孤独の鎌鼬~転生先と肉体が最悪だけど特典生かしてどうにか頑張る~ (一般通過デモゴルゴン)
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前語り

以前の投稿が三年前なので初投稿です
ホモじゃないです(重要)


・・・暗い意識の中、水の流れる音で目を覚ます。

冴えない頭で体を起こし、スマホをいじろうとするが。

 

「・・・ガ?(は?)」

 

俺の目に入るのは、澄んだ川。

そして、俺自身の手は

 

異形のものと、化していた。

 

 

~~~~~~~

 

 

(・・・最悪の気分だ)

 

現在俺は、竹林の中に身を隠していた。

先ほどに比べて大分落ち着いている・・・と、思う。

こんな異常事態に即座に対応できる人間など早々いない。

ましてや、元々俺はただの学生である。

 

とりあえず、現状把握だ。

現在地はおそらく大社跡である。

先ほどの河川の風景と特徴的な竹林から見て間違いないだろう。

・・・なぜ俺が大社跡にいるかも、なんとなく心当たりがある。

 

いわゆる、テンプレ異世界転生。死因はおそらく熱中症だ。

一人暮らしの夏休みにエアコンがぶっ壊れ、業者を待つ間にポックリ逝ってしまったのだろう。数日前からモンハンをぶっ通しでやり続けたのも原因の一つだ。お金を惜しまず育ててくれた両親に顔向けができない・・・まったく情けない限りである。

・・・それ以上の問題もいくつかあるわけだが。

 

まず、転生先の世界がモンスターハンターの世界であることだ。

モンハンをかじったことのある人ならわかると思うが、この世界は弱肉強食の大自然。

その時点で現代人にとっては過酷な世界である。俺が軍人ならワンチャンあったかもしれないが、先ほども述べた通り俺はただの一学生の身であるため、精神的にかなり参っている。

その次に、”今の体は、人間の体ではない”ということだ。

転生先が人間であったら、でかい街に行くことを目標に憶病に生きていけばいい。

だが、残念ながら俺の体は人の体ではない。つまりは、モンスターの体ということになる。

この弱肉強食の世界の大自然に身を置かなければならないことが確定してしまった、ということだ。

 

・・・そして、ここからが大本命である。

”おそらくおれは、一人の神様とやらに見放された・・・どころか、嫌われている節さえある”

でなければ、ここまでパッとしない転生特典も渡さないし、俺をこんなモンスターに転生させたりもしないはずである。

・・・モヤのかかった記憶が正しければ、たしか二人の神様が喧嘩をしていたと思われる。

それでも特典をよこしてくれたのは、もう一人の神様からのせめてもの贈り物だろうか。

片方は時間がかかるが有能だ。しかし、もう一方の特典に関しては

 

(間違いなく人間に目を付けられる・・・のに、内容がしょぼすぎる!)

 

さて、ある程度情報を把握したところで、現況をまとめてみよう

 

現在位置は大社跡

そして・・・

 

 

転生先のモンスターは「オサイズチ」

転生特典と思わしき能力は、空中を蹴ることが出来る『エアホッパー』

そして、鉱石だろうが野草だろうがなんでも食し、取り込むことのできる『悪食』である。

 

 

 

(・・・・・・どうしろと!?!?!?!?)

 

こうして、俺の最悪のモンスター生活が幕を開けた

 

 

 

 



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群れを呼ぼう!

気が向いたので早期投稿です。
文字数は・・・察してください。


情報整理が済んだところで、何かアクションを起こさねばと思った。

今朝の発狂からずいぶん時間がたっており、すでに日が傾き始めている。

 

(とにかく飯だな・・・)

 

とりあえず腹を満たそう。

現状の能力がどれほどの物かも確認しておきたい。

そう思い立ち、俺は最初の目覚めたエリア1番に向かった

 

 

 

・・・のだが、俺の寝ていた場所が明らかに変である。

 

(血だまり・・・?)

 

ずいぶん時間がたっているため錆びたような色になっているが、間違いなくあれは血痕である。

しかし、なぜ俺のいた場所に血痕があるのか全く分からない。

まあ、今気にすることではないのだが。

ドス系と言ったら、取り巻きの群れとともに行う高度な連携である。

こいつを存分に生かさせてもらおう!

 

眼下にはガーグァが三羽。

最低でも一匹は確実に仕留められるだろう。多分。

 

俺は首を持ち上げ、天高く吠えた!

 

「グルァァァアアア!!」

 

群れを呼ぶときの吠え方はなんとなくわかる。

この肉体が教えてくれる。

今の咆哮でガーグァが逃げ出しそうになっているが問題はない!

 

(さあ、来い!)

 

 

 

 

 

 

結局自分で仕留める羽目になりました☆

 

~~~~~~

 

(さ、散々だ・・・)

 

まさか群れが一匹たりとも来ないとは・・・

いったいどうなってんだ?さっきのでっかい血痕が関係してんのか?

要調査だな・・・

 

(取り合えず、飯だな・・・)

 

俺は自力で仕留めた一羽のガーグァにかぶりつく。

この世界は弱肉強食なのだ。仕方がないのだ。

 

 

などという感想は一瞬で消しとんだ。

 

「キューー・・・!(うんめぇ・・・!)」

 

えっ!?ナニコレうっま!!

人間の食事で言うなら焼き立てジューシーの鳥の丸焼きにかぶりついた気分である!

なるほど、ジンオウガさんの好物になるわけである。

 

(これならいくらでも食えそうだな!)

 

そのまま俺は黙々と食事を進め、”骨一つ残さず食い切った”。

まさか骨まで余すことなく食べられる生物が存在していたとは思わなかったぜ。

おなかも舌も満たされたところで、さっそく血痕の詳しい調査に向かう。

 

(間近で見るとキッツイな・・・)

 

周辺をしっかりと見回すと、周囲に比較的小さな血痕がいくつか残っている。

位置的に俺はでかい血痕の中に倒れていた。ということは、周辺の小さな血痕が示すのは・・・

 

(多分だが、群れが壊滅したんだな)

 

ほかの小型モンスターを蹂躙した可能性もなくはないが、オサイズチにそんな大層な力などないと思われる。

となれば、消去法で元々のこの体の持ち主が率いていた群れが何者かによって壊滅させられたと考えるべきだ。

 

(爪痕っぽいものも見当たらないし・・・ハンターたちの仕業と考えるべきか?こっわ・・・)

 

さすがモンスターなハンター。この程度はお茶の子さいさいということである。

まあ俺自身はそこまで目立とうとは思わないので、向こう側の身勝手な都合のない限りは目を付けられないだろう。

 

【ガーグァの捕食により あなたの速度が 1 上昇しました】

 

「・・・!?」

 

突如、頭の中に浮かぶ文字列。

まるでRPGのレベルアップのような文章に、俺は驚愕していた。

まさか、これって・・・

 

『悪食』の効果か!?

 

(感謝します!もう一人のほうの神様!)

 

ただ単に何でも食える能力かと思っていたら大間違い。

使える使えないどころか立派にチート能力だった!

しかもおそらく、鉱石や野草を食べてもステータスが上がる。

どのステータスが上がるかは不明だが、その辺りはおいおい調べていけばいいだろう。

 

この広大で無慈悲な大自然の中、おれは同じ生活を繰り返し朽ちていくのみだと思っていた。

だが、こいつのおかげで光明が見えてきたのだ。

 

(まだ、成り上がれる・・・『悪食』をつかいこなせば、この一帯の主も夢物語じゃない!)

 

目指せ!テンプレな異世界チートライフ!!!

 

 

 

 

 

 

とりあえず今日は休みます。おやすみ・・・

 

 




勘のいい方はお気付きだろう。
そんなうまい話があるわけがないと・・・


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生活リズムを守ろう!

調子がいいので初投稿です。
文字数はいつも通りです。


 

~~~~~~~~~~~

 

―――今日もまた、朝が来る。

俺の一日は、朝食のサラダから始まる。

今日も適当な薬草やらタケノコを頂いている。

冷やすなりあく抜きするなりでもっとおいしく頂けそうなものだが、この際そんな手間はかけていられない。

 

【自然回復力が上昇しました】

 

上がるステータスは自然回復力。

このステータスは明確な数値で上昇が報告されないし、何を食べることによって上がるのかもわからない。

ただ、このような植物類を多く食すと必ずと言っていいほど上がる。

今までケガをしないように必要最低限の狩り以外での戦闘は避けているため、どれほどの効力を有しているかはわからないが、上げておいて損はないだろう。

 

~~~~~~~~~~

 

―――太陽が真上に来る頃。

昼には魚か肉を食べると決めている。

本日の標的は〇ソ猪ことファンゴ君。

丁寧に視界にとらえ、全速力でタックルをかましてやる。

すっ転んだところで”喉元を食いちぎり、息の根を止める”。

もう一匹は適当にしっぽの刃で切り付けて追い払い、ゆっくりと食事に入る。

 

【ファンゴの捕食により あなたの力が 1 上昇しました】

 

モンスターを喰ったことによって上がるステータスだが、俺はこれに対して一つの仮説を立てた。

それは、猟虫で捕れるエキスの色から連想されるステーテスが上昇するステータスということだ。

ファンゴの赤色ならパワーが、ガーグァの白色ならスピードが、ブンブジナの橙色ならばスタミナが上がるといった要領だ。

今日はファンゴを比較的多くを見かけたためファンゴだったが、食べる肉はその日その日で変わっていく。

何なら魚を喰った日のほうが多いくらいだ。ちなみに魚だと、何匹か食ったところでスピードが1上昇する。

一日にいずれかのステータスしか上げられないが、そこは仕方ないと割り切るしかない。

 

~~~~~~~~~~

 

―――夕暮れ。

俺は大社跡の中でも標高の高い11番エリアにて鉱石を食していた。

味はとてつもなくかたいパン。黒パンをイメージしてもらえればわかりやすい。

しかし、こいつを喰うことによってもメリットはある。

 

【防御率が上昇しました】

 

今日は運がよかったようだ。

こんなかんじで、鉱石を喰っていると防御率とやらが上がることがある。

上がる時は本当にまれであり、これまでで三回ほどしか上がっていない。

近くにある卵を喰ってもいいのだが、そんなことをすればリオ夫妻に焼き殺されてしまうので実質的になしだ。

何で知ってるかって?

 

けもの道から顔を出した瞬間、目の前でクルルヤックがブレスで吹き飛ばされたからだよ(虚ろな目)。

 

一応食ったが、全ステータスが1上がった程度だった。

味もくそまずだった。炭化してたししゃーないべ。

 

~~~~~~~~~~

 

ほかにも、骨を喰ったら部位耐久値が上昇するため毎日食していたり、ジンオウガ先輩に目を付けられかけたり、リオ夫妻に毎日「なんだアイツ・・・」と言わんばかりの目線を浴びせられたりなどいろいろあったが、おおむねこんな日常を過ごすこと大体ひと月。

現在の上昇ステータスはこんなもんである。

 

力+7 スピード+15 スタミナ+7

自然回復力の上昇と部位耐久値の上昇がほぼ毎日

防御率の上昇が三回 である。

 

さて、体感でどんなものかの言うと・・・

 

 

 

\(^o^)/わからん\(^o^)/

 

だって、今までまともな交戦なんてしてないんだもの。

隠密したり不意打ちですっ転ばせてかみついたりばかりで力量を図る機会がロクにないのである。

 

これでは一向に成長したかどうかわからない・・・

しかし変なことをすれば人間に目を付けられるし、何なら死にかけねない。

今後の指針としては、ステータスが伸び悩むまではこの生活サイクルを繰り返すつもりである。

 

安定は大事だ、古事記にもそう書いてある。

 

というわけで本日もこの辺でお休みである。

気がかりとしては、”しっぽの刃よりも顎のほうが強い”のでオサイズチとしてそれはどうなのだろうということだ・・・

 





目立たないように生きる(草も鉱石も食べる顎が異常に強すぎるオサイズチ)


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報告書:大社跡の鎌鼬竜

時飛ばし&人間サイドのお話です。
うまく書けているといいのですが・・・

通算UA800突破しました。ありがとうございます。


―――お天道様が真上に来る頃、たたらの火の前に一人の姿があった。

その赤髪の人物はとある書類を片手で持ち、かれこれ三刻ほどは頭を悩ませている。

 

「この報告書、どうすっかなぁ・・・」

 

―――彼の名はノボル。カムラの里にて修練を重ね、晴れてハンターズギルドから正式にハンターとして認められた期待のルーキーである。

その腕は確かであり、新人ながらその技術は上位で活躍するハンターと肩を並べるほどと里長フゲンに認められている。

 

しかしながら、彼の才能がここまで開花したのもきちんとした理由がある。

それは・・・

 

(・・・多分、俺と同じなんだよなぁ。こいつ)

 

そう。彼もまた、転生者なのである。

彼は二人組の神様にいくつかのチートを頂き、ここまで上り詰めてきたのだ。

気を自由自在に増幅し、操る能力

鍛えれば鍛えるほど強靭になり、今では鋼の棒で殴られても怯まない身体。

そして、筋肉のかすかな躍動すらもとらえ、いかなる攻撃をも察知することのできる神秘の目である。

しかし与えられた特典におごることなく、石橋どころかレインボーブリッジを叩いて渡るほどの丁寧さでキッチリとハンターとしての修練を積んできた。

努力の甲斐もあり、彼はビシュテンゴも無傷で、なおかつ余裕をもって狩猟することができる。

彼にとって、とんでもなく無茶な修練を頼んだにもかかわらず熱意をもって彼を指導してくれたウツシ教官はハンター人生の恩人である。

 

しかし、初めてオサイズチを狩猟した翌日、そのオサイズチの亡骸がきれいさっぱりなくなったという事件が起きた。

おかげさまで彼ははじめての武具の強化のチャンスをスカされたのだが、三か月もたった今ではいい思い出である。

 

・・・なお、聡明な読者諸君ならばお気づきだろうが、この消え去ったオサイズチこそがわれらが主人公君である。

つまり、エリア1の惨劇の犯人もこのノボルという人物である。

彼はメイン武器である太刀と閃光玉などのサポートアイテムを巧みに使いこなし、エリア1番から離脱させることなく群れを掃討したのだ。

 

ぐぅ~~~~

 

「へぇ!?もうこんな時間!?」

 

閑話休題。

いつの間にか昼食時をとっくに過ぎていることを腹の虫が告げる。

気づいたとたん、恐ろしいほどの空腹感がノボルを襲う。

 

(いっけねぇ、またヨモギちゃんに叱られる!)

 

前世からの年齢も合計すれば、精神的にはとっくにおっさん。

中身は大して成長していないが、それでも幼女に叱られるのは精神的にとてもクるものがある。

書類を急いでポーチにしまって、扉を開けて表に飛び出す。

 

「急げいそグヴぇ!?」

「うわぁ!?」

 

ロクに確認もせずに外に飛び出したので、人とぶつかっても文句は言えないだろう。

ノボルはぶつかった人物に覆いかぶさる形で石畳の上に倒れこんだ。

 

「いってぇ~~・・・」

「痛たたた・・・大丈夫かい?我が愛弟子」

 

ぶつかった人物は彼の恩師であるウツシ教官である。

どうやら彼は、昼時になっても姿を現さないノボルを心配して探しに来たようだ。

ぶつかった人物がウツシ教官だと認識するや否や、即座に立ち上がりノボルは平謝りをする。

 

「っごごご、ごめんなさい教官!!!」

「いやいや、かまわないよ。お昼を食べに来ていないとヨモギちゃんに言われてね。今日はまだ誰も姿を見ていないと言っていたから、もしかしたらここにいるかなと思ってね。

 

何か悩み事かい?僕でよければ相談に・・・」

「いっいえ大丈夫れす!ヨモギちゃんのところに行ってきますね!?」

 

ぴゅーん!!

 

「いや、悩みごとのありそうな・・・速い!?さすが我が愛弟子!」

 

ノボルはなぜかとても慌てた様子でその場を立ち去る。

最近、愛弟子に避けられているようで若干のホームレスならぬ愛弟子レスに襲われていた彼は若干のショックを受けた・・・

 

「まったくほれぼれするほどの身体能力だ!彼のハンターとしての未来はきっと明るいだろう!」

 

・・・そんなことなかったようだ。

まもなく、彼は1枚の紙切れに気が付く。

どうやらノボルが落としていったものらしい。

 

「これは・・・モンスターの報告書?」

 

ウツシはその書類をじっくりと読み始める。

 

『報告書:大社跡のオサイズチについて

3か月ほど前、かなり奇妙な行動をとる鎌鼬竜を発見した。

普通の鎌鼬竜と比較して異常な点をここに記す。

 

・群れで行動していない

・朝に特産タケノコや薬草などの植物を食べている

・必ず昼に狩りを行う

・捕食の形跡をほとんど残さない

・夕方に飛竜の巣に向かっている

・夜間は出現しない

 

この鎌鼬竜については今後も観察を続けていくつもりである』

 

ウツシはこの報告者の内容に対して驚愕を隠せなかった。

様子のおかしなオサイズチは確かに見かけたが、植物を食べているなど知りもしなかったからである。

ノボルはこのモンスターの対処について悩んでいたのだ。

 

(よし!ならば愛弟子のために僕も一肌脱ぐとしよう!)

 

ノボルがハンター活動に集中できるよう、このオサイズチの観察を自分が引き継ぐことに決めたのだ。

そう思い立ったウツシは、さっそく大社跡に向かうことにした。

 

~~~~~~~~

 

(いつからこんなことに・・・)

 

ノボルはここ最近ずっと抱え続けていたもう一つの悩みについて考えていた。

オサイズチの事など、この問題に比べれば軽いものだと思っているほどである。

 

ウツシ教官と面と向かって話せないのだ。

距離を詰められると妙に緊張するうえ、舌も回らなくなる。

この正体不明の現象に対してノボルは非常に悩んでいた。

 

(このままじゃウツシ教官にも悪いし・・・ハァ・・・)

 

ため息をつき、ノボルは茶屋のテーブルに突っ伏すしかなかった。

 

 

 

 

 

 

余談だが、ノボルはかなり可憐な顔立ちとその力に見合わぬ華奢な体格を持つ。

現代で言うならば「男の娘」というやつである。

 




めずらしくいっぱいかけた・・・と思います
それではまた次回


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半年間をまとめよう!

なんだか不穏な回です

通算UA1200&お気に入り25件突破ありがとうございます。


―――時がたつのは何とも早いもので、最初に大社跡で目覚めてすでに半年が経過していた。

なお、半年間の間はずっと同じことしかしてなかったので割愛させていただく。

本当は細かいことがいろいろあったりするのだが、どれも大した出来事ではないので語る必要もないだろう。

 

この半年を経て変わったことは三つある。

 

一つは、脚力と顎の力が普通のオサイズチに比べ数段ほど上だということだ。

おそらくこれには『悪食』と『エアホッパー』が関係していると思われる。

『悪食』はご存じの通り、ありとあらゆるものを食らい、自らの血肉とするスキルだ。そのため、顎を含めた食事に関する部分が強化されているのだろう。『エアホッパー』も同様に、虚空を蹴って移動する能力のため脚力が強化されているのだ。

・・・半年の生活を経てようやく気付いたのだ。鉱石や骨を平然と噛み砕くのは普通に考えておかしいだろうと。

我ながらなんという間抜けっぷりである。最近になって精神的に落ち着いてきたので気づいたのだ、と思いたい・・・。

 

二つ目は無論ステータスの伸びっぷりである。

手早くまとめさせていただくと

 

力+40 スピード+80 スタミナ+50

自然回復力と部位耐久値の上昇は相変わらず

防御率上昇が計八回 である。

なお、これらの数値は前回のステータスを合計した値になっている。

 

といった感じだ。

この過酷な大自然の中、ここまで順調に挙げられているのはかなりの幸運だ。

まあ、隠密に徹しまくってるおかげで縄張りなんてものはないに等しいのだが。

その代わりと言ってはなんだが、新参者やプライドの高いジンオウガさんを除いた縄張りを通ってもスルーされるようになった。

最初は何度も吠えられたものだが、結構前から「こちらに敵意がないならまあいっか」といった感じで見逃されるようになった。

リオ夫妻に至っては仲良しになっているレベルである。鉱石を喰いに行くついでに卵を盗りに来たクルルヤックやらメラルーやらを追い払っていたおかげだろう。

 

三つ目は大したことではないが・・・横回転回避ができるようになった。いわゆるコロリンである。

スピードのステータス上昇の恩恵だろう。おかげさまで交戦した時の戦術が一つ増えた。

まあ、これまでマトモな戦闘なぞしてきていないので役に立つかはわからないが・・・無いよりましである。

 

今のところ、ステータスの上昇による恩恵を横回転回避ぐらいしか感じていないが、それでも順調にステータスが上がっているのは純粋に嬉しいし、安心感がある。

・・・最近では、前世で遊んでいたゲームに懐かしみを覚えるようになってきた。それに、大好物であるラーメン各種も食べられていない。

この世界にあるかは知らないが、食えるならいずれ食ってみたいものである。

 

(・・・寝るか)

 

この辺りを気にし始めると腹しか減ってこない。

俺はとっとと瞳を閉じ、省エネモードに入ることにした。

 

~~~~~~~~~

 

「・・・オサイズチの捕獲とアケノシルムの狩猟?」

 

里のハンターであるノボルに、そんな奇妙なクエストを依頼された。

奇妙なオサイズチの捕獲を頼みたいというハンターズギルドのお得意様の依頼と緊急クエスト代わりのアケノシルムの狩猟依頼が同じフィールドだったため、急遽合同で行うことになったのだ。

 

そのため、現在ノボルはもう一人のハンターのナツトを待っているのだが・・・

 

(・・・オサイズチでも思ってたけど、なんか妙に転生者多くね?)

 

ここ最近、新人にも関わらず異常な快挙を上げ続ている人物が多いのだ。

いろんな意味で異常な力をもっていたりすることが多く、大半の人物の態度はかなり不評である。

同じく異常な力を持つものとして、肩身が狭くなるようなことは控えてほしいとノボルは思う。

 

(お茶がうめぇな・・・)

 

まあ、自分は人として守るべきことはちゃんと守っているつもりなので大して関係もないかと考え、茶屋のアイルーにいただいた温かいお茶とうさ団子をじっくりと味わうノボル。

そこに、一つの人影が駆け寄ってくる。

 

「おーい愛弟子~!」

「!?」ブフゥ!

 

意外な人物の声にすすっていたお茶を吹き出すノボル。

どうやら半年たった現在でも例の症状は治っていないようである。なんとも人の心とは難儀なものだ。

 

「きょ、きょきょ教官!?」

「やあ愛弟子!例のオサイズチに会いに行くんだって?」

「え、ええそうです」

 

とは言えど、最近ではようやく普通に会話ができる程度には落ち着いてきたノボル。

油断すれば声が裏返りそうになるほど心臓がバクバクしているが、三か月前に比べればずいぶんとマシになってきた。

 

「そのことについて、今現在だけでも判明していることだけでも話そうと思ってね

 

どうやら、あの個体は鉱石なども難なく食していることも発覚したんだ」

 

「っ!?」

 

先ほどの若干浮ついた雰囲気は一瞬で消え去り、その眼は歴戦の狩人にふさわしい目つきとなったノボル。

 

「また、捕食の痕跡をほとんど残さない理由もわかったよ。そもそも、ほかのモンスターと違ってあの個体は骨をも残さず全て食べきるんだ。さらに、骨まで食べきっているのにもかかわらずほとんど時間をかけていない。まるでそのモンスターに骨などないといわんばかりにね。

奴の顎には十二分に注意したほうがいい。下手をすれば、狩られてしまうのはこちら側だ」

 

・・・ノボルはまだ上位のハンターではない。

オサイズチの亜種が出たとすれば、それは上位ハンターの領分だ。

ノボル一人ではなく、最近上位に上がったハンターであるナツトが呼び出された理由がこれだ。

アケノシルムは上位の個体だがかなり若い個体なのでノボルが担当する。が、それでも狩りを行っているところに乱入される可能性は高い。

改めて気を引き締めなおし、ノボルはウツシの顔に向き合う。

 

「わかりました、教官。万全の用意をもって―――

 

 

 

 

「おっ!?カワイ子ちゃん見っけ~♪」この狩猟に・・・」

 

あまりにも暢気なそのセリフに、せっかく入れた気合いがそがれてしまうノボル。

後ろを振り返ると、レウス一式を着込んだ金髪の美丈夫の青年が肩を組んできた。

 

「もしかして、君がノボルちゃん?すっげぇ小動物っぽくてかわいいね~!」

(・・・イラッ)

 

ノボルは前世からのコンプレックスである低身長と顔つきを指摘されて思わずムカついてしまう。

しかし、彼もまたハンターである。こんなことで心を揺さぶられるような修練なんて送ってきていない。

 

「・・・あの、初対面の人に向かって失礼じゃありませんか?」

「ベッツにい~じゃん?あ、俺の名前はナツトだ!よろしくな!」

 

そういうと、爽やかにウィンクをするナツト。彼の美貌から放たれたそれは、並の女性なら一発で落としていただろう。しかし、ウィンクした相手は男であり、その上絶賛心の病にかかっているのである。

その病は上書きなどでできないほどの重症であるため、当然ナツトに靡くはずもない。

にもかかわらず、他人のプライバシーなぞ知ったことではないといわんばかりに距離を詰めるナツト。挙句の果てには「女の子は強い男に従えばいいんだよ!」とかなり拗らせた発言も飛び出してきた。下心満々である。

 

「なあ、キャンプについたら一回”休憩”しようぜ?」

(気持ち悪っ!?)

 

そういいながらノボルの体を撫でまわすナツト。

どうやら隠す気もなくなったようだ。

嫌悪感をあらわにし、ナツトを突き放そうとするノボル。

 

 

その瞬間、ノボルの肌を炎が焼いた。ナツトの手から炎が噴き出したのだ。

間違いなく転生特典である。彼の快挙の要因はこの炎なのだろう。

嫌悪感が焦りと危機感に変わるノボル。意外にもナツトの握力は非常に高い。

 

(コイツ・・・!)

「・・・女はな、俺の前ではだれも逆らえないんだよ

だから、お前の体もじっくり――――」

 

 

 

ズガンッ!!!!!

 

瞬間、走る翡翠の疾風。吹き飛ぶナツトの体。

抱き寄せられるノボルの体と、それに応じて真っ赤になるノボル。

 

―――集会場を満たすのは、まさしく絶対零度の殺意。

 

アイルーたちはガタガタと震え、受付嬢であるミノトも反射的に臨戦態勢に入る。

その冷気を放つのは・・・

 

「・・・愛弟子の狩りを手伝ってくれることには感謝している。だが、愛弟子に手を出すつもりなら話は別だっ!!!」

 

凄まじい怒気とともに放たれるウツシの叫び。

忘れるなかれ。彼もまた、カムラの里に生きる猛者なのだ。

 

「いってぇ・・・!雑魚が何しやがる!!!その女は俺が目をつけてたんだぞ!」

 

哀れ、ナツトには集会場に満ちる殺意に微塵も気づいていないようである。ハンターとしての精神が成熟しているならば、この殺気に気づくことができていただろう。

しかし、彼は所詮特典に甘えてきた未熟者の狩人。カムラの里の猛者に気づくはずもない。

 

「愛する家族が傷つけられそうになっているのに、黙っている者は居ない!!!

 

そもそも、愛弟子の性別は男だ!!!」

 

 

 

 

「は?男なのかよ・・・ペッ!!期待して損したわー」

 

とたんに興味を失い、クエスト出発口に向かうナツト。

あまりの豹変ぶりに、ウツシは思わず殺気を解いてしまう。

 

 

「・・・愛弟子よ。君が嫌なら、僕がギルドマネージャーのゴコクさん頼んでキャンセルしてもらおうか?」

「いっ、いえ!大丈夫れす!!」

 

顔を真っ赤にしながらもなんとか返事を返すノボル。

上位昇格のチャンスを逃すつもりはないようだ。

 

「・・・そうか。君の覚悟はそれほどまでに強いんだね。ならば、快く送り出すのが僕の役目だ!!!行くんだ、愛弟子!上位の狩りの世界に羽ばたくんだ!

 

気炎、万丈!」

「・・・!もちろんです!あの野郎に、カムラの炎を見せつけてやりますよ!」

 

ノボルはクエスト出発口に向かう。

向かうは大社跡。彼は、上位への登竜門を破るのだ。

 

 

 

 

 

 

(教官の体、デカかったな・・・)

思わずにやけそうになる口元を、青い襟で隠しながら。

 

 




気づいたら文字数が大変なことになってた・・・
ノボルの装備はカムラノ一式と初期武器です。
素材は生活費稼ぎに売っています。世知辛い・・・
攻撃系のチートでぶっ飛んだのもらってないからね、仕方ないね。


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初戦闘(難易度:ルナティック)をしよう!

戦闘回です。戦闘回だと思います。戦闘回だといいなぁ・・・

通算UA1800&お気に入り40件突破ありがとうございます。


「クルァァァアア!?(こっちくんなぁぁあ!?)」

「待てやぁぁぁぁあ!!!」

 

やあどうも、俺だよ!!!

いつもとノリが違うって?それも仕方ないだろう。

俺は現在絶賛命の危機なのである。いつもと同じテンションで居ろというほうが無理な話である。

 

俺は現在、真夜中の大社跡にてレウス装備一式のハンターに追っかけられている。

炎のブレス吐いたり地面を砕いたりしているのでまず間違いなく転生者である。

あの詠唱には聞き覚えがある。おそらく炎は通じるどころか吸収して回復するので、リオ夫妻に頼ることはできないだろう。

 

・・・俺ってなんかしたか!?

特に人里に襲撃とか行商人襲ったりとかしてないんだけど!?

 

「火竜の・・・」

 

・・・あっやべ!

 

~~~~~~~

 

「咆哮ォォォォオ!」

 

ナツトの喉から放たれる竜の業火。

その炎はありとあらゆるものを焼き尽くしながらオサイズチに迫ってくる。

しかし、炎が届く直前、オサイズチの姿が霞む。

オサイズチはとっさに横に飛ぶことによって攻撃範囲から離脱したのだ。

 

しかし、環境的にナツトの行動は最悪の選択である。

こんな竹林の中で高温の炎を放てばどうなるかは想像に難くない。

燃え盛る竹林、天高く上る煙。

既にこの一帯には地獄のような光景が広がっていた。

戦慄するオサイズチ。

逃げ惑う獣たち。

それに反し、この災厄を引き起こした張本人は―――

 

「はぁ~メンドクサ・・・さっさと死ねばいいのに」

 

この態度である。

自然への敬意など微塵も感じられないその態度。この力の本来の持ち主がいれば、間違いなくナツトは鉄拳制裁を食らっていただろう。

 

「無駄にすばしっこいやつだなぁ!?火竜の翼撃!!」

 

ナツトの両腕に業火が宿り、鞭のようにしなやかにオサイズチに襲い掛かる。

ギリギリまで引き付けて跳躍し、間一髪でかわすオサイズチ。

オサイズチが逃走し、ナツトが追撃する。その追撃をオサイズチが躱し、さらに逃走。

先ほどからずっとこの調子だ。ナツトが攻撃するたびに、その一帯がさらに燃えていくのを除けば、まったく状況は進展していない。

オサイズチがナツトより上手なのか。ナツトの力の振るい方に問題があるのか。比較的後者に賛同が集まりそうだが、今は大した話題ではないだろう。

 

「グルゥ・・・!(埒が明かねぇ!)」

 

何を思ったか、突然山のほうに方向転換を行ったオサイズチ。

その理由も知る由もなくナツトはさらに追跡する。

 

「野郎、どこ行きやがる!」

 

ナツトの脅威は炎だけではなく、常人離れした身体能力も含まれる。

ガルクを連れていないにも関わらずオサイズチに追いつくのは、この身体能力の頼りまくっているというのもある。

そうしてついに、ナツトは攻撃範囲内にオサイズチをとらえた。

 

「これで終わりだ!火竜の翼撃ィ!!!!」

 

先ほどのものとは比べ物にならない火力を放つナツト。

まさしくそれは、火竜の翼撃と呼ぶに相応しい破壊力を持っていた。

迫る爆炎。余りも巨大な翼に対してオサイズチの対応が遅れてしまう。

 

「ドラァァァアアア!!」

 

かろうじて跳躍し直撃を避けるオサイズチ。

しかし、その爆炎の余波になすすべもなく吹き飛ばされるオサイズチ。

 

「グガァァァァアアアア!!??」

 

―――竹林の向こう側に飛んでいき、オサイズチの姿が見えなくなる。

これでは生死すらもわからない。

 

「へっ、ようやく死んだか・・・。剥ぎとりゃ多少は金になんだろ」

 

自分によほど自信があるのか、オサイズチの討伐を確信するナツト。

無理もない。あの勢いで地面に衝突して無事なモンスターなど、それこそ古龍などでしかありえないのだから。

 

~~~~~~~~

 

「間に合わなかったか・・・」

 

そう言いながら天を仰ぐノボル。

そのそばには、落とし穴の中ですやすやと眠るアケノシルムがいた。

なんてことはない。ただ単に、ノボルがタイムアタック勢もビックリの行動読みでアケノシルムを圧倒したのだ。

おかげで彼と彼のオトモは無被弾である。

・・・これが彼の日常と聞いたら、全国のハンター諸君はいったいどのような反応するのだろうか。

 

「あいつの冥福を祈ってやろう・・・ZZZ」

「にゃにゃ!こんなところで寝ちゃダメにゃよ!」

「・・・ハッ!?ご、ごめんミケ」

「まったく、ご主人は狩りが終わった後のその癖をどうにかしてほしいにゃよ!」

 

そんな彼だが、神秘の目を全力で使った狩りの後は大きな疲労感と睡魔に襲われる。

それは力の代償という奴だろう。上位への昇格クエストとだけあって、彼は神秘の目を全力で使用したのだ。

そんな彼のフォローを回復が得意なミケが行うのはいつもの事らしく、手慣れた様子で元気ドリンコをノボルに飲ませるミケ。

 

「そういえば、冥福って何のことだにゃん?」

「ん?・・・ああ、あのオサイズチの事だよ。アイツとはなんだか気が合いそうな感じがしてさ」

「ご主人は変なことをいうにゃ。大型モンスターと心を通わせるなんて、別の大陸の噂話でしか聞いたことないにゃんよ?」

「いや、意外とそうでもないかもしれないぞ?」

 

そういいながら、星空に向かって手を合わせ、黙祷をささげるノボル。

「やれやれだにゃ」といいながら、ミケはしばらくその黙祷に付き合うことにした。

 

~~~~~~~

 

―――死のビジョンが見える。というのは、まさに先ほどの瞬間のことをいうのだろう。

 

(『エアホッパー』がなかったら死んでたぜ・・・)

 

オサイズチの脳裏によぎったのは、地面に打ち付けられて全身の骨が折れる自身の姿。

その最悪のビジョンが現実にならないように、オサイズチは咄嗟に『エアホッパー』を発動したのだ。

『エアホッパー』には、実はそれまでかかっていた運動エネルギーを消失させる効果がある。

これにより、オサイズチは落下のダメージをなくすことに成功したのだ。

とは言えど、先ほどの攻撃の余波によって受けたダメージが大きいことに変わりはない。

 

(・・・あの火力じゃ、このエリア10に来ても意味がなかったか)

 

オサイズチの目論見はこうだ。

ボルボロスのように泥をまとい、炎の攻撃を少しでも軽減し、さらなる逃走を図ろうとしたのである。

・・・しかし、先ほどのノリで先ほどの火力が出されてはそんなものは意味をなさないだろう。

この状況から生き延びる方法を思案するオサイズチ。

 

(考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ・・・・!)

 

しかし、そうこうしている間に奴の熱気が近づいてくる。

一秒時が刻まれるたび、大きくなっていく焦り。

オサイズチは、炎に焼かれる自らの姿を幻視した。

 

・・・ひとつ、打開策を思いつく。

それは元人間として、彼が絶対に打ちたくない手段であった。

しかし、ここは弱肉強食の大自然の世界である。そんなものに甘えているようでは、この先生きてはいけないだろう。

 

・・・ゆっくりと深呼吸をし、オサイズチは決死の覚悟を決める。

このまま死んでやるくらいなら、最後の最後まで生き残ることにかけたほうが何万倍もマシだ。

 

(・・・やってやる)

 

・・・その時、彼の目は確かに、この大自然に生きる者の目をしていた。

 




オサイズチ君の戦略にご期待ください。

また次回にお会いいたしましょう。


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転ずる者たちの応酬~第一幕~

「ずる」か「ぜし」か「じた」にするかでかなり悩みましたので実質初投稿です()

通算UA2300&お気に入り50件突破しました。ありがとうございます。



~~~~~~~~

 

「あの役立たずが!」

 

ナツトは激怒していた。フクズクの送ってきたモンスターの現在位置と、自らの眼から得た情報と一致しないからである。

この開けたエリア10にオサイズチの亡骸があるのなら非常に目立つはずである。しかし、亡骸どころか体毛の一本たりとも残ってないのはどういうことか。

匂いの筋も途切れていることから、ナツトは完全にオサイズチを見失ったことを理解する。

 

「帰ったら焼き鳥にして食ってやる・・・やっぱ新システムゴミだわ。モンハンらしさも消えちまったしな」

 

とんでもない悪態をつくナツト。彼の辞典には他者への慈しみという言葉はないようだ。

正しく、唯我独尊。彼がどこまで拗らせているかがよくわかる。

 

――――その傲慢が、どこまで通用するのだろうか。

 

「くそがよぁ・・・」

 

仕方ないといわんばかりに、彼は慣れない周囲の捜索を行う。

このような時、本来は周囲の警戒を最大限に行うものだが、彼はそれすらせずに周囲を歩き回る。

熟練のハンターが見たならば間違いなく彼を怒鳴り倒していただろう。

 

捜索を行ってしばらくすると、それらしいものを特定する。

いくつかの泥のふくらみだ。というか、これくらいしか痕跡らしい痕跡がないのだが。

 

「オラァ!」

 

そこに近寄り、焔の鉄拳を打ち込むナツト。泥の塊は砕け散り沈んでゆく。

一つ、また一つと砕かれていく泥の塊。まもなく、泥の塊は最後の一つになった。

 

(大方、オロミドロの痕跡だろうな)

 

そう結論づけ、最後の塊に近づいていくナツト。

 

(帰ったらどうしたもんか。ナンパかヤケ食い・・・しか思いつかねえ)

 

最後の塊に向かい、その腕に焔を宿し、振り上げるナツト。

 

「とっとと帰ろ・・・」

 

そんな気の抜けた言葉とともに、破壊の鉄槌が振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

バシャァァァアン!!!!!

 

―――誰もがそう思った、その瞬間。

突如泥の塊が炸裂し、ナツトの体が吹き飛ばされる。

 

・・・現れたのは泥まみれになった我らがオサイズチ。

ギリギリとその顎を噛みしめながら、吹き飛ばされたナツトのほうを向く。

闘志は燃えに燃えている。先ほどの逃げに徹していたオサイズチとは異なる個体ではないかと錯覚させるほどに、その気迫は凄まじかった。

 

 

「畜生が・・・!」

 

吹き飛ばされた体を起こそうとするナツト。

ダメージが思ったよりも大きいのか、なかなか思うように立ち上がれない。

 

しかし、オサイズチはここでおかしな行動に出る。

唐突に首を持ち上げ、体をよじりながら顎を開いたり閉じたりしている。

いったいどうしたのだろうか。決して戦闘中にとるような行動ではないのは確かだ。

・・・やがてそのアギトをこちらに向けなおすオサイズチ。

 

それと同時に、ようやく立ち上がるナツト。なぜだがバランスがうまく取れないが、そんなことを気にしてはいられない。

彼は怒っているのだ。自らに歯向かった、”愚かな獣”に対して。

 

「ぶっ殺してやる!火竜の―――!?」

 

火竜の翼撃を放とうとして、唐突にバランスを崩すナツト。

だが、彼が違和感を抱いたのはそこではなかった。

 

(右腕の感覚がおかしい・・・?)

 

何かあったか?と考えながら彼は右腕に視線を向け―――

 

 

 

 

 

その目に映ったのは、虚空だった。

 

~~~~~~~

 

「来ないなぁ・・・」

「来ませんにゃあ・・・」

 

ベースキャンプにて、ノボルとミケは寝ころんでいた。

ノボルは上位ハンターではないので、ナツトの捕獲依頼に手を出せないのだ。

・・・まあ、十中八九クエストは失敗だろうが。

とはいえど、帰ってくるのがいくらなんでも遅すぎる。

 

「・・・ZZZ」

 

とうとう居眠りを始めてしまうノボル。

ミケはあきれ果てながらも、今度は起こさなかった。

 

―――現地で惨劇が起きているなぞ、彼らには知る由もないだろう。

 

~~~~~~~

 

 

「・・・う、うわぁぁぁぁあああ!?!?!?」

 

情けない悲鳴を上げるナツト。

彼の右腕の二の腕から先はなく、赤い血がドクドクと流れ出していた。

 

―――オサイズチは泥から飛び出す同時に、ナツトの腕に食らいついたのだ。

鉱石すらも容易く噛み砕くその顎の力。それが死力をもって振るわれたならばどうなるかは、想像に難くはないだろう。

 

【リオレウスの防具の捕食により 火耐性(小)を獲得しました】

 

さらに、『悪食』によって火の耐性を取得したオサイズチ。

これにより、ナツトの攻撃が少し通りずらくなった。

 

血に染まった牙をナツトに向けるオサイズチ。

わずかな動作の一つすら見逃さないと言わんばかりにナツトを鋭くにらみつける。

 

「ひ―――」

 

その視線に怯み、わずかにたじろいでしまうナツト。

そんな一瞬の隙を突かないほど、今のオサイズチは甘くない。

 

オサイズチは前方に軽くジャンプし、さらに『エアホッパー』を発動させる。

ナツトに向かってその顎を開きながら突進するオサイズチ。

ナツトは迎撃を行おうとするが・・・

 

「か、火竜の――」

 

遅い。狙いを定めてから攻撃を放つのがあまりにも遅すぎる。

即座に上方に飛び跳ね、さらに角度をつけオサイズチが食らいつく。

 

食い破られるは左腕。その上にオサイズチの勢いに引っ張られ、ナツトは倒れこんでしまう。

 

「あ、ぎぃぃぃぃぃいいいい!?!?!?!?」

 

オサイズチはナツトの左腕を口からぶら下げながら離脱し、近くの高台に上る。

彼は左腕を空中に放り、その腕にかぶりついて噛み砕く。

 

【スキルチェック発動 獲得成功確率25%・・・成功。リオレウスの防具の捕食により 火耐性(中)を獲得しました】

 

さらに強化されるオサイズチの火耐性。ナツトの攻撃はさらに通りずらくなり、従来の威力の半分程度しか通らなくなる。

先ほどの状況から一変。追い詰められたのはナツトのほうだ。

 

「グルゥ・・!」

 

殺意に満ちた目でナツトを見据えるオサイズチ。

 

「はぁ、はぁ・・・!」

(くそっ!くそっ!どうしてこんなことになってんだ!?

俺はオリ主のはずなんだ!!こんなところで終わるような奴じゃないんだ!!

俺は最強の存在なんだ!!!なのになんで!!!!)

 

困惑と恐怖にのまれ、すでに意気も折れかけているナツト。

なんとか残った足で岩肌にもたれることができたが、その程度の事でこの詰みの盤面に変化は起きない。

 

「嫌だ・・・嫌だ・・・!」

 

確実に最後の一撃を与えるため、ナツトに近寄っていくオサイズチ。

ナツトをじっくりと見据えながら歩みを進めるその姿は、橙色の外套をまとう死神を幻視させる。

 

 

 

 

 

だが、ここでナツトは最悪かつ最善の行動をとった

 

「嫌だぁぁぁあああ!火竜の―――」

 

大きく息を吸い、大量の空気を取り込むナツト。

同時に満ちる膨大な熱気。

この後に放たれる一撃は、彼の初めての死力を尽くした攻撃。

オサイズチはその災厄を止めるために駆け出した

 

が、間に合わない。その一瞬の動作に対して、その反応は遅すぎたのかもしれない。

 

「大、咆哮ぉぉぉぉぉぉおお!!!!!!!!」

 

 

―――放たれる竜滅の炎。世界の終末を思わせるほどの膨大な豪炎。

放たれた業火は大社跡の一部を飲み込み、焼き尽くしてしまった。

にもかかわらず、その炎の勢いはとどまらない。

飲まれてゆく大社跡、燃え尽きてゆく数々の命。

 

(やった・・・!!)

 

炎に呑まれたオサイズチの姿を見たナツトはようやく安堵を得た。しばらくして、彼はようやく炎を放つのをやめ、自らの起こした惨状を見つめる。

視界を覆う、天を焦がすほど立ち上る焔と煙。

獣の悲鳴が響き渡る、星一つ写さない黒い空。

 

 

(やった・・・!やっぱり俺は最強なんだ・・・!)

 

無意識で行っているのか、両腕を炎で作り出すナツト。

その炎は質量をもっており、物をつかむことすらできるだろう。

ナツトは赤い両腕を広げ、天に向かって叫んだ。

 

「ざまあぁぁぁあみやがれぇぇぇ!!!!!

俺こそが最強なんだ!!!俺が本気を出せばこんな奴なんて簡単に殺せるんだ!!!

捕獲クエストだとか知ったことか!!!

俺に指図するような奴は全員焼きつくしてやるんだ!!!

俺の前に立つような奴は灰一つ残してやらねぇ!!!

俺はこの世界の神なんだぁぁぁぁぁああ!!!!」

 

ナツトがそう叫んだ時、炎と煙が揺らめいでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチンッッ!!!!!!!!!!!!!

 

 




スタミナもたんわぁ!?!?!?!?!?(休日なのをいいことに二時から書いていた人)

あ、ちゃんと続きますよ

次回もよろしやす~


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小話:裁きの時

評価バーに色がついてる…だと…!?(戦慄)

読者の皆様方、誠にありがとうございます。
これからもぼちぼち書いていくつもりですので、何卒うちのオサイズチ君と共によろしくお願いいたします。

本日は本編ではなくちょっとした小話を挟ませていただきます。
小話なんて書いたことがないので私は実質初投稿です()。
前回からしっかりと続いておりますので、前回をお読みになっていない方はそちらからご覧になってください。


~~~~~~~

 

「―――ぁぁああああ!・・・は?」

 

気づけばナツトは、大社跡ではないどこかの場所にいた。

周囲は溶岩が流れており、ここが完全に周囲の土地から隔離されていることがわかる。

 

「・・・・・!?」

 

周囲の景色の変わりようにたじろぐナツト。

先ほどの炎と煙の立ち込めていた場所から一転。空は蒼白の月が輝き、大地は溶岩が赤々と照らしていた。

 

(なんっだここ・・・!?)

 

異様だか、神秘的なその光景。

あまりにも異常な現象に、呆然と立ち尽くしているナツト。

 

 

 

 

 

 

『やはり、俺たちの選択は間違ってなかったようだ』

 

唐突に響き渡る男の声。

あまりにも禍々しく響くその声の方向に、ナツトは振り向いた。

 

・・・その身に纏うは七色に輝く漆黒の外套。

フードを目深にかぶったその人物の顔は誰にもわからない。

ただ一つ言えるのは、その人物が計り知れない力を持っているだろうということだ。

彼が何かしたわけではない。

 

彼の放つそのオーラが、彼が偉大な者だと魂に理解させるのだ。

 

(な、んだよ・・・コイツ・・・!)

『俺が何者かなど、貴様には関係のないことだ』

 

思考を読まれて、さらに動揺するナツト。

先ほどの高揚はどこかに行ってしまったのか、ナツトは久方ぶりに相手に警戒心をむき出しにしていた。

――――そんなものは、彼の前では塵にも等しいものだとも知らず。

 

『・・・俺はルゥと違って無駄話が嫌いだ。貴様のような外道に与えてやるような話は一切「火竜の大咆哮ぉぉぉぉぉお!!!」・・・』

 

男の言葉を遮り、己が持つ最大火力を放つナツト。

大社跡の一部を焼き尽くした、万物を焼き尽くさんとする竜滅の焔が解き放たれる。

爆炎は男とナツトの距離を一瞬で消し飛ばし

 

―――パチン

男の虫を追い払うような仕草で、あまりにもあっけなくかき消された。

 

「・・・・・・・・・は・・・ぁ・・・?」

『・・・間抜けな声を放つな。最初から入れていない力が抜けそうになったぞ』

 

嘘だ。ありえない。

異常事態の連続をさばき切れず、完全に呆然としているナツト。

そこへ、男が声をかける。

 

『さて、念には念を入れておくか。

貴様は日本よりこの世界を訪れ、炎竜王の息子の力を手にした多田野ナツトだな?』

「・・・・・・」

『・・・聞こえているのか?もしや、先の一合で痴呆にでもなったか?』

「・・・っせぇ!だったらなんだよ!」

 

あられもない疑いをかけられ、正気を取り戻すナツト。

しかし嘘はつかない。ここで嘘をついたところで、大して意味はないと思ったからだ。

そして恐らく、この男に嘘は通用しない。男の威圧感が、そう告げている。

 

『そうか。ならば―――

 

俺は裁きを下すことができる』

 

 

瞬間、爆炎を使って飛び跳ねるナツト。

 

(やばい、やばいやばいやばい!)

 

得体のしれない焦燥感と危機感がナツトを襲い続ける。

ここにいたら、何かがまずい。生物としての本能がそう訴えかける。

 

(とにかく、ここからオサラバ―――

 

ガツンッ!!!

 

見えない壁に遮らえ、真っ逆さまに落ちてゆくナツト。

困惑するナツトに、男は言う。

 

『無駄だ。貴様はこの空間から逃れることはできない』

 

そして、男は告げる。

ナツトへと、告げる。

どこか、無気力に告げる。

だが、厳かに告げる。

 

 

彼は、宣告する。

 

『多田野ナツトよ。汝はその炎の力を使い、不条理に数多の命を奪った』

 

彼は、宣告する。

 

『それは、あまりにも大きな罪だ。到底許されるものではない』

 

彼は、宣告する―――

 

『黒き光の神より判決を下す』

 

神は、宣告する

 

 

『汝は地獄行きだ。刑罰を『深淵の刑』とする』

 

 

 

その瞬間、ナツトはどこからともなく現れた激流に呑まれる。

 

「がぼっ!?」

 

どう考えても物理法則を逸脱しているその現象。

そのまま深海に引きずり込まれるナツト。

深くなればなるほど、水圧が高くなり、全身が押し潰されそうになる。

だが、潰れない。全身の激痛は、留まるところを知らない。

 

「がぼぼぼぼ!?!?」

 

肺に水が入ってくる。さらに激しくなる苦痛。

だが、死なない。意識も鮮明なまま、二つの激痛がナツトを襲う。

 

(いでぇぇぇぇええええ!!!!痛い!痛い!痛いィィィィイ!?!?!?)

 

苦しみ悶えるナツト。

既に発狂していてもおかしくないが、なぜか発狂できない。

正しく地獄と呼ぶにふさわしい状況に彼は居る。

 

――――だが、絶望はここで終わらない。

 

さらなる深海から影が伸びる。

それは、イカやタコなどの軟体生物の触手だった。

 

その一本一本が人一人を容易く握りつぶせそうなほどに巨大ではあるが。

 

(んな―――)

 

ナツトは足をつかまれ、握りつぶされる。

さらに走る激痛。しかし、実際には折れておらず、折られた痛みのみが繰り返されている。

その触手はさらにもう一方の足を握り、へし折る。

さらに増える激痛。彼には鮮烈な四つの激痛が襲いかかっている。

 

(あぎゃあぁぁぁああああ!?!?!?!?)

 

さらにナツトの体は振り回され、いつの間にか表れていた周囲の岩盤にたたきつけられる。

 

(ぐべぇ!?ごぁ!!がぁ!!あぎぃ!?)

 

忘れてはならないが、彼はこうされている合間にも更なる深海に引きずり込まれている。

際限なく増し続ける、水圧の激痛。

既に水で満たされてしまった、肺の苦しさ。

幾度も打ち付けられる、全身に走る鮮烈な痛み。

握りつぶされた足から響く鈍痛。

そして、ここまでの苦痛を与えられても狂えない呪い。

 

彼は味わい続ける。

これまでの罪を清算するための苦痛を。

 

(痛い・・・助けて・・・誰か・・・!)

 

いずれ、ナツトという自我が崩壊し、魂が白と化すまで。

 

 

~~~~~~~

 




ほんとは三本ほどまとめて投稿するつもりでしたが、さすがにきついので分けさせていただきます。

次回はいったん本編に戻ると思います。

誤字報告ありがとうございます。


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刹那の激闘の後/残火の灰

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
「俺は この小説の詳細情報をのぞいたら
評価バーが 赤色に染まっていた…」
な… 何を言っているのか わからねーと思うが 
おれも 何がどうなってるのか わからなかった…
頭がどうにかなりそうだった… 催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…

というわけで評価バーが赤色に染まりました!
名義も変えて心機一転、これからもうちのオサイズチ君共々宜しくお願い致します!


―――トラバサミが空ぶるような音が、炎の燃える音に混ざった。

 

・・・ドサッ

 

何かが倒れる音がする。

地面を赤が浸食する。

男の声はもう響かず、草木の燃える音が響き続ける。

 

バチョン!

 

肉と鋼が同時に切れたような音が響く。

今度は一回ではなく、二回、三回と響き続ける。

 

ギギィ グチャ

 

少しすると、鋼や肉のみの音も混ざり始める。

音の響く感覚も狭くなってくる。

やがて、その音は聞こえなくなった。

そこに残っていた影が、のそり、のそりと動き始める

 

火に照らされるのは、あまりにも痛々しい姿の鳥竜。

前身は焼けただれており、かすかに残った橙の毛とその尻尾でようやく、オサイズチとして認識できるかどうか。

 

オサイズチは当てもなく歩き続ける。

時折、後ろから他の獣が追い越す。

何度もぶつかりそうになるが、オサイズチはまったく気にするそぶりはない。気にしているほどの意識など、とうに残っていない。

 

 

ここがどこかもわからないまま、やがてオサイズチは倒れてしまった。

瞼が持ち上げられない。

意識もほとんど残っていない。

かすかな視界もほとんどぼやけてしまっている。

 

(・・・・・・最悪の・・・気分・・・だ・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――彼が最後に聞いたのは、大きな翼で羽ばたくような羽音だった。

 

 

~~~~~~~~~

 

「・・・うわぁ」

「酷いにゃん・・・」

 

ノボルは高台に上り、大きく環境の変わった大社跡を見渡していた。

決して少なくない雨に打たれながらも、望遠鏡を使い細部まで観察している。

 

ナツトの起こした大災害は、意外にもその規模自体はあまり大きくならずに済んだ。

山火事が起きたその直後、何の前触れもなくかつてない豪雨が降り注いだのだ。

それは果たして偶然か。はたまた神様の気まぐれか。

大社跡はかなりの竹林が焼けてしまったが、自然のたくましさを舐めてはいけない。

恐らく、そう遠くないうちに竹林の大部分は元に戻るだろう。

 

―――昔々に作られた、いくつかの人工物をのぞいて。

 

(あれって、手記の考察が正しければ昔のカムラの里なんだっけ)

 

転生前、ネットで見た一つの推測に過ぎないが、言われてみればカムラの里の家や塀に作りが似ている。

たしか、前回の百竜夜行が50年前。その当時に作られた家だと言われればなんとなく合点がいく。

その人工物は今現在、その全てといっていいほどの範囲が黒く焼けてしまった。

8番から10番のエリアの道に至っては全焼し、少しの瓦礫しか残っていない。

いずれ近くの竹林がその範囲を広げ、最悪この道は通れなくなってしまうだろう。

 

「励んでいるようだな」

 

ふと、いつの間にか後ろにいた人物に声をかけられる。

里長のフゲンとそのオトモのカエンだ。いったいいつからノボルの後ろに立っていたのだろうか。

 

「里長」

「だが、そろそろ戻ってもよいのではないか?いくら鍛錬を積んできたとはいえ、体を冷やすのはよくないぞ」

「・・・いえ、まだ見つけていないものがあるので」

 

そういいながら、再度望遠鏡をのぞくノボル。

彼にとってよっぽど気がかりなものがあっただろか。

フゲンは自らの記憶を探る。が、意外にその答えはすぐに見つかった。

 

「あのオサイズチか」

「ええ。遺体どころか痕跡の一つも残っていないので・・・」

「はっはっはっ・・・交戦した結果、より一層警戒心が高まったようだな」

「あの野郎、高をくくっておいて食われやがって・・・」

「それほどの実力を秘めていたということだ。今後が楽しみだな」

 

今は亡きナツトへの愚痴をこぼしつつ、他愛のない会話をするノボルとフゲン。

しかし、ノボルは何となくフゲンに違和感を抱く。

その違和感を確かめたくなり、ノボルはふとフゲンのほうに振り向いた。

 

「そういえば、里長は―――

 

 

 

―――その時、彼の神秘の眼はフゲンの顔を捉えた。

あるいは、捉えてしまったともいえるだろう。

 

「―――」

「・・・どうしたノボル。何か気になることでもあるのか?」

「・・・いえ。何でも」

 

ノボルは捜索を急遽打ち止め、翔蟲を取り出す。

 

「これ以上冷えるのは確かにまずいですしね。・・・お先に失礼いたします」

「そうか」

「・・・ヨモギちゃんたちに温かいものを頼んでおきますね」

 

そういって、その場を離れるノボル。

そして、その高台にはフゲンとカエンが残された。

 

唐突に、カエンがフゲンを包むように背後にまわる。

耳を寝かせ、その瞳を閉じる。

フゲンを包むような姿勢は変わらない。

 

―――ざあざあと、雨が少し強くなる。

カエンは姿勢を一切変えず、微動だにしていない。

 

―――ざあざあと、雨はさらに強くなる

フゲンが、両膝を地面についた。

それに合わせ、さらにフゲンを包み込むカエン。

 

フゲンは、その顔を天に向ける。

相棒に同情するように、カエンはフゲンに寄り添い続ける。

 

 

―――さらにゴウゴウと、雨は強くなる

 

 

―――さらにゴウゴウと、大雨は強くなる

 

 

―――空は暗雲に包まれ、さらに豪雨は強くなる

 

 

―――雨音は、満月が夜空に浮かぶまで、やむことはなかった。

 

 




予定がいっぱいいっぱいでなかなか更新できなかった・・・
本当に申し訳ない(博士感)

改めまして、通算UA6000件&お気に入り登録170件突破。皆様誠にありがとうございます!

ところで、雨ってどうして無意識に悲しくなるのでしょうか?


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他人?の言葉を聞こう!

難産でした・・・
燃えたよ・・・燃え尽きたさ・・・真っ白にな・・・

通算UA7800件突破&お気に入り登録200件突破いたしました。
ありがとうございます。


 

―――ゆっくりと、意識が浮上し始める。

 

「―――」

「―――?」

 

何かが聞こえてくる。

朧げでだれが何を言ってるか全くわからない。

とりあえず、起きなければ・・・

 

「――が――で――」

「だ――や―――」

 

若干だが、意識がクリアになってきた。

起きなければと、より強く意識を強くする。

 

「―んで――メなの!?」

「―――は―おんじ―よ?」

 

聞こえるようになってきた。

更に一層、意識を強く持つ。

 

「うげぇ――ったなぁ――」

「仕方な――彼のぶ――」

 

 

 

・・・きた!

 

「グル・・・」

 

のっそりと体を持ち上げる。なぜか覆いかぶされていた葉っぱがズルズルと落ちていく。

所々痛みの残る体を観察する。驚いたことに、やけどの跡らしきものは一つも残っておらず、むしろ全体的に強化されている気がする。

と、ここで俺は一つの知識を思い出す。

超再生、というものをご存じだろうか。

筋肉やら肉体が傷つけられて再生する際に、傷つきにくくなるようにより強く再生されるといったものだ。

恐らく、これによって俺の体が強化されたのだろう。転生者を喰ったのも一役買っていそうだ。

 

『立った・・・』

『嘘・・・』

(・・・ん?)

 

そういや、誰かの声によって起こされていたな。

声をかけてくれた人物には感謝しなければ。

そうでなければここまですんなりと目覚められなかっただろう。

俺はその人物に頭を下げるため、声のするほうに向く。

 

「キュウ―――」

 

 

向いたところにいたのは、二匹の幼い飛竜だった・・・

は?

 

「ガ―――」

『まじかよ!?あれから復活したのか!?アンタすげぇな!』

『そんな・・・だって、どんなモンスターか判別が出来ないくらい酷い火傷だったのよ!?』

 

・・・そうか、これは夢か。

いわゆる白昼夢というやつである。そりゃそうだ。

モンスターがここまで流れるように人語をしゃべるわけないもんな。

よし、ならば二度寝を

 

ドサぁ!!!

 

『いやーお前ら待たせちまったな!お待ちかねの飯だぞ~!』

『あ!親父!』

『お父さん!イズチさんが・・・!』

 

・・・・・・・・・・・

 

『おお、イズ坊!やっぱりお前さんなら目を覚ますと――――

「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」

 

 

 

 

~~~~~☆オサイズチ君発狂中☆~~~~~~

 

 

 

『いやー驚かせちまったな!済まない済まない!』

『い、いえ。こちらこそ・・・』

 

久々の狂乱から数分後。

すっかり顔なじみになっていたリオ夫妻―――リオレウスのレオさんと俺は”初めての会話”を行っている。

いったいなぜ会話ができるようになったかは全くの謎である。

転生者を喰ったことが関係しているのだろうか・・・?

 

『いやー、しっかし嬉しいねぇ。こうして誰かとまともに話すことができるのは久々だぜ・・・』

『オウガさんはプライドが高いうえに無口ですからね。あなたと違って、誰かと話すのは嫌いなんでしょう』

 

今喋ったのはリオレイアのマリーさん。

言わずもがな、レオさんの奥さんである。

 

『アイツ頭かたいからな・・・イズ坊くらい柔軟に動いてほしいもんだ』

『あ、ありがとうございます』

『でもイズチ君!あそこまでの無茶はもうしたら駄目よ!?あなた本当にあと少しで死んでたんだから!!』

『も、申しわけないです・・・』

 

叱られてしまった。少しショックである。

・・・しかし、今回の件での収穫もある。

大幅なステータスの上昇と、まさかまさかの新スキルの獲得である。さっそく箇条書きで紹介しよう

 

力+80 スピード+120 スタミナ+100

防御率上昇×2 自然回復力上昇(いつもの)

 

である。

なんと、スピードをのぞいた三大ステータスが二倍になるほど上昇しているのである。

この伸びっぷりにはポーカフェイスを保とうとしていたのにもかかわらず、思わず大声をあげてしまうところであった。

さらに、新たに獲得した新スキルもある。

パッシブスキルの『火耐性【大】』である。

なんとこのスキル、俺に与えられる火属性ダメージを75%カットするという化け物スキルだというのだ。

『悪食』のログによると、このスキルの獲得確率はまさかの5%。

しかもこのスキル、獲得に失敗するたびに獲得に必要な食事が増えるとのこと。

・・・マジで運がよかった。ありがとう二人目の神様。

 

『しっかし、まさか四日で完璧に治っちまうとは・・・』

『植物ばかり食べてましたけど・・・もしかして、あれが関係してるの?』

『そういえば、イズ坊は普通のオサイズチに比べて身体能力も桁違いじゃないか!?』

『えっと・・・ッスゥーーーー・・・』

 

『そうだそうだ!聞かせろー!』

『だめだよソラ!いまはお父さんとお母さんが話してるんだよ?イズチさんが困っちゃうでしょ!』

『いいじゃないかよアリス!俺も親父や母ちゃんみたいな飛竜になりたいんだよ!』

 

先ほどの子供二匹の名前はソラとアリスという名前らしい。

どうやら二人はずいぶんと仲がいいらしい。ソラはだいぶやんちゃな性格らしく、アリスはそんな兄を止めるためにかなり常識人な性格になったようだ。

 

『・・・いえ、話しますよ。俺もどうしていきなり喋れるようになってのか心当たりがありませんし・・・』

『いいのか?確かに俺たちも気になるが・・・』

『やったー!聞かせろ聞かせろ!』

『・・・ソラ?』

『ヒェ』

『だから言ったのに・・・』

 

・・・ドンマイ。ソラ。

 

~~~~~~~~

 

『・・・というわけです』

 

俺はリオ一家に事情を話した。とはいえど、自らの生い立ちと『エアホッパー』について話していない。

昔から何かを喰らうと急激に身体能力が成長する特異体質で、そのせいか生来雑食であり、顎の力が異常に発達しているといった内容で話を進めた。

マリーさんは納得したような表情で『よく頑張ったわね』と言ってくれて、ソラの俺を見る目はすっかり羨望に染まっていた。

ちなみにアリスは気絶した。余りにも常識外れ過ぎてキャパオーバーを起こしてしまったらしい。現在、マリーさんとソラがアリスの看病をしている。

・・・ちなみにレオさんには―――

 

『・・・まあ、そういうことにしといてやる』

 

と、険しい顔で言われた。なぜだ。

しかしレオさんは顔を普段通りに戻すと、俺にヒソヒソと衝撃の事実を告げた。

 

『お前さんが俺たちと話せるようになった理由は簡単だ。謎の力を操るような連中の肉を喰ったからだよ』

『・・・へ!?連中!?』

『シィー・・・声がでかい。まあ、驚く気持ちもわかるぜ。あんな奴らが複数いるなんて悪夢以外の何物でもない・・・巣でもあいつらの事が頭によぎって安心して眠れやしねぇ』

 

ま、マジか・・・

転生者が複数人いるのだろうと思っていたが、まさかレオさんも遭遇しているとは思わなかった・・・

しかし、レオさんはこうして俺と会話を行っている。話の内容が間違ってなければ、おそらくあのジンオウガも会話が行えるのだろう。

ということは・・・

 

『喰ったんですか?』

『正確には「喰わせてもらった」んだがな。俺とマリーが襲われたとき、唐突に白い雷が落ちてきてな。あの雷がなけりゃ、今頃こうしてお前さんと話すことも叶わなかっただろうよ』

『喰わせて・・・?』

『ハハハッ!お前さんならいずれ出会えるさ!』

 

・・・だめだ。なんのことだかサッパリわからん。

俺は早急に立ち上がり、出立の準備を始めた。

なぜ目をつけられてしまったのかはまったくもって不明だが、俺はギルドのからのお尋ね者になってしまったということだ。

リオ夫妻には恩義があるが、今すぐに返せるようなものを俺は持っていない。

せいぜい彼らを巻き込まないように大社跡から離れるのが関の山だ。

 

『あら、もういっちゃうの?もう少しゆっくりしていけばいいのに』

『ハンター連中に目をつけられてしまったみたいなので、流石に離れないとまずそうですし・・・』

『ソイツぁ災難だな・・・何かあったらすぐここにきてくれよ?お前さんには卵を守ってもらった恩があるからな!』

 

どうやら自分が思っていたより大切に思われていたようだ。

この伝手ができたのはかなりデカい。大社跡に戻った際には是非とも頼らせていただこう。

 

『兄ちゃんまたな~!!!』

『またいらっしゃーい!』

『いつでも戻って来いよ~!』

 

『またいつか~!』

 

目的地はすでに決めてある。原作オサイズチも生息域としていた『寒冷群島』だ。

心機一転。新たな土地で頑張り直すとしよう!

 

 

あ、アリスが気絶したままだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

『―――シークレットシーケンス稼働・・・』

『イリーガルソウルを解析・・・成功。適合率50%』

『火耐性ボーナスにより適合率上昇。適合率70%』

『イリーガルスキル解析中・・・解析成功・・・スキルチェック発動。成功率1%』

『・・・失敗。スキルを降格し最適化・・・スキルチェック発動。成功率99%』

 

『・・・成功。未覚醒イリーガルスキル『???』を習得しました。スキル覚醒条件が達成されたとき、このスキルはアンロックされます』

 




というわけで、次回から寒冷群島編でございます。
オサイズチ君の新たな活躍にご期待ください。

グダグダするので時はふっとばさせていただきます。


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ギブアンドテイクをしよう!


お待たせしました・・・ッ!?(土下座)
GW中は中々に忙しく更新ができませんでした。
ちゃんと更新はしていくつもりでございます。初投稿()なので本当です。

通算UAがとうとう11000件を突破いたしました!皆様誠にありがとうございます!
また、お気に入り登録280件突破、ありがとうございます。


 

―――新たな出会いにも恵まれ、意気揚々と大社跡を発ってはや数日。

俺は今、恐ろしい敵と対峙していた。

高台に上り、あたりを入念に見渡す。しかし、それらしきものは全く見えない。

・・・勘のいい方ならお気づきだろう。俺が対峙している脅威の正体を・・・

 

 

 

『・・・やばい、まったく分からん』

 

そう、迷子である。

・・・数刻ほど前の俺よ。なぜリオ夫妻に方角すら聞かなかったのか。

何となく北っぽいところに向かって見たものの寒冷群島は見つからず、いつの間にか迷子になってしまっていた。

なんという因果応報。正しく自業自得である。

一応大社跡らしきものは見えないことはないが、ぶっちゃけ大社跡と寒冷群島の位置関係が全く分からん。

 

(・・・とりあえず飯探そう)

 

最悪、この場所で定住することを考えなければならない。

・・・まあ、生存のみを考えるならそれでも構わないのだが、それだと今後の万が一に対応できなくなってくる可能性もある。

なるべくは寒冷群島に向かいたい。

 

 

 

 

 

 

 

そして、日が傾き始めたころ。

おれは奇妙な・・・いや、とてもいいものを見つけた。

 

「にゃう~ん・・・・・・」

 

気絶したアイルーである。それも、おそらく誰かにすでに雇われているオトモアイルーだ。近くに凧が落ちているため、おそらく隠密隊のメンバーだろう

・・・丁度いい。

ここで恩を売って、新たな伝手とコイツの目的地への道を手に入れよう。

 

~~~~~~~

 

「にゃう~ん・・・・・・」

 

隠密隊のアイルー、きなこは焦っていた。

”寒冷群島”に向かう最中、前触れなく吹いてきた強い突風に対応できず不時着してしまった。

追い打ちをかけるようにモンスターの気配を感じ、きなこは死んだふりを決行。

やってきたオサイズチはすぐに姿を消したが、まだ近くに気配を感じるため迂闊に動けないので、死んだふりを続行していた。

 

だが、きなこはこれでもれっきとしたオトモアイルー。

忍耐を試される試練をこなすなど朝飯前だ。

しばらくすると、案の定オサイズチが戻ってきた。オサイズチに悟られないようにかすかに目を開き、様子をうかがおうとするきなこ。

 

 

(・・・オサイズチって肉食だったと思うんだけどにゃ?)

 

オサイズチらしからぬ行動に内心おどろくきなこ。

それもそのはず、肉食であるはずのオサイズチの口には大量の薬草が咥えられていた。

そもそも、普通の野草と薬草を見分けるのは意外と難しい。

ハンター養成所などでは各種植物が判別できるように専用の講義と課題なども組まれているほどだ。

そんな代物をモンスターが、ましてや肉食獣のオサイズチがピンポイントに収集しているのだ。

きなこの眼が捉えているものがどれほどの異常事態なのだろうか。ギルド職員や研究員の面々が見たら卒倒する者が出てくるだろう。

 

オサイズチは大量に咥えた薬草を近くの平たい岩に薬草を置くと、またもや森の中に消えていった。

先ほどと比べてかなり早く戻ってきたオサイズチは、今度はアオキノコをポロポロと落としながらなんとか薬草の上に置いた。

 

周囲に落としたアオキノコもかき集め、オサイズチはさらに驚愕の行動に出る。

 

(まさか調合もできるのかにゃん!?!?)

 

アオキノコを細かくなるまで噛み砕いた後、自慢の尻尾を巧みに使いこなし薬草に馴染ませながら薬草を一枚の布のように潰していくオサイズチ。

まさか、この場で即興の回復薬もどきを作ろうというのか。

これは大変なことになってしまった。このことを里のみんなに通達してしまえば、ハンターズギルドの人間も巻き込んで大波乱になるのだろう。

 

やがて回復薬もどきである草の布の出来に満足したのか、近場にあったはちみつをもぎ取り草の布に染み込ませていく。

蜂蜜が染み込んだのを確認したのか、その草の布を加えながらきなこに近寄っていくオサイズチ。

 

(ま・・・まさか・・・)

 

オサイズチはきなこにその草の布をかけ、きなこの体をその身体で温め始めた。

なんということだ。オサイズチにそんな生態があったとは驚きだ!と、驚愕に染まるきなこ。

・・・無論、このオサイズチこと我らが主人公君が異端すぎるだけである。

草の布も、頭の中のモンハン知識と数多の植物を食べてきたその舌を活かして適当に仕上げた代物だ。

 

(あ、兄貴・・・!)

 

無論、きなこはそんなことを知らない。

すっかりきなこはオサイズチに惚れ込んでしまったのだった。

 

~~~~~~~

 

『おはようございますにゃ!兄貴!』

『・・・おう』

 

オトモアイルーに恩を売ろうと介護したら、なぜか舎弟になっていた件。

・・・うん、意味わからん。

まあ、結果的に恩は売れたので、ヨシ!と考えていいだろう。

さらに、このオトモアイルーはなんと寒冷群島に向かう隠密隊のメンバーの一人だというのだ。

正しく棚から牡丹餅。善行は積んでみるものである。

 

『じゃ、早速頼むわ』

『はいにゃ!』

 

早速俺はオトモアイルーに寒冷群島までの案内を頼んだ。

オトモアイルーが俺の背中に飛び乗る。昨日の日が暮れ始めるころに目覚めたばかりだが元気そうだ。

現在、俺の背中には鞍のようなものが取り付けられている。

強靭なツタなどを編んで作ったものだ。やはり手の有無は工作スキルの差が明確につく。

・・・正直うらやましい。久々にラーメンが喰いたい。言えば作ってくれるだろうか?

 

『しっかり捕まってろよ?』

『ふふん!これでも一端のオトモにゃ!リオレウスの飛行ならともかく、オサイズチの背中にしがみつくなんて朝飯前にゃよ!』

『ほう?』

 

なるほど。これはすっ飛ばしても問題なさそうだ。

この姿になって全力疾走するのは久々・・・というわけでもないが、比較的リラックスした状態で走るのは初めてである。

周囲の眺めを堪能しながらかっ飛ばすとしよう。

 

『さあ、もうとっくに準備はでき『オーケー!』てぎにゃぁぁぁぁあああああ!?!?!?!?速すぎないかにゃぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?』

 

 

デカい悲鳴が聞こえたが、問題なくしがみつけているようなので問題なさそうだ。

 

 





評価バーがオレンジになったのは突っ込んではいけない。


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寒空に 駆ける鎌風 みかん色

短歌なんてロクに描いたことないので初投稿です。

通算UA13000件&お気に入り登録320件突破しました。
ありがとうございます。


・・・半年近く放置してマジですんませんでしたぁァぁァぁァあああ!!!!


―――月明かりが白い大地を照らし、氷柱をきらめかせる幻想的な夜。

今宵、この舞台にて激闘を演じている者たちの姿があった。

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

「まだいけるか、ニャン!?」

「なんとか・・・(ガリッ!)ニャ!」

 

何らかの木の実を噛み砕き、失いそうになった意識を留めるオトモ隠密隊の面々。

彼らは全く予想していなかったアクシデントに見舞われていた。

 

「まさか他のハンターに押し付けられるとは思ってもいなかったニャンね・・・」

「あの紫のハンター、絶対とっちめてやるニャ!」

「・・・生きて帰れたら、ニャラね」

「笑えないジョークだニャン!?」

 

彼らは見知らぬハンターにこの厄介なモンスター”達”のヘイトを押し付けられてしまっていた。

素材の採集をしていたエリアに、そのモンスターを連れてきたハンターが乱入してきたのだ。

その対応をしていたら、いつの間にか諸悪の根源は居なくなっていたというわけである。

ここまで綺麗ななすり付けはそうそう出来るものではないだろう。無論微塵も褒められる要素はない。

 

隠密隊を任命されるだけあって、かなりの実力を持つはずの彼らの軽口は、そんな異常事態の中の己が精神を落ち着かせるためのものだろう。

 

 

 

 

「ブフゥ・・・」

「ブファ・・・」

 

―――無理もない。

満身創痍の彼らの前に立ちはだかるのは、”体格が全く同じ”の二頭の白兎獣。

無論、隠密隊の面々がただ単に同じ体格のウルクスス二頭に苦しめられているわけでは無い。

 

二頭のウルクススが、何の前触れもなく同時に滑り出す。

言葉を交わすことなく散開する隠密隊。

 

片方の白兎獣はそのまま滑りぬけていくが、もう片方の白兎獣は散開地点で即座に反転。

そのまま、隠密隊のうちの一人に狙いを定める。

 

そして、跳躍。

天高く飛び上がり、隠密隊の一人―――薄紫の毛を持つあずきを押しつぶしにかかる。

 

「そんな大ぶりの技なんて「危ないニャ!」―ッ!?」

 

小タル爆弾に吹き飛ばされ、その場から大きく離脱するあずき。

すると、先ほどまであずきがいた地点に雪の塊が着弾し―――

 

ズシンッ!

 

重々しい音を響かせながら、白兎獣が着地する。

あの小タル爆弾がなければ、雪の塊に怯まされたところをぺしゃんこに押しつぶされていただろう。

だが、白兎獣らの攻撃はここで終わらない。

 

着地した時の衝撃なんて屁でもないと言わんばかりに即座に立ち上がる白兎獣。

そのまま、U字にターンして小タル爆弾を投げた隠密隊―――若干赤みのかかった黒い毛並みのクロミツの後ろに回り込む。

だが、この程度の動きならクロミツは容易に反応できる。

 

「さすがに慣れてきた―――ニャンよ!」

 

そんな言葉と共に、”前方ステップ”を行うクロミツ。

そして、クロミツがいた地点にもう一頭の白兎獣が滑りぬけた。

 

さらにクロミツの後ろに回り込んだ白兎獣が、地面から両手で雪の塊をすくい上げ、転がすように放り投げた。

そのままサイドステップを繰り出し、自身の髭を掠めた雪の塊を見送ったクロミツは反撃に転じようと爆弾を取り出す。

 

「いい加減にあきらめてくれニャン!」

 

 

 

 

 

 

ゴシャア!!!

 

だが、その反撃は叶わない。

滑りぬけたほうのウルクススがドリフトをかけ、クロミツにタックルを仕掛けたのだ。

後方からの強烈な衝撃に吹き飛ばされ、クロミツはそのまま気絶してしまった。

 

「クロミツ!?」

「世話が焼けるニャ・・・あずきは回避に専念しろ、ニャン!」

 

が、隠密隊のリーダー―――茶色の毛並みを持つミタラシは冷静に指示を飛ばし、クロミツの救護に向かう。

それを阻止せんと二頭のウルクススが巧みに雪の塊を投げ飛ばす。

 

「今更それが通じるとでも思ってるのかニャン!?」

 

しかし、隠密隊のリーダーを務める彼の実力は伊達ではない。

襲い来る雪崩のような雪を巧みにかわしてゆく。

 

「とっとと起きるニャン!!!」

「ブニャ!?!?」

 

そのままクロミツに緑シラヌイカを叩きつけ、クロミツを力ずくで目覚めさせる。

その間にも、いくつもの雪の塊が襲い掛かってくるが―――

 

「元ニャンターは伊達じゃない、ニャン!」

 

背中から古びた二本のブーメランを取り出し、雪の塊に向けて投げつけるミタラシ。

巧みに投げつけられたブーメランは空中の雪の塊を一つ残らず打ち砕いた。

 

「助かったニャン・・・」

「さすがに限界のようだニャンね・・・ノボルの旦那には申し訳ないけど、ここは撤退するしかなさそうだ、ニャン」

 

そう言いながら、疲れたような目で再度白兎獣たちのほうを向くミタラシ。

 

「・・・逃げられる確証はなさそうだけど、ニャン。」

 

 

―――二頭の白兎獣は、しっかりとこちらを見据えている。

しかも、背後には壁。先ほどよりも状況は悪化している。

 

「あずき!とりあえずお前だけでも逃げるニャン!」

「ミタラシ!?でも!?」

「こんな危険な白兎獣の”兄弟”の情報を一つでも多く持ち帰るんだニャン!」

 

『この二頭の白兎獣が兄弟であること』

これこそが隠密隊の面々を苦しめている理由だった。

ただの二頭のウルクススならば、問題なく対処できていただろう。

しかし、彼らは違った。過去に何があったのか、ほかの個体とは一線を画す連携力を持つ。

歴戦の狩人でも狩猟は困難だろう。

 

「ミタラシはどうするんだニャン!?」

「クロミツを逃がすためにここに残るニャン!その程度の時間なら稼げるニャン!」

「馬鹿野郎ニャン!お前を置いて―――」

 

「やかましい!くたばりたいのか!」

 

「・・・ッ」

「・・・お前の事、一生忘れないニャン」

 

クロミツは四つ足の構えになり、その場から離脱を図る。

白兎獣たちはクロミツを逃がさないと言わんばかりに動き出そうとするが―――

 

「ギィ――!?」

「グルゥ!?」

 

瞬間、夜空に二本の三日月が浮かぶ。

ミタラシが音も無く放った二本のブーメランが白兎獣達の眼に直撃したのだ。

一寸たりとも狂うことなく放たれた二つのブーメランは、片方の白兎獣の耳を砕き、もう一方の白兎獣の眼を抉り取った

 

「お前らの相手は俺だ!かかってこいウサギども!」

 

「「ブファァァァァァァァァア!」」

 

矮小な猫一匹に明確な傷をつけられたことで、すでに兄弟は激怒している。

しかし、これでクロミツたちは確実に脱出できるだろう。

 

(・・・ならば、あとは死力を尽くすだけ―――)

 

その瞬間、ミタラシの頭によぎるのは数々の思い出。

ニャンターとしてデビューを果たしたあの日、

G級の壁を突破したあの瞬間、

そして―――

 

(・・・あいつらと、もう一度狩りに行きたかったな)

 

巨大な機動要塞とその主に、三人と一匹で立ち向かったあの激闘。

 

瞬間、白兎獣達が動き出す。

一匹に完全に集中している今、ここから生き延びることを祈ることすら無駄といえるだろう。

あの兄弟はそれほどまでに―――危険だ。

 

(・・・なるべくダメージは負わせる。だから―――

 

 

 

 

 

コイツら頼みますぜ。ノボルの旦那)

 

一秒でも長く時を稼ぐため、ミタラシは駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

「右にゃ!リーダァァァァアアアアアアア!!!!!!!」

 

部下の一人の声が聞こえた瞬間、ミタラシは右に避けた。

そして、兄弟の片割れがミタラシを完ぺきに捉える―――――筈だった。

 

「コォアアアアア!!」

 

両者の間に入り込む橙の鎌風。

鎌風は上空から降り立つ勢いを利用して尻尾を振り下ろし―――――

 

「ゴガッ!?!?!?!?」

 

白兎獣の頭蓋を”叩き斬った”。

 

 



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成長を実感しよう!/憎悪の根源

なんだか不穏なタイトルが添えられていますが初投稿です。

通算UA18000件&お気に入り350件突破しました。
ありがとうございます。




―――隠密隊リーダー、ミタラシは、自身が見ている光景に理解が追い付いていなかった。

突如として響き渡った部下の声に従った彼は、一切のダメージを負うことはなかった。

 

問題はそのあとだ。

 

「リーダー!大丈夫かニャ!?」

自身に心配の声をかける最年少の部下と

「ガ・・・ァア・・・」

乱入者に頭蓋を切り裂かれ、息絶えていく白兎獣の片割れ。

そして何より―――

 

 

 

「クルルァ!?(そこのアンタ!大丈夫か!?)」

―――なぜか部下にまたがられたオサイズチが、自身の事を心配そうに鳴いていた・・・

 

 

 

 

「・・・・・・は?」

 

一瞬思考が停止した彼を責めることは、おそらく誰もできないだろう・・・

 

~~~~~~~~~~十数秒後~~~~~~~~~~

 

やあ皆!俺だよ!

寒冷群島に案内してもらったらきなこの上司っぽい人がピンチだったので助けたら、すごく不思議そうな目で見られた。

どうやら俺の攻撃力がおかしいみたいなことをきなこが言っているが、それって弱すぎって意味だよな?

あれ?俺またなんかやっちゃいました?

HAHAHAHAHA!!

 

 

 

さて、正気に戻ろう(現実への帰還)

 

 

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

「おれが 空中から尻尾を振り下ろしたら

奴の頭蓋を 真っ二つに 切り裂けた」

な… 何を言っているのか わからねーと思うが 

おれも 何をされたのか わからなかった…

頭がどうにかなりそうだった… 催眠術だとか超スピードだとか

そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…

 

いや戻れてない正気には。それくらい、今起きた出来事はヤバいのだ。

だってそうだろう。本来モンスターを討伐するには一発の攻撃の威力の大小にかかわらず必ず手数がいる。

これはハンターだけの話ではなく、モンスターも同様である。

いかに急所を狙えど、相対する者同士で力量が大きく離れていない限り一撃で仕留めるなどまず不可能である。

 

それを俺はオサイズチお得意の空中前転振り下ろし一発で成し遂げてしまった。

つまりはそういうことだ(錯乱中)

 

こんなもんハンターサイドの連中に見られちまえばますます危険視されるじゃねえか!?

 

『おれは旨い飯でも食いながらのんびりしたいだけなんだぁぁぁぁあああ!?!?!?』

『兄貴ぃ!?気持ちはわかるけど落ち着くニャン!』

 

「おいまて!?きなこお前そいつが何言ってるかわかるのか!?!?!?」

 

あああああああああああああ!?!?!?(いまだ錯乱中)

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

―――――戦場に似つかわしくない、そんなカオスの宴が繰り広げられる中。

 

「・・・」

白兎獣の兄弟、その兄の方であるウルクススは、完全に冷たくなった弟の死体を見つめていた。

ただただ、何をするまでもなく見つめていた。

 

血を分かち合った兄弟だった。

子供のころまでは、親兄弟と無邪気に遊んでいたのだ。

 

あの漆黒の。

いや、金色の悪魔が現れるまでは。

 

ソイツは突然現れ、実に鬱陶しそうにこちらを蹂躙した。

一夜にすら満たない時間で痛めつけられ、弄ばれ――――家族は惨殺された。

弱肉強食の世界だ。

親兄弟は、この後食われてしまうのだろうと、仕方のないことだと思っていた。

 

だが、その悪魔は家族だった肉会を喰らうこともせず、あろうことかそのまま放置された。

勇敢だった父の遺体のみを塵一つ残さず消し去って。

 

ソイツはきっと、唯一ソイツに触れた父がどうしようもなく許せなかったんだろう。

そして、それと同様に――――

 

彼らもまた。

家族を"ただ殺した"あの悪魔が、どうしようもなく許せなかった。

だからこそ、彼は強くなった。唯一残った彼の弟と共に。

あの悪魔に復讐を果たすために。

もう二度とあの悪夢を訪れさせないために。

 

だが、それは果たせなかった

 

「ガ・・・ガぁ・・・・?」

 

 

 

 

 

「ガぁァぁァぁァぁァぁ嗚亜アあぁ吾あアああ嗚呼ああ阿あ!!!!!!!!」

 

彼を支えるものは、守るものと共に崩れ去った。

護るものを奪われた獣は、ただ憎悪のままに暴れ尽くす。

たとえその身さえ滅びようとも。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「―――っ!?危ない!」

 

掛け声に合わせてその場から飛び下がる一同。

その瞬間

 

ガオンッッッッッ

 

まるで空間をぶち抜いたような風切り音のような音が響き渡り、彼らのいた場所に一つの砲弾が走った。

砲弾の正体は――――言うまでもないだろう。

 

「ブフぁア・・・」

 

かつての悪夢を思い出し、底なしの憤怒と憎悪に呑まれたウルクススだ。

今まで見えなかった古傷のようなものが赤く浮かび上がり、体毛が黒ずんでいる。

 

「な、何だにゃアレェ!?!?」

「獰猛化か?いや、微妙に特徴が違う」

 

きなこは今までにない現象に慌てふためき、ミタラシは既視感のある姿にさらに警戒心が高まる。

・・・しかし、オサイズチは知っている。

この禍々しく、そして痛々しい姿を。

 

(・・・まさか、ヌシ!?ヌシウルクススとかまるで想像つかねえぞ!?)

 

―――ヌシモンスター。

とあるモンスターに痛めつけられ、住処を追いやられたモンスターの成れの果て。

際限なき悪意への恐怖は、彼らの肉体のリミッターを外し、彼らに強大な力を与える。

 

しかし、ゲーム本編にはヌシウルクススは存在しない。"ゲーム本編には"、であるが。

そう。この世界は正真正銘、悠久の歴史を刻む大自然。

ならば――――際限なき悪意への恐怖を刻みつけられたこのウルクススが、バケモノになっても何らおかしくはない。

 

「ど、どどどどうするニャンリーダー!?」

「・・・ここは撤退が最優先だ。このバケモノは俺たちじゃ絶対に対処できん」

 

ミタラシは静かに告げる。

彼の長年のニャンターとしての勘だが、ヌシウルクススのヘイトは主にオサイズチに集中している。

長年の相棒を殺されたのだ。

矮小なこちらより憎悪を抱きやすいだろう。

 

「・・・お前にはつらいかもしれんが、このオサイズチは見捨てるしかない」

「にゃぁぁぁああ!?!?!?なんでニャ!?僕はまだ兄貴と―――」

「いいか!聞け!幸か不幸かヘイトはこのオサイズチに集中している!」

 

 

 

「・・・にゃ?なら僕ら大丈夫にゃよ?」

 

途端、あっけからんとそんなことを言い放つきなこ。

 

「・・・は?何頓珍漢なこと言って―――」

 

 

 

「コォアアアアアアアアア!!!!」

 

瞬間、猛々しく響く咆哮。

その声につられてミタラシが上を見上げれば―――

 

「だって―――」

 

その目に映るのは言葉通り"空を駆ける"オサイズチ。

まるで水泳のように後方に足を向け、彼は―――

 

「クルル・・・(ライダー・・・)」

 

「―――兄貴だって―――」

 

そのまま虚空を蹴り

 

「ガァァァァァアアア!!!!(キィィィィッッック!!!!)」

「ブ、ファァァァアア!?」

 

その剛脚をヌシウルクススの腹部へと炸裂させた。

 

「―――ものすごく強いニャン!」

 

ヌシウルクススの腹部は砕かれはしないものの、大きく後方に吹き飛ばされる。

そのまま、ヌシウルクススは壁に激突。ズルズルと落ちていき、地面にうなだれた。

 

「いや~、兄貴が向こう岸まで空を走ったのは中々爽快だったニャン!最初はびっくりしたけど、今度またやってほしいニャンねぇ・・・」

 

 

 

 

「・・・・・・は?(本日二回目)」

 

そんな二匹(きなことミタラシ)はさておいて

 

ヌシウルクススもこれで終わりではない。

彼の中で燃え上がる恐怖(憤怒と憎悪)とて、"たかが"強烈な一撃だけでダウンするほど甘ったれたものではない。

むしろ大ダメージを受け、死へと一歩近づいた彼はさらに業々と燃え上がる。

 

「ブルルァァア・・・・」

 

そして、我らがオサイズチもまたしかり。

この程度で息が切れるような体のつくり方はしていないのだ。

彼もまた、決死の戦いを覚悟しさらに目をぎらつかせる。

 

そして―――

 

「ブファぁァぁァぁァア嗚ア嗚亜ああ嗚呼!!!!!!」

「クルルルァァァァァァァァアアアアア!!!!!」

 

第二ラウンドが始まった。

 

 

 




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皆もハーメルン取説をチェックだ()



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