ウマ娘 紅の軌跡If もし物語開始前から三人が迫っていたら (小鳥遊 小佳夏)
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キサラギクレナイ

ウマ娘育成機関「日本ウマ娘トレーニングセンター学園」、通称トレセン学園。

ここには全国各地から才能のあるウマ娘が集まり、トゥインクルシリーズに出るために日夜切磋琢磨している。

そこにあるウマ娘がいた。名をキサラギクレナイといった。

 

彼女は誰よりも走ること、勝つこと、そして楽しんで生きることに執着していた。

入学後こそおとなしかった彼女だが、年を重ねるにつれ自由奔放な生き方を出すようになった。例えば・・・。

・オグリキャップと大食い対決

・タマモクロスと粉もの料理研究

・スーパークリークに骨抜きにされる

・マヤノトップガンと飛行機見物

・ハルウララと気ままにお散歩

・ニシノフラワーとダンスレッスン

・メジロマックイーンとお茶会

などなどなど。

更には幼馴染であったシンボリルドルフ、エアグルーヴ、ナリタブライアン以下の生徒会メンバーにもドッキリを仕掛けたりして遊びながら過ごしていた。まあこれも以前の話となり、今はなかなかそんなこともできなくなっているのだが、それについては後述しよう。

かといってトレーニングをおろそかにすることもなく、トレセン学園に収蔵されているデータや実体験をもとに自己流のトレーニングを確立。また同じウマ娘であるミホノブルボンやライスシャワー達とトレーニングを重ね、果てにはアグネスタキオンの研究に付き合いもしてスカウトされる前から成績を伸ばし、挙句の果てには桐生院トレーナーとトレーニング談議で盛り上がる、そんな光景も目に付いた。それだけ速いからこそ、自由奔放がゆるされていたのもあるだろう。

実際、教官がつくスカウト前のウマ娘たちがトレーニングしている際、彼女たちにトレーニング指導をして、成績をぐんと伸ばしたこともある。それだけ彼女のトレーニング知識は卓越していた。

 

更に彼女はウマ娘の故障についても調べていた。それこそサイレンススズカにトウカイテイオーと、ウマ娘が故障する例は数多くあった。同じく爆弾を膝に抱えるアグネスタキオンらと共に故障したウマ娘が復活するまで付き添い、そのデータ集めや治療法の研究に参加していた。特にテイオーのケガの時はメンタルケアに始まり、復帰までのトレーニング指導や休日のお出かけなどを通して、彼女を復活まで支えたということもあった。

 

そんな自由奔放かつ速く走ることに執着する彼女は、学内模擬レースでも他を圧倒。トゥインクルシリーズに出走しつつも、学内模擬レースでクレナイと対決したサイレンススズカはその強さに驚愕し、身近にこんな強いウマ娘がいるなら、それに勝たないと海外に行けないと、海外遠征を中止した。

「私はあなたと走ると、先頭の景色を見られませんでした。いつもあなたの背中だけ。あなたに私の背中を見せられるまで、海外にはいきません。あなたに勝ち逃げなんか、許しません」

そう彼女は語ったという。

 

そんなクレナイだが、なかなかチームに入ることを選ばなかった。

というのも、本人のトレーニング知識は豊富で今更教わることはない。また既に自分のやり方を確立している以上、ここから他人の指導法に合わせたくはないと。

それを証明するように、スカウトをかけてきたチームのトレーナーには自作の筆記テストを課し、自分はこれに満点をとれる。最低でも満点をとれなければチームには入らないと告げていた。

実際今まで満点をとれる人はおらず、更に他のウマ娘にたまに指導していることから、桐生院トレーナー以外のトレーナーから腫物を触るような扱いを受けていた。

 

だがそんな彼女も、今はあるチームに入っていた。チーム名はシミュラクル。トレーナーはまさかのキサラギクレナイ本人。というのも、理事長の発案により、彼女にトレーナーは必要ないが、チームに入らなければトゥインクルシリーズには出られない。それであれば、クレナイをトレーナーとするチームを作り、そこに入ってしまえばいいと特例を作ってしまったのだった。

この時に役に立ったのは今までトレーナーに課した筆記テスト。これだけのトレーナーとしての知識があり、速く走れる素質もあるのなら、ルールの方を変えて走らせればトレセン学園の利益にもなるといわれると、他の理事も納得せざるおえず、レースから引退した後の先取りも含めてチーム創設が許可されたのだった。

 

そしてチームという以上、規定より少ないながらもチームメンバーがいる。メンバーはシンボリルドルフ、トウカイテイオー、サイレンススズカの三人。そしてこの三人にクレナイは・・・。

「クレナイ、ご飯できましたよ」

「クレナイ、お風呂掃除終わったよ!」

「レイ、洗濯ものしまっておいたが、次は何をすればいい?」

すごーーーーーーーく重い愛を向けられていた。

誰が呼んだか重馬場の主、霧吹きを周りに向けているウマ娘、レースでは逃げるが日常生活では差されっぱなし、そんな渾名がつけられているキサラギクレナイであった。

ちなみにレイというのはクレナイの幼名である。クレナイを略してレイ、とのことである。



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キサラギクレナイとシンボリルドルフ

キャラ崩壊注意タグを入れたほうがいいのか迷いますね


シンボリルドルフは以前は生徒会会長として様々取り仕切っていたが、クレナイがチームを開設するのと同時に生徒会を引退すると表明していた。以前からルドルフがいなくても生徒会が回るように分担をしてきたルドルフだったが、彼女の手腕を引き継げるものはおらず、どうしてもエアグルーヴ以下残存メンバーでは対処しきれない事案が発生することがあり、未だに会長職に残留。基本はエアグルーヴとナリタブライアンが仕事をこなし、どうしても対応できないときのみ会長として手腕を振るう顧問というのが適切な役回りになっていた。

今日はそんな会長としての手腕を振るう日。そんなときにクレナイはルドルフに連れられ、一緒に生徒会室にて仕事をこなしていた。毎回生徒会メンバーではない私が仕事していいのかと思うのだけども、ルドルフ曰く。

「レイだから何も問題はないさ」

とのことである。

 

「(仕事するのはいいけど、あんまり私の性に合わないのよねぇ)」

そんなことを考えつつ、目の前の仕事を片付け、ちらりとルドルフを見る。彼女は机に積まれた書類に目を向けて集中している。

よし、私の仕事は終わった。ここから逃げよう。とそろーりと席を立ち扉へ向かおうとルドルフに背を向けたその時、ルドルフから声がかかる。

「レイ、わかっているぞ」

「やっぱりルドルフからは逃げられないのね・・・」

舌打ちをし、ため息をついて席に戻ると、ルドルフが不満そうな表情をこちらに向けていた。

「ルドルフなんて他人行儀な呼び方はやめてくれ。昔のようにルナと呼んでくれといつも言っているだろう」

そう、私はシンボリルドルフとは幼馴染である。昔は一緒に遊ぶこともあり、互いにルナ、レイと幼名で呼び合っていた。トレセン学園に入ってからはルドルフ、クレナイと呼んでいたが、ある時を境にルドルフが幼名で呼び合おうと言ってきたのだった。

「はいはい、ルナ」

私が投げやりにそう呼ぶと、満足そうな笑みを浮かべ、また書類に目を落とす。

「あ、ルドルフ。この書類なんだけど」

私が一つ聞こうとしていたことがあったのを思い出し、ルドルフに問いかけると、今度は目も上げずに一言返してきた。

「ルナ」

ルナと呼べということなのだろう。

「ルドルフ」

「ルナ」

「・・・ドルフ」

「ルナ」

何と呼んでもルナとしか返さない。私はため息をついて、「ルナ」と呼びかけると、ようやく顔をあげた。

「なんだ、レイ」

「この書類のここ、なんか違和感を感じるのだけど」

それは学園の経理に関する書類だった。何回か見ていたからわかるのだが、ある品目の単価になんとなく違和感を感じる。

「ふむ・・・確かにな。まあレイのいうことだからもし私が違和感を感じなかったとしても何か変なんだろう。あとでエアグルーヴに調査させる」

いや何よその謎の信頼は。

まあとにもかくにもこれで私の仕事は完全におしまい。応接用のソファーに座り、おいてある紅茶セットから自分の分を入れて一服する。

「なんだ、私には入れてくれないのか?」

「自分で入れればいいじゃないの」

「私はレイの紅茶が飲みたいんだ」

「はぁ・・・わかったわよ。入れてあげるから早く終わらせちゃいなさい」

そうしたら間違いなくルドルフの書類裁きのスピードが上がった。そこまでして早くほしいのね・・・。

半ば呆れつつ彼女の分の紅茶を入れて待っていると、私の隣に一気に書類を片付けたルドルフが座った。

「はい、紅茶。残念ながら私の血も唾液も入ってないわよ」

「むぅ、入れてくれてもいいんだがな」

・・・。ジョークのつもりだったのだが、まさかの肯定で返されてしまった。皇帝が肯定・・・いや、これ以上は言うまい。

すると唐突にルドルフが私の耳に近づいてきて囁いた。

「まあ私としては、君の何かを入れて飲んでみたい気持ちも強いが」

と言ってそのまま耳にハムっと甘噛みしてくる。

「っ!?!?!?」

ぞっくぅぅぅううと体がと耳と尻尾が震える。そのままあむあむとしてくる会長を突き飛ばし、ソファーの端っこまで逃げる。

「な、なんばしよっと!?」

驚きすぎて博多弁が出た。いや私はそっちの方には一切行ったことが無いのだが。

「いやなに、おいしそうだったから、ついな」

「ついじゃない! ついじゃ!」

そうしていると、生徒会室の扉が開く。

「会長、戻りまし・・・って会長。この部屋をそういう用途に使うのはおやめくださいと常々・・・」

入ってきたのはエアグルーヴ。私とルドルフの位置関係を見て、またルドルフのが私に何かしたと察したらしい。

そう、"また"の言葉の通り、私はちょくちょくこういうスキンシップを仕掛けられている。じゃあなんで生徒会室に来るかって? 来るときは手をつないで連行されてくるし、逃げようとしても逃げられないから。一度本気で逃げようとしたら、足首と椅子の足を手錠で繋がれた。まあ、うん。そういうことよ。

「別にこれくらいいつもやってることのはずなんだがな。毎回そう驚かなくても」

「いつも"あなたから一方的に"やってくることよね。ほんとやめてって言っても止まらないだろうから言わないけど、突然はやめてくれると助かるわ」

そう返し、ようやく落ち着いたのでソファーに戻る。そう返したとこでまた突然やるんでしょうけど。

そこからはエアグルーヴ、更に戻って来たナリタブライアンも混ぜてのお茶会となった。だいたい生徒会の手伝いをする日はこんな感じで過ごしている。

 

ちなみに例の書類の違和感だが、調べたら理事の一人が予算をちょろまかそうとしていたことが発覚。ルドルフに

「やっぱりレイはすごいな」

と感心された。



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キサラギクレナイとサイレンススズカ

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「「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

そのままゴールを駆け抜ける。そしてゴール線の上に設置したカメラを見て、どっちが先にゴールしたかを確認する。

「やった勝ったぁ!」

「また勝てなかった・・・」

そして勝った私は喜び、負けたサイレンススズカは落ち込む。

今日はスズカと私の二人でのトレーニングの日。基本毎日トレーニングをする私で、そういう時は大体ルドルフやトウカイテイオーと四人でやるのだが、今日は都合が悪くスズカとの二人でトレーニングをすることになった。

「ほんと、どうやってもあなたには勝てないのよね」

「何回かは君がハナ差で勝ったこともあるじゃないの」

そういうとスズカは不満そうな顔をする。

「あなたに私の背中を見せないと、私の勝ちじゃないの。それにレースでは勝てたことないのだし」

「それなら一生スズカが勝つことはないんじゃないの?」

ニヤリとする私。

「絶対、いつかはあなたに私の背中を見せて、私が味わっている屈辱を味合わせてやるんです」

私の挑発に闘志を燃やすスズカ。とはいえ、今日はもう暗くなってくるころ。そろそろ上がったほうがいいだろう。

「とりあえず今日はこのくらいにしよう。機材の片づけ、手伝って」

「わかったわ」

スピードとスタミナを鍛える機材をスズカと半分ずつ持ち、部室へ。部室の倉庫に機材を片付けた後、そのままシャワーを浴びて体を流す。

「あ~~、シャワーのお湯が身に染みるぅ」

「そうですね、気持ちいいですねぇ」

「・・・。ってなんでここにいるの?」

と、なぜか私にひっついてシャワーを浴びるスズカに突っ込みを入れる。いやいや、そんな顔に?マークを浮かべないで!?

「ふふ、いいじゃないですか♪私とあなたの仲なんですし、それに何回も一緒に浴びているでしょう?」

「いやだって色々あたってね!?」

スズカの体はまあ一言で言えば貧相だ。だがそのおかげで、抱き着くと体中がぴっちりと密着する。こう、スズカが密着していると思うと、なんかこっちまで恥ずかしくなってくる。確かに何回もこうされたことはあるが、どうしても慣れるものではない。そうしてどぎまぎしていると、スズカが私の脇腹をつーっとなでてきた。

「ひょわっ!?」

「あらあら、かわいい声ですね」

そういう不意打ちはほんと辞めてほしい。

それからスズカは私のお腹、腕、足と触ってくる。が、これに関しては驚かせようと思ってやっているのではないし、ある意味日課となっていることなので別に声は上げない。いやむず痒いけど。

「相変わらず、鍛えられた筋肉ですよね。これを上回れないと勝てないんですよね」

私の筋肉を触って、自分と比べて戦意を高める。目に見える私との差を感じたいらしい。本人談だが。

「ありがとうございます、今日も差を実感できました」

ちゃんと堪能し終わった後お礼を言うあたり、スズカはほんといい娘って感じがする。いやこんな裸のスキンシップ?を要求してくる娘がいい娘なのかは知らんけども。

「それは何より。で、まだ居るの?」

「いえ、よければ私のも触ってみませんか? あなたなら、私のどこを触っても構いませんよ? それこそ、全身くまなく」

「やめなさい」

なんか誘惑する目線をこちらに向けるスズカから意識をそらし、汗を流しつつ体を洗っていく。

スズカは「残念です」と一言だけ言い、自分の体を洗う。今日こそスズカしかいないからこれで収まっているが、他の二人がいると収拾付けるのが大変になりかけるのがほんと面倒なところである。

とにもかくにもシャワーを終えてさっぱりした私は、夕飯を食べるべく寮の食堂へとスズカを引き連れて歩いて行った。



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キサラギクレナイとトウカイテイオー

「今日はどこにいこっか? カラオケ? ゲーセン? どこでもいいよ♪」

そう言って私の手を引くのはトウカイテイオー。今日はトレーニングもお休みのオフの日。ほかの二人は用事があるようで、テイオーと二人で外に遊びに来ていた。

「どこでもいいのよね。テイオーはどこか行きたいとこないの?」

「じゃあね、ボクはまずはちみつ飲みに行きたい!」

というわけで、まずはテイオー御用達のはちみつドリンクカーFunny Honeyへ。

「はちみつ固め濃いめダブルのマシマシで!!」

「はい、1,500円ね」

いつも思うのだが、濃いめはまだわかる。濃厚ってことなんだろう。でも固めとかダブルとかマシマシというのはどんな意味があるのかしら? しかもそれで1,500円でしょ? どこぞのメンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシでも1,000円超えないはずだし、ほんと不思議な飲み物ね、はちみつドリンク。

商品を受け取ってちゅーと嬉しそうに飲むテイオー。笑顔が可愛いわね。

「あ、クレナイにもあげる」

そう言って私にドリンクのストローを向けてくる。

「あら、ありがとう」

ドリンクを飲むと、とっても濃厚なはちみ・・・のうこ・・・げほっ。

「げほっごほっ」

あまりの濃さに咽た。え、ナニコレ。こんな濃さのはちみつが存在するというの・・・。世界は広い・・・。

「あ、大丈夫? クレナイ」

テイオーが私の背中をさすってくれる。

「ええ、大丈夫よ、ありがとう」

呼吸を整え一息。私がドリンクを返すと、テイオーが私の口元に目をやった。

「あ、口元にはちみーついてるよ、動かないでね」

そう言って、私の手をつかんでくいっとひっぱり、頭を下げさせたとこでテイオーがぺろり。

「な、ななな!?」

「えへへ~♪ おいしいなぁ♪」

え、あの、ここ公園なんだけども!? それにただでさえイケメンなテイオーにそんなことされるとドキッとして心臓に悪いからほんとやめてほしい。というかテイオー、なぜあんたはストローの飲み口をそんな執拗に舐め回す??

「はぁ・・・はぁ・・・・」

とりあえず呼吸を落ち着かせると、テイオーがちょうどはちみつドリンクを飲み終えた。

「さ、次のとこ行こ♪」

ごみを捨ててきたテイオーが私の腕にしがみつくようにして、歩き出す。私はそれに引っ張られるようにして続くのだった。

ところで、さっきのストローをテイオーがカバンにしまっていたような気がするのだけど・・・気のせいよね、きっと。

 

その後映画を見たり、ウィンドウショッピングをしたり、カラオケで持ち歌対決をしたりして夕方になったころ、テイオーが最後に行きたい場所があるというのでついていっていた。

「ここここ、ここに入りたいんだよね♪」

そこはホテル。入口に看板があって休憩とかいろいろ書いてあるとこ。誰がどう見てもそういうとこである。

「あんたは何を考えているの! ふざけてないで帰るわよ」

テイオーの頭をはたき、帰ろうとするとテイオーが全力で拒否してくる。

「やだやだやだやだ~、クレナイと一晩過ごす~」

「わがまま言わない!!」

私はひょいっとテイオーの腰に手を回し、肩に担ぐとそのまま学園への道を歩き出した。しばらくやだやだと繰り返していたテイオーだが、少しするとおとなしくなり、そのまま学園まで私の方に揺られていた。

ちなみにこの話をスズカとルドルフにして説教してもらおうと思ったのだが、二人とも羨ましい!! と言っていたので、まともなのは私だけかと一人乗りのボートに水と食べ物を載せて海に出たくなった。



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ウマ娘にインタビュー

ウマ娘にインタビューのコーナー

 

司「さて突然始まりましたウマ娘にインタビューのコーナー。今日のウマ娘はこの三人です」

 

ル「シンボリルドルフだ」

 

ス「サイレンススズカよ」

 

テ「トウカイテイオーだよ」

 

司「えー、このコーナーでは、ウマ娘に質問をしてそれにこたえていただくというコーナーとなっております。

最初の質問はこちら

『クレナイを好きになったきっかけ』」

 

ル「では私から行こうか。レイは私の幼馴染で、小さい頃はルナ、レイと呼び合っていたんだ。同じ小学校で仲もよかったんだが、トレセン学園へ入ってからは私は生徒会に、レイは一般の生徒として過ごしていた。それで遊ぶことも少なくなっていったのだが、そのうちに気づけば心にぽっかり穴が開いたような気がしてな。それである時、レイを誘って遊びに行ってみたんだ。そうしたらすごく楽しくて、この先ずっとレイと一緒にいれば楽しいと、心に穴が開くこともないと思ったんだ。だから、この先ずっと一緒にいたいと、レイのことが好きになったんだと思う。生徒会長になったのも、レイにとって過ごしやすい環境を作りたいというのがあったからだ。もちろんだからレイがチームを作るという話が出た時は全力で推したし、そのまま私もチームに入らせてもらった」

 

ス「次は私ね。私は模擬レースで何度か競り合ったのがきっかけかしら。それまで私は誰の後ろも走ったことが無かったの。必ず先頭。それも大逃げ。唯一逃げられなかったのはケガをした天皇賞の時だったかしらね。そこから復帰した後も先頭を走っていたのだけど、丁度レースが無くて少し暇していた時に模擬レースに出ないかという相談があったの。とても速いウマが出る。本当ならトゥインクルシリーズに出てもおかしくないけど、チームに入らず出れてないウマ。一緒に走れば、そのウマにいい影響を与えられるだろうからって。ええ、それがクレナイだった。

スタートするまで、私はいつも通りに逃げられると思っていた。私より速いウマなんかいないって。でも、いざスタートしたら、私の前にでるウマがいたの。クレナイ。いくら私が加速しても、クレナイはもっと加速する。どうやっても縮められないその距離にもう頭が真っ白になったわね。

それから何回か模擬レースで対決したけど、結果は私の全敗。でも、そうやって対決しているうちに、それがとっても楽しくなって。私はクレナイの横で走りたい、そしていつかは追い抜きたいって気持ちがとっても強くなって。気づいたら走ることよりクレナイのことが好きになっていた、そんなとこかしら。予定していたアメリカ遠征も、目の前にちょうどいい壁がいるのに、それを避けていくことはないと思ってキャンセル。クレナイがチームを作るというときに、沖野トレーナーの許可を得て転籍させてもらったわ」

 

テ「最後はボクだね。ボクがクレナイを好きになったのは、ボクが三度目の骨折をしたときだね。あの時はもうダメだって思って、スピカを脱退しようとして。そんな時に現れたのがクレナイだったんだ。

ボクが一日オフになって遊ぼうとしたときにひょっこり顔を出して、一緒に遊びましょ? って言ったんだ。ボクからすれば誰だこいつはってなったんだけど、そのまま振り回されるように遊んだね。はちみつ飲みに行ったり、カラオケ行ったり、服を見たり、クレーンゲームをしたり。カラオケでは採点バトルをして、二人とも過熱したなぁ。そうしたら時間が無くなって、また次の日クレナイと一緒に遊んだんだ。今度はペットショップ行ったり、プリクラしたり、屋上遊園地行ったり。そうしてたら、クレナイが明日はジャージを着てコースに集合って言いだしたんだ。なんでそんなことをって思いつつも、ここ二日一緒に遊んでくれたから、次の日いったんだ。そうしたら突然ボクを背中に背負って、そのまま走り出したんだ。そうしたら、風が顔に当たって、レースをしているときの感覚がよみがえってきて。自然とまた走りたいって気持ちが沸き上がってきた。3,600mをきっちり走り終わった後、クレナイがそのまま連れていきたいところがあるって言って、生徒会の応接室に連れて行ったんだ。そこにいたのはキタサンブラック。当時はまだ小さいウマ娘だったんだけど、彼女が手作りのお守りを持ってきていたんだ。実際には数日前にも来てて、学園の門で出待ちしてたところをクレナイが見つけて、今日渡せる機会を改めて作るって約束したらしい。そこで元気になれるようにってお守りを受け取ったら、もう走るのをやめるなんて言えないよね。そのあと、だぶるじぇっと・・・? ああ、ツインターボか。ターボも来て挑戦場渡してくるし、なんかもうやるしかないって雰囲気にさせられちゃった。え、挑戦状を受けたのかって? いや、結局いつ走れるようになるかわからないし、受けなかったよ。でも、必ずまたレースには出る、どれだけ時間がかかってもって伝えたら、満足そうな顔してたっけ。

で、そのあと治るまでクレナイに面倒を見てもらって、完治した後はクレナイとスピカの沖野トレーナーにトレーニングをつけてもらったんだ。そしてあの有馬での復活を果たせたってわけ。んで治療中、ほとんど付きっ切りでクレナイが面倒を見てくれて、治った頃にはいつの間にかクレナイのことが好きになってたんだ。クレナイがチームを作るとなったとき、治療中にボクがクレナイと仲良くしているのを見ていた沖野トレーナーが転籍を進めてくれて、元々スピカに脱退届を出してたのもあって移っちゃった」

 

司「それでは次の質問に行きましょう。

『今クレナイさんを含めた四人で生活しているとのことですが、どんな感じに生活しているのでしょう?』」

 

ル「まあず、私たちが生活しているのは、チームシミュラクルの部屋だな。これはプレハブをつなげて作ってある建物なのだが、中に生活するための部屋だけではなく、トレーニングルーム、ダンスレッスンができるスタジオ、シャワーなんかの休養施設まで整えてある。もちろん私が生徒会長の強権を使えてそろえた部屋でな、トレーニングルームの器具なんかも、学園のトレーニングルームにあったお古を譲ってもらったものだ。古いとはいえまだまだしっかり動くからな。これを使ってみっちり練習しているよ。珍しい部屋で行くと、鍛冶ができるようになっているな。私たちがシューズに付ける蹄鉄。基本は市販品を使うが、レイはこだわりがすごくてな。自分に合うようにきっちり整形をしたがる。それができるように高温にも耐える部屋を一つ用意した。ついでにわたしたちのも整えてもらうこともあるが、あんな職人技、さすがの私たちでも真似ができない」

 

ス「具体的な生活だと、まず朝起きてクレナイがトレーニング機器の点検などをやって、その間に私が朝食を用意。みんな起きて軽食を入れた後朝練。そのあと朝食を食べてから授業に行って、午後勉強が終わったら基本はトレーニング。何か用事があったら、行く人は行って行かない人はひたすらトレーニングですね。雨の日は中でマシンを使ってトレーニングしたり、資料を集めたりすることが主になるかしら? トレーニングを終えたらみんなでシャワーを浴びて汗を流し、寮の食堂でがっつりご飯。戻ったら自習をして就寝。睡眠はたっぷりとりましょうがチームの標語になってたりするくらいだもの」

 

テ「ただ毎日トレーニングしているわけでもなくて、体調とか筋肉の具合を見て休養日にすることもあるかな。あとはレースの直前とか。そういう時はみんなで遊びに行くなぁ。特にカラオケ行くともう大変。みんな採点で競いまくるから、トレーニングするのと同じくらい疲れちゃう。あとは河原を散歩したり、神社に行ったりとか? そんな感じで毎日楽しく過ごしてるなぁ。レースになると、基本みんなで出場。みんな中長距離走ることが多いから、必然と出るレースも被っちゃってね。まあ全部クレナイが圧勝。クレナイが何かの都合で出ないときだけ、スズカが逃げ切って、二人がいないとカイチョーかボクが勝つ。そんなのが定着しちゃってるなぁ。そう、クレナイも早いけど、スズカもボクらとは次元が違う速さを誇ってるからね。いつかは絶対勝つけどね」

 

司「なるほど、ありがとうございます。

それでは次の質問。

『今後クレナイさんとはどのようなことをやりたいですか』」

 

三人「「「それは!!」」」

 

以下、自主規制を多数かけなければならなくなりましたので、インタビューはここまでとなります。




三人がなぜ好きになったのかとか、チームの部屋の様子を書きたかったので入れました。
テイオーの好きになった理由だけ長いのは、あの話だけ知人に「見ろ絶対見ろ早く見ろ」とニコ動のURLを送り付けられて見たからになります。


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血の有馬

「速い速い!! これはセイフティリード!! キサラギクレナイ、またも後続と大差をつけて今ゴール!! 天皇賞秋を制しました!!」

天皇賞秋。秋シニア三冠を目指すうえで絶対に避けて通れない一戦。ここを私はいつも通り一着で勝利していた。そのままジャパンカップも制した私は一番人気で有馬に出走。当日、中山競バ場にはクレナイのセンターを見ようと、大勢のファンが詰めかけていた。

その有馬があんなことになるなんて、あの時は誰も、私さえも予想していなかった

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「各ウマゲートに入りました。・・・・・・・・・スタートです!!」

ゲートが開き、一斉にウマ娘が飛び出す。先頭を切るのはもちろんキサラギクレナイ。二番手にサイレンススズカ。そしてその後ろからはトウカイテイオーとシンボリルドルフが続く。

そのまま中山競バ場の4コーナーに突入。先頭集団の順位は変わらず。そしてぐるりと一周してそろそろスパートというとき。一気にサイレンススズカがスピードを上げた。

「おっと、ここでサイレンスがスパート!! キサラギクレナイに並んできたぁ!! そしてそれに続くトウカイテイオーとシンボリルドルフもスピードアップ!!! 差せるか、今日こそ差して無敗王者に土をつけられるか!!! 帝王と皇帝の威厳をまた示すことはできるのか!!!」

スピードを上げたスズカは珍しくクレナイに横並びとなり、そのあとを追うッテイオーとルドルフもその背後に付け、最後に差し切る体制に入った。そして四人がもつれたままレースは最後の直線に入る

「さぁ中山の直線は短いぞ!! 後ろの娘達は間に合うのか!!」

クレナイもゴールが見え最後のスパートと足に全力を入れた時。クレナイに事件が起こった。

「っ!?!?!?」

芝に突いた右足が何かにとられ、前に出せない。咄嗟に左足で地面を蹴るも、それ以外何もできない。

「おおっっと!? これは、クレナイが転倒した!? クレナイが転倒!!!!!」

ウマ娘の最高速は優に60km/hを超える。それも成長目覚ましく、またスパートをかけたウマ娘ともなれば、80km/hを超えても不思議ではない。その状態のウマ娘が転べばどうなるか。まあ無事で済むわけがないのは想像に難くないだろう。芝にたたきつけられ、そこで私の意識は途絶えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そのレースではいつもの通り、レイの逃げに始まった。それを追うスズカ、テイオー、私。いつも通りの構図だ。でも今日はいつもと違って、最後にスズカの背後に付けた。そのスズカはレイと並んでいて、もしかしたら、今日こそはレイに、スズカに勝てるかもという気がした。だから全力で、無我夢中に、スズカを避けるように横へ出て前だけを見て走っていた。そしてゴール板を駆け抜けた。多分、ぎりぎり。あそこから横に並べても、前に抜け出せるほど私はレイやスズカ、テイオーより強くはないし、それを許してくれるほど彼女たちも弱くはない。結果は、勝ったのは誰だ。そう思って確定板を見ると、トップにスズカの番号が、そして二番には私の三番にテイオー、そして四番にまだ番号が出ていなかった。

なぜ? 何でレイの番号がない? レイに何かあった? 同時に見ていたスズカとテイオーと一緒にゴールに目を向けると、ゴールライン手前で一人のウマ娘が酷い姿で横たわっているのが見えた。

あれは・・・あの勝負服は・・・っ!!

「レイっ!!」

すぐさま駆け寄るも、片手と両足がぐちゃぐちゃに折れ曲がり、体中から血を流している。

「っ、スズカ! 急いで救急セットを! 控室にある! テイオーは私と応急処置だ!」

生徒会長として応急処置の勉強もしていた私が即座に指揮を執り、消毒、止血など、その場で救急車が来るまでにできる応急処置を施した。

どうして、なんで・・・。そう思いながら、今はできることをやるしかできなかった。

その後、レイは救急車で搬送された。

レイ以降の後続のウマ娘はレイを避けようと大混戦に陥った。

そして荒れに荒れた有馬。レイの搬送やレイの姿を見た観客に体調不良が多発したこともあり、いつもより時間をおいてのウイニングライブになった。私はウイニングライブなんかやってる場合じゃないと思いもしたが、せっかく有馬に来た観客にライブをしないでそのまま返しては、学園の恥となってもおかしくはない。だからスズカやテイオーと一生懸命にライブをし、何とか終えることができた。

 

この大事故は後に、血の有馬として語り継がれることになった。




はい、回収できないのでオウカが消えました。
まあこの後三人がなんとかクレナイを復帰させてくれると思います。


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クレナイの心と、それを埋める心

「・・・ここは・・・」

うっすら目を開けると、知らない天井が見えた。左右に首を振ると、白いカーテンが見える。両手足が動かない。

「あ、そっか、私、有馬で・・・」

少しすると、最後に見えた記憶がよみがえった。有馬のラストスパート。何かにとられた右足。そのまま芝にたたきつけられる記憶。衝撃。私は転倒して、病院に担ぎ込まれた、というところなのだろう。

「ダメだ・・・眠い・・・」

意識が戻ったのもつかの間。すぐに睡魔に襲われた私は、また目を閉じて静かに眠るのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「結論を言うと、命が助かって何より、というところでしょうな」

「そう・・・ですか・・・」

しばらくして、安定して意識を取り戻せるようになった私。現在の病状を聞くと、両足と左手複雑骨折。右手単純骨折。内臓破裂やらのダメージ多数。他、体の各部骨折座礁筋肉損傷擦傷出血etcetc。まあまず生きててよかったねというレベルの大けがをしたようだ。

まあそりゃ、あれだけのスピードで転んだらそうもなるだろうけど。

「また走れるようになりますか?」

「なんとも言えないですね。まず歩けるようになるかもわからない。よしんば歩けるようになったとして、走れるかはあなたのリハビリと努力次第といったところでしょうな」

「わかりました、ありがとうございます」

それを聞いた私の心には、ぽっかりと大きな穴が開いていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それから少しして、私の右手が動かせるようになったころ、いろんなウマ娘達がお見舞いに来てくれた。ウマ娘以外の一般のファンも、たくさんの見舞いの品や手紙や千羽鶴なんかを送ってくれた。多すぎて保管なんかに困るくらい。

んで、ウマ娘のみんなはお見舞いの品を持ってきてくれるのはありがたいんだけど。ありがたいんだけど!!! オグリとスペ、あんたらは量ってもんを考えんかい! 何を思ってフルーツ1箱ずつ持ってくるかなぁ!? もうたくさんあるのに食べきれるわけがないだろうに。

まあそんなトラブルもありつつ治療に専念していると、少しずつではあるが体に回復の兆しが見えてきた。

そんなある日、私はルドルフたち三人を呼んだ。

 

「来てくれてありがとう、ルナ、スズカ、テイオー」

「いや、構わない。それよりも今日はどうした」

ルドルフを中心に、三人は私のベッドわきの丸椅子に座る。私はそれを見て、ぽつぽつとしゃべりだした。

「私のこれからについて。あなたたちにだけは相談ができる。

まず私の体だけど、私の見立てで行くと、歩けるようにはなると思う。でも、また走れるかはわからない。よしんば走れるようになたっとしても、勝てるかがわからない。この長い治療生活の間で、筋肉は完全に衰えた」

三人、静かに聞いてくれる。

「私があれだけ走ることにのめりこんだのは、勝ちたいから。負けるとすごく悔しい。なんなら死にたくなるほど悔しい。だから勝つことに専念してきた。誰よりも体を鍛え、勝てるように専念してきた。幸いにも体はこのトレーニングについてこれた。タキオンとは違い、どこまで追い込んでも壊れない体だった。

みんなに指導をしていたのも、それを生かして自分のトレーニングにつなげたいから。早くなるためなら、実験しようが何をしようが、何でもやった。

でも、これではまた1からのトレーニングだ。それに一度壊れた体だもの。どれだけ修復しようと、一度壊れると次も壊れやすい。そんな体でどこまでいけるかわからない。もし勝てないなら、それで絶望するくらいなら、もう走りたくはない」

「そうであれば、トレーナーになるのはどうだろうか。以前話もしたように、トレーナーの枠なら空いている。君の知識であればトレーナーになっても事欠かないだろうし、元から君の指導には人気がある。悪い選択肢ではないはずだ」

ルドルフがそう提案してくる。確かにそれは、元々私に用意されている、というそれも期待されている道だ。

「ええ、それはその通りなのだけども、今はまだ、それも選びたくはないかしらね」

「それはまたどうしてか、聞かせてくれるだろうか」

「私、嫉妬深いから。自分が走れないのに誰かの走りを見ていると、絶対自分も走りたくなって、動けない体を憎むと思う。もっと長年走れば納得できるかもしれないけど、今はまだ無理。それこそ自傷くらいならしてもおかしくない。実際、今もしたいけど体が動かないし、それにまだ自分の体に見切りをつけたわけでもないから、なんとかなってるの。

だから、もしは知らない道を行くとしたら、ウマ娘とは関係ない道になると思う」

「そうか・・・」

「でもね、私は今まで走ることしか考えてこなかった。そんな私が今更他の道に歩めそうな気はしない。そもそも年齢的に、今からほかの学校に行けるのかもわからない。社会になじめるのか、集団生活ができるのかもわからない。とても、不安しか感じない。

とれる道がここまで何もないとなると・・・命を絶つことも考えている」

そこまで言った後に三人の顔を見ると、みんな一斉にため息をついた。

「まあ君なら言ってもおかしくはないと思ったが・・・」

「まさか本当に言うなんて・・・」

「そうだね、これはちょーっとお話が必要かもね」

そして一斉に立ち上がり、右腕を三人で掴んでくる。

「まずこれだけははっきりと言っておくが、私は君が死ぬことを絶対に許さない」

「私も、もし先に死んじゃったら、後を追いかけるわ」

「そうだね、ボクも死ぬときはクレナイと一緒がいいな」

「え、あの、みんな・・・?」

それから三人は目を合わせ、一緒にこう言った。

「「「私は(ボクは)、クレナイ(レイ)のことが好きだから」」」

「だから絶対に死ぬことは許さない」

「もしあなたが学園をやめるというのならそれについていくわ」

「もし復帰したいというのなら、ボクたちが全力で面倒を診るし、トレーニングにも付き合う」

「「「だから、死ぬなんて絶対に言わないで」」」

それに対し、うんと言えない私だったが、言わなくてもこの三人が絶対に阻止してくるだろう。

そう思うと、愛されているなとか、愛が重いなとか、なんかいろいろ考えてしまう私であった。



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どこまでも、ついていく

ライスではありません


しばらくして、何とか退院までこぎつけることができた。体は完全に訛り切っているが、未だ完治は見えない。

「ありがとう、三人とも」

「ううん、これくらいなんてことないよ♪クレナイもやってくれたことだしね~♪」

それから少しして。三人が変わりばんこに私の世話を焼いてくれた。それこのご飯食べさせてくれたり、体を拭いてくれたり。そして退院の日だが、今日はテイオーの番の日だ。実際のとこ、車椅子生活になって不便しそうだったからうれしいのだけども。ところで、なんで私の車椅子が無動力なのかしら? 電動のをお願いしていたはずなのだけども・・・? いえあれね、勝手に動かれたくないってルドルフが横やりを入れたんでしょうね。容易に想像がつくわ。

「これからもボクたちが面倒みるからね、全部任せてよ!」

「ほんとうにありがとう」

「どういたしまして♪」

そのままテイオーに部屋まで連れて行ってもらう。車椅子ということもあり、プレハブの入り口がスロープになっていた。バリアフリーだ。

部屋に戻ると、ルドルフとスズカが待っていた。二人に抱えてもらって、ベッドの上に移してもらう。

「ありがとう、ルナ、スズカ」

「気にしないで」

「ところで一つ、聞いておきたいことがあってな。その答えを理事長にあげないといけない」

「足のことよね? 正直、まだわからないけれども厳しそうというのが答えになるわね。筋力の衰え具合はあなた達もわかってると思うけど、そういうことなのよ。明日あたり、タキオンにお願いしてデータを取るつもりだけど」

「ああ、わかった。詳細がわかったらまた言ってほしい。もしトレーニングしたくなったら、私たちが手伝うからな、言ってくれ」

「ええ、頼りにしてるわ」

この様子だと、このまま逃げ切れることはできなさそう。腹をくくって走るしかないかもね。そんなことを考えながら目を閉じ、深い睡眠に落ちていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「寝たか?」

「ええ、深く眠っているみたい」

「そうか・・・」

クレナイが寝るのを見届けた後、ボク、スズカ、ルドルフの三人は今でお茶を飲んでいた。

「で、二人はどう思うのさ。クレナイ、また走ると思う?」

「正直わからないな。体は何とかなると思う。それこそ、酷い骨折から復活したスズカや、何度も骨折して治ってるテイオーがいるんだ。体は戻ると考えていいはずだ」

「そうね。そこはいいとして、後はクレナイの心の問題よね」

「ああ。そこばっかしは、その時にならないとわからん」

「まあ、もし走りたくないって言ったら、その時はみんな揃って学園やめて、どこかでゆっくり過ごすのもいーんじゃない?」

「っと、まさか最強のウマ娘を目指していた君からそんな言葉を聞く日が来るとはな」

「まあでも、私たちみんな同じこと考えてるでしょう?」

「それは違いない」

くつくつと笑うルドルフ。ここにいるのはみんなクレナイが好きで、好きすぎるくらいの三人。であれば、クレナイが何よりも最優先で、クレナイが何かしたいと言えばそれが叶うようにすべてを整える。

どんな道を歩もうとも必ずついていく。それを確認しあった三人であった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それからしばらくして、私のケガは少しずつではあるが、確実に治っていった。ギプスも段階的に取れ、軽い工作くらいならできる程度に腕が動かせるようになった。だがそれに反比例するように筋力やスタミナは落ち、今では普通の人間と変わらないくらいにまで落ち込んでしまっていた。

 

そんな中、今日はスズカに車椅子を押してもらって、散歩に来ていた。もちろんルドルフとテイオーも一緒に。今日は普通にトレーニングはお休みの日なので、みんなでのんびりと散歩をしている。

「外は風がきもちいいわね」

「ええそうね、ほんと」

途中で買い食いしたり、ウィンドウショッピングをしたり、色々と回っていた私たちは、帰りがけに河原の土手に来た。オレンジ色の夕日が綺麗に映えている。

ふと河原を見下ろすと、ウマ娘が必死にランニングしている姿が見えた。自然と、唇を強く嚙み、血が出るほど強く手を握りしめていた。

悔しかった。まだまだ治らず、治るにつれてどんどん鈍るこの体が恨めしかった。もっと走りたい、また速く走りたい。そんな思いだけが先行し、私の心を黒く染め上げる。

「やっぱり、生きてても、もう・・・」

小さく、とても小さく呟いた。そしてそれが、三人に聞こえてしまった



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復活の序章

「やっぱり、生きてても、もう・・・」

そういったところ、横にいたルドルフが私の頬っぺたをつねり上げた。

「なんだそんなことを言うのはこの口か?」

「いひゃい」

「そうですね、そんなこと言う口にはお仕置きが必要ですね」

そういうとスズカが反対側のほっぺをつねり上げる

「スフカまふぇ・・・」

「当然だよ、クレナイ。ボクたちは君を死なせないって言ったんだからね。ぜーったいにさせないから」

後ろから当然と自信満々のテイオーの声が聞こえてくる。

ほっぺを解放されるまでしばらく、これはおちおち死んでもいられないと体に刻み込まれた私であった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そんなことがあった後、私の復活を願うファンの声が私にまで多数届くようになった。今までも届いていたのをルドルフの方で止めていたそうなのだが、これで私にはっぱをかけようとしているらしい。中にはテイオーの時のキタサンブラックのように、もう怪我しないようにと自作のお守りを作って送ってくれたウマ娘も居た。それと一緒に

「早く元気になってね オウカ」

なーんて私が走っている姿の絵までつけてくれているのを見ると、ほんと私って愛されているなと感じる。

 

ちなみに同じウマ娘からは

・また一緒に飛行機見たい(マヤノトップガン)

・研究はどうする(アグネスタキオン)

・お姉ちゃんがいなくなるのは嫌だ(カレンチャン)

・お姉様と走りたい(ライスシャワー)

・一緒に長距離に向けたトレーニングを(ミホノブルボン)

・チームメンバーなのに一緒にトレーニングしてない(スペシャルウィーク、ダイワスカーレト、ウオッカ、ゴールドシップ、沖野トレーナー)

・もっと甘やかしたい(スーパークリーク)

・ダンスの指導を(ナイスネイチャ、ニシノフラワー)

・憧れの先輩とまた並走したい(キタサンブラック、サトノダイヤモンド)

・レースは楽しいよ(ハルウララ)

・友達もさみしがる(マンハッタンカフェ)

・またお茶会を(メジロマックイーン)

・お魚釣ろー?(セイウンスカイ)

・粉もの料理研究はどうするんや(タマモクロス)

・生徒会の手伝いを(エアグルーヴ、ナリタブライアン)

・もっとトレーナー談義を(桐生院トレーナ)

・トレーナーが寂しがる(ハッピーミーク)

とあつーーい言葉をいただき、これでは退学は間違いなく無理だなと感じるところである。

 

それから少しずつ、タキオンのデータを見つつ無理をしないようにリハビリを進め、しばらくすると普通に走れるようにまでなった。

そこからは早く、どんどんトレーニング時間を増やせ少しすると往年と同じとはいかないものの、ある程度のスピードを取り戻すことができるようになった。

さて、そうこうしているうちに、学内の模擬レースに出ろという話が回ってきた。私としてはまだまだだと思うのだが、ルドルフ曰く

「現状でも模擬レースくらいなら余裕で勝てるさ。現役ウマ娘が出るわけではないし」

だそうだ。

レース当日。ゲート近くでストレッチをしていると、ルドルフ、テイオー、スズカのいつもの三人組が顔を出した。

「ぜーったい勝ってね。期待してるよ」

「非公式だが、キミの復帰戦だ。楽しみにしている」

「しっかりと見ていますから、頑張ってきてくださいね」

それに手をあげることで答え、私はゲートに入った。

 

そしてレーススタート。ケガする前と同じように先頭に出て後続をぐいぐいと引き離す。そのまま危なげなく最後の直線に。そしていつも通り、トップでゴール板を駆け抜けた。




少しだけオウカを出せました
またこの後もちょっとだけ出せないかなと思っています


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クレナイの軌跡

学内レースでの復活の後、自信をつけた私は更にトレーニングを重ねた。そのままケガをする前に近づく体を取り戻すことができた。

そして時は過ぎ、有馬がやってきた。私が公式に復活する日である。どうしてもレースで勝てると踏めるだけの体を手に入れられなくて、ここまで来てしまった。正直言えばまだ足りないと思うのだけれど、そうしたらいつまでたっても出られない、早くレースに出て私たちと勝負しろという三人に負けた。

実際、私が有馬への登録をしたら票が続々と集まり、まさかの一番人気で出走が決まった。

まあ予想はしていた。トレーニング続けている間も応援のメッセージや手紙が毎日のように届いていたし、時たま取材に来る記者が結構いたし。にしても、乙名史記者だったかしら? あの記者、過大に感じ取るの何とかしてほしいわね。次変なこと書いたら絶対会長に頼んで出禁にしてもらいましょう。

それはさておき。

中山競バ場。芝の香りと勝負服の感覚が懐かしい。

さて、有馬の人気を上から何人か紹介しておきましょう。

二番人気、アメリカへの遠征中止の後一時期レースから遠のくも(私の看病のため)、最近レースに復帰し、相も変わらず目覚ましいスピードを見せるサイレンススズカ

三番人気、最近あまりレースに出てない(私の看病(ry)けども、出ると究極テイオーステップで勝利を収めるトウカイテイオー

四番人気、こちらもレースはご無沙汰(私の(ry)だが皇帝たる威厳を見せつけろシンボリルドルフ

きっちり私に関係のあるウマ娘が上位に来た感じね。私の紹介文?

一番人気、血の有馬から復活を遂げた軌跡のウマ娘。あの後も人気は衰えずその声援を背負って今日もトップでゴール板を駆け抜けられるか、キサラギクレナイ

なんかすっごいプレッシャーを感じなくはないわね。とはいえ、別に気にならないのだけども。

ちなみに、お守りをくれたオウカは競バ場から観戦してくれるらしい。あの後ずっとあのお守りを首にかけている。たまに三人に嫉妬されもするが、なんかこれをつけていると安心できると言ったら、渋い顔をしつつも納得してくれた。

今日もこの想いと一緒に、ターフを駆け抜ける。

 

「くれない~!! がんばれ~!!」

控室からレース場に出ると、近くの観戦席から私を呼ぶ声がする。あの小さい娘はオウカだ。小さく手を振ると、にこっといい笑顔を向けてくる。可愛い。

「クレナイ、相変わらず愛されてるね」

「でも私たちの愛の方が大きいでしょうけど」

「いや、小さい子と何張り合ってるのよ大人げない」

あきれ顔をテイオーとスズカに向ける。

「ほらそこで止まってないで、早くゲートに行け。そろそろだぞ」

私たちを呼ぶルドルフの声でゲートに向かう。さぁ、出走だ。

 

「各場ゲートに入りました。体勢整えて・・・各ウマ娘きれいなスタートを切りました!」

ゲートが開いて一気にレース場に飛び出す。そのまま一気に加速して先頭に。

「さぁ先頭を行くはキサラギクレナイ。いつものように先頭を駆けていきます。それに続くは二番人気サイレンススズカ。クレナイに迫らんという気迫で追いついていきます」

第三コーナーから四コーナーを抜けて有馬を一周。あの時と同じ。順調に走っている。

「さぁここで後ろからシンボリルドルフが上がってきた! シンボリルドルフ凄い加速だ! これはまさに皇帝の神威! その前トウカイテイオーも横に飛び出て加速! スパートをかけてサイレンススズカに迫ろうとしている!」

最終コーナーに入る。多分、後ろにはスズカがいる。見なくても聞かなくてもわかる。あれだけ一緒に練習したスズカなら、絶対にいる。わかる。

でも前にはいかせない。

「先頭からキサラギクレナイ、サイレンススズカ、トウカイテイオー、シンボリルドルフと続いてくる!」

最終コーナーの第四コーナー。ここの立ち上がりと同時に一気に全力を出す。

「さぁ中山の直線は短いぞ! 後ろの娘たちは間に合うか!?」

「最初に立ち上がったのはキサラギクレナイ! あの時と同じ、前の有馬と同じように!! ぐんぐんと、ぐんぐんと加速する!!!」

「それに合わせてサイレンススズカもラストスパート! その後ろからトウカイテイオーとシンボリルドルフが迫る!! 並んだ、あの時と同じく四人が並んだ!! 年末の有馬は、夢の有馬は、いったい誰が制すのか!! 誰が勝ってもおかしくないこの状態、だれが最初にゴール板の前を駆け抜けるのか!!!」

あの時はここで転んだんだっけ。そう思いつつも、最後の、本当の最後の力を振り絞って全部の力でターフを蹴る。

「今ゴールしました!! 同着!! 同着です!! これは写真判定になるでしょう」

ゴール板を駆け抜けた後、ゆっくりと減速。うん、足に痛みはない。大丈夫。

誰が勝った? そう思って確定板を見ると、未確定の文字が。写真判定をしているらしい。息を整えている間に結果が出た。場内に放送が響く。

「結果が出ました! 1着はキサラギクレナイ!! 血の有馬から完全復活!! 奇跡の大復活です!!」

「2着はサイレンススズカ、3着シンボリルドルフ、4着トウカイテイオー、5着にライスシャワーという結果になりました!!!」

・・・勝った? ・・・勝った! 勝った!!!

だんだんと勝ったという実感がわいてきて、そのまま天に向かって叫んだ

「勝ったぁあああああああ!!!!」

それに合わせて観客席から大きな拍手が沸き上がった。ちらっとオウカの方を見ると、いい笑顔でぴょんぴょん飛び跳ねながら拍手している。あの跳躍力、将来いいウマ娘になりそう。

「やっぱりあなたが強いわね」

「本当だよ。最後の最後で差し切ったと思ったのに」

「今日こそは皇帝の神威をと思ったが、まだまだだな」

「まだまだ。無敗のウマ娘の称号は降ろさないわ」

「「「いや(いえ)、一度おろしてるじゃん(おろしてるじゃない)」」」

そんなやり取りをしつつ、ライブの準備へ。

偶然にも今日の曲はSpecial record。4人で歌う曲だ。

「さぁ、ライブやってきっちり終わらせるわよ!」

「ああ!」

「ええ!」

「うん!」

 

その日のライブはいつもよりも盛り上がった気がした



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紅の、皇帝の、帝王の、沈黙の、そして桜と箱舟の軌跡

あの復活からしばらくの時が立った。

私はまだまだ現役を続けるも、負けることも多々増えてきた。最強とは言えども、やはり運や年には勝てないこともあるようだ。

ルドルフ、スズカ、テイオーの三人も私と一緒にまだ走り続けている。現状、何回か私の前になるも、未だ私に背中を見せられてはいない。

テイオーにいたっては四度目の骨折をするも、私に勝ちたい、また走りたいという強い心でまた這い上がってきた。

 

そして春。桜舞い散る中、トレセン学園に新入生が入ってきた。

新入生の中には、憧れのウマ娘と共に走りたいと願って入学してくるものも少なくない。

ここにも、また一人そんなウマ娘がいた。名をオウカといった。

 

オウカは式の後、教室で渡されたチーム一覧を読み、そこにシミュラクルの名前が無いことに首をかしげていた。

「ねえねえ、何してるの」

声をかけられて顔をあげると、一人のウマ娘がいた。

「私はミネルバアーク。アークって呼んで。それであなたは?」

「ボクはオウカ。よろしく、アーク」

「ええ、よろしくね。それで、何してたの?」

「ああ、チーム一覧の中に、シミュラクルが無くって。あそこのクレナイさんにあこがれてここに入ったから、どうしても入りたいと思ってたんだ」

「シミュラクル・・・。確か、先輩が、あそこは異質なチームで入るにはまず自力で部屋を探さないといけないとか言ってたはず」

「そうなのか!? よく知っているね」

「私の小学校の先輩なんだけど、あの人もクレナイさんにあこがれてたから。まあ私もなんだけど」

「それなら・・・?」

「ええ、一緒に探しましょう!」

それから二人は学園中を探し、聞き込み調査をするも、なかなか成果をあげられずにいた。そんなとき、見知ったウマ娘が学園内のレース場から出てくるのを偶然にも目撃した。

「あれって!!」

「うん、クレナイ先輩だ!!」

二人はクレナイの姿を見失わないように、でも気づかれないように後を追った。そうすれば部屋にたどり着けると思ったからだ。

しかし、森の中に入ったとこでふいにクレナイの姿を見失ってしまう。

どこに行ったんだろうとあたりを見回し、クレナイがいないとわかると、二人は顔を見合わせた。

「急にいなくなったけど、多分この近くだよね?」

「うん、私はそうじゃないかなって思うけど・・・もっと進んでみる?」

「ああ、行ってみよう」

そうしてまたしばらく進むが、完全に迷子になってしまった。クレナイの姿も建物も見当たらず、途方に暮れたとき、後ろから声がした。

「キミたちはここで何をしているのかな?」

その声に振り返ると、三人のウマ娘がいた。

「大方、レイの姿を見て後ろをつけてたとか?」

「でしょうね。あの人、それに気づいていると決まってここに迷わせにかかるから」

そこにいたのはトウカイテイオー、シンボリルドルフ、サイレンススズカの三人だった。年齢による衰えはあるものの、まだまだ現役を貫くと決めている三人である。

「それで、君たちはクレナイの姿を追ってここに来たの?」

こくりと頷く二人。

「ふむふむ、なるほどね。惜しいとこまで来てるし、合格でいいんじゃないの? クレナイ」

テイオーが木の上に向かって声をかけると、そこには枝に座ってみんなを見ているクレナイの姿があった。そんなクレナイの首には、ぼろぼろになりながらもまだかかっているお守りがあった。

「そ、そんなとこに・・・」

「全く気付かなかったよぉ・・・」

気からしゅたっと降りてきたクレナイは二人に声をかける。

「あなたたちが後をついてきてたのはわかっていたからね。普段から追われる身だと、背後に敏感になっちゃって。それでここであなたたちを撒こうとしてたんだけど、そのあとも進み始めたから気になっちゃって。というか、あなた達ってオウカとアークよね? いつも応援ありがとう」

まだ二人が小学生の頃のレースの後、少しだけクレナイと話したことがあり、その時に言った名前を憶えていてくれたことに驚き、更にオウカは首にかかっているのがあの時にあげたお守りだというのに気づき、またうれしくなる二人。そんな二人から三人に視線を変え、クレナイは問いかける。

「この二人ならいいと思う。私は入れてもいい」

「ボクがクレナイのやることに反対するわけないじゃん♪」

「全くだ。わざわざ聞かなくてもいいと言っているんだがな」

「まあちゃんと聞いてくれるとこ、好きですよ」

クレナイ、ルドルフ、テイオー、スズカの四人が頷く。

「さあ、最後にあなた達に確認するけど、シミュラクルに入りたい?」

それを聞いたオウカとアークはオウム返しする。

「シミュラクルに?」

「入れるの?」

クレナイが大きくうなずくと、二人がとっても明るい顔をする。

「「ぜひ、よろしくお願いします!!」」

 

こうしてシミュラクルは新たなメンバーを加え、クレナイ、ルドルフ、テイオー、スズカの古参メンバーはいちゃいちゃしながら、オウカとアークの二人はどんどん力をつけ、シミュラクルの名をとどろかせていった

 

「ところで、いい加減結婚してくれないかなぁ?」

「そうだな、早くレイと式を挙げてしまいたいんだが」

「ウマ娘同士のそういうのも増えてきましたからね前例を作ってもいいと思うんです」

「相変わらず愛がすごいわねぇ、あなたたちは」

「先輩方、なんかすごいね」

「本当ね。あれが早さの秘訣だったりするのかな」

「こらそこ、変に繋げない!!」

相変わらず重い愛を受けるクレナイは、果たしてどんな道を歩んでいき、それを間近で見るオウカとアークはどんな軌跡を歩んでいくのか。

それは神のみぞ知る。




最後はいちゃいちゃがなくなりましたが、こういう終わらせ方もありかなと思っています。
途中で怪文書感がなくなっちゃったのが反省点ですね。

次はもっと頑張ります


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