喫茶店・ホースリンクへようこそ! (アヴァターラ)
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キャロットパンケーキ

 「懇願!マスター君!君と君の店に協力をしてほしい!」

 

 「・・・とりあえず椅子から降りてもらえます?理事長」

 

 始まりはそんな言葉だった。ちょっとした喫茶店の主に過ぎない俺は椅子の上に立って勢いよく扇子を広げる小さくとも立場的に偉い女性に向かってとりあえずそう返すのであった。

 

 

 

 

 「テンチョー!もうすぐお客さんくるよー!」

 

 「マスターって呼んでくれよテイオー。じゃ、来たら3番席に案内してくれ。元気よく挨拶してくれよ」

 

 「マスターさーん!2番席のお客さんデザートオーダーです!今日のデザートは・・・」

 

 「キャロットパンケーキ、だな。すぐ焼くから待っててくれ。マックイーン!ドリンクの補充頼む!」

 

 「わかりましたわ。それと1番席の清掃は終わっています」

 

 「さすが。あと一組だから頑張ってくれ」

 

 「もちろんですわ」

 

 

 「あのー・・・予約したものなんですけど・・・」

 

 「「「いらっしゃいませー!喫茶店、ホースリンクへようこそ!!」」」

 

 「うわあ、スペシャルウィーク、トウカイテイオー、メジロマックイーン・・・本物だ・・・」

 

 

 

 

 ウマ娘ファンの聖地、と呼ばれる喫茶店がある。ウマ娘とは、ウマと呼ばれる別世界の生き物の特徴を宿した女性の象徴で、総じて美女美人美少女揃い、ぴょこぴょこと動く耳を頭上に携えフリフリ揺れるふさふさの尻尾をお尻につけた人間とはちょっと違う生き物である。娘、とつくように文字通り女性しかいない彼女らを俺たち普通の人間はこう表している

 

 彼女たちは走るために生まれてきたのだ、と。

 

 人間とは比較にならないバ力と、3000メートルを全速力で走りきるスタミナ、時速70㎞で走る俊足を備えた彼女らは競技者でありアイドルとしてこの世界で広く認知されている。トゥインクルシリーズというレースで走り、レースで一着になったものがセンターとして歌うウィニングライブのセットは昔からの国民的な興行だ。

 

 そしてここ、俺の店、俺の城である喫茶店ホースリンクはウマ娘たちが日夜トレーニングと学業に励むトレセン学園・・・日本ウマ娘トレーニングセンター学園のすぐ横という超超好立地に建っている。ほんの2年前まではトレセン学園のウマ娘たちの憩いの場だった俺の喫茶店は今や完全予約制と相成り、予約が途切れない日はないというくらいに商売繁盛させてもらっている。

 

 もちろん平々凡々、自慢できるのは料理とコーヒーの腕のみという俺一人で店をまわしていたらこんなことにはならない。その理由とは・・・

 

 

 「なんで現役のウマ娘たちが俺の店でウェイトレスやってんだよ・・・しかも勝負服で」

 

 「それ、この前も聞きましたわ。もう2年前のことなんですからいい加減あきらめてくださいまし」

 

 「だってさぁ・・・」

 

 「まあまあいいじゃないですか!私、楽しいです!」

 

 「そうだよー!ボクたちはテンチョーの所で働けて楽しいよ?」

 

 「はいはいありがとうございますーっと」

 

 そう、今をときめく現役のアスリート、アイドルであるウマ娘たちがレースの時のみ着用する絢爛な勝負服を着て、接客をしてくれる。今のうちの店の一番の売りであり、俺の頭を痛めている原因でもある。2年前、唐突に表れたトレセン学園のちっこい理事長こと秋川やよいさんがいきなり

 

 『提案!!君の店で、わが校の生徒たちを日替わりで働かせてもらえないだろうか!』

 

 と閉店ギリギリにやってきて直談判してきたのだ。とりあえず椅子から降りてもらって話を聞くと

 

 『問題!現在トゥインクルシリーズは国民的興行ではあるが、年々陰りが見え始めている!故に宣伝!ウマ娘たちをもっと身近に感じてもらいたい!そこで発案!君の店でウマ娘たちとファンが交流できるように取り計らってほしい!つまり・・・』

 

 『コンセプトカフェをやれとでも?』

 

 とまあこんな感じで俺の店を開く際に色々と便宜を図ってもらった恩もある俺はそれを断らず承諾、1か月ほど普通に来るウマ娘たちに仕事を教えながら営業を続けていたのだがウマ娘、しかもレースで活躍している本物のアイドルウマ娘が接客をしているということはこのネット社会、すぐさま広がるもんである。客が増えすぎてパンクしたので予約制に切り替えて現在に至るというわけである。しかもその予約も追いつかず抽選制になり果ててるとか。そこらへん理事長に丸投げしてるけどこれ以上は無理だと思うんだよなあ。

 

 そんなことを考えながらニンジンを練りこんだ生地を焼き上げて3段重ねにし、バニラアイスを上に添えてその脇に蜂蜜を混ぜたハニーホイップクリームでデコレーション。さらに飾り切りをしてシロップで煮詰めたウマ娘の形をしたニンジンをトッピングして上から蜂蜜を垂らす。よしできた!

 

 「スぺー、できたから運んでくれー。」

 

 「わああ、おいしそうです!」

 

 「食うなよ」

 

 「わかってますよ!もう!・・・・お待たせしましたー!今日のデザートのキャロットパンケーキですよ!」

 

 右耳に青いリボンをつけ、紫と白を基調にした勝負服に身を包むウマ娘、スぺことスペシャルウィークがちょっと涎を垂らしかけながらパンケーキを運んでいく。会計をしている葦毛のきれいなロングヘアで黒の勝負服を着ているメジロマックイーンに手持ち無沙汰なのかボックスステップを踏んでいるポニーテールに白の勝負服のトウカイテイオー。本日の担当3人娘に視線をやりながら、水出しコーヒーを取り出し、シェイカーに牛乳と氷を入れてシェイクし、カフェオレを作る。

 

 それぞれが現役最強格と呼ばれているウマ娘たちだ。日本総大将なんていう二つ名がついたスペシャルウィーク、文字通りの帝王、トウカイテイオー、そして長距離の名優、メジロマックイーン。こうしている分にはただのかわいい美少女しか見えない彼女たちもターフに入ると一変する。

 

 それぞれが尋常ではない走りを見せ、ほかのウマ娘を薙ぎ払ってレースを制している。ほんの五日前なんてスぺがレコードタイムを更新して1着でウィニングライブのセンターを陣取っていたしな。

 

 「ねえねえテンチョー、ボクもパンケーキ、食べたいなあって」

 

 「なっ・・・ずるいですわよ!」

 

 「あ!私も食べたいです!」

 

 「じゃ、全部終わった後な。ほれ、ファンサービスしてこい」

 

 そうしてファンのもとに行った彼女たちはそれぞれ写真を一緒に撮ったり、握手したりサインしたりと大忙しだ。裏方でしかない俺と違って日々トレーニングをして、レースに出て、歌って踊る彼女たちは非常に多忙だ。いくら自分たちが出るレース、ひいてはトゥインクルシリーズのためとはいえその隙間を縫ってこの喫茶店に来てるのだから疲れもたまるだろうと思っていたのだが案外そうではないらしい。

 

 なんでもここで働くと気分がリフレッシュして調子が上がり、体力も回復しておまけに不調が治るのだとか。ついでに俺の料理も食えて万々歳、多分最後以外はプラシーボ効果であるがまあ特に問題がないなら俺も文句ないし、なんだかんだウマ娘たちは目の保養になるので俺自身も働いていて楽しい。エンゲル係数は際限なく上がっていくがそれはそれでご愛嬌というものだ。

 

 「うーーー!なんだかボク歌いたくなっちゃったよ!テンチョー!ライブしていい!?」

 

 「いいぞー」

 

 「やったー!じゃあボクセンター!」

 

 「いいえ!ここは私がセンターをしますわ!」

 

 「はい!私もセンターやりたいです!」

 

 俺の店はそれなりに広かったが完全予約制になった際に席数を半分に減らして小さいがちょっとしたステージと音響機器を入れた。それなりに広い店ではあるがキャパシティ的に俺一人で回すには少々きついものがあったからな。ちょくちょくファンに歌をねだられていたウマ娘たちも渡りに船、ウマ娘たちの気まぐれでプチライブが開かれることも間々ある。もちろん今のようにセンター争いが勃発するのが日常茶飯事なのだが、ここはレースができない。なので

 

 「はーい、じゃあ息をそろえて?」

 

 「「「じゃん、けん、ぽん!」」」

 

 「へへーん!やっぱりボクがセンターだね!じゃあテンチョー!ミュージックお願い!」

 

 「むぅ、仕方ありませんわね」

 

 「そんなあ・・・」

 

 笑顔で全力Vサイン、独特なステップで喜ぶ笑顔のテイオーと耳をへんにゃりと折り曲げたスぺとマックイーン。といってもへこむほどのものではないらしくすぐさまステージに上がってテイオーの後ろにつく。予約したお客さんはまさかライブがこんな特等席で見れるとは思ってなかったらしくテンションぶち上がりでざわついてる。さっき帰っちゃった人は残念だったな。

 

 「じゃ、かけるぞ・・・1,2,3!」

 

 そうして俺が音響のスイッチをオンにすると同時にかかるファンファーレが鳴り響くような軽快なイントロが鳴り響き、ぴたっと動きを止めていた3人がそれぞれステップをしながら息を合わせてダンスを始める。

 

 

 「君と夢をかけるよ!何回だって勝ち進め勝利のその先へーー!!」

 

 歌いだしたのはもちろんセンターのテイオー。伸びやかな歌声が響く。基本的にウマ娘たちが歌う曲はセンターの一人が歌うだけでなく2着3着のウマ娘も歌うものなのでスぺとマックイーンもそれに続く。照明や効果などは全くない、人数だって少ないし音と歌声とダンスだけの簡素なライブであるが彼女らの圧倒的な存在感が物足りなさを感じることを許さない。続くスぺとマックイーンの歌が加わり盛り上がりが最高潮へ続く。

 

 やはりウマ娘のライブはいいものだ。もちろんバシバシに照明やレーザー、効果を使った競バ場でやるライブも最高だがこうして身近にウマ娘を感じることができるミニライブも素晴らしいものだと思わず洗い物をしていた手を止めてライブに見入ってしまう。ダンスも息ぴったりに合わさり、サビの盛り上がりも経てあっという間一曲の終わりが近づいてきた。

 

 

 「・・・君と夢をかけるよ いつまでも、希望とともに 」

 

 示し合わせたように曲の終わりで決めポーズをとった3人に俺も含めて今いるお客さん全員から拍手喝采が鳴り響く。運動をして少しだけ頬を紅潮させたた彼女らが笑顔でそれにこたえているとインテリアとしてなかなか気に入っている柱時計が大きな音を鳴らした。そろそろ閉店時間か。客も予約した際にルールを伝えられてるのでドリンクを飲み干して会計を済ませて、最後に各々応援してるウマ娘と握手をして帰っていった。

 

 「ふふーん!今日もボクのおかげで大繁盛だったね!ね!マックイーン?」

 

 「あなただけの手柄ではありませんわ。マスターさんの料理もあってこそです」

 

 「最後に思いっきり歌えて楽しかったです!」

 

 「そりゃよござんしたね。じゃ、パンケーキ焼くからこれ飲んで待っててくれ」

 

 ライブの時に作っておいたそれぞれの好きな飲み物をカウンターに置いて厨房に戻る。テイオーには濃いめに作ったハニードリンク、マックイーンは薄めの、スぺにはタピオカミルクティーである。テイオーの「はちみーはちみーはちみ~はちみ~をなめ~ると~♪」という彼女のオリジナルソングをBGMにコンロを6つ同時に操ってパンケーキを焼いていく。

 

 彼女らは俺なんかよりもよっぽど細っこいが俺よりもよく食べる。ウマ娘の平均はどんぶり飯をお代わり3杯、これに大量のおかずが入ってくる。どこにそんな量が入るのかと疑問に思うが食べると腹が出るのできちんと腹に収まってるのだろう。

 

 特に今日はスぺがいる。スぺは輪をかけて大食漢だ。もうひとり無限に食うような奴もいるがスぺもなかなかよく食べる。とりあえずテイオーとマックイーン用の6段重ねキャロットパンケーキを積み上げてスぺ用のパンケーキの作成に入る。フライパンを大きいものに変え、皿を大皿に、そしてなんと驚異の9段重ねである。腕にずしりと来て非常に重いがこれくらいならスぺはぺろりと食べてしまう。たくさん食べる子は元気な証拠なので俺は気にしないが体重とか大丈夫なのだろうか。レースに勝ててるってことはコントロールできてるんだろうけど。

 

 ささっとデコレーションと3人だけに特別ってことでチョコレートアイスの追加もしつつそれぞれ運んでやる。やはり女の子、スイーツを前にすると瞳がキラキラと輝きだす。特にマックイーン。彼女は甘いものに目がないのだ。普段は頑張って隠してるんだけどここじゃもうバレバレだ。

 

 「わ~~~!おいしそうです!いただきます!」

 

 「うわ~やっぱりスぺちゃん」

 

 「よく食べますわね・・・」

 

 パンケーキを吸い込むような勢いで食べているスぺをよそに談笑しながら食べるマックイーンとテイオー、おいしそうに食べてくれるのでこちらとしては満足ですわ。とりあえず閉店したので喫茶店の入り口のドアを開き、外にかかっている看板をOPENからCLOSEに変える。今日も一日お疲れさんでした、またのお越しをお待ちしておりますってな。

 

 

 

 

 

 「マスターさん!お代わりお願いします!」

 

 「いいけど怒られても知らんぞ」

 

 追加の生地まだ残ってるかなあ・・・・喫茶店・ホースリンク、今日の営業は終了しました、よければまたご予約お願いします。素敵なウマ娘たちがあなたを出迎えるでしょう。それでは、また。




 思い付きで見切り発進!ファンの交流とかでこんなのあってほしいなあっていうのを頑張って形にしましたができませんでした(一行矛盾)

 ウマ娘、楽しいですね


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BLTサンドとSouthen Foods

タイキシャトルをすこれ(迫真)


 喫茶店の朝は早い・・・なんてことはなく。いや、仕込みとかの関係上早いは早いが一般的な喫茶店と違ってそもそも仕事自体が少ない。完全予約制な以上、何人来るかがわかっていて、メニューは完全にこちらの日替わり、しかも開店は9時ときた。ウマ娘たちが働きに来る前は午前6時から開店していたが彼女たちは休みを利用した希望者たちが来るわけなのでさすがにそんなに早いと休みが休みにならないのである。

 

 そんなことを考えながらささっと仕込みを終えて自分用のコーヒーを一杯、サイフォンの中からカップに注いでそのまま口をつける。淹れたては最高に香りがいい。

 

 時刻は現在朝7時、もうちょっとしたら登校時間といったころだろうか?彼女たちもベッドから起き上がったり、朝練を切り上げて眠い眼をこすりながらこちらに来るのだ。そういっても彼女たちも慣れたもの、朝練だってしてる彼女たちの朝は早いのである。当たり前のように朝練で3時間トレーニングをして学園に通う猛者たちばかりなのである。それにもうすぐ・・・

 

 

 「ハウディ!マスターさーん!」

 

 ほらきた。元気よくまだクローズの看板がかかってるはずのドアを開けて入ってきたのは綺麗な栗毛のショートなポニーテールをしたアメリカ生まれの元気印、タイキシャトルだ。トレセン学園指定の制服に身を包んだ彼女はウマ娘特有の身体能力でドアを一瞬でくぐりカウンターに腰かけた俺に猛ダッシュ、そして・・・

 

 「おはようのハグデース!」

 

 「おう、おはようタイキッ!?」

 

 ぎゅむうっ!と俺に対して熱烈なハグを交わしてきた。彼女の身長は172㎝、俺よりは低いが女性としては高い部類に入る。そして俺は優雅にコーヒーブレイクをしていたのだ。つまり座っている。これが意味することは・・・

 

 「むぐぐ・・・むぐぐ、むぐむ」

 

 「オゥ!ソーリーマスターさん!」

 

 見事に彼女のたわわに実った果実に顔面を突っ込むことになるのである。文句を言ってもしょうがないのではあるが一応抗議の籠り声をあげて彼女の背中をタップして離してもらう。相変わらず元気なことで。目の前でニコニコ笑うタイキシャトルに毒気を抜かれて文句を言う気が起こらなくなる。ほんとこういうとこ得してるよなコイツ。

 

 「改めてタイキ、今日はよろしくな。一人だけど大丈夫か?」

 

 「イエス!ワタシロンリーはだめデスけど今日はマスターさんが一緒なのでノープロブレムデース!」

 

 そう、今日の担当はタイキシャトルただ一人なのだ。いま彼女が所属しているチーム・リギルはどっちかというと練習重視であまり士気やモチベーションというものを気にしない風土があるガッチガチのスパルタチームだ。担当のおハナさんも厳しいことで有名。走ればファンは勝手についてくるを地で行くエリートチームなのだが・・・・

 

 「しっかしリギルがこの手のことに大事なメンバーをよこすなんてなあ」

 

 「ノー!ワタシたちだってマスターのお店で働きたいデース!ファンと交流、ファンタスティック!トレーナーさんにお願いしてきまシタ!」

 

 「おハナさん折れたのか・・・意外だ」

 

 言うまでもないが俺の店で働くのは挙手制だ。つまり希望者以外はこない。しかもトレーナーの許可だっている。確かに彼女は賑やかなのを好む。好みすぎて寮長に何度かお叱りを受けたり理事長秘書のたづなさんにおいかけられたりしてるのを見たこともある。でもトレーナーの指示にはよく従っていると聞く。その彼女がトレーナーにお願いしてここにきているというのだから世の中よくわからんものだ。

 

 「トニモカクニモ!今日一日よろしくデース!・・・あっ」

 

 「・・・お前さん、朝ご飯は?」

 

 「楽しみすぎて食べるの忘れてたデース・・・・」

 

 「小学生かお前・・・まあ来るのも早かったし時間あるだろ。ちょい待ってろ」

 

 ぶんぶんと激しく尻尾をふりピコピコと耳を動かしていたタイキシャトルからかわいらしいお腹の音が響いた。思わず突っ込んでしまったのだが帰ってきた答えが忘れたとは拍子抜けもいいところである。まあ高校生だし?まだまだお子様なところを見られて少し得した気分だ。朝ごはんくらい大盛りで出してやろう。

 

 というわけで取り出しますはアメリカ産のベーコン、これを薄切りにしてこれでもか!というほどフライパンに放り込み、カリカリになるまで焼く。日本のベーコンは水気がおおくてカリカリにしようとすると高確率で焦げるのでこういうのはアメリカ産に限る。

 

 厚切りの食パンをトースターに突っ込みこんがり焼いてマスタードとマヨネーズを塗り、トマト、レタス、たっぷりのベーコンを上に乗せ、ベーコンの油で焼いたスクランブルエッグを重ねてケチャップをかけてパンでサンドする。いわゆるBLTサンドだ。卵は脂がもったいないからついでだけど。

 

 アメリカっぽい分厚いサンドイッチを斜めカットして互い違いに立てて横にスティックニンジンを置いてオリジナルマヨソースをミニ器にこんもり入れてやってタイキシャトルにもっていってやる。目にした瞬間タイキの目がまぶしいくらいに輝き始めた。いい反応するなあ、作り甲斐がある。

 

 「BLTサンド!?センキューマスター!日本のベーコン、あんまり好きじゃないデスけどおいしそうデス!」

 

 「アメリカのべーコン食べちまうと日本のベーコンは甘く感じちまうよなあ。煮込みならもってこいなんだがな。ま、こいつはお前さんの故郷のベーコンだよ。さ、食べて着替えてきな」

 

 「イエース!いただきマス!」

 

 そう言って行儀よくパチン!と手を合わせたタイキがはむぅ!!とサンドイッチにかじりつく。とりあえずミネラルウォーターを出してすっかり冷めてしまった自分のコーヒーをグイっと一気飲みする。キレのある苦みが最高、調理して覚醒した頭をさらにぱっちりと目覚めさせてくれる。

 

 「ベリーベリーヤミー!おいしいデース!故郷の味デス!」

 

 「そらよかったな。食べたら着替えてきてくれ。ゆっくりでいいぞ、まだ一時間くらいあるからな」

 

 頬をリスのようにしてサンドイッチを頬張るタイキシャトル。さすがに大盛りといえどウマ娘は体の許容量が大きいから食べたいだけ食わすと腹がぽっこりと出てしまうので量は調整してる。特にコイツの勝負服は腹が思いっきり露出してるカウガール衣装なので腹が出てたらかっこがつかない。いつも思うが体冷えそうだよな。しかもタイキは雨の日のレースが得意だからずぶ濡れになって走ることもある。風邪ひきそうだ。

 

 想像してなんか寒くなってしまったしコイツの腹を冷やすのも可愛そうなのでホットミルクを作ってやろう、蜂蜜たっぷり入れてな

 

 「もぐもぐ・・・むぐむぐ・・・あ、マスターさん!この前のレース見てくれましたか!?」

 

 「ん?ああ、1800のマイルだったっけ?1位、おめでとさん」

 

 「むー、軽いデース!もっと褒めてくだサーイ!」

 

 「今からファンにたくさん褒められるだろ。俺はこんくらいでいいんだよ」

 

 「それとこれとは別デース!プリーズプレイズミー!」

 

 「いいからほれ、これ飲んで着替えてこい」

 

 ハニーホットミルクを置いて俺は厨房に引っ込む。タイキの反応からして今日の日替わりのBLTサンドの出来は上々なようなのでカリカリベーコンの量産体制に入る。卵はタイキだけに特別ってやつだ。タイキは俺が厨房に引っ込んだ瞬間嘘のようにシュンとして静かになった。

 

 タイキは一人が大嫌いらしい。この前のことだが学園のあるウマ娘に弁当を持って行った帰りにポツンと練習場で一人たたずむタイキを見たのだが、俺を見つけた瞬間それこそシャトルのようにとんでもない速度で泣きながら突っ込んできたのだ。なんでも一緒に練習するはずだった友達が急にレースが決まってしまいポツンと残されたのだそうで。そして一人寂しくトレーニングに明け暮れていたのだが俺を見つけたとたん我慢していた寂しさが決壊、ハグという名のタックルに変わったと説明された。

 

 つまり極度の寂しがりなのだ、コイツは。一人にしただけで4段階くらい調子が下がるとおハナさんが言っていた。なのであの時俺と会えたのは非常に助かったとのちに合流した彼女にお礼を言われたくらいに。今もほら、もそもそと食べ終えてしょぼしょぼと着替えに2階の更衣室に向かっている。ちょっと素っ気なかったかな?

 

 

 さてさて、そろそろ開店時間間近だ。俺も制服のエプロンをかけて気を引き締める。今日のお客は20人、夕方まで頑張っていこうか!と一人で気合を入れているとトタトタと足音が響いてタイキが更衣室が降りてきた。緑色で露出度が高いカウガールの姿だ。腰には拳銃、首の後ろにはテンガロンハットといかにもな姿ではあるがこれがよく似合っている。

 

 「準備完了デース!さあ、バシバシさばいていくデスヨー!」

 

 「どこでそんな言葉覚えてきたんだ?」

 

 何はともあれ喫茶店・ホースリンク、ただいま開店いたします。俺はドアの看板を開けるついでにもうすでに待ちきれなくて開店前に並んでいたお客さんを案内するのであった。お客さんはタイキのハグの洗礼を受けて幸せそうであったとここに記しておく。

 

 

 

 

 

 「マスターさーん!日替わりメニュー3つデース!それとブレンドとカプチーノ、アイスラテデース!」

 

 「あいあい、じゃあドリンクからな。日替わりはちょっと待ってくれ」

 

 「イエッサー!」

 

 「俺は教官じゃねえ」 

 

 「アイマム!」

 

 「女でもねえ。わざとだろ」

 

 「えへー」

 

 という軽口をたたきながらコーヒーを入れてミルクを泡立て、シェイカーでラテを作る。ほとんど同時にできたドリンクをタイキが持つお盆にのっけてタイキが運んでいく。俺も厨房から人数分のBLTサンドとフライドポテトのセットを作り上げて専用のバスケットに一つずつ丁寧に敷き詰めていく。今日はタイキの日なのでタイキの形に切ったニンジンを串にさして旗に見立てて添えておく。こういうことをしてないとただ料理がうまいだけになっちまうからウマ娘コンセプトカフェっぽくしないとな。

 

 「ハウディ!サンキューフォアウェイティング!ドリンクデース!」

 

 「タイキシャトルさん!この前のレースとライブ見ました!1位おめでとうございます!恐縮ですけどサインしてもらっていいですか!?」

 

 「オゥ!サンキュー!サイン!いいデスヨ!どこデスか!?」

 

 「シャツに大きくお願いします!家宝にするんで!」

 

 「イエース!お名前教えてくだサイ!」

 

 と、こんな感じでファンサや接客に忙しいタイキシャトルがそれでも楽しそうなことに一安心しつつ客をさばいていくのだった。

 

 

 

 「んん~~~~!終わったデース!」

 

 「おう、お疲れさん。いい時間だし飯食ってけ。着替えてる間に仕上げておくからよ」

 

 「ホントデスか!?わーい!楽しみデース!」

 

 そんなこんなで今日も盛況で営業を終わることができた。帰り際会計で美味しかったと礼を言ってくれる人もいたし俺としても満足だ。さてさて、ちょこちょこ営業中に仕込みをしてきたことだし頼まれごとを終わらせちまおう。俺はチャカチャカと鉄鍋を火にかけて油に肉を放り込むのであった。

 

 

 

 「う~~~!いい匂いするデース!わぁ・・・」

 

 「おう、いいタイミングだな。ほれ、たくさん食ってけ」

 

 並べられた料理を見た瞬間思わずといった感じで言葉を失ったタイキ。それもそのはず、目の前にあるのは・・・

 

 「Southern Foods・・・南部の・・・故郷の料理デース・・・マスターさん、どうして・・・」

 

 「ま、レースで頑張ったからな。それに、ほれ。おハナさんから頼まれたんだよ」

 

 俺が見せたのはスマホのメール画面。そこにはおハナさんから「タイキのことを目一杯褒めてあげてほしい。私がやっても不気味なだけでしょう?だから、あなたからタイキのことをうんと褒めてあげてほしいの。よろしくお願いします」というメッセージがあった。営業始めてすぐにそのメールが来たので俺も営業中時間を見つけては今店にあるもので作れるタイキの故郷の料理、フライドチキン、ジャンバラヤ、コーンブレッド、ミルクビスケット・・・(さすがに材料に制限があったからこの程度にしかできなかったが)を作っておいたのだ。

 

 おハナさんは確かに厳しいが情がないわけじゃない。合理主義だけど冷血なわけじゃないのだ。本心では誰よりも、何よりもチームのウマ娘を想っている。少し不器用なだけなのだ。それもタイキたちはわかってるから彼女に従って厳しいメニューに取り組んでいる。

 

 「さ、たくさん食べてお腹いっぱいになったらおハナさんに思いっきりハグしてお礼を言ってこい。レース一位おめでとう、タイキシャトル」

 

 「ハイ!ハイ!・・・いただきマース!」

 

 そうしてお腹が膨れるまで目一杯おいしそうに故郷の料理を食べたタイキシャトルは、気になって迎えに来たらしいおハナさんに向かって飛びつくようなハグをするのだった。

 

 「トレーナーさーん!サンキュー!サンキューベリーマッチデース!」

 

 「ちょっと!マスター君!ばらしたでしょ!?」

 

 「さーてなんのことやら。おハナさんなんか飲んでく?」

 

 「・・・コーヒー。エスプレッソで」

 

 「あいよ」

 

 喫茶店・ホースリンク、本日はこれより貸し切りとなります。誠に申し訳ありませんが後日またご予約のほうをよろしくお願いいたします。あなたにウマ娘と素敵な出会いがあるよう、お祈り申し上げております。それでは、また。 




なんでタイキが出てる小説ってすくないん・・・?


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ビーフシチュー

別タイトル「定休日大食いウマ娘戦線」


 間違いなく今日は地獄だ。言い切れる。俺の体は今日をもってボロボロになるであろう。そんな予言じみたことを考えながら毎日のルーティンである仕込み作業を開始する。

 

 今日は定休日だ。定休日なはずなんだけど・・・俺は休みじゃない。自慢じゃないが俺の店は2年前まで安い、うまい、量が多い。ついでに近いという武器を活かしてトレセン学園に通うウマ娘たちが押し寄せる人気スポットだったのだ。それを理事長の思い付きという名の大改革によって予約制となり、ファンの交流の場に大変身した。

 

 これを受けて困ったのはトレセン学園にいるウマ娘たちだ。もちろん学園には豪華なカフェテリアや食堂が完備されているのでそういう意味では困らないが存外彼女たちにとって俺の店は居心地がいい場所だったらしく、生徒会長であるシンボリルドルフあたりに苦情が殺到したのだ。これを受けて困ったのは俺と理事長である。当時は若かったから若さに任せて頑張ってきたがもう一回やれと言われると億劫になる。残念人間ですまんな。

 

 しょうがないので定休日を一つ削ってウマ娘たちが来ていい日を作ることにした。たくさん来られても気のいい子が自分でできた料理をもっていったりしてくれるので何とか回っている現状、そうして今日を迎えたわけなのだが・・・・緊急事態、エマージェンシーである。昨日とあるウマ娘二人から連絡が来たのだ。

 

 一人目は日本総大将でおなじみスペシャルウィーク。賄いを作ると人の何倍も食べる食べっぷりがとても気持ちいい子だ。なんでも彼女はこの間のレースで優勝したから自分にご褒美をあげたいというかわいらしい理由で俺の店を選んでくれたの事。まあそのくらいならどんとこい。仕込みの量を3倍に増やせば何とかなるなる。

 

 そしてこちらのほうが本命、葦毛の怪物ことオグリキャップ、長い髪とぴょこんと飛び出たアホ毛、物静かかつ天然ぎみなウマ娘である。なぜこの子が本命なのか?こいつは曲者なのだ。なんせスぺよりもよく食べる。ご飯一升とおかずをマウンテンで出してもお代わりを要求してくる。こいつが来ると毎回毎回翌日の営業に支障が出るレベルで食いまくるので来る前に連絡しろと言い含めてあるのだが、その恐怖の電話が昨日来たのだ。食堂の従業員を毎日泡吹かせてるこいつが来るだけで俺の店は特別シフトが必要なくらいなんだがな。

 

 よく食べるスぺとさらに食べるオグリが合わさり、この店にいまだかつてない危機が訪れているのだ・・・・!!!

 

 「そんなこと毎回のことでしょうに。今更そんな大げさに熱弁するほどのことではありませんわ」

 

 「それとこれとは話は別だマックイーン。お前が今食っているモンブランとブラウニーとエクレア、ついでにかぼちゃプリンをダース単位で出しても奴らは3分も持たん。これは聖戦、ジハードなのだ・・・・!!!」

 

 「だから大げさですわ。お紅茶いただけますこと?」

 

 「へいへい。銘柄は?」

 

 「ダージリンでお願いしますわ」

 

 俺はティーポットに茶葉を入れてお湯を注ぎ、蒸らして紅茶をマックイーンに出す。というか営業前なのに何でここにいるんだこいつは。たぶんスイーツを食べまくってるところを誰にも見られたくないとかそんな感じだと思うけど。太るぞ。いくら俺の店のスイーツシリーズがウマ娘用に糖分やらなんやらが調整されてるとはいえ量を食えばそりゃ出るさ。マックイーンの耳が幸せそうにぴんと立っているので気分を濁したくない俺はお口をチャックするのである。

 

 「あ、そうだ。マックイーン、新作の試作でブラマンジェ作ったんだが食うか?」

 

 「ぜひ!!・・あっ・・その・・・いただきますわ・・・」

 

 「もう俺の前で取り繕ってもしょーがねーよ。お前どんだけ俺の店の菓子食ってると思ってるんだ」

 

 「う~~~~!!だってだって、貴方の作るお菓子がおいしいんですもの!新作となれば食べたくもなりますわ!」

 

 「メジロ家のご令嬢にご愛顧されて感謝してますよってな。ほれ、紅茶のブラマンジェだ。ソースはクランベリー、限界まで柔らかく作ってみた」

 

 そうしてマックイーンの前に出したブラマンジェは口当たりの良さを限界まで追求し、形を保つ限界点を見極めて作ったものだ。振動するだけで崩れそうな柔らかさである。あれだ、いわゆるとろける杏仁豆腐とかと一緒の系譜だ。紅茶の香りと生クリームとミルクの調和、甘さは控えめだがソースで補う俺の自信作である。

 

 「わぁ、今にも崩れそうなのにスプーンを入れても崩れない・・・いただきますわ」

 

 「召し上がれ」

 

 はむっとマックイーンがブラマンジェの乗ったスプーンを口に運ぶ。口に入れた瞬間マックイーンの顔がパァっと輝いた。耳も尻尾もピコピコフリフリとご機嫌である。この反応なら店で出しても大丈夫そうだな。今度からメニューに追加っと。

 

 「お気に召したようで何より。じゃあ俺は仕込みに戻るからくつろいでてくれ。紅茶のお替りはポットの中な」

 

 そう言い残しておれは厨房にある無数の寸胴と巨大フライパン、オーブンを同時に操りながらなんとか対スぺ&オグリの仕込みを終えるのであった。

 

 

 

 営業中である。マックイーンは丁寧にご馳走様を言って帰っていった。気の毒そうな視線とともにだけど。やっぱり今日が地獄だってあいつも察してるんじゃん。そう思うなら協力してくれてもいいのにさあ。

 

 俺の店の定休日は2日。まず水曜日、これは完全に休みで店を開かない。そんでトレセン学園全体の休日である日曜日、今日である。ウマ娘専用の日でいつもよりだいぶごった返す。相席は当たり前のレベルで席が足りねえ、会計も追いつかないのでウマ娘の日は売れたもんを俺が勘定してトレセン学園に請求して一括にしてもらってる。分散するウマ娘たちが一極集中するのだから忙しさは加速していく。ちなみにトレセン学園は2000人在籍しているわけだがそのほとんどのウマ娘が俺の店を利用したことがあるのだそうだ。

 

 そして朝の地獄をさばき切り、来たウマ娘たちが各々自主練をするために店から退店してようやく一心地着ける。と思うとドアが開いた。そこからぴょこんと顔を出したのは桜色のポニーテールに鉢巻をつけたウマ娘、現ダートの女王であり脚質が合わないにも関わらず有マ記念を制した奇跡のウマ娘、ハルウララだった。彼女はカウンターでだれてる俺を見つけるとぴょこぴょことドアをくぐって俺の近くまで跳ねてくる。

 

 「あー!マスター!おはよう!今日ね!今日ね!トレーナーが朝練でトレーニングをお休みにしてくれたの!だからね!マスターのお店で美味しいもの食べることにしたんだぁ!」

 

 「おー、おはようウララ。いいぜー、うまいもん食わせてやる。飲み物は?」

 

 「えーっとえーっと・・・甘いやつ!もしかしてマスターお疲れ?また今度にしたほうがいい?」

 

 「なーに言ってんだ。せっかく来たんだから俺のことは気にせずにたくさん食ってけ」

 

 そう言って俺はぴょこぴょこ跳ねるウララの頭をかき混ぜるように撫でてやって厨房に入る。ウララは「うっらら~♪」といつもの調子で歌いながらかなりワクワクで待ってる様子。これは期待を裏切るわけにはいかない。というわけでまずご飯。2日前から仕込んだ特別品である。どうせオグリとスぺが食いつくすだろうから先に来たウララに少し分けてやろう。

 

 取り出すのは深いグラタン皿。そこに生クリームでクリーミーに仕立てたマッシュポテトをどっさりと入れ山状に。そしてその周りに並々と2日かけてソースから作ったニンジンと肉がゴロゴロ入ったビーフシチューを注ぐ。そしてその上にチーズをドバっとかけてからオーブンに突っ込みチーズがこんがりするまで焼いて完成。ついでにバケットをトースターに入れて焦げ目をつける。これでおっけー。

 

 そして次はドリンク。オーダーが曖昧なのでここはメニューには載せてない裏メニューから作ろう。ドンっとテーブルに置いた喫茶店らしくないジョッキグラスの中に細かくダイスカットし冷凍したイチゴを入れて平らにならし、その上にイチゴソースを乗せてまたならす。そしてマドラーを利用してその上からさらに牛乳を注ぐ。するとジョッキグラスの中が綺麗に淡いピンク、赤、白の三層に分かれる。ホースリンク裏メニュー、食べるイチゴミルクである。混ぜればハルウララの髪の色と同じになるだろう。そしてイチゴの旬はまさに春、彼女のためにあるようなドリンクだ。

 

 「ほいお待たせ、今日限定メニューのビーフシチューグラタン風と食べるイチゴミルクのセットだ。ドリンクは混ぜてのみな。熱いから気をつけろよ」

 

 「わあああ!きれー!おいしそー!うららーって感じ!いただきまーす!」

 

 そうしてウララはハフハフしながらおいしそうにシチューを頬張って食べていく。時折「おいふぃ~♪」と口から漏れているのはご愛嬌だ。こんな無邪気で素直なのにレースでは強いんだよなあこの子、トレーナーもトレーナーでなんだかおかしな奴だし。何なんだろうなあの蹄鉄の被り物。飯食う時も脱がないし。

 

 もぐもぐと幸せそうにビーフシチューを頬張るハルウララに幸せを分けてもらっていると背筋を冷ややかな感触が駆け抜けた。思わずばっとドアのほうを見ると見知った人影が二つ・・・!ついに来たか今日のハリケーンが!しかも二人同時に!カランカランとドアベルが鳴ってドアが開く。果たしてそこにいたのは予想通りの二人だった。

 

 「マスターさーん!こんにちはー!ご飯食べに来ました!オグリキャップさんも一緒です!」

 

 「マスター、こんにちは。途中でスペシャルウィークと会ったんだ。・・・早速だけど、お腹が空いたから何か出してくれると嬉しい」

 

 「お、おう。二人とも、ちょっと待ってな。ウララはゆっくり食べてろよ」

 

 「?はーい!」

 

 冷や汗をかいて言葉が震えた俺の言葉に何もわかってないウララののんきな返事が重なる。とりあえず席に座った二人にお冷を出して厨房にすたこらサッサ、仕込んでたメニューを完成させる。というか二人同時とかまじか。ちょうど昼前くらいだけど下手したら夕方の分の食材なくなるぞこれ。そうなったら早めに店じまいだな。夕方に来るつもりの子はすまんとだけ言っておこう。

 

 とりあえずおっきな皿を二つ引っ張り出し、朝に焚いておいたバターライスを5升焚きの炊飯器から1升分ずつ盛り付けて卵を10個使って巨大な半熟オムレツを作ってバターライスの上に乗せてナイフで割る。とろりとした半熟卵がバターライスを覆う。さらにその上にこれでもかとさっきウララにも出したビーフシチューをたっぷりとかける。とりあえずこれで良し。今日の日替わりランチ(になるはずだった)ビーフオムライスの完成である。ズシリと重いそれを二人の前に地響きが起きそうな勢いでデン!と置いてやる。

 

 「うわあ!おいしそうです!いただきま~す!」

 

 「うん、おいしそうだ。いただきます」

 

 「わぁ!すごいおっきい!」

 

 「急がず味わって食べてくれよ・・・」

 

 

 ウララののんきな感想とともに食べ始めたスぺとオグリ、見る見るうちにオムライスの山が削れていく・・・!くっ足止めにもならんか!スぺは満面の笑顔で幸せそうに。オグリは無表情ながら雰囲気がかなり柔らかくなってる。とりあえず気に入らなかったわけじゃなくて良かった。あっやばい次弾を装填しないと!

 

 「おかわり」

 

 「私もお願いします!」

 

 くっ早い!だけど俺も間に合った!ヨシ!にんじんハンバーグをビーフシチューで煮込んだ煮込みハンバーグとバケットのセットだ!味わう間もなく吸い込むように食べやがって・・・!!!そのおいしそうな顔に免じて許してやる!作り甲斐がある食べっぷりしやがって畜生!いいよ好きなだけ食ってけよ!もともとこの店の目的はそれなんだからな!

 

 その後もビーフシチューのアレンジレシピは続き、ポットパイ、コテージパイ、ドリアと形を変え、ラグースパゲティで俺の店の残弾が尽きたため打ち止めとなった。スぺはコテージパイあたりで笑顔でご馳走様を言ったのだがその後もオグリは食べ続け、今朝までに仕込んだすべての料理を食べつくしあえなく聖戦は俺の店の惨敗に終わったのである。もう振ってもデザートとドリンクぐらいしか出てこない。いまもスぺはジョッキパフェ、オグリはバケツプリンアラモードを食べてる。こいつらの食欲どうなってんだ。ちなみにウララは二人のフードファイトに飽きたのかお腹いっぱいになったのか知らないが途中から夢の中である。

 

 「マスターさん!ご馳走様でした!おいしかったです!」

 

 「マスター、ごちそうさまでした。とても美味しかった。食堂でもこんなには食べられないのにマスターはたくさん食べさせてくれるんだな」

 

 「おう、お粗末さまだ。食堂はなー、さすがに全生徒2000人分となると結構ギリギリっぽくてな。食材はあっても器具が埋まってたりと人員が足りないんだと「もっとオグリキャップにたくさん食べさせてあげたいのに私たちが未熟なせいであの子にセーブさせてしまってる」って嘆いてたよ。まあお礼くらい伝えておいたらどうだ?」

 

 「そうだったのか・・・!うん、明日にでもそうしよう。ありがとうマスター。それを聞いて幸せな気持ちになれたよ」

 

 「そうかい。じゃ、また腹が減ったら来い」

 

 「うん、あと・・・パフェおかわり」

 

 「・・・もうほんとになんもないからそれで最後な」

 

 幸せそうに眠るハルウララを背負ったスペシャルウィークとたっぷり出てたお腹がいつの間にか引っ込んだオグリキャップがそろって店を出ていき俺は店の前のかけ看板に「食材切れのため本日閉店」とホワイトボードに書いて吊るしておくのだった。そして今しがた入ろうとしたらしいウマ娘たちががっくりと肩を落として帰っていくのに胃を痛めました。ごめんなさい。

 

 そうしてとっぷりと日が暮れた夜。トレセン学園も消灯して誰もいなくなるであろう時間だ。俺ももう明日の営業のため全力で皿を洗って厨房を掃除し終えドアに鍵をかける前に一服しようとコーヒーを淹れた時、閉店と看板で知らせてあるにもかかわらずドアが開いた。ドアを開けたのは綺麗な鹿毛に三日月のような一部だけ白い前髪が特徴的なウマ娘、シンボリルドルフだ。またの名を「皇帝」シンボリルドルフ。トレセン学園生徒会会長にして元学園最強。今はレースを引退して生徒会業務や興行レースに引っ張りだこの大人気ウマ娘だ。

 

 「すまない、閉店してるとはわかっていたのだがドア越しに君の姿を見つけて、つい・・・」

 

 「おう、いらっしゃい生徒会長サマ。今日はどんなお叱りがあるんだい?」

 

 「そんなにいじめないでくれ。君にそんな他人行儀にされると私だって些か傷つく、こんばんは。()()()

 

 「悪かったって。さ、座れよ。その様子を見るに疲れてんだろ?コーヒーくらいは淹れてやるよ。お疲れ様、()()

 

 少しだけ目を伏せ、耳をへんにゃりと折り曲げていじけた態度を示すシンボリルドルフを俺は愛称で呼びかけて隣の席へ導く。正直彼女と俺はかなり親密な関係にある。なんせ俺はシンボリルドルフ(こいつ)が産まれたときから知っている。なんせ家が隣同士で両親の仲がとてもよかったからだ。つまり俺とルナは年の離れた幼馴染同士・・・いや最早兄妹に近い関係にある。俺が料理を始めたのだって、中央を目指すシンボリルドルフ(こいつ)のために身体づくりを栄養面からサポートするためだからな。トレーナーになってやれれば良かったんだけど俺には才能がなかった。

 

 「少しやせたか?きちんと飯は食ってるのか?」

 

 「・・・そうか?確かに最近は忙しいが食事はきちんととってるは・・・・あっ」

 

 少しだけ疲れたように見える彼女が心配になった俺は当たり障りのない質問をしてみるが彼女は少し考えてそれを否定しようとしたところで彼女の腹の虫が可愛らしい音を立てた。思わず頬を染めるルナに俺は少しだけ笑いを漏らしてしまう。ちょっとだけ膨れたルナは赤くなった顔で抗議してくる。学園の奴らには見せられん顔してんぞ。天下の皇帝様も女の子だねえ。

 

 「こ、これは違うんだ。たまたま今日は生徒会の業務が忙しくて・・・」

 

 「いーっていーって。腹が減るのは健康な証拠だ。飯持ってくるから待ってろ」

 

 「・・・ありがとう」

 

 俺は厨房に行って小鍋に分けてあったビーフシチューを温めてウララに出したようにオーブンに突っ込んでバケットも焼く。俺が店を始めたのは究極的にはすべてシンボリルドルフ(こいつ)のため。ちょっと無理しがちで他人のために頑張れるコイツのサポートを少しでもしてやりたいから。だからいつルナが来てもいいようにルナの分の料理は必ず取っておくことにしている。来ないときは別に俺が食えばいいしな。もう最近は来ない日のほうが多いから俺はお役御免なのかもしれんけど、コイツがやりたいようにやって最後は楽しく終われればそれでいいのだ。

 

 出したビーフシチューを冷ましながらおいしそうに食べるルナをみて、俺はコイツの目標が叶うように願うのだった。

 

 

 喫茶店・ホースリンク明日より通常営業を再開いたします。予約をされたお客様は時間をお忘れなきようお願いいたします。あなたにウマ娘との素敵な出会いがありますように。




書きたい子が多すぎて中途半端になるのがつらい・・・むり・・・ダレカタスケテ・・・


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とある休日の話

多分読まなくても全く問題のないお話です。


 水曜日である。定休日である。俺の唯一の完全なる休日である。店を開く必要なし、なんと素晴らしいことか(生きがいの半分が消し飛ぶ)早く起きる必要もなく、仕込みをする必要もない。趣味といえば料理の研究の俺としても今日は何をすることもなく暇を持て余す日なのだがたまにはそんな日があってもいいだろう。

 

 もう昼前といういつもよりだいぶ遅い時間なので俺は起き上が・・・なんか布団の中にいない?というか俺の肩のあたりに見覚えのあるウマ耳があるんだけど。つーか隣の柔らかい感触はもしや・・・?あれー?おかしいぞー?昨日は確かに一人で寝たゾー?俺は恐る恐る布団を持ち上げる。するとそこには・・・

 

 「これは学園の生徒には見せらんねえな・・・」

 

 「・・・すぅ・・・お兄ちゃん・・・」

 

 そこにはとてもとても幸せそうに眠る我らが完全無欠の生徒会長、シンボリルドルフの姿があった。ご丁寧に小学生の頃の俺への呼び方で寝言を漏らす彼女は私服姿で俺の腕を抱き枕にして眠りについていた。なんだっけ?この子になんかあったっけ?確かにコイツには2階の住居スペースのカギを唯一渡してあるけど普段の様子を見る限りこういうことは滅多にしない、というか中等部に入ったあたりで卒業したはずだ。ちなみに下の喫茶店スペースの合鍵を持ってるウマ娘は結構いる。マックイーンのようにおやつを食べたいがために開店前に入り浸る用途にしか使われてないけど。

 

 「・・・ふふ、いつもありがと・・・・」

 

 「なーんの夢を見てんだか」

 

 にへら、といつもの姿とは正反対のだらしない笑顔で寝言を漏らすルナに俺も何となく笑顔になってしまう。そういえばコイツとこんな風にまったりとした時間を過ごすのはいつ以来だったか。ルナは7冠を達成して華々しく引退して以降生徒会長の業務に精を出してきた。夜遅くまで書類とにらめっこして地方のレースに出向き有望なウマ娘をスカウトしては生来の面倒見の良さでとことんサポートする。いつ寝てるのかわからないなんて噂すら出回る始末だ。

 

 仕事に熱中しすぎて夕方の食堂の時間を逃して俺の店に申し訳なさそうに生徒会メンバーを引き連れて食べに来たのだって1度や2度じゃない。それくらい自分に厳しく他人にゲロ甘。それがシンボリルドルフというパーソナリティだ。

 

 もっと言ってしまうと単純に甘え下手。年齢が上がるにつれてルナは誰かに頼るのが下手になっていった。なまじ自分で全部できてしまうから頼る必要がないのも手伝って、完璧な生徒会長という仮面を演じそれを完全に遂行していくようになったのだ。

 

 まあ半分言い過ぎみたいな感じなんだけどな。生真面目さは生来のものだし生徒会長もそれに付随するものもこいつは楽しんでやってる。だけどたまーーーーーーに糸が切れることもある。とどのつまり今日がその糸が切れた日なのだろう。電池切れみたいなもんだ。ほっときゃ治る・・・んだけどちょっと今日は用事がなあ。幸せそうなとこ悪いけど起こすか。

 

 「ルナ、ルナ。起きろよー?起きないと耳をモフるぞ?いいのか?ほれほれ」

 

 「ひぃあっ!?・・・兄さん、起きた。起きたから耳を触るのをやめてほしい。嫌ではないが・・・こそばゆい」

 

 「なんだ、お兄ちゃんって呼ばないのか?」

 

 「なっ・・・!?」

 

 ドッキリがてら耳を優しくもみながら声をかけて起こすと素っ頓狂な声をあげてルナが起きた。モフられることに対して文句を言ってくるので俺が寝言でお兄ちゃんと呼ばれたことを教えるとルナの顔がカァァァと紅く染まっていく。パクパクと口を動かしたルナであったが結局真っ赤になって黙り込んでしまった

 

 

 「・・・降参だ。その、勝手に寝床に入ったのは謝る。だからその・・・それ以上掘り返さないでほしい」

 

 「俺としては入った理由を聞きたいんだけどねえ。まあいいや、朝飯でも食べるか。何が飲みたい?」

 

 へんにょりとした耳で頬を赤らめて顔ごと目を逸らすルナにこれ以上追い打ちをかけようとは思えなかったので俺はしなった耳ごと頭を撫でて話題を切り替えた。少しすねたような顔をしたルナはボソッと

 

 「ブレンド、兄さんのオリジナルが飲みたい」

 

 「はいよ、お姫様」

 

 「・・・そんな柄でもないし、年でもない」

 

 「俺はそう思わないけどな」

 

 「ふふっ。兄さんにはかなわないな」

 

 俺のからかいをどう受け止めたのかはわからないが、ルナは穏やかに笑った。いつも彼女が見せる皇帝らしさを脱ぎ捨てたような少女らしい笑顔だった。

 

 

 コーヒーの奥は深い。豆を焙煎し、ミルで砕く。抽出だってペーパードリップやネルドリップ、サイフォンといった種類がある。俺の店だと基本サイフォンなんだけどな。なんてことを思いつつルナの好みである苦みが薄くコクと香りが立っている配合をしてサイフォンでコーヒーを淹れる。アルコールランプが揺らいで蒸気圧でコーヒーが上にたまっていく。規定通りの時間を守ってフラスコをゆすって上からコーヒーを戻してカップに注いでルナに出してやる。

 

 「ありがとう・・・こうして兄さんの淹れてくれたコーヒーをゆっくり飲む時間が取れるのはいつ以来だろうな・・・」

 

 「今日はトレセンは休みなのか?朝っぱらからお前がいるなんて珍しい」

 

 「正確には私が休みなんだ。エアグルーヴに怒られてな、理事長の許可まで取って私を休みにしたのだ。引退した私にとっては今日の授業はもはや意味のないものだからな」

 

 「今日は一般教養がないのか、なるほどなあ。じゃあゆっくりしていけよ・・・つっても俺ももうすぐ用事があるんだけどな」

 

 おいしそうにコーヒーを飲んでくれていたルナの瞳がちょっとだけ揺れて耳がわかりやすく垂れた。そんなに俺と一緒に居れないのが悲しい?兄離れしてほしいなあ甘えん坊め。理由が理由だから一瞬で納得するだろうが。

 

 「すーぐ戻ってくるよ。タキオンの奴に弁当届けに行くだけだ。あいつもう食堂じゃ満足できなくなったらしい。トレーナーにも弁当を作ってもらってるのに贅沢な奴だ」

 

 「なんだ、そういうことか。彼女も兄さんの料理に病みつきになったのだな・・・ところで新作のダジャレがあるのだが」

 

 「どうせ自販機でソーダを買ったのだそーだーみたいなもんだろ」

 

 「そうだ!会心の出来だと思うのだが!」

 

 「30点」

 

 「兄さんは厳しい・・・!」

 

 なんかエアグルーヴあたりの調子が下がってそうな気がするダジャレを聞いた俺はルナの分のブランチついでに作ったサンドイッチをバスケットに詰め込みルナの朝食の分を出してやった。ルナはここで待ってるので早く戻ってこいとのこと。俺は了解の返事をだしてルナのさわり心地のいい耳ごと綺麗に梳かされた頭を撫でてから自分の城を後にするのだった。

 

 

 

 「いかに近いとはいえ遠近法を疑うくらいでかいよなあトレセン・・・」

 

 徒歩5分もすれば俺の城の何倍もでかい建物とそれを取り囲む巨大な運動場をいくつも備えた超マンモス学園についた。もう昼前に近いからか運動場には更衣室に戻るウマ娘の姿が散見される。とりあえず門の前の受付所で理事長にもらったIDカードを提示して中に入る。何で俺がこんなもん持ってるかっていうと扱いがトレセンの職員だからだ。俺の店はトレセンが立場上運営してるからな。

 

 「あっマスターさーん!」

 

 「マスターさん!この前の日いけなかったんですけどー!」

 

 「次の新メニュー決まってます!?」

 

 と次々声をかけてくれる店をひいきにしているウマ娘たちにテキトーな挨拶を返して職員用玄関から入ってトレーナー待機室を目指す。一応今日来ることは知ってるだろうから挨拶くらいはしとかないとな。

 

 「すんませーん。アグネスタキオンのトレーナーさんいますかー?」

 

 「あ!マスターさんこんにちは。この前はミークがお世話になりました。ええっと・・・アグネスタキオンのトレーナーは・・・・」

 

 「ああ、桐生院さんどうも。もしかして視界の端でキラキラしてたりします?」

 

 「ええ・・・はい・・・」

 

 「さすがはMrモルモット、相変わらずですね。じゃ、失礼します。これ、ミークとどうぞ」

 

 「わ、ありがとうございます!」

 

 俺のあいさつに反応してくれたハッピーミークというウマ娘のトレーナーである桐生院さんにニンジンフィナンシェの詰め合わせを渡して無駄にまぶしい目標物に接近する。光で影もわからないくらいまぶしいのでいつも通り遮光グラスをかけて挨拶する。

 

 「今日はまた一段とまぶしいですね。タキオンは実験室ですか?」

 

 「ああ!マスターさんどうも!ええまあ今日は3本ほど実験をしたもので・・・どうも効果が重複してるらしくて・・・慣れましたけどね!あっはっは!」

 

 「ぶっとんでますね相変わらず・・・」

 

 この異様に光り輝く人物こそが超光速の粒子の異名をとるウマ娘、アグネスタキオンのトレーナーである。ウマ娘の限界の先を見ることを目標にし、レースにすら出なかったアグネスタキオンを口説き落とした剛の者で通称はMrモルモット、もしくはゲーミングトレーナー。タキオンの実験の結果常に光り輝いているためタキオン以外は素顔を見たことのない謎の人物ではあるが人当たりもよい好人物だ。

 

 「わざわざ申し訳ありませんね・・・私もそれなりの弁当は作れるようになったんですけどやはりマスターさんには敵わないようで・・・」

 

 「いえいえ、最初よりはだいぶ上達しましたよ。それにこれで商売してるんです。負けたら商売あがったりですよ」

 

 「はは、そうかもですね。それじゃ、タキオンが待ってるでしょうから、よろしくお願いします」

 

 「ええ、失礼します」

 

 俺はそう言ってトレーナー室を後にした。タキオンが陣取っている最上階の実験室まで歩を進める。途中で遭遇するある意味で運のいいウマ娘たちに持ってきたお菓子をばらまきながら階段を登り切り、薬品の匂い漂う実験室の前についた。ゴンゴンとノックをすると気の抜けたはいりたまえーという声が聞こえたので横開きの扉を開ける。するとそこには

 

 「あー、うあー・・・遅いよマスターくぅん。私はもうエネルギーが足りずにフラフラだよ。どうしてくれるんだい?」

 

 「そら俺の弁当を待つんじゃなくて大人しく食堂の料理を食いに行けばいいんだよ。今日俺は休みなんだぞ」

 

 実験机に突っ伏した無駄にサイズが合ってなくてだぼだぼの袖あまりな白衣を着こんだ気だるげで栗毛なウマ娘、アグネスタキオンが恨みがましそうな声をあげて俺を出迎えてくれたのだった。ぐでんとしている彼女はそれでも俺の言葉にカチンときたようで突っ伏したまま言い返してくる。

 

 「食堂までいって皿を取って料理を盛り付けて口を動かす時間があるなら実験をしたいんだよ私は!モルモ・・・もとい、トレーナー君の弁当は君よりも愛情の量が多いが味についてはだいぶ良くなってきたとはいえ君の料理には栄養バランスも含めて勝てないだろう!総合的に見ても君が私の弁当を用意するべきなんだ!・・それに・・・」

 

 「それに?」

 

 「私に「おいしい」を教えたのは君だろ?責任、取りたまえよ・・・」

 

 そう言って本当に限界が来たらしくあげていた顔を突っ伏したタキオンのために持ってきたバスケットを置いて中身を取り出してタキオンの口元にもっていく。迷いなくそれにかぶりついた彼女がもぐもぐとサンドイッチを咀嚼して飲み込んでいく。俺がこいつに弁当を作り始めたのは1年ほど前、彼女のトレーナーになったばかりのMrモルモットがいきなり営業時間終わりの俺の店に光り輝きながら突っ込んできたのが始まりだ。曰く「担当ウマ娘の食生活を改善したいが自分は料理ができないので何とかならないか」だったかな。

 

 そんで話を聞くにつれて自分の頬が引きつり、その依頼を受けたのだ。なんせ栄養がありそうなものを片端からミキサーにぶち込んで飲み干すという所業を耳にすれば飲食業にかかわるものとしてほってはおけないしな。つーかそんな食生活をすれば間違いなく胃腸は弱くなるし咬合力も減って逆に運動能力が落ちるだろうに。というわけで弁当を作ってアグネスタキオンのもとへ行き栄養の取り方について懇切丁寧に説いたあと面倒くさがる彼女に弁当を食わせた。そしたら一口食べた時点で普通にぺろりと平らげたのできちんと飯は食うようにということで別れたのだが・・・

 

 「ふむ、相変わらずバランスがいい。飽きないような味付けに適度な歯ごたえとボリューム・・・ところでマスター君」

 

 「なんだ?」

 

 「やっぱり毎日作ってきてくれないかい?」

 

 「アホ、お前にゃトレーナーの飯もあんだろが」

 

 「彼のは彼のでおいしいしあったかいと思わせるんだけどね、いいじゃないかデリバリーくらい。飲食店なのだろう?」

 

 「残念ながら俺のデリバリーはルドルフ専用でな。お前はついでだついで」

 

 「ひっどい店主もいたもんだねえ。シンボリルドルフが羨ましいよ」

 

 「バーカ。お前のトレーナーほど尽くしてくれる奴ぁなかなかいねえぞ」

 

 「わかってるよ・・・もちろん」

 

 そういうタキオンの頬は赤みがさして愛しいものを考えるような表情をしている。ケッ、両想いならさっさとくっつきゃいいのになあ。それにぐだぐだと彼女のトレーナーが忙しい時に代わりに弁当を作っては来たがそれもこの様子ならそろそろ終わるだろうしな。ウマ娘とトレーナーが恋に落ちるなんてのはよく聞く話だ。なんせ担当ウマ娘のために栄養学を学んで料理を一から俺に教わりに来るような奴だ。そんな奴と接して落ちないほうが俺としちゃどうかしてると思うね。自明の理という奴だろう。

 

 「ふぅ・・・ご馳走様、おいしかったよ」

 

 「おう、お粗末様だ。じゃあ俺は帰るぞ。ルドルフを待たせてるからな」

 

 「ああ、ありがとう。そうだ、ついでにこれをもっていくといい」

 

 そう言ってタキオンは白衣のポケットからピンク色に発光する液体の入った試験管を俺に手渡した。いぶかしげな顔をする俺に彼女は

 

 「ほれ薬だよ。いつものお礼さ、好きなウマ娘に使ってみるといい、面白いだろう?」

 

 「いらねえよばかちん」

 

 「あああーーー!!もったいないじゃないか!」

 

 あまりにくだらないものだったのでその場でふたを開けて流しに流して不法投棄してやった。そのまま「鬼!悪魔!えーっとえーっと・・・料理上手!」とわめく罵倒の語彙が乏しいアグネスタキオンの実験室を後にしてそのまま帰路につくのだった。そうして俺の城、喫茶ホースリンクのドアをくぐると・・・

 

 「兄さん、遅い」

 

 「すまん」

 

 ぷっくーと頬を膨らませてぷりぷりと拗ねているルナの姿がそこにはあった。俺はしょうがなく彼女のご機嫌取りに奔走して休日をすべて使いつくすのであった。めでたしめでたし。



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カノープスのハンバーガー

ウマ娘の手料理食べてみてえよなあ俺もなあ・・・


 開店日、ああ楽しいな、仕事の日(マスター心の俳句)・・・クッソしょうもないことを言っているが今日は開店日である。ルナをなだめるのは大変だった。ウマ娘には特有のしぐさがあるのだがそれの一つに「前掻き」というものがある。どちらかの足を地面に擦り付けるように前から後ろに掻く、という仕草である。

 

 どうもこれはウマ娘の本能的なしぐさの一つらしく年を経るごとに自制を覚え行わなくなっていく。公園とかで見る子供のウマ娘はよくやっているけどな。そんでそんでこの行動が意味するのは「私は不機嫌です」とか「こうしてほしい」とかの不満を現すボディランゲージなわけで・・・とどのつまりルナはお冠になってしまったのだ。それはもう耳を後ろにぺったーんと倒して不機嫌を現していた。

 

 お分かりだろうか?あの、清廉潔白にして完全無比の生徒会長である皇帝シンボリルドルフが!子供っぽく前掻きをしたのだ。めっちゃ久しぶりに見たんだけどまさかルナがやるとは思わなくてちょっと笑ってしまった。そのあと正座させられてぷりぷりとお説教を食らったが。やれ「戻ってくるのが遅い」だの「兄さんは私よりタキオンがいいのか」だの「私だって兄さんと一緒にいたい」だの・・・後半ほとんど願望やん。兄離れしてください。

 

 とまあそんな感じでルナのご機嫌を取るために東奔西走したわけで、具体的には一緒に映画館いったり、外食しようとしたら兄さんの料理がいいと言われて飯作ったり、プラネタリウム行ったり?まあいろいろあったわけですよ。割愛するけどな。そんでこんなに長々話している理由としては・・・・

 

 「仕込みやってねえええええええ!!!!」

 

 そう、仕込みである。飲食業において下準備とは最も時間がかかりなおかつ最も大事な作業といっても過言ではないのだ。今日のメニューはハンバーガー、自家製パティにたっぷりレタスと甘いトマト、ニンジンソースを挟んだオリジナルハンバーガーである。レタスとかは直前になっても何とかなるが問題はパティ、ひき肉である。まだ肉の塊なんだよねーこれが。これをひき肉にするところからやらないと・・・どうすっべ時間足りるかってか体力が持つか?

 

 うーんうーんと俺が頭を抱えながら肉の塊を切り分けていると店のドアが開いた。そういえば今日は3人来る予定だったっけか。えーっと確か・・・

 

 「おっはよーマスター!ターボが一番乗りだよ!」

 

 「マスターさん、おはようございます~」

 

 「はよーマスターさん、ネイチャさんは3番乗りですよってねー」

 

 そうそう、チームカノープスより青い髪、オッドアイ、元気の良さは天下一品な個性大爆発ウマ娘のツインターボ、ゆるふわな性格、わざわざ帽子に耳用の穴をあけて斜めにかぶり長いリボンを携えたマチカネタンホイザ、もふもふしてそうな短いツインテにクリスマスカラーのイヤーカバーをつけたナイスネイチャの3人である。ちなみにもう一人イクノディクタスというウマ娘もいるのだが本日はレースにより留守とのことで。ん?待てよ・・・?よし来た!これだ!

 

 「いいところに来た!特にネイチャ!手伝ってくれ?」

 

 「はえ?」

 

 「ふえ?」

 

 「・・・もしかしてバッドタイミング?」

 

 「いやいやまさかまさか・・・逃がさんからな」

 

 そんな感じで普段はウマ娘たちを入れない厨房に3人を引きずり込んだ俺は仕込みを手伝ってもらうことにした。というわけでまずは

 

 「えーダブルター「ツインターボ!」冗談だって食い気味に否定すんな。お前さんにはこのミートミンサーでひたすらにひき肉を製造してもらう。見ての通りの手動式だ。お前さんが頑張れば頑張るほどうまいハンバーグやパティができるので頑張るよーに」

 

 「ハンバーグ!?やる!やるやる!ターボハンバーグ大好きだもん!」

 

 「頼んだぞー」

 

 青いツインテをフリフリと元気よく振ったツインターボが勢いよくミートミンサーのハンドルを回してひき肉を量産していく。ターボエンジン点火ってか?そいじゃ次々~

 

 「ほい次、タンホイザはこれ、芋をピーラーで剥いてひたすらこの天突きを使って細か~く棒状に切っていってくれ。今日のポテトフライはクリスピーで行くからな」

 

 「わかりました!いいですよね~カリカリしたフライドポテト~!」

 

 「食いすぎると太るけどな」

 

 「うぅ~カロリーオーバー・・・」

 

 何か思い当たる節があるのか知らないがしょぼんとしつつも作業をしてくれるタンホイザ。割と経験あるのかピーラーの使い方によどみがない。さて次は俺の中で大本命、料理ができることがわかっているウマ娘ことナイスネイチャ。頑張ってもらおうかなっと。

 

 「さてネイチャ。お前にはニンジンソースを作ってもらう。味の決め手だから頑張ってくれよ~」

 

 「ちょっ!そういうのはあんたがやらないとダメじゃないの?私が作っても・・・」

 

 「いいんです!ここはウマ娘とファンが交流する喫茶店!来るのはお前のファンなんだからお前が作った料理が喜ばれるのは必然!というわけでこれレシピな。チェックはするからやってみてくれ。成功したらほかの奴にも頼んでみるから」

 

 「いいのかな~・・・そこはこう・・・テイオーとかマックイーンとかあるじゃん?最初が私じゃなくても・・・」

 

 「あいつらは料理があんまり得意じゃないからダメ。お前以外でやるんだったらクリークとかタマとかに頼むけど今のメンツならお前がいい。そら始めろー。ターボ、ミンチはどうだ?」

 

 「ふっふっふ・・・どーだ!」

 

 ちょっと自信なさげにソース作りに取り掛かったナイスネイチャ。ちょっと無理やりだった気はするけど料理の腕は信用してるからな・・・この前もらったケーキ美味しかったし大丈夫でしょ。ターボに向き直るとすでに大きなボウルいっぱいにミンチ肉を量産していてくれた。俺はそれに粗く刻んだ薄切り牛肉を混ぜ込んで特製スパイスと練り始める。量が多いとほんと大変なんだわ。特に今日のハンバーガーのパティはうっすいもんじゃなくて分厚いのを2枚使うボリューミーなものだ。必然的に量が必要になってくるわけで。

 

 「うわ~たくさんありますねぇ。全部焼いたらどれくらいの量になるんでしょう」

 

 「だいたいこれで40人前かね。今日来るのは30人だから他は予備かな?じゃ、成形していくぞー」

 

 「ターボも!ターボもやる~!ほら!こんなおっきいのできた!」

 

 「でかすぎだわパンに収まらん。やり直し!」

 

 ウマ娘特有のパワーでタネを圧縮したターボが見せてきたのはあわや自分の顔ほどもありそうな肉の塊であった。欲張りなのは構わんがそれ焼くと絶対中身生焼けになるからな?肉汁補充のためにラードも入れてるし絶対くどくなるぞ。ターボはぶー垂れながら俺と同じ大きさで成形を始めた。ポテトフライ量産を終えたタンホイザも合流し和気あいあいとパティ作りに励む。一方ネイチャは

 

 「これと、これ。あとこれを入れて・・・うん、いい感じ。マスターさん、味見してみてよ」

 

 「おーわかった。手洗ってくるから待っててくれ」

 

 「わざわざいいよ。ほら」

 

 そう言って自分が使ってた小皿に取ったソースを口元まで差し出してくれるネイチャ。まだ作業途中だった俺はありがたくそれでソースの味見をさせてもらう。うん、いいな!俺が作ったときとほとんど同じ味だ。レシピありとはいえここまで再現するのはさすがネイチャといったところだろう。というか付加価値で言ったら俺の100倍くらいの値段が取れそうだ。やらないけどな。

 

 「完璧だよさすがはネイチャ。引退したらここで働くか?」

 

 「どっこも雇ってくれなかったら考えるわ~。ま、ネイチャさんにかかればこんなもんだってね~」

 

 俺の称賛に機嫌をよくしたネイチャが小鍋の火を落としてこちらに合流する。ネイチャにしては珍しく鼻歌なんか歌ってる。ターボがだんだん飽きてきたようだしあとは俺一人でもなんとかできそうなので終了かな。

 

 「うっし、手伝いありがとな!今日の賄いは期待しておけよ~。じゃあ手洗って着替えてきてくれ」

 

 「は~い!ターボパティ3つがいい!3つだよ!」

 

 「私もそれで。マスターさんの料理美味しいですし~」

 

 「ネイチャさんはお任せしますよ」

 

 「ほいよ。いってらっしゃい」

 

 俺は成形したパティに網脂を纏わせながら3人が手を洗って厨房から出ていくのを見守るのだった。タンホイザが一瞬こけそうになったがターボが慌てて支えて事なきを得た。やめてくれよここで怪我したりするのは・・・ただでさえお前運がないんだからさ。鼻血でも出たらお客さんの前に出せないでしょ、もう。

 

 

そして営業開始、カノープスの面々は大人人気もあるが子供人気もある。予約も家族連れが多かったり。最初のお客さんもそうだ。

 

 「こんにちはー。予約した斎藤ですけど、4人です」

 

 「わあ!ツインターボだ!ナイスネイチャもいる~~!」

 

 「マチカネタンホイザだよお父さん!この前のレースすごかった~!」

 

 「そうだねぇ。いつも応援してます」

 

 「いらっしゃいませ~。わぁ、応援ありがとうございます。僕もありがとうね~、握手する?」

 

 「いいの!?するする!」

 

 「ツインターボさんはこの前は惜しかったですね。見事な逆噴射でしたけど」

 

 「うぐぐ・・・大丈夫!次はちゃんと大逃げするから!だからターボも応援してよ!」

 

 「もちろんです!ナイスネイチャさんもこの前のセンター良かったですよ!ほらあの投げキッス!うちの夫ったらあれでメロメロになっちゃいましてね~」

 

 「ちょ、それをここで言うなよ!」

 

 「あはは・・・忘れてくれると嬉しいんだけどそれ・・・とりあえずお席にどうぞ。マスターさん3番席つかうね~」

 

 「はいよ。いらっしゃいませ。本日のメニューはハンバーガーです。この3人が調理を手伝ってくれた本日限定メニューになっております。ドリンクがお決まりになりましたらお好きなウマ娘を呼んでご注文をどうぞ」

 

 そう言いながら俺が示したのは日替わりメニューを書いてある黒板である。急ピッチで3人のデフォルメイラストを描いたがなかなか様になっているんじゃないか?と思いながらタンホイザがドリンクメニューをもっていくのを尻目に俺は厨房に引っ込むのだった。

 

 「マチカネタンホイザのおねえちゃん、この前のレース1番だった!ね!お父さん!」

 

 「そうだなぁ。あ、あとでサインもらってもいいですか?それとドリンクはこのオレンジトロピカル二つにアイスコーヒーとレモンコーラでお願いします」

 

 「はい!勿論ですよ~マスターさんドリンク注文いただきました~!」

 

 蹄鉄の音を鳴らしてこっちに来たタンホイザからドリンクのオーダーを受け取った俺はオレンジジュースとパイナップルジュースを基本としたカクテルジュースと水出しアイスコーヒー、コークにレモンシロップを入れて「ターボがやる!」といってきたツインターボに渡すのだった。さあ忙しくなるぞー!

 

 

 

 「「「ありがとうございましたー!」」」

 

 というわけでホースリンク、本日も盛況で終わることができましたっと。おーっほっほっほどっかのヘイロー高笑いを真似ている左右非対称で派手派手な勝負服のツインターボ、ふわっとした肩出しの民族衣装っぽい勝負服のマチカネタンホイザ、黒の落ち着いた色をベースにイヤーカバーと同じ色のアクセントがちりばめられた勝負服のナイスネイチャが最後のお客さんを笑顔で送り出したところで本日の営業終了である。

 

 いやーなんて言っても今日はウマ娘が作ったといっても過言ではないメニューだったせいかお客さんの反応も最高だったなあ。途中ターボがライブやりだしたりして盛り上がった一日だったと賄いを作りながら考える。バーガー用のパンを2つに切り、ソースを塗って肉汁滴るパティを載せ、レタス、パティ、トマト、チーズ、パティ、生玉ねぎ、ピクルス、ソースをあふれんばかりに乗せて完成。カリカリに上げたポテトフライにレモンを絞ったコーラのセットだ。デザートはキャラメルバニラアイス。名付けてカノープスバーガーを3人の前に紙ナプキンと一緒にデン!と置いてやる!

 

 「よし!今日も一日お疲れさんだ!お代わりあるから食べたいなら言えよー!」

 

 「わぁい!ターボお代わり予約ー!」

 

 「おいふぃいです~!カリカリポテトはいいですね~カリカリ♪カリカリ~♪」

 

 「あーターボ!こぼれてるこぼれてる!もうしょうがないな~」

 

 ソースを顔や手に付けながら豪快にかぶりつくターボとそれを世話してあげてる面倒見のいいナイスネイチャ、サクサクとポテトを食べてるタンホイザを置いて俺は表の看板を下ろしに行くのだった。

 

 喫茶店・ホースリンク本日の営業は終了ですよっと・・・ん?

 

 「イクノディクタスじゃないか。何だ、レースは終わったのか?みんないるから飯食ってけ」

 

 「はい。こんばんはマスターさん。その、トレーナーからみんなここにいると聞いたもので・・・」

 

 大きな丸眼鏡に長い三つ編みが特徴的なウマ娘、イクノディクタスが所在なさげに俺の店に向かってくるところだった。なるほどトレーナーからね・・・多分ブッキングしたのが申し訳なかったんだな。一人だけ仲間はずれにしたようなもんだし。よし、そういうことなら入れ入れ!

 

 イクノディクタスを店の中に引き入れ厨房に引っ込む前に声をあげておく。すぐに気付いた3人が寄ってきたのを尻目に料理を再開する。

 

 「お~い残り一人が来たぞお前ら!」

 

 「あ~~!イクノディクタス!レースどうだった!?」

 

 「ターボ。ええ、ハナ差でしたが優勝できました。おいしそうなもの食べてますね」

 

 「さーすが。キラキラウマ娘はちがうね~。私も負けてらんないかも」

 

 「ええ、何せカノープスの目標はチームスピカの打倒。まずは重賞からさらっていくべきです」

 

 「うんうん!私もスピカには勝ちたいよ~!頑張ろう!えい、えい、むん!」

 

 「「「おーーー!!!」」」

 

 「ぶへっ!!!???」

 

 「「「タンホイザーーー!?」」」

 

 「ふぇ゛・・・う゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ん!!!!」

 

 あっちゃー・・・今日は大丈夫だと思ったのになあ・・・タンホイザが音頭をとったえいえいおーに倣った3人がこぶしを突き上げる・・・まではよかったのだが元気よくこぶしを振り上げたターボの手がタンホイザの顔面に命中し、痛みに数瞬フリーズしたタンホイザの瞳にみるみる涙がたまり、たらりと鼻血が出たのを境に決壊、火が付いたように泣き出してしまった。

 

 慌てて謝るターボと慰めにかかる他二人と救急箱をひっつかんで戻ってくる俺という何ともしまらない構図で今日の営業は終了するのであった。もー、気を付けてくれよほんとに。



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うららかパウンドケーキ

 ゲームでファン感謝祭があるならこういうのがあってもいいのではというお話。


 わが店ホースリンクにはたまに、ほんとにたまにではあるがイベントを行うことがある。そも現役ウマ娘と触れ合えること自体がイベントみたいなもんであるが、理事長が突発的に考えたイベントや働きに来るウマ娘自身が考えたものを行うこともある。直近だとメジロ家ティータイムだったかな?マックイーンを筆頭にしたメジロ家が普段使ってるお茶の葉やらなんやらを取り寄せてメジロ家の優雅なティータイムを体験するイベントだったはずだ。

 

 こんなの売れるわけねーじゃろと考えていたのだが理事長が言うには予約への申込数が普段の3倍だったそうで。3倍だよ3倍、ウマ娘ってスゲーな(小並感)うーん、ミーハー魂っていうのはよくわからん。まあそれはそれとしてこんな話をするからには今日ホースリンクではイベントがあるのだ。

 

 本日の主役はこちら、蹄鉄の形をした頭部がとってもチャーミングな・・・っておい。お前じゃないわ。

 

 「蹄鉄、なんでいるんだよ」

 

 「いちゃ悪いんか。一応俺はトレーナーだぞ?担当のウマ娘を届けるのだって立派な仕事だ」

 

 「マスター!こんにちはー!今日ね、すっごく楽しみにしてたの!いっしょにがんばろーね!」

 

 「おーウララ、おはようさん。蹄鉄、なんか食ってくか?」

 

 「いや、この後模擬レースに呼ばれてててな。しょうがないから見てくる。ピンとくる奴がいればいいんだけどなあ」

 

 「お前のお眼鏡にかなうやつはそんなにいないだろうなあ。でも隠れた才能とか大好きだろ?」

 

 「そーゆーのが一番燃えるんだよ。ウララ見ればよくわかんだろ」

 

 蹄鉄トレーナーの後ろからぴょこんと顔を出したのは砂上に咲く満開、桜花爛漫、ハルウララだ。俺はウララに挨拶をしてなぜかいる蹄鉄と雑談をする。

 

 蹄鉄はハルウララともう一人、合わせて二人を担当しているトレーナーで常に蹄鉄の被り物をかぶっている変わり者である。変わった見た目とは裏腹にトレーナーとしての能力は図抜けている。ダートに特化し、芝に足をとられてまともに走れなかった上スプリンターのハルウララを何をどうしたか長距離の有マ記念に出したうえ優勝をかっさらわさせるという奇跡としか言いようがない行為を成し遂げているのだから。

 

 ちなみに学園としてはそんな優秀なトレーナーをウマ娘2人にかまけさせてるのはちょっとという話で「チーム作れお前」とせっつかれてるとか。でもコイツの審美眼というかウマ娘の気に入り方がどうもとがってるんだよな。

 

 判明している基準としては「育てて面白いかどうか」らしい。「勝てるか」ではない。育てる以上必ず勝てるようにするからあとは面白いかどうかという自信過剰なんだかビッグマウスなんだかわからん理由があるようでいまだにチームを作れるほど担当を増やしていないが担当してほしいというラブコールは山とあるみたいだけどな。「ピンとこない」らしい。贅沢ものめ。

 

 「そーそー、この前面白いことがあったんだよ。な、ウララ?」

 

 「面白いこと・・・?・・・うーん・・・あ!そうそう!トレーナーのそっくりさんに会ったの!」

 

 「お前増殖してんの?」

 

 「いや、俺は蹄鉄かぶってるけどあっちはアルファベットの「P」被ってた。なんでもアイドルプロデューサーらしい。確かに他人の気がしなかったな」

 

 「被り物流行ってんの・・・?」

 

 「それはしらん、がウララに目を付けたのは慧眼だ、なんつっても俺の誇りだし。なんでも所属事務所で今ウマ娘のプロデュース企画が持ち上がってるらしくてな?それで商店街の人気者だったウララに目をつけスカウトしたらまさかの現役ときたもんだ。びっくりして引き下がったよ。ウララ自身はやりたがってたけどな」

 

 「アイドルってウイニングライブをたくさんできるってことだよね?うらら~って感じ!やりたかったな~」

 

 「さすがに現役ウマ娘を引き抜いてアイドルにするのは無理だろ。理事長が黙ってないし何よりファンが許さない。引退後の選択肢としてはありだろうな。固定ファンがついてるから最初から売れるわけだし」

 

 「いっそ俺もP被ってプロデュースしてみるか~?」

 

 「トレーナーがトレーナーじゃなくなっちゃうの~?それは、なんかやだなぁ~」

 

 「俺一生蹄鉄被るわ」

 

 「そういう意味じゃねえぞ多分」

 

 そんな言葉を残した蹄鉄はハルウララを思いっきり抱きしめて撫でまわした後にトレセン学園に帰っていった。残ったのは勝負服が入ったカバンを持ち、耳はパタパタ尻尾はブンブン、瞳をキラキラ輝かせふんすと鼻息荒いハルウララである。やる気マックスだったのにさらにやる気を引き出して帰りやがったあのトレーナー。

 

 

 

 さて、閑話休題。というか話が大幅に本筋からそれた。早速着替えに更衣室に向かったハルウララが着替えている間に何がどうしてそうなったかを説明しようと思う。何の話かっていうとイベントの話だ。もちろんこんな小規模な店舗で何十万のファンを抱えるウマ娘のイベントなんかできるはずはない。

 

 ただウマ娘が望んだり、理事長が思いついた場合は話が別だ。例えば大多数のファンではなく特定の誰か、特定のファンに向けた何かをしたいとかがそうだな。

 

 例えば行ったことといえばスペシャルウィーク、彼女に日本総大将という二つ名が付き始めたころ、故郷の育ての母に勝負服を着て成長した自分を見てもらいたいという理由で店を貸しきりにしてスペシャルウィークオンリーイベントをやったりとか、オグリキャップが笠松トレセンの人たちにお礼をしたいといって彼女の友達を呼んでパーティーを開いたりとかそんな感じのイベントとというよりはお祭りだ。

 

 さてさてつまり今日行うのはハルウララのイベント。彼女がよく入り浸る商店街で彼女が勝てなかったころから応援してくれている最初の最初のファンの人々に向けて何かしたいというお願いを蹄鉄が受けたことに起因するものだ。名付けてハルウララ(が)感謝祭、ハルウララが一枚一枚手書きで書いた招待状を商店街のおじちゃんおばちゃんに手渡しして前準備はすでに万端、あとは楽しむだけ、というわけだ。

 

 そしてハルウララの勝負服であるが、なんとジャージ、体操服、ブルマである。もちろんトレセン学園のものとは違うオーダーメイドのものではあるがほかのウマ娘たちが身にまとうようなアイドル然としたものではない。が、逆にそれが彼女の飾らない魅力を引き立てている。ついでに言うとハルウララのファンの総数はトレセン学園全体でトップ3のファン数を誇る化け物なのだ。

 

 勝てなかった彼女がトレーナーと運命的な出会いをして有マを制するというまさにシンデレラストーリーはトゥインクルシリーズを大いに盛り上げた。トレセン学園周辺ではハルウララが出没してもみんな慣れているため流されるが出張先で出歩くとあら大変、ファンの塊に呑まれることになると蹄鉄が言っていた。この感謝祭、ちょっとだけ一般枠があるのだが外国からの応募含めて倍率100万以上を記録している。理事長が目をまわしていたのでそれ以上に多かったんだろうな・・・とれた人は幸運だこと。

 

 「マスターマスター!お待たせ!着替えてきたよ~!!」

 

 肉と野菜を鉄串に順番にさして特製スパイスを塗りたくっているとカツカツと足にはいた蹄鉄シューズの音を鳴らしながら勝負服のハルウララが降りてきた。階段をホップ、ステップで軽やかに降りてきた彼女は俺が刺し終わった鉄串を置いた瞬間に横からバフッと抱き着いてくる。人懐っこいウララらしい。俺は手がべとべとなのでウララの勝負服に付かないように両手を上にあげて好きにさせてやる。

 

 「マスター、今日はお願い聞いてくれてありがとうね!わたし、すっごく楽しみにしてたの!だからだから、マスターには一番にお礼言いたかったんだぁ!」

 

 「いいよこんくらい。でもここでよかったのか?お前のファン数なら理事長が喜んで会場を用意しただろうに」

 

 「ううん、ここがいい。ここじゃなきゃイヤなの。私が走り始めた時から応援してくれてる人たちと私が負けても負けても変わらずおいしいごはんをくれたマスターのお店にお礼をするのが一番最初。昔からそう決めてたの」

 

 「そっか、じゃあ頑張らないとな!よっしウララ!会場の準備に行くぞ!」

 

 「お~~~!!!」

 

 「の前に今日出すデザートの味見頼むわ」

 

 「ずこ~~~!!!」

 

 声に出してずっこけるハルウララをよそに俺は手を洗い冷蔵庫からあらかじめ作って冷やしておいたデザートを取り出す。今日のデザートはパウンドケーキ。ハルウララをイメージしたものだ。生地にイチゴとラズベリーを練りこんで焼き上げ、桜の塩漬けを混ぜ込んだアイシングで桜の花が混じったピンク色の砂糖の層がかかっている。このピンクを出すのには苦労した。なんせ彼女の髪の色と全く同じにしたうえで味も妥協せずに頑張ったのだ。ついでに言うとこれは何があろうと普段の営業で出す気はない。今日だけの特別、あるいはまたウララが何かするときの限定メニューにしようと思う。

 

 今日はハルウララの特別な日、それならば特別なものを用意してやらないとな。2つ切り分けると中に仕込んだイチゴが丸々形を保っているのが見て取れる。ヘタをくりぬいて切ると桜の花びらっぽいよな、コトと少しだけ皿を鳴らしてわくわくで待っている彼女の前にアイスミルクティーと一緒に置いてやる。すると瞳を輝かせた彼女は指ぬきグローブで包まれた手でケーキを掴んで大きく頬張った。

 

 「いちごだ~~!!!桜の花びら!?ん~~~おいし~~~!!!マスターこれすっごくおいしいよ!」

 

 「よし、じゃあ食べ終わったら準備行くか!今日はBBQだぞ~~~!!」

 

 

 

 

 というわけで外である。さすがに商店街に配った招待状の客プラスアルファを全員一気に収容するスペースはうちにはない、が!こんなこともあろうかと!(理事長が)土地を大きくとってくれているので店の裏側にはバルコニーのような大型のスペースがある。昔はここテラス席だったんだけどな。必要ないから普段は使ってない宝の持ち腐れである。

 

 というわけで倉庫から引っ張ってきた大型グリルの網を外してハルウララが軽々と運んできた段ボール一杯の木炭をトングで入れて着火剤で着火して焼くスペースと熾火で保温するスペースを作る。ドリンク系はピッチャーに入れて自分で取ってもらう立食形式で今日は行こうと思う。さて、第一弾はもうすでにオーブンで焼いてあっためるだけだ。さらにオーブンの中には巨大な肉塊をじっくりと今焼いている最中、さあ営業開始だ!

 

 

 

 

 そうして準備を完了して招待した時間になると次々とウララが招待した客たちがやってきた。みんな店とかもあるだろうに来てくれるなんていい人たちばっかりだな。ちなみに今回はお酒も用意してあるから存分に楽しんでくれると嬉しいと思う。

 

 「お!ウララちゃん招待ありがとな!」

 

 「魚屋のテツじゃねえか、おめぇも招待されたんか!」

 

 「ばーか、商店街の奴ぁほとんど招待されてんだよ。ほら、肉屋の平さんも来てる」

 

 「わ!八百屋のおじちゃんにお肉屋さん、魚屋さんも来てくれたの!?ありがとー!」

 

 「「「あったりめえよ!」」」

 

 「「「あんたたちはしゃぎすぎんじゃないわよ?」」」

 

 「お、店長の兄ちゃん!土産にいいニンジン持ってきたんだ。使ってくれや」

 

 「なんのうちは和牛のいいところだぜ!」

 

 「それならこっちはマグロのトロだ!カマトロってところ、焼くとうめえぞー」

 

 「あんたそれどこの金で持ってきたの?」

 

 「そうよ、今月のお小遣いから引くからね」

 

 「ま、うちは大目に見てあげるわ。なんてったってハルウララちゃんのご招待だもの、特別よ」

 

 商店街の店を率いる人たちは持参したお土産をハルウララに目一杯渡し、それを知らなかったらしいそれぞれの奥さんに怒られながら登場して早速ビールを飲み始めたり

 

 

 「「「「ウララおねえちゃん!こーんにちはー!」」」

 

 「ハルウララさん、ご招待ありがとう」

 

 「この子ったらずっと楽しみでまだかまだかって毎日言ってたんですよ?」

 

 「いや、お恥ずかしい話ですが息子と同じくらい僕も楽しみだったんです。招待ありがとう」

 

 「あ!幼稚園の皆にお父さんにお母さんたち!いらっしゃい!今日は楽しんでねぇ!マスターの料理、ほっぺが落ちるほどおいしいんだよ!」

 

 よく幼稚園に遊びに行くらしいハルウララは子供人気もある。というかハルウララ自体がとんでもなく人懐っこいので人脈が広い。蹄鉄トレーナーですら全貌を知らないというのだから相当だろう。わらわらとこっちに来て挨拶してくれる子供たちに焼き立てのお肉と野菜の串をあげながら同時並行でいろんな作業を進める。招待客がいっぱいになったところでハルウララがスイッチを入れたマイクを持って話し出す。

 

 

 「みーんなー!今日は来てくれてありがとう!ハルウララだよ!今日こうしてみんなに招待状を出して集まってもらったのはみんなにお礼が言いたかったから!1年前、私がまだ一回も勝てなくてただただ走るのが楽しかっただけの時、それでも応援してくれた商店街の皆にありがとうを伝えたかったの!私が有マで勝てたのもみんなが応援してくれたから!・・・だから、今日はたくさんたのしんでいってね!」

 

 「おうよー!」

 

 「一番のファンは俺だー!」

 

 「ばっかおめえそれはちげえよ!」

 

 「そうだそうだ!一番はウララちゃんのトレーナーに決まっとる!」

 

 「商店街のアイドルがトゥインクルシリーズを代表するウマ娘の一人になるなんて最高だ!よし今日は呑むぞー!」

 

 最後のほう、少し涙が出てしまい言葉に詰まったハルウララであったが何とか言い切って頭を下げた。その瞬間歓声が飛んでみんなが逆に思い思いの言葉でハルウララを褒め、お礼を言いだした。それにこたえるようにハルウララが笑顔になる。顔が少し涙にぬれているが、まるで満開の桜のように麗らかな笑顔だった。

 

 

 

 

 「ねえマスター。みんな楽しんでくれたかな?」

 

 「なんだ藪から棒に」

 

 ハルウララがファンと触れ合い、一人ではあるがライブをして大盛況で終わった今日のイベント。酔いつぶれた商店街の人はそれぞれ奥さんにおぶられて帰り、子供たちがそれぞれハルウララに折り紙で作った優勝トロフィーや靴をプレゼントして親と手をつないで会場を後にしてがらんとなった。俺が使ったグリルを丸洗いしてると近くで机を片付けていたハルウララがぽつりとそう漏らした。

 

 「わたしは今日すっごく楽しかった。ず~っとわくわくが一杯で歌ってても話しててもうれしかったし楽しかったんだ。だから今日は・・・夢みたいだった」

 

 「お前だけ楽しくて客がみんな作り笑顔だったとでも思ってんのか?ないない、ぜったいない。というかそんなんだったらまず招待に応じるわけないだろ。安心しろ、ちゃんとお前はみんなを楽しませたんだよ」

 

 「そーかなー・・・うん!そうだよね!トレーナーが言ってた!「まずは信じるところから」って!じゃあわたしも信じてみる!きっとみんなは楽しんでくれたって!」

 

 「おーいウララー、迎えに来たぞー」

 

 「ウララちゃん、お疲れ様。あ、おじ様もこんにちは」

 

 「おじ様って・・・蹄鉄と同い年だぞ俺」

 

 「あーーー!トレーナー!今日すっごく楽しかったんだー!」

 

 蹄鉄の野郎がもう一人の担当を引き連れウララを迎えにやってきた。俺は二人とウララの分をとっておいたパウンドケーキを分けて包むのであった。

 

 

 

 「ぐえええええええええええ!?!?!?」

 

 「トレーナー!?トレーナーーー!!?うえええん!ごめんなさーーーーい!!!」

 

 「お兄様!?だいじょうぶ!?」

 

 その前にハルウララのタックルを食らって無事腰が変な方向に曲がった蹄鉄を助けるところから始めるか。とりあえず本日は閉店、と

 

 「蹄鉄無事かー?」

 

 「このくらい余裕だぜ!」

 

 「腰が180度回転してなかったらかっこいいんだけどなそのセリフ」

 




アンケートの通りに掻くとは限らないので悪しからず・・・


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ライスブレッドハニトー

 おはようございます。今日も今日とて営業日である。今日は蹄鉄のウマ娘が一人とスピカから一人、ついでに蹄鉄のウマ娘の友達がもう一人の計3人来る予定である。今日は目覚ましに頼らずぱっちり起きることができたな。今日はいいことありそうだと思いながら身支度を済ませていつもどーりのモーニングルーティンである仕込みをしようと階段を下りる・・・ってあら?

 

 「おはようございます。マスターのオーダーにより本日一日接客業務を行うためこの場で待機をしていました。本日はよろしくお願いいたします」

 

 「ブルボンか。さすがに早くないか?ほかの奴らは?」

 

 「顔色と声色からステータス「寝起き」であると判断。現在始業時刻より4時間と35分前であると申告、私的理由により調理及び清掃の補助を行ったほうが効率的と判断、すなわち「お手伝い」を希望します」

 

 「そりゃこっちとしてはうれしいけどよ。お前自身はもっと休んでなくていいんか?」

 

 「「心配」の気持ちを検知。問題ありません。本来トレーニングの日はこの時間よりも早朝に起動しています。休息期間は十分とれています。それに、あなたに会えるのを「楽しみ」にしていました」

 

 「・・・そうかい。ま、ほどほどに頼むよ。じゃあまず朝飯作るか。ブルボンは?」

 

 「・・・バッドステータス「空腹」を検知。食事を希望します」

 

 「うまい飯食いたかっただけだろう?」

 

 「隠しコマンドにより回答を拒否します」

 

 「もうそれでバレバレだっつの」

 

 店の中でまるで彫像のように目をつむっていたウマ娘が俺がドアを開けた瞬間図ったように目を開けて俺に挨拶してきた。金属っぽい髪飾りと右耳につけた光るリング、ぴょこんと飛び出たアホ毛が特徴的なウマ娘の名はミホノブルボン。話し方を見ればわかるように個性的なウマ娘がたくさんいるトレセン学園の中でも個性派の一人だ。感情が希薄で受け答えはまるでサイボーグ、だが目標に向けて愚直にただひたすらに努力を続けることができる心の強さをもつウマ娘である。

 

 なんとなくわかると思うが俺は彼女に懐かれている。一応店に来るウマ娘たちとそれなりに良好な関係を築けているのではないかと勝手に思っている俺ではあるがブルボンのように自分から朝の仕込みやら清掃を手伝いたいというウマ娘は珍しい。たいていはこの前のカノープスのように俺が頼むのが先だからだ。一度それとなく聞いてみたのだが。

 

 「肯定。私は店長にステータス「好意」を持っています・・・それが何かありますか?」

 

 と強烈なカウンターパンチを食らったのだがよくよく話を聞いてみると

 

 「詳細に報告するとお父・・・もとい、父とどこか似ています。失礼を承知で表現すると「兄」がいたらこんな感じなのでしょうか」

 

 ということらしい。つまり家族に似てるから親しみを感じているということだろう。兄、というのはルナの兄貴分であるからまあ納得できんこともない。じゃあとりあえずと思ったところで店のドアが開いた。

 

 「おはようございます・・・わ、おじ様にブルボンさん。お邪魔します」

 

 「おはようございます。まあ、ブルボンさん。寮にいらっしゃらないと思いましたら先に来てらしたのね」

 

 「なんだライスにマックイーン、今日はいやに早く来るな?それともなんだ、腹でも減ったのか?」

 

 「ななななにを言いますの!?たまたま早起きしたからお手伝いに来てあげただけですわ!」

 

 「えっとね、ライスはお腹すいたよ?おじ様のご飯おいしいもん。できたら食べたいなって」

 

 「なるほど、じゃあライスとブルボンは飯食うか。マックイーンは掃除な」

 

 「・・・ああ、もう!私の分も用意してくださいまし!朝食食べておりませんの!」

 

 「最初から素直にそー言えばいいんだよ。ここは飲食店なんだから腹減ったら食わせるのが仕事なの。少し待ってろ」

 

 やってきたのはいつもおなじみ朝にスイーツを食いに来るマックイーンと長い黒髪で顔の半分を隠し、大きな耳が特徴的なライスシャワーだ。今日の接客担当3人娘、つながりがよくわからんかもしれないが、ブルボンは3冠、マックイーンは天皇賞の連覇をライスに阻止されている。勝者と敗者、そういうつながりだ。もちろんわだかまりなんてかけらもなく3人とも仲良し。たまに3人で遊びに行くこともあるとか。戦いが終わればノーサイド、素晴らしいな。

 

 そして今日のキーパーソンはライスシャワー。蹄鉄の担当なんだが今日のことについて連絡を受けた。なんでも最近ふさぎ込むことが多いらしい。ブルボンの3冠達成とマックイーンの連覇を阻止したライスシャワーは当然ではあるものの腹立たしいことに両者のファンから恨まれた。レース場に出ればブーイングが飛ぶこともある。気持ちはわかるがスポーツなんだから勝ち負けがあるのは当然、こういった番狂わせがあるから盛り上がるのになあ。

 

 で、蹄鉄が考えるにはファンによってできた傷はファンによって治そうということで、今日予約する人にはマックイーンやブルボンが来ていることは伝わってない。そして万が一ライスのアンチが当選したとしてもマックイーンとブルボンがいる前で大げさに悪口を言ってこないだろうという算段だ。ついでに言うとマックイーンとブルボンは両者ともライスのことを大事にしているのでなんか言って来たら飛んで行って怒ることだろう。ライス奮起大作戦である。

 

 そんなことをつゆ知らずのライスシャワー、とてとてと小柄な体で俺のそばに近寄って来てくれる。ちなみに彼女は高等部、なんとマックイーンの先輩だ。逆じゃないかと思えるがこんな小さな体躯であんなパワフルな走りを見せられるのは素晴らしい。根性も人一倍ある。こちらを見上げるライスの頭に手を置いてさわり心地のいい耳ごと撫でる。

 

 「えへへ、お兄様が撫でてくれるのも好きだけどおじ様が撫でてくれるとなんか安心するな・・・」

 

 「だから俺は蹄鉄と同い年だっつの。なんでおじ様なんだよ」

 

 「だって、絵本とかで出てくる喫茶店の店長さんって素敵なおじ様が多いから、つい・・・」

 

 「・・・まあ別にいいんだけどさ」

 

 ライスの毒気のない言葉に力が抜けた俺が事実上の白旗を振ったところで厨房に逃げ込んで可愛い可愛いお手伝いさんたちのために今日出すメニューを味見してもらうことにしよう。今日予約されてる人は全員女性、男が来ないのでがっつりとしたメニューを作らなくていい。どちらかというとスイーツ系に偏る感じでいいんじゃないかね。

 

 というわけで取り出しますは米粉で作った食パンだ。1斤を半分に切って中身を四角くくりぬく。中身をキューブ状にカットして昨日作っておいたフレンチトースト用の卵液につけておき、外側は中にバターと蜂蜜、薄くスライスしたバナナを入れてオーブンで軽く焦げ目がつくくらいまで焼く。ほんとだったらたっぷり卵液を吸わすのがいいんだけど量が量だからくどくなっちまうのでほどほどにしておこう。キューブ状のフレンチトーストを焼いてこんがりとしたら冷凍庫から作っておいてあるキャラメルバニラアイスを掬ってくりぬいた中に詰める。ここからは時間勝負。あらかじめカットしてあるいちご、バナナ、オレンジをフレンチトーストと一緒に詰め込んで上からチョコレートソースをたっぷりかけて完成。暖かさと冷たさが混合してるのでアイスが溶けないうちに出しちまおう。

 

 「ほい、今日の日替わり、米粉パンのハニトーだ。ゆっくり食べな」

 

 「オーダーを受諾。オペレーション「ゆっくり食べる」で食事を開始します。いただきます」

 

 「多分マスターさんはそういう意味で言っておりませんわ・・・うぅ、またカロリーが重なるのにおいしそうなものを・・・」

 

 「ハニトー・・・?もしかしてちょっと前にテレビでやってたやつかな・・・?おいしそう」

 

 というそれぞれ違う反応を見せてくれた3人。ブルボンは大真面目にゆっくり食べようとしてるようだが一口食べた瞬間食べるペースが速まったので気に入ったのだと解釈しよう。そしてマックイーン、しばらく葛藤するようにプルプル震えていたのだが意を決したように目をぎゅっとつぶってハニトーを口に運ぶ。するとぱぁっと顔が輝いて吹っ切れたように食べだした。そうだ食え食え、太っても保健室行きゃ何とかなるだろ。何で保健室行ったら痩せるんだろな。トレセンの闇かもしれない。そしてライス、アイスを掬って口に運び、一緒にフレンチトーストも頬張る。ほっぺをおさえて笑顔になったな。よし、今日も上々っと。しかしまあ、ライスのペースが速いな。オグリやスぺほどじゃないにしろライスもよく食うからな。本人は恥ずかしがって指摘するとしゃがみこんで丸くなっちゃうけど。

 

 

 そんなこんなで食事を終えて清掃と仕込みをすること少し。といってもやることなんてフルーツのカットくらいなものでもし甘いものが苦手な人が来た用の鉄板ナポリタンの用意は俺がパパっとやってしまった。というか切り方で個性が出るな。ブルボンはまるで機械で切ったかのように全く同じ大きさだし、マックイーンはあまり料理をやってないらしく少しばらつきがある。ライスはライスで丁寧丁寧にやってくれて誰が切ったのか一発でわかる。

 

 そして余った時間でティータイムを過ごすこと少し、話を聞くと今度は蹄鉄がゴールドシップとかいう別世界から来たんじゃないかと思えるウマ娘と組んで悪だくみしようとしたのを生徒会副会長エアグルーヴがやる気を犠牲にして止めたということらしい。ちなみにブルボンは我関せず、マックイーンは頭痛が痛いみたいな顔をしてた。お前ゴルシと仲いいもんな。

 

 

 さてさて開店時間まであと少し、着替えに行った3人が仲良く戻ってきた。何と今日はマックイーンはこの前URA本部からもらった新しい勝負服を着ることにしたらしい。薄い水色を基調にしたフリルがたくさんついたいつも着ている黒を基調としたものとは全く別のデザインでこれがまたよく映える。そしてミホノブルボン、真っ白な中に蛍光ピンクと青が入った未来的でサイバーっぽいデザインをしている。足の金属っぽいパーツが非常に男心をくすぐるかっこよさをかもしだしている。あと露出がないのに扇情的に見える不思議。マックイーンの新衣装は健康的な感じなのに。

 

 そしてライスシャワー、黒鹿毛の彼女によく似合う紺色のドレスと帽子、青いバラのワンポイントと腰の短剣が非常にマッチしていて可愛らしい。まるで引っ込み思案な箱入りお姫様といった風情で大変よく似合っている。さてさて全員揃ったところでホースリンク、開店します。

 

 

 

 「すいませーん、予約した伊藤ですけどー」

 

 「い、いらっしゃいませ・・・お席にどうぞ」

 

 「わ、ライスシャワーちゃん!うわー、さすがに本物は可愛い!握手してもらってもいいかな?」

 

 「え、と・・・ライスでいいなら・・・ブルボンさんやマックイーンさんじゃなくていいの?」

 

 「あなたがいいのよ。なんていっても今日あなたに会えるっていうから頑張って予約したんだもの。私あなたのファンなの。会えてうれしいわ」

 

 「ファン・・・ライスにもファンがいたんだ・・・えへへ、ありがとう」

 

 「きゃー!かわいい!」

 

 とまあそんな感じでやはりホームページで大々的にライスシャワーの日であることを宣伝した効果が出ている。そうして接客すること少し、俺というかライス以外が気付いたことがある。

 

 

 「な、マックイーン、ブルボン」

 

 「はい、何か既視感があると思ってたんですの。これは・・・」

 

 「照合、ほぼ100%。現在店内で接客しているお客様の全てがどこかに青いバラをモチーフにしたアクセサリーを着用しています」

 

 「だよなあ・・・なんか意味があるんだろうか?」

 

 そんな感じの会話をしながら俺が料理を作り、お手伝いしてくれている3人が運ぶ。ライスのファンがほとんどだがやはりマックイーンもブルボンも人気が高い。特に3人でライスをセンターにしたライブは大変よく盛り上がった。ライスは最後までセンターを他二人に譲ろうとしてたがファンのお願いにこたえる形で歌って踊ってくれた。そして俺たちが気付いたことにライスも気づいたようで

 

 「そ、それって・・・青い、バラ・・・?」

 

 「あ、気づいたんですね!そうです、青バラ!今ライスシャワーちゃんのファンの間で青いバラのアクセをつけるのが大流行してるんです」

 

 「え、そうなの・・?でもライスは・・・」

 

 「いやいや、ライスシャワーちゃんがつけてるからですよ!ほらその勝負服も!この前のインタビューで『一番好きな絵本に出てくる、青いバラのお話のように・・・私もみんなを笑顔にしたくて青いバラをつけてます』って!そこからもうみんなの中で流行してるんです」

 

 「でもまだライスは、誰も幸せにできてない・・・レースに出たらみんなから嫌がられるし・・・「何言ってんですか!」・・・え?」

 

 「ライスちゃんはみんなを幸せにしてますとも!悪役だなんて私たちは思ってません!少なくとも私はライスちゃんに元気をもらえました。あの鬼気迫る強烈な走りを見てもっと応援したくなった!私にとってライスちゃんはヒーローなんです!」

 

 「ライスが・・・ヒーロー・・・?」

 

 「ええ、ええ!あの番狂わせをみて誰が悪役なんて言えますか!」

 

 そうだそうだ!と店内中にいるすべてのお客さんから同意の声が上がる。おたおたしてるライスシャワーにブルボンとマックイーンが近づいていく。

 

 「全く、その通りですわね。ライスさん、私はまだあなたにリベンジしてなくてよ?私がもう一度競い合いたいのはあの時の私を食い殺さんとしてたあなた。いつまでも自分を下にして卑下していては困りますの。胸を張って前をお向きなさい。あなたは私に勝ったのですから、堂々としてるべきなのですわ。もっとも、次は負けませんが」

 

 「同意です。ライス、あなたは現時点での私の目標です。私の3冠を阻んだあなたに勝つことは必須条件です。もう一度言います、四の五の言わずに走りなさい。あなたには逆境をはねのける力がきちんとあると判断しています」

 

 「マックイーンさん、ブルボンさん・・・うん、いつまでもうじうじしてちゃダメだよね・・・!ライス、頑張るって・・・お兄様と一緒に頑張るって決めたんだから・・・ライス頑張れ・・・ライス・・・おー!」

 

 

 「「「「「「おー!」」」」」」

 

 「ふぇ!?」

 

 マックイーンやブルボン、お客の説得を聞いたライスは初心を思い出すことができたらしい。自分を鼓舞するために放った言葉にその場にいた全員がのっかったことで耳と尻尾をピーンと伸ばして驚きながら素っ頓狂な声を上げたライスが笑い出して、その場は和やかな雰囲気になるのだった。

 

 良かったなライス。お前がつけてるその青いバラは昔は確かに不吉の象徴だった。けどな、今は真反対の意味を持ってるんだぜ?青いバラの花言葉は「夢はかなう」・・・お前の自分の走りで人を幸せにしたいっていう夢はほとんど叶いかけてるんだ。あとはお前が自信をもって胸を張れるかどうか。頑張れよ、ライスシャワー。

 

 

 

 

 

 

 

 「というわけでうまくいったんだが蹄鉄、お前から見てどうだ?」

 

 「ん、ライス・・・いいことでもあったか?」

 

 「お兄様、うん。とっても、とっても嬉しいことがあったの!ライス、頑張るからね!」

 

 「ばっちりだな。あんがとよマスター、またどっかでライスのこと頼むわ」

 

 「それはいいんだけど。お前こんな時間まで何してたんだ?」

 

 「タキオンにつかまって全身光ってたな」

 

 「シュールだな・・・」

 

 「Mrモルモットはレーザービーム撃てるようになってたぞ」

 

 「なんかタキオンがあいつに何をしたいかがわからんのだが」

 

 「そりゃあ、何なんだろうな・・・?」

 

 マックイーンとブルボンがそれぞれのトレーナーと一緒に帰った後、ライスを迎えに来た蹄鉄と俺はそろってそんな会話をして同じように首をかしげる。そんな俺たちの様子を見たライスはクスクスと幸せそうに笑うのだった。

 




 やっつけ仕事なんでクオリティ低いですがお許しください!


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ウマ娘総合雑談スレ part5640

書いてみたかった掲示板形式です。読まなくても本編には全く関係ありません


1:名無しのウマ娘ファン ID:x+Et3Kl53

 このスレはウマ娘に関する話題を幅広く扱う雑談スレッドです。みんなの推しウマを熱く熱く語りましょう!

 

2:名無しのウマ娘ファン ID:Rghoe2C1R

 たておつ。いやーここ数年はすげえウマ娘がたくさん出たな

 

3:名無しのウマ娘ファン ID:SSHkxATAo

 スペシャルウィーク、トウカイテイオーにメジロマックイーンとかな

 

4:名無しのウマ娘ファン ID:Giqmw4ZMC

 グラスワンダーとかエルコンドルパサーも忘れちゃいけない

 

5:名無しのウマ娘ファン ID:r0+WRR+Cn

 ハルウララをお忘れとは・・・

 

6:名無しのウマ娘ファン ID:LuVVGbVji

 あの子どうして有マとれたんだろ・・・?

 

7:名無しのウマ娘ファン ID:Fz8yfM+47

 それなー。あの屈託のない笑顔が好きでメイクデビューから追ってるんだけど初期はほんと勝てなかったし

 

8:名無しのウマ娘ファン ID:ueE0q0bCv

 しかも主戦場はダートの短距離。びっくりするくらい遅かったのに

 

9:名無しのウマ娘ファン ID:9PzIacf3A

 それが今やダートの女王よ

 

10:名無しのウマ娘ファン ID:3t1WPJykI

 ハルウララといえばこの前のレースで変な被り物した男に飛びついて抱き着いてたんだけどあれなに?羨ましいんだけど

 

11:名無しのウマ娘ファン ID:w7FSjYYhT

 でた、1スレ一度は出るこの話題

 

12:名無しのウマ娘ファン ID:rbdHSAGbT

 あーそれハルウララのトレーナー。通称蹄鉄ヘッドトレーナーっていうんだけど

 

13:名無しのウマ娘ファン ID:V3MriBIyw

 あれトレーナーなの!?まかり間違っても中央のトレーナーだよね!?

 

14:名無しのウマ娘ファン ID:+D6MIvc3K

 残念ながらあれが由緒正しき中央トレセンのトレーナーなんです

 

15:名無しのウマ娘ファン ID:a1o11+MoI

 中央のトレーナーってめちゃくちゃ試験厳しい上に超成果主義じゃなかった・・・?

 

16:名無しのウマ娘ファン ID:KYaZHvYN+

 おもいっきり成果出してるからなあ

 

17:名無しのウマ娘ファン ID:Vu3/b0/vi

 しかも一人は有マとらせてもう一人もミホノブルボンとマックイーンの悲願を阻止してるし

 

18:名無しのウマ娘ファン ID:Ks8BQ7avr

 ライスたんもあの蹄鉄のウマ娘なの!?

 

19:名無しのウマ娘ファン ID:xJ/w+8I9C

 せやで。しかも羨ましいことに「お兄様」呼びだ

 

20:名無しのウマ娘ファン ID:MRyPLFhQ0

 嫉妬で光り輝けそう

 

21:名無しのウマ娘ファン ID:ARKquF1o7

 中央トレセン奇人3人衆は伊達じゃないな。

 

22:名無しのウマ娘ファン ID:0Jqq2wUfQ

 奇人3人衆とは・・・?

 

23:名無しのウマ娘ファン ID:Cgr7/Qw1T

 出走順で紹介しよう!

一枠一番、蹄鉄ヘッド!育てるウマ娘は必ず勝利!稀代の名トレーナー!えり好みが激しいのが玉に瑕か!?

二枠二番、ゲーミングトレーナー!担当のアグネスタキオンの実験により常に光り輝いていて顔が見えないのが特徴だ!

三枠三番!ゴールドシップ!トレセン学園の特異点といえばコイツ!追込による力強いレース運びは必見だ!

 

 

24:名無しのウマ娘ファン ID:pCtxqza0m

 ウマ娘が入ってるの草

 

25:名無しのウマ娘ファン ID:QuuqyYOVL

 ゴールドシップってあの葦毛の長身で出るとこ出ててとんでもねえ美人のゴールドシップ?

 

26:名無しのウマ娘ファン ID:Nvhexd+X8

 見た目に騙されるな!奴はトレセン学園の中でも一番の奇人だ!

 

27:名無しのウマ娘ファン ID:5SZdFmxzT

 ええ~でもレース見る限りすっげえハラハラしていいレースすんなあっていう印象しかないんじゃが・・・

 

28:名無しのウマ娘ファン ID:t6LNSMEN3

 ゴルシ伝説、始め!

 

29:名無しのウマ娘ファン ID:z/GloLnKl

 その1 担当トレーナーを契約前に頭陀袋に入れて無人島に拉致する

 

30:名無しのウマ娘ファン ID:7lpU+UoXa

 その2 チームメイトも拉致で集めた(被害者 日本総大将)

 

31:名無しのウマ娘ファン ID:VNa3Em9Zi

 その3 ゴルゴル星出身(自称)

 

32:名無しのウマ娘ファン ID:ANEINdnpK

 その4 実は年齢不詳

 

33:名無しのウマ娘ファン ID:pr5x84FCX

 その5 尻尾を部屋に忘れてくることがあるらしい

 

34:名無しのウマ娘ファン ID:RpFxxnYWs

 その6 トレーニングをえり好みする

 

35:名無しのウマ娘ファン ID:jctuGpmWv

 ラスト 実はトレーナーに惚の字

 

36:名無しのウマ娘ファン ID:UGyvD15aU

 ラストkwsk

 

37:名無しのウマ娘ファン ID:2GB4lWUaq

 皐月賞で公開告白してたぞ

 

38:名無しのウマ娘ファン ID:Mq5g64oqd

 まーじで?

 

39:名無しのウマ娘ファン ID:GqTJvLGnA

 「トレーナー!アタシの船長になってくれーっ!」って追込で優勝もぎ取って言ってたな

 

40:名無しのウマ娘ファン ID:+EkIMRa7w

 それ微妙じゃね?

 

41:名無しのウマ娘ファン ID:eKWw6OTdG

 トレーナーには伝わったみたいだけどな

 

42:名無しのウマ娘ファン ID:pDWk9ZNcQ

 なおそのあと、巨大な鯉のぼりを掲げてウィニングライブならぬウィニングラン。ついでに最前列にいた子供を肩車するファンサービスを披露

 

43:名無しのウマ娘ファン ID:P7aoocOkj

 子供にやさしいのは素晴らしい(メソラシ

 

44:名無しのウマ娘ファン ID:IH+Kj4K9T

 鯉のぼりはどうやらマチカネフクキタルから奪った模様

 

45:名無しのウマ娘ファン ID:8k7TfUbRz

 フクキタルが叫んでたのそれでかwww

 

46:名無しのウマ娘ファン ID:rNwNfhnrG

 ゴルシで忘れてたけどゲーミングトレーナーというパワーワードが・・・

 

47:名無しのウマ娘ファン ID:T3L4Rl9QJ

 あーそれな

 

48:名無しのウマ娘ファン ID:9JRYBEle+

 本人はいたって常識人なんだけど、担当がねえ

 

49:名無しのウマ娘ファン ID:Lxord/Ngv

 マッドサイエンティストなんだよなあ。モルモット呼びやぞ

 

50:名無しのウマ娘ファン ID:wdSHmhDuh

 ひぇっこわい

 

51:名無しのウマ娘ファン ID:tMEcoAxOG

 なお実際はかなり大事にしてる模様

 

52:名無しのウマ娘ファン ID:ORB5s8ECB

 ワイトレセン用務員、話題のMrモルモットトレーナー、現在アグネスタキオンが背中にのしかかってだれている状態でデスクワークをしている模様。「かまいたまえよ~、トレーナーくぅん」という声が聞こえる。

 

53:名無しのウマ娘ファン ID:Rcleo/jon

 ヴッッッッッッ!!!

 

54:名無しのウマ娘ファン ID:QoQfmDwHG

 かわいい(迫真

 

55:名無しのウマ娘ファン ID:vNMYcJQ6E

 て待て!トレセンの用務員だと!?逃がすな囲え!

 

56:名無しのウマ娘ファン ID:yWHtfDeIS

 アラホラッサッサー

 

57:名無しのウマ娘ファン ID:WnafAnoea

 討ち入りじゃあああああ!!

 

58:名無しのウマ娘ファン ID:qBhWJdH7H

 くっ(テイオーステップ

 

59:名無しのウマ娘ファン ID:YaoMqv/FF

 なんの!(逃げ焦り

 

60:名無しのウマ娘ファン ID:ヨームイン

 で、何が聞きたいん?とりあえず仕事中だから手短にな

  

61:名無しのウマ娘ファン ID:baoX5CHZe

 仕事中に掲示板を開くな

 

62:名無しのウマ娘ファン ID:0xS/DXn/a

 仕事ってどんなことしてるん?ウマ娘と話したりする?

 

63:名無しのウマ娘ファン ID:ヨームイン

 >>62 主にダートとか芝の管理、あとよくものが壊れるからそれの補修。力加減ミスった踏み込みされるとコンクリが蹄鉄の形にへこんだりするからな。ウマ娘とは話したり話さなかったり。ただ見かけたら寄って来てくれる子はいるよ。ハルウララとかエアグルーヴとかニシノフラワーとか。

 

64:名無しのウマ娘ファン ID:FCwQHg3zo

 ハルウララはわかる。あの子の人懐っこさならたぶん誰にでも構いに行く。でもエアグルーヴとニシノフラワーはわからん

 

65:名無しのウマ娘ファン ID:ヨームイン

 >>64 花壇つながりかな。こういう形の花壇作ってくれないか、とかお花が綺麗に咲いたので見に来てください!とか

 

66:名無しのウマ娘ファン ID:QEYwTZqZ3

 ははあ、なるほど。裏山死刑

 

67:名無しのウマ娘ファン ID:0PSSxyRQn

 過激すぎィ!それはそうとこの前学園内で起きたイベントでタマモクロスが幼稚園児のコスプレしたってマ?

 

68:名無しのウマ娘ファン ID:ヨームイン

 ああ、あれね。したな、ゴールドシップの策略にはまって着てた。正直めっちゃ可愛かった

 

69:名無しのウマ娘ファン ID:UlSoNA2i0

 ま た ゴ ル シ か

  

70:名無しのウマ娘ファン ID:7UycCsOWq

 そういやトレセン学園の近くってなんかカフェなかったっけ?3年位前に行ったんだけどすげえウマ娘でごった返してたな。料理すげえうまかったんだけど。近くに行ったときもっかい行きたい

 

71:名無しのウマ娘ファン ID:5vJTapIa4

 そこもう完全予約制になっとるで

 

72:名無しのウマ娘ファン ID:Cv/E+AzJG

 うっそマジで?

 

73:名無しのウマ娘ファン ID:y8uAsY2u0

 たぶんそれホースリンクだよな?2年前に超画期的なサービスを打ち出した結果客がパンクして予約制になったんだっけ

 

74:名無しのウマ娘ファン ID:aRQOn+AKb

 ほほう、そのサービスとは?

 

75:名無しのウマ娘ファン ID:nMMj4pm5W

 勝負服を着た現役のウマ娘が接客してくれる。ついでに握手もしてくれるしサインしてもらえるし運がよかったらライブも聞ける

 

76:名無しのウマ娘ファン ID:snyFiWxXF

 Pardon?

 

77:名無しのウマ娘ファン ID:BIi9A4ktR

 だから、現役のウマ娘たちが勝負服を着て料理とか飲み物を運んで来てくれるって話らしい。毎度毎度抽選倍率えぐいよな

 

78:名無しのウマ娘ファン ID:qNEyDeM/f

 なにそれ神じゃん。なしてそんなことになったと?

 

79:名無しのウマ娘ファン ID:ヨームイン

 なんでも理事長が直接店の店長に頼みに行ったとか。そして店長は断らなかったという話。エアグルーヴが言うにはウマ娘とファンとの交流の場を恒常的に用意したかったんだと。この前はハルウララのイベントやってたな

 

80:名無しのウマ娘ファン ID:vcrOIJXCL

 参加したかったなー。近くの商店街の人は招待したんでしょ?ハルウララが直筆の招待状書いてさ

 

81:名無しのウマ娘ファン ID:TnAcEjTqM

 言っちゃ悪いがなんでG1ウマ娘の代表格の一人のハルウララが商店街の人に招待を?

 

82:名無しのウマ娘ファン ID:トレトレーナー

 ワイトレセンの新人トレーナー。蹄鉄先輩から聞いた話によると勝てなかったころから応援してくれていた最初のファンの人たちにお礼したかったのだとか

 

83:名無しのウマ娘ファン ID:aDU0yFfPe

 なにそれ最高に可愛いじゃん。そして貴様トレーナーだと?担当はだれじゃい

 

84:名無しのウマ娘ファン ID:b8pmDbM5/

 残念ながら実力不足で担当はついてません・・・

 

85:名無しのウマ娘ファン ID:tLC/l3h+X

 強く生きろ

 

86:名無しのウマ娘ファン ID:P8NUyEK51

 つらく当たって悪かったな

 

87:名無しのウマ娘ファン ID:HYqKUT3d6

 優しい世界。ってことはそのホースリンクとやらにワイの推しウマ娘であるスペシャルウィークが来るかもしれないんだな?

 

88:名無しのウマ娘ファン ID:トレトレーナー

 スペシャルウィークはその店常連だぞ。よく接客にも行ってる、賄い目当てで

 

89:名無しのウマ娘ファン ID:JiIMPxDNu

 オグリキャップもいそう

 

90:名無しのウマ娘ファン ID:ヨームイン

 オグリはどっちかというと食べに来る感じっぽい。マスターさん嘆いていたわ「オグリ来ると後続の分全部なくなる」って

 

91:名無しのウマ娘ファン ID:OhaN2fQ3a

 ・・・トレセンの食堂って食べ放題だったのでは?

 

92:名無しのウマ娘ファン ID:7DSyCIXtc

 朝食と昼食の間を絶食と称するウマ娘やぞ。足りるわけないだろ

 

93:名無しのウマ娘ファン ID:l40aSIeIB

 ところでホースリンク行ってみたいんやけど予約方法教えてくだチャイ

 

94:名無しのウマ娘ファン ID:e7qA/rNCc

 まずトレセン学園のHPへ飛べ。そして交流っていうタブがあるからそこをクリック、レース予定やらファン感謝祭やらの予定表を無視して一番下に「ウマ娘交流喫茶店・ホースリンク」のバナーをクリックすると予約ページに飛ぶ。そうすると1か月の定休日以外の日付に誰が出勤するか書いてあるから推しウマ娘を見つけて予約しろ。あとはひたすら祈れ、3日前くらいに連絡が来る。

 

95:名無しのウマ娘ファン ID:MhkBdzcRv

もし3日前に連絡が来たら本人確認証のコピー、住所、連絡先、目的のウマ娘への愛(ついで)をメールで送れ。これはウマ娘の安全のためワイらの身元確認に使われる。犯罪歴とかあったらまず行けないと思っとけよ?もし出勤してるウマ娘に何かあったら賠償金額億じゃきかないからな

  

96:名無しのウマ娘ファン ID:sO8fi4n+N

 ちなみにその連絡先等に運が良ければウマ娘本人から連絡が来ることもあるぞ。具体的にはいけなくなってしまったからごめんなさいっていう内容やな。ちなみにそうなった場合次の出勤日に予定が合えば確定で行けるからアフターフォローもばっちりだ。もしダメだったら直筆サインとグッズが郵送で届くぞ

 

97:名無しのウマ娘ファン ID:fapyo6M0K

 至れり尽くせりで草。なんや小さな喫茶店の割にはえらいしっかりシステム作ってんな

 

98:名無しのウマ娘ファン ID:トレトレーナー

 そりゃ店のマスター一応トレセンの所属ですし。予約の管理とかは学園の事務が行ってるんだなこれが。あの店接客はともかく調理とかドリンクとかそういうの全部マスター一人でやってるから手が回らんって

  

99:名無しのウマ娘ファン ID:5UXHxY8mg

 え?つまりもともと一人で店やってたってこと?おい3年前行ったとかいうやつ。どうだったん?

 

100:名無しのウマ娘ファン ID:オキャクマン

 ほいほい、いや店自体結構大きかったからさ、30席くらいあんのよ。行ったときは10時くらいだったんだけどそれでもウマ娘たちでパンパン、ワイも相席したんだわ。女の子と同じ席で飯食うなんて初体験だったからがちがちに緊張しててよく覚えてへんのだけど、ウマ娘たちが厨房に入ったと思ったら席の料理を全部持って出てきて、それを繰り返してたからセルフサービスか~と思ってたんやけど

  

101:名無しのウマ娘ファン ID:WftqSl9+p

 真実はただの人不足。そりゃパンクしますわ

  

102:名無しのウマ娘ファン ID:aRy8AKxUb

 いやそれでもおかしい。店長鉄人じゃん。お前も取りにいったん?

 

103:名無しのウマ娘ファン ID:オキャクマン

 いや、相席になったアンダーリムの赤い眼鏡かけた髪の毛がすごいもっふもふの芦毛のウマ娘が一緒にもってきてくれた。お礼言ったら「気にするな」ってスゲークールに言っててウマ娘かっけーって思ってたわ

 

104:名無しのウマ娘ファン ID:5bOw8quDx

 なあもしかしてそのウマ娘、頭大きかった?

 

105:名無しのウマ娘ファン ID:uMNi7lDBd

 毛量で大きく見えたけど普通じゃね?

 

106:名無しのウマ娘ファン ID:Kv3Lp6Dyi

 もしかしてこの子?  [http//syashin.com]

 

107:名無しのウマ娘ファン ID:s0T3viwJY

 おー!その子その子!いやあ成長しても美人さんだなあ!

 

108:名無しのウマ娘ファン ID:8LewwuLqp

 てめえこの野郎!ぶっ殺してやる!

 

109:名無しのウマ娘ファン ID:6GpevDVMx

 ファッ!?なんで!?

 

110:名無しのウマ娘ファン ID:bCXH3lLtv

 そのウマ娘はビワハヤヒデだ!トウカイテイオーとデッドヒートしてただろ!

 

111:名無しのウマ娘ファン ID:T44dtTdL7

 ・・・うそん。いやまって俺まだテイオーのレース全部見れてない・・・

 

112:名無しのウマ娘ファン ID:qcYpFILK4

 はーつっかえ。でもかなり人気だったんだなその喫茶店。行けた勇者いる?

 

113:名無しのウマ娘ファン ID:HOWCMufIl

 ノ

 

114:名無しのウマ娘ファン ID:Ey8yQYNdQ

 ノ

 

115:名無しのウマ娘ファン ID:FYiG0U9fZ

 ノ

 

116:名無しのウマ娘ファン ID:4YkXSFZpR

 割といるな、語ってくれ

 

 

117:名無しのウマ娘ファン ID:オキャーク1

 じゃあワイから。ワイツインターボファン。この前チームカノープスが来るという日に合わせて予約したんゴ。3日前になって当選の事実を知り家族驚愕、一人で予約したから連れてけとうるさい妹を放置して来店。出迎えてくれたのはマチカネタンホイザ、俺の目的のツインターボは奥で家族連れのお客さんとお客さんの赤ちゃんを抱っこして話してた。ツインテール引っ張られてたのに全然気にしてなかったな。正直現役のウマ娘たちがこんな近くにいる事実に感動してよく覚えてない。唯一覚えていたのは出た料理のハンバーガーがカノープスの面々が手伝って作ったものであることと。ツインターボと握手してサインもらったことくらい。お手々小さくて、でも力強くて最高でした。

 

118:名無しのウマ娘ファン ID:OR8WAeGge

 つまり実質ウマ娘の料理が食えたと

 

119:名無しのウマ娘ファン ID:ksSv++YPu

 ツインターボいいよね。レース展開が読めないのが最高にドキドキする。

 

120:名無しのウマ娘ファン ID:オキャーク2

 次俺が語るわ。俺はハルウララのファンなんだが、この前のハルウララのイベントに当選することができたんだ。倍率100万だぜ?すごくね?一生分の運が消えた気がするわ。それはさておき、そのイベント当日は店の中じゃなくて店の裏側にテラス席があるんだがそこで行われたんだ。ちょうどトレセン学園の運動場が見える場所にあって、すでに商店街の人でごった返してた。ハルウララを探したら商店街のおじちゃんたちに囲まれててすぐわかったな。すっごい笑顔で早速和んだよ

 

121:名無しのウマ娘ファン ID:BBqGDOONN

 宝くじで一等当たる並みの幸運の持ち主で草

 

122:名無しのウマ娘ファン ID:PPimM16au

 あのイベントいけたんか!羨ましいぞこの野郎!

 

123:名無しのウマ娘ファン ID:SnUx9QJd8

 ワイハルウララファン、予約メールに1万文字ほどハルウララへの愛をぶちまけ予約を入れ無事落ちる

 

124:名無しのウマ娘ファン ID:h6ekQrAat

 たぶん危険人物扱いされてるぞ

 

125:名無しのウマ娘ファン ID:トレトレーナー

 そういう人結構いるみたいよ。選考にはそんな関係ないけど

 

126:名無しのウマ娘ファン ID:AbLH1/G6q

 そうなのか。だけどトレセンに怪文書を送ってはいけない(戒め

 

127:名無しのウマ娘ファン ID:dEtM2v6zW

 怪文書って・・・・(´・ω・`)

 

128:名無しのウマ娘ファン ID:オキャーク2

 不憫な人はおいといて続き。店長さんは気さくなあんちゃんって感じの人だった。つっても全員分の調理をしながらだから話したりはしてないけどこちらの皿が空になった瞬間追加の料理が出てくるからよく見てるわって感じだな。さすがに商店街の人への感謝祭らしいのででしゃばる真似はしたくなくて壁のシミになってたんだがそしたらハルウララが挨拶に来てくれたんだよ。「たくさん食べて、たのしんでいってくれると嬉しいな!」ってさ。テンション爆上がりして腹が出るまで食べました(太り気味)

 

129:名無しのウマ娘ファン ID:oL1No8QA3

 誰だってそーなる 俺もそーなる(太り気味

 

130:名無しのウマ娘ファン ID:/vS/S3k7r

 お前はただの食いすぎやろピザ

 

131:名無しのウマ娘ファン ID:L+VCDy+BG

 ギックゥ!!

 

132:名無しのウマ娘ファン ID:HQdv8qp1m

 ドストレートで草

 

133:名無しのウマ娘ファン ID:iN/P8REpz

 最後の一人ドウゾ

 

134:名無しのウマ娘ファン ID:vMhJoHwUq

 次は誰じゃ?スペシャルウィーク?グラスワンダー?メジロマックイーン?

 

135:名無しのウマ娘ファン ID:トビイーリ

 違うんだな、これが

 

136:名無しのウマ娘ファン ID:oBM1qMrjV

 ほほー

 

137:名無しのウマ娘ファン ID:3iwC46vH6

 言うてみ言うてみ

 

138:名無しのウマ娘ファン ID:トビイーリ

 まあ話を聞いてくれ。俺はトウカイテイオーのファンなのだが、ちょうど仕事でトレセン学園の近くを通れる日とトウカイテイオーが来る日が重なったんだ。そうすると会ってみたくなるのが人情ってもんだろ?当然予約したわけだ

 

139:名無しのウマ娘ファン ID:m/1Mk/FcZ

 なるほど、その気持ちはわかる

 

140:名無しのウマ娘ファン ID:lPOrWDwl8

 そんで店に行ってトウカイテイオーと一緒にはちみーソングでも歌ったんだな?

 

141:名無しのウマ娘ファン ID:トビイーリ

 そして予約は見事に外れたんだ。悔しさに枕を3日ほど濡らしたがとりあえず仕事に励んだ。でもどーしても諦めきれずに件の喫茶店を一目見ておこうと思って足を運んだわけさ。昼休憩に行くつもりだったが予約が外れたので閉店時間を過ぎた後だった。

 

142:名無しのウマ娘ファン ID:XudQ35qOe

 なんやて工藤

 

143:名無しのウマ娘ファン ID:HIfVKVy/z

 やってることから悔しさにじみ出てて草

 

144:名無しのウマ娘ファン ID:トビイーリ

 しばらく「へーここが・・・普通に訪れたい店構えじゃん」と涙をこらえて観察していたのだが、満足して帰ろうとしたところで喫茶店のドアが開いた。そこから出てきたのは喫茶店の店長さんだった。どうやら看板を片付けに出てきたらしい。彼は俺に気付くとここで何をしてるのか尋ねてきた。変な疑いを持たれたくなかった俺は洗いざらい話してしまったんだ。

 

145:名無しのウマ娘ファン ID:pAzSuj8rQ

 急展開

 

146:名無しのウマ娘ファン ID:hmRtDEurY

 ほほう、確かに店をじろじろ眺める不審者だもんな

 

147:名無しのウマ娘ファン ID:5m9hAnHz2

 へんたいふしんしゃさんかもしれないわけで

 

148:名無しのウマ娘ファン ID:トビイーリ

 やめてくれよ!俺はそういうんじゃないんだから!そんで俺の悲しみの訳を聞いた店長さんが一言「料理だけでいいなら食べていきますか?ウマ娘はいませんけど、半額にしときますよ」と言ったのである

 

149:名無しのウマ娘ファン ID:A7yRYULg9

 なんと!?

 

150:名無しのウマ娘ファン ID:/JIZyXr7/

 貴様あの店は料理も旨いという話じゃないか!いいなあ!

 

151:名無しのウマ娘ファン ID:トビイーリ

 そして俺はそれを見逃すはずはなく、二つ返事で店長さんにお願いをした。店長さんは快諾してくれて、看板を持った彼の後ろについて店内にイン。確かに誰もいない店内だったけど壁に掛けてある蹄鉄の数に圧倒されたね。店長さん曰く来てるウマ娘がG1とかで優勝した記念に片っぽを喫茶店に寄付してるらしいんだ。もう片っぽはトレーナーかウマ娘自身が持ってるんだって。つまり、レースの時につけてた蹄鉄ってわけよ

 

152:名無しのウマ娘ファン ID:トビイーリ

 内装は普通の喫茶店だけどそれなりに大きな店の半分くらいがたぶんウマ娘がライブする用のステージに占拠されてた。店長さんはすぐにドリンクを聞いてきてアイスコーヒーをお願いしたんだ。コーヒー死ぬほどうまくて驚いたんだけど出てきた料理もすごかった。鉄板に卵を敷いてナポリタンを盛ってその横にでかいにんじんハンバーグがデン!とあるわけ。味ももちろん絶品、人気になるわけだよ。

 

153:名無しのウマ娘ファン ID:aC/uL2GJ5

 いいなー、正直料理だけでもいいから食ってみたい。2号店出さへんの?

 

 

154:名無しのウマ娘ファン ID:ヨームイン

 結局料理のレパートリーで店長に匹敵する人がいないんだと。あとウマ娘と仕事させても大丈夫なオリハルコンメンタルが必要だから。どんなことされても何ともない鋼の理性がですね

 

155:名無しのウマ娘ファン ID:Bsfpt8HZ6

 俺両方ねーわ

 

156:名無しのウマ娘ファン ID:kGPyLWuuR

 そう考えると店長さんやべーな

 

157:名無しのウマ娘ファン ID:トレトレーナー

 あの人はなあ、多分ウマ娘全員妹か娘とかにしか思ってない。スーパークリークも娘扱い、エアグルーヴも頭を撫でられるし、何だったらこの前マヤノトップガンを肩車して買い物してたぞ

 

158:名無しのウマ娘ファン ID:トビイーリ

 店長さん死ぬほど羨ましい。そんで話はここじゃ終わらないんだ。暫く店長さんと雑談はさみながら料理に舌鼓を打ってたんだけど。唐突に店のドアが開いたんだ。俺は業者でも来たんだろうと気にせずに料理に集中してた。そして店長さん一言「お~ルドルフ、いらっしゃい。飯食うか?」   ル ド ル フ!?!?!?!?

 

159:名無しのウマ娘ファン ID:IMKWjWeMN

 ルドルフってあのシンボリルドルフ!?

 

160:名無しのウマ娘ファン ID:chYzcq2My

 皇帝が閉店後の喫茶店にくんの!?

 

161:名無しのウマ娘ファン ID:7t4XPcuxq

 なんかお忍びっぽくてよき

 

162:名無しのウマ娘ファン ID:トビイーリ

  ちょうどナポリタンを頬張った俺は激しくせき込んだのだがさすがに皇帝の前で鼻からスパゲティを出す醜態をさらしたくない。頑張って飲み込んで口元を拭いてから振り返ったわけだ。そうするとドアを丁度閉めてこっちを向いた感じのシンボリルドルフと目が合った。トウカイテイオーの前はルドルフをひそかに応援していたワイ、感動で泣きそうになり、店長を見た後ルドルフを3度見位したと思う

 

163:名無しのウマ娘ファン ID:6mPf+sqLs

 そりゃ奇跡の7冠ウマ娘だしなあ。もうめっきり公の場には出てないし

 

164:名無しのウマ娘ファン ID:Ds50jBGwe

 もう裏方に回るようにしたんでしょ?たまに引退ウマ娘レースで走ってるらしいけど

 

165:名無しのウマ娘ファン ID:トビイーリ

 ルドルフは呆れたものを見る目で店長を見た後「閉店しているのではなかったのか」と店長を問い詰めた。やっべ俺のせいだと謝ろうと思ったが店長は「俺の店なんだからいつ客がいてもいいだろ。食事目当てのルドルフさん?」と皇帝相手にまさかの挑発。そしてシンボリルドルフ、顔を少し赤らめて耳を前に倒し「それを言うのは反則だ・・・」と。皇帝、まさかの図星

 

166:名無しのウマ娘ファン ID:84UEHo5ax

 ルドルフのイメージが一瞬で崩れた。

 

167:名無しのウマ娘ファン ID:JmINw3lBF

 凛々しさの中にある可愛さが最高

 

168:名無しのウマ娘ファン ID:Yf7uest1L

 ルドルフのグッズ買いあさるわ。

 

169:名無しのウマ娘ファン ID:トビイーリ

 結局シンボリルドルフは本当に食事に来ただけらしく、制服姿だったんだけど「勝負服じゃなくてすまない」って本来なら俺が謝るところだったのに逆に謝罪してきてサインまで書いてくれた。さすがに緊張してきた俺なんだけど彼女と話すことができて幸せだったよ。特にシンボリルドルフから見た今のトゥインクルシリーズの話はためになった。まあ店長と話したそうだったから俺は早々に食べきってお会計したんだけどな。半額のはずがドリンクおごりになってて店長に惚れかけたのは内緒だ

 

170:名無しのウマ娘ファン ID:0VPNtj6E6

 まさに怪我の功名、棚から牡丹餅。いいなあ

  

171:名無しのウマ娘ファン ID:KlJs4sa4Q

 ・・・ところでトレセン関係者たち。ルドルフと店長の関係についてkwsk

 

172:名無しのウマ娘ファン ID:ヨームイン

 しらん

 

173:名無しのウマ娘ファン ID:トレトレーナー

 出身地が同じらしいとは小耳の挟んだ。ほかはしらん

 

174:名無しのウマ娘ファン ID:dXBGavMP8

 はーつっかえ!

 

175:名無しのウマ娘ファン ID:xdgr8OV+6

 やめたらこの仕事?

 

176:名無しのウマ娘ファン ID:idwg7M6NU

 まあいいや、そんで次の話だけど・・・・

 

 



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はちみードリンク

 日曜日だ。Sunday!定休日と見せかけた開店日。もう営業しなくていいっすか~?などと考えている今日この頃、残念ながら開店しないと方々のウマ娘のお嬢様方からなぜか文句が出るので営業しなくてはいけない。ぶっちゃけ今日の仕込みはないに等しいっていうしかない!昨日のうちに済ませてあるからだ!

 

 昔は料理のメニュー表があった時期もあるんだけど俺の手が追い付かなくなってやめた。なんせ忙しすぎるのでな、俺一人でウマ娘何十人分の料理を仕込み別でいろいろこなせっていうのは無茶が過ぎる。というわけでホースリンクのスタイルは日替わりメニュー一択、ドリンクメニューはあるけど。そんで今日の日替わり、牛タン煮込みカレー、温玉チーズのせはすでに作成済み。とろーりほぐれる牛タンにごろごろ野菜、温玉のまろやかさとチーズのパンチが後引く一品である。カレーあっためてチーズ削って乗っければ終わり!

 

 そんで今日はオグリもスぺも来ない!どっか遠征に行ってるとかなんとか。つまり夕方まで営業可能!素晴らしい!これで「え、ご飯ないんですか・・・?」とか「うぅ~ここのご飯楽しみにしてたのに・・・」と耳をぺったりしおしおにして引き返すウマ娘という俺のせいじゃないのに心を痛める光景から解放される!というわけでそろそろ・・・

 

 「準備したいからどいてくれない?」

 

 「やだ!ターボ暫くここにいる~~!!」

 

 「いいんだけどさぁ・・・」

 

 「えへへ、マスター一人占めだ!」

 

 そう、店には安楽椅子が5つほどおいてあるのだがそれの一つにどっかりと腰かけてコーヒーブレイクしてる俺、そしてその俺の上に乗っかって今日のデザートのミルクジェラートを美味しそうに頬張っているのがご存じカノープスの大逃げウマ娘、ツインエンジ「ツインターボ!」・・・ツインターボである。

 

 俺がとりあえずの準備を終えて自分用のコーヒーと味見用のジェラートを皿にもってアフォガードでも楽しもうと思ってたのだが鍵を開けていたせいでツインターボが半泣きで来襲してきた。俺を見つけ、座ってるのを見た彼女はピン!と耳を立てて俺のほうへダッシュ、ぴょんと跳ねて俺の膝の上にぽすんと軽く収まり、ミルクジェラートを見つけ目を輝かせ、今に至る。ターボちゃん君もうすぐ高校生でしょ?だめだよ男に向かってそんなことしてちゃ。俺二十代だけど娘を持つ親の気持ちを理解しそうになってるよ今。

 

 「で、なんでこんな朝早くからここに来たんだ?」

 

 「だって、みんなターボを置いて自主練に行っちゃったから・・・」

 

 「お前も一緒に行けばよかったじゃないか」

 

 「トレーナーが、オーバーワークになるからターボは絶対ダメって言うんだもん!ターボだってみんなと走りたいのに~~~!」

 

 という事情を聞いてみるにここ一週間ターボはトレーニングをやりすぎなくらい頑張ってしまったらしい。そこでそれを見たトレーナーが何が何でも今日は休むよう厳命したそうだ。それを聞いたチームのナイスネイチャ、マチカネタンホイザ、イクノディクタスは仕方なく、仕方なくターボを置いて自主練へ。

 

 そして寂しくなったターボは友達を当たるのだがみんな寝てるか練習中、もうどうしようもなくなったので仕込みで起きているであろう俺にかまってもらいに来たということだ。まあ構ってあげるのはいいんだけど、ターボは素直で話してて楽しいし。ちょっとわがままだけどそこがまた可愛らしいよな。まー暫くかまってやるか、火を使ってるわけじゃないし開店時間まで3時間くらい時間あるし、とちょうどいい位置にあるターボの頭に手を伸ばして撫でる。

 

 頭に触れた瞬間ピクン、と耳が動く。それにかまわず耳ごとかき混ぜるように優しく撫でてやる。ターボはこうやって頭を撫でられるのが結構好きだ。ジェラートを食べ終わった彼女は俺に体を預けるように倒れこんでぐりぐりと後頭部を俺の胸あたりにこすりつけて催促してくる。そのまま撫でているとターボが俺の上で寝息を立て始めてしまった。子供かお前は。しかもご丁寧の俺に片腕を枕にして寝やがって、動けねえじゃん。どうすっべかなー。

 

 そうして姿勢を保つこと1時間30分後、そろそろ腕のしびれが限界を突破してるので俺の服に盛大に涎を垂らすツインターボを起こすことを検討し始めた矢先、またも喫茶店のドアが開いた。

 

 「あーー・・・やっぱいるよね、ターボ」

 

 「わ、マスターさん大丈夫ですか?」

 

 「ターボがご迷惑をおかけしています。申し訳ありません」

 

 「おー、まあそれはいいんだけどターボ引き取ってもらっていい?そろそろ辛いんだわ・・・」

 

 「わわわわ!ごめんなさいターボちゃんがご迷惑かけて・・・!」

 

 正直ターボは軽いんだけど1時間半も同じ姿勢でいるのはだいぶつらい。タンホイザが軽々とターボの両脇に手を差し込んで持ち上げてくれたことでようやく俺は立ち上がることができた。いろんな個所からバキボキと音を立てて立ち上がり、姿勢が変わったことで起きたツインターボが素っ頓狂な声をあげる

 

 「あれ!?みんなだ!どうしたの?」

 

 「どーしたのーじゃないのターボ!マスターさんに迷惑かけてんじゃないわよ!」

 

 「いだだだだ!!ネイチャ頬引っ張りすぎ!」

 

 「お、し、お、き、よ!全くもう・・・すいませんマスターさん、私たちはこれで・・・」

 

 「失礼します」

 

 「お邪魔しましたー」

 

 「おー、ターボを可愛がってやれよ~」

 

 「ネイチャ!痛い、痛いよ~!!」

 

 「足りないって~?タンホイザ、イクノ。やっておしま~い!」

 

 「失礼します、ターボ」

 

 「むぎゅ!」

 

 「ターボちゃん、反省してね」

 

 「うぎゅうううう!?ごめん、ごめんなさい~~~」

 

 「ほどほどにしてやってくれよ~怒ってないからな」

 

 頬を引っ張られて涙声になりつつもどこか嬉しそうなターボと、ちゃんと加減しながらかまってあげる3人にほっこりしながら俺はストレッチを開始するのであった。右手がガガガガガガ・・・・

 

 

 

 

 「マスターさん、ごちそうさまー」

 

 「おー、気をつけて帰れよー」

 

 そんなこんなで今日の営業はもう終了、いい時間になったしそろそろ閉めるかね。と看板を引っ込めて暫く。空が茜色に染まった時のことだ。ちょうど俺が洗い物を全て片付けて今日最後のコーヒーをキメようとしたとき、ドアの前に小さな影が二つ、まるでトーテムポールかのように並んでいるのを発見した。

 

 「み、見つかってないよね・・・?」

 

 「キタちゃん、もっと詰めて、見えないよ~・・・」

 

 「わ、ダイヤちゃんおしすぎ・・・」

 

 「だって見えないんだもん~」

 

 ・・・頭隠して尻隠さずどころか全身丸見えの影二人分はどうやらウマ娘であるようだ。それもニシノフラワーより年下くらいの、つまり小学生。ウマ娘でここまで仲がいいのは珍しいかもしれない。1学校に10人いたら多いといわれるくらいだからなウマ娘は。シルエットを見る限り見たことはない。俄然気になってきたぞ。

 

 どうやら俺のほうを見ずに言い争いというかプチ喧嘩をしてるらしい二人に気付かれないようにドアにそっと近づいて開ける。ドアの先には活発そうなショートの黒鹿毛のウマ娘と大人しそうな鹿毛のウマ娘がちょうど開いたドアを見ているところだった。うん、身長的にどう見ても小学生だね。私服だしトレセン生ではなさそうだ。

 

 「えと・・・その・・・」

 

 「あの・・・」

 

 「うーんと、びっくりさせてごめんな。俺はここの店でマスターやってるもんだ。申し訳ないけど今日はトレセンのウマ娘以外には定休日でね。もしここに来たいって思って来てくれたんならお父さんやお母さんにお願いして予約してほしいんだけど・・・」

 

 「「ご、ごめんなさい!!!」」

 

 二人のウマ娘は怒られると思ったのか勢い良く頭を下げた。そして同時に俺にとんでもないレベルで罪悪感が募っていく。心が痛いので訳を聞くことにしよう。

 

 「ああいやいや、怒ってるわけじゃないから。それでなんだけど、二人はどうしてこの店に来たのかな?」

 

 「はい、えっと私はキタサンブラックっていいます。その、この喫茶店がレースに出てるウマ娘と会えるって聞いて、その・・・」

 

 「サトノダイヤモンドです。どうしても行ってみたくて・・・」

 

 「なるほど、来てしまったと」

 

 そういうことなら、というかちょっとうれしいな。ウマ娘ありきとはいえこんな小さな子たちまで俺の店のことが広まってるなんて・・・今の時間的にもギリギリだな・・・?まあ行けるか。

 

 「ま、そういうことならちょっとだけ入っていくか?飲み物くらいはおごってあげるよ。帰るなら気を付けて帰ってくれ」

 

 俺がそういうと二人は同時に顔を見合わせて目をぱちくり、耳をパタパタ。言われたことを信じられないみたいな感じだ。けど戸惑いもあるのだろう、二人で頬をくっつくほど近づけてこそこそと話し出した。仲がいいようで大変よろしい。内緒話のようなのでちょっと離れて待っててあげる。

 

 「キタちゃん、どう思う?」

 

 「あやしいんだけど・・・でもこれを逃したら・・・」

 

 「うん、もう入れないかもしれない・・・」

 

 「「うう~~~~ん」」

 

 悩んでる悩んでる。というかちょっと声が聞こえてるのが微笑ましい。やがて意を決したようにシンクロして顔をこっちに向けた二人は

 

 「「お願いします!」」

 

 「よし、ホースリンクへようこそ。中へ入ってくれ」

 

 そうしてドアを開けて二人を案内する俺。キタサンブラックは瞳を輝かせて、サトノダイヤモンドはおっかなびっくりドアをくぐってすぐに歓声を上げた。

 

 「すごい!蹄鉄がいっぱいかかってる!」

 

 「もしかしてこれがネットに書いてあった、レースの時につけてた蹄鉄ですか!?」

 

 「おお、よく知ってるね。そうそう、なんだか知らないけどレースの時に履いてた蹄鉄をうちに寄付するのが流行ってるらしくてね。さすがに数が多くなってるから仕舞ってるのもあるけど一人5個くらいは飾ってあるはずだよ」

 

 「「わああああ!!!」」

 

 子供は現金だなあ。というか蹄鉄見て喜ぶなんてさすがはウマ娘。と思っていると二人とも何かを探しているような感じだ・・・なんだ?いや、誰が履いてた蹄鉄か確認したいのか?ということはいわゆる推しというやつがこの二人にもあるんだろうか。

 

 「誰の蹄鉄か気になる?それとも誰かのファンなのかい?」

 

 「はい!私、トウカイテイオーさんの大大大ファンなんです!だからどこかにかかってるのかなって!」

 

 「私はメジロマックイーンさんが好きなんです!あの、どこかにかかってますか?」

 

 「へえ、テイオーとマックイーンの・・・もちろんかかってるよ。テイオーは右端、マックイーンはその隣だ。ほら、あそこ」

 

 俺が指をさして二人の蹄鉄を示した瞬間まるで瞬間移動のように二人はテイオーとマックイーンの蹄鉄のもとへ行って釘付けになった。あそこまで熱心だとちょっとサプライズしてやりたくなるな・・・よし、今日確か二人はスぺの遠征についていってるゴルシとトレーナー以外はフリーだったはずだし、ちょっといたずらしてやれ。

 

 というわけで蹄鉄に夢中な二人を置いて厨房に引っ込んだ俺は素早くスマホでメールを入れてテイオーとマックイーンを呼び出すことにする。まあ今日のデザートの処理に付き合えって言えば来るだろ・・・って返信はっや。二人とも食いつきすぎだろ・・・まあいいや。とりあえず今いるキタサトコンビ(省略)にテイオーとマックイーンがいつも飲むドリンクを出してやろう。あとついでに倉庫を・・・あったあった。

 

 というわけでドリンクははちみーとトレセン内で呼ばれている蜂蜜をメインにしたドリンクだ。正直屋台やスタンドで売ってるものは蜂蜜がたっぷり入ってるせいでくどく感じるのでホースリンクではレモネードをベースにして蜂蜜の甘さを引き立てるような作り方をしている。もちろん蜂蜜の多さは調節可能だ。

 

 というわけでキタサンブラックはテイオーの好みの固め多めダブルのマシマシ、サトノダイヤモンドはマックイーンが好きな柔め薄め少な目という正反対のはちみーを作ってさっき発掘した少し古びた蹄鉄をもって二人のもとへ行く。

 

 「満足したかい?」

 

 「あっ!夢中になっちゃった・・・」

 

 「あの、マスターさんごめんなさい。貴重なものだったからつい・・・」

 

 「いいっていいって。そんでこれ飲み物ね。俺のおごり、はちみーっていうんだけど知ってるかな?キタサンブラックちゃんのはテイオーが、サトノダイヤモンドちゃんのはマックイーンがよく飲んでる味だ」

 

 「テイオーさんの・・・?」

 

 「マックイーンさんが好きな味、ですか?」

 

 「そ、二人とも常連だからね。どういうものが好きなのかは知ってるよ」

 

 マックイーンに至っては開店前に高頻度で来るしな。テイオーも結構来るけどマックイーンが一番売り上げに貢献してるといっても過言じゃない。さすがメジロのお嬢様はお金持ちですねぐへへへへへ。二人が興味津々ではちみーについてるストローに口をつけて中身を吸う。こくん、と飲み込んだ二人が顔を合わせて声をそろえ

 

 「「おいしい!」」

 

 「そりゃよかった。ついでに倉庫からこれ持ってきたんだ。何だと思う?」

 

 「それって・・・」

 

 「蹄鉄、ですか?」

 

 キタサンブラックとサトノダイヤモンドに古びた蹄鉄を渡す。不思議そうに蹄鉄を眺める二人に向かってネタ晴らし。

 

 「それね、テイオーとマックイーンがメイクデビューで着けてた蹄鉄。そういえばもらってたからさっき掘り出してきたんだ」

 

 「「えええっ!?」」

 

 「ま、俺も色々知ってるし話してあげたいんだけど。そういうのは本人から聞くべきだからね、ねえ?」

 

 「本人・・・?」

 

 「ですか・・・?」

 

 「もー!何なのさテンチョー!裏口から入ってこいだなんておかしいよー・・・?テンチョー、その二人だれ?」

 

 「あら?見覚えが・・・たしかサトノ家の娘さんでしたわね?マスターさん、どういうことか説明してくださいまし」

 

 「テイオーさんだ・・・!」

 

 「マックイーンさん・・・!」

 

 俺の後ろからタイミングを見計らったように登場したトウカイテイオーにメジロマックイーン、私服姿の二人は本来俺の店にいない小学生二人組に首を傾げていたのでここで説明を挟んでおく。二人のファンらしいのだけどうちを見に来たついでということで会わせてあげたくなったという話をすると得心顔の二人は

 

 「へー!僕のファンなんだね!僕は無敵のトウカイテイオー!君の名前は?」

 

 「キ、キタサンブラックです!あのあの、デビューからずっと応援してます!」

 

 「ありがとー!キタちゃんかあ・・・よろしくね!」

 

 「メジロマックイーンですわ。サトノ家のご令嬢と会えるなんて光栄ですわね。いつも最前列で応援していらっしゃるでしょう?覚えておりますわ」

 

 「は、はい!サトノダイヤモンドです!天皇賞、すごい走りでした!憧れてます!」

 

 「ダイヤさんと仰るのですね。ふふ、ありがとうございます」

 

 「ああ、そうだ二人とも、日曜日ならいつでもおいで。トレセン学園の生徒専用の日だけど二人は特別に入れてあげるよ。ただ、ご両親の了承は得てから来てね?」

 

 と言いながら今日余ったジェラートを4人分まとめて出す。どうせ明日は別のもん作るんだし余らせてもしょうがない。廃棄するのももったいないから食べてもらえるのならそれが一番いい。本来ミルクジェラートだったんだがさっきキャラメルと混ぜてキャラメルジェラートに変わっているそれを歓声を上げてパクつきだす4人、と思ったところでキタサンブラックのスマホが鳴った。真っ青になったキタサンブラックが電話に出る。

 

 「お、お母さん!?ごめんなさいちょっと遠くまで遊びに来てて・・・うん、うん・・・どこってえっと・・・」

 

 あーこれは怒られるやーつ。というか100%俺のせいなのでキタサンブラックに電話を替わってもらって事のあらましを話す。最初は誘拐犯かと疑われたがサトノダイヤモンドがとっさの機転でビデオ通話に切り替えたことにより映ったテイオーとマックイーンのおかげで事なきを得た。さらにダメ押しはマックイーンの

 

 「良ければ私の車で送迎いたしますわ」

 

 という鶴の一声だった。いやー何とかなった!というわけでジェラートを食べきった4人が楽しそうにマックイーンの執事さんが運転する長いリムジンに乗って帰っていった。ついでにメイクデビューで二人が履いてた蹄鉄を見つけたテイオーとマックイーンが

 

 「テンチョーこれキタちゃんにあげていい?」

 

 「マスターさんこの蹄鉄ダイヤさんに差し上げてもよろしいかしら?」

 

 といってきたのでしまっておくより断然そっちのほうがいいと思うので二人にプレゼントすることにした。最初は拒否してたけど強引に渡されて受け取った二人の嬉しそうな顔で俺まで笑顔になっちまったよ。今日は新しい出会いがあって楽しかったな。さてさて、明日の仕込みをしないとっと。

 

 俺は明日のメニューとくる奴を考えながら冷蔵庫の中身を確認するのだった・・・やっべニンジンあと少しじゃん。




 というわけでこの小説ではキタサトコンビはロリのほうで行きます(鋼の意思
 次はだれを書こうかなあ


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白みそ海鮮豆乳鍋 

執筆途中で一回間違えて投稿しちゃいました。勘違いをしてしまった方、ごめんなさい


 今日は出かけることにしよう。というのも実は今日は水曜日ではないのだが有給取らないとトレセンが怒られるらしいのだ。週休二日だと思ってたら週休一日だしな今の俺。そんで労働法に引っかかることがままあるのでどっかで帳尻を合わせてやらないと理事長が涙目になって店に突撃してくる羽目になる。あの人泣かせると長いからなー・・・

 

 正直いつまでも店にこもっててもカビが生えるかもしれないからたまには日の光を浴びて光合成をしないといかん。でもやることなんてないようなもんだ。車はあるにはあるが遠出したいとも思わんし歩きでどっか行くかー。

 

 そうして繰り出すのは商店街。ハルウララとナイスネイチャのホームみたいなもんだ。町のいたるところにいろんなウマ娘のポスターやらグッズやらが散見される。とりわけ多いのがさっき言った二人、ハルウララが宣伝するスポドリとナイスネイチャが宣伝してるシューズのポスターが最近のトレンドか?ほかにも人気があるウマ娘のポスターがちらほら。申し訳程度によく見るアイドルのポスターも張られているあたりこの商店街がどれだけウマ娘を押しているかわかるな。

 

 「お、喫茶店の兄ちゃんじゃねえか!この前はお疲れさんだな!よかったら寄ってくかい?安くしとくぜ」

 

 「どうも、お疲れ様です。じゃあお言葉に甘えて少し・・・」

 

 「おうおう!見てけ見てけ!!今日のおすすめはタイだ!謎の金色ウマ娘が捕ってきた鮮度抜群のタイだぜ!」

 

 「何やってんだゴルシ・・・」

 

 あいつ現役のはずだよな?「私が捕りました」のポップアップにスピカトレーナーと強引に肩組んで笑顔で映るゴルシを見てそう漏らす。・・・でもめっちゃええタイじゃん。どうしよ、買っていこうかな・・・鍋、そうだな今日は寄せ鍋にしよう。そうと決まれば善は急げ~。タイ、タラ、あとサケ・・・・白みそベースでいいかな?すりごま振ればおいしそうだ。でも一人じゃあれだし誰か呼ぶか。どうせ欠食児童の集まりみたいなウマ娘ばっかだし呼べば誰か来るだろ。おっ伊勢海老~、立派だな、これも買いっと。

 

 「おっちゃん、これとこれと、これ、あとこの伊勢海老5匹もらえる?」

 

 「さっすが御大臣だな!いつも通り届けとくからよ、代金は・・・こんくらいだな。ついでにおまけでもう一匹伊勢海老つけてやる」

 

 「おおう太っ腹。じゃあこれお金ね、ありがとー」

 

 「おう、ありがとさんだ。ウララちゃんのこと、頼んだぜ」

 

 「蹄鉄に伝えておきますよ」

 

 一応店の仕入れもこのあたりの店で行ってるのでいつもの材料と一緒に夕方に届けてくれるそうだ。個人店はこれがあるから買い物が楽になるんだよなあ・・・。さてさていい買い物もできたし次はどこに行こうかなー・・・ん?前方に見覚えのあるウマ娘が・・・というか常連だ。日曜日に必ず来るウマ娘。長い青鹿毛にぴょこんと飛び出た白いアホ毛が特徴的な

 

 「マンハッタンカフェじゃないか。奇遇だな」

 

 「マスターさん、こんにちは。マスターさんこそ珍しいです、こんな平日に商店街をうろついているなんて・・・今日はお休みですか?」

 

 「ん、ああ。休みなんだよなあ・・・そんで暇を持て余して出かけてるんだ」

 

 「そうなんですね・・・」

 

 どこかぽやんとしているマンハッタンカフェの黄色の瞳が俺を物珍しそうに捉える。彼女は少し考えて視線を外し・・・どこ見てんの?俺の後ろになんかいる?やめてくれよ虚空をじっと見つめるの。視線を俺に戻した彼女はそっと俺の服の裾をつまんで引っ張り始めた。

 

 「どうした?」

 

 「折角なのでお茶でもと思いまして。喫茶店の店主に紹介するのは失礼かもしれませんがマスターさんのお店に行けないときによく利用してるお店があるのでどうかな、と」

 

 「へえ、俺の店とどっちがいい?」

 

 「・・・卑怯です」

 

 「じょーだんだよ。好きな店に行きゃいい」

 

 「では、私と一緒に喫茶店に行ってくれますか?」

 

 「もちろん、奢ってやるよ」

 

 「・・・やった」

 

 俺の服の裾を引っ張っていない手で小さくガッツポーズをしたマンハッタンカフェにつれられて少し歩いたところにある喫茶店に入った。いわゆるチェーン店の喫茶店でよく見るものだが、物静かなところが好きなマンハッタンカフェがよく利用するところなだけあって席と席のスペースがゆったりととってあり、仕切りが多い間取りとなっていた。

 

 「私はブレンドとモーニングで・・・マスターさんはどうしますか?」

 

 「エスプレッソ、あとミックスサンドかな」

 

 こういうチェーン系の店ではいわゆる「ウマ娘盛り」と呼ばれるものがあるのだが、大体料金2倍くらいで人間サイズの3倍ほどが相場のつまりメガ盛りメニューだ。ウマ娘自体はそこそこ珍しくはあるが結構頻繁に店に来店したりする。そこで発生するのが人間サイズに合わせた料理の量だ。もちろんウマ娘には燃費の関係上全く足りないのでいくつも料理を頼む羽目になって出費がかさんでしまう。そこで考案されたのが「じゃあ多くすればいいんだろ!ウマ娘にはサービスだもってけぇ!」とやけくそで考案されたウマ娘サイズというわけ。だからカフェが頼んだモーニングも結構すごい。

 

 大きなサラダボウル、分厚いバタートーストが4枚、スクランブルエッグは卵5個分はありそうだ。俺の頼んだサンドイッチのサイズと比べても圧倒的である。死ぬほどどうでもいい話だが俺の店はデフォルトがウマ娘サイズだ。もちろん人が来るときは調整するが昔々のウマ娘を相手にして商売をしていた時はウマ娘サイズからさらに大盛り、超大盛りがあった。今はビックバンサイズ(スぺとオグリのデフォルトサイズ)なんていうのもある。

 

 「ふー、ふー・・・」

 

 「・・・やっぱチェーン店だな。あ、そうだ。なあカフェ」

 

 「はい、なんでしょうか?」

 

 「夜に鍋作るつもりなんだがよかったら食べに来るか?」

 

 「よろしいんですか?」

 

 「いいよ、おいで」

 

 「じゃあ、お願いします」

 

 コーヒーが好きなのにいっぺんに飲むとお腹を壊すマンハッタンカフェがゆっくりとコーヒーを冷ましながら飲むのを見ながら俺もエスプレッソを飲む、がやはり万人受けする味で自分で淹れる自分好みの味には程遠いものだった。カフェも俺の店でよく頼むカプチーノを頼んでないあたりこの店で一番好みの味なのがブレンドなのだろう。ついでに夜の鍋に誘うと来てくれるということなので時間を教えておくことにする。

 

 そうして特に話すこともなく1時間ほど喫茶店に滞在した俺とマンハッタンカフェが店をでる。無表情であるが満足そうにぽわぽわしたオーラを出すマンハッタンカフェをなんとなく撫でまわして別れ、またぶらぶらと目的もなく徘徊することにした。

 

 ぶらぶらっと商店街を抜けて繁華街に入る。ここら辺は大きなゲーセンやらショッピングモールやらスポーツセンターやら大きな施設がわんさかある。目的地もないがとりあえず調理道具とか見に行こかな~

 

 「・・・店長を視認。おはようございます」

 

 「あれ?ブルボン?この時間なら何時もトレーニングしてると思ってたんだけど違うんだな?」

 

 「一部を肯定します。本来ならこの時間帯は確かにトレーニングを遂行していますが本日はマスターより完全なオフをいただきました。故にマスターのオーダー「単独による気分転換」を遂行しようと近くのショッピングモールへ行こうとしたのですが・・・携帯の調子が悪く、迷っています」

 

 俺の後ろから声をかけてきたのは私服に身を包んだミホノブルボンだった。フード付きのトレーナーの上からゆったりとした上着を着た彼女がまるでファミコンがぶっ壊れた時に映るような画面になったスマホを見せてくれる。如何にも機械っぽい印象があるミホノブルボンであるが実はとんでもない機械音痴で触るだけで機械が壊れること多々、自販機が爆発してしまったこともあるのだとか。つまり携帯電話もその例にもれなかったということで・・・

 

 「とりあえず携帯貸してくれ・・・再起動は・・よし。直ったな。ショッピングモールか、一緒に行くか?俺も暇を持て余してるんだ」

 

 「本当ですか!?・・・あ、いえ失礼しました。ミッションを「店長と一緒に気分転換」に変更。逸れる可能性を消去するため手をつなぐことを希望します」

 

 「・・・それ必要か?」

 

 「逸れるかもしれませんので」

 

 「いや、そんな混んでないし」

 

 「・・・嫌、ですか?」

 

 珍しくうれしそうなブルボンが手を差し出してくるが必要ないだろと返すと悲しそうな雰囲気になってしまったのでええいままよと手をつないでやる。そしてその手を見たブルボンが確かめるように手をにぎにぎ動かして満足げにむふんと息を吐いた。なんか出会ったころに比べて色々多彩になったね君・・・俺の負けですわ。

 

 というわけでなんとなく楽し気な雰囲気を醸し出すブルボンを連れて着いたのは色々な店が複合されている大型商業施設、映画館も併設されている豪華なものだ。 ブルボンはどうやら俺と同じというかトレーナーに言われたからこの施設に向かっていただけで特に何か目的があるというわけではなさそうだ。

 

 「なあブルボン、暇なら映画でも行ってみるか?」

 

 「はい。マスターからのオーダーには気分転換の詳細な指示はありませんでした。私は遊びに疎いので店長にお任せします」

 

 「んーじゃあ、この映画見てみるか?」

 

 と俺が指したのはいわゆる動物系の感動ものだ。見えない、聞こえない、嗅覚がないという3重苦を抱えた子犬と少年の物語。こういう優しい物語に目がない俺としては結構気になっている。ブルボンに希望がないのなら俺の希望を通させてもらおう。どうやらブルボンは俺が指し示した映画でいいようなので財布を出させる前に俺がまとめて払って一緒に館内に入る。

 

 

 「・・・いい物語でした」

 

 「ああ、終盤の川に落ちてしまった子犬を助けるために自分の身を顧みず川に飛び込む男の子のシーンがすごくよかった」

 

 結果としては名作であった。上映中にすすり泣きの声がそこかしこから響いてくるほどに感動的で優しい物語に俺も引き込まれて、ほろりと涙が出てしまったくらいに。あの映画を撮ったすべてのスタッフに乾杯。結構いい時間になったな・・・?

 

 「なあブルボン」

 

 「はい」

 

 「実は今日の夜は鍋を食べようと思っているんだが材料を買いすぎてな、よかったら「行きます」・・・おう、そうか」

 

 食い気味にこちらに近づきながら肯定するブルボンを連れて店までの道のりをえっちらおっちらと進む。途中に八百屋と肉屋によって適当に仕入れを済ませて店につく。ほどなくしてカフェと・・・アグネスタキオンが来た。あれ?タキオン?なんで?

 

 「すみませんマスターさん。どこに出かけるのかと聞かれて素直に答えた私がうかつでした。それに夜ご飯を作るといわれてミキサーを取り出されてはさすがに・・・」

 

 「ああ、うん。それは別にいいんだけど・・・タキオンお前昼だけじゃなかったのかミキサー飯・・・」

 

 「もちろんだともマスターくぅん。時は金なりというだろう?食堂にご飯を食べに行くくらいならさっさと休みたいんだよ私としては」

 

 「ああもういいや。鍋作るから上で待ってろ」

 

 「ふふん、言われなくともそうするとも」

 

 2階には俺の私室のほかに談話スペースのようなものがあってこたつという魔の機械が設置されている。ノートパソコンを持ったアグネスタキオンが我先にと上に登りそれにカフェとブルボンが続く。俺は厨房で土鍋を引っ張り出してブルボンに渡し、カフェにカセットコンロをセットしてもらうように頼んだ。冷蔵庫の中から常備してるだし汁と豆乳、白みそを取り出して火にかけて鍋のベースをパパっと作る。

 

 あとは魚屋のおっちゃんがさばいておいてくれたゴルシ印のタイとサケ、タラを鍋用サイズに切り分けてさらに盛り付けキノコや白菜といった野菜類もそこへ、あとは6匹もあるどでかい伊勢海老だ。まずは4匹は鍋用でいいだろ、ついでにエビみそもスープベースに混ぜちゃえ、よしこれでオッケー。ぶつ切りの伊勢海老の完成っと皿にぽいーっとな。

 

 そんで残り2匹、縦半分に切って兜焼きでいいだろう。オーブンでこんがり焼いている途中に上に登って鍋の準備をしておこう。というわけでオーブンセット!スタコラッサッサー!

 

 「店長、鍋のセット完了しています。報告、アグネスタキオンさんが謎の発光物を入れようとしていたので阻止しておきました」

 

 「ナイスブルボン、カフェ、悪いけどタキオンのボディチェックして怪しいもんは全部捨てるかトイレに流しておいてくれ」

 

 「わかりました。これと、これと、これですね・・・あとこれも」

 

 「ああーーーー!!それは明日モルモット君に飲ませようと思ってた・・・やめてくれたまえ!ああああ!!鬼!悪魔!たづな!」

 

 「たづなさんに怒られろお前」

 

 タキオンとカフェがくんずほぐれついろいろやってるのを尻目に俺は土鍋の中にベースを注いで、野菜類を敷き詰めた後上に海鮮類を入れて中火にかけて蓋をする。そろそろ兜焼きが焼きあがってる頃のはず、常備してるトマトソースとチーズをたっぷり乗せた兜焼きに綺麗な焦げ目がついてるのを確認して4つの皿に一人分ずつ盛り付けて上にもっていく。

 

 「お待たせー、伊勢海老の兜焼きだ。鍋が煮えるまでつまんでてくれ」

 

 「・・・おいしそうです」

 

 「うう、カフェぇ・・・あんなところまで触らないでもいいじゃないか・・・」

 

 「ステータス「高揚」を確認。いただきます」

 

 俺が兜焼きを取りに行った後何があったかは知らないが乱れた様子のタキオンにジト目のカフェ、我関せずのブルボン、そして部屋の片隅に小山を築いている試験管。とりあえず気にしないことにしよう。さー鍋だ鍋、蓋を開けるともわっと蒸気が立ち上って白みその香りと魚介のいい香りがあたりに漂う。俺はウマ娘サイズの取り皿に3人分均等に鍋の中身を注いで配る。ついでに具材を足してもう一回蓋をする。

 

 「さ、食べてくれ」

 

 「はい、いただきます」

 

 「いただきますね」

 

 「うう~、いただくよ」

 

 この後めちゃくちゃ鍋食べた。あと鍋が空になってシメのおじやをやってるときにどこから聞きつけたのか理事長がやってきてもう一回鍋を作った。理事長って小柄な割によく食べるんだな・・・・「美味!」じゃないよもう




 マスターさんのどうでもいい休日の話でした。キャラを多く出すと誰かがおろそかになるのが私の作品の悪いところですね・・・


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マスターさんのレース観戦

書き終わって思ったこと「レース描写うっっっっっす!!!これいる?」


 「最近の兄さんはどうして私にかまってくれないんだ?この間だって私を抜きにして鍋を囲んでいたそうじゃないか。理事長から聞いたぞ、もう」

 

 「その日はお前地方にスカウトに行ってたじゃないの。というかあんまり理事長を苛めてやるな、まるで子猫のように震えていたぞ」

 

 「それは私じゃない、たづなさんだ」

 

 閉店後の店内、カウンターに肩肘を置いて顔を支えてわかりやすく拗ねた顔をしているのは我らが生徒会長シンボリルドルフである。どうも俺が休みの日と自分の休みが合わなかったのが相当お冠らしい。いつもの凛々しさはどこへやら、うじうじと俺にちくちく攻撃をしてくる。生徒会長さんは忙しくていけないな、というか俺に会えないと調子崩すのやめなさい。もうそろそろ君も独り立ちをする年齢なんだからな。

 

 「ほら、明後日は大事な日なんだろ?そうカッカするな。きちんと応援に行ってやるから」

 

 「・・・にいさんのことだからどうせほかの娘も応援するもん」

 

 「おいおい見くびってもらっちゃ困るぜシンボリルドルフ。俺はお前が()()()()()でお前以外を応援したことはないぞ。例え、誰が出ててもな。お前の一番のファンは俺だ、トレーナーだろうがそれは譲らんぞ」

 

 「・・・ん、兄さん。一つお願いしていい?」

 

 「ああ、俺にできることならな」

 

 「明後日の()()()()()()()()、私が優勝したらニンジンパフェ、作ってほしい」

 

 「勿論、今までで一番うまいやつを作ってやる」

 

 隣に座ってコーヒーを飲みながらそう言い切ってやると、ようやく顔が緩んだルナが俺にもたれかかってきた。俺は何も言わずそのままその体を支える。明後日、大イベントがあるからな。当然、俺も見に行くつもりだ。

 

 

 

 そうして日がたち、ここは東京レース場、本来なら店を開く日ではあるが理事長の計らいで休みになっている。なぜなら、日本中誰でも熱狂するようなとんでもないレースが今日開かれるからだ。ルナが拗ねていた日に話していたビッグイベントとはこれのことで、URAとしても初の試みとなる。まさに夢の大レースなのだ。

 

 『天高くウマ昇る晴天、本日はここ東京レース場にて初開催となるレースを執り行います。あなたの夢、私の夢を乗せた現役、引退問わずファン投票で決まったウマ娘が走ります。URAメイン開催「スペシャルエキシビジョンマッチ」、距離は2400、バ場状態は良好です!!!』

 

 わああああ!!!と耳が割れんばかりの歓声が響き渡る。運よくパドックとレース場両方に近い良い席をとることができたので応援にも身が入るというものだ。そう、今日行われるのはいわゆる無差別級とでもいうべきレースだ。現役だろうが、引退してようが構わずにファン投票を行い選出された選りすぐりの16人がレースを行う。勿論怪我で引退した場合や辞退した場合は別だが。

 

 『それではURAを代表いたしましてトレセン学園の秋川やよい理事長にご挨拶をいただきます、よろしくお願いします』

 

 『傾聴!本日はURAが開催するスペシャルマッチに足を運んでいただき感謝している!今日出走するのは我がトレセン学園の中でも指折りの猛者たち、誰が勝っても不思議ではない!よって期待!誰が勝利しても万雷の拍手と喝采を送ってほしい!あと出走するウマ娘諸君!』

 

 「ん、なんか嫌な予感が」

 

 『本日優勝したものにはトレセン学園と提携している喫茶店、ホースリンクにてスイーツの1日食べ放題の権利を得るものとする!勇猛邁進!励んでほしい!以上!』

 

 「ふっざけんなせめて先に相談しろ理事長!あとで身長縮むまで撫でまわしてやる!」

 

 思わず叫んでしまった俺だが幸い周りが盛り上がっているおかげで特に不審がられずに済んだ。やってくれたなあのちみっこめ、あとでたづなさんにチクってやる。あとしばらくは料理作ってやんないもんね。・・・・やっべーなどうしよ。いや別に作るのは構わんけどウマ娘が満足する量となるとなあ・・・何とかなるかたぶん。

 

 『えーいやにパドックが騒がしいですが出走するウマ娘の紹介をしたいと思います。それでは1番から!願いを叶えるシューティングスター!彼女をおいて誰がこの名を語れようか!6番人気!日本総大将!スペシャルウィーク!1枠1番での出走です!」

 

 『続いて2番、最速の名は彼女のもの!先頭の景色は譲らない!8番人気、異次元の逃亡者、サイレンススズカ!1枠2番での出走になります!』

 

 『3番、精密なレース運びはまるで機械!坂路の申し子!10番人気、サイボーグ、ミホノブルボン!2枠3番での出走です!』

 

 『4番、炸裂するか究極テイオーステップ!3番人気だ不屈の帝王!トウカイテイオーが堂々登場です!出走枠は2枠4番!』

 

 『5番、ステイヤーが殴り込みをかけに来た!4番人気、長距離の名優、メジロマックイーンです!3枠5番での出走になります!』

 

 『6番、ダートの女王が有マに続いて乱入だ!16番人気、桜花爛漫、ハルウララです!出走枠は3枠6番!』

 

 『7番、不可能を可能にするブルーローズ!13番人気、淀の刺客、ライスシャワー!4枠7番での出走!」

 

 『8番、誰もが彼女に夢を見た!引退しても人気は衰えず!2番人気、芦毛の怪物オグリキャップ!ターフを踏みしめました!4枠8番での出走です!』

 

 『9番、計算しつくされたレース、彼女のチェックメイトに抗えるか!?7番人気、勝利の探究者ビワハヤヒデ!5枠9番での出走です!』

 

 『10番、誰もが彼女に見惚れてしまう!走る姿はまさに覇王!9番人気、世紀末覇王、テイエムオペラオー!歌いながらの登場だ!5枠10番での出走です!』

 

 『11番、天高く羽ばたけ!マスクをつけたエンターテイナー!11番人気、怪鳥エルコンドルパサー!軽やかにバク転を決めました!6枠11番での出走です!』

 

 『12番、限界に挑むマッドサイエンティスト!その試験管の中身やいかに!?14番人気、超光速の粒子アグネスタキオン、6枠12番での出走です!』

 

 『13番、吼えろターボエンジン!全開で突き進め!15番人気、大噴射ツインターボ、7枠13番での出走です!』

 

 『14番、名ウマ娘誕生の影に彼女あり、脇役は今日主役になれるか!?12番人気、ブロンズコレクターナイスネイチャ、7枠14番です!』

 

 『15番、奇想天外摩訶不思議、今日も何が起こるかわからない!頭陀袋を担いで意気軒高、5番人気、不沈艦ゴールドシップ、今頭陀袋から・・・トレーナー!?トレーナーを担いでいます!スタッフ!ちょっと助けてあげて!!8枠15番です!』

 

 次々とファンの投票で決められたウマ娘がそれぞれのアピールを決めてパドックからレースに移る。全員がG1ウマ娘で、なおかつ人気が高い子たちだ。そして、最後。めっきりレースに出なくなったが・・・彼女以上のウマ娘を俺はまだ知らない。彼女より上をいったものがいないからだ・・・最強の皇帝が今パドックに姿を現す。

 

 『最後の紹介です・・・唯一抜きんでて並ぶものなし!奇跡の7冠ウマ娘、最強とは彼女を現す言葉!皇帝がターフに戻ってきました!1番人気、シンボリルドルフ!威風堂々の登場です!』

 

 一歩一歩を確かめるように踏みしめてパドックからレース場に歩いて向かうルナを歓声が後を追う。引退後、久しぶりに踏みしめるG1御用達レース場はいまのルナにどう映っているのだろうな。そうして1番人気のルナからスタートゲートの中に納まっていく。ついでにトレーナーを振り回して楽しんでいたゴールドシップは最後にトレーナーに熱いベーゼを一方的に交わしてスタッフに引き渡した。場内のどよめきがすごいことになってるがスピカの問題なので俺は気にしないことにする。スぺとスズカの目からハイライトが消えてるのも見なかったことにしたい。

 

 多分どこか微笑ましいものを見るような感じなってるんだろうなあルナのやつ・・・あいつウマ娘が幸せなら自分も幸せってやつだし。そんなことを考えてると最後に元気よくハルウララがゲートに収まった。さて、俺はルナが一着になるのを疑わないが・・・ほかはどうだろうな。

 

 『全バゲートイン・・・出走準備完了・・・エキシビジョンマッチ・・・スタートしました!』

 

 ガタン!とゲートが一斉に開いた瞬間に全員、いやゴールドシップ以外がスタートを完璧に切った。先頭に躍り出たのは3人、いや4人のウマ娘だ。

 

 『おおっとゴールドシップ出遅れか!?先頭争いは、サイレンススズカ、ミホノブルボン、ツインターボ、そしてなんとハルウララです!』

 

 『彼女は今まで差しで戦ってきましたが逃げを見せるのは今回初めてですね。どんなレースを魅せてくれるのでしょう』

 

 『現在前から、サイレンススズカ、ミホノブルボン、ツインターボと並ぶようにハルウララ。1バ身挟んでテイエムオペラオー、アグネスタキオン、トウカイテイオー、メジロマックイーン、エルコンドルパサー、ナイスネイチャ、そこから半バ身、ビワハヤヒデ、シンボリルドルフ、オグリキャップ、スペシャルウィーク、ライスシャワー、最後にゴールドシップです」

 

 『あっという間に1000mを通過しました。ここから争いが激化していきますよ。最初に仕掛けるのは・・・やはりゴールドシップ!』

 

 『ゴールドシップ!ゴールドシップが追い込みを始めました!どんどん加速していきます!』

 

 ゴールドシップ、奇行ばかり注目されがちな彼女ではあるがその実規格外のスタミナと長身を生かしたストロークでのロングスパートが特徴的な追込みウマ娘だ。パワーはあるが加速力がそこまでないため早い位置でのスパートを選んだのだろう。あっという間に上位に食い込みだした。それを許すはずのない怪物が一人、伏せていた顔を上げた。

 

 『残り1000mを通過!ゴールドシップが追い上げていくぞ!ああっとここで怪物が動き出しました!オグリキャップ、ゴールドシップに並走するように加速していきます!』

 

 『最後のカーブにかかります!ウマ娘たちが続々とスパートをかける中、シンボリルドルフは全く動かず!どうした皇帝!万事休すか!?』

 

 んなわけないだろ。この程度で万事休すなんて言ってたら皇帝なんて呼ばれるわけがないんだ。バ群に埋もれるようにただついていってるように見えるルナ、最後のカーブを曲がる瞬間彼女がこちらを見た、ように見えたので指を一本立てて前に突き出す。

 

 見えたのか見えてないのかは知らないが俺がそうした瞬間、ルナは獰猛に笑った。いつもの凛々しさと優しさを前面に出した笑顔ではなく歯をむき出して目の前にいるライバルを噛み殺さんばかりの好戦的な笑顔。さあ、皇帝が動き出すぞ。止めれるもんなら止めてみろ。

 

 『残り500m!ああ!シンボリルドルフです!皇帝が加速していく!どんどん抜かれる上位陣!日本総大将を躱し!不沈艦が追い越され!刺客をはねのけています!皇帝が来ている!皇帝が来ているぞ!大噴射を避け!サイボーグが抜かされる!』

 

 後方にいたはずのルナが一歩歩を進めるごとに必死にスパートをかけているはずのウマ娘たちが次々追い越されていく。どうだ観衆、これが皇帝、これがシンボリルドルフだ。よくわかってたはずだろ?最強は誰かってことを。

 

 『ゴールは目の前だ!残り200!皇帝が止まらない!帝王をねじ伏せ、覇王を打ちのめし!そして先頭の逃亡者を捉えた!今!皇帝があらゆるウマ娘をはねのけて!一着でゴールイン!引退したとは思えない強さを見せつけましたシンボリルドルフ!皇帝はここにあり!皇帝の凱旋です!』

 

 さすがは皇帝ってところか。バ群に飲まれていたはずのルナが最後のスパートで並み居る強豪をなぎ倒して優勝を勝ち取った・・・ついでに理事長の言が本当なら俺の店のスイーツ食べ放題も。テイオーに抱き着かれたルナを見た俺はとりあえず冷蔵庫と冷凍庫の中身を思い出すところから始め・・・ようとしたがそれよりも先にウィニングライブの最前列を確保しに踵を返すのだった。

 

 

 

 

 

 「・・・で、なんでレースにいた全員が食い放題やってるんだ!?」

 

 「ふふ、私は約束があるからな。それに私が得たのは「食べ放題の権利」であってそれをシェアすることには何の問題もないだろう?」

 

 「あー、屁理屈がうまくなったなルドルフ」

 

 「誰かさんが私を苛めてくれるおかげでな」

 

 「美味!やはりマスター君のスイーツは最高だな!」

 

 「一番納得できないのは理事長が混じってることだわ!」

 

 「不満?いいではないか一つ作るのも二つ作るのも一緒という話も「ほーう?」・・・?」

 

 「お前ら、理事長がポケットマネーで全部出してくれるってよ。そういうことだからスイーツだけじゃなく料理も解禁してやるわ。お前ら理事長にお礼言っとけー」

 

 「「「「「「ありがとうございまーす!!!」」」」」

 

 「よし今日は大盤振る舞いだ!チームもトレーナーも全部呼べ!理事長のおごりだー!」

 

 「驚愕!?さすがにそれは・・・!!」

 

 というやり取りがあって、1週間分の材料とか何やらが全部ウマ娘たちの腹に消え、俺の腕は無事腱鞘炎になった。ついでに店は3日営業不能になった。そして金持ちなはずの理事長の財布は見事に薄くなり、食べに来たウマ娘たちの腹は膨れ上がったのだとさ、ちゃんちゃん。

 

 ちなみにルナのスペシャルニンジンパフェはバレると面倒なので休業中にしっかり作ってやりました、まる。始まりは俺が高校生の時に初めて作ったニンジンアイスだったけど、それが今でもルナの好物になってるなんてちょっと誇れるかも、と思ったのだった。




 懺悔するとレース前のウマ娘の紹介の口上を書きたかっただけです。ごめんなさい、だから石を投げないでください。

 レース描写は私には無理ということが分かったので次からは喫茶店に戻ろうと思います


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関西粉もんセット

お待たせしました。オグリ&タマ&クリークの話です。


 あー今日も今日とて営業日、予約でいっぱいのわが店ホースリンク、うれしい悲鳴が鳴り響いております。具体的には俺の両腕あたりから。この前の食べ放題のせいで見事に両腕をやっちまった俺は現在治療中、その後遺症に無駄に苦しんでおります。

 

 いやちゃうねん、決してフライパンの振りすぎとかそういうので腱鞘炎になってそれが長引いてるとかそういうわけでは・・・そうですその通りです。今現在も両腕にシップとサポーターをつけています。見苦しいので長袖の制服で隠してるけど。というわけで最近は鍋振り回したりとかしない料理に傾倒しています。パスタとかフライパン使いまくりだもんな、しばらく作れんわ。

 

 まあ今日は来てくれる子3人のうち2人が料理上手なのでカノープスの時のように手伝ってもらおうってか調理してもらおうかなって思ってる。ちなみにもう一人は食べ専だ。いや、料理ができるかどうかは知らないが見たことないし食うところばっかしか知らん。あの芦毛、うちに来るたび何もかも食い荒らしていくもんだから、何も残らんからな。この間の食べ放題の時はみんなの分を食べてはいけないと自分からセーブしてくれたからよかったがそうじゃなかったら俺の手は取れてたかもしれん。

 

 ネギを小口切り、紅ショウガ刻んで天かすあげて、タコ、ベーコン、ウィンナーをぶつ切りにする。今日はタコ焼きと焼きそばの関西粉もんセットである。デザートは昨日仕入れたいいイチゴを使ったイチゴ大福。あんこもよくできたんじゃないかね?作るとき死ぬほどしんどかったけど。あと戦争が起きないように粒あんとこしあん両方作りました。さて、そろそろ来る時間かね。

 

 「マスター、おはよう。今日はよろしく頼む」

 

 「マスターさん、おはようございます~、ほら、タマちゃんも」

 

 「・・・おはようしゃん・・・」

 

 「おー、オグリ、クリーク、タマ、おはようさ・・・ん・・・?」

 

 やってきたのは今日の当番、全員引退したウマ娘ではあるがとんでもない人気があり本人たちのやる気もあるため特別にシフトに組み込んでる一部例外のウマ娘たち、オグリキャップ、スーパークリーク、タマモクロスの3人だ。3人が挨拶しながら店に入ってきたので厨房から顔を出して挨拶をしようとするととんでもない光景が目に入ったので思わずフリーズした。とりあえず復帰した俺が訳を尋ねる。とりあえずわかってなさそうだけどオグリから。

 

 「オグリ、二人に何かあったのか?これはどういうことなんだ?」

 

 「ん?別に普通だと思う。仲がいいのはいいことだ」

 

 「そうか、悪いけど先に掃除始めてくれ。えー・・・あー・・・クリーク?そのタマについてなんだけど?」

 

 「はい?タマちゃんですか?別に普通だと思いますけど」

 

 「そうか、俺の知るタマモクロスは決して同い年に抱っこされ、幼稚園児が被るような黄色の帽子を被ってスモックを着用した上に死んだ目でおしゃぶりを咥えているようなウマ娘じゃなかったと思うんだが」

 

 「ふふ、可愛いですよね~」

 

 ダメだ、俺の疑問がことごとく封殺されている。スーパークリーク、非常に魅力的な風貌と穏やかかつ世話好きで母性の強い性格をしている彼女は小さいもの、というか子供が大好きだ。誰かを甘やかさないと調子を崩してしまうくらいのお世話好きで現役時代はおしゃぶりとよだれかけを着けた色々ぶん投げたトレーナーが被害というかお世話をされていたのだが現役を退いてトレーナーを甘やかせないようになってからその矛先は身長の小さなウマ娘に向きつつあるとかいう話を小耳にはさんだっていうか寮の同室であるナリタタイシンから聞いた。ちなみにその時の彼女はよだれかけをつけていたのでお世話される寸前で逃げてきたのだろう。指摘したら蹴っ飛ばされて肋骨が折れたりしたがウマ娘に蹴られたにしては軽傷だったので照れ隠しに思ったより力がこもったことに直前に気付いて全力で止めようとしたけど間に合わなかったんだろな。めっちゃへこんでたってチケゾーとハヤヒデが言ってた。気にせず店に来ればいいのに。多分スピカトレーナーの人外の耐久力が周知されてしまったせいだな。

 

 めっちゃ話が逸れた。とりあえず今の目の前にあるまさに絶不調という顔をしているタマモクロスを助けるところから始めないと。クリークも悪気があるわけじゃないんだけどなあ・・・包容力が高いというかなんというか・・・気づけば流されかけてるんだろうなあ・・・。

 

 「なあクリーク」

 

 「はい、なんでしょう~」

 

 「とりあえず掃除頼むわ、タマモクロスは別で仕事があるから貸してくれ、ほれ」

 

 「わかりました~。タマちゃん、いい子にするんですよ~」

 

 「・・・うん」

 

 俺にタマを渡したクリークがオグリに合流して掃除を始めるのを尻目に何も抵抗しないタマを抱きかかえたまま厨房に引っ込んだ俺はとりあえず帽子を取って制服の上から着させられてたらしいスモックを脱がせて、おしゃぶりを口から引き抜いてやる。そしてバチン!と目の前で手を鳴らした。

 

 「はっ!?う、ウチはいったい・・・!?」

 

 「おはよう、タマ。思い出さないほうが精神衛生上いいと思うけど、ん」

 

 俺がタマから分離したスーパークリークばぶばぶ3点セットを指し示してやるとサーッと青ざめたタマが震える口を開いた。

 

 「な、なあ・・・まさかウチこれをつけてここまで来たんやないやろな・・・・?」

 

 「・・・すまん」

 

 「う、うそや!うそっていって!」

 

 「で、仕事のことなんだが」

 

 「もうちょっと乗れや!ここからカタルシスやろ!?タマちゃん演技し損やんけ!」

 

 「いやもうあんなタマ思い出したくねえよ。まさかとは思うけど自主的にああなったのか・・・?」

 

 「そんなわけないやん!朝クリークと合流したらそっから記憶が・・・・」

 

 とりあえずいつもの調子に戻った関西の白い稲妻ことタマモクロス。彼女は背が小さい上にスーパークリークにオグリと仲がいいからよく標的にされるらしい。長いリボンにつながったイヤーカバーをフリフリと振って気を取り直したタマは

 

 「で、今日って何作るん?ネイチャたちカノープスに聞いてんけどなんかウチらも料理してもらうかもっちゅー話やん」

 

 「おー、まあな。ほら俺今両腕がこうじゃん?あんまり重労働できんくてなー・・・というわけで今日はこれよ」

 

 「へえ!たこ焼きと焼きそばやん!任せとき!きっちり焼いてやるでー!」

 

 おー、ってことで俺は厨房とつながってるカウンターの一部を動かす。天板を外すと鉄板が2枚姿を現した。普段は使わないけどカウンターでも調理ができるようにつけたもんだ。そのうち一枚の鉄板を外して倉庫から引っ張ってきたタコ焼き用のものに変える。こうすればタマが料理をしててもお客さんと交流できるってわけだ。今回俺はドリンクとデザートに集中するってわけ。

 

 それぞれの材料を容器にもってボトルに入れただし汁と小麦粉をカウンターに置く、ついでに掃除も終わりつつあるみたいなのでクリークとオグリを手招きで呼び寄せる。

 

 「クリーク、お前焼きそば作れるよな?レシピ渡すから今作ってみてくれ、タマも一回焼いてみて。俺はイチゴ大福包むから。オグリは味見な」

 

 「わかりました~」

 

 「粉もんセットやな・・・よし、やったるでー」

 

 「わかった。じゅるり」

 

 「気がはやいわ」

 

 ずびし、とすでに涎が垂れているオグリに軽くチョップを入れる。頭を抱えたオグリがちょっとだけ楽しそうに俺の手に頭をぐりぐりと擦り付けてくるので要求通りに撫でてやって、口にイチゴを一つ突っ込む。ついでに二人にもイチゴをあげて作業開始!

 

 まずクリーク、彼女は手際よくキャベツをざく切りにしてニンジンを薄切り、さらに玉ねぎを串切りにする。そんで豚バラとイカを炒めて火が通ったところに野菜を投入して塩コショウとニンニクチップを少量入れて炒め合わせていく。肉に火が通り野菜がしんなりしてきたところで麺を入れて酒で蒸していく。それが終わるとうちでは焼きそばソースではなくお好み焼きソースを使うのでそれをどばーっと投下してソースの焼ける香りが漂ってきたところで完成、オグリ用にてんこ盛りの皿と普通盛りの皿が3つ手際よく盛り付けたところでクリークの作業は終了。

 

 そして次はタマ、生地を流しいれて少し待ち、ネギをどっさり、天かす、紅ショウガを入れて5列あるうちの3列にタコを入れる。そんで残り1列にウィンナー、もう1列にベーコンとチーズを入れてその上からさらに生地をかけて焼けるのを待つ。千枚通しを両手に持ったタマが目にもとまらぬ速さでたこ焼きを丸めていく。丸め終わるとタマはタコの3列のうち2列に油を投下、そっちはカリカリにするつもりらしい。焼きあがったものを同じように皿に盛りつけて、オグリ用のたこ焼きマウンテンと俺たちの分にソース、マヨネーズ、青のり、鰹節をかけて完了。いいな二人とも手際がいい。

 

 「オグリちゃん、よく噛んで食べてね~」

 

 「オグリ、お待たせや~」

 

 「二人とも、ありがとう。いただきます」

 

 俺も一応味見するが問題はない感じだな。よし、じゃあ食べ終わったら開店するか。オグリは時間かかりそうだから俺はイチゴを包む作業に戻らないと・・・なるほど、ドーナツに穴をあけるバイトが虚無だって言ってたゴルシの気持ちがよくわかる作業だ・・・同じ作業の繰り返しだしな!

 

 

 

 

 

 

 

 「いらっしゃいませ!今日はタコ焼きデーやで~!カリカリかフワフワ選んでや!」

 

 「焼きそばはイカ抜きかどうかを教えてくださいね~」

 

 「ドリンクメニューだ・・・おすすめ?そうだな・・・うん!マスターの料理は全部美味しいぞ!」

 

 というわけで勝負服に着替えた3人。タマはイヤーカバーと同じ赤と青を中心にしたジャケットに中に稲妻の模様が入ったシャツ、白いジーパンのようなパンツを履いて、赤いブーツを付けている。そしてクリークは青と白を基調にしたまるでドレスのようなワンピースに肩掛けカバンを付けている。そして二人に共通することはそれの上にエプロンを付けていることだ。ミスマッチなことこの上ないが勝負服が汚れては事なので着けないといかん。特にもう引退してる3人の勝負服は個人のものなのでURAに預けて修理、クリーニングをしてもらえないからな。この前オグリが走ったレースのような場合は話が別だが。まあ?もし汚れても俺が全額自費でクリーニングもしくは修繕に出すので汚れても問題ないっちゃない。でもウマ娘の勝負服はクッソ高いので出来れば汚したくない。

 

 そして今お客に対してうれしいことを言ってくれたオグリキャップ。彼女は丈の長い白いセーラー服、胸元の星、スカートからすらりと伸びたタイツに包まれた脚とへそ出しという感じの勝負服だ。タイキやヒシアマゾンもそうだがウマ娘の勝負服って腹だし流行ってんの?寒そうなんだけど。

 

 俺はドリンクのほかにイチゴ大福に合うあったかい玉露を淹れながら3人が和気あいあいとファンサービスや料理、配膳をするのを見守るのだった。時々オグリの腹が鳴ってお客さんから食べ物を貰っているのをちょっとだけ頭を抱えた。オグリさん、それお客さんの注文のたこ焼き・・・

 

 「オグリィ!あんたつまみ食いしすぎや!」

 

 「はっ!?つい・・・!」

 

 「いいよいいよ!マスター、オグリキャップさんに俺からなんか奢ってあげたいんだけど!」

 

 「悪いっすねお客さん。クリーク、オグリに焼きそばあげて」

 

 「は~い」

 

 クリークが楽しそうにオグリに焼きそばをあーんしてあげるのを見て俺は今のお客さんのドリンクを無料にすることを決めるのであった。えらいすいません。

 

 

 

 そして閉店後、オグリの腹がお客さんからのサービスで膨れ上がったのを呆れた顔で見る俺とタマ、微笑ましそうに見るクリーク、そしてなんとなく満足げなオグリ。お前来るといつもお客さんに餌付けされてるよな、たまに食事を餌に誘拐でもされるんじゃないかとおじさん心配になってくるよ。ウマ娘の身体能力なら鉄製のドアでもドア枠ごと蹴破って出てくることはできるだろうけどさ。特に鍛えてる競争ウマ娘ならなおさら。

 

 「ほい、お疲れさんだ。夜飯は・・・いるか?特にオグリ」

 

 「ほしい」

 

 「即答かい。タマとクリークも食べるよな?焼きそばとたこ焼きはやめとくか。散々作って飽きてるだろうし」

 

 「ほんまやで。ずっと焼かせるやつがあるかいな。でもええんか?今から作るのは面倒ちゃうん?」

 

 「そうですよ?よかったら私が何か作りますけど・・・マスターさんの腕のこともありますし」

 

 「いや、気にしなくていいよ。今日一日だいぶ楽させてもらったからな。ありがとうなクリーク」

 

 そう言って俺は丁度いい位置に来たクリークの頭を撫でる。普段撫でる側にいる彼女はどうやら頭を撫でられることにはあまり慣れていないらしく少しだけ顔を赤くして目線を逸らした。それでもされるがままにしているあたり嫌がってはいないのだろうな。こういうところは年相応だな。

 

 「お、なんやクリーク?撫でるんは得意でも撫でられるんは苦手か~?いやあええもん見れたわ!」

 

 なんてタマがクリークをからかおうとしてるので空いてる片手でタマも撫でまわすことにする。いやあ、身長が小さいと撫でやすくていいですな。

 

 「ちょ、ウチはええねん!そんな撫でまわされると身長縮むやんかぁ・・・もー・・・」

 

 「タマ、お疲れ様。今日はありがとうな。オグリも、お疲れ様」

 

 「うん、マスターもお疲れ様だ・・・じー・・・」

 

 「オグリ、おいで」

 

 「!・・・ああ!」

 

 両手に花という感じで二人を撫でまわす俺をちょっと寂しそうに見つめるオグリ、仲間はずれにしては可愛そうなので俺はオグリを呼んで近寄ってきたオグリの頭もぐりぐりと撫でてやるのであった。

 

 

 その後、俺は3人に焼きそばの材料をそのまま転用した味噌焼きうどんを作り、デザートに片手間で作ったイチゴシャーベットを出してやった。そして3人が帰る段階になって俺は今日一日で材料を使い切って余ったイチゴ大福やあんこだけ余ったのでノーマル大福、さらにおはぎを3人が所属してる寮全員分いきわたるように渡した。大荷物になったが3人は軽々と担いでいる。帰ろうとしてるクリークを呼び止めた俺はもう一つ包みを渡した。

 

 「これ、タイシンに渡しといてくれ。怒ってないから気にせず来てくれって」

 

 「あら~わかりました。きちんとお渡ししておきますね」

 

 中身はイチゴのドライフルーツ。少し前に仕込んでおいたものだ。タイシンは小食なうえにあまり甘いものも好きじゃないみたいだからな。それにウマ娘が力加減を間違えることなんてよくあるんだ。ウマ娘とかかわる職場な以上そんなこといちいち気にしていたってしょうがないんだからな。タイシンは自分を責めがちだから気にしてないって伝えるのが一番いい。俺はウマ娘の寮に入れないし無理やり呼び出すわけにもいかないから同室のクリークが今日来てくれて助かった。

 

 タイシンの出勤日は近いしこれで気にしないようになってくれればいいんだけど。




 えー、ナリタタイシンを曇らせてしまった件ですが、そこまで湿度が高い話にする気はないしきちんとハッピーで終わらせますのでどうか石を投げないでください(五体投地


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ウマ娘との出来事を語るスレ part213

 書きたくなったのでスレ形式をもう一回やります


1:名無しのトレーナー

 このスレは日常にあったウマ娘との絡みを書き込み、嫉妬、妬み、ついでに祝福を送るスレッドです。ウマ娘と絡んだものには石を投げ、そうでないものは慰めあいましょう

 

2:名無しのトレーナー

 いや草

 

3:名無しのトレーナー

 1の殺意が高すぎる

 

 

 

 

 

 

134:名無しのトレーナー

 そろそろ出尽くした感じかね?

 

135:名無しのトレーナー

 あ、じゃあ俺がこの間の話をしていいか?

 

136:名無しのトレーナー

 なに?ネタがあるというのか貴様。石を持てえ!

 

137:Pヘッド

 まあ待て、話を聞いてほしい。

 俺はとある場末のアイドル事務所でしがないプロデューサーをやっているものだ。「P」の形をした被り物を被っているのでPヘッドと呼ばれている

 

138:名無しのトレーナー

 ほほう、アイドルとな?

 

139:名無しのトレーナー

 なんでそんなもん被ってんだ

 

140:名無しのトレーナー

 流行ってるんじゃね?蹄鉄トレーナーみたいな?

 

141:Pヘッド

 流行ってるかどうか知らんがあると落ち着くんだ。某潜入する蛇の段ボールのようなものだと思ってくれ。それで本題、この間の話なんだが所属している事務所でウマ娘をアイドルにしてはどうかという話が持ち上がってな。実際に企画が通って俺たち末端のプロデューサーはスカウトに出かけたんだ。

 

142:名無しのトレーナー

 それはさすがに無茶が過ぎる

 

143:名無しのトレーナー

 競合が大きすぎィ!

 

144:名無しのトレーナー

 URAがある中でそれはちょっときついですな

 

145:Pヘッド

 うむ、返す言葉もない。末端からは「無理じゃろwwwwww」と草をはやしまくって否定していたんだが上の言葉には逆らえないのが俺たち社畜、というわけでいるかもわからないアイドルになりたいというウマ娘を探す俺の旅が始まったのだ。

 

146:名無しのトレーナー

 社畜は悲しいな

 

147:名無しのトレーナー

 わかる・・・わしもこの前上司の鶴の声で

16連勤してきたところだゾ

 

148:名無しのトレーナー

 お前は労基へいけ

 

149:Pヘッド

 さすがにそこまでブラックではないが、様々な場所を調べるうちにとある一つの情報を手にした俺は早速その場所に向かったんだ

 

150:名無しのトレーナー

 ほほう、してその情報とは?

 

151:Pヘッド

 とある商店街にて、商店街全体から可愛がられているウマ娘がいるという話を聞いたんだ。すでに人気のあるウマ娘なら話が早い、きっといいアイドルになるだろうと思った俺は早速現場へ向かった。

 

152:名無しのトレーナー

 うむ、ウマ娘はどこでも人気だからな

 

153:Pヘッド

 そして現場についた俺、聞き込み開始。自分で言うのもなんだが珍妙な俺の見た目を気にしないおおらかな商店街の人たち、話を聞くとそのウマ娘は明るく元気で、人懐っこく、常に笑顔でいる愛嬌抜群の子らしい。これはますますスカウトしたくなってくる

 

154:名無しのトレーナー

 アイドル向きやな

 

155:名無しのトレーナー

 なるほど、確かにそう聞くとファンになる気持ちも可愛がる気持ちもわかる

 

156:Pヘッド

 そしてどうやら今商店街の駄菓子屋に件のウマ娘が来ていると聞いた俺はいてもたってもいられずにその場に直行した。

 

157:名無しのトレーナー

 いいぞー

 

158:名無しのトレーナー

 俺もそんなウマ娘見てみてーよなー。何で俺の幼馴染にはウマ娘がいないんだ

 

159:名無しのトレーナー

 高望みが過ぎるぞ

 

160:Pヘッド

 駄菓子屋につくと確かにウマ娘がいた。桜色のポニーテール、ぴくぴくとキュートに動く耳、ハチマキ・・・あれ?なんか見覚えがあるぞ?と思った俺が少し止まった時、そのウマ娘が振り返った

 

 

 ハルウララだった。

 

161:名無しのトレーナー

 ぶっふぉwwww

 

162:名無しのトレーナー

 さすがに笑った

 

163:名無しのトレーナー

 そりゃ人気あるわww だってG1ウマ娘でダートの女王で有マ取ったウマ娘だもんwww

 

164:名無しのトレーナー

 商店街の人たちが可愛がる理由しかない

 

165:Pヘッド

 まさか俺のようなアイドル業界の底辺にいるようなプロデューサーが会えるはずもない存在との遭遇に俺の心臓は七転八倒、被ってるPの文字も冷や汗をかきだす始末。彼女は俺を見ても全く臆さずに近寄って来て「こんにちは~!」と元気よく挨拶をしてくれた

 

 可愛さで死ぬかと思ったがとりあえず耐えれた。ありがとう担当のアイドルたち、君たちが俺のナンバーワンだ。君たちのかわいさのおかげで俺は耐えることができた。

 

166:名無しのトレーナー

 死ぬほど羨ましい

 

167:名無しのトレーナー

 ワイハルウララ感謝祭参加民、高みの見物

 

168:名無しのトレーナー

 167をぶっ殺せ

 

169:名無しのトレーナー

 よっしゃ任せろ

 

170:名無しのトレーナー

 この裏切り者ぉ!

 

171:Pヘッド

 気になる感謝祭のことについては後で聞くとして続き、取り合えず俺がスカウトなんかしたら事務所のクビとついでに物理的に俺の首が飛びかねないのでその時点でスカウトは断念、1ファンとして接することを決めた

 

172:名無しのトレーナー

 ナイス判断

 

173:名無しのトレーナー

 ここでスカウトに走らないのは英断

 

174:Pヘッド

 「あれー?トレーナーのお友達?」とハルウララに聞かれたので否定して、ファン丸出しで握手してもらった。ウマ娘の握手って力強いんだよな。とても女の子とは思えない。そして自分で言うのもなんだがPの字と超人気ウマ娘が会話をするという絵面が続いたんだが、ある時ハルウララがぴょこっと俺の後ろを覗き込んだんだ。自然な動作でその可愛い動きをするとかますますアイドル向きぃ・・・と思いつつ俺もつられて後ろを見た

 

 蹄鉄の被り物をした人がたっていた。

 

175:名無しのトレーナー

 でたwwwww

 

176:名無しのトレーナー

 蹄鉄トレーナーww

 

177:名無しのトレーナー

 送り出すウマ娘が必ずG1ウマ娘になる頭おかしいトレーナーw

 

178:Pヘッド

 一目見た瞬間、俺はこう思った。「他人の気がしねえ」と。向こうも同じようで無言で近づいてきた彼と俺はどちらともなくピシガシグッグッと固い握手を交わしてソウルメイトになった。被り物仲間ができた瞬間であった。

 

 そうして俺はハルウララとどうやらトレーナーについてきたらしいライスシャワーのサインをもらい、名刺を交換した後でちょっとした営業をしてホースリンクとやらの優待券を貰って帰ってきたというわけさ

 

179:名無しのトレーナー

 ほほう、そらよかったな。お前ら、判決

 

180:名無しのトレーナー

 重罪、死刑

 

181:名無しのトレーナー

 異議なし

 

182:名無しのトレーナー

 右に同じ

 

183:名無しのトレーナー

 主文、被告人を石投げの刑に処す

 

184:Pヘッド

 なんでだ!?

 

185:名無しのトレーナー

 まあウララたんとライスたんのサインは血涙が出るほど羨ましいがそれには一億歩譲って目をつむろう

 

186:名無しのトレーナー

 そしてちゃっかり営業をかけたことも見逃そう

 

187:名無しのトレーナー

 だが!ホースリンクの優待券を手に入れたことは許すまじ!

 

188:Pヘッド

 は?これそんないいもんなのか?

 

189:ジームイン

 説明しよう!その優待券は現役ウマ娘とじかに交流ができる喫茶店、ホースリンクにて予約なしに店に入ることができる超すごい券なのだ!ちなみに何回でも使える赤色(ウマ娘の家族等に配られることが多い)と1回しか使えない青色(こちらは基本関係者)があるぞ!予約率が常に50倍を上回っているホースリンクに自由に入れる夢のチケットなのだぁ!!!と中央トレセンで事務してる私が説明してみる。

 

190:Pヘッド

 へぇ、そりゃすごい。じゃあ俺も推しのナイスネイチャがいる日を狙っていってみるか。

 

191:ジームイン

 ちなみに中央トレセン関係者は基本顔パスだゾ。店長に顔覚えてもらってたらの話だけどな。ほぼ100%飯をおごってくれるので重宝しとります

 

192:名無しのトレーナー

 ぐぎぎ・・・羨ましい・・・!

 

193:名無しのトレーナー

 ぐぬぬ・・・

 

194:名無しのトレーナー

 おのれ事務員!貴様何か話を落としていけ!さもなくばむち打ちの刑に処す!

 

195:ジームイン

 ええんか?じゃあ遠慮なく。さて、基本的にウマ娘の子たちの大多数が愛が重いというか愛情深いというのは皆さん周知の事実だと思う。

 

196:名無しのトレーナー

 初耳だが?

 

197:名無しのトレーナー

 新事実を既知の情報のように暴露するな

 

198:名無しのトレーナー

 なに!?つまりライスちゃんはヤンデレなのか!?すばらしい!

 

199:ジームイン

 よく考えろよ?毎日毎日手取り足取りトレーニングしてくれて、困ったことがあれば全力で助けてくれるし、自分の全てを注いできてくれる。レースに勝つために寝る間を惜しんで自分のために身を削ってくれる。そんな存在であるトレーナーに思春期の女の子が触れたらどうなる?

 

200:名無しのトレーナー

 なるほど、把握

 

201:名無しのトレーナー

 そんなん惚れちゃいますやん・・・!

 

202:名無しのトレーナー

 自分とは関係なく考えてたけどやっぱトレーナーってやばいな

 

203:ジームイン

 せやろ?それで4か月くらい前に地震があったじゃん?それで俺が作業してるときに棚が倒れたりしたんだが、その時の周りにいたウマ娘とトレーナーの話をしようと思う。

 

204:名無しのトレーナー

 あー、あったなー。結構でかかったやつ

  

205:名無しのトレーナー

 そっちでも被害あったんだな。

 

206:ジームイン

 そのウマ娘とトレーナーだが丁度俺とレースに出す書類について話していた蹄鉄さんとハルウララにライスシャワーなんだ。地震があったときちょうど大きな棚の前で話し込んでたからその棚が俺たちに向かって倒れてきたんだ。当然だけど俺たちより優先度は高いのはウマ娘。彼女たちに怪我でもあろうもんなら彼女たちの大事なキャリアにかかわるので倒れた棚からかばうように蹄鉄さんはハルウララを、俺はライスシャワーを抱きかかえて棚に押しつぶされたわけなんだが

 

207:名無しのトレーナー

 まずやってることがおかしい

 

208:名無しのトレーナー

 お前らも助かれよ

 

209:名無しのトレーナー

 でもよくやった

 

210:ジームイン

 彼女たちはスターだ。蹄鉄さんはともかく俺みたいな事務員はいくらでも代わりが利く。何とか彼女たちをかばうことに成功したんだが、当然押しつぶされていて身動きは取れない。特に蹄鉄さんのほうは打ちどころが悪かったのかうめき声が聞こえるわけ。なんとかせねばと思った俺の下でライスシャワーは「お兄様・・・!?すいません事務員さん少しだけ失礼します!」と普段の小動物的な感じとはかけ離れた凛々しい声になって俺の下から転がり棚に手を付けるとえいやっと一瞬だけ持ち上げた。

 

211:名無しのトレーナー

 ライスたんの凛々しい声だと・・・!?

 

212:名無しのトレーナー

 というか持ち上がるのか・・・

 

213:名無しのトレーナー

 ウマ娘だしなあ

 

214:名無しのトレーナー

 重さによるんじゃね?

 

215:ジームイン

 棚の重さは木製でクソ重いもん入ってるから大体400㎏くらい。そんでライスシャワーは持ち上がった一瞬で足を棚につけて背中を地面に置いて持ち上げ始めた。自由になったハルウララもそれに加わって棚は嘘のように持ち上がって俺と蹄鉄トレーナーは解放されたわけだ。そしてここからまだ話が続く

 

216:名無しのトレーナー

 続けたまえ

  

217:名無しのトレーナー

 はよ!はよ!

 

218:ジームイン

 最終的に蹴り飛ばされた棚は天井近くまで上がってそのすきに抜け出した俺と蹄鉄さん、何とか助かったと思った瞬間ぐいっと抱き上げられた。ライスシャワーに。そして隣には同じようにハルウララに抱き上げられた蹄鉄さんの姿が!

 

219:名無しのトレーナー

 イケメェン

 

220:名無しのトレーナー

 逆お姫様だっこか・・・たぎるな!

 

221:名無しのトレーナー

 なんで俺はその場所の壁じゃなかったんだ・・・!!!

 

222:ジームイン

 そして二人は「トレーナー!今すぐ保健室に連れてってあげるからね!」「事務員さん、助けてくれてありがとうございました。ライスが保健室まで連れていきます」といったと思ったらレースのスタートダッシュばりの速度で飛び出してあっという間に俺と蹄鉄さんを保健室に連れていってくれました。正直言うと惚れかけたね。あ、蹄鉄さんは打ち身ですんだよ。俺も青あざができたくらいで軽かった。

 

223:名無しのトレーナー

 なるほど、大事なくてよかったな

 

224:名無しのトレーナー

 ほんとほんと

 

225:名無しのトレーナー

 でも400㎏の棚を二人がかりでとはいえ蹴り飛ばすとかウマ娘こっわ

 

226:ジームイン

 用務員の奴が嘆いてたな。頼むから石畳の上で思いっきり踏み込むなって。直すの苦労するんだぞと

 

227:ヨームイン

 名前を呼ばれて即参上!いやマジの話それは勘弁な?それはそうとその地震の時俺のほうでも衝撃的なことがあったから告白させてくれ

 

228:名無しのトレーナー

 あ、微妙に使えないやつがきた

 

229:名無しのトレーナー

 ワイらのほしい情報をくれない無能だ

 

230:名無しのトレーナー

 辛辣すぎて芝生える

 

231:ヨームイン

 君たちなんか厳しくない!?

 

232:名無しのトレーナー

 仕事でもないのにウマ娘に話しかけられるなんて羨ましい

 

233:名無しのトレーナー

 なんかいじりやすそうでつい

 

234:名無しのトレーナー

 はーつっかえ!(フライング

 

235:ヨームイン

 すまん、帰るわ。我らが生徒会長の話はこの後ジームインの奴と共有することにする

 

236:名無しのトレーナー

 ままま、ちょっと待ってくださいよ、ね?

 

237:名無しのトレーナー

 よっイケメェン!

 

238:名無しのトレーナー

 縁の下の力持ちー!

 

239:名無しのトレーナー

 引き止め方がざっつww

 

240:ヨームイン

 しょーがねーなー。地震当時、俺は校舎の修繕作業をしてたんだ。そこで俺に声をかけてくれる人がいた。何を隠そうホースリンクの店長さんである。なぜか隣にとても仲睦まじげな様子のシンボリルドルフを連れていた。まさかシンボリルドルフが男にぴったりくっついて一緒に歩いてくるなんて思わなかった俺は脚立から転がり落ちそうになったものだ

 

241:名無しのトレーナー

 ちょろい(確信

 

242:名無しのトレーナー

 お前詐欺には気を付けろよ

 

243:名無しのトレーナー

 待て!シンボリルドルフが仲睦まじげだと?あのシンボリルドルフが?常に凛々しい顔でウマ娘たちの先頭を歩んでいるあの皇帝が?

 

244:ヨームイン

 ああ、しかも執務をしているときに見せるようなきりっとした顔ではなく優し気に微笑んでいた。皇帝の新たな一面を見てしまった俺だがそこは俺もトレセンの従業員、店長とも店の備品やらなんやらのことでよく話す関係だから今回も仕事の話だろうと踏んだ。話してみるとやはり仕事のことでニシノフラワーがホースリンクに花を植えたいと希望したらしく花壇作ってくれないかという話だったのだが

 

245:名無しのトレーナー

 お前いつも花壇作ってんな

 

246:名無しのトレーナー

 ホースリンクって外観ちょっとウェスタンな感じの喫茶店だよね?花とかあうの?

 

247:名無しのトレーナー

 は?優し気に微笑む皇帝とかトレセン紹介ビデオのテイオーと話しているときみたいな感じの?

  

248:ヨームイン

 いや別にいつも花壇作ってるわけじゃねえよ!?確かにほかの用務員に比べて花壇にかかわる件数は多いけど・・・>>247が言ってるビデオって去年の奴か?いや、それよりももっとこう・・・親し気な家族に見せるような顔って感じだったな。

 

249:名無しのトレーナー

 へぇ・・・でも店長さんだしなあ。わかるというかなんというか

 

250:名無しのトレーナー

 あの人ウマ娘に好かれてるよな。恋愛的な意味じゃなくて、どっちかっていうと兄貴分みたいな感じ。

 

251:ジームイン

 あの人は兎に角優しい。トレーナーにもウマ娘にも事あるごとに料理振舞ってくれるし困ったことがあれば相談に乗ってくれるし、理事長のとんでもない無茶ぶりにも涼しい顔で答えてるし。この前も事故でとあるウマ娘が蹴っちゃって怪我しちゃったんだけど笑顔で許す心の広さ。一人で調理する癖にいつもいつもオグリキャップとスペシャルウィークに食い放題させてるくらいにはおおらかだぞ。

 

252:名無しのトレーナー

 聖人かなにか?

 

253:名無しのトレーナー

 ウマ娘に蹴られて無事とかスピカトレーナーの仲間か?

 

254:名無しのトレーナー

 ゴルシにレースの度にドロップキックされてもピンピンしてる人と一緒にしてやるな

 

255:名無しのトレーナー

 きちんと怪我してる時点で人間だろ。鼻血で済んでるあのトレーナーがおかしいだけだ

 

256:ヨームイン

 それで少し話し込んだところで地震発生、幸い倒れるものは近くになかったんだが・・・落ちてくるものがあった。そう、修理対象だった天井の照明だ。俺が修理する前に地震が起こったから老朽化した照明が落ちてきてしまったんだ。よりにもよってシンボリルドルフの所に

 

257:名無しのトレーナー

 やっぱお前無能だな?

 

258:名無しのトレーナー

 はーつっかえ!

 

259:名無しのトレーナー

 やめたらこの仕事?

 

260:名無しのトレーナー

 不可抗力だけどこれはやばい

 

261:ヨームイン

 そう、俺も脚立に乗ったままだったから脚立が倒れて投げ出された。当然俺なんかより心配なのはシンボリルドルフ、彼女に何かあったらシャレにならん。何とか目を向けるとそこには照明からシンボリルドルフをかばう店長の姿が!

 

262:名無しのトレーナー

 さすが店長!そこにしびれる憧れるぅ!

 

263:名無しのトレーナー

 よーやった!それでこそ男や

 

264:名無しのトレーナー

 この前の地震震度は低かったけど縦揺れだったからな、被害もそりゃ出るか

 

265:ヨームイン

 店長は落ちてくる照明を腕で殴りつけて軌道を逸らした。そして庇われたシンボリルドルフ、悲痛な声で「お兄ちゃん!」・・・ん?お兄ちゃん?聞き間違いか?と俺は思った。そして店長「落ち着け、ルナ。大丈夫だ」・・・ルナ?どちら様ですか?と俺はこんな状況にも関わらずメダパニ状態になった。

 

266:名無しのトレーナー

 お兄ちゃん?皇帝がそういったのか?カレンチャンとかじゃなくて?

 

267:名無しのトレーナー

 ワンチャンマヤノトップガンかもしれない

 

268:名無しのトレーナー

 そしてルナ・・・?まさか、シンボリルドルフのことか?

 

269:ヨームイン

 その疑問に答えるために続きを話そう。耳を疑った俺だが今にも泣きそうな顔をしたシンボリルドルフを見て目も疑う羽目になった。けどとりあえず俺は被害の確認と店長さんには保健室に行ってもらわないとダメなのでシンボリルドルフを撫でてなだめている店長にそれを提案、一緒に保健室に行くことになった。

 

270:名無しのトレーナー

 まって、衝撃的すぎて信じられない

 

271:名無しのトレーナー

 え?あのスペシャルマッチで並み居るウマ娘をぶち抜いて1位をもぎ取ったシンボリルドルフにそんな一面があるんですか!?

 

272:名無しのトレーナー

 まさか皇帝が頭を撫でられるのを許容するとは・・・

 

273:ヨームイン

 道すがら話を聞くと驚くことに店長とシンボリルドルフは年の離れた幼馴染だった。シンボリルドルフの両親が忙しかった時に店長の家に預けられていたそうで落ち着いたシンボリルドルフが「兄さん」と呼びなおしていたな。お兄ちゃんというのは小学生の時に呼んでいたころの名残が咄嗟に出てしまったのだとかなんとか。ルナってのもシンボリルドルフの愛称、呼ばせるのは家族か店長だけらしい。そして保健室に付くと蹄鉄トレーナーらと合流したってわけさ。

 

274:ジームイン

 お前なんか顎が外れてるくらい口開いてたのはそういうことだったのか

 

275:名無しのトレーナー

 気持ちはわかる

 

276:名無しのトレーナー

 つーか店長勝ち組すぎね?羨ましいことこの上ないわ

 

277:ジームイン

 でも店長って調理師だけじゃなく栄養学とかも修めてんぞ?管理栄養士の資格持ってるって。ウマ娘が食うもん作るんだからそういうのは気を遣うのが当たり前、努力は惜しんじゃダメって言ってた。

 

278:名無しのトレーナー

 ぐわあああああ!!

 

279:名無しのトレーナー

 煩悩にまみれた俺たちと違いすぎる

 

280:トレトレーナー

 妙にあの店で飯食うと調子がいいと思ったら栄養まで完璧に考えられてたからなのか・・・

 

281:名無しのトレーナー

 よくよく考えればあんな好立地で飲食店出すんだからウマ娘が来るのは必至、ということは理事長のチェックが通ったわけだ。その時点で優秀なのは当たり前か。

 

282:オキャクサーン

 ホースリンクつながりでこの前の話、オグリキャップ、スーパークリーク、タマモクロスがいた日に行くことができたんだけどさ。その時調理してたのがスーパークリークとタマモクロスだったんだよな

 

283:名無しのトレーナー

 へえ、そりゃ珍しい。いい日に当たったな

 

284:ジームイン

 あー・・・

 

285:ヨームイン

 それは・・・

 

286:トレトレーナー

 うん・・・

 

287:オキャクサーン

 トレセン関係者たちの歯切れが悪いが気にせず行こう

 オグリキャップは料理や飲み物運んだりで忙しそうだったけど勝負服の上にエプロン着たタマモクロスとスーパークリークも負けず劣らずだった。俺はウマ娘の料理が食えるなんてラッキーなどと考えて何も気にしなかったんだがここで話を聞く限り店長がほとんど調理に関わらないってなんか変じゃね?

 

288:名無しのトレーナー

 確かに、そこまでこだわってる人が他人にまかせっきりになるなんて変だな

 

289:名無しのトレーナー

 だな?もしかして新サービスか?これからはウマ娘の料理を前面に押し出す感じ?

 

290:オキャクサーン

 まあ俺の話は涎が止まらないオグリキャップに10人前の焼きそばを奢ったという話で終わるんだが。出費は痛かったがスーパークリークにあーんされるオグリキャップ、プライスレス。なので全く後悔してない。しいて言うなら今言ったことが気になるな。

 

291:ジームイン

 それな、理由があるんだよ

 

292:名無しのトレーナー

 ほほう、理由とな?

 

293:名無しのトレーナー

 詳しく聞こうじゃないか

 

294:ヨームイン

  いやさ?この前のスペシャルマッチで理事長が言ってたこと覚えてる?

 

295:名無しのトレーナー

 あー、あの4字熟語か?

 

296:名無しのトレーナー

 そこじゃないだろ。多分「優勝者にはホースリンクにてスイーツ食べ放題」これだろ

 

297:トレトレーナー

 そうそれ。本来なら優勝したシンボリルドルフの特権だったんだけど・・・彼女「私が得たのは権利だけでシェアしちゃいけないとは言ってない」という理論でレースに来たウマ娘全員で店に押し掛けたのよ。まあレースを見てたらしい店長、理事長に文句を言いながら律儀に全員食べ放題を行うわけね

 

298:名無しのトレーナー

 あの全員食べ放題とかやばいだろww

 

299:名無しのトレーナー

 皇帝は頭が回るなあ(白目

 

300:ヨームイン

 反省しない理事長、それに静かに怒った店長はなんとスイーツだけでなく料理の食べ放題も開催、トレーナーや所属チームウマ娘をも巻き込んだ大パーティーに発展(すべて理事長のおごり扱い)

 

301:ジームイン

 結果、働きすぎた店長、両手に腱鞘炎を発症。現在鋭意治療中。だからこれからのシフトは料理できるウマ娘が行って店長の負担を減らす方針になったみたいよ

 

302:名無しのトレーナー

 おおふ

 

303:名無しのトレーナー

 店長・・・・あんた男だよ・・・!

 

304:名無しのトレーナー

 なるほど、そりゃ料理するのはつらいだろうなあ・・・

 

305:名無しのトレーナー

 店長頑張るなあ。というか人増やしてやれよ。食堂とかから引っ張ってきてさ

 

306:ジームイン

 オグリキャップとスペシャルウィークがいる限り無理

 

307:名無しのトレーナー

 悲しいなあ・・・・

 

 




 BNWのお話じゃないのはお許しください!


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マスター、配信業に手を出す

 本編進めろと思ったあなたたち、本当に申し訳ない
 いやその・・・やってみたくなって・・・・


 「提案!配信などしてみてはどうだろうか!?」

 

 「理事長あんたいい加減にしないともうニンジンケーキ作らないからな」

 

 「にゃああああああ!?」

 

 営業終了後、片づけを終え今日のシフトのウマ娘たちをトレーナーが迎えに来た後。俺が一人楽しく自作のカクテルを作って一杯やろうとしたとき唐突にドアが開いて理事長が珍妙なことを言った。数瞬止まった俺だがこれ以上忙しくされてもアレなのでちょいちょいと理事長に手招き。まさに「いいこと言った!」というドヤ顔で近づいてきた理事長を身長を縮める勢いで帽子と上に乗ってる猫ごと撫でまわしてやった。

 

 「・・・で?配信ってのは?」

 

 「あぅぅぅ~~~~・・・う、うむ!実をいうと最近ウマチューブといった動画サイトが人気を博していることを知っているだろう!?」

 

 「ああ、そりゃまあな。なんでもそれで億稼ぐやつもいるんだって?」

 

 「正解!URAも動画をアップロードしているのだが・・・」

 

 「いまいち伸びない、と」

 

 「はうっ!?」

 

 「そんで困った秋川ちゃんは俺に投げればいいじゃないかと思いつき」

 

 「へうっ!?」

 

 「レースしてるウマ娘の日常を動画、もしくは生放送してファンを増やしたいと」

 

 「そ、そのとおりだ!」

 

 「でも普通の日じゃトレーニングの邪魔になるからうちの店に来る日についでにやって俺の店をスタジオ代わりにすれば経費も人件費も浮いて万々歳、というわけですか」

 

 「阿吽!まさにその通り!さすがはマスター、私のことをよく理解し・・・て・・・?」

 

 「ええ加減にせえっちゅうんじゃこの子供理事長~~~~!!!」

 

 「みゃあああああああ!?」

 

 勝手なことを言う理事長に本日2回目の身長縮小の刑をくれてやってどかりと椅子に座りこむ。配信・・・配信だあ?俺はやったことないしそもそも俺の店でやる理由が皆無だ。なんだったらチームごとにやらせてトレーナーに管理させるのが一番手っ取り早いだろうしな。余計わけわからんくなったぞ。

 

 「・・・で、理事長。なんでホースリンク(うち)を選んだんですか?」

 

 「うう~~~・・・説明。それは知名度と集客率だ。知っての通り君の店は完全予約制、にもかかわらず毎日抽選が必要になるほど予約が舞い込んでくる。抽選があるということはあぶれるものもいるということ。その切り捨てた者が運よく予約に成功するとは限らない。そこからあぶれた熱のあるファンを見逃すわけにはいかないのだ」

 

 「なるほど・・・仮に俺が良しといってもウマ娘たちがいいといいますか?」

 

 「想定、既に君の店にシフトが入ってるウマ娘たち全員の了承は得ている。君の店ならばよいと皆言っておった」

 

 「外堀を埋めるのがうまいっすね・・・いいでしょう。配信とやら、うちでやろうじゃないですか」

 

 「うむ!よろしく頼む!ところで小腹が空いたのだが・・・」

 

 「暫く理事長には何も作りません」

 

 「愕然っ!?」

 

 

 

 

 「ということがあって今日やれって言われて実際今目の前にカメラとパソコンがあるんだけどなんか聞いてる?」

 

 「えっとね!トレーナーが「マスターをできるだけ困らせてやれ」って言ってたけどよくわかんないな~?マスター何か困ってるの?」

 

 「お兄様から「おじ様の言うことをよく聞け」っていうのはライス聞いたよ?」

 

 「そっか~~~~~~。蹄鉄は後でブートジョロキアカレーをくれてやる」

 

 「うっらら~~♪配信だって!何するんだろ、ね!ライスちゃん!」

 

 「理事長さんが言うにはいつも通りお話していればいいって」

 

 「そうなの~~?」

 

 理事長の思い付きに振り回される俺、ここにあり。配信ですってよ皆さま。俺はウマチューバーじゃないっての~。もしやるにしてもゴルシとかベクトルは別だけどモデルやってるゴールドシチーとかにやらせればいいじゃん。しかも一発目がハルウララとライスシャワーなんて豪華も豪華だよね。俺の店でやる必要ある?

 

 で・・・理事長お手製の進行表によると・・・まず挨拶、それから雑談して質問に答える・・・以上。ざっついわ!いるかこんなもん!と進行表を破いてごみ箱に放り込む。どうしたもんかなあ・・・せや、せっかく喫茶店なんだしコーヒーの淹れ方講座を3人でやるのはどうだろうか。そういうのなかったらうちの店でやる意味ないし

 

 「マスター!もうすぐ始まるって~」

 

 「ウララちゃん、ライス髪変じゃないかな?どこかおかしいところない?」

 

 「かわいーよ?」

 

 「ほんと?うれしいな・・・・」

 

 俺とウマ娘二人の空気が違いすぎる。そんなこんなしていると開始の時間になった。なんかいつもと違いすぎて胃がキリキリしてきた・・・おれは料理人だぞ、ウマチューバーじゃないっつーの・・・で、俺は観念するように配信開始のボタンを押した。宣伝とかはせずに0から始めるらしいのでどれだけ俺の店の知名度があるかということになるんだけど・・・なんでウマ娘の名前タイトルに入れちゃダメなの?え?タイトル一本釣りはNG?URAの動画とかち合うから?これもURAのコンテンツじゃねーのかよ・・・

 

 配信開始、のボタンを押すこと30秒、やっとこさ人がぽつぽつ来始めてコメントがもらえるようになった。ちなみに今、ライスとウララはカメラの外で映ってない。

 

 

 ・ホースリンクと聞いて

 ・店長!?店長じゃないか!?

 ・配信はじめたんかワレェ!

 ・喫茶店のマスターが配信とかウマチューブも多様化してきたな

 

 「あー、いらっしゃい。音の大きさとか大丈夫かい?なんせ初めてやるもんでね。至らなかったら申し訳ない。改めましてどうも、URA公認、ウマ娘交流喫茶店ホースリンクでマスターやっとるもんです。よろしゅう」

 

 

 ・音も画面も大丈夫ー

 ・正式名称死ぬほど長くて草。3文字で頼む

 ・リンクだな

 ・緑の勇者?

 ・シェェェアアァァッ!

 ・店長!この前お邪魔させてもらったけど最高だった!また予約するから!絶対!

 

 「おお、ありがとうございます。この前っていうと・・・オグリたちの日かアイネス、エアシャカールの日かな?まあ毎日違うウマ娘たちが来るからうまく狙ってやってくれ。そんでこの放送の目的なんだが・・・このパネルを見てくれ」

 

 当たり障りのない話題の後俺が理事長のイラストとともにこの放送の趣旨を解説した黒板をカメラの前に掲げる。読む時間を2分ほど取ってから立ち上がってカメラにぎりぎり映る場所にかけて置いた。

 

 ・へぇ、予約あぶれちゃった人のために、かあ

 ・理事長!あんた最高だよ!

 ・でも店長の仕事増えまくってるのワロエナイ

 ・でも全く宣伝してないせいでいま20人くらいしかいないやん

 ・独り占めしたいから、ヨシ!

 

 「まあ、いつまでも俺が一人でしゃべってるのもあれだし、話し相手が欲しいな・・・」

 

 ・ワイらじゃ不満か?

 ・そりゃ毎日ウマ娘と触れ合ってる店長だぞ

 ・ブサメンに慈悲をくれ

 ・そんなもんはない

 ・そんなー

 

 「わーい、マスター!」

 

 「お、おじ様~!」

 

 俺の言葉に反応して画面外からハルウララとライスシャワーが登場した。予定通りだったんだが、予定外なのは二人そろって俺に抱き着きに来たことだ。多分蹄鉄の指示だな?ウララの満面の笑みの何とまぶしいことか。ライスは恥ずかしそうだけどやめないあたりノリノリですね・・・コメントが沸き立つ。

 

 

 ・あああああああああああああ!?

 ・マジでか!?マジでか!?

 ・ああああウララちゃああああん!

 ・ライスたん!?ライスたんが俺の画面の中に!?

 ・俺の胸の中に来てくれ!

 ・店長、そこかわれ。いや変わってくださいお願いしますなんでもしますから!

 

 「はい、というわけでホースリンクの厨房裏、一緒に話をしていくのはこの二人」

 

 「うっらら~~♪ハルウララだよ!いっぱいお話しできるとうれしいなあ!」

 

 「ラ、ライスシャワー・・・です。みんなと仲良くできたらいいな」

 

 「というわけで理事長の無茶ぶりに快く協力してくれる可憐なウマ娘二人と今日はお送りしていきたいと思います」

 

 元気に両手をあげて自己紹介する二人を前にしてコメントがすごい勢いで増えていく。まーこんな地味な男がやるよりゃ可愛い可愛いウマ娘たちが画面に映ってた方がいいよね・・・。ライスは割とすぐ離れたんだけどウララはいつまでたっても離れるどころか膝の上ですごそうとしてきたので炎上の気配を察知した俺は隣の椅子にやさしくウララを置いた。ウララのニコニコ笑顔に視聴者とどこからかコメントに紛れ込んでるデジたんが尊死している。

 

 「はい、よろしくな二人とも。そんでこっから先なんだけど・・・なんも考えてないんだわ。なんか質問ある?」

 

 ・そんな〇〇だけど質問ある?みたいなノリで聞かれても・・・

 ・ノープランかぁ・・・もしかして理事長のせい?

 ・蹄鉄トレーナーのことはどう思ってる?

 ・最近あったウマ娘のかわいかったエピソードについてどうか一つ

 ・シンボリルドルフがこの店常連ってマ?

 ・ハルウララとライスシャワー、ぶっちゃけマスターのことどう思ってる?

 

 「んーと・・・理事長先生のせいかわかんないけど、昨日トレーナーにやってって言われたんだ!あとトレーナーもマスターも大好きだよ!あと応援してくれるファンの皆も!」

 

 「ライスは、お兄様もおじ様も好き、だよ?お兄様は毎日ライスのことを考えてくれるし、おじ様はライスがここに来るたびにご飯を食べさせてくれるし・・・」

 

 「ルドルフ?ああ、たしかによく来るぞ。というかあいつと俺幼馴染だしな、年はだいぶ離れてるけどよ。最近あったウマ娘の可愛かったエピソードねー・・・・」

 

 真剣そのものな顔で質問に答える二人の緊張をほぐすため二人の頭に手を置いて撫でながら考える。さすがは現役ウマ娘、髪や耳の手入れは怠ってないらしく実にさわり心地がいい。時折触れる柔らかな耳が手の下でぴくぴく動くのを感じながら俺はどれを話そうか考える。いや、話してもいい話はたくさんあるんだけどどれがウマ娘たちのイメージアップにつながるかわからん。例えばマックイーンが開店前にここでスイーツをたくさん食べてる話をしたとしよう。視聴者には受けるけど俺がマックイーンに後で怒られてロメロスペシャルを決められるかもしれない。なんでお嬢様なのにプロレス技に精通してるんだあいつは。

 

  

 ・待って?ルドルフと幼馴染?しぬほど詳細に情報をくれ!

 ・なんでこの人は当たり前のようにウマ娘の頭に触れてんだ

 ・店長だからでしょ

 ・俺と変わってくれない?

 ・ウマ娘を恋愛対象とかそういうのに見なかったらいいぞ

 ・無理ですわ

 ・手に頭を擦り付けるウララちゃんきゃわわ

 ・ライスちゃんのふにゃふにゃ笑顔であと40時間は働ける

 

 「ああ、そうだこれがあったわ。ちょっと前の話なんだけどな?この前ここでマンハッタンカフェ、アグネスタキオン、ミホノブルボンの3人と炬燵で鍋をやったんだけど」

 

 「ええ!?お鍋・・・?いいなあ、ブルボンさん」

 

 「あー!ずるーい!」

 

 「今度食わせてやるよ。その時にタキオンの奴が炬燵の魔力に取りつかれてなあ・・・こんな感じになっちまってな」

 

 配信に使ってるパソコンはなぜか俺の私用のパソコンなので画像フォルダーから炬燵の中に体を突っ込みうつぶせで顔だけ出して溶けてしまったタキオンの画像を引っ張り出して配信画面に映す。ちなみに撮ったのはマンハッタンカフェ。日頃の仕返しだとかなんとか。

 

 「あー!タキオンさんだ!こたつむりー!」

 

 「ふ、ふふ・・・あのタキオンさんが・・・」

 

 「あいつ研究から離れると大体こんな感じだぞ。日頃の研究に裂いてる時間が多いだけで。モルモットの奴と一緒だとこれ以上にだらけてる」

 

 

 ・は~~~?なにこれ可愛すぎるんだが?

 ・別の所で足を入れながら無表情ピースをするミホノブルボンが可愛い

 ・こんなことして実験対象にされても知らんぞ

 ・ゲーミング店長・・・!

 ・最近タキオンのウマッターでレーザービームを発射する動画を投稿されてたモルモットトレーナー・・・

 ・あの人ほんまに人間なん?

 ・男か女かすらわかってないけどな

 

 「あの人Mrモルモットって言われてるけど性別不明なんだよなあ。もしかしたら女の人かもしれないんだけどちょっと・・・声も中性的だし」

 

 「私は男の人だと思うなー!」

 

 「ライスは女の人かなって・・・持ってたハンカチ花柄だったし・・・」

 

 

 ・どっちでもたぎる

 ・二人はここの喫茶店の飲み物で好きな奴ある?

 ・ワイ、ここのブレンドが忘れられない

 ・ここで飲んだエスプレッソ、美味しすぎる。あんなに濃いのに苦みがくどく無いし、すっきりと喉に通る。

 ・はちみーっていうやつ美味しかったなあ

 ・店長、せっかく放送してるんだしコーヒー淹れるコツとか教えてよ

 

 「コーヒーのコツ?いいぞ、お手軽においしくなるように教えてやる」

 

 「私は・・・う~~~~~~ん・・・沢山あって選べないよ~~~!!・・・あ!食べるイチゴミルク!あれが好き!」

 

 「ライスは、マスターさんが淹れてくれるココアが一番好きなんだ。ほっとするの」

 

 「じゃあ淹れるか、ハイ二人ともこれ着けて」

 

 「エプロンだ~~~!桜の柄の!」

 

 「ライスのは・・・お米?」

 

 「ああ、知り合いの服職人に頼んで作ってもらった。勝負服作ってるやつなんだけど、二つ返事だったよ。それプレゼントだから持って帰って好きなように使え~」

 

 カメラを移動してカウンターの前に3人で立つ。俺はサイフォンを指さしながら説明を始める。

 

 「えー、まずはどのご家庭にもあるでおなじみサイフォンを使って・・・」

 

 「私もってないよ?」

 

 「ライスも持ってないな・・・」

 

 

 ・堂々と噓をつくな

 ・誰が本格的にやれといった

 ・ドリップコーヒーで許して・・・

 ・一般家庭にサイフォンはないぞ

 ・ワイは持ってるで

 ・コーヒー好きは持ってるかもしれないが一般家庭にはない(断言

 

 「なんだないのか。じゃあしょうがないな。では代用品としてハルウララかライスシャワーを用意してください」

 

 そう言いつつサイフォンですでに淹れてあったコーヒーをウララに渡し、ライスにマグカップを渡した。二人は?マークを頭上に浮かべながらも素直に受け取り、耳をくるくる回しながら待機している

 

 ・いきなり超絶難易度にするな

 ・先生!サイフォンより難易度が高いです!

 ・さてはまじめに解説する気ないな?

 ・最初より難易度が20000倍くらい上がってて草

 ・サイフォン用意したゾ

  

 「二人ともいない場合は知り合いのウマ娘、奥さん、恋人、姉、兄、妹、弟、友人などで代用しましょう。そして持たせたコーヒーをコップに注いでもらって完成です。結局無駄に自分でやるよりも誰かに淹れてもらったほうがありがたいし美味しいよねという話でした」

 

 ウララがライスの持ったカップにコーヒーを注ぎ、カメラの前で両手で差し出す。そして二人で一言

 

 「どーぞ!」

 

 「飲んでください」

 

 ・これは絶対うまい

 ・全員いない場合はどうしたらいいですか!?

 ・もうそれはあきらめて自分でやれ

 ・ひっでえ

 ・サイフォンって意外とお高いんやな・・・

 ・ビジュアルって卑怯だわ

 

 「まー今のは冗談だから安心しろ。いわゆるメジャーなペーパードリップでの淹れ方を今から解説しよう。用意するのは、ドリッパーとコーヒーをためるサーバー、もしくはカップ。コーヒーの粉に出口が細いケトル、コーヒーフィルターにあと携帯でいいからタイマーな」

 

 「えーと、ドリッパー?サーバー・・・あとコーヒーの粉・・・」

 

 「コーヒーケトルにコーヒーフィルター、あとタイマー・・・」

 

 ウララとライスがそれぞれ道具を用意し、ケトルに水を入れて沸かす。そして解説を続ける俺、早くもウララが怪しいが多分大丈夫、ダメでもライスが頑張ってくれる!

 

 「お湯が沸いたら飲むカップに注いで温めろ。そしてフィルターをドリッパーにセットして粉をきちんと規定量入れて平らにならすんだ」

 

 

 

 ・ほうほう

 ・2人が協力して作業してるの萌える

 ・わかる

 ・ワイにも淹れてくんねーかなー

 ・へー、カップも温めるんだ

 

 「そして何回かに分けてお湯を注ぐぞ。今回は3人分のお湯を用意したからな。まず1回目、これが超重要なんだ。粉全体が濡れるように円を描いて注ぎ、20秒ほど蒸らせ」

 

 「そーっとそーっと・・・」

 

 「そうそう、そんで20秒経過したら2回目、ここが香りを決める。たっぷりとぎりぎりまで注いで3回目、4回目へと続けろ。2回目以降は全部落ちる前に追加で注いで1回に注ぐ量を減らしていくんだ。お湯がなくなったら終了」

 

 「わぁ・・・いい匂い・・・」

 

 「できれば何杯分注ぐにしても2分30秒から3分くらいで終わらしたいところだな。それ以降はきちんとコーヒーが出ない。わかったかー?」

 

 「うん!ねえライスちゃん!これでトレーナーにコーヒー淹れてあげられるね!」

 

 「わあ、お兄様喜んでくれるかな・・・」

 

 

 ・こんなことされたら涙腺壊れる

 ・ワイ将、夫婦喧嘩したのでこれを試してみる候

 ・トレーナー羨ましい・・・・!!!

 ・人増えてきたな・・・

 ・ウマッターで宣伝した一般人がいるっぽい

 ・同接300人か、増えたな

 ・そのうち1000人とか軽くいきそう

 ・ウマ娘が配信やりゃそりゃあなあー

 ・バーチャルウマ娘クルー?

 

 二人が淹れてくれたコーヒーをマグに注ぎ、さすがにブラックのままでは無理だろうということで冷蔵庫から牛乳、ホイップクリームを出し砂糖と温めた牛乳で混ぜ、カフェオレにした後ホイップクリームを載せて適当に砂糖をカラメルにしたもんをかけてやる。これでキャラメルマキアートもどきの完成だ。もちろん俺はブラックだ。

 

 「はい、これで飲みやすいだろ」

 

 「わぁ!甘い!おいし~~~!」

 

 「クリームがふわふわ・・・ちょっとほろ苦くて、でも甘くて・・・おいしいです」

 

 「おう、ありがとよ。つーことでいい時間になったからそろそろ終わるわ。あとちょいで蹄鉄が迎えに来るからな。俺は今からブートジョロキアカレーを奴の口の中に押し込む作業の準備に移る。つーわけで次回の予定は未定だけどまたどっかで会おうぜ!動画はちょくちょくあげてくからな!ホースリンクの厨房裏、お送りしたのはマスターと」

 

 「みんなと話せてうれしいな!ハルウララだよ~!」

 

 「とっても楽しかったです。またお話しできたらいいな。ライスシャワーです」

 

 「それではご来店、ありがとうございました~!」

 

 「「ありがとうございました~~~!!!」」

 

 

 ・作る手際よすぎィ!

 ・蹄鉄トレーナーどんな恨みを店長に抱かれてんだ・・・

 ・最高に楽しかったからレースに支障が出ないレベルで毎日やれ

 ・無茶苦茶言っとる

 ・ああ~~~ライスちゃんとウララちゃん頬っぺたくっつけあってニコニコしてるの尊み~~~!!

 ・ところでマスター君、同室のウマ娘が倒れたんだけど・・・それと後で覚えておきたまえ

 ・マスターさん、お鍋美味しかったです。またお邪魔させてもらいますね

 ・テンチョー!お鍋ってなにさ~~!ボクも次は食べに行かせてよ~~!!




 次回こそは・・・次回こそは喫茶店の話を・・・・!!!


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クレープ食べ放題

 配信を初めてやった日から幾日かたち、俺の両手もすっかり良くなってサポーターも外れ、ついでに折れてた肋骨も完治した。いやーあばらをやると長いね!固定がうまく行ってたおかげで動きまくってもそんなに痛んだりはしなかったけどさ。

 

 ああ~~~フライパンが持ちやすい!いつも通りに力を籠められることのなんと素晴らしいことか。試しに野菜炒めを作ってみたが違和感はないな。よしよし、これできちんと仕事に戻れる。

 

 ああそうそう、あれから配信はやってないのだがちょくちょく動画は投稿してる。人気なのは「ホースリンクの賄い飯」と「トレーナーが質問に答える」というやつだ。前者は俺の店で出す賄いをレシピの解説から実際の調理までしてそれをウマ娘が食うというもの。そんで後者は蹄鉄とか仲のいいトレーナーに協力を仰いで事前に募集した質問に答えてもらうものだ。スピカトレーナーが一番再生数が多いな。おもにゴルシとの関係についてだけど。

 

 今度から店の様子を定点放送でもしようかな~とウマチューバーが板についてきたような気がする俺が色々思案しているとそろそろ今日の担当のウマ娘たちが来る時間だ。一人はめっきり日曜日に来なくなったし、また仲良くしてくれるといいんだけど。

 

 今日はリハビリがてら軽いものを作ろうと思う。題してクレープフェア!軽食は出さず、クレープとほかのスイーツが食べ放題というスイーツバイキングみたいなもんだ。昨日のうちに大量のフルーツ、アイス、ケーキを仕込んで今この店には似つかわしくないほど大きい(ウマ娘を相手するなら標準サイズ)の業務用冷蔵庫に所狭しと眠っている。自分で取り分けてよし、ウマ娘に取ってもらってもよし、なかなかいいアイデアではないだろうか。

 

 小麦粉と卵、牛乳を混ぜてクレープ生地を作ってるとドアが盛大な音を立てて開いた。ははあ、こ奴が先頭だと思ってたけどドアがぶっ壊れそうなくらい勢いよく開くのはやめてくれ。

 

 

 「おっはよおおおおおおお!!!!マスターさーーーん!」

 

 「相変わらず声がでかいなチケゾー。元気そうで何よりだ」

 

 「えっへへー。だってだって今日はハヤヒデとタイシンと一緒に働けるんだよ!?もう嬉しくって嬉しくって~!」

 

 現れたのは黒鹿毛の跳ね気味なショートカットのウマ娘、チケゾーことウイニングチケットだ。元気の良さでいえばあのタイキシャトルをも上回るほど。見るだけでこちらが笑顔になるほど素直で感情をそのまま表に出すタイプ。特に感動すると必ず泣くほどにだ。すごくどうでもいいことで感動するからなコイツ。

 

 「あ~~~~!!!マスターさん両手治ってる!?よがっだよ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!」

 

 「うるっさ!チケゾーおちつけ!ほら大丈夫だから!ちゃんと動いてるから!」

 

 「う゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ん゛!!!」

 

 さすが感覚器官が鋭いことに定評があるウマ娘、目ざとくここ何週間か俺の両手を占有していたサポーターがないことに気付いたチケゾーの瞳にみるみる涙が溜まって一瞬で決壊、おんおん女の子とは思えない声を出して泣き出したチケゾーを慌てて俺がなだめる。ひぐえぐと盛大に泣くチケゾーを持て余しているとややあってまたドアが開いた。

 

 「全く、チケット。私たちを置いていくなとあれほど・・・ああ、おはようマスターくん。チケットのその様子を見るに両手は完治したというところか、おめでとうと言わせてもらうよ」

 

 「ああ、ありがとうハヤヒデ。バラバラに来るとは珍しいな?」

 

 「いや、そうではなくてだな・・・チケットは君に会うのが楽しみで待ちきれなかったんだが、タイシンがな・・・ドアの前まで来たのはいいものの「やっぱり帰る」と言い出して・・・少々説得していた。自分で入ると言っているから先に入ったんだが・・・」

 

 彼女の名はビワハヤヒデ、カールした長いロングヘアの芦毛と赤いアンダーリムのメガネが魅力的なウマ娘、妹を持つ姉ということもあって面倒見がよく、よく泣くチケゾーとツンツンしてるタイシンをまとめる潤滑剤みたいな立場にいる。彼女は俺にしがみつくチケゾーを困った目で見ながら耳をドアのほうへそばだてている。入ってこないってことは踏ん切りがつかないのかね。

 

 「そんな悩むことか~~~?人を蹴っ飛ばしたくらいで」

 

 「君はそう言うが私たちウマ娘にとっては大ごとだぞ。特に今回の件は君に非がないわけであるし、私たちのようにレースに出てるウマ娘にとって人を怪我させたなんてことがあったら出場停止なんてこともある。君は全くタイシンを責めないから逆にいたたまれなくてな・・・トレーナーとじゃれ合うものとはまた別なんだ」

 

 「ふ~~~~ん。チケゾーちょっと頼むわ」

 

 とりあえず入ってもらわないと仕事も話も進まないのでついには俺に抱き着いて滂沱の涙を流し続けるチケゾーをハヤヒデに引きはがしてもらってドアの前まで行ってドアを勢いよく開ける。するとそこには死ぬほど焦った顔をしている小柄で鹿毛のショートヘアのウマ娘がいた。彼女こそが件のウマ娘であるナリタタイシン、負けん気が強く、トゲトゲしているが案外繊細で気にしいのウマ娘だ。彼女はドアを開けた俺を見た瞬間に顔が青ざめ、耳はへたり込み、尻尾が垂れてしまった。何この罪悪感、小さい子を苛めてるみたいじゃん。

 

 「おう、おはようタイシン。元気してたか?」

 

 「お、おはよ・・・まあ、それなりに・・・」

 

 「そっか。心配してたんだ、あのあとめっきり店に来なくなっちまったからな、嫌われたのかと」

 

 「そんなわけない!あっ・・・その・・・なんで、怒らないの?アタシ、あんたを蹴っ飛ばして怪我させたのに・・・」

 

 俺が嫌われたのかと心配してたことを尋ねるとタイシンにしては珍しく強く否定してくれたので少し安心した。普通に嫌いとかうざいとか言うからなコイツ、チケットがよく言われてるのを耳にする。チケット自身は本心じゃないのを分かってるのかどうなのか全く気にせずタイシンに絡んでいくので一人を好みがちなタイシンの数少ないライバル兼友達だ。もちろんハヤヒデも。3人合わせてBNWと呼ばれているこの集まりは同じチームにもかかわらず同じレースによく出場するからよく見る。ファン人気もまとめて高いのだ。

 

 「おいおいよく考えろ。スピカのトレーナーがどんだけ蹴り飛ばされてプロレス技食らってると思ってるんだ。よくあることだろ」

 

 「それは・・・まあそうだけど。でもあんたはトレーナーじゃない。それに手加減だって間に合わなかったのに」

 

 「慣れてるから大丈夫だ。正直言って俺にとっちゃ怒る理由がないからな。それよりもお前が店に来なかったほうが堪えたぞ。申し訳ないと思うなら売り上げに貢献してくれ」

 

 俺がそう言い切るとタイシンはようやく俺から逸らしていた目を俺に向けてくれた。ちゃんとこっち向いてくれてよかった。これはルナの名誉のために言わないでおくが実はウマ娘に怪我をさせられるのに慣れてるのは事実。ルナがまだ幼くて力加減が不器用だったもんだからそりゃもう突撃食らってふっとんだり骨が折れたりなんてのは日常茶飯事だったのだ。ルナは泣きながら力加減を覚えたといっても過言ではない。当時の俺は包帯まみれだったものだ・・・自分で言うのもなんだがなんで怒らなかったんだろうな俺。そんだけルナが大事だったんだけどさ。

 

 「はあ・・・もう、気にしてるのがバカみたい。わかった、あんたがそれでいいなら私も何も言わない。でも、これだけ言わせて・・・蹴っちゃって、ごめんなさい」

 

 「ああ、いいよ。さ、もうすぐ仕事だぞ~腹ごしらえしたら頑張ろうな」

 

 「はいはい・・・美味しいのを期待しといてあげる」

 

 「任せろ!両腕が自由になった俺に隙はない!」

 

 と、ドアを開けて店の中に入ると俺とタイシンが仲直りしたことを察したチケゾーが涙で池が作れそうな勢いで号泣してこっちにすっ飛んできた。二人仲良くタックルを食らって俺たちは思わず笑うのであったとさ。

 

 

 

 動画のために3人に承諾を得てカメラを回しながら今日のことを伝えていく。今日の日替わりはクレープ中心のスイーツビュッフェ。オーダービュッフェになるから忙しくなるかもということももろもろ伝え終わってお待ちかねの賄いタイム。

 

 「で、今日のスイーツフェアなんだが」

 

 「ふむ、今日は男性女性ともバランスよく予約が入ってたと思うのだがそれでいいのか?」

 

 「いい、というか予約の段階で今日は甘いものを出すって言う大まかな予告はしてるんだからそれを承知した人たちでしょ多分。まあダメだったらこんな感じで・・・」

 

 俺はササっとカウンターの鉄板でクレープを焼いてその上に、ツナマヨ、レタス、トマト、サニーレタス、ニンジン、玉ねぎを入れてニンジンドレッシングを少量かけてサラダクレープを作り上げた。これなら大丈夫でしょ。

 

 「甘いだけがクレープじゃないさね。まあタコミートも用意してあるからタコス風にしてもいいかな。タイシン食べる?こういうのなら好きでしょ」

 

 「・・・食べる」

 

 「ほいほい。二人も一つ作ってあげるから好きなものを言ってくれー」

 

 「いいの!?それじゃえっと・・・イチゴとバニラアイス!あとカスタードと生クリームマシマシで!」

 

 「うわ・・・甘ったるそう・・・あんたそんなの食べるの?」

 

 「え~~~いいじゃ~~ん!タイシンも一口食べる?」

 

 「いらない。甘いものそんなに好きじゃないし」

 

 「じゃあ私は・・・バナナとチョコレート、生クリーム。バナナ多めがいいな」

 

 「おっけー。すぐ作るからちょっと待っててな」

 

 二人のオーダーを受けた俺はクレープをまた焼いてまずチケゾー所望のイチゴダブルクリーム&アイスを作る。カスタード敷いて、上にイチゴ敷き詰めて、その上に生クリームホイップして、くるくる巻いてよく見るクレープに、それをスタンドにおいて頂点にアイスをズドンと置いたあと追い生クリームにイチゴとイチゴソースをかけて完成、見た目も宝石のようなイチゴクレープだな!結構ボリューミーになっちゃった。ウマ娘だしまあいっか。

 

 そしてハヤヒデ所望のバナナチョコクリーム。バナナを縦半分にして豪華に一本おき、生クリームをホイップしてその上にチョコソース、そのあとドライバナナを砕いたものとクルミをトッピングして同じようにくるくる巻いて完成、うん、なんか楽しくなってきたぞ!やっぱり自由に料理するのは楽しいなあ!

 

 「ほれ二人ともお待たせ。食べたら着替えてきてくれ~。タイシン、うまいか?」

 

 「言う必要ある?・・・おいしいけどさ」

 

 「わあ~~~!やっぱりマスターさんの料理はボリュームあって美味しいね!ね!」

 

 「ああ、日曜日にしか来られないのが残念だ。特にこの前はオグリキャップが・・・」

 

 「悪いな、残弾は残さない主義でね」

 

 「じゃあウマ娘の予約も受け付けてくんない?」

 

 「俺が過労死しちゃうだろ」

 

 ルナ用に残してるのは秘密だ。チケゾーが口の周りをクリームまみれにしてるのを甲斐甲斐しくハヤヒデがハンカチで拭いてあげるのを微笑ましく思っているとそろそろ準備に取り掛からないとまずい時間だ。いそげーいそげー!開店の時間だー!

 

 

 

 

 

 「いらっしゃ~~い!ホースリンクへようこそ!今日はスイーツバイキングだよ!」

 

 「席に着いたらそこの黒板に書いてあるフルーツやアイスを決めて私たちに伝えてくれ。マスターくんがそれでクレープを作ってくれる」

 

 「甘いのがダメならサラダクレープもあるよ。タコスっぽいのがおすすめだって」

 

 「あ!ナリタタイシンさん!よかったらサインを・・・」

 

 「アタシ?・・・まあいいけど。どこ?」

 

 「このサイン帳に・・・・!」

 

 「ん」

 

 「ありがとうございます!大切にします!」

 

 「・・・大げさ」

 

 いやー予約のキャンセルもないしクレープは結構好評だしいいですな。ドリンクも結構でてる。特に今日のコーヒーは甘いものに合わせても美味しく、それでいてすっきり飲めるようにブレンドを変えてみたのだ。いつもより苦みと香りが強く、酸味が少ない。甘いものを食べた口の中をさっぱりとリセットしてくれるだろう

 

 もちろんみんな勝負服、黄色のシャツを結んで腹だし、片足分バッサリないダメージジーンズ、ファーがついたジャケットというパンクな姿のタイシン、ピンクと赤っぽい茶色のアイドルっぽい勝負服、なぜかスカートの横に穴が開いてるハヤヒデ、タンクトップっぽい上着の中に青っぽいスポブラをもろに見せてるスパッツがスポーティーなチケゾー。みんなよく似合ってるんだけど・・・寒くないのそれ?なんで腹だしばっかしてるんだよ。チケゾーに至っては袖がないんだよな。見てるだけで体冷える。アイス扱ってると寒くなってくるわ。

 

 そしてタコスクレープが案外人気だ。使ってるクレープ生地自体は甘くはないからどんなトッピングしてもおおむね大丈夫だけどそれでもやっぱりクレープだもん、甘くしたくなると思ったんだけどしょっぱいのも人気っぽい。あとはプリンクレープとかも人気。在庫の減りがすごいや。

 

 そんなこんなで時間がたって問題なく今日の営業も終了。途中で来店した夫婦から子供を授かったという話を聞いたチケゾーが感動で泣くといういつも通りというかなんというかということはあったがそれ以外特に特筆すべきことはなかった。しいて言うならタイシンが一番人気だったくらい?

 

 「なんか食ってく?タコライスなら作れるけど」

 

 「食べる食べる!大盛りで!」

 

 「少な目、サルサ多めで」

 

 「じゃあ私は、チーズを増やしてもらおう」

 

 「おっけー」

 

 ささっと本日余ったタコミートを使用してタコライスを作る。サルサソースももちろんオリジナル。ハラペーニョがピリリときいた大人の味です。このソース実はたづなさんがよく持ち帰ってるんだよね。ポテチにつけてビールでグイッといくのがいいとかなんとか。あとトレーナー達酒飲みのつまみにもなるってさ。俺もカクテルを作る程度には酒が好きなのでわからんでもない。うまいアテを自分で作れるってなんか得した気分だよね。

 

 「ハイお待たせ」

 

 「「「いただきま~す!」」」

 

 3人がワイワイ姦しく食事をするのをちゃっかりカメラで撮影しながら俺はひたすらに鉄板を磨き上げて汚れを落とすのであった。

 

 

 

 

 

 ホースリンク本日の賄い。「クレープ&タコライス」

 

 

  コメント

 相変わらずマスターさん手際よすぎて草。盛り付けもきれいだな。

 

 さすがプロだわ。あと何がとは言わんがでかいな

 

 ああ、でかいな。ハヤヒデ

 

 いいモノをお持ちで

 

 お前ら最低だな。毛量が多いだけで普通だろ。

 

 ↑お前純粋だな・・・詐欺には気を付けろよ

 

 しかしまあ・・・ウイニングチケットは元気だな。ナリタタイシン引いてるぞ

 

 BNWはこれがデフォ!いやー店長が動画上げてくれるからウマ娘の普段の様子を見れていいですわ

 

 生配信またやってくれねーかなー

 

 

 動画が上がった夜・・・とある寮から「私の頭は大きくないぞ!?」というウマ娘の悲痛な叫びが響き渡ったそうな




 今回のイベントを完走できないかもしれない作者です
 
 評価、感想ともに大変励みになっております。今まで特にお礼なんぞ言ってこなかったのでこの場を借りて皆さんにお礼申し上げます。

 評価と感想くれると筆が早くなります(本音)

 これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。


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スペシャルタルト

イベントを完走できなかった憤りを込めて書きました。反省してます。


 今日は晴れの日だ。曜日は日曜日、ウマ娘のために店を開いているはずであるが・・・今日は特別な日なので店を開けてない。俺の店で食事をするのを楽しみにしているウマ娘の諸君には誠に申し訳ないんだけど今日という特別な日ぐらいは許してほしい、と俺は店の裏手、ウッドデッキになっている元テラス席の一角でいつもの店の制服でなくタキシード姿で待っている。俺の店なのかと疑うほど可憐に装飾され、バージンロードが敷かれている。

 

 「・・・あなた」

 

 「来たか、似合ってるな。さすがは皇帝」

 

 「ふふ、今日はその呼び方はなしにしてほしいな」

 

 「ああ、すまないな・・・ルナ」

 

 「・・・うん、今日はよろしく頼むよ」

 

 「固いな~」

 

 声をかけてきたのはルナことシンボリルドルフ、彼女もいつもの皇帝という二つ名を体現したかのような軍服っぽい勝負服ではなく、純白の、裾が床に付くかつかないかくらいの長さの綺麗なウエディングドレスに身を包んでヴェールを被っている。凛々しさと優雅さ、そして可愛さをすべて混ぜ込んで強調したようなルナの姿に思わず感嘆の息を漏らした。俺はルナに歩み寄り、横に並んで腕を差し出す。ルナは何も言わずにその手を取って俺の隣に並ぶ。そのままコツコツと俺の革靴とルナの蹄鉄ハイヒールが音を立て、ウッドデッキのすぐ端、トレセン学園を臨める場所まで腕を組んで歩いた。

 

 「俺で良かったのか?」

 

 「あなた以外に私の相手を務められる人間がいると思うのか?」

 

 「はあ、光栄ですよお姫様」

 

 背景のトレセン学園を挟むように俺たちは向き直って、ルナの顔を薄く隠しているヴェールを上げる。露になったルナの紅潮した顔には化粧が施してあり、元からいいルナの顔がさらに可愛くなっている。見つめ合った俺とルナはどちらともなく顔を近づけ、その唇に俺の唇が触れようと近づいていく――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「カーーーット!!!ありがとうございました!」

 

 「「はーーーーー・・・」」

 

 監督からカットの声が入って顔を放して引き締めていた表情を緩めた。あーもう、なんでブライダル系のCMの撮影に俺が駆り出されてるんだか・・・え?実際の結婚式?いやだなあ、ルナはまだ学生なんだからそういう相手がいたとしても卒業後でしょ。ついでに俺なんかじゃ釣り合わないって。さてさて、こんな話になったのはおおよそ2週間ほど前にさかのぼるんだが・・・

 

 

 

 

 「兄さん、頼みがあるんだけど聞いてくれないか?」

 

 「いいぞ」

 

 「内容くらい確かめないと何を言われるかわからないぞ・・・」

 

 「理事長が言ってくるなら聞くけどお前が言うなら別にな。それにお前が俺に頼むなんて最後の手段みたいなもんだろ」

 

 その日の営業終了後に一人でやってきたルナが俺の隣に腰かけつつそう聞いてくるので即答してやるとなぜかお説教をいただいた。いやだってお前が俺を頼るなんてなかなか珍しいことだから聞いてやりたくもなるじゃん?分かってよこの兄心を。とりあえずルナにブレンドとクッキーを出してやって話を聞くことにする。

 

 「実は、とある大手のブライダル系の会社から依頼があってね・・・なんでもウエディングプランを扱う会社のCMにウマ娘を使いたいということなんだ。それで理事長が私ともう二人を選んで声をかけてくださったのだが・・・」

 

 「へえ、良かったな。タダでウエディングドレス着れるぞ」

 

 「ふふ、確かに。それで困りごとが一つあってね・・・相手役がいないんだ」

 

 「俳優用意してもらえなかったのか?」

 

 「相手が私だと知ったらみんな断ってしまったそうなのだ・・・断らなかったのは大物の俳優くらいなのだがさすがに年齢差とイメージが合わなくて監督のほうからNGが出た。トレーナーでもいいとの話だったのだけど私のトレーナーは・・・」

 

 「ああ、もうすぐ還暦だっけ。エアグルーヴが引退したらもう一線から退くって言ってたな。長老さんじゃさすがに厳しいか」

 

 「やっていただくのも恐れ多いしどう見ても親子にしか見えないんだ。そこで兄さんにお願いしたいんだけど・・・」

 

 「お前の相手役をか?」

 

 「うん」

 

 「いいぞ。断る理由は特にないしな。あーでも俺演技とかからっきしだぞ」

 

 「私たちだってそうだ。先方が欲しいのはあくまでウマ娘であることとある程度以上の知名度だからな。まあ、写真撮影のようなものだろう」

 

 

 

 

 と、いう話になって撮影所はどこだという話になったらうちの店のウッドデッキが監督にピンと来たらしい。トレセン学園がバックに映って道路があるわけじゃないしうちの店が待機所にもなるからちょうどいいとかなんとか。そんで今日いる一緒に撮影するウマ娘というのは

 

 「はわ、はわわわわ・・・・・」

 

 「いやー、様になってるね。マヤちゃん大丈夫かい?」

 

 そこで何を思ったか真っ赤になってる明るい鹿毛のウマ娘、少し短めのウエディングドレスに身を包んだマヤノトップガンとウエディングドレスではなく燕尾服を見事に着こなしている黒鹿毛のウマ娘「おっぱいの付いたイケメン」などと称されているウマ娘たちの寮の一つ、栗東寮の寮長を務めているフジキセキだ。なんでフジキセキはウエディングドレスじゃないんだろうな。絶対似合うと思うんだけど。

 

 「フジ、お前なんでドレスじゃないんだ?」

 

 「私かい?流石に柄じゃないよ。それにこういう服なら勝負服で着慣れているからね、今日はこのポニーちゃんの相方になるのさ」

 

 「なんだ、見てみたかったけどな」

 

 「おっと、相手から目を逸らすのは感心しないよ。今日の会長のプリンスは君なんだから、ね?」

 

 「はいはい。交代か、マヤほら、深呼吸して。そんなんで大丈夫か?相手はフジだぞ?」

 

 「それはどういう意味かな?」

 

 「あ、アイコピー・・すーっはー・・・マスターちゃんと会長が大人すぎるよぉ・・・」

 

 「「そうか?」」

 

 「息ぴったり・・・」

 

 俺とルナが同時に顔を合わせて首を傾げるとマヤから突っ込みが入ったがよくわからん俺とルナは首を傾げるばかり、フジはクックッと腹を抱えて笑っている。そうしていると次の撮影の準備が整ったらしくカメラマンが一眼レフを構えながらこちらに呼び掛けてきた。まだ顔が赤いマヤとすぐさま落ち着いたフジが歩いていく。

 

 そうして撮影が始まった。俺とルナはそこにおいてある椅子に座って撮影の様子を見守る。しっかし様になってるなあフジのやつ。パシャパシャとフラッシュが焚かれるたびにマヤの顔の赤さが映えるような位置に自然に誘導してる。というか監督は頷いてないでマヤに時間をあげろよ。え?なに?逆に顔が赤くて慌ててるほうがいい絵が撮れるから好都合?そんなもんなのか・・・

 

 「く~~~惜しい!絶対ドレス似合うのに~~~!!!」

 

 と俺たちから少し離れたところでフジを見ながらハンカチを噛み締めている今回の衣装&メイク担当の人。そしてそれに深く深く頷くレフ板を持ったアグネスデジタル。何でお前ここにいるの?え?ウマ娘ちゃんのいるところにデジたんあり?ふぅん、じゃあお前もドレス着て映るか?そこの衣装担当の人の目が輝いてるぞ?え?解釈違い?相手役なら俺がやってもいいけど。・・・は?尊さで顔面を維持できないので遠慮する?まあいいけどさ。目線で会話するのに疲れたのでルナに向き直ると彼女は何か思いついたように口を開いた

 

 「ところで兄さん。一つ提案があるんだが」

 

 「聞こうじゃないか」

 

 「フジキセキのドレス姿、見てみたくないか?」

 

 「そりゃな」

 

 「「詳しく聞かせてくれ」」

 

 そこで割り込んできたのは監督と衣装担当の人。ルナはにやーっといたずらを楽しむような顔をしてこしょこしょと全員に向かって内緒話。ふむふむ、なるほど?ほほう、それならいけるか。デジタル、お前は仕事してろ。なるほどな~それなら会社側にも理があるし筋は通ってるから行けるか。しかしルナ、お主もワルよのお。そして衣装担当と監督、すごい悪い顔してるぞ。

 

 「兄さんほどじゃないさ」

 

 「ま、あのいたずら好きの寮長に仕返しするのも悪くはないだろ」

 

 「はい!休憩入ります!休憩後、フジキセキさんとシンボリルドルフさんは着替えをお願いします!内容は衣装担当のほうまで!マヤノトップガンさんは引き続き彼と撮影をお願いします!」

 

 「マスターちゃんが相手役になるの?言われたっけ?」

 

 「ああ、撮影した絵は多いほうがいいらしい。じゃ、マヤ?お手を拝借」

 

 「アイコピー!はいっどーぞ!」

 

 そうしてマヤと撮影をする。マヤはルドルフよりも小柄なので俺が抱き上げたりしている絵が多くなったな。そして首を傾げるフジをルナが押して店の中にイン。そして抵抗するアグネスデジタルを抱え上げた衣装担当の人がそれに続く。ウマ娘が割と本気で抵抗してるのにものともしない衣装担当さんすげえな、人間なのに。そして俺がマヤをお姫様抱っこし、マヤが顔を真っ赤にしたのを撮影してとりあえずは休憩と相成った。

 

 休憩時間、いい加減苦しかったシャツの第一ボタンを外し、蝶ネクタイを緩める。そうしてるとマヤにパシャリと一枚撮られた。なんで?え?予想外に様になってる?まー営業中の制服はネクタイついてるしジャケットも着てるからなあ。着慣れてるんでしょ。バーテンダーがバーテン服着てるようなもんだよ。早速マヤが撮った写真をウマスタグラムにアップするとすぐに反応が来た。

 

 「マスターちゃん!大好評だよ、ほら!」

 

 「俺をアップしてどうするんだ」

 

 ちらほらと俺を褒めるコメントがあるがそんなことよりも一緒にあげたらしい俺とルドルフ、フジとマヤのツーショットのほうがコメント数が多い。なになに・・・「マスターさんは俳優だったんですか!?」「フジキセキイケメンすぎる」「マヤノトップガンちゃん最高に可愛い!!」「シンボリルドルフ様麗しい」・・・俺は別にいいから3人をスマホが壊れるまで褒めちぎってやってくれ。そして店の中からデジタルの奇声が聞こえるがいつものことなので大丈夫だろう。

 

 そして俺とマヤで話しながら待っていると店のドアが開いてルナたちが姿を現した。やり切った顔をしている衣装担当の人の後ろには・・・おお、流石プロ。完璧じゃないの。

 

 「どうだ?兄さん、なかなか似合ってるだろう?」

 

 「どうして僕がこんな格好・・・」

 

 「あわ、ひゃわわ、デジたん解釈違いですぅ・・・」

 

 髪を一つ結びにした燕尾服に眼鏡をかけたルナ、ぐるぐる目になってはいるが純白のドレスと髪の色の対比が艶やかなデジタル。そして気になっていたフジキセキ、ルナが着ていたものと同じドレスではあるが勝負服でも胸元以外露出がないフジが肩を露にしてヴェールを被っているだけで随分印象が違うな。そして恥ずかしいのかもじもじして頬が赤くなってきてるのが非常に可愛らしい。

 

 「なんだフジ、やっぱりよく似合ってるじゃないか。なあ?」

 

 「ですですです!はぁ~フジキセキ先輩尊いですぅ~あふぅ~~・・・しゅき」

 

 「ああ、やはりフジはプロポーションがいいからな。よく似合ってるじゃないか」

 

 「もう!からかうのはやめてくれ!会長も人が悪いよ!」

 

 「ふふ。いやなに、兄さんがど~~~しても君のドレス姿が見たいというものだからね。協力してもらった報酬だよ」

 

 そうルナが言うとフジがキッと俺を睨みつけたが如何せん顔が赤いのと若干涙目なせいで全然怖くない。むしろ可愛くなった。それにしても・・・

 

 「やっぱりフジは女の子っぽい格好も似合うな。たまにはガーリッシュなものも着てみたらどうだ?いつもズボンだしスカートとか」

 

 「もー、僕はそういうのはいいの!それに僕がそんなことしても似合わないって」

 

 「そんなことないです!!!!いいですかフジキセキ先輩、まずあなたの魅力は・・・」

 

 その先は俺には聞き取れなかった。デジタルがフジを褒めちぎっているというのはわかるんだけど彼女があまりに早口なせいで人間の俺には聞き取れないようだ。だが、ルナがうんうん頷き、フジの顔がどんどん赤くなっていることからウマ娘には聞き取れるのだろう。うわあ、何時も揶揄う側にいるフジがまさかいじられる側に回るとこんなしおらしいなんて初めての発見だなあ

 

 「すいませーん、撮影始めます!まず、シンボリルドルフさんとアグネスデジタルさんから!」

 

 「呼ばれたよ。さ、いこうかデジタルくん?」

 

 「あわわ、だから解釈違いで・・・ひぇっ顔がよしゅぎぃ・・・」

 

 ルナがデジタルの手を取り、腰を抱いて連れ出した。うっわー様になってるー・・・パチリとウィンクをする姿はもはや王子様そのものだ。でも俺はドレス姿のほうが好きだなあ・・・デジタルなんて至近距離で受けたせいでいっぱいいっぱいになってるぞ。マヤ、手で顔を隠してるつもりかもしれないがばっちり指の間から見てるなお前・・・

 

 「すいませーん、フジさんと助っ人の人!こちらで同時に撮影お願いしまーす!」

 

 「はーい!じゃ、ポニーちゃん?俺と一緒になってくれるかい?」

 

 「マスターさんまで!・・・むぅ、お手柔らかに、マイプリンス?」

 

 流石に逃げ場がないことに気づいたフジが俺と一緒に撮影場所まで一緒に歩く。俺はヒシアケボノ程度には身長があるので大体のウマ娘を見下ろすことになるがフジやルナくらいの身長ならちょうどいい感じだな。マヤはさすがに小さすぎる。マジで親子くらいの身長差あるもんな。ロリコン扱いされちまう。

 

 撮影に入るとフジの表情がスッと変わった。エンターテイナーではあるが根は真面目な彼女のことだ、意識を切り替えたのだろう。さっきまでマヤと撮影してた時の王子様然とした雰囲気ではなく女の子の顔だ。じつはちょっと楽しんでるなフジのやつ?素直じゃねえなあ、と俺は指定されたポーズでしな垂れかかってくるフジの体をしっかり支えてやるのだった。

 

 

 

 

 

 

 「クランクアップです!お疲れさまでした!」

 

 「「「「ありがとうございましたー!」」」

 

 「そういえばなんでデジたんまで撮影してたの・・・?」

 

 「お前がいたのが悪いんじゃない?」

 

 「圧倒的理不尽!でもデジたんのウマ娘ちゃんセンサーがある限りいつでも現れますので!」

 

 「はいはい、スタッフさんたちもひと段落ついたら店の中にどうぞ。粗品で申し訳ないですけどケーキを用意してますので、よかったら」

 

 「あ、申し訳ありません。いただかせてもらいます」

 

 「いえいえ。ルナたちも着替えたら降りて来いよ。今日のケーキは自信作だぞー」

 

 「わ、やったー!マスターちゃんのケーキだ!」

 

 「これは役得だね。マスターさん、コーヒーでお願いするよ」

 

 「悪いね、兄さん。じゃあお先に行くよ」

 

 「デジたんは観葉植物なのでここらで失礼「お前は強制だから」・・・どうしてぇ!?」

 

 そりゃお前、いっつもウマ娘を遠くから見守って悶えてるだけで近づくと逃げるじゃん。割と貴重なんだよなお前がきちんと今日みたいに他人と交流してるの見るの。もうちょっとぐいぐい行っとけ、というか帰っていいっていっても多分フジかマヤが引き留めるしルナの悲しそうな視線でお前は踏みとどまる。賭けてもいい。

 

 4人が上で着替えている隙に冷蔵庫の中からウエディングケーキをイメージして作ったタルトを取り出す。なんとこのタルト、星形の3段重ねでなかなかにボリューミーなものだ。味の調和を取るのに大変苦労した品である。まず最上段、イチゴのタルト!ホイップクリームの上に飴で照りを出したイチゴをぎっしりと詰め込んだ一品、そして中段、レアチーズタルト!甘さ控えめでクリーミーさと酸味を強調してある。甘いイチゴのタルトと一緒にほおばってもおいしいだろう。そして下段、ニンジンエッグタルト!ペースト状にしたニンジンとカスタードクリームをたっぷり乗せたものだ。上2段が酸っぱいのでこっちは甘めになっている。なかなかよくできたんじゃないか?この前ヒシアケボノがウエディングケーキ作ったって言ってたから俺も作ってみたくなっただけなんだけどさ。

 

 

 「マスターちゃん!お待たせ!うわあ!すっごくおいしそう!」

 

 「ひょええ、食べるのもったいない・・・永久保存できませんか?」

 

 「できないから食え。飲み物持ってくるから待ってろー」

 

 そういいながら俺が踵を返すとルナが一緒についてきた。手伝ってくれるのだろうかと思ってるとルナがちょい、と服の袖を引っ張ってくる。

 

 「兄さん、今日はありがとう」

 

 「どうした急に」

 

 「心外だなあ。お礼だよ?いい撮影になったし何よりみんな楽しんでたんだから。もちろん私も、ね」

 

 「はいはい、俺も楽しかったぞ。いい目の保養になった」

 

 「もう、すぐそんなこと言って」

 

 「本心だからな。さ、みんな待ちきれないだろうからササっと準備しようか」

 

 俺はルナの頭を優しくなでて、作業に移る。ルナはそんな俺を微笑みながら見て、何も言わずに俺の手伝いを始めてくれるのだった。

 

 その日の夜、俺の机の上に飾ってある写真立てが一つ増えたのは、言うまでもない




 フジキセキにはまったマーーーン!!!
 王子様然とした子が女の子の部分をさらけ出してくれるのかわいいよね・・・

 デジたんはこれからサブリミナルデジたんとしてところどころに登場させたいですね

 あ、シンボリルドルフ、エアグルーヴ、ナリタブライアン、マルゼンスキーはリギル所属ではありますがトレーナーが違います。還暦迎えるおじいちゃんトレーナーが面倒みているという設定です。おハナさんはリギルの2代目みたいな設定ですね。


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肉満載BBQ

セイウンスカイ引けなかった記念。


 今日はいい天気だ。大きな入道雲が時折太陽を隠し、外で過ごすにはもってこいの気温。雨が降ることもないだろうし今日は外にいようかな。というのも今日は水曜日、休みだからだ。じゃあ何をしようかと言われれば俺の場合、料理をするか、出かけるか、そんで仕入れをするか、遊びに来たウマ娘を構ってやるか、動画の編集をするか、トレーナー(酒呑み)どもの宴会に巻き込まれるか・・・案外やることあるな。半分くらい仕事だけども。休みとは何だっけ。

 

 それはさておき、今日は俺の数少ない趣味の一つであるアウトドアをしようと思う。前にハルウララのイベントで出した大型グリルのように、外で料理したりテント張ったりなんだりかんだりするのが俺は好きなのだ。といっても明日は営業日だし遠出してキャンプに行くわけにはいかない。なので俺の店の範囲でできることをしようと思う。

 

 何をしようか、そうだなあ・・・俺の店の裏手、元テラス席の周りにはちょっとした森がある。まあ、トレセン学園を覆っている人工林なんだけど、これがまた植樹がうまくて密集しすぎずかといって広がりすぎないちょうどいい、つまりキャンプにもってこいの場所が偏在してるのだ。ハンモックとちょっとした調理器具をもって昼寝にでも出かけようかな。そうだ、そうしよう。

 

 持っていくものは・・・ハンモック、椅子、折り畳み机、クッカー、調理器具、焚火台、そんで飯の材料、最重要品、コーヒーセット、以上!あ、ついでに配信しよ、ウマ娘いないけど。意外と必要なもの多いんだよねえ。まあ、そんなことはどうでもいいや、戸締り確認、ガス栓切って、アイスかき混ぜて、寝かせたパン生地確認して、ぬか床かき混ぜて、いぶしてたベーコン引っ張り出して出発!

 

 といっても行く場所はすぐ裏手だ。なんども同じ場所で同じことをしてるので今更新鮮味はないがこれをやるだけで結構いい気分転換になる。たまにルナと一緒にやったりしてな。何も考えずぼ~っとするのもたまにはいいものだ。

 

 

 そうしてるうちに目的の場所についたのでとりあえず机だけ組み立ててスマホで枠を開くことにする。タイトルは・・・「店長の休日、ウマ娘抜き」これでいっか。事実しか書いてないし。配信開始・・・うわ、すぐ人が来た。

 

 「おいーっす。ホースリンクの店長だぜー。動画はちょくちょく投稿してたけど配信は久しぶりだな」

 

 

 ・店長ぉ!生きとったんかワレェ!

 ・久しぶりってか2回目やろ!

 ・ウマ娘抜きとは

 ・今日はだれがアシスタント?

 

 「残念だったな!今日は俺一人だぞ!だから今見てる300人!帰ってもええんやで?俺が昼寝してちょっと外で料理するだけの放送になるからな」

 

 ・嫌です

 ・店長さんのファンなので

 ・いつも投稿してる料理参考にしてます

 ・店長さんが作るキャンプ飯が楽しみなので残る

 ・ところで投げ銭解禁されてるはずだけど設定しないの?

 

 「あー投げ銭な。理事長が言うには投げ銭は俺の懐に入れていいっていうんだけど店で利益は十分だから広告も投げ銭も設定しないことにしたんだ。元がウマ娘のファンを増やすためだし広告とかあっても邪魔だろ?」

 

 これはマジ、もともとトレセンの従業員というだけで給料が出るのに俺にはさらに店の利益分までもらってるし、経費はでるし、ホワイトすぎる。お金はあっても困らないけどため込むだけなら意味ないから俺のチャンネルに課金する必要が皆無なので、設定しないことにした。正直今の再生数なら俺は余裕で一生食っていける感じだけど、楽を覚えると後が面倒なのでいいです。というかウマ娘パワーすごいな、ゴルシのチャンネルも登録者とんでもなく多いし、さすがトゥインクルシリーズは違うわ。

 

 ・は?

 ・課金させろ

 ・ワイの有り余るマネーを店長とウマ娘に注がせろ

 ・上限投げるから人雇って予約数増やして♡

 ・そうだよ(便乗

 

 「俺に課金するくらいならウマ娘のグッズ買え。上限なんかないからいくらでも貢げるぞ?俺はいいんだよ俺は、今で十分幸せだからな」

 

  

 ・わかった

 ・予約制等身大ぬいぐるみぽちった

 ・それ10万くらいしなかった?

 ・オグリのファンなので悔いなし

 ・投げ銭させろー!

 

 そんなことを話しながら椅子を組み立て、ハンモックを手ごろなところにかけて、焚火台に・・・着火剤と燃料忘れたわ。取りに戻るかーとスマホをひっつかんで店に戻る

 

 「すまん、忘れ物した。店に取りに行くわ」

 

 

 ・うっかり店長

 ・道具そのままにするのかって近い!

 ・あー店の裏手の森だったのね

 ・ということはトレセンの敷地内では?

 ・このひと一応トレセンの職員だから自由に出入りできるのだとか

 ・裏山

 

 そして倉庫から必要な分の燃料を取り出して戻ると・・・なんかハンモックの上になんかいるわ。碧みがかった芦毛に片耳だけイヤーカバーをつけてとてもとても幸せそうに眠るウマ娘・・・見覚えがあるというか見覚えしかないというか。

 

 「おーい、セイ。それは俺のハンモックなんだけど?つーか今日授業だろ?きちんと起きて教室まで行け」

 

 「あ~マスターさんだ~。ごめんねー、ちょっとサボる場所探してたらちょうどいい場所にあったもんだから、つい」

 

 

 ・ふぉあああああ!?セイウンスカイ!?

 ・セイウンスカイ!?なぜこんなところに

 ・一応トレセンですしおすし(震え声

 ・眠そうな半目が死ぬほどかわいい

 

 そう、俺がその場を離れて5分もしないまにハンモックですやすやと寝息を立てていたのはセイウンスカイ、のんびり屋でお昼寝が大好きなウマ娘だ。授業やトレーニングをサボり気味なことでも知られていて、サボタージュするためのスポットをいくつも知ってるらしい。で、むにゃむにゃいいながらの言い訳を聞くと完全にサボってここにいるようだ。こやつ俺がトレセンの職員なの忘れているのか?

 

 「そっかー、じゃあセイ?授業行こうか。送って行ってやるからさ」

 

 「ええ~いやだよ折角こんないいもの見つけたのに~。見逃してよー、ねー?にゃはは~」

 

 「言っとくけどお前のその姿全国放送されてるんだぞ?」

 

 「あれ~?配信ってやつ?にひひ、いいよいいよ~存分に放送したまへ~。セイウンスカイだよ~、みんな元気?」

 

 

 ・元気じゃなかったけど一瞬で元気になったわ

 ・うつ伏せでこっちにひらひら手を振るの最高にキュート

 ・ほっぺぷにぷにしてそう

 ・店長、触ってみて!

 ・セクハラを勧めるな

 

 「私のほっぺ?ふ~~ん・・・マスターさん触ってみる?」

 

 「じゃ、失礼して」

 

 今更というか何というかウマ娘たちとは仲がいいのである程度のボディタッチはできる。俺から積極的に触るのは頭をなでるくらいだけど、案外好評で撫でてくれと言われることもあるくらいだ。というわけで確かにもっちりした感触をしている柔らかいセイの頬をふにふに触る。ちょっとつまんで引っ張ったり、おーよく伸びること伸びること。

 

 「マスターひゃんどお?みゃんぞくした?」

 

 「そこらへんは視聴者に聞いてみような」

 

 

 ・躊躇が一切ないの本当に草

 ・当たり前のようにボディタッチするな

 ・余計うらやましくなった

 ・セクハラがセクハラになってねえ!

 ・柔らかいのは伝わった

 

 「さて、セイはどく気はないようだから俺は俺で楽しみますかね・・・俺は見逃してやるけどほかの人が来て怒られても知らんからな」

 

 「にっひひ~さっすがマスターさん!そういっても庇ってくれるの知ってるもんね。それじゃ、おやすみなさい~」

 

 という感じでお休み3秒ですやすやと夢の中に行ってしまったセイをほっておいて俺は椅子に座って焚火台を組み立て、燃料に着火していい具合の熾火を作る。具合としては中火くらいかなあ・・・?ケトルを置いて水を沸かし、鉄板の上にクーラーボックスから取り出した自家製のベーコンブロック、切り分けてないから2㎏もあるが、それを調理台の上で分厚くカットする。焚火台に乗っけたグリルの上にベーコンステーキを置くとじゅうぅと油が染み出し、香ばしいいい匂いが漂いだした。

 

 「やっぱこういうのが一番うまいんだよなあ・・・どうよ、これ自家製だぜ?」

 

 

 ・見るだけでうまい

 ・アテにしてビールをぐいっといきたい

 ・飯テロォ!

 ・我慢ならん、ベーコン買った

 ・塊肉のベーコン初めて見た

 ・なんでこんなでかいままで持ってきたの?

 

 「ん?そりゃこういうことしてると絶対に来るやつを一人知ってるからな。これがまたよく食うんだ。料理人冥利に尽きるくらいな」

 

 具体的にはアメリカ生まれのカウガールなウマ娘、あいつ俺がトレセンの敷地内でキャンプっぽいことやってると必ず出没するから結局俺はこの折り畳み式の大き目な焚火台にでかいクーラーボックスをもってこの趣味のアウトドアをしなければならなくなった。BBQが大好きって言ってるけどどこから聞きつけてくるんだろ。俺が一人でやってるのに。

 

 「いい匂いする~~・・・あ~!マスターさんずるーい!私にも~~!」

 

 「焼けたらな、焼けたら。寝てなくていいのか?」

 

 「こんないい匂いの中で寝られるわけないじゃん!わ~おいしそ~」

 

 「はいはい、ほれ」

 

 「あ~、ん!おいしい~!」

 

 「そりゃよござんした」

 

 器用にバランスを取りながらハンモックから身を乗り出すセイにナイフで切り分けたこんがりベーコンをフォークに刺して口の中に入れてやる。セイはもぐもぐと口を動かしてふにゃっと笑顔になった。俺もベーコンを大口開けてほおばる。うーん、スモーキーでうまい!沸いたお湯でコーヒーを淹れながら追加のベーコンをグリルに放り込む、じゅうじゅうぱちぱちといい音が響き渡ると同時にがさがさと目の前の草むらが揺れる。やっぱり来たか。

 

 「ンーーーー!!!ベーコンが焼ける匂いがシマース!あっ!マスターさん、ハウディ!」

 

 「おっすタイキ。今日も元気だなっ!?」

 

 「こんにちはのハグデース!」

 

 「お~熱烈。はむっ」

 

 

 ・ああああタイキシャトル!?

 ・横っ飛びにすっ飛んでったぞwww

 ・マスターさんに抱き着いてる・・・!?

 ・羨ましい ああ羨ましい 妬ましい 視聴者心の俳句

 ・セイウンスカイはちゃっかり2口目ですかww

 ・いいなああ!いいいいいなあああああ!!!!

 

 突っ込んできたタイキを何とか受け止めて、椅子が嫌な音を立てたがおいておくことにする。遊びたがりの犬のようなタイキの頭を撫でまわし、椅子をもう一個取り出してタイキに皿を渡す。笑顔で着席したタイキにベーコンを渡してやると元気よくいただきますをして食べ始めた。もうこれがルーティンだよなぁ。セイも器用にハンモックの上に座っている。バランス感覚が良いことで。

 

 「ところでタイキ、授業は?」

 

 「むぐむぐ・・・・今はお昼休みデース!近くを歩いてたらBBQの気配がしたのできまシタ!」

 

 「え?うわほんとだ。セイお前2時間分まるまるサボったみたいだぞ」

 

 「え~、どうせ座学だし大丈夫だよ。それよりマスターさんおかわり~」

 

 「はいはい・・・というわけでお次はこれだ。高かったんだぞ~」

 

 「「ステーキ!」」

 

 「おう、ステーキだ。いや商店街の肉屋さん様様だぜ?いい赤身肉だ。焼き加減は?」

 

 「ウェルダン!」

 

 「じゃあ私はミディアムレアー」

 

 「俺はレアがいいかな」

 

 赤身の塊肉を分厚いステーキ状にカットして塩コショウ、スパイスをまぶしてベーコンの油が並々と注がれているグリルに入れる。まずはウェルダンのタイキの分、セイの分、そんで俺は外だけ焼けばいいから後回しだ。持ってきたニンジンも一緒にベーコンの油に絡めて焼いておく。

 

 

 ・くっそうまそう

 ・俺たちは何を見せられてるんだ・・・!

 ・そりゃウマ娘が美味しくBBQを頬張る配信でしょ

 ・これで味が想像できるのが質悪い。絶対うまいやつ

 ・店長さんが料理してる時点で味は保証されてるから

 

 

 というわけでこんがりと焼きあがったタイキのウェルダンステーキ、少し赤身が残ったセイのミディアムレア。そして表面だけ焦げ目をつけた俺のレアが焼きあがってそれぞれ口に運ぶ。くぅ~、肉がいいから味付けがあんまりなくてもうまい!いやあ今日はいい日だなあ。一応トレセン学園内だから酒を飲みながらやれないのが残念だ。

 

 そして肉を頬張った二人、タイキは瞳を輝かせて肉を口に運んでいる。椅子に隠れた尻尾が激しく動いているし、耳もパタパタと元気に動いている。セイのほうもいつものふにゃりとした笑顔よりもなんだか輝いて見える。よっし今日も良くできたみたいだな!しかしまあ、のんびり屋のセイと真反対の元気いっぱいで活動的なタイキ。でも割と仲はいいのかな?タイキ自体が友達が多いほうだしコミュニケーションは強引だけど上手なほうだ。楽しそうに人に抱き着きに来るだけじゃないんだよな、この子は。

 

 「しかしまあ、やっぱりうまそうに食ってくれると気分がいいなあ。ところでデジタル」

 

 「はい!大変尊いですごちそうさまでした!」

 

 

 ・ホいつのまに!?

 ・同志デジたん!?

 ・どんどんウマ娘が増えていく

 ・現役の癖に俺たちに圧倒的に近い同志デジたんじゃないか!

 ・むしろ俺はデジたんが一番好き

 ・わかる。かわいい

 

 「そっか。ほれお前も食え」

 

 いつの間にか沸いていたアグネスデジタルが肯定してくれたのでとりあえずデジタルの口にも肉を運んでやる。「うっまーーーー!?」と昇天したデジタルを抱きかかえて椅子に座らせてやって俺は〆としてあるものを取り出した。

 

 「これなーんだ?」

 

 「アルミホイル?」

 

 「!グラスから聞きマシタ!ヤキイモ!ですカ!?」

 

 「ざーんねん、ま、焼けてからのお楽しみってね」

 

 俺はトングでグリルを外し、火が消えかけの炭の中に大きなアルミホイルに包んだものを入れる。もうすでに火は通してあるのでゆっくりと温めるように熱でうまみを閉じ込めるのだ。そうして待つこと5分ほど、昇天したデジタルも戻ってきて、逃げようとしたがタイキに捕まってハンモックの上でセイの隣に座らされて限界状態のままプルプルしているが気にしないことにする。

 

 そろそろいいかな、とトングで塊を取り出して机の上で中身を空ける。中から出てきたのはめちゃくちゃでかいニンジンハンバーグだ。ほんとだったら俺一人で独占するつもりで持ってきたんだけど、ステーキとかほかの食材はどうせ誰か来るという確信があったので念のため持ってきただけなのだ。中身を見た3人から歓声が上がる。

 

 「おお~すっごい大きなハンバーグ、ニンジンも立派だね~」

 

 「ん~~~もう待てないデース!マスターさん早く早く~」

 

 「わぁ・・・はっ!このアングル、いける!」

 

 若干一名反応がおかしいが気にしないこととする。ナイフを入れると噴火するように肉汁があふれ出す。俺は取り出したパンの上にカットしたハンバーグを置いて3人に渡した。昨日の営業の余りなので存分に食えー・・・デジタルが他2人に話しかけられてタジタジになっているのを後目に俺は放送を続けているカメラに向かって挨拶をする

 

 「は~い、じゃあいいところなんで本日はこれで終了。またどっかで配信するぞー。動画はこれからもバシバシ投稿していくつもりだから、そっちもよろしくな。ああ、あとURAの公式の動画、明日あたりに新しいの出るみたいだから見てやってくれ。なんだったっけか?」

 

 「あ~、うまぴょい伝説を歌って踊ってみた、だね。確かこの前のエキシビジョンで出た18人のウマ娘が躍るやつ。着順でセンター決めたみたいだからルドルフ会長がセンターだったよ~。まあ歌は全員で合唱したみたい。見てあげてね~」

 

 「ああ、そういえばウイニングライブ専用の曲ってネット配信してないんだっけ。これは貴重な動画だぞ~!公開は1か月限定らしいからみんな見てくれよな!それじゃ、本日の放送はここまで、お疲れさんだ。チャンネル登録とかは別にしなくてもいいけどウマ娘たちを応援するのだけはよろしく頼む。それじゃ、また」

 

 

 ・終わらないで

 ・24時間定点放送しろ

 ・なにその動画絶対かわいいやつじゃん。見なければ

 ・同志デジたんがハンバーグを頬張るのに萌えてしまったのでファンになります

 ・チャンネル登録者爆増してるの笑う

 ・100万人の壁が見えてきたな

 ・スペシャルウィーク出してください!オナシャス、センセンシャル!

 

 「いい匂い~!ああ~!マスターさん!タイキさんにセイちゃん!あとは・・・アグネスデジタルさん?」

 

 「お、スぺじゃないの。そのお腹・・・飯食べたのか。残念だなーこのベーコンにハンバーグが食べられないなんて」

 

 「いえ、食べます!美味しそうなので!」

 

 

 

 ・ああああスペシャルウィーク!ファンなんだ!ありがとうありがとう!

 ・狙ったかのように乱入してきて芝

 ・腹ァ!

 ・女の子とは思えないお腹・・・w

 ・これが1時間後にはしゅっとくびれてるんだよね不思議

 ・こんだけ腹ふくらましといてまだ食えるのか・・・!

 ・スぺちゃん食べすぎだよー!トレーナーに怒られても知らないよ?

 ・お!スぺじゃねえか!なんだよまた食いすぎてんのかぁ!?しょーがねーなー、後で一緒にカツオ漁いってダイエットすんぞ!

 ・あの、それはもしかして私もつれていかれるのですか?抱きかかえないでくださいまし~!




そろそろネタのひねり出しが厳しくなってきましたのでアンケートのご協力をお願いします。


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はちみつホットプリン

 どうしてもやりたかった一発ネタ

 えー、うれしいことではありますが、感想をたくさんいただいております。今まで一応すべてに短くではありますが返信させていただいておりました。ですがそろそろ作者の手が追い付かなくなってきておりまして。誠に申し訳ございませんが、これからは作者の返信したい、もしくはする必要がありそうなものにのみ返信をさせていただきます。

 規約上、感想への返信は自由ではありますが、一応のけじめとして前書きの場をお借りして皆様にお知らせしたく思います。よろしくお願いします。

 もちろん感想はすべてに目を通させていただいておりますのでこれからもどしどしお送りください。モチベが上がるとモロに執筆速度に影響が出るタイプなので。ガソリンはいくらあっても困りません。


 本日の営業、予約時間がみんな早かったせいか昼にはもう予約客を捌いてしまった。思ったよりも早く終わったことに拍子抜けした今日の担当ウマ娘たちも迎えに来たトレーナーに抱き着きながら帰っていき(何かを怖がってるように見えた気がするが)、俺も俺で閉店の準備をしてウマッターに営業終了の嘶きをする。満員御礼の感謝である。いやー今日のはちみつプリンは傑作だったみたいで持ち帰れませんか!?というお客様がたくさんいた。もちろん持ち帰れますよぐへへ、持ち帰り用の箱の絵柄はどうしますか?トウカイテイオー、メジロマックイーン、ゴールドシップ、シンボリルドルフ等々ご用意がありますが・・・みたいな会話を繰り返して完売!最高!

 

 ウマッターに乗せたいまにもとろけそうなはちみつプリンの画像へ「食べたい」「ネット販売して!」という声が届く届く、ふはははは!いやーたまにあるこのスマッシュヒットがたまらんねえ!と思っていると閉店のドアプレートがかけられているハズのドアがそろりそろり遠慮がちに開いた。俺が不審に思って目を向けるとそこにいたのはメジロマックイーン、常連ではあるが閉店後に来ることはとんとない(開店前には来るが)お行儀のいいウマ娘である。

 

 「ご、ごきげんようですわ」

 

 「おー、マックイーン・・・?お前なんかあったか?」

 

 「ななな何もありませんことよ!?」

 

 「・・・ほんとかー?」

 

 俺が疑問を覚えたのはまずマックイーンの尻尾と頭。顔はいつも通り平静を保ってるように見えるが何となく元気がないように思える。そして耳、何時もだったら俺の店に来る=甘いものを食べにくるなので上機嫌にパタパタせわしなく動いているのだが今は絶不調という感じで頭にぺったりと垂れてしまってピクリとも動かない。そして尻尾、垂れている、そりゃもうぐんにゃりとでもいえばいいのかという感じに垂れている。トレーナーじゃないが俺にもわかる、今こいつとんでもなく気分が落ち込んでいる。何があったんだろうか?

 

 「やっぱお前おかしいぞ?保健室にはいったか?」

 

 「いえその、いったからこうなったといいますか、いったおかげでこうなったんですの・・・」

 

 「ああ???」

 

 いまいち要領を得ないマックイーンの言葉に俺が首をかしげる。右手で左肩近くを抑えるように立つマックイーンの姿に怪我でもしたのかと思ったがそんなことがあればまずうちには来ない、マックイーンはそこらへんはしっかりと考えている子だ。ますます疑問が増える。とりあえずカウンターの椅子を勧めて彼女が着席したので気分が落ち着くようカモミールティーを淹れて出してやる。彼女は一言お礼を言ってそれを飲み、ほうと一息ついた。

 

 「う~~~ん・・・やっぱお前大丈夫か?」

 

 「あまりしつこいのは嫌われますことよ?問題ないと言っておりますのに」

 

 「だってお前表情普通なのにこっちはめちゃくちゃ沈んでるじゃねえか」

 

 そう言って俺はマックイーンの頭に手を置いてしなっている耳ごと頭をなでる、彼女は気持ちよさそうに目を閉じ逆に俺の手に頭を擦り付けるようにしてくる。反応自体は普通・・・うーん・・・何が原因なんだろうなあ・・・としっかり手入れが行き届いてサラサラしてる彼女の髪と柔らかい耳を撫でる。手を放すころにはぺったりしていた耳もちょっと沈んでるかな?くらいに戻った。尻尾も垂れず普通に少し動いている。こりゃ完全になんか嫌なことがあって落ち込んでいるだけだな?そういうことなら・・・

 

 「マックイーン、プリン食うか?今日のやつは傑作なんだ」

 

 「はい、いただきますわ」

 

 「おう、ちょっと待ってな。今回のやつは出来立てじゃねえと美味しくないんだ。15分くらい待ってくれよ」

 

 「ええ、もちろんですわ。今日はスピカはお休みですので」

 

 「そっか」

 

 

 俺は厨房に戻って卵、牛乳、生クリーム、はちみつを手早く混ぜてプリン液を作る。残念ながら営業の分は完売御礼だ。お代わりに備えて多めに作ってやろう。ちょっと大きめの耐熱皿にプリン液を流し込んであらかじめ熱しておいた蒸籠の中に入れてしばらく蒸す。固まったあたりで取り出し、ゴルシの知り合いの養蜂家の人にもらった巣蜜を上にトッピングして、完成。シンプルではあるが美味しいと自負している。そしてこのプリンがなぜ完成直後が一番おいしいのか、その理由はこれが温かいまま食べるホットプリンと呼ばれるものだからだ。しっかり固まった冷たいものと違い、温かいものは甘みが強く、滑らかさが出しやすい。卵の含有率も高めにしてあるからまったりとしていてクリーミーなのだ。

 

 「お待たせ、はちみつホットプリンだ。熱いから気をつけろよ」

 

 「温かい・・・プリンですの?」

 

 「おう、外国じゃ割とメジャーだぜ?発想としちゃ茶碗蒸しみたいなもんだ。割と出来立てのプリンを食べるのはよくあるみたいでな。スーパーで売ってるカッププリンじゃまず出来ねえ、自作するかきちんとケーキ屋で買ってあっためるこったな」

 

 「なぜスーパーで売っているものではできませんの?」

 

 「ああ、あれは実はプリン風ゼリーと言っていいもんなんだ。蒸して固めるもんじゃなくて寒天で固めてる。だからあっためても蒸しプリンの出来立てとは別もんになるんだよ」

 

 「!!!???そう・・でしたの!?」

 

 「なんでそんな愕然とした顔になるんだ?あれもプリンだから別に問題はないはずだろ?」

 

 「いえその、何を信じていいかわからなくなりまして・・・」

 

 「お前はプリン一つで人間不信になるなよ・・・それよりもほら、あったかいうちに食べてくれ」

 

 「は、はい!いただきますわ!」

 

 そういってマックイーンはプリンをスプーンで掬う、ほわっと湯気がたち、とろりとはちみつがプリンを覆う。ふう、ふうと息を吹きかけて少しだけ冷ましたマックイーンがパクリ、とプリンを口に運んだ。もぐもぐと咀嚼して飲み込んだ彼女の耳が元気よく動き出して、どことなしか平坦だった表情に赤みが差してきた。お、気分がよくなったみたいだな。お菓子一つで吹き飛んでしまうようなことだったのかもしれないが沈んでいるのをずっと見ているのは趣味じゃない。どうせなら笑っていてほしいし、楽しくなってくれればそれが一番だ。

 

 「おいしい、おいしいですわ!」

 

 「ああ、よかった。機嫌もよくなったみたいだし、安心したわ。しっかし、今日何があったんだ?奢ってやるから聞かせてくれよ」

 

 耳を上下に激しく動かしながら美味しそうにプリンを頬張ってくれるマックイーンを微笑ましく思いながら俺がそう尋ねると彼女は少し迷うように瞳を伏せてから口を開いた。

 

 「その・・・実は今日・・・トレセン学園で健康診断がありましたの。それで・・・あの・・・予防接種を・・・」

 

 「予防接種かぁ・・・なるほどな。ならお前がそうなるのも納得だわ」

 

 「へ・・・?あの・・・それだけですの?」

 

 「それだけって?」

 

 「いえ、今までこういうことがあった時、小学校では皆さん「えー?そんなことで?」というような反応ばかりでしたので・・・」

 

 「ああ、まあウマ娘と関わってない人だったらそうだよなあ。俺は一応ウマ娘のほぼ全員が注射や点滴、採血の類が多かれ少なかれ苦手っていうのは知ってるからな。あのルドルフでさえ顔が青くなるんだ。不思議じゃないよ」

 

 「・・・え?」

 

 「それにトレーナーもそうだろ?多分予防接種があるならどのチームもみんな休みになってるはずだ。トレーナーも分かってるから今日は休んで気分転換しろってことで休みなんだろうさ」

 

 なるほど、予防接種ね。やっと納得いったわ。あまり一般的に知られていることではないが、ウマ娘は注射の類が大の苦手だ。大人のウマ娘でも受けると決まったら顔が青くなるというのだからそれはもう種族的な本能のようなものなんだろう。俺もルナという幼馴染がいるからわかる。初めて見るはずの注射器になぜか恐れおののいて泣き出してしまったルナを抱っこしながら予防接種を受けさせたことで少し調べてみたんだが、どうも彼女たちはなぜか注射器、点滴といった医療器具を初めて見るにも関わらずそれに異常な恐怖を覚えるらしい。

 

 これには彼女たちが受け継いだ異世界の魂が関係してるのではという学説が現在主流ではあるが実際詳しいことはわかってない。まあつまり簡単に言うと「大の注射嫌い」なのだ。ウマ娘という種族はみんな。ちなみにルナの初予防接種の際に俺は抱き着かれて締め上げられたせいで肋骨が3本折れたことをここに記しておく。ウマ娘のパワーってやっぱやばいわ。

 

 「そういうことでしたの・・・トレーナーさんにはお礼を言わなくてはなりませんわ」

 

 「気にしなくていいと思うけどな。それにキチンと受けてからここに来たんだろ?偉いじゃないか。どうしても勇気が出なくて逃げるやつも毎年毎年いるくらいなんだから。そうだな・・・例えば・・・」

 

 

 

 「うええええええん!!テンチョー!匿ってぇ!!!!」

 

 「今ここに来たこの引っ付き虫みたいなやつとかな」

 

 「テ、テイオー!?」

 

 ドアが乱暴に開き、鹿毛のポニーテールを跳ね上げたウマ娘、トウカイテイオーがドアを潜り抜け、半泣き・・・というかもうほぼ泣いて俺を見つけたと思ったらマックイーンなど目にも入らんと言わんばかりにカウンターごと飛び越えて俺に抱き着いてきた。俺は首に強烈なダメージを受けながら逆肩車の体勢になりくすんくすんと鼻を鳴らして俺の頭に抱き着くテイオーゼミに話しかける。

 

 「テイオー、今日は予防接種の日なんだって?マックイーンから聞いたぞ。お前、逃げてきたな?」

 

 「ピエッ!?だってだってぇ!あんなおっきなお注射だなんて聞いてなかったんだもん!針も太いしさー!」

 

 「確かにそうですが・・・一般的には普通だと聞いておりますわ」

 

 「マックイーンは余裕そうだったじゃん!メジロの誇りにかけて!とか言っちゃってさー!ボクは無敵のトウカイテイオーなんだからお注射なんて必要ないんだよー!」

 

 多分それやせ我慢だぞテイオー。よかったなマックイーン、ばれなくて。さてさてこのわがまま帝王をどうしたら素直に予防接種に向かわせることができるのか。何かを思い出したようにスマホをチラ見したマックイーンの「私のライバルがこんなに情けないなんて・・・」という目から逃げるように俺にひっつくテイオーに説得の言葉をかける。

 

 「ほら、無敵のトウカイテイオーなら注射ぐらい大丈夫だろ?ちゃんと受けてきたらご褒美やるから、な?」

 

 「・・・ほんと?」

 

 「ああ、ほらマックイーンが食べてるやつ。はちみつホットプリン、俺の傑作なんだ。頑張ってきたら美味しいやつ作ってやるから、な?」

 

 「テンチョーもついてきてくれる?」

 

 「なんだ、俺も一緒じゃないとだめなのか?昔のルドルフみたいなやつだなー・・・いいよ、一緒に行ってやる」

 

 「カイチョー?カイチョーもお注射苦手だったの?」

 

 「ああ、前日になると俺に引っ付いて離れなくてな。ご両親に威嚇してたくらいだ。まあ結局俺に抱き着きながら受けるのがいつものパターンだったな。ほら、ちょうど今のお前みたいに。テイオー、別に注射が嫌いなのはしょうがない。だけど、それは学園がお前が余計な病気をしてレースに出られないなんてことににならないように気遣ってくれてるんだから、ちゃんと受けてくれ」

 

 「うん、わかった。その、迷惑かけてごめんね、テンチョー」

 

 「気にすんな。そうと決まれば一緒にトレセンまでいくぞ」

 

 ようやっと予防接種を受ける気になったテイオーの力が緩んだので頭から降ろして幼児にするような抱っこの体勢になった。こういう時にものをいうのは体力と筋力であるが毎日過酷な調理と重い調理用具を手足のように振り回している俺にとってテイオーくらいのサイズなら全然軽い、超余裕。あんまりにも怖がりすぎてたせいか涙にぬれる顔を拭ってやってマックイーンに声をかける。

 

 「つーわけでマックイーン、ちょっとトレセンまで行ってくるから。食べ終わってお代わりしたかったら待っててくれ、帰るんだったらドアだけ鍵かけといてくれ。じゃ、テイオー、いくぞ」

 

 「うう~~~!!わかったよ~。テンチョー、手繋いで~」

 

 「はいはい」

 

 テイオーを下ろしてエプロンを脱いでかけた俺がドアのほうに向かいながらテイオーの要求を聞き入れて手をつなぐ。やっぱり怖いのか尻尾を足の間に入れるくらい垂れ下げ耳をしおしおと萎えさせたテイオーに昔のルナの姿を重ねながら靴を履き替えようとするとスマホとにらめっこしていたマックイーンが口を開いた。

 

 「いえ、その必要はありませんわ」

 

 「え?でもテイオーには予防接種を受けさせないと・・・」

 

 「ええ、それはそうです。ですので、こういたしましょう」

 

 パンパン、とマックイーンが両手を顔の横で2回鳴らした。すると俺が開ける前だったはずのドアがガチャリと開いて白衣に身を包んだ人物が現れた。

 

 

 

 

 

 「私の主治医ですわ。トレセン学園の校医もしておりますの」

 

 

 「主治医です」

 

 「で、出た~~~~~~!!!」

 

 へぇこの人が、と思うとテイオーが悲鳴を上げてまた半狂乱となって俺の頭に戻って行ってしまった。機械的な音を立てて俺のほうに近づく主治医さんを見てテイオーが恐怖に上擦った声を上げる。

 

 「な、なんでここでお注射持ってるの~!?」

 

 「それは私がトレセン学園の校医だからです」

 

 「わけわかんないよ~~~!!」

 

 「いや訳はわかるだろ。ほらテイオー、ちょうどいいからここで受けちまえ。ほら腕だして」

 

 「ああ、そのままで構いません、では失礼して」

 

 主治医さんは座った俺に抱き着いて震えるテイオーの腕の制服を手早くめくりあげ、消毒しそして躊躇なく

 

 

 ブ ス リ

 

 

 「ぴぎゃあああああああ~~~~~~!?!?!?!?」

 

 思いっきり針を突き立てて注射した。耳元で絶叫が響いた俺の聴覚が半分ふっとんだ気がしたが1秒もかからず注射は終了して主治医さんは絆創膏を張り付け、服をもとに戻して一礼して出て行った。流石はメジロ家お抱えの医者、震えるウマ娘にあんな正確に注射をするとは・・・。

 

 「ほら、終わったぞテイオー。離してくれないとご褒美が作れないぞ~」

 

 「うう~~~痛かったよ~~!」

 

 「でもすぐだったじゃないか。暴れなかったし偉い偉い。な、デジタル」

 

 「はい!大変立派でした!震えるウマ娘ちゃんも・・・うへへへ・・・」

 

 主治医と一緒に入ってきたらしいナース服のデジタルの腕にも絆創膏があることに気づいた俺はデジタルをマックイーンの隣に、その隣にテイオーを置いて逃走を封じてからテイオーとデジタル、そしていつの間にか食べ切ったマックイーンの分のプリンを作るためにエプロンをつけて厨房に行くのだった。

 

 15分後、そこには笑顔で談笑しあう(うち一人は昇天しかけ)3人の姿があったとさ。ついでに夜にうちにきたルナを慰めるのに3時間かかったことをここに記しておく。おわり




 作中で言及した注射の件ですが公式設定ではありません。が作者はリアルで牧場に勤めておりまして、馬ではありませんが牛の世話をしております。その際に注射をする機会が間々あるのですが、手に持った注射器やらを見ると牛たちは露骨に嫌がりだすのでそこから発想した次第です

 牛は比較的頭のいい動物でありまして、ならばそれよりも頭がいい馬だったら注射器とかも理解するよね?特に競走馬なんて獣医さんと隣り合わせだったわけですし。
じゃあその魂を受けついたウマ娘たちも苦手なのでは?という理由です。魂に刻まれた感じですかね。

 長々と申し訳ありませんでした。お許しください

 え?アンケートに全部がない?全部書いたら作者どうにかなっちゃうので許して


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ウマ娘メディア活動総合スレpart415

 なんかこの前のブライダルCMの話の反応が気になるという感想を散見したので書いてみました


1:名無しのファン ID:tW/F4oMrk

 ここはウマ娘が出たテレビ番組やコマーシャル、雑誌に至るまであらゆるウマ娘に関するメディアについて語るスレッドです。今日も今日とて平常運転!

 

2:名無しのファン ID:bQQ4Jl91J

 立て乙。それよりもホースリンクの店長がチャンネル開設したってマ?

 

3:名無しのファン ID:9czTn4pfE

 マジもマジ、大マジよ。初回の生放送にはなんとだな・・・

 

4:名無しのファン ID:870THKL/6

 もったいぶらずに教えてくれよ

 

5:名無しのファン ID:2rjBeRpRR

 しょーがねーなー。なんとハルウララとライスシャワーがゲストで来たんだ。そして二人にじゃれつかれる店長

 

6:名無しのファン ID:4NGRgkt3b

 なにそれ羨ましい

 

7:名無しのファン ID:AgfZGM6Vc

 喉から手が出たわね

 

8:名無しのファン ID:tSRY1rQHt

 化け物かなにか?いやー最初のゆっるい挨拶からあの二人が出てきた時の衝撃と言ったらもう・・・!

 

9:名無しのファン ID:orbkAW+6C

 見たい!チャンネル教えてくれ!

 

10:名無しのファン ID:0BrSZCV6N

 すまんな、アーカイブ残ってないんや

 

11:名無しのファン ID:vJWZlaAoV

 ウソダドンドコドーン!!なんで?なんで?なんで?

 

12:名無しのファン ID:Y0I74FGlH

 テンチョー曰く「残すの忘れてた★」らしい。ちなみにその時後ろから「マーベラース★」と聞こえた上店長の背中にボリューミーなツインテが見えたのでマーベラスサンデーが引っ付いていたものと思われる

 

13:名無しのファン ID:CheVvA0OZ

 うぉぉぉい店長!つーかなんでマーベラスサンデーをくっつけてるんだ!?

 

14:名無しのファン ID:lzw3Y5Cjl

 世界マーベラス計画でしょ

 

15:ヨームイン ID:VT1V4N3j5

 そりゃおめえ、店長さんは学園のウマ娘には好かれてるからな。兄超えて父親みたいなもんよ

 

16:名無しのファン ID:PIqtDo6Na

 でたな用務員

 

17:名無しのファン ID:dPpobqml0

 今日のネタはよ

 

18:ヨームイン ID:tWjJUQf6C

 しょうがないにゃあ。この前の話だ。トレセン学園で健康診断があったのだが

 

19:名無しのファン ID:kkz+irfu4

 ほうほう

 

20:名無しのファン ID:baRnIYThD

 つまりウマ娘ちゃんのBWHがわかるんですね!?

 

21:名無しのファン ID:7v7uDkCIz

 BNWみたいに言うな。わかっても漏らさんだろうしこいつは用務員だぞ

 

22:名無しのファン ID:8EKAJoErZ

 はーつっかえ!

 

23:ヨームイン ID:8WjNLhouT

 これ俺悪くなくね?まあいいや続き。健康診断のついでにあることが行われたんだ・・・そう、予防接種だ。

  

24:名無しのファン ID:lJVTjs8Qx

 別にそれくらい普通では

 

25:名無しのファン ID:fI43fIvki

 あーなるほどねえ

 

26:名無しのファン ID:PMEGCriKU

 注射が何だってんだ

 

27:ヨームイン ID:Vf8NrEwDu

 あーやっぱり知ってる人は少ないよね。ウマ娘たちなんだけど、本能レベルで注射の類が嫌いなんだよ。ルドルフ会長は凛としていの一番にやったんだけど終わったら尻尾垂れてたし、業務終了したらコンクリを踏み抜きながら店長のところまで走ってった。わかる?あの皇帝ですら注射一つで調子が下がっちゃうってこと

 

28:名無しのファン ID:x/BTlc3Vr

 俺地方でトレーナーやってるんだけどマジでウマ娘たちは注射が嫌い。高校生でも泣きじゃくっちゃう子がいるくらいだよ。もう本能みたいなもんだから、その日は練習も何もかも休ませるのが慣習になってるし、トレーナーは書類仕事を休んでウマ娘に付き添う、親元から離れているわけだから頼れるのは俺たちだけ、そりゃ当然なんだけどさ。

 

29:名無しのファン ID:7+IYSxxcl

 はぇーそうなんや

 

30:名無しのファン ID:bjyYRuYJN

 うわ、論文まである・・・へぇー初めて知ったわ

 

31:名無しのファン ID:clHqWihnF

 で、それが何だっていうんです?

 

32:ヨームイン ID:wZQjl2WWy

 で、注射がみんな嫌いって言っても個人差があるわけで・・・例えばメジロマックイーンは震えながらもきちんと受けて帰って行ったし、ゴールドシップは平静っぽかったけど若干怖がってたっぽい。まあ終わったらトレーナー蹴り倒して拉致していったわけなんだけど困ったことにスピカのトレーナーがそこでいなくなっちゃったんだよな。そうすると困ったことがある。ダイワスカーレットとウオッカはケンカしながら勝手に受けてくれたんだけどもう一人、そうトウカイテイオーだ。

 

33:名無しのファン ID:bHtsPCV0L

 トウカイテイオーならゴルシ並みに平静を保ってそうだけど

 

34:名無しのファン ID:yHC1frS9z

 むしろシンボリルドルフへの憧れで同じことに挑戦しようとするまである

 

35:名無しのファン ID:mlR3lUofy

 んだんだ

 

36:ヨームイン ID:7jaWrICu9

 そう思うじゃん?それがトウカイテイオーって輪をかけて注射が大っ嫌いだったみたいだったんだ。そりゃもう逃げ方がすごくてなあ。注射を終えたウマ娘を総動員して逃げる彼女を追ったんだけど逃げ切っちゃったんだよな、これが

 

37:名無しのファン ID:C+iYS5wRj

 まじかよ

 

38:名無しのファン ID:BlmvpPeam

 正直可愛い、微笑ましいわ

 

39:ヨームイン ID:59HjzmsDC

 いやさ?笑い事じゃないんだけど。受けなきゃいけない予防接種、逃げたテイオー、明らかに怒ってるエアグルーヴ、ため息をつくシンボリルドルフ、針の筵のチームスピカ、テイオーと一緒に出て行った昇天しかけのナースなアグネスデジタル。これどうよ

 

40:名無しのファン ID:4roibFCFL

 まずいですねえ!一人別の意味でまずいですねえ!

 

41:名無しのファン ID:xND6IDWBG

 で、見つかったの?

 

42:ヨームイン ID:X5Nj98wwi

 ああ。というか逃げたときに思いっきり叫んでたよ「助けてテンチョーーーー!!!」ってな。まああの人なら説得するなりなんなりするだろうという信頼の元予防接種が再開されて悲鳴を上げるウマ娘を眺めていたり、怖くて涙目なニシノフラワーを励ましたりしてたんだが

 

43:名無しのファン ID:eSP5uJHbV

 どさくさに紛れて何しとるんじゃおどれは

 

44:名無しのファン ID:Gw4FIyFEH

 ニシノフラワーの反応を詳しく

 

45:名無しのファン ID:MUZYhPu/P

 店長さん信頼されすぎワロタ

 

46:ヨームイン ID:ad6a6e2zq

 別に何もしてない。しいて言うなら怖さが紛れるように話してたくらいだ。そして少し経ったころ、一人の校医さんのスマホが鳴った。確かメジロ家の主治医を務めてる人だった。メジロマックイーンからトウカイテイオーを店長が確保したから注射を打ちに来い、とのこと

 

47:名無しのファン ID:U8xD34ZGO

 さす店長

 

48:名無しのファン ID:WtjMsDbj7

 メジロマックイーンはなぜホースリンクへ?

 

49:ヨームイン ID:2LetyMDrh

 あとでアグネスデジタルに話を聞いたところ甘えに来ただけらしい。店長がメジロマックイーンの頭を優しく優しく撫でる場面を目撃して暫く意識が飛んでたそうな。そしてセミのように店長の頭に抱き着くトウカイテイオーを店長が説得しきったところで校医さん登場、トウカイテイオー狂乱。だがさすがはメジロ家主治医、ささっと注射を済ませて帰ってきた。

 

50:名無しのファン ID:R/dTrm9Q1

 えっ?やばくね?予防接種の注射法わかる?

 

51:ヨームイン ID:kVJAh97NW

 静脈注射だったそうな。アグネスデジタルが言うには校医さんはセミになったテイオーの腕をみて一瞬で注射ぶっさして終えたらしい。やばい。まあそのあと、ウマ娘3人は店長のご褒美スイーツを食べて終わったって話さね。

 

52:名無しのファン ID:ambHC9yRB

 ウマ娘にかかわる人って超人ばっかなん?

 

53:ヨームイン ID:srMgajLHB

 少なくとも俺は一般人だけど

 

54:トレトレーナー ID:yr1lQY9l0

 嘘こけ。お前この前新しく作る予定の大きな花壇の基礎工事一人で全部やってただろ。そんなんだから業者要らずとか言われるんだよお前

 

55:名無しのファン ID:YuIu7bPRY

 やっぱ超人かよ。トレセン学園ってもしかして魔境?

 

56:名無しのファン ID:3oH9yM52f

 否定できねえ!

 

57:名無しのファン ID:BsrPnPJEb

 また花壇作ってる・・・

 

58:トレトレーナー ID:/6wd047Jq

 しかもこの用務員溶接、電気技師、危険物取扱、運転免許フルコンプなんだぞ。やろうと思えばマジで家建てれるんだぞ。どこが一般人だ。

 

59:名無しのファン ID:6kHVa/78Y

 やっぱ中央の人は優秀なんやなって

 

60:名無しのファン ID:h3l9W431A

 それはそうとお前ら店長の動画で何が好き?おれは「ヒシアケボノと一緒にボーノ!」が好きなんだけど。ヒシアケボノと店長の目線が完全にいっしょなのツボ。あと作ってたニンジンケーキの完成度よ。そしてそれを頬張るヒシアケボノがじつにボーノ!勝負服がまたかわいいんだよなあ

 

61:名無しのファン ID:Rx/or7A9t

 めっちゃわかる。店長背高いのいいなあ。でも俺は「トレーナーに聞く!」が好き。リギルの東条トレーナーとトレセンの長老さんの対談で店長がいろいろ聞くやつ。トレーナー界のレジェンドと今まさに伝説への階段を駆け上ってる東条トレーナーの動画なんてなかなか見れるもんじゃないよ

 

62:名無しのファン ID:OOMJf1qdl

 長老さんの「まずは寄り添うこと。トレーニングがいかに効率的であろうと、効果的であろうと、トレーナーがそのウマ娘以外に目を向ければ必ず失敗する。ウマ娘と共に笑い、共に考え、共に悩み、共に泣く。ウマ娘が進む道に光を灯し、舗装をするのがトレーナー。トレーナーになりたいのであれば、まずは他人の事を自分の事と同じかそれ以上真剣に悩めるようになるのが第一歩」っていうセリフ好き。

 

63:名無しのファン ID:3OIqj2oNB

 東条トレーナーもそれには同意してたしな。練習はスパルタだっていうけど、公開されてる練習風景見ると誰かしら絶対東条トレーナーの周りにウマ娘がいるから慕われてるのがわかる

 

64:名無しのファン ID:KnpFwZkXX

 タイキシャトルにハグされて勢いのまま水平に横っ飛びする動画好き

 

65:名無しのファン ID:aM8SAMloc

 なにそれ流石に草

 

66:名無しのファン ID:JAxFxqAFJ

 エルコンドルパサーとグラスワンダーが青ざめてたやつか

 

67:名無しのファン ID:dWhvVtZFz

 あとはあれだな。蹄鉄ヘッドトレーナー。ひたすらハルウララとライスシャワーをほめまくる動画。店長の質問丸無視で語りだすんだけど途中から店長も吹っ切れて同じ尺度で語りだすやつ。

 

68:名無しのファン ID:L2UhMXewj

 10分くらい経ったらいつの間にかアグネスデジタルも参加してたやつだろ?

 

69:名無しのファン ID:Ryzcp+wYa

 あれめっちゃ笑った。けどそんだけ自分の愛バが好きなんだなあってわかってほっこりした。そして最後、全部聞いて真っ赤になってショートしてるハルウララとライスシャワーの姿を映すオチで腹筋が吹っ飛んだ。

 

70:名無しのファン ID:J6FHrN3Oe

 まさかあのハルウララですら顔真っ赤にしてフリーズしてるんだもんなあ。きっと相当嬉しかったんだと思う

 

71:名無しのファン ID:rKmjk8NrZ

 あとはそうだな・・・「ホースリンクの賄飯」シリーズ好き。あれほぼ毎日更新してくれるしレシピまでついてるし。たまに用意できない材料混ざってたりするけど。

 

72:名無しのファン ID:mVz5ynlu

 ベーコン(自家製)はむりぃ!なかったらアメリカから輸入品買えってもっとむりぃ!

 

73:名無しのファン ID:DmME9MCn0

 アメリカのベーコンじゃなきゃ作れない料理はなあ・・・・

 

74:名無しのファン ID:jURuPW9bt

 あと「トレーナーが歌って踊ってみた」も好き。というかトレーナー達歌もダンスもうますぎない?

 

75:トレトレーナー ID:gRnfB/6zC

 そりゃダンスと歌の指導するの俺たちですしおすし

 

76:ヨームイン ID:Lqp5ktWtJ

 お前カラオケで99点出してたもんな。もうお前らレースしろよ

 

77:名無しのファン ID:fND8E9Xhu

 自分の仕事を否定するようなことを言うな

 

78:名無しのファン ID:sfl57Xk1f

 お前ほんとに担当ついてないってマ?

 

79:トレトレーナー ID:i9OO7d4O+

 マジだぞ。だから俺は基本ダンスレッスンとボイストレーニングを担当してるんだけど、「歌の先生」って呼ばれるの何とかしたい。俺はトレーナーなんだ

 

80:名無しのファン ID:B3EAKWod4

 適材適所で草

 

81:名無しのファン ID:anRmwPR5O

 センターが東条トレーナー、脇に蹄鉄トレーナーとスピカトレーナー・・・あとなぜかいる理事長とたづな秘書・・・一糸乱れぬ動きして歌ってて腹筋ねじ切れるかと思った。

 

82:名無しのファン ID:WqhPQ6AaU

 店長曰くあれ一発どりらしいぞ。恥ずかしいし時間もないからトレーナー勢が団結したらしい

 

83:名無しのファン ID:ObnHrLsQe

 理由くそくだらなくて草

 

84:名無しのファン ID:PH4YqpO3r

 そりゃ東条トレーナーやたづな秘書や理事長はともかく残り2人はなあ・・・

 

85:名無しのファン ID:/fm/FMnBx

 野太いうまぴょいで死ぬほど笑った

 

86:名無しのファン ID:zK/8ipBcG

 歌はうまかったんだけどな。絵面の破壊力がね・・・

 

87:名無しのファン ID:K/hyhxzTi

 おい!お前ら!やべえぞ!

 

88:名無しのファン ID:aTYo4fLXH

 どうした急に

 

89:名無しのファン ID:NJxpKtTwO

 なんだなんだウマ娘の新グッズでも発売されたんか

 

90:名無しのファン ID:EYK3NJtu6

 それもやべえがこっちはもっとやべえ!中央トレセンのウマ娘がウェディングドレスを着て撮ったCM動画が公開されてる!!!

 

91:名無しのファン ID:zdBdvhahi

 

 

92:名無しのファン ID:j0s/gzmuU

 

 

93:名無しのファン ID:eLXTKS0VN

 

 

94:名無しのファン ID:YdeOpHNpO

 

 

95:名無しのファン ID:xkVfCVuEv

 Pardon??

 

96:名無しのファン ID:4zNoP12Fp

 リアリー?

 

97:名無しのファン ID:pWv2Wg/8z

 まじよマジ!いいからこのURLで動画見て来い!2分くらいだから!http:/douga.com

 

98:名無しのファン ID:R5x29lJxh

ファッ!?これマジ!?

 

99:名無しのファン ID:DkhLSDRsw

 シンボリルドルフ・・・だと!?

 

100:名無しのファン ID:B5nLsfTCG

 えっマヤノトップガン!?フジキセキ!?なんで!?

 

101:名無しのファン ID:lklySj1yJ

 一番不可解なのはなんでアグネスデジタルまでウェディングドレスを着ているのかということだ。絶対嫌がりそうな気がするんだけど。

 

102:名無しのファン ID:RaVj5GjPy

 いや!そんなことはどうでもいい!重要なことじゃない。重要なことと言えば・・・

 

103:名無しのファン ID:NgtRk0+r5

 言えば?

 

104:名無しのファン ID:KWPzSRVxC

 シンボリルドルフの腰を抱いたり、フジキセキを女の顔にしたり、マヤノトップガンをお姫様抱っこし、アグネスデジタルをキャパオーバーさせてるこの男優が誰かということだ!

 

105:ジームイン ID:XRTgq0vN0

 ああそれ店長。

 

106:名無しのファン ID:yDsu4xHCZ

 はああああああ!?

 

107:名無しのファン ID:xCsBP5Xzw

 あの人こんなにイケメンだったか?

 

108:名無しのファン ID:uuJ6w2qqY

 まああの人なら許せる。邪心が一切なさそうだし

 

109:ジームイン ID:F/B5St1k6

 何だか知らないんだけどそのCM、理事長に直接来た仕事らしくて。相手役の男優さん皇帝とかが相手になるなんて流石に無理ってなったらしくてね~しょうがなく店長が代打に出されたってわけ

 

110:名無しのファン ID:F17Gb+aI0

 ワイカメラマン。CMの撮り方に戦慄を覚えた。撮った人が上手すぎる。男役の店長を映しつつも必ずウマ娘が目立つように画角がとられていて、照明の当て方で店長の顔があまり意識されないように撮られてるんだ。結果、店長の背の高さと服の着こなしでとんでもねえイケメンととんでもねえ美人のウマ娘が並んでる構図に見えるんだ。凄すぎぃ!

 

111:名無しのファン ID:YTlA27wvb

 ほーん(鼻ホジ

 

112:名無しのファン ID:sb9booqX3

 お前で解説が台無しだよ馬鹿野郎

 

113:名無しのファン ID:QrsZKeFXx

 辛辣ゥゥゥ!

 

114:名無しのファン ID:BSD4mQAdn

 はーしっかしウマ娘は美人やなあ

 

115:名無しのファン ID:ofKr7gj6L

 ほんそれ・・・は!?フジキセキタキシードきて男役やってるやん!

 

116:名無しのファン ID:deB/kSX++

 うっわーさっすが似合う。イケメン。

 

117:名無しのファン ID:05QINQuT+

 え!?シンボリルドルフも男役やってんの!?

 

118:名無しのファン ID:CAe9HerkZ

 でも俺は店長相手に微笑んで腕をとる皇帝のシーンが一番好き

 

119:名無しのファン ID:izRM+qndN

 ワイは真正面から抱き着くマヤノトップガンがいい!

 

120:名無しのファン ID:pY5U0pHdW

 フジキセキが顔を真っ赤にして腰を抱かれるシーンで何かに目覚めた

 

121:名無しのファン ID:TBgeP8WZi

 アグネスデジタル店長が手を差し出しただけで昇天してて草。ウマ娘対象じゃなかったんかい

 

122:トレトレーナー ID:5tC/TwyoI

 確か、料理が上手い→食べたウマ娘ちゃんが笑顔になる→ウマ娘ちゃんを笑顔にできる店長は神!ってデジタルが言ってたわ。つまり神絵師とかそんなのを相手にする心情じゃない?

 

123:名無しのファン ID:7PfefdTbG

 なるほど納得・・・なっとく?

 

124:名無しのファン ID:G6WxUzFJ/

 そっとしておこう

 

125:名無しのファン ID:FJner7gOI

 ああああ!!!!マヤノトップガンがこの前ウマッターに投稿してた店長の写真とケーキ!あれこの撮影の時のやつだ!

 

126:名無しのファン ID:VvBLc2kjs

 なるほど。思ってみれば店長の服が一緒だ。うわ店長ネクタイ緩めるシーン色気あるなあ

 

127:名無しのファン ID:7dyel7tlp

 ※喫茶店の店長です

 

128:名無しのファン ID:8E0Vnrjyg

 濃すぎる2分間だった・・・ふぁっ!?

 

129:名無しのファン ID:/o30i2ngJ

 それぞれのウマ娘を主役にした4種類15秒のCMがテレビ放送で流れます・・・だと!?

 

130:名無しのファン ID:dtbLRhnd0

 見たい。超見たい。この動画で使ってない場面使うってやべえなこれ以上があんの?

 

131:名無しのファン ID:2XyxonZ/6

 この監督有能

 

132:名無しのファン ID:OHeaKVScT

 CM打った会社のホームページ落ちてて草

 

133:名無しのファン ID:Z8ixYB7w3

 さすがウマ娘効果

 

134:名無しのファン ID:bZfdlzYjM

 ただのウマ娘じゃこうはならんなあ・・・皇帝を筆頭にそれぞれG1を取ってるウマ娘だし、ファン数の母数が違う。まえハルウララがやったスポドリのCMが社会現象になりかけたのに似てる

 

135:名無しのファン ID:IAHrcXpF2

 ああ、売り上げが倍増した伝説のCMな

 

136:名無しのファン ID:fRenB5MFc

 しかし学生にブライダル系のCMとは・・・攻めるねえトレセン

 

137:名無しのファン ID:gEIizYIQO

 しかし、店長多才だな。料理できて、演技出来ておまけに人格者ときたもんだ

 

138:名無しのファン ID:b9ob3vlDz

 嫉妬心すら沸いてこない

 

139:名無しのファン ID:5SXEdCPEV

 別にウマ娘が幸せならなんでもいいや

 

140:名無しのファン ID:9Ltucloum

 真理

 

141:名無しのファン ID:jEf/ngcfh

 しかり

 

142:名無しのファン ID:EnCGnZeHX

 店長の動画見てるとお腹減るなあ

 

143:名無しのファン ID:gdurBE0P/

 新作のホットプリンの動画でも見てろ

 

144:名無しのファン ID:lLmEU2bI5

 あれ美味しそうなんだけど、どうせ食べるなら店長の店で食べたい

 

 




 最近忙しくなったのでちょっと投稿が遅れます。お許しください


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職場体験・準備編

 まさかの前後半になるとは・・・・!!!


 ああ、日曜日。営業日であるが正直一週間の中で一番忙しいんだ。なんせ朝からウマ娘が俺の店に入り浸り席が空くということがあまりない。満員御礼、ついでに俺の疲労も満杯になること請け合いである。そして今日は昼からスペシャルウィークという大食いちゃんがすべてを食い尽くしていったので食事ありませんという看板を出しておいた。そしてしょげ返るウマ娘多数、ごめんて。

 

 まあそういう日も多々あるわけで、申し訳ないが納得していただくほかはないのだが、いかんせん納得できない子もいるのだ。そう、例えば・・・

 

 「お腹空いたのだ~!!店長ちゃんとご飯残しておいてほしいのだ~!うううう!!がぶっ!!」

 

 「ああいったあああ!?おいウインディ!飯がないのはスぺに言え!俺に嚙みつくんじゃない!」

 

 例えば今、俺に噛みついているウマ娘、ミディアムショートな鹿毛に小さな流星、ギザギザ歯が特徴的なシンコウウインディだ。腹が減ったと喚く彼女が俺にダイレクトに噛みついてくるのをひっぺが・・・無理だわ。ウマ娘に力で勝てるわけないし、ウインディも本気噛みじゃなくて甘噛みだし。がじがじと俺に歯を立てないように噛みつく彼女が何となくかわいく思えてくるが、ま、ただ寂しいだけだろう。

 

 ウィンディは高等部1年生、15歳だ。親元から離れて寮で暮らすにはまだまだ幼い。同じ境遇のウマ娘たちが一緒にいるとはいえ四六時中そばに誰かいるわけではない。あるものはトレーニングを、あるものはトレーナーを探したりする。そうするとウィンディのようなまだトレーナーがついてないウマ娘たちは時間を持て余すことになる。

 

 そして寂しくなるんだ。仲のいい友達も、無償の愛を注いでくれる親も、見守ってくれる大人たちもいないことにどうしたって気づく。タイキやウインディのような寂しがりやなウマ娘は勿論、そうじゃないほかのウマ娘も調子を崩したりメンタルが不調になることがある。

 

 だから、俺の店がある。ここに来れば必ず俺はいるし、店にいなくてもすぐ戻れる距離にしか出かけない。この店を始めたのはルナのため、正確には「全てのウマ娘に幸福を」というルナの夢のため。ウマ娘たちがいつでもレースに出られるメンタルを維持するためのセラピー施設みたいなものなんだ。困った時の駆け込み寺を兼ねてるのが俺の店だ。だから、ある程度信頼していて交友関係が広いウマ娘には店のカギを渡してあるし、各寮にも合鍵が置いてある。いつ誰でも来れるようにな。

 

 実際俺のトレセン職員としての肩書は「調理師」ではなく「カウンセラー」だ。資格なんぞ一切持ってないがな。けどまあ、トレセンに2000人いるウマ娘を200人いるかどうかのトレーナーで何とかしようってのはさすがに無茶が過ぎるし実際面倒見切れていない。俺みたいな外部協力者が必要になってくる。俺のトレセン内の仕事は店に来る、頼ってくるウマ娘の相談事を聞いて俺が何とかできそうならそのまま何とかし、無理そうならほかのトレーナー連中に話を挙げて解決させること。喫茶店はまあ8割がた趣味ではあるが、美味しいお茶と食事があれば口が滑りやすくなるからってのもある。まあ理事長のせいで明後日の方向にかっとんでいるわけだが。

 

 ちなみに商店街などのトレセン近くの施設にも俺と同じ役割を持った店と人がそれなりにある。彼女たちにはバレてないんだけどな・・・要は俺たちはウマ娘を見守る目であり、トレーナーという脳に情報を届ける耳であるというわけだ。

 

 さて、長々と話したがこれは蛇足。本題は俺に噛みついて満足したのかどや顔をしているウインディだ。彼女はタイキと同じとまではいかないが結構寂しがりなので構いすぎるくらい構うのがちょうどいい。しょうがないからわしゃわしゃと両手で頭をかき混ぜてやる。

 

 「わわわっ!店長くすぐったいのだ!やめるのだ~~!」

 

 「なんだそういって抱き着いてきて。もっとやってほしいのか?ほれほれ」

 

 「むむむっ!これはテイコーなのだ!じゃちぼーぎゃく?の店長にテイコーしてるのだ!」

 

 「そりゃずいぶん可愛らしい抵抗だな」

 

 嬉しそうに尻尾を振るウインディに構いながらほかのウマ娘の相手をしているとドアが開いた。背中によじ登りだしたウインディを背負いなおしてそちらに向くと・・・いつぞやの一件からすっかり俺の店の常連になったウマ娘のキタサンブラックとサトノダイヤモンドの仲良しコンビだ。

 

 「お、キタにダイヤか。先週ぶりだな~元気にしてたか?悪いがマックイーンにテイオーは朝のうちにきて帰ったぞ。何飲む?」

 

 「こんにちはマスターさん!じゃあ私は・・・はちみー!テイオーさんが飲んでるので!」

 

 「もう、キタちゃん。今日はマスターさんにお願いしに来たんでしょう?私も同じのをお願いします。マックイーンさんが飲んでるやつがいいです」

 

 「お願い?ふむふむ、飲み物用意するからちょっと待ってて。おーいデジタル!いるんだろ?ちょっと来てくれ~」

 

 「はーい!わわわ!小さいウマ娘ちゃん!なんと可愛らしい・・・!はい!アグネスデジタルただいま参上です!」

 

 ぬるりとカウンター裏から現れたアグネスデジタルがキタとダイヤを見てよだれを垂らしかけたが純粋な二人の不思議そうな目を見て思いとどまったらしくきりっとした顔になってこちらに歩いてきた。突然出てきたデジタルに目を白黒させている二人をよそに俺は背中にへばりつくウインディを指してデジタルに頼み込む

 

 「ウインディのやつを引っぺがして持ち帰ってやってくれ。寂しいみたいだから構ってやるといい」

 

 「はい!正直まともでいられる自信はないですがやってみます!ではウインディさん!失礼します・・・ふふふひひひ・・・・」

 

 「ぴゃっ!?なななななんかこわいのだ!?で、デジタル・・・?」

 

 「はい、デジたんです・・・それではいきましょ~~~・・・」

 

 「は~な~す~の~だ~~~~!!!店長がいいのだ~~~~!!!」

 

 「ウインディ、明日構ってやるから今日はデジタルと遊んでてくれ。ちょっと俺はやることができたからな」

 

 「う~~~~~にゃ~~~~~!!!!」

 

 俺の背中から引っぺがされたウインディがいい笑顔のデジタルに抱き上げられてドアの向こうにフェードアウトした。ウインディも構ってもらえることができて満足そうだし明日またかまってやれば大丈夫だろう。ひらひらと手を振って見送った。そして何があったのかを理解してないキタサトコンビに向き直って作ってたはちみーを出してやる。

 

 「ごめん、お待たせ。それで何か話があるのかい?まあ俺にできることなら協力するよ」

 

 「ほんとですか!?」

 

 「キタちゃん、まだ喜ぶのは早いよ~。えっとですねその・・・お願いといいますのは・・・」

 

 「うんうん」

 

 「マスターさん!私たちをここで働かせてほしいんです!」

 

 「お小遣いでも足りないの?」

 

 「キタちゃんキタちゃん、端折りすぎだよ~~。えっとですね、学校で1週間の職場体験っていうのがあるんです。それで、行きたいって職場があるならお話して許可をもらってきなさいって先生が・・・」

 

 「ああそうだった!学校でお話をつけてある職場じゃない場所に行きたいっていうことならって言う話で、マスターさんが許してくれるならお願いしたいんです!」

 

 「ふむふむ、なるほど・・・先生とお話できる?」

 

 「は、はい!先生に今日お願いするって言ったら連絡先を預けてもらったので持ってます!」

 

 「ん、ありがと。俺は受け入れる方向でいくけど、理事長がどういうかだね。多分大丈夫だろうから二人も来るつもりでいてね」

 

 「「やったーーー!!」」

 

 「気が早ーい」

 

 職場体験、職場体験ねえ・・・俺の店が働いてみたい、と思われているのはうれしい限りだけどむしろ俺の店でいいのかという話だ。業態的に俺の店は普通の飲食店じゃないし、熱心なURAアンチの方々からはキャバクラ呼ばわりされるような店だ。子供の教育に悪いもんは一切おいてないが世間がどう見るかは別の話。二人に被害がいかないようにしなければ。

 

 というわけでまずは理事長に電話をする。電話番号を見つけてプッシュ、はいワンコールもせずにつながりました、と

 

 『珍妙!君から私に電話をかけてくるとはな!して、何用だ?大きな問題があるなら私としても放っておくわけにはいかない』

 

 「お疲れ様です理事長。ああいえ、そう大きな問題ではないのですが、今うちの店に来ている小学生のウマ娘二人がいまして・・・その二人が今度ある職場体験で1週間ほどうちで働きたいと言いまして。俺は受け入れるつもりなんですけど一応許可を取っておこうかなと」

 

 『うむ、許可!トレセン学園はウマ娘をサポートする学校なれば、それはたとえ入学前だとしても同じこと!して、その二人のウマ娘の名前は?』

 

 「キタサンブラックとサトノダイヤモンドです。私服でうちの店をやらせるのはあれなんで勝負服のほうは俺のほうで発注します。趣味なんで俺が出しますけどいいですね?」

 

 『否定!その名前は再来年のスカウト予定名簿に載っている名だ!領収書を提出することを義務付ける!きちんと面倒を見たまえ!それと体験期間中はその二人のトレセン学園への自由な出入りを認めることとする!よって案内!どこかで二人をトレセン学園内に連れてくるように!以上!』

 

 「わかりました。それと今日シンコウウインディがこっちに来まして、相当寂しがってたみたいです。ちょっと見てやってください」

 

 『了承!それでは失礼する!』

 

 電話をするついでに業務報告も済ませた俺が電話を切る。勝負服を着るというのはうちの喫茶店の唯一絶対のルールみたいなもんだ。それは例え職場体験の子だろうと同じこと。働く以上はそれに従ってもらう・・・んだけどクソ高い勝負服を体験のためだけに購入させるのは気が引けるので記念ってことで俺が用意しようとしたんだが理事長に機先を制された。まあいいや、次はガッコの先生と

 

 俺はキタから受け取った電話番号を自分のスマートフォンに打ち込んで電話をかける。日曜日であるが出るのだろうか?

 

 『もしもし、こちら中央東小学校の相沢です』

 

 「突然のお電話失礼いたします。私はURA所属、ウマ娘交流喫茶店ホースリンクで店長をしている和田と言います。先ほどキタサンブラックさんとサトノダイヤモンドさんからうちの店で職場体験をしたいという話をいただきましてお電話させてもらいました」

 

 『はい、突然のお願いで申し訳ありません。本来であればウマ娘の子はこちらが選んだ信頼できる場所に職場体験させるのですが、例外としてウマ娘本人の知り合いであればそちらに行くことも可能であるという規定がありまして・・・大変ご迷惑かと思いますがご一考していただけないでしょうか』

 

 「いえいえ、とんでもない。トレセン学園の理事長からも許可が出ました。つきましては詳しい日程のほどを後程詰めさせてもらえると助かるのですが・・・。制服等の準備物はこちらで用意しますので二人には何も持たせずこちらに来させてください。必要なら送り迎えもしますが」

 

 『ありがとうございます!日程の件も了解しました。本日は夜8時までは学校におりますのでいつでもおかけください。明日以降でも大丈夫です』

 

 「ええ、ありがとうございます。それでは、明日にまた連絡を入れさせてもらいます」

 

 電話を切って二人のところまで戻る。そわそわと顔を見合わせたりきょろきょろしてる二人を微笑ましく思いながら二人の前に立ってピースサインをしてやる。それで許可が出たことを悟った二人は息ぴったりに立ち上がってお互いに抱き着きあい喜びを表現している。まあ俺の店に働きに来る程度でこんな喜べるなんて平和でいいなー。

 

 「さて、二人には悪いんだけど今からちょっと時間もらうよー。そろそろ来るはずだから」

 

 「来る・・・ですか?」

 

 「いったい誰が・・・?」

 

 「ちょっとちょっとちょっと!小学生のウマ娘の勝負服ですって!?マスターちゃんそういう仕事をくれるって聞いて飛んできたわ!」

 

 「おっすシゲさん。悪いね急に呼び出して。キタにダイヤ、この人は重松さん、シゲさんって呼んであげてくれ。ウマ娘の勝負服を作る仕事をしてる人だ。うちの店で働くにあたり、二人には勝負服を着てお仕事をしてもらうよ。あ、勝負服はこっちが勝手に用意するからお金はいらないからね。プレゼントさ」

 

 「ハァイ、シゲさんよ。二人ともよろしくねー・・・突然のことで申し訳ないんだけど、あなたたち二人の勝負服を作らせてもらうことになったの。今日は採寸だけさせてもらうけど、大丈夫かしら?」

 

 「私たち二人の・・・」

 

 「勝負服、ですか!?」

 

 突然現れたのは鍛えられた肉体をスーツで覆い隠したナイスガイ、でも口から出るのは女言葉が特徴のシゲさんこと重松さんだ。彼はライスとウララにプレゼントしたエプロンの作成者でありURAが勝負服を作成するときに依頼する職人の一人でもある。ルナの勝負服を作ったのも彼だ。俺とはまあ、ルナ繋がりだな

 

 「そうよー?聞いてないかしら?このお店って勝負服を着たウマ娘が接客をするっていうコンセプトだから、たとえそれが職場体験でも勝負服は用意するって話よ?だから私が呼ばれたってワケ。じゃあ採寸を始めるわね、服の上からで大丈夫よ。それともしも勝負服のデザインが決まってるなら教えてほしいわ。素敵なのを作ってあげる」

 

 「ホントですか!?じゃあじゃあ!私、ずっと勝負服を作るならこれ!って決めてたものがあるんです!」

 

 「はい!私も、キタちゃんと一緒に絵にかいて考えてたんです!」

 

 「んまっ!デザインが決まってるなら早いわよ!私に教えてくれるかしら!?」

 

 手早く採寸を始めたシゲさんにキタとダイヤが言いつのっているのを横目に俺はシゲさんの分のコーヒーを淹れに厨房に入るのだった。職場体験かあ・・・少し楽しみになってきたな。それにキタとダイヤは明るくていい子だ。問題なんて起こるはずないだろうし、さっそく予定表を書き換える準備をしなくちゃな。さ、忙しくなるぞー!




 20話を超えてやっと主人公の名字が判明する小説があるらしい。

 今話はどうしてもロリキタサトコンビに勝負服を着せたかった作者の暴走が招いた結果です。反省も後悔もしていません。でもさあ・・・キタサトコンビに限らず勝負服を着たウマ娘の幼い姿ってみてみたくない?作者は見たい(鋼の意思


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職場体験・開始

 前後半と言ったな・・・あれは嘘だ。思ったより文字数が行ったので全中後半でですお許しください。

 ああ!ごめんなさい石を投げないで!


 はいはいどうも皆さんこんにちは。本日もホースリンクにて腕を振るう予定の店長です。まあ?俺の事なんざどうでもいいんだけど、本題はまた別。そう、キタサンブラックとサトノダイヤモンドの職場体験である。昔々の話であるが、職場体験はウマ娘たちでいう中等部の時に実施されていたわけである。が、人間はそれでよかったんだけどウマ娘たちは基本トレセンに進学するので、1週間もトレーニングとは別の事をするのはレースの勝敗に大きく左右されると文句が出たらしい。

 

 そして結局、トレセンを受験する小学6年生の一つ前、小学5年生に実施することが決定してしまった、というわけだ。人間にとってはとばっちりもいいとこであるが決まったもんはしょうがない。ウマ娘たちの基本は1にレース2にレース、それ以下トレーニング。これであるがゆえに。さて現在、キタサンブラックとサトノダイヤモンドの職場体験を明日に備えているわけである。で、朝シゲさんから

 

 「あの子たちの勝負服ができたわよ!久しぶりに面白い仕事ができたわ。渡しに行くから待ってて頂戴な」

 

 「ありがとシゲさん。代金は後で振り込んでおくから」

 

 「3割引きでいいわ。子供用の勝負服なんてね、なかなか作れるものじゃないもの。私も事務所のみんなもいい刺激になったわ。それに素材もレース用のものとは別、汚れに強くて家庭でも洗いやすい素材になってるの。ま、適正だと思ってね」

 

 「わかった。領収書はトレセンあてに頼む」

 

 「わかったわ~」

 

 っていうやり取りがあったわけで。シゲさんが気を利かせてくれて閉店後に来てくれると言ってくれた。ので、勝負服を着るキタとダイヤにも連絡を入れて3人が来るのを待っている。というわけなのだ。ちなみに俺と一緒に皿洗いをしてる今日のアシスタントのアグネスデジタルは頑として見る意思を固めているようなので飲み物出そうとしたら「いっぱいです~~~~っひょええええええ」とか言って昇天してた。あの、ウマ娘相手はともかく俺相手にそんな風にならないでしょ。

 

 「こんにちは~~!!」

 

 「こんにちは、マスターさん。あの、勝負服ができたって・・・」

 

 「いらっしゃい、もうすぐシゲさんが届けてくれるよ。その前に・・・おいデジタル」

 

 「はい、なんでしょう」

 

 「そのカメラと絵を描く道具をこっちに渡すんだ」

 

 「なななななんでですか!?いかにマスターさんといえどもデジたんのライフワークを邪魔することなど許されませんことよ!?」

 

 「まあトレセンに入学した奴ならともかく、この子たちはまた別の学校の子なんだから、余計な写真やら絵やら流出したら困るの。ネットで何言われるかわかったもんじゃない。この子たちを守るということで・・・・な?」

 

 「そ、そんな・・・救いはないんですか・・・?」

 

 「まあ?俺がダメっつっても?被写体たちがオッケー出せば俺はぐうの音も出ないわけだが」

 

 「マスターさん・・・あなたが神ですね!?!?・・・・あの・・・小さなウマ娘ちゃんたち?絶対に漏らさないと約束するのでどうか写真を撮らせてもらえないでしょうか・・・?」

 

 「いいですよ?」

 

 「はい、私も大丈夫です」

 

 「あ り が と う ご ざ い ま す!!!!!!」

 

 俺の遠回しな許可を受けたデジタルが飛び上がって喜びを表現してるのを俺は生暖かい目で、キタサトコンビはよくわかってない純真な目で見ていると、ドアが開いてシゲさんが登場した。電話が来てから結構早いな。そして両手に持ってるケースが勝負服か~

 

 「お待たせ~。さあ、お待ちかねの勝負服よ!それにしても二人ともいいセンスしてるわ。ちょっとだけ私のほうで変えたところもあるけれど概ねリクエスト通りになっているはずよ。さっそく着替え・・・と言っても私は男だから着替えに付き合うわけにはいかないわね・・・」

 

 「ああ、それについては問題なく。デジタル、出番だぞ」

 

 「ひょえっ!?わわ私ですか!?」

 

 「お前も勝負服持ってるんだから着替える際の注意点とかわかるだろ?手伝ってやってくれ、な?」

 

 「お願いするわ~。はい、これ着方の説明書よ。それじゃ、着て見せてね」

 

 「お願いしま~す!」

 

 「アグネスデジタル先輩、お願いします!」

 

 「あっあっ手を・・・ひょえ~~~~!?」

 

 二人に両手を取られたデジタルが半分意識を失いながら勝負服を持った二人に引っ張られるようにして更衣室に消えていった。なんで今日デジタルを呼んだかというと見たがるだろうなあというのが主要因ではあるが彼女は意外と服飾系への理解が深いのだ。デジタルはいわゆるオタクという部類にはいるのではあるが、よく絵をかいたりしている。それも勝負服を着たウマ娘の絵を。これが示すことはどういった構造をしてるかを理解していないとウマ娘に関しては妥協をしないデジタルの満足する絵は描けないので結果的に詳しくなったのだ。つまり、任せておけば完璧な着付けをしてくれる。詳細な解説付きで。

 

 「シゲさんコーヒーでいい?」

 

 「ええ、お願いするわ。あ、これ領収書よ」

 

 「いつも悪いね」

 

 俺の店は飲食店である都合上ミスや事故でウマ娘たちの勝負服を汚してしまうこともある。なのでそういったことがあった時に頼るのもシゲさんというわけだ。大体1日で戻ってくるのでありがたいことこの上ない、とシゲさんにホットのキリマンジャロを出してデジタルがいろいろ耐えてるであろう音を聞きながら待つ。20分くらいしたら満身創痍のデジタルと2人が出てきた。

 

 「マスターさん・・・やりました・・・デジたんはやり遂げましたよ・・・」

 

 「ああ、よく頑張ったな・・・二人とも感想は?」

 

 「すっっごいかわいいです!イメージしてた私の勝負服そのもので!もうほんと、ね!ダイヤちゃん!」

 

 「うん、キタちゃん!着心地もすごくよくて、こんなにフリフリしてるのに軽いです!着方も簡単でした。ありがとうございます!」

 

 「うんうん!サイズ調整は必要なさそうね。安心したわ~」

 

 キタサトコンビが来てる勝負服、質感的に確かにレース用の勝負服に使われている布とは別物っぽいが特に違和感はない。キタの服は和装ドレスというような感じで黒をベースに赤のラインと模様、金のラインが入り、スカートや上着の下は金色が基調になっている。肩や胸元は大胆に露出されているがそこはシゲさん、一番下に長袖の黄色の指孔カットソーのシャツを着ていることで問題にはならなそうだ。黒のミニスカートに黒に赤のワンポイントが入ったオーバーニーソックス、下駄風の蹄鉄シューズで華やかかつ勝負服っぽさがよく出ている。腰元の紅白のしめ縄がキタの元気の良さによく合っているな。

 

 そしてダイヤ、まさしくお嬢様といった風情の緑色のフィッシュテールドレスだ。白のレースを上半身に多く配置し、結構露出が多い(シゲさんの配慮で隠されているが)キタの勝負服と違って上半身の露出がゼロ、フィッシュテールドレスなので前のスカートが短いから黒のニーソックスを履いた足が見えるが夜会のお嬢様といった印象を与える清楚な雰囲気だ。腰のコルセット風のリボンも実によく似合っている。そして金色の刺繡がスカートのすそや上着にもあって落ち着いた色の中に光るものというコントラストが見てて飽きない。唯一心配だなと思うのはタキオンの勝負服のようなだぼだぼで長い袖であるが・・・手首付近を見てみるとうまく隠してはあるがファスナーが見える。分離ができるということだろう。シゲさんの心遣いが光るな。

 

 「うん、二人ともよく似合ってる。さて、いよいよ来週から職場体験を始めるんだけど、俺の指示にきちんと従うように。怪我しちゃったら大変だからね。それとあいさつは元気に大きく。ケンカをせずに仲良くすること。いいね?」

 

 「「はい!」」

 

 「うん、いい返事。それじゃあよろしくね?あ、招待したい人がいたらこの券渡してね?こっちのはご家族の、こっちのはお友達に」

 

 いつの間にか復活したデジタルがごっついカメラをもってキタサトコンビの周りを稲妻のようなステップで回りながら写真を撮っていくのを横目に、俺は二人に優待券をいくつか渡すのだった。

 

 

 

 

 

 そして職場体験当日、これから1週間、キタサンブラックとサトノダイヤモンドは俺の店で職場体験をすることになるわけであるが、さすがに知らないウマ娘と一緒に仕事をさせるのはアレということになってちょっと店のほうのシフトのローテを弄ってマックイーンとテイオーにお越しいただいた。快諾してくれたスピカのトレーナーには感謝している。キタサトコンビを見て足を撫でまわそうとしたのは止めたが。テイオーとマックイーンが蹴り飛ばして、だけど。そんな二人が着ているのは新しいほうの勝負服、マックイーンが空のように澄んだ水色、テイオーが大地に沈む太陽のように朱い勝負服だ。

 

 「よっし、テイオーにマックイーン。今日から、キタサンブラックとサトノダイヤモンドが1週間、職場体験をすることになる。ちょっと申し訳ないがお前らなら顔見知りだしリラックスして仕事をできると思って2日ほど連続で入れさせてもらった。頼めるか?」

 

 「いいよー!テンチョーにはお世話になってるもんね!ボク、ちゃんと教えてあげるから!」

 

 「ええ、勿論ですわ。ふふ、職場体験なんて・・・懐かしいですわね」

 

 「悪いな、まあ好きなもん作ってやるから勘弁してくれ。そろそろ二人も来るはずだから」

 

 テイオーにマックイーン、二人とも快くキタサトコンビを受け入れてくれるみたいでよかった。キタサンブラックはテイオーの、サトノダイヤモンドはマックイーンの大のファンということもあってか先日に俺の店に初めて来たときから仲良くなったらしく。時々プライベートで会っているようだ。俺も商店街でマックイーンとお茶をするダイヤやゲームセンターでテイオーと遊んでいるキタを見たりする。まあ一番出没する可能性が高いスポットは俺の店なんだけどな。

 

 「あ、そうだテンチョー。スぺちゃんとスズカが暫くシフトにはいれてないから来たいって言ってたよー?ボクたちばっかりずるいーって」

 

 「ずるいーと言われてもな・・・スズカはアメリカから帰ってきたばっかりでスぺはレースに出ずっぱりじゃないか。そこはトレーナーに言えよ」

 

 「あとゴールドシップですが・・・「そろそろ出禁解除しろー!あたしも働かせろよー!」と・・・」

 

 「店の中で花火大会しようとしなければいいぞ。だからって店の前で爆竹を1000発鳴らしていいわけじゃないって言っといてくれ」

 

 「いつ聞いても頭がおかしくなりそうですわ・・・」

 

 「店に来る分にはいいんだぜ?飯食って俺に絡んでこようが自由にしていいんだけど流石に客商売だと・・・働いてるとき子供には大人気なんだけどなーあいつ。ちょっと行動がエキセントリックすぎる。料理渡した次の瞬間デスソースかけて客に渡そうとしたのは度肝抜かれたぞ。客が激辛好きだったのが奇跡だ」

 

 「・・・見抜いて・・・らしたのでは?」

 

 「ありえそうなのが怖いなあ」

 

 ゴールドシップ、トレセン学園の特異点と呼ばれる行動すべてがぶっ飛んでいるチームスピカのエースだ。そしてトレーナーを射止めて現役なのにもかかわらず恋人を作り、それがファンに完全に認められているちょっと、いやだいぶ変わったウマ娘だ。トレーナーの恋人という立場に収まったおかげでスピカトレーナーの事を兄のように慕っていたスズカにスぺは俺の店でニンジンジュースをしこたま飲んで酔っ払うという謎の行動に出たが影響がそれくらいなら安いもんだ。ちなみにスズカとスぺ以外のテイオー、マックイーン、ウオッカ、スカーレットは素直に祝福したとかなんとか。詳しく知らんが。

 

 一歩間違えればチームが崩壊するかもしれないことをあっさりとやるあたりゴールドシップのぶっ飛びっぷりがうかがえる。スぺとなんか「うえええん・・トレーナーさぁん・・・」「まあ兄貴分に恋人ができるなんていいことじゃないの」「そうじゃないんですよお父ちゃん!」「誰がお父ちゃんだ」みたいなやり取りをしたんだがゴールドシップへの恨み言が一切出ないあたり慕われているいいウマ娘なのだ。

 

 さて、話がそれたが今日はマックイーンとダイヤ、テイオーとキタという感じでやっていこうと思う。お客さんには既に職場体験の小学生の子が店の中にいることはホームページで知らせてあるし、今日から1週間予約に成功しているお客さんにもメールでお知らせが行っているはずだ。もしこれで何かあったらまずいから知らなかったですまさないようにしとかないとな。

 

 「おはようございます!あああ!テイオーさんだ!」

 

 「おはようございます。マックイーンさん、どうしてここに!?」

 

 「おはよーキタちゃん!ダイヤちゃん!ふふふ!なんと今日から2日間!ボクたちが君たちと一緒に働くことになったのだー!」

 

 「おはようですわ、ダイヤさんにキタさん。言うなればトレーナー役、と言ったところですわ。一緒に頑張りましょう?」

 

 「「やったあああ!!!」」

 

 「おっし、二人とも今日からよろしくな。それじゃあ二人とも着替えて降りてきてくれ。さ、ホースリンク、始業するぞ」

 

 ドアを元気よく開けて入ってきてくれた二人がテイオーとマックイーンを見て大喜びしてる。親御さんからもお願いされてるし責任もって職場体験を楽しい思い出にしてあげないとな。俺は料理の仕上げのために食材を刻みながら勢いよく勝負服を保管してある更衣室の中に入る二人を見てペースを上げるのだった




 勝負服について作者のセンスのない改変を想像できない方は各々ロリキタサトの勝負服を改変していただきたく存じます。ダイヤちゃんはともかくキタちゃん露出やばすぎんよー・・・

 何とか解説を入れるとキタちゃんは袖の中の黄色い指孔カットソーが完全に長袖シャツになってて、ダイヤちゃんは長すぎる袖が一部着脱可能になってるということでどうか一つ・・・


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職場体験・仕事編 ハンバーグプレートランチ

 やあっと職場体験編が終わりです。もう引き延ばしても面白くないのでここですぱっと終わります


 職場体験がスタートする、今日という日に。マックイーンとテイオーがキタサトコンビの俺の店におけるトレーナーとして応援に来てくれたわけであるが、新しい勝負服に身を包んだ二人がキタサトコンビに挨拶を済ませキタサトコンビはさっそくと言わんばかりに今日から着ることになる出来立てほやほや、ピッカピカの勝負服に着替えに更衣室まで小走りで走って行った。

 

 「二人の勝負服かぁ~・・・マックイーンはどんなのだと思う?」

 

 「ふふ、きっと可愛らしいものだと思いますわ。楽しみですわね」

 

 和やか~に会話してるのは手際よく掃除を終わらせたテイオーとマックイーン、はちみーを手に普段のレースでは見られないぐらいの穏やかな顔で会話を楽しんでいる。そして俺は延々と作業をしている。それはなぜか?今日のメニュー、気合を入れすぎて作業工程がとんでもなく多くなってしまったからだ。今日の日替わりメニューはいわゆるランチプレート、一皿に多種多様な料理を乗っけたものだから、仕込みが予想以上に多くなってしまったのだ。

 

 まず主菜、これはニンジンハンバーグ、付け合わせにサラダ、ナポリタン、バターコーン、型に盛ったお山のごはんに箸休めのピクルス、ソースもピクルスも自家製、これにデザートのチーズケーキパフェが加わる。いや~皿を分けると運びにくいだろうって思って一皿にまとめたんだけど却って失敗だったかな?マジで作業が多すぎた。

 

 とりあえず何とか仕込みをすべて終わらせるとさっそくという感じでキタサトコンビが二人そろって更衣室から出てきた。どうやらデジタルが手伝って初めて着たとき、デジタルがカメラを構えながら長々と注意事項を語っていたのだがそれをきっちり守って着替えてきたらしくデジタルが着付けしたときと同じように着れているようでひとまず安心した。

 

 「わー!キタちゃん、ダイヤちゃんかわいい!なるほどー、確かに勝負服だね!」

 

 「とてもよく似合っておりますわ!一緒に頑張りましょうね」

 

 「ホントですか!?ありがとうございます!」

 

 「やったねキタちゃん!マックイーンさんもありがとうございます!」

 

 「よっし着替え終わったな。じゃあまず注意点から、今日はテイオーとマックイーンにそれぞれついて行ってくれ。料理を運んだりするのもちょっとだけやってもらうけどメインはテイオーとマックイーンな?お客さんに握手やらなんやらを求められたらテイオーとマックイーンが対応してくれ。キタとダイヤとしたがるやつはちょっとアレかもしれんからな。ワイワイ雑談する分には存分にやってくれ」

 

 「「はい!」」

 

 「おっし、じゃあ開店だ!看板立ててくる」

 

 そういって俺はトウカイテイオーにじゃれつくキタサンブラック、マックイーンに頭を撫でられ嬉しそうにしてるサトノダイヤモンドを残して俺はドアをくぐってドアの前にある看板をクローズからオープンにひっくり返し、持ってきた今日のメニューが書かれた黒板付き看板を立てて店の中に戻るのだった。あと道端でデジタルが死んでたけど何時もの事なのでそのままにしておくことにする。店に来る前に力尽きるなんて何があったのやら・・・

 

 

 

 

 

 

 カランコロン、とドアにつけてるベルの音がなる。本日一人目のお客様だ。時刻は10時ごろ、お昼にしてはまだ早いだろうけどブランチとしてとるなら申し分ないだろう。緊張でほっぺをリンゴのように染めたキタとダイヤがテイオーとマックイーンに促されて挨拶をする。

 

 「「いらっしゃいませ~!」」

 

 「え、あ、ああどうも。予約した戸塚です。そういえば職場体験って・・・ああなるほど。」

 

 「いらっしゃいませ!こちらの席にどうぞー!」

 

 「すいません、ありがとうございます。お嬢ちゃんたちもよろしくね」

 

 きちんと挨拶をした二人にとりあえず安心した。テイオーがすぐにお客さんをテーブルに案内してドリンクを聞いてきた。俺はオーダーのカフェオレを手早く作って、キタに手招きする。ちょこちょこと寄ってきたキタにお盆を渡してその上にカフェオレを乗っける。おたおたしながらおっかなびっくり運び始めたキタをテイオーが見守り、ダイヤとマックイーンがはらはらした顔をしている中、キタはこぼすことなくカフェオレをお客さんに提供した。うん、花丸。

 

 「お、お待たせしました!カフェオレです!」

 

 「お、ありがとう。頑張ってね」

 

 「は、はい!」

 

 そうしているともう一度ドアのベルが鳴った。つまりはお客さんだ。次はダイヤの番、マックイーンが安心させるように肩に手を置いて促す。いらっしゃいませと全員で挨拶をしたのちにマックイーンとダイヤが席にお客さんを案内する。

 

 「こちらですわ。お飲み物はいかがなさいますの?」

 

 「えっと・・・ダージリンをホットでお願いします。あの、メジロマックイーンさん、この手帳にサインを・・・」

 

 「ええ、勿論ですわ。いつも応援ありがとうございます」

 

 「わぁ。ありがとうございます!あと、そっちのあなた・・・職場体験の子だよね?頑張ってね、応援してるから!あ!よかったら名前教えてほしいな!レースデビューしたらファンになるから!」

 

 「サトノダイヤモンドです!よろしくお願いします!」

 

 「いい名前ね。じゃあお仕事頑張ってね!」

 

 聞こえてきたオーダー通りにポットの中に茶葉を入れて紅茶を入れる。カフェオレと違って運ぶものが多いから大変だけどダイヤには頑張ってもらおうかな。お盆を手渡し、紅茶の入ったカップ、ティーポット、角砂糖、フレッシュ、小皿とスプーンをセットする。ダイヤは持っていくものの多さにちょっと大変そうだがそれでもゆっくりではあるものの運びきった。

 

 流石にきれいにセットするのは無理だと思うのでお手本ということでマックイーンが小皿の上にカップを乗せ、スプーンを添えた後お替りを入れやすい位置にポット、角砂糖、フレッシュを置いて戻ってきた。うんうん、こっちも花丸満点、と。さて俺はランチプレートを仕上げないとな。

 

 四角い皿の左上にデミグラスソースをたっぷりかけたニンジンハンバーグを乗せ、その隣にナポリタン、サラダ。サラダの下にご飯、ハンバーグの下にピクルスとバターコーンをセットしてこういうものには欠かせないご飯の上にテイオーとキタをかたどった旗をセットする。料理はひっくり返しでもしたらまずいので今日はテイオーたちが運ぶことになってるのでテイオーがささっとお客さんにサーブした。流石やっぱり慣れてることはあるなあ。

 

 そうすること15組くらい。昼休憩を交互に挟んでもうすぐ今日のお客さんが終わるかな~といったところだ。キタとダイヤも段々慣れてきたみたいでテイオーやマックイーンと一緒にお客さんと話したり、むしろファン側に回ってテイオーやマックイーンがいかにすごいかという話をお客さんに解説してるくらい。

 

 マックイーンもテイオーもキタサトの熱にタジタジだ。どんだけ自分たちの事を尊敬しているか、好きなのかを延々と聞かされたらまあそうなるわな。最終的にお客さんと熱い握手を交わしていたが俺は特に気にしないことにする。

 

 「おーいデジタル、いるんだろ?なんか飲むか?」

 

 「ひぃえ・・・いっぱいですぅ~~もう何も喉を通りません~~~!!!!」

 

 何となくいるんじゃないかと思ってデジタルに声をかけると案の定俺の真上、天井裏あたりから声が返ってきた。道路で死んでたがどうやら復活したらしい。どこから見てるのとかどうやって入ったとか疑問は尽きないがどうやら何もいらないようなので営業が終わってから引きずり降ろしてテイオーとマックイーンで挟んで膝の上にキタサトを乗せておけば逃げれんだろ。ついでに料理をキタでもダイヤでもいいからあーんしてもらえ。

 

 「何か重大な命の危機を感じます~~!でもでも逃げたら一生後悔するような気も・・・」

 

 「楽しみにしとけ~~」

 

 「なんなんですかぁ~~~~!!!」

 

 敏感に己のある意味幸せな命の危機を察したらしいデジタルが声を上げるのをスルーし洗い物をしていると店のドアが開いて二人組の男性が入ってきた。あれ?二人組?今日は全員おひとり様だったはずなんだけどな・・・?もしかして何も知らない一見さんか?

 

 

 「いらっしゃい。ご予約はお済ですか?当店完全予約制となっておりまして・・・ご予約がなければ申し訳ありませんがお引き取りをお願いします」

 

 「えっあの・・すいません。これって使えますか・・?」

 

 「俺のも同じなんですけど・・・」

 

 そうして男性二人が見せてくれたのは俺の店の一回だけ使える優待券だった。なるほど、これなら予約なしでも店に来ることはできる。だけど俺は渡した覚えないぞ・・・?誰だ?蹄鉄?モルモット?はたまた別のトレーナー?うーん接点が見つからないが・・・まあ持ってる以上お客だ。きちんともてなしてやらないと。

 

 「優待券での入店ですね。失礼しました。それではお席のほうへ案内させてもらいます。おーい!」

 

 券を確認した俺がそれを受け取って別のお客さんと談笑してるテイオーたちに声をかける。意識をこっちに向けたテイオーとマックイーンは普通なんだけどキタとダイヤが男性客二人も見た瞬間ものすごくうれしそうに笑ってはじかれたようにこっちにやってきた。もしかして券渡したの君たち?大人で仲いい人がいるんだねえ・・・ちょっと意外かもしれない。

 

 「みなみさんにますおさん!来てくれたんですね!」

 

 「いらっしゃいませです!こちらにどうぞ!」

 

 「ごめんね、急に来て」

 

 「せっかく券もらったし、使っておかないと悪いかなと思ってさ」

 

 「そんな!来てくれて嬉しいです!」

 

 「はい!キタちゃんも私も楽しみに待ってたんですよ!」

 

 やっぱり二人の知り合いだったのか。眼鏡をかけたみなみと呼ばれた男をキタが、ますおと呼ばれた男をダイヤがそれぞれ手を取って席に案内して座らせた。あれもしかして結構仲いい感じ?ますます意外、どういうつながりなんだろうか?マックイーンもテイオーも首をかしげている。

 

 ドリンクを聞いて戻ってきた二人に向かってテイオーが耳にこしょこしょと内緒話のように話しかける。くすぐったいのかピクリと耳が動くが聞かれた内容を理解した二人が話し出した

 

 「ねえねえキタちゃん、あの二人とどういう知り合いなの?」

 

 「えっ?みなみさんにますおさんですか?それはですね、テイオーさんとマックイーンさんのレースの時、いつも私たちが一番に並んでるんですけど」

 

 「2番目に必ず来るのがあのお二人なんです!何度か一緒に並ぶたびにそこで少しずつ仲良くなれたんです!」

 

 「そうなんですわね・・・そういえば天皇賞の時お二人と一緒にいたような・・・?」

 

 「ほお・・・そうなんだ。じゃあ特別だ。ランチプレート、二人が運んで行ってあげてくれ。テイオーとマックイーンはドリンクな」

 

 「ホントですか!?やったー!」

 

 「はい!頑張ります!」

 

 というわけで作ったランチプレートを二人に渡して運んでもらう。流石に大きなランチプレートに少しよたよたしながら運ぶ二人に二人が若干ハラハラしながら見守っているがきちんと運んで渡すことができた。

 

 「ありがとう、おいしそうだね」

 

 「いや、実はここ一度来てみたかったんだよね。二人ともありがとうね」

 

 「ごゆっくりどーぞ!」

 

 「はい、どういたしまして」

 

 二人ともきちんと運ぶことができてうれしそうだ。みなみさんとますおさんも穏やかにお礼を言っているし、いい人なんだろうなあ・・・とりあえずはキタとダイヤに近づく不審人物じゃなくてよかった。仲もいいみたいだし、できればこれからも仲良くしてやってほしい。

 

 「こ、これは・・・!箸を入れるだけでほろりとほどけるハンバーグ、ニンジンも甘くて柔らかい!肉汁も噛めば噛むほど溢れてくる・・・!」

 

 「どうした急に」

 

 「いや、実は一度食レポというものをやってみたかったんだ」

 

 「確かにうまいけどさ・・・いや、あの二人が運んできたんだから美味しさもひとしおだな!」

 

 「だな!」

 

 うん、多分完全にただのいい人だ。キタとダイヤが心を許すのがわかる気がする。談笑しながら食事をする二人の周りをくるくる回りながら会話に参加する二人をテイオーとマックイーンと一緒に見守りながら俺は残りの仕事を進めるのであった。

 

 

 

 

 

 「あの、いいんですか?テイオーさんとマックイーンさんのサインまでもらったのに・・・」

 

 「また使える優待券までもらってしまって・・・?」

 

 「いいんですよ。せっかくキタとダイヤが優待券を渡したんですから、また来てください。お二人で来られてもいいですしキタとダイヤと一緒に来てもらっても歓迎しますよ」

 

 「すいません、ありがたくいただきますね」

 

 「ありがとうございます。キタちゃんもダイヤちゃんもありがとうね。テイオーさんとマックイーンさんもありがとうございました!」

 

 「大丈夫だよー!キタちゃんたちと仲良くしてあげてね!」

 

 「ええ、どういたしまして。末永く応援をよろしくお願いいたしますわ」

 

 そうしてみなみさんとますおさんの二人は帰路につき、職場体験の一日目が終了した。さっそく俺は天井を突っついて転がり出てきたデジタルを確保して、テイオーとマックイーンで挟んで膝の上にキタサトを配置した。デジタルはどうやら天井にいたときからいっぱいだったらしくその時点で活動を停止したが俺は気にせずに夕ご飯を用意することにした。

 

 そして20分後、俺の予想通りにキタサトコンビに食事をあーんされながら恍惚の表情で何とか命をつなぎながら幸せをかみしめるデジタルの姿があったとかなかったとか。真実は同室のタキオンが知る。さてあと6日、頑張って働いていきましょうかね。




 お付き合いいただきありがとうございました
 次はまた別の話を考えていきたいと思います。アンケートもご協力ありがとうございました。


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マスターさん、休日にテレビに出る

 キタサトコンビの職場体験はあっという間に終わって、ホースリンクに何時ものように代わり映えのない穏やかな日々が戻ってきた。正直キタとダイヤの人気には驚いたがホースリンクに来る客の大半は重度のレース狂いだ。彼女らに何か感じ入るものがあったのだろう。もしくはかなりディープな話題を当たり前のように口にする二人にシンパシーを感じたのかもしれないけど、仲のいいことはいいことだ。

 

 3日目はスピカよりウオッカとダイワスカーレットが来たが特に問題なく馴染んでいたし、むしろウオッカやスカーレットが張り切っていいところを見せようとしてライブやりまくったりしてた。その翌日、ヒシアマゾンとフジキセキの寮長コンビと仲良く料理をしてみたりと意外と人見知りしないタイプだということが分かった。そして休みを挟んで翌日、担当はニシノフラワーとセイウンスカイ、年が近いこともあってニシノフラワーとは特段仲が良くなってるように見えたなあ・・・花の世話を一緒にやったりと楽しそうだった。セイのやつはサボってたけどな。

 

 とまあ、一部分ではあるがあったことを思い出すとなかなかいい体験をさせてあげることができたのではないだろうか。俺は職場体験を受け入れるのは初めてだったからホントに触りだけしかやらせてやることはできなかったけどな。流石にうちの店に働きに来る子たちと同じことをさせるわけにはいかないし。サインとか握手とかはもってのほかだし、なんかあればURAアンチに燃料を投下することになるし、とにかく無事に終わってよかったよ・・・

 

 

 で、今日なんだけど・・・なんと休みをもらえた。しかも2連休だ。すごーい!これで遠くのキャンプ場に行ってひとりキャンプ配信でも・・・!とそうはいかないのが俺の仕事。出かけるにしてもなんかあった時のためにすぐ近で帰れるようにしなければならない。例外なのは夏の合宿の時期くらいだ。あと年末年始、冠婚葬祭、入院くらいはさすがに自由がきくが。ちなみに入院やら怪我やらしたらウマ娘の皆さんは大変心配なさる(俺に限らず、トレーナーだろうが用務員だろうが)ので、怪我と隣り合わせのウマ娘関係の仕事に就く人はできるだけ気を付けるのだ。怪我なんてしたくないけど。

 

 彼女らは愛情深いので、親しい人やトレーナーが怪我でもして入院しようものならたとえそれが自分の夢であっても簡単に捨ててそっちに行ってしまう。本能を愛情でねじ伏せる、そういう生き物なのだ。ウマ娘という種族は。

 

 さていつも通り話がそれたわけであるが、今日はちょっと遠出、というか俺がいつも使っている調味料やらなんやらがなくなってしまいそうなので商店街からかなり外れた場所にある輸入品を扱う店や外国人個人店、オーガニック専門店が軒を連ねるちょっとディープな繁華街のほうに行かねばならんのだ。

 

 特にスパイス系は俺のお気に入りの店のやつじゃないと使いたくない。ほんとに品質が良くて料理の味が一味も二味も変わってくる。注文に応じてオリジナルスパイスを作ってくれたりとかもするしマジで至れり尽くせりのいい店なのだ。あと塩、うちの店は5種類ほど塩を用意しているんだけど、ヒマラヤ山の岩塩と国産の藻塩の在庫が切れそうなのでそっちも買わないといけない。つまり、仕入れへ行かねば。あと最近話題の岩塩プレートというやつも試してみたい。洗ったら溶けそうな調理器具だなっていう感想しかないけど。

 

 

 

 というわけでやってきたのは繁華街、こっちはほとんどウマ娘が来ることがない、例外はマチカネフクキタルくらいなものだ。開運占いグッズ専門店があるからな。でもちょっと安全が確保できないとのことでトレーナー同伴だったりするけども。

 

 今日は電車と歩きでえっちらおっちらきた。電車一本で来ることができて大変らくらくである。駅から近いのも素晴らしいよなあ、このアングラな雰囲気も素晴らしいっとおっと?あれは・・・テレビ局?なんかの企画かな?街頭インタビューでもしてるのかな?ちょっと何してるのか気になるなあ。ってあれ最近人気のタレントじゃないか?日曜朝の特撮から始まり最近ドラマとかで引っ張りだこっていう・・・へー、金かけてんだねぇ。

 

 どうやらお兄さん・・えーっと・・・丹波伊織、だったかな?彼にインタビューだが何だかされた女性は握手をして感謝を示しつつ別れた。終わったようだ。俺もこれ以上いてもしょうがないのでそそくさと場を後にしようとすると・・・目が合った。あらやだ嫌な予感、理事長の無茶ぶりと同じ空気を感じますわ。と心の中のマックイーンを目覚めさせた俺がフリーズしていると丹波さんはこちらを完全にロックオンしたらしくてテレビカメラを引き連れてこちらに来た。ガンガンカメラ回ってるけど話くらいは聞いてもいいかもしれない。実は彼の初主演の特撮、ビコーペガサスに勧められて俺もがっつり見てたので俺も割とファンなのだ。ちょっと感動してる。

 

 「すいません!ちょっとよろしいですか!?「今日、何しますか!?」という番組なんですけど・・・よかったら出演してもらえないでしょうか?」

 

 「ええっと、ご苦労様です。いつも拝見してますよ。もしかしてついて来るやつです?」

 

 「ホントですか?いや、うれしいです。ええ、今日一日何をして過ごすのかを取材させていただく番組なんですけど・・・」

 

 正直びっくりした。「今日、何しますか!?」とは最近珍しいガチの体当たり企画で人気を博している深夜枠から一気に人気に火が付き現在ゴールデン枠で放送されてる番組だ。街頭で出演交渉した一般人が今日何をするのかというのを密着取材する番組で、いくつも伝説の回がある。しかも体当たりが割とガチで自衛隊のレンジャー訓練に付き合ったり、漁師さんだったらそのまま海に出たり、畜産関係だったら乳しぼりをしたりする、本気で何でもやるランダム性が人気なのだ。出演者は毎回変わるが今回は彼だったというわけだ。なるほど・・・ワンチャンいい宣伝になるかもな。受けるか。

 

 俺の店、ホースリンクはレースのたびレース場に足を運ぶ熱心なファンや掲示板に入り浸るような深いファンには抜群の知名度を誇るが一般層、それこそラジオ中継で流し聞きしたり、テレビのニュースでちらっと見るだけのような人、ウマ娘は好きでウイニングライブは見るけどレースはからっきしみたいな人、つまりライト層への知名度はほとんど皆無だ。一般人に人気のあるテレビに出て宣伝できればURAのためにもなるんじゃなかろうか?

 

 「・・・ちょっと待ってくださいね。番組の事は知ってるのでちょっといいかどうか上役に聞いてみます」

 

 「わかりました。すいません、よろしくお願いします」

 

 というわけで俺はササっとスタッフたちから離れて理事長に電話する。なんか最近この人に電話する機会が増えてきた気がするなあ・・・つながったのでこれこれこういう事情で取材申し込み来たんだけど自由にやっていい?と尋ねると間髪入れずに「許可!!好きなようにやるといい!」と許可が出たので電話を切ってスタッフたちのほうへ近づいてオッケーサインを出す。途端にスタッフ全員が安堵のため息をついて力を抜いた。何事?

 

 「ええっと、大丈夫ですけど・・・皆さんどうしたんです?」

 

 「ありがとうございます。いや、実はですね・・・この番組、密着取材の対象を探すのが一番大変らしくて、かくいう僕も二日目なんですよ。昨日からお願いしてて、今やっと許可が出たみたいな感じなんです・・・えっと・・」

 

 「あ、すいません。和田っていいます。なるほど、それはご苦労様でしたね。確かに大変そうですもんね、毎回取材対象が結構すごい人ばっかりで俺みたいな一般人が出るのはつまらないかもしれないですけど、いいんですかね?」

 

 「いえいえとんでもないですよ!スタッフの悪運のせいなので!」

 

 スタッフ全員が傷ついた顔をしている。仲がいいな。ADらしき人がスケッチブックで次を促してるのを見たのかどうかわからないレベルのチラ見で確認したらしい丹波さんがさっそくインタビューをしてくる。

 

 「では和田さん!早速ですが、何をしてらっしゃる方なんですか!?」

 

 「喫茶店を経営してます。今日は調味料の類を補充しにこっちまで来ました」

 

 「喫茶店!これはまた当たったことがない人が来ましたね~!それでは、今日!ついて行っていいですか!?」

 

 「いいとも!・・・実はこれ一度やってみたかったんですよね~」

 

 「わかってますね~!」

 

 

 

 

 ちょっとした質問に答えながらやってきたのは俺の行きつけのスパイス専門店、実は何度かテレビ取材が来ている名店でもあるのでこっちの取材交渉もあっさりオッケーがでた。

 

 「ちょっと和田ちゃん、いつの間にテレビに出られるくらい有名になったのよ~!あたしったらびっくりしちゃっても~。それで今日のご注文は?」

 

 「チエさん、番組知ってるでしょ?偶然だよ偶然、えっと、何時もの岩塩と藻塩、カルダモンとクミン、ガーリックミックスと黒コショウと白コショウ、オリジナルの4番、7番、16番頂戴」

 

 「はいよ。何も知らないならあんたの店行きゃ驚くだろうね~」

 

 「今日は休みだからなんもないなー」

 

 この店の店主、チエさんことブラックチェック、元競争バのウマ娘だ。名前がかわいくないからとチエさんというあだ名で呼ばれることを好む御年60歳の女傑で、ウマ娘の優れた嗅覚を生かしてスパイス屋を開業した肝っ玉母さんという言葉が似合うウマ娘だ。この人の調合したスパイスが最高にうまいのだ。試しに味見して食レポしてる丹波さんが素で驚いて後でゆっくり買いに来ますとコメントしているくらいに。こりゃ放送日翌日は大繁盛だな、くわばらくわばら。

 

 紙袋に包装されたそれを受け取ってって、あ!今日ウマ娘のやつらが二人ペアで来るの忘れてた!時間的には全然余裕だけど・・・まあいいや。理事長好きにしろって言ってたし来る二人も勝負服を修理したから着てステージに立ちたいっていう話で俺の店のミニステージ使いたいってだけだし。二人ともテレビごときで調子崩したりするタイプじゃないし。むしろ一人は進んで撮られに行きそう。丹波さんのファンだしそのままにしとこ。

 

 さーて用事は終わったしあとは店に帰るだけ!さくさくっと帰るぞー!帰ったらルドルフとかいないよな?いたらさすがに大変なことになるからやばいんだけど・・・せめてうちの店がURA所属下にあることを説明してから登場して遊ばされたい。ドア開いたら皇帝がいるとか取れ高すぎてカットになるかもしれん。ダジャレでも言おうもんならエアグルーヴが胃痛を覚えるだろう。あれこれまじめに考えてやばくね?3女神にでも祈っとこう。

 

 「えーっと一応俺の用事はこれで終わりなんですけど・・・こっからどうするんです?」

 

 「一日密着なのでできれば喫茶店のほうにも行かせてもらえますか・・・?」

 

 「わっかりました。じゃあ電車使うのでこっちですね」

 

 電車に乗ってやってきたのは勿論わが町、トレセン学園がある何時もの場所である。トレセン学園前~というアナウンスで電車の席を立ってドアに近づく俺にスタッフの皆さんはぎょっとしている。なにせトレセン学園の近くというのはそれはそれはウマ娘がたくさんいる。ついでにとんでもねえ権力を持つURAのご本山の一つであるトレセン学園の近くということもあってテレビの取材で訪れるのは限られるわけであって。

 

 「えっと・・・ここで降りるんですか?」

 

 「はい。いや、実は俺の店トレセン学園のすぐ近くにあるんですよ。上役っていうのもトレセンの理事長でして、テレビカメラ入れていい?って聞いてたんです。許可はきちんと下りてるので安心してついてきてください」

 

 「どこが一般人なんですか・・・?」

 

 「いやだなあ360度どこから見ても一般人ですよ。ちょっと運がいいだけです」

 

 「運がいいで済まされるわけないでしょ!」

 

 ナイス突っ込み丹波さん。実際運がいいだけじゃ無理だけどそれを宣伝するのは違うのでこれで押し通らせてもらう。というわけでついた俺の店、英語で書かれたホースリンクという看板、ウエスタン風の外観にエアグルーヴやニシノフラワーといった園芸が趣味のウマ娘たちが植えていった花や植物が華を添えている。カランコロンとドアをくぐった俺と丹波さん、まず店の中を見た丹波さんが驚いたように声を上げる。

 

 「うわっびっくりした・・・!すごい数の蹄鉄ですね・・・これはご趣味ですか?」

 

 「うーん、まあこの店自体趣味みたいなところがあるんですけど・・・それ、ウマ娘が実際に使ってた蹄鉄ですよ」

 

 「ウマ娘が?ご知り合いにウマ娘の選手の方でも?」

 

 「正確にはスタッフ兼客の、ですけどね。そっちの端からトウカイテイオー、メジロマックイーン、スペシャルウィーク、フジキセキ、ヒシアマゾン、ウオッカ、ダイワスカーレット・・・トレセン学園の現役ウマ娘がG1とかの大きなレースで優勝するたびにこの店にその時はいてた蹄鉄の片方を寄付していくんです。そしたらまあ、こんな数になっちゃって」

 

 「えええええ!?それってとんでもないことですよ!?ウマ娘ファン必見じゃないですか!?」

 

 「ええまあ、そうですね。といっても理事長もそれを分かってるようでして、うちの店のウェイターはトレセン学園から来てます。というわけで休みで申し訳ないですけど、URA所属下、ウマ娘交流喫茶店ホースリンクへようこそ!今日はおもてなしできないですけど、許してくださいね」

 

 そうした俺の言葉に丹波さんはおろかスタッフはポカーンと口を開けて驚いている。多分トレセン学園のウマ娘が働いているというのがパワーワードだったんだろう。誰だって驚く、俺も最初死ぬほど驚いたからな。

 

 「・・・どこが一般人ですか!すごい店じゃないですかここ!?」

 

 うんうんと頷くスタッフ一同。ほんとに仲いいんだなあ・・・あー時間的にそろそろ来る時間だ。というかもう玄関前にいるのが俺の位置から見える。そしてためらいもなく入ってきた小さな影と俺に匹敵するくらい大きな影・・・耳と尻尾が特徴的なウマ娘である。

 

 「マスター!?これ何!?悪の組織!?じゃあ僕が相手だ!」

 

 「ちょっとビコーちゃん、違うと思うの~あっマスターさん、ボーノ!」

 

 「よっすビコー、ボノ。なにってテレビの取材だよ取材。ほらこの人、ビコーなら知ってるだろ?」

 

 「あーーーーっ!キャロットマンだーーー!!!」

 

 「えっあっ・・・ごほん。根性一発!キャロットマン!!」

 

 「本物だーーーー!!!」

 

 やってきたのは小さな体に立派な勇気、正義の味方にあこがれるウマ娘のビコーペガサスと、立派な長身で優しさあふれるのんびり屋なヒシアケボノだ。このコンビは去年のファン感謝祭でヒーローショーのヒーロー役と怪人役をお互いにやった時から仲良くなって今に至るまで付き合いが続いているらしい。思いついたら一直線でちょっと暴走しがちなビコーをボノが優しく抑えるいいコンビだと思う。

 

 そして丹波さん、キャロットマンといわれてすぐに変身ポーズと名乗りが出てくるあたり流石と言わざるを得ない。正義のヒーローになるのが夢だというビコーは特撮ものの番組が大好きだ。その中でもお気に入りだというのがキャロットマンという丹波さんが演じたニンジンモチーフのヒーローだ。俺も正直見る前は子供向けと思っていたが案外面白く普通に全話見てしまった大人も楽しめるヒーロー特撮だ。

 

 「えっと、ご存じかもしれないですけど、このちっこいのがビコーペガサス。で、俺と同じくらいのがヒシアケボノ、今日はそこのミニステージを使いたいって理由でここにきてます。ビコー、ボノ、とりあえずステージ好きに使っていいから着替えに行っといで」

 

 「えー!折角キャロットマンがいるんだからヒーローショーをもがぁ!?」

 

 「もービコーちゃん。マスターさんのお店を借りるんだからわがまま言っちゃだめー。着替えに行くよー」

 

 変身ポーズを生で見て超絶興奮しているビコーをボノが抱え上げて更衣室に消えていった。そして残ったのは無言の間・・・気まずい・・・

 

 「僕、それなりにテレビ出てますけどここまで驚いたのは人生初かもしれません」

 

 「いやいや、言いすぎですって。それにテレビ出てるほうがすごいですよ。あの子たちの本質はアスリートですからね、うちはおまけのおまけですから」

 

 「でも不思議ですね・・・流石に話題にならないとおかしい気がしますけど、失礼ながら耳に入ったことがないですね」

 

 「そうなんですよ。この店ディープなファンは知ってるんですけどライト層には全く知名度がないもんですから、テレビに出ればこれで有名になれますかねー、なんて」

 

 「ちなみに今度誰が来るとかあります?」

 

 「明後日ならビワハヤヒデとナリタブライアンですかね。トレセンのホームページに詳しいこと書いてあるんで見てくださーい」

 

 「またとんでもない名前が出てきましたね・・・スタッフ、テロップ出しといてください」

 

 それからというもの、帰ってきた勝負服のビコーとボノがライブするのをカメラさんが撮り逃したら死ぬんじゃないかと思えるのほどの鬼気迫る勢いで撮ったり、ボノと俺がケーキ作って振舞ったり、二人が帰ってそろそろ撮影もお開きというタイミングでルナが来て阿鼻叫喚に陥ったりと正直楽しかったです。これがお茶の間に放送されると思うと楽しみでしょうがないなあ。

 

 久しぶりに忙しい休日になったけど、たまにはこういう日もいいんじゃないだろうか。あと丹波さん、サインもらっていい?飾るから。え?そりゃ勿論この一番目立つとこ。ミスマッチ?いや芸能人のサイン飾ってみたかったんですよ、それがあの丹波さんならなおさら。はい、ありがとうございます!

 

 そういや明日も休みなんだっけ。何しようかなあ・・・料理の試作しようかね、いつもどおり。丹波さんたちテレビスタッフを見送りながら、俺はどうでもいいことを考えるのだった。ルナ、ボノが作ったケーキ食べる?飲み物は紅茶?よし、兄さんにまかせなさ~い。

 




 暫くネタを考えるために更新停止しまーす。思いついたら更新するのでいつになるかは不明です。
 もっと面白く読んでもらえるように修行してくるっす!


 ではまたどこかで!


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【伝説の】「今日、何しますか!?」実況スレpart77【誕生】

 なんか放送後の反応が見たいって人が結構いたので記憶が新しいうちに書いておくことにしました。すぐ浮上してすまんな


1:今日の一般人()

 さて今回の「今日、何しますか!?」が放送されるわけなので、みんなでワイワイ楽しんでみるスレを立てたよ。楽しもうね!

 

2:今日の一般人()

 わーい!立て乙!今週の放送はあれでしょ?キャロットマンの丹波伊織君!楽しみにしてたんだよー

 

3:今日の一般人()

 おつー。ほんとになー。生身アクションがすごすぎて特撮とどっこいどっこいなスーパー役者さんだもん。

 

4:今日の一般人()

 丹波君なら自衛隊のレンジャー訓練にも行けると思うの

 

5:今日の一般人()

 根性でやり切った50代俳優の雄姿が見れる伝説回www

 

6:今日の一般人()

 正直かっこよかったです。ボロボロだったけど、事務所NG出ないもんだね

 

7:今日の一般人()

 15歳のアイドルが本気で乳牛牧場で働く回とかな

 

8:今日の一般人()

 意外にも動物に好かれるおかげでガチで就職しないかと誘われたやつwww牛がみんななんだなんだってなってアイドルから離れなかったりしてなww

 

9:今日の一般人()

 未成年にも容赦ない番組ホント草

 

10:今日の一般人()

 よしくるぞー!

 

11:今日の一般人()

 3

 

12:今日の一般人()

 2

 

13:今日の一般人()

 1!!!

 

14:今日の一般人()

 始まったーーーー!

 

15:今日の一般人()

 キャー丹波君!!!イケメェン!!!

 

16:今日の一般人()

 「皆さんこんにちは!今回の「今日、何しますか!?」の司会兼生贄を務める丹波伊織です!ってスタッフ!誰が生贄だって!?」

 

17:今日の一般人()

 おいスタッフ!生贄www売れっ子俳優に向かって生贄wwww

 

18:今日の一般人()

 容赦ねえええwwwそして恒例の今日の一般人()探しへ

 

19:今日の一般人()

 毎回毎回市井にいる人が何らかのすごい人なせいでやらせを疑われるも、交渉までノンカットの動画を挙げて潔白を証明したの本当に狂ってる。スタッフの取れ高運のよさもw

 

20:今日の一般人()

 最初のはお兄さん!

 

21:今日の一般人()

 趣旨を説明してインタビューに成功!・・・サラリーマンかあ・・・え?この会社超大手じゃん!

 

22:今日の一般人()

 でも守秘義務で断念、まあいつもどおり

 

23:今日の一般人()

 そして二人目・・・だめかあ

  

24:今日の一般人()

 インタビューも駄目ね・・・

 

25:今日の一般人()

 ってここで二日目!?はやくね!?

  

26:今日の一般人()

 さっさと行き過ぎ!どういうこっちゃ!?

 

27:今日の一般人()

 いや、これは覚えがあるぞ!伝説回と同じパターン!

 

28:今日の一般人()

 はっそうか!取れ高ありすぎて尺足りないからこのパート削るやつ!

 

29:今日の一般人()

 おおお期待できるじゃん!

 

30:今日の一般人()

 二日目最初の人は・・・おおきれいなお姉さん!

 

31:今日の一般人()

 なんか帽子が不自然だなあ・・・あとスカートの広がり具合も・・・もしかしてウマ娘?

 

32:今日の一般人()

 わっかんないけどとにかく美人だ。へぇ~秘書やってるんだ。あ、でも今日は休日で取材NGなのね・・・所作がとにかく優雅だぁ・・・

 

33:今日の一般人()

 秘書ってすげえんだな。おっ何時もの演出入ったってことはこの次の人が今日の一般人()だな!

 

34:今日の一般人()

 ・・・背ぇ高っ!あしながっ!俳優さんですか・・・?

 

35:今日の一般人()

 今日の一般人()はイケメンだなあ

 

36:今日の一般人()

 顔整ってるけど目立つタイプのイケメンじゃないな。いや、背は高いけど。丹波君より5センチは高いぞ

 

37:今日の一般人()

 丹波君公式177㎝のはずだから間違いなく180㎝超えてるな。そそくさ行こうとしたのを捕まえられてちょっと動揺してるwww

 

38:今日の一般人()

 「ええっと、ご苦労様です」落ち着く声してんなーこの人。でもどっかで見たような・・・?

 

39:今日の一般人()

 なんか既視感あるなこの人・・・おっ交渉成立?上司に確認中?

 

40:今日の一般人()

 やったー!許可が出たー!!本日の犠牲者だあああ!!

 

41:今日の一般人()

 言い方ァ!!

 

42:今日の一般人()

 ではさっそくインタビュー。

 

43:今日の一般人()

 丹波君にこんな一般人ですまんと謝る今日の犠牲者さん。

 

44:今日の一般人()

 丹波君、一般人()確保の難しさを語る

 

45:今日の一般人()

 イヤホント、ご苦労様ですわ

 

46:今日の一般人()

 スケジュールどんだけつぶれるかわかんないもんな、この番組

 

47:今日の一般人()

 ほうほう、和田さんとおっしゃるのね。って丹波君wwwスタッフに責任全押し付けwww

 

48:今日の一般人()

 そしてここでいつものやつ。意外とノリがいい和田さん

 

49:今日の一般人()

 はぇー喫茶店の経営者。意外な人が来たもんだ

 

50:今日の一般人()

 調味料の買い出し、ふむふむ・・・プロが何使ってるのか意外と気になるワイ

 

51:今日の一般人()

 わかる。同じもん使っても同じにはならんが美味しくなりそうな気はする。

 

52:今日の一般人()

 CM挟んで場面転換、和田さんはどうやらこの店で喫茶店を開いてるわけではないとのこと。なんでここにいるかというとお気に入りのスパイス店がここにあるからなのだそうで

 

53:今日の一般人()

 なんかそういうこだわりある店いいなあ、行きたい

 

54:今日の一般人()

 あ!この店!?テレビで見たことある!

 

55:今日の一般人()

 あー、ここいいよね。美味しいんだよね。

 

56:今日の一般人()

 え!?店主さんウマ娘なん!?意外~

 

57:今日の一般人()

 ウマ娘は感覚器官も鋭いし、納得できなくはない

 

58:今日の一般人()

 でも刺激物の匂いも駄目なのにスパイスとかはやばいんじゃね?

 

59:今日の一般人()

 ファッ!?60代!?見た目若すぎぃ!?

 

60:今日の一般人()

 40代くらいだと思ってた・・・ウマ娘って年とってもきれいなんだなあ

 

61:今日の一般人()

 そして和田さん、店主さんに肩をめっちゃ叩かれながら流れるように注文・・・呪文ですか?

 

62:今日の一般人()

 塩までは聞き取れた

 

63:今日の一般人()

 ほぼ最初だけで草

 

64:今日の一般人()

 ここで食レポ入りまーす

 

65:今日の一般人()

 丹波君素で驚いてて草ぁ!!

 

66:今日の一般人()

 後で買いに来るってよww

 

67:今日の一般人()

 丹波君店主さんに思いっきり持ち上げられて高い高いしてほめられてるwwwウマ娘すげえ!!

 

68:今日の一般人()

 どう見ても小さい孫相手にやる反応じゃねえかw

 

69:今日の一般人()

 「初めての体験でした」そらそうよ。そして和田さんの達観した目よ。やられたことあるんやろなあ

 

70:今日の一般人()

 のっけから濃かったな

 

71:今日の一般人()

 そして和田さん、本日の用事はここまでだそうで。喫茶店まで来ます?とのこと

 

72:今日の一般人()

 行くに決まってんだよなあ?

 

73:今日の一般人()

 というわけで和田さんの喫茶店(定休日)に行くために電車に乗る一同

 

74:今日の一般人()

 あ、この路線ってトレセン前を通過するやつじゃん。一度でいいから現役ウマ娘を見てみたいなあ

 

75:今日の一般人()

 ウマ娘はなー、結局は陸上やでな。ウイニングライブ見れればええや。ワイの推しはスペシャルウィークやで

 

76:今日の一般人()

 まあいくら国民的スポーツって言っても国民全員が夢中ってわけでもないし。野球とどっこいどっこいかちょっと上くらい?

 

77:今日の一般人()

 でも一人のウマ娘に20万30万のファンがつくってのはすごいよなあ。学生なのにね

 

78:今日の一般人()

 しかも芸能人じゃなーい。100万越えの化け物もいるんでしょ?たしか・・・

 

79:今日の一般人()

 シンボリルドルフ、オグリキャップ、ハルウララの3人やな。うち二人は引退済みやけど

 

80:今日の一般人()

 ってなんじゃこの煽りは?止まったところは・・・?

 

81:今日の一般人()

 トレセン学園前!?撮影許可ないとは入れないとこばっかりやん!こんなところに店あんの!?

 

82:今日の一般人()

 ここで衝撃の告白「ちょっと理事長に電話して許可とってました」

 

83:今日の一般人()

 あ、あの電話そういうことかああああ!!!

 

84:今日の一般人()

 スタッフ一同、ドン引き

 

85:今日の一般人()

 和田さん「やだなあ一般人ですよ」大嘘つきめ!

 

86:今日の一般人()

 こんな一般人いてたまるかあ!

 

87:今日の一般人()

 これはもしかしてこのあんちゃん結構すごい人なのでは?

 

88:今日の一般人()

 けっこうどころじゃないぞ。理事長ってのは間違いなくトレセンの理事長だ。URAの幹部の一人だぞ?しかも仕事としてじゃなく個人としてつながりがあるってことだ、喫茶店という個人店ならなおさら。

 

89:今日の一般人()

 もしかしてウマ娘見れる放送ですかぁ!?

 

90:今日の一般人()

 見れるかもしれんなあ。

 

91:今日の一般人()

 何それ激熱じゃん。トレセン学園まで行こうぜここまで来たならさ

 

92:今日の一般人()

 それやったら警察に取っ捕まるどころか番組が消えることになるからやめろ

 

93:今日の一般人()

 そしてつきました和田さんの喫茶店・・・ておっしゃれー!ログハウス風?なんかアメリカっぽい。花とか植物とかがマッチしてる感ある

 

94:今日の一般人()

 ウエスタン風、かな?店名は・・・ほ、ほ・・・ホース、リンク?ウマ娘が近くにいるからあやかったのかな?

 

95:今日の一般人()

 そして中に入る一行、まず目に入ったのは、これなんだ?Uの字型の・・・

 

96:今日の一般人()

 蹄鉄だな。ウマ娘が足の保護とグリップを確保するためにシューズにつける金具だ。それにしても壁一面にあるのは壮観だなあ。

 

97:今日の一般人()

 「趣味ですか?」って丹波君wwwえ?店自体も趣味な・・・はあ?

 

98:今日の一般人()

 今この人なんつった?ウマ娘が実際に使ってたやつ?確かに細かい傷があったりするけど・・・知り合いなのかな?

 

99:今日の一般人()

 ちょっと待って俺の脳が理解を拒んでる

 

100:今日の一般人()

 んんんん?

 

101:今日の一般人()

 スタッフ兼客のウマ娘がレースに勝つたび寄付していく?

 

102:今日の一般人()

 それもトウカイテイオー、メジロマックイーン、スペシャルウィーク、フジキセキ、ヒシアマゾン、ウオッカ、ダイワスカーレット・・・どいつもこいつも一度は聞いたことのあるウマ娘じゃん!G1常連の!詳しく知らんけど!

 

103:今日の一般人()

 一同大驚愕、そしてカメラマンでさえ焦ってカメラがぶれるwww丹波君めっちゃ口あいてるww

 

104:今日の一般人()

 は?ウェイターウマ娘なん?しかも現役?しかもしかも勝負服ぅ!?

 

105:今日の一般人()

 なんじゃそれは・・・え?この店URAと提携してるの?どおりで・・・納得できるんだけどなんか納得できない

 

106:今日の一般人()

 え?今日ウマ娘くるってマジ?録画ボタン!!!!

 

107:今日の一般人()

 俺はもう録画予約をすましている

 

108:今日の一般人()

 つよい ってもうきた!?だれ?ちっこいのと・・・でかぁ!?和田さんと同じくらいおっきいウマ娘!?

 

109:今日の一般人()

 おい、ウマ娘に自信ニキ!丹波君が驚いている間に紹介しろ!

 

110:今日の一般人()

 任せろ!ちっさいほうがビコーペガサス!でかいほうはヒシアケボノ!二人ともファン感謝祭でヒーローショーしてたから覚えてるぜ!

 

111:今日の一般人()

 レースじゃないんかーいw

 

112:今日の一般人()

 って勝負服の試着と動きやすさの確認のためステージで踊るぅ?はえーやっぱそういうことしてんのや・・・なんで喫茶店にステージが???

 

113:今日の一般人()

 ビコーペガサスちゃん丹波君をキャロットマンってw確かに本物だけどww

 

114:今日の一般人()

 子供に非常にやさしい丹波君、ここでとっさに変身ポーズと名乗りが出る。ビコーペガサスちゃん大興奮。

  

115:今日の一般人()

 その後ろでヒシアケボノさん、スタッフに「ボーノ♪ボーノ♪」とご挨拶。めっちゃかわいい。でっかわいい

 

116:今日の一般人()

 猛るビコーペガサスちゃん、ヒーローショーやろうぜと言い出すがヒシアケボノさん、やんわりと注意して持ち上げて去っていった。ぴーぴー喚きながらもおとなしく運ばれていくビコーペガサスちゃん、かわいい

 

117:今日の一般人()

 ファンになりそう

 

118:今日の一般人()

 丹波君「テレビ結構出てるけど人生で一番驚いた」

 

119:今日の一般人()

 そりゃそーだ。自衛隊のレンジャー訓練回の時よりも別のベクトルで伝説回になるなこれは

 

120:今日の一般人()

 マスターさん店おまけって・・・いやそうだけど・・・ウマ娘にとってはそうなんだけど!!!ウイニングライブがメインじゃないってことも分かってるんだけど!!!

 

121:今日の一般人()

 知名度ないよなこの店、なんで?

 

122:今日の一般人()

 テレビ出たら有名になるかなっていうかこんなインパクト抜群な店忘れるほうがおかしいっていうか明日からすごいことになりそう・・・ってはぁ~~~?

 

123:今日の一般人()

 完全予約制ですか!?いや、わかるけど!こんなサービスしてたらそうなるのはわかるけど!!!キャパ数すくねえなおい!なんで宣伝した!?

 

124:今日の一般人()

 これはウマ娘見たさで出羽亀になるやつたくさんいそうだな~

 

125:今日の一般人()

 というか来店までのハードル高いな!?予約して?合格したら個人情報送って?そんで精査されてようやく成功って!?

 

126:今日の一般人()

 ディープなファンだけじゃなくてライト層にもウマ娘を知ってほしいって・・・なるほどなあ

 

127:今日の一般人()

 でもこんなことやってダイジョブなん?ウマ娘の安全は・・・?

 

128:今日の一般人()

 もともとトレセンの周囲には壁、という感じで他と区切られてるからな。敷地外とはいえトレセンのすぐ近くにこんな店あるんだから防犯はそりゃあもうすごいことになるだろ。もともとウマ娘に会いたくてトレセンに不法侵入しようとする輩は後を絶たないから警備は特別厳重だという。というか入るために検問的なところあったじゃん。駅からトレセンに向かう途中

 

129:今日の一般人()

 ああ、和田さんが2,3話してスルーされたやつか。

 

130:今日の一般人()

 ああいうのそこかしこにあるらしいからよっぽどじゃなけりゃ大丈夫だと思う。というかURAに逆らうのはウマ娘に敵対するってことだからな?どうなっても文句は言えんぞ

 

131:今日の一般人()

 蹴られでもしたらやばいしな

 

132:今日の一般人()

 まずなんかしようとしてもその身体能力で返り討ちにあうし、大丈夫なのか。

 

133:今日の一般人()

 おおおおおお!!!戻ってきた!なんかヒーローっぽいビコーペガサスちゃんとパティシエっぽい感じのヒシアケボノさん!めっちゃ似合う!

 

134:今日の一般人()

 これで走るのかぁ・・・いや凄いなウマ娘

 

135:今日の一般人()

 シューズからカツカツ音鳴ってる・・・蹄鉄も履いてんだね

 

136:今日の一般人()

 え?このままダンスと歌見せてくれるんですか!?曲名は・・・メイクデビュー?

 

137:今日の一般人()

 何時ものウイニングライブじゃ聞かん曲だな、いやでもダンス可愛いな!?

 

138:今日の一般人()

 ああそれ、専用曲だから。ウマ娘がデビュー戦で優勝した時に歌える曲。だから、G1とかG2,G3みたいな重賞とかばっかりがテレビ放送されるじゃん?聞く機会なんてレース見に行かないとないんだよねえ

 

139:今日の一般人()

 二人だから二人ともがセンターで歌ってるのか。おお!今の両手広げて左右に振るのかわいい!

 

140:今日の一般人()

 あああああ二人でピースするのいいじゃん!

 

141:今日の一般人()

 ステップ踏むたびなる蹄鉄の音いいな。

 

142:今日の一般人()

 へぇーさすがはウマ娘、というかデビュー済みウマ娘か。そこらのアイドルより様になってるじゃん

 

143:今日の一般人()

 これでプロじゃないってマジ?

 

144:今日の一般人()

 プロやぞ。アスリートの

 

145:今日の一般人()

 そうじゃないんだよなあ。

 

146:今日の一般人()

 ここで和田さん、よかったらなんか腹に入れてくださいとケーキを作るとのこと。おお!?ヒシアケボノさん手伝うって!?

 

147:今日の一般人()

 ・・・・作業早くね?つーか計量カップ使ってない?

 

148:今日の一般人()

 お菓子は計量が大事なのに目分量で完璧なスポンジが焼けてる・・・?

 

149:今日の一般人()

 二人とも作業早すぎ!!?デコレーション一瞬じゃん!?和田さん同時並行でガトーショコラとバスクチーズケーキ作ってる!?

 

150:今日の一般人()

 「そりゃ一人で調理回しますからね、早くなりますよ。特に日曜日なんてウマ娘が山と来るんですから」一人でやってんの!?

 

151:今日の一般人()

 日曜日はウマ娘専用の日で朝からたくさんのウマ娘がくるってええええ・・・・

  

152:今日の一般人()

 そりゃ趣味とか言いますわ。趣味で好きじゃないとできないでしょこんなん。というか厨房立派でやべえ

 

153:今日の一般人()

 そして完成品、めっちゃおいしそう。ニンジンクリームのショートケーキに生クリームたっぷりのガトーショコラ、焦げ目が香ばしそうなバスクチーズケーキ・・・えっコーヒーもうまそう・・・

 

154:今日の一般人()

 ビコーペガサスちゃんよだれだらっだらでかわいい。そして頬張るのもかわいい

 

155:今日の一般人()

 うわああああケーキ食いたい!

 

156:今日の一般人()

 丹波君ケーキ、めっちゃおいしそうに食べるのいいな。実際美味しいんだろうけど

 

157:今日の一般人()

 ってあああああああああああああああああああああ!!!!思い出した!

 

158:今日の一般人()

 どうした急に!?

 

159:今日の一般人()

 前にウマ娘を起用したブライダル系のCM!男役この人だ!絶対!うまく隠してあるけど一目瞭然だよ!

 

160:今日の一般人()

 はははまさかそんな・・・・ほんまや!?

 

161:今日の一般人()

 なんか既視感あると思ったらそういうことか!

 

162:今日の一般人()

 ってどこが一般人だあんた!?

 

163:今日の一般人()

 えっでもCMと印象違いすぎ・・・

 

164:今日の一般人()

 うん、CMだとめっちゃ王子様してたけど今この場だとただの気のいいあんちゃんだ。

 

165:今日の一般人()

 ヒシアケボノさんケーキ褒められたのめっちゃ嬉しそう。ほっぺぐりぐりして「ボーノ♪」って!何それ俺もうこの子のファンになる!

 

166:今日の一般人()

 そして目的を果たした二人は去り・・・めっちゃ名残惜しそうだけど門限だから仕方ないね。

 

167:今日の一般人()

 そしてサインをしてもらって満足気なビコーペガサス。店長もしれっと要求、ビコーペガサスはしたけど店に飾られると知って渋る丹波君

 

168:今日の一般人()

 うん、だって要らないもんね。この店に芸能人のサイン

 

169:今日の一般人()

 すったもんだの末勝ち取った和田さん、カウンターのクソ目立つところにサイン配置。

 

170:今日の一般人()

 いやー今日も濃かったなあ・・・もうすぐ終わりだと思うのは悲しい

 

171:今日の一般人()

 5時間くらいスペシャルしろ

 

172:今日の一般人()

 終了間際・・・?えっまだなんかあんの・・・・!?!?!?!?!?

 

173:今日の一般人()

 あら、麗しいというかカリスマ溢れるウマ娘が来たわね。だれだろ?

 

174:今日の一般人()

 お前それマジで言ってる・・・?

 

175:今日の一般人()

 知らんとまずいんか

 

176:今日の一般人()

 まずいどころか生ける伝説だぞ!?皇帝、シンボリルドルフだよ!前代未聞の無敗七冠!一度も負けたことない最強のウマ娘だ!

 

177:今日の一般人()

 ついでに今のトレセンの生徒会長だ。ええ・・・どんな関係ですか?

 

178:今日の一般人()

 和田さんのコーヒーが好きだから閉店後によく来るって・・・仲がよろしいんですね(震え声

 

179:今日の一般人()

 皇帝に震えるスタッフ一同、ちょっと悲し気なシンボリルドルフ。

 

180:今日の一般人()

 かしこまられるのは好きじゃないってそりゃそうか・・・女子高生だもんな、まだ

 

181:今日の一般人()

 ここで驚愕の真実、皇帝・・・キャロットマンを全話視聴済み!!

 

182:今日の一般人()

 しかもエピソードがポロポロ口から出てくる。すごい、記憶力やばい。

 

183:今日の一般人()

 こ、ここでやっとエンドロールか・・・!

 

184:今日の一般人()

 店の紹介だなー・・・めっちゃ完全予約制強調するやん

 

185:今日の一般人()

 当たり前だろそりゃ。しかし濃い回だった。いろいろと

 

186:今日の一般人()

 間違いなく伝説入りだな

 

187:今日の一般人()

 んー、あほが出ないことを祈る

 

188:今日の一般人()

 あほなウマチューバーとか当然の権利のごとくノーアポ突撃するからな。撮影しながら

 

189:今日の一般人()

 ほんそれー。まあ動画上げてもすぐ広告はがされるけどなー。最近の動画精査は優秀だし

 

190:今日の一般人()

 ま、それはいいとして。まさか皇帝を見られるとは思わなんだ。しかも制服の

 

191:今日の一般人()

 普通の女の子なんだなあ、ウマ娘っていうのも。どっか遠い存在だったわ

 

192:今日の一般人()

 多分、それが目的だろうしなあ。ウマ娘を近くに感じてもらいたいって

 

193:今日の一般人()

 日常だとあんまり見ないもんなウマ娘。たまにすれ違うけど仲良くなれるわけじゃないし

 

194:今日の一般人()

 次回が楽しみだー

 




 この作品のルドルフさんは最強なので無敗でトゥインクルシリーズを終えた後ドリームリーグを荒らすだけ荒らして引退してます。海外でも無双しました。なんでっていうと作者が贔屓してるからです()

 けちのつけようがない最強の皇帝でいてほしかったんです


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【店長】ホースリンクを語りつくすスレpart1【何者?】

 アンケート内から書くといったな。あれは嘘だ。すいませんが今回ちょっと短いです


1:名無しの客

 えー本スレであるURA総合スレとウマ娘総合スレの両方より「流石にホースリンクの話題多すぎ」と怒られたためこの度独立することになりました(半ギレ

 

2:名無しの客

 なんでキレてるんだ

 

3:名無しの客

 うるせえ!別にスレ違いじゃないダルルォ!?

 

4:名無しの客

 マスターは人間だゾ

 

5:名無しの客

 あ、はい

 

6:名無しの客

 というか独立スレなかったんか。蹄鉄トレーナーとかスピカトレーナーとか東条トレーナー、果てはカノープストレーナーのスレもあるのに

 

7:名無しの客

 そういえば、というか原因は・・・

 

8:名無しの客

 この前のテレビ番組ですねえ!(憤慨

 

9:名無しの客

 なぜ怒ってるのか俺にはわからんね(ペチペチ

 

10:名無しの客

 予約倍率が跳ね上がったからです。あ、でも3日後行けるようになったお(勝者の余裕

 

11:名無しの客

 は?ぶっ殺すぞ(同じ日落ちた

 

12:名無しの客

 そんなことよりもこの前のテレビはやばかったなあ

 

13:名無しの客

 あの喫茶店が全国デビューですよ、ほろりとしました。開店直後から通ってるので・・・もう予約制になっちゃって行けてないんだけど

 

14:名無しの客

 トレセン周辺の住人か。そういう人多そうね

 

15:名無しの客

 ウマ娘であれば日曜日自由に行けるっていうのは初耳だった

 

16:名無しの客

 いいなーウマ娘っていうのは本末転倒か。元はウマ娘専用っていう感じの店だったらしいし。開店当初から通ってたって人そこらへんどう?

 

17:名無しの客

 多分初見の人はだいぶ入り辛いんじゃないかなあ?中にいるのって右を見ても左を見てもウマ娘ばっかりだし。ウマ娘と相席しなきゃいかんし

 

18:名無しの客

 ステータスが知恵の泉、ライオンハート、超魔術、慈母神、魔性の男くらいないと男性客入れなさそう

 

19:名無しの客

 何のステータスか知らんが度胸はいるぞ。俺はいっそ警察に捕まってもいいくらいの気持ちで入ったからな

 

20:名無しの客

 その度胸は別のところに生かせ

 

21:名無しの客

 スタントマンとして生かしてるぞ。この前も特撮でウマ娘に思いっきり蹴られて吹っ飛ばされる役をやってきた

 

22:名無しの客

 ミンチになってそう。つーかまた超人かよ

 

23:名無しの客

 それはそうとして記念すべきスレ独立を祝してなんかいい話ない?

 

24:名無しの客

 じゃあ!私が話してもいいですか!?

 

25:名無しの客

 おっ!ええよええよー。スレに常駐するウマ娘廃ファンに温かみのある話をしてくれ

 

26:特別な7日間

 やった!えっと、まず私は地方からトレセン学園に転入してきたんです!

 

27:名無しの客

 まさかの中央トレセンウマ娘ですか!?こんなところいちゃいけないから帰りなさい!

 

28:名無しの客

 ひでえいいようで草。こんなところって・・・いやそうだけど

 

29:名無しの客

 悪影響でちゃう!?

 

30:特別な七日間

 そんなぁ・・・でもでも、マスターさんのこと、もっともっと皆さんに知ってほしいんです!

 

31:名無しの客

 (どうしよう、めっちゃいい子っぽい)

 

32:名無しの客

 (ウマ娘が掲示板にいるなんて・・・)

 

33:デジデジデジタン

 (話を最後まで聞いた時点で昇天しそう・・・耐えられるかな)

 

34:特別な7日間

 続けますね!私、地方から初めてこの街に来た時、学園に行く前に生でレースを見たくてレース場に行ったんです!そこで見たレースがほんとにすごくて!それとは別に、トモを撫でまわされたりもしたんですけど

 

35:名無しの客

 ・・・まって?・・・まって!?トモって!!!

 

36:名無しの客

 太ももですねえ!!誰だそんなことをしたうらや・・・じゃなくて不届き者は!?許さんぞ!?

 

37:名無しの客

 ↑お前もよっぽどやぞ。それは大変だったね。無事だったのかい?

 

38:特別な7日間

 はい!というかその不審者さんが今のトレーナーさんなんです!でも、当時の私はそんなこと知らなかったので・・・その・・・とっさに蹴っちゃって・・・しまった!って思って今のトレーナーさんの方を見ると同い年くらいの男性が呆れたように話してたんです。会話の内容は長いんでまとめますけど「お前が悪い」という感じで。その男性っていうのがホースリンクのマスターさんだったんです!

 

39:名無しの客

 情報が多すぎぃ!つーかそんな不審人物がトレーナーとか中央もどうかしてるぞ!

 

40:名無しの客

 なんという濃い出会いだ・・・つーか店長も触る前に止めろよ

 

41:名無しの客

 というかあなたももうちょっと自分の事を大事にしなさい?だめよそんな人トレーナーに選んじゃ

 

42:特別な7日間

 あえっ!?でもでもでも、トレーナーさんもいい人だったんですよ!?ちゃんと私の事考えてくれますし、ちょっと・・・変な人なだけで・・・。じゃなくて!その、問題は・・・レースが終わった後でして・・・

 

43:名無しの客

 だめだ。完全にダメ亭主に依存する新妻状態だ。早く何とかしないと

 

44:名無しの客

 レースが終わった・・・?もしかしてウイニングライブまで見たのか!?ってことは門限・・・・

 

45:特別な7日間

 えへへ・・・わかっちゃいました?そうなんです。私、転入日前だっていうのに門限の事をすっかり忘れてて・・・入れなくなっちゃったんです。玄関でずっと声を上げてたんですけど誰もドアを開けてくれなくて・・・そしたらそしたらさっきレース場であった男の人が校舎から出てきたんです。

 

46:名無しの客

 トレセンの門限は厳しいって聞くなあ

 

47:名無しの客

 おおっとなぜ店長がそこに?

 

48:名無しの客

 多分不審人物トレーナーを監視する役目だったんでしょ

 

49:名無しの客

 店長への圧倒的信頼感

 

50:特別な7日間

 あはは・・・寮に入れないと今晩寝る場所もなかった私はほとんど泣きながらドアを叩いてたんです。そしたらマスターさんがどうしたのかを尋ねてきて、事情を説明すると「しょうがないな、次は多分ないぞ」といって電話をかけてくれたんです。そしたら寮長さんが出てきてくれて、怒られちゃいましたけど寮に入れたんです!

 

51:名無しの客

 さす店長

 

52:名無しの客

 さらっとウマ娘の個人連絡先知ってるのかよ店長

 

53:名無しの客

 羨ましいぞ店長

 

54:特別な7日間

 店長さんなら私も電話番号教えてますよ?ええと、それから何年か経つんですけど。店長さんってすっごく優しいじゃないですか。お店にもたくさん行かせてもらってたんです。お話しする機会もたくさんありました。相談にも嫌な顔一つせず親身になってくれたんです。だから、お礼になってるかはわからないんですけど・・・ウェイターのお仕事はできるだけたくさん入れるようにしてるんです!

 

55:名無しの客

 んんんんんんんん????

 

56:名無しの客

 ウェイター?ってことは現役!?

 

57:名無しの客

 あー、店長さん聞き上手だもんねえ。話上手だし、わかるわかる

 

58:特別な7日間

 はい!あとあと、マスターさんって頼りになるからみんなして「お父さんかお兄ちゃんみたい」って言われてるんですよね!実は私も、お父ちゃんがいたらこんな風だったのかな?って思ったり・・・なんて!うーん、マスターさんの話してたら会いたくなっちゃいました!休憩終えてもう一回走って会いに行くことにします!よーし!けっぱるべー!

 

59:名無しの客

 

 

60:名無しの客

 

 

61:名無しの客

 

 

62:名無しの客

 嵐のようだった

 

63:名無しの客

 みんな、だれか分かった?

 

64:名無しの客

 そりゃまあ?

 

65:名無しの客

 でも口には出さない。それがマナーだ

 

66:名無しの客

 せやで

 

67:名無しの客

 もしかして現役ウマ娘いっぱいいたりしてー、なーんて

 

68:素晴らしい才能

 あっははー、いたりしてー

 

69:天空の鷹

 いマス!実はウマ娘も掲示板はよく見るデスよ!

 

70:待って動く!

 日本語、難しいデース!ベンキョーになるデース!あ、皆さん、ハウディ!

 

71:逃げ切り☆

 ファンの人たちのこと、知りたいなって思ってるの!

 

72:稲妻バリバリ

 現役じゃないけどなー見とったりするでー

 

73:ゴルシちゃん☆

 見てて飽きねーからなー。トレーナーを頭陀袋に突っ込んだ時とかに見てるでゴルシ。

 

74:頭は大きくない

 意外と参考にすべきことが多くあるから、詰まった時とかに見るな。でも私の頭は大きくないぞ!

 

75:アゲ☆アゲ

 盛り上がってるときとかマジ最高!ウェーイってアガってるの見るとアタシもテンション鬼ヤバになる!みんなサイコー!

 

76:驚愕の日曜日

 みんなが私たちのレースで楽しんでくれるのがわかってとってもマーベラス!だから見てるよー!

 

77:名無しの客

 

 

78:名無しの客

 

 

79:名無しの客

 

 

80:名無しの客

 

 

81:名無しの客

 予想以上にたくさんいるううううううううう!?

 

82:名無しの客

 心臓に悪い。止まったわ

 

83:怒涛の羊

 だ、大丈夫ですか~?ええっと、救急車とか~、呼んだほうが・・・

 

84:名無しの客

 ごめんなさい勘違いでした!今も元気に動いております!

 

85:怒涛の羊

 よかったです~。あの、ご無理なさらずに・・・私の事は気にしないでください~走ることくらいしかできないので~

 

86:名無しの客

 (めっちゃいて混乱してる)

 

87:名無しの客

 (何が彼女たちをこの何の変哲もない掲示板に引き寄せたのか)

 

88:デジデジデジタン

 解説しよう!

 

89:名無しの客

 なんだって!?知っているのか雷電!?

 

90:デジデジデジタン

 ヒント=スレタイをよく見るべし

 

91:名無しの客

 ・・・・もしかして店長の初独立スレだから?

 

92:青い空

 あっはは~多分それかな~?店長さんにはみんな大なり小なりお世話になってるから・・・気になるんだよね~

 

93:名無しの客

 いやいやいや・・・人気すぎでしょ

 

94:名無しの客

 うんうん、喫茶店の一店長やぞ。いくらURAの傘下にいるとはいえ。大切な現役ウマ娘を一時的に任せてもらってるとはいえ

 

95:デジデジデジタン

 ほら、よく考えてくださいよ。親身に相談に乗ってくれて、美味しいご飯作ってくれて、時にはトレーナーさんとの仲立ちをしてくれて、困ったときに連絡すればすぐに駆け付けてくれる。こういったらなんですけどトレーナーさんよりも付き合いの長い子だっているんです。そんな人がなんて言われてるか、気になりませんか?

 

96:名無しの客

 ・・・たしかに?

 

97:名無しの客

 でも喫茶店の一店長にできる相談なんてたかが知れて・・・

 

98:デジデジデジタン

 は?

 

99:名無しの客

 ヒェッ

 

100:デジデジデジタン

 わかってないですねー。店長さんは第3者なんです。トレーナーとウマ娘ちゃんの外側からモノ申せる貴重な立場にいるんですよ。同じトレーナー同士ではライバルですから言っても相手にされないこともありますが店長さんはライバルでも何でもない完全にフラットな立場なんです。

 

101:名無しの客

 ううむ、それが何か?

 

102:デジデジデジタン

 ですから、トレーナーの指示が合わないウマ娘ちゃんとか、そもそも相性が良くない場合、トレーナーとウマ娘ちゃんが共倒れになるんです。例えばあなた方がトレーナーだったとして同じトレーナーに「お前らこのままだと両方、あるいはどっちかがつぶれるぞ」といわれても何か勘ぐって受けないでしょう?もしくは余計意固地になるとか

 

103:名無しの客

 うーん、まあ確かに

 

104:デジデジデジタン

 要は熱くなってる所に冷や水を差せるのが店長さんなのです。もちろん店長さんはトレーナーではありませんから絶対聞く必要はないですけどトレーナーさんとウマ娘ちゃんの関係性はとってもとっても大事なんです。ロマンチックですがウマ娘ちゃんとトレーナーさんの出会いは運命なので、両方ともつぶれてなんて欲しくないんですよ

 

105:トレトレーナー

 言っちゃ悪いんだけど俺らトレーナーに直接反対意見ってなかなかできないのよね。気があまり強くないウマ娘ならなおさらに。だって絶対的に俺らのほうが立場が上で俺らがいないとレース出れないから。考えたくないけどそれをいいことに悪いことするやつもいるんだ。死ぬほど悔しいんだけど

 

106:名無しの客

 でたわね

 

107:名無しの客

 久しぶりだな歌の先生

 

108:名無しの客

 担当は決まったか歌の先生

 

109:デジデジデジタン

 あ、担当成立おめでとうございます先生!

 

110:名無しの客

 え?担当決まったの?

 

111:名無しの客

 まじで?いや、おめでとう!マジで!

 

112:名無しの客

 よかったやん!お前の担当がレースに出る日を楽しみにしとるわ!

 

113:トレトレーナー

 おう!二人三脚で頑張るぜ!で、話し戻すとそういう弱い立場のウマ娘が相談できる人ってあんま多くない。その数少ない一人が店長ってワケ。しかも理事長と直接パイプを持ってるから抑止力にもなってる。困ってる子からすればまさに救世主、悪いトレーナーからしたら死神っていう役割になってるのが店長だ。

 

114:名無しの客

 なるほどねー店長って結構すごいんやな

 

115:名無しの客

 なあ、トレセンにカウンセラーとかいないの?

 

116:ヨームイン

 いるよ?というか事態が深刻なら店長は本職のほうに回すからね。でも保健室に行って自分から切り出すより店長のとこに行ってご飯ご馳走になりながら「なんか元気ないけどどうかしたの?」って聞かれるのとどっちがハードルが低いかっていう話よ。様子がおかしければ店長は普通に気づくから

 

117:素晴らしい才能

 そうだねー。マスターさんそういうの鋭いから。相談しやすいし、よく話しに行くよ

 

118:名無しの客

 そっか、雰囲気か。納得

 

119:名無しの客

 ところでせっかくウマ娘の皆さんが見てるとわかったので聞きたいことが一つ。店長の料理って何が一番うまいの?

 

120:デジデジデジタン

 ・・・・・

 

121:待って動く

 ト、トッテモ・・・難しい・・・デース・・・

 

122:稲妻バリバリ

 あ、アカン!戦争になるで!その話題トレセン学園じゃ禁句なんや!

 

123:名無しの客

 え、なんで?

 

124:走った葦毛

 それはニンジンハンバーグだ、うん

 

125:稲妻バリバリ

 ああああ!何いっとんねん!ウチもう知らんで!?

 

126:走った葦毛

 ・・・?何を怒っているんだ?

 

127:誇りにかけて

 メジロに来ましたわ!マスターさんの一番の料理はスイーツですの!間違いありませんわ!

 

128:無敵伝説

 そーだそーだー!テンチョーのスイーツは美味しいんだぞー!はちみーだって最高だもん!

 

129:影なんて知るか

 ニンジンハンバーグだろう。あのあふれ出る肉汁・・・最高だ

 

130:天空の鷹

 デスデス!マスターさんのニンジンハンバーグが№1!デス!

 

131:無敵伝説

 なにをー!!!

 

132:天空の鷹

 むむむ!!!

 

133:稲妻バリバリ

 ああ、アカン。野良レース始まってもうた。しょーもない理由で

 

134:名無しの客

 えええ・・・・

 

135:名無しの客

 きみら血の気多すぎない?

 

136:名無しの客

 結局どれなのよ

 

137:名無しの客

 学習しろ馬鹿野郎

 

138:稲妻バリバリ

 しゃーない、ウチも血がたぎるから行ってくるわ。荒らしてすまんかったなー

 

139:名無しの客

 ・・・まとめサイトに目を付けられそう

 

140:名無しの客

 もう遅いぞ

 

141:名無しの客

 そっか・・・でもレース・・・みたいなあ!!!

 

142:名無しの客

 たしかに

 

143:名無しの客

 店長さんのスレ、次立てるべきかこれ?

 

144:名無しの客

 間違いなく荒れるよなあ・・・ちょっと置くか

 

145:お忍び

 彼女たちが迷惑をかけたようで済まない・・・でも、私たちウマ娘は君たち人間ともっと仲良くしたいと思っていることを覚えておいてほしい。だから私たちが見たり、掲示板に書き込んでも気にせず接してほしいんだ。不躾だがよろしくお願いしたい。・・・余談だが、あの人の一番の得意料理はニンジンアイスだ。今も、昔も。

  

 




 スぺちゃんってさあ・・・かわいいよね

 上記は作者の最近のブームなので気にせずに。ウマ娘が掲示板を利用する回をやってみたかったんですけどできてるかなあ?

 よく考えれば10代の女の子なんだしネットとかよく利用するよねって思ったんですけど・・・掲示板は行き過ぎたかな?皆さんのイメージと乖離してないといいんですが・・・

 次回も気長にお待ちください


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マスターさん、皇帝との休日

 最近なんかたんねえなあ・・・と感じ、作者が考えたのは
 「ルナちゃんが出てないんだ!」ということでした
 ルナちゃんメイン回が必要だと思ったのです。


 今日も今日とて労働に励む・・・わけではなく、休みである。なんで休みかといわれれば労働基準法の何とやらで有休を5日間1年のどこかでとらないと理事長が御上に叱られてしまうので、という何ともしょっぱい理由である。別に休みは嫌いじゃないよ?でもいくらギリギリだからってゴールデンウイークばりに5日間休みにしなくてもいいじゃない。暇だよ、暇。しかもカウンセラーの仕事のほうも「絶対!休養!」って言われたからなんもできんじゃん。マジでどうしようかなあ・・・キャンプでも行くか・・・?そうだな、それがいい。ついでに配信もしようじゃないの。

 

 「つーわけで出かけようと思うんだけどさ、ルナ。ついてくる?」

 

 「いく」

 

 どういうわけか俺の店の2階にあるルナの部屋で昨日泊まった我らがトレセン学園会長シンボリルドルフに聞いてみたところ行くとのことですので二人でキャンプに行こうと思います。ちなみになんでルナが俺の店というか俺の家にいるかというともうすでに余裕で卒業できる&地方へのスカウト遠征の振り替え休日が彼女に与えられているからです。いやー、久しぶりにこの頭が働いてないルナを見るな。相当疲れていたと見える。

 

 普段なら「うん、ご一緒させてもらおう」みたいな感じだろうけど今は「いく」ですよ。かわいいねー俺の妹分は。撫でてやろう、よしよし。ルナの耳が俺の手の中でピクピクと嬉しそうに動き、ルナも撫でられるのは好きらしいので自分から俺の手に頭を摺り寄せてくる。じゃあ準備しようかなあ!気合い入れて美味しいバーベキューとかキャンプ料理とかしよう!というわけで・・・荷物を車に乗せる・・・前に一服しよ。

 

 「ルナ~ブラックでいい?」

 

 「兄さんのブレンドが飲みたい」

 

 「はいよ」

 

 返ってくる答えは一緒だけど、このやり取りに愛着を覚えてしまっている俺はいつもと同じようにルナに聞いて、ルナもいつもと同じように俺に返してくれる。何でもないこのやり取りが、俺の日常の象徴なのだ。ゴリゴリと豆を挽きながら、誰に言うでもなく俺はそう思うのだった。

 

 コーヒーを飲んでようやく頭の回転がかかってきたルナに手伝ってもらって、俺の仕入れ用のでかい車、まあハイエースなんだけど・・・に次々と荷物を入れていく。ルナもさすがはウマ娘、俺がだいぶ力をこめないと持ち上がらない木炭の段ボールとかBBQ用の台とかそういうものをひょいっと軽々持ち上げてぽいぽいと言わんばかりに車に入れていく。ぐぬぬ・・・なんか兄として男として負けた気分・・・勝ち目なんてないんだけどさあ・・・なんかこう、ね?あるじゃんそういうくだらないプライドみたいなもの・・・。

 

 「さて、着替えよし、テントよし、食材よし、配信機材よし、大型バッテリーよし。ルナー、そっちの準備は大丈夫ー?急に決まったから着替えとかさ。何なら待ってるから寮に取りに行ってもいいぞ」

 

 「大丈夫だ。着替えならこっちにもあるし、私もそんなに荷物の多いほうではないからな。それに・・・兄さんと久々に一緒にキャンプに行くんだ、少し掛かっているのかも、な」

 

 遠征で使っていたバックに、おそらく着替えやらを詰め込んだのだろう。特に大荷物というわけではない・・・ただ一つ、愛用の蹄鉄シューズのケースを除いては、だけど。走るつもりなのか。まあウマ娘はみんな常にランナーズハイみたいなもんだからなあ。特に昨今のキャンプ場にはウマ娘用のコースとか、シャワーだのが用意されているところも多い。坂路に近い場所もあるから、夏の合宿の時、海に行けなかったら山に行くというチームもあるくらいだ。ちなみに坂路の申し子という二つ名でおなじみミホノブルボンは毎年きっつい坂路があるキャンプ場で合宿してるらしい。

 

 車に二人そろって乗り込み、俺はウェブカメラを車載用の位置に調整して、ルナの膝にPCを置く。ルナは何をしようが車酔いとかそういうものに無縁なタイプなので大丈夫。顎に手を当てて頷いたルナはPC用の眼鏡をかけてPCを開いてカタカタと・・・なんでパスワード知ってんの?まあいいや、配信の準備をしている。そしてウェブカメラが起動して配信が始まった。なんで指示する前にできるのか、どうしてやり方を知ってるのか、気になるんだけど大概の事はあっさりこなすルナの事だ。きっと説明書でも読んだんだろう・・・たぶん。

 

 「はいはーい、ホースリンクの店長だよー。配信では久しぶりだね。この前あげた「アグネスデジタル、ウマ娘を語る」は面白かったー?」

 

 

 ・お久店長!今度行くからよろしくぅ!

 ・ん?車載配信?どこ行くん?

 ・同志デジタルは相変わらずやばいと思いました

 ・言ってることトレーナー目線だもんな

 ・でもまだデビュー前のウマ娘の事いろいろ知れてよかったわ

 

 「お、ってことは休業明けに来てくれるのか?腕を磨いて待ってるよ。さてさて、どこに行くかなんだけど・・・東京を飛び出してキャンプに行こうと思う!久しぶりに店にいなくていい休みをもらったからねー。というわけで同行者を紹介するぞ。はいこちら!」

 

 「ん?私か。コホン・・・シンボリルドルフだ。今は引退しているがこれでもレースでそれなりに活躍したんだ。それと今はトレセン学園で生徒会長をしている。こういったことは初めてだから気恥ずかしいが緊褌一番、頑張ってやってみようと思う」

 

 「ルドルフ、固い固い、もうちょっと砕けてもいいからさ。そんな生徒会の挨拶みたいなもんじゃなくて・・・」

 

 「難しいな・・・こんなことを兄さんは毎回やってるのか?さすがは、兄さんだ」

 

 「むしろ俺は大会のあいさつとかのほうが難しいと思うんだけど・・・」

 

 「いや、あらかじめ原稿を作って覚えればいいんだから難しくないと思うのだが・・・その場で物事を考えて臨機応変に話すのはすごいと思うんだ」

 

 「難しく考えすぎだわ、この頭がかたいのか?ん?」

 

 「兄さん、赤信号とはいえハンドルを離して頭をぐりぐりしないでほしい・・・」

 

 

 ・えええええええええええええええええええええええええ!?

 ・存じております(震え声)

 ・こここ、皇帝が!皇帝の声が聞こえた!?

 ・それなりというレベルじゃなかったんですけど・・・生ける伝説なんですけど・・・!?

 ・とんでもない配信ですね・・・店長ちゃんと配信残せるようにした?

 

 「あー、どうだっけ?ルドルフ、設定のとこのタイムシフトオンになってる?」

 

 「なってない、かな」

 

 「じゃあ残らんわ。すまんな」

 

 俺がルナにそう尋ねると設定画面を見たルナが確認して返事してくれた。俺これいつも忘れるんだよねー・・・別に俺の日常というかそういうの見ても面白くないと思うからオンにしなくてもいいと思うんだけど。配信の途中でオンにできないのがめんどくさいわ。まあ今日の配信は残さなくてもいいでしょー・・・おっとこの道を左っと。

 

 ・なんでええええええ!?

 ・うわああああ!!!貴重な皇帝のオフショットがああああ!!!

 ・いや、まだ手はある!!!アナログだ!画面録画と録音機をスピーカーの前へ!

 ・そうか!その手があったか!

 ・店長はどうして毎度毎度配信を残してくれないんだ!!

 

 そんなこんなでサクッっとキャンプ場についた俺たちは意外と楽しそうに視聴者の質問に答えているルナを置いてキャンプの受付をしてから車で場内に入り、ちょうどいいところを探す。寝るのはルナが車の中、俺がテントなのでテントを立てやすいちょうどいい場所を探してそこに車を止めて設営に入る。でも俺もそれなりになれたもの、一人用のテントならばすぐに設営はできるわけで。そんでもう一つ食事をとるようの椅子とか机とを入れるためのでっかい吊り下げ式のテントをルナと一緒に設営して荷物を放り込み、準備完了!さーてなにつくるかなあ!

 

 

 ・いいなーキャンプ、楽しそう!

 ・あれ?シンボリルドルフどこいった?

 ・設営終わってから見てないような?

 ・テンチョー!どうしてボクを誘ってくれなかったのー!?カイチョーずるいよー!

 ・落ち着いてくださいまし。それに私たちは休日ではありませんわ

 

 「あールドルフ?あいつなら着替えに行ったよ。ちょっと走るらしいからな。あとテイオー、お前今日授業だろ、マックイーンも。放課が終わったらきちんと授業受けろよ」

 

 なんか携帯が騒がしいから見てみたらどうやら配信を見つけてしまったらしいウマ娘たちから連絡が来てた。ついでに見覚えのあるアカウントからのコメントに俺はそう返して車から食材をぎっちり詰めたクーラーボックスを取り出す。そんで調理台、焚火台、BBQコンロを組み立てる。まだ日は高いが料理は基本手間暇かけるほどうまくなるので昼食と夕食の調理を始めることにしよう。

 

 

 ・あええええ!?トウカイテイオーとメジロマックイーン見てんの!?

 ・そうだよー!ボクが無敵のトウカイテイオー様だー!

 ・もう、調子に乗って後で後悔しても知りませんことよ?メジロマックイーンですわ、お見知りおきを。

 ・もしかしてほかのウマ娘もいたりする?

 ・あと多分見てるのはー・・・ライスとブルボンとー、カノープス、スピカ、あとグラスとエルも見てるんじゃないかなー?

 ・そうですわね、多分トレーナーさんの中にも見てる方はいらっしゃるのではないでしょうか?

 ・ウマ娘はともかく、トレーナーは仕事しろ

 

 「ホントだよ。書類仕事する時間だろ今って・・・」

 

 「すまない、待たせた。ん?どうしたんだ兄さん?」

 

 「いや、テイオーが抗議をしてきてな・・・なんで誘ってくれないのー、だと」

 

 「ふふ、まったく・・・後で機嫌を取ってやらねばな」

 

 俺はそういえばと思って調理の準備をする手を止める。あのエキシビジョンマッチを終えてから俺はルナが走る姿を見ていない。そう思うとせっかく走るのだから眺めていたいという気持ちが強くなってきたので聞いてみることにしよう。2,3時間くらいなら昼は軽くして夜に楽しく料理すればいいんじゃないかなあ。まあ俺がルナが走ってる姿を見るのが好きなんだけど。

 

 「なあルドルフ、走りに行くならついて行っていいか?久しぶりにお前が走ってるのを見たいんだけどさ」

 

 「もちろん、兄さんが見てくれるなら私も嬉しい」

 

 

 ・マジで!?皇帝の走りを間近で見れるの!?

 ・レースでもないのに・・・!!!最高じゃん!

 ・録画!録画ですわ!貴重な研究資料ですのよ!?

 ・わわっ落ち着いてよー!?トレーナーに言ってやってもらお?

 ・ウマ娘の皆さんざわめいてるの草

 ・皇帝の走りを録画できるんなら誰だってそーなる俺も今画面録画を開始した

 

 そんな感じでこじんまりとしてはいるが自然に囲まれていてロケーションはばっちりのキャンプ場のコースへ移動した俺たち、準備運動を始めるルナ。そしてそれを終えてトントンとはねてからレースのスタートような姿勢になって一拍のための後、ドン!と走り出した。まるでレースのスタートのようであるがルナにとっては体を温めるウォーミングアップだろう。それにしても俺のような人間の何倍も速いんだけど。

 

 一周1500mほどのコースをあっという間に走り切って俺の前を通過したルナがどんどんと加速していく。一筋の流星のように、躍動感がある走りはフォームのブレなさもあってかある種の美しさを備えているようだ。風がルナの前を避けるイメージすら沸き起こる。一定の音で加速していく蹄鉄が地面をたたく音が心地いい。

 

 ・はっや!なにウマ娘って全員こうなの!?

 ・これカイチョーまだ余裕で流してる感じかなー?

 ・ええ、レースならもっと速いですわ。フォームもお見事ですわね・・・

 ・えーっと・・・というかどこまで走るの・・・?

 ・たぶんカイチョーならこのペースで30分くらい走ってられると思うよーあっ予鈴!

 ・トレーナーさんにお願いできましたしこれで失礼いたしますわ 

 

 そうして何周もコースを走ってきたルナがようやく俺の前に戻って止まる。少し汗ばんでいるがスタミナ的にも全くこたえていないようだ。本当に軽い運動程度のつもりだったんだろうな。実に気持ちよさそうだ。レースが好きだけど引退してからレースに出る機会はめっきり減っているからな、フラストレーション溜まってるのかもしれないなあ。好きなだけ走れて気持ちよさそうだ。

 

 「ふう、ここのコースは気持ちいいな」

 

 「お疲れさん、相変わらず奇麗な走りだな。久しぶり見れて満足したよ」

 

 「・・・ほんとか?本気で走ったわけではないのだが・・・・」

 

 「本気で走ったら俺じゃケアできないから遠慮してくれ。怪我でもされたら俺は首を吊るぞ」

 

 「・・・やめる、やめるからそんなこと言わないでくれ」

 

 ・トーンが本気で草

 ・皇帝を傷つけてはいけない

 ・店長の声がマジすぎる

 ・俺が代わりに吊るから店長はシンボリルドルフと仲良くしてもろて・・・

 ・命を大事しろ

 ・引退した皇帝の走りが見れるなんて今日はいい日だあ

 

 そんな感じでキャンプ場に戻って、俺は冷蔵庫の片隅に眠っていたスペアリブを塊のまま焼き上げ、ルドルフと分け合って食べるのだった。美味しそうにご飯を食べる姿は、今も昔も変わらないな。俺は頬袋ができているルナを見ながら、こっそりとほほ笑むのだった。

 

 

 

 ・スペアリブでっか。めっちゃおいしそう

 ・シンボリルドルフって何しても美人なんだな

 ・あーテンチョー!それなに!?いいなーーー!!!

 ・美味しそうですわね・・・

 ・はわわわ・・・会長さん麗しいですぅぅ・・・ひょええええ

 ・姿が見えないと思ったら・・・マスターくぅん、私にもお弁当を用意してくれたまえよ

 ・肉・・・じゅるり

 ・ちょ、あんたスマホによだれかかってるで!?

 




 ちょっと急いで書いたんでクオリティ低め。ちょっと最近モチベ下がり気味なので続きは気長にお待ちください


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焼きおにぎり、ゴルシ焼きそばセット

 ゴルシが再現できないよ・・・というわけでキャラ崩壊してると思います。ゆるして


 今日も今日とて営業日~、満員御礼、完売万歳。結局のところ配信とかそういうのって宣伝にはなっても直接ファンに会えるわけじゃないからホースリンクのメインはやっぱり接客!料理!ファンサ!この3本柱ですわ。

 

 「スぺ、ウオッカ、スカーレット。今日はお疲れ様~。意外と予約が早い時間の人ばっかりだったから午前中で終わっちゃったな」

 

 「はい!楽しかったです!」

 

 「おう!すっげえかっけえバイクで来た人いたよな!でもそれにサインするのはちょっとためらっちまったぜ・・・」

 

 「何言ってんのよ。あんた最終的におだてられて書いちゃってたじゃない」

 

 「いいじゃねーかやってくれって言ったのあっちなんだから。ウオッカ号だぜ?排気量爆上げにするってよ」

 

 「まあ趣味は人それぞれだし・・・私が言うことじゃなかったわね」

 

 本日の主役というか担当、チームスピカよりおなじみスペシャルウィーク。そしてダイワスカーレットにウオッカの組み合わせである。ちなみに今日は男性客が多かった。いつもなら半々くらいなのにね。なんでだろうね、フシギダネ。まあそこらへんは事務員さんの裁量だし俺が関知するところじゃないんだけどね。うん、めっちゃどうでもいい。

 

 俺は3人に本日のご褒美であるプリンアラモードを作っているわけである。この間のキャンプは楽しかったなあ。あの後ルナが気を利かしてくれて一曲歌って踊ってくれたのだ。ウイニングライブではないがそりゃあもう大盛り上がりだった。

まあ同じキャンプ場にいた人がなんだなんだと集まってしまったりしたが閑散期だったのでそこまで大きな問題にもならなかったし弁えた人ばっかりだったのですぐに解散してくれたし。

 

 3人にプリンアラモードを出してやって皿を洗っていると荒々しく店の扉が開いた。っていうか蹴破られた。ギリギリ壊れてはないけどこんなことをするやつなんて俺の想像する限り一人しか思いつかないんだが。

 

 「御用改めの時間だオラァ!テイオー!マックイーン!やっておしま~~い!!」

 

 「アラホラサッサー!テンチョー覚悟!」

 

 「なんなんですの!?なんなんですの!?」

 

 「えっと、天丼?ってやつ、かしら?」

 

 「・・・え?」

 

 いきなりそう叫んだ長身、葦毛、プロポーショングンバツのウマ娘がそう叫ぶとどっかで見覚えのあるマスクとサングラスで顔を隠した3人が俺をいきなり担ぎあげ、頭陀袋に押し込んだ。突然の事で抵抗することすら忘れた俺が頭いっぱいに疑問符を浮かべながら押し込まれた頭陀袋の中で体勢を整える。えーっと、俺はなんでこんなことになってるんですかね?というか若干2名ほど完全に流されて協力してたよね?

 

 「えっえっ?ゴールドシップさん!?なしてこんなことを!?」

 

 「それにテイオーとマックイーンまで!?知らねーぞマスターにこんなことして出禁になっても!?」

 

 「ちょちょちょっとマスターさんはトレーナーさんと違って普通の人間なんだから怪我させたりしたら問題になるわよ!?」

 

 「うるせーっ!出禁が怖くて拉致ができるか!行くぞオラァ!」

 

 「無茶苦茶言ってますーっ!?」

 

 「もう出禁だからってわざわざ拉致なんてしなくてもいいって言いましたのに・・・」

 

 「ごめんねテンチョー、でもはちみー半年分には逆らえなかったよ・・・」

 

 「私は普通に用事があるのとスぺちゃんを迎えに来ただけなのに・・・」

 

 「スズカ先輩は相変わらずですね・・・」

 

 「いいからお前らもついてこい!ダートに埋めんぞ!」

 

 外から聞こえている話を聞いて考えるに、元凶は俺の店の中で爆竹を1000発鳴らしたことにより出禁になっているトレセン学園3大奇人の一人のゴールドシップだろう(残り二人は蹄鉄とMrモルモット)。そして正体を隠す気ゼロのテイオーとマックイーンは買収され、走ること以外興味が薄いサイレンススズカという最近までアメリカにいたウマ娘は流されて協力といった形だろうか?

 

 「ほらスぺ、ウオッカ、スカーレット。落としたくねーからそっち掴めー。じゃねーと頭陀袋引きずっていくぞ」

 

 「掴みます掴みます!だからマスターさんを大事にしてください!」

 

 「うっわー、何の恨みがマスターにあるんだよ」

 

 「これ選択肢あるようでないやつじゃない」

 

 「ゴルシちゃんを出禁にするのが悪いでゴルシ☆」

 

 「流石にあれはあなたが悪いですわ・・・」

 

 「うう、ごめんねテンチョー・・・やっぱりはちみーよりテンチョーのほうが大事だったよ・・・」

 

 「もう後悔しても遅いぜ☆」

 

 そういうなら今すぐに袋から出していただきたい。

 

 「あ、袋から出すのは目的地に着いたあとでなー。マックイーン、ガスの元栓と火の元確認、あと冷蔵庫に入れるべきもんあったら入れておいてくれ。デジタルー」

 

 なんで俺の心読んでるんだこのウマ娘は。

 

 「はいなんでしょう」

 

 「どうしているんですの・・・?というかどこから出てきましたの・・・?」

 

 「全部終わったらカギ閉めといてくれよなー」

 

 「わかりましたー」

 

 デジタル、冷蔵庫の右に入ってるケーキ食べていいぞ。あと3段目の戸棚にドライフルーツ作ってあるから持って帰って寮のみんなに配ってあげるといい。そんで悪いんだけど生徒会あたりにスピカと一緒に行動するって言っといてくれ

 

 「わっかりましたあ!!ありがとうございます!!これで3週間は頑張れますよ!」

 

 「なんの電波を受信してらっしゃいますの・・・?」

 

 至れり尽くせりなアフターフォローが終わったらしく担ぎ上げられた俺は「えっさ、ほいさ」という女の子らしからぬ掛け声を聞きながら揺れる頭陀袋の中、こう唱えるのであった。

 

 「どうしてこうなった」

 

 

 

 

 「ほんっとーーーーーに!スマン!!!ちょっと用があるからスズカに呼んできてほしいと頼んだんだが・・・・!」

 

 「それを聞いたゴルシが暴走した、と?」

 

 「返す言葉もねえよ・・・」

 

 あれから小一時間ほど袋の中で揺られること少し、というか途中明らかに走ったであろう揺れを感じた俺が袋から出されると目の前にはトレセン学園所有の合宿用キャンプ場、そして深々と頭を下げるチームスピカのトレーナーの姿。あのさー、自分の恋人の制御くらいやってくんなーい?普通に呼んでくれたら行くからさー

 

 「で、何の用なの?」

 

 「あー、じつはな・・・これチーム未加入者とトレーナー未契約者のための合同合宿なんだけどついてくるはずだったトレセンの調理師が途中で車に轢かれたらしくてな。つまり・・・ウマ娘の飯を作れる奴がいなくなった。すまん!こんなことをした後で頼めることじゃないけど今夜だけやってくれないか!?明日なら代わりの人員が来れるっていうから!」

 

 「しょうがねーなー。おいゴルシ」

 

 「なんだよー。言っとくけどアタシはあれが一番早いと思ったからやっただけだぞー」

 

 「いやもうそれはいいや。食材管理してるとこどこ?」

 

 「ん、こっちの車」

 

 「これ俺の車じゃん・・・・」

 

 「昨日借りるって言ったぞ。夜の12時くらいに玄関の前で」

 

 「俺の目の前で言えよせめて・・・つーか運転したのか?」

 

 「免許持ってるぞー」

 

 「それ船舶免許じゃねーーーーか!!!」

 

 「船も車もおんなじだろー?ハンドルあって、エンジンあって、前に進むじゃん」

 

 「・・・すまん。許可とってるって聞いて俺が運転した」

 

 「安心したわ・・・つーか沖野、ゴルシの手綱きちんと握れよ」

 

 「出来たらもっと穏便にあんた呼んでるよ・・・」

 

 沖野トレーナーの話を聞くに、このキャンプ場で行われているのはトレーナーとウマ娘のお見合いのようなもので、担当がついてないウマ娘とチームを持つ、あるいは未契約のトレーナーを引き合わせてウマ娘にはトレーナーがいるトレーニングの体験を。トレーナー側には模擬レースじゃ見えない隠れた才能や相性を、それぞれ見つけて新たなトゥインクルシリーズに挑む優駿を見つけようという話だそうだ。

 

 で、今回それを統括するのがチームスピカの沖野トレーナー。周りを見るに確かに新人トレーナーが何人かのウマ娘に囲まれてトレーニングを指導している姿がそこかしこに見える。まあ俺の仕事の範疇みたいなもんだしやってやるのは吝かじゃない。そして俺の周りで申し訳なさそうに耳を倒しているスピカの面々(まったく悪びれずルービックキューブをいじってるゴルシを除く)

 

 「チームスピカ、集合。沖野、こいつらトレーニングは?」

 

 「今日は休みにしてる。使うなら使ってやってくれ。あとゴルシ、お前は絶対に手伝え」

 

 「しょーがねーなー。ゴルシ様の華麗なコテ捌きを見せてやんよ」

 

 「じゃあゴルシ、焼きそば作ってくれ。マックイーン、スズカ、ウオッカ、スカーレットはその監視と手伝いな。他は俺と料理するぞー」

 

 「うー、テンチョーさっきはごめんね?ボク頑張って手伝うから!」

 

 「別にいいから。あとはちみーならいつでも作ってやるぞ?他も怒ってないから気にすんなよー。せっかくやるんだし楽しくやっていこう!」

 

 「「「「はーい!!」」」」

 

 「ほれマックちゃん。スペシャルゴルシ焼きそば作りに行くから行くぞー」

 

 「別に襟首をつかまなくてもきちんと手伝いますわ~~~~!!!!」

 

 いつの間にかグリルを用意してそれを担いだゴルシは抵抗するマックイーンをひっつかんで他を連れて設営に行った。そして俺は自分の車の中から食材を引っ張り出してキャンプ場に併設されている建物の中に入る。流石はトレセンが持ってる合宿所の一つ、なかなかいい調理器具がそろってるじゃないの。まあ今回は流石に急だったのでそんなに手の込んだ料理は作れないし数も必要だ。ゴルシの焼きそばメインで俺はサブで細々と何か作ろう。

 

 「じゃあスぺ、テイオー、おにぎり作るぞ。たくさん」

 

 「おにぎりですか?わあ、私おにぎり握るの得意なんです!頑張りますよー!」

 

 「ボクも!前にたくさん握ったから自信あるよー!テイオー様に任せるがよいぞよー!」

 

 「大変頼もしいんだけどまず米を炊くところからな」

 

 と俺は厨房に備え付けてあるウマ娘サイズの巨大な炊飯窯を指す。つーかこれ何合炊きだ?は?10升炊き?ウマ娘サイズですねー・・・俺がどうしたもんかと考えてるとスぺが普通に炊飯窯を持ち上げてそこに無洗米を入れて、テイオーが当たり前のようにドラム缶サイズのバケツで水を注いだ。さすがウマ娘、力持ちだなあ・・・まあいいや。俺もさっさと中身の調理しないと。

 

 俺は厨房の冷蔵庫に入ってた鮭を3枚におろして柵に切り分けた後骨を抜いて、塩、味噌で味を分けて焼き上げる。それぞれほぐしてボウルの中に入れればあっというまに具の完成だ。塩の一部にはマヨネーズを混ぜて鮭マヨも作っておく。

 

 で、でかい寸胴に水をぐらぐらと沸かして火を止め、鰹節を入れてだしをとる。とり終えたらスぺに寸胴を持ち上げてもらって鰹節を分離、きれいなかつお出汁がとれたな。出汁ガラはゴマ、しょうゆ、みりん、酒、砂糖でフライパンでカラカラになるまで煎っておかかにする。あとは副菜としてニンジンスティックを山ほどこしらえたあとバジルマヨをボウルいっぱいに作ってこれでオッケー。

 

 で、カツオ出汁のほうはなめこ、わかめ、ネギあたりで味噌汁にでもしておこう。ちょうどそれができたあたりで炊飯器が炊き上がりを知らせてくれた。テイオーが何十キロもあるだろうそれを軽々と持ち上げて調理台の上に置いて蓋を開く。もわ、と白い湯気が立ち上りつやつやのごはんが姿を現した。あー、ご飯ってみるとお腹空くなあとしゃもじで切るようにかき混ぜながら思ってるとスぺのお腹がく~~と鳴った。思わず笑ってしまった俺がスぺにぽかぽかと叩かれながらニンジンスティックにソースをつけてスぺの口の中に突っ込む。ぽりぽりとニンジンをかじるスぺ、自分もと口をひな鳥のように開けるテイオー。同じように口に放り込んでやって作業に戻る。

 

 あちあちと山ほどのごはんと格闘して大皿にとんでもない量のおにぎりを作って乾かないようにラップをかける。塩むすびが三角、塩鮭、味噌鮭が俵、鮭マヨ、梅が丸だ。軽々と何皿も運んでいくスぺとテイオーに続いて俺も外に出ると、すっかりと日が暮れて契約寸前まで行きそうなウマ娘とトレーナー達が仲睦まじく焼きそばを食べている光景が目に入った。

 

 俺もさっそくとばかりにゴルシが何台か用意してくれていたグリルの前に陣取っておにぎりを網の上に放り込み、しょうゆベース、味噌ベースのたれを塗って香ばしくなるまで焼き上げる。キャンプなら焼きおにぎりも乙なもんでしょ?ほらさっそく腹ペコウマ娘が寄ってくる。

 

 「うーん、いい匂い~!あ、マスターさんこんばんは!聞いてください!トレーナーが決まったんですよ!」

 

 「お、おめでとさん。お前さんがレースで走るのを楽しみに待ってるぜ。じゃあほれ、たくさん食え!」

 

 「いいなー、私はまだなんです~やけ食いしますよーもう!」

 

 ゴルシが隣で汗を流しながらあっち~な!と沖野と一緒に笑い合い、それでも手を緩めず大量の焼きそばを作るのを微笑ましく思いながら、俺は次々報告に来るウマ娘たちと話しながらおにぎりを焼き続けるのであった。この前キャンプやって今もキャンプ・・・天丼ってそういうことか?なーんてな。

 

 




 次回投稿は1週間後くらいをめどにお願いします。場合によっては早まりますけどちょっとこれからは長めに投降頻度を開けることにします


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バスケット入りマカロン

 未完(投稿しないとは言ってない)

 お恥ずかしながら戻って参りましたがまだ状況が芳しくないので次が何時になるかは未定です。お許しください。


 メイショウドトウは引けませんでした。やばたにえん。


 チャリンチャリン、とドアにつけたベルが御客の来店を知らせた。当然、俺は料理中なので挨拶をしないといけないわけだが厨房から目を離すのは若干厳しい。火使ってるし、危ないし。店が燃えたら困るし。目を離したすきにたまに侵入してるゴルシに小細工されたら余計困るし。デジタルとかもそうなんだけどどっから侵入してるんだろ。俺の知らない抜け道でもあんの?ここ俺の店なのに怖すぎるんですけど。まあいいや、なので今日の担当のウマ娘が向かうわけなんですけど・・・ 

 

 「いらっしゃいま・・・はわ~~~~っ!?」

 

 「ア゛ーーーーーッ!私の水晶玉がーーーーっ!?」

 

 「すみませんすみませんすみません~~~!!!」

 

 とてもこう・・・任せておけるという感じではなさそうなんですが、それは。ことは開店前までさかのぼる。

 

 

 俺は今日も今日とて仕込みに精を出していた。今日のメニューはトマトクリームのグラタンパスタ!たっぷりかかったチーズとトマトの酸味、クリームのまろやかさのバランスに気を使った一品だ。作るのもそんなに手間かからないし美味しいし言うことなしじゃないかな!さてさて今日の担当は・・・あっ、この子とこの子か。もう一人はともかく一人まともにこの店にたどり着けるかどうかも怪しいんだけど大丈夫かなあ。

 

 「おはようございます~~~っ!今日の私は絶好調ですよっ!なんとなんと別々のおみくじで3つも大吉が出たのですから!ふっふーん!!私にお任せくださいっ!」

 

 「お、フク。今日はご機嫌だな。この前は凶が出たんですーってどんよりしてたのに」

 

 「あの時はあの時、今日は今日なのです!大吉の私にスキはなし!さあ今日も頑張りましょう!」

 

 「はいはい。じゃ、掃除したら着替えてきてくれ」

 

 最初にやってきたのは片耳だけカバーを付けた鹿毛のウマ娘、全身開運グッズを身にまとうスピリチュアルなものが大好きなマチカネフクキタルだ。俺の店で働くたび開運グッズを置いてくので少々置き場所に困っているのだがまあ悪い子ではない。ちなみにこの子は心配しているほうじゃない。テーブルの一つを勝手に使って占い用スペースを作っているフクを見ながら仕込みを進めていく・・・んだけどもう一人のほうが心配になってきた。というかそろそろ遅刻だし、大丈夫かなあ・・・?仕込み終わったし探しに行こうかなあ、とドアの前に立とうしたところで勢いよくドアが開いて危うくぶつかるところだった。危なっ!

 

 「はわ、はわわ・・・遅刻しちゃいますぅ~~っ!あっ!?」

 

 「おっと、ドトウ。探しに行くところだったんだ。ちゃんと着けたようでよかった」

 

 「マ、マスターさんっ?あわわわ・・・すみませんすみませんっ!また受け止めてもらって~~~!」

 

 「はっはっは。もう毎回の事だから慣れたよ。ドトウが無事でよかった」

 

 もう一人、俺が心配してたのはこっちの方。鹿毛に白い流星、?マークのようなアホ毛、カチューシャでまとめたふんわりとした髪、垂れ気味な耳のウマ娘、メイショウドトウである。この子はもう、そそっかしいというかドジというか運に恵まれないというか・・・いろいろと大変なウマ娘なのだ。毎回毎回店の入り口の段差でこけて俺が受け止めるのが一連の流れみたいになってる。いやほんと、ドジなんだよねこの子、そのせいで性格もだいぶネガティブ方面にいっちゃってるし。この前ライスと話しているのを見たんだけどお互い無限に謝ってて話が進んでなかったし。

 

 あのエキシビジョンマッチにでたテイエムオペラオーが「終生の自分のライバル」と公言して憚らないぐらい実力はあるんだけどなあ。堂々としてられない性格、引っ込み思案が合わさってなんとも小動物にしか見えない。ちなみにドトウとフクのつながりは同じトレーナーが担当しているということ。二人とも仲良しでよく占いの出店を一緒にやってる。ちょっと強引なフクが連れまわすくらいがネガティブスパイラルに陥りがちなドトウを救っているんだと思う。俺は両手でドトウの脇を持ち上げてきちんと立たす。一人で立たせると後ろにすっころぶからなこいつ。きちんと立たせるまでがアフターケアです。まだ謝り続けてぐるぐるお目目だし。いつものことか。

 

 「フクー、相棒が来たからお世話してやれー」

 

 「待ってました!ドトウさん!今日のあなたは大吉です!ですから張り切って参りましょう!なんせこのトリプル大吉の私と一緒なのですから!というわけでまずこの大きなダルマを背負って・・・」

 

 「普通にやれ普通に」

 

 「い、いえ!折角フクキタルさんが用意してくれたんですから・・・こうやって・・・はわっ!?」

 

 どんがらがっしゃーん

 

 「ア゛ーーーーーッ!私のシラオキさまフィギュア(ゴルシ製)がーーーーっ!?」

 

 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい~~~っ!」

 

 「大丈夫かなあ・・・」

 

 

 

 とまあこんな感じでやることなすことほとんどドジに変わるドジっ娘ウマ娘、メイショウドトウと占い大好きシラオキ教、マチカネフクキタルを迎えて一日の営業を始めたわけであるが・・・ドトウはドジさえしなければ超優秀で気配りもできて、子供にも優しいいいウマ娘なんだけど・・・ドジがすべて帳消しにしてる不憫な子だ。例えば今日のお客様第一号を迎える時・・・

 

 「ごめんくださ~い。おっ!マチカネフクキタルにメイショウドトウだ!流石本物は違うな~っ!店長さん初めまして!いつも動画見てます!」

 

 「いらっしゃいませ!占いか注文か選んでください!占うのでしたらこちらの席へどうぞ!」

 

 「じゃあ先に注文しようかな。占いはご飯の後でお願いします」

 

 「じゃあ、こちらの席にどうぞ~。こちら、お水で・・・ひゃわっ!?」

 

 ばしゃあ

 

 「あわわわっ・・・すいませんすみませんすみませんすみません~~~!!!」

 

 「いえいえ、大丈夫ですよ。大変ですね」

 

 というやり取りがあった。水をぶっかけてしまったお客さんはドトウのファンだからかこういうことがよくあるというのを知識として知っていたらしい。そしてそれを笑顔で許してくれるおおらかな人であった。申し訳立たなかったのでドリンクを無料にしたけど。でもこう、ドトウのドジの被害を受けて喜んでるお客さんが多いのは何なんだろうか。もしかしてそっちの趣味がおありですか?それともドトウが一生懸命なのを分かっているから?というかドトウはいったん落ち着きなさい。頑張れば頑張るほど絡まるぞ。

 

 「おーい、ドトウ。ちょいこっち」

 

 「は、はいっ!今行きます~~~~っ!」

 

 とりあえず落ち着かせないと始まらないので厨房の方にドトウを呼ぶ。ドトウは怒られるとでも思っているのかびくびくとしながら俺の方に来た。目を伏せてうつむき気味に。耳も頭につくくらいぺったりと寝かせてまるで俺がこれから悪いことをするように感じてしまう。うーん、全く怒ってないんだけどドトウだしなあ・・・自責の念が強すぎるんだよね。確かに原因は彼女の不注意もある、がそこらへんはもう運の問題だ。彼女はできるだけ被害が広がらないように自分で対策してるしこれ以上を期待するのはちょっと違う気がする。

 

 目の前にきたドトウの頭にそっと手を伸ばす。叩かれるとでも思ったのかぎゅっと目をつぶった彼女の頭を2,3度ぐしゃぐしゃと撫でる。痛みが来ないことを不思議に思ったのかドトウが大きな瞳を開けてこちらを見た。

 

 「ドトウ、大丈夫か?別に怒ってないからな。なんて言えばいいんだろうなー・・・うん、これだわ。一回、頑張るのをやめてみ?」

 

 「えっ?でもでも、マスターさんのお料理投げちゃったり、お客さんにお水かけちゃったり、フクキタルさんのお人形壊しちゃったり・・・頑張らないと申し訳が~~・・」

 

 「いいからいいから。この店ってお前らウマ娘とファンの交流の場なんだから。ファンが楽しんでるのが一番なんだけど、お前も楽しんでないとだめなの。気を張ってたら楽しくないでしょ?疲れるしさ」

 

 「でででも・・・お仕事ですし・・・」

 

 「何だったらサボってもいいぜ?セイのやつみたいにさ。例えばフクのやつ、今あれ。完全に遊んでるじゃんか」

 

 「よくないですよぉ~~っ!・・・ふぇ?フクキタルさん・・・?」

 

 「ん、あれさ」

 

 俺が指し示す先、そこにはフクのやつが今いるお客さん全員を巻き込んでタロットカードによる占いに興じているところだった。フクが一枚カードをめくるたびにそれぞれ一喜一憂して大盛り上がりしている。俺の店って仕事自体は俺一人でも回るんだよね。客数少ないしメニューの幅もないからさ。でも、あの光景・・・ファンとウマ娘が同じ目線で笑い合っているあの光景。理事長が作りたがっていて、俺の店ならできると任せてもらっている、ルナの夢の一つの形。あれは俺じゃ作れない。場所を提供できてもウマ娘もファンも、楽しんでなきゃあの光景は作れない。だから、ドトウも楽しくないといけないんだ。

 

 「・・・いいな・・・」

 

 「じゃ、混ざってくればいい」

 

 「え、でもでも・・・私じゃ・・・」

 

 「でもほら、呼んでるぞ?」

 

 「あ・・・フクキタルさん・・・」

 

 フクキタルがドトウがこっちを見てるのに気づいて笑顔で手招きしてる。ドトウが嬉しそうに顔を綻ばせて、ふにゃりと笑った。そうそう、楽しんでこいよ。というわけでちょっとした手慰みに作っていたマカロンをバスケットに入れてドトウに手渡し、背をトン、と押して促してやる。ドトウは頷いて、レースの時のようなしっかりとした足取りでその輪に向かって歩いていくのだった。

 

 「あのあの、サービスです~~!」

 

 「来ましたねドトウさん!これでラッキーウマ娘が二人になりました!皆さんにもラッキーをお裾分けしますよ~!というわけでドトウさん、まずはこのカードを1枚、どうぞ!」

 

 「は、はい~。こうですか~?」

 

 「むむっ・・・これは・・・!」

 

 「す、救いはないのですか~?」

 

 「ホイール・オブ・フォーチュン!正位置です!ドトウさんにはこれからいいことがありますよ~っ!」

 

 「救いはあるんですね~っ!?」

 

 その中に混じったドトウの姿は、さっきまで半泣きだったとは思えないほど満面の笑顔で、輝いていた。ホイール・オブ・フォーチュン、競争における一番の暗喩。ウマ娘にとってこれほどラッキーなタロットというのもなかなかないだろうな。きっと、いいことがあるのだろう。

 

 

 と、いうことがあった。あのあといい具合に力が抜けたのかフクキタルの水晶を割ってしまった+(シラオキ様フィギュア)以外は特にドジをすることなくドトウは営業を終えることができた。フクキタルは特にドトウを怒ることなく、ラッキーアイテムが砕けたということは不運を全部肩代わりしてくれたのです!つまりこれからはいいことしかありません!ととてもとてもポジティブシンキングをしていた。途中、SNSに乗せる宣伝用の写真、勝負服のドトウとフクキタルがお互いマカロンを咥えて頬を寄せ合ってる写真を撮ってのっけたのだけどこれが結構反応がいい。というか今日のデザートは最近流行りのマリトッツォだったはずなのに気づけばマカロンみたいじゃん。くそぅ、マカロン作りやすいから数だけはあるもん、サービスで全員につけちゃう!

 

 

 まあ、そんなわけでまいど恒例賄いの時間である。すでに制服に着替えた二人が美味しそうにグラタンパスタを冷ましながらふぅふぅと食べているのを皿洗い機と化した俺が見守る何時もの感じ。隣でいつの間にか手伝ってくれているデジタルの口に余ったマリトッツォを突っ込みながら作業を進める。ドトウのいつも横に垂れている耳が今は上向きになっているのでまあ口に合ったのだろう。お、そういえば・・・

 

 「そういやドトウ、お前今度のレースオペラオーと勝負するって?」

 

 「ふぇっ?マスターさんどうしてそれを・・・?」

 

 「いや、この前オペラオーが来たとき声高々に宣伝してたし。ライバルなんだろ?」

 

 「ララライバルなんてそんな恐れ多いですぅ・・・でもオペラオーさんが・・・」

 

 「そんだけ認めてるってことなんだろ。よかったな、ドトウ。デジタル、うまいか?」

 

 「はいっ!いろんな意味でとっても美味しいです!」

 

 「オペラオーさんが・・・頑張らないと・・・!」

 

 「おーい、ドトウ、フクキタルー迎えに来たぞー」

 

 「トレーナーさーん!」

 

 「あ、トレーナーさん・・・あわわっ!?」

 

 「おわっ」

 

 びりびり、ばり、と迎えに来た2人のトレーナーに駆け寄ろうとしたドトウが予定調和のようにトレーナーを巻き込んですっころび、トレーナーの服のファスナーは爆発、ボタンは飛び散り袖は引きちぎれた。なるほど、いやそうはならんやろ。なっとるんだけどさ。トレーナーのほうは予想してるのか準備がいいのか替えの服を取り出して手早く着替えている。

 

 「ごめんなさいっごめんなさいっ!私またトレーナーさんに迷惑を~~~・・・」

 

 「ん?ウマ娘に迷惑をかけられるのがトレーナーの仕事だろ?なんてことないさ」

 

 「いらっしゃい。飯余ってるし食ってくか?」

 

 「お、いいの?やったね~。ありがたくいただきます」

 

 「ほいほい、デジタルお前も食ってけ。フク、捕獲たのんだ」

 

 「福が来るキャーッチ!!」

 

 「ひょえ~~~っ!でも幸せ・・・・」

 

 トレーナーを挟んで談笑しつつご飯を食べるフクとドトウ、そしてその隣で必死に命をつなぐデジタル。仲良きことは美しきかなってやつ?ま、これはこれで、いいのかね。

 



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トレセン学園、インTV!学園生活編

 唐突に思いついたテレビ取材ネタ。

 次話はトレーニング編、その次は掲示板の反応編の3部作で行こうと思います。
 
 場合によっては掲示板は一般人の反応とウマ娘の沼にはまったもう戻れない人たちの反応編で別れるかもしれんけどとりあえず3つという感じでオナシャス!


 「報告!マスター君、君にお知らせがある!」

 

 「ほほう、また仕事が増えるわけじゃないですよね?」

 

 「ぎっくぅ!?べべ別にそういうわけでは・・・あっ!誤解!誤解なのだ!だからそのニンジンケーキを返して~~」

 

 「いやぁ俺の作るケーキはうまいなあ」

 

 「あああ~~~!私のニンジンケーキぃ・・・うう・・・」

 

 「冗談ですって、ほら」

 

 「むぅ、悪辣!ひどいぞマスター君!」

 

 「それは俺の業務体系を見直してから言ってほしいですね」

 

 今日も今日とて営業終了、後片付けを済ませて自分の時間に突入し、アイリッシュコーヒーというオシャンティーなカクテルを作ってケーキをつまみつつまったりしようとした途端扉を開けて登場した理事長に出鼻をくじかれた俺がちょっとだけ意地悪をしたら涙目になってしまったので新しいケーキをあげてご機嫌取りをしている最中です。どうも、最近俺の業務量おかしくね?どれか減らしてもええんちゃう?と思っている店長です。仕事増えるたび給料の額面がどんどん上がってるよ!これ以上稼いでるのって真面目に上位のトレーナーくらいではないだろうか。貯金が増える増える。

 

 「で、お知らせって?」

 

 「う、うむ!朗報!なんとこのたび、トレセン学園内にテレビカメラを入れることにしたのだ!」

 

 「そりゃまた思い切ったことしましたね。ちなみに理由は?」

 

 「ほら、マスター君がテレビに出演したことがあったであろう?あれが予想外に大うけしたのだ!だからトレセン学園ももう少しメディアに対してオープンにするべきだというのが最近の議題に上がって、これがその一歩!なのだ!」

 

 「あー、あれですか。で、それが俺に何の関係が?」

 

 「う、うむ。ここからが本題なのだが・・・当日のトレセン側の案内人として出演を・・・」

 

 「却下。沖野とおハナさんにでもやってもらえばいいでしょ」

 

 まーたおれか。いい加減俺じゃなくてもよくないその話題?芸能人じゃないっつーの俺は・・・最近ちょっと自信なくなってきたけど。主にウマチューブのせいで。あとさっき話題出したけど沖野!ツケをいい加減払え。スピカのために金を使ってるから見逃してるけど俺じゃなかったら警察に追われてるぞお前。おハナさんが申し訳なさそうに俺に「彼ツケてばっかりでしょう?私が代わりに払うから・・・いくらかしら?」とか言ったんだぞ!相当だぞお前!丁重に断ったけど!確かにお前が夜来るときはおハナさんと一緒だから把握してるの知ってるけど!後それ聞いてゴルシの耳が垂れたからどうなっても知らんぞ俺は。

 

 で、恨み節はこの辺にして・・・テレビ、テレビねえ・・・この前のは俺から出たいつったからあれだけどさぁ・・・俺の本職は喫茶店のマスター兼カウンセラーであって他は全部副業なんだよ。全く誰が俺を推薦したのやら・・・

 

 「ちなみに君を一番推していたのは生徒会長だ。私はたづなに任せようと思ってたのだがな」

 

 「るぅなぁ・・・」

 

 ルナ・・・お前・・・どうしよう。強硬に断ることもできるんだけどそれをすると・・・浮かぶ!浮かぶぞ!悲しそうな顔で「そうか・・・いや、兄さんが嫌ならしょうがない。無理を言ってすまなかった」と言うルナの姿が!ダメだ!ルナにそんな顔をさせるのは良心と兄心に致命的なダメージを負う。かくなる上は・・・

 

 「ぐ・・・やります。ええ、やってやりましょうとも!」

 

 「言質!よくぞ言ってくれた!ちなみにトレーナーは練習のコーチングがあるので最初から除外だ!当日を楽しみにしてるように!」

 

 「当日・・・ってこの日俺の休みじゃねえか!理事長、覚悟はできてますね・・・?」

 

 「いや・・・その・・・営業に差しさわりがな、にゃああああああああ!?」

 

 日取りを見た俺は自信満々のどや顔理事長に身長縮小の刑をくれてやって、やけ酒のごとくカクテルを一気飲みするのだった。

 

 

 

 というわけで俺の貴重な貴重な休日を丸々潰して行われる取材の日。しかも特番扱い。番組タイトルは「あの仕事ってどうなの?特別編!トレセン学園裏話!」というらしい。番組自体はいろんな仕事の裏側を取材する不定期放送の番組に理事長が乗っかる形だ。リポーターと案内役の俺一人、後は取材陣。あと後方でたづなさんがニッコニコしてる。こわい、下手なこと言ったら後で怒られそう。あと俺が選ばれた理由はルナと他ウマ娘の推薦もあるんだけど「大体のウマ娘が俺の前だと大人しい」かららしい。つまり、ストッパー役である。トレセン学園の見せたくない部分(タキオンの実験室、蹄鉄の被り物の不審者、光り輝く人間のようなもの、何するか分からない黄金船など)を何とかして食い止めてほしいとか。んな無茶な。まあ授業中だし何とかなるっしょ。

 

 基本的に記者や取材などはトレセンの中に入れないし、レース後のインタビュー等も専用の施設かレース場でやっちゃうのだ。トレセンがテレビカメラ入れまくるとウマ娘のストレスになるしプライバシーもあるから基本的にトレセン内は取材カメラ厳禁。それを今回試験的にオープンにしてみようっていう話。成功してウマ娘にプラスになりそうなら1年に3回くらいは入れてもいいかな?くらいのお試しとのこと。

 

 「はいっ!皆さんこんばんは!今回のリポーターを務めます潜入調査員の萩野です!そしてこちらが・・・」

 

 「どうも、協力者の和田です。よろしくお願いします」

 

 「よろしくお願いします和田さん。今回特別に普段どころかどんな時でも撮影NGのトレセン学園の中にカメラを入れてもいいとのことで、私としても大変楽しみです。それと、ウマチューブ毎日楽しませてもらってます」

 

 「光栄です。今回、理事長が是非とも一般の皆さんにレースをしているウマ娘の普段の姿を見てもらい、ウマ娘を身近に感じてもらいたいとの事で今回のお話に至りました。それと、今回はトレーナーの仕事についても紹介していきたく思います。俺はトレーナーじゃないですけどね」

 

 こちらが今回の相方の萩野さん。バリバリの新人男性アナウンサーだ。スーツがピシっと決まってるね。そんな感じでまずは・・・教室からかな?というわけでカメラを引き連れて移動、中に入るのは中等部の校舎だ。話は通ってるのでサクサクッと授業中の教室の扉を開ける。ここはスぺやグラス、エル、セイのクラス。教壇に立っているのはカノープスのトレーナーだ。

 

 俺が教室に入った瞬間みんなの耳が一斉にピクピク動いてこっちに向いた。ついで振り返ってくるやつもいるので曖昧に手を振ってやるとにんまり笑って前を向くやつやこっちを見てピースするやつもいるし、スぺのように急に緊張してあたふたしだすやつやセイのように我関せずに寝るのもいる。ま、普通のガッコだわな。

 

 「なるほど、普段は普通の学校の授業なんですね?」

 

 「ええ、この学園はあくまで中高一貫の学校です。卒業しても困らないよう、トレーニングだけではなく通常の中学高校と同レベルの授業を行っています。もちろんトレーニングの兼ね合いもあるので時間は短く、内容は濃くをモットーに授業をしていますね」

 

 「あの教壇に立っている方、もしかしてトレーナーさんですか?」

 

 「ええ、トレーナーの中には教員免許を取得している人もいますから、そういう人は教壇に立つこともあります。ちなみに彼はチーム・カノープスのトレーナーですね」

 

 「カノープスの!この前、ちょうどナイスネイチャが勝利したレースの実況をさせてもらったんです。なるほど彼が・・・それでは生徒へのインタビューをしてみようと思います」

 

 「ええ、インタビュー受けたいやついるー?」

 

 入ってきた時点で授業を中断するのは言ってあるので問題ない。今日のトレセンはテレビカメラ優先で回ってるからな!はいはいはい!と手を上げるウマ娘たち。うーん、誰にしようかなー?うん、じゃあ・・・エルがいいかな?元気だし、知名度もあるし。スぺはスピカのトレーニングの時でいいだろ。

 

 「じゃあ、エルー。こっち来い」

 

 「ブエノ!よろしくお願いしマァス!」

 

 「よろしくお願いします。それでは、まず自己紹介を・・・と言ってもバレバレですけどね。お願いします!」

 

 「上々、良好、怪鳥!エルコンドルパサーデェス!チーム・リギルのエースデスね!」

 

 「グラスが睨んでるぞー」

 

 「ピィッ!?エルは負けないデェス・・・」

 

 テレビカメラの前で調子のいいことを言ったエルをグラスがにっこりしながら見てる。目は全く笑ってないけど。あとでアームロックかけられそう。それから普通に普段の事とか、授業の事とかを聞かれたエルはすらすらと答えてさっくりとインタビューは終わった。最後に一言求められたエルは

 

 「世界最強!エルコンドルパサーをよろしくデェス!今度のレース、1番になるデスよ!」

 

 と同じレースに出るグラスとスぺ、セイにテレビカメラを使った宣戦布告をした。全員ぴくっと動きを止めてエルを見つめている。というかレースに出る前の圧というか覇気とでも言うべきものが4人から出てる。萩野さんがごくりと息をのみスタッフさんたちがたじろいだ。流石にまずいのでポンとエルの肩に手を置いて後ろでニコニコしてるたづなさんを指し、頷く。

 

 「で、デェス・・・」

 

 スぺたちもハッとして何時もの調子に戻った。いやごめんなさいね。この子たち、レースに関しては本気なんで。

 

 「間近で見るとすごいプレッシャーでしたね・・・流石は黄金世代です。G1ウマ娘の本気を垣間見れました」

 

 「そうですね。ウマ娘たちはアイドルではなく競技者ですから。ウイニングライブだけ見るっていう人も一回でいいからレースを見てほしいですね。それがこの子たちの本来の姿ですから」

 

 俺はそう締めくくってカノープスのトレーナーにひらりと手を振って教室を後にする。彼はいつもツインターボ相手によくしている困ったような苦笑を浮かべて俺にひらひらと手を振って授業に戻るのだった。

 

 そして現在休み時間、取材陣一行は行く先行く先で興味深そうにこちらを見るウマ娘や映りたがりさん、俺を見つけて突撃してくるやつなどを相手にインタビューを繰り返しながら移動をしていると、タッタッタ・・・と軽やかな声がして俺の背中にばふっ!と誰かが抱き着いた。うーん、こんなことしそうなやつと言えば・・・

 

 「ハウディ!マスターさん!こんにちはのハグデス!そっちのテレビの人もハウディデース!」

 

 「おおっと、タイキか。高等部からこっちに来たのかー?暇なやっちゃな」

 

 「むぅ、せっかく会いに来たのにマスターさんツレないデス!もっとむぎゅっとハグし返してくだサイ!」

 

 「カメラあるだろ。マイル王者が何してるんだか・・・おハナさんに叱られるぞー」

 

 「えへへ、勘弁デス」

 

 そう言ってタイキは俺にのしかかった状態から離れ、カメラに向かって両手でひらひらと手を振っている。萩野さんはタイキに向かってインタビューを開始。なんて言ったってタイキシャトルは人気ウマ娘の一角だ。特に雨の日の重バ場でのタイキは誰も追いつけないと言っていい。力強い踏み込みで雨を置き去りにするほど加速していくタイキシャトルのレースに一目ぼれしたというファンは多いだろう。あと何と言ってもその性格、人懐っこくて物怖じしない。誰にでも笑顔で距離を感じさせない性格も人気の秘訣かもな?

 

 どこから人気ウマ娘が飛び出してくるかわからないトレセン学園はテレビの人たちにとっては取れ高の宝庫でありびっくり箱だろう。俺はもう慣れに慣れたけど一般のウマ娘にかかわりのない人は困るだろうなあ。ウマ娘ってみんな美人さんだから曲がり角曲がったら美少女、階段降りたら美少女、ドア開けたら美少女、今そこで「バクシンバクシンバクシーン!」・・・バクシンする委員長もいるし。廊下は走るなバクシン委員長。多分タキオンを追ってるんだろうけど。

 

 「撮れた?」「速すぎ」というやり取りをしてるカメラさんたち。やはりバクシンは撮れなかったか・・・タイキと別れて次に案内したのは、図書室だ。静かなここで読書や調べものをすることが好きなウマ娘もいる。例えばそうだな・・・おっやっぱりいたいた。

 

 「ここが図書館ですね。研究用のビデオルームも併設されています。娯楽としては勿論、レースに関する資料や研究をするにはうってつけの場所ですね。今もほら、そこかしこで読書に励んでいる子もいます」

 

 「なるほど、レースの研究というとフォームとかですか?」

 

 「それもそうですけど、自分に合った脚質とか、作戦、距離、ウマ娘のレースに関するものならあらゆるデータが閲覧できます。まあそれ目的じゃない子もいますけどね」

 

 俺はそう言ってスタスタと目的のウマ娘に近寄って肩をポンッと叩いた。すると彼女は本から顔をあげて素っ頓狂な声をあげる

 

 「・・・ひゃっ!?ま、マスターさんですか・・・驚きました・・・カメラ?・・・?・・・あっ!テレビの・・・」

 

 「ようノロ。お楽しみ中のとこ悪いね。せっかくだしインタビュー受けてみ?デビュー後のためだと思ってさ」

 

 「その、私でよければ・・・」

 

 「よろしくお願いします。それではまず名前からどうぞ!」

 

 「ぜ、ゼンノロブロイ、です。この場所にはよく、読書に来てます。まだデビューしてないですけど、よろしくお願いします」

 

 ゼンノロブロイ、読書、特に英雄譚を読むのが好きな黒鹿毛の髪を三つ編みでまとめた大きなメガネが特徴のウマ娘。この前ようやっとトレーナーがついてデビューに向けて調整中のウマ娘だ。デビュー前のウマ娘を先んじてインタビューするなんてことはめったにどころか皆無だろうからこれもこれでいいんじゃないかな?俺はたどたどしくも意外にしっかりインタビューを受けるノロを見て、デビューしてもうまくやっていけそうだという感想を抱いた。ちらりとたづなさんの方を見ると彼女もそう思ったらしくぐっとサムズアップをしてくれた。俺も笑顔で答えながら次の予定に頭を巡らせるのだった。



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トレセン学園、インTV!トレーニング編

 ゼンノロブロイのインタビューが終わり、彼女と別れてトレセン学園の中を取材陣を先導しつつ歩く俺。今から行くのは高等部・・・ではなく、トレーニングルームだ。高等部のウマ娘たちは場合によっちゃ受験を控えている子もいるので今回の取材ルートからは外れているのである。もちろんレースの道に残る子はいるし、トレーナーになりたいとトレーナー見習いになるウマ娘はトレセン学園に卒業後就職という形になる。が、そんなウマ娘はまれなのでだいたいどっかの企業所属になって現役を続けるウマ娘のほうが多いんだけど。

 

 といってもそんな日の当たるウマ娘はほんの一握り、ほとんどは進学か就職だ。幸い中央のトレセン学園を退学することなく卒業するというのは一定の優秀さを表しているので欲しがる大学や企業のほうが多い。そもそも中央トレセン自体の敷居が高いからだ。大学で新たに別の競技に目覚める子や、遅咲きの大輪を咲かせる子もいる。トレセン学園卒というだけでその後の人生には大きなプラスになるのだ。

 

 すごいよねトレセン学園。そりゃ親たちが血眼で我が子を入れようとするのがわかるわ。所属していたこと自体がステータスになる学校だなんて漫画かゲームみたいですわ。ちなみに留年する子もいないわけではない、といっても特別措置だけど。例えば高等部3年でデビューしたら?1年しか走れないじゃないか!という風になってしまうのでその場合3年間、つまりトゥインクルシリーズが1周するまでは留年可能だ。全てにおいてレースが優先されるトレセン学園らしいルールだと思う。もしそこで優秀な成績を残せるなら卒業した後にウィンタードリームカップに移ることができる。トレーナーとの契約を維持したまま、進学した別の大学から来てトレセンでトレーニングすることもできる。まあ俺が所属してからそのルールを使用したやつは見たことないけどな。

 

 「この時間はお昼とのことですがトレセン学園は学食形式と聞いています。これだけのウマ娘が押し寄せる食堂、いったいどんな感じなんですか?」

 

 「正確にはカフェテリアなんです。料理もビュッフェスタイルで好きなものを好きなだけ食べることができますよ。といっても偏った食事をする子なんていないですけどね。日々これ精進、体重コントロールから自分の食事管理もトレーニングなんです」

 

 「なるほど・・・なるほど?」

 

 「あの葦毛の怪物(オグリキャップ)は例外です。引退してますからね」

 

 「・・・ん?マスター、どうかしたのか?」

 

 「いや、美味しそうに食べるなとな」

 

 「美味しいから。それに、ご飯をたくさん食べると元気になれるんだ」

 

 食堂を練り歩いて、大きな保温容器に所せましと並べられた種類豊富なおかずの数々、大きな炊飯ジャー、ドリンクサーバーなどを紹介しながら歩を進めていくとやっぱりいたのはさらに天を衝かんばかりに盛られた料理の塔をすごいスピードで崩しているオグリキャップだ。ウマ娘は大食いだけど彼女は輪をかけてどころかほっとけば無限に食べ続けるからな。限界はあるっぽいけど俺が満たしてやれたことはついぞなかった。今もほら、カメラが来たというのにそれを気にすることなく食べてるし、腹は膨れてるし、厨房はてんてこ舞いになっている。

 

 オグリキャップは引退したとはいえそのファン数はハルウララをしのぐ。今のシンデレラがハルウララだとすればその前にガラスの靴を履いていたのはオグリキャップ、彼女だ。地方の弱小だったウマ娘が、トレセン学園の優駿をなぎ倒していくその姿はルナを倒せるんじゃないかという期待もあり、大いにレース界隈を盛り上げた。シニア級での直接対決はレース場の外にまで観客が押し寄せるほどだった。怪物に食い殺されるほど皇帝は弱くなかったが、それでも葦毛の怪物は、レースに欠かせない存在として、伝説を刻んでいる。

 

 「そういえば、その後ろにいる人はなんだ?カメラ・・・?」

 

 「ん、いやいやテレビだよ。少し前連絡あっただろ?」

 

 「・・・そうだっただろうか?」

 

 ちょっと天然なオグリは会話のテンポも独特だ。俺と話しながらも食事の手は止めないしどんどん皿の上の料理が減っていく。まるで吸い込まれていくかのように消えていく料理を見る萩野さんはちょっと目を離したら皿一枚からになってるのを見て見事な2度見をかましている。流石に食事中にインタビューはちょっとという感じで俺は勝手知ったる厨房に入っていき火の車状態の厨房を案内するが邪魔になりそうな部分には立ち入らない…ようにしてたんだけどコック長のおばちゃんに捕まって1時間ほど料理する羽目になった。カメラはなぜか延々と俺を撮るし、俺が調理始めた瞬間客が増えた。なんでや!仕方ないので数だけは作れるお手軽料理を作りまくりました。たづなさん怒ってない?大丈夫?よかった笑顔だ。きちんと目も笑っている。

 

 いろんな意味でクタクタになりながら食堂を脱出した俺と取材陣、なぜかウマ娘と一緒になって俺の飯食って満足そうなたづなさん一行はそろそろ昼休憩も終わり、午後に差し掛かったトレセンの中を歩いていく。午前中は座学だが午後は実技だ。ここでチームやトレーナーがいる、所属しているウマ娘はそれぞれ別行動、いない子は選抜レースに向けて全体練習に励むことになる。というわけでまずは室内の方から行ってみよう。

 

 「ここはトレーニングスタジオですね。いわゆるウイニングライブの曲を練習したりダンスの特訓をしたりする部屋になります。おっやってるやってる。和歌浦、邪魔するぞー・・・ってノロは一緒じゃないのか?せっかくの担当だろうに」

 

 「あ、どうもマスターさん。ゼンノロブロイちゃんは今日はお休みですよ。なのでお願いしてきた子たちにトレーニングをしてます」

 

 「あぁ、それで・・・というかウイニングライブ目的じゃないな?」

 

 「あ~っ!マスターさんひどい!ファル子は逃げ切りシスターズのメジャーデビューに向けて頑張ってるだけなのに!」

 

 「・・・せめて否定してくんない?休みなら文句言わないけど」

 

 「あの、私は走りに行きたいんだけど・・・」

 

 「ダンス精度、78%、歌唱精度89%・・・まだまだトレーニングが足りません。目標精度を95%以上に設定しトレーニングを開始します」

 

 「うーん、今日もチョベリグ!やっぱりみんなでトレーニングするのは楽しいわね~」

 

 「あの、今日はスーパーの特売日だからちょっと早めに終わりたいの。明日ならもっとやれるの!」

 

 「うわ、マルゼンスキーだ・・・!彼女たちって同一のチームではなかったですよね?」

 

 「もっちろん!私たちは逃げウマ娘だけで構成されたアイドルユニットならぬウマドルユニット!その名も・・・せーのっ!」

 

 「「「「「逃げ切りシスターズ!です!」」」」」

 

 「只今絶賛ファンを募集中だよ~!」

 

 「とまあこんな風に趣味に走るウマ娘もいるわけです。まあ同好会みたいな感じですね。いい息抜きになってると思いますよ」

 

 トレセン学園内でひそかに「歌の先生」と呼ばれているトレーナー。ゼンノロブロイ担当の和歌浦にダンス指導と歌唱指導を受けていたのはスマートファルコンを中心にして日夜ゲリラライブ等でじわじわとファンを増やしている非公認アイドルユニット、逃げ切りシスターズの面々だ。面子だけ見れば全員とんでもない選手なのだがアイドル活動をしているのは本邦初公開になるはずだ。放送して大丈夫か?

 

 「あっ、そうです。せっかくなので一曲聞いて行かれたらどうですか?観客がいたほうがトレーニングになりますし、ファル子ちゃん、どう?」

 

 「やるよ!見てもらえるんならいくらでも!私たちの大いなる一歩だよ!」

 

 「ん、じゃあやってみようか。位置について」

 

 和歌浦がパンパン、と合図を出して全員が位置につく。萩野さんも俺も一歩下がって、逆にカメラさんがサブカメラまで準備して撮影を始めた。センターはファル子、彼女の合図で曲が始まり、ステップ、歌唱に続いていく。完成度でいうならばウィニングライブとそう変わらなく見えるがブルボンの評価が正当だとするのならばまだ上があるということ。これからが楽しみなライブだった。

 

 「逃げ切りっ!Failin`Loveでしたっ!逃げ切りシスターズを・・・」

 

 「「「「「よろしくお願いしまーす!!!」」」」」

 

 笑顔でそう言った彼女たちに見送られて俺たちは撤収、たづなさん止めなかったしこれオンエアされるんだろうなあ。カメラさんが5つのカメラを同時に回して隅々まで取ってたし音響さんも撮り方がガチだったし。まあファル子からすればウマドルの夢に一歩近づいたという感じだろうけど。突っ込みのスズカがまた大変になりそうだ。と考えながら案内したのは筋トレ用のトレーニングルーム、近代的な筋トレ設備が居並ぶ中見覚えのある姿が・・・あのちっこいのは・・・どう見てもライスだ。ウララと蹄鉄はどこだろうか?取材陣もライスに気づいたらしく俺たちはライスに声をかけるために近づいていくと彼女は俺を見つけるとパァッと顔を輝かせてこっちにとてとてと走り寄ってきた。

 

 「ライス、邪魔して悪いな。蹄鉄はどうした?」

 

 「おじ様!学園の方に来るなんて珍しいね?お兄様はウララちゃんと高知でお仕事してるの。ライスはお兄様が作ってくれた自主トレをしようかなって。もしかしてこの人たちがテレビの?えっと、ライスシャワーです」

 

 「こんにちは。萩野といいます。ライスシャワーさん、トレーニングということですが走るのではないのですね?」

 

 「うん。ずっと走ってるわけじゃないんだよ?加速するための足の筋肉や腕の振りのためにパワーをつけるのが必要なの。ライスはステイヤーだけど、スタミナだけで勝てるほどレースは甘くないんだから」

 

 「なるほど、確かにその通りです。ライスさんは今から何を?」

 

 「えっと、バーベルスクワット、です。重さは・・・このくらい?」

 

 「・・・本当にですか?」

 

 「うん、これじゃちょっと軽いかも」

 

 そういってライスが指差したバーベルには50kgのおもりが3つ両方についている総計300kgのバーベルだ。ウマ娘のパワーからしたらほんとに軽いんだけどな。なんせ、車を何の器具もなしに持ち上げられる種族だから、トレーニングの負荷もこの程度ないとだめなんだろう。

 

 「軽いってこれで・・・ですか。やはりウマ娘は別格ですね。世界記録レベルなんですけど」

 

 「人間の、ですけどね。多分後で見れますけどもっとすごいのもありますよ。さ、グラウンドに行きましょう。そこが本命ですからね。ライス、またウララと一緒においで」

 

 「うん、ありがとうおじ様。ライス、頑張るよ!」

 

 ふんす、と気合を入れて軽々とバーベルを持ち上げてゆっくりとスクワットを開始したライスを驚愕の目で見る萩野さん。さっき窓からちらっと見たけどグラウンドじゃもっとすごいことやってるぞ?さて、お待ちかねのチームスピカのほうまで行こう。

 

 

 

 「いや・・・あれ、なんですか?」

 

 「沖野トレーナー曰く、「根性を磨くため」のきっついトレーニングだそうです」

 

 「スぺー!もっと気合いれろー!まだまだいけるぞー!」

 

 「はいいいいっ!ふぬぬぬぬ・・・!」

 

 「スぺ先輩ー!あと1周!おもり追加ですよー!」

 

 「ふええええっ!?」

 

 グラウンドに出た俺たちが目撃したのは部屋一つ分はありそうな巨大なタイヤを体に結んだ縄で引っ張るスぺとタイヤの上に乗って檄を飛ばす沖野とスピカの面々、確かあのタイヤは重機のタイヤで一つ5トンはあるんだっけ。普通の一般ウマ娘じゃまず無理だけど鍛え上げればできるという証左だな。根性も鍛えられるがそれ以上に体のいろんな場所にまんべんなく負荷をかけられるトレーニングだ。あっと驚いて言葉を失っている萩野さん一行、ウマ娘のパワーって日常生活で見ることなんてないし当然か。基本的に加減を徹底してる彼女たちが本気を出すのはそれこそレースかトレーニングだから、その一端がこれというわけかな。

 

 「ライスは自主トレですから軽いメニューでしたけど、トレーナーが見てるならもっと負荷の強いこういったトレーニングをこなすこともあります。そうやって、俺たちを熱くしてくれるレースにみんな挑むわけです」

 

 「すごい、ですね。こういったらなんですけど・・・彼女たちって中学生、高校生でしょう?なんで、ここまでできるんでしょうか」

 

 「それは・・・」

 

 「それは、本能だな」

 

 俺が答えようとしたのを遮って口を挟んだのはいつの間にか一周を終えてばてているスぺが引いていたタイヤから降りた沖野だ。荒い息を必死に整えてインターバルの間に少しでもコンディションを整えようとするスぺをサポートするスピカの面々、沖野はそれを目を細めて眺めながら話を続ける。

 

 「ウマ娘ってのは競争心がとにかく強い。誰にも負けたくない、私が一番速いんだって誰もが思ってる。あいつらは一番になりたいのさ。自分の前に誰も走っていてほしくないって常々思ってる。だから、きついトレーニングでもああやって必死にこなそうとする。子供とかそういうんじゃない。生まれながらの競技者、それがウマ娘だ」

 

 沖野はスぺのところまで戻ってしゃがみ込み、スぺの足を触診する。丁寧に、怪我がないか、負荷がかかってないかを真剣なまなざしで。どこまで限界すれすれを突き詰めるかを考えているのだろう。実際に触るのは、まあ悪癖だけど。

 

 「こいつらの足はそのままでも十分に速い・・・が、一番になるにはそれだけじゃだめだ。才能だけで何とかなるほどレースは甘くない。トレーナーは、こいつらの才能を磨きに磨いて、光らせる。どれだけ光っているかは・・・レースの結果だけどな。スぺ、痛いところは?」

 

 「ない・・・ですけど」

 

 「ですけど?」

 

 「いつまで触ってるんですか?」

 

 話している間ずっとさわさわ、なでなで、すべすべとスぺの足を撫でまわすようにねっとり触っていた沖野、さすがに限界が来たのか目が冷たくなるスぺそして、周りにいるのは目を吊り上がらせるスピカの面々。そして・・・

 

 「オラァッ!!何いいこと言った風になってエロい触り方してんだ!アタシとは遊びか!?」

 

 「ゴファッ!?ゴ、ゴルシ!?何言ってんだテレビの前で!つーかそんな触り方してねえ!」

 

 どこからか現れ見事なドロップキックを沖野に叩き込んだゴルシ。あーやっぱこう、年ごろからしたらいかにトレーニングのためとはいえ足をいつまでも不審な手つきで撫でまわされたら言いたいことの一つや二つ出るもんだよな。こいつこれさえなければトレーナーとしてどこに出しても恥ずかしくないのに・・・スぺをスカウトしたときから全く変わってないやんけ。

 

 「トレーナー・・・」

 

 「最っ低ですわ・・・」

 

 「あー、擁護出来ねえな」

 

 「くっついて多少は変わるかと思ったけど結局触ってくるのは変わらなかったわね」

 

 「ああん?」

 

 ぼそっとスカーレットが漏らした言葉にゴルシの瞳が吊り上がった。もともとの悪癖に加えて、恋人のハズの自分以外の足を撫でまわしたことによりワンアウト、俺の店によくおハナさんと来ることでツーアウトがかかっていたわけだがスカーレットの言葉により被害者が他にもいるということで3アウトと相成りめでたく遂にゴルシの堪忍袋の緒が切れたようだ。いろいろぶっ飛んでいるゴルシであるが、仲間を非常に大切にするタイプなので、いかに自分の恋人とも言えどセクハラスレスレの行為を友達にすればそりゃ怒るよ。いくらトレーナーつっても相手10代の女の子だし、場合によっちゃ痴漢だよ。

 

 「うわーーーっ助けてくれーーー!」

 

 「うっせえ!一回アタシと山籠もりして性根を叩きなおしに行くぞ!待てーっ!」

 

 「ねえ、あれって・・・」

 

 「ええ、そういう理由付けして二人きりになりたいだけですわ・・・」

 

 「ごめんなさい、遅れました・・・あら?スぺちゃん、これって・・・?」

 

 「えっと・・・よくわかんない、です」

 

 結局グダグダになってしまったのであるが問題なのはそこで何やら難しそうな顔をしている取材陣御一行である。前半は非常にトレーナーとして含蓄のある言葉を履いていたやつが今は担当に、いや恋人に追い回されているわけであるからな。そして忘れていたわけであるが、今日ついてきてるのは俺だけじゃない。俺は横目でいや、顔ごとしっかりと今日の監督役であるたづなさんの方を見る。

 

 彼女はにっこりとした笑みを崩さず、俺と目が合うと、顔の前にピースをしてちょきちょき、と開いて閉じてを繰り返した・・・全カットですか、そうですか・・・ごめんなスピカ、折角取材されるチャンスだったのに。しょうがない、リギルのほうに行くか。多分・・・大丈夫だよね?

 

 

 結局、トレーニングの映像は一部スピカを使うことになったが大部分がリギルのトレーニングに差し替えられ、そこにカノープスなどのトレーニングと比較するという形に落ち着いた。まあ、初のテレビ取材にしては悪くないんじゃないか?あとは作成される番組次第ってことで。




 皆さん鋭いですね。ゼンノロブロイ担当は和歌浦トレーナーことトレトレーナーなわけです。番外編のサブキャラを本編に出したような不思議な感覚です。

 最後だけ見ると沖野さん踏んだり蹴ったりですけどあの悪癖は相当のことしないと治らなさそうな気がします。ゴルシちゃんから目を離すからやぞ。1秒後には何が起こるかわからんって言ってるし。

 次回は掲示板で行きたいなあ。どっち先に書こうかな


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今日の注目テレビ番組実況スレ315日目

 というわけでまずはウマ娘にそんなに興味がない層の掲示板です
 次話が何時ものウマ娘重症ファンスレになります


1:流離いの実況人

 今日のテレビ番組をゆるーりと実況していくスレです。出先で見られないあなたも、録画を忘れた社畜も仲良く行ってみよう!

 

2:流離いの実況人

 たておつ

 

3:流離いの実況人

 今日は何を実況するべかー?

 

4:流離いの実況人

 あるじゃん、超特番が。今日日珍しいゴールデンタイムを3時間ジャックする番組がさ

 

5:流離いの実況人

 あー、あれか。あのお仕事のやつ。

 

6:流離いの実況人

 今日の紹介ってなんだっけ?

 

7:流離いの実況人

 あれじゃん、トレーナーのお仕事をのぞいてみよう!みたいな。トレーナー・・・トレーナー?動物の?

 

8:流離いの実況人

 いやそっちじゃなくて。ウマ娘のトレーナーらしいぞ。よく知らんけど。テレビ欄には詳しいこと書いてないし

 

9:流離いの実況人

 ほーん、ってことは地方のトレセン学園か?ウイニングライブもろくすっぽ見ないからなあ。仕事先にはウマ娘いないしかかわりねーや

 

10:流離いの実況人

 ・・・ん?いや、今番組HP調べてみたけど中央トレセン学園らしいぞ。どう違うのかよくわからんけど

 

11:流離いの実況人

 まじで!?うっそだろ・・・?

 

12:流離いの実況人

 何を驚いてるのか知らんが一般人にもわかりやすく説明してくれ

 

13:流離いの実況人

 あい。といっても俺もファン歴浅いからそんなに詳しくない。ほら、ニュースとかでよく聞く有馬記念とかジャパンカップとかあるじゃん?あれってG1っていう一番すごいレースらしいんだけど、地方トレセンじゃ出られないんだよね。そのレースに出るためには中央のトレセンに所属する必要があって、所属出来るウマ娘はみんなエリート。つまり大学でいう東大とか早稲田に入学しないと出れないみたいな感じ。

 

14:流離いの実況人

 はぇー要は中央はエリートの集まりって認識でいいんすね

 

15:流離いの実況人

 そゆこと。基本的に撮影NGだからカメラ入ったのは奇跡じゃない?本スレっていうか沼にはまった人たちは放送決定からずっと祭り状態だよ

 

16:流離いの実況人

 なるほどなるほど。テレビはゲーム用モニター化してるからウマ娘のレース見てないんだよね。まあスポーツって認識でよろしい?

 

17:流離いの実況人

 大体そんな感じ。ただし走り切った後ウマ娘が歌って踊るウイニングライブというものがあるんだけどね

  

18:流離いの実況人

 あーそれは知ってる。レースでセンター決めるんでしょ?ウマ娘は美人ばっかりだから映えるだろうねえ。

 

19:流離いの実況人

 それなー。職場にウマ娘のお姉さんいるんだけどほんとに美人だから。狙ってる人たくさんいたよ

 

20:流離いの実況人

 いた?

 

21:流離いの実況人

 現役時代のトレーナーともうすでに籍を入れてて男性社員がみんな散っていった。

 

22:流離いの実況人

 あじゃぱー・・・そういうのよくあるらしいね?

 

23:流離いの実況人

 それは知らんが要は学生時代に年上の先生に恋をしたってことざんしょ?これだけ聞くと犯罪くせえな

 

24:流離いの実況人

 手出したらアウト、ちゃんと卒業後まで待てばセーフでしょう?お、始まるな

 

25:流離いの実況人

 ふんふん、まずはアナウンサーの兄ちゃんの挨拶からってこれ校門っすか!?でっか!?

 

26:流離いの実況人

 敷地広すぎひん?おっ今回の案内人の人だな。まあ良くも悪くも普通っぽいあんちゃんだ。はぇーウマチューバーなの?知らんなあ

 

27:流離いの実況人

 ウマ娘界隈の有名人かもね。

 

28:流離いの実況人

 理事長さん仕事で忙しいらしいからVTRで取材の趣旨を・・・子供?

 

29:流離いの実況人

 これがwwww理事長wwwwぶっへwwww

 

30:流離いの実況人

 あ、前エキシビジョンマッチで挨拶してたひとや。URA幹部なのは分かってたけど理事長なんだ

 

31:流離いの実況人

 ・・・御年何歳なんですかね?若すぎぃ!あと帽子の上にいる猫はなんぞや!?

 

32:流離いの実況人

 最初からぶっ飛んでんなトレセン学園。ってこのあんちゃんトレーナーじゃないんかい!

 

33:流離いの実況人

 トレセン学園は中高一貫・・・なるほど、中学生で寮生活とはこれまたキビシーな。はぇーでっかい校舎・・・というか運動場でかすぎ!

 

34:流離いの実況人

 さっそく校舎の中に入ったな。ほうほう、授業中と。普通の学校なんだな。そこらへんは

 

35:流離いの実況人

 まー一応学園って言ってますし、でも正直ずっと歌って踊って走ってるのかと思ってた。

 

36:流離いの実況人

 いくらウマ娘の身体能力が高いからってそれは無理だろ。

  

37:流離いの実況人

 かかわりねーし興味なかったら知らないよそりゃ

 

38:流離いの実況人

 えっ教室の中入ってくれんの!?

 

39:流離いの実況人

 おおっ!予想してたけどウマ娘がこんなにいるのはすごいわ!というか何人か見覚えあるような?

 

40:流離いの実況人

 すっげえ。いやすげえわ。黄金世代が揃ってる・・・!

 

41:流離いの実況人

 黄金世代ってなーに?

 

42:流離いのオタク

 説明しよう!黄金世代とは、この教室の中にいるスペシャルウィーク、エルコンドルパサー、グラスワンダー、セイウンスカイの4人を指す言葉でそれぞれレースで二つ名がつくほど活躍してるウマ娘なのだぁっ!

 

43:流離いの実況人

 あっテロップ出た。めっちゃつよいウマ娘ってことね了解。ちなみにオタク君、それぞれの二つ名を教えてくれたまへ

  

44:流離いのオタク

 スペシャルウィークは日本の総大将、エルコンドルパサーは怪鳥、グラスワンダーは不死鳥、セイウンスカイはトリックスターと呼ばれているゾ

 

45:流離いの実況人

 スペシャルウィークの二つ名ごっついな!?というかとてもそうは見えないくらいのてんぱり具合・・・かわいい

 

46:流離いの実況人

 わかる、かわいい。カメラ向けられてわたわたしてるのかわいい。

 

47:流離いの実況人

 案内人のあんちゃんがインタビューを募集、当てられたのは・・・エルコンドルパサーだ。つーかなんだそのマスクは。

 

48:流離いの実況人

 これ、ルチャリブレのマスクじゃね?覆面レスラーのようなあれよ。でもそれ被っててもかわいいのがわかるってすごいな。目のキラキラ具合半端ない。

 

49:流離いの実況人

 声もかわいいとか反則でしょ。チームリギルのエース?リギルというのはわからんがとにかくすごいのはわかった

 

50:流離いの実況人

 なお、調子に乗った発言だったためグラスワンダーの空気が重くなってる。怖がるエルコンドルパサー、意外とかわいい性格してんな

 

51:流離いの実況人

 うーん、話聞いてる限り普通の学校っぽいな。授業も普通・・・?いや進むスピード尋常じゃないぞ!?へー、トレーナーって教職も兼ねてんのか。

 

52:流離いの実況人

 すごいなトレーナー、ハイスペックじゃん。資格とるだけでも毎年専スレで5分の4くらいの受験者が御通夜になるくらい難易度高いらしいのに。それで教員免許持つってやべーわ

 

53:流離いの実況人

 おおっとここで爆弾発言。エルコンドルパサー、テレビを使って勝利宣言・・・だ・・・?

 

54:流離いの実況人

 えっ?何この、空気というか重さというか・・・?

 

55:流離いの実況人

 なんだろ、映像越しなのにプレッシャーやばい。冷や汗出てきた。

 

56:流離いの実況人

 案内人さんナイス!空気が戻った!ガチで心臓に悪いわなんだあれ

 

57:流離いの実況人

 あの空気の中入っていけるなんて案内人のあんちゃん図太いなwww

 

58:流離いの実況人

 というか中学生なのにあんな・・・飢えた肉食獣みたいな空気出せるとかウマ娘怖いな

 

59:流離いの実況人

 私、ウマ娘だけど一緒にしないでほしい。あんなの一部の上位だけだよ。地方トレセンなんか練習すら適当なのもいるんだから。上澄みも上澄み、頂点に近いウマ娘だけだって

 

60:流離いの実況人

 そうなのか。ウマ娘もいろいろってことか。

 

61:流離いの実況人

 なるほど、アスリートなんだな。アイドルと同じように思ってたわ

 

62:流離いの実況人

 まあライブもレースもどっちも大事だよ。私もそうだった、でもやっぱりレースのほうが好きかな

 

63:流離いの実況人

 うわっ授業終わって廊下でたらめっちゃウマ娘いる!

 

64:流離いの実況人

 さすがはトレセン学園、ウマ娘が2000人いるってのはマジっぽいな

 

65:流離いの実況人

 おおっとここで案内人さんに抱き着くウマ娘が!っていうか案内人さんさっきからウマ娘たちと仲良すぎない!?

 

66:流離いの実況人

 羨ましい・・・!あんなプロポーションがいい美人に抱き着かれるなんて・・・!

 

67:流離いの実況人

 おー、タイキシャトルだ。この前たまたまレースをテレビで見れたけど速かったわー

 

68:流離いの実況人

 えっレースの時めっちゃ凛々しい顔で突っ走ってたのに今見ると・・・大型犬みたい

 

69:流離いの実況人

 構ってオーラがめっちゃ出てる。こんなかわいいに決まってるやん。

 

70:流離いの実況人

 ようやくカメラに気づいた!ハウディってカウボーイ、いやカウガールかな?

 

71:流離いのオタク

 当たらずとも遠からず、彼女アメリカ出身でこっちに留学してるって話よ。

 

72:流離いの実況人

 へー、だから時々混じる英語がえらいネイティブなんだな。あっ高校生なんだ?わざわざ映りに来たってことね、えー・・・

 

73:流離いの実況人

 子供っぽくて可愛らしいやんけ。ここで移動か。ん?なんだ今のバクシンバクシンバクシーンって?音しか聞こえなかったけど?

 

74:流離いの実況人

 解説入ったwww写真で「一瞬で走り去るサクラバクシンオー」ってwwwカメラにも映らんほど早いんかwww

 

75:流離いのオタク

 短距離ウマ娘の中でも指折りらしいよ。普段は学級委員長として頑張ってるんだって

 

76:流離いの実況人

 だとするなら廊下は走るなよ委員長

 

77:流離いの実況人

 注釈「トレセン学園は静かになら廊下は走っていい」

 

78:流離いの実況人

 静かじゃなかったのでどっちにしろアウト!

 

79:流離いの実況人

 んでここが・・・図書室?ええ、図書館じゃん、街の図書館みたいな広さだよこれ。

 

80:流離いの実況人

 へー、シアタールームも併設。施設凄いなあ。あ、やっぱりレースの研究用なのね。そりゃそうか

 

81:流離いの実況人

 おお、今度はメガネっ娘なウマ娘だ!ザ・文学少女って感じでかわいいじゃん!

 

82:流離いの実況人

 お?まだデビュー前!初々しいなあ!そっか、全員デビューしてるわけじゃないよねそりゃあ

 

83:流離いのウマ娘

 私は地方だからあんまり知らないけど中央のウマ娘はデビューまでが物凄い厳しいって聞くわ。まずトレーナーと契約するところからなんだけどなんでもスカウト制だから才能と運、それと実力がないと声がかからないの。レースに出るために入ったのにレースにすら出られないウマ娘もいるらしいわ。・・・正直走れないのは地獄ね

 

84:流離いの実況人

 なんでトレーナーがレースに出るためにいるんだ?別に練習だけ見てもらえばいいじゃん。レースは自由にしてさ。

 

85:流離いのオタク

 そうしたらレースに出て勝つため、一瞬の勝利のために体をぶっ壊すウマ娘が出まくるぞ。それを止めるのがトレーナーの役割の一つだ。それにレース数には限りがある、言っちゃ悪いが弱肉強食だ。だから一人のトレーナーができるだけ多くのウマ娘を見るためにチームなんてものができたんだ。それでもトレーナーの数は足りてないみたいだけどな

 

86:流離いの実況人

 そっか、思い至らなかったけど彼女たち子どもじゃん。一人でそういったことができる子なんていないか。

 

87:流離いの実況人

 ウマ娘って感情が強いって聞くしな。自制できないだろうし、子供ならなおさら。プロの世界だな、まさに

 

88:流離いの実況人

 ゼンノロブロイちゃんか。小動物観あってファンになりそう・・・ん?

 

89:流離いの実況人

 趣味の話になったら本について高速詠唱し始めて草。文学少女ってのはいいえて妙だったなw

 

90:流離いの実況人

 うーん、濃い!濃ゆいわ!

 

91:流離いの実況人

 これでまだトレーニングしてないってマジ?

 

92:流離いの実況人

 つーかもう1時間も経ってんの?

 

93:流離いの実況人

 早いわあ

 

94:流離いの実況人

 CM明け後、場面とんででっかい食堂へ来ましたね

 

95:流離いの実況人

 おおふ、カフェテリアって食い放題!?マジで!?ウマ娘羨ましい!

 

96:流離いのウマ娘

 恥ずかしい話だけど私たちってよく食べるから、ビュッフェのほうが作るほうも楽なんだって。地方のトレセンも食べ放題だよ

 

97:流離いの実況人

 恥ずかしくなんかないっしょ。美味しいならたくさん食べればいい

 

98:流離いの実況人

 そう、今画面に映っている子のよう・・・に・・・?

 

99:流離いの実況人

 食いすぎぃ!?

 

100:流離いの実況人

 あ、オグリキャップじゃん。一時期すごいブームだったよね

 

101:流離いの実況人

 あー、まあ地方トレセンから下剋上を成し遂げたわけだしなあ。でもなんか・・・垢ぬけないというか変わらない感じする

 

102:流離いの実況人

 オグリキャップ、笠松の星・・・!元気そうでよかった。でも食べすぎじゃない?ウマ娘ネキもこうなん?

 

103:流離いのウマ娘

 いやこれは無理。食べれないよ

 

104:流離いのウマ娘2

 む~り~!お腹破裂しちゃう!

  

105:流離いの実況人

 まあオグリキャップの腹も破裂しそうなくらい膨らんでるけど。というかえげつない速度で飯が消えてく

 

106:流離いの実況人

 食ってる姿気持ちいいな。料理人冥利に尽きるだろこんなの

 

107:流離いの実況人

 そしてまるで戦場のような厨房の中で・・・紹介しているうちに案内人さん捕まったーーー!!

 

108:流離いの実況人

 ※しばし料理をする案内人。つーか何だこの人、速度が一人だけ倍速みたいなんだけど

 

109:流離いの実況人

 もしかしてもともと厨房で働いてたのかしら?

 

110:流離いの実況人

 手際がいいのは確か。つーか案内人さんが料理しだしてからウマ娘が待ってるんだけど

 

111:流離いの実況人

 人気者だねえ。きっとおいしいんだろうな・・・なんか緑の秘書さんも食ってるけど

 

112:流離いの実況人

 やっとこさ脱出ぅ!案内人さんボロボロで草。次は、おお!トレーニング!

 

113:流離いの実況人

 トレーニングかぁ!何やってるんだろ?やっぱり走り込み?

 

114:流離いの実況人

 へー、スタジオなんてあるんだ。中にいるのは・・・

 

115:流離いのオタク

 すっげえ!マルゼンスキーだ!引退してるのに!他も有名ウマ娘ばっかりじゃん!でもつながりがないような・・・?

 

116:流離いの実況人

 スマートファルコン?っていう子あだ名ファル子なんだwアイドルっぽいw

 

117:流離いの実況人

 へ?アイドルユニットじゃなくてウマドルユニット?逃げウマ娘だけの逃げ切りシスターズ?そんなグループいたっけ?つーか逃げウマってなによ?

 

118:流離いのオタク

 知らんなあ。俺もまだまだって非公認かいっ!でもファンになりたい!サイリウム振りたい!推しの一人のミホノブルボンがいるうううううう!!!!

 

119:流離いのウマ娘

 逃げウマ娘っていうのはウマ娘の脚質、作戦の一つで、スタートから一番前を走ってそのまま1位を取ることだよ。もちろん追い抜かれない最高速とロングスパートに耐えるスタミナ、レースコントロールする頭脳がいる才能が試される走り方なんだ。王道なのは先行か差しだからね

 

120:流離いの実況人

 ほほー、なるほど。えっ歌ってくれるんですか!?

 

121:流離いの実況人

 ウイニングライブじゃん!

 

122:流離いの実況人

 うおっ流石にダンスも歌もうまいな!?つーか初めて聞く曲・・・

 

123:流離いのオタク

 知らないなあ。割とウイニングライブ聞いてるほうだと思ったんだけど・・・曲名はなんだろ

 

124:流離いの実況人

 ・・・オリジナル曲!?マジで?言っちゃ悪いけどレースより気合入ってない!?

 

125:流離いの実況人 

 これもしかしたらアイドル事務所がスカウトに来るぞ。この完成度でアイドルやりたいって言ってるなら絶対

 

126:流離いのウマ娘

 流石に学園に所属してるうちは無理でしょう。URAを敵に回す覚悟があれば別でしょうけど

 

127:流離いの実況人

 んな無茶な。でもいい曲だ。CD売るなら買いたいなあ

 

128:流離いの実況人

 逃げ切りシスターズ、オボエタ、オボエタ。個人的にこのアイネスフウジンっていう子すき

 

129:流離いの実況人

 俺はサイレンススズカかなあ。物静かでかわいい、清楚な感じする。

 

130:流離いの実況人

 なんかこのマルゼンスキーっていう子言動がバブルっぽいな。動きもなんかパラパラちっくw

 

131:流離いのオタク

 ちなみにそのマルゼンスキー、皇帝が来る前の日本一だからな。脚質も速すぎて結果的に逃げになってるって言われてるくらい早いぞ

 

132:流離いの実況人

 日本チャンピオンですか!?やばすぎ

 

133:流離いの実況人

 見送られて次に来たのは・・・筋トレ用のジム?やっぱ筋肉はすべてを解決するんやなって

 

134:流離いのウマ娘

 当然。ただ走ってレースに勝てるなら私たちはそこまで熱中しないよ。努力してやり切った上で競い合いたいんだよ

 

135:流離いの実況人

 そりゃなあ。普通のスポーツマンでもそう思うだろ。って何この子!?めっちゃかわいいいいいいい!!!

 

136:流離いの実況人

 なんかおどおどしてるけど一本芯が通ってる感じの顔してる。おっきな耳がすごい可愛い!

 

137:流離いのオタク

 ライスシャワーだ!現役最強格のステイヤー!スタミナなら他の追随を許さない黒い刺客!まさかテレビで見れるなんて・・・

 

138:流離いの実況人

 おじさま?お兄様じゃないんだwww

 

139:流離いのオタク

 お兄様はトレーナーの事らしい。でもライトオタクな自分には案内人さんとの関係はよくわかんない。筋トレ中か

 

140:流離いの実況人

 はぇー、ってバーの重さ間違ってない?

 

141:流離いの実況人

 ひぃふぅみぃ・・・片方150kgで両方合わせて・・・300㎏?

 

142:流離いの実況人

 ちょっとトレーナー!こんな華奢な子が持ち上げられるわけないでしょー!

 

143:流離いのウマ娘

 いや、たぶん行けます。私でも持ち上げることならできるし。でもトレーニングとしては使えないです。というかこの子みたいに軽いなんて口が裂けても言えません。さすがはG1ウマ娘、憧れます

 

144:流離いの実況人

 えっそんな軽々持ち上げるんですか・・・?そして普通にスクワットできるんですか・・・?

 

145:流離いの実況人

 俺は誓う。ウマ娘にケンカ売ったりセクハラ行為など絶対にしないと。蹴られたら死ぬ(確信

 

146:流離いの実況人

 ワイも

 

147:流離いの実況人

 おいどんも

 

148:流離いの実況人

 言っちゃ悪いけどウマ娘って車持ち上げられるからこんなパワーあるのは納得できる。けど画面のインパクトやばすぎ。

 

149:流離いの実況人

 後半に差し掛かってきたな。

 

150:流離いの実況人

 おお、ついに外か・・・・んん?

 

151:流離いの実況人

 俺の目がおかしくなったのか?

 

152:流離いの実況人

 とても大きい、タイヤを引っ張っている・・・?えっえっ5トン!?5トン!?さすがにおかしいだろ人型生物がやっていいことじゃないよ!?

 

153:流離いのウマ娘

 うわ、中央でもやるんだあの根性トレーニング・・・

 

154:流離いの実況人

 ウマ娘ネキも同じことできんの!?

 

155:流離いのウマ娘

 私がやったのは2トンだけどできるっちゃできる。でも5トンは現役時代でも無理。頭おかしい。一歩間違ったら怪我するのに、トレーナーさんぶっ飛んでるよ。私だったらつぶれてる。中央ってやっぱすごいわ。

 

156:流離いの実況人

 さ、さすがは日本総大将・・・

 

157:流離いの実況人

 こんどはリギル?さっきのはスピカ?チームの名前なのか。やってるのは・・・ショットガンタッチってはっや!?えっウマ娘パワーで投げられたボールに追いついてキャッチ!?すっげえ!

 

158:流離いの実況人

 おっさっきのタイキシャトルじゃん。踏み込みやべえ!?地面えぐれたぞ!?爆速だ!?

 

159:流離いの実況人

 その隣で・・・なんだあの葦毛の長身ウマ娘は。トレーナーを頭陀袋もって追い回してるけど

 

160:流離いの実況人

 知らん。それよりもトレーニングだ。併走って一緒に走るってこと?流す速さじゃないけど。めっちゃ早いけどこれ本気じゃないってマ?

 

161:流離いの実況人

 こんどはカノープス?やってるのは・・・瓦割?なんで?

 

162:流離いのウマ娘

 パワーのトレーニングだよ。腕の振りと力みのタイミングを合わせて力の込めと抜きをスムーズにするためにやるの

 

163:流離いの実況人

 かわいい女の子が試し割用じゃなくてガチの屋根に使う瓦を割っているのが画面の暴力すぎるわ

 

164:流離いの実況人

 今気づいた、リギル、スピカ、カノープス、これ星の名前だわ

 

165:流離いのオタク

 トレセン学園のチームは伝統的に星の名前からとられてるらしい。・・・やっと終盤か。濃すぎ、中央って魔境なんだな

 

166:流離いの実況人

 や、やっとED・・・!

 

167:流離いの実況人

 レス数少ないけどみんな見入ってたんやな

 

168:流離いの実況人

 うん、これ片手間で実況無理

 

169:流離いの実況人

 というかトレーナーの仕事多すぎない?途中紹介されたけどさ

 

170:流離いの実況人

 ウマ娘のスカウト、管理、レースへの申請、書類整理、場合によっちゃ授業、メンタルケア、トレーニングの管理、そして研究者でなくてはならない

 

171:流離いの実況人

 ハードルたっかいわ!そりゃ増えないわけだよ!

 

172:流離いのオタク

 中央のライセンスは厳しい&厳しいからなあ。だけどなれれば超高給、場合によっちゃ億万長者よ。そんな不純な動機な奴は面接で落とされるらしいが

 

173:流離いのウマ娘

 走るのは好きだけど私たちはお金儲けの道具じゃないんだよー。ちゃんと私たち自身を見てくれる人にトレーナーになってほしいな

 

174:流離いの実況人

 ウマ娘、奥が深いわ。これからはきちんとレースも見よ

 

175:流離いの実況人

 んだんだ。こんだけ頑張ってるのはわかったから、その成果は見てやらんと

 

176:流離いの実況人

 ワイ将、スペシャルウィークに一目ぼれ、貯金を開放することを決意

 

177:流離いの実況人

 ライスシャワーちゃんかわいかったなあ

 

178:流離いの実況人

 ハルウララ見てみたかった

 

179:流離いの実況人

 ライスシャワーと同じトレーナーなんでしょ?なんで出なかったんだろ?

 

180:流離いのオタク

  多分撮影日別の地方にいたらしい。目撃情報がある

 

181:流離いの実況人

 なるほど・・・なんだこの被り物!?

 

182:流離いの実況人

 て、蹄鉄ヘッドトレーナー・・・?こんなんが中央を代表するトレーナー・・・?

 

183:流離いの実況人

 これが代表ならあのゼンノロブロイの担当だというトレーナーも相当な変態に違いない

 

184:流離いの実況人

 とんでもねえ風評被害で草

 

185:流離いの実況人

 なんだよMrモルモットって・・・めっちゃ光ってるやん。人間なんか?

 

186:流離いの実況人

 頭陀袋のウマ娘はゴールドシップか・・・なに?トレセン3大奇人?

 

187:流離いの実況人

 中央は変態の集まり、オボエタ

 

188:流離いのオタク

 違うから!そいつらが特別なだけだから!

 

189:流離いの実況人

 このインパクトの前では何を言っても意味ないぞ

 

190:流離いのウマ娘

 ・・・中央を目指してる妹、止めようかな

 

191:流離いの実況人

 やめて差し上げて

 

 

 

 

 

 




 結局バレるトレセン学園3大奇人、おいたわしやトレセン学園・・・


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【我ら全員】ついに発表されるトレセンの中を見守るスレpart125【ウマぴょいしちゃう】

 お待たせしました。アオハル杯に夢中になってましたが私は元気です。


1:名無しの沼人

 このスレはぁ!!!放送をあと15分後に控えている「あの仕事ってどうなの?特別編!」をスレのみんなで見て感想を言い合うスレでイエエエエエエエエエ!!!!

 

2:名無しの沼人

 テンションたけえ

 

3:名無しの沼人

 いやでもわかる。ウマ娘を追い続けてはや15年、ずっと知りたいと思っていた秘密のヴェールに包まれた中央トレセンの中が公開されるんだからな!

 

4:名無しの沼人

 発表時から数えて100スレ以上消費してんの笑う

 

5:名無しの沼人

 しょうがない。我らはウマ娘の話題には敏感に反応するからな

 

6:名無しの沼人

 しかもそれが史上初の試みなら祭り状態も致し方なし

 

7:名無しの沼人

 でもどうして急にトレセンの中にカメラを入れるの許可したんだろうな?

 

8:ジームイン

 説明しよう!

 

9:名無しの沼人

 お前は・・・トレセンの事務員!?常駐スレにいないなんて・・・

 

10:ジームイン

 いや私人間よ?仕事もしてるし常駐してないよ。それはともかく。今回トレセンの中にカメラを入れるのは、ホースリンクの店長さんのせいです

 

11:名無しの沼人

 え?あのひと?接点がない・・・はっ!?

 

12:名無しの沼人

 そうか!この前のテレビ出演!

 

13:ジームイン

 そゆことー。これは別に喋っていいって言われてるから言うけど、あれ結構反響よかったらしくて、人間にもウマ娘にもさ。そんで、テレビカメラを入れることで現役ウマ娘のモチベーションが上がるならいいんじゃないって理事長が提案したのがそのまま通ったんだよ

 

14:名無しの沼人

 なるほど、ところで店長っていつになったらスパチャオンにするの?毎度毎度の動画ただで見るのもったいないのばっかりだから課金させてほしいんだけど

 

15:名無しの沼人

 そうだ!課金させろ!そんで従業員雇って予約数増やせ!この前もその前も落ちたんだよおおおおおお!!!!

 

16:名無しの沼人

 このスレもそうだけど行けた人のほうが珍しいからねえ。悲鳴が聞こえるわ

 

17:名無しの沼人

 5回当選のワイ、高みの見物

 

18:名無しの沼人

 は?ゆるさん

 

19:名無しの沼人

 ぶっころがしてやる

 

20:名無しの沼人

 過激ぃ!

 

21:ジームイン

 いやそれは多分しないんじゃない?店長さん激務だからそれに伴ってお給金お高いし、実際いくらかは知らないけど。お金に困ってなけりゃ動画広告で稼いだりもしないんでしょ?ま、頑張って予約してねー

 

22:名無しの沼人

 金はあるのにチャンスがないもだもだをどう発散すればいいのだ

 

23:名無しの沼人

 URAの一口支援に突っ込んでくれば?

 

24:名無しの沼人

 今月上限にいったんだよ!ウマ娘のために働いてるのに課金できない苦しみ。近所のぱかプチは枯渇させたしなあ・・・

 

25:名無しの沼人

 石油王兄貴はいっそのこと土地買ってレース場的な練習施設を作ればええんちゃうか

 

26:名無しの沼人

 それだわ。3億くらいあればいけるか?

 

27:名無しの沼人

 ガチ大富豪で草

 

28:名無しの沼人

 いやしかし!今日はほんとに楽しみだな!トレセンの中なんて職員とかそういうのの伝聞ばっかりじゃん?きちんと映像に残るってことはお前ら!準備は!?

 

29:名無しの沼人

 任せろ。この日のために最高音質のスピーカーと大画面テレビを購入した

 

30:名無しの沼人

 4K録画の準備はオッケー!

 

31:名無しの沼人

 念のため5台のレコーダーで録画予約してる

 

32:名無しの沼人

 このスレ富豪多すぎんか?

 

33:名無しの沼人

 それ以外趣味がないっていうかこれ以上の趣味を見つけることができない

 

34:名無しの沼人

 ウマ娘は沼だぞ。お前もよく分かってるだろう?

 

35:名無しの沼人

 よく存じておりますとも

 

36:名無しの沼人

 きた!きたきたきた!始まるぞオラァッ!

 

37:名無しの沼人

 よっしゃああああああ!!!

 

38:名無しの沼人

 お、この門構えは親の顔より見て尚入ることは許されないトレセンの門!初手からテンションあがるぅ!

 

39:名無しの沼人

 ここでいつものリポーター、あ!この人この前ナイスネイチャの勝利レース実況してた人だ

 

40:名無しの沼人

 新人の割に熱い実況で有名な人だな・・・・て、店長!?なぜここに!?

 

41:名無しの沼人

 店長!店長じゃないか!そういえばこの人トレセンの職員だったっけ

 

42:名無しの沼人

 というか撮影日ってでてるけど喫茶店休みでは?

 

43:名無しの沼人

 休日出勤だああああああ!!!!お疲れ様です!!!

 

44:名無しの沼人

 ・・・案内人?ってことは店長もう一回テレビ出てくれるんですか!?やったああああ!!!ウマ娘のかわいいポイントがふえるううううう!!!

 

45:名無しの沼人

 でもなんも紹介でないな?もしかしてほんとに1職員として案内だけするつもりか?

 

46:名無しの沼人

 ウマチューブの話題もさらっと流したし店長これ宣伝しないつもりだ

 

47:名無しの沼人

 まあこれ以上競争率増えても困るし

 

48:名無しの沼人

 でもウマ娘の魅力は広まってほしいいいいい!!!

 

49:名無しの沼人

 やっぱ理事長のウマ娘を身近に戦略か。そういえばトレセン紹介番組じゃなくてお仕事紹介番組だったな。トレーナーの事がメインなのか

 

50:名無しの沼人

 いいなあ。トレーナー試験さえ受かればなあ

  

51:名無しの沼人

 難易度高すぎやろどうなってんのさ

 

52:名無しの沼人

 脱落率9割だもんな

 

53:名無しの沼人

 まず大学院卒、パーソナルトレーニング資格、カウンセラー資格、スポーツ医学、ウマ娘工学、英語の読み書き、これができるのが前提。マルチリンガルは珍しくないとかな

 

54:名無しの沼人

 ハードルたけえよなあ。でも人間がウマ娘を指導するならそのくらいいるのか?

 

55:名無しの沼人

 おっさっそく校舎の中へ!でっけえ校舎だなあ。あっこれで中等部?

 

56:名無しの沼人

 つまり高等部は別なんですね

 

57:名無しの沼人

 おお、教室の中にまで入ってくれんのか・・・んんん!?

 

58:名無しの沼人

 すすす、スペシャルウィークだああああ!?それにセイウンスカイ!?エルコンドルパサーにグラスワンダーまで!?

 

59:名無しの沼人

 ひいいいまぶしくて目がつぶれるうううう

 

60:名無しの沼人

 制服可愛いなトレセン学園。運動服か勝負服のどっちかしか見れないから新鮮だわ

 

61:名無しの沼人

 ここが桃源郷か・・・?

 

62:名無しの沼人

 というかほかのウマ娘もよく見るとみんな調子よさそうなのばっかりじゃん。これでレース出れないのかぁ・・・

 

63:名無しの沼人

 てんぱるスペシャルウィーク、非常にかわいい。あとで繰り返し目に焼き付けよう

 

64:名無しの沼人

 ちらちらとテレビカメラと店長を交互に見てるな。店長がきて嬉しいけどテレビでてんぱってる?

 

65:名無しの沼人

 そしてエルコンドルパサー、めっちゃわくわくした顔してる。グラスワンダーもマイペースだな

 

66:名無しの沼人

 そして我関せずに眠るセイウンスカイ。いやでももちもち寝顔でかわいい

 

67:名無しの沼人

 結論、みんなかわいい

 

68:名無しの沼人

 終わり、閉廷!以上!みんな解散!

 

69:名無しの沼人

 ・・・ん?教壇にいるのカノープストレーナーじゃん!

 

70:名無しの沼人

 えっ?トレーナーの中には教員免許を持ってる人がいる?優秀すぎんでしょ・・・

 

71:名無しの沼人

 たまたま教育学部だったのかな・・・?

 

72:名無しの沼人

 やったインタビューだ!どの子もかわいいし誰が・・・エルコンドルパサーか。まあ納得、かな?

 

73:名無しの沼人

 うわ、ライブの曲聞いて分かってたけどかわいい声してんなやっぱり

 

74:名無しの沼人

 ウマ娘ってだけでも容姿は約束されてるからなあ。でもマスク着けてもかわいいっていうのはなかなかないでしょ

 

75:名無しの沼人

 ・・・リギルのエース、というか東条トレーナー担当の中だと現在タイキシャトルじゃなかったっけ?長老様の担当も含めるならナリタブライアンだろうけど

 

76:名無しの沼人

 グラスワンダーの様子を見るにフカシかな?調子乗っちゃってかわいい!

 

77:名無しの沼人

 おおっとここで勝利宣言!

 

78:名無しの沼人

 ・・・おっ?おおおお!この重圧は!

 

79:名無しの沼人

 G1レースの時のと同じ!ゲートに全員入った時の空気だ!やっぱりウマ娘から出てたんだな!

 

80:名無しの沼人

 これで中学生かあ・・・高校生とか、ましてや皇帝にもなったらどれだけの・・・

 

81:名無しの沼人

 店長さん果敢に飛び込んでなだめた!エルコンドルパサーの顔を見るについやっちゃったかんじか

 

82:名無しの沼人

 周りのウマ娘も動じてないしやっぱり中央はデビューしてなくてもすごいんかな

 

83:名無しの沼人

 おお、店長さんいいこという!そうだよ!俺たちはレース見に来てんだよ!

 

84:名無しの沼人

 ウイニングライブも大好きだけどそれよりもウマ娘たちが必死に1着を目指すレースが好き!アイドルじゃなくて競技者!そうそう!

 

85:名無しの沼人

 カノープスのトレーナーに挨拶して天国から脱出と

 

86:名無しの沼人

 天国てwww・・・天国やったわ

 

87:名無しの沼人

 

 右見ても左見てもウマ娘。天国ですわ

 

88:名無しの沼人

 ちょこちょこ重賞とかオープンでみたウマ娘がいる!それよりも、それよりもおおおお!!!

 

89:名無しの沼人

 デビュー前のウマ娘がこんなにたくさん・・・!すっげえ!どの子も強そうだあ

 

90:名無しの沼人

 デビュー戦が楽しみだ!ってああああああああああ!?

 

91:名無しの沼人

 タイキシャトルだ!しかもあんなに激しくハグを・・・!羨ましいいいいい!でも笑顔がかわいいいい!!!

 

92:名無しの沼人

 ウマ耳が犬耳に見えてくる勢い。ていうかタイキシャトルさん確か高等部だったのでは?

 

93:名無しの沼人

 店長に会いに来たと。ほうほう、いいなあ店長。あ、リポーターさんさすが。重馬場のタイキシャトルは早いよねえ。

 

94:名無しの沼人

 大雨の中の無敵、言いえて妙

 

95:名無しの沼人

 ・・・一瞬なんか映ったわ・・・ええっと、多分サクラバクシンオー。

 

96:名無しの沼人

 当たってて草

 

97:名無しの沼人

 鳴き声が特徴的すぎる。そして撮れなかったが故のテロップ処理。なんで廊下を走ってるんだ。廊下の床、足跡ついてんぞ

 

98:名無しの沼人

 と、図書室?いや、複合レジャー施設でしょ?

 

99:名無しの沼人

 トレセン学園の叡智の結晶かあ。なんかどっかで見たことある同志っぽいピンク髪がちらちら見える

 

100:名無しの沼人

 研究用っぽいな?デッサンの。レースじゃないんですか同志

 

101:名無しの沼人

 でも納得。ん?見たことないウマ娘だ。なんというかこう・・・文学少女?えっ!?デビュー前なのにインタビューしてくれるんですか!?

 

102:名無しの沼人

 ゼンノロブロイ・・・覚えた!よし、得意な距離は、中、長距離か。なるほど来年のトゥインクルシリーズが楽しみだ!勝負服見てみたい!

 

103:名無しの沼人

 G1に出ないと見られないからね。個性爆発勝負服本当に好き、あいしてる

 

104:名無しの沼人

 こんなかわいい子を育成できるなんて担当トレーナーは幸せ者だなあ

 

105:名無しの沼人

 さあ次のシーズンが楽しみになったところで今度は、学食だ!たしかビュッフェスタイルだという話だが

 

106:名無しの沼人

 おお、どれもこれもうまそう。彩りも豊かでさっすが中央、金かかってるわ

 

107:名無しの沼人

 自分でコントロールするのもトレーニングだという話の中黙々と大量に食い続けるのが一人

 

108:名無しの沼人

 お、お、オグリキャップ・・・!ホースリンクにはたまに働きに来るのだけど人気がありすぎて抽選倍率がすごいことになるオグリキャップだ・・・!

 

109:名無しの沼人

 あかん、ファンだったんだ俺。いや今でもだけど。変わってなくて、涙出てくる

 

110:名無しの沼人

 初期に発売されたぱかプチ、未だに机の上に飾ってあるぜ・・・!

 

111:名無しの沼人

 引退レースの入場券、額縁に入れて飾ってるよ。ほんと、名ウマ娘だった。

 

112:名無しの沼人

 感動したいんだけど食事スピード速すぎてそれどころじゃない

 

113:名無しの沼人

 あの量がどこに収まるんだ。膨れてるから収まってないのか

 

114:名無しの沼人

 お腹叩いてみたい。いい音しそう

 

115:名無しの沼人

 114は追放だ

 

116:名無しの沼人

 ウマ娘に危害を加えるような発言をするとは不遜な輩め

 

117:名無しの沼人

 それ普通にセクハラやからな

 

118:名無しの沼人

 お、厨房の中も案内してくれんの?でもこれトレーナーと関係・・・あるんだ!?

  

119:名無しの沼人

 は?トレーナーと話し合ってメニュー決めてんの?つまり栄養まで管理してるんだ!?そういう資格持ったトレーナーが協力してんのね、なるほど

 

120:名無しの沼人

 ここで快調に解説してた店長、歴戦のコック的なおばちゃんに捕まる。

 

121:名無しの沼人

 取材中なのに本職に復帰する店長。店長飯人気すぎだろw列できてんぞwwそして緑の秘書さんがwww

 

122:名無しの沼人

 取材に同行していた理事長秘書、狙ったように昼食をとるw

 

123:名無しの沼人

 やけくそ店長、倍速で動くが追いつかないのでさらに加速、包丁さばきが残像をまとい始める

 

124:名無しの沼人

 火を通す作業だけが普通の速さだな。うわさを聞き付けたのかウマ娘が増える増える。

 

125:名無しの沼人

 1時間後のテロップ、するとそこには満足そうな秘書さんたちとウマ娘、ヤムチャポーズで倒れる店長の姿が!どこからか現れたスーパークリークが膝枕をしている。実に羨ましい。オグリキャップの腹がとんでもないことになっとるわ

 

126:名無しの沼人

 お疲れ様店長。

 

127:名無しの沼人

 案内再開、店長の歩みが生まれたての小鹿のようである。そして、お待ちかねのトレーニングだああああ!

 

128:名無しの沼人

 走ってるウマ娘がみれるううう!!!

 

129:名無しの沼人

 ら、ライブスタジオ?やっぱりあるんだ!流石中央、機材も一流!

 

130:名無しの沼人

 部屋の中にいたのは・・・・へ?

 

131:名無しの沼人

 えっ

 

132:名無しの沼人

 ふぁ?

 

133:名無しの沼人

 ・・・ファッ!?

 

134:名無しの沼人

 一瞬意識とんだ

 

135:名無しの沼人

 わかる、やばい

 

136:名無しの沼人

 スマートファルコン、ミホノブルボン、サイレンススズカ、アイネスフウジン、マルゼンスキー・・・すげえ、逃げウマ娘の最上位層じゃねえか・・・!

 

137:名無しの沼人

 関連性が逃げウマ娘であることしか感じられないメンツ、でもこれが一度に見られるなんて目が足りない

 

138:名無しの沼人

 衝撃的すぎて忘れてた、見てるトレーナー、ゼンノロブロイのトレーナーなのか・・・

 

139:名無しの沼人

 ゼンノロブロイは休みだからお願いしてきた子たちのトレーニングを見てる、通称「歌の先生」・・・?・・・んん?

 

140:名無しの沼人

 どっかで聞いたことあるような

 

141:名無しの沼人

 こいつトレセン系スレにいるトレトレーナーじゃね?

 

142:トレトレーナー

 呼んだ?

 

143:名無しの沼人

 名を呼べば来るのか(困惑

 

144:名無しの沼人

 なあ歌の先生、これお前なん?

 

145:トレトレーナー

 まっさかー

 

146:名無しの沼人

 あやしい

 

147:名無しの沼人

 めっちゃあやしい

 

148:ジームイン

 こいつがゼンノロブロイさんのトレーナーやぞ

 

149:トレトレーナー

 事務員貴様!裏切ったなあああああ!?

 

150:ジームイン

 ウマ娘のトレーナーになることでどうせ名前が知られるんだ。あの子は素質あるんだから今のうちにファンを集めとけ、な?テレビ出た時点で一緒だし、それともなにか?お前の担当への愛は掲示板にバレた程度でかすんでしまうようなものだと?

 

151:トレトレーナー

 そんなわけないだろ!見てろ、絶対ゼンノロブロイちゃんとクラシック3冠、ひいてはシニア3冠だってとってやる!俺の担当ウマ娘は世界一強くてかわいいんだからな!なので、応援お願いします!

 

152:名無しの沼人

 担当への愛を叫ぶトレーナーの鏡。応援してるぜ!

 

153:名無しの沼人

 で、結局この集まりって何繋がり?ウマドル?

 

154:トレトレーナー

 ウマ娘のアイドル、ウマドルを目指しているスマートファルコンちゃんがメンバーを集めたトレセン学園非公式ウマドルユニット「逃げ切りシスターズ」の面々のダンス&ボイストレーニングに付き合ってたんだ。テレビ来るとは知ってたけどまさか映るとは思ってなかったんだけどね

 

155:名無しの沼人

 なるほど、非公式ユニット・・・?売り出せばマジで一世を風靡できるレベルの集まりが、非公式・・・?

 

156:名無しの沼人

 トレセン学園はアイドル育成校じゃないからしょうがないのだけどもだもだする

 

157:名無しの沼人

 へっ!?なに!?一曲披露してくれんの!?ウイニングライブじゃん!この5人でやってくれるなんて今までないぞ!?豪華すぎる!

 

158:名無しの沼人

 ・・・

 

159:名無しの沼人

 ・・・

 

160:名無しの沼人

 ・・・

 

161:名無しの沼人

 ・・・いい

 

162:名無しの沼人

 ああ、めっちゃいい

 

163:名無しの沼人

 曲もさることながらダンスとかフォーメーションとかウイニングライブの動きの応用が効いていてなおかつアイドルっぽい動きだ

 

164:名無しの沼人

 やるじゃん歌の先生!

 

165:トレトレーナー

 ちなみにこの曲、つてを使ってウイニングライブ作詞、作曲をしている先生に作ってもらってたり。他にも持ち歌を持ってる子もいます

 

166:名無しの沼人

 ままままマジで!?

 

167:名無しの沼人

 なんという爆弾発言!聞きたい!聞きたい!

 

168:ジームイン

 ああ、優秀な子に理事長からご褒美でもらえる自分イメージの曲ね。私はトウカイテイオーの曲が好きかな

 

169:名無しの沼人

 ああああああああああああああああ!!!!聞きたい!

 

170:トレトレーナー

 スピカの先輩に練習付き合ってやってくれって言われたときに聞かせてもらったなあ。確かにいい曲だった。

 

171:名無しの沼人

 これが・・・格差・・・!

 

172:名無しの沼人

 ワイ14歳、トレーナーを本格的に目指すことを決意

 

173:名無しの沼人

 頑張れ若人

 

174:名無しの沼人

 しかしまあ、カメラワークがガチだな。角度いくつあんだよ。しかもどれも完璧なとり方だし

 

175:名無しの沼人

 逃げ切りシスターズ、メジャーデビューを楽しみにしております

 

176:名無しの沼人

 歌の先生、プロデューサーやってあげて♡

 

177:トレトレーナー

 無茶言うな

 

178:名無しの沼人

 頑張れ頑張れ出来る出来る絶対できるって!なんでそこでやめるんだそこで!そう、これからお前は

 

179:名無しの沼人

 富士山だ!

 

180:トレトレーナー

 何言ってんだこいつ

 

181:名無しの沼人

 通じないのか・・・・

 

182:名無しの沼人

 これがジェネレーションギャップ・・・

 

183:名無しの沼人

 おっと次が来たぞ・・・筋トレルームだ!ん?あれは・・・!

 

184:名無しの沼人

 ライスシャワーだああああ!!!あああああかわいいいいいい!!!歩き方すらかわいい!天使!

 

185:名無しの沼人

 相変わらずおじ様扱いの店長

 

186:名無しの沼人

 さっすが現役最強格ステイヤー、取材慣れしてる

 

187:名無しの沼人

 へー、バーベルスクワット。やっぱ筋トレは大事なんだな。

 

188:名無しの沼人

 300㎏が軽いってマジ・・・?知り合いのウマ娘はトレーニングの時200㎏だったけどこれで軽いって・・・?

 

189:名無しの沼人

 店長に応援されて張り切るライスシャワー、めっちゃ軽やかに持ち上げてスクワット開始。

 

190:名無しの沼人

 うーん、すらっとした小柄な女の子なのにあんな重いものを持ち上げてるなんて・・・しゅごい

 

191:名無しの沼人

 あれ?よく見るとメジロライアンいない?

 

192:名無しの沼人

 あ、ほんとだ!いるいるって場面転換しないでええええええ

 

193:名無しの沼人

 おれ・・・ファンだったのに!インタビューもなしなんてあんまりだあああああ!!!

 

194:名無しの沼人

 プラスに考えろ・・・トレーニングの邪魔にならないためにわざとしなかったのだと・・・!

 

195:名無しの沼人

 ひどいよ・・・うおおおおん・・・

 

196:名無しの沼人

 あっスペシャルウィークだ

 

197:名無しの沼人

 まじで?

 

198:名無しの沼人

 この手のひらの返しようよ

 

199:名無しの沼人

 へー、タイヤ引きってでっかああ!?

 

200:名無しの沼人

 根性を鍛えるトレーニング・・・?根性を鍛える前に体が壊れそうなんですがそれは

 

201:名無しの沼人

 5トン・・・車とかの重量じゃん。車よりも引っ張りにくそうだしさ

 

202:名無しの沼人

 脚力やべえな。さすがは日本の総大将。浮かぶ汗すら美しい。

 

203:名無しの沼人

 もしかしてこれがあの末脚の秘訣か・・・?棒立ちウイニングライブから成長したな・・・!

 

204:名無しの沼人

 黒歴史をさらすのはやめて差し上げろ

  

205:名無しの沼人

 あっやっぱりトレーナーがいないとだめなトレーニングなんだね。安心した。あんなのをウマ娘一人でやってるとか怖すぎるわ

 

206:名無しの沼人

 おおお!リギルだ!ショットガンタッチって投げるのナリタブライアン!?で走るのは・・・きた!マイル王者!

 

207:名無しの沼人

 タイキシャトルすげえ!レースじゃ遠くからでしかわからないけど、踏み込みとかフォームとかさ・・・

 

208:名無しの沼人

 ああ、えも言われない美しさを感じる。躍動感っていうだけじゃなくてあの加速感、半端ねえ

  

209:名無しの沼人

 あっマチカネタンホイザ!ってことはカノープスだ!・・・瓦割?

 

210:名無しの沼人

 みたいだな。かわいいな相変わらず・・・ふんすと息を整えて・・・えっ何の掛け声・・・くっそかわいい

 

211:名無しの沼人

 「えい、えい、むん!」でぱっかーん!か。何その掛け声完璧じゃん。次は、でた!ツインターボ!

 

212:名無しの沼人

 「ターボも!えい、えい、むん!」ぱっかーん!流行ってるの?最高にかわいい。

 

213:名無しの沼人

 なおナイスネイチャは続かない模様。イクノディクタスはやったのに。そして3人の視線がwww

 

214:名無しの沼人

 「・・・えい、えい・・・むん」耐えきれなくなったナイスネイチャ、真っ赤になりながら復唱。そして4人とも笑顔に!カノープストレーナーもニコニコだ!

 

215:名無しの沼人

 もうすぐ終了か・・・名残惜しいがって・・・!?

 

216:名無しの沼人

 こ、ここここ・・・

 

217:名無しの沼人

 皇帝だあああああ!

 

218:名無しの沼人

 うわっシンボリルドルフ!?体操服ってことは・・・やっぱりそうだ!リギルに合流した!併走トレーニングだって!

 

219:名無しの沼人

 うわっドキドキしてる・・・併走ってはやっ!?

 

220:名無しの沼人

 うえええあんな速いの!?めっちゃ涼しい顔して!?

 

221:名無しの沼人

 エルコンドルパサーとか必死になってくらいついてるくらいだぞ!?年季が違うのか!?

 

222:名無しの沼人

 ああ、引退してもなお健在の皇帝・・・すっげえ・・・

 

223:名無しの沼人

 まだまだ現役行けそうだねえ、もったいない

 

224:名無しの沼人

 やりたいことがあるっていう形での引退だから正直夢に向かって頑張ってほしいと思う

 

225:名無しの沼人

 今度こそ、終わりかあ

 

226:名無しの沼人

 ああ、終わらないで・・・24時間定点放送してて

 

227:名無しの沼人

 店長が店の様子を8時間放送してたぞ

 

228:名無しの沼人

 まじで?いやそうじゃなくて!あああずっと見てたいいいいい!

 

229:名無しの沼人

 わかるけど物事には終わりというものがですね・・・くっそおわらないで・・・

 

230:ジームイン

 みんな楽しんでくれたようで何より

 

231:名無しの沼人

 うん、楽しかった

 

232:名無しの沼人

 いいなあトレセン職員、毎日これが見放題なんでしょ?

 

233:トレトレーナー

 まあ否定しないけど仕事だからね?ウマ娘第一、自分は後!で、ちょっとしたお知らせなんだけど

 

234:名無しの沼人

 ほほう、お知らせとな?

 

235:名無しの沼人

 だからこんなところまで顔出してたのか

 

236:ジームイン

 まあ、蹄鉄さんから発表があってね?せっかくだから堂々と広めてっていう話だよ

 

237:名無しの沼人

 あの蹄鉄トレーナーから!?あっゴルシがスピカのトレーナー追い掛け回してる。いつもの事か

 

238:トレトレーナー

 あ、それ痴情のもつれらしいよ?ゴルシちゃんスピカトレーナーがあんまりにもあんまりだから怒っちゃったみたい。って脱線した。蹄鉄トレーナーから皆さんにお知らせ!

 

239:ジームイン

 このたび、ハルウララ、ライスシャワーに続く新しい担当を決めました。来年度のトゥインクルシリーズから正式にデビューになるのでよろしく!だってさ。楽しみが増えたね?

 

240:名無しの沼人

 えっ!?あの蹄鉄トレーナーの新担当!?

 

241:名無しの沼人

 こりゃあ、来年度は嵐が来るぞ・・・!

 

242:名無しの沼人

 すっげえ大発表だ!眠れなくなるじゃんどうしてくれるの!

 

243:名無しの沼人

 くっそ、こんなんじゃあ、ますます・・・

 

244:名無しの沼人

 ますますウマ娘が大好きになるじゃないか!

 

 




 というわけで蹄鉄トレーナー、新人をスカウトする(過去形)

 彼に担当されるウマ娘もすでに決めています。次があるかはちょっと未定ですけど。実はこれをやりたかっただけでこの3話は盛大な蛇足だったりw

 では、またどこかで。


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新しい始まり 3人の新星

 というわけで今回で時系列が進みます。ちょっと作者も時系列をあいまいに考えているのであれですが、さて、蹄鉄さんの新担当は誰でしょうか?


 なんだかんだでもう春になる。春うらら、かわいいあのウマ娘を思い出すような晴れ晴れとした天気に満開の桜が咲き誇るトレセン学園は新しい風を迎え入れて、今所属している優駿たちもそれぞれ一歩、歩みを進めることになるのだ。具体的に言うならルナとマルゼンスキーが最高学年になった。名実ともに受験生になるわけであるが、生徒会長の業務は続行するのだそうで。ま、俺のかわいい妹だし、ちゃんと自己管理はできるルナの事はあまり心配はしてないんだけどさ。

 

 当然、新入生も入ってくる。卒業したやつもいる。卒業記念パーティーはそりゃ盛大にやったさ。おかげで全身筋肉痛になっちまった。ちなみに俺の店、ホースリンクは今春休みに突入している。トゥインクルシリーズが一周してレースがない日が続いてるから、こういうときくらいは休みにするのだ。そして、新しくデビューした子たちの中から俺の店で働いてみたいと希望する子を募集する充電期間というわけだ。

 

 俺はこういうときしかできないからと店の中の大掃除を何とか午前中に済ませようと頑張っている。午後はトレセンのほうに行かなきゃいけないからなあ。仕事じゃなくて、客として。

 

 というのは今日、4月も終わりに差し掛かって、トレーナーとウマ娘の契約の締め切りが終わったからなのだが、そこでトレーナーとウマ娘のお披露目会のような、壮行会とでも言うべきものが盛大に開かれるのだ。本来なら俺は働く側であるんだけど2年前からは参加する側に代わってしまった。というのも契約したウマ娘とトレーナーたちがこぞって俺に挨拶に来るもんだから厨房がしっちゃかめちっちゃかになって出ていけとコック長に叱られたからである。

 

 話は変わるが別に締め切り日といってもこれを過ぎても別に契約自体はできる。が、トゥインクルシリーズに途中参加するか、1年待つかを選ぶ必要があり、途中参加の場合は茨の道を歩むことになる。つまり、ジュニア級の最初からトゥインクルシリーズに飛び込むための締め切り日ということなのだ。

 

 「ま、こんなもんかね」

 

 俺は椅子をすべて机の上にあげて、床にワックスをかけ終え一人そうごちるのだった。乾くまでは誰も入らないように張り紙でもしとくか。さて俺は裏口から2階に上がってサクサクッと準備しておこうかね。今回は車で行くからな、なんといってもお土産が膨大な量あるから。車一杯の量のロッククッキーの山だ。これでもウマ娘を相手するには全く足りないわけであるがないよりましでしょ。今回は人間もいるから倍プッシュだなあ。

 

 ブロロロロ、と景気よくなったエンジンをふかして、大量のクッキーが入った段ボールを揺らしながら車を発進させるのであった。

 

 

 いつも徒歩で来ているトレセンの門を車でくぐり、職員用の駐車場に車を停めると用務員の人たちが出てきた。まあ、荷物あるからなあ、毎年恒例の事だからもう慣れたもんか。軽く挨拶をして車のドアを開放する。次々と段ボールを担いで会場に向かう用務員さんたちにならって俺も一つ段ボールをもっていく。軽く時間を見ると・・・あっもう始まってるわ。遅刻したな。

 

 「むむっ!遅刻!と言いたいところではあるが、歓迎!よく来てくれたマスター君!本年もウマ娘とファンを繋げる役目をよろしく頼むぞ!」

 

 「理事長、すいませんね遅れてしまって。よかったら一つどうぞ。こちらこそ、今年もよろしくお願いします。たづなさんも、どうぞ」

 

 「まあ、ありがとうございます。いただきますね。ふふ、美味しそうですね。では、マスターさん、楽しんでいってくださいね」

 

 「うむ!今日は無礼講!流石に酒はないが、たくさん食べ、語らい、親交を深めて行ってほしい!」

 

 「ええ、今日はお言葉に甘えることにしますね」

 

 そういってぶんぶんと手を振る理事長と清楚に手を揺らすたづなさんと別れて俺は立食形式のパーティー会場の適当な開いてる場所を目指す。とりあえず口を湿らすための飲み物だけとって、自由にかけられるベンチに座った。周りには新しく契約したトレーナーとウマ娘や、2年目、3年目、あるいはそれ以上共にしているであろうトレーナー達やチームがおのおの集まっている。彼らは俺を見ると顔を綻ばせた後、引き締め。それぞれ代表のトレーナーと新しく契約したウマ娘を引き連れてこっちにやってくる。

 

 「こんにちは、和田さん。チームアヴィオールの代表です。こっちが新しく所属したスイートライム、よろしくお願いします」

 

 「スイートライムです!あの、いつか絶対、ホースリンクで働きに来ます!よろしくです!」

 

 「うん、よろしくね。チームに昇進したのか。頑張れよー」

 

 「店長さーん!私もついに担当ができたの!だから、私の分の日程、確保しといてね!」

 

 「おお、クリアアクールか。もちろん、働きに来るなら歓迎するよ」

 

 続々と、わらわらと。俺の周りにウマ娘とトレーナーが入れ代わり立ち代わりやってくる。彼ら彼女らは口々に同じようなことを言っている。俺の店に働きに来る、と。2年前からの慣習というか慣例とでもい言うべきこの様も慣れてしまえば楽しいものだ。俺も記憶力を鍛えて何とかウマ娘とトレーナーの顔は覚えるようにしているからな。ルナのように一度見た顔は忘れないなんてレベルにはいかないが、何とか顔と名前が一致するようにはできるようになった。

 

 そうして時間がたち、挨拶をし終えたウマ娘やトレーナーが去ってそれなりに静かになって俺が飲み物に口をつけて乾いてしまった口を潤していると隣にスッと腰を下ろした人物がいた。

 

 「隣、いいかしら?」

 

 「もう座ってるじゃんか、おハナさん」

 

 「そうだったわね。今回も大変そうだわ、挨拶回り」

 

 「ま、無碍にしてやるわけにもいかんでしょ。誰が言い出したか知らないけど俺に宣誓しに来る分には、聞いてやらないとな」

 

 「G1に出て勝負服を着るという宣言だものね。あなたの店で働くということは」

 

 「べつに学園が貸し出す勝負服でも構わんのだけどな」

 

 「そうじゃないわ。自分の勝負服で働く、これが重要なのよ」

 

 そう、この津波のようなトレーナーとウマ娘の挨拶ラッシュは一種の宣誓なのだ。俺の店に働く条件は勝負服を着ること、これただ一つ。べつにG2以下しか出てないウマ娘だって働きに来てもいいんだけどな。学園がウマ娘に勝負服貸し出してるし。でもやっぱり自分の勝負服が欲しい、G1に出たいというのはレースに挑む全ウマ娘が思うこと。故に宣誓するのだ。勝負服を着ないと働けない店の店主である俺に対して、自分の勝負服をもって働きに来ると。暗に必ずG1に出るという誓いであるそれは、2年前の勝負服接客サービスを打ち出した年に誰かがそう言って、勝手に定着していった。大真面目に俺にそう誓ってくるならば俺もそれ相応に受け取らないといけないから、厨房で働いてるわけにはいかなくなった、というわけだ。

 

 そうしておハナさんと談笑してると見知ったやつがやってきた。ノロことゼンノロブロイと歌の先生こと和歌浦だ。どうやら今年からトゥインクルシリーズに挑むつもりらしい。それでほかのやつと同じように挨拶に来たというわけか。

 

 「こんちは、店長さんと東条先輩。今年からお世話になります。改めて、トレーナー和歌浦、ゼンノロブロイと挨拶に来ました」

 

 「こんにちはマスターさん。私も遂にトゥインクルシリーズに入ります。トレーナーさんと一緒に頑張って来ますので、私の日も作ってください」

 

 「ああ、頑張って来いよノロ。それと和歌浦、初の担当だからって気合い入れすぎんなよ?ちゃんとノロと歩調を合わせて一緒に来い」

 

 「はい!東条先輩!まだ先に話になりますが、いつかゼンノロブロイと挑ませてもらいます!」

 

 「待ってるわ。今年は調整のため新メンバーは入れないけど、あなたたちと当たるとしたらオペラオーかしら。期待しているわ」

 

 「はい、よろしくお願いします」

 

 「マスターさん、きっと英雄になって戻ってくるので、待っててください!」

 

 そう言って二人は去っていった。俺はトレーナーじゃないから彼らのこれからの努力の多さを理解することはできないが、無事これ名ウマ娘という言葉もある通り、故障なく俺の店に笑顔で来てほしいと切に思う。それはそうと今おハナさん新メンバー募集しないって言ったな。道理で隣に新人がいないわけだ。

 

 「おハナさん、新人入れないってやっぱり?」

 

 「ええ、師匠の独立とそれに付随して抜けていったシンボリルドルフ、エアグルーヴ、マルゼンスキーの事もあるわ。新体制を確立するために一度立ち止まることにしたの」

 

 「そっか、しかしまあ。今年引退したエアグルーヴを最後に長老さんも引退するって言ってたのになあ」

 

 「しょうがないわ。だって見つけてしまったんだもの。自分の今までのすべてを注ぎたいっていうウマ娘を。だから師匠に育てられた3人も抜けた・・・自分のノウハウをそのウマ娘にすべて注ぐべく」

 

 そう、チームリギルは分かたれたのだ。本来ならチームのすべてを渡して引退する予定だった長老さんが、思わずそれを撤回してしまうほどにほれ込むウマ娘が現れてしまったから。これを本当に最後にする、という話でその長老さんの覚悟を見たルナにマルゼンスキー、エアグルーヴはリギルを脱退し、特別に作られた4人のチーム、チームハダルに移籍した。引退者3人、そしてこれから現役の1人という何ともアンバランスなチームは、当人たちの実績により理事長に認められた。

 

 「噂をすれば、ね」

 

 おハナさんの言葉に顔を上げるとこちらに二人の影が近づいてきた。威風堂々とした何時ものルナと、鹿毛のミディアムロングの髪が特徴的な気の強そうな顔のウマ娘、確かスぺやエル、スカイにグラスと同じクラスで、ウララのルームメイトである・・・キングヘイロー。俺の店には顔を出したことはないが、話だけならよく知っている。

 

 「やあ、兄さん。ふふっ、少し邪魔をさせてもらおうかな?彼女を紹介にし来たんだ」

 

 「ああ、ルドルフ。構わんぞ。俺も多少は知ってるからな、改めてキングヘイロー、スぺやウララから話は聞いているよ」

 

 「ええ、私もウララさんからよくお話を聞いているもの。お互い様ね?改めて、キングヘイローよ。全てを凌駕する一流のウマ娘の名、覚えておきなさい?」

 

 「ああ、しっかりと覚えておくよ。挨拶に来たってことは、俺の店に来る気になったのかな?」

 

 「その通りよ。私はもう、あの子たちに後れを取るわけにはいかないの。彼女たちを追いこすためだったら、何でもするわ。たとえそれが給仕の仕事だったとしてもね」

 

 「別に俺の店に来たから強くなれるわけじゃないんだけどな。しかしまあ、よく長老さんを説得できたもんだ」

 

 「私も彼女の事は知っていた。プライドの高い気性難だとトレーナーの間でも話題だったからな。だからこそ驚いた、トレーナーのもとに直談判しに来たと思ったら、土下座だ。とても聞いていた姿とは違ったもので、驚いたものだよ。そうした姿を見たトレーナーが、彼女の顔を一目見た瞬間担当することを決めたんだ」

 

 「私がトレーナーにあれこれ文句をつけてえり好みしている間に、私の周りの子たちは前へ進んでいった。取り残されたのは私だけ・・・だけど約束してたの「レースで勝負しよう」って。その約束は・・・それだけは破りたくなかったわ。だから、そんなプライドは捨てて私を強くしてくれる人に片っ端から頼んでみたの」

 

 「私のところにも来ていたわね。模擬レースはもう締め切っていたから断ってしまったけど、今見ればもったいないことしたわ。あなた、いい貌してるじゃない」

 

 「蹄鉄も見たら欲しがっただろうな」

 

 「ありがとう。嬉しいわ。私はもう、お母様に認められるとか、G1を制覇するとかは2の次・・・あの子たちと、ウララさんやスカイさんたちと、本気の勝負をしたい。そのためなら、なんだってするわ」

 

 そう言ってこちらを見るキングヘイローの澄んだ瞳の中には、熱い熱い、熱した鉄のように真っ赤に輝く覚悟がメラメラと燃えていた。こりゃあ、ノロたちにとってとんでもないライバルが現れたもんだ。なるほど、スペシャルウィークたちがドリームトロフィーリーグに移らずシニア級に残ったのは、この子との約束があったからだな?

 

 「私があなたの店に出勤するのを、楽しみに待ってなさい!おーっほっほっほ!!」

 

 最後に癖らしい高笑いを残して、キングヘイローは去っていった。苦笑したルナが俺とオハナさんに一礼して後を追う。皇帝と女帝、スーパーカーに鍛えられる王者、か。今回のトゥインクルは荒れそうだな。

 

 「じゃあ私もそろそろリギルのほうに戻るわ。またお店の方にはお邪魔させてもらうわね」

 

 「ああ、いつでも歓迎するよ。リギルの方にもよろしく」

 

 「ええ」

 

 おハナさんが去った後、そろそろ料理を堪能しようとテーブルの方を見たらすでに完売御礼であった。お腹減ったなあ。流石にそりゃねーぜ・・・と空きっ腹を抱えて歩いているとひょこひょこと動く小さな影を見つけた。というかウマ娘だ。別にそれくらいなら珍しくないのだけど、トレセン学園だし。俺の目を引いたのはその小ささ、キタサトコンビといい勝負だ。それとその髪色、白毛に鹿毛のブチ模様、耳に至っては鹿毛だ。正直言おう、ウマ娘をたくさん見てきたと言い切れるが初めて見る珍しい模様だ。この場にいるということは・・・彼女もトレーナー持ちなのか?

 

 そう考えると急反転したそのウマ娘と俺の目があった、と同時に俺の腹がぐ~っと音を立てた。うわ、恥ずかし。彼女は白毛ウマ娘特有のルビー色の瞳をぱちくりとさせると俺のほうにまたひょこひょこと近寄ってくる。左耳につけている雪の結晶のような飾りが揺れる。俺の前にたどり着き俺を見上げた彼女が口を開く。

 

 「お腹空いてるッス?ご飯、食べられなかったッスか?」

 

 「ん、ああ。実はさっき挨拶回りを終えてね?食べようと思ったらもう売り切れだったんだ。残念」

 

 「なるほどッス。じゃあこれ、お兄さんが食べるといいッスよ!」

 

 そう言って彼女は、ちょうどとっていたらしいお皿に盛りつけられた料理をスッと差し出してくる。面食らってしまった。彼女の見た目にそぐわない話し方もそうなんだけど見ず知らずの俺に取ってきた料理をサラッと渡してしまう優しさと人懐っこさに。ニコニコ笑って皿を差し出す彼女に押されて俺はありがたく料理をいただくことにする。

 

 「ありがとう。でもいいのかい?君も食べたかったんだろう?」

 

 「大丈夫ッス!これでもきちんと食べたので!それにせっかくおいしい料理、食べられないのはもったいないッスから!」

 

 「じゃあありがたくもらおうかな。そういえば、君見たことない顔だけど、もしかして・・・「おお、いたいた・・・あれ?店長じゃん」は?蹄鉄?ってことはもしかして・・・?」

 

 「おお、こいつ俺の新担当。ほら、こいつが店長だぞ。挨拶挨拶」

 

 「あー!ウララ先輩とライス先輩の話によく出てくるあの!じゃあ挨拶するッス!私はブチコ!見た目通りの名前ッス!トレーナーにスカウトされて、今年からトゥインクルシリーズに挑戦するッス!いつか働かせてほしいッスよ!」

 

 「あー、蹄鉄・・・お前マジで?」

 

 「大マジだぞ」

 

 ブチコとその立派な胸を張って名乗ったその小さなウマ娘は新入生であると同時に蹄鉄が、あの蹄鉄が見染めてしまったウマ娘、ということらしい。俺が驚いて止まっているとウララにライスがやってきてブチコと合流してる。

 

 「あ~!ブチちゃんいたいた!もうどこ行ってたの~??」

 

 「ウララちゃん、ほっぺの周りにお料理ついてるよ~!」

 

 「およ?ウララ先輩、おべんとがたくさんついてるッス!ほら口を閉じてん~してくださいッス」

 

 「ん~~~?」

 

 「ん、きれいになったッス!」

 

 料理でべったべたになっているウララの口をハンカチで拭いてあげているブチコ、どう見てもやる立場逆だろ。にしても蹄鉄が目をつけるなんて・・・正直これだけ見てると癖ウマ娘とは思えない。これ以上の何かがあるはずだ。悲しいことに蹄鉄の選ぶウマ娘はどいつもこいつもどっかで問題を抱えてるから。

 

 「で、蹄鉄。新入生ってことは今年入学だろ?なんでこの子なんだ?」

 

 「ん?いや~ちょっと入学試験見たんだけどさ~・・・ブチのやつ、スタート前にゲートの中で暴れまわっててよ。ゲートぶち壊すんじゃないかなってぐらい!それで、ピンときた」

 

 「だってだって、ゲート狭いんスもん!私の大きさで狭いってのは相当ッス!改善を要求するッスよ!」

 

 「よりによってゲート難かい。それで?この子自体はどうなの?」

 

 「んー、才能はあんまりないな。入学試験もバ群に埋もれちゃったし。走り方もあってなかった」

 

 「スカウトしといてその言い草!?ひどいッス!」

 

 あんまりにもあんまりな蹄鉄の言葉にガビーンとでも言いそうな顔になったブチコ。表情豊かで可愛らしいことだ。どうも、世話好きな感じもする。俺に対する対応もそうだしウララにしたことも含めて。お姉さん気質・・・いや、クリークと同じお母さん気質か?大きさがあってないけど。

 

 「勝てないなんて言ってないだろ?それにお前には俺の今あるすべてを注いでやるから安心しろ。まずはトリプルティアラ、そんでダートG1。つまり芝とダートの両刀にしてやるから」

 

 「出来るのか?それこそ才能あるやつじゃないとできないことだろ」

 

 芝もダートも両方走るってのははっきり言って難しい。できるのはごく一部、具体的にはオグリキャップやエルコンドルパサーだ。蹄鉄が才能がないと断じるならブチコの才能は乏しいのだろう。その子を両刀にする?ハッピーミークにでもするつもりだろうかこいつは。

 

 「出来るさ。幸い現時点での俺の最高、ライスとウララがいる。芝と中距離はライスが、ダートとマイルはウララが教えられる。約束してやるよ、お前のその頭にティアラを被せてやるってな」

 

 「トレーナー・・・はい!頑張るッス!きっときっと、お母さんの夢を果たして見せるッス!」

 

 「夢?トリプルティアラがか?」

 

 「正確にはちょっと違うッスけど、まあだいたいそうッス!お母さんは中央で一度も勝てなかった、だから代わりに私が!お母さんの分まで中央のターフを駆けると約束したッス!」

 

 「と、いうことらしい。じゃあ挨拶も終わったし俺らはいくわ。ブチにウララにライス、明日から忙しいぞ~~~!ついてこい!」

 

 「「「お~~~!!」」ッス!」

 

 嵐のようにそう言って、彼らは去っていくのだった。ブチコ、ね。蹄鉄が育てる以上、あの子も強いウマ娘になるだろう。蹄鉄は有言実行、言った言葉必ず現実にしてきた。俺にそう言ったってことは本当にあるかもしれないな、トリプルティアラとダートG1の両立が。

 

 

 年甲斐もなくワクワクしてきた俺に仕事が終わったのか俺のもとにきたルナがふふっと嬉しそうに笑ったのに俺も笑い返して二人で談笑するのだった。




 はい、というわけで蹄鉄さんの新担当はオリジナルウマ娘のブチコちゃんです。知らない方もいるかもしれませんが、現役の白毛馬として史上初の勝利を飾ったソダシという馬のお母さんですね。アイドルホースとして有名なのでご存じの方も多いでしょう。

 というわけで簡単なプロフィール
名前 ブチコ
所属 中等部
身長 137㎝ 体重 ちょっと重いかも?
3サイズ 内緒ッス!(胸部装甲は立派)
髪型 ハーフアップに左耳に雪の結晶があしらわれた飾り
口調 ○○ッス!

 勝負服 白と鹿色のブチ模様が入ったムームー(ハワイの伝統衣装)にマント風のケープ(ハワイの王族が身に着けるもの)頭にノースポールの花冠をかぶっている。足は裸足にサンダル(水着スぺが履いてるようなやつ)

 それぞれの由来ですがまず低身長はリアルでキタサンブラックと同期かつ牝馬だからそれよりもちょっと低めに。胸部装甲は現時点で3頭の子持ちだから(あと作者の性癖)髪型も性癖、耳飾りについては母馬であるシラユキヒメから。勝負服がハワイの伝統衣装なのは父馬のキングカメハメハからで王族用ケープも同様。頭のノースポールの花冠は同じくシラユキヒメの雪のイメージから。

 端的に言えば作者の性癖欲張りセット()

 
 さて、作中でこれから始まるトゥインクルシリーズは

 トレセン学園の最古参、長老が率いるチームハダルで皇帝と女帝、スーパーカーに鍛えられる覚悟ガンギマリキングヘイロー
 
 継承
   シンボリルドルフ(芝、中距離、長距離)
   エアグルーヴ(芝、マイル、中距離)
   マルゼンスキー(芝、短距離、マイル)

             vs

 トレセン3大奇人、蹄鉄ヘッドトレーナーが鍛える才能に乏しいブチコ

 継承
   ハルウララ(ダート、短距離、マイル)
   ライスシャワー(芝、中距離、短距離)
   化け物じみた育成効率のトレーニング

             vs  

 新人が鍛える才能なら一番溢れているゼンノロブロイ

 継承 
   なし!

 つまり、王者と化け物に挑む英雄という構図になるわけです。大丈夫かゼンノロブロイ。設定しておいてなんだけど。

 いやー、かきたい話がかけてすっきりしました。次回はどうしよっかなあ


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 ブチコ、初出勤する

 ブチコ掘り下げ回。そんで作中ではレース結果について細かく描写はしないことにします。その結果等は掲示板回で細かくしていく感じにしようと思っています。
 
 つまり、日常の中でサラッとレース結果を言う感じになるかと。レース描写は私には難しいことをこの前の話で痛感したのでお許しください。


 あっという間に皐月賞、桜花賞が終わってしまい、メイクデビューもひと段落ついてしまった。今回のクラシック注目ウマ娘はテイエムオペラオー、メイショウドトウ、ウオッカ、ダイワスカーレットが特に注目されている。が、例年と違ってデビュー戦にもなかなかの注目が集まった。

 

 ファンの大多数、90%以上はウマ娘のみのファンになるのだが実績のあるトレーナー、例えば蹄鉄、長老さん、沖野、おハナさんなどの一部のトレーナーに限って言えばその人個人にファンがつくことも実は珍しくない。で、その中でも蹄鉄は別の意味で、長老さんはその圧倒的な経験年数のおかげでファン数が多い傾向にある。

 

 その二人、しかも長老さんに至っては引退宣言を翻して新しいウマ娘を担当したのだから当然そのウマ娘が気になるのはファン心理として当たり前なのかもしれない。キングヘイロー、ブチコ、ゼンノロブロイ・・・3人ともデビューの日取りはおそらく意図してかち合わせなかったようだが、それぞれ1着を取って順調な滑り出しをしながらトレーニングに励んでいるようだ。

 

 ほんで今日、というか今月はデビュー済みのウマ娘・・・つまりジュニア級の子しか出勤していない。新しくついた最初のファンたちと交流してみよう月間である。1週間前のゼンノロブロイ、3日前のキングヘイローに続いて今日はブチコがやってくる日なのだ。当然というか何というかファン数が少ないので競争率は低かった・・・なんてこともなく。なんと平常時とほとんど変わらなかったらしい。これには正直びっくりしたんだけどな

 

 ほんで今日、本来だったらブチコと一緒にライスやウララも一緒に来ていろいろ手取り足取り仕事を教えてもらう恒例行事があるのだけど。例えばゼンノロブロイならライスが来て、キングヘイローならルナが来て仕事を教える・・・はずだったんだけど!昨日になって蹄鉄から「わりい、急に仕事入って2人連れて行かんといけないんだけど大丈夫か?」と連絡があったのだ。なぜ急に言った!1週間前ならともかく昨日今日ではキャンセル効かんぞ!と怒った俺である。でも蹄鉄に怒るのは全くのお門違いで、実態はURA上層部から幾人かのトレーナーとウマ娘を指名した興行レースが急に決まったという話だった。当然人気ウマ娘には真っ先に指名が入る、つまりそういうこと。

 

 振り下ろしたい拳の行き所を見失った俺はしょうがないと蹄鉄を許しつつ、秘密のルートで手に入れたドラゴンブレスチリを使ったカレーをガスマスクをつけながら作成し今日迎えに来た蹄鉄のあの被り物の中に流し込んでやると心に誓っているのだ。俺のストレスを受け入れてくれ蹄鉄、ありがとう。

 

 で、今日はあのちっこいブチコのみで店を回すことになるんだけど・・・大丈夫か?というか昨日電話で蹄鉄が「気を付けろよ・・・ダメにされるぞ。俺はもうダメにされた」と可愛らしい手作り弁当を食べながら教えてくれた。ちなみにライスとウララはすでに堕ちているとのこと。つまりどういうこっちゃ?というか蹄鉄のやついつもコンビニ弁当だったはずなのに手作り弁当とは・・・いい人でもできたのかね?

 

 と、くぁとあくびしつつ寝起きの頭をぼさぼさかいてとりあえず顔洗って歯磨きして身支度をして階段を下りて店に向かうとなんともいい香りがする。俺の作った床下冷蔵庫にしまってある罰ゲーム用カレーの刺激臭とは似ても似つかない出汁と味噌のいい香りだ。先に誰かいるのかと思って厨房に顔を出すと。

 

 「ふっふーん~♪あ、店長さんおはようッス!厨房借りてるッス!」

 

 「ああ、ブチコか・・・えっ!?」

 

 「なんかおかしかったッスか?」

 

 「いやその・・・ずいぶん立派に料理してるなと思ってさ」

 

 そう、厨房に立っていた、というか木製の箱を台にして味噌汁の小鍋をかき混ぜていたのはなんとブチコだったのだ。というか今開店の4時間前だぞ?早くないか?1時間前に来ればいいって言ってるのに・・・と調理台を見るとそこにはネギが混ぜられた出汁巻き卵、ホッケ塩焼き、キュウリの浅漬け、出汁ガラを利用したおかかふりかけがかかったほかほかのごはんがすでにスタンバイしていた。結構料理をしてきたから目が肥えていると自負しているのだけど、一目で美味しそうだとわかる。これが13歳が作った料理か・・・?家庭的が過ぎるんだけども。

 

 「ああ、家で料理するのは私だったッスからね。お父さんもお母さんも私をトレセンに入れるために頑張ってお仕事してるから、私も何かしたかったんス」

 

 「なるほどな・・・しかしまあ、うまそうだな」

 

 「およ?プロの料理人からそういわれるなんて私も捨てたもんじゃないッスね!よし、できたんで食べるッス!」

 

 お椀にあおさと豆腐の味噌汁をよそったブチコがぴょんと俺の近くまできてにっこりと笑って促してくるので俺もありがたくご相伴に預かることにする。というか食材見て思い出したけどこれ全部消費期限が近づいてたやつじゃないか?なるほど?ダメにされるってそういうことか?蹄鉄の弁当もブチコだな?

 

 ひっさしぶりに人が作った朝食を食うなあ。俺の店の厨房と食材は私用の冷蔵庫の中にあれば自由にしていいというルールにしているのでいくらでも料理してもらっても構わないがそもそも学生の彼女らは料理をしないことが多いわけである。というかそんなことする暇あるならトレーニングしたい!走りたい!という感じだろう。もちろん料理上手な子もいるがわざわざ俺の店まで来て料理する子は多くないし。

 

 「いただきます」

 

 「いただきますっスー」

 

 ぱちんと小さな手を合わせたブチコにならって俺も手を合わせて漬物をぽりっとかじる。うまい、塩気も、漬け汁もカツオ出汁がほんのり聞いてご飯と合う。味噌汁も同様、ホッケの塩焼きは骨を丁寧に抜いてあって非常に食べやすかった。俺の味付けとはまた別の料理だが、普通にうまい。ぶっちゃけトレセンの生徒じゃなかったらスカウトして固定従業員にしたいレベルだ。

 

 「美味しいッス?」

 

 「すごいうまいな。ビックリしたよ。さてブチコ、蹄鉄になんか言われたことあるか?」

 

 「んーと、「折角なのであいつより早く行って朝飯の一つでも作ってやれ。店長、俺がいるところまで堕ちて来い」だったッスかね?何のことかわかんないッスけど」

 

 「なるほどな。それは全くどうでもいい言葉だから早く忘れるんだぞ。俺は蹄鉄に話があるから少し失礼するな。美味しかったよ、ありがとう」

 

 「あ、洗い物は私がするのでそのままでお願いするッス!トレーナーによろしくッス!」

 

 「わかった。ごめんな朝から」

 

 「楽しみだったのでむしろ良かったッス!」

 

 うまい朝食をありがたくいただいた俺は洗い物もするというのでありがたく任し・・・これ完全にダメ亭主ムーヴだこれ。蹄鉄に電話をかけることにする。普通に電話に出たなこいつ

 

 「蹄鉄・・・『おう、おはよう店長。ブチのやつすげーだろ?』ああ、ビックリした。今日迎えに来るとき楽しみにしてろ?お礼にカレーを振舞ってやる『またかよ!?この前ので・・あっおい!』よし、満足した」

 

 すまん蹄鉄。俺とお前のいたずら合戦は今回も俺の勝ちということで終わらせてもらうことにする。しかしまあ、ブチコがこんなに料理上手なのは想定外だった。台が必要なのは身長の関係上しょうがないにしても手際自体は素晴らしい。そして今見えるが何してても楽しそうに見えるのは簡単なようで難しい。ウララがそのタイプなんだけどそういうウマ娘はファンが多くなりやすいんだ。今日もブチコ目当ての客ばっかのはずだしデビューから追うなんてファンの中でも両肩まで沼にどっぷりつかった人種のはず。ちょっと冒険させても大丈夫かな?俺は鼻歌を歌いながら洗い物をふきんで拭いているブチコに声をかける。

 

 「おーい、ブチコ」

 

 「はいッス~」

 

 「唐突なんだけど、今日出す料理一品作ってみないか?クッキーとかそういうので」

 

 「いいんスか!?やったッス!ああ、何作ろうかな~?献立ってどうなってるッス?」

 

 「今日は自家製ベーコンとスモークサーモンのカルボナーラだな」

 

 「ふむふむ、イタリアン・・・じゃあ、プリン作るッス!いや、パンナコッタがいいッスかね?店長さんどう思うッス?」

 

 「ああ、いいんじゃないか?じゃあ生クリームと牛乳、バニラビーンズかな?ゼラチンはこっちにあるから・・・で、容器はこれにしようかね。これなら1時間くらいで固まるから。今日は30人来るけど大丈夫?」

 

 「むっふ~!私はウマ娘ッス!体力なら人間よりもたくさんあるッス!心配無用!あ、冷蔵庫のイチゴも使っても大丈夫ッス?」

 

 「いいよ。でも私用のじゃなくてこっちの仕事用冷蔵庫の中のから使ってな?じゃ、俺も仕込みに入るから。そっちの調理台とコンロ使っていいぞー」

 

 「はいッス~」

 

 ここまで接していて分かったが、ブチコはかなり人懐こい性格をしているらしい。まだ数回しかあってない俺にここまで楽しそうに話したり無警戒に近づいてくるくらいには。俺も別になんかするつもりはないからいいんだけどさ。というわけでさっそく俺も仕込みに入る。今日のために作ったベーコンとスモークサーモンを取り出し、ベーコンは永細い角切りに、スモークサーモンは加熱用とトッピングでまた別の切り方で切って冷蔵庫の中へ。あとは昨日仕込んでおいたカルボナーラソースを確認して終わり。うん、作業が少ない!

 

 というわけでブチコのほうを見るとすでにパンナコッタの液を火にかけ、イチゴを角切りにしているところだった。終わった俺も合流して協力してイチゴを切り終えブチコがそれを鍋に入れてブルーベリー、ラズベリー、砂糖を入れて煮立たせている。ベリーソースか、鉄板だな。その間に加熱が終わったパンナコッタ液を氷水で冷やして粗熱を取りそれぞれの容器の中に均等に注いでいった。うーん、すごいな。身長は全然違うがクリークとかネイチャと同じかそれ以上に手際がいい。慣れてる証拠だ。ラップをかけてスイーツ用の冷蔵庫の中へいれて終了。ベリーソースもいい具合だ。

 

 「ん、オッケーッス!どうッスか店長さん、お店に出せるッス?」

 

 「ああ、液を味見した感じだと大丈夫だよ。ソースも言うことなしだ。凄いな、ブチコ」

 

 「えへへ~」

 

 こっちに確認を求めて台に立ってなお俺より目線が低いブチコが見上げてくるので褒めて頭を撫でておく。そうしてると開店までもう少しの時間となった。ブチコが着替えている間に俺はさささっと掃除を済ませてパスタボイラーの電源をつけてソースを鍋に移してコンロの上に置いておく。

 

 「お待たせッス~。んー、この衣装も好きッスけどやっぱり自分のがほしいッスね~」

 

 「そりゃG1に出るまで我慢だな。あと一勝して朝日杯フューチュリティステークスに出るんだろ?次のレースはどうするんだ?」

 

 「むー?、トレーナーさんが言うにはサウジアラビアロイヤルカップかプラナタス賞に出るって言ってたッス」

 

 「デビュー戦はダートだったからなあ。その勝負服もよく似合ってるよ」

 

 「私も好きッスけど・・・青が多くて私の髪色と合わないッス」

 

 「でも今は衣装統一のために白の勝負服はないからなあ。ま、それで我慢しな」

 

 今ブチコが着てるのは学園が新たに作った青と金と白を基調にしたウイニングライブ用の勝負服、そのミニスカート版だ。確かに鹿毛と白のコントラストがあるブチコの髪色にはあってないかもしれないが、それでも大変可愛らしい。というか学園内でもなかなかの高評価のハズの勝負服である。もとからあった白の勝負服は蹄鉄が参加してる興行レースのウイニングライブに全部持ってかれてるのでしょうがない。

 

 「さて、開店だ。今日はよろしくなブチコ。落ち着いてゆっくりやるんだぞ?」

 

 「頑張るッス!」

 

 

 

 そうして開店して15分くらいかな?さっそくお客さんが来た。優しそうな女性だ。すぐさまブチコがちょこちょこと走り寄って接客を開始する。

 

 「いらっしゃいませッス!おひとり様ッスね?予約したお名前をお願いするッス~」

 

 「うわっ・・ちっちゃ、かわいい・・・あっごめんなさい!えっと浦川です。ブチコちゃん、デビュー戦すごかったわ!後でサインもらってもいいかしら?」

 

 「サインッス!?なんか恥ずかしいッスね・・・え、とわかったッス!私のでよければ!こちらへどうぞッス!」

 

 うんうん、きちんと問題なく案内をしているな。こりゃあんまり心配いらないかもしれない。俺はブチコが女性の手帳にでかでかと自分の名前を書いてドリンクの注文を受け取ってくるのを見てそう思うのだった。

 

 「店長さん、キャラメルマキアートのアイスと日替わりランチッス~!」

 

 「はいよ。じゃあドリンクな」

 

 俺はそう言ってサクッと作ったドリンクをブチコに渡してブチコはそれをお手拭きと一緒にサーブ。その間に俺はメインのパスタを作ってしまおう。楽しそうに女性と話している(なんか女性のほうは手がうずうずしているが。もしかしてブチコを撫でたいのだろうか?)ブチコが二組目の案内を問題なくするのを確認して厨房に引っ込むのだった。

 

 「君がブチコか~!デビュー戦見てたよ!いや、そんなに小さいのにあんだけ速いなんて大したもんだ!次は何に出るか決まってるのかい?」

 

 「決まってるッス!けどトレーナーに外の人には内緒って言われてるので言えないッス~!」

 

 「あっはっは!そりゃそうか!じゃあ君が出るレースを探しておかないとな!頑張ってね!」

 

 「ありがとうッス~!」

 

 「あっ、デザートとコーヒーお替りお願いしまーす!」

 

 「わかりましたッス!デザートは私が作ったッス!じゃあ、どうぞッス!」

 

 「うわ、おいしそ~。凄いのねブチコちゃん」

 

 「えへへ~」

 

 人懐っこさと誰にも物怖じしないブチコの性格がいい具合に働いてるらしく。初めてにしては全く問題ない働きっぷりだ。ちょこちょこ様子を見るだけでいいだろ。そんな感じで和気あいあいと時間は過ぎていき、店は閉店、ブチコも少し疲れたようだがそれでも楽しかったようでうれしそうな顔をしている。

 

 「おいっす~。ブチ、迎えに来たぞ~」

 

 「あっトレーナーさん!今日すっごい楽しかったッス!またやりたいッス~」

 

 「そりゃよかった。さて蹄鉄、座って少し待て」

 

 「えっ何そのガスマスク・・・」

 

 「ブチコは着替えてきてくれ。汚れたら困るだろ」

 

 「まって!?ブチ、おいていかないでくれ!?」

 

 「確かに勝負服汚したらまずいッス・・・でもトレーナーさんが・・・」

 

 「まあいいからいいから」

 

 と、俺はブチコの肩を押して更衣室に押し込む。そしてガスマスクの下で悪い顔をしてるであろう俺となぜか蹄鉄の被り物が青ざめているように見える蹄鉄がその場に残った。

 

 「ぬああああああああああああ!?」

 

 「大丈夫だ食える食える。実証としてドトウが美味しそうに食べてたぞ。エルは泣いてたけど」

 

 「もう犠牲が!?目が、この前の比じゃないほど目が痛い!」

 

 「俺も食ったんだからさ。食える食える。」

 

 「やめろ、スプーンを近づけるな!?もがっ!?・・・あれ?うまい・・・?・・・ああああああああああああああからああああああああ?!」

 

 「後から来るんだよなあ」

 

 「何事ッスか!?トレーナーさん!?」

 

 とりあえずの復讐を果たした俺は自分も作ったカレーを頬張り蹄鉄の道連れになるのだった。あああああからい!ちなみに実際辛いは辛いが食えない辛さじゃない。よくある激辛なだけだ。まあ蹄鉄が辛い物がことさら苦手だから今七転八倒してるだけだし。俺は必至こいて牛乳やらをもって走り回るブチコと悶える蹄鉄をみて悪い顔で笑うのだった。ちなみにこれはこの前蹄鉄がゴルシと協力して歩いていた俺を落とし穴に放り込んだ復讐である。あの後二人は理事長とたづなさんからたいそう叱られていたが俺も一つ仕返しをしたかったので満足した。これでよし。

 



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進捗どうですか?

 


 なんだかんだで水曜日だ。今日までジュニア級のデビューしたばかりの新人ウマ娘たちが俺の店にファンとの交流を体験しに来た。当然、やりたいと思えた子も自分には合わないと考える子もいるだろう。やりたいと思えるならまたこればいいし、そうじゃないなら自分の練習に集中してもらっても構わない。というか本来ならそっちのが普通で、俺の店は蛇足だからな。まあ、それでもいいという子が多いのは個人的に少しうれしい。

 

 で、今日は出かけようかなと思う。出かけるというか休日出勤というか趣味というか・・・トレセン学園のほうに陣中見舞いでもしようかなという感じだ。だから今日は休みだけどだいぶ早起きして厨房をフル回転させた。下準備を済ませて俺が持ってるもう一つの車、いわゆるキッチンカーに二人で積み込みを開始する。そう、「二人」で。毎年毎年、店のオープン時から欠かさずやっている恒例行事に今日は道連れがいる。

 

 「デジタル、今日は休みだったっけかお前?」

 

 「はい!この前の興行レースの振り替え休日です!いやー、マスターさんと陣中見舞いに行けるなんて・・・うふひひひひ・・・」

 

 「お前は本来ならされる側なんだからな?まあ、したいなら好きにすればいいんじゃない?」

 

 「はい!ありがたくご同行させていただきます!ありがたや~」

 

 「拝むな拝むな」

 

 よだれを垂らしかけながら女の子にあるまじき表情で俺に対して手をすり合わせているのは毎度おなじみウマ娘限界オタクのアグネスデジタルである。ちなみにこの子も立派なG1ウマ娘、シニア級である。オペラオーやスカーレットの先輩なんだよなあ。まあ主戦場を海外にするとか何とかでよくどっか行ってるから国内ファンはあんまり多くないけど一部のコア層に大人気なウマ娘だ。

 

 ちなみになんだけどこの子にも二つ名がある「勇者」というこれまたかっこいいやつだ。もしくは「変態」悪口じゃないぞ?ダートも芝も国内も海外も走れる、言うなればブチコが目指すべき目標そのままのウマ娘だ。何でもできるので変態、もしくは一部からは「同志」と呼ばれているとかなんとか。俺の配信でもよくそう呼ばれてるんだけど、なんの同志よ?

 

 ちなみに今日のメニューははちみーとサンドイッチ。しかもバケットを使った野菜たっぷりのやつだ。今朝商店街の八百屋さんにすごく新鮮な野菜を届けてもらったのでそれをふんだんに使ったサンドイッチ、チーズはタイキの実家の牧場から直輸入してるうまいやつ。ベーコン、生ハムは自家製。ソースも自作である。ちなみにデジタルも料理はできる。というかこいつ器用すぎてできないことを探すほうが難しい。今も助手席で英語でチャットをしている。

 

 「デジタル、口開けろ」

 

 「ふぇっ!?いやあの自分で・・・おいふぃいです・・・・ひぃえ・・・」

 

 「そりゃよかった。暇だったから作ってみたんだ。はちみつキャンディ。気に入ったんなら一袋やるよ」

 

 「うぅ・・・かみ・・・?ありがとうございましゅぅ・・・」

 

 沖野がよくなめている蹄鉄型を模したキャンディをまねして作った飴細工のはちみつキャンディをぽかんと開いているデジタルの口に突っ込んでやって俺はキッチンカーを出してトレセン学園のいくつかあるグラウンドの一つに向かうのだった。ちなみに後ろに冷蔵車を牽引している。なんでかって?ウマ娘の食欲をなめてはいけない。車一つ分など30人もいれば空になるのだ。だから専用の冷蔵車を理事長の伝手を利用して作って買った。これぞ給料の有効活用である。イベントの時もこの車で出張出店するので無駄な買い物じゃないのだ

 

 

 「「「トレセーン!ファイッ!ファイッ!ファイッ!オーッ!」」」

 

 「あと2本!」

 

 「む~り~!」

 

 「あっ!あれマスターさんのキッチンカー!」

 

 「えっどこどこ!?あった!」

 

 「おーやってるやってる。んじゃー見舞いますかね~」

 

 そんな感じで俺はキッチンカーの後ろに入り、横の窓を開けて顔を出す。すでにわらわらとウマ娘が溢れており後ろには苦笑したり、微笑ましいものを見るようなトレーナーの姿もあるわけだ。というわけで臨時店員のデジタルと共に出張版ホースリンク、開店しますよっと。

 

 「さて、何食べたい?」

 

 「エビアボカドニンジンサンド!」

 

 「ニンジンカツサンド!」

 

 「生ハムチーズ!」

 

 「はいはいー。じゃ、順番に並んで待っててくれ~」

 

 挟むだけだし非常に楽なサンドイッチ。デジタルがバケットを切り分け、俺が具をトッピングしソースをかける。美味しそうにサンドイッチにかぶりつくウマ娘たち。美味しい美味しいと言ってくれて俺も嬉しくなってくる。ちなみにこれは俺の完全な趣味、材料費とかそういうのも全部自腹だ。俺も人間なんで一か月に一回くらいしかできないのが残念だが、まあ来たかったら日曜日に店に来てくれ。もしくは閉店した後店内に俺の姿があれば入ってくりゃいいさ。 

 

 「はわ、はわわわ・・・ウマ娘ちゃんの笑顔がこんなにたくさん・・・!」

 

 「あ、デジタル先輩!海外レースすごかったです!憧れてます!」

 

 「ひょ、ひょええええええ!?」

 

 「後輩の前なんだから保て保て」

 

 「は、はい!応援してるから頑張るでございますことよ!?」

 

 「はい!ありがとうございます!」

 

 若干語尾がおかしいデジタルの外面を何とかごまかしながらサンドイッチを配り続けること15分くらい。その場にいるウマ娘たちには配り終えたので少し離れたところにいるであろうやつにも顔を出しとこうっと。さくっとバスケットにサンドイッチを敷き詰めてキッチンカーを閉める。あとは徒歩で散歩がてら行こうかな。デジタルはもうそこでウマ娘に囲まれて気絶してる(よく考えたらウマ娘がウマ娘に囲まれるのはトレセン学園では普通なのではないだろうか)ので俺一人で行くことにしよう。

 

 「はちみーはちみーはっちみーっと・・・おっやってるじゃん。おーいノロ!和歌浦~」

 

 「あ、店長さん。お疲れ様です」

 

 「マスターさん、こんにちは。どうされたんですか?」

 

 「なにって、差し入れだよ・・・ってジュニア級だから知らないか。たまにこうやってキッチンカーでトレセンのどっかに出没してんだ。差し入れ付きでな。ってことでほれ。食え食え」

 

 「へえ、そうなんですね。良かったねゼンノロブロイちゃん」

 

 「わぁ、美味しそうです。マスターさん、ありがとうございます」

 

 眼鏡の下で瞳をきらめかせたノロがアボカドポテトサラダサンドを手に取って小さな口でパクリとかじる。暫く夢中になりそうなので和歌浦にもトマトチーズサンドを渡して少し雑談をすることにした。

 

 「デビュー戦一着、おめでとさん。次は、どうするんだ?」

 

 「そうですね・・・ライスシャワーちゃんやスペシャルウィークちゃん、シンボリルドルフちゃんと併走してもらった感じを見ると、スタミナが結構ありそうなので中距離クラシック路線・・・王道の弥生賞のあとに皐月賞に行こうかと」

 

 「へえ、ってことは3冠路線か。というと警戒してるのはキングヘイローになるのか?」

 

 「今のところは、ですけどね。蹄鉄先輩のところ、ブチコちゃんはマイル路線らしいですけど・・・蹄鉄さんの事ですから弥生賞に出してくるかもとは思ってます。それに、あんなウマ娘初めて見ましたし」

 

 「というと?別に普通じゃないかね、ブチコは」

 

 「いやいや、デビュー戦見ましたけど・・・ゲートの中で、ねえ?」

 

 「まあ普通はやらせないけどな。なんせ蹄鉄は普通じゃないから」

 

 「ゲート難と聞いていたのに、目論見が外れましたよ。当たった場合対策の練り直しです」

 

 ガリガリと頭を書いて和歌浦は困ったように、それでいて滅茶苦茶面白そうにしている。まあ、どう自分の愛バを勝たせるかどうかを考えるんだ。楽しいし難しんだろ・・・それにしても・・・

 

 「ライスにスぺにルドルフ・・・よくそんな奴らと併走なんてできたな。忙しいだろうに」

 

 「あはは、まあ自分は新人ですからね。でもね店長さん、俺・・・ウイニングライブの練習をさせるならトレセンで一番うまいんですよ」

 

 「・・・なるほどね、こりゃ一本取られた。よく考えるもんだ」

 

 どうやらこの新人、自分の長所である歌関係、つまりウイニングライブの稽古をつける代わりにシニア級の古豪たちとの併走を交換条件にしたらしい。センスが問われる歌やダンスの練習を高水準でこなせるこいつならそれが条件になってしまうんだろう。レースがメインとはいえライブは切っても切れない要素、強かだな。

 

 「使えるものは使わないと、ゼンノロブロイちゃんに失礼ですから」

 

 「ふぅ、ごちそうさまでした。店長さん、美味しかったです」

 

 「ありがとな。じゃあちょっと休憩して練習頑張ってくれ。邪魔したな」

 

 「いえいえ、ごちそうさまでした!」

 

 「今度日曜日にまた行かせてください!」

 

 「おお、こいこい。んじゃ、またな」

 

 そうして二人と別れた俺は今度はリギルが、正確には長老さんが好んで使っているグラウンドの方へ足を運ぶ。するとそこにはやはり、好々爺然とした穏やかかつ優し気な顔をした老人、最年長トレーナーの長老さんとその隣に並び立つように立つルナが、必死にエアグルーヴ相手に競り合っているキングヘイローを眺めていた。俺がそっちに足を運ぶとルナの耳がぴくっとこっちを向いて俺に気づいたようだ。長老さんもベンチからたち上がってこちらに軽く会釈する。俺も頭を下げ返して二人のほうに向かうことにする。

 

 「どうも、お久しぶりです長老さん。いやはやチーム新設と聞いてこっちはずいぶん驚きました。どうですか?キングヘイローは」

 

 「はは、どうも私にもまだまだ譲れないものがあるのだと気づかされましてな。あなたの妹分には少し迷惑をかけますがどうかご容赦頂きたい」

 

 「いえいえ、ルナもやりたくてやってるのでしょうし、俺がどうこう言うことじゃないですよ。な?ルナ」

 

 「その通りだ。今の私があるのもトレーナーがあってのもの。それに、キングヘイロー・・・凄いな、うん」

 

 「へえ、ルナがそういうなんて珍しいな」

 

 「この老いぼれの節穴で見るには、彼女には突出した才能はない。同年代の黄金世代の面々の中ではどうしても一歩劣るでしょうな・・・だが、根性ならば誰よりも、ルドルフよりも勝るかもしれない。才能の差は努力で補えるでしょう、目標に向かい確実に、ひたすらに努力できるのもまた・・・得難い才能ですからな」

 

 「それに兄さん、ひょっとしたらだけど・・・彼女は得難い原石じゃないかと思うんだ。だって、ほら」

 

 ん?とルドルフがまだ競り合っている、エアグルーヴは手加減してるにせよ・・・勝負になっているキングヘイローを指し示す。ちょうどラストカーブに差し掛かったところで既視感というかよく見ていたような違和感を覚えた。こいつは・・・

 

 「ルナの、走り方か?」

 

 「そうだ。私しかできない、私だけのコーナリング。当然完成には程遠い、けど身に着けつつある。もちろんリギルのほかの後輩にも教えたのだが・・・本気でものにできそうなのは彼女ともう一人だけだ」

 

 「もう一人?お前の走りはほとんどのやつが真似して失敗するやつだろ?下手したら故障するようなの。他にもお前が直接教えたのがいるのか?」

 

 「・・・わからないかい?」

 

 「わからんな」

 

 ルナのコーナリングは一般のウマ娘に言わせるには正気じゃないと言われる狂気の技術だ。そんなウマ娘を壊しかねない技術をおいそれと教えるほどルナは愚かなウマ娘じゃない。トレーニングを監督してるキングヘイローだけじゃなくもう一人だ?そりゃまた誰か気になるな。ルナにそう言わせるなんてそうそうない。

 

 「()()()()()()()だ。彼女にはもう会ったか?」

 

 「あ、ああ。さっき会ってきた」

 

 「ほっほ。あのウマ娘は別格ですな。この年になるとライブの指導をするだけでもつらい、彼女のトレーナーはそれに関しての指導力は確かなものです。それの見返りが併走ならば、と受けましたがね」

 

 「私のコーナリングを、彼女は一度見ただけで再現しかけた。いや、正確には出来なかったのだが・・・それはただ身体能力が足りなかっただけ。もし相応の身体能力をもてば・・・やれるだろう」

 

 「へえ、そりゃまたすごいな?あのノロがねえ・・・俺はトレーナーじゃないからわからんけどお前がそういうならそうなんだろな。ってことは警戒してるのはノロってことか」

 

 「ええ、そういうことになりますな。でも、まだまだ指導で若い者には負けませんよ・・・キングヘイローは強いウマ娘だ。それだけは間違いない」

 

 走り切って精魂尽き果てたようにあお向けに倒れこむキングヘイローとそれを余裕そうに見下ろすエアグルーヴ。そしてそれをゴール付近で見ていたマルゼンスキーが座り込んであれこれアドバイスをしているのを目を細めて見守る長老さんとそれに深く頷くルナ。お互いがお互いを、警戒しているのか・・・ライバルってやつだな。良い関係じゃないの?

 

 「これ以上は邪魔になるのでお暇しますわ。これ、おいてくのでみんなでどうぞ。ルナ、バスケット後で回収してくれ」

 

 「ああ、任せてくれ。ありがとう、兄さん」

 

 「ご馳走に預かることにします。では、また」

 

 長老さんに会釈をし、ルナを軽く撫でてから俺はその場を後にすることした。キッチンカーのところまで戻るとすでに練習を再開しているウマ娘たちとそれをスケッチしているらしいデジタルの姿が。邪魔しちゃ悪いな、ということでもう一つ作ってある予備のサンドイッチをもってまたその場から離れて今度は蹄鉄が好んで使っている練習場のほうに進んでいくと・・・何やってんだあいつら?

 

 

 「もー、トレーナーさん。ちゃんと手を拭いてからおにぎり食べるッスよ。ライス先輩こっちの水筒お味噌汁なのでよかったらどうぞッス。ウララ先輩こぼしてるッスー」

 

 「いや、わるいブチ。いやしかしまあうまいなこの唐揚げ」

 

 「うん、とっても美味しいねお兄様」

 

 「このニンジンハンバーグもおいしーよー!」

 

 俺の目の前に転がってる光景は、ブルーシートの上に体操服姿のブチコにライス、ウララに何時もの蹄鉄が手作りの弁当らしい重箱を囲んでわいわいやってる様子だった。やってることがピクニックなんだけどここだけ・・・確かにちょうど昼時を狙ってこっちにきたけどまさかピクニックやってるとは思わんかったわ。というかあの弁当絶対ブチコの手作りだろ。蹄鉄のやつ教え子に何させてんだか・・・

 

 「よう蹄鉄、何してんだ?」

 

 「お、店長。あ、差し入れか?悪いね休みなのに。なにって昼飯食ってんだけど?ブチのやつが作ってくるっていうから」

 

 「はいッス!折角一日練習できるっていうんで私も気合入れてみたッス!店長さんもおひとついかがッスか?」

 

 「お?いいのかい?じゃあありがたく一つもらおうかな。お礼と言っては何だけど、このバスケットは差し入れだから昼飯の足しにしておいてくれ」

 

 「わぁ、美味しそうなサンドイッチッス!じゃあウララ先輩とライス先輩お先にどうぞッス!トレーナーさんも!」

 

 そういってバスケットを開けたブチコがライスとウララと蹄鉄に中身を配って自分も一つ取り出してかぶりつく。蹄鉄も器用に・・というかどうやってるか知らんがサンドイッチをうまいうまいと食べている。俺もお重の中から唐揚げを一つ取り出して口に放り込む。うん、生姜が効いていてうまいな。食欲そそる味付けだ。

 

 「しっかしまあ、デビュー戦でゲート難を克服してくるとはな。恐れ入ったよ蹄鉄」

 

 「いや別に克服してねえよ?」

 

 「・・・はぁ?いやでもあんなにきれいにスタート切ってたじゃねえか」

 

 「ああ、それな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 そういって蹄鉄はもむもむとサンドイッチを頬張っているブチコをよいしょと持ち上げて自分の胡坐の中におき、くしゃりと頭を撫でながら続ける。ブチコ自身はそういうのをあんまり気にしないタイプなのかそれともサンドイッチに夢中なのか気にせず食事を進めている。こういったらなんだけどぴったりフィットサイズだな。

 

 「ようはこいつってゲートの狭さが嫌いなんだよな。背の高さ的に目の前に扉があるから圧迫感があるっていうし。じゃあ、目をつぶって感覚を耳に集中する。幸いゲートは開くときにでけえ音を立てるからな。開く瞬間の音を聞いて目を開けつつまっすぐスタートを切れば、まともに見えるスタートの完成だ。要はただの応急処置さ」

 

 頭を撫でるのに飽きたのか蹄鉄はブチコの耳をむにむにともみながら俺に説明してきた。ブチコは相変わらず収まりよく胡坐の中にいるがウララに唐揚げをあーんしたりされたりライスが先輩風を吹かせてあれこれやってくれてるのを楽しそうに受け入れている。そしてその後ろの茂みから見覚えのあるピンクの頭が倒れてるのが見える。スケッチはどうした?

 

 「まあ、当座はそれでいいけどクラシックじゃそんなごまかしは通じないからな。ゲート練は基本毎日やることにしてるぞ」

 

 「トレーナーさんは鬼ッス~。私はゲート嫌いッス!一生相容れないッス!」

 

 「何とでもいえ。お前に勝たせるためならたとえ蹴られて死んだとしても俺は何でもやるからな」

 

 「か、覚悟が!覚悟が重いッス!ふぇぇぇんライス先輩ー」

 

 「お兄様を信じてれば絶対勝てるから!だからがんばろ?ブチちゃん」

 

 「ウララせんぱぁぁい!」

 

 「だいじょーぶだよー!トレーナーと私たちが頑張ってブチちゃんを強くするんだから!」

 

 「退路が完全にないッス!店長さんたしけて!」

 

 「それはその状況から?それともゲートから?」

 

 「ゲートからで!」

 

 「無理だからあきらめな」

 

 「見捨てられたッス!?」

 

 じたばたと蹄鉄を傷つけないように慎重に暴れるというある意味で器用なことをしているブチコのヘルプを一刀両断してニンジンハンバーグに手を伸ばした。彼女は不嫌嫌と言いながらも笑顔でいるので本当はこの状況が楽しくてしょうがないだろう。やはりウマ娘はいい。願わくば、今日かかわったどの子も何事もなくターフの上に立って、正々堂々のレースを観戦したいと、そう切に思わずにはいられないのだった。

 

 

 「ところでこの人誰ッス?」

 

 「ああ、それアグネスデジタル。芝とダートの両刀だぞ。お前の目標のその先にいるやつだからきちんと拝んどけ」

 

 「へー!そうなんスね!すごいッス!私はブチコ!デジタル先輩、よろしくお願いするッス!」

 

 「ひょえっ!?ちっちゃ!?かわわわわ・・・!?・・・スッーーーー・・・・」

 

 「あっオーバーロードした」

 

 「いつもの事だろ。あ、物は相談なんだけど暇だったら今度トレーニング付き合ってやってくれないか?いい参考にできると思うんだけど」

 

 「やってくれるならとっても嬉しいッス!お願いするッス!」

 

 「わ、私でよければ喜んで!」

 

 ブチコのトレーニングに、頼もしい助っ人ができたことは言うまでもない。




 はい、というわけで皇帝を継承しつつあるキングヘイローと才能を余すことなく発揮するゼンノロブロイ、勇者を味方につけるブチコでした。

 次話はデビュー戦で何があったのかを掲示板の民に語ってもらおうと思います。


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 【今年の】トゥインクルシリーズ総合スレpart5963【新星】

 お待たせしました。掲示板回です!


1:名無しのファン

 今回のトゥインクルシリーズについて語るスレです。推しへの愛を存分に語りましょう

 

2:名無しのファン

 始まったな!トゥインクルシリーズ!

 

3:名無しのファン

 ああ、全く今年も期待しかないぜ

 

4:名無しのファン

 この季節になるといったいどんなウマ娘がデビューするのかめっちゃ楽しみになってくる

 

5:名無しのファン

 ほんとそれ。

 

6:名無しのファン

 そしてぇ!今回のクラシックのG1といえばァ!!!

 

7:名無しのファン

 皐月賞、そして桜花賞だな!

 

8:名無しのファン

 まず皐月賞の話をしよう

 

9:名無しのファン

 んだんだ。今回の注目ウマ娘と言えばテイエムオペラオー。ジュニア級にもかかわらず去年皇帝がぶっちぎったスペシャルマッチに出場できるほどの有望株、リギルの新たな星になるかもしれないウマ娘だな。

 

10:名無しのファン

 ああ。ただひたすらに強い走りだった。ジュニア級のころからかっとんでたのは知ってたけど・・・

 

11:名無しのファン

 ホープフルに続いてだもんなあ・・・にしても、リギルの期待の新星を追い詰めるウマ娘がいるなんてな

 

12:名無しのファン

 ああそれな。メイショウドトウ、すごい伏兵だったよ

 

13:名無しのファン

 パドックで見たときなんてどう見ても絶不調だったのになあ

 

14:名無しのファン

 ワイ元トレーナーやけどあれ絶好調やぞ。トーシロめ

 

15:名無しのファン

 これは節穴

 

16:名無しのファン

 えっでも耳倒してたし表情自信なさげだったし・・・

 

17:名無しのファン

 あれはもとからの性格っぽい。トモの張り方、立ち方、姿勢、緊張感・・・どれをとっても申し分なかった。勘違いされやすいのがかわいそうだ。

 

18:名無しのファン

 ウマ娘ファンとして恥ずかしくないんかお前はぁ!?

 

19:名無しのファン

 ぼろくそで草

 

20:名無しのファン

 ちなみに見抜けたやつ

 

21:名無しのファン

 

 

22:名無しのファン

 

 

23:名無しのファン

 

 

24:名無しのファン

 

 

25:名無しのファン

 いねーじゃねーか!

 

26:名無しのファン

 ごめんなさい経験が足りませんでした

 

27:名無しのファン

 プロにはかてねーべ

 

28:名無しのファン

 まあそれはともかく。圧倒したテイエムオペラオーに対してメイショウドトウがクビ差まで追い詰めたのはホントにすごかった。

 

29:名無しのファン

 ゴール後こけてたけどなメイショウドトウ

 

30:名無しのファン

 柵を乗り越えて助け起こしに入った男を俺は尊敬する

 

31:名無しのファン

 あれ多分トレーナーやぞ

 

32:名無しのファン

 めっちゃ尊敬した

 

33:名無しのファン

 テイエムオペラオーが彼女に対して会見で「永遠のライバルになる」って言いきったのでこれからが楽しみ

 

34:名無しのファン

 メイショウドトウは会見でそれ知ってめっちゃてんぱってトレーナーのスーツ引き裂いてたけどな

 

35:名無しのファン

 どうしてそうなる

 

36:名無しのファン

 慌てた拍子に両手が裾に引っかかってビリー、と

 

37:名無しのファン

 いやそうはならんやろ

 

38:名無しのファン

 なっとるやろがい!

 

39:名無しのファン

 ウマ娘パワーは別のところで発揮してもろて・・・何事もなく予備のスーツを取り出して着るトレーナーに歴戦の猛者の空気を感じ取った。

 

40:名無しのファン 

 流石に草

 

41:名無しのファン

 でもあんなかわいいというかライスシャワーみたいな引っ込み思案っぽい感じがあるのにライブではしっかり胸はって歌って踊って凄かったなあ

 

42:名無しのファン

 テイエムオペラオーはなんかそういうのうまいのはわかる。でもメイショウドトウもほぼ同レベルでこなしてたのはすごい

 

43:名無しのファン

 さてそれに比べて桜花賞は・・・

 

44:名無しのファン

 まさかのチームスピカがワンツートップよ。今回は逃げたダイワスカーレットの策にウオッカが引っ掛かった感じだったな

 

45:名無しのファン

 それでもハナ差まで差したのはすんごいと思う

 

46:名無しのファン

 店長さんの動画見る限り仲のいいケンカ友達みたいな空気なんだけどね

 

47:名無しのファン

 なんだかんだ仲良しな感じする

 

48:名無しのファン

 ゴール後の写真判定の間延々と「オレ!」「アタシ!」「「むむむ~~~~っ!!」」って言い争ってるのめっちゃ可愛かった

 

49:名無しのファン

 そしてダイワスカーレットの勝利が決まったとき素直になれないながらも認めるのほんま尊い

 

50:名無しのファン

 現地で見てたけどほんとよかった。証拠に隣にいたピンクの髪にでっかいリボン付けたウマ娘なんか尊さで心臓発作起こしてたからな

 

51:名無しのファン

 どっかで見たことある特徴だけど大丈夫だったのか?

 

52:名無しのファン

 3秒後くらいに自力で蘇生してまた尊死を10回くらい繰り返してたぞ

 

53:名無しのファン

 なるほど、彼女は限界オタク悶絶天国に召されていたんだな

  

54:名無しのファン

 天国どころか地獄みてえな名前だな・・・

 

55:名無しのファン

 それは俺たちが毎日いるところでは?

 

56:名無しのファン

 そうだった。

 

57:名無しのファン

 話がそれたが次のティアラと3冠のレースが楽しみになった。もうチケット予約したし

 

58:名無しのファン

 早すぎぃ

 

59:名無しのファン

 多分こんくらいしないともう見れなさそうな感じするし 

 

60:名無しのファン

 かもなあ。そしてお待ちかねは・・・!

 

61:名無しのファン 

 ジュニアのデビュー戦だよ!お前ら注目してるのだれ!?

 

62:名無しのファン

 キングヘイローかな

 

63:名無しのファン

 いやしかしゼンノロブロイも捨てがたい

 

64:名無しのファン

 キングヘイロー、あの走りはやばい

 

65:名無しのファン

 ゼンノロブロイはまだ開花してないっぽい感じだけど、やばいよな

 

66:名無しのファン

 俺はブチコかな。めっちゃ、とっても、かわゆい

 

67:名無しのファン

 わかる。というか今季はその3人じゃないか?

 

68:名無しのファン

 デビュー戦バラバラだったけど、全員大差勝ちだもんなあ

 

69:名無しのファン

 じゃあまずは・・・ゼンノロブロイからかな?デビュー戦一番早かったし。

 

70:名無しのファン

 あの子な。テレビで見たときからファンになろうってずっと思ってたんだよ

 

71:名無しのファン

 ほんそれ。ビジュアル的にも、大きなメガネと耳が非常にマッチしていてかわいいし

 

72:名無しのファン

 でもレースでもな、あんなに強いなんてなあ

 

73:名無しのファン

 ああ、パドックで見たときなんか空気が他の子よりも違ってさ。これはもしやって思ってたらやっぱりって感じ

 

74:名無しのファン

 マルゼンスキー以来かな?先行で走ろうとしてるのはわかるんだけど能力差で結果的に逃げになる子は

 

75:名無しのファン

 ああ、やっぱりジュニア戦の1回目ともあってみんなゲートとかうまくないんだよ。それでも一発できれいにスタート切ってさ。加速していって他を置いてくんだ

  

76:名無しのファン

 毎年の事なんだけどまた強いウマ娘が出てきたなって感じ

 

77:名無しのファン

 しかもあの子文学少女なんでしょ?

 

78:名無しのファン

 ああ、この前確認してきた

 

79:名無しのファン

 というと?

 

80:名無しのファン

 いやホースリンクで

 

81:名無しのファン

 あれ?この頃って休みでは?

 

82:名無しのファン

 知らんのか?ジュニア級の子のお試し期間なんだよ今。普通に予約とれるし。ただ現役のクラシック、シニアの子がいないってだけさね。休みは1日多くなるからなんかの勘違いだろ

 

83:名無しのファン

 アバーーーッ!?俺としてことが(ファン歴2か月

 

84:名無しのファン

 初心者か。また一つ賢くなったな

 

85:名無しのファン

 嬉しいような複雑なキモチ。で、続きをどうぞ

 

86:名無しのファン

 歌のお兄さんいたりして

 

87:トレトレーナー

 呼んだ?

 

88:名無しのファン

 なんでいるんだ

 

89:トレトレーナー

 我が愛バの話をしてればいるぞ。具体的にはエゴサだけど

 

90:名無しのファン

 もういいや。ホースリンクの予約に成功した俺は当日きちんと身だしなみを整えて店の扉をくぐった。くぐった後で昇天するところだったが

 

91:名無しのファン

 ほほう、それはなして?

 

92:名無しのファン

 いやこの前トレセンが発表した新しいライブ専用勝負服あるじゃん?

 

93:名無しのファン

 ああ、あのえらい可愛いやつ

 

94:名無しのファン

 あれ凄いよね。昔からあるやつも好きだけどあっちも好きになった

 

95:名無しのファン

 ゼンノロブロイが着てたんだよ。スカートじゃなくてパンツスタイルのほうを

 

96:名無しのファン

 まーーーじで?それはしょうがないかも

 

97:名無しのファン

 だろ?実際指導役らしい同志アグネスデジタルも深く頷いていたから俺の反応は仕方ないと思うんだ

 

98:名無しのファン

 あー店長の店勝負服着ないとだめだから学園から貸されたんだな

 

99:名無しのファン

 そうらしい。まあ接客とかは初めてだし初々しくてかわいいなくらい。で本題なんだけど俺一応小説家なんだよね

 

100:名無しのファン

 進捗どうですか?

 

101:名無しのファン

 締め切りもうすぐですけど

 

102:名無しのファン

 原稿マダー?

 

103:名無しのファン

 地獄の言葉を並べ立てるのはやめろ。で、俺が彼女に会いに行こうと思ったのは彼女がテレビに出たときに好きな本の名前を列挙してたシーンがあっただろ?その中に俺の作品があったんだ

 

104:名無しのファン

 まじでか

 

105:名無しのファン

 推しに認知されるとかファンとしてあるまじき行為

 

106:名無しのファン

 まあそれは許してくれ。俺も物書きとしてそれなりに本が好きだから本好きトークできるかなって思って会いに行ったわけ。結果、ゼンノロブロイちゃんは俺の予想以上に本が好きで話が止まらなくなってしまった。そして一人で配膳までこなしだす店長

 

107:名無しのファン

 お前何やってんだ。店長は料理担当だろうに

 

108:名無しのファン

 返す言葉もない。で、さすがにと思ってゼンノロブロイちゃんに店長の事を教えて仕事に戻ってもらった。本が好きなのは事実、間違いない。

 

109:名無しのファン

 ちなみにお前の本の話はした?

 

110:名無しのファン

 めっちゃした。作者を前にしてるとは思えないだろうから仕方ないんだけど俺も驚くくらい考察とかしてくれてて作者冥利に尽きたね。あと多分いるであろう担当さん

 

111:トレトレーナー

 あいよ

 

112:名無しのファン

 流石にこの話は内密にお願いしたい。話してプラスになるならしてもらっても構わないけどそうじゃないなら秘密の、ただの本好きとの会話ということで処理したいんだけど

 

113:トレトレーナー

 いいよ。ゼンノロブロイちゃんも多分君との話が楽しかったみたいで終わった後嬉しそうに話してくれたし、そのお礼ってことなら。じゃあ俺はここで失礼

 

114:名無しのファン

 俺の話もここで終了。文学少女のゼンノロブロイを俺は推し続けることを決意した話でした、と

 

115:名無しのファン

 また濃い話だったな・・・んで次は?

 

116:名無しのファン

 その次デビューのキングヘイローかな?いや、こっちが別の意味で驚いたよね

 

117:名無しのファン

 ああ、パドックでも自信に満ちた緊張感よりも闘志が勝るいい表情してたしな

 

118:名無しのファン

 というかヘイローっていえば結構な名家だよな?テレビ見る限り黄金世代と同じクラスだったっぽいしなんで今になって・・・?

 

119:名無しのファン 

 さあな。案外気性難だったのかも。それでも凄いよ。生き字引の長老さんを捕まえたんだから。しかも彼女のためだけにチーム新設って本気だよ長老さん。

 

120:名無しのファン

 移ったメンバーに至っては皇帝、紅の怪物、女帝というリギルの中核メンバーだしな。

 

121:名無しのファン

 ジュニア戦デビューのゲートってみんな基本的に落ち着きがなくなるんだけどキングヘイローだけ妙に落ち着いててすごかった。

 

122:名無しのファン

 で、スタートだよ。作戦は多分最初から逃げ、大逃げってレベルかな。掛かったのかと思ってツインターボみたいになると思ったらそんなことなかったし。それにラストでね?

 

123:名無しのファン

 ああ、ラストカーブから度肝を抜かれた。既に追いつけないくらい差ができてたのに手を抜かずにさらに加速したんだよな

 

124:名無しのファン

 しかもあれはマルゼンスキーの走り方そっくりだった。何段階もあるギアを入れ替えるように段階的に加速していく末脚、マルゼンスキーの紅焔ギアだ。

 

125:名無しのファン

 マルゼンスキーには遠く及ばないけど技術自体はそのまんまだった。本格化したらどれほど速くなるか・・・

 

126:名無しのファン

 技術継承を見る限り、皇帝と女帝の技術も受け継ぐのかもしれない、そしたら

 

127:名無しのファン

 新しい王者の誕生か?とにもかくにもやばすぎるよ。デビューがもっと早ければな

 

128:名無しのファン

 黄金世代にもう一人追加されたのは間違いない。それでも年末、有マ記念がある。勝ち続ければそこで覇を競えるんじゃないか?

 

129:名無しのファン

 そうだな、でこの中にホースリンクでキングヘイローにあったやついる?

 

130:名無しのファン

 ワイや

 

131:名無しのファン

 いたわ

 

132:名無しのファン

 ワイはもともとリギルってか長老さんのファンだったんや。きっかけは皇帝なんやけどな。当然会いに行きたくなって予約したら成功した。店入って度肝抜かれたで?キングヘイローとシンボリルドルフがいたんやからな

 

133:名無しのファン

 まじで?まじで??

 

134:名無しのファン

 ああ、どうやら指南役だったらしい。で、キングヘイローなんだけど・・・気性難なのは間違いなさそう。元がつくだろうけど

 

135:名無しのファン

 ほほう、それはどうして?

 

136:名無しのファン

 所々でプライドが高めな言動があったんや。けど本人はそれを意識して治そうとしてるみたいでな?性格が原因でひと悶着あったんちゃうか?

 

137:名無しのファン

 なるほどな。でもお前が行ったときはそうじゃなかったと?

 

138:名無しのファン

 おう。どっちかっていうとお友達が大好きな子って印象かな?例えば同室らしいハルウララが朝がどうだとか、セイウンスカイが練習すっぽかしてたのを叱ったとか。しょうがないって顔しつつ嬉しそうな顔で話してくれたよ

 

139:名無しのファン

 やっぱいい子やったってことかな!というかハルウララと同室って苦労凄そう

 

140:名無しのファン

 毎日寝坊しかけるから起こしてるとか言ってたで。「しかたない子なんだから、もう」って言ってたわ

 

141:名無しのファン

 これには同志も昇天

 

142:名無しのファン

 はーホースリンクいいなあ。まだ行ったことないんだよね。予約とれなくて。

 

143:名無しのファン

 天国行きの切符は得てしてそういうもんや。今は耐えるんだぞ

  

144:名無しのファン

 せやせや。宝くじみたいなもんだし予約するだけならタダだからな

 

145:名無しのファン 

 しかも予約するだけなら金もかからん。ウマ娘に課金することについては惜しむ必要はないけど

 

146:名無しのファン

 まあ愚痴は置いといて、ラストだよラスト

 

147:名無しのファン

 デビューラストを飾るのはブチコか。いやホント一目見るだけで驚いたわ

 

148:名無しのファン

 ほんとそう。あの髪色は初めて見たよ。しかもあの小ささ、ナリタタイシンよりちっちゃいじゃん。

 

149:名無しのファン

 走れるのかと心配になったわ

 

150:名無しのファン

 パドックで出てきた時隣の女性が「小っちゃくてかわいい・・・」って言ってたわ。

 

151:名無しのファン

 ずっとニコニコしてチョコチョコ動きながら全方位に手を振って挨拶してたよな

 

152:名無しのファン

 多分アイドル性ならピカイチだろうな。ハルウララと同じタイプっぽい

 

153:名無しのファン

 しかも担当はあの蹄鉄トレーナーときたもんだ

 

154:名無しのファン

 あの人の選ぶウマ娘って相変わらず尖ってんなー

 

155:名無しのファン

 レースで圧倒的に不利になる体格してるもんな

 

156:名無しのファン

 それもそうだけどゲート入りめっちゃゴネてたよなwww

 

157:名無しのファン

 今度はゲート難かぁ・・・って感じだわw

 

158:名無しのファン

 でもほんとに小さくてかわいいよな。動作も結構オーバーで子供っぽいというか微笑ましいというか。ゴネてるとき手とか足が係員に当たらないようにめっちゃ気を付けてたし

 

159:名無しのファン

 そうするくらいなら素直にゲートは入れないいのに

 

160:名無しのファン

 仕方ないよ。ゲートのドアでもうあの子の顔見れなかったし

 

161:名無しのファン

 でもいくらゲート難だからってゲート内で目つぶるかふつー?

 

162:名無しのファン

 ゲート内のカメラが目をつぶってるのを映した瞬間場内がどよめいたよ。しかも音だけできれいにスタートを切るもんだから2重にさ

 

163:名無しのファン

 あれは俺もびっくりした。しかも体格が不利、一歩が小さいってことは体力消耗が激しいってことだし差しとかの作戦でも不利だ

 

164:名無しのファン

 当然選んだのは先行、にしても足の回転力半端なかったな。最後のコーナーからの加速やばかった

 

165:名無しのファン

 あそこから目に見えて足の動きが倍速になってたからな。ピッチ走法しか方法がないとはいえジュニア級でそこまで仕上げられるもんなのかって感じだ

 

166:名無しのファン

 多分蹄鉄トレーナーの担当のおかげかな?

 

167:名無しのファン

 ああ、そっか。ライスシャワーもハルウララも小柄だから必然的にピッチ走法に近くなるんだよね。ノウハウが蓄積されてるわけだ

 

168:名無しのファン

 同じ大差勝ちでも最初から差を縮めさせなかったキングヘイローやゼンノロブロイと違って末脚のみで大差勝ちしたからなあ。でもダート路線か~、芝で走って欲しかったなあ

 

169:名無しのファン

 でもハルウララで有マ記念とった蹄鉄トレーナーだぞ?もしかしたら・・・

 

170:名無しのファン

 我らが勇者アグネスデジタルのように両刀になるかも・・・?

 

171:名無しのファン

 それは・・・心が躍るな!

 

172:名無しのファン

 で、ライブだったんだけど・・・

 

173:名無しのファン

 お遊戯会かな?いや凄い上手だったんだけどね?両隣のウマ娘さん方が完全に妹とかを見る目だったんだけどさ?

 

174:名無しのファン

 ダンスとかを大きく見せるために飛び跳ねたり動きが激しかったのもよかったな。

 

175:名無しのファン

 キングヘイロー→正統派な堂々としたうまさ ゼンノロブロイ→歌上手すぎダンスキレありすぎ一人だけ別次元 ブチコ→ダンスはオーバー気味で見てて楽しい。歌はうまいが突出してるわけではない

 

176:名無しのファン

 これだわ。で、例のごとくホースリンクでのことを教えてくれ

 

177:名無しのファン

 いるの?

 

178:名無しのファン

 私が話そう

 

179:名無しのファン

 いるんだ・・・

 

180:名無しのファン

 ここは底なし沼の中だから探せばたいてい経験者がいるぞ

 

181:名無しのファン

 怖すぎるんですが

  

182:名無しのファン

 石油王とかが当たり前のようにいるんだからな

 

183:名無しのファン

 あ、土地確保したんで今度着工するよ。一周3000mの芝コースにする予定だよ

 

184:名無しのファン

 有言実行してるの怖すぎ。つーかそれ3億でたりんの?

 

185:名無しのファン

 仲間が結構協力してくれてさー。結構豪華にできそうだから楽しみにしておいて

 

186:名無しのファン

 とりあえずそれは置いといて・・・まず私が店に入った時、当然ブチコちゃんがいるわけ。ほんとに小柄でさ?聞けば137㎝だと。小学生でいうなら3年生ぐらいだよ。低すぎ。で、第一声が「いらっしゃいませッス!」

 

187:名無しのファン

 話し方ギャップありすぎ!?

 

188:名無しのファン

 そうそれよ。でも私の目線の下でニッコニコしてるブチコちゃんの可愛さですべてどうでもよくなったね。で、お目付け役というか指導役のウマ娘はいなかったわ

 

189:名無しのファン

 えっマジで!?それは大丈夫なのか・・・?

 

190:名無しのファン

 なんでも急に興行レースが決まってハルウララとライスシャワーはそっちに行かなきゃいけなかったんだと。でもブチコちゃんすごいしっかり者っぽくて、料理上手みたい。店長がデザート任せるくらいに

 

191:名無しのファン

 それはすごいな!?だって店長ってそれこそスーパークリークとかナイスネイチャみたいなできる子じゃないと任せないじゃん?それを初日からって、デザートのお味は?

 

192:名無しのファン

 もちろんおいしかった。でもお店で食べるきっちりしたものじゃなくて、家で作るものを最上級にした感じって言ったらいいのかな?そういうおいしさだった。わかりにくくてスマン

 

193:名無しのファン

 要はお袋の味か。つまりあの小ささでスーパークリーク並の母性を・・・?

 

194:名無しのファン

 母性=スーパークリークという方程式で草

 

195:名無しのファン

 まあそれはいいとして。凄い働き者だったよ。ちょこまかとテーブルを行ったり来たりして雑談に応じてくれたりお手拭きとかドリンクのお代わりとか気を利かしてくれたりして。動き全てがかわいく見えるから私も相当重症だね。まあそんな感じでサインをもらってきたんだ

 http:syashin.com

 

196:名無しのファン

 毛筆でブチコ!!ってめっちゃ豪快なサインだなww

 

197:名無しのファン

 いいなー!いーいーなー!!!

 

198:名無しのファン

 それでそのブチコなんだけど

 

199:名無しのファン

 なんじゃらほい

 

200:名無しのファン

 いや、昨日投稿された店長の動画に出てたなって話

 

201:名無しのファン

 えっ!?まだ見てねえ!

 

202:名無しのファン

 あー、あれな。割烹着に三角巾がめっちゃ似合ってて笑った

 

203:名無しのファン

 「マスターさん、今日は何するッスか?」この一言で「あっファンになる」ってなった

 

204:名無しのファン

 すごくよくわかる

 

205:デジデジデジタン

 さいっっっこうに可愛かったです!

 

206:名無しのファン

 手つきはマジで料理上手の動きだったけどな

 

207:名無しのファン

 横から見て台に乗ってるのが見えたときなんかキュンとした

 

208:名無しのファン

 割烹着が異様に似合うの草

 

209:名無しのファン

 給食係かな?

 

210:名無しのファン

 まあ次のG1が楽しみだな

 

211:名無しのファン

 ホープフルはキングヘイローとゼンノロブロイだろうけど・・・ダートはなかったよな?

 

212:名無しのファン

 たしかにな。ブチコはどうなるんだろうか

 

213:名無しのファン

 まあどうなっても応援するけど

 

214:名無しのファン

 せやせや

 

215:デジデジデジタン

 今年もウマ娘ちゃんが可愛くてたのしい!

 

216:名無しのファン

 まったくだ!

 

217:名無しのファン

 ところで見覚えのある名前だなあ?

 

 




 デジたん引いたのでどこかでデジたんメイン回をやろうかなと思います。前回は別腹ということでどうか一つ。


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店長、困る

 店長が動画配信を始めたときに皆さんが感想でいろいろ心配していたことに対する一つの答えとして書かせてもらいました。つまり蛇足です。


 今日も今日とて営業日、なんだか最近調子がいいぞぅ?と思う今日この頃である。配信はなかなかやる時間ないんだけど動画の投稿は結構している。なんと最近登録者が50万人に到達したのだ。この登録者のうちのどれが実際に動いているアカウントなのかは知らないけど良きかな。ウマ娘の宣伝になっているとこの調子なら胸を張ることができるだろう。でもなぁ・・・

 

 「ああ、またか。予約とりゃいいのに出待ちたぁ不届きな野郎め」

 

 そう思わず愚痴をこぼす俺の目線の先、窓の向こうには俺の城であるホースリンクの店先にいる男二人組だ。その手にはカメラとマイク、そんで声は聞こえないけどなんかカメラに向かってしゃべってるのがわかる。まあつまり、ウマチューブに動画を投稿している動画投稿者なのだろう。最近よくあるのだ、というか動画投稿し始めてからかな?ドッキリだが何だか知らんが俺の店に出勤するウマ娘たちに向かってカメラを向けて無理やり動画に出させようとする不逞の輩が湧くようになってしまったのだ。

 

 最初はまあ?やんわりと注意をして動画データをその場で消してもらってお引き取りを願っていたんだけど過激なやつならそのままウマ娘を連れ出そうとしたりゴネ出したりとか、「俺のチャンネルでこれを流したらどうなるかなあ?」などと暗に脅迫してきたりするやつもいてほとほと参ってしまった。検問はあるんだけど怪しかったら全部NGとかじゃないので、通れてしまうやつは通れてしまう、荷物検査があるわけじゃないからな。大抵は通りすがりのいいひとが「あんちゃんちょっと」と凄みのある笑顔で連れて行ってくれて事なきを得たりいつの間にか背後にいたたづなさんが連れて行ったり、誰が通報したのか知らないけど警察のお世話になったりしてたんだよね。

 

 で、その一部(アポなしの時点で)過激な奴らによって疑うことを知らないでおなじみサクラバクシンオーがあーだこーだ言われてついて行きそうになったのをきっかけに俺はキレた。とりあえずその輩には警察のお世話になっていただいてどうにかせねばいかんと決意したのである。

 

 とりあえずはウマ娘たちの保護の観点から出勤ルートの変更、これは簡単、学園側から人工林を通って俺の店に来るだけ。人工林はトレセンの敷地内なので立ち入り禁止だからよっぽどのバカじゃない限り入らないだろう。元から危なくないようにトレーナーの送り迎えはついてたけどもっと万全を期さねばいかん。

 

 で、もう一つがパトロールの追加。これは理事長に頼んで警察のお方々にお願いした。もともとトレセンの周りは平和なのだけど厄介ファンというのはどこにでもいるということなのですぐに承認された、でそれに伴ってトレセン内限定だった無許可撮影禁止のルールが俺の店の周りにも適用されている。つまり俺の店をバリバリに撮影しているこの二人はアウトである。一応念のため今日来る人のリストの顔写真を見ても当てはまらないのでアウト。はい電話決定。

 

 『もしもし、事件ですか事故ですか?』

 

 「あーすいません。ホースリンクの和田です。店の前で不審な二人組がカメラ回してウマ娘を出待ちしてるようなので対処をお願いしたいんですけど」

 

 『あー・・・またなんですね。お疲れ様です。至急向かわせてもらいます』

 

 「お願いします・・・これでいいかあ。さて、仕込み仕込みっと」

 

 さっそくと言わんばかりに近くでパトロールしていた警察官に肩をポンと叩かれて顔面蒼白になっている二人組を後目に俺は今日の仕込みに移るのであった。早く平和にならんかね。

 

 

 そして仕込み途中、不意に俺の店の電話が鳴った。ホームページ記載してあるとはいえ電話での予約は受け付けてないからかからないのが普通なんだけど・・・仕入れ先の業者かね?でもなじみの人は携帯にかけてくるだろうしなあ?

 

 「はい、もしもし喫茶ホースリンクです」

 

 『初めまして、私株式会社UMABOOOM!の鴨志田と申します。店長の和田様でよろしかったでしょうか?』

 

 「ええ、そうですが」

 

 『恐れ入ります。本日はお仕事のお依頼をさせていただきたくお電話させていただきました。つきましては弊社に所属しているウマチューバーのクリエイターとコラボという形で和田様に出演していただきたく・・・』

 

 「ああ、そういうことですね。申し訳ないですがそういう依頼はすべてお断りさせてもらっていまして、どうしてもという話でしたら・・・」

 

 『はい』

 

 「URA本部のですね、秋川理事長、それとメジロ家、シンボリ家等のURA幹部連合それぞれに許可を取ってから、という話でしたら私も動けます」

 

 『それは・・・』

 

 「ええ、難しいと思います。ですがそれぞれウマ娘に関することですから彼らの許可なしではなんとも・・・。私もURAの一職員でして、上の判断がないことには無理なんです」

 

 『了解しました。本日はお忙しい中貴重な時間をいただいてしまい申し訳ありません。もしも、ということがございましたらその時はよろしくお願いします。失礼します』

 

 がちゃん、と電話を切って、深呼吸・・・すー、はー・・・せーのっ!

 

 「やってられるかあああああああああああ!!!!」

 

 

 「ぴゃあああああああああああああああああああああ!?」

 

 「ああっすまん!」

 

 俺の魂の咆哮はちょうど今日の担当ということで裏口から入ってきたマチカネタンホイザの耳を盛大に直撃し悲鳴を上げさせてしまうのだった。目を回してしまった彼女に必死に謝りつつも俺はこのなかなかに仕事にならん状況をどうにかせんといかんと心に誓うのであった。

 

 

 

 

 「んん~むむむ~~~なるほど~。それは、マスターさんもお困りですねぇ」

 

 「ああ、いや朝は悪かったな。ちょっとカッカしちまってた」

 

 「いえいえ~むしろマスターさんもそういうので困るんだな~って」

 

 「俺も人間だぞこの~」

 

 「えへへ」

 

 営業を終え、なんとか問題なく終わらせることができた夕暮れ。あの後は特に何もなかったので良かったが、正直何かあったらと思って心配と緊張で余計に疲れた気がする。いつもと違うけど同じ位置に穴が開いた帽子を斜めに被ったおしゃれなタンホイザにチーズケーキとカフェオレを出して朝の事を詫びる。ウマ娘自身が人気になるのはわかる。とてもわかるんだけど・・・繋ぎで俺を使おうとするなよ。ちゃんとURAに持っていけば考えてはくれるぞ?よっぽどの事じゃなけりゃ通らないけど。朝の電話も多分俺が遮らなきゃ「出来ればウマ娘も・・・」と続いてただろうしな。困ったもんだ

 

 うむむ・・・と考えてるとフォークを咥えたタンホイザもむむむ、と一緒に考えてくれる。かわいい、ささくれている心が癒される。無性にルナに会って雑談したい気分だけどとりあえずいくつか意見を聞いてみよう。

 

 「んでなんだけど対処法として考えてるのは・・・」

 

 「考えてるんだ!流石はマスターさん」

 

 「煽ててもお代わりしか出ないぞ?まず一つ、動画の配信をやめて動画も全削除。ほとぼり冷めるまで静かに営業する」

 

 「えーっ!?やめちゃうの!?」

 

 「場合によってはな?んでもう一つ、勝負服接客サービスの中止だ。正直お前たちの安全を今俺が保証できるかと言ったらできんからなあ」

 

 「それはいやだよ!?」

 

 「安全には変えられないからな。んで最終手段、この店閉めて俺が学園の厨房に入る」

 

 「それはもっといや~~~~!?」

 

 反応がなかなかオーバーなタンホイザがテーブル越しに縋り付いてくるので頭を撫でて落ち着かせたあとお替りのチョコケーキをあげて改めて口を開く

 

 「で、どれがいいと思う?」

 

 「どれもだめだよ~~~」

 

 「なんの話をしてるんですか?」

 

 「おお、南坂」

 

 タンホイザが俺の質問に頭を抱えて否定しているとドアが開いてカノープスのトレーナーである南坂が姿を現した。これこれこうと事情を話して南坂がうんうん頷いてくれたので改めて

 

 「で、どれがいいと思う?」

 

 「全部却下です」

 

 笑顔が黒い南坂に断言されてしまった。さてどうしようかな

 

 

 「理事長、そんな感じなんですが」

 

 『却下!!!対策についてはこちらも考えるので早まった真似はしないように!たづな!HPの注意事項を拡大して貼り付けて固定!』

 

 『マスターさん、私たちの方でも尽力しますのでそんなことは言わないでください。皆さん悲しんでしまいますよ?』

 

 『同意!これはそんなことを考えさせた私たちに問題がある!それに途中でやめてしまっては余計に心証が悪くなるだろう。気にせず続けてほしい』

 

 とのことで。俺の対策はすべて却下されてしまったので背に腹は代えられぬ、最終手段だ。

 

 

 「と、いうわけでお前たちに相談させてほしいんだけど・・・とりあえずさっきの提案はどう?」

 

 「んー、カレンだったら絶対やらないなー?というかお店なくなったらカレンの隔週スイーツ投稿どうしたらいいの?」

 

 「却下よ。そんなことすればファンがアンチに回って余計面倒くさいことになるわ。燃えるわね、盛大に」

 

 「大 却 下です!ウマ娘ちゃんの笑顔溢れるこの聖地がなくなるのは死活問題!このデジたん、あらゆる方法で阻止して見せます!」

 

 「総すかんじゃん」

 

 「この店ないと困るもんね。記者に追いかけられずゆっくりできるカフェだし」

 

 「お兄ちゃんとゆっくりできるカフェはなかなかないしー、カレンは閉店はんたーい」

 

 「このお店がなければウマ娘ちゃんたちのあんな顔やこんな顔を見ることができません!閉店だけは断固阻止です!」

 

 2日後の定休日、俺はこの手の問題に詳しいであろうウマ娘たちを呼んで作戦会議を開くことにした。そのウマ娘たちとはまずSNSで絶大なフォロワー数を誇る今季期待の短距離ウマ娘、カレンチャン。ドリームリーグで活躍中の大人気読者モデルなゴールドシチー。そしてネットの海にどっぷり頭まで浸かっているでおなじみアグネスデジタルである。特に前者2人はいろんな意味でファンと近いため、アンチへの対処や炎上した場合などの対処が非常に上手だ。デジタルはなぞの人脈の広さで対応力が広い。

 

 「じゃあどうしたらいいのかねえ。結構な頻度で不審者来るんだよ。この前も恨みの手紙が来たし」

 

 「恨みの手紙・・・って?」

 

 「あー・・・要約すると「ウマ娘に囲われているだけでいい気になるなよ。身の程を知れ」みたいな内容かな。詳しくは思い出したくないけど」

 

 「なにそれ感じ悪。あるけどね、行き過ぎたファンレターみたいなの。そうだね・・・パトロールを密にするっていうのは、もうやってるんだっけ」

 

 「ただ炎上しただけならほっとけばいいんだけど~行動力のある人だと厄介だよね~。ところでデジタルちゃん何やってるの?」

 

 「特定作業です」

 

 「・・・???まあいっか。あ、そうだ。マスターさんってウマッターやってたよね?それで注意喚起とかはしたの?」

 

 「ヘッダーに固定してるんだけど・・・検問くぐってここまで来るやつらだと意味あるかどうかなあ。注意して聞くなら最初からやらないか電話なりでアポとってくるだろうし」

 

 「まあ、そうだね。あ、そうだ」

 

 「何か思いついたのか?」

 

 「私たちから言えばいいじゃん」

 

 「カレン達から?」

 

 「そ。私たちのSNSアカウント、学園の子たち全員分から一斉に注意喚起すればいいんじゃない?そうすれば来る人はファン全員から白い目で見られるわけだし、やりにくくなるよ」

 

 「あ~~!それいいね!カワイイ以外を投稿するのってちょっとイヤだけど、マスターさんのためだもん!カレン一肌脱いじゃう!」

 

 「そんなことしたらお前らまで巻き込まれるだろ。却下だ却下」

 

 「ふっふっふ・・・もう遅いですよ店長さん。先ほどグループに一斉に事の次第を投稿しました!明日の午前8時に一斉にそれぞれのアカウントから注意喚起がなされます!」

 

 「パソコンから目を離さないと思ったらそんなことしてたんかい」

 

 「真面目な話、皆さんこのお店がなくなるのは困るそうで・・・了解のお返事がたくさん来てます。流石に家の力を使おうとした方々は止めましたが」

 

 「それに関してはよくやった」

 

 絶対メジロ家の面々だ。ていうかマックイーンだ。というかトレセン学園のグループなんてあるの?怖いんだけど。俺が裏でなんて言われてるかなんて知りたくないからこれ以上掘り返さないようにしないと。・・・まあ、俺のためを思ってそれぞれ手間を割いてくれるというのは本当のところ滅茶苦茶にうれしい。これは皆来たときにとびっきりのおもてなしをしてやらないとな。

 

 「ま、何時もやってもらってばっかりだし、こういうときくらいは協力させてよ、ね?」

 

 シチーのその言葉に同調して頷くデジタルとカレンを見た俺は、ありがたくその言葉に甘えることにした。その代わりと言ってはなんだけど、好きなものをそれぞれ作ることを確約するのだった。 

 

 

 翌日のこと、開店準備中に携帯でウマッターを覗き見ると確かに学園のウマ娘たちのアカウントから俺の店に関する注意喚起の投稿が為され、トレンドを賑わせていた。現役引退問わずに皆一斉に似たような投稿をしていることから何事かと騒ぎになっている。その流れに乗じるようにトレセン学園のアカウントからも注意喚起が為され、とりあえずこれで一安心かと俺は胸をなでおろした。

 

 今日の担当であるシチーのほうに目をやると彼女はぱちん、と様になってるウインクを返してくれるのだった。




 というわけで店長がウマ娘たちに助けられるという話でした。

 次回は本筋に戻します。

 それに伴って新しくアンケートを追加しました 
 ご協力お願いします


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店長、困る「裏話」

 気になるというお声にお応えして!ルドルフ視点と底なし沼住人視点の詰め合わせです

 アンケートについてですがたしかに確定させるよりも原作に合わせて匂わすだけの方がいいかもと思ったので一度撤回します
ご協力ありがとうございました


 トレセン学園、ウマ娘たちが日夜鎬を削るレースに出るため、トレーニングに励み、仲間と語らい、ライバルと切磋琢磨する場所。学園というからには当然いろいろな組織があるわけだが、その中の一つ学生生活を司る頂点ともいえるトレセン学園生徒会、その活動場所である生徒会室は異様な雰囲気に包まれていた。

 

 「・・・・」

 

 トン、トン、と指で机を叩いているのはシンボリルドルフだ。いつも凛々しく、それでいて優しい笑顔を絶やさない彼女にしては珍しく不機嫌で耳も後ろに寝ておりとてつもない威圧感を醸し出している。威圧感や在る様はたしかに皇帝と呼んで差し支えないものだがそれを間近で拝んでいる同室の者たちにはたまらないものがある。

 

 たまたま手伝ってるマルゼンスキー、冷や汗が止まらない副会長エアグルーヴ、何時もはサボるのに率先して仕事をしているナリタブライアン。これで仕事をせずにこうなら文句の一つでも言いたいものかもしれないがシンボリルドルフは誰よりも多く仕事をこなしてかつその様なので文句も言えない。考えられることはただ一つ

 

 (会長の機嫌を直さなくては・・・・!)

 

 これに尽きるのである。彼女が不機嫌な理由はただ一つ、彼女の兄と言っても差し支えない人間の男が経営する喫茶店・ホースリンクにてこの頃迷惑行為が横行しているというのだ。元はウマ娘とファンとの交流という話で勝負服による接客を行っていたのだがここ最近は動画配信、テレビ出演等で知名度が上がったこともありキャンセル待ちで飛び入り入店しようとするものや悪質な動画投稿者、はては誘拐まがいの事も起こってしまった。

 

 被害者であるサクラバクシンオーの両親は当然学園に抗議、所属する「サクラの会」からも正式に抗議が来た。学園はその対応に追われ、理事会、果てはURA本部までも巻き込む大問題に発展しつつある。そこで打ち出されたのは件の喫茶店の閉店、もしくは勝負服接客サービスの中止だ。言ってしまえば学園に通うウマ娘たちの安全を確保するための正論であるはずのそれはシンボリ家、メジロ家を筆頭にしたウマ娘の名家の反対もあってなくなった。

 

 「ここでこれが無くなればファンが批判に回り今よりも状況が悪化するかもしれない」

 

 という現状のほうがまだましであるという方便で存続が決定した。そこで考えるべきなのは当然安全の確保だ。警備員の常駐がいま一番優先度が高いので人員の調整中である。まあその程度では皇帝の機嫌は悪くならない、じゃあなぜ彼女が現状物凄い不機嫌かというと「大好きな兄さんにとんでもないストレスがかかっているから」これに尽きる

 

 シンボリルドルフは店長が好きだ。ライクなのかラブなのかもはや判別がつかないレベルで大好きだ。文字通りシンボリルドルフがこの世に生を受けてから、彼は忙しいルドルフの両親に代わりずっとそばにいてくれたのだ。物心ついた時から彼の膝の上は彼女の特等席で、寂しくないようにと一緒に寝てくれたり、自分のために初めて料理をしてくれたりと愛情をこれでもかと注いでくれている。今でこそ距離を置いているが、彼の店に行ってコーヒーを飲み、食事をご馳走になり、たわいもない話をすることが一番好きな彼女にとっては一歩間違えば店が無くなるというこの状況は耐えがたいものだ。

 

 みしり、と金属製であるはずの万年筆がルドルフの手の中で愉快なオブジェに変わった。冷や汗が出るナリタブライアン、耳と尻尾がピンと伸びるエアグルーヴ、ため息をつくマルゼンスキー。早くこの時間が終わらないかな・・・と全員の思考が共通している。

 

 「もう、ルドルフ?眉間にしわが寄ってるわよ。そうなる気持ちもわかるけど、少し落ち着いて」

 

 「・・・んんっ・・・すまない。どうしてもな・・・困ったものだ。夢の実現にはまだまだ遠い」

 

 「仕方ありません。会長の幼馴染ですから、それに憂慮すべき事態であることは理解しているつもりです」

 

 「それでももう少し柔らかくいてくれると助かるけどな」

 

 「ブライアン!」

 

 「いい、その通りだ。すまなかった。大人になったつもりでいるのに、まだまだ若輩者だな、私も」

 

 やっとルドルフの顔が何時もの調子に戻ってくれた。それと同時に今度は全員の携帯から着信音がする。緊急用の連絡をするためのグループSNSだ。何事かと携帯を覗き込んだ4人、そこに書かれていたのは発信者がアグネスデジタルであることと、店長が脅迫文を送られていたことだ。当然そこには多くのウマ娘から一気に返信が来ている。特にメジロ家の面々は家の力を動かす気満々だがそこはデジタルが止めている。ルドルフは口を酸っぱくして店長に「俺の事で家の力を使うな」と言われているので何とか苦いものを飲み込んだ。

 

 ルドルフどころかその場にいる全員が一気に不機嫌になったわけであるが続くデジタル、ゴールドシチー、カレンチャンの投稿でその機嫌は一気に持ち直した。

 

 「学園のウマ娘全員のSNSアカウントから一斉に注意喚起か。なるほど、抑止効果は十分に期待できるだろう」

 

 「仮に店が無くなるとしたら困るのはファンの皆だしね。私たちからもできることはありそうだわ」

 

 「でもそれなりに知名度があるアカウントも限られます。この分では・・・」

 

 「・・・卒業生にも協力してもらったらどうだ?」

 

 「それだ。マルゼンスキー、理事長とたづなさんのところへ行こう。ブライアンとエアグルーヴは全員に配る文面のひな型を考えておいてほしい」

 

 「わかりました」

 

 「わかった」

 

 その後、事の次第を聞いた理事長とたづなさんにより事態は収束に向かっていったことは言うまでもない。そしてその陰には名もない人間たちのささやかな協力があったことも、知られてはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウマ娘に協力する支援者の鯖

 

 

 石油王

 おいっす。新コース設営のための協力と土地確保と資金協力ありがとね。順調に工事が進みつつあるよ

 

 シャッチョさん

 気にすんなー。コースが増えればウチも儲かるし。それはそうと最近ちょっとトレセン周りがきな臭くない?

 

 警備マン

 あー、それな。実際やばいよ。店長さん相当参ってるみたい

 

 ケイサッツ

 うん、今月だけで8回も同じ目的の不審者が捕まってる

 

 カイーチョ

 流石に多いな。これどうにかならんのか?

 

 クチュール

 いるわよねえ、そういう困った人

 

 ベンゴッシ

 うーん、迷惑防止条例違反でしか訴えられないのがきついな。他になんかないもんかね

 

 成金

 そういえばちょっと危ないこともあったんじゃなかったか?

 

 ケイサッツ

 うん、誘拐未遂があったよ。店長が止めてくれたからよかったものの一歩間違えれば危なかったかも

 

 成金

 犯人はなんて?

 

 ケイサッツ

 くっだらない話だよ。自分たちが有名になるためにウマ娘を利用したかったんだと。だまして連れて行こうとした時点で未成年者誘拐になるんだけど、わかってなかったみたい

 

 ベンゴッシ

 流石に危ないかな。何とかできないもんか・・・

 

 不動産王

 やべえよやべえよ・・・

 

 石油王

 どうした?

 

 不動産王

 メジロとシンボリから商談があった。トレセン周りの持ってる土地をよこせって。何するかと聞いたら警備会社建てるからその社屋作るって

 

 石油王

 安全確保に余念がないな(震え声

 

 ケイサッツ

 ねえこれまずくない?

 

 ベンゴッシ

 めっちゃまずい

 

 成金

 アホの俺に何がまずいか懇切丁寧に教えてくれ

 

 幹部

 説明しよう!現在トレセン周りの警備は警備マンの会社が務めているわけだけどシンボリ家やメジロ家がそれに食い込んでくるつもりになったということは・・・我らへの信頼が薄れてきてます

 

 成金

 滅茶苦茶まずいじゃん!?

 

 警備マン

 いわゆる名家の人たちは大事な大事な跡取りのウマ娘をトレセンに預けてくれているわけでして・・・そのトレセンが安全じゃなくなったら、ねえ?

 

 クチュール

 誘拐事件が尾を引いているわねこれ。大丈夫かしら

 

 幹部

 シンボリ家の方はもうカンカンに怒っててな?店長さんが止めてくれてるみたいだけど怒ったら何してくるか・・・

 

 ジームイン

 やべえよやべえよ・・・

 

 成金

 今度はどうした

 

 ジームイン

 店長さん場合によっては店たたむって(震え声

 

 石油王

 ・・・え?

 

 ケイサッツ

 ・・・は?

 

 成金

 ・・・ええええええええええ!?

 

 クチュール

 あら・・・でも理由はわかるわね。彼の事だし自分よりもウマ娘優先で動くだろうから・・・自分の城を手放すのもためらいがないわ

 

 警備マン

 いやとんでもないことだぞ!?店長さんの店ってウマ娘とファンの交流の場かつ、ウマ娘のリフレッシュの場だろ!?そんなことしたら調子崩すウマ娘が絶対出てくるだろ!

 

 成金

 阻止だ阻止!あの天国を潰すわけにはいかない!あらゆるコネクションを駆使して止めるんだ!

 

 幹部

 おぉふ・・・

 

 石油王

 今度はどうした

 

 幹部

 店長さんの店の事がURAの議題に上がった。ちょっと緊急会議してくる。できれば存続の方面に持っていけるように頑張ってくるよ

 

 ベンゴッシ

 頼んだ。

 

 デジデジデジタン

 やばいですやばいですやばいですぅぅ!!!

 

 警備マン

 同志デジたん!?この間のレースすごかったぞ!

 

 クチュール

 勝負服ばっちり決まってたわね。鼻が高いわ

 

 デジデジデジタン

 ありがとうございます・・・じゃなくて!やばいんです!天国が!私たちのサンクチュアリが消滅の危機です!

 

 カイーチョ

 っていうとホースリンクか。今度はなんだい?

 

 デジデジデジタン

 マスターさんに脅迫とも取れる手紙が届いてたんです!これがまた危機感を煽ってるようで・・・先ほど私とウマ娘ちゃんを二人集めてとんでもないことを相談されましたあああああ

 

 ケイサッツ

 は?ちょっと同志その手紙の現物ある?

 

 デジデジデジタン

 マスターさんは思い出したくないみたいですけど一応見せてくれました!保存済みです!今からアップしますね!

 

 ケイサッツ

 こいつぁ・・・いかんな。おい警備マン、消印ねえから直接投函したっぽい。監視カメラのログ洗え

 

 警備マン

 もうやってる。怪しいのは・・・いた!今データ送る。あと頼んだ

 

 ベンゴッシ

 やってくれましたね・・・とりあえず特定から始めましょう。場合によっては協力しますから

 

 石油王

 ちょっと知り合いの探偵業のやつに頼んでくるわ

 

 シャッチョさん

 冗談じゃねえ!あの天国を消してたまるか!

 

 幹部

 ひー、なんとかなったあああ!

 

 成金

 お、お帰り。ってことは存続?

 

 幹部

 まあ、何とかね。問題になったのはやっぱり安全面をどうするかだよ。結局は警備マンとこに増員頼むってことになったけどね

 

 警備マン

 まあそれは是非ともやらせてほしいけど。大丈夫なんか?

 

 幹部

 メジロ家とシンボリ家が店長の意向をくんで存続のほうに賛成してくれたからなんとか・・・でも幹部の一人が結構強烈に反対してねえ・・・

 

 シャッチョさん

 まあ反対するやつもいるわな。それに関してはしゃーない

 

 幹部

 ウマ娘への徹底した管理を標ぼうとしている人だから、管理できない部分が出てくるのは看過できなかったみたい。ウマ娘に対しては人一倍真摯な人だから譲れないものはあったんだと思う。結局理事長が説き伏せてくれたよ

 

 不動産王

 あの人には頭が上がらんな・・・

 

 デジデジデジタン

 あのあのあの!ちょっと光明が見えてきたかもしれません!

 

 成金

 詳しく頼む

 

 石油王

 流石は同志!協力できることがあれば惜しまないぞ!

 

 カイーチョ

 任せとけ!

 

 シャッチョさん

 ウマ娘のためならえんやこーら

 

 デジデジデジタン

 はい!さっき提案が出たんですけど、学園にいるすべてのウマ娘ちゃんのSNSアカウントから一斉に注意喚起を飛ばそうという話が上がりまして!そうしたら問題の周知とけん制が同時にできるのではないかと!

 

 クチュール

 なるほど、ウマ娘本人たちから迷惑していると伝えるわけね?これ以降何か起きるようであれば・・・

 

 ジームイン

 問答無用で取り押さえられます!ちょっと卒業生の子たちにも連絡とってみますね!店長さんのお店好きだった子たくさんいましたし!

 

 幹部

 俺も協力するよ。卒業生でURAに就職して働いてる子たくさんいるし渡りつけてみる

 

 石油王

 俺ウマッターの方に圧かけてくるわ。トピックスに出すようにさせてくる

 

 成金

 じゃあ俺ウマスタグラムの方で。札束で殴ってくるわ

 

 カイーチョ

 じゃあ俺も、ウマチューブの方でそれとなく広告で伝えてみる

 

 シャッチョさん

 稼いだ金は何のためにある?ウマ娘に湯水のごとく注ぐためにあるのだ!

 

 デジデジデジタン

 みなさん・・・ありがとうございます!

 

 成金

 お礼はいいよ。やりたくてやってるから

 

 石油王

 んだんだ。どうしてもお礼をしたいというなら・・・

 

 デジデジデジタン

 はい!なるたけ頑張らせていただきます!

 

 石油王

 まじで?じゃあお願いするけどさあ・・・

 

 カイーチョ

 そろそろ君の事推させてくれないかな?

 

 シャッチョさん

 君のレースとライブが好きだったんだよ!

 

 デジデジデジタン

 あぅ・・・えっと・・・そのぉ・・・・解釈違いですうううううう!!!

 

 

 以下、作戦会議が続く




 沼の人物紹介
 
 石油王
 みんな大好き石油王。ガチで油田を掘り当てた本物の石油王。若干5歳でウマ娘に魅せられた筋金入り。このたびどんなウマ娘でも中央のレースと同じターフに立てるようにするためレース場建設を行っている。箱推しなため全てのウマ娘を推している。たとえレース場に立っていなくても。

 シャッチョさん
 レース場建設協力者その1。芝やダートを管理する専門のプロ業者の社長。もちろんトレセン学園とも契約済み。作っているレース場の芝の管理も担う予定。ハルウララの熱烈なファン。こっそりハルウララ大感謝祭を射止めた幸運な男。

 警備マン
 トレセン学園と契約している大手警備会社の大株主兼社長、というか株の7割を持っている創業者の一族。レース場建設協力者その2。作っているレース場の警備関係を請け負う予定。マチカネフクキタルの熱心なファン。シラオキ教徒。趣味はタロット占い。

 ケイサッツ
 トレセン学園周辺を管轄する警視長。めがっさ偉い。最近トレセン学園がきな臭くなってきてるのが頭痛の種。御年55歳。実はスマートファルコンの大ファン。ゲリラライブの最前列を見ると高確率でサイリウム振ってる

 カイーチョ
 URAと提携してウマ娘関係のグッズを製造している超大手グループ会社を束ねる首領。最近の趣味は新しいぱかプチを考えること。レース場建設協力者その3、完成の暁にはオリジナルグッズを新レース場で販売する予定。ライスシャワーのファンで青薔薇のネクタイピンを常につけている

 クチュール
 キタサトコンビの職場体験編ででてきたシゲさんこと重松さん。勝負服をデザイン、作成する事務所の社長さんである。最近の推しはブチコ。早く勝負服作ってあげたい。

 ベンゴッシ
 個人事務所を構える敏腕弁護士。カイーチョの会社の顧問弁護士でもある。レース場建設協力者その4。建設に伴う法律関係の書類やらなんやらをだいたいやってる。イクノディクタスのファン、勝負服にやられたらしい

 成金
 リアル成金。FXで有り金を解かすどころか億万長者になった男。レース場建設協力者その5。その後も株で成功し続けているためレース場建設に必要な資金を提供した。今季注目ウマ娘はゼンノロブロイ。大きいウマ耳によわい。

 不動産王
 土地を腐るほど持っている大手不動産会社社長。レース場建設協力者その6。必要な土地をちょっとお安めに提供した。レース場の周りを再開発してニュータウンにしようかと考えている。仕事柄各名家とコネクションを持っているが胃が痛い。実はメジロライアンのファン。ホースリンクでもらったサインを大事に大事にしている

 幹部
 名もなきURA幹部の一人。レース場建設協力者その7、完成の暁にはアマチュアレースをたくさん開催したいと思っている。ウマ娘の引退後の進路を拡充させようと日夜努力を重ねている。スペシャルウィークの走りに一目惚れしてファンになった。日本総大将最高。

 ジームイン
 毎度おなじみトレセン学園事務員。就職したと思ったらいつの間にか沼にはまっていた。蹄鉄トレーナーが最近見つけたブチコを推し始めた。でも約束を守ろうと必死に頑張るキングヘイローに心打たれて揺れ動いた結果、全力で両方を推しだした。

 デジデジデジタン
 いつもお馴染み限界ウマ娘。かわいい、実は自分が推されるとはみじんも思ってない。解釈違いです。私より尊いあのウマ娘ちゃんはどうでしょう?「うるせえお前を推させろ!」主戦場を海外に移した結果海外ファンがついて余計に推される羽目に。仕方ないね。


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トレセン学園春のファン大感謝祭

 重い話が続いたので軽い話を書きたかった


 

 

 

 俺の店に訪れた空前の危機は今までかかわってきたウマ娘たちの協力により、今は鎮静の一途をたどっている。何の力が働いたのかは知らないけど俺の知るSNSが軒並みこの話題をトピックス、特集としてプッシュし多くの人に今何が起こっているのかを知ってもらうことができたのだ。それに続くようにトレセン、URAも公式に声明を発表しもしもウマ娘や所属する職員に何かあった場合必ず法的処置を敢行するという強い言葉に再生数や話題目当てで俺やウマ娘を道具程度にしか思ってないやつらは関わろうとしなくなっていった。

 

 さらにやつらにとどめを刺したのはSNSに続いたほかのメディア媒体だ。俺が出演したテレビ番組を放送していたキー局も朝のニュース番組で取り上げてくれたり、よくアグネスデジタルと意気投合している乙名史記者が所属する月刊トゥインクルも一面記事で大々的に取り上げてくれて、逃げる隙間をなくしたのだ。さらに徹底的だったのは、トレセンが今までやってきた不審者たちの総数とそれに対する処置をすべて公表したのがダメ押しになった。つまりやらかしたらこうなるぞという見せしめを晒し上げたのだ。

 

 まあつまり、長々と語ったこれが何を意味するかと言えば、俺の店に平和が戻ってきて、もう閉店とかどうとかいう必要がなくなったのだ。もちろん安全面を考慮して警備員の巡回を増やしたり店の隣に厨房とつながるプレハブ小屋がたってそこに警備員が常駐したりとか変化はあった。まあもとはと言えば人気ウマ娘を預かるには安全面を考慮しすぎるということはないし、仕方がない。ただ少々物々しくなってしまったんだけど、この店を続けられるというだけで幸せだ。それに今日みたいな祭りの日に間に合ったということも、一因かもしれない。

 

 そう、今日はトレセン学園が外部に開放される珍しい日の一つ。春のファン大感謝祭だ。まあ人間でいう文化祭や体育祭のようなイベントだけど。当然俺も出張開店する必要がある。ストレッサーが消えうせたので料理だけに集中できる環境になったのはとりあえずよかった。当然と言えばなんだが、俺としてはウマ娘や協力してくれるファンの皆様方にお礼をしたいと考えてるので今日は豪華にしたいなと思っている。というわけで頑張ってみた。

 

 今日キッチンカーで発売するのはフルーツサンド、ただのフルーツサンドと侮るなかれ。パン、挟むクリームは自家製。カスタードと生クリームをメインについでチョコクリームにイチゴクリーム、他たくさんである。パンに至ってははちみつがほのかに香るコッペパンだ。頑張って焼いたのである。厨房の中にパンの匂いが充満していてお腹が減ってくるわ。さらにフルーツはいろんな伝手を頑張ってフル活用して仕入れたちょっとお高めのいいものばかり。お値段もかなりというか赤字である。お礼なので仕方ないね。ただで配るとすぐなくなるからね、しょうがないね。

 

 あらかたすべてを冷蔵車に詰め込んでキッチンカーとドッキング。ショーケース内にこれでもかとフルーツを敷き詰め、パンを山積みにしたらさあトレセン学園までれっつごー、である。5分かからないけど、様式美だよ、これ大事。

 

 もうすでに生徒たちが盛大に飾り付けたトレセン学園に我が物顔で入った俺は生徒たちやその他の業者が屋台をやっているエリアの一角にキッチンカーを停めて準備を始めた。隣の屋台はテイオーの大好物であるはちみーの屋台だ。俺は今回はちみーじゃなくてコーヒーと紅茶の予定だからバッティングすることはないだろう。冷蔵車の中にクリームを取りに行ってキッチンカーの中にある冷蔵庫の中にしこたま詰め込んだら準備オッケー。ついでフルーツのカットをぱぱっとやってしまいあとは開場を待つだけになった。もちろん俺が来たことでウマ娘たちが開店は今か今かと待っているんだけどな。ちなみに最前列は・・・

 

 「チョコクリーム・・・いえ、チーズクリームも・・・メロンクリームも捨てがたいですわね・・・」

 

 「マックイーン、スピカの方はいいのか?」

 

 「ええ、問題ありません。こうしてマスターさんのスイーツを食べるより大事なことはありませんわ」

 

 「いやあるだろ。レースとかさ?テイオーが泣くぞ、ついでに沖野も」

 

 「トレーナーさんの事なんて知りませんわ!」

 

 「何やったんだあいつ・・・」

 

 ぷんすかぷんとでも擬音がつきそうなふくれっ面、饅頭のようなもちもちした頬を膨らませたマックイーンがぷりぷりと怒っている。なにあったん?えー、なに?沖野の野郎が足を触った挙句に「筋肉がついて太く強靭になったな・・・いい脚だ」って言ったぁ?沖野お前・・・褒めるにしてももっと言い方があるだろ・・・女の子やぞ。かわいそうにマックイーン、すらっとしていい脚線美だと思うんだけど言うに事欠いて太いとは。

 

 「あー、まあ褒めたかったんだよあいつは多分。ま、しょうがないから一つおまけしてやんよ。どれがいい?」

 

 「よろしいんですの!?それでは・・・イチゴのチーズクリームとメロンのメロンクリームを・・・!」

 

 「ほんでこれもおまけな」

 

 「わぁ・・・これは飴ですの?ありがたくいただきますわ」

 

 「おう、待ってな」

 

 俺はあらかじめ切ってあるコッペパンにマックイーン御所望のチーズクリームとメロンクリームを挟み、角切りにしたイチゴとメロンをこれでもかとトッピングして包み紙で包む。きらきらと新鮮なフルーツが光を反射するさまはまるで宝石のようだ。マックイーンに渡すと彼女の瞳が同じように、いやこっちのが綺麗か。きらきらと輝く瞳でフルーツサンドを受け取った彼女は待ちきれませんわとばかりにベンチに座ってかぶりついてる。さっきまでのふくれっ面はどこへやら。柔らかそうな頬を空気ではなく食べ物で膨らませた彼女は非常に上機嫌になったように見える。

 

 頬にクリームを付けながらも満面の笑顔で美味しそうに食べてくれるマックイーンを見るとこっちも嬉しくなる。料理人冥利に尽きるな。

 

 「で、デジタル」

 

 「はい、なんでしょう」

 

 「さも当たり前のように車の中にいるところ悪いが今日はお前働いちゃだめだからな」

 

 「そんな殺生な!?」

 

 「そんなことよりお前目当てのファンと交流しろ。さもなくば・・・」

 

 「・・・さもなくば・・・?」

 

 「この前お前が参加したらしいウマ娘アンソロジーをウララとライス、ブチコに見せることにする」

 

 「鬼ですか!?というかなんで持ってるんですか!?」

 

 「ゴルシがくれた」

 

 「う・・・うううううぅぅぅ・・・怒れないっ!仕方ありません、トレーナーさんと一緒に回ることにしましょう」

 

 「トレーナーは仕事だから友達といけって」

 

 木陰に隠れて此方を伺うデジタルのトレーナーがフリップを使って必死にそう伝えてくるのでそう伝えるとデジタルはこれも駄目なのかとがぁんと言わんばかりの顔になった。心が痛む、でもこの子友達と距離置いてばっかりであんまり遊んだりとかしないから今日くらいはいいんじゃないかと思うんだ。ほらさっそく

 

 「あー、デジタルちゃんいたー!」

 

 「ひょえっ!?ふぁふぁふぁファル子さん!?わたくしにいかなる御用向きで!?」

 

 「何って今日ファル子、デジタルちゃんと一緒に回りたくって探してたんだ!デジタルちゃんのトレーナーさんが、ここにいるだろうって!デジタルちゃん今日逃げ切りシスターズのステージがあるんだけど、見に来てくれない?」

 

 「もももちろんですとも!最前列で見る所存です!」

 

 「ほんと!?じゃあステージが始まるまでファル子たちと一緒に回ろうよ!ね?いこいこ!」

 

 「・・・は、はい!不肖デジたん、御付の任に・・・いまたちっていいました?」

 

 「逃げ切りシスターズのみんなも一緒だよ!」

 

 そんなこんなでトレーナーが仕込んだと思わしきスマートファルコンによってデジタルは連行されていく羽目となるのであった。ちなみにおそらく噓をついてまでデジタルとウマ娘を一緒に遊ばせたかったらしいトレーナーはよかったねえとでも言わんばかりの顔で滂沱の涙を流しながら二人を見送っている。手を繋がれても昇天しないとは・・・成長したな、デジタル。

 

 『おはようございます!只今より、トレセン学園春のファン大感謝祭、一般入場を開始します!お客様につきましては、お怪我をしないようにごゆっくりとトレセン学園を楽しんでいってください』

 

 「お、きたな。ホースリンク、出張開店始めますか」

 

 たづなさんのアナウンスがそこかしこに設置されているスピーカーから響き始め、それに伴って自分たちの模擬店で気合を入れ合うウマ娘たちやファンの喜びの声も聞こえ始めた。俺もこれから訪れるであろう大きな客の濁流に対抗できるように、備えておかねば。

 

 

 

 

 「ニンジン揚げいかがですかー!?」

 

 「かき氷やってまーす!」

 

 「トレセン学園で大人気、はちみつを使ったドリンクはちみー!お好みの味付けで提供中でーす!」

 

 「あ、ホースリンクだって!」

 

 「あー、マスターさんだ!うわ、おいしそ~」

 

 「すいませーん!イチゴのカスタード二つで!」

 

 「はいよ。じゃあ二つで800円ね。お待たせしました、どうぞ」

 

 「やった!さっそくウマッターにあげちゃお~」

 

 開始して15分も経たないくらいでもうすでに俺の店のキャパシティを超えだした。おっかしいなー、前の年はこんなことなかったんだけど・・・うん、知名度上がったせいだね。しょうがないね。なんか知らんけどウマ娘と人が混じった行列が長く長く続いているよ。既に行列整理の人たちもやってきた。エアグルーヴもそこでため息ついている。ごめんよ。え?場所を考えろ?だからごめんて、来年からは出店場所をもっとはずれのほうに変えるからさ。

 

 「あーやっと順番来たよ!ね、タイシン、何がいいと思う!?」

 

 「アタシ、コーヒークリーム、フルーツはいいや。ハヤヒデは?」

 

 「じゃあ私は・・・チョコクリームのバナナで。チケット、いつまでも悩んでると後ろの邪魔だぞ」

 

 「わかってるよー!じゃあ私は・・・イチゴのニンジンクリーム!」

 

 「お、BNWの御一行様か。相変わらず仲がいいようで何よりだな。ちょっと待ってな」

 

 見覚えのあるボリューミーな葦毛だなと思ってたらやっぱりハヤヒデたちか。待ってる間もファンと握手したり写真を撮ったりとなかなか忙しそうだけどこの祭りの趣旨はそういうものだし、楽しそうだし何も言うことはないな。しかしまあ、チケゾーは子供に人気だな。抱っこしたりおんぶしたり・・・ハヤヒデもタイシンも似たようなもんか。みんなかわいくてよろしいね。

 

 さて、オーダー品を丁寧に作ってやりますか。

 

 

 

 「ああああああああああ・・・・疲れた・・・」

 

 昼の12時を待たず、後ろの冷蔵車の中身は空っぽになってしまった。やはり店と違ってキッチンカーなので在庫は限られてしまうのがネックだな・・・正直体力的にもつらいしここでいったん営業終了できたのはいいのかもしれない。残りの時間はファン感謝祭を見て回ろうかな?。閉店の片づけを済ませていると、イベント会場のほうが盛り上がっている。ちらりと見るとどうやら早食い大会のようだ。参加してるのは・・・オグリ、タマ、クリークたちか・・・オグリいる時点で勝者決まりじゃない?あれ?意外といい勝負してるじゃん?

 

 ちらちらと片づけをしながらイベントをチラ見しているとどうやらタマとオグリが同着になったようで写真判定・・・判定あるの?にもつれ込み、オグリが優勝ということに相成った。まあ予想通りか、食べたかっただけらしく商品は2着のタマに譲ってるみたいだけど

 

 

 片づけを終えて一心地ついていると今度はイベントステージでスマートファルコン達逃げ切りシスターズのライブが行われるようだ。こういうときでもないとウイニングライブのようなものをじかに見ることはできないので俺もさっそく人混みの中にダイブしていくことにする。立ち見でいっか、と思ってると関係者席についていた沖野とおハナさんと目が合った。沖野がこっちに来いと手招きしていたのでありがたく座らせてもらうことにする。

 

 「よう店長、聞いたぜ?倍速で完売したって?」

 

 「あの規模でよく一人で回せるものね、お疲れ様」

 

 「悪いね。あれは正直予想外だよ。あと沖野ー。聞いたぞ?マックイーンに何言ってんだお前」

 

 「言わんでくれ・・・ありゃ俺が完全に悪いんだから・・・つい口からな」

 

 「素直なのは美徳なのだけれどあなたの場合は言い方を考えるべきかしら。そんなこと繰り返してるとゴールドシップに愛想つかされるわよ」

 

 「キッツいなあおハナさん。気を付けるよ、ホントに」

 

 「これがリギルと肩を並べるチームのトレーナーかよ」

 

 「あーそうだ」

 

 チーム、と聞いて手をポンと叩いたのは沖野、そういえば最近理事長から発表があったんだっけか。トレセン学園伝統のチーム対抗戦を復活させるって。

 

 「アオハル杯、物は相談なんだけどおハナさん、組まないか?」

 

 「魅力的、と言いたいところだけど遠慮しておくわ。私たちだけで足りるもの」

 

 「くぁー、やっぱそうだよなあ。スピカには短距離とダートがいねえからよ。参加できるのかどうか怪しいぜ」

 

 「別にスピカ限定じゃないんでしょう?他のチームと合流も認められてるんだし、新しい子でも探したら?」

 

 「なかなかオッケー出ないんだよ・・・」

 

 「まずお前は初手で足を触りに行くのをやめろ」

 

 アオハル杯、俺は見たことないが昔にあったトレセン学園伝統のチームでの対抗戦、短距離、マイル、中距離、長距離、ダートの5種目に最大3人ずつ代表を出して行うものだ。トゥインクルシリーズの人気に押されるように自然消滅してしまったそれを理事長が復活させることをこの間宣言していた。チームは今の学園内にあるものだけでなく、トレーナーの許可が出ればアオハル杯のみのチームを作ることもできるので、沖野が提案したのはそれだろう。リギルだけでいいというおハナさんの絶対の自信を崩すレベルではなかったようだが。

 

 少し思考にふけっていると歓声が響いて音楽が鳴りだした。ステージ上を見るとすでに逃げ切りシスターズの面々がフォーメーションに入ってダンスを踊っている。難しい話は後にして今はライブを楽しむことにしよう。俺は卓上にあったサイリウムをもって振り回して声を上げる。沖野も、意外にもおハナさんも乗ってくれた。もちろん観客の面々もだ。特にすごいのは最前列にいるデジタルと同じく最前列にいるおそらくファル子のファン集団のトップにいる初老の男性だ。鍛え上げられた肉体を惜しみなく振り乱しサイリウムを後続と一切のブレなく振るう姿はもはやプロの域だろう。

 

 スマートファルコンの歌いだしから始まるライブを、俺は久しぶりに飛び上がって鑑賞し始めるのだった

 

 




 はい、というわけでアオハル杯の話も盛り込んでみることになります。いつになったら喫茶店の話になるんだろうね。作者にもわかんないや。次の話もよろしくお願いします。


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店長、ファン感謝祭を楽しむ

 


 春のファン大感謝祭、自分の仕事というべきものを速攻で終えて、いや終わってしまって暇になってしまった俺は珍しいことに本来なら忙しくて一日つぶれるはずだったファン大感謝祭を楽しむ時間的余裕ができてしまった。正直に言おう、めっちゃ楽しい。久しぶりにライブで全力でコールをした。それはもう隣にいるおハナさんが俺の事を意外なものを見るような目で見るくらいには普段とテンションが違っていたと思う。ごめんよ、俺本来イベントとかそういうの大好きなの。運営してる立場だから優先事項が違うだけで、本気で楽しむとなったらこうなるわさ。ちなみに沖野の野郎は俺と同じ穴の狢だった。具体的にはスズカへのコールだ。ライブ終わった瞬間にどっかの葦毛が出現して頭陀袋に詰め込まれてどっか行ったけど。デート楽しんで来いよ。

 

 で、おれもおハナさんと別れて今度は校舎の中に行ってみることにする。途中で模擬店にお金を落としていきながらな。みんな楽しそうで俺の方も楽しくなってくる。でー、何があるかなーっと。んー、オペラオーの歌劇ショー(全上演6時間)にロシアンニンジン焼き、仮装喫茶、模擬トレーニング、模擬授業にクイズ大会・・・いろいろあるなあ。模擬トレーニングに行ってみるか、いやこれウマ娘専用か、あっはっは・・・

 

 「マスターさん、すごいですよ!流石です!」

 

 「おかしい、俺はなぜウマ娘がトレーニングを体験する中一人バーベルを担いでいるんだ・・・?」

 

 「マスターさんも遂にマッスルに目覚めて私は嬉しいですよ!さあ!上腕二頭筋が喜んでます!」

 

 「ライアンは元気だなあ・・」

 

 「はい!たくさん体を動かせて楽しいんです!」

 

 「そっかあ・・・」

 

 そんなことを考えながら顔だけ出しとくかとトレーニング室に文字通り顔だけ見せに来たのだが・・・入学希望のウマ娘たちがトレーニングを体験する中、監督をしているトレーナーやウマ娘の中にメジロ家のお嬢様なのにも関わらず快活明朗で親しみやすい性格をしているトレーニング大好きメジロライアンに見つかってしまったのだ。俺を見つけたライアンは目いっぱいの笑顔で俺にダッシュで近づいてきてあれよあれよという間に俺もトレーニングに励むことになってしまった。

 

 いやそれはいいよ?運動は大事だからね。あとライアンの輝くような大輪の笑顔を前にして断れる奴がいたら俺の目の前に連れてきてくれ。多分いないと思うけど、問題なのは俺は朝の時点で割と体力を使い果たしているということだ。正直この重いバーベルをもってトレーニングするのも若干きつい。体力仕事だからそれなりに自信はあるんだけどウマ娘には遠く及ばないからな、一応。きっつぅ・・・

 

 「ああ、そういえばライアン」

 

 「はい、なんでしょう?」

 

 「この前の事、マックイーン止めてくれてありがとな。超大ごとになるところだった」

 

 「あー、実はあたしも本当はマックイーンに賛成だったんですけど、やっぱりマスターさんは嫌がるかなって」

 

 「賢明な判断だなあ。ま、その気持ちはありがたくもらっておくよ」

 

 この前の困りごとの際、マックイーンが本気で怒って家の力を動かそうとしていたのをデジタルと一緒になって止めてくれていたのが同じメジロ家のライアンだ。まあウマ娘が無事なら俺の店はなくなったって別にいいんだけど結構今の店には愛着あるしマックイーンをなだめつつ何とかうまいこと着地させてくれたライアンにはお礼を言っておかないと、と思っていたのだがちょうどいい機会に恵まれたな。

 

 「さあ、マスターさん!まだまだ眠っている筋肉はたくさんありますよ!私と一緒にレッツマッスル!です!」

 

 「おし、じゃあやってみるかあ!」

 

 「その意気です!」

 

 ライアンが喜んでくれるなら、たとえ明日が筋肉痛で仕事が地獄になろうとやってやろうじゃないか!いくぞおおおおおおおおおおお!!!!!!

 

 

 

 

 「むぅりぃ・・・・マジ無理、全身が痛い・・・」

 

 1時間後、廊下を歩く俺の全身は素晴らしい倦怠感と鳴り響くような痛みに支配されていた。というか筋肉痛だった。効果出るの早すぎ、このまま歩き続けるのはやめておこう・・・このままオペラオーの歌劇ショーなんかいったら100%、寝ちまう。そんな失礼なことしたくないし6時間も時間ないので諦めよう。じゃあ行くとしたら仮装喫茶かあ・・・喫茶店については一家言ある俺としては厳しい目で・・・

 

 「いらっしゃいませ!あ、マスターさん!」

 

 「0点」

 

 「何がですか!?」

 

 「うら若き中学生が仮にも喫茶店で水着になるんじゃありません」

 

 「えー、でもほらこれ可愛いですよー。しかもこれレースでも着られるそうなんです!」

 

 「いや着るなよ?タイキの勝負服よりたちが悪いぞそれ」

 

 ドアを開けた瞬間元気に挨拶してくれたのでそれだけで100点つけそうになったが目に入った服装で一気に0点になった。スぺさあ・・・、なんで水着着てるんだよ、春だよいま?夏じゃないよ?仮装ってもっとこう・・・あるじゃん?ほらあそこでシーツ被ってるような仮装をしているちっこいのみたいな・・・

 

 「およ?あ!店長さんッス!いらっしゃいませッス~」

 

 「おお、ブチコか。ちなみにそれなんの仮装?」

 

 「ふっふっふ・・・見ての通りお化けッス!うらめしや~ッス!」

 

 「見ろよスぺ、これが正しい仮装だよ。というかなんで水着なの?」

 

 「ひどいですよマスターさぁん・・・だってマルゼンさんが一緒に水着着ようって言ってくれて・・・」

 

 「似合ってるよ?確かに可愛いよ?うん。でもTPOを弁え・・・」

 

 「どうして詰まってるッスか?」

 

 「いやその・・・もしかしたら俺の店、人の事言えねえんじゃねえかなって」

 

 どうしよう、俺スぺの事怒れねえ、怒っちゃいけねえじゃん。客観的に見たら俺の店って中学生や高校生のうら若き乙女が色とりどりのコスプレして握手して、サインしてくれる店・・・あれ?とてつもなくいかがわしいお店に聞こえるぞ?健全なはずなのにな?うーん、うーん・・・いかんこれ以上考えたら自我崩壊する気がしてきた。いつまでも入り口にいちゃいかんので移動しておこう。スぺはもう・・・諦めよう。お触りもしくは盗撮でもあろうもんなら俺は怒るけど。おこだよ、激おこぷんぷん丸だよ・・・いかん古いな。マルゼンを笑えん。

 

 「わーい、マスターちゃんだ!どう?マヤもう一回お嫁さんになったんだよ!」

 

 「ケ?あ、マスターさんデェス!どうですかエルの新しいルチャの衣装は!?」

 

 「あら、マスターさんこんにちは。ふふ、私もエルに合わせてちょっと変えてみました。ヒーラー?の衣装らしいです」

 

 「おっ3人ともよく似合ってるな。へー、割と仮装に力を入れてんだな」

 

 「楽しくないと損だもん!はいっお水!どーぞ!」

 

 次々と働いているらしいウマ娘たちが挨拶に来た。いつぞやのウエディングドレスなマヤノ、ゲームモチーフらしいエルとグラスだ。他にも思い思いの仮装をしているウマ娘の面々。しばらくここで休憩しよっかねえ。正直疲れたし。そこでやってきたのはブチコだ。シーツを少し引きずりながらだから歩きにくそう。というか前見えてる?

 

 「ふはーっ、私も休憩するッス~」

 

 「おうブチコ、お疲れ。楽しんでるのか?」

 

 「もっちろんッス!朝からたくさんお料理できて楽しいッスよ!」

 

 何時ものニコニコ笑顔のブチコを見てるとなんだか幸せな気分になってくるな。額に掻いてる汗すらもきらきらと光っているように見える。常備しているタオルで拭ってやっているとえへへとはにかんでくれた。そうそう、やっぱりこういう笑顔がだな・・・。というかブチコってこう・・・クリークあたりがめっちゃ好みそうなんだよな。小っちゃいし、純粋だし、素直だし、かわいいし。実はそこら辺にいたりして、なんてな

 

 「驚けーーーっ!」

 

 「わひゃ!?」

 

 「うん?ウララじゃないか。どうしたんだ顔の下で懐中電灯なんかつけて」

 

 「あれぇ!?驚いたのブチちゃんだけ?おかしいなあ・・・」

 

 「もう、ウララちゃん。あんまりやってると怒られちゃうよ・・・?こんにちはマスターさん。これ、ご注文のコーヒー、だよ?教えてもらったとおりに淹れたんだ」

 

 「おー、ライスありがとな。それは・・・」

 

 「えっと・・・ドラキュライス・・・だよ?がおーっ・・・えへへ、なんちゃって」

 

 番町皿屋敷のような白い着物を着て懐中電灯を持ったウララと蝙蝠の羽を生やして付け歯であろう長い犬歯を見せてはにかむように笑うライスだった。うーん、かわいい。というかライスって普段の私服もそうなんだけど割とおしゃれさんなんだよな。仮装一つとっても専用の服を作ってきてる当たり余念が何というか凝り性というか・・・可愛いからいっか。かわいさはすべてを凌駕するのだ。と、ウララに驚いたせいで耳と尻尾がピーンとなっているブチコを撫でながら俺は勝手にそう思うのだった。ところで厨房の奥に見えるのってクリーク?なんで包帯まみれ・・・え?マミー?それはどっちの意味で?え?どっちも?そっかあ・・・

 

 

 そうこうして俺のキッチンカーに戻ってくると車の前に見覚えのあるウマ娘の姿がってか今年小学6年生になったキタサトコンビだ。きょろきょろとどうしたんだろう。

 

 「おいっす、キタにダイヤ。久しぶりだな」

 

 「あっ!マスターさんだ!」

 

 「よかったぁ、もしかしたらお会いできるかなって思ってたんです!ご飯は、食べられなかったですけど」

 

 「あー、そりゃすまんな。売り切れちまって。代わりと言ったらなんだけどほれ、はちみつキャンディやるよ」

 

 「わ、ありがとうございます!」

 

 「やった、ありがとうマスターさん!」

 

 「いいってことよ」

 

 ぴょいんぴょいんと飛び跳ねて喜んでくれるとは料理人冥利に尽きる。嬉しいなあ・・・ん?あれ?みなみさんとますおさんじゃないの?一緒に来てたんだ。

 

 「あ、はい。ご無沙汰してます」

 

 「私たちの保護者ってやつらしいですよ?」

 

 「お父さんもお母さんもお仕事だっていうから、お願いしてみたんだ!」

 

 「どうも、そうらしいです。いや、正直驚きましたけど」

 

 へー・・・へっ!?この二人何者だ・・・?キタの家は多少裕福だが一般家庭だ。ダイヤの家は別格、名家の一つのサトノ家だぞ・・・?ただの一般男性がいくらなんでも知り合いとはいえ小学生のおもりなんて許されるほど信頼され・・・るかも。この二人めっちゃ好人物だし、もともと二人でレース場に来てた子たちだ。信頼もあったんだろうか、な?

 

 テイオーとマックイーンに会いに行くという4人と別れて俺はもう一度イベント会場のほうに行くことにした。なんでも最後にヒーローショーをやるとかなんとか。ビコーあたりだろうなあ言い出しっぺ。今回は立ち見かね。おっ始まる始まる。

 

 『ウマソルジャーファイブ!』

 

 タイトルコールこれ沖野じゃね?セットは町か、怪人役は・・・あれっ?カフェにボノ?あとは・・・タキオンン!?意外なメンツだな・・・つーか後ろの光源Mrモルモットじゃないか?今日は七色に光ってるんだな、まぶしい。

 

 「がおー」

 

 「がおー♪」

 

 「ふふふ・・・実験とついでに再改造は成功だな・・・さあ怪人カフェとヒシアケボノよ!この世界を滅ぼすのだ・・・!」

 

 「そこまでだ!」

 

 「だれだ!?」

 

 「レッドペガサス!」

 

 「ピンクバクシンオー!」

 

 「ピンクウララ!」

 

 「グリーンスズカ!」

 

 「・・・すやぁ・・・」

 

 「「「「正義のウマ娘!ウマソルジャーファイブ!」」」」

 

 色被ってるし一人完全に寝てるんだけど!?予想通りというか予想外なメンツもいるけど大丈夫なのかこれ?いや周りは大盛り上がりだけどさ。おい青役らしいスカイ。起きろ、こんな時までサボり癖を発揮するんじゃない。

 

 「セイちゃん、起きて、起きて、本番中よ」

 

 「ふわあ・・・あれ?あーっと・・・ブルースカイ」

 

 「もう遅いよ!?」

 

 「細かいことは気にしないのが正義ってこの前言ったし大丈夫!」

 

 「もう色とかは突っ込ませてもらえないのね・・・」

 

 「出たなウマソルジャーファイブ!この前はよくも・・・今日は一筋縄ではいかないぞ・・・!さあいけ!カフェ、ヒシアケボノ!」

 

 「先手必勝!いくぞー!」

 

 「あれ?タイマンは?」

 

 スズカのぼやくような突っ込みをよそに意気揚々とカフェとボノにとびかかったバクシンオーにウララ、ビコー。果たしてその結果は・・・・

 

 「はいっ、ドーナツどうぞ?」

 

 「わぁ!ありがとう!おいしー!」

 

 「ビビビビビビ・・・」

 

 「うわぁーっ!」

 

 「バクシィィィン!?」

 

 完全にボノにドーナツで買収されたウララとカフェの手から放たれたゲーミングなビーム・・・いや、あれ撃ったのMrモルモットだわ。そのための光源かい。とりあえずビームに撃墜されて目を回すビコーとバクシンオー。おお、一応ピンチってやつか。うろたえるスズカともうすでに寝ているスカイ。大丈夫かウマソルジャーファイブ!!?

 

 「くっこうなったら・・・皆行くぞ!ウマソルジャーバズーカだ!」

 

 「「「「「みんなのニンジンを一つに!ウマソルジャーバズーカ!」」」」

 

 『説明しよう!ウマソルジャーバズーカとは正義の心を無限大のエネルギーに変換して謎のビームとして放つウマソルジャーの必殺武器なのだ!』

 

 説明が説明になってねえ!肝心なところがふわっとしてるぞ沖野!その必殺武器を前にして不敵に笑うタキオン、なんだあの余裕は?

 

 「いまだ!ぽちっとな!」

 

 「擬音が古い?!あっ!バズーカが!」

 

 「あらかじめバズーカに細工をしておいたのさ・・・!使うと・・・砂糖をたっぷり入れた紅茶が出るようにね!」

 

 「食べ物を無駄にするんじゃねえ!」

 

 「えっあっマスターくぅん・・・ごめんなさい」

 

 よし。余りの事に思わず突っ込みを入れてしまったが謝ったのでよしとする。しかし必殺武器を封じられて大ピンチってところだな。見てて案外面白いじゃないの。

 

 「お。おほん!それはともかく、ふはははは!ウマソルジャーファイブ!これで貴様たちは終わりだーッ!」

 

 「こ、これで終わりなの・・・?」

 

 『ウマソルジャーピーンチ!まさかこれで終わってしまうのか!?正義は悪に屈してしまうのか!?』

 

 しかしこの沖野ノリノリである。会場内にいる子供たちはみんなウマソルジャーを応援しているな。割とハチャメチャしてるけどしっかり子供心は掴んでるんだなあ。

 

 「情けないわよウマソルジャーファイブ!」

 

 「なに!?だれだ!?どこにいる!?」

 

 「ここよ!」

 

 ピカーッとMrモルモットが作り出す逆光が5人の影を作り出した。便利だなMrモルモット、どうやらビコーたちと同じようにヒーロースーツを着ているみたいだな。

 

 「レッドマルゼン!」

 

 「ピンクファルコン!」

 

 「グリーンアイネス!」

 

 「グリーンルドルフ!」

 

 「ブルーブルボン」

 

 「我ら光のウマ娘!」

 

 「「「「「ウマソルジャーブイ!ツー!」」」」」

 

 ばばーん!と効果音と共に現れた五人組、既視感ありまくりというか一人妹分いるんだけど?何やってんだよルナ。ノリノリじゃねえか皇帝。何その楽しそうな顔、よかったな。あと色被り流行ってんの?何でかぶらすの?あと半数以上逃げシスのメンバーだよね?ここにいる全員で逃げシス揃っちゃってるよ?。

 

 「ウマソルジャーブイツーだと・・・?くっカフェ!攻撃だ!」

 

 「がおーっ」

 

 「ちょっとタイム!」

 

 「え?」

 

 タイムを申請したのはスズカだ。そして律義に待つ悪のマッドサイエンティストたち。スズカがあせあせと新しく表れた5人組と話している。もしかして台本になかったり?というかタイムを申請できるヒーローってなんだ。自由すぎるだろ。大丈夫なのかこれ?そして話してる最中に我慢できなくなったらしいビコーが

 

 「いまだ!ペガサスキーック!!!」

 

 「うそでしょ!?」

 

 「ぐわー、やーらーれーたー」

 

 空中3回ひねりと入れた飛び蹴りをカフェに食らわせて効果音と共にカフェは倒れた。それに焦った顔をしたのはタキオンだ。というか思いっきり不意打ちじゃねえか。盛り上がってるからいいけど。

 

 「くっカフェがやられた!よしヒシアケボノ、カフェの敵討ちを」

 

 「おいしかったー!」

 

 「あっドーナツなくなっちゃったー。うーん、作ってくるからあとはお願い!頑張ってねー」

 

 「・・・・」

 

 ドーナツをお腹いっぱい食べたらしいウララとなぜかいるオグリによって手持ちのドーナツが無くなったらしいボノはそのままステージから消えていった。そして演技だったらしいハイライトが入った瞳を一瞬にしてよどんでいて狂った光を灯している瞳に切り替えたタキオン。うん、何となく不憫になってきた。敵役なのに。ヒーローが自由すぎる。

 

 「ま、まだだよ。この紅茶を飲めばカフェは巨大化して復活でき「紅茶は嫌」・・・」

 

 「・・・改良してなかったんだ」

 

 「・・・・」

 

 「・・・・」

 

 ・・・・・・

 

 「おのれウマソルジャーファイブ、ウマソルジャーブイツー!」

 

 「何もしてないんだけどね?」

 

 「ステータス、理不尽を検知」

 

 「これにて一見落着☆」

 

 「ひと安心なのー」

 

 「ふむ、平和が戻ったな」

 

 「あなたたちが締めるんだ!?」

 

 味方からも総すかんを食らったらしいタキオンは盛大な爆音とこちらに衝撃波が飛んでこない謎技術の爆発によって吹っ飛び、ステージからいなくなった。こ、これで終わり、か?なんというか、こう・・・とんでもなくいハチャメチャで・・・凄いものを見た気がする。俺が何を見たのかと目を白黒させていると突然音楽が流れだして、はけた出演者たちがヒーロースーツからステージ衣装に着替えて壇上に戻ってきた。そしてそのまま流れ出した音楽に合わせて歌いだし、エンディングライブが始まったのだ。よし、何を見たのかはどうでもいいけどこれは楽しむほかないな!

 

 

 そうして盛り上がったライブも終わり、壇上のスクリーンがスタッフロールを映し出した。出演したウマ娘や協力した裏方の用務員やトレーナーの名前が映し出され、最後にでかでかととあるウマ娘の名前が写真と共に映し出された。

 

 

脚本・演出・総監督・エクゼクティブプロデューサー

 

ゴールドシップ

 

 

 ・・・・いやお前かよ!だいぶ納得したけど!俺のその突込みと共に、ファン感謝祭は大盛況で終了するのだった。

 

 

 




 前回の話で実はファン感謝祭編は終わろうかなと思ってたんですが意外と続きかけるもんですね。

 ウマソルジャーが一番難産だったのは内緒だ!もうちょっと中身詰めたかったんですけどこれ以上は作者の描写力が追い付かないのでお許しください


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