アニメと漫画とゲームの中間ぐらいの気持ちで書いてます。
運営さん、もっと地方馬実装して!!
「オグリキャップが引退かあ。オグリはよく頑張ったよなあ」
悔しそうにぐしゃりと新聞を握り潰しながら、ファンが叫ぶ。
競バ新聞の一面にはオグリキャップが有馬記念で有終の美を飾ったという記事がでかでかと載っていた。
地方笠松トレセン学園から中央へとデビューしたシンデレラ、オグリキャップ。笠松へ戻っての引退式は盛大に行われるとのことだった。地方から来た怪物が中央のウマ娘たちを倒す。その活躍に人々は酔いしれ、驚喜した。
だが。
中央トレセン学園の生徒会長室に集められた、地方トレセン学園の生徒会長達は口々に地方の窮状を訴えた。
オグリキャップの活躍により、同じように地方から中央へと移籍するウマ娘が相次ぎ、ローカルシリーズは今や閑古鳥が鳴く有様だ。
「それぞれのトレセン学園を中心として、地方を盛り上げていくしかない。中央へ来るなと門戸を閉じる訳にはいくまい」
中央トレセン学園の生徒会長であるシンボリルドルフはそれぞれ鋭意努力が必要だと繰り返す。
いきり立つ多くの地方トレセン学園生徒会長達を押え、代表でその気持ちを代弁したのは青髪のウマ娘。ばんえい競バで三冠をとり、重賞14度。地元では圧倒的な集客力を誇る、北海道の誇るスター、キンタロー。
「中央はそれでいいかもしれない。 だが、ルドルフ会長は地方レースの惨状をご存知か? 人も施設も酷いものだ。あげくスター性のあるウマ娘が出て来ても、中央に行ってしまっては結局潤うのは中央ばかりだろう」
「それはそれぞれのトレセン学園で様々な企画を考えていけばよいではないですか」
副会長であるエアグルーヴの言葉を鼻で笑ったウマ娘がいた。
「それぞれのトレセン学園で? 地方にそんな余裕があると思ってるなんて、随分とおめでたいね」
「何だと!?」
思わずそちらをじろりと見たエアグルーヴは、己を見返すウマ娘の迫力に圧倒される。
「キンタローさんの言う通りさ。あたし達にはそんな余裕はない。だから、別な提案をさせてくれ」
「タイガー。どういうことだ、提案とは」
間をとりなすように声を掛けたシンボリルドルフに、タイガーと呼ばれたウマ娘はふうと大きなため息をついて見せた。
「簡単なことだよ。オグリの逆ってことさ。中央の連中が地方に来てくれりゃ、みんな見たいと観客は増えるだろう。そして、これまで中央に移籍しなきゃ出られなかったレースに地方に所属したままで出られるようにして欲しい」
「どういうことだ、中央のウマ娘が地方レースに出るだと? 招待じゃなくてか」
「ああ。中央と地方の交流戦ってとこさ。中央のあんた達にとっても悪い話じゃない筈だ。地方と中央の垣根を無くせばいい。出られるレースが増えればお互いに得るものがあるだろう」
「だが、地方に所属したままだぞ。地方のウマ娘の負担が大きくはならないか?」
「そこはレースの間隔を調整するなり、民間のトレセンを利用するなりして工夫すればいい。あんた達は勘違いをしているが、世の中、中央に出てスターになりたいウマ娘ばかりじゃない。それとも、地方のあたし達に負けるかもしれないというのは不安かい?」
「ロッキータイガー! 失礼ではないですか!」
エアグルーヴが口を挟むが、ロッキータイガーは動じない。
「失礼? 失礼なのはあんた達中央の連中だよ。あたしのトレーナーの言葉じゃないが、地方は中央の二軍じゃないんだ。地元のおっちゃん達の声援を糧に地元を盛り上げようとしているウマ娘達だっているんだ。中央だけが盛り上がるのが、あんたの理想なのかいルドルフ」
「お前の言う言葉は、相も変わらずずしりと重いな」
目をつむり、やや考えたシンボリルドルフは、
「交流戦の件、私から理事長に提案をしてみよう」
そう凜とした声で答えた。
会議が終わり、散会となった後。
トレセン学園内の生徒会長室では、エアグルーヴがしきりに不安を訴えていた。
「よろしいのですか、あのような提案を受けて。逆に地方のレースで中央のウマ娘達が活躍し過ぎるということはないですか」
「それで盛り上がるというのなら地方も願ったりかなったりだろう」
紅茶を飲みつつ、シンボリルドルフが答える。
「タイガーにあそこまで言われたら受けない訳にはいかない。奴は、私達中央に喧嘩を売ってきた」
楽しそうに笑うシンボリルドルフにエアグルーヴは意外そうな顔を向ける。
「タイガーが言うなら期待できる」
「そ、そこまでなのですか、あのロッキータイガーは」
「知らないのか? 私が一着をとったジャパンカップ。二着はあのロッキータイガーだ」
「え!?」
シンボリルドルフは語る。
当時皇帝として絶対的な強さを誇っていた彼女に課せられていたのは、前年度のカツラギエースと同様、外国勢を抑えての勝利だった。
同じく三冠ウマ娘であるミスターシービーが出走せず、皇帝の肩に国民の期待が一心にのしかかる中、天皇賞でルドルフに勝ったギャロップダイナ、同三着のウインザーノットを中心とした日本勢の中で一際異彩を放っていたのが、地方からの枠でやってきたロッキータイガー。
一番人気に押されたルドルフとは違い、その人気は15番中11番目。
「しかも、驚くべきことにダートバの奴にとって、芝のレースはあのジャパンカップが最初で最後ということだ」
「ま、まさか!!」
エアグルーヴはごくりと唾を飲み込む。
ダート戦線を走り抜けたロッキータイガー唯一の芝への挑戦。
その結果が、よりにもよって世界各国のG1ウマ娘、日本国内のエースを集めたジャパンカップでのシンボリルドルフとの1と3/4バ身差の二着。
「最終の直線、後ろから追い込んでくる奴の姿は今でも忘れられない」
シンボリルドルフにとってそれは忘れられない思い出であった。
勝った後のウイニングライブ、皇帝の華麗なダンスに多くの観客が拍手する中、どこか緊張した様子のロッキータイガーには涙まじりのだみ声の歓声が贈られた。
「公営の星」
「皇帝の影を踏んだ虎」
そう称えられた彼女は、ルドルフの勧誘もどこ吹く風と船橋へと戻っていたのだ。
自分とトレーナーが盛り上げたいのは中央ではない、船橋だと言って。
中央トレセン学園内にあるカフェテリアでは、赤いスカーフを巻いたトレーナーが一人コーヒーを飲んでいた。きょろきょろと辺りを見回していたロッキータイガーは彼を見つけると、その前に座った。
「おう、どうだった、結果は」
「ああ。何とかまとまりそうさ。ルドルフの奴を散々挑発してやったからね。問題は中央の恵まれた環境にあるウマ娘達をあたし達が迎え撃てるかってことだけど」
「何、環境さえ整えればいい。後は戦える奴を集めればいいだけだ」
「トレーナーが中央の免許もとっておいてくれてよかったよ。でもチーム名がなあ」
「何だ、チームアンタレス。いいじゃねえか。中央の連中をさそりで一刺し」
盛り上がる二人の側で、ピンクの髪をしたウマ娘がうわあああんと大きな声を上げる。
「また、落ちちゃったよー。ウララ、どうすればいいのー」
がしがしと頭を掻きながら、選抜レースに落ちたと愚痴る彼女に、トレーナーとロッキータイガーは声を掛ける。
「ふうん。所属チームが決まらないねえ。お前、どこ出身だ?」
「へ!?こ、高知・・・・・・」
何のことだろうと目をぱちくりさせるハルウララに、トレーナーとロッキータイガーは頷き合う。
「いいじゃねえか、ハルウララ。うちのチームに入りな」
「へ!? 私が? 選抜レースは?」
「そんものいらないよ」
ぽんぽんとロッキータイガーはハルウララの肩を叩く。
「あたし達はチームアンタレス。地方出身や地方所属のウマ娘で作るチームさ。チームの目標は地方に客を呼ぶこと。打倒中央ができればなおいいがね」
「う、ウララ、足遅いから勝てないよ」
「やっても見ねえうちから諦めるんじゃねえ。中央の壁に弾き返されて惨めな姿をさらしても、地方に客が呼べればそれでいいって考えていた奴だっている」
トレーナーの言葉にウララはぱっと顔を上げる。
「それに俺の見立てが正しけりゃ、お前根性ある面構えをしているぜ。何となくアホみたいなその面といい、俺の昔の知り合いにそっくりだ」
「何それー。全然褒めてない!!」
ぷんぷんと怒るウララ。
「でもでも、いいの?」
「ああ、もちろんさ」
ロッキータイガーと握手を交わし、テンションがMAXになるハルウララ。
「打倒中央!」
「地方へお客を!」
「行くぞ、チームアンタレス!!」
「おーっ!!!」
大きな声で気勢を上げる3人の元に、やってきたのはトレセン学園理事長秘書の駿川たづな。
「公共の場ですよ、お静かに!」
「ご、ごめん」
「・・・・・・」
皇帝に対し一歩も引かなかったロッキータイガーが叱られる姿に、エアグルーヴはこの学園の真の権力者が誰なのか改めて思い知るのだった。
登場チーム紹介
チームアンタレス・・・・・・『打倒中央、地方へ客を』、をスローガンに掲げる地方出身・地方所属ウマ娘を集めたチーム。癖が強いウマ娘が多い。
トレーナー:里美天蔵(地方船橋所属。中央免許も所持)
所属ウマ娘
ロツキータイガー
ハルウララ
アブクマポーロ
メイセイオペラ
ライデンリーダー
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