浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー (門矢心夜)
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第一章
プロローグ


仮面ライダー五十周年記念作品(大嘘)
カクヨム版にて投稿している、浅井三姉妹のバカな日常五周年記念作品(建前)

初「本音は?」
心夜「ただ仮面ライダーが書きたかったんです……ごめんなさい(本音)」
美咲「良いから本編始めますの!」


 新学期が始まる数日前。

 一人の科学者が、とある私立高校に教師としてやってきた。

 校名は蘇我高校。

 滋賀でも有名な、実力者……所謂強い不良達の巣窟だと聞いている。

 県外からも、この高校に入るために引っ越してくる者がいるらしい。

 そしてこの高校で強い者は、喧嘩が人間離れしているそうな。

 そうだとするならば、自分の研究にうってつけ。

 そう思って、この高校に就職を決めた。

 

「……」

 

 彼女の研究は、主に人間の進化に関するものだ。

 突然変異体と呼ばれる人間が、千人に一人の確立で生まれる事がある。

 特徴として、そう呼ばれる人間は大抵、何かしら常識から外れた力を持って生まれてくるという事だ。

 その突然変異体は、大体は先天的な素質によって生まれてくる。

 実際この滋賀では、そう呼ばれる人間が多数存在するらしい。

 そういう噂をよく耳にする。

 情報を得ると言っても、この研究は公に明かしてはいない為、情報元は大抵都市伝説のサイトなどではあるのだが。

 確かそのサイトでは、四人の人間が紹介されていた。

 

 某漫画の宇宙人の如き戦闘力を持つ少女。

 手にした銃器によって、戦闘力が左右される少女。

 木刀から魔法を放つ少女。

 身体がバラバラ死体に変化しようと、元に戻る再生能力を持つ少女。

 

 実を言うと、彼女は一つ目の少女を探している。

 それが何故なのかというと、彼女にある悲劇をもたらしたとされる少女と特徴が同じだからだ。

 その悲劇は、今より数週間前に遡る。

 端的に言うなら、彼女は自分の幼馴染を突然変異体と思しき者に殺された。

 少し歳の離れた、優しい男の子。

 それなのに、誰かに殺されてしまったのだ。

 未だに幼馴染が誰に殺されたのかは分かっていないが、その理由は幼馴染の死体にあった。

 刺し傷でも、銃で撃たれたわけでもなく、幼馴染の身体には大きな穴が空いていた。

 それも、拳骨一つ分の。

 凶器も特定出来ず、どう考えても拳で貫かれて殺されたとしか思えない、あり得ない死にざまだったのだ。

 そうなると、一つ目の少女の可能性が高い。

 彼女がしたいのは、復讐だ。

 もしもその少女がこの街のどこかの生徒なら、ここの強者達の誰かがそれを知っているかも知れない。

 幸い、この高校の生徒達は、他校生をも自分達の支配下に置こうとしているらしい。

 不良漫画のような高校だが、その方が好都合だ。

 もうある程度、自分の研究は完成に近づいている。

 あとは誰かに実験台になってもらうのみだ。

 

「私が必ず、そいつを地獄に送るから」

 

 そう言って……彼女は蘇我高校の門をくぐった。

 

 



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第一話

本日は、俗にいう第一話部分を連続投稿します(変身して戦うまで)


 五月中旬。

 仕事に行きたくないというのは、日本国民共通の感情であって欲しい、などと考えながら俺は自分の部屋のベッドで目を覚ました。

 

「……」

 

 アラームの音が鳴り、今日も地獄の始まりだ。

 

※※※

 

 朝食を済ませてから、俺はリュックを背負って自転車でマンションを後にする。

 この瞬間から、俺をどんよりとした重い空気が襲う。

 理由はあとで説明するが、俺の仕事に行きたくないは、世の中の平凡な会社員が言う嫌だ嫌だのレベルを遥かに上回っていると思う。

 何故なら、そこで働いていると、万が一死ぬ可能性だってあるからだ。

 怪我ではない。

 死ぬのだ。

 

「ううう……」

 

 お腹が痛い。

 さっき食ったもの全部吐きそうだ。

 働き始めて一か月近く、俺の体重がガクンと落ちた。

 それもこれも職場環境のせいだ。

 

「はあ……」

 

 このまま仕事サボろうかな……いや、だってそうしないと心が潰れそうだし。

 神も許してくれるだろ?

 

「きゃあ!」

 

 ドン!

 

「なんだなんだ……? あ……」

 

 アア……オワッタ。

 ありのまま今起こった事を話すと、暗い顔で自転車を漕いでいたら、何かにぶつかったような衝撃が走り。

 それに気付いて確認すると、目の前で女の子が倒れていた。

 何を言っているのか分からないと思うが、俺もよくわからなかった。

 

「警察呼ばないと」

 

 仕事行く前に自転車で事故を起こしてしまうとはなんという番狂わせだ。

 ただこのままひき逃げで捕まるわけにはいかない。

 俺は携帯を取り出したが次の瞬間。

 

「えっ?」

 

 さっき轢いた少女に睨まれながら、俺は腕を掴まれた。

 そんな事を考えている場合ではないが、彼女はかなりの美少女に見える。

 黒髪を両サイドで三つ編みにし、紫の切れ長の瞳に、眼鏡を掛けた真面目そうな感じの子。

 赤いブレザーに赤いスカート。リボンの色は黒で……よくよく見ると胸が大きい。

 左腕には、生徒会長と書かれた金色の腕章。

 

「ぐっ、ぐっもーにん」

 

 次の瞬間、そんな美少女に俺は思い切り殴られた。

 

※※※

 

「てて……何するんだよ」

「貴方、人を轢いておいて何携帯いじってるんですの!?」

「いや警察呼ぼ

「黙りなさい犯罪者の言い訳なんて聞きたくないですわ!」

 

 君が聞いて来たのに何でここまで言われてんだ……。

 しかも朝からうるさい。

 

「いやあの携帯使わせてくれないとホントの犯罪者に

「もう良いですわ! こうなったらこの爆弾で貴方をバラバラにしますわ!」

 

 ば、爆弾!?

 あ……いや流石に冗談だよね。

 

「さあ……」

 

 ゑ? なんでなんで!?

 そんな危ないもの……え、女子高生だよねこの子。

 

「死になさい!」

 

 い、いやああああああああッ!

 

「アレ?」

「あ……」

 

 ……。

 今起こった事を説明させてくれ。

 爆弾は俺に向かって投げられた。

 のだが……すぐ後ろにあった電柱にぶつかり、跳ね返って、彼女の目の前で爆発した。

 

 



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第二話

 運が悪いことに、その爆弾は、広範囲に爆風が広がる事なく、ほぼ彼女自身のみを吹き飛ばした。

 なのに不思議だ。

 爆風が収まり、爆炎のみが残ったそこに……彼女の姿は全く無かった。

 

「……?」

 

 見た感じ、髪の毛一本すらない。

 まるで、最初からそこにはいなかったかのようだ。

 だがあのタイミングで避けられる筈がない。

 

「どうなってんだ?」

「ここにいますわよ」

 

 は……?

 後ろから声が聞こえた。

 そこには。

 

「えええええええええええええッ!?」

 

 全くの無傷で、あの女がそこに立っていた。

 

「ゑ? ゑ? ゑ? どゆこと? お前あの状態からどうやって……?」

「お前お前と言われるのもあれですし、一度名乗りますわよ? 私はこの世の六つの大陸の角美しく咲く花。名前は六角美咲《ろっかくみさき》ですわ」

「ああ……どうも。福沢裕太《ふくざわゆうた》です……ってそうじゃなくて!」

 

 さっきはどう考えても、彼女はあの爆風に巻き込まれていた。

 アレで生き残れる筈が……。

 

「あ、私なら今の爆発で一度死にましたわよ?」

「はい?」

 

 死にましたって何?

 じゃあそこにいるのは……。

 

「ひいいいいいいいいいいいッ!」

「なんですの? 私がゴーストとでも言いたいんですの?」

 

 何言ってるのかは分からないけど、取り敢えずお化けなのかな?

 

「私は見ての通り生きてますわよ。ただ私を爆風で殺す事は出来ませんわ」

「いや! 全く信じられない!」

 

 第一こいつが言ってる事が本当なら、目の前で死者蘇生が行われたって事?

 

「言われましても、私も望んでこんな体質になったわけじゃありませんわよ。まあでも、この能力のおかげで私は爆弾が当たっても生き返れますが」

 

 いや確実に当てようよ……てか爆弾なんて物騒な物を携帯するな!

 

「は、はあ……」

「もう良いですわ。私は生徒会長ですし、遅刻するわけにはいきませんわ」

 

 美咲は溜め息を吐いてから、俺に背を向けて去っていく。

 振る舞いこそ変な奴だが、立ち姿だけは本当に綺麗だ。

 あんな人が職場にいてくれたら……俺の人生はどんなに輝いているか……。

 

「……職場? 遅刻? あああああああああッ!」

 

 すっかり忘れていた。

 俺もそろそろ出勤時間じゃないか。

 

「やべえ遅刻だァッ!」

 

 あんなクソな職場でも、俺は一度も遅刻や欠勤した事がないのだ。

 今更遅刻など出来ない。

 

「うおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

 少しだけ、胃が軽くなった気がする。

 多分着けば元に戻るかも知れないが、あの少女に勇気を貰えたからだろう。

 

※※※

 

 さて……何だかんだ言っても、やはりここに着くと胃が痛い。

 職場に到着だ。

 

「私立蘇我高校……この門で既に吐きそうだ……」

 

 そう。

 俺の勤務先は私立高校。

 それもただの高校ではない。この高校は、この世の地獄と形容してもおかしくない。

 

「おはようございます……」

 

 俺は職員室の扉を開き、タイムカードを押す。

 ギリギリ遅刻は免れた。

 

「……」

 

 まず……この学校の職員室がやばい。

 面接官の殆どにそういう雰囲気が無かったせいで気付かなかったが、まんまここの雰囲気はドラマとかで見る暴力団の事務所っぽい。

 何せ髪を染めたり、強面の男や一部女性がここの教師として働いているからだ。

 まあでも、この人達にそこまで罪はない。

 怖い人達だし、当然嫌な奴もいるが、割と優しい人もいる。

 だが話してる時以外の顔は……やはり怖い。

 これも訳があるのだが。

 

「はあ……」

 

 ここまではまあ、別に怖い見た目の人がいるだけだから問題にはならない。

 この学校の真の恐ろしさは、生徒達にあるのだから。

 

 



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第三話

 準備をしていると、丁度チャイムの音が聞こえた。

 

「時間か……」

 

 早速一時間目が始まる。

 胃の痛みが更に激しさを増す。

 

「……嫌だあ……教室行きたくなぁい……」

 

 もうだめだ……おしまいだ……。

 

『何を寝言言ってる!? 不貞腐れてる暇があったら戦え!』

『何? 授業に出たくない? それは出ようとするからだよ。逆に考えてみるんだ。出なくてもいいさと』

 

 天使と悪魔が俺にささやきかける。

 

「うう……どうしよう……」

 

『金を貰う喜びは何よりも……何よりも強い!』

『やみくもに出かけるのは危険です! もっと情報を集めてからでも!』

『そこまで性根が腐っていたとは……』

 

「だァァッ! もううるせえ! 行きゃ良いんだろ行けば!」

「いや君がうるさいよ」

 

 すみません俺の中の天使と悪魔が失礼しました。

 

『『俺達のせい!?』』

 

 おう。

 

※※※

 

 ガラガラ……。

 

「失礼し

「おうフク! よく来たな。今日も自習にしてくれるよな? あん?」

 

 怖いよぉ……。

 

「もう好きにしてください」

「フクは話が分かってて良いな。よし!」

 

 俺は……こいつらには逆らえない。

 前まで何とかまともに授業をやろうと試みたが、こいつらに妨害されてしまった。

 こいつら……蘇我高校の生徒は、全国トップクラスの不良達。

 卒業後は有名企業……ではなく、暴力団からスカウトがあるとかないとか。

 まあ暴力団行きの奴がそんな沢山いたら、廃校にされかねないから、多分噂程度なんだろうけど。

 てかマジなら怖い。

 その内俺も何かされてしまうんじゃないだろうか。

 

「……」

 

 自習という事もあり……やはり皆好き放題やり始めた。

 というかこんな狭い室内でボールを投げる奴がいる。

 危ないからやめてほしい。

 

 ドン!

 

「いて……」

 

 顔面に当たった。

 

「あ、フク! こっちに投げ返してよ~」

 

 大して可愛くもない女子生徒が俺に手を振る。

 女子だが、こいつも不良だ。

 

「……」

 

 上等だクソアマ。

 俺は今ストレスが溜まってる……胃が重くなるくらいにはな。

 

「うおああああああああああッ!」

 

 俺は叫びながら、その女子生徒に向かって全力でボールを投げた。

 

「当たれェェッ!」

 

 普通に最低な行いだが、相手は自分から自由を奪う不良生徒。

 慈悲はない。

 

 ――当たれ……当たってくれ!

 

 ドン!

 

「……」

 

 俺の顔は青くなった。

 ボールは女子生徒ではなく、すぐ近くのヤクザみたいな男に当たってしまった。

 

「おい」

「ひいっ!」

「誰に向かってこいつ投げてんだアァン!?」

 

 怖い怖い怖い……。

 

「いやそのこれには

「うるせえ!」

「ああああッ!!」

 

 殴られた。

 

 



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第四話

 痛い……。

 もう何で皆顔ばっか殴るの?

 

「顔面の痛さがフタエノキワミだわ……」

 

 職員室で一人、もう自分でも何言ってんのか分かんない。

 こりゃ顔面と同時に頭もやられたかも知れない。

 

「福沢先生、この書類を

「はい?」

「すみません何でもないです」

 

 先輩が逃げていく……え? もしかして、今の俺の顔そんなに酷いのか?

 

「はあ……もう嫌だ」

 

 まだ三時間目と四時間目と六時間目授業だし……。

 もう嫌だ早く帰りたい。

 

※※※

 

 授業が終わった……。

 達成感も何もあったもんじゃない。

 ただただ胃が重く、辛いだけの一日が過ぎた。

 

「……」

 

 昼飯は何も食べられず、飲み物すら喉を通らない。

 胃はそれなのに重い……。

 そして顔が痛い……。

 

「うう……」

 

 もう行きたくない。

 毎日こんな事ばかり考える。

 こんな時、俺が正義のヒーローだったら、あの不良達をボコボコにして……分からせてやるのに。

 体育すら苦手な俺は、それすら出来ない。

 

「あの子は凄かったなあ……」

 

 朝の事を思い出す。

 発言や行動こそ変だったが、事実彼女は、俺が何といおうと自分の意見を通していた。

 俺にもあんな勇気や強さがあれば……もしかしたら……。

 

「いや、考えても仕方ないか」

 

 あの子はあの子。

 俺は俺だ。

 誰かの真似をした所で、その誰かにはなれっこ無いんだから。

 俺に出来るのは、俺に与えられた立場をこなすだけ……。

 

「先生、出来ました」

 

※※※

 

「え?」

 

 女の声が聞こえて、少し驚いた。

 生徒の声だろうか……ただそれにしては、この学校の生徒には似つかわしくない……落ち着いた声だ。

 俺が驚いたのは、その落ち着いた雰囲気の事だ。

 

「ま……まさか」

 

 こんなクソみたいな高校にも、もしかしてまともな生徒がいるのか?

 なら見るしかない。

いや見るべし。

 

「……ただドアは半開きなのね」

 

 どうりで声が聞こえるわけだ。

 まあ良い……覗くだけ覗いて。

 

「ちらっ……」

 

 取り敢えず中を見てみたが、何をやっているのだろうか。

 扉には科学部と書かれていたが、実験というよりは、ものづくりをしているように見える。

 もう一度よく見てみると、何か機械……いやベルトか?

 

「ん?」

 

 ベルトに取り付けられた何かを外して操作し、また取り付けている。

 すると……。

 

「えっ……?」

 

 声を殺したが、それでも出るのまでは防げない。

 ただの男子生徒が……そのベルトの力かどうかはわからないが、急に兵隊姿の怪人へと変化した。

 まるで……何とかライダーみたいに。

 

「いや……え? ここ科学部ってよりショッカー本部?」

 

 ライダーあまり見た事ないからそれしか出ないけど。

 

「こちらです」

 

 最初に声を聞いた女子生徒の方は、男子生徒が使っていたベルトとはまた違う形のそれを、顧問と思しき教師に渡す。

 

「あの人は……」

 

 俺も見覚えがあるし、お互い顔も名前も知っている人だ。

 名前は、狩野遥《かのうはるか》。

 俺の同期で、俺より少し年上の女性教師だ。

 前職は科学者だったと聞いた事がある。

 それなら科学部の顧問も頷ける話だ。

 

 初めて会った時も思ったが、かなりの美人だ。

 アッシュブラウンの髪を三つ編みにした、落ち着いた雰囲気。

 何となく女医にも見える。

 この学校の保健室の先生を彼女にやって欲しいくらいにはと思ったが、これでちょっと印象が変わったかも知れない。

 恐らくだが、この科学部の製作している物の製法を知るのは、彼女しかありえないからだ。

 

「これが……」

「はい。突然変異体に使用する事で、更にその力を増幅する効果もあります」

 

 聞きなれない単語だ。

 何となくだけど、ほにゃららライダーで言う改造人間の事だろうか。

 

「ところで先生、まずはどちらに攻め入る気ですか?」

 

 攻め入る!?

 何? もしかしてこれ聞いちゃいけない奴?

 怪人側がどんな悪さをするか決めてる奴だろ?

 

「決まっている……まず〇×女子高を支配下におく。噂によれば、そこに突然変異体が数名ほどいるらしいからな」

 

 あ……改造人間の事じゃないらしい。

 でも……ん?

 てことはそもそも突然変異体って何……?

 

「完成した事だ。今日はもう終わりにしよう」

 

 あ……もう終わりか。

 え?

 

「まずい」

 

 流石にここはまずい。

 俺はすぐ近くのトイレまで駆け足で移動し、隠れる。

 

「ふう……」

 

 それにしても恐ろしいものを見た。

 まさかショッカー本部が実在するなんて。

 てことはこの世界にも何とかライダーが存在したりするのだろうか。

 

「……」

 

 たださっき彼女らは、攻め入ると言っていた。

 ここは最凶の不良達が集まる学校だ。

 そうなると……放置しておくのは危険かも知れない。

 彼女らが言う突然変異体が見つかる前に、俺が隠しておくべきだろう……泥棒だけど。

 泥棒かも知れないが、これは俺のやるべき事だろう。

 

「これ以上奴らの好きにはさせない」

 

 それに俺へのイキリに更に拍車が掛かったら、胃潰瘍になるかも知れない。

 それだけは絶対阻止だ。

 

※※※

 

 俺は職員室に戻ってから、遥先生にバレないように科学部部室の鍵を入手。

 そしてこっそり歩いて、部室の前に立つ。

 

「お父さん。お母さん。ごめんなさい。俺は他人を巻き込まない為に泥棒になります……」

 

 反省もしません。

後悔もしません。

死んでもお断りします。

 

「……」

 

 俺は扉を開けた。

 暗くてよく見えない……が、探し求めていたものは意外と近くにある。

 

「これか……」

 

 変身した男子生徒が使っていたものと似ているが、細部が違うベルトだ。

 男子生徒の使っていたベルトの中心には、迷彩帽を被った兵士の紋章があったが、このベルトには紫色の爆弾の紋章がついている。

 この紋章らしきものが端末になっていて、これを操作する事で変身していた。

 実際取り外して、ひと昔前のガラケーのように開いてみると、数個のキーと、ディスプレイが姿を現す。

 

「意外とカッコいいけど……」

 

 俺は見た事ないが、やはりこういうのを見るとほにゃららライダーしか頭に浮かばない。

 俺が幼稚園の頃に、どこかで見た事あるくらいだ。

 確かこんな感じの端末で変身する奴がいたような気がするが、やはり俺の記憶に正確な記憶はない。

 

「っと……」

 

 いけないいけない。

 仮にも正義の為とは言え、今の俺は泥棒だ。

 急いで逃げなければ。

 

 



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第五話

 その数日後。

 

 滋賀県立〇×女子高。

 滋賀の公立高校にしてはかなり、いや全国的に見てもかなり異色な、ヤンキー女やギャルが多く集う女子高。

 蘇我高校程ではないが、そこそこ強者がいる。

 

「……」

 

 そんな学校の三年三組に、生徒の代表たる生徒会長の姿がある。

 六角美咲。

 一見真面目にも見えるが、そんな事はない。

 中学時代は元ヤンで、爆弾をよく作っては自分に当たって爆死していた。

 ただ喧嘩は割と強い……それは今でも健在だ。

 

「皆からの信頼を得て、私は頂点に立ちますわよ……ソウジ」

 

 ソウジは中学時代に付き合っていた彼氏の名前だ。

 卒業を機に別れたが、今でも美咲の心の支えである。

 生徒会長になったのも、彼との約束からだ。

 約束を果たして、再び会う為に。

 

「失礼しますわよ」

 

 美咲は生徒会室の扉を開ける。

 新生徒会役員と、新副会長等が既に集まっている。

 美咲は最後だった。

 そもそも今日は本来……生徒会で集まる行事というものは無かった。

 その証拠に顧問の姿もそこにいない。

 そんな今回の議題は……。

 

「んじゃ……前置きは無しにして始めるっすよ。今回生徒会役員に集まって貰ったのは、この果たし状を全員で読んでもらう為っす」

 

 軽いノリの副会長が、ブレザーの内ポケットから果たし状を取り出す。

 ひと昔前の不良漫画とかでありそうなそれだ。

 外の文字も中身も、筆で書かれている感じの字だ。

 

「私が読みますわよ」

 

 そこにはこう書いてある。

 

『〇×女子高生徒会……お前達に五対五での決闘を申し込む。明後日に河川敷に来い。負けたり逃げたりすれば、学校を支配させてもらう。蘇我高校生徒』

 

「至ってシンプルですわね……って貴女方、何を狼狽えていますの?」

「だ……だって、こんな勝負……無理っすよ」

 

 副会長が言う。

 

「はい?」

「蘇我高校……あいつらと喧嘩して無事で帰れる奴なんていない……こんなの無視して警察に……」

「させませんわよ」

 

 美咲は止める。

 

「挑まれた勝負から逃げるなんて……弱い人のする事ですわよ」

「でも!」

「会長……」

 

 近くにいた書記の一人が呟く。

 まだ入って間もない一年生だ。

 

「この一か月間……アンタの仕事ぶりは見てたんだけどさ、自分がやれるからって下に対して強引過ぎない?」

「なんですって?」

「あたしは中学ん時会長やってたけどさ、アンタのやり方は何かと雑なんだよ。アンタに人の上に立つ資格はない」

 

 その言葉に……美咲は拳を震わす。

 

「アンタらもそうだろ? 副会長も……」

「そうだそうだ」

「言う通りだ」

「皆さん……」

「もうアンタにはついてかない。一人で蘇我高校の連中とでも喧嘩して、勝手に一人で怪我でもしてなよ。さよなら」

 

 その書記を筆頭に、美咲以外の生徒会役員が出ていく。

 

「……良いですわ。一人でもやれますわ、私は」

 

 美咲は果たし状を握りしめ、一人そう呟く。

 

 



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第六話

「あそこにいる人こっち見てるよ~」

「キモ~い」

 

 はあ……俺はこいつらを助ける為に行動してるってのに、なんでこんな言われ様なんだ。

 

「……」

 

 果たし状をこの学校の生徒に渡しているのを、俺は遠目で見た。

 科学部の作ったベルトの件も考えると、悪い予感がして仕方ない。

 俺がする事は一つ。

 その果たし状の中身を見せてもらい、自分が数日前に盗んだベルトを使って、蘇我高校の連中を倒す事。

 何とか仕事を早く切り上げて来たが、もう下校時刻は過ぎている。

 もう帰ってしまったのだろうか。

 

「何をしてますの?」

 

 聞き覚えのある声。

 

「美咲……」

「女子高の近くで男一人で立ってるなんて、不審者の極みですわよ」

「ふ……不審者じゃねえし」

「立っている……いや、違いますわね。もしかしてた

「下ネタ言う気なら俺が全力で止めるぞ」

 

 そして俺は女子高生で興奮しねえし。

 

「はあ……そんな事より、今度は何ですの? 人轢く次は誘拐ですの?」

「犯罪から離れてくれよ……そうじゃなくて、実は……」

 

※※※

 

「なるほど……果たし状なら知ってますわよ。生徒会宛でしたし」

「ホントか?」

「今も私が持ってますわ」

「ならそれを俺に渡してくれ」

 

 俺は手を伸ばすが、美咲は渡すのを拒否。

 

「渡しませんわよ。大体……中身を見てどうする気ですの?」

「決まってるだろ。俺はそいつらの学校の先生だ。お前を巻き込むわけにはいかない」

「へえ……貴方はこの学校を支配させる気ですの? ここが支配されれば、私が誰かに支配されるも同然。そんなの私は耐えられませんわよ?」

「違う。俺がそいつらを止める」

 

 俺は拳を握る。

 

「貴方にそれが出来るとは思えませんし……それに、私は自分の運命を誰かに委ねる気はありませんの。私はいつか頂点に立ちたい。だから、そんな事させませんわよ」

「美咲……」

「話はそれだけですわね? とにかく、手出しは無用ですわ」

 

 美咲は眼鏡のブリッジを上げて立ち去る。

 

「……諦めない。俺はあいつを助ける……そしてこの学校の連ち

「あのーすみませんそこのお兄さん」

「ゑ?」

 

 警察官?

 俺なんかしたか?

 

「お……俺に何か用ですか?」

「用? 何とぼけてんの? 女子高の前でそんなそわそわしてるとか怪しすぎるよ? ちょっと職質させて?」

 

 なんでどいつもこいつも……俺を犯罪者扱いするんですかね?

 

※※※

 

 俺はあれから再び職質されるのを覚悟で……美咲の行動を監視した。

 そして時が来た。

 美咲は河川敷で、蘇我高校の生徒五人と向き合っている。

 それを俺は遠くで見ている。

 

「約束通り来ましたわよ」

「五対五……の筈だけどな。お前みたいな雑魚眼鏡一人か」

 

 蘇我高校の生徒五人は、確か全員一年生の筈だ。

 まずは実験の為に、まだ経験の浅い者から向かわせたのだろう。

 

「雑魚眼鏡? 口の利き方に気を付けた方が良いですわよ。私はいずれ頂点に立つ女。貴方達はその前座に過ぎませんの」

「……笑わせないで欲しいな。仲間一人連れて来れない奴に、そんな事言われてもね」

 

 生徒達がベルトを取り出す。

 兵士の頭の紋章型の端末を取り出し、操作する。

 

『ARMY DRIVE READY?』

 

「変身」

 

『COMPLETE』

 

 五人が兵士型の怪人へと姿を変える。

 

「これは……」

 

 流石の美咲も少し動揺した。

 だが……後ずさりもせず、まず金属バットを取り出す。

 

「武器は金属バットだけか?」

「やあッ!」

 

 美咲は勢いよく、怪人に向かってバットを振るう。

 だがバットの方から折れてしまった。

 

「これで終わりか?」

「いや……まだですわ。勝負はここからですの!」

 

 このままではまずい……早く変身しないと。

 

「……ッ!」

 

 俺はバッグからボマードライバーを取り出し、腰に装着。

 ドライバーからベルトが飛び出し、俺の腰を覆う。

 爆弾型の紋章を取り出してから、その端末を操作する。

『BOMER DRIVE』と書かれたボタンを押す。

 

『BOMER DRIVE READY?』

 

 何とかライダーっぽくポーズを決めて、叫ぶ。

 

「変身!」

 

 端末を中心に取り付ける。

 しかし……。

 

『ERROR』

 

 ベルトから拒否されるように、俺は吹き飛ばされてしまう。

 

「そんな……」

 

 俺はボマードライバーを拾い直し、今度はベルトを使わずに何とかしようと駆け出す。

 

「やめろお前ら!」

 

 そして階段の途中で叫ぶ。

 その声に気付いた生徒達が止まり、俺の方を向く。

 美咲は既にボロボロで、地面にうつ伏せで倒れている。

 

「うぐ……」

「フクか。俺達に何の用だ?」

「止めに来たに決まってんだろ……こんな事、もうやめるんだ」

「お前程度に何が……ほう、そのドライバーを使う気か?」

「……」

「別に奪い返すつもりはない。お前が持っていた所で役に立たないしな……。返すしか方法はない」

「お前達には渡さない。その子も俺が守る!」

「待ちな……さい。裕太さん……そいつは……私の敵ですわ……」

 

 傷だらけの美咲が立ち上がる。

 荒い息を吐き、拳を握った。

 

「貴方方……本当にこんなやり方で私達を支配して楽しいんですの?」

「何だと?」

「貴方方は私が一人で来たにも関わらず、五人で……しかもそのベルトを使って戦いを挑みましたわね……それって、貴方方が私より弱い事を認めている……そういう事になりませんの?」

「減らず口を……そんなものは仲間一人連れて来れなかった言い訳に過ぎない」

 

 美咲が笑って告げる。

 

「私は勝つ為に手段は選びませんが、集団で寄って集って一人を倒すのは嫌いですの」

「知らないのか? お前のそういうのを、負け犬の遠吠えって言うんだ」

 

 リーダー格が近付いて、美咲の腹を殴る。

 もう黙って見るなんて……出来ない。

 

「美咲! これを使え!」

 

 俺はボマードライバーを美咲に渡す。

 前に聞いた言葉を思い出した。

 そのベルトは、突然変異体と呼ばれる者の力を増幅する為のものだと。

 美咲は爆発に巻き込まれて死んでも、すぐに蘇る体質の筈。

 それなら……試してみる価値がある。

 

「無理だ。お前には使えない」

 

 舐め切った表情で美咲を見る。

 

「このベルト……なるほど、そういう事ですの……」

 

 美咲は何かを理解したかのように笑う。

 

「今から証明しますわ。私の言っている事が負け犬の遠吠えじゃないって事を……貴方方よりも少し数の面で不利ですが……これで力の面では平等ですわよ」

 

 美咲は腰にベルトを装着する。

 見た目の割に、妙に手慣れた動きだ。

 まるで初めてじゃないかのような。

 

「……これですわね」

 

『BOMER DRIVE READY?』

 

 端末を閉じてから右手を顔の左側近くまで移動させて構え、大きな声で叫ぶ。

 

「変身ですわ!」

 

 端末を取り付ける。

 

『COMPLETE』

 

 天から一個の紫に発光する爆弾が降り立ち、美咲はそれを右手で掴んで握り潰す。

 爆風が巻き起こり、美咲はそれの中へ。

 

「美咲……」

「まさか……」

 

 怪人達はそれを驚いた顔で見ている。

 爆風が止み、煙が立ち込めるそこから……その戦士は現れた。

 

 第一印象を言うなら、あの彼女の見た目の印象とは正反対だが……性格にはマッチした姿だった。

 黒を基調とした……彼女の肉感的なボディラインが強調されたライダースーツの上から、紫色の長ランを羽織ったその姿は……まさに番長。

 あの端末の形のような、紫色の爆弾型の頭の頭頂部からは火が灯されており、複眼は金色に輝いている。

 顔のデザイン的には、俺も知っているあの何とかライダーのような感じだ。

 武器はヒーローには似つかわしくない金属バット。

 そして背中に、ダイナマイトの形をした飛行武器が六つ。

 所謂ボムビットだろうか。

 

「私はボマー……仮面ライダーボマーですわ!」

 

 美咲は自分の戦士としての名を、高らかに名乗りあげた。

 

 

 



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第七話

「何故お前が……」

 

 動揺を隠せない怪人達。

 ボマーはバットを相手に向けて叫ぶ。

 

「最初からクライマックスですわよ!」

 

 そのまま駆け出す。

 リーダー格の怪人の脳天に向かってバットを振り下ろし、見事命中。

 一撃で怪人を戦闘不能に。

 

「そ、そんな……」

 

 一撃で倒した事もそうだが何より……。

 

「戦い方がムゴ過ぎる……」

 

 頭ばかりを狙っていて、凄く痛そうに見える。

 殺しはしていないだろう……と信じるしかない。

 見ていると……その後すぐに変身が解除され、人間の姿に。

 

「さっきまでの威勢はどうしましたの? もしかしてビビッてますの?」

 

 言っちゃ悪いかもだけど言わせてくれ。

 うぜえ。

 

「や……やるぞ!」

「倒すわよ!」

 

 何とか他の生徒達も、怪人としての力を活かして立ち向かう。

 

「はあっ!」

「えいっ!」

 

 二人同時に、美咲に対するが……最早他の怪人と同じ、いやそれよりも強い力を手に入れた美咲には及ばない。

 美咲が恐らく喧嘩慣れしているのもあるかも知れないが、とにかくあの変身以来、まともに攻撃が入らず……形勢逆転。

 ボマーがバットを薙ぎ払うと、それに吹き飛ばされた二人の怪人が、すぐに人間の体へと戻る。

 

「あと二人ですわね」

「ちょ、調子に乗るな!」

 

 今度は兵士らしく、どこからか銃を召喚。

 発砲するが、ボマーは金属バットで全て防いで駆ける。

 

「はっ!」

 

 そして脳天へバットを叩きつけた。

 あっという間に最後の一人へ。

 

「貴方を止められるのはただ一人……私ですわ!」

 

 右手を残り一人に指さしてから、すぐに親指を自分に向ける。

 

「図に乗るな!」

 

 今度は怪人自ら、ボマーへと立ち向かう。

 

「無駄ですわ!」

 

 背中の六本のボムビットが、複雑な軌道を描いて怪人へ。

 強力なボムビットを前に、怪人は成す術もなく全て喰らい、ダウンしてしまう。

 立ち上がろうとするのを見たボマーが、端末を外す。

 

「行きますわよ」

『FINAL DRIVE!』

 

 端末から音声が。

 ボマーの脛をボムビットが囲い、そのまますぐにボマーが飛び上がる。

 

「とうっ!」

 

 ビットを纏った方の足を前に突き出して叫ぶ。

 

「ライダーボムキック!」

 

 勢いに乗って、美咲は怪人の顔面へと飛び蹴りを放つ。

 所謂ライダーキックだ。

 

「うわあああああああッ!」

 

 怪人は断末魔を上げて、爆発に巻き込まれる。

 人間体へと戻った生徒が爆風の中から姿を現すが、ボマーの姿はまだ現れない。

 

「……アレ?」

 

 こういうのって……倒してから爆風の中から現れるのがセオリーなんだけど、まさか。

 

「ここですわよ」

 

 美咲が俺の後ろで、何故か人差し指を天に向けて構えていた。

 

「あの……もしかしなくても今のって……」

「また死にましたわよ」

 

 ですよね……てか死ぬと傷治るのね。

 

「いや普通自分の技で死ぬか!?」

 

 




心夜です。仮面ライダーでいう一話目的なオーソドックスな内容を書き終えた所で、
今日の投稿は終わりです。
狩野遥の復讐から始まった、ライダー対怪人による不良達の戦いが、どこに向かっていくのか。是非今後をお楽しみください!


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第八話

 数時間後。

 蘇我高校科学部部室。

 

「六角美咲……それがボマードライバーを使えた突然変異体の名前か」

 

 遥がアーミードライバーを、科学部部長兼副生徒会長の女子生徒から回収しつつ呟く。

 

「はい。そして恐らくですが、先生が探している例の突然変異体に特徴が近いかも知れないです」

「それは何故だ?」

「量産型とは言え、変身せずとも……アーミー五体の攻撃に気絶せず耐えていたそうです。ボマードライバーだけの力とは思えません」

「確かにそうだな」

 

 異常なまでの打たれ強さは、突然変異体全てに共通する特徴だ。

 だが……ボマードライバーの使用でそこまでの力を出せるなら、遥の幼馴染を殺害した犯人に当てはまるかも知れない。

 

「良いだろう。一旦その六角美咲をターゲットに戦う事にする。今作成中のベルトを完成させるぞ」

「はい」

 

※※※

 

 あの騒動の後、取り敢えず俺は一年達を適当な場所で寝かせ、美咲の頼みでファミレスに来ていた。

 腹減ったから飯奢れ……シンプルにそう頼まれて。

 

「美味しいですわ」

 

 目の前でハンバーグを美味しそうに食べる美咲。

 こういう所は、普通の女の子って感じだ。

 あそこの生徒達に、そんな可愛げは一切ないしな。

 

「……あ、そういえば明日からどうするつもりですの?」

「え?」

 

 なんかちょっと心配されている。

 どういう意味なんだろうか。

 

「だって貴方、相手方が許可したとは言え、もう私に味方したわけですから、蘇我高校にいるのはキツいんじゃありませんの?」

「……」

 

 確かにな。

 

「それにもし蘇我高校全体があの空気なら、貴方自身の身も危険ですし、もうまともに働かずに辞めた方が良いですわよ」

「そうだよね……丁度ストレスで胃もやられてたし……辞めるしか……いや待てよ。そんな事したら……」

「無職になりますわね」

 

 ノーッ!!

 

「ど、どうすんだよ俺……なんであんな事を……」

 

 女の子を助けた挙句、無職になるか死ぬかしか選べないなんて……。

 

「男が女に泣きつくんじゃないですわよ……みっともない……」

「いや……だって俺の人生クソ過ぎて泣けてくる……」

「はあ……。まあ私も一応貴方の行動に助けてもらったわけですし、何かしない事もありませんわよ」

 

 美咲はスマホを取り出す。

 

「どうする気?」

「うちの父が玩具屋で働いてますの。親に頼んで採用させて貰えないか聞いてみますわ」

「え、え?」

「あ、もしもし……」

 

 美咲は父親に頼む。

 通話終了後、スマホをしまい。

 

「取り敢えず面接代わりに家に来い、だそうですわよ」

「あ、うん……ゑ?」

 

※※※

 

 まずい事になってしまった。

 父親に面接目的で会うとは言え、女の子の家に上がらないといけない。

 学生時代、教師になる為に真面目に勉強していて、全然女の子と関われなかった俺にはキツい話だ。

 

「うう……お腹が」

「いちいち緊張してお腹を痛める癖……何とかしなさいの。これからは貴方に私のお供をしてもらうわけですから」

 

 お供……?

 

「いやお供になった覚えないけど」

「私がなれと言ったんですからなるんですの」

 

 なんて強引な。

 

「着きましたわよ」

 

 表札に六角と書かれた、そこそこ裕福そうな家が一軒。

 ついに彼女の家に到着してしまった。

 

「アア……オワッタ……」

「何オタオタしてますの? ビシッと入りなさい」

「は、はい……お邪魔します……」

 

 俺は覚悟を決めてドアを開ける。

 その先では、父親らしき男の人が腕を組んで立っていた。

 

「おう、いらっしゃい」

 

 あれ……?

 

「どうした? 具合でも悪いのか?」

「あ……いえ違います」

 

 何で倉〇てつをがここにいるんだ……?

 

「違いますわ。私の父親の光太郎ですわ」

「旧姓南光た

「ごめんそれ以上は危険な臭いするから言わなくて良いですよ……」

 

 



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第九話

 取り敢えず普通に面接を終え、採用が決まった。

 俺は美咲の部屋にお邪魔して、座布団で正座していた……。

 

「いやよく考えたらあり得ねえ……」

 

 知り合って間もない女の子の部屋にいるなんて。

 性格はともかく、一応美咲は美人だし。

 

「今性格悪いとか考えましたの?」

「アレ? 思考を読まれた?」

 

 女の子の勘という奴だろうか。

 まあ良い。

 取り敢えず部屋を見回していたが……。

 

「女の子の部屋にしては凄い光景だね……」

 

 ライダーには詳しくないが、美咲の部屋にはライダーグッズらしきものが沢山ある。

 ベルトに小物……ソフビにフィギュアまで。

 赤いカブト虫のような見た目のライダーのグッズが多い気がする。

 恐らく一番好きなライダーなのだろう。

 

「これなんだろ」

 

 黒いUSBメモリ的なものがある。

 触って確認していると、ボタンを見つけ、試しに押してみた。

 

『ジョーカー!』

 

 キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!

 

「す……凄い」

 

 劇中っぽくちゃんと光ったり音が鳴るのね……。

 

「何驚いてますの?」

「俺正直こういうので遊んだ事ないから、ちょっと驚いてて」

「勿体ないですわね。楽しいですわよ」

 

 他のも手にとってみる。

 

「これは……?」

 

 青いUSBメモリだ。

 

『トリガー!』

 

 声優がどっかの無職を彷彿とさせる声だな……。

 

「全然なってませんわね」

「へ?」

「これはですね……こういう事すると面白いんですのよ」

 

 美咲がメモリを手に、スイッチを。

 

『トリガー! トリガー! トリトリガー! トトトトトトトトリガー!』

 

 連打。

 

「……」

「ナズェヒイテルンデス!?」

「いや、予想以上にくだらな過ぎて……」

 

※※※

 

「そういえばさっき言ったな」

「何ですの?」

「俺はお前のお供だって……どういう事をすればいいんだ?」

「そうでしたわね。実は……」

 

 かくかくしかじか。

 

「なるほど……生徒会メンバーが全員辞めた、と」

「はい……」

「言ってもいいかな?」

「?」

 

「完全に自業自得だろ」

 

「そこまで言いますの!?」

「だって俺がその場にいたとしたら、辞める以前に、戦わせようとしたお前をぶん殴るもん」

「みっともない男ですわね貴方……」

「みっともなくて悪かったな……で、その生徒会の件を俺にどうしろと?」

「単刀直入に言いますわ……生徒会の仕事を手伝って欲しいですの……」

 

 はあ!?

 

※※※

 

「いやいや無理だろ! 俺はお前の生徒会の仕事内容どころか、そもそも生徒会の仕事なんてやった事ないし……」

「会社の書類仕事よりも楽ですわよ……多分」

 

 多分!?

 

「それって給料出ますか……?」

「何言ってるんですの? 生徒会の仕事に給与なんて出るわけないじゃないですの」

 

 生徒会はブラック企業なのか……?

 

「私は頂点に立つ者ですわ。頂点に立つ為なら、お金など二の次ですわ」

「そんなん言ってられるのも学生の内だけだぞ……」

 

 まだ初給料しかもらってないけど。

 

「とにかく、さっきも言った通り……これから貴方は私のお供。しっかりこきつかわせてもらいますわよ」

 

 ……ちょっと殴って良いかな?

 

「変し

「やめて」

 

 死んでしまいます。

 

「とにかく! 戻ってこない可能性の方が高い今、私達が何とかすべきですの!」

「だから俺がやる必要あるのかな……」

「強制わいせつの冤罪で警察に通報しても良いですのよ」

「やめろ馬鹿」

 

 冤罪、ダメゼッタイ。

 

※※※

 

 取り敢えずマンションの自室へ。

 何というか……今日まで忙しすぎて疲れた。

 

「はあ……」

 

 あの地獄のような高校と、半ば強制的に決別したわけだが……急すぎて胃痛はまだ収まりきっていない。

 というか……これから大丈夫だろうか。

 お金の面は美咲の父親の所で働けば何とかなるだろうが、美咲のお供をしなければならないのが気がかりだ。

 ……。

 

「仮面ライダーボマー……か」

 

 美咲の名乗っていた、戦士としての名。

 突然現れて、俺の人生を破壊して、新たな人生をくれた。

 あいつは爆弾使いどころか……あいつ自身が爆弾なのかも知れない。

 

 



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第十話

 次の日。

 玩具屋での就業前に暇を貰い、俺は両親の墓参りに来ていた。

 折角教師としての道を選んだのにも関わらず、それをすぐにやめなければならなかった事を詫びる為だ。

 

「……」

 

 俺は墓の前で手を合わせる。

 両親が死んだのは、数年前。

 大学生になる前、俺は友達と高校の卒業旅行に行っていた。

 両親も夫婦水入らずで旅行へ行くと告げていた。

 丁度俺と両親の戻る予定の日は同じで、両親は先に帰って料理を用意すると約束していた……。

 だが家に、両親の姿はなく。

 その数日後、両親が旅行先で事故に遭って亡くなった事が判明した。

 

「……ごめんよ」

 

 これで詫びるのは二回目だ。

 俺が卒業旅行ではなく、両親の傍にいる事を選べば……こんな事にはならなかった。

 それに頑張って教師になるという夢も、一年も経たないうちに辞めてしまった。

 これでは浮かばれない……。

 

「ここにいましたのね」

 

 美咲の声。

 聞こえた方に顔を向けると、私服姿の彼女がいた。

 春用の薄紫のコートに白いシャツ、そしてロングスカート。

 そこそこお洒落な姿の彼女が、そこにいた。

 

「ここまで来るんなら、せめて制服着て花くらい持ってきて欲しかったな」

「別にお墓参りが目的じゃありませんわよ」

 

 そう言いつつも、美咲もお墓の前で手を合わせる。

 

「誰が眠ってますの?」

「俺の両親」

「そうですの……」

「教師になったけど、すぐ辞めちゃった事を謝りたくてさ」

「ふーん……」

 

 凄い不満そうな顔だ。

 

「だ、ダメなの?」

「何故謝る必要がありますの?」

「だって……頑張ってなれたのにすぐ辞めちゃったから、申し訳なくて……」

「確かに貴方は夢を掴んで手放す道を選んだかも知れませんが、もう一度掴む事だって出来ますわ」

「美咲……」

「この戦いが終わってから、別の高校の教師になっても良いですし、何なら夢を変えて一生私のお供……でも良いんですわよ」

 

 それだけは断固拒否したいなあ。

 

「ま、まあ色々考えておくよ」

「それが良いですわ」

 

 なんだ、美咲も結構良いこと言うじゃないか。

 

「言っておきますが、私のお供は楽じゃありませんわよ」

 

 だからやる気ないって!

 

「あはは……」

「さあ、ご飯でも食べに行きますわよ。勿論貴方の奢りで」

「おいおい、俺まだ給料貰えて無いんだぞ……」

 

 呆れながらも、仕方ないと思いつつ立ち上がる。

 その時。

 

「……?」

 

 少し、頭が痛む。

 寝不足だろうか……いや。

 

「あれ……?」

 

 急に記憶が呼び起せなくなる。

 ――俺は誰の墓参りに来ていたんだ?

 何故、見知らぬ人の墓に花を……?

 

「うっ……」

「大丈夫ですの?」

 

 美咲に声を掛けられて我に帰る。

 混乱した記憶が安定する。

 そうだ……俺は両親の墓参りに来ていた筈だ。

 

「なんでもないよ」

 

 ……なんだったんだ。今の。

 

 



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第十一話

 

 二日後の月曜日。

 美咲は無人の生徒会室に足を運んでいた。

 

「……やはり、誰もいませんわね」

 

 いつもなら、たまに残った書類を片付けるメンバーもいるが、それすらいない。

 あの時のノリではなく、彼女達は本当に辞めたのだ。

 

「……」

 

 美咲はここまで、頂点に立つ為に色んな事を努力してきた。

 勝てない勝負もあったが、それだって勝つ為に全力を尽くした。

 でも他の人は、そんな美咲についてこれなくなった……。

 

「ソウジ……どうしたらいいですの?」

 

 美咲が昔、彼氏と一緒に撮った写真が入ったロケットを見て呟く。

 自分が弱くなってしまうと、ついやってしまう。

 でも決まって、すぐに我に返る。

 

「いけませんわ!」

 

 美咲は約束した。

 頂点に立って、美咲に見合う者と一生を送って欲しいというソウジの願いを叶える事を。

 そしてもう一度会った時、美咲にはソウジしかありえないとちゃんと伝えたい。

 だから今は泣かない。

 ソウジとの約束を果たす為にも。

 

「……ホントに迷惑っすよ」

 

 後ろから聞こえた声。

 副生徒会長のものだ。

 

「会長のせいで、こんなものをまた受け取らなきゃいけないんすからね」

 

 睨みつけながら、副生徒会長は果たし状を置いていく。

 

「もういい加減、やめたらどうすか?」

「……私はやりますわよ。いずれ頂点に立つ者として、売られた喧嘩は全て買いますの」

「勝手にするっす。じゃあ、今度こそさいなら」

 

 副会長が手を振って去っていく。

 美咲は果たし状の中身を見る。

 

「これは……」

 

 そこに書かれていた内容は……。

 

※※※

 

 玩具屋の店員として働き始めて二日目。

 

「いらっしゃいませ!」

 

 初日は少し大変だったが、何とか慣れてきていた。

 他の先輩達も優しいし、何より自分に暴力を振るう生徒達もいないし。

 

「働くって良いな……」

 

 あの学校で働いていたら、一生出てこなかった台詞だろう。

 

「俺は幸せだ!」

「ようフク! 何が幸せだって?」

「は……」

 

 その呼び方……まさか。

 

「科学部から泥棒した上、無断で辞めたらしいじゃんよ。んで? 何盗んだんだ? 言ってみろよ」

「え、えーっと……」

「黙ってたらどうなるかわかってんだろうな?」

 

 まずいまずいまずい……殴られる殴られる殴られる……。

 

「盗品ならここにありますわよ」

「?」

「美咲!」

 

 美咲がベルトをした状態で、蘇我高生に告げる。

 

「何盗んだのかと思えば、変身ベルトか。丁度いい、面白そうだから俺にくれよ」

「貴方に渡すわけにはいきませんわね」

 

 バットすら構えず、素手で立ち向かう。

 

「上等だ!」

 

 大きく振りかぶって、拳を突き出す蘇我高生。

 だが美咲は軽く受け止める。

 

「この程度ですの?」

 

 攻撃を受け止めた美咲が、相手の腹に拳を叩きつける。

 蘇我高生は嘘のように大きく吹っ飛ばされ、地面に激突して気絶した。

 

「まったく……ベルトすら使わない蘇我高生なんて大した事ありませんわね」

 

 それ言えるのは君くらいだと思うけどね。

 

「と、取り敢えずありがとう……どうしてここに?」

「貴方の仕事ぶりを見に来たのと、これを読んで欲しいですの」

 

 美咲は果たし状を手渡した。

 

 



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第十二話

 仕事終了後に美咲の家へ。

 果たし状を見つつ、対策を考えていた。

 

「にしても……今度は〇×女子高の生徒を味方に、なんてね……」

 

 果たし状にはこう書かれていた。

 

『〇×女子高生徒会の六角美咲へ 〇×女子高のある生徒に新しいベルトを渡した。三日後にどんな手を使ってもお前を倒すよう指示してある。負けた時は今度こそ〇×女子高を支配下に置かせてもらう』

 

「うちの生徒の誰か……という事は……」

 

 急に、あまり動じない筈の美咲が青い顔に変わる。

 

「どうした美咲、恐ろしいもの見た的な顔してるぞ」

「だだだだ大丈夫ですの! わわわわ私に怖いものののなどありませせせせんの!」

 

 何にビビってんだ……?

 

「どう見てもビビッてるだろ……一体何にビビってんだ?」

「まあ貴方になら良いですわね……うちの生徒で最も恐ろしい人の話」

「それって……蘇我高生よりヤバいのか?」

「ええ。多分彼らが束になっても勝てませんわね……」

「どんな人?」

 

 美咲は眼鏡のブリッジを上げて、その生徒の話を始めた。

 

「その生徒にカツアゲされた人数は万を超え、超人的戦闘力と摩訶不思議な肉体を持つ女子生徒……浅井淀子(あざいよどこ)ですわ……」

 

 そいつ見た時にスカウターが破損しないかどうか心配な話だな。

 

「淀子……あーなんか聞いた事ある名前だな。どんな関係?」

「同級生……と言ってもただの同級生ではありませんわ……。浅井淀子……いや、そもそも浅井三姉妹は私のライバルですの!」

「ライバル?」

 

 しかも三人いるのか。

 

「ええ。私がいつか絶対超えなければならない相手ですの。今は彼女達に勝つ事は出来ませんが、最後は勝ちますわ!」

「はあ……」

 

 だが美咲がすぐに落ち込み顔に変わり、

 

「でももしベルトを渡されたうちの生徒が、淀子さんなら、今の私には勝てませんわ……」

「そ、それじゃあどうするんだよ」

「こればかりはそうでない事を祈るくらいしかありませんわ」

 

 ぶっちゃけ何とか説得して、そいつに蘇我高校襲わせれば全て解決しそう。

 蘇我高校と協力関係で無かったというのが条件だけど。

 

「とにかく決まったわけじゃないし、もしかしたらその淀子さんに協力してもらえば、蘇我高生の野望を打ち砕けるかも知れないじゃん」

 

 今の考えを告げるが、美咲に睨みつけられる。

 

「協力してもらうのだけは絶対勘弁ですわ」

「なんでよ」

「浅井家の手だけは絶対借りませんの」

「いやそんな事言ってる場合か?」

「言ってる場合ですわ! 浅井家に私の負けというようなものですわ!」

「な、なるほど?」

 

 俺としてはビビってる時点で負けな気がするけど。

 

「とにかく! いつかは浅井家に勝ちますの! とにかく渡されていないかは気になりますし、明日確かめにはいきますわよ」

「おう」

 

※※※(美咲視点)

 

 という事で美咲は、淀子がいるクラスに向かったが……。

 

「いませんわね……」

 

 淀子の姿がない。

 風邪も引かなそうな彼女が来ない理由が見当たらない……。

 

「何やってんだあいつ……」

 

 後ろから聞こえた声。

 それも聞き覚えがある……いやそれどころの話ではない。

 美咲が最もライバル視している浅井家の人間の声だ。

 

「はぁつぅさぁん!?」

「な、なんだよ」

 

 黒髪ロングに、黄色の三白眼を持つ貧乳。

 浅井家の三つ子の次女……浅井初(あざいはつ)だ。

 学年一位の成績を持つ生徒……そして二位である美咲のライバル。

 淀子やあともう一人相手なら、勝てる分野があるというのに、こいつにだけは一つも勝てないのだ。

 

「今から勝負しますわよ」

「いやしねえよ。てかお前こそ姉さんのクラスなんか覗いて、何してんだよ」

「ライバルの貴女に説明する必要はありませんの。今日こそ私が倒しますわ!」

 

 美咲はハンドメイド爆弾を取り出す。

 そして初へと投げつける。

 

「危ねえ!」

 

 しかし初は爆弾を避け、壁に跳ね返ったそれが美咲へと激突。

 

「ぎゃあああああああああああッ!!」

 

 廊下で死んだ。

 

※※※

 

「はあ……もう、何で勝てませんの……?」

「それは良いから、何で覗いてたか説明だけしてくれ。そして二度とその面見せるな」

 

 ――嫌ですわよ。

 

「淀子さんを探していましたの。少し緊急事態で」

「姉さんならしばらく家帰らねえって言って旅に出たぞ。ジャ〇ーズのアイドルにエンカするまで諦めねえとか、何なら私が芸能人になれるまで頑張るとか……ホントあいつ馬鹿だな」

「良かったですの……」

 

 淀子を相手にする必要がない事が明らかになった。

 取り敢えず助かったみたいだ。

 

「あと美咲」

「何ですの?」

「お前の緊急事態とやらに私を巻き込むのだけはやめろよ? もし巻き込んだら許さねえからな」

「言われなくても貴女の手なんて借りませんわ。プライドが許しませんの! いつかは絶対貴女達をぶちのめしますわ!」

「いい加減私をライバル視するのやめて欲しいぜ……」

 

 




久しぶりに初さん書きました(笑)
あ、因みに話題こそ出ますが、淀子は作中で登場しません(あの人が出ると物語崩壊するので)


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第十三話

 

 数時間後、六角家の美咲の部屋。

 

「どうだった?」

「淀子さんはいなかったですわ」

「いない? それって……どんな理由で?」

 

 まさか気付かれないように、蘇我高校で拉致されたとかないよな。

 

「妹の初さんが言ってましたわ。東京に行っていていないと」

「……へ?」

「だから、アイドルに会う為に旅をしてていないって話ですの」

 

 んな馬鹿な話あるのか……?

 

「あら、蘇我高校の教師なのに今更そんな事で?」

「いや……蘇我高生に不登校の奴……しかもそんなオバカな理由で休む奴とかいなかったからさ」

 

 態度こそ悪いけど、逆に喧嘩出来る時に喧嘩したいから……不登校になる奴とかいないんだよなあ……。

 いっそ来ない方が俺の胃には良かっただろうけど。

 

「そうですのね。こちらはギャルとかもいますわよ。そこそこ真面目な人もいますが……裏が恐ろしい人とか」

 

 〇×女子高の方が恐ろしくないか……?

 あ、でもギャルは好きかも……。

 

「すけべ……」

「はあ!?」

 

 べ、別にそんな事考えてないのに……。

 ただ金髪女は割と好きかなって……。

 

「破廉恥ですわ」

「偏見だ! てかたまに俺の思考読むのやめてくれ!」

「無理ですわ」

「……うう、胃が痛い」

 

 好きな女の子のタイプを想像しただけなのに。

 

「そこは良いとして、今の段階では淀子さんでない事が分かっただけで、誰が犯人なのかはっきり分かりませんわね」

「確かに……」

 

 何とかして一気に全員を調べられる方法とかがあれば良いんだけど……。

 

「あ……良い事思いつきましたわ」

「本当か?」

「少し職権乱用にはなりますが……」

 

 ごにょごにょ。

 

「え……本気か?」

「本気ですわ」

「しかも俺もこの作戦に参加?」

「当たり前ですわ」

 

 まあ……一応恩もあるし、無下に出来ない……。

 

「分かったよ……」

「じゃあ決定ですわ」

 

 大丈夫かなあ……。

 

※※※

 

 二日後。

 俺は何とか〇×女子高の敷地内に潜入し、作戦が開始されるのを待っていた。

 

「にしても……この学校すげえな」

 

 美咲の作戦はこうだ。

 生徒会長の権限を使い、臨時の全校集会を開き、敢えて果たし状の中身を読み上げる事で怪しい動きをした生徒を見つける……というオーソドックスな作戦。

 なのだが……そもそも生徒会長の権限で全校集会が出来るのがおかしい気がする。

 他校だし、気にしたら負けかも知れないけど。

 

「ただいまより集会を始めます」

 

 それに……わざわざバレそうな奴を選ぶとも思えない……。

 

「まず、生徒会長の話。六角美咲さん、お願いします」

「はい」

 

 俺は体育館の外からバレないように見ていたが……中々佇まいだけはそこそこ良かった。

 姿勢もちゃんとしているし、何より真面目に見える。

 あれが中身にも反映されていればよかったのに……。

 

「今日は皆さんに、お話がありますわ」

 

 美咲は果たし状を手に、話し始めた。

 

 



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第十四話

「これは蘇我高校からの果たし状……そこにはこう書かれていますわ。『新しいベルトを〇×女子高の生徒に渡した』。そして明日、私をどんな手を使っても倒しに来ると書いてありましたわ」

 

 ――蘇我高校?

 ――嘘でしょ? あの不良達の巣窟の……。

 ――まさかウチに来るとかマジあり得ない。

 

「期待はしてませんが、この場を借りてお願いします。蘇我高校の生徒からベルトを貰った……という者がいれば、今すぐここで名乗り出なさい」

 

 ――いやいや、仮にいたとして名乗り出るの?

 ――無理っしょ。いくら不良の学校の連中でも、馬鹿正直に名乗り出る人なんて選ばないって。

 

 それは俺も思った。

 どうやって名乗らせる気だろうか。

 

「あくまで名乗り出る気はないみたいですね。なら……こんな手は使いたくありませんでしたが……」

 

 ボマードライバーを装着し、爆弾型の端末を外す。

 

『BOMER DRIVE READY?』

 

 端末を閉じてから右手を顔の左側近くまで移動させて構え、大きな声で叫ぶ。

 

「変身ですわ!」

 

 端末を取り付ける。

 

『COMPLETE』

 

 天から一個の紫に発光する爆弾が降り立ち、美咲はそれを右手で掴んで握り潰す。

 爆風の中から、仮面ライダーボマーが現れた。

 

 ――え? 何あれ。

 ――生徒会長……仮面ライダーだったんだ。

 ――アレ玩具じゃないの!?

 

「さて、これでこの場の全員が私の正体が仮面ライダーだという事は分かってもらえたと思います。そして……」

 

 ボマーは武器の金属バットで、マイクが乗った演台を真っ二つに割る。

 ほぼ全員が悲鳴を上げた。

 

「私がライダーである以上、まず変身してしまえば暗殺は不可能ですわ。大人しく名乗り出なさい。そしたら正々堂々叩きのめしますわ」

 

 仮面ライダーらしくない態度だなあ……ライダーオタクの癖して。

 

「まったく……本当に雑だね。会長」

 

 そう声を上げる生徒の姿。

 

「名乗らせる為に脅す……そんなんで会長が務まるこの学校は本当に救えない」

 

 遠目で見ていてよく分からないが、その生徒はベルトを装着した。

 

「……貴女でしたのね……山内(やまうち)さん」

「どうせこうでもしないと、アンタじゃ見破れないと思ったし。それに……暗殺なんてするわけがない。あたしはあくまで正々堂々とアンタのそのプライドも、自信もへし折るよ」

 

『FLAME THROWER DRIVE READY?』

 

「変身」

 

『COMPLETE』

 

 上空から現れた火柱に飲み込まれる山内。

 火炎放射器を模した、炎の怪人へとその姿を変えた。

 

「随分舐められたものですわね。でも、これで正々堂々戦えますわ」

 

 ボマーがバットを構える。

 

「明日……私が証明しますわ。私が頂点に立つ器だという事を」

「自惚れないでよ。どうせアンタじゃ、あたしに勝てない」

 

 ――明日あの二人が戦うのか!

 ――面白そうだし見に行ってみようよ!

 ――賛成!

 

 あれ、俺要らなくね?

 

「おい君、何してるんだこんな所で」

「あ、いや……その……」

「不審者が我が校にいます。至急来てください」

 

 何でこうなるんだァァァァァァッ!!

 

 



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第十五話

「はあ……はあ……」

「どうしましたの?」

「どうしましたのじゃない! お前が学校に潜入させたせいで、俺警察に捕まるとこだったんだぞ!」

 

 しかも俺がいる意味無かったし。

 

「ああすみません。もし逃げ出したら捕らえてもらうつもりでしたの」

 

 尚捕まる確率上がる奴だ……しかも不法侵入どころか、痴漢として。

もう何を言われても絶対に学校潜入系はやらない……。

 

「んで、ホントに明日戦う気かよ」

「ええ。勿論ですわ」

「もし何か仕掛けられていたとしてもか?」

 

 真剣なまなざしで問いかける。

 相手は勝つ自信が十分にありそうだった。

 山内の事は知らないが、もしもの事があれば、美咲は蘇我高校に〇×女子高を明け渡す事になってしまうかも知れない。

 でも美咲の答えは一貫していた。

 

「相手の出す手に恐れていては、頂点に立つ資格なんてありませんわ。それを正々堂々打ち破ってこその頂点。だから戦いますわ」

「淀子とやらにビビらなきゃカッコいいんだけどな……」

「それを言わないで欲しいですの! いつかは淀子さんにだって負けない力を付けますわよ!」

「そうか」

「その前に、まずは明日の山内さんとの戦いですわ! 最後に頂点に立つのは私って事を証明しますわよ!」

 

 美咲はビシッと外に向かって指をさして、意気込んだ。

 

 

※※※

 

 次の日の放課後。

 沢山の人が見物に来る中、ついに決闘が始まろうとしていた。

 不良の喧嘩とは言え、仮面ライダーと怪人の戦いだからか、生徒から話を聞いてきた一般人や特撮ファンも観客として来ている。

 勿論……蘇我高校の連中もいる。

 何なら記者まで、メモやカメラを手にガン見。

 俺も一般客として来ていた……ただし、黒子として。

 

「バレないように……」

 

 バレたらまた前みたいにいじめられる……。

 

「頑張れ! 仮面ライダー!」

 

 仮面ライダー対怪人なら、大抵仮面ライダーがホーム、怪人がアウェイになりがちだが、生徒達には彼女らの性格を知っている者がいるのもあって、敢えて怪人側である山内を応援するコールも。

 

「あたしがアウェイか……でも、勝てば良いだけの話」

「あら、他の人の応援を気にするなんて……貴女も意外と小さいですわね」

「……」

 

 山内が黙り込む。

 お喋りは終わりだと言いたげに、山内はベルトを装着。

 

「……」

 

 火炎放射器の形をした端末を操作する、彼女の瞳には……美咲に対する敵意が込められているのを感じる。

 淡々とボタンを押した彼女。

 

『FLAME THROWER DRIVE READY?』

 

「変身」

 

 端末を取り付ける。

 

『COMPLETE』

 

 上空から現れた火柱に、山内は飲み込まれる。

 火炎放射器を模した、炎の怪人へとその姿を変えた。

 

「では、私も……」

『BOMER DRIVE READY?』

 

 端末を閉じ、端末を掴んでいる右手を顔の左側に移動させる。

 

「変身ですわ」

 

 端末を取り付ける。

 

『COMPLETE』

 

 上空から一つの爆弾が降り立ち、美咲はそれを握り潰す。

 そこから生まれた爆風の中から、一人の戦士が登場する。

 紫の長ランに身を包む、仮面ライダーボマー。

 

「タイマン張らせて貰いますわよ」

 

 バットを構え、ボマーは自信満々にそう告げた。

 

 



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第十六話

 

 かくしてルール無用、先に倒れた方が負けのタイマンがスタートした。

 

「先手必勝ですわ!」

 

 バットを構えたボマーが、火炎放射器怪人に向かって全速力で駆け出す。

 金属バットを大きく振りかぶり、そのまま脳天に向かって。

 

「……」

 

 怪人には間一髪で躱される。

 ベルトの能力もあるかも知れないが、何というか勘で回避された感がある。

 

「あたしは多分、アンタに力勝負じゃ勝てない。でも、アンタを一か月ずっと見てきた。あたしはアンタのやりそうな事なら見通せる……」

「たった一発避けた程度で……よくそこまでイキれますわね」

 

 すかさず第二撃。

 しかし……彼女の言う通り攻撃は躱されてしまう。

 

「攻撃を当てる必要なんてない。それ以外でも倒す方法はある」

 

 火炎放射器の怪人はフィールドから、サッカーゴールの上へと飛ぶ。

 確かに場外負けのルールはないが、敵前逃亡ともとれる行動。

 それも背中のブースターの影響で、ジェットエンジン並みの速度を出している。

 

「なるほど……私が疲労したその時に叩くって事ですの? 上等ですわ!」

 

 ボマーは火炎放射器怪人を追いかける。

 ただいくらボマーでも、あの速度は……。

 

「まだ使ってなかった機能……試させてもらいますわ」

 

 端末を取り出し、あるボタンをクリック。

 端末から音声が流れる。

 

『ACCELERATE DRIVE』

 

 加速……を意味する単語。

 名の通り、ボマーの動きが、あの火炎放射器怪人とほぼ同等に。

 眼にも止まらぬ……という程ではないかもだが、それでも車なんかより全然速い。

 

「これならどうです?」

 

 心なしか、加速出来る事が凄く嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。

 

「やるね……でもこちらにはこれがある」

 

 飛行し始める火炎放射器怪人。

 だがボマーには強力な飛び道具がある。

 

「ボムビット!」

 

 ボマーの意思のまま、何もない所から彼女の背中に、ダイナマイト型のビットが出現する。

 複雑な軌道を描き、火炎放射器怪人へと飛んでいく。

 

「……」

 

 それも読まれていた。

 火炎放射器怪人は両手から炎を生み出し、ボムビットを跡形もなく消し去ってしまう。

 

「あ……当たりませんの」

「何度も言わせないで。あたしはアンタのやりそうな事は分かる。蘇我高校の連中も、それが分かっててあたしにやらせた筈」

「ぐぬぬ……」

 

 そうこうしているうちに、頼みの綱のアクセラレートも終了してしまう。

 

『ACCELE END』

 

 ボマーは加速した世界から引き離される。

 

「しまった……」

「切り札をそう簡単に使うなんて、何も考えてないのが見え見えね」

 

 ボマーの図星を指す火炎放射器怪人。

 これで終わりだと言わんばかりに、火炎放射器怪人は右掌に巨大な炎の弾を生成する。

 

「消し飛ばしてやる……」

「あ、あれはまずい……」

 

 流石に止めないと!

 

「山内、そんな事をしたら俺達に当たる!」

 

 黒子衣装なのも忘れて、俺は大声で叫ぶ。

 

「だから何? 見学者が勝負に口出ししないで!」

 

 余った左手で火の弾を生成し、俺に投げつける。

 

「ぐあっ!」

 

 上着が焦げる。

 俺は脱ぎ捨てて、何とか止めようと走り出す……が。

 

「やめなさい、裕太さん」

 

 ボマーが止める。

 

「美咲……」

 

 



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第十七話

 

「山内さん、その攻撃受けますわ。貴女の全力を受けても立っていられないようなら、私は貴女の上である資格はない……だから全力で来なさい」

 

 ボマーが火炎放射器怪人に呼びかける。

 

「何言ってるんだ! あれを受けたらお前どころか俺達まで!」

「ジャンプして軌道をずらしますわ。それなら貴方達には当たらない……」

「けどそれじゃお前が!」

「私がやると言ったらやりますの!」

 

 ボマーは力強く宣言した。

 

「私を……信じなさいな」

「覚悟は決まったの?」

「ええ。受け止めてみせますわ」

 

 ボマーは高く飛ぶ。

 

「これで終わり! はあっ!」

 

 火炎放射器怪人が火炎弾を放つ。

 火炎弾は見事命中し、ボマーの全身を飲み込む。

 

「美咲!!」

 

※※※

 

 炎は止んだ……。

 死人はおろか、建物は一切損傷していない。

 あの火炎弾は、ボマーの宣言通り……全て彼女が受け止めた。

 

「……」

 

 火炎放射器怪人が笑う。

 

「やっぱり死んだか……まあ、分かっていた事だけど……」

「……まだ……ですわ……」

 

 あの炎の中に消えた、そう思うしかなかった筈の美咲の声。

 

「!」

 

 変身こそ解除されていたが、何とか体育館の屋根の上に立っていた。

 制服の一部が焦げ、肌の一部が露出している。

 だがボマードライバーは無事のようだ。

 

「どうして……」

「私は貴女より上に立つ人間……だから、あの攻撃くらい……受け止めて当たり前ですわ」

「ッ……」

「私は確かに、強引ですわ。勝つ為なら手段など選びませんし、受けた勝負は片っ端から受けて立ちますわ。ですが、誰にも認められずに勝っても……それはただの自己満足。私は貴女に負けを認めてもらうまで、何度だって攻撃を受け止めますわ」

 

 美咲はもう一度、ボマードライバーを操作する。

 

『BOMER DRIVE READY?』

「変身ですわ」

 

 構えてから、端末を取り付けた。

 

『COMPLETE』

 

 ゆっくりと降ってくる爆弾を、美咲は握り潰す。

 爆風の中から、再びボマーが現れる。

 

「ふざけるな……あたしは認めない! 絶対にアンタを認めない!」

 

 火炎弾を放つ怪人。

 しかし外してしまう。

 

「認められないのなら、もう一度撃ちなさい。今度は狙いなさい。そして貴女が私の上に立てばいい……でも、それを私が認めませんわ」

「くっ……ああああああああああああッ!」

 

 怪人がボマーと距離を詰め、得意の炎攻撃を何度も浴びせる。

 ボマーは避けない。

 次の攻撃からは、むしろ外れる筈のものすら当たりに行っているように見える。

 

「山内……さん……それで終わりですか?」

「ああああああああああッ!」

 

 炎攻撃から、拳に切り替える。

 ボマーの顔面に、重い一発が入った。

 だが彼女は怯まない。

 

「これで終わりですわ」

 

 顔面に拳が突き刺さった状態で、端末を操作する。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 今度はバットを構え、ボムビットがバットを囲うように出現した。

 

「ライダーインパクト……」

 

 怪人の脳天にバットを振り下ろしてから、今度は脇腹に向かって薙ぐ。

 当たった瞬間、ボマー自身を巻き込む大爆発。

 変身解除された怪人……山内がごろごろと転がってから気絶し、ボマーは多分あの爆発で死んだのだろう。

 爆風から少し遠い所で、何もない所から復活し……天を指さしていた。

 

 ――おーっ! カブトのポーズだ!

 

「えっ!」

 

 あれ自分は天国に行った的なポーズじゃないの!?

 

 



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第十八話

 

 ボマー……美咲は変身解除してから、大きな声で叫ぶ。

 

「蘇我高校の生徒に告げますわ。私はどんな手を使われても、全力で迎え撃ちますわ!」

 

 観客として見ていた生徒の一人が、美咲に近付く。

 

「やるじゃないか。〇×女子高生徒会長」

 

 厳つい顔の男だ。

 身体は大きく、俺より一回り大きい。

 そんな男が、美咲の対面に立つ。

 

「貴方は……」

「俺は蘇我高校生徒会長の……足利明人(あしかがあきと)。蘇我高校の選んだ生徒を倒すとは、やるではないか」

 

 純粋に美咲を褒め称える明人。

 美咲は少し睨んで問う。

 

「前回の一年坊主と、今回山内さんを仕向けたのは貴方ですの?」

 

 明人は目を閉じて答える。

 

「その質問については黙秘させてもらいたい。だが、二度も卑怯な手でお前に剣を向けてしまう事になったのは会長たる俺の責任でもある。詫びよう」

「詫びる必要はありませんわ。それより……私達の学校を支配下に置いて、どうするつもりですの?」

「蘇我高校は強者の集う場所。常に頂点で居続ける為に、俺達は他校を支配する。それ以外に理由はない」

 

 理屈が通じない……それが蘇我高生のめんどくさい所。

 

「なら……私も同じですわ。貴方方が自分のやり方で頂点を目指すなら、私は正面から受けて立ちますわ」

「それがお前の答えか……」

 

 明人は少し笑みを浮かべる。

 

「その心意気だけは褒めてやる。だが……」

 

『SWORD DRIVE READY?』

 

 剣型の端末を取り付ける明人。

 

『COMPLETE』

 

 天から降りてくる剣の柄を受け取ると、そこから全身が怪人の肉体へと変わっていく。

 

「はあッ!」

「変身ですわ!」

 

 咄嗟に変身し、バットで上段斬りを防ぐボマー。

 剣の怪人が問いかける。

 

「この俺の剣を前にしても、同じことが言えるか?」

「同じことを言いながら、その剣をへし折りますわ」

 

 ボマーが怪人の剣を弾く。

 

「気合と力は十分のようだな」

「そうでしょう? ここでクライマックスにしますわよ?」

 

『FINAL DRIVE!』

「ライダーインパクト!」

 

 ボムビットが回りを囲うバットを構え、それを怪人の脳天に振り下ろす。

 

『FINAL DRIVE!』

「……」

 

 対して怪人は、その場から姿を消す。

 

「どこに……」

 

 最初の一撃を外したボマー。

 そこに見えない斬撃がいくつも叩き込まれる。

 生身の人間なら即死級の大ダメージ。

 

「……」

 

 ボマーの変身が解除されてしまう。

 ボロボロになった美咲が、何とか食いしばって立っている。

 

「どうやら、今は俺の勝ちらしい」

 

 剣を振るってから、変身を解く。

 

「六角美咲……お前のその勇気を見込んでもう一度勝負を挑みたい。二週間後、蘇我高校に山内と共に来い。そこでこの戦いに決着をつける」

「望む……ところですわ。ケッチャコ……」

 

 バタッ……。

 

「美咲ッ!」

 

 美咲は気絶し、俺はすぐ様彼女に駆け出していた。

 

 



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第十九話

 

 美咲が倒れてから数時間後の夜八時。

俺はあの後すぐに目を覚ました山内と共に、彼女が眠るベッドの近くの椅子に座っていた。

 

「……」

 

 山内も、そしてあれだけの攻撃を受けた美咲も、命に別状のあるダメージはない。

 特に心配する事はないと言われたが、俺は取り敢えず起きるまで傍にいる事にした。

 

「ねえ、アンタ」

 

 隣に座る山内に声を掛けられる。

 俺の方が年上で、元とは言え教師だというのに、彼女の口の利き方は美咲に対するものと同じだ。

 

「取り敢えず……アンタ呼びやめてくれないかな……」

「じゃあなんて呼べばいい? 会長の金魚の糞?」

 

 ムカッ……。

 

「俺が好きでこいつと一緒にいると思うのか……?」

「違うの?」

「違いヤス」

「じゃあなんで一緒にいるの?」

「……」

 

 言えない。

 就職先を見つけてもらう代わりに、美咲に働かされてますなんて言えない。

 恥ずかしすぎて……。

 

「とにかく! 俺には福沢裕太っていうちゃんとした名前があるんだ! だからせめて裕太さんと呼んで

「フクでいい?」

「うう……」

 

 急にお腹が……。

 

「急に腹抱えてどうした?」

「その呼び方にはトラウマがあるからやめてくれ……」

 

 いてててて……。

 

※※※

 

「落ち着いた?」

「うん……」

 

 あったかいお湯飲んだら何とかなった……。

 

「でもさ、裕太もこんな人と一緒だと疲れない?」

「そりゃあ疲れるけど……でも、なんだかんだ最近はこいつに救われた」

「救われた?」

「ああ……色々と」

 

 決してコネで就職させてもらっただけではなく……ね。

 

「俺は美咲みたいに強くないし、度胸もない。でも……俺も彼女みたいに強い意思を持って生きてみたいって思えた」

 

 そしたらまた来年こそ……教師になりたい。

 自分の考えや経験を、ちゃんと生徒に伝えられる教師に。

 

「変わってるね、裕太も。あたしにはもう……」

 

 何かを言いかける山内。

 その時。

 

「んっ……んー……」

 

 美咲が目を覚ました。

 

「ここは……どこですの?」

「病院だよ。剣の怪人にやられた後、救急車を呼んだんだ」

「そうですの……」

 

 美咲は目を閉じる。

 落ち込んでこそいないが、悔しそうな顔をしていた。

 

「二週間後って言ってたけど……どうする気なんだ?」

「戦うに決まってますわ」

 

 彼女の意思は固い。

 だが……。

 

「勝てるのか?」

「今のままでは……恐らく無理ですの。なら方法は一つですわ」

「それは……?」

「それは……」

 

 美咲は溜めてから、告げた。

 

「修行ですわ!!」

 

 ガチャ。

 

「テメエらうるせえぞここどこだと思ってんだ!」

「……」

 

 バットタイミングだったな。

 

「うるさいですわ」

 



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第二十話

 

 数日後。

 蘇我高校科学部部室。

 

「精が出ているみたいだな、遥先公」

「……」

 

 明人の言葉に、返事はおろか、振り向きすらしない遥。

 遥は今、培養器の前で……それに繋がれたパソコンを操作している。

 培養器の中には、赤ん坊の姿が。

 

「その赤ん坊は何だ?」

「そうだな……二週間後の決戦の隠し玉、とでも言っておこう」

 

 明人はその言葉に眉を潜める。

 

「そんな話は聞いていないし、それは俺が負けると思っているという事か?」

「勘違いするな。元々私は、お前達を利用する為に来たに過ぎない。お前達の勝ち負けなど……私にはどうでも良い事だ。もしお前が負ければ、その時はこいつを使ってでも美咲……いや、誰かが白状しなければ全てを殺すかな……」

 

 光のない瞳で、遥は明人に告げた。

 

「先公、アンタが復讐とやらを成し遂げる為にここに来たのは知ってるさ。でも……俺はこれ以上、あいつらに卑怯な戦い方をさせたくない。正々堂々戦って勝ってこそ、他校を支配する価値がある。ここは俺達の学校だ……これ以上ここの生徒達をお前の卑怯なやり方に染めさせるな」

「……」

 

 遥は黙っていた。

 

「ちぃーっす!」

 

 そこに別の人物が現れる。

 軽いノリの女の声。

 

「一体何の用だ……前田(まえだ)」

「別にぃ? 面白そうだから来ただけだよぉ」

 

 ギャル風の女子生徒……前田は蘇我高校の中でも珍しい生徒と言える。

 腕っぷしはそこそこ良いが、気まぐれで協調性がない。

 統率や礼儀を重んじる明人が苦手なタイプだ。

 

「このベルトで怪人に変身出来るんだっけぇ?」

 

 前田が手にとったのは、ホースドライバー。

 全てのベルトの原型たるアーミードライバーと同じく汎用性があるベルトで、馬と常に一心同体で戦う騎兵型の怪人になる事が出来る。

 

「ここの部長でもある副会長ぉから聞いたけどぉ、今六角美咲とかって奴と戦ってるんでしょぉ? ヤらせて欲しいなぁ~」

 

 手を合わせてお願いされるが……明人は嘆息して。

 

「許可出来ん。あいつと山内には俺と俺が選んだ奴に戦ってもらう。お前の出番はない」

「ケチねぇ。でもぉ……そんなの私に関係ないからぁ」

 

『HORSE DRIVE READY?』

 

「変~身☆」

 

『COMPLETE』

 

 背後から実体のない馬が走ってくる。

 前田はジャンプしてからその馬に乗り込む。

 

「えへ☆」

 

 馬が実体化し、前田の身体が女性騎士の姿へと変わる。

 

「悪いがそっちもその気なら……」

「足利」

 

 変身しようとする明人を、遥が止める。

 

「面白い……前田、六角美咲を倒す自信があるのか?」

「分かんないけどぉ、ちょっと面白そうだなぁって」

「良いだろう。やれるだけやると良い」

「りょぉかぁい☆」

 

 前田は変身解除してから、スキップしつつ部屋を出た。

 

「何てことをしてくれたんだ」

「私の役に立つなら、何でも利用する。それだけの話。それに……もし私の探す突然変異体が美咲ではなく、お前達の中にいるなら……私はお前達の生徒だろうと容赦なく殺す」

「……」

 

 明人は拳を震わせる。

 

「どうやら……力づくでお前の野望を止めるしかないようだな」

 

『SWORD DRIVE READY?』

「……」

 

 端末を取り付ける。

 空から降りて来た剣の柄を握り、そこから明人の身体を怪人へと変化させた。

 

「それはこちらの台詞だ、足利」

 

 遥も立ち上がる。

 指揮官らしき帽子を被っている兵士……の形の端末が取り付けられたドライバーを着け、端末を操作。

 

『ROAD DRIVE READY?』

 

「変身」

 

 端末を取り付ける。

 

『COMPLETE』

 

 王者の証らしきマントが空から降り立ち、遥が纏う。

 様々な勲章を付けた軍服が、そのマントから光を伸ばし遥の身体を覆う。

 指揮官の怪人が……その場に姿を現す。

 

「さあ、始めようか」

 

 



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第二十一話

 

 先制は剣の怪人。

 武器を水平に構え、平突きで指揮官怪人の首元を狙う。

 

「遅い」

 

 指揮官怪人が回避。

 残像が残る程の速さだ。

 

「……」

「まだまだ……ッ!」

 

 剣の怪人も負けじと指揮官怪人に立ち向かう。

 だが……速さは及ばない。

 

「それがお前の限界か……」

 

 悟ったかのように、指揮官怪人は端末を開く。

 

『WARRIORS DRIVE』

 

 音声の後、何もない空間から実体のない兵士達が現れる。

 剣の怪人に五体の兵士が切りかかり、怯まされてしまう。

 

「くっ……」

 

 動けない明人に、遥は告げる。

 

「これで終わりだ」

『FINAL DRIVE!』

 

 端末を操作した後、更に多数の兵士が出現。

 剣の怪人へ一斉射撃し、そのまま指揮官怪人がトドメに大剣を振るった。

 

「ぐあッ!」

「……」

 

 剣の怪人……明人は変身解除に追い込まれる。

 

「その身体では、しばらくまともに戦う事は出来なそうだな」

「くっ……俺としたことが……」

「まあ良い。お前がいなくても、私の復讐に影響はない……。まずはあの女にボマーを消してもらう」

 

 遥は倒れた明人を放置したまま、パソコンに向き直った。

 

※※※

 

 美咲が退院し、数日後の月曜日。

 全員で仕事や学校を休み、俺達は森へ向かう。

 

「車の動きが重い……」

 

 乗っている人数は俺、美咲、山内で三人の筈。

 だがそれにしても重い……。

 まるであともう一人分乗ってるかのように。

 

「美咲、言っておくけど遠足で行くんじゃないんだからな?」

 

 荷物の積み過ぎを疑って言う。

 

「言い出しっぺは私ですからそんな事しませんわよ」

 

 の割に水着を入れた袋を抱えている。

 俺だって水着なんか持ってきてないぞ。

 そんなに泳ぎたいのなら遠泳十キロの後ランニング十キロの刑に処す。

 

「会長、泳ぎで勝負する?」

「まだ私と争う気ですの? 上等ですわ」

 

 二人とも相変わらずだ。

 

「何系? 水着勝負ならウチの出番っしょ!」

 

「「……最後の声誰だ?」」

 

 俺と山内はそう呟かざるを得なかった。

 明らかに知らない人の声ですもの……。

 

「優香(ゆうか)さん?」

「美咲っちお久!」

「いつの間に乗り込んだんですの!?」

 

 美咲の声の方向を見ると、彼女の隣に見知らぬ黒ギャルの姿があった。

 彼女が優香というのだろう。

 

「美咲っちが来週から修行とか言ってたの聞いたんよ。面白そうだからついてきた系」

「あの……取り敢えず自己紹介良いかな……」

「ん? ウチの事聞きたい系? しゃーないなあ、兄ちゃん中々イケメンだしこの後ベッドでサービス

「しなくて良いからね?」

 

 バレたら捕まるし。

 

 



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第二十二話

「私が紹介しますわ。彼女は同級生の岸本優香(きしもとゆうか)さんですわ」

「美咲っちの友達系ね! よろしこ!」

「貴女を友人にした覚えはありませんわ。このクソ〇ッチ」

「美咲っち冷たい~」

「大体今から私達は修行に行きますのよ! 遊びではないんですから、今からでも帰ってくださいな」

「嫌系」

「いい加減になさい!」

 

 うるせえ……。

 

「裕太、私助手席座っても良い?」

「先輩を優先しなさい山内さん! 私はこの人の隣は嫌ですの!」

「あ、ズルい系! ウチが行く系!」

 

「「どうぞどうぞ」」

 

 テメエらふざけんなよ!?

 

※※※

 

 もう車を止めずに、黙って森の中まで移動。

 車からキャンプ用の道具やらを取り出し、早速テントを設置した。

 

「よし、完成だ」

 

 だが問題発生。

 

「俺一人だけ男なんだけど、どうしようか」

 

 流石に女子高生と同じテントで寝るわけにもいかない……。

 テントは一つしかないし……ここは。

 

「裕太、アンタレディーファーストという言葉知ってる?」

「俺の辞書にそんな言葉は存在しない」

「何て自分勝手な辞書なの!?」

「自分勝手という言葉もない」

 

 なので。

 

「ここはそっち一人で代表者を出して、じゃんけんで決めないか?」

「男として恥ずかしくないの? アンタ」

 

 知らんな。

 

※※※

 

 というわけで、山内とじゃんけんをする事に。

 

「……」

「……言っとくけど負けないよ裕太」

「こっちこそ」

 

「任せましたわよ山内さん!」

「山内っち、頑張る系!」

「こんな男に負ける気ないから、大丈夫」

「もう話は済んだか? じゃあ行くぞ」

 

 ドキドキ……ドキドキ……。

 

「「じゃ~んけ~ん!」」

 

「「ぽん!!」」

 

 両方ともグー……。

 次はチョキで……。

 

「「あいこでしょ! あいこでしょ! あいこでしょ!」」

 

※※※

 

 じゃんけんが始まり一時間……結局決着がつかずにいた。

 

「はあ……中々やるな」

「アンタもね……」

 

「早くしてくださいな……夕飯の準備とかもあるんですのよ」

「ウチ眠くなってきた……美咲っち膝枕させる系……」

「か、勝手に寝ましたわね……」

 

 本当に何しに来たんだろ……あの人。

 

「こうなったら腕っぷしで決めない?」

「は? お前何言って

 

『FLAME THROWER DRIVE READY?』

 

「何変身しようとしてるんだ馬鹿! 俺が死ぬだろ!」

「もうこれしか方法ないでしょ」

 

 はあ……まったくこいつらは……。

 

「もういい! 俺の負けで良いから殺すな!」

「やったあ!」

「やりましたわね!」

「ん? 勝った系?」

 

 女がいっぱいいるのも良い事ばかりじゃないな……。

 

 



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第二十三話

「修行は明日からにするとして、今日の晩飯決めようぜ」

「夜は焼肉ですわ!」

 

 謎ポーズと共に宣言する美咲。

 

「カレー系!」

「カレーがいい」

「俺も」

「……どうしてですの」

 

 美咲が落ち込む。

 

「分かった分かった明日そうするから」

「アッハッハッハ!」

 

 急に笑い出したな美咲……怖え。

 

「取り敢えず俺が森の外でスーパー見つけてくるから、お前達まきを集めてくれるか?」

「了解ですわ」

「分かった」

「おけ!」

 

※※※

 

 取り敢えずカレーの材料を購入し、もう一度森へ。

 

「流石にあいつら三人でもまきはちゃんと集められたよな……」

 

 物凄く心配だが、取り敢えず大丈夫である事を祈りたい。

 もうすぐ夕方だし……。

 

「そこにいたのか」

「ん? うわッ!」

 

 俺は背後から切りかかられた。

 かすりではあるが、少し傷を負う。

 

「誰だ……?」

 

 振り向くと、そこには人がいた。

 黒いフードを被り……顔を隠している。

 

「そんな事どうでも良いだろ? 俺はお前の……福沢裕太の知らない誰か。強いてそれに答えるならそんな所だ」

 

 距離を詰め、もう一度剣を振るってくる。

 

「少しお前の顔が見たくなってな……会いに来てやったのさ」

「どういう事だ? お前は俺を知ってるのか?」

「知っている……という言葉で表せる関係ではないかもな」

 

 言葉の意味を察しようとしたが、まるでどういう関係か分からない。

 

「餞別だ……これを受け止めてみろ」

 

 刀を構える黒フード。

 俺は避ける準備をする。

 

「はあっ!」

 

 だが……避け切れず。

 刀が俺の首に近付く……その時。

 

「うわあああッ!!」

 

 咄嗟に振るった俺の拳が、黒フードの身体を大きく吹き飛ばした。

 

「これがお前の力……面白いじゃないか」

 

 黒フードは何とか立ち続けて笑う。

 

「え……」

 

 自分の実力に声も出なかった俺をよそに、黒フードは背を向けて立ち去る。

 

「また近いうちに会おう。じゃあな」

「……」

 

 フードの下に潜む瞳が、少しだけ見えた気がした。

 

※※※

 

「何だったんだあいつ……」

 

 蘇我高校の生徒かどうかは分からないが、俺を知っているような口ぶりだった。

 だが俺はあんな黒フードの男と会った記憶はない。

 それに声も、誰のものか分からない。

 

「それに……」

 

 俺自身の事も、少し気になった。

 俺は何か凄い力で、あの黒フードを吹き飛ばした。

 まるで突然変異体のように……。

 だが……俺が突然変異体なのはあり得ない。

 何せ突然変異体なら使える筈のボマードライバーはあの時使えず、俺は変身出来なかった。

 一体何が何だか……。

 

「……ッ」

 

 俺の頭が痛み……同時に一つのイメージが浮かぶ。

 

「これは……」

 

 俺が知らない場所で、急に倒れ……意識を失っている。

 最後に見たのは……俺と同じ顔の男?

 

「はあっ……はあ……」

 

 イメージはそこで終わる。

 痛みも引き……俺は木にしがみついて息を荒くしていた。

 

「俺は……一体……」

「どうしましたの?」

 

 いつの間にかいた美咲が声を掛けてくる。

 

「美咲……」

「楽になるまで少し待ちますわ」

 

 近くでそう言ってくれる美咲。

 

「ああ……ありがとう。美咲にも優しい所あるんだな……」

「優しいと言いなさいな」

 

 それは無理かな。

 

「聞こえてますわよ」

「何も言ってない!」

 

 俺と美咲のいつも通りの感じの会話で落ち着き、テントを置いた河原が見えてきたところで問いかける。

 

「美咲はさ、もし自分の記憶に迷いが生じたらどうするの?」

「どういう意味ですの?」

「どうやら俺……昔俺に似た誰かと顔を合わせて、そのまま倒れたらしいんだ。でもそんな事した覚えはないし……それに……」

「?」

「いや、なんでもない。やっぱりこの質問も無かった事にして」

 

 下を向く俺に、美咲は取り消した筈の質問への答えを告げた。

 

「私にとって、過去の記憶は所詮自分の一部。大事なのは今の自分ですわ。生徒会長として、ボマーとして、今の自分にすべき事を考える。過去は今更変えられないのですから、今見てるものを大事にすればいいですの」

 

言いながら手首を動かす。

 

「美咲……」

「大体貴方は、自分に自信がないように見えますわ。男ならもっと自信をもって、堂々と生きなさいな」

「う……うん……」

「そうでなければ、私のお供失格ですわよ」

 

 それはいっそ失格にして欲しい。

 

「聞こえてますわよ」

「だから何も言ってない!」

 

 

 



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第二十四話

 

 取り敢えず到着し、まきがちゃんと集まっているのを確認。

 やらかしそうな三馬鹿でも、まきを集めるくらいは出来ていてほっとした。

 

「そこはかとなく馬鹿にされているように感じますわ」

「気のせいだよ多分」

 

 さっきから勘が良いなこいつ。

 美咲のような勘の良いガキは嫌いだよ。

 

「あたし頭は悪くないよ?」

「何? ウチの事馬鹿にしてる系?」

 

 訂正。

勘の良い奴しかいなかった。

 

 その後全員で協力してカレーを作り、何とか一日目が終了。

 テントの中で寝ている女子三人から少し離れた場所で、俺は横向きに寝ていた。

 

「石いてえ……」

 

 せめてレジャーシート持ってくるべきだったな……。

 

※※※

 

 次の日。

 いよいよ修行開始だ。

 

「全員起きたか?」

「まだ起きてない系じゃん……裕太っちの股の

「やめい!」

 

 なんか逆に意識しちまうじゃないか!

 

「美咲と山内は?」

「まだ起きてない系」

 

 ……じゃあ起きてんの優香だけなの?

 何でこいつだけ起きてんだよ。

 

「起きるまで遊ぶ?」

「遠慮しとく」

 

 何度でも言う。

 俺の好みは清楚系のお姉さんだ。

 

「じゃあウチが着替えても同じこと言える系?」

「馬鹿やめろ何着替えようとしてんだ!」

「? この下水着系」

 

 ゑ……?

 

「下着か何も着てないと思った系? それに遊ぶって何考えてた系?」

 

 あれ……もしかして。

 

「裕太っち……ウチよりドスケベ系?」

 

 断じてねえよ!

 

「たってる系」

「ゑ!?」

「嘘系」

「これ以上からかわないでくれ……」

「嫌系」

 

 ……もう嫌だこの人。

 

「……取り敢えず皆を起こしてくれ」

「りょ!」

 

※※※

 

「全員起きたか?」

「はーい……」

「朝キツい……」

「おっす!」

 

 一番どうでも良い奴が一番元気だな。

 

「今から修行を始めるぞ。取り敢えず……何からすればいいんだろ……」

 

 てか何でコーチ俺なんだろ……今考えても不思議だけど。

 

「あ、いいこと思いついた系」

「何?」

「ウチ、高二の頃……美咲っちと一緒にアイドル大会に参加した事あるんよ」

「アイドル大会?」

 

 そんなラブ〇イブみたいな大会あるのか……。

 

「その時やってた特訓やる系?」

「面白そうね。あたし賛成だよ優香」

「……」

「美咲さん?」

「あの特訓は……嫌ですわよ……」

「へ?」

「説明よりやる方が早い系。準備する系」

 

 優香がどこかに向かって歩こうとする。

 だがすぐ足を止めた。

 

「河原に鉄骨ってある系?」

「ねえよ!」

 

 てか何やる気だよ!

 

「困った系……鉄骨なきゃ鉄骨渡り出来ない系……」

「カイ〇かこいつらは!」

「もう二度と鉄骨渡りは嫌ですわ……」

「お前まさか……」

「落ちて怪我した事ありますわ……」

 

 怪我されても困るし却下だな。

 

 



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第二十五話

 

 中々修行方法が思いつかず……最終的に俺が決める事に。

 

「裕太さんは何かありませんの?」

「そうだなあ……」

 

 俺的には思い出深いのはアレかな……。

 

「よし、じゃああれやってみるか」

 

※※※

 

 崖を登り、森の奥を見通してから……俺は石を取り出す。

 マジックペンで『裕太』と書き、そのまま石を森に向かって投げ飛ばす。

 

「とうっ!」

「……」

「……」

「これ……もしかして」

 

 俺が修行と言われて思い浮かんだものの一つだ。

 

「いいか皆、今から森に向かって投げた石を探してもらう。制限時間は無しで良いか。俺の所に先に持ってきた奴を勝ちとする……負けた奴は晩御飯抜きだぞ」

「……」

「……」

「晩御飯抜き……それはキツいね」

「なんだ美咲に優香。晩御飯抜きになりたくなければ頑張らないと……」

「いや、裕太さん。これ言っても良いですの?」

「何?」

「このネタ……もう去年やりましたの」

 

 ……うそーん。

 

「会長に優香、あたしはやるよ。アンタらどうするの?」

「飯抜きは嫌系。やるよ」

「今日の夜こそ焼肉ですわ!」

「それじゃあよーい……どん!」

 

 全員森へと駆けていく。

 

「さーて、飯の準備するか」

 

※※※

 

 数分後。

 優香は何とか、持ち前の運動神経で二人に追いついていた。

 

「ライダーと怪人って聞いたけど、大した事ない系じゃん?」

「……山内さん」

「うん」

 

 二人は端末を取り出す。

 

「「変身!」」

 

 ボマーと火炎放射器怪人へ変身する。

 

「あ! ズルい系!」

「フルバースト」

『ACCELERATE DRIVE』

 

 二人は高速移動で姿を消す。

 

「……これじゃ勝てない系……」

「そうでもないかもよ」

「?」

 

 聞き覚えのある声だ。

 振り向くと、見覚えのある少女が石を握っていた。

 

「前田っち!」

「必死になって何か探してるの見てさ、多分これだと思ったんやけどちゃう?」

「それ系それ系」

 

 優香は前田から石を受け取る。

 

「相変わらず勘が良い系……でもどこで見つけた系?」

「ここに来た時に落ちてきたんよ。マジックで名前まで書かれてたし」

「なるほど系。あざまる水産!」

「いいって事よ!」

「じゃね~」

 

 その場から立ち去る優香。

 

※※※

 

 前田は優香が立ち去ったのを確認してから、ベルトを取り出す。

 会話は全て聞いていた。

 修行で石を探しているのも知っている。

 あとは美咲と山内を探し、倒すのみ。

 

『HORSE DRIVE READY?』

 

「変~身☆」

 

『COMPLETE』

 

 背後から実体のない馬が走ってくる。

 前田はジャンプしてからその馬に乗り込む。

 

「てい☆」

 

 馬が実体化し、前田の身体が女性騎士の姿へと変わる。

 

「よし」

 

 前田は一息ついてから、森の奥へと馬を走らせた。

 

 



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第二十六話

 

 ボマーと火炎放射器怪人は組み手をしながら、石を探し続けている。

 

「また腕を上げましたわね、山内さん」

「会長もね」

 

 空中からボマーのライダーキックがさく裂。

 火炎放射器怪人はそれを難なく回避。

 

「よっと……でも、まだあたしが落ち着いてる時は攻撃読まれっぱなしね」

「うるさいですわね……読まれないようにってのが一番難しいんですのよ。大体避けるなんて卑怯ですわ」

「はあ……会長。少しは攻撃の回避とかもちゃんとやらないといつか死ぬよ?」

「それは……気に入りませんのよ。売られた勝負はちゃんと買って、必ず勝つ。それが私の流儀ですわ」

 

 ボマーは爆弾を投げる。

 しかし木に当たって跳ね返り、ボマー自身に命中。

 

「……」

 

 だがすぐに山内の背後で復活。

 

「それに私は爆発じゃ死にませんわ」

「……この人に学校任せて大丈夫なの?」

 

 自分はこの人に負けはしたから仕方ないけど、凄く心配だ。

 

「とにかく、私は何があっても攻撃は避けませんわ。避ける以外の方法で何とかしますの」

「まあ……その方が会長らしくて良いか……」

 

 色々考えたが、それでも彼女はそのやり方で結果を出している。

 今更自分がとやかく言いまくるわけにもいかない。

 それに彼女なら何とかしてくれるだろう。

 いざって時は人並外れた根性とメンタルで……。

 

「へえ、攻撃避けないのぉ? ならこの攻撃も避けないよねぇ?」

「!」

 

 ボマーの背後に、騎兵の姿。

 

「志村後ろ!」

「はあッ!」

 

 ボマーは咄嗟に、バットで攻撃を受け止め……そして押し返した。

 

「私は確かに避けませんが、簡単に攻撃を当てるなんて百年早いですわ」

「へぇ、確かに凄い根性だねぇ」

「……」

「どうしたのぉ?」

「いや、その喋り方……凄く知ってる人を思い出すからやめて欲しいんですの……」

「誰の事ぉ……? あ? もしかして優香ちんの事?」

「貴方知り合いでしたの!?」

「中学の時からズッ友だお」

「どうりでテンションが似てるわけですわ……」

「あ、今から倒すけどぉ、いいよねぇ? 答えは聞いてないよぉ?」

「まるでリュウタロスみたいな言い回しですわね……ならこっちは、最初からクライマックスですわ!」

 

 バットを構え、騎兵怪人目掛けて駆け出す。

 

「うおりゃあッ!」

「あんッ!」

 

 見事に一撃ヒット。

 

「流石ぁ、美咲ちんつをいねぇ」

「調子狂うから戦う時くらいその喋り方やめなさいの!」

「おっと、そんな事言っていいのぉ?」

 

 騎兵怪人は端末を取り出す。

 

「知ってるぅ? ギャルってケータイ打つのめっちゃ早いんだよぉ?」

 

『FINAL DRIVE!』

 

「これでぇ……どぉ?」

 

 光を纏いながら駆け出す騎兵。

 

「危ない!」

 

 ボマーの前に、突如影が現れる。

 あれは……。

 

「ぬあっ!」

「……へぇ、また止めに来たのぉ……? 会長ぉ」

 

 変身が解けた剣の怪人……足利明人が、ボロボロの身体でボマーを庇うように立っていた。

 

「これ以上……お前の好きなようにはさせない」

 

 



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第二十七話

 

「会長やっぱ面白ぉい……でもぉ、そんな身体でぇ……どうする気ぃ?」

「例え身体がボロボロだろうと……俺は蘇我高校の生徒会長に登り詰めた男だ。ハンデがある程度で勝ちを譲るわけにはいかないな」

 

 何とか立ち続ける明人。

 

「何をしているんです、足利さん!」

「お前は逃げろ。こいつは俺が止める」

「でも逃げるわけには!」

「忘れるな!! お前は俺が倒す……そしてお前の学校を貰う。だから、お前の根性とやらを俺に見せてみろ。俺にビビらなかった他校生は、お前が初めてなんだ……そんなお前を、こんなふざけた奴に倒させてたまるか!」

 

『SWORD DRIVE READY?』

 

 端末を操作し、明人がベルトに取り付ける。

 

『COMPLETE』

 

 空から降ってくる剣の柄を掴み、そこから怪人の身体へと変化していく。

 

「行け、六角美咲。強くなったお前を倒すのを、楽しみにしている」

「……分かりましたわ」

 

 美咲は拳を震わせる。

 

「行きますわよ、山内さん」

「ええ」

 

『ACCELERATE DRIVE』

「……」

 

 ボマーと火炎放射器怪人は、高速で移動し、姿を消す。

 

「あの時は逃がしたが、もうそうはいかんぞ」

「私もかぁなぁり強いから、会長じゃ勝てないかもよぉ?」

 

※※※

 

 スタートから二時間後。

 

「裕太っち~!」

「?」

「見つけた系~!」

 

 遠くから石を持って走ってくる優香の姿。

 

「お、とってきたか。二人は?」

「二人は森の奥行ったっきり見てない系」

「そうか……まあすぐ戻ってくるだろ」

 

 石を取り敢えず確認。

 

「確かにこれだな。この勝負、優香の勝ち!」

「やった系!」

 

 と話をしていると……その奥から、必死に逃げて来たと思しき二人の姿が。

 

「遅いぞ二人とも。お前達二人とも負けたぞ」

「……何の話ですの?」

「いや、石探しの修行してただろ」

「「……あ」」

 

 あ、じゃねえよ。

 

「とにかく、二人とも飯抜きだぞ」

「「しまったああああああああああああ!!」」

 

「夜は焼肉……」

「焼きマシュマロ……」

 

 ガシッ。

 

「なんだ? 俺の脚なんか掴んで」

「「うるうる……うるうる……」」

 

 ガチ泣きかよ……。

 

「まーいいじゃん。焼肉は皆で食べる系で!」

「まあ優香が今回勝者だし、それなら文句ないな……。良いよ、皆で食べようぜ」

「「!」」

 

 二人は一緒に飛び跳ねる。

 

「でも石探しの事を忘れる程の事態ってなんなんだ……?」

「あ、野生児の股の棒が

「多分違うから話さなくてよろしい」

 

 この黒ギャル……。

 

「あ、実はこういう事があったんですの」

 

 かくかくしかじか。

 

「なんだって!」

 

 



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第二十八話

 

「え~いっ♡」

「はあっ……ぬんっ!」

 

 騎兵の攻撃を、剣の怪人は何とか受け止め……弾き返す。

 騎兵は少し距離を取る。

 

「大怪我してるって割にぃ、中々やるねぇ」

「……お前程度など、ハンデがあるくらいが十分だ」

 

 剣の怪人が構えなおす。

 強烈な痛みはあるが、変身しているおかげか……多少誤魔化されている。

 

「会長ぉって凄く面白いけどぉ……飽きちゃったかな。もうこれで終わりぃ!」

『FINAL DRIVE!』

 

 馬の頭部に光が集まる。

 

「やらせるか……」

『FINAL DRIVE!』

 

 剣の怪人は姿を消す。

 今まさに突撃しようとしている騎兵が動揺する。

 

「しまっ……」

 

 呟く頃には遅かった。

 見えない斬撃が何度も叩き込まれ、システムが騎兵の攻撃を解除してしまう。

 

「とどめだ」

 

 怯んで動けない騎兵に、すかさず斬撃を叩き込む。

 騎兵は、剣の怪人の一撃で変身が解かれ、ごろごろと転がっていく。

 

「……俺の勝ちだ」

 

 ソードドライバーが自動的に変身を解除する。

 無理が祟ったのか……明人の身体を変身前よりも凄まじい痛みが襲う。

 

「……く」

 

 声も出せない程の痛み。

 何とか意識だけでもとどめようとするが、それすら明人の身体は許さない。

 

「……」

 

 明人はそのまま……気絶してしまった。

 

※※※

 

 石探しから次の日。

 例の騎兵怪人の襲撃に備えていたが特に何も起こらず。

 次の特訓を開始しようとしていた。

 

「さてと、あの騎兵怪人も来ない事ですし次の特訓をしますわよ」

 

 美咲がガッツポーズでそう告げてから、俺を一瞥する。

 多分ネタを出せと言いたいのだろう。

 

「もうレパートリーが……」

「あれでネタ切れですの?」

「いや、まああるにはあるんだけど……」

 

 牛乳配達とか手で畑耕すとか、木から出るハチの攻撃避けるとか……。

 

「竜の玉系統しかないや」

「……裕太さんに頼るのはダメみたいですわね……」

 

 てか俺を頼るな。

 

※※※

 

 数分くらい考えたが、やはり出ない。

 美咲は突然こう言いだす。

 

「特訓の内容が思いつかないなら仕方ありませんわね。今日は川で遊びますわよ!」

「「賛成!」」

 

 この人達大丈夫かな……特訓と張りきった割にいきなり遊びだしたし……。

 

「裕太さんも着替えますのよ」

「俺も!?」

 

 しかもご丁寧に俺の海パンまで……。

 

「お父様のですわ」

「人のかよ!」

 

 人の海パンとか絶対履きたくないんだけど。

 

「良いですの? 気分転換も特訓の一つですわ。思いつかないのなら、一旦リフレッシュしてから考える。それが大事ですのよ」

「まあ……確かに」

 

 俺の好きな竜の玉の仙人もそう言ってたしな。

 

 取り敢えず着替えた。

 皆はまだテントの中だ。

 

「終わったよ」

 

 まず出てきたのは山内。

 無難に赤と黒のビキニ姿だ。

 

「おー……」

「そんなに似合ってる?」

「いいと思うよ」

「……ありがとう」

 

 少し照れる山内。

 

「次はウチ!」

「うわあッ!」

 

 これは……マイクロビキニという奴だろうか。

 肌が結構露出していて……その……。

 

「たってる系」

「だからたってねえ!」

 

 流石にギャルの水着じゃ興奮しねえ! 驚いただけだ驚いただけ。

 

「私も着替え終わりましたの」

 

 最後に美咲。

 紫と白のレオタード姿。

 眼鏡を外しているからか、美少女度が上がっている……。

 

「に、似合ってるな」

「もっと褒めなさいな」

「……」

「なんですの?」

「いや、ぶっちゃけると年下の水着姿より……遥先生みたいな大人で清楚な奴をだな……」

 

 敵側なのがあれだけど、正直見た目だけならタイプだから悲しい……。

 

「じゃあ遥先生とやらに会えたら、貴方がロリコンと伝えておきますわね」

 

 なんだと……。

 

「そんな事したら、オレハクサムヲムッコ

 

 げ ん

 

 こ つ

 

「やれるもんならやってみなさいな」

「無理ですすみませんでした」

 

 




次回予告

美咲「open your eyes for the next bomer」
初「え? 何? なんで私ここに
美咲「しっ! 次回予告ですのよ、ちゃんと次の内容を話しますの!」
初「いや私十二話に出演するだけで良かった筈だろ?」
美咲「私も貴女がここに来るのは不本意ですの。良いからとっとと終わらせ……え? もう時間がありませんの?」
初「何やってんだこういうのはさっとやれさっとよ!」
美咲「次回、第二十九話! 見てくださいな!」
初「サブタイは!?」
美咲「ありませんわそんなもの。天の道を行き、総てを司りますわ!」
初「お前は地獄行きだバカモン!」


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第二十九話

 

「俺泳ぎ苦手なんだよなあ……」

「つべこべ言わずに水に入りますの」

「はい……」

 

 まだ今の季節だと少々冷たいな。

 

「大体貴方も身体を鍛えなさいな。それだから生徒達に舐められるのですわ」

「うるさいな」

 

 大体あいつら普通の不良のレベル超えてるから無理だろ……。

 でも……。

 

「……」

「まだ悩んでますの?」

「あ……ああ。まあな」

「……ライダーキック!」

「うわあっ!」

 

 美咲が急に回し蹴りで、水を飛ばしてきた。

 

「水の掛け合いなんて久々ですわ」

「やったな?」

 

 俺は全力で拳を振るって吹き飛ばす。

 

「きゃあッ! やりましたわね!」

 

 今回のは普通だ。

 ……やっぱり、あの時は偶然だったのだろう。

 

「もう考えるのはやめた。美咲、俺と勝負だ!」

「望む所ですわ!」

 

※※※

 

「てて……」

 

 明人と戦った場所よりも少し遠くで、前田は目を覚ます。

 まだ身体が痛む……それに。

 

「日付変わってるぅ……」

 

 どうやら、そこそこ長い間眠っていたらしい。

 

「まったく……女の子にも容赦ないんだからぁ……」

 

 スカートの埃を掃い、立ち上がる。

 身体は痛むが、骨折の類はしていない。

 変身すれば恐らく誤魔化せるものだろう。

 

「……」

 

 ベルトから端末を取り外す。

 

『HORSE DRIVE READY?』

 

「変~身☆」

 

『COMPLETE』

 

 背後から実体のない馬が走ってくる。

 前田はジャンプしてからその馬に乗り込む。

 

「てい☆」

 

 馬が実体化し、前田の身体が女性騎士の姿へと変わる。

 

「美咲ちんだけでも倒して帰るんだから」

 

※※※

 

 夕方。

 川から上がり、着替えようとしていたその時……。

 

「み~つけた!」

 

 川沿いの崖の上から、軽いノリの女の声。

 声の主は騎兵の姿をしている。

 

「貴女は!」

 

 まだ水着姿の美咲が遠目で彼女を見る。

 崖からなんと、そこそここちら側まで距離があるというのに河原まで飛び越え、美咲との距離を詰めた。

 

「まだ勝負ついてなかったし~、戦ってもいいよね~?」

「悪いですが、私も明人さんとの約束がありますの! 貴女の為に時間を割いてる暇などありませんわ!」

 

 さっきまで思い切り遊んでた奴の言うセリフかこれ……。

 

「へえ、そんな事言っちゃうんだぁ~。でもぉ、勝つのは私ぃ!」

 

 何かに気付いた優香が、騎兵を見て呟く。

 

「その声……前田っち?」

「そうだよ優香ちん。待っててぇ、美咲ちん倒しちゃうから」

「舐められては困りますわ!」

『BOMER DRIVE READY?』

 

 美咲は端末を閉じ、顔の左側まで移動させて構える。

 

「変身ですわ!」

 

 端末をベルトに取り付ける。

 

『COMPLETE』

 

 上空から降ってくる爆弾を掴み、爆風が起こる。

 そこから仮面ライダーボマーが現れた。

 

「行きますわよ!」

 

 バットを構え、ボマーは駆け出す。

 

 




次回予告

初「……」
美咲「どうしましたの?」
初「次回、浅井三姉妹のバカな日常……」
美咲「待ちなさいな!」
初「なんだよとっと終わらせて帰りてえんだよ」
美咲「仮面ライダーボマーですのよここは。貴女はここではモブですのよ!」
初「……」
美咲「それに何ですのそのテンションの低さは! 誰か死にでもしたんですの?」
初「いや、優香が二人増えたと思うとめんどくさそうだなって」
美咲「それは私も同感ですの……ってもう尺がありませんわよ! 前回もちゃんとできなかったんですから今回こそ」
初「次回! 浅井三姉妹のバカな日常 前田死す! デュエルスタンバイ!」
美咲「全然違いますの!」


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第三十話

 両者の実力はほぼ互角。

 両者一歩も譲らない戦いを繰り広げ、既に十分ほど経過している。

 まだお互いの手の内を晒す様子はない。

 

「まだまだねぇ……それじゃあ明人ちんには勝てないんじゃな~い?」

 

 騎兵怪人は勢いよく剣を振るい、ボマーを吹き飛ばす。

 

「私は確かに無事だけどぉ、明人ちんはあの状態で私を倒したのよぉ?」

 

 まだ続ける騎兵怪人。

 

「でも美咲ちんはぁ、まだ私に一撃しか当てられてないじゃん? それで勝てるのぉ?」

 

 ボマーの動揺を誘う気だろう。

 だが……ボマーにそれは通用しない。

 

「私は確かに、一度彼に負けましたわ。ですが……あの人は私を一目置いていた。恐らく私なら明人さんに勝てるかも知れないと、彼自身が信じているからですわ」

「へぇ? だからぁ?」

「やる前から諦めて、勝負を投げ出す程……私は弱くありませんの。今は勝てなくても、次こそは勝ってみせますわ!」

 

 ボムビットを飛ばすボマー。

 ボマーの思いが込められた、渾身の六発が勢いよく、騎兵怪人の馬へ命中。

 

「すごい度胸ねぇ」

 

 爆風で吹き飛ばされた騎兵が……馬と共に立ち上がる。

 

「でもぉ、それはこれを受け止めてから言って欲しいなぁ」

「また来ますわね」

 

 騎兵怪人は端末を取り出す。

 

『FINAL DRIVE!』

「いっくよ~!」

 

 騎兵怪人は、馬の頭に光を纏わせて突進する。

 ボマーはベルトから端末を外して操作。

 

「その突進、打ち破ってみせますわ」

『FINAL DRIVE!』

 

 脚にボムビットを纏わせる。

 

「はぁ~っ!」

 

 騎兵怪人がボマーへ迫る。

 

「ライダー……タイフーン!」

 

 先の水の掛け合いで見せたような、鮮やかな回し蹴りが放たれた。

 

「きゃぁッ!」

 

 ボマーが起こした爆発の中から、変身が解除された前田が勢いよく吹き飛ばされる。

 ゴロゴロと河原を転がるが、まだ気絶までしていない。

 爆炎から少し離れた位置で、相変わらず一度死んだボマーが……天を指さす構えをとった。

 

「へぇ……結構やるじゃん……だけど今度こそ……」

 

 端末を取り出し、再変身しようとする。

 

「もうやめる系!」

 

 優香が前田の前に立ちふさがった。

 

「何してんの? 優香ちん……邪魔」

「友達同士で争うとこ……見たくない系……」

「……」

 

 前田はベルトに手を掛けてから問いかける。

 端末を取り出そうとしているようにも……ベルトそのものを外そうとしているようにも見えた。

 

「優香ちんなら、ここで私が変身しても止める?」

「止める系……当たり前じゃん……」

 

 少し間を置いてから、笑って……。

 

「……もういいよ」

 

 ベルトを外す前田。

 

「ちょっとだけ楽しむつもりだったけど、はしゃぎすぎちゃったぁ。でもやっぱり、私には優香ちんの方が大切だし、そう言うならやめる!」

「前田っち……」

「え……」

 

 遠くで聞いていたボマーがバットを落とす。

 多分……再変身してもぶちのめす気満々だったのだろう。

 

「てか最初から優香に説得させれば邪魔されなくて済んだのか?」

「私は……こんなふざけた奴の為に力を使いましたの……?」

 

 怒りで拳を震わせるボマー。

 ボマーが変身を解除し、美咲になった彼女が前田に向かって。

 

「屈辱ですわ!」

 

 爆弾投げ。

 しかし運悪く、優香の背中で爆発する事なく跳ね返り……美咲の所へ転がってくる。

 

「ゑ……」

 

 大爆発。

 

「どうしてこうなるんですのぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

 それはこっちが聞きたいよ。

 




次回予告

美咲「……」
初「お前はいつまで経ってもそうだな」
美咲「それより私は悔しいですわ! なんでこんな初さん並みにふざけた奴の為に力を使わなければならなかったんですの!?」
初「知らねえよ! てか私はここまでふざけてねえ!」
美咲「いつも私の勝負から逃げている癖によく言いますわ」
初「だってめんどくせえんだからしょうがねえだろ!」
美咲「まったく……どいつもこいつも戦いをなめすぎですわ」
初「んで、次回の内容は? もう時間がないぞ」
美咲「ゑ!?」
初「十、九、八」
美咲「分かりましたわカウントダウンやめなさいな!」
美咲「次回仮面ライダーボマー……えーっと!」
初「はい時間切れ」


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第三十一話

 

 戦いの後……。

 流石に前田一人に夜道を歩かせるのも難なので、俺は彼女の家まで車で送る事になった。

 

「……」

「なんかぁ、ごめんねぇ?」

「あ……うん。大丈夫だから」

 

 そういえばこいつは気付いてるんだろうか。

 俺が蘇我高校を突然辞めた、あの福沢裕太だって事を。

 

「そういえばさぁ……キミフクだよねぇ?」

「うぐっ……」

 

 その渾名は……。

 

「うわぁっ! あぶなぁい……」

「すまん、急にお腹が……」

「えへへ……やっぱりおもしろぉい」

「これだから蘇我高校の生徒は……」

 

 俺みたいな新米をすぐからかうし嫌いだ……。

 

「私はもうちょっとフクと一緒にいたかったのになぁ……。顔もそこそこ良いんだし……。高校に戻ってきたら付き合わなぁい?」

「いえ戻る気ないんで結構です。それにガキに興味ない」

「たってるぅ」

「たってない」

「嘘だよぉ!」

「……」

 

 なんで俺に関わる女は皆股間をいじってくるんだか……。

 

「そんな事より、なんで美咲と戦おうと思ったんだ? 他の奴みたいに果たし状とかもないみたいだし、何か理由があるのか?」

「ないよぉ」

「え?」

「私も喧嘩好きだけどぉ、支配とかそぉいうの別にどうでも良いしぃ。それに友達の優香ちんに止められたらぁ、戦うのやめちゃうよぉ」

「とどのつまり……」

 

「暇を持て余したぁ」

「お前の」

「遊びぃ」

 

 ……こいつ以外にもこんな奴がいるのだろうか。

 

「でもぉ、いくら何でも生徒会長は堅すぎる気がするのよねぇ」

「足利明人だっけか?」

 

 俺も話した事はないが、蘇我高校の生徒の中でも……統率や喧嘩相手に対する礼儀を兼ね備え、彼に憧れて蘇我高校に入るヤンキーも多いと聞く。

 実際あの戦いの時に、彼を間近で見てそう感じた。

 

「あの人ぉ、他の人が喧嘩する時にも、やたらそういうのに厳しくてぇ……嫌になっちゃうのよぉ……」

「……」

 

 俺的には少しでもそういうのがいないとキツイんだけどなあ……。

 明人がいなかったらどうなってたんだろ。

 

「そんなの好きで良いじゃんねぇ」

「少なくともそれに俺を巻き込まないでくれ……」

 

 俺の胃腸に負荷が掛かる。

 

「そういえばぁ、なんでフクは美咲ちんと一緒なのぉ? もしかして付き合ってるぅ?」

「な、んなわけねえだろ! 俺はガキに興奮しないっつっただろ!」

「ゑ? ヤリモク? 美咲ちん可愛いそぉ……」

「こいつ……」

 

 やっぱり蘇我高校の生徒は嫌いだ……。

 

「ん……?」

 

 飲酒検問だ。

 俺は車を止める。

 

「ちょっとお兄さん良いかな?」

「はい」

「こんな真夜中に女子高生なんか連れてどこ行くの? ちょっと君怪しいから署まで来てくれない?」

「……丁重にお断りする」

 

 もうやだ。

 

※※※

 

 あ~た~らしい朝が来た。

 

「邪魔者もいなくなった事ですし、今日からまた張り切りますわよ!」

「だね」「おっす!」

 

 三人とも気合十分だな。

 

「裕太さん、何かいい修行方法ありませんの?」

「俺に質問するな」

 

 どうせ竜の玉関連の修行しか頭に浮かばないし。

 

「あ、なら裕太さんも一緒にやれる特訓がありますわよ」

「なにそれ」

「私も淀子さんに勝つ為に、たまにやってる奴ですわ」

「美咲っち、まだ淀っちに勝つ気だった系?」

「当たり前ですわ。いつか倒しますわ」

「淀子って……あの浅井淀子? それに勝つ為の特訓って……」

「多分アレ系でしょ。分かる分かる」

 

 優香は分かったらしい。

 

「それは」

「「それは?」」

「それは……」

 

 美咲は間をおいてから。

 

「次の話に入ってから言いますわ」

 

 メタいな。

 

 




次回予告

初「しくしく……」
美咲「何故泣いてますの!?」
初「いや、お前達にからかわれたり、蘇我高校の生徒達にボコボコにされてきた裕太を見てると可哀想でつい」
美咲「私のお供なんですから、もう少し鍛えて貰わなければ困りますわ」
初「やめろ裕太のライフはもうゼロに近いぞ」
美咲「限界突破しなければいつまで経っても弱いままですわ!」
初「お前管理職に向いてるな」
美咲「当たり前ですわ」
初「悪い意味で」
美咲「どういう意味だゴラ!」
初「久しぶりに口調が荒れたな……ってまた予告出来てねえし」


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第三十二話

「鬼ごっこですわ」

「は?」

 

 なんて?

 

「鬼ごっこですわ」

「何が?」

「だから特訓ですの」

「え……?」

 

 ふざけてんのか?

 

「ふざけてませんわよ」

「いやいや、何言って……」

「まあ聞けば分かりますわよ」

「ホントか?」

 

 怪しいな。

 

「取り敢えず、ルールは一つ。目つぶしと股間への攻撃以外何でもありで、鬼を倒せば終わりですの。鬼は逆に、逃げてる人を倒しますの」

「へ……? つまりどういう事?」

「それ以外なら、何をしても良い系。爆発物を置いても、ナイフで刺しても良い系!」

「怖いよ!」

 

 やはり俺の想像力が足りなかったらしい。

 

「てかこれ考えたのは……浅井淀子だよね?」

「そうですわ」

 

 生きてるうちに会いたくないな。

 ワンチャン蘇我高校の生徒が可愛く見えてくるレベルかも知れない。

 

「その通りですわ」

 

 やっぱそうみたい。

 

「てか思ったんだけどさ、これお前たちの事だからまた元ネタか何かあるの?」

「知らないですわ」

 

 まあ良いか。

 

「それじゃあ鬼決めますわよ。と言っても、じゃんけん以外ですわ」

 

 まだあの時の事があるからな。

 

「ウノで決めない?」

「何で持ってるの……」

「こういうのやりたかったからノリノリで……」

 

 まさか。

 

「うるさいわねえ。あたし中学の時なんて友達いなかったのよ!」

「まだ何も言ってないし……」

 

 しかもそこまで考えてない……。

 

「とにかく好都合ですわ。ウノで負けた人を鬼にしますわよ」

 

 気合十分の美咲。

 

「じゃあやろっか」

 

 山内がカードのシャッフルを始める。

 見た感じ……かなり手慣れているように見えた。

 

「じゃあゲームを……」

「待って欲しいですの。こういうのを始める前にやるべき事がありますわ」

「何それ」

 

 美咲と優香が手を挙げる。

 俺と山内もそれに倣って真似をした。

 

「「盟約に誓って(アッシェンテ)!!」」

 

 ノゲノ〇かよ!

 

※※※

 

「どうしてですのぉ!」

 

 負けたのは美咲だ。

 まあでも良かった。

俺が鬼だったら誰もタッチ出来ずに終わってた所だ。

 

「しゃー!」

 

 因みに一位は山内。

 中々強かった。

 

「てか強いな山内」

「鍛えてるからね。いきがるだけの半端な強さじゃ、あたしに勝てないよ」

「ぐぬぬ……いつかウノでも貴女に勝ってみせますわ」

「へえ、じゃあもう一度

 

「やり始めるなしまえ馬鹿!」

 

「「そんなあ!」」

 

 こいつらホントに何しに来たんだ……。

 

※※※

 

 というわけで……鬼ごっこという名のデスマッチが開幕。

 

「つか、俺相手に変身したりしねえよな……?」

 

 アクセル使われたら終わりだし。

 

「うわあッ!」

 

 俺は何かに吹き飛ばされる。

 

「なんだ……?」

「私ですわ」

 

 ボマーではない、変身していない六角美咲が近くでバットを構えて立っている。

 

「変身してなかったから良かったけど……バットも無しだろ……」

「何しても良いんですのよ。何なら変身しても」

「やめて」

 

 死んでしまいます。

 

「私のお供なのに弱すぎては困りますわ。だから今この場で鍛えますわよ」

「んな無茶苦茶な」

「私がやると言ったらやりますの! ほら構えなさいな!」

「ど、どうなっても知らないからな!」

 

 十中八九俺が負けそうな気はするけど。

 

「行きますの!」

 

 バットを構えた美咲が俺に襲い掛かる。

 

「ていっ!」

「ぐあっ!」

 

 俺は躱せずに吹き飛ばされてしまう。

 

「ああッ……」

「目を閉じては相手の動きが見えませんわよ! しっかり相手の動きを見て、受け止めるんですの!」

 

 そんな度胸があるのはお前だけだよ!

 

「もう一度行きますわよ!」

「ねえ、これ誰の特訓!?」

 

 俺鍛える必要ある!?

 

「つべこべ言わずに受け止めますの! 気合ですわ!」

「気合じゃ無理だああああッ!」

 

 その時、不思議な事が起こった。

 

「……!」

 

 頭の中に……一つの声が聞こえた。

 

『あの女を……殺せ』

 

 その言葉が聞こえてすぐ……何故か俺の意識が閉じてしまった。

 

※※※

 

 突如、電源が抜けたように項垂れる裕太。

 

「……」

 

 それを見た美咲が動きを止め、声を掛けた。

 

「どうしましたの? 裕太さん?」

「……狩野遥の仲間と断定。お前を排除する」

 

 裕太の口からそう声が漏れる。

 

「え? うわあっ!」

 

 美咲の腹に、重い拳が入った。

 何とか意識を保ち、バットを構えなおす。

 

「どういう事か分かりませんが、やっとやる気になったようですわね」

 

 口から垂れた唾を左腕の袖で拭い、もう一度駆け出した。

 

「たあッ! ていッ!」

 

 全て見切られ、攻撃を避けられる。

 

「避けてはいけませんのよ! ちゃんと受け止めなさいな!」

 

 攻撃を避ける裕太に、美咲は何度もバットを振るう。

 

「この程度か……」

 

 裕太は美咲のバットを蹴り上げ、手から離させる。

 

「そんな……」

 

 美咲は少し動揺する。

 

「終わりだ」

 

 裕太はそう告げて、美咲の首を手でつかんで地面に叩きつけた。

 

 

 




次回予告

初「美咲、お前馬鹿か」
美咲「始まって早々なんですの?」
初「姉さんの鬼ごっこを優香はともかく、裕太と山内巻き込むなよ。可哀想だろ?」
美咲「鍛える為ですわ」
初「他に方法あるだろ……てかお前大丈夫か? 裕太に殺されそうだけど」
美咲「大丈夫ですわ。私はこの小説では主人公、主人公補正だって当然……」
初「お前の場合逆主人公補正で自爆してるから無理じゃね?」
美咲「うるさいですわ!」
ポイッ! ドーン!
初「ほらな」
美咲「何故ですの! 何故私に主人公補正は働かないんですの!?」


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第三十三話

 

「か……はっ……」

「……」

 

 段々と締め付ける力が強くなっていく。

 頭から血が引き、寒気が支配する。

 美咲は何とかしようとするが、身体に力が入らない。

 

「会長!」

 

 それを見かけた山内が近付き、火炎放射器怪人へと変身する。

 

『COMPLETE』

 

「お前もか……」

 

 美咲の首から手を離し、火炎放射器怪人に相対した。

 

「フルバースト」

 

 高速移動し、裕太の背後に回る。

 威力を弱めて、うなじを軽く叩く。

 

「くっ……」

 

 裕太を気絶させる事に成功し、変身を解く。

 

「大丈夫? 会長」

「借りが出来てしまいましたわね」

「そうね」

「山内さん」

「何?」

「何故私から距離を取りますの?」

「え? だって、アンタ鬼でしょ? この隙にタッチとか

「そんな卑怯な事しませんの!」

 

※※※

 

「うう……」

 

 うなじが痛む……。

 確か俺は、鬼ごっこで美咲と遭遇して……。

 

「起きましたのね」

「……」

 

 俺は上体を起こす。

 

「鬼ごっこはどうなったんだ?」

「私が裕太さん以外を全員タッチして終わりましたわよ」

「そうか……ん? 俺以外?」

 

 そういえば。

 

「俺はどうして寝てたんだ?」

「覚えてないんですの?」

「え?」

「項垂れたと思ったら急に私の腹に拳をぶち当てて、私を殺す気で暴れだしたんですのよ?」

「そ、そうなの?」

 

 思い出そうとしてみるが、そんな記憶はない。

 急に意識が閉じてからの記憶がない。

 

「すまない、思い出せない……」

 

 取り敢えず美咲に頭を下げる。

 

「良いですのよ。結果死ななかった事ですし」

「……」

 

 俺は黙り込む。

 黒フードに会ってから、俺は自分が分からなくなり始めた。

 そして今も、俺が知らない間に美咲を殺しかけていた。

 気にするなと美咲に何度も言われたが、今回ばかりは出来そうもない。

 

「私なら大丈夫ですの。もし次暴れだしたら、私が力づくで止めますわ」

 

 自信満々な顔で、俺にそう告げる。

 

「ああ、そうしてくれ」

「さあ、夕飯の支度をしますわよ。また買い出しを頼みますわ」

「え、あ、うん」

 

 俺は言われるがまま立ち上がる。

 そのまま車まで向かおうとするが、一旦美咲に呼び止められた。

 

「これだけは言わせなさい」

「な、何?」

 

 口元を少し緩める美咲。

 

「やれば出来るじゃないですの」

「ほ、褒められても困るな……」

 

 ※※※

 

 結局あの力もしばらく発現せず……修行の日々が続き。

 美咲と明人の戦いから丁度二週間後。

 ついに約束の日がやってきた。

 

「……いよいよ決着の時ですわね」

 

 蘇我高校。

 懐かしいような、もう二度と来たくなかったような、複雑な気分でいっぱいな学校の門を再び潜る。

 また胃痛に襲われそうになるが、美咲が肩に手を乗せて来た。

 

「私がいますわ。もっと堂々としてなさいの」

「お、おう」

「へー、ここが蘇我高校ねえ」

「ウチも初めて来た系」

「優香も来てたのか」

「もう関わった以上、ウチも部外者じゃない系じゃん?」

「そう……なのか?」

「細かい事気にしちゃダメ系ダメ系」

 

「ようフク」

「ギクッ!」

「女連れか? 観客席はあっちだぜひっひっひっひっ……」

「裕太っち大丈夫系?」

「やっぱり無理系だなこれは」

 

 俺の前に立ち、その生徒に美咲が問う。

 

「控室はありませんの?」

「お前が仮面ライダーだっけか。あっちだぜ」

「分かりましたわ。山内さん行きますわよ」

「ええ」

 

 美咲は山内と共に、控室に向かう。

 

「負けなるよ、美咲!」

 

 ギロッ!

 

「ううう……」

 

 生徒に睨まれた。

 

 

 

 




次回予告

美咲「ふう、いよいよ決戦ですわね」
初「やべえ裕太じゃねえけど胃が痛くなってきた」
美咲「何故ですの!?」
初「だってこれ本編知らない人からしたら、頼もしい生徒会長ライダーかもだけど、普段のお前を知ってる私からしたらお前自爆テロ(笑)の常習犯だから、そんな奴に学校を任せたくねえ」
美咲「私は六つの大陸の角で美しく咲く花ですわ! 私に負けの二文字はありませんわ!」
初「除草剤撒いて良いか?」
美咲「浅い井戸に初めて頭突っ込む女って呼びますわよ」
初「お前段々厨二臭くなってんぞ」
美咲「てか予告しますわよ予告!」
初「やべ時間ねえ! 次か


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第三十四話

 

 生徒の指し示した方に向かい、俺と優香は体育館の観客席に。

 

 ――蘇我高校! 蘇我高校! 蘇我高校!

 

 山内戦の時と違い、今度はこちら側が完全アウェイ。

 

「蘇我高系! 蘇我高系!」

「冗談でも便乗しないでやれ……」

 

 縁起でもない。

 

「さて、相手はどういう奴が来るんだ?」

「これに書いてある系じゃん」

 

 どうやら優香がどこかで選手表みたいなものを貰ったらしい。

 見せてもらうと。

 

「あれ……?」

 

 〇×女子高側には、美咲と山内の名が書かれている。

 だが蘇我高校の選手名に、足利明人の名がどこにもない。

 怪我が治らなかったのだろうか……しかし。

 

「あの……」

 

 勇気を出して前の席の生徒に声を掛ける。

 

「なんだよ」

「明人はいないのか?」

「明人さんなら行方不明だよ。だから狩野遥先公が選んだ名前の奴が、〇×女子高の代表二人を纏めて相手するみたいだぜ」

 

 生徒はそう告げて前へ向き直った。

 確かに蘇我高校側に書かれている人物の名は一つのみ。

 その名前は。

 

「ヴィーダ?」

 

 少なくとも日本人の名前ではなさそうだ。

 それにこの学校に外国人がいた記憶もない。

 俺が辞めた後に転校でもしてきたのだろうか。

 

「おっ、そろそろ始まる系!」

 

 優香に言われ、俺もフィールドを見る。

 体育館の入場口から、美咲と山内……そして。

 

「あれがヴィーダ?」

 

 アッシュブラウンの髪に、水色の瞳。

 制服姿ではなく、水色のワンピースを着た……女子高生でもなく、幼女。

 年齢を高く見積もっても、小学校高学年くらいだろう。

 どことなく、雰囲気が遥に似ている。

 

 ――おい、子供?

 ――誰のだよ。

 ――あんなのが俺達の代表?

 ――ふざけてんのか!

 

 流石の蘇我高サイドからも、ブーイングの嵐。

 

「静かに」

 

 フィールドにもう一人現れる。

 科学部顧問……狩野遥だ。

 

※※※

 

「ヴィーダを見た目だけで判断されては困るな。悪いがこいつは、お前達の誰よりも強い」

 

 遥は光のない眼でそう言い切る。

 観客席からのブーイングが止み、遥が少し離れた位置へと移動した。

 

「変身用意!」

 

 審判の指示に、美咲と山内、そしてヴィーダが従い……ベルトを装着する。

 美咲は爆弾の紋章型の端末がついたボマードライバー。

 山内は火炎放射器の端末のフレイムシャワードライバー。

 そしてヴィーダは……少し二人とベルトの形が違う。

 黒い武骨なバックル。

そしてその右側面に、何かの差し込み口らしきものがある。

 実際ヴィーダが、そこに差し込んで使うのであろう……奇抜な槍の形をしたアイテムを握っていた。

 二人が試合開始前に会話していた。

 

「二対二の筈……聞いてませんわよ」

「まあ良いじゃない。これで勝てば終わりよ」

「二対一は気乗りしませんの」

 

 あくまで平等な条件での勝負を好む美咲は、少し不満げな表情。

 しかしヴィーダは違う。

 あんな幼い子供の見た目をしていながら、二人を真剣な眼差しで見つめる。

 

「行きますわよ山内さん」

「分かってる」

 

 二人は端末を取り出し、DRIVEボタンをクリック。

 

『BOMER DRIVE READY?』『FLAME THROWER DRIVE READY?』

 

 美咲は端末を閉じてから、右手を顔の左側で構える。

 山内は静かに端末だけ閉じてから言う。

 

「「変身(ですわ)!」」

 

 二人は端末を取り付ける。

 山内を炎のエフェクトが包み、美咲の頭上から爆弾が一つ降ってくる。

 美咲は爆弾を右手で握り潰し、爆風が生まれた。

 炎と爆風の中から、二人の戦士が現れる。

 火炎放射器怪人、そして仮面ライダーボマー。

 

「ヴィーダ……ママノテキ、ヤッツケル」

 

 片言の日本語で、ベルトのスイッチらしきものを起動するヴィーダ。

 

『GUNGNIR ON』

 

 バックルの中から、待機音が流れる。

 ヴィーダは一度目を閉じてから、槍型のアイテムを上に投げ、もう一度キャッチ。

 

「ヘンシン」

 

 挿入口に差し込む。

 

『CHANGE』

 

 どこからともなく、上空から魔法陣が出現し……そこからアイテムと同じ形をした槍が現れる。

 ヴィーダはその柄に向かって手を伸ばし、掴み取った。

 

「……」

 

 ヴィーダの姿が、掴んだ手の部分から変わっていく。

 水色と白を基調としたライダースーツに、水色の複眼の顔。

 美咲とは違うが、怪人というよりかは仮面ライダーよりの姿だ。

 

「ヴィーダ……グングニル。カメンライダーグングニル」

 

 ヴィーダも片言で、自分の戦士としての名を名乗る。

 

 




次回予告

美咲「そろそろネタが尽きましたわね」
初「いよいよまともに次回予告する時が来たのか」
美咲「いや次回予告がまともに出来てないのは貴女のせいですわ」
初「次回浅井三姉妹のバカな日常」
美咲「隙あらば乗っ取ろうとするのやめなさいの!」
初「だって本来私出る必要ねえのにわざわざ呼ばれてんだぞ、やる気なんて起きるわけねえだろ」
美咲「やる気出しなさいの」
初「無茶言うな。次回浅井三姉妹のバカなにchi
美咲「しつこいですわ!」
ヒューッ! ドン!
初「……次回もお楽しみに」


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第三十五話

 

「グングニル……いい名ですの。私は仮面ライダーボマー。戦わせて貰いますわよ!」

 

 互いに名乗り終えた後、審判が開始の合図を出す。

 

「始め!」

 

 グングニルが開始と同時に動き出した。

 それも消えるように。

 

「ぐおッ……」

 

 何と火炎放射器怪人を、手持ちの槍も使わずに素手……それも左拳でダウンさせた。

 

「山内さん!」

『ACCELERATOR DRIVE』

 

 ボマーは奥の手の筈のアクセルドライブまで使用し、グングニルに相対する。

 グングニルも超加速でそれと互角にやり合う。

 どちらの動きも、俺達の眼には止まらない。

 

「コレデ、オワリ」

『GUNGNIR FINAL DRIVE』

 

 姿を現したグングニルが、魔法陣を上空へ。

 そこから無数の槍が放たれる。

 

「させませんの!」

 

 ボムビットで迎え撃つ。

 だが数本が残り、ボマーの身体を霞めた。

 

「くっ……」

 

 腕を押さえるボマー。

 

「スゴイネ」

「馬鹿にされては困りますわ……」

 

 バットを構え直す。

 さあ来いと言わんばかりに、予告ホームランの構えを取る。

 

「オモシロイ……ショウブ!」

 

 グングニルが再び超加速。

 ボマーはグングニルの動きに視線を集中する。

 

「集中……集中ですわ!」

 

 ボマーの近くで、空気が震えた。

 

「はあッ!」

 

 攻撃を見切り、ボマーは大きく吹き飛ばす。

 超加速で姿を消していたグングニルが、ごろごろとフィールドを転がる。

 

「特訓の成果ですの!」

 

 なのかな?

 反射神経を鍛える訓練をした覚えはないんだけど……。

 

「ナカナカ……ヤルネ」

 

 グングニルが立ち上がる。

 見た感じ、まだまだ余裕そうだ。

 

「デモ、ヴィーダ、マダホンキチガウ」

「良いですわよ。本気とやらを見せなさいの」

 

 ボマーがバットを構えつつ挑発する。

 

「イイヨ……」

 

 そう告げたグングニル。

 すると……その身体が五つに分裂。

 高速移動で分身を作ったのだろうか。

 

「これは……」

『GUNGNIR FINAL DRIVE』

 

 上空にグングニルの数だけ魔法陣が出現。

 先の攻撃と同じように、そこから無数の槍がボマー目掛けて射出される。

 

「流石に無理ですわ!」

 

 ボマーが呟く。

 咄嗟にボムビットを出現させ、爆発させる。

 爆発に巻き込まれたボマーが、爆風から少し離れた場所で出現した。

 突然変異体としての能力。

 

「ソレガ……ノウリョク……」

「私に攻撃を回避させるなんて、貴女中々やりますわね」

 

 ボマーの戦闘スタイルは、相手の攻撃を回避せず、全て受け止めて弾き、その上で倒す事で相手に強さを認めさせるというもの。

 実際火炎放射器怪人との戦いでは、そのやり方もあって、山内との和解に成功した。

 確かに初めてだ。

 その戦い方を決して曲げなかったボマーに、回避行動をとらせた人物は。

 

「認めますわ。今の貴女は私より強いと……でもだからこそ、私は今ここで貴女を超えてみせますわ!」

「?」

 

 グングニルは首を傾げる。

 ボマーは武器を構え直し、今度は自ら駆け出す。

 

「今度はこっちから行きますわよ!」

「ショウブ……」

「はあッ!」

 

 頭上に向かって、バットを振り下ろすボマー。

 

「オソイ……」

 

 超高速で……グングニルがその攻撃を回避する。

 

『ACCELERATOR DRIVE』

 

 そこで咄嗟に、ボマーは端末を操作した。

 

「これなら!」

 

 人間の常識を超えた速度で移動し、グングニルの脇腹に一撃を浴びせる。

 

「ウワッ!」

 

 グングニルが吹き飛ばされた。

 

「これで二撃目……ですわ」

 

 バットを構えなおし、ボマーはもう一度立ち上がるグングニルに向き直る。

 

「もう一度分身でもしてみなさいな」

「……ッ!」

 

 高速移動で分身するグングニル。

 先と同じように、ボマーへと必殺技を放つ。

 

『GUNGNIR FINAL DRIVE』

 

 ボマーは一歩も動かない。

 意識を集中させ、バットを構える。

 

「全て受け止めて弾きますわ」

 

 あの無茶な槍の弾幕に対し、そう宣言。

 槍が魔法陣から一斉射出される。

 

「はあッ!」

 

 今度のボマーは全て見切り、バットを高速で動かして受け止めた。

 意地でも回避しようとしないボマーは、気合だけであの攻撃を耐えてみせる。

 

「これで……どうですの?」

 

 ボマーは構え直す。

 どんどん来いと言わんばかりの気合を感じる。

 

「ナカナカヤルネ……ナラ、コレハドウ?」

 

 グングニルが取り出したのは、玩具の銃だ。

 

「そんな玩具の銃で、私を倒す気ですの?」

「……」

 

 構わず胸に向かって発砲するグングニル。

 ボマーは避けずに立っていたが……。

 

「あ……れ?」

 

 ボマーの胸には、実際の銃で撃たれたのと同じ穴が空き……そこから血が流れた。

 

 




次回予告

初「死亡フラグ立てたなお前」
美咲「面目ありませんの」
初「お前次回どうする気だよ」
美咲「浅井三姉妹のバカな日常の次回予告はやらせませんわよ」
初「お前が死んだらそうして良いか?」
美咲「まだ終わらせませんわよ! 出来ればあと数か月くらい続けたいですわ!」
初「ゑ? てことはお前との茶番をあと数か月分も考えなきゃいけねえのか!?」
美咲「茶番じゃなくて次回予告ですわ!」
初「お前がそう思うんならそうなんだろ。お前の中では」
美咲「とにかくまだ終わらせませんわ! 次回、美咲死す……って誰ですのこれ書いたの!」


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第三十六話

 

「美咲!」

「美咲っち!」

 

 観客席から思わず叫ぶ。

 

「コレ、ヴィーダノホンキ。ヴィーダノノウリョク」

 

 グングニルの能力は多分、触れたものに殺傷能力を与える……といったところか。

 それなら、コルクの弾が物理法則等を無視して美咲の胸を貫く事も納得がいく。

 

「コレデ……オワリ。オマエ、シヌ」

 

 ボマーを油断させ、その隙をついて殺害する気だったのだろう。

 

「私の負け……ですわ。貴女の力は、私の予想を遥かに超えていた……二対一にも関わらず負けて悔しいですわ」

 

 変身が解除される前に、端末を取り出すボマー。

 どうする気なのだろうか。

 

『EXPLOSION DRIVE』

 

 朱色の光を纏ったボマーが、最後の力を振り絞り駆け出す。

 

「ですが死ぬわけにはいきませんの。いつか貴女を超える為、ここは一度引き分けで終わらせますわ」

 

 グングニルにしがみつき、カウントダウンが始まる。

 

『3、2、1』

 

 周囲の景色が白く輝く。

 

『EXPLOSION TIME』

 

 その瞬間、ボマーのボムビットによる爆破を超えた爆風が空間を支配した。

 グングニルの変身が解除され、ヴィーダに戻された彼女が場外へ吹き飛ばされる。

 ボマーはあの爆発に飲み込まれた。

 

「……」

 

 爆発が収まった頃、ステージの中央に……倒れた美咲の姿があった。

 ヴィーダと美咲、二人の状態を見た審判が、美咲に軍配を上げる。

 

「システム解除! 勝者、六角美咲チーム!」

「よし!」

「やった系!」

 

 他の生徒の目も憚らず、俺と優香がガッツポーズ。

 美咲も何とか身体に力を入れて、立ち上がる。

 

「……何とか、倒す事だけは出来ましたの」

 

 美咲としては認めがたい……辛勝ではあるが、これでやっと終わった。

 長い戦いが……。

 

「なに? 終わったの?」

 

 山内も起き上がり、美咲の肩を借りる。

 

「終わりましたわよ。勝ったとは言えませんが……」

「どうでも良いわよ。過程は見れてないけど、勝ったんでしょ?」

「……ええ」

 

 美咲はヴィーダを一瞥してから近付く。

 

「私はあれで勝ったなんて思ってませんわ。次こそは貴女の全てを打ち破ってみせますわ」

「ミサキ……」

 

 ヴィーダも美咲の手をとる。

 

 ――いい戦いだったぞ!

 ――美咲! 美咲!

 ――ヴィーダ! ヴィーダ!

 

「ふざけるな!」

 

 その一声で、場の空気が変化した。

 声の主は……狩野遥。

 ベルトを着けて、フィールドに現れる。

 

「……」

 

 美咲を睨みつける遥。

 美咲はそれに対して呟く。

 

「私もあの勝ち方に、納得はしてませんわよ。今はこうするしかありませんでしたが、次こそは必ず真正面から全て

「そんな事はどうでも良い……ヴィーダ! 何故負けた! お前に与えた力なら、必ず六角美咲を倒せた筈だ!」

 

 あの時俺を震え上がらせた、冷静沈着で残忍そうな科学者の姿はない。

 そこにあるのは、何というか……子供を叱る母親にようにも見えた。

 

「ママ……ゴメン」

「もういい……下がってなさい。そいつは私が殺す。私の仇と思える奴は全て殺す。誰にも邪魔はさせない!」

『ROAD DRIVE READY?』

「変身!!」

 

 端末を取り付ける。

 

『COMPLETE』

 

 王者の証らしきマントが空から降り立ち、遥が纏う。

 様々な勲章を付けた軍服が、そのマントから光を伸ばし遥の身体を覆う。

 指揮官の怪人が……その場に姿を現す。

 

 




次回予告

美咲「……悔しいですわ」
初「まだ言ってんのか」
美咲「不意打ちでしか勝てないなんて、私もまだまだですわね」
初「いやお前言うけどよ、お前本編で戦闘準備出来てない私に向かって爆弾投げてたけどあれはどうなんだよ」
美咲「それはそれ、これはこれですわ!」
初「次回、浅井三姉妹のバカな日常」
美咲「しつこいですわ!」
初「お前がどんだけカッコいい台詞言おうが、私はお前のオバカな行動忘れてねえからな!?」
美咲「だ、誰が馬鹿ですって! あーもう次回予告する時間がありませんのぉ!
待て時間! おい逃げるのか!」
初「素が出てんぞ素が」


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第三十七話

「はあああああッ!」

「変身ですわ!」

『COMPLETE』

 

 ボマーも変身して迎え撃つ。

 剣による攻撃をバットで受け止め、弾き返す。

 

「かなり重いですが、さっきに比べれば大した事ありませんわね」

「黙れ黙れ黙れ!」

 

 端末を操作する指揮官。

 

『WARRIORS TRIPLE DRIVE』

 

 沢山の実体のない兵士達が、ボマー目掛けて駆け出していく。

 

「ボムビット!」

 

 六つのボムビットを飛ばし、兵士達の前へと着弾させ爆発。

 兵士は全て無に帰した。

 

「……こいつ……」

 

 目を丸くする指揮官。

 

「私は頂点を目指す者。半端な強さで倒そうとするなんて甘いですわ」

「私が……半端? 違う。違う違う違う! 私があいつの仇を討つ! お前はその為に死ななければならない!」

「来るなら来なさい。私が真正面から破壊しますわ」

 

 ボマーがバットを構える。

 指揮官も剣を構え、叫びながら立ち向かう。

 

「はああああああッ! せいッ!」

 

 指揮官が振るう連続剣を、ボマーはバットで受け止めて弾く。

 最後の全力刺突も受け止めて押し出し、隙を作る。

 

「そこですわ!」

 

 ボマーがバットを使って、指揮官の腹へと突き刺す。

 指揮官が大きく吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

「何故だ……何故私の攻撃が通用しない……」

 

 上体を起こしながら呟く指揮官。

 

「そんな筈が……そんな筈ない!」

 

 剣を手に、もう一度地を蹴った。

 

「終わらせますわ。この戦いを……」

 

 ボマーが端末を取り出し、ボタンをクリック。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 ボムビットをバットの周囲に展開し、野球選手の如く構える。

 

「うおおおおおおおおおッ!」

 

 ボマーに近付く直前で、指揮官も端末を取り出してボタンを押す。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 兵士達が指揮官の前に出現し、一斉射撃。

 同時に指揮官も大剣を振り下ろそうとするが。

 

「ライダーインパクト!」

 

 大きく振られたバットが、ボマー自身を巻き込みそうな程強い爆炎と共に、全てを吹き飛ばす。

 指揮官は変身解除され、フィールドにもう一度叩きつけられる。

 

「ママ!」

 

 近くで見ていたヴィーダが、指揮官……遥へ近づく。

 

「……」

 

 ボマーも変身解除。

 

「どけ!」

「ワッ……」

 

 自分の身体を持ち上げた遥は、ヴィーダを払いのけて口を開く。

 

「こんな事があってたまるか……私は負けるわけには……」

「その負けは、きっと貴女をより強くしてくれますわ」

「は……」

 

 美咲が呟く。

 

「人は負ける度にまた強くなれますの。負けて負けて負け続けて、そして人は簡単に負けない力を手に入れる」

「負けが、私を強くするだと? ふざけるな! 私は失敗した。私があいつの傍にいなかったせいで、あいつを守れなかった! 失敗する度強くなる? 一度の失敗で、人は多くを失う事だってあるんだぞ!」

「ならその失敗を、決して否定してはいけませんわ!」

「……!」

「貴女がその人の為に戦えたのなら、貴女は既にその失敗から学べていますの。何故私達の学校を狙うのか、それは分かりませんわ。でももし、私に挑む事で貴女に得があるというなら、私は何度でも相手になりますわ」

「……」

 

 遥は涙を流す。

 近くにいたヴィーダが、頭を撫でて慰める。

 

「六角美咲……」

 

 遥が何かを伝えようとした。

 しかしその時……。

 

「!」

 

 突如、フィールドの明かりが消える。

 

 




次回予告

初「なあ聞いて良いか?」
美咲「何ですの?」
初「お前ライダーだよな?」
美咲「はい」
初「なんでライダーキックの使用率低いんだ?」
美咲「……初さん」
初「なんだよ」
美咲「流石ににわか過ぎますわよ」
初「そ、そうなのか?」
美咲「ライダーもライダーキックばかりではありませんの。武器持ちライダーも増えて、武器での技が中心になっているんですのよ」
初「平成ライダーあんま見た事ねえから分かんなかったわすまん」
美咲「今から私の家へ連行しますわ」
初「は?」
美咲「今からラーニングさせますの」
初「おい今から先輩とデートなんだ邪魔するなああああああああッ!!」


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第三十八話

「停電か?」

「裕太っち離れちゃダメ系!」

 

 優香に捕まれる。

 

「ここで終わりだぜ? 狩野遥ぁ!」

 

 聞き覚えのある声。

 そして何かが突き刺さる音が響く。

 

「ぐっ……」

 

 遥の呻き声まで聞こえた所で、ようやく電源が回復する。

 フィールドに新しく人が増えていた。

 言うまでもなく……俺にこの前切りかかった黒フードの男だ。

 何かのスイッチを握っている。

 

「最後の悪あがきの為にこんなスイッチまで用意してたみたいだが……残念。こんな雑魚共じゃ俺の相手にならない」

「裕太っち、周り見る系!」

 

 俺は黒フードと優香の言葉で、周りの状況に気付く。

 観客だった生徒達が全員、ベルトを着けていないのに、アーミーや他の怪人に変えられていた。

 そして全員理性を失っている。

 原理は不明だが、あのスイッチが関係しているのだろうか。

 

「うわあッ!」

「取り敢えず逃げる系!」

 

 考える暇もなく、俺は優香と共に会場外へと逃げた。

 

※※※

 

「ママ……! オキテヨ! ママッ!」

 

 ヴィーダは、血を流して倒れる遥を揺すっていた。

 

「貴方何者ですの?」

 

 美咲が黒フードを睨みつけて問いかける。

 

「さあな、お前との関係性を語るなら他人……ってとこまでしか俺も分かんねえ。俺には名前すらねえからな」

「ヴィーダ……ママキズツケタオマエ……ユルサナイ!」

『GUNGNIR ON』

 

 バックルの中から、待機音が流れる。

 ヴィーダは一度目を閉じてから、槍型のアイテムを上に投げ、もう一度キャッチ。

 

「ヘンシン!」

 

 挿入口に差し込む。

 

『CHANGE』

 

 どこからともなく、上空から魔法陣が出現し……そこからアイテムと同じ形をした槍が現れる。

 ヴィーダはその柄に向かって手を伸ばし、掴み取った。

 

「……」

 

 その姿を仮面ライダーグングニルへと変える。

 美咲も共闘しようとするが、

 

「テヲダスナ!」

 

 そう言われて止められる。

 

「悪いねえお嬢ちゃん、可哀想だけどお前もこれからママと同じ目に遭うんだぞ?」

「ユルサナイ!」

 

 黒フードは生身の状態で攻撃を回避。

 その状態でフードの中からベルトを取り出す。

 紋章は拳……いやメリケンサックだ。

 

『SMASH DRIVE READY?』

「変身」

 

 メリケンサックを着けた怪人の姿へと変わり、グングニルへ右ストレート。

 回避に失敗したグングニルが、そのパンチを受けて吹き飛ばされる。

 

「ウワアッ!」

 

 地面へと叩きつけられるグングニル。

 

「ヴィーダ、アキラメナイ……」

「ガキの癖に根性あるねえ。そういうの嫌いじゃないぜ?」

 

 サック怪人が地を蹴って、グングニルに追い打ちをかける。

 

 




次回予告

初「さーて明日の浅井三姉妹のバカな日常は?」
美咲「美咲ですわ……って何やらせるんですの!」
初「だって次回予告書き始めたのはいいものの、次回予告一回もしてないだろ?」
美咲「そ、そうですわね……」
初「もう今回こそ強引にでも次回予告してやろうかと。さて次回は、何なんだよ中身」
美咲「分からないならやらなくて結構ですわ!」
初「お前がちゃんとやらねえから私がやってんだろ!?」
美咲「次回予告出来てないのは貴女のせいですわ!」
初「私はやろうとしただろ!」
美咲「いつも貴女がここを乗っ取ろうとして止めてますわよね!?」
初「だってめんどくせえんだからしょうがねえだろ! あ、やべえ時間が!」


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第三十九話

 

 その戦力差は、圧倒的と言わざるを得なかった。

 グングニルの十八番である分身からの槍攻撃も全て妨害し、サック怪人はグングニルを追いつめる。

 

「……ドウシテ……ママノタメニマケチャイケナイノニ……」

 

 グングニルが、ボマーに倒された時の遥と同じように立ち上がる。

 

「負けちゃいけない……か。いやいや、ここで負ける方が賢明だと思うぜ? どの道あの傷じゃ無事で済まない。だから親子揃ってあの世で仲良くしな」

 

 サック怪人が端末を操作する。

 

『FINAL DRIVE!』

 

「これで決まりだな」

「ヴィーダ……アキラメナイ……」

 

 槍を構えなおすグングニル。

 だが満身創痍と言った所だ。

 もう見ていられくなった美咲が変身し、

 

「はあッ!」

「ぐっ……!」

 

 サック怪人が放った特大の気功弾を防ぐ。

 

「ボマー……」

「ヴィーダさんにこれ以上攻撃させませんわ。まだ私はヴィーダさんを超えられていませんもの」

「なんだ? お前も死にたいのか?」

「違いますわ。貴方を倒すつもりです」

 

 予告ホームランの構えをとるボマーを、サック怪人が笑う。

 

「くくく……俺を倒す? 冗談キツイな」

「冗談などではありませんわ」

「だとしたら……馬鹿なのか?」

「ムカッ……その一言で余計倒したくなりましたわね」

「馬鹿は馬鹿だろ? お馬鹿さん」

「馬鹿馬鹿うるさいですわね。今すぐ倒してあげますわ!」

 

 ボマーは勢いよく地を蹴った。

 

「ウェイ!」

「言葉の雰囲気通りの単細胞だな。その程度の攻撃が当たるとでも?」

『ACCELERATOR DRIVE』

 

 グングニルに対してやった攻撃と同じものを放つ。

 しかし避けられる。

 

「俺はあの小僧程甘くねえぞ」

「この……」

「む?」

 

 どこからともなく、銃弾が放たれる。

 グングニルだ。

 ボマーを殺しかけた、あの能力でエアガンを強化し、銃弾を放った。

 

「良い不意打ちだな。だが無意味だぜ?」

 

 サック怪人は言いながら、拳で銃弾を受け止めている。

 

「どうすれば良いんですの……」

 

 気合で勝ちたいのは山々だが、これでは勝機が見えない。

 攻撃を当てる以前の問題だ。

 

「これを……」

 

 遥の声。

 まだ微かに、意識を残していた。

 

「これを使えば、ボマーを強化出来る……」

 

 遥の手に握られていたのは、一枚のカード。

 紫と水色の配色のボマーがそこに描かれ、何かを読み取る用のバーコードが描かれている。

 

「これは……」

「頼むぞ……私の代わりに……」

 

 今度こそ意識を失う。

 

「遥さん……貴女を死なせはしませんわ。貴女にやる事があるのなら、生きてそれを果たしなさいな」

 

 ボマーがカードを受け取ろうとするのを、サック怪人が邪魔しに入る。

 

「サセナイ!」

 

 だがグングニルはサック怪人に弾丸を当てて阻止した。

 

「今ここで貴方を倒しますわ」

『SCAN DRIVE』

 

 端末を使い、そのカードを読み取る。

 

『COMPLETE HYDRO DRIVE READY?』

 

 両腕を腰の高さまで広げ、全身に力を込めて叫ぶ。

 

「超変身ですわ!」

 

 水色の光が包み、ボマーの姿がカードの中と同じに変形する。

 朱色の炎は青く変わり、身体のあちこちに水色の紋様。

 そして、首に水色のマフラーが出現する。

 

「これが……新しい力……」

 

 名付けるなら、仮面ライダーボマー……ハイドロフォームと言った所だろうか。

 

「遥、行くよ」

 

 まだその場にいた山内が遥を背負って退避しようとする。

 

「させるかよ」

 

 サック怪人の拳から気功弾が放たれるが、ハイドロボマーはそれに気付き、アクセルドライブ時と同等の速度で移動して防ぐ。

 

「こいつ……」

「目的を果たしたいなら、私を倒してから行きなさいな」

 

 もう一度バットを構え直す。

 

 




次回予告

初「なんかここら辺くらいからお前にしてはかっこよすぎる気がするな」
美咲「何ですの私がカッコよかったら悪いんですの?」
初「なんつーか二年の時のお前を知ってる私からしたら違和感しかねえ」
美咲「あれは貴女達が私のペースを乱すからですの!」
初「でもちょっとパクリてえ台詞はチラホラあるな」
美咲「どれですの?」
初「例えばそうだなあ『目的を果たしたいなら、私を倒してから行きなさいな』とか?」
美咲「……くすくす……ぷーくすくす」
初「おい何笑ってんだよ」
美咲「だって、私らしいカリスマ性が感じられませんもの……くすくす」
初「そもそもお前にカリスマ性なんてねえだろ。だから生徒会メンバーに見捨てられたんだろうが」
美咲「それを言うなですわ!」
初「もう時間か。次回もよろしく」
美咲「まだ話は終わってませんわよ!?」


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第四十話

「なっちまったもんは仕方ねえな……ぶちのめすまでだ」

 

 サック怪人の方から、ハイドロボマー目掛けて駆け出した。

 

「……」

 

 ハイドロボマーが青い炎を纏った掌で、サック怪人の拳を受け止める。

 

「なにっ……!」

「はあッ!」

 

 左脇腹に蹴りを入れ、仰け反らせた。

 

「ここからですわ」

『HYDRO ACCELERATOR DRIVE』

 

 通常時のアクセルドライブを超える加速で、ハイドロボマーは何度もサック怪人の身体へバットを叩きつける。

 サック怪人が怯んだ所で、端末のボタンを押す。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 バットの周りを、水色に変色したボムビットが集結。

 

「ハイドロインパクト!」

 

 怯んだサック怪人に、強くバットを叩きつける。

 ライダーインパクトを超える爆発は、フィールド全体を覆う程の爆風を起こした。

 

「ぬあッ!」

 

 地面に叩きつけられ、サック怪人の変身が解ける。

 

「まだやりますの?」

 

 黒フードはすぐさま立ち上がり、背を向けた。

 

「どうやら、今のお前相手では分が悪いみてえだな。あばよ」

 

 煙幕を起こし、その場から姿を消す黒フード。

 

「マテ!」

 

 グングニルが叫ぶが、もう遅かった。

 

「……」

 

 同時にハイドロボマーのハイドロフォームが終わる。

 

『HYDRO END』

 

 二人はまだ変身を解かずに会話する。

 

「逃げられましたわね」

「ママ……」

 

 ヴィーダが下を向く。

 

「恐らく戦うチャンスはいつか来ますわ。まずは遥さんが無事である事を祈りますわよ」

「ウン……」

「それに、ここに長居するのは危険みたいですわ」

 

 観客席には未だに、理性を失って暴れている怪人達がウヨウヨしている。

 逃げるか無茶を承知で倒すか……。

 だがボマーの性格上、その二択なら迷わず後者を選ぶ。

 

「戦いますわよ。ヴィーダさん」

「ミサキ……」

「まずは全員倒して帰るんですの。そして遥さんに会いに行きますわよ」

「ウン!」

 

 ボマーとグングニルは武器を構え、観客席に向かって走っていく。

 

「最初から飛ばしますわよ!」

 

 敵の直前で端末を開き、アクセルドライブを発動。

 

『ACCELERATOR DRIVE』

 

 ボマーとグングニルが加速し、バットと槍で怪人達を勢いよく倒していく。

 

「はあッ!」

「ヤアッ!」

 

※※※

 

 やっと会場出口付近。

 体力に限界が近付いていたが、何とか踏ん張り……最後の力を出し切る。

 

「必殺技行きますわよ」

「ウン!」

 

 ボマーは端末を取り出してボタンを押し、グングニルは槍型のアイテムを変身用とは違うスロットに差し込む。

 

『FINAL DRIVE!』『GUNGNIR FINAL DRIVE』

 

 ボマーの周囲をボムビットが覆い、グングニルは上空に魔法陣を出現させる。

 

「ライダーインパクト!」

 

 ボマーはバットを迫る怪人達に叩きつけ、グングニルも魔法陣から槍を射出した。

 怪人達は勢いよく吹き飛び、そのまま倒れていく。

 

「これで終わり……ですの?」

「デモ……」

 

 妙な事に気付く、普通この怪人化は……気絶以前に変身者が深刻なダメージを受ければ勝手に解除される筈なのだ。

 しかし怪人達は気絶しても、人間体に戻らない。

 ベルトを着けずに変身しているせいなのかは分からないが……今のままでは彼らを元の姿に戻す事が出来ないらしい。

 

「遥さんに聞いてみるしかありませんわね」

 

 ボマーとグングニルは変身を解き、取り敢えず脱出を選ぶ。

 

※※※

 

 優香を先に逃がし、俺は怪人達を何とか追い払いながら、優香や山内と合流した。

 山内は俺との合流前に救急車を呼び、遥を病院まで搬送させた。

 まだ来ていないのは、美咲とヴィーダだったのだが……。

 

「来たか」

 

 こちらに向かって、走ってくる二人の姿。

 近付くと同時に息を切らし、俺に報告する。

 

「怪人達が元に戻りませんわ」

「何だって!」

 

 美咲の性格上、恐らく怪人達を倒しながら出てくるだろうとは想像していたが、倒しても人間体に戻らないというのは……。

 

「こうなった以上、遥さんに生きて貰って事情を聞くしかありませんわ。今は退きますわよ」

「お、おう」

 

 俺達は駐車場まで走っていく。

 

『上手く……いったか』

 

 脳裏に声が聞こえる。

 河原で俺が意識を失った時と同じ……。

 

「……ッ! 今は気にしてる場合じゃない」

 

 何とか頭を横に振って誤魔化す。

 

「まだ終わらないのか……」

 

 狩野遥という教師が科学部でベルトを作り出し、それを俺が盗み出した事から始まったこの戦い。

 美咲が蘇我高校から挑まれた勝負に全て勝利し、このまま終わると思っていた。

 だけど……今の俺達は気付かなかった。

 何故この戦いが始まったのか。

 そして……隠された真実を。

 

《第一章 完》




次回予告

美咲「さあ、貴女の罪を数えなさいな」
初「自分の罪数えろボケ」
美咲「謝罪するような事などした覚えがありませんわ」
初「鬼畜かよお前は」
初「それはさておきマジで第二章に続くのかよ」
美咲「不本意ですが貴女にもまだ働いてもらいますわよ」
初「働いてねえだろ」
美咲「金銭貰わなければ働けないなんて、貴女は裕太さん以下ですわね」
初「お前マジで相方が裕太で良かったよな。多分私が裕太ならお前殴り飛ばしてるわ」
美咲「貴女みたいな失礼な人なんてこっちから願い下げですわ」
初「こっちの台詞だボケ」
美咲「あ、時間ありませんわね……次回第二章!」
初「仮面ライダーボマー完」
美咲「うるさいですの!」


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第二章
第四十一話


 

 死にはしなかったが、予断を許さない状況には変わりない。

 今の狩野遥の状態だ。

 美咲達の防衛によって緊急搬送され、そこで応急処置の後の手術で、何とか一命をとりとめる事に成功した。

 しかし傷は深く、この後回復するかどうかもよく分からない。

 最悪このまま死んでしまう事も……。

 

 代表戦が終わって数時間後の夜八時。

 俺、美咲、山内、優香の四人は遥の病室の外にいた。

 まだ解散出来ない理由は一つ。

 遥の娘……のような存在であるヴィーダの今後だ。

 

「誰が預かるのよ」

「ウチの家じゃ預かるの難しい系……」

「優香には流石に預けられないわね」

「何故系?」

「自分で考えなさい」

「それじゃ分かんない系」

 

 優香の所が無しになった所で、山内が俺と美咲の方を向く。

 

「裕太とか会長の所はダメなの?」

「俺は一人暮らしだけど……色々と問題があるだろ」

 

 あんな幼女と二人きりで暮らしてたら犯罪者だと思われる。

 

「私の家も難しいですわ」

「じゃあ……」

 

 全員で山内の顔を見る。

 

「ヴェェッ? なんであたし?」

「だってもうそれくらいしか選択肢ないし。それに何かダメな事情ある?」

「別にないけど」

「だったら頼むよ」

「ナニソレイミワカンナイ」

 

 そんな真〇ちゃんみたいな事言われても。

 

「とにかく頼むよ! な!」

「……はあ」

 

※※※

 

 半ば強制的に決まってしまったので、取り敢えず挨拶に。

 

「ヴィーダ」

「……」

 

 ヴィーダはまだ、遥が眠るベッドの前で落ち込んでいる。

 

「遥さんが治るまでの間、私と一緒にいてもらうから……よろしくね」

「……」

 

 ――うう、どうしたらいいのよ。

 

 山内は子供の扱いは得意か苦手かと言われたら苦手な方だ。

 こういう時、どう声を掛けたらいいのか……。

 

「ねえ、ママの事は好き?」

「スキダヨ」

「そっか」

「ヴィーダ、ミンナトチガウ。ツクラレタニンゲン。ママハヴィーダヲドウグトシカミテナイイッテタ」

 

 あの扱いを見れば、大体の人が分かる。

 でも……。

 

「ダケド、ヴィーダ……ママスキ。ダッテ……ホントハ、トッテモヤサシイ。ヴィーダ、ワカル」

「ヴィーダ……」

「キミ、ナマエハ?」

「山内……」

 

 そこで止まる。

 下の名前は……あまり好きじゃない。

 

「シタノナマエハ?」

 

 ヴィーダに首を傾げられる。

 自分の知人にも、下の名前を自ら明かした事はない。

 わざわざ聞かれたのも、恐らく今回が初めての事だ。

 

「……」

 

 山内は少し俯いて考えてから、ヴィーダに自分の名前を告げた。

 

「成音(なりね)。山内成音」

「ナリネ、ママ、スキ?」

「あたしは……」

 

 山内は自分の母親を思い出す。

 〇×女子高に入るまで、山内は名門の私立中学に通うエリートだった。

 生徒会長にも就任し、有名私立高校に特待生として入学出来そうにもなっていた。

 でもそこまでの道は、全て母親が決めたもの。

 中二の時くらいから、山内は成績不振から母親に叱られるようになり、母親の決めた事をこなすのが嫌になった。

 元々人と争う事があまり好きではなかったから、余計にそう思ってしまったのだ。

 山内は母親の決めた道から外れる事を選び、けじめとして家を出ていく事にした。

 今では父親からの仕送りを受け取りながら、学校近くのマンションで一人暮らしをしている。

 〇×女子高は学校の特性上、学年一位を取らなければ大学への推薦入試を受けられない。

 元々私立中学でエリートだった山内には簡単な話だが、恐らく三年後に母親が決めた大学に入る事はまずないだろう。

 

「あたしは、母さんの事が苦手かな」

 

 ヴィーダは遥の為に美咲と戦う事を躊躇わなかったし、遥が倒された時は、母親の為に美咲と協力して戦う事を選んだ。

 山内なら、多分母親が困っていても助けようとは思えない。

 自分が一番苦しかったのに、母親は叱るだけで何もしなかったのだから。

 

「ナリネノママハ、ヤサシクナカッタ?」

「……覚えてない」

 

 嫌だった事なら、沢山思い出せる。

 母親には遊んで貰った記憶すらない。

 貰ったものと言えば、この名前と毎日の食事くらい。

 食事すら、母親に従わなければ食べさせて貰えない日もあった。

 

「ごめんね、なんかヴィーダを慰めるつもりで来たのに」

「ナグサメル? ヴィーダヲ?」

「うん」

「……ウレシイ」

「え?」

「コレッテ、トモダチ?」

 

 ヴィーダが大きく開けて首を傾げる。

 

「友達……」

「ヴィーダ、ナリネ、トモダチ!」

 

 そう言って握手を求めた。

 

「そうね、トモダチ!」

 

 山内はその手を握る。

 




次回予告

美咲「ヴィーダさんの喋り方聞いてると、アマゾン思い出しますの」
初「ネットでポチる奴?」
美咲「違いますわ。仮面ライダーアマゾンですわ」
初「どういう奴なんだ?」
美咲「これですわ」
初「これは中々異色だな……」
美咲「昭和ライダーも一応少しだけ見てますの」
初「へえ……」
美咲「それより山内さんの名前が明らかになりましたわね!」
初「おいおいそりゃまずいぞ」
美咲「何がですの?」
初「お前自分がつるんでた奴の事くらい覚えとけよ。いから始まってみで終わる私のストーカーに下の名前無いんだぞ」
美咲「誰ですの?」
初「……知らねえからな」
ガチャガチャ
美咲「? 今収録中ですのよ、勝手に入られては困りますわ!」
???「初ちゃーん、最近顔見てないけどここにいるの?」
初「……開けるなよ、絶対に開けるなよ」


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第四十二話

 

 数分後、ヴィーダと山内……成音が病室から出てくる。

 成音とヴィーダは友達というよりかは、姉妹のように手を繋いでいた。

 

「じゃあ、あたしはヴィーダ連れて帰るから」

「頼むよ、成音」「頼みますわ、成音さん」

「き、聞いてたの?」

「いやほらだって、この小説始まって一章終わっても下の名前分かんなかったわけだから、ついな……」

「私も知りませんでしたわ」

「はあ……本当は知られたくなかったんだけどね」

 

 成音が諦め気味に嘆息する。

 

「ヴィーダ、ナリネ、トモダチ!」

 

 嬉しそうにぴょんぴょん跳ねるヴィーダ。

 

「友達……私も友達になれますの?」

「ミサキ、トモダチカナ?」

「何で疑問形ですの!?」

「イツカ、ヴィーダ、タオス!」

「わ、私も今度こそ正攻法で倒しますわよ!」

「テメエらうるせえぞここどこだと思ってんだ!」

 

 先生に怒られてしまった。

 てか……前美咲が入院した時も思ったけどここの先生口悪すぎだろ。

 

「ねえねえヴィーダっち、ウチは?」

「ユウカ、ビッチ!」

「ヴィーダっち……割と増せてる系?」

「?」

 

 ヴィーダが目を丸くして首を傾げる。

 恐らく遥が何らかの方法で、言葉とかを教えたのだろうと推測するが、だとすると……何教えてんだろう……。

 それはまあさておき。

 

「ヴィーダ、俺は?」

「ユウタ!」

 

 最初は嬉しそうに飛び跳ねていたが、少しばかり俺を見てから、何故か成音の後ろに隠れてしまう。

 

「ど、どうしたのヴィーダ」

「ヴィーダ、ユウタ、キライ……」

「ゑ!?」

 

 なんでなんで!

 

「ど、どうして?」

 

 近付こうとするが、拒否されてしまう。

 

「うーん……」

「あれですわ、裕太さんの本性がロリコンだとバレたのですわ」

「それは断じてないだろ」

 

 ヴィーダがマセテいるとしてもだ。

 

「す、好かれるように頑張るよ! 俺は怖くないからね!」

「……」

「信用されてませんの」

「酷いよぉ!」

 

※※※

 

 成音、ヴィーダ、優香と別れ、俺と美咲は帰り道を車で進む。

 

「取り敢えず、ヴィーダさんの引き取り手が見つかって良かったですわね」

「そうだな……」

「元気がありませんわね。ヴィーダさんに嫌われた事を気にしてるんですの?」

「それもある。でもそれよりは……」

 

 美咲から聞いた話によれば、怪人化した蘇我高校の生徒達は倒しても怪人化が解けなかったらしい。

 今の俺に、蘇我高校の生徒に対する情などないつもりだが、人間に戻れないのは少し可哀想だと思う自分がいる。

 

「怪人化した生徒達、どうすれば良いんだろうな……」

 

 美咲がいつものように、俺に考えを告げた。

 

「こうなった以上、戻す方法が見つかるまで戦うしかありませんわ」

「確かに、遥先生が起きるまではそうするしかないか」

「ええ」

 

 そういえば、まだ皆に対し『あのこと』を告げてないと思い、美咲にバレない程度に言ってみる。

 

「そういえば美咲」

「なんですの?」

「これからはもしかしたら、俺もお前の力になれるかも知れない。だから、もしピンチだったら俺を頼っていいぞ」

「……何の話かさっぱりですわ。どういう事か教えなさいな」

「その時まで内緒だな」

 

 もししくったら恥ずかしいし。

 

「私に隠し事とは良い度胸ですわね。取り敢えずボコボコにしますわよ」

「おい今運転ち

「変身ですわ」

「やめろッ!」

 

 取り敢えず変身だけは阻止した。

 

 




次回予告

初「うるうる……」
美咲「どうしましたの?」
初「いやあ、私は感動してるぞ。お前にまともかどうかはさておきこんなに友達が増えて」
美咲「貴女が人を褒めるなんて珍しいですわね。何かありますの?」
初「勿論。これを機に二度と私に関わるな。以上」
美咲「貴女を倒すまでは無理ですわ! 今から勝負しても良いんですのよ!」
初「ここで何の勝負するんだよ」
美咲「……」
初「五秒以内に思いつかねえと帰るぞ。五、四三二」
美咲「こうなったらやけくそですわ!」
チュドーン!
初「……私に関わるとそうなるからやめた方が良いんじゃねえか?」


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第四十三話

 

 身体に重みがある。

 まるで数日間、身体をピクリとも動かさなかったかのような倦怠感。

 足利明人はそれを感じながら、見知らぬ場所で目を覚ます。

 

「ここは……?」

 

 何かの研究所……のようだ。

 自分が眠っていたのはカプセルのような狭い空間。

 そして、その周りに無数の配線……。

 いや……違う。

 

「教室?」

 

 そう、蘇我高校の科学部のような……何かの教室のようにも思える。

 だが蘇我高校ではない……はずだ。

 

「目が覚めたようだね」

 

 青い髪に赤い瞳の……白衣を纏った女性に声を掛けられる。

 

「アンタは誰だ?」

「そうだね……君の知らない誰かと答えておくよ」

 

 そう言いながら、青髪の女はソードドライバーを明人に手渡す。

 

「これは君のだろ? 返すよ」

「……」

 

 明人は何かを疑いながらも受け取る。

 

「ここに連れて来たのはアンタか?」

「そうだよ。君と、君のそのベルトを調べていたのさ。気絶している所を誘拐して悪かったとは思ってるけど、君は多分……僕が誘ってもついてこなかっただろうからさ」

 

 今のところ身体に、何かおかしな点があるというのはない。

 だが本当に調べただけなら、このまま返して貰える筈だ。

 

「どこに行く気だい?」

「俺は帰る。生徒会長が長い間席を開けるわけにはいかない。それに、俺には約束がある」

「六角美咲と戦う事か?」

「……! それも知っているのか?」

「狩野遥に関わる人物は、ほぼ全て調べさせて貰ったよ。仮面ライダーボマー……だっけか。それと戦う約束をしているんだろう?」

「ああ……」

「心配はいらない、戦えるさ。ただし……僕の配下としてね」

 

 それを聞いて、明人は女に襲い掛かろうとする。

 

「プライド故に言う事を聞く気になれない。僕と同じか……やれ」

 

 掃除用具入れのロッカーから、怪人が飛び出す。

 拳にサックを付けた、サック怪人とでも言うべきだろうか。

 

『SWORD DRIVE READY?』

 

 明人は剣の柄を取り、剣の怪人へ。

 サック怪人の拳を剣で受け止め、弾き返す。

 

「お前を、止める……」

 

 サック怪人が、今度は蹴りを繰り出す。

 それを腕で受け止め、剣で薙ぎ吹き飛ばした。

 

「ぐあッ……」

「その程度か!」

 

 残像が出来る程に加速し、サック怪人へと斬撃を叩き込む。

 

「これで終わりだ」

『FINAL DRIVE!』

 

 トップスピードまで加速し、もう一度光の速さで斬りつけようとする明人。

 しかし。

 

「……ぐっ……」

『悪いが、俺のお袋の仲間を殺そうってんなら止めるぜ……』

 

 頭の中に声が聞こえ、手足が固まる。

 まるで他人に操られているかのように、自分で制御が出来ない。

 

「誰だ……」

『お前の知らない誰かで、目の前の女の息子みたいなもん……って答えておくぜ』

 

 サック怪人が嘆息して、変身を解く。

 サック怪人の中身は、暑苦しそうな黒フードを被った男。

 

「お前が……俺の弟……」

「ふざけるな……誰がお前などと……」

『おっと、お喋りの時間は終わりだぜ?』

 

 明人の意識が閉じる。

 代わりに明人の中にある、もう一つの人格が表へ。

 

「そうだな兄貴……俺はお袋の願いを叶える為に生まれた。力になるぜ」

 

 ニヤリと笑って、変身を解く。

 

「遥……。僕は必ず君を超えてみせる。君の大切なものを手に掛けた以上、僕は君以上の存在になってみせる……」

 

 




今回は美咲が出ていない為、次回予告は無しです。
初「ネタ尽きたのか」
いいえ違います。
初「尽きたんだろ?」
……はい。
初「次までに考えとけボケ」
てか次回予告にネタもクソもない筈なんだけどな。
初「言わせてるお前が言うなよ」
それを言うなよ。


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第四十四話

 

 某月某日。

 何だかんだで、数週間ぶりの学校だ。

 

「修行の為とは言え、生徒会長が数週間も学校を休むとは……」

「まあ良いじゃない。真面目過ぎても禿げるわよ」

「そう系」

「ついてきてたんですの?」

「なに? 不満?」

「不満系?」

「そうじゃないですの。私は今まで一人で登校していましたので、こういうのに慣れないんですわ」

 

 友達らしい友達もいなかったし。

 

「本当に困るっすよねえ……そんな生徒会長じゃ……」

 

 校門前で、腕を組んで立っていたのは……二年生の副会長だ。

 

「何か用? 副会長」

「もうその呼び方やめてくれないかい? もう生徒会の仕事してないし……いや、この人が最近してないせいでやらされてたか」

 

 美咲にニヤケながら嫌味を言う。

 

「会長が戦わなかったら、今頃この学校はあいつらのものになってたのよ? 分かってるの?」

「山内ちゃんも変わったねえ。何なら私達の眼を覚まさせてくれたのは山内ちゃんなのに」

「……」

「もう会長には任せておけないっすね。任期満了までにクビになっちゃうんじゃないんすか?」

「アンタねえ!」

「やめなさい」

 

 美咲が拳を止める。

 

「彼女達が離れる原因を作ったのは私ですわ。だから、私がいつか皆さんが帰って来られるように尽力すべきですの。誰の力も借りませんわよ」

「会長……」

 

 成音は拳を下ろす。

 

「行きますわよ」

「……」

 

 美咲達が離れてから、副会長は静かに呟いた。

 

「ムカつくっす……」

 

※※※

 

 五時間目までの授業を終え、六時間目は全校集会。

 美咲達生徒は体育館に集まり、開始を待つ。

 

「……」

 

 生徒会に話が来ていないとなると、教師陣のみが知る話なのだろう。

 やがてざわざわしている生徒達に静まるようにする指示が出る。

 

「静かに」

 

 その言葉に全員が従ったのは数分後。

 校長がステージに上がり、マイクの前に立つ。

 

「お前らが静かになるまで五分掛かったぞ」

 

 うざい教師がよくやるアレ。

 

「私がいつ静かにしなかったんですか何時何分何秒地球が何回回った日?」

「二時四十七分三十二秒地球が二百憶回回転した六月十七日。これで良いか?」

「回転数適当過ぎですちゃんと答えてください」

「……全校集会を始めるぞ」

「無視ですかつまんね」

 

 金髪碧眼の若い校長先生が、青い瞳を潜め……先の言葉を無視して告げた。

 

「今日からうちの高校に、新しい教師が入る事になった。んじゃ、挨拶頼むぞ」

「はい」

 

 青い髪に赤い瞳、白衣を纏った若い女性教師。

 

「皆さんこんにちは、僕の名は戸間菫(とますみれ)です。よろしくお願いします」

「こいつは本校の理科系を担当すっから、お前ら分かんねえとこは面倒見てやれ」

 

 一礼する菫。

 美咲を見て少し笑みを浮かべてから、口をもう一度開く。

 

「僕はここに来るまで、ある研究をしていました。それは人間の進化の研究です。最近になって、人類の中の数千分の一の確率で、新たな可能性を持った人間が生まれる事が明らかになっています」

 

 ざわつく全校生徒。

 

「僕がここに来たのは科学を教える事もそうですが、君達のような未来を背負う若者に、この研究の面白さを伝えられたらとも思っています」

 

 全校生徒を見回す。

 

「もし僕とそれについて語りたいという者がいれば、是非話しましょう。きっと退屈はしませんから」

 

 口元を少し釣り上げてから、菫はその場から去っていく。

 

 




次回予告

初「つーか久しぶりに見たな校長」
美咲「作者もキャラ忘れてたみたいですわよ」
初「そりゃあだって本編でも没個性的過ぎて、あんまり印象残んねえもん」
美咲「そうですわよね」
美咲「でも貴女は貴女で、妙なキャラ付けされてるみたいじゃないですの」
初「作者が描いてもらってるいかがわしい画像の話はやめろ。子供も見てるかもなんだぞ」
美咲「優香さんが出てる時点で子供むけとは言えませんわ」
初「そうだな」
優香「初っちも美咲っちも納得しちゃダメ系!」
初&美咲「無理(ですわ)」
優香「もう次回から岸本優香の日常に変えてやる系!」
初「絶対書くなよ作者」


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第四十五話

「へえ、新任教師……。どんな人?」

 

 俺は美咲の部屋で、彼女と話をしていた。

 煎餅をよく噛んでから飲み込むと、それを見て美咲が告げた。

 

「戸間菫先生。元科学者で、人間の進化の研究をしていた……と言ってましたわ」

「進化……それって突然変異体の事か?」

 

 突然変異体は、美咲やもしかしたら俺のように、その菫という教師の言葉を借りるなら、新たな可能性を秘めた者達。

 もしかすると、同じような研究をしていたという遥とも何らかの関係があるかも知れない。

 

「もしそうなら、少し調べてみる必要がありますわね」

「そうだな」

 

 美咲が思い出したように言う。

 

「しかし困りましたわね……。あの傷とはいえ、未だに目覚めないなんて」

「……」

 

 狩野遥の容態は、あの戦いの日以降変わっていない。

 悪化こそしていないが、逆に回復もしていないのだ。

 ヴィーダも成音と共に、あれから何度も見舞いに行っているが、それを聞いては辛い顔をするヴィーダを、成音が何とか慰めている状態。

 今のままでは、この戦いを終わらせる事は出来ない。

 

「今のままじゃ、動機が分からないんだよな……」

 

 美咲に伝えようとはしていたが、それは見事に阻まれてしまった。

 あの黒フードによって……。

 

「……!」

「どうしましたの?」

 

 俺の頭に、また一つのイメージが浮かぶ。

 暗い空の下、黒フードを被った男が、若い……高校生くらいの男を殺害する瞬間。

 

「何で……俺がこんな記憶を……」

 

 人が大怪我をする所や、殺されかける所なら、何度も見てきた。

 でも、本当に息の根を止めた場面なんて……。

 

「また何か思い出したんですの?」

「あ、ああ。でも大した事じゃない」

 

 虚勢を張って誤魔化す。

 

「今日はもう帰るよ。またな」

「ええ……」

 

 少し心配した顔で見る美咲に対して笑顔を見せ、俺は部屋をあとにする。

 

『お前は逃げられない』

 

 どこからか、そんな声が聞こえた。

 

※※※

 

 〇×女子高の空き教室。

 戸間菫が作業をしている最中、一人の生徒がそこにやってくる。

 

「あの、ちょっといいすか?」 

「君は……」

 

 菫が振り向くと、その生徒が答えた。

 

「蒲生(がもう)と言うっす。一応この学校の生徒会副会長っす。よろしくっす」

「副会長……、つまり生徒会のナンバー2だね?」

「うっす」

 

 何やら、その称号に不満げな様子。

 

「生徒会の仕事に不満でも?」

「それもあるっす。でも仕事というよりかは……」

「会長は確か、六角美咲……という名だったかな?」

「は、はいっす」

 

 菫はある程度の事情を何も聴かず察した上で、問いかける。

 

「君はその人をどう思うんだい?」

「私は……」

「ここには誰もいない。正直な気持ちを言うんだ。僕ならそれに応えてあげられる」

「私は……正直あの人にはついていけない。あの人は無茶苦茶っす。とてもリーダーなんかには向かないくらい。そう思うのに、私はあの人を超えられない。それが……」

「君の悩みか。よくわかった」

 

 菫は立ち上がり、蒲生に近付く。

 

「君は僕の話を聞いていたかな?」

「あの話……っすよね?」

「そうだ。進化に関する研究の面白さを伝える……それが僕のやりたい事さ」

「……」

「でも僕が本当にしたいのは、その先。君にその研究の協力者になって欲しい。もしなってくれれば、六角美咲を消せるかも知れない」

「いいっすよ……」

 

 菫は蒲生の返事に笑ってから、耳元で囁く。

 

「じゃあ……君も僕の仲間だ」

 

 




次回予告

初&美咲「作者(さん)、お誕生日おめでとう(ですわ)!」
美咲「ってケーキをもう食べきってますの?」
初「だって自分の誕生日の時にちゃんとケーキにありつける事なんて滅多にねえし、邪魔される前に食べとかねえと」
美咲「作者さんがここに来るまで待つのは出来ませんの……?」
初「あいつ今日こねえよ」
美咲「何故ですの?」
初「いや一応今日が誕生日だけど、これ書いてんの昨日だから、作者は今ワクワクさんの副反応で苦しんでる」
美咲「サラっと言いましたけど、何故これ書いてるんですの……」
初「確かにな。自分で自分の誕生日祝わせてる時点でもう頭が……っておい、美咲が消え始めてる!?」
美咲「貴女もですわよ」
初「おい筆を置くな! 祝ってやるから何でもするからあ!」


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第四十六話

 

 同日夜中……蘇我高校。

 未だに怪人の姿から人間に戻れず、理性を失って暴れ続ける生徒達が、警察の手によって交代で監視されている。

 

「何でこんな地獄のような役目を押し付けられなきゃいけないんだ……」

「誰がやったんだよこんな事」

 

 怪人達の動きが夜になり静まり始めた所で、愚痴りだす警察官。

 今のところ死人はいないが、終わりの見えない観察に気が狂いそうだ。

 

「お勤めご苦労っす」

 

 女の声。

 警官二人の前に、〇×女子高副会長の蒲生が現れる。

 

「お嬢ちゃんこの学校の生徒じゃないよね? それにこんな遅い時間にどうしたの?」

「もう夜も遅いし、親も心配するから帰った方が……」

「私なら心配いらないっす。それより警官さん達こそ帰った方が良いっすよ」

「?」

 

 麻酔弾が込められた銃を放ち、警官二人を眠らせた。

 

「行くっすよ」

 

 ブレザーの中に隠していたベルトを取り出し、腰に装着。

 

『ガスドライバー!』

 

 マインドコントロールガスと書かれたガジェットを、ドライバーの横に差し込み、指を鳴らす。

 

「変身」

『ガスドライブ! マインドコントロール! アヤツール!!』

 

 全身黄色の、ガスの如くもやっとした外見の怪人へと姿を変える蒲生。

 そのまま歩いて、校舎内へ。

 

 

 

 暴れ続けるアーミー軍団や、他の有象無象の怪人の前に姿を現し、ガス怪人はマインドコントロール能力を使う。

 

「ウギャアアア!」

 

 人の言葉も話さず、完全な怪人と化した生徒達が叫ぶ。

 だが数秒後に突然叫ぶのをやめ、統率のとれた行動でガス怪人の所へ集う。

 

「これから私に従ってもらうっす。必ず会長……いや、六角美咲とその仲間を倒すっすよ」

「ミサキ……こンな姿ノままにしタあイつ……ゆるサなイ」

 

 怪人が片言で、恨みの言葉を吐き出す。

 

「なら、やれるっすよね?」

「とウぜンだ」

「いい返事っすね。アンタらには期待してるっすよ」

 

 ――六角美咲……これでアンタの時代も終わりっす。精々苦しんで消えてくだせえ。

 

 怪人の姿を解いた蒲生が、口元に笑みを浮かべた。

 

※※※

 

 次の日。

 俺と美咲はカフェで、生徒会の仕事を進めていた。

 

「今までやれなかった分がありますから、どんどん手を動かしますわよ」

「はいはい……」

 

 いくら書いても終わらない。

 流石に量が多すぎる。

 

「てか成音に頼めば良いじゃん」

「成音さんに任せるわけにはいきませんわ。私の仕事なんですから」

 

 ならお前だけでやれよ。

 

「貴方は私の一部みたいなもんですわ」

「勝手に俺をお前の一部扱いしないでくれ」

 

 お供設定解ける日はいつなんだろう。

 

「死ぬまで有効ですわよ」

「えー……」

 

 こいつが政治家とかになったら、その仕事も任されたりするんだろうか……。

 

「きゃあああッ!」

 

 外から悲鳴。

 それに気付いた俺と美咲が、素早く頼んだものを平らげて外に出る。

 あ、ちゃんとお金も置いていってね。

 

「出ましたわね……」

「ウウウ……」

 

 理性を失ったアーミーが、美咲を見て呻き、襲い掛かる。

 

「私に挑む気ですわね」

 

 美咲は生身の状態でアーミーを蹴り飛ばし、怯んだ所でベルトを取り出す。

 装着し、端末を操作。

 

『BOMER DRIVE READY?』

 

 端末を掴んだ右手を顔の左側で構えてから叫ぶ。

 

「変身ですわ!」

 

 端末をベルトに取り付ける。

 上空から紫色の爆弾が美咲の手元に吸い込まれるように降り、美咲はそれを握り潰す。

 爆風が巻き起こり、そこからボマーが現れる。

 

「貴方が、私の頂点への旅を終わらせる者ですの?」

 

 バットを向けると、アーミーが人間らしからぬ叫び声で答えた。

 

「ウギャアアア!」

「悪いですが、まだ終わらせませんわよ」

 

 ボマーはそう告げて駆け出す。

 

 




次回予告

初「……転校してえ」
美咲「どうしましたの?」
初「いや、もうここまでの話でお前が生徒会長として如何にダメかを存分に見せられた気がしてよ」
美咲「う、うるさいですの」
初「これ最終話までに全メンバー戻るのか?」
美咲「それは私に聞かれても知りませんの」
初「まあ、これだと私達三年生だから来年以降どうなろうが知ったこっちゃねえけどな」


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第四十七話

 

 暴走アーミーと殺陣を経験した故か、ボマーはそれ程苦労せずにアーミーを圧倒する。

 相手の一撃を軽々ガードしてから、端末を取り出して必殺技。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 そのままジャンプし、右脚にボムビットを集めてから叫ぶ。

 

「ライダーボムキック!」

 

 久しぶりのライダーボムキック。

 仮面ライダーらしい飛び蹴りで相手を吹き飛ばし、爆死したボマーが遠くの位置で復活。

 

「爆発しても死なない能力、いつ見てもチートだな」

 

 刃物で刺されても、自身の身体を爆破してしまえば問答無用で生き返れるのだから。

 

「ウウウ……」

 

 怪人はやはり人間体に戻らない。

 ボマーがバットを向けて告げる。

 

「貴方達はいつか私達が戻しますわ。これ以上痛い目に遭いたくなければ、もう逃げなさいな」

「ギャアアアア!」

 

 奇声を上げながら逃げ出す怪人。

 ボマーはそれを確認して、変身を解く。

 

「仕方ない、家で続きをやりますわよ」

「ああ」

 

 荷物を手に、車まで行こうとする。

 だが。

 

「ウギャアアアアアアア!」

「ギャオオオ!」

 

 さっきとは別個体の奴ら五体が、ボマーの前に現れる。

 

「まだいるんですの!?」

 

 目玉を飛び出しながら叫ぶ美咲。

 彼女はもう一度変身し、駆け出す。

 

「とりゃあッ!」

 

 バットで二体程纏めて吹き飛ばすボマー。

 いくら数で責められても、アーミー程度では、今のボマーの相手にはならない。

 

「これ使いたかったけど、まだ出番無さそうだな」

 

 バッグの中に隠しているものを見ながら、俺は呟く。

 

「おおおッ!」

 

 ボマーが一体を吹き飛ばしてから、端末を取り出して操作。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 ボムビットがバットへ集まる。

 

「ライダーインパクト!」

 

 ボマーの十八番、ライダーインパクト。

 バットに纏わるボムビットと共に、強くアーミー二体へと叩きつける。

 

「おりゃあ!」

 

※※※

 

 アーミーは吹き飛ばされてから、その場から逃げ出す。

 ボマーはノーダメージ(?)で、アーミー五体を倒した。

 

「二回死にましたわ」

 

 自分の技で二回死ぬのはパーフェクト勝ち判定で良いのだろうか。

 

「お疲れ様です」

「どうしましたの? なんか不服そうな顔してますが」

「いや、何でもないよ」

 

 俺でもちょっとはカッコよく出るくらいいいだろう。

 だからそれまで封印だ。

 

「怪しいですわ……」

「かなり昔にフランスに行った羊みたいな顔しないでくれよ」

「何ですの? それ」

 

 マジか知らない子とかもういるんだな。

 

「取り敢えず今度こそ家で書類を……」

「ウギャアア」

「しつこいですの!」

 

 次に出た五体も、ボマーは難なく倒しましたとさ。

 

 




次回予告

初「おい裕太、こいつを甘やかすな」
美咲「?」
初「自爆技使ってパーフェクト勝ち判定とか甘すぎるんだよって話だよ」
美咲「私ヴィーダさんとの戦い以来エクスプロージョン使ってないですわよ」
初「そうじゃねえよ。そもそもお前自爆し過ぎなんだよボンバーウーマン」
美咲「私も好きで自爆してませんわよ!」
初「なら自爆せずに当ててみろよコラ」
美咲「上等ですわ!」
ポイッ! カーン……ドーン!!
初「……さーて帰るか」


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第四十八話

 

「なんで一日に三回も死なないといけないんですの……?」

「それより、あの怪人達蘇我高校の奴らだよな。理性が無くなっても、蘇我高校には今見張りがいるから簡単には出られない筈なんだけどな」

 

 簡易的だけどバリケードも張ってたみたいだし。

 それでも見張る側からしたらたまったもんじゃないだろうが。

 

「つーか、この家にまで襲ってこないよな?」

 

 流石に美咲の家族にまで迷惑は……。

 

 ピンポーン♪

 

「……おい」

 

 今の話してる途中に来られたら、俺がフラグ立てたみたいになっちゃうだろ。

 

「私が行ってきますわ」

「おう頼む」

 

 美咲が一応ベルトを装着して、玄関まで向かう。

 

『BOMER DRIVE READY?』

 

「変身ですわ!」

 

 仮面ライダーボマーへと姿を変え、扉を開ける。

 

「また来ましたわね! 私の家だけは破壊させませんわ!」

「……何してんの?」

「ミサキ、オバカ?」

「変身までしてノリノリ系じゃん?」

「み、皆さんお揃いでどうしましたの?」

 

 ボマーは変身解除。

 

「取り敢えず集まるならここじゃないの? もう裕太いるっぽいし」

「今一応仕事中ですの」

「生徒会の? なんで裕太にもやらせてるわけ?」

「裕太さんは私の一部ですわ」

「ユウタ、ドレイ……カワイソウ」

 

 ヴィーダは俺の気持ちを分かってくれるみたいだな。

 何故か俺の事は嫌いみたいだけど。

 

「あたしもやるわ。だから裕太を解放してあげなよ」

「分かりましたわ」

 

 成音が多少呆れ顔で、美咲宅へ上がる。

 

※※※

 

「流石に溜まりすぎね」

 

 疲れてぐったりする成音。

 

「他のメンバーがいないんですから、仕方ないですの。まあ蒲生さんが少しやっていたみたいですが……」

「アンタ努力は惜しまないけど、人望はないに等しいからね」

「うるさいですわ」

「事実を言ったまでよ。もうちょっと誠意を見せないと、多分皆帰ってこないわよ」

「成音さんはどうする気ですの?」

「あたしは仕方ないからこれを機に書記に戻るわよ。元々やりたかったわけじゃないけど」

「? 生徒会って立候補したり志願制だったりじゃないのか?」

 

 少なくとも蘇我高校はそのシステムだった筈。

 まあうちの生徒会は、腕っぷしが強くないとなれないけれど。

 

「私達の高校では、志願する事も出来ますが、中学で生徒会長だった者は強制的に生徒会配属ですの。有無を言わさずに」

「まじかよ」

「私は志願しましたわ」

「でしょうね」

 

 動機が純粋かはさておき。

 

「ムズカシソウ……」

 

 成音の隣で、じーっと書類を見ているヴィーダ。

 

「ヴィーダ、成音は今ちょっと忙しいから俺と遊ぶか」

「……イヤダ」

「だから何で!」

 

 俺何もしてないよ!

 

「じゃあウチと遊ぶ系」

「ユウカ、ビッチ!」

「さ……流石にそれは傷付く系。まあ良いや」

 

 優香と共に、部屋の外へ出るヴィーダ。

 

「変な遊び教えるなよ!」

 

 それが心配だ。

 

「大丈夫系、まずナンパの仕方から!」

「大丈夫じゃない問題だ!」

 

 俺からも優香ビッチと言わせてくれ。

 

 




次回予告

初「優香、ビッチ!」美咲「優香さん、ビッチですわ!」
初&美咲「……」
美咲「被りましたわね」
初「最悪だ」
美咲「というより生徒会の仕事が終わりませんわ……」
初「可哀想と言ってやりたいが、お前なら仕方ない」
美咲「うるさいですの」
初「悔しかったら全うな人間になれ」
美咲「貴女にそのままお返ししますわ」
初「いや意味分かんねえし」


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第四十九話

 

 俺も結局手伝い、何とか二時間程度で書類を全て書き終えた。

 

「はあ……終わった……」

 

 既に腕が痛い。

 教師時代でも、こんなに書類を書いた事が無かったのに。

 

「あたしも久々だから腕が……」

 

 二人とももう腕がパンパンだ。

 なのに美咲はそんな様子もなく、急に立ち上がった。

 彼女は今日だけで三回も戦闘をしているというのに。

 

「美咲?」

「ちょっと外へ出てきますわ」

 

 美咲はそう言って部屋を出る。

 

「最近増えたんだよな、あいつ一人で外出る事」

「そうなんだ」

 

 彼女が仮面ライダーボマーとなって、一か月以上が過ぎた。

 努力のかいもあり、蘇我高校と決着をつけ、何とか学校を守れはしたが、戦いはまだ続いている。

 

「長い戦いに挑み続けて、副会長にまで責められて……俺だったら到底耐えられないや」

「……」

 

 成音も立ち上がる。

 

「成音?」

「あたしもちょっと出てくる」

「おう、気をつけてな」

 

 俺は成音を見届けてから、その場で横になった。

 

※※※

 

 裕太には初めて聞いた風に返したが、何をしているのか成音は知っていた。

 美咲が最近一人になる理由を。

 彼女はよく、近くの公園で身体を鍛えている。

 木にサンドバッグを吊るして、攻撃を当てては跳ね返ったものを受け止めてを繰り返すという古典的な方法。

 

「会長……」

 

 成音はヴィーダとの戦いを思い出す。

 あの時、主に戦ったのはボマーのみで、成音は最初の攻撃で戦闘不能に追いやられてしまった。

 あの修行中は、まだボマーと互角くらいかもと思っていたのに、あの決戦で……自分と美咲のレベル差というものを思い知らされたようにも感じる。

 

「……」

 

 自分は、美咲のやり方に反抗して生徒会を出た。

 あの時蘇我高校の生徒と戦うと言い出した事が出ていくキッカケだったが、そうなる前から彼女の強引で大胆過ぎる仕事ぶりが気に入らなかった。

 仕事ぶりもそうだが、何より自分が生徒会長だった時と比べてしまった。

 成音は母親に言われるがままにやり続け、やりたくなくても仕方ないと思い続けながらやっていた。

 だが美咲は何事に対して常に一生懸命で、自分の目的の為ならどんな努力も無茶も惜しまない。

 低レベルの学校に入ったというのに、そこに見合わない程場違いな努力家だった彼女。

 もう二度と努力をしないと決めていたのもあって、成音はがむしゃらに頑張る人間を見るのが嫌になっていたのかも知れない。

 そして蘇我高校の生徒に頼まれて戦いはしたが、結局美咲に勝つ事は出来なかった。

 努力していても所詮は底辺だと思っていた。

 だから彼女を凹ませてやろうと考えていたのに。

 今はかつて自分が見下し、尚且つ見るのも嫌だった相手に対して劣等感を抱いている。

 

「あたしだって……」

 

 こんな事思ったのは初めてだ。

 誰かに置いて行かれる事が悔しいと思った事は。

 

「ナリネ!」

 

 いつの間にかいたヴィーダが、成音に対して飛びついた。

 

「ヴィーダ……」

 

 よしよしと頭を撫でる。

 

「優香はどうしたの?」

「ユウタノトコ、イッタ」

「そっか」

 

 何かに気付いたヴィーダが、上目遣いで成音を見た。

 

「ナリネ、ダイジョウブ?」

「大丈夫よ」

「ミサキ……イル」

 

 ヴィーダが美咲を指さす。

 今はランニングをしている美咲を見つつ、成音はヴィーダに問う。

 

「ヴィーダは、あたしの事どう思う?」

「?」

「ほら、あたしヴィーダとは一度戦ってるけど……すぐ負けちゃったし。弱っちいとか思ってるかなって」

「ナリネ……」

 

 ヴィーダが少し落ち込んだ顔をする。

 

「ナリネ、ゴメン……」

「良いのよ。あたしが弱いのは事実。だから、もっと強くなりたい」

「ヴィーダモ……」

「え?」

「ヴィーダモ、モットツヨクナル。モウママガキズツクノハイヤダ。ダカラ……」

 

 ヴィーダが手を差し出す。

 

「イッショニ、ツヨクナロ!」

 

 ヴィーダがいつものようにぴょんぴょんと跳ねて言う。

 成音は微笑んで。

 

「うん」

 

 と返してあげた。

 

 




次回予告

初「意外とお前リアルな特訓してんだな」
美咲「そうですわ。いつかは貴女達にも勝つ為に」
初「凄いじゃん」
美咲「え?」
初「こんなに一生懸命特訓してるなら、私なんてすぐ追い抜かせるだろ? だから分かったら私に関わるのをやめて、二度と私の前に姿を現すなボンバーウーマン」
美咲「珍しく褒めたと思ったらそういう魂胆ですのね……!」
初「私がお前を褒めるわけねえだろ」
美咲「やっぱり貴女は今ここで倒しますわ」
初「落ち着け前回もそのネタ
美咲「えいっ!」
ポイッ! カン! ドーン!
初「……人の話を聞けよお前は」


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第五十話

 

 その次の日から、成音はヴィーダと共に特訓を始めた。

 

「ナリネ、トックン!」

 

 ヴィーダが笑顔で、校門の近くで手を振っている。

 

「待っててくれたの?」

「ウン!」

 

 嬉しそうに手を繋ぐ。

 

「イコ!」

 

 そして強引に引っ張っていく。

 

「ちょっ、ちょっとヴィーダ?」

 

※※※

 

 まずは街をランニング。

 ジャージに着替え、ヴィーダと共に走る。

 

「エーイ!」

 

 成音もそこそこ走りに自信はあるが、ヴィーダはそれ以上。

 あっという間にヴィーダを置いていく。

 

「ハヤクハヤク!」

 

 ぴょんぴょんと飛び跳ねて呼ぶヴィーダ。

 

「待ってよ~!」

 

 成音は何とか追いかける。

 

「ナリネ、マダマダ」

「はあ……速いわねヴィーダ」

「ヴィーダ、カケッコトクイ!」

 

 エッヘンと腕を組む。

 

「ま、まだまだ! 次の勝負では負けないわよ!」

 

※※※

 

 次の特訓は崖登り。

 取り敢えず崖がある所まで移動したのだが。

 

「ひえ~……」

 

 ヴィーダがやろうと言い出したものの、成音は少し恐怖する。

 あまり高い所や不安定な所は得意じゃない。

 

「ナリネ、ダイジョウブ!」

 

 ヴィーダは恐怖一つなく、崖を登っていく。

 

「大丈夫かなあ……」

 

 不安げな顔をしながらも、成音は崖を登り始める。

 

「ひっ……」

 

 少し登った所で、足場がザクっと音を立てて崩れた。

 慌てて登ろうとするが、それが仇になり。

 手を離してはまった。

 

「うわあああああああッ!」

 

 真っ逆さまに転落。

 地面に激突する前に、

 

「ヘンシン!」

 

 既に登り終えていたヴィーダが変身して、成音を助けに行く。

 

「ありがとう……」

 

 心臓がバクバクだ。

 グングニルが成音を優しく立たせてから、変身を解く。

 

「コワカッタ?」

「う……うん」

 

 でも美咲なら、こんな崖でも躊躇わず登るんだろうなあ……と少し落ち込む。

 

「ダイジョウブ! モットガンバル!」

 

 両腕でガッツポーズをするヴィーダ。

 

「そうね。まだまだ!」

 

 成音は諦めず、もう一度登り始める。

 

※※※

 

「オフロ! オフロ!」

 

 その数時間後。

 結局一日目は、ヴィーダに一つも勝つ事が出来なかった。

 全身クタクタで部屋に戻り、まだ元気そうなヴィーダを先に入れてから、扉の鍵を閉める。

 

「はあ……まだこの程度かあ」

 

 脱力し、椅子に腰を預けて天井を見る。

 今日特訓した感じでは、まだ全然美咲やヴィーダに追いつけるイメージがない。

 美咲でさえハイドロフォームや、グングニルとの戦いで使って自爆が無ければヴィーダに勝てないのだから、美咲よりも実力が劣る成音がそう簡単に肩を並べられるわけがない。

 分かっている。分かってはいても……意識せずにはいられない。

 

「ナリネ」

 

 風呂に入ろうと、タオルを準備していたヴィーダに声を掛けられる。

 

「ヴィーダ……」

「アシタモガンバロウ!」

 

 ヴィーダにそう言われ、成音も笑顔で頷く。

 

「ナリネモオフロ、ハイロ!」

「え? あたしも?」

「アライッコ!」

「はいはい」

「ヤッター!」

 

 




次回予告

江代「ここは……どこだ?」
美咲「あれ? 江代さんが何故ここに?」
江代「吾にも分からん。ここはどこだ?」
美咲「いつも初さんと次回予告をしている現場ですわ」
江代「次回予告……? 一体何のだ?」
美咲「あれ、もしかして知りませんの? 私が主人公の小説『仮面ライダーボマー』ですのよ」
江代「仮面ライダー……貴様が?」
美咲「ええ」
江代「ふっ……笑わせるな」
美咲「はい?」
江代「貴様が子どもに好かれるわけがなかろう。せめて吾の如き人を引き寄せる闇の力が無ければ、子どもの心を掴むなど出来はせん」
美咲「じ、上等ですわ! 今から変身して、子ども達に見せてきますわ!」
『COMPLETE』
美咲「行きますわ!」
江代「……ホントに行きおったな」

数分後。

美咲「……」
江代「どうだ?」
美咲「逃げられましたわ……」


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第五十一話

 

 特訓が始まり一週間と少し。

 ヴィーダとの差はまだ開きっぱなしのままだが、少しずつ自分を鍛える事が出来た気がする。

 今日はお互い変身して、組み手をしようとしていた。

 

「今日は負けないわよ、ヴィーダ」

 

 成音は意気込みながら端末を取り出す。

 ヴィーダとの戦いは経験したが、こうして組み手をするのは初めてだ。

 

 ――大丈夫。あたしは会長が戦う所を一度見た。だからあの時よりも戦える筈。

 

「ナリネ、イクヨ」

 

 スイッチを押す。

 

『GUNGNIR ON』

 

 バックルの中から、待機音が流れる。

 ヴィーダは一度目を閉じてから、槍型のアイテムを上に投げ、もう一度キャッチ。

 

「ヘンシン!」

 

 挿入口に差し込む。

 

『CHANGE』

 

 ヴィーダはその姿を、仮面ライダーグングニルへと変える。

 白銀と水色で構成された、槍使いのライダーがその水色の複眼で成音を見据えた。

 

「あたしも」

 

 端末を操作し、閉じる。

 

『FLAME THROWER DRIVE READY?』

 

「変身」

 

 端末を取り付ける。

 

『COMPLETE』

 

 上空から現れた火柱に飲み込まれる山内。

 火炎放射器を模した、炎の怪人へとその姿を変えた。

 

「イクヨ」

 

 グングニルが左拳を握り、素早く移動して火炎放射器怪人の喉元を狙う。

 あの時……決戦の時と同じ攻撃だ。

 

 ――落ち着いて避けないと……!

 

 美咲と同じように集中し、攻撃を予測する。

 しかし火炎放射器を向けた時には、もう遅かった。

 

「ッ!」

 

 成音は攻撃を見切れず、そのまま命中してしまう。

 急所を狙われた成音はシステムに守られたが、変身が解けてしまった。

 

「くっ……」

 

 成音は地面に拳を叩きつける。

 何が足りない……。

 美咲はどんなに早い敵も、躱すどころか正面から吹き飛ばしていた。

 同じようにやろうとしたのに、攻撃がどこから来るのかさえ分からなかった。

 

「ナリネ……」

「やっぱり……」

 

 自分には無理なのだろうか。

 母親のレールから外れた自分では、常に努力し続ける美咲には追い付けないのだろうか。

 

「アキラメチャダメ!」

 

 グングニルが叫ぶ。

 

「ヴィーダ……」

「キットデキル! ツヨイキモチガアルナリネナラ!」

 

 武器を構えなおすグングニル。

 

「強い……気持ち……」

 

 言われた言葉を噛みしめる。

 

『FLAME THROWER DRIVE READY?』

 

 もう一度端末を操作し、構えた。

 そして、自分の心に強く言い聞かせる。

 

 ――あたしは強くなりたい。いつか会長に勝ちたい!

 

「変身!」

『COMPLETE』

 

 火炎放射器怪人へともう一度変身する。

 

「行くよヴィーダ!」

 

 全身の炎を燃やし、もう一度グングニルに立ち向かおうとする。

 

「狩野遥の道具……みツけタ……」

「「!」」

 

 何者かの声。

 声の方を向くと、そこには。

 

「……ギャアアアアッ!!」

 

 蘇我高校にいた怪人達が、集団を組んで自分達の前に立っていた。

 

 




次回予告

※美咲が出ていないので、初と江代が次回予告担当です

江代「吾と貧乳の銃士で次回予告だと……」
初「完全に部外者だけじゃねえか」
初「……美咲出なさそうだし適当に終わらせるぞ」
江代「ふっ……」
初「さーて来週の仮面ライダーボマーは!?」
江代「闇の騎士江代だ。進路相談で闇の騎士を志していると告げたが、まともに取り合ってもらえずじまいだ。奴らはこの世界が誰によって守られているのか理解しておらんらしい」
江代「さて次回は」
貧乳の銃士加入
貧乳の銃士離反
貧乳の銃士死す
江代「の三本だ」
初「来週もまた見てくれよな。じゃんけん、っておい!」
江代「なんだ?」
初「なんだじゃねえだろ、死すってなんだ死すって!」
江代「貴様はギャグキャラなのだから死なんだろう?」
初「そういう問題じゃねえだろ」


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第五十二話

 

「ヴィーダ、ヤル……」

 

 グングニルが槍を構えて立ち向かおうとする。

 しかし火炎放射器怪人が止めた。

 

「ナリネ?」

「あたし一人でやる」

「デモ……」

「あたしだって、一人で戦える!」

 

 ――会長は最初に果たし状を受け取った時、あたし達に見捨てられても一人で戦いに行った。あたしにもそれくらいの強い気持ちがなきゃ、追いつけない!

 

 火炎放射器怪人は全身から炎を滾らせて、怪人達へと向かっていく。

 

「はあッ!」

 

 炎の拳で、アーミーを一人倒す。

 今の火炎放射器怪人でも、アーミー程度ならもう余裕だ。

 

「その程度!?」

 

 全身から炎を放出し、焼き尽くす。

 

「グギャア!」

 

 炙られて苦しそうにしている怪人に、キックで追い打ちをかける。

 

「はあッ!」

「ウオアア!」

 

 蹴られた所を押さえ、悶え苦しむアーミー。

 

「いける……あたしも会長みたいに戦える!」

『FINAL DRIVE!』

 

 全身の放射口から炎を放出し、ジェットエンジンの要領で三体で固まっている怪人達へ突撃する。

 

「うおおおおおおおおおッ!!」

「グアアアア!」

 

 怪人達はボーリングのピンのように倒れ、気絶した。

 

「あたし、強い……このまま!」

 

 その勢いで残りを倒そうとする火炎放射器怪人。

 だが……。

 

「図ニ乗るナ」

 

 残っていたアーミーに斬りつけられる。

 

「きゃあッ!」

 

 火炎放射器怪人は地面へと叩きつけられ、残ったアーミーに銃口を向けられる。

 

「……」

 

 咄嗟に転がって回避するが、その先に別のアーミーの姿が。

 

「ぐあッ!」

 

 剣で斬りつけられ、火炎放射器怪人は大きく吹き飛ばされる。

 まるでビーチバレーのボールのように回され、何度も斬りつけられていく。

 

「くっ……」

「これデ……終ワりダ」

 

 端末なしで、どこからか音が聞こえる。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 自分を斬り付けた四体全員が、剣を高く掲げて振り下ろす。

 そこから光が放たれる。

 

「しまっ……」

 

 受け止めるどころか避ける事すら叶わない。

 

「ぎゃああああッ!」

 

 強制的に火炎放射器怪人……成音は変身解除に追い込まれた。

 

「くっ……」

「中々頑張ッたガ……無駄だッたよウだナ」

 

 胸倉を掴まれ、剣の先を向けられる。

 

「まズはオ前かラ殺しテやる」

 

 ――あたし……このまま死んじゃうの?

 

 成音は目を閉じる。

 

※※※

 

 数か月前。

 

「どういう事? 卒業後は私の決めた学校に行く筈よ? こんな低レベルの高校に行くなんて」

「……」

「何か言ったらどうなの?」

「これ」

 

 あたしは、この前父さんと一緒に書いてもらった書類を見せる。

 アパートの部屋番号と、自分の名前が書かれた紙。

 

「さようなら」

「待ちなさい成音、こんなの聞いてないわよ!」

「アンタなんか母親と思った事ない。だから答える必要なんてない」

「……!」

 

「もう二度と、会いたくない」

 

※※※

 

 母さんは誰の目から見ても毒親だし、今でも大嫌いだ。

 だけど成音は、そんな母親から逃げる選択肢を選んでしまった。

 もし成音が美咲なら、違う道を選んだ筈だ。

 あの時には戻れなくても、やり直す道を選べるなら選びたい。

 だからまだ、死にたくない……。

 

「グギャアアアア!」

 

 断末魔が上がる。

 だがその声の主は成音ではなく、アーミーの方だ。

 

「ヴィーダ、ヤッパリミテラレナイ。ヴィーダカラトモダチウバウヤツ……ユルサナイ!」

 

 グングニルが槍を構え、怒りを露わにする。

 

 




次回予告のネタがないので、今回もカットさせてください。
初「ついにハッキリ言ったな」


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第五十三話

「わザわザ、先に死にニ来たノか」

 

 アーミーの一人が、グングニルに切っ先を向けた。

 

「シナナイ。ヴィーダハ、オマエタチヲタオシテナリネトカエルノ!」

「ほウ……面白イ」

 

 グングニルは消えるような速さで、移動する。

 

「ぐあッ!」

 

 次に現れた瞬間、近くにいたアーミーを吹き飛ばした。

 

「ヴィーダ……」

 

 成音はヴィーダの姿を見て、もう一度立ち上がる。

 

「……」

 

 端末を取り出して、ボタンを押す。

 

『FLAME THROWER DRIVE READY?』

 

 端末を閉じる。

 

「変身!」

 

 ベルトに装着した。

 

『COMPLETE』

 

 天から降り注いだ火柱が、成音の身体を火炎放射器怪人へと変える。

 もう一度アーミーへ相対した。

 

「はあッ!」

 

 火柱で焼き尽くし、動きを止める。

 ステップしてから距離を詰め、怯むアーミーへと拳を叩きつけた。

 

「テイッ!」

 

 グングニルも負けず劣らず、槍を回す。

 グングニルに襲い掛かるアーミーはバタバタとなぎ倒されていく。

 

「これナら……」

『FINAL DRIVE!』

 

 もう一度剣を高く掲げる。

 

「マケナイ!」

『GUNGNIR FINAL DRIVE!』

 

 上空に魔法陣を出現させ、アーミー目掛けて槍を放つ。

 

「グアッ!」

 

 大きく怪人を吹き飛ばし、気絶させる。

 

「ナリネ!」

「分かった!」

 

 グングニルが火炎放射器怪人へ呼びかけた。

 ベルトから端末を取り出して操作し、構える。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 全身から炎を迸る火炎放射器怪人。

 そのままジェット機の要領で、残りのアーミーへと飛び出す。

 

「はああああああッ!!」

 

 火だるまと化した火炎放射器怪人が、アーミーへと激突。

 

「グアアアアッ!」

 

 爆発を起こして、アーミー達を大きく吹き飛ばして気絶させる。

 

※※※

 

 怪人達をその場で寝かせ、成音とヴィーダはその場から離れた。

 

「あれで良かったのかな」

 

 実を言うと、その場を離れるまでに少し悩んだ。

 警察に通報すべきか、それとも蘇我高校まで運ぶべきか。

 数秒くらいでどっちも危険と判断し、元に戻す方法が分かるまで戦い続けるしかないという結論に至った。

 

「次こそあたし一人でもやれるように……」

「ナリネ」

 

 頑張らないと、と呟こうとした口をヴィーダが成音の腕を掴んで止める。

 

「ヴィーダ?」

「ナリネ、ムリハメッ!」

「でも……」

 

 あの時、殺されそうになった時は凄く怖かった。

 美咲なら、あの場でも何とかして乗り切る筈だ。

 でも自分は怯えるだけで、ヴィーダに助けられてしまった。

 ヴィーダは、そんな成音の気持ちを受け止めて言う。

 

「ヴィーダ、ナリネスキ。ナリネイナクナルノヤダ。ダカラ、ムリハメッ!」

「ヴィーダ……ごめん」

 

 俯いて、ヴィーダに謝罪する。

 母親に値する人物を傷付けられ、失うかも知れなかったヴィーダには軽率な発言だった。

 申し訳ない気持ちにもなったが、同時に嬉しかった。

 こんなに自分の事を心配してくれる人は、彼女が初めてだったから。

 

「あたしはあたしのペースで強くなる。それで良いんだよね?」

 

 ヴィーダの目を見て言う。

 ヴィーダは笑顔で「ウン!」と頷く。

 

「ヴィーダ、ナリネ、トモダチ!」

 

 嬉しそうに跳ねて、成音に言うヴィーダ。

 成音も微笑んでから、

 

「あたしも、ヴィーダと友達!」

 

 そう返す。

 二人で手を繋ぎ、会話しながらマンションへと帰る。

 

 




次回予告

初「……」
成音「……」
初「よう」
成音「あ、どうもこんにちは」
……。
初「何話せばいいんだよ」
成音「知らないわよ」
初「お前に聞いてねえよ」
成音「誰に聞いたのよ」
初「作者に聞いたんだよ」
成音「ナニソレイミワカンナイ」
初「どこの西木野真〇だよ」


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第五十四話

 ガス怪人……蒲生は校長室で、帰還した怪人から話を聞いていた。

 

「狩野遥の人形と、山内ちゃんに負けたっすか」

「はイ……」

 

 ボロボロになった怪人達は、申し訳なさそうに話す。

 

「申し訳ありマせン」

「はあ、この体たらくでどう六角美咲を倒すんすか? 蘇我高校の生徒の癖に情けないっす」 

「そうだな」

 

 どこからか聞き覚えのない声が聞こえる。

 

「誰っすか?」

「まさかすぐに俺に後輩が出来るなんてな。よう」

 

 現れたのは、足利明人。

 だが様子がおかしい。

 恐らく……。

 

「アンタは明人じゃないっすね? 一体誰なんすか?」

「俺はこいつの身体をちょいと借りてる、ただのあの人の家族さ」

「そうっすか。それで、その家族がここに何の用っすか?」

「面白そうだし俺にも仕切らせてくれよ」

「嫌っすね。六角美咲を倒すのはこの私っす」

「つれねえな。でもそこまで言うって事は、自信があるんだよな?」

 

 明人がベルトから剣型の端末を取り出す。

 

『ガスドライバー!』

 

 ポイズンガスと書かれたガジェットを、ドライバーの横に差し込み、指を鳴らす。

 

「変身」

『ガスドライブ! ポイズン! クルシーム!!』

 

 紫色のガス怪人へと姿を変える蒲生。

 

『SWORD DRIVE READY?』

 

 端末を取り付け、降ってくる剣の柄を取り、そのままガス怪人へと斬りかかる剣の怪人。

 ガスでバリアを作り、弾くガス怪人。

 

「中々やるじゃねえか」

「明人と比べたら大した事ないっすね」

「これでも最近この身体に放り込まれたばかりなんだ。無茶言うな」

 

 弾かれた剣の怪人が、もう一度構えなおす。

 

「はあッ!」

 

 剣の怪人が姿を消し、現れた場所でガス怪人を薙ぎ払う。

 やはり明人と比べると遅い。

 

「口は達者だが、俺を倒せないようなら、お前は俺や六角美咲よりも弱い事になるな」

「なんだと……」

「あいつは新しい力を手に入れている。今の俺じゃ到底倒せねえ。もしあいつに勝ちたいのなら、俺くらい倒してもらわねえとな」

「アンタ程度、すぐに倒すっす」

 

 挑発に乗って、そう反論するガス怪人。

 笑みを浮かべながら剣の怪人は言う。

 

「やってみな」

 

 剣の怪人がもう一度駆け出そうとする。

 しかし。

 

「ぐっ……何をする、お前……」

 

 剣の怪人の動きが止まる。

 彼の中にいる明人が、精神力で妨害していた。

 

『や……めろぉ……』

「俺に抗ってやがる……ッ!」

『俺はお前にも菫にも屈しない!』

 

 明人と人格が切り替わる。

 

『何だと……』

「お前、六角美咲と戦うつもりなんだろ」

「そうっす。私があいつを……」

「六角美咲を倒すのはこの俺だ! お前にも、こいつにもやらせない! 俺がお前達を止める!」

『FINAL DRIVE!』

 

 端末を操作し、閉じて再びセット。

 剣の怪人が構えつつ、姿を消す。

 

「どこっす!」

「はあッ!」

 

 ガス怪人を斬りつけ、大きく吹き飛ばす。

 

「ぐあッ!」

 

 蒲生の変身が解け、地面へと叩きつけられる。

 

「……」

「流石だね。足利明人……君は確かに強い。だけど僕の計画に必要なのは君ではなく、君の肉体だよ」

 

 どこからか現れた菫が、何かのスイッチを押す。

 

「ぐッ……」

 

 明人が苦しみだし、悶える。

 

「戻ってくるんだ」

『おうよ』

「待て……ッ!」

 

 明人の声が届く事はなく、身体を再びあの人格に奪われてしまう。

 

「今の僕には蒲生も必要だ。こんな醜い争いを、僕に見せないでくれないか?」

「……」

「これからは彼と協力して進めたまえ。君一人では荷が重かろう?」

 

 笑みを浮かべながら言う菫に、蒲生は不満そうに答える。

 

「……ういっす」

「では、よろしく頼んだよ」

 

 菫が立ち去っていく。

 

「そういう事だ。よろしくな」

「……」

 

 明人に握手を求められるが、蒲生は断る。

 

 ――見てろ六角美咲、足利明人もいつか出し抜いて……お前を倒すっす。

 

 




今日も次回予告はありません。
初「はっきり言うな」


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第五十五話

 

 次の日の放課後。

 

「そんな事があったんですの?」

「ええ。まだ身体が痛むけど、大丈夫よ」

 

 美咲、成音、優香の三人で下校していた。

 

「にしても今の話凄い系じゃん? 最初成音っち一人で挑もうとしてたなんて」

「そ、そう?」

「美咲っちの真似系?」

「ち、違うわよ! 誰が会長の真似なんか……」

 

 言えない。実は思い切り会長の真似しようとしていたとか。

 

「貴女も頂点の道を歩き始めた、って事ですわね」

「あ、アンタなんか目標にしないわよ!」

「悪いですがその座を譲る気はありませんわよ」

「人の話聞いて!?」

 

 ――やっぱこの人目標にするのは間違いかも……。

 

「取り敢えず祝勝祝いするじゃん? ヴィーダっちも誘う系?」

「唐突ね優香」

「こういうのは思い立った時にやるのが普通系」

「勢いだけは凄いわよね二人とも」

「だけって何系? 馬鹿にしてる系?」

「いや、だってあたしには真似出来ないし」

「ナリネ!」

 

 校門から声が聞こえる。

 

「ヴィーダ!」

「ミンナモイル!」

「ヴィーダさん、久しぶりですわね。最近まで成音さんとどうしてたんですの?」

「ナリネ、ヴィーダトトック

「ああああ! ダメダメヴィーダ!」

「ナンデ?」

「な、何でも良いから会長にはめっだよ! めっ!」

 

 特訓してる事だけは絶対に知られたくない。

 いつの間にか美咲を追い越していた的な感じにしたい。

 

「何ですの? 何を隠してますの?」

「あー、実は今までヴィーダと会長の悪口言ってたのよ」

「はい……?」

「だってアンタ悪口言われても仕方ない人じゃない?」

「なぁんですってえ!?」

 

 白目を剥きながら、どこからか取り出した爆弾を投げる。

 成音には当たらず、校門で跳ね返り、美咲に激突。

 

「……爆弾くらいちゃんと当てられるようになりなさいよ」

 

 もう避けようという気すら起きなくなっていた。

 

「どうしてですのぉ!」

「知らないよ!」

 

※※※

 

「やっと終わった」

 

 仕事を終え、俺は家まで帰ろうとしていた。

 

「ん? 通知か」

 

 俺達のグループトークだ。

 写真が投稿されたという通知が沢山ある。

 

『今日の写真ですの』

 

 あいつら……俺を呼ばずに寿司屋でパーティしてたのか。

 仲間が俺一人だけ男ってのも辛いもんがあるな。

 

「てか……俺の悪口言われてないよな……」

 

 あり得そうだから困る。

 

「まあ良いか、俺も早く帰って飯を……」

「まだいましたのね」

 

 聞き覚えのある声。

 

「なんだいたのか美咲……いつから?」

「悪口言ってないよな、から聞いてましたわ」

 

 しまった。

 

「いやほら、女子会ってそんなイメージが」

「まったく……どいつもこいつも私に悪口を……。そんなに私は悪口言われるような人間ですの?」

 

 うーん、既に言いたい事があり過ぎるのは確かかな。

 

「貴方もそんな事を言うなら、これは渡せませんわね」

「?」

 

 美咲が袋から取り出したのは、なんとも美味しそうな寿司の詰め合わせ。

 恐らくパーティをした寿司屋で、テイクアウトでもしたのだろう。

 

「そ、それを俺に!」

 

 丁度良いものを食べたいと思っていた所だ。

 手が伸びてしまう。

 

「先の失言を詫びなさいな」

 

 こいつぅ……。

 

「ゴメンナサイミサキサンワタシニスシヲオメグミクダサイ」

「よろしい」

「やったあ!」

 

 俺は寿司を受け取る。

 

「その代わり、今から私の家に来なさいな」

「いや、もう家に帰りた

「来てくださいな? そして私を手伝いなさい」

 

 これは断れないパターンだ……もう既に受け取っちゃったし仕方ない。

 

「はひ……」

 

 




次回予告

美咲「ついに戻ってきましたわ~!」
初「裕太可哀想に……」
美咲「またそれですの? 私と裕太さんは一心同体なんですの! 最高のパートナーなんですの! 出会えば奇跡も起こりますわ!」
初「なんかそれ以上喋るとまずそうだからそこでストップ」
美咲「それより初さんは私が戦ってる間何してるんですの?」
初「何って、大学の推薦入試の勉強中だけど。彼氏東京に行ってるし、追いかけねえと」
美咲「つまり私は彼氏に会いたいだけの人に負けてるんですの……?」
初「そゆこと……っておい」
美咲「うわああああああああッ!!」
お察しください。


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第五十六話

 

 俺は美咲の家まで直行。

 部屋で寿司を頂いてから、俺と美咲は仕事を始めた。

 それから数時間後。

 

「ふぅ……」

 

 大量の書類を何とか書き終え、夜十一時に。

 俺の身体が、睡魔に屈そうとしていた。

 

「……」

 

 そういえば美咲の声が聞こえない、と思って目をこすって美咲を見る。

 すると。

 

「すー……すー……」

 

 先に書類を終わらせていた美咲が、気持ちよさそうに寝息を立てていた。

 眼鏡を外すのも忘れて。

 

「このままだったら凄く可愛いんだよな」

 

 普段は荒々しく負けず嫌いな彼女も、寝ている時だけは凄く可愛く見える。

 初対面の時も思ったけど、黙っていれば美人なんだよな……。

 

「ふぁー……そろそろ帰るか」

 

 俺も帰ろうと部屋を出ようとする。

 だが疲れで身体がふらつき、

 

「えっ……」

 

 俺は美咲にのしかかる形で倒れてしまった。

 

「……いてて。あ」

 

 ヤバいと気付き、上体を起こす。

 自分がのしかかった証拠だけでも消そうと逃げようとするが、その前に美咲が目を開く。

 

「……何事ですの……」

「オ……ワタ」

 

 バッチリ見られた。

 そして当然、こう言われた。

 

「どういうつもりですの?」

 

 やべえ、殺される。

 どう言い訳すれば良いんだコレ。

 

「おはようございます」

 

※※※

 

 殴られた。

 当然だ。

 

「いてえなおい……」

「まったく、別にここで寝ても良かったんですが、人に襲い掛かるのは感心しませんわね」

 

 美咲が腕を組みながら言う。 

 

「いや寝ても良かったのかよ」

 

 なら早く言ってよ。

 ……ゑ? いやいや色々まずいだろ。

 

「取り敢えず終わってますのね」

「おう」

「どうしますの? 寝ていきますの? それとも、また性欲をぶつける気ですの?」

「だから痴情のもつれじゃねえよ」

 

 間違ってもこいつに手は出さねえ。

 

「取り敢えず枕だけ貸しますから、寝ていきなさいな」

「いや別に家帰るけど……」

「構いませんが、明日私に付き合ってもらう都合上早く起きてもらいますわよ」

「ゑ、明日休日なのにまだなんかやるの?」

「私とお買い物ですわ」

「買い物……? 何で急に?」

「最近修行や生徒会の仕事で忙しかったですし、気分転換に行こうと思ったのですわ」

「へえ……でもそれなら俺いると邪魔な気が……」

「あら、私と出掛けるのが不満ですの?」

 

 美咲が半目でこちらを見る。

 やらかした後だから断り辛い。

 

「わ、分かったよ。取り敢えずもう寝よう。眠いし」

「それで良いんですのよ。私も寝ますわ」

 

 眼鏡を外す美咲。

 そのままベッドに上がり、横になる。

 

「くかー……くかー……」

「の〇太?」

「見た目で判断しないで欲しいですの」

 

 起きてたのかよ。

 

 




次回予告

初「おい〇び太」
美咲「いい加減にしなさいな」
初「いやワクワ〇さんか?」
美咲「貴女〇ロリですの?」
初「今日は何を作って遊ぶんだ?」
美咲「今日は全然登場しない私専用のマシンをって……やらせないで欲しいですの!」
初「こんなの作りたくないよーだ」
美咲「でも私専用のマシンは欲しいですわね……」
初「確かにな。お前仮面ライダーなのに」
美咲「それを言うならヴィーダさんも乗ってませんわ」
初「それはお前が乗ってない理由になるのか?」
美咲「作者さん私専用のマシン作ってくださいな!」
作者「気が向いたらな」
美咲「この分からず屋!」
ポイッ! ドーン!
初「どんだけ使いまわすんだよ」
作者「良い感じのネタが思いつくまで」


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第五十七話

 

 朝。

 出かける前に、俺はリビングで美咲と朝食を頂いていた。

 

「人ん家で飯食わしてもらうのなんて久しぶりだな」

 

 美咲の母親と父親も対面で食べている。

 自分の家族ではないが、こういう家族みんなで食べる的なシチュエーションも久しぶりだ。

 まあ……もう自分の家族で同じ事は出来ないが。

 

「美味しい? 裕太くん」

「はい、とても」

 

 美咲の母親に感想を告げる。

 そういえば美咲の母親を見るのも初めてだ。

 美咲に似て美人だし、大人の魅力がある。

 もし手を出すならこっちだな。

 

「今邪な事考えました?」

「そんな事考えてねえし」

 

 バレたか。

 

「そういえば二人とも、昨日は激しかったな」

 

 美咲の父親が笑みを浮かべながら俺達に言う。

 

「もしかしてこれか?」

 

 指で輪っかを作ってそこに指を入れる父親に、俺と美咲は味噌汁を吹き出す。

 

「違います!」「違いますわ!」

「またまた、隠さなくても良いんだぞハハハ……」

 

 てかこの親何で成人男性に未成年襲わせようとしてんだ……。

 

「俺達も若いころは」

 

※※※

 

 一時間後。

 俺達は外に出ていた。

 

「んで、買い物ってどこ行くんだよ」

「普通にショッピングモールですの」

 

 俺は未だにスーツ姿だが、美咲は一応着替えていた。

 髪型こそ同じだが、中々お洒落な服を着ている。

 何度でも言うが、こいつは言動行動が残念なだけで美人なんだと思わされる。

 

「どうしましたのそんなにジロジロ見て」

「な、何でもないよ」

「言っておきますが、私は犯される気はありませんのよ」

「だから襲わねえって言ってんだろ!」

 

※※※

 

 取り敢えずショッピングモールへ。

 

「取り敢えずまずは、新しいライダーグッズを見に行きますわよ」

「え!?」

 

 いきなりだな。

 まずここは服とかじゃないの……?

 

「ほらほら行きますわよ」

「はあ……」

 

 俺ライダー分かんねえんだけどなあ。

 

「あ、これですわ」

 

 どうやら今年の新しいライダーの変身ベルトらしい。

 スタンプのようなものを押して、変身するとかなんとか。

 

「映画での先行登場がカッコよかったですわ。セイバーも良いですが、こちらも中々……」

「そ、そうか」

 

 ライダーの世界は俺には中々難しい。

 

「あ、眼鏡のお姉ちゃん! 男連れてる!」

 

 子供の一人で美咲を指さして言う。

 

「あらどうしましたの?」

「ねえねえ、リバイスの変身やってよ!」

「良いですわ。映画とテレビでラーニング済みですのよ!」

 

 美咲はベルト無しのエアで変身のポーズを行う。

 

「変身ですわ!」

 

 別ライダーの変身でもですわ付けるのか。

 

「すごいすごい!」

 

 子供がぱちぱちと手を叩く。

 

「私にかかればこんなもんですわ」

「でも毎回思うけど、ですわは変だよ」

「……」

 

 俺が言いたかった事を言いやがったな……。

 

 




次回予告

美咲「リバイス最高でしたわ!」
初「あー今日から新仮面ライダーなんだっけ」
美咲「そうですの! この話で私が変身ポーズをした仮面ライダーですわ」
初「どんなライダー?」
美咲「そういうと思って、今回はリバイスの宣伝をしますわ」
初「次回予告で他の番組の宣伝するとか聞いた事ねえわ」
美咲「主人公は家族を守る為に変身する! 仮面ライダーリバイス! 絶対に見なきゃ損ですわ」
初「宣伝下手過ぎね?」
美咲「それは作者の落ち度ですの」
初「言うなそれを」


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第五十八話

 

 まだ落ち込んでいる様子の美咲。

 

「……」

「いや、あれは俺も変だと思うぞ」

「つい出てしまうんですの」

「てかお前ん家って別にお嬢様とかそういうの無さそうなのに、喋り方そうなの?」

 

 前から気になってたけど。

 

「私はいずれ頂点に立つ者ですわ。高貴な振る舞いや言葉遣いを身に付けていて当然ですわ」

 

 高貴ってのはとてもお前に似合わない言葉だな。

 

「聞こえてますわよ」

「あれ俺口に出してた?」

 

 心読まれたか。

 

「次はどうするんだ?」

「ゲーセンにでも行きますわ」

 

 次はまさかのゲーセンか。

 

「浅井家にプロゲーマーがいますから、その人に勝つ為に修行してますのよ」

「また浅井家か」

「今はライダーとして強くなる修行も大事ですが、浅井家に勝つ事は私のライフワークですのよ」

「ライフワークねえ」

 

 考えてみれば俺にはないなあ。

 

「貴方のライフワークは私のお供でいる事ですのよね?」

「だから何でそうなる!」

 

 それだけは嫌だと何度言ったら。

 

「まずはウォーミングアップにガンバライジングでもやりますわ」

「聞けよ俺の話!」

 

 そのままゲーセンに入っていく。

 

※※※

 

 数分後。

 

「負けましたわ……」

「お前スロット弱くね?」

 

 二回くらいしていたが、見てた感じスロットで外れ引いてる感が凄すぎた。

 

「これでは早い攻撃で隙が出てしまいますわね。もっと訓練しなくては」

「得意の遊びながら修行か?」

「そんな所ですわ。相手がどんなチートを使おうとも、それを見抜ければ勝機はあります。そして答えは意外な所にありますのよ」

「なるほどな。んで……次は太鼓ゲー?」

「あの人の得意分野の一つですわ。貴方もやります?」

「俺も? じゃあまあ良いけど」

 

 正直言って俺の実力は下手の横好きレベルだ。

 普通すらフルコン取れないし。

 人に自慢出きるようなものではない。

 

「そろそろ曲始まるぞ」

「待ちなさいな」

 

 何故か美咲が服のポケットから音叉を取り出す。

 どうやら玩具のようだが。

 

「何してんの?」

「勝つ為のおまじないみたいなものですわ」

 

 太鼓が置かれた台に、音叉の先をちょんと付けてから、自分のおでこに先を向ける。

 そして目を閉じた。

 

「……」

 

 眼を開け、音叉を持っていた手を軽く払う。

 

「はあッ!」

「それがおまじないか? 美咲」

「違いますわ」

「え?」

「今の私は美咲じゃないですわ。美咲鬼(みさき)さんとお呼びなさいな。明日夢」

「誰だよ」

 

 なんかのスイッチが入ったみたいだな。

 

「私、鍛えてますから……負けませんわよ」

 

 独特なポーズをとって、太鼓バチを握る。

 

 




次回予告

初「最後のネタなんだ?」
美咲「響鬼ですわ響鬼!」
初「ひびき……?」
美咲「これですの」
響鬼視聴後。
初「これ仮面ライダーなのか?」
美咲「大体一般人はそういいますわね……」
初「まあ面白そうではあるけど」
美咲「素直に褒めるなんて珍しいですわね」
初「お前を褒めたくないだけだ」
美咲「なぁんですっt
割愛


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第五十九話 

 

「どうしてですのぉお!」

「勝った……」

 

 俺と美咲……いや美咲鬼さんは、お互い難易度鬼でプレイした。

 のだが、スコアは三戦とも俺の勝利で終わってしまった。

 

「もう一度……もう一度勝負ですわ!」

「まだやるのか?」

 

 もう既に腕が痛い。

 

「当たり前ですわ。私は勝つまで戦うんですの。負けたままで放置するのは私の流儀に反しますわ!」

「わ、分かったよ」

 

 美咲鬼さんの気合に負けて、俺はもう一度コインを入れる。

 再び三曲終了後。

 

「今回は私の勝ちですわね」

「嘘だろ……」

 

 今度は俺のスコアを大きく超えてしまった。

 さっきのようなミスも殆どなく、隙のない立ち回りで俺に三連勝。

 俺の腕の痛みを考慮しても、この成長は意外だ。

 

「私はやればやる程に伸びますわ」

「そうみたいだね」

 

 ただしスロットには適用されない模様。

 

「次は別ので勝負しますわよ!」

「えー! もう既に腕が……」

「良いから行きますわよ!」

「話を聞いてくれ!」

 

※※※

 

 他のゲームで何戦かしたが、最終的に美咲が勝つ展開が続き。

 昼飯を食べ、他にもいくつか店を回ってから……帰路へ。

 

「てか買ったものにあんまり女の子らしいもの見当たらないな」

「大きなお世話ですの」

 

 新ライダーの変身ベルトに、ソフビ、あと火薬の原料の一部っぽいものを購入。

 これ警察に言っても良いんだろうけど、多分そんな事をしようとしたら間違いなくしばかれる。

 

「私は化粧もおしゃれも興味ありませんわ。ちゃんとすっぴんで勝負しますの」

「そ、そうか」

 

 まあこいつの顔面ならそもそも化粧なんて要らないか。

 

「さ、家に帰ったら今度は走り込みますわよ」

「今日暑いけどやるのか?」

 

 てか俺もやるのか?

 

「当たり前ですの。ある人が言ってましたわ。男も女も、度胸と愛嬌の両方を兼ね備えた者が人生を制すって」

「確かに凄いけど、誰が言ってたの? それ」

「それは秘密ですの。でも私の大切な人ですわ」

「へぇ……」

 

 彼氏とかだったら驚くけどな。

 

「……! 美咲、危ない!」

「えっ……うわあっ!」

 

 人気のない所で、俺と美咲は何者かに襲撃された。

 美咲は咄嗟に拳を受け止めるが吹き飛ばされ、何とか体勢を立て直す。

 隣に立っていた俺が、美咲に拳を振るった者の正体を捉えた。

 

「お前は……」

 

 あの黒フードが変身していたサック怪人。

 

「貴方、あの時の黒フードさんですわね?」

「……殺す」

 

 サック怪人は静かに呟いてから、美咲に拳を振るう。

 

「あくまで答える気はありませんのね」

 

 今度は何とか拳を受け止め、美咲は蹴りで押し出す。

 

『BOMER DRIVE READY?』

「変身ですわ!」

『COMPLETE』

 

 空から降る爆弾を、美咲は握り潰す。

 そこから現れたのは、爆弾の形の顔をした仮面ライダー……ボマー。

 

「戦う前に言いますわ。今の私はかーなーり強いですわ!」

 

 

 

 




ネタ切れにつき次回予告は今回ありません……。

初「またかよ」


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第六十話

 

「貴方の実力は覚えてますわ。だから最初から飛ばしていきますわよ」

『SCAN DRIVE』

 

 端末を使い、そのカードを読み取る。

 

『COMPLETE HYDRO DRIVE READY?』

 

 両腕を腰の高さまで広げ、全身に力を込めて叫ぶ。

 

「超変身ですわ!」

 

 ボマーがハイドロフォームへと変わる。

 

「……」

 

 サック怪人も拳を構えなおしてから、ボマー目掛けて勢いよく駆け出す。

 姿が見えなくなる程の加速。

 

『HYDRO ACCELERATOR DRIVE』

 

 ハイドロボマーも、サック怪人と同じく超加速。

 二人が互いに攻撃を放った所で、現れては消え、現れては消え、を繰り返す。

 再び二人が止まって構えなおした所で、サック怪人が息を切らした。

 

「もう息切れですの? なら終わらせますわ!」

『FINAL DRIVE!』

 

 ボマーのバットに、ボムビットが集まる。

 

「ハイドロインパクト!」

 

 ライダーインパクトの強化版、ハイドロインパクト。

 水色のボムビットを、サック怪人の腹に向かって叩きつける。

 

「はあッ!」

「ぐおっ!」

 

 自身すら巻き込みかねない大爆発の中から、サック怪人だけが吹き飛ばされる。

 サック怪人の変身が解け、人間体の黒フードへ。

 ボマーは……。

 

「こっちですわ」

 

 自身の能力で復活した後、変身解除。

 

「さあ、黒フードさん……正体を現しなさいな」

 

 ゆっくりと歩いて近付く美咲。

 しかし。

 

「美咲気をつけろ!」

「え?」

 

 俺が叫んだ後、黒フードが再変身して立ち上がる。

 美咲も変身しようと端末を取り出すが、妨害されてしまう。

 

「排除する……!」

 

 そして首を掴んで地面へと叩きつけ、絞める。

 

「くっ……かはっ……」

「美咲! ……ッ!」

 

 痛みと共に、俺の頭にイメージが浮かぶ。

 俺が河原で、美咲の首を絞めつけようとしていた光景。

 紛れもなく、蘇我高校との決戦前の特訓時のものだ。

 あの時俺は意識が途切れて知らなかった……だが。

 

「今はこんな事考えてる場合じゃ……!」

 

 頭を振って、自分が背負っていたバッグを開く。

 俺は美咲達に内緒にしていたそれを取り出した。

 

「……」

 

 サック怪人が、美咲の首を絞めながら俺を見る。

 俺は取り出したもの……赤紫の刀身に黒い柄の刀の形をした端末が取り付けられたベルトを装着して言う。

 

「お前に……美咲は殺させないぜ」

「裕太さん……それは……」

 

 端末を取り出して操作し、眼を閉じた。

 

『ムラマサ!』

 

 息を吸い、腹から声を出す。

 

「変身!」

『御意……出陣! ムラマサ……仮面ライダームラマサ!』

 

 上から刀の形をした光が降り注ぎ、腰の辺りで制止する。

 柄を掴んで抜刀すると実体化し、そこから身体が変化していく。

 俺の姿はそのまま、仮面ライダームラマサへ。

 

「うおおッ!」

 

 変身するや否や、手にした刀でサック怪人に斬りかかる。

 サック怪人は咄嗟に美咲の首から手を離し、拳のサックで防御。

 

「……」

 

 サック怪人が無言で弾く。

 

「けほっ……こほっ……裕太さん……」

「あとは俺に任せておけよ。美咲」

 

 俺は刀を構えて、サック怪人を睨む。

 

 




次回予告

美咲「ついに裕太さんも仮面ライダーに……」
初「第二章になってやっとか」
美咲「加賀美さんだって副主人公ですが、ガタックになるのは遅かったですわよ」
初「な、なるほど? てか変身前と変身後で性格ちょっと違くないか?」
美咲「言われてみればそんな気がしなくもないですわね。バグスターにでも乗っ取られてるんですかね?」
初「よく分からねえけど、吹〇とア〇ヤみたいな感じか?」
美咲「それだと私が分かりませんわ……」 


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第六十一話

「はあッ!」

 

 俺は自分の姿が消える程の速さで、サック怪人との距離を詰める。

 見えた辺りで上段斬りを行い、サック怪人の顔面に傷を負わせた。

 

「ぐッ!」

「……!」

 

 手が震える。

 これが今の自分の力。

 今なら、何でも出来る気がする。

 

「まだ行くぜ!」

 

 もう一度地を蹴って、サック怪人に何度も斬りかかった。

 サック怪人をかなり押せている。

 

「くっ……」

「もう終わりか? ならこれで終わりにしてやるぜ」

 

 俺は端末を操作。

 

『最終撃!』

「ライダースラッシュ!」

 

 俺は全速力で、サック怪人に斬りかかる。

 剣の怪人の必殺技に類似しているが、それよりも速く。

 

「おりゃあ!」

 

 トドメは全力の薙ぎ払い。

 サック怪人の腹を斬りつけて、大きく吹き飛ばす。

 大ダメージを負ったサック怪人は変身解除しながら転がり、仰向けに倒れる。

 

「ぐあッ!」

「……」

 

 俺は一応変身を解かず、そのままトドメを刺そうとする。

 だが黒フードが煙幕で目をくらまし、その場から逃走。

 

「逃げられちまったか……ったく」

 

 少し様子を見る。

 隠れていない事を確認してから、俺は変身を解いた。

 

「……」

 

 分が悪いかもとさえ思ったが、相手を撤退させる事が出来た。

 

「美咲、勝ったぞ!」

「やりましたわね……」

 

 美咲が近くの柱にもたれかかりながら、俺にサムズアップする。

 

※※※

 

 戦いの後、今度こそ美咲の家に向かい。

 部屋の中で美咲に話しかけられた。

 

「あのベルトの事だったんですのね。力になれるかもとは」

「そうだよ」

「何故隠してたんですの?」

「だってもしかしたらお前の事だし、一人で戦いそうな気もしたからよ。だったら必要ないならないで良いのかなって」

「そういう事でしたのね。というかそれより、それはどこで手に入れたんですの?」

「あー、あの決戦の日に見つけた」

「逃げてる途中で、ですの?」

「そう。俺科学部に隠れたんだけど、その中にこれがあってさ。取り敢えずこれをかっさらってきた感じだ」

 

 黒フードや怪人がどこに潜んでいるかわからない以上、護身も必要だと思い盗んだが、結局会わずじまいで、自分に使えるのか判明しないままあの日は終わってしまった。

 

「何にせよ、これで戦力が増えましたわね」

「ああ」

 

 この力があれば、俺もやっと美咲の役に立てる。

 

「でも最強の座は渡しませんわよ」

「なーにが最強だよ。思い切り殺されかけただろ」

「う、うるさいですわ!」

 

 爆弾を投げつけられる。

 俺に当たらず床に跳ね返り、ギャグ漫画のように美咲だけに激突してから爆発。

 

「……」

「何故当たらないんですの……」

「知らないよ」

 

 あと爆弾使う時にちゃんと自分が生き残れるように当てて欲しい。

 

 




次回予告

初「最強戦力さん、そこまで言うなら姉さんと戦え」
美咲「……見逃しますわ」
初「逃げてんじゃねえぞコラ」
美咲「あーもう! まずは貴女を倒してからですわ!」
初「いや、私こそ見逃してくれ。めんどくさい」
美咲「もう少しやる気を出して欲しいですの」
初「体力の無駄」
美咲「ムキーッ! 腹が立ちますわ!」
(割愛)
初「ほら、読者にネタが飽きられ始めたぞ」


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第六十二話

 黒フードは人気のない路地に隠れてから、菫に連絡する。

 

「……俺だ」

『どうした? 息が荒いぞ』

「すまない、任務を失敗した」

『そうか』

 

 荒い息を吐く黒フード。

 

『君ならあの二人を倒せると思ったんだけど、少し期待外れだったね』

「……すまない」

 

 静かに黒フードはこう返す。

 

『君は僕に尽くす為に生まれた。僕の命令すらまともにこなせないようなら、君に存在価値がない事は分かってるよね?』

「……」

 

 黒フードは唾を飲み込む。

 

『でも安心したまえ。僕も君をすぐ殺したりはしないさ。君は僕の大事な作品だ。期待に応えてくれるなら、僕も君を見捨てたりしない』

「ああ」

 

 黒フードは少し落ち込んだ声で返事する。

 

『流石に一人で二人を相手させるのは荷が重かっただろうし、あの二人と合流したまえ』

「明人や蒲生とか?」

『ああ。それなら君でも、二人を倒せる筈だ』

 

※※※

 

 命令通り蘇我高校へ向かう。

 怪人達が守護する廊下を歩き、二人がいる場所までたどり着く。

 

「ここか」

 

 校長室の扉を開ける。

 

「また誰か来たんすか?」

「よう兄貴、来たのか」

 

 不満そうな蒲生と、歓迎する明人。

 黒フードは目深にフードを被り続けたまま、黙って入室。

 

「そのフード取れないんすか? 礼儀とかないんすか?」

 

 黒フードの態度にイラついている蒲生が、黒フードに指摘する。

 

「……お前にそれを命令する権限などない筈だ」

「ムカつくっすね。その態度」

「……」

 

 黒フードは蒲生に背を向ける。

 背を向けたまま言う。

 

「お前達二人の力を借りに来た。菫からの命令だ」

「……はあ?」

「ここの生徒達では、もうライダー達に太刀打ち出来ん。六角美咲や福沢裕太と戦ったが、二人とも俺を倒した」

「福沢裕太? 何のことだよ兄貴」

「あいつも仮面ライダーに変身した。それも一切の強化なしで、俺を圧倒した」

 

 黒フードはまだ傷になっている部分を押さえる。

 それを見た明人が言う。

 

「兄貴が弱いだけで、福沢裕太の方が強いだけなんじゃない?」

「……」

 

 弟の言葉に、黒フードは少し目を細める。

 

「俺さ、お袋から聞いたんだけど……兄貴って出来損ないなんだろ?」

「それは……」

「人工突然変異体として作られたけど、完璧に力も使いこなせない半端者。それが兄貴の正体だって聞いた」

 

 自然に生まれてくる突然変異体は、基本的に自分の能力に自覚がなくとも、制限なしで力を使用する事が出来る。

 黒フードはそんな突然変異体を人工的に生み出す研究で作られた一号機。

 突然変異体のDNAを元に生み出されたが、結果的に失敗作として生み出されてしまった。

 結果、力を自分の意思で使用出来ていない。

 

「しかもその上福沢裕太なんかに負けるなんてさ。兄貴、こいつはともかく、俺はアンタと組みたくねえよ」

「俺も別にお前と組みたいわけじゃない。菫に頼まれて仕方なくだ」

 

 黒フードが鋭い目で、明人を睨みつける。

 

「そこまで言うなら頼まん。俺は一人でも戦う」

 

 外へ向かおうとする黒フード。

 

「へえ、出来んの?」

「……」

 

 明人の挑発を無視し、黒フードは校長室をあとにする。

 

※※※

 

 出てすぐに黒フードはサックドライバーを装着する。

 

『SMASH DRIVE READY?』

「変身」

 

 サック怪人へと変わる黒フード。

 その時。

 

「……ッ!」

 

 一つの光景が見えた。

 体育館のような場所で、誰かと二人で外の廊下を歩く二人の女性を見ていた。

 片方は狩野遥、もう片方は戸間菫。

 

「俺は菫さんがいれば頑張れる。そんな気がするんだ」

 

 近くに立つ男が放ったその声と共に、光景はそこで消える。

 

「これは……」

 

 誰かの記憶だろうか。

 しかし……誰のものなのか分からない。

 自分の記憶でない事は確かだ。

 

「今は気にしている場合ではない」

 

 今は菫の為にも、戦って勝つ事だけをイメージするべきだ。

 自分にそう言い聞かせ、サック怪人は歩き出す。

 

 




次回予告は……ない。
初「まあ美咲いねえし許そう」


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第六十三話

 

 美咲宅。

 既に裕太は帰宅し、美咲は夕食を食べてから休もうとしていた。

 

「うわあッ!」

「な、なんだこいつは!」

 

 一階から両親の声。

 

「また誰か来ましたの?」

 

 少し不満げに呟いてから、美咲はボマードライバーを装着。

 

『BOMER DRIVE READY?』

 

 端末を閉じてから、顔の左側で構える。

 

「変身ですわ!」

『COMPLETE』

 

 窓から外へ着地。

 門の前で待つサック怪人に、ボマーは言う。

 

「また私とやりに来たんですの? さっきは油断しましたけれど、もうやられたりしませんわよ」

 

 バットの先を向ける。

 

「対象を確認……任務を遂行する」

 

 サック怪人は拳を構えた。

 

※※※

 

 ボマーが地を蹴って、サック怪人へと攻撃を叩き込む。

 

「はあッ!」

 

 サック怪人はすんでの所で回避。

 

『SMASH WAVE DRIVE』

 

 端末を操作し、拳から光を放つ。

 ボマー目掛けてまっすぐに飛んでいく。

 

「ていッ!」

 

 ボマーは掌で受け止めて握り潰す。

 

「この程度ですの?」

「……ッ!」

 

 ハイドロフォームでないならあるいは、そう思っていたが、ボマーの実力はサック怪人を上回っていた。

 やはりあの時、ムラマサに目をくれず殺すべきだったかも知れない。

 

「……ッ!」

 

 少し後悔するが、ボマーが一人でいる今しか倒せるチャンスはない。

 サック怪人は拳を握り、地を蹴った。

 

「ここでお前を殺してやる……」

 

 拳をボマーに向かって振るい、当てようとする。

 しかし。

 

「……ッ!」

 

 痛みと共に、頭の中にイメージが浮かぶ。

 これは記憶……だろうか。

 どこかで眠っていた凄い量の情報が、起き上がったかのようにサック怪人の脳を支配する。

 どの記憶にも、何故か美咲の顔がある。

 

「馬鹿な、こんな事があり得るわけが……」

 

もう『あいつ』は自分の中にいない筈。

なのに、拳が動かない。

 

「動け……動けよ」

 

 菫の為に戦う。

 それが黒フードの生まれた意味。

 なのに今の黒フードはもういない筈の奴の記憶に、動きを止められている。

 

「どうしましたの? 私は受け止める気でいますのよ?」

 

 まるで友達を手に掛けようとしているかのように、拳が動かない。

 こいつは知らない。死のうが構わない。

 そう言い聞かせているのに、サック怪人の拳は止まったまま。

 

「くそ……ッ!」

 

 そう呟いて、黒フードは変身を解く。

 

「黒フードさん……?」

 

 ボマーが近付こうとする。

 それに黒フードは見切りをつけてから、煙幕弾を投げて撤退する。

 

「やはり今のままでは……!」

 

 折角のチャンスだが、それを逃すしか方法はなかった。

 

 




今回も無しで
初「シリアスシーンだからよしなんていうとでも思ったのか」


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第六十四話

 

 あれから数時間、人気のない場所で朝まで眠り。

 

『君か。僕の命令は予定通り

「教えてくれ」

 

 黒フードは起きてすぐに、菫に問いかけた。

 

『どうした? そんなに動揺した声をして……君らしくもない』

「聞きたい事は沢山ある。何故俺の身体の中に、いない筈の福沢裕太の記憶がある? 何故俺の頭に、知らない誰かの記憶が見える? 答えろ……答えてくれ! このままでは菫の期待に応えられない!」

『そうか……やはりそうみたいだね』

 

 何かを察したように笑う菫。

 

「何がおかしいんだ……」

『君がそれを聞いてどうするんだい? 君は僕の子供とは言ったが、同時に君は僕の発明品でしかない。道具である君がそれを知って、どうするつもりなんだい?』

「しかし」

『僕に逆らうのかい? それは君の存在意義に反する行いだと思うけど?』

「……」

『言っただろう? 利用価値がある以上、子供である君を簡単に殺したりはしないと』

「俺は……」

『死ぬのは怖いだろう? それなら結果を残したまえ』

 

 黒フードは、生まれた時から菫に尽くさなければと考えて生きてきた。

 プログラムされた結果そういう思考回路になったと言われてからも、彼が菫に対し抱く気持ちは変わらない。

 だから……黒フードは恐れている。

 自分のミスで、彼女に捨てられて死ぬ事を。

 

『それに君には感謝しているんだ。僕の為に生まれる事を選んだ君に』

「え……?」

 

 ――生まれる事を……選んだ?

 

『もうこのくらいでいいかな? では、今度こそしくじらずに任務をこなしたまえよ』

「……」

 

 通信はそこで途切れる。

 

「……」

 

 今の黒フードには、どうしたらいいか分からない。

 このまま美咲に立ち向かった所で、自分の中に未だ残る福沢裕太としての自分が、拳を止めてしまうだろう。

 

「こんな所にいましたのね」

 

 私服姿の六角美咲が、黒フードの前に現れる。

 まだ朝早いというのに。

 

「わざわざ殺されに来たのか?」

「私は今でも、貴方と戦う準備は出来てますわ」

 

 ボマードライバーを取り出す美咲。

 

「悪いが、今の俺はそのような気分ではない。放っておいてくれ」

 

 そこで唐突に、お腹の音が鳴る。

 そういえば、昨日から何も食べていない。

 

「腹減ってますの?」

「気にするな」

「気にしますわ。貴方は私がいつか倒す相手。その時に、悩んだままの貴方を倒したくはありませんわ」

「……」

「とにかく、何かしら食べに行きますわよ」

 

 美咲は黒フードの手を握って、無理矢理引っ張っていく。

 

「お、おい……」

 

 敵である自分に殺されるかも知れない。

 そんな事すら考えず、美咲は走っていく。

 でも何故だろう。

 黒フードも不思議と、嫌な感じはしなかった。

 

※※※

 

 美咲が連れて行ったのは、行きつけのカフェ。

 取り敢えずモーニングセットを二つ注文し、黒フードと共に食事していた。

 

「美味しいですの?」

「……ああ」

 

 長い間何も食べてなかったのだろう。

 黒フードはかなりの勢いで、サンドイッチを平らげている。

 フードは被ったままで表情は見えないが。

 

「フード……取りませんの?」

「俺の顔を見たら、恐らくお前は驚く。それでも良いのか?」

「私元カレに超イケメンがいますのよ。今更驚いたりなんて」

 

 黒フードは辺りを見回してから、フードを外す。

 驚かない……そう言ったが。

 そこにある顔は、それを出来なくするものだった。

 

「……え?」

「これが……俺の素顔だ」

 

 黒フードの顔は、福沢裕太と同じものだった。

 

 




次回予告

初「てかお前行きつけのカフェあったんだな」
美咲「たまにろーれらいの方にも顔出してますわよ」
初「あそこは今回友人に許可とってないから流石に出せねえよな」
美咲「遠藤さん元気にしてますの?」
初「まあ取り敢えずな」
美咲「そうですの」
美咲「あ、異世界道具店で仮面ライダー関連ありませんの?」
初「どうすんだよそれで」
美咲「別のライダーに変身しますの!」
移動!
美咲「カブトのライダーベルト……本物ですわね!」
初「買うと思った」
美咲「変身しますわ!」
美咲「来てください、カブトゼクター!」
しーん……。
美咲「来てくれませんの!」
初「……」


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第六十五話

 俺は朝起きてすぐに、病院に向かった。

 昨日の晩、成音から連絡を貰ったからだ。

 どうやら……狩野遥が昏睡状態から目覚めたらしい。

 

「まだ来ないか」

 

 美咲にも連絡したが、まだ返信がない。

 成音とヴィーダ、そして優香が集合してから、俺達は遥の病室に全員で入室した。

 

「失礼します」

「全員揃って来たのか……六角美咲は?」

「実は連絡がつかなくて。取り敢えず、話す事は何とか出来そうですね」

 

 俺達は近くの椅子に座る。

 

「ママ、オキテル……!」

「良かったね、ヴィーダ」

 

 嬉しそうにしているヴィーダに、成音が微笑む。

 遥はバツが悪そうに顔を逸らす。

 

「感動の再会って感じ……ではない系かな」

 

 優香も二人の様子を見て判断する。

 

「聞きたい事がいくつかあります。何故、蘇我高校の生徒に〇×女子高を支配させようとしたんですか?」

 

 遥は目を閉じてから言う。

 

「私が蘇我高校の生徒を使って、他校を支配しようとした理由……それはある突然変異体を探す為だ」

「突然変異体を?」

「ああ。私はその突然変異体に、自分の幼馴染を殺された」

 

※※※

 

 一方、美咲は裕太顔の黒フードから話を聞いていた。

 

「俺はある人に、狩野遥の幼馴染の殺害を指示された。そして……俺は命令通りこの手にかけた」

「……」

 

 罪悪感に満ちた表情をしている彼に、美咲は掛けるべき言葉を探すが見つからない。

 

※※※

 

「死体を見た時、彼の身体にはどう見ても突然変異体が能力を使用したものとみられる痕跡が見つかった。死亡したのは私の地元である滋賀、そして風の噂で聞いた『滋賀にいる超人的戦闘能力を持つ少女』という情報を頼りに、滋賀にある高校を調べるつもりだった」

「その少女が美咲だと思ったんですね?」

「いや、少し違う。まずそもそもの能力が違うしな。それでも邪魔する以上無視しておけないのは事実だったが、その噂の少女でない事に気付いたのは、あの黒フードに襲われてからだな」

 

※※※

 

「狩野遥が復讐の道を選んだのなら、それは俺の責任だ。責められて当然だし、お前の敵になるのも必然だ」

「貴方……」

「この顔も、福沢裕太と入れ替わり、狩野遥やそれに協力する者を殺す為に得たものだ。だから、俺はその為にしか存在出来ない」

 

 黒フードは俯く。

 昨日の昼まで、処刑人のような雰囲気を漂わせて戦っていたのに。

 今は何かに怯えているようだった。

 

「その生き方に、貴方は満足してますの?」

「満足……どうだろうな。分からない。俺は自分の意思で今まで戦い続けてきた。だがこれも作られた感情なのだとしたら、それは自分の意思と言えないのかも知れない」

「……」

「だから満足したとしても、それが俺の本当の意思かなんて分かるわけがない」

「要するに、満足はしてませんのよね?」

「え?」

「自分の生き方に満足しているなら、そんな迷いのある顔で答えませんわ」

「だが俺は……」

「戦いから逃げているわけじゃありませんの。ですが、私も今の貴方とは戦えない。迷いのある貴方を倒しても、それは私が貴方に勝った事になりませんわ」

「……」

「貴方はどうしたいんですの?」

「俺は……」

 

「答えなど出させるわけがないだろう?」

 

 不意に聞こえた男の声、そして飛んでくるボムビット。

 

「危ないですわ!」

 

 美咲は黒フードを突き飛ばしてから、ボムビットを受ける。

 周りの客がそれに気づき、悲鳴を上げて逃げ出す。

 

「……」

 

 爆死した美咲はその場で蘇生。

 無傷の美咲が、声の主に目を向けた。

 

「何者ですの?」

「さあな……。どこかで会った事あるような気もするが」

「あれは……」

 

 声の主は……美咲も驚きを隠せなかった。

 ボムビットが飛んできた時点で察するべきだったが、そこにいたのは。

 所々配色が変わった、黒い仮面ライダーボマーだった。

 

 




次回予告

美咲「裕太さんが二人……」
初「これワンチャン裕太も改造人間説あるだろ」
美咲「でも裕太さんはあまりおかしい所はありませんでしたわ」
初「いや鈍感かお前は」


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第六十六話

「兄貴よぉ……何で殺すべき相手と仲良く飯なんて食ってんだ?」

「それは……」

「私が無理矢理連れて来た」

「お嬢ちゃんには聞いてねえ。俺は兄貴と話をしてんだよ」

 

 黒いボマーに軽くあしらわれる美咲。

 

「兄貴、俺達はお袋の命令通り動けばいい。兄貴の意思なんて、お袋にとっちゃどうでも良いもんなんだ」

「……」

「俺達はお袋に作られたんだよ。だからそれ以上になる事は出来ない」

「……ッ」

「お袋の意思だけあれば良いんだ。ましてや人を殺したアンタに、自分の意思で生きる事が許されているとでも?」

 

 黒フードは黙って俯く。

 

「まあでも……そんな兄貴の苦しみもそろそろ終わりだ。俺が完成すれば、蒲生も明人の中のあいつも、アンタも廃棄だ」

「俺が……廃棄」

 

 黒フードは手を震わせている。

 美咲は拳を握って、黒いボマーに言う。

 

「蒲生さんに明人さんの中の奴? 貴方達、二人に何をしたんですの!?」

 

 美咲の怒りに対し、黒いボマーが笑う。

 両腕を広げて、挑発するように。

 

「俺が教えずともすぐ分かる事だし、それに俺が完成すれば二人とも消されるんだ。無駄な事を俺にさせるなよ」

「貴方の態度ムカつきますわね。ちょっとボコボコにさせてくださいな!」

「やめろ美咲、お前の敵う相手じゃない」

「私がやると言ったらやりますの。勝てるか勝てないかじゃありませんわ。私の仲間とライバルに手を出した罪は重いですわ」

 

 ボマードライバーを装着し、端末を取り出す。

 

「アンタも来いよ兄貴。どうせボマー一人じゃ俺に勝てない」

「……」

 

 黒フードもドライバーを装着。

 

「「変身(ですわ)!」」

『『COMPLETE』』

 

 美咲は仮面ライダーボマーへ、黒フードはサック怪人へと変身する。

 

「表に出なさいな」

「そうしよう」

 

※※※

 

 ボマー達は外へ。

 

「はあ、兄貴を脅すのが目的だったのに……まさか兄貴と戦う羽目になるとはなあ」

 

 サック怪人に指さす黒いボマー。

 

「貴方が戦う必要はありませんの。こいつは私の仲間とライバルを侮辱した……それだけで私が戦う理由は十分ですわ」

「言うねえ……なら望み通り一対一にしてやるよ」

 

 黒いボマーがその場から消え、ボマーの背後へ。

 

「ぐあッ!」

 

 サック怪人の腹に向かって拳を叩き込み、変身を解除させた。

 

「なんですって……」

「見えなかっただろ? これが俺の実力さ」

「けほっ……」

「アンタも思い知っただろ? 未完成の時点で、俺はアンタより上。つまりもうアンタは必要ないのさ」

 

 黒いボマーが黒フードを蹴り飛ばす。

 

「この……ッ!」

 

 ボマーはボムビットを飛ばす。

 

「へえ、ボムビットか。俺もそれ出来るって事忘れてない?」

 

 ボマーのボムビットよりも多い、十二本のボムビットがボマーのものを相殺。

 そして残りがボマーを襲う。

 

「きゃあッ!」

 

 ボマーは死亡し、美咲として復元。

 

「羨ましいねえ。俺にもその能力があれば、もっと派手にやるんだけどな……」

「な、なんて強さですの……」

「さてさて、もう少し遊びたい所だが……これ以上は命令違反になっちまう。悪いが帰らせてもらう」

「ま、待ちなさいの……」

「兄貴。せいぜい残り少ない人生を楽しむんだな」

 

 ボムビットを美咲達の方にばら撒き、爆風に紛れて黒いボマーは消えていく。

 

「……」

 

 美咲は黒いボマーが去っていった爆風の奥を見据えていた。

 

 




次回予告

初「黒いボマーの見た目の描写少ねえけど、どんななんだ?」
美咲「体は女性っぽいのに、声質は男でしたわ」
初「いやどういう状態なんだよ」
美咲「私に聞かれても分かりませんわよ……」
初「まあ、変身者の見た目が出て来ねえと分かんねえか」


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第六十七話

 

 病室。

 まだ遥の話は続いている。

 

「私の幼馴染を殺した犯人が、あの黒フードに依頼した者か、あの黒フード自身なのは間違いないだろう。だが幼馴染を殺すだけに飽き足らず、私や私の発明品まで破壊しようとするとはな……」 

「犯人の正体に、心当たりはありますか?」

「今の所はない。そもそも突然変異体自体、かなり希少なんだ。滋賀で多く発見されているとは言え、そう簡単に見つかるわけがない」

「そうですか……」

 

 やはりあの黒フードから直接聞くしかないのだろう。

 

「犯人が分からないなら、まずはあの怪人達だけでも何とかするしかないわね」

「そうだな」

「遥先生、蘇我高校の生徒達を元に戻す方法はありますか?」

「勿論ある。黒フード達が先手を打っていない事が前提ではあるが、科学部の部室には元に戻す為のワクチンが用意してある筈だ」

「ワクチンですか?」

「ああ。あの怪人化はスイッチだけのものではなく、私が決戦前に学校中に撒いたガスが影響している」

「ガス……」

 

 遥が言う。

 

「そもそもお前達に、怪人化の仕組みを説明していなかったな。私が作ってきたベルトには、学校中に撒いたガスと同じ成分が入っている。突然変異体の因子が含んだガスがな。そのガスを体内に取り込む事で、人の姿を怪人に変えつつ、突然変異体と同等の身体能力を得る。ボマードライバーやグングニルドライバーは因子の活性化が目的で、少し特殊だがな」

「なるほど……いやあのすみません」

「なんだ?」

「ガス自体に突然変異体の因子が含まれているのは分かったんですが、ガスが無くても突然変異体と同等の身体能力は得られるんですか?」

「そうだな。その通りだ。本来あのベルトを作るのに、怪人化するガスなど不要だ」

「じゃあ何で怪人化するガスなんてものを……?」

 

 遥は目を閉じる。

 

「人に言うのは少し恥ずかしいが……自分が戦っている理由を忘れない為だ。私の幼馴染がライダーや怪人という類のものが好きでな。怪人達を見る事で、自分が戦う理由を忘れないようにしていた」

「そうですか……」

「六角美咲はあの姿になってすぐに、仮面ライダーを名乗ったそうだな」

「はい」

「私の幼馴染が生きていたら、良き友になっていただろうに」

 

 泣きそうなのを堪えながら言う。

 

「話が逸れてしまったな。科学部の部室に保管されたワクチンには、ガスを中和する効果がある。そのガスを生徒に向かって放射すれば、怪人化した生徒達を元に戻せる筈だ」

「ヴィーダ、ヤル!」

 

 話を聞いていたヴィーダが立ち上がり、遥にそう告げた。

 

「……」

 

 しかし遥は返事すらせず、ヴィーダにはバツが悪そうに目を逸らしている。

 

「ママ……」

「……遥さん」

「……」

「どうしてヴィーダの目を見て、話してあげないんですか?」

「……!」

「ヴィーダは遥さんの事を嫌っていない。むしろ、もう傷つけたくないと思っているんですよ」

「今の私に……ヴィーダの目を見て話してあげる資格はない」

「遥さん……!」

 

 その時だ。

 

「グギャアアッ!」

  

 病室内に、怪人が侵入する。

 

「皆、来たぞ!」

 

 

 




次回予告はないです。


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第六十八話

 

 数は四体。

 全てアーミーだ。

 

「対象……狩野はルかとその製作物を発けン。速やカニ排除すル」

 

 アーミーの一体が武器を構えながらそう告げる。

 

「まずいな、思っていたよりガスが効いていたようだな」

 

 冷静に言う遥。

 

「ベルトを使って変身するなら、ベルトが仮の脳になる事によって守られる。しかもこの操られ様は……ガスドライバーまで持っていかれたか」

「トニカクトメル!」

 

 ヴィーダがグングニルドライバーを装着して、アーミー達の前へ。

 

『GUNGNIR ON』

 

 俺もムラマサドライバーを着けて、ヴィーダの隣に。

 湧きあがる力を感じてから笑みを浮かべ、敵に向かって告げる。

 

「雑魚が何人来ようと、俺には勝てねえぜ」

「裕太……?」

「行くぜヴィーダ」

 

 俺は端末を取り出して、ボタンを押す。

 

『ムラマサ!』

 

 ヴィーダが槍型のガジェット、俺は閉じた端末をそれぞれ構えてから叫ぶ。

 

「ヘンシン!」「変身!」

 

 それぞれ取り付ける。

 

『CHANGE』『御意! 出陣! 仮面ライダームラマサ!』

 

 ヴィーダが仮面ライダーグングニル、俺が仮面ライダームラマサへと変身し、武器を構える。

 

「まさか、そんな筈は……」

「行くぜ!」

 

 仮面の下で歯を剥き出しながら、俺は素早くアーミーとの距離を詰めて一体斬りつける。

 

「ハアッ!」

 

 グングニルも同じく、姿を消しながらアーミーを一体なぎ倒す。

 勢いに乗ってもう一体も倒し、

 

「セヤッ!」

「グギャアッ!」

 

 あと一体。

 

「これで終わりだぜ」

 

 端末を取り出して、ボタンを押す。

 

『最終撃!』

「ライダースラッシュ!」

 

 俺は素早く最後の怪人との距離を詰め、何度もアーミーを斬りつけた。

 アーミーはそのまま気絶し、倒れる。

 

「ふぅ……」

 

 俺は息を吐いてから、変身を解く。

 その様子を見ていた成音が、訝しげに問いかける。

 

「ねえ、裕太……」

「怪我でもしたか? 成音」

「違うわ……その、戦ってる時……性格違く無かった?」

「え?」

 

 俺は首を傾げる。

 俺自身、特に違和感のようなものは感じなかったが……。

 

「そんな事ないと思うぞ」

「そ、そう?」

「とにかく、もう相手側にバレちゃったみたいだし……早く止めに行こうぜ」

「え、ええ」

 

 成音がグングニルに目を向けて問う。

 

「ヴィーダ、ここの見張りを頼んでも大丈夫?」

「ヴィーダ、ミハリ?」

「うん。怪人達はあたしと裕太で元に戻すから、ヴィーダは遥さんを守って」

「ウン! ヴィーダ、マママモル!」

 

 グングニルが元気よく頭を縦に振る。

 

「じゃあ、早く行こう」

「分かったわ」

 

 俺と成音はベルトを手にしながら、病室の外へと飛び出していく。

  

 

 

 

 




美咲が出ていないので、今回もありません。


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第六十九話

 あれから数分。

 遥は二人が病室から出てから、少しばかり考えていた。

 

「……」

「どうした系?」

 

 それを見ていた優香が問いかけてくる。

 

「いや、さっきの戦闘での裕太の姿に少し疑問があってな……」

 

 ライダー用、怪人用のベルト問わず、両方に備わっている特徴がある。

 それは怪人化ガスの副作用で脳が上手く作動しなくなる代わりに、ベルトが脳の肩代わりをするという機能だ。

 これのおかげで、怪人化した状態でも思考をコントロールする事が出来る。

 だがこの機能を使った時、一つの疑問が生まれてしまう。

 

「……」

 

 変身者が二重人格の場合、どのような事が起こるかである。

 勿論遥はそれを想定して作っている筈もないので、どうなるかなど分からなかったが、あの性格の変わりようはもう一つ人格があるとしか思えない。

 

「岸本優香、少し聞いても良いか?」 

「何系?」

「福沢裕太は、あんな性格になる時があるのか?」

 

 遥の問いかけに対し、優香が少し思い出しながら答える。

 

「分からない系かな。でもウチの前ではあんな喋り方今までしてなかった系」

「そうなのか……」

「あ、でも……そもそも裕太っちはちょっと謎が多い系」

「どういう所がだ?」

「急に記憶があいまいになったり、ある時なんて美咲っちに襲い掛かった系」

「……」

 

 遥は話から推測する。

 

「裕太と一緒にいる時、ヴィーダはどういう反応をしていた?」

「あー、なんかよく分からないけど嫌いとか言ってた系。初対面だったのによく分からない系」

「……」

「どうした系?」

「それが本当なら、少しまずいかも知れんな……」

 

※※※

 

 同時刻、蘇我高校。

 準備を整えた蒲生と明人が、怪人化した生徒達を連れてそれぞれの目的地に向かおうとしていた。

 蒲生は総員で病院内を襲撃。

 明人は六角美咲を真正面から倒す。

 

「そろそろお袋の願いが叶うんだな」

「……ちっ」

「おいおい、拗ねるなよ。六角美咲は俺が倒してやるからよ」

「うるさいっす。それが嫌だって言ってるっすよね?」

 

 美咲を取られ、少々へそを曲げている蒲生。

 美咲を賭けてじゃんけんで決めたのだが、負けてしまったのだ。

 だがまだ諦めていない。

 

「すぐに狩野遥を始末してそっちに行くっす。私が行くまで倒しちゃダメっすよ」

「無理だな。俺はお前より強いからな」

「……お前ホント嫌いっす」

 

 二人が会話をしている途中だったその時。

 

「そこまでだ」

 

 蒲生達の前から男の声が聞こえる。

 福沢裕太と、山内成音。

 二人がドライバーを手にした状態で、立ち塞がった。

 

 

 




次回予告(ry


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第七十話

 

「アンタが福沢裕太っすか。黒フードの奴から聞いてたより随分弱そうっすね」

「な、なんだとぉ!」

 

 最近の高校生は大人をなめ腐り過ぎな奴が多すぎる……。

 

「で、何しに来たんすか」

「アンタ達に言うわけないじゃないの」

「山内ちゃん、美咲なんかといても良い事ないっすよ。今からでもこちら側に……」

「副会長。会長を倒したいなら、まずあたしを倒しなさい。あたしは会長に勝つまで、誰にも負ける気はないから」

 

 フレイムシャワードライバーを装着する成音。

 

「私と戦う気っすか?」

『ガスドライバー!』

 

 ガスドライバーを取り付けながら、蒲生はシリンダー型の変身ガジェットを取り出す。

 

「んじゃ、俺はお前とだな……福沢裕太」

「その話し方、お前はまさか……」

「? どっかで会った事あるか?」

 

 明人がベルトを装着する。

 何かに操られている明人の喋り口調があの時の黒フードに似ているが、まさかそんな事はない筈だ。

 

「まあ良い……」

 

 俺も静かにベルトを取り付ける。

 脳の中がかき混ぜられるような感覚に少し襲われてから、俺はこう呟く。

 

「俺がお前を倒すぜ」

「そうこなくっちゃな」

 

 全員で変身の構えをとる。

 

「「「「変身!」」」」

『『COMPLETE』』『御意……出陣、仮面ライダームラマサ!』『ガスドライブ! クルシーム!』

 

「しゃあ、行くぜ!」

 

 俺は刀を構えて、明人との距離を詰める。

 

「はあッ!」

 

 頭を狙って上から斬りかかるが、剣の怪人は軽々と受け止める。

 

「……!」

「おいおい、その程度か? 倒すんじゃなかったのか?」

「こ、これで!」

 

 限界まで加速し、何度も剣を叩き込む。

 

「単調過ぎてつまんねえな……」

「こいつ……」

「お前にお手本見せてやるよ。明人から盗んだ剣技を」

 

 今度は明人が姿を消し、俺に迫る。

 

「くッ!」

 

 何発か剣撃を受け止め、ダメージを最小限に抑える。

 技を終えた明人が俺の背後に現れ、顔だけ向けながら言う。

 

「真似するのに苦労したぜ。まさかこの俺様が人間の技を真似にするのに苦労するなんてな」

 

 俺につけた傷を見る。

 

「へえ、何度か受け止めたのか。でも、それくらいしてくれなきゃこっちとしても期待外れが過ぎる。もう一度掛かってきな」

 

※※※

 

 火炎放射器怪人の方も、かなり相手のペースに飲まれていた。

 得意の火炎放射をほぼ高圧ガスで防がれ、近距離攻撃も難なく防がれてしまっている。

 やがて体力が尽き掛けたが、相手にその様子はない。

 

「つ、強いわね……」

「この程度っすか? 私を阻んで、美咲の所に行かせないつもりだったんすよね?」

 

 ガス怪人が火炎放射器怪人を睨む。

 

「そんな半端な覚悟で、私に挑まないで欲しいっす。美咲に勝つ為に、私はこの道を選んだんすから」

 

 苛立ちながら、ガス怪人は放射口を火炎放射器怪人に向ける。

 

「この道を選んだ……? 何言ってんのよ。そんなんで会長を、六角美咲を倒せると思ってんの?」

「はあ?」

「あの人は目先の敵だけじゃない。過去のライバルも、未来のライバルも、全て見据えて努力している。そんな人が、ただ一人倒したら満足な人相手に負けるわけないじゃない!」

「説教すか? 山内ちゃんが私に?」

「ええ、説教よ。アンタと、そして最近まで気付いてなかった私にね」

 

 火炎放射器怪人は笑みを浮かべ、拳を握り直す。

 ガス怪人は呆れた顔をする。

 

「まあ良いっすよ。どんだけ周りが持ち上げようが、最後には実力が上な人が勝つっす。だから山内ちゃん、悪いけどそこを退くっす」

 

「――その必要はありませんわ」

 

 成音の背後から声が聞こえる。

 

「か、会長!」

「美咲……」

 

 美咲はキメ顔をしながら、自分に指をさしてポーズする。

 

「私、参上ですわ!」

 

 




次回予告

初「ニ〇ル子かよお前」
美咲「ニャ〇子? それは知りませんが、私のは電王の真似ですわ」
初「私の宇宙CQC、パート2!」
美咲「私の必殺技、パート2ですわ!」
二人「……」
二人「電王ネタに似てますわ(ニャル子ネタにそっくりだな)」

※今回は美咲が正解


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第七十一話

 

 火炎放射器怪人が問いかける。

 

「どうしてここが分かったのよ」

「あの黒フードさんが、ある程度の事を教えてくれたんですわ」

「黒フードが……なんで!?」

「そ、それはあとで説明しますわ。それより、今は二人を助けますわよ」

 

 まるで正義のヒーローかのように現れた美咲に、ガス怪人が近付いていく。

 

「わざわざ殺されに来てくれるなんて、嬉しいっす」

「殺されに? 違いますわ……私がここにいるのは、ちゃんと私を認めてもらう為ですの」

「……まだそんな事言ってんすか? やっぱりアンタはいつまで経っても成長しないんすね」

「ええ。どれだけ強くなっても、この考え方だけは変える気はありませんわ」

 

 ボマードライバーを装着する。

 

「力が強いだけで、人に勝てるなんて大間違いですもの」

 

 美咲の顔には少しばかり後悔の色がある。

 

「私は一度失敗しましたわ。だから貴女にも、成音さんにも辞められた。だからこそ、もう一度やり直しますの。何度失敗しても、私は認めてもらえるまで何度でも抗いますわ!」

「心意気だけは立派っすね。何度聞いてもホントに……。だが無意味っす」

 

 高圧ガスで美咲を吹き飛ばす。

 美咲は何とか受け身を取り、地面へと着地する。

 

「抗った所で無意味っす。もう私がアンタを認める事はないっすよ」

 

 ガス怪人がゆっくり近づき、もう一度放射口を向ける。

 

「なら、良いですわ。別にそれでも……」

「なんすか?」

 

 美咲は立ち上がる

 

「なら、逆にやってみせなさい。貴女が私より強い事を、私に認めさせてみせなさい。私は絶対に負けませんわ」

 

 端末を取り出し、ボタンを押す。

 

『BOMER DRIVE READY?』

 

 顔の左で構える。

 

「変身ですわ!」

 

 端末を取り付けた。

 

『COMPLETE』

 

 上から降ってくる爆弾を握り潰し、爆風からボマーとなって現れる。

 

「やっと会えたっすね、その姿」

「成音さん、ここは私一人でやりますわ」

「そういうと思ってたわ。会長」

 

 火炎放射器怪人はそう告げて、その場を立ち去る。

 

「さあ、ショータイムですわ」

 

※※※

 

 成音はその隙に、科学部の部室を探す。

 

「ギャアアッ!」

「はあッ!」

「グアッ!」

 

 時々邪魔するアーミーを爆炎で吹き飛ばしつつ。

 何とか数分を掛け、火炎放射器怪人は科学部の部室を見つけた。

 

「ここね」

 

 鍵が掛かった扉を吹き飛ばし、一旦変身を解く。

 

「凄い部屋ね……」

 

 中は理科室的な感じというよりかは、一つの実験施設のようにも見えた。

 培養器に沢山の試験管、電源コードにドライバー。

 の割に一人も見張り的なのはいない。

 恐らく彼ら自身、ここにあるものに価値はないと判断した故なのだろう。

 

「……」

 

 培養器の近くには、何かの書類らしきものが置かれている。

 そこに書かれているのは、ヴィーダの事だった。

 

『遺伝子改造による、突然変異体作成実験レポート』

 

「……」

 

 中に書かれた内容は到底知識がない成音には理解出来ない。

 が、恐らく人の倫理から外れた研究なのは容易に想像出来る。

 でも……これが無かったら成音はヴィーダと出会い、成長出来なかったと思うと複雑な気持ちにはなるが。

 

「へえ」

 

 成音が興味深く見ていたのは、ヴィーダの脳に備えられた能力だ。

 人を脳波で識別可能……らしい。

 要するに変装などをしても、彼女には一切通用しないのだとか。

 

「……」

 

 資料に全て目を通し、一応回収する。

 他の資料もワクチンを探しながら、目を通す。

 突然変異体の因子が含まれたガスに関する資料、そのガスを使った変身ベルトに関する資料、それに関連する様々な実験データ。

 

「ここら辺、あとで詳しく読んでみるべきね」

 

 片っ端から回収し続け、数分後。

 

「あった……」

 

 ワクチンと、丁度それが挿せる挿入口がついた銃を見つける。

 

 




次回予告

初「力が強いだけで人に勝てるなんて大間違いか……」
美咲「どうですの私の台詞」
初「いやごめん。姉さんと過ごしてると、そういう感覚が無くなる」
美咲「あの人だけは仮面ライダーにしちゃいけませんわ……」
初「それだけは激しく同意だ」


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第七十二話

 

「これで良いのかな」

 

 取り敢えず挿入口にワクチンを差し込む。

 効果音が鳴り、銃が光りだす。

 その時。

 

「グギャアッ!」

 

 丁度良いタイミングで、アーミーがこちらに気付いて襲い掛かる。

 

「まったく、丁度良過ぎね」

 

 成音は銃口を向ける。

 

「発射!」

『VACCINE CHARGE……FIRE!』

 

 銃口から青い光が放たれ、アーミーを飲み込む。

 

「ウウ……ウオオオンッ!」

 

 悶えるアーミーを見ながら銃を下ろし、成音は祈る。

 

「お願い効いて……」

 

 アーミーは成音の願いに呼応するように崩れ落ちた。

 頭からゆっくり、アーミーは人間の姿を取り戻していく。

 普通の男子生徒へと戻ったアーミーはその場で崩れ落ち、同時に洗脳も解かれる。

 

「はあッ……! ここは……」

 

 成音を見ながら、男子生徒は荒い息を吐く。

 

「アンタを助けておいたわよ」

「は……」

「ここは危険だから、今すぐ帰った方が良いわ」

 

 銃と資料を手に、成音はそう告げて部室を出て行った。

 

「俺……何してたんだ?」

 

※※※

 

 ボマーはガス怪人を押し続け、何とかあともう少しの所まで追いつめていた。

 

「はあッ!」

「くっ……」

 

 ガス怪人がボマーのバットで吹き飛ばされる。

 壁に叩きつけられたガス怪人に、ボマーはバットの先端を向けた。

 

「どうしましたの? 私に認めさせたいのでしょう? 自らの力を……それとも、貴女の覚悟はその程度だったんですの?」

「うるせえっす!」

 

 ガス怪人がボマーの挑発に乗りながらも立ち上がる。

 

「頂点に立つというのは、そんな生易しい道ではありませんわ!」

「私達に見放された分際で偉そうに!」

 

 ガス怪人の拳を受け止め、ボマーも左拳を振るう。

 

「そう思うのなら、どんな手を使ってでも勝って認めさせなさいな。頑固な私を認めさせられるなら、やってみなさいな!」

「くっ……ああああッ!」

 

 拳が乱れるガス怪人。

 普通なら避けられるそれを、ボマーは敢えて受け止めていく。

 

「ふざけているんすか!」

「これが私ですの……。貴女に認めてもらう為に、私はどんな攻撃だって当たりにいきますわよ!」

 

 そう言いながら、ボマーは回し蹴りを放つ。

 

「貴女はただ拳を振るい続けるだけで良い。私は認めてもらえるまで諦めませんわ」

「ああああッ!」

 

 ガス怪人はアンプル型のガジェットを取り出し、差し替える。

 

『ガスドライブ! コウアツ! フキトーブ!』

 

 高圧ガスを放射口から放ち、ボマーを吹き飛ばそうとする。

 ボマーは受け止め、抗いつつ進む。

 

「くっ……これでもダメなんすか……!」

 

 ガス怪人はガスを止め、もう一度本気でボマーへ殴り掛かる。

 

「はあッ! やあッ! たあっ!」

「……」

 

 ボマーは避けない。

 黄色の複眼が、こちらを睨んでいるように見えた。

 

「なんで……なんで……」

「これで終わらせますの」

 

 ボマーは端末を取り出し、ボタンを押す。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 取り付けてからジャンプし、右足をガス怪人へと向ける。

 

「ライダーボムキック!」

 

 ボムビットが右脚を覆い、そのまま勢いよくガス怪人へと急降下。

 

「うわあああああああッ!!」

 

 爆風の中から変身解除された蒲生が吹き飛び、壁へ叩きつけられる。

 蘇ったボマーが、遠くで天へと指をさす。

 

 




次回予告

初「なあこれホントにお前か?」
美咲「七十二話にもなって何寝ぼけてるんですの?」
初「寝ぼけたくもなるわ。だったら爆弾投げてみろや」
美咲「そんな安い挑発には乗りませんわ」
初「そこにダイナマイトの導火線があるな」
ドッカカラマッチヒョイ!(危険ですので絶対に真似しないでください)
美咲「うわああああッ!」
初「なんだなんだ」
美咲「投げましたわね?」
初「いや知らねえよ」
美咲「許しませんわ!」
初「あぶね!」
ドーン!
初「飽きたっつってんだろ」
投げた奴誰だよ。


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第七十三話

「お、俺は何を……」

「はやく行って。ここは危険よ」

「お、おう」

 

 火炎放射器怪人の方も順調だった。

 銃の効果で怪人化と洗脳を解き、あともう少しという所まで来ていた。

 

「あとは会長達がいた所の奴らね」

 

 銃を構えながら、火炎放射器怪人はもう一度駆けていく。

 

※※※

 

 黒フードは美咲の家にいた。

 福沢裕太の人格が残っているおかげか、初めて入った筈なのに懐かしさを感じる部屋の中で、黒フードは三角座りをしている。

 これで良かったのか……そう考えながら。

 

「……」

 

 美咲は……最早殺されて当然の生涯を歩んできた自分を守る為にも戦うと言って、自分から足利明人や洗脳された蒲生の事を聞き出して、全員救う事を約束して出て行った。

 自分よりも遥かに高い戦闘能力の持ち主たる彼女の実力に、不足はない。

 けど何より、敵である自分の事情や気持ちを気遣ってまで戦う理由が思い浮かばない。

 あの時も、庇わず見殺しにしても良かったのに、自分の能力を使って守った。

 こんな人殺しを救う理由が、どこにあるというのだろうか。

 

『あいつにそんな都合は関係ない』

「……お前、やっぱりまだいたのか」

 

 福沢裕太の声に、一号がそう答える。

 

『自分の望みの為に本気で生きたいと思う奴がいるなら、例えそいつが悪だろうとそいつを応援するし、もし自分にとって気に入らない事なら全力で立ち向かう。それが六角美咲だ』

「……」

『あいつは精一杯生きようとしてる奴の味方なんだ。お前をそういう奴だと思ったからこそ、お前も救おうとしてるんじゃないか?』

「俺はあいつやお前を殺そうとしていたのにか?」

『あいつはむしろ、そういうのを相手にすると燃えるタチだ。だから俺が止めた。あいつや……お前を守る為にな』

「俺を守る? どういう事だ?」

『それは……』

 

 一号の頭が少し痛む。

 

「うっ……」

『どうやら、もう俺もここに永くいられないみたいだな』

 

 一号の中から、福沢裕太の記憶が消えていく。

 元々不完全な存在だった脳波が、ゆっくりと自分の中から消えようとしているのだ。

 

「……」

『悔しいな。もしお前が美咲に手を出す選択をしたとしても、もう止めてやる事が出来ないのか』

「福沢裕太……」

『もし菫と生きる選択肢を選びたいのなら、美咲を信じてみろ。そして一緒に戦うんだ』

「……良いのか? 人殺しの俺が、幸福になる道を選んでも……誰かに救ってもらう道を選んでも」

『俺には分からない。けど、もし選ぶのなら……その人生を使って償う事も必要かも知れないな』

「償い……か」 

『大丈夫だ。俺がいなくても美咲がいる。美咲なら、お前と一緒にその方法を考えてくれる筈だ……じゃあな』

 

 そう言い残し、福沢裕太は一号の中から消えていく。

 

 




次回予告は今回無しです。


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第七十四話

「ああッ!」

「おいおい……俺の動きで学習出来たのかと思えば、てんでダメじゃねえか。どうやら強いのはドライバーだけみてえだな」

「野郎……」

 

 俺はあれから一撃も与えられていない。

 相手の攻撃を受け止めるどころか躱す事も出来ていない。

 このままでは……。

 

「私が相手になりますわ」

「美咲!」

 

 つい先ほどガス怪人を倒したボマーが、バットを剣の怪人に向けながら立っていた。

 

「初めましてだな、六角美咲」

「明人さん……」

「おいおい、こいつの名前を出すなよ。俺には二号っていうれっきとした名前……じゃねえけど番号があんだよ」

「……」

「最近は俺の兄貴が世話になったみたいじゃねえか」

「兄弟というのは……あの黒フードさんの事ですの?」

「そうだ。そこのムラマサにも勝てねえ……弱っちい出来損ないの兄貴の事さ」

「出来損ない……」

 

 ボマーはバットを握る手を震わせる。

 

「なんだ? あいつを馬鹿にされて怒ってんのか?」

「ええ……怒ってますわ。明人さんの身体を勝手に使っている事、それに黒フードさんを馬鹿にした事に」

 

 剣の怪人はやれやれと笑いながら言う。

 

「おいおい、あいつはお前の敵だった筈だろ? なんで仲良くなっちゃってるわけ?」

「違いますわ。私は彼の敵として、彼の願いを尊重しただけですわ」

「んだと……?」

 

 ボマーは顔を上に向ける。

 

「私は戦う相手には、常に本気でいて欲しい。迷いを全て捨てて、全力で立ち向かって欲しいんです。だからこそ、私は今の彼を守ります。貴方達に蒲生さんも明人さんも、そして黒フードさんも弄ばせませんわ」

 

 バットを構え、戦闘態勢に入る。

 

「随分言うねぇ。まあ、どうせお前じゃお袋には止められねえだろうがな」

 

 剣の怪人が武器を構えた。

 

「良いぜ、こいつを倒す前に俺が遊んでやるよ」

 

※※※

 

 一号は美咲の家から飛び出して、菫のいる〇×女子高を目指す。

 

「……」

 

 裕太が消えてから、自分に出来る償いを自分なりに考えた。

 美咲はこうしている間にも、自分の為に命を懸けている。

 だから、菫と距離が近い関係の自分に出来る事をやろうと思った。

 

 説得。

 それが今の一号に出来る、最善の行動だ。

 命令に背いたと思われれば、殺される事もあり得るが、今はそれを考えている場合ではない。

 むしろ美咲のように言うなら、殺される状況になろうとも生きて帰るくらいの度胸は必要だろう。

 だから、一号は生きて帰る。

 自分の願いを叶えつつ、美咲の為に出来る事をする。

 

 一号はフードの下の瞳を窄めながら、目的地への足を早める。




次回予告

美咲「次の相手は明人さんの身体を乗っ取ってる人ですの」
初「……」
美咲「どうして黙ってますのよ」
初「いやさ、この作品だと明人は強いのかも知れないけど……浅井三姉妹の世界だと……」
美咲「ここは私のステージですのよ! 同じ世界だからといってこっちまで侵攻されては困りますわ!」


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第七十五話

 

「裕太さん、貴方も行きなさいな」

「す、すまん。あとは頼んだ」

 

 変身を解いてから、裕太はその場を離れる。

 

「すぐに片を着けますわ」

『SCAN DRIVE』

 

 ハイドロフォームのカードを取り出し、読み込ませる。

 

『COMPLETE HYDRO DRIVE READY?』

 

 両腕を腰の高さまで広げ、全身に力を込めて叫ぶ。

 

「超変身ですわ!」

 

 ボマーがハイドロフォームへと変わり、アクセルドライブを使う。

 

「はあッ!」

「ふっ……」

 

 二人は姿を消しながら、バットと剣を振るう。

 ハイドロボマーの実力は、剣の怪人以上の筈だが、剣の怪人もそれについてきている。

 

「くっ……」

「どうした、ハイドロフォームの力ってのはその程度か?」

 

 剣の怪人が姿を消す。

 

「そこですわ!」

「ぬおッ!」

 

 ハイドロボマーは見抜いてから、剣の怪人に向かってバットを振るって吹き飛ばす。

 

「お前も中々やるな」

「貴方だけは許せませんもの……とっとと蹴りをつけますわ」

 

 ハイドロボマーがバットを回してからもう一度姿を消す。

 

「そうこなくちゃな」

 

※※※

 

 戸間菫は一人、自室代わりにしている教室で研究を続けていた。

 

「さて……どうしたものか」

 

 言うまでもなく、先に送った黒いボマー――通称仮面ライダーアトミックに変身した実験体の改良だ。

 一号を一瞬にして気絶させ、ハイドロボマーもボムビットで爆破させはしたが、それはあくまでアトミックドライバーの性能に過ぎない。

 三号の素体も突然変異体の遺伝子からコピーし作った点は、今行動中の一号や二号と変わらないが、この三号はその二体とはある点が決定的に違う。

 天然で生まれる突然変異体が一つしか能力を持てないのに対し、三号は最初から複数の能力を備えている。

 だがどの能力もまだ実戦で使える程度ではない。

 これで戦闘に勝てたとしても、それでは遥の研究品を盗んで勝っただけだ。

 この三号を強化し、兵器運用が可能なレベルになれば、科学者として上の地位に立てる。

 それで遥さえ消せれば、自分は科学者として頂点に。

 

「菫」

「……何だい。僕も忙しいんだよ、一号」

 

 菫は眉を潜めながら、教室に入ってきた一号を見る。

 

「僕は君に六角美咲を倒すよう指示したのに、君は彼女と仲良く朝食を食べていたそうだね。三号から聞いたよ」

「……」

「君は僕に従順で仕事人気質な所が取り柄だったのに、そんな裏切りをするなんてね。見損なったよ」

「……」

 

 一号は身体を震わせる。

 

「不服そうだね。僕の言った事が間違っているとでも?」

「……菫、もうやめにしないか?」

「何だと?」

「俺は菫と一緒にいたい。けどこのまま誰かを傷付け続けたら、それも出来なくなる。だから……頼む。もうやめてくれ」

 

 一号は床に頭をつけて土下座する。

 

「君は僕の望みを知ってるのだろう?」

「……ああ」

「なら何故こんな事をする。僕が狩野遥に負けるとでも? それともこの三号でも、六角美咲に負けるとでも?」

 

 俺は知っている。

 菫が誰かの笑顔のための発明をしたいと言った事を。

 

「ち、違う。俺は誰かの笑顔の為に研究に取り組む菫が好きなんだ! だからこんな事をやめてくれ! ……あれ」

 

 ――何故だ? 何故俺の口から、こんな言葉が?

 

「そうか、もうそこまで思い出せているんだね」

 

 悪い笑みを浮かべる菫。

 

「どういう事だ。俺は菫の実験体として生み出された筈……。それに俺はそんな光景を一度も……」

「それは僕が君の記憶を消したからさ」

「消した? それはどういう事なんだ」

「一号、僕は前にこう言ったよね。僕の為に生まれる事を選んでくれた事を感謝している……と」

「ああ」

 

 その言葉と、いくつもの言葉が引っかかり、自分が何なのかが理解出来なくなっていた。

 

「君のしつこさに敬意を表して、特別に教えてあげよう。君の人格は僕が一から生み出した存在じゃない。君が僕に忠誠を誓うようにプログラムしたのは事実だが、それは君が元々持っていた感情を強くしたに過ぎない」

「……まさか」

 

「――そう。君は僕を好きで仕方なかったただの青年。僕が君の脳波を取り出し、記憶を消してその身体に入れたのさ」

 

 




次回予告無しです


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第七十六話

 

「それが……俺?」

 

 腑に落ちない内容だが、筋は通っている。

 それならサック怪人に変身した時に見えた記憶も、自分の過去の記憶が蘇ったという事なのだろう。

 

「あのベルトは使用者の脳波を読み取り、変身中の仮の脳として機能する。何度も変身する事で情報が蓄積され、そこの中にある君の記憶が蘇ったのだろう」

 

 菫は続ける。

 

「これで分かっただろう? 何故僕に酷い事を言われても、死ぬ事を強いられても、僕に尽くしたいと思ったのか。もし君の感性が普通なら、この場で抵抗して僕を殺す選択肢だって取れた筈だ。なのに何故出来ないのか……君自身が元々僕を好きだからなのさ。僕はただ、その感情を増幅しただけ」

「……だからどうした。それでも俺は菫を止める。好きだからこそ、俺は菫にこんな事をやめて欲しい」

「分かっていないようだな。僕は今以上に君の感情を増幅出来る。そう、盲目になるくらい」

 

 菫が指を鳴らすと、教室に誰かが入ってくる。

 ドアを蹴破ってから飛び上がり、黒フードに向かって飛び蹴りを当てた。

 

「ぐあッ!」

「ふふっ……」

「お前は……」

 

 黒フードに飛び蹴りを当てたのは、福沢裕太。

 しかし様子がおかしい。

 歯を剥き出しにし、歪んだ笑みを浮かべている。

 

「二号、押さえろ」

「悪いが兄貴にはもう一度人形に戻ってもらうぜ?」

「ぐっ……ああっ……」

 

 裕太が黒フードの腹をぐりぐりと足で抉る。

 

「まだ君を殺しはしないさ。ただし、次起きる時には……冷酷な人形に戻っているはずさ」

 

 それが最後に聞こえた菫の声だ。

 

※※※

 

 戦いが始まって数分。

 スペックこそハイドロボマーの下である剣の怪人に技量で対抗され、お互いダメージらしいダメージも与えられないまま、ハイドロフォームが切れてしまった。

 

「そんな……」

 

 身体から水色のオーラが拡散し、ボマーへと戻ってしまう。

 

「よく頑張ったようだが、もう終わりみてえだな」

 

 剣の怪人が端末を取り出し、操作する。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 端末を取り付けてから構え直し、切っ先をボマーへ向ける。

 

「一か八かですわ!」

 

 ボマーも端末を操作し、アクセルドライブを発動。

 

『ACCELERATOR DRIVE』

 

 それから必殺技をクリック。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 端末を取り付け、ボマーもバットを構える。

 

「はあッ!」「ふっ!」

 

 互いに姿を消し、加速した空間の中で剣の怪人の斬撃を目視で防いでいく。

 

「これで終わらせますわ!」

 

 バットにボムビットを集め、剣の怪人へと思い切り叩きつける。

 

「ライダーインパクト!」

「ぬわあッ!」

 

 自身をも巻き込む爆発で、剣の怪人を大きく吹き飛ばす。

 剣の怪人は壁へと叩きつけられる……が、相手を倒すには至らない。

 

「こんなもんかよ。俺を倒すには足りなかったみてえだな」

 

 与えたダメージは決して小さくはない筈だ……だが決定打にはなっていない。

 

『ACCELE END』

 

「加速も切れたか。これで本当に終わりだな」

「諦めませんわ……!」

 

 互いに武器を構えなおし、次の一撃に全てを賭けようとしたその時。

 

「……ッ! お前また……」

『や……めろ。六角美咲は俺の敵だ……お前如きが手を出すな!』

 

 明人の人格が、剣の怪人の動きを止めた。

 

 




次回予告と思わせて……。

初がよく行くプリン屋のCM

美咲「何か始まりましたわね」
初「毎日を何とか生きる為、私は贅沢プリンを食べる」
初「江代にゲームで負けた後も、私は贅沢プリンを食べる」
美咲「……」
初「和泉に家まで追いかけられた後も、私は贅沢プリンを食べる」
初「京極先輩へ上手く告白できなかった後も、私は贅沢プリンを食べる」
初「そして姉さんに〇〇〇〇がバレた後も、私は贅沢プリンを食べようとしたが取られて殴られた」
美咲「酷いCMですわね」
初「私はこれから何度も死にかける事になるだろう」
美咲「私の話題がありませんわよ!?」
初「だから、これからもよろしく」
美咲「私の話題! ねえ私の話題は!?」
初「うるせえなねえよ!」


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第七十七話

 

「くっ……ああッ……」

『六角美咲! こいつは俺が止める……今のうちに仕留めろ!』

 

 剣の怪人は明人の制止に抗おうとする。

 

「明人さん……! 分かりました!」

「くそ……動け! 動け!」

 

 端末を取り出し、操作し取り付ける。

 

「明人さん、今終わらせます!」

『FINAL DRIVE!』

「ライダータイフーン!」

 

 ボマーは脚にボムビットを纏いながら駆け出す。

 

「とりゃあああッ!!」

 

 剣の怪人の頭に向かって、全力の回し蹴りを放つ。

 怪人は爆風で大きく吹き飛び、強制的に変身が解ける。

 

「うわあッ!」

 

 明人の姿に戻る怪人。

 ボマーは蘇生するや否や変身を解いて近付く。

 

「明人さん!」

『六角美咲……』

 

 何とかあの人格に抗いながら呟く明人。

 

「大丈夫ですの!?」

 

 傷だらけの明人の身体に触れながら、美咲は問いかける。

 

「まさか、敵である筈の俺を助ける為に戦ってくれるとはな……」

「当たり前ですわ。私の戦うべき相手が苦しんでいる時に助けるなんて」

「だが、非常にお前らしい」

 

 明人は笑う。

 

「六角美咲」

「……はい」

「悪かったな、あの時はお前との決着をつけられなくて」

「良いんですの。私はこうしてまた話せて、安心しましたわ」

「そうか……くっ……」

 

 頭を押さえる明人。

 

「どうやら、これまでみたいだ」

「明人さん!」

「こいつをどうにかして、全てが終われば、またお前と戦う。約束だ」

 

 震える小指をこちらに向ける。

 

「分かりましたわ」

 

 美咲は喜んで小指を差し出してそれに応じる。

 

『感動の再会はそこまでにしてもらおうか』

 

 明人の人格が入れ替わった。

 

「悪いが、今回は退かせてもらうぜ」

 

 気絶している蒲生を回収し、そのまま行こうとする。

 

「蒲生さんを返しなさいな!」

 

 美咲はそう叫ぶが、明人に笑みを浮かべられ。

 

「無駄だ。こいつの洗脳は深い。今返した所で、お前を襲うのがオチだ」

「……ッ!」

「今回お前が勝てたのはラッキーだという事を忘れんなよ。それじゃあ」

 

 そう言い残し、明人は窓ガラスを割ってどこかへ去っていく。

 

「……絶対諦めませんわ」

 

 蒲生の事も、明人の事も。

 絶対に二人を取り戻す。

 

『~♪』

 

 スマホから着信音が鳴る。

 

「成音さんですわね」

 

 美咲はボタンを押し、通話に出る。

 

「もしもし」

『会長、こっちは何とか蘇我高校にいた怪人と病院に来た奴らにワクチンを打ち終わって、元に戻せたんだけど、そっちはどう?』

「倒せはしましたが、逃げられてしまいましたわ。敵が何者かも分からず終いで」

『そう……そういえば、裕太はそっちにいないの?』

「私が逃がしたのですが、そこにもいないんですの?」

『うん。ここにはいないわ』

「そうですの。帰る途中に探してみますわ」

『お願いね』

「はい」

 

 終了ボタンを押す。

 

「裕太さんもしかして迷子に……」

「俺ならここにいるぞ」

「うわあッ!」

 

 美咲の背後に、何食わぬ顔で裕太が立っていた。

 

 




次回予告

美咲「最後の裕太さんは心臓に悪いですわ……」
初「お前も大抵相手の心臓に負荷かけるような行為やるだろ。まあ爆弾外すから結局殺せねえけど」
美咲「うるさいですわ」


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第七十八話

 

「い……いるならいるって言いなさいな」

 

 美咲が腕を組んでそう告げる。

 

「悪い悪い」

 

 裕太は頭を掻きながら笑う。

 

「ところでそちらは大丈夫でしたの? 成音さんが心配してましたわ」

「俺なら隠れてずっと見てたよ。逃げろとは言われたけど、流石にお前が倒れた時に何もしないわけにいかないしな」

「そうですの」

「怪人達は取り敢えず元に戻せたみたいだし、一旦遥先生の病室に戻ろうぜ」

「ええ」

 

 裕太と共に、美咲は歩き出す。

 

※※※

 

 それが起きたのは、校舎の外へ出てすぐだった。

 

「美咲!」

「うわあッ!」

 

 音速で飛ぶ風の拳に吹き飛ばされ、美咲はごろごろと地面を転がる。

 

「……この攻撃は」

 

 見覚えがある。

 これは……。

 

「対象を……排除する」

 

 聞き覚えのある声。

 その声が聞こえた先にいるのは、サック怪人だ。

 

「黒フードさん……」

「……」

 

 黒フードの下から少しだけ覗いていた瞳も、完全に生気が無くなり、光を失っている。

 

「俺はあの人の為に、殺す……六角美咲を殺す」

「ここは俺が……」

 

 裕太はベルトほ取り出す。

 

「待ちなさいな!」

 

 変身しようとした裕太を、美咲が止める。

 

「黒フードさんは私が助けますの」

「助けるって……こいつは敵なんだぞ!」

「分かってますわ! けど、今の彼は自分の意思で戦っていない。私は彼自身の選択を尊重したいんですの!」

「あの人の意思のままに……」

 

 虚ろな目で呟き続ける黒フードに、美咲はベルトを装着しながら言う。

 

「黒フードさん、貴方が自分の意思で立ち向かっていない事はその眼を見れば分かります。だから私が眼を覚ましてあげますの」

 

 端末を取り出し、ボタンを押す。

 

『BOMER DRIVE READY?』

 

 端末を閉じて、顔の左側で構える。

 

「変身ですわ!」

 

 端末をベルトに取り付けた。

 

『COMPLETE』

 

 上から降ってくる爆弾を右拳で握り潰し、爆風に飲み込まれる。

 爆風の中で、仮面ライダーボマーへと姿を変えた。

 

『SMASH DRIVE READY?』

 

 黒フードが端末を操作して構える。

 

「変身」

『COMPLETE』

 

 黒フードも、サック怪人に変身する。

 

「貴方の運命は、私が変えますわ!」

 

 バットを突き出し、ボマーは駆け出す。

 サック怪人も拳を握り、迎え撃つ。

 

「……!」

「はあっ!」

 

 ボマーが振り下ろしたバットを、サック怪人は受け止める。

 

「!」

 

 余った左拳でボマーの腹を貫き、その身体を大きく吹き飛ばす。

 

「前よりも強くなってますわね……けど、今のただ盲目な貴方に負けるわけにはいきませんわ!」

 

 




次回予告

初「毎回思う。これホントにあった事か?」
美咲「貴女私を見くびり過ぎですの!」
初「まあ……そういう事にしておくか」
美咲「それより最近次回予告適当過ぎませんの?」
初「私とお前がただダラダラ喋るだけのネタを用意するのも疲れるらしいぞ」
美咲「何故始めたんですの……? この前とか貴女がプリン食べるだけでしたし」
初「作者が最近ビックマックめっちゃ食べてるからな」
美咲「ピクルス苦手なのにですの?」
初「抜いてるらしい。まあ私もだけど」
美咲「あり得ませんわ!」
初「いやピクルス苦手なのは仕方ねえだろ。てか私も作者もきゅうり苦手だぞ」
美咲「好き嫌いはいけませんわね」
初「あ、あとお前も嫌い」
美咲「うるせえしばくぞ」
初「また口調変わったなおい」


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第七十九話

 

 戦いはサック怪人が劣勢だ。

 ハイドロフォームにすらなっていないボマーの動きに、サック怪人はついていけていない。

 しかし、サック怪人は何とかボマーの動きに合わせようと奮闘している。

 

「はあッ!」

 

 サック怪人の右ストレート。

 それをボマーは左掌で受け止めてから、バットを上に投げて右拳で吹き飛ばす。

 

「くっ……」

 

 サック怪人が受け身をとって体勢を立て直すと同時に、ボマーが投げたバットをキャッチ。

 

「排除……排除!」

 

 サック怪人は機械の如く、もう一度立ち向かう。

 

「消す……お前を消す!」

「今の貴方に消されるわけにはいきませんの!」

 

 サック怪人が大きく右拳を振るう。

 すると。

 

「はあッ!」

 

 今までのサック怪人の拳撃からは考えられない威力の攻撃が、今度はボマーの身体を大きく吹き飛ばす。

 

「……!」

 

 見覚え、いや俺が実際に経験した事だ。

 あの黒フードに始めて会った時、俺はそいつを拳一つで大きく吹き飛ばした。

 その力と同じ力だろうか。

 

「その拳、効きましたわ……もっとやりなさいな!」

 

 ボマーはバットを構えなおしてもう一度立ち向かう。

 

「排除! ……排除!」

 

 ボマーにもう一度拳を振るい続けるサック怪人。

 だが能力は使っていない。

 

「あの拳はどうしたんですの!?」

 

 ボマーの振るうバットを、サック怪人が受け止めた。

 

「削除!」

「きゃあ!」

 

 ボマーの腹を蹴り飛ばす。

 

「……やはり貴方は出来損ないではありませんわ。やれば出来るじゃないですの」

「やれば……出来る……美咲……」

 

 一瞬サック怪人の動きが固まる。

 だがすぐに首を横にふり、大声を上げて立ち上がろうとしているボマーにのしかかった。

 

「ああああッ!!」

「私は貴方に言いましたわよね。洗脳されていたとしても、それなら洗脳された状態から認めさせてみせると」

「知らない! 知らない! 俺はあの人しか知らない!」

 

 動けないボマーの顔を何度も殴りつける。

 

「貴方が知らなくても、私が覚えてますの!」

 

 何度目かの所で、ボマーが拳を受け止めた。

 

「その人と共にいる事を選びたいと思う貴方を、その人の為でももう人を殺めたくないと言った貴方を、自分の願いの為に何が出来るかを考えようとした貴方がいた事を、私が覚えてますわ!」

 

 ボマーはサック怪人に頭突きしながら起き上がる。

 

「だから思い出させてみせますの!」

『ACCELERATOR DRIVE』

 

 ボマーが加速状態に入り、サック怪人へ消える速度で地を蹴った。

 

「はあッ!」

「くっ……ぐあッ! あああッ!」

 

 最後に回し蹴りで大きく吹き飛ばしてから、ボマーは端末を操作。

 

「これで終わりですわ」

『FINAL DRIVE!』

 

 ボムビットがバットに集結。

 ダウンしているサック怪人に向かって叩きつけるように、バットを振り下ろす。

 

「ライダーインパクト!」

 

 物理法則とかを一切無視し、ボマーの方が逆に爆発に巻き込まれる。

 サック怪人は吹き飛ばされ、地面を転がりながら、その身体を元に戻していく。

 

「くっ……ああっ……」

 

 ゆっくりと立ち上がろうとする黒フードを、遠くで蘇ったボマーが見つめる。

 

「俺は……あの人しか、知らない……」

 

 そのまま、黒フードは気絶した。

 

 




お休みです


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第八十話

 

 倒れた黒フードに、変身を解いた美咲が近付く。

 

「黒フードさん……」

「美咲……」

 

 その時だ。

 

「裕太」

「成音? それにみんなも、ここに来たのか」

 

 成音とヴィーダが、ベルトを装着して俺を見ている。

 だが……何というか穏やかな雰囲気ではない。

 

「ど、どうしたんだよ。そんな顔で俺を見て」

「裕太、気を悪くしないで聞いて欲しい」

「は……はあ」

 

 成音は言うのを躊躇ってから告げる。

 

「遥さんが言ってたの。もしかしたらあの日、裕太が遥さんを斬りつけたんじゃないかって」

 

 しばらく俺は、成音の言っている事が理解できなかった。

 

「へ? いや、どう考えても違うだろ。だって俺はあの時、優香と一緒にいただろ?」

「多分あの場に現れたのは、裕太であって裕太じゃない……そうですよね遥さん」

 

 成音がスマホのスピーカーに向かって言う。

 

『ああ。優香からの話を聞いて考えてみたんだ。ヴィーダが何故、福沢裕太を避けているのか』

「ヴィーダの……一体どういう事ですか?」

『成音は私の説明と、蘇我高校から持ち帰った資料で既に知っているんだが、ヴィーダには脳波で個人を判別する能力が備わっているんだ。ヴィーダがお前を嫌いと言った理由には、きっとそれがあるのだろう』

「でもこんなのおかしいです! 俺は観客席からずっと見てたんですよ!?」

 

 あの日の記憶に偽りはない。

 確かに俺の中から声が聞こえる事はあったし、俺の知らない記憶を、俺は断片的に思い出す事があった。

 しかし……。

 

『まったく……今更気付くなんてな』

「……ぐ……」

 

※※※

 

 頭を押さえる裕太。

 

「裕太!」

 

 口元を緩めながら、彼は囁く。

 

『すっとしたぜ……ようやく表に出られる」

「アンタ……」

「そうだよお嬢ちゃん、俺が黒フードの正体さ」

「裕太……さん?」

 

 遠目で見ていた美咲も、その様子に気付く。

 

「久しぶりだな六角美咲。俺だよ、あん時の黒フード」

「何言ってるんですの裕太さん……貴方が黒フードなんてそんな事……」

「おいおい、分かりやすかったと思うんだけどな。大体、あの黒フードの性格と俺の性格、太陽と月くらい違うだろ?」

 

 両腕を広げながら言う裕太。

 

「あ、因みに言っとくけどよ。あの決勝の時までお前達と一緒にいた福沢裕太はあいつだぞ」

 

 黒フードを指さす裕太。

 

「あいつがお前と戦うのを少々躊躇ったり、お前といる事をあまり不快に感じたりしていないのも、あいつの中に少し残っていた福沢裕太がそう感じさせてたっつー事」

「でも、そんな事どうやって……」

「俺とあいつ、そして福沢裕太に関してはちょいと複雑な事情があるんだが、まずは俺の中の福沢裕太とこの場のお前らに、あの決戦の時に何があったかを一から説明してやるよ」

 

 裕太は悪魔のような笑みを浮かべ、口を開き始める。

 

※※※

 

 美咲に敗北した後、黒フード……二号は菫に通信を入れた。

 

「俺だ」

『二号か。狩野遥の暗殺は成功したのか?』

「いや、まだ息があった。しかもあのアマ、ハイドロフォームカードなんてもん隠してやがった。そのカードのせいで六角美咲にやられたよ」

『そうか……でもいくつか遥の研究品は盗めたのだろう?』

「ああ。一番よさそうなのを手に入れた」

 

 戦闘前に科学部の部室で盗んだアトミックドライバーに見ながら言う。

 

『それは楽しみだな。ところで、一号はまだ校舎内にいるのか?』

「ああ。その筈だ」

『ならプランを変えよう。君の能力と、君に与えた顔を使うんだ、あとは分かるよね?』

 

 フードに隠された、中々整った福沢裕太の顔に触れる。

 そして菫が何をしたいのかも全て察した上で笑う。

 

「お袋も落ちる所まで落ちたな。遥だけじゃなく、巻き込まれただけのガキや自分の子供まで殺すってのかい」

『そういう事になるね』

「お袋は科学者としては高得点でも、母親としては零点だな」

『失敗作を生かしておいた所で無意味だ。それに君が福沢裕太になる方が、怪しまれずに狩野遥を殺すチャンスを得られる。それに、狩野遥側に付きそうな人間も早めに排除する方が妥当だ』

「良いねえ、やっぱりお袋は最高だ」

 

 二号は通信を切る。

 

 




次回予告は今回なしです


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第八十一話

 

 丁度良いタイミングで、二号は科学部の部室からドライバーを盗んで逃げようとしていた福沢裕太……一号に遭遇した。

 

「お前は……」

「よう、久しぶりだな福沢裕太」

 

 一号が鋭い目で二号を睨む。

 

「丁度お前を探してた」

 

 笑みを浮かべながら、二号はサックドライバーを装着する。

 

「悪いけど俺はお前に構ってる暇はないんだ」

「へえ……そうか。でも悪いけど、そんなの聞いてないから」

『SMASH DRIVE READY?』

「変身」

『COMPLETE』

 

 二号はサック怪人へと姿を変える。

 

「ならこいつで……」

 

 一号がベルトを装着。

 

「俺とやるってのか……良いけど、暇つぶしくらいにはなってくれよ」

『ムラマサ!』

 

 刀型の端末を取り出し、ボタンを押す。

 端末を閉じてから、ポーズを決める。

 

「変身!」

『失敗!』

「え……うわっ!」

 

 ベルトが一号の身体から弾けるように外れる。

 

「はあ……暇つぶしどころか、ベルトすら満足に使えないのか」

「くそ……」

「はあ、つまんね」

 

 サック怪人は一号の背後に移動し、肘を一号のうなじに当てた。

 

「うっ……」

 

 一号が気絶し、うつ伏せに倒れる。

 

「それじゃあ、仕事開始」

 

 サック怪人は変身を解いてから、右手を一号に向ける。

 自身に秘められた突然変異体としての能力を使う。

 

「福沢裕太の脳波は頂いたぜ」

 

 福沢裕太の脳波を自分の脳内に取り込んでから、二号は自分の着ていた黒フードを脱いで、一号の身体に着せる。

 

「代わりにこいつでもやるか」

 

 ムラマサドライバーを奪ってから、サックドライバーを代わりに渡す。

 

「んじゃ、残り少ない人生を楽しんでくれよ。兄貴」

 

 二号は倒れている一号を見下ろして、そこから去る。

 

※※※

 

「これが、俺が入れ替わった経緯さ。納得したか?」

 

 美咲と、何よりこの事を覚えていない福沢裕太自身に言う二号。

 

『おい……ちょっと待てよ。それなら俺は何なんだ、まるで自分の身体が無いみたいじゃないか!』

「よく気付いたな福沢裕太。その通りだ」

 

 交互に人格を入れ替えながら喋る二号。

 

『え……』

「六角美咲、一号兄さんが殺したのは狩野遥の幼馴染だけじゃない。福沢裕太も……だ」

『どういう事だよ、俺が死んだってどういう……』

「言葉通りの意味だ。一号兄さんがお前を殺し、その死体から脳波を抽出し奪った。その奪った人格が、お前だ」

『……そんな』

 

 青い顔をする福沢裕太。

 絶望に満ちた表情だ。

 二号の人格に変わった途端、笑みを浮かべてから言う。

 

「これでどんな馬鹿でも状況くらいは飲み込めただろ。明かさずに殺すつもりだったが仕方ないな」

 

 二号はムラマサドライバーを装着。

 

「それにちまちま殺すより、派手な喧嘩の方が俺の性にも合うし、むしろバレて俺的にはラッキーだ」

『ムラマサ!』

「変身」

『御意! 出陣! 仮面ライダームラマサ!』

 

 二号は仮面ライダームラマサへ。

 

「そううまくはやらせませんわ」

 

 美咲や成音もベルトを取り出し、戦おうとするが。

 

「ヴィーダガタタカウ!」

「ヴィーダ……」「ヴィーダさん」

「フタリハテヲダサナイデ。アイツ……ママキズツケタヤツ……ヴィーダ、タオス!」

 

 ヴィーダが瞳孔を開きながら、グングニルドライバーを装着。

 

『GUNGNIR ON』

「ヘンシン!」

『CHANGE』

「少しは楽しませてくれよ?」

 

 グングニルとムラマサが、互いに構える。

 

 



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第八十二話

 

 最初に動き出したのはグングニル。

 右手の槍を構えながら、消えるような速度で移動する。

 

「セイッ!」

「気合十分だなあ、お嬢ちゃん。だがこの前の俺とは一味違うぜ!」

 

 ムラマサの方が一枚上手だ。

 高速移動も刀も、グングニルの槍捌き以上に扱いこなしている。

 

「ウワアッ!」

 

 グングニルが斬撃で吹き飛ばされた。

 

「少しは腕を上げたようだが、俺の刀捌きには及ばねえな」

「マケナイ……マケタクナイ!」

 

 グングニルは槍を構え直し、もう一度ムラマサに立ち向かう。

 

※※※

 

 戦いが始まって数分が経つ。

 しかし未だに、相手の優勢が続いている。

 

「ヴィーダ……」

 

 戦う様子を一番心配そうに見ていたのは成音だ。

 そわそわと落ち着かない様子を見せていたが、美咲がその腕に手を添える。

 

「今はヴィーダさんに任せますの。裕太さんにした事も許せませんが、ヴィーダさんは母親を殺されかけたのですから」

『今戦ってるのはヴィーダか?』

 

 まだ通話中の遥が問う。

 

「ええ。遥さんの為に戦ってる」

『私の為に……か? いや、今は理由は良い。状況はどうなんだ?』

「ヴィーダがおされてるわ。これじゃあとても勝てない」

『それなら、グングニル自体のスペックを上げるしかない』

「そんなのどうやって……」

『グングニルドライバーは、他のドライバーを取り付ける事でフォームチェンジが出来る』

「そんな機能があったんですの?」

 

 美咲はグングニルと戦ったあの時を思い出す。

 しかし、その時にはその機能を使っている様子はなかった。

 

『ああ。だが私のロードドライバーでは出来なかった』

「どうして」

『恐らくあの時のヴィーダでは力不足だったのだろう。仮面ライダー用のベルトは非対応故、もし出来るとしたら……山内成音、フレイムシャワードライバーをヴィーダに渡せ』

「これを?」

『ああ。まだ他のドライバーを試していないが、今出来るとしたらそれしかない』

「……分かった」

 

 少し俯いてから、顔を上げる。

 

「ヴィーダ!」

 

 成音の呼び声に、グングニルが振り向く。

 

「これを使って!」

 

 フレイムシャワードライバーの端末部分を、グングニルへ投げる。

 

「させるか!」

 

 ムラマサが邪魔しようとするが、そこをヴィーダが何とか防ぎ、端末を受け取った。

 

「ナリネ……アリガトウ!」

 

 グングニルはドライバーの左側、槍型のガジェットを挿していない方に端末を挿入する。

 少しばかり緊張しながら。

 

「……」

 

 成音が祈る。

 

『フレイムシャシャシャ……』

「アッ……アアッ!」

 

 だがそんな成音の期待に反して、ドライバーがバチバチと火花を立てて端末を吹き飛ばす。

 

「そんな!」

 

 何とか立ち上がるグングニル。

 

「ふぅ、どうやら無理みてえだな」

 

 安心したムラマサがもう一度斬りかかりに行く。

 何とか槍で防ぎ、ムラマサを弾いた。

 

「ヴィーダニハ、ムリナノ……?」

 

 グングニルが顔を下げる。

 

「ヴィーダ……」

『やはり無理なのか……』

 

 成音と遥が諦めかける。

 しかし。

 

「ヴィーダさん!」

「ミサキ……」

 

 美咲がグングニルへ叫ぶ。

 

「無理かも知れないと考えてる場合ではありませんのよ! 貴女は自分で自分の母親を傷付けた者を倒すと決めんですのよ! それなら、出来ると信じなさいな!」

「……!」

 

 グングニルがもう一度端末を拾う。

 

「デキルト……シンジル……!」

「ヴィーダ! 頑張って!」

「成音さん……」

「ナリネ……」

 

 二人の言葉を聞いたグングニルが、ムラマサを見る。

 

「ママヤユウタ、ミサキ……そしてナリネノタメ二、ヴィーダハオマエヲユルサナイ!」

 

 端末を左側に差し込む。

 

『フレイムシャワー!』

 

 何とか負荷に耐え、グングニルは叫ぶ。

 

「ダイヘンシン!」

 

 右手で槍を押し込んでから、斜め左上まで右腕を伸ばす。

 

『CHANGE FLAME THROWER』

 

 グングニルが光に包まれ、姿が変わっていく。

 白と水色中心だったカラーリングに、オレンジが加わり、複眼の色も赤く変わる。

 左手に火炎放射器が握られ、背中にはブースター、そして槍の刃も発炎する。

 

「コレガ、アタラシイチカラ……」

 

 




次回予告

初「ついにグングニルもパワーアップしたのか」
美咲「ヴィーダさんと成音さんの絆、そして遥さんに対するヴィーダさんの強い想いが生み出した奇跡のフォームですわ!」
美咲「次回はその活躍が出ますわよ!」
初「そりゃあ楽しみだ」


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第八十三話

 

「あれが……」

 

 成音が驚いた眼で見る。

 

「あの変身が出来たのは、成音さんのおかげですわ」

「会長……」

「私の言葉だけでは、恐らく彼女には響きませんでしたわ。貴女がいてこそですわ」

 

 両腕を広げるムラマサ。

 

「今度は出来たようだなお嬢ちゃん」

「ヴィーダ、オマエ……タオス!」

「やってみな」

 

 ムラマサが姿を消してから、グングニルへ迫る。

 

「……がら空きだ!」

「ハアッ!」

 

 槍を回転させながら、炎を生み出して防ぐ。

 

「コンドハヴィーダノバン!」

 

 次はグングニルが高速移動で姿を消す。

 速いだけじゃない。

 槍とそれが纏う火炎の強烈な攻撃が、ムラマサを追いつめていく。

 

「ぐあっ……こいつは厄介だな」

 

 ムラマサが攻撃を受けた所に触れてから言う。

 

「ハアッ!」

 

 そのまま追い打ちをかける。

 上空の魔法陣から数本の槍を放ち、ムラマサ目掛けて放つ。

 

「おわっ……!」

 

 太刀打ち出来ずに、数本掠ってしまう。

 

『どうやら出来たようだな』

「遥さん」

『六角美咲の言う通りだ。しかもフレイムシャワードライバーで、ロードドライバーで想定されていた以上の戦いぶりを見せるとはな』

「じゃあ、つまり……」

『非常に非科学的だが、山内成音とヴィーダ……お前達の絆が生み出したものに違いない』

 

※※※

 

 ムラマサもデータにない戦闘を強いられたせいか次第に追い詰められ、あともう少しの所まで追いつめた。

 

「コレデ……キメル!」

 

 槍型のガジェットを押し込み、必殺技を放つ。

 

『GUNGNIR FINAL DRIVE!』

「ライダーフレイムランス!」

 

 魔法陣から大量の槍と炎が放たれる。

 

「ぐああああッ!」

 

 ムラマサを大きく吹き飛ばし、強制的に変身を解いた。

 

「くっ……」

 

 二号が笑みを浮かべながら立ち上がる。

 

「思っていたより、随分やるな」

「……トドメ……」

 

 グングニルが槍を構えながら前に進む。

 

「おっと、俺を殺す気かい? だがそうはいかねえぜ」

 

 何とムラマサに再変身し、瞬間移動並みの速さで姿を消す。

 

「次は今みたいにはいかないぜ。六角美咲もそこのお嬢ちゃんも、この俺が葬ってやる」

 

 最後にそれだけ言い残す。

 

「……ニゲラレタ」

 

 グングニルは変身を解く。

 

「ヴィーダ」

 

 成音がゆっくりとヴィーダに近付いた。

 

「ナリネ……ナリネ!」

 

 ヴィーダが成音に飛びつく。

 

「凄かったよ、ヴィーダ」

 

 成音もヴィーダをぎゅっと抱きしめる。

 

「ツギハカチタイ、ママニアヤマッテモラウマデタタカウ!」

「そうだね……」

 

 一人だけ二号が先ほどまでいた場所を、美咲は寂しそうに見ている。

 

「裕太さん……」

 

 




次回予告が思いつかないので今回もカットさせてください……。


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第八十四話

 

 〇×女子高空き教室。

 

「またゆっくり話せる日が来て嬉しいぜ。お袋」

「僕もだよ、と言いたい所だけど……君がそんなボロボロの状態で戻って来たのはしくじったせいだからだろう?」

 

 菫が美しくも怖い笑みを浮かべる。

 

「悪いな。でもよ、この方が俺も楽しいんだ」

「君は本当に、言う事を聞かない奴だ」

「言いたきゃ言えよ。どうせ殺しちまえば同じなんだから」

「……」

「ところで兄貴はどうすんだ?」

「ああ、どうせ君が殺すのだろう? もう絞れるものは絞りつくした。奴は廃棄だ。永遠に」

 

 そう言って、菫は手元のボタンを押す。

 

「福沢裕太ももう必要ない。どうせ今は彼に動く程の意思はないのだろう。今の内に処分を」

「おいおい、お袋。ちょっと待ってくれ」

「……」

「こいつなんだけどよ、ちょいと俺の玩具にさせてくれ。この通り」

「どういうつもりだ?」

「俺、ちょっと見てみたいもんがあんのさ」

 

 そう言って二号はニヤリと笑みを浮かべた。

 

※※※

 

 あの後、気絶している一号を病院まで運んだ。

 特に大きな怪我などもなく、少し時間が経ってから目覚めた。

 

「ここは……」

 

 美咲が戦ったおかげか、それとも何かが起きたのかは分からないが、洗脳は解けていた。

 

「気が付きましたのね」

「六角美咲……。俺は、一体何を……」

 

 一号が辺りを見回して問いかける。

 

「気にする必要はありませんの。貴方が貴方に戻ってくれた。それだけで十分ですわ」

「……お前と戦ったのか。あの人の命令で」

「命令かどうかは分かりませんが、私と戦ったのは確かですわ」

「そうか……」

 

 一号は涙を流していた。

 

「一号……さん?」

「俺は今度こそ、完全に捨てられたのだな……」

 

 何かを察したように、そう告げる。

 

「……」

「美咲……」

 

 一号は美咲に顔を近づける。

 

「頼む……俺を殺せ」

「……」

「これ以上生きても、俺はあの人の為にはもう生きられない。だからもう良いんだ……」

 

 そう言って大粒の涙を流す。

 

「……」

「美咲……俺の願いを聞き入れてくれるんじゃないのか?」

「聞き入れますわ。貴方は私のライバルと決めた人」

「なら……ッ!」

「それが貴方の本当に望む事なら、ですわ」

「……!」

 

 美咲は外を見る。

 

「私も今は、どうすれば良いか分かりませんわ。貴方の願いを叶える事もそうですが、私も……共にいたいと願った者を失いましたもの」

「……」

 

 一号は拳を握った。

 

「ですが絶対に、貴方にも裕太さんにも、笑顔でいてもらえるように尽力しますわ。それが貴方のライバルで、裕太さんをお供に選んだ私の責任ですもの」

「美咲……」

「……」

 

 ――裕太さん、貴方をここに連れ戻すまで……私は戦い続けますの。

 

 夜空を見ながら、美咲はそう心で呟く。

 

 

 




次回はヴィーダ回になる予定!


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第八十五話

 戦いの後、成音は美咲と別れてヴィーダと共に遥の病室へと向かった。

 どうしても、二号を倒せずに逃がしてしまった事を謝りたい。

 そう告げて走っていくヴィーダを、何とか追いかける。

 

「会長は大丈夫かしら……」

 

 美咲は病院まで一号を運んで行った。

 優香もついていこうとしたが、美咲から一人にして欲しいと言われ、誰もついていかなかった。

 恐らくこの病院のどこかの病室で、彼が美咲の近くで眠っていると思われるが、一号は敵側の人間。

 油断は出来ない。

 

「ナリネ、ハイロ」

 

 あくまで静かに、ヴィーダが病室の扉を開ける。

 遥は扉が開くまで、何かの写真を見ていたようだ。

 それに気付いた遥がヴィーダだと気付いた瞬間に、申し訳ない顔になった。

 

「……」

「ママ……」

 

 成音はそれを静かに見守っていた。

 

「どうした? お前がここに来る必要はない筈だ」

 

 遥は敢えて突き放すような態度で、ヴィーダの目を見ずに言う。

 

「アルヨ」

 

 それでもヴィーダはくじけずに、そう告げる。

 

「ヴィーダ、ママヲキズツケタヤツタオセナカッタ……。ソレ、ヴィーダガマダヨワイカラ」

「……」

「ママゴメンネ……ヴィーダ、ママノヤクニタチタイノニ……」

 

 遥は息を吐いてから言う。

 

「お前がそうする必要はない」

「ナンデ?」

「お前は私の道具だった。けど、今はもう私の為に働く必要がなくなった。今のお前は自分の命さえ守れればそれでいい。わざわざ私の為に戦わなくても良いんだ。私なんかにも関わらず、そこの少女と家族のように暮らせばいい」

 

 罪悪感に満ちた表情で、尚も突き放し続ける。

 

「イヤダヨ」

「……」

「タシカニナリネスキ、コレカラモイッショニイタイ。ケドソレトオナジクライ、ヴィーダハママガスキ」

「……」

「ヴィーダ、コレカラモマママモル。ダッテママハ、ヴィーダノママダカラ」

「私は母親じゃない!」

 

 大きな声で、ヴィーダにそう告げる。

 

「お前はただ、私の卵細胞から生みだされただけの……人形だ。私の復讐心を満たす為の道具だったんだよ。だからお前にわざわざ危険な戦いを強いた! そんな私が、お前の母親になれると思うか?」

 

 そう言って涙を流す。

 ヴィーダも言葉を失う。

 

「なれるわよ」

 

 そんな時に、成音がそう口にする。

 

「……」

「ナリネ……」

「遥さんがそうやって拒絶するのは、それを申し訳なく思うからでしょ? 本当は自分が生み出したヴィーダの事を、娘のように思いたい。そうなんじゃないの?」

「違う……。復讐の為だ……そうでなければ、生み出したりはしない……」

 

 遥が扉が開くまで見ていた写真を、もう一度見て呟く。

 

「コノヒト……ママノダイジナヒト……。ママ、コノヒトノタメ二、ヴィーダウミダシタ?」

「……そうだ。だから」

「ジャアコノヒトハ、ヴィーダノパパダネ」

 

 ヴィーダがそう言う。

 

「ナラ、ナオサラママノタメニタタカウノアキラメラレナイ。パパノタメニウマレタナラ、ヴィーダハソノタメ二タタカイタイ。ダッテ、ヴィーダ、カゾクヤトモダチガダイジダカラ」

「ヴィーダ……」

 

 遥が初めて、ヴィーダに目を向ける。

 そしてくしゃくしゃの顔で、ヴィーダの頭を撫でた。

 

「ママノテ、アッタカイ」

「そうか……私は欲しかったんだな。あいつとの家族が……」

 

 自分の気持ちを吐露する遥。

 成音もその光景を見て、笑みを浮かべる。

 

「よかった」

 

  

 




初「もうちょっとだけ続くんじゃ」


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第八十六話

 面会が終わり、遥と別れてから……成音はヴィーダを寝かしつけて、紅茶を飲みながら、和解の後の出来事を思い出していた。

 

※※※

 

 少し成音と話がしたいと告げた遥の言葉に従い、ヴィーダが一度退出する。

 成音が遥に近付くと、遥が少し笑みを浮かべてこう言った。

 

「お前が今まで、あの子の傍にいてくれたのか?」

「はい」

 

 成音も少し照れながら答える。

 

「そうか」

 

 遥が安心した顔で続けた。

 

「あの子は私の所にいた頃、飯と実験くらいしか与えられているものが無かったからな。私以外の所にいた方が、この子も幸せだと思ってた」

「……」

「どうした? 暗い顔をして」

「ヴィーダには話した事あるんですが、私は母親が嫌で家を出て行った事があって。ヴィーダに母親が好きかどうか聞いたら、道具扱いされてても、本当は優しいのを知ってるから好きだって言ってて、まだ生まれたばかりなのに、私よりもちゃんと母親の気持ちを理解しているのが凄いなって思ってて……」

 

 自分はヴィーダと違って、一切歩み寄る気が無かった。

 自分の気持ちばかりを優先して、母親から逃げる事を選んだ。

 

「それが正しい判断だろうな。普通はダメな親からは、そうして逃げた方が良い。ヴィーダは何故か、そうしなかった。それをした所で、私以外の誰かからは責められる事もないし、私が責めても気にしなければそれでいいのに」

「……」

「私は、ヴィーダに感謝しなければいけないな。こんな母親の為に、命を懸けて戦うあの子に」

 

 遥はそう呟く。

 

「それに、今までお前達を利用していたというのもある。相応の償いはするべきだろうな」

「……」

「山内成音、頼みがある。お前達の仲間として、共に戦ってもよいか?」

 

 成音に目を向けて、そう問いかける。 

 

「虫がいい話なのは分かっている。だが、これ以外に私に出来る償いなどない。頼む……」

 

 遥は頭を下げた。

 成音は少し考えてから伝える。

 

「分かりました。ただ、会長に聞いてみないと分からないので……返答は少し待ってください」

「本当か……」

 

 遥が答えに対して口を開く。

 

「私はヴィーダの友達ですし、ヴィーダが守りたいって言うなら……遥さんも守らなきゃいけないって思うんです」

「……」

「その代わり、私からも頼みがあります」

「なんだ?」

「ヴィーダと、これからも一緒にいたいんです。ヴィーダがもし遥さんと一緒にいたいなら、そうするべきかもですけど、もしヴィーダの意思が変わらなければ、まだ一緒にいたいんです」

 

 成音もお願いする。返答はすぐに返って来た。

 

「問題ない。私も、そうしようと思っていた所だ」

「遥さん……」

「まだ今の私では、母親らしく出来る自信はないが、ヴィーダも見た所、お前をかなり信用しているらしいしな」

「そ、そんなことあるのかな……」

「うちの娘を頼んだぞ。山内成音」

「……はい!」

 

 成音は遥の頼みに、そう答えた。

 

《第二章 完》

 




次回から第三章です!

美咲「いよいよここから動き出していく感じですわね。裕太さん、絶対に助けてみせますわ!」
初「流石にここは空気を読むか。取り敢えず、頑張れよ美咲」
美咲「あ、はいですわ」
初「仮面ライダーボマー第三章、明日から公開開始!」


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第三章
第八十七話


 あれから数日が過ぎた。

 

「……」

 

 美咲は自宅で一人、生徒会の仕事を粛々と進めている。

 蒲生達は当然帰ってきておらず、成音が自分の仕事と、プラスアルファで引き受けてくれたが、それでも量が多い。

 

「全然終わりませんわね、裕太さん」

 

 思わずそう呟く美咲。

 しかし、返事が返ってくる様子はない。

 それもその筈……。

 

「裕太さん……」

 

 福沢裕太……正確にはその脳波は今、敵の手にある。

 取り返したい気持ちはあるが、敵の正体も分からず、何も出来ずにいた。

 

「ダメですわ! 私は裕太さんと一号さんを助けると決めたんですもの」

 

 両頬を両手で叩き、顔を上げる。

 特訓用に着ている体操着に目を付け、気分転換でランニングに行こうと、美咲は粛々と着替えた。

 

「今は出来る事をするのですわ……六角美咲!」

 

 そう言い聞かせてから、美咲は部屋を出る。

 

※※※

 

 丁度六角美咲が家を出たタイミングに、一号が門前にいた。

 

「一号さん!?」

「……」

 

 明るく挨拶する美咲。

 会うのはそこそこ久しぶりだ。何せあの出来事の後すぐに退院し、姿を見せなかったのだから。

 勿論連絡などもなく、どこで何をしていたのかも全然分からない。

 そんな一号は浮かない顔で問いかける。

 

「これからどこかに行くのか?」

「ええ。また特訓ですわ」

「そうか」

「一号さんも一緒にどうです?」

 

 一号は少々困惑している。

 

「俺もか?」

「ええ。何か悩んでいるようにも見えましたし、動けばもしかしたら、気持ちも整理出来ますわよ」

「……そうだな。分かった」

 

 静かに頷くと、美咲が嬉しそうに門を開けて告げる。

 

「じゃあ決まりですわ! まずは修行場所の公園まで競争しますわよ」

「いきなりか」

「最初から飛ばしていきますわよ!」

「ああ……」

「よーいドン! ですわ!」

 

 少しおかしい掛け声を聞いてから、美咲と共に一号も走り出す。

 

※※※

 

 公園まで着いてから、ひとまずベンチで一旦休憩。

 美咲が一号に飲み物を渡し、隣に座る。

 

「そういえば、まだあの時の礼を言っておらんな」

「?」

「暴走した俺を止めてくれた事の礼を、まだ言っていないと思ってな」

 

 一号はあの時、捨てられた事への悲しさで胸がいっぱいだった。

 だが首を傾げていた美咲が笑い、答える。

 

「良いんですのよ。私は当然の事をしたまでですわ」

「そうか……」

「それより、退院してから姿を見せませんでしたけど大丈夫でしたの?」

「……何とかな」

 

 退院後、一号はしばらく野宿をして過ごしていた。

 福沢裕太の名義で入院していた為、加害者である自分がこれ以上彼に迷惑は掛けられないと、退院する時もまだ身体に痛みが残る状態であった。

 美咲の家に向かったのは、礼を言い忘れた事を思い出したからだ。

 金も携帯食料もない為、食事もほぼとれていないが問題は……。

 

 ――ぐー……。

 

「どうやら大丈夫じゃなかったみたいですのね」

 

 美咲がそう問いかける。

 

「す、すまない」

「両親に頼んで、夕飯食べさせて貰えるか聞きますから、今日ばかりは甘えなさいな」

「あ……ああ」

 

 美咲はそう言ってスマホを取り出す。

 

※※※

 

 結局特訓を中断し、一号は美咲の家で夕食を頂いていた。

 

「心配したぞ裕太。随分店に顔出さない上に、連絡までしなかったからな」

「えっと……その……」

 

 どうやら福沢裕太は美咲の父に世話になっていたらしく、対応に困ってしまう。

 

「実は裕太さん、今日まで入院してたんですのよ。退院祝いにうちで食べたいというから連れてきたのですわ」

「そ、そうなのか。大丈夫だったか?」

「あ、ああ」

「うちの娘に見舞いに来てもらえるなんて、お前も幸せ者だな~」

「は、ははは……」

 

 一号は何とか対応に困りながらも、久々にまともな食事を頂いた。

 

 




次回予告

初「一号もクールで結構好きだな。まあ、京極先輩のカッコ良さには勝てねえけど」
美咲「貴女が人の顔を語れるとは思いませんけど?」
初「誰がまな板だしばくぞコラ」
美咲「掠ってもないですわよ……」


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第八十八話

 

 食べ終わってから美咲の部屋に行き、一号はベッドの上に座る美咲に告げる。

 

「実はあの時は言えなかったが、俺が何者なのか分かったんだ」

「本当ですの?」

「ああ。あの人……戸間菫を好きで仕方なかった平凡な青年、らしい」

「なるほど、つまり貴方は元々普通の人げ……え、今戸間菫って言いました?」

 

 美咲が目を丸くして問いかける。

 

「ああ」

「戸間菫って、私の学校に教師として赴任したあの……」

「そうだ。その人が、俺の生みの親だ」

「やはりそうだったんですのね……あの人は少しばかり不思議な人とは思ってましたが、まさかそんな身近に犯人がいたなんて」

「……」

「菫先生が遥さんの幼馴染や裕太さんを殺してまでしたかった事は、貴方に教えてくれなかったんですの?」

 

 一号は少し黙り込む。

 元々の配下である一号でも、そこまでは知らなかった。

 彼女が自身の研究で名を立てたいのは態度で分かるが、その為に人を殺す理由がよく分からない。

 それに、菫は狩野遥と親友同士だったとも聞いている。

 

「俺にもそこまでは分からない。俺達を作った理由が研究の為なのは分かるが、何故人の命を奪わなければならないのか。それは分からない」

「そうですのね……ところで、その人間としての記憶はどれくらい思い出せたんですの?」

「それも実は……結構曖昧だ」

 

 曖昧、という表現方法すら怪しいが。

 今のところ、自分が元々普通の人間だったという証拠証言は、菫の発言とサックドライバー装着時に一度見えた記憶のみ。

 菫の言葉を聞く限り、自分は菫に対し恋愛感情……もしくはそれに近い感情を抱いていたのは明らかだが、自分が本来どんな人間だったのかまでは分からない。

 

「うーん……なるほどですの。貴方の記憶や、知っている情報に、菫先生の考えを変えさせられる手掛かりがあればと思ったんですがね……」

「まだそこまで……考えてくれたんだな」

「当たり前ですの。例え貴方が諦めたって、私は諦めませんの」

「……」

「それに正体が分かれば、やれる事が一つ思いつきましたわ」

「なんだ?」

 

 ベッドから立ち上がる美咲。

 

「私が直接説得しに行くんですの」

「……無茶だ! それに俺やお前をまだ殺さずに放置している事にも、何かしら考えがある筈だ」

「全て承知の上ですのよ」

「だが……お前がライダーになったのも、狩野遥があの行動をとったのも、俺の行動が招いた結果。これ以上お前が背負う必要は……」

「違いますわ」

「え……」

 

 美咲は言う。

 

「蘇我高校との対決を受けたのも、ライダーになる事を決めたのも、全て私の意思ですの。だから私はこれからもこの力を使い続けますわ」

「……」

 

 一号は少しだけ笑顔を見せる。

 

「俺がこんな事を言うのは、おかしいかも知れない」

「……はい?」

「でも俺は、これに巻き込まれたのがお前で良かったと今なら思える。俺の願いが叶わなくとも、俺はお前が敵であった事を後悔はしない」

 

 一号が少しばかり安心した顔で、美咲にそう告げる。

 

「一号さん……」

「お前に頼みがある。聞いてくれるか?」

「なんですの?」

 

 本来敵である筈の美咲が自分の夢の為に行動を起こしてくれる事を、一号は心から感謝していた。

 そんな美咲に対し、自分が出来る事を少し考えていた。

 これがその答え。

 

「俺が諦めていた願いを、叶えようとしてくれているお前の力になりたい」

「……」

「俺をお前の仲間にしてくれないか?」

「一号さんが、仲間に?」

「ああ」

 

 恐らくは断られるかも知れない。

 少し不安だったが、美咲は笑顔で手を差し出す。

 

「良いに決まってますわ!」

「……」

 

 予想外の答えに、少しばかり呆然とする。

 

「私も貴方に勝つ事が出来たら、友人同士になりたいと思っていた所ですの。だから貴方の方からそう言ってくれて嬉しいですわ」

「美咲……」

「これからよろしくお願いしますわ」

 

 一号もそれを了承し、美咲の手を握る。

 すると、もう一度握り方を変えてから、拳を何度か打ち付けた。

 

「これが……お前流の握手か?」

 

 少しばかり困惑しながら問いかける。

 

「私の好きなあるヒーローの真似ですわ」

「そうなのか」

 

 




次回予告

初「あの握手なんなんだ?」
美咲「仮面ライダーフォーゼこと、如月弦太朗がよくやる握手ですわよ」
初「ほへー、しかも福士蒼汰か。え、しかも二号これ……吉沢亮か?」
美咲「その通りですわ。仮面ライダーメテオ、朔田流星ですわ!」
初「私吉沢亮割と好きなんだよな。フォーゼ見てこようかな」
美咲「おすすめしますわ!」


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第八十九話

 

「はい号令」

「創立、灰、オリゴ糖ございました~」

「ったくこいつらは……」

 

 一号が仲間になった次の日。

 取り敢えず仲間全員にその事を伝えてから、菫の所に行こうとしていたのだが。

 

 ――まずい事になりましたわね。

 

 そう心で呟きながら、昨日の会話を思い出す。

 

※※※

 

 一号が仲間になって束の間、美咲は彼に忠告を受けた。

 

「すまんが美咲、この事は他の者達には伝えないようにした方が良い」

「どうしてですの?」

「当然だ。俺をきちんと理解しているのはお前だけだ。恐らく俺の言った事など、誰も信用しない。遥は特にな」

「……」

「それに菫が実験体を使って遥やヴィーダ、そしてお前や俺を排除しようとしていたのは、自分がやっている事を誰にも知られない為だ。正体を知った時点で、彼女は恐らく容赦なくお前を消す。それでも本当に仲間に伝えるのか?」

「流石にそこまでのリスクに、皆さんを巻き込むわけにはいきませんわね……」

「勿論美咲、お前だってそうだ。お前が狙われたのは、お前にその力があると認められた故だ。恐らく真実を知らなかった、という事にしておけば逃げられる。そのベルトと引き換えにはなるが、お前は平穏な日々を取り戻せるかも知れない」

「……! それだけはダメですわ! 例え危険な戦いでも、私はどんな手を使っても生きて帰りますわ!」

 

 美咲の言葉に、一号は安心した顔を見せる。

 

「すまない……。本当にこの危険にお前を巻き込んで良いのか、もう一度確認していたのだ」

「今更この戦いから退けませんわ。私の仲間やライバル、それに大事なお供にまで手を出していた菫先生を、これ以上野放しには出来ませんもの」

 

※※※

 

 という会話を、就寝前に二人で交わした。

 故に遥やヴィーダは愚か、成音や優香もこの事実を知らない。

 

「取り敢えず、まずは菫先生を探さないとですわ」

「美咲っち!」

「うわあっ!」

 

 急に優香に声を掛けられる。

 

「一緒に帰る系?」

「す、すみませんが今日は先生に用がありますの」

「誰先生系?」

「それは言えませんわ」

「ふーん、じゃあ何を聞く系?」

「もっと言えませんわ」

「ほうほう……あ、分かった系」

 

 ――あれ、もしかしてバレ……。

 

「逆ナンの達人の三組担任に、ナンパの仕方聞く系?」

「ズコーッ!」

 

 昭和みたいなノリで倒れる美咲。

 

「それならウチの遊び相手紹介する系」

「だから違いますの! 進路の話ですわ進路」

「でも優香っち未だに学年二位系じゃん?」

「うっ、そうですわね……」

 

 学年一位を取れていない美咲では、今のところ推薦枠を貰えない。

 

「就職でもする系?」

「私が一般企業に収まる器だと思いますの?」

「おー、もしかして政治家にでもなる系?」

「私は総理大臣でも足りないくらいですわ」

「大きく出た系じゃん」

「とにかく、私は総理大臣より上に立つ為にどうすべきか進路相談に行きますから、先に成音さんと帰ってなさいな」

「おっ系!」

「今のはOKのKと系を掛けたギャグですの?」

「ギャグ説明したら面白くない系……」

「大丈夫ですわ。滑ってましたわ」

「大丈夫じゃない系!」

「とにかく行きますわ」

 

※※※

 

 取り敢えず優香を撒き、職員室へ。

 

「失礼しますわ」

「なんだ六角。書類の提出期限なら延ばさないぞ」

「ほっといてくださいな」

 

 生徒会の顧問をあしらう。

 

「菫先生はおりませんの?」

「戸間先生なら、多分四階の奥の部屋じゃないか? あの空き教室で何かしてるみたいだけど、不気味で近付く気が失せるんだよな」

「分かりましたわ」

 

 職員室を出る美咲。

 言われた通り三階の奥の教室へと向かい、中を確認する。

 

「明人さん……」

 

 明人が眠らされている。

 裕太――二号や蒲生の姿はない。

 それに肝心の菫の姿も。

 

「いつか助けますわ」

「誰を助けるって?」

「……!」

 

 美咲は振り返る。

 そこには、白衣を纏う戸間菫の姿があった。

 

 




次回予告

初「優香の奴、ついにダジャレまで言い始めたな」
美咲「滑ってましたけどね」


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第九十話

 

「菫先生……」

「ここに来たって事は、僕に何か用があるのだろう?」

「ええ」

 

 美咲は臆せず、菫へ正直に回答する。

 

「立ち話も難だし、僕についてきたまえ」

 

 菫は口元に笑みを浮かべながら言う。

 

「分かりましたわ」

 

 少し警戒しながらもそれを了承する美咲。

 

※※※

 

 菫の車に乗って数分。

 美咲はカフェまで移動し、自分のコーヒーと美咲のミルクティーを注文。

 店員が去るのを確認してから、口を開く。

 

「僕に自分から話しかけに来てくれたのは、君で二人目だよ。それも生徒会長。僕の話に興味を持ってくれたのかい?」

「……」

「恐らく違うよね。明らかに僕を警戒している。僕には何かある。今の君の顔から、君の心理を予測した」

 

 菫はすました顔で話し続ける。

 

「君が何故僕に近付いたのか、何となく想像がつく。誰から聞いたんだい?」

「……」

 

 美咲は口を開かない。

 

「大方、一号だよね。彼以外ありえない」

「全部分かってた、そうみたいですわね」

「安心したまえ。今の僕は丸腰だ。周りの目もあるし、今は何もする気はない」

「……」

「それで? 君は一体、僕にどういう目的で近付いたんだい?」

 

 菫が半目で問いかける。

 

「単刀直入に言いますわ。これ以上一号さん、蒲生さんや明人さん……それに裕太さんに手出ししないでいただきたいですわ。私なら誰からの挑戦も受けますし、倒される覚悟もありますの」

「つまり、君を犠牲に他の者に手を付けるな……そう言いたいのかい?」

 

 美咲の答えを待たずに、菫が笑い出す。

 

「くくく……ははは……冗談は止したまえ」

 

 急に怒りの表情を浮かべる菫。

 

「僕は別に君を殺したくて戦っているわけじゃない。僕はただ、狩野遥が許せないから戦っている」

「……」

「君も、あの遥の生み出した実験動物も、狩野遥に関係しているから殺すだけ。それに狩野遥の発明品がこの世に存在していては、僕が正しく評価されない」

 

 美咲は怒りを押さえながら話を聞き続ける。

 

「それは僕の失敗作とて同じだ。僕の発明品は、僕が完璧と認めたもののみが残れば良い。失敗作にいつまでもこの世にいられては、僕の汚点になる」

「……」

「一号は、二号に任せてある。じきに彼も死ぬ運命を辿るだろう。それは君も例外ではないが……」

「どうやら、力づくで分からせるしかありませんわね」

 

 美咲は立ち上がる。

 

「やれやれ、君の性格上こうなるとは思ったが……まあ、良いだろう。僕が君に力の差というものを教えてやろう」

 

※※※

 

 店を出て、近くの路地裏まで移動する。

 

「ここなら誰もいないし、好都合だ」

「……」

 

 美咲はボマードライバーを装着。

 一方菫は、車の中から取り出していたベルトを装着。

 美咲の持つボマードライバーと同じく、端末を操作する形のものだが、武器や兵隊などの形はしておらず、シンプルな白い丸の形をしている。

 美咲と菫、両者ともに端末を取り出す。

 

『BOMER DRIVE READY?』

 

 顔の左側で構える。

 

「変身ですわ」

『COMPLETE』

『DRIVE READY?』

「超化」

『COMPLETE』

 

 菫も端末を取り付ける……が。

 

「……」

「あれ、姿が変わってませんわ」

「心配はいらない」

 

 菫が何と、生身にも関わらず超高速で駆け出す。

 そのままボマーとの距離を詰め、拳を腹に叩きいれる。

 

「ぐっ……」

「うん、まずまずの出来だね」

「それは……」

「これも僕の発明品さ」

 

 菫は笑みを浮かべながら両腕を広げる。

 

 




次回予告

美咲「変身しないでベルトの力を引き出す者がいるとは驚きましたわ……」


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第九十一話

 

「仮面ライダーや怪人の姿に変われるのは、どうやら後付けらしいから、これが自然な姿の筈さ」

「少し油断しましたわね……」

「それが分かった所で……今度こそ戦うとしよう」

 

 菫が素早く移動し、ボマーもそれに追いつく。

 

「はあっ!」

 

 ボマーが最初に、菫へとバットを振るう。

 

「……こんなもの」

 

 しかしそう言って笑った菫に回し蹴りされ、折られてしまった。

 

「そんな……」

 

 折られたバットが再生するが、それを見て菫はもう一度笑う。

 

「流石に再生するか、しかし何度打ち込んだところで……それじゃあ無駄だって分かったよね?」

「それならこれですわ」

 

 ボマーはハイドロフォームカードを取り出す。

 

『SCAN DRIVE』

 

 端末でカードを読み取る。

 

『COMPLETE HYDRO DRIVE READY?』

 

 両腕を広げてから叫ぶ。

 

「超変身ですわ!」

 

 ハイドロボマーとなってから、端末を操作する。

 

『HYDRO ACCELERATOR DRIVE』

 

 目にも止まらぬ速さで加速し、菫にもう一度バットを振るう。

 

「はあッ!」

 

 今度は折れずに攻撃が命中する。

 が、ダメージは入っていない。

 

「少しはやるみたいだけど、その程度みたいだね」

 

 菫は左拳でハイドロボマーを吹き飛ばす。

 ハイドロボマーは地面へと叩きつけられた。

 

「さて、次は僕の番だ」

 

 菫の表情が変わる。

 立ち上がろうとしたボマーに蹴りを入れてからよろけさせ、そこに流れるように拳と蹴りを叩きいれていく。

 

「ああッ……」

「どうだ? 変身能力こそないが、遥の作ったものの比ではないだろう?」

「くっ……」

 

 ボマーは膝をつく。

 

「話す元気すらない、みたいだね。じゃあこれで終わりにしてやろう」

 

 端末を取り出し、ボタンを押す。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 菫は笑みを浮かべ、宙に浮く。

 

「はあッ!」

 

 ボマーに右足を向けて、そのまま急降下。

 見事な飛び蹴りが、ボマーの身体へと突き刺さる。

 

「うわああッ!」

 

 ボマー……美咲は強制的に変身を解除してしまう。

 そのまま地面をごろごろ転がる。

 

「君の話は少し聞いたけどさ、頂点に立ちたいんだろ? なのにそんな無様を晒すのかい?」

「……ッ!」

 

 美咲は口元を歪めながら、拳を叩きつける。

 

「はあ……僕は遥を殺す為に、こんな奴で手を汚さなきゃいけないのか」

「こんな奴……」

「そう言われてもしょうがないよね。大口を叩く割に大した事なかったわけだし」

 

 菫は煽り続けた。

 

「悪いけど、今の君じゃあ僕が直接手を汚す価値はない。君はあとで蒲生や明人が殺すさ」

「……」

「ああ、言っておくけど多分警察に僕らの悪事を説明した所で無駄だよ。突然変異体というのは希少だ。ごく限られた人間しか、その存在に気付いていないんだから」

「そんな事しませんわ……貴女は私が……」

「……はあ」

 

 菫は飽きたと言わんばかりの表情を見せてから背を向けて、歩き出す。

 

「また学校で会おう。あと何回会えるのか分からないけど」

 

 その背中を見て美咲に出来たのは、痛みに抗い、拳を握りしめる事だけだった。

 

 



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第九十二話

 

 あのまま菫は教室に戻り、蒲生に電話を掛ける。

 

『菫先生、どうしたんすか?』

「少しまずい事になってね」

 

 そう言いつつも、少し余裕のある笑みを浮かべた。

 

『え?』

「六角美咲に、僕が黒幕である事を知られてしまった」

『……』

「案ずる事はない。すぐに消す事が出来れば、何の問題もないからな」

『そうですね……その通りです』

 

 菫はピクリと眉を上げる。

 

「自信が無さそうな声だね。一度負けた事を気にしているのかい?」

『……』

「悪いけど君にそんな暇は与えられないな」

『それは……』

「代わりに君には最後のチャンスを与える。それすらこなせないようなら、君も一号と同じく廃棄だ」

『……』

「安心したまえ。僕も何もしないわけじゃない。少しばかり危険な方法だが、それでもやるかい?」

 

 菫が目をつけたのは、フラスコの中の薬品と、その隣に置かれたドライバー。

 

『私は六角美咲を倒したいっす。その為なら死んでも……』

「良い返事だ」

 

 菫は不敵に笑い、通信を切る。

 

「遥……君はやはり凄い科学者だ。君がいなければ、どれも完成に至らなかった……でもね、科学者として頂点に立つべきなのは僕なんだ」

 

 その為なら、どんな手も使う。

 人の道を外れても、科学者として頂点に立とうとする。

 それが自分……戸間菫だ。

 

「なあ聞いて良いか?」

 

 明人の身体の中にいる、もう一人の二号が菫に問いかけた。

 

「……」

「こいつを蒲生に使うんだろ? 何なんだこいつは」

 

 そう言ってフラスコを指さす。

 

「三号の肉体の製作過程で生まれた副産物……。蒲生には説明したが、非常に危険な代物だ」

「どんなもんなんだ?」

 

 菫は近くにある透明なボックスに目をつける。

 そこには、元気に駆け回るマウスの姿が。

 

「これを見たまえ」

 

 菫が先のフラスコの中の液体をスポイトで吸い、ボックス内に垂らす。

 マウスがそれを舐めると、たちまち身体に変化が起きた。

 

「これは……」

 

 マウスの瞳が片方だけ色が変わり、右半身の筋肉が不自然に隆起する。

 恐らく副作用だろう。

 だがその肉体の変化で得る力は……。

 

「……こりゃすげえな」

 

 何と肉体が変化した実験用のマウスが、拳でガラスを破壊する。

 そのままどこかへ飛び出していく様子を見ながら、菫が言う。

 

「元々突然変異体でない生物の遺伝子を書き換え、尚且つ通常の突然変異体ではありえない力を使う事が出来る。ただし……」

 

 動いていたマウスが突然行動を止め、苦しみだす。

 そしてそのまま息絶え、二度と動かなくなった。

 

「大抵の者は、その膨大な力に耐え切れない」

 

 菫は死んだマウスを拾い上げ、即座にゴミ箱に捨てる。

 

「でも耐え切れるだけの力があるなら、これを使いこなせる」

 

 薬品の力に置いてあるベルトを見て呟く。

 明人の所持しているソードドライバーの正統進化型のドライバー。

 裕太の持つムラマサドライバーも、ソードドライバーの発展型だが、このドライバーはムラマサドライバーに入っている機能を除外した代わりに、ソードドライバーに元々備わっている能力を二倍以上に向上させている。

 仮面ライダーへの変身と同じく突然変異体である事が必須条件だが、同時に人工物である事も条件となっている。

 

「面白れぇ……」

 

 二号は笑みを浮かべながら、薬品に目をつけた。

 

※※※

 

 通信が切れてから、蒲生は自室で笑っていた。

 

「くく……ふふ……ははは……」

 

 ここでしくじったらどうなるのかとか、菫が今作ったものを使って自分がどうなるのかとか、そんな感情は今の蒲生にない。

 洗脳の影響で、美咲への憎しみ以外の感情が、蒲生にとってどうでもよくなってしまっているからだ。

 

「美咲……。例えこの身体が壊れても、私はアンタを倒す。だから待っていろ……」

 

 狂人のような笑い声が、自室に響く。

 

 



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第九十三話

 

 美咲に頼まれ、福沢裕太の代わりに美咲の父親の店で勤務を終えてから、一号は美咲の家へ訪れた。

 彼女の部屋の扉を数回ノックしてから、ゆっくりと足を踏み入れる。

 

「……!」

 

 そこにいたのは、身体中に包帯を巻いていた美咲の姿が。

 

「あ、おかえりですわ」

 

 何事も無かったかのように、笑顔で一号を迎える彼女。

 

「……その姿は……」

「負けましたわ。手を汚す価値すらないと言われて、生き延びましたが……」

 

 悔しい感情を必死に押し殺して話す美咲。

 

「すまない……俺がそばにいてやらなかったせいで……」

「良いんですのよ。それにあの場にいては、貴方も危険でしたわ」

「だが……」

「大丈夫ですの。今回負けても、次勝てれば良いんですの。貴方は貴方の心配をすれば、それで良いんですの」

「……」

 

 美咲は痛みを堪えながら立ち上がる。

 

「貴方の言った通り、やはりあの人は危険ですわ」

「ああ……」

 

 本当なら、今すぐにでも彼女に戦いをやめて欲しい。

 しかしもう、取り返しのつかない事を彼女はした。

 彼女を守るなら、刺し違えてでも菫を止めるしか……。

 

「大丈夫ですの。私は絶対に死にませんわ」

「……」

「これまでどんな戦いでも生きて帰れた。だから、今度だって生きて帰れますわ。だから貴方は、今から菫さんを取り戻せた後の日々を楽しみにしていればそれで良いんですの」

 

 美咲は一号の頭に手を乗せて言う。

 まるで子供を撫でる母親のように。

 

「それに、諦めたくありませんもの」

 

 美咲はそう言って、窓の外を見る。

 

※※※

 

 夜十一時。

 二号は廃ビルの屋上の壁に身体を預け、月を見上げて笑みを浮かべていた。

 

「……」

 

 光のない赤い瞳に、月の光が反射する。

 丁度そのタイミングで、通信が入った。

 言わずもがな、菫からだ。

 

『僕だ』

「よう、何の用だ?」

『そろそろ君に、彼を処分して欲しい。でなければ、他の者に一号を倒させるよ』

「おいおい、まだこいつは目覚めてねえんだぞ」

 

 やれやれと笑いながらそう言うが、菫が重い声で言う。

 

『そうか……君もその程度』

 

 諦められた声に、二号は眉を上げて気丈に答える。

 

「そこまで言われちゃあ仕方ねえな。少し荒療治になるが、何とかこいつを起こしてやるよ」

『それでいい……。頼んだよ』

 

 通信が切れる。

 

「やれやれ、人使いが荒い奴だな……」

 

 二号はムラマサドライバーを装着した。

 

『ムラマサ!』

 

 端末を操作し、構える。

 

「変身」

 

 端末を取り付けた。

 

『御意! 出陣! 仮面ライダームラマサ!』

「さてと」

 

 二号と裕太の精神を半分融合した状態にしてから、二号はもう一度笑う。

 

 




次回予告

美咲「次回から物語が大きく動くらしいですわ」
初「え、これマジかよ」
美咲「何見てるんですの?」
初「悪いこの脚本一人用だからお前には見せられねえ」
美咲「意味が分かりませんわよ見せなさい!」


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第九十四話

 

 美咲はその先にあるものに、ただただ唖然としていた。

 

「あ、貴方は……」

「ああ、あれは二号じゃない。福沢裕太だ……」

 

 黒いフードを身につけ、ベルトを装着している青年を見て、一号はそう告げる。

 

 ――裕太さん……どうして?

 

「一号、お前は俺が殺す……絶対に……!」

 

 歯を剥き出して、裕太は一号に怒りを向けた。

 その両目からは涙が流れている。

 

※※※

 

 時間はそれより二日前に戻る。

 遥の退院が決まり、美咲達は学校帰りに病院へと向かった。

 

「ママ、タイイン! タイイン!」

 

 ヴィーダが飛び跳ねながら、病院の敷地内へ。

 それを見ていた成音が笑いながら言う。

 

「病院内は走っちゃダメよ!」

「ワカッテル!」

 

 とは言いながらも、ヴィーダは飛び跳ね続ける。

 

「ヴィーダっち、嬉しそう系」

「そうですわね」

「それにしても、また随分怪我したわね会長」

 

 先まで突っ込まれなかったが、成音が思い出したように言う。

 

「色々あったのですわ」

 

 少し目を逸らしながら美咲は答える。

 二人はまだ見逃してもらえる可能性がある。

 だから話すわけにはいかない。

 

「会長?」

 

 成音が疑いの眼を向けるが、美咲に話を逸らされた。

 

「それより、成音さんはヴィーダさんとは上手くいってますの?」

「そうね。そこそこ仲良く暮らしてるわよ」

 

 成音は遠くで跳ねるヴィーダに視線を向けた。

 

「成音さん、変わりましたわね」

 

 美咲が穏やかに笑うと、成音が照れながら言う。

 

「そ、そう? あたしはあたしよ。何も変わってないわ」

「あら、最初の貴女は少し嫌そうでしたわよ」

「そ、そんな事ないわよ!」

 

 成音が急に恥ずかしそうに言う。

 

「照れてる系照れてる系」

「う、うるさいうるさいうるさい!」

 

※※※

 

 着いた頃には退院の手続きが終わった遥が、私服姿で子供達を眺めていた。

 

「ママ!」

「……ヴィーダ」

 

 自分に向かって飛ぶヴィーダを、遥が受け止める。

 

「ママァ……」

 

 嬉し涙を流すヴィーダ。

 遥がよしよしとその頭を撫でてから、美咲達三人の姿を見て、穏やかな母親の表情から一人の科学者の顔に変わる。

 

「遥さん」

「私がこれからする事は決めている」

 

 少しばかり俯くが、もう一度顔を上げた。

 

「あの子の為に、お前達や蘇我高校の生徒達を巻き込んで、ヴィーダを生み出してまでしたかった事。それを今度は、お前達を支える形で成し遂げたい」

「……」

「良いか?」

 

 遥が少しばかり躊躇いながら、手を差し出す。

 美咲は迷わずその手を握る。

 

「当たり前ですわ」

「六角美咲……」

「これから、よろしくお願いしますわ!」

 

 美咲は笑顔で、遥にそう告げた。

 

 



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第九十五話

 

 その後、美咲達は遥と共に美咲宅へと向かう。

 成音が蘇我高校から持ち出した資料を準備し、美咲達は全員で円を作って座り、遥が仕切り始める。

 

「では、今までの状況を整理するぞ」

 

 次いで成音が、最初に言う。

 

「まずこの戦いが始まったキッカケは、遥さんの幼馴染が殺害された事よね?」

「ああ。司法解剖の結果でも、凶器が特定出来ず、自分で調べても現代兵器であの傷は到底生み出せないと思ったからな」

「それで……その犯人を探し出して罪を償わせる為に、遥さんは自分の技術を手に蘇我高校の教師になったわけね」

「そうだ」

 

 少しばかり後悔の表情を浮かべる遥。

 

「次にだけど、会長はどんな経緯で仮面ライダーボマーになれたの?」

「あ、そう系そう系! ウチもよく知らない系」

「確かにちゃんと話した事ありませんわね。私は……」

 

 一号の肉体に入っていた裕太からボマードライバーを受け取り、アーミードライバーを使用していた蘇我高校の生徒を倒した所から全てが始まったと話す。

 

「なんか凄くヒーローチックね……話盛ってないわよね?」

「盛ってませんわよ!」

「話を戻すぞ。そこで私は蘇我高校の科学部員にフレイムシャワードライバーを渡し、あの学校の生徒を利用するように頼んだ」

「それであたしに頼みに来たわけね」

 

 成音が腕を組む。

 

「ああ、そういう事になるな」

「あの後、蘇我高校の生徒会長……足利明人が出て来たわよね」

「私はあの人に勝てませんでしたわ」

「ソードドライバーは旧式のドライバー故、ボマードライバー相手にあそこまで立ち回れるのは中々の実力と言える」

「この資料にもそう書かれてるわね。初期型だって」

「その後三年の前田が、ホースドライバーを持ち出し、六角美咲に戦いを挑むが失敗。予定通り、蘇我高校との決戦で美咲と成音組とヴィーダが戦う事になった」

 

 美咲達はあの時の事を思い出す。

 あれは蘇我高校との決着をつける為の戦いだったが、同時に遥達を狙う者がいる事を知るキッカケにもなった。

 

「ハイドロフォームとなったボマーのおかげで、私達はどうにかなったが、あそこで蘇我高校の生徒達は私のせいで怪人化し……」

「裕太さんの人格が一号さんから抜き取られて二号さんの所へ」

 

 美咲が少し俯きながら言う。

 

「その後、一号や二号を動かしている者によって蒲生や明人を洗脳され、美咲達はそれと戦った。二号によって、福沢裕太本人はすでに死んでいる事を伝えられる」

「ここまでが今まで起きた全てね」

 

 成音が呟く。

 

「遥さん、相手の正体に何か心当たりはないの?」

「そうだな。私と同じくヴィーダのような人工突然変異体を作れて、尚且つ人の脳波を操作する事によって洗脳やスワップも思うがままに出来る。恐らく科学者で、尚且つ突然変異体の研究に従事している者だな」

 

 美咲がその言葉に対して質問した。

 

「突然変異体の研究は、世間でどの程度知られているものなんですの?」

「そもそもの話、突然変異体の存在は希少だ。ある程度は遺伝もあるのだが、全てが全てそうでもない」

「つまり……」

「突然変異体の数の少なさ故に、都市伝説レベルでしか世間で存在が知られていない。だからこの研究をしている者は百にも満たない」

「逆に言えば、その中に必ず犯人がいるって事になるわね」

 

 成音が冷静に言う。

 

「その中にいるとして、あとは動機だな。私の幼馴染や私の発明品、そして私自身を殺さなければならない程の動機が何なのか。そこまで分かれば、大体犯人が絞れる」

「……」

 

 美咲は遥の言葉を聞いて、菫と話した時の事を思い出す。

 彼女は狩野遥が許せないから戦っていると言っていた。

 詳しく聞く事は出来なかったが、もし遥に何か思う所があるとしたら。

 

「遥さん」

「なんだ?」

「遥さんの友人という説はありませんの?」

 

 名前は出さずに、抽象的に問いかけてみる。

 

「私の友人?」

「ええ。決してあり得なくはありませんの」

「会長にしては中々鋭い質問ね」

 

 感心しながら美咲を見る成音。

 

「ウチも理解するの難しい系……」

「ヴィーダモ……」

「二人に関しては外に出てても良いのよ……?」

 

 会話についていけてない二人を見て呟く成音。

 

「友人で同じ研究をしている者なら心当たりがある」

「本当ですの?」

「ああ。高校時代からの友人、戸間菫だ」

 

 




次回予告はカットです


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第九十六話

 

「戸間菫……ってうちに赴任してきた教師と同じ名前ね」

 

 成音が眼を細めて呟く。

 

「あいつが教師……どんな人物だった?」

「えっと、青髪に赤い瞳で……人間の進化の研究をしていると言ってたわね。数千分の一の確率で新たな可能性を持った人間が生まれるとか何とか」

「それなら、同一人物で間違いはないな」

「でも問題は、友人であるその人がどういう動機で遥さんを狙っているかよね?」

「分からない……少なくとも、私自身が直接彼女に何かした、という覚えはない。それに彼女は幼稚で負けず嫌いだが、私に勝ちたいからとそんな卑怯な手を使うような奴ではなかった筈だ」

 

 やはり一号の言葉通りだ。

 彼女が犯人だという事実を受け入れさせるのは、遥の言葉を聞く限り難しい。

 今ここで正解だと答えたとしても、それが通る事はないだろう。

 

「うーん……昔はどういう事してたの?」

「昔か……」

 

 少し遥は笑う。

 

「私も菫も、突然変異体の存在を知る者という共通点で友人関係になった。お互い競い合ったりもしたし、学生時代は普通に遊んでたりもした」

「最後に会った時は、どんな会話をしたの?」

「そうだな。もう半年以上前の話になるが、私はあいつの相談を受けた」

 

 何とか思い出しながら遥は続ける。

 

「確か菫に、私の研究資料をくれと頼まれたが……断ったんだ」

「……」

「その時のあいつは、思いつめた顔をしていた。何というか、あいつらしく無かった。だから余計渡せなかった。普段私に勝ちたいと言っていたあいつが、土下座してまで私にそうして欲しいと頼むのが、少し怖く感じた」

 

 遥は俯いて言う。

 

「でもそうなると、それが原因でという可能性もあるわね」

 

 成音が鋭い瞳で告げる。

 

「あの時のあいつは、恐らくスランプでおかしくなっていたんだ。私の言葉で冷静になってくれた筈なんだ……そんな事あるわけが……」

 

 遥はあくまで菫を信じようとする。

 だが成音があくまで冷静な考えで、それに反論する。

 

「ならもし、そのおかしくなっていたのが嘘だったとしたら?」

「え?」

「こういう考え方はどう? 菫先生自身は遥さんの研究成果を使って、遥さん以上の評価が欲しいと望んでいた。遥さんを世間的には菫先生の二番煎じにする事で、遥さんの研究を全て菫先生の手柄にしようとしていた……」

「……」

「でもそれが出来なくて、まずは遥さんの心の支えである幼馴染を殺した。それでも心が折れていない……寧ろその復讐の為に研究を続けようと決心した遥さんを見た菫先生が、遥さんや遥さんの発明品ごとこの世から抹消しようとしている……そう考えると、割と自然よね」

「しかし……」

「遥さん、もしその幼馴染の為に今まで戦ってきたのなら、友人相手でもちゃんと疑わなきゃダメよ。そういうのは、視野を狭めるだけだから」

 

 成音はあくまで厳しい言葉を投げる。

 

「それに、あたしはヴィーダに悲しんで欲しくないの。だから遥さんに死なれるわけにはいかないのよ」

「ナリネ……」

「そ、そうか……」

 

 その言葉を聞いて、遥も少しばかり考えを改めたのか、表情が変わる。

 

「会長はどう思う?」

「わ、私ですの?」

「ええ。アンタの意見も聞いてみたいのよ」

「……」

 

 美咲は黙り込んだ。

 成音の考えこそ正解かどうかは分からないが、菫がこの一連の事件の黒幕なのは、紛れもない事実。

 ただ、このまま話が進んでしまえば間違いなく成音達も命を狙われる。

 

「私は結論を出すのは早いと思いますわ。他の可能性についても、探るべきだと思いますの」

「そう、分かったわ」

「では、今回はここでお開きにしますわよ」

「え、これで終わるの?」

「ええ。私も少し用事を思い出しましたし、キリも良いところで」

「それもそうね」

「取り敢えず、何か分かった事があれば報告しますわよ」

「ああ。私も少し考えてみよう」

 

 遥が立ち上がる。

 

「遥さんはこれからどうするの?」

「取り敢えず一度、蘇我高校に戻ろうと思う」

「大丈夫なんですの?」

「あそこには実験機材やパソコンを置きっぱなしだからな。成音が資料を無事に持ち帰れたのを見るに、中は何もいじられてないのだろう?」

「ええ。何も手が付けられて無かったわ」

「なら、これからの敵に対応出来るアイテムを作ろうと思う」

「対応出来るアイテムですの?」

「ああ。私はあの決戦の時にハイドロフォームカードを手渡したが、あれは本来ボマー用の強化アイテムではないんだ」

 

 美咲はそう言われて少し考える。

 

「もしかして、黒いボマーの事ですの?」

「黒いボマー……まさかお前、見たのか?」

「ええ。私は前に、黒いボマーと会ったんですの」

「……こうしてはいられない」

 

 遥が顔を青くして、美咲に告げた。

 

「あの黒いボマーは危険だ。もし敵側にあのドライバーを取られたのであれば、早急に対処せねばならんな」

 

 



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第九十七話

 

 遥はそう言い残し、急いで部屋をあとにした。

 他の面子も敵の正体について考えてみると言い残し出て行き、美咲のみが残って、一号の帰りを待つ。

 

「……」

「ただいま」

 

 仕事から帰った一号が、部屋に入ってから扉を閉める。

 

「おかえりですの」

「俺に用があると聞いた。用件はなんだ?」

「実は……」

 

 美咲は一号に、成音達が真実に近付きつつある事と、黒いボマーの話をした。

 

「そうか」

「黒いボマーのドライバーが遥さんの最高傑作で、今の私達に到底敵わないのであれば、遥さんにだけでも、真実を伝えた方が良いと思いますわ」

「……確かにそうかも知れないな」

 

 一号は俯きながらもそう告げる。

 

「でもその場合、貴方の存在をどう認めてもらうかですわね」

「いや、俺はあくまでお前個人の仲間という事にしておいた方が……」

「それでは、もし私が倒された時に貴方が疑われてしまいますわ」

「……」

「貴方が皆に受け入れて貰えない事を心配しているのは分かりますが、どうしても私達と行動する以上、お互いの信頼は必要ですわ」

「信頼……」

 

 一号は静かに呟く。

 

「それに、貴方が犯した罪は……貴方自身が全て悪いわけではありませんの。その罪と向き合うと決めたなら、きっと遥さんも貴方の力になってくれると思いますわ」

「……」

「大丈夫ですの。私が何とか説得出来るように頑張りますわ!」

 

 そう意気込む美咲。

 

※※※

 

 というわけで、美咲は遥を家へと呼び出す。

 

「私だけを呼ぶとは……珍しい事もあるものだな」

「あー、実は貴女に話す事が二つ程あるんですの」

「私に話す事?」

 

 遥が眉を潜めた。

 

「実は私、遥さんを狙う人の正体を掴みましたの。というより、もう話して戦いましたわ」

「……! それは誰なんだ!」

 

 冷静さを失った遥が、美咲に迫りながら問いかける。

 

「昨日成音さんが推理していた内容は正しかったんですの。貴女の幼馴染や裕太さんを殺すように指示したのは、戸間菫先生……」

「……そう、なのか」

 

 遥はショックを受けたような顔をしてから、そう答えた。

 恐らく彼女自身は、それを一番否定したかったのだろう。

 

「ある人から聞いて、私はその真実に辿り着いて戦いましたが、私は負けましたわ」

 

 美咲はまだ痛む傷を押さえる。

 

「……」

「もう一つの要件は、そのある人を貴方に紹介する事ですわ」

 

 美咲が真剣な顔でそう告げてから、扉の外で待っている筈の一号に入るように言う。

 

「……」

 

 静かに一号が、美咲の部屋へと入って来た。

 

「お前……」

 

 遥が一号を睨みつけるが、一号は粛々と両目を閉じて座る。

 

「一号さんが、私に教えてくれたんですの」

「……こいつを連れてきて、どうするつもりだ?」

「私達と共に戦いますの。成音さんや優香さん、ヴィーダさんを危険な目に遭わせずに戦う為にはこれしかありませんの」

「話にならないな。よりによって、そいつを仲間にしようなど」

 

 そう言って立ち上がる遥。

 

「気持ちは分かりますの。ですが今の彼は……」

「もう良い」

 

 一号が止める。

 

「一号さん……」

「狩野遥」

「……」

 

 一号が遥の名を呼ぶ。

 

「俺は決して、自分が許されるべき存在でない事は分かっているつもりだ。せめてもの償いとして、菫は俺達が止める。だから……」

 

 遥が一号に近付いて、腹に拳を叩きつける。

 

「……」

「殺す事を指示したのが菫なのは分かった。決して……それを認めたくはないがな。だが、私は何よりお前が許せない。お前のせいで、私の大切なものが壊されたんだからな!」

 

 遥は涙を流しながら、ロードドライバーを取り出す。

 

『ROAD DRIVE READY?』

「変身」

『COMPLETE』

 

 端末を取り付け、遥は指揮官怪人へと変身する。

 

 



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第九十八話

 

「……!」

 

 一号も、咄嗟にサックドライバーを取り出す。

 

『SMASH DRIVE READY?』

「変身」

『COMPLETE』

 

 その身体をサック怪人へと変えてから、窓を開けて外へと逃走。

 

「待て!」

 

 指揮官怪人も、窓から外へ。

 そのままどこかへと移動していく。

 

「変身ですわ!」

『COMPLETE』

 

 ボマーも、二人を追いかける。

 

※※※

 

 屋根と屋根を移動しながら、二人は戦いを続ける。

 ボマーは二人を追いかけていた。

 

「お前のせいだ。お前が殺したせいで、私は二度とあの子の顔を見られなくなったんだ!」

 

 指揮官怪人は兵を召喚して、サック怪人へと銃撃させる。

 それを何とか回避したサック怪人が、顔を歪めていう。

 

「ああ……俺のせいさ。だからこそ生きてその罪を償う。美咲もそれを望んでくれているから」

「生きて罪を償う? ふざけるな、そんな事をした所であの子は返ってこない。お前がするべき事は、私の為に今ここで死ぬ事だ!」

 

 間合いを詰めて、指揮官怪人はサック怪人へと剣を振り下ろす。

 何とか拳で剣を受け止める。

 

「……ッ!」

 

 サック怪人は反論すべき言葉を失う。

 彼女の怒りは尤もだ。

 サック怪人の願いなど、傍から見れば人殺しのわがままに過ぎない。

 美咲がいくら許しても、大切な人を殺された者がそう簡単に許してくれるはずがなかった。

 

「やめなさいな!」

 

 ボマーが間に入って、二人を弾く。

 

「私が諦めかけていた一号さんの願いを叶えると決めたんです。もし一号さんが生きる事を許さないというのなら、まず私を殺しなさいな」

「六角美咲……お前の考えは欲張り過ぎだ。私の願いとこいつの願いを両立するなど、どうすれば出来るというのだ!」

「それは私にも分かりませんの! けど絶対にやりたい……やらなくちゃいけないんですわ!」

 

 ボマーはバットを下ろして言う。

 

「私に敵も味方もありませんの。全力で何かの為に一生懸命生きる人なら、皆仲間で、ライバルですの。だから幼馴染の為に手を尽くす遥さんも、菫さんの近くで生きる為に菫さんの考えを変えたいと足掻く一号さんも、どっちもかけがえのない仲間ですの!」

 

 指揮官怪人が俯きながら、変身を解く。

 やるせない顔で、こう言った。

 

「もう良い」

 

 泣きそうなのを堪える遥。

 

「遥さん……」

「もう好きにすると良い。今の私じゃお前に勝てない。それにそいつを殺した所で、あいつは返ってこないしな」

「……」

「ボマー用のアイテムの開発に戻る。二度ともう、そいつを仲間にしようなどと言うんじゃないぞ」

 

 遥はそう告げて、その場から去っていく。

 

「……」

 

 美咲も変身を解く。

 その背後から、声が聞こえた。

 

「これで分かっただろ」

「……」

「皆が皆、お前のように強いわけじゃない。お前は確かに強いし、どんな困難が相手でも全力で立ち向かう事が出来る。俺はお前のそういう所に救われたが、大抵の奴にお前のような心はない。大切な者を殺した人を仲間として受け入れるなど、無理に決まっているんだ」

 

 美咲は俯く。

 

「ひとまず帰ろう。あまり外に長居するのは危険だ」

「ええ……」

 



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第九十九話

 

 時間は経ち、夜遅くに。

 一号は既に眠りにつき、美咲のみベランダに出て……外を眺めていた。

 

「……」

 

 自分の欠点を言われたのは、これで二度目だ。

 生徒会から出ていく時の成音も言っていた、自分の悪い癖。

 自分が出来る事は、努力すれば他人も出来るようになると思い込む癖。

 そのせいで、生徒会がほぼ解散状態まで追い込まれたというのに。

 

「……私に出来る事は、他の誰かが簡単に出来る事じゃない。本当に、そうなんですの?」

 

 それでも、ここまで美咲がその心意気で戦えてきたのは事実だ。

 今やり方を曲げたら、多分遥や一号を笑顔に出来ない。

 それに裕太も……帰ってこられない。

 

「二人が共に歩ける道は絶対ある筈ですの……ですから考えるんですわ!」

 

 美咲は自分にそう言い聞かせる。

 けど、迷いがまだ残っているのもまだ事実だった。

 

※※※

 

 ――裕太。裕太!

 

 誰かが、俺を呼んでいる気がする。

 聞き覚えのある女性の声。

 

「……ここは?」

 

 辺りを見回す。

 俺の実家のリビングだ。

 両親が旅行中の事故で亡くなって、今はもう他人の住処となっている筈の。

 俺の姿もスーツではなく、高校時代に着ていた詰襟。

 

「裕太、何ぼーっとしてんのよ。早く食べないと遅刻するよ」

 

 声の方を向く。

 テーブルに置かれているトーストやハムエッグを作ってくれたであろうその人は……。

 

「母さん?」

「どうしたのよ裕太。そんな目丸くして」

 

 俺は思わず立ち上がり、その身体を抱きしめた。

 

「母さん……!」

「な、何なのよ一体……」

「また会えた……会えたよ」

「まったく……」

 

 母さんも少し呆れながらも抱きしめ返す。

 しかし。

 

「ん……違う」

「え?」

「アンタ……誰?」

 

 抱きしめていた母さんが、俺を突き放しながら言う。

 

「裕太はもっと温かかった。なのに……アンタは誰なんだい? 裕太の顔をして、ホントの裕太をどこにやったんだい!」

「違う……。俺は裕太だ! 俺は裕太なんだよ!」

「うるさい! 裕太の顔をして、私に近付かないで!」

 

 そう言われた瞬間……全てが俺の視界から遠ざかる。

 母さんも何もかも消え去り、次に見えたのは。

 

「あれは……」

 

 俺だ。

 まだ蘇我高校に赴任する前で、大学を卒業してすぐの頃の俺。

 教師の心得、的な本を読みながら幸せそうに歩いている。

 

「……!」

 

 その背後にゆっくりと近付くのは、黒いフードを被った男。

 男は周りに人がいないのを確認してから、裕太の前に現れる。

 

「うわあッ!」

 

 黒フードに驚いた俺が仰け反る。

 だがそれが誰なのかを確認よりも早く、黒フードは拳で腹に穴を開けた。

 

「あああッ!」

 

 腹を押さえながら、俺はゆっくりと崩れ落ちる。

 そこで見えた。

 その男が、俺と同じ顔をしているのを。

 

「これが、俺の最期……」

 

 こんな事があったせいで、俺は自分を殺した奴の身体に入れられて、美咲達をこの件に巻き込んだ。

 俺は……人間ではなくなってしまった。

 

「よう」

 

 その様子を見て涙すら流しそうになった俺の前に、俺の姿をした男が現れる。

 

「お前は……」

 

 




ここから割とシリアス展開続くかもです


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第百話

 

「どうよ、お前の最期。あっけないよな」

 

 二号が、その瞬間を見ながら嘲笑する。

 

「……」

「殴る元気もないか。まあ、そうだよな。理由あるとは言え殺されて、知らないうちに自分を殺した奴の味方してたなんて、誰も信じたくねえよな」

 

 肩に手を乗せてくるが、俺はそれを払いのけた。

 

「はあ、しょうがねえ奴だなあ」

「お前に何が分かるんだよ……。俺はお前達と違う。お前達さえいなければ、俺は人間の教師として生きられた筈なんだ。奪ったお前達が偉そうにするな!」

 

 二号に向かって拳を振るう。

 が……当たる事なく避けられる。

 

「教師ねえ……だがお前、蘇我高校の教師になった事は後悔してるだろ? なら逆に、俺達と関わらずに人間として教師になってたらどうなってんだろうな」

「それは……」

 

 二号の問いかけに、俺はどう返していいか困ってしまう。

 

「あのよ、何故俺がこんな事聞いたか分かるか?」

「……」

「確かにお前が死んだのは、俺のお袋や一号が、自分達の計画の為にお前を必要としていたからだ」

 

 二号は冷静に告げる。

 

「でも、逆に言えばお前が蘇我高校の教師にさえならなければ、お前は選ばれずに済んだ。どこかの知らない誰かが、お前の代わりに選ばれたかも知れないのにな」

「……」

「運が悪かったのもあるかも知れねえが、これは蘇我高校に入る事を選んだお前のせいでもあるんだぜ?」

「うるさい……うるさい!」

 

 図星を突かれたような気がして、俺は地面に拳を叩きつける。

 

「そんなの、俺がどうにか出来るわけないだろ……どうしたら良かったんだ……」

「どうしたら、なんて考えた所で今更どうなるんだよ」

「……」

「お前は死んだ。お前を殺した奴の中に入れられて、今は俺の中にいる。出来るとすれば、俺と二人三脚で生きるか、美咲に期待してお前が助かる方に賭けるかだな」

「くっ……ううっ……」

 

 その現実に対して、俺は泣く事しか出来ない。

 

「まあ、どちらにしてもお前が元の身体に戻れる事はないけどよ。でも、お前は正直兄貴の事どう思うんだよ」

「……」

「ここは俺の中だ。何を言おうが、俺以外の誰にも聞こえやしねえ」

「……許せないさ。俺を殺したお前や一号を、絶対に許せない」

 

 涙を啜りながら答える。

 

「そうか。なら、お前を少しだけ自由にしてやるよ」

「え……」

「俺が殺されるのはゴメンだが、一号を俺の能力を使って殺してみろ。どうせあいつはもう用済みだしな」

「……」

「躊躇う理由はないだろ? 俺もあいつもただの人形だ。どうせ殺した所で、人殺しにならない」

「……」

 

 俺は俯く。

 出来るわけがない。

 した所で俺が生き返るわけでもなければ、むしろ美咲を悲しませるかも知れない。

 出来ればこのまま何もしたくない。

 けど……。

 

「そうやっていたい気持ちは分からなくもないが、お前に時間はないぞ。もし美咲がお前を助けられなかったり、お前がこの身体を動かす事を拒んだりしたら、お前は死ぬ。それに……どうせ生き延びた所でこの身体の寿命は短い」

「どういう事だ」

「この身体はあくまで人工物だし、それに成長促進させる為にヤク漬けにされた代物だ。そんなもんが長生き出来るとでも思ってんのか?」

「……」

「どうせ死ぬんだったらよ……せめて自分の仇くらいきちんととった方が良いんじゃねえのか?」

「……」

「今だけはお前の味方でいてやる。お前の辛い気持ち、俺も一緒に背負ってやるからよ」

 

 悪魔の囁きだ。

 そんなの考えなくても分かる。

 なのに……俺はその誘いに乗る事しか出来なかった。

 

「すまない……美咲。これがお前に対する裏切りなのは分かってるつもりだ。けど、俺の死が避けられないなら……せめて自分の仇だけでもちゃんととりたい。だからその為に、お前の理想を壊す事を許してくれ」

 

 俺は二号の手をとる。

 二号が俺に見えないように、口元に笑みを浮かべた。

 

 



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第百一話

 

 遥との交渉に失敗した次の日。

 それが起きるまで、残り一時間と少し。

 

「一号さん、一緒に修行行きませんか?」

「ああ、そうだな」

 

 特に嫌そうな様子もなく、粛々と準備をする一号。

 

「一号さん」

「……なんだ?」

「私はまだ諦めてませんの。二人が共に歩ける未来があると」

「……」

 

 一号は何も答えない。

 

「一号さん……」

 

※※※

 

 そのまま外に出て、美咲と一号はまず公園までランニング。

 サンドバッグが吊るされた木の所まで移動し、まずはキック力を鍛える修行から始める。

 

「はあッ! とうッ!」

 

 ライダーになってからこの修行を始めたが、僅か一か月と少しで、サンドバッグが既にボロボロになっていた。

 あちこち穴が空き、そうでない所にも傷がある。

 

「せいやっ!」

 

 最後にカブトを意識した上段回し蹴りを放ってから、美咲は息を吐いて休憩。

 

「一号さんの番ですわよ」

「ああ」

 

 座っていた一号が立ち上がり、サンドバッグの前に立つ。

 

「……はっ!」

 

 美咲と比べると静かな掛け声を上げながら、軽く拳を振るう。

 あの時のような力は発現せず、普通にサンドバッグが揺れる。

 

「……やはりあの力は使えないか」

 

 そう呟いてから、今度は蹴りを放つ。

 

「やっ、とうっ! はあッ!」

 

 力こそ発現しなかったが、最後の一撃が、サンドバッグを多く揺るがした。

 

「……」

「中々よくなってますわ」

「そうか……」

 

 落ち着いた声で、美咲にそう返す。

 ベンチに座って、飲み物を飲んでから……一号は美咲に言う。

 

「美咲。俺はそろそろ、菫を止めに行こうと思う」

「……」

 

 美咲は真剣な眼差しで言葉を聞く。

 

「昨日の遥の態度を見て、俺のした事の重さを……より理解出来た気がする。だからこそ、俺は少しでも早く菫を止めて、昔の俺が好きだった菫に戻したい」

「一号さん……」

「お前にも、もう迷惑は掛けられないしな」

 

 一号が言う。

 

「私も、早く貴方や遥さん……皆に笑顔になって欲しい。それに、裕太さんも。皆、私の大切な仲間ですから」

「……」

「一号さんがもう行きたいと言うのであれば、私は喜んでそれについていきますわ」

 

 美咲は笑顔でそう返す。

 

「……ありがとう」

 

 一号も小さく笑って、そう答えた。

 その時。

 

「美咲!」

 

 一号が美咲を庇いながら、何者かが振るった斬撃を背中から受ける。

 

「……くっ」

 

 一号は痛みに悶えながらも振り返り、その姿を捉えた。

 

「ムラマサ……二号か」

 

 刀を振り払ってから、荒い息を吐く仮面ライダームラマサの姿。

 変身を一度解いてから、フードを取ってその顔を見せる。

 

「くうっ……うううッ!」

 

 美咲は涙を流してうなり続ける彼を見て、目を見開いた。

 

「あ、貴方は……」

「ああ、あれは二号じゃない。福沢裕太だ……」

 

 一号はそう告げる。

 

 ――裕太さん……どうして?

 

「一号、お前は俺が殺す……絶対に……!」

 

 歯を剥き出して、裕太は一号に怒りを向けた。

 

 



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第百二話

 

「お前のせいで、俺が死んだ。俺の仇は、俺がとる……!」

 

 譫言にように、涙を流して呟く裕太へ、美咲は言う。

 

「裕太さん、落ち着いてくださいな!」

「美咲、お前は下がっててくれ」

「しかし!」

「下がれよ! 俺はこいつを殺さなきゃいけないんだ!」

 

 あんなに苦しそうな顔をしているのは、初めて出会った時以来……いや、それ以上だ。

 

「……」

 

 一号は葛藤しながらも、ベルトを取りだす。

 

「そうやって、お前はまた自分を作った奴の為に命を奪うのか……」

「……」

 

 一号は俯きながら、端末を操作する。

 裕太はそれを見て更に激怒する。

 

「……ふざけるな!!」

 

 ムラマサドライバーのボタンを押し、端末を閉じる。

 

『ムラマサ! 御意! 出陣! 仮面ライダームラマサ!』

「ああああああああああッ!!」

 

 悲痛な叫び声を上げながら、ムラマサは一号目掛けて地を蹴った。

 

「……」

 

 一号もサックドライバーを取り付けて変身する。

 

「変身」

『COMPLETE』

 

 一号はサック怪人へと姿を変える。

 

「裕太さん、一号さん……」

「とっとと殺してやる……この人形が!」

 

 ムラマサは消える程の速さで、サック怪人と距離を詰めていく。

 

「せやっ!」

 

 荒々しい一太刀が、ムラマサから放たれる。

 サック怪人は難なく躱し、その刀を弾き飛ばす。

 

「お前とは戦えない。お前を傷付ければ、美咲が悲しむ」

「ならとっとと死ねよ!」

 

 怒りと憎しみに感情を蝕まれたムラマサは、何度も刀を振るう。

 

「お前さえいなければ、お前が俺さえ選ばなければ!」

「……」

 

 美咲もボマードライバーを取り出す。

 

「手を出すな美咲」

 

 サック怪人が何とか捌きながら、美咲を止める。

 

「これは俺が解決すべき問題だ。どうにかして裕太を止める。だからお前は下がっていろ」

「止める? ふざけるな! 俺は止まらない! お前が死ぬまで、俺は止まらない!」

 

 ムラマサの太刀が、ついに少しだけサック怪人の腕を霞めた。

 

「……ッ!」

「やっと隙を見せたな……」

 

 ムラマサが狂ったように笑う。

 

「覚悟しろよ」

「……」

 

 サック怪人は咄嗟に端末を操作する。

 

『WAVE DRIVE』

 

 端末を取り付けて、拳から波動を放つ。

 ムラマサを大きく吹き飛ばし、木へと激突させた。

 

「……」

「くっ……」

「もうやめよう。こんな事をしても、お前は……」

「……黙れ黙れ!」

 

 ムラマサはそう言って立ち上がる。

 そして手から光を放つ。

 それを何とか紙一重で回避してから、サック怪人は目を見開く。

 

「これは……」

「ああ。二号の能力の一つ……脳波破壊だ」

 

 



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第百三話

 

 戦いが始まって数分。

 脳波破壊も交えながら、ムラマサはサック怪人をゆっくり追い詰めていく。

 

「……ッ」

 

 サック怪人は変身前に負ったダメージもあり、満身創痍の状態。

 ムラマサは追って攻撃し続ける。

 

「頼むよ。死んでくれよ……何故死んでくれない!」

 

 泣きそうな声を上げながら、ムラマサは攻撃を続ける。

 

「早く死ねって言ってんだよ!」

 

 もう一太刀が命中。

 

「……!」

 

 美咲の足が動きかける。

 しかしサック怪人は尚も止めた。

 

「手出し無用だ……美咲!」

「……!」

 

 美咲を見ていたサック怪人の腕に、刀が突き刺さる。

 

「くうっ……」

「……」

 

 サック怪人の変身が解ける。

 ダイレクトに刺さった刀が、一号の体力を奪い、その場に崩れ落ちた。

 

※※※

 

 俺は自分で追いつめた一号を目にして、喜びを禁じえなかった。

 

「これで……俺の復讐が果たせる」

 

 こいつの脳波を破壊して、こいつの身体がぐちゃぐちゃになるまで、刀で突きさしてやりたい。

 自分が狂い始めている事に気付きつつも、俺の頭は、一号を殺す事で一杯になっていた。

 それ以外の事が眼に入らない程。

 

「終わりだ一号……」

「……ッ」

「消えろ!」

 

 俺は渾身の脳波破壊を、右手から放つ。

 動けない一号へ、真っ直ぐと。

 

「……」

 

 これでひとまず、一号の命は終わりだ。

 そう思っていた。

 だから……見えていなかった。

 一号の前に現れる、美咲の姿が。

 

「……ッ!」

 

 気付いた時には遅かった。

 俺の放った脳波破壊は、美咲の身体へとダイレクトに命中し。

 

 ――彼女の脳波を……破壊した。

 

「……」

 

 自分にも、はっきりと伝わった。

 何か大事なものを壊してしまった……そんな手ごたえが。

 最早人間の魂と言っていい脳波を破壊された美咲が、力なくその場に倒れ、二度と動かなくなった。

 

「美咲……美咲!」

 

 一号が刀を腕から何とか引き抜き、倒れた美咲へ声を掛ける。

 

「あ……あぁ……」

 

 俺が……殺した。

 大事な仲間を……自分の手で。

 

『あーあ、これでお前も人殺しだな』

 

 二号が他人事のように、俺の頭の中で呟く。

 

『まあ良いや。さっと一号を……っておい聞いてんのか』

 

 人殺し……その言葉が、俺の心を乱す。

 

「っ……あああああああああああッ!!」

 

 俺のせいで美咲が……美咲が死んだ。

 

「あああ……ああああッ!」

『おい』

 

 二号が呼ぶ声すら、俺の耳には入らない。

 

「……ッ! うわああああああああああああああああッ!」

 

 俺の叫び声が、他に誰もいない公園一帯に響く。

 一号がすぐに美咲を担いでその場をあとにしていたが、その姿が俺の瞳に映る事はなかった。

 

 




初「お、おい嘘だろ……」


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第百四話

 

 倒れた美咲の身体を、彼女の自宅まで運んでから、一号は蘇我高校の科学部部室にいる遥の下へと駆け付けた。

 

「お前の顔を見てる暇などない。今の私は忙しいんだ」

 

 息を荒くして近付く一号に対して、遥は機嫌が悪そうにふるまうが、一号は構わず近付く。

 

「なんだ」

「美咲が……美咲が……」

 

 一号は伝えようとして、その場に崩れ落ちる。

 

「美咲が……死んだ。福沢裕太に、脳波を破壊された……!」

「なんだと……」

 

 遥が眼を見開く。

 そのまま急ぎ足で、部室をあとにする。

 

※※※

 

 遥以外の者にも、美咲の死が伝わるのにそう時間は掛からなかった。

 山内成音や岸本優香、ヴィーダにも伝わり、皆が美咲の死体の前で、それぞれの胸の内を見せていた。

 

「美咲っち……」

「ミサキ……」

 

 二人が泣いていた。

 成音は少し離れた場所で、泣くのを堪えながら悔しそうにしている。

 

「どうして……どうしてなのよ。あたし、まだアンタを超えられてない。アンタが死んじゃったら、あたしは誰を目標に生きれば良いのよ!」

 

 成音が叫ぶ。

 そのまま近くで見ていた一号に近付き、

 

「ねえ……教えてよ。誰がこんな事するように指示したのよ」

「残念だが……お前達には言えない」

 

 一号はそう告げる。

 だが成音は、

 

「どうしてよ……アンタは敵側の人間だったんでしょ? なら知らない筈はないわよね! こんな事を裕太にやらせた黒幕は誰!? 言いなさい!」

 

 胸倉を掴みながら言う。

 一号は冷静に返答した。

 

「俺が誰かを答えれば、お前達は俺を信じたのか?」

「……!」

「美咲だけは俺を信じてくれた。だから美咲とだけ、協力していたんだ。お前達を今以上の危険に巻き込まない為に」

「ならアンタだけで戦えば良かったじゃない。何で会長を巻き込んだのよ!」

「あいつがそういう選択をしない事は、お前達が一番よく知っている筈だ」

 

 一号の言葉に、成音は脱力する。

 

「美咲も、お前達を危険に巻き込みたくないと思っていたんだ。だから犯人の正体を美咲と遥にしか伝えていない。もしお前達が知れば、美咲と同じようにこれから狙われる事になるのだぞ」

 

 気付く事が出来なかった。

 思えば、何か隠し事をしているような感じではあった。

 今の今まで、美咲が一号と親しくしていた事を知らなかった上に、一号も救う為にと一人で背負って戦っていた事も知らなかった。

 もし気付いていたら、止められなくても協力くらいは出来たかも知れないのに。

 

「……会長」

 

 その拳が美咲の部屋の床に叩きつけられる。

 重い音が、部屋に響く。

 

 

 



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第百五話

 気付いた時には、俺は戸間菫と名乗る女性の拠点にいた。

 恐らく、一号や俺の中にいる二号を作った者がいる拠点。

 その拠点は、美咲達の通う学校だ。

 

「……」

 

 あの後、俺は涙が枯れるまで泣き続けた……と思う。

 どこかで勝手に身体が動かなくなり、痺れを切らした二号が入れ替わって、ここまで移動したのだろう。

 気付けば、菫と名乗る女性の前にいた。

 

「久しぶりだね……いや、君の記憶では僕と今回初めて会った事になるのかな? 福沢裕太」

「……」

 

 こいつは一号に俺を殺させた者。

 本来なら一号と同じように、殺して然るべき人間なのだろうが、今の俺にそんな元気はなかった。

 自分自身を殺されたという事実に対する怒りで回りが見えなくなり、俺は自分の手で美咲を殺した。

 俺のせいで、俺は大事な仲間を……。

 

「その顔はもしかして……六角美咲でも倒したか?」

「……」

「よくやってくれた。一号を逃したらしいが、君にしては大したものだ」

 

 わざとらしく笑って、肩に手を乗せる。

 が、それを俺は払いのけた。

 

「俺に触るな……!」

「可愛げがないねえ。あの一号でさえ、僕にデレデレで甘いのに」

 

 椅子に座りながら、なんかのスイッチを取り出す。

 そしてボタンを押した瞬間……。

 

「ぐっ……」

 

 頭が痛みだす。

 

「一応言っておくけど、僕は君の脳波もある程度改造してあるんだ。だから僕が望めば、君の脳波はいつでも改良出来る」

「……っ」

「そう怒らないでくれよ。僕は君の為に、ご褒美を用意しているんだ」

「ご褒美……」

 

 俺は頭を押さえながら菫を睨む。

 

「これだ」

 

 菫が近くにある培養器のベールを取る。

 その中にあるのは……。

 

「俺……」

 

 俺だ。

 髪は白くなっているが、顔は俺そのものだ。

 

「君に似せた、三号の身体だ。一号や二号の寿命の弱点をある程度克服し、尚且つある程度の突然変異体の能力を使いこなせる。そして……このベルトもね」

 

 黒いボマードライバーを手にしながら言う。

 

『おいおいお袋、そいつは俺のもんだろ?』

「……」

『はいはい』

 

 菫の圧に押された二号が、やれやれと両手を広げる。

 

「一号を殺せば、君にこの身体をやろう」

「……」

 

 もう今の俺に、そんな選択をする余裕も無かった。

 あんな事をした俺が、仲間の所に戻る事など出来ない。

 なら、もういっそ死んだ方が良いのだろう。

 

「躊躇う理由があるのかい? 君は教師になりたかったんだろう?」

「……」

「選択をしないのは勝手だが、自分の為に何が一番最善かを考えた方が良い。君に時間は残されていないのだから」

 

 菫が耳元で囁く。

 



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第百六話

 しばらくして、遥が美咲の身体を運んで蘇我高校へ向かった。

 絶望に暮れていた成音達だったが、まだ復活する見込みがあるという。

 まず第一に美咲の肉体自体には損傷がなく、美咲の魂たる脳波も、完全破壊には至っていない。

 絶望的な状況には変わりないが、成音はそう告げた遥に任せた。

 

「ねえ」

「……」

 

 ヴィーダと優香が帰ってから、美咲の部屋で目を閉じて座っている一号に声を掛ける。

 一号が少し目を開けた。

 

「前にあたし、蘇我高校に攻めた時に……会長がアンタから色々聞いたっていう話を聞いたんだけどさ、アンタはいつから会長の味方をしてたのよ」

「……お前達が蘇我高校に向かった当日だ」

「やっぱり、その日だったのね」

「あいつは敵である俺を気に掛けて、わざわざ飯まで食べさせてくれた」

「……」

「戦うべき相手が悩みを抱えている状態では、例え倒しても勝った事にならない。そう言って、俺があの人と一緒にいられるようにすると言ってくれた」

 

 それを聞いて、少しだけ笑う。

 

「いつも無茶苦茶な事ばかり言うあの人らしいわね」

「……俺はあの人と一緒にいる為に、あの人の頼む事なら何でもした。裕太や遥の幼馴染にまで手に掛けてな。だがそんな俺の為に、あいつは戦うと言ってくれた。だから俺も、あいつの努力を無駄にしない為に戦うと決めたんだ」

「……」

「あいつは、俺やお前達が共に歩ける道を探そうともしていた。俺は反対したがな……。事実、遥や裕太は俺を受け入れるどころか、俺への憎しみをぶつけてきた」

 

 一号は瞳を細めながら言う。

 

「人はやはり、憎む理由がある者と分かり合う事は出来ない。あいつは最後までそれが出来ると信じていたが、それは甘い考えだったようだな……」

「確かにそうね……でも、そうでもないと思うわ」

「……」

 

 成音は美咲とのこれまでを振り返りつつ話す。

 

「アンタは会長と関わる事で変われた。だから会長と一緒に戦えたんでしょ?」

「……ああ」

「あたしもそう。会長と戦う事が無かったら、今でも会長とは分かり合えないままだった。だから一概にそうとも言えないわ」

「……」

「一号、お願いがあるの」

 

 真剣な眼差しで告げる。

 

「あたしに、アンタを作った人の事教えて」

「……」

「危険な事くらいあたしにも分かる。けど、裕太に会長を倒させた原因を作ったそいつらを、あたしは絶対止めたいの」

「本当に良いのか」

「ええ」

 

 一号は少し黙り込んでから、口を開く。

 

「俺にそれを実行させた犯人は……」

 

※※※

 

 一号から話を聞いた。

 犯人が戸間菫である事。

 そして、ほぼ成音が想像した通りの理由で遥の殺害を企てている事も。

 

「やっぱり、そうなのね」

「勘が良いな」

「そうでもないわよ」

 

 そう答えてから、フレイムシャワードライバーを取り出す。

 

「やっぱりヴィーダや優香には黙ってた方が良いわよね?」

「片方は殺される対象に選ばれているが、もう片方は助かる余地がある。もし守りたいのであれば、お前も全力で戦うのだな」

「そのつもりよ」

「……」

「アンタはどうするの?」

「俺は戦いに挑む前に、狩野遥が言っていた復活する可能性に賭けてみるべきだと思う」

「……」

 

 黙り込む成音。

 

「恐らく俺とお前だけでは、今の菫達に太刀打ち出来ない。福沢裕太と二号のムラマサ、足利明人、それに……あの黒いボマー」

「そうね……確かにそうするべきかも知れないわ」

 

 一号の意見に賛同したその時。

 

『~♪』

 

 丁度成音の携帯端末が鳴る。

 狩野遥からだ。

 

「ちょっと出るわね……はい」

『成音、方法が一つだけ見つかったぞ』

 

 



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第百七話

 

 そのまま成音は、遥からその方法を聞いた。

 

「そんな事が出来るの?」

『ああ……だがこれも限りなく賭けに近い。これが出来なければ、恐らくもう復活の可能性はないな』

 

 遥の説明はこうだ。

 美咲が戦ってきた人達のドライバーを集め、そこの中に蓄積された残留データの中から美咲の記憶を抽出してカード化し、美咲自身の脳波の情報が込められたボマードライバーで読み取る。

 それを美咲に装着させ、情報で脳波を再構築する事で、美咲の脳波を蘇生させる……というもの。

 

『今から皆を、蘇我高校に集められるか?』

「やってみるわ」

 

※※※

 

 仲間全員を蘇我高校の科学部に集め、同じ説明を優香とヴィーダ達にもする。

 

「マジ系!?」

「ママホント?」

「ああ。賭けにはなるが、まずフレイムシャワードライバーを使ってみようと思う」

 

 遥は成音からフレイムシャワードライバーを受け取り、ブランクカードが刺さったカードリーダーと接続する。

 パソコンを操作し、エンターキーを押すと。

 

「これは……」

「どうなの?」

「成音の中にある美咲の記憶の一部が、カードに蓄積されたようだな」

 

 遥が冷静な声で言う。

 

「だがこれだとやはりデータが足りんな」

「……」

「ヴィーダモ!」

 

 グングニルドライバーを手渡す。

 

「ありがとう、ヴィーダ」

 

 次はグングニルドライバーを接続し、データを転送。

 

「まだダメか」

 

 かなりのデータを注入したが、まだ修復には至らない。

 

「他の回収したドライバーも試したが、まだ足りないな」

 

 遥がパソコンを睨みながら言う。

 

「ウチ、前田っちにドライバー貸してもらえないか聞いてみる系!」

「その手があったわね」

 

※※※

 

 ある程度時間が経過した後。

 成音は優香と共に、前田の家へと向かう。

 

「まだ今日は家にいる筈系」

 

 蘇我高校の生徒達は一応、あれからも普通に日常生活を送れている。

 遥の判断で、科学部のみは無期限の活動中止となったが、それ以外に問題はない。

 ヴィーダと約束した生徒達への謝罪も、ほとぼりが覚めてから全校生徒に対して行い、戦いが終わったら科学者に戻ると遥は決めているらしい。

 

「前田っち、優香系」

 

 優香がインターホンを鳴らして、前田を呼ぶ。

 ホースドライバーはあの後も、前田が預かっていた筈だ。

 

「どしたの~?」

 

 呼ばれてすぐに扉を開け、優香に眠そうな顔で問いかける。

 

「前田っち、ベルトまだ持ってる系?」

「持ってるよ~」

「ベルトちょっと貸して欲しい系」

「どったの急に」

「友達が大変系……それがないと困る系」

「うーん……よく分からないけど、優香ちんがそういうなら貸すよ~」

「ほ、ホント系?」

「うん! 優香ちん友達想いだし、信頼出来るじゃん」

「あざまる水産!」

 

 優香は前田からベルトを受け取る。

 

「受け取れた系」

「最後どういう会話してんのか全然分かんなかった……」

「気にしたら負け系」

 

 



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第百八話

 

 前田からホースドライバーを受け取り、それも接続して記憶を注入。

 

「まだ足りないか……」

 

 残り10パーセント。

 しかし今の所、現実的に集められるドライバーは集めきった状態だ。

 

「あとどれくらい必要なの?」

「恐らく残りの数字は……ただ単に戦闘した記憶があるだけでは不可能なのだろう。美咲と長い時間を共にし、尚且つ理解がある者……しかし」

 

 今の裕太は敵側だ。

 それに裕太が許可しても、二号が邪魔するのは目に見えている。

 

「……俺が説得に行く」

 

 そう告げたのは。

 

「一号……」

「お前……」

 

 成音が驚きの顔、遥が睨みながら呟く。

 

「美咲が死んだ原因を作ったのは、俺でもある。だから俺がやる」

「無理よ! アンタじゃ裕太の怒りに油を注ぐだけ……」

「それでも、俺が説得する」

「……」

 

 一号は意思を曲げない。

 まるで美咲が話しているかのように、はっきりと意思を伝える。

 

「美咲は俺の為にも戦おうとしてくれた。なら俺もその思いに答えたい」

「一号……」

「今回の件で、俺は自分がやった事の重さを尚一層理解した。それに……美咲が死んだのはもとはと言えば俺のせいだ。もし生き返る可能性が少しでもあるのなら、俺がその為に尽力する義務があると思う」

 

 遥が少しばかり、その言葉に反応する。

 それに気付いた一号が名を呼ぶ。

 

「狩野遥」

「……」

「俺は恐らく、一生お前に許して貰えない事は分かっている。福沢裕太にもな。だが美咲を必要としているのはどちらも同じだ。今回だけでいい、俺にやらせてくれ」

 

 遥が立ち上がって問いかける。

 

「昨日は激情に駆られたあまり、お前に聞く事もしなかったな。教えてくれ。お前は自分が殺した者の為に何が出来ると思うんだ」

 

 しかしそう問われると、少しばかり俯いてこう答えた。

 

「……分からない」

「……」

「美咲も、俺の頭の中にいた裕太も、それは自分で考えるべき事だと言っていた。今の俺に、どう償えば良いのか分からない。だから、今は自分のするべき事をするだけだ」

「そうか」

 

 遥はそう告げてから、もう一つ問いかける。

 

「その言葉に嘘はないんだな?」

「……ああ。今の命は美咲に拾ってもらったもの。美咲の為にも使うのは当然の事だ」

 

 一号の答えに、遥は言う。

 

「なら、私に証明してくれ。今のお前の覚悟を。言葉や覚悟に嘘はないと」

「ああ……」

「あたしも手伝うわ一号」

「……成音」

「ここまでアンタや会長が無理してくれたのに、あたしだけ何もしないわけにはいかないでしょ?」

「すまない……」

「礼は良いのよ。会長を生き返らせて、裕太も連れて帰る。絶対に成功させるわよ!」

「……!」

 

 一号が頷く。

 

 

 

 

 

 



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第百九話

 

 あの話の後。

 知らない廃ビルの上で、俺は一人座り込んでいた。

 

「……」

『まったく、とんでもない番狂わせだ。正直お前が兄貴を無茶苦茶にする所を楽しみにしてたってのに、とんだ邪魔が入るし、おまけに身体を交換条件に出されても動かないときたもんだ』

 

 二号の愚痴る声が聞こえる。

 そんな言葉に対して返す気分にはなれないが、何とか身体を取られないように自我だけはきちんと保つ。

 

『馬鹿じゃねえのお前』

「……」

 

 痺れを切らした二号に罵倒される。

 

『良いか? お前の大好きな六角美咲が死んで辛い気持ちも分かってやれねえ事もないが、そのまま動かなきゃお前はただ人を殺して終わっただけになるんだぞ。もう人一人殺してんだ。今更人形一つ壊す事の何が嫌なんだよ』

「……」

 

 美咲がいなくなった今、復讐心などどうでも良い。

 その復讐心で回りが見えなくなって美咲が死んだ。

 俺なんて……こいつと一緒に死ねばいいんだ。

 

『……はあ、最悪だ。いや?』

 

 二号が何かに気付く。

 

『おい、一号来たぞ。今度こそやれよ』

 

 二号が催促してから、その口を閉ざす。

 彼の言う通り、扉を開けて男女が姿を現した。

 俺と同じ顔をした青年一号と、山内成音。

 

「裕太……」

 

 成音が小さな声で、俺の名を呟く。

 

※※※

 

 突然現れた成音に、俺はどう声を掛けてあげるべきか分からなかった。

 謝罪も、言い訳も、全て意味がないと判断し、まずは自分が敵になって突き放すべきだと判断して、口を開く。

 

「俺に何の用だよ。その様子だと、もう知ってるんだろ」

「ええ」

 

 俺の言葉に、成音は小さく返す。

 そのまま、俺は成音に最後の要求をした。

 

「そいつを連れて、もうどっかに行ってくれ」

「……」

「頼む。もう二度と、俺に関わらないで欲しいんだ」

  

 俺は頭を下げて頼み込む。

 

「俺はお前達を傷付けたくない。これ以上俺の手で誰かが死ぬ所なんて見たくないんだよ……」

 

 涙が流れる。

 

「出来ないわよ……」

 

 成音が静かにそう返す。

 

「出来るわけないでしょ! なんでアンタと関わらないって選択肢を選べるのよ! 会長が死んだのはアンタのせいじゃない! アンタが自分を責める必要なんてどこにもないのよ!」

「俺のせいなんだよ!」

 

 成音の言葉に、俺は大声で反論する。

 

「俺が回りを見てれば、あいつの言葉に惑わされなければ……美咲は死なずに済んだんだ。俺のせいだ……俺のせいなんだよ……」

「裕太……」

 

 顔を床に擦りつけて泣く俺を、成音は見下ろす。

 その時だ。

 

「アンタが倒さないなら、そいつは私の獲物っすよ」

 

 その声と共に、蒲生が現れた。



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百十話

「副会長!」

「蒲生……」

「お前私が殺す予定だった美咲を殺したんだから、一号譲るっすよ」

 

 そう告げる蒲生の身体は、何かがおかしかった。

 右半身の筋肉が不自然に隆起し、冷や汗をかいている。

 

「副会長、その身体……」

「ああ山内ちゃん、私強くなったんすよ」

 

 右腕の血管を浮き出しながら、笑みを浮かべて言う。

 

「山内ちゃんも良かったら見てくっすよ」

 

※※※

 

「おいおい、もうあいつ飲んでったのか?」

「ああ。ついさっき一号を倒すと言ってね」

 

 遥が笑みを浮かべながら、明人の身体の二号にそう告げる。

 遥の視線の先には、中身の薬品が飲み干されたフラスコが置かれていた。

 

「君も欲しいだろう? 少しばかり待ってくれ」

 

 菫の言葉に、二号は両腕を広げて問う。

 

「てかあいつ大丈夫だったのかよ」

「そうだね……今の所はだけど」

 

 菫は怪しく笑む。

 

※※※

 

 蒲生はソードドライバーに形が似たベルトを腰に装着する。

 

『アークソードドライバー!』

 

 ベルトから起動音が聞こえる。

 端末を取り出し、ボタンを押す。

 

『ARC SWORD DRIVE READY?』

 

 端末を構えて、苦しみながらも呟く。

 

「変身……ッ!」

 

 端末を取り付けると、ベルトから禍々しいオーラがあふれ出し。

 負荷が掛かった機械音が鳴り響く。

 

『ARC……COMPLETE!』

 

 そのまま禍々しいオーラが、蒲生の身体を包み込む。

 身体を蝕むかのように。

 

「くっ……ああああああッ!」

 

 蒲生の身体にも負荷が掛かり、悶え苦しみながらも、上空から降る剣の柄をとった。

 

「はぁ……はあ……ッ!」

 

 蒲生は剣の怪人……いや、剣の怪人・改とでも言うべき姿に変化し、その剣を構える。

 荒い息を吐いてから、その口を開く。

 

「もう負ける気がしないっす……この力があれば……!」

 

 裕太以外の二人がドライバーを取り出す。

 

『SMASH DRIVE READY?』『FLAME SHOWER DRIVE READY?』

 

 端末を構えてから、二人で叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

 端末をベルトに取り付ける。

 

『『COMPLETE』』

 

 それぞれ火炎放射器怪人と、サック怪人へと姿を変えてから、剣の怪人・改へと駆けだす。

 

「ああああああッ!」

 

 叫び声を上げながら、剣の怪人・改がサック怪人を狙う。

 剣の怪人系列の特徴である超高速移動で距離を詰め、勢いよく吹き飛ばす。

 

「ぐあッ!」

 

 サック怪人は鉄柵に叩きつけられる。

 

「……ぐっ……」

 

 攻撃しながらも、身体への負担は大きく……苦しそうに呻く。

 

「あああああああああああああッ!」

 

 



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第百十一話

「副会長!」

 

 火炎放射器怪人が地を蹴って、剣の怪人・改へと飛びつく。

 苦しむ剣の怪人・改の姿を見ながら、説得を試みる。

 

「副会長、もうやめて! このままだと……」

「山内ちゃんが言ったんでしょ? それくらいの覚悟がなきゃ、美咲には勝てないって」

「……ッ!」

「私は絶対美咲より上に立つっす。この命を投げても、絶対に!」

 

 剣の怪人・改が、勢いよく火炎放射器怪人を吹き飛ばす。

 

「うわあッ!」

「成音!」

 

 俺はムラマサドライバーを取り出して、腰に装着する。

 

「変身!」

『御意! 出陣! 仮面ライダームラマサ!』

 

 仮面ライダームラマサへと姿を変えてから、俺は剣の怪人・改の前に立ち塞がった。

 

「……!」

「何するんすか?」

 

 俺は剣の怪人・改を睨みつけて告げる。

 

「成音に手を出すな……! これ以上美咲の仲間には手を出させない!」

 

 剣の怪人・改の剣を弾く。

 

「分かったっすよ。なら……」

 

 剣の怪人・改は姿を消して、サック怪人へと近づく。

 

「……!」

 

 目にも止まらぬ速さで、サック怪人を集中狙いしてダメージを与えていく。

 サック怪人はバレーボールのように宙へと浮かされる。

 

「あっ……」

「くっ……ぐあっ!」

「一号!」

 

 火炎放射器怪人がサック怪人の所へと駆けようとするが、俺はその手を掴んで止める。

 

「何するのよ!」

「もうこれ以上戦うな! お前を死なせるわけにはいかないんだ!」

「……!」

 

 俺の必死な言葉に、火炎放射器怪人は目を見開いてから反論した。

 

「いい加減にしてよ! 一号は自分の犯した罪の重さを理解して、生きてそれを償おうとしているのよ!」

「……!」

「アンタや遥の恨む気持ちを、全部受け止めて……必死に。それに、副会長をあれ以上戦わせるわけにはいかないでしょ!」

 

 俺は俯く。

 

「会長はまだ死んでない。あたし達がここに来たのは、生き返らせるのにアンタの力が必要だから来たのよ」

「生き返る……?」

「なんだって?」

 

 話を聞いた剣の怪人・改が、サック怪人への攻撃を止めて振り向く。

 

「それなら話は早いっす。福沢裕太、その方法で六角美咲を生き返らせるっすよ」

 

 剣の怪人・改が俺にそう要求した。

 けど俺は、それに返事をせず。

 

「……」

「何黙り込んでるんすか? 早くするっすよ。アンタも美咲を殺した事を後悔してた筈っすよ?」

「生き返ったとして、そしたらお前は美咲をどうする気だ」

「殺すっすよ。この力を使って」

「……なら」

 

 俺は姿を消しながら、剣の怪人・改へと近づき。

 その胴体に向かって切り払う。

 

「今はその要求は吞めない」

 

 

 

 



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第百十二話

 

「裕太……」

 

 火炎放射器怪人が、剣の怪人・改に斬りかかった俺に呟く。

 

「美咲が蘇るとしても、絶対殺させない。どうしてもやるというなら、蘇らせる前にお前を止めてやる」

「私とやるんすか? けど……」

 

 剣の怪人・改が素早く俺に斬りかかり、吹き飛ばす。

 

「アンタの技量で、それが出来るんすか?」

「なら、ここで誓ってやる。技量がどうとかじゃない。俺は刺し違えてもお前を止めてやる。それが美咲に対して、最後にしてやれる事だ!」

 

 俺はもう一度立ち上がって、剣の怪人・改へと剣を振るう。

 剣が躱され、空振るが、もう一度脇腹へ。

 

「!」

 

 今度は剣の怪人・改が得物で受け止めた。

 

「こんなもんすか……」

「くっ……!」

「美咲のお供って割に、一番大した事ないっすね!」

 

 剣の怪人・改が剣気で俺の刀を弾く。

 

「……!」

「誓いってのはどうしたんすか? 所詮その程度の、ちっぽけなものなんすか?」

 

 俺の言葉を責めながら、何度も剣を防御する俺に叩きつける。

 

「大人しく美咲の力を借りる方が賢明っすよ。雑魚がイキった所で、何の解決にもならないんすよ!」 

 

 強く弾き飛ばされる。

 

「殺した俺が……そんな事出来るわけないだろ。美咲を殺した俺に、美咲の力を借りる資格なんてない……」

「ふーん……大した根性っすね。だけどこれで終わりっす」

 

 剣の怪人・改が端末を操作して、ベルトに取り付ける。

 

『ARC FINAL DRIVE……!』

 

 禍々しいオーラを迸らせる剣の怪人・改。

 立っていた位置から姿を消し、俺の目の前に。

 

「はあッ! とうッ!」

 

 剣の怪人・改が剣を何度も俺を斬りつける。

 

「……ッ!」

 

 最後の一撃で副作用が身体を襲いながらも、俺に強い一撃を叩きつけた。

 

「ぐあああッ!」

 

 俺は大きく吹き飛ばされ、変身が解かれる。

 

「……ッ!」

「……うッ……」

 

 剣の怪人・改が副作用で悶える。

 俺も何とか立ち上がろうと、身体に力を入れようとした。

 

「美咲……」

 

 立てない。

 立ち上がって、もう一度戦いたいと思うのに……身体に力を入れる事すら出来ない。

 俺は……ここで終わりなのか。

 

「ああああああッ!」

 

 既に火炎放射器怪人に再変身していた成音が、剣の怪人・改に向かってタックル。

 

「どいつもこいつも……あの馬鹿の真似なんて醜い事を……」

 

 実力差を分かっていながらも、全員が今出来る事をしようとしていた。

 

「……!」

 

 サック怪人も同じように立ち向かう。

 

「くうっ……!」

 

 二人では歯が立たず、大きく吹き飛ばされる。

 

「だから言ったんすよ。大人しく諦めた方が良いって……」

「……」

「もう戦える奴もいないみたいっすね。じゃあ、大人しく美咲を生き返らせてもらうっす」

 

 俺達が地べたで這う事しか出来なかったその時。

 

「ハアッ!」

 

 一本の槍が、剣の怪人・改目掛けて真っ直ぐに飛ぶ。

 咄嗟にそれを防いだ剣の怪人・改が、槍が飛んできた方向を見る。

 

「マダ、ヴィーダガイル!」

 

 仮面ライダーグングニルへと変身していたヴィーダが、槍を構えつつ空を飛んでいた。



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第百十三話

「ヴィーダ!」

 

 成音が屋上に降り立ったグングニルを見て叫ぶ。

 

「ナリネ、ユウタ、イチゴウ、ダイジョウブ?」

「何とかね……」

「アトハヴィーダニマカセテ!」

 

 ヴィーダがそう告げながら、槍を構える。

 

「ヴィーダ……」

 

 裕太が申し訳なさそうに顔を地面につけながら言う。

 

「コノヒト……カラダアブナイ、タスケナキャ!」

「まさか人形にまで心配されるとは思わなかったっすよ……」

「ヴィーダ、これ使って!」

 

 成音がグングニルにフレイムシャワードライバーを手渡す。

 

「ナリネ、アリガトウ!」

『フレイムシャワー!』

 

 端末から音声が鳴り、斜め左上に右腕を伸ばしてから叫ぶ。

 

「ダイヘンシン!」

『CHANGE FLAME THROWER』

 

 グングニルが光に包まれ、姿が変わっていく。

 仮面ライダーグングニル フレイムシャワーフォームへとその姿を変えた。

 

「スグニ、オワラセル!」

 

 火炎と共に姿を消したグングニル。

 すぐに剣の怪人・改の背後に現れ、まず回し蹴りで吹き飛ばす。

 

「こりゃまずいっすね……こっちも本気で……ぐっ……」

 

 そこで剣の怪人・改の限界が訪れる。

 変身解除まではいってないが、明らかに身体への負荷で動けなくなっていた。

 

「まだ……倒されるわけにはいかないっす……美咲と戦うまでは……!」

 

「おいおい、俺に黙って出てった割にその程度かよ」

 

 突如聞こえた一つの声。

 

「期待外れにも程があるってもんだ」

 

 足利明人の身体に憑依しているもう一人の二号が、どこからか屋上に姿を現す。

 

※※※

 

「おい、使いこなせないならとっととそれ置いて帰んな」

「嫌っす。アンタには美咲の首も一号の首も渡さないっすよ」

「そう言うのは自由だけどよ」

 

 明人二号は変身すらせずに、剣の怪人・改を蹴り飛ばし、ベルトごと吹き飛ばして変身解除させる。

 

「お前にそれが出来んのか?」

「あっ……ああっ!」

「ま、まだ俺もこの痛みになれちゃいないが……」

 

 よく見ると、明人の身体も筋肉が不自然に隆起している。

 

『アークソードドライバー!』

 

 ベルトを腰に装着してから端末を取り出して、立ち止まり。

 俺に顔を向けた。

 

「おい俺」

『な……んだよ……』

 

 俺が押さえ込んでいた人格を何とか表に出して呟く。

 

「もうそいつの身体を自由に出来ねえみてえだし、こっちこいや」

『……確かに、もう潮時かも知んねえな』

「それに、俺はやっぱり一人の方が良いよな」

 

 俺の身体を使い、二号は明人に向かって光を放つ。

 俺の中から何かが抜け落ちる感覚。

 その後、明人は目を輝かせて言う。

 

「これは……そうか。どうやら上手くいったみたいだな。変身」

 

 明人は天高く手を掲げ、禍々しいオーラを放つ剣を受け取り。

 剣の怪人・改へと姿を変えた。

 



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第百十四話

「あの身体は俺のもんだ……サクッと全員殺してやるぜ」

 

 二号が変身した剣の怪人・改は、蒲生が変身したそれよりも速くそして力強い動きを見せる。

 フレイムシャワーフォームのグングニルに勝るとも劣らない動き。

 

「ミンナ、ハヤクミサキノトコロニイッテ!」

「でもそれじゃあヴィーダが!」

「ナリネ!」

 

 グングニルが何とか顔だけ成音に向けて言う。

 

「ミンナデ、ワラッテカエル!」

「……! 分かった!」

 

 成音はグングニルからフレイムシャワードライバーを受け取り、再変身。

 怪人としての力で蒲生を含めた三人を抱えながら走って逃げる。

 

「おいおい、逃がすわけねえだろッ!」

 

 ゆっくりと逃げようとする成音達に剣気を飛ばす剣の怪人・改。

 それを何とかグングニルが防ぐ。

 

「ミンナハ、ヴィーダガマモル。ヴィーダ、オマエニカツ!」

 

 通常フォームに戻ったグングニルが、槍を構えなおして言う。

 

「……上等じゃねえか。やってみろよ」

 

 剣の怪人・改が笑って、闇色の切っ先を向ける。

 

※※※

 

 何とか力技で、成音は裕太や一号、そして蒲生と共に科学部の部室へ。

 気絶している二人の姿を見た優香が心配そうに駆け寄る。

 

「裕太っち! 一号っち!」

 

 何とかその呼びかけで、二人は目を覚ます。

 

「ここは……」

「そうか……俺は負けたのか」

 

 その姿を見てから成音は遥にムラマサドライバーを渡す。

 

「遥さん、ムラマサドライバーです」

「成音、もしかして……」

「今ヴィーダが何とか二号を押さえてくれてる。早く生き返らせて助けに行かないと!」

「早速始めるぞ」

 

 遥がムラマサドライバーをカードライターに接続し、美咲に関するデータを送信。

 すると……。

 

「一〇〇%……これでいける筈だ!」

 

 遥が両目を見開いて言う。

 ブランクカードに『ALL WEAPON FOAM』と表示される。

 

「!」

 

 成音と、俺も思わず反応する。

 

「美咲っち……」

 

 優香も祈った。

 

「……」

 

 一号も表情こそ変わっていないが、それでもどこか心配そうなそぶりをする。

 

「よし、行くぞ」

 

 ボマードライバーを美咲の腰に装着し、スキャンのボタンを押す。

 

『SCAN DRIVE』

「これでいける筈だ」

 

 しかし。

 

『ERROR』

「……!」

 

 読み取りに失敗する。

 無機質なエラー音のみが、部屋に響く。

 

「嘘……系……」

 

 優香がそう告げる。

 

「馬鹿な、これでもダメなのか……」

 

 遥がその場で崩れ落ちる。

 しかし……。

 

「成音?」

 

 俺の近くで立っていた成音だけが、諦めずに美咲に近付いた。

 

「会長……いつもは皆に無理させる癖に、自分が生き返るのは無理だって……そう言うの?」

「成音……」

「帰ってきてよ会長! この場の誰よりも無茶苦茶で、負けず嫌いのアンタが、何で生き返る事の一つも出来ないのさ! それをやってこそのアンタでしょ!」

「やめろ成音!」

「やめない!」

 

 成音が大きな声で皆に言う。

 

「会長……!」

 

 もう一度、成音はドライバーを取り出す。

 

 



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第百十五話

 ……。

 誰かが、自分の名前を呼んだ気がして。

 美咲は何もない空間で、目を覚ました。

 黒一色のその世界で……自分の身体だけがその時見えていた。

 

「……」

 

 美咲は、裕太に脳波を破壊されて死んだ。

 けど……今こうして目覚める事が出来た。

 なら、今自分の身体を動かす事が出来れば……まだ戦う事が出来る筈だ。

 

「美咲」

 

 手を伸ばそうとした美咲を呼び止める……男の声。

 分からないわけがない。

 自分の大切なお供で、けど自分を殺した相手。

 福沢裕太のものだ。

 

「裕太さん、どうしてここに?」

 

 自分の問いかけに対して、裕太は悲しげに言う。

 

「すまない……俺のせいでお前は……」

「裕太さんは悪くありませんの。ですから……」

 

 止めようとした美咲に背を向けて、裕太はどこかへ歩き出す。

 美咲は思わず手を伸ばして叫ぶ。

 

「どこへ行くんですの!?」

「俺はお前と一緒には戦えない。俺がお前といる資格なんてないんだ」

「裕太さん……裕太さん! 裕太さん!!」

 

 黒い光に呑まれて消えた裕太を、美咲はもう一度追いかけようとする。

 しかし。

 

『もう放っておいてやれよ』

「この声は……」

 

 聞き覚えのある声が聞こえた。

 まるでレコーダー越しに聞く、周りに聞こえている自分の声。

 でも、少し太い声。

 

「昔の……私」

 

 振り向くと、あまり思い出したくない自分の姿があった。

 太っていて、自分だって彼氏を作って青春したいと誰よりも思っていたのに、何もせずにやさぐれていた頃の自分。

 ソウジと出会い、変わる前の醜い自分。

 

『あいつは、お前の為を思って……お前といないようにしようとしてる。お前だって分かるだろ?』

「分かりませんわよ! 私は裕太さんとまだいたい。裕太さんとやりたい事が、まだ沢山あるんですのよ!」

『……そんな事言って、お前は人の人生にどんだけ重いもの背負わせてきたんだよ』

「……!」

 

 昔の自分が言う事に、間違いはなかった。

 生徒会の件も、遥と一号が和解出来なかった事もそうだ。

 自分が出来るからと、他人にまで同じレベルを押し付けてしまう癖。

 今だって……恐らく目覚めたら美咲は裕太にそういう事をするのだろう。

 

『お前は……「ソウジ」みたいにはなれないんだよ』

「……」

 

 美咲は光に呑まれる。

 

※※※

 

 気付けば、美咲は見覚えのある場所にいた。

 自分の中学の近くにある空き地。

 

「昔の私ですわ……」

 

 元カレ……ソウジと出会う前の自分。

 中学の制服を着た太った少女……昔の美咲が、スナック菓子を食べながら学校のカッコいい男子を一瞥していた。

 

 



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第百十六話

間違いない。

あの日だ……自分の運命が変わったあの日。

この日の事は今でも覚えている。確か……。

 

「あ、二年のブタ女がこっち見てるぞ!」

「やめろよブタがうつるだろ!」

「馬鹿お前ら声がでけえよ……ハハハ……」

 

 こういう奴らに向かって、昔の自分は。

 

「うるせえんだよ……私だって好きでこんな体型じゃねえんだよ。うつるのが嫌ならあっちいけよ!」

 

 自分で火薬を込めた爆弾を思い切り投げる。

 けど跳ね返っては……。

 

「うわああああッ!」

 

 いつも自爆していた。

 

「ハハハ……バーカ!」

 

 そして諦めず、バットでボコボコにして返り討ちにする。

 それが、昔の美咲の日常だ。

 

「ごめんなさーい!」

「うわああああッ!」

「二度と悪口言いに来るんじゃねえ! 次来たらぶっ殺すぞこの野郎!」

 

 喧嘩の腕だけは、昔から良かった。

 けど……ただひたすらに虚しかった。

 

「……つまんねえな」

 

 別に、好きで喧嘩が強くなったわけじゃない。

 自分を馬鹿にする気に入らない奴らをボコボコにしていたら、いつの間にか強くなっていたのだ。

 本当は、普通の女の子みたいに恋愛がしたい。

 けど……。

 

「何泣いてんだよ」

 

 ソウジは笑みを浮かべながら、自分に近付いてきた。

 

「……」

「お前だよお前。なんか悲しい事でもあったのか?」

「なにヘラヘラしてんだよ」

 

 最初彼を見た時は、イライラして仕方なかった。

 自分に対して笑顔を向けてくる奴は大抵、馬鹿にしてくる奴と決まっていたから。

 

「お前も私を馬鹿にしてんのかコラ」

「……してるかもな」

「んだとコラ!」

 

 バットを構えて、そいつに叩きつけようとした。

 だがソウジは、

 

「へえ、中々やるんだなお前」

 

 そう言いながら、バットを素手で受け止める。

 

「何で避けねえんだ。いてえだろ!」

「お前がどんだけキレてんのか気になった。だから受け止めたんだ」

 

 急に真剣な顔で、そう告げた。

 

「それと勘違いするなよ。俺が笑ったのはお前の体型じゃない。そもそも体型を馬鹿にする奴なんて最低だ」

「なら何で笑ったんだよ」

「お前のその腐った根性を馬鹿にしたんだ」

「んだと……?」

「お前そもそも、その馬鹿にされてる原因を何とかしようと一度でも考えた事あんのかよ」

 

 そう問いかけるソウジに、目を逸らしながら美咲は言う。

 

「あったさ。けど、何しても全然痩せられなかった。私には無理なんだよ。普通の女の子みたいに恋しようとかさ」

「ああ、そうかもな」

「お前、何が言いてえんだよ!」

「無理とか簡単に決めつける奴が、出来るわけがないと言いたいんだよ」

「……!」

「無理っていう言葉を言って良いのは、死ぬ前だけだ。まだ死にそうでもねえのに、それだけ力があるのに、無理なんて言葉を簡単に使うな」

 

 ソウジは真剣な顔で、天に指を差しながらそう告げる。

 

「人間は変われる。何かの為に、人は変わる事が出来るんだ」

「……」

「俺の好きなヒーローの言葉だ。覚えておくと良いさ」

 

 そう告げて、ソウジはどこかへと歩いていこうとした。

 だがあの時の自分が、それを止める。

 

「おい」

「……」

「そこまで言うならよ、私を手伝ってくれよ」

「手伝う?」

「お前の言葉が嘘だったら、私はお前をぶっ飛ばす。だからこれから常にそばにいろ。いつでもその面ぶっ飛ばせるようにな」

「……そうか。なら、こっちから提案しても良いか?」

 

 ソウジが振り向いてから言う。

 

「俺のお供になれ」

「はあ?」

「俺がお前を手伝う代わりに、お前も俺を手伝え」

「どういう事だよ」

「じゃあ決まりだ」

「お、おい待てよ! 私やるって言ってねえぞ! おい!」

 

 



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第百十七話

 

 ソウジの家は、家族経営の工場だ。

 従業員は彼の両親のみで、他の社員は皆辞めていった。

 ソウジはまだ十三歳の時から、殆ど学校を休んでまで工場を手伝っていたのだ。

 

「随分ボロい工場だな」

 

 ついて来た美咲の第一印象。

 

「そう見えるよな。でもいつかは、ここをでっかくしてやりたい」

「は? 無理だろ」

「無理か……何度も同じ事を親に言われたさ。だから俺が正しいと証明する為に、ここで親父やお袋を手伝ってる」

「……」

「取り敢えず、中に入ろうぜ」

 

 ソウジにそう言われて、美咲は二人で工場内へ。

 夜遅くまで、何かの作業をしていた二人が、ソウジの姿を見る。

 

「ただいま」

「おかえりソウジ。あら、その子は?」

「ああ……俺のお供。今日からここの世話になるから」

「だからまだ決めてねえっての」

「あらあら、そうなの?」

 

 ソウジの母親が笑いながら言う。

 しかし父親は。

 

「ソウジ……何度言えば分かるんだ。もうこの工場に誰が来ようと、すぐ辞めていく。ましてや女子中学生だ? そんなの連れてきた所で、どうなるんだよ」

「やってみなきゃ分からないだろ親父」

「またそれか……勝手にしろ。くれぐれも怪我だけはさせるなよ」

「分かってるよ」

 

 ソウジはそう言ってから振り向く。

 

「二人の許可も貰えた所で、今日からよろしくな」

「あ……ああ」

 

 半ば強制的に、美咲はソウジのお供となった。

 

※※※

 

 それからは毎日疲れる日々が始まった。

 学校が終わってはソウジの家に立ち寄り、終業時間まで仕事を手伝い、そのままソウジと共に何かしら運動をする日々が続く。

 その日はランニングだった。

 

「はあ……はあ……」

「もうへばったのか、早いな」

「うるせえ、仕事終わった後にこの距離走るとかあり得ねえんだよそもそも」

「無理じゃない事を証明しろって言ったのはそっちだろ? ならやるしかないよな?」

「あーもうわーったよ!」

 

 ぐちぐち言いながらも、美咲はソウジについていく。

 そこからも長い距離を走り、取り敢えず工場前までたどり着いた。

 

「はあ……」

「やれば出来るじゃないか」

「そうみてえだな」

 

 美咲はサムズアップする。

 汗はかきまくっているが、ちょっとずつ身体が軽くなっていくのを感じていた。

 

「よし、もう一走りいくぞ」

「はあ?」

「流石に冗談だ」

「お、お前なあ……」

 

※※※

 

 仮面ライダーが好きになったのも、その辺りだった。

 時々ソウジの部屋にあがっては、一緒に見ていた。

 

「ヒーローってのはやっぱすげえな……。無理かも知れなくても、最後まで諦めずに立ち向かえるんだから」

 

 美咲は思わずそう呟く。

 

「この世で一番強くなれるのは、無理かも知れないなんていう考えを捨てられた奴だけだ」

「……」

「別に迷っても良い。迷わずに強くなれる奴なんていないからな。けど、無理なんて考えに至る奴はいつまでたってもそのままだ」

「そうだな」

 

 美咲は笑いながらそう言う。

 

「んじゃ、特訓行くぞ」

「お、もうそんな時間か」

「結構絞れてきたからな。今日からまた厳しめで行くぞ!」

「お、お手柔らかにな」

 

 気付けば、これが美咲の日常になっていた。

 

 



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第百十八話

 

 少しずつ体型が良くなり、自信がついてきて……美咲は少しずつ学校に通うようになってきた。

 そんなある日の事。

 

「おうおう、少し脂が落ちてまずそうになったんじゃねえの?」

「でも豚は豚よね~ハハハ」

 

 チャラい男子生徒が女を連れながら、美咲を馬鹿にする。

 

「……」

「おい無視してんじゃねえよコラ」

 

 男子生徒の一人がつかみかかった。

 美咲が睨みつけると、男子生徒は虚勢を張りながら問いかける。

 

「な……なんだよやる気か」

「相手になりてえならなってやる。けど、それならはっきり言えや」

「んだと偉そうに……!」

 

 拳が振るわれる。

 美咲は持ち前の反射神経を使って、その拳を受け止めた。

 

「……どうすんだ? やるのか……やらないのか?」

「良いぜこの野郎。勝負してやるよ」

 

※※※

  

 美咲はその生徒と共に、路地裏へ。

 持ち前の喧嘩の強さもあり、その生徒のみは難なく素手で倒す。

 

「……もっと歯ごたえが欲しいな」

「歯ごたえ……か。だったらこの人と勝負してみろよ」

 

 そう言って、どこからか現れた別の生徒が美咲の前に現れる。

 自分以上の巨体で、かなり鍛えていると思しき男子生徒。

 

「先輩、この生意気な豚をお願いします」

「おう任せろよ」

「……」

 

 美咲は拳を構えなおす。

 

「はあッ!」

 

 そのまま地を蹴って駆け出すが……。

 

「あああッ!」

 

 その巨体から放たれる拳を受け止める事は出来ず、無様に地面を転がった。

 

「くっ……」

 

 美咲は立ち上がれずに悶絶する。

 大男はもう一度拳を握って、美咲にゆっくりと近付いていく。

 

「なんだそれで終わりか? なら遠慮なく……」

 

 拳が振り下ろされる……その時。

 

「悪いが、こいつは俺のお供だ。傷つけられちゃ困るな」

 

 ソウジがその拳を受け止め、蹴りを放つ。

 

「くっ……」

「こいつ……」

「痛い思いをしたくなければ去れ」

 

 ソウジは美咲が倒した生徒を睨みつける。

 

「ひいっ……行きましょう先輩!」

「この野郎……!」

 

 取り巻きも同じく逃げていくのを確認してから、美咲に目を向けた。

 

「……」

「大丈夫か?」

 

 そして手を差し出す。

 だが美咲はそれを取ることなく拒否。

 

「お前……なんで私を助けたりなんかしたんだよ。あんな奴、私なら何とか出来た」

「……」

 

 何も答えないソウジに、美咲は不貞腐れながら答えた。

 

「ああそうかい。私には無理だっつーのか? 少しは認めてくれたと思ったのに、内心じゃまだ私の事馬鹿にしてんのかよ」

 

 ソウジの答えを待たずに、美咲はその場から走り出す。

 この時の美咲には、素直にありがとうと答える事が出来なかった。

 

 



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第百十九話

 

 あの後。

 雨の降る空き地で、傘もささずに美咲は空を見上げていた。

 

「……」

 

 さっきのソウジの態度を思い出して、美咲は胸の内に悔しさを募らせていた。

 あれだけ彼が要求するレベルに近付こうとして必死に努力したというのに、彼はまだ……自分ではあの巨体の男一人倒す事すら出来ないと判断して助太刀した。

 この時の美咲は、自分の薄っぺらなプライドを傷つけられた事をうじうじと気にする事しか出来ない。

 

「はあ……」

 

 結局、自分は努力しても……誰かに舐められる運命は変わらない。

 そう決めつけて、美咲は立ち上がって歩こうとした。

 その時。

 

「……ほら」

 

 ソウジが現れて、美咲に傘を差しだす。

 美咲はプイっと顔を背けて言う。

 

「何の用だよ」

「何の用って……お前馬鹿なのに風邪引く気か」

「馬鹿って……やっぱり私の事なめてんだろ!」

「反論する余地もない程馬鹿だろお前は」

 

 ソウジの冷静な返しに、美咲も頬を膨らませながらも何も言葉が出なかった。

 

「俺にも俺の責任ってもんがあんだよ」

「……」

「お前は俺のお供だ。選んだ俺には、選んだ奴なりの義務がある。俺はお前を守る。絶対に」

「は……なにそれ」

 

 美咲自身、嬉しいとも思っていた。

 けど、この時は素直にそう答えられず。

 

「またそうやって、弱い奴扱いするのかよ」

「……強くなりたいんなら、まず自分のいる位置を理解する事も大事だ」

「……」

「自分の強さ、弱さ。それを理解した上で、人はようやく強くなる事が出来る。それすらせずに戦って、もし死にでもしたらどうする? お前はお前の欲しいものを、お前自身のせいで逃す事になるんだぞ」

 

 全部……間違ってない。

 この言葉は、今の美咲にも受け継がれて、今の美咲自身の生き方に繋がっている。

 けど、美咲自身にも……自分なりの考えがあった。

 ソウジと共に過ごし、自分で見つけた今やりたい事。

 

「なら、私はどんな無茶でも生きて帰ってやる」

「……は?」

「お前前に言ったよな? 無理なんて言葉は死ぬ前に言えって」

「……」

「だったら私は死ぬ前に立たされようが、そこを振り切って生き残ってやる。例え絶対死が避けられないとしても、それを乗り越えて先に進む。お前の言った言葉を超えてやる。お前に助けて貰わなくても、解決出来るくらいに強くなる」

「美咲……」

「だから次同じ事があっても、二度と助けるな。私のプライドが傷付く」

「……ふふ……ははは」

 

 ソウジが笑う。

 

「何がおかしいんだよ!」

「いやあ、こんな大口叩く奴と、前まで無理無理言ってた奴と同一人物とは思えなくてさ」

「お前のせいだろ!」

「でも、そういうからには……これからは俺の特訓にへばらずついてこれるんだよな?」

「お、おう。勿論だ」

 

 ソウジが告げる。

 

「決まりだ。また今日からいつもより厳しく行くぞ」

「おいおい今日雨だろ!」

「大丈夫だ。俺もお前も馬鹿だ。風邪なんて引かない!」

「さっきと言ってる事ちげえぞ!」

「知らんな! 工場まで競争だ!」

「待てよ!」

 



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第百二十話

 

 丁度、今の自分と同じくらいの体型まで痩せてきた頃の話。

 一緒に仕事を手伝い、痩せる為の特訓を続けるうちに、美咲はソウジの事が段々好きになっていった。

 中学三年生の初め辺り、美咲はソウジに告白した。

 

「お前は俺のお供だが、恋人には出来ない」

「何でだよ」

 

 美咲の言葉に、ソウジが一瞬だけこもってから返す。

 

「恋人同士になったら、お互いを意識して加減をするようになるだろう? それではお前の為にならない」

「……」

「話は終わりだ」

 

 ソウジはどこか辛そうな顔でそう告げて、自室へと戻っていく。

 美咲が何故、その時断られたのかを理解したのは……その後すぐの事だった。

 何となく気まずい雰囲気の中、ソウジの工場の手伝いをしている時に、美咲はソウジと彼の父親の会話を聞いた。

 

「俺は近いうちにこの工場を売ろうと思っている」

 

 最初に聞こえたのは、そんな声。

 ソウジの父親のものだ。

 

「何を言ってるんだ父さん。美咲が来てから、何とか沢山作れて前より稼げるようになったんだ。諦めるのは早いぞ」

「けど、彼女やお前以外でまともな従業員と呼べる奴が他にいくついるんだ?」

「……!」

 

 父親の言葉に、ソウジが言葉を失う。

 常に理想の為に、途方のない努力を続けるソウジに現実を押し付けるように父親が告げる。 

 

「お前の子供のような考えで様変わりする程、世の中は甘くない。従業員がいなければ新しいものを作る事も困難だし、作れなければ売る事も出来ず、ここを維持する事もままならない。売るしかないんだ……」

「父さん……」

「もう気は済んだか? 元々お前にそんな期待はしていない」

「待ってくれよ!」

 

 いつね冷静なソウジが、あんなに声を上げて話すのは見た事がない。

 美咲でさえ、最初は本当にソウジの声なのか疑った。

 

「ソウジ……」

 

 美咲は道具を手にしたまま、静かに呟く。

 

「俺が何とかしてみせる。だから待ってくれ!」

「……」

 

 ソウジの父親は黙ったまま、どこかへ行ってしまった。

 そこで理解した。

 ソウジ自身も、本当はそれが無茶な夢である事を自覚していた。

 それでもそんな無茶をどうにかしようと抗い、戦った。

 そこには誰かの犠牲があってはならない。

 そう思ったから、美咲の事を振ったのだ。

 一人で戦い続ける為に。

 けどそれなら、尚更諦めきれない。

 

「……」

 

 ソウジを一人になどさせない。

 ソウジがそんな無茶を叶えようと戦うなら、美咲も一緒に戦いたい。

 そう思って、美咲はソウジを呼び止めた。

 

「ソウジ」

「……どうした?」

 

 



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第百二十一話

 美咲は言う。

 

「この工場を守るのは、お前一人じゃなきゃダメなのか?」

「……何の話だ?」

 

 ソウジは何とか誤魔化そうとする。

 

「この工場をデカくしたい、それがお前の夢なんだろ?」

「ああ」

「なら、なんでその夢に私を頼ってくれねえんだよ」

「……お前の力を借りなくても、それくらい」

「ソウジ!」

 

 美咲はソウジの後ろから抱きつく。

 

「私はお前がいたから、こうして目標に近付けた。自信を持って、お前を好きになれた。けどよ、お前の事を助けてくれる仲間はいるのかよ」

「……」

「だったら私がその仲間になりたい。私の為に一生懸命でいてくれたお前に、今度はお前の為に私が一生懸命やる番なんだよ」

 

 自分の想いを、きちんと伝える。

 

「だから、これからもずっとそばにいてくれよ。私の彼氏としても、さ」

「……お前……また変わったな」

「え?」

「自分の事で泣いてばかりのお前が、今度は俺の心を支えようとしてくれてるんだからさ。本当に、変わったな」

「ま、まあ。私はいつかお前すら超えるつもりだからな」

「今回ばかりは、俺の負けだ」

 

 ソウジが笑って、そう告げる。

 

「ほえ? いや、なんか実感ねえけど。告白に勝ち負けもクソもあるのか?」

「さあな」

「あ、今適当な事言ったろ!」

「良いぞ。ついてくるならついてこい。だが、これは本当に非現実的な夢だぞ。誰にとっても」

「無理って言うのは、死ぬ前だけ……それがお前の生き方だろ?」

「ああ……その通りだ」

 

 ※※※

 

 こうして、美咲とソウジは付き合う事になった。

 学校と工場が両方休みの日は、恋人のように出かけた事もあるし、美咲の家に連れて来た事もある。

 両親がいない、ある日の夜。

 慣れない……というよりあまりした事のないキスをしてから、美咲はソウジに泊まるように言い。

 数時間後……既に疲れて眠ったソウジを見て、ふと呟いた。

 

「こんな日々が、ずっと続けばいいな」

 

 今の生活は、かつて美咲が抱いていた夢そのものだった。

 普通の女の子のように、誰かと恋をしたい。

 それに、ソウジとの関係はそれだけじゃない。

 恋人であると同時に、その夢を支える立場。

 いつかきっと大物になるであろう人を、こうして支えられる。

 そしていつかは、二人で頂点に立つ。

 勿論、自分がソウジより上に立つのは諦めていないが。

 

「……」

 

 美咲はもう一度、あの時のように背中からソウジに抱き着く。

 季節的に少し寒さを覚えていたが、ソウジの肌に触れればそんな事も忘れてしまう。

 瞳を閉じて、もう一度祈る。

 ずっと一緒に、いられますように……と。

 



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第百二十二話

 美咲はあの日、確かにそう祈った。

 けど結局、美咲の心からの祈りが叶う事はなく。

 美咲の高校進学が決まり、卒業式を迎えてから、ソウジは美咲に呼ばれて学校の桜の木の下……ではなく、一年半以上も世話になった工場に呼び出された。

 

「……」

 

 美咲は進学する予定の女子高の制服姿。

 ソウジは、結局一度も着る事が無かった中学の制服姿。

 彼は卒業式すら出席する事なく、初めて美咲に会った時の姿で、自分と向き合っていた。

 まず彼は、少しばかり悲しげな眼をして自分の名を呼ぶ。

 

「美咲」

 

 それも、あの時告白を断った時よりも辛そうに。

 

「今日で、お前は俺の彼女も……お供も卒業だ」

 

 自分に別れを切り出した。

 

「……!」

 

 美咲にも、言われた理由は何となく理解出来た。

 彼は自分を嫌ってなどいない事は、彼の眼を見れば明らかだ。

 理由は違う所にあった。

 

「……」

 

 ソウジと美咲の近くを、何人もの人が出入りするのが見える。

 工場の中にある工具や機械……ソウジやソウジの家族と同じくらい、美咲が触れ合った代物を運び出していた。

 ソウジの父親の判断で、工場は売られる事になった。

 夢に描いていた、工場を再興する夢は散り、ソウジは職を探さなければならなくなったのだ。

 

「嫌だ。お前が行く場所なら私も行く! 私を置いてって行くなんて許さねえぞ!」

 

 ソウジは頭を横に振る。

 

「これ以上、お前から未来を奪えない。それに、今の俺がお前を手にする資格なんてない。お前には、俺より良い人に巡り合って欲しいんだ」

 

 そう言って、ソウジが美咲に一つのものを手渡す。

 ソウジが好きな、仮面ライダーカブトのストラップ。

 ソウジが、いつも肌身離さず持っていたものだ。

 

「俺は多分、もうお前に会う事は出来ない筈だ。だけど、たまにはこれを握って俺の事を思い出して欲しい」

 

 笑顔でそう頼むソウジ。

 けど、美咲は受け取りつつも一度俯いて呟く。

 

「……言うんじゃねえよ」

「美咲?」

「もう会えねえなんて言うんじゃねえよ! 私にお前より上の男なんていねえよ! もし今手に出来ねえってんなら、私が頂点に立ってお前もそこに連れてってやるよ! それなら文句ねえだろ! お前、それまで別の女に私と同じ事するんじゃねえぞ! 浮気なんかしてたら、私が許さねえからな!?」

 

 涙と鼻水が、自分の中から止まらなかった。

 

「頂点に立つんなら、そんなくしゃくしゃな顔じゃ出来ないぞ。もっと笑顔で、胸を張って言えよ」

 

 そう優しく告げるソウジの顔も、泣きそうなのを堪えているものだった。

 

 しばらくして……美咲は手を振るソウジに見送られて、思い出深い工場をあとにした。

 最後に、ソウジの声が聞こえた気がした。

 

『行ってくれ……美咲。頂点へ。お前は俺の……最高のお供なんだから』

 



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第百二十三話

「お願い……お願い……! 帰ってきてよ……!」

『ERROR』

 

 成音が何度も読み取らせるが、何度も失敗する。

 無慈悲に失敗した時の音声が鳴るが、成音はそれでも続けた。

 何回も続けた後、近くで見ていた優香があるものの存在に気付く。

 

「ちょっ。これ……何系?」

 

 美咲の制服のポケットから、仮面ライダーのストラップが出てくる。

 赤い外観に、青い瞳のカブト虫の仮面ライダー。

 紐も本体も、そこそこ汚れているが、欠けている個所は一つもない。

 昔のものではあるが、相当大事にされていたのが分かる外観だ。

 

「ストラップ?」

 

 美咲が大切にしていたと思われるストラップ。

 成音はそれを、美咲の手に握らせてから端末にカードを読み取らせる。

 

『SCAN DRIVE』

「お願い……!」

 

 成音は目を閉じて、強く祈る。

 

※※※

 

 通常形態ではやはり歯が立たず、グングニルは満身創痍だった。

 相手はまだ余裕の状態で、グングニルは何とか最後の力を振り絞って必殺技を発動する。

 

「コレデキメル!」

『GUNGNIR FINAL DRIVE!』

 

 空に大量の魔法陣を出現させる。

 剣の怪人・改も、端末を操作してボタンを押す。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 剣の怪人・改は禍々しい光を纏いながら消える。

 通常の剣の怪人なら相手の前に出現し、目にも止まらぬ連続攻撃だが。

 

「……!」

 

 何十にも分身した剣の怪人・改が、一斉にグングニルへ斬りかかる。

 魔法陣から槍が放たれる前にキャンセルされ、グングニルが剣の怪人・改に吹き飛ばされた。

 

「グアッ!」

 

 鉄柵に叩きつけられ、変身が解けてしまうヴィーダ。

 そんな彼女相手に剣の怪人・改が振り向き、告げる。

 

「腕を上げてると思いきや、とんだ期待外れだな」

「……」

 

 ヴィーダは立ち上がれない。

 もう、手足を動かす程の体力すら残っていない。

 

「どうやらもう動けねえみてえだし、少し待ってやるよ」

「ナニヲ……スルキ?」

 

 剣の怪人・改が怪人の顔の下で笑う。

 

「そこで大人しく待っていろ。お前の友達や母親が、殺される所でも想像してな。キレれば嫌でも、無理に動くんじゃねえか?」

「……!」

 

 ヴィーダは瞳を見開いて、身体を何とか動かそうとする。

 だが……無理だ。

 ヴィーダにそう告げた剣の怪人・改が、その場から飛び降りた。

 

「マテ!」

 

 ヴィーダの言葉は届かない。

 出来るのは、動かない身体に無理矢理力を込めようとする事のみ……。

 

「ヴィーダ、トモダチヤママ……マモリタイ……!」

 

 まだ間に合う。

 そう信じて、ヴィーダは少しずつ動こうとする。

 

 

 



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第百二十四話

 忘れられないし、忘れたくもない。

 そんな思い出が自分の頭を過ぎった後、再び美咲は黒い空間に戻された。

 再び一人になり、誰もいない空間の中で……ソウジと最後に会った時の事をもう一度思い出す。

 

「……」

 

 美咲は、ソウジと約束した。

 頂点に立てる程の女性になって、必ずソウジを迎えに行くと。

 ソウジに頼らずとも、むしろ自分がソウジのように誰かを救える人間になると。

 けど……今の美咲は。

 

「裕太さん……」

 

 自分にとって大切なお供の心を救えないどころか、自分の言葉で誰かに重圧を抱えさせてしまうという欠点がある。

 ソウジに救われて、それからソウジの言葉を信じて、戦ってきたのに。

 自分は彼を超えるどころか、彼と同じことすら出来ない。

 

「ソウジ……すまねえ」

 

 普段の丁寧な口調から、昔の口調でソウジに詫びる。

 涙を流し、下を向いて……地面に拳を叩きつけた。

 

「お前を助けるどころか、私は自分のお供すら笑顔に出来ねえ。私はやっぱり、全然変われてねえ。デブで、人のせいばかりにして、それで泣いてたあんときの私と何も変われてねえんだ!」

 

 結局、美咲が変える事が出来たものは体型のみだ。

 

『よう』

 

 不意にそんな声が聞こえた。

 ここには美咲以外、誰もいない。

 返答など……ある筈が……。

 

「お前……」

「また泣いているのか、美咲」

 

 あの時の……初めて会った時の制服姿のソウジが、自分の前に立っていた。

 

「ソウジ……」

「おい、俺の言った言葉忘れたわけじゃないだろ? そんなくしゃくしゃな顔した奴が頂点に立てないって。だから笑ってみろよ」

 

 ソウジがあの時のように、笑顔で自分にそう告げる。

 美咲は……涙を流したまま言う。

 

「笑えるわけねえよ!」

「……」

「私は、やっぱりお前みたいにはなれなかった。お前より強くなりたかったのに、お前みたいにすらなれねえ。私は自分のお供すら……助けてやれねえ。それに……もう私死んじまったんだ。言ってただろ、死ぬ前に無理って言葉言えってさ。だから今言う。無理だ。私には無理なんだよ、頂点に立つなんて」

 

 あの時のように、弱音を吐く。

 ソウジの返答は、偶然にもあの時と同じだ。

 

「ああ、そうかもな」

「……」

 

 美咲はその言葉を受け入れようとした。

 あの時は反抗したが、今の状況的にはソウジの言葉が的を射ている。

 ソウジからも、美咲は思いあがっていたように見えたのだろう。

 

「俺の言葉を、泣き言を言う為のものにしようとしているお前にはな」

「……!」

 

 ソウジはあの時のように真っ直ぐな目で、美咲にそう告げた。

 



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第百二十五話

「俺はお前にそんな泣き言を言わせる為に、そう言ったわけじゃない」

「けど……」

「それどころか、お前は死すら振り切って進むって言った。今が、その時じゃないのか?」

「……」

 

 ソウジの口調は、やはり厳しくも優しかった。

 だけど……今はそれが、美咲にとっては少し重圧に感じてしまう。

 

「でも……じゃあどうすりゃいいんだよ! 例えここで生き返れたとして、私に何が出来るって言うんだよ! 一号さんと遥さんを和解させる事も、裕太さんの心を救ってやる事も出来ねえ! 私が何を言っても、皆その言葉に重さを感じちまう。それじゃあ意味がねえだろ!」

「本当に、皆がそうだったのか?」

「え……?」

「見てみろよ」

 

 ソウジが、外の様子を見せる。

 いや……実際には、今の覚醒しかかっている美咲が感じ取っているものなのだろう。

 成音と優香が自分を目覚めさせようと奮闘し、一号も目を閉じて祈る。

 遥も、それと一緒に。

 裕太だけは……まだ罪悪感に満ちた表情で何も出来ずにいた。

 

「皆……私を待っているのか? けど、裕太さん……」

「お前に救えなかったものは確かにあるかも知れない。でも、自分が救ったものの事を考え、それを誇りに思う権利はお前にはある。そして、自分が選んだお供は……どんな事があっても守り通さなきゃいけない。あんな辛そうな顔したお供放置して死ぬのは、俺ならしないし出来ない」

「……」

「一つ教えてやる。お前は俺みたいにはなれない。それは事実だ。だが俺以上になる事は出来る。俺は自分の夢が死んで、お前の手を離さざるを得なかった。それでもお前は、最後の最後……いや今も俺の手を掴もうと戦ってくれている。お前のお供がお前から手を離そうってんなら、お前はその根性で、お供の手を掴んでみろよ」

「ソウジ……」

 

 ソウジが笑みを浮かべる。

 美咲はそこで、ようやく気付く。

 

「私、ソウジと同じ事が出来なきゃ……誰も救えないってそう思い込んでた。私、馬鹿だ。馬鹿ですわ……」

「けど、それがお前の良いところだ。俺も、お前の馬鹿さに救われた一人だ」

「……」

「美咲、お前はその馬鹿のままで良い。馬鹿のまま永遠に進化しろ。そして、また会えた時に俺を驚かせてくれ」

 

 涙を拭って、美咲は返す。

 

「馬鹿馬鹿うるさいですわね……」

「馬鹿は馬鹿だろ。これは褒めてんだよ」

「そう聞こえませんわよ」

「はは……」

「あははは……」

 

 久しぶりに、二人で笑う。

 そして決意は、固まった。

 

「ソウジ、私やりますわ。必ず裕太さんの手を掴み取る。だって、彼は私のお供ですから」

「それでこそ、俺のお供だ。行け、美咲。その手で、未来を掴み続けるんだ」

 

 美咲は、一筋の光に手を伸ばし……そして拳を握る。

 白い光に包まれ、ソウジも、自分の身体も、何もかもが見えなくなった。

 最後に、消えていくソウジに美咲は言う。

 

「いつか、貴方の手も掴んでみせますわ。必ず……!」



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第百二十六話

 カードを読み取らせようとしたその時。

 

「……!」

 

 ガラスが割れる音が、科学部の部室内に響く。

 

「二号……」

「あ、あれ何系……?」

「ヴィーダ、負けたのか……」

「安心しろ、あいつはまだ生かしてある。まずはお前達を殺して、あいつを怒らせてからだ」

「二号!」

 

 一号がサック怪人に変身しつつ飛び出す。

 

「はあッ!」

 

 拳を振るったサック怪人を、剣の怪人・改が一撃で変身解除に追い込む。

 

「兄貴如きが俺を止められるわけねえだろ」

「……くっ。あああああッ!」

 

 もう一度変身し直して、突撃する。

 

「はあッ!」

 

 振るう拳は一つも当たらない。

 

「山内成音、早くしろ!」

「……。させるか!」

 

 成音に向かって、剣の光を放たれる。

 その時。

 

「うわあッ!」

 

 美咲を中心に、大爆発が巻き起こる。

 成音達は何とか剣の怪人・改の攻撃を浴びる事なく吹き飛び……一命をとりとめる。

 

「会長……会長!」

 

 爆風が収まる。

 寝台の上から、美咲の肉体が消えていた。

 

「今度こそ……完全に終わったな」

 

 剣の怪人・改が腕を組んで笑う。

 

「あら、私の能力をお忘れですの?」

 

 仮面ライダーボマー。

 紫の爆弾型の頭に、学生服を纏った不良のライダーが、剣の怪人・改の背後に姿を現した。

 

「会長!」

「美咲っち……」

 

 成音と優香が驚きの顔。

 

「美咲……」

 

 裕太は呟きながら、その姿を目にする。

 一号も表情こそ変えなかったが、どこか安心した顔になった。

 

「上手くいったのか」

 

 遥も信じられないと言いたげな顔だ。

 

「……ミサキ……」

 

 まだ屋上で地を這うヴィーダも、復活した美咲の脳波を読み取って笑う。

 

「ただいまですわ、皆さん」

 

※※※

 

「不完全とは言え、一度破壊した脳波が蘇るなんてな。面白い事もあるもんだ」

 

 剣の怪人・改が振り向いてそう告げる。

 

「私一人の力じゃありませんの。私に蘇って欲しいと思う人がこれだけいたから、私はここに帰ってこられた。それに……」

 

 美咲は目を閉じる。

 そして息を吸ってから、目を開けて呟く。

 

「私はまだ死ねませんわ。裕太さんや一号さんを泣かせたまま死ぬなんて、そんな事出来ませんのよ」

「とんだ茶番だな。そいつらの命は、もう永くないんだぞ」

「私は諦めない。死んでも絶対諦めませんわ!」

 

 ソウジが死ぬまで無理と決めないのなら、美咲は死んでも無理だとは決めない。

 死んで死んで、それでも……そこから絶対に蘇る。

 それが、自分の強さだ。

 

「面白れえな……やっぱお前は面白れえ。けど、蘇ってすぐで悪いが……今回は脳波だけじゃなく命ごと奪わせてもらうぜ」

「……そんな事させませんわ。今の私の命は皆からいただいたもの、今回ばかりは無駄にするわけにはいきませんもの」

 

 ボマーはあのカードを取り出し、スキャンドライブのボタンを押す。

 

『SCAN DRIVE』

「これが、私と……私についてきた者の力ですの!」

 

 カードを読み取る。

 

『COMPLETE ALL WEAPON DRIVE READY?』

 

 爆弾、火炎放射器、魔法の槍、騎兵、メリケンサック、そして……妖刀。

 カードに込められた全ての力が、ボマーを取り囲む。

 

「ハイパー超変身ですわ!」

 

 その声に呼応し、ボマーは青い炎に包まれる。

 武器の光がボマーに集約され、新たな姿へと変化した。

 

「……」

 

 爆弾の上の炎は赤くなり、全体的に青と白を中心とした色へと変化。

 ライダースーツの上に纏う服も、学ランから……まるで社長や政治家が着ていそうなスーツへ。

 頂点に立ちたい、そう願う美咲の理想を体現したような姿だ。

 六本のボムビットは水色に、そしてバットが金色へ。

 変わらない黄色の複眼で真っ直ぐ剣の怪人・改を見据えて言う。

 

「仮面ライダーオールウェポンボマー……それが今の私の名前ですわ」

 

 

 

 

 

 

 



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第百二十七話

 剣の怪人・改が笑みを浮かべながら剣を構える。

 

「へっ……今度こそ期待して良いんだよな?」

「期待? 何の事ですの? 貴方がするべきは、私に倒される覚悟ですわ!」

「……上等だ!」

 

 剣の怪人・改が姿を消しつつ、ボマーとの距離を詰める。

 手にしている剣をボマーの脇腹に向かって振るう。

 

「……」

「遅いですわ!」

 

 ボマーが金色のバットで防ぎきる。

 

「やるな……」

「せやあッ!」

 

 防いでから弾き、剣の怪人・改の腹部を蹴り飛ばす。

 怯んだ隙を見て、ボマーが呟く。

 

「ここから本領発揮ですわ」

 

 金のバットの柄部分にあるスイッチを押す。

 

『ODIN LANCE!』

 

 バットからの音声の後、ボマーの持つ金のバットが仮面ライダーグングニルの持つ槍へと変化。

 そして更にもう一度端末を操作し、取り付ける。

 

『WEAPON DRIVE ODIN LANCE』

 

 背後のボムビットが形を変え、ボマーの左手へ。

 変化したバットと同じく、グングニルの持つオーディンランスへ。

 

「はっ!」

 

 ボマーは二本の槍を手に、剣の怪人・改に対する。

 剣の怪人・改は早い動きを見切れず、二本の槍の猛攻に押し負けた。

 

「ぐあっ……」

「はっ!」

 

 ――ヴィーダさん、力を借りますわ。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 ボマーは左手の槍を上に投げ、また形を変形させる。

 ボムビットだったそれは、グングニルが展開するものに似た魔法陣の形に変化し、そこから数本の槍が射出された。

 

「くっ……」

 

 剣の怪人・改がその威力に怯む。

 あともう少しの所で、ボマーが最後の切り札を使用する。

 

「今度は、成音さんの力を借りますわ」

『SUMMON DRIVE FLAME SHOWER』

 

 端末を操作した後、ボマーの背後のボムビットが変形し、火炎放射器怪人の形へ。

 ボマーの武器も自動的に、火炎放射器怪人の武装に。

 

「あれが……」

 

 成音はそれを見て驚く。

 武器を変化、そしてその武器の必殺技を使うだけでなく、怪人そのものまで召喚しているボマーの強さには、驚かざるを得なかった。

 

「いきますわよ」

 

 ボマーが端末を操作し、ベルトに取り付ける。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 怪人とボマーの持つ火炎放射器が、エネルギーを充填させた。

 放射口から朱の光を放ちながら溜め、完了してから引き金を引く。

 

「はっ!」

 

 二つの放射口から勢いよく、爆炎が放たれる。

 剣の怪人・改に衝突と同時に大爆発を起こし、敵の身体を勢いよく吹き飛ばす。

 剣の怪人・改は変身解除し、足利明人の身体に戻ってから、ロッカーに激突した。

 

 

 



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第百二十八話

 足利明人の姿に戻った二号。

 何とか意識を保ち、ボマーの姿を捉えて笑う。

 

「へっ……こいつはすげえや。今の俺じゃ、分が悪いってもんだ……」

「さあ、明人さんの身体から出ていきなさいな」

 

 ゆっくり近づいたボマーが、金のバットを向けて要求。

 

「無茶言うなよ。それはあの身体じゃなきゃ出来ねえし、まだそういうわけにはいかねえんでな」

 

 二号はポケットから、煙幕弾を取り出す。

 ボマーの前でばら撒き、煙に紛れて姿を消し、どこかへと消えた。

 

「六角美咲、お前も絶対いつか俺がこの手で倒す。それまでどこの誰にも殺されるなよ」

 

 最後に聞こえた声だ。

 丁度オールウェポンの効果が切れ、通常フォームを経ずに、六角美咲の姿へと戻る。

 

「……」

 

※※※

 

 

 菫が肉体の最終調整に入りだした頃、二号は明人の身体をボロボロにしながら入室した。

 

「その様子や蒲生がいない所を見るに、美咲の仲間達に邪魔されたようだね」

「……お袋は何でもお見通しか」

 

 床に座り込んで、歪んだ笑みを浮かべる。

 

「まさか、破壊した脳波を復活させるなんてな」

 

 それを聞いた瞬間、菫が眼を見開く。

 

「それは遥がやったのか?」

「ああ。六角美咲が生き返った上に、更に強くなりやがった。そのドライバーでも、もうキツいんじゃねえか?」

 

 菫専用のドライバーを指さす。

 

「もう……切札を使う時が来たというわけか」

 

 菫は培養器の中にいる肉体を一瞥してから告げた。

 

「予定より早いが、君にこの肉体をあげよう」

「おいおい、そいつは一号を殺してからの約束だった筈だろ? 良いのかよ」

「……こう言っちゃ難だけど、奇跡とは言え相手は一度破壊した脳波を復元する事が出来る。それに相手の戦力が今以上に上がってしまうのは非常に厄介だ」

「気持ちは分かるけどよ、焦ってもアンタの思い通りになるか分かんねえぞ」

 

 菫は内心動揺している。

 六角美咲さえ消えれば、もう少し楽に遥達を追いつめられると確信していたが、まさか破壊した脳波を蘇らせてしまうとは想像もしていなかった。

 だが。

 

「心配はいらない。繋ぎの策もきちんと用意してある」

菫が机の上に置いてあるものに掛かった布を持ち上げる。

 そこには蒲生や二号が使った、突然変異体の因子が大量に入った薬品数本と、量産化されたアークソードドライバーがある。

 

「もうそんなに作ったのか」

「ああ……量産化を急ぎ過ぎて多少オリジナルよりも劣る性能だが、戦力を削ぐには十分だろう」

「ただ、それを誰に使わせるんだよ。もう並大抵の奴じゃ、六角美咲には勝てないぜ」

「六角美咲を倒すのは君だ。まずはそれを支援する者達を倒す。例えば山内成音。一人でいる所でドライバーごと破壊すれば、遥の作った人形は強化能力を失う」

「大体それだって、倒せればの話だろ? 倒せなきゃどうするんだ?」

「別にそれならそれでも構わん。この肉体を強化する時間稼ぎの役割も担っているのだからな」

 

 菫は続けながら、他に隠していたものを見せる。

 そこには拘束されている〇×女子高の生徒達の姿が。

 

「ドライバーは彼女らに使ってもらう。六角美咲を見放した、生徒会のメンバー達だ」

「おいおい、こいつら全員誘拐したのか?」

「万が一の時の為に、蒲生を使って誘拐させておいたのさ」

「よく学校にバレてないよな」

「木を隠すなら森の中……と言うだろう?」

「はあ、なるほどな」

「洗脳は済んでいる。あとはこの薬を投与するだけだ」

 

 菫は悪魔のような笑みを浮かべて、薬を一瞥した。

 

 

 

 



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第百二十九話

この話は、是非この曲と共にご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=HPjcvYaFntI


 あの戦いが終わった後、他の皆が美咲の活躍と復活を嬉しそうにしていた所で、俺は隙を見て蘇我高校を去った。

 美咲は、俺を泣かせたまま死ぬなんてしたくないと言っていた。

 けど……俺は美咲に優しくしてもらう資格なんてない。

 美咲から離れなければ。

 その思考だけを離さず、俺はどこかへと歩き出そうとする。

 

「どこに行くつもりですの?」

「……」

「待ちなさいな」

 

 何も言わず、一瞥してから去ろうとした俺の腕を引っ張る。

 

「まさか、私に何も言わずどこかに消えるつもりでしたの?」

「……」

「裕太さん……、なんで私の顔を見てくれないんですの?」

 

 近付く美咲から距離を取り、顔を横に向ける。

 

「やめてくれ……美咲」

「裕太さん……」

 

 それでも諦めず歩み寄る美咲を、俺は押し返す。

 

「もうやめてくれよ! 俺はお前を殺した……。俺はお前に救われる資格も無ければ、一緒にいる資格もない。俺は感情に任せて行動したせいで、お前を殺した……。けじめだよ。だから、もう行かせてくれ……ほっといてくれよ」

 

 涙をこらえて、俺はそのまま歩こうとした。

 しかし。

 

 ――パチン!

 

 美咲はそんな俺の頬に、平手打ちをする。

 

「……」

「けじめ? これがですの?」

「美咲……?」

「私がどれだけ貴方を心配したと思ってるんですの!?」

 

 美咲が涙を堪えるような表情をしながら、そう叫ぶ。

 

「……ッ!」

「私には明人さんや蒲生さんが帰ってくる事も大事でしたわ。けど、何より貴方にここにいて欲しかったんですわ! それなのに、いなくなる事がけじめだなんて勝手に勘違いしないで欲しいですわ!」

「……」

 

 俯いた俺に、美咲が抱き着く。

 心なしか……母親の温もりにも似たようなものを感じた。

 

「美咲……?」

 

 母親の温もりを感じながらも、彼女は温もりの感じとは反対に、子供のように泣きそうになっていた。

 いつもは年上である自分にも強気な態度をとっていた彼女が……今は普通の女の子のように泣きそうになっている。

 

「私……怯えてましたの。このまま貴方が、どこかに行ってしまうんじゃないかって。まだやりたい事が、沢山あるのに……」

「……怯える事なんてないだろ。俺は別に、何も出来てない。生徒会の仕事を手伝うくらいしか、俺はしてない。お前は一人で歩ける。だから……」

「……貴方は馬鹿ですわ。もうそれ以上のものを……私は貰ってますのよ。だから、貴方を離すなんて私には出来ませんわ……」

 

 抱きしめる力が強くなる。

 

「私は……貴方といた時間を楽しいと感じていましたのよ」

「そう……なのか?」

「ええ……」

「……そう……か」

 

 嗚咽で、上手く言葉が出ない。

 俺は泣いていた。

 泣くのを我慢している女の子に抱きしめられながら。

 

「私はまだ、貴方と一緒にいたい。貴方の夢を叶えたい。貴方を、死なせたくない……誰にも、それが無理だなんて……死んでも言わせませんわ」

「……」

 

 俺は何とか、今も上手く動かない口で告げる。

 

「ありがとう……」

 

 俺は感じた。

 この後……俺がどうなるかは分からない。

 美咲の尽力のおかげで生き残れるかも知れないし、力及ばず死ぬかも知れない。

 けど……どんな結果になろうと、美咲が俺をお供に選んだ事だけは後悔しないと。

 何せ彼女は、紛れもなく……いい意味でも悪い意味でも、俺の人生を破壊した爆弾だから。

 

「一緒に帰ろう、美咲」

「当たり前ですわ……だって」

「おう」

 

「私一人じゃ、生徒会の仕事が一つも片付きませんのよ」

 

「……は?」

「さあ、また手伝ってもらいますわよ! 裕太さんがいれば、すぐに終わる気がしますわ!」

「……やっばさっきのありがとう取り消しても良いか?」

「さあ今から家に行きますわよ! ご飯もごちそうしますわ」

 

 聞いてないし……。

 さっきまでの感動を返せ……そう言いたいのは山々だが、俺はそれを口に出せなかった。

 あの涙を堪える表情が、自分に対する感情を物語っていた気がしたから。

 

「待てよ、やるなんてまだ言ってないぞ!」

 

 いつもの調子でそう返答しながら、俺は彼女の背中を追いかけた。

 

 

 

 




次回予告

初「……」
美咲「あ! 初さんがな
初「きかけたけど最後で台無しになったわ」


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第百三十話

 その様子を、一号は陰から覗いていた。

 美咲を追いかける裕太の姿を見て安堵した所に。

 

「アンタもやっぱり心配だったの?」

 

 成音が声を掛けてきた。

 

「……ああ」

 

 一号は少しばかり俯いて答える。

 美咲と裕太が仲間同士の関係に戻れなかったのだとしたら、きっと自分のせいだと一号は思っていた。

 仮にもし、二人が離れ離れになるようなら、どんな手を使っても説得する気で様子を見ていたのだ。

 

「俺には、その義務があると思ったから……」

「やらなきゃいけない……そう思ったわけね」

 

 一号に向かって、口元に笑みを浮かべて言う成音。

 

「成音もそうなのか?」

「あたしは違うかな。少なくともやらなきゃいけないとか、そういう事じゃなくて……二人が一緒にいて欲しいって思ったのよ」

「……」

「アンタもそうなんでしょ? 義務とかそうじゃなくて、二人には一緒にいて欲しいって……」

「……分からない」

 

 一号はそう答える。

 前まで彼の中には、福沢裕太の脳波があった。

 完全に自分の中から脳波が消滅した今でも、一号自身には福沢裕太の記憶の一部が朧気に残っている。

 残った記憶の中にはどれも、笑っている美咲の顔があった。

 脳波が無くなっても、一号の記憶にもそうやって残る程、裕太にとって美咲は大きな存在となっていたのが分かる。

 だから、裕太にもう一度美咲の笑顔を見せてあげる事が、一号のすべき事だと思った。

 

「けど、不思議だ。俺も、あの光景が好きだ」

 

 自分の中に、もう福沢裕太はいない。

 だから本来あり得る筈はないが、一号も美咲の笑顔を見れて嬉しいと感じていた。

 

「アンタ自身が、そう感じてるんだと思うわよ」

「俺自身が?」

「ええ」

 

 成音も笑みを浮かべて、仲良さげに歩き続ける二人の背中を見る。

 彼女に言われて、一号は改めて自分の気持ちを整理した。

 そして答えた。

 

「成音」

「どうしたの?」

「俺に、菫と一緒にいる事以外に叶えたい夢が増えた気がする」

 

 一号はもう一度、美咲の笑顔を思い出す。

 

「あの光景を守りたい。その為なら、俺は命を賭ける」

 

 それを聞いた成音が言う。

 

「良い夢ね……けど、命を賭けたら会長に怒られちゃうかもね。アンタの命も、会長にとっては死ぬ気で守りたいものの一つだろうし」

 

 言われて、一号はあの時を思い出す。

 自分を庇って、脳波を破壊された美咲の姿を。

 そして、自分は死んでも裕太と一号の命を諦めないと言った彼女の姿を。

 

「訂正しよう。俺は生きる。生きてあの光景を絶対に守る。守るために死なない」

 

 一号は改めて、成音にそう告げた。



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第百三十一話

 美咲を追いかけ、俺は久しぶりに彼女の自宅を訪れた。

 帰って来た娘を嬉しそうに迎える両親の姿を見てから、俺は久しぶりに美咲の部屋へ。

 美咲が先に扉を開け、俺も一緒に中に入る。

 

「変わってないな……この部屋も」

 

 そして大量に詰まれた書類も。

 

「はいそこ書類ばかり見ない」

「お前ああは言ってたけど、ちゃんとやってたんだよな?」

「そうですわよ」

「それでまだこれだけあるんだよな?」

「はいですの」

「これ、提出期限はいつなんだ?」

「明日ですわ」

「……」

 

 俺から言える事はたった一つだ。

 

「何でこうなったああああああ!」

「私一人じゃ手がつけられない上に死んでたんだから仕方ないじゃないですか!」

「うう……それもそうだな」

「とにかくやりますわよ!」

 

 美咲が床を突き破りそうな勢いで、座布団へダイブ。

 すぐ様ペンを取り出し、作業開始。

 

「はあ……」

 

 俺も溜め息を吐きながら、久々に書類に手を付け始めた。

 

※※※

 

 二時間後。

 美咲も書類を終わらせ、俺も美咲から与えられた書類を何とか書き終える。

 今日俺は蒲生と剣を交え、そして追いつめられたが、その時以上に今の方が疲労感が半端ない。

 美咲は俺に見せているいつもの余裕そうな顔だ。

 

「腹減ったな……」

 

 ご馳走すると言われた身で何だが、俺の口からそんな言葉が零れる。

 今日は色んな事があり過ぎた。

 美咲の母親の作る料理は美味しいし、早く食べたい。

 そんな事を考えていたが。

 

「きゃああああああッ!!」

 

 一階からの悲鳴。

 美咲の母親のものだ。

 

「行きますわよ!」

「ああ」

 

 気付いた俺と美咲で一階へと駆け下りていく。

 俺は念のためにムラマサドライバーを装着し、玄関へ。

 そこには。

 

「どうしたんですの!?」

「あ、あ、あれ……」

「……どうも」

 

 美咲の母親が指さす先にいた人物は、俺と瓜二つの顔をした一号だ。

 大方、ドッペルゲンガーとでも思ったのだろう。

 

「一号さん……」

 

 美咲が半目で一号を見る。

 

「え? 誰? 裕太くんじゃないの?」

「……」

 

 美咲の母親が困った目で、俺と一号を交互に見る。

 まあ、そうなるか。

 

「私が説明しますわ」

 

 美咲が母親にそう告げた。

 

※※※

 

 複雑なことは話さず、取り敢えず俺と一号は偶然顔が似てるだけの者である事、一時期俺が行方不明になり、その時は一号を替え玉にしていた事などを母親だけでなく、俺の雇い主である美咲の父親にも説明。

 

「なるほどな……」

 

 一号はバツが悪そうな顔で、俺の方を見ようとしない。

 取り敢えずその時は何も言わず、俺は美咲の父親にだけ目を向ける。

 

「よし、どっちもよく働いてくれてるし……二人とも俺が面倒を見てやる」

「「え?」」

 

 俺と一号が同じ声でそう呟く。

 

「うち基本的に従業員少ないし、多い方が助かるし、賑やかだしな」

「いや、あの、おやっさん?」

「俺も……その……」

「じゃあそういう事で、明日からよろしくな。よし、飯にしよう!」

 

 俺達の言葉を聞かず、食卓に向かう美咲の父親。

 

「……」

 

 その対応を一番不安そうな顔で受け止めていたのは、案の定一号だ。

 

 

 

 

 



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第百三十二話

 

 夕食後、俺は美咲にさっきの話をした。

 

「ええーっ!!」

 

 美咲から目玉が飛び出しそうになっていた。

 

「……」

「裕太さんと一号さんが、明日から一緒に働く……んですの?」

「ああ」

 

 俺がそう返事すると、美咲が問いかけてくる。

 

「一応聞きますわよ。一号さんと一緒でも問題ありませんの?」

「……」

 

 聞かれて、少しばかり自信が無くなった。

 さっきの場面で美咲の父親を責める事は出来なかったが、流石に自分が殺そうとした相手と普通に仕事をするのは難しいだろう。

 彼をこれ以上責めても仕方のない事は俺も分かっているつもりではあるが。

 そして特に相手は、その事を気にしているようだし。

 

「私が上手く父さんに言いましょうか?」

「いや、良い」

「……?」

 

 俺は頭を振るうと、美咲が首を傾げる。

 

「確かに俺は一号を恨んで殺そうとして、結果的にお前を一度殺した。お前が死んだのも、お前があいつを守りたかっただからだろ?」

「ええ」

「お前はそんな俺をこれからも仲間として受け入れてくれた。だから、お前の目に見えているあいつを、これから俺も理解してみるよ」

「裕太さん……分かりましたわ」

 

 美咲が嬉しそうな顔で、俺にそう告げた。

 

※※※

 

 けど、俺はそこで話を止めなかった。

 純粋にさっきまでの出来事に対して、疑問を抱いていた事がある。

 

「まあでもそれはそれとしてよ」

「なんですの?」

「一号の奴、普通にここに来て飯食って、今外で寝てるわけだけど……」

「ええ」

「あいつ今ここに暮らしてるの?」

「ええ」

「ええ、じゃないだろ!」

「?」

「仮にもあいつ男だぞ。大丈夫なのか? その……同じ部屋で」

「何を気にしてるんですの?」

 

 ……。

 

「え?」

「私は別に男女一緒の部屋で寝ても気になりませんわ」

「な、なんで?」

「だって欲情されても、私が自衛すれば良いだけの話ですもの」

「そうですか……」

 

 貞操観念とかどうなってんだよ……。

 と悩ませていると、美咲が急に腕を組んで半目で言い出す。

 

「大体貴方は逆に、女の子に対しての積極性が足りませんわ」

「な、なにをー!?」

「それだからモテないんですわ」

「お前にだけは言われたくねえな」

「失礼な! 私の中学時代は……その、すごくモテモテでしたわ!」

「へえ、じゃあ彼氏はどれくらい出来たんだ?」

「それはセクハラですわ!」

「そりゃねえだろ!」

「じゃあ貴方は彼女出来た事あるんですの!?」

「二十三歳童貞です!」

「童貞が許されるのは中学生までですわ」

「別に良いだろ!」

 

 というか元教師という立場的にそんな事言えねえし。

 



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第百三十三話

 久しぶりに美咲は裕太と軽口を叩き合った後、美咲のスマホからファイズフォンの着信音が鳴る。

 というか、美咲がカスタムした着信音だ。

 相手は狩野遥。

 

「もしもし」

 

 美咲は端末のボタンを押して、耳に当てる。

 

『六角美咲、蒲生の治療とボマードライバーの調整終わったぞ』

「ありがとうございますわ」

『だがすまない。蒲生の中にあった薬を中和する事には成功したんだが、洗脳までは何とも出来なかった』

「そうでしたの……」

『脳波を調べたら、ある種の記憶操作も行われていた。こう言っては難だが、元に戻すのは中々困難を極めるだろうな』

 

 遥が疲れた声でそう告げた。

 

「それなら、その状態からでも私を認めさせてみせますの」

『……』

「一号さんだって、互いを理解し合う事で仲間になれましたもの。ですから、絶対に無理なんて事はありませんわ」

 

 

 

『そうか。ただ、お前も生き返ったばかりなんだ。あまり無茶はするなよ』

「私は無茶をした事など一度もありませんわ」

 

 美咲は笑顔でそう告げる。

 

「他の誰かにとっては無茶でも、私には違いますもの」

『お前らしい答えだな』

「また目覚めたら、連絡お願いしますわね。私がいち早くお見舞いに行きますわ」

『ああ、了解した』

 

 遥がそう呟いてから、美咲が思い出したように問いかける。

 

「ところで、ドライバーの調整はどんな感じですの?」

『ああ、そっちの説明を忘れていたな』

『急ごしらえで用意したオールウェポンを改良して、ボマードライバー自体にも機能を一つ追加した』

「機能ですの?」

『ああ。これを作った当初にそんなところまで作る余裕はなかったが、お前が私に協力してくれている礼というか……』

「礼?」

『そうだな、お前は仮面ライダーなのにないものがあるだろ?』

「ないもの?」

 

 美咲は少し考えた。

 仮面ライダーボマーにはファイズをオマージュしたっぽい端末型のベルトがあるし、必殺技もバットをボムビットと共に叩きつけるライダーインパクトだけでなく、ちゃんとライダーボムキックという固有のライダーキックがある。

 それに強化フォームもハイドロフォームと、ついさっきオールウェポンが追加された。

 しかし……それでも足りないものがあった。

 

「あ、バイクですわ!」

『そうだ。バイクに変形する機能を追加した』

「おおー!」

 

 美咲は大歓喜。

 

『あ、だがお前免許はあるのか?』

「……」

『持ってなかったんだな……?』

「はいですの……」

 

 さっきとは一転し、がっくりと項垂れる。

 

『まあ戦闘時に使うくらいなら問題ないだろう。くれぐれも移動に使うなよ』

 



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第百三十四話

 嬉しい知らせを聞いた次の日。

 いよいよ、運命の出勤だ。

 

『おう、六角か。どうした? 生徒会の資料の期限なら待ってやらんぞ』

「そう言われても待ってもらいますわよ先生。今緊急事態が起きてるので休みますわ」

『緊急事態だぁ? おばあちゃんでも助けてるのか?』

 

 困っているおばあちゃんを助けるだけなら美咲でも簡単に出来る。

 けど……。

 

「そうですわね。困っている二人のおばあちゃんを助けないといけませんわ。それも二人仲良くちゃんとやってくれるように……」

『どういう状況だそれ……てか、終わってないからサボる為の言い訳に使うんじゃねえだろうな? どうでも良いから早く来い』

「貴女の前で自爆テロしますわよ?」

『ひいっ! すみませんでした!』

 

 ――許してくださいな先生。それくらい緊急事態なんですわ。

 

「「行ってきます」」

 

 同じ声、同じ容姿の二人のおばあちゃんが家を出ていく声が聞こえた。

 美咲は見守りに備えて……変装の準備を始める。

 

「キャストオフですわ」

 

 ――CAST OFF! CHANGE……UNDERWEAR。

 

 そう脳内再生された音と共に、美咲は下着姿になった。

 

 数分後に、変装完了。

 いつもの眼鏡とは違う、度入りのサングラスを着け、服も多少ラフなものへ。

 

「……これなら問題ないですわ」

 

 昔自分がヤンキーだった頃に着ていた奴だが、問題なく着れる。

 リバウンドしないように努力し続けたかいがあったというものだ。

 

「よしっと……」

 

 そのまま自転車に乗り、美咲の父親が経営する玩具屋へと進んだ。

 

※※※

 

 到着後、まずは店の近くに隠れて……様子を確認する。

 

「「いらっしゃいませ」」

 

 朝からやってきた子連れの客に、裕太は元気よく、一号は粛々と挨拶をする。

 二人とも同じ顔だが、態度はまるっきり違う。

 

「あれ、裕太くん双子だったの? そっちは弟さんかお兄さん?」

「えーっと……」

 

 子供の母親からの質問に、どう答えるべきか困る裕太。

 

「あーでもお母さん、よく言うじゃないですか世の中には似たような顔の人が二、三人いるとかいないとか。それが偶然ここに来ちゃっただけですよ」

「そうなんですか?」

「そうそう。新人として入って来た時は驚いちゃって……」

 

 何とか誤魔化す裕太。

 だが別の子連れ客が現れ、裕太を指さして言う。

 

「あれ? くらいかおのおじちゃんあかるくなった……え? ふえてる?」

 

 一号を見て混乱する子供。

 裕太は身体を震わせ……叫ぶ。

 

「おじちゃん↑だと!? ふざけんじゃねえよお前、お兄ちゃんだろォ!!」

 

 

 

 

 

 




次回予告

初「裕太、語録出すなよ……」


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第百三十五話

 まあ取り敢えず、二人が喧嘩になる事はなく、きちんと仕事をこなし続けた。

 実を言うと、ちゃんと裕太や一号の仕事ぶりを見た経験はほぼないに等しい美咲だが、見ていて分かるのは……裕太はやや不器用だが、愛想があり、お母さんや子供の客に人気。

 一号の方は、通りがかった若い女性に好印象のようだ。

 仕事の方も非の打ち所がないくらい完璧。

 確か前に美咲が心配して聞いた時は、取り敢えず自分の中にある裕太の記憶を使って覚えたのだとか。

 ただやはり問題はある。

 

「お、おい一号。ちょっとこれ運ぶの手伝ってくれよ」

「……別の人に頼んだ方が良い」

「いやんな事言ってる場合じゃないから!」

 

 そう、やはり一号は裕太に対して距離をとっていた。

 裕太の方は何とか過去の彼ではなく、今の彼を受け入れ、歩み寄ろうと努力をしてくれているが、一号の方は罪悪感故か……あまり会話をしようとしてくれない。

 

「うう……どうしましょ……」

 

 そうこうしてるうちに、昼時に。

 

「おーい裕太くんとそれに……」

「あ、俺は一号です」

「じゃあいっちー、昼飯入って良いぞ」

 

 美咲の父親にそう言われ、二人は休憩室へと向かった。

 

「はあ、昼休み中に進展があると良いのですが……」

 

※※※

 

 美咲も取り敢えず休憩室近くに隠れる。

 窓が開いている為、様子は取り敢えず見えた。

 

「……」

 

 二人がもくもくと電子レンジで温め、食べようとしてるのは、今日朝から美咲の母親が作ってくれた弁当。

 美咲は一人っ子故、あまり親が凄く張り切って飯を作る場面は見た事ない。

 だが、今日の母親の作る様子は中々に張り切っていたのを覚えている。

 

「まだ距離取り続けてますわね……」

 

 凄く距離が遠い。

 裕太が少しずつ近付こうとしているが、それに伴って一号も距離を取る。

 やがて裕太が頭を掻きむしり、痺れを切らして言う。

 

「なあお前、こんな事ずっと続ける気か?」

「……」

 

 裕太の問いに、一号は答えようとしない。

 

「確かにお前のせいで俺は死んだ。お前に俺の人生を奪われた事は許せないけど、俺はお前が美咲達を守ろうとしてんのを何回も見た。だから、今はお前に復讐しようなんて思ってない」

「……」

「お前にも色々あったんだろ? よく分かんないけど……だったらむしろさ、俺が歩み寄ろうとしてんだからお前も……」

「俺は別に美咲達の為にしてるわけじゃない。俺は美咲の気持ちに救われた。だから俺も、その恩を返そうとしてるだけ。善意でお前達といるわけじゃない」

 

 一号が自分に言い聞かせるようにそう告げる。

 その言葉に、裕太が返す。

 

「……そういうめんどくさいの、もうやめたらどうだ?」

 



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第百三十六話

「……」

「なんというか、上手く話せないけど……元は敵だった自分を気遣ってくれた事が嬉しいんじゃないのか? だからそういう美咲が好きで一緒にいる。それでいいじゃないか」

「俺は……罪人だ。それに菫のしている事が悪だと思いながら、彼女の指示だからという理由だけで、お前や遥の幼馴染を……。だから、俺が美咲にそんな甘えた感情を抱くなどあってはならない」

「あってはならないんだろうけどさ、もう抱いちゃってんだからしょうがないだろ」

「……」

 

 一号は俯く。

 

「それに、お前が美咲の為に戦ってくれるんなら……こっちとしても恨んだり出来ない。今の俺もお前と、立場は似たようなもんだしな」

「……ああ」

 

 納得したように頷く一号。

 

「それに何よりよ、なんかそうやって変に距離取られると気持ち悪くて仕方ないんだよ。普段から仲良くしろとは言わないけど、仕事の時くらい協力する場面は協力しようぜ」

「……ああ」

 

 もう一度頷く一号。

 それから呟く。

 

「俺は自分の罪と向き合い、自分が奪ってきた命に対して償うと決めた。その為に協力してくれる美咲、そして一応は仲間と決めてくれた遥、そして今こうして歩み寄ろうとしているお前。俺はその人達の為に命を使う」

「一号……」

「だから戦いの時は、俺にも背中を預けてくれ。お前の為に、この命を使ってやる」

 

 一号の眼差しに、裕太は笑みを浮かべて返す。

 

「馬鹿野郎。お前にも好きな奴はいるんだろ。だったらとっとけよ。美咲の為にもよ」

 

 美咲はそれを見届けて、ゆっくり背を向けて去り始めた。

 

※※※

 

 ところが。

 

「うわっ、なんだかすごいかっこうのおねえちゃんいるよ」

「しっ、見ちゃダメよ」

「完全に見ちゃダメなもの扱いされてますわ……」

 

 それもその筈……。

 いつもの割と清楚な恰好から一転、露出の高い派手な変装をしている。

 胸の谷間なんかも見えて、男子からしたら注目の的。

 まあ裕太にバレさえしなければよかったのだが、流石にやり過ぎたか。

 

「何してんだ美咲」

「ひっ……」

 

 恐れていた事態が起きた。

 さて、どう誤魔化すか。

 

「ミサキ? ワッツ? フーイズディスネーム?」

「いやもう声でバレてるから」

 

 グラサンを取る裕太。

 

「なんだよ見に来てたのかよ」

「そ、そうですわよ。貴方達二人とも危なそうでしたし」

「そ、それは分かるんだけど普通にくれば良いだろ。なんだその恰好」

「普段の私のイメージと違うものと考えたらこれしかなかったんですのよ!」

「あれ、もしかして……裕太くんの彼女?」

「「違います!」」

 

 子供と一緒に来た母親に誤解されてしまった。



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第百三十七話

久しぶりの完全ネタ回(笑)


「まったく……」

 

 裕太の彼女として扱われた事を不満に思いながら、美咲は更衣室を借りて普段着に。

 眼鏡もいつもの奴を。

 

「あ、たまにくるおばちゃんだ!」

「お……おば?」

 

 そう。

 美咲もたまに店を見に来るのだが、子供達によくおばさん呼ばわりされる。

 

「ねえねえ、へんしんポーズみせてよ!」

「これは……Vバックルですわね」

 

 子供から渡されたのは龍騎のベルト。

 バックルの柄は……蟹。シザースの柄だ。

 

「よりにもよってこれですの……?」

「なんかマズいのか?」

 

 裕太が問いかける。

 

「このベルトの持ち主は……モンスターに頭から食べられて死んだんですわよ」

「そんなまどマギ三話みたいな事があったのか……」

「ねえねえはやくはやく!」

 

 まあでも、この子はそんなシザースでも好きだと思ってくれたのだろう。

 だからやるしかない。

 

「いきますわよ」

 

 美咲はまず鏡の前に立ち、シザースのバックルを勢いよく前に突き出す。

 右腕を大きく動かしてから前に突き出し、叫ぶ。

 

「変身ですわ!」

 

 そしてバックルをベルトに挿入。

 両拳を握ってから、そのまま勢いよく鏡にダイブ……出来なかった。

 

「ぎゃああああああッ!!」

 

 鏡に頭をぶつけ、その勢いで鏡が倒れて割れてしまう。

 

「何やってんだ馬鹿……」

「いてて……」

「おねえちゃんおもしろーい!」

「もう龍騎ライダーの変身ポーズはしませんわ……」

「世界中どこに行ってもリアルに鏡に突撃するのはお前くらいじゃないか?」

「でもすごいね!」

「ら、ライダーになって頂点を極めるのは興味深いですわ!」

 

 シザースの台詞を叫ぶ美咲。

 わーいと喜んでいる様子を見るに、余程好きなのだろう。

 ライダー大投票でもランク外だったし、まあ……シザースもこれを見れば喜んでくれるんだろう。 

 

「でもお姉ちゃんはナイトが好きですわね」

「べただね」

「ベタで悪いんですの!? カッコいいんですわよナイト!」

「ダメだ、俺じゃ何も突っ込めない」

 

※※※

 

 その子はリバイスドライバーとバイスタンプを購入し帰宅。

 入口で裕太と共に見送る。

 

「じゃあね!」

「シザースの事、好きでいてあげてくださいですわ!」

「うん!」

「そうそう。こいつを馬鹿にしても、シザースの事は馬鹿にしちゃダメだな」

「それどういう意味ですの?」

「いやほら、色んな所から圧が掛かりそうだしって爆弾を出すなしまえ馬鹿!」

「問答無用ですわ!」

 

 爆弾を投げる。

 近くの電柱で跳ね返り、美咲の所で大爆発。

 

「いてて……」

 

 裕太は吹き飛ばされたのみだが、美咲は……巻き込まれた。

 

「……」

「なんで……なんでこうなるんですのよぉ……」

 

 

 



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第百三十八話

 結局何だかんだ美咲も残り続け、閉店時間が迫り。

 裕太と一号、そして美咲や他の従業員と共に掃除をした後、裕太と一号はタイムカードを押してそのまま帰路へ。

 

「ひとまず、裕太さんと一号さんは問題なさそうですわね」

「そうみたいだな」

「……」

 

 裕太が一号に笑みを見せると、一号は少し目を逸らす。

 

「二人はこれからどうするつもりですの?」

「俺は久しぶりにマンションに帰るわ。冷蔵庫の中身とかヤバそうだしな」

「俺は美咲と共に帰る」

 

 横目で一号を見る裕太。

 

「取り敢えず家に行くのは一号さんだけですのね」

『~♪』

 

 着信音に設定しているファイズフォンの音が鳴る。

 相手は狩野遥。

 

「はいですわ」

『六角美咲、蒲生が目を覚ましたぞ』

「本当ですの?」

『ああ。だが案の定、私を見てすぐに襲い掛かった。ガスドライバーはこちらの手にあるから、もう抵抗は出来ないが……来てくれるか?』

「今から行きますわ」

 

 美咲はそう呟いて通信を切る。

 

「蒲生さんが目覚めましたの。今から蘇我高校に行きますわ」

「俺も同行した方が良いか?」

 

 一号が美咲にそう問う。

 

「いや、これは私と蒲生さんの問題ですの。私一人で解決させてくださいな」

「……分かった」

「大丈夫ですのよ一号さん。私が心をぶつければ、きっと……」

 

 少しだけ自信を失くしそうになる。

 けど、失くしたら……きっと凄く後悔する事になるだろう。

 だから今は、やるしかない。

 

「行ってきますわ」

 

 美咲は駆け足で、その場をあとにする。

 

※※※

 

 科学部の部室の扉を開け、飛び込むようにして入った。

 そこには、拘束された蒲生と……それを見張る狩野遥の姿があった。

 

「来ましたわ」

「ああ。少し手荒だが、こうしておく事を許してくれ」

 

 遥が汗を掻きながらそう告げる。

 

「やっと来たっすね六角美咲」

 

 蒲生が餌を見つけた肉食獣の如き顔で美咲を見る。

 

「久しぶりですわね、蒲生さん」

 

 美咲は真剣な顔でそれを見つめるが、蒲生が唾を吐き捨ててから言う。

 

「何すかその顔、私を馬鹿にしてんすか?」

「……」

「まあそうっすよね。一度は倒したわけっすから。上から目線でも仕方ないっす」

 

 美咲は少しだけ考え、遥に告げる。

 

「遥さん、蒲生さんにガスドライバーを渡してくださいな」

「な、何を言っている!」

「……」

 

 美咲は遥に目だけ向ける。

 遥がそれを察し、ドライバーを美咲に渡す。

 

「蒲生さん、これを手に表に出てくださいな」

「……」

 

 拘束を解かれ、ドライバーを再び手にした蒲生が美咲を睨みつける。

 美咲はそれに構わず、真剣な眼差しで見つめた。

 

 



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第百三十九話

 美咲と蒲生は外に出て、お互い向き合う。

 何の意図も伝えずに行動している美咲に対して苛立ちを感じた蒲生が、美咲に問いかけた。

 

「何のつもりっすか? ドライバーまで渡して、表に出て……。まさか病み上がりの私をボコボコにしようとか、そういう魂胆っすか?」

「……ボコボコにされるのは、私の方かも知れませんわ」

「はあ?」

 

 蒲生の質問に対してそう回答してから、美咲はボマードライバーを装着。

 端末になっている爆弾型のバックルを取り出して開き、『BOMER DRIVE』と書かれたボタンを押す。

 

『BOMER DRIVE READY?』

 

 美咲は端末を閉じ、いつもの構えをして呟く。

 

「変身ですわ」

 

 ゆっくりと、ベルトに端末を差し込む。

 

『COMPLETE』

 

 音声の後、上から一つの爆弾が降りる。

 それを握り潰し、その爆風を浴びて、美咲は仮面ライダーボマーへと姿を変えた。

 

「まさかアンタから戦いを挑んでくるとはね……変身」

『ガスドライブ! コウアツ! フキトーブ!』

 

 蒲生はガス怪人へと姿を変える。

 

「……」

 

 ガス怪人は構えるが、ボマーはバットを落とす。

 そして両腕を広げた。

 

「何の真似っすか?」

「私、まだちゃんと貴女に勝ててませんの。あの時、二号さんに連れ去られて……まともに貴女と会話一つ出来なかった」

「する必要なんてないっすよ。むしろ……とっとと殺させるっす」

「出来なければ、まだ死ねませんわね。尤も、出来ても死ぬ気はありませんの」

「ホントふざけてるっすね。わざと攻撃当たりに行く次は、攻撃しないから自分の事情話せって?」

「……」

「なめてんじゃないっすよ。こっちはアンタ超える為に命まで懸けたってのに」

「私はその理由を知る必要がありますわ」

「だから、それが分からないんすよ。知ってどうする気っすか。今更私はアンタを仲間だなんて思わないっすよ」

「貴女がそう思わなくとも、私はそう思ってる。それだけで十分ですわ」

 

 ボマーの言葉に、ガス怪人は返すべきものを詰まらせる。

 

「……勝手っすね」

「もう言われ慣れましたわ。けど、それが私ですのよ」

「……聞いて良いっすか?」

「なんですの?」

「私が今から殴っても……その構え続ける気っすか?」

「……勿論ですわ」

 

 ボマーが間髪入れずに答えた。

 

「なら、遠慮なく行くっす。この場でアンタを泣かせてやる……二度と頂点だのなんだのと言えなくなるまで!」

 

 ガス怪人はガスの勢いと共に、ボマー目掛けて飛び出していく。

 右腕を引き絞り、ボマーの目の前で勢いよく突き出した。

 



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第百四十話

 無言で殴り続けて、どれくらいの時が経っただろうか。

 ガス怪人……蒲生は疲れる一方だが、ボマーにはそこまでダメージが通っていない。

 気持ちを全て受け止めるまでは倒れない。

 そう言っているようにも感じられる。

 

「はあ……はあ……」

「それで、終わりですの?」

「……ッ!」

 

 ガス怪人は最後に、全力の一撃を叩き込み。

 それでも倒れないボマーを見て、口を開いてしまった。

 

「アンタは、生徒会長としては言ってる事もやってる事も無茶苦茶っす。学校を守る為に蘇我高校と戦おうとか言いだしたり、その為に学校を休んでまで修行しに行ったり。人に迷惑かけてばかりっす。けど私達が協力なんかしなくても、アンタはほぼ一人の力でやりたい事をやってきた。私は誰かとつるまなきゃ、ろくに仕事なんて出来やしないのに……」

「……」

「私はアンタ以上の存在になりたかったっす。だからその為に、アンタを消すっす」

「それが、貴女が命を懸けた理由というわけですの?」

「……その通りっす」

 

 ガス怪人がそう呟いてから、ボマーが返答する。

 

「どうして、叶えたい願いがあるのに命を捨てられるんですの?」

「……」

「貴女はその願いを、絶対に叶えたかったんじゃないんですの? なのに……願いの為に死んだら、その後の世界を見る事すら叶わないんですのよ」

「ふん……アンタがそれを言うんすか?」

「私は命を懸けた事なんて一度もありませんのよ」

 

 ボマーの発言に、ガス怪人は言葉を詰まらせた。

 

「私は夢を叶えても絶対死にませんの。せっかく自分の夢がかなったのに、そんな世界で生きられないなんて勿体ないですわ」

「……」

「貴女は私が消えた後の世界で、やりたい事があったのでしょう? なら、何故!」

「そうでもしなきゃ、絶対アンタなんて倒せないと思ったからっすよ!」

 

 校庭に、ガス怪人の叫び声が響き渡る。

 

「本当は私だって分かってたっす。絶対にアンタなんかに勝てやしないって。けど、それなら命を懸けてもその可能性に賭けようと思っただけっす」

「蒲生さん……」

「ああそうっすよ。私はそうでもしなきゃ絶対にアンタなんかに勝てない人間なんすよ。だから魂を売った。アンタの命を奪おうとした。だから……薬に頼って命を捨ててでもやろうとした。それでも、私はアンタには勝てないんすよ。何でも一人でこなす完璧なアンタには、絶対に……」

「……」

「生徒会長として、アンタは不出来だけど。それでも、人間として強いのは間違いなかった。こんな無茶苦茶な考えしてる癖に、なんで一人で何でも解決出来るんだろうってそう思った……。だから、そうするしかなかったっす」

 

 そう告げて俯くガス怪人に、ボマーが言う。

 

「一人だったら、私はこうして貴女の前に立ててませんわ」



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第百四十一話

「私が戦えたのは、こうして生きているのは皆さんがいてくれたから。でも、私は誰かをまとめ上げる事は得意じゃありませんの。私は一人でも戦えると思っていたのに、いつの間にか皆さんの存在がかけがえのない……この戦いで得た財産になってましたわ」

「……勿論私も、とか言うんすよね?」

「その通りですわ。だって、今はこうしてお互いの事を話し合えている。だから、仲間ですのよ。それに……」

 

 ボマーが続ける。

 

「私、副会長である貴女に唯一勝てなかったものがありますわ」

「なんすか」

 

 ガス怪人は少し自分でも考えてみるが、思いつかない。

 生徒会長としての仕事をした事はないし、美咲には人間的な強さで負けている。

 群れなければ、自分は何一つこなす事が出来ない。

 

「私は貴女みたいに、誰かの心を掴む事が出来ませんでしたの」

「……」

 

 ガス怪人は少し黙り込む。

 

「今でこそ、私は成音さんと一緒にいますけど……貴女は戦わずとも、誰かの心に寄り添えて、それでいて人を笑わせるのが得意な優しい人でしたわ」

「私が? 優しい? はっ……何の事か分からないっすね」

 

 ガス怪人……蒲生は、洗脳前の美咲に対する憎しみ以外の記憶がほぼ欠如している。

 美咲の告げた言葉が、何一つ理解出来なかった。

 自分が人を笑わせる事なんて、出来るわけがない。

 

「今の貴女は忘れているかも知れない……けど、私がそれを覚えてますの。貴女は、生徒会の人間……いや、誰かと一緒に生きられるという面では私より遥かに優れてますわ」

「……なんすか。そんな事を言っておけば、私が素直に嬉しいと言うとでも思ったんすか」

「思ってませんわ。私は事実を伝えただけ、それをどう受け取るかは貴女が決める事」

「……そうすか」

 

 ガス怪人は、銃型の武器を構えなおす。

 

「なら、これが私の答えっす」

 

※※※

 

 無抵抗のボマーに、今度は遠距離からガスを放射するガス怪人。

 しかし……それでもボマーにはあまりダメージが通っていない。

 

「アンタから見て、私がどういう人間かは分かったっす。けど、それだけじゃ私には不十分なんすよ」

「不十分……ですの」

「私には仲間なんて必要ないんすよ。ただアンタに勝つ事、それが今の私に必要な事。ただアンタを消したい。殺したい。それだけが、私の全てっす」

「……」

「所詮今の私はそんな存在なんすよ。もう元の私なんてどこにもいないんすよ」

 

 蒲生が少しばかり諦めた顔でそう告げる。

 

「……私は、今の蒲生さんにもきっといいところがあるって信じてますわ」



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第百四十二話

「私は前の貴女と真の意味で仲間にはなれませんでしたわ。もう今の貴女には、前の貴女の良い所なんて残ってないかも知れない。でも、私は前の貴女とだけじゃない。今の貴女とだって仲間になりたいんですわ。だからせめて、いや違いますわね。まずは、今の貴女と仲間になって、貴女に元の心が戻ったら、もう一度元の貴女とも仲良くなりたい。そう思ってますわ」

 

 ボマーの言葉に、ガス怪人は少し動揺する。

 

「……アンタ、本当にさっきから何言ってんすか。私と真の意味で仲間になりたいとか……。私はアンタを殺そうとした。それを分かってんすか!」

「分かってますわ! けど……そう思われていも仕方がない事をしたと、今の私も思ってますのよ」

「……」

「でも打ち解ける事を諦めたくはありませんの! 私は貴女を仲間だと思っている。だから今、私は貴女を理解している所ですの。こうして貴女の感情をぶつけてもらって、その答えを……私の頭で……」

「……」

 

 無駄だ。

 そう告げようとも思った。

 だけど……美咲を殴り続けるのにも飽きてきた。

 こうなったら、美咲と同じ手を使ってやろう。

 そう思って、バットを拾ってボマーに投げた。

 

「おい」

「……!」

「それを使うっす。もうサンドバッグにするのも飽きたし、そっちも殴ってくるっす」

「蒲生……さん?」

「アンタの言う理解するっつーの、ちょっと真似してやるっす。ただし、私はアンタの全てを否定してやる。良いっすね?」

「……望むところですわ」

 

 ボマーはバットを構えなおす。

 そのまま足を動かして、ダッと音を立てて地を蹴った。

 

「……!」

 

 ガス怪人は勿論避けず、バットの攻撃を銃で受けきる。

 いつも美咲がやっているように。

 

「どうした? 話してみるっす」

「良いんですの? 私が貴女に抱いている感情は、この一撃だけでは絶対表現出来ませんの」

「……」

「さっきも言いましたけど、私は貴女が人に尊敬されてるのが羨ましかったですわ。私はこうして戦って話し合わなければ理解されないのに、貴女は違う。貴女は立ち振る舞いだけで、色んな人から尊敬されている。私はそこだけはどうしても貴女に勝てない。頂点に立つ為には、そういう立ち振る舞いも必要だというのに」

 

 ボマーはバットを素早く動かしながらそう答える。

 感情を乗せて、重い一撃を入れ続けた。

 

「私は第一印象が悪いと、常々言われますの。ですから、貴女のように立ち振る舞いでも頂点に立ちたいとそう思ってますのよ」

 

 ボマーはバットをもう一度構える。

 

「それに、昔の貴女は人の心に寄り添う事も得意でしたわね」

 

 ボマーのバットは休まず動き続けた。

 

「不器用な私には、そんな事出来ませんでしたけど……貴女は違いますの。生徒会の人達は、貴女には心を開いてくれる。それに、私は見てましたのよ。生徒会の人達は、生徒会を抜けても貴女と一緒にいましたし、貴女がいなくなった事を心配していた。心配や尊敬してくれる人は数じゃない……その人がどれだけ自分を見てくれるかが大事だと分かっていても、私は貴女のそういう所には勝てませんでしたわ」

「……」

 

 ガス怪人は返すべき言葉を失う。

 

「畜生……全部否定してやろうと思ったのに。アンタは、アンタには……それ以外の不満はないんすか!」

「……」

「そうやって綺麗な言葉だけ使って、自分だけ逃げようとしてんすか? アンタだってあるんだろ……不満が!」

「不満は確かにありますの。けど、自分にないものは自分の努力で手に入れるしかないですの。だから私は、いつか貴女のそういう所も上回れるようになりたいですの」

 

 ボマーは端末を取り出す。

 

「それが、私が貴女に抱いている気持ちですの!」

『FINAL DRIVE!』

 

 ボマーがバットにボムビットを集め、そのまま勢いよく地面を蹴る。

 ガス怪人の前で勢いよくスイングし、その身体を大きく吹き飛ばす。

 

「ライダーインパクト!」

「ぐあっ!」

 

 ボマーが爆発に巻き込まれる。

 ガス怪人は地面を転がり、ボマーは死んでから蘇生。

 

「これで……終わりですの……」



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第百四十三話

 ボマーはもう一度構えを止め、バットを捨てようとした。

 しかしガス怪人が止める。

 

「もう良いっす。もううんざりっすよ」

「蒲生さん……」

「こんなやりとり……長く続けた所で、元の自分に戻る事はないし、私はアンタとつるむ気はないっす。そんな事を期待してたようにも見えるっすけど、それなら時間の無駄っす」

 

 ガス怪人は変身を解く。

 

「……」

 

 ボマーも変身を解き、六角美咲の姿へ。

 

「残念だったっすね。あの時拘束さえ解かなければ、てかドライバーさえ渡さなきゃ……仲間には出来なくとも情報源にはなれた筈っすけど」

 

 蒲生はそう告げる。

 去ろうとしたその時、美咲が叫ぶ。

 

「待ってくださいな」

「……」

 

 もう、なんだ……などと言葉を発する事さえ億劫になっていた。

 

「今日の所は引き分け……そうしますわ。けど、絶対にいつか決着をつけて……互いに仲間になれるよう努力しますわ。だから、蒲生さんさえ良ければいつでも戦いますわ」

 

 美咲の言葉に、蒲生は苛立ちながら返す。

 

「……勝手に言ってるっす。私はもう、アンタみたいな奴と関わりたくなくなったっすよ」

「そうですのね……けど、私をまた消したくなったらまた

「もううるさいっすね。戦わないっす。絶対に……もう二度と」

 

 蒲生はそう吐き捨てて、今度こそその場をあとにする。

 美咲の声が聞こえないくらい離れるまで、美咲は何も言わなかった。

 

「……それでも、私はまた戦えると信じてますわ」

 

 蒲生に聞こえた空耳か、それとも美咲本人が発していたのかはもう距離が遠くて分からない。

 相変わらずしつこい奴だと、蒲生は頭を掻きむしる。

 

※※※

 

 帰り道……。

 蒲生はただ一人、自分のした事を後悔しながら歩いていた。

 美咲みたいな無茶苦茶な人間を消し、超える事が出来れば、あの無茶苦茶になった生徒会を自分が上手く立て直せる。

 そう信じて、菫に魂を売った結末は最悪だった。

 相手の心を折る事はままならず、ただただ、彼女の人間としての心の強さを思い知らされ、ついに蒲生が折れざるを得なかった。

 

「畜生……」

 

 悔しい。

 ああ言って去る以外に、もう自分には何も出来ないという事実がとても悔しい。

 仮にあの後美咲が倒されるとしても、もうそこに自分はいない。

 自分の力で彼女を倒す事は、不可能なのだ。

 

「蒲生……」

 

 聞き覚えのある声。

 忘れもしない。

 

「何の用すか? 皆」

 

 振り向くと、美咲と成音を除く、生徒会のメンバーだった者達全員がその場に立っていた。

 ある時、菫に頼まれて誘拐した者達……。

 洗脳されているのだろう。

 全員の瞳が死んでおり、腰にはアークソードドライバーが。

 

「……こんなことに使われるなんて、思わなかったっすよ」

 

 自分に誘拐させた者達に、自分を襲わせる。

 菫が何を考えているかは知らないが、取り敢えず……用済みになったと判断されたのは事実。

 

「蒲生、排除する……」

「そうっすか。なら死んでもらうっす」

 

 全員がドライバーを操作して、その姿を怪人に変えた。

 

※※※

 

 同時刻。

 足利明人は、時々来る強烈な身体の痛みに耐えながら……〇×女子高から逃走していた。

 

「……ッ!」

 

 戸間菫に植え付けられた人格に乗っ取られた時に飲んだ薬の影響なのは言わずもがなだが、かなりの激痛だ。

 あの男は副作用に耐えながらも、この身体で戦っていたが、今の明人では到底やれそうにない。

 

「六角……美咲……」

 

 口から言葉を零す。

 今逃げて向かっているのは、六角美咲の所だ。

 つい先ほど、あの男の人格は完全に明人の身体から抜けた。

 別の身体に移動したその男を倒そうとしたが、身体の痛みで力が出せず敗北し、命からがら逃走し、今に至る。

 敵の正体を知った上で逃げた以上、命の保証はないが、確か六角美咲も敵が菫である事を知っていた筈だ。

 

「……ッ」

 

 痛みは止まらない。

 けど、美咲にもう一度会うまでは倒れられないと……明人は何とか身体に力を入れて歩き続ける。

 

《第三章 終わり》




何だかんだで一番長くなりましたが、次から第四章です。
最終フォームも登場し、物語はクライマックスへと大きく動き出します!


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第四章
第百四十四話


 

 生徒会メンバーの一人、後藤(ごとう)が生徒会室で……白髪でスーツ姿の男性に頭を下げつつ報告した。

 

「蒲生を取り逃しました、すみません……松永(まつなが)先生」

「おいおい、新生徒会がそんなんで良いのかよ。後藤新生徒会長さんよ」

「……」

 

 顔を上げた後藤が、光のない瞳で……白髪男で松永を名乗る二号を見据える。

 菫によって感情を強化される形で、彼女に従っていた一号や二号、蒲生は本来の人格をある程度残していたが、後藤達はほぼ雑と言っていいレベルの洗脳しか施してない故か、本来の人格が完全に死んでいる。

 恐らく洗脳を解くのも簡単だが、別にそれで良い。

 今やっている事は、二号の肉体を完全強化する為の時間稼ぎに過ぎないのだから。

 

「良いか……お前達に倒してもらうのは三人。蒲生に山内成音、そして六角美咲。今の六角美咲は、最高戦力と言っても差し支えない存在だ。蒲生如きで苦戦しているようじゃ、勝つ事は出来ねえぞ」

「……」

 

 強引に洗脳した場合、元々戦闘力が高い者でもかなり弱体化する。

 蒲生ですら倒せないというのは、十分あり得る話だ。

 

「まあ良い。次は期待しているぞ」

「はい」

 

 二号はそう告げてから、生徒会室を退出した。

 まだやるべき事は終わっていない。

 時間稼ぎに使うものは、他にもある。

 

「しかし、松永先生か……いい響きだな」

 

 そう言いながら少し笑う。

 明人の身体にある二号と脳波を融合した際に、実を言うと、もう既に失った筈の過去の記憶をある程度思い出している。

 まず、自分の名前が『松永秀奈(まつなが しゅうな)』という名である事。

 それと、自分が戸間菫に接触して人体実験を受けた理由。

 そして……一番思い出したくない事柄。

 

「……」

 

 今の……福沢裕太を模した身体の手足を見て、少しばかり自分の現状に安心する。

 そう。

 二号……松永秀奈は、元々女性だった。

 別に女性である事自体が嫌だったわけじゃないし、それでいじめを受けていたわけでもない。

 むしろ、自分は身内で誰よりも強い存在だ。

 けど限界は存在した。

 今の身体では、今以上に強くなれない。

 ある時、それが自分の中の恐怖になった。

 勿論自分が女性である事が悪いわけじゃない。

 女性だって、強い者は沢山いる。

 けど、自分が男性だったらもっと強くなれるのに、という気持ちが消える事がなく……結局、秀奈は菫の人体実験を受ける時も男性の身体が欲しいと念を押していた。

 この記憶だけは、本当に思い出したくなかった。

 全て忘れて、これからの一生を強い男として過ごせればどれだけ幸せだった事か。

 

「……」

 

 二号は溜め息を吐きかけたが止め、過去に蓋をして菫の所へと向かう。

 もう少しで夢が叶うのだ。

 過去の記憶に心を痛める暇など、今の二号にはない。

 

 



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第百四十五話

 美咲が去ってから、俺と一号は二人でマンションに向かっていた。

 俺は良いと言ったのだが、もし菫からの襲撃があったら危険だという理由でついてきている。

 距離感問題は解決し、二人並んで歩いていたが特に話す事もない。

 そろそろ久しぶりの自室に戻れる……そんな時。

 

「裕太、聞いても良いか?」

 

 一号が真顔で俺にそう声を掛けてきた。

 

「お、おう。何でも聞いて良いぞ」

 

 少しは成長したのかなと心の中で感心しつつ、どういう質問が来るのか待っていた。

 

「――お前は美咲の事が好きなのか?」

「(せき)!」

 

 予想の斜め上の質問が来てむせた。

 

「うぇっ……いやお前、確かに質問して良いとは言ったけどよ……ふざけるにしたってそりゃないぜ」

「本気だ」

「ですよね……」

 

 そんな真顔で冗談だとか言うわけねえや。

 

「俺は菫の事が好きで、その為に罪を犯した。お前が美咲と共にいるのは、そしてあの時離れようとしていたのは、美咲の事が好きだから……そうなのか?」

「いや、恋愛感情は間違っても抱いてねえよ。大体俺は年上のお姉さんが好みのタイプだし、あいつは体型良いけど所詮ガキんちょだし、性格もバブみのバの字もねえし、それに無茶苦茶で上から目線で……年上に対する礼儀もないし……。だから全っ然好きじゃねえ!」

「そうか」

 

 特に引いたりもせず、ただ一言そう告げる一号。

 

「でもよ、まあ好きっちゃ好きさ。恋愛感情とかじゃなく、ちゃんと友情的な意味でよ」

「……」

「それにあいつ、俺と会ってから俺がいねえと生徒会の仕事も一緒に出来ねえとか言い出してよ。ホントは俺がいなくても事足りる癖に……」

「確かに一応生徒会の仕事をしていたが、進みはあまり良いようには見えなかった。美咲はあの時裕太がいないから人手が足りないと言っていたが……」

「何で俺がいなくなっただけで進みが悪くなるのかまるで理解出来ない」

「……」

 

 一号が急に黙り込む。

 

「なんだよ、なんか俺おかしい事言ったか?」

「なんでもない。だが、少しばかりお前も敏感になるべきだと思っただけだ」

「は、はあ?」

 

 何を言いたいのかさっぱりよく分からん。

 

「いずれ気付ける日が来る。まあ、相手次第というのもあるだろうが」

「お、おい。それじゃよく分かんないだろ?」

 

 返答を求めてそう告げる。

 その時。

 ガシッという掴まれる感覚を、右脚に覚えた。

 

「ん? あ……」

 

 振り向くとそこには、荒い息を吐き続けて俺の脚を掴む足利明人の姿が。

 

「お前……福沢裕太……か?」

 

 明人が何とかかすれた声でそう問いかける。

 



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第百四十六話

「明人……!」

 

 俺は咄嗟に手を伸ばそうとするが、一号に掴まれる。

 

「……」

「な、なんだよ」

「足利明人の中には二号がいた筈だ。罠の可能性もあるぞ」

 

 そう言われて、手を引っ込める。

 代わりに一号が近付いて、明人に告げた。

 

「ひとまず助けてやる。ただし、ベルトを渡してからだ」

「……」

 

 明人は何とか身体に力を入れて、二本のベルトを渡す。

 ソードドライバーと、アークソードドライバー。

 

「……」

 

 それを確認してから、一号は俺に頷き。

 俺は手を伸ばして、明人を立ち上げてから背負う。

 

「ひとまず俺の部屋に連れていこう」

「ああ」

 

※※※

 

 久しぶりの自分の部屋。

 今ではかなり懐かしく感じるし、今日は久々にゆっくり休めると思っていた。

 勿論今回は、そんな感動を口にする時間もなく……せっせと明人を布団に寝かせ。

 俺と一号で観察を続けていた。

 

「今のところ出てこないな」

「……ああ」

 

 一、二時間経っても……まだ二号の人格が出てくる気配はない。

 ひとまず明人の容態を何とかすべきだと、スマホを取り出す。

 

「取り敢えず、遥先生に連絡をとろう。まだ確か蘇我高校にいた筈」

 

 俺は番号を入力し、遥先生に連絡を入れた。

 

『私だ。何の用だ?』

「実は今、俺のところに足利明人が来て。一応二号の奴が入ってる可能性があるので、俺の部屋の中で寝かせてるんですが、この苦しそうにしてるのは……」

『ああ、間違いなく蒲生も服用していた薬の副作用だろう。二号の奴も、アークソードドライバーを使っていたし、薬の効果なのは間違いない』

「取り敢えずどうすれば……」

『今から明人を蘇我高校まで運べるか?』

「運びます」

 

 俺はそう頷く。

 しかし。

 

「ダメだ」

 

 苦しそうな顔をしながら、それを拒否する。

 

「このくらい、俺は克服してやる。そして強くなってやる……」

「無茶を言うな。蒲生も死にかけの所だったんだぞ」

 

 一号が冷静に諭す。

 

「これが克服出来ないようなら、俺は六角美咲に顔向け出来ん……。大きな力を得る事には、代償がつきものだ。それを忘れるな」

 

 明人は一号にそう反論する。

 

「……」

 

 一号は黙ってしまう。

 

「けどお前が死んだら、美咲がどれだけ悲しむか分かるだろ!」

 

 あの時の美咲の泣き顔を思い出す。

 もう彼女にあんな思いはさせたくない――。

 

「分かるさ。だから……克服する」

「……!」

「俺はただのあいつの仲間でいる気はない。いつかあいつを倒す者として、強くならなければいけない」

「……お前」

「俺はあの男に乗っ取られていた時も、きちんと見ていた。あいつが新しい力を手に入れるのを……。

だから俺も強くなる。あいつが一度死んで強くなったのなら、俺も同じくらいの事をしなければあいつに負けてしまう」

 

 明人は鋭い瞳でそう告げる。

 美咲に勝るとも劣らないその気迫に、俺は圧されてしまった。

 

 

 



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第百四十七話

 俺は反論を諦めて、遥に告げる。

 

「すみません、彼自身に拒否されてしまいました」

『……。しかしその状態の危険性はお前も分かる筈だ。もし彼が危なそうなら、その時は無理にでも連れてくるんだ』

「分かりました」

 

 遥が通信を切る。

 

※※※

 

「良いのかよ、足利明人を野放しにして。あいつは多分、あの薬を克服出来るだろ?」

「今は適当に泳がせておくさ。君を完成させられれば、もう負ける心配をする必要はないし……それに」

「なんだ?」

「もし彼が薬の効果を克服し、僕に襲い掛かってくるようなら……君が乗っ取っても良いんだ。違うかい?」

「おいおい。あの薬、そこそこ痛い思いしたんだからもう二度とやりたくないぜ」

 

 二号の言葉に、菫が笑みを返す。

 そして思い出したようにこう呟く。

 

「そうだ、時間稼ぎの準備に必要なものが完成した」

「お、どれどれ?」

「これだ」

 

 菫が見せたのは、蘇我高校の生徒達や成音達が使う怪人変身用のベルトだ。

 一見、そこまでの違いはないように見えるが……。

 

「使ってみてからのお楽しみ、と言いたいのか?」

「その通りだ」

「……ふっ」

 

 二号はそう笑う。

 

※※※

 

『諸事情あって、今は裕太のマンションにいる。心配しないでくれ』

 

 午後十時。

 美咲はベッドの上でそのメッセージを確認して、一人考え込んでいた。

 

 ――次もし会う事が出来たら、何を話すべきですの?

 

 ついさっきまで、美咲は蒲生とお互いの思いをぶつけあっていた所。

 けど蒲生にうんざりと言われ、二度と戦いたくないとまで言われてしまった。

 だが美咲ははっきり、相手に伝える事は出来た。

 次に会う事が出来れば、今度こそ仲間になりたいと。

 でも……どうすれば。何を伝えれば良いのか。

 美咲には分からない。

 

「……」

 

 美咲には分かる。

 絶対にいつか出来る……と。

 はっきりと自分の想いを伝えあい、互いを現状以上に理解し、互いの良いところも悪いところも少しでも理解出来れば、絶対にあの洗脳された蒲生とも仲間になれる。

 でも問題は、方法だ。

 方法が分からなければ、折角の確信も無意味となる。

 届きそうな所にそれはあるのに、何故か……届かない。

 まるで星のように。

 

『~♪』

 

 ファイズフォン柄のカバーを着けているスマホに、着信音が入る。

 通話相手は、岸本優香。

 

「優香さん……?」

 

 こんな時間に何の用だろうか。

 美咲は少し気になりつつも、通話開始ボタンをタップ。

 耳に当ててから、美咲は告げる。

 

「もしもし優香さん?」

『よっ、美咲っち!』

 

 彼女の声は、この時間帯には似つかわしくない……元気なものだった。

 



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第百四十八話

「どうしましたの? こんな時間に」

『こんな時間て……まだ夜十時系じゃん』

「凄く元気ですわね」

『ウチはいつだって元気系。美咲っちもそうっしょ?』

「私はそうでもないかもですわね」

『? どうした系? 体調でも悪い系?』

 

 優香が心配そうに聞いてくる。

 今悩んでる事を聞いても仕方も無い気がするし、少しだけ気になっている事を質問する事にした。

 

「優香さんは、ある日突然私や成音さん達の前に現れましたけど、なんで危険な戦いなのにまだついてこられるんですの? それも、戦う力もないのに」

『……』

「別に、足手まといだとか言うつもりはありませんのよ。けど、何となく気になるんですの。死ぬかも知れない戦いに、こうして貴女はついてきてくれる。私が死にかけていたのも、ちゃんと見ていた筈なのに」

 

 優香を心配してそう告げる美咲。

 しかし。

 

『何言ってる系! 美咲っちや、もしかしたらウチの友達が戦ってるかも知れないのに、ウチがそれを見捨てられるわけない系』

「……」

『ウチは、ただ見てる事しか出来ない系。けど……ちゃんとこの戦いから日常に戻れる事を祈るのがウチの役目だと思ってる系。だって、ウチと美咲っちは昔から友達系……そうでしょ?』

「そうですわよね」

『それに、美咲っちが死んだの……ウチ凄く辛かった系。淀っちや初っち、江代っちや和泉っち達になんていえば良いのか分からかったし、生き返らなかったらこれからずっと美咲っちがいなくなった事を引きずって生きなきゃいけないと思った系』

 

 優香は止まらず続けた。

 

『ウチは、そんな事になるのは嫌系。ウチは友達と馬鹿な事やってる時が一番楽しい系だから、この戦いが終わったら、また二年の時みたいに淀っち達と遊びたい系。それまでは、せめて戦いを見守らせて欲しい系。ウチは何も出来ないかもだけど、せめて美咲っちが折れそうな時は支える系』

『忘れちゃダメ系。美咲っちと戦った成音っちも、離れそうになった裕太っちも、成音っちや遥っちの為に一生懸命なヴィーダっちも、美咲っちのそういう真っ直ぐ突き進む姿勢が好きでついてきている系。蒲生っちも……いつかきっと美咲っちの良さを分かってくれる系』

「え?」

 

 美咲は驚く。

 蒲生の話など一度もしていないのに。

 

『ウチは美咲っちの友達系。美咲っちが他の誰かに相談出来ないのなら、ウチが相談聞く系』

「……優香さん、ありがとうございますわ」

 

 美咲も口元に笑みを浮かべる。

 

『それに、ウチも諦めてない系。ウチも出来れば、戦いに参加したい系』

「え?」

『なーんてね。でも美咲っちを支える方法は何かしら考えたい系。それだけは分かって欲しい系』

「……」

『んじゃ、そろそろ寝る系』

「はい、おやすみなさい」

『おやすみちゃん』

 

 優香が通話を切る。

 美咲はそのまま横になって、眼を閉じた。

 



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第百四十九話

「……」

 

 通話が終わってから、優香は珍しく……少し落ち込んだ顔になる。

 さっき美咲に言われた言葉が、少しだけ気になっているのだ。

 戦えないのに、何故ついてこられるのか。

 答えはさっきも言った通り、美咲を支える為。

 けど……実際彼女にそれは必要なかった。

 彼女には、守りたいと思う者がいて、それが必然的に彼女の心の支えとなっている。

 何度折れても、自分の力なしに立ち上がっていた。

 

「……っ」

 

 少しばかり声を出しながら、横に転がり……机の上に置かれているものを見る。

 ホースドライバー。

 美咲の復活の為に、前田から借りたものだ。

 返却するかどうかも彼女に聞いたが、どちらでもいいと言われ、少し迷っている。

 

「あれを使えば、ウチも戦える系?」

 

 それが一番、直接的に彼女を支えられる手段だ。

 もうこれ以上の戦力が必要かは分からないが、少ないよりかは多い方が戦いを有利に進められる筈。

 お世辞にも頭が良くない優香に出来る事と言ったら、それくらい……。

 

「ウチには、無理系」

 

 少しだけ手を伸ばそうとしてから、それに気付いて項垂れる。

 美咲達の戦いの過酷さは、見ている自分も分かっているつもりだ。

 最悪美咲のように、命を落とす事だってある。

 もしかしたら、間違って自分が命を奪ってしまう事も。

 友達の為とはいえ、そこまでの覚悟を背負って戦う事など……自分に出来ないだろう。

 

「……どうしたら良い系?」

 

 優香は迷い続け……朝まで眠りにつけなかった。

 

※※※

 

 次の日の朝。

 

「うー……」

 

 美咲と成音、そして優香の三人で登校していたが……優香は眠そうにしていた。

 

「どうしましたの?」

「ん? 実はあの後眠れなくて……」

 

 優香は眠い目をこすって歩く。

 

「貴女も悩み事ですの?」

「んーまあそんなとこ」

「優香でも悩む事あるんだ」

「成音っち中々酷い事言う系……」

「今日は全校集会ですのよ。色々な事があって今更知りましたけど」

「大丈夫大丈夫、寝れば良い系……」

「そういう問題じゃありませんのよ?」

 

 三人で話しながら歩いていたその時。

 一人の女子生徒が立ち塞がる。

 

「ん?」

「貴女は……」

「平井(ひらい)?」

 

 

 美咲と成音が呟く。

 生徒会のメンバーの一人で、成音の同級生。

 しかし……様子がおかしい。

 瞳に光がなく、操られているかのように生気を失っている。

 そして右半身の筋肉が不自然な動きをしていた。

 あの時の蒲生のように。

 

「六角美咲に山内成音、貴女二人を排除します」

 

 そう言って、アークソードドライバーを取り出す平井。

 

『アークソードドライバー!』

 

 腰に取り付けてから端末を取り出し、操作して端末を閉じた。

 

『ARC SWORD DRIVE READY?』

「変身……」

『ARC COMPLETE』

 

 禍々しい光が平井を包み、上空から同じく禍々しい輝きの剣が現れる。

 それを掴むと同時、平井の身体が剣の怪人・改へと変化した。

 

「私がやりますわ」

 

 二人に下がるように指示し、美咲はボマードライバーを取り出す。

 端末を操作し、閉じて構える。

 

『BOMER DRIVE READY?』

「変身!」

 

 そう叫んでから、端末をベルトに取り付けた。

 上から紫色の爆弾が降り、それを握り潰して爆風を生み出す。

 その爆風の中から、一人の戦士が現れる。

 仮面ライダーボマー。

 

「キバって行きますわ!」

 

 

 

 



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第百五十話

 

 成音は遠くから、ボマーと剣の怪人・改の戦いを観察していた。

 ボマーの動きは、もう有象無象を寄せ付けない立ち回り。

 回避を使わずにバットや腕による防御が中心のスタイルは相変わらずだが、ハイドロボマーの力はおろか、アクセルドライブなどを使わずとも、平然と戦えていた。

 剣の怪人・改の平井が完全に押されている。

 洗脳されている以上、戦闘経験がない一般人よりは強いはずだが、例えるならゲームのコンピュータを相手にしているかのように、限られたパターンで戦っていた。

 勿論同等の実力であれば、剣の怪人・改は間違いなく勝つ事が出来る。

 しかし知識と経験、そして臨機応変さが備わった今のボマーには当然ほぼ全ての攻撃が見切られている。

 

「うぇいッ!」

「かはっ……」

 

 ボマーがバットで、大きく剣の怪人・改を仰け反らせる。

 そのまま勢いよく地を蹴って、剣の怪人・改の胸部へと突きを入れた。

 大きく吹き飛ばされた剣の怪人・改は最初、壊れた機械のように倒れたが、その後すぐに……機械のような人間味のない滑らかの動きで立ち上がる……が。

 

「くぅっ……ああッ!」

 

 薬の副作用が、平井を襲う。

 腕を押さえて苦しみだし、動けずにいた。

 

「その辺にしなさいな。貴女死にますわよ」

 

 ボマーが冷静に諭すが、洗脳されている平井にその声は届かない。

 息を切らして、それでも足を前に動かして。

 

「滅ぼす事が任務。それは出来ない」

 

 機械のように感情が欠落した声……だが確かに彼女が負っている苦痛を感じられる声で、剣の怪人・改が告げる。

 苦しみながらも端末を取り出し、ボタンを押して技を発動。

 

『ARC FINAL DRIVE!』

 

 取り付けた瞬間、禍々しいオーラが剣の怪人・改を包む。

 苦しみながらも剣を握り、構える。

 

「……!」

 

 ボマーも同じく端末を取り出してボタンを押す。

 そして端末を取り付ける。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 脚にボムビットを集結させてから飛び上がり、右足の裏を剣の怪人・改に向けてから勢いよく急降下。

 

「ライダーボムキック!」

 

 ボマーが叫びながら、剣の怪人・改へとライダーキック。

 剣の怪人・改も、痛みを訴える身体にむちかって、必殺技で受け止めようとするがボマーには通用せず、爆風で勢いよく吹き飛ばされて変身解除。

 平井は宙を舞ってから、地面へと勢いよく衝突。

 爆死したボマーが別の場所で復活し、変身を解く。

 

「くっ……ううっ! ああああッ!」

「平井!」

 

 気絶しながらも副作用で悶絶している彼女の所へ、成音が近付く。

 

 

 

 



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第百五十一話

 成音は状態を確認してからすぐにスマホを取り出し、狩野遥へと連絡を入れる。

 

「遥さん、薬を飲んだ人が!」

『なんだと』

 

 遥がそう言いながらも、冷静に指示を出す。

 

『とにかくそいつを今すぐ蘇我高校まで運んでくれ』

「はい!」

 

 通信を切ってから、成音は平井を背負おうとする。

 

「待って、ウチがやる系」

 

 それを止める優香。

 

「優香?」

「優香さん?」

 

 二人がその優香を見て呟く。

 

「ウチが運ぶから、二人はこんな事をした人を探して欲しい系」

「……」

 

 成音は一号からの話で、誰がやったかを把握している。

 それは美咲も同じ。

 二人は何となく察した。

 今まで戦いに参加する気配のないものが、蒲生と違って無理矢理洗脳されている。

 という事は、もしかしたら他の生徒が被害を受けている可能性も……。

 

「嫌な予感がするわね」

 

 成音がそう呟くと、美咲がこう言葉を返す。

 

「私が行きますわ。だから成音さんは優香さんと一緒に……」

「美咲っち」

 

 優香が名を呼んでから、首を横に振る。

 意地でも一人で行く、そう言いたいのだろうか。

 

「危険だということは分かってますわよね?」

「美咲っち達の方が、もっと危険な筈系……。これくらいの危険、ウチが背負う系」

 

 執念のようなものを、優香の瞳から感じる。

 

「今回ばかりは任せるわよ」

「成音さん?」

「……良いから、行くわよ」

「わわっ、引っ張らないで欲しいですの!」

 

 美咲の腕を引っ張って歩き出す。

 どうせ止めても、美咲は応じないだろう。

 だが成音は気付いていた。

 恐らく……夜眠れなかった事と関係しているのだろう。

 聞きたい気もするが、今は起きているかも知れない問題を解決する方が先だ。

 

「ウチもウチの努めを果たす系」

 

 優香も平井を背負ってから、駆け足で蘇我高校へ向かう。

 

※※※

 

 既に登校時間は過ぎた状態。

 美咲と成音が〇×女子高に到着した時には既に、校舎内に誰もいなかった。

 普通に全校集会が始まっている、とかなら勿論問題ないのだが……。

 

「一応ベルトは着けたまま入りますわよ」

「分かってるわよ」

 

 美咲と成音は慎重に扉を開けると、そこには全校生徒の姿がある。

 案の定、そこにいる全員様子がおかしく、扉が開いた瞬間こちらを見てベルトを取り出す。

 

「やはりですわね」

「おいおい、遅刻はいけないな。六角美咲生徒会長さん……いや、六角美咲元生徒会長さんよ」

 

 美咲の前に、黒フードを着けた男が現れる。

 二号……だろうか。

 

「また貴方達の仕業ですのね!」

「ああ……そうさ」

 

 二号と思しき人物がフードを取る。

 白い髪に、赤い瞳。

 顔は福沢裕太そのものだが、完全に髪から色素が抜けていたそれは……少しばかり異質な感じを醸し出していた。

 

 

  

 



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第百五十二話

 

 白髪の裕太の姿をしている二号を見つめていると、二号がふざけた態度でこう返す。

 

「ああこれか……どうだ? イケてるだろ? お前の大好きな裕太が、痛々しく白髪に染めたって思うと」

「貴方と裕太さんでは月と鼈ですわ」

 

 受け取り方によっては馬鹿にしているような気が……と成音は心の中で呟く。

 怒る美咲をよりも少しだけ前に出て、二号に対して笑みを浮かべて告げた。

 

「平井を洗脳したの、アンタ達なんでしょ? それに他の生徒達も」

「正確に言えば、こいつらは洗脳じゃないがな。ただ少しだけ、人工脳波で身体を乗っ取っただけだ」

「へえ……でも、こんな雑な洗脳であたし達に挑むって事は、アンタの作り主は相当焦ってるみたいね」

「……バレちゃあ仕方ねえな」

 

 二号も少しだけ弱った顔を見せるが、すぐに笑みを取り戻す。

 

「だが、まだ俺達が負けるとも決まったわけじゃねえ。流石のお前達でもこの数相手は少し荷が重いんじゃねえか?」

「……」

 

 口を開き終えた二号の隣に、美咲と成音にとっては見覚えのある少女が現れる。

 

「後藤さん!」

「後藤!」

「ああ……紹介が遅れたな。こいつがお前に代わる新しい生徒会長だ」

 

 後藤の様子も、平井と同じだ。

 瞳から光が消え、右半身の筋肉が薬の副作用で不自然に隆起している。

 そして腰には、アークソードドライバーが。

 

「六角美咲を排除……それが新しい生徒会の方針」

 

 後藤が静かにそう呟く。

 

「後藤さん、今目を覚ましてあげますわ」

 

 美咲は端末を操作してから閉じる。

 

「変身ですわ!」

『COMPLETE』

 

 爆弾を握り潰し、爆風を浴びて仮面ライダーボマーへ。

 

「どうやらやる気は十分みてえだな。一旦ずらかるぞ」

「……」

 

 二号が指を鳴らすと、後藤と共にどこかへ消えてしまう。

 

「待ちなさい! 逃げるんですの!?」

 

 と言うや否や、体育館に立つ他の生徒達もベルトを取り出して装着する。

 全員が端末を操作して、口を開く。

 

「六角美咲……山内成音を……排除する……」

 

 同じくらいの声質で、生徒達がそう呟きながら変身。

 アーミーや火炎放射器怪人、騎兵怪人やサック怪人。

 様々な種類の怪人に変身する生徒達。

 

「やるしかないですわね」

「あたしも手伝うわ」

 

 そう言って、フレイムシャワードライバーを装着する成音。

 

『FLAME SHOWER DRIVE READY?』

 

 端末を閉じてから、静かに呟く。

 

「変身」

 

 ベルトに端末を取り付ける。

 

『COMPLETE』

 

 炎に包まれる成音。

 その身体を火炎放射器怪人へと変えてから、銃口を敵に向けた。

 

 

 



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第百五十三話

 

 戦いから数十分。

 

「よいしょ……こらしょ……」

 

 何とか平井を背負って、優香は蘇我高校の科学部部室へと到着。

 ベッドに寝かせてから、白衣の姿で待つ遥に目を向ける。

 

「遥っち、運んできた系」

「ああご苦労。あとは任せろ」

 

 遥はそのまま道具を準備し始めた。

 優香はすぐには出ずに、その様子を見届ける。

 それに気付いた遥が、優香に声を掛けた。

 

「どうした? 見ても楽しいものでもないぞ」

「いや、遥っちに少し聞きたい事がある系」

「私に聞きたい事?」

 

 遥は少し困惑しながら、

 

「私に男の扱いを問われてもな」

「違う系」

「……違うのか?」

「いや、ウチの事どう思ってる系?」

「昔ながらのギャル、か?」

「そうじゃなくて……ウチが気にしてるのは、美咲っち達や遥っちみたいに何の役にも立ててない事系」

「……」

 

 遥の表情が真剣なものへと変わる。

 

「みんなそれぞれ戦う力持ってるのに、ウチだけこうして見てる事しか出来ない系。ウチはもう仲間が傷付く所は見たくないし、美咲っちみたいに死んじゃう所なんて絶対に見たくない系。でも……ウチが戦ったら、ウチが誰かを傷付けてしまうかも知れない系。ウチは、どうしたら良いのかなって……」

「それこそ……私に聞かれても困る」

 

 遥が静かにそう告げた。

 

「私はお前達といる時間はそこまで長くないし、お前の事も上辺だけしか知らない。それに、私も現状に決して満足はしていない」

「満足してない?」

「ああ。元々私の個人的な復讐だったのに、その為に多くの者を巻き込む結果となってしまった。今でもその者達に謝るどころか、巻き込まれる者は増える一方だ。しかし今の私の力では、直接戦いに行く事は出来ない。こうして後方支援しか出来ない事が、少し悔しい。本当は今すぐにでも、自分の力で菫に罪を償わせたいというのに」

 

 下を向く遥。

 

「けどそれが無かったら美咲っち達も満足に戦えなかったし、生き返る事も無かった系。それに……友達を巻き込んだ事は許せないけど、好きな人の為に戦いたいという気持ちはウチも否定出来ない系」

 

 思わず手を止める遥に、優香が言う。

 

「遥っちは自分が思うような悪い人じゃない系。好きな人を想えて、その為に行動出来て、でもちゃんと間違えたら苦しむ事が出来る……とっても優しい人系。ヴィーダっち見てれば分かる系」

「まったく……お前達は本当にお世辞が上手いな。皆同じような事を私に言う」

「美咲っちも成音っちもハッキリものを言う人系。絶対そんな事ない系」

 

 そこで優香は気付く。

 

「あれ?」

「どうした」

「なんか相談したいのはウチだったのに、なんか遥っちの悩みに答えちゃった系……」

「ああ、そういう話だったな」

 

 遥が半目でそう答える。

 

「うう……なんかウチ人の悩み聞くとついそっち答えちゃう系……」

 

 優香が頭を抱えた。

 しかし。

 

「それだ」

「え?」

「それでいいんじゃないか? お前がこの戦いの役に立てる方法……だと思うんだが」

「これが?」

「ああ。お前は見た所、人間を観察する能力に長けている。それに困っている者を放っておけない優しさがある。戦う力がなくとも、それはお前にしか出来ない事なのではないか?」

 

 遥が珍しく優しい笑みを浮かべて答える。

 

「でも、それをするなら美咲っちの方が説得力あるっていうか……」

「確かにそうだな……だが彼女は一人しかいないし、美咲の意見は強い者から見た視点での言葉が多い。こう言っては難だが、この前までの私と一号、そして福沢裕太と一号のように、彼女一人の努力だけでは中々難しい場合もある」

 

 そうして美咲一人で頑張り過ぎた結果、美咲は一度死んでしまった。

 あんな事は……もう。

 

「お前は確かに、最前線に立って戦う覚悟も無ければ、私のように後方支援も難しい立場だ。何かの為とは言え、人を傷付ける事に対して消極的でもある。けど、それで良い気がする。美咲とは違う切り口で、誰かの心を救う事が出来るんじゃないか?」

「……」

 

 優香は少し黙り込む。

 

「変わりたいと思う心は素晴らしいかも知れない。けど、それは変わる前に持っていた良さを失う事もある。私に言えるのはそれだけだ」

 

 遥は道具の準備に戻りながら、最後にこう告げる。

 

「だが今のままでは、美咲達が身体に負う傷だけはどうにも出来ないし、相手を追いつめる戦力になれないのは確かだ。どっちが自分に相応しいか、少し考えてみると良い」

 

 



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第百五十四話

 

 数こそ多かったが、そこまで問題はなかった。

 あの洗脳されていた平井よりも劣る、人工脳波で乗っ取られた生徒達はどんどんボマーと火炎放射器怪人の手によって変身解除され、少しずつ数を減らしていく。

 

『『FINAL DRIVE!』』

 

 ボマーと火炎放射器怪人が二人で端末を操作して、ベルトに取り付ける。

 束になって襲い掛かる生徒達目掛けて、必殺技を放つ。

 

「ライダータイフーン!」

 

 広範囲回し蹴りのライダータイフーン。

 そして火炎放射器怪人の爆炎放出。

 向かってくる怪人達を一網打尽にし、周囲の生徒達の変身を解いていく。

 

「一旦距離を取りますわよ」

 

 残った生徒達を体育館外におびき寄せてから、ボマーは普段使用を禁じている技を使う。

 

「成音さん離れてくださいな!」

「分かったわ」

 

 火炎放射器怪人が距離をとる。

 ボマーはゾンビのように向かってくる怪人達に飛び込みながら端末を操作し、ベルトに取り付けた。

 

『EXPLOSION DRIVE』

 

 ボマーが白い光に包まれながら、ボムビットと共に怪人達の群れへと突っ込み、大爆発で怪人達を四方八方へ吹き飛ばす。

 ボマーは残った怪人達から距離を置いた場所で蘇生し、もう一度バットを構えた。

 

「あともう少しですわ!」

 

 そう思っていたのも束の間。

 ボマーの前に、三体の剣の怪人・改の姿が。

 

「えっ……うわあっ!」

 

 ボマーが大きく吹き飛ばされる。

 

「会長!」

 

 ボマーに叫んだ火炎放射器怪人も、同じく剣の怪人・改に囲まれた。

 

「何よこれ……」

「山内成音、排除」

 

 聞き覚えのある声。

 剣の怪人・改に変身している者は全員恐らく、生徒会の面々だ。

 

「なんのこれしき……生徒会のナンバーワンの私がここで倒れるわけにはいきませんわ!」

 

 もう一度立ち上がってから、バットを構えなおす。

 苦戦しながらも、何とか剣の怪人・改の猛攻に対応しようとしている。

 

「あ、あたしも!」

 

 端末を取り出して、ボタンを押す。

 

『FLAME WAVE DRIVE』

 

 ベルトに取り付け直してから、拳を思い切り地面へと叩きつけた。

 

「はあッ!」

 

 拳から炎が、波を描くように放出され……自分の周囲を大きく吹き飛ばす。

 

「くうっ!」

 

 意外にも、剣の怪人・改達の実力は二号が使っていた時よりも低く、ボマーの奮闘であともう少しで倒せるという所まで追いつめる。

 

「さあ、これで終わりですわ! 私が眼を覚まさせてあげますの」

 

 ボマーが端末を操作しようとしたその時。

 

「! 会長!」

「ぐあッ!」

 

 そこに、何かが降り注いだ。

 ボマーのボムビットにも似ていた、黒いダイナマイト型の。

 

「……」

「も、もしかして……」

 

 ボマーが少し離れた場所で復活してから、飛んできた方を見る。

 火炎放射器怪人も同じように。

 

「黒いボマー……ですわ」

 

 ボマーの目線の先には。

 黒と赤系統の色で構成された、ボマーの黒版とも言える存在がいた。

 

「この姿で会うのは久しぶりだな。六角美咲」

 

 



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第百五十五話

 そう告げて、黒いボマー……二号がゆっくりと地上に舞い降りる。

 倒れている生徒達を見て、静かに呟く。

 

「やはり適当な洗脳と、失敗作の脳波で乗っ取っただけじゃこんなもんか……」

 

 溜め息を吐いて、ボマーを一瞥。

 

「皆を元に戻しなさいな」

「俺は別にそれでも良いんだが、あいつがうるせえし無理だな」

 

 黒いボマーが、ボマーに向かって右手を向ける。

 

「まあでも、前の身体と比べて随分楽しいな……これは」

 

 するとボマーの身体が急に動かなくなり、そのまま黒いボマーの意思でゆっくりと持ち上げられた。

 

「次はこれか?」

 

 ある程度の高さまで持ち上げてから、指を鳴らす。

 ボマーの身体が発火を開始した。

 

「な、なんですのこれは!」

「会長!」

「し、仕方ありませんわね」

 

 ボマーはやむを得ず端末を操作。

 

『EXPLOSION DRIVE』

 

 白い光に包まれて自爆し、何とか焼死を回避。

 少し離れた位置で復活する。

 

「なんて力ですの……」

「悪いが時間稼ぎにはまだ足りないんでね。少し失礼させてもらうぜ」

 

 黒いボマーが少しだけ俯きながら、両腕を広げて力を解放する。

 周囲の生徒全員が光に包まれて、黒いボマー自身も光に包み込んでから、どこかへ消えていく。

 そこには最初から何もなかったかのように、ボマーと火炎放射器怪人以外の人がいなくなった。

 

「消えましたわ……」

 

※※※

 

 二号は自分達を別の場所に避難させてから、菫に通信を入れる。

 

『どうやらダメだったみたいだね』

「だから言っただろ? 焦ってこんな奴ら使ったところで、時間稼ぎにすらならねえって」

 

 生徒達を一瞥して言う。

 

『そうでもないさ。今から全員改造は無理だけど、後藤くんだけでも何とか……』

「薬の投与量でも増やすつもりか?」

『そんな所だ。ま、少しでも投与の仕方間違えると死ぬし……結構難しいんだけどね。あとは彼女のアークソードドライバーをオリジナルと同等の能力に改良し直す。それで何とかなるだろう』

「それは良いけどよ、お袋が焦ってんのは敵側にバレバレだったぜ」

『……』

 

 菫の口が止まる。

 

「なあお袋、いざとなれば……俺を完全に自由にしてくれて良いんだぜ?」

『……』

 

 ボタンのようなものを手元でいじる音が、スピーカー越しに聞こえた。

 

「脅しか?」

『君を完全に自由にするのは危険過ぎるからね。君の欲は分かるが、君は僕の実験に乗った段階で僕のモルモットである事を忘れない方が良い』

「へいへい……」

 

 二号はそう返事する。

 返事しつつも、今の状況がただただつまらなくて仕方がない。

 

『六角美咲と山内成音は学校を一旦離れたようだ。後藤をその後向かわせるから、君の能力でそこにいる生徒達を回復させてくれないか?』

「簡単に言うねえ」

 

 笑みを浮かべつつそう告げる。

 

『何の為に、しくじった君にその身体を与えたと思っているんだい?』

 

 またも脅しに掛かる。

 二号は仕方ないなと少し笑ってから答えた。

 

「……わーったよ」

『分かれば良いんだ』

 

 そう言って、通信を切る。

 

「あいつもそろそろおしまいか?」

 

 二号……松永秀奈は思う。

 彼女はそろそろ利用価値が無くなる……と。

 松永秀奈としての記憶を取り戻した今、忠誠心は一切残っていない。

 多重能力者かつ男の身体を手に入れている以上、彼女に用はないと言っても差し支えない。

 肉体改造をしてもらえなくなるというデメリットはあるが、それなら自分の戦闘能力でカバーすればよいのだ。

 彼女の命令を聞かずとも、彼女が自分を操る手段さえ破壊してしまえば済む話。

 

「……」

 

 秀奈は静かに笑みを浮かべて、空を見上げた。

 

 



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第百五十六話

 美咲と成音は学校中を探したが、生徒や教師はおろか、菫の姿を見る事も出来なかった。

 一度切り上げて、美咲達は優香と遥が待つ蘇我高校へと向かう。

 

「遥さん!」

「平井!」

 

 成音はすぐさま平井の近くへ。

 美咲の表情から緊急性を察した優香が、遥が問う前に美咲へと聞く。

 

「何があった系?」

「生徒達が皆操られてましたわ」

「そんな……」

 

 優香がそう声を漏らす。

 遥は冷静な顔で言う。

 

「他の生徒も、平井と同じ状態なのか?」

「生徒会のメンバーは洗脳、他の生徒達は脳波で乗っ取りに分けられてますわね」

「そうか……」

「平井さんはどうですの?」

「ああ、それなら心配ない。洗脳が雑だったおかげで、完全に元に戻す事が出来た」

 

 遥が平井を見て告げる。

 

「他の奴らも大体同じなら、恐らく同じ要領でいける筈だ」

 

 元に戻せなかった蒲生とは違い、あの粗雑な洗脳や脳波による乗っ取りなら希望がある。

 しかし。

 

「でも、事態はそう簡単じゃないわ」

 

 成音の言う事も尤もだ。

 あの洗脳も全て、黒いボマーや二号の新しい身体をチューンナップする為の時間稼ぎとは言っていたが、それをする前の段階から、黒いボマーの戦闘能力はこちらの力を遥かに凌駕している。

 

「あの黒いボマーを何とかしないとね」

 

 成音が呟くと、遥が腕を組んで答えた。

 

「それなら心配ない。オールウェポンの能力があれば、黒いボマー……仮面ライダーアトミックの単体スペックを完全に上回れるし、実を言うと、オールウェポンの能力はまだ伸びしろがある」

 

 遥の言葉に、美咲が首を傾げる。

 

「今回お前を復活させるのに、ドライバーから六角美咲の記憶を抽出して作ったのがそのカードだが、他のドライバーの保有者からドライバーを借りる事でアップデート出来る」

 

 パソコンの画面を操作して美咲に見せる。

 

「そうなんですの?」

「ああ。恐らくだが、蒲生や足利明人をこちら側につけられれば、もっとドライバーの性能を上げられる筈だ」

「なるほど……」

 

 難易度は高いはずだが、美咲は言う。

 

「よーし、やってみせますわ!」

「明人はともかく、副会長がアンタに味方してくれるかどうか分からないわよ」

「……なれますわよ、絶対」

 

 美咲は少しだけ自信なさげな声で答えた。

 

「会長?」

「なれるって信じない人には、絶対成功はありませんの。ですから、今は前向きに考えるべきですわ」

「アンタにしては自信なさげね」

「一度失敗したから、かもしれませんわね。けど、私は諦める気はありませんのよ。絶対に蒲生さんも仲間にしてみせますの。私が諦めたら、一生それは出来ませんからね」

 

 自分にも言い聞かせるように、美咲はそう告げた。

 



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第百五十七話

「それに、今の状況は私にとって度し難すぎますのよ」

 

 真剣な表情でそう告げる美咲。

 

「そうね。学校の皆があいつらの手下っていうのは

「それもありますが、他に心配すべき事がありますの」

「?」

 

 首を傾げて、成音は美咲の言いたい事を考えてみる。

 しかし思いつかない。

 美咲はこう見えて、敵のした事に対して怒った事はあまりない。

 むしろ、自分の目的を押し通すスタイルを取っていた筈だ。

 そんな彼女が、相手のやった事にキレるとはどういう事なのだろうか。

 

「私が心配……いや激怒している事、それは……」

「それは?」

「それは……」

 

「――私の許可なく、勝手に誰かを生徒会長にするなんて許すわけありませんわ!」

 

「はあ?」

「……」

 

 遥と成音が二人とも、唖然とする。

 

「二号さんは生徒会長という職を舐め切ってますわ。生徒会長は誰か一人の意思で勝手に決めていいものではありませんのよ。それをあの人の一声で決めてしまうなんて、絶対に許される事ではありませんわよ!」

「いや……そんな事言ってる場合?」

「言ってる場合ですわ! 今まで菫先生や二号さんがやった事も腹が立ちますが、今回ばかりは腸が煮えくり返りそうですわ! 他の事を許しても、それだけは私が絶対に許しませんわ! いや! ゆ゛る゛し゛ま゛せ゛ん゛わ゛!!」

「えぇ……」

「流石美咲っち!」

「いや流石にツッコミなさいよ」

「おのれ二号……私を馬鹿にするとどうなるか思い知らせてやりますわ」

 

 美咲が鋭い眼でそう告げた。

 そして、高く笑う。

 

「こんな奴が生徒会長なのに、お前達の学校は大丈夫だったのか?」

「まあ一応ね……」

 

 遥に心配され、成音が呆れ顔で答える。

 

「何が問題ですのよ! 私はただ、生徒会が抱える問題をきちんと解決しようとしてましたわ!」

「でも流石に蘇我高校の果たし状を読んで戦うって言うのはダメよ」

 

 その結果として、色々なものを救うチャンスが与えられたわけだが、あれのみをピックアップするなら、とても生徒会長の所業とは思えない。

 

「生徒会長になれるのは、私のように何からも逃げずに立ち向かえる人だけですわ!」

「そうじゃなくて、余計な問題増やすなって言ってるのよ」

「勝負を挑まれて受ける事のどこが問題ですのよ!? 全く意味が分かりませんわ!」

「はあ……もう良いわよ。アンタにそれ説明しても理解出来ないでしょ」

「成音さん地味に今私を馬鹿にしましたわね?」

「馬鹿にするわよ流石に」

「流石にってどういう事ですの!? 私は至って真剣に」

「あーもううるさいうるさいうるさい!」

 

 成音がそう叫ぶ。

 

 



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第百五十八話

 落ち着いた後、蘇我高校の部室に仲間を全員呼ぶ事になり。

 まず成音が呼んだヴィーダが真っ先に到着。

 

「ナリネ!」

 

 ヴィーダはまるで子犬のように、成音の身体へ飛びこむ。

 

「ダイジョウブダッタ?」

「うん、何とかね」

 

 成音も反射的に頭を撫でる。

 美咲は裕太と一号を呼んだが、諸事情で来られないという連絡が入った。

 

「裕太さんと一号さんは来れないみたいですわね」

「ああ。彼らは今、足利明人の監視をしているようだからな」

「え?」

「言い忘れていたな。実は足利明人は菫の所から逃走して、今は裕太の部屋で眠っているようなんだ。薬の副作用に苦しんでいるにも関わらず、彼は治療を拒否している。まだ菫達が何かを仕掛けた可能性が高い故、監視をしてもらっているのだが……」

「……ッ!」

「お、おい!」

 

 遥の話の途中で、美咲は部室の外へ走り出す。

 

「まったく……」

 

 遥が腕を組みながら言う。

 

「会長、明人の事も気にしてたみたいだしね」

 

 成音は仕方ないかと言わんばかりの顔でそう呟く。

 

※※※

 

 裕太の部屋に到着するや否や、勢いよく扉を開けて明人に近付く。

 

「明人さん!」

「……み、さき……」

 

 明人が何とか、美咲の手をとる。

 その右腕の筋肉は不自然に隆起し、片目も赤へと変化していた。

 

「まだ生きてましたわね……」

「当たり前だ。この副作用を乗り越えて、俺は更に強くなってみせる。あいつがこんな状態の俺の身体を使いこなしたようにな……」

 

 明人は何とか笑みを作って言う。

 

「蒲生さんも明人さんも……どうしてそこまでして……」

「お前が強くなったのも、俺はずっと見ていた。お前が一度死んで強くなるのなら、俺も同じような事をしなければ意味がないからな。薬に頼っているというのは少し罪悪感があるが、この戦いについていく為ならば、少しでも戦力として通用する方が良い」

「……」

 

 裕太が告げる。

 

「ずっとこの様子だ。何とか説得してくれないか?」

「明人さんが望まないのに、それは出来ませんわ。明人さんは薬の副作用に打ち勝って、力を振るい続けた二号さんに勝ちたい。そうでしょう?」

「そうだ」

 

 明人が静かに告げてから続ける。

 

「だが安心してくれ。お前と戦う時にこの力を使う気はない。戦いが終わったら、この力を捨てるつもりだ」

「分かりましたわ。ただこれだけは約束してくださいな」

「なんだ?」

「私は命を捨ててまで、それに拘る事だけは避けて欲しいと思ってますの。危険だと思ったら、すぐに治療を受けてくださいな。私に勝つ為だけに死ぬのは許しませんわよ」

「……ああ」



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第百五十九話

 

「それにしても、何の為にそんな事を……」

 

 遥がそう呟きながら考える。

 

「あたしが何となく二号に、焦ってるのかどうか聞いたら動揺してたし、時間稼ぎだとも言ってたわ」

「うむ……そうか」

 

 画面に向き直ってから言う。

 

「もしかすると、これは早急に手を打つべきかも知れんな」

「と言うと?」

「オールウェポンの強化が出来る事が敵側の想定外だと仮定しても、オールウェポンと二号は一度戦っている。菫も私と同じ、高度な技術を持つ科学者だ。剣の怪人・改のベルトや人工突然変異体をあれだけの精度で作れるのを見れば分かると思うがな」

「……」

「つまり、相手もその時の戦闘データを元に何か手をうってくる筈だ。恐らくこうしている間にも、強化は進んでいる筈だ」

「それなら、早く叩く方が無難ね」

「ああ……だが強化が不十分と言いながらも、相手の突然変異体としての能力も手強い。ベルトの能力はともかく、装着者の性能まで未知数となるとな……」

 

 遥が少し頭を抱える。

 

「成音っち、頼みがある系」

「優香?」

 

 優香がいつにもなく真剣な顔で、こう頼んできた。

 

「ウチが、ウチが戦えば……戦力差を少しでも埋められない系?」

 

※※※

 

 

 優香の発言に、最初は少し驚く。

 だが返答するのは早かった。

 

「な、何言ってるのよ。優香が戦うって、そんなのどうやって?」

「手ならある系」

 

 そう言ってから続ける。

 

「ウチの家に、前田っちから借りたベルトがある系。それを使えばウチも戦える系……」

 

 その様子を見る遥。

 それに気付いた優香が、遥を見てから頷く。

 

「遥っちにも言われた系。ウチが戦わないからこそ、誰かに寄り添う事も出来るかもって。けど、やっぱりそれじゃダメ系……。時間が経てば経つ程、美咲っち達が危なくなるっていうのに、ウチが直接何も出来ないなんてダメ系」

「けど優香、アンタに誰かと戦う覚悟はあるの?」

「……」

 

 優香は俯く。

 

「それに、戦いに参加したら今までみたいにはいかなくなる。相手に命を狙われる事だってあるかも知れないのよ」

「それは皆も同じ系。なのに、ウチだけ安全な場所にいるなんて……やっぱりウチには出来ない……」

「……」

 

 成音も、見ていた遥も返す言葉に詰まってしまう。

 

「ダッタラ、ヴィーダガソノネガイテツダウ!」

「え?」

 

 優香がヴィーダを見る。

 

「ユウカノキモチ、ヴィーダニモツタワッタ。ユウカモタタカウナラ、ヴィーダガソレテツダウ!」

「ヴィーダっち、良い系?」

「ウン! ユウカ、トモダチ。トモダチガトモダチマモルノ……アタリマエケイ!」

 

 優香の喋り方を少しばかり真似して、ヴィーダが笑顔で言う。

 

「ありがとう系」

 

 優香は感謝する。

 

「やっぱりウチも戦う。皆の力になる為に」

「本当に良いのね?」

 

 成音の問いかけに、優香は迷わず答える。

 

「うん」

「分かった……だけど、無理はしないでね。本当に無理なら、あたしやヴィーダに任せて逃げなさい」

「分かってる系」

 

 調子よく答える優香。

 

 

 

 



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第百六十話

 

 明人が再び眠ってから、美咲は裕太を見て言う。

 

「それにしても……目の隈が凄いですわね裕太さん」

「ま、まあ寝ずに監視してたからな……」

 

 歩こうとしていていたがよろけている。

 

「やべ……頭がいてえ……」

「大丈夫ですの? 少し横になりなさいな」

「お、おうすまん」

 

 裕太は目を閉じてすぐに、眠りにつく。

 まるでの〇太並みの速さだ。

 

「どうやら、かなり疲れがたまっていたらしいな」

「一号さんは大丈夫ですの?」

「俺は問題ない。二日くらい寝なかった事があるくらいだからな」

 

 一号は平気なそぶりで、冷蔵庫を開く。

 

「こ、これは……」

 

 そして中身を見た一号が固まる。

 絶望とも言える表情を浮かべた状態で。

 

「どうしましたの?」

「見ろ……」

 

 一号に呼ばれた美咲が近くで、冷蔵庫の中身を見た。

 

「……」

 

 酷い有様だ。

 冷蔵庫内の食材の殆どが腐っている。

 それもその筈……裕太は長らく敵の手の内にあった。

 しばらく家に帰っていなかった故、溜まっていたものが……。

 

「参ったな……これでは飯の支度が出来んな」

「確かにこれでは難しいですわね」

「ああ。参ったな」

 

 一号の腹からは大きな音が。

 

「昨日の夜も何も食べてないし、このままでは飢え死にだ」

「音鳴らしながらそんな真面目な顔しないで欲しいですの」

 

※※※

 

 一号が冷蔵庫を閉じて、何も持たずに外へ出ようとする。

 

「どこへ行きますの?」

「この近くに雑草が生えていないか調べに行く」

「……へ?」

「いや、食材探しに……」

「何故雑草ですの?」

「外で寝起きしていた時の必需品だ。醤油をつけて食えば割と美味い」

「流石に他の人が食べるものがそれではまずいですわね……」

 

 美咲は財布の中身を確認してから、スマホで仲間に連絡する。

 そして裕太のエコバッグを借りて、靴を履く。

 

「私が買い物に行きますから、一号さんは家で待ってなさいな」

「お前、夕飯の買い物なんて出来るのか?」

「貴方は何を言ってますの?」

「お前の普段の行動を見るに料理が出来そうには見えんからな」

「どいつもこいつも私を生活力ないとか言うのやめなさいな」

 

 少なくとも雑草をご馳走しようと考えた者に言われるとは思わなかった。

 

「これでもある人に認められるくらいには美味しく作れますわよ」

「ある人? それは誰だ?」

「言うわけありませんわ!」

 

 ソウジとの思い出はまだ話さずに胸にしまっておきたい。

 

「まったく……三人とも待ってなさいな。私が最高の料理をご馳走しますわよ」

 

 美咲はそう告げて、部屋を飛び出す。

 



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第百六十一話

『諸事情で今日は戻れそうにありませんので、そこにいる皆さんで作戦会議をよろしくお願いしますわ』

 

 美咲との個チャに、成音宛に送られたメッセージの内容だ。

 

「ナリネ、ドウシタ?」

「会長、今日はもうここに来れないって」

「ホント系?」

「理由は分からないけど気になるわね」

 

 もしかすると、また一人で敵側の人間を黙って説得に行こうとか考えてるのではないか……と。

 

「菫先生の件とかもあるし、今回ばかりはちゃんと話してもらわないと」

 

 成音は美咲に通話。

 

『はい、もしもし』

「アンタ何してんのよ。アンタ私達に内緒で、また敵側の人間説得しようとか考えてないわよね?」

『……はあ?』

 

 美咲が困惑した声で話す。

 

「とぼけないでよね。大体アンタがああやってぼかす時は……」

『ただの買い物ですわ。裕太さん家の夕飯の』

「……はあ?」

『だから買い物ですわ。あの人この前の件のせいで、冷蔵庫の食材全て腐らせてましたのよ。ついでに夕飯も作るつもりなので、今日は戻れませんわ』

「あ、そう」

 

 どうやら早とちりだったようだ。

 

『何か作戦があれば、私に教えてくださいな。ではお願いしますわ』

 

 通話が切れる。

 

「ミサキ、ナンダッテ?」

「裕太の家で、夕飯を作るんだって?」

「ついに美咲っち、裕太っちのハート掴みに行く系……!? いやでも明人っちや一号っちもいるしもしかして……」

「うん、取り敢えずその妄想はその辺でやめといた方が良いわね」

 

 作戦会議に戻りたいところだが、まだ一つ問題がある。

 

「優香に聞きたいんだけどさ」

「何系?」

 

「そもそも会長に料理なんて出来るの?」

 

 一番心配だ。

 こう言っては難だが、ヴィーダを除くと一番料理が出来なさそう。

 

「あー、美咲っちなら料理得意系」

「ウェ!? アンタ舌は大丈夫?」

「流石に馬鹿にしすぎ系……ウチの友人に浅井淀子っていう子いるけど、その子に比べたら全然上手い系」

「浅井淀子って……え? あの浅井淀子? 伝説のカツアゲ女」

 

 サラッととんでもない名前を聞いてしまった。

 

「そだよ。しかも美咲っちのライバル系」

「あんな空中浮遊とか気功波とか撃つっていう伝説がある人がライバルだなんて……」

「あ、でも美咲っちが料理極めてる理由は淀っちを毒殺する為だったらしい系?」

「は? 毒殺?」

「まあ淀っちに毒効かないらしいけど」

 

 そういう問題じゃない……まあそれも凄いっていうか、え?だけど。

 

「あの人爆弾作るだけに飽き足らず、毒薬まで作った事あんの?」

「まあ美咲っちは勝つ為なら何でもする系だから……」

 

 あの人相手に努力して勝つというのは難しいかも知れない。

 流石に犯罪に手は染められないし。

 

「話を元に戻すぞ」

 

 遥があきれ顔でそう告げる。

 

 

 



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第百六十二話

 

 幸い菫側の襲撃を受ける事なく、美咲は何とか裕太の部屋まで帰還。

 手を洗うや否や、すぐに料理を開始。

 

「お前料理出来たんだな」

 

 一号が意外そうな顔でこちらを見る。

 

「当たり前ですわ。女の嗜みですもの」

 

 手際よく材料を切り終えてから、次の工程へ。

 

「何か手伝う事はあるか?」

「では一緒に豆腐を切って欲しいですの」

 

 頼まれた一号が、パックに入った豆腐を手の上へ。

 

「……」

 

 美咲がやっていたように、左手の上にある豆腐を切ろうとするが……。

 

「あ……」

 

 左手の力加減が上手くいかず、豆腐が崩壊。

 

「え?」

 

 美咲が目を丸くして、一号の様子を見る。

 

「すまん……俺には難しいようだ」

「さては貴方氷川さん並みの不器用ですの?」

「……」

 

 一号はバツが悪そうな顔で、目を背けた。

 

※※※

 

 同時刻。

 蘇我高校の体育館。

 

「じゃあ、特訓を始めるわよ優香」

「なんか改めてこの場に立つと緊張する系……」

 

 ホースドライバーを家から持ってきた優香が、成音と相対していた。

 次の日の攻め込みに備えて、一夜漬けではあるが、戦闘訓練をすることになった。

 

「取り敢えず、まずは変身ね」

「えーっと、こう系?」

 

 優香はまずベルトから馬型の端末を取り出す。

 

「それでこう?」

『HORSE DRIVE READY?』

 

 音声の後、優香は端末を閉じて構える。

 

「へ、変身系!」

 

 端末をベルトに取り付けた。

 

『COMPLETE』

 

 背後から走ってくる実体のない馬の上に、優香はジャンプして座る。

 その姿を騎兵に変えた優香が、手探りではあるが、まずはそれっぽく構えてみた。

 

「で、出来た系」

「そこまでは大丈夫みたいね。変身」

『COMPLETE』

 

 成音も火炎放射器怪人へ。

 

「それじゃ、いくわよ」

「おっ、おっす!」

 

 まずは火炎放射器怪人が背中のブースターを使って、騎兵怪人へと突撃。

 

「えっ、いきなり系? えーっと、えーっと!」

 

 騎兵怪人は動揺しながら、咄嗟に回避。

 しかし動きを読まれ、火炎放射器怪人に拳を叩きつけられる。

 

「い、いたい系……」

「ダメよそれじゃあ、相手に動きを読まれるわよ」

「攻撃を避けるって意外と難しい系……」

 

 攻撃を避けるくらいなら、と思っていたが……それは大きな間違いだったらしい。

 

「相手に読まれているか読まれてないかで、生きるか死ぬか決まる時もあるのよ。よく考えて戦いなさい」

「わ、分かった系!」

 

 騎兵怪人は立ち上がる。

 

「次は優香からかかってきなさい」

「いく系! うおおおおおッ!」

 

 騎兵の速さを活かした動きで、火炎放射器怪人との距離を詰める。

 剣を構え、火炎放射器怪人の胴体目掛けて振ろうとするが……。

 

「……!」

 

 優香は、そこで少し躊躇。

 その隙をついた火炎放射器怪人に、無慈悲にも反撃されてしまい、大きく吹き飛ばされた。

 

 



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第百六十三話

 

「うわあッ!」

 

 騎兵怪人は吹き飛ばされた勢いで変身解除し、優香の姿へ。

 

「……」

 

 火炎放射器怪人も変身解除ボタンを押して変身を解き、優香に近付く。

 

「やっぱり躊躇したわね」

「ば、バレた系?」

「ええ」

「ごめん系……」

 

 優香は少し俯いて答える。

 

「優香、今回は訓練だけど……相手はアンタみたいに優しい人ばかりじゃない。相手によっては命を奪われる事だってあるのよ」

 

 成音が厳しくそう告げた。

 

「……」

「とにかく、今のままじゃ一緒に戦うのは難しいわね」

「成音っち」

「?」

 

 優香が立ち上がりながら言う。

 

「ウチ、まだ諦めない系。ウチは誰かを傷付けるなんてしたくないけど、けど皆にだけそんな事させたくない系……だからまだ付き合ってくれる系?」

「優香……」

 

 成音はもう一度優香に向き直る。

 

「分かったわ」

 

 そう告げてから、端末を取り出す。

 

※※※

 

 一時間が過ぎ。

優香は少しずつ精度を上げて、成音に攻撃を当てられるようになっていた。

 

「いく系!」

 

 端末のボタンをクリック。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 騎兵怪人が端末をベルトに取り付ける。

 馬が後ろ足を何度か擦ってから、火炎放射器怪人目掛けて突進。

 馬の頭部に光が発生した。

 

「はあっ!」

 

 火炎放射器怪人は咄嗟に躱す。

 

「……!」

 

 騎兵怪人はそれに気付きながらも真っ直ぐ進み、少ししてから止まる。

 必殺技が終わってから、互いに変身を解く。

 

「ま、また避けられた系……」

「そうね。けど、中々よくなってたわよ」

 

 成音が優香にそう告げる。

 

「そ、そう系?」

「もう少し躊躇が無くなって、精度を上げれば戦力になれるわ」

「が、頑張る系」

 

 成音がスマホを取り出して時間を見た。

 

「そろそろ休憩しよっか。あたしが夕飯の買い物行くわ」

「お、何か買ってくる系?」

 

 優香が眼を光らせて言う。

 

「流石に調理する場所とか借りられないから総菜買う事になるけどね。何がいい?」

「ウチフライが食べたい系」

「へー、ギャルでも結構油ものとか食べたりするの?」

「いや、別に全員食べないわけじゃない系……」

「ほら、体型維持の為とか言いそうかなって」

「ウチは食事制限とかあまりしない系」

「そ、そうなのね」

 

※※※

 

 そんな会話を交わしてから、成音はヴィーダや遥にもリクエストを聞きに行く。

 

「ヴィーダ、ハンバーグタベタイ」

「ハンバーグね。遥さんは?」

「ア〇ヒスーパードライ」

「え……酒飲むの?」

「ああ。多少酒入ってた方が、なんか集中出来るんだ」

「そういうタイプか……」

 

 成音は遥の意外な面を知りながらもメモ。

 

「取り敢えず行ってくるわね」

「ああ、あと念のため平井にも何か買ってやれ」

「そうね。じゃあ行くわ」

 

 そう告げて部室をあとにする。

 

 



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第百六十四話

 

 その日の夕飯は麻婆豆腐だ。

 料理を作った美咲が最初に箸を入れ、口に運ぶ。

 

「んー! やっぱりあの人流の麻婆豆腐は美味しいですわ!」

「あの人流? なんだ前教えてくれなかった人か?」

 

 数時間眠ってすっかり元気になった裕太が、麻婆豆腐を食べながら問う。

 

「その人ではありませんわよ。私とその人が好きなヒーローが作ったことのある麻婆豆腐ですわ」

「そうか。これも、そのヒーローが作ったやつ?」

 

 裕太は別の皿に盛られた中華風冷奴を箸で掴んで聞く。

 

「そうですわ! ヒロインの方が微妙と言ってましたが、私はその冷奴好きですわよ」

「ほへー……」

「というより、今回はそのヒーロー関連の料理メインにしてますわ」

「待て待て待て。聞きたいんだけどよ」

「なんですの?」

「ヒーロー番組で出てくる料理、ここまで忠実に再現出来るもんなの?」

 

 一号も確かに聞いててそう思う。

 

「あー、サイトにレシピが載ってますの」

「え、ホントか?」

「ええ。この料理以外にもあと何品か」

「へー……って言いたいところだけど良いか?」

「はい?」

「それヒーロー番組なのか? ホントに?」

「何言ってますの? 仮面ライダーカブトは、特撮ヒーローもので教育番組、なおかつ料理番組ですわ」

「属性多いなおい……」

 

 天に指をさしながら言う美咲に、裕太が返答。

 

「なあ美咲、聞いても良いか?」

「なんですの? 一号さん」

「その人というのはお前の彼氏か?」

「……」

 

 美咲が箸を落とす。

 

「えっ、いや、教えるわけないですわ! 私とその人の間に何もありませんわよ!」

 

 そういう割には顔が赤い。

 

「顔が赤いぞ」

「……」

 

 美咲は静かに爆弾を取り出す。

 

「おいやめろ俺の部屋吹き飛ばすつもりか」

 

 裕太に止められる。

 

※※※

 

 成音は丁度そのくらいに、店で買い物をしていた。

 惣菜コーナーに向かって歩きながら、さっきの特訓を思い出す。

 

「……」

 

 優香は予想以上に戦闘に適応してきたが、それでもかなり相手に対しての甘さを捨てきれていない。

 そもそも敵を傷付ける事自体、彼女の性格上向いていないというのもあるし、まだ彼女が覚悟や容赦をするようなら、やはり明日の攻め込みに参加させるのは危険だ。

 

「あたし達で何とかするしかない」

 

 あの後連絡をとったが、一号が明人の監視役、裕太と美咲が成音達と共に戦うらしい。

 ヴィーダも合わせれば三人もライダーがいる以上、戦力に不足はないが、相手の強さも未知数だ。

 戦力が多いに越した事はないが、それでも……。

 

「?」

 

 パンコーナー近く。

 成音の目の前で、黒フードの人物が現れる。

 それも一号や二号が着ていた見慣れたデザインの。

 

「でもあれ女の人、っぽいわね」

 

 明らかに一号や二号より背が低く、体つき的に女性だと分かる。

 その人はパンコーナーで菓子パンを手にし、そのまま外に向かって走り去ろうとした。

 

「えっ」

 勿論店員さんもそれを見ていた。

 

「きゃっ! 万引きよぉ! 追っかけて誰か!」

 

 店員さんの何人かが黒フードの女に立ち向かうが、黒フードは喧嘩殺法で軽々撃退して店外に向かって逃走。

 

「仕方ないわね」

 

 成音はそう呟いてから、その女を追いかける。

 

 

 



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第百六十五話

 

 勿論警察も駆け付けたが、黒フードの女の逃げ足の速さに追いつける者はおらず。

 代わりに成音が追いかけ続け、追手が見えなくなった辺りで黒フードが足を止める。

 

「さあ、もう逃げられないわよ」

「それはこっちの台詞っすよ、山内ちゃん」

 

 黒フードが顔を晒す。

 正体は……。

 

「副会長……?」

 

 遥に治療を受けてから姿を消した、〇×女子高生徒会副会長の蒲生だ。

 蒲生はベルトを腰につけてから言う。

 

「山内ちゃん、悪いけど大人しくついてくるっす」

「それはこっちの台詞よ。万引きなんてして……」

「仕方ないっしょ。今の生徒達見りゃ分かると思うけど、私と山内ちゃんと美咲……今標的にされてる。家にいたらいつ狙われるか分からないし、外で逃げ回りながら生きるしかないんすよ。まあ、それはさておいて、今から私と一緒にくるっす」

「だから、いかないってば」

「悪いけど、山内ちゃんに拒否権はないっす……変身」

 

 蒲生がガス怪人へと姿を変えてから、成音がベルトを取り出す暇も与えずに拳を腹に叩きつける。

 

「くっ……」

 

 成音はガス怪人の前で崩れ落ち、ガス怪人に抱えられた。

 

「捕獲完了っす」

 

 時間差で追ってきた警察に対しても、ガスの放射口を向ける。

 

「痛い目見たくなきゃ、ここから去るっす」

「撃て!」

 

 警官たちが銃を発射するが、ガス怪人は全て吹き飛ばす。

 

「こっちには人質がいるってのに、野蛮な警察っすね」

 

 蒲生はニヤリと笑みを浮かべてから、ガスチェンジ。

 

『ガスドライブ! スイミン! ネムール!』

 

 催眠ガスを放射し、吹き飛ばされて仰向けに倒れる警官たちを眠らせてから逃走。

 

「ま、こんなもんすか」

 

※※※

 

 食べ終わってからすぐに、美咲と裕太は二人とも眠りにつき。

 元々眠りの浅い一号は目を開けて、身体を壁に預けていた。

 一号だけでなく、足利明人もまだ目を開けている。

 彼に聞こうとしていた事を思い出し、一号は明人に問いかけた。

 

「足利明人、お前に聞きたい事がある」

「……なんだ?」

 

 明人は一号を見た時も、何の反応も示さなかった。

 明人にそれほどの余裕が無かったのか、あるいは……そう思って告げる。

 

「お前は俺が、あの時対峙した黒フードの男だと気付いているのか?」

「……気付いていた。お前の声や仕草で分かる。どういう経緯で仲間になったのかまでは知らんが、お前があの黒フードなのは間違いないと思った」

 

 明人は静かな声でそう答える。

 

「なら何故、俺とそう落ち着いて会話が出来る? その態度はどう考えても普通ではない……」

「馬鹿者。あの時のお前など恨むに値しない」

 



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第百六十六話

「俺が敵と認めるのは、何に恐れる事もなく真っ直ぐに生きる事が出来る者だけだ。あの時のお前にそれ程の価値はなかった」

「……そうか」

 

 一号は下を向いた。

 

「今のお前はどうなんだ?」

「……」

「自分の意思で、何かを決めて戦う事が出来るのか?」

「自信を持って答える事は出来ない。だが、今美咲や裕太の為に戦っているのは自分の意思だ。もう二度と、こいつらに涙を流させない。それがこの二人の命を一度奪った俺に出来る贖罪……」

「……」

 

 明人がそれを聞き終えてから言う。

 

「それでは、まだ足りんな」

「……」

「六角美咲を見てみろ」

 

 そう言われて、裕太と二人で眠る美咲の姿を見る。

 

「あいつは義務感に駆られて戦っていない。どんな戦いでも、積極的に自分から突っ込んでいく。それが例え、自分の関わるべきでない戦いであろうとな。他者と戦う事に関して積極的だからこそ、俺はあいつを好敵手と認めているし、俺も自分が強くなる為ならどんな事でもしたい」

 

 美咲のそんな行動に、一号は何度も救われた。

 正義の為に行動していないからこそ、そもそも美咲自身は一号に対して恨みは抱いていなかったし、むしろ本気の自分と戦う為に敵である自分を本気で助けようとしていた。

 そしてだからこそ他人を頼る事を厭い続け、誰よりも傷付く。

 そんな彼女を放っておかず、または超える為に、様々な理由で彼女の近くには人が集まる。

 

「……俺は」

「お前にもある筈だ。誰かや状況に課せられた義務ではなく、自分で望んで戦う理由が」

「……ああ」

 

 忘れてなどいない。

 忘れるわけがない。

 一号が美咲と共に戦うのは、美咲が絶対に菫を変えると約束してくれたから。

 

「俺は菫といたい。それに協力してくれると言った美咲の仲間になった。だが……」

 

 罪のある自分が、そんな理由で戦う事など許されないと、美咲以外の前ではそういう素振りをなるべく見せないようにしている。

 

「罪程度、俺にもある。数えきれない程な。だが俺はそれでも戦い続ける事を望む。やめたとて、どうせ消えはしないのだからな」

 

 明人のその姿を見て、一号は気付く。

 心の底は一号と同じだと。

 でも……もし違いがあるとしたら、罪に対する向き合い方だろうか。

 

「……」

「もし俺に強さを認められたいなら、その気持ちを強くしてから俺と戦うんだな。とにかく、今のお前では……俺に好敵手として認めてもらうなど夢のまた夢だ」

 

 厳しい言葉をぶつけてから、明人はそのまま目を閉じる。

 

「……」

 

 一号も目を閉じてから、眠りにつく。

 が……。

 

「げほっ……」

 

 突然、そう咳込んで一号は目を覚ました。

 最初に咳込んでから止まる事なくそれが続き、手で押さえる。

 喉の痛みと、口の中の違和感に気付き、押さえた手をもう一度見た。

 そこには……。

 

「……!」

 

 自分が吐き出したと思しき血がついていた。

 



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第百六十七話

 

 蒲生は人目につかない所に隠れてから、ガスドライバーの能力で成音を洗脳しようと試みたが。

 

「……」

「やっぱり強い意志の持ち主を洗脳するのは無理みたいっすね」

 

 何度やっても、洗脳が上手くいかない。

 あの時の怪人化した生徒はあくまでガスの影響で思考能力が麻痺していたから成功したが、何の影響も受けておらず、尚且つ強い意志を持つ者を洗脳下に置く事は出来ないみたいだ。

 

「参ったっすね」

 

 命令であるとは言え、半ば自業自得によるものが起こした結果だが、蒲生は追われる身。

  少しでも味方を増やし、〇×女子高の生徒全員を洗脳下から解放した上で、自分を用済み扱いしている菫達も叩き潰そうと考えていたが……これではまた逃げ続けなければならない。

 

「……」

 

 疲れ果てた蒲生は諦めてから、近くの塀に身体を預けた。

 不思議と昨日程、眠るときの不快感は覚えなかった。

 適応……という事なのだろうか。

 何となく目を閉じて、深くは眠らずに身を休める。

 

「どんだけこんな生活してりゃ良いんすかね?」

 

 あれから家にも帰っていない。

 菫の配下だった時でさえ、我が家では多少の不信感を抱かれつつも、そこで寝起きする事は出来た。

 昨日からである筈の逃げている時間が長く感じて、今では自分の部屋の景色すら懐かしく感じる。

 

「クソ……力が欲しいっす……」

 

 蒲生はあの薬を使っていた時の事を思い出す。

 身体は物凄く痛かったし、実際死に至りそうになったが、圧倒的な力を感じた。

 痛みすら快感になるほどに。

 あれを上手く自分の力に出来ていれば、美咲すら追い越せていたというのに。

 結局そうはいかず、二号に先を越され、単純な力では美咲に劣ってしまった。

 あそこで死にたくは無かったが、ここまで悔しく、そしてしんどい思いをするのなら、薬のせいであのまま目を覚まさない方が楽だったかも知れないとすら思う。

 ガスドライバーだけでは、美咲を倒す事も、今自分を始末しようとしている追手を倒す事すら出来ないのだから。

 

「……」

 

 そして洗脳が使えないなら、美咲に頭を下げれば良いのでは……という思考が生まれそうになる自分が嫌になる。

 確かに美咲の性格上、共闘を望めばしてくれそうだが、そんな事は蒲生自身のプライドが許さない。

 自分はどんな方法を使っても、美咲の存在を消し、自分が美咲より上だと証明する為に洗脳される道を選んだ。

 あいつの力だけは絶対に借りる気はない。

 

「けっ……」

 

 爪を噛んで、蒲生はただこの状況を耐える事を選ぶ。

 

 

 

 

 



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第百六十八話

 

 科学部部室。

 

「ナリネ……オソイ……」

 

 ヴィーダが先に敷いていたお布団の上で、ひもじい顔をして呟く。

 お使いを頼んで数時間が経ち、夜十時近くになるが、未だに成音は帰ってこない。

 連絡すら来ない。

 

「ウチも腹減った系……」

 

 優香も某漫画で爆死したヘタレのポーズで倒れている。

 腹の音が喧しく響き続けているのが聞こえる。

 遥も黙々と作業を続けていたが、集中力が切れてきている。

 遥の身体もそろそろアルコールを欲している頃なのだろう。

 

「一応電話してみるか」

 

 痺れを切らして、遥がスマホを取り出す。

 電話帳を開いて、成音の番号に電話を掛けると……出て来たのは意外な相手だった。

 

『狩野遥っすか? 久しぶりっすね』

「……お前は」

 

 通話に出た相手は蒲生。

 相変わらずの態度で電話に出てくる。

 まさか蒲生が誘拐したというのか。

 

「お前が誘拐したのか?」

『そこまで心配しなくても、山内ちゃんならこっちで眠ってるだけっすよ。起きたらそのまま行かせるんでよろしくっす』

 

 軽い口調でそう告げる蒲生。

 しかし遥は油断せずに問い返す。

 

「何か企んでいる……という事はないな? お前の洗脳は私では解けなかった。未だに菫の配下として行動していてもおかしくはない筈だ」

 

 蒲生は少々げんなりした声で答えてきた。

 

『正確にはさっきまで……というのが正しいっす。なんせガスドライバーの洗脳能力が効果なかったんすよ』

「……」

 

 それなら遥も信用出来なくはない。

 ガスドライバーの洗脳機能はあくまで、ドライバーを使わず怪人化した者を脳を犯しているガスを操る事で、コントロール出来るようにするもの。

 故にガスに犯されていない普通の人間を洗脳する事は不可能だ。

 

『悪いっすね。こっちも追われてる身なんすよ。ま、もう出来ればアンタ達や菫達に関わりたくないんで、適当に倒しちゃって欲しいっす。そんじゃ』

 

 通話を切ろうとする蒲生。

 

「待て」

『なんすか?』

 

 それならば、と遥が言う。

 

「もしその言葉を信用して欲しいなら、お前の持つガスドライバーを渡してくれ。それがあれば、大きな戦力になる」

 

 しかし……。

 

『何の為に使うか、想像するのは簡単っすよ。どうせ、美咲の為に使うんすよね?』

 

 真意を突かれて、遥は少しばかり弱る。

 

「……」

『断るっす。菫に狙われている以上護身用にベルトが必要だし、わざわざ敵に塩送るような真似したくないっす』

 

 蒲生は拒否した。

 

『用はそれだけっすよね? まあ、せいぜい頑張ってくださいっす』

 

 そのまま通話が切れた。

 

 

 

 



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第百六十九話

 蒲生は通話を終えた後、爪を噛みながら成音を見て呟く。

 

「山内ちゃんも、美咲と戦った者は皆おかしくなってくっす。なんであんな奴についていこうと思うんすか……」

 

 元はと言えば、生徒会を最初に辞めだしたのも彼女なのだ。

 それを見て……蒲生も他のメンバーも生徒会を辞めた。

 皆口にしなかっただけで、気持ちは皆同じだと思っていたのに、成音は美咲と戦った後、急に美咲と行動を共にするようになった。

 あれだけ菫の為に動いていた一号も、自分達を裏切って美咲の味方をしている。

 美咲の敵だった者は美咲と戦う事で、美咲の味方になっていく。

 

「……」

 

 蒲生にはとても理解の出来ない話だ。

 彼女のやる気や向上心は確かに、凄まじいものがあるし、見習うべきものではあると思う。

 だが一方で、他人まで彼女の価値観に巻き込もうとする。

 そのせいで、生徒会に関係のない仕事にまで付き合わされた事が何度もあった。

 去年は卒業した元会長がある程度ストッパーになってくれたが、副会長だった時から彼女の行動はそういう問題を孕んでいた。

 

 けど……そんな事は彼女には一切関係ない。

 

 ついていかないのなら、彼女は一人でも歩く。

 多勢に無勢な状況でも、絶対に勝ちに来る。

 自分の強さを認めさせようとしてくる。

 そして、そうでなければ満足しない。

 蒲生がどれだけ強くなろうとも、美咲は絶対にそれを超える。

 そして、相手より正しい事を証明したとしても、彼女は自分の思いを曲げる事はない。

 

「強ければ、何だって良いんすか……」

「確かに、あの人は生徒会長としては零点よね」

「山内ちゃん……」

 

 いつの間にか起きていた成音に言われる。

 

「あの人は学校を守ったけど、それはあの人の行動が結果的にそうなっただけ。あの人は自分の為にしか動かない。自分のプライドの為だけに生きてる」

 

 成音は俯いて笑みを浮かべつつ告げる。

 それに対して、蒲生は睨みながら反論した。

 

「そこまで思ってくれるなら、なんであんな人の為に戦えるんすか?」

「そうね……強いて言うなら、認めたくはないけどやるべき事をやろうとする気持ちが人とは違い過ぎる点ね」

「……」

 

 考えている事は、自分と同じというわけだ。

 

「そうよね。だからそれが悔しくて、何というか絶対にあの人を超えなきゃって思うのよ。まあ……難しいなんてレベルじゃないんだろうけど」

「……」

 

 成音も、美咲に対抗したいという気持ちは同じだった。

 けど彼女と自分では、やはりやり方が違った。

 

「だから、あの人に死なれちゃ困るのよ。あたしも折角、あの人に負けたおかげで色んな事にやる気を出そうって思えるようになったし」

「……」

 

 成音が蒲生に顔を向けて頼む。

 

「副会長、お願いがあるの。会長に今だけは力を貸してくれない?」

 

 

 



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第百七十話

「……」

 

 蒲生は黙り込むが、成音は続ける。

 

「あたしもアンタも、いつかはあの人を超えたいって気持ちは同じ。だから、協力して欲しいのよ」

「だから、あの人に力を貸すのだけはごめんだと何度言えば分かるんすか。それにもう、私はあいつと関わりたくないんすよ。めんどくさい……」

「副会長……」

 

 成音が言う。

 

「正直副会長には、まだ仲間を思う気持ちとかそういうのちょっとは残ってると思ってた。だから会長だけを敵として狙ってるのかなって……でも、ホントにそんな気持ちもないのね」

「……」

 

 蒲生は口を閉ざす。

 すると成音は立ち上がって言う。

 

「ならあたしがやる。例えアンタがその気になったとしても、アンタには絶対に倒させない。もし手を出そうとしたら、あたしが全力でアンタを倒す」

「勝手にするっす。どうせもう戦う機会なんてない」

「……ッ!」

「良いから、もう仲間の所に帰るっすよ。山内ちゃんなら気持ちを理解してくれると思ったのに、やっぱりそうやって塩を送らせようとする……。もううんざりっすよ」

「……」

 

 成音は何も言わず、蒲生に背を向けてその場を去る。

 蒲生はそれを見届けてから、もう一度瞳を閉じて身体を休めた。

 

※※※

  

 成音はある程度まで離れてから、早歩きで蘇我高校に向かい始めた。

 

「……」

 

 正直、そこまで期待はしていなかった。

 洗脳が解けていない以上、前のような仲間や後輩に優しかった蒲生の人格は彼女の心に残っていないだろうと思っていた。

 それでも成音はあの頃から、生徒会の仕事は嫌いでも、蒲生の事は割と好きだった。

 美咲に対する愚痴は聞いてくれたし、生徒会になくてはならない存在。

 それが今では……あの様だ。

 美咲の復讐心に溺れた挙句、美咲の事が嫌になって関わりたくないと逃げている。

 もう頼っても無駄だ。

 

「山内成音……発見」

 

 ふと聞こえたその声に、顔を上げる。

 気付けば、成音は洗脳された生徒会メンバーに囲まれていた。

 全員、アークソードドライバーを着けている状態の生徒会メンバー。

 

「……!」

「排除する……」

 

 一人だけかなり苦しそうな声で、そう告げたのは……新生徒会長と言われていた後藤。

 筋肉の隆起があの時以上に酷く、身体に相当負荷が掛かっているのが分かる。

 

「後藤……」

『ARC SWORD DRIVE READY?』

 

 全員が機械のように、端末を取り出してからボタンを押し。

 閉じてから、ベルトに取り付ける。

 

『ARC COMPLETE』

 

 禍々しいオーラが、彼女達の身を包む。

 上空から同じような光を帯びた剣が降り、それを掴み取る。

 生徒会メンバーは全員、剣の怪人・改へと姿を変えた。

 

「やるしかないわよね」

 

 成音も覚悟を決めて、フレイムシャワードライバーを腰に。

 端末を取り出して、ボタンを押す。

 

『FLAME SHOWER DRIVE READY?』

 

 端末を閉じてから構え、ベルトに端末を取り付ける。

 

『COMPLETE』

 

 上から火柱を浴びて、成音は火炎放射器怪人へと姿を変えた。

 

「はあッ!」

 

 火炎放射器怪人はそのまま地を蹴って駆け出す。

 

 

 



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第百七十一話

 同時刻。

 満を持して、美咲達が〇×女子高前へと集結。

 全員ベルトを着けて、遥との通信をオンにして、門の前へ。

 

「なんかあまり実感湧かないけど、もうこんだけ仲間いるんだな……」

 

 俺は思わずそう漏らす。

 最初は俺と美咲二人だけだったというのに、美咲の強さを認めた者、美咲の心意気に救われた者。

 色んな理由で美咲についていく事を決めた者達が、こうして立っている。

 俺と美咲合わせて八人。

 半分この場にいないが、それでも十分凄いことだ。

 

「まだ集まったのはこれだけですわね」

 

 美咲は全員を見てそう呟く。

 成音に関しては、遥から事情は聞いた。

 蒲生に誘拐されたが、すぐに解放された……と。

 

『ああ……明人と一号も来ていないと聞いた』

 

 明人もまだ万全な状態ではなく、一号は自分から明人の監視役をすると告げて俺の部屋に残った。

 

「というか、優香は戦うのか?」

「ウチもただ見てるだけってわけにはいかない系。一緒に戦う系」

 

 緊張で震えながら立つ優香。

 それをヴィーダがつついてから告げる。

 

「ダイジョウブ、ヴィーダ、ユウカ、マモル!」

 

 美咲がその様子を見てから前を向く。

 

「私達だけでも戦いますわよ」

「ああ」

「ウン」

「おっ系」

 

 それから美咲が告げる。

 

「さてと、戦う前に……ここには仮面ライダーが三人もいる事ですし、あれやりますわよ。裕太さん、ヴィーダさん」

「ン?」

「あれってなんだよあれって」

「仮面ライダーが三人揃ったら、あれしかないですわあれ」

 

 そういえば、仲間の仮面ライダーが三人きちんと揃うのは今回が初めての事だ。

 

「同時変身ですわ!」

「流石特撮女子……」

 

「ナンカオモシロソウ!」

「それじゃあ、行きますわよ」

「……」

 

 ライダーでない優香は少し離れようとする。

 

「ほら、優香さんもご一緒に!」

 

 何故か怪人のベルトを使用している優香も共に参加。

 

『BOMER DRIVE READY?』『GUNGNIR ON』『ムラマサ!』『HORSE DRIVE READY?』

 

 ベルトを操作してから、それぞれ構える。

 

「変身ですわ!」「ヘンシン!」「変身!」「変身系!」

 

 ヴィーダ以外が端末をベルトに取り付けて、ヴィーダは槍型のガジェットをグングニルドライバーに挿す。

 

『『COMPLETE』』『CHANGE』『御意! 出陣! 仮面ライダームラマサ!』

 

 それぞれの変身過程の後、美咲は仮面ライダーボマー、ヴィーダが仮