レッドきゅんをhshsしたい (ミ゙ヅヅヅ)
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1話
見た目はサトシとの見分けつけるために、リメイクレッドを想定。
ポケットモンスター……縮めてポケモンは1996年に赤・緑の2バージョンが発売されたロールプレイングゲームの名称である。最初期の売上こそふるわなかったものの、育成・通信・対戦などの画期的な要素がウケて絶大な人気を誇った作品だ。その人気は今や海外にも波及し、現在に至っている。
かく言う私も、ポケモンと共に育ったものだ。
ダイヤモンド・パールから始めて、黒白2辺りまでやっていた。それ以降はゲーム実況でたまに見るぐらいだ。
そんな私でも、赤緑版の内容ぐらいは知っていた。ポケモンシリーズの始まりだし、アニメも再放送があったので一話から通して見ていた。
そんな初代ポケモンの特徴は何か……となると、やはりバグ技になる。
シナリオ上に登場するも、通常プレイでは捕まえることの出来ないポケモン。そのデータがゲームカセットの中に残っており、バグによって捕まえられる。多くの人が、ミュウを求めてポケモンにのめり込むこととなった。
直接の要因ではないが、バグ技もこのゲームの流行の一端を担っていたと思われる。
そんな初代ポケモンが、3○Sのバーチャルコンソール版として発売されたときは、すぐさま購入しバグ技を試みた。
そりゃあ私は、ダイパの謎の場所世代だったから、興奮しないはずがない。
道具欄を拡張したり、タマムシでミュウを釣り上げたり、相棒のヒトカゲを犠牲にアネ゙デパミ゙を錬成したり。
そんな風に遊んでいたら、データはすぐに吹っ飛んだが、私は懲りずにバグ技で遊び続けた。
今となっては、それがいけなかったのだと分かる。
時代は変わって3○Sから任○堂ス○ッチに世代が移行し、そんなバグ技で遊んでいたことなんて忘れて仕舞っていたある日のこと。
大体、二十歳になって暫く経ったころ。私は大学に向かい、道を走っていた。前日、夜ふかしをしてしまい寝坊をしてしまったのだ。
そんな私は、道端に落ちていたバナナの皮に気がつかず、滑ってしまった。
こう、クルッと回る感覚で。
頭から鳴っちゃいけないような音が鳴りつつも、地面にダイブした。そして、段々と意識が暗く沈んでいくのが感じられた。
だから私は、そこで事切れたと思っていた。思っていたのだが……。
◆◆
「は……、ここは一体何処?」
大学へと通う途中、バナナの皮に滑って転んだと思ったら、突如として周りの風景が一変していた件。先程まで、見慣れた道路に居たはずなのに、どうしてこんな場所に居るのだろうか。
私は分かりやすく狼狽して辺りを見渡す。自然豊かな場所だ。
ボケーっとしながら辺りを見回していると、少し離れた所に一本の看板が建てられているのが見えた。
私はその看板まで近づき、そこに書かれていた文字を読む。
「ときわしてぃ……トキワシティ?」
目の前の看板にはこう書かれていた。
トキワシティ
トキワは みどり えいえんのいろ
えいえんなる みどりの まち
それも、仮名や漢字でなく、見慣れない文字でそう書かれていた。見たことのない文字なのに、自然とそう読めた。
いや、そんなことより
「……ポケモン?」
そんな呟きが漏れた。この町の名前を私は聞いたことがある。
「これじゃまるで……」
ポケモンの世界に入ったみたいだ。
そんな思考が頭を
……え、もしかして私バナナの皮に滑って死んだの?それで転移して来たの?もしそうなら、家族に顔向け出来ないんだけど。
「いや、待て。何かのドッキリとか?」
現実的な考えが頭に浮かぶ。普通に考えればその線が濃厚だ。そんなことを思いながら、何とはなしに空を見上げてみると、そこには数羽のポッポが空を羽ばたいた。
「……」
現実逃避気味に草むらを見つめてみると、そこにはコラッタが駆け回っているのが見えた。その姿はとてもリアルで、CGや偽物には見えなかった。
ドッキリだとすると、随分と大掛かりなモノだなあ、と私は遠い目でその光景を眺めた。目はかなり死んでいたと思う。
それならばここは夢なのではないか、と私は考えた。そう思い頰を抓ってみたのだが……普通に痛かった。
風が吹けば涼しいし、日が照りつければ暑い。
ここが現実世界だと思わされるものばかり。
「これ、ポケモンの世界に転移しとるやん」
思わず声が出てしまう。マジで言ってるのだろうか。
私自身、本を読むことが好きでラノベや漫画、二次創作にまで手を出していた。だからか、この状況が何なのか容易に理解できる訳で……。これは所謂、転移という奴だ。
私、確実に死んでたよね。頭から落ちて首がゴキッって。アレはヤバい音だった。完全に折れてただろうし、死んでたと思う。
取りあえずジュンサーさんを探して、保護して貰うか?そう思うも、経歴を聞かれたら詰む。最悪、密入国者だと思われるかも知れない。
私は日本生まれ日本育ちだ。
しかし、母親は北欧生まれの純外国人である。
一応両親の馴れ初めを書くと、高校の修学旅行で北欧に行ったときに、ナンパをして引っ掛けたらしい。父は、ワン・ナイトラブの積もりだったらしいが、母は本気だったようで、ヤンデレ化して父に迫ったらしい。
両親のそんな話聞きたくなかったな……。
そんな経緯で、私は所謂ハーフと言うやつだ。そのため髪の色は銀色だ。
ハーフ自慢をしたい訳ではない。
何が言いたいかと言うと、私の見た目はモロ、不法入国者っぽいということだ。
アカン。身元確認出来ない外国人風の人とか、強制送還される。
「共通試験の英語、200点満点中84点やぞ」
この状態で送還されれば軽く死ぬ。ノルウェー語とかスウェーデン語とかも分かる訳がない。こちとら英語やりたくないから、大学の言語選択を中国語と朝鮮語した女やぞ。あの辺の言語とか分かる筈がない。
出来る限りジュンサーさんのお世話にならないでいよう。私はそう決意する。
「あれ?ジュンサーさんってアニオリやっけ?」
そもそもの話、ここは何準拠のポケモン世界なんだろうか。
アニポケだったら、マサラはサートシくんの故郷だけど、ゲーム版だったらレッドくんの故郷になるよね。ポケスペやギエピーでもレッド君だった気がする。電撃は……見たことないな。
ジュンサーさんが存在しない可能性もある?
「何か、身元を確認出来るものとかないかな」
身体を調べてみる。
そして、私はポケットに膨らみがあるのに気がついた。服装は元のままであるし、財布とスマホでも入っているのだろうか。探ってみると財布が一つ入っていた。
ポケモン世界の通貨単位は、確か円だったはず。外国版準拠のポケドルでない限りは使えるよね。
……と言うか、この世界のトレーナーはどうやって旅のお金を稼いでいたのだろう。ゲームみたいにポケモンバトルして、強奪していったのかな。何それ怖い。
そんなことを考えながら財布を覗く。そこには、五千円札1枚に、二千円札1枚、千円札2枚の計九千円。小銭を合わせればギリギリ一万円に届きそうな金額が入っていた。
「これで飢え死ぬことは……って、何だろ?この変なカードは」
財布の中に、青っぽいカードが入っているのが見えた。表面には、さっきの看板と同じような文字で、トレーナーカードと書かれている。そして裏面には、QRコードが記されてあった。
QRコードね。
「このQRコード、スマホで読み取れんかな?」
そう言って私はスマホを取り出そうとする。
しかし、スマホの代わりにポケモンアニメなどで見るポケモン図鑑が出てきた。
「え、私のスマホは?!」
驚いて少しだけ叫ぶ。
あのスマホには、エッチなイラストが大量に保存されていたはず。おねショタとか筆おろしとか、写生管理とか、ちょっと人に見せられないやつが多くある。
私は想像する。
死んだ
司法解剖やら事件性の有無とかで、警察がスマホを調べたとき、私に対し別の容疑を疑う様を。
……これは益々、家には帰れないな。
ポケモン図鑑を見て、中に記録されているポケモンを見ていく。しかし、150+1体しかこの図鑑には載っていないのか。
前から思ってたけど、151匹しかポケモン見つけられなかった博士、無能なんじゃないかな。
そんなことをしている内に、私はようやくカメラ機能を発見した。さっそくQRコードを読み取ってみることにした。
「今まで手に入れたバッジ数と……財布の残高?」
見てみるとバッジがゼロ個に残高が999,999円入っていた。
……うん。なるほど?
「……」
は?……え、ちょっと。残高おかしくない?これ、完全にバグってるよね。バグって。
「私のやってた、赤緑のデータって。どうなってたっけ」
このバッジ数と残高。
ニビシティのジムは壁抜けしてスルーした記憶があるし、バグアイテムを売って、お金をカンストさせていた記憶もある……ような気がする。
今背負っているリュックに、嫌な予感しかしない
私は恐る恐る、背負っていたリュックを見る。何時も大学に行くときに持って行っているリュックを。
何だか、道具欄を拡張していたような思い出がある。
どう考えてもヤバい。
背負っていたリュックをおろし、中を確かめてみる。見てみると中は暗く、渾沌としていた。
「……うわぁ」
予感は的中した。
これ、下手に扱えば世界がバグるんじゃね。イヤな汗が流れてくる感覚がする。現実世界ではセレクトなんてないから、そこまで心配しなくて良いのか?
バッグ拡張バグはセレクトで道具の入替えが出来るからこそヤバいのである。今の状態ではそこまで心配しなくて良いと私は判断する。
私はそう思い直し、物は試しとバッグから一つ、物を取り出してみた。
すると中から『ライバル』が出てきた。
「ライバル!??」
鞄の中から、ライバルとしか名状しがたいものが出てきた件。何と言うか、この物体は完全にライバルだ。確か効果は、壁抜けだったか。
壁抜けだったら、ペゾとかも有名だったけど……。
……しかし、何だコレは。
「まともなアイテム全然持ってないな。モンボとか傷薬ぐらいしか普通なのない」
そもそも、傷薬って大丈夫な奴なのだろうか。傷ついたポケモンを、
あっ、『はやぶさバッヂ』がある。確か使うとメニュー画面を開ける道具だったはず。これでメニュー画面が開けるぜ。
……現実世界でメニュー画面を開くって何だろう?
「……道具、全部で20種類入ってる」
各持ち物99個まで入ってる。相変わらず普通に、物理法則を超越している。
「取りあえず、メニュー画面を開いて……みるか」
はやぶさバッヂを手に取り眺める。
何だろうか、この『はやぶさバッジ』じゃなくて『はやぶさバッヂ』というしかない形状は。
しばらくバッヂを弄っていると、裏面にボタンのようなものが付いているのが分かった。さっそく押してみる。
「わっ、見知ったメニュー画面出てきた」
空中に立体映像のような形でメニュー画面が開かれる。図鑑にポケモン、道具にトレーナーカード、セーブに設定。
現実世界でセーブとは、一体何なのだろうか。(哲学)
セーブしても再起動方法ないんだが。同じく設定は何を設定するのか。セリフの速さとか、戦闘アクションのカットだろうか。リアル世界の声が速くなるのだろうかな。怖いから触らんとこ。
トレーナーカードは、わざわざQRコード読み込まなくても、残高とバッジを見られるのが便利だ。図鑑欄も、わざわざ図鑑を起動する手間がなくて良いかも。
「ポケモン欄は……わざわざ見なくて良いかな」
私は現実から目をそらした。最後に連れ歩いていたポケモンに良い心当たりがないからだ。
しかし、どうしようか。とりあえず、お金はあるのは嬉しい。デビットカードみたいな感じで使えるのだろうか。
身分証明に関しても、トレーナーカードで代用出来ると思う。と言うか、トレーナーカードって、本来は身分証明書みたいなものだろうし。
一先ず、心配事は片付いた。このあとはどうしようか。ニビシティに行ってジム戦でもしたら良いかな。トレーナーだし。
「──」
いや、ニビジム行くんだったらそれに対応したポケモン捕まえないといけないかも。今の手持ちは、どうせ碌なものではないだろうし。
「あの」
「聞こえてる?」
「へ?」
耳元でとても可愛らしい声が聞こえた。声変わり前の幼い声だ。掛けられた声の方を向くと、そこには幼い顔立ちの少年が立っていた。
「キミはぼくみたいに旅人なのかな?ずっと、入口の看板を見てるみたいだけど」
え、今『旅人』って言った?この小さい子供が旅人?そう言えば、設定に『ポケモン自然保護法』とかあったような気がする。十歳になるとポケモン捕獲の免許取れるみたいな法律。
でも、実際に見ると凄い光景だな。子供が旅って。可愛い子には旅をさせよ、を地で行くとか。凄い世界だと思う。
そんなことを考えていると、少年は声を出す。
「ぼくの名前はレッド。キミは?」
少年は楽しそうに笑って言っ──いや待って。今、この
私はキョトンとした顔で立ち尽くした。
注意
はやぶさバッヂは、メニュー画面から使用するとフリーズします。メニュー画面を開かずにご使用下さい。
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2話
フルネーム判明してるのって、オーキド家、ツワブキ家、サクラギ家に、ソネザキ・マサキ、シン・リー、優藤聖代、
後はシロナさんの名字がカラシナかも知れないぐらい?
私はショタコンだ。
うん、待って。引かないでくれる?私はただ、筆をおろす同人とか、写生の管理をする同人とか、無知シチュの同人とかが好きなだけなのだ。
こら、そこ異常性癖とか言わない。一回異常性癖で検索してみい?脳姦とか眼窩姦とかと比べたら全然マシなんだから。
まあ、ともかく私はそんな感じの人物なのだ。そんな私は今、人生の岐路に立たされている。
「れ、レッド……?」
私は、目の前の少年が呟いた言葉に酷く動搖していた。
──レッド
その名前はポケモン世界に於いて、特別な名前だ。マサラタウンから冒険の旅に出た、初代主人公の名前。僅か十一歳にしてロケット団を
後の作品では、シロガネ山で山籠りしたり、チャンピオンズトーナメントに出場したり。
色んな意味で、伝説の存在となっている。
彼は、そんなモノの名前を名乗った。
「ほ、本当に……?」
「えっと、本当だよ?」
そう言われると、目の前の少年はどことなくゲームでのレッドに似ている気がする。そう言えば、キミの名前はとか言われてた気がする。
取りあえず、本名を呟く。
「私の名前……は、萩原栞」
「……ハギハラ・シオリ?」
何だか妙な間が空いた。変な名前だった?名字の文化がないとか。いや、でもオーキド・ユキナリさんがいるし、名字文化はあるよね。
この名前、もしかしてポケモン世界では下ネタに値する可能性ある?ゲーム版では『れおなるど』と言う名前もNGワードに設定されていたし、なくはないかも?
そう考えていると、レッド君は私の様子に気づき答える。
「名字を名乗るのが珍しくてね」
へえー、初耳。普通名字は名乗らないんだ。そう言われると、博士関係でしか名字呼びされてないな。そもそも、皆自分の名字を覚えているのだろうか。それすら疑問に覚えてくる。
レッド君は首を
「まあ良いや、ぼくとポケモン勝負しようよ!」
もしかしたら、レッド君の方が常識知らずかも知れない。
ちょっと何を言ってるか、よく分からない。普通、初対面の相手にポケモン勝負を仕掛けるか?あれか、トレーナーは目があったら即バトルするものなのかな。この世界、ゲーム版準拠っぽいしあり得ないことはないけど。
少し悩み、レッド君の姿を見る。
その姿は物凄く可愛い。大人しい感じのショタに見える。しかし、この子は将来、シロガネ山の頂上に居座って都市伝説になる少年であって。
……ふむ。
私は、危ないことには関わらない主義の者だ。確かゲーム版でのレッド君は、悪の組織であるロケット団と対立し、あはや命を失う……みたいなこともあったはず。あんまり関わるのは危険が及びそうだし、ポケモン勝負も断る方向にしようか。
「バトル、しようよ」
「……分かった」
……ハッ!
気がついたら了承していた。これがショタの懇願か。自覚しているか分からないが、上目遣いでのお願いなんて断りようもない。
まあ、ショタのお願いを無碍にする訳にはいかないし、どっちみち了承していたか。……この書き方、何だか犯罪臭がするな。
「手持ちポケモンは、まだ一匹しか捕まえてないから、一対一で」
一匹だけってことは、まだ旅に出たばかりなのかな。博士にお届け物を届けたあとぐらい?
旅人と言っていたし、ポケモン図鑑貰ったあとなのは確かだけど。1番道路を通ってトキワシティに着いたばかり、と言った所か。リーグ優勝後だとしたら、どうしようかと思った。
私は、彼にバレないように『はやぶさバッヂ』を取り出した。そして、その場でメニュー画面開いた。
「……?」
レッド君は特に、気にした様子を見せないので、メニュー画面は使用者にだけ見えているのだろう。私は、メニュー画面のポケモンの項目に手を触れた。
この項目は嫌な予感がして、まだ開いていなかった。鞄の中にバグアイテムが入っているのだ。当然、手持ちポケモンが普通のポケモンであるはずがないのだろう。
しかし、今からポケモン勝負をするのだ。押すしかない。私はメニューのその項目を押してみた。すると、現在の手持ちのポケモンが目の前に写った。
てもちポケモン
・ ミュウ
・
・ベアビヲ9
・
・9パゾ9な゙
・けつばん
Oh……これはダメだ。もう一度言う。これはダメだ。予想以上にダメだった。
碌なポケモンがいない。
一体ぐらい正規のポケモンがいると思っていたのだが、全てアウトだった。唯一正規っぽいのが、ミュウ……というのがヤバい。勿論、これはタマムシデパートで釣ったバグ産なのだが。幻のポケモンが一番正規感するのは何なのだろうか。
そうこうしている間に準備が整ったのか、レッド君は私に話し掛ける。
「よし、じゃあ始めるよ」
始められるポケモンがいない。(切実)
大真面目に出せるポケモンがいないのだ。それでも、何も出さない訳にもいかない。私の腰には、いつの間に付いていたのだろうか、モンスターボールが六つ存在していた。ポケモンを持っていないと誤魔化すことも出来ない。
どうしようかと、悩みあぐねていると、レッド君は一匹のポケモンを繰り出した。
「いけ、フシギダネ」
「ダネフシャ!」
緑色をした小型のポケモンを出した。フシギダネだ。フシギダネはツタを宙に浮かせて、やる気満々の様子だ。レッドの名前から、ヒトカゲを出すと予想していたのだが、大きく外れた。
いやでも、Let's go版ではフシギバナ使っていたし妥当か?
「早くキミも出しなよ」
そんなことを考えていると急かされた。ポケモンのことを考察して現実逃避していたのだが、無駄だったか。しかし、うん、なるほど……。
この中で、一番目立たないポケモンを出すしかないか……。
「……いけ、ミュウ」
「みゅうみゅ」
検討に検討を重ねた結果、ミュウが一番目立たないポケモンだと判断いたしました。これは正気じゃない。
ほら、見てみろよ、あのレッド君の
これにはフジ博士もニッコリだろう。
でも見た感じ、初めて見るポケモンに驚いている……って様子だ。
まあ、それはそうか。
いくらミュウが凄いポケモンだとしても、その存在を知らない人には伝わらないか。
幻のポケモン──それは、誰も知らないからこその幻なのだ。知る人ぞ知るって感じで。何だか、ラーメン屋みたい。
しかし、流石はレッド君。すぐに正気を取り戻して、フシギダネへと指示を出してる。
「フシギダネ、"なきごえ"、そして"たいあたり"!」
フシギダネは大きく鳴き声をあげてから、真っ直ぐミュウへと身体を突っ込んでいく。その頭をミュウの身体へとぶつけるように。しかし、それを許す訳にはいかない。
「……避けて」
「みゅう!」
フシギダネのたいあたりを、ミュウは余裕を持って躱す。
フシギダネのレベルは、そこまで高くないのだろう。精々6レベルぐらいだろうか。それぐらいならば余裕で避けられる。多分、今のレベル10レベルはいってるだろうし。
「ミュウ、"はたく"!」
「みゅうみゅ」
ミュウの目の前には、攻撃を躱され無防備な状態になったフシギダネがいる。すかさず、ミュウは私の指示通りフシギダネの頭めがけて手で
「フシギダネ……!」
「ダ、ネフシャ」
一撃では決まらなかった。ゲームだったら一撃で決まっているぐらいの攻撃だったと思うが。鳴き声で攻撃力を下げられた影響だろうか。
「ミュウ。もう一度"はたく"」
「みゅう」
フシギダネはこの追撃に対応できず、ひんし状態になる。
やったぜ!
正直、レベル差が大きくて実力関係なく勝てると思ってたけど、普通に嬉しい。私の実力を全く感じさせない戦いだった。タイプ相性とか知らない、下手の横好きの私が、主人公に勝ったぞ!
なんか虚しくなってきた……。
「キミ、強いね」
ちょっと、褒めるな。私自身全く凄くないのに褒められるのは、めちゃくちゃ辛いから。
「それに、この……ミュウ?見たことがないよ」
「新種の……ポケモンだから……」
冷や汗をかきながら答える。図鑑に『しんしゅポケモン』と書いてあったので、あながち噓でもない。
「ねえ、キミはこれからどうするの」
「……決まってない」
これは本当だ。取りあえずニビシティに行くか、ここらへんでポケモン探しをするか、全く決まっていない。
「それだったら、一緒に行かないかい。グリーンは一人で行っちゃったし」
初代ライバルのグリーンまでいるのか。ふんふん。一緒にか。え、何が?
「?」
「ミュウのこと気になるし、ポケモン勝負だって負けたままなの悔しいし」
……。これってもしかして、レッド君と一緒に旅に出られるチャンスなのでは?何でそんなビッグチャンスが訪れたの。
やっぱり寂しいとかそういうのかな?そりゃあ、こんな小さな子の一人旅とかどうかしてると思うけど。
レッド君と旅をする上で、一番怖いのはイベントに巻き込まれることだ。一緒に旅に出ることの、リスクとリターンを考える。
「一人で行きたいんだったら……」
「行く」
食い気味にそう言って、大きくコクリと
「私も、着いていく」
なるべく、笑顔をつくってそう言った。
尚、表情筋が死んでるので笑えてない。
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3話
──ポケモンセンター
それは、言わずと知れた回復施設である。ポケモンの体力やPPを回復させたり、ゲーム通信を行ったり、パソコンを使ったり出来る施設である。最近のシリーズでは、フレンドリーショップと合併をしていた記憶もある。
(そりゃあポケモン世界だし、ポケモンセンターも当然あるよね)
私は心の中で、そう感嘆する。
ゲームのトキワシティは、ポケセンにフレンドリーショップ。トレーナーハウスにトキワジム。後は少しの住宅が存在する町だった。しかし、現実のトキワシティはそれとは比べ物にならないほど大きかった。仮にも〝シティ〟と名乗っているのだ。生活に困らないだけの店と、住宅がそこにはあった。
そんな町を歩いて行き、漸く辿り着いたのがこのポケモンセンターだ。
四角い建物に、何故か読める謎の文字でPOKEと書かれている。何だ、この豆腐みたいな建物は……。想定していたよりも大きいし、訳が分からん。
そして、そろそろこの文字が読めてしまうことにも恐怖を覚える。これって、
「……ここが、ポケセン」
思わず呟いてしまう。
中に入ると、内装はゲームとは違っていた。何だかアニメ版のポケセンみたいな内装だ。あの建物のシルエットから、こんな内装になるんか?
この世界の物理法則に、疑問を覚えていると、レッド君が私に話し掛けてきた。
「そう言えば、何処出身か聞いてなかったよね?」
言ってなかったどころか、私はまだ全然言葉を発していない。かれこれ、ここに辿り着くまで十分ほど一緒に歩いていたのだが、その間ずっと無言だった。
(まあレッド君、無口設定やし問題ないかな)
そんなことを思い何も言わずにいたのだが、レッド君はこの無言の状況に耐えられなかったようだ。しかし、出身地か。私は何も考えずに出身地を答える。
「……奈良……かな?」
「ナラ?」
彼は少し怪訝な表情を出す。はい、私は奈良出身です。大学は関東に出て居たけど、出身は普通に関西だ。関西弁が出るのはその影響。エセ関西弁じゃないよ。
しかし、この反応……。もしかして、この世界に奈良県が存在していない可能性ある?そうなると、私の出身地は何処になるんだろ。関西……じゃなくてジョウト地方の何処にあたるのだろう。ジョウトの……。
「ジョウト地方……の遺跡のある所?」
「遺跡、アルフの遺跡とか?」
地名弱いからよく分からん。アルフの遺跡って奥吉野辺りかな。南北朝時代に、南朝政府があった辺り。私の出身は奈良市辺りになるから、多分そこじゃない。奈良市って、ポケモン世界では何シティになるんだろ?
「……その近くの町」
「もしかして、キキョウシティ?」
彼の言葉にピンときた。それだ。キキョウだよ、桔梗。キキョウシティだわ。私は大きく項突く。
私はそう愕然としていたが、レッド君の言葉に引き戻された。
「へえ。ここから、随分と離れてるね」
そう言うレッド君は、何処出身か……と思うもマサラタウン出身だと思い出す。マサラタウン出身って、総じてスーパーマサラ人だったりするのだろうか。
でも、彼のシロガネ山の武者修行を考えると、少し信憑性を感じてしまうのも確かだ。
この子、将来無口になってシロガネ山に閉じこもるってマ?ストーリー終了後何があったのだろう。
「……レッド君って、シロガネ山。好き?」
「……?」
「何でもない」
直接聞けるわけもない。
将来シロガネ山に閉じ籠もるけど、何かシロガネ山に思い入れあるの……?なんて、意味不明過ぎて聞けない。それに、コミュ力皆無の私に、自然な聞き込みなんて出来てたまるか。
私は心の中で憤る。彼はキョトンとして、私を見つめるばかり。
……キョトンとしたレッドきゅんって、何か可愛いなあ。写真って撮ったら駄目かな?
ポケモン図鑑にカメラ機能があったのは、遠の昔に発見している。撮ったら駄目かな。え、はい、ダメですよね。すみません。
「まあ、いいや。ぼくはポケモンを回復させるよ。キミはどうするの?」
盗撮を悩んでいる私に、彼はそう話し掛けてきた。
預けるって、あのバグポケモンたちをだろうか。モンスターボールから出したら瞬間、周囲がパニックに陥りそうなんだけど。
ゲーム形式みたいに、ボールから出さずにセットするだけなら良いのだけど。
いや、パニックになるだけなら、別に良い。本当は良くないけど、万歩譲って良いよ。
でも、けつばんとか、一部のポケモンに関しては出しただけで、フリーズしかねないのだよ。そんなパンドラ早く手放したいな。パンドラの箱と違う点としては、中に希望がないこと。絶望だけのパンドラって開く必要、なくない?
早めに、けつばんを処分したい。でも、逃がすときにボール開くの怖い。パソコンにでも預けようかしら。
「……パソコンを、先に使いたい」
私はそう宣言して、パソコンが置いてある場所を指さした。パソコンの位置はゲームと同じく、入って右手側にあった。
「〝ポケモン預かりシステム〟を使うの?」
レッド君は首を傾げてそう言った。名前は知らないけど、多分それだと思う。取りあえず、パソコンにポケモンを預けたいのだ。……冷静に考えてみると、パソコンでポケモンの転送できるって凄いよね。
開発者のソネザキ・マサキさんマジパないな。
そんなことを思い、パソコンの前まで行き電源を入れた。
……。うん?
「……やり方分からないの?」
彼の言葉に、私はコクリと項突いた。
逆にこの機械、どうやって扱えば良いんだろう。何か、めっちゃ分厚いのに、機能がめちゃくちゃ存在している。試しに検索エンジン使ってみたら、スイスイ動く。物凄くハイテクだ。でも、それ以外の機能が分からない。
検索エンジンは、私の本能で見つけた。ネット検索をして、生きてきた私を舐めるなよ。
うーむ。このパソコンって、転送装置とか搭載するために、こんなに分厚くなってるのかな。転送装置って、運搬業に大きな打撃与えてそう。
そうこうしている間にレッド君の手で、ポケモンの整理の画面までを進められたみたいだ。凄く慣れてるな。部屋にパソコン有るだけある。
私はボックスを碌に見ずに、けつばんとミュウの入れ替えをした。チラッと見えただけで、アウト判定が出た。何で、見えた範囲だけでも全部バグってるんだよ。
このラインナップ、バグポケ縛りをしているとしか思えない面子なんだけど。
私は戻るボタンを押して、パソコンの電源を切った。早く新しいポケモン捕まえることを誓う。……よし、取りあえず、ポケモンの回復させて貰うか。
私はポケモン回復の預かり場まで移動する。
「お預かりしますね」
リボンを付けた、ロング髪の女性が対応してくれる。ジョーイさんは居なかった。物凄く期待していたのに……。ジョーイさんって、第何世代からの登場なのだろうか。
彼女は、モンスターボールを何かの機械に入れる。そして、暫くすると回復完了の音楽のようなものが流れる。この時間僅か7秒。
「お待ちどうさまでした」
速くない?
本当に回復出来ているのか、心配になるほどの速さだ。流石に技術の発展が凄まじい。
「これで回復は終わったね。それじゃあ、旅に必要なものを、買いに行こう!」
同じく、回復を終えたレッドにそう言われ、私はポケモンセンターを出た。
……レッドきゅんって、本当に無口設定なのだろうか?私の方が喋れていないんだけど。私はそんなことを思った。
◆◆
「一日が終わった。ポケモンセンター凄すぎるんやけど……」
ポケモンセンターはトレーナーの宿でもあったのだ。だから、あんなにデカかったのか。尚、物理法則の問題は解決出来ていないものとする。
初代ポケモンで宿屋は一つしか存在していなかったけれど、その理由がポケセンが宿をしていたからだなんて。
……こら。ゲームのシステム上、宿なんて必要なかったからとか言わない。例え、辻褄合わせだろうと、私が休めているのだから
取りあえず、ポケモンセンターには安価で泊まれた。トレーナーカードを出せば割引されるらしい。レッド君曰く、国からの補助がどうたら言っていた。
何で国が、トレーナーの優遇政策をしているのだろうか。永遠の謎である。
「しかし、風呂まであるとは思わなんだよ」
お金は取られたが、良い浴場だった。
ここって、本当に何の施設なんだろうか。
後、お風呂上がりの感想なんだけど、レッドきゅんの髪、めっちゃくちゃサラサラしてた。普段は髪がハネているのに、風呂上がりだけ真っ直ぐなのは反則だと思う。とても触りたかったです。現場からは以上です。
……いかん、思考が
「今、しんとアカンことあんのに」
私には今、やらなくてはならないことがあるのだ。それは、手持ちのポケモンの確認だ。現在の手持ちはこうなっている。
・ ミュウ
・
・ベアビヲ9
・
・9パゾ9な゙
・ミュウ
Oh……嫌な面子だなあ。
この中でミュウが一番まともと言うのが嫌な所だ。そして、空白ポケモンが怖い。
ベアビヲ9は、立ち絵がシオンタウンのゆうれいなのを覚えているので、まだ気が楽だ。
そして、9パゾ9な゙とか言う、全く知らないポケモン。どんなポケモンかすら覚えていない。絶対ヤバいよね。
取りあえず、ミュウを二体出してみる。
「いけ、ミュウ!」
「みゅうみゅ」
「みゅうー」
ボールから出てくると、空中を踊るように飛び回る。可愛い。
ミュウって確か、フジ博士が南アメリカで発見した、新種のポケモンだったよね?ポケモン世界って、南米はあるのか。そう言えば、ジムリーダーのマチスはアメリカの軍人だっけ。地理関係ってどうなってるんだろ。
アメリカに、イッシュ・アローラ・オーレなどの州があるのかな。
まあ、良い。今回の本題はミュウでないのだ。
「いけ、ベアビヲ9」
「 !!」
そう、このポケモンたちだ。ベアビヲ9の姿を見る。完全に、シオンタウンの幽霊であった。尚、それは前だけで、後ろ姿はモザイクであった。脳がバグりゅ。
鳴き声も当然のように聞こえない。何か言っているのが分かる程度だ。いや、声が出ていると分かる分余計に異様だ。
いや、ちょ、待って。何で擦り寄って来るんだ。懐いているのは分かるが、それ以上に恐怖が勝つ。
えーと、図鑑。ベアビヲ9。電気タイプで種族値はサンダースと同じ。……これって、初めからサンダースを使った方が早いと思うのですが(凡推理)。
いやまあ、幽霊を捕まえるのは浪漫だからしょうがないよね。どうしても捕まえられない相手、幽霊を捕まえるとか浪漫でしかない。だからって、恐怖が和らぐ訳ではないが。
次に私は、9パゾ9な゙のモンスターボールを手に取る。そして大きく振りかぶってボールからポケモンを出した。
「ぎゅい!!」
すると、サンドパンの鳴き声をした、ニドリーノが出てきた。何言ってるか分からないだろう。私もだ。
お前、正体ニドリーノだったんかよ。
圧倒的普通のポケモン感が凄い。正直、全身モザイクや、バーコードのヤバいポケモンだと思っていた。
さっきからSAN値がだだ下がりだったので、とても助かる。
何も変わったところのない、普通のニドリーノだ。前から見ても、後ろから見ても変わらない。ただ、声がサンドパンなだけだ。何でもう少し頑張ってくれなかったんだ。
しかし、これは良いな。これからはコイツを使って、野生のポケモンとバトルしようかしら。そう思い、出したポケモンをボールに仕舞う。
そして、私は残ったボールを見つめる。ハッキリ言って、物凄く出したくない。でも、手持ちに入れていたってことは、少なくとも戦えるポケモンだってことだろう。けつばん……?アイツも戦えると思うけど、フリーズを起こす〝けつばん〟も存在するんだよ。何かの間違いが起こらないように預けた寸法。
私は覚悟を決めて、ボールに手を掛けた。ボールから二匹のポケモンが出てくる。
「ピィㇼイ!!」
「 !!」
空白のポケモンの二匹だ。サイドンの鳴き声をしたモザイクと、声が訳の分からないコラッタの二匹が出てきた。
……イロモノだなあ。
ポケモン愛好家とかに見せたら、SAN値吹っ切れてぶっ倒れそう。非常に冒瀆的だ。
「想像以上にキツいものがある」
私はそう呟く。コレはダメだ。グレーゾーンが多すぎる。何なら完全にアウトだとも思う。
「バグアイテムもさっき使って、危うく壁に埋まりかけたし。あんまりバグったものと関わりたくない」
本当にバグって碌でもないな。
バグポケの確認を行う前に、壁抜けアイテムの確認をしてみたのだ。少し試してみると、マップ移動がないためか、ゲームと違いドアをすり抜けて外にも出られた。物凄く便利だ、と思い調子に乗って色々試していたら、壁に埋まってしまった。歩数制限があったのだ。
生き埋めになりかけて、めっちゃびびった。ミュウがテレポート覚えてなかったら、本当に死んでたと思う。
非常にシュールな光景だったと自負している。でも、最後にポケセンの職員に見つかりかけて、叫ばれたのだけが気がかりだ。
都市伝説になったらごめんね、と私は心の中で謝った。
誤字脱字の多すぎ問題。誤字ってるの見かけたら、報告お願い……。
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4話
図鑑の、インドゾウ先輩ぇ……。
朝起きると、周囲がとても慌ただしくなっていた。まるで、何か事件が起こったかと思わせるほどの騒ぎであった。
足音はバタバタと廊下中に響き渡るように鳴り、人々は声を
これは、ただごとではないなと悟り、私はすぐさまベッドから飛び降りて、ポケモンセンターのロビーまで向かうことにした。
ロビーに近づくほど、騒ぎが大きくなる。
ロビーに着く。そこでは、多くの人が話し込んでいる姿があった。そして、その近くには、レッド君が腰掛けに座っているのが見えた。
私はレッド君を見る。
服装は既に、トレーナー服に着替えられていて、頭の外ハネも整えられていた。
あの横ハネは、ワックスか何かで作っているのだろうか。
昨日の髪質的に自然にはつかないよね?
そんなことを呑気に考えていると、彼は私がいるのに気づいたように、手招きをして私を引き寄せた。
彼は、何やら元気のない様子だ。元気がないと言えば、周りの雰囲気も同じようだ。一体何があったのだろうか。
「一体、何があったの?」
私は彼に訊ねてみた。
そうすると彼は、一度深呼吸をすると、
「……昨日の夜、そこの廊下でお化けが出たらしいんだ。それも、小さな女の子の」
「……女の子の」
よく分からないが、小さな女の子の幽霊が出たのか?
お化けに関して、私は昨日、それらしきポケモンを出しているので、少しドキリとする。ベアビヲ9だ。
でも、そのポケモンはシオンタウンの幽霊の姿をしたポケモンで、到底女の子とは呼べる見た目ではなかった。
つまり、私のものとは別件で幽霊が出たのだろう。ここまでの騒ぎだ。デマではなく、何らかのことが起こったのだろう。
少し怖くなってきた。
「ほら、あそこの人たちが、お化けを見たって人たちだって」
レッド君は、人
「どうも、小さな女の子が壁をすり抜けて行ったらしいんだ」
レッド君はおどろおどろし気に、手をお化けのポーズにして、話し始めた。
うん……?壁をすり抜けた?
レッド君は話を続ける。
「少女は壁にめり込んだ後、手足をバタバタさせた後、奇声を発して消えたんだって」
レッド君の言葉に、私はビクリと身体を
……うん、なるほど。壁にめり込んだ後、何かを叫んで消えたと。
何だか、心当たりがあるなあ……。
「直接見たのは職員の彼女だけらしいけど、奇声に関しては結構な人が聞いてたらしくてね」
レッド君は彼女が目撃者だよ、と言って一人の女性を指差す。その姿は、昨日の壁抜けの実験のときに驚かせた彼女であって……。
「……」
冷や汗が垂れてくる。血の気が引くとはこのことなのか。ブルブルと震えて来てしまう。
彼は私の様子を見て、驚いたように話し掛けてくる。
「わわっ、顔色が悪くなってる?ごめんね!怖い話なんかして!」
違う。コレは怖くて、こうなっているんじゃないんだよ。
私は心の中で叫ぶ。
つまりは、昨日の壁抜けの姿がもの凄い勢いで拡散され、これほどの騒ぎになっていると。
小さな女の子と言うのは腑に落ちないが、十中八九、その女の子は私な気がする。
唾を呑み込む。口元がひくひくと動く感覚がある。
人集りの近くに居た、お婆さんが急に大きな声を出して言う。
「祟りぢゃ!昔、この地で空襲があったときの、あの子の亡霊ぢゃ!」
ちょっと待ってくだされ。過去の悲劇と結び付けられて、盛り上がらないでくれる?!お婆さん、その話
それと周りの人も、そんなことが……みたいな反応止めて。それ、私の
「大丈夫かい、シオリ。水飲む?」
「……飲む」
レッド君から渡された水を飲みながら、その騒ぎを眺める。間接キッスとか、今はそんなこと意識できない。
話がどんどんと大きくなる。何だ、その空襲の女の子のエピソードは。絶対、今作った設定だろ。
……って、うわ。昨日のバグポケの鳴き声を聞いていた人も居るぞ。
そして、何故だか、女の子の心霊話と融合している件。火にガソリンを注ぎ込んでる感じ。これ、どうやって沈静化するのだろう。
そう考えていると、ポケモンセンターの事務室から大きな声が聞こえてくる。
「皆さん!監視カメラの解析が終わりました!」
ポケモンセンターの職員の一人が大急ぎでロビーに走ってくる。
「……?!」
その言葉に私は驚く。
ちょっと、待って。監視カメラとか、あの廊下にあったの?!え、マジで?
私はあの集団に紛れて映像を見てみる。その映像には、画質が粗いため絶妙に顔は分からないが、私の姿がしっかりと映像が残っていた。
「
「霊を鎮めるなら、シオンタウンが良いよね。誰か空を飛ぶ使える人いる??」
「取りあえず、わたし。ピジョット持ってるよ!」
当然、私の壁抜けの映像も映っていた。確証を得た人々は大騒ぎだ。ピジョットを持っていた若い女性が、空を飛んでシオンタウンまで飛んでいく始末。
「あわ……」
あわわわ、あわわ、その、ごめんなさい、本当にごめんなさい。
私の
私は心の中で平謝りをする。地に
そんなことを心の中で叫んでいたが、噂が
心の底から、申し訳ない気持になった。
◆◆
「大変な騒ぎだったね」
ロビーで祈禱師が
彼女がここに戻ってくるまで、
本当に胸が痛いです。罪悪感でめっちゃ死にそう。
彼女が祈禱師を連れて来たあと、周囲の人は、安心して食堂など一部の機能を再開したのだが。
そんなこんなで、今ご飯にありつけているのだ。他の人も、少しだけ落ち着いてきている。
祈禱師の人は、何か悪霊の気配が凄いとか言って、御札とかペタペタ貼ってる。多分、その悪霊の気配も、幽霊の見た目をしたベアビヲ9のものだと思います。
わざわざポケモンタワーから呼び出してしまって、本当に申し訳ないです!!
旅の途中でポケモンタワー寄るつもりですので、そのときにでもお詫びします。
そう私は誓った。コトネさん、本当にごめんなさい。
一通り謝罪を終えると、お腹がグウとなった。まだ、朝ご飯を食べられていないのだ。取りあえず、肉を一切れ口の中に入れる。
「む、美味しい……」
何だか感触が変だが、凄く美味しい。さっきまで、疲れ切っていたメンタルが回復していくようだ。一体何の肉を使っているのだろうか。
「シオリ、美味しいよね、このお肉!ヤドンの肉って癖があるんだけど」
彼はそう言って私に笑い掛け……、今何て言った?
ヤドン、お前。尻尾だけじゃなくて、他の部位も食べられるのかよ。ヤドンの尻尾ってアイテム、妙にリアリティがあってトラウマだったんだけど。
あれ?そうなると、昨日の夜に出た蟹飯。ご飯の上に、蟹の身のような物が混ざっている料理って、もしかしてクラブだったりする?
知らず知らずの内に、ポケモンを食べていた件。
……個人的にはケンタロスとか、カモネギを入れた鍋って美味しそう。
「今度、鍋食べてみない?」
「カモネギの旬っていつだったかな」
レッド君にそう言うと、少し考える素振りを見せながら、そう返答された。
カモネギに旬とかあるんだ。そして、案の定食べられるカモネギパイセン。鴨葱なんて、名前をしてるのが悪いんだよ。
そんなことを話していると、コトネさんは祈禱を終えたらしく、その場で喋り出した。
「……。これで、悪霊の退治は終わりました。念の為に御札なんかも無料でお配りしてますが、どうしましょうか」
コトネさん。祈禱とかも無料でやってくれていたんですか……。
お金を払いにいこうとしている人に、人の役に立てるのなら、私も本望です……とか言ってる。ヤバい、心の綺麗さが段違いだ。
また、心が死んできた。ちょっと、お布施を渡しに行ってくる。
「……これ、少ないですが、お布施です」
私は申し訳なくなって、財布から千円札を出す。
「はい?……いえいえ、そのお気持が嬉しいんですよ」
もし寄付をするなら、本部の方にしてくれ、と彼女は続けて言う。
ま、眩しい。ゲーム版では、悪霊に取り憑かれていたとは言え、ヘゲ・・・ケケーッ!とか言っていた人とは思えない。
これは、私が惨めになる。ところで、コトネさんのファンクラブって何処にありますか。入会したいです。
何というか、めっちゃ良い人だ。
そして、私は、罪悪感で心がどうにかなりそう。
お金に関しては、本部に振り込みました。ポケモンタワーの維持費にでも使ってくれ。
◆◆
「22番道路に寄るの?」
「……うん」
ポケモンセンターから離れたあと、私はレッド君に頼んで寄り道をさせて貰った。場所は勿論、22番道路だ。
ここを真っ直ぐ行くと、シロガネ山。右折するとチャンピオンロード。左折すると26番道路からジョウト地方へと繫がる、物語の終盤に訪れる場所である。
しかし、今回はある理由によってそこへいく。それは……
「あーッ!レッド!…………と、誰だ?」
ライバルのグリーン君が待ち構えているからだ。
ゲームでは、彼は旅立ってすぐにチャンピオンロードに行こうとするのだ。ジムバッジを持っていない、と見張りのおじさんに阻まれるのだけど。
そこで、彼はレッドとポケモンバトルをすることになる。ここは現実世界なので、居ないかも……と思っていたけれど、居て良かった。
レッド君はグリーン君の質問に答えるべく、口を開く。
「グリーン。彼女はシオリだよ!一番道路で出会ったんだ!」
「へえ、ポケモンバトル強いのか?」
この人たちってポケモンバトルにしか興味がないのかな?早々にポケモンバトルの話をしだすの、どうかと思う。
しかし、これは昨日、気になってレッド君に聞いてみたんだけど、初めて会ったトレーナーはバトルするのが礼儀とか言われた。私の方がおかしいらしい。
だから、ゲームであんなにバトルしてたのか。凄い世界だな。
そんなことを考えていると、レッド君はグリーン君に答える。
「彼女の腕前は、グリーン以上だよ!」
レッドの言葉にグリーンは眉を
レッド君、煽りよるな。煽り耐性なさそうなグリーン君にそんなこと言ったら逆上されそう。
多分、今のレッド君よりも強いグリーン君相手に、どうしてそんなに威張れるのかしら。
ゲーム時代、ここで負けたんだよね。やけに強いんよ、ここのグリーン君。
研究所で戦ったときより、めっちゃレベル伸びとるやん……って思ったものだよ。
「言ったな、レッド!……シオリ、オレとどっちが強いか勝負だ!」
やっぱり、こうなった。
そもそも、ここに来たのは、これから彼が捕まえるであろうコラッタのことを忠告をするためなのだ。
祈禱師の件で、思い出したのだ。
シオンタウンのポケモンタワーで、主人公であるレッドは、ライバルであるグリーンに再会するのだ。
ポケモンタワーはポケモンを供養する、
そこで彼は、相棒のラッタを供養していた……と言う話があるのだ。
公式では明言されていないが、ポケモンタワー以降、彼の手持ちであるラッタがバトルに登場しないことから、それが示唆されている。
そのときのセリフも意味深であり、彼のポケモンが亡くなったのだと、推測できるものとなっている。
そんなことを、コトネさんを見て思い出して、ここまで来たのだ。
マジでコトネさん、さまさまだ。もう、足向けて寝られない。
しかし、これは、ポケモンバトルをしないと話を聞いて貰えないパターンっぽいね。……しょうがない。
「……瞬殺するから、待ってて」
私は二人に向かって、そう言った。
なんとなくで出した祈禱師コトネの株が上がる上がる。
「……瞬殺するから、待ってて」
そんな中二臭いセリフを吐いた萩原栞。やめて!栞。そんなセリフ吐いたら後で死ぬほど後悔することになるよ。
次回、冒頭で正気に戻る。デュ○ル・スタンバイ!
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5話
戦闘シーン、難しいんじゃ!!
魂の投稿。魔法少女の更新とカラオケ行ってたから、更新遅れた。
カラオケの私の
……何かおすすめのネタ曲ある?
前回までのあらすじ!
グリーン君の前で瞬殺してやるぜッ!みたいな中二発言をしてしまった。
うにゃあああ!!死ぬ、恥ずか死ぬ!
私は心の中で絶叫した。
いや、アレなんだよ。想像以上に、レッド君とグリーン君の邂逅に、テンションがあがってしまったんだ。何だろう、あの二人って永遠のライバルって感じじゃん。そんな空気に当てられ、私は中二の波動に目覚めてしまったのだ。
そんな波動いらない……。
まあ、そんなこんなで、気づけばあんな発言をしたんだと思う。とっても後悔しております。
そんな、私の
「へッ!そこまで言われりゃ、お手並み拝見といこうか!」
キレっキレに昂ぶっていた。不敵な笑顔を浮かばせて、楽しそうにしていた。
この反応で、私は正気に戻ったものだ。
グリーン君超怖い。これ、ライバル認識されてないよね。取りあえず、選択肢間違えたとは思うのだが。私は内心オロオロする。
「ルールを確認させて貰う。バトルは2対2のシングルバトル。持ち物、道具の使用は禁止。これでどうだ」
彼は、私に向かってそう言う。
昔から思っていたことなんだけど、ポケモンバトルで回復薬使いまくっての延命戦法って、ズルいよね。道具さえ事前に準備すれば、大抵の相手に勝てるものだし。
このルールは、それを防ぐためにあるのだろう。
そんなことを考えていると、グリーン君はモンスターボールを取り出すと、腕を振りかぶって投げた。
「いけ、ポッポ」
「ピョォ!!」
モンスターボールから一匹のポケモンが出る。グリーンの相棒、ポッポだ。このポケモンはノーマル・ひこうタイプで、一番道路から登場する、非常にメジャーなポケモンだ。
しかし、出合い頭にバトルをするのは本当に慣れない。これが礼儀とか、この世界おかしいわ。負けたら負けたで、金払うことになるし。
因みに、前回のレッドきゅんとの戦いではお金は貰ってない。トレーナーカードカンストしてて、貰っても意味がないからだ。でも、今は祈禱師の本部の所にお金振り込んで、カンスト状態じゃないけど。
私はレッドきゅんとの戦いを思い出す。
あのときの戦いは、それはもう酷いものだった。何せ、持っているポケモンの把握すら出来ていなかったので、ミュウを出すという暴挙までしてしまったのだ。
でも、今回の私は違う。私は持っているポケモンの確認を、終えたのだ。
その中で考えた。どのポケモンが一番正規ポケモンっぽいかを。
…………。
「……いけ、ニドリーノ!」
「ぎゅい!!」
私はボールからニドリーノを出した。サンドパンの鳴き声をするニドリーノだ。
正式名称は『9パゾ9な゙』と言う。
はい。完全なバグポケモンですね。本当に有難うございます。名前からして不穏なんだよなあ。
ただ、このポケモンは一味違う。前も後ろも、ニドリーノの立ち絵を使っているのだ。タイプも同じで、技も多分同じ。サンドパンの鳴き声がするところに目を瞑れば、完全に正規ポケモンなのだ。
唯一の欠点は、
ニドリーノ 9パゾ9な゙
の画像 あせをかき
ひふを ぬめぬめ させ
て
No.33 おもさ ???kg
こんな感じに、図鑑がバグることぐらいだ。……もしかして、致命的な欠点?
図鑑がバグることに気づいたのは、昨日のことだ。何とはなしに、図鑑でこのポケモンを見てみると、画面がこんな感じにバグっていたのだ。何も知らない人が見れば、完全にホラー演出だろう。
「あれは……ニドリーノだな」
「ミュウの他に、こんなポケモンを」
幸いなことに、二人は鳴き声のことに気づいていない。きっと、ニドリーノに出会ったことがないのだろう。今後二人が、ニドリーノに出会わないことを祈ろう。
そもそも、何でバグポケを出してるんだろう。普通のポケモンをまだ捕まえられていないからか。
グリーン君が居なくならない内に、と急いできたことが捕まえられていない原因だ。
そう言えば、何でこの人朝っぱらからこの道路に居たのだろうか?朝の騒動のときは居なかったし、もしかしたら昨日から
私は内心、不思議に思っていると、彼がポッポに何か言うのが聞こえる。
「ポッポ、すなかけだ!」
「ピョ!」
グリーン君はポッポにすなかけ、を命じる。砂掛けは、相手の攻撃の命中率を一段階下げる技だ。
「ニドリーノ、たいあたり」
「ぎゅい!!」
私は
「ポッポ、もう一度すなかけ」
「ピョピョ!」
しかし、私の攻撃は外れた。やはり、すなかけは厄介だ。初代ポケモンに於いて、命中率や回避率の設定は甘いのだ。何度か技を積めば、攻撃が全然当たらないぐらいに。
もしかして、グリーン君、すなかけの害悪戦法で戦ってる?
「ニドリーノ、つのでつく」
「ポッポ、すなかけだ!」
害悪戦法だ!マジか、グリーン君。確かに初代においてこれ以上なく、有用だし、実際強いけど、これは何という害悪だ。
……いや、つのでつくは当たるけど。
「ピョっ!?」
つのでつくの命中率100だから、よっぽどのことがない限り当たる。偶に外れることもあるが、大体当たる。命中率の計算ってどうなってるのだろう?
「大丈夫か!ポッポ」
「ピョ……ピョッ!」
ポッポはまだ立ち上がる。つのでつくは攻撃力が低いので、流石に一撃で倒せなかったか。しかし、次で決まるだろう。
「もう一度、つのでつく」
「ポッポ、かぜおこし」
「ピョお!!」
ポッポのかぜおこしで、9パゾ9な゙は少しダメージを負うも、無事ポッポを倒した。
「やるじゃねえか!いけ、ヒトカゲ」
「ヒト!」
グリーン君はポッポをモンスターボールに戻すと、ヒトカゲを出した。
ヒトカゲをやる気満々に、尻尾を振っている。
そう言えば、ポケモンのライバルって、主人公の弱点のタイプを必ず選ぶよね。最新版では違ったけど、それまでのバージョンではその所為で、ライバルとの戦いは億劫だった。
「ヒトカゲ、ひっかく!」
「ヒト!」
彼はヒトカゲに指示を出す。ヒトカゲの覚えている技は、"ひっかく"と"なきごえ"の二つ。9パゾ9な゙は先程の攻撃を受けて弱っているので、彼は短期決戦を望んだのだろう。攻撃力を下げるより、相手を戦闘不能にした方が良いだろうし。
私は指示を出そうとするも、
「ニドリーノ!」
「へっ、ヒトカゲを舐めてもらっては困るぜ!」
グリーン君は口をニッと開いてそう言った。これで、まともなポケモンが倒れてしまった訳だ。
次はミュウを出すか?それとも" "を出すか?間をとってベアビヲ9先輩を出そうか。幽霊パイセン出したら、問答無用で勝てそうなんだけど。ダメかな?
私のソウルが囁いている。グリーン君は怖がりだと。怖がっているショタを見たくないか……と。
──怖がったグリーン君に対して、抱きついてからの慰め。涙目で私を見つめるグリーン君。
……ちょっとムラっときた。そう言う、同人誌を見たことがある。流石に現実ではしないけど。
「いけ、ミュウ!」
「みゅうっ!!」
ミュウを
「はっ?!何だそのポケモンは!」
彼は、じいさんの研究でも見たことないぞ、と続けて言う。博士繫がりで、フジ博士から教えられていなかったのだろうか。いや、グリーン君に教えていないだけで、博士自体は知っていそう。
私は、呆けたままのグリーン君に構わずミュウに指示を出す。
「今のうちに、サイコキネシス!」
「みゅう!」
ミュウのサイコキネシスが決まった。ヒトカゲは何も出来ずに、されるがままになっている。
「ヒトカゲ!」
彼は正気に戻りヒトカゲに声をかけるが、無駄だった。数秒後、ヒトカゲは倒れた。
スマホで『〜』って打ったら、予測変換欄の一番上に『ラタナキリ州』って出てきた。
一体なぜカンボジアの州が『〜』で変換されるんだろ?
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6話
赤緑青黄 FRLG 紅蒼翠
⬇3年後
金銀水晶 HGSS DP白金
⬇数年後
黒白
⬇2年後
黒白2 XY(メガシンカ無し)
⬇2年後
日月(メガシンカ無し)
⬇数年後
剣盾
に、なるのかな。
そして、ω紅、α蒼、XY、日月、L黄、L茶がメガシンカありの平行世界?
三人称視点
「ヒトカゲ!」
勝負が決まるとグリーンは、そう叫んでヒトカゲの元へと駆け寄った。その
「よく頑張ったな、ヒトカゲ、そしてポッポ」
彼はとても悔しそうにして、ヒトカゲをモンスターボールへと仕舞う。そして、ボールの表面を撫でると地面に
彼は暫く地面に目を向け、
しかし、寸刻後、何かを思い出したかのように顔をゆっくり上げる。
彼の視線の先には、勝負に勝ったことを喜ぶが如く、空中を舞っているミュウがいた。
(あっ、やばい。ミュウのこと詰問されたら答えようないんやった)
栞はハッとした表情でそんなことを考える。
彼女は腰に付けられたボールホルダーに手を掛け、ボールを
そして、内心冷や汗を垂らして黙りこくる。愚問、彼女の所持しているポケモンに就いて、話せないことがあるからだ。それを知ってか知らでか、グリーンは栞に話し掛ける。
「なあ、そのポケモンはなんだったんだ?爺さんの研究所でも見たことないぞ」
グリーンは何かを疑っている様子を隠さずに、そう訊ねた。
彼、グリーンのフルネームは、オーキド・グリーン。ポケモン博士である、オーキド・ユキナリの孫だ。
彼は、祖父が博士の影響か、他の人寄りポケモンに就いて詳しいと自負していた。
先程のバトルのときのように、資料だけでしか知らないポケモンも多くいるが、それでも、名前すら聞いたことのないポケモンなど存在しないと、彼は思っていた。
だからこそ、自分の見たことのないポケモンに啞然としているようだった。
(オーキド博士って、ポケモンは151匹しか居ないぜ!……って言ってたイメージしかないんやけど)
彼女は、そんな片寄ったイメージを彼の孫の前で考えていた。
別に、ゲーム版の博士は、ポケモンの数には言及していないのだが。
しかしどうしたものか、と彼女は考える。ミュウに就いてどう話したら良いものか。下手な答えでは看破されるであろうし、真実を話すにも
「このポケモンはミュウ。……新種のポケモンだよ」
彼女はレッドにしたのと同じ返答をした。ここにはレッドも見守っているのだから、違う説明をするにも出来ない。この回答自体も、そこまで悪いものでもないだろう、と考え答える。
しかし、グリーンは納得しなかったのか訝しげに問う。
「どこで出会ったんだ?この辺りだと見たことないぜ」
彼は、首を
「彼女は、キキョウシティ出身らしいよ。だから、そのポケモンはジョウトのポケモンじゃない?生態性違って聞くし」
(ナイス、助け舟、レッド君!!)
彼女は心の中で叫ぶ。その説明に、そっかとグリーンは納得する。もしかしたらグリーン君案外チョロいのでは、と栞は思った。
栞がそんなことを思っている内に、レッドとグリーンは二人で話し合う
「それで、どうしてこの道路に来たんだ?ここから先はジムバッジがないと通れないぜ」
グリーンはそう言って、道路の門所の方角を指差す。ここからでは、見えない位置にあるようだ。レッドは何てことはない、といった様子で返答する。
「シオリが寄り道したいらしくてね。それで来たんだ」
「寄り道ねえ。さっきジョウト地方出身って言ってたし、地方を繫ぐ道路でも確認しに来たのか?」
この道の先にはジョウト地方に繫がる26、27番道路が存在する。グリーンは勝手にそう納得をした。言い訳の手間がなくてありがたい、と栞は思った。
「本当なら、お前にもバトルを申し込みたいけど、このポケモンの状態じゃな」
彼は小さくなったモンスターボールを見て笑う。レッドも、今は一匹しかポケモンを持っていないことを話す。栞が思っていたよりも、仲の良い関係であった。
一通り、レッドとの会話を終えると、グリーンは言う。
「それじゃあ、俺は先に行くぜ!こんな所で負けて終わる訳にはいかないからな!……シオリもまたな」
彼は早々にこの場から立ち去ろうとする。しかし、未だ目的を達せていない。栞はそれを引き留める。
「待って」
「うん?何だ、シオリ、言いたいことでもあるのか」
グリーンは狼狽する。
「……少し、話があるんだよ」
栞はそう話す。
彼女が此処に来た理由は、全てグリーンのラッタ死亡フラグを壊すためだ。何らかの方法で、原作の流れを変えて、ラッタが亡くなるのを阻止しなければならないのだ。
しかし、今の時点では未だグリーンはコラッタを捕まえてない。捕まえていないポケモンが、これから亡くなると予言されても困るだけだろう。
いっそのこと、コラッタを捕まえないように言うか……そう思うも、今度は別のポケモンが犠牲になるだけだろう。彼女は、ラッタの死亡の原因を、ロケット団との戦闘だと殆ど断定している。ラッタが居ないだけでは、ラッタポジションが入れ替わるだけだ。
儘ならぬものだ。彼女はそう考える。
(せめて、連絡さえ取れればやり易いんだけどね……)
そう思うも、初代ポケモンには連絡アイテムである、ポケギアは未だ存在していない。厳密には、3年後の時系列である金銀ではポケギアは普及しているように設定されていたので、あるにはあるだろうが。
「……回復薬は、常備してる?」
「一応な。一匹のポケモンに付き、一つぐらいかな」
「もっと持つべき?」
「えっ?」
栞の言葉にグリーンは思わず聞き返す。回復薬を大量に用いる、ゾンビ戦法で何とかならないかしら、と苦し紛れの発言であったが、上手くいきそうだ。
「回復薬は出し惜しみするものではない。腐らせても良いから、大量に持つべき」
栞はここぞとばかり、発言する。思い返せば、ジムリーダーでさえバトルで用いた回復薬は、一匹につき一つだけだった。これは、そんなマナーが存在している……といったものだろうか。
「回復薬がなくて、ポケモンが死ぬのは悲しいでしょ?」
更に追い打ちをかける。これで、ラッタの死亡理由が老衰だったら恥ずかしいな、と栞は思う。
(ゲームの流れ的には、ロケット団にやられた感じと思うんやけど。鼠の寿命ってどのくらいやったっけ?)
彼女は本気で悩む。その様子を見たグリーンは、彼女の悩み姿に考え込む。幸いにして、お金は多く持っている。そして、鞄に関しても大きなものを持っており、かさばる心配は余りない。彼はそう考えた後、口を開く。
「そこまで心配してくれるのなら、予備を買い溜めておくか」
自分の準備不足で、ポケモンに辛い思いをさせるのは忍びない、とも彼は続ける。
「ぼくも回復薬買った方が良いかな……」
栞の隣でレッドは、そう小さく呟く。栞は、既に買い溜めている、とリュックから多くの回復薬を取り出した。昨日の内に買っておいたのだ。リュックの持ち物の上限に就いては、はやぶさバッヂをポケットに入れることで解決した。
そのときは、はやぶさバッヂ一つ抜くだけで、回復薬99個入るようになるってどういうことだ、と彼女は困惑したのだが、暫くして考えるだけ無駄だと割り切った。どうせバグなんでしょう、と。一応、これは仕様になるのだが。
「まあ、参考になった。ありがとな。それじゃあ、また会おうぜ!」
栞が話を終えたのを判断して、グリーンは去っていった。
(私としては、グリーン君にも旅に同行して貰いたかったんやけどね……)
彼にその気はなさそうなのを感じ、それを諦めた。そもそも、二人以上の会話ってどうしたら良いか分からないし、結果オーライか。彼女はそんなことを思った。
今思うと、霊を供養をするポケモンタワーを、三年後の金銀でラヂオ局に改装するってあたおか案件だと思うんですよ。
呪われそう。
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7話
誤字脱字報告、感謝します!いま、1話からちょっと修正作業しているので、もう少し待ってて。
──道に迷った。
今の状況を端的に表すとこうなる。
ゲーム時代だったら、適当に歩いても、ものの数分で目的地に着けていたのに。
何で……何でトキワの森が、こんなに迷宮になってんの!?
私は心の中で、声を荒らげる。
取りあえず、今に至るまでの行動を記すとする。
22番道路でグリーン君と別れた後、私たちはトキワシティに戻ったのだ。レッド君が回復薬の予備をもう少し買いたいと言うからだ。
私が持っていると言っても、自分用にもう少し欲しいと。
先ほどのグリーン君との会話を聞いて、不安に思ったのだろう。
そして、その流れで旅に必要な準備を再確認した後、トキワシティから出た。この頃には時間は午後になっていた。
一応、ついでみたいなものだが、トキワジムも確認してみた。でも、やはりゲーム通りに、ジムリーダーのサカキ不在で閉まっていた。
とまあ、この町にこれ以上用はなくなったので、私たちは2番道路に向かったのだった。
道中、明らかに進行を邪魔したいがためにあるような、"いあいぎり"出来そうな木があったり、上からだと何とか下りられそうな段差があったりしたが、通り過ぎた。
ゲームの都合とは言え、もう少しバリアフリーを考えて整備して貰いたいものである。
そして私たちは、2番道路を過ぎて、トキワの森に入った。しかし、そこで問題が起きたのだ。
──あれ?一体ここは、どこを歩いているんだ?と。
有り体に言えば、迷ってしまったのだ。
思えば、森に入ったときから嫌な予感がしていた。
どうして、出口は一つなのに、分かれ道がこんなにあるんだ……とか、進行方向を示す看板はないのか……とか。
そもそもの話、私は方向音痴なのだ。
グーグ○マップを使っても、目的地周辺を30分ほど
いや、同建物内の施設って、グーグ○マップじゃ案内されないよね。この店に行きたいと打っても、目的地まで0メートルと表示されるし。
そして、コミュ障だから人にも聞けないし……ぐすん。
私の地理のレベルは47都道府県全部覚えてないほど。つまり、壊滅的だ。
義務教育どうしたんだと思うほどの
歴代総理大臣とか歴代征夷大将軍を
場所と名前のセットって、覚えられないよね。
ここで重要なことが一つ。
レッド君も方向音痴だったことだ。地図の見方ぐらいは分かる程度には、地理は分かるそうだが。
しかし、そんなことは今回に於いては意味がなかった。それは、彼の持っているマップがゲームのタウンマップ程の尺度の地図であったからだ。
GPSが付いているのか、現在地点がトキワの森なのは分かるが、縮尺が狂っているため、トキワの森にいることしか分からない。
精々、町のある方角ぐらいしか分からないものだ。
最悪、方位磁針はあるので、森の道なき道を突き進めばゴールに辿り着けはするかな。
……本当に最悪なんだけど。
「……ねえ、シオリ。どうして森に突っ込もうとしてるんだい。もしかして、バカだったのかい?」
散々な言われようだ。実際に森を突っ切れるか、試みてみようとしたけど止められてしまった。
「崖があったら危ないだろう。木の枝で怪我するかも知れないし」
しかし、正論であるため言い返せない。
ううむ、
歩いていた道は行き止まり、戻るにしても結構クネクネ曲がっていた所為でどうなっているか分からない。
「取りあえず、この辺りでトレーナーを探してみよう。ぼくたちだけでは駄目だ」
レッド君はそう言う。
トキワの森のトレーナー。
私が覚えている限りでは、虫取り少年がトキワの森を徘徊していたはずだ。彼らに頼るのが一番だろうか。
「……そうだ。テレポートは?」
今、思い出した。ミュウのテレポートは使えるのではないだろうか。
テレポートとは、野生のポケモンと遭遇したときに逃げることの出来る技のことだ。
この技の凄い所は、役の立たなさだ。
野生のバトルでは普通に逃げれば良いだけだし、トレーナーバトルでは効果がない。ネタ技だ。
どのくらい役に立たない技かと言うと、97年公式大会で、テレポートを覚えたフーディンが出場したことが、未だにネタになってるレベル。
これ、地方大会じゃなくて、全国大会の話なんだぜ……。
と、まあこんな感じにネタにされるテレポートだが、この技は戦闘外では、ある程度重宝される。
この技は戦闘外で使用すると、以前に寄ったポケモンセンターの前まで移動することが出来るのだ。
これは"そらをとぶ"の下位互換のようなもので、"そらをとぶ"入手前まではとてもお世話になる技だ。
この技をミュウが覚えていた理由?何か知らないけど、ウチのミュウ全部の技覚えてたよ。技制限なんて現実世界にはなかった。
これで、強力な技を覚えるために、"なきごえ"を、3.2.1.ポカンしてしまうポケモンはいなくなる訳だ。
鳴き声を忘れるって、舌でも抜かれてしまったのだろうか。恐ろしい話である。
「……うーん、テレポートかあ。トキワシティに戻るにしては、ここまで結構歩いたからね」
レッド君はそう言う。どうやら、テレポートは最後の手段にしたい模様だ。
確かに、ここまでの道中長かったし、安易に戻りたくない。例え、一瞬で戻れるとしても、今日という日が無駄になった感が否めない。
こんなことなら、グリーン君にニビシティまででも案内して貰えば良かった。
私はレッド君の言葉にコクリと
一先ず、道を遡ることにする。トキワの森には、ゲームでは三、四人ほどのトレーナーが居たはずだし、現実世界ではもっと多いかも知れない。
何となく分かってきたのだが、ゲームで居たキャラクターは、大体現実世界でもゲームと同じ場所に居ることが多い。
グリーン君があの場所に居たのも、世界の強制力なのかも知れない。
まあ、気休めのような物で、もし、誰も居なかった場合はテレポート。居た場合には、道を尋ねる……ぐらいに考えておいた方が良いかも知れない。
「ねーえ、テレポートってミュウ?それとも、別のポケモンの技?」
「……ミュウの技だね」
「あのポケモン、浮いてて、エスパータイプっぽかったもんね」
分かる。
宙に浮いてたら、エスパータイプ感あるよね。エスパータイプって安易に浮きすぎだと思うんだよ。
他の私の手持ちも、ある意味、浮いてるから、エスパータイプの可能性が微レ存してそう。嫌な浮き方だなあ。
他のポケモンのタイプとか覚えてないし、エスパータイプと言おうか。
辛うじて、ゆうれい先輩のタイプが電気というのは覚えているぐらいだ。
お前、あの見た目して電気タイプなんかよ……。
ニドリーノパイセンは毒タイプだよ。名前発音出来ないから、便宜上はニドリーノ
で行くよ。
「……ミュウはエスパータイプ。でも、知能が高いからタイプ関係なしに。大体の技を使えるよ」
大体……と言うか全ての技だけど。
あれ?性別ないからメロメロとか一部の技は使えないんだっけ?よく覚えてないな。
「へえ、凄いポケモンだね。他にはどんなポケモンを持っているの?」
「……え?」
「ミュウとニドリーノ以外の手持ちポケモン。6匹持っているんだろう」
あっ、終わった。私の人生終了のお知らせ。唐突に、答えられない質問がきた。
うがあああ!まだ、野生のポケモン捕まえられてないんだよ。どうやら思っていた以上に、ポケモン捕まえるセンスがないのだ。
体力バーがないから、攻撃の止め時が分からないし、そもそもボールを投げても当たらない。
小学5年生の夏祭りで、輪投げをして、何も獲得できずお金が尽きたエピソードを思い出した。
トキワの森ってピカチュウが出るんだ。伝説的マスコットのピカチュウが。でもね、絶対に当たらないの。最後の方とか、同情して自ら当たりにきてくれるのに、当たらないのよ。
果ては、ピカチュウ自身がボールに体当たりしにきたけど、捕まらなかった。そして、私のボールが尽きて終わった。
結局、そのピカチュウは無事、レッド君に捕まえられることになった訳だが。
そんなこんなで、手持ちは一切変わっていない。
……手札を簡単には見せる訳にはいかないぜ!キリっ……みたいなこと言えば、見逃してくれるかな?
「……みたい?」
「うん、見てみたいかな」
「……くっ、一匹だけなら」
ショタの懇願に敗れてしまいました(二敗目)。まあ、もう一匹、ミュウを出せば良いか。ミュウ・ミュウ・ニドリーノ(仮)の三匹を出せば……。
私はボールを投げる。
「みゅう!!」
二匹目のミュウだ。若干、見た目が違うので一匹目とは区別できる。
レッド君の反応を窺う。すると、どうにも、コレじゃない感の顔をしていた。分かるよ。もっと、別のポケモンを期待していたのだろう。でも、他にマトモなポケモンは居ないんだ。
居るのは鳴き声のないコラッタと、ベアビヲ9先輩、後ろ姿モザイク先輩なんだ。
一番マトモそうなコラッタも、声なき鳴き声にSAN値奪われそうになるんだ。残りの二体は見た目の時点でSAN値奪われるけど。
「へえ、ミュウ二匹持っているんだ。ぼくが言いたかったのは、別の種類のポケモンなんだけどね」
私は彼の言葉を無視する。分かってるよ。でも、その言葉通りにするとSAN値削れちゃうから。
既に昨日、"ライバル"を使って壁抜けして懲りたのに。バグったことは極力しないと誓ったのだ。
……実は、波乗り出来るアイテムである『?????』を使う機会を窺っているのは内緒である。
見た目クトゥルフってるから、余り使いたくないけど。
後『トレードセンター』とか面白かった。これ使うと、めちゃくちゃ石投げたくなるアイテム。私は無言で石を投げた。
はい。誘惑に負けてバグアイテムは使っております。
安全に考慮して、一人になれるタイミングでだけ、使ってるのでセーフ判定です。ほら、いざというときのために、アイテムの効果を確かめないと駄目じゃない。
そんな言い訳をしていると、レッド君が私に歎息しながら話し掛けてくる。
「まあ、良いよ。今度見せて貰うし」
あっ、拗ねたレッドきゅん可愛い。
何だろう、ちょっと、右頰がぷくっとなった所に幼さを感じた。
「それじゃあ、道案内してくれる人を探しに行くよ」
レッド君は気合を入れてそう、声に出して言った。私はおー、と小さく手を挙げて応えた。
この話の結論?
方向音痴同士、更に迷ってトレーナーにも会えず、テレポートして帰ったよ。
一日が無駄になったぜ!!
……はあ。
豆○ばじゃないけど、知ってる?
空白ポケモンのモザイクぱいせん、タイプは「゛゛゛…」と「マニア」なんだよ。
……タイプ相性どうなるんだろう。
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8話
UA多いな、と思ってたらランキングに載ってた。そんな時にお酒の話ってどうかと思う。
あとコイツ等、いつまでトキワシティに居るんだろ……。(困惑)
お酒が飲みたい。
そう思ったのは、トキワの森からテレポートで町に戻ってきてすぐのことだった。
浴びる程に酒を飲みたい。飲んでいて気分が悪くなる程、口に入れたい。
私がお酒に出会ったのは、二十歳になってすぐのことだった。
私は昔から、この見た目の所為で子供扱いをされることが多かった。どれだけ、頑張って大人の振る舞いをしても、背伸びをした子供として捉えられてしまう。
その反動からか、私は大人への
煙草は身体に悪いと思い吸わないと誓っていたが、せめてお酒ぐらいはと成人前から思い続けていたのだ。何年も、何年も前から。
そして、遂にやってきた二十歳の誕生日。その日は買わなかったが、次の日コンビニに行ってお酒を一缶買ってきた。初心者向けと言われる麒○の氷○果汁だ。
コンビニでは、物凄く年齢確認を行われたが、無事に買うことが出来た。わーい。
私は家に帰ると早速、一口、口の中に含んでみることにした。身体だけでなく、肝臓まで幼かったらどうしようかと、恐る恐る飲んでみたのだ。
すると、どうしたものだろうか。案外いけたのである。それは一缶飲み終えても変わらない。酔いが余り回らない。それどころか、まだまだ余裕があった。もしかすると、と思い酒屋に行き限界を調べてみた。
結果としては、ある程度の域までは酔うものの、そこで止まるぐらい。泥酔というものが全然起こらなかった。私は
もしかしたら、北欧生まれの母親からの遺伝かも知れない。ほら、言うじゃん。ロシア・北欧の人はお酒に強いと。
そんなこんなで私は、
「そう言えばここ三週間、お酒呑んでなかったな」
詰まるところ、限界を迎えたのだ。
今日に至るまでの三週間、大学の課題やらバイトやらでお酒を飲む暇がなかった。忙しいんじゃボケ!!と、やけ酒を呑むのも煩わしい程忙しかった。
その反動か、喉を焼くぐらいキツい、ロシア人並に度数が高いのを呑みたい、と思ったのだ。
私はレッド君とは別れた後、酒屋に行って酒を買ってきた。世界が違えばメーカーも違う。私がそこで見た銘柄は、何やら初めて見るお酒が多かった。それを見るだけで、何だかデタラメに興奮した。
ゲームで通せん坊をしていた、あの酔っぱらいも、ここでお酒を買っていたのだろう。
にやける顔を抑えきれず、私は適当に吟味をして良さげなものを選んだ。
銘柄はぢわれ。達筆なカントー文字で、そう書かれている。これを選んだ理由は、甁の柄が格好良かったからだ。こう言うのは結局、ノリが大切なのだろう。
酒屋のおじさんには、お酒はお嬢ちゃんにはまだ早いと止められたが、トレーナーカードを見せてみたら信じて貰えた。とても訝しげであったけれども、何とか通った。
元の世界では偽造ではないかと疑われたこともあったので、すんなりと行って良かったものだ。これって、偽造防止の機能とかあったりするのかな。
ともかくして、私はレッド君と合流し、例の如くポケモンセンターに直行した。中は、朝の件でオカルトマニアが数名増えただけで、特に変わりはなかった。
あっ、私オカルトマニアとかのデザイン好きー。何かシンパシー感じるから、嫌えない。私があの格好しても、ただのロリータになるだけだからしないけど。
ゴスロリ、普通に似合ってしまうの辛い。メンヘラっぽく見えないんだよ。
そんなこんなで、私はポケモンセンターの食堂で晩ごはんを食べ、パッとお風呂に入り、すぐさま自室へと戻った。全ての準備が整った。
さあ、宴の始まりだ。
私はお酒の栓を抜いた。おつまみも既に用意している。この酒、少し高かったから結構ドキドキしてる。しかも、あの世界には存在していないお酒だからか、非常に楽しみである。
私は、事前に買っておいたコップを取り出しお酒を注いだ。勢いよく注がれるお酒は、溢れそうになる直前で止められる。溢さないよう慎重にコップを持ち上げると、私は啜るようにそれを飲んだ。酩酊感はまだ感じられなかった。
「……よし、酒盛りと行こうか」
適度な量になったコップに一口、グビリとお酒を
ソムリエじゃないから、膨らみがあるとか、芳醇だとか、細かいことは分からないけど、取り敢えず旨い。
御託を並べられるほど、私はお酒に就いて知らないし、そんなものは必要ないとも思っている。ただ、旨いもんに旨いと言えばそれで良いんだと思う。決して、味覚音痴の言い訳とかではない。
そんなことを思いながら、左手でおつまみを摑む。うむ、旨い。
柿○ーとかがあれば良かったのだけど、この世界にはなかった。酒のおつまみとしては最強だと思うのだけど、この世界には存在してなかった。
……柿○ーは、わさび味が最強だと思ってるんだけど、どうだろう。勿論、異論は認めない。わさびうまー。
ともかくして、その場凌ぎとしてヤドンの尻尾を買ってきた。取りあえずそれに、わさびを塗って食べている。これが、良い肴となっている。本当に申し訳ないだけど、ヤドンの尻尾、マジで旨いんよな。ポケモン愛好家に殴られそう。
いや、てかこの世界。ポケモンを食べてるのに、どうしてポケモン愛好家とか成立するんだろうか。菜食主義者なのかな。植物系のポケモンも居そうだけど。永遠の謎である。
「しかし、
思わず、声が出る。
少し酔うと、脳にフィルターが外れる感覚がする。分からない?何だか、このぐらいの感覚が一番気持ちよく酔ってられてる気がする。酩酊ってきた……?ふへへ。
あっ、そうだ。個人的に自分笑い上戸だと思うから、テンションの高さに注意して。普段から心の中で、テンション高いから余り違いないけど。
「やば、顔笑っとんやけど。死ぬ!」
何とはなしに鏡見てみると、いつもの無表情から愉しそうな顔になっていた。これがお酒の力。……私、表情筋動かせたんだ。
しかし、無計画に酒甁開けてるけどどうしよう。流石に、こんだけ呑み切ったら腹がたぷんたぷんになる……と言うか、急性アルコール中毒で死にそう。
でも、酒瓶放っておくと腐りそうやし。
「これ、四次元バッグに入りよらんかな?」
私は名案だと思い、酔った感覚のまま酒甁をバッグに突っ込んでみた。すると不思議なことに酒甁は溢れず、すんなりとバッグに入った。
え、すげえ。これもしかして良くある空間魔法みたいに時間固定されてる?
何これ強い。これがトレーナーの標準装備とかマジかよ。これ、バグとかじゃないんだぜ。
「運搬業とか出来そうやん!」
生モノとか、安心して持ち運べそう。
いや、でもポケモン転送装置とかいうチートがあったな。運搬であれに勝てるものとかない気がする。あれ、空港とか車とか必要になくなるレベルの発明だよね。ポケモンを転送できるのなら人も転送できそうだし。
もしかして、ポケモン世界に車や電車が少ないのはそれが理由か。ポケセンに必ず一つはあるという普及具合だし、ノーベル賞並みやん。
「ソネザキさんマジパねえわ。伊達にポケモンと合体してた訳じゃない」
いや、下ネタじゃないよ。物理的にポケモンと合体してただけで……。あれ、意味が変わっていなくない?いや、まさかー。へへ。
そんな風に、一人で酒盛りをしていると部屋のドアをトントンと叩く音が聞こえた。
「え、騒ぎすぎた?ココ防音なんやけど」
思い返せば、昨日の空白ポケモンの声漏れてたらしいし、案外聞こえてるのかも。下ネタ結構言ってたけどどうしよう。私は咄嗟にお酒を直して扉の鍵を開けた。
「はいはい。今、開けまーす」
扉を開く。すると、そこにはレッド君が居た。
「森のマップ、手に入れてきたのだけ……ど?」
彼の表情は段々困惑したものへとなっていく。私の表情に驚いているのだろうか。いつもの無表情じゃなくて、普通に笑った表情になってるし。
うん、私と驚いているよ。対人でも、しっかり表情筋働いているのか。
私はレッド君に近づくと手を取って、部屋へと招き入れた。
「取り敢えずレッドきゅん、サンキュー。地図、めっちゃ助かんわ」
「へ?は、え?」
私の言葉に、レッドきゅんはあからさまに動搖する。
「え、えと。どうしたの……?いつもと様子が」
「うんにゃ。どうもせんけど……?取りあえず、マップ見して」
レッド君の手からマップを取る。何故だか放心状態だったので、簡単に取れた。私はマップを一瞥する。
「うわ、めっちゃ複雑やん」
私はトキワの森の複雑さにそう叫ぶ。
これ、多分ゲームではなかった道とかもある。ゲーム時代、こんな複雑ちゃうかったはずやし。
私がそんなことを思っていると、レッド君はようやく冷静さを取り戻したのか、深呼吸をすると話し始める。
「本当にどうしたの?口数の多さとか」
「……?何ともせんけど?」
酔っていた私はここで気づいた。
そう言えば、さっきから普通にコミュニケーション取れてる気がするな、と。
え、これは凄い。いつも一人で宅飲みばっかしてたから気づかなんだよ。コミュニケーション取れるなら、これから酒飲んで冒険しようかな。途中で死にそうだけど。
「あっ、そだ。ヤドンの尻尾あんやけどレッドきゅんも食べん?まだ更んやつ残ってんよ」
「きゅ、きゅん?」
「ほら、包装パックまだ開けとらんから、自由に取っとって」
レッド君はありえないものを見るように私を眺めた。ここに来て、きゅん呼びに気づいた模様。気づかれても改めないけど。
レッドきゅんの目つきが心做しか強くなった気がする。……何か興奮する。これって視姦プレイ?
「まあ良いや。それより、どうゆうルートで行くん?」
「……。ルートだよね」
レッド君は何かを言いたげな表情をしながらも、私の言葉に答える。纏めると、
トキワの森に入ってすぐ右折する。そのまま真っ直ぐ進むと行き止まりになるからその直前で左折。そして、道なりを行けば行き止まりになるから左折を2回ほどする。それで、真っ直ぐ行って右折をして真っ直ぐ行く。そこから……と本当に大迷宮のようだった。
もう、木とか切り倒した方が良いと思う。その方が、世の為人の為だと思う。だるいし、すり抜けバグでもしようかしら。いやでも、マス目的に埋まりそうだよね。どうしたものか。
「あっ、そうだ!ピジョットを持っているお姉さん居たよね。彼女に運んで貰うとか」
「……流石に三人乗りは無理だろうね」
そう都合良くいかない。しかし、レッドきゅんも道の複雑さに不安があるらしく、即却下もしなかった。
だって、余りにも……ねえ。
何で、一直線の道を作らないのか。これが不思議で堪らなかった。
わたし、みせいねん。おさけのめない
追記。
誤字報告感謝します。関西弁の新しい、という意味のサラという言葉は
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9話
失踪してたぜ!(華やぐ超絶スマイル)
修正作業で書く気力なかったので、
やらかしてしまった。
考えうる限り、ほぼ最大級にやらかしてしまったのだ。私自身、お酒に強いと自負していた。実際、酔ったとしても低俗な独り言が増える程度であった。そのノリで外を出歩くとか、ネットで衝動買いをするとかはありえない。
派手に酔っ払うことはないのだ。今回だって、地図を見るだけの思考能力は残っており、何処で迷い易いか等判断できる程度には頭が回っていた。
……低俗な独り言が増えるのは問題だって?いやまあ、いつも下ネタが多いし、平常運転みたいなものだよ。アレだよ、下ネタって
話が逸れた。ともかく、私は気づかなかったのだ。お酒を呑んだときに、対人へのストッパーが壊れるだなんて。一人でしか飲んでいなかった弊害がここで出たのだ。
あの後も、私たちは明日のことに就いて話し合った。私も思考能力が落ちた訳ではないので、普通に……話せている分寧ろ円滑に話し合いが出来た。
下ネタは……まあ、伝わっていないことを祈っている。大丈夫、大半は心の中で抑えたはずだし。
問題なのはその後だ。
私は布団にある膨らみを見つめる。スゥー、と規則よく呼吸音が聞こえてくるようだ。
これはマズい状況に陥っている。
蒲団の端をそっと摑み、持ち上げてみる。するとそこには、幼気な少年がベッドの上で丸まっている姿があった。目は軽く閉じられ、口はモゾモゾと少しだけ動いている。……脳が現実だと認めたがらない。
「……」
今後、野営で一緒に寝ることもあるのだし、同衾しようぜ……みたいなことを言った記憶がある。この最低ポイントとしては、磯野野球しようぜー、ぐらいのテンションで言ってた所だ。
この言葉に、レッド君は戸惑いつつも、私の押しに圧倒されて今に至る。思い返せば、思い返すほどクヅな行動をしている。一応言っておくと、誓って手は出していない。
精々抱きついたぐらいだ。
「……」
いや、アウト判定はまだ早いと思う。下心があったとは言え、よくある話だろう。寧ろ微笑ましい光景だったと私は思うね。下心があったとは言えね(ヤケクソ)。
そんな言い訳じみたことを考えていると、ベッドから大きな物音が聞こえた。
「ん、くぅ……あれ?おは、よう?」
レッド君が目を覚ましたのだ。手で目を少しだけ
◆◆
ぼくが彼女と出会ったのは、トキワシティの看板の前だった。彼女は長い銀髪を
背丈に合わない大きなリュック、腰にはモンスターボールを六つ付けていることから、ぼくは彼女を旅のトレーナーだと判断した。
初めて見る同世代のトレーナーに好奇心が湧き、ぼくは彼女に話し掛けた。しかし、彼女は微動だにせずただ突っ立ったままでいた。まるで、ぼくの存在に気づいていないかのように反応されなかった。
もう一度、呼び掛けてみる。今度は先程よりも大きな声で。
「─!?」
すると彼女は、アとエを混ぜたような奇妙な声をあげて、驚いたように此方へと振り向いた。その顔つきは幼く、同世代、もしくは歳下かも知れないと感じられた。
「キミは旅人かな?入口の看板をずっと見ているみたいだけど」
ぼくの問い掛けに、彼女はポカンとするだけで中々返答をしてくれなかった。仕方ないので、ぼくは自己紹介をすることにした。
「……萩原栞」
そして、ぼくが名乗ってから暫くしてから、彼女は自分の名前を名乗った。
ハギハラ
名字を含めたフルネームでの呼び名だ。ぼくはその答えに少しだけ驚いた。取りあえずこの地方においては、名字文化は廃れつつあるのだ。一部、博士や名家、あとは古風な所では使われているのだが、それ以外の所では余り使われない。
一応、調べればぼくの家にだって名字は存在するのだろうが。
銀色の髪をしているので、もしかしたら別の地域からやってきたのかも知れない。その割に名前は和風であるが。余り、突っ込まない方が良いのかな。
「まあ良いか。ぼくとポケモン勝負をしようよ」
ぼくは話を変えるために、ポケモンバトルを申し込んだ。別におかしな流れではない。初めて会ったトレーナー同士はバトルをするのは、マナーであるからだ。
しかし、そのことにさえも彼女は戸惑っている素振りを見せた。やっぱり彼女はどこか遠い国生まれなのだろうか。国が違えば常識も変わると言うし、そう言うことなのだろう。取りあえず、もう一度頼んでみる。
「……分かった」
すると彼女は大きく項突いてみせた。
………
……
…
「ミュウ。もう一度"はたく"」
「みゅう」
その攻撃にフシギダネは敢えなく倒されてしまった。ベテラントレーナーの攻撃ではない。同世代の女の子の攻撃によって、負けてしまった。
圧倒的な戦いぶりであった。手も足も出せず負けてしまったのだ。
ぼくの友達の、グリーンよりも格段に強いだろう。彼はオーキド博士の孫で、同世代では負けなしのトレーナーなのだが、彼よりも数段強いことは確かだろう。
そして、極めつけはミュウというポケモンだ。ポケモン図鑑に載っていないポケモンなのだ。他の地域のポケモンかと疑ったが、こんなポケモンは見たことがない。
図鑑ナンバー151番、ミュウ。記録されたばかりで情報が全くない。詳しく問い
見たところ、噓を言っている訳ではなさそうだ。博士に図鑑の完成を頼まれていたけど、こんなポケモンがいるとは。ぼくは少し決心をする。
「ねえ、キミはこれからどうするの」
「……決まってない」
彼女のこの答えはある程度予想していた。何処か他に行くあてがあるのなら、町の看板の前で立ち尽くしていないだろう。ぼくは言う。
「それだったら、一緒に行かないかい」
「?」
こんなに強い同世代のトレーナーがいるだなんて、思っていなかった。井の中の
◇
「おはよう」
「おはよう、ございます……」
私は冷や汗を垂らしてそう答えた。
はっきり言って、地獄の始まりだと思う。どう反応していいか全く以て分からない。アレだよ、レッド君からしたら歳上の女性に同衾するよう
絶対にいい感情を持っていない。
私、知ってるよ。同人誌と現実は違うものなんだって。同人誌なら、この後エロエロな展開になるのだろうけど、現実は通報オチになると思う。
「ねえ、シオリ?」
「……な、なに?」
「いや、何でもないよ。食堂に行こうか」
え、なに、この生暖かい目は。優しげで慈愛に満ちたような顔は。これ私、赦されたん??え、何で?
「……怒って、ないの?」
「大丈夫だよ。分かってるから」
何を分かっているのか、分からない。え、抱きしめたこと怒ってないん?マジで?これはどういう判定なの。頭を悩ませていると、レッド君は私に近づいてきて頭を撫ではじめた。どうどうと、宥めるように私の頭をなdええ?
「──ッ!?」
「大丈夫だよ、寂しいんだよね」
ば、バブみ?レッドきゅんから、バブみを感じるんだけど。しかし、何でこうなってんの??あれか。私が同衾を迫ったり、抱きしめたりしたの、寂しさが原因だと思われたの。え、噓だろ。二十歳だよ、私。干支九つくらい違うんだよ。
戸惑いの感情が、私の中を支配した。
おめでとう。栞は同世代のトレーナー()から、甘えたがりの後輩に進化した。
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