ベルセルク 転生戦記 (ボルボロックス)
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始まり
プロローグ 転生


ーー……雨が降り頻り、その街道を多くの人々が行き交う中、とある児童養護施設の一室にて1人の少年が、漫画を読んでいた。

 

暗い茶髪の少年、黒瀬 大雅。彼が熱心に見ている漫画は"ベルセルク"というダークファンタジーである。

 

ベルセルクは内容がエグい部分があり、特に強姦や死体、殺人、臓物の表現が強い漫画であり、そんなシーンに加え、ワンピースなどにはある快活な表現が少ないが、独特な読者が多い。

 

「ふぅ、今日も面白かった。さてそろそろ寝るかな。」

 

ベルセルクを読み終えた大雅は本を棚に戻し、眠りに着く。

 

 彼は幼い頃、2度親に殺されかけた。

 

1度目は生みの親にネグレクトを受け、瀕死の所まで行った所を役所と警察、施設の人間に保護され、その際に一命を取り留めた。

 

2度目は新しい里親に引き取られた時、その時は父親から暴力を受けて心と身体に傷を負い、その後再び施設に保護された。

 

 2度家族に裏切られた大雅は、初めは人間不信になったがそこから施設の人々の必死の治療の甲斐もあって、大半の人間を信用出来るようになってきた。

 

「(明日は……まぁ良い日になればいいかな。外にでも行くか。)」

 

そうして眠りに着くと、大雅の意識は底に落ちていった……。

 

 

ーーー。

 

 

大雅Side

 

「(あれからどんだけ時間が経った?もうそろそろ朝か?だとしたら起きないと……。)」

 

 そう思いながら身体を動かそうとしたが、思うように身体が動かない。手足が可笑しいのか?

 

ゆっくりと目を開けると、そこには茶髪の女の人がおり近くに同じくらいの赤ん坊がいるのだが、というか、近くでカラスがカァーカァー、鳴いているのは何故だ?

 

「(あれ?この人、ベルセルクのシスさんじゃないか?んじゃ、あの子はガッツで……って、ここはまさかベルセルクの世界か!?)」

 

寝て起きたらベルセルクって!?一体何が起きた!?俺あの後どうなったんだ?!

 

「んぎゃーーー!んぎゃーーー!」

 

ヤバい、声も赤ん坊の物しか出せない!

 

 そんな事に戸惑っていると、シスさんは俺の事を優しく撫でながら泣き止ませてくれた。

 

その温かさが、とんでも無く心地よい。

 

すると、俺を殴ろうとしていたのかガッツの父となる男、ガンビーノが拳を振り上げていたが、それをシスさんが庇ってくれた。

 

「ちっ!そのガキ寝かしつけとよシス!」

 

「うーー。あ……あぅ……タ、イ…ガ……。ガッ……ツ。」

 

俺とガッツを抱きながら、とても幸せそうに笑うシスさん。俺達の名を呼びながら、シスさ……義母さん嬉しそうに笑うのだった……。

 



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01 旅立ち

タイガSide

 

 俺が"タイガ"としてベルセルクの世界に、いつの間にか転生してから数年後、しばらくは赤ん坊として過ごしながらハイハイなどで身体を動かしていた。

 

そして3歳になった頃、俺は義母さんを助けたくて沢山薬や身体を治す為の医学を独学で学びながら、義母さんがペストにならないように気を付けた。

 

しかし、俺達が4歳になった頃、義母さんはペストに掛かってしまい、俺達の前で息を引き取った。ガッツは強い奴だよ、辛くても泣かないんだから。

 

 俺も泣くのを堪えていたが、どうしても夜一人の時になって大泣きしたよ。けど、泣いている暇は俺達には無かった。

 

5歳になると俺とガッツは戦場に駆り出され、戦の手伝いをしながら戦場の空気を学ばされ、剣を振れるようになる為に稽古までさせられた。

 

初めの時は俺ら2人揃って吐いたけど、大体の事はすぐに慣れた。

 

ーーー。

 

ーー。

 

ー。

 

 それから時が進み、俺達が10歳になると2人揃って"初仕事"に出た。戦争に"傭兵"として出たのだ。

 

初めは周りに茶化されながらだったがこっちは死ぬ気で何人も殺した。初めて人を切った時の感触は今でも手に残ってるし、思い出しただけでもゾッとする。

 

ゾッとで思い出したが、俺はこの世界でガッツに対しての結末を変えるために、アイツと義兄弟の盃を交わして義兄弟になり、それから一緒に鍛錬や筋トレなんかもしている。

 

おかげで筋肉もそこそこに、ガッシリとした身体付きになって剣も問題なく振れるようになったし、得意な武器(カットラス2本)も手に入ったし、ガッツにだんびらを渡せた。

 

 けど、俺達が夜に寝室で休んでいる男色家の男である仲間にケツを掘られてしまった。いやあれはマジでクソ痛かった!まぁ翌日にガッツと一緒に奴を殺したけど。

 

その後はガンビーノが多少の怪我をして、戦場に出れなくなったが俺達は構わずに傭兵として戦争に出ていた。

 

こっちはあのクソ野郎の世話なんざ焼きたくないので、放っていたが、ガッツはガンビーノに憧れているのでアイツの世話を焼こうとした。

 

 けれど、ガンビーノの野郎は俺達を疫病神だなんだと言って殺しに来たので応戦したら、事故でガッツの得物である"だんびら"に奴の喉が刺さり、そのまま死んでしまい俺達は夜逃げの形で傭兵団を抜け出した。

 

「これから、どうするんだ?タイガ。」

 

「……。」

 

「なぁ、これからどうすればいいんだ?!タイガ、教えてくれよ!!」

 

泣きそうになりながらこちらを見てくるガッツ。

 

そりゃこんな状況になれば、混乱するだろうし、戸惑うのもわかる。けど、なっちまった物は仕方ない。

 

「旅をしよう。ガッツ、旅をしながら金を稼いで行こう。」

 

「それって、他の傭兵団に入りながらって事?」

 

「あぁ。そうするしか生きる方法は無い。ガッツはどうする?」

 

「……分かった。俺も頑張る!」

 

俺達は2人で夜の星空を見ながら、近くを通り掛かった傭兵団に拾われ、そこから戦場を転々としながら剣の腕を高めて行った……。



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02 髑髏の騎士

お久しぶりです!投稿します。


タイガSide

 

 あの夜から俺とガッツは様々な傭兵団を廻りながら戦争を経験し、路銀を稼いではその日暮らしをしたりしていた。時には鍛錬をしている。

 

まぁ出来る事つったらナイフの使い方、炸裂弾の投げ方などは教えれるのでそれを混じえながら鍛錬をしている。

 

そんで、今は夕飯のおかずである"うさぎ"を調理している所だ。

 

「よっしゃ!ガッツ。飯できたぜ。」

 

「おう。」

 

今日のメニューは"ウサギ肉のつくねと野菜の汁物"と"子鹿のステーキ"だ。

 

「お前、マジで飯作るのは美味いよな。あぐっ!!」

 

「そうか?そいつはありがとうな。」

 

そんな他愛ない会話をしながら夕飯を平らげた俺らは、火を消して眠りについた。しかし、その時に何かの気配を感じると、霧が立ちこめており、蹄を打つ音が聞こえてきて、振り返るとそこに、キーパーソンである"髑髏の騎士"がいた。

 

「あんたは!」

 

「ほう?異物なる者がこの世界に入ったか。」

 

「あんた、何しに来たんだ?」

 

「うぬのような存在がこの物語をどのように変えるのか、我は興味があって馳せ参じたまで。好きに歩むが良い。どのような結末になるのか、我は見届けるのみ。」

 

髑髏の騎士はそう言うと、愛馬に乗ったまま霧の向こうへと消えていった……。

 

 

ーーー。

 

 

髑髏の騎士Side

 

あれが転生者という存在か。

 

初見で感じた事は少ないが、奇異な存在ではあったな。

 

「(あの男から感じた気配、奴には何かあるか。)」

 

そんな事を考えながら我は愛馬と共に霧の中を進んだ……。

 

 

ーーー。

 

タイガSide

 

 髑髏の騎士と邂逅した翌日、俺らは新しい戦場に出向きそこで灰熊のバズーソって奴が味方を戦斧を斬りながら名乗りを上げ、それを見て仲間達は怯え始めた。

 

「よしっ!んじゃ俺が「待てこら。」あいてっ!なんだよガッツ。」

 

「お前はこの間大暴れしたじゃねぇか。ここは譲れ。」

 

そう言うと、ガッツは前に出て将軍さんと何かを話していた。恐らく値打ちについて、だろうが。

 

「お、おい。あの坊主大丈夫なのか?」

 

「体格にしたってそうだが得物だって長いし……死んだなあいつ。」

 

 周りの兵士が口々にそういうが、そんな事戦の中じゃ関係ねえよ。ド素人共。

 

「ガッツ!やったれ!!」

 

「るっせぇ、気が散るから口出すなっての!!」

 

ガッツはだんびらを振ってバズーソを追い詰めていき、その当りの強さからかバズーソは後ろに押され始めていく。

 

てか、鎧着込み過ぎなんだよ。あの馬鹿は。

 

「ぐっ!!おのれ!」

 

「っ!!」

 

 そう言ってバズーソがガッツに向かって斧を振るが、それは空を切りガッツの一撃がその頭に直撃し、バズーソはその場に膝を付くが、ガッツはだんびらを構えていた。

 

「ま、待て!?このバズーソ感服の至!だからま」

 

待ってくれ。と言おうとしたが、ガッツによって頭を砕かれて物言わぬ死体となったバズーソを見ながら、ガッツは溜息をつく。

 

「馬鹿が。戦場でそれが通用するかよ。」

 

ガッツの活躍に全員が息を呑む中、俺はガッツに近付いたがすぐに戦が再開され、敵を撃ちに掛かる。

 

「やるじゃん、ガッツ!」

 

「当たり前だ。あんなヤカン頭に負けるかよ。」

 

「よっしゃ!んじゃ残りも片付けるか!」

 

そうして俺達がメインとなって敵兵を斬り伏せていき、最終的な戦果としては俺が4でガッツが6という結果になったが、まぁたまには良いかな。

 

そんな中、俺らを見ている視線に気付きその方向に振り返ると、そこには銀髪のあの男がいた。

 

 

 

「(あれって、グリフィス!?)」

 

 

 

 

 



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03 グリフィス

 タイガとガッツが戦争を終え、兵士たちに並んで2人もその日の取り分を騎士団長から受け取っていた。

 

そんな中、戦士団長はガッツとタイガに話し掛けていた。

 

「お前達2人、中々の腕前であったな?1人はバズーソを討ち、1人は50人を斬り伏せた……正直驚いたぞ!」

 

「……。」

 

「どうも。」

 

「どうだ?2人とも私の下に士官してみないか?給金も今の3倍、いや4倍だそう!士分に取り立てたやっても良いぞ。どうだ?」

 

「……行くぞタイガ。」

 

 金額を数え終わったガッツは、踵を返すことなく歩いていくとタイガは戦士団長に頭を下げた。

 

「ごめんなさい!……凄く有り難いんですが、すみません、俺らは傭兵ですのであなたの様な方には勿体ないと思います。お気持ちだけ受け取っておきます。」

 

タイガは一礼してそう言うと、ガッツの後を追っていき、その背を見ながら戦士団長は顎を撫でた。

 

「う~ん、片割れは無愛想ではあるが……もう片方は惜しいなぁ。あれは良い騎士になるというのに。」

 

そう呟くと、戦士団長はその場を立ち去った。

 

2人は緩やかな道を歩いているが、ガッツは不機嫌そうに歩いており、タイガは資金が入った袋を弄っていた。

 

「……。」

 

「今日中に街に着けると良いな。まぁどっかで野宿「おい。」ん?どした、ガッツ?」

 

「お前、どこにも行かねぇよな?」

 

「ん?」

 

「さっきの野郎みたいな奴の所には、行かねぇよなって聞いてんだよ!」

 

苛ついた様子で、そうタイガに質問をするガッツ。

 

どうやら先程のタイガと戦士団長との会話が気に入らなかったのか、少し食い気味で来ていた。

 

すると、タイガは笑った。

 

「あははっ、大丈夫だよ!義兄弟置いてどっか行くわけ無いだろ?」

 

「本当だろうな?」

 

「当たり前だよ、ガッツ。」

 

すると、遠くから馬に乗った者が数人がこちらに向かって走って来ていた。その手には剣が握られており、鎧を身に纏っていた。

 

「?盗賊か?」

 

「いや。多分敵側だった奴らだな。ガッツ下がってな。」

 

タイガはそう言うと、懐から小さな袋を3つ取り出すと、それを地面に叩きつけて、その場に鼻を抑えてガッツと一緒に屈んだ。

 

すると、全員は突然くしゃみをしだし、馬から転げ落ち馬も苦しそうに暴れた。

 

「なんだこりゃあ?」

 

「ちょっとしたイタズラ道具だ。さぁて、さっさと縛っちまおう。」

 

タイガは戦の中でくすねた縄を取り出すと、全員の鎧と剣を取り上げて縛り上げた。

 

「げほっ!げほっ!ちくしょう!?げほっ!卑怯だぞ!?縄解け!!?」

 

「いやあんたらが襲ってきたからだよ。どうせ追い剥ぎ目的だろ?」

 

「タイガ、こいつらどうする?」

 

「無視して街行こうぜ?腹減ってしょうがないし。」

 

そうしてタイガとガッツが縛り上げた者達を無視して進もうとすると、別の人間が馬に乗って向かって来ていた。

 

すると、1人の男が声を挙げた。

 

「キャスカ!?来たのか!」

 

「仕方ないだろ。グリフィスの命令だ……そいつら返してもらってもいい?」

 

「ん?あぁ別に良い「良くねぇよ。」おいガッツ。」

 

「こっちは襲われかけたんだぞ?落とし前くらい付けさせろ。」

 

ガッツの言葉に、タイガはやれやれといった様子でため息をついた……。

 

 

ーーー。

 

 

タイガSide

 

 コルカス達を縛ったあとに、キャスカが現れたが原作通り、ガッツとキャスカが切り合いを始めた。

 

初めの方はキャスカの動きを見ながら、だんびらで流したり弾いたりしていたガッツの動きに、彼女も戸惑った様子でサーベルを振っていた。

 

まぁ鍛えたガッツに今のキャスカじゃ勝てないわな。

 

そんな中、ガッツがキャスカを馬から弾き落とすと止めとばかりにだんびらを振り上げる。すると、どこからか槍が飛んできて2人の間に刺さった。

 

グリフィスだ。

 

「グリフィス!」

 

「剣を、引いてくれないか?」

 

 涼やかな声が広がり、キャスカ達が安堵の表情になるがガッツはだんびらを構える。すると、グリフィスも溜息を吐きながらもサーベルを抜く。

 

ガッツが斬り掛かるが、グリフィスはまるで紙みたいにヒラヒラと避けていき、アイツの腹に向かってサーベルが刺さりそうになる。

 

「(ヤバい!)」

 

ガッツにサーベルの刃が刺さりそうになった瞬間、俺は全力で駆け出して2人の元に向い、カットラスを抜いてグリフィスの持っていたサーベルをだんびらの上に乗って止めた。

 

 

ーーー。

 

 

ガッツSide

 

「ちょいちょい、2人とも。マジになってどうするんだよ?少し落ち着けや。」

 

タイガに止められて、俺はだんびらを構えたまま目の前の馬に乗った奴を睨み付ける。

 

この野郎、さっきからスカした顔をして俺らを見下ろしやがって!ぶっ飛ばすぞ!?

 

「悪いが、アンタとやり合う気はない。行くぞガッツ。」

 

タイガは珍しくその場を急いで去ろうとして、そう言ってくる。

 

まぁ、俺もこいつを見てるとムカついてくるから同意するが。

 

すると、グリフィスとかって野郎は俺らの前に剣を抜いて足を止めさせた。ったくなんだよ!?こっちは急いでんだよ!

 

「待て。悪いが、2人とも着いてきて貰うよ?」

 

「「?」」

 

グリフィスとか言う奴の言葉に、俺とタイガは首を傾げるしかなった……。



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04 鷹の団

グリフィスSide

 

 タイガとガッツ……この2人の事は敵陣営にいた時に見たが、その時に欲しいと思った。

 

ガッツの力と剣、タイガの冷静さと内に秘めた豪胆な部分。その2つがどうしても欲しかったが、オレと彼らは敵同士だったので声が掛けられなかったのだ。

 

けれど、2人がオレ達"鷹の団"のキャンプに向かって歩いて来ているのを知った時は、内心とても嬉しかった。それに改めて2人の腕前を知りたくて、コルカスがちょっかいを出すのを許した。

 

 案の定コルカス達は負けた上に、身包みを剥がされた上に放置されそうだったのは、流石に哀れに思えた為にキャスカを向かわせたが、それも駄目だった為に俺が向かい2人の前に立った。

 

「(2人とも、やはり欲しい。)」

 

2人ともオレには無い、力の籠もった目をしていた。

 

そして、ガッツと切り合いをして"誤って"彼の腹目掛けて刃が届きそうになったが、それはタイガによって止められたが、内心笑みが溢れたよ。

 

ますます2人が欲しい、そう思って仕方なかった!

 

オレは2人を鷹の団の別働隊がいるキャンプに誘い、そこで彼らを勧誘しようと決めて、2人を連れて行くことにした……。

 

 

ーーー。

 

 

タイガSide

 

 グリフィスに誘われ、俺とガッツは鷹の団の残りの面々がいる所に連れて来られた。

 

ガッツは周りの連中を警戒しているのか睨みを利かせているが、それ以上に背後のキャスカとコルカスから物凄く睨まれている。

 

まぁ、コルカスの場合は逆恨みだろうし、キャスカの場合は軽い嫉妬心からだろう。

 

「皆は休んでいてくれ。オレは彼らと話がある。」

 

「っ!?そんな、グリフィス!こんな奴らと何を話すの!?」

 

こんな奴ら扱いかよ。流石に泣くぞ。

 

コルカスも気に入らないのか、キャスカに同調して反論しているが、しかし、グリフィスは反論を許さなかった。

 

「キャスカ、コルカス。」

 

「「っ!」」

 

「……着いて来てくれ。」

 

苦虫を噛み潰したような顔をしながら、そっぽ向く2人を他所に俺とガッツはグリフィスに連れられて、彼が原作でガッツを勧誘した丘に連れて来られた。

 

「ふぅ……良い景色だろ?ここはオレのお気に入りなんだ。」

 

「「……。」」

 

「さっきは済まなかった。軽いイタズラのつもりだったんだ……コルカスにはそれなりに反省をさせる。許して欲しい。」

 

そう言うとグリフィスは頭を下げて来て、それを見て遠目にこちらを見ていたが、まぁこの際は無視しておく。

 

「いや、こっちもアンタら仲間の誰にも怪我とかしてないんだから良いんじゃないの?それで、用件は何なんだ?"鷹の団"のグリフィス。」

 

鷹の団の名前を聞いて、ガッツは驚いたらしくグリフィスを頭から爪先まで見渡す。

 

まぁ、鷹の団の噂は戦場でも原作でもよく知ってるから俺は驚かないが……。

 

「鷹の団……!?その団長が、こいつ?!」

 

「そう……んで?俺らになんか用なのか?」

 

「タイガ、ガッツ……お前達が欲しい。」

 

「っ!?」「……?」

 

グリフィスの言葉に、俺は息を呑み、ガッツはへんてこな顔をした。

 

まぁ、誰だっていきなしそんな事を言われればこうなるだろうけど、流石にその顔は無いぞガッツ。

 

まぁとりあえず理由を聞いておくか。

 

「なぁ、それはどういう意味なんだ?」

 

「ガッツの戦いは、バズーソのような怪物やコルカス達のような多勢が相手でも退かないが、とても危うく見えたが、それはタイガが様々な点で支えていた。」

 

「コイツ、猪突猛進だからなぁ。」

 

「んだとこら!?」

 

「ふふっ。何よりタイガの方についてだが……戦いの方もそうだが、オレはお前に個人的に興味がある。」

 

グリフィスの言葉に、内心俺はどこか嬉しかった。誰かに褒められたりするのは、悪くないし、何より鷹の団に誘われたのは好機だ。

 

中から物語を大きく変えられると思ったからだ。

 

だが、俺が返答する前にガッツが前に出ると、グリフィスを睨みながら言った。

 

「嫌だ、と言ったら?」

 

「イヤか?」

 

「あぁ!お断りだね!!!何で何も知らねぇやつに協力しなきゃならねぇんだよ!?大体テメェの部下から先に仕掛けてきたくせによぉ!!」

 

「ちょちょい!ガッツ!?」

 

「う~ん……では、どうすればいい?」

 

「コレ、で決着つけようぜ?」

 

そう言うと、ガッツはだんびらを抜いてグリフィスに向けた……。



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05 ガッツ対グリフィス

今回はガッツとグリフィスの喧嘩です。

てか、こうなるわな。



ガッツSide

 

 俺はグリフィスとかいう奴に向けて、だんびらの切っ先を向けている。しかし、野郎は怯えるどころが涼しげに笑っており、タイガに至っては呆れているのか頭を抑えている。

 

「なぁガッツ。俺らは喧嘩しに来たわけじゃないんだから、だんびらを納めたらどうだ?」

 

「るっせぇ!タイガ、てめぇは口出すんじゃねぇ!これはオレの問題なんだよ!?」

 

 こんな会ったこともねぇ、ましてやは俺らがどんな生き方をしてきたかも知らねぇやつに、こんなスカシ野郎に誰が従うかっての!!

 

すると、スカシ野郎はクスクス笑うと、腰に指していたサーベルに手を掛ける。

 

「力づくって言うのも嫌いじゃない。だが、俺が勝てば2人ともオレのモノだ。」

 

「んだと……!?」

 

「オレは、欲しい物は必ず手に入れる。」

 

「グリフィス!?」

 

スカシ野郎の部下だった女が叫んできたが、野郎は女の方を一瞥すると、平然と言い放った。

 

「キャスカ、手を出すな。誰にも手を出させるな。」

 

「けど!」

 

「キャスカ。」

 

 野郎が名前を呼ぶと、女は歯噛みして黙り込んでしまう。けど野郎はこちらを見ると、清々しい笑みを浮かべてきた。

 

気に入らねぇ、その面歪ませてやる!!

 

オレはだんびらを構えて、ヤツに向かって飛び掛かった……。

 

 

ーーー。

 

 

タイガSide

 

 はぁ〜、やっぱり始まったか。

 

ガッツは本気で切りかかって入るが、グリフィスからすれば軽いお遊び程度なんだろうな、さっきから軽々と避けてるし。

 

「ガッツ〜、怪我すんなよ?治療大変なんだから。」

 

「喧しい、黙ってろ!?」

 

あらら、頭に血が登ってるよあれ。こりゃあ負けた。

 

他所を見ると、コルカス達が集まっており何やらいざこざを始めている。

 

すると、キャスカがコルカスに両刃の剣を抜いて止めた。

 

そんな中、優男のような風貌の男であるジュドーが俺の所に歩み寄ってきた。

 

「隣、良いか?」

 

「ん?どうぞ、えぇっと。」

 

「俺はジュドー、宜しく。」

 

ジュドーは俺の隣に座ると、静かにガッツとグリフィスの打ち合いを見ていた。

 

「お前、タイガだっけ?どっちが勝つと思う?」

 

「ん?そりゃあグリフィスだろうな。」

 

「ありゃ?お友達の方じゃなくて?」

 

「バズーソを倒したくらいで、あれに勝てると思うほどこっちはのぼせ上がってないさ。むしろ同年代に負けたほうが良いと思ってるくらいだ。」

 

「手厳しい事で。」

 

「ジュドーはどっちが勝つと?」

 

「そりゃあグリフィスでしょ?自分の所の大将が負けるなんて思うやついるか?」

 

ジュドーの言葉に同意の笑みを浮かべると、グリフィスの流れる剣がガッツの身体を切り裂いていき、身体のあちこちから血が吹き出していた。

 

しかし本当にグリフィスは天才だわ!

 

やろうと思えば、ガッツを戦闘不能に出来るだろうが手加減して、あの程度で済ませてる。

 

いやある意味で本当に凄いわ。

 

するとけど、このまま行くと宜しくないな。止めるか。

 

「よっこいしょ、と。」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「止める。もうそろそろ良い頃でしょう?」

 

そう言って俺はカットラスを2本抜くと、"縮地"を使って2人の間に入り、ガッツのだんびらとグリフィスのサーベルを止める。

 

「「っ!?」」

 

「はいそこまで。ガッツ、そろそろ冷静になれ。これ以上やっても怪我が増えるだけだ。グリフィス、あんたも見極めはいいんじゃないか?」

 

「どけタイガ!!この野郎には「ガッツ、いい加減にしろよ。ガキじゃないんだから。」くっ」

 

俺の言葉にガッツはだんびらを抜くと、舌打ちをして後ろに下がる。どうやら血が抜けてどうすればいいか分かったらしい。

 

「悪かったな。グリフィス、こいつ頭に血が登りやすいんだ。」

 

「いや、オレも楽しかったよ。けど、まだ終わってない。」

 

「え?」

 

そう言うとグリフィスは、俺にサーベルを向けてきた。

 

「キミもやってみないか?」

 

あぁ、やっぱりそうなるのね。




グリフィスに剣を向けられたタイガ、どうするんでしょうか。

まぁ勝てる気がしないわけでもないけど?


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06 タイガ対グリフィス

タイガSide

 

 ガッツとの打ち合いを終えたグリフィスがそういうと、俺はどうすべきか首を捻ったが、ガッツは目線で「殺れ!」と送って来ている。

 

いやガッツさぁ、言葉の表記間違ってるからね?

 

殺れはないでしょ、殺れは……。

 

「どうした?やらないのか?」

 

「う~ん……分かった、やるよ。」シャキッ

 

腰に挿してあるカットラスを2本抜くと、グリフィスに向かって構え、グリフィスもサーベルを抜くとこちらに笑みを浮かべながら構える。

 

 俺とグリフィスの間に風が吹き、固唾を飲んで見守る中でグリフィスが先に動くのが"視えた"俺は、それを一撃を左手のカットラスで叩き落とし、グリフィスに向かって右手に持っていた剣で突きを放つ。

 

しかし、その一撃もグリフィスに躱されるが、今度は彼の足を咄嗟に狙って剣を振るうと、彼は咄嗟にその場から飛び退き、こちらも距離を離す。

 

追撃でカットラスを振るうが、その瞬間にグリフィスは身体を捻って避けると、今度は死角からサーベルを振ってきたので左のカットラスを回転させて防ぐ。

 

その瞬間に右のカットラスを振ると、その刃はグリフィスの顔を掠めるだけで躱されてしまい、空振りに終わってしまった。

 

「ふぅ……中々危うかったぞ今のは。」

 

「それはどうも(これが、グリフィスか……まるでこっちの動きが全部見えてるみたいな動き方だ。これはマジでやらないとな。)すぅ~!はぁ〜!」 

 

全身全霊、本気で勝ちたい。

 

そんな事を考えながら深く深呼吸して全身を力ませ、片方のカットラスをしまうと右手のカットラスにのみ力を集中させる。身体の姿勢は低くし、グリフィスのみを見据える。

 

そして勢いよく駆け出して間合いを詰めた瞬間に連撃を放つが、その全てはグリフィスに躱されてしまう。しかし、グリフィスの方も少し苦しそうな表情になって来ていた。

 

そして、一瞬グリフィスが避けるために体勢を崩した。

 

その瞬間を見逃さなかった俺は、残っている余力を右手に集めて全身の力を込めた状態で駆け出してを上段からの刃を振り下ろす。

 

「はぁぁぁっ!!!」ビュッ!!

 

「っ!」ギィンッ!

 

 俺のカットラスとグリフィスのサーベルがぶつかり合い火花が散る。周囲からおぉっ!という声が聞こえてくるが、こちらとしては一撃で仕留める筈だったのが失敗して少々傷付いてる。

 

すると、グリフィスは後ろに下がったと思ったらサーベルを腰に戻したのだ。

 

「どうした?」

 

「止めておこう。これ以上は冗談では済まなくなりそうだ。」

 

「……そうだな。俺も正直疲れたよ。」

 

すると、グリフィスはこちらに手を伸ばしてきた。

 

「?これは?」

 

「今の戦いを通してハッキリ感じたよ。タイガ、ガッツ。お前達2人を鷹の団に迎えたい。」

 

「え/はぁ?!」

 

「ガッツの戦い方も面白いが、タイガの方も捨て難いと思ってな。出来る事ならオレはお前達2人が欲しいんだ。」

 

グリフィスの言葉に俺とガッツが呆然としていると、どこからか拍手が聞こえてきて、その場所を見るとジュドーが拍手をしていた。

 

「凄かったぜお前ら!」

 

「これからよろしくな!」

 

「これからが大変だぜ!」

 

口々に団員達が歓迎の言葉を言う中、キャスカとコルカスはどこか面白くなさそうにしていた。

 

すると、グリフィスがこちらに近付いてきた。

 

「お前達が欲しい。その力、オレの下で振ってくれ。」

 

こうして俺達は鷹の団に入隊する事になったのである……。

 

 

〜〜〜。

 

 

「ふざけんな!!納得行くか!!?」

 

グリフィスとの手合わせの後、用意されたテントの中でガッツはタイガにそう叫んだ。

 

ガッツは未だにグリフィスとの手合わせの結果と、半ば強制的に入団させられた事が気に入らないのか、用意された食事のパンを乱暴に食べながらそう叫ぶ。

 

「あのなぁガッツ。落ち着けよ。ある意味良かったじゃないか。あちこち転々としなくて良くなって。」

 

「そういう問題じゃねぇんだよ!あの透かし野郎のナメた態度が気に入らねぇんだよ。人をモノみたいに考えてるのかアイツは!?」

 

「それは……?」

 

タイガが外の物音に気付くと指を立てて、静かにするようにし、ガッツはだんびらを手に取ると、タイガがテントの幕を捲って下から見てみた。すると、そこには剣を持ったコルカス達がいた。

 

「お、おい本当にやるのか?」

 

「ったりめぇだろ!?昼間はあんな事されてんだ!ボコボコにしてやんねぇと俺様の気が済まねぇんだよ。」

 

「……さっきの奴らだ。人数は8人で剣を持ってる。昼間のお返しに来たみたいだ。」

 

「上等だ。こっちの方が分かりやすい……入ってきた瞬間ぶち殺す!」

 

 

そんな時だった。

 

「お前ら何してんだよ?」

 

「じゅ、ジュドー!?キャスカ!?」

 

「明日も仕事あるんだから、馬鹿なことしてないでさっさと帰った帰った。流石にグリフィスに何されるか分かんねぇぞ。」

 

「は、はい!んじゃ俺らこの辺で。へへっへへへっ。」

 

「お、おいお前ら!?ちぃっ!お、おい!てめぇらなんで邪魔するんだよ!?せっかく俺が邪魔物を」

 

「……グリフィスが直接勧誘した奴らだ。貴様が好き勝手にしていいわけないだろ。それくらい分かれ。」

 

コルカスが必死に言い訳しようとするが、キャスカがそれを冷たく返す。それを見ていたジュドーはやれやれと首を振るが、コルカスはいやらしい笑みを浮かべた。

 

「な、何だよジュドー、キャスカ。お前らあいつらが鬱陶しくないのかよ?奴らは俺らをコケにしたんだぜ!?」

 

「いや、それお前だけだっての。俺ら何もされてねぇよ。」

 

「だ、だけどよぉ!?あいつらぜってぇに「いいかげんにしろコルカス!!」ひっ!?わ、悪かったよ。じゃ、じゃあな!」

 

コルカスはスタコラサッサ〜と逃げていき、それを見てジュドーとキャスカは溜息を吐く。

 

その様子を見ていたタイガがテントから出てきた。

 

「あ~、その助かったよ。」

 

「済まなかったな。」

 

「良いって。これから仲間なんだから、仲良くしないとな。」

 

「わたしは、お前達を認めた訳じゃない……お前ら2人勝手にどっかで野垂れ死ね!!」

 

それだけ言うとキャスカはズカズカと歩いて帰っていった。

 

「あ~、俺らって嫌われてる?」

 

「どうだろうな?んじゃ、俺も寝るわ。おやすみ〜。」

 

欠伸をしながら歩いていくジュドーを見送って、タイガとガッツもテントに戻り、眠ることにしたのであった……。



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07 初戦と勝ち星

大変お久しぶりです!!


今年からベルセルクの投稿を再開致します。


お待たせして申し訳ないです。


 タイガとガッツの2人がグリフィス率いる鷹の団に誘われた次の日、2人はとある国同士の戦争に参加することになり、その仕事は敵の補給物資と食糧を焼き払う為に奇襲を仕掛けるという物であり、そこまで敵陣のど真ん中を突っ切るという物であった。

 

 

援軍は無く、任に当たるのは鷹の団のみ、敵の数は約2千……かなり無謀とも言える作戦であったが、さらに今回の任務の殿はガッツとタイガの2人で当たる、というものであった。

 

 

「ガッツ、タイガ。今回の殿、お前達にやって貰う。」

 

 

「「っ!?」」

 

 

グリフィスの発したその命令に、鷹の団の団員達がざわつき、顔を見合わせている。

 

 

その中で命じられたガッツとタイガも驚いていた。

 

 

まさか、新しく入ってすぐに“重要な仕事”を任せられるとは思っていなかったからである。

 

 

「これは骨の折れる仕事だ。敵の牽制、そして味方の逃走を助ける。

さらに道は森の一本道、しかし、襲ってくる数百騎の敵を抑えながら走る……死ぬ確率も高い。

・・・やれるか?」

 

 

「命r「やる。やんなきゃ死ぬだけだ。」タイガ。」

 

 

「そうだ。任せたぞ。」

 

 

 毅然と良い放ったタイガにグリフィスは頷き、その様子を見ていた団員達は驚きながらも軽口を叩いていた。

 

 

「グリフィスはなに考えてるんだ……?」

 

 

「試してんだろあいつらを……。」

 

 

「どうせトンズラする……。」

 

 

口々にそう言い合う中、キャスカは違っていた。

 

 

「(違う、こんな重要な役目をただ試す為だけにやらせたりしない。

グリフィスは……あいつらを信頼している!!)」

 

 

そんな中でいよいよ作戦が開始され、グリフィス達は河を渡り、敵陣へと奇襲を仕掛ける事に成功し、1人の犠牲者を出すこともなく、敵陣への奇襲を成功させたのである。

 

 

「二列縦体!脱出する!!」

 

 

「「「「おおぉぉぉぉぉっ!!」」」」

 

 

見事に撤退までの隊列を組み、そのまま撤退を図る。

 

 

その手際の良さにガッツとタイガは驚いていた。

 

 

「(何て奴らだ、こんなに手際の良い奇襲。見たことないぜ!)」

 

 

「(信頼しているからだ。こんなに作戦が上手くいくのはみんながグリフィスを信頼してるからだ。……なら尚更、あいつをフェムト(使徒)なんかにさせない!!)」

 

 

タイガは先頭を走るグリフィスを見ながら、強く決心した。

 

 

グリフィスをゴッドハンドであるフェムトにしない。それは彼がこの世界に転生した時に考えていた事の一つであり、その為にも彼やガッツを助けようと考えていたのだが、彼は改めてそう決心した。

 

 

「ガッツ、ここからは俺らの仕事だ!!しくじんなよ!!」

 

 

「はっ!!その言葉、そのまんまのしつけて返してやるよ!!」

 

 

味方がだいぶ離れ、後ろには敵が迫ってきていた。

 

 

 ここから、2人の殿が始まったのであった。

 

 

 

ーーーーーーーー。

 

 

タイガside

 

 

 奇襲を無事に終え、後ろから敵の騎馬隊が追いかけてきた。

 

 

 その数はグリフィスの予想通り数百はいた。

 

 

「ガッツっ!左翼から来てるぞ!!」

 

 

「分~ってるよ!!」

 

 

俺とガッツは馬に乗りながら、迫ってきている敵兵を切り伏せていき、逃げ遅れた連中も逃がす事が出来た。

 

 

その中で、ガッツはだんびらを、俺はカットラスを抜いて敵を切り伏せていくが、数はやはり敵の方が多い。だが、俺やガッツには恐怖も焦りもなかった。

 

 

寧ろ、まだまだやれる。戦える!!

 

 

「(来い!来い!!来い!!!)」

 

 

「(もっと、もっと来やがれ!!)」

 

 

 俺達は闇夜の中で敵兵達に追われながらも、それに構うこと無く殿を続けた。

 

 

 それからどれくらい時間が経ったのか、それすらも分からないほどに俺達は馬を走らせ、敵の騎馬隊を相手していたが、俺もガッツもかなり疲れて来はじめていた。

 

 

味方の最後尾はかなり遠ざかり、ここいらが潮時だと思った。

 

 

「うわっ!!?」

 

 

「ガッツ!!?」

 

 

その時だった、ガッツの馬が矢に射たれ、ガッツが落馬しそうになったが幸い間に合った!!

 

 

「くそっ!!タイガ、離せ!!お前まで落ちるぞ!!」

 

 

「喧しい!!黙ってろ!」

 

 

その瞬間、敵の1人が迫ってきているのに気付かず、俺らに剣を振り下ろそうとしているのが見えた、その時、敵兵を矢が飛んできて貫いたのである。

 

 

その飛んできた先には、グリフィス達がいた。

 

 

「グリフィス!?」

 

 

「何でっ!!」

 

 

「良いから走れ!!突っ切るぞ!!!ピピン!」

 

 

隣から大柄な男がガッツを抱えあげると、そのままガッツを俺の後ろに乗せてくれた。

 

 

「ありがとう!!」

 

 

「うんっ!!」

 

 

ドドドドドドッ!馬が走る中、森の出口が見えてきた。

 

 

「切れた!!散れ!!」

 

 

「っ!!」

 

 

 その指示を聞いた瞬間に、俺達は左右に散ると、前方に控えていた雇い主の軍が大砲で追ってきた敵兵を打ち倒していき、敵は大半が崩れたのを察すると逃げていった。

 

 

「すげぇ。」

 

 

「野郎、これを狙ってたのか?」

 

 

「それは分からないが、けど、グリフィス……あいつは凄いっ!!」

 

 

俺はただ、グリフィスを見て素直にそんな感想を述べていた。

 

 

 その後、城の外であるが祝杯があげられた。

 

 

「お前ら凄いな!あんな数の敵を相手によぉ!!」

 

 

「全くだぜ!!見直した!!」

 

 

「あのガッツって奴も凄いが、お前もなかなか根性あるな!!」

 

 

「あ、ありがとう。」

 

 

仲間達からそう言われ、照れながらもその場を離れると城壁の上で涼んでいるガッツを見つけた。  

 

 

「いやぁ、疲れたぁ。みんな元気だなぁ。」

 

 

「……あぁ。」

 

 

「どうしたガッツ?」

 

 

「いや、なんつうか……今回の戦、今までと違った感じがしたんだ。何か、その……。」

 

 

下から気配を感じ、見てみるとそこにはジュドー達がいた。

 

 

「……ん?あ、ジュドー。ピピン。それに。」

 

 

「は、初めまして!俺リッケルトって言います!」

 

 

「こんな所で夕涼みか?2人とも来いよ。主役が来ないんじゃつまらないだろ?」

 

 

「「主役?」」

 

 

「そっ!今回の宴会はお前らの入団祝いも兼ねてんだよ。行為は受け取っとけよ~?」

 

 

「単に騒ぐネタが欲しいんだと思うけど。」

 

 

「そうか。んじゃガッツ行くぜ!!」

 

 

「お、おいこら!!タイガ!引っ張んな!!?」

 

 

 その後、俺とガッツは団員達から揉みくちゃにされ、滅茶苦茶弄られたがそれでも今まで感じれなかった”仲間の暖かさ“を感じれたのであった……。

 

 

「そ、今回の戦の大役果たしたお前らがいなきゃつまんねぇの。」

 

 

 




何か気になる点や感想あれば下さい!!


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ミッドランド編
08 進むときと……。


ずいぶん時間が跳びます。




タイガside

 

 

 初任務を終え、無事に生き残った俺とガッツは鷹の団に正式に入団し、多くの戦に参戦して成果を出していった。ガッツの実力と人望、あと、ほんのちょっぴりの俺の無茶も相まって、俺らは鷹の団の切り込み隊に選ばれた。 

 

 

そんな俺らは今、とある戦に参戦していた。

 

 

「ガッツは敵を引き付けてくれ。左翼と正面は合わせて動くんだ。右翼は敵が足を止めたら矢だ。」

 

 

「「「はい!タイガさん!!」」」

 

 

「タイガ、ずいぶん細々してんな。俺は先に動くぜ。」

 

 

「おう、ガッツがメインだからな。だが死ぬなよ?」

 

 

「誰に言ってんだよ・・・行くぜ。」

 

 

 ガッツが今回の敵である大国、チューダー率いる黒羊なんとか騎士団の前に出ると、ガッツはそのだんびらを振るい、敵兵の大半を切り伏せていき、その一撃に黒羊は足並みを乱し崩れかける。

 

 

小隊長が足並みを立て直させようとするが、そうはさせない!!

 

 

「今だ!!行くぞ!!!!」

 

 

「「「「おおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」

 

 

 俺が率いていた別動隊が敵に迫っていき、黒羊は隊列を乱され、徐々に押され始めていく。

 

 

 俺や仲間で敵を切り伏せていき、ガッツと合流した後に“合図”を出す。

 

 

 すると、グリフィス率いる鷹の団本隊が姿を見せると、敵の1人が恐れたように震えながら言い出した。

 

 

「た、鷹の団だ……!白い鷹、戦場の死神だぁぁぁぁっ!!!?」

 

 

 そこからは敵は崩れて散り散りになってしまい、仲間達によって敵は総崩れ、さらにそれを好機と読んだ味方のミッドランド軍が攻め混んでいき、最早チューダーの黒羊は隊の形を成しておらず、壊滅したのだった。

 

 

それを見て、全員が勝鬨を挙げる。

 

 

「っし!」

 

 

「タイガ、ありがとな。」

 

 

「あぁ、ガッツもお疲れさん。」

 

 

ガッツと拳を合わせ、遠くにいるグリフィスに会釈する。

 

 

 今回も何とか生き残った・・・。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー。

 

 

 鷹の団の仲間達が待機している砦に戻った鷹の団本隊、それを仲間達が歓声をもって出迎えをした。

 

 

特にその中でもガッツとタイガ、切り込み隊の2人を仲間達が迎えた。

 

 

「隊長ぉ!副長ぉ!!」

 

 

「お2人とも凄かったですぜ!!」

 

 

「隊長の一騎駆けと副長の息の合った支援!!かっこ良かったですぜ!」

 

 

「今回の戦、大手柄っすね!!」

 

 

「俺らのボスと右腕!鷹の団の双長!!」

 

 

仲間達の歓声、それを受けていたガッツとタイガはどこか恥ずかしげであった。

 

 

「いや、今回はガッツのお陰だ。派手に立ち回ってくれたから上手くいったんだ。」

 

 

「アホ、それを言うならお前の支援があったからだろ。」

 

 

「お、おう。ありがとう。」

 

 

「「「「副長が照れた~~~~!!」」」」

 

 

「喧しい!!!」

 

 

「おい。」

 

 

 仲間達と友好を深める中、1人の女性が話し掛けてきた。

 

 

 数年前よりも凛々しくなり、千人長となったキャスカであった。

 

 

「キャスカの姉G……!?」

 

 

「キャスカ千人長!?」 

 

 

「……ちっ。」

 

 

「あぁ……よ、よぉキャスカ。」

 

 

「取り込み中失礼する。話があるからガッツ隊長”殿“、タイガ副長を借りても?」

 

 

「いやキャスカ!あれは「いいっての。お前ら先始めてろ。」ガッツ。悪い後で行くから始めてて。」

 

 

 ガッツとキャスカ、タイガは3人で離れてしまい、その場の空気が若干悪くなった。

 

 

「なぁ、あれって……」

 

 

「今回の一騎駆けの事、だろうな。まぁそうでなくても、キャスカ千人長とガッツ隊長は犬猿の仲で有名だしなぁ。それを副長が仲を取り持ってはいるがなぁ。」

 

 

ーーーーーーーーー。

 

 

「お前達、どういうつもりだ? 今回の戦、お前達と私の隊で本隊が敵軍に突っ込むのを側面から牽制、援護をするはずだっただろ!!それを勝手に一騎駆け!?

英雄にでもなったつもりか!?」

 

 

「キャスカ、あれは俺が悪いんだ。俺が勝手に作戦を変えたから伝えるのが「よせバカ。」っ!?けどガッツ!」

 

 

「……悪かったよ。以後気を付ける。」

 

 

そう言うとガッツが立ち去ろうとしたが、キャスカがよしとしなかった。

 

 

「いつもそうだな。貴様はいつも口先ばかり、同じことを繰り返す。

タイガもだ!なぜこいつを庇い、勝手にやらせる!?」

 

 

「……。」

 

 

「悪い……。」

 

 

「ガッツ、お前は仲間の事など少しも考えていない!!敵と剣を交えていればそれで満足なんだ!!貴様は、ただの狂犬だ!!!」

 

 

「ってめぇ!!もういっぺん言ってみろ!!」

 

 

「ガッツ!?キャスカ!?止めろっての!!?」

 

 

 

「騒がしいな。2人ともその辺にしておけ。」

 

 

 

キャスカに掴み掛かるガッツをタイガが抑えようとした時、兜を持ったグリフィスが3人を見上げていた。

 

 

「グリフィス……。」

 

 

「キャスカ、ガッツとタイガには俺から言っておく。」

 

 

「…………グリフィスはこの2人(ガッツ達)に甘過ぎる。」

 

 

グリフィスの隣を通り過ぎる際にそう言うと、グリフィスはやれやれといった表情になる。

 

 

「ガッツ、お前はキャスカと仲悪いな?顔付き合わせて3年とちょっとなのに。」

 

 

「グリフィス、ありがとう。」

 

 

「良いってことさ、タイガ。だがなぁ、今回は連絡が遅いから気を付けてくれ。」

 

 

「あぁ、分かってる。ガッツ、俺は先に戻ってるからな。」

 

 

タイガは切り込み隊の仲間達の待つ広間へと向かった。

 

 

その後、ガッツは呟くように言った。

 

 

「オレだって仲間の事は考えてる。昔のオレじゃねぇ……。」

 

 

「そうか。なら良いさ、行こう。」

 

 

「グリフィス……その、今回の戦、すまなかった。」

 

 

ガッツの言葉にグリフィスは笑顔で返した。

 

 

「ふっ、お前のそう言うところやタイガの意外な所も、オレの策の内さ。」

 

 

グリフィスはそう言うと去っていき、ガッツもそのあとを追う。

 

 

 タイガとガッツ、グリフィスはあの初戦の後から親しくなり、互いに認め会えるようになり時には言い争いになるが、それでも友人のようになり、そこで赤い血のような卵、ベヘリットを見せられた。

 

 

その時にグリフィスは言った。 

 

 

『オレはオレの国を手に入れる』と……。

 

 

その言葉にタイガとガッツは言葉が出なかったが、グリフィスの眼は本気であった。

 

 

 

 その後、グリフィスはミッドランド王から呼び出され、叙任式を受けてミッドランド国の騎士となったのであった。

 

 

 

■■■■■■■■■■■■

 

 

 それから数日後、鷹の団はとある城の制圧任務を任されたのだが…………。

 

 

その任は難航していた。

 

 

「ふざけんな!!!離せ!!」

 

 

「隊長、止まってください!!!」

 

 

「もう一時も経ってるんだぞ!!?50人近く送って、1人も帰らねぇ!!ほっとけるか!!」

 

 

 グリフィスから城の本丸を落とすように命じられた切り込み隊だったが、城の中に潜入した仲間達が誰1人戻らず、ガッツは焦りと怒りで周りが見えてなかった。

 

 

「だ、だったらグリフィスの大将に増e「んなことしてみろガストン!!てめぇぶっ殺すぞ!!!」た、隊長落ち着いて!?って、副長?!」

 

 

タイガが水の入った袋を持って近付くと、それをガッツに叩きつけたのである。

 

 

その事にガッツは怒りが増し、タイガに掴みかかった。 

 

 

「なにしやがんだ!!!タイガてめぇ!!?」

 

 

「落ち着けガッツ。仲間達が戻らねぇなら俺が今から仲を探って来る。

それで半時しても戻らなかったら、隊を下げろ。」

 

 

「てめえ何言ってんだ!?そんなふざけた真似が「良いから言う通りにしろ!!!」っ!?」

 

 

「ふ、副長?」

 

 

「みんなも、俺が必ず半時しても戻らなかったらすぐに下がれ。」

 

 

そう言うとタイガは城の中へと入って言った。

 

 

決して怒鳴る事の無かったタイガが怒鳴り、1人で城の中へと入った事にガッツ達は驚いたのであった……。

 

 

しかし、タイガは“ある予感”を感じていた。

 

 

この城の中に、“奴”がいると……。

 

 

 

 

 

 



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09 使徒“不死のゾッド”

やっとここまで来た!!


タイガside

 

 

 ガッツ達から離れて1人で城の中へと入った俺は、その中に倒れている無残に殺された切り込み隊の仲間達と亡骸を見て、言葉を無くしていたが、それと同時に予感は的中した。

 

 

「(いる。この城の奥に、“奴”がいる……!この圧迫感、間違いない……!)」

 

 

「ふ、副長ォォ……。」

 

 

「っ!!ディロス!?」

 

 

奥から半身を失いながらも歩いてきた部下に駆け寄り、その身を抱き止める。

 

 

すると、切り込み隊の部下ディロスは最後の力を振り絞って消え入りそうな声で伝えた。

 

 

「ディロス、しっかり!」

 

 

「ゾッ……ド、不死の……」

 

 

「~~っ!!あぁ、分かった。教えてくれてありがとう。もう休め。」

 

 

ディロスはその言葉を聞いたからか、そのまま眠りに付きそのまま動かなくなり、その身をゆっくりと壁の近くへと寝かせ、カットラスを2本抜き、まっすぐと通路を進む。すると、その奥には“奴”と“奴”に殺された仲間達の亡骸があった。

 

 

「見つけたぜ……使徒!!!!」

 

 

「……ほう?」

 

 

 この世界で俺が倒すべき、その1人である使徒のゾッドが目の前にいた……。

 

 

 

ーーーーーー。

 

 

 

 “使徒”のゾッドと相対したタイガはカットラスを手に、ゾッドを睨み付けて敵意を向ける。

 

 

すると、その様子を見ていたゾッドは感心したのか、何を思ったのか掴んでいた死体を無造作に投げ捨てるとタイガの方を見る。

 

 

「小僧、貴様何故俺が使徒だと知っている?そしてその敵意……貴様は何者だ?」

 

 

「それ言う意味ある?てめぇらには関係無いだろ?」

 

 

「確かにそうだ。言葉など無用な物、掛かってこい!!!」

 

 

 ゾッドのその言葉を聞いたタイガは即座に間合いを積めて斬りかかる。

 

 

 ゾッドの大剣とタイガのカットラスとでは正面きっての勝負は出来ず、一撃で倒されてしまい、肉塊となってしまうだろう。そこでタイガは撹乱しながら攻撃をし、敵の攻撃を往なし、避けながら戦う戦法を取る事にした。

 

 

「ふんっ!!」

 

 

 ゴアアアアッ!!と巨大な剣を軽々と振るうゾッド、その剣激の嵐にタイガは圧されるが、その全てを避けていき、回り込んで頸動脈など急所に斬りかかる。

 

 

「ちっ!!っらぁ!!」

 

 

狭い城の中で駆け回れた事で、ゾッドは僅かに反応が遅れるがそれでもタイガの動きに反応して対応していき、タイガを弾き飛ばす。

 

 

「っ!ほう、身軽な奴だ……。オレの剣を寸前の所で避け、柱の影などから奇襲を仕掛ける。

中々悪くない戦法だ。もっと、もっとオレを楽しませろ!!!」

 

 

「言ってろ!こっちはさっきから本気だっての!!!」

 

 

タイガはカットラスを振るい、ゾッドに迫るがその攻撃は全て剣で防がれてしまう。さらにゾッドもタイガの動きに慣れてきたのか、タイガの移動先に先回りして剣を振ってくる……徐々にタイガは追い詰められてきていた。

 

 

タイガは弾かれた武器と痺れる腕から来る痛みを堪える。

 

 

「はぁ、はぁ!(マジ物の化け物だわ、速さなら多少は自信があったけどそれにも対応してくる。かといって真っ正面から行けば確実に剣ごと叩き折られる。こうなったら、あれをやるか。)」

 

 

 タイガは後ろに下がると2本のカットラスを正眼に構え、それを見てゾッドは感心する様に彼を見る。

 

 

「ほう……オレの剣を避ける事が出来ないと踏んで真っ向勝負か?それとも、玉砕覚悟で来るか?手数と速さにモノを言わせるつもりなのだろうが、どうだろうな?

貴様の2つの刃がオレの体に触れる前に、貴様の武器は砕け、臓物を撒き散らすことになるぞ。」

 

 

「……やれるもんならやってみろ。その前にてめぇの顔面に傷を付けてやるよ。」

 

 

「ふははっ、面白い!!受けてやる!!」

 

 

 ゾッドがタイガに迫り、大剣を彼の頭に向かって振り降ろす。

 

 

 本来ならその剣を双剣で防ぐ、または後ろや左右に避けるなどするがカットラスの強度では、防いだ瞬間バラバラに砕け散り、後ろには石柱があり下がる事が出来ず、左右に跳んでも対応される。

 

 

 そこでタイガは逆に……ゾッドに向かって突き進んでいった!!!

 

 

「玉砕覚悟か!!試してみるがいい!!」

 

 

タイガはゾッドの剣を受ける寸前に強く前に踏み出して、大剣を上から踏み込んで押さえると、ゾッドの右半分目掛けてカットラスを力一杯振り降ろす。

 

 

「っらぁ!!」 

 

 

「っ!?」

 

 

斬られた右半分と右目からは鮮血が吹き出し、斬られた右半分を抑えて後ろに数歩下がる。

 

 

「はぁ、はぁ……ざまぁみろ。どうだ、ただ殺すだけだった相手から顔を斬られた感想は?

こちとら仲間を殺されてんだ……少しは痛みを感じたか?」

 

 

タイガがそう尋ねた時、ゾッドは顔面半分を抑えて苦しんでいるような唸り声を挙げていたが、それは徐々に代わり始めてきて、楽しそうな物へと変わっていった。

 

 

「ぐ……くくっ……くははっ!くははっ!良い、良いぞ小僧!!

このオレに玉砕覚悟で駆けてきたかと思えば、オレの顔を切り裂いてみせた。

この痛み、この胸の高鳴り……三百年に渡る、殺戮の日々において貴様が初めてだ!!!」

 

 

 ゾッドは高らかに叫ぶ。すると、彼の肉体が変化し始めていき、体はガッツよりも大きく毛が生えていき、頭には太く大きく曲がった角が現れ……その姿を見たタイガは体を震わせていた。 

 

 

「出やがったな……化け物め。」

 

 

「嬉しい……!嬉しいぞ小僧!!久しく忘れていた……この血沸き肉踊る感覚!!!

オレは貴様のような敵に巡り会うために!!この三百年を生き長らえて来たのかもしれん!!

さぁ戦え!!このオレを……」

 

 

「!?」

 

 

「失望させるな!!!!!!!!」

 

 

「ちっ!!」

 

 

タイガはゾッドの振るった巨大な腕を紙一重で避けて剣を構えるが、ゾッドの腕が当たった石柱はバラバラに砕け、それを見ただけで体から汗が止まらなかった。

 

 

覚悟をしていた、使徒と戦い、物語を変える為に死ぬ覚悟……それが塗り潰され掛けるほどに。

 

 

しかし、タイガは目の前の巨牛の如き怪物を前に体を震わせる。

 

 

「ちぃっ!!マジものの化け物だな!!っらぁ!!」

 

 

タイガが意を決して再びカットラスを振るうが、その刃はゾッドの角に阻まれバラバラに砕けてしまったのである。

 

 

「なっ!しまっ……がはっ!!?」

 

 

ゾッドに振るった腕に吹き飛ばされ、石柱に激突したタイガはズルズルと倒れてしまい、それを見たゾッドはタイガに歩み寄る。

 

 

「……どうした?これまでか……!?この程度のものなのか!!

いや……人間にしてはよくやったといった所か。だが容赦は……ん?」

 

 

ゾッドは腕に違和感を感じ、その左腕を見るとそこには折れたカットラスの刃でゾッドの腕を突き刺し、未だに自分を睨んでくるタイガがいた。

 

 

「貴様……。」

 

 

「勝手に、終わらすんじゃ……ねぇ、よ……。こちとら、まだ、やれる……!

それ、に……こんな所で、死ねる、かよ……!まだ、俺は……!!」

 

 

「ほう……まだ戦う気力があるか。中々見上げた心意気だ。

良かろう!!!ならば、この場で苦しまずに殺してやろう!!!!

それが貴様へのオレからの手向けだ!!!!」

 

 

その時であった。

 

 

「うらああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

だんびらを振り上げていたガッツがゾッドの腕を斬り、ゾッドはその一撃に驚いてタイガを手から離した瞬間、ガッツはタイガを捕まえる。

 

 

「タイガ!!?タイガ、しっかりしろ!!おい!!」

 

 

「ぁ……ガッ、ツ……お前、何で、ここに……?」

 

 

「てめぇが遅い上に中から化け物みたいな声がしたから来たんだよ!!!

つうか、タイガ!あいつはなんなんだ!?あの化け物は!?」

 

 

「小僧……よくも邪魔立てしてくれたな。許さんぞ、この戦いを……その者との戦いを邪魔するものは、誰1人として生かして返さん!!」

 

 

「っ!!?」

 

 

「ガッツ、俺を放って……」

 

 

「アホなこと言うな!!?逃げるぞ!!外にグリフィス達も待ってる!!合流すればあんな怪物「駄目、だ。」?タイガ?」

 

 

「奴を、グリフィスに……会わせ、るな。それだけ、は……。」

 

 

「分かった!!だから黙ってろ!舌噛むぞ!!?」

 

 

ガッツはタイガを抱えると、城の入り口に向かって走っていき、そこにはグリフィス達が待っていた。

 

 

しかし、ゾッドはそれを許さず2人を追っていき、その命を取ろうと迫っていく。

 

 

「ちぃっ!このままじゃ追い付かれちまう!!だが、間に合った……グリフィス!!!」

 

 

「ガッツか!!全兵、弓矢構え!……放て!!!」

 

 

グリフィスの号令と共に無数の矢がゾッドに向かって放たれ、ゾッドはそれを手を交差させて防ぐ。

 

 

「おのれぇぇ……どいつも、こいつも邪魔ばかりしおって!!」

 

 

「ば、化け物!!?」

 

 

「なんだよあれ!?タイガ副長、あんなのとやりあってたのかよ!?」

 

 

「まさか、あれがゾッドなのか!?は、ははっ……じょ、冗談だろ!?」

 

 

「ガッツ、タイガは!?」

 

 

「気絶してる!?城の中には切り込み隊の死体があった……多分あの怪物だ!」

 

 

鷹の団の面々が驚き恐怖な嘶く中、ゾッドは苛立ちが最大になっていた。

 

 

「ちぃっ!貴様ら、邪魔するならここで……!!?それは!?」

 

 

ゾッドはグリフィスの首にぶら下がっていた覇王の卵……真紅のベヘリッドを見て動きを止めた。 

 

 

「何と言うことだ……まさかここで、それの持ち主に出会うとは。それに、その小僧。

……面白い!!ならばここは下がってやろう!」

 

 

ゾッドはそれだけ言うと、背中からコウモリのような形をした巨大な羽を出すと、何処かへと飛び去り、グリフィス達はただ呆然と見ていたが、すぐに正気に戻ると殺された仲間達の供養をしたのだった……。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー。

 

 

ゾッドside

 

 

 あの城で出会い、立ち合ったあの小僧、タイガと言ったか。

 

 

まさか人間に顔を切られるとは思いもしなかった。この三百年、人間の小僧に手傷を追わされるなど初めてだ。

 

 

「(それにしても、あの小僧……。)」

 

 

あいつは何故、俺が使徒だと言うことを即座に分かったのか。

 

 

そして、奴のあの敵意はいったい……?

 

 

 いや、そんなことはどうでもいい。

 

 

あの小僧はいずれ倒す、そして、あの覇王の卵を持った小僧……奴もいずれは。

 

 

「ふははっ!!退屈せずに済みそうだ!!」




何かあれば、感想下さい。


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10 物語は進む

少し変わるかなぁ……。


物語が……少しだけ変えて行くか!!


 ゾッドとの戦闘の後、タイガはベッドの上で目覚めた。

 

 

 どうやら、そこは病室で他にも沢山の兵士らしき者達が収容されている。タイガの体には手当てされた痕があり、動かそうとすると体が軋むように痛むが、それでも体は何とか動かせる。

 

 

「あれから、どんくらい寝てた?みんなは?」

 

 

タイガがゆっくりベッドから起き上がると、看護婦に礼を言うと松葉杖をついて病室を出た。

 

 

「(あれから、どんくらい寝てた?ゾッドとの戦闘の後は……確か姫様と会うんだったな。

あんまり会わせたくはねぇんだが。)ん?」

 

 

「あっ!タイガ!!」

 

 

「よっ!目が覚めたみたいだな。」

 

 

「無事か。」

 

 

「よっ!」

 

 

「……。」

 

 

「「「副長ぉぉぉ!!」」」

 

 

長い廊下を抜けて、広間に出るとそこにはリッケルト、ジュドー、ピピン、コルカス、キャスカと言った主要な面々、そして切り込み隊の面子の一部がいた。

 

 

「みんな、その、おはよう。」

 

 

「おう、元気そうで何よりだ。」

 

 

「大丈夫なの!?タイガ、軍医が重傷だって言ってたし!」

 

 

「良かった。」

 

 

「全く心配かけやがってよぉ。」

 

 

「ごめん。」

 

 

ジュドー、リッケルト、ピピン、コルカスがそれぞれの言葉を述べる中、切り込み隊の一部が駆け寄ってきた。

 

 

「副長ぉぉぉ!!目が覚めてくれて良かったっす!」

 

 

「目が覚めねぇのかとおもっちまいやした!!」

 

 

「良かった!本当に!!」

 

 

「う、うん。みんなも心配かけてごめん。あ、そういえば……殺されてた切り込み隊のみんなは!?」

 

 

タイガの質問にジュドーが返した。

 

 

「簡易ではあるけど埋葬したよ。あのままにしておけないからな。」

 

 

「そうか……。あ、グリフィスとガッツは?」

 

 

「……グリフィスなら今は忙しい、大臣達と謁見してるから後にしろ。あのバカは何処かで剣でも振ってるんだろ。」

 

 

「そうか。ありがとう、キャスカ。グリフィスには後で「大丈夫か、タイガ。」グリフィス?」

 

 

大臣らと話を終えたグリフィスがホールから出てきた。

 

 

「グリフィス、話とかはもういいのか?」

 

 

「あぁ、それよりもお前の方はもういいのか?」

 

 

「あぁ、少し痛むけど大したことはない。」

 

 

「そうか……ならタイガ、あの化け物について教えてくれないか?あの場所で、お前が見たもの、何があったのかを。」

 

 

グリフィスがタイガにそう訪ねると、ジュドー達の目付きが変わり、タイガもどう説明すべきか考えていた。

 

 

「……信じてくれるかは分かんねぇし、荒唐無稽な話だぞ?」

 

 

「構わない。これは、俺達鷹の団が遭遇した問題だ。聞いておかなければならない。」

 

 

「分かった。」

 

 

タイガはあの城で何があったのかを説明し、そこで見た大男が仲間達を殺しているのを見た事と、それが理由で応戦した事、そして目の前で怪物に変化した事を話し、その大男が不死のゾッドだという事を話した。

 

 

使徒の事については話してはいない。話すべきではないと思ったからである。

 

 

「……。」

 

 

「……これが、俺が見た事の全てだ。」

 

 

タイガの話していた事にグリフィスは黙って聞いていた。

 

 

そんな中でコルカスが震えながら訪ねた。

 

 

「ま、マジかよ?タイガ、あんな化け物がゾッド、人間だってのか!?」

 

 

「あぁ、そうだ。奴は目の前で変身して見せた……俺も驚いたよ。言っとくが幻覚とかじゃない。」

 

 

「悪い夢であってほしいな。」

 

 

「……。」

 

 

「そ、そんな……三百年も生きてる人間なんて。」

 

 

「ば、化け物っすね。」

 

 

しばらく話を聞いていたグリフィスが頷き、口を開いた。

 

 

「不死のゾッド……あんな化け物が現実に存在するとは。悪い夢でも見たような気がする。

しかし、裏を返せばこの世界には人智の及ばない巨大な“何か”が存在する、という証拠になるかもしれないな。」

 

 

「グリフィス。今の話は忘れてくれても「いや、これは重要なことだ。」え?」

 

 

「タイガ、そんな化け物と戦って生き延びた……それは何か、“大きな意味”があるんじゃないか?俺はそう思ってる。」

 

 

「グリフィス……。」

 

 

グリフィスの言葉にタイガは拳を強く握る。

 

 

「(そうだ、俺は鷹の団の生存とガッツとキャスカの幸せ、そしてグリフィスの使徒化を防ぐために来たんだ。絶対に死ぬわけにはいかない!!)」

 

 

そんな事を考えていると、その表情を見てグリフィスは微笑んだ。

 

 

すると、後ろから足音が聞こえて振り返るとそこには、だんびらを肩に背負ったガッツが歩いて来ていた。

 

 

「あ、ガッツ。」

 

 

「……よぉ。」

 

 

「その、いや~~まさかこんな怪我するとは思わなかった!!これじゃ切り込み隊の副長失格かな~~なんて。」

 

 

「……。」

 

 

「えっと、ガッツ?何か言って欲しいんだけどって!?痛っ!?」

 

 

無言で近づいてきたガッツは、突然タイガの頭に拳骨を叩き落とした。

 

 

突然の事に驚き、戸惑うタイガだったが殴られた本人はガッツの方を見ていると、どこか不機嫌そうに自分を睨み付けていた。

 

 

「ガ、ガッツ?」

 

 

「お前、あの化け物に襲われた時、“自分を放って……”とか言ってたな。」

 

 

「え、あ、あぁ。言ってたな、俺。」

 

 

「ふざけたこと抜かしてんじゃねぇぞ!!てめぇは切り込み隊の副長だ!今度勝手に死んだり、馬鹿なこと抜かしたら許さねぇ!!覚えとけ!!」

 

 

「わ、分かった分かった。悪かったよ。」

 

 

タイガが謝ると、ガッツはズカズカと歩いて去ってしまった。

 

 

首を傾げていると、リッケルトが話し掛けてきた。

 

 

「ガッツ、タイガの事すごい心配してたんだよ。タイガがボロボロになったのを見て、すごい慌ててたんだ。」

 

 

「え?それ本当?」

 

 

「あぁ、確かに。起きないのを見てマジで心配してたぞ?」

 

 

「そう、だったのか。」

 

 

リッケルトの話を聞いたタイガは、このあとガッツに謝ったのだった……。




少しばかり弄りました。


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11 狩りの一幕

 タイガはガッツに礼を言い、今後の事をグリフィスと相談しようと彼の下に立ち寄ったが、そこではミッドランド国王達とグリフィスが話しているのが見え、さらにそこでグリフィスが王女シャルロットを転びそうになったのを助けた瞬間に、彼がひっぱたくのが見えた。

 

 

その瞬間に、タイガは頭を抱えたが、同時に一泡吹かせようと考えた。

 

 

「(あ、そういえば狩りのシーンだったな?そこで、脅かしてやるか。)」

 

 

 そして、木の実が実り秋のある日、秋の狩りが行われ、ミッドランドの国王とシャルロットとその側使いの者達、ユリウス率いる白龍騎士団、そして、グリフィスの鷹の団が秋の狩りの警護に着いた。

 

 

「はぁ……平和だねぇ。」

 

 

「おいおい、タイガ。もうちっとやる気出せよ。仕事だぞこれも。」

 

 

「いやぁ、こういう穏やかな日は良いなぁって思って。ガッツもだんびら(それ)、置いてくれば良いのに。」

 

 

「……俺には“こいつ”を振り回してる方が性に合ってる。」

 

 

「そうか。あ、俺やる事あるんだわ。」

 

 

タイガは仲間達から離れると、遠くからユリウスの方を見る。そこにはユリウスがクロスボウを持った男と話しているのが見え、その動向を探っていた。

 

 

そして、林から猪が飛び出し、王女シャルロットの馬が暴れだし、川の方へと走るを見てユリウスが合図をすると、駆けていきタイガもそっと後を追った。

 

 

すると、男はクロスボウをグリフィスの方へと向けており、そして、その矢を放った。

 

 

「(今だ!)」

 

 

 タイガは男に向かって、麻痺の効果のある薬を塗った吹き矢を男に吹くと、針が男に命中し倒れた。タイガがゆっくりと近付く。

 

 

「大きな獲物発見!!」

 

 

「~~~~っ!!?」

 

 

タイガは男を縄で縛ると、グリフィス達の下に向かった。

 

 

「おーい!みんな~!大丈夫か~?」

 

 

「タイガ!てめぇどこ行ってたんだ!?グリフィスが……なんだその野郎は?」

 

 

「こいつ?犯人。クロスボウを射った。」

 

 

「「「「「っ!!!?」」」」」

 

 

「こいつがこのクロスボウを射った奴だよ。さぁて、誰が射つように命じたのかな?

まぁ大方グリフィスを快く思ってない、“器の小さな奴”の指示だろうな?」

 

 

「~~~~っ!!!?」

 

 

タイガの言葉と今の状況に男は懸命に命乞いをしようとするが、口が動かず、体を揺らすしか出来ない。そんな中、ガッツがだんびらに手を掛ける。

 

 

「タイガ、こいつを押さえてろ。首、叩き落として「ガッツ待て。」っ!グリフィス!!?」

 

 

「「「「グリフィス!!?」」」」

 

 

「大丈夫か?グリフィス。」

 

 

「あぁ、幸い“こいつ”のお陰で助かった。」

 

 

グリフィスが胸元から少し欠けたベヘリットを見せると、一同は驚いたがグリフィスはその矢を男に突き付ける。

 

 

「この矢には、毒が塗ってある。しかもかなり強力な。」

 

 

「なっ!?ど、毒!?」

 

 

「そうだなぁ。多分こいつの身形からしてどこかの騎士団の所属だな?毒はその頭からか?

しかし、グリフィスが守って良かったなぁ?下手したら王女暗殺だぜ?」

 

 

「~~っ!!!?」

 

 

「……グリフィス、こいつどうする?」

 

 

「副長!こいつ袋にしてやりましょうよ!!」

 

 

「ウチの頭を狙うとはな。ぶっ殺してやる!!」

 

 

「剣で滅多刺しにしてやる!!」

 

 

鷹の団の団員全員が今にも襲いかかりそうだったが、それはグリフィスに止められた。

 

 

「王女の前だ、手荒なことはしたくない。国王陛下に伝えよう。」

 

 

グリフィスの後ろを見ると、そこにはシャルロットが若干怯えていた。

 

 

 その時グリフィスとタイガが視線を向けた先には顔を青ざめさせて、舌打ちをして逃げるように去る犯人、ユリウスの姿があった。

 

 

「……高くついたな、この(くすり)は……。」

 

 

「(あ~ぁ、怒らせちゃった。)」

 

 

 その後、男は国王陛下の前に突き出され、一時はユリウスの白龍騎士団の弓使いである事が判明し掛けるがユリウスはそれを必死になって否定し、男は牢屋に投獄される事となり、その際に必死にユリウスに助けを求めるが、ユリウスは誤魔化すことで精一杯であり、さらに白龍騎士団は今回の騒ぎで“王女を狙った疑い”を掛けられた。

 

 

ユリウスは必死になって否定し、王に弁明したが国王は今回の事は流石に許せなかったらしく、彼から王位継承権を剥奪するように命じ、城へ厳重監視される事となった。

 

 

その事にユリウスは酷く荒れていた。

 

 

「くそっ!!くそっ!!!くそっ!!!グリフィスめ!!鷹の団め!!この私にこのような屈辱を与えおって!!!(何故失敗した!!?何故捕らえられた!?計画は完璧だったはず!!?)」

 

 

ユリウスは頭を掻き乱し、部屋を荒らしながら考えるが、その理由は決して分からなかった。

 

 



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12 叱責

髑髏の騎士、登場!!


タイガside

 

 

 俺は今、仲間達と一緒に酒場にいる。

 

 

 周囲には俺ら以外に他の騎士団の面々もいるが、遠くで縮こまりながらこちらを見ているのは、白龍騎士団の面々であり、その目には酷く落ち込んでいた。

 

 

「(ま、気持ちは分からんでもないが。)……なぁ、あんたら。そこで呑んでないで一緒にどうだ?」

 

 

俺がそう言うと白龍騎士団の騎士達は、初めは戸惑っていたが次第にゆっくりと頷いて一緒に飲むことになった。 

 

 

 秋の狩りでの一件の後、ユリウスはミッドランド軍内部での発言力が弱まり、肩身の狭い思いを強いられ、少しずつではあるが荒れていくようになり、兵士にも当たるようになっていた。しかし変わりに、グリフィスは白龍騎士団の凶行から姫を守り、活躍したという事でミッドランド軍内部でも発言力と立場が増した。

 

 

さらにミッドランドの一部の大臣などは、今の内にグリフィスと関わって甘い汁を啜ろうと考える者達も現れ、それに対してグリフィスは綺麗な笑顔で対応していて、凄いと思ったわ。

 

 

あいつらとまともに話せると思っていたが、よくよく考えれば、グリフィスは目的のためにはとんでもないことをする。それこそ下手すれば破滅しかねない無茶な事をするが、それはあいつが自分の夢のために戦えているからだ。そこが正直羨ましい……。

 

 

「はぁ……。」

 

 

「な~にため息吐いてんだよ、タイガ。」

 

 

「あ、ジュドー……いや、これからの事を考えててな。」

 

 

「何だよらしくねぇな!ま、お前はあの人斬り馬鹿に比べたら何倍もマシだぜ。」 

 

 

コルカスが呆れながらも頭を掻きながらそう言う。

 

 

「そういえば、ガッツは?」

 

 

「ガッツか?あいつならグリフィスに呼ばれて、部屋に行ったぜ?」

 

 

「そうか…………ん?グリフィス?ってマジか!?」

 

 

「うぉっ!?ど、どうしたんだよタイガ!?」

 

 

「いや悪い!ちょっと野暮用だ!!あ、これでみんな飲んでて!」

 

 

 俺はジュドーに金が入った袋を渡し、支払いを済ませて外へと出てガッツがいるであろう場所に向かう。

 

 

そうだ!ユリウスが暗殺しくじったらグリフィスがあいつをガッツに殺すように言うんだ!しかも、その後には……あぁくそ!!完全に抜けてた!!

 

 

俺はガッツを探して周囲を見回していると、ローブを被りユリウスの邸宅へと向かっているガッツを見つけた。

 

 

「ガッツっ!!」

 

 

「あ?タイガ、お前ここで何してんだ?」

 

 

「……お前、まさかグリフィスから暗殺を命じられたのか?」

 

 

「……何で知ってんだ?あぁ、確かに命じられたよ。それがどうした?

急いでんだ、話なら後で「待てガッツ。」あ?何だよ。」

 

 

「……殺るなら、しくじんなよ?あと、念のためこいつ持っとけ。暗殺が終わったら壊して捨てとけ。」

 

 

俺は懐から仮面を出した。今回の暗殺に必要だと思い用意しておいた。

 

 

「?仮面か、ありがたく使わせて貰うぜ。」

 

 

ガッツは仮面を受けとると、それを持って仕事に……ユリウス暗殺に向かった。

 

 

ガッツは、あいつは今、グリフィスの為に剣を振るってる。

 

 

それがあいつの新しい生き甲斐で、ガッツにとってグリフィスは親友で戦友だ……。

 

 

ただ戦場で剣を振るうんじゃない、仲間のために、グリフィスの為に剣を振るおうとしている。けど、あいつはもしかしたら、暗殺を終えてグリフィスに伝えに行こうとしたら、あいつは……この団を抜ける。

 

 

それが引き金で鷹の団は……。

 

 

「(いや、何か方法が有る筈なんだ。鷹の団も無くさず、グリフィスも使徒にしない方法が!)」

 

 

『生き延びたか、異端なる者よ。』

 

 

「っ!?あんたは……!?」

 

 

背後から声が聞こえて振り返ると、そこには髑髏の騎士がおり、俺を見ていた。

 

 

『使徒との戦いを生き延びた事、見事であった。まさかあの男を相手に生き延びるとは思いもしなかったぞ。』

 

 

「そいつはどうも。けど、まだ目的は達成してない。俺は“蝕”を起こさせない。

グリフィスもゴッド・ハンドにさせないし、皆を守る!」

 

 

『それは不可能だ。』

 

 

髑髏の騎士はまるで当たり前のようにそう言いはなった。

 

 

「なっ!?何でだよ!分かんねぇだろ!!必ず方法が有る筈だ!蝕を止める方法が!」

 

 

『あれは決して止められぬ厄災、彼の者どもは五番目の生誕を必ず行うだろう。

その時貴様は、己の無力に絶望する……。』

 

 

「っ!!俺は、俺は皆を助ける!!絶対に!!」

 

 

 

『自惚れるなっ!!!』

 

 

 

「っ!?」

 

 

髑髏の騎士は強く叫ぶと、その怒気に圧されて言葉が出なくなる。

 

 

『この世に“絶対”など有りはしない。貴様の童児の如き考えなど、この世の理の前では無に等しい。己に運命を変える力が有ると思うなら、その考えは改めよ。

……貴様に“蝕”は止められない。肝に命じておけ。』

 

 

髑髏の騎士はそれだけ言うと夜の闇の中に消えていき、俺はその場に立ち尽くして涙を流していた。

 

 

髑髏の騎士の言葉、その全てに言い返すことが出来なかった俺は、その場にしばらく立ち尽くし、頭の中を整理することしか出来なかった。

 

 

「(俺は、考えが浅いのか?原作を知ってても、それを変える事が出来ないのか?

……あぁくそ!!何か、何か有る筈なんだ!例え変えられなくても、良い方向に曲げる事が。)」

 

 

 その後、遠くの方で騒ぎが起きると、ガッツがユリウスを殺したようだ。俺はその場から立ち去り、気付けば遠くにはシャルロット姫とグリフィス、その手前の階段にはキャスカとガッツがおり、ガッツは泥と血で汚れていた。

 

 

暗殺は上手く行ったようだ。

 

 

その中でグリフィスがシャルロット姫と雑談をしていたが、その中でグリフィスが立ち上がった……。

 



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13 鷹の夢、自身の夢

タイガ、苦悩します。


 グリフィスとシャルロットの両名はミッドランド王が開いた夜会を抜け出し、2人だけで夜風に当たっていた。その中でシャルロットは夜会を開くくらいなら戦そのものを止めれば良いのに、そう呟き、グリフィスは彼女に貴いものを勝ち取る為の道具と言った。

 

 

それに対してシャルロットは家族や恋人という例を挙げると、グリフィスは笑顔で肯定したが、その中でもう一つの貴いものに出会っている筈と答えた。

 

 

「もう一つの、貴いもの……?」

 

 

「はい。誰のためでもない、自分が……自分自身の為に成す夢です。」

 

 

その言葉にシャルロット、そして、遠巻きに聞いていたガッツ、キャスカ、タイガはそれを黙って聞いていた。 

 

 

「世界の覇権を夢見る者、ただ一本の剣を鍛え上げることに一生を捧げる者……一人で一生をかけて探求していく夢もあれば、嵐のように他の何千何万の夢を喰らい潰す夢もあります。

身分や階級……生い立ちに関わりなく、それが叶おうと叶うまいと人は夢に焦がれます。」

 

 

「(夢に、焦がれる……か。)」

 

 

グリフィスの言葉を聞いていたタイガはその場に踞りながらも、グリフィスの言葉を黙って聞いていた。

 

 

「夢に支えられ、夢に苦しみ、夢に生かされ、夢に殺される。そしてその夢に見捨てられた後でも、それは心の中に燻り続ける……たぶん死の間際まで。

そんな一生を男なら一度は思い描く筈です。何より……」

 

 

 

 

「生まれてしまったから、仕方なくただ生きる……。

そんな生き方、オレには耐えられない。」

 

 

 

「「っ!!?」」

 

 

 タイガとガッツはグリフィスのその言葉に息を飲んだ。

 

 

 ガッツはただグリフィスの為に剣を振るい、タイガはただ自分の目的のために生きていた為に彼らには“夢”と呼べるものが無かった。

 

 

 何かを成すために生きる事もなく、ただ戦い、ただ目的のために生きていた。

 

 

 その事にガッツとタイガ、そして話を聞いていたキャスカはただ静かに聞いていた。 

 

 

 その中でシャルロットはグリフィスをじっと見つめて、不思議な方と言い、鷹の団の仲間達をお友達といい、彼らがグリフィスの不思議な魅力に惹かれて着いてきたのかもしれないと言うと、グリフィスは静かに答えた。

 

 

「彼らは優秀な部下です。何度も一緒に死線を越えてきた、私の思い描く夢のためにその身を委ねてくれる大切な仲間……。でも、私にとっての()とは違います。」

 

 

「「……。」」

 

 

「グリフィス様のお友達とは、どのような方なのですか……?」

 

 

「決して他人の夢にすがったりしない。誰にも強いられる事なく、自分の生きる理由(わけ)は自ら定め、進んでいく者……そして、その夢を踏みにじる者があれば全身全霊をかけて立ち向かう……。例えそれが、この私自身であったとしても……私にとっての友とは、そんな“対等の者”だと思っています。」

 

 

 グリフィスの言葉にガッツは立ち尽くしており、タイガはその場から動かずに黙って聞いていた。しかし、暫くするシャルロットの下に使いの女が現れ、ユリウスとその息子のアドニスが殺されたと報が入り、それを聞いたグリフィスは……人知れずに笑みを浮かべた。

 

 

 その後、ガッツとタイガはその場から離れたが、キャスカはボロボロのガッツを見て“有ること”を察したが、声が掛けられなかった……。

 

 

 

ーーーーーーーー。

 

 

 グリフィスから離れたタイガは1人、自身の部屋でグリフィスと髑髏の騎士から言われた事を思い返していた。

 

 

自身のやっている事が正しいのか……。

 

 

自身の自己満足ではないのか……。

 

 

その行動に、正しい道筋があるのか……。

 

 

「(あぁ……何かだんだん分かんなくなってきた。俺、このまま鷹の団にいても良いのか?

俺は、鷹の団の人間としては異質だからなぁ。けど、俺は……。)」

 

 

「タイガ、いたのか。」

 

 

「っ!?あ、あぁガッツ。大丈夫か?」

 

 

 いつの間にか自身の部屋に訪ねてきたガッツに驚きながらも、タイガはガッツにそう訪ねた。

 

 

「あぁ……タイガ、お前は俺の事をどう思ってる?」

 

 

「?それは、仲間だよ。大切な仲間。」

 

 

「そうか……なら、タイガ。お前、夢とかはあるのか?」

 

 

ガッツの言葉に、タイガは驚き返すことが出来ず、それを見たガッツはただ黙って返事を待っていた。

 

 

「俺には…………夢とかはない。考えたことも。」

 

 

「そうか……邪魔したな。」

 

 

ガッツはそう言うと部屋を出ていき、自身の部屋へと戻っていく。

 

 

その背中を見送ったタイガは、深いため息を吐きながらベッドに横たわり、自身が如何に夢も何も持たず、ただ自分の好きなように動こうとしていたのかが分かり、どれ程薄い存在なのかを理解し、自己嫌悪に陥る。

 

 

「(はぁ、自分が嫌になる……。こんなに薄っぺらだったなんて……。)」

 

 

タイガはそんな事を言いながら目を瞑り、眠りに着いた。

 

 

 

 

 その2日後、ミッドランド軍は鷹の団を先陣とし、敵国チューダーとの大戦に挑むこととなり、タイガは鎧を身に纏うと仲間達の下へと向かっていた。

 

 

「(チューダーとの大戦か……。今回の戦もかなりの規模だろうな……。)」

 

 

 

『貴様に“蝕”は止められない。』

 

 

『生まれてしまったから、仕方なくただ生きる……。

そんな生き方、オレには耐えられない。』

 

 

グリフィスと髑髏の騎士の言葉を思い出したタイガは、足を止めて俯いてしまう。

 

 

「(俺には、何も出来ないのか……。何の夢もない、俺には。

今はそんな事を考える時じゃない!!戦に集中するんだ!!)」

 

 

頭を振って言葉を振り払うと、タイガは仲間達の下へと向かっていった。

 

 

「お!タイガ、遅せぇぞ!」

 

 

「悪い悪い、遅くなった。」

 

 

「おいおい大丈夫か?何か顔色悪いぜ?」

 

 

「平気平気。今日は戦果を挙げまくるつもりだ!!」

 

 

「凄い……!タイガ、気迫に満ちてる。」

 

 

タイガの気合いの入れようにリッケルトが驚いていると、タイガは切り込み隊の下へと向かう。

 

 

すると、そこには少し暗い表情をしたガッツがおり、声を掛けようとした時、先頭にいたグリフィスが腕を高く挙げて全軍に号令を出す。

 

 

「出立ーーつ!!」

 

 

多くの民からの歓声に見送られながら、彼らはチューダー帝国との戦に挑むために軍を進めたのであった……。

 



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14 チューダー帝国 青鯨超重装猛進撃滅騎士団

 広大に広がる平原、そこでは今、ミッドランド王国と長年に渡り戦を続けている大国、チューダー帝国、その一軍である重騎士団、“|青鯨超重装猛進撃滅騎士団《せいげいちょうじゅうそうもうしんげきめつきしだん》”(何でこの名前にした?)との戦が行われていた。

 

 

両軍ともに強固な陣営を敷いており、各地で凄まじい戦を繰り広げている中、鷹の団は敵主力である中央と当たっており、馬と馬がぶつかり合う距離まで近付きながら互いに激戦を繰り広げている。

 

 

血飛沫と悲鳴、怒号が轟く戦場は凄まじい乱戦状態となっており、タイガ達切り込み隊も押されながらも敵軍を圧していた。

 

 

「っらぁ!!」

 

 

「がはっ!?」

 

 

「っしゃあ!!」

 

 

「っ!?」

 

 

「副長、スゲェ!俺らもやるぜ!!」

 

 

「「「「「オオォォォォォォッ!!」」」」」

 

 

 タイガはカットラスで迫ってきていた敵兵の首を落とすと、その兵が掴んでいた槍を持って後ろから来た敵兵の胸を貫き、他の兵士達の援護に向かいながら敵兵を切り伏せていき、その様子を見ていた仲間達は驚き、指揮を高めていった。

 

 

そんな中でタイガは周囲の様子を見渡していた。

 

 

「(これは、かなりの乱戦だな。けど今はこちらが多少押してる。

これなら……?!)」

 

 

 タイガが視線を向けた先、そこでは女千人長であるキャスカが重装の戦斧を持った敵とやり合っており、かなり圧されていたが、タイガがガッツの方を見ると彼は敵兵に囲まれており、それを見て焦りの表情となった。

 

 

「(まずいまずいまずいまずい!!これってキャスカとガッツのシーンだろ!?って、ガッツは未だに動けないし、けど、このままだとキャスカが……!)」

 

 

タイガは迫ってきている敵を切りながら、どうすべきか考えていたが……それよりも早くタイガはキャスカ達に向かって馬を走らせた……。

 

 

 

◆◆■◆◆

 

 

 

 キャスカは現在、1人の大柄な騎士と戦っていた。

 

 この男は“|青鯨超重装猛進撃滅騎士団《せいげいちょうじゅうそうもうしんげきめつきしだん》”(長いので“青鯨”に簡略!!)団長であるアドンであり、その実力は本物であり、“体調”が悪い今のキャスカではその猛攻を受け止めきれなかった。

 

 

「はぁ、はぁ……くっ!」

 

 

「貴様か、女だてらに千人長をやっているというのは?ふんっ!気に喰わんな、女が騎士の真似事など……。いや、兵士どもの“夜の相手”としてなら、使えんこともないか。」

 

 

「なんだとっ……!」

 

 

「大方、その千人長の地位もあのグリフィスの相手をして手に入れたのだろう?」

 

 

「っ!!貴様ァァ!!!」

 

 

アドンの言葉に怒り、キャスカは勢いに任せて斬りかかるがアドンはそれを物ともせずに受け止めて弾き返し、彼女を落馬させ、さらに追い詰めていきキャスカは冷や汗を流す。

 

 

「(こいつ、強い……!)」

 

 

「ふんっ!戦場は男の聖域!!そこに女の身でありながら踏み込んだ愚かさと浅はかさ!!

この青鯨超重装猛進撃滅騎士団団長であるアドンが知らしめ「名前が長い!!!」がふっ!?」

 

 

「っ!?」

 

 

槍を振り回していた青鯨の団長アドン、しかし後ろから突撃してきたタイガの蹴りによって落馬させられ、顔面から落ちてしまい、かなり痛かったのかタイガを睨み付ける。

 

 

「貴様っ!!何者だ!?いきなり背後から襲うとは、騎士としての礼儀もないのか!!?」

 

 

「喧しいっ!!あーーーもうっ!!こうなりゃあお前倒して憂さを晴らしてやる!!!」

 

 

「ふんっ!貴様のような小僧に、この青鯨超重装猛進g「だから長い!」ぐおっ!?貴様、名乗りの最中に斬りかかるな!!無礼な奴め!!?」

 

 

「生憎と戦場育ちでなぁ!貴族の礼儀なんざ知らないよ!!」

 

 

「くぅっ!小癪な……!ならば、我がコボルイッツ家140年に渡り伝承されし戦槍術最大奥義!!岩斬旋風「長ぇよ。」あがっ!?」

 

 

アドンは必殺?の一撃をタイガに披露しようとした瞬間、後ろから来たガッツのだんびらによって一閃され、鎧を砕かれてその場に倒れ付した。

 

 

「岩斬旋風…………何?」

 

 

「おおぉ!!流石隊長!!」

 

 

「副長もスゲェけど、隊長はもっとスゲェ!!」

 

 

ガッツはアドンを一瞥すると、タイガとキャスカに近付いた。

 

 

「ガッツ、お前敵は?」

 

 

「ほとんど殺ったっての。それよりタイガ、そいつどうしたんだ?剣に切れがねぇし、何か顔色も悪いぜ。」

 

 

「ガッツ、キャスカは女なんだから色々……って!?」

 

 

「タイガ!!?」

 

 

タイガがキャスカに視線を移した時、彼女は意識を失い崖から落ちそうになり、手を伸ばした。

 

 

しかし、タイガも落ちそうになってしまいガッツが手を伸ばして助けようとした時、アドンは懐からクロスボウを取り出し、ガッツに向けて矢を放ち、それが彼の脇腹に刺さった。

 

 

「(しまっ………!!)」

 

 

「隊長!!副長ぉ!!姉さん!!」

 

 

「ガッツ!!タイガ、キャスカ!!」

 

 

鷹の団の仲間達が心配する中、3人は崖下へと落下していった。

 

 

「くそっ!!?タイガ、そいつを!!」

 

 

「分かってる!!」

 

 

タイガは咄嗟にキャスカを護るようにすると、3人は崖の下を流れる川へと落ちてしまったのだった……。

 

 

 

◆■◆■◆

 

 

 

 雨が降り始め、増水し流れが増していた川。そこからガッツ、そしてキャスカを抱き抱えていたタイガが激しく咳き込みながらも、自力で這い上がって出てきたのであった。

 

 

「ぶはぁ!!げほっ、げほっ!!?た、タイガ、大丈夫か!?」

 

 

「げほっ、げほっ、げほっ!お、俺なら大丈夫。それよりキャスカを……。」

 

 

「お、おう!……ちっ、まずい!」

 

 

タイガからキャスカを受け渡され、ガッツが様子を見ると彼女は息をしておらず、ガッツが咄嗟に人工呼吸をすると息を吹き返して、激しく咳き込みながらも水を吐き出した。

 

 

「ガッツ、キャスカは?」

 

 

「あぁ、なんとか……痛っ!?」

 

 

「ガッツ、その矢!」

 

 

ガッツは矢を抜くと、それを川に投げ捨てた。

 

 

「くそっ!あの鯨野郎……今度会ったらサシミにしてやる。それよりもタイガ、オレらよく生きてたな?あそこから落ちてよぉ……嘘みてぇ。」

 

 

「そうだな。けど今はとりあえずキャスカを運ぼう。本陣へ行くのは後にしよう。

今はキャスカを安全な所に連れていこう。熱もあるし、このままだとまずい。

あっ!彼処に行こう!!」

 

 

「あっ?」

 

 

タイガが指差す先には洞窟があり、タイガとガッツはキャスカを連れて、その洞窟へと向かったのであった。

 

 

そこにたどり着くとタイガは持ってきた袋に入っていた道具でガッツの腹の傷を塞ぎ、鎧などを少しでも乾かすために脱いだ。

 

 

「…………さて、と。どうしたもんかねぇ?敵には落ちてる所を見られてるし、火を焚けば居場所がバレちまうな。」

 

 

「あぁ、それにキャスカがコレじゃあしばらくは動けない。少し休もう。」

 

 

「あぁ、それにしても……こいつ、なに考えてんだ!?熱出したまま戦に行くとか、コレだから女は!」

 

 

「ガッツ、キャスカにはキャスカなりあるんだよ。」

 

 

「けどよ、タイガ。こいつは……はぁ。」

 

 

しかし、キャスカは未だに震えており、その様子に困り果てていた2人であったが、ガッツは深くため息を吐いた……。

 

 

◆■◆◆■◆

 

 

 

「ガッツとタイガ、キャスカが!?」

 

 

「へいっ。かなり高い崖でしたが、下は川だったんできっと……。」

 

 

 アドン率いる青鯨騎士団は戦略的撤退を行い、一戦を終えたグリフィス達は報告に来たジュドー達から事の詳細を聞いており、他の団員達も慌てふためき動揺していた。

 

 

ガッツ達(あいつら)の事だ。死ぬことはないにしろ、あの高さじゃあ……ガッツは手傷を、キャスカも様子が変だった。捜索隊を出すなら早めにした方が。」

 

 

3人が落下した崖はかなりの高さがあり、3人とも死にはせずとも大怪我をしているかもしれないと、皆が思い不安に不安に駈られるが、そんな中でミッドランド国の兵士がグリフィスに声を掛ける。

 

 

「グリフィス卿、お分かりでしょうな?戦ではまず敵に打ち勝つことが大事!ならばその最中に高々一隊長2人や一兵士ごときに時間と兵士を割くなど言語道断!それに、その程度の窮地勇猛な鷹の団であれば難なく切り抜けるのでは?……生きておられればですが。」

 

 

 ミッドランド兵士達の馬鹿にしたような発言にガストン達は怒りそうになるが、ジュドーやピピン達も気持ちを理解しながらも何とか抑える。その中でグリフィスは遠くを見ながら思考するのであった……。

 

 

 



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15 彼女の思い

遅くなってすみません!!


ガッツside

 

 

「いい加減にしねぇか!!この、ヒス女(・・・)!!」

 

 

 雨が止み、外が晴れた時にタイガの奴とこいつが、熱を悪化させないように服を脱がせると食い物探してくるからキャスカを頼むと言われ、オレはこいつの事を見守っていた。……まぁ、下を脱がせた時に血が出てるを見た時は、流石にオレでも分かった。

 

 

ちなみに服を脱がせるのは、問答無用でタイガに手伝わせた。

 

 

奴は恥ずかしいとか言ってたが、そんな事は関係ねぇ!!てか、何が恥ずかしいだ!ふざけんな!!

 

 

しかし、こいつは少し唸ってから目が覚めすと、このアマ、いきなり殴り付けてきた上に色んな物を投げてきやがった!しかも、ナイフまで投げるとか洒落になんねぇぞ!?

 

 

「あのなぁ!恩に着せるつもりはねぇ!だがなぁ、こっちは死ぬ思いで甲冑着けた状態でてめぇを川から引きずりあげたんだ!!それを礼の一言どころかナイフ投げつけやがって!!

てめぇが女(・・・・・)じゃなかったらぶん殴って顎外すとこだぞ!!!」

 

 

 オレがそう言うと奴は俯いて、震えながら動かなくなった。

 

 

「あ~~ぁっ!ったく、すぐに頭に血が上りやがる。コレだから女には戦仕事は向か「このバカタレ!!」痛っ!?」

 

 

タイガが食い物を持って走ってきたかと思えば、この野郎はいきなり殴りかかってきやがった!!

 

 

「タイガ!てめぇ何しやがる!?」

 

 

「お前なぁ!少しはデリカシーを持つか、オブラートにつつんで物を言え!?何ちゃっかり2人で喧嘩してんだよ!?」

 

 

「は!?知るかよ!この女が先に「……私だって……」あ?お、おい。」

 

 

オレとタイガが言い合いをしていると、あいつ……キャスカが震えて涙を流しながら口を開いた。

 

 

「私だって……好きで女に生まれたわけじゃない……。私だって、私だって……。」

 

 

「……ちっ。」

 

 

「はぁ、とりあえずキャスカ。ここだとヤバイから奥に。ガッツも飯にしよう。」

 

 

オレらはタイガが持ってきた木の実やらを食って腹に貯めることにしたが、その間も奴はメソメソと泣いていた。

 

 

「ったく、肉とか魚はねぇのかよ。」

 

 

「我慢してくれ。火を起こせば煙でこちらの位置がバレる。それに雨で枝とかも湿ってるから使えないし。」

 

 

「くそっ……おい、いつまで泣いてんだよ。」

 

 

「うるさい!!……お前達にだけは助けられたくなかった。情けない。」

 

 

「なぁ、タイガ。こんな奴放っとけよ。なんで助けたんだ?」

 

 

「あのなぁ。仲間なんだから、そんな事言うなっての。」

 

 

ったく。……なぁ、お前はなんで鷹の団に入ったんだ?さっきも言ったが、女には戦商売は……はぁ、答えたくないなら答えなくて良いがよ。」

 

 

「グリフィスだ……。」

 

 

 そこからキャスカは自身の生まれを話始めた。

 

 

 こいつの生まれが貧しい農村で、しかも麦以外は育たない土地でしかも冬には餓死者が出るほどに生きていくのが大変な場所だという事を……。

 

 

さらに戦の小競り合いで巻き添えを食らうということも……。

 

 

確かに気持ちは分かるし、それがどれだけしんどい事かもよく分かる。

 

 

 オレやタイガも旅を始めた頃は食うことも出来ない時もあったし、戦での小競り合いで潰れた村とかも嫌って程見てきているし、その悲惨な様子もたくさん見てきた。それがどれだけ生きるのがしんどくなるかも知っている。

 

 

オレとタイガは黙って話を聞いていた。

 

 

「……そんな時、遠乗りの貴族が私に目をつけて侍女に欲しいって言ってきた。だけど、貴族がただ善意でそんな事をすると思うか?」

 

 

「それって、やっぱり……。」

 

 

「あぁ、そう言うこと……だろうな。」

 

 

「あぁ、奴は私を襲おうとして来た。初めは私も逃げたさ……けど、それでも仕方がない、当たり前の事って思って目を瞑ろうとした、その時だった、グリフィスと出会った。

グリフィスはそいつに言った“貴族に生まれただけで、神にでも選ばれたつもりか?”って。」

 

 

「そうだったのか……。」

 

 

 その後、グリフィスはこいつを……キャスカを助けるのではなく、自分で戦うかどうかを選ばせ、キャスカは自分で剣を取り貴族を刺し、そして戦う決意をして、それから鷹の団へと入団したらしい。

 

 

そして、こいつの言葉からグリフィスがどれだけ大きく、そして大切な存在なのかが伝わってきた、それはオレも同じと思えるからだ。

 

 

 ガンビーノ……オレやタイガの親父代わりであり、戦を教えてくれた。

 

 

あんなことになっちまったが、オレはガンビーノを憎みきれず、忘れられずにいた。

 

 

タイガはどうかは知らないが……。

 

 

「(ガンビーノ……。)」

 

 

◆■◆

 

 

 それからキャスカは2人にあらゆる事を話していき、彼女がグリフィスに崇拝に近い感情を抱いていた事を話したが、その中である貴族の事を話した。

 

 

その貴族は今はある国で軍の総督をしているのだが、その男の趣味がとてつもなく悪い意味で有名であり、それが若く容姿の良い少年を“色子(男娼)”として監禁している事、そして、その男にグリフィスがその男に鷹の団の為に体を許した事を。

 

 

それを聞いたガッツは驚きで、言葉を失い、内容を知っていたタイガは目を伏せた。

 

 

「グリフィスは河で水浴びをしながら、腕の肉が抉れるほどに掻きながら言ったわ。

“自分だけ汚れずにいられるほど、欲しいものは容易く手に入る物じゃない”って。

それに、グリフィスは“勝ち続ける事”が死んでいった人達に出来るだとも言っていた……。

そんな彼を見て、私は彼の剣になりたかった。」

 

 

「……。」

 

 

「……。」

 

 

「そんな時だ、お前達が現れたのは……。グリフィスがお前達を誘った時、物凄く妬ましかった。“お前達が欲しい”……グリフィスがあんな風に言うなんてなかったから。」

 

 

乾いた笑みを浮かべながらガッツとタイガを見るキャスカだが、2人はそのまま話を黙って聞いていた。

 

 

「……。」

 

 

「……。」

 

 

「何故、お前達なんだ……!!冷静なグリフィスはお前達の事になると、衝動的になる!

特に、タイガ!お前があの化け物と戦っていると聞いたとき、グリフィスはお前を助けると言って聞かなかった!」

 

 

「え?(グリフィスが俺を助ける?何でだ?俺はグリフィスとは特に何か有ったわけでは……。)」

 

 

タイガがグリフィスが何故自分を助けるのかということに疑問を持っていると、ガッツが外に自分達以外の声が聞こえて振り返ると、岸の反対方向に3人の傭兵がおり、自分達を探していた。

 

 

どうやら彼らはガッツとキャスカ、ついでにタイガの死体を確認すれば報奨金を貰えるということで3人を探しているらしく、他にもいるらしい。

 

 

3人は死体を探すために川下へと進んでいった。

 

 

「ガッツ、キャスカ、あまり時間は無さそうだ。日が暮れたらここを出よう。」

 

 

「おう。」

 

 

「……。」

 

 

3人は服と鎧を身に付け、それぞれの得物を持つと日が暮れるのを待って外へと出た……。



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16 500対2!!

原作と出てくる兵士の数が違います!!


初めは200でも良いかなぁと思ったんですが、区切りが良いので500人にしました!


……ちょっっっと、やりすぎたかな(・_・;)

いや、これは、その……なんかこの2人ならこれくらい余裕かなぁ、と……あ、あはは。




 日が落ち始め、夕暮れ時となると同時に3人は森の中を進んでいた。ガッツとタイガは難なく森を進んでいくが、キャスカの方は呼吸が荒くなっていて、歩みも遅れていた。

 

 

「はぁ、はぁ。」

 

 

「キャスカ、大丈夫か?」

 

 

「し、心配はいらん!私は……!」

 

 

机上に振る舞うキャスカだったが、

 

 

「……ったく、迷惑な話だぜ女ってのはよぉ!

体力はねぇ!頭にすぐ血が登る、その上に月のものだなんだでこのざまだ!

向いてねぇぜ、戦にはよぉ。」

 

 

「ちょっ!ガッツ、少しは「お前は黙ってろタイガ。」……。」

 

 

タイガがガッツを注意しようとすると、ガッツはそれを止めてキャスカの方を腕を組ながら見ている。そんな彼にキャスカは歯を食いしばって睨み付けた。

 

 

「お前に……お前に何が分かるっ!?」

 

 

「分かるわけねぇだろ、男なんだからよぉ。ただ分かってんのは、こっちはお前のその“女の都合”でいつまでも足留め食うわけにはいかねぇんだよ。

敵さんにとっちゃお前が女だろうが関係ねぇし。ま、どっちかってたら喜ぶんじゃねぇの?」

 

 

キャスカがガッツを睨み付けていると、タイガは何かの気配を察知して周囲を警戒し出した。

 

 

「ガッツ、キャスカ。話はそれくらいにしてくれ……お客さんだ。」

 

 

「「っ!?」」

 

 

3人が辺りを周囲を見渡すと、森の中からぞろぞろと大勢の傭兵達が現れ始めた。

 

 

その数、およそ500人!!

 

 

その手には剣や槍、クロスボウに斧といった種類豊富な武器を持っており、全員が目をギラギラとさせていた。

 

 

「っ!?」

 

 

「けっ!うじゃうじゃと、どっから出てくるんだ?」

 

 

「(おいおい、ちょっと多すぎじゃないか?ざっと見積もっても100人はいるぞ?!

これも、俺がいるから起きたイレギュラーなのか?)」

 

 

「くくくっ!見つけたぁ!見つけたぞ小僧ども!!」

 

 

「あ、あいつ。」

 

 

「なんだ、あのおっさんかよ。」

 

 

「え~~っと、なんだっけ?ウドンだっけ?」

 

 

「なっ!?貴様ら、なんだその反応は!?それと小僧、私はウドンではない!ア・ド・ン・だ!!!!この青鯨超重装猛進撃滅騎士団団長であるこのアドン様を侮辱するな!!

……まぁ良い!貴様らはタダでは殺さんぞ!!貴様ら2人は我がコボルイッツ家にどわっ!?

き、貴様!!人が話しているときに攻撃するな!!」

 

 

「いや、無駄に話が長かったから、つい。」

 

 

タイガが放ったクロスボウの矢がアドンの背後の木に命中し、アドンがタイガに文句を言うがタイガもやれやれといった様子で首を傾げる。

 

 

「ぐっ!?ま、まぁよい!貴様ら2人はここで殺し、女剣士は兵士達の慰み者だ!」

 

 

「うわぁ、いかにも“小物”が吐きそうなことを……んでガッツ、やれそう?」

 

 

「当たり前だ。てめぇこそビビってねぇよなタイガ?こんな“雑魚”相手によぉ。」

 

 

「いやいや、こんな“小物”にビビるわけねぇだろ?」

 

 

「ぐぬぬぬっ!!貴様らぁぁぁ!小物だの雑魚だのと侮辱しおって!!!

かかれぇ!!!」 

 

 

「「「「うおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」

 

 

 アドンの号令に傭兵達の一部が我先にと一斉に襲いかかっていく。

 

 

その瞬間、ガッツはだんびらを横から大きく振り払い、2人の傭兵を切り伏せていくと血飛沫が宙を舞い、その後ろではタイガが片方のカットラスで攻撃を受けつつ、反対の手のカットラスで斬りかかってきた傭兵の首を落とす。さらに、キャスカも負けじと剣を振るい、敵の剣を受け流すとそのまま流れるように敵の首を切り落とした。

 

 

3人の応戦する姿にそれを見て傭兵達の足が止まった。

 

 

「貴様らに、これ以上借りは作らん!!」

 

 

「へっ!上等っ!!」

 

 

「それじゃあ、行きますか!!」 

 

 

 大群に囲まれながらもガッツ、タイガは笑みを浮かべていた。

 

 

その笑みを見たアドンは忌々しげに体を震わせながら、さらに号令を出す。

 

 

「ぐぬぬぬっ!!えーーーい、怯むなっ!!敵はたった3人だ!!囲みながら攻めろ!!

3人ずつで掛かれぇ!!!」

 

 

アドンの指示で大勢が3人に襲い掛かろうと迫ってきていた。

 

 

「おまえら、伏せろ!!」

 

 

「っ!キャスカ、伏せて!」

 

 

「うわっ!?」

 

 

「っらあぁぁぁぁぁぁっ!!!」 

 

 

ガッツがだんびらの長さを活かして振るい、タイガとキャスカが頭を伏せる。すると、襲い掛かってきた傭兵十数人はそのだんびらの一撃によって鎧ごと真っ二つに分断される。

 

 

その中で数人の槍を持った兵士達が突貫してくる中、タイガはクロスボウから矢を3発放ち、怯んで足を止めた敵の首を切り飛ばし、後ろから来ていた傭兵には落ちていた槍を使い、胸を貫いた。

 

 

そんな中、キャスカは敵を2人倒すとガッツとタイガに歩み寄ると小さく一息吐く。

 

 

 その中で傭兵達の不甲斐なさにアドンは悔しそうに歯軋りをし、地団駄を踏む。 

 

 

「お、おのれぇぇっ!こうなれば……サムソン!!!」

 

 

「お"う!!兄ギぃ!!」

 

 

アドンが呼ぶと姿を現したのは、グロテスクな魚(アンコウ)のような分厚い甲冑と刺の付いた鉄球と鎖が合わさった武器を持った大男が現れ、3人は一気に警戒を強める。

 

 

「なんだありゃ?」

 

 

「デカいな。」

 

 

「この者は我が弟にして我が青鯨超重装猛進撃滅騎士団副団長サムソン!!

サムソンの装甲の厚みは通常の3倍!例え岩の下敷きになろうと凹みはせず、さらに武器の鉄球による一撃は水牛の頭蓋を粉々に打ち砕き、人間が食らえば忽ちに肉塊となぁる!!」

 

 

「それって、力しか取り柄のないって言ってるようなもんだろ?」

 

 

「確かにな?」

 

 

「くっ!?おのれ、馬鹿にしよって!!行けいサムソン!!!コボルイッツ家の誇り、知らしめてやれ!!」

 

 

兄の言葉にサムソンは人とは思えない息を吐きながら、3人へと迫る。

 

 

鉄球を振り回し、周りの傭兵達や3人も後ろに下がってしまう。

 

 

すると、タイガはサムソンの鉄球の前に出るとキャスカはそれに驚くが、迫っていた鉄球を木にぶつけると木の幹を抉ったが、速度が落ちて地面に落ちた瞬間にタイガは鎖の穴へと槍を2本突き刺して動きを封じる。

 

 

「ぐっ!?」

 

 

「はーーはっはっはっ!!馬鹿め!!!その程度でサムソンを止められるつもりか~?

サムソンの腕力ならばその程度、なんと言うことはない!!」

 

 

「そうだろうな?だが、“一瞬”止めれれば良いんだよ。“一瞬”な。」

 

 

タイガの言葉にアドン達が首を傾げていると、身動きが取れずにいたサムソンに向かってだんびらを降り下ろし、その頭蓋を刃にて甲冑ごと叩き割り、サムソンはその一撃を受けて白目を剥いてたおれると動かなくなった。

 

 

「な、ななな!?サムソォォォン!!?貴様ら!!サムソンをよくも……!

この卑怯者め!!貴様らには、誇りと言うものはないのか!?」

 

 

「誇り、誇りねぇ……。アドンさん、それ言うなら戦場で女を差別する発言したり、慰み者とか言ってるあんたには誇りがあるのか?こんだけの傭兵使っておいて。」

 

 

「んぐっ!?」

 

 

「そりゃそうだ。大体タイガの言う通り、あんたに誇りとかあるのかよ?何か見てて思うんだが、おっさんの方が情けねぇよな。3人にこんな大人数なんて使うなんてよ。」

 

 

「ぐっ、ぬぐぐぐぐっ!!う、うるさい!!うるさいうるさ~~い!!勝てばよいのだ!!

貴様らのような下衆な者共と私を比べるな!!

お前達、そいつらを殺せばさらに倍の金を出してやる!!さっさと殺せぇぇぇ!!!」

 

 

タイガとガッツの言葉に地団駄を踏み怒るアドン、そんな彼の倍の金を出すと言われ、傭兵達は口元が弛む。

 

 

それを見たタイガは深くため息を吐く。

 

 

「やれやれ、金に釣られるとか……。ガッツ、キャスカ。こいつらさっさと倒しちまおう。」

 

 

「だな。こんな連中、とっとと片付けるぞ!」

 

 

「わ、分かっている!」

 

 

それから3人は迫ってきた傭兵達を互いに背中を預けながら倒していく。

 

 

ガッツがだんびらを振るい、傭兵達の体を真っ二つに叩き割り、頭蓋を断ち割る。その中でタイガとキャスカは細々と敵の首を切り落としていく。しかし、キャスカは乱戦の中で2人の動きに驚いていたが、それ以上に万全でない自分が歯痒かった。

 

 

「(くっ!?体調さえ万全なら、この程度の乱戦……。)」

 

 

「ぐぬぬぬっ!!貴様ら、こうなれば女を狙え!!女を狙えば奴らとて足が止まる!」

 

 

傭兵達が一斉にキャスカへと迫っていくが、その瞬間にタイガが炸裂弾を傭兵達に向かって投げると、ガッツはその玉を見てだんびらで前を防ぎ、タイガはキャスカを伏せさせるとけたたましい爆音が響き渡り、傭兵達は爆発の衝撃によって動けなくなっていた。

 

 

そんな中でタイガはキャスカに耳打ちした。

 

 

「キャスカ、今のうちに一気に森を駆けのぼって。」

 

 

「なっ!?ど、どういう」

 

 

「俺とガッツで隙を作るから、それと同時に行ってくれ。」

 

 

「だ、だけど……それだとお前達は!?」

 

 

キャスカが2人を心配するように声を掛けるが、ガッツが一蹴した。

 

 

「勘違いしてんじゃねぇよ。半病人は邪魔だからとっとと失せろって言ってんだよ。

それにあのタコやろうには借りがある。

それによ、こんなつまんねぇ所でくたばるのか?」

 

 

「キャスカ、キャスカはグリフィスの所に帰るんだ。」

 

 

「おら、とっとと行け。剣の主の……グリフィスの所に帰んな。」

 

 

タイガとガッツの言葉に背中を押され、キャスカは俯くがすぐに顔を上げる。その目には涙が浮かんでいた。

 

 

「っ!!必ず……必ず仲間を連れて戻る!!それまで死ぬな!!」

 

 

キャスカは涙を拭ってそういうとガッツとタイガは笑みを浮かべ、走り去るキャスカを見送った。

 

 

「に、逃がすな!?女を殺せ!!」

 

 

「おっと!女のケツを追っかけるのは後にしな。」

 

 

「せっかく目の前に大金がいるんだぜ?無視するなよな?」

 

 

 ガッツとタイガが挑発的な笑みを浮かべて、指で挑発すると傭兵達が2人に向かって襲いかかる。

 

 

ガッツはそれをだんびらを振るい、迫ってきていた敵を両断していき、タイガも負けじとカットラスや落ちている武器を使って倒していく。

 

 

その様子に傭兵達は後ろに下がる。

 

 

「ば、化けもんだ!あのでけぇ剣の奴、一太刀ごとに人が吹っ飛ぶなんて。」

 

 

「あっちの奴も、確実に頭とか急所を潰しに来てる!こんなのが敵にいるなんて聞いてねぇぞ!?」

 

 

おののく傭兵達にガッツとタイガは笑みを浮かべながら、彼らに話し出す。

 

 

「あいにくとオレの剣は“なまくら”でな、あんまりよく斬れねぇが厚みと重さも並みの3倍以上ある……一発で死に損なうと痛えぞ。傷もデケェから治しにくいしな。」

 

 

「俺も剣の腕は並みでな。けど何処をどう切れば痛いのかはよくわかってるし、ある程度は色んな武器も使えるぜ。」

 

 

「ぐぬぬぬっ!!お、おのれーーーー!?貴様らぁぁぁ!!早くそいつらを殺さんかぁぁ!!

そやつらは卑劣な手で、我が弟サムソンを殺したのだぞ!?仇を討つというものはおらんのかぁぁぁ!!」

 

 

この時、傭兵達は心の中で「知らねぇよ。」と、意見が1つになる。

 

 

そんな中、アドンはある提案を出した。

 

 

「……そやつらの首を取ったもの者には、3倍いや10倍の報奨金と我が騎士団の千人長の地位を与えるぞ。」

 

 

その破格の報酬を聞いた傭兵達は顔を見合わせて笑みを浮かべる。

 

 

「ど、どうする?」

 

 

「2人殺しただけでその報酬だぜ?やるだろ。」

 

 

「よ、よし。なら“いっせーのせ”で行くぜ?」

 

 

報酬に釣られて2人ににじり寄る傭兵達にガッツとタイガはため息を吐き、呆れた顔になる。

 

 

「タイガ、オレ今ものすごーーーーく帰りてぇんだが、帰って良いか?」

 

 

「いやダメでしょ。多少はやる気出せよ。」

 

 

「はぁ~~~~。帰りてぇ。」

 

 

「はいはい、とりあえずやろうや。頼りにしてるぜ、隊長!」

 

 

「ったく、付いてこいよな。副長!!」

 

 

 そこからはひどい乱戦状態となった。 

 

 

 ガッツのだんびらが敵の体を鎧の上から砕いていき、手足を吹き飛ばし、血飛沫が宙を舞い、その近くではタイガのカットラスが敵の首や手を切り飛ばしていく。その中で自分の苦手とする相手が出れば互いに相手を変えて倒していく。

 

 

長年共に戦っているから出来る息の合った動きに、傭兵達は次々に切り伏せられていくが、傭兵達も諦めずに2人へと襲い掛かり、クロスボウが2人に命中するが、2人とも多少足を止めたが、すぐに得物を振っていく。

 

 

そして、ガッツが200人、タイガが150人ほど斬った所で背中を合わせ、肩で息をする。

 

 

「ガッツ、何人斬った?」

 

 

「さぁな、10から上は数えてねぇよ。タイガは?」

 

 

「同じ。10からは数えてない。」

 

 

「そうかよ、へへっ。楽しくなってきやがった。」

 

 

「こっちはドン引きだよ。」

 

 

「今だ!!そいつら疲労している!叩き潰せ!!!」

 

 

「「「「おおおぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」

 

 

 ガッツとタイガの2人の傭兵達が波のように押し寄せるのであったが、タイガは咄嗟に炸裂弾を放ち、それによって傭兵達は驚くが即座に2人が敵兵を倒していく。体に矢傷や剣や槍による傷を作りながらも2人は敵を斬ることを止めない。

 

 

ただ今は、生きるために……生き残るために剣を振るう。

 

 

ーーーーー。

 

 

タイガside

 

 

 くそっ、頭がふわふわしやがる。それになんだよ、俺ってこんなに戦闘狂だったか?

 

 

 普通なら逃げたいし、体が震えるはずなのに、何でか今は体を動かすのが心地いいんだ。

 

 

 ガッツが隣にいるからか?キャスカが無事だからか?

 

 

 いや、違うな。今はただ……こいつらを倒して生き残る。ただそれだけだ!!!

 

 

 

 

ーーーーー。

 

 

ガッツside

 

 

 なにやってんだオレは、こんなところで馬鹿みたいに命張って、くだらねぇ所で熱くなってんだ?

 

 

 キャスカの為か?タイガが側で戦ってるからか?

 

 

 考えてる暇はねぇ!!

 

 

 今は……ただ斬るだけだ!!

 

 

ーーーーーー。

 

 

 2人がアドンと傭兵団と戦っていた頃、キャスカは敵の追い討ちを受けながらも、上層部の説得を終えて、捜索に来ていた鷹の団の仲間達と出会うことができた。そこで彼女はガッツとタイガが戦っている事を話すと仲間達は慌ててキャスカの後を追い、目的の場所で見たのは……500人の傭兵が体が欠損した状態の死体となって倒れている所であった。

 

 

「おいおい、これスゲェな。」

 

 

「これ、500人はいるぞ!?2人でこれを……。」

 

 

「っ!?ガッツ!!?タイガ!!?」

 

 

キャスカが声を挙げて見た先には、ボロボロの状態で木に背を預けているガッツとタイガがいた。キャスカが慌てて近づき、頬を撫でる。

 

 

「ガッツ……!ガッツ!!タイガ……タイガ!!」

 

 

「ぃ……るっせぇ……傷に染みるだろうが。」

 

 

「あ、キャスカ……。みんなも……。」

 

 

「っ!!ガッツ!タイガ!!」

 

 

 2人が無事なことに一同は安堵したが、2人は即座に担架に乗せられて鷹の団の本陣へと運ばれ、治療を受けることになり、戦医からは絶対安静を言われたが、2人は頑として譲らず、戦場に出ると言い、戦医はそれを聞いて呆れ返ったのだった。

 

 

 その夜、タイガは仲間達から離れると森に行き、その影にいた人物に話しかけた。

 

 

 

 

 

 

 

「覗き見なんて趣味悪いな?えぇ……不死のゾッド。」

 

 

 

「ふんっ。」

 

 

 




遅くなった上に駄文で読みづらいですが、読んでくれると嬉しいです。


そして、ゾッドの現れた目的は!?


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17 任命と決戦へ

お久しぶりです。


ベルセルクは必ず終わらせます!


 タイガは仲間達から森の近くで休むことにしたが、そこにはゾッドがいたので仲間達に気付かれないように2人は顔を合わせずに話すことにした。

 

 

 ゾッドは見ていたのだ。タイガとガッツの2人が500人の兵士を相手に戦い、生き残った所を見て、ゾッドはタイガやガッツと戦いたいと思ったのである。

 

 

「あの大群を相手によくぞ生き残ったものだ。それにあの戦いぶり、ますます興味が湧いたものだ。貴様、いったい何者だ?」

 

 

「……しがない傭兵だよ。あと、悪いが戦うのは待ってくれ。あいにくと全身痛みでおかしくなりそうなんだ。」

 

 

「ふっ!なかなか肝が据わった小僧だ。まぁいい今回は貴様に免じて手を出すのは止めてやろう。だが、逆に貴様に興味が湧いた。いつか、喰らってやろう。」

 

 

「……食えるもんなら食ってみろ。絶対に蝕を止めて見せる……絶対に。」

 

 

 タイガはそう呟くと、仲間達の酒宴を行い、自身を呼ぶ仲間達の下へと向かっていった。彼は誓った。この暖かい場所を守る為に必ず蝕を止めて見せると、改めて強く決意した。

 

 

「タイガ副長!よく生きてやしたね!隊長も副長も無茶しますよ!」

 

 

「全くだ!けど、生きててくれて良かったです!」

 

 

「あぁ、ほとんどガッツのおかげだよ。俺はやれることをやっただけだ。」

 

 

「くぅ~~!気取らねぇのが良いよな副長も!」

 

 

 酒宴に参戦したタイガはゆっくりと酒を飲んでいく。仲間同士で酒を呑んでいくのが楽しいと思い、頬が緩む。そんな時であった。

 

 

「タイガ。」

 

 

「グリフィス、どうかしたか?」

 

 

「今回の戦い、よく無事で帰ってきた。」

 

 

「あぁ、ガッツのおかげだよ。」

 

 

「それもあるだろうが、お前の実力で生き残ったんだと俺は思っている。だからこそ、お前もガッツも生き残った……俺はそう感じている。」

 

 

 グリフィスの誉め言葉に照れ臭そうにするタイガ、それを見てからかう仲間達やガッツも笑みを浮かべる。そんな中でグリフィスがある提案をした。

 

 

「タイガ。お前には斬り込み隊の副長を辞めてもらう。」

 

 

「え……!?」

 

 

『はぁ!!?』

 

 

 グリフィスの発言に鷹の団一同は驚き、タイガに至っては驚きで口が閉じなくなっている。

 

 

「おいグリフィス、何言ってやがる!?こいつは俺の部下だ!勝手に辞めさせるなよ!?」

 

 

「グリフィス、タイガに何か落ち度があったの?」

 

 

「いや落ち度はない。そして、辞めると言ってもタイガには斬り込み隊ではなく、遊撃部隊の隊長をやってもらう。」

 

 

『遊撃部隊?』

 

 

「そうだ。タイガ、お前には諜報や戦闘の際に各部隊の援軍に動く遊撃隊の隊長をやってもらいたい。お前には城など見て、どちらにでも動けるように編成、指揮を任せたい……どうだ?」 

 

 

「う~ん……。」

 

 

グリフィスの言葉にタイガは腕を組んで考え込んでいると、ガッツが

 

 

「だから!勝手に決めるなよ!こいつが居なくなったら、色々困るんだよ!

タイガも何とか言えよ!」

 

 

「う~ん。それはまぁそうなん……ん?

(待てよ?ここで手柄を挙げて、グリフィスに何か進言できれば、グリフィス拷問ルート回避できるんじゃないか?それに、黒犬やワイアルドの事も進言できるかも……。)」

 

 

「た、タイガ?どうしたんだ?」

 

 

「……グリフィス、その話受けるぜ。」

 

 

「「「タイガ!?」」」

 

 

 タイガが遊撃部隊の承諾をすると、ガッツ達一同は驚き、グリフィスも頷くがタイガは皆に承諾した理由を答えた。

 

 

「グリフィスが持ってきたってことは、何かあるんだろ?

例えば、“次”の俺らの戦う相手が厄介だから城を攻め落としといてくれって感じか?」

 

 

「次の……俺らの戦う相手?」

 

 

「ほう、分かっていたか……みんな!先程本国から指令が来た。

ミッドランド軍の白虎騎士団がチューダーの本拠地を攻めに掛かったが……戦況は芳しくないらしい。俺達もこれよりそこに向かう。」

 

 

「!?まさか、チューダー最強と謳われる“紫犀聖騎士団”が駐屯してる帝国と戦うかもしれないってことか!?」

 

 

 コルカスの言葉に全員がざわつく。

 

 

 紫犀聖騎士団……それはチューダー帝国最強の騎士団であり、数多くの騎士団を保有する帝国の騎士団の中でも群を抜く強さを誇る存在であり、特に団長であるボスコーンは無双の強さに加えて戦局を見る目もある。

 

 

「おいおい、マジかよ……。よりによって、紫犀聖騎士団がいるのかよ!?」

 

 

「これはまた、大掛かりな戦になりそうだぜ。」

 

 

 皆がざわつく中、タイガは別のことを考えていた。

 

 

「(俺達は恐らく、紫犀聖騎士団と戦う……。そこでもしガッツが勝って、俺らが生き残れば……あとは、あの王妃だな。対策もバッチリしてある。

そして、必ずグリフィスのフェムト化を防いでみせる!!)」



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18 チューダー帝国を討つ。

 ミッドランド軍、その軍の1つで“虎”の称号を与えられた二大騎士団の一翼である“白虎騎士団”はチューダー帝国との先鋒として戦に挑んだが、敵の要塞ドルドレイの護りは堅く、どの様に攻めても容易く返されてしまい、多くの死者を出してしまった。

 

 

 白虎の牙は重厚な紫犀によって踏み潰されてしまったのであった……。

 

 

 芳しくない戦況を打破しようと、ミッドランド国の騎士団全ての団長達とグリフィスが呼ばれ、チューダー帝国とドルドレイ要塞の攻略法を探る軍義が行われたが、どの様な案を出しても必ず“紫犀聖騎士団”と当たるために皆が消極的になる中、王がグリフィスに尋ねると、彼は淡々と答えた。

 

 

「御命令とあれば……。“鷹の団”のみをもって当たらせて頂きます。」

 

 

 グリフィスのさも“勝つので大軍は不要”と……当たり前のような口振りで答え、その様子に他の将達は連勝続きでのぼせていると苦笑する者もいれば、不遜な態度に激昂する者もいた。けれども、その中の一部の者達の助言もあり、ミッドランド王はグリフィスに命じた。

 

 

「鷹の団に……ドルドレイ攻略を命ずる。」

 

 

 その命令にグリフィスはただ静かに頷くのみであったが、そんな王とグリフィスの姿を見て数人の将は舌打ちして、呆れたのであった。

 

 

 しかし、この戦の後に彼らは驚くべき報せを受けるのだった……。

 

 

◆◆◆

 

 

タイガside

 

 

 どうも、500人斬りの手伝いをしたタイガだ。

 

 

 今俺たちはグリフィスの命令で駐屯地に待機しており、各々が自由な時間を過ごしているが、俺はというと、遠くに見える馬鹿デカいドルドレイ要塞を遠くから眺めているが、いやぁ、デカいわぁ……まさに堅牢って感じ。

 

 

「(いやぁ、金でよくもまぁ成り上がったなぁ……。ゲロ総督……あれ?ゲロだっけ?まぁいいか。)」

 

 

「おい、タイガ!丁半やらねぇか?こいつらの有り金は獲ったところでよ。」

 

 

「タイガさん!俺らの仇取ってください!!」

 

 

「いやどんだけ気楽なんだよ?まぁいいけど……。てか、幾らやられたの?」

 

 

「「「給料3ヶ月分!!」」」

 

 

「……あぁ、頭痛い。まぁやるか。」

 

 

 ガッツと丁半をやることになり、俺はガッツの正面に座ると、ガッツがサイコロを筒に入れて振りながら床に置く。

 

 

「丁!」

 

 

「半で。」

 

 

 出た目は半……俺の勝ちであった。

 

 

「はぁ!?マジかよ!?もう一回だ!!」

 

 

「良いぜ……そういえば、今回の相手のこと、聞いてるか?」

 

 

「あ?ドルドレイだろ。いいんじゃねぇの?戦も賭けも勝つときは勝つし、敗ける時は敗けるての。それに今までだって同じような事が有ったじゃねぇか。」

 

 

「まぁな……。」

 

 

 俺が考え事をしていると、仲間の1人が声をかけてきた。 

 

 

「タイガさん、何かあるんで?」

 

 

「……今回の戦、勝てばデカいからなぁ。何せ“紫犀”が敵にいるからな。」

 

 

「「「紫犀?」」」

 

 

「前に調べたんだよ。紫犀聖騎士団、チューダーきっての猛将ボスコーンが団長を務める最強の騎士団で、その実力はミッドランド軍の白龍、白虎にも勝るってな。それに、ボスコーンははっきり言ってガッツ、お前より強いぜ。」

 

 

「「「た、隊長よりも強い!?」」」

 

 

 タイガの言葉に驚くガストン達切り込み隊の面々。ガッツの実力を知っているのとタイガの強さも知っているが故に、その言葉には真実味があるのかゴクリと唾を飲み込んでいく。

 

 

 そんな中でガッツ本人は、楽しげに嗤っていた。

 

 

「……ほう、そいつは面白ぇ。俺より強いか……?ならタイガ、今から俺がそいつに勝てるかどうか、賭けねぇか?」

 

 

「本気か?こんな話しといてあれだが。」

 

 

「はっ!馬鹿野郎。俺を誰だと思ってんだ?お前といくつも修羅場潜ってんだぜ。何より……俺には“やりたいこと”もあるからなっ!」

 

 

 そう言うと、ガッツはサイコロを筒に入れてカランコロンと振り、板の上に下ろす。

 

 

「丁だ!タイガは?」

 

 

「……半で。」

 

 

 互いに見合い、切り込み隊の面々も見守る中でガッツが筒を上げると……サイコロの目は“丁”であった。その結果に切り込み隊の面々とタイガは驚いたが、ガッツはニヤッと笑う。

 

 

「ほらな?俺はそのボスコーンとか言うのには負けねぇよ。」

 

 

「……そうだな。なら、ガッツ。絶対に死ぬなよ?」

 

 

「ったりめぇだろうが!誰に言ってんだ?俺の強さはお前が知ってんだろうが。」

 

 

 ガッツのその言葉にタイガは微笑むと、テントを後にして戦の支度に入ろうとした。その時、彼は戻ってきていたグリフィスに声を掛けられた。

 

 

「タイガ、少し時間良いか?」

 

 

「グリフィス?あぁ、良いぞ。」

 

 

 タイガはグリフィスに連れられて、彼の天幕に入る。

 

 

「グリフィス、用件は何だ?何かあったのか?」

 

 

「あぁ、実はお前とキャスカの部隊には本隊とは違う仕事を頼みたいと思っているんだ。だが、その前に聞いておきたい事がある。」

 

 

「何だ?」

 

 

 グリフィスは真剣な眼差しでタイガを見ると、ある言葉をかけた。

 

 

 

 

 

タイガ、お前……“未来”が見えてるのか?

 

 

 

 

 

 



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