ダンジョンに恩恵なしで挑むのは間違っているのだろうか? チート? いいえ努力です (モフモフ好き)
しおりを挟む

ダンジョンに恩恵なしで挑むのは間違っているのだろうか? チート? いいえ努力です

 照りつける太陽の下、馬車は目的地へ向かった進む。

 

「あれがオラリオか」

 

 まだ一両日かかる距離であるにも関わらず、馬車の中からでもよく見える、遥か天高き塔、宛ら旧約聖書に書かれたバベルの塔だ。

 その根本に目的地であるこの世界の世界の中心地とされる迷宮都市オラリオが存在する。

 

 しかし都市と謳っているが、実際は都市国家と言えるだろう。

 

 え? なんで旧約聖書なんて出てくるのかって?

 

 神のミスで転生したからですよ……。

 

 

 

 バベルを見上げながら、あの時から今日までのことを思い出す。

 神を名乗る者に、突然自分が死んだことを告げられたあの時を。

 

 

 

「お前さん、死んじまったんじゃよ、それも手違いで」

 

「ハハハ、テンプレワロス……いや、ほんとに笑えないんですけどこれ」

 

「すまんの、管理部署で盛大にずっこけたやつがおっての……その際にお前さんの書類だけが運悪くシュレッダーへとヒラリヒラリ」

 

「復元できないんですか?」

 

「無理じゃった、ものの見事にバラバラで復元して蘇生させたとしてもかなり歪みが出ててな、それで蘇生させたとしても周りへ連鎖的に歪みが膨らみやがて世界がどうなるか」

 

「なに? 特異点にでもなるの? それとも異聞帯化待ったなしの? カルデア案件なの?」

 

「お前さんの認識で言えばぶっちゃけそうなるな、歪みが他の枝葉に移る前に剪定されることになりかねない」

 

「つまり世界のために犠牲になれと……」

 

「まあそうなるの、とは言えそのままにしておくとそれもそれで色々と問題がな、じゃから異世界に転生してくれんか?」

 

「それはそれで特異点にならないんですか?」

「そこら辺は大丈夫なようにできているからな……、前例を大量に作ってくれた奴らがいての、その対策にできた機構じゃ」

 

「ああ、昨今量産されてるという……」

 

「まあそうなるな、というわけで行く世界は」

 

「こっちで決めれるんですか!「残念じゃが、くじ引きじゃ」おおう……」

 

 行き先が決まっていないなら、ファンタジー系とか行ってみたかった。

 スパロボ系も憧れだったけど……無念。

 

 そう言って箱をを出され、それに手を突っ込んでくじを引いてみる、行き先は

 

「【ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているのだろうか】じゃな」

 

「ダンまちですか……、よっしゃファンタジー! ちなみに生前の記憶とか人格とか、チートみたいなものはもらえるんですか?」

 

「渡せはするのじゃが、直接的なチート系はおすすめはせんぞ」

 

 その一言に高ぶった高揚が冷水をぶっかけられたかのように下がっていく。

 

「あの世界、神が降りてきておる関係上、生や死、それに近い権能持ちは稀に魂を見れたりするからのう。

 チートを授けるとどうしても魂にな……、チートもらって神々の標的ないし玩具になってもいいと言うなら止めぬが」

 

 神々の標的になってもいいのか? その一言で、もしチートもらって転生したときの自分の姿が容易に想像できてしまった。

 

 あの2chスレないしネット掲示板の住人のような神々の中に、ごちそうという名の玩具が投下された場合のイメージが次々と湧いてきてしまう。

 

「う~ん、けどな~、チート無しであの世界か……」

 

 しばらく考えていたときにふと、昔考えたことが頭をよぎった。

 もし異世界転生できて特典もらえるとしたらどうするか。

 その中で一度考えたことがあった。

 修行系だ、転生前に習いたい技や流派の、学問を修行させてもらえたならばと。

 

 

 そこから神様に頼んでチートの代わりにある条件下で修行をつけてもらえないかと。

 

 そこからはトントン拍子で話は進み修行をつけてもらうことに。

 

 一人目の師匠はGetBackers奪還屋から風鳥院花月さん。

 風鳥院流の技は結構好きだったのでお願いすることになりました。

 

「では、これから風鳥院流の基礎から始めます、まずは琴の基礎から」

 

 そしてうっかり忘れていたのだ、風鳥院流を学ぶということはすなわち、女体の持つ娟さを必要とすることを。

 舞を踊り、琴を奏で、振り袖も着こなす修行が必要だったのだ。

 他にも料理に裁縫など、他にも色々教えてもらうことに。

 

 そして気がつけば、筧十兵衛さんや朔羅さん、雨流俊樹さんまでいたのは、やはり花月さんの隣には彼らの存在が欠かせないということなのだろう。

 絆、魂のつながりなんでしょう。

 

 なお、修行場所のイメージは回想にもあった風鳥院家。

 

 そして風鳥院流の修行が終われば、次もGetBackersからポイズンウィッチ、工藤卑弥呼さん。

 

「やるからにはきっちり行くわよ、覚悟は良い?」

 

 修行場所はかつて卑弥呼さんが美堂蛮、兄の工藤邪馬人の三人で暮らしていた場所である。

 

 というわけで、美堂蛮、工藤邪馬人さん達……どころか、天野銀次、マリーア・ノーチェス、ホンキートンクのマスター達まで。

 

 うん、赤羽さんが見当たらないけど、それ以外の人たちがだいたい集合してる。

 先程まで修行していた、風鳥院家も隣に見える。

 つまり……、大集合というか、大同窓会なのかもしれない。

 卑弥呼さんの家の隣にホンキートンク、その隣にマリーアさんのカード屋カルタスまで……。

 

 完全な宴会である。

 

 

 そんな宴会の中、私はポイズンパフュームを学ぶため、空気の選別と呼吸法の修行をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 うん、修行が終わってから振り返る。

 死ぬわ! というか死んだわ!

 

 正直転生前に何度死んだと思ったか……、転生前の状態ということで、この修行中に死ぬことはないけど、何度も経験するというのは……どこのゼロシステムだろうか。

 転生前ということで肉体が擬似的な没個性くんという感じで、人の形はしているけど個性というものが無い。

 

 転生後、つまり来世がどんな姿になるかはわからないというのがあるんだろうけどね……。

 

 

 つまり転生後、体の慣らしから始めないといけないという問題も存在しました。

 

 空気の選別で毒を吸うことは何度も、最初は催眠香、そこから徐々に毒性が強いものへ……。

 うん、赤死香とか超やばいわ……。

 

 死に覚えゲーのキャラの気持ちをものすごく感じられてしまった……。

 

 後は、殺気に耐える修行も追加され、気がつけば蛮さんの殺気を受けたり、気がつけば銀次さんが名前を呼んだら、銀次さんの隣りに赤羽さんが現れてひと悶着あったり、それに気づいた銀次さんがタレパン銀次になって怯えてたりと……。

 

 途中から蛮さんの実践稽古まで追加され、色々されてしまった……。

 

 

 おかしい、ポイズンパフュームを習いに来たはずが、なにか違うものもたくさん学んだ気がする。

 

 途中何度意識が飛んだかわからないわ~。

 

 マリーアさんは、ポイズンパフュームもウィッチクラフトの部類にも入るということなのだろうか、いくつか手ほどきも……。

 

 

 

 もうどれだけ時間がかかったのかわからないけれど、それもようやく終わりを迎えた。

 

「これで私が教えられることは終わったわ、まあ向こうで使えるかどうかはあんた次第よ。

 まあ、あっちでも頑張んなさいね」

 

「皆様、ご指導、ありがとうございました!」

 

 

 そして、その後すぐに別の場所へと飛ばされていた。

 他にも錬金術等の技術を学んだりしたのだが、省略。

 

 最後にたどり着いたのが、あるお店での修行。

 

 願いを叶える店。

 

 対価を払えばどんな願いも叶えてくれる店へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは突然の事だった。

 

 そいつは夢の中に現れてこう言った。

「対価を払おう、これからそちらに送るのでお前さんの術を教えてやって欲しい」

 

 対価を払うから術を教えろだって?

 

 だが、そいつは安くはねぇぞ。

 

「無論じゃとも……」

 

 そして、そいつが持ってきたのは光だった。

 

「ことが終わればこれを対価に」

 

 自身の目と力で釣り合っているか……。

 

「願いは……」

 

 

 

 

 目が覚めれば客はすぐに現れた。

 

 

 不思議な客ではあった。

 

 依頼人が言うにはまだ生まれる前であり形が定まってはいない、それ故の没個性というか、人の平均を重ねていったらこうなるんじゃないかというような躰。

 かつて受けた依頼のあの子供ともまた違う。

 

「これからよろしくおねがいしますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからどれぐらいの時がたったか。

 力の使い方に関して言えば此処にくる前に教えられてたのかすんなり覚えてくれていた。

 その師が良かったのかそれとも……。

 

 術の覚えは良かったが、時々モコナと組んで騒がしくなるのが難点だったな。

 だが、ちゃんと気配りもできていたし、俺の方が術を教えられる事もあったぐらいだ。

 けれどそれも今日まで。

 

「これで、俺の教えられることは全部だ」

 

「四月一日先生、お世話になりました」

 

 

 その挨拶が鍵になったのか、徐々に姿が薄くなっていく。

 

「ああ、次にお前さんがどこに行くかわからないけど、せいぜい頑張りな」

 

「ええ、四月一日先生も、モコナもお元気で……」

 

 そして最後に消える直前

 

「それから、お酒と液キャベ補充しておいたほうがいいかもですよ」

 

 そう言い残して消えていった。

 

「全く、酒はともかくなんで液キャベなんだか……、俺はそこまで飲まねぇっての」

 

 液キャベ……か、侑子さんの事を思い出すな。

 

(ワタヌキー♪ ワタヌキ~♪ 今夜は蔵のお酒全部開けるわよ~♪)

(う~、頭痛~い……だる~い)

 

「全く、飲み過ぎなんですよ」

 

 

 そして侑子さんの事を思い出し過去を思い出していると客の気配が。

 

 

 

 

 そして、いつものように客を出迎えようとした。

 しかし客を見た瞬間、刻が止まってしまった様に思えた……。

 

 

「ここは、何のお店かしら?」

 

 気がつけば涙が流れていた、声を震わせながら必死に言葉を絞り出した。

 

「願いを、願いを……叶えています

 俺に叶えられる願いで、あなたがその対価を支払えるなら」

 

 

「じゃあ私の願い、叶えてくれるかしら?

 ───ただいま、四月一日」

 

「はい、その対価が払えるなら

 ───おかえりなさい、侑子さん」

 

 

 

 そして、あの日からずっと止まっていた刻が動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自己満足ってわかっているけど、もう一度巡り会える世界線があってもいいよね……」

 

 

 

 

 

 

 

 あの瞬間を見届けた後、完全に意識が途切れた。

 

 あそこが最後の修行地だった以上、次に目覚めるときは転生先。

 

 一体そこで何が待っているのか、それはまだわからない。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。