そしてタロウがここに居る! (やめてください)
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第一章 一話 運命との邂逅
俺はヒーローに憧れた。悪い
でも、成れないって分かった俺は、スタートラインにすら立てないって分かった俺はーーーーーーーーーー
第一章
東光太郎
何時もの事だった。襲ってくるチンピラを叩きのめすのは。何時もの事だった。
「何時もの事じゃねえなあ…」
俺は口から血を垂らしながら呻く。
「なんだ、お前は。異常だ」
フード被った大男が地の底に響く様な声で言ってくる。このバケモンがやったのはシンプル。ただ暴れて、ただ集まってきたヒーロー全員返り討ちにした。
「ははっ…」
乾いた笑いを漏らしながら俺は手にした鉄パイプを握り直す。
「そうかも、なぁ!!!」
バケモンが撒き散らした瓦礫をゴルフの要領で顔面に打ち込む。が、難なくキャッチされる。
「まあ知ってた」
バケモンの意識が顔面に集中してる内に思い切り脛に鉄パイプを叩き込む。
「ッ…」
バケモンが息を飲むのが分かる。あいつは直ぐに反撃とばかりに拳を振り下ろすがすんでの所で避ける。
拳が着弾した所が罅割れ、小さなクレーターができる。舗装済みのアスファルトの道路でだ。
「バケモンはバケモンだな…!」
「やっぱりお前は異常。個性を使ってる素振りも無いのに俺と戦ってる。おかしい。これならヒーローの方が弱かった」
「生憎と無個性なもんで」
軽口もそこそこにマンホールに鉄パイプを突き刺し、浮かせる。しっかりと持って、投げる!
「おらぁ!」
投げたマンホールは我ながら綺麗な弾道?でバケモンの足元に向かっていく。
マンホールを掴もうと体勢を下に下ろしたバケモン。
そのドタマに鉄パイプを振り下ろそうとしたが、バケモンは急に頭を上げ、俺の腕ごと鉄パイプを掴んで止めた。知らずの内に動きが鈍ったんだろう。
「やっべ、振り下ろすの遅かった」
丁度俺が言い終わると同時にバケモンの拳が俺の土手っ腹に着弾した。視界がめちゃくちゃにシェイクされるみたいに歪む。多分今俺は吹き飛ばされてるんだろう。
アスファルトを破砕する程の威力の拳。これを貰ったら助からないってのは馬鹿でも分かる話だ。
あー、畜生。終わりかよ。しょうもない人生だったなあ。ヒーローに憧れたのに無個性でヤケになってケンカ三昧。人を殴るばっかりで一体俺は何がしたかったんだろう。
あ、そっか。
「ヒーローになりたかったのか」
思わず口から声が出た。まだ発声できるのが奇跡としか思えない。
その時だ、目はもう霞んじまって禄に見えないが銀と赤の影が近づいてくる。
「もう君は立派なヒーローだよ」
なんだこの声。穏やかで、安心する。腹に暖かい光が当たる。止まらなかった寒気が、徐々に引いていく。霞んでいた視界も徐々にクリアになる。
「ウルトラマン…!?」
「そうだよ、ウルトラマンだ」
初老の男性を思わせる声。銀と赤の機械的なスーツ。押しも押されぬNo.2ヒーロー。ウルトラマン。オールマイトと並んで希望の象徴と呼ばれる俺の憧れ。
「なななな、なんっで貴方が此処に…!?」
憧れの存在を目の前に完全にパニックになる俺。
「なんでって、とんでもない
「いや、そんなこと」
「ウルトラマン!!!」
バケモンが叫んだ。今まで俺とやり合ってたのはママゴトに過ぎなかったと確信させる程の威圧感。こいつは…何かに怒ってる。
「忌々しい、忌々しいヒーローめ!!」
「ギガントマキア…」
「貴様とオールマイトさえ居なければ、主はあんな御姿にならずとも済んだのだ!!」
俺はチキンのつもりは無かったが、これはキツいな…
「大丈夫」
俺の様子を察したのか、ウルトラマンが小声で話かけてくれた。
「心配しないで。私が付いている」
「っ…!」
心が震えた。憧れの存在は、憧れた通りに偉大なのが分かる。これが、
ウルトラマンはバケモンと向かい合った。
「ギガントマキア、彼はもう終わったんだ。私とオールマイトで終わらせた。彼の時代も、彼が齎した悪夢も、オールマイトが背負った因縁も…終わった」
「主が…終わった…だと…?」
バケモンの纏う空気が更に一段階エグくなる。
「主を痛め付けるに留まらず!!侮辱までするか!!!万死!万死!!万死ィ!!!」
ブチ切れたバケモンはウルトラマンに右テレフォンパンチをかます。とんでもなく速い一撃だ。
だが、
「ふむ、力押しでは勝てないと前回学ばなかったのかい?」
ウルトラマンは軽く位置をずらし悠々と避ける。そしてテレフォンパンチの後で俺から見ても隙だらけのバケモンにウルトラマンは、
「腕だ」
そう言って高速回転する光輪をぶち込んだ。
すると冗談みたいに右腕が飛び、宙に舞う。
「すっげえ…」
「ァァァァァァァァァァァァ!!!!」
叫ぶバケモン。腕の断面からは鮮血が吹き出し骨が覗く。めちゃくちゃにスプラッターなのに何故か目が離せない。
「よくもォォォォ」
そう言いながらバケモンは飛んだ腕を断面にくっ付けた。するとあろう事か異様な音と共にに右腕がくっ付いちまった。
「はっ!?」
「彼を難敵たらしめる一つの要素。再生能力さ。これには本当に苦労させられた…」
ウルトラマンは染みじみ言いながら両手を十字に構える。
「その構えは…!」
「さてギガントマキア、もう充分だろう。君は散々多くの人を傷付けた。これで君も終わりだ」
前に出した右腕に蒼い光が充填されていく。
「スペシウム光線」
静謐にその名が言われると共に蒼い光は放たれた。蒼い光が空に線を引くそれは正に
「ガアアァァァァァァァァ!!!終わらん!!終われん!!まだ終わらせてはならんのだぁぁぁぁぁ!!」
絶叫しながらもその身で光線を受け止め続ける。何が奴をそこまでさせるのか。俺には全く分からなかった。
すると、バケモンの体を黒い霧が飲み込んだ。たち所にバケモンは消え失せた。
「残党か、まあ無理も無い。彼は戦力としては一流だから大事だろう」
ウルトラマンはなんかぶつぶつ言っている。
「まあいいか…さて、体の方は大丈夫かい?一応の治療はしたから問題無いとは思うけど」
「は、はい。さっきまで死にかけてたとは思えない程調子が良いです」
「そっか。それは何よりだよ。でも幾ら体は治っても精神は疲れてるだろう。今日は帰ってゆっくりするといい」
「ありがとうございます…」
そうしてウルトラマンの気遣いで俺は帰路に付くのだった。
「あたたたた…」
ウルトラマンが纏うスーツから排気が行われる。
『ったくあんたは相変わらず無茶ばっかだなあ。もう全盛の時とは違うって分かってんのかい』
スーツのヘルメット内に通信が入る。
「ははは…そう年寄りを苛めないでくれたまえ」
『いんや、此ばっかりは苛めざるおえないね。そもそも一人でギガントマキアに向かっていくのが土台無茶な話なんだ』
「でも…オールマイト近くに居なかったし…」
拗ねた子供の様な問答をするウルトラマン。
『まあ、一つ言えるのはこの調子で続けていくのは不可能って事だ。
「ああ、そのことなんだけどさ。さっきの彼を少し調べて欲しいんだ」
『さっきの彼ぇ?ああ、あのパンピーの癖してギガントマキアに向かってくイカレ小僧か』
「イカレ小僧って…まあ兎も角調べてみてくれ。私の読みが正しければ、光を受け継ぐに相応しい人物かもしれない。私の中に宿る、巨人の光を」
そして、時を同じくして緑谷出久もオールマイトとの邂逅を果たす。
今日は、無個性の二人が運命と出会った日。そしてここから二人は様々な因果に巻き込まれる。その先に有るのは平和か、希望か、絶望か。
その結末を、まだ誰も知る者は居ない。
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