俺の居場所は幻想郷 (明希☆)
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プロローグ

 

ここで一つ昔話をしようと思う。

それはまだ俺が小学生の時の出来事だ。

 

八幡「ぐすんっ…。どうして、まわりは、おれを、いじめ、るん、だよ。何にも悪いことしてないじゃないか!」

 

俺は生まれつきの腐った目が原因でクラスの奴にいじめられている。家に帰っても俺に化け物を見るような視線を浴びせる両親と妹。そんな状態なので両親からの愛情なんてものを俺は一度も貰ったことがない。

意味がわからない。どうして俺がこんな理不尽な目に合わないといけないんだ。

そう思いながら一人公園で泣いていた。

 

そんな時だった。

 

?「どうしたの僕?こんな所で泣いちゃって?」

 

一人の女性が俺に話しかけてきた。

凄く大人びた金髪の女性だ。

いじめのことがあり人間不信気味の俺は少なからず警戒をしてしまう。

こういう優しそうな人には裏がある俺はそう考えてしまうのだ。

 

?「ふふふ、そんなに警戒しなくて大丈夫よ。私の名前は八雲紫。あなたは?」

 

八幡「………比企谷八幡」

 

紫「そう。八幡君ていうのいい名前ね」

 

なんだこの人、急に下の名前で少し馴れ馴れすぎないか?

俺はそんなことを考えながら八雲さんの方へと視線を向けた。

 

紫「‼︎」

 

その瞬間、凄く驚いた表情を浮かべる八雲さん。ああ、やっぱりそうか。一見、優しそうな人でも俺の目を見ると気持ち悪いと罵り心を踏みにじる。この人もそうなんだな…。

そのまま俺の目は心と連動してどんどんと腐っていくのが分かる。

 

しかし

 

紫「八幡君、あなた相当苦労してるみたいね」

 

八幡「え?」

 

俺の予想とは違い八雲さんから悪意が発せられることはなかった。それどころか自分のことを心配してくれたのだ。

 

紫「多分、あなたが泣いてた理由もその目ね。あなたは生まれながらにしてこんなハンデを背負ってしまった…」

 

そう言いながら俺のことを抱きしめてくれる八雲さん。

俺はこの瞬間、初めて愛情というものを与えられたのだ。心が急速に満たされていくのを感じる。

そして…。

その思いは尋常なく溢れ出た。

 

八幡「う。うえ〜〜ん」

 

俺は八雲さんの胸の中で沢山の涙を流した。

それは数分間続く。八雲さんはその間、何も言わずただ黙って俺を包んでくれた。

 

八幡「ぐすん。すみません。服を汚してしまって…」

 

紫「いいのよ八幡君。あなたは今まで苦労してきたんだから泣く権利はあるのよ」

 

八幡「ありがとうございます。でも、八雲さん。あなた、俺の目が気持ち悪くないんですか?俺はこの目のせいで学校ではいじめられ、両親や妹にも嫌われています。俺に優しく接してくれたのはそれことあなたが初めてです」

 

俺はこのような疑問を八雲さんにぶつけた。

だって、今までこのように接してくれた人はいなかったのだ今の八雲さんは良い意味で俺にとって異質なのである。

 

紫「……」

 

すると急に黙り込む八雲さん。

何かまずいことを言ってしまっただろうか?そう思いながら今言ったことに不自然なことがないか思案が特には思いつかない。

俺はそんな八雲さんに不安になりながら八雲さんの口が開かれるのを待つ。

 

紫「…いいわ。教えてあげる」

 

やっとのことで口を開いてくれた八雲さん。

どうやら、怒っているわけではないようだ。

一安心。

 

紫「実はあなたの目には物凄い力を感じとったの。その力は普通の人間が浴びると物凄い嫌悪感を持ってしまう程にね。恐らく、あなたの能力なのでしょうね」

 

は?わけが分からない。

第一、俺の質問の答えにすらなっていない。

一体、八雲さんは何を言ってるんだ?

 

紫「わけが分からない。そう言いたそうな表情ね」

 

おっと、どうやら俺の感情が表情に出てしまっていたようだ。とりあえず、謝らないと

 

八幡「すみません…」

 

紫「謝らなくていいわ。目に物凄い力が感じ取れるなんて言われても混乱して当然だしね。でもね、八幡君それは本当のことなの。

あなたの目には力が宿っているのよ」

 

八雲さんの真剣な表情。

そこからは何か強い意志のようなものが感じられとても冗談には思えなかった。

しかし、八雲さんの言うことが正しかったとして疑問は残る。

それは…

 

八幡「…本当に俺の目にファンタジーのような力が宿ってるとしてどうして八雲さんは大丈夫なんですか?」

 

そう何故、八雲さんは俺の力を受けつけないのだ?この事が気がかりになってくる。

 

紫「あ〜、それはね。私は普通の人間じゃないからよ」

 

八幡「普通の人間じゃない?」

 

紫「ええ、実は私妖怪なの」

 

八幡「………は?」

 

今、なんて言ったんだ?

妖怪?いよいよファンタジーのど真ん中にきちまったか!!

と、ふざけた考えは辞めて、本当にどう言うことか頭の処理が追いついてこない。

 

紫「まあ、少し混乱してるようだけどこのまま続けさせてもらうわ。私は普通の人間と違い妖力を持っている。だから、あなたの目の効果をそれで相殺してるのよ。そう言う系の能力は基本的に操れてないうちは効果も薄く多少の霊力の持ってる人や妖怪なら何も起こらないの」

 

八幡「な、なるほど…」

 

とりあえず、頭の中を整理しよう。

俺が今まで嫌われてきた理由は目に不思議な力を宿すからで能力を操れないが故にオートで発動してたと…。でも、紫さんのように多少不思議な力を持った人なら俺の目を相殺して何も影響を受けない。

ああ、やっと理解してきたぞ。

 

紫「どうやら、理解できたようね」

 

八幡「は、はい。それで紫さん。頼みたいことがあるんですが…」

 

紫「言わなくても分かるわ。能力の制御を教わりたいのね」

 

やっぱり、お見通しか。

俺は紫さんの言葉にすぐ頷く。

 

紫「ふふふ、良いわよ。能力を制御出来るようにしてあげる。ただ、しばらく家には帰れなくなるわよ。それでもいい?」

 

しばらく家に帰れない恐らくかなりの時間を費やすのであろう。しかし、どうせ家に帰っても家族は俺を嫌っている。それなら、しばらく会えなくなるが能力の制御を覚えて家族と幸せに暮らしていけるようになりたい。

こう見えてリスクリターンはしっかり考えれる方だ。

 

八幡「はい!」

 

俺は思考の末、八雲さんに同意する。

そんな俺に対し八雲さんは優しい笑みを返してくれた。

 

紫「分かったわ」

 

その瞬間、俺の目の前の空間が割れた。

これは比喩でも何でもない本当に割れたのだ。

 

八幡「…は?え?」

 

いやいや、何だよこれ。

え?何?ここの中に入ればいいの?

そう思いながら俺は八雲さんの方へと視線を向けた。

八雲さんは相変わらず笑顔で俺を見ている。

どうやら、この中に入らないといけないらしい。

いくら、同意したとはいえ、流石にこの中に入るのは怖い。俺がそう怖がっていると。

 

ガシッ

 

俺の手は強く握られた。

 

紫「何ボサッとしてるの?さっさと行くわよ」

 

そう言いながら俺を引きずるように連れて行く。なんか、少しフレンドリーになっただけでかなり態度が変わってるような…。

まあ、いっか…。

半ば諦めた気持ちで八雲さんに連れて行かれるのだった。

 

紫「あ〜、そうそう。さっきから気になってたけど私のことは八雲さんじゃなくて紫って呼んでね」

 

……この人はとんでもない人だ!!

 

 

 

 

 

 

八雲さ「紫」…。

ねえ、この人今俺の心に言葉を重ねてきたんなけどどうなってんの?

妖怪って心まで読めるのかよ。

 

紫「ん〜。確かに心を読めるのもいるけど私は読めないわよ」

 

八幡「あ、そうなんですか」

 

どうやら、八雲さ「紫」…紫さんは心を読めないよだ。なんだ、俺の考えすぎか。

あれ?でも、「それ以上は考えちゃダメよ」

どうやら考えてはいけないらしい。

よし、考えるのはやめよう。

そして、大人しく紫さんと呼ぶことしたのであった。

 

紫「着いたは八幡」

 

謎の割れ目を抜けた後、目の前に神社が見えた。

 

八幡「あの?ここは一体?」

 

俺は率直な疑問を紫さんにぶつける。

 

紫「あ〜、そういえば説明してなかったわね。ここは幻想郷といって忘れ去られたものが来る場所よ」

 

八幡「忘れ去られたものですか?」

 

紫「ええ、ここには神や妖怪や人間。さまざまな種族が暮らしているの」

 

八幡「な、なるほど…」

 

どうやら、俺は思ったより凄いところにきているようだ。

 

紫「そして、今来た場所は博麗神社って言ってね。この幻想郷の摂理を守ってる巫女がいる場所よ」

 

八幡「巫女ですか…」

 

紫「ええ、そして、その博麗の巫女にあなたの能力が制御できるように鍛えてもらうわ

 

八幡「え!!紫さんが鍛えてくれるんじゃないんですか!」

 

てっきり紫さんが俺を鍛えてくれるとばっかり思っていた。

 

紫「う〜ん。本当はそうしたいけど私は忙しいし何より博麗の巫女は人間がやってるからそっちの方が馴染みやすいと思ったの。それに今なら次期博麗の巫女である貴方と同い年ぐらいの子もいるしね」

 

なるほど、確かに同じ人間の方が分かり合える部分も多い。恐らく、紫さんなりの気遣いなのだろう。でも、同じ人間てことは…。

 

紫「あ〜、心配はいらないわよ。ここにくる前にも言ったけど多少の霊力を持ってる人間なら貴方の能力は受けないの。博麗の巫女は、多少どころか物凄い霊力を持ってるから大丈夫よ」

 

どうやら、俺の懸念してた問題は大丈夫なようだ。いざ、鍛えてもらうとなっても目のせいで嫌われたらたまったものじゃない。

 

紫「さあ、安心したならさっさと行くわよ」

 

そう言って紫さんは俺の手をとり神社の中に入っていくのであった。

 

紫「霊奈ーーー!いるーーーー!!」

 

急に大きな声を出す紫さん。

どうやら、神社の中の人を呼んでるようだ。

すると…。

 

???「どうしたんですか、紫さん。貴方が急に来るなんて珍しいですね」

 

中から巫女服を来た女性が現れた。

 

紫「いてくれて良かったわ。実は貴方に頼みたいことがあってきたのよ」

 

???「頼みたいことですか?それはそちらの少年に関することですか?」

 

そう言いながら俺の方に目をやる巫女さん。

 

紫「ええ、そうよ。ねえ、霊奈。この子の目を見てあげて」

 

???「目ですか?」

 

そう言いながら巫女さんはしゃがみ込み俺に視線の高さを合わせる。

 

???「初めまして、私は博麗霊奈。博麗神社の巫女をやっているわ」

 

こんな小さな俺に対しても礼儀正しく挨拶をしてくれる博麗さん。

こんなこと初めてなのでどこかむず痒い。

 

八幡「…ひ、比企谷八幡です」

 

俺は少し緊張しながら挨拶を返す。

 

霊奈「八幡君って言うのね。よろしく」

 

そう言いながら霊奈さんは俺の目を捉えた。

目の前に美人さんの顔が現れ自分の顔が赤くなるのが分かる。

 

霊奈「なるほどね…」

 

何かを理解する博麗さん。

恐らく、俺の目にある力に気づいたのだろう。

すると、霊奈さんはポケットからお札のようなものを取り出す。

 

霊奈「八幡くん。少しこのお札を持ってもらっていいかしら?」

 

俺は博麗さんに言われた通りそのままお札を手に取った。

その瞬間、お札は淡い光を放たれた。

しかし、俺が驚いたのはそこだけではない。

なんと、お札からは光と共に文字が現れたのだ。

紫さんと博麗さんもそのお札を覗き込む。

そのお札にはこう書かれていた。

 

『自身に対する拒絶を操る程度の能力』

 

霊奈「やっぱり、この子の目にはこんな力が宿ってしまってるのね」

 

そういうと俺の手からソッとお札を受け取る霊奈さん。

そして…

 

ガバッ

 

抱きしめられた。

 

霊奈「貴方はよく頑張りました。その年で辛かったでしょう。でも、大丈夫ですよ。貴方には今味方ができました。紫さんも私も貴方の味方です」

 

その声は母性が感じ取られ紫さんとはまた違った母の愛のようなものを感じ取れた。

それがたまらなく嬉しかった。

 

八幡「ありがとうございます」

 

自然とその言葉が溢れる。

博麗さんは俺を抱きしめるのを辞め笑顔を向けてくれたのであった。

 

霊奈「それで紫さん。貴方は、この子が能力の制御を出来る様に鍛えて欲しい。そういう要件でよろしいでしょうか?」

 

紫「流石、霊奈ね。その通りよ。私は貴方にそれを依頼しにきたの」

 

霊奈「なるほどね。勿論、オッケーですよ。こんな子をほっておけるわけありませんし。何より霊夢に同い年ぐらいの友達ができるのは嬉しいことですから」

 

そういうとチラッと神社の中の方へと視線を向ける。

そこには、障子の隙間からチラッとこっちを覗いてる少女がいた。

 

霊奈「霊夢〜、出てきていいわよ」

 

霊奈さんが女性に対してそう声をかける。

その声を聞いた瞬間、少女はそそくさとこちらへやってきた。

 

紫「あら、霊夢。こんにちは」

 

紫さんが少女に挨拶をする。

 

???「紫。久しぶり〜!」

 

少女は、紫さんに対して元気いっぱいに挨拶を返した。

 

霊奈「こら、紫さんでしょ」

 

???「え〜、別にいいじゃん。めんどくさいし」

 

霊奈「まったくもう」

紫「あらあら。ふふふ」

 

博麗さんこめかみを抑え、紫さんは笑顔だ。

なにこの状況。

 

???「そんなことより君は?」

 

おっと、どうやら少女は俺に興味を示しているようだ。

しかし、そんな少女に対してまたしても霊奈さんは叱りつける。

 

霊奈「こら、人に名前を聞くときはまず、自分からでしょ?」

 

???「は〜〜い」

 

少女は少し間延びした返事をしている。

まったく、反省はしてないようだ。

 

???「私の名前は博麗霊夢。次期、博麗の巫女よ」

 

ない胸を張りドヤ顔をかます少女。

うん、可愛い。俺じゃなきゃ告白してふられるまであるな。ふられるのかよ。

 

八幡「俺は比企谷八幡…」

 

霊夢「八幡?変な名前〜」

 

うん。この子あれだわ。

思ったことをズバズバ言うタイプだわ。

霊夢の横に立つ霊奈さんは慌てて霊夢に注意する。(霊夢と霊奈さんの区別をつけるため下の名前で呼ぶことにした)

 

霊奈「こら、霊夢!謝りなさい!」

 

その顔は先程までの笑顔とは真逆で恐怖すら覚える顔であった。

 

霊夢「ご、ごめんなさい」

 

少し声が震えてる。

分かるよ。今の霊奈さんめっちゃ怖かった。

 

霊奈「八幡君。ごめんね。霊夢ったら同年代の子と会うのが初めてだから少しワクワクして心が浮ついてるの」

 

八幡「いえ、大丈夫ですよ。それに悪口なんかには耐性があるんでなんなら、言葉のサンドバッグにだってなれますよ」

 

そうだ。俺は今まで何度も悪口をぶつけられた今更この程度、屁でもないのだ。

すると、霊奈さんの怖い顔が次は俺に向けられていた。

え?なんで?俺なんかした?

 

霊奈「八幡君。そんなこと言ったらダメよ。心を強くすることは大事よ。でもね、自分はこんな存在だからと諦めるのは絶対にダメ。君はなにも悪くないんだから。自分に自信を持ちなさい」

 

どうやら、霊奈さんは俺のことを思って叱ってくれているようだ。

確かに今のは俺に落ち度がある。

自分のことをサンドバッグなんてこれからは冗談でも言わないようにしよう。

そう思いながらふと霊夢の方を向くと紫さんから話を受けている。

どうやら、俺の事情を話してくれているようだ。

 

紫さんから話を聞き終えた霊夢は俺の前までやってくる。

その目は、涙で潤んでいた。

 

霊夢「八幡!私は貴方の味方よ。絶対に裏切ったりしないわ」

 

霊夢…。

俺の境遇を心から悲しんでくれる存在。

俺は同い年で初めて自分のことを分かってくれる存在が目の前に現れたのだと嬉しさが溢れてきた。

 

八幡「ありがとな…」

 

俺のこの一言で霊夢の目の潤みは消える。

そして、最高の笑顔を浮かべた。

 

霊夢「うんっ!」ニコッ

 

ああ、どうやら俺には居場所ができたようだ。

 

 

 

 

 

霊夢「それで八幡?能力のせいで理不尽を受けてきたんでしょ?これからどうするの?」

 

どうやら、紫さんは俺が能力で周りから嫌われてしまっているということしか話していないようだ。

 

八幡「あ〜、えっと、霊奈さんに能力を制御できるように鍛えてもらう予定だ。しばらくは家に帰れないらしい」

 

霊夢「え?じゃあ、八幡どこに住むの?」

 

あっ!霊夢の問いに対してそのことを考えていなかったことを思います。

俺はチラッと紫さんの方を向いた。

 

紫「そうね〜。一応、私の家か博麗神社に泊まってもらおうと思ってるんだけど。どうしようかしら」

 

どうやら、紫さんも決めていなかったようだ。俺自信、まったく考えていなかったので紫さんを責めることはできない。

しかし、この問題は意外とすぐ決まることとなる。

 

霊夢「それなら神社でいいじゃん!それなら、紫が毎日送り迎えする必要もないし私も八幡と一緒に過ごせるし一石二鳥よ!」

 

前者は分かるが後者は勘違いしてしまいそうになるんですが…。でも、確かに効率を考えるならそれが一番かもしれない。

 

霊奈「う〜ん。確かにそうね。霊夢も同年代の子と関われて嬉しそうだしそれでいいと思うわ」

 

紫「あらそう?なら、そうしましょうか」

 

こうして俺は博麗神社に住むことが決まったのだった。

霊夢は万歳しながら喜び更には俺の手を取ってくる始末。

霊奈さんと紫さんはなんか、「あらあら、これは」とか「次の次の博麗の巫女も安泰ね」とか言ってる。

八幡理解不能。

でも、確かに霊夢は今まで友達が一人もいなかった。その点については俺と似てるのかもしれない。俺だって心では霊夢というはじめての友達ができたことに喜んでいるのだから。

 

 

紫「あ、よく見たらもうこんな時間ね。じゃあ、八幡のこと頼んだわよ!」

 

紫さんは、そう告げるとまたしても空間に割れ目のようなものができ、そこへと入っていった。その時に霊奈さんに教えてもらったのだが紫さんは結界を操る程度の能力を持っており、空間に隙間を作れ自由に場所を移動できるようだ。なにそれチート。

 

霊奈「さあ、八幡君。私たちも中に入りましょ」

 

霊奈さんが俺にそう告げると霊夢は俺の手を掴み神社の中へと引っ張る。

 

霊夢「こっちこっち!」

 

霊奈さんは笑顔でその光景を見ていたのであった。

 

 

 

そこから俺の修行生活が始まる。

毎日、朝8時に起床し朝食を食べすぐに修行へと移った。特訓内容は能力を抑える為、霊力を高めコントロールするというものだ。勿論、休憩時間や昼食の時間もあった為、そこまでハードスケジュールではないのだが何分、霊力のコントロールなんて何一つ出来ないど素人のため凄く大変だった。霊夢と一緒に訓練をやってたのだが霊夢と俺では全てに差があり半分絶望しかけていた。

霊奈さんは「霊夢は今までも修行をしてきたから差があるのは当たり前ですよ」と慰めてくれたが同年代でこれほどまでに差があるとなんとなく虚しくなる。

 

しかし、めげずに霊夢にアドバイスを貰おうと思って聞いてみると「う〜んと。こうギュイーーンって感じよ」と効果音で説明された。こいつはあれだ、才能で全てをこなす奴なのだとその時、悟ったのだった。

 

 

〜10日後〜

 

なんやかんや修行を始めて10日が経った。

俺も少しづつ霊力を操れるようになり空まで飛べるようになった。

霊奈さん曰く、想像以上のスピードで俺は成長しているようで能力をコントロールできるようになるのも時間の問題のようだ。

そのことを聞いた俺は少し喜んだ。

しかし、それとは対照に霊夢の表情は少し暗い。

 

八幡「どうしたんだ?霊夢?」

 

霊夢の奴が少し暗いので心配になって声をかけた。

 

霊夢「いや、ただ八幡が思ったより早く霊力をコントロールできるようになってきてるから悲しいだけよ」

 

え?なにそれ?それって俺如きが才能を持つなんておかしいということか?もし、霊夢が俺にそんなこと思ってたら泣いちゃうよ。

 

霊奈「ふふふ、大丈夫ですよ八幡君。霊夢は貴方に悪意を持ってそう言ったわけじゃありませんから」

 

俺の心情を察したのか。

霊奈さんが俺と霊夢の間に合いの手を入れる。

 

霊奈「霊夢はね、寂しいのですよ。もし、八幡君が能力をコントロールしたら元の場所に帰っていってしまうことがね」

 

ああ、そういうことか。

確かに幻想郷に来てから考えてなかったが俺は能力をコントロール出来たら元の世界に帰る。そのために今、修行しているのだ。もし、修行が終わったら霊夢と会えなくなる。

そう思った瞬間、俺の心に今まで沸いたことのない感情が生まれた。

この感情は一体…。

 

霊夢「ねえ、お母さん。もし、八幡の修行が終えたらもう八幡はこっちに来ちゃダメなの?」

 

謎の感情と葛藤していると霊夢が霊奈さんに尋ねる。確かにその通りだ。修行が終わってもまたこちらに来れるのなら別れを惜しむ必要はなくなる。紫さんなら俺をいつでもここに連れてくることができるのだから。

しかし、霊奈さんの表情は思案顔になる。

 

霊奈「う〜ん。どうでしょうね。そのあたりは紫さんと交渉してみないと分からないわね」

 

やはり、そうなるか。

霊夢の顔が見て分かるほどに落ち込む。

そういう俺も悲しん気持ちは同じだ。

と、その時だった。

 

紫「そうねぇ〜」

 

急にスキマが現れそこから紫さんが出てくる。どうやら、俺達の話を聞いてたようだ。

 

霊奈「紫さんいたんですか?」

 

紫「ええ、八幡がどれだけ成長したか見ようと思ってね。すると、思った以上に成長してて驚いたわ」

 

紫さんが霊奈さんと対面した。

すると、横から霊夢が紫さんに近づく。

 

霊夢「ねぇ、紫。修行が終わった後でも八幡をこっちに呼んじゃダメ?」

 

今までにないほど弱々しい声を上げる霊夢。

 

紫「流石にそれはね…。八幡は、あくまで修行という理由でこちらに呼んだのよ。だから、修行が終わったらお別れね…」

 

流石は紫さんだ。

こういうことは濁さずハッキリという。

これは俺と霊夢が変に期待しないようにとせめてもの配慮だろう。

しかし…。

 

霊夢「そんなのやだ〜」ウェーン

 

霊夢は泣きだし紫さんに駄々をこねる。

流石の紫さん達も霊夢は泣くのは予想外だったのか。

アタフタとしていた。

そういう俺も霊夢にどう声をかければいいのか困る。

そこで紫さんは一つの結論を出したのだった。

 

紫「あ〜もう、霊夢泣き止んで頂戴。それならこうしましょう」

 

そう言いながら紫さんは俺の前に来た。

そして、スキマからボタンを出し俺に渡す。

 

紫「八幡、外に帰ってどうしても困ったらそのボタンを押しなさい。そうすると幻想郷に来ることが出来るわ」

 

八幡・霊夢・霊奈「‼︎」

 

なんと、このボタンを押せば幻想郷に来れるようだ!まさか、こんなものがあったとわ…。これには、俺も霊夢にも笑顔が浮かぶ。しかし、紫さんの説明はまだ続いていた。

 

紫「ただしそのボタンを押して幻想入りしたらもう二度と貴方の世界には戻れないわ」

 

八幡「え?」

 

戻れないだって?それじゃあ、意味がないじゃないか。俺と霊夢の顔に戸惑いが浮かぶ。

そんな気持ちを代弁してか霊奈さんが紫さんに問いかけてくれた。

 

霊奈「これは一体、どういう意味で八幡君に渡したのですか?」

 

まさにその通りだ。

 

紫「まあ、簡単にいうと元の世界に戻って仮に能力をコントロールできたとしても向こうの世界で能力関係なしに周りから拒絶され居場所がなくなった時にこっちに来なさいってことよ」

 

なるほど、ここに来て紫さんの意図が要約理解できた。

 

霊夢「つまり次に八幡がこっちに来ることがなかったら八幡は幸せな人生を歩んでいる。だから、その時は妥協しなさいってこと?」

 

お〜、俺が今言おうとしたことを先に霊夢が言ってくれた。

 

紫「まあ、そういうことよ。もし、八幡がいなくて寂しいと思ってもそれなら、八幡は幸せに暮らしてるんだからって思えるでしょ」

 

本当によく考えられる。

これなら、最悪俺は幻想郷で暮らすことができると思うことでモチベーションを下げることなくこれからも修行を続けることが出来る。横を見ると霊夢も渋々ながら納得したようだ。

 

 

 

それからのことは早かった。

俺はその後も修行を続けてなんと約1カ月で霊力をほぼ完璧にコントロール出来るようになった。

 

霊奈「ここまでコントロールできたなら大丈夫ね。それじゃあ、八幡君。いよいよよ」

 

八幡「はい」

 

そう霊力をコントロールできるようになった俺は今から能力を抑え込むというところだ。

俺は全身の霊力を集中させ拒絶の能力を抑え込む。

その時だった。

霊夢と霊奈さんの目が大きく開く。

俺は、え?と首を斜めに倒し二人の驚く顔を眺めていた。

 

八幡「あの〜どうかしましたか?」

 

二人は一体なにに驚いているのだ?

頭の中ではクエスチョンマークが並ぶ。

 

すると、霊夢はどこからともなく鏡を持ってきた。

 

霊夢「八幡!鏡をみて!」

 

そう言いながら俺に鏡を向ける。

そこには、目の腐りが取れた俺がいたのだった。

 

八幡「俺の目が普通の目に!」

 

あまりの変わりように俺自信驚いてしまう。

こりゃ、霊夢も霊奈さんも驚くはずだわ。

 

霊奈「ヘェ〜、とてもイケメンですよ八幡君」

 

霊奈さんが俺をイケメンと評価する。

今までそんなこと一度も言われたことがなかったので思わず顔を赤くして照れてしまった。

 

すると…。

 

霊夢「むっ‼︎」

 

なにが不満なのか頬っぺをリスのように膨らませて不機嫌さをアピールする霊夢。

そんな霊夢に霊奈さんは笑いながら「あらあら、霊夢。嫉妬しちゃいましたか?」とからかっていた。

霊夢は「そんなんじゃないし!」と慌てながら反論してる。うん、可愛い。

 

と、その時!

 

紫「どうやら、能力をコントロールできたみたいね」

 

またしても何処からともなく現れた紫さん。

このタイミングで姿を出したということはそういうことだろう。

 

霊奈「紫、来たのね…」

 

そう言いつつ霊奈さんの目は霊夢の方へと向けられた。俺も霊夢の方へと視線を向ける。

そこには、悲しみを浮かべた霊夢がいた。

 

霊夢「今日で八幡とお別れってこと?」

 

霊夢は涙ながらに紫さんに尋ねる。

 

紫「ええ、外の方でも彼が行方不明扱いになってるからね。1日でも早く帰さないといけないのよ」

 

そう忘れてはいけない。外の世界では彼がいなくなったことでかるくパニックが起こっているのだ。人がいなくなったのだ。そこまで来ると嫌われてる嫌われてない関係なく警察が動く。

 

俺は霊夢の方に振り返った。

 

八幡「霊夢、これでお別れだ…」

 

涙が溢れそうだ。

しかし、泣くわけにはいかないここで泣いたら別れが辛くなるからだ。

霊夢もそれを分かっているのか涙を堪えている。

 

霊夢「八幡、外の世界で困ったことがあればすぐにこっちに逃げてきてね。私はいつでも八幡を歓迎するしここに住んでもいいから」

 

八幡「ああ、ありがとな。もし、外の世界でダメだと思ったらすぐにこっちへ来る」

 

俺と霊夢の最後の会話。

 

そして…。

 

ガバッ

 

俺と霊夢は抱き合ったお互いに初めてできた友達。しかし、2人の中ではすでに友達という領域を超えていたのである。別れ際になって2人はそのことに気づいたのだ。

 

霊夢「八幡、私貴方のことが好きみたい」

 

霊夢は俺に告げる。

俺はその言葉に対しすぐに返答する。

 

八幡「ああ、俺もだ」

 

これで最後かもしれない。

それが俺と霊夢の歯止めを取り外しお互いに思い思いのことを告げあったのだ。

これが最後かどうかは分からない。

ただ、少なくとも外の世界に居場所がなくても俺にはここがあるそう思えたのであった。

 

紫さんと霊奈さんは俺たちの事をただ黙って見届けてくれている。

しかし、そんな時ももう終わりのようだ。

 

紫「さあ、八幡。そろそろ行くわよ」

 

紫さんの言葉を聞き俺たちは抱き合う事をやめた。霊夢の顔は真っ赤だ。きっと俺の顔も同じくらい赤いであろう。

 

そして、俺は元の世界に戻った。

 

その後は色々と大変だった。

一ヶ月も行方不明だった俺が突然帰ってきて世間は大混乱だった。

しかし、そんな混乱も一週間もすれば治り日常へと戻った。

家に帰った時、家族からは目が綺麗になってることについて聞かれたが適当に誤魔化した。そして、その後の生活は前までの生活とは大違いである。能力を制御した俺は家族から愛を受けるようになった。前までとは違い本当の家族というものを手に入れたのである。ただ、学校では今まで同様にボッチだ。

何故かと言うとそもそもの話、今までの都合上、俺は集団というものには慣れていなかった。だから、あえて一人でいる事を選んでいるのだ。しかし、前のような嫌がらせを受けることは特にない。それは俺にとって普通の幸せだったのだ。寂しいが恐らく霊夢と会うことはもうないであろう。俺はそう思っていた。

その後、俺はすくすく育ち無事、小学校、中学校を卒業した。

しかし、何故か知らないが俺が誰とも関わらずに過ごしているのを見た平塚先生に無理矢理、部活に入れられた。そこには何もやっていないのに罵倒してくる部長や理不尽にキモいを連発する部活仲間がいる。

どうして、こうなった…。

俺は、正直、ストレスだったが能力をコントロールできてなかった頃に比べればマシだし何より今は家族から悪意を受けることがない。それが救いでなんとか耐えてきた。

 

しかし…。

 

それにも限界が来た。

それは修学旅行の時である。

 

『貴方のやり方嫌いだわ』

『人の気持ち考えてよ』

 

俺は理不尽な依頼を解消する為に嘘告白をした。

それによって、部活仲間から罵られ、

クラスでも俺が告白の邪魔をしたと噂になりまるで能力のせいで虐められてた時のような境遇に成った。

 

ははは、何やってんだろ俺は…。

せっかく紫さんや霊奈さん達が協力して能力を制御出来たのにこれじゃあ意味ないじゃないか。

そんな時、俺はあの時のボタンをポケットから出した。

 

八幡「まさか、これを使うことになるなんてな…」

 

そうして、俺はボタンを押す。

 

目の前にはあの頃と変わらない神社が立っていた。

 

 

 

 



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別種族の共存

八幡が元の世界に帰って一週間が経った。

 

 

私は今、縁側に座っている。

修行のやる気が起きないのだ。

 

霊奈「霊夢〜」

 

お母さんが私を呼ぶ声が聞こえる。

私を探しているのだろう。

 

霊奈「あら、こんなところにいたのね」

 

いつもの優しい声色。

お母さんはいつも私に優しい。

きっと、私が寂しさでいっぱいなのも気づいているんだろうな。

 

そんな事を考えているとお母さんは私の隣に腰かけた。

 

霊奈「八幡君がいなくなって寂しいの?」

 

まあ、なんとなく分かってたけどやはりそれを聞いてくるのね。

私はお母さんの質問に対し素直に頷いた。

ここで意地を張っても仕方がないからだ。

 

霊奈「そうね。お母さんも寂しいものその気持ちは分かるわ。でもね、霊夢。もし、八幡君が向こうで辛いことがあってこっちに来た時、そんなしょぼくれた態度では八幡君に嫌われてしまいますよ」

 

お母さんの言われたことで私は我に返った。

確かにその通りだ。八幡は私が元気いっぱいの姿を見て私を好いてくれたんだ。

今の私を見たらきっと八幡は良い風には思わないだろう。

 

霊奈「だから元気出して頑張ろう!」

 

お母さんの言葉は全て安直だ。

しかし、お母さんの言葉だからこそ私の心にスッと入ってくる。なぜなら、その言葉の中に私への愛を感じるからだ。私はお母さんの目をしっかり捉えて「うん」と力いっぱい頷いた。

 

 

私の目の前には笑顔のお母さんがうつる。

 

 

それから私は今まで通り修行に集中力を取り戻した。

 

 

三年後

 

 

今までの基本の訓練が終わり実戦向けの訓練になった。基本的にお母さんと一対一で向かい合い鋭い攻撃の訓練から素早く躱す訓練までその場に応じた完全なる戦闘。

これには流石の私も疲れを隠せない。

お母さんも心なしか厳しくなった。

でも、仕方がないのかもしれない。

博麗の巫女たるもの妖怪に負けることは決して許されないのだから。

 

 

そんな毎日が続いていると勿論、無事では済まないこともある。

 

 

霊夢「うわっ」ドンッ

 

 

私はお母さんの弾幕に被弾して吹き飛ばされてしまった。私は地面に倒れ伏す。これにはお母さんも心配そうな目を私に向ける。しかし、それも一瞬のことお母さんはすぐに我に返り「立ちなさい」と一言私に告げた。

 

私は言われるがままにすぐ立ち上がる。

 

しかし!

 

霊夢「くっ!」

 

すぐに膝をついてしまった。

流石にダメージが大きい。

体の自由が上手く効かなくなっている。

 

霊奈「今日はここまでですね…」

 

流石のお母さんもここで終了にしてくれた。

正直、これは助かる。

このまま、続けるなんて言われたらきっと私はボロボロにされるだけだっただろう。

 

私はなんとか踏ん張り縁側まで歩いた。

 

霊夢「ふぅ〜」

 

あ〜、ダメだ。全然お母さんに勝てない。

本当ならあの弾幕も避けれないこともなかったはずなのに…。

 

私は少し自己嫌悪に落ちてしまった。

すると…。

 

霊奈「大丈夫?霊夢?」

 

お母さんが心配そうな目で私を見ている。

先程までの修行の時とは違い。母親の目だ。

その辺の公私をしっかり分けれるあたり流石だと思う。

 

霊夢「大丈夫よ」

 

お母さんを心配させてはいけない。

そう思った私はすぐさま自分が大丈夫だという意地を見せる。

すると、お母さんは少しホッとした表情を見せてくれた。

やっぱり、その表情が私にとっても一番落ち着く。

 

霊奈「それなら良かったわ。ここ最近、少し厳しくし過ぎたから体を壊しちゃったのかと思って」

 

霊夢「こんな程度で体を壊したら博麗の巫女は務まらないわよ」

 

霊奈「あら、そんなこと言って被弾しちゃったじゃない?いつものあなたなら避けれるとおもったのだけれど」

 

霊夢「あれは、そう!偶々よ。偶々」

 

何気ないこの会話。

これが今の私の一番の楽しい時間だ。

この会話が延々に続いてくれればな…。

あわよくば八幡もこの会話に入っていて…。

と、そんな事を考えている時だった。

 

ヒューン

 

紫「霊奈!妖怪よ!」

 

突如、目の前にスキマが現れる。

中から出てきたのは勿論、紫。

どうやら、妖怪が現れた事を知らせにきたようだ。急な指令、博麗の巫女ならよくある事なのだが今日の紫は少し焦っているように感じた。察するに協力な妖怪が出たのであろう。

 

霊奈「分かりました。紫さん、すぐ向かいましょう」

 

お母さんも紫の雰囲気から何かを察したのか真剣な眼差しを浮かべ紫の方へ歩み寄る。

 

霊奈「霊夢。少し行ってくるから良い子にしててね」

 

そう言ってお母さんは紫と共にスキマの中へと入っていった。しかし、この瞬間私の中で嫌な予感が走る。何かよくないことが起こるそんな気がするのだ。

 

霊夢「お母さん…」

 

神社に一人取り残された私はただ小さく囁いた。

 

 

あれから何時間も経ったかしら?

三時間?四時間?

もう太陽はとっくに沈んでる。

しかし、お母さんが帰ってくる気配はなかった。私の中の嫌な予感はある形で形成されてゆく。しかし、そんなことあるわけないと私は否定し続けた。ただ、ひたすらにお母さんの帰りを待って…。

 

霊夢「早く帰ってきてよ」

 

ヒューン

 

霊夢「!!」

 

どこか近くでスキマが開いた。

どうやら、帰ってきたようだ!!

 

すぐに行かなきゃ!

 

そう思い私はすぐさま境内の方へと向かう。

しかし、そこにある光景はとても私の望んだ光景ではなかった。

 

 

紫が血塗れのお母さんを抱き抱えている。

 

 

私はすぐさまお母さんにかけよった。

 

 

霊夢「お母さん!お母さん!」

 

どうして、返事をしてくれないの?

どうして、体が冷たいの?

私は震えた体で紫の方へ視線を向けた。

紫は、ただ首を横にふる。

 

霊夢「うわあぁーーん」

 

その瞬間、私の目から涙が溢れて出た。

お母さんが死んだ。あの優しいお母さんが私をおいていっちゃった…。どうして?

ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ

 

私の心はパニック状態に陥る。

紫はお母さんの体をそっと縁側に置き、私を抱きしめてくれた。

 

紫「ごめんね」

 

紫はただ一言そう溢す。

私はそのまま一晩中泣き続けた。

 

翌日になって紫に聞いたのだが今回、とてつもなく強い妖怪が人里に現れお母さんは命がけで人々の命を守ったという。

その結果、なんとか妖怪を倒すことには成功したもののお母さんの方も大きくダメージを負ってしまい相討ちという形で勝負がついたようだ。

 

八幡がいなくなった今、家族はお母さんただ一人だけだった。でも、そのお母さんももういない。私は一人ぼっちになったのだ。

 

 

 

 

 

その後のことは早かった。

 

 

 

 

 

お母さんの葬式が人里で行われすぐさま人里では私が新しい博麗の巫女、博麗霊夢として紹介された。私は歳がまだ幼いこともあり周りからも不満の声が少なからず上がっている。しかし、博麗の巫女がいなければ人は妖怪の餌食、周りは渋々ながらも納得した。

 

しかし、それから一ヶ月後

 

霊夢「……」

 

私は一度たりとも妖怪退治を成功させることが出来ていなかった。

これは別に実力がないからではない。

私は…。

 

妖怪「くうぅ…」ナミダメ

 

私は妖怪にトドメをさす勇気を持っていないのだ。どうしても最後の瞬間にためらってしまう。心ではわかっているのに体が動かないのだ。

 

霊夢「はぁ…」

 

今も私は目の前の妖怪にトドメを指さずため息をついた。そして、そのまま妖怪を放置して神社へと戻る。こんなことを私はもう数回繰り返していた。

それもあってか紫から何度も叱られている。

 

紫「はぁ、霊夢。また、妖怪を取り逃したの?」

 

縁側でくつろいでいるとひょっこりスキマから紫が現れた。

 

霊夢「仕方ないでしょ。私は弱いんだから」

 

ここで無抵抗の妖怪を目の前で逃して来たなんて馬鹿正直なことは言わない。

そんな事を言ったらもっと叱られるのは目に見えてるからだ。

 

紫「ふ〜ん。その割にはさっきの妖怪をわざと見逃したように見えたけど?」

 

霊夢「げっ」

 

まさか、さっきのを見られていたとは…。

これは、また叱られちゃうな…。

 

紫「霊夢。確かにあなたはまだ幼いわ。その歳で命を殺めるのはかなりの勇気がいる。でもね、妖怪を倒さないと幻想郷の人と妖怪とのバランスが崩れちゃうのよ。それがわかってるの?」

 

紫の言ってる事は正論だ。

紫みたいな大妖怪を除いて一般的な妖怪や妖精と人間が共に暮らすなんて不可能。

この種族の間にあるイザコザを常に管理しないといけないそれが博麗の巫女だ。

しかし、私は妖怪を倒すという事をこの一ヶ月まだ一度も行えていない。

 

霊夢「……」

 

それ故に私は無言になってしまう。

 

紫「また、だんまり?あのね、霊夢。流石の私もずっとあなたに優しくしてられないわよ」

 

紫の言葉に少し殺気が混じる。

どうやら、本当に怒っているようだ。

これはなんとかしないとヤバイわね。

 

と、そんな時だった。

 

妖怪「あ、あの!」

 

紫・霊夢「え?」

 

神社の鳥居の方に妖怪が立っている。

あいつはさっき私が見逃した奴だ。

 

妖怪「さっきはありがとうございました」

 

霊夢「は?」

 

わけが分からない。

この妖怪は一体、何を言ってるのかしら?

紫も同じような顔を浮かべている。

 

霊夢「あの?何言ってるの?」

 

妖怪「え?あ、いや、さっき私の事を見逃してくれたじゃないですか。そのお礼に来ました」

 

この妖怪は馬鹿なのかしら?

普通、見逃されたならそのまま姿を隠すのが正しい行動だ。なのにこいつは私にお礼を言いに来た。

 

霊夢「なんで?そんなのでお礼に来るのよ?普通、そのまま逃げるでしょ?」

 

私はすぐさま心に思った疑問を妖怪に尋ねる。すると、妖怪の方が次は「え?」と反応をする。

そして、ただ一言こう告げた。

 

妖怪「だってあなたは本来、私を倒さなくてはならなかった。でも、それをしなかったってことはあなたは私にとって命の恩人と変わりありません。だから、お礼を言いに来たんです」

 

へぇ、妖怪の中にも律儀な奴はいるのね。

その瞬間、私の心にある一つの考えがよぎる。もし、これが実現すれば幻想郷は真の理想郷になるほどの考えだ。

 

霊夢「とりあえず、そんなお礼はいらないわ。ただ私が仕事をサボっただけのことだしね。怒られるならまだしも褒めらたらむず痒くなっちゃう」

 

妖怪「え?でも」

 

霊夢「ああ、もう!鬱陶しいわね。早く帰らないと今度は本当に退治するわよ!」

 

そう言って私はお札を構える。

妖怪は、「ひっ!すみません」と言って帰って行った。

 

紫「驚いたわ。あんな律儀な一般妖怪がいるなんて…。今まで妖怪は基本殺めてたから一切気づけなかったのね」

 

紫は先程の妖怪に興味深そうな感想を述べる。しかし、今はそんな感想より聞いて欲しいことがあるのだ。

そう思い私は紫に勇気を振り絞って提案する。

 

霊夢「ねぇ、紫」

 

紫「!!なに?霊夢?」

 

やっと自分に対して口を開いてくれたことに驚いた様子で紫は私の方へと振り返った。

 

しかし、私はそんな紫の表情など気にすることなく言葉を続ける。

 

霊夢「人間と妖怪って共存出来ないかしら?」

 

この幻想郷の常識を覆す言葉を…。

 

紫「は?」

 

紫はまるで新種の妖怪を見たかのような表情でこちらを見てくる。

 

霊夢「だから、人間と妖怪の共存よ。今の見たでしょ?妖怪にもしっかりと感謝の心がある。てことは、お互いにお互いの種族を認め合えばきっと出来るわよ。人間と妖怪が本当に笑顔で暮らせる世界が!」

 

しかし、紫はその言葉に対して呆れたような表情を私に向けてきた。

そして、バッサリと言い放つ。

 

紫「無理ね」

 

その時の紫の表情はただひたすらに冷たかった。

 

紫「人間と妖怪はそれぞれ違った価値観を持つの。だからこそ意見の食い違いで共存は不可能と言われてきたわ。さっきみたいに感謝の心を持つ妖怪がいたからと言って全種族が意見を統一させるのは無理よ」

 

意見の食い違い。

これによるぶつかり合いはなくなることはない。しかし、そんなこと百も承知でよ。

 

霊夢「違うわよ、紫。あなたは前提条件が間違えているのよ。別に意見の食い違いがあると共存は不可能になるわけじゃないわ」

 

紫「え?」

 

霊夢「意見が食い違ったならそれを決める基準となるものを作ればいいのよ」

 

紫「基準となるもの?霊夢、あなた一体なにが言いたいの?」

 

霊夢「まあ、簡単に言うとこう言うことよ!」

 

そう告げると私は右手から弾幕を空に向けて放つ。その弾幕はまるで花火のように空を舞った。

 

霊夢「霊力や妖力は使いようによってはこんなふうに美しいものにも変えれる」

 

紫「……なるほどね」

 

どうやら、紫も理解してくれたようだ。

 

紫「要するにあなたはその美しさのある弾幕の中、制限を決めてあくまで遊びとして勝負をする。それによって互いの意見のどちらが優先するのか決めるってわけね」

 

流石は紫ね。

もうすでに私の言いたい事を言っちゃった。

 

すると…。

 

紫「ふふふふ、あっはっはっは」

 

紫が急に大きな声で笑い出す。

え?どういうこと?

結構、ガチで困惑中の私。

 

紫「いや、ごめんなさい。ついおかしくて」

 

霊夢「…。やっばり、ダメだった。この案」

 

紫は幻想郷ができた時からいる。

紫がダメだと断言するならおそらくダメなのだろう。結構、いい案だと思ったんだけどなぁ。

 

しかし、次に紫から返ってきた返答は予想外のものだった。

 

紫「いやいやいや、なに勘違いしてるの霊夢?最高の案よ!」

 

え?今、紫が最高の案って言った?

 

紫「まさか、弾幕をこんな斜め上の使い方にしようとするなんて、その発想、まるであの子見たいね」

 

紫がふふふと笑いながら私の顔を覗く。

その瞬間、私の顔が少し赤くなったのが分かった。そう紫の言うあの子は勿論、八幡のことである。ここだけの話。八幡は、私と暮らした一ヶ月間、凄い発想力を発揮してたのだ。八幡の考えはどれも斜め上でお母さんも私もよく度肝を抜かれた。勿論、紫も例外でない。

 

だって霊力の原理を初めて知った時なんて、八幡はこんな事を言ったんだから。

 

八幡「カードなどの中に霊力を込めておいたら霊力を直接消費することなく多様な弾幕を打つことってできないんですか?」

 

普通、こんなこと思いつく?

物体の中に霊力を閉じ込めるなんてどんな風に考えたら思いつくのよ…。

 

 

でも、まあ、そんな八幡と一緒に暮らしてたからこそ思いついたこの美しき弾幕。どうやら、少なからず私も彼に毒されているようだ。

 

紫「あらあらあら、顔が赤いわよ霊夢」

 

そんな私の表情を見てからかってくる紫。

 

霊夢「う、うるさいわね!!」

 

あ〜、もう!!

やっぱり、八幡の事を考えてると自分が自分じゃなくなっちゃう!

ちょっと落ち着かないと…。

 

霊夢「それで紫?私の意見は賛成という事でいいの?」

 

紫「う〜ん。そうねぇ、まだ、賛成とは言わないけれどあなたが本気でそんな世界を目指すと言うなら私はサポートするってところかしら」

 

なるほど。

つまり、この考えが現実になるかは私次第ということね。

いいわ!やってあげる!この私が幻想郷全てを塗り替えて上げるんだから!

 

こうして私の計画が始まった。

 

まず、やったことは基本的なルールの設定と勝敗を決めるゲームの名前だ。

これは紫と一晩中話した結果、弾幕ごっこという名前に決まった。戦闘に使う弾幕に『ごっこ』という遊びを表す言葉をつけることで危険なものという認識を弱めようと考えたからだ。紫も「あら、いいじゃない!」とかなり気に入った様子。

 

次にルールなのだがこれは流石に一日では決まらないので三日ぐらいかけてしっかりと構想を練った。その結果、弾幕ごっこはあくまで勝敗を決めると同時に美しさも競うものというルールを付け、また、スペルカードというものも作った。これには、各自それぞれが霊力、または、妖力などをこめ自分のイメージしたとっておきの弾幕を予め用意しておくというものだ。

 

そうこれはあの時、八幡が思い付いたカードの中に霊力を込めるという発想をそのまま貰ったのである。因みに実験も兼ねて一つスペルカードを作ってみたが大成功だった。

 

このルールをまるまる紫に提出すると紫は「ふむふむ」と言いながら私の意見を文句ひとつ言わずに聞いてくれた。

 

紫「なるほどね。確かに八幡君が考えたカードを使うという発想は弾幕ごっことは相性がいいわね。もし、これが実現すれば戦いそのものが幻想郷の美しさの象徴になるかもしれないわ。あなたが描いた未来は、まさに私が望んだ未来…」

 

紫が望んだ未来か…。

確かにこの幻想郷は理想を目指した世界。

しかし、考えの違いから流れる血はとても理想郷とは言えないものがあった。

 

紫はまるで瞑想をするが如く目を閉じ静かになる。そして、そのまましばらくしてゆっくりと口を開いた。

 

紫「分かったわ霊夢。私も本格的にこの世界を目指すことにするわ」

 

この瞬間、紫はサポートではなく全面協力へと変わった。紫が協力してくれるなら心強い。私自身、この弾幕ごっこが実現するのではないかと希望を持った。

 

しかし、現実は甘くない。

 

私と紫はそれぞれこの新たなルール「弾幕ごっこ」を幻想郷に広げてまわった。

しかし、人里ではそんな遊びに何の意味があると批判を受け、妖怪たちにもそんな遊びには付き合えないとあしらわれる。

しかし、これも仕方ないのかもしれない。

だって、私はまだ年齢も若い女の子。

いくら紫が同意したとはいえ、そんな未熟者が考えた案を採用するなど殆どいなかったのだ。

 

霊夢「う〜、やっぱりダメなのかしら…」

 

周りから否定され続けた私は現在、疲労困憊である。まさか、ここまで乗ってくれる人が少ないとは…。

 

紫「う〜ん。やっぱり、実績がないのが響いてるのかもね。人里では貴方は妖怪も碌に倒せないダメ巫女って扱いになってるもの」

 

霊夢「うっ…」 

 

紫の言葉が私の胸を貫く。

そう実は私が妖怪を倒せないことから現在、人里の人たちに不満が溜まってしまってるのだ。しかし、それも仕方がないのである。

自分たちを脅かす妖怪が全然退治されないのだ恐怖から不満が溜まっても仕方がない…。

 

紫「どうするの霊夢?ひとまず、あなたがそれなりの戦績を残さないと妖怪からも舐められ人間からも不満が溜まる。とても、このシステムを広げることなんてできないわ」

 

確かにその通りだ。

まず何より信用がない私の話に耳を傾ける奴はいない。なんとか、信用を得ないと…。

でも、どうやって?

私は頭の中でいろいろな案を模索する。

しかし、何一ついい案は思いつかなかった。

と、その時!!

 

霊夢・紫「!!」

 

人里の方から巨大な妖気が現れた。

 

霊夢「紫!!」

 

私は紫の名を呼ぶ。

それと同時に紫はスキマを開け現在位置から人里まで繋げた。

私はすぐさまスキマに飛び込み人里へと向かう。

 

そこには…。

 

そこには、巨大で異質な体を持った化け物が立っていた。その大きさは10メートルは超えているだろう。

 

霊夢「あ、あれは一体!」

 

思わず私は声を荒げなが言う。

あんな妖怪、今まで見たことない。

一体、何者なの?

そんな事を考えてると私の横にいた紫は声をあげる。

 

紫「あ、あれは!」

 

紫の表情からしてどうやらあの妖怪を知っているようだ。

 

霊夢「紫、あなたあの妖怪知ってるの?」

 

紫「知ってるも何もあの妖怪。霊奈をやった妖怪と同じ妖怪よ。といってもあれはもはや化け物だけどね」

 

霊夢「……え?」

 

今、紫はなんて言ったの?

お母さんをやった妖怪?

 

霊夢「何言ってるのよ。その妖怪はお母さんと相打ちで倒されたんでしょ!」

 

紫「ええ、確かにそのはずよ。とすると、もしかして同種の妖怪かしら。どこから、

幻想入りしてきたか分からないけどあんな化け物が二体もいたってこと…。強さも霊奈の時と同じくらいあるし…」

 

お母さんを倒した妖怪と同種で強さは同じくらい…。

それを聞いた瞬間、私の体に鳥肌が立つ。

もし、紫の言うことが事実なら到底、私では倒すことなど出来ない。

 

紫「霊夢、逃げなさい!こいつは私がなんとかするから!」

 

紫は私に対してそう叫んだ、、、

しかし…。

 

人「うわぁ!化け物!!」

 

妖怪「な、なんだよ!あれ!」

 

もし、ここで私が逃げてしまえば人里の人とその周辺に住んでる妖怪の命が危ない。

私は博麗の巫女、こんなところで逃げるわけには行かないのだ。

 

霊夢「いいえ、紫。私も戦う。博麗の巫女たるものこんなところで逃げるわけには行かないもの…。私はあの妖怪を殺す!!」

 

紫「霊夢……。分かったわ」

 

私の言葉に対して少し言い淀んだ紫。

しかし、すぐに私の意思を感じ取ったのか私が戦う事を許容してくれた。

 

紫「それと霊夢。貴方はあの妖怪を殺すって言ったけどあれに魂はないわ」

 

霊夢「え?」

 

紫「あれはね。邪念の塊よ。どこからあんな邪念が来たのかは知らないけどあれには命はない。いわばロボットみたいなものよ。だから霊夢。手加減する必要なんてないわ。思いっきりやりなさい!」

 

霊夢「そう、分かったわ!」

 

正直、この情報は何よりもありがたかった。

いくら、化け物とは言え私はまだ殺すと言うことに抵抗がある。しかし、相手に魂がないと分かった今、私の心のタガは外されたも同然だ。

 

霊夢「行くわよ紫!」

 

そう言って私は化け物に向かっていく。

紫はその後をすぐに追った。

 

 

 

人「あれは?博麗の巫女か?ダメだ今の巫女じゃあんな化け物は倒せない!」

 

妖怪「ああ、幻想郷はお終いだ」

 

周りは絶望よ表情を浮かべながらひたすら祈っている。

 

霊夢「紫、私じゃあいつを倒せる力はないから攻撃はあなたがお願い。私はあいつを錯乱させるように動くから」

 

紫「分かったわ!」

 

この勝負、正直、絶望的と言わざるおえないけれど、もし可能性があるとしたら私が相手を翻弄してる隙に紫の本気の一撃をお見舞いする。これしかないだろう。

 

私は化け物後ろに回り込み弾幕を放つ。

 

霊夢「はぁっ!」

 

ボンッ

 

しかし、予想通り私の弾幕では化け物はかすり傷すら負わず、それどころか弾幕に反応すらしない。ここまで差があるのか…なら!

そう思い今度は弾幕を連打する。

 

霊夢「はあっ!はあっ!はあっ!」

 

ボンッ ボンッ ボンッ 

 

流石の化け物もこれには反応を示してくれた。化け物は私の方へと視界を向ける。

そして、手のひらを私の方へと向けた。

 

その瞬間…。

 

ビューーーン

 

もの凄いエネルギー波式の弾幕が私に放たれた。

 

霊夢「ちょっ!」

 

私は間一髪のところでそれを回避する。

正直、今の一撃をモロに食らったら一発KOだったわ…。

ただ、化け物は今、私を捉えている。

私はチラッと紫の方へと視線を向けた。

そこにはすでに妖力を集中させた紫がいる。

 

紫「よくやったわ霊夢!」

 

ドオンッ!!

 

その言葉と同時に紫は巨大な弾幕を放った。

もよ凄い威力が込められた弾幕がそのまま化け物めがけて飛んでいく。

 

そして!

 

ドッカーン‼︎

 

その弾幕はモロに妖怪に直撃した。

周りには砂埃が立つ。

 

霊夢「やった!」

 

作戦が成功した!

あんなのを食らったら流石の化け物もタダじゃ済まないはず!

しかし、紫の表情は依然として硬かった。

どうして?

 

そう思いながら化け物の方を見る。

砂埃が少しずつ消え、視界がハッキリしてきた。

するとそこには…

 

化け物「グルルルルル!!」

 

傷は負ってるもののまだ立っている化け物がいた。まさか、あの弾幕を耐え切ったというの!さっきの弾幕はとんでもない力が込められてたはずなのに…。

 

紫「……」

 

どうやら紫はさっきの一撃で仕留めきれてないことにはいち早く気づいてたのね。

流石だは…。

でも、そうなるとどうやってあいつを倒せば…。

万事が尽きたか…。

そう思った時だった。

 

化け物「グアアああああ!!」

 

化け物が急に叫び声をあげ暴れ出した。

恐らくさっきの一撃でキレてしまったのだろう。私と紫は何をされてもいいように戦闘態勢を崩さない。

しかし、次に化け物がとった行動はとんでもないことだった。

 

化け物「はぁ!はぁ!はぁ!はぁ」

 

なんとやけになった化け物はただ出鱈目に弾幕を四方八方に放つ。

 

紫「えっ!」

 

霊夢「ヤバッ!」

 

こんな所でそんなものを乱射されては死人がでる。現に人と妖夢は現在パニック状態になり逃げ回っている。

と、その瞬間!

 

ドンッ!

 

化け物が放った弾幕が一つの民家に直撃した。しかもその民家の下には女の子が隠れている。

 

霊夢「危ない!」

 

ビューーーン

 

私は慌ててその女の子の所へと向かった。

 

 

ガタガタガタ

 

ドンッ

 

間に合え!

私は民家が崩れ落ちるのと同時に飛び込んだ。

 

紫「霊夢っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「うっ!」

 

少女「う〜〜」

 

よかった。

なんとか間に合ったようだ。

私は建物の下敷きになる前になんとか少女を救い出すことに成功した。

少女をそのまま地面に置いてあげる。

 

霊夢「ここは危ないから。早く逃げなさい」

 

そう優しく言うと少女は「うん」と言ってすぐに逃げて言った。

 

さてと…。

私は化け物の方へ振り返る。

すでに化け物弾幕は止んでおり少し興奮してるようだがなんとか大人しくなった。

 

霊夢「本当、どうしようかしら…」

 

私は頭をフル回転させて考える。

と、その時!

 

霊夢「あっ!そうだ!」

 

私は慌てて自分のポケットを漁る。

そして、そこから一枚のカードを取り出した。

 

霊夢「これなら、奴にダメージを与える上に動きを封じれるかもしれないわ!」

 

そうこれは弾幕ごっこに当たって試作品で私が作ったスペルカード。

このスペカと紫の弾幕を合わせれば…。

そう思い私は紫にスペカをかざした。

 

紫「‼︎」

 

どうやら、紫は私の作戦に気づいてくれたようだ。

さあ、化け物さん。ここからが反撃よ!

私は化け物の方へと飛び立つ。

 

 

化け物「グルルルルル!!」

 

化け物は私が近くなり威嚇する様な声を出した。

 

霊夢「威嚇のつもり?悪いけど私にそんなの意味ないわよ」

 

そう言って私はスペルカードをかざす。

 

霊夢「今から貴方をこのカードで倒すわ」

 

化け物「くりゃあああ!!!」

 

その瞬間、化け物は私に弾幕を放ってきた。

たく、本当に魂がないのね。

意思を全く感じないわ。

私はすぐ急上昇してその弾幕を躱した。

私の視線は化け物を見下ろしている状態になる。そうなるのを確認すると同時に私はカードに少量の霊力を込めた。

その瞬間、スペルカードが光出す。

もとより込めていた霊力が反応したのだ。

それを合図に私は叫ぶ。

 

霊夢「霊符 夢想封印」

 

それと同時に無数の弾幕が美しく舞い散る。

 

化け物「ぐらぁ?」

 

困惑する化け物。

しかし、もう遅い。

化け物の周りには今私が放った夢想封印が取り囲んでいる。

化け物は身動きひとつ取れない状況となった。

それと同時に紫と目配せをする。

紫は私に対して軽く頷いた。

どうやら、準備は出来てるみたいね。

 

霊夢・紫「はぁ!!」

 

その瞬間、私は取り囲んでた弾幕を一気に化け物に放った。紫もそれに合わせて弾幕を放つ。さっきの紫の攻撃だけでも少なからずダメージを食らったのだ。私の夢想封印と掛け合わせればきっとこいつを倒せる。

 

化け物「ぐわあああ!!」

 

化け物はそのまま体がボロボロになっていく。

そして!

 

ドカーン

 

もの凄い爆発が起きた。

化け物はそのまま跡形もなく消え去る。

 

霊夢「ふう。どうやら成功したみたいね」

 

紫「ええ、よくやったわ。霊夢。」

 

紫から労いの言葉をかけられた。

 

紫「まさか、霊奈を倒したのと同じ化け物を倒すなんて…。あの夢想封印かなりのものだったわ」

 

霊夢「ふふふ、これも八幡のおかげよ」

 

八幡が考えたカードに霊力を込めると言うアイデア。これがあったから化け物を倒せた。

本当によかった…。

と、そんな事を考えていると

 

人「博麗の巫女がやってくれたのか?」

 

妖怪「あの巫女が…」

 

全員「「「うお〜〜!!博麗の巫女と大妖怪があの化け物を倒してくれた!!」」」

 

人や妖怪が私達に感激の声をあげている。

どうやら、今回の戦いでかなりの人からも妖怪からもかなりの信用を得れたようだ。

これは非常に大きい。

すると、それを見た紫が私に耳打ちをしてくる。

 

ふむふむ。なるほど。

 

耳打ちを終えた紫の顔を見るといやらしい顔を浮かべていた。ほんといい性格してるわこいつ。

 

私はそのまま人間と妖怪達を見下ろす。

そして、大きな声で叫んだ。

 

霊夢「みんな〜〜!!聞いて頂戴!!今回、よく分からない化け物が幻想郷に現れたわ!今回はなんとかなったけどまた、同じような奴が来ないとも限らない。そうなったら妖怪とか人間とか関係ないに今度こそ幻想郷が終わるかもしれないわ」

 

私が叫ぶと下の方ではザワザワと騒ぎ声が上がる。今の私のセリフに恐怖を感じたからだろう。

 

霊夢「落ち着きなさい。だから、私から提案があるの!それはこの前、言った弾幕ごっこよ。これから種族間のイザコザをこれで解決し妖怪と人間が共存できる世界をつくる。これならまた、あんな化け物が現れた時、みんなで協力して化け物に対応できるようになるわ!」

 

人「弾幕ごっこか…」

 

妖怪「確かにあんな化け物がまた来た時、幻想郷に住むもの同士争ってる場合じゃなくなるかもしれないし…」

 

人「そうだ。その弾幕ごっこって奴を採用しよう!これからは妖怪も人里に入ることができ食料なんかも分け合う。共に協力しよう!」

 

妖怪「ああ、そうだ!ルールなんかもしっかり決めてやっていこう!」

 

化け物を倒したおかげで私の意見は前までとは段違いで通った。

 

 

その後、無事幻想郷中に弾幕ごっこが広がり一年足らずで弾幕ごっこが定着した。

それからは霊夢自身、妖怪の命を奪うことなく弾幕ごっこで妖怪と戦い。勝利を収めていた。

 

すると、ある日謎の金髪少女が私の元に訪れて勝負を迫ってきた。

なかなか、腕はいいのだが私にはまだまだ及ばないようで金髪少女が挑戦してくるたびに返り討ちにした。でも、金髪少女は負けず嫌いなのか倒しても倒してもリベンジにくる。最初は、めんどくさかったけど戦いってるうちに私も楽しくなってきて何故かお茶を一緒にする仲までになっていた。

そして、私が異変解決をするのにもついてくるようになりしまいには親友と言って差し支えないほどの仲になったのだ。なんやかんや八幡の次に仲良くなった同年代の友達。

私自身嬉しかったことは否定できない。

 

その後、沢山の異変を金髪少女と解決していった赤い霧の異変や春が来ない異変。

幻想郷ではおかしな異変が絶え間なく続く。

しかし、異変が終わるたびに妖怪と仲ようなり昔の私では考えられないほどの友達ができていった。

 

今、八幡はどうしているのだろうか?

ふと考える時がある。

あまり良くないことなのだがしょっちゅう八幡があのボタンを押してこっちに来ることを妄想してしまうほどにだ。

ただ、こっちに来ていないと言うことは幸せに向こうで暮らしている証拠。

私はグっと寂しさを堪える。

辛くなったらいつでもこっちに来なさいよ八幡。

私の友達も沢山紹介してあげるからね。

あ、ただそれで一目惚れとか辞めてね。

こっちに来たら八幡は私のなんだから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「まさか、2体の邪念の塊が両方やられるとわね。博麗の巫女。なかなか、おもしろいじゃないか…」

 



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再開

八幡「ここも変わらないな」

 

ボタンを押した俺は昔懐かしい景色に胸を躍らせる。霊奈さんと霊夢は元気にやってるかな?そう思いながら俺は鳥居をくぐって神社の中へと入った。

 

しかし、誰もいない。

中にいるのかとは思うが一体どうやって声を掛ければいいんだ…。

「こんにちは」も違う気がするし「久しぶり」もなんか違う…。

 

どうしよう…。

 

俺がそんなバカみたいなことで悩んでいると神社の中から人が出てきた。

 

霊夢「あ〜、境内も汚れてきたし掃除をしないとね」

 

あれは間違いない霊夢だ。

かなり成長してめちゃくちゃ美人になってるが俺には分かる。

え?てか、可愛くなりすぎだろ、あいつ。

いや、前も可愛かったけどさ。今はなんというか大人の色気が少しブレンドされてる気が…。

 

霊夢「ん?誰かいるの?」

 

おっと、どうやら俺の気配を感じ取ったようだ。ここは建物の角度的にギリギリ霊夢から見えていない。そんな中、ぼっちの俺を感じとるとは流石霊夢だ。

 

霊夢「参拝客?」

 

そう言いながら霊夢は俺の方へと顔を覗かせる。

 

八幡「よ、よう…」

 

霊夢「え?」

 

俺を捉えた瞬間、霊夢は固まった。

比喩表現なしに固まった。

瞬きひとつしていない。

 

八幡「ど、どうした?霊夢?」

 

そんな霊夢の態度に思わずそう言葉が溢れる。

 

その瞬間だった!

 

霊夢「は、はちまーーーん!!」

 

バサッ

 

霊夢が勢いよく俺の方へと来る。

え?ちょ、待って!

 

ヒュッ

 

ドテンッ

 

八幡「あっ」

 

思わず飛びかかってきた霊夢を俺は躱してしまった。そのせいで霊夢は地面と抱き合うことになる。いや、俺は悪くない。だってあんな美人に急に飛びつかれたら反射的に避けてしまっても仕方ない。うんうん。

 

霊夢「い、いてててて」

 

霊夢は涙目になりながら立ち上がる。

少し鼻が赤い。

うん、可愛い。

 

しかし、そんなバカなことを考えてる暇はなかった。すぐさま、霊夢は涙目のまま俺を睨みつけてくる。

 

霊夢「どうして避けるのよ!!」

 

これはかなりご立腹の様子。

無理もない感動の再会を現在、俺はぶち壊してしまったのだから。

 

八幡「いや、その、急に飛び込んできたから。つい反射的に…」

 

言葉を詰まらせながらもなんとか弁明を図る。しかし、霊夢は思いっきり頬を膨らませ「ふんっ」とそっぽを向いてしまった。

これは一体どうしたらいいのだろう。

 

八幡「悪かったよ霊夢。お前が想像以上に可愛くなってて驚いてしまったんだよ。だから、な?許してくれ。この通りだ」

 

そう言って俺は頭を下げた。

え?プライドはないのかって?

馬鹿野郎そんなもん生まれてくる前に捨てたわ!

 

霊夢「か、かわいい…。まあ、いいわ。特別に許してあげる。そのかわり…」

 

お、どうやら成功したようだ。

しかし、このパターンは交換条件付き。

小町で学んだがこういう時はだいたい一筋縄ではいかない命令がくるのだ。

もし出て行けとか言われたらどうしよう。

俺、野宿になるのか?

でも、確か野宿は妖怪に食われる可能性があるから危険って霊奈さんが言ってたな。

 

やだ、八幡。幻想郷に帰って初日で人食い妖怪の餌になっちゃうの?

うん。今の脳内再生は自分でも気持ち悪かった。

てか、霊夢のやつ命令を全然俺に言わないな?どうしたんだ?

と、そんなことを考えた瞬間だった。

 

バサッ

 

霊夢が俺に飛びつく。

今度は先程とは違い物凄いスピードで飛びつかれ避ける隙もなかった。

 

霊夢「私の気が済むまでこうしなさい…」

 

霊夢は俺の胸の中でそう呟く。

ああ、この感じ懐かしい。

以前、霊夢と別れ際に交わしたハグ。

それと同じ暖かさが俺の胸に広がる。

俺はそのまま霊夢の体を包み込みこう言葉をこぼすのだった。

 

八幡「ただいま」

 

霊夢はその言葉を聞くと俺の顔の方を上目遣いの形で除き「おかえり」と呟いたのであった。

 

 

それから10分後。

霊夢はやっと離れてくれた。

正直、あんな美人に抱きつかれて平常心を保てるわけがない。心臓が常にバクバクだった。しかし、それは俺だけではない。俺自信、霊夢も激しく心臓が動いてるのを感じ取った。まあ、俺の心臓も霊夢に感じ取られたのだろうけど…。

 

霊夢はその後、俺を建物の中へと案内してくれる。懐かしいなぁ。ここで霊夢と霊奈さんと俺で飯を食ったものだ。

あれ?でも待てよ?

 

八幡「なあ、霊夢?霊奈さんはどうしたんだ?」

 

そう先程から霊夢さんの姿が見えない。

妖怪退治に出かけているのだろうか?

しかし、俺の質問に対して霊夢の表情は暗くなる。まさか!俺の脳内で最悪の可能性が浮かび上がった。

 

霊夢「そのことも含めて説明しないといけないわね」

 

霊夢は、暗い表情ながらも俺と向かい合いそして、俺がいなくなった後の幻想郷での出来事を話してくれた(詳しくは別種族の共存を読んでね)

 

八幡「なるほどな」

 

霊夢の話を聞き終えた俺は色々な感情が入り混じる。霊奈さんの死による悲しみ。霊夢が幻想郷のルールそのものを変えて、何故か俺の考えたカードに霊力を込める奴が主流になってる驚き。そして、霊夢に沢山の友達が出来たことへの喜び。

 

霊夢「まあ、色々な情報が一気に入ってきて混乱するのは分かるけど出来れば八幡のことを話してほしいな」

 

おっと、そうだ。

あのボタンは最終手段であることは霊夢も知っている。故に俺に辛い出来事があったことをもう霊夢は察しているのだ。

 

八幡「分かった」

 

俺は意を決して霊夢に外の世界で体験したことをありのまま全て話した。

 

霊夢「そんなことが…」

 

霊夢は悲しそうな表情を浮かべる。

そして…。

 

ギュッ

 

再び俺のことを抱きしめた。

 

八幡「え?ちょ?霊夢?」

 

突然の出来事に戸惑ってしまい言葉がうまく出ない。

 

霊夢「八幡、辛かったね。また、人に拒絶されて誰からも受け入れて貰えなくて、でも、大丈夫。私は八幡を拒絶したりしない絶対にあなたのもとからいなくならないわ」

 

ああ、霊夢は俺を受け入れてくれたのか。

正直、怖かった。

俺がやったことを霊夢は許容してくれないかもしれない。それに怯えながら俺は全てを話した。でも、霊夢ら俺の全てを受け入れてくれたんだ。

 

やはり霊夢はいや、この幻想郷そのものが俺にとって何よりも大切な"本物"だ。

 

八幡「ありがとな霊夢…」

 

俺は涙ながらにその言葉をこぼした。

 

しかし!

 

霊夢「でもっ」

 

霊夢の抱き締める腕に力が入る。

 

八幡「ちょ、ちょっと霊夢さん!痛いんですけど」

 

俺がそう嘆いても霊夢は一向に力を緩めない。それどころかさらに力を増していく。

 

霊夢「状況から仕方なかったとはいえ、私以外の女に告白したのよね。だから、私はいま嫉妬で狂いそうだわ」

 

八幡「え?」

 

ちょ、なんか今すごくヤンデレみたいなセリフ言わなかったか?嫉妬って…。いや、まあ、たしかに俺が悪いんだけどね。俺だって霊夢が他の男に告白したとか言ったら多分、嫉妬するし…。

 

霊夢「八幡。このままじゃ私、気がどうにかなりそうよ。さあ、どうする?」

 

どうするって…。

これはあれか、私に告白しろと案に伝えているのか?たしかに俺と霊夢はお互い好きだとは言ったが恋人ではない。

ここはひとつ比企谷八幡、男を見せるか。

俺はそう思い霊夢を一度引き離す。

そして、そのまま肩に手を置き、目を合わせた。

 

八幡「霊夢!」

 

霊夢「は、はい!」

 

ヤバイ。めっちゃ緊張する。

霊夢も顔を赤めて思わず敬語になってるし…。でも、ここで下がるわけにはいかない。

 

八幡「俺と…」

 

俺は覚悟を決め告白する。

そう思った瞬間だった。

 

八幡「俺と「霊夢ーーーーーーーーーー!!」っ!え?」

 

 

外から突如、霊夢も呼ぶ声が聞こえる。

声の軽い感じから言って霊夢の友達だろう。

霊夢はマジかよという表情を浮かべている。

 

霊夢「は、八幡!今の声は気のせいよ。それより、今の続きを」

 

霊夢はそうやって俺に続きをせかした。

いや、出来るわけないでしょ。

 

霊夢「いいから、続きを「霊夢ーーーーーーーーーー!!!いないのかーーーー!!!」あーーー!もうっ!!魔理沙の奴!!」

 

その瞬間、霊夢はキレながら建物から出て行った。

 

八幡side out

 

[

 

 

霊夢side in

 

今、私はめちゃくちゃキレている。

折角、八幡が私に告白してくれそうな雰囲気だったのに!

あいつ絶対許さない。

そう思い。私は声の主の方へと飛び出た。

 

???「よう、霊夢!暇だったから来てやったぜ!!」

 

来てやったぜって…。

ああ、ヤバい。凄く殴ってやりたいわ。

 

あ、そうそうみんなにはまだ紹介してなかったわね。今目の前にいるのは霧雨魔理沙。

一応、私の親友的存在よ…。

って、私誰に言ってんだろ。

まあ、いいや。

 

魔理沙「おいおい、霊夢。お前、やけに機嫌が悪いな?もしかしてあの日か?」

 

霊夢「あんた、これ以上口開いたら殴るわよ?」

 

もうなんでよりにもよってこんなタイミングなのよ。そう思い私が絶望に落ちていると…。

 

八幡「おい、霊夢?その子がさっき言ってた友達か?」

 

私たちの声を聞いたのか、八幡が中から出てきた。ああ、なんか嫌な予感がするわ。

八幡に限って大丈夫だとは思うけど魔理沙は結構、可愛くてカッコイイ。目移りするには十分な程の外見。しかも…。

 

魔理沙「お?なんだ、外来人か?」

 

八幡「え?お、おう。。」

 

魔理沙「そうか!私、霧雨魔理沙ってんだ。よろしくな」ニッ

 

八幡「え、ああ。俺は比企谷八幡だ。よろしくな」

 

 

そう魔理沙は凄く人懐っこいのだ。

初対面の人にもズバズバと話しかけてすぐ仲良くなる。

 

でも、八幡はこの程度で落ちないよね。

そう思い私は八幡の方へと目をやる。

 

すると…。

 

八幡「かわいい…」

 

魔理沙「えっ?」///

 

八幡「あ、いや、すまん。つい本音が…。って、違う!」

 

魔理沙「ほ、本音って…。へへへ」

 

え?なにこいつら?なんでそんな付き合いたての初々しいカップルみたいな会話してんの?

てか、八幡。あんたなんで魔理沙を口説いてんの?いや、まあ、分かるわよ。多分、思わず口から溢れちゃったんでしょ?美味しい料理を食べて思わず「あ、美味しい」って言うのと同じような感じで…。

 

でも、普通私の目の前でいう?

そう思いながら私は八幡の事を睨みつける。

この天然タラシ野郎が!!

すると、八幡は怯えた目になる。

あの目は本気で謝ってる目だ。

八幡の目について一番詳しく私が思うんだから間違いない。

 

魔理沙「ん?どうしたんだ霊夢?八幡のこと睨んで?」

 

ぐっ!流石に魔理沙に対してあんたが可愛いって言われて嫉妬したなんて言えない…。

なんとか誤魔化さないと…。

 

霊夢「別に睨んでないわよ?」

 

魔理沙「え?そうだったか?絶対、睨みつけるのかと思ったんだが…。まあ、いっか」

 

ふう。魔理沙がサバサバな性格で助かったわ。

 

魔理沙「で?霊夢?どうして、外来人の八幡がいるんだ?幻想入りしたなら帰してやらないと」

 

魔理沙の疑問は的をついてる。

普通、幻想入りした人間は私がすぐ結界をいじって外へと出してあげる。でも、今八幡は明らかに私の家の中にいた。外にすぐ帰すなら家の中で寛いでいるなんてあり得ないのに。

 

霊夢「あ〜、まあ、説明すると結構長くなるんだけど仕方ないか…」

 

そう思い魔理沙に八幡の事情を全て話した。

ちなみに私と八幡が抱き合って別れたことなど余計なことは話していない。

 

魔理沙「へぇ、大変だったんだな八幡。でも、安心しろ!ここじゃあ、お前を拒絶する奴はまずいない。これからも仲良くやっていこうぜ」

 

そう言いながら手を八幡に差し出す魔理沙。

八幡は、「ありがとな」と一言だけ言って魔理沙の手を取った。二人は硬い握手を交わす。

なんやかんやあったけどこのタイミングで八幡と魔理沙があってくれたのは八幡にとってよかったかも知れない。八幡、幻想郷は貴方を受け入れてる。その事を今の魔理沙との握手でよく理解できたはず…。

 

魔理沙「あ!そうだ、八幡!お前一体どこに住むんだ?」

 

八幡「え?」

 

魔理沙が急にそんな事を言い出した。

八幡が住む場所?

そんなの博麗神社に決まってるじゃない?

 

八幡「え〜と、一応、霊夢の許可が出るならこの神社に住まわせて欲しいんだが…」

 

そう言いながら弱々しく私を見る八幡を

別にそんな心配しなくても大丈夫よ。

 

霊夢「ええ、勿論いいわよ。八幡は以前もここに住んでたし私とっては家族みたいなものだしね」

 

まあ、というより八幡がもし別の場所に住むって言ったらもう反対するけどね。

 

八幡「そうか、ありがとな。霊夢」ニコッ

 

そう言いながら私に微笑む八幡。

八幡って目の濁りがなくなってからめちゃくちゃイケメンなのよね。思わず私のキャラじゃないけどキュンとしちゃったわ…。

気をつけないとね。

 

魔理沙「え?でも?」

 

すると、魔理沙が心配そうな眼差しで私と八幡を見てくる。何よ、その目?

 

魔理沙「霊夢、お前金銭面は大丈夫なのか?」

 

あっ!

 

八幡「金銭面?」

 

魔理沙「え?ああ、そうか、八幡は知らないのか…。実はな。霊夢の奴、あんまりお金を持ってなくてな一人でもかなりきつい生活をしてるんだ。なんなら、この前なんて雑草を美味しそうな目で見てた時は思わず私の大切に育ててたキノコをあげちまったぜ」

 

ちょっ!魔理沙!!余計なこと言うんじゃないわよ!八幡に対する私の好感度が下がっちゃうでしょ!

 

八幡「そ、そうなのか…」

 

そう言いながら八幡は心配そうな目を私に向ける。

 

霊夢「べ、別に八幡が気にする必要は無いわ!お金なら、、、そう!魔理沙がなんとかしてくれるから!」

 

魔理沙「いや!無理だからな!」

 

くっ!白状もの。

 

八幡「…バイトは出来ないのか?」

 

魔理沙「う〜ん。基本、人里では一定のコミュニティが出来ていてそいつらで仕事を分け合ってるんだ。だから、外来人の八幡がバイトを頼むのは少し難しいな。それこそ、住み込みのバイトじゃ無いと…」

 

八幡「なるほど…。つまり、金を稼ぐ為には人里で住む必要があるってわけか…」

 

え?人里で住む?

 

霊夢「ちょ!それはダメよ!」

 

何故かこの幻想郷、人里には可愛い子で溢れかえってる。もし、イケメンの八幡がそんなところで住んだら少なからず誘惑しようとする輩が出てくるわ。それだけは、防がないと…。

 

魔理沙「なんでダメなんだよ霊夢?」

 

霊夢「いや、よく考えてみなさいよ。外の世界と幻想郷じゃ何もかも勝手が違うのよ。そんな中、人里で住もうものならきっと混乱しちゃうわ」

 

我ながら咄嗟に出た言い訳にしてはかなり良いことを言ったと思う。

 

魔理沙「あ〜、たしかにな〜。う〜ん。じゃあ、どうしよう…」

 

ふう。なんとか、八幡が人里に行くことは避けれた。でも、問題は解決していない。本当に生活費どうしようかしら…。

そんな事を考えてる時だった。

 

 

「それなら、心配ないわよ」

 

 

私の後ろからスキマの開く音が聞こえる。



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星空の下

八幡side

 

霊夢の後ろの方から効果音が流れる。

俺はこの効果音を知っていた。

この音は俺を初めて本物へと導いてくれたあの不気味な音。

 

八幡「久しぶりですね…。紫さん」

 

そう紫さんのスキマが開く音だ。

紫さんはこちらの方へと顔を向ける。

 

紫「本当に久しぶりね…。八幡君」

 

心なしか紫の表情が暗い。

まあ、その理由はおおかた察している。

間違えなく俺のせいだろう。

紫さんは俺があのボタンを押す事をきっと望んではなかった。しかし、俺は押してしまったのだ。

 

紫「ボタンを押しちゃったのね…」

 

八幡「はい、すみませんでした…」

 

紫「別に謝ることじゃないわ。あれを押すかは貴方の意思に任せたのはこの私だもの」

 

紫かんはそう言うと俺に優しく微笑みかけてくれた。ああ、やっぱり、紫さんは優しい。

俺は改めてそれを感じ取ったのだった。

 

霊夢「それで紫?さっきのセリフはどういうこと?」

 

おっと、このタイミングで霊夢が話に割り込んでくれた。恐らく、暗い話の流れを断ち切るためだろう。流石、霊夢だ。

 

魔理沙「そうだぜ紫。霊夢にはとても人を養うお金なんてないぞ?」

 

紫「そんなこと一番私が分かってるわよ」

 

いやいや、そんなこと分かっちゃダメでしょ。霊夢、お前一体どんな生活を送ってきたんだよ…。

 

魔理沙「だろ?じゃあ、どうするんだ?」

 

紫「そんなの簡単よ。私が工面してあげる」

 

八幡・霊夢「え?」

 

この人、今なんて言ったんだ?

工面してくれる?

つまり生活費をくれるということか?

 

霊夢「ちょ、紫。どういう風の吹き回し。あなたが私にお金をくれるなんて」

 

流石の霊夢もそのことにビックリなのか驚いている。そうただ驚いてるだけだ。だから、きっと目に浮かんでるドルマークは気のせいだろう…。気のせいであってほしい…。

 

紫「まあ、八幡君は私の弟みたいなものだからね。流石に雑草なんて食べて欲しくないわ…」

 

霊夢「ちょ、私は八幡に雑草を食べさせたりしないわよ!変なこと言わないで!」

 

そう紫さんに叫ぶと同時に俺の方に振り向く霊夢。どうやら、俺に変なイメージを持たれていないか心配しているようだ。ここは、霊夢を安心させる為に声に出して気にしてない意思を伝えよう。

 

八幡「お、おう、霊夢。べ、別に、俺は何も、気にしてないぞぉ↑」

 

あ、やべ。

めっちゃ噛んだ上に声が裏返っちゃった。

霊夢の顔がみるみる青くなる。

 

霊夢「絶対、私のことやばい人って思ったじゃない!私は普通の可愛い女の子よ!」

 

そう言いながら霊夢は俺の肩に手を置き、思いっきり揺さぶってきた。

 

八幡「ちょ、分かったから。ゆらすな」

 

霊夢「あ、ごめん」シュン

 

八幡「あ、いや、すまん。きつく言いすぎた」ナデナデ

 

霊夢「あ、えへへ」ニコニコ

 

おっと、いけない。

ついお兄ちゃんスキルが発動してしまった。

すぐに離さねば…。

そう思い霊夢の頭から手を離す。

流石にこんな美人の頭を撫でたらバチが当たりそうだ。

だから、お願い。頭から手を離した瞬間、そんな悲しそうな顔しないで…。

 

魔理沙「…なあ、紫」

 

紫「…なにかしら?」

 

魔理沙「…なんであいつら喧嘩したかと思ったらイチャイチャしてるんだ?」

 

紫「奇遇ね。実は私にも理解不能なのよ…」

 

なんか、魔理沙達が目を点にして俺らの事を見ている…。どうしたんだ?

霊夢は顔が赤い。

 

霊夢「ん、んん」

 

そんな事を思ってると霊夢は咳払いをする。

 

霊夢「そんなことより本当に生活費を工面してくれるのかしら?」

 

紫「え、ええ。そのつもりよ」

 

八幡「でも、本当にいいんですか?」

 

紫さんはいいというが俺的に養われる気があっても施しを受けるのは躊躇いがある。

 

紫「う〜ん。やっぱり、気を使っちゃうわよね…」

 

八幡「はい…。流石に無償でお金を貰うのは、躊躇いがあります…」

 

魔理沙「へ〜、八幡て真面目なんだな。どこぞの巫女なんて欲を隠し切れないほど喜んでるぞ」

 

霊夢「ちょっと、誰のことよ…」

 

魔理沙「いうまでもないぜ」ニッ

 

本当仲良いなこの2人。

 

紫「そうね、それなら八幡君にあるお願いを頼もうかしら」

 

八幡「お願いですか?」

 

紫「ええ、私はその報酬として貴方の生活面を支える。それならどう?」

 

なるほどあくまで施しではなく報酬という形で紫さんは生活費を俺に回してくれるわけか。たしかにそれならバイトと大差はなく、申し訳なさもなくなる。

そんな提案をされて断れるわけがない。

 

八幡「分かりました。是非そうしてください」

 

俺はすぐさま紫さんの提案にのるのであった。

 

八幡「それで一体何をすればいいんですか?」

 

紫「そうね。なら、八幡君には霊夢の監視をしてもらおうかしら」

 

え?監視?

一体、どういうことだ?

 

紫「実はね、聞いてよ八幡君。最近、霊夢ったら異変が起こっても面倒臭いだの大丈夫だのぐちぐち愚痴を溢してサボろうとするのよ。なんとか口うるさくしてやっと動いてくれるんだけどなかなかの我儘娘でね。だから、常に霊夢に八幡君がついていてほしいのよ」

 

そう言いながらオヨヨっと泣き真似をする紫さん。てか、霊夢よ。お前は一体何をやっているんだ…。

 

霊夢「ちょ、紫!変なこと言わないで!なんやかんや最終的にはちゃんと動いてるし今の幻想郷は前までと違って安全性が高いの!さっきから勝手に私のイメージを下げるのはやめて!」

 

おお、霊夢がかなり怒ってる。

しかし、紫さんはそんな霊夢の態度をふふふふと笑いながら軽くあしらった。

 

紫「別に私は嘘はいってないからねぇ。あなたがサボろうとするのは事実だし」

 

霊夢「あんたねぇ!!」

 

紫「ふふ。まあ、半分は冗談よ。本当の頼みは八幡君にも異変解決を手伝ってもらいたいの」

 

半分は本気なのかよ…。

てか、異変解決?

 

八幡「異変解決の手伝いって?」

 

紫「そのままの意味よ。簡単に言うと霊夢と一緒に異変を解決してってこと」

 

ま、マジか…。

たしかにお金を貰うんだからそれなりのことは覚悟してたけど、流石に異変解決の手伝いは予想外だった。てか、俺戦えないし…。

 

霊夢「ちょ、紫。そんなの危険すぎよ。八幡は弾幕ごっこなんてやったことないのよ。怪我するわ。それに異変解決の手伝いなら魔理沙がいるじゃない」

 

魔理沙「そ、そうだぜ!」

 

霊夢が俺の思ってた事を代弁してくれた。

恐らく俺は霊夢と魔理沙の足手纏いになる。異変解決なんてとてもできないだろう。

 

紫「う〜ん。まあ、そうよね。でもね霊夢。もし、このまま八幡君が何の訓練も受けずに幻想郷に住むのは危険なの。私はね、あくまで修行を受け、そして、八幡君が実戦でも戦えるほどの腕をつけてほしいという思いを込めていっているのよ」

 

霊夢「…つまり、異変解決の手伝いはあくまで名目上であって真の目的は八幡を鍛えあげること?」

 

紫「ええ、そう言うことよ。霊夢、八幡君は霊力が多少使える程度でスペルカードも持っていない。だから、貴方が鍛えてあげて」

 

霊夢「まあ、そう言うことなら…」

 

どうやら、話がまとまったようだ。

まあ、分かりやすく説明すると紫さんは俺がお金を貰う事を躊躇っていたので条件として異変解決の手伝いを提示し報酬という形で俺にお金を渡すことにした。しかし、その異変解決も名目上であり本当の目的は幻想郷を生き抜く為、俺を鍛えることだったってわけだ。

要するに俺は結局プラスになることしか受け取っていないってことか…。

でも、ここで俺がそれを言っても話がややこしくなる。それならいっそのこと強くなって本当に異変解決に貢献できるようになろう。

俺が返せる恩はそれしかないのだから…。

 

紫「それで八幡君。この条件でいいかしら?」

 

八幡「ええ、勿論ですよ」

 

俺はこの瞬間、博麗の巫女と共に異変解決を行う青年になった。しかし、この時の俺は知らなかった。俺にとって最初で最後の異変解決があんな辛く苦しい物になるなんて…。

 

紫「よし!そうと決まれば修行よ!といっても流石にゴタゴタ話してる隙に時間が経っちゃったわね。修行は明日からにしてちょうだい」

 

紫さんのセリフを聞いて太陽の位置を確認する。たしかにもう半分沈みかけだ。今から訓練を開始したら暗くなってしまうだろう。

 

魔理沙「お、八幡。明日から修行開始か。なら私も手伝ってやるぜ。どうせ暇だしな」

 

八幡「え、おう。ありがとな」

 

まさかの魔理沙も訓練の手伝いをしてくれるようだ。霊夢と魔理沙…この2人は異変解決のエキスパートだ。そんな2人に協力してもらえるなんてきっとラッキーなことだろう。

 

霊夢「それなら今日はとっとと解散して、明日の朝にここに集合にしましょう。その方が合理的だし」

 

魔理沙「ああ、分かったぜ」

 

紫「私は来れるかわからないけど時間があれば来てみるわ」

 

霊夢の言葉をはじめに魔理沙は箒に乗って飛び立ち、紫さんはスキマの中へと入っていった。

神社には再び霊夢と俺だけになる。

 

霊夢「ふう。なんかごめんね八幡。戻ってきたばかりですぐに修行なんて」

 

八幡「あ〜、気にすんな。修行は自分のために行うんだ。それに…」

 

霊夢「それに?」

 

俺の言葉に対し首を傾げながら呟く。

こいつはなんて動作一つ一つがこんなに可愛いんだ?

 

八幡「それに俺も霊夢や魔理沙の役に立ちたいからな」

 

少し気恥ずかしくなり顔を逸らしながら霊夢に告げた。霊夢は俺の言葉が嬉しかったのか「私のために…ふふふふ」と言って笑顔を浮かべてる。

 

八幡「ん、んん。そんなことより早く神社に入ろうぜ」

 

慌てて流れを変えるように告げる。

だってなんか恥ずかしいんならな。

こういうのはさっさと終わらせないと俺が精神的に死んでしまう。

 

霊夢「もう照れちゃって…。でも、たしかにそうね。早く入りましょ"私たちの"神社に」

 

そして俺と霊夢は神社の中に入っていくのであった。

 

八幡side out

 

 

 

霊夢side in

 

現在、私は八幡と一緒に台所に立っている。

理由は一緒に料理をしているからだ。

最初は私だけで作ろうと思ったのだが八幡が手伝いに来てくれた形だ。

てか、八幡手際良すぎでしょ。

なんか、八幡が作ってくれてるお味噌汁からいい匂いが溢れてきている。

まさか料理もできるなんて…。

これは絶対手放せないわ。

あれ?でも、まだ私と八幡は恋人じゃないのか…。まあ、一緒に暮らしてたらまた告白の雰囲気になる時もくるでしょ。その時こそ八幡と恋人に…。

そんな妄想に耽っていると不意に声をかけられる。

 

八幡「霊夢、そっちはできたか?」

 

おっと、危ない危ない折角の焼き魚が焦げちゃうところだったわ。うん、ちょうどいい焦げ色。我ながら上出来ね。

 

霊夢「ええ、ちょうどできたわ」

 

八幡「そうか、なら食べよう」

 

私と八幡はちゃぶ台の上に料理を並べる。

懐かしいな。八幡と一緒にご飯を食べるの…。

 

そして、私と八幡は夕食を食べたのであった。ちなみに今日の夕食だけで私の家の食料が尽きた。まあ、明日から紫が工面してくれるし多少わね。あ、そうだ。今度、八幡の歓迎会として宴会を開くのもいいわね。全額紫負担で。

 

霊夢 side out

 

 

 

八幡side in

 

夕飯を食べ終えた俺と霊夢は風呂に入る。

勿論、別々にだよ?

まあ、そんな事をしてると久しぶりの幻想郷での1日はあっという間に終わってしまった。

霊夢と俺は布団をひき寝る体制を取る。

ちなみに布団は霊夢が昔俺が使った布団を引っ張り出してきてくれたのだ。ああ、まだ残ってたのかmy布団。俺は布団との感動の再会を果たし横になる。霊夢も同じ部屋で布団を引き横になる。

するとほんの10秒程で寝息が聞こえてきた。

俺と再会してかなり興奮してたからな一気に疲れてしまったんだろう。俺も早く寝ないとな。そう思い俺は目を瞑った。

 

 

しかし…。

 

 

八幡「寝れない…」

 

俺は寝れずにいた。

なんとなく原因は分かる。

おそらく今までの環境と急に変わったからだ。前に幻想郷に来た時も慣れるまでは上手く寝付けなかった記憶があるし、逆に帰った時も寝付けなかった。

こう見えて俺は環境の変化に弱いのだ。

 

八幡「流石にまずいな…」

 

明日から修行が始まるのに寝不足ですなんて洒落にならない。

俺は一度布団から出る。

 

バサッ

 

八幡「仕方がない。気分を変える為に星でも見るか…」

 

このままじゃダメだと思った俺は一度外に出る。そして、神社の入り口にある階段の真ん中に腰をかけた。そのまま星空を見上げる。この幻想郷、自然が豊かで星がすごく綺麗に見えるのだ。実は前に寝れなかった時も霊奈さんがこの星を見せてくれた(霊夢は爆睡してた)。すると心が落ち着きすぐに寝れたのだ。

 

 

霊奈『星は自然と人を落ち着かせます。だから、緊張した時は星を見ればいいんですよ』

 

霊奈『八幡君。大丈夫ですからね。明日から修行をして貴方の能力を絶対に抑えれるようにしてあげますから』

 

ふと霊奈さんと星を見た夜を思い出す。

初めて幻想郷にきて不安だった俺に優しく接してくれた霊奈さん。

 

八幡「霊奈さん…」

 

俺の言葉は満点の星空の中に消えてゆく。

 

八幡side out

 

 

 

霊夢side in

 

八幡が外に出た。

襖を閉める音で私は気づいたのだ。

一体、何してるのよ?

私は気になって八幡の跡をつける。

すると、階段のところに腰をかけた。

どうやら、星を見ているようだ。

へえ〜、八幡って案外ロマンチックだったのね。

そんな事を考えてると八幡がこちらに振り向く。ヤバ、気づかれた。どうしよう。隠れるのも変だしここは…。

 

霊夢 side out

 

 

 

八幡 side in

 

ふと、横から視線を感じた。

ぼっちは視線に敏感なのだ。

俺はすぐさま視線の感じた方へと目を向ける。そこには霊夢が立っていた。

あいつ何やってんだよ…。

まあ、おおかた俺の跡をついてきたんだろうが…。てか、テンパりすぎだろ。別に俺は怒らないのに。

すると、霊夢は仕方がないという様子で俺の横へと来た。

 

霊夢「星をみてるの?」

 

霊夢が俺に呟く。

 

八幡「ああ、俺環境の変化に弱くてな。実は前に来た時も寝れなくて困ってたんだ。その時に霊奈さんにこの星空の景色を教えてもらったんだよ。星を見てると自然と落ち着ついて、すぐ眠れるんだって。だから、今回もあの時の事を真似て星を見てたんだ」

 

霊夢「……全然知らなかった。星を見てたなんて…。私も誘ってくれたら良かったのに…その時も今も」

 

すると不貞腐れたような態度をとる霊夢。

いやいや、俺が寝れない事を理由にわざわざ起こすわけにはいかないだろ。

 

八幡「悪かったよ。ただ俺が寝れないっていうしょうもない理由でお前を起こすのは流石に申し訳なかったんだよ。それにどっちみち今はお前も起きてきたじゃないか」

 

流石に自分が寝れない事を理由に他人を起こすのは俺にとって鬼畜以外のなんでもない。

 

霊夢「たく、しょうがないわね。このことは許してあげるわよ」

 

お、どうやらお許しをもらえたようだ。よかったよかった。

ん?待てよ?そういえば今日霊夢に告白しようと思って出来てなかったよな?もしかして今が大チャンスなんじゃ?

よし、今しかない!

俺は今日2回目の勇気を振り絞り告白を決意する。この時間なら確実に誰かに邪魔されることはないだろう。

 

八幡「なあ、霊夢。昼の続きをここでしていいか?」

 

霊夢「昼の続き?…………………あっ」

 

少し考えた後、俺が何を言おうとしたのか理解したようだ。霊夢の顔が昼間の時ぐらい赤くなる。

 

八幡「霊夢、もう知ってると思うが俺はお前のことが好きだ。だから、俺と付き…」

 

俺の口からその続きの言葉が発されない。

いや、正確には発せないのだ。

 

八幡「むぐむぐ」

 

なんと、霊夢が絶賛顔を真っ赤にしながら俺の口を押さえている。え?なんで?俺の一大決心がまたまた止められたんだが…。

というか、息が苦しい…。

俺が苦しそうな表情を浮かべると霊夢はハッとした表情を浮かべ手を退けてくれる。

 

霊夢「ご、こめん。八幡。その、あれよ、えっと、なんていえばいいのかしら…」

 

何やら言葉に迷ってアタフタする霊夢。

テンパって自分の伝えたいことが上手いこと言葉に出てこないのか?

しかし、次の瞬間。

 

霊夢「そう!心の準備がまだできてないのよ!だから、今はダメ!!」

 

八幡「心の準備って…。昼は急かしたのに…」

 

霊夢「昼間は私の方からきっかけを作ったから準備ができてたのよ」

 

霊夢はそういうとそっぽを向いてしまった。

ほんと女子というのは難しい生き物である。

俺は一体、どうしたらいいんだ…。

そんな事を考えているとある一つのことに気がついた。

 

八幡「…おい霊夢。その腕どうしたんだ?」

 

霊夢「腕?…あっ」

 

さっきまで袖のせいでよく見えなかったが俺の口を押さえた時にズレたのか。その隙間から火傷のような痕がある。

 

霊夢「え、ああ、これね。さっき料理してた時にやっちゃったのよ」

 

おいおい、マジかよ。

全然気づかなかった。

 

八幡「なんですぐ言わないんだよ。ちょっと見せてみろ」

 

霊夢「え?大丈夫よこれくらい」

 

霊夢はそう言って腕を隠そうとする。

それはまるで消毒を嫌がる子供が怪我を隠してるようだった。

てか、本当に心配なので見せて。

 

霊夢「もー!あれよ、実は博麗の巫女はこの程度の火傷。一日経てば治るのよ。だから、気にしないで」

 

そう言って頑なに霊夢は腕を見せてくれなかった。これ以上は何をやっても無駄だろう。

俺は霊夢の言葉を信じて諦める。てか、火傷の痕が一日で治ることなんてあるのか?博麗の巫女の体、神秘すぎだろ。でも、まあ、確かにさっき一瞬見ただけだがもう痕が残ってる程度だった。普通の人間なら夕飯の時間帯から考えてもっと酷くても不思議じゃない。まあ、霊夢達はよくよく考えてみると弾幕ごっこなんて遊びをやってるんだ。火傷なんてすり傷と変わらないのかもな…。

 

霊夢「う〜ん」

 

そんな事を考えてると霊夢があくびをする。

すごく眠そうだ。

 

霊夢「ごめんなさい八幡。流石に眠いからもう寝にいくわ。八幡も明日から修行なんだから早く寝なさいよ」

 

そう告げると同時に霊夢は階段を登っていった。あ〜、俺もキリのいいところでも戻らないとな。そう思い俺も戻ることにした。

見た感じすでに霊夢は戻ったようだ。

俺も早く寝ないといけないしな。

そう思い建物に入り布団の引いてある部屋まで戻ってきた。

そこには霊夢が寝息をつきながらねてる。

やっぱり寝るの早いなこいつ…。

俺はそんな事を考えながら布団に潜った。

今度はすぐに眠ることができた。



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修行開始

実はこの物語の構想は大方出来ています。
ただ、それを文にまとめるのが大変(汗
正直、かなり重いシーンもありますが最終的にはハッピーエンド?で終わらせるつもりでご安心下さい。

あと、投稿ペースが遅くなります。
これは忙しいとかそう言うものではなく、物語の都合上です(実は前回もかなり苦労してる)。正直、意味が分からないと思いますが完結した時に全てわかります。

この作品、実はシリアスな作品なんですよね…。まあ、普通に読んでる分には、ほのぼの系なんですがシリアスなんて嫌だと言う方は読むのをオススメしません。

予定では一年で完結ですかね。



 

八幡 side in

 

翌朝になった。

 

八幡「う、う〜〜ん」

 

太陽の光が障子の隙間から差し出す。

その光のおかげで俺は目を覚ますことができた。ふと、隣を見てみるとまだ霊夢はまだ寝ている。どうやら、俺の方が早く起きれたようだ。

そして、気づいたのだがよく見るとあの時、霊夢にあった火傷の痕が完全になくなっている。やっぱり、霊夢ってすごいんだな。俺は改めてその事を知った。

 

八幡「折角だし朝食でも作ってやるか…。」

 

そう思い俺は台所へと向かう。

しかし、そこであることを思い出した。

 

八幡「そういえば昨日、食材を全部使ったんだった…」

 

そう昨日の晩、霊夢は紫さんから生活を工面してもらえるという事で全て食材を使い果たしたのだ。はてさて、どうしたものか。このままでは朝食抜きになってしまう…。

そう思った時だった。

ふと台所の隅に何か置かれてることに気づく。そこには食料とパンパンの封筒(お金)。そして、一枚の手紙が置いてあった。

俺はその手紙を手に取る。

 

『八幡君へ

恐らく、すでに食料とお金が底を尽きたと思うので早めに約束の生活費と一週間分の食料も用意しておいたわ。大切に使ってね❤️

                紫より』

 

どうやら、紫さんは早々と食料問題になると気づいていたようで既に用意してくれたようだ。これには流石としか言いようがない。

 

しかし、一つ疑問もある。

 

八幡「一週間分の食料にしては少し少ないような?」

 

別に文句があるわけではない。

こっちはもらっている側なのだ。

でも、俺と霊夢の2人分にしては量が少ない気が…。俺は少し考える。

そして、ある可能性に気がついた。

それは俺と霊夢が少食だということだ。

節約さえすれば一週間分はこの量でも足りる。紫さんはそのことも考慮して食材を置いていったのかもしれない。

 

まあ、そんな事よりも…。

 

八幡「食料もあるしパパッと作ってやるか」

 

そう思い俺は霊夢が起きてくる前に朝食を作り始める。

 

霊夢「ん、ん〜〜ん」

 

寝室の方から霊夢の声が聞こえる。

どうやら、起きたようだ。

足跡がこっちの方に向かってきている。

 

霊夢「おはよう。八幡」

 

片目を擦りながら霊夢が台所へやってきた。

どうやら、霊夢はかなり朝に弱いようだ。

 

八幡「おう、霊夢。おはよう。朝食、作ったから食べるか?」

 

霊夢「朝食?材料あったの?」

 

八幡「ああ、紫さんが置いてってくれたんだ。ほら」

 

そう言いながら俺は部屋の隅にある紫さんからの食料と封筒を霊夢に見せる。

 

その瞬間、霊夢は眠気が一気に飛ばし、驚いた表情を浮かべる。

 

霊夢「な、なによ。この量の食料。これだけあれば私1人の生活の時なら一ヶ月は持ったわよ!それに何よ。この封筒。すごい大金が入ってるじゃない!」

 

霊夢はまるで宝物に飛び込むかのような勢いで紫さんからの支援を見ている。

てか、その量で一ヶ月って…。霊夢よ、お前は前までどれだけ過酷な環境で暮らしてたんだ…。

 

八幡「また、今度紫さんにお礼を言わないとな」

 

霊夢「ええ、流石にこれだけの量をもらったらね」

 

俺と霊夢は紫さんにお礼を言うことを誓ったのだった。

 

八幡「それより、霊夢。さっきもいったが朝食だ。一緒に食べよう」

 

霊夢「ありがとう。でも、起こしてくれたら手伝ったのに…」

 

霊夢が少し残念そうな顔をする。

う〜ん。実は俺も最初は起こそうと思ったのだ。でも…。

 

八幡「あんな気持ち良さそうに寝てたら起こせるわけないだろ」

 

霊夢のあんな幸せそうな顔を見て起こせる奴はおそらくこの世にいないんじゃないか?

そう思えるほどにすやすや寝てたのだ。

 

霊夢「そう。まあ、私寝ることと食べることは何よりも好きだからね」

 

あ〜、その気持ち分かる。

ただ、ここで普通に返答しても面白くない。

俺の心の中で悪戯心が芽生える。

その二つが好きなら、もしかしてと思って芽生えた心だ。

 

八幡「ふ〜ん。つまり三大欲求に忠実ってことか?」

 

俺はさも当たり前のように呟いた。

すると…。

 

霊夢「ええ、そうよ。自分の欲求を我慢するなんて考えられ………」

 

寝起きも相まってか霊夢は俺の質問に違和感なく返答しようとする。しかし、最後の方で自分が何を言ってるのか気づき顔を今までに見た事ないくらい赤くした。

 

霊夢「バカ〜〜〜〜!!」バチンッ

 

俺はそのまま霊夢から強烈ビンタをくらう。うん。今回は俺が全面的に悪い。

 

八幡side out

 

霊夢side in

 

現在、私と八幡は朝食をとっている。

それにしてもさっきは凄く恥ずかしい思いをしてしまった。まさか、八幡があんな事を言うなんて想像してなかったからだ。

まあ、確かにそう言った事を妄想したことがないこともない。私だって普通の女の子だもの。って私なに考えてるのよ!

でも、まあ、真剣に考えて私はまだ八幡の恋人にはなれていないのだ。まずは段階を踏んでいかないとね。

 

八幡「そういえば霊夢?魔理沙っていつ頃に来るんだ?」

 

私がそんな事を考えていると八幡が私に尋ねてきた。魔理沙ね〜。なんやかんや、あいつはこう言う時はすぐ来るのよね。

 

霊夢「多分、すぐに来るんじゃないかしら?」

 

八幡「そうなのか?じゃあ、早く食べ終えないとな」

 

八幡はそう告げると箸を動かす速度を上げる。私もそれに比例して速度を上げるのだった。

 

霊夢 side out

 

八幡side in

 

朝食を素早く食べ終えた俺たちは境内へとでた。

 

霊夢「さて、魔理沙はそろそろ来るかしら……って!鳩が沢山集まってるし…」

 

霊夢の言う通り境内を見渡してみると沢山の鳩が歩き回っている。まあ、それだけ自然豊かということなのだろうが流石に多すぎないか?

 

霊夢「鳩が来ると後で掃除が大変なのよね…。はぁ」

 

あ〜、確かにそうかもな。

鳩の糞とか羽とか散らばりそうだし。

 

八幡「まぁ、後で手伝ってやるから気を落とすなよ」

 

俺がそういうと霊夢は「え?ほんと!」と喜ぶ。ああ、可愛い…。じゃなくて、一応、俺も博麗神社に住まわせてもらってる身なのだ霊夢の手伝いは当然のことである。

と、そんな事を話していると物凄い勢いでこっちに何かが飛んで来るのが見えた。

 

八幡「あれは?」

 

謎の飛行物体に視線を向ける。

ここからじゃよく見えないな。

そう思いじっと見ていると霊夢が横から声を出した。

 

霊夢「あ〜、魔理沙ね。どうやら来たみたい」

 

え?魔理沙だって?

う〜ん。確かによく見てみるとあの金髪は魔理沙である。てか、すごい速度だな…。

 

魔理沙はそのまま勢いを殺す事なく博麗神社へと降りてきて急ブレーキをかける。

その時に周りで衝撃波が走り鳩たちは飛んでいった。

 

魔理沙「よお!おはようだぜ。霊夢に八幡!」

 

手を挙げながら箒から降りると笑顔で挨拶をしてくる魔理沙。可愛…「ぐしゃ」。

霊夢に足を踏まれた。痛い。

 

霊夢「おはよう魔理沙。やっぱり早かったわね」

 

魔理沙「ああ、修行ってんなら早く始めないと時間が惜しいからな」

 

そう言いながら俺のもとに寄り、肩をバシッと叩く。

 

魔理沙「それじゃあ、八幡。今日はこの魔理沙さんがめいいっぱい鍛えてやるから覚悟しとけよ」ニッ

 

覚悟って…。

初日からそんなきつい訓練を行うのか?

できれば軽いのから始めたいな。

 

霊夢「待ちなさい魔理沙。流石に今日は鍛えると言っても霊力のコントロールからよ」

 

魔理沙「え〜、なんだよ。折角、弾幕ごっこができると思ったのに…」

 

見て分かるほどに落ち込む魔理沙。

てか、初心者相手に弾幕ごっこをやろうとしてたのかよ…。

 

霊夢「あのね〜。八幡は多少霊力が使える程度で戦闘を行えるほどの技術も体力もないのよ。初日から弾幕ごっこなんてやったら死んじゃうわよ」

 

どうやら、霊夢の方は結構計画的に考えてくれてたようだ。よかった、もしこれで霊夢にも弾幕ごっこを早速やれなんて言われたらシャレなしで死んでたな。

 

魔理沙「じゃあ、具体的にどんな訓練を行うんだ?」

 

霊夢「そうね〜。とりあえず今日のところは弾幕のコントロールと空をちゃんと飛べるかね。あと、余裕があってスペルカードを作れたら万々歳よ」

 

魔理沙「なるほどな」

 

流石、霊夢だな。

こんな俺のためにそこまで考えてくれてたとは…。八幡嬉しくて涙でちゃう。

 

霊夢「それじゃあ、さっさと修行始めるわよ」

 

こうして俺の修行が始まったのであった。

 

八幡side out

 

霊夢side in

 

いよいよ八幡の修行が始まった。

とりあえず、今の八幡がどの程度霊力をコントロールできてるか確かめないとね。

 

霊夢「早速だけど八幡。ちゃんと空は飛べるかしら?」

 

これは弾幕ごっこをやる上で必要なことだ。

一応、昔お母さんに修行してもらって八幡は空を飛んでいた。しかし、それはもう何年も前のこと。今の八幡がしっかりと使いこなせているか確かめないといけない。

 

八幡「空を飛ぶか…。昔は出来たけど今できるかな」

 

そういうと八幡は体に霊力を集中させる。

そして…。

 

ふわっ

 

八幡の体が地面から離れた。

どうやら、飛ぶ感覚は覚えてくれていたようだ。これなら思ったより早く弾幕ごっこができるようになりそうね…。

 

八幡「お、出来た。出来た。思ったより覚えてるもんだな」

 

そう告げるとヒョイっと周りを飛び回る八幡。なんか、子供っぽくて可愛いわね。

あ、いけないいけない。今は修行に修行しないと。

 

魔理沙「へぇ〜、八幡上手く飛んでるじゃねえか。これならきっとすぐに弾幕ごっこができるようになるぜ」

 

八幡「そうか?」

 

八幡はそういうと地面に着地する。

 

魔理沙「ああ、絶対できるってこの魔理沙さんが言うんだから間違いないぜ」

 

魔理沙さっきから上から目線すぎないかしら?そういえば前から弟子が欲しいとか言ってたわね。きっと八幡を始めて出来たけど弟子感覚に思ってるのね。

 

霊夢「まあ、魔理沙の言う通りよ。これなら予定より早くすみそうだわ。案外、今日中にスペルカードを作るのも夢じゃないわね」

 

八幡「マジか」

 

あ、八幡が少し嬉しそうな顔をした。

スペルカードを早く試してみたいのかしら?

 

霊夢「ふふふ、そうと決まればさっさと次に行くわよ」

 

こうしてすぐに次のステップに移ることになった。

 

霊夢「それじゃあ次は弾幕の質がどんなものか、確かめるわよ」

 

八幡「弾幕の質?」

 

どうやら、ピンときてないようね。

これは説明してあげたほうが良さそうね。

 

霊夢「ええ、密度や速度。あとは威力かしら。それらが現状どれほどのものか知る必要があるわ」

 

私が弾幕の質の良さの基準とされるものを説明した。

まあ、正直、これはそれほど期待できないだろう。昔、修行してた時、八幡は弾幕を放つ訓練なんてしていなかった。一応、霊力のコントロールが出来てるみたいだから放てるとは思うけど質は期待できないだろう。

 

魔理沙「よし、それなら私が実験台になってやるぜ」

 

そういうと魔理沙は箒に乗って空へ飛ぶ。

 

魔理沙「よし、八幡。私に向かって弾幕を打ってこい!」

 

八幡と私を見下ろす形で魔理沙がそんなことを言った。

どうやら、受け役になってくれるみたいね。

そうと決まれば…。

 

霊夢「八幡、手加減なんて要らないわ。今放てる限りの弾幕を魔理沙に放ちなさい」

 

私はそう八幡に告げるのだった。

 

霊夢side out

 

八幡side in

 

よく分からないが魔理沙に向かって弾幕を放てと言うことになった。

まあ、実際のところ魔理沙にとって俺の弾幕はお遊び以下であろう。

だからこそ、俺は全力で魔理沙に弾幕を放つことを決意する。

 

八幡「はあっ!!」

 

体中に霊力を集中させ弾幕を10発程度放つ。

正直、今の俺にはこれが限界だ。

 

しかし…。

 

魔理沙「よっ!ほっ!よっと!」

 

魔理沙はいとも簡単に俺の弾幕を躱していく。やっぱり、こうなるよな…。正直、最初から実力の差は分かっていたのであまり落胆はしなかった。

 

俺の弾幕はその後、全て躱され魔理沙が降りてきた。

 

魔理沙「う〜ん。スピードはまあまあだったが密度も威力もまだイマイチだな」

 

すぐさま俺の弾幕の評価を教えてくれた。

密度に威力ねぇ。

確かに自分でも分かるほどあまり弾幕に霊力を込めれていなかった。恐らく原因はそのせいだろう。

 

霊夢「でも、初めてにしては良かったと思うわよ。まあ、そこらへんにいる妖精にならなんとか通用すると思うわ」

 

妖精になんとか通用するレベルか…。

やっぱり、もう少し修行していかないとな。

 

霊夢「とりあえず、しばらくはスペルカードはお預けで弾幕に霊力を込める訓練になるわね。上手くできるようになったら多分見違えるほどになると思うわ」

 

八幡「なるほどな」

 

こうして俺の弾幕に霊力を込める訓練が始まる。

 

 

 

 

それから3日後…。

 

なんやかんやしてるうちに3日も時間が過ぎてしまった。しかし、この3日間ひたすら弾幕に霊力を込める訓練をしていたおかげで俺の弾幕の質がかなり上がっていた。

 

魔理沙「よ、ほ、うわっと!」

 

現在、俺の弾幕を魔理沙が躱している。

初日とは違い魔理沙には余裕がなく自分でも分かるほどに成長していた。

 

そして、ついに…

 

魔理沙「くっ!」シュッ

 

魔理沙に俺の弾幕が掠る。

もちろん、ただ掠っただけだが今まで全くと言っていいほどに当たらなかったのだ。

これは大きな一歩と見ていいだろう。

 

霊夢「ストップよ」

 

霊夢も魔理沙が掠ったのを見て止めにはいる。それと同時に魔理沙は地面におりてきた。

 

魔理沙「いや〜、すごいな八幡。まさか、たった3日でここまで成長するとはな」

 

魔理沙は掠った頬を撫でながら俺に告げた。

 

八幡「いや、これもお前らのおかげさ。それにまだ掠っただけの上に魔理沙は俺に一切の攻撃を仕掛けてないんだ。まだまだ修行しないとな」

 

霊夢「でも、かなりのペースよ。普通ならたった3日でここまでならないわ」

 

八幡「そんなもんか?」

 

霊夢「そんなもんよ」

 

霊夢は笑顔で俺にそう告げた。

 

霊夢「それじゃあ、そろそろ作っていいかもね」

 

八幡「作る?何をだ?」

 

霊夢「そんなの決まってるでしょ。スペルカードよ」

 

その瞬間、俺は内心めっちゃ喜んだ。

もともとスペルカードは俺が何気なく考案して何故か広まったもの。いよいよ、俺自身も使えるようになるのかと思うと嬉しくてたまらない。

 

魔理沙「そういえばスペルカードを最初に思いついたのは八幡だしな。使ってみたくてウズウズする気持ちは分かるぜ。私も初めてスペカを作った時そんな感じだったからな」

 

俺の心を代弁するかのように告げる魔理沙。

てか、やっぱり、初めてスペルカードを作る時は魔理沙とかでもワクワクしたんだな。

 

霊夢「ふふ、それじゃあ、スペルカードを作るわよ」

 

そう告げると霊夢は6枚の白紙のカードをどこからともなく出してきた。

 

霊夢「これに自分のイメージした霊力の形を込めればスペルカードが出来上がるわ」

 

霊夢がそういうと俺にカードを差し出す。

さて、どんなスペルカードを作ろうか…。

俺はひたすら思案するのだった。

 



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弾幕ごっこ

 

 

 

 

 

霊夢に6枚のカードをもらった俺は結構な時間をかけてスペルカードを考えた。

 

八幡「よし、こんなもんだろ!」

 

あれから、1時間ほどかかっただろうか。

無事に俺はオリジナルスペルカードを作り終えることが出来た。

 

魔理沙「お、思っより早かったな。一体、どんなのを作ったんだ?」

 

魔理沙が興味津々に聞いてくる。

しかし、それは困った。

正直、イメージで作ったスペルカードを口で説明するのは中々難しい。

一体、どう説明すればいいんだ…。

 

霊夢「魔理沙、急かしすぎよ。大体、スペルカードはイメージによって作られるものなんだから。口で説明は難しいに決まってるじゃない」

 

魔理沙「あ、そっか」

 

おお、流石は霊夢。

俺の思ったことをそのまま説明してくれた。

ほんとに気がきくんだよな…。

 

そして、霊夢にそのことを指摘された魔理沙は少し考え込んでいる。

一体、どうしたんだ?

 

と、その瞬間、魔理沙の目が急に輝き出した。なんか嫌な予感が…。

 

魔理沙「よし、じゃあ弾幕ごっこだ!」

 

やっぱり…。

正直予感はしてたんだよな…。

魔理沙って結構脳筋のとこあるし勝負事が大好きだからな。俺がスペルカードを作ったらすぐに弾幕ごっこを言い出すのは予想の範囲だった。

本当ならここで乗ってあげてもいいのだが流石にスペカありで魔理沙とやり合うと冗談なしで命が危ない。

 

ここは慎重に断ろう…。

 

八幡「ああ、悪いが「あら、いいじゃない」…」

 

俺が喋ろうとしたら霊夢が俺に言葉を重ねてくる。しかも、あまり俺にとってよくない方の言葉で…。

 

霊夢「私も八幡のスペカがどんなものか見てみたいし、是非やってほしいわ」

 

う〜ん。いくら霊夢の頼みでも流石になぁ。

 

八幡「いやいや、俺は弾幕ごっこ初心者だぞ。スペカありで弾幕ごっこなんてやったら普通に死んじゃうんだが」

 

霊夢「あ、確かにそうね。死ななくても八幡が怪我しちゃうかもしれないし…」

 

そう言いながら思案する霊夢。

死ぬ以前に怪我すらも心配してくれる霊夢。

流石に過保護すぎる気が…。

 

魔理沙「大丈夫だって、怪我なんて戦いの勲章みたいなもんだ。それにさっきだって私に弾幕を掠めてたし普通に戦えると思うぞ。なんなら、ハンデとして私はスペカを2枚しか使わないってのはどうだ?」

 

戦いの勲章ねぇ。

葉山とかなら喜びそうだが俺は別に欲しくないんだよなぁ…。だって痛いの嫌だし。

折角、ハンデまで貰ったがやっぱりもっと実力をつけてからにしてもらおう。

 

八幡「ああ、悪いな魔理沙。やっぱりもう少し実力をつけてから弾幕ごっこをしよう」

 

魔理沙「そうか…」

 

目に見えて落ち込む魔理沙。

ああ、そんな悲しそうな顔をしないでくれ罪悪感が…。

 

しかし、魔理沙はまだ諦めていなかった。

 

魔理沙「ほんとにダメか?」ナミダメ×ウワメ

 

ぐはっ!

俺の顔を涙目で覗き込みながらお願いしてくる魔理沙。

こいついつの間にこんな高等テクニックを!

俺でなきゃ惚れてるね。

俺はこんなのに絶対に負けない!

 

魔理沙「八幡?」ウルウル

 

魔理沙「弾幕ごっこ、やりないな…」ウルウル

 

魔理沙「ダメ…なのか?」ウルウル

 

八幡「仕方がない。やるか!」

 

はっ!

魔理沙の連続涙目攻撃を受けて思わずそう答えてしまった。魔理沙の口はニヤッと形を変える。こいつやっぱり嵌めやがった。

てか霊夢さんお願いだから体から出てる黒いオーラをしまって…。

 

魔理沙「そうかそうか、やってくれるのか!やっぱり八幡はいい奴だな!」バシバシ

 

俺の方をバシバシ叩きながら告げる魔理沙。

くそー、可愛いから文句言えねぇ…。

 

霊夢「……魔理沙、八幡、誘惑、八幡、涙目、弱い、上目遣い、弱い」ブツブツ

 

なんか霊夢はぶつぶつ何か言ってる。

お願いいつもの霊夢に戻って!

 

霊夢「はっ!いけないいけない」

 

お、どうやら戻ってくれたようだ。

よかったよかった。

 

霊夢「たく、魔理沙の悪ノリに乗せられちゃって…」ツーン

 

あ、全然良くなかった。

こりゃ拗ねちゃってるパターンだ。

 

八幡「悪かったって…。でも、お前も折角だし俺のスペカ見たかっただろ?」

 

霊夢「まあ、そうだけど…」

 

どうやらまだ納得はいってないご様子。

こうなったら…。

 

八幡「はあ、これはあくまで俺のスペカを披露するための弾幕ごっこだ。絶対に安全には配慮するし気をつける。だからな?許してくれよ」ナデナデ

 

俺は霊夢の頭に手を置き撫でた。

こうすると基本的に霊夢は機嫌を良くしてくれるからだ。

 

霊夢「んっ。まあ、それなら良しとしてあげる」

 

少し甘い声をあげた後、すぐに承諾してくれた霊夢。どうやら、機嫌を直してくれたようだ。

 

魔理沙「おい、お二人さん。いちゃついてないでさっさと準備してくれよ」

 

八幡・霊夢「イチャイャなんてしてない(わ)」

 

 

魔理沙のセリフに思わず俺と霊夢の言葉が重なる。まあ、確かに側から見たらイチャイチャしてるように見られてもしょうがないがこれはけしてそんなものではない。ほんとだよ…。

 

八幡「んんっ。それより、弾幕ごっこだろ。始めるならさっさとやろう」

 

気恥ずかしくなった俺は霊夢の頭から手を離し魔理沙に告げる。その瞬間、霊夢が「あっ…」とか言ったが聞かなかったことにした。

 

魔理沙「お、なんだよ。やる気になってるじゃねか!それじゃあ、さっそく始めるぜ!」

 

そう言って魔理沙は箒に乗って空を飛ぶ。

俺もそれに合わせて浮遊した。

 

霊夢「あんまり派手にやって神社を壊さないでよ」

 

下から霊夢が俺たちにそう告げる。

確かにここは神社の上だ。

下手にやったら危ない、気をつけないと。

 

魔理沙「それじゃあ、先行は八幡に譲るぜ。ドンとこい!」

 

ほ〜、先行を譲ってくれるのか。

なら、遠慮なく。

 

俺は早速1枚目のスペルカードを取り出す。

そして、こう唱えるた。

 

八幡「影符『シャドーダンス』」

 

スペルカードが淡く光を放つ。

 

そして!

 

ヒュンヒュンヒュン

 

いくつもの弾幕が魔理沙めがけて放たれる。

 

魔理沙「お!早速、一枚目か。飛ばすな八幡!」

 

八幡「まあな、出し惜しみしててもお前には勝てないことはもう分かってるし」

 

魔理沙「ああ。でも、あまいぜ。そんな攻撃じゃ簡単に躱し…え?」

 

俺の弾幕を躱そうと構えた魔理沙。

しかし、魔理沙の表情には驚きが浮かんでいる。理由は簡単だ。何故なら俺の弾幕は魔理沙から軌道が逸れたからである。いや、逸れたではない。正しく言うならばそう囲っているのだ。魔理沙の横を円状に俺の弾幕達が回り続けている。

 

魔理沙「一体、なんだ?」

 

八幡「さあ、なんだろなっ!」

 

その瞬間、俺は魔理沙を囲ってる弾幕に力を込める。すると、その弾幕達は順番に魔理沙を襲った。

 

ビュン ビュン ビュン

 

魔理沙「え?おわ!うおっ!」

 

しかし魔理沙は紙一重でそれら全てを躱す。

やっぱりこの程度では当たらないか。

だが、そんなことは弾幕の訓練中から察していた。俺では魔理沙に弾幕を当てることができない。しかし、このシャドーダンスはそんな魔理沙対策で作ったものでもある。

 

魔理沙「ちょっ!またかよ!」

 

魔理沙は慌てた表情を浮かべる。

そう実はこのシャドーダンスは仮に躱されようと再び円状に動く弾幕達の中に混ざり再度囲った敵に攻撃をするようになっているのだ。これならいくら躱されようと関係ない。

まあ、一つ欠点はあるが…。

 

魔理沙「くっ!ならこうだ!」

 

ビューーーン

 

その瞬間、魔理沙は勢いよく上昇する。

やっぱり気づかれたか。

そうこのシャドーダンスの最大の弱点は上下である。相手の横を円状に動くから前後左右に躱されても特に問題がない。しかし、今のように急上昇されると…。

 

ヒュン ヒュン ヒュン

 

敵を見失った俺の弾幕はみるみるどこかに散らばっていく。ああ、無惨…。

 

魔理沙「ふぅ〜、結構危なかったけど上に逃げたら簡単に抜けれたぜ」

 

魔理沙はニッと笑みを浮かべた顔を俺に向けながら告げる。

 

八幡「ふっ。ならこれでどうだ!」

 

俺はそう言いながら2枚目のスペルカードを構える。どうやら俺自信この弾幕ごっこを限界まで楽しめているようだ。魔理沙があれだけやりたがってた意味も今ならわかる。

 

魔理沙「こい!」

 

八幡「影符『マシンガンシャワー』」

 

2枚目のスペルカードはマシンガンシャワー。これは名前通りマシンガンの如く弾幕を素早く連続で放つ技だ。パワーはないがスピードだけならとんでもないものである。

 

魔理沙「やっぱり、八幡の弾幕はスピード重視か!だけど威力が足りないぜ」

 

魔理沙はそう告げると弾幕を放つ。

別にスペルカードでもないただの弾幕だ。

 

ボンッ ボンッ ボンッ

 

俺のスペカは見事に魔理沙の弾幕に相殺されていく。なんか悲しい…。修行初めて3日目の素人とプロではここまで差が出るのか…。

 

魔理沙「どうした八幡。その程度か」

 

八幡「お前が強すぎるんだよ…」

 

さて、どうしたものか。

俺に残されたスペカは残り4枚。

なんと2枚も無傷で躱されてしまったのだ。

もし、魔理沙にダメージを与えるとしたら…。

 

魔理沙「おいおい、八幡!弾幕ごっこ中に考え事は危険だぜ。魔符『スターダストレヴァリエ』」

 

八幡「え?」

 

魔理沙にどうやって弾幕を当てようかと考えているといきなり攻撃を仕掛けてきた魔理沙。

初心者相手になんてことを…。って、言ってる場合じゃないな。

俺は慌てて魔理沙のスペカを躱そうとする。

しかし、魔理沙のスペカは威力も密度もスピードも…。そして、美しさまでもが俺とはレベルが違った。美しい星形をした弾幕は素早く俺に襲いかかる。

 

霊夢「ちょっ!」

 

下で様子を見てた霊夢はそれに焦ったような表情を浮かべる。大方、俺に魔理沙のスペカが被弾することを心配しているのだろう。

 

ここで霊夢を心配させるわけにもいかないし一か八かやりますか。

そう言って俺は3枚目のスペルカードを構えた。

 

八幡「拒符『リジェクトアタック』」

 

ギュイン

 

構えたスペカの前に空間の歪みのようなものが現れる。そして…。

 

ヒュン ヒュン ヒュン   

 

その歪みはまるでブラックホールのように魔理沙の弾幕を吸収していく。そして、しまいには魔理沙の放った弾幕全てを防ぎきった。

 

魔理沙「な、なにーーー!!」

 

流石の魔理沙もこれには驚きを隠せない。

まあ、それもそのはず、何故ならこのスペルカードは俺だからこそ作ることができたスペルカードなのだから…。

 

魔理沙「今のは一体どうやって…?」

 

まさか自分のスペカを回避されるとは思ってなかったのか魔理沙は少し混乱している。

 

八幡「おいおい、魔理沙。弾幕ごっこ中の考え事は危険だぞ?」

 

俺は先程魔理沙に言われた言葉をそのまま返してやり4枚目のスペカを構える。

魔理沙が混乱してる今ならこのスペカを当てれるはずだ!

 

八幡「隠符『イーアワクミエー』」

 

俺は遠慮なしにスペカを放った。

 

魔理沙「あわわわわわわ」

 

混乱してた魔理沙もは俺がスペカを放ったのを確認すると慌てて回避する。

このスペカによって放たれる弾幕は5弾、数はそう多くはない。

しかし、このスペカには秘密があるのだ。

 

ヒュイ〜〜ン

 

なんと魔理沙によって躱されたスペカは急カーブし再び魔理沙の元へと飛んでゆく。

そう実はこのスペカには自動追尾機能をつけてあるのだ。原理は簡単、霊力や妖力や魔力など生き物が生まれながらにしてもつエネルギーを探知するように設定した。近くに人がいる場合はそっちに反応して危険だが、霊夢みたいにある程度の距離感があれば問題はない。

 

魔理沙「マジかよ!うわっと!」

 

ドンッ

 

ここに来て初めて魔理沙が一発被弾する。

魔理沙は、そのまま森の方へと落ちていった。しかし、どうやらダメージはあまりないようす。森に落ちる寸前の所で止まった。

しかし、魔理沙目掛けて飛ぶ弾幕は4つ残っている。さあ、どうする…。

ドンドン魔理沙と距離を詰める弾幕。

だが魔理沙は逃げない。

 

そして!

 

ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン

 

魔理沙「今だ!」

 

魔理沙は弾幕に当たる直前に勢いよく横に逸れる。弾幕はそのまま地面の方へと落ちていき爆発音をならした。

マジかよ…。

 

魔理沙「やった!上手くいったぜ!」

 

おかしい…。勿論、あんな感じでギリギリに避けられることも想定して近づけば近づくほどすぐに反応して急カーブするよう設定したのに…。まあ、俺自信まだまだ素人だ。おそらく微調整が甘かったんだろう。でも、今ので決めれなかったのは痛いな…。

 

魔理沙「いや〜、まさか、軽くとはいえ被弾するとはな…。正直甘く見てたぜ…。でも、もう手加減はしないぞ八幡!」

 

お〜、魔理沙の目から炎が見える。

めちゃくちゃ盛り上がってるな…。

大丈夫かな俺…。死なないよな?

 

魔理沙「私に残ったスペカは後1枚。折角だし私の大技を見せてやるぜ。多分、八幡なら死なないだろ!」

 

え?なに?俺なら死なないって…。なんか凄いスペカを使う気なのか?

そんなことを思っていると魔理沙はスペカとあれは八卦炉か?それを俺に向かって構えた。

 

霊夢「え?ちょ?魔理沙!」

 

霊夢がなんか下でアワアワしてる。

何!一体、俺はどうなるんだ?

そんな不安に包まれていると魔理沙の方から物凄い魔力が感じ取れた。

マジかよ…。

魔理沙の持つ恐らく八卦炉?に物凄い魔力が込められている。なるほど、火力重視の一発ってわけか…。それなら…。

 

俺はスペカを構える。

そして、霊力を一気に込めていく。

 

魔理沙「なんだ?八幡も火力重視のスペカか?」

 

八幡「そうだ」

 

魔理沙「へへ、それはいいぜ!これならテクニックとかそういうのは関係ないからな」

 

八幡「そうだな」

 

魔理沙の言う通りこの一撃はシンプルな潜在能力の強さで決まる。普段はスピード重視の弾幕が多い俺だがこのスペカだけは別格だ。本当に火力のことしか考えないで作ったからな。

 

八幡「いくぞ!影符『シャドーエクスプロージョン』」

 

魔理沙「ああ!恋符『マスタースパーク』」

 

俺からは黒いエネルギー波が魔理沙からは虹色のエネルギー波が放たれた。

 

俺と魔理沙の間で凄まじいエネルギー同士がぶつかり合う。

 

八幡「くっ!」

 

魔理沙「ぐぐぐっ!」

 

お互い一歩も引かない状況。

正直、かなりキツイ。

 

その瞬間だった!

あまりにも大きな力でぶつかり合ってた俺と魔理沙のエネルギーは限界を迎え真ん中あたりでお互いのエネルギー波が弾け飛んだ。

 

八幡「くっ!うわあああああ!!」

 

魔理沙「えっ!うわああああ!!」

 

互いに地面に吹き飛ばされる俺たち。

 

霊夢「ちょっ!」

 

ヒュン

 

その瞬間、霊夢が飛び立ち。

見事、空中で俺と魔理沙をキャッチしてくれたのだった。

 

 

 

 

 




影符「シャドーダンス」
黒い弾幕が相手の横をグルグル周り連続攻撃をする。


拒符「リジェクトアタック」
目の前に空間の歪みができ、相手の攻撃が消える。


影符「マシンガンシャワー」
その名の通り超スピードで大量の弾幕を飛ばす。


隠符「イーアワクミエー」
追尾型の弾幕。暇な方は名前の解読をどうぞ。

影符「シャドーエクスプロージョン」
黒いエネルギー波


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