とある英雄馬の深き衝撃 (静かなるモアイ)
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とある英雄馬の深き衝撃

英雄の逸話。

初対面で様々な人達から女の子と本気で間違えられた幼少期。

ご飯は三角食べを好む。

圧倒的に強いけど、実は甘えん坊でお坊ちゃまというニックネームがある。




その馬は兄弟達よりも小柄で育った。だから、多くの人々はその身に宿る絶大なる才能に未だ気付いていなかった。

 

牝のような可愛らしい大きさに顔立ち。担当した調教師さえも牡だとは思わず、股間を覗き込む始末。

 

誰が想像しただろうか?この小柄な牡馬が世界の頂きに登り詰め、日本史上最強の文字を冠された英雄に至る事を。ただ、2度しか敗北はなく共に走った馬に圧倒的な力を、対戦者と観客に心から衝撃を与えた。対戦者には圧倒的な実力差を、観客には感動という衝撃を多くの者に届けた。だけど、彼は頂点に立ったまま人々の届かぬ所に旅立ってしまった。

 

その英雄はディープインパクト。競馬は知らなくても、多くの人に認知され感動を届けた英雄。その英雄はもう居ない、人々の記憶の中の存在となってしまった。彼を…ディープを越える英雄は現れないかも知れない。案外、直ぐに英雄の称号を受け継ぐ名馬が現れるかもしれない。

 

ありがとう英雄、ありがとうディープインパクト。作者も含め、当時の子供達に感動を与えてくれて。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが…此処とは違う地球。そこには馬は存在しない。馬という漢字も無い。漢字は有るのは有るのだが、馬の点が少ないという事に成っている。その地球には普通の人間…俗に言うホモサピエンスの他にも人間と称できる霊長の存在が確認されて人として過ごしている。

そのもう1つの人間はウマ娘。原則的に女性しか居らず、男性は居てもほぼ居ない。ホモサピエンスとの交配も出来て、産まれるのはホモサピエンスかウマ娘のどっちかだ。そのウマ娘であるが、我々の地球に居る馬の耳と尻尾を持っており、身体能力は物凄く高い。我々の知る競走馬の名前を名付けられていたり、何処かシンパシーを感じる。もしかしたら、そのウマ娘は我々の知る名馬のその世界での姿なのかも知れない。

 

故にこの世界にも英雄(ディープインパクト)は誕生した。しかし、なんの因果だろうか?それとも幼少期のエピソードがエピソードだったのだろうか。

 

英雄は男のウマ娘として産まれた。まあ、それは良いだろう。だが、問題は()()()として産まれた事である。男の娘、それは男なのだが何処から見ても女の子という出で立ちの男の子である。

確かに我らが英雄は小さい頃。多くの人に女の子に間違えられた過去を持つ。英雄に跨がい共に戦い抜いた戦友でさえも初対面に「女の子みたい」と思ってしまった程だ。英雄は史実では立派な男の娘だったのだ。

 

ではそのこの世界の英雄に至る男の子、ウマ娘としてのディープインパクトは何処で何をしてるのか?彼は桜吹雪が舞い散る桜並木の道に立っていた。

 

此処は日本トレーニングセンター学園。縮めてトレセン学園と呼ばれており、此処では日本各地から集まったウマ娘が立派な競技者に成るために日々勉学に励んでいる所である。

 

鹿毛色の髪をした可愛らしい顔立ちをした少年。ただ1人、在校生の中では唯一の男子生徒なのだから。そう、この少年こそ後に世界の頂点に立つことになる未来の英雄 ディープインパクトである。

 

今日は入学式。トレセン学園は中等部であるジュニアクラス、高等部以上のシニアクラスに分けられており、ディープインパクトは中等部であるジュニアクラスからの入学だ。

 

「ディープお兄ちゃん!!」

 

その声が聞こえ、ディープインパクトは後ろを振り向く。ディープインパクトは産まれて直ぐに両親を喪った。彼は姉夫妻に育てられ、今日の入学式は姉と姉の娘が見に来てくれており、振り向いたディープインパクトの視線の先には歳の離れたウマ娘の姉であるブラックスタイドと兄妹同然に育った姪っ子であるキタサンブラックだ。キタサンブラックは未だ小学生程であり、トレセン学園に入学するのは未だ先の事である。

 

「暫く会えない?」

「寂しく成るわね…」

 

トレセン学園は全寮制。夏休みや冬休み等の長期休みの時や里帰り以外は学内で過ごすことになる。つまり、ディープインパクトは今日から暫くは家族に会えなくなるのだ。

 

「なに、ちゃんとたまには帰ってくるよ」

「無理はしないでね」

 

ブラックスタイドは早く亡くなった両親の代わりにディープインパクトを育て上げた。ディープインパクトは少し小柄で、か弱いと思っていた。だが、姉だから分かる。ディープインパクトの素質は自分を遥かに上回り、日本という領域には収まる事はなく世界すらも視野に入れて衝撃を与える物になると確信している。

 

この2年後。ディープインパクトは不敗神話を為し遂げ、伝説になる。

 

神話を成し遂げた翌年。ディープは世界に挑む。

 

『凱旋門賞に遠路遥々、日本からサムライがやって来た。日本の英雄の衝撃は世界に届くのか!?エントリーNo.1!!ディープインパクト!!』

 

黒き翼を模したマントが靡く。今、英雄は世界に挑むだろう。

 

英雄ディープインパクト。地を舞う天馬の異名を持つ日本最強の長距離スプリンター。ただ1人の男性ウマ娘の競技者であり、長距離世界ランク1位。若干15歳(早生まれ)の若き日本のエースは今、ダートから抜け出して世界の強豪と共に走り出した。

 

『ディープが仕掛ける!!ディープインパクトが仕掛ける!!ディープが翼を広げた!!翔んだ、間違いなくディープインパクトは翔んだ!!ディープが翔んでいる!!見よ、世界よ!!これが日本競馬の英雄だ!!翔べディープ!!これが、世界に与える衝撃波!!』

 

今、世界に衝撃波が巻き起こる。




貴方が凱旋門賞を制覇するのを見たかった。

いつか、貴方の血を受け継いだ子供達が凱旋門賞を制覇することを願う。ありがとうディープインパクト。

仮に連載すればディープインパクトがジュニアCクラスから凱旋門賞挑戦までと成ります。


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英雄。チームに入る

英雄の軌跡


ディープインパクトは小柄だ。ウマ娘の競馬は勿論のこと、ホモサピエンスの陸上競技を含めた走る競技は体格が大きなアドバンテージになる。体格が大きく、背が大きければその分一歩走る度のストライドが大きく、一歩一歩の幅が大きい。その上、骨格というフレームに着く筋肉量も必然的に大きくなる。

 

だからなのだろうか?多くの大人達はディープインパクトの身に宿る素質に気付く事が出来なかった。これは多くの大人達の誤算と言えるだろう。史実でもそうだった、ディープインパクトは幼少期の頃はそこまで注目されていなかった。G1を制覇する馬は幼少期の頃から片鱗を見せると言われている。それはウマ娘の世界でも言えることであり、ウマ娘の世界でその片鱗が現れ出すのは本格的にウマ娘がトレーニングを始めるジュニアAクラス(中学一年生)の頃である。

 

「ウララちゃん。チーム決まった?」

「未だ決まってないんだ。エヘヘ…行けると思ったんだけどな」

 

トレセン学園の生徒達はトレーナーの皆様が顧問を務めるチームに入り、そこのトレーナーの指示やアドバイスを聞いてはトレーニングに励んだりしているのだ。トレセン学園のチームは言わば部活動のような物であり、多くのチームが存在している。

チームに入ればメリットが沢山だ。大会へのエントリーもトレーナーが行ってくれたり、蹄鉄シューズ(ホモサピエンスで言えば陸上のスパイクシューズ)やスポーツドリンクも部費で出る。だが、チームに入らなかったら大会のエントリーも自分で行わなければならないし、蹄鉄シューズやスポーツドリンク等も自腹で買わなければならない。

 

だから多くの生徒達はチームに所属してスター選手を目指して頑張るのだ。ディープインパクトのクラスメートの9割は既にチームに所属しており、ジュニアAクラスで唯一チームに入っていないのはディープインパクトとトレセン学園での初めての友人であるピンク色の髪の少女 ハルウララの2人だけだ。

 

「大丈夫大丈夫!!ディープ君も私も凄いチームに入れるよ!!」

 

素質が無い。見た目だけで判断されたディープインパクトとハルウララの2人。今日も2人は運動場の端っこでストレッチを行い、自主練習を行っていた。チームに所属していない為に自分でトレーニングメニューを考えるしかない。

ディープインパクトは小柄で未だ身体も未発達(一般的に女性の方が発育は早い)。そのディープインパクトよりも小柄なハルウララの2人はトレーナー達から見向きもされず、面接の段階で門前払いされてしまったのだ。

 

ふと、そこでハルウララは気付いた。ディープインパクトの身体は物凄く柔らかく、バレリーナのように脚が後頭部に着く程だったのだ。

 

「ディープ君!?凄く、身体柔らかいね!?」

「うん。小さい頃から柔らかかったからね」

 

史実曰く英雄ディープインパクトは物凄くしなやかな筋肉と柔軟性を持っていた。本来、馬では不可能に近い横走さえも可能であり、その柔軟な筋肉のバネが皆が知る翔ぶ力に成っているのかもしれない。

 

「よし、それじゃアップしてくるね。お先!」

 

ディープインパクトはそう告げ、軽く走り始める。柔らかい間接と筋肉だからこそ出せる、走り。その走りは走ると言うよりも跳ねていた。もし、これで彼がウォーミングアップではなく本気で走り出せば跳ねるは翔ぶに昇華されるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その光景を遠くから見ていた3人組が居たのだ。その内2人は白髪のウマ娘であり、1人は若いホモサピエンスの男性だった。ディープインパクト以外で男性だとすれば間違いなく何処かのチームのトレーナーだろう。

2人の少女はどちらも白髪だ。片方はポニーテールで、泥んこに汚れたジャージ姿。もう1人の少女は高身長でそこら辺の男性より背が高い美女だった。

 

「ゴルシ、オグリ…あの子が噂の子だよな?」

 

トレーナーはディープインパクトの走りを眺め、震える。末恐ろしい物の片鱗を見てしまったかのようにだ。

 

既に練習を行ったのか、泥んこに汚れたジャージ姿の少女。少女と言ってもディープインパクトより背が少し大きい少女が口を開く。

 

「しなやかな動きだ。まるで走るじゃない…翔ぶと言った方が良いな」

「なんで…何処のチームもあの子を入れないんだ!?なんで気付かない!?あの子は…とんでもない選手に化けるぞ!!」

 

ディープインパクトの潜在能力に驚かされたのか、トレーナーと思われる男性は震える。

 

「確かに体格は小さい。体格のアドバンテージは無いだろう。だけど、そのデメリットを遥かに上回るバネに柔軟性…見かけじゃ絶対に気付けない力だ!!」

「どうするんだよ、トレーナー。ウチはオンボロチームだろ?」

 

高身長の美女がそう言った。そう美女のいう通りで男性が率いるチームは最初からボロボロだった。最近まで学園農園のニンジン畑で手伝いをしていたほど、金欠だ。解散寸前のボロボロチームであり、田舎から出てきて誰にも相手にされなかった子と問題児を引き入れてなんとかチームとしての形を保ってるに過ぎない。

 

「ゴルシ。お前はあの子と…噂のディープインパクトと走りたいか?」

「おう。面白そうだしな!賑やかに成るぞ!!」

 

高身長の美女に問うと、美女は笑顔でそう答えてくれた。

 

「オグリは?」

「楽しくなりそうだ」

 

所属ウマ娘が全員賛成してくれた。ならば答えは決まった。

 

「行くぞ」

 

トレーナーは教え子であるウマ娘のオグリキャップ、ゴールドシップを連れてディープインパクトとハルウララの所に向かう。

 

「すまない…ちょっと良いか?」

 

トレーナーは白髪の少女オグリキャップ、高身長美女ゴールドシップと共にディープインパクトに話し掛ける。トレーナーの声に反応し、ディープインパクトはトレーナー達の方を向いた。

 

(なんて綺麗な瞳だ!?まるで…やる気に満ち溢れてる!!)

「なんですか?もしかして…此処使います?端っこだけでも良いので使って良いですか?」

「いや…俺は君を勧誘しに来たんだ。俺のチームに入ってくれ、解散寸前でボロボロなチームだけど」

 

まさかの勧誘。これまで沢山のチームに断られてきたディープインパクトも勧誘されるとは思わず、驚いた。

 

「えっ?入って良いんですか?」

「勿論だ!!」

 

だが、ディープインパクトは人差し指を立てた。

 

「その代わり、ハルウララ…僕の友人のウララちゃんも入れて下さい」

 

ディープインパクトは友達思いだ。自分はトレーナーのチームに入ることが出来る。だけど、ハルウララはこのままじゃ一生チームに入ることが出来ないかも知れない。だから、自分もチームに入る条件としてハルウララを同じチームに入れるように言ったのだ。

 

「勿論だ!!チームシリウスにようこそ!!」

 

この1年と少し経った12月。日本に初めての衝撃波が襲うことになる。ディープインパクトのデビューであり、彼はそのレースを圧倒的な力で余力を残したまま勝利する事になる。

 

英雄ディープインパクト。彼の伝説は始まったばかりだ。

 

 

「此処がチームシリウスの部室だ!!」

「オンボロ!?」

 

だが、彼が所属したチームシリウスは正にボロボロであった。




なんでオグリ…髪飾り着けてないの?転入したばかりだから。



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衝撃波が迸る

ディープインパクトの衝撃的なデビュー


チームシリウス。嘗てはG1制覇も出来るほどのメンバーを保有していたトレセン学園の主力チームだった。だった…過去形だ。今のシリウスはなんとか形を残してるに過ぎない、解散寸前のオンボロチームなのだ。

 

嘗ては伝説的なOGであるクリフジ、シンザンと言った殿堂入りと称される伝説のウマ娘が所属していた。だが、クリフジやシンザンも遠い昔に現役を引退して卒業していき、その栄光は終わりを見せ始める。数年前だろうか、当時のキャプテンであり日本記録を幾つも塗り替えたトキノミノルという無敗のウマ娘が在籍していた。だが、トキノミノルは病により、選手生命を絶たれてしまい皐月賞と日本ダービーを制覇した数日後に現役を引退し…シリウスを去った。誰もが出来ると思っていた史上初の無敗での三冠ウマ娘。その寸前での電撃引退からの自主退学。故かトキノミノルは幻のウマ娘と呼ばれるように成った。

クリフジとシンザンが卒業し、トキノミノルという絶対的エースが頂点に立ったまま辞めたシリウスは次々とメンバーが脱退していき今のオンボロチームと成ってしまったのだ。

 

「うわー、ボロいね!」

 

唖然とするディープインパクト。その隣ではボロいが、人生初の部活動に心を踊らすハルウララが立っていた。チームシリウスの部室は木製の小屋だったが、年期が入っておりぶっちゃけボロい。床を踏めばギーギーと床板が軋む音が響く程だ。

そんなシリウスの新入部員と成ったディープインパクトとハルウララ。その2人の前にはシリウスの顧問であるトレーナー。そして先に入部している白髪ポニテの少女であるオグリキャップ、高身長美女であるゴールドシップが居る。なんでもオグリキャップも先日に入部したばかりであり、学年はディープインパクトの1年先輩であるジュニアB組だそうだ。

 

「ゴルシが入ってくれるまでの数年間。シリウスは誰も居なかったからな」

 

部室に置いてあった少し錆びかけのパイプ椅子に腰掛けたトレーナーは語る。トキノミノルが自主退学し、次々とメンバーが脱退していき形だけと成ったシリウスは解体処分寸前に成っていた。だが、トレセン学園処か日本で最も速かったトキノミノルが所属していたという事も有ったのだろう。シリウスは部員が皆無に成っても直ぐに解体される事はなく、そのままにされていた。

だがトキノミノルの引退から数年経った2年前。シリウスは危機を向かえる。流石に数年経っても部員が入ってこないという事も有り、シリウスは本当に解体処分されようとされた。まあ、仕方がないだろう。当時、新入りのトレーナーであり誰も担当してなかったシリウスの担当と成ったトレーナーはなんとかシリウスを残そうと走り回った。その時だった。

 

『おーい。ベガってチーム追い出されちまったんだけど。入って良い?』

 

最古参であるゴールドシップが逆スカウトで入部。なんでもゴールドシップはチームベガに所属してたが、トーセンジョーダンという先輩が「気に入らないから」という理由でドロップキックを喰らわしてチームベガを入部3日で追い出されたらしい。

 

なんやかんや有り、ゴールドシップという部員が入ってくれたシリウスは解体処分の危機を免れた。しかし、部員は1人であり部費はそこまで出ない。その為にトレーナーとゴールドシップは学園農園の手伝いをしたりして、活動資金を集めては試合に出たりしてしてたのだ。

 

それから今年の春先。ディープインパクトとハルウララが入学した頃だ。地方にもトレセン学園は存在しており、地方トレセンからトレセン学園に転校してきたオグリキャップ。彼女は地方から転校してきた身であった為か、多くの人に相手にされなかった。これには理由がある。地方のトレセンはトレセン学園と比べて実力は低く、オグリキャップも体格で判断されたディープインパクト達と同じ様に何処にも入れて貰えなかったのだ。

 

『すまない。部員は募集してるか?』

 

そんな事でオグリキャップは先程までのディープインパクトとハルウララと同じく、自主練習を行っていた。そんな時に、偶然にもシリウスの事を知って彼女はシリウスに入部したのだ。

 

「というのがチームシリウスなんだ…」

 

チームシリウスの事を話終えたトレーナー。だが、チームシリウスは未だ終っていない。これからだ。トレーナーは思う、このチームシリウスの可能性は無限大だと。

最古参のゴールドシップは気分屋だが、実力は本物。最高峰のレースであるG1でも何度か勝っており、底知れぬスタミナとパワーがある。

オグリキャップは素質が高い。地方から出てきた身で、未だ誰もが信用していないが間違いなくG1のトップ選手に至れる可能性を持っている。地方でのレース経験も有り、地方出身という事も有ってか芝でもダートでも力を発揮できる。

ハルウララに関しては未だ良く見てないからトレーナーはどれ程の力が有るのか分からない。

そしてディープインパクト。女の子のような顔立ち、小柄な身長。だが、この少年が肉体に秘めた末恐ろしい潜在能力は計り知れない。天性の柔軟性とバネが産み出す瞬発力を用いた翔ぶような走り。体格に恵まれなかった為に、多くのトレーナー達が気付けなかった英雄の原石。

 

「まるで…シンデレラストーリーだな」

 

ハハッとトレーナーは未来を思い少し笑う。問題児と称されたゴールドシップ、地方から転校してきた故に誰にも相手にされなかったオグリキャップ。そして体格に恵まれなかったディープインパクトとハルウララ。

 

「ディープインパクトだったな?お前は必ず、頂に至れる。俺が保証する。だけど、お前がテッペンを取る為には1つ条件がある」

「条件?」

「お前のデビューは早くても来年の秋以降。遅くても来年4月だ。お前は女の子みたいな顔立ちだが、男の子。中1から中2の半ばが成長期のピーク。それを過ぎるまで辛抱してくれ」

 

ディープインパクトは男の子。男子の成長期は女子よりも遅く成長期がやって来る。ディープインパクトは今が成長期のピークであり、骨や成長点が敏感だ。その成長期のピーク…最低でも骨の成長ピークが終わる頃まではレースに出さない方が良い。事実、史実の英雄ディープインパクトも兄弟達と比べて遅くデビューしたのだ。

 

トレセン学園の生徒は早ければジュニアAクラスから、普通でジュニアB、遅くてジュニアCからデビューする。そう考えればディープインパクトのデビューは少し遅めに成るだろう。

 

「はい!」

「良い返事だ。それじゃあ、チームシリウスの本格始動だな!!」

 

チームシリウス。このチームのシンデレラストーリーは今、此処に始まったのだ。

 

 

1年後、10月某日。

 

地方ではなく中央での新たなデビューをしたオグリキャップ。髪はポニーテールを辞め、額には母が現役時代に着けていた髪飾りを着けており、シリウスのチームリーダーである彼女は記者会見を受けていた。

 

「オグリキャップさん一言!」

 

「今の気持ちを教えてください!」

 

「シンザン選手以来、チームシリウスでのクラシック三冠達成のご感想を教えてください!!」

 

クラシック三冠。それはジュニアCクラス…中学3年生の僅か1年しか挑めない特別なタイトルであり、皐月賞、日本ダービー、菊花賞の3つを制覇したウマ娘は三冠馬と呼ばれる。クラシック三冠を達成したウマ娘は数えきれる程しかなく、無敗で三冠馬に到達したウマ娘はただ1人…トレセン学園最強チーム チームリギルのリーダーであるシンボリルドルフただ1人だ。

オグリキャップはそのクラシック三冠を達成し、チームシリウスでは30年以上前の選手であるシンザン以来の偉業を成し遂げたのだ。だが、クラシック三冠の他のレースでは負けた事があり、シンボリルドルフ以来の無敗での三冠馬には成る事は出来なかった。

 

「はい。ただ、この重圧から解放されて今はほっとしています」

 

クラシック三冠。それは周囲からの期待は高まるのは勿論のこと、皐月賞と日本ダービーを制覇して残り菊花賞だけと成れば重圧は高まる。だが、それでもオグリキャップは成し遂げた。

 

「ご褒美とかはどうします?」

「食べ放題の店に行きたいです」

 

そんな年頃の少女のような質問も投げ掛けられ、オグリキャップは笑顔で答える。

 

だが…記者会見の最後に彼女は告げた。

 

「最後に1つ。私はチームシリウスのエースではない」

 

三冠馬オグリキャップがエースではない。その言葉に記者達はざわついた。だが…その2ヶ月後。彼等はオグリキャップの言葉の意味を知ることになる。

 

 

12月19日。その日、日本に衝撃波が走った。

 

新人戦。この日、男のウマ娘がデビューすると聞いて物好きな記者達は競馬場に駆け付けた。

 

『さあ。先頭を行くのはコンゴウリキシオー、逃げる逃げる。この日のレースの主役は彼女に成るのか?』

 

始まったレースだったが、2000mという中距離のレースとは言え先頭を先行するのはコンゴウリキシオーというウマ娘。人気も高く、他のウマ娘はコンゴウリキシオーから遅れた集団の所に居り、誰もがコンゴウリキシオーの勝ちを確信した。

 

残り300mにコンゴウリキシオーが到達する前は。

 

「はぁはぁはぁ…行ける!!」

 

コンゴウリキシオーもスタミナが無くなってきた。後続が迫るが距離はリードしている。このまま行けば、彼女が優勝するのは誰もが理解できた。唯一、コンゴウリキシオーや他の選手達の悲劇を挙げるとすれば()と同じ日にデビューした事だろう。

 

その時だった。衝撃波が巻き起こる。

 

『後続の1人が仕掛けた!!』

 

実況の1人が叫ぶ。その瞬間、コンゴウリキシオーは死力を尽くして逃げようとする。だが…それは無意味だった。爆発的な加速で何かがコンゴウリキシオーを抜き去った。そのウマ娘は可愛らしい少女のような顔をした男だった。

 

「えっ?」

 

そのウマ娘はディープインパクト。彼は仕掛けた瞬間に翔ぶような走りを見せ、柔軟性高い関節が繰り出すストライドとバネのような筋肉を使うことで翔ぶように走り、ぐんぐん加速する。

 

『ディープインパクト!!加速した!!ディープインパクト!!最早、翔んでいる!走るじゃない、彼は地を翔んでいる!!ディープインパクト!!たった今、ゴールしました!!衝撃的なデビューで、文字通りの衝撃を見せてくれました!!』

 

差しではない。差しを越えた爆発的な仕掛け。その圧倒的な強さを見て、誰もが言葉を失った。遅れること数秒、他のウマ娘達もなんとかゴールした。しかし、彼女達はそこで知る。ディープインパクトの規格外を。

 

「なんで…ぜぇ…ぜぇ…」

 

全力で2000mを走った。息が上がり、肺が酸素を欲しがっている。心拍数は上がり、鼓動が早い。普通はそうだ。しかし、ディープインパクトは彼女達と違い涼しい顔で呼吸が一切乱れてなかった。

 

彼が天から授かったのは柔軟性と瞬発力だけではない。馬鹿げた肺活量。その肺活量がディープインパクトの最大の武器であり、最後の仕掛けた爆発力の源なのかも知れない。

 

成長期の骨格成長が終わり、オグリキャップ程の身長まで成長したディープインパクト。彼は涼しい顔をしたまま、フィールドを去った。

 

無敗神話の始まりである。




史実ネタが多めです(ウララちゃん以外)。

オグリもクラシック出ていたら三冠馬間違いなし。なのでクラシック制覇させました。

当然、馬界のハジケリストはゴルシワープしてます(笑)

てか、シンデレラ的なメンバーに成ったなチームシリウス。オグリは地方から出てきたスーパースター、ディープは期待されてなかったから英雄、ウララちゃんは1つの地方競馬を救った救世主であり愛されるという勝ち方をした名馬。む?ゴルシ?彼はハジケリストだ。フィクションより漫画のような実話の皆さんチームじゃないか


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地を舞う天馬の英雄

ディープのクラシック制覇への道が始まる。


優秀なウマ娘には二つ名と呼ばれる物が付けられる時が多々ある。その二つ名はそのウマ娘の個性や走り方、特徴や立ち振舞いから名付けられる事が多く、競技者であるウマ娘達のもう1つの名前のような感じだろう。

 

有名処の二つ名を挙げるとすればトレセン学園最強と称されるチームリギル。チームリギルのメンバーの大半は二つ名を名付けられた優秀なウマ娘の皆様だ。リギルのリーダーであり、トキノミノルさえも成し遂げられなかった無敗での三冠馬を唯一成し遂げた皇帝シンボリルドルフ。女帝エアグルーヴ。オグリキャップにクラシックでは負けたとは言え、優秀なウマ娘である怪鳥エルコンドルパサー等々の強いウマ娘は二つ名を持っている。

 

だが…昨年からだろう。リギルを上回る勢いで知名度を再び上げてきた、不死鳥の如くどん底から甦ったトレセン学園のチームが最近有名に成ってきた。部員は僅か6名であり他のチームと比べたら、部員の数は少ないだろう。しかし、その実力はトレセン学園でも最強クラスと呼び声が高い。

 

学年不明(シニアクラスなのは間違いなし)で、黄金色の不沈艦ゴールドシップ。

 

チームリーダーであり、地方出身の三冠馬。灰被りの怪物オグリキャップ。

 

ジュニアBクラスで、ディープインパクト達の翌年に入部した名家の令嬢。名優メジロマックイーン。

 

短距離としての素質を開花させ、今では短距離に於いてはオールラウンダーであるオグリキャップを上回る強さを誇る少女、嘗て負け組だった一等星ハルウララ。

 

海外遠征の経験あり、ゴールドシップが勧誘(拉致)してきたゴールドシップの親友。その道を往く爆弾娘ジャスタウェイ。

 

そして……この男を忘れてはいけない。

 

 

4月17日。三大クラシックの第一幕である皐月賞。そこに英雄が衝撃波と共に疾走する。

 

『ディープインパクトが翼を広げた!!』

 

G1の中でも中学三年生であるジュニアCクラスでしか、参戦できない三大クラシック。その1つであり始まりである皐月賞。最終コーナーを曲がり、黒き翼を模したマントが靡きその英雄が加速する。

 

その英雄はディープインパクト。姉であるブラックタイドがデザインしてくれた、黒き翼を模したマントが有る貴族風な勝負服を纏い翔ぶように疾走する。G1のレースは特別なレースであり、多くのウマ娘は勝負服と呼ばれる特別なオーダーメイドの衣装を着るのが一般的だ。

 

『ディープインパクト止まらない!!衝撃波が止まらない!!ディープインパクト!!圧倒的な走りで先ずは皐月賞を制覇しました!!

シンザンがルドルフが…そしてオグリキャップが辿った三冠馬への道。先ずは第一関門の皐月を突破した!!』

 

地を舞う天馬の英雄、或いは英雄。チームシリウスのエースであるディープインパクト。彼はシンボリルドルフ以来となる無敗での三冠馬を目指し、今日も一着でゴールした。

 

「ディープお兄ちゃん!!」

「いよっし!!先ずは皐月を突破だな!!」

「モグモグ、うむ。よし」

「ディープ君ナイッスー!!」

「流石は私の弟!!」

 

皐月賞を1位で突破したディープインパクト。彼は自分に向ける声援に気付き、声の方を向いた。その方を見るとチームシリウスのメンバー、家族である姉ブラックタイドとその娘であるキタサンブラックが居たのだ。

 

「流石ですわ、ディープ先輩」

「いよっし!!ナイッスー!!ディープ!!」

 

チーム新人でもあるメジロマックイーンとジャスタウェイも、ディープインパクトが無事に皐月賞を突破した為か嬉しそうだ。

 

「ディープ!!ディープ!!ディープ!!」

 

「ディープインパクト!!三冠行ってくれ!!」

 

「頼むぞ!!英雄!!」

 

歓声が巻き起こり、観客席からはディープコールが巻き起こる。ディープインパクトは未だ無敗、全ての公式戦を1位で勝ってきている。しかも、走るスタイルが序盤と中盤に様子を見て、終盤に爆発的な加速で一気に抜き去る。その豪快で見ている側も楽しめる走り方故か、ディープインパクトはデビューしてから急激にファンが増えてきているのだ。

 

シンボリルドルフ以来となる無敗の三冠馬。チームシリウス伝説のリーダーであり、病さえ無ければ確実に無敗の三冠馬に成れたトキノミノルの無念を晴らす事を期待し、ファンは英雄ディープインパクトに期待を込める。

 

そしてディープインパクトは右腕を天高く上に掲げ、人差し指を伸ばして1を示す。先ずは1つの関門である皐月賞を突破したので指を1つ立てたのだ。5月末の日本ダービーを突破すれば指を2つ、最後の菊花賞を突破すれば指を3つ上げるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ。ディープインパクトを門前払いしたトレーナーの皆様。

 

体格に恵まれず、天性の柔軟性とバネに気付けなかった節穴なトレーナーさんの皆様。彼等は全員が頭を抱えていた。当然だ、門前払いして素質が無いと決め付けた男子が英雄と呼ばれるまでに強くなったのだから。

 

「彼が彼処まで化けるなんて…」

 

「ディープインパクトは兎も角、ハルウララも彼処まで強くなるなんて」

 

「俺はなんてバカな真似を……」

 

そして彼等は理解した。ウマ娘の素質に体格は決定的ではないのだと。




史実は兎も角、アプリではハルウララでもオグリに匹敵する選手に育てる事が出来ます。

日本ダービー、北海道合宿、菊花賞。史実は漫画より奇なり。

てか、ディープ、オグリ、ウララの事実はフィクションびっくりですからね


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日本ダービー

英雄の物語完結までもう少し。


皐月賞を制覇したディープインパクトは破竹の勢いで勝ち進める。

 

「恐らく、僕が日本ダービーに出走するメンバーの中では一番強いかもしれません。ですが、こうなった以上…勝負は何が起こるか分かりません。僕が僕を相手するなら、差しきらせる前に対策を行うでしょう。なので、確実に勝てる保証は有りません」

 

インタビューでそう答えたディープインパクト。可愛らしい顔立ちをし、一見女性のような小柄な少年。数日後に迫った日本ダービー、全てのウマ娘が一生に1度しか走ることを赦されないレースであり目標だ。ただ、日本ダービー等の三大クラシックは全ての中学三年生が出れる訳ではないのだ。選ばれた18人、その選抜された中学3年生のウマ娘が頂点を競って戦う。

2年前、シンボリルドルフが成し遂げた無敗でのクラシック三冠制覇。それを狙えると周囲からの期待は勿論、メディアからの報道は熱を見せる。何より、ディープインパクトはチームシリウスの所属であり、日本ダービーを制覇すればチームシリウスの伝説であるトキノミノルと同じく無敗での二冠及びダービー制覇を成し遂げる事が出来るのだ。

 

 

「ディープインパクト君ですか?あの子には是非とも頑張ってほしいですね。勿論、トレセン学園の職員としては他の子にも頑張って欲しいですけどね」

 

報道陣はディープインパクトの周辺の人々は勿論のこと、トレセン学園の様々な方々にもインタビューを行っていた。

トレセン学園の応接間。そこでとあるインタビュアーは駛川たづなと名乗る、トレセン学園理事長の秘書から話を聞いていた。

駛川たづなは緑を基調とした衣装を纏っており、屋内でも帽子を被っている。

 

「私は理事長の秘書なのでトレーナーと生徒達の間には滅多に干渉しません。ですが、ディープインパクト君の事は入学前から知ってました。彼、私の友人の弟さんなんですもん」

「その人は?」

「ブラックタイドさんです。今はデザイナーをしてまして」

 

ブラックタイド。インタビュアーは知っている。ディープインパクトの姉であり、同じく男性ウマ娘であったサンデーサイレンスの子供。ブラックタイドとその義父である有名演歌歌手には既にインタビューを行っていた彼等だったが、此処でブラックタイドの名前を聞くとは世間は狭いものだ。

 

「そうなんですか…あとディープインパクトさんの事で何かエピソードとかは?」

「そうですね…食堂の職員の皆様からはお坊っちゃま君なんて呼ばれてましたね。あと、物凄く食事のマナーが綺麗なんですよ」

 

と言ったたづな。インタビュアーとしては何かぶっ飛んだネタとかを探したかったが、これ以上はたづなからは聞けそうに無いだろう。

 

 

インタビュアーが去った後、駛川たづなは1人で応接間を片付ける。やがて片付けが一段落したのか、帽子を取った。帽子を取ると、ホモサピエンスの耳ではなくウマ娘の耳が有ったのだ。そう、駛川たづなはホモサピエンスではなくウマ娘だったのだ。

 

「本当に…サンデーサイレンスさんそっくりですね。ディープちゃんは」

 

そしてたづなは財布から1枚の写真を取り出した。その写真にはディープインパクトに瓜二つだが…頬に傷痕の有る男性ウマ娘と幼い頃のたづなが写っていた。その男性はサンデーサイレンス。アメリカ出身だが、生まれつき体格に恵まれなかった事と人種差別が未だ残るアメリカで男性ウマ娘として産まれた為か、悲惨な幼少期を過ごしては日本にやって来た人物。

だが…彼は日本の芝を走る適正は素晴らしく。瞬く間に日本でトップスターに登り詰めた。サンデーサイレンスは肉体に素晴らしい素質を秘めており、日本でそれを開花させた。だが…彼はもう居ない。サンデーサイレンスはディープインパクトという後継者を遺してこの世を去ったのだ。

 

「身体が小さく、それ故に多くのトレーナーに見向きもされなかった。でも肉体に秘めた素質は計り知れなかった。本当にそっくりだ」

 

その写真を大事そうに仕舞い、別の写真を取り出したたづな。その写真は優勝した記念に撮影された物だろうか?背景には日本ダービーの文字が書かれており、緑の勝負服姿で中学生頃の少女たづな。たづなを囲むように沢山のファンが写っており、その中には物心がギリギリ着かない位の幼さなディープインパクトがブラックタイドに抱っこされて写っていたのだ。しかし、その写真…1つ気になる点が存在していた。写真に写る少女たづなだったが、左足と右足は包帯が軽く巻かれており、良く見ると左足は包帯に隠されているが少し変色していたのだ。

 

「シンボリルドルフさん程度じゃ停まらない。貴方は(幻のウマ)を越える伝説になる。私は信じてますよ、ディープちゃん。

私を越える競技者は君しか現れない。私はそう思います」

 

たづなはその写真も大事に仕舞い、帽子を被って馬耳を隠す。そして応接間を出ていった。

 

「だって…サンデーサイレンスさんが遺言で「ディープは世界に衝撃を起こす」って言ってましたもん」

 

 

 

5月29日。日本ダービーが始まった。

 

『おおっと!?ディープインパクト、出遅れたか!?』

 

だが…スタート直後。ディープインパクトはよろけてしまい出遅れてしまう。出遅れはレースに於いて大きな失態、そのまま距離を離されれば打開は厳しく成ってしまう。事実、ゴールドシップも過去に世紀の出遅れ(通称-120億円事件)で大惨敗した事がある。

 

しかし、このディープインパクトにそれは関係ない。直ぐ様、持ち直すと集団の真ん中に張り付き…そのまま並走する。そして第3コーナーを曲がった時だった。

 

『ディープインパクトがもう仕掛けた!?持つのか!?此処で仕掛けて持つのか!?』

 

ディープインパクトが動いた。此処で加速し、一気に先頭集団を捉えては抜き去り先頭に出る。そして、最後のコーナーを曲がってディープインパクトの加速は爆発した。

 

『出るぞ!!衝撃波!!ディープインパクトの加速が停まらない!!彼の肺活量はどうなっている!?出遅れたのにも関わらず、ディープインパクトは今…ゴールしました!!』

 

そしてディープインパクトは1位でゴールした。なお、出遅れたにも関わらずディープインパクトは大会レコードタイでゴールするという規格外を見せ付ける。そして…彼は天高く腕を上げて指を2本立てる。皐月賞、日本ダービーを制した。後は菊花賞だ。それを制すると、彼はシンボリルドルフと同じく無敗の三冠馬となる。

 

 




次回は菊花賞に備えての北海道合宿(史実でも北海道で菊花賞に備えてました)。

だが…ゴルシのハジケが合宿限定で巻き起こる(笑)

ディープ「ヒグマは呂布、ツキノワグマは関羽です。まあ、人に触れた事がない熊は基本的に刺激しない限りは襲っては来ませんよ。山を歩く際はラジオを流せば、向こうから仕掛けてきません。熊は警戒心が強いので」

ゴルシ「ヒグマ出たぁぁぁあ!!」


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北海道合宿

前半。ディープが教える熊の驚異。後半はゴルシ


皐月賞から日本ダービー間では短いスパンで行われる。その間は約1ヶ月であり、調子や体調をどれだけ維持して仕上げるかが大事になる。その2つを終えれば次は菊花賞であり、菊花賞を制覇すれば晴れてディープインパクトはシンボリルドルフ以来となる無敗の三冠馬に成ることが出来るのだ。

だが…菊花賞は秋の10月25日。未々先であり、時間に猶予は沢山有る。しかし、暑い夏を無事に乗り切る事が絶対条件であり、過去には皐月賞と日本ダービーを制覇しても猛暑で体調を崩し調整を失敗して菊花賞を逃がしたウマ娘や名馬(我々の世界で)が沢山居た。

 

8月は夏休み。合宿が行われるのが基本では有るのだが、チームシリウスはディープインパクトが無事に菊花賞を制覇する為に8月一杯を使って合宿を行うことにしたのだ。合宿が行われるのは北海道、ディープインパクト達が普段から暮らしている東京都と比べて気温は涼しく避暑地として最適だ。

 

「さあ、皆!!お肉が焼けたぞ!!」

 

主に練習場として北海道の地方トレセンの練習場を借りて合宿にせいを出すチームシリウス。滞在場所としてはディープインパクトの実家の別荘を使わせてもらう事になり、チームシリウスの他にはディープインパクトの家族も参加している。今日は合宿が始まってから1週間目であり、別荘の庭で夕飯のBBQを行っている。辺りにお肉や野菜が美味しく焼ける匂いが広がり、実に美味しそうだ。

 

「はっはは!遠慮しなくて良いぞ!!」

 

そう言う老人が1人。この老人はディープインパクトとキタサンブラックの祖父(ディープから見れば血筋的に姉の義父)である超有名演歌歌手である。毎年、紅白歌合戦等に出ており、代表曲は祭りや与作である。

 

「いや…まさか…ディープのお爺さんが…あのサブちゃんだったなんて」

「マックイーンだけじゃなく、ディープもお坊っちゃんだったのか」

 

その有名演歌歌手はファンからはサブちゃんと呼ばれており、サブちゃんの事を知るトレーナーとジャスタウェイは苦笑いを浮かべてしまう。

 

因みにディープインパクトは北海道産まれ東京都育ち。実家は普通に裕福。育ての両親(姉夫妻)、妹(姪)、祖母と祖父(サブちゃん)の6人家族。

 

ハルウララは高知県出身高知育ち。実家は普通。

 

オグリキャップは岐阜県出身岐阜県育ち。実家はそこそこ貧乏で母親との2人暮らし。

 

ゴールドシップはゴルゴル星産まれ(自称)家族は国家機密とのこと。因みにゴルゴル星はラップ越しに夜空を眺めると見えるとか。

 

ジャスタウェイは東京都歌舞伎町産まれ。実家の側には万事屋銀ちゃんという怪しげで愉快な店があり、警察官の1人がキャバ嬢をストーカーしてるとか。

 

メジロマックイーンは超絶大富豪。家が最早城であり、小学校の時はリムジンで通学していたとか。

 

「だからお前、初めてのウイニングライブの時に祭りを歌ったのか」

「僕が歌詞覚えてるのそれだけだったので」

 

ウイニングライブ。それはレースに勝利したウマ娘が観客席に集まってくれた人々と感動を分かち合う為に、歌のパフォーマンスを行う事である。このウイニングライブのお陰か、ウマ娘の競技者は競技者であると同時にアイドルのような側面も持っている。だが…トレーナーはディープインパクトにライブの練習をさせる事を完全に忘れてしまい、ディープインパクトは初めてのウイニングライブで祖父サブちゃんの代表曲である祭りを披露してしまったのだ。

本来、ウイニングライブはアイドルのように格好いい曲や可愛い曲を歌う。しかし、そんな事を知らずにディープインパクトが披露したのはまさかの演歌である祭りだったのだ。

 

「そういや、北海道って熊さん居るんですよね。プーさんみたいな感じですの?」

 

マックイーンがそう言う。そう、北海道には熊が生息している。勿論、本州にも熊は生息してるが北海道には日本で最も大きな肉食動物ヒグマが生息している。熊は肉食動物なのだが、最近ではプーさん以外にリラックマやくまモンと言った可愛らしいキャラクターのお陰か女の子に人気なのだ。

 

「くまモン可愛いよね!」

「リラックマもなかなかだ」

 

くまモン、リラックマのブームの為なのかオグリキャップとハルウララも熊は可愛いと言う。だが…北海道出身のこの男と姉は違った。

 

「「そんな分けないでしょ!!」」

 

ディープインパクトとブラックタイドの姉弟である。そう、北海道では熊は恐るべき存在だと語られているのだ。それもその筈、過去に起きた獣害事件(野生動物が人間に危害を加えること)で何人も人が熊に殺されてきたのだ。

 

「熊を嘗めてたらいけないわ。奴らは恐ろしい存在よ、熊はプーさんとか言いながら共存出来るなんてほざく動物愛護団体の皆さんが居るけど、それは有り得ない。熊は執着心が強く、狙った獲物は逃がさない」

 

ブラックタイドが告げる。そう、熊は真実を知れば可愛げが1ミクロンもない危険な動物なのだ。人間の食べ物の味を覚えた熊や人間の味を覚えた熊は何度でも人里に降りてきては人間に危害を加える。

 

「熊はエグいんですよ。ヒグマは呂布、ツキノワグマは関羽です。ヒグマなんて人とウマ娘を瞬殺出来るスペックがあり、時速60キロで足場の悪い山を疾走し、朝青龍以上の体重で突っ込んで来ます。もう、絶望しかないよ」

 

熊は殺人的な身体能力を誇る。時速60キロで山を疾走する。岩や木の根子、急な斜面で走るのが大変な所で時速60キロで突き進むのだ。もし、車やウマ娘が普段から走る道路等で走ればそれより速く走るだろう。しかし、体重が軽く百キロを越えており、タックルや撫でるような攻撃でさえも殺人級な一撃を誇る。

 

「もし…遭遇したらどうしたら良いの?」

「人に触れず自然の中で生きてきた熊なら何とかなる。熊はヒグマ、ツキノワグマどっちも警戒心が強いんです。なので、ラジオを流し続けたりしてたら熊も此方の気配に気付いて近づきて来ません」

 

熊は警戒心が強い。なので携帯ラジオを流し続けたりすれば、熊も此方の場所が分かり近付いてこない。熊避けの鈴は似たような効果があり、ラジオが無い時はそれが使われてきた。

 

「まあ…近年ではそれが通用しなく成ってきたんですよね」

 

だが…それは人間に触れず純粋な自然の中で生きてきた熊限定。近年では熊が可愛いとエサをやったりする観光客、自然の開拓で境界線が曖昧になり人里に降りては人の食事を覚えた熊、これらの理由で人に慣れた熊が続出。ラジオや熊避けの鈴も意味が無くなってきたのだ。

というか、人の味を覚えたヒグマならラジオの音=人が居ると認識して襲ってくる可能性も有るのだ。正に絶望。

 

「熊を麻酔で眠らし山に返しても、その熊は再び人の前に現れる。覚えておいて、人と熊は共存するべきだと言う人が居るけど、それはもうほぼ不可能。共存出来るルールを一方的に破ったのは私達、人間だとね」

 

そう…人と熊の境界線を破壊したのは我々人間である。

 

熊の恐るべきスペックを改めて知り、唖然としてしまうオグリキャップ達。だって、熊だから仕方がない。

 

「それじゃあ、明日は休息だが…希望者は資料館に行くか?良い勉強に成るだろう」

 

実際に北海道にはヒグマが引き起こした獣害事件に対しての資料館が存在している。その資料館にはそのヒグマを再現したオブジェやそこヒグマの皮等が展示されているのだ。

ウマ娘達は選手である前に学生であり、実際に行くのは良いだろう。

 

しかし、これは自由参加。当然の如く、参加しなかったハジケリストと巻き込まれた哀れな苦労人が存在した。そう…

 

「さあ、行こうぜ!!ジャスタウェイ!!この世の果てまでな!!ゴルシちゃん探検隊しゅっぱーつ!!」

「昨日のディープとお姉さんの話し聞いてた!?」

 

そう…ゴールドシップとその親友であるジャスタウェイである。ジャスタウェイはゴールドシップに完全に巻き込まれた形では有るが、2人は北海道の大自然を満喫して探検していたのである。

 

此処は北海道の山奥。

 

「大丈夫だ、問題ない。エデンの意志が私に囁くんだよ…ズルズルボールはこの奥に有るってな」

「なにズルズルボールって!?初めて聞いたわ!!」

 

ゴールドシップはエデンとやらの意思に導かれ?ズルズルボールとやらを探すために、ジャスタウェイを連れて山奥にやって来た。一応、彼等が居るのは山奥なのは山奥では有るのだが、整地はされた登山道。獣道ではなく、人が通るために少しは整備された道である。

 

「大丈夫大丈夫。ほら、熊出没の看板無いだろ?」

「いや、国道側の登山口に思いっきりヒグマの絵が書かれていたけど!?」

 

北海道は何処でヒグマが降臨するか分からない。看板が有ろうが無かろうが、奴等は降臨する。何故ならヒグマはスタミナ有るわ、走るわ、泳げるわ、その気に成れば北海道の様々な所に現れるのだ。

 

「ゴルシ。今すぐ戻ろう…なんだかイヤな予感が」

 

ジャスタウェイはそこで言葉を切り、あんぐりとして固まってしまう。

 

「どうしたんだよジャスタウェイ?む?」

 

するとゴルシも何やら違和感を感じて後ろを振り向いた。そこには大きな大きなヒグマが立っていたのだ。

 

「「逃げろぉぉおおおお!!」」

「まー!!」

 

ヒグマ降臨!!

 

後日。無事に五体満足で逃げ切る事が出来たジャスタウェイとゴールドシップは語った。

 

「あれ、神様が設計ミスして誕生したプレデターだろ」

「北海道は都会だけで良いや」

 

 

 

ディープ&ブラックタイド「だから言ったじゃん」

 

なお、本州には関羽と言えるツキノワグマが生息してる。日本に居る限り、熊とは遭遇するだろう。




次回…菊花賞。

たづなさん?「菊花賞おめでとう。これで君は無敗の三冠馬ですね。だから…今こそ、私も正体を明かします」

たづなさん?「今日からディープインパクト君、貴方を鍛えます。貴方は既に国内では無敵でしょう、ですが世界が相手なら別です。私の夢を貴方に託します」

菊花賞を終えたディープにたづなさん?が夢を託す。これが、史実とのターニングポイントと成るのだった。




次回作?のオマケ

ウマ娘には様々な名馬が登場する。だが…未々多くの名馬が出てきていない。シンザン、オルフェーヴル、クリフジ、そしてテンポイント。

嘗て流星の貴公子と呼ばれた男性のウマ娘、テンポイント。彼はハンディキャップでの悲劇により世界挑戦の夢と選手生命が絶たれた。

だが…それでもテンポイントは時を得てトレセン学園に帰ってきた。自分の夢を子供達に託し、トレーナーとして未来の名馬を育てるために。

テンポイントは選手時代に所属していたチームシリウスのトレーナーとなり、廃部寸前だったチームシリウスの復活を目指す。同じくオンボロチームであるチームスピカと共に頑張ったり、時には競いあったり、時に笑いあったり。

牛乳大好きテンポイント。彼がシリウスとスピカの子供達をスピカのトレーナーと共に新たな一等星に導く物語である。

テンポイントやディープ等の一部の未実装ウマ娘は本来の性別に成ってる場合が有ります。

登場が確定している未実装ウマ娘。テンポイント(男)、ディープインパクト(史実通り男の娘)、オルフェーヴル(ゴルシの姉)、レジェンド クリフジ、トキノミノル(正体は?)

テンポイント「牛乳は良いですよ。1日1リットルが目安です」←史実ネタ


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英雄の物語

所でディープインパクトの実装未だですか?


熱い猛暑を北海道で過ごし、夏バテすること無く菊花賞が行われる当日を迎えたディープインパクト。

 

京都競馬場。菊花賞が行われる競馬場はこれまでにない興奮に包まれていた。全てのウマ娘が生涯に1度しか挑戦する事を赦されない三大クラシック。三大クラシック最後の関門と言える菊花賞は2年ぶりに満席…いや立ち見の観客を含めれば満席を上回る人々がやって来ていた。

 

皇帝シンボリルドルフ以来となる無敗の三冠馬の誕生。その光景を見ようと多くの人々がやって来た。その無敗の三冠馬となろうとするのは英雄ディープインパクト。男では史上初の無敗の三冠馬を目指すべく、英雄はターフに入った。

 

「英雄!!」

 

「ディープ!!」

 

「頼んだぞディープインパクト!!」

 

人気は当然の如く一番人気。されどディープインパクトの顔に迷いはない。北海道での夏合宿を家族も一緒に参加した為か、心の負荷やプレッシャーは思ってたよりも無さそうだ。だが…それでも昨年度の三冠馬であるオグリキャップと異なり、無敗の2文字がプレッシャーとしてディープインパクトにのし掛かる。

 

「お前なら行けるぞディープ!!」

 

だが…英雄は1人ではない。観客席ではチームシリウスの仲間や家族達がディープインパクトの勝利を信じて声援を送る。まあ…ゴールドシップが観客席で焼き蕎麦を焼いて商売してるのは気にしてはいけないだろう。

 

「行ってきます!!」

 

英雄は家族と仲間にそう告げて、スターティングゲートに向かった。

 

 

 

『さあ、これより始まります菊花賞。全てのウマ娘が生涯1度だけ挑戦を赦された三大クラシック。その三大クラシック最後の戦いが始まります』

 

実況がそう告げて、ゲートが開く。一斉に飛び出した出場者達であったが、英雄ディープインパクトは隊列の真ん中に控えて瞬発力を爆発させて仕掛けるタイミングを待つ。

 

『先頭はローゼンクロイツ。ディープインパクトは未だ隊列の真ん中だ』

『恐らく、彼は仕掛けるタイミングを待ってますね』

 

第4コーナーを回って最終直線。遂に英雄が仕掛ける。本来、ウマ娘では困難な高速走行中のサイドステップ。それで隊列の外側に飛び出したディープインパクトは急激に加速する。いや、加速ではない最早爆発と称した方が良いほどの急加速だ。

 

『ディープインパクトが仕掛けた!!彼は此処からが速い!!逃げるローゼンクロイツ!!』

 

だが…衝撃波を爆発させた英雄は止まらない。その勢いのままでローゼンクロイツを抜き去り、ぐんぐんとディープインパクトはリードを広げていく。

 

『ディープインパクト!!リードは5馬身!!もう、圧倒的だ!!そしてディープ…貴方はシンボリルドルフと同じく、伝説になる!!』

 

実況が叫び、その瞬間にディープインパクトはゴールした。シンボリルドルフ以来となる無敗の三冠馬の誕生、嘗て幻の馬と呼ばれたトキノミノルの未練を晴らすようにディープインパクトはチームシリウスの伝説のページを刻んだのだった。

 

 

 

 

VIP席。そこでチームリギルのメンバー、トレセン学園の理事長と共にディープインパクトの疾走を見守ったたづな。彼女はディープインパクトに拍手を送ると、トレードマークでもある帽子を取った。

 

「おめでとうディープちゃん。やはり、私の目に狂いはなかった」

 

帽子を取ったたづな。当然、たづなの事をウマ娘だと知ってるのは極僅か。それ故か最強チームであるチームリギルのメンバーはたづなの秘密を知り、唖然としてしまった。

 

「そんな…貴方は…貴方は…まさか」

「ええ、お久しぶりと言えば良いですかね?くれぐれも私の事は公に成るまで内密に」

 

たづなはそう告げて、VIP席を出ようとする。だが…

 

「待ってください!!」

 

呼び止める人物が居た。それはリギルのリーダーであり、ディープインパクトと同じく無敗の三冠馬の称号を持つウマ娘、シンボリルドルフだ。

 

「どうして…病と怪我を隠して日本ダービーに出たんですか!!貴方なら…ダービーを辞退し、休養を取ってからでも世界を制覇出来た。

あの時、幼い私に言った世界の頂に行きたいという願いを諦めてもダービーに出るべきだったんですか!!」

 

だが…それでもたづなは答えない。

 

「答えてください!!トキノミノル!!」

「私は自分の事より、他人の期待を優先してしまった。それだけよ」

 

たづなはそう告げて帽子を再び被り、VIP席から出ていった。

 

たづなは真っ直ぐ、とある場所に向かう。そこでは無敗の三冠馬になり、報道陣からのインタビューを終えたディープインパクトがストレッチをしていた。

 

「あっ!たづなさん!!」

「実はですね…私とディープインパクト君は昔に会ってるんですよ」

 

たづなはそう告げて、帽子を取る。

 

「改めてお久し振りね。私の本当の名前はトキノミノル。嘗て、チームシリウスのリーダーだった競技者よ」

 

トキノミノル。それがたづなの本当の名前であり、嘗てチームシリウスのリーダーだったウマ娘。生涯無敗、10戦10勝であり7回も日本記録を塗り替えた伝説。ウマ娘の競技者の中では伝説として語られる女性。それがトキノミノルだ。

 

「君は覚えてないかもね。でも、事実よ。先ずは菊花賞制覇おめでとう」

 

たづな…トキノミノルはディープインパクトの視線の高さまでしゃがみ、更に続ける。

 

「私は理事長に言いました。貴方がクラシック三冠を無敗で制覇すれば、1年間…秘書としての仕事を休むと。

その間、私はコーチとしてディープインパクト君…貴方を鍛えます。貴方はもう国内では無敵でしょう、最速の私が保証します。ですが、世界が相手ならは別です」

 

「但し、その条件として私の願いを代わりに叶えて。私の代わりにとある大会で優勝して」

「その大会って何ですか?」

 

その試合は唯の試合ではない。史実の英雄ディープインパクトが、暴君オルフェーヴルが、ゴールドシップが、ジャスタウェイが、日本の名馬達が挑戦して敗れた夢の舞台。

 

「フランスで行われる世界最高峰のレース、凱旋門賞。そのレースで勝利したウマ娘は名実共に、世界最速の称号を得るわ」

 

凱旋門賞。英雄は伝説から全てを託され、遂に世界に飛翔する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1年後。羽田空港。

 

新たに中学生に成ったキタサンブラックを加えたチームシリウス。シリウスのメンバーはサブちゃんとブラックタイドを筆頭としたディープインパクトの家族と共に、英雄の凱旋を待っていた。

 

「ディープお兄ちゃん未だかな?」

 

チームシリウスと家族から少し離れた所。そこでは沢山の報道陣もカメラとマイクをスタンバイさせて、英雄が現れるのを待つ。

 

そして…その時がやって来た。

 

「日本代表がフランスから帰ってきたぞ!!」

 

1人の報道陣が叫ぶ。すると、日本代表監督であるトキノミノルを先頭に、日本代表が帰ってきた。そして…トキノミノルの後ろには首から金色に輝くメダルを提げて、右手に輝くトロフィーを持つ英雄が現れたのだ。

 

「待ちくたびれたぞ!!ディープ!!」

「マジで英雄に成ったな!!」

「おかえりー!!ディープ君!!」

「うむ!!流石だ!!」

「お帰りですわ!!ディープ先輩!!」

「良くやった!!流石だぜ!!」

「流石はお兄ちゃん!!」

 

英雄ディープインパクト。正真正銘、世界の頂点に立ったディープインパクトが日本に帰ってきた。

 

「ただいま!!」

 

これはもう1人の英雄が歩んだ軌跡である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴルシ「次は私達だな!!ジャスタウェイ!!」

ジャスタウェイ「おう!!」

 

なお、翌年。ゴルシとジャスタウェイが凱旋門に挑戦したが、結果は史実の通りであったとか。




これで一先ず完結ですね。まあ…もとより短編だったので物凄く駈け足でしたが。


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