ようこそ自称天才がいる教室へ (贋作者)
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1章
天才(自称)


 ──4月。入学式。バスの中、窓越しに満開の桜を眺めている世界一のイケメンは俺こと流川快斗。

 

 そんな俺は今、高度育成高等学校という東京の埋立地にある日本政府が作り上げた──希望する進学、就職先にほぼ100%応える学校と名高い学校へバスで向かっている。もちろん、そんな名高い学校の受験に受かった俺は天才であり、俺に勝てるのは俺だけである。……あれ?中学校の時、俺はテストでいつも2位だった気がする……けどきっと気のせいだなうん俺が負けるなんてありえない。

 

 つまり俺の負けだ。1位だった田中君許してくらさい。

 

「席を譲ってあげようと思わないの?」

 

 は?だまれこのクソカスが。愚民が俺様に話しかけてんじゃねえよ。

 

 俺は突然聞こえてきた声をボロクソに批判し、犯人を探そうと混んできたバス内を見渡す。

 

「そこの君、おばあさんが困ってるのが見えないの?」

 

 ……俺はついに犯人を見つけた。優先席にどっかりと座る金髪のガタイのいい高校生……の真横に立つ年老いた婆さん……の隣に立つOLの女性が犯人だった。女性は金髪の高校生に話しかけていただけらしい。

 

……いや、そもそも俺に話しかけてきてないじゃん。俺勘違いして勝手にキレてただけじゃん。いやキレてないけどもじゃん。

 

「実にクレイジーな質問だね。何故この私が老婆に席を譲らないといけないんだい?まさか、私が座っている優先席はお年寄りに譲るのが当然とか言い出さないだろうね?……優先席は優先席であって、それに法的な義務は存在しない。この場をどう動くかは私が全て決めることだ」

 

 金髪の男は女性にそう言い返し、女性も図星だったのか少し言葉に詰まる。

 

「おい、そこの金髪。さっきから屁理屈ばっかりこねやがって……うるさいから黙れよ。愚民が俺様の耳を汚すな」

  

 俺がそう言いながらOLの女性を守るように立つと、みんなが俺をヒーローを見る目で見てくる。……最後の一言で少し軽蔑された気がしなくもないが。

 

 ……ふっ、やっぱりいい事をするのは気持ちがいいな。この金髪の愚民も婆さんに席を譲ればいいものを……馬鹿が。

 

「……私は高円寺コンツェルンの息子だ」

「おれがぐみんでしたすみませんゆるしてくださいなんでもしますから」

 

 先ほどまで俺をヒーローみたいに見ていたバス内の乗客は今、俺をゴミを見る目で見ていた。こいつカスッ……そんな幻聴が聞こえてきそうだ。

 

……いや仕方ないじゃん!ねえ!だってさ、この目の前の金髪はあの高円寺だぞ?このままだと俺はいつか社会的に潰される。くそぉ、高校生になったからって調子こいてふざけて愚民とか言わなきゃよかったぁぁああ………。

 

「あの……私も流石にそこの人程言う気はないけど、お姉さんの言う通りだとは思うな」

 

 その時、高円寺と同じ制服の美少女が立ち上がり、そう言った。……そして今気づいたけど、制服から見るに俺はどうやら高円寺と同じ高校らしい。……はい俺の高校生活は終わりを告げました。……まだ始まってすらないんけど?ははっ……。

 

 て言うか何気に今立ち上がった美少女、俺の方向いた時俺をゴミを見るような目で見てた気がしたんけど?……いやでも、いかにも優しい人間ですよ感あるし気のせいか?……いや、気のせいじゃないな。……何故なら俺は天才だからだ。……あの美少女はきっとメンヘラかドSだ!

 

 ……さて、俺の無意味な名推理は置いといて……俺はここで高円寺を庇う!そうすればきっと高円寺に許してもらえるはずだ……!

 

「おうおうおうおう?ゴラお前ふざけんなよ?あの高円寺コンツェルンの息子様に喧嘩売ろうってか?ああん?」

 

 俺の天才的な三下ムーブを見たバスの乗客はもはや俺を人として認識していなかった。多分、人の皮を被った害虫か何かだと思ってるんだろうな。

 

「……っていう劇をやるんだよな!なぁ?二人とも」

「え、え……?」

「は、は、ははははは。……君、実に面白いじゃないか。正直、狂人の類かと疑ったよ」

 

 このままじゃ乗客に駆除されかねないと判断した俺は行動に出た。今までのを全て一つの劇だったことにし、オールフィクションって事にするのだ。勿論、その策で助かるのは俺だけ、つまり高円寺と美少女は協力する意味がない。だが、本当にそうだろうか。あの高円寺コンツェルンの息子に対して、OLの女性はある意味失礼を働いている。そしてもし、高円寺の両親が子供大好き人間だった場合、彼女は高円寺グループに消される可能性があるのだ。……そしてもし、それにあの美少女が気づけるほどの頭を持っていれば……

 

「う、うん!そうだね。乗客中の皆さん!そしておばあさんとOLのお姉さん。劇の練習に巻き込んでしまってすみませんでした!」

 

 ……そう、こうなる。よくやった、パーフェクトだ名も知らぬ美少女。……あの美少女は優しい。ここで全てを劇という事にすればOLのお姉さんが消されなくなる可能性に気づいたのだ。クズとは大違いだぜ。

 

……このまま高円寺が合意しなくても俺と美少女、二人の主張があればゴリ押しで全て劇だった、という事にできる。これにて解決……となればいいんだがそう簡単にはいかない……筈だった。……本当のところ、あの美少女は少しだけ頭が足りなかった。この場合、もしここで全てを無かった事にしたところで、全てが終わった後に高円寺次第でOLのお姉さんは消されるし、美少女も消されるし、俺も消される可能性があった。つまりこれはOLと美少女を巻き込んだ完全な賭け……だが、何故か高円寺は今、笑っている。賭けに勝ったぜ。多分俺たちを消すことはしないって事なんだろう。

 

「……いやあさっきは申し訳ないね。そこの老婆、席に座るがいい」

 

 高円寺がそう言って席を譲り、俺たちの評価は普通のちょっと下ぐらいに戻った。……そりゃそうだよな。側から見たら俺たちバスで劇始めた頭沸いてる連中だし。

 

 ……俺は高円寺に消される問題を後回しにして乗客から駆除される問題を解決しようと思ってたわけだけど……なんか同時に二つとも解決したっぽいよな?……流石俺、天才だ。

 

「……少し興味が湧いた。シルバーボーイ、名前は?」

 

 突然、高円寺が小声で喋りだす。一体誰に話しかけてるんだろうな俺じゃないよな俺じゃないって信じてる……いやこれ俺の方向いてるし俺だわ。

 

「……田中太郎」

 

 ……悪いな中学時代俺よりテストの点が高かった田中。一度も話した事ないけど、お前はきっといい奴だったよいや俺よりテストの点良かったから悪いやつか。なら売ってもいいよな。

 

「……もし君が偽名を使ってるんだとしたら私は君を──」

「……さんの次にテストの点が高い流川快斗デス!」

 

 ……くそぉ!消される可能性があるから俺よりテストの点が高かった田中太郎を名乗って逃げようとしたのに。

 

「……あの、ちなみにシルバーボーイってのはなにでございましょうか?」

「……君の目は珍しい銀色だからそう呼んだだけさ。あと、快斗ボーイ。君は特別に私に敬語をつけなくても構わない」

 

 ……聞いたか?おいオラ聞いたか?あの高円寺コンツェルンの息子が俺に敬語使わなくていい、だとよ?はい、勝った。やっぱ媚売りは大事なんだなって。

 

 ……これって気に入られたって事だよな?え?流石に俺をもうすぐ消すから多少の無礼は許してやろう、とか思ってないよな?……やべえ、唐突にすげえ怖くなってきた。

 

「了解だ、高円寺。じゃあいつかまた会う日まで」

 

 俺はそう言いながら、丁度高度育成高等学校に着いたバスを降りる。ちなみに俺はもう高円寺と会う気は一切ない。怖いし。……高円寺、永遠にさようなら……

 

 

 




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永遠とは(哲学)

 

 ……どうやら俺にとっての永遠は一瞬らしい。バスを降りた後、クラス分けを確認し、Dクラスだった俺は自分の教室まで来ているんだが……高円寺がいる。もう一度言おう。高円寺がいる。な、何を言っているかわからねーと思うが……いや落ち着け俺こんなもの誰でもわかるに決まってるじゃないかつまり高円寺は俺のストーカーいや何言ってるんだ俺流石俺天才。

 

 ……どうやら俺は壊れたらしい。

 

「やあ、さっきぶりだね快斗ボーイ」

 

 だまれこのクソカスがごめんなさい高円寺様でしたか今俺ちょっと錯乱してるんで落ち着くまで待っててもらっていいですかねはは。

 

「さっきぶりだなーじゃあ俺席こっちだからばいばい」

 

 ……幸いにも俺の席は高円寺から遠い、とまではいかなくても割と離れているようだった。

 

 ……よっしゃ!俺は高円寺に見えないようガッツポーズして席へ向かう。

 

「入学早々随分と重いため息ね」

「……同じクラスだったなんてな」

 

 は?死ねよクソリア充が。

 

 ……俺が席つくと、俺のすぐ近くの席で黒髪ロングの美少女と茶髪っぽい髪色の影薄い系イケメンが仲睦まじく話をしていた。

 

 なんだこいつ等俺への当て付けか?彼女いない歴=年齢の俺を煽ってんだろそうなんだろ?正直に言え、そしたら許してやるよ。3回殺すだけにしといてやる。

 

「オレは綾小路清隆。よろしくな」

「俺は流川快斗。よろしくな」

「……いきなり自己紹介?というか唐突に会話に入ってきたあなたは誰かしら?」

 

 俺が会話を荒らすためにリア充共の会話に入り込んでやると二人は驚いた様子で俺を見てきた。あと多分勘違いじゃなければ心なしか黒髪美少女に睨まれてる気がする。勘違いだといいな。

 

「……いや俺さっき流川快斗って言ったじゃねーか……つーか、もしほんとにわからないなら小学校からやり直した方いいぞ?」

「……あなた、初対面でよくもそんな失礼な口を聞けるわね……」

 

 俺が優しく助言してあげると黒髪美少女は少し苛立った様子でそう答えてきやがった。

 

「失礼?面白い冗談だな。俺は世界一優しくてイケメンで天才な最強人間だぞ?」

「……なるほど、わかったわ。あなた、今すぐ病院に行ったほうがいいわ」

「……正直、さっきまでは話せて嬉しいと思ってたオレも今丁度病院に行ったほうがいいと思ってた所だ」

 

 ……なんだこいつら。中学の時の同級生と同じ反応しやがって。……言ってもわからぬ馬鹿ばかり。

 

「そうだ、俺がキラだ!」

「もういいだろ、で、お前の名前は?」

 

 茶髪イケメンこと綾小路が俺の方を一切向かずに黒髪美少女に話しかける。

 

 あれえ?もしかして俺、無視されてる?俺を存在しなかったものとして会話を続ける気なんだろうか?泣きそう。

 

「拒否しても構わないかしら」

「1年間、お互い名前を知らずに過ごすのは居心地が悪いと思うけどな」

「私はそうは思わないわ……でも、これ以上無駄な話を続けたくないから………私は堀北鈴音よ」

 

 黒髪美少女……いや、堀北はそう言って無駄な話は終わりと言わんばかりに本を開いて読み始める。本の題名は『罪と罰』。

 

 ……いい題名だ。お前達二人は俺を無視した罪と罰を負うべきだと思うんだよ俺は。……でも許す。だって、あいつら多分まだ会ってから対して経ってない……つまりリア充ではないだろうから。やったぜひゃっほい

 

 ……それから数分後、チャイムがなり、ほぼ同時にスーツを着た先生と思われる女性が入ってきた。

 年は30歳前後、髪はポニーテール調にまとめられていて、見た目的には仕事人間って感じのしっかりしているイメージができる。多分あの先生は結婚できない系だわ可哀想にお疲れ様。

 

 先生の名は茶柱。茶柱曰く、この学校は普通の学校と異なる部分が存在しており、生徒全員は敷地内の寮での生活を義務付けられ、在学中外部との連絡が特例を除き禁止されている。さらに3年間クラス替えはない。また、Sシステムという特殊なシステムも存在しており、配られた学生カードの中に入っている電子マネーのようなポイントを消費して施設を利用したり買い物ができる。ちなみに敷地内で買えないものはないとされている。さらに、入学した生徒達はそれだけの価値がある、と初めから10万ポイントを生徒達全員のカードに入れてあり、一ポイントは一円と同義、尚、毎月一日にポイントは再配布される。と説明を受けた。

 

 うーんつまり政府は、俺はクソガキじゃないがクソガキ共に10万円を渡したってことだろ?経済を必死に回してる連中が?税金をむしり取っていくあの連中がか?おかしいだろ……単純計算で10万×36=360万。一人当たり3年間で360万配るとして、この学校の生徒数は500をとうに超えているはず、……正確な数値がわからないから700ぐらいと仮定して計算すると……25億2000万……しかもこれを今までずっと続けていた、と。政府は一体何億ここにつぎ込んだんだ?政府も流石にそんな馬鹿じゃねえだろ?……ってことは何かがある、筈。

 

 ……あーそういやさっき茶柱実力で生徒を測る、みたいなこと言ってたなー。実力いこーる価値だとすると、実力がゴミだって判断されたら価値がさがる。で、入学を果たした俺たちの今の価値は10万円分でも、価値が下がれば貰えるポイントも減る。あーなるほどー流石俺天才だぜ。茶柱は毎月10万もらえるなんて言ってなかったしな。

 

「皆、少し話を聞いてもらってもいいかな?」

 

 そんなことを考えていた俺の意識を現実へと戻したのは、突然立ち上がった如何にも優等生といった感じのイケメン野郎の声だった。

 

「僕らは今日から3年間、同じクラスで過ごすわけだし、今から自発的に自己紹介をしていかないかい?一日も早くみんなが友達になれたらと思うんだけど、どうかな?」

 

 そう言ってその野郎は教室内を見渡し始める……少ししてから一人の女子が同意し、それを火種にみんなが私も、僕もと賛成していく。

 

「僕の名前は平田洋介。気軽に下の名前で呼んでくれると嬉しいかな。趣味はスポーツ全般、特にサッカーが好きで、この学校でもサッカーをするつもりなんだ。よろしく」 

 

 提案をした男……平田は非の打ちどころのない完璧な自己紹介をすらすらと終えた。

 

 ……やっぱりな、俺は一眼見た時からわかってたんだ。あいつはサッカーをやってる奴だって。だってあいつの顔、サッカーしてそうな顔してるもん。……というか全く関係ないけどあいつキャーキャー言われすぎじゃね?そりゃあ俺よりイケメンじゃなくとも俺もあいつはイケメンだと思うが…… ほら、見てみろよ。もう既に隣の席の女子が目をハートにして平田を見てやがる。流石におかしいだろ……平田は絶対チート使ってる。異論は認めたくない。

 

「端から自己紹介を始めてもらいたいんだけど……いいかな?」

 

 俺がそんなくだらない事を考えてる中、平田は端の席に座る女に確認を取る。……おい誰だよ俺が考えてたことくだらないとか言いやがった奴……俺じゃねえか殴るぞ俺。

 

 ──少ししてから、端に座っていた女……井の頭は少し緊張しながらも周囲に励まされ自己紹介を終えた。その後も自己紹介はつつがなく進行していき、山内春樹とかいう馬鹿なのかお調子者なのかわからない男、櫛田桔梗という、さっきバスで共闘した美少女。キレ散らかして教室から退散していった赤髪のヤンキー、他にも池寛治というイケメンつまり俺嫌いの男や、高円寺六助という、さっきバスで俺に名前を聞いてきた危険な奴……等々、変gi……いや、中々個性的なクラスメイトだという事がわかった。

 

 どうやら次は俺の番のようで、皆が俺の自己紹介への耳をすましている。

 

「俺の名前は流川快斗。世界一優しくて天才でイケメンとかいう完璧人間なんで、皆さん俺を頼ってください」

 

 そう言い終えて周囲を見渡してみるとクラスの半数以上が俺を虫を見る目で見てきていた。これはひどい、いじめですね。あなた達を名誉毀損罪と器物損壊罪で訴えます!理由はもちろんお分かりですね?あなた達が俺をこんな目で見つめ、俺の心を破壊したからです!覚悟の準備をしておいて下さ(ry

 

 ……母さん、父さん。あなたの息子はもうすぐ害虫として駆除されるかもしれません。

 

 ……その時、俺を駆除しようと業者を呼ばれるかもしれない空気になったのを変えようとしたのか、次の人へと平田が自己紹介を促し始める。

 正直言ってありがたい。あのままゴキブリみたいに駆除されたくなかったからな。

 

「えっと……綾小路清隆です。えー、得意なことはありませんが、皆と仲良く慣れるよう頑張ります。よろしくお願いします」 

 

 どうやら俺の次の番だったらしい綾小路が自己紹介を終え、座った途端、教室に微妙な空気が流れ始める。

 

 ……ああうん、俺よりましだけど空気が微妙になったぞ。誰か空気清浄機持ってこい。

 可哀想なことに綾小路の自己紹介はクラスで一番最後、つまりさっきの様に生きる空気清浄機平田が空気を変える事はできないということ。

 この空気に耐えられなくなったのか、それとも同情なのか、そんな綾小路へとパラパラと拍手が送られる。

 

 ……ど、どんまいだ綾小路。

 

 

 




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衝撃の事実

 いくら日本政府が関わっているエリート学校だろうと、入学式はどこも同じもの。中学校と変わらず、偉い人たちからのありがたくない話を長々と聞かされ無事に終了した。

 そして、昼前。俺たちは施設の説明を受けた後解散となった。殆どの生徒は寮へと向かうようで、そうでない人たちはグループを作りカラオケなど、遊びに行くようだった。

 

 ちなみに俺は遊びには行かず、ケヤキモールで生活必需品を買ったあと、今日の飯を買うためにコンビニの中にいた。

   

「なぁ。お前、同じクラスのえーと、確か流……流……えーと、頭のやばいやつか?」

 

 俺って実はアタマノ・ヤバイヤツって名前だったらしい。初めて知った自分の本名に驚きを隠せません……。

 

 ──突然話しかけてきた声が聞き覚えのある声だったから誰かと思って振り返ってみると、さっき俺のこと無視してくれやがった綾小路が俺の後ろに立っていた。

 

「アタマノ・ヤバイヤツさんがどなたかは存じませんが、俺の名前は流川快斗だ。そして──そんなお前はジコショウカイ・シッパイタロウで合ってるよな?あれ?オレノコト・ムシシタロウだっけ?」

「すまん、流川…そしてオレの名前はそんな名前じゃないぞ。綾小路清隆だ……」

「全然いいぞ、全然気にしてない……よろしくな袋小路(ふくろこうじ)!なんか行き止まりになってそうな苗字だな!」

「めっちゃくちゃ気にしてるじゃないか……すまん……」

 

 はっ!俺を無視するとは本来なら万死に値する……けど素直に謝ってきたから許します。つまり綾小路、お前は今から俺の親友だ。絶対に裏切らないと誓うぜ。

 

「よかったじゃない、話す相手ができて。彼、少し……いえだいぶ頭がおかしいようだけど……」

 

 ……は?綾小路お前殺すぞ?俺はお前と縁を切る。絶縁だ。残念だよ綾小路。俺はお前を信じてたのに。

 

 突如聞こえてきた声の犯人は先程俺を無視してくれやがった堀北。どう考えても綾小路と一緒に来てただろリア充しね。

 

 いや、まてよ、これはあれだな、きっと……

 

「……なるほど綾小路が誘拐したのか通報しようそうしよう」

「ちょっと待てなんでそうなった?」

「……流川君が何を言っているか分からないけど、私が綾小路君に誘拐されたなんて悍ましいこと言わないでくれるかしら。運の悪いことに入り口であっただけよ」

 

 ははは。結局一緒にコンビニ回ってるから綾小路は万死に値する。さようなら俺の親友だった人。綾小路、お前親友絶縁RTAの世界記録取れるよ。そんなコンテストないけど。

 

「堀北はツンデレ、と──」

「殺すわ」

 

 俺は気がついたら地面に倒れてた。俺は見た。俺がツンデレと発した瞬間堀北が俺の体をぶん殴って地面に叩きつけたのを。

 

「めっちゃ痛い。堀北お前、何男の子の体傷物にしてんの?責任取ってくれるんだよな?」

「そもそもあなたがツンデレ、と吐き気がする単語を発したのだから自業自得だわ」

 

 いやだって、綾小路と運の悪いことに会ったっていうけどじゃあなんで綾小路と一緒に回ってるんだよ。そんなもんツンデレ以外の何者でもないじゃん。ていうか堀北ツンデレって単語知ってるんだな。これ絶対今までも何回も言われたから意味わかるようになった系だよな?……つまりツンデレは堀北の地雷って事か。

 

「これから堀北のことはツンデレちゃんって呼ぶことにした」

 

 でも俺は進み続けるんだ。地雷を駆逐するまで。

 

「やめなさい、本当に殺すわよ」

 

 やめますすみませんでした。

 

「……恐ろしく早い前言撤回。俺でなきゃできないね」

「何か言ったかしら?」

「なんでもないです」

 

 そんな馬鹿みたいな会話をしていると……

 

「なぁ。これ‥‥どういうことだろうな?」

 

 ……綾小路がそんな事を言いながら、『無料コーナー』と書いてあるところをゆびさした。

 そこには1ヶ月三点までと書かれた注意書きがあり、シャンプーや絆創膏などの日用品がワゴンの中につまれてあった。

 

「ポイントを使い過ぎた人への救済措置、ってことかもな」

「1ヶ月に10万円も与えておいて、随分と甘い学校なのね」

 

 俺はどうせなら無料のがいいと思ってそこからまだ買ってない必需品をもらっていくことにした。来月10万貰えるか怪しいし。ちなみにその時堀北に守銭奴と言われたが俺は気にしない。俺の心は鋼だからな。うん。ほんとにきずついてないよ。きずついてくちょうがおさなくなんかなってなんかないし、おれのこころはがらすじゃない。

 

 ……で、今俺はレジで買うものの会計を済ませ一人で寂しく寮へ向かっていた。綾小路と堀北はもう少しあそこに残るらしい。ちなみに一応綾小路の連絡先だけもらった。でも堀北はくれなかった。何でだよクソいや俺の頭がおかしいからかじゃあ俺が悪──いわけないな堀北が悪い。

 

 

 

 

 

 

 学校生活2日目。授業初日ということもあって大体の授業は勉強方針の説明だけのようだ。ちなみに初授業が始まって少ししたら、初回早々居眠りや私語をしている者が出てきた。馬鹿どもが。しかしそんな生徒たちは教師に注意されることはなかった。もしかしてもう俺たちは義務教育の奴隷じゃなくなったから全て自由にしてあげますって事なのか?……もしそうなら、何が起きても自己責任って事か?……うーん。

 

 ……ていうかそもそもここって進学校だぞ?何でサボる奴があんなにいんの?しかも見たところここまでサボる奴がいるのうちのクラスだけだし。もしかして昨日綾小路からの連絡で聞いた『不良品』がどうのって言われたってやつに関係してます?

 

 ……あぁ……そんな……まさか……俺たちDクラスが『不良品』って事か?だって、もしそうならクラスごとに実力が分けられてるって事になるからつまり、Cは俺たちの次に雑魚でBはCの次に雑魚でAは最強って事になるんだぞ?え?ガチでそうなん?じゃあなんで最強たる俺様がAクラスじゃねえんだよなるほど俺が最強じゃないからかって納得できるかふざけんな今混乱してます助けてください。……落ち着け俺、まだそうと決まったわけじゃない。大体平田とか櫛田とかそこら辺の奴らはみるからに有能だったしな。きっと俺の気のせいだ。……それに、もしかしたら不良品と書いて天才児と読むかもしれないだろうが!

 

「流川くん…だよね?」

 

 今は放課後、皆が帰宅する中、俺は一人椅子に座りずっと色々考えてたのだが、その声と共に俺の意識が現実へと戻ってくる。

 

 声の主はバスで共闘した櫛田だった。

 

「すみません僕の名前は綾小路清隆ですのでどうぞおかえりください」

「…嘘つかないでよー。綾小路君とはさっき話したもん」

「実は僕、二人目の綾小路清隆なんですよね」

「……もうそれでいいや。……話があって、バスでの事なんだけど」

 

 ああうんその話なら俺もう顔割れてるから嘘ついても無意味だな。恥ずかしッ。あれもこれも全部綾小路のせいだ。『俺は悪くない』

 

「昨日話せればよかったんだけど、流川くん、いつのまにかいなくなってたから……」

「……あぁ、昨日は色々買うものがあったから居なかっただけだ。で、話って何の話だ?」

 

 もしかして俺が自分が助かるためにOLと櫛田巻き込んだの気づいちゃった?……確実に殺される。逃げようかな。

 

「……昨日はバスの中で助けてくれてありがとう!あのままだと無礼をした私とOLのお姉さんが消されるかもしれないと思ったからあんな事したんだよね?何かお礼できる事ないかな?」

 

 は?ごめんちょっと何言ってるかわからないわ。え?櫛田お前、俺を殺しに来た死神か悪魔じゃなかったのか?……なんか向こう側から見たら俺は櫛田も助けようとしてるように見えたらしい。俺、櫛田の事一ミリも助けようと思ってなかったんだけど。

 

「いらない帰れ」お礼なんて別に大丈夫だぞ?俺別に大したことしてないし

「え?」

 

 ……あ、まずい。建前と本音を間違えた。流石俺天才……じゃねぇよ!がちやべえじゃんおいどうしてくれんだよ俺。いやなんで俺は俺にキレてんだよ頭沸いてんのか俺殴るぞ?いやなんで俺は俺を殴るんだよ俺殺すぞ?いやなんで俺は俺を殺すんだよ俺消すぞ?…………………無限ループって怖くね。

 

 ……ていうか現実逃避してる場合じゃないじゃん。どうしよ。

 

「……えーと、また明日」

 

 ……カ イ トは逃げ出した。しかし、キ キ ョ ウ に回り込まれて逃げられなかった。

 

「えーとなになに?お礼できる事は何かないかって?お礼なんて別に大丈夫だぞ?俺別に大したことしてないし」

「いや、なに今さっきのことなかった事にしてテイク2始めてるの?」

「お礼なんて別に大丈夫だぞ?俺別に大したことしてないし」

「ゲームのCPU??」

「俺別に大したことしてないし」

「言うのめんどくさくなって端折ったでしょ」

 

 ……くそ。なんだこの女。やっぱりバスの中で考えた通りメンヘラじゃないか。ここまでやったら流石にもう構ってくるなよ……いや俺が悪いんだけどもでも俺は悪くないからやはり櫛田が悪い。

 

「とにかく、お礼は別に要らないから。じゃあな」

「でも、」

「……お礼したいなら俺の願いを聞き入れてくれよ……。本人がいらないって言ってるのにお礼したいです!って言ってるのは自分勝手すぎないか?俺の気のせい?もし気のせいだったらコーラ飲みながら土下座してやるよやらないけど」

 

 俺は呆然とする櫛田を置いて教室から出る。流石に言いすぎたか?いや、言い過ぎだろうとなんだろうと今のは正論な筈。別に俺は櫛田が嫌いだからそんなことを言ったわけじゃない。俺は真の人類平等主義者。男でも女でも、人間である限り、俺が正しいと思ったなら辛辣だろうと指摘してやる。ただし、俺が気に入ったやつには指摘しない……あれ?

 

 今、衝撃の事実が発覚した。どうやら俺は平等主義者じゃないらしい。

 




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運動神経

まじでクソみたいに時間空いてすみません!最近学校が忙しくて……一応期間開けただけはあって今までのより少し長いです!僕的にはゴールデンウィーク中に何話かかけるといいと思ってます。


「よっしゃプールだー!」

 

 プールサイドに池の声が鳴り響く。今は水泳の授業時間。もうこの学校に来てから一、ニ週間ぐらいがたった。

 

「き、来たぞっ!?」

 

 そう叫び身構える池。ちなみに事情を知らない人間が見たら池は変態にしか見えないが、女子の水着を見れることに興奮してるんだけなんだ許してやってくれ……いや、どちらにせよキモかったわ。どうぞ、池に対して好きなだけ誹謗中傷を浴びせるがいい。

 

 ……ちなみに多くの女子は池みたいな変態男子に見られるのが嫌だったのか見学している。尚、今この事実に気づいた池、その他男子達はこの世の終わりでも見たかの様な顔で呆然と膝をついていた。哀れだな。抱きしめたくなるくらい哀れだ。キモすぎて抱きしめたくないけど。

 

  ……一体なんで俺はこんな奴らと同じクラスなんだ?やっぱりこのクラスは不良品なのか?……つーかそもそもどうしてこんな見るからにアホそうな面してるこいつらがなんでこの学校入れてんだよ。お前等実はそのアホ発言は全部演技で実はすごいとかなのか?

 

「二人とも何やってるの?楽しそうだねっ」

「く、く、櫛田ちゃん!?」

 

 女子が見学なのに気づいてから頭のネジが飛んだ池と山内がクソみたいな茶番をしていた所、二人の間に割って入る様に櫛田が顔を覗かせた。その瞬間、スク水を着た櫛田を男子のほとんどがガン見し始める。そして、胸はDか?Eか?そんなくだらない呟きがすぐ後ろから聞こえてきた。

 

 が、皆んなはすぐに櫛田から視線をずらす。一体どうしたのか?俺が疑問に思っていたところ……世界平和って素晴らしいな、という声がまた後ろから聞こえてくる。いや、めっちゃうるさいじゃん俺の後ろのやつ。独り言言い過ぎだろ。けど、お陰でどうして皆が視線をずらしたのかがわかった。どうやら皆は生理現象を気にしているらしい。もしここでテント状になっちまうと大変な騒ぎになるからな。……発情期の猿どもが。いや俺もテント状になるけども。

 

 そんな中池だけは鼻息を荒くし、櫛田をガン見し続けていた。あそこまでいくとむしろ尊敬通り越して軽蔑すらするわ。あいつは人としての尊厳がないらしい。

  

 ちなみに、俺はあの日以来櫛田と話をしていない。何か思うところがあったのか櫛田が積極的に話しかけてこない、ってのもあるし、櫛田が近くに来たら俺ができるだけ逃げてるからだろう。……俺はお節介な人間って苦手だからな。あれから少し櫛田を観察したけど、わかったことと言えばあの女は『あざとい』が名前なんじゃないかってレベルであざとい事と全ての人間に優しくする人間だってことだけだ。ていうかあんな色んな人に優しくしてたら絶対、「櫛田さん俺に優しい!俺のこと好きなんじゃね?ふひふひ」って奴がたくさん出てくる筈。あいつに惚れた奴ら可哀想すぎる。

 

「よーしお前ら集合だぞー」

 

 ムキムキマッチョな先生が皆に声をかける。あの先生は脳筋。異論は認める。

 

「早速だが、準備体操をしたら実力を測る。泳いでもらうぞ」

「先生、俺泳ぎたくありません!」

 

 一人の生徒がピンと手を伸ばし大きな声で先生に伝える。

 

 ……馬鹿か?泳げません!ならまだわかる。分かるけど、あいつ泳ぎたくありません!だぜ?流石に……クソ面白すぎて死ぬかもしんない。死因:笑いすぎて死亡……とか面白すぎて笑いごとになんないからいやなってるなごめん。

 

「俺が担当するからには、必ず夏までに泳げるようにしてやるぞ。安心しろ」

「え、いや別に俺泳げないなんて言ってな……」

「──そうはいかん。今は苦手でもいいが、克服はしてもらう。泳げるようになっておけば、あとで必ず役に立つ。必ず、な」

 

 あれー?話通じてますか?先生ー?……ダメだこいつら。二人して頭が狂ってやがる。

 

 というかこの脳筋先生必ずって言葉使いすぎじゃね?……あと、あとでって表現おかしいだろ。普通いつか役に立つって表現する筈。さてはこの脳筋、馬鹿なふりしてるだけの優秀な人間だな?流石天才の俺。ここまで見抜くなんてな。

 

「さて、準備体操するぞ。まずは左足の関節を外してー」

 

 ……前言撤回。こいつは馬鹿だ。しかもただの馬鹿じゃない。頭の狂った大馬鹿野郎だ。

 

「……冗談だ!ダハハハハハ」

 

 こいつ…‥ド畜生だな。なんでこんな奴が教師やってんだよ。解雇されろ。

 

 ──準備体操が終わり、俺たちはプールサイドで脳筋馬鹿野郎の話を静かに聞いていた。

 

「これから男女別で50m、競走してもらう。1位になった生徒には俺から5000ポイントをプレゼントしよう」

 

 これこそまさに実力に応じてポイントがもらえるってやつじゃないか?つまり俺の推理は当たってたのか。流石俺、名探偵快斗としてやっていけそうだな……ちなみになんか怪盗の方が合ってる気がするのは気のせいだ。

 

「まずは女子から泳いでくれ。人数が少ないからな」

 

 すげー堀北めっちゃはえー

 すげー櫛田普通にはえー

 すげー誰だか知らない人ちょっとはえー

 

 ……そんなことを考えている内にいつの間にか女子の泳ぎが終わり、男子の泳ぎが始まった。

 

「……次は流川の番だが自信はあるのか?」

「…‥私も少しだけ興味あるわね。自称天才さんがどれだけやれるか気になるわ」

 

 順番待ちの間プールサイドでボーっとしていると綾小路と堀北が話しかけてくる。堀北、お前そうやって皮肉めいた事言うから友達できないんだぞ?もう、そんな子に育てた覚えはありませんそして子供を育てた覚えもありません。

 

「ふっ、任せろ。俺を誰だと思ってる?あの天才少年流川快斗だぞ?舐めんな」

 

 俺の自信を肌で感じ取ったのか堀北と綾小路が真剣な目つきで俺を注視する。

 

「準備はいいな?よーい」

 

 全員がプールに入ったことを確認した先生が合図の準備をする。

 

 ──ピーッと合図の笛の音が響き俺含め全員がスタートを切る。

 

 綾小路、堀北、行くぜ、俺の泳ぎ見てろよあっ、ちょ、息が、溺れました助けてください死にます助けて調子乗った事は謝りますから助けてく、ら、さ、──

 

 

 

 

 

 

「知らない天井だ」

 

 俺が目を開けて一番最初に発した言葉はやはりこれだった。人生で一度は使ってみたい言葉ランキング810位だったんだよやったぜ。

 

「……目を開けて一番最初の言葉がそれか」

 

 聞こえていた声の主を探すと、俺が寝かせられているであろう布団の横に座っている綾小路を発見した。

 

「知らない人間だ」

 

 俺が目を開けて2番目に発した言葉はやはりこれだった。人生で一度は使ってみたい言葉ランキングに入ってなかったどころか今即興で思いついた言葉なんだよやったぜ。

 

「それにしても、自分で自分を天才で最強とか言ってたのに水泳はできないんだな」

 

 綾小路が俺を無視して喋りだす。いや何無視してんだよふざけんな。

 

「俺は運動神経が良いなんて一言も言ってないつまり勝手に勘違いしたのはお前だから俺は悪く無い」

 

 綾小路の失礼な物言いに俺は穴のない完璧な反論をする。流石俺だぜ。こんなの誰も反論出来る筈がない。

 

「いや、最強って最も強い様の事を指すんじゃないのか?だからオレはお前が遠回しになんでもできるって公言してるのかと思ってたんだが……」

「……い、いや?」

 

 反論してきやがった。くそ、俺が正しいはずなのに……間違ってる気がしてき──いや、俺が間違う?そんな筈ない。何故なら絶対は俺だからな。図が高いぞ綾小路。

 

「俺が自らを最強と信じる限り俺は最強なんだよ」

「……おお、かっこ──」

「何故なら天上天下俺こそが絶対だからだ」

「──よくないな。一瞬でもかっこいいと思ってしまったオレを殺してくれ」

 

 俺は綾小路の言葉を聞き終えた瞬間ヤツの頭めがけてパンチを放つ。

 

「……おい、なんの真似だ?」

「──ふざけんなお前反射神経おかしいんじゃねえのか?俺のパンチを容易く防ぎやがって」

 

 俺の全力を込めたパンチは最も容易く綾小路に腕を掴まれることによって防がれた。

 

 ……決して俺のパンチが弱かったわけではない。大事なことだから2言おう、決して俺のパンチが弱すぎて簡単に反応されたってわけじゃないのだ。ちなみに、別に俺の腕力は小学5年生と同じぐらいだ、と医者に言われたことはないからな?本当だぞ?本当の反対の反対だぞ?本当の反対の反対の反対だぞ?……あれ?

 

「それで、一体急にどうしたんだ?」

 

 俺の手を離した綾小路が聞いてくる。

 

 ……なんかさっきと違くね?さっき俺の腕を掴みながら聞いてきた時はもっとなんというか、無機質な感じだったような気が……気のせいか?

 

「いや、お前が殺してくれっていうから一回ぐらい殺しとこうかな、と」

「……流石に嘘だろ?」

「さぁな。それは俺のみぞ知るってところだ」

「いや、なんかカッコよく言ってるが意味ないからな?それは当たり前のことだぞ?」

 

 うるせーばーかばーか。俺の渾身のパンチが止められた屈辱、決して忘れはしないからな綾小路ィ……!

 

「で、ここはどこでなんで綾小路がここにいるんだ?」

「……今更だな。……ここは──「いや、ちょっと待て俺が完璧な推理で当ててやる。ここは保健室、まぁこれは当たり前だな。そして何故綾小路がここにいるか、それは……お前がホモで俺のケツを──「おいちょっと待て、違うからな?」……お前がそういうならそうなんだろうな──「いや、流川……絶対信じてないだろ。本当に違うからな?」……はいはい、わかったわかった違うんだよな──「……やっとわかってくれたか」──綾小路、お前はホモじゃなくてゲイなんだよな」……いやちょっと待て、全然わかってないじゃないか……はぁ……」

 

 俺の完璧な推理の前に綾小路は何故か溜息をつく。

 

 ……この無礼者が、俺が……この偉大なる天才イケメン少年の俺が、わざわざ推理を披露してやってるってのに……許さねえ、てめえは死刑だ綾小路。どうせ、男同士、保健室、一人は寝てる、何も起きないはずがなく……とか思ってたんだろ気持ち悪いな、死ねばいいのに」

 

「流川、殴ってもいいか?」

「……は?お前本当に人間か?よくも人を殴るなんで最低な行為をしようって思考になれるな、お前のためを思って友人として言っておく、すぐにそうやって暴力に訴えるのはよくないぞ?」

「……流川……さっき自分がやったことを忘れたのか……?」

 

 綾小路が意味のわからないことを聞いてくる。チョットナニイッテルカワカラナイネ!

 

「……何言ってんだ?俺は、カメラアイという一度見たものがまるでカメラのフィルムのように自動で脳に記憶される能力を持ってる。だから忘れるなんてありえない」

「カメラアイ……聞いたことがあるな、そうだったのか。でもなら尚更──」

「まぁ嘘だけど」

「──やっぱりオレはお前を殴ろうと思う」

 

 はあ?なんでだよ。理不尽だ。

 

「……はぁ、流川、お前は自分がゲイでもホモでもないのに勝手にそうだと決めつけられた挙句死ねばいいのにって言われたらどうする?」

「──ぶん殴って半殺しにする」

「……だろ?自分のやったことを理解したか?」

「???」

「……嘘だろ。……オレは一生お前を理解できる気がしない」

 

 綾小路が疲れたようにそう呟く。

 

 ……いや、まぁ綾小路が俺のことを理解するどーこーは一旦置いといて、なんで綾小路は俺が心の中で思ってたことを言ってきたわけ?偶然……なわけないよな、怖い、こいつエスパーなの?超能力者なの?さいきのくすおさんなの?

 

 もしそうなら考えても仕方ない……俺にも超能力くれ。まあそんなもん信じてないけど。

 

「……さて、理解できないだっけ?そうだな。所詮俺と綾小路は他人なんだから綾小路が俺のこと理解できるわけがないんだよ。たとえ血が繋がってても100%相手のこと理解することなんて無理だろうし。でもまあ100%じゃなくとも少しなら理解することはできる。

〝深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ〟かつてドイツの哲学者、ニーチェが言った言葉らしい。意味としては異常者を理解するためには自分自身も異常者になるのが一番、みたいな感じだと俺は思ってる」

「……オレもその言葉は知っていた。割と有名だからな。……つまり流川が言いたいのは流川を理解したいならオレも流川みたいな異常者になれ、ってことか?」

「まぁそんなところだ」

「……なんというか、意外だな、流川が自分を異常者だと認めてたとは……」

 

 綾小路が少しばかり驚いた様子でそう呟く。

 

「はぁ?当たり前だろ、俺が異常者じゃなかったら誰が異常者なんだよ」

「……ああ、そうだよな。当たり前だ」

「──そうだろ?……当たり前の話だ。俺ほどの天才でイケメンで完璧な人間を異常と呼ばずなんと呼ぶ」

「──あー、そういう意味か……そうじゃないんだが……」

 

 綾小路が何か呟いているが俺は無視して話始める。

 

「人は完璧にはなれない、かつて宮沢賢治も〝永久の未完成、これ完成である〟つまり未完全な姿こそが人間として完成している姿だと言っていたらしい。そう、つまり人は普通完璧にはなれない筈なんだ。だけど、ほら、見てみろ!俺は完璧だ!これは人類史上最も異常な出来事だ、つまりだから俺は異常者って事だぜ!」

「……水泳できないのにか?」

 

 ……あれ?おかしいな、なんか汗が出てきた。部屋暑くない?

 

「それにさっき、オレは水泳のことしか聞いてないのにも関わらず、何故か運動神経が悪くないなんて言ってない、とか言ってきたってことは他の運動も得意じゃないだろ。流川」

 

 あー暑い暑い。今日は暑いなー汗がたくさん出てくる。

 

「え、えーと、俺が自らを完璧と信じる限り俺は完璧なんだよ↑」

「……声裏返ってるぞ?」

「な、何故にゃら天上天下俺こそが絶対だからだゃ」

「……噛みまくってるぞ?」

「あーうんへー、…………アディオス!」

 

 俺はそう言って保健室のドアを0.1秒で開けて逃走する。俺の足の速さは50m11秒。これは速い。速すぎる。間違いなく逃げ切れるぜ。……大事なことだから言っておこう、いいか、俺の足の速さは決して小学1年生の50m平均タイムじゃないぞ?そう、決して小学1年生の足の速さと俺の足の速さが同じなわけじゃないからな?

 

 ……俺は結局、自分の足を信じて後ろを振り向かず寮まで全速力で走った。途中普通に早歩きしてたやつに抜かされた気がするけど、きっと気のせいだろう。だって俺、速いもん。

 

 

 

 




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学校の仕組み

 

 5月最初の授業が始まり、茶柱が教室へ入ってくる。茶柱は険しい顔をしており、生理でも止まったのかと聞くやつでも出て来そうだ………もっとも、そんな奴はいないだろうけど──

 

「せんせー、生理でも止まりましたか?」

 

 池がへらへら笑いながら先生に聞く。

 

 ──いやがったわ。……このド低脳が。

 

「これより朝のホームルームを始める。その前に質問はあるか?気になることがあるなら今聞いておいた方がいいぞ?」

 

 茶柱は池の発言を無視して話を続ける。もはや池は人として認識されていないのか?池……お前は俺と同じだよ……。

 

 ……最近までそこら辺の有象無象(クラスメイト)に興味がなかったせいで一ミリも記憶に残っていなかったんだけども、俺ってば初日で駆除されそうになるぐらい嫌われて、そのまま水泳でおぼ……ほんのすこーしだけ俺がミスった時にさらにさらに嫌われたんだよな。そんな俺は今、このクラスにおいて空気以下の存在として扱われている。空気は生きる上で必須だから空気以下、だ。

 

 全く、なんでイケメンで天才で最強な俺様が嫌われてるんだよ……凡人共の見苦しい嫉妬か?まぁ多分そうだろうな。……俺ほどの完璧な人間、妬まない方がおかしい。──そりゃあ、仕方なかったってやつだ。褒美(?)だ、我の許しをくれてやる。

 

「あの、今朝確認したらポイントが振り込まれてなくてジュース買えなかったんですけど……」

「本堂、前に説明しただろう。ポイントは毎月1日に追加される。今月も問題なく支給されたことは確認している。」

「え、でも振り込まれてなかったですよ?」

 

 有象無象(クラスメイト)の中の一人、本堂という生徒が茶柱に質問をする。

 

 ちなみに俺はこの本堂とか言う野郎の存在を今日初めて認識した。影薄いんだよ馬鹿野郎。

 

「……お前達は本当に愚かな生徒達だな」

 

 怒りあるいは悦び?か不気味な気配を纏った茶柱が言う。

 

 ──はっはっは、何を言うかと思えば……この俺が愚かだと?……ふざけやがって、俺はたとえ先生だろうと容赦しないからな!覚悟しやがれ茶柱ッ!

 

「このッ!婚期を逃した年増──」

「──何か言ったか?流川」

 

 俺は死んだ。さよならだ。

 

 ──俺が発言した途端、茶柱はまるで人を何人も殺ってそうな鋭い目つきで俺を睨みつけてきた。

 

「一応言っておくが、ポイントが振り込まれてないなんてこともなく、このクラスだけ忘れられたなどという可能性もない。わかったか?」

 

 茶柱は俺を目で殺し続けながら説明を続ける。

 

「ははは、そういうことだねティーチャー!簡単なことさ、私たちDクラスには1ポイントも支給されなかった、ということだね」

「は?毎月10万ポイント支給されるって……」

「わたしはそう聞いた覚えはない。そうだろう?」 

 

 突如話出す高円寺…激論の末、本堂はダ○ガ○ロンパされた。 

 

「態度は悪いがその通りだ。あれだけヒントをあげて気付くのが数人とは……まったく、嘆かわしい」

 

 教室を見渡してみると、突然の出来事にほとんどの有象無象(クラスメイト)は呆然としている。

 

 ふっ、やはり俺はあいつらとは違う……何故なら俺はこの程度のこと予測できていたからだ!さすが俺、俺レベルになると未来を予測できちゃうんだぜ──

 

「さて、流川、お前は確か『俺は天才だ!』と面接官に豪語していたらしいな。よし、説明しろ」

 

 ──は?いや、は?何これこんな未来知ら──い、いや?知ってましたし?こうなることなんてバリバリ予測できてましたし?

 

 先生が次に言うセリフだってわかっちゃうし?茶柱の次のセリフは──

 

 ──「今のは嘘だ。私が説明する。流川様、すみませんでした」、という!

 

「──どうやら流川は天才らしいのでな。きっと何もかもわかってるのだろう。……あぁ、ちなみに決して先程の事を根に持っているわけではないからな?全くもって気にしていないぞ?」

 

 はい、全然違った。……あ、あれえ?俺が間違えた、だと……?いや!そんなわけない!てことはつまり、茶柱の方が間違っている、と言うことだ。

 

 ……ふっ、聖職者だからって容赦しねえ。言ってやるぜ。茶柱、てめえが間違ってるぞ、と──

 

「流川?どうしたんだ?早く説明しろ」

「ハイッ!まず、この学校は実力で生徒を測る、入学を果たした生徒には10万ポイントの価値がある、この二つを先生が初日に仰られてたことから、一番あり得そうな考えでしかないですが、この学校は実力で『価値』を測る、と仮定します。入学した時点での俺たちの価値、つまり実力が10万ポイント分だったとして、恐らくこの1ヶ月間でなんらかの方法で測定した俺たちの実力が0ポイント分の価値だっただけ、という事ではないでしょうか?」

 

 ──無理無理。あんなやばい目で睨まれたら間違ってるなんて言えねえよ!怖っ。いや怖っ。

 

 ……ていうか仮定、とは言ったものの、俺は自分が合ってるって確信してる。だって、俺天才だから。

 

「……まさか本当に答えられるとはな……その通りだ流川」

 

 茶柱は驚きながらもニヤリと笑う。いや何驚いてんだよ、茶柱俺が答えられるって知ってたから言ったんじゃねえの?ふざけんな。

 

「遅刻や欠席、授業中に私語や携帯を触ったり、よくもまぁやってくれたものだ。この学校ではクラスの成績がポイントに反映される。その結果、お前達は振り込まれるべき10万ポイントを全部溶かした。それだけのことだ。

 入学式の日、説明しただろう?この学校は実力で生徒を測ると。そして今回、その実力が0と評価されただけに過ぎない」

 

 茶柱は淡々とそう告げ、手にしていた紙を広げそれを黒板に貼り付ける

 そこには、Aクラス:940、Bクラス:650、Cクラス:490、Dクラス:0

 と書かれていた。

 恐らくはこれが各クラスのポイント、クラスポイントなのだろう。……と言うことはつまり1000ポイントが10万円に値してるってところか、全クラスが軒並み数値を下げてるからな。

 

 ──最悪の予想があたった。やっぱり実力を測るのはクラスごと、か……。くそっ!なんで個人じゃねえんだよ。俺一人だったら天才すぎて余裕で1000ポイントぐらい取れたわ!

 

「………どうしてここまでクラスに差があるんですか?」

 

 生徒達が呆然となる中、みんなの勇者、平田が立ち上がる。

 

 ──マヌケが。俺は前にお前を有能と言ったな、あれは嘘だ……はっ、こんな簡単なことがわからないなんて……いや、俺が天才すぎるだけか、すまんな平田。許せ。

 

「流川、答えてやれ」

 

 ……はぁ?なんでこの俺がわざわざ愚民どもに教えてやらないといけないんだ?大体、何俺に命令してんだよクソ教師!俺を誰だと思ってやがる、調子こいてんじゃ──

 

「 早 く し ろ 」

 

 ──ハイ!

 

「この学校のクラス分けは多分、優秀な生徒たちの順でされているんですよね?最も優秀な生徒はAクラス、落ちこぼれはDクラスへ。そう、つまり俺以外のDクラス生徒は不良品、ということ」

 

 俺がそういうと、有象無象(クラスメイト)共は信じたくないのか俺を睨んでくる。いや、信じたくないってより俺の『俺以外のDクラス生徒は』ってのが気に入らなかったのか?……最初は俺も自分が不良品……?嘘だー!と思ってたが分かったんだよ……俺がこのクラスに入ったのは何かの間違いだってな!俺が不良品?寝言は寝ていえ。

 

 ──というか、有象無象(クラスメイト)共が俺を人間と認識しているだと……?あぁ、もしかしてさっきの10万の説明したから評価が上がったのか?……全く、人間ってのはまるでわからな──いや、わかりますけど?俺ほどの天才がわからないものなんてこの世にないからな!

 

「これは綾小路が教えてくれた事なんですが、上級生に自分はDクラスって伝えたところ、憐れみと蔑みが混じった目で見られたらしいのです。さらに、『不良品』や『地獄を見る』だの色々と言われたのだと。綾小路がどうして相手の視線から感情を読み取れたのかは置いといて、ここから推測するに俺の言ったことは間違い無いと思ってます」

 

 俺がそう言い終えると何処かからあり得ないほど冷えた視線を察知。お前はどうしてそう余計なことを言うんだ、と言わんばかりの圧力だ。

 

 ──これは……まさか!?俺様が天才すぎて国から刺客が来たのか!?

 

「……その通りだ流川。……たが、まだ補足があるので述べておこう。率直に言おう、Dクラスから脱却することは可能だ。簡単な話、クラスのポイントをCクラスより多く手に入れれば、DクラスがCクラスに入れ替わるようになっている。つまり、クラスポイントによってクラスが変動するということだ」

 

 茶柱が俺の意見を認めたことによって、やっと俺が正しいと分かったのか有象無象(クラスメイト)共騒ぎ出す。

 

「驚いているところ悪いが、もう一つ残念なお知らせがある。これは先日やったテストの結果だ。揃いも揃って一体お前達は中学で何を学んできたんだ?」

 

 茶柱が追加で張り出した紙にはテストの点が並んでいる。基本的に60点前後の点数ばかりで、14点だとか24点だとかもいる。一部点が高い奴もいるが、このクラスの平均は65点ぐらいだ。

 

「良かったな。これが本番だったら8人は退学になっていた。………あぁ忘れていた。この学校は中間、期末テストで赤点を1教科でも取れば退学だ。今回のテストで言うと、32点未満の奴らだ」

 

 ──生徒達がざわめく中、茶柱は説明を続ける。

 曰く、この学校の説明にある、希望の就職先や進学先に進めるのはAクラスだけなのだと。

 

「浮かれていた気分は消えたようだな。中間テストまで3週間、退学しないように頑張ってくれ。お前達が赤点を取らずに乗り切る方法はあると確信している。できるなら実力に相応しい振る舞いで挑んでくれよ?」

 




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綾小路を許さない

 茶柱が教室から出て行った途端、一斉に俺の方を向く有象無象(クラスメイト)共。

 

「お前、自称天才じゃなくて本当に天才だったんだな」

「ごめんね今までゴキブリ以下の存在として扱ってて!」

「よっ、流石天才!」

 

 有象無象(クラスメイト)共が俺に賞賛の言葉をたくさんかけてくる。はっ、やっと俺の価値がわかったか。……べ、別にお前らに褒められても嬉しくなんてないんだからなっ?えへ、えへ、えへへへへ──

 

「──で、どうして分かってたのに今まで全く俺たちクラスメイトに教えなかったんだ?」

「これからは最低のゴミとして扱うね!」

「……流川は天才だけど、ゴミ以下のクズ野郎だ!」

 

……これはひどい。上げて落とすとかお前ら人間じゃねえ!……なんで俺が教えなきゃいけないんだよ、自分で気づかなかったのが悪いんだろうが…………というか、不味い、不味いぞ。このままじゃ本当にまずい。このままだと俺はクズ野郎のレッテルを貼られ、虐められる……!そうなると俺は、運動能力が常人よりちょっーとだけ、本当にちょっーとだけ低いから力ずくでは解決できない。

 

 ──だが、舐めるな。俺は幼、小、中といついかなる場所においてもいじめられ続けた男。言わば虐められのプロだ。俺は幼少から天才でイケメンだったからな、嫉妬した人間のクズどもに何度もいじめられた。大人は容認。俺はその時初めて自分の保身しか考えられないゴミクズが存在をすることを知った。……そして結局、俺はそのクズ共の虐めてきた証拠、容認していた証拠を集めて教育委員会に提出し、俺様大☆勝☆利ってしたわけっていう嘘なんだけどどうしよう。

 

 つまり何が言いたいかと言うと……

 

「いや、これ考えたの俺じゃ無いんだけど…」

 

 ……俺は悪くない。

 

「え?いや、自分が責められるのが嫌だからって嘘つくなよ!」

「いやいや、嘘じゃねえよ。今日の朝差出人不明で俺にメールが来てて……そこに、言うことは少し変えたけどさっき俺が言ったような事が全部書いてあったんだよ……」

「……そんな見え見えの嘘に引っかかるわけないだろ!」

 

 ……ちっ、黙れよ詐欺られそうな顔面ランキング1位とってそうな、名前知らない地味顔のモブ!……くそっ、詐欺られそうなくせになんで俺の嘘は見抜けるんだよ!

 

「……快斗ボーイは嘘はついていない、それはこの私が保証する」

 

 突如出現した高円寺。いやお前突如出現してばっかだな。

 

「はぁ?なんで高円寺が入ってくるんだよ」

「それは私が快斗ボーイの友人だからさ」

 

 こらお前誰が友人だ誰が。……大体俺、高円寺とは初日以外ずっと話してなかったぞ?流石にもう消されないと思ってたから俺は別に高円寺から逃げてなかったけど、高円寺の方が俺に話しかけてこないし、もう忘れたのかなーっと思ってたんだけど?

 

「そもそもこの自分を天才だと信じて疑わない男が今更周りの評価を気にするわけがないだろう?快斗ボーイは今までだってクラスでは空気以下として扱われていたのにも関わらず全く気にした様子がなかった。今更少し責められた程度で自身の評価を守ろうとするわけがないだろうに」

 

 高円寺は君たちはこんな簡単なこともわからないのかい、と言ってため息をつく。……いや?え、なんで高円寺は俺を庇ってるんだ?まさか本気で俺を友人と思ってるわけじゃないよな?……え、ないだろ?

 

「う、うるさい。じゃあ証拠見せてみろよ証拠。そのメールを見たら納得してやる」

「あぁ、ほら、ちょっと待ってくれよ?」

 

 先程の詐欺られそうなモブがそう言い、他の有象無象(クラスメイト)もそれに同調する。ちなみに平田や櫛田などはまだ呆然としていてこの事態を収集してくれそうにはない。

 

 ……これはまずい。ただのはったりでしかない架空のメール、もし俺の端末を見せたらバレちまう。

 

 

 ──とでも言うと思ったか?

 

 俺は茶柱に説明しろと言われた時点でこの展開を予測してた。……説明を強制された俺は、このクラスで唯一連絡先を交換している綾小路に急いで『俺が今からクラスでする説明をメールに書いて差出人不明にして俺に送ってくれ』と送信していた。つまりもう既にメールは来ているのだ。流石俺天才だぜ。…………まぁ高円寺の乱入は想定外だったけども。

 

 ……ただし、ここでめんどくさいのはメールが来た時間。俺は朝と言ったがメールが来たのは朝ではない。まぁだけど、その程度は俺が手で隠せば大丈夫……と信じてる。

 

 俺は天才俺は天才俺は天才俺は天才。自分にそう言い聞かせてバクバクとなる心臓を押さえつけながら俺は時間だけを隠してメールをみんなに見せる。

 

「ほら、これでいいだろ?」

「ま、まじか……嘘じゃなかったのかよ」

「……流川君……ごめんね」

「……俺が悪かった」

 

 はぁ……死ぬかと思った。なんとか乗り切ったな。いや、まぁ俺天才だしあたり前だけどね?いやうん本当、全然危なくなんてなかったからな?本当だぞ?

 

 ……それにしても全く、俺を疑いやがって……いやまぁ俺が嘘ついてるんだけど。

 

「それにしてもそのメール送ってきた人って誰だろうねー」

「綾小路君から情報を得たとか書いてあるしやっぱり綾小路君と仲が良さそうな人なんじゃない?」

「……あ、今更だけどこれってつまり、流川が天才じゃなかったってことじゃないか?」

 

 ──おい今ふざけたこと抜かした最後のやつはどこのどいつだ? ぶ ち 殺 す。

 

 ……けど、ちっ、今あいつを殺しに行ったら今までの努力が水の泡だ。俺は無駄な努力が大嫌いなんだよ。……はぁ、つまり今の俺の評価は人間として認識されてはいるが頭がおかしいやつってところか。ふざけやがって……!

 

 俺が有象無象(クラスメイト)への憎悪を燃やしていると、綾小路からメールが来る。いやすぐ近くにいるのになんでメール。

 

『流川はこれを予測してたのか。凄いな』

 

 ……そうだそうだ俺は凄いんだ。流石綾小路、そこらへんの有象無象(クラスメイト)共とは大違いだぜ。

 

『流石天才だな』

 

 そう、流石俺なんだよ。分かってるじゃねえか。

 

『運動音痴なのにな(笑)』

 

 ──殺す。なんだこの絶妙にイライラさせてくるメールは。特に(笑)が煽りにしか見えない、と言うか完全に俺のこと煽ってるだろ。協力してくれたし感謝のメールでも送ろうかと思ってたけど絶対に殺す。

 

 

 

 

 

 

 学校が本性を見せた放課後、俺は指導室の前へ来ていた。放課後になる前、茶柱に話があると事前に伝えたらここに来いと言われたのだ。だからここに来た……来たんだけど……

 

「なんでツンデレちゃんがここ──ぐはっ」

 

 ──恐ろしい。俺がツンデレちゃんと言った瞬間、少し距離が離れていたはずの堀北が俺の目の前に瞬間移動していて俺は天へと吹き飛ばされた。

 

「なんで流川君がここにいるのよ……」

 

 堀北は絶対零度の視線を俺に向けながら呟く。いや、謝れや。

 

「……俺は先生に直談判しに来ただけだ。俺ほどの天才イケメン少年がDクラスなんて──」

「──何かの間違い……と言いたいのでしょう?だったら私と目的は同じね。でも正直、あなたがあのクラスなのは妥当な評価だと思うわよ」

 

 はぁ?ふざけるなよ?

 

 ──ふざけたことを抜かす堀北に俺が反論しようとした時、指導室のドアが開き……

 

「まぁ入れ、それで堀北、流川、私に話とはなんだ?」 

 

 ……茶柱が顔を覗かせた。……指導室に入った俺と堀北。そして堀北は椅子に座ってすぐ口を開いた。

 

「率直に聞きます先生、なぜ私がDクラスなのでしょう……流川君はともかく」

 

 ホリキタ、アトデナグル。

 

「どうやらお前達は自分が優秀な人間だと思っているようだな……特に流川」

 

 ……まぁ、これはその通りだ。だって事実そうだろ?

 

「……事実そうでしょう。入学試験の問題はほとんど解けたと自負していますし、面接でも問題はおこしてないはずです……流川君はともかく」

「確かにお前の学力は優れていると言える。……流川はともかく。だが学力だけでクラスは決まらない。仮に学力だけでこの学校で評価されるのだとしたら須藤のような奴は入ってこれていない」

「っ……………。」

 

 おい、俺はともかくってなんだよ……ていうか二人して言いやがって……あんたら仲良いな……

 

「一応言っておくが上に聞いても結果は同じだ。だが、悲観する必要はない。卒業までにAクラスに上がる可能性は残されている」 

「…………今日の所は失礼します。ですが納得していないというのは覚えていてください」

 

 よっしゃ、堀北が出て行く。次は俺のターンだ。行くぜ。

 

「先生、どうしてこの俺がDクラ──」

「──あぁ、そうだった。流川は別として、もう1人ここに人を呼んでいたのだった。堀北、お前にも関係のある人物だぞ」

 

 あれー?茶柱さーん?……人の話はちゃんと聞きましょうねー。

 

「関係のある人物……?」

「でてこい綾小路」

 

 綾小路……だと?なんであいつが……?

 

「いつまで待たせれば気が済むんスかね」

「──綾小路ィ!」

 

 綾小路がわざとらしくため息をつきながら給湯室から出てきたところを──俺は襲撃した。

 

 ……俺はお前を殺す!まずは俺渾身の右ストレート!俺のパンチは綾小路の腹にクリーンヒッ──痛っ……!は?……え?痛……。

 

「……手が……手が……」

「お、おいどうしたんだ流川……」

 

 俺は綾小路の目の前で倒れ込んで、震える手を綾小路に見せる。

 

「……お前の腹殴ったら手が痺れたんだけど………?クソ痛え……」

「……もしかして、綾小路君の筋肉が硬すぎて力も強度も弱い流川君の手が痺れたの?」

「……そうかもしれ──い、いやいや堀北お前何言ってんだ?俺の手は別に力も強度も弱くねえから!むしろ強いまであるからな?」

 

 俺は失礼なことをほざく堀北に咄嗟に反論する。……所で、何故か堀北が何を言っているのかわからないと言った感じで俺を見つめてきてるんだけどどうして──いや、俺は天才だからそれぐらいわかるに決まってるだろ。堀北がああなったのは俺が天才すぎて俺の言ってることが理解できなかった、と言ったところか。……確か、IQが20違うと会話が成立しない、とかいうしな。悪いな堀北、俺のIQが高いばっかりに……。

 

「……そもそも流川は何故綾小路を殴ったんだ?事によっては暴力沙汰として職員会議にもってかなければならないぞ?」

「や、やだな先生。俺は別に綾小路のこと殴ってませんよ。今のは俺と綾小路で決めた二人だけの挨拶ですよ挨拶」

「そうか……綾小路、本当か?」

「……本当です」

 

 よくやった綾小路。それでこそ俺の友人だ。……でも俺のこと煽った挙句俺の大事なおててを破壊したから許さねえ。いつか絶対に報復してやる。

 

「そんなことより、綾小路君は私達の話を聞いていたってことよね?……盗み聞きとはいい趣味してるわ。……先生、私はここで失礼します……」

「まて堀北。最後まで聞いた方がいいぞ?Aクラスに上がるために必要なことだ」

「──手短にお願いします」

 

 意志が弱い。おい堀北お前そんな簡単に自分の意志を変えていいのか?俺は出てってやるぜ……と思ったけど俺出て行く理由がないな。つーか俺まだ茶柱に直談判してないんだけど?

 

「……お前は面白い生徒だな、綾小路。入試のテスト、全教科50点。今回の小テストも50点。正解率が低いやつは解けているのに、正解率が高いやつは解けていなかったり、これで偶然とは到底思えない」

「偶然ですよ偶然」

 

 は?全部50?キッモ……え?キモすぎ。これ絶対意図的だろ……まあ、所々頭良い感じ出してたし驚きは少ない。せいぜい驚きすぎて死んじまうくらいの驚きだ。

 

「綾小路君……あなたはどうしてこんな訳のわからないことを……?」

「いや、だから偶然だっての。隠れた才能とか、そんな設定はない」

「どうだかなあ、ひょっとしたらお前達より頭脳明晰かもしれないぞ堀北、流川」

 

 するとびくん、と堀北の体が震える。きっとプライドが刺激されたのだろう。

 

「私と流川君と並べないでください。寒気がします」

 

 違ったわ。俺が嫌われてるだけだったわ。ふざけんな殺すぞ。

 

「──先生、綾小路の方が俺より頭脳明晰?あり得ませんね。俺を誰だと思ってるんですか?天才ですよ。天才」

「……そうか?まぁ確かに今日分かった事だが、お前はSシステムや学校の仕組みについて理解していたようだし、そうなのかもしれんな」

「いえ、流川君はあのシステムについて理解していたわけではなく、謎の人物からメールで教えてもらったのでしょう?」

 

 そういうことにしてるだけで一応説明したことは全部俺が考えた事なんだけど……ここで事実を言ったら堀北に殺される……怖すぎ。

 

「でも確か……あれには綾小路君から情報を得たってのが書いてあった……ということは綾小路君の知ってる人があの謎の人物……一体……」

「す、少し待て堀北。どう言うことだ?あれは流川が考えたことじゃなかったのか?」

「そうですね。先生が出て行った後に流川君がみんなに謎の人物からのメールを読み上げただけ、と言っていましたから」

 

 堀北の言っていることが真実だとわかると茶柱の目の光が大幅に消える。どゆこと。

 

「……あー、堀北、あれは嘘で、全て流川が考えたことだぞ」

 

 ──へーそうなんだ。その流川ってやつすごいなってちょっと待てよおい!……綾小路どうした?お前なら俺がわざわざああした意図ぐらいわかってるだろ?というかわかってなかったらやってなかっただろ?ぶち殺されたいのか?

 

「流川が先生に説明を強いられてる時、オレにあのメールを差出人不明で出してくれって頼まれてな。時間は流川が指で隠してみんなに見せたから誰もそのメールを見て言ったっていうのを疑ってなかっただけだぞ」

 

 綾小路はさらにこちらの事情をばらして行く。まるでさっきはよくも余計なことをみんなの前で言ったなと言わんばかりの勢いだ。おいやめろふざけんなよ綾小路。……俺はお前を絶対に許さない……地獄へ堕ちろこのクソ野郎が。

 

「そ、それは本当なの?流川君」

「……まぁ……いや、ああ、多分そうなんじゃね?」

「……ふざけないで。もう一度聞くわよ、綾小路君が言ったことは事実?」

「はい……」

 

 厳しい目つきで俺の方を見てくる堀北。

 

 ……怖い。怖いよ。多分俺はもうすぐこの世界から消される。

 

「取り込んでいるところ悪いが私はもういく、会議の時間だ。ここは閉めるから3人とも出ろ」

 

 心なしかさっきよりも気分が良さそうな茶柱がそう言って俺たちを指導室から出す。……ん?さっき大幅に消えた茶柱の目の光が戻ってる……いやむしろ増えてるまである……?

 

 




矛盾や誤字があれば指摘お願いします。一応きちんとチェックはしたんですけど……今回の話は特に誤字や矛盾が多そうです。
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「……あー先生、待ってください」

「……なんだ流川」

 

 俺が会議室へ向かうであろう茶柱を呼び止めると、振り返った茶柱の顔には隠しきれない喜色が浮かんでいた。……なんか怖いんですけど。

 

「少し確認したいことがあるんですけど……」

「……そうか、だがさっきも言ったが今から会議がある。明日にしてくれ」

 

 茶柱はそう言って去ってしまったので俺も帰ろうと廊下を歩き出──

 

「──あなた、何普通に帰ろうとしてるの?」

「そうだぞ流川……じゃあオレは帰るか──」

「──綾小路君、あなたも待ちなさい」

 

 ……堀北に待て、と言われた綾小路は世界の終わりでも見たかのような表情でその場に泣き崩れた。泣いてないし無表情だけど。

 

「さっきのこと、本当に本当のことなのね?」

「流川、証拠を見せてやったらどうだ?」

 

 死ね、綾小路死ね、貴様だけは死んでも許さん。よくもやってくれたな。もしこれで俺が堀北に殺されたらお前どうしてくれるんだよ……!

 

「……わかった。見せる。見せてやるよ。けど、一つだけ約束しろ、これを守ってくれないと困る」

「……先にその約束の内容を教えてくれないと、とてもじゃないけど約束するとは言えないわね」

 

 ……堀北って思ってたより頭いいんだな……先に約束するって言わせてからこっちだけが有利な約束しようとしてたのに──まぁ?頭いいと言っても俺の100000000000000000分の1ぐらいだけどな、はははは!

 

「堀北は多分Aクラスに上がりたいんだろ?だから俺はそれを手伝ってやる。……で、俺が手伝ってやる代わりに、堀北は俺が綾小路にメールを送ったことだとか、先にこの学校のシステムに気付いてたことを他の奴らに言わないで欲しい。……あと未来永劫俺のことは殺さないで」

「……正直あなたに手伝うと言われても大して嬉しくないわね……でもいいわ、約束する。もしさっき綾小路君が言ってたことが本当なら、あなたは確かに味方の方がいい。……あと、殺さないでってなんの話かしら……?」

「言ったからな?前言撤回は無意味だぞ?俺は今の録音したからな?…………ほらよ」

 

 堀北に殺されないことが確定した俺はほっとしながら綾小路へ送ったメールを見せる。

 

「……信じられない、いや、信じたくないことだけれど本当のことだったようね」

「……じゃあ俺は帰るから。…………あと、そこに逃げようとしてる綾小路がいるから捕まえた方がいいと思うぞ」

 

 俺と堀北が話している間に逃走を図った綾小路、悲しいかな、奴は鬼のような形相をした堀北に確保された。……当然の報いだ。むしろまだ足りないまである。……綾小路、次にあった時は100万回分の拷問をしよう。

 

 

 

 

 

 

 堀北に協力しなければならないことが決まった次の日の放課後。俺は屋上で茶柱と話をしていた。

 

「それで、昨日言っていた少し確認したいこととはなんだ?」

「……昨日知らされた小テストの結果についてのことです。昨日、先生はこれが本番だったら8人は退学になっていたと言っていましたよね?」

「ああ、それがどうかしたのか?」

「いや、張り出されたそれぞれのテストの点が書いてある紙に、32点未満の人は7人しかいなかったんですよ」

「……なに?」

 

 茶柱は本当に驚いたのか少し呆けた顔をする。

 

「多分、先生たちの書き忘れだと思うんですよね。そしてその、そこに書き忘れられたのって俺なんですよね。だからつまり非常に認めたくないことですけど、俺が赤点を取った8人目ってことになっちゃうんですよね」

 

 俺は今、全ての感情が抜け落ちたロボットみたいな顔をしているのだろう。自覚はある。もし今俺に対して冗談でも言ってくる奴がいたら冗談抜きでぶん殴るかもしれない。……だが、もし怒りを表に出してしまえば俺は自分が天才でないと認めていることになる。……ふざけるな、俺は天才だ。完全無欠の完璧超人。それが俺だ。

 

 ……けど、実際問題俺は赤点を取ってしまったのだ。……確かにあれは抜き打ちのテストだったけど、殆どの問題が簡単だったし、最後の方の難問に関しても、俺はこの高校に入る前高校3年分の勉強全てを3周はしていたから俺にとって難しかったわけがないのだ……赤点を取ってしまったのは純粋に俺の実力不──ふざけるなよ、そんな事……認めてたまるか。くそっ、くそっ……

 

「あぁ──確か一つだけ、点数は100点だったのに名前がない答案があったな。それがお前のだろう」

 

 ……ん?てことはつまり?

 

「お前は本来なら100点だったってことだ。全く、名前の書き忘れなんて勿体ない」

 

 ……は、はは、ははは流石俺だぜ。当たり前だろ?この天才でイケメンの俺様だぞ?間違えるはずもない。勿論名前を書き忘れたのは意図的、これによってあれがこうなってああなるんだぜ!

 

「ただ、テストの点を表示する紙に書き忘れたのはこちら側の過失だ。すまなかった」

「……悪いと思ってるなら教えてください。その小テストに名前を書く権利って何ポイントですか?」

「……はははははは!面白いことを言うな」

「先生、確か初めに言ってましたよね。敷地内で買えないものはないとされてるって」

 

 そう、茶柱は確かにそう言った。買えないものはないってことは、つまりポイントさえあればなんでも買えるってことだ。

 

「確かに言ったな。しかし、よく覚えていたな」

「……何度も言いますけど、俺、天才ですから」

 

 まぁ、茶柱の言っていたことをあのあとすぐノートに全部写して、何度も読んだから覚えてるだけなんだけど。

 

「……流川の思っている通りこの学校は、ポイントさえあればなんでも買える。しかし、何故今更小テストの名前を書くんだ?いや勿論名前を書けばあのテストの点数が100点になることは分かっている。だが、あれはもう先月のポイントに関係してるわけで、今月のことには一切関係がない」

「──流川快斗は天才である。だから100点を取らなければならない。取らなければおかしい。ただ、それだけのことです」

 

 にやり、俺の話を聞いていた茶柱は広角を上げ……

 

「……分かった、いいだろう。あのテストの名前を書いていい権利は1万ポイントだ」

「……これでいいですか?」

「あぁ、これでお前はあのテストに好きなように名前を書いて構わない。勿論、名前を書けば100点を与えてやろう」

「──ありがとうございました、では」

 

 屋上だからか、ひどく風が吹く中、俺は……

 

「次は、ないぞ」

 

 ……自らに言い聞かせるように、自らを戒めるように、自らを咎めるように、小さな声でそう呟き、屋内へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 5月に入ってから約一週間。俺はあの日以来特に何もなく平和な日常を過ごしていた。そんな俺は今、気怠げに図書館へと向かっている。さっき、綾小路から堀北がそこに来いと言っている、っていう伝達があったのだ。だるい。

 

 ……早く家に帰って寝ようと思ってたのに……!人の睡眠時間削りやがって……これでもし俺が睡眠不足で早死にしたら責任取ってくれるんだろうな?

 

 ……図書館についた俺はそうそうに堀北と綾小路を見つけ、さっさと綾小路たちがいる端の方の長机の1角へ向かう。

 

「で、俺を呼んだってことはAクラスに上がるために必要なことなんだろ?赤点取りそうな奴らのために勉強会でもするのか?」

「……驚いた。察しがいいのね」

「何度も言わせるな、俺は天才だって言っただろ」

 

 いや、と言うか俺に前に受けた小テスト全教科持ってこいって言われたしここ図書館だし、人何人かいるって言われたし、堀北がメリットもなく人のために動くわけないし、簡単に想像つくだろ……あーなるほど?いや、悪いな。俺が天才なばっかりに……俺が簡単にできることでも凡人にはそんなことないんだもんな。悪い悪い……ふっ。

 

「何故かしら。今、そこはかとなくイラッとしたわ」

 

 ぞわっ……俺が堀北の言葉を聞いた瞬間、俺の肌に鳥肌が立つ。なんだこいつ……超能力者か……!?

 

「「「「「る、流川(くん)……?」」」」」

 

 ……突如、後ろから聞き慣れない声が複数聞こえてきた。

 

 振り向いてみると、右から、独善クソアマ櫛田、アホバカの池と山内、赤髪ヤンキーお猿さんの須藤、見知らぬ華奢な体つきの青髪のショートボブ(恐らくこいつが気をつけるよう事前に綾小路に言われていた沖谷とかいうクラスメイト)達が椅子に座っていた。。沖谷の髪の毛は艶やかで、可愛らしい顔つきをしている。……だが男だ。…… 流石にないと思うけど、綾小路に教えてもらってなければこいつに惚れてたかもしれない………おえええ、吐きそう。

 

「なあ、なんで流川がここにいるんだよ」

「そこのツンデ──ぐっ……ほ、堀北に呼ばれたんだよ……」

 

 フツメンの可哀想な池が聞いてきたから哀れに思って答えてやろうとしたら俺は堀北にぶん殴られた。ふざけやがって……!

 

「さて、流川君、まずはテストの点数を教えて頂戴……あなたが赤点保持者だったら元も子もないわよ」

「……全教科100点だ。まぁ、俺は天才だからな」

 

 俺はそう言いながら持ってきたテストの用紙をみんなに見せる。勿論、前名前を書き忘れたやつは書き直して茶柱に提出し、100点をもらっている。

 

「う、嘘だろ?」

「……すげえ」

「マジかよ……」

「す、凄い!」

「……嘘……」

 

 上から池、山内、須藤、沖谷、櫛田の順。……やっぱ褒められるのは気持ちいいな。実に清々しい気分だ。……勿論堀北と綾小路も驚いて──ない……だと?

 

 ……俺が軽くショックを受けてると堀北が俺にしか聞こえないぐらいの小声で……

 

「私と綾小路君は流川君が100点なのは知ってたわ。茶柱先生に事前に聞いていたから。……あなたには彼らを教える側に回って欲しいのよ。だから今日敢えて答案を持って来させた理由は──」

「──俺のことを頭のおかしいだけのバカだと思ってるあいつらが俺の言うことを聞くわけない、だから俺のテストの点数を見せて俺が本当に天才だと言うことを証明すればいうことを聞くはず、ってか?」

「……相変わらず察しがいいわね。テストの点といい、正直、嫉妬するわ」

「仕方ない、俺は天才だから──いたたたたたた!いてえよ!おい!」

 

 俺が堀北を慰めてあげようとしたらこいつ俺の手を抓ってきやがった。こんのクソアマ……!

 

「あはははは、流川君は堀北さんと仲がいいんだね!」

「櫛田……お前の目は節穴か?」

 

 櫛田……お前ほんと眼科行った方がいいんじゃないか……?どうしたら俺の手を抓ってくる堀北と俺の仲がいいと思えるんだ……いや、もしや、お勧めすべきは眼科じゃなくて精神科か?

 

「それと流川君、この間はごめんね……許して欲しいなんて我儘にも程があるけど……お願い、なんでもするから許して……!」

 

 目に涙を溜め、上目遣いで俺を見上げて来る櫛田。──ってなんでここであざとい仕草するんだよ……ふざけやがって……後ろ見てみろよ……なぁ、お前の後ろ……池と山内と須藤のあの眼光……まるで堀北が3人いるみたいだ。……さよなら。俺は終わったよ。俺の人生はここで終了だ。

 

 

 ……結局、その後の勉強会は俺が天才だと理解したくせに奴らは俺に教わりたくないとかで沖谷以外が櫛田から教わっていた。これは……俺が嫌われてるのか櫛田が好かれてるのか……まぁ、どっちもってとこか。……あと、確実にあるのがさっきの櫛田のなんでもする!とか言うやべえ発言のせいだ。櫛田絶対俺のこと嫌いだろ。……クソが。

 




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ペルソナ

何ででしょうか。いつの間にか書く予定がなかった筈の文が大幅に増えました。…‥こわい


 ──勉強が始まってから少しの時間が経過した今、図書館には俺と綾小路、櫛田と堀北のみだけが残っていた。経緯としてはあまりにも馬鹿な須藤に対して堀北が辛辣にも正論を述べ、めでたく皆さんが堀北への不満を爆発させて消えていった、と言うところだ。尤も、俺が教えてあげていた沖谷に関しては俺にわかりやすい、ありがとう、とかめっちゃ言ってくれるマジ天使(だが男だ)だったんだけど、本人の意思に関係なく須藤たちに連行されてしまった。死ね赤髪クソ野郎が。

 

「堀北さん……こんなんじゃ誰も一緒に勉強してくれないよ……」

「確かに私が間違っていたわね。もし今回彼らが赤点を回避できたとしても、彼らはまたすぐに同じような窮地に追い込まれる。そうなれば何度も何度も同じのことの繰り返し……だったら、足手纏いは今のうちに脱落してもらった方がいいわ」

「そ、そんなのって……」

 

 ……目の前で櫛田と堀北が言い合いをしてる。……もうあいつらどっか行ったし帰らせて欲しいんだけど。……はぁ、俺は事情を聞かされずに協力してたけど、どうせ堀北はあいつらの点数が上がればAクラスへ近づけるとでも思ってたんじゃないのか?──いや、俺は天才だからわかる、思ってたに決まってる。……んで、今の堀北はもうあいつらはダメだ、と見限った、ってわけだろ?……いや、これ……

 

「……堀北間違ってなくね?」

 

 そうだよ、何でこいつら言い合いしてんの?どう考えても堀北があってるじゃんか。目的のために必要とあらば雑魚は切り捨てる、これは紛れもなく正解だろうが……………ていうか、そんなことより早く終わらせて帰らせてくれ……俺が堀北についたから2vs1、はい終了俺の勝ち、だから帰らせろ。

 

「る、流川君までそんなこと言うの……ね、ねえ綾小路君は違うよね?こんなに早くみんなと別れるなんて嫌だよね?」

「まぁ、堀北がそう決めたんならそれでいいんじゃないか?」

「あ、綾小路君まで………………私は──何とかする。して見せる。須藤君達を見捨てたくない」

 

 櫛田はそう宣言し、鞄を持って立ち上がる。

 

「櫛田さん、あなた本気でそう思っているの?……私にはあなたが彼らを助けようとしているようには思えないわ」

「何それ、意味わかんないよ。堀北さんはどうしてそうやって敵を作るような事、平気で言えちゃうの?…………じゃあね3人とも、また明日」

 

 櫛田は表情に影を落とし、短い言葉だけを残して立ち去っていく。……気の毒だとは思わなくもないかもしれないけど、そんなことより俺が早く帰れることの方が大事だぜ……!

 

「堀北、帰っていいよな?もう協力することなんてないだろ?ないんだろそうなんだよな知ってたばいばい」

「──いやちょっ」

 

 後ろで素っ頓狂な声を出している奴がいるけど誰だろ。めちゃくちゃ間抜けな声だな。ははははは!

 

 

 

 

 

 ──迷った……………………いや、そんな気がするだけですけどね!?いや、だって俺が迷うわけないだろ?ほら、俺って天才だし?ここがどこだかまるでわかんないなんてことありえないから。別に、俺は天才だからと初めて行った図書館からでも地図見ないで寮に帰れると調子乗って迷ってなんかないからな……!

 

 ……おっ、綾小路発見。話しかけよう。特に理由はないけど話しかけよう。特に理由はないけどここがどこか聞いて、特に理由はないけどここから寮までの道を教えてもらおう。そうだよそうしよう。特に理由はないけど。

 

「おーい、あやのこ──は?おい待て」

 

 何だあいつ。いやほんと何だあいつ。俺が特に理由はないけど道を聞こうと思ってたら突然走り出しやがった……!くそ、まさか俺から逃げてるとでも言うのか……一体どこに俺から逃げる理由が──あー、なるほどな、前の報復として綾小路殺害計画を俺が立てていることをしっちまったからか……!間違いない、流石俺だぜ、人の考えを読み取るなんて。……まぁ一つだけ腑に落ちない点がある……それは、俺に計画を立てた覚えがないことだ!くそっ、覚えがないなんて悔しいぜ。

 

 ……俺は天才的な推理をしながら突如学校へ向かって走り出した綾小路を全力で追う。……く、くそなんでだ……全然全く追いつけない……というかむしろ距離が離れてるまであるぞ……しかも綾小路すげえ適当なフォームで走ってやがる……な、なんでだ、俺が負けるなんてありえない……てことはつまり、これは夢か……!……全く困ったやつだな俺も。いつのまにか寝ちまうなんて……とはいえ一体いつからが夢なんだ?……まぁ、どうでもいいか。

 

 ……綾小路は学校に入ってからは普通に歩き出した、なにやら上に向かっているようで俺は今それを追いかけている……何故か息を切らしながら。

 

「はぁ、はぁ……くっ、何故か息がっ、続っ、かない……」

 

 くそ……なんで息が切れてるんだ…………………いや、あぁ、そういうことか……!現実世界の俺は天才だから息が切れるなんてことはありえない……つまり、これは夢だからこそ息が切れているという俺の天才的な脳みそからの俺への配慮なのだ。流石俺の脳、俺よりは劣るけど天才だぜ。

 

「……流川?」

 

 俺が疲労で前を見れずに階段を登っていると、突如上から声が聞こえてきた。……この声は、綾小路か……………そうだ、どうせ夢の中なんだし殺そうか。綾小路のせいで堀北に協力しなきゃいけないってなったんだし。くそ、思い出すだけで止めどなき殺意が沸いてくるぜ。

 

 綾小路俺はお前を、殺して破壊して屠って消してぶち殺して片付けて殺害して蹂躙して生命を奪い取って処刑して破滅させて血祭りにしてやる……!俺は俺に誓ったんだ。必ず綾小路を殺すと……!

 

「おらぁ、覚悟し──……んーんーんーー」

 

 あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!「俺が綾小路を殺そうとしたらその瞬間綾小路が瞬間移動して俺の口を塞いでいた」な…何を言っているのかわからねーと思うが俺も何をされたのかわからなかった──わけないだろ!いい加減にしろ!俺は天才だから全部わかってるからな!今のはあれだよあれ、頭がどうにかなりそうで催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃなくて、もっとも恐ろしいものの片鱗ってことだろ?さすが俺天才だぜ。

 

「あー最悪、ほんっと最悪最悪最悪。自分が可愛いと思ってお高くとまりやがって、どうせアバズレに決まってんのよ。堀北、死ねばいいのに」

 

 俺が天才的な頭脳を発揮し、最後の切り札として名探偵Rになろうと考えていたとき、突如階段の一番上、屋上の扉の前から声が聞こえてきた。……これは、櫛田……?えぇ……あいつこんなこと言うキャラだっけ……?あっ、いや夢だからか……ははは、別に夢だってこと忘れてないからな。ははははは。

 

 ……つーか、堀北ボロクソ言われてんな、ふっ、いい気味だぜ。俺のことをこき使いやがった罰だ……!

 

「それにあの流川とか言う奴──」

 

 おー俺か。まぁ当たり前だけど、俺みたいな天才、もちろんめっちゃくちゃ褒めるんだろうな。あ、まさか俺に惚れたとか?ごめーん俺お前みたいな女無理だからーふはは!

 

「──お礼してやろうと思ったら断った上に説教垂れやがって、こっちはあんたみたいな気狂いに教えてもらうことなんてねーから」

 

 ……は?え?あれ?

 

「それに自分のこと天才とか意味わかんないこと言ってるキモいナルシだし、あんな気狂いがテストの点100点とかほんと意味わかんない。どうせ不正でもしたんでしょ」

 

 ……は?いや、は?

 

「それに謝る時にわざわざあんなこと言ってあげたってのに無反応…………なるほど、流川はホモ、と──」

 

 は?おい……いや、え?……これ、夢じゃなくね?だって何で俺が自分で自分を口撃しなきゃならねえんだよ。……なら息が切れてたのは何でか、だと?……はぁ?俺の息が切れるわけないだろいい加減にしろ!

 

 ……しかも、くそ、何言ってんだよゴミカス櫛田……てめえのおかげで綾小路が俺から一歩、いや2歩、いや3歩、いや10歩下がったんだけど?……ガチでさぁ、どう言う思考回路してんの?お前俺みたいなイケメンによくもそこまで言えるな、嫉妬か?はっ、哀れだな、所詮お前は下賤のもの、心の広い俺様とは立ってる場所が違うんだよ。……で、

 

「……どうやって死にたい?」

「お、おい流川……」

 

 綾小路が俺から10歩下がったおかげで今、俺の口は誰にも覆われていない。俺は自由だ。

 

「ここで……何してるの……」

「ちょっと、道に迷っててさ、悪い悪い直ぐ立ち去──」

「──俺たちずっと聞いてたけど?で、どうやって死にたい?」

「……流川お前……嘘だろ……」

 

 黙れ櫛田が言った適当を信じて俺をホモだと勘違いしているマヌケが。……前に俺が勝手に誰かをホモと認定した気がするけどきっとそれは気のせいだろう。俺はそんな偏見でものを決めるなんて最低なことはしない!……

 

「──ところで綾小路、櫛田ってヤンデレでメンヘラっぽくね?いや、絶対そうだろ。だってそんな感じするし」

 

 ……そんな最低なことはしない!

 

「お、おい一回喋るのを──えっ」

 

 綾小路が何かを言いかけた時……いや何かじゃないな俺きっとへの賞賛だろうふははは。そんなに褒めても何も出ないぞー?……じゃない話がそれた。

 

 綾小路が何かを言いかけた時……いつの間にか階段を降りてきて直ぐ近くに来ていた櫛田が綾小路の手を掴み、綾小路の手をパーの手に広げて自分の胸に持っていった。

 

「もし今のことを喋ったらあんたにレイプされたって言うから。……あんたの指紋はもうここについた。証拠もばっちり」

「わ、わかったから離せ」

「この制服はこのまま洗わないで部屋に保管しとくから。もし裏切ったりしたら警察に突き出す」

 

 櫛田は綾小路をこれでもかと言うほど睨みつけ、手を離す。綾小路、やっぱお前は死んだほうがいいよ。何女の胸触ってんだよ羨ましい……のか?

 

「馬鹿だな、櫛田。そんなことしても無駄だ、俺がこのボイスレコーダーで今のを録お──ぶっ」

 

 俺がボイスレコーダーを櫛田に見えるように出して煽った瞬間、櫛田が瞬間移動して俺をぶん殴った。意味がわからん……何で瞬間移動できるやつがこんなに……?……くそ、この世界には七つの玉の物語に出てきそうなやつしかいないのか……?

 

「……はい、消した」

 

 俺が殴られたところを押さえてる間に、櫛田は俺のボイスレコーダーを奪い、俺が録音したものを消去してしまう。……このクソアマが。だけど……まだ負けてない。そう、ここで……

 

「……俺の秘められた才能が開花し、ただでさえ天才で完璧な俺様は完璧のさらに上の存在へと昇華する。……てめえの顔面を殴ってやる、くらいやがれ……!」

 

 進化した俺の最強のパンチが櫛田へと迫る……!……よしっ、これは当たっ……た?ん?あれ?なんか柔らかいんですけど?いや、当たり前か女子だし……って顔面がこんなに柔らかいわけないですよね。はは。

 

「く、くそっ、何て狡猾な罠なんだ……!俺は間違いなく顔面に当てたはずなのにいつのまにか……」

「は?罠……?」

 

 俺のパンチは何故か櫛田の胸部に吸い込まれていた。この現象はまるで、運動音痴のやつが狙った場所にボールを飛ばせないみたいみたいな現象だ……けど、俺は運動音痴じゃないから櫛田が何か仕掛けてたのだろう。

 

「……なんて恐ろしい女なんだ櫛田…‥まさか俺を罠にかけるなんて……けどまだ終わってない!俺のパンチはぐー!ぱーじゃなかったから指紋はつかな──」

 

 ──はい終了。人生終了。警察連れてかれまーす。……くそ、俺が話しているうちにいつの間にか俺の手はパーにされていた、櫛田が俺の指を動かしていたのだ……最悪だ、罠にかけられた衝撃で気づかなかった……。

 

「馬鹿なの?……わざわざ私にそれを教えたらどうなるかぐらい考えられる筈でしょ?……………これで2人の証拠は手に入れたから、もしバラしたらどうなるかわかるよね──」

「──すみませんでした許してください……実は、綾小路が俺にこうしろって命令したんですよ……だからどうか……」

「え、おいちょっと待て、オレがなんだって?」

 

 俺は流れるように完璧な土下座を披露した。流石俺、土下座も完璧、って言ってる場合じゃねえんだよな。やばいやばい、とりあえず綾小路のせいにしといたけど証拠は残るしなぁ……そうだ、綾小路が俺の指紋の上から触りまくれば俺の指紋消えるんじゃね?…‥流石俺天才。

 

「綾小路、行け。俺たち、友達だろ?」

「……急に何の話だ?ていうか、そもそもオレの知ってる友達は人を売るようなことはしないからな?」

 

 くそ、俺の頭が良さすぎて話が通じない……。

 

「綾小路……いや、綾小路君、流川君の言ってることは本当のこと?」

「……いや、違うぞ。話をするうちに分かったんだが、流川の言うことは基本的に信じないほうがいい」

「……それは私でもわかる。流川君は気狂いだし……でも、綾小路君が嘘ついてる可能性もある」

「まぁ、それはそうだが……」

 

 は、俺の気が狂ってるだと?逆だ逆。俺じゃなくてめえらの気が狂ってんの。…‥ていうかやばいな、これだといずれ綾小路が嘘ついてないってバレるかもしれない…………そうだ、話を逸らそう……!

 

「なぁ、櫛田…‥そもそも何でお前はその裏の顔みたいなもん隠したいんだ?それが本性なら別にそっちの自分で生きていけばいいだろうが」

「はぁ?自分の存在意義を実感することができるからに決まってるでしょ。こっちは誰からも好かれるようになりたいから努力してんの。頭のおかしい奴は口出ししてこないでくれる?」

 

 言い過ぎだろ…‥流石の俺もお前を殺したくなっちゃうじゃねえか。

 

「……ああはいそうですか。……まったく、俺からしたら櫛田がどっちの性格だろうがどうでもいいってのに…‥何でこんな目に」

 

 くそ、これもあれも全部綾小路のせいだ。俺は奴が道を教えずにこっちに来たからここまで来ちゃったわけだし、俺は奴のせいでこれを夢だと思い込まされたし…‥あれ?なんか全部俺の勘違いな気がし──ないな全部あいつが悪い。

 

 ……マジでこっちは櫛田の裏の顔とかバラす気ないから向こうが俺を犯罪者に仕立て上げることのできるものさえ持ってなければさっさと帰れるってのに…………おっ、いいこと思いついた。全く天才すぎて自分で自分が怖いぜ。

 

「櫛田、誓ってくれ。櫛田の秘密を俺がばらさない限り、櫛田は俺を絶対に訴えないと誓え」

「だから、初めからそういう話だったでしょ?何聞いてたわけ?」

「いや、俺お前のこと信用できないから。もしかしたら裏の顔なんてばらされても大丈夫で演技してるだけかもしれないし。…‥大体、現在進行形でほとんどの人を騙してる奴だぞ?信用するわけがない……だから……」

 

 俺は言葉を途中で切り、すぐそこにいる櫛田の手を取り俺のズボンに当てる。

 

「もし警察に訴えるような怪しい動きをしたらお前に逆レイプされたって言うから。……お前の指紋はもうここについた。証拠もばっちりだ。…………じゃあ俺は帰るわ」

 

 俺は何故か余裕の表情を浮かべている櫛田の手を離し、階段を降りる。…‥なんで余裕の表情だったんだ?──いや、俺は天才だからわかる。どうせ男が女をわいせつ罪とかで訴えても意味がないとでも思ってるんだろう。バカが、世界が思ってるより法律様は男女平等なんだよ。

 

 ……綾小路、お前は俺に命令した可能性をまだ櫛田に疑われてるし、櫛田に確実にダメージを与えることができる脅しをすることができてない…………ふっ、友人としてこの俺様が応援してやろう。……………頑張れ綾小路!負けるな綾小路!

 




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…‥ちなみに作中でよく快斗が相手が瞬間移動した、と表現してますが、これはただ単に快斗の動体視力がカスすぎて瞬間移動しているように見えてるだけです。


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たかいえんのてら

更新遅過ぎやろゴミが、と言われるのを覚悟しています決して誹謗中傷を言わないであげてください……あれ?


 

 櫛田をボコボコにしてから暫くたった今、俺は普通に学校生活を送っていた。あの日以来堀北から協力要請はないし、危険人物櫛田も俺に話しかけてこない。

 

 ……ちなみに関係ない話ではあるけど最近一つだけ気になることがあって、あの日以来堀北の態度が何か軟化した気がするんだよな……なんかだけに。流石俺ギャグセンスも神の領域。……じゃなくて、いやなんかマジで前の堀北はつん99%のでれ1%だったけど、今の堀北はつん80%のでれ20%ぐらい、って感じなんだよな。まぁとはいえでれてるの綾小路にだけなんだけど死んでくれないかな綾小路。……はっ、危うく綾小路を殺したくなってしまうところだったところで完全犯罪ってどうやるか知ってる奴教えてくれないか?

 

「──快斗ボーイ、少し話さないかい?」

「はぁ?少し話す?お前俺を誰かわか──ってるんですよねすみません許してくださいお願いします」

 

 俺は突如話しかけてきた高円寺に対し、流れるように完璧な土下座を披露した。流石俺、土下座も完璧ってなんかこのくだり最近した気がする。

 

「快斗ボーイ、私は君に敬語を使わなくても構わないと言っただろう?」

「あ、ああ。……えーっと、何の用です──何の用だ?」

「……今は暇かい?もし暇ならこの後すぐカフェに来たまえ」

 

 ははは、これ行かなかったらヤバいやつだろ。あの高円寺だぞ……行かなかったら無礼を働いたとかでわんちゃん消される。……これ行くしか選択肢ないじゃないですかやだー。

 

 ……というか何であいつは先にカフェへ向かったんだ?俺の返事聞いてから一緒に行けよ……いや、俺が来るって確信してるからか……くそ、なんか負けた気がする。

 

 ──いつのまにか負け犬の烙印を押された気がした俺は激しい憎悪に身を灼かれながらカフェへ向かう。……そしてついに到着したわけなんだけど、何故か俺の目の前にいる高円寺は先輩と思わし女子達に囲まれながらあーん、をされている。

 

 ……これはいくら高円寺だとしても許されざる行為だ。リア充は殺さなければならない、これは俺の父の友達のいとこの孫の友達の飼ってる犬のライバルのインコがよく鳴いていた言葉だ。そして俺はその意思を継いでいる……つまり、俺は高円寺を殺す、という事だ。……一応言っておくけど、私怨は一切ない。決して羨ましいとか思ってないし、決して高円寺と場所変わりたいとかは思っていない。いいか?ほんとだからな?本当の本当の本当の本当いいなぁ……はっ、本当の本当の本当だからな?

 

 とそんなことを考えていると……

 

「──快斗ボーイじゃないか、早く座りたまえ」

 

 ……高円寺は俺に気づいたようで手招きをしながら俺に声をかけてくる。……いや、どうしろと。そこらへん全域高円寺を囲んでる女子生徒で埋まってるんですけども。……くそ、こんなに多くの女に囲まれるなんて……死ねばいいのに。

 

「いや、えーっと、どこに座れば……」

「ああ、仕方ない。……レディー達、また今度時間を取るからここは一旦引いてはくれないだろうか」

 

 すると周囲にいた女子生徒達がえーと言いながらも渋々帰って行き、俺が座る場所が出現した。

 

 ……こいつ……まさかホモなのか?普通野郎と話すより女と話す方を優先するだろ。……なのに俺と話すのを優先……だと?──いや、考えてみれば当たり前か?何てったってこの偉大なる俺様と話ができるんだからな。あの高円寺といえどやはり興奮してるんだろうな……ん?待てよ?興奮?やっぱりホモじゃないか今すぐ消えてくれ。

 

「さて、早速本題に入ろうか。君は何だい?」

「……俺が何かだって?悪いけど哲学は苦手なんだ」

 

 まぁほんとは割と得意なんだけど。……でもここで下手なこと言って高円寺が望む答えを言えなかった場合俺は……消されるかもだし。

 

 ……つーかこの質問は何なんだ?俺を地球外生命体とでも言いたいのか……?高円寺……頭は大丈夫か?いや大丈夫じゃなさそうだ良い病院知ってるから行ってこいよって言おうとしたけどここ敷地内から出られないじゃん流石俺天才……あれ?

 

「……恐らく私はバスで君と会わなければ微塵も興味を抱かなかっただろう」

 

 は?おい?どうした?急に俺を貶すな殺すぞ?殺せないけど。

 

「快斗ボーイがただの天才であるなら私もさして君に興味を抱かなかっただろう。しかし、君は明らかに凡人であり庸人でありそこら辺にいくらでも存在する人間だ。そう、快斗ボーイはそこら辺にいくらでもいる凡人なのさ。なのに君はただの凡人がする筈のないことをバスでした」

 

 俺が凡人?ふっ、かわいそうに高円寺、お前の頭はイカれちまったんだな。

 

「この学校のシステムについて明かされた時もだが、君の思考は普通じゃない。……だから私は問うているのさ、君は何だい?と」

 

 ……そういえばあの時助けてもらったな。やっぱり俺が嘘ついて切り抜けようとしてることはバレてたのか……。

 

「……やだなー俺はただのそこら辺の有象無象の一人だっての」

「ははは、バレバレの嘘を吐くなんて実にナンセンスだね。君が自分を天才と信じて疑っていない、いや、疑う事をしないということは周知の事実だというのに」

 

 高円寺が俺の天才的な嘘をバッサリと切り捨てる。

 

 ……全く、高円寺はひねくれてるな、よくもまぁ俺程の誠実な人間を疑えるものだ。

 

「快斗ボーイ、君はプライドを捨てざるおえない状況に陥って媚びなければならない時も、自分が天才ではないと不本意ながら相手に言わされている時も、自分が圧倒的に強い存在に負かされた時も、絶対に自分を天才と疑うことをやめない……そうだろう?」

 

 高円寺が顔を俺の方に向け問いかけてくる。……いや、こいつ自分が間違ってる可能性微塵も信じてないから問うてきてるというよりただ確かめるように呟いてるだけか?

 

 ……はぁ

 

「……つまり、なにが言いたいんだ?」

「別に快斗ボーイに何かを言わせたいわけではないさ。私が君とこの会話をすることに価値があると判断したから話しているだけのこと」

 

 は?つまり何だ?こいつは俺と会話したいだけの変態だったってことか?俺の大切な時間を奪っておいて?死んじまえ。

 

「……ふむ、とはいえ君が今まで一度も本音で話していないことは些か気になるね。……快斗ボーイは過剰な程自己保身に走るからねえ、私に本音を語って何かをされるのを恐れていると言ったところかい?……私はいずれ日本を背負う男、その程度のことで私が不機嫌になると思われているのなら心外、というものだねぇ」

 

 つまり本音を語れと……?俺が心中で言ってたリア充死ねとか死ねとか死ねとかそこら辺を全部言えと……?ていうか俺、死ねしかボキャブラリーないことに今気づいたんけどどうしよ──じゃなくて今はそんな場合じゃないんだよねどうしよ。……いや、この際本音を言ってしまうか?勿論死ねだの何だの誹謗中傷は伝えないけど、バレなきゃ関係ないしな。バレなきゃ。

 

「……わかった。信じるからな?」

「フッ、快斗ボーイが何をしたいかはわかっているさ、だからこそ敢えて言おう。……私、高円寺六助は流川快斗に何を言われても流川快斗、ひいては彼の大事な人間に絶対に手を出さないと誓う。高円寺コンツェルンの名にかけて」

 

 ……俺は今のを録音してた。当たり前だ、信用できるはずがない。……でも高円寺は俺の性格からして録音してる、ということを確信しながら敢えて誓うと言った……くそ、敗北した気分だ。……勿論俺が負けるなんてあり得ないけど。

 

「……本音を言っていい、ということで好き勝手言わせてもらおう。──高円寺はさっき俺が凡人とか言ったな……違うな、間違っているぞ。俺は天才で完璧な最強の人間だ」

「……ふむ、私が間違っている、と?……それこそ間違っているよ快斗ボーイ。……君は凡人である、これは確固たる事実なのさ。他の何者でもない私がそう判断したのだからね」

 

 唯我独尊、略して唯尊、これが今日からお前のあだ名だ。

 

 高円寺……こいつ、やばい、やばすぎるぜ。どんだけ自己中なんだ……もしかして世界は自分を中心で回ってるとでも思ってるのか?……間抜けが。そんなわけがないだろう。何故なら──世界は俺を中心に回っているからだ!

 

「……快斗ボーイ。どうして急に私に憐憫の眼差しを向けてくるんだい?……流石の私も少し気分が良いとはいえな──」

「──すみません許してください靴掃除靴舐め靴食べなんでもしますからぁ!」

「ははは!冗談さ……しかし、靴食べとは一体なんだい?」

 

 黙れゴミクズが。ちっ、何が冗談だ、俺に死の恐怖を味わらせやがって……!

 

 ……ちなみに靴食べとは、靴を食べることであり、靴を食べることである。(Orepediaから引用)

 

「……おっと、時が流れるのは早いねえ……そろそろ会計をしようか。……あぁ、勿論私が払うから安心したまえ」

 

 くそ、なんでだ……なんかわからないけど高円寺と話してるとどうしても俺が高円寺より下の存在に思えてくる……この上から目線のせいか?

 

 ……いやまぁ俺の方が上だけどな?所詮高円寺は金を持ってるだけのクズだ。世の中は金が全てというが……いうが……あれ?ほんとに金が全てなんだし高円寺の方が俺より──下だから。うん。今決めたことだけど、高円寺は今から俺の配下だから。だってほら、俺の分の金払うって自分で言い出したし?これはどう考えても俺への忠誠心の表れだろ?

 

「快斗ボーイ、最後に一つだけ。……暫く私は傍観することにするよ。君という異常(イレギュラー)がいるということは、私が興味を持たなかったばかりに気づかなかった異常(イレギュラー)が存在しているかもということだしねえ」

 

 高円寺はそう言って俺の分の会計、そして先ほどまでいた女子たちの会計を払いカフェから出て行った。……あ?おいちょっと待てよく考えたら俺は何も頼んだ覚えはないぞ?

 

 俺が衝撃の事実に気づいた瞬間、高円寺の高笑いが遠くから聞こえてくる。……おい何が私が払うから安心したまえ、だ。俺の純情を弄びやがって……!いずれ然るべき報いを与えてやる……!覚悟の準備をしておけよ、高円寺ィ!

 

 

 




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イミテーション

「さて、高円寺はどっか行ったし、残り20分の昼休み……寝るか」

「──おお、流川じゃないか……聞いてた限り今から暇らしいな、堀北が勉強会するからこい、って言ってたし一緒に行かないか?」

 

 俺が睡眠を取るという素晴らしい英断をし、カフェから出ようとすると、入り口付近で綾小路……と櫛田にあった。

 

 は?え?君たち何普通に二人で昼飯食ってるの?俺がいなくなった後一体何が……というか堀北が俺を連れてこいと言ってる、だと?……くそ、俺の安寧を邪魔させてたまるか……!

 

「……嘘だな!堀北はあの日、目的のために足手纏いの雑魚どもは切り捨ててやるぜ、って言ってただろうが!なのに今更勉強会?流石にそれは嘘だとしか思えないぞ?」

「……嘘じゃない。あの後色々あったんだ、というか堀北はそんな喋り方はしないだろ……」

「……いいや、嘘だな!そして綾小路は俺を図書館に誘導し、やっと二人きりになれたな、とか言いながら俺のケツを狙ってくるに決まってる!」

「……まだオレがホモだと思ってたのか……ほんとに違うからな?……」

「……ていうか流川君、私がいるの忘れてない?」

 

 何か声が聞こえるけど気にしない気にしない。このまま綾小路が嘘をついてることにして俺は睡眠をとる!

 

「……はっ、見るに耐えない愚行だな綾小路。そんな見え見えの嘘をこの俺様に言うとは……その罪、贖えると思うな──」

 

 ──ブーブーブー

 

「堀北からのメールだ。読み上げる。『綾小路君、早く来てくれないかしら?櫛田さんもそこにいるんでしょう?もちろん櫛田さんもよ。あと、流川君も絶対に連れてきて』……」

「……い、いやまだだ。それが実は綾小路の嘘っていう可能性が──」

「──ほら、これ見ればわかるだろ」

 

 そう言って綾小路は俺にメールを見せてくる。……はははははははは、わっとざふぁっく。

 

 ちっ、くそ、これまじで行かなきゃダメか?……でも、協力するって堀北に言っちゃってるし、綾小路が嘘ついてると思ったから行きませんでした!って言い訳今使えなくなっちゃったし……

 

「…‥というか流川お前……所謂厨二病患者ってやつなのか?」

 

 は?ふざけんな闇の炎に抱かれて消えろ。

 

「…‥流川君……」

 

 櫛田が憐憫の眼差しで俺を見てくる。

 

 ……お、おいなんだよその目。やめろ、おいやめろって。くそ、このクソアマが……なんでこの俺が憐れまれなきゃいけないんだ……!

 

「……俺は決して厨二病なんかじゃない!それに……仮に、もし仮に俺が厨二病患者に見えたんなら、それは中学時代いつも1位だった田中太郎のせいだ……!俺は悪くない!」

「一体何をどうしたら中学時代の田中太郎って奴のせいになるんだ……?」

「しかも、誰も厨二病が悪いことなんて言ってないしね……」

 

 櫛田、こいつ今『しね』と言ったな!?……みんなに好かれる櫛田桔梗の皮を被りながらも、さりげなく俺に暴言を吐いてくるとは………………なんとなく俺の勘違いな気もしなくもないが、俺は天才だから、勘違いなわけがない。

 

 ……てかこらそこ「愚行……ぷっ」「贖えると思うな……ふふっ」とか言いやがって綾小路と櫛田め……何俺を小馬鹿にするように笑ってやがる……く、くそ、このままでは俺に厨二病とか言う不名誉な称号をつけられてしまう……もうすでに手遅れな気がしないでもないけど。

 

「……ほ、ほら早く行かないと堀北に斬殺されるから早く行こうぜ!!」

「逃げたな」

「逃げたね」

 

 うるさいぞ。

 

 

 

 

 

 

 図書館へ着いた俺たちを待ち構えていたのは鬼のような形相をした堀北と前に退場して行った筈の勉強会メンバーたちだった。

 

  ……相変わらず堀北は怖い。……最近気づいたことだけど、堀北は常に生理なんだろう。じゃなきゃこの俺様に怒気なんかを向けてくるはずがないからな。

 

 ……その後は綾小路から事情をある程度聞き、櫛田とのデートの代わりに釣られたという勉強会メンバーについてと堀北が色々あって赤点組は必要、と判断したということは理解した。……でも、判断をしたということは理解しても、その判断自体は全く理解できない。

 

 赤点組の奴らが何の役に立つ?こいつらは才能がないってのに全く努力をしないんだぞ?その上、無知、無能、無価値。……百、いや千歩譲って須藤と池はいい。須藤は運動神経に秀でて、バスケを本気で取り組める集中力を持っている時点で無能じゃないし、池は社会人になった時、最も大切と言われてるコミュニケーション能力が優れているからだ。

 

 ……でもじゃあ他の奴らは?山内……こいつはもうダメだな。コミュニケーション能力はあるのかもしれないけど、池以下だし、さらに何故か顔を見てるだけでイライラしてくる。山内は今回退学しなくともいずれ絶対退学する。……そして、沖谷……こいつは……可愛いからよし!………っていう冗談……じゃないかもしれない冗談は置いといて、そもそもこいつ赤点取ってないから必要とか必要じゃない以前にわざわざ教えなくても多分大丈夫なんですよね。ははっ!

 

……てことはつまり、皆必要!だけど山内、てめーはダメだ!ってことか。いやこれ山内を除けば堀北の判断正解じゃん。──ま、まぁ?俺も初めから堀北の判断は合ってるってわかってましたし?もちろん、俺ほどの天才が間違えるはずなんかないですし?俺が──

 

「──おい、ちょっとは静かにしろよ。ぎゃーぎゃーうるせえな」

 

 ……俺の天才的な思考を遮りやがって。誰だか知らないけどお前は今日から俺の奴隷な……そう思いながら俺は唐突に声をかけてきた変質者を睨む。

 

「悪い悪い。問題が解けて嬉しくてさ、ちょっと騒ぎすぎた。帰納法を考えた人はフランシス・ベーコンだぜ?覚えておいて損はないからな〜」

 

 池はその変質者にへらへらと笑いながらそう謝る。これは池が悪いな。……すまんな名前も知らないモブ変質者、勝手に奴隷にして。………………そういやそんなことよりベーコンって美味しいよな。まじで。

 

「あ?ひょっとしてお前らDクラスか?」

「俺たちがDクラスだから何だってんだよ。文句でもあんのか?」

「いやいや、別に文句なんてねえよ。俺はCクラスの山脇だ。よろしくな」

 

 変質者a.k.a山脇は俺たちがDクラスと知ると否やにやにやと口元に笑みを浮かべて俺たちを見回す。

 

「ただこの学校が実力でクラス分けしてくれててよかったぜ。お前らみたいな底辺と一緒に勉強させられたらたんまねーからなあ」

 

 俺はキレた。は?は?は?は?は?俺が底辺だと?ふざけんなこのゴミカスが。

 

「なんだ──」

「──黙れこのクズ野郎が。俺は別にクラスメイトが何と言われようとどうでもいい、だけど俺の事を侮辱することだけは絶対に許さない」

 

 俺はキレかけた須藤の上から被せるように素晴らしい事を言う。赤点組、いや、この図書館にいる人全てが俺を見てくる……実に気持ちがいい。……ところでその視線の大半は俺を軽蔑する視線な気がするんだけど気のせいだよな?

 

「……大体な、お前だって所詮はCクラスだろ。AクラスならまだもCクラスて。ぷっ、自分より下がいることに安心してる弱者がよくもそんな事を……」

「……さっきから黙って聞いてりゃ不良品の分際で……」

「不良品?違うな、間違ってるぞ。クラスメイトはともかく、少なくとも俺は不良品なんかじゃない。ざ〜んね〜んでした〜俺は天才でイケメンな完璧超人なんです〜」

 

 俺が言い終えると視線の大半が軽蔑+憐れみになった気がした。しかも、うざっ、と声が聞こえたような……いや、流石に気のせいだろう。何故なら俺は天才だからだ。

 

「く、くくっ。冗談はよせよ。お前みたいなのが天才なわけねえじゃねえか」

「え、何当たり前のことを今更……俺が天才なわけないじゃん」

「え、いやえ……………や、やっと認めやがったか。そうだよ。お前なんてただの不良品なんだよ!」

「は?ふざけんな誰が不良品だと?俺は天才に決まってるだろアホが」

 

 俺が神レベルに凄い反論をすると図書館内にいる全ての人間が俺にさっきより大きな憐れみの視線を向けてくる。……わかりたくなかったけど、この視線……俺は知ってるぞ。この視線は、ついに頭がおかしくなったんだな可哀想に……という視線だ。いやふざけんな、俺の頭はおかしくなってなんかいない。

 

「──は?お前が自分で天才じゃないって……」

「え?何言ってんの?嘘つくのやめてくれません?この俺が自分を天才じゃないなんて言うわけないだろ」

 

 赤点組が俺の言葉にこれでもかと言うほど首を縦に振る。

 

「おまっふざけん──」

「──ん、あれ〜?山脇君、君、顔真っ赤だなあ?もしかして熱〜?……それとも俺にお熱とか〜?でもごめんね、俺はノンケだから……」

「……このクソ不良品が!殴ってやる!」

「どうどう、ほら落ち着いて落ち着いて。本当に俺が好きだからって照れて暴力振るうなって〜、今時のツンデレヒロインでもそんなことしないよ」 

 

 え、本当に山脇ってホモだったのか……と恐らく一緒に勉強しに来たであろうCクラスの男子たち全員が引き気味に山脇から遠ざかる。

 

「──俺はホモじゃねえ!く、くそ。テスト範囲外のとこ勉強してるバカの癖に……覚えてろよ!」

 

 同じクラスの男子に引かれたのが堪えたのか、山脇(負け犬)はそう吐き捨てて涙目でこの場を去っていった。

 

「さ、流石に今のはやりすぎだったんじゃないかな……」

 

 どこから沸いたのかストロベリーブランドの美少女が突然引き気味にそう言ってくる。

 

「俺は悪くない」

 

 そう、間違っていたのは俺じゃない。山脇の方だ!

 

「……確かに仕掛けたのは向こう側からだったけども──」

「──いいか?やられたらやり返す、俺はただ倍返ししただけだ」

「……そ、そうなんだ。……でも、ここで勉強を続けるなら大人しくやろうね」

 

 美少女は何故か最後まで少し引き気味にそう言って帰っていった。……いや、俺がイケメンすぎて恥ずかしくなったから帰ったんだな、そうに違いない。ふはははははははっ!……はぁ、疲れた。

 

「ね、ねえ。さっきテスト範囲外って言ってた……よね?」

 

 やっと邪魔者がいなくなった時、櫛田が口を開く。多分さっき山脇が吐き捨てていったセリフのことだろう。

 

「あ?あんなんハッタリに決まってんだろ!」

「いいえ、一概にそうとは言い切れないわ。でも、クラスによってテストが違う、なんてことは学年で統一されてるはずだからありえないし……もし、範囲が変わったとすると……Cクラスだけが何故か範囲が変わったという情報を早くに知っていた……?それか私たちDクラスだけの伝達が遅れている……?」

「──もしくはまた別のことかも知れないしな、とりあえずは先生に聞いた方がいいと思うぞ」

 

 綾小路の提案を皆受け入れたのか、直ぐに職員室へ向かおうと立ち上がる。

 

「俺の昔話をしよう」

 

 は?と皆が俺の方を向く。

 

「俺の中学時代の話だ──」

「ちょっと待ちなさい。何故今なの?別に今じゃなくてもいいじゃない……」

「俺の中学時代の話だ──」

「てめえの過去話なんか聞いてる場合じゃねえんだよ!おら、さっさと行くぞ!」

「俺の中学時代の話だ──」

「うん、これ多分私たちが聞いてくれるまで同じ言葉言い続けるよ。前私もやられた」

 

 櫛田がそう言った途端俺を引きずってでも職員室へ行こうと奮闘してた赤点組の奴らが皆その場に崩れ落ちる。

 

「俺の中学時代の話だ──」

 

 

 

 




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ラ王

俺の中学生の時の話だ、俺には唯一仲が良かった友達がいた。そいつと出会ったのは中学一年生の時、その時の俺ははまだ自らが天才だということに気づいてなかったから、遊びもせずただただ真剣に勉強をする所謂ガリ勉ってやつだった。で、そんな俺は友達なんて不必要だ、といつも一人でいたんだけど──はぁ?それは友達ができなかっただけじゃないのかだと?綾小路、お前は馬鹿か?俺は自ら望んで友達を作らなかっただけだ。

 

 ……話が逸れた。そう、それでいつも一人でいたんだけど、ある日、教室へ行くと突然そいつに話しかけられてな、俺は今まで接点なかったから何の話だろ?と疑問に思ってた……するとやつは……

 

「君、いつも勉強してる割にはテストの点あんまりだよね〜」

 

 ……とか言ってきやがった。そんなことを言われて殺意が沸いた俺は、やつに「じゃあお前の点は何なんだ?」と尋ねたんだ

 

 ──ん?その友達の名前は出せないのか?池、俺はこいつの名前を知らないから名前の出しようがない──嘘でしょう?……それはもう友達とは言わないんじゃないかしら、だと?だって俺別にあいつの名前に興味なかったし、俺があいつを友達って思ったらそれは友達だろ。堀北お前……こんな簡単のこともわからないのか……全くこれだから愚民は…………っ痛っ!すみませんでした許してください堀北様!

 

 ……くそ、綾小路のせいで話が逸れた。

 

 ──は?オレのせいじゃない?嘘つくなよ綾小路……ちっ、一旦仕切り直しだ。俺が尋ねた「じゃあお前の点は何なんだ?」に対してあいつは……

 

「僕、実は全然テストの点良くなかったんだよね……」

「じゃあ何で俺にあんなことを……」

「……ごめんね。ただの嫉妬なんだ。……僕、あまりにも点数が酷いからさ……つい」

「別にいいけど。じゃあ何点だったんだ?」

「……酷すぎて言うのも恥ずかしい……絶対笑わない?」

「あぁ、約束する」 

 

 ……俺が寛大な心で許してあげたにも関わらず奴は何て言ったと思う?……奴は……

 

「実は……」

「実は?」

「98点だったんだ……!あぁ、2点も落とすなんて恥ずかしい恥ずかしい……これ以上落としてたら、そう、例えばもし22点とか落としてたら絶対自殺しちゃってたよ……78点を取っても生きていける人間がいるなんてとても信じられない…………ん、あれ?どうしたんだい流川君。口が空いたままかたまってるよ?」

 

 ……こんなことをへらへら笑いながら抜かしてきやがった……奴は俺の点数が78点だと言うことを知っていながら演技をしていやがったのだ。そのことに気づいた俺は奴を脳内で100万回殺して怒りを収め、「冷やかしに来たなら帰ってくれ」と相手に言い放った。そしたら奴は……

 

「んふ〜。流川君、君、面白いね。今ので流石にキレると思ってたんだけどな〜」

 

 ……あまりにも気持ち悪いにやにや顔でそんなことを言ってきた。これが俺たちの出会いだ。

 

 ……そしてそれからと言うもの、俺は常に奴に付き纏われるようになり、奴がいつも煽ってくるせいで俺のストレスは常に限界突破していた。ちなみに俺は知らなかったことだけど、奴は学校で煽りの天才、と呼ばれていたらしい。

 

 ──んん?ここだけ聞いてっとそいつと流川全然仲良くねえじゃねえか、だと?まだ話の続きがあるんだよ須藤──はぁ?早く話せ?お前何様の──……くっ、話が逸れるところだった。全く、山内の癖にやってくれたな。

 

 ……俺が奴、煽りの天才と仲良くなったのは、いつも通り煽りの天才に付き纏われていたある日の事。俺たちが普通に道を歩いてたら、見るからにDQNって感じのヤンキーに絡まれたんだ。

 

「おら、金出せ金!」

「な、何でですか?」

「お前そりゃあれがああなってこうであれだからだよ!」

 

 そこからはまず、俺が土下座をした。さっさと見逃してもらいたかったからだ……悲しいことにその時の俺は自信がなかったからな──何?いや今でも土下座するじゃん、だと?櫛田が何を言ってるのか全くわからないな。

 

 ……ごほん、話を戻そう。そしたらなんと、DQNはこの俺様が土下座をしてやったと言うのにも関わらず俺の頭を踏んづけてきやがったんだ。

 

「うひょおー!男の頭の踏むの興奮するぅ!」

 

……DQNは特殊性癖持ちの変態だった。俺はドン引きした。一緒にいた煽りの天才もドン引きした。

 

「このままてめえのケツの穴に俺の息子をぶち込んでやるぜヒャッハー!」

 

 これを聞いた俺は死んだ。特に心が。……するとそれを聞いた煽りの天才がDQNの目の前に立ち……

 

「これが義務教育の敗北……」

「ああん?なんだとゴラ!てめえも俺の息子ぶち込まれてえのか?」

「すみません、良くわかりません」

「てめえも俺の息子ぶち込まれてえのか?って言ったんだよ!」

「すみません、良くわかりません」

「おちょくってんのか!?」

 

 煽りの天才はSiriの如くすみません、良くわかりません、と言い出した。

 

「──あはは!質問したら必ず答えが返ってくるとでも思ってたの〜?」

「……くそっ、この野郎ッ!」

「あれ、図星ですか〜?そうやって暴力でしか訴えることしか出来ないなんて……君の脳みそは飾りなのかな〜?」

 

 DQNはもう泣きそうだった。でも怒ってもいた。顔が真っ赤だった。

 

「僕もね、別に意地悪でこんなこと言ってるわけじゃないんだよ」

 

 嘘つけ。

 

「ただ君の将来が心配で心配で……」

「ふざっけんなよ!てめえは俺の親ですってか?大体俺は高校3年生だ!てめえみたいなクソガキに口出しされる謂れは……」

 

 これを聞いた俺はずっと黙っていたにも関わらず言ってしまったんだ……

 

「え、中学1年生に説教される高校3年生って……ぷっ……」

 

 ……と。──これを聞いたDQNはキレた。そして俺の胸ぐらを掴み、思いっきり顔を近づけてきた。そう、最悪なことにDQNは俺にキスをしようとしてきたのだ。……けど、その時、自転車に乗った警察官が突然現れDQNを確保。

 

「く、くそ!なんで警官がここに……!」

「いや普通に君の声が近所迷惑っていう通報があったから来たんだけど」

「じ、自業自得……ぷっ……」

 

 煽りの天才の最後のセリフでさらに傷ついたDQNの顔はもはやマグマレベルに赤かった。マグマ見たことないけど。

 

「……なぁなぁ、今どんな気持ちなんだ?中学1年生に説教された挙句警察に捕まるなんて……ぷっ、ほら、どんな気持ちか言ってみろよ」

 

 DQNは俺のこのセリフでついに泣いた。

 

……俺はキレていたのだ。この天才イケメンの俺様の偉大なる唇をあんなクソ男に奪われかけたからな、当たり前だ。あのDQNには死んで欲しかった。……ちなみに殺意は今も尚健在だ。

 

「それにしても……流川君、君、中々煽るの上手いね〜。まぁ僕には到底及ばないけど」

「……そうか。……てかそんなことより警察が来たのってお前の計算だったりする?わざとキレさせて声をあげさせて通報してもらう、単純な計画だけど相手が馬鹿だったから……」

「さてね……じゃ、帰ろっか」

 

 この日から俺は煽りの天才と仲良くするようになった。相変わらず常に煽ってくる奴だったけど、俺を助けてくれたあたり悪い奴じゃないんだなってことは分かってたからだ。だってもし俺だったらそいつだけ置いて逃げるだろうし。──ん?これで話は終わりなの?いやまだだ、というか寧ろここからが本題だからしっかり聞いとけよ、沖谷、いや、皆。

 

 さっき、俺は山脇とかいう脇役みたいな猿を煽っただろ。あれってこの煽りの天才の真似なんだよ。自分の思考回路をあいつの思考回路に限りなく近づけて、あいつが言いそうなことを考え抜く。まぁ流石の俺様でも完璧な再現なんて無理だし、自分が自分、という意識は残してるけど。だってそうじゃなきゃただの劣化版煽りの天才になっちゃうし、認めたくはないことだけど、煽りの才能に関してだけは多分あいつの方が俺より上だったからな。

 

 

 

 

 

 

「意外だったな……流川がまともなことを言うなんて……」

「あの流川君が自分より上がいることを認めてたなんてね……」

 

 赤点組もいつの間にか俺の話を真剣に聞き言ってたようで、皆感心したように頷いていた。

 

「……ちなみに後から聞いた話だけど、その煽りの天才が俺に付き纏うようになった理由は俺が直ぐにキレなかったかららしい。あいつ、人を煽るのが癖になっててしようと思ってなくてもついついやっちゃうらしくて、人と話そうにも皆キレてどっか行っちゃうから、俺に会って嬉しかったんだと」

「嘘だな」

「嘘ね」

「嘘だね」

 

  ……上の一個下から綾小路、堀北、櫛田の順。……いやふざけんな嘘なんかついてないんですけど?

 

「はぁ?嘘?この誰よりも優しい俺様がが嘘つくわけないだろ馬鹿が!」

「ほら、こんなので怒る男が煽りの天才、とかいう人に煽られて怒らない筈無いじゃない」

「そうだな、多分今の話も多少捏造してるんじゃないか?」

「全部本当の話だっての……まぁ2年生の途中からあいつと全く話さなくなったけど……

 

 くそ、こいつら全く俺を信用してないぞ……ふざけやがって……

 

「つうかよ、結局流川は何が言いたかったんだよ!」

「何キレてるんだ?……まさか、更年期障害か?これだから須藤は……」

「こ、こうねん?……何言ってるかわかんねーけど、さっさと先生に確認に行かなきゃじゃねーのか?」

 

 ば、馬鹿な……こいつ、俺の煽りが効いてないだと……くそ……やっぱりIQが20違うと話が通じないと言うのは本当だったのか……。

 

「……ふぅ、仕方ない、分かった。……つまり、俺が過去話で何を伝えたかったかと言うとだな……」

「何を伝えたかったと言うと……?」

「俺は人の思考回路すら真似できる最強の天才だってこ──ぐはっ……」

 

 俺は死んだ。綾小路と櫛田と沖谷以外の全員にぶん殴られたのだ。

 

 

 ───才能・容姿・コネ。

 この世のすべてを手に入れた男、日清ラ王、流川快斗!

 俺の死に際に放った一言は、人々を職員室へと駆り立てた。

 

「俺は……何も……悪く……ない……」

 

 生徒達は、職員室を目指し、夢を追い続ける。

 世はまさに、俺の時代!

 

 

 




矛盾や誤字があれば指摘お願いします。一応きちんとチェックはしたんですけど……今回の話は特に誤字や矛盾が多そうです。
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