絶次元ゲイムネプテューヌ 激爪のビッキィ (ノイズシーザー(旧ノイズスピリッツ))
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プロローグ

あらすじにも書きましたが自作のリメイクです。気が向いたらでいいので読んでください。


 神次元ゲイムギョウ界──そこは女神と呼ばれる存在が国を作りその下にマーカーキャラ達が集う世界。神次元ゲイムギョウ界には四人の女神がおり、それぞれが統治する四つの国家によって世界が構成されている。

 

 

 

 女神グリーンハートが治める、リーンボックス

 

 

 

 女神ホワイトハートが治める、ルウィー

 

 

 

 女神ブラックハートが治める、ラステイション

 

 

 

 女神アイリスハートが治める、プラネテューヌ

 

 

 

 そしてこの物語はその神次元から降り立ってきた、陽だまりを失った少女の軌跡。

 

 

 

【ジェットセット山道】

 

 

 プラネテューヌとラステイションの間にあるそのダンジョンの中に、一人の少女がモンスターと対峙していた。

 

「…………」

 

 黒髪のはねっけのあるショートに、炎を連想させるオレンジ色の瞳の可愛らしい顔立ちである。服装は黒に赤いラインの入ったパーカーに特に特徴のない普通のジーパン、首にはヘッドホンを掛け、黒いスニーカーを履いていて、そして両腕には厳つい赤色のガントレットを付けたその少女は構えをとってモンスター……【ハシビロコウ】と対峙している。

 

「……ッ!」

 

 先に仕掛けてきたのは、少女からだ。その足で地面を蹴り上げて、ハシビロコウに向かって走り出す。正面から向かってきた少女にハシビロコウは自身の羽を広げ、突風を巻き起こして少女を吹き飛ばそうとする。

 

「──ッ!!」

 

 だが少女は突風をものともせず、足を止めることなく真っ直ぐハシビロコウに向かいそのまま──

 

「ハァッ!!!」

 

 ハシビロコウの顔面に左ストレートを叩き込む。殴られたハシビロコウは吹き飛んで壁に激突。今の一撃で致命傷を受けたのだろう。そのまま消滅した。

 それにしてもこの少女、モンスターを一撃粉砕とは外見からは想像もつかないパワーである。

 

「…ふぅ。…まぁこんなもんかな」

 

「ビッキィ殿。そちらもおわったようで御座るな」

 

「ああ。そっちも終わったみたいだな? ステマックス」

 

「うむ。拙者の方もとこ通りなく終わったで御座る」

 

 一息ついていた少女に一体の()()()()が声を掛けてきた。紫色のスリムなボディのステマックスという名のロボットは口調とその外見からまるで忍者のようだ。

 そしてこの少女はビッキィというらしい。

 

「なら、そろそろプラネテューヌに戻るぞ」

 

「ビッキィ殿、貴女は戦闘を終えたばかり。少し休憩した方が…」

 

「必要ない。さっさと行くぞ」

 

「…承知したで御座る」

 

 自分に気を使うステマックスの案を断り、ビッキィはプラネテューヌに向かって歩いていく。ステマックスはそんなビッキィの言葉に複雑そうな反応をしながらもその後に付いていく。

 

「…ビッキィ殿」

 

「何? ステマックス」

 

「何故、ハシビロコウの攻撃を避けなかったの御座るか? ビッキィ殿なら、わざわざ攻撃を受ける必要など……」

 

「わたしには『オートヒール』がある。だから避ける必要なんてない。……聞きたい事はそれだけか?」

 

「いえ…要らぬ事を聞いて申し訳ないで御座る」

 

「…なら行くぞ」

 

「……御意」

 

 ステマックスはビッキィの無茶な戦い方を咎めようとするも、当の本人は聞き耳を持たない。そして二人はプラネテューヌに向かって歩き出すのだった。

 

 

 

【プラネテューヌ協会】

 

「ビッキィ・ガングニルです。クエストを完遂いたしました」

 

「同じくステマックス、任務完了で御座る」

 

「お二人とも、おつかれさまです! (≧▽≦)」

 

「二人とも〜おつかれさま〜!」

 

「…わざわざ出迎えにきたんですか。アイリスハート様、イストワール様」

 

「おお、ぷるるん殿にいーすん殿! お出迎えしてくれてありがとうで御座る!」

 

「うん、二人が戻ってくるの、まってたんだよ〜」

 

「プルルートさんがどうしてもって…ひゃわっ!? ステマックスさん!? いきなり指で頭をなでないでくださいー! Σ(゚Д゚) 」

 

「すまぬ…いーすん殿…しばし、しばし拙者に癒やしをくだされ…」

 

 プラネテューヌ協会に戻ってきた二人を出迎えたのは、薄紫の長い髪をおさげにした少女…プラネテューヌを納める女神、アイリスハートこと『プルルート』と本に乗った妖精のような姿をした幼女…プラネテューヌ教祖『イストワール』の二人だ。

 

 

「キィちゃ〜ん、ステちゃ〜ん。ちょっと、お話があるの〜」

 

「…何ですか、アイリスハート様?」

 

「どうかしましたかな? ぷるるん殿」

 

「ステマックスさ〜ん、あたまをなでるのをやめてくださ〜い( ≧Д≦)」

 

「うお!? す、すまんで御座る、いーすん殿。拙者とした事がつい夢中になってしまった……」

 

「ステマックス…お前何やってんだ…」

 

「いや…その…拙者は…ただ、癒やされたくて…」

 

「うう…かみがぐしゃぐしゃです…( ;∀;)」

 

「いすとわ〜る〜なかないで〜」

 

 ビッキィ達を出迎えた二人はそのまま自分達の部屋までビッキィ達を案内し、そのまま話を始めようとプルルートがビッキィ達を自身が付けたあだ名で呼ぶ。呼ばれた二人は返事をするが涙目になったイストワールの怒った声がした。……どうやら部屋に入るまでずっとステマックスに頭を撫で回されていたようだ。

 原因であるステマックスに冷たい視線を向けるビッキィ。そんな相棒の軽蔑の眼差しを見て、慌てて弁明するステマックス。髪が乱れて、泣くイストワールを慰めるプルルート。

 ──客観的に見てカオスである。

 

「…あっぷるるん殿! 話とは何かな!?」

 

「うわ、露骨に話を戻したなこいつ…」

 

 このままでは危ない。そう判断したステマックスは話を強引に戻す事にした。そんな相棒にビッキィは呆れる。

 ──仕方ない、だってこのままだったらプルルートを怒らせる可能性があったのだから。誰だって命は惜しい。

 

「プルルートさん、ありがとうございます…もう大丈夫です…わたしお仕事残っているので、これで失礼します…( ;∀;)」

 

「わかった〜。いってらっしゃい、いすとわ〜る〜」

 

 慰められた事で多少は立ち直ったイストワールはプルルートにもう大丈夫だと言い、残っている仕事を片付けに別室に行った。そんなイストワールを、手を振って見送るプルルート。そして二人に顔を向けて、改めて要件を伝える。

 

「おはなし〜? …あ~! 〜ひさしぶりにあたしや~アイエフちゃん達と~いっしょにごはんたべよ〜」

 

「おお、ならごちそうになるで御座──」

 

「すみません、わたしはこれから用事があるのでお断りします」

 

「ちょっ、ビッキィ殿せっかく、誘ってくれているのにそのような態度…」

 

「だったら、ステマックスだけここに残ればいい」

 

「いや、拙者だけ残っても──」

 

「いいの、ステちゃん」

 

「…ぷるるん殿…しかし…」

 

「だから、いいの。…そっか〜残念だけど〜しかたないね〜。ごめんね〜」

 

「…ではわたしはこれで失礼します」

 

 プルルートの話とは、食事の誘いだったようだ。喜んで誘いを受けるステマックス。だがビッキィの方は用事があると言って断る。そんなビッキィの態度をステマックスは咎めようとするも、プルルートに静止されてしまう。そして残念そうにしながらビッキィに謝るプルルート。そんなプルルートの様子を見ながら、ビッキィは部屋を出ていく。

 

「…ぷるるん殿…」

 

「な〜に? ステちゃん」

 

「ビッキィ殿がすまんで御座る」

 

「大丈夫。気にしてないよ〜!」

 

「ぷるるん殿…」

 

ビッキィが出て行ってしまい、重い雰囲気が漂ってきた部屋の中でステマックスは相棒の態度の事をプルルートに頭を下げて謝罪する。

だがプルルートは気にしてないといい、ステマックスの頭を上げさせる

 

「ねぇ、ステちゃん。キィちゃんの用事ってあの事?」

 

「…はい…ビッキィ殿は――ビッキィは二年たった今でもミライの事を探し回っているよ…」

 

「…そっか…そうだよね。…キィちゃん、ミーくんの事大好きだったもんね。」

 

「そうで、御座るな…」

 

「どうして…こうなっちゃったのかな…ミーくんが居なくなってから、キィちゃん変わっちゃった…」

 

「プルルート様…」

 

「昔はいっぱい笑って、いっぱい泣く子だったのに…今は泣くことも笑うこともしないよ…」

 

――プルねぇさん、見て見て!わたし、新しい技が使えるようになったよ!――うう、プルねぇさん、ごめんなさい…だからおねがい…おこらないで…

 

かつては自分を姉のように慕ってくれた妹分との様々な思い出が甦り、プルルートは静かに涙を流す。

 

「…プルルート様…すまない、オレが不甲斐ないせいで…」

 

「…うんうん。ステちゃんは何も悪くないよ。…いきなり泣いたりしちゃってごめんね…あたしもう、大丈夫だから…」

 

「プルルート様…」

 

「…だから、お願い。キィちゃんの傍にいてあげて」

 

「言われずともそうする…では、拙者はこれにて失礼するで御座る」

 

「うん、キィちゃんをお願い。」

 

「御意」

 

プルルートの願いを聞き届け、ステマックスはビッキィの後を追う

 

 

 

【プラネテューヌ外】

 

(プルねぇさん…ごめん…でも、わたしはあきらめたくない…ミライは絶対に生きている。必ず、見つけて見せる)

 

「――ようやく追いついたで御座る、ビッキィ殿」

 

「…ステマックス、何のようだ?」

 

「貴女のお傍にいるのが拙者の役目で御座る」

 

「…わざわざ追ってきたのか?そのまま飯食っていけばよかったのに、馬鹿な奴」

 

「拙者、人の食事では栄養がとれんよ」

 

「そういう意味じゃねぇよ…」

 

日が沈んでいるプラネテューヌの外でビッキィはプルルートへの罪悪感を感じながらもラステイションに向かって歩いていた。

だが後ろから聞きなれた声が聞こえてきたので歩みを止めて、自分を追ってきたステマックスの方をむく。ビッキィの問いに対し、唐突な天然(?)ボケをかますステマックス。そんな相棒に対してビッキィはつい反射的にツッコミをいれる。

 

「…ビッキィ殿」

 

「何だ」

 

「ミライ殿のことは諦めて居ないので御座るか?」

 

「当たり前だ。ミライは絶対に生きている」

 

「他の国の女神殿達の協力をもってしても見つけだせなかったのに?」

 

「…ああ。」

 

「――超次元にもいなかったのに?」

 

「っ…それでも、あきらめない…あきらめたくない…!」

 

ステマックスの問いに答えていくビッキィ。その瞳からうっすらと涙を浮かべている。

 

「…ビッキィ殿、貴女の気持ちは痛い程わかる。だが、だからといって――!?」

 

「なんだ、どうしたステマックス…?…なんだ、このでかい穴!?」

 

「ここから離れるで御座る!」

 

「言われなくたって…ッ!?…くっ、吸い込まれる?!」

 

「ぐぅぅ…ビッキィ!手を、オレの手をとれ!そして絶対に離すな!」

 

「す、ステマックス…」

 

「ミライだけでなくお前まで失うなんてオレには耐えられない!だから、頼む…!オレの手を握ってくれ…!」

 

「………うん」

 

ステマックスはビッキィに対して言葉を続けて伝えようとするが、ビッキィのすぐ後ろに何の前触れもなく巨大な穴が現れる。それに気付いた二人はすぐに逃げ出そうとするも、穴から凄まじい吸引力が発生し二人は吞み込まれそうになる。その直前にステマックスがビッキィに自分と手を繋ぐようにと懇願。相棒の…かつてはプルルートと同じくらい慕っていた兄貴分の言葉を聞き、ビッキィはその手をとる。そしてそのまま二人は――

 

「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!?」」

 

穴の中へと呑み込まれていった――

 

 

 

【????】

 

…わたしたちの世界の事情にあなたたちを巻き込んでしまって、ごめんなさい…でも、どうか…お姉ちゃん達を…皆を助けて…!わたしたちの世界を、ハッピーエンドに導いてください…!

 

 

 




プロローグなのに長すぎる気がする…


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01 運命の出会い

イメージOP『誰が為に愛は鳴る』


【ある研究者の記録】

 

ーープラネテューヌの山岳にある、タリの遺跡から古代女神の遺産を発掘した。

奇跡的に良好な保存状態の物を二つもだ

私はそれを徹底的に解析した。

わかったことは、三つ。

一つ目は、このUSBメモリ型の物体の名は『ゲイムメモリ』ということ。

二つ目は、ゲイムメモリの中にはモンスターの遺伝子がデータ化され、記憶されているということ。

三つ目は、ゲイムメモリを起動させ、人体に挿し込むと使用者の身体にそのモンスターの遺伝子データが入り込み、その姿をモンスターへと変貌させてしまうことだ。

 

 

 

突如、何の前触れも無く現れた穴に吸い込まれたビッキィとステマックス。二人は今どうなっているかというとーー

 

「「うわぁぁぁぁぁ!!?」」

 

空から真っ逆さまに落ちていた。

 

「どうすんだよ、ステマックス!?わたしたちこのままじゃ…!」

 

「どうすると言われても、拙者空は飛べないで御座る?!」

 

「…忍術ッ!なんかいい忍術ないの!?」

 

「…そうだ、あれなら!ビッキィ殿、しっかり捕まってるで御座る!」

 

「わかった!」

 

このまま何もせずに落下したら間違いなく、下の森の木々にぶつかりながら地面に激突は必至。

いくら頑丈な自分達でも無事では済まないと思ったビッキィはステマックスに何とかこの状況を解決する、いい忍術はないのかと問う。

相棒の言葉に心当たりがあったのだろう、ステマックスは自分にしっかり捕まってるようにビッキィに言う。

 

「忍法・転移の術!」

 

…特に何も起こらなかった。

 

「……だめじゃねぇか!?」

 

「ど、どうして!?何故、転移が使えないので御座る?!」

 

「仕方ねぇ…!ステマックス!二人で協力するぞ!だから一旦離れろッ」

 

「…協力って…?…まさかビッキィ…!」

 

「ああ、ゲイムメモリを使う!」

 

「ッ…無理はするなよ!」

 

まさかの転移が使えないという事態にビッキィはツッコミ、何故か転移が使えないステマックスはただ混乱する。

だが今度はビッキィの方になにかあるらしい。

自分から一旦離れろと言うビッキィにステマックスは心当たりがあったのだろう。少し、戸惑いながらも無理はするなと伝え、一旦手を離す。

 

「ーーゲイムメモリ・モデルS、インストール! 」

 

パーカーのポケットからUSBメモリ型のアイテムをとりだして、そしてそれを左腕のガントレットのスロットに挿し込む!

 

ーー『Solgrega Injectrise.』

ガントレットに挿入されたメモリから発した電子音声の直後にガントレットから太古に絶滅した古代モンスター、『ソルグレイガ』をモデルにした『ゲイムモデル』が現れる。

ゲイムモデルがビッキィに向かっていき、それをビッキィが自身の左拳で殴るようにあてる。するとゲイムモデルが光の粒子に分解され、そのままビッキィを包み込んでいく。

黒をベースにオレンジ色の発光ラインが特徴的なボディースーツ、同色の両腕に巨大なクロー、足にはメカニカルなブーツが付き、そのつま先からは両腕のクローと同じ形状のブレードが生えている。

頭には獣の耳とたてがみを模したヘッドギア、腰にも先端にブレードがついた長いオレンジ色のチューブみたいな尻尾が付く。

そして、瞳も紅くなり、獣のように縦に割れる。

ーー『Monsgear Solgrega Complete.』

変身完了の直後に再び電子音声。

 

 

「ーー行くぞ、ステマックスッ!」

 

「御意!」

 

メモリの中の遺伝子と自身の体内の因子を元に作った生体装甲を纏ったビッキィはステマックスに声を掛け、ステマックスはそれに勢い良く応える

 

「激爪連牙ァッ!」

 

「忍法・風遁の術!」

 

前に出たビッキィが自身の両腕を交互に振って障害物の枝木を切り裂く、対してステマックスも両手で印を組み、旋風を起こすことで落下の勢いを殺していく。

そして段々地面に近づいていき、そのまま無事に二人は着地した。

 

「「ふぅ…セーフ…!」」

 

「ビッキィ殿!お体の方は大丈夫で御座るか?」

 

「問題ない。…まず、ここはどこだ?」

 

「むぅ…神次元でも超次元でもないのは間違いないで御座る。ーー転移ができなかったことが何よりの証拠で御座る。」

 

「…やっぱりそうか」

 

「さて、どうしたものか…」

 

「…そうだな。…!?」

 

「?ビッキィ殿どうしーーお、おい!?」

 

なんとか着地に成功し、安堵する二人。だが自分達の今いる世界が故郷とも、その故郷と縁深い世界でもないとわかり、これからどうするか考える。

そんな時にビッキィの様子がおかしい事にステマックスは気づき、声をかけるがビッキィはよつん這いの姿勢になり走っていってしまう。

ステマックスは慌てて全速力でその跡を追う。

 

「ビッキィ殿どうなされた!?急に走り出して…!」

 

「…匂い…!」

 

「…匂い?」

 

「ああ、知ってる匂いがしたんだ!ーーアイエフさんとコンパさんの匂いに似てる!」

 

「な、なんと…!」

 

「わたしは先に行っている!」

 

「…わかった!」

 

そう、変身したビッキィの嗅覚が彼女のよくしる二人の匂いを嗅ぎ取ったのだ。

確かめる必要がある。そう思ったビッキィはさらに速度をあげ、匂いを辿っていくのだった。

 

 

【バーチャフォレスト・最深部】

 

ビッキィ達の視点より十数分前、ある一つの勝負の決着がついていた。

 

「…ク、クソッ!ズリーぞ!変身なんてしやがってよ!」

 

ネズミを模したフードを被った女…犯罪組織の工作員、下っ端の『リンダ』は自分を負かした少女に悪態をついていた。

 

「――大人しく退いてください。そうすれば見逃してあげます」

 

腰まで伸ばしたピンク色に近い、大きく二又に分かれた髪、プロセッサユニット【ライラック】を装着し、欠けた電源マークを思わせる水色の特徴的な瞳をした少女…プラネテューヌの女神候補生、『ネプギア』はリンダにここから大人しく退けば見逃すと言っている。…どうやら、リンダの命を奪うつもりはないようだ。

 

「はい、分かりました…何て、言うわけネェだろうが!こうなったらこっちだって奥の手を使ってやるっ!」

 

往生際の悪いリンダは隠し持っていた、メモリが刺さった紫色の禍々しい形状をしたゲームコントローラーを取り出す。

 

「な、なんです?あれ…」

 

「…ゲームの、コントローラー?」

 

ネプギアとリンダの戦いを静観していた、金髪にCの形をした髪飾りをした少女『コンパ』に腰まである長い茶髪にリボンをした少女『アイエフ』はリンダが取り出した、謎のコントローラーに困惑を隠せない様子だ…

 

「それで一体何をする気ですか!?やめなさい!」

 

「だから、テメェの言うことなんぞ聞かネェっての!ゲイムメモリ、強制インストール!」 

 

『Game model Domination.』

 

リンダがコントローラーの中央下にある、スタートボタンを押す不気味なトーンの電子音声が鳴るとコントローラーから通常の個体よりも一回り大きな汚染エンシェントドラゴンのゲイムモデルが現れ、そのままリンダを体内に取り込み、銀色のメカニカルな姿へと完全に実体化する。

 

「ーーゲイムキャラごと踏み潰してやるっ!!!」

 

「「「…え?えええええ!?」」」

 

汚染エンシェントドラゴン改め、メタルエンシェントドラゴンの内部でリンダは吠える。

対してネプギア達だが、あまりの超展開に三人とも付いていけず、思わず叫び声をあげてしまう。

 

「何よあれ…!何なのよあれぇ!?」

 

「お、おっきいです…!」

 

「…一体何がどうなってるの…!」

 

「ごちゃごちゃウルセーぞっ!」

 

「「きゃああああ!!?」」

 

「アイエフさん!?コンパさん!?」

 

未だに混乱の極みにある三人に、メタルエンシェントドラゴン内部のリンダはコントローラーを操作。地面を思い切り踏みつけ、地響きを起こしてアイエフとコンパの二人を立てないようにする。…元々飛行できるネプギアは慌てて二人の救出に向かおうとするが――

 

「――隙ありぃ!」

 

「きゃあ!?」

 

「ネプギア!?」

 

「ギアちゃん!?」

 

二人の救出をしようとしたネプギアだが、いつの間にか背後にまで近づいていたメタルエンシェントDの爪に背中を切りつけられ、さらに追い打ちと言わんばかりに尻尾で叩かれて地面にぶつかる。

完全に不意をうたれたネプギアはダメージを負ったものの、何とか立ち上がる。

 

「う、うう…!」

 

「ネプギア、大丈夫!?」

 

「は、はい…何とか…!」

 

「ギ、ギアちゃん…!待ってるです、今お手当てするです!」

 

「あ、ありがとうございます…コンパさん…」

 

ネプギアは二人に駆け寄られ、回復魔法をかけてもらう。

 

「へへへ、この隙に当初の目的を…」

 

「――!させません!」

 

「もう遅ェよ!うおりゃあ!」

 

そしてリンダはその隙に当初の目的であるプラネテューヌのゲイムキャラ『パープルディスク』を破壊しようと近づく。

それに気付いたネプギアは自身の武器であるM.P.B.Lを向けて撃とうとするも、間に合わずにパープルディスクを破壊されてしまう。

 

「ああ、ゲイムキャラさんが!」

 

「へへっ、ざまぁ見やがれ!――これでここには用はネェ。次はラステイションのゲイムキャラだ!」

 

「待ちなさい!くっ、図体が大きい癖に逃げ足が速いわね…!」

 

「ゲイムキャラが…そんな…」

 

目的を果たし、この場にはもう用はないリンダはメタルエンシェントを操作してそのままラステイションに向かって逃げる。

下っ端の癖に引き際をわきまえている。

一方ゲイムキャラが破壊されたネプギア達は途方に暮れるのだった。

 

 

 

【バーチャフォレスト・最深部直前】

 

「――近い…。匂いの元はこの先だ!」

 

ステマックスに先行する形で目的の場所の近くに来たビッキィ。そのまま最深部に入ろうとした瞬間――

 

「オラオラ、退きやがれェ!」

 

「!?」

 

逃亡したリンダことメタルエンシェントに遭遇する。

 

「あっぶネェな!?ぶつかったらどうすんだ!?」

 

「…ご、ごめんなさい…って、エンシェントドラゴン?でも色が違うし喋ってる…」

 

「何ジロジロ見てんだ、ガキ!こんなとこいねぇでさっさと家に帰ってゲームでもしてな!」

 

「いや、今わたし家ないし…」

 

「…ハア?家がない?家出でもしたのか?」

 

「多分そうだと思う…?」

 

「なんで疑問形なんだよ…」

 

「「…ってこんなことしてる場合じゃない、速く行かないと(行かネェと)!?」」

 

お互いの今の見た目的にシュールすぎる茶番を繰り広げながら二人は互いの目的地へと向かって二人は正反対の方向へ走り出すのだった。

 

 

 

【バーチャフォレスト・最深部】

 

 

「――とにかく!イストワール様に報告に行きましょ。ほら、早く!」

 

あの後どうやら経緯こそ異なったものの、原作通りゲイムキャラから力を受け取ったネプギア達はイストワールに報告しにバーチャフォレストから出ようとしていた。ギアちゃんと仲良し(意味深)なアイちゃん。(小声)

 

「聞こえてるわよ、地の文!?」

 

「アイちゃん、地の文さんって誰ですか?」

 

「二人とも!メタな会話しないで早くプラネテューヌに戻りま…――ネプギャアアア!?」

 

「ネプギアさん、退いてえええ!?――ビギャアアア!?」

 

「え?何?何が起こったの!?」

 

「すごい勢いで走ってきた知らない人が、ギアちゃんに思い切りぶつかったです!?」

 

「道中、風変わりなエンシェントドラゴンが通り過ぎて困惑したが何とか追いついたで御座る…ってなんで御座るか、この状況…」

 

メタメタなやり取りを始めるアイエフとコンパを窘めようとするネプギア。だが速く行こうと焦ったばかりに全力ダッシュで向かっていた馬鹿…もといビッキィがネプギアの横っ腹に頭から突っ込んでしまう。ネプギアとビッキィの二人は仲良く奇声をあげながら地面を転がる。

急展開にもほどがある状況に困惑するアイエフとコンパ。ようやく相棒に追いついたものの、状況が飲み込めないステマックス。

 

ああもう(カオス過ぎて)めちゃくちゃだよ。

 

 

 

 




ゲイムメモリ
神次元のタリの遺跡から発掘されたUSBメモリ型アイテム。某ガイアメモリよろしく人体に直接挿し込むとモデルになったモンスターのデータ化された遺伝子が流れ込んでモンスターへと姿を変える代物。デバイスを通すことでモデルにしたモンスターのデータ…ゲイムモデルを召喚させる事ができる。
何故平行世界の超次元(以後絶次元)にあるかは現段階では不明。

モデルS

ビッキィが持つメモリ。タリから発掘された、オリジナルのゲイムメモリ。モデルになったモンスターはその当時に生息したといわれる巨大なライオン型モンスター、ソルグレイガである

モンスギア
ビッキィの体内の因子とメモリのデータ化された遺伝子が反応、結合することで生成される生体装甲。

コントローラー
リンダこと下っ端が持っていた謎のコントローラー。
どうやらゲイムモデルをメカとして実体化させ、使用者を体内に取り込む(または乗り込む)ことで自在に操作できるアイテムのようだ。


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02 邂逅、爪と女神候補生

イメージOP『誰が為に愛は鳴る。』


【ある研究者の記録】

 

タリの遺跡から発掘されたゲイムメモリの研究を始めてから一月が立っている。

その成果をここに記録しよう。

 

まず一つ目、ある一定のダメージを受けると体内に入り込んだメモリが体外へと出てしまうこと。

 

二つ目、体内に入り込んだメモリの遺伝子データの大半はメモリ内に戻っていくが、その中の一部だけが体内に残り、それが集まってモンスターの核に酷似した器官を作り出していたこと。

 

最後に三つ目、その核に酷似した器官は、新たに細胞を生み出しているということだ。

 

――それにしてもいい実験台が手に入った。身寄りのない病気のガキなんて都合がよすぎる。これは私に研究をしろという女神の啓示だろう。

 

 

 

【バーチャフォレスト・最深部】

 

 

「本当にすみませんでした…」

 

「本当にビッキィ殿がすまなかったで御座る、ネプギア殿」

 

「い、いえ…私は気にしてませんから…」

 

「ビッキィだったかしら?今度からは気をつけなさいよ!」

 

「アイちゃんの言う通りです!気をつけないと怪我に繋がるです!」

 

「…はい、以後気をつけます。…あの、ネプギアさん本当に大丈夫ですか?」

 

「は、はい…大丈夫です」

 

「ビッキィ殿、走るときははもう少し抑えめにするで御座る。」

 

「…わかってるよ。」

 

前回ネプギアを巻き込んで、仲良く地面を転がったビッキィ。約数分間はネプギアと一緒に目を回していたが、コンパに介抱されたことでようやく復活。

そして当然ながらネプギアに謝罪。心優しいネプギアはビッキィを許してあげた。…天使である。

アイエフ、コンパ、ステマックスからは注意されたが。…残当である。

 

(…別人とはいえ、わたしを助けてくれたネプギアさんになんてことを…次からは気をつけないと…)

 

(大分ヘコんでるな…あれくらいならまだ大丈夫か?)

 

「ああ、なんか凄く落ち込んじゃってる…!」

 

「ち、ちょっと言い過ぎちゃったかしら…?」

 

「そんなことないですよ、アイちゃん。…一歩間違っていたら、二人とも大怪我してたです。だから言い過ぎじゃないです。」

 

「…そうね。ありがとう、コンパ」

 

「えへへ、どういたしましてです!」

 

「コンパ殿の言う通りで御座る。あまりお気になさるな、お二方。…それとビッキィ殿、そろそろ元に戻るで御座る。」

 

「ーーそうだな」

 

例え別次元の他人だとしても自分にとって恩人であるネプギアにとんでもないことやらかしたことにビッキィは肩と尻尾をがっくり落として落ち込む。

そんなビッキィの様子を見てどうしたらいいだろうとあたふたするネプギア、ちょっと言い過ぎたと思ってきたアイエフにそんなことないと諭すコンパ、コンパの言葉にアイエフは笑顔で礼を言う。

気のせいだろうか、二人の間に少し甘い雰囲気が漂ってきている。そんな二人をしり目にしつつ、ステマックスはビッキィにそろそろモンスギアを解除するように言う。ステマックスの言葉を聞き、反省を一旦やめて頷くビッキィ。

 

「…ライズアウト」

 

『Riseout』

ビッキィの吹くような声と共に電子音声が響き、モンスギアが灰色に染まっていく。全体が灰色になるとそのまま塵となり

、ビッキィの周りに落ちて行った。元の格好に戻ったビッキィはガントレットからメモリを引き抜きパーカーのポケットにしまう。

 

「…ええ!?す、砂になっちゃった…一体どういう仕組みなんだろう…!…もしかしてガントレットから抜いていたあのメモリの力かな。」

 

「びっくりですぅ!」

 

「…ステマックスから聞いていた通りね…。コンパ!ネプギア!早くイストワール様の所に行くわよ。…あてわかってると思うけどアンタ達も来なさい。別の次元についてイストワール様…プラネテューヌの教祖様が詳しい話を聞きたいらしいから」

 

「心得た」

 

「はい、分かりました…ってステマックスお前、アイエフさんにモンスギアの事話したのか?」

 

「うむ。ビッキィ殿とネプギア殿がコンパ殿に介抱されてる間に話したで御座る。…こちらのイストワール殿と話がしたくてな…彼女ならば拙者達が元の次元に帰れる方法を知ってるやもしれぬからな。」

 

「確かにそうだな、帰れる宛もないし…。…それでアイエフさんにはどこまで話した?」

 

「拙者達が他の次元から来たことと、モンスギアの事のみで御座る。――詳しい話はイストワール殿に会ってしますが、構わないで御座るか?」

 

「…ああ、別に構わない」

 

「………………………」

 

「…?」

 

「ビッキィ、安心――」

 

「アンタ達!何いつまで二人で話してるのよ!置いていくわよ!」

 

「…ステマックス、行くぞ」

 

「…御意」

 

塵になったモンスギアに機械いじりが趣味だからか、好機の目線を向けるネプギアにただ単純に驚いているコンパ。一方あらかじめステマックスからある程度の話を聞いていたアイエフはさほど驚いていない様子だ。ビッキィはステマックスに自分達の事を話したのかと問う。…ステマックスはそれを肯定する。どうやらこちらの世界のイストワールに帰る方法を探してもらうつもりらしい。ステマックスの話を聞いたビッキィはほんの一瞬だけ体が震えるがすぐに構わないと返答する。その様子をステマックスは無言でどこか心配そうに見ている。無言で自分を見るステマックスにビッキィは訝しげな目を向ける。

そんなビッキィを見ながらステマックスは口を開き言葉を伝えようとするがアイエフの言葉に遮られてしまう。置いて行かれない為に二人はそのままネプギア達に付いていく形で、バーチャフォレストを後にするのだった。

 

 

【プラネテューヌ教会前+ビッキィ視点】

 

「…別次元でもここは変わらないな…」

 

「超次元とも変わらないで御座るな」

 

プラネテューヌの教会に着き、その扉の前でわたしは思ったことをそのまま口に出した。…別次元なのに全然変わらない。正直言って驚いている。

…あとそれは超次元も同じみたいだ。

 

「…あんまり変わらないんだな、超次元の方も」

 

「…すまん、無神経な事を言った」

 

「いいよ。プルねぇさんとの事は全面的にわたしが悪い。…それくらいわかってる」

 

「…ビッキィ…」

 

そうだ、全部わたしが悪い。プルねぇさんはわたしの事を心配してくれたのに、わたしはその想いを踏みにじるようなことをした。それだけじゃない、その事を謝りもしないであんな態度を取って今もプルねぇさんを傷つけている。――わたしは最低だ。

 

「ビッキィそれ以上悪い方に考えるな!」

 

――ッ!落ち着け、ステマックスの言う通りだ、これ以上自己嫌悪するのはダメだ。()()()()()()()()()()()()()

平常心…!平常心…!ふぅ、よし落ち着いた。さてと気を取り直して、ネプギアさん達の後を追わないと…

 

「…先に入っていったネプギアさん達に続いてわたし達も行こう。」

 

「…ビッキィ殿…!イストワール殿との話は拙者がやるで御座る。先に宿でも取って休んでおられた方が…」

 

「大丈夫だ、問題ない。…行くぞ」

 

「…御意っ」

 

…っ、…心配してくれたのにごめん……ステマックス……

 

【プラネテューヌ教会内】

 

「――初めまして。ビッキィさん、ステマックスさん、プラネテューヌの教祖イストワールと申します。アイエフさん達からお話は伺っております。」

 

ビッキィとステマックスを出迎えたのは、妖精のような小さな女性…神次元のイストワールがそのまま成長したような姿だ。ちなみに原作通りネプギア達はラステイションに向かっていったようだ。

 

「……なんか大きい」

 

「こちらのイストワール殿は超次元のイストワール殿と同じで御座るな」

 

「そちらの次元にも私がいるのですね。」

 

「ええ、その辺も含めて全て説明するで御座る」

 

「…わかりました。それではお話をしましょう。」

 

超次元に行ったことのないビッキィは大きいイストワールを見て目を丸くして驚いている。

一方でステマックスは超次元に行ったことがあるからか、大きいイストワールを見ても特に驚きはない様子だ。

イストワールの方はステマックスの何気ない言葉…多次元の自分の存在に強く興味を惹かれたようだ。

 

 

 

誠心誠意説明中……………

 

 

 

「なるほど…神次元に超次元…別の世界の私やネプテューヌさん達…色々ややこしいですね…」

 

「全くで御座る…」

 

「こうも同じ人がいるとややこしいな…」

 

一通りの説明を終え、一段落入れる三人。別世界の同一人物がたくさんいるという事実に頭がこんがらかってきているようだ。無理もない。

 

「それにしても犯罪組織マジェコンヌか…」

 

「正直一番驚いた。別世界とはいえ、あのマジェコンヌさんが…」

 

「私としてはそちらのマジェコンヌさんが改心してナスをメインにした大農家になっているというのが信じられないのですが…」

 

「あの人の作るナスとその他の野菜本当に美味しんですよ。あとメイク落とすとすごい美人なんですよね、あの人…」

 

「なぜあのような奇抜なメイクをしていたのか拙者にはわからないで御座る…」

 

「驚きの連続で私の容量をオーバーしそうです…」

 

お互いの世界のマジェコンヌのギャップの凄まじさに困惑を隠せない三人。本当にギャップが凄まじすぎる。

 

「――コホン!気を取り直して話を続けましょう。」

 

「「…はい」」

 

流石に脱線が過ぎたので咳払いをして話を戻すイストワール。ビッキィとステマックスは声をそろえて返事をする

 

「結論から申し上げますと、お二人を元の世界に帰すことは今は不可能です。」

 

「…薄々そんな気はしてました。」

 

「今は、というと?」

 

「はい、まずはそちら側の…神次元の私とコンタクトをとる必要があります。そしてこれが一番の問題。次元を超えるには莫大なシェアエナジーが必要なんです。今のこちらのシェアでは…」

 

「コンタクトの方は三日かければ問題内で御座るな?」

 

「…はい最短でそれくらいかかります。」

 

(こっちでも三日かかるんだ…)

 

イストワール故に仕方なし。

 

「前者の方は問題内で御座るな。…問題は後者の方で御座る」

 

「犯罪組織を何とかしないとわたし達が帰れる可能性は低いってことか…」

 

イストワールの話を聞いて、犯罪組織を何とかしない限り帰れないことが分かったビッキィとステマックス。

 

「…力になれず、申し訳ありません。」

 

「イストワール殿の責では御座らん。…悪いのは犯罪組織で御座る。故に拙者達も協力を申し出たい。構わぬで御座るな?ビッキィ殿」

 

「ああ。――わたしもステマックスと同じ意見です。犯罪組織の撲滅、及び女神様達の救出…わたし達にも手伝わせてください」

 

「…ステマックスさん…ビッキィさん…ありがとうございます…私も約束します、シェアが回復したら必ずお二人を元居た次元にお帰します」

 

犯罪組織撲滅と女神達の救出の協力を願い出るビッキィとステマックス。そんな二人にイストワールは感謝の言葉をかけ、必ず二人を神次元に帰す事を約束する。

 

「――そしてイストワール様にもう一つだけお願いがあります。」

 

「お願い、ですか?」

 

「はい。ずっと探している人がいるんです。もしかしたらわたしやステマックスと同じようにこの次元に飛ばされたかもしれないんです」

 

「拙者からもお願いするで御座る。どんな些細な事でも構わぬ。どうか…どうか…!」

 

「――!わかりました。その方も探してみます。写真とかはありますか?」

 

二人の必死の懇願にイストワールはその探し人が二人にとって余程大切な人物なのだろうと察っし、聞き入れる。

 

「ありがとうございます…!写真は、これです。」

 

その言葉を聞いたビッキィはイストワールに感謝しながら、パーカーのポケットから透明なケースに入れられた一枚の写真をイストワールに見せる。

写真に写っていたのは白い長髪を後ろに纏め、スーツを着た人物が照れくさそうに右手でピースサインをしている。一見長身の女性に見えるが、着ている服からしておそらく男性だろう。

 

「名前はキセイジョウ・ミライ。二年前から行方不明になっている…わたしの幼馴染です…」

 

 

 

 

 

 




ビッキィ・ガングニル
今作の主人公。
ゲイムメモリを使用する事で生体装甲モンスギアを装着できる。プラネテューヌ教会に引き取られた孤児。

キャラクターのモデルはシンフォギアの立花響がモデル

キセイジョウ・ミライ

ビッキィの幼馴染。キセイジョウというファミリーネームからわかる通りキセイジョウ・レイが成り行きで引き取った養子。現在は行方不明になってしまっている。

キャラクターのモデルはビッキィと同じくシンフォギアから小日向未来(名前のみ)。容姿の方は男体化した風鳴翼をイメージ。


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03 爪、黒の大地につく。

イメージOP『誰が為に愛は鳴る』


【とある研究者の記録】

 

 ……面白い。通常時は緩やかな速度で細胞を生み出す核だがメモリを挿した瞬間、その核が遺伝子を取り込もうと急激に活性化を始め、その結果凄まじい速度で細胞が生み出されていき体が変質する……発掘された二本のメモリを既に二本とも試してみたが、どちらの結果も素晴らしいの一言につきる。

 どちらのメモリもしっかり実験体に適合し、その体を変質、モンスターへと姿を変えていった。巨大なライオン型に、さらにそこから巨大な鳥型にへと、姿を変えさらにまたライオン型に戻る。……面白い、実に面白い……! 

 ──だが一つだけ気に食わないところがある。それは一定以上のダメージを受けるとメモリが体外からから勝手に出てきてしまう事だ。くそ、なんてつまらない機能だ。

 ……おっと失礼、つい悪態をついてしまった。……気を付けなければ。……そういえば今使っている実験体の名前は何だったかな? ……確か……いや、どうでもいい事か。──使い物にならなければ捨てて新しく補充すればいい。

 

【ラステイション】

 

 ──黒の大地、ラステイション。まるで巨大な工場を思わせる重厚さを持ったその地にネプギア達と合流するのを目的に、ビッキィとステマックスは足を踏み入れていた。

 

「……へぇ、ここのラステイションも神次元と変わらないんだな……」

 

「……確かにあまり変わらないないで御座るな。……ネプギア殿達は恐らくギルドに向かったで御座るな」

 

 ラステイションに着いたビッキィは辺りを見回しながら、表にこそあまり出していないが自分の知るラステイションとの差異をほとんど感じさせない街並みに、かえって新鮮さを感じているようだ。

 一方で超次元にも行ったことがあるステマックスはビッキィとは逆に見飽きたと行った反応をしつつ、ネプギア達の向かった場所に検討を付ける。

 そんなステマックスの様子を見ながら、ビッキィはステマックスが吹いた言葉に答える。

 

「まぁ、普通に考えればそこしかないよな。──ステマックス」

 

「……どうなされた? ビッキィ殿」

 

 ステマックスの言葉に答えたビッキィは何か思いついたように、ステマックスを見つめる。急に見つめられたステマックスはほんの一瞬動揺しながらも、すぐに平常に戻りビッキィにどうしたと聞く。

 

「ここからは二手に分かれて情報収集しよう」

 

「ふむ、なるほど、了解したで御座、……ってええっ!?」

 

 ビッキィが何気なく言った言葉にステマックスはいつもの調子で承諾しかけるがすぐにその意味を理解して驚愕の声を上げながら、どういう事かとビッキィに詰め寄る。

 

「な、何を言っているで御座る、ビッキィ殿!!?」

 

「わたしなりに情報を集めたい。……イストワール様だけに負担かけさせる訳にはいかない」

 

「……いや、しかし……! ビッキィ殿を一人にするわけには……!」

 

「大丈夫だ。わたしは足が速いから、いざとなればいつでも逃げられる」

 

 ステマックスに詰め寄られ、ビッキィはおどろきながらも情報収集をしたい理由を話す。どうやら自分なりに情報を集めてイストワールの負担を減らしたいらしい。

 だがそう言われてもステマックスは納得できない様子。それも仕方がない。彼にとってビッキィは相棒である前に娘のような存在だ。そんな大事な存在を危険が伴う情報収集に一人で行かせる等出来る筈がない。だが当のビッキィは頑として譲るつもりは無いようだ。……ステマックスは少しの間考え込み、発言する。

 

「だったら拙者一人で情報収集をやるで御座る! ビッキィ殿はネプギア殿達と合流されよ!」

 

「駄目だ。それならステマックスがネプギアさん達と──」

 

「いいや! ビッキィ殿がネプギア殿達と合流するで御座る! ……ミライの事ならイストワール殿とオレに任せろ」

 

「……っ、……分かった。情報収集はお前に任せる」

 

「了解した」

 

 ステマックスは情報収集は自分一人がやり、ビッキィにはそのままネプギア達と合流する事を提案する。ビッキィはそれに対し反論をしようと言葉を伝えようとするが、言い切る前にステマックスが遮る。……最後に小声でビッキィの耳元に言葉を伝えて。真意を見通されていたビッキィは目を見開いた後、顔を下に向けて小さな声で了承する。その言葉をしっかり聞き取りステマックスは了承する。

 

「──では拙者は行って来るで御座る」

 

「……ああ、行って来い。……わたしは、ギルドに向かう……」

 

「御意。……ビッキィ」

 

「……?」

 

 話し合いは終わり、ビッキィとステマックスは二手に分かれ、それぞれ別行動に移ろうとする。分かれる直前、ステマックスはビッキィを呼び、その手で頭を撫で始める。

 

「!? ステマックス、お前! ……な、なにをして……!」

 

「大丈夫だ。オレはお前の前から居なくならない。ミライも絶対に戻って来る。……そしてプルルート様にだっていつかちゃんと謝れる。だから安心してネプギア殿達の所に行くで御座る」

 

「…………」

 

 安心させるように優しく頭を撫で付けながら、諭すようにビッキィに伝えるステマックス。ビッキィは顔を僅かに赤く染めながら、無言で聞いている。

 

「それにな、まだお前の花嫁姿を見れていないのに死ぬとかごめんだ」

 

「……? ……!? ス、ステマックスお前いきなり何言って……!!?」

 

「ハッハッハ。お前の親代わりとしての言葉だよ。では行ってきます」

 

 ビッキィの様子を見ながら、ステマックスは続けて言葉を伝える。その言葉にビッキィは最初は反応しなかったが、意味を理解した途端僅かに赤く染まっていた顔が完全に真っ赤になり、目を見開きながら声をあげる。

 そんなビッキィを面白そうに見ながらステマックスは親としての自身の気持ちを言って、そのまま走り去っていった。

 

「〜〜〜〜!!! あの、バカ忍者ァ……!」

 

 そしてビッキィはステマックスの爆弾発言に悶えながらビッキィは恨めしそうに罵倒するのだった

 

 

 

【ビッキィ視点】

 

 ……許さない。あのバカ忍者、絶対に許さない……! 未だにレイさんに告白できないヘタレ忍者の癖に! 

 ──ステマックスのばーか、ばーか! レイさんに告白するまではわたしは絶対にミライと結婚なんかしてやんないからな!! 

 ……なんか急に空しくなってきた……早くネプギアさん達探そう……

 とりあえずギルドに……あ、三人共いた。……でももう一人いるな……? ……まあいいや、とにかく合流しよう

 

「……ネプギアさん、皆さん」

 

「ビッキィちゃん! よかった、無事に会えた! ……あれ、ステマックスさんは?」

 

「あら、ビッキィ。イストワール様から話は通っているわ、これからよろしく……そういえばステマックスはどうしたの?」

 

「ビッキィちゃん、よろしくです! ……ビッキィちゃん、もしかしてはぐれちゃったです?」

 

「よろしくお願いします。……ステマックスは情報収集の為、別行動です」

 

 ……二人共、 ステマックスの事気になりすぎだろ……っていうかこれ絶対、わたしとステマックスはセットとして見られてるな? あとコンパさんは子供扱いしないで。……言わないけど

 

「……で、この子だれよ?」

 

「あ、ユニちゃん! この子はビッキィちゃんっていうの! ほら、さっき話した……」

 

「ああ、そういえば言っていたわね……これから仲間になる二人組がいるって。──アンタがそのうちの一人? アタシはユニっていうの」

 

 ……この人、ユニって言うんだ。……気のせいかな? なんかノワールさんに似ているような……? ……とりあえず挨拶はちゃんとしなきゃ駄目だな。失礼だし。

 

 

「……ビッキィ・ガングニルです。よろしくお願いします、ユニさん」

 

 よし、我ながら良い挨拶だ。……あれ、なんかユニさんこっちをじっと見てる……見れば見るほどこの人、ノワールさんに似てる……ファンかな? この次元のラステイションを治めてるのノワールさんらしいし。

 

「……ビッキィだったわね? アンタいくつ?」

 

 ……え。なんで急に年聞かれてるのわたし……? ……いや正直に答よう、減るもんでもないし。

 

「……12です」

 

「……ネプギア、この子まだ子供じゃないの。……ちゃんと戦えるの? 足手まといにならない?」

 

 ……はっ? 

 

「え!? えっと……だ、大丈夫だよ……多分」

 

「……どうかしら? イストワール様から聞いてはいるけど……」

 

「ちょっと心配です……」

 

 ……むかっ。何この人、むかつく。いやそりゃわたし見ての通りの子供だけどさ。だからといって足手まといは失礼だろ。

 しかもネプギアさん達まで……、いいよだったら示すだけだ。

 

「……信じられないのなら、構いません。実力で示します」

 

「へぇ……言うじゃない。やって見なさいよ!」

 

 上等! やってやる! ……いつまで見下ろしながら笑えるかな!!? 

 

「やってやりますよ……!」

 

「……あわわ……ど、どうしよう!? なんかとんでもない話になっちゃった?!」

 

「あの子、意外と子供っぽいというか割と年相応ね……」

 

「二人の間に火花が散ってるです……!」

 

 

「さぁ行くわよ、リピートリゾートに!」

 

「ええ、わたしを舐めた事を後悔させてやります!」

 

 いざゆかん! リピートリゾートォォォ! ……やっぱり別の次元だからダンジョンも違うんだな……

 

 

【??? 視点】

 

 ふむ……『マジェコントローラー』の調整は完了だな……、む? 誰か来たようだな、入りたまえ

 

「博士ェ! 調子はどうすか〜?」

 

 ──リンダ君、きみか。預けていたものの調整は完了したよ。

 

「お、いいタイミングだったみたいだぜ! ……いつもありがとよ、博士。これ、土産の饅頭な! シャットの奴と一緒に食べなよ」

 

 おお饅頭か、ありがたい。ああ、娘も喜ぶよ。……そうだリンダ君、この後は予定はあるかい? 

 

「あ、すんません。……まだ仕事あるんすよ……」

 

 そうか、残念だ。……娘ももうすぐ起きるからひと目顔を見にいって欲しかったが……仕事では仕方がない。

 

「……シャットは大丈夫なんすか?」

 

 大丈夫、問題ない。……あとはこれを完成させるだけだ。

 

「ああ、シャットのは銃かぁ〜、……でもこれシャットにはデカ過ぎネェすか?」

 

 大丈夫だ、それも考えてある。では気をつけて行きなさい。君に何かあれば娘が悲しむ。

 

「うっす。……じゃもう行きます、ウィズダム博士!」

 

 …………行ったか。さて、そろそろシャットが起きた頃だな。昼飯を作らねば。

 




ウィズダム
ゲイムメモリ対応ゲームコントローラー型デバイス『マジェコントローラー』の製作者。シャットという娘がいるらしい。
キャラクターモデルはシンフォギアのアプリゲームから、ニコラ・テスラ


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04 爪と黒。…ついでに紫

研究者(笑)さんの記録は今回で最後です。


【とある研究者の記録】

 

実験は順調だ。最近は確か…三日ほど水しか飲ませていない状態でモンスターの核を食わせたら、実験体の両腕が化け物のようになった。痛そうにのたうち回る様は見ていて面白かった。

…問題はそこからだ。あの実験体、最初はいい反応していたが腕の事が余程ショックだったのか、最近は全くいい反応をしない。なんてつまらないんだ。……7歳のガキは脆すぎるな…まぁいいか。

今日の実験を最後にあれを廃棄するか。新しいおもちゃ…モルモットなど探せばいい。

ーーああ、楽しみだ。メモリを二本いっぺんに挿したらどうなるだろうか…!ああ、楽しみ過ぎて待ちきれない…!

 

 

【リピートリゾート】

 

「「………」」

 

リピートリゾート…ラステイションの近くの海に建造された、名前の通り、リゾートのようなダンジョン。そこに若い少女が5人…だがその先頭に立っている2人の様子がおかしい。

 

…片方は強気な笑みを浮かべ、もう片方は一見なんでもなさそうに見えるがその胸の内は対抗心がむき出しだ。

そして時折ちらりとお互いの顔を見合えば、火花が散っている。

ーー言うまでもなくこの相当な負けず嫌い2人組はユニとビッキィである。

「うう…どうしよう…止めたいけど2人とも怖くて近づけないよぉ…うう、アイエフさーん!」

「よしよし大丈夫よ、ネプギア。それにしても近寄りがたいわね…」

「…むう。困ったです…」

ネプギアは止めに入りたいが対抗意識むき出しの2人の雰囲気に気圧され、涙目になりながらアイエフに泣きついた。

アイエフはそんなネプギアを慰めつつ、苦笑いしながらユニとビッキィを見る。

そしてコンパはそんなユニとビッキィの様子を見て、喧嘩は良くないと思いながら困ったように吹く。…バーチャフォレストの事以来ネプギアと仲良しになったアイエフに少しだけヤキモチを抱いているようだ。

 

「そろそろモンスターとエンカウントしたいな…」

 

「そうね。ーー大口叩いたんだから頑張りなさいよ?」

 

「…当然です」

 

 

先行している2人はそんなやり取りをしつつ、相変わらず火花を散らしている。2人の前に立ちはだかるように3体のモンスターが現れた!

 

「「「ッ!」」」

 

「ッ!モンスターッ…!…ところでネプギアさん達は?」

 

「ようやくお出ましね!…アタシ達、どうやら先に行き過ぎたみたいよ?慌ててこっちに向かっているわ」

 

「…仕方ないですね。わたし達だけで行きましょう」

 

「そうね。…行くわよ!」

 

現れたモンスターは名前の割に全然鹿には見えない、シカベーダー改と呼ばれるモンスターだ。

2人はビッキィは格闘技を思わせる構えを、ユニの方は大きなスナイパーライフルを構え、臨戦態勢に入る。

 

「ッ!」

 

「ーーッ!うりゃッ!!」

 

先手必勝と言わんばかりに、シカベーダー改3体の内の1体がビッキィに先手必勝と言わんばかりに体当たりを仕掛けてくる。

ビッキィはそれを右に回避し、そのままシカベーダー改の背後にまわり、しゃがみ込むような姿勢になり、そのまま体のバネを利用して無防備な背中をアッパー気味に殴りつけ、シカベーダーを空中に吹き飛ばす。

 

「ーーふーん。言うだけはあるじゃない。」

 

そんな事を吹きつつ、ユニはスナイパーライフルの照準を空中に殴り飛ばされたシカベーダーに定めーー

 

「目標を…狙い撃ちよ!」

 

スナイパーライフルのトリガーを引きを発射。

…発射されたライフルの弾丸は吸い込まれたと錯覚する程、精確にシカベーダー改を射抜いた。そのままシカベーダー改は消滅。残りは2体だ。

 

「…やるな。いい腕をしている。…残りも同じように殴り飛ばします!止めは任せました!」

 

「任せて!…モンスターを殴り飛ばすの頼んだわよ、ビッキィ!」

 

「了解です!」

 

ビッキィはユニの実力を素直に評価する言葉を吹きつつ、残り2体へ目を向け、ユニに言葉を伝える。

ユニもその言葉を了承。…彼女もビッキィに言葉を伝えながら愛用のスナイパーライフルの照準を早速空中に殴り飛ばされた2体目に向けた。 

 

 

「「ふぅ…」」

 

「お疲れ様!見てたけど2人共、すごかったよ!」

 

「息があったコンビネーションしていて正直驚いたわ…」

 

「ビッキィちゃんすごいです!モンスターさんが、ロケットみたいに飛んでいってたです!」

 

あのままシカベーダー改3体を倒し、そのドロップアイテム『グリーンプレート』3枚を回収した2人は向かっている3人を座り込んで一息つく。その二人の元にたった今追い付いた、ネプギア達が三者三様の反応を示す。

 

「どんなもんよ!こ・れ・が・!アタシの実力よ!…それとビッキィ」

 

「…いや、そんな…褒められても何も出ませんよ、コンパさん…はい?なんです、ユニさん」

 

3人の言葉に当然と言わんばかりに胸を張るユニにそれとは対象的に(コンパの言葉にだが)少し照れ気味のビッキィ。

そんはビッキィの様子を横目にしつつ、ユニはビッキィに声をかける。

急に声をかけられたビッキィはなんだろうと首を傾げながらも返事をする。

 

「アンタの実力を疑って悪かったわ。アンタは十分強いわ。…年の割にね」

 

「……わたしの方こそ生意気言ってごめんなさい。それにユニさんも強いです。あれほど精確な狙撃はそうそうできるものじゃありません。…あと一言余計です」

 

「あら、気づかれちゃった♪…改めてユニよ。よろしくね!」

 

「まったくもう…!…改めてビッキィ・ガングニルです。こちらこそよろしくお願いします」

 

お互いに謝罪し合いながら、実力を認め合うユニとビッキィ。ユニがさり気なく言った言葉にビッキィはツッコミを入れたりしてるが。…対するユニもペロッと下を出しながら笑う。さながら小悪魔のようだ。

 

「…なんか複雑な気分…最初にユニちゃんと知り合ったのは私なのに…でも仲良しになってよかった!…でもやっぱり複雑…」

 

「なんだかスポ根漫画みたいな展開ね…」

 

「戦いの中で芽生える友情ですっ」

 

そんな2人をネプギアは複雑な表情をしつつ喜んでいる。

アイエフとコンパは漫画のような展開に呆れ気味だったり、目を輝かせてたりと対照的だ。

 

「じゃ、そろそろ休憩終わらせて行きましょ」

 

「…そうですね」

 

「うんっ行こうユニちゃん、ビッキィちゃん!」

 

「そうね、まだクエストの途中だし」

 

「いくですっ」

 

色々会話を弾ませた5人はそろそろ休憩を終わらせてクエストに戻る。…最初の時よりは距離感が近くなっている。もしこの場に保護者…もといステマックスがいたら大喜びしながらカメラアイからオイルを漏らしていた事だろう…

 

 

        〜少女クエスト中〜

 

 

「よっし、終了!やっぱり楽勝だったわね!」

 

「うん、あっという間だった。ユニちゃんもビッキィちゃんも本当に強いね!」

 

「…本当にあっさり終わっちゃった。…すごいや、2人共」

 

「ビッキィもだけど、ネプギアも結構やるじゃない。…ま、2人共アタシ程じゃないけどね!」

 

「えー!そんなことないよー!ねー?ビッキィちゃん」

 

「ネプギアさんの言う通りだと思いまーす!」

 

「うふふ、もうすっかり仲良しさんですね」

 

「そうね、初めてじゃないかしら?あの子があんなに笑ったの。…それにビッキィって本当にあんなふうに笑える子なのね…」

 

「そうですね…安心したです。ステマックスさんから聞いてはいましたけど、本当は明るい子なんですね…」

 

「…仲直りして欲しいわねぇ…プルルートって言う女神様と…」

 

「…プルルートって人だけじゃないです…ミライって人も見つかって欲しいです…」

 

すっかり打ち解けた様子の3人。そんな3人をアイエフとコンパは微笑ましげに見ていた。…実は2人はバーチャフォレストの時にステマックスから聞いていたのだ。

…行方不明になった幼なじみを探していること、実の姉のように慕っていた女神と気まずい関係にあること、今のビッキィの体の状態のこと…そして自分が今話した事はビッキィには内密にして欲しいという事。

ーーアイエフ達を信頼しての事だろう…ビッキィには内緒でステマックスはほとんど話していたのだ。勿論、アイエフを経由してイストワールもそれは把握している。

 

「オーイ!なにダンジョンの真ん中でしんみりしてやがるんだ!」

 

「やがるんだー!」

 

「ッ!?…アンタは下っ端!…と…子供?」

 

「ビッキィちゃんと同じくらいの、子供です…?」

 

しんみりとした雰囲気を出し始める、アイエフとコンパ。 

そんな2人の雰囲気をぶち壊す声が聞こえてきた…下っ端こと、リンダと見たことない少女だ。…ビッキィと同年代だろうか?…腰まで伸ばした蒼い髪を、☓を象った髪留めでポニーテールにし、白いワンピースを着ている。当然のようにリンダの隣にいる少女にアイエフとコンパは困惑する…だがーー 

 

「ボクは、シャット。シャット・ドゥーンって言うのっ。早速悪いんだけど…お姉さん達はちょっと寝てて?ばきゅーん…」  

 

「な、何この煙…意識が…」

 

「ね、眠くなってきた、で…す…」

 

シャットと名乗った少女は、その体には不釣り合いな程大きい銃をアイエフ達に向けると、銃口から催眠ガスが漏れ、そのままアイエフ達を包み込んでいく。…その煙を吸ったアイエフ達は意識が朦朧となり、眠ってしまう…

 

「よしっ、無力化せーこー!ーーリンダっナデナデしてっ」

 

「しょうがねぇなぁ…でもよ、シャットぉ…生温くねぇか?ガス嗅がせて眠らせるとかさ…」

 

「いーのっ!怪我しちゃったらかわいそーじゃんっ…あとリンダ頭を撫でるの上手だよねっ」

 

「…そうか?普通だろ。…あとさ…博士にはちゃんと言ったのか?お前がアタイんとこに来てるって…」

 

「大丈夫だよ?パパにはちゃんとお手紙を置いていったもん」

 

(あ、これ博士めっちゃ大騒ぎしてるわ)

 

自身に懐いている少女とやり取りしつつ、リンダは少女を抱きかかえながら頭を撫で付けていた……

 

【ドゥーン地下研究所】

 

シャットォ〜〜!!!何故、勝手にリンダ君の所に行ってしまったんだ!?…くそっ体さえ、体さえ自由に動ければ…ああ、パパ超心配ッ!!!

 

 

【リピートリゾート】

 

「は、はははは…」

 

「?」

 

娘の事で大騒ぎする父親の姿が眼に浮かんだリンダは遠くを見るような目をしながら、乾いた笑いをこぼす。

そんなリンダの様子をナデナデを堪能しているシャットは首を傾げながら、不思議そうに見ていた……

 




ライバルキャラ、シャット・ドゥーン登場。


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05 邂逅、激爪と炎弾

【ある少女の記憶】

……やっと見つけた。これを食べれば、強くなれる。強くなればプルねぇさんも認めてわたしの同行を認めてくれる。……いただきます。


【リピートリゾート】

 

「シャット、そろそろ残りのヤツら倒しに行こうな?」

 

「えー!ヤダヤダ!もっとナデナデしてよっ」

 

「ナデナデの続きは仕事終わったらなっ!」

 

「……むぅ。…わかった。ーー約束だよっ」

 

「おう」

 

シャットの銃から出た煙を吸って眠っているアイエフとコンパを余所に、シャットはナデナデを中止したリンダにもっとしてとねだるも、仕事を持ち出されので頬をぷくっと膨らませながらも従う。…それにしてもこの下っ端それなりに付き合いが長いからか、シャットの扱いに手慣れている。

 

「ンじゃ、いっくぜぇッ!…とその前に、念の為にインストールしとくか。」

 

「あ~、それならボクもやらなきゃッ!」

 

いざネプギア達を襲撃しに向かわんとするリンダだが、その前にやること済まそうという考えに至り、懐にしまっていたマジェコントローラーを取り出す。

シャットの方も父親であるウィズダムから渡された、サブマシンガン型アイテム、ショットデバイサーを構えながらリンダに便乗する。

 

「よっしゃ行くぞ、シャットッ!ゲイムモデル、強制…」

 

「うんっ、せーのっ!」

 

「「インストールッ!」」

 

『Game Model Domination.』

 

リンダは既にメモリが装填されているマジェコントローラーのスタートボタンを押すと、エンシェントドラゴンゲイムモデルが現れ、実体化。そのままリンダの体を取り込みバーチャフォレストの時にもネプギア達に見せた機械古竜、メタルエンシェントとなる。

 

「おっし、改めて…いっくぜぇっ!」

 

リンダは気合い十分と言わんばかりにメタルエンシェントの中でマジェコントローラーを握る。

 

『Steam Rise.』

 

『800 Million Magathuhinokami. 』

 

シャットもリンダと同じくメモリが既に装填されている、ショットデバイサーのトリガーを引く。すると銃口からエンシェントドラゴンに酷似したモンスター、八億禍津日神のゲイムモデルが現れる。

そのまま八億禍津日神はシャットの小さな体をその巨大な翼で覆い隠す。すると八億禍津日神徐々にその身体が粒子化していき…最終的にはシャットを覆っていた巨大な翼のみになる。

そしてその翼がゆっくりと開いていくとーー

 

『Mons Gear Complete.』

 

「んん~~!行こ、リンダっ」

 

その中には既に変身が完了したシャットの姿。それと同時に電子音声が響く。

…変身したシャットの姿は赤いボディスーツに竜の頭部を模したヘッドギアに、左腕にはビッキィのと比べて小さめな篭手を右腕にも同じものが付いているが、その手にはショットデバイサーが握られている。そして足には膝下からつま先まで覆ったメカニカルなブーツ。

そしてその背中には八億禍津日神の巨大な翼がそのままくっついている。ーーメモリに使われているモンスターが八億禍津日神とは思えない程スッキリした姿だ。

そして変身を終えた、シャットは可愛らしく背伸びをして、リンダに催促する。

 

「行くぞ!シャットォ!」

 

「は〜いっ!」

 

今だに眠り続けているアイエフとコンパには見抜きもせず2人は翼を広げ、残る3人を倒しに飛び立っていった…

 

一方その頃、ビッキィ達はというと…

 

「…?」

 

仲良く談笑しつつ、アイエフ達を待っていたが流石に来るのが遅いと思ったビッキィは首を傾げる。

 

「どうしたの、ビッキィちゃん?」

 

「いや、アイエフさん達遅いなーって思いまして…」

 

そんなビッキィを見て、ネプギアがどうしたのかと聞いてくる。それに対してビッキィは、アイエフとコンパはどうしたんだろうとしっかり答え、再び首を傾げた。

 

「言われてみれば確かに遅いわね…?」

 

「…2人共、どうしたんだろう…。…アイエフさん、コンパさんッ!?」

 

その言葉を聞いて確かにと口にしたユニはビッキィと同じように首を傾げ始める。

ネプギアはアイエフさん達どうしたのかな…?と思いながら、アイエフ達のいる方へと顔を向け、驚愕する。

 

「な、何?2人共なんで倒れて…??」

 

「一体なにが…?…ッ!ネプギアさん、ユニさん、武器を構えて下さいっ、上から何か来ますッ!」

 

ようやく事態に気が付いた、ネプギアとユニは眠るように倒れているアイエフとコンパの姿に驚愕を隠せない。

同じくビッキィもどういうことだと驚いていたが、自分達の真上に何かの気配を察知。

ネプギアとユニに戦闘態勢に入るように言い放ち、自分も戦闘態勢に入る直前にーー

 

「当ったり〜!」

 

どこか間の抜けた声が響き、それと同時に大量の炎の球が三人に降り注いできた。

 

「「「きゃああああ!?」」」

 

炎の球は着弾と同時に爆発。三人は爆炎に飲み込まれていく。

 

「へへーん、すごいでしょ?パパの作った八億禍津日神のゲイムメモリの火力!」

 

「…確かにすげぇ。アタイの出番がなくなっちまった…」

 

子供らしく胸を張りながら、シャットはリンダに満面の笑みで言う。

――当のリンダはメタルエンシェントの中で顔を引きつらせながら博士やりすぎじゃね?と思いなつつ、出番がなくなった事に少しばかりショックを受けていた。

 

「それにしてもシャット、お前女神には容赦ネェな?」

 

「いやだって、ボク一応犯罪組織の一員だし…女神は倒した方がいいでしょ?」

 

「まあ確かにそうだな…。――シャットッ!」

 

「ふえ?どうしたのリンダ、ってわぁ!?」

 

空中で軽い会話をしていたリンダとシャットだったが突如爆炎の中から二つのビームが放たれ、それに気付いたリンダがシャットに声掛けをし、それに反応したシャットは慌ててそのビームを避ける。

 

「い、いまのなに…?――もしかして!」

 

「ああ、もしかしてだな!渋テェ奴らダゼ!」

 

謎の攻撃を間一髪避けた二人は攻撃の正体を察知し、爆炎の中をにらみつける。その中にいたのは女神化したネプギアと、白い髪を左右の縦ロールにまとめ、グレーのボディースーツを着た少女…女神化したユニ、そしてモンスギアを纏ったビッキィだった。

 

「ってあいつも女神かよっ!しかもあのガキ、よく見たらバーチャフォレストで会った奴じゃねーか!?」

 

「…………」

 

そう声を荒げ叫ぶリンダ。…シャットはビッキィをじっと見て黙っていた。…その表情は驚愕に染まっていた。

 

「クソッ、女神がもう一人いるなんて聞いてネェぞ…!…シャット?」

 

「…リンダ。…あの黒い髪の女の子の着てるの、モンスギアだよ」

 

黙り込んだシャットを見てどうしたことかとリンダは思い、シャットに声を掛ける。

リンダの呼び掛けにシャットは閉口していた口を開け、今見下ろしている少女が自分と同じモンスギアを纏っていることを伝える。

 

「ハァ!?どいうこと「「隙ありッ!」」――チィッ!」

 

「リンダッ!「お前の相手はわたしだッ!」って、うそぉ!?跳んできたぁぁぁ?!」

 

シャットの答えにリンダは驚き、どういう事だと聞こうとするがそれを遮るようにネプギアとユニが今度はリンダに向けてビームを放つ。

シャットはリンダの手助けをしようとネプギア達にショットデバイサーを向けるもビッキィがジャンプでシャットに飛びかかり、両腕の巨大なクローで切りかかりにきた。その驚異の跳躍力にシャットは驚きを隠せない。だがとっさにショットデバイサーをビッキィに向けてそのままトリガーを引く。

 

「ぐっ!?――ただでやられるかッ!」

 

「…ふえ?足に何か巻かれて――きゃああああ!?」

 

銃から放たれた火炎弾を食らい、落下していくビッキィ。だがお前も道連れだと言わんばかりに自分のモンスギアについた尻尾…テイルブレイドをシャットの足に巻き付ける。

当然背中の翼で飛ぼうとするも落下の勢いが強いのか、そのままビッキィに引っ張られるようにシャットも一緒に落下していった。

 

「シャットォォォォ!!?」

 

「そこぉッ!ミラ-ジュダンスッ!!」

 

「し、しまった翼が!?アタイも落ちるぅぅ…!?」

 

落ちていくシャットを見たリンダは思わず声を荒げ、助けに向かおうと隙を見せてしまう。

――当然その隙を見逃さず、ネプギアは空高く飛び上がり、ミラージュダンスでメタルエンシェントの翼を切り落とした。

そしてリンダもシャットと同じ様に落下していったのだった。

 

 

【ビッキィ視点】

 

間の抜けた声と一緒に降ってきた、大量の炎の球に飲み込まれそうになった。――危なかった。変身が間に合ってなきゃ、全員火だるまになっていた。

――そして驚いたのはユニさんが女神だった事だ。そしてネプギアさんを見る目が怒りに満ちている。

…多分だけど、ユニさんはノワールさんの妹なんだろう。似てたのはわたしの気のせいじゃなかった。ネプギアさんに対して、怒ってる理由は…なんとなく察しはつく。

…考えるのは後にしよう。今はこいつから話を聞かないと

 

「お前、なんでモンスギアを着ている?メモリとデバイサーをどこで手に入れた?」

 

「あいたた…――それはこっちのセリフだよ?君こそどうしてモンスギアを着てるの?」

 

「質問を質問で返すな。聞いてるのはわたしだ」

 

「…これパパが作ったもの。君のは?」

 

こいつのメモリとデバイサーはこいつの父親が作った?…噓をついている様子はない、まさか本当か?

ここは正直に答えるべきか…少しだけ嘘も混ぜとこう

 

「わたしのこれは元から持ってたものだ。…噓じゃないぞ」

 

「へぇ~元々持ってたんだ?…もしかして君の名前ってビッキィ?」

 

わたしの名前を知っている…!?

 

「あ~!その反応、やっぱりだ!君がミライが言っていたビッキィなんだ!」

 

――え、コイツイマナンテイッタ?

 

「ボクね、シャット・ドゥーンって言うのっ…あれれ?でも確かミライの言っていたビッキィって…」

 

「ミライはお前たちといるのかっ!?」

 

「わわっ!?いきなり大きな声を出さないでよ…びっくりするじゃん…」

 

「そんなことよりも、わたしの質問に答えろっ!」

 

「わかったわかった。答えるから落ち着いて?ミライはパパの研究所にいるよ」

 

ミライがいる…?ずっと会いたくて探し続けたあの人がいる…?あ、ああ…!

 

「ふえ!?ええ、泣かないでよ!――ねぇ、よかったらボク達と一緒に来ない?」

 

こいつ…シャットは泣き出したわたしを見て慌てながらも一緒に来ないかと誘ってくる。でもそれはネプギアさん達を裏切ることになる。…それは出来ない。でもミライが…わたしは一体どうしたら…?

 

「――もういいや。もうこのまま君を連れていくことにするよ」

 

え…?な…に…じゅう…か、ら…けむり、が…ね、む、い…?

 

 

【シャット視点】

 

この睡眠ガス…ほんと便利だなぁ…二回しか使えない上に、範囲狭いけど。…ってメタルエンシェントが粉々になっちゃってる!?…ほっ。中にいたリンダは無事みたい…

 

「リンダ大丈夫?」

 

「いてて、ヒデェ目にあった…ってシャットこいつ連れてくつもりか?」

 

「待ちなさい!ビッキィちゃんをどうする気!」

 

うるさいなぁ…無視しちゃえ

 

「待てって言ってるでしょ!ビッキィを返しなさい!!」

 

だからうるさいよ、このままビッキィ連れて一旦帰ろう

 

「うん。詳しいの事は後。…一旦家に帰ろう?」

 

「りょーかい。イジェクトボタンッ!」

 

「なっ、待ちなさいッ!」

 

待たないよ~だ!ダンジョンから脱出~!

 

 

【ラステイションの隠し通路(ドゥーン地下研究所直通)】

 

「説明頼むぜ、なんでこいつ連れてくんだ?モンスギアが気になるならメモリ奪えばいいだろ?」

 

「いやぁ、この子がミライの言っていたビッキィみたい」

 

「…へぇこいつがビッキィ…ってハァ!?こいつが別の部屋に閉じ込めてるあのガキの知り合い!?…ってことはこいつ別の次元の奴か…」

 

「うん。だから連れていく」

 

まぁ驚くよねぇ…ボク等の使っているメモリのオリジナル…ミライが持っていたあのメモリ、モデルFの持ち主だもん。

 

 

「なるほどな、納得したぜ。…よしっこいつはアタイが運ぶぜ」

 

「お願~い!じゃおうちに向かってレッツゴー!」

 

それにしても気になる…なんで髪の毛黒いんだろ?確か前にミライから聞いた話だとビッキィって薄紫色の髪をしてるって言ってたのに…?なんでかなぁ??

 

 

 



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06 忍と黒の妹

過去編は追憶の章として編集しました。


【ユニ視点】

 

……全部ネプギアの所為よ。お姉ちゃん達が負けたのも、ビッキィが犯罪組織の奴らにさらわれちゃったのも、全部ネプギアの…っ!……そう思えたら、楽だったんだけどね…

 

『……私の所為だ。私の所為でビッキィちゃんが…あの時、1人にさせなきゃ、3人一緒にいれば……』

 

ーー卑怯よ。あんなに思い詰めた顔で泣いてたら、怒るに怒れないじゃない……アタシはネプギアを慰めながら、目覚めたアイエフ達に状況を説明して、そのまま2人にネプギアを任せた後にアタシはビッキィの行方の手がかりを探しにラステイションに戻ってきたのだけど、手がかりとか全然見つからなくて…疲れたアタシは一旦この辺にあるベンチで一休みしようと思ったら……

 

「………」

 

先約が居た。それもロボットで、如何にも忍者見たいなデザインをしてる。

かなりなの長身のロボットがベンチに座り込んでるとか、中々にインパクトあるわね……

 

「…………ッ!」

 

「きゃああああ!?」

 

…気になり過ぎて思わず隣に座っちゃったわ…。…それにしてもカメラアイに光がないわね?…壊れてるのかしら?それとも寝てるだけ?

なんて思いながら隣のロボットの顔を覗き込んで、なんとなく見つめる。

すると、すぐ後にロボットのカメラアイに光が灯り、伏せていた顔を勢いよくあげる。それを間近で見たアタシは思わずみっともない悲鳴をあげながら、一気にベンチの端っこまで離れる。……恥ずかしい…っ!

 

「……いつの間にかオレは寝落ちしていたのか。…不覚…!」

 

「ねぇ!」

 

「おわぁ!?……な、なんか聞き覚えのある声が…?」

 

……ブツブツとなんか言いながら落ち込み出した…。

そんなロボットの様子にちょっと引く。けどアタシの事に気付いてないみたいだから、声をかける。

声をかけられたロボットは素っ頓狂な声を出して、飛び上がるように、落ち込んでた事で猫背になってた背中をピンとしっかり伸ばした。……聞き覚えのある声ってのはスルーするわ。だってアタシの立場的に、聞き覚えがあるのは当たり前だもの。

 

「……ユニ殿?」

 

ほらね、やっぱり知ってた。

 

「アンタ、なんでベンチで寝てたのよ?」

 

「ベンチ?――ああ、それは少し休憩のつもりでいたら、いつの間にか眠っていたので御座る」

 

……なるほどね、そういう事…ってやけに人間臭いロボットね…

 

「やけに人間臭いロボットね、アンタ…?」

 

「はは、もう拙者は20年以上稼働しているで御座るからな…」

 

……20年!?ロボットの割には結構な長生きね、こいつ…

 

「へー、そういやアンタ、名前は?」

 

「…名前?ステマックスで御座る」

 

……ステマックス?…うそ、確か、ビッキィと一緒にいたっていうやつの名前も…!?――あ、ああ…!

 

「――ユニ殿!?どうしたで御座るっ、気を確かにっ!?」

 

「……ごめんなさい…ごめんなさい、ごめんなさい…!」

 

あの時の、ビッキィがさらわれた後のネプギアみたいに、アタシはみっともなく泣いて謝ってしまった…

 

 

【ステマックス視点】

 

オレの名を名乗った途端、何故かその場に崩れ落ちて泣きじゃくるユニ様をベンチに座らせて背中を擦りながら落ち着かせる。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい…!」

 

「一体何がごめんなさいで御座る?」

 

背中を擦りながら、それとなく聞いてみる。

 

「……ビッキィ、が」

 

――!?何故そこでビッキィの名が…?胸中に困惑が広がるオレを余所に、ユニ殿は口を開いて説明を……

その瞬間、オレの頭の中にpipipiと着信音が鳴る。アイエフからだ。

 

「…え?」

 

唐突に聞こえてきた着信音に、ユニ様も思わず涙が引っ込んだようだ。困惑の表情を浮かべる、その背中を擦ったまま、俺はその電話に出る。

 

「もしもし、ステマックスで御座る。どうなされた、アイエフ殿?」

 

その名を聞いたユニ様の背中がビクッと反応する。……本当にどうしたというんだ…?

 

「…ステマックス、大変な事になったわ」

 

「……大変な事で御座るか?」

 

只事ではない。アイエフの険吞な様子にオレはそう察した。……胸中にいやな予感を感じながら、その言葉の続きを待つ。

 

「――ビッキィが犯罪組織にさらわれたわ」

 

「――――」

 

その言葉を聞いた瞬間オレの思考はフリーズ仕掛けた……

 

 

 

【引き続きステマックス視点】

 

フリーズ仕掛けた思考をなんとか引き戻し、アイエフから詳しい内容を聞き出したオレはすぐそちらに合流する趣旨を伝えて、電話を切る。そして申し訳ないのか、体を震わせるユニ様へと顔を向ける。

 

「ごめんな「ユニ殿だけの責任では御座らん」ステマックス…でも…」

 

「大方ビッキィが一人で突っ走ったので御座ろう?ならばユニ殿が責任を感じることでは御座らんよ」

 

「…心配じゃないの?アンタは、ビッキィのことが心配じゃないのっ!?」

 

オレの言葉に冷徹だと感じたのかユニ様は怒りの形相で立ち上がりオレの胸ぐらに掴みかかってくる。

 

「心配に決まってるだろ。なんとか冷静に装っているだけだ。本当はすぐにでも探しに行きたい」

 

「――あ、ごめんなさい…」

 

オレの心情を理解したのか、ユニ様は掴んでいた手を離す。落ち着いてくれたようだ。

 

「…それで、これからアンタはネプギア達と合流するの?」

 

落ち着かせる為か、一旦呼吸を整えてからユニ様はオレに質問を投げかける。

 

「左様。ユニ殿は?」

 

「…アタシもついていくわ。一人じゃ行き詰まるから」

 

ユニ様は悔しそうに握りこぶしを作りながらオレの質問に答える。

 

「…了解した。共に行こう」

 

「…ええ、わかったわ」

 

「では行くで御座る」

 

「ええ、行きましょう」

 

オレ達はそのまま、ネプギア様達の下へと向かった…

 

【それから十数分後】

 

無事ネプギア様達と合流を果たしたオレとユニ様だったが、ユニ様がネプギア様に決闘を申し込み、アイエフ達によって奮起したらしいネプギア様はそれに了承。

互いに女神化しての勝負へと発展した。

……勿論オレと、アイエフ、コンパはビッキィのことが気掛かりだが、二人の事情的に必要な事だからと理解して黙ってその様子を見守っている。(何故オレが理解できるって、イストワール様から聞いた話と照らし合わせれば大体は理解できるんだよ)

 

「――ミラージュ、ダンスッ!」

 

「きゃああああ!?」

 

……どうやら、ネプギア様の勝利で決着がついたらしい。

 

慌てて二人の下へと駆け寄るアイエフとコンパを見ながら、見守り続けるオレ。

そんな時にメールの着信音が鳴り響く。……全くこんな時に誰だ…?――!?な、ビッキィからだとッ!?

慌てて開き、その内容を見る。手紙にはこう書かれている…

 

『私はウィズダム・ドゥーン。ビッキィ君、そしてミライ君の身柄を預からせてもらっている。君達と取引がしたい。指定した場所に来ていただきたい。』

 

その内容にオレは衝撃を受けた。ミライもいる。それも敵の手に堕ちていた。

困惑と驚愕を受けているオレの様子をみて駆け寄ってくる、四人にオレはどうするべきか、悩んだ――

 

 

 

 

 

 

 




家のステマックスは頭部に緊急用の通信機能を備えています


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07 また、会えた

【ウィズダム視点】

 

ぃいやぁっ!(巻き舌)諸君!私はウィズダム・ドゥーンッ!

……一応は犯罪組織の協力者をしている者だ。

 

「パパ〜…誰に話してるの〜…?」

 

「そのツッコミは厳禁だよ、シャット」

 

いきなりメタな自己紹介をする私に愛娘である、シャットが正座の姿勢でメタなツッコミを入れてくる。…え?何故正座しているのかって?それはーー

 

「パパ〜…ごめんなさい…反省したから正座やめていーい…?」

 

「駄目だ。パパを心配させた悪い子にはお仕置きだ。」

 

そう、お仕置きである。置き手紙1枚置いて勝手に居なくなった愛娘へのね。……まぁお仕置きの理由はそれだけでは無いが。

 

「……それに何故彼女を連れてきたんだ?」

 

「だ、だってぇ…ミライとビッキィを会わせてあげたかったんだもん……」

 

正座のまま涙目で体をふるふると震わせながら申し訳なさそうに言う我が娘。

……くっ、静まれ私の右手…っ!正座を解かせて頭を撫でるのは今はまだ我慢だぁ…!

何故なら今はお仕置き中であり尚且つ、真面目な話の途中だからだ。

 

「……そう言えばリンダ君は?」

 

「ビッキィとミライの所!。見張りをするって!」

 

なるほど。……大方まだ眠っている彼女をミライ君の部屋で見ているんだろうな、ワルを気取り、実際に犯罪を犯してしまっているがシャットと同じぐらいの子を放っておく程腐った訳では無いしな、私の姪は。

 

 

【リンダ視点】

 

ぶぇあくっしょんっ!……なんだよ、急に…風邪か?

 

「どうかしたんすか、リンダさん」

 

「…なんでもネェ。…ほら、さっさとそのチビの事を見てやれよ。…せっかくこのアタイがベッドまで運んでやったチビをな!」

 

「ほんとありがとうございます…」

 

「……ふん」

 

 

【ウィズダム視点】

 

……ああ、想像が容易過ぎて笑えてくるぞ、我が姪よ。…ああ、そうだ聞かなければならない事があった。

 

「そうか。……ふむ、彼女の、ビッキィ君の髪の毛はあるかい?」

 

調べなければならない。何故彼女の髪の色が、メモリに刻まれていたデータと異なるのか。……おおよその検討はつくが。

 

「ふえ?ないよ?」

 

やはり取っていなかったか。……少しばかり淡い期待を抱いていたが、まぁいいだろう。…私が直接彼女に直談判するしかないな、うん。

 

「……そうか。すまなかっね、もう正座はしなくていいよ」

「ほんと!?やったぁっ、……〜〜〜っ!?」

 

ちょ、シャットっ、いきなり立ち上がっては…ああ、遅かった……

 

「あしが、あしがびりびりするぅ……」

 

涙目で私にそう訴えるシャット。……全く。

 

「当然だ、長時間正座してた状態でいきなり立ち上がったのだから」

 

そう言いながら私は足を伸ばして座り込んでいるシャットを抱き寄せて頭を撫でてやる

 

「わっ、……えへへ」

 

嬉しそうに撫でられるシャット。……うーん、尊い。…む?

リンダ君から通信?……なるほど、彼女が起きたか。

ーーすぐに向かわなければならんな。……シャットを抱っこしながらな。

 

 

【ビッキィ視点】

 

…う、うーん…?こ、ここは…?……そうだ!思い出した!わたし、アイツにシャットに捕まって…!

 

「ーーキィ」

 

まずい、メモリも、デバイサーまで取り上げられてる…!

 

「ビッキーー」

 

どうする?どうすればいい??もしメモリが解析でもされたら、間違いなくネプギアさん達の脅威になる……!

 

「ビッキィ!」

 

「ほわぁぁぁ!?」

 

みみぃ!?耳がぁぁぁあああ!!?ーー一体誰だ、人の耳元で大声出すやつは…!……あ、うそ…?

 

「……久しぶりだな、プルさん達は元気か?」

 

…ミラ、イ……!うそ、ほんとにいた…!

 

「ミライ…!ミライィィ!!!」

 

「うおわぁ!?ーーいきなり抱きつくなよ、、病み上がりなんだから無理すんな」

 

そういいながら、抱きつくわたしを自分から引き剥がしベッドに寝かせる。……うぅ、いい返せない…

 

「……話をしようぜ?お互い色々聞きたいことあるだろうからさ」

 

話……うん、確かにしなきゃだめだ。

 

「…うん。……2年前に何があったの?レイさんも、皆心配してたんだよ…?」

 

本当に何があったんだろう、わたしのメモリと一緒に消えてしまった事、聞かなきゃいけない

 

「……2年前、ビッキィから預けられたモデルF…ファルザーラメモリをメンテナンスしていたらな、急に空間に穴が空いて…そこに吸い込まれちまったんだ。……俺が話せることはこんぐらいだ。正直、俺もよく分からないんだ…」

 

え、えぇ…?……いやそれまさかわたしとステマックスみたいに…??

 

「それからどうしたの?どういう経過で捕まっちゃったの?」

 

これも聞かなきゃいけない。

 

「へ?捕まった?誰が??」

 

……え?ミライは何言ってるの?

 

「いやいやミライ?何言ってるの?捕まったからここにいるんだよね!?」

 

わたしは思わず声を荒らげてミライに顔を近づけながら言う。

 

「落ち着け、ビッキィ!?近い!近いから!」

 

「はっ!?……ご、ごめん…」

 

いやわたし興奮しすぎだろ…深呼吸して落ち着こう…

 

「そうそう、落ち着こうな」

 

うん。……すー、はー…!…ふぅ、落ち着いた。

 

「話続けていいよ!」

 

「おう。……まぁいきなりこっちに飛ばされた俺は行く宛てなんてないから、途方に暮れていたら食材の買い出しに行っていたウィズダム博士に会ったんだ」

 

……なんだろう、もうわたし今別の意味で嫌な予感がするんだけど

 

「娘と変わらない年代の子を放っておけないってんで、ここに連れてこられたんだよ」

 

……予想の斜め上過ぎるぅ!?

そもそもなんでそんな人が犯罪組織にいんの?ほんとに疑問なんだけど??

 

「なんでそんな人が犯罪組織にいんの?」

 

あ、思ったことつい言っちゃった。

 

「……ああ、それは…」

 

少し戸惑うようにミライは後ろをむいて、腕を組んで仁王立ちしている黒いフードを被った女の人を見る。……そう、この部屋の中にいたの3人なんだよね。ミライに見つめらた女の人は腕組みをしたまま、はぁ、と溜息をついて静かに頷く。

 

「ありがとうございます」

 

……?…??…え、何今のやり取り?

 

「許可貰ったから話すぞ」

 

「あ、はい」

 

ああ、あれ言って大丈夫?って聞いていたんだ…

 

「シャットの事は知ってるな?」

 

……!あのモンスギアを使っていた奴か…!

 

「……うん」

 

「シャットさ、病気だったんだ」

 

「ーーーー」

 

ミライの言葉に思わず思考が停止した。……病気?でもあいつ普通に……あ、モンスギア!…そっか、だから……

 

「もうわかるだろ?メモリによる肉体強化であの子の病気は治ったんだ。昔のお前と同じように」

 

そうかだからミライはメモリを……今のモデルFはアノネデスさん達に改造されてほとんど無害だもんね、だから気軽に渡しちゃったんだ……

 

「そういうこった」

 

…あっさり人の心を読まないで欲しいなぁ……

 

「いや、ビッキィ考えている事が顔に出てるんだよ」

 

「お前、シャットレベルにわかりやすいゼ?」

 

……えぇ、なんかショック…

 

「…こほん。…もしかして犯罪組織にいる理由って…」

 

「大体お前の考えている通りだヨ。」

 

理由に気づいたわたしの質問にミライではなく女の人の方が口を開いて答える。……そっか、そうだったんだ。

 

「…だけど、問題が起こった。シャットの病気は確かに治ったけど今度は体ん中に作られた核の影響でシャットを長い眠りに落とした。」

 

眠り?……わたしの時はそんなことは起きなかった。…どうして?

 

「あくまで予想だが擬似核が与える影響は人によって違うんじゃないかって博士は言っていたな」

 

…なるほどね……

 

「とにかくシャットは長い眠りについちまった。……なんとか起こそうとしたけど、博士とアタイの稼ぎじゃシャットの入院費で手一杯だったんだ」

 

「……協会には頼れなかったの?」

 

「女神には頼りたくねぇ」

 

わたしが女神の話をした時、女の人の目に強い怒りが宿る。……すごく、怖い…

 

「……どうして?」

 

「協会の連中はアタイや博士が必死に助けを求めても、門前払いしやがったんだ!〝ブラックハート様は守護女神戦争で忙しい〟ってな!」

 

……守護女神戦争…?……そうだ、この次元のイストワール様から聞いた事がある…!この次元は犯罪組織が現れる半年ぐらい前まで天界って場所で女神様同士で戦争をしていたって…!

 

「だから、アタイ達は犯罪組織に入った。規模が大きい犯罪組織ならシャットを目覚めさせる事が出来る設備と資金が手に入るかもってな。…博士はその頭脳を活かしてマジェコンの開発のサポート、アタイはエージェントとしてメンバー勧誘とかをな」

 

……ああ、この人達は自分達の家族の為に犯罪組織に入ったんだ…どうしよう、助けたいって思っちゃうよ…どうしたらいいの?プルねぇさん…ステマックス…!




誰にだって事情はある。


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追憶の章
忍の回想その一


――どうして…?

どうしてそんなに怒ってるの?プルねぇさん

どうしてそんなに泣いているの?プルねぇさん

そうか、わかった。 
 
 わ た し が 間 違 っ て た ん だ    

          




【ステマックス視点】

 

 うーむ……ビッキィと一旦別行動をとり情報収集を始めてたはいいが……あまりいい情報が手に入らないな……今の時点で集まった情報のほとんどは既にイストワール殿から聞いて把握しているものだ。……ハァ……困ったな。

 ……それにしてもイストワール殿から聞いてはいたが、実際に見てみるとモラルの低下が目に余る。

 違法改造ツールマジェコン……こんなゲイムギョウ界の在り方を全否定するようなものが当然のように出回っているとは……この次元のネプテューヌ殿達が負けて捕まった影響もあるな……どちらにせよ早急に何とかしなければ……その前に少し休憩に入るか。……丁度近くに公園がある。そこのベンチで一休みするとしよう。

 

 ……ふう。それにしても、今日は日差しが強いな……。……確か、こんな日差しだったな。……あの子を、ビッキィを拾ったのは……

 

 

【ステマックスの回想】

 

 ある日の事だ。プルルート様にイストワール様がキレた。

 理由は当然、仕事しろという事だ。

 ……今でも思うが何故女神がこれなのに、プラネテューヌは潰れずにいるんだ? ……イストワール様のおかげだ、間違いない。

 イストワール様にこってり絞られたプルルート様は半べそになりながらオオトリィにクエストに向かうことにした。

 勿論、見張り役としてオレも同行する形だ。

 

「おっでかけ♪ おっでかけ♪ ステちゃんと久しぶりのお出かけ〜!」

 

 叱られて半べそをかいていたプルルート様だったが、すっかりいつもの調子を取り戻したようだ。

 ……そんなに久しぶりだったか? あとこれお出かけではなくクエストなんだよなぁ……

 

「久しぶりだよ〜? ……ステちゃんってば最近お仕事かレイさん達の事ばっかりだもん」

 

 そんなこと──ごめんなさい。その通りでした。だから怒らないで下さい、プルルート様。……だが仕方ない。何かと多忙なレイ殿に負担を掛けさせるわけにはいかない。だから基本的にはミライとピーシェの面倒はオレか、プルルート様が見ている。

 それにオレも教会職員としての仕事がある。……うん、確かにプルルート様と一緒どころか、一人でも全然クエストに行ってないな。

 

「でしょ〜?」

 

 ……はい、おっしゃる通りです。誠に申し訳ございませんでした……

 

「いいよ、いいよ〜。……今回のお出かけでチャラにしてあげるね〜」

 

 いや、だからお出かけではなく……いや了解した。プルルート様。

 

「れっつごー!」

 

 ……やれやれ。困った女神様だ。初めてあった時からなにも変わっていない。……15年前に七賢人のスパイやってたオレに、アイエフ達の世話係を任せたあの日から、変わっていない。

 ……ありがとう。オレを仲間として受け入れてくれて。

 

「──どういたしまして」

 

 聞 こ え て た ん か い 

 

 ヤバい、恥ずかしすぎる……

 

【オオトリィ大森林】

 

 引き続きオレ、ステマックスの視点でお送りします……

 

「ぷるるん殿……クエストの内容は覚えているで御座るか?」

 

 ちゃんと聞かなきゃね。報連相は大事。これ、社会の常識です。

 

「うーんと……あ、最近いかにも博士っ! て感じの変な人がオオトリィを出入りしてるっていう目撃情報があったみたいで〜それの調査だって〜」

 

 ……不審者(多分研究職の人)だと? ……なるほど、住民への危険性を考慮すれば女神が率先してやる仕事だな。……まず間違いなくカタギではないしな、そいつ。

 

「……承知したで御座る。向かいましょう、ぷるるん殿」

 

「うん。よ〜し、いっくよ〜!」

 

 

【女神様移動中】

 

 ……ちっっとも、見つからん。本当に不審者なんているのか? 

 

「ぷるぅ……全然見つからな〜い!」

 

 ──まずい、プルルート様のストレスが溜まって来ている。

 そうなれば行き着く先は……ひぃ! 考えただけで恐ろしい!! 

 

「ぷ、ぷるるん殿、落ち着くで御座る……焦らずゆっくり──……ん?」

 

 あれは……人か? こっちに向かって走って来ている!? 

 

「ぷるぅ、わかって──どうしたの、ステちゃん?」

 

「ぷるるん殿! 後ろ、後ろ!」

 

「ぷるぅ? 「助けてっ、助けてくれっ!?」……あなた誰〜?」

 

 白衣を着た、怪しい男がプルルート様にしがみつきながら助けを懇願している。……なるほど確かに不審者だ。

 

「……お主か? ここ最近オオトリィを出入りしているという不審者は?」

 

「そんなことよりっ、早く助けてくれっ!? このままじゃ、化物にっ、あのガキに殺されるっ?!」

 

 ……駄目だな。この男、大分混乱している。……色々気になる事を口にしているが今は保護をして詳しい話を聞くべきか? 

 

「──ステちゃん」

 

 プルルート様が真剣な眼差しでこちらを見る。……何を求めているか言われずともわかる。

 

「承知したで御座る……お主、こちらへ「GUGAAAッ!!!」──、ッ!」

 

 背後から殺気!? すかさず振り向いて手裏剣で防御ッ! 

 ──ぐっ……! なんて力だ……! だが、なんとか……弾き返せた……

 

「ステちゃん! 大丈夫!?」

 

「ひ、ヒィ……! あ、あいつここまで追ってきた……! た、たすけて……っ」

 

 しがみついてきた男から離れ、プルルート様がオレの安否を確認する。

 

「も、問題ないで御座る……! それよりもアレは一体……?」

 

 モンスターか? だがあんな奴は見た事がない……! 

 まるでところどころ、ライオンを模したような出で立ちをした、白色の人型モンスター。……新種か? 

 

「……わからない。あんなモンスター見た事ないよ……!」

 

 わかっていたが、プルルート様も知らないか……

 

「あ、あいつだ! あいつが俺を殺そうとして来たんだ! 頼むっ、助けてくれぇ!」

 

 あれが? ……話を聞くのは後回しだな。今はあれの対処が先か……

 

「ぷるるん殿、その男を頼むで御座る」

 

「……わかった。……無理しちゃ駄目だよ、ステちゃん」

 

 オレの言葉を素直に聞き入れ、男の肩を掴み逃げないようにする。……どうやらプルルート様もこの、

 男を怪しんでいるようだ。

 

「承知したで御座る……プラネテューヌ教会所属、ステマックス……──参る!」

 

【ステマックスVS????】

 

「──GAAAAA!」

 

 唸り声をあげながら両手の指についた鋭利な爪を振り下ろし、オレに飛びかかってくる化物。

 なんつー馬鹿力だ……! あんなのをまともにくらったら無事じゃすまない……ならばっ! 

 

「風遁かまいたちの術!」

 

 オレは印を組み、忍術を発動。するとオレの周りに無数の風の刃が出て、モンスターを襲う。

 

「GAAaaaa……!?」

 

 全身を切り刻まれ、たまらずのたうち回る。よし、ちゃんと聞いている……! このまま畳み掛ける! 

 

「火遁大火炎の術!」

 

 再び印を組み、今度は両腕を前に突き出す。手のひらから炎を発射。そのままのたうち回っているモンスターを焼く。

 

「GA!? GRUAAA!!?」

 

 ……このまま火炎を打ち続けて──……なんだっ!? 様子がおかしい……! 

 

「GA……GAA……!」

 

 な、なんだと……? こいつ、炎を吸収しやがった……!? しかもかまいたちで負った傷まで治っている!? 

 なんなんだこいつは……! 

 

「GAAAA!!!」

 

 ──ッ!? 速いッ! こいつ、なんて足だっもう距離を詰めて……! また爪を振り下ろしてきたっ、ぐうぅぅぅ……!? なんてパワーだ……! さっきの非じゃない……! 

 

「GAOッ!」

 

 ぐあっ!? こいつ、オレの空いた横腹に蹴りをして来やがった……! 

 蹴り飛ばされたオレは木々に激突。ぐぅ……かなり効いたぞ……! 

 

「ステちゃんっ、大丈夫ッ!?」

 

「死にたくない、まだ死にたくない……!」

 

 プルルート様が怯える男を抱き寄せながら声を掛けてくる。

 

「だ、大丈夫で御座──「ステちゃん、上!」……ちぃっ!」

 

 立ち上がろうとしたオレに追い打ちをかけるように、モンスターが飛びかかって爪を振り下ろしてくる。……咄嗟に避ける。

 ……あっぶねぇ……! 

 

「GAA……!」

 

 今度はなんだ……! 何かエネルギーのようなものが両腕に集まって……? いやこれは魔力だ! 

 

「GARUAAAAA!!!」

 

 魔力が集まった両腕を地面に突き刺した? ……なっ地面が割れた!? しかもそこから火が……うわぁぁぁぁ!!? 

 

「ステちゃぁぁぁん! ……変身っ!」

 

【ステマックス視点】

 

 ハァ……ハァ……! あ、危なかった……! 咄嗟に女神化したプルルート様がオレと男を抱えて飛ばなければ、今頃火だるまだ……! 

 

「……ステちゃん、次はあたしがヤるわ……いいわよねぇ?」

 

 ……仕方ない。なるべくオレだけで終わらせたかったが……まぁ仕方ない……! 

 

「なら拙者はこの男を見ていよう。……任せたで御座る」

 

「いいわぁ……あのライオンちゃんをお仕置きして……あ・げ・る♪」

 

 ……絶対まともなやられ方しないな、あのモンスター……

 




今回はいつもより短めです。


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忍の回想その二

――どうしてこうなちゃったんだろう…どうしてどうして気付いてあげられなかったんだろう……

あたしがもっと早くあの子の悩みに気付いてあげれば……そうすればあんな危ない事させなかった……

仲直りがしたい…またあの頃みたいに一緒にぬいぐるみを作りたいよ…キィちゃん……



【オオトリィ大森林】

 

前回から引き続きステマックス視点でお送りいたします。

 

……今現在どういう状況かと言いますとね――

 

「ほらっ!ほらぁっ!だめじゃなぁい♡もっとちゃあんと避けなきゃあ♡」

 

「GAU!?GAON!?GAAAA!!?」

 

一方的なワンサイドゲームが展開されております。これはひどい。

 

どうしてこうなったかと言いますとね、オレ達が空から地上に降りた瞬間にあのモンスターが勢い良く突っ込んできたんですよ。

 

――オレ達に爪を振りかぶろうとした瞬間にプルルート様の蛇腹剣が展開して、アイツを拘束して地面に叩きつけたんです。

 

それからは本当に酷い。アイツが抵抗しようとした瞬間に合わせて何度も地面に叩きつける簡単な作業で御座います。無駄に高い技術だ。

 

最初のプルルート様のセリフ通りしっかり避けていれば……もう可哀想過ぎて直視できないんだが…オレに抱えられてる例の男なんてもはや声が出せないレベルにまで恐怖で竦みきっている。…モンスターに?いいえ、勿論プルルート様にです。

 

「はははははは!!!」

 

「GA…A…」

 

うわぁ…アイツもう虫の息だ…見た目的にはライオンっぽいけど。……ん?なんだ、あのモンスターの様子がおかしい…?って光っている……!?いったい何が起こっている……!?

 

【オオトリィ大森林】

 

「……何よこれ」

 

眩しさに手で顔を隠しながら、アイリスハートは思わずそう言った。それもその筈だ。拘束していたモンスターの身体が光りだしたのだ。

 

「ひ、ひぃぃ…!噓だろ、まさか――」

 

「……お主、何か知っているで御座るな…」

 

心当たりがあるのか、そう口に出した研究者風の男は抜けた腰を引きずり芋虫のような姿勢で死にたくないと言わんばかりにその場から逃げようとする。

 

「どこへ行く。お主には後ほど聞きたいことが山ほどあるで御座る」

 

だがステマックスが男の目の前に立ちはだかり、逃がさないようにする

 

「どけ!どけよぉ!?」

 

死への恐怖にまみれた顔で男は叫ぶ

 

「断ると言った。大人しくするで御座る」

 

「嫌だいやだイヤダァ!」

 

ステマックスの制止もむなしく、男は逃げようとする

 

「仕方ない…ふんっ!」

 

「ぐえっ…――」

 

やれやれと言う感じでステマックスは男の腹に拳を軽く叩き込み、意識を奪いそのまま自身の背中に男を背負う。

 

「さてこれでひとまずは…「きゃああああ!?」なっ、プルルート様!?」

 

男を背中に背負い、目を離していた、アイリスハートの様子を見ようと視線をそちらに向けた瞬間。上空からアイリスハートが自身の近くまで落ちてきた。

どいうことだと、ステマックスは空を見上げるとそこにいたのは――

 

「なっ……あのモンスターじゃない!?別の人型モンスターだと!?」

 

そう、先程まで自分達と交戦していたモンスターtじゃない。まるで鳥人を思わせるようなフォルムをした別のモンスターだ。そいつはじっとステマックス達を見つめている。

まさかの新手の登場にステマックスは目を剝くが、ここで疑問ができる。……先程までいた筈の獣人型はどこにいったのだろうか

その答えは地面に叩き付けられたアイリスハートが答えた。

 

「違うわ、ステちゃん。別のモンスターじゃないわ」

 

「…それはどういう……まさか…!」

 

「ええ、そうよ。――あれはあのライオンちゃんよ…!」

 

「そんな…ばかな…まるっきり種類が違うじゃないか!?」

 

プルルートが告げた衝撃的な言葉に、ステマックスは毅然とする。

 

「ステちゃん、その男をお長いね?聞かなきゃいけないの沢山あるわ」

 

「……承知した。…お気を付けて」

 

「ええ、任せて頂戴」

 

そんなやり取りを交わしながら、アイリスハートは鳥人型に再び向かっていった。

 

【アイリスハートVS????】

 

オオトリィ大森林上空――アイリスハートと鳥人型は向かい合っていた。

 

「さっきは油断したけどぉ、次はこっちがイカセて上げるぅ!」

 

再びアイリスハートが蛇腹剣を展開。鞭のように振るって、鳥人型に叩き込もうとする。

 

「――」

 

しかし当たらない。縦横無尽に空を舞い、蛇腹剣の攻撃をことごとく避けているのだ。

 

(やりずらいわねぇ…魔法を使えれば楽だけど、ステちゃんの火遁の時みたいに吸収されかねないから、うかつに使えないしぃ…)

 

アイリスハートは思考する…どうしたらこのモンスターを倒せるかを。魔法は使うのは逆に危険かもしれない。ステマックスの火遁の時のように吸収されるかもしれないからだ。だから目の前にいる敵が獣人型だった時も魔法は使わずに物理攻撃で倒そうとしていた。

 

(ほんと、面倒ねぇ…)

 

「PYUAAA!!!」

 

アイリスハートがそうこう考えてる間に鳥人型が動いた。

その大きな翼を広げて、羽ばたくとそこから小さなつららが無数に飛んでくる。

 

「あらぁ、そんなことまで出来るの?――器用、ねぇ!」

 

そう告げると、アイリスハートは展開した蛇腹剣を振り回してつららを迎撃する。

 

「次はこっちの番よ!ドライブスタッブ!」

 

お返しと言わんばかりにアイリスハート自身のスキル『ドライブスタッブ』を発動

一気に加速し、接近。そのまま鳥人型を蛇腹剣で滅多切りにし、蹴り飛ばす。

 

「PYUAAA!!?」

 

蹴り飛ばされた鳥人型は翼を広げて何とか持ち直し、再びつららを飛ばして反撃。

 

「芸がないわねぇ…もっと他にないのかしら!?ファイティングヴァイパー!!!」

 

アイリスハートも先程のようにつららを迎撃。そこからスキル『ファイティングヴァイパー』を発動。

再び接近し、魔法によって電流を纏った蛇腹剣で鳥人型を縦に一閃。普段ならそれで終わりだが、アイリスハートはそこからさらに、一旦距離を離して蛇腹剣を展開。獣人型の時のように拘束し、締め上げる。

 

「PYUAA!?、PIGYAAA!!?」

 

締め上げられ、蛇腹剣の刃が食い込まれていき、鳥人型はあまりの痛みで奇声を上げる。

 

「いい声で鳴くわねぇ…♪もう一つおまけよぉ♡、そーれッ!」

 

「PIGUYAAAAAAAA……ッ!!?」

 

そしてアイリスハートはとどめと言わんばかりに…締め上げ、食い込ませた状態で蛇腹剣を引っ張る。そうすると鳥人型の体にに食い込んでいた蛇腹剣の刀身が回転をする。より体を抉り斬った。……本当に恐ろしい女神である。

 

「――――」

 

「ふふっ、だめよぉ♡、まだイカセ足りないんだからぁ♡」

 

全身余すことなく傷だらけにされ、大ダメージを負った鳥人型はそのまま頭から地面に向かって落下していく。

だがアイリスハートは止まらない。とどめと言わんばかりに三度蛇腹剣で落下していく、鳥人型を拘束する。そしてそのまま……

 

「そーれ♪」

 

――拘束したまま振り回して地面に叩き付けた。地面にクレーターができるほどの衝撃を受けた鳥人型はもう虫の息だ。

 

「……まだまだ足りないわぁ…!」

 

舌なめずりをしながらアイリスハートは鳥人型のすぐ傍に着地。蛇腹剣を振りかぶろうと……

 

「あら?……これはどういうことかしらぁ?」

 

アイリスハートは再び困惑する。満身創痍の鳥人型の体から二本のUSBメモリのような物が排出されたのだ。そして鳥人型の体がどんどん縮んでいき……

 

「……女の子?しかもまだ子供じゃない…!」

 

自分とお揃いの薄紫色の髪をした小さな女の子になったのだ。体がボロボロな上に満足に食事を取れていないのか、瘦せ細ってしまっている。極めつけは両腕だ。どう見ても人のそれではない。まるであの獣人型の腕をそのまま子供のサイズまで落とし込んだような形状だ。

 

「……プルルート様、これは一体…!」

 

「……わからないわ…!」

 

戦闘が終わりその様子を見守っていた、ステマックスも例の男を背中に背負ったままプルルートに近づき、質問する。その声色はプルルート同様困惑が隠しきれていない。

わからない。プルルートはステマックスの投げかけた質問にそう答える。…答えるしかなかった。

 

「…ステちゃん」

 

「……はい、この子も連れて帰りましょう。…当然この二本のメモリも…」

 

「ええ、この子も連れて行くわ。ーー帰るわよ、プラネテューヌに」

 

「…承知」

 

 



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回想、アヤメの姉妹

【プラネテューヌ教会】

 

 オオトリィで謎の幼女を保護してから数日後

 

 教会内に備え付けてある、部屋の1つに、プルルート、ステマックスの2人は椅子に座り、テーブルをさ挟んで向かい合っている。

 

「ステちゃん、あの人何か教えてくれた?」

 

「はい、ようやく全て話してくれたで御座る。…大変だった」

 

「ステちゃん、お疲れ様〜」

 

「ありがとうで御座る、ぷるるん殿…!」

 

 どうやらステマックスは先程まで例の男に事情聴取を行っていたらしい。…オオトリィでの出来事から数日経った今まで口を割らなかったが、ようやくその重い口を開けたとの事。

 ……ステマックスの疲れ切った様子から察するに、かなり大変だったようだ。

 そんな彼にプルルートは苦笑いしつつも、労いの言葉をかける。

 ステマックスは仕える主の優しさに感涙しながら感謝する。

 

「どういたしまして〜! …イストワールは?」

 

「いーすん殿は例のメモリについてレイ殿と通信で話し合っているで御座る。…あの少女の容態は?」

 

「うん…かなり痩せてたし…ごはんも食べてないみたいだから、おかゆ食べさせたりして、少しずつだけど元気になってきてる。……相変わらず、名前、教えてくれないけど」

 

「……そうで御座るか…」

 

 あたしはプルルートって言うの。…貴女の名前はなぁに? 

 

 ひっ…こないで…もういたいことしないで…! 

 

 …保護した当初、自己紹介をしようとした時の少女の拒絶の言葉と怯えきった様子を思い出し…暗い気持ちが2人の心を覆う。

 

「……ステちゃん、あたし、またあの子の様子見てくるね。ステちゃんはイストワールにこの事を伝えに言って」

 

「…了解したで御座る」

 

 本当はプルルートについて行きたい。そんな気持ちを堪え、ステマックスは、イストワール達の元へ向かう。

 

「行ってらっしゃい、ステちゃん。……よし」

 

 ステマックスを見送り、プルルートは決意を固め、『彼女』のいる医務室へと向かっていった。

 

 

【プラネテューヌ教会 医務室】

 

 備え付けられたベッドの上に頭から毛布を被り、体を震わせている幼い女の子がいた。

 

「…………」

 

 目には怯えの色が宿っており、警戒するように無言で扉をじっと見ている。

 そんな時に、コンコンとドアをノックする音が部屋に響いた。扉を静かにあけ、プルルートが入ってくる。

 

「また来たよ〜。気分はどう?」

 

「…………」

 

 答えない。プルルートの呼びかけに、少女は無言をつらぬく。……その表情に深い怯えを浮かべながら

 

「……何か食べたいもの、ある?」

 

 ゆっくりと優しい声色でプルルートは少女に言う。

 

「………なんで」

 

 少女が初めて口を開く。

 

「ぷる?」

 

「なんで、こんなにやさしくしてくれるの?」

 

 顔に怯えが残ったまま、少女はプルルートに問う。

 

「…………」

 

「わたしのて、こんなになってるんだよ? こわく、ないの?」

 

 体を震わせ、異形となっている自身の腕をプルルートに見せながら、少女は言う。

 

 対するプルルートは、微笑みながら、少女の手を取り……

 

「こわくなんかないよ。だから貴女もこわがらないで? あたしを、あたし達を信じて…!」

 

 祈り、懇願するように、プルルートは少女に言う。

 

「──こわ、かった…」

 

「うん」

 

 プルルートは少女を抱きしめる

 

「めもり、からだになんかいもいれられた…」

 

「うん」

 

 プルルートは抱きしめたまま、少女の頭を撫でる

 

「おなかすきすぎて、もんすたーのかくをたべちゃったら、てがこんなんなっちゃった…」

 

「…うん、もう大丈夫だよ。もう、怖いことする人はいないよ」

 

 抱きしめ、少女の頬を撫でながら微笑む。

 

「ひっ、くっ……あ、ああぁああぁあ……っ!」

 

「よしよし、大丈夫だからね…」

 

 頬を撫でてくるプルルートの手に自分の異形の手を添え、決壊したかのように泣き出す。

 そんな少女を安心させるように、プルルートは少女を抱きしめながら背中をさする。その名の通り、女神の、慈愛に満ちた表情で。

 

「──あの、ごめんなさい…ふく、びしょびしょにして…」

 

 プルルートが少女を抱き、慰めて、十数分後。泣き止んだ少女は羞恥と申し訳なさで赤面しながらプルルートに謝っていた。

 

「ん〜ん? 全然、気にしてないよ〜!」

 

 対するプルルートは気にした様子はなく、少女を抱きとめたまま頭を撫でて、笑いかける。

 

「うみゅ…ありがとう…」

 

 撫でられるのが気持ちいいのか、少女は目を細めて、嬉しそうな表情でプルルートに礼を言う。

 

「どういたしまして〜! …ねぇ」

 

 プルルートは頭を撫でたまま、真剣な顔になり、少女の顔を真っ直ぐ見ながら言う。

 

「…うん」

 

 真剣な顔になったプルルートを見て、少女はギュッとその『手』でプルルートの服を掴むながら聞く姿勢をとる。

 

「あたしは、プルルート。…貴女の名前は、なぁに?」

 

 真剣な表情から一転。…優しい柔和な笑みを浮かべながら少女に改めて名前を問う。最初に聞いた時のように。

 

「……ビッキィ。…わたしは、ビッキィ、です」

 

 少女は、ビッキィは深呼吸して、自分の名をゆっくり、丁寧に名乗る。

 

「そっか、ビッキィちゃんっていうんだ? ……キィちゃんって呼んでいい?」

 

 やっと名乗ってくれた。嬉しさで泣きそうになるのを堪えながら、プルルートは愛称で呼んでいいかと聞く。

 

「うん! いいよ! ……わたしも、おねえちゃんってよんでいい?」

 

 ビッキィはプルルートに抱きついたまま、恐る恐る聞いてくる

 。

 

「いいよ〜! ……ねぇ、キィちゃん今日は何が食べたい?」

 

「…リゾットがたべたい!」

 

「えへへ、ならすぐ作ってくるね〜」

 

「あっ……」

 

 そんなやり取りをしつつ、もうすぐ夕頃になるのでプルルートはビッキィの抱擁を解き、夕飯の支度に向かおうとする。

 抱擁が解かれたビッキィは一瞬寂しく感じるもぐっと堪え、大人しく待つことを選ぶ。

 そんな様子のビッキィを見てプルルートは彼女に手を差し出しながら、こう告げた。

 

「一緒にいこ? キィちゃん」

 

「…うん! …えへへ」

 

「えへへ〜! リゾット好きなの?」

 

「たべたことないけど、ほんでみたことあるよ!」

 

「そっか~、すごく美味しいから楽しみにしててね~?」

 

「うん!」

 

 ビッキィはベッドから降りて、差し出された手を取る。喜びに満ちた、子供らしい笑顔で。

 それに釣られてか、同じようにプルルートも笑みを零す。

 ──2人は手を繋ぎながら、そのまま台所へ向かっていく。

 お揃いの髪色も相まって その今の2人やり取りは、本当の姉妹の様に見えるのだった……

 

【一方その頃ステマックス達は】

 

 教会に備えつけた、会議室。そこには、イストワールとステマックス、そしてモニター越しに青い髪に白い角の様な飾りを頭の片側だけに付けた眼鏡の女性、キセイジョウ・レイの3人がいた。

 二人の会話中に、ステマックスが情報を伝えに入室し、たった今それも終わったところだ。

 

「──以上で御座る」

 

 イストワールとレイに傅きながら、ステマックスは報告を伝え終える。

 

「ふむふむ。なるほど…レイさんから聞いた通りですね(`・ω・´)」

 

「……やっぱりあれが、2本のゲイムメモリが原因…!…近々、その子に会いに行ってよろしいですか?」

 

 イストワールは自身の顎に手を添えながら、情報のまとめを始める。一方でレイは原因に当てをつけ、例の少女…ビッキィに会いたいと言い出す。その顔に悲壮感と責任感を宿しながら。

 無理もないだろう。ゲイムメモリはタリ…レイが女神として治めていた、太古の国が作り出してしまったものなのだから。

 そのメモリが今になって一人の少女の人生を歪めてしまっている。だからこそ責任感を感じてしまっているのだ。

 

「レイ殿、あまりお気に病むな。過去の過失を悔やんでも仕方ないで御座る」

 

 それがわかっているステマックスはかつての上司を慰める。

 

「ステマックスさん…ありがとうございます。…ですがその子に会ってみたいです構わないでしょうか?」

 

 ステマックスに感謝の言葉を送り、改めてビッキィに会いたいと申し出る。

 

「…あの子の心が開いたら──」

 

 そう告げようとした瞬間に着信音が響く。出所は、イストワールからだ。二人は思わず、そちらに視線を向ける。

 

「イストワールさん?」

 

「いーすん殿?」

 

「すみません、プルルートさんからです。…晩御飯出来たからおいで~だそうです。あとキィちゃんも一緒だそうですよ? (*^^*)」

 

 送られたメールの内容を見たイストワールは笑顔になりながら2人に告げる。

 

「「キィちゃん?」」

 

 ステマックスとレイは声をそろえて言う。キィちゃんって誰だと思いながら。

 そんな2人にイストワールは笑顔を保ったまま、無言でメール文と共に添付された写真をホログラフィーにして2人に見せる。

 

「…レイ殿、どうやらたった今から会いに行っても問題はないようで御座るよ?」

 

「みたいですね! 会いに行くときは、ミライとピーシェも連れて来ますね、きっといいお友達になれるから」

 

「ですなぁ!」

 

 笑いあう二人の視線の先には、テーブルに並べられたリゾットを背景に、手をつ繋ぎながら、笑顔でピースサインをしている、プルルートとビッキィの姿が映っていた──

 

 



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コラボ回!激爪と愛月

初のコラボ回です


【ビッキィ視点】

 

「ふんふんふーん♪」

 

 やっぱり空の散歩はいいなー

 

 モンスギア作ってくれたレイさん達には本当に感謝しなきゃ。

 

 よーし、次は教会を1周しちゃおう! 

 

「はじまーるうたー♪ …ん?」

 

 鼻歌から普通に声出して歌っちゃうぐらいたのし…って、え…? あれなに…って人!? 人が落ちてる?! 

 危ないっ、助けなきゃ! …加速、そ〜ち! 

 

「うにゃー!!! 誰か助けてー!?!?」

 

 大声を出しながら助けを求めてる…あ、わたしに気づいた! 

 すっごいびっくりしてる。…まぁ当たり前だよね。普通人間は空飛ばないからね! 

 

「な!? なんでこんな空の上に人が!? ……いや僕も現在空にいるけど………助けて見知らぬ人!!!」

 

「うんっ! 助ける! しっかり捕まって!」

 

 そう伝えて、わたしは手を伸ばして落ちてる人に手を差し伸べる。落ちてる人も手を伸ばしてわたしの手を取る。離さないように空いた手でガッチリ掴む! 

 落ちちゃわないよう、両手でしっかり握る! 

 

「おわわ………よっと、はぁはぁ助かった。ありがとう」

 

「どういたしまして! …しっかり掴まっててね? このまま降りるから」

 

 わぁ、かわいい顔。ミライみたい。

 

【プラネテューヌ教会】

 

「…心配だ…非常に心配だ…」

 

「やっぱりあたしもついていけばよかった〜!」

 

「二人共! ビッキィさんだってもうすぐ十歳になるんですから、あんまり過保護はだめで…え? ( ゚д゚)」

 

 片や教会の入口をぐるぐる周り、片や涙目になりながら後悔している、そんな過保護で心配症な二人を呆れながらも嗜めていたイストワールは空から地上に降りていくビッキィを見て啞然とする。だって何故か見知らぬ男の子と手を繋いでいるのだ

 

「あっねぇねぇ、こんな時になんだけども名前なんて言うの? 僕は愛月って言うんだ♪ 宜しくね」

 

 僕って事はこの子いや、愛月って男の子だったんだ…

 

「わたし? ビッキィだよ。ビッキィ・ガングニル! 君の名前は?」

 

 ファミリーネームはブランさんの本を読んで考えました! 

 

「ビッキィって言うんだ! かっこいい名前だね〜、さっきは助けてくれてありがとう!」「名前褒めてくれてありがとう! それとどういたしまして! 愛月!!」

 

 わたしの名前がかっこいいだなんて…すごく嬉しい! 

 

「うん♪ 後ねビッキィ……下で心配そうに見ている人達ってビッキィの知り合いなの?」

 

 あ、まだ降りてる最中だったよ。危ない危ない…わぁプルねぇさん達心配し過ぎでしょ…あと今の状況、説明が大変な奴だよ絶対。(確信)

 

「…え? …あーうん。あれ、わたしの家族」

 

 ほんと過保護だなぁ…まぁわたしの事情的に仕方ないけど。

 

「家族なんだ。色々と質問とかされそうな予感する」

 

「何その予感…あ、そろそろ下につくよー!」

 

 いやでも、ステマックスとか聞いてきそう…

 

「わかった〜♪」

 

 かわいい声だなぁ、正直女の子にしか見えない。

 はーい、地上に到着〜! からのモンスギア解除! お砂になーれ! 

 

「ビッキィ!? その子は誰だ!? …まさかボーイフレンドか!? まだ子供なのにお兄ちゃん許しませんよ?!」

 

「落ち着いて下さい、ステマックスさ〜ん(;_;)」

 

「わぁーキィちゃんがみーくん以外の男の子と一緒にいる〜、あたしプルルートって言うの。貴方の名前は〜」

 

 やっぱり近づいて質問ラッシュしてくるバカ兄貴ことステマックス、やめて? 激務ないーすんさんの胃はもう限界なんだよ! 

 そして相変わらずマイペースなプルねぇさんである。

 

「僕は愛月って言います。えっと……先程空から落っこちていた所をビッキィに助けてもらいました」

 

「そっか〜よろしくね〜」

 

「…すまぬ。取り乱してしまったで御座る」

 

 自己紹介し合う。愛月とプルねぇさん。あと取り乱し過ぎだよ、ポンコツ忍者。ミライが来た時もこんなじゃん。

 

「空から? もしかして異世界人でしょうか…? (-ω-?)」

 

「異世界人? 多分そうなるのかな……後プルルートさんが持っているのってぬいぐるみ?」

 

 ……異世界人? …ああ、ネプテューヌさん達みたいなものか。だから空から落ちてきたんだ、納得。

 

「ふえ? うんそうだよ〜! かわいいでしょ〜?」

 

 愛月の質問に、3頭身にデフォルメされたステマックスのぬいぐるみを見せるプルねぇさん。…今日はステマックスのぬいぐるみなんだね。

 

「び…ビッキィ…機嫌を治してくれ…? な…?」

 

 そんな二人を見ていたわたしに後ろから声を掛けてくるバカ兄貴。

 ……しらないもん。初対面の人と手を繋いでただけで詰め寄ってくるロボなんかしらないもん。

 

「つーん」

 

 というわけでそっぽむきます。

 

「なるほど…後で詳しい話をお願いします( ー`дー´)」

 

「わぁ〜すっごい可愛いねぇ僕も色々ぬいぐるみ作っているんだぁ♪」

 

「そうなんだ~今度見せて〜?」

 

「うん♪」

 

 ……共通の趣味があるからかな? …仲良くなるの早いなぁ…

 

「愛月さん。すみませんが詳しい話が聞きたいので中に入ってください」

 

「あっはぁーい。えーと妖精さん?」

 

「わたしはプラネテューヌ教祖イストワールともうします。( ー`дー´)」

 

「ほぇ教祖? ………それってどんなお仕事してる人なんだろう?」

 

 自己紹介し合う愛月といーすんさんってああ、愛月その質問はっ!? 

 

「どんな仕事…? …うっ(´;ω;`)」

 

 ああ! いーすんさぁんっ! …ちくしょう、わたしがもっと大きくなっていれば…! せめてその激務の半分くらいを引き受けられるのに…! 

 

「あわわ………イストワールさん大丈夫ですか? えーとえーとどうしたらいいの? 僕!?」

 

 そんなのわたしが知りたいよっ! 

 

「だ、大丈夫です…すみません、お先に失礼します…(´;ω;`)」

 

 ……ああ、いーすんさん…おいたわしや…

 

「イストワールさん、大丈夫なのかな? プルルートさん、ビッキィ?」

 

 大丈夫じゃないんだよなぁ……

 

「ぷ、ぷるぅ…」

 

「じとー」

 

 何目逸らししてるんですかねぇ、この女神様は……? 

 

「………もしかしてお仕事貯めているの?」

 

「うん。…そこのお姉ちゃんがお仕事全然しないから」

 

「ぷるぅ…」

 

 そう、ちっとも仕事しないんだよ、このお姉ちゃん

 

「しくしく…」

 

 すみっこで目からオイル垂れ流しながら泣いてるポンコツ忍者なんかしーらないっ

 

「あの手伝ってもいいですか? 簡単な事しか出来ないけど、それとあっちで落ち込んでるロボットのお兄さんは大丈夫なの?」

 

 おうふ。…わたしと同年代で大変な状況なのに……

 

「…だってさ? よかったね、プルねえさん。ねぇ、聞いてる? お仕事しないプルねえさん」

 

 あとあのポンコツ忍者の馬鹿兄貴は気にしなくていいからね! ──ってまだあの馬鹿兄貴すみっこで泣いてるし……

 

「お仕事します…しますからもうやめて、キィちゃん…」

 

 …こっちも泣き始めた…いい過ぎたかな……

 

「プルルートさんヨシヨシ(。´・ω・)ノ゙」

 

 っ!? …なんかいーすんさんみたいにセリフの後に顔文字が出ている…! ……馬鹿な、いーすんさん以外にも居たのか…! 

 

「うう…! 愛月くん、ありがと〜…!」

 

「……家の家族が本当にごめん」

 

 うぅ…なんかこれ見てると申し訳ない気持ちがぁ……! 

 

「大丈夫だけどビッキィ? あんまりお姉さんを泣かせないでよね?」

 

 あうっ。…確かにやり過ぎたかも…。

 それにしても、プルねぇさん気持ち良さそうに撫でられてるなぁ…

 

「うっ…わかったよ…ちょっといじめ過ぎちゃった…ごめんね、プルねえさん」

 

「いいよ、お仕事せずにイストワールに押し付けちゃってるの本当だから…」

 

 実際その通り。……勉強頑張ろう。そして大きくなったらいーすんさんのお仕事を手伝おう。…この国になくなって欲しくないし、何より大好きだし。

 

「えーとそろそろ教会の中に入ればいいのかな?」

 

 あ、そうだね。

 

「うん。おいで~」

 

 ……あ、その前にすみっこで泣きっぱなしのステマックス…

 

「…ほらステマックス。…ごめんね、言い過ぎた」

 

「しくしく……いいよ、許す。俺も悪かったしな」

 

「…早く中に入ろ?」

 

 お互い謝り合って、一緒に教会の玄関に向かって入る。

 ……泣き止むの早いなぁ…

 

「わぁ〜すっごい! とってもかっこいい!!!」

 

 テンション高っ! …やっぱり男の子なんだな〜すっごくわかるその気持ち。

 

「でしょ〜!」

 

「拙者が毎日掃除を欠かさずやってるで御座るからな。…それと愛月殿。申し遅れたが拙者はステマックス。以後お見知りおきを」

 

「うんうんわかる。わたしも初めて来た時びっくりしたもん」

 

「そうなんだ! ステマックスさん宜しくね♪」

 

「よろしくで御座る」

 

「プルルートさん達こんなすっごい所に住んでいるなんて羨ましいなぁ〜」

 

「えへへ〜ありがとう〜」

 

「まぁ拙者達…というかプルルート殿はこの国で一番偉いで御座るからな…」

 

「いーすんさんがいなきゃとっくになくなってると思うけどね…」

 

 会話しながら教会内を案内するわたし達。

 ……ほんと勉強頑張ろう。いーすんさんを助けよう

 

「1番偉い? それってプルルートさんが国政って言うのを握っているの?」

 

 おお、国政って言葉わたし以外で言ってる子同年代で初めて見た…! 

 

「…まぁそうなるで御座るな…なにせ、この国を治める女神で御座るから…」

 

「…そうだね。あたし女神だからね…」

 

「今更だけどよくこの国回るなぁ…」

 

 本当に不思議でならない。

 

「えっ……女神? ………それっておとぎ話とかじゃないの?」

 

 ふえ? 愛月何言って……

 

「…おとぎ話? もしや愛月殿。そなたのいた世界には女神がいないので御座るか?」

 

 ああ、なるほど。女神様が居ない世界なんだ、納得した。

 

「うん………今まで絵本とかでしか知らなかったから。こっちにはそんな人がいるの?」

 

「うむ。いるで御座る。…ビッキィ殿! 勉強の成果、見せてくれで御座る」

 

 唐突に話丸投げされたっ!? 

 

「え!? わたし!? …わかったよ…」

 

 でも頑張る。

 

「ほえ? ビッキィなれるの………それに勉強の成果って???」

 

 ありゃりゃ、混乱してるよ…仕方ないか、いきなりだもんね。

 

「違う違う、わたしなれない。──こほん、愛月よく聞いてね? この世界には女神様がいて国を作ってるの」

 

「えっうん」

 

 うーん、我ながら説明下手ァ…このまま続けちゃえ。

 

「今ある国は全部で4つ…ここはその内の一つ、プルねえさんことアイリスハートが治めるプラネテューヌ」

 

「アイリスハートってプルルートさん名前2つあるの?」

 

 あ、そこに食いつくんだ

 

「うん。そんな感じかな…?」

 

「そうだよ〜あたし元の名前と女神としての名前があるの〜」

 

 あ、プルねぇさんが補足してくれた。ありがとう

 

「そうなんだ………アイリスハート…いい名前ですねプルルートさん」

 

「ありがとう〜! …あと女神としての姿に変身できるんだよ〜!」

 

「えっ! 変身出来るの!?!? すっごい! ねぇねぇやって見せてよ!?」

 

「「えっ」」

 

 待って愛月待ってそれは駄目大惨事になるから(超早口)

 

「ん? どうしたの2人とも???」

 

 どうしたのって…ステマックスと顔を見合わせてからお互い頷き合う。…うん、止めなきゃ

 

「わかった〜!」

 

「待つで御座る!? 早まってはいけない!?」

 

「お願いやめて、プルねえさん!? 愛月の心に一生物の傷をつける気!?」

 

 愛月はキョトンとしているしぃ! 知らないから仕方ないけどもぉ!? 

 

「だーめっ! へーんしーん!」

 

「「NOォォォ!!?」」

 

 ステマックスと一緒に絶叫するわたし。……うごご、トラウマがぁ…! …初めて会った時に体中を切り刻まれたトラウマがぁ…! 

 

「わぁ〜眩しい!」

 

「これがあたしの女神としての姿…アイリスハートよぉ…♪」

 

「「終わった…もうおしまいだ…」」

 

 勝てるわけないよ…orz

 

「ほわぁ………綺麗」

 

「あらぁ? ありがとう、愛月くぅん♪」

 

「えーとこの時はアイリスハートさんって呼んだ方がいいの?」

 

「どっちでもいいわよ?」

 

 ……変身した、プルねぇさんが、愛月の頭を、撫でている…? え、えぇ?? 

 

「えへへ♪ くすぐったいよぉ〜♪♪♪」

 

 ……わたしは、わたし達は、何を見ているの…? 

 

「…妹よ、オレ達は何を見ている?」

 

 ステマックスも困惑している。だよね! 何を見てるって言いたくなるよねっ!? だってあのアイリスハートだよ!? 数々の(放送禁止レベルの)伝説を神次元中に轟かせた、あのアイリスハートがっ! 女王様じゃなくて女神様に見える…! 

 

「…ありえない、変身したプルねえさんがドSを発揮しないなんて…!?」

 

「これは、真に現か? それとも夢か?」

 

「ねぇねぇプルルートさん、2人は何を話しているの?」

 

「…ごめんね、愛月くん。あたしちょっと、二人に話があったのよ…」

 

 え。ちょっと待ってプルねぇさん!? OHANASHIはMA☆TTE! 子供の前だから! そしてわたしも子供だから! ドSな笑みを向けないでお願いしますからぁ! 

 

「うんわかった」

 

 うんわかった。…じゃないよ!? いいのっ、この作品が18禁になっちゃうよ!? コラボした作品がだよっ?! 

 

「大丈夫よ〜……ちゃ〜んとカットするから♡」

 

 あ、それなら安心…じゃね〜〜〜!!? いやぁぁぁぁっ!!! 

 

【ここから先はお見せできないのでカット】

 

【プルルート視点】

 

「「あば、あばばばば」」

 

 はぁ…すっきりしたわぁ〜っ! 

 うふふ、余計な事を言う悪い2人には口は災いの元ってはっきり教えてあげられたわぁ…♪

 

「うわあ………大丈夫なのかな? 2人とも」

 

 さて、女神化解除しようかしら。流石にずっと変身するのは肩が凝っちゃうわ

 

「大丈夫だよ〜」

 

 というわけで変身解除〜〜! 

 

「そうなんだ………あれもう戻っちゃったの? プルルートさん」

 

「うん。…あんまり長く女神になっちゃうと疲れちゃうから…」

 

 楽しいんだけどね〜

 

「そうなんだ、お疲れ様」

 

「ありがと〜!」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめ」

 

「ピピ…ガーー」

 

 ……なんか、キィちゃんもステちゃんも、壊れたラジオみたいになっちゃった…

 

「えーとビッキィ達大丈夫なのかな?」

 

 大丈夫。…かな〜? ……やり過ぎたかも。

 

「ガーー……はっ!? …せ、拙者の方はなんとか…! …ビッキィの方はそっとしてあげて欲しいで御座る」

 

 ステちゃん復活〜! ……キィちゃんにはあとでいっぱいごめんなさいしなきゃ…

 

「じゃあお部屋に運んだ方がいいのかな?」

 

「それなら拙者が運ぼう…愛月殿はぷるるん殿と一緒にいーすん殿のところへ」

 

「はぁーい! プルルートさん案内して〜?」

 

 うぅ、ほんとはあたしが運んてあげたいけど仕方ないよね……

 

「うん! こっち~!」

 

 イストワールのところにれっつごー! 

 

「あっイストワールさん、お待たせしてごめんなさい」

 

 というわけでイストワールのところに入りました〜! 

 

 イストワール「いえいえ、大丈夫ですよ! (^_^)」

 

 イストワール「…こほん。では愛月さん、貴方の詳しい事情をお聞かせできますか? (^_^)」

 

 愛月「えっと、寝ていたらすっごい風が強く吹いてきてなんだろうと思って目を開けたらお空の上にいたの」

 

 そっか〜、お空からか〜! ネプちゃん達と一緒だ〜! 

 あ、だからキィちゃんと一緒だったんだ。

 

「なるほど…つまりそちらもわからないと…(・ω・`)」

 

「あ~、そこをキィちゃんに助けてもらったんだ〜?」

 

「うん。そのあとはプルルートさん達にあって今に至ります」

 

 …やっぱり優しい子だね、キィちゃん。謝ったらいっぱい頭なでなでしてギューってしなきゃ

 

「はい。僕の世界はポケモンって言う不思議な生き物たちが至る所に住んでいて人と仲良く暮らしていたりするそんな世界です」

 

「ぷるぅ…ポシェモン?」

 

 あのタイトル名が発音しづらい有名ゲームの! 

 

「ポシェモンじゃなくてポケモンですよ。……実際に見せましょうか?」

 

 …しょぼん、違った〜…

 

「…お願いします」

 

 ……気を取り直して…。……どんなのかな? 楽しみ〜! 

 

「はぁーい♪ 出てきて【フレム】」

 

 元気よく返事しながら、ポシェット…じゃなくてポケットからボールを取り出す愛月君。

 そのボールからすごくかっこいい、二本足で立つワンちゃんが出てきた。わぁ、かっこいい! 

 

「これがポケモン…(`・ω・´)」

 

 ……イストワールってばすごい真面目な顔でワンちゃんを見てる…異世界の生き物なんて、珍しいもんね〜

 

「わぁ〜かっこいいワンちゃんだね!」

 

「ルガルガンと言って僕のお父さんが捕まえたんですよ。そこから僕が【フレム】ってニックネームをつけたんです」

 

「ルガルガン…なるほど…(`・ω・´)」

 

「フレムって言うんだ? あたし、プルルート! よろしくね〜フレム〜!」

 

 わぁ! 笑って挨拶してくれた! かしこ〜い! 

 

「このような子達が沢山いるんですよ」

 

「ふむふむ……わかりました。ありがとうございます。…似た世界を検索して候補がでたらお呼びします」

 

 こういう時もイストワールって頼りになる〜! 

 

「わぁありがとうございます。イストワールさん!」

 

「ただしっ! みっかかかりますがっ!」

 

「うわっ! び………びっくりした〜」

 

 …あちゃー、イストワールの悪い癖が出ちゃった…いきなりだと、びっくりしちゃうよね〜…

 

「ごめんね〜…」

 

「大丈夫。じゃあプルルートさん3日の間宜しくお願いします!」

 

「うん、よろしくね〜!」

 

 …ふふっ、賑やかになりそうで楽しみ〜!



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コラボ回!激爪と愛月 、いちにちめっ!

愛月と過ごす一日目です。


【プルルート視点】

 

前回までのおさらーい!空から降ってきた男の子、愛月君を保護したよ!

イストワール曰く〜、帰れるのは3日後!いつも通り〜!

そんなこんなで、イストワールとのお話を聞いたあたし達は、晩御飯の支度とお風呂の準備をする事にしたのでした〜!

 

「あ、私は早速調べてきます。ごはん出来たら読んでください(^o^)」

 

「いってらっしゃ~い」

 

「お願いします。イストワールさん」

頑張れ、イストワール〜!

 

「…というわけで〜ステちゃんとキィちゃん呼んで来てくれる?ステちゃんには晩ごはんのお手伝い、キィちゃんはお風呂まだだから、お願いできる〜?」

 

「うん!わかった。……え~とプルルートさん」

 

元気が良い返事。……あれ、困り顔でこっちを向いて来た…

 

「なに〜?」

 

「ステマックスさんとビッキィのお部屋ってどこかな?僕ここに来たばっかりだからわからないの」

 

……あ゛っ

 

「…ごめんね〜?……じゃあ、あたしと一緒にいこうか〜」

 

ぷるぅ…あたしのバカ〜…愛月君はここに来たばっかりなのに〜!

 

「ありがとう・・・ございます」

「…どうしたの?」

 

凄く不安そうな顔をしてる…しゃがみこんで、目を合わせるようにして…やっぱり不安そう。

 

「僕・・・ちゃんと元の世界に帰れるのかな?」

 

「…大丈夫」

 

体震えちゃってる……怖いんだね。愛月君の手をギューってして、怖い気持ちがなくなるようにしなきゃ。

 

「きっと元の世界に帰れるよ。…絶対に帰してみせるから」

 

ぐーたらとかみんなから言われちゃってるあたしだけど、それでも女神だから。

 

「プルルート・・・お姉ちゃん」

 

わわっ、抱き着いてきて泣いちゃった。…やっぱり怖いよね…。

 

「一つ・・・お願いがあるの・・・いい?」

 

「なぁに?」

 

キィちゃんにしてあげてるみたいに、愛月君の頭を撫でていたら泣き止んだ愛月君が顔を上げて、お願いを言ってくる。

 

「ここにいる間【お姉ちゃん】って呼んでもいい?」

 

「…いいよ」

……弟まで出来ちゃった。…後でベールさんに自慢しよーっと♪

 

「ありがと・・・お姉ちゃん」

 

…ふふっ、可愛い笑顔。甘えてくる時のキィちゃんみたい。

 

「よ~し、キィちゃん達を迎えに行こう?愛くん」

 

【女神移動中】

 

まずはステちゃんのお部屋にとーうちゃく〜♪

 

「着いたよ〜!」

 

「ここは誰のお部屋なの?」

 

「ステちゃんのお部屋だよ〜」

そう愛くんに伝えながらドアにぶら下がってる、ステちゃんの名前が入ったプレートを見せる。

 

「ステマックさんのお部屋・・・どんなふうになっているんだろ?」

 

…割と普通のお部屋だよ?

 

「ステちゃ〜ん、いる〜?」

 

ドアを、トーントント〜ン♪

 

「いるで御座る。時間的に夕飯の手伝いで御座ろう?」

 

流石ステちゃん察しがいい!

あれ?愛くんったら、ドアの隙間で覗き見しようとしてる。

……そんなにステちゃんの部屋が気になるのかな?

 

「……気になるなら入るで御座るよ」

 

「いいの!?!?わぁ~い」【笑顔で部屋に入る】

 

「……元気な少年だ」

 

そうだねぇ

 

「ステちゃん、ちゃんと手伝いしてね〜?」

 

「勿論で御座る」

 

「おぉ~かっこいい!!!」

 

ステちゃんの部屋って本棚に机にゲーム機と、割と普通なんだけどなぁ…ロボットのお部屋ってだけでわくわくしちゃうのかな?

 

「そんなにで御座るかなぁ…普通なんだけどな…」

 

「もしかしたら・・・この本棚が隠しスイッチになったり」

 

……その発想はなかった〜、ということはもしかして〜?

 

「いやいや。そんな事ないで御座るからね」

 

「ベッドの下に、エッチな本とか〜?」

 

金髪巨乳系かな?原作的に考えてっ!

 

「子供の前でなんて事言うで御座る!?」

 

あいたっ!?…ぷるぅ、何もハリセンで叩かなくてもぉ〜… 。

……それにそのハリセンどこから出したの?

 

「ないのか・・・残念」

 

「……ではビッキィの部屋に行こう」

 

残念がっちゃってる、愛くん。

ロボットなのにわかるくらい、なんとも言えない顔をしながらそれを見るステちゃん。

…ちょっと申し訳なくなってきちゃった…

 

「はーい。愛くん、行くよ〜」

 

「はぁ~いお姉ちゃん」

 

「……お姉ちゃん?」

 

お〜、やっぱり気になっちゃうよねぇ〜♪

 

「えへへぇ〜」

 

「……そういう事か」

 

あ、あたしと愛くん見て納得した。うんうんって頷いてるし。

 

「じゃあビッキィのお部屋に案内して~お姉ちゃん・お兄ちゃん」

 

……おお、ステちゃんをお兄ちゃん呼びした〜!

ステちゃんすごい驚いてる。…ロボットなのにすごい表情豊かなんだよね、毎日見てて飽きないよほんとにね。

 

「んなっ…!?」

 

「うん、いこー!」

 

【ビッキィの部屋】

 

「着いたよ〜、キィちゃん、いる〜?お風呂だよ〜」

 

トントントン♪ドアをトントントン♪…反応がない、寝ちゃってるのかな?

 

「ビッキィ、起きてるで御座るか〜?」

 

「んゅ…わかったぁ…」

 

…やっぱり寝ちゃってたんだね。あくびしてるし、寝起きだからか、すごい眠そう。

 

「ビッキィ……眠そうだけど大丈夫?」

 

「へいきぃ…わたしもお風呂入りたい…」

 

「うん足元に気をつけて行って来てね。」

 

…うーん、心配。すっごく、心配。

お船漕いじゃってるし、あのまま1人で入っちゃったら浴槽の中で寝ちゃいそう…

むむむむむ…!…思いついたっ!

 

「あ、そうだ!」

 

「いきなりどうしたで御座る?」

 

「うみゅ…?」

 

「どうしたの?お姉ちゃん」

 

「愛くん、キィちゃんと一緒にお風呂入らない?」

 

これがあたしの思い付きぃ…!

 

「ぶっ…!?」

 

「ふぇ…?」

 

「ふぇ?僕とビッキィが一緒に入るの?」

 

ふふっ、2人共、ふぇ?って言ってるかわいい。……おっといけないいけない、話が脱線しそうになった。修正しなきゃ。

 

「うん。今のキィちゃん一人だけお風呂に入れるの危ないから…あたしとステちゃん、晩ごはんの支度しないといけないし…」

 

「うん……分かった。一緒に行こう?ビッキィ」

 

これがあたしの秘策。子供同士だし、愛くん結構しっかりしてそうだし大丈夫だよね。

 

「いや、ぷるるん殿?」

 

「うーん、いいよぉ…」

 

ご覧、読者の皆……ねむねむキィちゃんだよ(カ○ト感)

 

「僕、場所分からないから案内してくれる?」

 

「いいよ~」

 

二人共いってらっしゃーい!

 

「お兄ちゃん許しません!許しませんからね!?男の子と一緒にお風呂なんてふしだらな…」

 

……うるさいなぁ。

 

プルルート「ステちゃん?」

 

いっけなーい、うるさすぎてむかついちゃった。――ぬ い ぐ る み の 首 が 落 ち ち ゃ っ た よ 。

 

「ひえ…」

 

「わ か っ た ?」

 

「ひゃい…」

 

ふふっ、お利口さんだねステちゃん。

 

「お風呂、こっちぃ…」

 

愛月「はーいじゃあお姉ちゃん、お兄ちゃんお風呂入って来るね〜♪」

 

流石男の子。ちゃんとキィちゃんをエスコートしてあげてる。……お風呂あがってる頃にはさっぱりして起きてるといいなぁ…さてと、あたし達も晩御飯の支度しなきゃ!

 

「いってらっしゃ~い!…ステちゃん、あたし達も晩ごはんの支度しよ!」

 

「了解で御座るぅ…」

 

今日は張り切って唐揚げとか作ろうかなぁ~♪

 

【ビッキィ視点】

 

ふわぁ~…してんかわって、ビッキィでーす…ねむい。

 

「ここがおふろばぁ…」

 

「広いんだね〜。ビッキィ……お風呂の中で寝ないでよね?」

 

「わかってるよぅ…」

 

あいつき、しんぱいしすぎぃ…。…シャツぬいで、スカートもぬいで…

 

「ならよかったけど寝ちゃいそうになったら一言言ってよね?」

 

ビッキィ「はーい…」

 

ふくぬぎおわり~おふろばにれっつごー…。

 

「じゃあ〜入ろっか?」【ビッキィの手を取りながら】

 

あ、てをにぎられた…おんなのこみたいなきれいなて…ちょっとうらやましい。

 

「おーけー…」

 

「はふぅ……」

 

「気持ちいいねぇ〜」

 

きもちぃぃ…!さっぱりしたからかな?目が覚めてきたビッキィですはい。

 

「そうだ、ビッキィ〜ひとつ言い忘れていたんだけどいい?」

 

んん~?なんだい、愛月。

 

「3日間よろしくね。ビッキィ」

 

……急に改まってどうしたのかと思ったら、それか~。

 

「……こっちもよろしく」

 

――それはむしろこっちのセリフだよ、愛月。

というわけで愛月と楽しく談笑しつつもお風呂を終わらせて、着替えも済ませて(愛月の替えの服は偶に泊まりに来るミライがおいていったのを貸してあげた)

 

【ビッキィ視点】

 

ひきつづき~♪わたしのしてん~♪

ごーはん♪ごーはん♪今日はなーにかなー♪

 

「プルねえさん、ごはん出来た?」

 

「出来てるよ〜、もうテーブルに置いてあるから食べよ〜!」

 

「ビッキィ大丈夫か?何かされなったか?お前はかわいいからお兄ちゃんとってもしんぱ…」

 

やったぁ!おてて洗わなきゃ!(ステマックスの言葉?聞こえませんね)

 

「愛月!ごはん食べよ!」

 

「うん♪もうお腹ぺこぺこだよ〜」

 

せやろ…せやろ…(謎の関西弁)

 

「張り切ったよ〜」

 

「来ました〜(*^_^*)」

 

張りきったか~♪へへっ、めっちゃ楽しみ。…あ、いーすんさんお帰り~!

 

「イストワール、お帰り〜!」

 

「トホホ…最近妹分が冷たい…」

 

「わぁ!今日は白米と唐揚げとサラダにとん汁!」

 

わたしの好物オンパレードだ!待ちきれないっ、早く食べたい!

 

愛月「わぁ〜すっごい美味しそう♪♪♪」

 

「でしょ〜?プルねえさんの料理ほんとにおいしいよ!」

 

これを残さず毎日食べていればわたしは将来ナイスばでーなレディに…!

 

愛月「そうなの!早く食べようよ〜」

 

ふっ…愛月も待ちきれない様子。

 

「それじゃあ、みんな座って〜!」

 

「はーい!」

 

プルねぇさんの号令の下、返事をするわたし達(勿論愛月も含むよ!)

 

「あ、拙者は、エネルギーパック(レギュラー)で御座る」

 

紫色で四角形のエネ○ゴン…げふんげふん、エネルギーパック。ハイオクとかもあるらしいよ!どうでもいいけど。

 

「おぉ〜お兄ちゃんの食事はそれなんだね……かっこいい」

 

え。かっこいいかこれ…?

 

「そうで御座るか?男の子は皆ロボットが好きで御座るな〜」

 

「うん!僕の世界にロボットなんていないからとっても興味あるんだ〜」

 

ス「……なるほど。そうで御座ったか。ゲイムギョウ界には拙者のようなロボットは別段珍しくないで御座るよ」

 

ルウィーの女神のブランさんと長い付き合いらしいコピリーエースとか、ステマックスの友達のアフィモウジャスおじさんの住んでるリーンボックスとかね。

結構いるんだよね、ステマックスみたいなロボット。

 

「そうなんだ〜色々と見て回るものがいっぱいあってちょっと困るなぁ〜」

 

「…何、3日もあるからゆっくり回ればいいで御座るよ」

 

「うん!Ψ( 'ω'* )いただきま〜す」

 

うん、ステマックスにわたしも同意。あとそろそろ食べよう。せっかくのごはんが冷めちゃう。

 

『いただきます』

 

またしても声を揃えるわたし達。食べるぜヒーハー!

 

【全員食事中】

 

「……ふぅ〜食べた、食べた!」

 

愛月「はふぅおなかいっぱい(*≧∀≦*)」

 

「お粗末様〜!」

 

へへっ…とん汁3杯もおかわりしちゃったぜ…おなかたぷたぷだーい…。

 

「……補給完了。…拙者部屋に戻って寝るで御座る。おやっ!」

 

炭火焼きっ!…やめよう、なんかわたしが食いしん坊みたいだから(※まごうことなき事実です。by作者)

 

「すみっ。イストワールは?」

 

「私もそろそろ…おやすみなさい(´・ωゞ)」

 

お疲れ様です、いーすんさん。おやすみなさい!

 

「おやすみ〜」

 

「おやすみなさ〜い」

 

「わたしたちもねよ…愛月、一緒に寝る?」

 

部屋余ってるけど、そうした方がいいかな?お風呂にも一緒に入ったし

 

「ガタッ」

 

「ステチャン?」

 

「…オヤスミナサイ」

 

……私は何も見てない聞いてない。ホントダヨ。

 

「うん分かった。お姉ちゃんおやすみなさい」

 

プルねぇさんついでにステマックス、おやすみなさい~!

 

「おやすみ〜」

 

「いこー!」

 

「うん♪行こ」

 

【少年少女移動中】

 

 

「はい、いらっしゃい」

 

愛月をわたしの部屋に招き入れる。…ぬいぐるみが飾ってある棚と本が入った棚、上にベッドがついた一体型の勉強机。これが私の部屋。

 

「あっぬいぐるみだぁ〜可愛い〜これ誰が作ったの?」

 

「全部プルねえさんが作ってくれたんだ。」

 

愛月、ぬいぐるみが気になるご様子。説明しながらわたしはぬいぐるみを手に取る。デフォルメされたフェンリルのぬいぐるみ。わたしの一番のお気に入りだ。

 

「そうなんだ〜僕も明日作り方教わろっと。」

 

「愛月もぬいぐるみ作るの?」

 

お、小さなぬいぐるみをポケットから取り出した。一目見てもわかるくらいいい出来栄えだ。

 

「うん♪まだまだ下手な方だけどね」

 

「……全然はそうは見えないけど…?」

 

じーっと見ればわかるけどこれ普通にお店で売られてもおかしくないクォリティしてるよね…?

 

「ふわぁ〜そろそろ眠くなってきた(っ﹏-๑)」

 

「……うう…わたしもまた眠くなってきた…ベッドにいこー…」

 

愛月見てたらまた眠くなってきちゃったよ…あんなに寝てたのにな~…。

 

「そうだね〜おやすみ〜ビッキィ」

 

「おやすみ、愛月」

 

電気を消して、二人まとめてお布団被って、おやすみなさ~い。……スヤァ。

 

 

 

 



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コラボ回!激爪と愛月、ふつかめっ!

毎度書き方変わる作者で申し訳ないですが、今回は三人称です。
しかもめっちゃ長くなった……


 〜翌日〜

 

「……愛月、愛月……朝だよ? 起きて」

 

「うにゅ…後50時間…」

 

 神次元に落っこちてきた少年、愛月を自身の部屋に招き入れたビッキィは眠気がまだ残って居るものの、起きてその隣で寝ている愛月を起こそうと自身の眠気を堪えながら寝そべった状態で愛月の肩に触れ、強めに揺らすも寝ぼけている愛月は寝すぎだろと突っ込みたくなる寝言を言いながら一緒に被っていた布団を全て奪い、潜る。

 

「……むぅ。お・き・ろ〜〜っ!」

 

 そんな寝坊助に痺れをきらし、ビッキィはほほをぷくぅと膨らませると愛月から布団をひっぺがして自身も潜り、両手で愛月の腹を思い切りくすぐり攻撃をおみまいする。

 それを食らった愛月はまるで女の子のような悲鳴を上げた。

 

「きゃっ!? ……悲鳴が女の子みたい…」

 

「うぅ…ビッキィ~~急にくすぐるのやめてよぉ~~」

 

 そんな愛月の悲鳴を聞いてしまい、ビッキィは思わず両手で耳を塞ぎながら驚いてしまう。

 急にくすぐられた愛月は泣きべそをかいて苦言をもらしながら起き上がる。

 

「ごめんごめん。……だけど起きようとしない愛月も悪いよ?」

 

「それはそうだけど…くすぐり弱いからやめてよね?」

 

 謝りながらも、起きないのが悪いと考え、ビッキィはそう言う。

 それを指摘された愛月は申し訳なさを感じるが、それでもくすぐりは弱いから止めてと伝える。

 

「はいはい、もうやらないよ。……プルねぇさん達のとこ行こう?」

 

「はぁ~い♪」

 

 二つ返事をしながら、ビッキィはいまだにベッドの上にいる愛月へと手を差し出して1階のリビングで朝食の用意をして待っているであろう姉達の元へと行こうと伝えると寝起きのせいか愛月は普段以上にかわいらしい笑顔で返事をして差し出された手を取り、そのまま手を繋いで共に部屋を出てリビングへと向かう。

 

 ───────────

 

「……愛月本当に男の子?」

 

「もぉー! ちゃんと男だよ!! 僕は!!!」

 

 仲良く手を繋いでリビングへと向かう途中、ビッキィは先程見た、愛月のかわいらしい笑顔を思い出しながら一緒にお風呂に入っていたにもかかわらず、そんな事を訊く。

 それを聞いた愛月は流石にむっと来たのか、ほほをぷくぅと膨らませながら、声を上げて自分は男だと主張する。

 

「いやだって、顔といい、仕草といい……わたしよりも女の子してるよ…?」

 

「だからと言って僕で遊ぶのはやめてよね?」

 

 先程の自分の様な仕草に思わずくすりとしそうになったビッキィはそれをなんとか堪える。

 しかし男の子にも関わらず、自分以上に女の子している愛月に若干凹みながら、そう言うと愛月はそれでも自分で遊ぶのはやめて欲しいと伝える。

 

「はいはい。……あ、着いた。プルねぇさーん!」

 

「はーい! ご飯出来たよー!」

 

 それを二つ返事して聞きながら、姉達のいるリビングへと着く。そこにはやはり待っててくれていたプルルートと、既に朝食の置かれたテーブルに着席している、ステマックスとイストワールに出迎えられる。

 そんな朝食の内容はこれだ。

 洒落たデザインのバケットの中に焼きたての素晴らしい出来栄えの手作りパンが幾つかあり、更にロボットであるステマックス以外の人数分の目玉焼きにウィンナーが乗った皿がテーブルの上に並べられている。

 それを見て食欲をそそられた2人はおはようと返事をしながら席につき、全員で手を合わせながらいただきますといってから朝食を食べ始めるのだった。

 

 ───────────

 

「ごちそうさまでした!」

 

「お粗末様〜♪」

 

 朝食をそれぞれ食べ終え、愛月以外はほとんど同時にご馳走様を言う。

 そんな仲のいい家族を見てプルルートは嬉しそうに微笑みながらお粗末様を言って食器を片付ける為に椅子から立ち上がり、自分の食器をキッチンと一体化されている流しへと運んでいく。

 

「ごちそう様! それにしても…はぁ」

 

「どうしたの?」

 

 マイペースに食べていた愛月も少し遅れて食べ終わり、手を合わせてご馳走様を言う。しかしそのすぐ後、なにやら気落ちした様子で溜息をついてしまう。

 皿洗いを始めているプルルートのいる流しへ自分の食器を纏めて運んでいるビッキィはそんな愛月の様子が気になって、自分の食器を皿洗いを夢中でしているプルルートにお皿ここに置いておくねと伝えて、愛月の方へと向かい、どうしたのかと訊いてみる。

 

「食後の運動がてらランニングしてくるで御座る」

 

「わたしもすぐに調べ物に戻ります∠( ̄^ ̄)」

 

「行ってらっしゃ〜い」

 

 そんな2人をよそに、日課と仕事をしに行くステマックスとイストワール。

 いつもの日課へと向かう2人をプルルートはいつものように手を振って見送ると、ビッキィから離れた愛月が後ろから近づいて話しかけて来て、急にどうしたんだろうと思いながら後ろを向いて膝を曲げて愛月と目線を合わせてどうしたのかと訊く。

 

「聞いてよお姉ちゃん! さっきビッキィがね」

 

「あらまぁ〜。……キィちゃん?」

 

 プルルートに促され、愛月は先程自分がビッキィにされた事を伝える。──かなり根に持っていたようだった。

 それを聞いたプルルートも流石にやりすぎだと判断したのか、ソファーにのんびり座っているビッキィの名を呼びながら視線を向け、睨みつける。

 

「だってあと50時間とか言うんだよ? 寝すぎでしょ……」

 

「それでもやりすぎだから駄目」

 

「…うっ……はい、反省します……愛月もごめんなさい」

 

「うん…次からはやめてね」

 

「わかった」

 

 睨みつけられたビッキィはバツが悪そうにプルルートに言い訳をするが、でもやりすぎだから駄目とバッサリ切り捨てられ、流石に観念して反省の言葉を口にしながら愛月に謝罪する。

 ビッキィの謝罪を聞き入れ、了承しながらも再三の注意をする愛月。

 それを複雑な心境を残しながらもビッキィは注意を聞き入れ、勢い良く頷いて了承した。

 

 ───────────

 

「あっお姉ちゃんちょっといい?」

 

「なぁに〜?」

 

「僕もぬいぐるみ作ってるから一緒につくろぉ~」

 

「いいよ〜♪」

 

「やった~~~」

 

 朝から少しトラブルがあったものの、その数分後には穏やかな雰囲気となっていた。

 プルルートはのんびりと皿洗いをしていたところに愛月が声を掛けてくる。どうやらぬいぐるみを共に作らないかという誘いらしい、唐突に誘われたプルルートは一瞬困惑しながらも、そう言えばキィちゃんの部屋で寝てたっけと思い出して、ならおそらくビッキィから聞いたのだろうと思い至り、いいよと了承する。

 了承を受け取った愛月は嬉しそうに喜んでいる。

 

「……」

 

「あっお姉ちゃんせっかくだからビッキィのぬいぐるみ作りたいな」

 

「いいよ。……キィちゃんも呼んでいい? ああ見えて寂しがり屋さんだから」

 

「わかった♪ ねぇそこでそっと見ている人こっちにおいでぇ~」

 

「……え、なに?」

 

 ソファーに座りながら、そんな2人を複雑そうにじっと見つめるビッキィ。自分も混ざりたいと思っているものの先程の事があるからか、気まずさが尾をひいていしまっていた。

 隠しもしないその視線に勿論気づいていた2人は小声で互いの主張を伝えあう。片や、せっかくだからとビッキィのぬいぐるみを作りたいというのと片やそれなら誘って一緒に作ろうというものだ。

 後者の、プルルートの提案ににんまりとしながら賛成して、愛月は早速ビッキィに話しかける。

 2人が小声で話し合っている様子も見ていたビッキィはいきなりおいでと話しかけられた事に困惑してその場から動けないでいた。

 

「ほら! ビッキィこっちにおいでよ」

 

「え、ちょっとなに!?」

 

「お姉ちゃ~ん連れてきたよ~~」

 

「お疲れ様〜♪ ……キィちゃんも一緒にぬいぐるみつくろ?」

 

「え!? …………わかった」

 

「よぉーしがんばろぉ~~♪」

 

「おー!」

 

「お、おー…?」

 

 愛月はそんなビッキィの様子にお構い無しとばかりに手を取り、プルルートの元へと引っ張っぱろうとする。

 いきなり引っ張られたビッキィは驚き、しかし抵抗することなく引っ張られていく。

 そうして愛月はビッキィをプルルートの元まで引っ張り、連れてきたとプルルートに伝える。

 愛月に労いの言葉を掛けつつ、ビッキィの先程の愛月のようにビッキィと目線を合わせながら一緒にぬいぐるみを作ろうと誘う。

 いきなりの事が多くて困惑するしかなかったビッキィだったが、素早く頭の中で状況を整理し1分も経たないうちに了承する。自分も混ざりたいと思っていたから、本人的には普通に嬉しい事だ。

 了承の返事を聞いた2人は手をあげて気合いを入れるようにおーと言い、ビッキィも戸惑いながらも少し遅れておーと言った。

 

 ───────────

 

 暫く真剣にぬいぐるみを作っていた一同だったが、いつの間にかビッキィがプルルートの膝上に体を丸めて寝てしまい、それには流石のプルルートも作業を止めて苦笑い。

 しかし愛月は先程の仕返しとばかりに笑顔を浮かべながらビッキィの脇腹を両手でくすぐりだした。

 

「ありゃ? ビッキィ寝てる…さっきの仕返ししてもいいよね? おりゃ~!」

 

「すぴー…。……あははは、ちょっなにっ!? や、やめ…あははは!」

 

 そのくすぐり攻撃に体を丸めて、さながら猫のような姿勢で気持ち良さそうに寝息をたてていたビッキィもこれにはたまらず起きて、大笑いしながらくすぐり攻撃に対してじたばたと抵抗する。

 

「さっきの仕返しだよ! ビッキィ

 

「うぅ……何も言い返せない…」

 

「ふふっ…」

 

 仕返し。それを言われた瞬間、言い返せなくて抵抗がなくなりビッキィは大人しくなる。

 自分の膝上でそんなことをやっている2人に怒ること無く、プルルートは見守ってあげている。

 

「あははやった~そしてこっちも完成したよぉ!」

 

「ぶっ!? ……わ、わたし?!」

 

「そうだよぉ~かわいいでしょ」

 

「自信作だよ〜♪」

 

 ようやくくすぐり攻撃を止めてくれた愛月に、ほっとするビッキィ。しかしそれも束の間、愛月が完成したと見せてくれたぬいぐるみを見た瞬間、ビッキィは思い切り吹き出した後、顔がまるでトマトのように真っ赤に染めていく。

 

「……あ、ありがと…」

 

「ビッキィ照れてるかわいい~~」

 

「〜〜! わたし、ランニングしてくる!」

 

「わぁ!? ……もう照れ屋さんなんだから…」

 

 嬉しいような、恥ずかしいような。そんな心境でトマトのように顔が真っ赤になりながらぬいぐるみに対して礼を言うビッキィ。しかし、そこから愛月からのかわいいという追い討ちにあっさり限界を迎えてそのまま立ち上がってランニングへと向かうと言って、そのまま走り去っていく。

 そんなビッキィに相変わらず照れ屋さんだなぁと思いつつ、苦笑いするのだった。

 

 ───────────

 

「あっぬいぐるみを作る材料無くなった。一緒に買いに行く? お姉ちゃん」

 

「いいよ? いこいこ〜!」

 

「わぁ~い!」

 

 ビッキィが恥ずかしさで走り去ってからしばらく経ち、ぬいぐるみを作り続けていた2人だったが材料がなくなってしまい、それに気付いた愛月が材料を買いに行こうとプルルートに提案。その提案を快く承諾して、喜ぶ愛月と手を繋ぎながら商店街へと向かう。

 

「こっちだよ〜」

 

「わぁ~色んなお店があってにぎやかだね~お姉ちゃん」

 

「皆元気一杯だからね〜」

 

「そうだねぇ~…あれ?」

 

 愛月の手を引きながら結構年季の入った商店街を歩くプルルート。

 賑やかで活気のある商店街に思わず目移りしたように周りを見渡す愛月。プルルートはそんな愛月にこの国の女神として誇らしげにしながらそう言う。

 相槌を打ちながら、周りを見渡し続ける愛月。ふと路地裏に目を向けると、なにか大きなネズミのぬいぐるみが落ちているのが目に入った。

 

「愛くん、どうしたの?」

 

「あそこにぬいぐるみが落ちているのちょっと見てみる」

 

「…ぬいぐるみ? ……プルッ!? あ、あれって……」

 

 路地裏をじっと見つめる愛月にどうしたのかと声を掛けるプルルート。プルルートの言葉に対してぬいぐるみが落ちているからちょっと見てくると行ってプルルートの手を離して愛月は路地裏に向かっていく。

 路地裏にぬいぐるみ。捨てられた物かなと思いながら愛月が向かった路地裏の方へと目を向けるプルルート。しかしそこに落ちていたのはぬいぐるみではなく、見覚えのあるネズミだった。驚きながら声を上げ、慌てて自分も行かなきゃとプルルートもその路地裏に向かっていく。

 

「あの…大丈夫ですか? ねずみさ~ん」

 

「チュ…こ、ここは…? オイラは一体……??」

 

 ぬいぐるみの落ちている路地裏に着いた愛月。しかしよく見てみればお腹が動いているのでぬいぐるみではなく生き物だと言う事に気付き、心配しながらおそるおそるその黒いネズミをつつき始める。

 つつかれたネズミ…ワレチューは閉じていた大きな目を開け、目覚める。

 

「ねぇ大丈夫? 生きてるのねずみさん」

 

「生きてるっチュ……だからつつくなっチュ……」

 

「なんだ、残念〜」

 

 目が覚めたネズミに対してつっつくことを止めず、割と酷いことを言いながら話しかける愛月に、思わず額に青筋を立てながらも生きてるからつつくのはやめろと言いながらワレチューは起き上がる。

 そんなワレチューを見て、残念そうに呟くプルルート。

 少し遅れて到着したようだ。しかしどうやら起きなかったら踏み付けるつもりだったようで、それに気付いていたワレチューは内心セーフとほっとする。

 

「良かった~それにしても君は誰なの? ずいぶんふわふわしてるけど」

 

「ふわふわってなんだっチュ…オイラの名前はワレチュー!」

 

「ワレチューさんっていうんだ。僕は愛月よろしくねっ!」

 

「チュっ!? 何気安く抱きついてるっチュ!? 離せっチュ!?」

 

 ふわふわと感想をしながら誰なのかと訊く愛月に対して、ツッコミを入れながらワレチューは自身の名をたからかに名乗ると同時に、さの背後からワレチューとデカデカと描かれた謎の巨大フォント(※イメージです)が現れる。

 しかし愛月はそれを意に介さず、ワレチューを抱きしめてそのふわふわボディを堪能し始める。

 当たり前だが、いきなり抱きつかれたワレチューは困惑。

 しかしすぐに気安く抱きつくなと抵抗を始める。

 

「ほわぁ~とってもふわふわしてる~~抱きごごちさいこぉ~!!!」

 

「話を聞けっチュ〜〜〜!」

 

「お姉ちゃん! ワレチューさんとってもふわふわしてて気持ちいいよ!」

 

「知ってる〜!」

 

「チュ〜〜〜!?」

 

 しかし愛月はやはり意に介さない。話を聞けと声を出すワレチューの抵抗むなしく、そのふわふわボディを堪能され続けている。

 ワレチューの抱き心地を堪能しながら、愛月はプルルートに自分の感想を言う。それに対してワレチューとそれなりに付き合いの長いプルルートは、さも当然のように知ってると言い放つ。

 ワレチューの叫びが路地裏に木霊するのだった。

 

 ────────────

 

「あっそうだ! 少しゴメンね」

 

「な、何をするっチュ……?」

 

「ぬいぐるみ作るためにちょっとね」

 

「ぬいぐるみ? …まさかオイラの?」

 

 そうしてしばらく抱きしめられていたワレチューだったが、急に愛月が何か思い付いたようでワレチューを抱き上げたまま、その体をくまなく調べ始める。

 急に自分の体を調べ始めた愛月にワレチューは困惑しながらも訊く。

 それに対して愛月はぬいぐるみを作る為だと答え、ワレチューはもしかして自分のぬいぐるみを作るのかとまた訊く。

 

「うん。このフォルムならかなり子供受けなかわいいぬいぐるみが作れるんだけど」

 

「なるほど、お前見る目があるっチュ」

 

(ネズミ嫌いなキィちゃんにも可愛がれられてるしね…)

 

 ワレチューのフォルムならかわいいぬいぐるみが作れるという愛月の言葉に、ワレチューは見る目があると関心しだす。自分のキュートなフォルムを褒められるのは素直に嬉しいからだ。

 そんな2人の様子をみながらプルルートはそんなことを思っていた。

 ──ビッキィはリアルネズミが苦手なようである。

 

「だからさ…いいよねぇ?」

 

「チュっ…!? ……わかったっチュ…」

 

「よぉ~し! お姉ちゃんちょっと待っててね!!」

 

「チュ〜〜〜!?」

 

「行ってらっしゃ〜い」

 

 一通り説明した愛月は何故か笑顔のまま、少し怖い口調でワレチューに問いかける。

 それを見たワレチューは愛月にドS女…プルルートを連想してしまい、思わず震えながら了承する。本人が近くにいるからか、より怖さ倍増である。

 了承を得た愛月は善は急げとばかりにワレチューを抱きかかえたまま、近くの編み物屋へと走っていく。

 そんな愛月に呑気に手を振りながら見送るプルルートであった。

 

 ────────────

 

「お姉ちゃんお待たせ~~~!!! 出来上がったよ!!!」

 

「チュ…チュウ…」

 

「お帰り〜」

 

 それから1時間後ににっこり笑顔の愛月と、それとは対称的に、やつれて疲れきった顔をしたワレチューが沢山の袋を乗せたカートを引いて戻ってきた。

 疲れきったワレチューの目には生気がない。それもそうだろう。普通に時間がかかった上にプルルートを連想してしまったばかりに必要以上に神経を尖らせてしまっていたのだ。哀れである。

 しかし原因のプルルートはそんなワレチューに目もくれず愛月にお帰りと言う。

 

「ありがとぉ~ワレチューさんのおかげでとっても良いものが出来たよぉ。あっお姉ちゃんにもあげる」

 

「わぁ、ありがと〜♪」

 

「チュ……オイラ、帰るっチュね…」

 

 そう言って愛月はプルルートに、よりかわいらしくデフォルメされたワレチューに似たぬいぐるみを手渡す。

 それを受け取ったプルルートは嬉しそうに抱きながら、愛月に礼を言う。

 そんな2人をよそに、すっかり疲れたワレチューはふらふらとしながら帰ろうとする。

 

「あっ待って」

 

「チュ?」

 

「記念写真♪ ありがとうね」

 

「わぁ…!」

 

「……お前女だったチュか?」

 

 しかし愛月は帰ろうとするワレチューを引き留める。なんだと振り向いたワレチューはその手にスマホを持った愛月に写真を取られる。スマホで撮った記念写真を見てワレチューに礼を言いながら微笑む姿は誰がどう見ても女の子である。

 それを見たプルルートは思わず声を出し、ワレチューは爆弾発言をかましてしまう。

 

「むぅ…僕は男だぁ!!!」

 

「チュゥゥっ!?」

 

「わぁ、相変わらずよく飛ぶ〜!」

 

 当然ながら女の子扱いされた愛月は怒りながら、強烈な平手打ちをワレチューにくらわせる。

 それを食らったワレチューは悲鳴をあげながら、まるでパラ○ク○に殴られたクロ○スのように横に回転しながら空へと飛んでいく。顔を見上げながらそれを見たプルルートは相変わらずよく飛ぶな〜と思うのだった。

 

 ────────────

 

「いけない、早くご飯作らなきゃ……」

 

「わぁ~~いい匂い♪」

 

「ぷるぅ? ……もしかして!」

 

「……お帰りなさい」

 

 買い物を終わらせた2人だが、色々あったからすっかり日が暮れてしまい、愛月の手を引きながら急いで帰宅する。

 頭の中で冷蔵庫の残りを思い出しつつ、献立を組み立てながら自宅であるプラネテューヌ教会の扉を開く。それと同時に香ばしい匂いがプルルートと愛月の鼻をくすぐる。

 2人の目の前にエプロン姿のビッキィが出迎えてきた。

 

「ビッキィにあってるよエプロン!」

 

「……どういたしまして。…りんごのリゾット作ったから手を洗って食べてね」

 

「はぁーい」

 

「……うん。ありがとう、キィちゃん」

 

 愛月はビッキィのエプロン姿を褒める。それを聞いたビッキィは表面上はなんでも無さそうで夕食を食べてねと催促する。しかし、嬉しそうな様子が隠せていなかった。

 プルルートは感慨深そうに夕食を作ってくれたビッキィを労うように頭を撫でる。

 

「ん……プルねぇさんも早く食べてきなよ」

 

「あっ忘れるところだった! ビッキィ~来てくれる?」

 

「…? なんだい、愛月」

 

「はい! これ」

 

 照れくさそうに、しかし嬉しそうに撫でられながらビッキィはプルルートにも食べてねと催促する。それを聞いたプルルートは頷きながら、一足先に手を洗いにリビングへと向かい、愛月もついて行こうとするがビッキィに渡すものがあるのを思い出し、手招きしながらビッキィを呼ぶ。

 どうしたのかと思いながらビッキィは愛月の元へと向かい、先程作ったワレチューのぬいぐるみを手渡される。

 

「…へ? なんでワレチュー??」

 

「買い物に行っている時にね」

 

「……ワレチューぇ……」

 

 渡されたぬいぐるみのデザインがよくナスを届けてくれるネズミに似ていて、思わず困惑するビッキィに、愛月は買い物の途中で起きた出来事を話す。それを聞いたビッキィは憐れんだ。いくら何でも不憫過ぎるからだ。

 

「はぁ~よかったなぁ、あの感触。…再現するの大変だった」

 

「再現度高すぎて笑うんだけど」

 

 愛月はワレチューのふわふわボディの感触を思い出しながら、その分再現するのが大変だったと言い、ビッキィは本物と寸分違わないぬいぐるみの感触に頑張りすぎでしょと苦笑いする。

 

「ねぇねぇこれさ商品として限定販売してもいいかな?」

 

「それは…イストワールさんに聞かないと…」

 

 愛月はこのぬいぐるみを限定販売できないかとビッキィに訊く。だが、当然ながらまだ子供のビッキィに決める権限はないのでイストワールに聞かなきゃと愛月に言う。(※プルルートでないあたり察して下さい)

 

「う~んよさそうと思ったんだけど」

 

「わたしもそう思うけど……って早く食べてきなよ」

 

「わかった~~」

 

 少し残念そうにする愛月を慰めるように自分としては凄くいいと伝えるビッキィ。しかし、話が夕食から脱線しているのに気付き早くご飯食べてきなよと愛月を再び催促する。

 2度の催促をされた愛月はのんびりとした返事をしながら、ビッキィと共にプルルート達の待つリビングへと向かうのだった。

 

 

 

 




今回1番の被害者はワレチュー。


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コラボ回! 激爪と愛月、みっかめ!

「スピ-…スゥ…スゥ…」

 

「…………どうしよう」

 

愛月が神次元に落ちてきて3日目。彼がここにいれる最後の朝だ。しかし彼は困惑していた。それはそうだろう。──なんせこの部屋の主であるビッキィに抱きしめられているのだから。

体を締め付けられる痛みに耐えながら、愛月は思う。

どうしてこうなった。

 

「……んん…おにく…♪」

 

「んぅ?はーい誰ですか〜」

 

ベタな寝言を言いながら、気持ちよさそうに眠っている。しかし、コンコンとドアをノックする音が響き、抱きしめられているままの愛月はほぼ反射的にノックをしたドアの向こうの人物に話しかける。ガチャりとドアを開けて出てきたのは──

 

「2人とも〜、朝ごはんできたよ〜?」

 

──プルルートだった。柔らかな笑みを浮かべながら気の抜けた声で朝食ができたので2人を呼びに来たのだ。

 

「お姉ちゃん〜ヘルプミー」

 

プルルートを見て、救いを求めるかのように手を伸ばしながら、愛月はプルルートに助けを求める。

 

「は〜い……ほら、キィちゃん起きて?朝ごはん全部食べちゃうよ〜?」

 

「うにゅ?朝ごはん、たべりゅ」

 

手を伸ばす愛月に苦笑いしながらビッキィを起こそうと鶴の一声を言うと、食い意地の張ったビッキィはその一声によってあっさり目覚め、愛月を解放する。

 

「ありがとお姉ちゃん………イテテ力強いよビッキィ」

 

「ご、ごめん…」

 

「別にいいよ。ふにゃ〜今日のご飯は何?お姉ちゃん」

 

体を伸ばしながらプルルートに礼を言った後ビッキィの方に顔を向いて愛月は咎めるように言う。

ビッキィの方も状況を理解したのか、申し訳なく感じて愛月に謝罪をする。謝罪を聞いた愛月はあっさり許すと、プルルートに朝食の内容を訊く。彼としてはそちらの方が重要らしい。

 

「朝ごはんはパンとスクランブルエッグだよ〜」

 

「……あれ、ステマックスは?」

 

「ステちゃんは先に下に行ったよ〜」

 

「じゃあ早く行って食べよ〜♪♪♪」

 

プルルートはいつも通りの笑みを浮かべながら朝食の内容を答える。ビッキィはキョロキョロと周りを見てから、ステマックスが居ないことに気付き、プルルートにどこか行ったの?と訊くとプルルートは先に下に行ったと答えてから、体をしゃがませてビッキィの目線に合わせてから今日はステちゃんが当番だよ。と伝えた。それを訊いたビッキィは、そういえばそうだったと納得するのであった。

 

────────

 

「あっお兄ちゃんᴳᴼᴼᴰ(≧∀≦*)ノᴹᴼᴿᴺᴵᴺᴳ」

 

「おはようで御座る。……やたらと英語の発言が良いで御座るな?」

 

先に下に降りてきた、愛月はエプロンをつけて皿に盛りつけた朝食をテーブルに並べているステマックスに挨拶をし、英語うまいなと続けて言う。

 

「勉強中なの、時々海外の人達とポケモンバトルするから。」

 

「……なるほど、頑張るで御座るよ」

 

「うん♪」

 

愛月から理由を聞き、激励しながら朝食を並べ終え、一息ついたとロボットなのに額を手で拭う。

 

「キィちゃん、あたし達蚊帳の外だね〜……」

 

「うん、そうだね……」

 

「皆さん、おはようございます(*´▽`)ノノ」

 

いつの間にか降りてきていたビッキィとプルルートは完全に蚊帳の外になっていたことに二人して泣きそうになっていた。そんな二人をよそに、イストワールが手を振って挨拶をして、リビングに入ってきた。家族全員集合である。

 

「あっおはようイストワールさん♪ お姉ちゃんビッキィごめんね。」

 

「大丈夫、気にしてないよ〜!」

 

「同じく。気にしなくていいよ」

 

「2人ともギューッ!」

 

「ぷるぅ!?……もう仕方ないんだから〜」

 

「おわぁ!?……びっくりしたぁ……」

 

いきなり愛月に抱き着かれ、おどろきながらも二人はおとなしく抱かれる。しかし、愛月の体は少し震えていた。

 

「……愛くん、どうしたの?」

 

「……愛月…?」

 

震えていることに気づき、ビッキィは不安げに愛月とプルルートを交互に見て、それとは対称的にプルルートは理由に心当たりがあるのか、愛月を優しく抱く。

 

「お別れするの・・・やだ」

 

「愛月……」

 

「……愛くん、あたしの話、聞いてくれる?」

 

どうやら別れることがつらくなったらしい。その言葉を聞いたビッキィはどうしようと頭を悩ませながらプルルートを見つめる。そんなビッキィの不安をなくすように、プルルートは笑いかけると愛月に自分の話を聞いてほしいと訊く。それを愛月は無言のまま、静かに頷きプルルートをじっと見つめる。

 

「このままここに残っちゃったら、愛くんはパパとママにずーっと会えなくなっちゃうよ?」

 

それを見てプルルートは口を開き、諭すように愛月に伝える。愛月の両親はまだ生きている。元々孤児で両親のいないビッキィと違って生きているのだ。だからこそプルルートは続けて言う。

 

「だから、わがまま言っちゃだめ」

 

「うん…………」

 

「それに、これでお別れしてもずっとじゃないよ。また会えるかもしれない」

 

「ほんと?またお姉ちゃん達と会えるの?」

 

「……愛月、イストワールさんは何が出来るか覚えてる?」

 

「えと………確か次元を調べてくれるんだっけ?」【唐突に聞かれたため少し困惑しながらも答えた】

 

「そしてこことその次元を繋げてくれるんだよ?……もうわかるでしょ?」

 

「じゃあ………来れるんだね。ここにビッキィ達のところに」

 

「まぁ愛月からは無理だけど、わたし達からなら…ね?イストワールさん」

 

「その通りです、仕事があるのでめったには出来ないですがっ(`・ω・´)」

 

「イストワールさん、ありがとうございます」

 

「どういたしまして(^ω^)」

 

そう、二度と会えないわけではない。場所さえわかればいつだってイストワールがそれを検知しゲートを開けることができる。勿論、基本的にイストワールは仕事が忙しいので滅多なことではできないが。

 

「つまり拙者達からなら来れるという事で御座る。…ささっ、早く朝ごはんを召し上がるで御座るよ!拙者が気合いを入れて作った1品で御座るからな!」

 

「はーい!」

 

「は~い!」

 

「わかりました(^_^)」

 

「はーい」

 

「では皆の衆…せーのっ!」

 

『いただきます((^▽^))』

 

あえて黙り、様子をうかがっていたステマックスが最後にざっくり説明し、朝食を食べるように催促。それを聞いた全員が着席し、最後に鵜着席したステマックスの言葉に合わせてほぼ同時に手を合わせていただきますを言うのだった。

 

────────

 

「お兄ちゃ〜ん」

 

「…む?どうなされた」

 

少ししんみりした事はあったものの、無事に朝食を食べ終えて、プルルート、ビッキィ、イストワールは1度自室に戻り、1人リビングに残ったステマックスは坐禅を組み、瞑想していた。否、1人ではなかった。リビングには愛月も残っており、瞑想していたステマックスに後ろから話しかけてきた。一体何用だろうと瞑想を解き、後ろを振り向いて訊く。

 

「一緒にさお散歩しに行こー!」

 

「散歩?拙者で良ければ構わぬで御座るよ」

 

「ありがとう〜じゃあさ、この〝オオトリン大森林〟ってところに行こー♪♪♪」

 

どうやら散歩の誘いらしく、ステマックスは自分で良ければ付き合うと答えて快諾を頂いた愛月は嬉しそうに声を弾ませながら散歩に行く場所を指定する。しかしその地名が間違っていた。正しくは……

 

「……愛月殿。正しくはオオトリィ大森林で御座る」

 

「オオトリィ大森林にお散歩しに行こ」

 

そう、オオトリィ大森林である。オオトリンでもなければグローバルフォレストでもない、オオトリィ大森林である。

そんな事を思いつつ、ステマックスは耳元で囁くように愛月かな間違いを振り向いて指摘する。地名を間違っていた気づいた愛月は顔を赤くしながら改めてオオトリィ大森林に散歩に行こうと誘ってくる。

 

「……御意で御座る」

 

そんな愛月を見ながらステマックスは内心苦笑いしながらも改めて了承したのだった

 

────────

 

【オオトリィ大森林】

プラネテューヌの近くにあるダンジョンであり、名前の通り大きな森林である。ダンジョンなのでモンスターが出てくる危険性があるが、森の入り口からその付近までは結界が張られており、可能な限りモンスターに襲われる危険性を排除しているからか、マニアックな散歩スポットとしても有名になっているダンジョンである。

 

────────

 

「着いたで御座る。ここがオオトリィ大森林で御座るよ」

 

「ほわぁ〜大きな森林だねぇ〜!」

 

そう説明をしながら目的地であるオオトリィ大森林に到着。

妹分であるビッキィと出会った場所でもある因縁の場所だが、今は愛月と散歩だ。複雑な気持ちは一旦置いて楽しむ事に専念しよう。ウキウキとはしゃぐ愛月を見ながら、ステマックスはそう考える。

 

「あまり、深い所には行っては駄目でござるよ?ここらへんは先程説明した通り、結界がある故あまりモンスターが出てこないから危険性はほとんど無いで御座るが、結界が張られて居ない奥は違うで御座るから」

念の為、愛月に一応の注意をする。何かあってからでは遅いのだ。

 

「はぁーい」

 

「よろしい。…行くで御座るよ」

 

愛月の返事を聞き、頷いた後に愛月と並んで歩き始める。散歩が始まった。

 

────────

 

「やっぱりお散歩は楽しいねぇ〜お兄ちゃん♪」

 

「うむ、散歩も偶には悪くないで御座るな」

 

石ころを蹴っ飛ばしながら歩く愛月とそれとは対称的に、丁寧に歩くステマックス。今の所はトラブルも無く順調に散歩が進んでいるようだ。

 

「あれ?なにかに当たっちゃった…。──なにか聞こえる?」

 

「……確かに羽音のようなものが聞こえるで御座るな」

 

愛月が石を大きく蹴っ飛ばした数分後…不気味な、それも1つ2つではない無数の羽音が聞こえてくる。何が来るのか分からない愛月は怯え、その愛月を庇うように前に立ち、ステマックスは刀と巨大な手裏剣を抜いて臨戦態勢をとる。警戒していた2人の元に現れたのは──

 

「Σ(っ゚Д゚;)っヒッ蜂!!!お兄ちゃん蜂・・・蜂が向こうからいっぱい飛んできたぁ!!!!!!」

 

「しかも多ッ!?──って愛月殿落ち着かれよ!?」

 

ハチ型モンスター(名前はない)だった。しかもやたらと数が多く、2人の回りを取り囲んでいく。

 

「お兄ちゃん〜…」

 

「落ち着かれよ、大丈夫で御座るから」

 

ハチ型が、というか蜂が怖いのか愛月は怯えながらステマックスに縋り付く。ステマックスは縋り付く愛月を片手で抱えながら安心できるようにと力強く言う。

 

「…大丈夫だ、オレが着いている」(俺1人であの量を捌けるか?片腕が塞がっていては印を結ぶ必要のある火遁等の忍術は使えない…どうしたものか…!)

 

しかしその内心は焦っていた。それもそうだろう、ステマックスの忍法は変わり身の術等の簡単な物を除けばほとんどが印を結ぶ必要があるのだから。

 

『──っ!』

 

しかし蜂型のモンスター達はそんな事お構い無しに集団でステマックスと愛月に襲いかかった

 

「舐めるな!〝風魔手裏剣〟ッ!」

襲いかかるハチ型に対してステマックスは自身のスキル風魔手裏剣を発動。

ステマックスのコントロール下に置かれた巨大手裏剣は通常ではありえない軌道でハチ型を数匹を切り裂いていく!

 

『──!』

 

蜂型のモンスター達は各方面から一斉に毒液を噴射してきた。しかも先程の一撃で学習したのか、巨大手裏剣を複雑な動きで避け切りながらだ。

 

「──ッ!…愛月、しっかり捕まってろ!」

 

「う、うん!」

 

愛月を抱えたまま、変わり身等を駆使して毒液を避ける。そして変わり身に使用した丸太には既に導火線に火がついたダイナマイトが!2人を逃がすまいと追跡しようとした瞬間、ダイナマイトが爆発。大部分が粉微塵となるが、それでも数は残っており、2人を追跡している。

 

「まだ残っているな…!」(……ダイナマイトはこれで終いだし、手裏剣は間違いなく避けられる。……接近戦は愛月が危険だ…どうする!?どうすればいい!?)

 

焦るステマックス。しかしその時だった、逃げる2人を蜂型のモンスターは追跡していたハチ型だったが何処からか音が聞こえた瞬間巣の方向に戻って行った。何かの命令が飛んだのだろう。

 

「……帰った…?」

 

「はち、もういない…?」

 

「居ないよ、もう大丈夫だ」

 

しかし愛月は恐怖から泣き出した。蜂が余程怖かったのだろう。

 

「ああ、泣くななくな、男だろ?」

 

泣き出す愛月を頭を撫でたりして慰めながらそう言う。

 

「うぅ怖かった………ほんと蜂怖い」

 

「……もうこのまま帰るか?」

 

「うん………帰る」

 

「良し、なら帰ろうか」

 

散歩を止め、そのままプラネテューヌへと歩いて戻っていく。

 

(イジェクトボタン持ってくればよかった……あと今度ギルドに間引きの依頼を出すか。あの数のモンスターが襲撃してくれのは危険だしな)

 

内心は大真面目に考えながらだ。それもそうだろう、客人を危険な目に合わせてしまったのだから。

泣き疲れたのか、腕の中で眠る愛月を見る度にステマックスはそう思ってしまう。

 

(……よほど怖かったんだな…しばらくおやすみ)

 

そうしてステマックスは愛月を抱き抱えたまま、プラネテューヌ教会へと帰還した

 

────────

 

「ただいまで御座る…」

 

「2人共、お帰り〜……どうしたの?」

 

バンダナにエプロン、そしてマスク。……いかにも掃除してましたと言わんばかりの格好をしたプルルートが2人を出迎えてくる。しかし2人の様子を見て、目の色を変えて剣呑な空気を出してステマックスに訊いてきた。

 

「いやぁ、まぁ色々あってな…そういえばビッキィは?」

 

「キィちゃんも掃除のお手伝いしてるよ〜!」

 

プルルートに事情を伝えたら、間違いなくあのハチ型は間引きどころか全滅間違いないのであえて曖昧に答えて、自身の腕の中で未だ眠っている愛月を1目見てから、プルルートにビッキィの所在を訊いてみると、どうやら一緒に掃除をしていたらしい。となると、おそらく今は別室か…とステマックスは予想して腕の中の愛月の頭を優しく撫でる。泣いていたからだろう。よく見れば目元が腫れてしまっている。

 

「愛くん、目元が腫れちゃってる……何があったか話してくれる?」

 

それに気付いたプルルートが笑顔でステマックスに再び訊く。……口元こそ笑っているが目は全く笑っておらず、威圧感が凄まじい。

 

「それは……」

 

人間だったら顔を真っ青にしているだろう威圧感に晒され、ステマックスは全てを話した。だって怖いから仕方ない。

 

「……あたし、ちょっとお出かけしてくるね〜?…大丈夫、すぐ終わるから」

 

事情を全て訊き、怒気を纏ったプルルートがエプロンとマスク、そして掃除用具を置いて急に出かけると伝える。

 

「ひぇっ……いってらっしゃい」

 

理由を察して内心ハチ型に同情しながらビビりながらプルルートを見送るのだった…

 

────────

 

「うにゅ………あれ?寝ちゃってた」

 

「おお、起きたか。」

 

「おはよぉ……お兄ちゃん。」

 

「ハハッ、おはよう。だがもう昼だ。」

 

「……あれ、ステマックス達帰ってきてたの?」

 

やっと起きた愛月はステマックスを見てから朝の挨拶を言う。しかしステマックスの言葉通り時刻はもう昼過ぎだ。

そんなやり取りをする2人にエプロン、マスク、手に掃除用具とプルルートと同じ格好をしたビッキィがリビングに入ってきた。

 

「ただいま……ビッキィ〜まだ………眠い」

 

「……ビッキィ、オレは昼食を作ってくるから、その間愛月を頼めるか?」

 

「……了解。ほら愛月こっちに来て、眠いならソファーで寝よう?」

 

言葉通りまだ寝足りない愛月は欠伸をしてゆらゆらと頭を前後に揺らす。

ステマックスは立ち上がり素の口調で昼食を作るからその間愛月を任せるように伝える。兄貴分が素の口調になっているのに困惑しながらも了承し、愛月を手招きしてソファーへと誘導する。

 

「うん……」

 

「……わたしも掃除してつかれちゃった…おやすみぃ…」

 

ビッキィに言われ、よろよろとした足取りでソファーに向かい、そのまま横になって眠り始めた愛月に釣られるように掃除の疲れを訴えながらビッキィもソファーで横になり、猫のように体を丸くして眠る。

 

「おやすみ2人共。……さて、昼はうどんにするか」

 

2人を見ながらそう呟くと早速小麦粉を取り出した。どうやら手打ちで作るつもりのようだった。

 

────────

 

 

「ただいま〜!」

 

「お帰りなさいで御座る。……2人を起こしてはくれぬか?」

 

時間が過ぎていき、清々しい程すっきりした顔をしたプルルートが帰ってきて、リビングへと入ってくる。

プルルートに気付いたステマックスはちょうどいいとばかりに出来上がったうどんをテーブルに並べながらソファーで眠っている2人を起こすようにプルルートに頼む。

 

「は〜い!……2人とも〜、起きて〜!」

 

「ふみゅ…にゃあ…ごはん…」

 

「うにゅ………ご飯………ふわぁ〜」

 

「ふわぁ〜……よく寝たぁ…」

 

「ほら、お昼はうどんだよ〜?」

 

「うん……」

 

「うどん………食べう」

 

「なら座ろうな。……ビッキィもだ」

 

「はーい……」

 

起こされた2人は寝ぼけながらも椅子に座り、ビッキィと愛月は美味しそうなうどんを見て

 

「美味しそ〜 」

 

「わたしも来ました〜(^ω^)」

 

「あ、イストワール。…これでみんな揃ったね。……せーの、」

 

『いただきます!』

 

イストワールも来て椅子に座る。そしてそのまま全員で手を合わせて挨拶をしてうどんを食べ始めるのだった。

 

────────

 

そうして昼食を食べ終えて……イストワールは仮眠しに自室へ、ステマックスも同じく、眠るために自室へと戻って、プルルート、ビッキィ、愛月の3人だけとなった。

 

「……あ、実はね〜?押し入れを掃除していたらこんなの見つけちゃったんだ〜!」

 

プルルートは懐かしむように笑いながら思い出したように大きなダンボール箱を運んでくる。

……ダンボールの上にはデカデカと〝びっきぃの!〟って書かれている。

 

「ぶっ……」

 

ダンボールを見て思わず変な声を出してしまう。

 

「どうしたの?ビッキィ〜変な声出して」

 

「いや、その、っていうかプルねぇさんそれ……」

 

「小さい頃のキィちゃんが大好きだったヒーローさん達のなりきりおもちゃだよ〜!」

 

ダンボール箱のガムテープを剥がしながらそう言う。その顔は満面の笑みを浮かべている。

 

「ヒーロー?」

 

「うぅ……」

 

どういうことかな?と首を傾げる愛月に、それとは対称的に顔を俯かせるビッキィ。恥ずかしいのだろう、顔が赤い。

 

「じゃじゃーん!」

 

そこに入っていたのは〇面ラ○ダーの変身ベルトである。どうやらビッキィは男の子みたいに特撮が好きだったようだ。

 

「〇面ラ〇ダー!?わぁ〜!!!すっごい!!!」

 

それを見た愛月が思わず大はしゃぎしながら声を出して喜ぶ。彼も男の子。やはり○面ラ○ダーは好きなようだ。

 

「ふふっ、懐かしい〜」

 

「……愛月めっちゃはしゃいでる…」

 

微笑みながら懐かしげにベルトをみる。ラインナップは様々で、最近の物から、所謂コンプリートセレクションまで揃っている。

 

「僕も好きだから!それにしてもうわぁ〜色んなベルトがある〜あっこれ僕が欲しかったやつだいいなぁー」

 

「それならおみやげで持っていく?…あとこれで少し遊んでもいいよ」

 

「いいの!?ありがとう〜お姉ちゃん!ビッキィ!一緒に遊ぼ♪♪♪」

 

「ゑ!?……いやその……」

 

ビッキィを誘いながら愛月はダンボールの中から3つのメダルとベルトを取り出す。

 

「うぅ…わたしもやる!」

 

そういいながら、目玉みたいなアイテムとベルトを取り出す。もうすぐ10歳になるとはいえ、まだ9歳の子供。誘惑には勝てなかったようだ。

 

「わはぁ〜!!!やっぱり〇ーズはかっこいい!次はこっち」

 

変身音を聴きながらそう言って次に取り出したベルトは、かなりメカメカしいベルトと今や懐かしのガラケータイプの携帯電話であった。

 

「マ○ト兄ちゃんはどうして、ああなんだろう…?」

 

どうやら持っていたのは○ーストではなくス○ク○ーな模様。

……次に取り出したのはベルトにブレス。そしてリバーシブルする仕様の大きめのミニカーだ。

 

「やっぱり僕はこのベルトかな〜」

 

『complete』とやたらネイティブな発音を聴きながらそう言って、愛月が取り出したのは蛍光色のドライバーとふたつのカセットのようなものだった。

 

「……ダーク○ライブはかっこいいよね。……次はこれにしよーっと」

 

続いてビッキィもそう言って次に取り出したのは剣を納めた鞘に、手帳型のアイテム

 

 

「やっぱエグゼ〇ドはいいなぁ〜」

 

「わたしは○リバーが好きです」

 

しかし彼女が持っているのは火炎○烈○だ。

 

「ビッキィ〜それならその剣じゃなくてこっちだよ〜」

 

そう言って禍々しい色の剣と手帳型のアイテムを取り出してビッキィに見せる。

 

「知ってる。偶には抜刀したいんだい」

 

だが偶にはこちらで遊びたかったようで照れたようにそっぽを向きながら言うのだった。

 

 



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コラボ回!激爪と愛月、エピローグ

そうして○面ラ○ダーごっこしながら遊び続けていた内に時が過ぎ、いよいよ愛月が元の世界に帰る時がやってきた。

プラネテューヌ教会にある、イストワールが操作する転送ゲートの前で全員が集まっている。

 

「…またね、愛月」

 

「またね、愛くん」

 

ビッキィは笑いながら、プルルートはルガルガンの、お手製のフレムのぬいぐるみを渡して頭を撫でながら、違いがあれど、別れを惜しんでいた。しかしステマックスだけは皆とは少し離れた場所で何らかのの準備をしていた。

 

「うん………ぬいぐるみありがとうお姉ちゃん。ビッキィ、お兄ちゃんもありがとう」

 

「また会おうね、今度はわたし達から会いに行く!」

 

「ぬいぐるみ大事にしてね。また、会おうね」

 

「……よし、準備出来た」

皆が会話している内にステマックスは何かの準備を終えたようだ。

 

「うん!絶対会いに来てね♪その時はみんなを僕が案内してあげる!!!」

 

「うんっ、その時はよろしくねっ!」

 

「時間出来たら絶対に遊びに来るからね〜!」

 

「皆、少し集まってくれないか?勿論、いーすん殿も」

 

各々が再会を約束する中、何かの準備を終えたステマックスが話しかけてきた。

 

「?どうしたの、ステマックス」

 

「ステちゃん?」

 

「ふえ?わたしもですか(・-・)?」

 

「お兄ちゃんどうしたの?」

 

「何、写真を撮ろうと思ってな」

 

皆がどうしたのとステマックスの方に向き、視線が集中する中、写真を撮ると答えた直後にステマックスの胸の装甲が左右に展開し、収納されていたインスタントカメラが露出される。

 

「!?」

 

「ステちゃん、いつの間にそんな機能つけたの〜?」

 

「ああ、さっきまで何をしていたのかと思ったらカメラの動作チェックをしていたのですね( ^_^ )」

 

「わぁ〜撮る撮る!!!」

 

ロボな兄貴分の唐突な新機能に困惑するビッキィ、全く気にも止めていなかったプルルート、疑問が解消され納得するイストワール、驚きもせず写真を強請る愛月と場は混沌となる。

 

「よーし、なら皆並んでくれ」

 

「?…??…あ、はーい」

 

「そうなんだ〜!あれ?これじゃステちゃん撮れないよ?」

 

「大丈夫、問題ない。取り外せるからな」

 

「ロボットって便利ですよね(^_^)」

 

写真を撮るためにわちゃわちゃする一同。なんとも微笑ましい光景である。

 

「ビッキィ〜こっちに寄ってーお姉ちゃんもこっちこっち」

 

「へ?…あ、うん…」

 

「は〜い」

 

「はい(*^^*)」

 

未だにビッキィだけは困惑したままだったが、愛月に声をかけられ我に帰ってプルルート、イストワールと共に寄っていく。

 

「皆準備出来たか〜?」

 

「バッチリ!」

 

「同じくバッチリ」

 

「大丈夫、問題ないよ〜!」

 

「大丈夫です(`・ω・´)」

 

ステマックスの声掛けにそれぞれ準備完了と返事をする。

それにしてもこのロボ、完全にござる口調が崩れて素に戻っているがちっとも気にしてないようだ。

 

「なら撮るぞー!」

 

カメラを起動させると同時にステマックスは驚異的なスピードで皆の元へと駆け寄り、両手でブイサインをする。

 

「(`・ v ・´)vブイッ」

 

「ぶーいっ!」

 

「ぶいっ( ^_^ )」

 

「ブイッ!」

 

「ぶ、ぶいっ」

 

ブイサインをするステマックスに続くように上から順番に

愛月、プルルート、イストワール、最初からブイサインしてたステマックス、皆がノリノリだったので釣られたビッキィが戸惑いがちにそれぞれ声を出してブイサインをする。

そして写真が撮られ、インスタントカメラなのですぐに現像される。

 

「どんな風に撮れたんだろ?楽しみ〜」

 

「どれどれ…おっ、よく撮れてるな」

 

「みんないい顔〜」

 

「中々いい感じですね( ˶ˆ꒳ˆ˵ )」

 

「なんで皆ノリノリなのぉ…」

 

恥ずかしそうに呟くビッキィを他所に、撮れた写真に注目する一同。

 

「わぁ〜♪♪♪とってもよく撮れてる!!!!」

 

「ありがとうお兄ちゃん!とっても大切にするね」

 

一際喜んでいるのは愛月で、ステマックスは「やるよ。俺からのプレゼントだ」と短く伝えたて、愛月に写真を手渡す。愛月は写真を受け取り大切にすると伝えた。

 

「ああ、大切にしてくれ」

 

「(っ*´ω`*c)エヘヘ」

 

その言葉に嬉しそうにしながらステマックスは愛月の頭を撫でる。もう完全に優しいお兄ちゃんだった。

 

「そろそろ、行きましょう愛月さん( ^_^ )」

 

「はい」

 

微笑ましい光景を見守っていた、イストワールだったが、もうそろそろ時間だと名残惜しそうに愛月に声をかけ、返事をした愛月を連れていく。

 

「それじゃ、改めて…また会おうね」

 

「…またね」

 

「また会おう、弟分」

 

「滅多には来られませんがいつか会いに行きますね。(öᴗ<๑)」

 

「またね、愛くん」

 

「みんな3日間の間だったけどとっても楽しかったよ♪みんなの事絶対に忘れないから!〝また会おうね〟」

 

「うんっ、またねっ!絶対にまた会おうね!」

 

 

「では、ゲートオープン!解放!!(`・ω・´)」

 

それぞれが別れを伝え、そして再会を約束する。

そして、イストワールの宣言と同時に転送ゲートにシェアエナジーが集まると、光の柱の様なものが現れた。

 

(ほわぁ〜すっごく綺麗だな〜)

 

「その中に入って下さい。そうすれば元いた世界です( ^_^ )」

 

目の前の光の柱を見て、綺麗だと内心思っていた愛月を他所に、イストワールがその中に入るように伝える。

 

「みんなまたね!!!」

 

そう言うと愛月はジャンプして柱の中に飛び込んで行った。

 

「…またね…」

 

「…大丈夫、また会えるさ」

 

やはり寂しいようでビッキィは静かに呟く。そんなビッキィを見てステマックスは丁寧に頭を撫でながらそう伝える。自分達からなら、ちゃんと会いに行けるのだから。

 

「愛くん、また会う時はお友達と一緒にいるかな?」

 

そう呟く、プルルート。ちなみに脳裏に何故か大分ぶっ飛んだ少年が浮かんできたがすぐに気のせいだと振り払った。

 

「…また会いましょう、ポケモンの事、非常に興味がありますからねっ」

 

イストワールの呟きと共に、光の柱が小さくなっていき、最後にら消えていくのだった。




次回はコラボの番外編を投稿予定


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最新話
コラボ回!激爪と愛月、えくすとらっ!


久しぶりの更新。それと愛月花屋敷さん、お待たせしました!


「ふわぁ〜…まだねむい…」

はろはろー!どうもプルねぇさんのお膝で寝てたら置いてかれた、お眠だったビッキィです。……置いてくくらいなら起こしてよぉ…バカ兄貴ことステマックスは今の時間は仕事で外に出てるし…正直な話テンション高めにしないとやってられないくらい寂しい…ってこ、こほんっ。今のは聞かなかった事にして頂きたいっ(読者に向けたメッセージ。…いるかわからないけどねっ)

……っていうかそもそも〝1人〟ではないんだよね。正確には1人と1匹な訳なんですよ

 

「……」

 

……うん。さっきからわたしをじーっと見てるわんちゃん…もとい愛月と一緒にいた〝ポケモン〟…ルガルガンのフレムもお留守番しているのだー!…いやもう起きた時目の前にいたからびっくりして変な声だしちゃったのはかなりの恥です。……いやもうほんとどうしよ。お互いだんまりで会話が続かないよっ!?…いやそもそも会話してないや…。へるぷみー!ミライー!?…ちくしょう、今日はあいつ久しぶりにレイさんとアノネデスさんと一緒にピクニック行ってるんだった…いやマジでどうしよう、モンスターだったら普通に何言ってるかは(なんとなくだけど)わかるけど、異世界から来たポケモンに通じるんかなぁ…って言うかわたしの地の文ながすぎぃ…

 

(……聞こえるかい?えーとビッキィ?)

 

「…ふえ!?」

なんかこっちに鳴き出した!? ……あ、なんか聞こえるかいって言ってるっぽい。…よかった、ポケモンでもちゃんとなんとなくでわかるんだね、わたし。……善良で大人しいモンスターの保護にも役立っているし、割と有用なんだよね…

 

(その反応…どうやら君は俺の言葉がわかるみたいだな)

 

「…なんとなく、だけどね…」

フレムはわたしに近付きながらそう言ってくる。 …なんていうか、結構理知的なのかな?それと見れば見るほどフサフサしてそうな毛並みである。それにキューティクルも抜群だ。……なんか女の子として負けた気分…

 

(ふむ・・・なるほど)

 

「……そういえばさ、フレムの種族ってみんなフレムみたいな姿なの?」

あ、隣に座ってきた。……せっかくだからふと気になった事も聞いておこう。え?なんで急にそんな事聞いたかって?理由なんてないよ。ただ少し気になっただけだよー。……いやまぁ、正直ただ汚染モンスターみたいに色違いとかかなって思っただけだけどね

 

(いや俺たちの種族は特定の条件によって姿が変化するからほかの連中が全員同じってことはないな。)

 

「へぇ、そーなんだ!」

条件付きとはいえ種族単位で姿が違うんだ…。

…変わった種族だなぁ。それに納得もした。イストワールさんがあんなにフレムに興味があるのか…

 

(ほかの詳しいことなら愛月に聞けばいい彼はあの歳でいろいろと知識を持っているからな)

 

……なるほど、後で聞いてみようかな!……それにしても…

 

「……フレム、わたしが君の言葉がわかる事に驚かないね?」

 

 

普通に意思疎通が出来てるのにあまり驚いた様子がないのは正直キィちゃんびっくりです

 

(この世界は広いからな…君のように俺たちの言葉がわかる者もいるからな)

 

え。待て待てMA✩TTE!?フレムなんか勘違いしてるよ!?そんなの出来るのわたしくらいだから!居たらプルねぇさん達が何らかのアクションを起こすはずだよ!?」

 

(……あぁすまない少し誤解を与えたようだ…)

 

……あ。途中から声に出ちゃってた…フレム大分引き気味だよぉ…やらかしちゃったよわたしぃ…

ってわたしの様子見たフレムが申し訳ないとばかりに頭下げてきた!?

 

「謝らないでいいよ!気にしないでぇ!?」

 

罪悪感が出ちゃうからぁ!

 

(そうか…)

 

…ほっ、頭を上げてくれた…それにしてもバカ兄貴を彷彿とさせる真面目さ加減だなぁ…ってもうこんな時間だ。バカ兄貴帰ってくるし晩御飯…プルねぇさん達帰って来てないからわたしが作るか…ふふっ、レパートリーがリゾットと目玉焼きしかないキィちゃんの腕前を披露して…もうちょい作れるようになりたいなぁ…ってフレムってばいつの間にか入り口の前に居る…愛月達の帰りを待ってるのに専念するつもりなのかな?

よーし、それならわたしは今のうちに晩御飯の支度をしよう!……あ、勿論作るのはリゾットです。……そしてまたわたしの地の文ながすぎだよぉ…




短い上に雑なオチで申し訳ない…


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