氷室葵の暗殺教室 (ゼノ)
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1学期
1話 始まりの時間
駄文だと思いますが、頑張って更新していこうと思います。
俺の名前は氷室葵。椚ヶ丘中学校の3年A組に所属している。
そこで俺は退屈な毎日を過ごしていた。
私立椚ヶ丘中学校は名門と名高く、学問やスポーツにおいて一流の学校だ。
そんな椚ヶ丘中学校で俺は勉強や部活において上位の成績だ。周りから見れば俺の日常はとても充実した毎日に見える。
しかし、俺は退屈だった。思えば、5年前のあの時からだっただろうか。こんなふうに思ってしまうようになったのは。
何をやっても退屈だと思ってしまい、俺の日常は空白な毎日と化していた。
空を見上げればまだ明るいにも関わらず三日月が出ている。最近ずっとそうだ。三日月から形を変えない月が昼でも空に出ている。
最初は驚いたが、今となってはこれが当たり前の景色だ。
学校も終わり、帰り道を歩いていると数人の不良が1人の少女に絡んでいた。世間一般的に言うナンパだろう。
「お嬢ちゃん、可愛いねぇ。俺達と一緒に遊ばない?」
「いえ、結構です。は、離して下さい!」
「そんな事言わずにさぁ」
不快だ。弱者を虐げる奴らは見ていて吐き気がする。1人を数人で囲むようなクズは特に。見ているだけで殺気が溢れ出てくる。
溢れ出す殺気を抑えきれず手を出してしまったことが今までで何回もあった。気付いたときには、自分の身を守るためにと親父から習った護身術が喧嘩をするための技術になってしまっていた。
だけどいつからか、不快感を覚えるものの止めに入ることはなくなっていた。
どれだけ助けてもこういった輩の数は減らない。
むしろ俺が助けた生徒は全員、俺が放つ殺気と1人で数人の不良を圧倒する俺の姿を怖がり、恐れ、避ける生徒たちが増えていった。
2年生に上がる頃には大体の生徒から恐れられ、俺は生徒たちから『化け物』と呼ばれるようになった。
もうこんな事はやめよう。こんな事しても、何も意味なんてない。そう思っていた。
「いいから離して!」
「何だとコイツ!」
抵抗する少女に激怒した不良が少女に殴りかかった。
「やめなよ、お前ら。嫌がってるのに無理矢理連れて行こうとするとか最低だな。しかも断られたら即暴力かよ。ほんと、お前らみたいな人間はいつ見てもクズだな」
いつもなら放っておくだろう。でも何故か俺は放っておくことが出来なかった。
少女に手を出そうとした不良に我慢出来なかった。そして、少女を助けたい。そう思った。だから止めた。
「あ?んだテメェ。中坊が、舐めてると痛い目見るぞ!」
「痛い目見るのはお前らの方だ。来いよ、クズども」
「舐めんじゃねぇ!クソガキがぁー!」
不良の1人が俺に殴りかかってきた。だが動きが単純すぎる。そんな攻撃では俺に当てるどころか擦り傷一つ付けることはできない。
身体を下に下げて不良の拳を避け、懐に潜り込む。そのまま身体を起こすと同時に不良の顎目掛けてアッパーカットを放つ。それだけで不良は気絶した。
「う、嘘だろ...」
「あ、兄貴が一撃で」
不良たちの目線が気絶した不良に集中する。
「こ、この野郎がぁ!」
「よ、よくも兄貴を!!」
今度は2人がかりで殴りかかってくる。俺はそれを慎重に見極め、両手で不良2人の拳を受け止めた。そしてそのまま不良の腕を振り払い、体勢を崩した不良の腹に本気の一撃を叩き込む。
「かはっ...!」
「ごふっ...!」
ドスっ...と鈍い音がして不良は倒れ込む。
「で、お前らはどうすんの?まだやるってんなら相手になるけど?」
そう言って俺は残りの不良たちを睨みつけ、殺気を放つ。
「な、何なんだよコイツ!?本当に中坊かよ!?」
「に、人間じゃねぇ。ば、化け物だ!逃げるぞ!」
不良たちは気絶している不良と痛がっている不良を抱えて逃げていった。もう終わりか。意外とあっけなかったな。
それにしても、『化け物』...か。
結局傍から見ればそうなのだろう。数人の不良を1人で圧倒する俺は『化け物』にすぎない。
この少女も俺を『化け物』と言って逃げ出すに違いない。
そう思いながらも俺は少女に声を掛けた。
「大丈夫?怪我とかない?」
「はい、大丈夫です!助けてくださってありがとうございます!」
俺は動揺してしまった。何故ならこの少女は俺を怖がることなく、それどころか俺に礼を言ってきたのだ。こんなこと、今まで一度も無かった。いつもなら悲鳴を上げて逃げ出しているはずだ。
「いや、礼なんていいよ。ただ、アイツらのことが気に食わなかっただけだ。それよりも、君は俺のことが怖くないの?」
「全然!どうしようかと思ってたので本当に助かりました!」
「そっか...」
こんな人もいるんだな。そう思いながら少女を見る。
少女は俺と同じ椚ヶ丘の制服を着ていた。ぱっと見は年下に見えるが、よく見ると俺と同じ3年生だった。
しかし彼女を見たことがない。おそらく転校生だろう。
「俺の名前は氷室葵。君と同じ椚ヶ丘の3年生だ。同い年だし敬語は使わなくていいよ。よろしく」
俺は無愛想に少女に挨拶をする。
「同い年だったんだね!私茅野カエデ。よろしくね!」
茅野は明るい笑顔でそう言った。でも何故か違和感があった。茅野の笑顔が本物ではないような、そんな違和感が。
でも今はそんなことを気にしても仕方がない。
「暗くなってきたし駅まで送るよ。さっきみたいな奴らにまた絡まれたら面倒だろうし」
「あ、ありがとう」
駅へ送る途中、茅野は自分のことについて話してくれた。
最近椚ヶ丘に転校してきこと、育ててくれた姉と二人で暮らしていたが、その姉が事故で亡くなってしまったこと、椚ヶ丘にいる親戚を頼って椚ヶ丘に来たこと。そして、自分がE組であること。
俺についても話した。両親を亡くし今は叔父さんである祐介さんと二人で暮らしていること。昔は不良たちを潰して回っていたこと。そして、俺が『化け物』と呼ばれていること。
茅野は俺が『化け物』と呼ばれていることについて「酷いよ!氷室くんはただ人助けをしてただけなのに!」そう言ってくれた。
茅野と話すのはとても楽しかった。久しぶりだ。誰かとの会話がこんなにも楽しいと思えたのは。
そうこう話しているとあっという間に駅についた。
「今日は本当にありがとう!」
茅野はそう言い残して帰って行った。
茅野を送り届けた後、そのまま俺は家に帰った。
「ただいま」
家につき、ただいまを言うが、誰もいない家に虚しく声が響く。祐介さんは仕事で忙しく、あまり家にいることはない。だから基本家では1人きりだ。
夕食を済ませ、風呂に入ってベッドに横になる。
眠りにつく前に考えた。
どうして俺は茅野を助けたのだろう。人助けをしても恐れられるだけ。もう人助けなんかしない。そう決めていたはずなのに。
自分でもわからない。気付いたら止めに入っていた。
どれだけ考えても答えは出ず、その日はもう寝ることにした。
この時の俺はまだ知らなかった。俺のこの行動が今後の人生を大きく変えたということを。
そして翌日
俺は朝から職員室に呼び出された。
職員室の扉を開けるとそこには担任が立っていた。
「全く、E組の生徒をかばって喧嘩しただと!お前はバカなのか氷室!成績優秀なお前だから今まで多少は見逃してやったが、E組をかばったというなら話は別だ。お前のせいで私の評価に傷がつくんだぞ!もういい、お前は一週間の停学後E組行きだ」
くだらない。自分の保身が危うくなれば平気で生徒を切り捨てる。本当にコイツらはクズばかりだ。
「そうですか。別に構いませんよ。俺はアンタを教師とは思わない。だからこそアンタから学ぶことなんて一つもない。では、失礼します」
そう言って俺は職員室を出た。
E組か...。クラスが変わったってきっと俺は1人だ。今までと何も変わらない。
だって...俺は『化け物』なのだから。
A組での最後の授業が終わり、俺は家に帰った。
家につくと家の前には黒い車が停めてあり、その車には黒いスーツを着た男が乗っていた。
男は俺を見つけると車を降りて俺に話し掛けてきた。
「私は防衛省の烏間と言うものだ。君が氷室葵君だな?」
「はい。そうですけど、何か?」
防衛省の人が俺に何の用だ?
「実は、君がE組に編入すると聞いて話をしに来た」
俺に話?一体何だろうか?防衛省の人からの話ということは余程重要な話なんだろうが...。
「どうぞ」
家に入ると、烏間さんは俺に一枚の写真を見せてきた。
何だコイツ?タコ、なのか?しかし、そのわりには黄色いし足の数が多い。それに身長も大きすぎる。
見たことのない生物を見て驚いている俺に烏間さんは更に衝撃的なことを言った。
「単刀直入に言う。君にこの生物を暗殺してほしい」
言葉を失った。中学生の俺が暗殺を?しかもこの奇妙な生物がターゲットだと?
「コイツは月を7割破壊した犯人であり、来年の3月には地球も破壊すると言っている。
そしてこの超生物は君が編入する3年E組の担任でもある」
烏間さん曰くこの超生物はマッハ20で動けるうえに、普通のナイフや弾丸は効かず、この対先生用ナイフと対先生BB弾でのみダメージを与えれるらしい。
「マッハ20の超生物が暗殺のターゲット…」
続けて烏間さんが誰をも殺る気にさせる一言を放つ。
「成功報酬は、100億円だ」
他の生徒たちは既に暗殺を始めている。君にも停学が明け次第暗殺に参加してもらう。そう言い残して烏間さんは帰って行った。
「超生物を暗殺する為の暗殺教室、ね」
『化け物』の俺にはぴったりなのかもしれない。
E組で上手くやっていけるかはわからない。茅野は俺の事を恐れていなかったが他のE組生徒たちは俺のことを恐れるかもしれない。
だけどこの超生物の暗殺は俺の空白な毎日を埋めてくれる。そんな気がした。
ターゲットはマッハ20の超生物。成功すれば報酬は100億円。
今、俺の暗殺教室が始まろうとしていた。
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