真弓兄弟の暗殺教室 (Ncwe?)
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第0章 設定
第0話 設定の時間


随時追加していきます!




真弓 友(まゆみ ゆう) 出席番号:23番

 

誕生日:8月16日

 

身長:174cm

 

体重:49㎏

 

血液型:A型

 

髪色:深緑

 

武器:対先生用刀

 

くっつける予定の人:不破優月

 

好きなもの:アニメ、漫画、音楽、剣術

 

嫌いなもの:虫、友達を傷つける最低なやつ

 

趣味、特技:剣術、漫画鑑賞

 

将来の夢:私立探偵

 

宝物:剣術道場に通い出した時から使ってる木刀

 

親友:不破、三村、菅谷、千葉、岡島、磯貝、前原

 

得意教科:国語、社会、音楽、美術

 

苦手教科:数学、英語、水泳

 

入っていた部活:帰宅部(剣術道場が学校のすぐ後だったため)

 

元々いたクラス:B組

 

落ちた理由:成績不振(数学)

 

好きな食べ物:唐揚げ、きゅうりの漬物

 

弁当派 or 買い食い派:お弁当

 

コードネーム : ジャンプ系主人公(付けた人:不破優月)

 

選挙ポスター:斬れないものなどあんまりない!

 

体力 4

機動力 5

近接暗殺 5

遠距離暗殺 4

学力 4

 

固有スキル 居合切り

 

戦略立案 5

指揮、統率 4

実行力 4

技術力 4

調査、諜報 5

政治、交渉 3

 

 

生徒で唯一、対先生日本刀を使用している。昔から剣術道場に通っており、暗殺訓練が開始してからもよく修行するようになったので、近接暗殺の成績はトップクラス。普段から漫画を読んでいるお陰で発送が柔軟。席は菅谷の後ろ。出席番号は前原と三村の間。

昨年のクラスが同じだったため、磯貝、前原、三村とは仲が良く、前の席の菅谷ともすぐに仲良くなった。

女子の中では、趣味が合うということもあり、不破と仲が良い。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

真弓 新(まゆみ しん) 出席番号:30番

 

誕生日:12月29日

 

身長:172cm

 

体重:48㎏

 

血液型:AB型

 

髪色:藍色

 

好きなもの、こと:ダンス、歌うこと、ピアノ、甘いもの、料理

 

嫌いなもの:特になし

 

趣味、特技:アクロバット、演技

 

将来の夢:トップアイドル

 

宝物:今の唯一の家族『真弓友』

 

親友:カルマ、渚、茅野、杉野、中村、倉橋

 

得意教科:理科、英語、音楽、家庭科

 

苦手教科:社会、美術

 

入っていた部活:帰宅部

 

元々いたクラス:A組

 

落ちた理由:成績不振(社会)

 

好きな食べ物:プリン、ロールケーキ等の甘いもの全般

 

弁当派 or 買い食い派:お弁当

 

コードネーム:毒舌アイドル(付けた人:真弓友)

 

選挙ポスター:常に笑顔でクールなアイドル★

 

体力 5

機動力 5

近接暗殺 5

遠距離暗殺 3

学力 4

 

固有スキル バク転射撃

 

戦略立案 4

指揮、統率 5

実行力 5

技術力 3

調査、諜報 3

政治、交渉 5

 

 

某アイドル事務所の某ジュニア。芸能活動をしながら、椚ヶ丘中学校に通っている為かなり多忙。それでも学年でトップクラスの成績を取っているためA組に所属していた。しかし、友のE組行きが決定した頃から、徐々に成績が落ちてきてしまい、新も6月からE組行きに。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

その他キャラの設定

※登場次第追記

 

近藤勇 (こんどう いさむ)

 剣術道場の経営者。かなりのお人好しで優しい性格。友からもかなり頼りにされている。剣の腕前は道場一。

 

土方歳次 (ひじかた としつぐ)

 かなりスパルタな先輩。近藤に次ぐ腕前。頭がかなり良く、公立校の永田町高校に通う。大体のテストでクラス上位。行方不明の兄と弟がいる。

 

沖田総七 (おきた そうしち)

 椚ヶ丘中学校3年C組。友や新と親しい。他の本校舎の生徒と違ってE組を嫌悪しておらず、友の良き友人。父親が警視庁捜査一課の刑事。髪色はピンク色。

 

山崎透 (やまざき とおる)

 椚ヶ丘中学校2年D組。友の事を尊敬する後輩。道場の門下生でもあるが、雑務としても働いている。政治家の息子。

 

沖田イツ (おきた イツ)

 沖田総七の姉。道場の片付け等の手伝いをしている。土方に好意を寄せる。不破の良き相談相手にもなっている。総七と同じく髪色はピンク色。

 

不破太陽 (ふわ たいよう)

 不破の兄。不破と同じくジャンプをはじめとする漫画好き。

 

歳 (とし)

 友を狙う謎が多い暗殺者。日本刀を使う。

 

古見錦 (ふるみ にしき)

 二学期、突如A組に転校してきた女子生徒。友に対して殺気を放っていたようだが……?

 

 

『RainBow 7』

 新が所属するアイドルグループ。

 メンバー

  真弓新 (まゆみ しん)

  赤峰翔 (あかみね しょう)

  金杉拓馬 (かなすぎ たくま)

  林隆太郎 (はやし りゅうたろう)

  坂田桃也 (さかた とうや)

  高橋淳 (たかはし じゅん)

  山中響平 (やまなか きょうへい)

 

  

 

 

 

 

 




2021/4/22 友と新の挿絵を追加しました。描くの疲れたので他キャラの容姿は想像にお任せします。

2021/4/27 近藤勇、土方歳次、沖田総七、山崎透、沖田イツの設定に追記しました。

2021/5/5 新君の設定に追記しました。

2021/8/21 歳、古見錦の設定を追加しました。


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第1章 一学期
第1話 暗殺の時間


1話に主人公の出番はほぼ無いです。他の生徒たちに自然に紛れてる感じ。
友が主人公っぽくなるのは2話以降かなぁ?
これ以降の原作の話ですが、友か新が絡まない回は書かないです。
さっそく杉野の話はカットです

ごめんね杉野!!




始業のベルが今日も鳴る───

 

 

《渚 side》

 

僕らは殺し屋……。

 

標的(ターゲット)は……先生。

 

ペタン ペタン

 

廊下に異音が響き渡る。

明らかに人のものでは無い足音。

 

ガララッ

 

教室のドアが開く……。

入ってきたのは………

 

先生「HRを始めます。日直の人は号令を!」

先生(ターゲット)

 

渚「起立!」

 

生徒が一斉に立ち、銃を構える。

 

渚「気をつけ!………れーーーい!!!!」

 

パパパパパパパ

 

一斉に先生に向かって発砲する。

 

先生「おはようございます。発砲したままで結構ですので、出欠を取ります。磯貝君」

 

磯貝「はい!」

 

先生「すいませんが銃声の中なのでもっと大きい声で」

 

磯貝「はい!!」

 

先生「岡島君」

 

岡島「はい!!」

 

先生「岡野さん」

 

岡野「はい!!」

 

先生「奥田さん」

 

奥田「は…はい!!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

先生「遅刻無し……と。素晴らしい!先生とても嬉しいです!」

 

片岡(速すぎる……!)

 

磯貝(クラス一斉射撃で駄目なのかよ!!)

 

先生「残念ですねぇ……今日も命中弾0です。数に頼る戦術は個々の思考を疎かにする。目線、銃口の向き、指の動き、一人一人が単純すぎます。もっと工夫しましょう。でないと……最高時速マッハ20の先生は殺せませんよ?」

 

前原「つーかさあ…本当に全部避けてんのかよ先生!」

 

三村「どっから見ても…これただのBB弾だろ?」

 

友「本当にこんなもんで殺せるのか?」

 

前原「当たってるのに我慢してるだけなんじゃねーの?」

 

 

先生「んー…では岡野さん、弾をこめて銃を渡しなさい。言ったでしょう。この弾は君たちにとっては無害ですが……」

 

パン! ブチッ

 

先生の触手に弾が当たった瞬間……

触手が弾け飛んだ……!?

 

先生「国が開発した対先生特殊弾です。先生の細胞を豆腐の様に破壊できる。あぁ、もちろん数秒あれば再生しますがね…。だが君たちも目に入ると危ない。先生を殺す以外の目的で、室内での発砲はしないように……

 

 

殺せるといいですねぇ…卒業までに」

 

椚ヶ丘中学校

3年E組は暗殺教室

 

先生「銃と弾を片付けましょう。授業を始めます」

 

始業のベルが今日も鳴る。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

先生「……そこで問題です真弓君。この四本の触手のうちの仲間外れは?」

 

友「えっと……青い触手…?」

 

先生「正解!青の例文のwhoだけが関係詞です」

 

何で僕らがこんな状況になったのか……。

 

茅野「ね、渚。昼だけど…出てるね。三日月」

 

渚「うん……」

 

3年生の初め、僕等は2つの事件に同時に遭った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ニュースキャスター「月が爆発し、7割方蒸発しました!我々は、もう一生三日月しか見れないのです!」

 

 

 

超生物「初めまして。私が月を()った犯人です」

 

生徒一同「……は?」

 

超生物「来年には地球も()る予定です。君達の担任になったので、どうぞよろしく」

 

生徒一同(まず5、6ヶ所ツッコませろ!)

 

クラス全員そう思った…

 

烏間「防衛省の烏間という者だ。まずは、ここからの話は国家機密だと理解頂きたい。単刀直入に言う。この怪物を君たちに殺して欲しい!!」

 

生徒一同(……は?)

 

三村「……え、何すか?そいつ、攻めて来た宇宙人か何かすか……?」

 

超生物「失礼な!生まれも育ちも地球ですよ!!」

 

烏間「詳しい事を話せないのは申し訳ないが……こいつが言ったことは真実だ。月を壊したこの生物は来年の3月、地球をも破壊する。この事を知っているのは各国首脳だけ。世界がパニックになる前に、秘密裏にこいつを殺す努力をしている……。つまり、『暗殺』だ!」

 

烏間さんが怪物に向かいナイフを振るう。

しかし、怪物はいとも容易く避けている……。

 

烏間「こいつはとにかく速い!殺すどころか……眉毛の手入れまでされている始末だ!丁寧にな!!満月を三日月に変えるほどのパワーを持つ超生物だ。最高時速は実にマッハ20!!つまり、こいつが本気で逃げれば我々は破滅の時まで手も足も出ない!」

 

超生物「ま、それでは面白くないのでね。私から国に提案したのです。『殺されるのはごめんですが……椚ヶ丘中学校3年E組の担任ならやってもいい』と」

 

生徒一同(何で!?)

 

烏間「こいつの狙いは分からん。だが、政府はやむなく承諾した。君達生徒に絶対に危害を加えない事が条件だ。理由は2つ。教師として毎日教室に来るのなら監視が出来る。そして何よりも、約30人もの人間が、至近距離からこいつを殺すチャンスを得る!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

パン!

 

先生「………中村さん。暗殺は勉強の妨げにならない時にと言ったはずです。罰として後ろで立って受講しなさい」

 

中村「すいませーん……」

 

何で怪物(かいぶつ)がうちの担任に?

どうして僕らが暗殺なんか!?

そんな皆の声は……

 

烏間さんの次の一言でかき消された。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

烏間「成功報酬は百億円!」

 

生徒一同(!?!?)

 

烏間「当然の額だ。暗殺の成功は、冗談抜きで地球を救う事なのだから…。幸いな事にこいつは君達をナメ切っている。見ろ、緑のしましまになった時はナメてる顔だ!」

 

生徒一同(どんな皮膚だよ!?)

 

超生物「当然でしょう。国が殺れない私を、君達が殺れるわけがない。最新鋭の戦闘機に襲われた時も……逆に空中でワックスをかけてやりましたよ」

 

生徒一同(だから何故手入れする!?)

 

烏間「そのスキをあわよくば君達に突いて欲しい。君達には無害でこいつには効く弾とナイフを支給する。君達の家族や友人には絶対に秘密だ。とにかく時間がない。地球が消えれば逃げる場所などどこにも無い!!」

 

超生物「そういう事です。さぁ皆さん。残された一年を有意義に過ごしましょう!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

キーンコーンカーンコーン

 

先生「昼休みですね。先生ちょっと中国行って麻婆豆腐食べてきますね。暗殺希望者がもしいれば携帯で呼んで下さい」

 

前原「マッハ20だから……えっと……」

 

磯貝「麻婆の本場、四川省まで10分くらい……」

 

友「確かにあんなのミサイルでも落とせないだろうな」

 

前原「しかもあのタコ…音速飛行中にテストの採点までしてるんだぜ?」

 

菅谷「マジ!?」

 

磯貝「俺なんかイラスト付きで褒められた…」

 

岡野「てかあいつ、何気に教えるの上手くない?」

 

倉橋「わかるー。私放課後に数学教わって、次のテストの成績良かったもーん」

 

 

三村「……ま、でもさ。所詮俺ら…E組だしなぁ…」

 

岡島「頑張っても仕方ねーけど」

 

 

───そう。タコ型の超生物で、暗殺の標的(ターゲット)なのに、あの先生は何故か普通に先生してる。

僕らも同じ。即席の殺し屋であるのを除けば、普通の生徒だ……。

けど僕らE組は……少しだけ普通と違う。

 

 

寺坂「……おい渚ァ……ちょっと来いよ。暗殺の計画進めようぜ?」

 

渚「…………うん」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

寺坂「あのタコ…機嫌によって顔の色が変わるだろ。観察しとけって言ったやつ出来てるか?」

 

渚「……うん一応。余裕な時は緑のしましまなのは覚えてるよね。生徒の回答が間違ってたら暗い紫。正解なら明るい朱色。面白いのは…昼休みの後で……」

 

寺坂「俺は知らなくていーんだよ…作戦がある…あいつが1番『油断』してる顔の時…お前が刺しに行け」

 

渚「……僕が?で、でも………」

 

寺坂「いい子ぶってんじゃねーよ。俺らはE組だぜ?進学校(ここ)勉強(レベル)についてけなかった脱落組……通称『エンドのE組』。毎日山の上の隔離校舎まで通わされて、あらゆる面でカスみたいに差別される…… 落ちこぼれの俺らが百億円稼ぐチャンスなんて……社会に出たってこの先一生回ってこねぇぞ……

抜け出すんだよ……このクソみてぇな状況から……例えどんな手を使ってもなァ……」

 

村松「しくじんなよ渚く〜ん」

吉田「ギャハハハ」

 

 

そう言って寺坂君達は去っていった……

僕に『とあるもの』を渡して……

 

『渚の奴、E組行きだってよ』

 

『うわ……終わったなアイツ』

 

『俺、あいつのアドレス消すわ』

 

『同じレベルだと思われたくねーし…』

 

ブオッ

 

先生が帰ってきた…

何故かミサイルを持って…

 

渚「うわぁっ…!……おかえり先生……どしたのそのミサイル…」

 

先生「お土産です。日本海で自衛隊に待ち伏せされまして」

 

渚「た…大変ですね…標的(ターゲット)だと」

 

先生「いえいえ。皆から狙われるのは、力を持つ者の証ですから」

 

渚「……!」

 

先生「さ。5時間目を始めますよ〜」

 

渚「…………はい」

 

先生には……わからないよね

 

皆から暗殺の標的(ターゲット)にされるってことは…

裏を返せば、

皆に実力(ちから)を認められているって事だ

 

そんな怪物に……

期待も…警戒もされなくなった…

認識さえされない人間の気持ちなんて…

 

『お前のお陰で担任の俺の評価まで落とされたよ。唯一良かったのは……もうお前を見ずに済むことだ』

 

殺れるかもしれない……

だって…

この怪物(せんせい)にも暗殺者(ぼく)の姿は見えてないから。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

先生「お題にそって短歌を作ってみましょう。書けた人は先生のところへ持ってきてください。書けた者から今日は帰ってよし!」

 

前原「お、マジか!」

 

友「ならさっさと終わらせてゲームするか!」

 

先生「ただし!お題はラスト七文字を『触手なりけり』で締めること!」

 

磯貝「触手なりけり……ですか?」

 

先生「そうです。チェックするのは文法の正しさと触手を美しく表現出来たかです。例文です。『花さそふ 嵐の庭の雪ならで はえゆくものは 触手なりけり』」

 

友「触手だったのだなぁ…って…」

 

菅谷「どんな状況なんだよ……」

 

先生「皆さん頑張って下さいね〜。その間に先生は休憩を……」

 

茅野「先生しつもーん」

 

先生「……?どうしましたか茅野さん」

 

茅野「今更だけどさぁ。先生の名前なんて言うのー?他の先生と区別する時不便だよ」

 

岡野「確かに。名乗ってないよね」

 

先生「名前……ですか。名乗るような名前はありませんねぇ。なんなら皆さんでつけて下さい。ですが、今は課題に集中ですよ」

 

茅野「はーい」

 

先生「ふぅ…」 プシュー

 

渚「……」 ガタ

 

先生「お、もう出来ましたか渚君」

 

寺坂「……!」 ニヤリ

 

お昼ご飯の後で僕らが眠くなる頃に、

先生の顔が薄いピンクになる時がある。

 

茅野「…!」

 

茅野の質問への反応も少し遅れた。

多分先生も1番油断する時間なんだ。

 

友(渚……短歌の札の後ろにナイフを……)

 

菅谷(殺る気……みたいだな)

 

この進学校で落ちこぼれたE組(ぼくら)は思う。

 

【どこかで見返さなきゃ。“やれば出来る”と親や友達や先生達を】

 

“殺れば出来る”と──

 

そして僕は……ナイフを構え、振り下ろした

 

ヒュッ

ドッ…

 

認めさせなきゃ

 

先生「…………言ったでしょう。もっと工夫を」

 

どんな手を使っても……

 

先生「しま……にゅ?」

 

友(先生に寄りかかった……?!)

 

杉野(何をする気だ……?渚……)

 

先生(これは……『BB弾グレネード』!?)

 

寺坂(特製のな!!もらった!!)

 

バァァン!!

 

磯貝「渚!?」

 

前原「なんだこれ!!」

 

三村「BB弾が凄い速さで!?」

 

 

寺坂「ッしゃあ!」

 

村松「百億いただきィ!」

 

吉田「殺ったぜェ!」

 

 

友「寺坂!」

 

茅野「渚に何を持たせたのよ!?」

 

寺坂「あ?オモチャの手榴弾だよ。ただし、火薬を使って威力を上げてある…三百発の対先生弾がすげぇ速さで飛び散るようにな!」

 

茅野「なッ…!」

 

寺坂「なァに、人間が死ぬ威力じゃねぇよ。俺の百億で治療費ぐらい払ってやらァ……ん?…無傷?火傷ひとつ負ってないのか?…それになんだ?渚を覆うこの膜…タコの死体に繋がって……!?」

 

先生「……実は先生、月に1度ほど脱皮をします……」

 

寺坂・吉田・村松「!?」

 

先生「脱いだ皮を爆弾に被せて威力を殺した…つまりは月イチで使える奥の手です…」

 

先生の顔色は…顔色を見るまでもなく…

真っ黒…

 

【ド怒り】だ……

 

先生「寺坂…吉田…村松…首謀者は君らだな…」

 

寺坂「えっ…いっ…いや、渚が…勝手に…」

 

バッ…!!! シュッ シュッ シュッ バゥッ

 

ゴトッ ゴン パタッ

 

寺坂「…!?」

 

寺坂・吉田・村松(俺らん家の表札……!?)

 

先生「…政府との契約ですから、生徒は決して“君達に”危害は加えないが……次また今の方法で暗殺に来たら、“君達以外”には何をするかわかりませんよ……?家族や友人………いや、君達以外を地球ごと消しますかねぇ……」

 

5秒間で皆悟った……

【地球の裏でも逃げられない】と…。

 

どうしても逃げたければ…この先生を殺すしか……!

 

寺坂「なっ……何なんだよテメェ……!迷惑なんだよォ!いきなり来て地球爆破とか暗殺しろとか……迷惑な奴に迷惑な殺し方して!何が悪いんだよォ!!」

 

先生「……迷惑?とんでもない!君達のアイディア自体は凄く良かった!特に渚君。君の肉迫までの自然な体運びは百点です。先生は見事に隙を突かれました」

 

渚「……!」

 

先生「ただし!寺坂君達は渚君を、渚君は自分を大切にしなかった。そんな生徒に暗殺する資格はありません!」

 

寺坂「…!!」

 

先生「人に笑顔で…胸を張れる暗殺をしましょう!君達全員、それが出来る力を秘めた有能な暗殺者(アサシン)だ。暗殺対象(ターゲット)である先生からのアドバイスです」

 

マッハ20で怒られて、うねる触手で褒められた

異常な教育が…僕は普通に嬉しかった

この異常な先生は……僕らの事を正面から見てくれたから……

 

先生「さて、問題です渚君。先生は殺される気など微塵も無い。皆さんと3月までエンジョイしてから地球を爆破です。それが嫌なら君達はどうしますか?」

 

暗殺なんてしたことないし…

僕らには他にすべき事が沢山ある…

……けど思った

 

渚「……その前に、先生を殺します」

 

この先生なら…殺意さえも受け止めてくれるって。

 

先生「ヌルフフフ……ならば今殺ってみなさい…!殺せた者から今日は帰って良し!」

 

生徒一同「えー!?」

 

岡島「無理に決まってんだろ!」

 

友「短歌の方がマシだろこれ!」

 

僕らは殺し屋。

標的(ターゲット)は…先生。

 

茅野「殺せない……先生……殺せない……殺せん………あっ、

 

 

 

『殺せんせー』は?」

 

殺せんせー「にゅ?」

 

殺せんせーと僕らの暗殺教室。

始業のベルは明日も鳴る。

 

 

前原「今撃っても表札と一緒に手入れされるわ……」

 

岡島「帰れねぇ……」

 

友「ゲームがぁ……漫画がぁ……」

 

 

 

 

 

 

 






もうちょっと文章を書く能力を向上させたい!


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第2話 漫画の時間

第2話にしてオリジナル回です!
主人公のテンションはかなり変わりますよ!
え?前も言いましたけど杉野の話はカットですよ?





《友 side》

 

 

友「……いってきます」

 

誰もいない家を後にして、コンビニへと向かう。

 

誰もいない理由?

 

親はね〜死んだんだよね〜。

 

ちょっと今はまだあんまりシリアスにしたくないからね!明るくいくよ〜☆

 

あと弟がいるんだけど…

あ、大丈夫死んでないよ?

実はね……俺の弟、アイドルなんだ!!

 

某アイドル事務所の某ジュニアで、

『RainBow7』っていうグループに入ってる!

芸能活動をしながら、この椚ヶ丘中学校にも通ってて、成績も割と良くて…A組だっけ?

 

ま、そんな訳でいつも登校するときは俺1人なんだよね…割と寂しい。

 

さて、コンビニに行くわけだが!

何故かって!?

今日はジャンプの発売日だからだよ!

そう!俺は漫画やアニメが好きなのだ!!

作者はほとんどのアニメは名前しか知らないけどね!

なんでこんなキャラにしたんだろうね!

 

でも急いで買わないと…一応学校あるからね。

登校中にコンビニ寄ってジャンプ買わないといけないからね〜。

 

友「よーし着いたッ!!!これでジャンプを……

 

 

 

 

あれれー?おっかしーなぁ??ジャンプが売り切れてるぞぉ?」

 

目の錯覚だこれは。うん。きっと俺は幻影を見てしまっている……。

 

不破「よし着いたッ!ジャンプを……ジャン……プ……?」

 

友「……あっ」

 

不破「……あっ」

 

友・不破「………」

 

不破「お、おはよう…真弓君……」

友「よ、よう不破……奇遇だな…」

 

不破「…ジャンプ…無かったね…」

友「……さて、どうする?」

 

不破「そんなの…」

友「……決まってるよな」

 

友・不破「他のコンビニに探しに行くぞぉぉ!」

 

 

友「……あれから5ヶ所目…ようやくあったけど…」

 

不破「1個だけ……」

 

友「……いいよ買っても」

 

不破「ほ、本当?」

 

友「あぁ…知り合いに土下座で見せてくれるように頼むさ」

 

不破「それはどうなの……じゃ、じゃあ私が買って真弓君に見せるよ!学校で2人で見ようよ!」

 

友「い、いいのか!?土下座しなくてもいいのか!」

 

不破「いいんだよ!真弓君!一緒に見よう!」

 

友「ありがとうな不破……あ、あと名前で呼んでくれないか?苗字で呼ばれるより、名前の方が慣れてるからさ。友って呼んで欲しいな」

 

不破「じゃあ友君、学校行こっか!」

 

友「あぁ……ん?待って?今何時だ…?」

 

不破「…………えっと…こっから校舎って何分?」

 

友「20分くらいかな…」

 

不破「はい…終わった〜…」

 

友「とりま行きますか……」

 

 

 

殺「友君!不破さん!先生、君たちが非行に走ったのかと心配しましたよ!!!」

 

友「ご、ごめんなさい……ジャンプ探してて……」

 

不破「思ったより時間かかっちゃって……」

 

殺「全く……さぁ席に着いて準備をしてください」

 

友「はーい……」

 

 

前原「なーにしてんだ」

 

友「うっせ。いつもの所に無いのがわりーんだよ」

 

渚「ジャンプのせいにしないでよ…自業自得だよ?」

 

友「はは。ごめんごめん。ん?杉野どうしたんだ?」

 

渚「今朝暗殺失敗して……自分の得意な分野で挑んだからか、落ち込んでるんだ…」

 

友「そっか……」

 

菅谷「………」カキカキ

 

友「……殺せんせー描くの上手いな創ちゃん」

 

菅谷「毎日描いてるからな。描きやすい顔してるし」

 

友「確かにな」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

不破「友君、ジャンプ一緒に読もうよ!」

 

友「おう!マジ感謝!」

 

前原「お、なになに仲良さそうじゃん」

 

友「あ?なんだよ来んなよ陽斗」

 

前原「いいだろー?」

 

磯貝「やめとけよ。友は漫画読みたいんだから、邪魔しないであげろよ」

 

友「いや、陽斗に話しかけられるのが嫌なだけだ!」

 

前原「俺限定かよ!」

 

磯貝「ははは。相変わらずだな」

 

不破「3人共仲良いんだね〜」

 

友「前のクラスが同じでな」

 

不破「ねーねー!友君って家にも漫画沢山あるの?」

 

友「もちろん。漫画もゲームも沢山あるよ。これでも…割と金持ちだからねぇ…へへへ…」

 

磯貝「悪い顔だ……」

 

 

不破「ねぇ!今度家に行ってもいい?」

 

友「おーいいぞー。うち割と広いから結構な人数入るぜ」

 

磯貝「お、久々に行きたいな。友の家」

 

前原「いいなそれ!他にも誘おうぜ!」

 

 

中村「おー?面白そうな話してんじゃん」

 

岡島「俺達も行っていいか?」

 

友「おー岡島以外ならいいぞ」

 

三村「やった!久々の友の家だ!」

 

千葉「色んなのがあって飽きないんだよな」

 

速水「そうなんだ…楽しそうだね」

 

菅谷「じゃ、岡島以外の8人で行くか」

 

岡島「いや誰かツッコめよ!!」

 

友「じょーだんじょーだん。じゃ次の休みにでも来いよ」

 

前原「よっしゃ!」

 

友「またマリパでボコしてやるよ陽斗」

 

前原「次は負けねぇからな!!」

 

三村「ずっと負けてっからなー前原」

 

磯貝「また新しいゲーム買ったのか?」

 

友「おう。また気になるゲームあったら貸してやるよ悠馬」

 

 

 

 

 

中村「いやぁ…男子の家に行きたいだなんて、不破ちゃん大胆だねぇ」

 

不破「べ…別にそんなんじゃないよ!?ただ漫画を楽しみたかっただけだから!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

不破「友君一緒に帰らない?」

 

友「おう不破。嬉しいけど…わりーな…課題提出しないといけないから、先に帰っててくれ。ありがとな今日は。ジャンプ見せてくれて」

 

不破「ううん。いいんだよ。困った時はお互い様!友情、努力、勝利!ジャンプの三原則だよ!」

 

友「おう!やっぱ不破とは話が合うわ。じゃ!また明日な!」

 

不破「うん!また明日!」

 

中村「ん〜……早く発展しないかねぇ…不破ちゃん顔に出るからいじりやすいのに……」

 

 

 

 

友「さて、先生は…いたいた」

 

殺「おや友君。課題ですね」

 

友「はい殺せんせー。ちゃんと問いてきたよ……ん?あそこにいるの杉野と渚か?」

 

殺「先程手入れが終わったところですよ…ヌルフフフ」

 

友「今朝かなり落ち込んでたけど……今はそうでも無さそう……ほんとに手入れされたみたいだ」

 

殺「君もお望みとあらば手入れ致しますよ!」

 

友「はは…やめとくよ……」

 

 

殺「……友君。君は…他の生徒よりも重い過去を持っていますね?」

 

友「……何でそんなの知ってんの?先生……。調べたってこと?」

 

殺「他の生徒は理事長先生から頂いた資料を読んだ程度ですが…君は…かなり色々な事を調べさせていただきました」

 

友「……他のやつには言ってないんだよね?」

 

殺「もちろん……話すかどうかは君が決めることです」

 

友「そうだな……『中学1年の時の件』を知ってるやつはいるけど…『全て』を知ってるやつはいない……でも、別に言わなくても……」

 

殺「ですが、いつかは……言わないといけない時がくると思いますよ。でも安心してください。彼らは、きっと受け入れてくれると思います」

 

友「それはどうも…殺せんせー。じゃ、俺は帰るね」

 

殺「ええ。さようなら」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

友「いつかは……か。……駄目だ。思い出したくねぇ。あん時の光景なんか……」

 

 

新「やっほ。兄貴」

 

友「んぇ?新じゃん。どしたん仕事」

 

新「今日は朝NEWSに出てその後バラエティの撮影で終わったよ。明日はいつもの音楽番組の収録あるけど」

 

友「お、じゃ久々に新の料理食えんのか!楽しみー!」

 

新「おう。たらふく食えよバカ兄貴」

 

友「あ、次の休み友達遊びに来るんだけど……」

 

新「そうか。多分俺は午後には帰るよ。午前中は撮影あるから外出してると思う」

 

友「おっけ〜!!」

 

こんな日常が……いつまでも続くといいな!

 

 

 

 

 




不破さんとのフラグ1本目立てました〜☆
さあオリジナル回を経てわかったのは

僕に文才なんて存在していないことですね☆
(☆使いすぎじゃね?)

どうしても台詞ばっかになるんだよなぁ。




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第3話 サービスの時間


殺せんせーってマッハで物買ってる時ちゃんとお金払ってるんですかね…?


 

《友 side》

 

俺たちは今、殺せんせーに暗殺をしかけようとしている。

奴は今、ペンギンの形をした可愛いかき氷機でシャリシャリシャリシャリ氷を削っている。

え、美味そう。←

 

 

前原「いたいた」

 

三村「今日のおやつは北極の氷でかき氷だとさ…」

 

友「コンビニ感覚で北極行くなよあのタコ……」

 

磯貝「行くぞ……百億は山分けだ!」

 

 

作戦はこうだ……。

あいつに笑顔で近づいてナイフで切りかかる…!

 

 

片岡・岡野・矢田「殺せんせー!」

 

磯貝・前原・友・三村「かき氷、俺らにも食わせてよ!」

 

 

殺「おぉ!!」

 (生徒達が心を開いてくれているッ!!あんなにも笑顔で……

 

 

こんなにも殺気立って……!)

 

ババッ

殺「でもね……笑顔が少々わざとらしい……こんな危ない対先生ナイフは置いといて……」

 

一同(!?)

 

前原・岡野「えっ…!?」

 

 

殺「花でも愛でて、良い笑顔から学んで下さい」

 

一同(ナイフがチューリップに……!?)

 

いつの間に…!?

 

片岡「…ん?…ていうか殺せんせー!!この花!クラスの皆で育てた花じゃないですか!!」

 

殺「にゅやッ!?そ、そーなんですか!?」

 

矢田「酷い殺せんせー……大切に育てて…やっと咲いたのに…」

 

殺「す、すいません!!今新しい球根を………買ってきました!」シュバッ バッ

 

磯貝・三村「………」

 

…それ本当に会計したのか?

 

岡野「マッハで植えちゃ駄目だかんね!」

 

殺「承知しました!!」

 

片岡「1個1個いたわって!」

 

殺「はい!」

 

 

前原「なぁ…あいつ地球を滅ぼすって聞いてっけど…」

 

友「おう…その割にはチューリップ植えてんな……」

 

 

 

 

寺坂「チッ……モンスターが良い子ぶりやがって……」

 

村松・吉田・狭間「…………」

 

 

 

 

茅野「渚、何メモってんの?」

 

渚「先生の弱点を書き留めて置こうと思ってさ。暗殺のヒントになるかもしれないから」

 

茅野「ふーん……その弱点役に立つの?」

 

杉野「どれどれ……身長3mくらい…特技、超音速巡航……なにこれ?」

 

茅野「役に立たなそう……」

 

渚「うーん……」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

友「悠馬そこだ刺せ!!」

 

磯貝「クソっ!こんな状態でヌルヌルかわしやがって!」

 

 

烏間「これは…なんだ……」

 

茅野「クラスの花壇を荒らしちゃって、そのお詫びのハンディキャップ暗殺大会を開催してるの」

 

 

縄に縛られて木にぶら下がる先生。

普通の人なら絶望的な状況のはずだが、この先生にとってはそこまで脅威でもなさそうだ。

だってほら。皮膚に緑の縞模様が浮かび上がってるもの。

 

殺「ほらほらほら!お詫びのサービスですよー?こんな身動き出来ない先生!そう滅多にいませんよぉぉ??」

 

渚「う……完全にナメられてる…」

 

烏間(これはもはや…暗殺と呼べるのか…!?)

 

渚「でも待てよ…?殺せんせーの弱点からすると……」

 

 

殺「ヌルフフフフ…無駄ですねぇ…E組の諸君!このハンデをものともしないスピードの差!君達が私を殺すなど夢のまたy……あっ」バキッ ボト

 

 

友「あ……」

 

前原「……落ちた」

 

 

一同「今だ殺れぇぇぇぇ!!!!」

 

殺「にゅやぁぁぁ!!!し、しまったぁぁぁ!!!」

 

暗殺のチャンスとばかりに全員で攻撃を仕掛けたが、縄を抜けて学校の上まで行ってしまった。

 

前原「あっ!」

 

岡島「ちくしょう!抜けやがった!」

 

菅谷「あのタコ屋根の上まで!」

 

 

殺「ここまでは来れないでしょう!基本性能が違うんですよ!バーカ!バーカ!」

 

木村「あと少しだったのに……」

 

 

殺「……明日出す宿題を2倍にします」

 

一同「(器が)小せぇ!!!」

 

そしてそのままマッハでどこかへ……。

 

三村「…逃げやがった……」

 

片岡「でも、今までで1番惜しかったよね」

 

磯貝「この調子なら殺すチャンス必ず来るぜ!」

 

矢田「殺せたら百億円何に使おー♪」

 

 

烏間(中学生が嬉々として暗殺の事を語っている。どう見ても異常な空間だ… ──だが不思議だ。生徒の顔が最も活き活きしているのは……標的(ターゲット)が担任のこのE組だ)

 

 

 



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第4話 カルマの時間

ついに作中でもかなりの人気キャラ、赤髪の彼が登場!





《友 side》

 

殺「晴れた午後の運動場に響く掛け声……平和ですねぇ…生徒の武器(エモノ)が無ければですが…」

 

烏間「八方向からナイフを正しく振れるように!どんな体勢でもバランスを崩さない!!」

 

烏間先生の授業……スパルタだなぁ…

『あの人』の本気の修行よりかはマシだけどさぁ……

 

 

烏間「この時間はどっか行ってろと言ったろ体育の時間は今日から俺の受け持ちだ。その辺の砂場で遊んでろ」

 

殺「酷いですよ……烏間先生!私の体育は生徒に評判良かったのに!」

 

菅谷「嘘つけよ殺せんせー……」

 

岡島「身体能力が違いすぎんだよ…この前もさぁ」

 

 

殺『反復横跳びをやってみましょう!まず先生が見本を見せます。ほらこの通り。まずは基本の視覚分身から』

 

前原・友・岡島・杉野『出来るか!!』

 

殺『慣れてきたら、あやとりも混ぜましょう』

 

前原・友・岡島・杉野『あやとり上手っ!!!』

 

この先生体育教えるの向いてねぇよ…。

 

 

中村「異次元すぎてねぇ」

 

杉野「体育は人間の先生に教わりたいわ」

 

殺「!!!」ガーン

 

烏間「……やっと暗殺対象(ターゲット)を追っ払えた…。授業を続けるぞ」

 

前原「でも烏間先生…こんな訓練意味あるんすか?しかも、当の暗殺対象(ターゲット)がいる前でさ」

 

烏間「勉強も暗殺も同じことだ。基礎は身につけるほど役に立つ。例えばそうだな……磯貝君、前原君、そのナイフを俺に当ててみろ」

 

磯貝「え?いいんですか?」

 

前原「2人がかりで?」

 

烏間「そのナイフなら俺達人間に怪我は無い。かすりでもすれば、今日の授業は終わりでいい」

 

 

磯貝「え、えーと……そんじゃ…」ヒュッ

 

烏間「……」スッ

 

磯貝「……!」

 

烏間先生は2人のナイフを軽々と避けた。

 

烏間「さぁ…」

 

前原「クッ…!」バッ

 

2人は攻撃を続けるが、烏間先生は容易く避けるか、捌いていく。

 

烏間「…このように、多少の心得があれば、素人2人のナイフ位は俺でも捌ける」

 

磯貝(当たらない……!)

 

前原(全部避けるか捌いてる……!?)

 

磯貝・前原「くそっ!」ガッ

 

烏間「……」バッ

 

磯貝・前原「!?」(ひっくり返されたっ!?)

 

 

すげぇ……2v1で勝った……!

 

烏間「俺に当たらないようでは、マッハ20の奴に当たる確率の低さがわかるだろう……。見ろ!今の攻防の間に奴は!砂場に大阪城を造った上に着替えて茶まで立てている!」

 

一同(腹立つわぁ〜……)

 

烏間「クラス全員が俺に当てられる位になれば、少なくとも暗殺の成功率は格段に上がる。ナイフや狙撃……暗殺に必要な基礎の数々……体育の時間で、俺から教えさせてもらう!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

矢田「烏間先生、ちょっと怖いけどカッコいいよね〜」

 

倉橋「ねー!ナイフ当てたらよしよししてくれんのかな〜」

 

 

殺「烏間先生……!ひょっとして私から生徒の人気を奪う気でしょう!!」

 

烏間「ふざけるな。『学校が望む場合……E組には指定の教科担任を追加できる』。お前の教員契約にはそういう条件があるはずだ……。俺の任務は殺し屋達の現場監督だ。あくまでお前を殺すためのな……」

 

殺「『奴』や『お前』ではありません。生徒が名付けた『殺せんせー』と呼んで下さい」

 

 

杉野「6時間目小テストかー」

 

渚「体育で終わって欲しかったね……」

 

 

 

 

???「よ、渚君」

 

 

 

 

渚「……!カルマ君!帰ってきたんだ……!」

 

カルマ「久しぶり〜……お、あれが例の殺せんせー?すっげ。ホントにタコみたいだ」

 

あの赤髪…もしかして……。

 

友「なぁ悠馬、あれって…」

磯貝「あぁ。停学中だった…赤羽業(あかばねカルマ)!」

 

 

殺「……カルマ君。今日が停学明けだと聞いていました。が、初日から遅刻とはいけませんねぇ」

 

カルマ「あっはは。生活リズム戻らなくてね……とりあえずよろしく先生。ほら握手」

 

殺「こちらこそ。楽しい1年にして………!?」ドロッ

 

カルマ「……!」バッ

 

殺せんせーの触手がドロっと溶けた。

カルマはすかさず追撃するが、殺せんせーはマッハでかわす。

 

 

殺(掌に対先生ナイフを……!?)

 

カルマ「ほんとに聞くんだこのナイフ……細かく切って貼っつけてみたんだけど……けどさぁ先生?こんな単純な『手』に引っかかるとか……しかもそんなとこまで飛び退くとかビビり過ぎじゃね?」

 

初めてだ……

殺せんせーにダメージを与えた生徒…

赤羽業……噂には聞いてたけど…

 

大分ヤベー奴だな…。

 

カルマ「殺せないから『殺せんせー』って聞いてたけど……あっれぇ?

 

 

せんせーひょっとしてチョロいひと?」

 

殺「…………!! 」 ピクピク

 

 

茅野「渚、私この中学来てから日が浅いから知らないんだけど……彼どんな人なの?」

 

渚「……うん。1年2年が同じクラスだったんだけど……2年の時続けざまに暴力沙汰で停学食らって…このE組にはそういう生徒も落とされるんだ……でも、今この場じゃ優等生かもしれない…」

 

茅野「……?どういう事?」

 

渚「凶器とか騙し討ちの基礎なら…多分カルマ君が軍を抜いてる」

 

 

カルマ(逃げないでよ殺せんせー……『殺される』ってどういう事か授業(おし)えてやるよ)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

その後、カルマは色々な手を使って先生を追い詰め、1日が終わった……。

先生は、物理的にも精神的にもダメージを受けていた。

 

だが翌日……

形勢逆転した。

 

殺「……カルマ君、先生はね。手入れをするのです。錆びて鈍った暗殺者の刃を」

 

それから一日中カルマは手入れされ続けた……

殺せんせーに個人マークされたら…どんな手を使って1人じゃ殺せねーよな…

 

 

友「さてと、課題提出しないと…ん?あれはカルマと渚と殺せんせー……。…カルマですら手入れされちまったってことか」

 

カルマ「あれ?君……真弓君だっけ?せんせーの財布奪ったから一緒に飯いこーよ」

 

友「お、それいいね。先生、課題職員室置いとくからー」

 

殺「友君まで!?」

 

 

カルマ「渚君、友君何食べたーい?」

 

友「俺は何でもいいよ〜」

 

渚「僕もなんでも!」

 

殺「ちょっと!?みなさーん!?」

 

 



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第5話 毒の時間


スライムせんせー登場…の巻。





 

《友 side》

 

先程、理科の授業が終わった。

お菓子を使った実験だったので、帰り道にお菓子食べようとしたのだが……

 

殺「お菓子から着色料を取り出す実験はこれで終了!余ったお菓子は先生が回収しておきます!!!」

 

前原「あ、おい!」

 

杉野「それ俺らが買ったやつだろ!」

 

友「あのタコ…!給料日前だからって授業でおやつを調達してやがる!」

 

片岡「地球を滅ぼす奴がなんで給料で暮らしてんのよ…」

 

 

 

友「くそ……俺らのお菓子なのに……」

 

俺のコアラが……!!

 

奥田「……」ガタッ

 

友「…?奥田……?」

 

菅谷「友…奥田が持ってるのって」

 

友「ああ……大丈夫か?あれ」

 

 

奥田「あ、あのっ…先生…」

殺「どうしましたか?奥田さん」

奥田「ど、毒です!飲んで下さい!」

 

奥田が手に持ってたのは薬品が入ったフラスコだ。

そして、それをストレートに先生に渡した。

ええ……。

 

殺「……奥田さん、これはまた正直な暗殺ですねぇ……」

 

奥田「あっ……あの……わ、私、皆みたいに不意打ちとか…上手く出来なくて……でもっ…化学なら得意なんで真心こめて作ったんです!」

 

 

杉野(お、奥田……)

 

前原(それで飲むバカは流石に……)

 

 

殺「それはそれは……では、いただきます」ゴクゴク

 

前原・岡島・友(飲んだ!?)

 

殺「…!!………こ…これは……」

 

にゅ。

 

 

前原(なんかツノ生えたぞ…?)

 

友(色も少し変わったし……)

 

殺「この味は水酸化ナトリウムですね。人間が飲めば有害ですが……先生には効きませんねぇ」

 

薬品に味とかあるんだ…。

 

奥田「……そうですか」

 

殺「あと2本あるんですね。それでは」ゴクゴク

 

奥田「は、はい!」

 

殺「うっ……うぐぁっ……グググ……」

 

ばさっ。

 

友(今度は羽生えた!?)

 

三村(無駄に豪華な顔になってきたぞ…!?)

 

殺「酢酸タリウムの味ですね。では、最後の1本」

 

不破(どうなる!?)

 

友(最後はどうなるんだ!?)

 

 

………( ˙-˙ )

 

 

殺「王水ですねぇ。どれも先生の表情を変える程度です( ˙-˙ )」

 

 

片岡(真顔になった……)

 

前原(変化の法則性が読めねーよ!)

 

岡島(てか先生真顔薄っ!!)

 

友(顔文字みてーだな!)

 

殺「先生の事は嫌いでも…暗殺の事は嫌いにならないで下さい( ˙-˙ )」

 

前原「いきなりどうした!?」

 

 

殺「それとね奥田さん。生徒1人で毒を作るのは安全管理上見過ごせませんよ」

 

奥田「……はい。すみませんでした……。」

 

あ…顔文字から戻った。

 

殺「放課後(この後)、時間があるのなら一緒に先生を殺す毒薬を研究しましょう」

 

奥田「は……はい!」

 

…え?暗殺対象(ターゲット)と毒薬作るの…?

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そして翌日……

 

茅野「で……その毒薬を作って来いって言われたんだ」

 

奥田「はい!理論上は、これが1番効果あるって!」

 

渚「毒物の正しい保管法まで漫画にしてある……相変わらず殺せんせー手厚いなぁ……」

 

奥田「きっと私を応援してくれてるんです。国語なんて分からなくても…私の長所を伸ばせばいい…って」

 

 

友「……不破。あれ効くと思うか?」

 

不破「うーん…どうなんだろ…。いくら殺せんせーでも、自分に効く毒薬作るかなぁ…?」

 

 

 

殺「おはようございます」 ガララ

 

茅野「あ、来たよ。渡してくれば?」

 

奥田「はい!」

 

 

殺「おや奥田さん」

 

奥田「先生、これ……」

 

殺「流石です……では早速いただきます…」 ゴクゴク

 

殺せんせーは勢いよく毒薬を飲み干した。

 

 

 

殺「ヌルフフフフフ………ありがとう奥田さん……。君の薬のお陰で……先生は新たなステージへ進めそうです……!」

 

奥田「……えっ?……それって……どういう……」

 

 

やっぱり……毒じゃなかったか……。

 

一体…何が起きるんだ!?

 

 

殺「グオォォォオォォォォォォォォォオ!!!!」 カッ

 

ふう

 

一同(溶けた!?!?)

 

メタルスライムみてーになりやがった!?

 

殺「君に作ってもらったのはね。先生の細胞を活性化させて流動性を増す薬なのです……。液状ゆえにどんな隙間も入り込む事が可能に!!!」

 

片岡「何処に入ってんのよ……そこ私の机でしょ……」

 

殺「しかも、スピードはそのままに!さぁ!殺ってみなさい!」シュパッ! ドッドドド

 

前原「ちょっ!!!無理無理!!」

 

岡島「こんなの無理だろ!!」

 

杉野「床とか天井に潜り込まれちゃ狙いようないって!」

 

友「んだよこのはぐれ先生!!」

 

殺「ツーン」

 

 

奥田「だ、騙したんですか殺せんせー!?」

 

殺「奥田さん。暗殺には人を騙す国語力も必要ですよ」

 

奥田「えっ……」

 

 

殺「どんなに優れた毒を作れても……今回のようにバカ正直に渡したのでは…暗殺対象(ターゲット)に利用されて終わりです。渚君、君が先生に毒を盛るならどうしますか?」

 

 

渚「え……。うーん…先生の好きな甘いジュースで毒を割って……『特製手作りジュース』だと言って渡す……とかかな?」

 

殺「そう。人を騙すには相手の気持ちを知る必要がある。言葉に工夫をする必要がある……。上手な毒の盛り方…それに必要なのが国語力です」

 

 

奥田「……!」

 

殺「君の理科の才能は将来皆の役に立てます。それを多くの人にわかりやすく伝えるために……毒を渡す国語力も鍛えて下さい」

 

 

奥田「は……はい!」

 

カルマ「あっはは。やっぱり暗殺以前の問題だね〜」

 

渚(殺せんせーの力の前では……猛毒を持った生徒でもただの生徒になってしまう。まだまだ……先生の命に迫れる生徒は出そうにないや……)

 

 

 



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第6話 剣術の時間

友君がついに主人公っぽくなります!
6話にしてようやくです……

6話で主人公っぽくなる奴は本当に主人公なのだろうか()





 

《友 side》

 

1週間が終わり、休日。

俺は今駅に向かっている。

 

第2話で言ってた、家に来る約束のためだ。

家を知らない奴らが大半だし、迎えに行くことに。

 

友「お、もう結構着いてんじゃん」

 

不破「おはよー友君!」

 

友「おはよう不破。皆も」

 

前原「あと来てねーのは岡島か?」

 

磯貝「あいつ遅いな……」

 

中村「もうほっといてもいんじゃなーい?」

 

 

しばらくすると岡島が走ってきた。

 

 

岡島「わりぃ!遅れた!!」

 

菅谷「おせーぞ岡島」

 

三村「置いてくとこだったぞ」

 

岡島「わ、わりぃ…」

 

友「じゃ、全員の飲み物おごりで」

 

岡島「はぁ!?お前の家のもの出せばいいだろー!?」

 

中村「いーからジュース買ってきてよー」

 

千葉「俺はコーラがいいな」

 

菅谷「俺緑茶ねー」

 

岡島「そんなァ!?」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

岡島「くそっ……あと数分早く起きていれば……」

 

前原「自業自得だぞー?」

 

 

友「さて、そろそろ着くぞ」

 

磯貝「おー……相変わらずデカいな……」

 

不破「……ウソでしょ?」

 

中村「この豪邸が……」

 

速水「友の家……」

 

菅谷「ホントでけーな…」

 

岡島「こんなとこ住んでるのか……」

 

友「ど〜ぞ〜お入りー」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

俺の家は大きな二階建て。

1階はリビングやキッチン等がある。

2階には俺や新の部屋がある。他にも空き部屋だらけ。ま、大体の部屋は俺や新の私物で埋まってるけどな

 

友「ここが俺の部屋ね~……おい中村と岡島。何探してんだ」

 

中村「何って…決まってるでしょ?」

 

岡島「エロ本だよ……!あるんだろ?健全な男子中学生の家なんだから!」

 

友「ねーよ!」

 

ゲス野郎共め……!!

 

 

不破「凄い……漫画がこんなにも……」キラキラ

 

友「好きに読んでいいよ。この前のお礼だ」

 

不破「ホント!?」

 

 

前原「おい友!マリパで勝負だ!!」

 

友「いいよ〜。じゃ悠馬と航輝もやろーよ。他の人も後で交代制でね〜」

 

磯貝「おう!」

 

 

それからは、ゲームしたり、漫画読んだり、皆でおやつ食ったりしながら時間を過ごしていった……

 

 

友「じゃ、ゴミとか食器片付けてくるな〜」ガチャ

 

三村「おう。ありがとな」

 

 

下の階へ行くと玄関が開いた。新が帰ってきたのだ。

 

新「ただいま……」 ガチャ

 

友「お、おかえりぃ〜」

 

新「来客か……。あぁ。そういえばE組のクラスメイトが来るんだっけ」

 

 

不破「友く〜ん。手伝いに来た……って」

 

友「お、不破。紹介するよ。俺の弟の新だ」

 

新「よろしく…兄貴と仲良くやってくれてるそうで……」

 

不破「よ、よろしくお願いします……」

 

 

中村「ん?あのイケメン……どっかで…」

 

岡島「知ってんのか?中村」

 

中村「なんか見たことある気がするんだよねぇ…」

 

 

磯貝「見たことあってもおかしくないよ」

 

前原「友の弟、アイドルやってるからな!」

 

 

中村・不破「あ、アイドル!?」

 

三村「某アイドル事務所の某Jr.なんだ。最近よくテレビに出てる、CDデビュー前のグループ、『RainBow7』っているだろ?あそこのメンバーなんだよ」

 

 

新「初めまして。3年A組…RainBow7の真弓新です。よろしく」

 

 

菅谷「え、A組なのかよ……」

 

友「成績良いからねぇこいつ」

 

新「……あ。そーだ兄貴。最近剣術道場行ってねーそうじゃんか。近藤さん達から聞いたぞ」

 

友「げっ……だ、だって、E組落ちちゃったから勉強しないと……」

 

新「あそこの人ら頭いいから……少しは勉強教えてやるから来いって言ってたぞ?」

 

 

千葉「剣術道場に通ってるのか?」

 

友「まぁな…。最近は行けてないけど……」

 

新「今から行ったらどうだ?あの人……今すぐにでも来てくれって顔してたぞ」

 

友「えぇ…てか会ったのかよ……」

 

新「会いに行ったが正しいな。最近仕事が忙しくて、友と話せてなかったし…道場ちゃんと行ってんのかなって」

 

 

中村「いーじゃーん。行こーよ道場!」

 

岡島「楽しそうだしな!」

 

前原「道場の方に行くのは俺らも初めてだからな!」

 

何でこいつらこんなに好奇心旺盛なんだよ…!

 

友「うぅ……じゃあ行くかぁ?剣術道場」

 

一同「行く!!」

 

即答だった…。

仕方ない、行くとするか…。

 

 



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第7話 剣術の時間-2時間目


ついに剣術道場へ。

そしてオリキャラがかなり出ます。




 

《友 side》

 

最近行ってなかったし……。

あの人らに何言われるかわかんねーなぁ……

 

中村「お、ここが道場かい?」

 

千葉「友の家も大きかったが……」

 

速水「ここも大概ね」

 

岡島「すげぇ……」

 

 

???「……ん?……あ!友先輩!!」

 

友「おう山崎。元気してっか?」

 

山崎「はい!しばらく来ないから近藤さん心配してましたよ?」

 

友「う……仕方ないだろE組落ちたんだし……」

 

 

やっぱり会いたくねぇよぉ……。

 

 

山崎「後ろの方々はE組の?」

 

友「あぁ…。どうしても来たいって……」

 

山崎「よろしくお願いします。椚ヶ丘中学校2年D組、山崎です」

 

山崎透。

俺を慕ってくれている後輩だ。

 

前原「よろしく〜……ところでさぁ…?道場って、ちゃんねーいんの?」

 

友「うーん……まぁ道場の手伝いとしているにはいるけど……あの人はダメだよ?」

 

前原「なんだよ?そんな絶望的なのか?」

 

友「そーゆーんじゃなくてね……?」

 

あの人……好きな人いるからなぁ…。

 

山崎「とりあえず中に入りましょ。土方さんも待ってますよ!」

 

友「…………はい…」

 

 

土方さん「よう友。久々だなぁ……全然顔見せねぇと思ったら…E組に落ちたんだってな。ちゃんと俺に教われば良かったんだよ」

 

土方歳次さん。

椚ヶ丘中学校と同じくらいレベルが高い中学を卒業した頭が凄くいい人……。なんだけど、凄く厳しい………。

 

友「えぇ……だって土方さんスパルタだし…」

 

土方さん「あ?」

 

友「ひっ……」

 

 

不破・中村(めっちゃ怖い人いる!!)

 

岡島「これが嫌だったのか…」

 

磯貝「なんか申し訳ないことしたな…」

 

菅谷「あれ?前原は?」

 

 

前原「どこだ……ちゃんねー…いねーじゃねーか!!」

 

三村「ちゃんねー探してるよ……」

 

千葉「人の道場で何してんだ…」

 

 

総七「あれ……何人か知ってる顔いるね〜」

 

友「おう総七。久々だな」

 

沖田総七。

俺と同い年で、椚ヶ丘中学校3年C組だ。

頭もそれなりに良く、剣術の腕前も中々のもの。

 

総七「E組どーう?俺のクラスメイト、いっつもE組の悪口言ってるけど」

 

友「楽しいよ?本校舎の連中にはわからんだろうが」

 

総七「へぇー。それは良かったよ」

 

 

不破「あの人……」

 

中村「知ってんの?」

 

不破「確か…前同じクラスだった…」

 

 

総七「沖田総七…。3年C組だよ。不破さんや千葉君、岡島君は知ってるね〜」

 

近藤さん「おう友!!久しぶりじゃねぇか!!」

 

近藤勇さん。

この道場を経営している人。凄く優しくて面倒見のいい人だ。

 

友「近藤さん!」

 

近藤さん「たまには顔出せよ!トシはかなりスパルタな教え方するが、俺は優しく教えてやっから!」

 

友「ありがとうございます!」

 

やっぱ優しいなぁ…この人。

 

 

岡島「てか…道場って言う割にはあんまり人いねーな…」

 

近藤さん「そうなんだよ……どんどん減っていっちゃってね……」

 

土方さん「最近はよく悪徳な業者から立ち退きの話が出てきてな。参ってんだ……。そこでだ友」

 

 

……ん?

 

 

土方さん「てめーに追い払って欲しいんだよ。流石に近藤さんの手を汚すわけにはいかねーが、友なら大丈夫だろ。E組ならさ」

 

友「いやダメでしょ!?!?」

 

磯貝「なんか色々と大変そうだな…」

 

千葉「邪魔して悪かったかな……」

 

 

イツ「そんな事ないですよ?久々に友君も来て、お友達も連れてきましたしね」

 

沖田イツさん。

総七の姉。この道場にいる人で唯一の女性。道場にいるって言っても門下生ではなくお手伝いさんだけどね。

 

前原(ちゃんねーだぁ!)

 

岡島(すげぇ美人!)

 

こいつら……顔でわかるわ。

 

友「イツさん……お久しぶりです」

 

イツ「久しぶりね。E組って大変そうだけど…何とかなってるみたいね」

 

友「それはそうと……悪徳業者を俺に追っ払えって…無謀すぎますよ土方さん?」

 

土方「あ?お前の実力ならいけんだろ」

 

いやあんたの方が実力あるだろ!

 

ピンポーン

 

近藤さん「……!」

 

三村「ん?」

 

菅谷「お客さんすか?」

 

 

土方「……近藤さん」

 

近藤さん「……ザキ。開けてやれ」

 

山崎「…はい」

 

 

インターホンが鳴るのと同時に空気が変わった……?

まさか…来るのか?悪徳業者とやらが…

 

ピンポーン

 

山崎「はい……今開けまッ……!?」

 

ドゴッ

 

 

玄関が開くと同時に、山崎は何者かに蹴り飛ばされた。

 

友「山崎!」

 

土方「来やがったな……」

 

 

友「山崎!大丈夫か!」

 

山崎「な、何とか…大丈夫です……」

 

悪藤「おいおい近藤さんよォ……そろそろ立ち退きしてくんねェかなァ……そろそろ…武力行使の時間だぜ?」

 

友「……てめーか」

 

悪藤「あ?」

 

友「てめーが例の悪徳業者かって聞いてんだよ!!」

 

悪藤「へぇ…見ねぇ顔だ……こいつは面白ェじゃねぇか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






さぁさぁシリアスになってまいりました。

悪藤とかいういかにも悪そうな名前のやつが悪徳業者です。



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第8話 剣術の時間-3時間目

オリジナル回わりと長く続くなぁ。

2話位で終わるかなって思ってたんだけど4話くらいになりそう。




《友 side》

 

こいつが悪徳業者……

 

でけぇ……近藤さんよりも身長あるんじゃねぇか…?

 

さっきの蹴りから鑑みるに…パワーも相当…

 

そして、後ろに黒服が4人ほど……

コイツらは相手するまでもねーが…クラスメイトに手を出されちゃ困る

 

土方「イツ……友のクラスメイト連れて逃げろ」

 

イツ「は、はい!皆こっちよ!」

 

 

イツさんはE組の皆を道場の奥の方へと逃がそうとしてくれている。

 

 

悪藤「追え!てめーら!」

 

ボスと思われる奴が叫ぶと、一斉に黒服が皆に向かって襲いかかる。

 

菅谷「げっ!こっち来るぞあいつ!」

 

千葉「早くこっちに!」

 

不破「あっ!!」バタッ

 

中村「不破ちゃん!」

 

逃げる途中、不破が転んでしまった。

 

不破「……やばい…足挫いたかも…」

 

モブ黒服「逃がすかよ…」

 

黒服が不破の事を捕まえようとする。

 

友「離れろモブ!!」 バァン!!

 

モブ黒服「ぐぁ……!」バタッ

 

黒服は今の一撃で気絶したようだ。

 

友「頭に竹刀打ち込んでやった。木刀じゃないだけ有難く思え。……大丈夫か?不破」

 

不破「うん…でも足が……」

 

友「そこで座ってろ……。大丈夫だから。安心して」

 

不破「う、うん…」

 

 

友「さぁかかって来いよ。名前のないモブ黒服野郎。あと3人ほど残ってんじゃんか」

 

モブ黒服「く、くそっ!」

 

黒服は3人がかりで殴りかかってくるが…

動きが単純だ……。そんな拳じゃ当たらない。

 

そして、黒服全員の腹に竹刀を打ち付けた。

 

モブ黒服「ぐぁっ!」

 

モブ黒服「こんなガキにっ!」

 

モブ黒服「ち、ちくしょう!」

 

 

ホント…モブがでしゃばってさぁ……?

無駄に大きい動きしやがって…不破に当たったらどーすんだこのバカ。

 

 

悪藤「貴様……真弓とか言ったか?」

 

友「……なんだ。俺の名前知ってんのか」

 

悪藤「お前…確か椚ヶ丘中学校の落ちこぼれ『エンドのE組』だったよな?他の奴らもそうなのか?可哀想な奴らだなぁ!少し勉強が出来ねーだけでクソみてぇに扱われてな!毎日毎日、クソみてぇなとこでクソみてぇな生活送ってんだろ?どうしようもねぇ落ちこぼれだな!ハハハハ!!」

 

友「………………」

 

不破「……!」

 

友「……テメェ…今なんつった」

 

 

悪藤「あ?」

 

友「俺の大切なクラスメイトに………俺の大切なE組に……なんつった……テメェ」

 

不破(友君……怒ってる……)

 

ボスっぽいのは俺に向かって木刀を投げ捨てる。

 

悪藤「……ほらよ。木刀だ。木刀(こいつ)で…殺す気で戦おうぜ…?真弓クンよぉ?」

 

…向こうも木刀を構えている。

 

友「………おう。いいぜ……殺す気で勝負に挑む…か。

 

 

殺ってやろうじゃん……!」

 

 

悪藤「そう来なくっちゃなァ!!行くぞォ!!」

 

友「…………」バッ!!

 

悪藤「えっ………!?空中………!?」

 

友「………」

 

バァァン

 

悪藤「ぐはっ…!」バタッ

 

始まった瞬間に空中に飛んで、そのまま肩に振り下ろした。

当分は痛みが収まらないだろうな。

 

友「……勝負ありだ。思った以上に弱くてつまんなかったよ。序盤の敵としては丁度いいかもしんないけどな。

 

 

…いいかテメェら二度とこの道場にそのツラ見せんじゃねぇ。もし次来たら…また俺が木刀(こいつ)で斬り伏せてやる」

 

悪藤「ひ……ひいっ!!て、撤収だてめーら!!」

 

悪徳業者達はそのまま去っていった。

 

 

友「口ほどにもないヤツらだったな。なんでこんなヤツらにあんたら苦戦してたんだ」

 

近藤さん「すまないな。いくらあんなやつ相手でも、私が手を下す訳にはいかなくてな」

 

友「まぁ確かに……近藤さんや土方さんが相手だったら肩だけじゃ済まないし…総七や山崎だったら、暴力沙汰でE組行きになるかもしれないから……。いやだとしても俺下手したら退学でしたけど」

 

近藤さん「いや肩だけじゃ済まないとかじゃなくて…

まぁ友なら大丈夫だろっていう」

 

友「大丈夫……なのか?」

 

土方さん「まぁお前が来てくれて助かったわ。礼を言うぜ」

 

 

友「はぁ…。そ、それより不破!足大丈夫か?」

 

不破「うーん……挫いちゃったみたい……」

 

中村「………!」

 

前原「ん?どうした中村」

 

中村「コソコソ」

 

前原「……成程」

 

中村と陽斗……。何企んでんだあいつら。

 

 

中村「ねーえ友。不破ちゃん足挫いちゃってるし、君がおぶって家まで送ってあげたらどうかねぇ?」

 

不破「な、中村さん!?」

 

前原「いいんじゃねーか?なぁ皆?」

 

岡島「そうだな!友、いいだろ?」

 

 

友「んー…まぁ、こうなったのは連れてきた俺の責任だしな」

 

不破「ゆ、友君!?えっ…?…いいの?…ほんとに?」

 

友「あぁ。ほら乗って。中村も乗せるの手伝えよ」

 

中村「はいはーい!」

 

 

不破「ちょ、ちょっと!何してくれるの!?」コソコソ

 

中村「あの日からやけに友と喋ってたでしょ?私達が背中押してあげてんのよ〜?」コソコソ

 

不破「べ、別にそんなんじゃないから!」コソコソ

 

 

友「おーい。何こそこそしてんだよ。早く乗りなよ〜」

 

不破「う、うん!」

 

不破(やばい……やばいよこれは……!!///)

 

 

 

 

 





やっと次回、不破さんがヒロインらしくなります!
ようやくだ…!



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第9話 おんぶの時間


少し短いですがお許しください…!




 

《不破 side》

 

どうなってるの……これ……

今、私は仲のいい同級生の男子におんぶされている……。

 

えっと……そうだ。

状況整理をしよう!私の得意分野だ!

 

友君の通う剣術道場に行って……

そこで悪い奴らに会って……

足挫いて……

 

友君におんぶされてる……

 

 

いや何で!?!?

 

よく考えたら普通に車とか…選択肢あったし…

全部中村さんのせいだよ!!

前原君とか岡島君もノッてきてさ!!

 

 

友「大丈夫か?不破」

 

不破「ふひゃい!?//////」

 

友「どした?」

 

不破「な、何でもないっ!!だ、大丈夫だから!//////」

 

 

変な声出た!変な声出た!

どうしよう…ヤバいやつだと思われてないかなぁ……

 

うう…私、少女漫画の過激なシーンとか見ただけで顔赤くなっちゃうもんなぁ………。

 

友「ここを左に曲がるんだっけ?」

 

不破「そ、そうだよ……///」

 

友「おっけー」

 

……友君は…私の事…何とも思ってないのかな……

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

さてと……もうそろそろで不破の家か……

 

 

にしても……『俺の責任だ』とかちょっとカッコつけて引き受けたけど…これかなりやばい状況だよね?

 

クラスメイトの女子おぶってるって……。

 

うう…したくなくても意識しちまう……。

 

不破の口数減ってる気がするし……。

 

やばいな……ここに来て恥ずかしくなってきた…。

何とかポーカーフェイスを保たないと…!

 

い、いや!不破は別にそーゆーのじゃない……。

好きな人とか………そーゆーのじゃなくて……。

ただの仲のいい友人だ! うん!

 

 

友「この辺りか?」

 

不破「そ、そう。そこの家…///」

 

友「ここか。インターホン押すか」ピンポーン

 

 

不破兄「はーい。どなたですか?」ガチャ

 

友「えっと……優月さんのクラスメイトの者ですけど……優月さんが足を挫いてしまいまして……」

 

不破兄「ゆ、優月が!?大変だ!かーさーん!!」

 

 

不破「お兄ちゃん焦りすぎ…。大丈夫だからね?」

 

不破母「優月!車乗りなさい!!」

 

友「準備速ッ!?」

 

いつの間に車出したんだ!?

これがご都合展開って奴か……!?

 

不破兄「ほら早く!病院行くよ!」

 

友「不破、車の座席のとこに座らせるよ。お兄さんも手伝って下さい」

 

不破兄「オーケー!」

 

 

不破のお兄さんと協力して不破を車の座席に座らせた。

 

友「よし。大丈夫か?不破」

 

不破「……うん。ありがとね?友君…//」

 

友「……おう。また明日な」

 

不破「うん!また明日!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《不破 side》

 

……友君、優しかったな…。

 

明日まともに友君の顔見れるだろうか…。

 

不破兄「中々良い奴だったじゃん。顔も悪くねーし」

 

不破「お兄ちゃん!?///」

 

不破母「期待してるわよ優月」

 

不破「お母さんまでっ!?///」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

はぁ…。凄い顔熱い……。

 

明日……なんとかポーカーフェイスを保たないとな…!

 

……それにしても、ただのクラスメイト相手にドキドキしすぎだって…。

 

あれは……そう。思春期男子特有のクラスの女子をなんか意識しちゃう現象だから。

 

恋なんかじゃ…ない…と思うけど。

 

はぁ…早く帰ってゲームしよう…。

 

 

 

 





不破さんは自分の気持ちに気付き始めてますね…。

友君はまだかな?
これから徐々に自覚していく感じかな?

ひとまずオリ回は一旦終了…。次からは原作通りに進んでいこー。


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第10話 胸の時間

 

 

《友 side》

 

友「おはよ。不破。大丈夫か?」

 

不破「うん。幸い少しテープ巻くだけで何とかなったよ……」

 

友「それは良かった……」

 

 

前原「よう友!」

 

中村「あの後どうなったのさぁ?」

 

友「どうも何も……ただ送っただけだけど?」

 

前原「お前それでも男か!?」

 

友「逆に何させようとしてたんだ!?」

 

 

中村「ま、不破ちゃんが無事でよかったよ〜」

 

不破「中村さん……まだ許して無いからね?」

 

中村「な…なんの事やら……ほら!早く教室行こーー!」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《渚 side》

 

烏間「今日から来た、外国語の臨時講師を紹介する」

 

イリーナ「イリーナ・イェラビッチと申します♡ 皆さんよろしく!!」

 

前原(すっげー美人!!)

 

岡島(おっぱいやべーな!)

 

片岡(……で?なんであんなに殺せんせーにベタベタなの?)

 

 

烏間「本格的な外国に触れさせたいとの学校の意向だ……。英語の半分は彼女の受け持ちで文句は無いな?」

殺「……仕方ありませんねぇ」

 

茅野「……なんか凄い先生来たね……しかも殺せんせーに凄く好意あるっぽいし……あと胸……」

 

渚「……うん。…でもこれは、暗殺のヒントになるかもよ」

 

タコ型生物の殺せんせーが

人間の女の人にベタベタされても戸惑うだけだ……

 

いつも独特の顔色を見せる殺せんせーが……

戸惑う時はどんな顔か……?

 

殺「……………にゅやぁ/////」

 

友・前原・岡島・三村(普通にデレデレじゃねーか!!)

 

茅野「何の捻りも無い顔だね……」

 

渚「うん……人間もありなんだ…」

 

イリーナ「あぁ……見れば見るほど素敵ですわぁ……その正露丸みたいなつぶらな瞳…曖昧な関節…私、虜になってしまいそう♡」

 

殺「いやぁ恥ずかしい///」

 

片岡(騙されないで殺せんせー!!)

 

岡野(そこがツボな女なんていないから!!)

 

僕らはそこまで鈍くない。

『この時期に、このクラスにやって来る先生』

 

結構な確率で……只者じゃない

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

殺「ヘイ パス!」

 

カルマ「ヘイ 暗殺ッ!」

 

殺「ヘイ パス!」

 

岡野「ヘイ 暗殺ッ!」

 

 

いやぁ……暗殺サッカー結構楽しいな!

 

殺「ヘイ パス!」

 

友「ヘイ 暗殺ッ!」

 

イリーナ「殺せんせー!」

 

うわ来たよ……。

こいつ嫌いなんだよなぁ……。

 

イリーナ「烏間先生から聞きましたわ!すっごく足がお速いんですって?」

 

殺「いやぁ〜。それほどでもないですけどねぇ」

 

イリーナ「お願いがあるの…。1度本場のベトナムコーヒーを飲んでみたくて……私が英語を教えてる間に買って来て下さらない?」

 

殺「お安いご用です!ベトナムに良い店を知っていますからぁ!」ドシュ

 

 

磯貝「……で、えーと…イリーナ……先生?授業始まるし、教室戻ります…?」

 

イリーナ「…授業?あぁ。各自適当に自習でもしてなさい」

 

磯貝「えっ……」

 

本性表したな……この女…。

 

イリーナ「それと…ファーストネームで気安く呼ぶのやめてくれる?あのタコの前以外では先生を演じるつもりも無いし……『イェラビッチお姉様』と呼びなさい」

 

中村・不破「………」

 

カルマ「で、どーすんの?『ビッチねえさん』」

イリーナ「略すなァ!!」

 

ナイスカルマ!

 

カルマ「あんた殺し屋なんでしょ?クラス総掛かりで殺せないモンスター……ビッチねえさん1人でやれんの?」

 

イリーナ「……ガキが。大人にはね…大人の殺り方があるのよ。潮田渚ってあんたよね?」

 

渚「…?」

 

 

ビッチねえさんが渚に近付いてく…何する気だ?

 

 

イリーナ「……」スッ

 

渚(!?)

 

は…?え…?

 

茅野「なっ………!!?」

 

渚に……キスをしたっ…!?

 

渚「………」クタァ

 

あ、渚死んだ()

 

イリーナ「後で教員室にいらっしゃい。あんたが調べた奴の情報……聞いてみたいわ。ま、強制的に話させる方法なんていくらでもあるけどね……。その他も!!有力な情報持ってる子は話に来なさい!いい事してあげるわよ…?女子にはオトコだって貸してあげるし…。技術も…人脈も…全て有るのがプロの仕事よ……。ガキは外野で大人しく拝んでなさい……。あと少しでも私の暗殺の邪魔をしたら……

 

 

 

殺すわよ」

 

 

渚が気絶するほど上手いキス……。

従えてきた強そうな男たち……。

「殺す」という言葉の重み……。

彼女が本物(プロ)の殺し屋なのだと実感した……。

 

……だが、

クラスの大半が感じた事……。

 

この先生は……嫌いだ!!

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

あのビッチ……

授業もしないでタブレットいじりやがって……

 

前原「なぁビッチねえさん。授業してくれよー」

 

お、よく言ったぞ陽斗!

 

岡野「そーだよビッチねえさん」

 

岡島「一応ここじゃ先生なんだろビッチねえさん」

 

イリーナ「あーー!!ビッチビッチうるさいわね!!まず!正確な発音が違う!あんたら日本人はBとVの区別もつかないのね!」

 

いや実際ビッチっぽいしBでもよくね?

 

イリーナ「正しいVの発音を教えたげるわ!まず歯を下唇で軽く噛む!ほら!」

 

仕方ないな……。

ま、授業やる気になったらいいか。本場の教師の英会話教室ってとこかな。

 

イリーナ「……そう。そのまま1時間過ごしてれば静かでいいわ」

 

一同(……なんだこの授業!?)

 

あのクソビッチ……!全然授業じゃねーじゃんか!!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

体育の時間

 

 

三村「……おいおいマジかよ…2人で倉庫にしけこんでくぜ?」

 

前原「……なーんかガッカリだな殺せんせー……。あんな見え見えの女に引っかかって」

 

 

片岡「…烏間先生。私達、あの人のこと好きになれません」

 

烏間「……すまない。プロの彼女に一任しろとの国の指示でな。だが、わずか1日で全て準備を整える手際…殺し屋として一流なのは確かだろう」

 

 

ドドドドドド

 

岡島「な、なんだ今の!?」

 

友「銃火器の音!?」

 

杉野「体育倉庫からだ!」

 

 

イリーナ「いやぁぁぁぁぁ!!」 ヌルヌルヌル

 

一同「!!」

 

岡野「な、何!?」

 

岡島「銃声の次は鋭い悲鳴とヌルヌル音が!」

 

 

イリーナ「いやぁぁぁ」 ヌルヌルヌル

 

一同「………」

 

イリーナ「いやぁ……ぁ…」 ヌルヌルヌル

 

一同「………」

 

 

岡島「めっちゃ執拗にヌルヌルされてるぞ!?」

 

前原「行ってみよう!」

 

殺「ふぅ〜」キィ

 

渚「殺せんせー!」

 

岡島「おっぱいは?!」

 

岡島ストレートすぎるだろ…。

 

殺「いやぁ〜もう少し楽しみたかったですが……皆さんとの授業の方が楽しみですから。6時間目のテストは手強いですよ〜」

 

渚「ま、まぁ頑張るよ……」

 

すると、体育倉庫からビッチ姉さんが…!

 

イリーナ「………」 フラ...

 

岡島・前原「!!」

 

一同(健康的でレトロな服にされている!?)

 

イリーナ「まさか……わずか1分であんなことされるなんて……!肩と腰のこりをほぐされて、オイルと小顔とリンパのマッサージされて……早着替えさせられて……その上まさか……触手とヌルヌルであんな事を……!」

 

一同(どんな事だ!!?)

 

渚「殺せんせー何したの?」

 

殺「さぁねぇ…。大人には大人の手入れがありますから」

 

渚「悪い大人の顔だ!!」

 

殺「さ、教室に戻りますよ」

 

一同「はーい!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

英語の時間

 

このビッチ……いい加減授業しろよ…

 

イリーナ(必ず殺してやるわ…あのタコ…!プロの仕事があの程度でタネ切れなんて思わないでよね!私の人脈から最適の手先(アシスト)を選び直すわ…!もう一度機材と1から調達しなきゃ!)

 

……こいつの暗殺じゃ先生は殺せない。

1度警戒されて、マークされたら殺す事どころか、仕掛けるのすら出来やしない…。

カルマの時にそれは立証済みだ。

 

イリーナ「あぁもう!なんでWi-Fi入んないのよこのボロ校舎ァ!!」

 

カルマ「あはは。必死だねぇビッチねえさん。あんな事されちゃ、プライドズタズタだろうね〜〜」

 

磯貝「……先生、授業してくれないなら殺せんせーと交代してくれませんか?一応俺ら、今年受験なんで……」

 

イリーナ「はん!地球の危機と受験を比べられるなんて……ガキは平和でいいわねぇ〜…それに、聞けばあんた達E組って、この学校の落ちこぼれだそうじゃない?勉強なんて今更しても意味無いでしょう?」

 

………!

 

イリーナ「そうだ!じゃあこうしましょ!私が暗殺に成功したら1人500万円分けてあげる!!あんた達がこれから一生目にする事ない大金よ!!無駄な勉強するよりずっと有益でしょ!だから黙って私に従いn…」

 

ビシッ トーン トン…

 

誰かが消しゴムを投げ、呟いた。

 

 

「出てけよ」

 

 

 

イリーナ「!!」

 

杉野「出てけくそビッチ!」

 

倉橋「殺せんせーとかわってよ!!」

 

イリーナ「なっ!なによあんた達その態度っ!!殺すわよ!?」

 

前原「上等だよ殺ってみろコラァ!!」

 

茅野「そーだそーだ!巨乳なんていらないっ!」

 

渚・友「そこ!?」

 

 

 

 

 

そして昼休み…その後には英語の授業……

またあのビッチの授業受けないといけないのかよ…

 

 

前原「そろそろ烏間先生説得しよーぜ」

 

三村「あの人の授業じゃ、成績が今より落ちちまうよ」

 

磯貝「そうだな。放課後掛け合ってみよう」

 

 

友「ただでさえ英語は苦手教科の1つなのに……もっと苦手になりそうだよ」

 

不破「何とかならないのかなぁ……あの人」

 

ガララッ

 

友「……!」

 

噂をすればなんとやら。扉を開けて入ってきたのはビッチ姉さんだ。

 

イリーナ「…………」カッカッカッ

 

ビッチは黒板に英文を書き始める……

あ、そーだ。席座るか。

 

イリーナ「You're incredible in bed! Repeat!!」

 

一同「………」

 

イリーナ「ほら!」

 

一同「ユーアー インクレディブル イン ベッド」

 

 

イリーナ「アメリカでとあるVIPを暗殺した時……まずそいつのボディーガードに色仕掛けで接近したわ。その時彼が私に言った言葉よ。意味は『ベットでの君は、スゴイよ……♡』」

 

一同(中学生になんて文章読ませんだよ!!)

 

 

イリーナ「外国語を短い時間で習得するには、その国の恋人を作るのが手っ取り早いとよく言われるわ。相手の気持ちをよく知りたいから、必死で言葉を理解しようもするのよね。私は仕事上必要な時……その方法(ヤり方)で新たな言語を身につけてきた…。だから私の授業では、外人の口説き方を教えてあげる。プロの暗殺者直伝の仲良くなる会話のコツ……。身につければ、実際に外人と会った時に必ず役立つわ」

 

岡島・中村(外人と……!)

 

イリーナ「受験に必要な勉強なんて、あのタコに教わりなさい。私が教えられるのは、あくまで実践的な会話術だけ。もし……それでもあんた達が私を先生と思えなかったら……その時は暗殺を諦めて出ていくわ…そ、それなら文句無いでしょ……?あと……悪かったわよ…いろいろ」

 

一同「……………あはははは!!!」

 

 

友「なにビクビクしてんだよ」

 

カルマ「さっきまで殺すとか言ってたくせに」

 

前原「なんか普通の先生になっちゃったな」

 

岡野「もう『ビッチねえさん』なんて呼べないね」

 

イリーナ「……!あんた達!分かってくれたのね!」

 

片岡「考えてみれば、先生に向かって失礼な呼び方だったよね」

 

倉橋「うん。呼び方変えないとね」

 

 

 

前原「じゃあ『ビッチ先生』で」

 

イリーナ「………!えっ………と…ねぇ君たち?せっかくだからビッチから離れてみない?ほら?気安くファーストネームで呼んでくれて構わないのよ?」

 

前原「でもなぁ。もうすっかりビッチで固定されちゃったし」

 

矢田「うん。イリーナ先生よりビッチ先生の方がしっくりするよ〜」

 

友「そんなわけでよろしくビッチ先生!」

 

岡島「授業始めようぜビッチ先生!!」

 

イリーナ「キーーーッ!!やっぱりキライよあんた達!!」

 

という訳で、E組に新しい先生がやってきた。

高慢で卑猥な痴女、それでいてプロの暗殺者のビッチ先生が。

 

 

 

 




余談ですが、友君は下ネタには興味無いですが、アニメ等でそーゆー描写があったり、近くに前原だったり岡島だったりがいて話は聞いてはいるので知識は少しあります。





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第11話 集会の時間

 

《友 side》

 

友「あーあ。なんで本校舎に行かないといけないんだよ……」

 

不破「しょうがないよ……月に一度の全校集会なんだから」

 

前原「めんどくせー……なんで本校舎の連中より早く着いて並ばなきゃいけねーんだよ」

 

磯貝「おい皆、早く行くぞ。この前遅れた時は本校舎花壇の掃除をさせられたんだ…。また遅れたら次は何されるか……」

 

前原「あれは大変だったなー」

 

友「お前サボってたろ!」

 

前原「あれぇそーだっけー??」

 

 

???「うわぁぁぁ!!!」

 

 

友「……なんだ今の」

 

前原「岡島の声だな」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

岡島「うわぁぁぁ!!!」

 

三村「橋が壊れた!」

 

岡島「誰だよこっちが近道っつったの!!」

 

木村「お前だよ!」

 

岡島「うわぁぁぁ!!!」

 

三村・木村・千葉「岡島ぁぁぁぁ!!!」

 

 

矢田「きゃぁぁ!!」

 

神崎「へ、ヘビが!!」

 

岡島「うわぁぁぁ!!!」

 

矢田・倉橋・神崎・速水・原「お、岡島君!!!」

 

 

吉田「ぎゃぁぁ!」

 

寺坂「く、クマが出やがったぁ!!」

 

岡島「うわぁぁぁ!!!」

 

寺坂・吉田・村松・狭間「お、岡島ぁぁ!!」

 

 

磯貝「ま、まずい!!」

 

友「落石だ!」

 

岡島「うわぁぁぁ!!!」

 

磯貝・前原・岡野・片岡・中村・友・不破「お、岡島ぁぁぁ!!!」

 

 

菅谷「うわぁぁ!」

 

杉野「誰だよ蜂の巣刺激したやつ!」

 

岡島「うわぁぁぁ!!!」

 

渚・杉野・菅谷・茅野・奥田「お、岡島(君)!!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本校舎にて……

 

何とか無事に到着したな……。

 

うん。無事……。

1人ボロボロだけど無事。うん。

 

だが、この全校集会……。

俺らにとっては気が重くなるイベントだ。

 

E組の差別待遇はここでも同じ……

俺らはそれに長々と耐えなければならない。

 

友「……!」

 

なんか視線を感じる……

C組の方からか?

 

……すぐに視線の主を見つけた。

あの薄ピンクの髪…

沖田総七か…。

 

総七(下らない……。差別なんかして何が楽しいのかねぇ……)

 

なんだあいつ……チラチラ見てきやがって……昨日剣術でボコボコにしたの恨んでんのか?

 

 

 

校長『……要するに、君たちは全国から選りすぐられたエリートです。この校長が保証します……が。慢心は大敵です。油断してると……どうしようもない誰かさんたちみたいになっちゃいますよぉ〜?』

 

一同「あははははは!!」

 

 

友「陽斗、そういやカルマいなくね?」

 

前原「ああ。さっき渚に聞いたんだけど……集会フケて罰喰らっても痛くも痒くもないとかで……」

 

友「あいつだけサボリってことかよ……」

 

 

三村「……!あれ烏間先生じゃね?」

 

友「え?……あぁ。表向きには烏間先生が担任なんだっけ」

 

前原「国家機密連れてくるわけにはいかねーもんな」

 

友「で、倉橋と中村は何してんの」

 

前原「ナイフケースデコったからってここで出すなよ……」

 

友「あーほら烏間先生に叱られてる」

 

 

三村「……!ビッチ先生まで来たぞ!」

 

前原「渚に近寄って……うおっ!!渚の顔がビッチ先生の胸にっ!!」

 

友「興奮すんな陽斗」

 

前原「渚め、羨ましいっ!」

 

友「羨むな陽斗」

 

 

 

 

荒木『はいっ。今皆さんに配ったプリントが生徒会行事の詳細です』

 

前原「……えっ」

 

 

岡島「俺らの分は…」

 

岡野「ない…」

 

磯貝「すいません!E組の分まだなんですが……!」

 

荒木『えぇ?無い?おっかしーなぁ……ごめんなさーい。3ーEの分忘れたみたい。すいませんけど、全部記憶して帰ってくださーい。ほら、E組の人は記憶力も鍛えた方がいいと思うし』

 

相変わらず陰湿なことで……。

 

ブワッ

 

……は?

一瞬にして……プリントが全員に配られた……!?

ま、まさか……。

 

殺「磯貝君。問題ないようですねぇ。手書きのコピーが全員分あるようですし」

 

国家機密来ちゃったけど!?!?

 

磯貝「あ、プリントあるんで続けてくださーい」

 

荒木『え?あっ……!うそ、なんで……!?誰だよ笑い所潰した奴!……あ、いや、では続けます』

 

大丈夫なのかよあんたがここに来て……!

あーほら他の生徒からも『なんだアイツ』みたいな目で見られてるよ。

烏間先生も怒ってるし。

 

てかビッチ先生なんかナイフで刺してね?

それこそここでしちゃダメだろ!

あ、烏間先生に連れてかれた……。

アホだなぁ……。

 

前原「はは!しょーがねーなビッチ先生は!」

 

 

 

 

磯貝「さ、旧校舎戻るぞ」

 

友「おう」

 

前原「今日は面白かったな〜。本校舎の奴らビックリしてたぜ」

 

友「だとしても、国家機密が集会来ていいのかよ……」

 

 

総七「おーい友」

 

友「……ん?総七か」

 

総七「E組大変だったな。長い距離歩かされた挙句にあんな仕打ち……」

 

友「ま、仕方ないさ。そういうとこなんだからさ。あと、あんま俺と話さない方がいいと思うぞ。お前までE組落とされたらどーすんだよ」

 

総七「それもそうだけど…。ま、頑張ってね。……恋愛とか」

 

友「……お、おう」

 

恋愛って……何を言って…。

 

 

こうして、殺せんせーが来てから初の全校集会が終わった…。

 

俺らが話している頃、1人の男子生徒が『殺気』を放っていたのは、また別の話……。

 

 





余談ですが、友君は恋愛に関しても知識はあんまりないし、経験も勿論ありません。
ですが、ポーカーフェイスが得意なので恥ずかしいと思いながらも平気でカッコつけられる男です。

そしてその後1人で思い返して恥ずかしすぎて死にそうになるタイプです。

あと最後の『殺気』の奴は渚ちゃんのアレです。
カットしてごめんね!




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第12話 第二の時間

 

《友 side》

 

殺達「さて、始めましょうか!」

 

……何を?

 

殺国語「学校の中間テストが迫って来ました」

 

殺数学「そうそう」

 

殺社会「そんなわけでこの時間は」

 

殺理科「高速強化テスト勉強を行います!」

 

殺英語「先生の分身がマンツーマンでそれぞれの苦手科目を徹底して復習します」

 

 

寺坂「下らね……ご丁寧に教科別にハチマキとか…ってなんで俺だけNARUTOなんだよ!!!」

 

殺鳴門「寺坂君は特別コースです。苦手科目が複数ありますからねぇ」

 

 

友「俺は数学か」

 

殺数学「友君は国語や社会と言った文系の教科が得意ですねぇ。理科の暗記も中々出来る。ですが数学や英語のような暗記したものの応用が苦手ですねぇ」

 

友「う……ぐうの音も出ねぇ……つーか体力持つのか?そんなに分身してさ」

 

殺数学「ヌルフフフ。1体外で休憩させてますので心配ご無用ですよ」

 

友「それは逆に疲れるんじゃねーのか!?」

 

 

国語6人、数学9人、社会3人、理科4人、英語4人、

休憩1人…NARUTO1人……。

少し前まで3人くらいが限界だったってのに……。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

翌日……

 

殺達「更に頑張って増えてみました!1人につき3人の先生が教えます!さぁ!授業開始です!」

 

いや増えすぎだろ!!!

 

残像もかなり雑になってるし!

 

雑すぎて別キャラになってねーか!?

 

 

不破「どうしたの?殺せんせー」

 

茅野「なんか気合い入りすぎじゃない?」

 

殺「…そんなことないですよ?」

 

渚「……」

 

昨日なんかあったのか……?

にしても、教えるのが上手くて覚えやすい……。

すげー先生だな…このタコは。

 

 

 

前原「……さすがに相当疲れたみたいだな」

 

中村「今なら殺れるかなぁ?」

 

岡島「なんでここまで一所懸命先生をすんのかね〜?」

 

殺「ヌルフフフ……全てはテストの点を上げるためです……そうすれば!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

※妄想です

 

前原『殺せんせー!』

 

岡野『先生のお陰でいい点数取れたよ!』

 

磯貝『もう殺せんせーの授業なしじゃいられない!』

友『殺すなんて出来ないよ!』

↑生徒達の尊敬の眼差し

 

JD『先生!私たちにも勉強教えて♡』

↑評判を聞いた近所の巨乳女子大学生

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

殺「…………となって、殺される危険もなくなり、先生にはいい事ずくめ!」

 

絶対最後のがメインだこのエロダコ。

 

三村「……いや、勉強の方はそれなりでいいよな」

 

矢田「うん。なんたって暗殺すれば賞金百億だし」

 

中村「百億あれば、成績悪くてもその後の人生バラ色だしさ」

 

殺「にゅやっ!?そ、そういう考えをしてきますか!?」

 

 

岡島「俺たち、エンドのE組だぜ殺せんせー」

 

三村「テストなんかより、暗殺の方がよほど身近なチャンスなんだよ」

 

そう…俺たちはエンドのE組…。

頑張ったところで……この学校の制度からは逃れられない…。

 

殺「………なるほど。よくわかりました」

 

前原「………?何が?」

 

…空気が変わった……?

 

殺「今の君たちには……暗殺者の資格がありませんねぇ……。全員校庭へ出なさい。烏間先生とイリーナ先生も呼んでください」

 

三村「……急にどうしたんだ?殺せんせー」

 

中村「さぁ?いきなり不機嫌になったよね……」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

殺(……E組のシステムの上手いところは……一応の救済処置が用意されている点だ。定期テストで学年188人中50位に入り、尚且つ元の担任がクラス復帰を許可すれば、差別されたこのE組から抜け出せる…。だが、元々成績下位な上、この劣悪な学習環境では、その条件を満たすのは厳しすぎる………。ほとんどのE組生徒は、救済の手すら掴めない負い目から、エグい差別も受け入れてしまうそうだ)

 

前原「何するつもりだよ殺せんせー。ゴールとかどけたりして…」

 

殺「……イリーナ先生、プロの殺し屋として伺いますが、あなたはいつも仕事をする時……用意するプランは1つですか?」

 

イリーナ「……いいえ?本命のプランなんて、思った通り行く事の方が少ないわ。不測の事態に備えて、予備のプランをより綿密に練っておくのが暗殺の基本よ…。ま、あんたの場合規格外すぎて、本命どころか予備のプラン全部狂ったけどね……」

 

殺「では次に烏間先生。ナイフ術を教える時……重要なのは第一撃だけですか?」

 

烏間「……第一撃はもちろん最重要だ。だが、次の動きも大切だ。強敵相手では第一撃は高確率でかわされる。その後の第二撃、第三撃を……いかに高精度で繰り出すかが勝敗を分ける」

 

前原「結局何が言いたいんだよ殺せんせー?」

 

殺「先生方のおっしゃるように、自信を持てる次の手があるから、自信に満ちた暗殺者になれる。対して、君たちはどうでしょう?『俺らには暗殺があるからそれでいいや』と考えて、勉強の目標を低くしている。それは、劣等感の原因から目を背けているだけです!」クルクルクルクル

 

先生が凄い回転して、でけぇ竜巻が……!

凄い風……!!

 

殺「もし、先生がこの教室から逃げ去ったら……?もし他の殺し屋が、先に先生を殺したら……?暗殺という拠り所を失った君達には……E組の劣等感しか残らない。そんな危うい君たちに、先生から警告(アドバイス)です!

 

 

『第二の刃を持たざる者は……暗殺者を名乗る資格なし!!』」 ゴォオッ ドドドドド

 

段々竜巻が大きく……!

てかこれ他の奴らにバレるだろ!

 

 

殺「……校庭に雑草や凸凹が多かったのでね。少し手入れしておきました…」

 

!!

グラウンドが綺麗に……!!

 

殺「先生は地球を消せる超生物……。この一帯を平らにするなど容易い事です…。もしも君達が自信を持てる第二の刃を示さなければ、相手に値する暗殺者はこの教室にはいないと見なし、校舎ごと平らにして先生は去ります」

 

第二の……刃……?

 

渚「い…いつまでに?」

 

殺「決まっています。『明日』です!明日の中間テスト!『クラス全員50位以内』を取りなさい!」

 

一同「!!?」

 

50位以内……だと!?

 

殺「君達の第二の刃は先生が既に育てています。本校舎の教師達など劣るほど……先生はトロい教え方をしていません…。自信を持ってその刃を振るって来なさい。仕事(ミッション)を成功させ、恥じることなく笑顔で胸を張るのです。自分たちが暗殺者(アサシン)であり……E組であることに!」

 

おいおい……まじかよ!!

50位以内取らないと…先生が逃げる……!?

 

 

 

 

 



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第13話 テストの時間

 

《友 side》

 

中間テスト、数学の時間

 

杉野「うわぁ!来た来た来た来た!」

 

木村「ナイフ1本じゃ殺せねぇよ!どうすんだこの問4!」

 

中間テスト。

 

全校生徒が本校舎で受ける決まり。

つまり、俺らE組だけアウェーでの戦いになる。

 

……まずいな。

数学は苦手教科の1つだ……

 

殺せんせーや近藤さんに教わりはしたが、流石進学校と言ったところか……!

レベルが高すぎるッ……!

 

やべぇ……!攻略出来ないっ!

このままだと……殺られるッ!

 

『ちゃんと教えたはずですよ』

 

……!殺せんせー……!

 

『あれは、正体不明のモンスターではありません…』

 

本当だ……落ち着いて考えれば……

 

わかる!

 

問題文の重要な部分…解き方のコツ…

 

全部………殺せんせーが教えてくれている!

 

この問題なら……殺れる!

 

次の問題も……次の問題も……!

 

次……の……?

 

なんだよこれ……こんなの…習って……。

 

 

 

 

 

俺らは…背後から見えない問題に殴り殺された…。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

烏間「……これは一体どういう事でしょうか。公正さを著しく欠くと感じましたが」

 

本校舎教師「おっかしいですねぇ…?ちゃんと通達したはずですよぉ?烏間先生…?伝達ミスではないのですかねぇ?」

 

真弓友

合計点数 377点 188人中58位

 

潮田渚

合計点数 315点 188人中105位

 

磯貝悠馬

合計点数 367点 188人中68位

 

寺坂竜馬

合計点数 230点 188人中159位

 

 

烏間「伝達ミスなど覚えは無いし、そもそもどう考えても普通じゃない。テスト2日前に、出題範囲を全教科で大幅に変えるなんて……」

 

本校舎教師「わかってませんねぇ……うちは進学校ですよ。直前の詰め込みにもついていけるか試すのも方針の1つ。本校舎のクラスでは、なんと理事長自らが教壇に立たれ、見事な授業で変更部分を教えあげてしまわれました」

 

烏間(あの理事長……!自分の主義のためにそこまでやるか!余計な妨害をしてくれた……!暗殺対象(こいつ)にE組から去られたら元も子も無い!)

 

 

殺「……先生の責任です。この学校の仕組みを甘く見すぎていたようです……。君達に顔向け出来ません………」

 

殺せんせー…落ち込んでる…。

俺らの方を向かず黒板を見続けて……。

暗殺のチャンスだけど、こんな時に暗殺しに行くやつなんかいるわけ……。

 

ガァン!

その時、誰かが殺せんせーにナイフを投げた。

 

殺「にゅやっ!?」

 

カルマ「いいの〜?顔向け出来なかったら、俺が殺しに来んのも見えないよ」

 

 

…いやいたわ。

成績良くて素行不良なやついたわ。

 

殺「カルマ君!!今先生は落ち込んで……え?」

 

カルマ「俺、問題変わっても関係無いし」

 

赤羽業

国語 98点 数学 100点 理科 99点

社会 99点 英語 98点

合計点数 494点

188人中4位

 

 

木村「す、すげぇ…」

 

前原「数学100点かよ……!」

 

カルマ「俺の成績に合わせてさ、『せっかくだからもうちょい先行ってみましょう』とか言って、あんたが余計な範囲まで教えたせいだよ…。だけど、俺はこのクラス出る気ないよ。前のクラス戻るより暗殺の方が全然楽しいし……。で?どーすんのそっちは?全員50位に入んなかったって言い訳つけて……ここからシッポ巻いて逃げちゃうのぉ?それって結局さぁ……殺されんのが怖いだけなんじゃないの?」

 

前原「………なーんだ!殺せんせー怖かったのか!」

 

友「それなら正直に言ってくれりゃ良かったのに」

 

倉橋「ねー!『怖いから逃げたい』って!」

 

殺「………!!にゅやぁぁぁぁ!!逃げるわけありません!!期末テストであいつらに倍返しでリベンジです!!!」

 

中間テストで俺らは壁にぶち当たった。

E組を取り囲むぶ厚い壁に……。

 

一同「あははは!!」

 

殺「何がおかしい!!悔しくないんですか君たちは!」

 

 

それでも俺は胸を張った。

自分がこのE組であることに。

 

 






真弓友の一学期中間試験成績
 英語 66点 国語 85点
 数学 65点 理科 70点
 社会 91点
 合計点数 377点
 188人中58位

次回は修学旅行の序章です!友と不破の初デート回……!?




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第14話 買い物の時間

《友 side》

 

片岡「友。班の人数揃った?」

 

友「班……?あ、修学旅行か」

 

片岡「揃ったら、私か磯貝君に言ってね」

 

友「おっけ〜い」

 

 

中村「ねぇ友君よ。ウチの班に来ない?って不破ちゃんが」

 

不破「ちょ…!?な、中村さん!?」

 

友「ああ。全然いいよ。中村と不破のとこの他の班員は……航輝、岡島、創ちゃんに千葉ちゃんに速水か」

 

三村「同じ班か。よろしくな友」

 

友「おうよろしく〜」

 

菅谷「友、どこ行きたいとかあるか?」

 

友「ん〜。やっぱり映画村とかかなぁ」

 

中村「いいね〜!映画村!」

 

不破「ちょ、ちょっと中村さん!!」コソコソ

 

中村「なによ不破ちゃん?」コソコソ

 

不破「何って…!なんで私が友君と同じ班になりたいみたいな言い方を…!」コソコソ

 

速水「……でも、実際なりたかったんでしょ?」コソコソ

不破「そ、それは…!」コソコソ

 

友「何コソコソ話してんだ?」

 

不破「こ、こっちの話だよ友君!!」

 

 

殺「全く……3年生も始まったばかりのこの時期に総決算の修学旅行とは片腹痛い……。先生あまり気乗りしませんねぇ!」

 

前原「じゃあなんで舞子の格好してんだ!」

 

杉野「ウキウキじゃねーか!」

 

岡島「しかも似合ってるよ!」

 

三村「つーか後ろの荷物でかっ!」

 

友「明らかに必要ないもん入ってんだろそれ!」

 

 

殺「バレましたか……。正直、先生は君達との旅行が楽しみで仕方ないのです…」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

烏間「知っての通り、来週から京都2泊3日の修学旅行だ。君らの楽しみを極力邪魔はしたくないが、これも任務だ」

 

岡野「……てことは、あっちでも暗殺?」

 

烏間「その通り。京都の街は学校内と段違いに広く複雑。しかも、君達は回るコースを班ごとに決め、奴はそれに付き添う予定だ。狙撃手(スナイパー)を配置するには絶好の場所(ロケーション)。既に国は、狙撃のプロを手配したそうだ。成功した場合、貢献度に応じて百億円の中から分配される。暗殺向けのコース選びをよろしく頼む」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

千葉「……こんな感じで、映画村の劇を見ている隙をついて狙撃してもらうのはどうだ?」

 

三村「おお…いい作戦だと思う!」

 

中村「んじゃ、演者の人達にも協力してもらうように烏間先生にも言わなきゃね」

 

友「普段より大きく動いてもらって、殺せんせーを上手く狙撃ポイントに誘導することが出来れば……」

 

 

 

イリーナ「フン……皆ガキねぇ…。世界中を飛び回った私には…旅行なんて今更だわ」

 

前原「じゃ留守番しててよビッチ先生」

 

矢田「花壇に水やっといて〜」

 

倉橋「ねー2日目どこ行く?」

 

片岡「やっぱここからじゃない?」

 

磯貝「暗殺との兼ね合いを考えると……」

 

倉橋「でもこっちの方が楽しそ〜」

 

 

イリーナ「何よ!!私抜きで楽しそうな話してんじゃないわよ!!」

 

前原「あーもー!行きたいのか行きたくないのかどっちなんだよ!!」

 

 

ビッチ先生は相変わらずだな。

…ん?なんかいきなり手に重みが…?

 

殺「皆さん!1人1冊です」

 

皆に配られたのはかなり分厚い本だ。なんだこれ。

 

三村「重っ!」

 

中村「なにこれ殺せんせー?」

 

 

殺「修学旅行のしおりです」

 

友・前原「辞書だろこれ!!」

 

 

殺「イラスト解説の全観光スポット、お土産人気トップ100、旅の護身術入門から応用まで!昨日徹夜で作りました!」

 

前原・友「どんだけテンション上がってんだ!!」

 

 

殺「先生なら京都まで1分で移動することが出来る……。でもね、移動と旅行は違います。皆で楽しみ…皆でハプニングに遭う…。先生はね、君達と一緒に旅できるのが嬉しいんです」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

中村「友、不破ちゃん、明日3人で修学旅行の荷物買いに行かない?」

 

不破「うん、私も買いたいものあったからいいよ」

 

友「俺も。どうせ暇だしな」

 

 

中村(………ふふ、計画通り…)

 

友「じゃ、明日9時に駅前で」

 

不破「うん。わかった!」

 

中村「りょうか〜い。……ふふ」ニヤニヤ

 

 

この時、俺たちは気付くべきだったんだ。

中村のゲスな目的に…!

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

翌日

 

不破「………ねぇ友君」

 

友「…あぁ。来ねぇな…あいつ」

 

 

俺ら2人は今駅前で誘った張本人を待っているのだが…

 

友「あいつ全然来ねぇ!!!」

 

迂闊だった……!

良く考えれば中村が男女2人を誘うだなんてゲスな目的が大半だ……!

くっ…警戒するべきだった…!

 

最初から2人きりにするのが目的だったか…!!

 

 

不破「あ…!中村さんからLINEだ!」

 

友「なんて?」

 

不破「『ごめ〜ん、予定入ったから今日来れないや〜』だって……」

 

友「あいつ……」

 

 

不破「……2人で行こっか…」

 

友「そうだな。まずは1日目のおやつでも買いに行くか?」

 

不破「そうだね。あとは皆で楽しめるものとかも買いたいなって」

 

友「お、いーねぇ。おやつの次はそこ行こっか。その後時間あったらゲーセンにでも行くか?」

 

不破「うん!賛成!」

 

 

 

ここはもう開き直って楽しむしかねぇ…

でも…女子と2人で買い物とか……

やばい…初めてだから結構緊張する!!///

 

【真弓友の弱点 意外とヘタレ】

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

《不破 side》

 

中村さんめ……これが狙いだったとは……。

や、やばい!めっちゃドキドキするっ!!

 

友「不破はどんなお菓子欲しい?」

 

不破「ふぇっ!?あ、そ、そうだね。普通に…コ〇ラのマーチとか……ポ〇キーとか?」

 

変な声出た!変な声出た!///

うぅ……緊張してるとき変な声出る癖直さないと……!///

 

友「よし、じゃー俺はマ〇ブルとか買っとこ〜」

 

不破「お会計して、その次は皆で楽しめそうなやつだね」

 

はぁ……なんだろう。

早くこの時間が終わってほしいような……。

もっと長い間こうしていたいような……。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

友「すごろくとか…人生ゲームなんかありじゃないか?トランプとかUNOとかはどーせ誰かが持ってくるしさ」

 

不破「んー…。どんな人生ゲームがいいかなぁ?」

 

友「俺はどれでもいいけど……不破が決めていいよ」

 

不破「うーん……じゃあ適当にこれかな……

 

……ん?」

 

 

私が手に取った人生ゲームは……。

他のものと比べて明らかに結婚だったりデートだったりとかのイベントマスが多いやつだった。

 

しまったぁぁぁぁぁ!?////

ミスったぁぁ!?////

 

友「おっけー。じゃ、会計してくるね。金はあるから」

 

不破「ふぇっ!?う、うん!ありがと……///」

 

 

幸い友君はどんなイベントがあるか見てなかったみたいだけど……やってる最中に気付かれるかも……。

て…ていうか早く違うのに替えてもらわないと…!

 

あぁ…でももう会計しちゃってる……遅かったぁ……。

 

 

友「さて、他に買うものとかないか?」

 

不破「う、うん。無いと思う…」

 

友「おっけ。じゃ、ゲーセン行こっか!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

不破「こ、これ!!」

 

友「あ、不破が好きな漫画のフィギュアじゃん」

 

 

私達はクレーンゲームのコーナーを見て回っている…!

すると、私の大好きな漫画のキャラクターのフィギュアがあるではないか!!

 

でも…私クレーンゲーム苦手なんだよなぁ…

 

友「取ってあげよっか?」

 

不破「いいの!?」

 

友「あぁ。前に新に教えてもらったんだ。確か…こーゆーフィギュアはこうやって…アームで押して……っと」

 

ゴトッ

 

友「よーし3回で取れたー!」

 

不破「す、凄い!」

 

友「ほら、欲しいんでしょ。あげるよ」

 

不破「い、いーの!?」

 

友「当たり前だろ。あげるために取ったんだから」

 

か、カッコイイ……///

 

や、やばい!顔赤くなってるのバレる!!

 

 

友「さ、次は何するかね……。あ、あれとかいいんじゃね?銃でゾンビ倒すやつ」

 

不破「確かに…射撃の練習にもなるかも」

 

友「俺らにはピッタリでしょ!でも大丈夫?ホラーとか…苦手だったりしない?」

 

不破「う、うーん……。ちょっと怖いけど…ま、まぁ大丈夫だよ!」

 

友「そうか?ならやるか!」

 

 

うぅ…。

友君と一緒なら平気だなんて言う勇気は無かった……。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

友「いやぁ…疲れた。でも自己ベスト更新したぜ!」

 

不破「凄いね友君……。出てくるゾンビ全部倒すじゃん…」

 

友「でもこれ、ヘッドショットした方が得点高いんだ。俺はまだ全体ヘッショは無理だからな。ほら、このランキング1位の『Yukiko』って人。この得点は全体ヘッショ当てて、それプラス最短で進まないとここまで行かないよ」

 

 

不破「そうなんだ…。凄いねこの人」

 

友「ああ。ここのゲーセンは全部この人載ってるし……俺も憧れてんだ。その人に。でも、不破も初めてにしては上手いと思うぞ?普段から訓練受けてるだけあるね」

 

不破「でも友君には及ばないよ…。普段の射撃も結構的に当ててるよね?」

 

友「あぁ。普段ゲームやってるからかな。反射神経とかも普通より良い方だし、銃のエイムとか、どう立ち回った方が効率がいいか考えたりとか……。ゲームやってると暗殺にも活かされるものだな〜」

 

凄い……。

ゲームと現実じゃ感覚とかも違うだろうに……。

それも上手くコントロールして……。

 

友「近距離暗殺の方は、剣術道場のおかげだろうな。この前、烏間先生に頼んで対先生日本刀作ってもらってさ。すげぇ使いやすいんだ」

 

不破「対先生日本刀……!?なんかカッコイイ!」

 

友「今度、不破の好きな漫画のシーンやってあげるよ」

 

不破「ホント!?やった!」ニコッ

 

友「……!///」

 

不破「…?どうかした?」

 

 

友「い、いや何でも…じゃ、他のゲームしに行くか!」

 

不破「う……うん」

 

何だろう……

今なんか…顔赤くなってたような…

ま、まさか…!?

 

い、いや!ないない!

友君だって思春期の男子だもん!

同じクラスの女子の笑顔見て顔赤くなることなんて普通にあるって…!!///

うぅ……そんなこと考えてたら…私まで顔赤くなっちゃったよ……。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

友「もうこんな時間か…。家まで送るよ」

 

不破「い…いいの?」

 

友「あぁ。夜道は危険だからな」

 

不破「ありがとう…」

 

 

 

友「今日は色々大変だったな……」

 

不破「うん…。でも楽しかったよ!」

 

友「ならよかった!修学旅行も、今日以上に色々あるんだろうな…」

 

不破「うん……。暗殺、成功するといいね」

 

友「あぁ…。あ、そろそろ着くぞ」

 

 

不破「うん!ありがとね!家まで送ってもらって……」

 

友「全然!女子を送るのは男子の役目だし…俺も今日一日中楽しかった!修学旅行頑張ろうな!」

 

不破「………!…う…うん!///」

 

友「じゃ!またな!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

友「はぁ…」

 

何とかポーカーフェイスでいられた……!

 

でも、あいつの笑顔見た時、思わず赤くなっちまった…!

バレたかなぁ……あれ…。

 

仕方ないじゃん…!

これでも思春期の男子だぞ?!

下ネタとかには興味無いが!

あの笑顔は反則だろ!!!

 

うぅ…修学旅行…あいつの顔まともに見れるだろうか……。

 

 

 

 



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第15話 旅行の時間

《友 side》

 

菅谷「うわ……A組からD組まではグリーン車だぜ……」

 

中村「E組(うちら)だけ普通車……いつもの感じね」

 

 

D組担任「うちの学校はそういう校則だからなぁ」

 

メガネのモブ「学費の用途は成績優秀者に優先される…」

 

ニキビのモブ「おやおや?君たちからは貧乏の香りがしてくるねぇ?………ん?」

 

 

 

イリーナ「ごめんあそばせ……ごきげんよう生徒たち」

 

不破「ビッチ先生……」

 

友「なんだよそのハリウッドセレブみたいな格好は…」

 

イリーナ「フフフ……女を駆使する暗殺者としては当然の心得よ…」

 

烏間「おい…目立ちすぎだ…着替えろ。どう見ても引率の先生の格好じゃない」

 

イリーナ「堅い事言ってんじゃないわよカラスマ!ガキ共に大人の旅n...」

 

烏間「脱げ。着替えろ」 ギロ…

 

イリーナ「………う…」

 

 

 

岡島「誰が引率なんだか……」

 

千葉「金持ちばっか殺してきたから…庶民感覚がズレてんだろうな」

 

つーかあれパジャマだよな……。

なんで他の普段着無いんだよ。

 

中村「あれ?そういえば殺せんせーは?」

 

友「…確かに…どこにって……うわっ!!」

 

窓を見ると黄色いタコがいた。

何やってんだ!!

 

三村「何で窓に張り付いてんだよ殺せんせー!」

 

殺「いやぁ……駅中スウィーツを買ってたら乗り遅れまして……次の駅までこの状態で一緒に行きます」

 

友「それでいいのか国家機密……」

 

殺「ご心配なく。保護色にしてますから、服と荷物が張り付いてるように見えるだけです」

 

友・不破「それはそれで不自然だよ!」

 

 

 

 

 

殺「いやぁ…疲れました…。目立たないよう旅するのも大変ですねえ」

 

いや大分目立ってますけど?

 

岡島「そんなでかい荷物持ってくんなよ……」

 

速水「ただでさえ殺せんせー目立つのにね」

 

中村「てか…外で国家機密がこんなに目立っちゃやばくない?」

 

殺「にゅやっ!?」

 

友「その変装も近くで見ると人じゃないってバレバレだし…」

 

てか付け鼻取れたぞ。

 

 

菅谷「殺せんせー、ほれ」 ヒョイ

 

殺「にゅ?」

 

菅谷「まずそのすぐ落ちる付け鼻から変えようぜ」

 

殺「おお!!凄いフィット感!!」

 

菅谷「顔の曲面と雰囲気に合うように削ったんだよ。俺、そんなん作るの得意だから」

 

 

友「流石!すげーな創ちゃん!」

 

中村「うん!焼け石に水くらいは自然になった!」

 

まあそれでも不自然な図体してるのは変わりないんだけど…。

 

 

岡島「なぁ!せっかくだからなんかしよーぜ!」

 

友「それなら、人生ゲームでもすっか?」

 

中村「お、人生ゲーム持ってきたんだ〜」

 

不破「………!」ビクッ

 

 

友「ほい。これ」

 

中村「……ふーん。なるほどねぇ。…友、これ誰が選んだのぉ?」

 

友「え?不破だけど…」

 

不破「…………………!!!」ビクッ

 

中村「へぇ〜不破ちゃんなんだぁ〜」ニヤニヤ

 

不破(バレたァァァ!!恋愛イベント多いのバレたァァァ!私のバカ!何でこんなの選んだのよ!!)

 

中村「よし!じゃーやろっかー♪」

 

岡島「ぜってー俺が勝つぞー!」

 

友「お前だけは絶対負けさせる」

 

岡島「何でだよ!」

 

 

友「よし10出た!」

 

中村「何でそんなルーレットの出目いいのよ……」

 

友「最近10連爆死が多かったからな…」

 

中村「そこ!?」

 

 

岡島「ん?何だ?このマス……『20マス戻る』……って嘘だろ!?」

 

菅谷「ドンマイ岡島」

 

三村「じゃあな岡島」

 

友「骨は拾うぞ岡島」

 

岡島「死んでねぇわ!」

 

 

不破「あ、必ず止まるマスだ…『結婚マス:全員ルーレットを回し、マスに止まったプレイヤーの出目に1番近いプレイヤーと結婚する……(既に結婚しているプレイヤーを除く)』ってええっ!?///」

 

中村「お、じゃーまず不破ちゃん回しなよ」ニヤニヤ

 

不破「う、うん………えっと…7だ」

 

中村「じゃ私……5か」

 

三村「俺は…3だ」

 

菅谷「俺は1……1番遠い出目だな」

 

速水「私は4…」

 

千葉「俺も4だ」

 

岡島「よし俺……お!俺は8!今1番近いんじゃないか!?」

 

不破「えぇ……」

 

岡島「おい嫌そうな顔すんなよ!!」

 

友「俺は……お、7だ」

 

不破「……!」

 

中村「お〜。じゃあ不破ちゃんと結婚すんのは友君か〜」

 

不破「………!!!///」

 

三村「結婚したら…最終的に2人1組になるみたいだな。結婚した人同士の合計所持金額がスコアになるらしい」

 

不破「………///」

 

友「宜しくな。不破」

 

不破「う……うん!よ、よろしくお願いします(小声)///」

 

中村(いいねぇ……いい反応してくれるよ…。いじりがいがあるね…。…今度はカルマも誘うかぁ…)

 

そんなこんなで人生ゲームをして、

1位が俺と不破のペア。

2位が千葉ちゃんと速水、3位は中村と航輝、4位は創ちゃんと岡島のペアだった。

 

きちんと岡島を負けさせました★

創ちゃんには申し訳ないけどな……。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

E組の宿─

 

殺「にゅやぁ……」 グデ~ン

 

 

片岡「1日目ですでに瀕死なんだけど……」

 

三村「新幹線とバスで酔ってグロッキーとは…」

 

 

岡野「大丈夫?寝室で休んだら?」

 

殺「いえ……ご心配無く…。先生これから1度東京に戻りますし…枕を忘れてしまいまして」

 

三村「あんだけ荷物あって忘れ物かよ!!」

 

てか枕変わると眠れないタイプなのかよ……。

 

 

茅野「どう神崎さん?日程表見つかった?」

 

神崎「……ううん」

 

殺「神崎さんは真面目ですからねぇ……。独自に日程をまとめていたとは感心です。でも大丈夫。先生手作りのしおりを持てば全て安心」

 

前原・友「それ持って歩きたくないからまとめてんだよ!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

友「今日1日は旅館内で過ごすんだったな」

 

磯貝「あぁ……と言っても、ほとんど時間無いけどな」

 

前原「それに、京都着いただけで疲れたよ……。ところでさぁ!明日の夜、気になるクラスの女子ランキングやろーぜ!」

 

友「はぁ?なんだよそれ」

 

前原「そのままだよ!皆で、クラスの女子の誰が気になるか投票すんの!」

 

磯貝「ま、まぁ…修学旅行のレクリエーションとしては最適かもな」

 

友「でもいいのか?あのゴシップタコに少しでも聞かれたら、メモって逃げられて終わりだぜ?」

 

前原「大丈夫だって!そんときは殺せばいいんだよ!」

 

友「殺せないだろ……」

 

気になる女子ねぇ……。

俺は……………。

 

やめよう考えるの…。段々顔赤くなってきてる気がする…

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2日目 映画村

 

演者「そのまま大人しく去るがよい。拙者…無益な殺生は好まぬでござる」

 

演者「うぬぅ……言わせておけば……」

 

演者「おいてめぇら!やっちまえ!」

 

 

岡島「間近だと刀の速度すげーなぁ!」

 

友「かっこいい……!俺も参加してぇ!!」

 

不破「友君の目が輝いてる……!」

 

うわぁぁ!やばい!テンションめっちゃアガる!

来てよかったっ!!

 

殺「速く魅せるよく練られた動きですねぇ。先生もこういう殺陣大好きななんです」

 

三村「やばい!こっち来た!」

 

中村「殺せんせーこっちこっち!」

 

殺「どっちどっち?」

 

 

千葉(俺らが狙撃場所に指定したのは『映画村』……)

 

中村(演者の人に派手に立ち回るようにしてもらって…)

 

菅谷(ショーに殺せんせーが夢中になっているスキに…)

 

速水(スナイパーの人に狙撃してもらう……)

 

 

岡島「……あれ…?殺せんせーは…?」

 

中村「……見てあれ……演者と一緒に殺陣してる……」

 

三村・菅谷「何してんだテメェ!!」

 

 

殺「助太刀いたす。悪党共に咲く徒花は血桜のみぞ」

 

岡島「決めゼリフも完璧だよ!?」

 

 

友「くっ……!俺も参加すべきか…!?」

 

不破「しなくていいよ!?」

 

その後、対先生日本刀を持って参戦しようとしたが不破達に抑えられたのでやめた……。

殺陣したかった……。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

岡島「あーあ……結局暗殺失敗しちゃったなぁ…」

 

友「俺も殺陣したかったなぁ……」

 

菅谷「おいおい……」

 

中村「お、あそこのお店でお土産買おーよ」

 

 

岡島「おー!木刀だ!」

 

三村「かっけー!」

 

友「やめとけ。使わないと邪魔になるだけだぞ」

 

不破「友君の家にも木刀あったよね」

 

友「ああ。でも、普段剣術道場で稽古する時は竹刀ばっか使うから、使う時なくてな。今じゃ新が殺陣練習する時に使ってるし」

 

中村「アイドルの弟君が?」

 

友「うん。あいつ、事務所入ってすぐに舞台に抜擢されて、いきなり殺陣やることになってさ。俺や他の剣術道場の連中が教えてやって、結果的に舞台が大ヒット。あいつの演技力も評価されて、中学生にして主演舞台が決まるほどだ」

 

 

中村「凄いんだねぇ…弟君」

 

不破「…思ったんだけど、あんまり友君と新君って似てないよね?顔つきとか……」

 

友「……そうだろうな。俺と新…血繋がってないから」

 

岡島「義兄弟ってことか?」

 

友「俺が小3の時、親が拾ってきたんだ。それ以来仲良く接してきて、同じ中学入って…でも、成績は向こうの方が上。アイドルやりながら勉強もして…本当に凄いよ。あいつは。今日だって、仕事で修学旅行休んだんだぜ。身体能力も学力もある。俺とは大違いだよ。あいつは」

 

不破「…ご、ごめんね…。変なこと聞いちゃって…」

 

友「いいんだよ。今まで散々聞かれてきたし…。でも、例え血が繋がってなくても俺と新の絆は本物だからな」

 

 

中村「じゃーさ。新君にもなんかお土産買ってってあげないとね」

 

友「そうだな。と言っても、あいつは仕事で色んなとこ言ってるけど……」

 

不破「こういうのは気持ちが大事だからね!」

 

岡島「そうそう!兄に貰ったって事実が嬉しいんだよ」

 

友「……そういうもんなのかな。じゃ、この刀のキーホルダーでもプレゼントすっか」

 

三村「お、いいじゃん」

 

速水「気に入ってくれると思う」

 

菅谷「よし、じゃー次は清水寺行こうぜ」

 

中村「京都の観光名所って言ったら清水寺よね〜」

 

岡島「舞妓のお姉さんとかいないかな〜」

 

友「お前を清水の舞台から落としてやろうか」

 

岡島「じょ、冗談きついぜ?」

 

 

……新。

俺は薄々気付いていた。

あいつの成績が下がっていることに。

普段成績を見せることないあいつだが、今回の中間テストは話すらしない。

 

俺がE組に落ちたから……。

もしかしてそれが原因で…。

いや、やめよう。

今は旅行を楽しむのに専念だ!

 

 

中村「ねー。折角だから写真も撮ろーよ…2人ずつさ?」ニヤニヤ

 

……ここまでニヤつかれると何か考えるの丸わかりだな。

 

中村「じゃあねぇ…岡島は女子と一緒にするのは危ないから三村とね」

 

三村「俺かよ……」

 

岡島「危ないって何!?」

 

 

中村「で、後は千葉くんと速水ちゃん。友君と不破ちゃん。私と菅谷ね」

 

…やっぱこれが目的かよ。

どうせ俺と不破をくっつけて、ついでに千葉ちゃんと速水も…って算段だろうが、皆が納得するかどうか…

 

不破「………////」

 

ダメだ。思考停止してるわ。

 

千葉「俺は速水とか」

 

速水「じゃ、撮ろっか」

 

こっちはこっちで冷めてるわ。

 

こうして仕方なくツーショット写真写真を撮ることになった。

 

この後、友の中で不破とのツーショット写真が宝物になったのは言うまでもない……。

 

 





いい加減友君も気持ちには気付いてます。
でも感情には出さないようにしてるし、不破のにも気付かぬフリをしているせいで他生徒からは『実は鈍感なのでは?』と噂されてます。



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第16話 好奇心の時間

 

《友 side》

 

2日目 旅館

 

岡島「しっかし、ボロい旅館だよなぁ…」

 

友「仕方ないだろ…。こーゆー方針なんだから。ウチは」

 

岡島「でもよぉ…寝室は男女大部屋2部屋だし、E組以外は個室だそうだぜ…」

 

渚「いーじゃん。賑やかで」

 

友「……ん?あれ、不破と中村じゃないか?」

 

 

渚「ホントだ……2人とも何してんの?」

 

中村「しっ……!決まってんでしょ……覗きよ。覗き」

 

岡島「覗き!?それ俺らの仕事(ジョブ)だろ!?」

 

渚「仕事(ジョブ)ではないよね」

 

 

友「意外だな……。少女漫画のキスシーンとかコンビニに並んでる青年誌の表紙だけで赤面する不破が覗きに加担するなんて」

 

不破「うっ……///」

 

不破(バレてた…!?////)

 

中村「私が誘ったのよ〜」

 

不破「う、うん…」

 

不破(この前2人で買い物したりゲーセン行ったりした時の写真撮られてて…それで脅されたなんて言えないっ……///)

 

杉野「でも、覗くって誰を…?」

 

中村「ふふ……あれを見てみなさい」

 

風呂場には…あのタコの服があった。

てかあいつもちゃんと風呂入るんだ…。

 

渚「……あれって」

 

中村「あの服がかけてあって……服の主は風呂場にいる……。言いたいことわかるよね?」

 

友「………なるほどね…」

 

中村「今なら見れるわ……殺せんせーの服の中身…!首から下は触手だけか…!胴体があるのか…!暗殺的にも知っておいて損は無いわ!」

 

岡島「この世にこんなに色気ない覗きがあったとは……」

 

中村「さぁ……見せてもらうわよ………!」ガラガラ

 

中村が風呂場のドアを開けると……。

 

泡風呂の中で触手を洗っている殺せんせーの姿が……。

 

 

中村・友「女子か!!」

 

殺「おや皆さん」

 

杉野「なんで泡風呂なんだよ……」

 

不破「入浴剤禁止じゃなかったっけ…?」

 

殺「あぁ。これ、先生の粘液です。泡立ち良い上にミクロの汚れも浮かせて落とすんです」

 

杉野・岡島「ホント便利な体だな!」

 

中村「……ふふ。でも甘いわ!出口は私達が塞いでる!」

 

友「確かに……浴槽から出る時俺らの前を通らないと行けない…」

 

中村「そう。殺すことは出来なくても、裸くらいは見せてもらうわよ!」

 

これなら見れる……殺せんせーの体の構造……!

 

殺「そうはいきません!」ポヨッ

 

殺せんせーが立ち上がると、粘液のせいかスライムのように固まった水が体に引っ付いていた……

 

中村・友「煮こごりか!!」

 

くそ…肝心な体が見えねぇ…!

汚れのせいか色も濁ってるし…!

 

しかも、簡単に窓から逃げやがって……。

 

岡島「中村……この覗き虚しいぞ」

 

中村「うう……」

 

不破(ていうか私ただ脅されて恥ずかしい思いしただけじゃん……!///)

 

 

渚「修学旅行で皆のこと色々知れたけど……」

 

杉野「うん…。殺せんせーの正体は全然迫れなかったな」

 

岡島「大部屋でダベろーぜ」

 

友「あ、ジュース買ってくるから先行っててくれ」

 

杉野「おう!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

友「さてと……アップルジュースを…」

 

カルマ「あれ、友じゃーん」

 

自動販売機で飲み物を買っていると後ろから赤い悪魔(カルマ)が近付いてきた。

 

友「カルマ……またイチゴ煮オレか?」

 

カルマ「うん。好きだからねー」

 

友「そういや…カルマの班、色々大変だったらしいな」

 

カルマ「んー。まさか班員が拉致られるとはね……」

 

友「殺せんせーのしおりに書いてあったんだっけ?拉致られた時の対処法」

 

カルマ「そう。まさか書いてあるとは思わなかったよ。渚君がしおり持ってきたのにも驚きだけどね」

 

友「確かに…。あんなの持ち歩きたくないからな」

 

そんな風にカルマと話しながら歩いていたら、

いつの間にか、もう大部屋の前まで着いていた。

扉を開けると男子が集まって何か話していたようだ。

まあ多分昨日陽斗が言ってたあれだろう。

 

磯貝「お、カルマに友。いいとこに来た」

 

前原「お前ら、クラスで気になる子いる?」

 

木村「無理に言わなくてもいーんだぞ」

 

やっぱりその話か…。でもカルマに気になる女子とかいるのか?

 

カルマ「ん〜……。俺は奥田さんかな」

 

菅谷「言うのかよ……」

 

前原「意外。なんでー?」

 

カルマ「だって彼女、怪しげな薬とか…クロロホルムとか作れそうだし、俺のイタズラの幅が広がるじゃん?」

 

前原「絶対くっつかせたくない2人だな」

 

なんつー考えしてんだ…。

 

 

磯貝「友はどうだ?」

 

友「……俺は不破かなぁ」

 

菅谷「お前も言うんかい」

 

友「まあ気が合うし……よく話すし」

 

前原「んー今んとこはまだって感じか?ま、期待してるぜ」

 

友「あ?なんだよ女たらし」

 

前原「女たらし!?」

 

三村「まぁ合ってんだろ?」

 

前原「言い方が悪い!」

 

…ふぅ。なんとかポーカーフェイスでいられた…。

 

磯貝「皆、この投票結果は男子の秘密な。知られたくない奴が大半だろうし……。女子や先生に絶対に……」

 

悠馬の動きが止まった。何事かと後ろを振り向くと……

 

『奴』がいた。

 

 

殺「ふむふむ……なるほど…………」

 

前原「…メモって逃げやがった!!」

 

杉野「殺せ!!」

 

こうして俺たち男子と殺せんせーのチェイスが始まった……。

まあすぐ見失ったけど。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《不破 side》

 

片岡「クラスで気になる男子?」

 

中村「そ。修学旅行と言ったらこーゆー話題で盛り上がるもんでしょ!」

 

気になる男子……か…

今私の脳裏にはとある1人の男子が思い浮かんだ……。

いやいやいやいや!友君とは別にそんなんじゃ…!!

 

倉橋「はいは〜い!私は烏間先生〜!」

 

中村「そんなの大半がそうでしょ!先生じゃなくて、クラスの男子だったら誰?ってことよ!」

 

矢田「クラスの男子…っていうと、やっぱ磯貝君とか?」

 

岡野「前原とかカルマ君とか……顔はいいって人はいるんだけどね……」

 

片岡「性格がね……」

 

倉橋「友ちゃんとかも割と優良物件じゃない?」

 

中村「ダメよ!友には不破ちゃんというプリンセスがいるんだからぁ~」

 

不破「ちょ、中村さん!?!?///」

 

プ、プリンセスって……!!??

 

 

矢田「確かに!休み時間一緒にいること多いよね!」

 

中村「それに一昨日……2人でデートしてたよねぇ…」

 

岡野「そ、それホント?!」

 

不破「中村さんから誘ってきたのに来なかったからでしょ!?///」

 

茅野「あー…まんまと騙されちゃった訳か…」

 

あぁ……これからもずっといじられ続けるのかなぁ……///

 

 

イリーナ「あんた達〜。そろそろ就寝時間ってこと、一応伝えに来たわよ〜」

 

片岡「一応って……」

 

イリーナ「どうせ就寝時間過ぎても話しまくるでしょ?」

 

倉橋「先生だけお酒飲んでずるい〜」

 

イリーナ「当たり前でしょ?オトナなんだから」

 

矢田「ねぇ!せっかくだからビッチ先生の話聞かせてよ!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

女子一同「えーー!?」

 

中村「ビッチ先生まだ二十歳!?」

 

片岡「経験豊富だからもっと上かと思ってた」

 

倉橋「ねー」

 

岡野「毒蛾みたいなキャラの癖に」

 

イリーナ「それはね…濃い人生が作る毒蛾のような色気……誰だ今毒蛾っつったの!?」

 

不破「ツッコミが遅いよ」

 

 

でも…まだ二十歳だなんて…

とっても見えない……

生きてきた世界が違うとはいえ……

 

イリーナ「女の賞味期限は短いの…。あんた達は私と違って…危険とは縁遠い国に生まれたのよ。感謝して全力で女を磨きなさい」

 

女子一同「……」

 

不破「ビッチ先生がまともなこと言ってる……」

 

中村「なんか生意気〜」

 

イリーナ「なめんなガキ共!!」

 

矢田「じゃあさじゃあさ!ビッチ先生がオトしてきた男の話聞かせてよ!」

 

倉橋「あ!興味ある〜」

 

イリーナ「フフ…いいわよ。子供にはシゲキが強いから覚悟なさい…」

 

うう……その言葉だけで赤面してしまう……

 

イリーナ「例えば……あれは17の時……っておいそこぉ!!」

 

原さんと奥田さんの間に特別デカいものが…。

顔が真っピンクになってる殺せんせーだ。

い、いつの間に…!?

 

イリーナ「さりげなく紛れ込むな女の園に!!」

 

殺「いいじゃないですかぁ〜。私もその色恋の話聞きたいですよ〜」

 

 

相変わらずゲスい先生……

 

中村「そーゆー殺せんせーはどーなのよ。自分のプライベートはちっとも見せないくせに」

 

倉橋「そーだよ!人のばっかずるい!」

 

岡野「先生は恋バナとかないわけ?」

 

中村「そーよ!巨乳好きだし片想いぐらい絶対あるでしょ!」

 

 

殺せんせーが押されてる……

どうするんだろ…話してくれるのかな?私も興味あるし……。

 

 

って逃げたぁ!?

 

イリーナ「あのタコ!!捕らえて吐かせて殺すのよ!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

前原「いたぞ!」

 

岡島「こっちだぁ!!」

 

中村「捕まえろぉ!」

 

殺「にゅやっ!?しまった!男女の挟み撃ちにっ!!」

 

 

友「お互い大変だね〜」

 

不破「ホントにね…」

 

友「女子もなんか盗み聞きされたのか?」

 

不破「殺せんせーの恋バナを吐かせようとしたら逃げちゃって…」

 

友「殺せんせーの恋バナ…?あるのかそんなの……」

 

不破「そっちは?盗み聞きって……」

 

友「あー……悠馬が男子の秘密って言ってたから詳しくは言わないけど……盗み聞きされてメモられたからさ」

 

不破「そ、そうなんだ……」

 

 

茅野「なんだかんだで結局暗殺になるね…」

 

渚「うん…」

 

茅野「明日最終日かぁ。楽しかったね〜修学旅行。皆の色んな姿見れて」

 

渚「……修学旅行ってさ、終わりが近づいた感じするじゃん?暗殺(この)生活は始まったばかりだし、地球が来年終わるかどうかはわからないけど……このE組(クラス)は絶対に終わるんだよね…来年の三月で」

 

茅野「…そうだね」

 

渚「皆のこともっと知ったり……先生を殺したり……やり残す事無いように暮らしたいな」

 

茅野「とりあえずもう1回位行きたいね。修学旅行」

 

友「……不破」

 

不破「ん…?何、友君…?」

 

友「明日も楽しもうな!修学旅行!」ニコッ

 

不破「………!///」ドキッ

 

友「ん?…どした?」

 

不破「う、ううん…。そうだね!楽しもう!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

そして修学旅行も最終日を迎え……明日からは通常の授業。

ま…タコ型標的(ターゲット)が先生やってるだけで通常じゃねーけど……。

 

友「ただいま…」

 

新「おかえり〜。修学旅行、楽しかったか?」

 

友「おう新…。楽しかったけど疲れたわ……。あ、そーだ。ほい、お土産」

 

そう言って俺は旅行中に買った刀のキーホルダーを新に投げ渡した。

 

新「えっ…これ俺に…?」

 

友「おう。お兄ちゃんに感謝しなさ〜い」

 

新「……ふふ。あんがと、バカ兄貴。」

 

友「さ、とっとと飯食って寝るぞ〜」

 

新「おう。今から料理作るとこだから」

 

新(……兄貴は気づいてるだろう。俺の成績が下がっていることに……。…『もし次の小テストでクラス下位の成績を取ったら、6月末にはE組行き』…か。何だろうな…もうそれでもいい気がしてきちまった……)

 

友「……あいつ…大丈夫だろうか…。もしこのままE組行きなんてなったら…芸能活動に支障をきたすだろうに……でも…俺はどうしたらいいんだろうな……」

 

殺「決まっています。彼の決断を受け入れるのです」

 

………ん?

 

友「なんで窓に張り付いてんだタコ!!」

 

殺「ヌルフフフ。いいじゃないですか。友君、君が責任を感じる必要は無い。新君が決めた道を応援してあげてください」

 

 

友「先生ならどうする…?」

 

殺「そうですねぇ…。このまま芸能活動を続け、A組の成績を維持するのはあまりにも難しい。私なら…先程から言うように彼の決断を受け入れます。彼が芸能活動を辞め、A組に残るならそれを……E組に行って芸能活動を続けるならそれを……」

 

友「………新の決断…か」

 

 

新「なぁ兄貴」

 

友「………し、新…!?」

 

新「何ひとりで喋ってんの?」

 

友「いや…なんでも」

 

新「……俺、E組行くよ。芸能活動は『高校受験』って理由で休止する。……ごめんな。勝手に決めちゃって…」

 

友「…!!」

 

これが、新の決断……!

 

友「……そっか。応援するぜ。俺は!」

 

新「……!」

 

友「あと、うちの先生教えるの上手いからA組にいた時より学力上がるかもよ〜」

 

新「ま、まじでか…E組なのに…」

 

友「それで、いつからE組来るんだ?」

 

新「多分…6月中には落とされるだろーな…」

 

友「じゃあクラスの奴らにも言っとくね」

 

新「お、おう……」

 

 

友「……ん?メール…?」

 

新「どうした?」

 

友「い、いや…なんでも」

 

 

烏間先生からのメール……

 

『明日から転校生がひとり加わる。多少外見で驚くだろうが…あまり騒がず接して欲しい』

 

 

この文面から見るに……

間違いない。殺し屋だ。

しかも…俺らのクラスメイトとしてってことは同年齢!

一体……どんな奴が……!

 

 

 




ここで新君E組行き決定!
まぁ実際警告されただけでまだ言われては無いですが…
成績向上が見られないとかの理由で落とされるでしょうねぇ…

ちなみにこの後クラスのグループで新君のこと言いました★


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第17話 転校生の時間

 

《友 side》

 

杉野「あーあ…今日から通常授業か…」

 

現在俺はたまたま会った杉野と渚と登校中だ

 

友「そーいや、昨日烏間先生から一斉送信メール来た?」

 

渚「あ…うん」

 

友「この文面だと、どう考えても殺し屋だよな」

 

杉野「ついに来たか。転校生暗殺者」

 

渚「転校生名目……ってことは」

 

杉野「ビッチ先生と違って俺らとタメなのか?」

 

 

岡島「そこよ!!!」

 

突然岡島が目の前に現れた。

 

友「うおっ…!いきなり出んな!!」

 

岡島「気になってさ!顔写真とかないですかー?ってメールしたのよぉ!そしたらこれが返ってきた!」

 

写真に移っているのはピンク色の髪をした女子。中々可愛いと思う。

 

友「お、女子か」

 

杉野「なんだよふつーに可愛いじゃん!」

 

渚「殺し屋には見えないね」

 

岡島「うわー!なんか緊張してきたー!仲良くなれんのかなー!」

 

友「浮かれすぎだろ岡島……」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

杉野「さーて…来てっかな転校生!」

 

友「……ん?俺の席の隣…なんか変な黒い箱が…」

 

すると、箱の画面が付き…かなりリアルな2次元の女子中学生の姿が……

 

???「おはようございます。今日から転校してきました。『自律思考固定砲台』と申します。よろしくお願いします」

 

そう来たか……!!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

烏間「皆…知ってると思うが…、転校生を紹介する……。ノルウェーから来た自律思考固定砲台さんだ……」

 

固定砲台「よろしくお願いします」

 

不破(烏間先生も大変だなぁ……)

 

友(俺…あの人だったらツッコミきれずにおかしくなるわ)

 

 

殺「プークスクス」

 

烏間「お前が笑うな!同じイロモノだろうが……。言っておくが、彼女は思考能力(AI)と顔を持ち、れっきとした生徒として登録されている。あの場所からずっとお前に銃口を向けるが…お前は彼女に反撃出来ない……。『生徒に危害を加える事は許されない』それがお前の教師としての契約だからな」

 

殺「……なるほどねぇ。契約を逆手に取って、なりふり構わず機械を生徒に仕立てたと…いいでしょう!自律思考固定砲台さん!あなたをE組に歓迎します!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

菅谷「でもよぉ…どうなって攻撃するんだ?固定砲台って言ってるけどよ……どこにも銃ないぜ?」

 

友「うーん……多分だけど…」

 

固定砲台「………」ガシャ

 

ガシャ ガシャ ガキィン

 

固定砲台の側面から銃が展開された。

そして、銃からは大量の対先生弾が発射された。

 

菅谷「なっ……!?」

 

友「やっぱり…!てか危ねぇ……!!」

 

隣だから銃に当たるところだった……!

 

つーか!弾やべぇ!普通に当たりそう…!

 

殺「ショットガン4門、機関銃2門、濃密な弾幕ですが、ここの生徒は当たり前にやってますよ?この弾もこうしてチョークで弾いて……っと。それと、授業中の発砲は禁止ですよ」

 

固定砲台「気をつけます。続けて攻撃に移ります。弾道再計算、射角修正、自己進化フェーズ5-28-02に移行」

 

発砲禁止っつったろ今!気をつけるって言ったばっかじゃん!!てか発砲音うるさ!

 

殺「こりませんねえ……さっきと全く同じ射撃……所詮は機械ですねぇ…これもさっきと同じ。チョークで弾いて退路を確保……!!?」

 

バチュッ

 

……えっ…!チョークで弾いたはずなのに…!

殺せんせーの指が弾け飛んだ!?

 

殺(隠し弾(ブラインド)!!全く同じ射撃の後に…見えないように1発だけ追加していた!)

 

固定砲台「右指先破壊。増設した副砲の効果を確認しました。次の射撃で殺せる確率、0.001%未満。次の次の射撃で殺せる確率、0.003%未満。卒業までに殺せる確率、90%以上」

 

……ここに来て初めて俺達は気付いた。

彼女ならひょっとして殺るかもしれない……。

 

固定砲台「よろしくお願いします殺せんせー。続けて攻撃に移ります」

 

入力済み(プログラム)の笑顔で微笑みながら、転校生は次の進化の準備を始めた。

 

俺らは彼女を甘く見ていた…。

というより、認識を間違っていた。

 

パパパパ ビシッ バチッ

 

固定砲台「2発の至近弾を確認。見越し予測値計測のため、主砲を4門増設し、続けてる攻撃に移ります」

 

目の前にいるのは……紛れもない殺し屋だ……!!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

千葉「……これ、俺らが片すのか…」

 

村松「お掃除機能とかついてねーのかよ?固定砲台さんよぉ?」

 

固定砲台「…………」

 

村松「……チッ。シカトかよ」

 

吉田「やめとけ。機械に絡んでも仕方ねーよ」

 

 

その日は一日中ずっと、機械仕掛けの転校生は攻撃を続けた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

そして翌日──

 

固定砲台「朝8時半。システムを全面起動。今日の予定、6時間目までに215通りの射撃を実行。引き続き殺せんせーの回避パターンを分析……!?」

 

固定砲台は、ガムテープでぐるぐる巻きにされていた。

銃を展開出来ないように……。

 

固定砲台「殺せんせー。これでは銃を展開出来ません。拘束を解いて下さい」

 

殺「うーん……そう言われましてもねぇ…」

 

固定砲台「この拘束はあなたの仕業ですか?明らかに生徒に対する加害であり、それは契約で禁じられているはずですが」

 

 

寺坂「ちげーよ…。俺だよ!どー考えたって邪魔だろーが!常識ぐらい身につけてから殺しに来いよポンコツ」

 

 

菅谷「ま、わかんないよ。機械に常識はさ」

 

原「授業終わったら、ちゃんと解いてあげるから」

 

杉野「そりゃこーなるわ……昨日みたいなの、ずっとされてちゃ授業になんないもん」

 

こうして、今日は1度も射撃が行われる事無く授業を終えることが出来た……。

 

 

 

 



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第18話 自律の時間

《友 side》

 

不破「今日もいるのかな…あの固定砲台さん」

 

友「多分な……そろそろ烏間先生に苦情を言った方が良さそーだ……ってん?」

 

不破「な、なんか…昨日より体積増えてない…?」

 

固定砲台「おはようございます!友さん!不破さん!」キラキラーン

 

友・不破「えええええええ!?!?」

 

固定砲台が…昨日よりも表情豊かになっている……!?

 

殺「親近感を出すための全身表示液晶と、体、制服のモデリングソフト。全て自作で8万円!!」

 

固定砲台「今日は素晴らしい天気ですね!こんな日を皆さんと過ごせて嬉しいです!」

 

殺「豊かな表情と明るい会話術!それらを操る膨大なソフトと追加メモリ。同じく12万円!」

 

友・不破(転校生がおかしな方向へ進化してきた……)

 

殺「先生の財布の残高……!5円……!!」

 

友「あ、それはどーでもいいんで」

 

殺「酷い!?」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

固定砲台「庭の草木も緑が深くなっていますね。春も終わり、近付く初夏の香りがします!」

 

岡島「たった一晩でえらくキュートになっちゃって〜…」

 

三村「これ一応…固定砲台だよな…?」

 

 

友「前は無表情だったけど…今は表情豊かで可愛いな」

 

不破「……!」

 

不破(友君が可愛い…って…………なんだろ…この気持ち…嫉妬…?)

 

 

寺坂「何騙されてんだよ。全部あのタコが作ったプログラムだろ?愛想良くても機械は機械。どーせまた空気読まずに射撃すんだろ?ポンコツ」

 

固定砲台「……おっしゃる気持ち…わかります寺坂さん。昨日までの私はそうでした……。ポンコツ…そう言われても…返す言葉がありません……。ぐすん…ぐすん…」

 

片岡「あーあ。泣かせた」

 

原「寺坂君が2次元の女の子泣かせちゃったー」

 

寺坂「なんか誤解される言い方やめろ!!」

 

 

竹林「良いじゃないか……2D(2次元)……Dを1つ失う所から、女は始まる……」

 

磯貝・前原・友「竹林!それお前の初セリフだぞ!?いいのか!?」

 

固定砲台「でも皆さんご安心を。殺せんせーに諭されて、私は協調の大切さを学習しました。私の事を好きに頂けるように努力し、皆さんの合意を得られるようになるまでに。私単独での暗殺は控える事に致しました」

 

殺「そういうわけで仲良くしてあげて下さい。あぁ勿論、先生は彼女に様々な改良を施しましたが、彼女の殺意には一切手をつけていません!先生を殺したいなら、彼女はきっと心強い仲間になるはずですよ……?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

殺「………では、菅谷君。教科書を伏せて網膜の細胞は細長い方の桿体細胞と……あと1つ、太い方は?」

 

菅谷「……んぇ…?ヤバっ…寝てた…!えーっと……ん?」

 

固定砲台「シーッ……」

 

固定砲台の足に『錐体細胞』と書いてある。

いやアウトじゃんそれは。カンニングじゃん。

 

菅谷「……えーと、錐体細胞…」

 

殺「こら!自律思考固定砲台さん!ズルを教えるんじゃありません!」

 

固定砲台「で、でも先生!皆さんにどんどんサービスするようにとプログラムを!」

 

殺「カンニングはサービスじゃないっ!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

休み時間。

固定砲台は『ミロのヴィーナス』を作って皆に披露していた。

更に千葉ちゃんと将棋もしていた。

凄い…二つのことを同時にやってる…!

 

倉橋「へぇー!こんなのまで体の中で作れるんだ!」

 

固定砲台「はい!特殊なプラスチックを体内で自在に成型できます!設計図(データ)があれば、銃以外も何にでも!」

 

菅谷「すげぇ造型!」

 

矢田「へぇー!面白ーい!じゃあさ!花とか作ってみてよ!」

 

固定砲台「わかりました。花の形(データ)を学習しておきます!……王手です。千葉君」

 

千葉「……!3局目でもう勝てなくなった……!」

 

友「なんて学習力だ……」

 

不破「そ、そういえば!人工知能が電子ドラッグで世界を支配するって漫画があったわ!」

 

固定砲台「それは、超メジャー少年誌で連載され、映画化もされた超人気探偵漫画ですね!」

 

友「花のデータが無いのに何で…?」

 

固定砲台「さぁ…?」

 

 

 

殺「……しまった!先生とキャラが被る……!」

 

渚「被ってないよ1ミリも!」

 

なんかタコがほざいてる……

 

殺「自分で改良しといてなんですが!これでは先生の人気が食われかねない!皆さん!!先生だって人の顔ぐらい表示出来ますよ!皮膚の色を変えればこの通り」

 

一同「キモイわ!!」

 

 

片岡「あとさ、このコの呼び方決めない?」

 

岡野「自律思考固定砲台じゃ長すぎるもんね」

 

中村「んー…名前から1文字取ったりして……」

 

 

不破「自……律……そうだ!律なんてどう?」

 

千葉「安直だな」

 

友「いーじゃん。可愛くて」

 

前原「お前はそれでいい?」

 

 

律「……!嬉しいです!では、『律』とお呼び下さい!」

 

律は嬉しそうに答えた。

 

不破「よろしくね〜律!」

 

不破(さっきは嫉妬しちゃったけど……これは誰でも可愛いって思うよ〜!)

 

中村「すご!タッチパネル機能もあるんだ!」

 

不破「ホントだ〜!ぷにぷに〜!」

 

 

 

渚「上手くやっていけそうだね」

 

カルマ「どうだろーね…。寺坂の言う通り、殺せんせーのプログラム通り動いてるだけ……。機械自体に意思がある訳じゃないから、あいつがこの先どうするかは…あいつを作った開発者(持ち主)が決める事だよ」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

翌日──

 

律「おはようございます。皆さん」

 

元に戻っちゃった……。

 

烏間「『生徒に危害を加えない』という契約だが……『今度は改良行為も危害と見なす』と言ってきた」

 

殺せんせーがせっかく暗殺が上手くいくよう改良してやったんだから良いだろ別に……。

 

烏間「君らもだ。彼女を縛って壊れでもしたら賠償を請求するそうだ。開発者(持ち主)の意向だ。従うしかない」

 

殺「開発者(持ち主)とはこれまた厄介で……。親よりも生徒の気持ちを尊重したいんですがねぇ……」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

律「攻撃準備を始めます。どうぞ授業に入って下さい殺せんせー」

 

退化(ダウングレード)したってことは……また始まるのか……。

 

あの…一日中続くはた迷惑な射撃が……!

 

 

そらそろ来る……!銃が展開されて…BB弾が放射される……。

 

律「……」ジャキッ…

 

……えっ?

 

展開されたのは銃では無く…

花だった

 

律「……花を作る約束をしていました」

 

矢田「……!」

 

律「殺せんせーは私のボディーに…計985点の改良を施しました。その殆どは…開発者(マスター)が『暗殺に不要』と判断し、削除、撤去、初期化してしまいましたが……学習したE組の状況から……私個人は『協調能力』が暗殺に不可欠な要素と判断し、消される前に関連ソフトをメモリの隅に隠しました……」

 

殺「素晴らしい!つまり律さん…あなたは!」

 

律「はい!私の意思で産みの親(マスター)に逆らいました!殺せんせー…こういった行動を『反抗期』と言うのですよね…?律は悪い子でしょうか」

 

殺「とんでもない!中学三年生らしくて大いに結構です」

 

こうして、E組の仲間が1人増えた。

これからは、この28人で殺せんせーを殺すんだ。

 

友「それにしても可愛いな」

 

竹林「君も2次元が好きかい?……君とは話が合いそうだ」

 

友「みたいだな」

 

 

 

 

不破「………」

 

中村「なーに妬けてんのよ不破ちゃ〜ん」

 

不破「べ、別に嫉妬してないよ!?だ、大体なんで私が友君に嫉妬しないと……/////」

 

中村「おやぁ?誰に嫉妬してるのは言ってないけどねぇ?」

 

不破「はぐぅ!!!/////」

 

中村(にしても…友は気付いてんのかね…。まさかこんなに分かりやすいのに気付いてないわけないよね…。だとしたら鈍感すぎるけど…)

 

 

 



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第19話 まさかの時間

 

《友 side》

 

殺「さて……烏間先生から転校生が来ると聞いていますね?」

 

あぁ…昨日、律の時と同じように一斉メールが来たな。

 

前原「あーうん。ま、ぶっちゃけ殺し屋だろうね」

 

殺「律さんの時は少し甘く見て、痛い目を見ましたからねぇ。先生も今回は油断しませんよ。いずれにせよ、皆さんに暗殺者(仲間)が増えるのは嬉しい事です」

 

友「なぁ律。なんか聞いてないのか?同じ転校生暗殺者として、次に来るやつのこと……」

 

律「はい…少しだけ。初期命令では、私と彼の同時投入の予定でした。私が遠距離射撃、彼が肉迫攻撃、連携して殺せんせーを追い詰めると……」

 

肉迫攻撃……近距離暗殺が得意なやつが来るのか……

 

律「ですが…二つの理由でそれはキャンセルされました」

 

不破「その理由って……?」

 

律「ひとつは彼の調整に…予定より時間がかかったから。もうひとつは、私が彼より暗殺者として、圧倒的に劣っていたから……。

私の性能では、彼のサポートをつとめるには力不足だと…そこで、各自単独で暗殺を開始する事になり、重要度の下がった私から送り込まれたと聞いています」

 

殺せんせーの指を飛ばした律がその扱い……。

 

どんな怪物(やべー奴)がやってくるんだ……!

 

ガララッ

 

ドアが開いた……!

来るのか…!?転校生……!

 

???「……」

 

入ってきたのは、全身白装束の男……。

男は俺らの方を見ると……。

 

 

ポン!と…いきなり手から鳩を出した。

 

………え?手品師?

 

???「ごめんごめん。驚かさせたね……。転校生は私じゃないよ。私は保護者……。まぁ白いし、シロとでも呼んでくれ」

 

茅野「いきなり白装束で来て、手品やったらビビるよね」

 

渚「うん……殺せんせーでもなきゃ誰だって……」

 

当の殺せんせーは部屋の天井隅に逃げていた……。

 

友「ビビってんじゃねーよ!殺せんせー!」

 

前原「奥の手の液状化まで使ってよ!」

 

殺「い、いや…律さんがおっかない話するもので……」

 

渚「とりあえず戻りなよ殺せんせー……」

 

 

殺「初めましてシロさん。それで、肝心の転校生は?」

 

シロ「初めまして殺せんせー。ちょっと性格とかが色々と特殊な子でね……。私が直で紹介させてもらおうと思いまして」

 

格好からしてそうだけど…掴み所ない人だ……。

 

…ん?今一瞬…渚の方を見た…?

 

殺「…何か?」

 

シロ「いや……皆いい子そうですなぁ。これなら、あの子も馴染みやすそうだ。席はあそこ……寺坂君と赤羽君の間でいいんですね」

 

殺「ええそうですが……」

 

シロ「では紹介します。おーいイトナ!入っておいで!」

 

『イトナ』って言うのか…転校生。

皆の視線がドアに集まる…。

 

一体どんな奴が……!!

 

そう思った瞬間、後ろの壁が壊れ、白髪の少年…恐らくイトナだろう。

彼が入ってきて、着席した。

 

一同(ドアから入れ!!!)

 

イトナ「俺は勝った……。この教室の壁よりも強い事が証明された……。それだけでいい……。それだけでいい……」

 

なんかまた面倒臭いの来やがった…!!

 

渚(殺せんせーもリアクションに困ってる!!)

 

不破(笑顔でもなく、真顔でもなく……)

 

友・前原(何だその中途半端な顔は!!!)

 

シロ「『堀部糸成』だ。名前で呼んであげてください。あぁそれと、私も少々過保護でね……。しばらく彼の事を見守らせてもらいますよ」

 

 

 

カルマ「………ねぇイトナ君、ちょっと気になってたけど…今、外から手ぶらで入って来たよね?」

 

イトナ「………それがどうした」

 

友「……カルマの言いたいことは分かった…。外は土砂降り……手ぶらで来たなら体は雨水で濡れているはず…」

 

カルマ「そーゆー事。でも…イトナ君は1滴たりとも濡れてないよね……」

 

イトナ「……赤羽業。お前は、多分このクラスで1番強い。けど安心しろ……俺より弱いから…俺はお前を殺さない」

 

カルマ「…………」

 

イトナ「真弓友。お前は2番目に強い。剣術の才能ならこのクラスで1番だ。だが……俺より弱い」

 

友「………」

 

何だ…?強い、弱いって……?

 

イトナ「俺が殺したいと思うのは、俺より強いかもしれない奴だけ……」

 

話ながらイトナは殺せんせーの方へと歩んでいく。

 

イトナ「この教室では…殺せんせー。あんただけだ」

 

殺「強い弱いとは喧嘩のことですかイトナ君?力比べでは先生と同じ次元には立てませんよ?」

 

イトナ「立てるさ……だって俺たち…

 

 

血をわけた兄弟なんだから」

 

一同(!?……き、き、き、き、き、兄弟!?!?)

 

イトナ「負けた方が死亡な。兄さん」

 

嘘だろ……?

あのタコと人間が兄弟……?

いやそれよりもこれは…!

 

ジャンプあるある…!兄弟同士の対決……!!

『兄より優れた弟など存在しねぇ』的なストーリーになるのではっ………!!

 

イトナ「兄弟同士小細工はいらない。お前を殺して俺の強さを証明する。時は放課後……この教室で勝負だ……。それまでに、こいつらにお別れでも言っておけ」

 

 

矢田「兄弟って!?殺せんせーどういうこと!?」

 

三村「そもそも人とタコで全然違うじゃん!」

 

殺「い、いやいや!?全く心当たりありません!!先生生まれも育ちも一人っ子ですから!両親に『弟が欲しい〜』ってねだったら、家庭内が気まずくなりました!」

 

いやそもそも親とかいるのか!?

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

磯貝「……イトナ、凄い勢いで甘いもの食ってんな……」

 

木村「甘党なところは殺せんせーと同じだ……」

 

岡野「表情が読み取りづらいところも……」

 

 

つーか食いすぎだろ…。

机に山のように置いてあるし…。

糖尿病まっしぐらだぞ?

 

殺「兄弟疑惑で皆やたら先生と彼を比較しています…ムズムズしますねぇ……。気分直しに今日買ったグラビアでも見ますか…。これぞ大人の嗜み……にゅ?」

 

イトナ「………」

 

殺せんせーとイトナ……同じグラビアを読んでいる…!?

 

そして俺の隣で昼食を食べている不破は何も言わず赤面している……。

 

不破はこーゆーの見ると顔赤くして黙り込むからな…。

 

う……意識しなくても可愛いと思ってしまう……///

 

いや別にそーゆーんじゃなくてね?!///

 

ちょっと楽しんでるとかそんなことないからね!?///

 

い、いや!それより今はイトナだ……

甘党だけじゃなく、巨乳好きまで同じとは…!

 

 

岡島「こ、これは俄然信憑性が増してきたぞ!」

 

渚「そ、そうかな岡島君」

 

岡島「そうさ!巨乳好きは皆兄弟だ!!」

 

渚(三人兄弟!?)

 

 

いやそれよりイトナも岡島もなんでグラビア持ってんだよ!!

あと殺せんせー!教育者なら教室でグラビア読むな!

 

茅野「もし本当に兄弟だとして…なんで殺せんせーは分かってないんだろう……」

 

不破「……はっ!きっとこうよ!」

 

あ、復活した。

そして妄想しだした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

世は戦乱の時代……

 

『へ、陛下!敵軍がすぐ側まで迫っております!』

 

『ぬうう……やむを得ん!息子たちよ!お前たちだけでも生き延びよ!』

 

殺『先に行け!弟よ!この橋を渡れば逃げられる……ッ!!にゅやっ!!』

 

イトナ『に、兄さん!!』

 

殺せんせーは敵の攻撃をくらい、川へと落ちてしまう…。

 

イトナ『兄さーん!!』

殺『構うな!行け!弟よ!生きろーー!!』

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

不破「──で、成長した兄弟は気づかず、宿命の戦いを始めるのよ!」

 

友「おお!王道展開じゃないか!!」

 

茅野「うん…王道展開はいいけどさ、なんで弟だけ人間なの?」

 

不破「………それはまぁ、突然変異?」

 

友「養子とかそんなんじゃない?」

 

茅野「肝心なとこが説明出来てないよ!」

 

渚「キャラ設定の掘り下げが甘いよ2人とも!もっとプロットをよく練って……」

 

不破「えー…でも王道展開だし、友君の言う通り養子とかでいいよー」

 

茅野「そもそもなんでタコが人間を養子にするの…」

 

友「まぁ…気分とか?」

 

茅野「どんな気分!?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後

 

殺せんせーとイトナを囲むように、机でリングを作り、教室はまるで闘技場になっていた。

 

こんなの……まるで試合じゃないか…。

 

シロ「ただの暗殺は飽きてるでしょ殺せんせー……。ここはひとつ、ルールを決めないかい?リングの外に足が着いたらその場で死刑……!どうかな?」

 

杉野「なんだそりゃ……負けたって誰が守るんだそんなルール…」

 

カルマ「いや、皆の前で決めたルールを破れば、“先生として”の信用が落ちる。殺せんせーには意外と効くんだ。あの手の縛り」

 

 

殺「いいでしょう。受けましょうイトナ君。ただし、観客に危害を与えた場合も負けですよ」

 

イトナ「ああ」

 

シロ「では、私の合図で始めよう。暗殺……開始!」

 

その瞬間、俺たちの目はただ1箇所に釘付けになった……

 

開始の合図と共に、『一瞬で』斬り落とされたせんせの腕にでは無く……。

イトナの頭に生えている『それ』に……。

 

殺「………ま、まさか…!?」

 

触手……!?

 

 

 

なるほど…。

触手で雨水を弾いてたから何も持ってなくても濡れないってことか……。

 

殺「………どこでだ…」

 

殺せんせーの顔は……第1話の寺坂の時と同じ黒…。

『ド怒り』だ。

 

殺「どこでそれを手に入れたッ!!その触手を…!!」

 

シロ「君に言う義理は無いね殺せんせー……。だが、これで納得したろう?この子と君は兄弟だと……」

 

両親も、育ちも違う……だが『兄弟』……。その意味……。

 

同じ、『触手を持つもの同士』という意味………!!

 

 

殺「どうやら…あなたにも話を聞かなければならないようだ」

 

シロ「聞けないよ…?死ぬからね」

 

シロはそう言うと、殺せんせーに向かい、謎の光を浴びせた。

すると、殺せんせーの体が一瞬固まり、その一瞬ついてイトナが攻撃を加えた。

 

シロ「この圧力光線を至近距離で照射すると、君の細胞はダイラタント挙動を起こし、一瞬全身が硬直する。全部知っているんだよ……。君の弱点は全部…ね」

 

イトナ「……死ね。兄さん」

 

 

 

 



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第20話 絆の時間

《友 side》

 

イトナは触手で素早く攻撃を繰り出し、殺せんせーはかなりダメージを負っている……!

 

殺せんせーが床に叩きつけられ、イトナがすかさず追撃……!!

 

吉田「う、うおおっ……」

 

村松「殺ったか……!?」

 

寺坂「いや……上だ!」

 

 

寺坂の言う通り、殺せんせーは上に逃げていた。

恐らく、奥の手の脱皮だろう。

 

シロ「……そういえばそんな手もあったっけか……」

 

脱皮は殺せんせーのエスケープの隠し技……!

こんなに早く使わせるとは……

 

シロ「でもね殺せんせー。その脱皮にも弱点があるのを知っているよ。その脱皮は見た目よりもエネルギーを消耗する。よって、直後は自慢のスピードも低下するのさ。常人から見ればメチャ速いことに変わりはないが、触手同士の戦いでは影響はデカいよ」

 

先程よりも殺せんせーが押されている……!

 

シロ「加えて、イトナの最初の奇襲で腕を失い再生したね。それも結構体力を使うんだ。二重に落とした身体的パフォーマンス……。私の計算ではこの時点でほぼ互角だ。また、触手の扱いは精神状態に大きく左右される」

 

……!

あの時……殺せんせーが花壇を荒らしちゃってお仕置きにハンディキャップ大会をした時、触手が縄に絡まって中々抜け出せずにテンパっていた……!!

 

シロ「予想外の触手によるダメージでの動揺。気持ちを立て直す暇も無い狭いリング。今現在……どちらが優勢か、生徒諸君にも一目瞭然だろうねぇ……」

 

これ……本当にイトナが殺せんせーを殺るんじゃ……!

 

シロ「更には、献身的な保護者のサポート……」

 

また光線が…!!

 

一同(……!!)

 

殺せんせーの脚が!!

 

シロ「これで脚も再生しなくてはならないね……。尚一層体力が落ちて殺りやすくなる」

 

イトナ「安心した。兄さん、俺はお前より強い」

 

殺せんせーが追い詰められている…!

 

あと少し……殺せば地球を救える……

 

なのに……何故か悔しい……。

 

周りを見渡すと、皆も悔しそうな顔をしている……。

渚は懐からナイフを取り出し、見つめている……。

 

悔しいのは……俺だけじゃなく…皆だ。

 

弱点だって……俺らが見つけたかった…!

 

E組(俺ら)が………殺したかった………!!!

 

 

シロ「……脚の再生も終わったようだね…さぁ、次のラッシュに耐えられるかな?」

 

殺「ここまで追い込まれたのは初めてです……。一見愚直な試合形式の暗殺ですが……実に周到に計算されている。あなた達に聞きたい事は多いですが…まずは試合に勝たねば喋りそうにないですね」

 

シロ「……まだ勝つ気かい?負けダコの遠吠えだね…」

 

殺「シロさん…。この暗殺方法を計画したのは貴方でしょうか?ひとつ計算に入れ忘れていることがあります」

 

シロ「無いね。私の性能計算は完璧だから……。殺れ。イトナ」

 

イトナ「…………」ドギャッ

 

その瞬間……触手が弾け飛んだ。

 

殺せんせーの……ではなく、

 

イトナの触手が。

 

イトナ「……!!」

 

殺「おやおや…落し物を踏んづけてしまったようですねぇ」

 

床に対先生ナイフ……?

 

周りを見ると渚が持っていたナイフが無くなっていた…

 

いつの間に……!?

 

殺せんせーは動揺を隠しきれていないイトナを自分の皮で包み込んだ。

 

殺「同じ触手なら、対先生ナイフが効くのも同じ。触手を失うと動揺するのも同じです。でもね、先生の方がちょっとだけ老獪です」

 

殺せんせーはイトナを窓へと放り投げた。

皮で守られてるとはいえ、痛いだろあれ……。

殺「先生の抜け殻で包んだのでダメージは無いはずですが、君の足はリングの外に着いている。先生の勝ちですねぇ…。ルール通りなら君は死刑。もう二度と先生を殺れませんねぇ」

 

イトナ「…………!!」

 

殺「生き返りたいのなら、このクラスで皆と一緒に学びなさい。性能計算ではそう簡単に計れないもの。それは経験の差です。君より少しだけ長く生き、少しだけ知識が多い。先生が先生になったのはね。経験(それ)を君達に伝えたいからです。この教室で先生の経験を盗まなければ、君は私に勝てませんよ」

 

シロ(まずいな……イトナは大の勉強嫌いだ。勉強嫌いの子供に対して説教すれば、校内暴力(ジェノサイド)が吹き荒れるぞ……!)

 

イトナ「勝てない……俺が……弱い……?」

 

 

友「黒い触手……!」

 

前原「やべぇ!キレてんぞあいつ!!」

 

イトナ「俺は強い…!この触手で誰よりも強くなった!誰よりも……!!……ガアッ!!」

 

イトナは殺せんせーに飛びかかった…が、

『何か』がイトナに刺さりいきなり倒れてしまった

 

麻酔弾……!

 

シロ「すいませんね殺せんせー。どうもこの子はまだ登校できる精神状態じゃなかったようだ。転校初日で何ですが、しばらく休学させてもらいます」

 

シロはそう言ってイトナを担ぎ、教室から出ていこうとする。

 

殺「待ちなさい!担任としてその生徒は放っておけません!一度E組(ここ)に入ったからには卒業するまで面倒を見ます!それにシロさん。あなたにも聞きたい事が山ほどある!」

 

シロ「いやだね……帰るよ。力づくで止めてみるかい?」

 

殺せんせーの触手がシロの肩に触れた途端、

触手がドロッと溶けてしまった……。

 

シロ「対先生繊維。君は私に触手一本触れられない。心配せずともまたすぐに復学させるよ殺せんせー…。3月まで時間は無いからね。責任もって私が、家庭教師を務めた上でね……」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

イトナと殺せんせーの勝負が終わり、E組みんなで片付けをしていた時のこと……。

 

殺「はずかしい…はずかしい…」

 

 

不破「……何してんの殺せんせー」

 

友「さっきからあんな感じだよ……」

 

殺「シリアスな展開に加担したのが恥ずかしいのです……。先生、どっちかと言うとギャグキャラなのに…」

 

友・不破「自覚あるんだ!?」

 

 

狭間「カッコよく怒ってたね……。『どこでそれを手に入れたッ!!その触手を…!!』」

 

殺「いやぁぁ!!言わないで狭間さん!!改めて自分で聞くと逃げ出したい!!掴みどころのない天然キャラで売っていたのに…ああも真面目な顔を見せてはキャラが崩れる……」

 

友「自分のキャラを計算してるのが腹立つ……」

 

イリーナ「でも驚いたわ…。あのイトナって子…。まさか触手を出すなんてね」

 

 

 

磯貝「……殺せんせー。説明してください」

 

片岡「あの二人との関係を……」

 

杉野「先生の正体、いつも適当にはぐらかされてたけどさ……」

 

友「あんなの見たら、聞かずにはいられないよ」

 

岡野「そうだよ…。私たち生徒だよ?」

 

前原「先生の事、よく知る権利あるはずだよな」

 

 

殺「……仕方ない。真実を話さなくてはなりませんねぇ…。実は先生…………………。人工的に造り出された生物なんです!!!」

 

中村「………だよね。で?」

 

殺「にゅやっ!?反応薄っ!?これ結構衝撃的告白じゃないですか!?」

 

岡島「つってもなぁ…自然界にマッハ20のタコとかいないだろ」

 

原「宇宙人でもないのなら、その位しか考えられない」

 

友「で、イトナは弟だと言っていたから、先生の後に造られた、もしくは触手を移植されたと想像がつく」

 

殺(察しが良すぎる…!恐ろしい子達……!!)

 

渚「知りたいのはその先だよ殺せんせー……。どうしてさっき怒ったの…?イトナ君の触手を見て…。殺せんせーはどういう理由で生まれてきて、何を思ってE組(ここ)に来たの?」

 

 

殺「………残念ですが、今それを話した所で無意味です。先生が地球を爆破すれば、皆さんが何を知ろうが塵になりますからねぇ……」

 

一同「………!!」

 

殺「逆に!もし君達が地球を救えば、君達は後で幾らでも真実を知る機会を得る。もうわかるでしょう……知りたいなら行動はひとつ!

 

 

殺してみなさい。暗殺者(アサシン)暗殺対象(ターゲット)。それが、先生と君達を結びつけた絆のはずです。先生の中の大事な答えを探すなら、君達は暗殺で聞くしかないのです。質問が無ければ今日はここまで。また明日……。

 

 

 

 

はずかしい……はずかしい……」

 

俺らは殺し屋。

銃とナイフで答えを探し、

 

標的(ターゲット)は先生。

自分の命で僕らに問う。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

片付けが終わり、俺らは烏間先生の元へと向かった

『この気持ち』を話すためだ。

 

磯貝「烏間先生!」

 

烏間「……君達か。どうした大人数で」

 

磯貝「あの……もっと教えてくれませんか。暗殺の技術を」

 

烏間「…?今以上に…か?」

 

矢田「今までさ。『結局誰が殺るんだろ』ってどっか他人事だったけど…」

 

前原「……さっきの。イトナを見てて思ったんだ」

 

友「誰でもない。俺らE組の手で殺りたいって」

 

三村「もしも今後、強力な殺し屋に先越されたら…俺ら、何のために頑張ってたのかわからなくなる!」

 

片岡「だから限られた時間、殺れる限り殺りたいんです。私たちの担任を」

 

磯貝「殺して……。自分たちの手で答えを見つけたい!」

 

烏間(……意識がひとつ変わったな。良い目だ)

 

烏間「わかった。では、希望者は放課後に追加で訓練を行う。より厳しくなるぞ!」

 

一同「はい!!」

 

烏間「では早速、新設した垂直20mロープ昇降…!始め!」

 

磯貝・前原・友「厳しッ!!」

 

 

 

 

 



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第21話 新の時間


ついに真弓『兄弟』の暗殺教室になる……!

ようやくタイトル詐欺じゃなくなる……!


 

《友 side》

 

友「ただいま……」

 

烏間先生の放課後の訓練が終わり、ヘトヘトの状態で家に着いた。

家では、新が動画を撮っている。

最近の某事務所のジュニアは、動画とかでファンに近況報告をしたりして、喜ばせるらしい。

 

確かに…動画ならコンサートに行かなくても、その人を身近に感じられるしな。

 

 

新「──ということで、僕は高校受験のため、活動を一旦休止することになります…。でも、安心してください!来年の4月には必ず戻ります!メンバーや関係者の方々、そしてファンの皆には迷惑をかけてしまいますが、これからも応援してくれると嬉しいです!じゃあまたね!!」

 

友「…………」

 

こないだ、新の正式なE組行きが決定した。

本校舎のヤツらが呟いてたのを聞いたが、『兄弟揃ってE組とか恥ずかしくないのか』とか言われたそうだ。

 

新「……おかえり。兄貴。よろしくな!月曜から!」

 

友「おう」

 

今日は金曜日。だが、俺らは明日も訓練で行かなきゃならない。

新には、クラスで遊びに行くと伝えてある。

 

自分の部屋に戻り、スマホを見ると、クラスラインがザワついていた。まあ新についてだろーな……。

 

 

創介[月曜だっけ?新がE組行きになるの]

 

TOUKA[芸能人の人と会うの初めてだから楽しみだな〜^^*]

 

RIO[友君の面白い話とか聞けるかなぁ〜w]

 

U[やめてくれる?]

 

陽斗[話してみると良い奴だぜ!]

 

hinano[うわ〜楽しみ〜!]

 

RIO[新のライブ映像とかないの〜?]

 

正義[ジュニアってライブやるんだっけ?]

 

U[人気なとこは単独ライブもするよ]

 

U[実際新のとこはやってるし、明日DVDあるから持ってこようか?]

 

RIO[おー!持ってこい持ってこい!!]

 

なんかライブDVD持ってくことになっちゃった……。

まぁいいけどな。

 

ドシュッ

ピンポーン

 

突然何かがマッハで着陸した音とインターホンが鳴った。

 

俺はとりあえず1階に降りる。

確実にあのタコだ……!

 

 

友「……はい」ガチャ

 

殺「こんにちは友君」

 

友「ちゃんと人間の変装してて安心したぜ殺せんせー……。で?何しに来たんだよ」

 

殺「いやぁ。新君の様子を一目見ようかと」

 

友「え…。まだ暗殺のこと新には話してないんだろ?」

 

殺「当日話す予定だそうです」

 

友「大丈夫なのか?表向きの担任は烏間先生だったけど…」

 

殺「どうせ後でバレることです。適当にはぐらかしても大丈夫です!」

 

絶対テキトーに言ってる。後で烏間先生に怒られても知らんぞ……。

 

 

新「何してんだ?兄貴…。何だ?その……関節が曖昧なデカい人…」

 

殺「どうも新君。私は3年E組に深く関わっている者です!」

 

説明下手すぎてめっちゃ怪しいんだけど!!

大丈夫かこのタコ!?

 

新「は、はぁ…」

 

殺「月曜から転入ということで…一足先にご挨拶をと」

 

新「よ、よろしくお願いします」

 

殺「それでは!ヌルフフフフ……」

 

新「何なんだあの人……」

 

友「ま、まぁ…月曜にはわかるから」

 

新「おう……」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

翌日──

 

中村「頼んだものは持ってきたかい?友君」

 

友「はいよ。殺せんせー、DVDプレイヤー借りるね」

 

殺「新しいクラスメイトを知るためですからね。モチのロンです!」

 

友「これから見せるのは、去年の12月─冬休み中に行われた『RainBow7(レインボーセブン)』の単独ライブの映像だ。新はグループのアクロバット担当。体力や機動力はグループ1だ」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《渚 side》

 

友君が持ってきたDVD。

 

新君が、一体どんな人なのか気になって、クラス全員釘付けになっていた。

 

 

友「まず初めに……1人ずつメンバー紹介していくな。

 

 

 

まずは、グループのセクシー担当の『山中 響平(やまなか きょうへい)』。高校2年生で、グループ最年長。10歳で入所して、舞台や先輩のバックダンサーで経験を積んできている。

 

続いて『高橋 淳(たかはし じゅん)』。高校1年生。グループ内でもバラエティ担当。出身が大阪だから、大阪弁で話す。12歳で入所して、13歳からは年に一度ある大きな舞台に3年連続で出演。

 

赤峰 翔(あかみね しょう)』。高校1年生。グループのリーダー。10歳で入所して、すぐに連続ドラマの子役に抜擢。その後舞台やミュージカルにも定期的に出演してる。グループで唯一、地上波でレギュラー番組を持ってるんだ。

 

林 隆太郎(はやし りゅうたろう)』。中学2年生。中学生とは思えないクールな顔立ちで、ファンを魅了する。また、声の仕事に定評があり、BSで放送しているグループの冠番組のナレーションを担当。今年の冬にはアニメの出演も決まっている。

 

そして『金杉 拓馬(かなすぎ たくま)』。中学2年生。新と同じくアクロバット担当。アメリカ生まれ、東京育ちで英語も完璧。近年じゃ、ミュージカルで英語だけの歌詞の歌を1人で歌って話題になってた。

 

坂田 桃也(さかた とうや)』。中学2年生。他グループの桃色担当と同じく、キュートなルックスと声でファンをメロメロにさせる。ファンサービスが1番多いのがこの子だな。演技もなかなかで、秋には連ドラ出演が決まってるし、冬には映画出演もするそうだ。

 

 

最後に、『真弓 新(まゆみ しん)』。グループのアクロバット担当で、バク転も難なくこなす。バラエティで体を張って、来年にはレギュラー番組を持つんじゃないかって噂されるほど。13歳で入所して、時代劇の舞台に出演。殺陣を披露してたちまち話題になり、大河ドラマでは有名な武将の幼少期を演じた。そっから多くの舞台やドラマに出演。グループ内でも1番目立ってるといっても過言じゃない……。俺の自慢の弟だ」

 

友君は、1人ずつわかりやすく説明してくれる。

 

新君は、映像の中で何度もアクロバットを披露している。

彼みたいに身体能力のある人が暗殺に加わってくれるとなると心強い。

 

中村「それにしても、流石アイドルって感じだね。この前あった時は…あまりアイドルって雰囲気感じなかったけど、映像内では手を振ったり…終始笑顔だったり…ちゃんとアイドルしてる」

 

友「次に歌うのは『RainBow7』の初のオリジナル曲だ。現状、2つしかオリジナル曲は無い。まぁ、ジュニアだからな。最近はかなり多くのオリジナル曲を持つとこも増えてきたけど……まぁ結成して半年くらいだからな」

 

殺「ふむ…綺麗なバク転です。これを暗殺に活用出来れば、先生を殺せる確率は大幅に上がるでしょう……!彼が暗殺に参加してくれるのが楽しみです!ヌルフフフフ……」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

某事務所内の休憩スペース。

俺たちRainBow7のメンバーは全員で話し合っていた。

 

新「……ごめんな。俺の都合で」

 

赤峰「いーってことよ。お前が戻ってくるまで、6人で何とかやってやるよ」

 

坂田「『俺がいなくても大丈夫そう』って思えるほどに成長してやるよ〜」

 

新「そりゃ楽しみだ」

 

金杉「椚ヶ丘中学校に通ってんだもん。むしろ今までよく無事だったね…真弓っち」

 

新「あはは……」

 

高橋「ファンの人も受験なら納得してくれると思うで〜!次の音楽番組の収録は俺らだけやから、頑張らへんとな!」

 

山中「放送日決まったら送るから!受験勉強の休憩に見るんだぞ!」

 

新「はい!」

 

 

林「……真弓っち。なんか、E組行きが決定する前より、いい顔してるね」

 

新「…そうか?」

 

林「何となくそんな気がするけど……ま、いいや。頑張ってね」

 

金杉「てゆーか、来年は俺ら3人休む?」

 

坂田「いやーそれは流石に〜?」

 

赤峰「おいおい……3人も休まれちゃ困るぞ……」

 

新「1人休んで他6人でやるならまだしも、3人も休んだら4人だけじゃん…」

 

高橋「山ちゃんも来年大学受験やから…ワンチャン3人になるんちゃう?」

 

林「それはやばいな……」

 

赤峰「……もうこんな時間か。じゃあ、そろそろ解散だな。新!絶対帰ってこい!」

 

新「……うん!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

新「…ただいま」

 

友「おっかえりー♪」

 

 

新「明後日からE組か……緊張するな…馴染めるか」

 

友「大丈夫。優しーやつらが大半だから。あ、あと月曜コンビニ寄ってから学校行くからな」

 

新「あ、うん」

 

新(またジャンプか……)

 

 

友「…頑張ろうな。お互い」

 

新「?…うん」

 

友「あ、俺明日は剣術道場で稽古つけてもらうから。一緒に行くか?」

 

新「いや、明日俺は久々に家でゆっくり休むよ」

 

友「おう」

 

 

久しぶりのゆっくり会話できる時間。

俺も新も…話すのに夢中だった。

 

そして一日が終わったのであった……。

 

 

 

 






次回は休日回&新君登校回!



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第22話 新の時間-2時間目

 

《友 side》

 

土方さん「打ち込みが浅い!もっと強く!稽古怠って腕が鈍ったか!!」

 

総七「土方さんスパルタだね〜」

 

山崎「でも、誰よりも嬉しがってると思いますよ。先輩が久しぶりに自ら稽古を頼んだんですから」

 

 

暗殺のため……!土方さんに稽古を付けてもらったけど……!無理…!死ぬ…………!!

 

友「ふぅ……。久々だこの感覚…ツラい…」

 

土方さん「……友。ずっと稽古来なかった割には動けてたな」

 

友「何ですか土方さん。飴と鞭使い分けるようになったんですか」

 

土方さん「んだとテメェ……」

 

友「ひいっ……すんません!」

 

土方さん「でも、ホントによく動けてたと思うぞ。数ヶ月も稽古サボったら普通は感覚忘れるだろうにな。独学で練習でもしてたか?それとも学校で…いや、椚ヶ丘中学校で剣を振る授業なんざ、あるわけねーか」

 

あるんだよなそれが!ウチなんだよねそれが!

体育の時間、皆剣振ってるよ!

俺も対先生日本刀使ってるよ!

 

土方さん「よし。稽古に戻るぞ」

 

友「も、もう!?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《不破 side》

 

イツ「見てるだけで楽しい?不破さん」

 

不破「は、はい。こんなの…見る機会なんてあまりないですから」

 

私は友君の稽古を見学している。

一度剣術の稽古を見てみたかったって理由だけど……思ってた以上にスパルタだった……!

 

土方さんって人…烏間先生と同レベルくらい強いんじゃないかな……。

 

でも、友君の剣を振る姿……。

体育の時間でも何度も見てる…。

烏間先生に何度かかすってるし、色んな技を披露してる。

私が頼めば…キャラクターの真似もしてくれる……。

 

見る度に思うけど、

今回は…いつもよりも……

 

カッコいい………!///

 

 

イツ「ねぇ不破さん」

 

不破「ひゃい!?///」

 

変な声出た!変な声出た!///

直んないんだけどこの癖……//

 

イツ「不破さんって……友君のこと好き?」

 

不破「ふぇっ!?い、いや?!そんなこと……///」

 

 

イツ「ふふ……大分顔に出てるわよ」

 

不破「………!///」

 

中村さんに言われたもん……。

顔に出やすいって……うう…何とかそれも直したいのに…。

 

イツ「私もね。好きな人がいるの。安心して友君じゃないわ。その友君に指導してる『あの人』よ」

 

不破「ひ、土方さんですか?」

 

イツ「そう。あの人は誰よりも厳しいけど……誰よりも優しい。そんな人なの」

 

不破「……わ…私は…友君のこと…多分好きです。でも今まで、その…男子を…こんな本気で好きになったことなんて無かったし……。だから、どうすればいいのか分からなくて……」

 

イツ「……大丈夫よ。友君も多分だけど、不破さんのこと大切だと思ってる。それが友情なのか…恋心なのかは分からないけど……。彼がE組のことを話す時、凄く楽しそうなの。特に、不破さんとのことを話してる時がね。私もこういう時、どうすればいいのか…模範解答はわからない。でもね、友君はきっと、不破さんの事、ずっと大切にしてくれると思うな」

 

不破「………!/// そう…ですか…!」

 

イツ「私の家は剣術道場の2個隣の家よ。先に連絡してくれれば、相談に乗ってあげるわ。その代わり、私の愚痴も聞いて欲しいな」

 

不破「……!はい!」

 

 

友「…もうこんな時間だ。不破ー!そろそろ帰るよ!家まで送ったげる!」

 

不破「うん!…ありがとうございます、イツさん!」

 

イツ「フフ……頑張ってね」

 

 

友「イツさんと何話してたんだ?」

 

不破「内緒!女同士のヒミツ!」

 

友「なんだよそれ……。まーいいや。明日、新がE組に来るからさ…仲良くしてやってほしいな」

 

不破「当たり前じゃん!これから一緒に色んなこと殺っていくんだから!」

 

 

友「……ああ。それはそうと…まだ新は殺せんせーのこと知らないからなぁ…明日あいつ驚くだろうなぁ……」ニヤニヤ

 

友君は意外とSだ……。

 

友「そろそろ着くな」

 

不破「じゃあ、また明日!」

 

友「おう!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

《新 side》

 

久しぶりに兄貴と共に家を出る。

普段、学校がある日も収録がある日も俺は先に行っていたから……。

 

友「よーし!ジャンプ買うぞー!」

 

相変わらずだ……うちのバカ兄貴は……。

いつも1人でコンビニ行ってジャンプ買って学校行ってんのかよ……

 

友「おーい不破ー!」

 

……ん?

 

不破「友君おはよー!新君も、4月に会った以来だね!私は不破優月!よろしくね!」

 

兄貴が…女子と登校………!?

 

友「ん?どうした?新」

 

新「えっと……兄貴の彼女ですか?」

 

不破「かっ…!!?!?//////」

 

あ、一瞬で顔赤くなった。

 

友「そういうんじゃなくて!普通の友達だよ!俺と同じジャンプ好きでさ!な?不破」

 

不破「う…うん!そ、そうだよ…!」

 

 

女子の方…不破って言ったか。

彼女は確実に兄貴に気があるな…。

 

成程。今後『姉貴』になるかもしれないんだな…!

 

その後、2人は無事ジャンプを購入し、E組の校舎へと向かった。

 

不破「あ、烏間先生ー!」

 

友「おはようございます!」

 

烏間「おはよう。友君、不破さん。そして、君が新君だな」

 

新「は、はい……」

 

 

烏間「2人は教室へ行っててくれ。新君と話すことがある」

 

友・不破「はーい」

 

新「え…?」

 

 

な、なんだ……話って…。しかもこの人…教師の雰囲気じゃないし……。

 

烏間「さて、俺は『防衛省』の烏間だ。ここ、3年E組の『表向き』の担任をしている」

 

防衛省……!?

表向き……!?

 

何を言って……!?

ドシュッ

 

凄まじい轟音と共に俺の目の前のに現れたのは……黄色いタコだった。

 

なにこれぇ!?!?

 

殺「おはようございます新君!今日からよろしくお願いします……E組の担任、殺せんせーです。ヌルフフフ…」

 

新「あ、あんたみたいなタコが担任…!?」

 

烏間「ああそうだ。少し前にあった、月が爆破した事件。あれの犯人がこいつだ。そして、我々政府は、こいつの暗殺をE組生徒に依頼した」

 

は、はぁ…?

暗殺……!?

 

烏間「すでにE組の生徒は暗殺の訓練を受けている。そして、これが君に支給する、対超生物ナイフとBB弾、そしてエアガンだ」

 

新「え、えっと……。要はこいつは標的(ターゲット)で、俺らは暗殺者(アサシン)……。すでにE組生徒は暗殺しようとしてて、俺はそこに途中参加する…と」

 

殺「その通りです!」ピンポーン

 

新「顔に丸の模様…!?どんな皮膚だよ…!てか、こんなタコに授業が出来るのか…?」

 

殺「ヌルフフフ…教師をやるにあたり、全ての問題集を読み込みましたからねぇ……。すでにE組の生徒にも教えていますが、君はかなり地頭がいい!徹底して教えますよ……ヌルフフフ…」

 

新「は、はぁ…」

 

殺「それでは、HRです。先生が呼ぶまで廊下で待ってて下さいね」

 

 

新「………何なんだ…。転入初日に…訳が分からない」

 

倉橋「やっほ〜!」

 

新「うわぁっ…!び、ビックリした…」

 

倉橋「新君だよね〜?よろしく〜!私達も最初は戸惑ったけど、慣れたらこの暗殺生活も楽し〜よ〜!ビッチ先生の授業とか〜」

 

新「ビ、ビッチ?」

 

倉橋「うん!イリーナ・イェラビッチ先生。私たちの英語教師で、殺し屋なの。ハニートラップの達人なんだ〜」

 

新「超生物に防衛省に殺し屋の教師……そして暗殺者の生徒か……って、あんた…えーと…」

 

倉橋「倉橋陽菜乃だよ〜」

 

新「倉橋…さっき先生HRの時間って言ってたけど?」

 

倉橋「あ!やば〜い!忘れてた〜!」

 

新「………」

 

俺も廊下に向かうか……。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

なんだろ……緊張してきたな…。

 

舞台や映画やライブ……色々やってきたけど緊張は無くならないな。

 

殺「では、皆さんご存知の転入生を紹介します」

 

ご存知なんだ…。ま、それもそうか。バカ兄貴がライブDVDとか見せてるだろうからな。

 

殺「先生…こういう転入生を呼ぶのに憧れてたんです。律さんは固定されてましたし、イトナ君はシロさんが呼んでましたから」

 

ん?待って?固定されてるって何?

 

 

前原「そんなのに憧れてんのかよ」

 

岡野「まぁわからなくはないけどさ」

 

殺「では!入ってきてくださーい!!」

 

ガララ…

 

扉を開け、教室を見渡s

 

新「何あの黒い箱ォ!?!?」

 

あれが律ってやつか?

確かに画面には女の子が映ってるが……。

 

殺「それでは自己紹介を!」ワクワク

 

新「あ、はい」

 

何でワクワクしてんだこのタコ。

 

新「真弓 新です。アイドルっていう変わった職業してますけど、普通の中学生とほとんど変わらないんで普通に接してくれると嬉しいです…。よろしくお願いしまーす」

 

殺「新君の席は友君の右隣ですよ」

 

新「はーい…」

 

生徒の方は普通なのが多くて安心したぜ……。

まぁでっかい黒い箱もあるが…。

 

殺「さて、1時間目は体育ですが、新君は見学です。普段の体育の授業がどういうものかを先生と見ましょう」

 

新「先生と見るんだ……」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

殺「初めに3人目の転入生と聞いて……暗殺者ならどうしましょうかと思いましたが……普通の人間で何よりです」

 

新「他の転入生っていうと…律と…なんだっけ?」

 

殺「イトナ君です。彼は色々ありましてねぇ…」

 

新「……ふーん。で、体育はいつもこんな感じですか?」

 

校庭では、生徒たちが烏間先生に模擬暗殺をおこなっている。かなり異常な空間だ。

 

殺「ええ。烏間先生に攻撃が当たらなければ、先生には当たりませんからねぇ」

 

黄色と緑のシマシマ模様……ナメてる顔だっけ?

 

殺「友君は他の生徒と違い、特注の対先生日本刀を使用しています。使い慣れているせいか、かなり烏間先生に攻撃出来ている。ま、所詮はかすり程度ですがね」

 

新「へー……」

 

烏間「………さて、新君。君もやってみよう」

 

新「えっ……。俺初めてなんですけど…」

 

烏間「安心しろ。手加減はする」

 

新「……じゃ、じゃあ」

 

とりあえず、見よう見まねで繰り出すが、全て弾かれている……

 

烏間「甘い!そんな攻撃で、奴に通じると思うな!」

 

…!じゃあこれなら……どうだ!

 

 

渚「……!」

 

岡島「捌かれる直前にバク転したぞ!?」

 

 

烏間(俺が捌く時、バク転でナイフと共に回る。一見避けただけのように見えるが、少し反応が遅れれば、捌くために出した手にかすっていた)

 

新「うう…手強い…」

 

烏間「アクロバットが得意だそうだな。それを上手く活用出来れば、君の暗殺者としての能力は大きく向上する。これからは厳しくなると思うが、頑張ってくれ」

 

新「……はい!」

 

まだよく分からないことだらけだけど、

何故かやる気が湧いてくる。

 

不思議なクラスだ…!ここは…!

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

《友 side》

 

あれから数日、新は段々とクラスに馴染んでいった。

 

渚「新君おはよう」

 

新「おはよ渚」

 

カルマ「おはよ〜新。そーだ…友の恥ずかしいエピソードとかないの〜?」ニヤニヤ

 

新「あるよ。後で話してやる」ニヤニヤ

 

友「おいそこォ!」

 

 

新は渚やカルマ、杉野とすぐに仲良くなった。

倉橋や矢田ともよく話す。

 

模擬暗殺でも、持ち前の身体能力を活かした動きで、たった数日で1点獲得した。

 

不破「良かったね。友君」

 

友「え?」

 

不破「新君がクラスに馴染んで。い つも気にかけてたじゃん」

 

友「…そうだな。でも大きなお世話だったかな」

 

不破「そうだ!今週のジャンプの続きの考察しよ!」

 

友「お、いいね!しよしよ!」

 

29人に増えた暗殺教室。

始業のベルは今日も鳴る──。

 

 

 

 






友君は不破や三村達ものづくり組、磯貝、前原のイケメン組。
新君は渚やカルマ、杉野のメインキャラ組と絡ませることでどちらかがいなくても話を書けるようにしました。

友君は基本不破さんセットですがね。
くっつけさせるためにね!



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第23話 球技大会の時間 & 番外編 仕返しの時間(後日談)

《新 side》

 

今日は渚、杉野、カルマと登校している。

友達と登校出来るって幸せ……。

 

渚「やっと梅雨明けだ〜!」

 

杉野「アウトドアの季節だな!どっか野外で遊ばねー?」

 

新「いいね。何しよっか?」

 

カルマ「じゃ、釣りとかどう?」

 

カルマから釣りって提案が来るとは思わなかった……。

 

カルマ「夏場はヤンキーが旬なんだ…。渚君を餌にカツアゲを釣って逆にお金を巻き上げよう」

 

渚「ヤンキーに旬とかあるんだ……」

 

新「暴力沙汰はちょっと……事務所にバレたらヤバいんで……」

 

渚「…確かに」

 

 

杉野「………!」

 

杉野が立ち止まり、何かを見ている。

 

「ナイスボール!キャプテン!」

 

どうやら本校舎の野球部が練習しているらしい。

 

進藤「…ん?なんだ、杉野じゃないか!久々だな!」

 

杉野「…おう!」

 

杉野が駆け寄ると、他の野球部員も野球コートの檻越しだが杉野に駆け寄り、話しかける。

 

野球部員「おお杉野!」

 

野球部員「んだよ!たまには顔出せよ!」

 

杉野「はは、ちょっとバツ悪りーよ」

 

野球部員「来週の球技大会、投げるんだろ?」

 

杉野「お?そういや決まってないけど投げたいな!」

 

野球部員「楽しみにしてるぜ!」

 

野球部員「しかし、いいよな杉野は!」

 

野球部員「E組だから毎日遊んでられるだろ?」

 

野球部員「俺ら勉強も部活もやんなきゃだからヘトヘトでさぁ」

 

進藤「よせ。傷つくだろ。進学校での部活との両立。選ばれた人間じゃないならしなくて良いことなんだ」

 

カルマ「へーえすごいね。まるで自分らが選ばれた人間みたいじゃん」

 

新「お、おいカルマ……!」

 

喧嘩沙汰は勘弁だ…止めないと、と思ったが、流石に俺もイラついてはいる。

 

進藤「…うん。そうだよ。気に入らないか?なら来週の球技大会で教えてやるよ。人の上に立つ選ばれた人間と、そうでない人間…。この歳で開いてしまった大きな差をな……」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

殺「クラス対抗球技大会ですか……。健康な心身をスポーツで養う。大いに結構!……ただ、トーナメント表にE組が無いのはどうです?」

 

友「E組は本戦にはエントリー出来ないんだよ」

 

三村「1チーム余るって素敵な理由でな」

 

磯貝「その代わり、大会のシメのエキシビションに出なきゃ行けないんです」

 

殺「エキシビション?」

 

前原「よーするに見せ物さ。全校生徒が見てる前で、男子は野球部の、女子は女子バスケ部の選抜メンバーと戦わせられんだ」

 

木村「一般生徒のための大会だから部の連中も本戦には出れない。だからここで、皆に力を示す場を設けたわけ」

 

菅谷「トーナメントで負けたクラスもE組がボコボコに負けるのを見てスッキリ終われるし、E組に落ちたらこんな恥かきますよ〜って警告になる」

 

殺「なるほど。いつものやつですか」

 

片岡「そう。でも心配しないで殺せんせー。暗殺で基礎体力ついてるし。良い試合して全校生徒を盛り下げるよ!」

 

女子一同「おー!!」

 

殺(スポーツは勝つばかりが全てじゃない。負ける時は負け方も大事ですが……片岡さんは責任感があり、統率力(リーダーシップ)も抜群。女子チームはこの逆境もいい糧に出来るでしょう)

 

寺坂「……俺ら、晒し者とか勘弁だわ。お前らで適当にやっといてくれや」

 

吉田・村松「………」

 

寺坂、吉田、村松の悪ガキ三人衆はそのまま教室を出ていってしまった。

 

磯貝「寺坂!吉田!村松!……ったく」

 

前原「野球となりゃ頼れんのは杉野だけど……なんか勝つ秘策ねーの?」

 

前原が杉野に聞くと、杉野は俯いて答えた。

 

杉野「……無理だよ。最低でも3年間野球してきたあいつらと……ほとんどが野球未経験のE組(俺ら)。勝つどころか、勝負にもならねー。それに、かなり強いんだ。うちの野球部。特に今の主将『進藤』。豪速球で高校からも注目されてる。俺からエースの座を奪ったやつなんだけどさ。勉強もスポーツも一流とか、不公平だよな。人間って。……だけどさ、勝ちたいんだ殺せんせー!善戦じゃなくて勝ちたい!好きな野球で負けたくない!野球部追い出されてE組に来て、むしろその思いが強くなった!E組(こいつら)とチーム組んで勝ちた……」

 

殺「わくわく!」

 

杉野は熱心に話している中、殺せんせーの顔は野球ボールのようになっており、バットだとかグローブだとかボールだとか1人で野球が出来る某玩具だとかを持ってワクワクしていた。

 

杉野「お、おう……殺せんせーも野球したいのはよく伝わった」

 

殺「ヌルフフフ…!先生一度スポ根モノの熱血コーチをやりたかったんです!殴ったりは契約上出来ないのでちゃぶ台返しで代用します」

 

友・前原「用意良すぎだろ!!」

 

つーか殺せんせーのコーチ像古っ!!

明らかに昭和ですけどそれ!

この世界平成!現実令和!

 

殺「最近の君たちは目的意識をはっきりと口にするようになりました。殺りたい。勝ちたい。どんな困難な目標に対しても揺るがずに……!その心意気に応えて、殺監督が勝てる作戦とトレーニングを授けましょう!!」

 

このタコ……大丈夫か?

 

こいつの体育って…嫌な記憶しかないぞ?

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

球技大会当日──

 

荒木『それでは最後に……E組対野球部選抜の余興試合(エキシビション)を行います!』

 

俺らE組が入場すると、野球部も入ってくる。かなりやる気に満ちてんな……あいつら。

 

新「……で、野球部は何であんな気合い入ってるのさ」

 

杉野「野球部としちゃ、全校生徒にいいとこ見せる機会だしな。それに、俺ら相手じゃコールド勝ちで当たり前。最低でも圧勝が義務だから、あっちはあっちで情け容赦なく本気で来るぜ」

 

 

進藤「……学力と体力を兼ね備えたエリートだけが……選ばれた者として人の上に立てる。それが文武両道だ杉野。お前はどちらも無かった選ばれざる者だ。選ばれざる者が表舞台(グラウンド)に残っているのは許されない。E組共々、二度と表を歩けない試合にしてやるよ……」

 

 

菅谷「そーいや殺監督どこだ?指揮すんじゃねーのかよ」

 

渚「……あそこだよ。烏間先生に目立つなって言われてるから、遠近法でボールに紛れてる。顔色とかでサイン出すんだって」

 

友「顔色変えたらバレるだろ……」

 

①青緑 ②紫 ③黄土色

 

渚「今のはえっと……『殺す気で勝て』ってさ」

 

磯貝「確かに。俺らにはもっとデカい目標(ターゲット)がいるんだ。奴ら程度に勝てなきゃ、あの先生は殺せないな」

 

杉野「よっしゃ!殺るか!」

 

男子一同「おう!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

『E組の攻撃 1番 サード 木村君』

 

木村「やだやだ……。どアウェイで学校のスター相手に先頭打者かよ」

 

進藤(フン……まずは雑魚か)

 

殺「ヌルフフフ……さぁ味わわせてやりましょう……!殺意と触手に彩られた地獄野球を……!」

 

進藤が超高速の球を投げ、木村はバットを振れなかった。そしてボールがグローブに触れた途端、

ズドォォン…

凄まじい音が鳴った。

 

荒木『これは凄い!ピッチャー進藤君、流石の剛球!E組木村棒立ち!バットくらい振らないとかっこわるいぞ〜』

 

進藤(……雑魚は眼中に無い。警戒するのは杉野くらいだが、その杉野も野球部時代、練習試合で俺から全く打てていない。当然の話だ。格が違う。)

 

さて、そろそろ殺せんせーが木村に指示を出す番だな。

『例の作戦』、通じるのだろうか…

 

①赤 ②紫 ③ピンク

 

木村(りょーかい)

 

荒木『さぁ進藤、二球目!投げた!』

 

コォン……

 

進藤が投げた球は木村のバットに軽く当たり、転がった。『バント』だ…!

 

荒木『あーっと!バントだ!いい所に転がして…内野誰が捕るかで一瞬迷った!』

 

1番のバッターはE組一の瞬足の木村。

意表を突けば楽々セーフだろうという殺せんせーの読みは当たっていたようだ。

 

荒木『セーフ!これは意外!E組がノーアウト一塁だ!』

 

さて、次は新の番だが……。

 

新「………」

 

①黄色 ②緑 ③白

 

新「……」コンッ

 

木村に続き、新もバントでなんとか乗り切った。

作戦は成功だな……!

 

荒木『今度は三塁線に強いバント!前に出てきたサードが脇を抜かれた!』

 

殺(強豪とはいえ中学生。バントの処理もプロ並みとはいきませんねぇ……)

 

荒木『これでE組ノーアウトで一二塁!!』

 

進藤(な、何ィ~~~!?)

 

野球部監督(こいつら、何故バントがこんなに出来る!?素人目には簡単そうに見えるだろうが、進藤級の速球を狙った場所に転がすのは至難の業だ…!あの遅球の杉野では、練習台にもなるまいに!!!)

 

前原「どーよ…。こちとら、アレ相手に練習してんだぜ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

殺「殺投手(ピッチャー)は300㎞の球を投げ!!」

 

磯貝「うわぁっ…!?」

 

前原「打てるわけねぇだろ!!」

 

 

 

殺「殺内野手は分身で鉄壁の守備を敷き!」

 

殺A「間に合うかな〜?」

 

殺B「そちらがどうぞ」

 

殺C「いえいえ、どーぞそちらがお捕りになって」

 

木村「く、くそ…!」

 

千葉「完全に舐められてるな……」

 

 

 

殺「殺捕手(キャッチャー)はささやき戦術で集中を乱す!」

 

殺捕手「校舎裏でこっそりエアギターやってましたね……ノリノリでしたねぇ?三村君」

 

三村「なっ…!なんで…!?」

 

 

殺捕手「友君、修学旅行の時に不破さんと撮ったツーショット写真大切にしてますよね……。昨日嬉しそうに見てましたねぇ……」

 

友「てっ……テメェ何見てんだこのタコ!!」

 

 

確かにたまに見返して『可愛いなぁ…』って思ってるけど!!///

思春期男子なんだから当然だろ!!そりゃ!///

エロには興味無いけどやっぱり意識しちゃうんだよっ……///

このタコ!人のプライベートまで覗きやがって……!!

 

 

殺「先生のマッハ野球にも慣れた所で、次は対戦相手の研究です」

 

慣れてないが?

皆ボロボロなんだが?

目ついてんのか?

 

 

殺「この3日間、竹林君に偵察してきてもらいました」

 

竹林「面倒でした」

 

よし竹林。正直で宜しい。

 

竹林「進藤の急速はMAX140.5㎞。持ち球はストレートとカーブのみ。練習試合も9割方ストレートでした」

 

杉野「あの豪速球なら…中学レベルじゃストレート1本で勝てちゃうのよ」

 

恐ろしいやつだな……。俺球技なんて全然出来ないぞ。

 

殺「そう……。逆に言えばストレートさえ見極めればこっちのものです!というわけでここからの練習は、先生が進藤君と同じフォームと球種で、進藤君と同じにとびきり遅く投げましょう…。さっきまでの先生の球を見た後では、彼の球など止まって見える……!従って、バントだけなら充分なレベルで修得できます」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

荒木『ま、満塁だーー!!ちょ、調子でも悪いんでしょうか進藤君!?』

 

進藤「……!杉野ッ…!!」

 

①水色 ②緑 ③漆黒

 

殺せんせーの指示通り、杉野は獲物を狙うような目で進藤を見つめ、バントの構えを取る。

 

進藤は……確実にビビってる。

 

そして、ビビったまま進藤は投げた……

 

杉野(……。さっき文武両道って言ったよな。確かに……武力で俺はお前にかなわねー…。けど。例え弱者でも!狙いすました一刺しで、巨大な武力を仕留めることが出来る!)

 

杉野はバントの構えから打撃(ヒッティング)の構えに変え、そのまま進藤の球を打ち返した。

 

『打ったァー!!!深々と外野を抜ける!速者一掃スリーベース!!な、なんだよこれ…予定外だ…!E組3点先制!!』

 

杉野(俺はこいつらと…そういう勉強やってんだ!)

 

 

前原「いいぞ杉野!!」

 

菅谷「このままなら行けるんじゃね!?」

 

友「……いや。あれ見ろよ」

 

新「……!?り、理事長先生が…野球部の監督席に!?」

 

岡島「マジかよ……」

 

竹林「ラスボス登場……というわけか」

 

どうやらこの球技大会……俺らが思ってるより一筋縄では行かないようだな……。

 

 

 




番外編 仕返しの時間(後日談)

前原「はぁ…」

友「えっと……何があったんだ?皆……」

登校すると陽斗を初めとするE組数名が烏間先生に怒られていた。

前原「んー…『かくかくしかじか』でいいか?」

友「なるほど」

磯貝「それで納得するのか……」

友「そんなことなら呼んでくれればよかったのに。俺だって本校舎のヤツらに仕返ししたかったよ」

前原「いやー……人数足りてたし…。それに昨日、不破と剣術道場に行くって言ってたろ?邪魔するの悪いかなーって」

友「そ…それはどうも……。まぁ怒られずに済んだしな」

磯貝「あはは……確かにな」

友「ていうかこの回、この小説でもアニメでもカットされて…かなり不憫だな」

前原「その小説の主人公がそれを言うなよ……」

友「ちなみにこの後の片岡の回もアニメ同様カットされるよ」

片岡「!?」




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第24話 近い時間

《友 side》

 

男子が野球部と対戦している頃…一方女子は──

 

中村「いやー惜しかったね〜」

 

片岡「勝てるチャンス何度かあったよね。次リベンジ!」

 

茅野「ごめんなさい…私が足引っ張っちゃった…。女バスのキャプテンのぶるんぶるん揺れる胸元を見たら怒りと殺意で目の前が真っ赤に染まって……」

 

岡野「茅野っちのその巨乳に対する憎悪は何なの!?」

 

速水「さて…男子野球はどうなってるかな?」

 

 

後ろを振り向くと女子が見に来ていた。

もう女子バスケ(そっち)の試合は終わったのか。

 

不破「友君どう?」

 

友「おう不破……」

 

不破「えっ…すごい!野球部相手に勝ってるじゃん!」

 

友「…ここまではな。あれ見ろよ」

 

一回表から、ラスボス登場とはね……。

 

不破「…え…嘘……!?」

 

片岡「まさか……理事長先生が……!?」

 

友「…この試合。どーなるかわかんなくなってきたぞ」

 

理事長「……………」

 

理事長(ここでE組を勝たせてはいけない。彼らの目には少しずつ自信が漲りつつある。全てあの怪物の引いた糸だろうが…。それでは良くない。『やればできる』と思わせてはいけない。常に下を向いて生きていて貰わねば。秀でるべきでない者達が秀でると……私の教育理念が乱れるのでね……!)

 

荒木『今入った情報によりますと、野球部顧問の寺井先生は試合前から重病で……野球部員も先生が心配で野球どころじゃなかったとの事。それを見かねた理事長先生が、急遽指揮を執られるそうです!!』

 

 

友「陽斗、気をつけろよ?理事長は何するかわかんねーから」

 

前原「お、おう……」

 

荒木『いくつか指示を出して理事長先生が下がりました!さぁここからどのように……!こっ…これは!?』

 

前原「……!?んだよコレ…!?」

 

荒木『守備を全員内野に集めてきた!?こんな極端な前進守備は見たことない!!』

 

 

友「バントしかないって見抜かれてんな」

 

岡島「つってもダメだろ!?あんなに至近距離で!」

 

竹林「ルール上では、フェアゾーンならどこ守っても自由だね。審判がダメだと判断すれば別だけど……審判の先生はあっち側だ…。期待出来ないね」

 

荒木『内野のプレッシャーにビビったか5番前原!真上に打ち上げてワンナウト!』

 

不味いな……ここまで警戒されちゃバントが出来ねぇ……。

悪い流れになって来やがった…!!

 

 

岡島(冗談じゃねぇ……。こんな内野バントじゃ抜けねーよ……!どーすんだよ殺監督!!)

 

①…汗 ②……汗 ③…………泣

 

岡島(打つ手無しかよ!?!?)

 

その後、千葉ちゃんも打つことが出来ずに3アウトになってしまった…。

 

進藤は完全に理事長の洗脳を受けてる…。

さて、次は俺らが投げる番だが、ここは杉野が頼みの綱だ。

 

杉野の変化球…。野球部の連中はしらないから案の定動揺している!

 

菅谷「打たすなよ杉野。ボール来たら俺ら取れる自信ねーぞ?」

 

杉野「わかってらい」

 

荒木『に、2者連続三振ー!』

 

磯貝「流石だな。杉野」

 

前原「このまま勝てたらいいんだが……」

 

友「そうもいかないだろうな。ベンチでしっかり洗脳してるぜ?あの理事長」

 

野球部のベンチでは、理事長が進藤を洗脳していた。

『捩じ伏せる』だとか『踏み潰す』だとか聞こえてくる。

 

いやコワッ……!!

 

カルマ「……ん?殺監督…足元に出てくんなよ。踏んでほしいの?」

 

殺「次の打順は君からです…君の挑発で揺さぶってみましょう!」

 

……。監督、カルマに何指示してるんだ…?

カルマに頼むようなこと…やな予感がしてくる……。

 

荒木『二回の表!相変わらずこの鉄壁のバントシフト!』

 

審判「…ん?どうした赤羽。早く打席に入りなさい」

 

カルマ「ねーえ。これズルくない?理事長センセー。こんだけ邪魔な位置で守ってんのにさぁ?審判の先生何にも注意しないの…。一般生徒(お前ら)もおかしいと思わないのぉ?あっ…そっかぁ!お前らバカだから…守備位置とか理解してないんだね〜」

 

やったわあいつ。

絶対敵に回したよ……。

さっき監督が指示してたのはこれってことか……。

 

一般生徒「小さいことでガタガタ言うなE組が!」

 

一般生徒「たかだかエキシビションで守備にクレームつけてんじゃねーよ!」

 

一般生徒「文句あるならバットで結果出してみろや!!」

 

カルマ(ダメみたいよ?監督)

 

殺(いいんです。それで。口に出してはっきり抗議することが大事なんです)

 

 

その後、二回の表で為す術なく3アウト……。

二回のウラは洗脳済みの進藤がバッタバッタと打ちまくり、遂にE組と同点になってしまう……。

 

次で点を取らなければ、洗脳済みの進藤が3回ウラで確実に点を取るだろう。

延長になってもそれはそれでキツイ。

 

 

友「……ん?監督…カルマの時と言い、なんで足元に出てくるんだ。踏むぞ?マジで」

 

殺「踏むのは止めてください……。さて、先生との練習が活かされる時ですよ」

 

友「…!?マジで?こんなアウェイな中でやるのかよ…」

 

杉野「友……行けるのか……?」

 

友「はぁ…やるしかねーだろ?ここで点取らなきゃ終わりだ。殺ってやんよ…あの『練習』のせいでゲームの時間減ったんだ…結果出さねーと意味ねぇよ……!!」

 

 

不破「友君…!」

 

茅野「大丈夫かな友君……申し訳ないけど、球技が上手い印象は無いし……」

 

中村「かなりヤバい状況だよね……」

 

不破「友君なら…きっと何とかしてくれる…!私たちが信じてあげないと……!」

 

中村「……不破ちゃん」

 

倉橋「そうだよ…!私たちが応援してあげないと!」

 

片岡「女子が負けた分、男子に頑張ってもらわないとね」

 

 

女子の方から声援が聞こえる。

それと同時に他の男子の方から殺気を感じるがまぁいい。

 

 

友「………」

 

打席に着き、あのクソみたいな『練習』を思い出す。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

友「えっ…!?なんで俺が刀で銃弾を弾くことができるって知ってんだよ!?」

 

殺「この前不破さんに披露していたの…先生は見ていましたよ?」

 

友「…見てたのかよ。で?それと野球にどう関係があんの……まぁ何となくわかるけど」

 

殺「ヌルフフフ。刀で弾を弾く感覚で、バットで球を弾いてみましょう。そうとなったら早速特訓です!」

 

友「はぁ!?今からゲームしたいんだけど!?」

 

殺「それより特訓優先です!」

 

友「おかしいだろ!バントだけでいくんじゃ…!?」

 

殺「念には念をですよ!!では行きますよー!!」

 

友「嫌だぁぁぁ!やめてぇぇぇ!?新助けてぇぇぇ!?」

 

新「………兄貴…ご愁傷さま」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~まじで地獄だったわ……!

 

…さて、相手は…進藤だよ……。

 

ま、あのバケモノ監督の球に比べたら良い方だ。

 

が…それでも理事長先生に洗脳されてる分頭おかしい投球だろう。

 

進藤「………!!」ブゥン

 

投げた……!!

 

…………ここだッ!!!

 

カキィィン!!

 

荒木『打ったー!?E組がまさかの再びリードだー!!』

 

不破「す、凄い……!」

 

 

杉野「友……!」

 

前原「すげぇ…!」

 

磯貝「いつの間に練習を……」

 

新「…あそこでニヤついてる監督がしつこく教えたんだよ」

 

殺監督は凄くニヤニヤしている。

 

殺(ヌルフフフ……。流石友君。私の計算通りですねぇ。あの練習で彼の能力は飛躍的に上がり、ゲームの時間を削減することで生まれる殺意を球に向けさせる…!)

 

全て殺せんせーの読み通りって訳だ。

とにかく、これでなんとかリード。

 

岡島「いいぞ!友!」

 

三村「よくやった!」

 

友「全部あのタコの仕業だよ……。あー緊張した」

 

杉野「よし!次は俺が行ってくる!」

 

さぁ…理事長どう出る…?

っ…!?

 

三村「お、おい…!」

 

木村「マジか……!」

 

そう来たかッ…!!

 

荒木『あーっと!これは!?バント!!今度はE組が地獄を見る番だー!』

 

なるほど。俺らが先にやった事を後にやることで、『手本を見せる』っていう大義名分を得たと……。

 

監督……どうするんだよ…!

 

荒木『あっという間にノーアウト満塁だ!そして!ここで迎えるバッターは……!我が校が誇るスーパースター!進藤君だー!!』

 

進藤「踏み潰してやるッ……!!杉野ォォォ!!!!」

 

進藤……しっかり洗脳されてやがる……!!

 

監督、一体どう……あれ?どこに……って、またカルマのところ…?

 

カルマ「新〜。カントクから司令〜」

 

新「……は?…マジで言ってんのあの監督……」

 

一体何をする気だ…………なっ!?

荒木『こ、この前進守備はっ!?』

 

さっきの野球部と同じ…!明らかにバッターの集中を乱す位置にカルマと新が…!

さっきカルマに煽らせたのはこのためか…!

 

前進守備を妨害行為と見なすかは審判次第!

さっきのクレームを却下した以上今回も黙認するしかない!観客たちも同様だ…!!

 

カルマ「先にそっちがやった時、審判はなーんも言わなかった……。文句ないよね?理事長?」

 

理事長「……。ご自由に。選ばれた者は守備位置位で心を乱さない」

 

カルマ「へーえ。言ったね?」

 

新「それじゃ…遠慮なく」

 

そう言うと、カルマと新は更に前……。

 

振れば確実にバットにあたる位置まで移動した。

 

進藤「……は?」

 

これには流石の洗脳済み進藤も集中が切れたようだな…!

 

カルマ「気にせず打てよスーパースター……。ピッチャーの球は邪魔しないから」

 

理事長「…フフ。下らないハッタリだ。構わず振りなさい進藤君……。骨を砕いても打撃妨害を取られるのはE組の方だ」

 

いや、骨砕いたら犯罪だろ…!生徒に何させる気だあの理事長……!!

 

進藤(……!ナメたマネしやがってぇ……!大きく降ってビビらせりゃ退くに決まってるッ…!!)

 

進藤が大きくバットを振ると、カルマと新はそこから1歩も退かず、体を反ることでバットを避けた。

普段の訓練の賜物ってか?

それにしても度胸半端ねーな……!

新なんて数日前に来たばっかなのに……。

 

新「ダメダメ。そんな遅いスイングじゃ……」

 

カルマ「次はさぁ……殺すつもりで振ってごらん…?」

 

うわぁ腹立つ。

だが、この時点で進藤は理事長の戦略に体がついていかなくなっている。

ランナーも観客も、野球の形をした異常な光景に呑まれていた。

 

進藤「うわぁぁっ!!」ガスッ

 

荒木『腰が引けたスイングだっ!!』

 

進藤が打った弱い球をカルマがジャンプで捕り、キャッチャーの渚にパス。

 

これで三塁(サード)ランナーアウト!

 

磯貝「渚!そのボール三塁へ!」

 

カルマから受け取ったボールを、渚が木村へパス。

 

そして二塁(セカンド)ランナーアウト!

 

杉野「木村!次は一塁へ!進藤走ってないから焦んなくていいぞ!」

 

進藤はその場に座り込んでいる。

よほど精神が疲弊したんだろう。

 

そのうちに木村は一塁の創ちゃんにパス。

 

審判「打者(ピッチャー)ランナーアウト……。トリプルプレー……」

 

荒木『ゲ……ゲームセット…!!E組が……!野球部に勝ってしまった……!!』

 

周りの観客は『つまんねー』などと言い残しその場を去っていく。

観客達の間から、寺坂、吉田、村松の姿が見えた。

何だかんだ言ってちゃんと試合見に来てくれたんだな。

あいつらとも上手くやっていければいいのに。

 

でも…見てる人達は知る由もないだろうな。

試合の裏で、2人の先生が数々の戦略をぶつけ合っていた事なんて……。

 

殺(中間テストと合わせると、一勝一敗ってところですかね……。次は期末でケリをつけましょう)

 

 

杉野「……進藤」

 

進藤「………」

 

杉野「ゴメンな。ハチャメチャな野球やっちまって…。でもわかってるよ。野球選手としてお前は俺より全然強え。これでお前に勝ったなんて思ってねーよ」

 

進藤「…だったら、なんでここまでして勝ちに来た。結果を出して、俺より強いと言いたかったんじゃないのか?」

 

杉野「んー…。渚は、俺の変化球練習にいつも付き合ってくれたし、カルマや新の反射神経とか、皆のバントの上達ぶりとか、友のホームランとか、凄かったろ。でも、結果出さなきゃ上手くそれが伝わらない……。要はさ、

 

 

ちょっと自慢したかったんだ!昔の仲間に、今の俺のE組(仲間)のこと!」

 

進藤「……!フッ…覚えとけ杉野。次やる時は高校だ!」

 

杉野「おう!」

 

 

杉野(……高校まで地球があれば…な)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

不破「友君!」

 

友「おー不破。女子は負けちゃったんだっけ?」

 

不破「うん…惜しいところまでいったんだけどね……それより友君、さっきのホームラン!凄くかっこよかったよ!」ニコッ

 

友「………!/// 」

 

不破「どうしたの?」

 

友「い、いや…。ありがとな。殺せんせーに夜まで特訓させられてな……。何が『刀で銃弾を弾く要領でやればカンタン』だよ…。すげぇ緊張した…」

 

不破「あはは……。でも皆凄いよ…野球部相手に勝つなんて…!」

 

友「ま、今回のMVPは杉野だよ。あいつのお陰でここまで頑張れたんだからな!」

 

球技大会も無事に終え、

ついに『夏』の季節に入る…!

 

 

 



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第25話 アートの時間

《友 side》

 

岡島「7月1日…。今日から夏服!肌色が眩しいねぇ…健全な男子中学生にはつらい時k」ドゴッ

 

わけのわからないことを言ってる岡島にナイフを投げつける。

 

渚「岡島君……大丈夫?」

 

友「いーぞ渚。相手しなくて」

 

殺「…いけませんよ。露出の季節に平常心を乱しては」

 

友「いいこと言ってるけどその手に持ってるグラビアはなんだエロダコ。生徒の前で読むなよ教育者……なぁ不破」

 

不破「………う…うん///」

 

友「………ま、いいや///」

 

不破が可愛いから許す。うん。

 

中村・新(だから早くくっつけや!!)

 

殺(ヌルフフフ……夏の季節になり、生徒の純愛小説も筆が進みそうです……。特に第6章、『真弓友と不破優月、運命の出会い』……!)

 

友「死ねぇ!!」

 

殺「にゅやっ!?何故先生の思考が…!?」

 

岡島「へ…へへ…これくらいで俺はやられねぇ!それにしても今日から夏服だとは昨日まで思わなかったから心の準備が出来てねぇよ…」

 

友「もう一度死にたいのか?」

 

菅谷「………ああ。今日から半袖なのは計算外だった」ガラ

 

友「あ、おはよう創…ちゃ…ん?」

 

岡島・渚「……!?」

 

創ちゃんの左腕には…謎の禍々しい模様が…!!

 

菅谷「晒したくなかったぜ……。神々に封印されたこの左腕はよ……」

 

一同(どっ……どうした菅谷!?)

 

友・不破「カ……カッコいい!!!」キラキラ

 

一同(すっこんでろ漫画脳共!!!)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

倉橋「へ~!ペイントなんだこれ!」

 

菅谷「メヘンディアートっつってな。色素が定着したら1週間ぐらい取れねーんだ」

 

カッコイイ…!羨ましい…!

 

カルマ「あー。インドのやつっしょ」

 

菅谷「お、カルマ知ってんのか」

 

カルマ「うちの両親、インドかぶれで旅行行く度に描いてくるよ」

 

殺「よ、良かった!先生てっきりうちのクラスから非行に走る生徒が出たかと…!」

 

先生は『なぜ若者は非行に走るのか』とか『ゼロから入るカウンセリング』とかの本を持っている。

相変わらずそーゆーとこチキンだよな。

 

創ちゃんは絵や造形が凄く上手い。

ポスターから変装マスクまで、彼にかかればお手の物だ。

 

菅谷「よかったら殺せんせーにも描いてやろうか?まだ塗料が幾つか残ってるんだ」

 

中村「へー…。溶けたチョコで絵を描くみたいなやり方なんだ」

 

菅谷「そ。だから、スイーツ作ったりするやつは結構得意かもな」

 

殺「楽しみですねぇ…!先生こういうの1度は描いてみたかったんでs…ギャーーーーー!!!」

 

創ちゃんが塗料で描いたところが溶け始めた!?

 

てか先生うるさっ!!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

友「なるほど。対先生弾を粉末にして塗料の中に練りこんだのか…」

 

不破「確かに先生油断してたけど、殺すまでじっとしててはくれないよね……」

 

菅谷「うーむ…ダメか」

 

殺「アイディアは面白いですが菅谷君……効果としては嫌がらせのレベルです…。ていうか、先生普通にカッコイイ模様描いてほしかったのに……」シクシク

 

菅谷「わ、悪かったよ!普通の塗料で描いてやるって!」

 

友「創ちゃーん!殺せんせーの次俺にもカッコイイ模様描いてよー!」

 

不破「あ、私も!!」

 

 

倉橋「私もやってほしー!」

 

岡島「俺も俺も!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

不破「はぁぁ…カッコイイ……」

 

友「やっぱロマンだよなぁ…こういうの…」

 

皆がメヘンディアートに魅了されていると、ドアが勢いよくガララと開き、ビッチ先生が入ってきた。

 

イリーナ「私の色香に悲鳴を上げろオス達よ!おはy…ギャーーーーッ!!!」

 

菅谷「おうビッチ先生…皆見てるうちに描いて欲しくなったみたいでさ……」

 

殺「しばらくして塗料を剥がすと色素が定着してるんですって!楽しみで授業が手につきません!」

 

イリーナ「お前はそれでも担任か!?」

 

まあ、ビッチ先生が言わんとしてることは分かる。

だがこんなのワクワクしない訳がなかろう!!!

 

殺「ところで菅谷君…。見ていたら先生も誰かに描いてみたくなってきました!!」

 

菅谷「いいけど……皆に描いちゃったから、もうまっ(サラ)なキャンバス残ってない………」

 

殺・菅谷「あ」

 

2人はビッチ先生の方を向いている。

ビッチ先生も気付いたようで、やや後ずさりをしている。

 

殺「…あるじゃないですか。好き放題書けそうな面積の広いキャンバスが……!」

 

イリーナ「ちょ……ふざけんじゃないわよ…!誰がそんな……ッ!?」ガク

 

足元にあった塗料を踏んずけて転んで気絶した………なんなんだこの人は。

 

殺「安静にしてる間に、先生はこっち半分、菅谷君はそっち半分を!」

 

菅谷「ほっほー。俺と競う気かね?」

 

 

 

新「すごいな菅谷……。いつもの教室があっという間に彼色に染まっちゃった…」

 

友「ああ。芸術肌なだけにさっきみたいに目立ちすぎちゃう時があってさ。2年の時に、それが原因で素行不良扱いされたんだって」

 

 

菅谷「……。よしこれでどーだい?ハートや花の模様を付けてみた。そもそもファッションアートだしな。外に出て楽しい感じに仕上げてやったぜ」

 

杉野「おー!」

 

三村「流石菅谷!」

 

矢田「これなら逆にビッチ先生喜ぶんじゃない?」

 

倉橋「ねー♪」

 

友「殺せんせーの方はどうなんだ?」

 

 

殺「ヌルフフフ。先生も負けてはいませんよ!ごらんなさい!」

 

一コマ目

『おじさん:夏は衣替えの季節だよタコ君』

二コマ目

『タコ:僕も衣替えがしたいよ!!』

『おじさん:よーし!おじさんに任せろ!』

三コマ目

『タコ:それでどうするの?』

『おじさん:“ソデ”を切って新しい“衣”を付けるのさ……』

 

友・不破「何故に漫画!?!?」

 

殺「いや…アートとかファッションは苦手なので得意な分野で……」

 

新「逃げに走るくらいなら描くな!!」

 

倉橋「左右で違和感ありすぎるよ……」

 

前原「ビッチ先生、もう外歩けねーぞ……」

 

菅谷「……いや、あえて漫画をポップアート的な図柄として活かす手もあるぜ。枠の周囲に……ホラ。こんな模様どうよ」

 

一同「おおおお!」

 

安っぽいタコの漫画が一気にアートに!

 

殺「いや、あまりキレイに収まりすぎると気障ったらしい!どこか1ヶ所は笑いを取らなくては!」

 

新「なんでそこで張り合うの!?」

 

殺せんせーはビッチ先生の顔にメガネと髭を描き足し、額に『中肉中背』と書いた。

え?だっさ。(辛辣)

 

一同「それ見た事か!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

その後、菅谷がアートの路線にしては殺せんせーがギャグの路線に戻しを繰り返していった……。

 

杉野「収拾つかなくなってきたな……」

 

岡野「どうするの?1週間は落ちないんでしょ?これ」

 

菅谷「うーん…。一応落とせない事はないけど…めんどいな」

 

イリーナ「………」パチ

 

矢田「あ……起きた……」

 

ビッチ先生は自分の現状を確認し、教室を出ていった…

 

陽斗が恐る恐る廊下を確認すると……

 

ビッチ先生は今まで出したことの無い殺気を出し、『本物の銃』を持ちながら歩いてきた……。

 

前原「激しくお気に召さなかった!!!」

 

友「あの銃本物だぞ!!」

 

イリーナ「死ね!!!あんた達皆殺しにしてやるわ!!」

 

殺「ご、ごめんなさい!つい熱中してしまって!でも教室壊れるから実弾はやめて!!」

 

杉野「やめろってビッチ先生!!すぐ落とせば定着しないらしいぜ!」

 

イリーナ「キーーーッ!!折角の夏服デビューが台無しよ!!」

 

 

 

友「創ちゃんが全部やればあそこまで怒らなかったろうに……殺せんせーが余計なモン足すから…」

 

菅谷「だろうな……。普通はさ。答案の裏に落書きしたらスルーされるか怒られるだろ?だけど、あのタコは安っぽい絵を加筆してくる。むしろ嬉々としてさ」

 

友「それはそれで迷惑だな……」

 

菅谷「考えてみりゃ当然だよな。落書き程度でマイナス評価になるわけがない。なんせ殺しに行ってもいいんだから……ちょっとぐらい異端な奴でもE組(ここ)じゃ普通だ。いいもんだな。殺すって」

 

友「…ああ」

 

7月。

本格的な夏の始まり。

殺せんせーの暗殺期限まで、残り8ヶ月。

 

右にいる創ちゃんと話してると、左から陽斗が近付いてくる。

 

前原「そーいやさ。友、プールどうすんの?今年は」

 

友「……ああ。勿論出ねーよ」

 

菅谷「なんだ?プール休むのか?」

 

友「ああ。中学入ってからプールはずっと休んでる…。理由は言えないけど…」

 

…………7月。

先程の通り、本格的な夏の始まりだが、友にとっては『嫌なこと』が待っていた……。

 

 

 

 




美術力ランキング
男子      女子
1位 菅谷創介  1位 倉橋陽菜乃
2位 真弓友   2位 不破優月
3位 吉田大成  3位 茅野カエデ
4位 杉野友人  4位 狭間綺羅々
5位 竹林考太郎 5位 矢田桃花

殺せんせーからのコメント
真弓友
 漫画キャラの模写は勿論、何も見なくてもカッコよく描けてます。美術家の菅谷君とはまた違う、漫画家としての才能を持ってますね。

真弓新
 びっくりするほど下手ですね…。ですが本人曰く、バラエティで披露した時はかなりウケたらしいので画力を上げるつもりは無いそうですが、上手い方が仕事も来ると思うのですが……。




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第26話 訓練の時間

《烏間 side》

 

─訓練の中間報告─

 

4ヶ月目に入るに当たり、

『可能性』がありそうな生徒が増えてきた。

 

『磯貝悠馬』と『前原陽斗』

運動神経が良く、仲もいい2人のコンビネーション。

2人がかりなら、俺にナイフを当てられるケースが増えてきた。

 

『赤羽業』

一見のらりくらりとしているが…その目には強い悪戯心が宿っている。どこかで俺に決定的な一撃を加え、赤っ恥をかかそうかなどと考えているが……

そう簡単にいくかな?

 

『真弓友』

1人だけ対先生ナイフを使わず、対先生日本刀を使っている。剣術道場に通っているため剣の扱いに長けている。模擬暗殺を行う度に新たな動きをしてくるため、裏でもかなり努力をしているのだろう。

 

『真弓新』

この中では1番暗殺の経験が少なく、まだナイフを当てるまでには至っていないが、アイドル活動をしているため体力があり、アクロバットの技を使って思わぬ動きを見せる。これからが楽しみな生徒だ。

 

女子は、体操部出身で意表を突いた動きができる『岡野ひなた』と、男子並みの体格(リーチ)と運動量を持つ『片岡メグ』。

 

このあたりが近接攻撃(アタッカー)として非常に優秀だ

 

殺『そして殺せんせー。彼こそ、俺の理想の教師像だ。あんな人格者を殺すなんてとんでもない!』

 

烏間「人の思考を捏造するな。失せろ標的(ターゲット)

 

『寺坂竜馬』『吉田大成』『村松拓哉』

こちらは未だに訓練に対して積極性を欠く。3人とも体格は良いだけに……彼らが本気を出せば大きな戦力になるのだが。

 

全体を見れば、生徒たちの暗殺能力は格段に向上している。この他には目立った生徒はいないものの……

 

ぬるり。

 

……!?後ろから強い殺気……!?

 

バシッ

 

渚「……うっ……いった…」

 

烏間「………!すまん。ちょっと強く防ぎすぎた。立てるか?」

 

渚「あ、平気です…」

 

杉野「ばっかでー。ちゃんと見てないからだ」

 

渚「う……見てたんだけどな」

 

 

『潮田渚』

小柄ゆえに多少はすばしっこいが、それ以外に特筆すべき身体能力は無い温和な生徒。

……気のせいか?

今感じた得体の知れない気配は……!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

烏間「それまで!今日の体育は終了!」

 

はぁ…ようやく終わったか…。

ダンスの練習や舞台の稽古よりもキツイぞ……。

 

木村「いやーしかし当たらん!」

 

岡島「スキ無さすぎだぜ烏間先生!」

 

倉橋「烏間せんせ〜!放課後街で皆でお茶してこーよ!」

 

新「丁度最近新しいお店出来たんですよ〜」

 

俺は自他ともに認めるかなりのスイーツ好きだ。

この前も1人でスイーツ店に行った。

ちゃんと変装したのにバレたけど……。

 

烏間「……ああ。誘いは嬉しいが、この後は防衛省からの連絡待ちでな」

 

三村「私生活でもスキがねーな……」

 

矢田「っていうより……私達との間にカベっていうか…一定の距離を保ってるような……」

 

倉橋「厳しいけど優しくて……私たちのこと大切にしてくれてるけど、でもそれってやっぱり……ただの任務だからに過ぎないのかな……」

 

殺「そんなことありません。確かにあの人は…先生の暗殺のために送り込まれた工作員ですが、彼にもちゃんと素晴らしい教師の血が流れていますよ」

 

 

新「………ん?なぁ、あそこにいる男の人、誰だ?」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

烏間先生と入れ替わるように俺らのグラウンドに、

大男が入ってきた。

 

鷹岡「やっ!俺の名前は鷹岡明!今日から烏間を補佐してここで働く!よろしくなE組の皆!これは、お土産だ!」

 

彼は持っていた袋を置き、中身を開いた

 

三村「な、なんだ?ケーキとか飲み物だ…!」

 

茅野「これ!『ラ・ヘルメス』のエクレアじゃん!」

 

不破「こっちは『モンチチ』のロールケーキ!」

 

 

友「不破もスイーツ好きなのか?」

 

不破「うん!1度食べてみたかったんだ!このロールケーキ!」

 

友「なんか意外だな。俺も同じやつ食べよっかな」

 

不破「うん!凄く美味しいって評判らしいから!」

 

中村(なんであんな距離近いのに付き合ってないの……。そもそも気付いてるのかどうかさえわかんないし!)

 

 

磯貝「いいんですか?こんな高いの…!」

 

新「大人気洋菓子店の限定品までありますよ!?」

 

鷹岡「おう食え食え!俺の財布を食うつもりで遠慮無くな!モノで釣ってるなんて思わないでくれよー?お前らと早く仲良くなりたいんだ!それには、皆で囲んでメシ食うのが1番だろ!」

 

この一言で、皆スイーツを食べだした。色んなスイーツがあるし、ちゃんと水まで用意してある。

 

矢田「でも、鷹岡先生よくこんな甘いものブランド知ってますね!」

 

鷹岡「ま、ぶっちゃけラブなんだ。砂糖がよ」

 

前原「デカい図体して可愛いな……」

 

新「ちょっ……!殺せんせーそれ俺のモンブランだぞ!!」

 

殺「にゅ……」

 

鷹岡「お〜殺せんせーも食え食え!!ま、いずれ殺すけどな!はっはっは!」

 

 

木村「同僚なのに烏間先生と随分違うスね」

 

原「なんか近所の父ちゃんみたいですよ?」

 

鷹岡「ははは!いいじゃねーか父ちゃんで!同じ教室にいるからには…俺たち、家族みたいなもんだろ?」

 

友「………」モグモグ

 

今の一言……。

なんだろう。少し気になる…。

 

不破「…?どうしたの友君?」

 

友「……ちょっといいか?不破」

 

不破「え?」

 

友「鷹岡先生、ちょっと教室に自分の水筒あるんで取ってきま〜す。不破も一緒に行こ」

 

不破「えっ、ちょ、ちょっと友君!」

 

鷹岡「…おう。早く戻ってこいよ」

 

 

 

 

 

 

友「…不破。ごめんな連れ出して。あの鷹岡先生って人……なんか違和感あるんだ」

 

不破「違和感……?」

 

友「ああ。皆には言ってなかったんだけど…俺は両親を亡くしてる」

 

不破「えっ……?」

 

友「悠馬と陽斗と航輝、あと多分殺せんせーは知ってるけど、他の奴らは知らない。新と二人暮ししてるのも、今の俺には新以外の家族がいないからだ」

 

不破「…………」

 

友「もし、俺が両親を亡くしているから、皆が持ってるものが欠けていて、それが原因で違和感を感じてるならいいんだけど、もし両親を亡くしているからこそ感じるものだとしたら…」

 

不破「…だとしたら……?」

 

友「あの人は……かなり危険だ」

 

不破「………!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

友「鷹岡先生戻りました〜」

 

鷹岡「おう!お前らが行ってる間に全部無くなっちまったぞ?だが安心してくれ。また買ってくるからよ!」

 

友「それはどうも…」

 

 

磯貝「明日から体育の授業は鷹岡先生が?」

 

鷹岡「ああ!烏間の負担を減らすための分業さ!あいつには事務作業に専念してもらう!大丈夫!さっきも言ったが俺達は家族だ!父親の俺を全部信じて任せてくれ!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

鷹岡「よーし。皆集まったな!赤羽は……サボり魔ってのは聞いてるから仕方ないな。では、今日から新しい体育を始めよう!ちょっと厳しくなると思うが、終わったらまたウマいモン食わしてやるからな!」

 

中村「そんな事言って、自分が食いたいだけじゃないの?」

 

鷹岡「まーな……お陰様でこの横幅だ」

 

上手く皆の心を掴んでる……やっぱり昨日感じた違和感は気のせいだったのか……?

 

鷹岡「さて!訓練内容の一新に伴ってE組の時間割も変更になった!これを皆に回してくれ!」

 

菅谷「……時間割?……ってえ…!?」

 

時間割の内容は非常におぞましいものだった。

 

 

月〜金曜日は4時間目から10時間目まで訓練…

土曜日は2時間目から6時間目……

 

夜9時まで訓練だなんて………こんなの狂ってる!!

 

皆も…かなり驚いてる…!

 

鷹岡「このぐらいは当然さ……!この時間割(カリキュラム)についてこれればお前らの能力は飛躍的に上がる。では早速……」

 

前原「ちょっ……!待ってくれよ!」

 

明らかにおかしい時間割に陽斗が訴える……。

だが…こんな狂った時間割作るやつだ…!

抗議した所でどうにもならない……!

でも、こんなの許されてたまるかよ…!!

 

前原「勉強の時間これだけじゃ成績落ちるよ!遊ぶ時間もねーし…!出来るわけねーよこんなの!!」

 

『出来るわけない』と陽斗が言った瞬間…

 

鷹岡は陽斗の髪を掴み、腹に膝蹴りをした…。

 

前原「が……は…ッ」

 

鷹岡「出来ないじゃない…『やる』んだよ。言ったろ…?俺達は『家族』で、俺は『父親』だ。世の中に父親の命令を聞かない家族がどこにいる…?」

 

…………!!

 

鷹岡は狂った表情で話を続ける。

 

鷹岡「抜けたい奴は抜けてもいいぞ?その時は俺の権限で新しい生徒を補充する。けどな?俺はそういう事したくないんだ…。お前らは大事な家族なんだから。父親として家族皆で地球の危機を救おうぜ!なっ!」

 

そう言って、鷹岡は神崎の肩を掴む。

恐怖で支配するつもりかよ……!

 

鷹岡「な?お前は父ちゃんに着いてきてくれるよな…?」

 

神崎「は…はい……あの…。私……。私は嫌です。烏間先生の授業を希望します」

 

神崎……!

 

直後、バチッと凄まじい音が鳴った。

 

神崎が鷹岡に叩かれたのだ……!

 

 

杉野「神崎さんッ!!」

 

鷹岡「………お前らまだわかってないようだなぁ…『はい』以外は無いんだよ…。……なんだ?お前ら…その目は。そろそろ自分の立場を理解したらどうだ…?」

 

鷹岡が次に目をつけたのは……不破だ…!

 

不破「えっ………」

 

鷹岡「……なぁ。わかるよなぁ?」

 

鷹岡は拳を…不破に繰り出した。

 

ガッ……

 

無意識に体が動いた…。

 

鷹岡の拳が不破にあたる直前で止まった。

 

俺が鷹岡の背中に対先生日本刀を当てたからだ。

 

鷹岡「………何してんだ…?友……」

 

友「テメェこそ何してんだ……さっきから…俺の大切な人に……大切なE組(クラス)に……何やってんだァ!!!」

 

磯貝「……友!」

 

新(兄貴…!ブチギレてる……!)

 

 

鷹岡「どうやら…お仕置が必要だなァ!!」ドゴッ

 

友「ぐ……あっ…ッ!テメェだけはッ…許さねぇ……!!」

 

対先生日本刀を何度も振るうが、鷹岡の強靭な肉体には効いていないようだった。

 

鷹岡「そんだけかァ…?折角俺が…お前の親の代わりになろうとしたのになァ?『疫病神』クン!」

 

一同「…!?」

 

友「……!………許さねぇ…絶対にっ!!!」

 

そういって俺は精一杯の力を込め刀を振るった。

 

鷹岡「……ッ!!てめぇっ…!」

 

さっきよりも鷹岡は確実にダメージを受けた。

 

が、鷹岡は俺の事をいとも容易く蹴り飛ばした。

 

友「が…ぁ……ッ」

 

うずくまる俺に鷹岡が近付いてくる…!

 

鷹岡「てめぇ……父親に反抗しやがって……トドメの一撃を……」

 

まずい…このままじゃ…殺られ…

 

烏間「………そこまでだ。鷹岡。それ以上…生徒達に手荒くするな!暴れないなら…俺が相手を務めてやる…!」

 

友「烏間……先…生…。来るの…遅くないっすか…」

 

烏間「君達の担任が、友君の鷹岡に対する気持ちを尊重してやりたいと言ってな。だが結局助けるなら、忠告を聞かずにもっと早く助けるべきだった。すまない」

 

友「いい…っすよ…。むしろ…久々にあそこまで…キレたから…逆にストレス…発散出来たし…」

 

不破「友君ッ……!」

 

殺「友君…あまり喋らない方がいい。保健室へ運びます」ビュッ

 

不破「…………っ…」

 

 

 

 



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第27話 才能の時間

《新 side》

 

鷹岡に傷を負わされた兄貴がマッハで保健室に運ばれた……。

だが、さっきの鷹岡の『疫病神』……。

あんなの言われたら…そりゃブチギレる…。俺だってキレかけた。

 

鷹岡「……烏間!そろそろ横槍を入れてくる頃だと思ったぜェ?言ったろ烏間…?これは暴力じゃない。教育なんだ。暴力でお前とやり合う気は無い……。やるなら…あくまで教師としてだ!」

 

どういう事だ……?

 

鷹岡「お前らもまだ俺を認めてないだろう…。父ちゃんもこのままじゃ不本意だ…。そこでこうしよう!こいつで決めるんだ!」

 

磯貝「……ナイフ?」

 

鷹岡「烏間。お前が育てたこいつらの中でイチオシの生徒をひとり選べ。そいつが俺と闘い、1度でもナイフを当てられたら……お前の教育は俺より優れていたのだと認めよう……。その時はお前に訓練に全部任せて出てってやる!男に二言はねぇ!」

 

それを聞いて一部の生徒がやる気になる。

当然だ。クラス全員が出ていって欲しいと思ってるんだから。

 

鷹岡「だが……使うナイフは対先生(これ)じゃない。殺す相手人間(オレ)がなんだ……使う刃物も…本物じゃなくちゃなァ!!」

 

鷹岡が手にしているのは……本物のナイフ…!

皆の顔が一気に青ざめた……。

 

烏間「よせっ!彼らは人間を殺す訓練も用意もしていない!」

 

鷹岡「安心しな…寸止めでも当たった事にしてやるよ。俺は素手だし、これ以上無いハンデだろ…?さぁ!烏間!ひとり選べよ!嫌なら無条件で俺に降伏だぁ!生徒を見捨てるか!生贄として差し出すか!どっちみち酷い教師だなお前は!!はっははー!!」

 

こんなの無理に決まってる……!

こんなの……烏間先生は……一体誰を……

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《烏間 side》

 

俺は……まだ迷っている。

 

地球を救う暗殺者を育てるには……奴のような容赦のない教育こそ必要ではないのか?

 

……この教育(職場)についてから迷いだらけだ。

 

仮にも鷹岡は精鋭部隊に属した男。訓練3ヶ月の中学生の

(ナイフ)が届くはずがない。

 

その中で1人だけ……

 

わずかに『可能性』がある生徒を……

 

危険にさらしていいものかも迷っている……。

 

烏間「……渚君…。やる気はあるか?」

 

杉野(なっ……)

 

新(なんで渚を………!?)

 

烏間「選ばなくてはならないなら恐らく君だが……返事の前に俺の考え方を聞いて欲しい。地球を救う暗殺任務を依頼した側として…俺は君達とはプロ同士だと思っている。プロとして君達に払うべき最低限の報酬は、当たり前の中学生活を保障する事だと思っている。だから、このナイフは無理に受け取る必要はない。その時は俺が鷹岡に頼んで……『報酬』を維持してもらうよう努力する」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《渚 side》

 

僕は、この人の目が好きだ。

こんなに真っ直ぐ目を見て話してくれる人は家族にもいない。

 

立場上、僕らに隠し事も沢山あるだろう。

 

何で僕を選んだのかもわからない。

 

けどこの先生が渡す(ナイフ)なら信頼できる。

 

それに、神崎さんと前原君、友君のこと…

 

せめて一発返さなきゃ気が済まない。

 

渚「……やります」

 

僕は烏間先生からナイフを受け取った。

 

 

鷹岡「お前の目も曇ったなァ烏間。よりよってそんなチビを選ぶとは」

 

烏間「渚君。鷹岡は素手対ナイフの闘い方も熟知している。全力で振らないとかすりもしないぞ」

 

渚「……はい」

 

烏間「いいか。ナイフを当てるか寸止めすれば君の勝ち。君を素手で制圧すれば鷹岡の勝ち。それが奴の決めたルールだ。だがこの勝負、君と奴の最大の違いはナイフの有無じゃない。わかるか?」

 

渚「……?」

 

 

イリーナ「カラスマの奴…頭が変になったのかしら?なんであそこで渚を出すのよ?」

殺「見てればわかります。烏間先生が出した答えは正しいですよ。あの条件なら、私でも渚君を指名するでしょう。……いずれにせよ、勝負は一瞬で決めるでしょうね」

 

 

菅谷「おい…渚のナイフが当たると思うか…?」

 

木村「無理だよ…烏間先生と訓練してりゃ、嫌でもわかる…」

 

三村「まして…本物のナイフなんて使えるはずが……!」

 

茅野(……渚!)

 

 

 

鷹岡「さぁ……来い!!」

 

 

鷹岡(公開処刑だ…!全力で攻撃を躱してからいたぶり尽くす!生徒全員が俺に恐怖し、俺の教育に従うようにな……)

 

 

僕は、烏間先生の言葉を思い出した。

 

 

『いいか。鷹岡にとってのこの勝負は『戦闘』だ。目的が見せしめだからだ。二度と皆を逆らえなくする為には…攻防ともに自分の強さを見せつける必要がある。対して君は『暗殺』だ。強さを示す必要も無く、ただ1回当てればいい。そこに君の勝機がある。奴は君にしばらくの間に好きに攻撃させるだろう。それらを見切って戦闘技術を誇示してから、じわじわと君を嬲りにかかるはずだ。つまり、反撃の来ない最初の数撃が最大のチャンス。君ならそこを突けると思う』

 

渚「………ッ…!」

 

鷹岡(そろそろ気付いたな…?刃物を持つとはどういう事か…。『本物のナイフで人を刺したら死んじゃうよ……こんなの、本気で使えるわけがない!』と…俺はな、それに気付いて青ざめるド素人の顔が大好きなんだァ…さぁ見せろ…!絶望の顔を…!!)

 

渚「…………」

 

僕は、本物のナイフを手に、

どう動けばいいのか少し迷って…

烏間先生のアドバイスを思い出した。

 

そうだ。闘って勝たなくていい。

 

 

 

───殺せば 勝ちなんだ───

 

 

だから僕は、笑って普通に近付いた。

通学路を歩くみたいに──

普通に─

 

鷹岡先生の腕に僕の体がポンと当たる。

 

そして……ナイフを鷹岡先生に向けて振った。

 

ここで初めて鷹岡先生は気付いたみたいだ。

自分が殺されかけている事に。

 

鷹岡先生はギョッとして体勢を崩した。

 

誰だって殺されかけたらギョッとする。

 

殺せんせーでもそうなんだから。

 

重心が後ろに偏ってたから、

服を引っ張ったら転んだので……

 

 

仕留めに行く。

 

正面からだと防がれるので、

 

背後に回って…確実に……。

 

ピタッ……

 

鷹岡先生の首元に…ナイフが当たった。

 

渚「……捕まえた」

 

一同(……!!!)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《烏間 side》

 

なんて事だ……!

 

予想を遥かに上回った……!!

 

普通の学校生活では、絶対に発掘される事の無い才能!!

 

殺気を隠して近付く才能!

 

殺気で相手を怯ませる才能!

 

『本番』に物怖じしない才能!

 

俺が訓練で感じた寒気は………!

 

あれが訓練じゃなく、本物の暗殺だったら……!!

 

戦闘の才能でも、

暴力の才能でもない!

 

暗殺の才能!!

 

これは…咲かせても良い才能なのか……!?

 

渚「あ…あれ?峰打ちじゃダメなんでしたっけ…?」

 

殺「そこまで!勝負ありですよね?烏間先生。全く!本物のナイフを生徒に持たすなど、正気の沙汰ではありません。怪我でもしたらどうするんですか」

 

…ケガしそうならマッハで助けに入っただろうが。

 

それにしても…

 

杉野「やったじゃん渚!」

 

茅野「ほっとしたよもー!」

 

岡島「大したモンだよ!」

 

磯貝「よくあそこで本気でナイフ振れたよな!」

 

渚「いや、烏間先生に言われた通りやっただけで……鷹岡先生強いから、本気で振らなきゃ驚かす事なら出来ないかなって…………いった!」パチーン

 

前原「………」

 

渚「なんで叩くの前原君!?」

 

前原「あ、悪い。ちょっと信じられなくてさ。でもサンキュな渚!今の暗殺スカッとしたわ!」

 

新「渚……ありがとな!兄貴にも後で伝えとくぜ!お前の活躍!」

 

渚「ちょ、ちょっと……」

 

ああしてると、とても彼が強くは見えない。

 

だからこそ、鷹岡はまんまと油断し反応が遅れた。

 

暗殺者にとっては、『弱そう』な事はむしろ立派や才能なのだ!

 

更に、自然に近付く体運びのセンス。敵の力量を見て急所を狙える思い切りの良さ……。

 

 

暗殺でしか…使えない才能……!

 

 

だが、喜ぶべき事なのか…!?

 

このご時世に暗殺者の才能を伸ばしたとして、E組(ここ)ではともかく、彼の将来にプラスになるのか?

 

考えていると、左肩にぶにゅんとした感覚……

 

殺「今回は随分迷ってばかりいますねぇ。あなたらしくない」

 

烏間「…悪いか」

 

殺「いえいえ。でもね、烏間先生」

 

奴が指を指した先では、鷹岡がいた。

 

渚君に強い殺気を放っている。

 

鷹岡「このガキ…!父親も同然の俺に刃向かって……!まぐれの勝ちがそんなに嬉しいか!もう1回だ!!今度は絶対油断しねぇ!!心も体も全部残らずへし折ってやる…!!」

 

助けに行かねばと向かおうとすると、奴が俺の肩を抑えた…。

それと同時に、渚君が話し出した。

 

渚「…確かに。次やったら絶対に僕が負けます。でも、はっきりしたのは鷹岡先生…。僕らの『担任』は殺せんせーで、僕らの『教官』は烏間先生です。これは、絶対に譲れません。父親を押し付ける鷹岡先生より、プロに徹する烏間先生の方が、僕はあったかく感じます。」

 

……!!

 

渚「本気で僕らを強くしようとしてくれてたのは感謝してます。でもごめんなさい。出ていって下さい」

 

鷹岡「……!!」

 

 

イリーナ「じゃあ私はあんたらのなんなのよ」

 

竹林「僕らのビッチです」

 

イリーナ「殺す…!」

 

 

殺「先生をしてて一番嬉しい瞬間はね、迷いながら自分が与えた教えに……生徒がはっきり答えを出してくれた時です。そして烏間先生……生徒がはっきり出した答えには、先生もはっきり応えなくてはなりませんねぇ…」

 

鷹岡「黙って聞いてりゃあ……ガキの分際でぇっ!!!」

 

鷹岡は渚君に殴りかかった……。

そして、俺は鷹岡を肘打ちで止めた。

 

鷹岡はそのまま地面に倒れた。

 

烏間「…俺の身内が迷惑かけてすまなかった。後の事は心配するな。俺一人で君達の教官を務められるよう、上の交渉する。いざとなれば、銃で脅してでも許可をもらうさ」

 

 

理事長「……交渉の必要はありません」

 

烏間「…!!理事長…!?」

 

まずい…この男の教育理念からすると…

E組を消耗させる鷹岡の続投を望むのか…?

 

理事長「…新任の先生の手腕に興味があったのでね。様子を見に来ました。……でもね鷹岡先生…。あなたの授業はつまらなかった。教育に恐怖は必要です。一流の教育者は恐怖を巧みに使いこなす。が、暴力でしか恐怖を与える事ができないなら、その教師は三流以下だ。解雇通知です。以後…あなたはここで教えることは出来ない。椚ヶ丘中(ここ)の教師の任命権な防衛省(あなた方)には無い。全て、私の支配下だと言うことをお忘れなく」

 

鷹岡「………!」ダッ ダダダ

 

鷹岡はそのまま去ってしまった。

 

木村「鷹岡クビ…」

 

千葉「てことは、今まで通り烏間先生が…!」

 

一同「よっしゃあ!」

 

鷹岡を切ることで誰が支配者かを明確に示した。

どう転ぼうが奴の掌の上と言うことか……。

 

殺「相変わらずあの人の教育には迷いが無いですね…」

烏間「…例えばお前は、『将来は殺し屋になりたい』と彼が言ったら、それでも迷わずに育てるのか?……彼自身は気付いてないが、その才能がある。お前の暗殺に役立つかは疑問だが、人間相手なら有能な殺し屋になれるだろう」

 

殺「……答えに迷うでしょうね。ですが、良い教師は迷うものです。本当に自分はベストの答えを教えているのか……。内心は散々迷いながら、生徒の前では毅然として教えなくてはいけない。決して迷いを悟られぬよう…堂々とね。だからこそカッコいいんです。先生っていう職業は…ね」

 

……俺も。暗殺(この)教室で熱中(ハマ)ってしまっているのかもな。

 

迷いながら人を育てる面白さに…。

 

 

 

 



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第28話 疫病神の時間

 

《新 side》

 

なんとか鷹岡の一件は渚や烏間先生のおかげでなんとかなった…。

 

俺達は喜んでいるが、まだ本心から安心は出来ていない。

 

不破「殺せんせー!友君は!?」

 

そう…保健室へ運ばれたバカ兄貴。

 

殺「今はぐっすり眠っています。日々の疲れが溜まったのでしょう。普段から訓練を受け、剣術道場に通い、毎日のようにゲームをしている。最近は勉強もきちんと手をつけている。これでは疲労が溜まるでしょう。彼にはしばらくの休息が必要でしょう」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《不破 side》

 

不破「渚君、交代だよ」

渚「…うん」

 

今、私たちは交代で友君の看病をしている。

 

かなりボロボロだ…。

 

さっきの殺せんせーの話から、疲労がかなり溜まっていたことがわかる。

 

私は……あの時…

 

鷹岡先生が友君を殴ろうとした時…

 

助けに行こうとした。

 

友君が私にしてくれたように……。

 

でも…足が竦んで…動かなかった……。

 

友君は私を守ってくれたのに……、

 

私は友君を…守れなかった……。

 

私はその後色々と考え……保健室の机に突っ伏し、そのまま寝てしまった。

 

中村「不破ちゃん…交代……って…寝てるし……。……そっとしといてあげますか…」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

《友 side》

 

未だに、忘れられない。

 

両親の件

 

友『父さん……!?母さん……!?』

 

???『See you. また会える日を楽しみにしてるよ…』

 

叔父『父さんと母さんの分まで…友が生きるんだ…!』

 

火事の件

 

友『なんで………俺らばっかこんな目に…会うんだよ…』

 

野次馬『あの家…中学生の子が2人で暮らしてるところじゃないの……』

 

叔父『災難だったな…。僕の家を使うといい。同じ椚ヶ丘にあるからな。なに…もうすぐ僕はいなくなるから…平気さ』

 

そして、その数ヶ月後に持病で叔父は死んだ。

 

思い返せば、母親や父親、叔父だけじゃない、中学に上がるって時、祖父が死んだ。確か…俺が生まれて数ヶ月で、祖母が死んだと聞いた。

 

 

……はは。

 

なんだよこれ。

 

『疫病神』って…。

 

その通りじゃん……。

 

このままじゃ…新や…E組の皆にも…危害…が…

 

守ら…なきゃ……俺が…

 

強く…なら…ないと…俺…が……

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

目が覚めると、見慣れない天井──

 

どうやらあの後、保健室に運ばれたようだ。

 

辺りを見渡すと、保健室のベッド近くの机で寝ている不破の姿が目に入った。

 

こちら側を向いて寝ているせいで、寝顔が完璧に見えてしまう。

 

……顔が熱くなってきた。

 

最近、より一層感じるようになってきた。

 

不破の笑顔……。

俺が…あそこまで守りたいって思った異性は初めてだろう。

 

だから、俺は鷹岡にキレた。

 

大切な人に危害を加えようしたから。

 

いや、既に陽斗と神崎に暴力を振るっている時点で、大切な人達に危害を加えている。

 

…だが、その結果がこれ。

もっと強くならないと……何も…守れない……。

 

不破「………ん……むにゃ…」

 

友「……!!///」

 

ビックリした……。

いきなり変な声出すなよ……起きたのかと思って一瞬ビビったぞ…。

 

不破「…ん……友…君…?」

 

……今度こそ起きたのか。

 

友「……不破…良かった。無事で」

 

見たところ不破に外傷は無さそうだ。

 

不破「友君……良かった……ひぐっ…」

 

俺が無事なことに安堵したのか、不破は涙を流し始める。

 

友「ちょ…泣くなよ……俺がなんか悪いことしたみたいだろ……」

 

不破「うっ…だって……」

 

友「大丈夫だから。この通り。そうだ…鷹岡は?」

 

不破「…烏間先生と……うっ…渚君のおかげで…なんとか…ひぐっ…」

 

友「あーもー涙で綺麗な顔がぐちゃぐちゃだぞ。ほらハンカチやるから拭いて拭いて」

 

不破「う……うん…あり…がと…///」

 

友「……ていうか、烏間先生はわかるけど…渚って…?」

 

鷹岡を渚がやっつけたとでも言うのか……?

 

不破「う…うん。実はね……」

 

俺は、泣き止んだ不破から先程まで何があったのか伝えられた。

 

鷹岡が勝負を持ちかけたこと。

 

それは烏間先生が選んだ生徒と鷹岡が闘うというもので、生徒側は本物のナイフを使うこと。

 

烏間先生が渚を選んだと言うこと。

 

渚は見事に鷹岡先生にナイフを当てたということ。

 

あとは烏間先生と、途中から現れた理事長先生によって鷹岡は解雇されたということ。

 

 

友「随分と色々あったんだな。俺が寝てる間に…」

 

殺「ええ」

 

………ん?

 

友「いつの間に部屋入ってきたタコ!!」

 

不破「うわっ…!?ほんとにいつの間に…」

 

殺「不破さんが泣き出したタイミングから入ってはいませんがずっと見てましたよ」

 

このタコ………!

 

殺「君は、最近頑張りすぎている。暗殺のための訓練、将来のための勉強、強くなるための剣術、娯楽のためのゲーム。全てのせいで君は疲労が溜まっている。少し休んだ方がいい。しばらく、体育は見学、もしくは模擬暗殺にのみ参加にしましょう」

 

友「………ま、いいっすよ。それにしても、ゲームじゃなくて暗殺訓練の方を削るんですね」

 

殺「ゲームが好きな男子に『辞めろ』と無理やりいっても聞かないでしょうしね…」

 

友「わかってんじゃん」

 

殺「それと…来週からの水泳の授業は…」

 

友「……勿論、出ない」

 

不破「えっ…水泳やらないの?」

 

友「ああ。申し訳ないが、俺は1年も2年もずっと水泳だけは休んでる。今年も例外じゃない」

 

不破「………そっか…」

 

殺「……では、先生は皆さんに友君が起きた事を話してきます!」

 

そういって、殺せんせーはマッハで保健室から去っていった。

 

友「……水泳、一緒に出たかったか?」

 

不破「えっ……!?べ、別にそういう訳じゃ…//」

 

友「ごめんな…。『俺のトラウマ』のせいで」

 

不破「……トラウマ…?」

 

友「…さて。俺らも教室に向かうか。言われた通り休みたいし」

 

不破「……うん」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

俺らが教室に戻り、扉を開けると、皆の視線が一気にこっちに向いた。

 

磯貝「友!」

 

前原「良かった無事で!」

 

友「……ああ」

 

渚「…ねえ。友君。教えてほしいんだ…鷹岡先生が言ってた、『疫病神』っていうの…」

 

……!!

もう…話さなくちゃいけないのかな…。

また…思い出す…あの日の…光景を……。

 

友「……いずれ、お前らにも詳しく話さないと…だな…。でも、今日はやめてくれないかな…。殺せんせーにも聞いてると思うけど、疲れてんだ…。今日は…このまま帰らせて欲しい…。ごめんな。皆…待たせたのに……」

 

まだ…心の準備が出来ていなかった。

 

杉野「……全然いいって!」

 

中村「いつでも好きな時に話しなよ〜」

 

他のみんなも、『気にしないで』と声を掛けてくれる……今まで、こんな暖かいクラスに会ったことなかった……。それだけで…嬉しかった…。

 

友「……お前ら……」

 

不破「…大丈夫だよ友君。私たち、いつでも助けになるから」

 

不破の言葉で、もっと嬉しくなった…。

俺には…頼れる場所が…信じられる仲間がいる…。

今、改めて実感出来た気がした。

 

それと同時に、守りたいとも思った。

今後、鷹岡みたいなやつとまた会うかもしれない。

少しでも戦力になるように…強くなりたい。

 

 

 

 



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第29話 休息の時間

《友 side》

 

あの日から強くなることを決意した俺は、

殺せんせーから言われた通り、体育の授業を少し休む分…

 

休日は剣術道場で訓練漬け……!

 

と思ったのだが…。

 

友「なーんで俺はショッピングモールにいるんですかね……」

 

不破「お!この服かっこいー!友君似合うんじゃない?」

 

友「あのー…聞いて……」

 

数時間前、不破から呼び出されて駅前に向かうと、いきなりショッピングモールに向かうと言い出した。

 

いきなりどうしたのかと彼女に問うと……

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

不破「え?友君と?」

 

殺「そうです。彼なら恐らく休日も剣術道場に入り浸り修行します。強くなりたいという生徒の意志を尊重したい気持ちもあるのですが、それよりも生徒の心のケアが大切です!」

 

不破「それで、私に友君と出掛けろと……」

 

殺「ええ。新君なら友君も反抗するかもしれませんが、不破さんなら大丈夫だろうと思いましてね…」

 

不破「多分理由の半分はさっき言ったことなんだろうけどさ……顔がピンクになってる時点でもう半分が煩悩なの丸わかりだよ殺せんせー……」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

なんてことがあったらしい。

 

………俺の考え完全に見抜かれてんじゃねーか……!

 

あの先生には敵わないな…。そう思いながら不破の後を追う。

 

不破「友君ってどんな色の服が好き?」

 

友「んー……紫かな。今は緑の服に紺のズボンだけど」

 

不破「うーん…どうしようか。私もファッションセンスあるわけじゃないから……」

 

じゃなんで洋服買おうとしてんだ……。

 

 

不破「………どうしよう」

 

友「無理しなくても良いのに…」

 

不破「………もういい!探偵の勘で決めるわ!」

 

友「不破サン?やな予感しかしないよ?」

 

不破が選んだのは、

ピンクと紫の間くらいの色のパーカーと紫のカーディガンだった。

 

友「……どう?試着したけど」

 

不破「うん!似合ってるよ!」

 

友「……このパーカーさ。不破が着てるやつに似てるけど。寄せた?」

 

不破「えっ……!べ、別にそんな気持ちは…///」

 

あったな。

そんな気持ち絶対あったな。

 

友「…まぁいいや。普段は新が買ってきたのをテキトーに着てるから…久々に外で友人に選んでもらったものだし。折角だから買うよ」

 

不破「えっ…ホ、ホント?それでよかった?」

 

友「うん。気に入ったよ。結構。次外出る時はこいつら着よっかな」

 

不破「良かった!喜んでもらえて!」ニコッ

 

友「あ、ああ…。じゃ、元の服に着替えてくるから…//」

 

試着室の中へと入り、先程の不破の笑顔を思い出す。

 

あれは…反則だって……!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

不破「じゃ!次は本屋行こ!!」

 

友「……それ本命だな」

 

不破「いやぁ…単行本今日出るからさぁ…」

 

友「ま、いーよ。買いたい漫画あるしね〜」

 

 

不破「楽しみにしてたんだ〜新刊。この先の展開が凄く気になるのよね〜」

 

友「今までは王道かと思わせといて、思わぬ所に伏線があったから……2巻のあの伏線がそろそろ回収されるんじゃないかと俺は考察してるぞ」

 

不破「確かに…!でも、3巻にあったあの伏線も…!」

 

友「あーあれか…あれも有りうるな。そういや、死んだと思われてるキャラが実は生きてたパターンあるって作者さん言ってたらしいけど…そのキャラが3巻に出てるやつじゃないかって考察見たな」

 

不破「私も見た!どういう感じで出してくるのか気になるなぁ……」

 

その後も今話題の漫画の考察をしながら本屋を一通り見終わり、次はゲーセンに行くことに……。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

友「さーて何やるか!」

 

不破「クレーンゲームとか見てみる?」

 

友「そうだな。なんか欲しいのとかある?」

 

不破「う〜ん……。あっ…」

 

不破の視線の先にあったのは、ゆる〜いキャラクター達が登場するギャグ漫画の人気キャラクターのぬいぐるみだった。

 

友「お、これ欲しいの?」

 

不破「う…うん…何か恥ずかしいな……///」

 

このギャグ漫画は子供や女子に人気な作品。

基本少年漫画ばかり見てる不破がこれを選ぶとは意外だったが……

 

友「恥ずかしがることはないよ。好みは人それぞれだしね〜。じゃ取りますか」

 

百円玉をクレーンゲームに投入し、ぬいぐるみを穴に近付けていく。

そして、僅か4回目で……

 

友「……よし取れた」

 

不破「す…すご……」

 

友「はいよ〜。ご注文の品で〜す」

 

不破「ありがとう!本当に上手いなぁ…」

 

友「でもこれ新の方が上手いんだよ?俺は教わっただけ。じゃ次はあっち行こーよ」

 

クレーンゲームのコーナーを抜け、対戦ゲームや音ゲーなどの機体があるコーナーに着いた。

 

すると、見覚えのある人物が対戦ゲームをしていた。

 

不破「…!あれ、神崎さんじゃない?」

 

友「あ…ホントだ。そーいや杉野が言ってたな。神崎、凄くゲーム上手いって」

 

 

神崎「対戦ありがとうございました。……あっ」

 

対戦相手に礼をした後、神崎はこちらに気付いたようだ。

 

神崎「友君…不破さん…」

 

友「よ、神崎。ゲーム上手いらしいじゃん。今も勝ったみたいだしさ」

 

神崎「うん。よく遊んだから。椚ヶ丘のゲームセンターもよく行ってて、大体最高記録出しちゃったから、たまには違うところも行こうと思って」

 

友「……まさか、記録1位の『Yukiko』って…」

 

神崎「うん。私だよ」

 

……!

俺がゲーセンで遊んだ全ての機体の記録で1位を取っていた、憧れの存在が…!

 

クラスメイトの神崎だったとは…!

 

友「…神崎!この格ゲーで俺と勝負しよう!」

 

神崎「いいよ。友君、ゲーム好きだからいい戦いできるかも」

 

友「絶対に勝つ…!!」

 

 

 

不破「………なにこれ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

結果は惨敗。

 

いい所まではいったのだが……

やはり勝てなかった。

 

友「何で…何で勝てないんだ…」

 

神崎「でも、今までで1番いい勝負だったよ」

 

友「もっと練習しないと……!」

 

不破「………………」ジー

 

……後ろから不破の視線を感じる…。

あれ?怒ってる?

 

神崎「あ…ごめんね、不破さん。2人のデート邪魔しちゃって」

 

不破「デ……デ……!?い、いやっそういうんじゃ……///」

 

神崎「私、そろそろ帰ろうかなって思ってたから。じゃ、後は2人で楽しんでね」

 

そう言って神崎はこの場を後にした。

 

 

 

不破「………」

 

うーん…つい対戦に熱中しすぎて不破を置いてけぼりにしてしまった…。

そのせいで機嫌を損ねてしまったみたいだし……。

 

どうすれば……。

なんか気分転換……飲み物でも買って休憩するか。

 

友「あ…不破、飲み物買ってくるよ。何か、飲みたいのある?」

 

不破「……じゃあ…麦茶」

 

友「お…おう。じゃ、ここで待ってて。買ってくるから」

 

うーん…やっぱり機嫌悪そうだ……。

とりあえず麦茶と…俺が飲みたい烏龍茶を買って……

 

この後どうしよう……機嫌直してくれなかったら…。

俺のために連れてきてくれたのに…俺のせいで……。

 

 

 

さてと…飲み物買ったし、不破のとこ戻って……ん?

 

チャラ男A「ねーちゃんかわいーねー」

 

チャラ男B「俺らと一緒に遊ばな〜い?」

 

不破「え…あの…私……」

 

不破がチャラついた男共に絡まれてる……!

とにかく助けないと……!

 

チャラ男A「いーじゃんか!楽しいコトしようぜ!」

 

そう言ってチャラ男は不破の腕を掴む。

 

友「おい。何してんだ…」

 

俺はそのチャラ男の腕を力強く握りしめる。

 

友「彼女は俺の連れだ。手出さないでもらえますかね?」

 

チャラ男A「ひっ……」

 

チャラ男B「…ンだよ…彼氏持ちかよ!」

 

チャラ男A「邪魔したな!」

 

結構殺気を出していたせいかチャラ男達が逃げていく。

ざまぁみやがれ。

 

不破「ゆ、友君……」

 

友「大丈夫だった?ほい、麦茶」

 

不破「うん…ありがと………」

 

友「…さっきはごめんな。つい熱中しちゃってさ」

 

不破「いいよ…。私も、ちょっと怒りすぎちゃった…」

 

友「機嫌直してくれて良かった〜。じゃー次どこ行く?結構色々行っちゃったけど…」

 

不破「今は12時だから……お昼ご飯食べようよ!」

 

友「いいよ〜。じゃーどこ行くか……何食べたい?」

 

不破「う〜ん……何でもいいけど、スイーツとかもありかなぁって」

 

友「おけ〜。スイーツ店探しますか」

 

そう言って、ショッピングモールのマップを見に行く。どうやら1階にスイーツ店が1個あるらしい。

 

俺達は1階に降り、スイーツ店へと向かった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《不破 side》

 

1階に降りて、スイーツ店を目指し歩く。

しばらくして、スイーツ店の前に着いた。

 

友「ここがスイーツ店だな」

不破「うん!どれも美味しそう……ん?」

 

メニューを見ようとお店に近づくと、立て看板が目に入る。その立て看板には『カップルは50%引き』と書いてあった………。

 

不破「………!!!////」

 

友「へ〜。男女2人で来たら50%引きね。丁度いいじゃん。入ろっか」

 

不破「えっ…あ…ちょ……」

 

友君なんでそんな平然でいられるのっ!?

カップルだよ…!?///

 

店員「2名様でよろしいですか?」

友「はい」

不破「はい……//」

 

店員「それではあちらの席へどうぞー」

 

 

友「よーし。何頼む?」

 

不破「ど、どうしよっか……」

 

ヤバい…凄く緊張する……!

な…何を食べよう…ていうか何食べても味しないよ…こんな緊張してたらぁ……。

 

友「……不破。大丈夫か?」

 

不破「えっ…いや…大丈夫!」

 

友「……俺とじゃ嫌…だったか?」

 

不破「えっ…!?そんな事ないよ…!ぎゃ、逆に、友君こそ、私で良かったの?…私と、こういう店…ていうか、カップルのフリと…いうか……」

 

友「……俺は良かったよ。美味しいスイーツ食べれるし。それに…不破可愛いし………///」

 

か……かわ……!?////////

 

友「………そ、そろそろ注文しよっか!!俺、このいちごパフェにしようと思うんだけどさ…!」

 

不破「じゃ…じゃあ…私はチョコパフェで……!」

 

その後、友君が店員さんを呼んで、頼んでくれた。

 

待ってる間、スマホを見ようとしたら、私と友君、両方のスマホから『ピロン』という音がした。

中村さんからLINE……?

 

開いてみると……

私と友君がスイーツ店で話している写真が送られていた。

 

………ん?

え?これさっきの会話のとこだよね?

 

まさか…後をつけられてる……!?

 

友「………カルマの野郎…」ボソッ

 

友君の方にはカルマ君から来たみたい…。

 

友「不破。確か、殺せんせーが俺と一緒に行くようにって言ったんだよな」

 

不破「う…うん」

 

友「……その話を聞いた時に…尾行されてることに気付くべきだった…」

 

友君の視線の先には、大分デカい人の影が見えた。

 

いや変装下手くそか!?

 

近くにはカルマ君らしき人と中村さんらしき人…

 

そして巻き込まれたであろう渚君らしき人が見える……

 

 

友「今までの全部見られてたってわけか。あーやだやだ」

 

そうこうしている内に注文したパフェが届いた。

 

友「さっさと食べちゃいますかね」

 

不破「うん…でも、見られてると気まずいな…」

 

友「確かに……。てかパフェ美味しい」

 

不破「友君のいちごパフェ美味そうだよね〜」

 

友「…いるか?」

 

不破「えっ…?いいの?」

 

いちごパフェも好きだから嬉しい!

 

そう思って、少し身を乗り出して友君のいちごパフェから少しすくおうとすると……。

 

 

友「はい。あーん」

 

不破「えっ……!!////」

 

なんと…友君は自分のスプーンでパフェをすくい、私に食べさせようとしてくれている…!!

そ、それって……も……もしや…!?

 

友「ほら。口開けて」

 

言われるがまま口を開け、友君のスプーンでいちごパフェを食べる……。

 

凄く美味しいし、凄く嬉しい。

でも、私の脳内は…

 

友君と『間接キス』をしたことでオーバーヒートしてしまっている……!!

 

不破「えっ…あっ…えっと…その…わ、私のも……た、食べる?///」

 

友君の目を真正面から見るのが少し恥ずかしくなって、少し俯いたせいか上目遣いしているような感じになってしまった。

 

友「……!う、うん、いいの?///」

 

不破「い、いいよ……」

 

この時の私の脳は完全にショートしてしまっている。

私は先程友君がやったみたいにスプーンでチョコパフェをすくって……

 

不破「ほ、ほら………あ…あーん…して…?」

 

私のバカ!何やってるんだ!

自分がされたからって何もやり返すこと無かったのに!!

 

友君も流石に照れてるみたいだったけど、私のスプーンでチョコパフェを食べた。

 

『間接キス』しちゃったぁぁ!!

まだ付き合ってもないのに……!!!

 

しかもゲスな先生とクラスメイトが見ているのに…!!

 

私はなんて馬鹿なことをっ!!!

 

その後、互いに恥ずかしくなったのか一言も話さずにパフェを食べ終えた。

 

友「そ、そろそろ帰るか…?パフェも食べ終わったし」

 

不破「うん…そうだね!」

 

私たちはスイーツ店、そしてショッピングモールを後にし、椚ヶ丘駅へと戻ってきた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

今日は本当に楽しかったな……。

色んなことがあった…。

 

でも、あの不破の上目遣い……。

可愛かった………。

 

しかも…最初俺は無意識でやってしまったのだが…。

 

あれ、『間接キス』じゃん……!!!

 

不破「…今日は凄く楽しかった…。友君は…私と一緒で…楽しかった?」

 

友「あ、ああ!凄く楽しかった!ありがとな。連れてきてくれて!服も選んでもらったし!」

 

不破「そう?なら良かった!これからも、頑張るのはいいけど無理はしないでね!」

 

友「ああ。不破も、危ないことするなよ?」

 

不破「うん!じゃあ、またね!」

 

友「おう!」

 

いつも2人で帰る時と同じように不破を家まで送って、そのまま自分の家へと目指す。

 

 

……後ろから人ではない何かの気配を感じる……。

 

すると、俺の肩にぶにゅという感触が……!

 

友「なんですかストーカーせんせー」

 

殺「ストーカーとは失礼な!先生は君がきちんと休めているか心配で!」

 

友「じゃあなんでカルマと中村呼んだんだよ!あと渚も巻きこまれてたろ!」

 

殺「面白いからに決まっているでしょう!!」

 

友「ざけんなこのタコ!!」

 

カルマ「ねぇ友君……」

 

中村「チャラ男追っ払ったときカッコよかったね〜」

 

カルマ「不破さん見とれてたよ〜?」

 

中村「スイーツ店での『あーん』もちゃーんと写真撮ってるよ〜ん」

 

カルマ「後で2人に送るからね〜」

 

 

友「この悪魔共!!!!」

 

でも正直その写真欲しい!!

くそ…!なんだこの複雑な気持ちは!

 

渚「友君も大変だね……」

 

友「お前だけが味方だよ渚…」

 

殺「さて、友君。確かに皆を守るには、強さが必要です。そして、強さを得るには努力が必要です。でもね、努力はしすぎるとかえって疲労が溜まり、本当に強さが必要な時に力を発揮出来なくなる。時には、今日のような休息も必要なのです」

 

友「……そうだな。ムカつくことは多々あるが、あんたのおかげだもんな。ありがとな。殺せんせー」

 

そして、俺は家に帰り、剣術の修行を適度にすまし、その後ゲームをした。

 

夜、俺と不破の携帯にカルマと中村から今日のデートの写真を送られ、両者同時期に赤面したのは言うまでもない。

 





お前らはよ付き合えよ!!(←作者)


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第30話 夏の時間

《新 side》

 

夏。

灼熱の太陽、鳴り響く蝉の声、そして暑すぎる教室。

 

前原「暑っぢ〜……」

 

三村「地獄だぜ…クーラーの無い教室とか…」

 

本校舎にはどこでも冷房ついてるのに…旧校舎にはひとつもない…これが差別か…。

 

殺「だらしない…夏の暑さは当然の事……温暖湿潤気候で暮らすだから諦めなさい……ちなみに先生は放課後には寒帯に逃げます」

 

一同「ずりぃ!!」

 

あのタコ…マッハで空飛べるからって……!

 

新「でも…今日プール開きだろ?」

 

杉野「いや、そのプールがE組(俺ら)にとっちゃ地獄なんだ。なんせプールは本校舎にしかないんだから。炎天下の山道を1km往復して入りに行く必要がある……」

 

菅谷「人呼んで『E組 死のプール行軍』。特に、プール疲れした帰りの山登りは、力尽きてカラスの餌になりかねねー…」

 

殺「………仕方ないですねぇ。全員水着に着替え、上にジャージを羽織って着いてきなさい。そばの裏山に小さな沢があったでしょう。そこに涼みに行きましょう」

 

友「……」

 

新「兄貴どーすんの?水着無いでしょ」

 

友「この前カルマに聞いた涼めるサボりスポット聞いたからそこ行ってくる」

 

新「暑さでぶっ倒れんなよ」

 

友「うっせ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

速水「裏山に沢なんてあったんだ」

 

千葉「一応な。っつっても、足首まであるかないかの深さだぜ」

 

磯貝「あれ?友はいないのか?」

 

新「カルマに教えてもらったサボりスポット行くってさ」

 

前原「別に泳ぐわけじゃねーと思うけど……」

 

新「どっちにしろ制服濡れるの嫌だろ?」

 

前原「あーそれもそうか」

 

殺「さて皆さん!先生にはマッハ20でも出来ない事があります。そのひとつが君達をプールに連れて行く事。残念ながらそれには1日かかります」

 

磯貝「1日…って大袈裟な。本校舎のプールなんて歩いて20分……」

 

殺「おや?誰が本校舎に行くと…?」

 

草むらの向こうからサーーと水の音が聞こえる。

 

他のみんなもそれに気付いたのか、草むらに向かい、かき分けると……

 

そこには小さな沢ではなく、大きなプールがあった。

 

殺「なにせ小さな沢を塞き止めたので、水が溜まるまで20時間!バッチリ25mコースの幅も確保!シーズンオフには水を抜けば元通り!水位を調節すれば魚も飼って観察できます!制作に一日、移動に1分!あとは1秒あれば飛び込めますよ!」

 

一同「い…いやっほぉう!!」

 

クラス全員がプールへと飛び込んだ!

 

こーゆー事してくれるから…うちの先生は殺しづらい!

 

磯貝「それにしても、友のやつ来なくて良かったかもな」

 

新「あはは…確かに…」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

プールの時間、

 

ボールで遊んだり、25mコースで泳いだり、潜水遊びをしたり、浮き輪で浮かんだり、写真を撮ったり…。

 

やっていることな皆それぞれだ。

 

茅野「楽しいけどちょっと憂鬱…泳ぎは苦手だし、水着は体のラインがはっきり出るし…」

↑浮き輪で浮かんでる人

 

岡島「大丈夫さ茅野……。その体も、いつかどこかで銃があるさ」

↑写真を撮っている人

 

茅野「うん岡島君…。二枚目面して盗撮カメラ用意すんのやめよっか」

 

 

中村「渚……あんた……」

 

渚「ん?」

 

中村「……男なのね…!」

 

渚「今更!?」

 

原「まぁ仕方ない…」

 

 

不破「…あ!あそこにいるのって……おーい!友くーん!」

 

友「……お、おう…なんか皆の声がしたからさ…来てみたんだけど、ここって…小さな沢があったとこじゃ」

 

新「殺せんせーがプールに改造した」

 

友「スゲーな殺せんせー……。まぁ、俺には関係無いけどな」

 

不破「…………」

 

友「で、殺せんせーは?」

 

新「…あそこだよ」

 

ピッピー!!

兄貴に殺せんせーがいる場所を教えようと指さすと、大きなホイッスル音がした。

 

殺せんせーがホイッスルを吹いている。

 

殺「木村君!プールサイドを走っちゃいけません!転んだら危ないですよ!」

 

木村「あ、す、すんません」

 

殺「原さんに中村さん!潜水遊びは程々に!長く潜ると溺れたかと心配します!」ピッピー

 

原「は…はーい」

 

殺「岡島君のカメラも没収!」ピー

 

岡島「あぁ!俺のカメラ!!」

 

殺「狭間さんも本ばかり読んでないで泳ぎなさい!菅谷君!ボディーアートは普通のプールなら入場禁止ですよ!」ピーピーピー

 

こ…小うるせぇ………

 

中村「いるよね……自分が作ったフィールドの中だと王様気分になっちゃう人」

 

杉野「ありがたいのにありがたみが薄れちゃうよな……」

 

倉橋「カタいこと言わないでよ殺せんせー!水かけちゃえ!」

 

殺「きゃんっ!」

 

……え?何今の

倉橋が殺せんせーに水をかけたら…変な叫び声を……

 

 

すかさずカルマは殺せんせーが座っていた椅子の足を掴み揺らし出す。

 

殺「きゃあっ!?やめてカルマ君!揺らさないで水に落ちる!!」

 

…………………!!

 

殺せんせー…もしかして……!

 

殺「い、いや別に…泳ぐ気分じゃないだけだし……。水中だと触手がふやけて動けなくなるとかそんなんじゃないし…」

 

三村「手にビート板持ってるから…てっきり泳ぐ気満々かと……」

 

殺「これビート板じゃありません。ふ菓子です」

 

三村「おやつかよ!!」

 

俺たちの大半は直感した。

今までの中で1番『使える』弱点じゃないかと…

 

水殺…!!

この夏の研究(テーマ)になりそうだ。

 

だけど翌日……

このプールが大きな火種を呼ぶきっかけになるとは知る由もなかった。

 



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第31話 寺坂の時間

《寺坂 side》

 

このE組(クラス)は大したクラスだ。

 

成績最下層の掃き溜めと言われながら、中間テストじゃ妨害にも負けず平均点を大きく上げた。

 

球技大会じゃ、暗殺を通じて養った力で野球部に勝っちまった。

 

環境も向上してる。

最近じゃ、E組専用のプールなんてのが出来る有様。

 

大したクラスだ。

 

だから………

 

このクラスは居心地が悪い…。

 

岡島「おい皆来てくれ!!プールが大変だぞ!」

 

寺坂「……」ニヤリ

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

岡島に呼ばれ、プールへと向かう。

 

プールは…酷い有様だ。

ゴミが捨てられ、整備されていたものは壊されている。

 

前原「ビッチ先生がセクシー水着を披露する機会を逃した!」

 

…心底どうでもいい。

 

イリーナ「おいガキ!」

 

心を読むな。

 

不破「酷い…!誰がこんなことを……!」

 

ふと後ろを見ると、寺坂、吉田、村松の悪ガキ3人組がやけにニヤニヤしていた。渚もそれに気付いたようで、3人のことをじっと見ている。

 

吉田「あーあー…こりゃ大変だ」

 

村松「ま、いーんじゃね?プールとかめんどいし」

 

寺坂「……んだよ渚、友…。何見てんだよ。まさか、俺らが犯人とか疑ってんのか?くだらねーぞ。その考え」

 

殺「全くです…。犯人探しなどくだらないからやらなくていい……」

 

寺坂「……!!」

 

すると、殺せんせーはマッハでゴミを片付け、壊れていたものも完璧に修理した。

 

流石……。

 

殺「はいこれで元通り!いつも通り遊んで下さい」

 

一同「はーい!」

 

寺坂・吉田・村松「…………」

 

寺坂(全部このモンスターのせいだ…!こいつが来るまで、ダメ人間の集団の中にいれたのに…)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

教室にて─

 

不破「寺坂君の様子が変?」

 

友「ああ。元々あいつらは勉強も暗殺も積極的な方じゃなかったけど、特に寺坂が苛立ってるっていうか…プール壊しの主犯も多分あいつだろうし」

 

三村「ほっとけよ。いじめっ子で通してきたあいつ的には面白くねーんだろ?」

 

不破「うーん…でも気になるね。クラスでも浮いてるから…あまりよくわからないし…」

 

友「そうなんだよな…。てことで聞きに行こう」

 

三村「聞くって…誰に?」

 

友「寺坂グループの誰か。丁度あそこに吉田いるし」

 

 

 

 

友「おーい吉田」

 

吉田「……?んだよ」

 

友「今朝のプールの件、お前らが?」

 

吉田「………ああ。寺坂の提案でな。だが正直なとこ、俺も村松も…もう寺坂にはついてけねーと思ってる」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

寺坂達はどこ行ったんだろ……。

 

ん?この声…村松か?

 

村松「───だから、やり方変えた方がいーんじゃねぇのか?クラスの奴らと距離置いても、俺らに得ねぇしよ」

 

やっぱり。寺坂と話し合ってんのか?

 

寺坂「村松…なんだそのポケットのは」

 

村松「あっ…い、いや…この前受けた全国模試が過去最高の順位でよ…。これというのもあのタコの開いた『模試直前放課後ヌルヌル強化学習』のおかげ…」

 

寺坂「てめぇ!あの放課後ヌルヌル受けたのか!?ヌルヌルなんざバックレよーって3人で言ったべ!?」

 

村松「いやでもヌルヌルすんのとヌルヌルしないじゃ大違い…」

 

寺坂「ヌルヌルうるせー!!」

 

うん……なんの事か分かってるからいいんだけどさ。

知らない人聞いたら卑猥な話してるって思われそう…。

 

そんなことを考えているうちに寺坂は村松を木に叩きつけ、教室へと戻ってしまった。

 

寺坂「成績欲しさに日和やがって…裏切りモンが!」

 

村松「……!」

 

 

新「………村松。大丈夫か?」

 

村松「お、おう…新か。ったく寺坂のやつ…」

 

新「何があそこまで気に食わないのかね…」

 

村松「さぁな。正直俺はもうあいつに付き合うのは飽きてきたよ」

 

寺坂も…平和にやれればいいんだけどな。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

吉田「──てなわけで…寺坂は未だに気に入ってないんだよ。あのタコのこと」

 

友「寺坂も…皆と平和に出来りゃいいんだけど」

 

吉田「どーだろうな。俺らが何度行っても聞かねーよあいつ」

 

殺「吉田君!」バシュ

 

吉田「うおっ…!?びっくりしたな…って!そのバイク…!マジかよ殺せんせー!すげー!まるで本物じゃねーか!!」

 

殺「この前君が雑誌で見てたやつです。丁度プールの廃材があったんで作ってみました!」

 

殺せんせーが現れたと思ったら、木製のバイクに乗っている。服装もレーサーの服装してるし…。

 

寺坂「……何してんだよ吉田」ガララ

 

このタイミングで帰ってきた…。

 

吉田「あ…寺坂…。い、いやぁ…この前こいつとバイクの話で盛り上がっちまってよ。うちの学校こーいうの興味ある奴いねーから……」

 

殺「ヌルフフフ。先生は大人な上に漢字の漢と書いて漢の中の漢。この手の趣味も一通りかじってます!しかもこのバイク、最高時速300km出るんですって!先生一度本物に乗ってみたいモンです」

 

吉田「アホか。抱きかかえて飛んだ方が速えだろ!」

 

なんだ。寺坂以外は割と殺せんせーやクラスに馴染めて来てるじゃないか。

 

なんなら今の吉田、寺坂といる時より楽しそうだ。

 

なんて思ってたら、寺坂が足で先生の手作りバイクを蹴り飛ばした。

 

殺「にゅやーーっ!?」

 

吉田「……なっ!?何てことすんだよ寺坂!」

 

中村「謝ってやんなよ!大人な上に漢字の漢と書いて漢の中の漢の殺せんせー泣いてるよ!?」

 

 

寺坂「…てめーらブンブンうるせぇな…虫みてーに駆除してやるよ!」

 

寺坂は自分の机から何かを取り出し、それを床に叩きつけた。

叩きつけられた物からは煙のようなものが出てきた。

 

不破「うわぁっ!」

 

三村「な、何だコレ!」

 

友「殺虫剤…!?」

 

 

殺「寺坂君!ヤンチャするにも限度ってものが…」

 

寺坂「触んじゃねーよモンスター。気持ちわりーんだよ。テメーも、モンスターに操られて仲良しこよしのE組(てめーら)も」

 

一同「………!」

 

 

カルマ「何がそんなに嫌なのかねぇ…。気に入らないなら殺せばいいじゃん。折角それが許可されてる教室なのに」

 

寺坂「…何だカルマ…テメー俺にケンカ売ってんのか?上等だよ……大体テメーは最初から…ッ!」

 

カルマ「ダメだってば寺坂…ケンカするなら口より先に手ェ出さなきゃ」

 

寺坂がカルマに近づき、カルマは話してる途中の寺坂の顔を強く掴んだ。

 

寺坂「…放せ!くだらねー!」

 

寺坂はそう言い残し、教室から出ていってしまった。

 

前原「なんなんだアイツ…!」

 

磯貝「一緒に平和にやれないもんかな……」

 

 

 



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第32話 ビジョンの時間

《友 side》

 

翌日、寺坂は昼になっても登校して来なかった。

 

殺せんせーは──

 

殺「ぐすっ…ぐすっ…」

 

何故か泣いていた……。

 

イリーナ「…なによ。さっきから意味も無く涙流して」

 

殺「……いいえ。鼻なので涙じゃなくて鼻水です…目はこっち」

 

イリーナ「まぎらわしい!!」

 

目と鼻が近くにある上に小さいため非常に分かりづらい。

 

殺「どうも昨日から体の調子が少し変です……。夏風邪ですかねぇ…」

 

超生物も夏風邪引くんだ……。

 

寺坂「…」ガララ

 

すると、教室の扉が開いた。寺坂だ。

 

殺「おお寺坂君!!今日は登校しないのかと心配でした!」

 

先生…鼻水飛び散ってるんですけど。

 

殺「昨日君がキレた事ならご心配なく!もう皆気にしてませんよ!ね?ね?」ブチョォオォ

 

不破「う…うん…」

 

友「汁まみれになっていく寺坂の顔の方が気になるよ…」

 

新「食事中なんですけど…」

 

殺「昨日1日考えましたがやはり本人と話すべきです。悩みがあるなら後で聞かせてもらえませんか?」

 

寺坂「………おいタコ。そろそろ本気でブッ殺してやンよ。放課後プールへ来い。弱点なんだってなぁ?水が。てめーらも全員手伝え!俺がこいつを水ン中に叩き落としてやッからよ!!」

 

寺坂は皆を見渡すが、誰一人答えない。

無理もないだろう。

 

前原「……寺坂。お前、ずっと皆の暗殺には協力して来なかったよな。それをいきなりお前の都合で命令されて……皆が皆ハイやりますって言うと思うか?」

 

陽斗の言う通りだ。恐らく1人も手伝うやつはいないだろう。

 

寺坂「ケッ。別にいいぜ来なくても。そん時は俺が賞金100億独り占めだ」ピシャッ

 

そう言って寺坂は教室を出ていってしまった。

 

吉田「なんなんだよあいつ……」

 

村松「もう正直ついてけねーわ」

 

倉橋「私行かなーい」

 

岡野「…同じく」

 

千葉「俺も今回はパスかな」

 

俺も勿論行かない。というかプール使う作戦って時点でやる気がない。

『トラウマ』を思い出したくないからだ。

 

殺「皆行きましょうよぉ」

 

は?足が動かない…!?

 

杉野「うわ!?粘液に固められて逃げられねぇ!!」

 

友「気持ち悪!!」

 

殺「折角寺坂君が私を殺る気になったんです。皆で一緒に暗殺して気持ち良く仲直りです」ドロドロ

 

一同「まずあんたが気持ち悪い!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《渚 side》

 

渚「寺坂君!」

 

新「寺坂!」

 

僕は新君と教室を出ていった寺坂君を追った。

 

なんか…教室から凄い悲鳴が聞こえるけど………。

 

 

渚「本気で殺るつもりなの?」

 

寺坂「んだ渚、新。当たり前じゃねーか」

 

渚「だったら、ちゃんと皆に具体的な計画話した方が……」

新「1回しくじったら、同じ手は使えないんだぞ」

 

寺坂「……うるせぇよ。弱くて群れるばっかの奴らが…本気で殺すビジョンも無いくせによ。俺はテメーらとは違う。楽して殺るビジョンを持ってんだよ」

 

寺坂君は『計画』に自信を持ってる様子だったけど、『自分』に自信を持ってるようには見えなくて…

 

喋る言葉もなんだか借り物のようで…

チグハグさに胸騒ぎがした…

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

寺坂「よーし!そうだ!そんな感じでプール全体に散らばっとけ!」

 

俺たちは寺坂の言う通りにプールに入っている。

 

兄貴は勿論いない。ついでにカルマも。

 

竹林「疑問だね僕は……。君に他人を泳がせる器量なんてあるのかい?」

 

寺坂「うるせー竹林!とっとと入れ!」ドン

 

寺坂は竹林を蹴り飛ばしてプールへと突き落とす。

 

木村「すっかり暴君だぜ…寺坂の奴」

 

三村「ああ。あれじゃ一年二年の頃と同じだ。学年中の嫌われ者。浮きすぎなんだよ…この学校じゃ」

 

寺坂が皆に指示していると、いつの間にか殺せんせーが寺坂の背後に立っていた。

 

殺「なるほど。先生を水に落として皆に刺させる計画ですか。それで君はどうやって先生を落とすんです?ピストル一丁では先生を一歩すら動かせませんよ?」

 

寺坂「……覚悟は出来たかモンスター」

 

殺「勿論出来てます。鼻水も止まったし」

 

寺坂は殺せんせーにピストルを突きつける。

 

寺坂「…ずっとテメーが嫌いだったよ。消えて欲しくてしょうがなかった」

 

殺「ええ知ってます。暗殺(この)後でゆっくり2人で話しましょう」

 

凄いナメてる……。

 

寺坂(ナメやがって……!来い……『イトナ』!!)

 

寺坂はピストルの引き金を引く。

すると、プールの水を塞き止めていた堰が爆発し、俺たちは水で流されてしまった……!

 

 

寺坂「え……お…おい…!ウソ…だろ…!?」

 

渚「うわっぷ……!」

 

磯貝「ヤバい…流され……っ!」

 

殺(何者かがプールの堰を爆破した!誰が何のために!?それより早く全員を引き上げねば!この先は険しい岩場!溺れるか落下するかで死んでしまう!)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

今の爆発音は……プールの方から!!

 

寺坂…。いや、多分だけど寺坂は何者かに踊らされていただけだ……!

 

……!川が氾濫してる…!?

 

さっきの爆発音は…プールの堰を破壊した音か!!

 

皆が危ない…!!

寺坂は皆をプールに入れるって言ってた!

つまり、水と共に皆も流されて……!!

 

……!あそこの岩に誰か捕まってる……!

 

 

不破「うっ…や、やばい……流され……」

 

……不破!!

 

早く助けに行かないと…!

 

でも…水……が…。

 

ドクン…

 

水………が……。

 

ドクン…

 

もう…失い…たくない…。

 

ドクン…

 

失う…のは…もう……いやだ……。

 

ドクン…

 

でも…足が…動かな……。

 

 

不破「もう…限…界……手が……」

 

不破は岩を掴んでいた手を離してしまった…。

 

不破「だめ……誰か……」

 

 

 

 

 

 

友「不破ッ!!!!」

 

不破「……友…君…?」

 

俺は…とっさに水に飛び込んで右手で不破の手を、左手でさっきまで不破が掴んでいた岩を掴んだ。

 

水が怖い……でも、

 

失うのはもっと怖い……!!

 

友「……死なせはしないッ…!絶対……!」

 

不破「友君…!水が…苦手…なんじゃ……」

 

友「……不破…の…ため…だ……」

 

まずい…俺も体力の限界が来ている。

 

いや、体力というより、『精神』の……

 

ビュン!!

 

友「……!!」

不破「わっ……!」

 

俺と不破の体にふやけた触手が巻き付き、触手は猛スピードで俺らを陸へと運んだ。

 

殺せんせー……来るのが…遅せぇ…よ……。

 

俺の意識は、ここで途絶えてしまった。

 

 

 



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第33話 水遊びの時間

《不破 side》

 

友君と殺せんせーのお陰で何とか流されずにすんだ……。

 

不破「はぁ…はぁ…友君…ありが……と……?」

 

友君は、私の前でぐったりと倒れている。

 

不破「嘘……でしょ…?友君…?ねぇ!友君…!」

 

何度も揺さぶるが起きない。

幸い呼吸はしているから死んではいないようだ。

 

不破「どうしよう……。ここに置いてけないし…。誰もいないし…。」

 

私は、あの時の事を思い出した。

 

初めて休日に友君と会った時のこと。

 

剣術道場に連れて行ってもらって、悪い人たちが来て、そのせいで私が足を怪我してしまったこと。

 

そしてその後、友君が私をおぶって家まで送ってくれたこと…。

 

不破「…やらなきゃ。私が…!」

 

私は友君を背中におぶる。

 

皆がどこにいるのか分からないけど……。

 

その時、微かだけど殺せんせーの声がした。

 

私はそっちに向かった。

友君をおぶってるし、さっきので疲れてるからかなり遅いけど…。

諦めずに前へ進んだ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

殺せんせーは俺達を何とか救った。

 

だが、そのせいで水をかなり吸っている。

 

その時…殺せんせーの足に、白い触手が結びついた。

 

杉野「おい…あれって…!」

 

新「……知ってるのか?」

 

渚「…うん。新君の前に来た…転校生暗殺者……!」

 

転校生……。

 

そうか…『堀部糸成』!

そして、その保護者の…名前は確か『シロ』…!

 

殺せんせーは触手によって、水の中に叩きつけられる。

 

 

シロ「はい。計算通り。久しぶりだね。殺せんせー」

 

殺「………!」

 

シロ「ちなみに、君が吸ったのはただの水じゃない。触手の動きを弱める成分が入っている。寺坂君にプール上流から薬剤を混入させておいた。前にも増して積み重ねた数々の計算……。他にもあるが、戦えばすぐ分かるよ」

 

イトナ「…さぁ兄さん。どっちが強いか…。改めて決めよう」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《寺坂 side》

 

俺は、自分が強いと思ってた。

 

ろくにケンカもした事は無いが、ガタイと声がデカいだけで大概の事は有利に運んだ。

 

クラス内の弱そうな奴にターゲットを決めて支配下に置く……。

 

小学校じゃそれだけで一定の地位を保っていられた。

 

たまたま勉強も出来たんで、私立の進学校に行く事にした。深く考えず、いつもの調子で楽勝だと思ってた。

 

 

だけど……この学校じゃ…その生き方は通じなかった。

 

俺の持っていた安物の武器は、ここじゃ一切役立たないと悟った。しかも、多分これから一生そうなんだと。

 

本校舎の連中みたく、先々を見据えて努力するやつが、大人になって俺みたいな無計画な奴を支配するんだ。

 

落ちこぼれのE組に落ちて、同じような目的の無い連中と楽に暮らせると思ってたら、そこでも違った。

 

いきなりモンスターがやってきて、クラスにデカい目的を与えちまった。

 

取り残された俺はここでも、目的があって計算高い奴に操られて使われていた。

 

寺坂「………クソッ!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

イトナは触手を使い、殺せんせーに攻撃を仕掛け続ける。

 

殺(早い…!重い…!前よりも遥かに…!)

 

シロ「触手の数を減らし、その分パワーとスピードを集中させた。単純な子供でも操りやすい。……片や君は全身濡れてますます動きが鈍ってきた。『心臓』を破壊するのも時間の問題だ」

 

殺せんせーはかなり水で膨らんでる…!

水を含むとああなるのか…!

 

岡島「マジかよ…。あの爆破はあの2人が仕組んでただなんて……」

 

片岡「でも押されすぎな気がする……。あの程度の水のハンデは何とかなるんじゃ?」

 

寺坂「……水だけのせいじゃねー」

 

磯貝「寺坂…!」

 

寺坂「力を発揮できねーのは、お前らを助けたからよ。見ろ。タコの頭上」

 

殺せんせーとイトナの攻防の上では、

 

影に捕まる村松、吉田、そして木の枝に捕まる原がいた。

 

新「助け上げた場所が…触手の射程範囲内に…!」

 

寺坂「ああ。原はヘヴィでふとましいから危険だぞ…。あいつらの安全に気を配るから尚一層集中出来ない……あのシロの奴ならそこまで計算してるだろうさ…。恐ろしいやつだよ……」

 

前原「呑気に言ってんじゃねーよ寺坂!!原たち、あれマジで危険だぞ!お前ひょっとして…今回の事全部奴らに操られてたのかよ!?」

 

寺坂「……フン。あーそうだよ!目標もビジョンも無ぇ短絡的な奴は…頭の良い奴に操られる運命なんだよ……。だがよ、操られる相手ぐらいは選びてぇ!奴らはもう懲り懲りだ。賞金持ってかれるのもやっぱり気に入らねぇ!……だからカルマ!テメーが俺を操ってみろや!」

 

寺坂はカルマの胸をドンと叩いて話し続ける。

 

寺坂「その狡猾なオツムで俺に作戦与えてみろ!完璧に実行してあそこにいるのを助けてやらァ!」

 

カルマ「良いけど…実行出来んの?俺の作戦……死ぬかもよ?」

 

寺坂「やってやんよ……。こちとら実績持ってる実行犯だぜ?どんな作戦だ?言ってみろ」

 

カルマ「え、まだ思いついてないけど」

 

一同「思いついて無いのかよ!!」

 

さっきの言い方既に思いついてるやつの言い方だろ!

 

 

 

カルマ「………思いついた!原さんは助けずにほっとこう!」

 

一同「……………は?」

 

寺坂「おいカルマ…ふざけてんのか!?原が一番危ねーだろうが!!ふとましいから身動き取れねーし!ヘヴィだから枝も折れそうだ!」

 

うん…多分それ全部原に聞こえてるぞ…?

 

カルマ「……寺坂、昨日の同じシャツ着てんだろ?」

 

寺坂「……あ、ああ」

 

マジかよ……汚ねぇ…

 

カルマ「ズボラだよなー。やっぱお前悪巧みとか向いてないわー。…でもな。お前は頭はバカでと体力と実行力持ってるから……お前を軸に作戦立てるの面白いんだ。俺を信じて動いてよ……。悪いようにはならないから」

 

寺坂「…………バカは余計だ。いいから早く指示よこせ!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

寺坂はカルマの指示通りにイトナ達の方へと向かう。

 

シロ「さて…足元の触手も水を吸って動かなくなってきたね。トドメにかかろうイトナ。邪魔な触手を全て落とし、その上で心臓を……」

 

寺坂「おいシロ!イトナ!!」

 

シロ「寺坂君か……。近くに来たら危ないよ」

 

寺坂「よくも俺を騙してくれたな…!」

 

シロ「まぁそう怒るなよ。ちょっとクラスメイトを巻き込んじゃっただけじゃないか。E組で浮いてた君にとっちゃ丁度いいだろ」

 

寺坂「うるせぇ!てめーらは許さねぇ!」

 

寺坂は自分の来ているシャツを脱ぎ、自分の前に出す。

 

寺坂「イトナ!テメェ俺とタイマン張れや!!」

 

殺「止めなさい寺坂君!君が勝てる相手じゃない!」プクー

 

寺坂「すっこんでろふくれダコ!!」

 

シロ「……クス…。布キレ1枚でイトナの触手を防ごうとは…健気だねぇ。……黙らせろイトナ。殺せんせーに気をつけながら…ね。」

 

 

 

渚「カルマ君…!」

 

カルマ「いーんだよ。死にゃしない。あのシロは俺達生

徒を殺すのが目的じゃない。生きてるからこそ殺せんせーの集中を削げるんだ。原さんも一見超危険だけど、イトナの攻撃の的になる事はないだろう。例え下に落ちても……殺せんせーは見捨てないのは体験済みだし……だから寺坂にも言っといたよ……」

 

寺坂はイトナの触手による攻撃を食らう。

 

カルマ「気絶する程度の触手は喰らうけど、逆に言えばスピードやパワーもその程度。死ぬ気で喰らいつけって……」

 

寺坂は…まだ耐えている……。

自分のシャツでイトナの触手をガッチリと掴んでいる。

 

シロ「よく耐えたねぇ…。ではイトナ。もう1発あげなさい。背後のタコに気をつけながら……」

 

イトナ「……くしゅん!」

 

シロ「……!?」

 

イトナはくしゃみを連発し、鼻水も出ている。

 

カルマ「寺坂のシャツが昨日と同じってことは…昨日寺坂が教室に撒いた変なスプレー、アレの成分を至近距離でたっぷり浴びたシャツってことだ。それって、殺せんせーの粘液ダダ漏れにした成分でしょ?イトナだってタダで済むはずがない。……で、イトナに一瞬でも隙を作れば、原さんはタコが勝手に助けてくれる」

 

カルマの言う通り、原は殺せんせーによって救出されている。

 

寺坂「…吉田!村松!お前らはそこから飛び降りれんだろ!!」

 

吉田・村松「はぁ!?」

 

寺坂「水だよ水!!デケーの頼むぜ!!」

 

村松「マジかよ……!」

 

吉田「しょーがねーなぁ…!」

 

カルマ「殺せんせーと弱点一緒なんだよね?じゃあ同じことやり返せばいいわけだ」

 

俺たちはイトナに水をかけまくる。

落ちた衝撃の水しぶきだけじゃなく、手やその辺のビニール袋に水を入れたりして、どんどん水を吸わせる。

 

イトナ「………!」

 

カルマ「大分水吸っちゃったね……。殺せんせーと同じ水を…。あんたらのハンデが少なくなった」

 

シロ「……!!」

 

カルマ「で、どーすんの?俺らも賞金持ってかれんの嫌だし、そもそも皆あんたの作戦で死にかけてるし、ついでに寺坂もボコられてるし。まだ続けるなら…こっちも全力で水遊びさせてもらうけど?」

 

 

 

 

シロ「……してやられたな。丁寧に積み上げた戦略が…。たかが生徒の作戦と実行でメチャメチャにされてしまった。……ここは引こう。触手の制御細胞は感情に大きく左右される危険なシロモノ。この子らを皆殺しにでもしようものなら……。反物質臓がどう暴走するかわからん。帰るよ。イトナ」

 

イトナ「………ッ!!」

 

シロ「イトナ!!」

 

 

 

殺「どうです?皆で楽しそうな学級でしょう。そろそろちゃんとクラスに来ませんか?」

 

イトナ「……フン」バッ

 

イトナはシロとともにどこかへと去っていった……。

 

 

杉野「ふぃーっ…。なんとか追っ払えたな」

 

岡野「良かったね殺せんせー。私達のお陰で命拾いして」

 

殺「ヌルフフフ。勿論感謝してます。まだまだ奥の手はりましたがね」

 

原「そーいや寺坂君…。さっき私の事を散々言ってたね?ヘヴィだとか…ふとましいとか…」

 

寺坂「い…いやあれは……!」

 

原「言い訳無用!動けるデブの恐ろしさを見せてあげるわ!」

 

 

カルマ「あーあ。ほんと無神経だよな寺坂は。そんなんだから人の手のひらで転がされんだよ…」

 

寺坂「うるせー!カルマ!テメーも1人高いところから見てんじゃねー!」

 

寺坂はカルマを水へと引きずり落とした。

 

よくやった寺坂。

 

カルマ「はぁ!?何すんだよ上司に向かって!」

 

寺坂「誰が上司だ!!触手を生身で受けさせるイカれた上司がどこにいる!?大体テメーはサボり魔のくせにオイシイ場面は持って行きやがって!!」

 

片岡「あーそれ私も思ってた…」

 

カルマ「だからってすぶ濡れにする事ないだろ!」

 

殺「寺坂君は高いところから計画を練るのに向いていない。彼の良さは現場でこそ発揮されます。体力と実行力で自身も輝き、現場の皆も輝かせる。実行部隊として成長が楽しみな暗殺者(アサシン)です」

 

寺坂が、かなり乱暴だけどクラスに馴染んできた。

でも、この中の数人は気付いていた。

クラスの『人数が足りない』ことに……。

 

 

中村「………ねぇ。殺せんせー、全員ちゃんと助けたんだよね?」

 

殺「ええ勿論…。律さんを除く28人全員……!」

 

殺せんせーも気付いたようだ。

 

中村「…じゃあ、なんで不破ちゃんがいないの…!?」

 

渚「……!」

 

片岡「……殺せんせー、不破さんの事助けたんですよね?!」

 

殺「ええ…!友君と一緒に助けたはずですが…!」

 

えっ……!

 

新「兄貴と……!?兄貴、水に入ってたんですか!?」

 

殺「ええ……。不破さんの事を助けようしていましたが…」

 

新「……やばいな……『あの時』の光景がフラッシュバックされちまう……!」

 

倉橋「あの時…?」

 

新「…とりあえず、2人を探して…!」

 

 

 

 

不破「大丈夫……だよ……」

 

一同「!!」

 

一同が振り返ると、兄貴をおぶった不破が草むらから出てきた。

 

不破「殺せんせー……友君を…保健室に」

 

殺「……わかりました」ビュン

 

殺せんせーは兄貴を抱え、教室へマッハで飛んで行った。

 

中村「不破ちゃん…!良かった…無事で……」

 

不破「ごめんね…皆。心配かけて…はは…ちょっと私…疲れて…きちゃった…」バタン

 

中村「不破ちゃん!」

 

新「不破……!」

 

殺「ただいま戻りました…!不破さんも一緒に保健室に送ります!」ビュン

 

 

渚「……新君。友君に何があったのか、教えてよ」

 

磯貝「俺と友、結構付き合い長いけどさ。あまり詳しくは知らないんだよ。だから、教えてくれないか?」

 

新「……ごめん。俺からは教えることは出来ない。でも、あいつが…バカ兄貴が起きたら、説得してやる。皆に話すように…な」

 



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第34話 友の過去の時間

ついに友の過去が明らかに……!!




《不破 side》

 

……ここは。どこだろう。

 

…まさか……漫画の世界…?

 

………いや、保健室か。

 

そうだ…。私はあの後倒れて……。

 

 

中村「……ん?…起きた?不破ちゃん」

 

不破「中村さん……」

 

中村「はぁ……良かった…。無事で…」

 

不破「…友君は?」

 

中村「まだ起きてない…。結構うなされてるよ」

 

不破「そっか……。そう言えば、さっき…何があったの?」

 

中村「…シロとイトナ。あいつらが寺坂を操ってた。何とかカルマの作戦通りに追い払えて、寺坂も馴染んできてハッピーエンド……になるはずもなく、不破ちゃんがいないのに気付いて…で、しばらくしたら不破ちゃんと友が現れた…ってわけ」

 

不破「……そうなんだ…私がいない間に色々と…」

 

中村「不破ちゃんこそ、何があったの?」

 

不破「私は…水に流されて……友君が助けてくれたの。水苦手って言ってたのに…わざわざ川に飛び込んで…。なんとか殺せんせーのお陰で2人とも救出されたけど……友君は…目を…覚まさなくて……」

 

中村「……そっか…そっちも色々とあったんだね。……さてと、私は皆に不破ちゃんが起きたこと言ってくるから……友のこと、頼んだよ」

 

友君…ほんとだ。かなりうなされてる……。

 

友「う……父……さん……母…さん………なん……で…」

 

……苦しそうだ。

 

こんなに苦しそうな友君……見たことない。

 

 

いや、表情に見せなかっただけで……内心苦しかったのかもしれない……。

 

友「う…うーん……ん……不……破……?」

 

不破「……!友君…!起きたの!?」

 

友「……不破…無事…なのか……?」

 

不破「うん…。友君こそ…大丈夫?」

 

友「う…何とかな……。まさか、同じ月に保健室に2度も来るとはな……」

 

不破「良かった……無事で…ぐす……ひぐっ…」

 

友「ちょ…だから泣くなって……。まさか同じ月に同じやつの泣き顔を同じ場所で見るとは思わなかったよ……。ほらハンカチ貸すから拭いて」

 

殺「不破さん!おお!友君も起きましたか!」

 

友「殺せんせー…それに新も…。そーいやさっきの爆発って…」

 

殺「説明する時間は無いので『かくかくしかじか』で済ませますね。申し訳ないです」

 

友「『そんなんでわかるか!』って王道のツッコミで返したいけどそんな余裕無さそうだから理解しておくよ」

 

新「それは理解出来たのか…?」

 

殺「先生としたことがイトナ君達に気を取られ気付くのが遅れてしまった。なんとお詫びしたらいいか……」

 

友「ま、色々大変だったみたいだし、俺も不破も生きてるんだからさ。そんな謝んなくてもいいっすよ。な?不破」

 

殺せんせーと…新君も来たみたい…。

 

そうだ。友君に伝えないと。

私たちが…知りたいってこと。

 

不破「うん……。ねぇ…友君。私たち、友君の過去知りたいよ…。何があったの?なんで…水がトラウマになったの…?私たち仲間だよ…?助け合おうよ……」

 

友「うっ……涙目でそんなこと言うなよ…。反則だろ……」

 

新「……兄貴、そろそろ皆に話すべきだと思う。俺はE組に来て一番日が浅い。でもここの皆は、凄く優しいってのはわかってる…」

 

殺「友君、教室へ行きましょう。そこで…話しましょう。君の過去を…皆に…」

 

友「………うん」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

俺たちは教室へと向かった。

 

正確には体育着に着替えるため、先に不破に帰ってもらい、新と殺せんせーと一緒に。

 

教室のドアを開けると、不破を含め、全員席に座っていた。

 

新も、自分の席に座りに行く。

 

俺は、普段殺せんせーが立っている教卓の前に着いた。

 

磯貝「……話してくれるか?友の…過去を」

 

覚悟は決めた………。

思い出す覚悟を……。

 

友「ああ。話すよ。俺の…『真弓友』の過去を」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

5年前──

 

俺の家は…自分で言うのもあれだがかなりの金持ちだった。

 

幼い頃からゲームや漫画、玩具等を沢山与えられ、その分色んな習い事も受けてきた。

 

小一から小四までは国内の色んな所に転校したりとか……海外に旅行に行ったりもした。

 

義兄弟の新もそう。俺と共に色んな所をまわった。

 

 

小五からは、『これ以上転校すると友達が出来ないんじゃないか』という親の考えにより、当時住んでいた椚ヶ丘の小学校に2年間通うことになった。

 

最初は友達が出来るか不安だったけれど…クラスメイトとも話すことは出来てたし、当時好きな子もいた。……もう友達も…好きだった子も……名前と顔覚えてないけどな。

 

 

 

 

ある日、数日の間親の仕事の関係で船に乗る事になった。

 

当初は両親と叔父だけで行く予定だったけど、俺が『船乗りたい』とねだったため、3人で行く事になった。

 

新は丁度高熱を出してしまい、行くことが出来なかった。

出掛けている間は祖父が看病してくれたそうだ。

 

 

 

椚ヶ丘に定住してから、旅行の回数が少なくなっていたためか、久々の船で凄くテンションが上がり、1人で色々な所を探索した。

 

だがその時……

 

大人達が凄く慌てている様子を見た。

 

『船に穴が開いた…!!』『このままじゃ沈んでしまう!急いで救助の手配を…!』

 

そんな言葉を聞いた気がする。

 

俺は急いで両親の元へ向かった。一緒に逃げるために。

 

俺達が泊まっていた部屋に着いて、扉を開ける。

 

すると中は……『紅』で染まっていた。

 

 

俺は何があったのか分からず…その場で立ちすくんでしまった。

父親も母親も全身真っ赤で…傷がある。

幸い、まだ息があるようで『お前だけでも逃げろ……』と言っているようだ。声が掠れてよく聞こえないが、恐らくそう言っている。

 

部屋の窓の方を見ると、そこには…1人の男が立っていた。

黒のコート……黒の帽子……そして、血塗られた日本刀。

 

俺はそいつを見た瞬間に気付いた。こいつが両親をこんな目に遭わせたのだと。

 

男は俺の方を見て不敵な笑みを浮かべて呟いた。

 

???『See You. また会える日を楽しみにしてるよ…』

 

そう言って男は窓の外へと消えた。

 

 

ふと床を見ると、水浸しになっている。

浸水して来たんだ。

 

俺は何とか両親を助けようとした。まだ息がある。ちゃんとした治療を受ければ何とかなる。

 

だが、俺の小さな体じゃ2人の大人は運べない。1人だけでも数m引きずるのが限界だ。

 

そこに叔父が入ってきた。

俺たちを探してくれていたんだ。

 

叔父は惨状を見て、絶句していた…。

 

父親は、最後の力を振り絞り、こう言った。

 

父『友を連れて逃げろ』

 

母親も続けて、

 

母『友、早く逃げなさい』

 

と言った。

 

これが、俺が聞いた両親の最後の言葉だ。

 

突然、部屋に大量の水が入ってきた。

このままじゃ流される……。

 

叔父は俺のことを抱え、水の流れに乗って外へと脱出した。

そのまま俺と叔父は救助隊に引き上げられ、一命は取り留めた。

 

だが俺は、水に無気力のまま流されていく両親の姿を見てしまった。

 

──これ以来、プールや海のような大量の水を見たり、船に乗ったりすると……その時の光景がフラッシュバックしてしまう。

 

 

それ以降も俺達、真弓家の不幸は続いた。

 

両親の一件があり、俺は心を塞ぎ込んでしまった。

 

あれ以来小学校にも行かず、自分で勉強した。

卒業式にも出なかった。卒業アルバムもすぐに捨てた。

小学校の時を思い出すと、両親の事も思い出してしまうと思ったから。

 

家も…。両親が使ってた部屋には出入りしなくなった。

 

叔父はあれからも俺らのことを気にかけてくれた。

叔父の勧めで剣術道場にも通った。

俺は、『強くなって仇を討つために』何度も道場に通った。

 

 

そして小学校卒業後、祖父が死んだ。

俺だけじゃなく、義理の孫である新にも優しくしてくれていた。

 

 

1人で部屋にこもり勉強をしていたからか成績が上がっていたため、中学は進学校に通うことにした。

勉強で、両親の事を何とか忘れようとした。

 

中学1年になって、勉強もそこそこついていけていたし、悠馬や陽斗、航輝と言った友達も出来た。

このまま何事も無く終わると思っていた。

 

だが、そんなことはなかった。

 

中学1年の夏、家が火事になった。

俺と新と、両親の思い出の家。

 

ほとんどの遺品が燃えてしまった。

両親が大切にしていた宝物。

両親に買ってもらった物。

両親と過ごした場所。

ほとんど全てが灰になった。

 

その後、叔父が住んでいる家に住むことになった。

同じ椚ヶ丘にあったから、学校生活に支障は出なかった。

 

だが、その後すぐに叔父が持病で死んだ。

この頃から俺は…自分が『疫病神』なんじゃないかって思い始めた。

 

俺は火事以来…勉強のやる気が無くなっていった。

叔父の死からは……生きる気力すら無くなっていった。

その日から、剣術道場にも通わなくなっていった。

 

それに比べ、新はアイドル活動を始めた。

流石にいつまでも両親や祖父、叔父の遺産に頼る訳にはいかないから。

恐らく、俺を元気付けようという思いもあったんだろう。

 

 

 

そしてある日……E組行きが決定した。

折角手に入れた場所も、友人も、全てが水の泡になる。

いっその事死んだ方がマシなんじゃないか。

そう思い始めた。

 

そんな時、悠馬が声を掛けてくれた。

 

磯貝『友、お前もE組行きなんだって?俺もだよ。バイトしてるのがバレちゃってさ。まぁその…お互い大変だけど、頑張ろうな!』

 

陽斗も話しかけてきた。

 

前原『俺も成績不振でE組行きさ。あーやだやだ。旧校舎まで行くのだりーぜ』

 

航輝も近くに寄って来てくれた。

 

三村『自業自得じゃねーか。俺もE組行きなんだけどな…。ま、皆頑張ろうぜ!』

 

何気ない男子中学生の会話。

でも、俺はそれが普通に嬉しかった。

全て失ったと思っていた。

でも違った。俺にはまだ残っていた。

E組という劣悪な環境に落ちることが決まって…死ぬことすら考えた。

 

でもその日から、少しだけ生きる気力が戻ってきた。

『仇を討つ』だなんて思いもいつしか無くなっていった。

 

このままこんな風に笑いあえたら───。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

友「そして今─。

 

殺せんせーがやってきて、

 

不破や渚達のお陰で素晴らしい日々を送れている。

 

E組に落ちなければ、殺せんせーが来なければ、この中の誰か1人でも欠けていたら、

 

こんな気持ちにはなっていないだろう。

 

 

──鷹岡に『疫病神』と罵られた時、久しぶりにあの時の感情が戻ってきた。

 

また負けそうになった。

でも、皆がいるから、負の感情と戦えた。

 

これ以上…大切な人を死なせない。

そう誓った。

 

これ以上失いたくない。

そう強く思った。

 

例え、この命に変えても──」

 

 

俺は……いつの間にか涙を流していた。

 

皆は、真剣に話を聞いてくれている。

不破や渚達は勿論、寺坂達も。

殺せんせーも聞いてくれている。

少し離れたところで、烏間先生とビッチ先生も…。

 

ふと、不破が立ち上がった。

 

不破「友君……。今、言ったよね?『例え、命に変えても…』って。私を助けたのも…『自分は死んでもいいから助けたい』っていう…自己犠牲の気持ちがあったから?」

 

友「……ああ。俺は…もう失うのは嫌だから……」

 

不破「私だって友君を失いたくない!!」

 

不破が大声で叫んだ。

ここまで大声を出した不破は見たことがない。

 

不破「自己犠牲なんてやめてよ……。友君が死んで、私達が助かっても……!私達は喜ばないよ…!」

 

友「不破……」

 

カルマ「『皆を守るため強くなりたい』。友はそう言ったよね。でも、自分を犠牲にして守る奴…それって本当に強いのかな。俺には、そうは見えないけどね」

 

磯貝「カルマの言う通りだ。それに、お前はいつも俺達に相談なんてしなかった。大方、迷惑をかけるんじゃないかなんて考えてたんだろうけど、そんなこと無い!」

 

前原「お前は1人で悩みすぎだぜ?少しは頼ればいいんだよ。E組(俺たち)が何のためにいると思ってんだ?」

 

友「カルマ…悠馬…陽斗…」

 

殺「皆さんの言う通りです。友君、自己犠牲の精神なんて捨ててしまいなさい。それで君は人を救えて『良かった』と思うかもしれない。でもね、助けて貰った人は『自分のせいで死んでしまった』と思い詰めてしまうかもしれません。それは、本当の意味で『助けた』とは言えませんよ。人に笑顔で…胸を張れる強さを持ちましょう。君なら……持てるはずですよ」

 

 

友「殺…せんせー……。うっ…う……うぁぁっ……」

 

無意識に涙が零れ落ちる。

俺は……泣き崩れてしまった。

 

新「……今日は幾らでも泣いていいよ。兄貴。今まで…背負わせてごめんな。これからは俺ら2人…いや、E組(みんな)で背負っていこう」

 

 




テストが近いので15日(土曜日)と18日(火曜日)の投稿をお休みさせていただきます……。

申し訳ありません!!


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第35話 期末の時間


お久しぶりです!テスト終わったので戻ってきました!


 

《友 side》

 

不破「おはよ!友君!」

 

友「……えっと…なんで家まで…?」

 

俺の過去を話した翌日、

登校しようとしたときにインターホンが鳴った。

ドアを開けると、そこには不破が立っていた。

 

不破「ほら早く!行く準備!」

 

友「あっ…はーい」

 

これは多分話が通用しない。

仕方なくカバンを持って行くことにした。

 

あと数分くらいゲームしてから行こうとしたのになぁ。

 

 

不破「そういえば新君は?」

 

友「渚と杉野が連れていった。俺はまだゲームしたかったから一緒に行かなかったけど」

 

不破「……まさか私が来た時もまだゲームしたかったのにな〜……なんて考えてたんじゃ…」

 

友「イヤソンナコトナイデスヨ?」

 

不破から目線を逸らすと、参考書を読みながら登校する本校舎の生徒が目についた。

 

友「本校舎の連中は大変だねぇ…。登校中も勉強とは」

 

不破「でも、私達も勉強しないと…。そろそろ期末試験なんだから」

 

友「俺らどっちも数学苦手だからな……土方さんにでも教えて貰おうかな…スパルタだけど頭いいし…」

 

不破「私数学もだけど、社会もな…。歴史は好きなんだけど得意ってわけじゃないから……」

 

友「歴史なら俺が教えてあげるよ。暗記系は得意だし」

 

不破「本当!?」

 

 

そんな話をしていると、E組の裏山の入口前まで来ていた。すると、本校舎の連中と同じく勉強をしながら歩く生徒が俺らの横を通り過ぎた。

 

友「お、竹林じゃん。お前も勉強しながら登校してんだ」

 

竹林「友と不破さんか。当然、期末では…中間より良い点数を目標にしているからね」

 

ここ、椚ヶ丘中学校では成績が全て。

E組を誰に恥じる事も無いクラスにする─。

そう目論む殺せんせーにとってこの期末は、

一学期の総仕上げ。決戦の場である。

 

中村「やっほ〜。今日もラブラブだね〜」

 

不破「な、中村さん…!///」

 

友「程々にしろよ?不破困ってるんだから」

 

中村(赤面してる不破ちゃん見て楽しんでる癖に…)

 

友「ん?」

 

中村「なーんでも」

 

 

昨日あんなしんみりとした話をしてしまったが、

あの後皆に、『明日以降、気を使わずにいつも通りで接してくれ』って言っておいた。

変な気を使われたくないから言ったんだけど……

早速いじってきたよこいつ…。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

殺「ヌルフフフ…。皆さん、一学期の間に基礎がガッチリ出来てきました。この分なら期末の成績はジャンプアップが期待できます」

 

中間の時と同じく殺せんせーは分身しながら勉強を教えてくれている。

 

渚「ねえ殺せんせー。また今回も全員50位以内を目標にするの?」

 

殺「いいえ。先生、あの時は総合点ばかり気にしていました。生徒それぞれに合うような目標を立てるべきです。そこで今回は、この暗殺教室にピッタリの目標を設定しました!」

 

暗殺教室に…ピッタリな目標……?

 

寺坂「………」

 

殺「だ、大丈夫!寺坂君にもチャンスかまある目標ですから!」

 

寺坂「……」イラッ

 

その気遣い逆にイラつかせるだけだから殺せんせー。

 

殺「さて。前にシロさんが言った通り…。先生は触手を失うと動きが落ちます。試しに1本減らしてみましょう」パン ブチュッ

 

そう言って殺せんせーは自分の足を銃で撃ち抜いた。

 

殺「ご覧なさい。全ての分身が維持しきれずに子供の分身が混ざってしまった」

 

殺せんせーの言う通り、分身の中に少し等身の低い殺せんせーが混ざっていた。

分身ってそういう減り方するものだっけ!?

 

殺「更にもう一本!」パン ブチュッ

 

殺せんせーは2本目の触手を破壊した。

 

殺「ご覧なさい…。子供分身が更に増え、親分身が家計のやりくりに苦しんでいます」

 

なんか切ない話になってきたぞ……。

 

殺「もう1本へらすと、父親分身が蒸発しました。母親分身は女手ひとつで子を養わなくてはいけません」

 

一同「重いわ!!!」

 

 

殺「色々と試してみた結果、触手1本につき先生が失う運動能力は、ざっと20%!……そこでテストについて本題です。前回は総合点で評価しましたが、今回は皆さんの最も得意な教科も評価に入れます。教科ごとに学年1位を取ったものには……答案の返却時、触手を1本破壊する権利をあげましょう」

 

一同「!!」

 

何だと……!暗殺のチャンスじゃないか…!!

 

 

殺「チャンスの大きさがわかりましたね総合と5教科全てでそれぞれ誰かがトップを取れば、6本もの触手を破壊出来ます。…これが暗殺教室の期末テストです。賞金百億に近づけるかどうかは、皆さんの成績次第なのです!」

 

この先生は…やる気にさせるのが本当に上手い!

 

 

 

不破「凄いこと言い出したね殺せんせー……」

 

友「ああ…。だが、これは最大のチャンスと言っても過言じゃない!俺も…社会ならA組と張り合えるくらいの成績あるからな!」

 

不破「そうだね!一教科限定なら上位ランカーは結構いるから、皆もかなり本気でトップを狙ってる…!」

 

友「ああ。あと心配なのは……理事長の妨害だな…」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

新「渚、ここ間違ってるぞ。ここは先にこうしてから……」

 

渚「あ、そっか…。ありがとう新君」

 

新「俺はこれでも元A組だしな。頑張らないと!」

 

すると、杉野の携帯から着信音がした。

 

杉野「…ん?進藤から電話だ…。おうどうした?」

 

進藤『ああ。球技大会では世話になったな!高校で借りを返すとお前に言ったが、俺と違ってお前はまともに進学出来るのか心配になってな』

 

杉野「はは……。相変わらずの上から目線で…」

 

進藤『……というのもな。今会議室に…A組が集まってる。自主勉強会を開いているんだそうだ。音頭を取るメンバーは、“五英傑”と言われる天才達だ。

 

中間テスト総合2位!!他を圧倒するマスコミ志望の社会知識!放送部部長!『荒木鉄平』!!

 

中間テスト総合3位!!人文系コンクールを総ナメにした鋭利な詩人!生徒会書記!『榊原蓮』!!

 

中間テスト総合5位!!4位を奪った赤羽への雪辱に燃える暗記の鬼!生物部部長!『小山夏彦』!!

 

中間テスト総合6位!!性格はともかく、語学力は本物だ!生徒会議長!『瀬尾智也』!!』

 

杉野「……え、えっと…そのナレーションお前がやってんの?」

 

進藤『あ、うん。1回やってみたかったんだ。こういうの……』

 

なんでいきなりプロレス選手の解説みたいになったんだ……。

 

進藤『そして…中間テスト1位、全国模試1位……。俺たちの学年で生徒の頂点に君臨するのが…支配者の遺伝子。

 

 

生徒会長、『浅野学秀』!あの理事長の…ひとり息子だ』

 

新「……浅野…」

 

進藤『人望は厚く、成績はトップ。プライド高いA組の猛者を纏めあげるカリスマ性。彼自身の指導力に加えて、他の4人。全教科パーフェクトな浅野と、各教科のスペシャリスト達。5人合わせて『五英傑』。このままだとトップ50はほぼA組で独占だ…杉野。奴らはお前らE組を本校舎に復帰させないつもりだ』

 

杉野「……ありがとな。進藤。でも大丈夫。今の俺らは、E組を出ることが目標じゃないんだ。けど、目標のためにはA組に負けないくらいの点数を取らなきゃなんない。見ててくれ。頑張るから」

 

進藤『…勝手にしろ。E組の頑張りなんて知ったことか』

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後、兄貴と不破と3人で話していると、磯貝が声を掛けてきた。

 

磯貝「友、不破、新。放課後空きなら本校舎の図書館で勉強しないか?」

 

友「ああ…誘いは嬉しいけど、俺と不破はこれから剣術道場に行くんだ」

 

磯貝「道場に?」

 

友「うん。土方さん、ああ見えて数学で学年1位取るほどの人だから。不破と一緒に教わりに行くんだ」

 

磯貝「そっか…頑張れよ。新は?」

 

新「俺は空いてるから行くよ〜。磯貝の他には誰が行くの?」

 

磯貝「さっき渚と茅野と奥田と神崎を誘った。あと一人来れるけど……」

 

中村「私も行くー!」

 

後ろから中村が磯貝の肩を叩く。

 

磯貝「お、中村!よし、じゃあ行くか!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

俺たち7人は図書館で勉強を始めた。

周りからやや冷ややかな目で見られるが知ったこっちゃない。

 

荒木「おや?E組の皆さんじゃないか!勿体ない…君達にこの図書室は豚に真珠じゃないのかな?」

 

E組に話しかけてきたのは、進藤が言っていた五英傑の4人だ。

 

新「……荒木…瀬尾と小山と榊原まで」

茅野「例の五英傑さんかぁ……」

 

瀬尾「どけよザコ共。そこ俺らの席だからとっとと帰れ!」

 

茅野「なっ、何をぅ!?参考書読んでんだから邪魔しないで!」

 

新「茅野…」

 

渚「本……」

 

茅野は参考書を読んでるフリして『世界のプリン』なる本を読んでいたようだ。

何しに来たのお前。

 

磯貝「ここは俺達がちゃんと予約取った席だぞ」

 

中村「そーそー。クーラーの中で勉強するなんて久々でチョー天国ぅ〜」

 

中村…お前も何しに来たんだ。

 

 

小山「君たちは本当に記憶力が無いなぁ。この学校じゃE組はA組に逆らえないの!」

 

奥田「さ…逆らえます!」

 

奥田…!

 

小山「何…?」

 

奥田「私たち、次のテストで全科目で1位取るの狙ってるんです!そしたら大きな顔させませんから!」

 

小山「…フン!口答えするな!生意気な女だ。オマケにメガネのせいでイモ臭い!なぁ荒木。ギシシシ」

 

いや小山も荒木もメガネかけてんじゃねーか。

 

榊原「腐すばかりでは見逃すよ小山…。ご覧。どんな掃き溜めにも鶴がいる」

 

神崎「……!」

 

榊原「勿体ない…。学力があれば僕に釣り合う容姿なのに。君、うちに小間使いとして奉公に来ない?」

 

神崎「い、いえ…あの…」

 

茅野「…神崎さんってさ」

 

渚「…うん。とことん男運無いよね」

 

榊原が神崎に言い寄ってる…。

杉野がこの場にいたら暴れ出してたろうな…。

 

小山「いや待てよ……。元A組の真弓以外の奴らも、記憶を辿れば……。神崎有希子、中間テスト国語23位。磯貝悠馬、社会14位。中村莉桜、英語11位。奥田愛美、理科17位。なるほど。一概に学力なしとは言いきれないな。一教科だけなら」

 

小山が奥田の頭をコツコツと叩く。

 

瀬尾は渚の方へと向かう。

 

荒木は磯貝の背後へ行き、頭に手を置いた。

 

荒木「面白い…。じゃあこういうのはどうだろう。俺らA組と君らE組……。5教科でより多く学年トップを取ったクラスが…負けたクラスにどんな事でも命令出来る……ってのは」

 

………!

 

 

瀬尾「ん?急に黙ってビビったか?自信あるのは口だけか?なんならこっちは…『命』賭けてもいいぜ?」

 

その言葉を聞き、

 

神崎は榊原の、渚は瀬尾の、磯貝は荒木の、俺と中村は小山の首元に、シャーペンや指等を当てる。

 

渚「……命は簡単に賭けない方がいいと思うよ」

 

 

瀬尾「じょ……上等だよ!受けるんだなこの勝負!」

 

荒木「死ぬよりキツい命令出してやるからな!」

 

榊原「逃げるんじゃないぞ!」

 

逃げてんのはそっちだろ…?

道中のザコ敵みたいに去っていって……。

 

そして、この図書館の騒動はたちまち全校の知る所となり、この賭けはテストの後の俺たちの暗殺を…大きく左右する事になる。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

友「つ…疲れた……」

 

不破「…もうダメかも……」

 

俺と不破は土方さんに数学を教えて貰った…のだが、

 

友「剣術だけじゃなくて勉強もスパルタだ……」

 

不破「私にも相当スパルタだったけど…友君に当たりきついなぁ…あの人」

 

友「まぁ…それだけ愛されてるってことなのかもしれないけどさ……」

 

実際、教え方はかなり上手い。

重要な部分をきちんと言ってくれるお陰で要点が抑えやすいし、ついでに課題まで出してくる。

 

期末テスト……俺らE組史上、かつてないほどの勝負になる……!

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今日もずっと期末テスト勉強……だが…

 

殺「こら!カルマ君!真面目に勉強やりなさい!君なら充分総合トップがねらえるでしょう!」

 

カルマ「言われなくてもちゃんと取れるよ……あんたの教え方が良いせいでね」

 

うーん……それにしても余裕持ちすぎじゃないか?

 

カルマ「けどさぁ殺せんせー……。あんた最近『トップを取れ』って言ってばっかり…。普通の先生みたいに安っぽくてつまらないね」

 

殺「………」

 

カルマ「…それよりどーすんの?そのA組が出した条件って……。なーんか裏で企んでる気がするよ?」

 

岡島「心配ねーよカルマ。このE組がこれ以上失うモンなんてねーよ」

 

倉橋「勝ったら何でも1つかぁ~。学食の使用権とか欲しいな~」

 

新「そんなので良いのか……」

 

 

殺「ヌルフフフ。それについては先生に考えがあります。さっきこの学校のパンフを見てましたが、とっても欲しいものを見つけました。『これ』をよこせと命令するのはどうでしょう?」

 

殺せんせーが指さした『これ』……

 

成績優秀者のみが行ける…あの……!!

 

殺「君たちは一度どん底を経験しました。だからこそ次は、バチバチのトップ争いも経験して欲しいのです。先生の触手…そして『これ』。ご褒美は充分に揃いました!暗殺者なら、狙ってトップを()るのです!!」

 

それぞれの利害が交錯する期末テスト……!

ある者にとっての勝利は、別の者にとっての敗北!

それぞれが自分にとっての勝利を求め……

 

やってきた試験当日…!!

 

 



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第36話 5教科の時間

《友 side》

 

俺と不破は、本校舎の廊下を歩いている。

E組の試験会場へと向かっているのだ。

 

不破「どう?友君、トップ取れそう?」

 

友「どうだろ……。取れそうなのは社会だけど、浅野はやっぱり強敵だしな…」

 

不破「そうだね……頑張らないと…ん?私たちが一番乗りかな?」

 

友「……いや?誰か座ってるけど……」

 

そこには、ピンクの髪をした女子生徒がいた。

 

友・不破(……誰だ!?)

 

烏間「律役だ」

 

後ろに立っていた烏間先生が教えてくれた。

 

律役て…もうちょっといい人いなかったのかよ…

 

烏間「流石に理事長から人工知能の参加は許されなくてな……ネット授業で律が教えた替え玉を使うことで何とか決着した。…交渉の時の理事長に『大変だなコイツも』という哀れみの目を向けられた俺の気持ちが…君たちにわかるか」

 

友・不破「いやほんと頭が下がります!!」

 

烏間「……律と合わせて俺からも伝えておこう。頑張れよ」

 

友「……はい!」

 

本来なら1人で受けるはずの人だが、色んな人と同じ舞台にいるのを感じる。

 

一緒になって闘う人。

 

敵となって闘う人。

 

野次や応援を飛ばす観客(ギャラリー)

 

これはまるで……

 

 

俺達は殺し屋。おまけに今は…闘技者(グラディエーター)

 

 

闘いのゴングが…今日は鳴る……!!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《殺せんせー side》

 

テストは良い。

 

一夜漬けで得た知識など、大人になったらほとんど忘れてしまうだろう。

 

それでいい。

 

同じルールの中で、力を磨き、脳みそを広げ、結果を競う…。

 

その結果から得る経験こそが宝物だ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《渚 side》

英語の時間───

 

問スター「グォォオォ!!!」ドガァァン

 

は、速い!!

中間よりずっと…!

 

中高一貫の進学校では…中三から高校の範囲を習い始めることは珍しくない。

 

特にペースが速いのは……うちでは、『英語』『数学』『理科』!

 

けど、学校内での条件は、皆同じだ!!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

瀬尾「どいつもこいつもラストの問題で殺られてやがる。…だが俺はお前らとは違ぇ…!親の仕事でLAに1年いた!その時に基本的な会話は充分覚えた…!この問題文の単語や文法その範囲内……!!今更日本の中学レベルでつまずくかよォ!!」

 

【瀬尾の回答:△】

 

瀬尾「……倒れないッ…?嘘だろ…!?満点回答の見本だぞ……!?」

 

余程自分の回答に自信があったのか、【△】という結果に驚きを隠せないようだ。

 

中村「お堅いねぇ……力抜こうぜ優等生!」

 

【中村の回答:◎】

 

中村の回答は文句無しの満点回答だ。

 

瀬尾「い、E組ごときが……!?」

 

中村「多分読んでないっしょ?サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

殺「さすがは名門校…。良い問題を作りますねぇ。問題文が名作小説から引用されている。生徒の読書量や、臨機応変さも採点基準に加える気でしょう。恐らくは、原文に準じた雑で簡潔な口語体で答えなければげんてんになる……。トップ争いではここを満点取るかどうかで大きく違う」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

【渚の回答:◎】

 

【新の回答:◎】

 

渚「やった…!」

 

新「よっし…」

 

 

瀬尾「……しまった!その小説…英語の教師が授業中にさりげなく薦めてきやがった!!」

 

俺らの教師は『先生こういう繊細な反逆に憧れましてねぇ。ぜひ二か国語で読んでください。君たちの年頃ならキュンキュン来るはずです』とかいってしつこく薦めてけどな…。

 

 

中村「外国で良い友達いなかったっしょ瀬尾クン。やたら熱心に本を薦めるタコとかさ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

理科の時間───

 

小山「そォ〜ら!理科は暗記だッ!記憶野の閃光で敵の鎧を一枚一枚剥いでいく……だが、1番堅い頭の装甲が剥がせない…!ちゃんと暗記したはずだが……ん?」

 

小山が向いた先には、

楽しそうに歩く問スターと奥田がいた。

 

奥田「それでね〜」

 

問スター「わかる〜」

 

 

奥田「本当の理科は暗記だけじゃ楽しくないです。『君が君である理由を理解してるよ』ってちゃんと言葉にして伝えて上げたら、この理科すっごく喜ぶんです」

 

新「流石だな…奥田。でも俺も負けてないぜ」

 

小山が新の方を振り向くと、新も問スターの肩に乗っている。こちらの問スターは新にメロメロになっていた。

 

そして、問スターは自ら装甲を脱いでいった……。

 

奥田(理科にも相手に届く国語力が必要って、最近やっとわかってきました!殺せんせー!)

 

新「…小山も少しは見習えば?同じメガネでも…その奥に宿る理科への情熱は奥田の方が強いと思うよ」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

《友 side》

社会の時間──

 

荒木「し、しくじったぁ!!今年のアフリカ開発会議はチェックしてたが……首相の会談の回数なんて分かるかよ……!?」

 

どうやら荒木はこの難問でつまづいたようだ。

対して悠馬は……。

 

磯貝「ふー…危なかった。会議の重要度の象徴だし、一応覚えて正解だった……!」

 

友「本当すげぇよな…。悠馬、お前が教えてくれなかったら俺もマークしてなかった……」

 

荒木「…磯貝、真弓友、貴様ら!!社会問題で俺を出し抜くとは……!」

 

磯貝「たまたまだよ……。俺ん家結構な貧乏でさ。アフリカの貧困にちょっと共感して調べてたら…実際に現地に連れてかれて、更に興味が広がっただけで…」

 

友「ホント…あの先生のお陰で色んな場所連れてかれたお陰で助かったよ…」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

国語の時間───

 

春過ぎて 夏きるたらし 白妙の

衣ほすてふ 天の香具山

 

榊原「思った以上にやるようだなE組!顔だけでなく言葉も美しい!…だが!ただ一片の会心の解答でテストの勝敗は決まらない!取りこぼしなく全て制する総合力が必要なのだ!」

 

神崎「……!」

 

榊原(そして…我々は決してトップなど取れやしない。A組(うち)には総合力の怪物がいる…)

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《学秀 side》

数学の時間──

 

数学か。

 

E組には…赤羽がいたっけ。

 

中間の数学は僕に続いて2位。

 

総合でも4位。

 

E組としては飛び抜けている。

 

あと脅威になりうるのは真弓新…。元A組故に学力が高い。

 

 

だが僕には、数学はもとより全教科死角は無い!

 

クラス対決も頂上対決を圧勝で制し、

E組には父を支配する駒としては働いてもらう!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《カルマ side》

 

……あーあ。

 

皆…目の色変えちゃってまぁ…。

 

勝つってのはそういうんじゃないんだよね。

 

通常運転でサラっと勝ってこその完全勝利……。

 

正しい勝ち方……。

 

こいつを生贄に、皆に教えてやるよ…。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

2日間の攻防の末…。

 

全ての戦い(テスト)が幕を下ろした!

 

暗殺、賭け(ギャンブル)

 

全ての結果は〇の数で決まる……!

 

そして3日後……!

 

 

殺「さて皆さん。全教科の採点が届きました…」

 

ついに…結果発表……!!

 



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第37話 終業の時間-1学期

《友 side》

 

うちの学校では、学年内順位も答案と一緒に届けられる。

 

テストの行方は一目瞭然だ。

 

 

殺「では発表します…。まずは英語から!E組の1位……

 

 

そして学年でも1位!!『中村莉桜』!!」

 

中村莉桜

英語 100点

学年 1位

 

一同「おおおお!!」

 

中村「どうよ〜♪」

 

中村1位……!早速E組が1点獲得だ!

 

殺「完璧です。君のやる気はムラっ気があるので心配でしたがね」

 

中村「うふふーん。なんせ賞金百億かかってっから。触手1本忘れないでよ?殺せんせー?」

 

殺「勿論です。渚君も健闘ですが、肝心なところでスペルミスを犯す癖が直ってませんね」

 

潮田渚

英語 91点

学年 6位

 

殺「新君も途中文法のミスがありました。それでも大健闘ですよ」

 

新「惜しかった…」

 

渚「うーん…」

 

真弓新

英語 97点

学年 3位

 

 

殺「さてしかし、一教科トップを取ったところで潰せる触手はたった1本。それに、A組との5教科対決もありますから…」

 

浅野学秀

英語 99点

学年 2位

 

瀬尾智也

英語 95点

学年 4位

 

 

 

殺「続いて国語……!E組1位は…『神崎有希子』!…がしかし!学年一位はA組『浅野学秀』…!!神崎さんや友君、新君も大躍進です。充分ですよ」

 

浅野学秀

国語 100点

学年 1位

 

神崎有希子

国語 96点

学年 2位

 

真弓新

国語 95点

学年 3位

 

真弓友・榊原蓮

国語 94点

学年 4位タイ

 

 

前原「…やっぱ点とるな…浅野は」

 

友「漫画版じゃページの場も取ってたな」

 

渚「友君…?」

 

岡島「流石は全国1位…中間よりも遥かに難易度高かったのに」

 

三村「全教科変わらず隙が無い……」

 

杉野「五英傑なんて並べて呼ばれてるけどよ…。結局は浅野1人。あいつを倒せなきゃ学年トップは取れねーんだ……」

 

 

殺「………では続けて返します。社会!E組1位は『磯貝悠馬』!!そして学年では……

 

 

おめでとう!!浅野君を抑えて学年1位!!」

 

磯貝「よっし!!!」

 

殺「友君も惜しかったですが、磯貝君と同じく浅野君の点数を越えている。充分健闘しました」

 

友「うーん…惜しかったな……」

 

磯貝悠馬

社会 97点

学年 1位

 

真弓友

社会 96点

学年 2位

 

浅野学秀

社会 95位

学年 3位

 

 

不破「これで二勝一敗!」

 

友「さて、次は理科……奥田と新だ!」

 

奥田「……!」

 

新「…」

 

 

殺「理科のE組1位は『奥田愛美』、『真弓新』の2人!!そして………素晴らしい!!学年一位も『奥田愛美』、『真弓新』!!」

 

一同「おおおお!!」

 

奥田愛美・真弓新

理科 98点

学年 1位タイ

 

浅野学秀

理科 97点

学年 3位

 

友「一教科で2人トップだ!」

 

不破「これで3勝1敗!!」

 

三村「数学の結果を待たずしてE組がA組に勝ち越し決定!」

 

前原「いい仕事したな!奥田!新!触手1本ずつ、お前らのモンだ!」

 

木村「てことは賭けの賞品の『あれ』もイタダキだな!」

 

倉橋「楽しみ〜!」

 

英語、社会、理科で学年トップを取り、計4名が触手を破壊する権利を得た。

 

しかし、この教室内に、総合トップを狙えると言われていた『赤羽業』はいなかった…。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3-A教室─

 

小山「E組とクラス対決で負けるなんて…こんな屈辱あるか?」

 

荒木「いいじゃないか小山。お前はある意味標的に勝てたんだから」

 

小山「…ああ。俺から総合4位を奪った奴へのリベンジな。でも…あいつ、勝手に自滅してんだもん。勝負するまでも無いわ。あんな雑魚」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

E組裏山─

 

カルマ「………!」

 

赤羽業

数学 85点

学年 10位

総合 469点

学年 13位

 

殺「…流石にA組は強い。5教科総合は6位まで独占。E組の総合は新君の7位が最高でした。当然の結果です。A組の皆も負けず劣らず勉強をした。テストの難易度も上がっていた」

 

浅野学秀

数学 100点

学年 1位

総合 491点

学年 1位

 

カルマ「………何が言いたいの?」

 

殺「恥ずかしいですね〜!『余裕で勝つ俺カッコいい』とか思ったでしょ」

 

カルマ「………ッ!!///」

 

 

殺「先生の触手を破壊する権利を得たのは、中村さん、磯貝君、奥田さん、新君の4名。暗殺においても、賭けにおいても、君は今回何の戦力にもなれなかった。分かりましたか?殺るべき時に殺るべき事を殺れない者は……暗殺(この)教室では存在感を無くして行く。刃を研ぐのを怠った君は暗殺者じゃない。錆びた刃を自慢気に掲げた、ただの『ガキ』です」

 

カルマ「……チッ…」

 

 

烏間「……おい。いいのかあそこまで言って」

 

殺「ご心配なく。立ち直りが早い方向に挫折させました。彼は多くの才能に恵まれている。だが力有る者はえてして未熟者です。本気でなくても勝ち続けてしまうために、本当の勝負を知らずに育つ危険がある…。

 

大きな才能は、負ける悔しさを早めに知れば大きく伸びます。テストとは、勝敗の意味を、強弱の意味を、正しく教えるチャンスなのです」

 

 

 

 

 

 

殺(成功と挫折を今一杯に吸い込みなさい生徒達よ!!勝つとは何か。負けるとは何か。力の意味を…今!!───私が、最後まで気付けなかった…とても大事な事だから)

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

カルマと殺せんせーが戻ってきた。

 

殺せんせーに何か言われたのか、カルマは少し苛立っているように見える。

 

殺「さて皆さん素晴らしい成績でした。5教科プラス総合の6つの中、皆さんが取れたトップは英語、社会、理科の3つ。そのうち理科は2人がトップを取ったので、破壊出来る触手は4本。ではトップの4人はご自由にどうぞ」

 

殺ぬ(ま。4本くらいなら失っても余裕でしょう…。6本は流石にヤバかったですが…)

 

 

殺せんせーが話している途中、寺坂組4人が立ち上がり前へと向かう。

何するつもりだ?

 

寺坂「おい待てよタコ。5教科のトップは4人じゃねーぞ」

 

殺「?…4人ですよ寺坂君。国、英、社、理、数、全て合わせて……」

 

寺坂「はぁ?アホ抜かせ。5教科っつったら国、英、社、理……あと家だろ」

 

寺坂竜馬

吉田大成

村松拓哉

狭間綺羅々

家庭科 100点

学年 1位

 

す、すげぇ…!

家庭科で100点とか…!

料理得意な新でも80点なのに…!

 

殺「か、家庭科ぁぁぁ!?ちょ待って!?家庭科のテストなんて『ついで』でしょ!?『こんなの』だけ何本気で100点取ってるんです君たちは!?」

 

寺坂「だーれもどの5教科とは言ってねーよな」

 

狭間「ククク…クラス全員でやりゃ良かった。この作戦」

 

 

千葉「言ったれカルマ」

 

カルマ「………。『ついで』とか『こんなの』とか…家庭科さんに失礼じゃね?殺せんせー?5教科の中じゃ最強と言われる家庭科さんにさ?」

 

……本当カルマは煽るのが上手いな。

よし。俺ものっかってやろう。

 

友「そーだぜ先生!約束守れよ!」

 

菅谷「1番重要な家庭科さんで4人がトップ!」

 

倉橋「合計触手8ほ〜ん♪」

 

殺(は、8本!?!?ひぃぃぃぃ!!!)

 

磯貝「それと殺せんせー。これは皆で相談したんですが、この暗殺に…今回の賭けの『戦利品』も使わせてもらいます」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

期末の後は、ほどなく一学期の終業式。

 

けど俺達には、やるべきことが残っている。

 

 

浅野「…………」

 

寺坂「お、やっと来たぜ。生徒会長サマがよ」

 

浅野「…何か用かな。式の準備でE組に構う暇なんて無いけど」

 

寺坂「おーう。待て待て。何か忘れてんじゃねーのか?」

 

磯貝「浅野。賭けてたよな。5教科トップを多く取ったクラスが1つ要求出来るって。要求はさっきメールで送信したけど…あれで構わないな?」

 

瀬尾「くっ…」

 

おーおー。悔しそうな顔してるねぇ!

 

寺坂「5教科の賭けを持ち出したのはてめーらだ。まさか今更冗談とか言わねーよな?なんならよ。5教科の中に家庭科とか入れてもいいぜ。それでも勝つけどなヘヘッ」

 

寺坂…。今回ばかりは、お前らに感謝だな。

 

家庭科は受験に使わないから重要度が低く、問題も教科の担任の好みで自由に出題する。

 

そうなると、殺せんせーの授業しか受けていないから圧倒的に不利なはず。家庭科で満点なんて、5教科トップよりも難しいだろう。

 

そんな中、4人も1位を取るとはな…!

全く…。ようやく暗殺教室に馴染んできたって感じがするな。

 

磯貝「カルマ。珍しいな。お前が全校集会来るなんて」

 

カルマ「だってさ、今フケると逃げてるみたいでなんか嫌だし」

 

 

倉橋「………」

 

中村「………」

 

にせ律「…………」

 

菅谷「……烏間先生!隣のにせ律が気になって式に集中出来ないっすよ!」コソコソ

 

烏間「堪えてくれ…。律が機械だとバレないために必要な工作だ…。直属の上司の娘さんでな。口は堅いし詮索もしない。律の授業で成績が上がったと上司もご機嫌だ」コソコソ

 

菅谷「俺、テスト中からずっと隣だし、集中出来ずにクラス最下位になっちまった…」

 

烏間(クラスでは最下位でも、学年で見れば中位の成績。ドン尻からよくここまで育てたもんだ…)

 

 

終業式はつつがなく進む。

 

いつものE組いじりもウケが悪い。

 

悪い見本(エンド)がトップ争いをしてしまったから。

 

今日ここに殺せんせーはいないけど…

俺達は前を向いて立っていられた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

殺「夏休みのしおり。1人1冊です」

 

前原「出たよ……。恒例過剰しおり」

 

友「アコーディオンみたいだなこれ……」

 

殺「これでも足りないくらいです。夏の誘惑は枚挙に遑がありませんから」

 

にしてもページ数多すぎだろ!

読んでるうちに夏休み終わるわ!!

 

殺「さて、これより夏休みに入るわけですが、皆さんにはメインイベントがありますねえ」

 

中村「あー。賭けで奪った『これ』のことね」

 

殺「本来は成績優秀クラス。つまりA組に与えられるはずだった特典ですが、今回の期末はトップ50のほとんどをA組とE組で独占している。君たちにだってもらう資格はあります。

 

 

夏休み!!椚ヶ丘中学校特別夏期講習!!沖縄離島リゾート2泊3日!!」

 

不破「そういえば友君、沖縄大丈夫なの?海だけど…」

 

友「うーん…。正直不安だけど、皆がいるから安心かな。それに水は殺せんせーの現状分かる範囲での最大の弱点でもあるんだ。何とか水に触れずに、暗殺に貢献するさ」

 

 

殺「……君たちの希望だと、触手を破壊する権利は教室(ここ)で使わず、この離島の合宿中に行使するという事でしたね。触手8本の大ハンデでも満足せず…。四方を先生の苦手な水で囲まれたこの島も使い、万全に…貪欲に命を狙う…………。正直に認めましょう。君たちは侮れない生徒になった」

 

一同「……!」

 

殺「親御さんに見せる通知表は先程渡しました。これは、標的(先生)から暗殺者(あなた達)への通知表です」ブワッ

 

教室いっぱいの二重丸。

 

標的(ターゲット)からのこの3ヶ月の嬉しい評価だ。

 

 

殺「一学期で培った基礎を存分に活かし、夏休みも沢山遊び!沢山学び!そして沢山殺しましょう!

 

 

暗殺教室!基礎の一学期!これにて、終業!!」

 



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第38話 いきものの時間


多分初めて友くんが登場しない回です




《新 side》

 

夏休みっていうのは楽しい事もあるが、その分嫌なことも沢山ある。

 

椚ヶ丘は意外と人が多い。

夏休みじゃ、家族連れが電車に乗って外出しようと駅前に沢山人が密集する。

 

アイドルにとっては辛い現状だ。

 

 

俺は今外出している。

が、普通の格好ではない。

 

サングラスをかけ、マスクをつけて歩いている。

 

何でって?

そんなの決まってる。ファンの人にバレないためだ。

 

芸能人だと誰か一人にバレてみろ。

一瞬で騒ぎになる。

気付いてくれる人がいる=ファンがいるということにもなるが、騒ぎになると色々とめんどくさい。

 

このまま誰にもバレずに…。

 

倉橋「あれ?新君?おっは〜♪」

 

…………あ。

 

早速クラスメイトにバレたんですけど!?

 

新「ちょ、あんま大きい声出すな…!近くにファンがいたら騒ぎに……」

 

倉橋「あ、そっか。新君って芸能人だからね。ごめんごめん。ところで、何してたの〜?」

 

新「CDを予約してきたんだ…。尊敬する先輩のグループのニューシングルが出るからな」

 

倉橋「そうなんだ〜。この後空いてる?裏山行こうと思うんだけど〜」

 

新「いいけど…何するんだ?」

 

倉橋「じゃー早速裏山行ってみよ〜!」

 

新「ちょ!倉橋…!」

 

倉橋は話も聞かずに裏山の方へと走っていく。

 

仕方がないので追うことにした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

裏山──

 

新「昆虫採集?」

 

倉橋「うん。この前罠仕掛けといたんだ〜。お小遣い稼ぎくらいにはなるよ?まぁ芸能人の新君からしたらはした金かもだけどね〜」

 

新「言い方が悪いな……。それにしても、俺が虫嫌いだったらどうしてたんだよ」

 

倉橋「それは無いと思ってたよ〜?この前E組の花壇でバッタさんと戯れてたからね〜」

 

新「ああ…。見てたんだあれ。まぁ、虫は俺も好きだからな…。兄貴は苦手だけど」

 

兄貴は大の虫嫌い。

部屋に蚊が入っただけで俺に助けを求めてくる程だ。

Gが出た時なんかは気絶しかけてた。

 

 

倉橋「よいしょっと!木の上から見る景色最高〜♪」

 

新「本当だな…。虫も沢山いそうだ」

 

倉橋「うん。って、あそこにいるの…前原君達じゃ?」

 

倉橋が指さす先には、前原、渚、杉野の3人がいた。

どうやら前原は金欲しさに虫を探しているらしい。

 

前原「──オオクワガタだっけ?あれウン万円とかするらしいじゃん?そいつをネトオクに出して大儲け!最低でも高級ディナー代とご休憩場所の予算までは確保するんだ!」

 

相変わらずだな…こいつは。

 

倉橋「だめだめ。オオクワはもう古いよ〜」

 

新「15歳の旅行プランじゃねーだろ……それ」

 

前原「倉橋と新…!」

 

倉橋「おは〜。皆もお小遣い稼ぎ来たんだね〜」

 

杉野「倉橋、オオクワガタが古いってどういうことだ?」

 

倉橋「んっとね〜」

 

そう言って倉橋は木から降りる。

俺もそれに続けて降りた。

 

倉橋「私達が生まれた頃は凄い値段だったらしいけどね。今は人工繁殖法が確立されちゃって、大量に出回り過ぎて値崩れしたんだってさ」

 

前原「ま、まさかのクワ大暴落か……。1クワガタ=1ちゃんねーぐらいの相場だと思ってたのに…」

 

倉橋「ないない。今はちゃんねーの方が高いと思うよ〜」

 

前原…ショックで顔が崩壊してるぞ…。

 

倉橋「そうだ!せっかくだしみんなで捕まえよ〜!多人数で数そろえるのが確実だよ〜!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

倉橋が仕掛けたトラップを見ると、何匹か昆虫が付いていた。その中にはカブトムシもいる。

 

倉橋「お手製のトラップだよ〜。昨日の夜につけといたんだ。あと20ヶ所ぐらい仕掛けたから、上手くすれば1人1000円位稼げるよ〜」

 

杉野「おお!バイトとしちゃまずまずか!」

 

倉橋(探してたアレが来てるといいな〜)

 

すると、木の上から声が聞こえてきた。

 

岡島「…フッフッフッ。効率の悪いトラップだ。それでもお前らE組か…!」

 

前原・新・杉野「岡島!!」

 

なんでこんな所にこいつがいるんだ。

しかもエロ本読んでるし。

おい未成年。

 

岡島「せこせこ千円稼いでる場合かよ。俺のトラップで狙うのは…当然百億円だ!」

 

百億……!?

 

渚「ま、まさか……」

 

岡島「その通り。南の島で暗殺するって予定だから…あのタコもそれまでは暗殺も無いと油断するはず。そこが俺の狙い目だ。」

 

岡島が指さした先には……

 

地面いっぱいに散らばったエロ本と、その上でエロ本をニコニコしながら読むカブトムシに擬態した殺せんせー……。

 

いや情報量多っ!!

 

岡島「ククク…かかってるかかってる。俺の仕掛けたエロ本トラップに!」

 

新「すげぇ…スピード自慢の殺せんせーが微動だにせず見入ってる……」

 

前原「余程好みのエロ本なのか……」

 

杉野「またなんだあのカブトムシのコスプレは!」

 

新「あれで擬態してるつもりか嘆かわしい!」

 

 

岡島「どの山にも存在するんだ。『エロ本廃棄スポット』がな。そこで夢を拾った子供が……大人になって本を買える齢になり……今度はそこに夢を置いていく。終わらない夢を見る場所なんだ……。丁度いい。手伝えよ!俺たちのエロの力で覚めない夢を見せてやろうぜ!」

 

パーティが致命的にゲスくなってしまった…。

 

岡島「随分研究したんだぜ?あいつの好みを。俺だって買えないから拾い集めてな」

 

渚「?殺せんせー、巨乳なら何でもいいんじゃ…?」

 

岡島「『現実』ではそうだけどな。エロ本は『夢』だ。人は誰しもそこに自分の理想を求める。写真も、漫画も、僅かな差で反応が全然違うんだ」

 

渚「…凄いよ岡島君。1ヶ月間本を入れ替えてつぶさに反応を観察してる!」

 

杉野「ていうか大の大人が1ヶ月連続で拾い読むなよ…」

 

新「嘆かわしい……」

 

 

岡島「お前のトラップと同じだよ倉橋。獲物が長時間夢中になるよう研究するだろ?」

 

倉橋「う…うん」

 

岡島「俺はエロいさ。蔑む奴はそれでも結構。だがな、誰よりエロい俺だから知っている。……『エロは、世界を救える』って」

 

な、なんかカッコイイ……!!

 

 

岡島「殺るぜ。エロ本の下に対先生弾を繋ぎ合わせたネットを仕込んだ。熱中してる今なら必ずかかる。誰かこのロープを切って発動させろ!俺が飛び出してトドメを刺す!」

 

どんなものでも研ぎ澄ませば刃になる。

 

岡島のエロの刃が、殺せんせーを貫くかもしれない。

 

 

…すると、突然殺せんせーの目がみよーんと伸びた。

 

岡島「デ、データに無いぞ!?あの顔はどんなエロを見た時だ!?」

 

殺「ヌルフフフ。見つけましたよ」

 

殺せんせーは触手を伸ばして、少し遠くの木から1匹の虫を取った。

 

殺「ミヤマクワガタ……。しかもこの目の色!」

 

殺せんせーの言葉を聞いた瞬間、倉橋の目の色が変わり、殺せんせーの元へ飛び出していった。

 

倉橋「白なの!?殺せんせー!!」

 

殺「おや倉橋さんビンゴですよ」

 

倉橋「すごーい!探してたやつだ!」

 

殺「ええ!この山にもいたんですねぇ」

 

岡島「あぁ…。あとちょっとだったのに……」

 

前原「なんで喜んでんのかさっぱりだが…」

 

新「巨大カブトと女子中学生がエロ本の上で飛び跳ねてんのは凄い光景だ」

 

どうやら殺せんせーは今更自分の行動が生徒に見られていたことに気付いたらしい。

 

俺らの方を向いてはっ!という顔をして、その後エロ本の山を見て、触手で顔を抑えた。

 

殺「ちょうはずかしい…ちょうはずかしい…」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

殺「面目ない…。教育者としてあるまじき姿を…。本の下に罠があるのは知ってましたが、どんどん先生好みになる本の誘惑に耐えきれず……!」

 

岡島「すんなりバレてた!?」

 

嘆かわしい……。

 

杉野「なぁ倉橋、それってミヤマクワガタだろ?ゲームとかじゃオオクワガタより全然安いぜ?」

 

倉橋「最近はミヤマの方が高い時が多いんだよ。まだ繁殖が難しいから…この子はサイズ大きいし、2万円はいくかもね〜」

 

前原・杉野「2万…!?」

 

 

殺「おまけによーく目を見て下さい。本来黒いはずの目が白いでしょう」

 

新「なるほど……アルビノ個体ってわけね」

 

前原「え?それって、ごくたまに全身真っ白で生まれてくるやつだろ?」

 

新「いや、クワガタのアルビノは目だけなんだ」

 

殺「その通り。『ホワイトアイ』と呼ばれ、天然ミヤマのホワイトアイはとんでもなく希少です。学術的な価値すらある。売れば恐らく数十万は下らない……」

 

渚・岡島・前原・杉野・新「すっ……!?」

 

数十万……俺でもそんなに稼げないぞ…。

 

倉橋「ゲスな皆〜。これ欲しい人手ー上げて♪」

 

渚・岡島・前原・杉野・新「欲しい!!!」

 

殺しにエロにいきものに……。

 

倉橋「どーしよっかな〜」

 

殺「ちょ!先生が見つけたんですよ!?」

 

前原「俺のだぁ!!」

 

杉野「落ち着け前原!」

 

岡島「うわぁぁぁ!」ドボーン

 

渚・新「岡島(君)ーー!」

 

夏休みの学校も発見がいっぱいだ。

 

 

 



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第39話 策謀の時間

《友 side》

 

南の島での暗殺旅行が1週間後に迫り、今日はその訓練と計画の詰めに集まった。

 

勝負の8月。殺せんせーの暗殺期限まで残り7ヶ月。

 

流石に、全員に緊張感が走って……。

 

イリーナ「まぁまぁガキ共。汗水流してご苦労な事ねぇ」

 

うん。いたよ早速1名。緊張感の欠片もねぇ奴が。

 

三村「ビッチ先生も訓練しろよ…。射撃やナイフは俺らと大差ないだろーにさ」

 

イリーナ「大人はズルいのよ。あんた達の作戦に乗じて…オイシイとこだけ持ってくわ…」

 

???「ほほう……えらいもんだな…イリーナ」

 

イリーナ「…えっ!?ロ、ロヴロ師匠(センセイ)!?」

 

烏間「夏休みの特別講師で来てもらった。今回の作戦にプロの視点から助言をくれる」

 

あ、原作では大分前に出たけどこの二次小説じゃその話ごとカットされた人だ。

ようやく初登場したんだな。

 

ロヴロ「1日休めば指や腕は殺しを忘れる。落第が嫌ならさっさと着替えろ!」

 

イリーナ「ヘ、ヘイ!喜んで!!」

 

 

三村「ビッチ先生、あの師匠には頭上がらねーなぁ…」

 

菅谷「…ああ。てか、あの人いかにも怖いもん」

 

ロヴロ「それで、殺センセーは今絶対に見てないな?」

 

烏間「ああ。予告通りエベレストで避暑中だ。部下がずっと見張ってるから間違いない」

 

簡単にエベレストに行って涼むな!!

 

ロヴロ「ならば良し。作戦の機密保持こそ暗殺の要だ」

 

岡野「ロヴロさんって殺し屋の斡旋業者なんですよね。今回の暗殺にも誰かを…?」

 

ロヴロ「いいや。今回はプロは送らん。…というより、送れんのだ。殺センセーは臭いに敏感…。特に君たち以外の部外者の臭いを嗅ぎ分ける。君たちの知らない所でプロの殺し屋を随分送り、誰もが悉く失敗してきたが…その際、プロ特有の強い殺気を臭いごと覚えられ…2回目からは教室にすら辿り着かせてもらえない。

つまり、1度使った殺し屋は2度使うのは難しい上……困った事も重なってな」

 

友「困った事……?」

 

ロヴロ「残りの手持ちで有望だった殺し屋数名が……何故か連絡がつかなくなった」

 

突然……!?

何人もの殺し屋が暗殺に失敗してる殺せんせーに怖気付いた…とか?

 

ロヴロ「という訳で…今現在斡旋できる暗殺者は0だ。慣れ親しんだ君たちに殺してもらうのが一番だろう」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ロヴロ「………先に約束の8本の触手を破壊し、間髪入れずクラス全員で攻撃して奴を仕留める………。それはわかるが、この1番最初の『精神攻撃』と言うのは何だ?」

 

渚「まず動揺させて動きを落とすんです。殺気を伴わない攻撃には、殺せんせー脆いとこありますから」

 

前原「この前さ……殺せんせーエロ本拾い読みしてたんすよ『クラスの皆さんには絶対に内緒ですよ』ってアイス1本配られたけど……。今どきアイスで口止めできるわけねーだろ!!」

 

寺坂・吉田・村松・狭間「クラス全員で散々にいびってやるぜ!!」

 

渚「他にもゆするネタはいくつか確保してますから、まずはこれを使って追い込みます」

 

ロヴロ「残酷な暗殺法だ」

 

……同感です。

 

ロヴロ「で、肝心なのはトドメを刺す最後の射撃……。正確なタイミングと精密な狙いが不可欠だが……」

 

烏間「不安か?このE組(クラス)の射撃能力は」

 

ロヴロ「……いいや、逆だ。とくに、あの2人は素晴らしい」

 

ロヴロが『素晴らしい』と評したのは

『千葉龍之介』と『速水凛香』の2人だ。

 

烏間「そうだろう。『千葉龍之介』は空間計算に長けている。遠距離射撃で並ぶ者のない狙撃手(スナイパー)。『速水凛香』は手先の正確さと動体視力のバランスが良く、動く標的を仕留める事に優れた兵士(ソルジャー)……。どちらも主張が強い正確ではなく、結果で語る仕事人タイプだ」

 

ロヴロ「俺の教え子に欲しい位だ…。他の者も良いレベルに纏まっている。短期間でよく見出し育てたものだ。人生の大半を暗殺に費やした者として、この作戦に合格点を与えよう。……彼らなら、充分に可能性がある」

 

 

友「うーん…やっぱ射撃は上手くいかないな…」

 

射撃の訓練が始まってばかりの頃は、ゲームで銃を撃ち慣れてたのもあって割とクラス内でも射撃成績が良かったが、そこから中々上手くならない……。

それでもクラス内上位な方なんだけど…。

 

不破「私も……立て膝だからかな?上手く安定しなくて…」

 

ロヴロ「……君たち」

 

ロヴロさんがこちらに話しかけてきた…

めっちゃ怖い!!

 

友「は、はい……」

 

ロヴロ「…あぐらで撃ってみろ」

 

不破「えっ……」

 

俺と不破はロヴロさんに言われるがままにあぐらで的を撃った。

すると、2人とも先程よりも撃った弾が的の中心に近づいた。

 

ロヴロ「狙いが安定しただろう。人によっては立て膝よりあぐらで撃つのが向いている」

 

不破「は、はい…!」

 

友「さすが本職…!」

 

さっきよりもかなり撃ちやすい…!

 

ふと後ろを見ると、渚がロヴロに質問をしていた。

 

渚「…ロヴロさん。ロヴロさんが知ってる中で……1番優れた殺し屋ってどんな人なんですか?」

 

ロヴロ「………!……興味があるのか?殺し屋の世界に」

 

渚「あ、いや、そういう訳では……」

 

ロヴロ「…そうだな。俺が斡旋する殺し屋の中に『それ』はいない。最高の殺し屋……。そう呼べるのはこの地球上にたった1人。この業界にはよくある事だが……彼の本名は誰も知らない。ただ一言の仇名で呼ばれている……。

 

曰く、『死神』と」

 

渚「………!」

 

最高の殺し屋、『死神』……!!

 

 

ロヴロ「ありふれた仇名だろう?だが、死を扱う我々の業界で、『死神』と言えば唯一絶対奴を指す。神出鬼没、冷酷無比……。夥しい数の屍を積み上げ、『死』そのものと呼ばれるに至った男。君たちがこのまま殺しあぐねているのなら……いつかは奴が姿を現すだろう。ひょっとすると今でも……。じっと機会を窺ってるかもしれないな……」

 

そんな人が…。

 

いよいよ、南の島のチャンスは逃せないな……。

 

 

磯貝「友!」

 

友「ん?…悠馬か。どうした?」

 

磯貝「南の島の暗殺だけど…友には『この』役割を担ってくれないか?」

 

磯貝は暗殺計画書のとあるページを指さした。

 

磯貝「この役割なら水に濡れることはないだろうからな。あと、無理はするなよ?」

 

友「わかってるって。任せとけ!」

 

磯貝「頼んだぞ」

 

皆気遣ってくれている…。あんまり心配かけさせないようにしないとな。

 

正直1位取れなかったのは悔しいけど……この作戦だと1位取った人は確実に濡れることになるから少しホッとしてしまった…。

 

……いや、駄目だ駄目だ。そんな事考えちゃ…。

とにかく今は…目の前の目標!

南の島の暗殺計画………絶対に成功させる!!

 

 

 

 

 



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第40話 水族館の時間


友と不破を久々に2人きりでイチャつかせます。
はよ付き合え!!(←作者)


《友 side》

剣術道場にて─

 

総七「──で、お前ら沖縄に行くんだろー?いいなぁ俺も行きてぇなぁ」

 

友「なんだ?E組落ちるか?」

 

総七「いややめとくわ」

 

友「はぁ?」

 

剣術道場の貴重な休憩時間─。

総七、山崎の2人と沖縄旅行の話をしていた。

 

山崎「でも先輩凄いですよ!社会で学年2位だなんて!」

 

友「いやー…でも1位取りたかったな…」

 

総七「ところでさぁ。E組って可愛いコ多いよね〜。本校舎ブスしかいねーからさぁ」

 

友「あー…まぁ他クラスより顔面偏差値高いかもな」

 

総七「名前なんだっけなー。神崎?とか矢田?とか倉橋?とか結構人気だぞ」

 

山崎「あ。僕のクラスメイトで速水さんって人が素敵って言ってる人いました!あと片岡さんっていうイケメンな人もいるって」

 

友「イケメン……か。ドンマイ…片岡…」

 

総七「それこそさぁ。いつも友が仲良くしてる不破も可愛いじゃん。友にその気がないなら取っちまうぞー」

 

ピクッ……

 

友「………おい」ドン!!!

 

俺は壁に手を力強く叩きつける。

 

友「今……なんて言った?」

 

総七「え…えっと…冗談だって……」

 

山崎「先輩…わかりやすい……」

 

その時、俺の携帯が鳴った。

 

友「ん?不破からLINEだ。えっと内容は……」

 

 

Yuzuki[ねぇ友君。明日午後からどこか出かけない?]

 

U[いいよー。どこに行く?]

 

Yuzuki[じゃあ水族館とかどうかな?友君大丈夫?]

 

U[水族館なら自分が水に入るわけじゃないし、ガラスが割れて水が流れてきたりとかも無いだろうからへーきだよd(˙꒳˙* ) ]

 

Yuzuki[良かった!じゃあ明日1時頃に駅前ね!]

 

U[OK!]

 

 

友「…………/////」

 

総七「友…凄い顔赤いな」

 

山崎「本人は気付いているのか、気付いて無いのか…」

 

総七「ま、応援してやっか。友人だしな」

 

山崎「そうですね!後輩として応援します!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

《不破 side》

 

ついに今日……。友君と水族館へ行く!!

 

そして、実は私は……異性と水族館のような娯楽施設に行くのは初めてなのだ!

 

え、でしょうねって!?読者さんは勘が鋭いね!

勘が鋭いガキ(読者)は嫌いだよ!

 

家族や、女友達とならある程度はあるけど……!

 

 

うーん…何を着ていこう…。

普段通りのパーカー?

いや、いっそオシャレしたり……。

 

……そうだ!逆に考えてみよう!

『友君ならどうするか』!

 

友君だったら……友君だったら……

 

『うん。気に入ったよ。結構。次外出る時はこいつら着よっかな』

 

そういえば、私が服を選んであげた時こう言ってた…!

 

きっと友君なら、私が選んだ服を着てくる!

 

だったら……私は…

 

…あの時選んだパーカー、自分の持ってるやつに寄せたんだ。

だから、そのパーカーを着ていけば…ペアルック的な……

 

~~~~~!!!//////

 

なんて事を考えてるんだ私は…!!

 

と、とりあえず普段通りのパーカー!

下手にオシャレせずにいこう…!!

 

さて、今は…10時半か。

 

 

………何時に着けばいいんだ…?

 

早めに着いておくべき?

いや…それだと『待った?』『全然待ってないよ』的な会話が出来ない…。

いやいや!そんなド定番な王道シチュなんて……!

 

だからといって遅れるのも違う…。

自分から誘っておいて遅れたら、好感度が下がってしまう……。

 

ピッタリだ。

ピッタリにつこう。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

よし…そろそろ集合場所。

時間もいい感じ………ん?

 

友「………」

 

友君もういるっ!!!

ヤバい…待たせちゃったかなぁ……。

 

友「……あっ。不破ー!」

 

友君がこちらに手を振ってくれている…!

 

不破「友君!ごめんね。待った?」

 

友「俺もさっき着いたばっかだから大丈夫だよ。さ、行こ行こ」

 

不破「……私が選んだ服、来てくれたんだ」

 

友「え?ああ。気に入ってるし…それに、不破なら俺がこの服来てくると踏んで、似てるパーカーで来るかなって推理したんだ」

 

全部筒抜けだった!?

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

椚ヶ丘水族館──

 

友「さて着いたな。水族館来るの何年ぶりだろうな……」

 

不破「よし。早速見て回ろうよ!」

 

 

 

友「おー。色んな魚がいるな。あっちにはイワシ、あっちはマンボウ……。こっちは…クラゲか?」

 

不破「凄い……。久しぶりに見たけど、こんな綺麗なんだ…!」

 

友「ああ…。あ、おい、あんま離れんなよ?」

 

不破「…えっ。あ、うん…!」

 

『離れんなよ』…か。

…………。

 

あぁぁぁ……///。また顔赤くなる……。

 

暗い水族館で良かった…。

 

 

友「不破、あれ見て。あそこカワウソの触れ合いコーナーだってさ!」

 

不破「ホントだ!」

 

可愛い……。

カワウソ可愛い……。

 

ダメだ……思わず笑顔になっちゃう…。

 

友「………///」

 

不破「ん?友君もカワウソ触りなよ!」

 

友「あ……ああ。そうだな。可愛いなーお前。この子の名前は……へー『ユヅキ』って言うのか」

 

 

……え?

このカワウソ私の名前と同じなの…?

待てよ……。

…………と言うことは…?

 

友「『ユヅキ』可愛いな〜。『ユヅキ』〜、なでなでしてあげますよ〜」ニコニコ

 

………これ友君わざとやってないよね!?

この笑顔……純粋な笑顔だと信じたい!

 

でも友君意外とSだからわざとな気がする!!

 

 

 

友「お、そろそろイルカショーだって」

 

不破「行こ行こ!水族館と言ったらイルカショーだよ!」

 

友「えーっと……『前の座席に座ると水がかかるかもしれません』だってよ?どうする?」

 

不破「うーん…イルカショーと言ったら水しぶきだし…でも、友君大丈夫?」

 

友「まぁ、水しぶきくらいなら。毎日顔とか手とか洗ってるし、風呂も入ってるからその程度は大丈夫だよ」

 

…ということで、前から3列目に座ってイルカショーを見ることに。

 

そして、数分後にイルカショーが始まった。

 

不破「お〜!高くジャンプした!」

 

友「すげぇ…。って、ぶわっ!思った以上に水かかる!」

 

不破「ほ、ホント…。あーあ…服も髪も濡れちゃったよ…」

 

 

 

友「…………!////」

 

友(水に濡れてる不破……この前のプールの時は切羽詰まってたから気にしてなかったけど…すげぇ可愛い……///)

 

 

 

不破「………!////」

 

水に濡れてる友君……この前のプールの時は大変な状況だったら意識してなかったけど……凄くカッコイイ……///

 

 

イルカショーも見終わり、まだ見てなかった他のコーナーも見たりして、どんどん時間が過ぎていった。

 

友「……そろそろ帰るか。大分見て回ったし」

 

不破「そうだね!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私の家の前──

 

水族館を出て、電車で椚ヶ丘駅に戻り、

友君は、いつも通り私を家まで送ってくれた。

 

友「──じゃ、俺は家帰るな」

 

不破「……友君!…今日は本当にありがとう!南の島…頑張ろうね!」

 

友「…ああ!」ニコッ

 

不破「……!じゃ、じゃあね!////」

 

 

うぅ…その笑顔反則だよ……///

 

不破兄「おかえり優月。今日もカレシ君とデートかい?」

 

不破「デ、デートってわけじゃ!まだ付き合ってないしっ!//」

 

不破兄「へ〜。『まだ』ってことはこれから付き合う予定があるの〜?」

 

不破「お兄ちゃん!!もう…私部屋戻るから!」

 

 

 

 

………。付き合う…かぁ。

 

あーもう!こんなこと考えてると熱くなってくるよ…!

 

 

早く沖縄行く準備しよ…!

 

………今までで1番力を入れた暗殺計画。成功するといいけど…。

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日……ついに沖縄へ───。

 

 

 

 





次回から沖縄編……。

先に行っておきます。
友君は女装が一切似合いません。
これが意味すること…勘が鋭い読者さんならわかるでしょう


ごめんなさい。渚ちゃんのところカットです。



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第41話 島の時間

《友 side》

 

今……俺たちE組は、船に乗っている。

 

殺「にゅやぁ……船はヤバい…マジでヤバい……先生、頭の中身が全部まとめて飛び出そうです」

 

殺せんせーは……なんか酔ってる。

 

 

 

そして俺は…

 

友「…………」

 

精神が少し不安定になっている…。

 

こんな小さな船でもフラッシュバックしてしまうとは……。

 

不破「大丈夫?友君」

 

友「…ああ。やっぱ…動く船に乗ると思い出しちゃうみたいだ………」

 

不破「………友君。私たちがついてるから。……力不足かもしれないけど、安心して」

 

友「………ああ。皆のお陰で…少し気が楽になったよ」

 

 

 

倉橋「あ!先生、起きて!見えてきたよ!」

 

新「東京から6時間。先生を殺す場所だ。兄貴、そろそろつくよ」

 

友「……ついに着いたか!」

 

 

一同「島だーーーっ!!!」

 

 

 

 

ウェイター「ようこそ。普久間島リゾートホテルへ。サービスのトロピカルジュースでございます」

 

島へ着くと早速おもてなしが…!

 

ってあれ…?

 

友「俺の分のトロピカルジュース来ないんだけど…」

 

不破「確かに……どうしたんだろう?」

 

友「…まさか数間違えたのか?」

 

不破「さっきのウェイターさん呼ぶ?」

 

友「いや、いいや。また飲む機会あるでしょ」

 

 

三村「いやぁ最高だな!」

 

木村「景色全部が鮮やかで明るいなー!」

 

殺「ホテルから直行でビーチに行けるんですね。様々なレジャーも用意してあるようですねぇ」

 

おい水着美女を凝視するなエロダコ。それでも教師か。

 

 

新「例の暗殺は夕飯の後にやるからさ。まずは遊ぼうぜ殺せんせー!」

 

吉田「修学旅行ん時みたく、班別行動でさ!」

 

殺「ヌルフフフ…。賛成です。よく遊び、よく殺す。それでこそ暗殺教室の夏休みです」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

1班の磯貝達が殺せんせーの気を引いているうちに、俺ら4班はやるべきことがある。

 

計画書(プラン)通り暗殺が出来るかどうか、綿密に現地をチェックして回る。

 

 

茅野「次はうちの班に来る番だよ!やることやってすぐに着替えないと!」

 

渚・カルマ・杉野・新「おーう!」

 

 

 

 

 

杉野「……で?殺せんせー、そこ変な模様どうしたんだよ」

殺「日焼けしました。グライダーの先端部分だけ影になって」

 

どんな日焼けだよ!

 

神崎「私たちはイルカを見る予定なんですけど…」

 

茅野「船だけど大丈夫?」

 

殺「ご心配なく!水着を持ってます!」

 

 

殺せんせーはそう言って本物の魚のような水着(?)を着て水中へ。

そしてイルカと一緒にジャンプしている。

 

新「…なんだあれ」

杉野「……あれは…水着……なのか?」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

俺たち2班は狙撃手である千葉ちゃんと速水がいるため、射撃スポットを選ぶことに。

 

航輝と岡島は現在『準備中』だから、俺と創ちゃん、千葉ちゃん、不破、中村、速水の6人で行動中だ。

 

千葉「殺せんせーは?」

 

速水「今は3班と海底洞窟巡りしてる。こっちの様子は絶対に見えないよ」

 

千葉「じゃあ、今なら射撃スポット選び放題だな」

 

速水「サクッと決めちゃいますか」

 

中村「……シブいねあの二人」

 

友「もはや仕事人の風格だな……」

 

不破「中学生の会話内容とは思えない……」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

殺「いやぁ。遊んだ遊んだ。お陰で真っ黒に焼けました」

 

一同「黒すぎだろ!!!」

 

殺せんせーの顔は本当に日焼けなのかわからないレベルで黒かった。

第1話の寺坂の時みたいなド怒りの黒よりも真っ黒だ。

 

歯まで真っ黒に焼けているから表情が読み取れない。

 

磯貝「じゃ殺せんせー。飯のあと暗殺なんで、まずはレストラン行きましょう」

 

殺「はい♪」ルンルン

 

村松「……どれだけ満喫してんだ。あのタコ」

 

寺坂「こちとら楽しむフリして準備すんの大変だったのによ」

 

吉田「ま、今日殺せりゃ明日は何も考えずに楽しめるじゃん」

 

村松「まーな!今回ぐらい気合い入れて殺るとすっか!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

レストランは大きな船の中にある。

 

正直なとこ言うと…滅茶不安だ…。

 

海の上……動く船……。

 

ヤバい…また………!

 

不破「…友君。無理しないでよ?この作戦言った時…皆を心配させないように『大丈夫』って言ったでしょ?」

 

友「………うん」

 

不破「……友君。…無理だけはしないでね?降りたかったら降りても……」

 

友「…いや。頑張るさ。皆がいるんだ。少しは安心出来るよ。それに、今はまだ殺せんせーもいるしね」

 

そうだ。今の俺には皆が居る。

それだけで、少しは楽になった。

 

 

磯貝「夕飯はこの貸切船上レストランで、夜の海を堪能しながらゆっくり食べましょう」

 

殺「な、なるほどねぇ……。まずはたっぷりと船に酔わせて戦力を削ごうというわけですか。実に正しい!ですが……そう上手くいくでしょうか。暗殺を前に気合いの乗った先生にとって、船酔いなど恐れるに…」

 

一同「だから黒いわ!!!」

 

先生の顔は真っ黒。日焼けだ……。

 

目も口も一切見えない。

 

中村「表情どころか前も後ろもわかんないわ」

 

片岡「ややこしいからなんとかしてよ」

 

……何とかできるのか?

 

殺「ヌルフフフ。お忘れですか皆さん!先生には脱皮がある事を!黒い皮を脱ぎ捨てれば…ほら!元通り!」

 

殺せんせーは脱皮をして日焼けした皮を脱いでいつもの黄色い肌に戻った。

 

不破「あ。月一回の脱皮だ」

 

……ん?そうだよね?それって月一回だよね?

 

 

殺「こんな使い方もあるんですよ。本来は『ヤバい時』の奥の手ですが」

 

友「……その『ヤバい時』って…この後あるんじゃないっすか?」

 

 

殺「………あっ…。……………ああああああ!!!!!!!」

 

 

前原「バッカでー…。暗殺前に自分で戦力減らしてやんの……」

 

片岡「どうして未だにこんなドジ殺せないんだろ……」

 

 

この日のために、夏休みに入って密かに特訓を重ねてきた。

仕込みも万全。

 

今度こそ、殺せんせーにこの刃を届かせる……!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

殺「にゅやぁ…結局酔った……」

 

前原「さーて殺せんせー。メシのあとはいよいよだ」

 

菅谷「会場はこちら……。このホテルの離れにある水上パーティールーム」

 

磯貝「……ここなら、逃げ場はありません」

 

三村「さ、席につけよ殺せんせー。楽しい暗殺……」

 

岡島「まずは映画鑑賞から始めようぜ」

 

 

 

磯貝「…初めに、三村が編集した動画を見て楽しんで貰い、その後テストで勝った8人が触手を破壊し、それを合図に皆で一斉に暗殺を始める。それでいいですね殺せんせー?」

 

殺「ヌルフフフ。上等です」

 

 

友「セッティングご苦労さん。航輝」

 

三村「頑張ったぜ。皆が楽しんだり飯食ってる間もずっと編集さ」

 

ホント凄いな航輝…。

ついでに岡島もな。

 

殺(……この小屋は周囲を海で囲まれている。壁や窓には対先生物質が仕込まれている可能性もある。脱出はリスクが高い。小屋の中で避けきるしかないようですね……)

 

 

渚「…殺せんせー。まずはボディチェックを。いくら周囲が水とはいえ、あの水着を隠し持ってたら逃げられるしね」

 

殺「入念ですねぇ。そんな野暮はしませんよ」

 

渚は直に先生の体を触っている。

ここで渚が攻撃したところで…殺せんせーは余裕でかわすだろう。

 

でも…。

 

皆で、この作戦なら…。

 

殺れる……!

 

 

殺「準備はいいですか?全力の暗殺を期待してます。君たちの知恵と工夫と本気の努力。それを見るのが、先生の何よりの楽しみですから……。遠慮は無用。ドンと来なさい!」

 

一同「………!」

 

 

新「言われなくとも…始めるぜ。殺せんせー」

 

新はそう言って、小屋の中の電気を消した……。

 

そして、航輝が編集した動画がスタートした。

 

 



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第42話 異変の時間

《友 side》

 

さて、触手破壊の権利を得た8人以外は、殺せんせーの後ろで小屋を出入りすることになっている。

 

 

位置と人数を明確にさせないために。

 

そして、それぞれの持ち場につくために。

 

恐らく、殺せんせーは匂いに敏感だから、あの二人─

千葉ちゃんと速水の匂いが小屋の中に無いのをすでにわかっているだろう。

それも計算のうちだ。

 

よし。俺もそろそろいく番だな。

自分の持ち場へと行こう。

 

 

 

さて──

 

俺の役割は、『小屋の破壊』。

 

詳しくはまぁ後で実行するから言わないが、ともかく破壊する必要がある。

 

友「さてと……モーターボートなんて運転した事ないけど、殺りますか」

 

小屋の柱に紐が結びついてあり、その紐は5機のモーターボートに繋がっている。

 

それぞれのモーターボートを俺と、カルマ、茅野、原、竹林が運転する。

そして精一杯引っ張って小屋を破壊……!

これが俺に与えられた役割だ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

『3年E組が送る とある教師の実態』

 

三村が編集してくれた動画を殺せんせーに見てもらう…。

 

殺「しかしこの動画よく出来てますねぇ。編集が三村君。撮影が岡島君、ナレーターが新君ですか。カット割りといい、選曲といい…良いセンス。ついつい引き込まれ……にゅ?」

 

『まずは、ご覧頂こう。我々の恥ずべき担任を………

 

 

 

買収は…失敗した』

 

テレビには…エロ本を読む巨大カブトの姿が…!

 

殺「失敗したぁぁぁぁ!?!?」

 

『お分かり頂けただろうか。最近のマイブームは熟女OL……。全てこのタコが1人で集めたエロ本である』

 

殺「ちょ、違っ……!?岡島君達!皆に言うなとあれほど……!!」

 

おーおー。焦ってる焦ってる。

まだまだ終わりじゃないぜ…?

 

『お次はこれだ。女子限定のケーキバイキンに並ぶ巨影…誰あろう。奴である。バレないはずがない。女装以前に人間じゃないとバレなかっただけ奇跡である』

 

なんでバレないと思ったんだろ……。

普通気付くだろあんなデカいの。

 

狭間「エロ本に女装に……恥ずかしくないの?ド変態」

 

良いぞ狭間。もっと言ったれ。

 

『給料日前の奴である。分身でティッシュ配りに行列を作り、そんなに取ってどうするのかと思いきや……なんと、唐揚げにして食べ出したではないか。教師……いや。生物としての尊厳はあるのだろうか。……こんなものでは終わらない。この教師の恥ずかしい映像を1時間たっぷりお見せしよう』

 

殺「あと1時間も!?!?」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1時間後───

 

殺「……死んだ。もう先生死にました……。あんなの知られて…もう生きて行けません」

 

大丈夫か…?俺らが殺る前に自殺すんじゃねーのこの先生……。

 

『さて、秘蔵映像にお付き合い頂いたが…何かお気付きではないだろうか。殺せんせー?』

 

ここで殺せんせーは初めて気付いたようだ。

 

『満潮』によって…小屋の床全体に水が流れていることに。

 

まさか本当に気づかないとはな。かなり水吸ってるせいか触手が膨らんでる。

 

 

寺坂「…俺らまだなんにもしてねぇぜ。誰かが小屋の支柱を短くでもしたんだろ」

 

新「船に酔って、恥ずかしい思いして、海水吸って……」

 

中村「大分動きが鈍ってきたよね」

 

寺坂「さあ本番だ。約束だ。避けんなよ」

 

殺(……やりますね。しかし、狙撃手(スナイパー)のいる方向はわかっている。そちらの窓さえ注意すれば……)

 

俺ら8人は殺せんせーの触手を撃ち抜いた。

 

そして、それと同時に……

 

兄貴達モーターボート担当の5人が小屋を破壊……!!

 

茅野「よし!」

 

カルマ「おっけ〜」

 

友「壊れたな!」

 

原「やった!」

 

竹林「フッ…」

 

 

そして後は…渚や前原達、『フライボード』担当が、水圧の檻で殺せんせーの退路を塞ぐ!!

 

更に、律達が射撃を開始!

 

殺せんせーは当たる攻撃に敏感だ。

 

だから、この一斉射撃ではあえて先生を狙わずに……

 

弾幕を張り、逃げ道を塞ぐ……!

 

 

からの…!

 

とどめの2人……。千葉と速水!!

 

 

陸の上には…2人の匂いが染み込んだダミーを置く!

本物の2人は、ずっと水中にいた!!

 

 

小屋の中で陸上を警戒させておき、フィールドを水の檻へと変えることで……全く別の狙撃点を創りだす!!

 

2人の匂いも、発砲音も、水が全て消してくれる!!

 

 

千葉・速水(もらった……!!!)

 

 

殺(………よくぞ…ここまで…!!)

 

2人は弾を放った。

そしてその弾は殺せんせーの方へと吸い込まれていく。

 

そして……

 

 

その夜、殺せんせーの全身が…閃光と共に弾け飛び、俺らも衝撃で飛ばされてしまった。

 

 

 

新「うわぁっ…!!」

 

友「……!殺ったのか…!?」

 

今までの暗殺とは明らかに違う……!

 

殺せんせーが爆発して…後には何もない!

 

殺った手応え!!

 

 

烏間「油断するな!奴には再生能力もある!片岡さんが中心になって水面を見張れ!」

 

片岡「はい!」

 

 

水圧の檻と対先生弾の弾幕の檻……。

 

2つの檻…。逃げ場はどこにもなかったはず…!

 

 

友「新!不破!大丈夫か?」

 

不破「う、うん。なんとか」

 

新「兄貴はボート乗ってたから…水に入らなくて平気だったみたいだな」

 

友「ああ。……ん?おいあそこ…」

 

兄貴が指さした先──

 

水面にブクブクと泡が……!?

まさか、殺せんせーがいるのか…!?

 

 

 

その瞬間。

僕らが見た物は…殺せんせーの……!

 

 

殺「ふぅ」プカァ

 

顔が入った……透明とオレンジの変な球体……。

 

何アレ!?

 

 

殺「これぞ、先生の奥の手中の奥の手!完全防御形態!」

 

一同(完全防御形態……!?)

 

殺「外側の透明な部分は…高密度に凝縮されたエネルギーの結晶体です。肉体を思い切り小さく縮め、その分余分になったエネルギーで、肉体の周囲をガッチリ固める。この形態になった先生はまさに無敵!水も、対先生物質も、あらゆる攻撃を結晶の壁が跳ね返します!」

 

マ、マジかよ……!!

 

矢田「…そんな。じゃあ、ずっとその形態でいたら殺せないじゃん」

 

殺「ところがそう上手くはいきません。このエネルギー結晶は、24時間ほどで自然崩壊します。その瞬間に先生は肉体を膨らませ、エネルギーを吸収して元の体に戻るわけです。………裏を返せば、結晶が崩壊するまでの24時間、先生は全く身動きが取れません」

 

……!

 

殺「これは様々なリスクを伴います。最も恐れるのは、その間に高速ロケットに詰め込まれ、遥か遠くの宇宙空間に捨てられる事ですが…。その点はぬかりなく調べ済みです。24時間以内にそれが可能なロケットは今世界のどこにも無い!」

 

 

──やられた。

 

ここに来ての殺せんせーの隠し技……

その欠点までちゃんと計算ずくで…!

 

完敗だ……!!

 

 

寺坂「チッ。何が無敵だよ。何とかすりゃ壊せんだろこんなモン」

 

寺坂は殺せんせーを持ち上げてスパナでガンガンと叩くが、音が響くだけで効いてないようだ。

 

殺「無駄ですねぇ。核爆弾でもキズひとつつきませんよ」

 

カルマ「そっか〜。弱点ないんじゃ打つ手ないね〜」

 

カルマは自分の携帯を取り出すと、殺せんせーの前に出した。

画面には…エロ本を読む巨大カブトが………。

 

殺「にゅやーーッ!!やめてーー!!手が無いから顔も覆えないんです!!」

 

カルマ「ごめんごめん。じゃとりあえず携帯をその辺の石で固定してと。あ、そこで拾ったウミウシも引っつけとくね。あと誰か不潔なオッサン見つけてきてー。これパンツの中にねじ込むから」

 

殺「助けてぇぇぇ!!!」

 

不破「ある意味いじり放題だね…」

友「ああ。そしてこーゆー時のカルマは天才的だ…」

 

 

烏間「…とりあえず解散だ皆。上層部とこいつの処分法を検討する」

 

カルマ「ちぇっ。もう少し遊びたかったのに」

 

 

殺「ヌルフフフ。対先生物質のプールの中にでも封じこめますか?無駄ですよ。その場合はエネルギーの一部を爆散させて…さっきのように爆風で周囲を吹き飛ばしてしまいますから」

 

烏間「………!」

 

殺「ですが、皆さんは誇っていい。世界中の軍隊でも先生をここまで追い込めなかった。ひとえに皆さんの計画の素晴らしさです」

 

一同「………」

 

 

殺せんせーはいつもの様に俺達の暗殺を褒めてくれたけど……皆の落胆は隠せなかった。

 

かつてなく大がかりな…全員での渾身の一撃を外したショック……。異常な疲労感と共に、僕らはホテルへの帰途についた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

皆かなり落ち込んでいる……。

でも、1番悔しいのは……千葉ちゃんと速水だろう。

 

千葉「律。記録はとれてたか?」

 

律「はい。可能な限りのハイスピード撮影で、今回の暗殺の一部始終を」

 

千葉「……俺さ。撃った瞬間わかっちゃったよ。『ミスった。この弾じゃ殺せない』って……」

 

律「……断定はできません。あの形態に移行するまでの正確な時間は不明瞭なので。ですが、千葉君の射撃があと0.5秒早いか、速水さんの射撃があと標的(ターゲット)に30cm近ければ、気付く前に殺せた可能性が50%ほど存在します」

 

速水「……やっぱり」

 

千葉「自信はあったんだ。リハーサルは勿論、あそこより不安定な場所で練習しても外さなかった。だけど……いざあの瞬間、指先が硬直して視界も狭まった」

 

速水「……同じく」

 

千葉「絶対に外せないという重圧(プレッシャー)。『ここしかない!』って大事な瞬間…」

 

速水「…うん。こんなにも練習とは違うとはね」

 

 

 

前原「しっかし…疲れたわ〜」

 

三村「自室帰って休もうか…もう何もする気力ねぇ…」

 

寺坂「んだよてめーら。1回外した位でダレやがって。もー殺ること殺ったんだから明日1日遊べんだろーが」

 

岡島「そーそー!明日こそ水着ギャルをじっくり見んだ〜!どんなに疲れてても全力で鼻血出すぜ〜」

 

前原「そんな元気ねぇよ……」

 

 

……なんか変だ。

いくらなんでも…皆疲れすぎじゃ…。

 

渚「な、中村さん!凄い熱…!」

 

渚の方をみると、中村が倒れていた。

 

いや、中村だけじゃない……。

 

岡島「いやもう想像しただけで鼻血ブ……いや…あれ……」

 

友「岡島!鼻血が……!!」

 

 

中村と岡島だけじゃない……!

 

陽斗や航輝……杉野や神崎達も…!

 

烏間「フロント!この島の病院はどこだ!」

 

フロント「え、いや…。なにぶん小さな島なので…」

 

烏間「……クッ!」

 

その時、烏間先生の携帯が鳴った。

 

烏間「…非通知から……?」

 

???『やぁ先生。可愛い生徒が随分苦しそうだね……。ククク……賞金首を狙ってるのは君らだけでは無いということだ……』

 

烏間「…何者だ。まさかこれはお前の仕業か?」

 

???『ククク。最近の先生は察しがいいな。人工的に作り出したウイルスだ。感染力はやや低いが、一度感染したら最後…。潜伏期間や初期症状に個人差はあれ、1週間もすれば全身の細胞がグズグズになって死に至る……』

 

烏間「……!!」

 

???『治療薬も一種ののみのオリジナルでね。あいにくこちらにしか手持ちが無い。渡すのが面倒だから…直接取りに来てくれないか?……山頂の『普久間殿上ホテル』最上階まで、1時間以内にその賞金首を持って来い………。だが、先生は腕が立つそうだから危険だな。そうだな、動ける生徒の中で最も背が低い男女2人と……何だっけな名前。『真弓友』とか言ったか?そいつらに持って来させろ。フロントに話は通してある。素直に来れば、賞金首と、薬の交換はすぐに済む。だが、外部と連絡を取ったり、1時間を少しでも遅れれば……即座に治療薬は破壊する。礼を言うよ。よくぞそいつを行動不能まで追い込んでくれた。天は我々の味方のようだ』プツッ ツー ツー

 

烏間(……まさか!こんな時に第三者が狙って来るとは!)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

烏間「───という訳だ」

 

……俺を名指しで呼ぶだなんて…一体何故…。

 

矢田「酷い…誰なんですかこんなことするやつは!」

 

園川「烏間さん。案の定ダメです…。政府としてあのホテルに宿泊者を問い合わせても、『プライバシー』を繰り返すばかりで…」

 

烏間「やはりか…」

 

やはり……?

 

烏間「……この小さなリゾート島『普久間島』は、『伏魔島』と言われ、マークされている。ほとんどのリゾートホテルは真っ当だが、離れた山頂のあのホテルだけは違う…。南海の孤島という地理も手伝い、国内外のマフィア勢力や、それらと繋がる財界人らが出入りしていると聞く。政府のお偉いさんともパイプがあり、迂闊に警察も手が出せん」

 

そんな厄介なホテルに黒幕が……!

 

カルマ「ふーん…。そんなホテルがこっちに味方するわけないね」

 

吉田「どーすんすか!?このままじゃいっぱい死んじまう…!こ…殺される為にこの島来たんじゃねーよ!」

 

原「落ち着いて吉田君……。そんな簡単に死なない死なない。じっくり対策考えてよ」

 

吉田「お、おお。悪ぃな…原」

 

 

寺坂「言うこと聞くのも危険すぎるぜ……。友と1番チビの2人で来いだぁ?友はともかく!このちんちくりん共だぞ!?人質増やすよーなもんだろ!」

 

寺坂の言う通りだ……。

でも渚は良いとして、茅野ちょっと怒ってるぞ。

 

寺坂「第一よ。こんなやり方する奴らにムカついてしょうがねぇ。人のツレにまで手ぇ出しやがって!」

 

狭間「単細胞が……」

 

村松「キシシ……」

 

寺坂「要求なんざ全シカトだ!今すぐ全員都会の病院に運んで……!」

 

竹林「賛成しないな」

 

竹林……!

 

竹林「もし本当に人工的に作ったウイルスなら、対応出来る抗ウイルス薬はどんな大病院にも置いていない。いざ運んで無駄足になれば、患者の負担(リスク)を増やすだけだ。対症療法で応急処置はしとくから…急いで取引に行った方がいい。奥田さんと新君。手伝って欲しい」

 

奥田「は、はい……!」

 

新「りょーかいっ」

 

……打つ手なしだ。

殺せんせーが動けるなら手の打ちようがあるが…

俺らの暗殺が下手にいい所まで行ったせいで……24時間は身動き取れない…!

 

烏間(敵の目的はこいつだが…渡しに行った生徒2人を人質に取り、薬も渡さず逃げられでもしたら……!どうする…!?交渉期限は1時間無い……!)

 

殺「良い方法がありますよ」

 

えっ……?

 

殺「病院に逃げるより……大人しく従うよりは……律さんに頼んだ下調べも終わったようです」

 

律「OKです♪」

 

殺「元気な人は来てください。汚れても良い恰好でね。友君は武器も持ってきてください。持っているでしょう?木刀を」

 

友「………!なんで知ってんだよ…!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ここが……普久間殿上ホテル……!

 

千葉「……高ぇ」

 

律「あのホテルのコンピュータに侵入して、内部の図面と警備の配置図を入手しました。正面玄関と敷地一帯には大量の警備が置かれています。フロントを通さず…ホテルに入るのはまず不可能。ただ一つ、この崖を登ったところに通用口がひとつあります。まず侵入不可能な地形故……警備も配置されていないようです」

 

…おいおい。まさか。

 

 

殺「敵の意のままになりたくないなら手段は一つ…。患者10人と、看病に残した3人を除き…動ける生徒全員でここから侵入し、最上階を奇襲して治療薬を奪い取る!」

 

一同「………!!」

 

烏間「危険すぎる…!この手馴れた脅迫の手口…敵は明らかにプロの者だぞ!」

 

殺「ええ。しかも私は君達の安全を守れない…大人しく私を渡した方が得策かもしれません。どうしますか?全ては君達と……指揮官の烏間先生次第です」

 

磯貝「………それは」

 

岡野「ちょっと……」

 

菅谷「難しいだろ……」

 

 

烏間「……やはり無理だ。渚君、茅野さん、友君。すまないが…」

 

磯貝「いやまぁ…」

 

岡野「崖だけなら楽勝だけどね」

 

友「いつもの訓練に比べたらな」

 

不破「ねー」

 

磯貝「でも、未知のホテルで未知の敵と戦う訓練はしてないから…。烏間先生、しっかり指揮を頼みますよ」

 

寺坂「おお。ふざけたマネした奴らに…キッツリ落とし前つけてやる!」

 

烏間「……!」

 

殺「見ての通り。彼らは只の生徒ではない。貴方の元には16人の特殊部隊がいるんです。さぁ…時間は無いですよ?」

 

烏間「……注目!!目標山頂ホテル最上階!隠密潜入から奇襲への連続ミッション!ハンドサインや連携については訓練のものをそのまま使う!3分でマップを叩き込め!21時50分(ニーヒトゴーマル)作戦開始!!」

 

一同「おう!!!」

 




出撃メンバー
└渚、カルマ、千葉、速水、寺坂、吉田、菅谷、茅野、友、不破、磯貝、片岡、岡野、矢田、木村、烏間先生、ビッチ先生

病欠メンバー
└岡島、三村、前原、杉野、狭間、倉橋、中村、原、神崎、村松

看病メンバー
└奥田、竹林、新


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第43話 伏魔の時間

遂にここまで来た……!

原作の不破さん活躍シーン……!!!




《友 side》

 

岡野「ほら!早くしないと置いてくよ〜」

 

岡野はひょいひょいと崖を登っていく。

 

木村「やっぱ身軽だな〜岡野は」

 

磯貝「ああ。こういう事やらせたらクラス一だ」

 

木村「それに比べてうちの先生は……」

 

イリーナ「きゃー揺れる!もっと静かに登りなさいよ!」

烏間「……」

 

磯貝「動けるのが3人中1人とは……」

 

ビッチ先生は烏間先生に捕まってるし、殺せんせーは身動き取れないから烏間先生が持ってるし……。

 

 

殺「しかし皆さん見事なバランス感覚ですねぇ…。」

 

烏間「崖登り(クライミング)なら学校の裏山でもさせている。どんな場所でも暗殺を可能にするためには…基礎となる筋力とバランスが不可欠だからな」

 

イリーナ「いいから早く登りなさいよ!掴まる手が疲れてきたわ!!」

 

千葉「つーか、ビッチ先生何でついて来てんだ…?」

 

片岡「留守番とか除け者みたいで嫌なんだって」

 

寺坂「フン。足でまといにならなきゃいいけどな」

 

 

不破「ねぇ友君…。こんなことする人に心当たりとかないの?」

 

友「…あるわけないだろ。俺だって何で名指しされたかわかんないんだよ……」

 

不破「そ、そうだよね……」

 

友「不破。その岩尖ってるから危ない」

 

不破「うわっ…。ホントだ……ありがとう」

 

 

……でも、何故俺は呼ばれたんだろう。

 

一体…何の目的があって…?

 

 

律「この扉の電子ロックは私の命令で開けられます。また、監視カメラも私たちを映さないよう細工出来ます。ですが、ホテルの管理システムは多系統に分かれており、全ての設備を私ひとりで掌握するのは不可能です」

 

烏間「流石に厳重だな。律、侵入ルートの最終確認だ」

 

律「はい。内部マップを表示します。エレベーターを使用するには、フロントが渡す各階ごとの専用ICキーが必要なため、私は使えない。従って、階段を登るしかないのです。その階段もバラバラに配置されており。最上階までは長い距離を歩かなくてはなりません」

 

千葉「テレビ局みたいな構造だな」

 

友「ああ。確かテレビ局は、テロリストに占領されないように複雑な設計になってるんだっけ」

 

菅谷「こりゃあ悪い宿泊客が愛用するわけだ……」

 

 

烏間「行くぞ。時間が無い。状況に応じて指示を出すから見逃すな」

 

烏間先生は扉を開けて中へ入っていく。

俺らも磯貝、寺坂を先頭に中へと続く。

 

そして、侵入して最初の難所のロビー……。

 

ここを通らないと上には行けないけど、警備のチェックが最も厳しい場所。

 

すぐそこに非常階段があるけど……。予想以上に警備が多いな……。

 

俺らが全員が気付かれずに通過するのは無理だろう……。

 

イリーナ「何よ。普通に通ればいいじゃない」

 

…は?

 

菅谷「状況判断もできねーのかよビッチ先生!」

 

木村「あんだけの数の警備の中どうやって…」

 

イリーナ「………。だから、普通によ」

 

え……!?

 

ビッチ先生はワイングラスを片手に歩き出した。

警備の男たちはビッチ先生に見惚れているようだ

 

イリーナ「あっ…。ごめんなさい。部屋のお酒で悪酔いしちゃって…」

 

警備員「…あ!お気になさらずお客様」

 

イリーナ「来週そこでピアノを弾かせて頂く者よ。早入りして観光してたの…。酔い覚ましついでにね…ピアノの調律をチェックしておきたいの。ちょっとだけ弾かせてもらっていいかしら?」

 

警備員「えっと…じゃあフロントに確認を」

 

イリーナ「いいじゃない…。あなた達にも聴いて欲しいの。そして審査して……」

 

警備員「し、審査…?」

 

イリーナ「そう…。私の事よく審査して…ダメなとこがあったら叱って下さい…」

 

そういうとビッチ先生はピアノを弾き始めた。

 

ビッチ先生が凄く綺麗に見える…!

ピアノ…めっちゃ上手い…!

 

殺「『幻想即興曲』ですねぇ。腕前もさる事ながら、魅せ方が実にお見事。色気の見せ方を熟知した暗殺者が…全員を艶やかに使って音を奏でる。まさに『音色』。どんな視線も惹き付けてしまうんでしょう」

 

 

イリーナ「ね。そんな遠くで見てないで…もっと近くで確かめて」

 

ビッチ先生はさらに多くの警備員を惹き付けてくれてる。

 

すると、警備員の人に見えないように手でサインをした。

 

『20分稼いであげる。行きなさい』

 

今のうちに……!

 

 

 

茅野「はぁ…」

 

不破「全員無事にロビーを突破…!」

 

菅谷「すげーやビッチ先生。あの爪でよくやるぜ」

 

磯貝「ああ。ピアノ弾けるなんて一言も」

 

烏間「普段の彼女から甘く見ないことだ。優れた殺し屋ほど万に通じる。彼女クラスになれば、潜入暗殺に役立つ技能ならなんでも身につけている。君らに会話術(コミュニケーション)を教えているのは、世界でも一二を争う色仕掛け(ハニートラップ)の達人なのだ」

 

普段があんなんだから忘れてたけど……ビッチ先生はプロの殺し屋なんだ…!

久しぶりにプロとしてのビッチ先生を見れた気がする。

 

殺「ヌルフフフ。私が動けなくても全く心配ないですねぇ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一方その頃──

 

杉野「うぐ…悪ぃな。新、竹林、奥田」

 

竹林「とにかく皆発熱が酷い。脳にダメージが行かないように、頭だけは冷やしておこう」

 

奥田「は、はい!」

 

新「大丈夫か?倉橋」

 

倉橋「う…うん。ありがとう…新君」

 

新「ああ。気分悪くなったらすぐに言えよ」

 

奥田「…あ、あの、これだけ強いウイルスなら…この島中に広まってしまうんじゃ…」

 

新「…多分それはない。犯人は兄貴を名指しで指名した。ということは、もし兄貴が感染したら困るはず。だから空気感染ではなく経口感染だろう。飲食物などに混入されていて、兄貴はそれを口にしなかった。もしくはしないように誘導されてたか……」

 

竹林「だから、赤の他人にバシバシ伝染す心配はない。あそこに行った皆にもそう伝えたけど…」

 

奥田(私達(E組)だけを狙って盛られたウイルス……一体、いつどこで…?)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

烏間「……よし。入口の厳しい警備は抜けられた。ここからは客のフリができる」

 

菅谷「客…って、こんなホテルに中学生の団体客なんているんすか?」

 

烏間「聞いた限り結構いる。芸能人や、金持ち連中のボンボン達だ。王様のように甘やかされて育った彼らは、あどけない顔のうちから悪い遊びに手を染める」

 

殺「そう。だから君たちもそんな輩になったフリで、世の中をナメてる感じで歩いてみましょう」

 

殺せんせー言われた通りにナメてる感じで歩いてみる。

 

寺坂が1番それっぽい。ちなみに俺は持ってきた木刀(勿論袋に入れてるけど)を肩に乗せて周りを睨むように歩いている。……こんなんでいいのだろうか。

 

殺「そうそうその調子!」

 

烏間「この調子…か?あとお前までナメるな」

 

殺「ただし。我々も敵の顔を知りません。敵もまた客のフリで襲って来るかもしれない。充分に警戒して進みましょう」

 

一同「……はい!」

 

この後、何度か他の客にすれ違ったが、一切見向きもしなかった。

トラブルを避けたいのは向こうも同じなのだろう。

 

そして、3階の中広間。

ここから4つ道が別れているため、どこから敵が来てもおかしくない状況だが…。

 

寺坂「なんだ。入ったら楽勝じゃねーか。時間ねーんだからさっさと進もうぜ」

吉田「そーだな!」

 

烏間「お、おい!」

 

寺坂と吉田は早歩きで進んでいく。

すると、向かい側から誰か歩いてくる。

 

こちらに近付くにつれ、段々と顔が見えてくる。

 

………!あの顔は……!

 

友・不破「寺坂(君)!吉田(君)!そいつ危ない!!」

 

寺坂「…あ?」

 

敵と思われる男はポケットから何かを取り出す。

 

烏間先生は急いで寺坂と吉田を自分の後ろへ引き戻すが、『敵』のガスを食らってしまう。

 

毒使い「……なぜわかった?殺気を見せずすれ違いざま殺る…俺の十八番だったんだがな…?」

 

友「だっておじさん。ホテルで最初にサービスドリンク配った人だろ?」

 

一同「……あ!」

 

不破「そんな人が…こんなホテルを歩いてるなんておかしいわ」

 

茅野「じゃあ…こいつが皆に毒を…!?」

 

毒使い「フッ。断定するには証拠が弱いぜ。ドリンクじゃなくても、ウイルスを盛る機会は沢山あるだろ?」

 

友「……皆が感染したウイルスは経口感染……つまり、飲食物に混入されていたもの。竹林と新がそう言ってた」

 

不破「クラス全員が同じ物を口にしたのは……あのドリンクと、船上でのディナーの時だけ」

 

友「だが、ディナーを食べずに映像編集をしていた航輝と岡島も感染したことから……」

 

不破「感染源は昼間のドリンクに絞られる……」

 

友「それに…俺にトロピカルジュースが配られなかったのも…」

 

不破「名指しで要求する予定の友君が感染するのを防ぐため…。従って…!」

 

友・不破「犯人は貴方だ!おじさん君!!」

 

毒使い「……!」

 

 

渚「すごいよ不破さん!友君!」

 

茅野「なんか探偵みたい!」

 

友「普段から少年漫画読んでるとな…」

 

不破「普通じゃない状況が来ても素早く適応出来るのよ!」

 

友・不破「特に探偵物は、マガジン・サンデー共にメガヒット揃い!」

 

渚「ジャンプは!?」

 

友「え?ジャンプの探偵物?この二次小説の作者は買おうかどうか迷ってるみたいだけど、買うといいと思うよ!」

 

不破?「私がひたすら拷問されます…そんな漫画です…」

 

茅野「いやらしいよ!中の人ネタまで使って!」

 

渚「ステマが露骨だよ!もっとマーケティング倫理に配慮して……!」

 

すると、ガタッという音がした。烏間先生が崩れ落ちた……!さっきのガスか!!

 

殺「毒物使い……ですか。しかも実用性に優れている」

 

毒使い「俺特製の室内用ガスだ。一瞬吸えば象すら気絶する。外気に触れればすぐ分解して証拠も残らない……。さて、お前たちに取引の意思が無いことはよーくわかった。交渉決裂。ボスに報告するとするか……んっ…!?」

 

毒使いの男が気付く頃にはもう遅い。

すでに俺らによって全ての退路が絶たれている。

 

片岡「敵と遭遇した場合…」

 

千葉「即座に退路を塞ぎ……」

 

寺坂「連絡を断つ……」

 

磯貝「ですよね?烏間先生」

 

 

烏間「……お前は、我々を見た瞬間に……攻撃せずに報告に帰るべきだったな……」

 

毒使い「フン。まだ喋れるとは驚きだ。だが、所詮他はガキの集まり。お前が死ねば統制が取れずに逃げ出すだろうさ!」

 

毒使いの男はふたたび毒を噴射しようとするが、その前に烏間先生の素早い攻撃をモロに食らって倒れた。

 

毒使い(つ…強え…人間の速さじゃ…ねぇ……。だがな……お前の引率も…ここまで…だ…)

 

毒使いの男が倒れると同時に…烏間先生も倒れてしまった…!

 

一同「烏間先生!!!」

 

 



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第44話 カルマの時間-2時間目


ちなみにめちゃくちゃ忘れてて慌てて投稿しました。
前は忘れた挙句日付変わっちゃったので……。



《友 side》

 

烏間「……ダメだ。普通に歩くフリをするので精一杯だ…。戦闘が出来る状態まで…30分で戻るかどうか……」

 

友「像をも倒すガス浴びて歩ける方がおかしいって…」

 

不破「あの人も充分化け物だよね……」

 

 

ここは3階…標的のいる10階はまだまだ先だ。

……だってのに。

 

もう先生に頼ることは出来ない。

この先に大人(プロ)が何人も待ち構えているかもしれないのに…!

俺らの力だけで勝てるのか…!?

 

 

殺「いやあ。いよいよ『夏休み』って感じですねぇ」

 

………は?

 

片岡「何をお気楽な!」

 

友「ひとりだけ絶対安全な形態のくせに!」

 

木村「渚!振り回して酔わせろ!」

 

渚「……」グルングルン

 

殺「にゅやーーーっ!!」

 

いいぞもっとやれやれ!!

 

カルマ「よし寺坂。これねじ込むからパンツ下ろしてケツ開いて」

 

寺坂「死ぬわ!!」

 

渚「それで殺せんせー。何でこれが夏休み?」

 

殺「先生と生徒は馴れ合いではありません。そして夏休みとは、先生の保護が及ばない所で自立性を養う場でもあります。大丈夫。普段の体育で学んだ事をしっかりやれば、そうそう恐れる敵はいない。君達ならクリア出来ます。この暗殺夏休みを」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その頃黒幕側──

 

ガストロ「濃厚な魚介だしに…たっぷりのネギと一匙のニンニク。そして銃!!…つけ銃うめぇ…銃身内に絡むスープがたまらねぇ」

 

黒幕「ククク…見てるこっちがヒヤヒヤする。実弾入りだろ?その銃」

 

ガストロ「ヘマはしねっス。ご安心を。撃つ時にも何の支障もありませんし、ちゃんと毎晩我が子のように手入れしてます。『その日1番美味い銃がその日1番手に馴染む』。経験則ってやつっすわ。俺の」

 

黒幕「…他の3人もそうなのか?」

 

ガストロ「……俺らみたいな何度も仕事をしてきた連中は何かしら拘りが出てくるもんス。『歳』は俺ァよく知りませんが…スモッグ。やつの毒は自作で、研究室まで作る始末……」

 

黒幕「……では、もう1人、グリップも?」

 

ガストロ「…ええ。……まぁ。あいつはちょっと殺し屋の中でも変わってまして……」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

俺たちは最上階に向かうため、展望通路を歩いていた。

 

寺坂「……!」

 

先頭の寺坂が止まる。

…『敵』だ。

 

めちゃくちゃ堂々と立ってるし…!

 

矢田「……あの雰囲気…」

 

吉田「…ああ。いい加減見分けがつくようになったわ…」

 

友「どう見ても…『殺る』側の人間だ」

 

展望通路は狭くて見通しが良い……。

 

奇襲も出来ない上に数の利も活かせない。

 

全員どうしようかと立ち止まっていると、男は窓ガラスに素手でヒビを入れた。

 

男「…つまらぬ。足音を聞く限り…『手強い』と思える者が1人も居らぬ。精鋭部隊出身の引率の教師もいるはずなのにぬ…だ。どうやら『スモッグ』のガスにやられたようだぬ。半ば相討ちぬといったところか。出てこい」

 

俺たちは男に言われて、出る。だが、全員怯えてる。

 

寺坂(……手で窓にヒビ入れたぞ…!?)

 

片岡(そ…それより……)

 

不破(怖くて誰も言えないけど……)

 

友(なんか…その……)

 

 

カルマ「『ぬ』多くねおじさん?」

 

一同(言った!!良かったカルマがいて!!)

 

ぬ男「『ぬ』をつけると侍っぽい口調になると小耳に挟んだ。かっこよさそうだからつけてみたぬ。間違ってるならそれでもいいぬ。この場の全員殺してから『ぬ』を取れば恥にもならぬ」

 

そう言って男は手をゴキゴキと鳴らす。

 

殺「素手…それがあなたの暗殺道具ですか」

 

ぬ男「こう見えて需要があるぬ。身体検査に引っかからぬ利点は大きいぬ。近付きざま頚椎をひとひねり。その気にならば頭蓋骨も握り潰せるぬ」

 

頭蓋骨を…!?

 

ぬ男「だが面白いものでぬ。人殺しのための力を鍛えるほど…暗殺以外にも試してみたくなるぬ。すなわち闘い。強い敵との殺し合いだぬ。……だが、がっかりぬ。お目当てがこのザマでは試す気も失せた。雑魚ばかり1人で殺るのも面倒だ。ボスと仲間を呼んで皆殺しぬ」

 

まずい…!この状況で仲間なんて呼ばれたら…!

 

そう思った瞬間、カルマが男の携帯を観葉植物で破壊した。ついでに窓にもヒビを入れた。

 

カルマ「………ねぇ、おじさんぬ」

 

『おじさんぬ』て…。

 

 

カルマ「意外とプロってフツーなんだねガラスとか頭蓋骨なら俺でも割れるよ…。ていうか、速攻仲間呼んじゃうあたり……中坊とタイマン張るのも怖い人?」

 

烏間「よせ……!」

 

殺「ストップです烏間先生。…顎が引けている」

 

……本当だ。

今までのカルマなら、余裕そうに顎を突き出し、相手を見下す構えをしていた。

 

でも今は…

目は真っ直ぐ、油断なく、正面から相手の姿を観察している。

 

殺(……存分にぶつけなさい。高い大人の壁を相手に…!)

 

ぬ男「…柔い。もっと良い武器を探すべきだぬ」

 

カルマ「必要ないね」

 

おじさんぬは何度も攻撃を繰り出す。しかし…カルマは全て避けるか捌いている……!

 

これは…烏間先生の防御テクニック…!

普段、模擬暗殺をしている時の烏間先生の捌き方…!

烏間先生から防御技術を教わることなんて無かったはず…つまり…目で見て盗んだということ!

 

でも、避けれてはいるが…カルマから攻撃をすれば捕まって終わりだろう。

 

どうする……カルマ……。

 

ぬ男「…どうしたぬ。攻撃しなくては永久にここを抜けれぬぞ」

 

カルマ「どうかな〜。あんたを引きつけるだけ引き付けてといてその隙に皆がちょっとずつ抜けるってのもアリかと思って…」

 

ぬ男「………」

 

カルマ「安心しなよ…。そんなコスいことは無しだ。今度は俺から行くからさ…。あんたに合わせて『正々堂々』素手のタイマンで決着つけるよ」

 

カルマが…正々堂々………?

 

ぬ男「良い顔だぬ。少年戦士よ。お前とならやれそうぬ。暗殺稼業では味わえないフェアな闘いが…!」

 

カルマとおじさんぬの攻防は再び始まった。

 

今度はカルマも攻めつつ防いでいる。

 

ぬ男「くっ…」

 

カルマがおじさんぬの足にダメージを与えた!

背中を見せている…チャンス…!

 

だが……。

 

ぬ男「………」ブシュッ

 

おじさんぬは背後のカルマに向かってガスを噴射した…!

 

ぬ男「…一丁あがりぬ。長引きそうだったんで、『スモッグ』の麻酔ガスを試してみることにしたぬ」

 

 

………嘘だろ…。

 

吉田「き、汚ぇ…!そんなもん隠し持っといてどこがフェアだよ…!」

 

ぬ男「俺は1度も素手だけとは言っていないぬ。拘ることに拘りすぎない。それもまたこの仕事を長くやってく秘訣だぬ」

 

おじさんぬはカルマの頭を掴み、持ち上げる。

 

ぬ男「至近距離のガス噴射…。予期してなければ絶対に防げ…」

 

その時、おじさんぬの顔面にガスが直撃した。

 

カルマ「奇遇だね…2人とも同じ事考えてたぁ…」

 

うーわ…カルマ凄い悪人面してる……。

 

ぬ男「何故…お前がそれを…!しかも、何故…俺のガスを吸っていないぬ……!」

 

おじさんぬはカルマに襲いかかるが、逆にカルマに押さえつけられてしまう。

 

カルマ「ほら寺坂早く早く!ガムテと人数使わないと、こんなバケモン勝てないって!」

 

寺坂「へっ…。テメーが素手でタイマンの約束とか…もっと無いわな!」

 

男子全員でおじさんぬを取り押さえ、ガムテープでぐるぐる巻きにする。

 

カルマ「毒使いのおっさんが未使用だったのくすねたんだよ。使い捨てなのがもったいない位便利だね〜」

 

ぬ男「何故だ……。俺のガス攻撃…お前は読んでいたから吸わなかった。俺は素手しか見せていないのに…何故…」

 

カルマ「…とーぜんっしょ。素手以外の全部を警戒してたよ。あんたが素手の闘いをしたかったのは本当だろうけど、この状況で既に固執し続けるようじゃプロじゃない……。俺らをここで止めるためにはどんな手段でも使うべきだし、俺でもそっちの立場ならそうしてる。……あんたのプロ意識を信じたんだよ。信じたから警戒した」

 

カルマ……ちょっと変わったな。いい感じに。

 

殺「大きな敗北をカルマ君は、期末テストで敗者となって身をもって知ったでしょう。敗者だって自分と同じ、色々考えて生きている人間なんだと。それに気付いたものは必然的に、勝負の場で相手の事を見くびらないようになる。自分と同じように敵も考えていないか、頑張っていないか。敵の能力や事情をちゃんと見るようになる。敵に対し敬意を持って警戒できる人。戦場ではそういう人を…『隙がない』と言うのです。1度の敗北を実に大きな糧にした。君は将来大物になれます」

 

 

 

ぬ男「大した奴だ少年戦士よ。負けはしたが、楽しい時間を過ごせたぬ」

 

カルマ「えー何言ってんのー?楽しいのこれからじゃん」

 

カルマは物凄い笑顔で言っているが…その手にはおぞましい物が…。

 

ぬ男「……なんだぬ?それは……」

 

カルマ「わさび&からし。おじさんぬの鼻にねじ込むの。さっきまではきっちり警戒してたけど、こんだけ拘束したら警戒もクソもないよね。これ入れたら専用クリップで鼻塞いでぇ…口の中に唐辛子の千倍辛いブート・ジョロキアぶち込んで…その上からさるぐつわして処置完了〜。さぁ、おじさんぬ。今こそプロの意地を見せる時だよ〜」

 

ぬ男「ぬぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

カルマ……さっきからえげつないことしてやがる…聞いてるだけ吐き気が…。

とりあえず…不破に見せたくないので、不破の目を後ろから手で覆う。

 

不破「ひゃあっ!?///」

 

友「すまない不破…。お前にこの光景を見せるわけにはいかない…」

 

不破「えっ…あ、ありがと…。でも…声だけで吐き気が」

 

友「俺も吐き気が……」

 

 

渚「殺せんせー……カルマ君、特に変わってなくない…?」

 

殺「ええ…。将来が思いやられます」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

烏間「……ここから先はテラスだ」

 

友「俺たちは目立っちまうな…」

 

一体どうすれば……。

 

 

片岡「…烏間先生と男子はここで待っててください。こういうとこは女子だけの方が怪しまれにくいと思いますから」

 

烏間「…だが、女子だけでは危険だ……!」

 

カルマ「………あっ。じゃあ…」

 

渚「……え?」

 

 

 

渚「……ねえ。僕…こんな恰好…する意味あるのかな」

 

カルマ「あるよ〜あるある」パシャパシャ

 

渚「カルマ君!?」

 

渚が…女装している…。

うん。似合ってる。

 

片岡「ここから先は私達女子と渚に任せてください!」

 

矢田「テラスにある裏口の鍵を開けて、男子も通れるようにするから!」

 

友「不破…気をつけろよ?そっち行ったら守れないんだから…」

 

不破「大丈夫!女子皆頼もしいから!」

 

友「う…うん。そうだよな。頑張ってな!」

 

そして、不破、片岡、矢田、速水、岡野、茅野、渚ちゃん()の7人はテラスへと向かっていった。

 

カルマ「ね〜友く〜ん。随分と不破さんの事心配してたね〜。それにこの前のデートのこと忘れてないよ〜?『間接キス』してたね〜」ニヤニヤ

 

友「お、おまっ……!皆の前で言うんじゃねぇ!!」

 

磯貝「マジか…」

 

菅谷「へ〜やるじゃん」

 

千葉「意外だな…」

 

友「ああ……。もうダメだ終わりだ……」

 

赤い悪魔め……!!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

しばらくすると裏口の鍵が開いた。

 

作戦は成功したみたいだな。

 

殺「危険な場所へ潜入させてしまいましたね。危ない目に遭いませんでしたか?」

 

矢田「んーん!」

 

片岡「ちっとも!」

 

友「良かった…何もなかったみたいで」

 

不破「うん。渚君が恥ずかしがってるの見てるの楽しかったよ〜」

 

友「それは良かった…」

 

ああ……普段は自分が恥ずかしがってる姿見られて俺や中村に楽しまれてるから………。

 

渚「……ねぇ。今回結局女子が全部やってくれたし……。僕がこんなことした意味って…」

 

カルマ「面白いからに決まってんじゃん!」

 

渚「待ち受けにしないでよカルマ君!!」

 

茅野「そんなことないと思うよ?きっと誰かのためになってるって!」

 





よく二次小説では主人公も女装しますよね。
でも友はイケメンなんですけど女装は似合わないんですよね。

でも新はきっと将来女形とかやりますよ。友とはまた違った美形なので。


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第45話 仇の時間


遂に新たなキャラクター登場!
果たして彼の本心とは……!?


《友 side》

 

友「あれ?着替えるの早いな渚」

 

渚「う……」

 

磯貝「そのまま行きゃよかったのに。暗殺者が女に化けるのは歴史上でもよくあるぞ」

 

渚「磯貝君まで……!」

 

カルマ「渚君。とるなら早い方が良いらしいよ」

 

渚「とらないよ!大事にするよ!!」

 

烏間「その話は後にしてくれるか……」

 

渚「二度としません……」

 

 

烏間「さて…また広間だが…」

 

寺坂「……ああ。いやがるな…『敵』が」

 

広間の中央に堂々と立っている。後ろを向いているためこちらに気付いてるかわからないが……。

 

???「………15、6と言ったところか。どうやら、私の『お目当て』は来てくれているようだ……」

 

……!!気付かれている…!

 

???「やぁE組の諸君。こんな所まで御苦労。ああ、そんな身構えないで。僕の目的は『先生』じゃないよ…」

 

男は後ろを向いたまま話し続ける。

 

烏間「…お前は、この事件の黒幕に雇われた殺し屋ではないのか……?」

 

???「いや。雇われてるよ。ある条件と引き換えにね」

 

殺「ある条件……?」

 

???「ああ。僕の本当の目的は…君さ。『真弓友』君」

 

………え…俺…!?

 

友「……なんで俺に」

 

???「まだ気付かないのかな……。では、『これ』でどうだろう」

 

男はそういうと、黒い帽子を被った。

 

その姿に…見覚えがあった。

黒の帽子、そして真っ黒な服に、日本刀を鞘に収め腰に着けている。

 

その姿は───

 

『See you. また会える日を楽しみにしてるよ…』

 

友「まさか…あの時の……」

 

???「ようやく思い出してくれたかい?そう…僕は君の両親を殺した男さ…。君にとっての『仇』だよ」

 

友「………ッ!!」

 

???「さて。僕はボスに雇われはしたけれど…正直君らも先生も興味無い。僕の目的は『真弓友』君の殺害さ」

 

友「………は?」

 

こいつ…今なんて…

 

???「僕はね…。真弓家まるごと潰すと言う依頼を受けているんだ…。さぁ…殺し合おうよ。『真弓友』君?」

 

友「ふざけんな…!誰がお前なんかと……!」

 

???「……殺り合ってくれたらここを通してあげるよ。全員ね。あと、ただ互いに殺し合うのはつまらない。何せ君達E組は人を殺す訓練は受けていないだろうからね。だから、友君は僕の日本刀の刃を折ったら勝ち……。そして僕は友君を殺したら勝ち…。こんなルールでどうだい?ああ。勿論、拒否権はないよ?もし拒否したら…クラスメイトまとめて切り刻む。でも、この勝負を受けてくれたらどっちが勝っても他の皆は先へ行かせてあげるよ」

 

……狂ってる。

 

だけど…やらなきゃ。

 

俺は持っていた袋から木刀を取り出した。

 

烏間「友君……!」

 

不破「友君!危険だよ…!こんなの……」

 

友「……大丈夫。絶対勝つからさ…」

 

正直、絶対的な自信はない。

でも……死ぬ訳にはいかない!!

 

 

???「さぁ始めようか。…あ、名前言い忘れてたな。ま、いいや『(トシ)』とでも呼んでくれ。」

 

友「………」

 

俺は木刀を強く握りしめた。

 

歳「それじゃ…殺し合い開始(バトルスタート)だ!!」

 

木刀を強く振った。

が、相手の日本刀によって防がれる。

木刀と日本刀がぶつかり合い、カキンという音が鳴る。

 

相手は白刃…。まともに殺り合えば間違いなく死ぬ。

 

 

でも、中々攻撃することができない。

こちらが刀を振っても、相手の刀に防がれるし、攻撃の手を少し緩めたら向こうが攻めてくる。

なんとか刀と刀をぶつけさせ、相手の刃を折ろうと試すが……そう簡単に折れそうにはない。

 

そりゃそうだ。簡単に折れるような刀なんて無い。

 

だが、これ以上刀がぶつかり合えば…こちらの木刀が折れかねない。

 

俺は強く踏み込み、渾身の一撃を相手の刀にぶつける。

そして、強く押し込む。

刀同士がギリギリと音を立てる。

もっと力を込めれば……!

 

そう思った瞬間、

友「ぐぁっ……!?」

 

俺は蹴り飛ばされた。

 

歳「……。刀以外の攻撃が無しというルールなんて誰も言ってないからね」

 

友「が…あっ…!!」

 

俺は再び蹴られ、数十cmくらい飛ばされてしまう。

 

このままじゃ、立ち上がる前に斬られて……!

 

 

歳「さぁ…トドメを…」

 

不破「ダメっ!!!」

 

顔を上げると…俺の前には不破が両手を広げて立っていた。

 

不破「友君は私が守る…!第三者が介入しちゃダメなんて誰も言ってないでしょ………!」

 

友「……不破…!よせ……」

 

歳「……邪魔しないでくれるかな?お嬢さん。まずは君の首から落としてやろうか…?」

 

 

不破「友君は何度も私のことを守ってくれた…!今度は私が友君を守る……!!」

 

歳「……失せろ」

 

歳はそう言って刀を右から左へと振る。

 

が、不破の体に刀が当たる前に固いものに当たる。

俺の木刀だ。

力を振り絞って……こいつの刀を防いだ。

 

友「……やめろ…。俺の大切な人に…手出すんじゃねぇ……!!」

 

不破「友君……!」

 

友「不破。下がってろ…。危険だから……」

 

不破「…………!」

 

友「……ありがとな。救ってくれて」

 

不破「……友君、頑張って……!」

 

友「…ああ」

 

その後、さっきと同じように刀と刀がぶつかり合う。

 

歳「…そんな攻撃じゃ…!僕の刀にヒビすら付けられないよ!」

 

俺は再び蹴り飛ばされ、壁に激突してしまう。

 

そして歳はそこにすかさず攻撃……。

先程不破にしようとしていたように右から左へ……。

俺の脇腹付近に斬りつけた。

 

 

 

しかし、俺は死ななかった。

なぜなら……

 

歳「……何?」

 

友「…………防具を中に着用しちゃダメなんて……誰が言った…?」

 

服の下に防具を仕込んでいた。木刀と同じ、万が一のために持ってきていたのだ。

 

歳「…フン!こんな防具……刀を強く押し込めばすぐに壊れる……」

 

歳は振り下ろした刀を力強く防具へ押し込み続ける。

 

かなり強い力…奴の言う通り、すぐにでも防具が壊れてしまいそうだ。

 

歳「この防具さえ壊れれば生身……!私の刀がそのままお前の脇腹に食い込む…!」

 

友「ああ。……だから俺は…その刀を壊す…!」

 

歳「何を…木刀程度ではこの刀は壊れないッ!」

 

より一層力が込められ、防具越しでもかなりの痛みが伝わってくる。

 

友「ああそうだ。木刀なんかじゃ傷一つつかねぇ……!だから…木刀なんかよりも、いや…この世で最も固い…そんなレベルのモンでぶっ叩かねぇとな!!」

 

そう言って俺は左手を上げる。

俺の左手には…

 

殺「ヌルフフフ…」

 

完全防御形態の殺せんせー……!

核爆弾の爆発でも傷一つつかない物質なら…確実に!

 

壊れるッ!!

 

 

 

俺は最後の力を振り絞って左手を振り下ろし、歳の刀に殺せんせーを叩きつけた。

 

歳「………!!」

 

奴の刀は…見事にボロボロに折れた。

 

友「これで…俺の勝ちだな……」

 

歳「……………。いつの間に…」

 

友「あんたが防具に注目してた時に…渚にパスして貰ってたんだよ…」

 

歳「…フフッ……負けを認めよう」

 

そう言って、歳はこの場を去ろうとする。

 

 

友「おい待て…!……お前、本当に俺を殺すつもりだったのか…?それにしては挙動がおかしい気がする……。…最後だって、わざわざ防具じゃなくても、生身の首に第二撃を加えれば…」

 

歳「……友クンと戦うのが楽しくてね…。今日限りじゃ勿体ないと多少手加減してしまった。あの後どうするか気になってしまってね……。だが、まさか自分の先生を武器として使うとは。本当に面白い…。また会える日を楽しみにしてるよ…E組の諸君」

 

歳はそのままどこかへ去ってしまった。

 

友「……勝った…のか」

 

そう呟くと、皆が駆け寄ってくる。

 

磯貝「すげぇよ!よく勝てたな!」

 

木村「あんな作戦…よく思いついたよな!」

 

友「はは…たまたま殺せんせーが目に入ってさ。使えるんじゃないかと思っただけだよ」

 

不破「…友君ッ」

 

いきなり不破が抱きついてきた。その眼には涙を浮かべている。

 

不破「……心配させないでよ…」

 

友「…ごめんな。俺は大丈夫だから…。でも、この服…」

 

不破「えっ…?」

 

先程の攻撃で服が切れてしまっている。

剣で斬られたんだから仕方がない。防具が無かったら体まで斬られてただろうし…。

 

友「せっかく不破が選んでくれたやつなのに…破れちゃった。あとで縫わないと…」

 

不破「………私…友君が無事なら…服なんて…」

 

友「何言ってんの。友人に選んでもらった服だ。大切にしないとだろ?……って…おいカルマ!写真撮るな!!」

 

俺は今不破に抱きつかれている状況だ……。

悪魔(カルマ)の大好物じゃないか…!

 

烏間「……さて、喜んでいる時間はない。先へ進もう」

 

烏間先生に言われ、皆歩き出す。

不破もようやく泣き止んだようで、俺から離れ歩き出す。

不破の顔をチラッとだけ見たら凄く赤くなっていた。

まぁ無理もない……。

 

残り時間は少ない…

雇った殺し屋もあと1人、2人程度だろう。

潜入も終盤だ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

烏間「……律」

 

律「はい。ここからはVIPエリアです。ホテルの者だけに警備を任せず、客が個人で雇った見張りをおけるようです」

 

それで早速上の階段に見張りがいると……

どうしたものか…。

 

寺坂「……俺らを脅してる奴らか無関係かはどーでもいい。倒さなきゃ通れねーのは同じだ」

 

殺「その通り。そして倒すには…君が持っている武器などが最適ですねぇ」

 

寺坂「……透視能力でもあんのかテメーは」

 

烏間「出来るのか?一瞬で2人とも仕留めないと連絡されるぞ」

 

寺坂「任せてくれって…。おい木村、あいつらをちょっとここまで誘い出して来い」

 

木村「俺が?どうやって?」

 

寺坂「知らねーよ」

 

いや無責任すぎんだろ……。

 

カルマ「じゃあこう言ってみ木村……」

 

木村「…!?」

 

カルマのってきたな……。

 

 

 

警備員「……あ?何だボウズ」

 

木村「…あ、あっれェ〜?脳みそ君がいないなァ〜?こいつらは頭の中まで筋肉だし〜………人の形してんじゃねーよ。豚肉共が」

 

警備員「………おい」

 

警備員「待てゴラ」

 

木村(そりゃ怒るわ!!)

 

木村はE組一の瞬足。大の大人でも簡単に追いつけない…。

……てか今の煽り普通にイラつくだろうな…。

 

警備員「ちょ…く…なんだこのガキ!くそ速え!」

 

警備員「てかこいつ、もしかして…」

 

寺坂「今だ吉田!!」

 

吉田「おう!」

 

木村が引き付けた警備員に向かい、寺坂と吉田がタックルする。そして、首に『スタンガン』を当てて、気絶させた。

 

寺坂「ったく…タコに電気を試そうと思って買っといたのによ…こんな形でお披露目とは思わなかったぜ」

 

片岡「買っといたって…高かったでしょ?それ」

 

寺坂「……ん…最近ちょっと臨時収入あったもんでよ」

 

 

 

殺「…いい武器です寺坂君。ですが、その2人の胸元を探ってください。ふくらみから察するに…もっと良い武器が、手に入るはずですよ」

 

寺坂が言われた通りに警備員の懐に手を入れると、そこには……!

 

『本物』の銃……!!

 

 

殺「…そして、千葉君。速水さん。この銃はきみ達が持ちなさい」

 

千葉・速水「……!」

 

殺「烏間先生はまだ…精密な射撃が出来るところまで回復していない。今この中で最も『それ』使えるのは君達2人です」

 

千葉「だ、だからっていきなり……!」

 

殺「ただし!先生は殺すことは許しません」

 

殺せんせーは額(?)に『不殺』という字を出した。

先生…顔に文字出すことも出来んだ…。

 

殺「君達の腕前でそれを使えば、傷つけずに倒す方法は幾らでもあるはずです」

 

千葉(俺らが……本物の銃を…!?)

 

速水(…さっき…エアガンでも失敗したのに…!?)

 

殺「…さて、行きましょう。ホテルの様子を見る限り、敵が大人数で陣取っている気配は無い。雇った殺し屋も残りはせいぜい1人2人!」

 

寺坂「おう!!さっさと行ってブチ殺そうぜ!どんな顔してやがんだ……こんなクソな計画立てるヤツはよ…!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ガストロ(……味の悪ぃ仕事になってきたぜ。超生物を殺す任務だったはずが、いつの間にかガキ共のお出迎え。ボスの直属の部下は突っ立ってるだけ。この俺様がほとんどパシリ同然だ。くそ不味い。やっぱりうめぇのは銃だけだ……)

 

8F コンサートホール──

 

俺たちはE組が隠れた場所─

 

そこへ、敵と思われる男。

 

銃を口にくわえたやべーのが入ってきた。このまま通り過ぎてくれればいいが…そういう訳にもいかなそうだ。

 

ガストロ「15……いや、16匹か?呼吸も若い。ほとんどが10代半ば。驚いたな。動ける全員で乗り込んできたのか」

 

体を少しも見せていないのに…呼吸で分かるだなんて…!

 

殺し屋の男は後ろの照明を銃で撃つ。かなり凄い音が鳴るが…ここはコンサートホールだ。つまり…

 

ガストロ「このホールは完全防音で、この銃はホンモノだ。おまえら全員撃ち殺すまで誰も助けに来ねぇって事だ。おまえら人殺しの準備なんてしてねーだろ!大人しく降伏してボスに頭下げとけや!」

 

その時、速水が銃を撃った。恐らく奴の持つ銃を狙ったのだろう。しかし…奴には当たらず後ろの照明が壊れた。不味い…速水の場所が割れてしまった!

 

ガストロ(実弾!?しかも今の発砲音は、ボスの手下のM60(ピストル)を奪ったのか!用意してた作戦とは思えない。俺の接近を察知し、急遽奪った銃での迎撃体制を整えたのか……。暗殺の訓練を受けた中学生…か。いーねぇ……)

 

殺し屋はホールの照明を全て点けた。

照明の逆光で見えにくい…!

 

ガストロ「意外と美味ぇ仕事じゃねェか!!」

 

 



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第46話 チャンスの時間

《友 side》

 

ま、眩しい…!

 

千葉(照明の逆光でステージが見づらいッ……!)

 

 

ガストロ「今日元気だ!銃が美味ぇ!!」

 

殺し屋は速水が隠れている座席に銃を放つ。

速水が隠れていたのはかなり上の座席だが、銃弾は狭い隙間を通して速水を横を通り過ぎる。

 

 

ガストロ「1度発砲した敵の位置は絶対忘れねぇ。もうお前はそこから1歩も動かさねぇぜ。俺は軍人上がりだ。この程度の1対多戦闘は何度もやってる。幾多の経験の中で、敵の位置を把握する術や、銃の調子を味で確認する感覚を身に付けた!……さて。お前らが奪った銃はあと一丁あるはずだが……」

 

こんなバケモノ……どうやって勝てって言うんだ…!

 

すると、殺せんせーの声が聞こえてくる。

 

殺「速水さんはそのまま待機!今撃たなかったのは賢明です千葉君!君はまだ敵に位置を知られていない!先生が敵を見ながら指揮するので、ここぞと言う時まで待つんです!」

 

ガストロ「なに…どこからしゃべって……」

 

殺せんせーは…最前列の座席に座っていた。

いや、あの球体の姿だから置いてあった?

まぁいいや。

 

ガストロ「テメー!何かぶりつきで見てやがんだ!!」

 

殺「ヌルフフフ。幾ら撃ち込んでも無駄ですねぇ。これこそ無敵形態の本領発揮。熟練の銃手に中学生が挑むんです。この位の視覚ハンデはいいでしょう」

 

ガストロ「チッ!その状態でどう指揮を執るつもりだ」

 

殺「では木村君!5列左へダッシュ!」

 

木村は言われた通り左へ5列進む。

 

殺「寺坂君と吉田君はそれぞれ左右に3列!死角ができた!この隙に茅野さんは2列前進!友君と不破さん同時に右8!磯貝君左に5!」

 

俺を含め、名前を呼ばれた人は殺せんせーの言う通りに移動する。

 

ガストロ(シャッフルだと…!だが、指示をするほど名前と位置を俺に知らせる事になる!たった十数人あっという間に覚えちまうぜ!)

 

殺「出席番号12番!右に1で準備しつつそのまま待機!」

 

殺せんせーは名前ではなく、出席番号で呼ぶ。

 

ガストロ「…へ?」

 

殺「4番と6番は椅子の間から標的(ターゲット)を撮影!律さんを通して舞台上の様子を千葉君に伝達!ポニーテールは左前列へ前進!バイク好きも左前に2列進めます!」

 

今度はその人の特徴で呼ぶ。いよいよ分からなくなってくる頃だろう。

 

殺「最近竹林君イチオシのメイド喫茶に興味本位で行ったらちょっとハマリそうで怖かった人!撹乱のため大きな音を立てる!」

 

誰だそれ…。こんな所でそんな暴露されるなんて可哀想に…。

 

寺坂「うるせー!何で行ったの知ってんだテメー!」

 

お前かい!!

 

 

殺「……さて。いよいよ狙撃です千葉君。次の先生の指示の後、君のタイミングで撃ちなさい。速水さんは状況に合わせて彼の後をフォロー。敵の行動を封じる事が目標です。

 

………がその前に。表情を表に出す事の少ない仕事人ふたりにアドバイスです。君たちは今、酷く緊張していますね。先生への狙撃を外した事で、自分達の腕に迷いを生じている。言い訳や弱音を吐かない君達は…『あいつだったら大丈夫だろう』と、勝手な信頼を押し付けられることもあったでしょう。苦悩していても、誰にも気付いて貰えない事もあったでしょう。

 

……でも大丈夫。君たちはプレッシャーを1人で抱える必要な無い。君達2人が外した時は人も銃もシャッフルして、クラス全員誰が撃つかもわからない戦術に切り替えます。ここにいる皆が訓練と失敗を経験しているから出来る戦術です。

 

…………君たちの横には、同じ経験を持つ仲間がいる。安心して引き金を引きなさい」

 

千葉「………!」

 

 

ガストロ(……フン。ありがとよ。ご高説の間にある程度目星がついたぜ…。出席番号12番って奴が待機から1人だけ動いてない。その癖呼吸は何かを企んでやたら荒い。他の場所も警戒するが、あの近辺は出た瞬間仕留める狙いをつけておく!)

 

殺「では、行きますよ…!出席番号12番!立って狙撃!」

 

 

出席番号12番は立ち上がり銃を構えた。だが、殺し屋は先に発砲し、頭に一撃……。

 

だが、それは出席番号12番の『菅谷が作った人形』だった。

 

律「分析の結果、狙うならあの一点です」

 

千葉「オーケー…!」バァァン

 

千葉ちゃんは銃を放った。

殺し屋には…当たっていない。

 

ガストロ「フ…フフ…外したな…これで2人目も場所が…ぁっ!!」

 

殺し屋の背後から釣り照明が落ちてくる。

 

千葉ちゃんは釣り照明の金具を狙ったのだ。

 

殺し屋はフラフラの状態で銃を構え撃とうとする。

 

が、速水がすかさず男の銃を撃ち、男の手から銃が飛んで行った。

 

速水「ふーっ…やっと当たった…」

 

 

寺坂「よし!ソッコー簀巻きだぜ!」

 

菅谷「はぁ…音立てないように作ったから疲れたぜ……」

 

烏間「……肝を冷やしたぞ。よくこんな危険な戦いをやらせたな」

 

殺「どんな人間にも、殻を破って大きく成長出来るチャンスが何度かあります。しかし、1人ではそのチャンスを活かし切れない。集中力を引き出すような強敵や、経験を分つ仲間達に恵まれないと。だから私は…用意出来る教師でありたい。生徒の成長の瞬間を見逃さず、高い壁を。いい仲間を。すぐに揃えてあげたいのです」

 

磯貝「凄いな千葉!」

 

友「千葉ちゃんカッコいい!」

 

千葉「はは…なんか恥ずかしいな…」

 

 

茅野「かっこよかった速水さん!」

 

矢田「凛香すごい!」

 

速水「う…うん。ありがと…」

 

烏間(……なんて教育だ。命懸けの撃ち合いをした後なのに…。表情はむしろ、戦う前より中学生だ)

 



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第47話 ××の時間

今日から1話ずつ投稿にしようと思います。
学業の方が忙しくて中々続きが書けてないので……。


《友 side》

 

烏間「…ふぅ。大分体が動くようになってきた」

 

そう言いながら、烏間先生は警備をしていた敵の首を締める。

 

烏間「まだ力半分ってところだがな……」

 

友「力半分で既に俺らの倍強いんだけど……」

 

不破「あの人ひとりで入った方が良かったんじゃ…」

 

律「皆さん。最上階部屋のパソコンカメラに侵入しました。上の様子が確認できます」

 

一同「!!」

 

律「最上階エリアは一室貸し切り。確認する限り残るのは……この男ただひとりです」

 

 

友「こいつが…黒幕か」

 

吉田「TVに映ってんの…ウイルスに感染させられた皆じゃねーか……録られてたのか」

 

寺坂「楽しんで見てやがるのが伝わって来やがる……変態野郎が…」

 

 

 

殺「…あのボスについて、分かってきたことがあります」

 

友「分かってきたこと……?」

 

殺「黒幕の彼は殺し屋ではない。殺し屋の使い方を間違えています。恐らく、元々は先生を殺すために雇った殺し屋。ですが先生がこんな姿になり…警戒の必要が薄れたので見張りと防衛に回したのでしょう。……でもそれは殺し屋本来の仕事ではない。彼らの能力はフルに発揮すれば恐るべきものです」

 

 

千葉「確かに。さっきの銃撃戦…あいつ、狙った的は1cmたりとも外さなかった」

 

殺「カルマ君もそう。敵が廊下で見張るのではなく、日常で後ろから忍び寄られたら、あの握力に瞬殺されていたでしょう」

 

カルマ「そりゃね…」

 

殺「友君を狙った男は最初から先生には興味が無かった…。何かしらで利害が一致した…もしくは殺し屋側が黒幕を利用したのでしょう」

 

……『歳』とか言ったっけ。あの殺し屋…。

何となく俺の知っている『あの人』に似てた気がするけど…でも見た感じ大人っぽかったよな……。20代前半くらい…。

『あの人』は高校生だし…。

まさか……

 

いや…今考えるのは辞めておこう…。

 

烏間「………さあ。時間が無い。こいつは我々がエレベーターで来ると思ってるはずだが、交渉期限まで動きが無ければ、流石に警戒を強めるだろう。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

烏間(最上階へもカードキーが必要だ。窓から侵入も考えていたが、カードは9階の見張りが持っていた。階段ルートの侵入者を…本気では警戒して無かった証拠だ。部屋の中はだだっ広いが遮蔽物が多い。最大限に気配を消せば、かなり近くまで忍び寄れる。やり方は体育の授業で教えたはずだ)

 

俺たちは烏間先生の指示通り、手足を一緒に前に出して歩いた。

 

『ナンバ』

忍者も使うと言われた歩法で、手と足を一緒に前に出すことで、銅を捻ったり軸がぶれる無駄がなくなり、衣擦れや靴の音を抑えられる。

体育の授業で習い、最近の暗殺で皆実践していた。

 

殺(…一刻を争う緊急時なのに…決して焦らず悲観せず…全員が自慢の生徒です。……だからこそ、決して目の前の敵に屈してはいけませんよ)

 

 

…いやがったな。黒幕が。

モニターの方をじっと見ている。俺らには気付いていないだろう。ウイルスに苦しんでる皆を見て楽しんでやがる…!

 

烏間(奴の近くの配線のついたスーツケース。あれが恐らくE組に盛られたウイルスの治療薬だ。配線の仕掛けはプラスチック爆弾の起爆装置。手元にあるのが起爆リモコンで間違いない。……なぜ言いきれるか?──同じ物を作ったことがあるからだ。

 

打ち合わせ通りだ皆。まずは可能な限り接近する。取り押さえる事が出来ればそれがベスト。もし遠い距離で気付かれたら、俺の責任で『本人』を撃つ。今の俺でも腕ぐらいは狙って当てれる。リモコンを取る手を遅らすことは出来るはずだ。それと同時に皆で一斉に襲いかかって拘束する!!)

 

俺たちは指示通りに近付いた。皆それぞれ武器を持って……。俺も木刀をいつでも振れるようにしてある。

 

焦った顔を見せてもらうぜ……!

 

苦しんでる皆の前で謝らせる……!

 

 

 

今…………!!

 

 

 

???「かゆい」

 

 

………え?何で…気付いて…。

 

 

???「思い出すとかゆくなる。でも、そのせいかな。いつも傷口に空気が触れるから……感覚が鋭敏になってるんだ」

 

黒幕の男は大量の起爆リモコンを放り投げた。

 

 

???「言ったろう?元々マッハ20の怪物を殺す準備で来てるんだ。リモコンだって、超スピードで奪われないように予備も作る。うっかり俺が倒れ込んでも押す位のな」

 

聞き覚えがある声だ……。

 

しかも、前よりずっと邪気を孕んで……!

 

 

烏間「……連絡がつかなくなったのは、3人の殺し屋の他に『身内』にもいる。……防衛省の機密費。暗殺に使うはずの金をごっそり抜いて……俺の同僚が姿を消した。……どういうつもりだ。

 

 

 

…鷹岡ァ!!!」

 

 

【第47話 鷹岡の時間】

 

 

……鷹岡明……!

 

あの時の…クソみたいな思い出が蘇る……!!

 

鷹岡「悪い子達だ…。恩師に会うのに裏口から来るなんて……。父ちゃんはそんな子に教えたつもりはないぞ?

仕方ない。夏休みの補習をしてやろう。屋上へ行こうか。愛する生徒に歓迎の用意がしてあるんだ。ついて来てくれるよなァ?おまえらのクラス…俺の慈悲で生かされているんだから…」

 

 

鷹岡はグシャリと笑った。

狂気と憎悪が刻み込まれた顔面で…。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

屋上 ヘリポート

 

烏間「気でも違ったか鷹岡。防衛省から盗んだ金で殺し屋を雇い、生徒達をウイルスで脅すこの凶行…!」

 

鷹岡「おいおい!俺は至極まともだぜ!これは地球が救える計画なんだ。大人しく3人にその賞金首を持って来させりゃ、俺の暗殺計画はスムーズに仕上がったのにな」

 

烏間「なに…?」

 

 

鷹岡「真弓友(疫病神)の方は俺が雇った殺し屋が条件として出てきたから仕方なく名指ししたが…。茅野とか言ったっけ?女の方。そいつを使う予定だった。部屋のバスタブに対先生弾がたっぷり入れてある。そこに賞金首を抱いて入ってもらう。その上からセメントで生き埋めにする…。対先生弾に触れずに元の姿に戻るには…生徒ごと爆裂しなきゃいけない寸法さ…。

 

生徒思いの殺せんせーはそんな酷いことしないだろ…?大人しく溶かされてくれると思ってな……!」

 

 

あ……悪魔……!!

 

 

鷹岡「全員で乗り込んで来たと気付いた瞬間は肝を冷やしたが…やる事は大して変わらない。お前らを何人生かすかは俺の機嫌次第だからなァ…」

 

殺「……許されると思いますか…?そんな真似が…」

 

鷹岡「これでも人道的な方さ…。おまえらが俺にした…非人道的な仕打ちに比べりゃな……!屈辱の目線と!騙し討ちで突きつけられたナイフが…!頭ン中チラつく度にかゆくなって……夜も眠れなくてよォ!!

 

落とした評価は結果で返す…!受けた屈辱はそれ以上の屈辱で返す…!特にィ…潮田渚ァ!!俺の未来を汚したお前は絶対に許さんッ!!」

 

渚「……!!」

 

友「背の低い生徒を要求したのは…渚を狙ってたのか!」

 

吉田「完璧な逆恨みじゃねーか!」

 

カルマ「へぇ…つまり渚君はあんたの恨み晴らすために呼ばれたわけ…。その体格差で本気で勝って嬉しいわけ?俺ならもーちょっと楽しませてあげるけど?」

 

寺坂「イカレやがって。テメーが作ったルールの中で渚に負けただけだろーが!言っとくけどな!あの時テメーが勝ってよーが負けてよーが…俺らテメーのこと大っ嫌いだからよ!!」

 

鷹岡「ジャリ共の意見なんて聞いてねェ!!親の指先でジャリが半分減るって事忘れんなァ!!!」

 

鷹岡はかなり興奮している。

 

それにしても…寺坂、少し様子がおかしいような……?

 

 

鷹岡「……チビ。お前1人で登ってこい。この上のヘリポートまで…」

 

 

 

茅野「渚…ダメ…行ったら……!」

 

渚「行きたくないけど…行くよ。あれだけ興奮してたら何するかわからない。話を合わせて冷静にさせて…治療薬を壊さないよう渡してもらうよ」

 

烏間「渚君…」

 

茅野「渚……」

 

カルマ「………」

 

…渚……!

 

渚はヘリポートまで登っていく。

 

鷹岡は登る用の梯子を倒した。

誰も登って来れないようにするつもりか…!

 

 

 

鷹岡「……足元のナイフで俺のやりたい事はわかるな?この前のリターンマッチだ」

 

渚「…待って下さい鷹岡先生。闘いに来たわけじゃないんです!」

 

鷹岡「だろうなァ。この前みたいな卑怯な手はもう通じねぇ。一瞬で俺にやられるのは目に見えてる」

 

それはそうだろう。渚には暗殺のスキルこそあるだろうが…戦闘のスキルはほとんどない…。勝つ確率はかなり低いだろう……。

 

 

鷹岡「だがな…。一瞬で終わっちゃ俺としても気が晴れない。だから闘う前に…やる事やってもらわなくちゃな…。謝罪しろ。土下座だ」

 

……こいつ…!!

 

鷹岡「実力が無いから卑怯な手で奇襲した。それについて誠心誠意な…!」

 

渚は言われるがまま膝をついた。

 

渚「……僕は…」

 

鷹岡「それが土下座かァ!?バカガキが!!頭こすりつけて謝んだよォ!!」

 

……このクソ野郎…!

 

渚「…僕は…実力が無いから卑怯な手で奇襲しました。……ごめんなさい」

 

鷹岡「おう。その後で偉そうな口も叩いたよな…『出ていけ』とか!!」

 

鷹岡は渚の頭を踏みつけた。

 

鷹岡「ガキの分際で!大人に向かって!生徒が教師に向かってだぞ!!」

 

 

渚「……ガキのくせに、生徒のくせに、先生に生意気な口を叩いてしまい、すみませんでした。本当に、ごめんなさい」

 

渚……!!

 

 

鷹岡「よーし。やっと本心を言ってくれたな…。父ちゃんは嬉しいぞ…。褒美にいい事を教えてやろう。あのウイルスで死んだ奴がどうなるか…『スモッグ』の奴に画像を見せてもらったんだが、笑えるぜェ…。全身デキモノだらけ。顔面が葡萄みたいに腫れあがってな…

 

見たいだろ…?渚君……」

 

 

鷹岡はスーツケースを宙へと放り投げた……!

 

ま、まさか……!!!

 

 

烏間「や、やめろーーーッ!!」

 

 

鷹岡は起爆リモコンを押した……。

 

スーツケースは…空中で爆散した。

 

抗ウイルス薬と思われる物が辺りに飛び散る。

 

 

菅谷・岡野「………!」

 

友・不破「…………!」

 

寺坂「…………!!」

 

 

渚「あ……あぁ……」

 

鷹岡「あは…あはは…アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!そうっ!その顔が見たかったァ!!夏休みの観察日記にしたらどうだぁ?お友達の顔面が葡萄みたいに化けていく様をよォ!ハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

 

屑がぁ……!!

 

渚「はーッ……はーッ……はーッ」

 

 

……!

 

 

渚……!?

 

 

渚「殺す…………殺…してやる……!」

 

鷹岡「ククク…そうだ。そうでなくちゃなァ……」

 

 



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第48話 叱咤の時間


遂に伏魔殿上ホテル編完結です!
渚VS鷹岡は友の視点よりも原作と同じの方が良いと考え、途中渚視点の部分があります!


《友 side》

 

渚「殺してやる…!!よくも皆を…!!」

 

鷹岡「はははは!!その意気だァ!殺しに来なさい渚君!」

 

 

 

片岡「渚…キレてる!」

 

吉田「俺らだって殺してぇよ…!けど、渚の奴、マジで殺る気か!?」

 

 

殺「寺坂君、彼の頭を冷やして下さい!君にしか……」

 

殺せんせーが言い終わる前に、寺坂は渚に向かってスタンガンを投げた。

 

寺坂「チョーシこいてんじゃねーぞ渚ァ!薬が爆破された時よ…テメー俺を哀れむような目で見ただろ!いっちょ前に他人の気遣いしてんじゃねーぞモヤシ野郎!ウイルスなんざ……寝てりゃ余裕で治せんだよ!」

 

磯貝「寺坂……!お前……」

 

ウイルスに感染していたのか……!

 

 

寺坂「そんなクズでも息の根止めりゃ殺人罪だ!テメーはキレるに任せて百億のチャンス手放すのか?」

 

殺「寺坂君の言う通りです渚君。その男を殺しても何の価値も無い!」

 

友「そもそもそいつに治療薬に関する知識はない!下にいた毒使いの男にでも聞けばいい。こんなクズは気絶程度で充分だ!」

 

 

鷹岡「…おいおい。余計な水差すんじゃねぇ。本気で殺しに来させなきゃ意味ねぇんだ。このチビの本気の殺意を屈辱的に返り討ちにして…初めて俺の恥は消しされる…」

 

どこまでもクズな男だ……!

 

殺「…渚君。寺坂君のスタンガンを拾いなさい。その男の命と先生の命。その男の言葉と寺坂君の言葉。それぞれどちらに価値があるのか考えるのです」

 

渚「……………」

 

磯貝「寺坂!」

 

寺坂は体力の限界が来たのか、倒れ込んでしまった。

 

吉田「おまえ…これ熱やべぇぞ!」

 

木村「こんな状態で来てたのかよ…!」

 

寺坂「……うるせぇ。見るなら…あっちだ。…やれ渚。死なねぇ範囲でブッ殺せ…」

 

 

渚はスタンガンをベルトに挟み、来ていた上着を脱ぎ捨てた。右手には本物のナイフを持っている。

 

茅野「殺せんせー……渚、スタンガンしまっちゃったよ…」

 

渚……どうするつもりだ…?

 

 

鷹岡「ナイフ使う気満々だな…安心したぜ。一応言っとくが!薬はここに3回分ほど予備がある…。渚クンが本気で殺しに来なかったり…下のやつらが俺の邪魔をしようものなら…こいつも破壊する」

 

岡野・千葉「くっ……」

 

鷹岡「作るのに1ヶ月はかかるそうだ…。人数分には足りないが…最後の希望だぜ?」

 

あのゴミ野郎……!

 

 

殺「…烏間先生。もう大分精密な射撃が出来るでしょう。もし渚君が生命の危機と判断したら…迷わず鷹岡先生を撃ってください…」

 

烏間(……先々まで見通せるこいつがここまで言うとは…今までになく危険な状況という事か…。いや俺が見ても間違いなくまずい…!)

 

 

俺たちが受けている訓練は『暗殺』の訓練…!

戦闘になる前に一撃を与える訓練だ。

 

下の階の殺し屋達は戦闘に持ち込んで倒すことが出来たけど…

 

今は完全に立場が逆だ…!

 

 

渚が先に暗殺に持ち込もうとしても、鷹岡が戦闘に引き戻す!

 

何せ、今回の鷹岡は最初から戦闘モードだ!

 

 

体格も、技術も、経験も、全てが鷹岡の方が上!

 

既に渚はかなりボロボロになってる…!

 

このままだと……!!

 

不破「勝負にならない……!」

 

友「勝てるわけが無い……!あんなの…!!」

 

鷹岡はナイフを持ち始めた。

くるくる回して、いかにも余裕。

当たり前だ。相手が素手でこんなボロボロなのに…ナイフVSナイフじゃ確実に渚が死ぬ…!!

 

 

茅野「烏間先生!もう撃ってください!渚死んじゃうよ、あんなの!」

 

寺坂「…待て。手出しすんじゃねー…」

 

寺坂……?

 

 

カルマ「まだほっとけって寺坂…?そろそろ俺も参戦したいんだけど…」

 

寺坂「…カルマ。テメーは練習サボってばっかで知らねぇだろうがよ……渚のやつ、まだ何か隠し玉持ってるよーだぜ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《渚 side》

 

ロヴロ『少年よ…。君には必殺技を授けてやろう』

 

渚『…!?…ひっさつ……?』

 

ロヴロ『そうだ…。プロの殺し屋が直接教える…必殺技だ』

 

 

 

 

 

 

渚『……!今のが…必殺技…?』

 

ロヴロ『そうだ。と言っても、まるでピンと来ないだろう?だがこの技は…実戦で使えば恐るべき威力を発揮する。殺し屋として最大のピンチの時、俺はこれを編み出すことで切り抜けた』

 

…この技の発動には条件がある。

 

大きく分けてそれは3つ。

 

1つ…武器を2本持っている事。

 

2つ…敵が手練である事。

 

3つ…敵が殺される恐怖を知っている事。

 

よかった。

全部そろってる。

 

鷹岡先生…。

実験台になって下さい。

 

 

鷹岡「…!!」

 

速水(渚…!笑って歩いていく…!)

 

磯貝(これって…前と同じ…、)

 

殺(いや…どこか違う…!!)

 

 

 

 

ロヴロ『必殺技と言っても、必ず殺す技ではない。そもそも訓練を受けた暗殺者なら、理想的状況から必ず殺すのは当たり前だ。だが、現実はそう上手くは運ばない。特に標的(ターゲット)が隙の無い手練の時はな。

 

暗殺者に有利な状況を決して作らず、逆にこちらの存在を察知されて、暗殺から戦闘へ引きずり込まれる。戦闘に手こずれば増援が来る。一刻も早く殺さねばならない。

そんな窮地(ピンチ)に、《必ず殺せる》理想的状況を造り出す技。それがこの必殺技、《必ず殺すための技》だ』

 

渚『必ず殺す…ための…!?』

 

ロヴロ『俺がさっきしたことを真似てみろ。ノーモーションから、最速で、最も遠くで、最大の音量がなるように……』

 

 

渚『あっ…』ビチッ

 

ロヴロ『意外に上手くならないだろう。日常でもまずやらない動き…だからこそ常識外れの行動となる。確実に出来るよう練習しておけ』

 

渚『でもロヴロさん…これって…』

 

ロヴロ『そう。相撲で言う《猫騙し》だ。これを使えば、敵の意識を一瞬だけ真っ白にして隙を作れる

 

ましてや君がいるのは殺し合いの場。負けたら即死の恐怖と緊張は相撲の比ではない。極限まで過敏になった神経を…音の爆弾で破壊する…!』

 

渚『でも、手を叩くならナイフを手放さないと…』

 

 

 

ロヴロ『それが良いのだ。それも戦闘の常識の外側の行為。手練の敵なら、君の挙動一つ一つを良く見ている。だからこそ虚を衝かれる!

 

 

手の叩き方は!体の中心で片手を真っ直ぐ敵に向け…その腹にもう片方の手をピッタリ当て、音の塊を発射する感覚で!

 

タイミングはナイフの間合いの僅かに外!接近するほど敵の意識はナイフに集まる!』

 

 

その意識ごと…

ナイフを空中に置くようにすて…そのまま。

 

 

パァァァァン………

 

鷹岡「…………!!!!な…にが…起こっ……!」

 

友(猫騙し…!?)

 

鷹岡先生は崩れ落ちた。

 

暗殺者は、その数瞬を逃さない。

 

流れるようにスタンガン(2本目の刃)を、

抜くが早いか。

 

バチィッ…

 

鷹岡「ギッ……!!!」

  (ウソ…だ…こんな…ガキに…2度も…)ドサッ

 

 

殺「……!」

 

烏間「………!!」

 

友「……すげぇ…」

 

カルマ「…………」

 

 

寺坂「…とどめ刺せ。渚。首あたりにたっぷり流しゃ気絶する…」

 

寺坂君の言うように、鷹岡先生の首元にスタンガンを突きつけた。

 

 

殺意を教わった。

抱いちゃいけない種類の殺意があるって事。

その殺意から引き戻してくれる友達の大切さも。

 

殴られる痛みを。

実戦の恐怖を。

この人から沢山の事を教わった。

 

酷い事をした人だけど、

それとは別に、

授業への感謝はちゃんと言わなきゃいけないと思った。

 

 

感謝を伝えるなら……

 

鷹岡(……やめろ…!)

 

そういう顔をすべきだと思ったから。

 

鷹岡(その顔で終わらせるのだけはやめてくれ……!

 

 

もう一生……!その顔が悪夢の中から離れなくなる……!)

 

…僕は笑って感謝を伝えた。

 

渚「鷹岡先生。ありがとうございました」

 

鷹岡「…!!!」

 

バチィッ…ズシャッ…

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

渚が…鷹岡を倒した……!!

 

一同「よっしゃあ!元凶(ボス)撃破!!」

 

 

殺「よくやってくれました渚君…。今回ばかりはどうなるかと思いましたが……怪我も軽そうで安心しました」

 

渚「…うん。僕は平気だけど…でも、どうしよう…皆への薬が…鷹岡先生から奪った分じゃ全然足りない……」

 

そうだ…。

薬が無いと…皆が死んでしまう……!

 

一同「…………」

 

烏間「……とにかくここを脱出する。ヘリを呼んだから君らは待機だ。俺が毒使いの男を連れて…」

 

ガストロ「フン。テメーらに薬なんぞ必要ねぇ」

 

 

その声は…銃使いの殺し屋…!?

 

毒使いの男に…おじさんぬまで…。

でも…『歳』と名乗った男は居ないのか…?

 

てかおじさんぬ酷い顔してんな…可哀想に…。

 

 

ガストロ「ガキ共…このまま生きて帰れると思ったかい?」

 

一同「……!!」

 

まずいな、3人がかりで来られると…

ここで戦うのはリスクが高いな……。

 

烏間「お前たちの雇い主は既に倒した。戦う理由はもう無いはずだ。俺は充分回復したし、生徒達も充分強い。これ以上、互いに被害が出る事はやめにしないか…?」

 

ガストロ「ん。いーよ」

 

吉田「諦め悪……え?……いーよ?」

 

 

ガストロ「『ボスの敵討ち』は俺らの契約にゃ含まれてねぇ。それに今言ったろう?そもそもお前らに薬なんざ必要ねーって」

 

…どういうことだ…?

 

スモッグ「お前らに盛ったのはこっち。食中毒菌を改良したものだ。あと3時間位は猛威を振るうが、その後急速に活性を失って無毒となる。……そしてボスが使えと指示したのはこっちだ。これ使えば、お前らマジでやばかったがな」

 

グリップ「使う直前に『4人』で話し合ったぬ。ボスの設定した交渉期限は1時間。だったら、わざわざ殺すウイルスじゃなくとも取引は出来ると……」

 

スモッグ「交渉法に合わせて多種多様な毒を持ってるからな…お前らが命の危険を感じるには充分だったろ?」

 

 

岡野「でもそれって…鷹岡(アイツ)の命令に逆らってたって事だよね…?お金もらってるのにそんな事していいの?」

 

ガストロ「アホか。プロが何でも金で動くと思ったら大間違いだ。勿論依頼人(クライアント)の意に沿うように最前は尽くすが、ボスはハナから薬を渡すつもりは無いようだった。

カタギの中学生を大量に殺した実行犯になるか…命令違反がバレる事でプロとしての評価を落とすか…どちらが俺らの今後にリスクが高いか、冷静に天秤にかけただけよ」

 

一同「……」

 

スモッグ「ま、そんなワケでお前らは残念ながら誰も死なねぇ。その栄養剤患者に飲ませてやんな。『倒れる前より元気になった』って感謝の手紙が届くほどだ」

 

一同(アフターケアも万全だ!!)

 

その時、大きなプロペラ音が聞こえてくる。烏間先生が呼んだヘリコプターが到着したのだ。

 

烏間「信用するかは生徒達が回復したのを見てからだ。事情も聞くし、しばらく拘束させてもらうぞ」

 

ガストロ「ま、しゃーねーな。来週には次の仕事が入ってるからそれ以内にな」

 

友「あ、あの…」

 

ガストロ「んぁ?」

 

友「もう1人の…日本刀使いの『歳』って奴は…?」

 

ガストロ「あいつか?さぁな俺らが気付いた時にはもうホテルには居なかったようだし、どっかフラっと行っちまったんだろ」

 

……!

あいつは、きっとまた俺の事を襲ってくる…!

もっと強く…皆を、自分を守れるようにならないと…!

 

カルマ「なーんだ。リベンジマッチやらないんだ〜おじさんぬ。俺の事殺したいほど恨んでないの?」

 

グリップ「……殺したいのはやまやまだが、俺は私怨で人を殺した事はないぬ。誰かがお前を殺す依頼をよこす日を待つぬ」

 

おじさんぬはカルマの頭をすれ違いざまにポンと優しく叩く。

 

ガストロ「そーいうこったガキ共!!本気で殺しに来て欲しかったら偉くなれ!そん時ゃプロの殺し屋の本気の味(フルコース)を教えてやるよ!」

 

殺し屋達は去っていった。

彼らなりの暗殺予告(エール)を俺達に残して…。

 

速水「…なんて言うか、あの3人には勝ったのに勝った気しないね」

 

カルマ「言い回しがずるいんだよ…。まるで俺らがあやされてたみたいな感じでまとめやがった……」

 

 

こうして…

 

イリーナ「あん…」ブブブ

 

 

イリーナ(…カラスマからバイブ1回。脱出完了の合図ね)

 

 

イリーナ「ねーぇ。麓に行って海が見たいわ。誰か車で連れ出して下さらない?」

 

警備員達「はい!はい!はい!」

 

 

俺達の大規模潜入ミッションは…

ホテル側の誰一人気付かないまま完了(コンプリート)した。

 

 

 

渚「…寺坂君。ありがとう。あの時声をかけてくれて。間違えるところだった」

 

寺坂「…ケッ。テメーのために言ったんじゃねぇ。1人欠けたらタコ殺す難易度上がんだろーが」

 

渚「うん…ごめん」

 

 

友「なぁ不破…あの時、俺の事庇ってくれてありがとな」

 

不破「…当然でしょ。私は何度も助けてもらってるんだもん。友君がピンチの時は、私が助けないと」

 

友「……!…ありがとう。でも、無茶はしないでよ」

 

不破「それはお互い様でしょ?」

 

友「ははは…それもそうだな!」

 

 

俺達は、皆の待つホテルに戻って……

 

もう大丈夫な事を伝えた。

 

 

そして……それぞれがそれぞれの疲れで泥のように眠った。

 

 

友「……」

 

でも俺は……皆が寝ている間少し外に出ていた。

 

とある人物に電話で確認したいことがあったからだ。

 

友「……もう夜遅いしさすがに出ないかな…?」

 

そう呟きながら、スマホを操作して電話をかける。

 

しばらくすると、俺が電話をかけた……剣術道場の先輩である『土方歳次』さんは電話に出て応答した。

 

土方さん『………何だ。こんな夜遅くに…。』

 

友「よく起きてましたね……。訓練ですか?」

 

土方さん『ああ。丁度さっき終わって寝るところだったんだがな……』

 

友「それは申し訳ありません……。1つ聞きたいことがありまして」

 

土方さん『聞きたいことだと?』

 

友「ええ……。土方さんって確か一人暮らしでしたよね…。両親が亡くなられて……」

 

土方さん『………ああ。聞きたいことはそれだけか?』

 

友「いえ……本題はこれからです。土方さんって……『兄』……とかいます?」

 

土方さん『………兄…か。そうだな。もう何年も会ってない兄がいる。今はどこで何してるんだか……』

 

友「……因みに、名前とか…年齢とか…顔の特徴とかは?」

 

土方さん『……名前は『土方歳朗』。年齢は…今20前後くらいだと思うぞ。顔の特徴っつったってなぁ……。俺が最後に会ったのは小学生の頃だぞ?あー…でも、俺と同じで父親似の顔だって言ってたから…俺と並んだら似てるんじゃねーか?……にしても何でそんなこと聞くんだよ』

 

友「いや…少し気になったもので。聞きたいことは以上です。ありがとうございました」

 

土方さん『……おう』

 

俺は電話を終えて…皆が眠っている場所へと戻ろうとした。

 

後ろを振り返った時…急いで戻っていく影が見えた。

戻って行った方向から察するに……E組の誰かがたまたま起きて俺が電話をしているのに気付き…隠れて見てたってところだろう。

 

俺は特に気にせず……自分の布団へと戻って眠りについた。

 

 

そして……俺を含め、皆が起きたのは、次の日の夕方だった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

岡野「おはよー。元気になった?」

 

原「お陰様で。やっぱ皆ジャージ姿なのね〜」

 

木村「他に客いないし、これが楽だわ」

 

 

不破「全員分の私服2日分考えるのエグすぎるしね〜」

 

友「まぁこれ二次小説だから関係ないけどな〜」

 

渚「不破さん?友君?」

 

不破「ところで、今あの中に殺せんせーいるんだよね?」

 

不破が指さす先には、コンクリートで固められた謎の大きな箱の様なものがあった。

 

友「ああ。ダメ元だけど、戻った時に殺せるようにガッチリ固めておくんだってさ」

 

殺せんせーの周りに対先生弾、その周りに鉄板を敷き、それをコンクリートで硬め、水に沈ませる。そういう作戦らしい。

 

新「烏間先生が不眠不休で指揮とってるそうだよ。疲れも見せず、すごい人だよね」

 

杉野「俺ら…あと十年であんな超人になれんのかな…?」

 

菅谷「さーな…」

 

 

矢田「ビッチ先生も、ああ見えてすごい人だし…」

 

速水「ホテルで会った殺し屋達もそうだった」

 

千葉「長年の経験でスゲー技術身につけてたり…」

 

木村「仕事に対してしっかりした考えがあったり…」

 

片岡「…と思えば、鷹岡みたいに『ああはなりたくないな』って奴もいて…」

 

友「『いいな』と思った人は追いかけて…『ダメだ』と思った奴は追い越して……」

 

新「多分それの繰り返しなんだろうね……大人になっていくって……」

 

ドドーン!!!

 

突然、物凄い轟音と地響きが…!

 

前原「爆発したぞ!」

 

村松「殺れたか!?」

 

とはいえ、結果は皆薄々分かっていて……

 

烏間「………ダメか」

 

殺「…先生の不甲斐なさから苦労させてしまいました。ですが皆さん、敵と戦い、ウイルスと戦い、本当によく頑張りました!」

 

渚「おはようございます殺せんせー。やっぱ先生は触手が無くちゃね!」

 

 

殺「はい。おはようございます。では旅行の続きを楽しみましょうか!」

 

中村「よっしゃ!折角元気になったんだから海で遊ぶぞー!」

 

女子一同「わーい!!」

 

渚「ジャージの下に水着着てたんだ」

 

茅野「私着てないッ!?」

 

 

海かぁ…。

俺は流石に入れないなぁ…。

 

不破「ゆ、友君…あ、あの…一緒に遊ぼうよ!」

 

友「え、い、いいけど…俺海入れないよ?」

 

不破「大丈夫!砂浜とかでなんか作って遊ぼ!」

 

友「まぁいいけど、不破はそれでいいの?泳ぐために水着買ったんじゃ…」

 

不破「い、いーのいーの!」

 

不破(友君に見せたかったなんて口が裂けても言えない……/////)

 

友「よし、じゃあ砂浜で殺せんせーでも作るか!」

 

不破「お、いーね!じゃあさっそく……」

 

友「…あ、不破……。その水着、凄い似合ってるよ」ニコッ

 

不破「……ふぇっ…!?/////」

 

友「…じゃ、じゃあ作ろっか…!///」

 

う…勇気出して言ったけど流石に恥ずいなぁやっぱり……。

 

 

その後、海や砂浜で遊ぶ人がいたり、遊ぶついでに暗殺しようとする人がいたり、ビッチ先生に追われる人もいたり……それぞれが楽しんで、いつの間にか夜になってしまっていた。

 

不破「もう夜かぁ……」

 

友「ああ…長いようで短かったな」

 

中村「なんか1日損した気分だよね〜」

 

 

殺「何を言ってるんですか皆さん!まだまだこれからですよ!」

 

三村「これからって…もう夜だぜ?」

 

殺「ヌルフフフ。夜だからいいんですよ…!昨日の暗殺のお返しにちゃーんとスペシャルなイベントを用意してます!真夏の夜にやることと言ったら…1つですねぇ」

 

殺せんせーは『夏休み旅行特別企画 納涼!ヌルヌル暗殺肝試し』と書かれた看板を持っている。

しかも幽霊っぽい恰好までしている…。

 

なんか…嫌な予感が……。

 

 



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第49話 怖い時間

昨日投稿するの普通に忘れてました。



《友 side》

 

一同「暗殺肝試し……?」

 

殺「先生がお化け役を務めます。久々にたっぷり分身して動きますよ……!勿論先生は殺してもOK!暗殺旅行の締めくくりにはピッタリでしょう!基本的には男女のペアで入ってもらいますよ〜」

 

前原「面白そーじゃん!昨日の晩動けなかった憂さ晴らしだ!」

 

矢田「えーでも怖いのヤダな〜」

 

倉橋「へーきへーき!」

 

この時…俺達は失念していた。

殺せんせーは…とてつもなくゲスいということを…!

 

 

ペア一覧

友&不破

新&倉橋

渚&茅野

カルマ&奥田

磯貝&片岡

前原&岡野

千葉&速水

杉野&神崎

吉田&原

木村&矢田

菅谷&中村

竹林&律

寺坂&村松&狭間

岡島&三村

烏間先生&ビッチ先生

 

 

三村「岡島とかよ…」

 

岡島「仕方ないだろ余ったんだから!!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

〔友&不破ペア〕

 

友「さてと…この海底洞窟の300メートル先に出口があるのか…」

 

不破「そうみたいだね……友君はこういうの平気だっけ?」

 

友「まぁテーマパークの肝試しとかはね…。日常的にゾンビがうろつく世界で銃撃ってるし」

 

不破「それだけ聞くとヤバい人だよ…?」

 

友「でも、急にビックリさせてくるのは苦手だな…。ホラゲーが本当に心臓に悪いんだよ」

 

不破「殺せんせーのスピードだし…本気でビビらせに来たらやばいね……」

 

それはマジで怖い。想像しただけでゾクッとする。

 

しばらく歩くと、ペン…ペンと何かを弾く音がする。

 

友「……?沖縄の三線の音か?」

 

不破「……ホントだ…」

 

その時、暗闇から殺せんせーがボワッと現れた。

 

友・不破「出たぁ!!!」

 

 

殺「ここは…血塗られた悲劇の洞窟。琉球…かつての沖縄で戦いに敗れた王族達が非業の死を遂げた場所です…」

 

不破「……ホントかな?」

 

友「多分…リアリティ出すための作り話だろう…にしてはよく考えてあるっぽいけど」

 

殺「決して2人離れぬよう…1人になれば彷徨える魂にとり殺されます……」スゥ…

 

背筋がゾッとする……。

 

不破「意外と本格的みたいだね…。早く抜けよっか…」

 

友「おう…」

 

殺「ここは血塗られた悲劇の洞窟……」

 

不破「……次のペアへの同じ語りが聞こえてくる……。いかにもリアルね」

 

友「そんなとこでリアルを追求するなよ……」

 

 

殺(ヌルフフフ…。君たちは本当に強くなった。今回の旅行で痛感しました。…が、そんな君達にもまだ足りないものがある。それは……!恋愛(スキャンダル)……!!

夏頃にはぼちぼちカップルが誕生してると踏んでましたが…君達と来たら暗殺に夢中でてんで浮いた話がない!ここらで一発…先生が恐怖で君達の背中を押して男女をくっつけ……!それをネタにひやかしたり実録小説を書くのです!これぞ担任教師の粋な計らい!!)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《杉野 side》

〔杉野&神崎ペア〕

 

神崎「ん…やっぱり少し怖いね…杉野君」

 

杉野「大丈夫だって神崎さん!何かあったら俺に任せろ!」

 

いいとこ見せるチャンスだぜ…!

入口で聞いた設定説明から察するに、古代琉球の落ち武者とかで嚇かす気だろ!ビビらない準備は万端…!

 

殺「…生きのびた者の中には夫婦もいました。ですが追手が迫り、椅子の上で寄り添いながら自殺しました」ボワッ

 

うおっ…!?急に出てきたぞ…!

 

殺「その椅子がこれです…」

 

寄り添って自殺した椅子…

きっと血塗れで…ボロボロな…

 

そこにあったのは、背もたれがハートの形になっていて、ハート模様が沢山ついている、黄色とピンクの可愛いベンチだった。

 

え…っ……あの………うーん……。

 

殺「琉球伝統のカップルベンチです。ここで2人で1分座ると呪いの扉が開きます」

 

杉野「あるか!こんな伝統!!」

 

仕方なく2人で座ることに…何なんだこれ…。

 

殺「さぁもっと会話を弾ませて!」

 

弾ませて!じゃねーよ…。

 

なんだ?なんか…思ってたのと違うぞ……。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

〔新&倉橋ペア〕

 

倉橋「う……意外と怖いかも……」

 

新「………」

 

倉橋「……新君、どうかしたの?」

 

新「え…あ、ああ。少し考え事。それより…あのタコ…次はどうやって驚かせにくるかね…」

 

倉橋「……!な、何この音…」

 

シュッ…シュッ…という音が洞窟内に木霊している。

 

新「…た、多分…刃物を研ぐ音だな」

 

倉橋「刃物を…!?…あ、あそこ…障子に影が…!」

 

洞窟内に謎の建物…そこの障子には殺せんせーの影が写っている。動き的に包丁を研いでいるようだ。

 

殺「血が見たい……」

 

新・倉橋「………!!」

 

殺「同胞を殺されたこの恨み…血を見ねば収まらぬ…!」

 

い、意外と本格的だ…!!

 

殺「血…もしくは…イチャイチャするカップルが見たい…!どっちか見ればワシ満足」

 

新「安い恨みだな!!!」

 

なんなんだこれ…。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

〔友&不破ペア〕

 

友「大分進んだな」

 

不破「うん…所々にあった肝試しっぽくないやつほとんど無視したからね…」

 

殺「この場所は牢獄…長い洞窟生活で精神が狂った者は、ここで奇声を出して騒いだそうだ。ここの霊は自分より大きな音を出すと驚いて逃げていく……。

ここにカラオケボックスがある。これでラブソングを大きい声で歌って…悪霊を追い返すのだ」

 

友「なんで洞窟内にカラオケボックスがあるんだよ!!」

 

不破「これ奇声っていうより歌声でしょ!?」

 

友「ってもういないし……!」

 

不破「どうしよっか…?」

 

とりあえずカラオケのリモコンでどんな曲が入っているか見てみる。

 

友「…………うわ。このカラオケほんとにラブソングしかないよ」

 

不破「これ、先生狙ってるよね…吊り橋効果…」

 

友「ああ。露骨すぎて怖がる隙もねーよ……。てかこれ1曲歌わないと扉開かないのか…。仕方ない…歌うか」

 

カラオケとか久々だな…。

この前新のグループが音楽番組でカバーしてた曲でも歌うか。

 

不破(友君って歌上手いのかな……?)

 

曲を選択すると、すぐに音楽が鳴った。

 

そして何とか歌い終わり、採点が始まった。悪霊追い返すだけなのになんで採点機能入れたんだ。

久しぶりに歌ったけど、どうだろ……。

 

【結果:94.67点】

 

不破「歌上手っ!?」

 

友「お、扉開いた〜」

 

不破「友君凄いね……」

 

友「多分新の方が上手いと思うけどね」

 

不破(真弓家の兄弟怖っ……!?)

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《前原 side》

〔前原&岡野ペア〕

 

……が、骸骨が降ってきた!?

 

殺「立てこもり飢えた我々は…1本の骨を奪い合って喰らうまでに落ちぶれた。お前達にも同じ事をしてもらうぞ」

 

すると上から……!

 

某棒状のお菓子が降ってきた。

 

殺「さぁ両端から喰っていけ」

 

前原・岡野「それポ〇キーゲーム!!!」

 

 

前原「さっきから何がしてーんだ!」

 

岡野「これじゃちっとも怖くないよ!」

 

殺「にゅやっ!?よ、予定と違う!?」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《奥田 side》

〔カルマ&奥田ペア〕

 

奥田「…怖くないのが……怖い…?」

 

カルマ「そ。あの時の渚君見てさ…正直俺衝撃受けた」

 

………!

 

カルマ「鷹岡を倒した事じゃない。倒して帰ってきた後だよ。全っ然怖くないんだ。あんだけの強敵を仕留めた人間が……。強い所を見せた奴って普通ちょっとは警戒されるけど…渚君は何事もなく皆の中に戻ってった。目立つの苦手だからちょっとだけ照れ臭そうに。喧嘩したら俺が百パー勝てるけど、殺し屋にとってそんな勝敗何の意味もない…。『警戒できない』。怖くないって、実は1番怖いんだなって初めて思った」

 

奥田「………」

 

カルマ「…でも」

 

奥田「…え?」

 

 

カルマ「負けないけどね。先生の命を頂くのはこの俺だよ」

 

……!

 

奥田「…はい!どっちが殺すのか楽しみです!」

 

カルマ「ところで…『琉球名物 ツイスターゲーム』って奴が置いてある。どうやら怖がらせてくだらねー事企んでるみたいだけど、E組(うち)で1番怖がりなの誰だっけ?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《殺せんせー side》

 

中々カップル成立しませんねぇ……!

 

次のペアで必ずや!

 

殺「ここは血塗られた悲劇の洞窟……琉k…きゃーーーっ!!!?!?!!化け物出たぁーーーー!?!?」

[※ 狭間です]

 

村松「くそっ…腰抜かしたとこ撃とうと思ってたのによ…」

 

狭間「子供の頃から夜道で会うとビビられてたわ…ついたあだ名がミス肝試し日本代表よ……」

 

寺坂「お、おう…。お前が楽しーならいいけどよ」

 

 

な、何なんですか今の霊は……!!

まさか…本物(ガチ)琉球の本物(ガチ)霊……!?

 

……!?

 

殺「ひーーーっ!!目がない!!」

[※千葉です]

 

速水「………何今の」

 

千葉「勝手にパニックになってんな…。あるわ目ぐらい」

 

速水「………ちょっと見せて」

 

千葉「絶対に嫌だ」

 

 

殺「ひーっ!?なんかヌルヌルに触られた!?」

[※自分で仕掛けたコンニャク]

 

殺「ひーっ!?日本人形!?」

[※神崎です]

 

殺「ひーっ!?水木しげる大先生!?」

[※竹林です]

 

茅野「結局自分が1番恐怖を楽しんでるね…」

 

渚「出よっか…このまま」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

友「要するに…」

 

前原「怖がらせて吊り橋効果で…」

 

杉野「カップル成立を狙ってたと…」

 

菅谷「結果を急ぎすぎなんだよ…」

 

矢田「怖がらせる前にくっつける方に入ってるから狙いがバレバレ!」

 

殺「だ!だって!見たかったんだもん!!手繋いで照れる2人とか見てニヤニヤしたいじゃないですかぁ!」

 

倉橋「泣きギレ入った…」

 

新「ゲスい大人だ…」

 

こいつ本当に教師かよ……。

 

中村「殺せんせー。そーいうのはそっとしときなよ。うちら位だと色恋沙汰とかつっつかれるの嫌がる子多いよ?」

 

え?お前が言う?

日頃から不破をいじってる中村がそれ言う?

特大ブーメランなのでは…?

 

あーほら不破も『お前が言うなぁ!』みたいな顔してるもん。

中村ちょっと目逸らしてるし。

 

殺「うう…わかりました…」

 

その時、洞窟の方から声がした。

 

イリーナ「何よ!結局誰もいないじゃない!怖がって歩いて損したわ!」

 

烏間「だからくっつくだけ無駄だと言ったろ。徹夜明けにはいいお荷物だ」

 

イリーナ「うるさいわね!男でしょ!美女がいたら優しくエスコートしなさいよ!」

 

ビッチ先生が烏間先生の腕を掴んでる…。

 

ふとビッチ先生は俺らに気付いたのか、烏間先生からそーっと離れる。

 

 

前原「なぁ…うすうす思ってたけど」

 

中村「ビッチ先生って……」

 

矢田「……うん」

 

友「…どうする?」

 

不破「明日の朝帰るまで…」

 

倉橋「時間あるし…」

 

一同(くっつけちゃいますか!!!)

 

結局皆ゲスかった。

 

無論俺も。普段中村やカルマにいじられてる憂さ晴らしになりそうだからなぁ!

 

 





話数間違えるとかいうやらかしをしました
ごめんなさい!!!!


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第50話 堅物の時間


これが本当の50話です
前回話数ミスりましたが今回は大丈夫です
多分



イリーナ(私の表情を見もしない…鈍感にも程があるわ…)

 

その時、ビッチ先生の肩を中村が叩く。

 

ビッチ先生が後ろを向くと、カップル成立という字を皮膚に浮かべた殺せんせーと、ゲス顔のE組生徒達が……

 

 

 

 

木村「意外だよな〜。あんだけ男を自由自在に操れんのに」

 

茅野「自分の恋愛にはてんで奥手なのね…」

 

イリーナ「仕方ないじゃないのよ!あいつの堅物っぷりったら世界(ワールド)クラスよ!私にだってプライドあるわ。男をオトす技術だって千を超える…。ムキになって本気にさせようとしてる間に……そのうち、こっちが…」

 

男子一同「……う」

 

杉野「可愛いと思っちまった」

 

三村「なんか屈辱…」

 

イリーナ「何でよ!」

 

 

不破「……友君も思ったの?…その…可愛いって…」

 

友「……う…うん…ちょっと…。…って痛い痛い痛い!!ちょ、耳引っ張らないで!」

 

不破「…………」ギュー

 

中村(他所でやれや!あとあんたらも早くくっつけ!!)

 

 

ビッチ先生はこう見えて不器用な人だ。

 

積み上げた経験が逆に邪魔で、気持ちに素直になれな……って痛い痛い痛い!

ちょっと!人がナレーションやってる時に耳引っ張る力強くしないで!不破やめて!そろそろ耳ちぎれる!

 

前原「ま、俺らに任せろって!2人のためにセッティングしてやんぜ!」

 

中村「作戦決行は……夕食の時間!」

 

矢田「南の島の夕食(ディナー)で告るとかロマンチック〜!」

 

イリーナ「…あんたら」

 

 

こうして、『烏間&イリーナくっつけ計画』がスタートした。

 

殺「では…恋愛コンサルタント3年E組の会議を始めます」

 

イリーナ「ノリノリね…タコ」

 

殺「同僚の恋を応援するのは当然です。…女教師が男に溺れる愛欲の日々…甘酸っぱい純愛小説が描けそうです」

 

明らかにエロ小説を構想してる!

 

前原「まずさぁビッチ先生。服の系統が悪いんだよ」

 

岡野「そーそー。露出しときゃいーや的な?」

 

矢田「烏間先生みたいなお堅い日本人の好みじゃないよ。もっと清楚な感じで攻めないと」

 

イリーナ「む、むう清楚か…」

 

中村「清楚つったらやっぱり神崎ちゃんか。昨日着てたの乾いてたら貸してくんない?」

 

神崎「あ、う、うん!」

 

神崎の服ならザ・清楚って感じだろう。

 

中村「ほら、服ひとつで清楚……に……」

 

一同「な……なんか逆にエロい!!」

 

着てみると明らかにサイズが違う。

なんならさっき着てたやつより露出多いぞこれ…。

 

吉田「そもそも全てのサイズが合わないっての…」

 

岡島「神崎さんがあんなエロい服着てたと思うと…」

 

神崎「~~~~!////」

 

これはかなり厳しいな……。

そもそもビッチ先生に清楚な要素無いし…。

 

岡野「もーいーや!エロいのは仕方ない!大切なのは乳よりも人間同士の相性よ!」

 

茅野「うんうんうん!」コクコクコク

 

殺「烏間先生の女性の好みを知ってる人は?」

 

烏間先生に好みのタイプがあるのだろうか…?

 

矢田「あ!そういえばさっき、テレビのCMであの女(ひと)の事ベタ褒めしてた!『俺の理想のタイプだ』って!」

 

何…!?それは意外…!

 

烏間『彼女はいいぞ…。顔つきも体つきも理想的だ。オマケに3人もいる』

 

テレビ『ア〇ソック〜』

 

 

 

一同「理想の戦力じゃねーか!!!」

 

竹林「強い女が好きって線もありうるけど、なら尚更ビッチ先生の筋肉じゃ絶望的だね…」

 

イリーナ「…うぬ」

 

 

奥田「じ、じゃあ手料理とかどうですか?ホテルのディナーも豪華だけど、そこをあえて2人だけは烏間先生の好物で…」

 

友「いいアイデアだけど……烏間先生、ハンバーガーかカップ麺しか食ってるの見たことないぞ…」

 

不破「なんかそれだと2人だけ不憫すぎるね…」

 

 

ぐぐ…つけ入るスキが無さすぎる……!!!

 

 

前原「…なんか烏間先生の方に原因あるように思えて来たぞ?」

 

イリーナ「でしょでしょ!」

 

殺「先生のおふざけも何度無常に流されたことか…」

 

打つ手を無くして烏間先生がディスられ始めた…。

 

 

殺「と、とにかく!ディナーまでに出来る事は整えましょう……。女子は堅物の日本人が好むようにスタイリングの手伝いを。男子は2人の席をムード良くセッティングです!」

 

一同「はーい!」

 

イリーナ「………!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

21:00 ディナー開始

 

烏間「……なんだこれは」

 

中村「烏間先生の席ありませーん」

 

岡野「E組名物、先生いびりでーす」

 

中村「先生方は邪魔なんで、外の席でどうぞ勝手に食べてくださ〜い」

 

烏間「……何なんだいきなり?最近の中学生の考えることはよくわからん…」

 

作戦はこう!烏間先生とビッチ先生を2人だけ外へ出す!

そのために、中村や岡野達が空いている席を無理やり占領する!

そして外の席では既にビッチ先生が待機!

そこで2人でディナー!!

 

 

俺達は烏間先生が出ていくと、すぐに窓際へと直行した。会話は聞こえて来ないが、動きだけでも見たいというゲスな精神だ。

 

茅野「ねぇ…ビッチ先生が着てるあのショールどうしたの?」

 

原「売店で買ってミシン借りて、ネット見ながらブランドっぽくアレンジした」

 

菅谷「原さん家庭科強いもんな〜」

 

 

中村「ビッチ先生まだかなぁ〜」

 

友「もっと会話弾ませろよ〜」

 

不破「ここからどんな展開になるのかな〜」

 

殺「ヌルフフフ…これだけでも充分小説が書けそうですねぇ……」

 

 

ビッチ先生はしばらく何かを話すと、烏間先生のナプキンをすっと直し、ナプキンにキス…キスした部分を烏間先生の唇につけた。

『間接キス』……!

 

不破「………!///」

 

友「…やるじゃん」

 

俺や不破はこれでも充分凄いと思うのだが……

 

俺らなんかよりももっとゲスい輩は…

 

中村「何よ今の中途半端なキスは!!」

 

前原「いつもみたいに舌入れろ舌!!」

 

イリーナ「あーもーやかましいわ!大人には大人の事情があんのよ!」

 

烏間「…?」

 

……ていうか烏間先生のあの感じ気付いてないよな?

 

どんだけ鈍感なんだよ…。

 

こうして、俺らE組の沖縄旅行は幕を閉じたのであった……。

 



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第51話 群馬の時間

久しぶりのオリジナル回!
不破さんのオリジナル設定もあります。
群馬を選んだのは『日常』というアニメが好きだからという単純な理由です。

あとまた忘れてました……。



《不破 side》

不破家にて──

 

不破「えっ…?お母さん、群馬行けないの?」

 

不破母「ごめんね…。私もお父さんも仕事が忙しいから、日帰りで太陽と2人で行ってもらうことになるんだけど…」

 

不破兄(太陽)「まぁ仕方ないか…。じゃあ電車で行くことになるな。あ…そうだ!優月、お前の友達を呼んだらどうだ?爺ちゃんも婆ちゃんも大勢いた方が嬉しいだろ!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

と、いうことがあって……。

おじいちゃんとおばあちゃんが住んでる群馬県に、私とお兄ちゃんとE組の友達と行くことになった。

 

大分行ってなかったし、気分転換になるかもしれないから、前々から行こうって行ってたんだけど、お仕事じゃ仕方ない。

 

……けど…

 

うーん…。誰を呼ぼうかなぁ…。

 

女子は…中村さんとか茅野さんとか?

あと速水さん、倉橋さん辺りも……。

 

男子は…

 

 

友君……。

 

 

 

いやいやいや……!

友君だけじゃないでしょ…!

新君とか、渚君とか、三村君…菅谷君…千葉君……。

 

……岡島君はいっか。

 

 

 

 

 

ということで、誘ってみた…。(ちゃんと岡島君も)

 

さて、誰から返事来るかな……。

 

しばらくすると、茅野さんと中村さんから返事が来た。

2人ともOKみたい。

岡島君と三村君は残念だけど用事があるみたい…。

じゃあ岡島君誘わなきゃよかったな。

え?酷いって?

まぁ…岡島君だしね。作者的にもいじりやすいんだよ?

松井先生(産みの親)もいじりやすいって言ってたし。

 

あ、千葉君と速水さんからも返事きた。

2人とも用事かぁ…。

 

 

この後菅谷君、渚君からOKの返事が来た。

これで私入れて5人かな?

 

そして…

 

U[お、いいよー!虫除けスプレー沢山つけてくな!(笑)]

 

友君から返事来たぁぁぁ……!!////

しかもOK……!!

 

この後、新君と、倉橋さんもOKの返事が来て、

 

行く人は私とお兄ちゃん、友君、新君、渚君、茅野さん、中村さん、倉橋さん、菅谷君の9人!

 

行く日は…明日!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

不破兄「俺ら覗いて7人か…結構呼んだな。もう何人かは駅前に来てるかな?」

 

不破「どうだろ…。9時集合だけど、今8時半だし…」

 

なんで私たち30分前に来たんだろ……。

 

誰も来てないよ流石に……ん?

 

あれ?集合場所に2人いる……………あっ…!あれ……

 

友君と新君……!?!?

 

 

友「……あっ。不破ー!」

 

新「ん…俺ら早く来すぎたと思ったけど、他にも来たか」

 

不破兄「えっと…友君と新君だね。友君は前に会ったことあるけど……優月といつも仲良くしてくれてありがとうな〜」

 

不破「お兄ちゃん………」

 

不破兄「……友君、期待してるよ」

 

友「…はい?」

 

不破「お兄ちゃぁぁん!!///」

 

なんでこの人はいつも余計な事言うの!?

 

中村「私も期待してるよ不破ちゃん」ニヤニヤ

 

不破「中村さんはいつの隙に私の背後を取ったの!?」

 

本当に気が付かなかった…!

中村さんを呼んだの間違いだった気がする…!

 

 

その後、9時近くになって倉橋さん、渚君、菅谷君、茅野さんの順で駅前に到着して、全員集まった。

 

菅谷「そういや友。お前虫苦手だろ?群馬って結構虫いるんじゃ…」

 

友「大丈夫!虫除けスプレー沢山つけてきたから!」

 

倉橋「色んな生き物いるかな〜」

 

中村「楽しみ〜!」

 

殺「いやぁ。ウキウキしてきますねぇ」

 

………………ん?

 

友・菅谷「なんでお前がいるんだよ!!」

 

不破兄「えっと……この人は?」

 

殺「どうも。E組の副担任です。皆から殺せんせーというあだ名で呼ばれているのでどうぞよろしく」

 

副担任……あ、そっか。表向きの担任は烏間先生だから…。

でも殺せんせーってあだ名はどうなの…?

 

 

殺「不破さん…先生も連れて行ってくれませんかねぇ?」コソコソ

 

不破「い…いいけど……」コソコソ

 

 

友「…どうするあれ…」コソコソ

 

渚「暗殺のことは秘密だから…」コソコソ

 

菅谷「下手に手出せねーぞ…」コソコソ

 

 

こうして…殺せんせーを入れた10人は群馬行きの電車へ……。

 

いくつか駅を乗り継いだりして……

 

おじいちゃん、おばあちゃんの家の最寄り駅まで着いた!

まぁ…ここから30分くらい歩くけど…。

 

 

倉橋「すっご〜い!大自然!」

 

友「思ってたより虫もいないな」

 

菅谷「それお前が虫除けスプレー大量につけたから寄ってこないだけじゃ…」

 

渚「茅野と新君…何食べてるの?」

 

茅野「さっき買っといたプリン!」

 

新「暑い日にはやっぱりプリンだよ〜」

 

渚「いつの間に……」

 

不破「うう…ここから歩くのが大変なんだよね…」

 

中村「随分遠いね…ま、うちらは連れてきてもらってんだから文句は言えないけどさ〜……。で、先生どこ行ったの」

 

不破「駅の近くの売店寄って色々買ってたから置いてきた…」

 

不破兄「扱いそれでいいのか…?」

 

不破「先生ならすぐに追いつくよ…」

 

ここじゃ言えないけどマッハ20だもん。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

不破「つ……着いた〜!!」

 

 

中村「ようやくね…」

 

友「結構疲れた……」

 

 

不破祖母「まぁまぁ…いらっしゃい皆」

 

不破「おばあちゃん!」

 

不破兄「久しぶり〜。おじいちゃんは?」

 

不破祖母「あの人は田んぼの方行ったよ。それにしてもこんなに友達連れてきて……。それで、どれが優月の彼氏?」

 

不破「か……かれっ……!?///」

 

おばあちゃんまでこういう事言う!!

なんで私の家族はこうなのー?!

 

中村「この真弓友ってやつです!」

 

友「…えっ!?ちが…!//」

 

そしてそこに乗っかる中村さん!!

やっぱ誘ったの間違いだったかも!

 

不破「ちょ、ちょっと!私まだ彼氏いないって!」

 

不破祖母「あら、まだってことは…」

 

中村「これからできる予定が…?」

 

最悪なコンビが誕生した!

でもカルマ君呼ばなくて良かったかもしれない!!

 

 

 

 

新「倉橋!めっちゃ大きいカブトいたぞ!ほら!」

 

倉橋「すご〜い!今までみたカブトで1番大きいかも!」

 

 

茅野「う〜ん!暑い日に食べるプリンさいこ〜!」

 

渚「さっきも食べてなかったっけ…」

 

 

中村「何してんの〜?」

 

菅谷「スケッチブック持ってきたからさ。この辺の向日葵とか描いてんだよ」

 

中村「ほ〜……。でも流石菅谷…凄い上手い」

 

 

 

私と友君は、おばあちゃん達の家から少し離れた場所へ行く。よく子供の頃はこの辺走り回ってたなぁ…。

 

不破「久しぶりだな〜この景色!」

 

友「椚ヶ丘じゃこんなの見れないな…。ずっと都会ばっか見てきた俺にとっては新鮮だよ」

 

友君も楽しんでくれてるみたいで良かった…。

 

相変わらず虫は苦手みたいだけど。

 

不良「よォ姉ちゃん」

 

その時、地元の不良と思われる数名が私に話しかけてきた。

 

不良「姉ちゃん東京から来たの?」

 

不良「俺らとこれから遊ばねぇ?」

 

不破「………」

 

せっかくのいい景色が台無しだなぁ…。

なんて思ってたら、友君が気付いてこっちに来てくれた。

 

友「お兄さんら何してんの?彼女、俺の連れなんだけど」

 

不良「んだ…?彼氏持ちか?」

 

不良「ケッ、だったら無理やり奪うまでよ!」

 

不良の1人は友君に殴りかかった。

が、友君は軽々と避けて相手のお腹に蹴りを入れた。

 

不良「ぐぁっ……」

 

不良「て…てめぇ…!」

 

別の不良が殴りかかるが、友君はそれも軽々と避け、不良の背中を蹴った。

 

 

友「……まだやる気?」

 

不良「……チッ引くぞ」

 

不良「へ、へい!」

 

不良達は倒れた仲間を担いで逃げていった……。

 

不破「す…凄い…」

 

友「大丈夫だった?」

 

不破「う、うん。でも…友君あんまり喧嘩強くないんじゃなかったっけ…?」

 

友「……沖縄旅行の後さ。俺…もっと強くならないと駄目だって思ったんだ。そうじゃないと皆を守れないって。だから、ずっと道場で剣術だけじゃなくて素手の武術も教えてもらったんだ」

 

不破「そうなんだ…」

 

友君…かっこよかった……///

 

 

???「…ククク。中々やるようじゃの…少年」

 

友「……えっ?」

 

………え?この声って……!

 

 

 



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第52話 群馬の時間-2時間目


また忘れてましたねごめんなさい!
あとまたテストが近いんでちょっとの間更新ストップしまーす。
勉強……しなきゃ……あぁ…。



《友 side》

 

???「ククク…中々やるようじゃの…少年」

 

友「……え?」

 

誰だこの人……いきなり現れて…。

…え?もしかしてさっきの不良と比べ物にならないくらいの不審者?

 

 

不破「……お、おじいちゃん…!?」

 

……え?

 

友「ええええ!?」

 

 

不破祖父「久しぶりじゃな優月。大きくなったな」

 

友「え、えっと…どうも」

 

不破祖父「先程の戦い…見せてもらったぞ。君…名は?」

 

友「真弓…友です」

 

不破祖父「優月と親しいようだね」

 

友「ええ。……でも、ただの友達ですよ…?」

 

不破祖父「……こちらに来なさい。あそこに小屋がある。2人で話そう。優月、少し待っててくれ」

 

不破「え……う、うん…」

 

俺は不破のおじいちゃんに小屋の中へと連れて行かれた……。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

……何が始まるんだ?

 

不破祖父「……君は、優月に気があるようだ」

 

友「ふぁっ…!?」

 

な、何をいきなり…!?

 

不破祖父「なに。怒っている訳では無い。むしろ嬉しいのだ。優月は昔から漫画ばかり読んで…色恋沙汰等聞かなかったからの…。そんな優月を好きになってくれる人がいるだけでわしは嬉しいぞ」

 

友「……うう…」

 

不破祖父「……優月のどこを好きになったのかな?」

 

友「………どこでしょうね…。初めに意識した時は、思春期の男子なんだからこれくらい思っても当然だ…くらいにしか思ってなかったんです。でも、その後から…不破の笑顔、照れてる顔、真剣な顔、楽しそうな顔………色んな不破を見ていく内に…いつの間にか好きになってました……」

 

不破祖父「………そうか。わしの息子がなんと言うかは分からぬが…わしは、2人の今後を応援しているよ」

 

 

………え?

 

それって……。

まさか……。

 

交際の許可出たってこと!?!?!?

 

えっ!?嘘……。

 

不破祖父「まぁ頑張りたまえ。優月はああ見えて不器用な所があるからな」

 

友「は…はい!」

 

 

だがその時、叫び声がした。

 

「きゃあっ!!!」

 

 

……!今の声……。不破…!?

 

俺は急いで小屋を飛び出した。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《不破 side》

少し前──

 

 

おじいちゃん……友君と何を話してるんだろ……。

 

それにしても、さっきの友君かっこよかったな……。

 

 

不良「なぁ姉ちゃん……」

 

不破「えっ…!?」

 

さっきの不良……!

 

友君に手傷を負わされてない2人が話しかけてきた。

 

 

不破「……何よ…」

 

不良「…姉ちゃん…よく見りゃ可愛いじゃねぇか」

 

不良「この辺はだーれもいないだろ?どーよここで…」

 

不破「な、何するのよ…!」

 

不良「へへ…決まってんだろ?」

 

不良の1人は私を地面へ押し倒した。

 

不破「きゃあっ!!う…嘘…!?や、やだ……」

 

思わず大きな声を上げてしまった。

 

不破「た、助けて……」

 

友君ッ………!

 

私は心の中で無意識に友君を呼んだ。

 

 

不良「言ったろ…?こんなとこ誰も……」

 

 

 

 

 

 

友「おい」

 

………!その声……

 

不良2人「…!?」

 

友「……テメーら…何してんだよ。

 

 

 

俺の不破に……何してんだ」

 

 

……友君!!

 

不良「くそが!」

 

不良は友君に殴りかかるが、先程の奴らと同じように捌かれ、友君に背負い投げされてしまう。

 

もう1人も友君の方へ走っていくが、友君は軽々と避けて相手に足を引っ掛け転ばせた。

 

 

友「……失せろ。二度とその面見せんな!」

 

不良2人「……ひっ…ひぃぃ!」

 

不良はすぐに逃げていった。

 

……助かった…。

 

私は安心しきって…思わず涙を流してしまう。

 

友「……怖かったな。でも大丈夫だよ。俺がいるから」

 

友君はそう言って、私を優しく抱きしめてくれた。

 

それが、とにかく嬉しくて……

暖かくて……

 

不破「う…うん……怖かった……あぁ…」

 

友「……泣いてもいいけど、ちゃんと涙拭きなよ?ほら、タオルあげる」

 

不破「う…うん」

 

友「………で、そこで一部始終を見ていたであろう野次馬共はいつまで隠れてんの?」

 

……え?

 

 

中村「……ありゃ」

 

菅谷「バレてたか…」

 

殺「ヌルフフフ…。どうやらもう解決したみたいですね」

 

み……皆…!?

 

不破「い、いつからそこに!?」

 

倉橋「友ちゃんが不良を追い返した辺りで駆けつけたよ〜」

 

新「着いた頃にはもう不良は逃げちゃってたね」

 

 

不破「…………ああ…終わった……//////」

 

友「はは…でも、不破が無事でよかったよ」

 

不破「……うん。ありがと…友君…。あ、ところで…おじいちゃんと何話してたの?」

 

友「………!ま、まぁちょっとな…///」

 

少し頬赤らめてる…。

…おじいちゃん…何言ったのよ!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

不破祖父「短い間だったが楽しかったよ」

 

不破祖母「また来なさいよ。いつでも待ってるからね」

 

 

不破兄「うん、また来るよ!」

 

不破「2人とも元気で!」

 

友「本当にありがとうございました!」

 

新「凄く楽しかったです!」

 

不破祖父「……友君。これからもよろしくな」

 

……おじいちゃん?やっぱ友君に何か言った?

 

友「………はい!」

 

友君まで!?

 

 

私たちは再び電車に乗って椚ヶ丘へと戻った。

 

また何度か乗り換えをして……。

最後に、椚ヶ丘へ向かう電車に乗ったあと、ほとんどの人は寝てしまった。

 

勿論私も…。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

……皆寝ちゃったのか。

 

不破も、不破のお兄さんも。

 

渚達も寝てるし……。

 

 

その時、電車がグラッと揺れた。

 

そして、俺の肩に何かがポンと乗っかる。

 

友「……!」

 

不破の頭だ。つまり、不破が俺の肩に寄りかかりながら寝ている……。

 

途端に恥ずかしくなってきた。

こーゆーのは…恋人がやることじゃ…!

 

…ふと、俺は不破の寝顔を見た。

 

本当に可愛いな……。

 

 

 

俺は、この暗殺教室に来てから変わったと思う。

 

もし俺がE組に落ちなかったら。

 

もし殺せんせーが来なかったら。

 

もし不破と会えてなかったら。

 

何か1つでも欠けていたら今の俺は無いと思う。

 

 

俺は…不破に感謝している。

 

…強くなりたい。

そう思わせてくれたのは不破のお陰だから。

 

 

俺は───

 

不破優月という女性()が好きだ。

 

好きな事にはまっすぐで、

 

どんな事にも諦めない。

 

一緒に笑ってるととても楽しいし、

 

泣いてる所を見ると、守りたいと思わせてくれる。

 

不破「うーん……友…君?」

 

友「……起きた?」

 

どうやら目を覚ましたようだ。

 

不破は自分の今の状況を把握したのか赤面している。

 

こういう所も好きだ。

 

クラスの他の奴らみたいにゲスいとこもあれば、

 

すぐに赤面するウブなとこもある。

 

友「……不破」

 

不破「……え?」

 

友「…今度の椚ヶ丘の夏祭り…。一緒に行かないか?」

 

勇気を出して誘ってみた。

 

不破「……うん!いいよ!じゃあ…私浴衣着てこよっかな〜」

 

浴衣……!?

 

……み、見たい……!

 

友「いいと思うよ〜。俺は…ふつーの私服でいいかな」

 

不破「……あっ。椚ヶ丘まであと2駅だ」

 

友「そうだな。皆を起こさないと」

 

 

俺達2人は皆を起こした。

 

ていうか何気に殺せんせーが寝てるとこ初めてみるかもしれない。

殺せんせーも寝るんだ…。

てかよく見たら枕で寝てるし。そういや修学旅行の時にお気に入りの枕じゃないと寝られないみたいなこと言ってたな。

 

暗殺のチャンスだったけど…流石に電車の中でナイフを振ったり、銃を撃ったりするのは……。

後で烏間先生の雷が落ちるだけだ。

 

 

椚ヶ丘に着いてから俺達は解散した。

 

不破は……お兄さんがいるから、今日は一緒じゃなくても大丈夫だろう。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

新「楽しかったね〜」

 

友「……ああ」

 

新「…?どうしたの?」

 

友「な、なぁ……!夏祭りって……何着てけばいいかな!?」

 

新「……は?」

 

 



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第53話 夏祭りの時間


大分更新が遅れてしまいました。
色々と忙しかったもので…申し訳ないです。
後書きで今後の更新頻度について話します。


 

《友 side》

 

新「───はい。これでOK!カッコつけて洒落た服で行くよりも…いつもの服の方が緊張しないだろ?」

 

友「……それもそうだな。ありがとうな新」

 

新「いいけど…夏祭り夜の7時からだろ?今朝だぞ?まだ着替えてなくてもいいだろ」

 

友「それもそうだな…!」

 

 

『ある決心』をしてから数時間。

 

夏祭りの時間は刻一刻と近付いてくる…!

 

その時、俺の部屋の窓を誰かがコンコンと叩いた。

 

 

殺「友君……夏祭り行きませんか?!」

 

殺せんせーだ。手には『夏祭りのお知らせ!今晩7時空いてたら椚ヶ丘駅に集合!』と書かれてある。

 

友「ああ。俺も新も行くつもりだよ。俺は不破と行く予定だったけどね」

 

殺「おお!良かったです。用事で断る人が意外に多くて……!では不破さんにも伝えておいてください!先生、この後は磯貝君の家へ行ってきます!」ビュン

 

……行っちゃった。

 

仕方ない。不破に連絡しておこう。

 

U[さっきうちに殺せんせーが来た。E組皆で夏祭り行きたくて誘ってるらしい]

 

U[来る人は7時に椚ヶ丘駅前に集合らしいから、俺達も集合そこでいい?]

 

しばらくすると、

 

Yuzuki[いいよ!殺せんせー寂しかったのかな?]

 

と返ってきた。

 

 

まぁ、夏休みだもん。いつもより俺らに会えなくて寂しがってたのかもな。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

7時になり、椚ヶ丘の夏祭りが始まった。

 

E組で集まったのは俺と不破と新の他に、

渚、カルマ、茅野、磯貝、前原、片岡、神崎、千葉ちゃん、速水、倉橋、矢田、岡島、中村、竹林、ビッチ先生だ。

 

殺「いやぁ…思いのほか集まってくれて良かった良かった。誰も来なかったら先生、自殺しようかと思いました……」

 

茅野「じゃあ来ない方が正解だったか…」

 

笑顔でかなり酷いこと言うね茅野。

 

…ん?あの二人……

 

千葉・速水「はぁ…」

 

友「千葉ちゃんと速水、どしたの?そんなへこんで…」

 

千葉「……射的で出禁食らった」

 

速水「イージーすぎて調子乗った……どうしようこれ」

 

友「うーん…流石射撃コンビ……」

 

 

カルマ「俺今5000円使って全部5等以下じゃん。糸と賞品の残りの数から、4等以上が1回も出ない確率を計算すると……なんと0.05%。ほんとに当たりの糸あるのかな〜?お巡りさん呼んで確かめてもらおっか?」

 

店員「わ、わかったよ!金返すから黙ってろ坊主」

 

カルマ「いやいや。返金のために5000円も投資したんじゃないのよ。ゲーム機欲しいな〜」

 

不破「カルマ君はねちっこいな〜……」

 

友「最初から大当たりは入ってないって見抜いてたな」

 

 

お、あそこで金魚すくいしてるのは悠馬と陽斗か。

 

前原「相変わらず何でもそつなくこなすな磯貝。金魚すくいでこんなすくうやつ見たことないぜ」

 

磯貝「コツだよ。ナイフで斬る感覚と結構近いぞ」

 

 

不破「磯貝君凄いね……。でもあんだけ金魚取ってどうするんだろ?」

 

友「ああ。あいつの家の『きんぎょ汁』凄い美味いぞ。また食べたいなー」

 

不破「へー……。

 

 

……え?食べるの?」

 

 

 

 

 

 

……そろそろかな。

 

友「不破。そろそろ花火始まるからさ、あっちの奥の方行かないか?あっちだったら、結構静かだよ」

 

不破「うん、行く行く!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夏祭りをやってる神社の上の奥の方。

 

人が来ないから、花火を静かに見るスポットとしてはピッタリだ。

 

不破「楽しみだね〜花火!」

 

友「……うん。…あ、さっき言いそびれたんだけどさ、その浴衣似合ってるよ」

 

不破「本当?嬉しい!」ニコッ

 

……!

…そうだ。その笑顔に…俺は何度も救われた。

 

その笑顔を守りたいって思うほど、強くなりたいって気持ちが高まっていった。

 

友「不破……。話があるんだ。……いいかな?」

 

 

不破「………!…………うん。いいよ」

 

 

 

友「……お、俺さ…。剣術道場に通い始めた頃…強くなる理由って…自分のためだと思ってた。自分を守るための強さが1番大切なんだって。

でも、このクラスで学んだ。強さってのは、自分だけじゃない。他の人を守るためにもあるんだって。

 

初めて鷹岡が来て、不破が襲われそうだった時。

あの時、初めて守りたいって思った。

ショッピングモールでナンパされてた時も、シロの作戦のせいで水に流されて危険だった時も、群馬で不良に襲われてた時も……。

守りたいって思えたから強くなれたし、強くなれたから守ることが出来た。

全部、不破のおかげだと思ってる。

 

不破が気絶した俺を運んでくれた時…『歳』の攻撃から俺を庇おうとした時……凄く嬉しかった。

 

いつも、不破と漫画の話で盛り上がってる時…楽しかった。

 

不破が泣いてる時、守りたいって強く思った。

 

不破が照れて顔を赤らめてる時…何故か俺も顔が赤くなった。

 

いや…何故か…じゃないな。理由は…もうわかってる」

 

 

不破は俺の話を真剣に聞いてくれている。

 

俺は、一拍置いて、気持ちを伝えた。

 

 

友「……俺は、不破のことが好きだ。この地球上の…誰よりも…」

 

不破「……!///」

 

友「……正直な所を言うと…告白するべきか迷ってた。この関係が…崩れてしまうんじゃないかって怖かった。でも、伝えたかったんだ。この暗殺教室(クラス)が終わる前に……」

 

不破「…………友君」

 

不破は口を開き、俺の名前を優しく呼んだ。

 

 

不破「私もね。友君が鷹岡から守ってくれた時とか、チャラ男や不良から救ってくれた時とか、水がトラウマなのにわざわざ飛び込んで助けてくれた時とかね……。凄くカッコイイって思った。

まるで、主人公みたいだって。

敵と戦ってる姿もジャンプの主人公みたいだった。

 

当然だよね。だって、友君は『この小説』の主人公なんだから」

 

友「……!」

 

『この小説』って……

 

不破「『原作』じゃ、私たちが出会う事はなかった。でも、『この小説』ではこうして会うことができた。これって、『奇跡』だと思うんだ。『原作』が生まれなかったら、『作者』が『原作』を読んでなかったら、『作者』が『この小説』を書かなかったら、一生会うことは出来なかった。

友君は『この小説』の『主人公』。

 

だから、私はその『ヒロイン』でいたい。

 

私も、友君の事……ずっと前から好き。

友君の事思う度に顔が赤くなった。

友君の笑顔とか、たまに見せる照れ顔とかも好き。

辛そうな顔をしてた時は、何とかしてあげたいって思った。

私じゃ力不足かもしれないけど…それでも、私を『ヒロイン』に選んでくれますか?

 

(主人公)君…」

 

俺は、不破の言葉を…一言一言、噛み締めながら聞いた。

 

俺の答えは………当然決まってる。

 

友「勿論。これからよろしくね…不破(ヒロイン)さん」

 

不破「……かなり変わった告白になっちゃったけどさ。私達…付き合ったってことでいいのかな?」

 

友「……多分。それでいいと思う」

 

不破「……嬉しいな。初めての恋人が友君で」

 

友「俺もだよ。……なあ。これからさ…下の名前で、『優月』って…呼んでもいいかな?」

 

不破「…えっ…!…う、うん!いいよ…!」

 

友「……じゃあ改めて。よろしくな優月」

 

不破「……うん!」

 

俺達は肩を寄り添いあって夜空を眺めた。

そろそろ……花火の時間かな。

 

不破「ここから下の出店も見えるんだね」

 

友「ああ。………なんか似てる店員多いな」

 

不破「うん。殺せんせーだね…」

 

どうやら…月末は大体金欠だから支店を増やして資金を稼いでいるらしい。

 

E組が稼いで早じまいした店のスペースに入り込んで色んな出店をやっている。

 

どんだけ金欲しいんだあのタコ……。

 

つーか国家機密なのに大丈夫なのか。

他の客怪訝そうな目で見てるけど。

すっごい怪しんでるよ。

『なんだコイツ』って感じだよ。

 

 

不破「あっ…!」

 

ドォォンと大きく花火が上がった。

 

とても綺麗だ。

 

不破「……濃かったね。夏休み」

 

友「……ああ。沖縄行って…群馬行って…告白して……

 

でも、二学期はもっと濃くなるんだろうな」

 

 

そう…この教室で確かな事は……

 

俺達も殺せんせーも、決して何事もなく終わらない事。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

殺「いやぁ稼ぎました。原材料費を差し引いても9月分のおやつは困りませんねぇ。君も楽しめましたか?明日からはまた勉強です。今日くらいは羽を伸ばして──」

 

???「………………」

 

殺「…え?……E組を……脱ける…?」

 

二学期は案の定、大波乱から幕を開ける。

 





今後ですが、更新頻度を大幅に下げようかなと。
要するに、今までは定期的に更新しようとしていましたが、段々忙しくなって時間を過ぎたりと言ったことがあったので、今後は不定期更新に移行しようと思います。

簡単に言えば、更新するかどうかは作者の気まぐれです()

因みに……
友の告白の『この地球上の誰よりも』は『劇場版名探偵コナン瞳の中の暗殺者』でのコナンと小五郎の台詞ですね。
コナンは蘭に、小五郎は英理に言った言葉です。
友と不破、2人で共通するジャンル、『漫画』の台詞で告白をしたって感じです。
リア充め!()


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第2章 二学期
第54話 竹林の時間



ついに二学期編スタート!!!




 

《友 side》

 

友「おはよ!優月!」

 

不破「おはよう友君!」

 

今日は二学期の始業式。

 

E組は家から直接本校舎に向かってから旧校舎へ行く。

 

そして、一学期と変わらず優月と登校することになった!

 

 

優月「二学期も暗殺頑張ろうね〜」

 

友「そうだな…。まずはどんな暗殺試すかね〜」

 

なんてことを歩いてると、後ろから悪魔の囁きが…。

 

カルマ「あれれぇ?二学期早々2人で登校とは…」

 

中村「ラブラブですねぇ漫画好きカップルさん?」

 

新(この2人イジりだすの早いな……流石)

 

 

不破「な、中村さん…!カルマ君も…!」

 

中村「聞いたよ不破ちゃん。告られてOKしたんだって〜?友も中々やるね〜」

 

友「……カルマァ!」

 

カルマ「ん〜?」ニヤニヤ

 

こいつ、絶対に許さねぇ……!!

 

不破「ちょ、ちょっと友君!何で2人知ってるの?!」

 

友「俺は…俺は信頼出来る人にだけ言うつもりだったんだよ!?新と悠馬と航輝と渚にだけ!でも渚の近くにカルマが居たみたいで…電話越しに聞かれたみたいなんだよ!」

 

新「あれは運が悪かったと思う。たまたまだったから」

 

不破「……えっと…カルマ君。この事…中村さんの他に誰に言ったの……?」

 

カルマ「ん?クラス全員。先生達にも言ったよ」

 

友「カルマァ!先生の前にお前から殺す!!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本校舎──

 

前原「よう友。やるじゃん!不破に告るなんてさ〜!」

 

友「お前も地獄へ落としてやろうか…」

 

前原「いや怖ぇよ!」

 

三村「全員に暴露されたもんな。殺せんせーも知ってるんだろ?」

 

友「もうやだ…旧校舎行きたくない」

 

不破「私も行きたくない…」

 

俺と不破が落胆してると、モブ…じゃなかった。五英傑が話しかけてきた。

 

荒木「久しぶりだなぁ。E組共」

 

瀬尾「ま、お前らは二学期も大変だと思うがよ」

 

小山「めげずにやってくれ!ギシシシシ」

 

 

不破「……出五かぁ」

【※出ばなから五英傑の略】

 

友「ただでさえ落胆してんのに…縁起悪…」

 

矢田「しかも何…?妙にニヤニヤしてたけど…」

 

村松「一学期の終業式じゃ悔しそーな顔してた癖によ」

 

 

 

総七「よう友。2学期もがんばろーな」

 

友「あ、ああ。総七…」

 

こいつにまで知られる訳にはいかない…!

 

前原「聞いてくれよ!こいつ彼女出来たんだぜ!」

 

友「陽斗ォ!!」

総七「マジか…!え?相手は不破?」

 

前原「そうそう!」

 

総七「お〜…。…剣術道場の皆に伝えとくな!」

 

友・不破「もうやめて!!!」

 

2学期早々こんなに弄られるとは…!!

 

 

 

 

荒木『──さて。式の終わりに皆さんにお知らせがあります。今日から…3年A組に2人…仲間が加わります。まずは1人目…。ここ、椚ヶ丘中学校の転入試験を見事合格し、A組に来ることになった…。『古見錦』さんです!』

 

転入生……?

E組だったら暗殺者かもしれないが…A組じゃ特に関係なさそうか。

 

古見『……どうも。今日から3年A組に入ることになりました。古見です。これから、椚ヶ丘中学校の一員として一所懸命やっていきますので、よろしくお願いします。以上です……………』

 

浅野「これからよろしくね…古見さん」

 

古見「ええ……。…………フフ」ニヤッ…

 

………え?

 

なんか今あいつ……俺に向けて殺気を…?

 

 

 

荒木『それでは、もう1人もご紹介しましょう!もう1人の彼は……昨日までE組にいました』

 

E組「!!?」

 

な、何だと……!?

 

荒木『しかし、たゆまぬ努力の末に好成績を取り、本校舎に戻ることを許可されました。では彼に喜びの言葉を聞いてみましょう!

 

 

竹林孝太郎君です!!』

 

 

……!?

 

嘘だろ……!?何で…竹林が…!?

 

 

竹林『─僕は、4ヶ月余りをE組で過ごしました。その環境を一言で言うなら……地獄でした。やる気のない生徒達。先生方にもサジを投げられ、怠けた自分の代償を思い知りました。もう一度本校舎に戻りたい……その一心で、死ぬ気で勉強しました。生活態度も改めました。こうして戻ってこられた事を心底嬉しく思うとともに、二度とE組に堕ちることのないよう頑張ります。以上です』

 

浅野「……おかえり。竹林君」

 

浅野は大きく拍手をした。

本校舎の生徒たちも、浅野につられ拍手をし、体育館内は大喝采…。

 

でも……

俺達E組にだけは、不穏な空気が漂っていた。

 

竹林が……昨日までとは別人に見えた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

前原「なんなんだよあいつ…!百億のチャンス捨ててまで脱けるとか信じらんねー!」

 

木村「しかもここの事地獄とか言いやがった…!」

 

岡野「言わされたにしたって、あれは無いよね」

 

片岡「竹林君の成績が急上昇したのは確かだけど、それはE組(ここ)で殺せんせーに教えられてこそだと思う。それさえ忘れちゃったのなら……私は彼を軽蔑するな」

 

前原「とにかく!ああまで言われちゃ黙ってらんねー!放課後一言言いに行くぞ!」

 

 

不破「竹林君……何があったんだろう…」

 

友「……………」

 

不破「……?友君?」

 

友「…え?あ、ああ。あいつにはあいつなりの事情があるとは思うけどな…」

 

……あの時の殺気は何だったんだ…?

 

明らかにあの『古見』ってやつは、俺の事を見てたし、殺気を放ってた……。でも何故…?

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本校舎前───

 

竹林「…………」

 

来たな…。竹林。

 

前原「……おい竹林」

 

磯貝「…説明してもらおうか。なんで一言の相談も無いんだ?」

 

奥田「なにか事情があるんですよね?!夏休み旅行でも竹林君いてくれて凄く助かったし、普段も一緒に楽しく過ごしていたじゃないですか!」

 

奥田の言う通りだ。

 

夏休み旅行では率先して皆の看病をしてくれて、

 

放課後にメイドの描き方教室を開いて、

 

律にメイドの服を着させて、

 

クラスの男子をメイド喫茶に勧誘して、

 

 

………ほとんどメイドじゃねーか。

 

 

カルマ「賞金百億。殺りようによっちゃもっと上乗せされるらしいよ?分け前いらないんだ竹林。無欲だね〜」

 

竹林「………せいぜい10億円」

 

……10億?

 

竹林「僕単独で百億ゲットは絶対無理だ。上手いこと集団で殺す手伝いが出来たとして、僕の力で担える役割じゃ、分け前は10億がいい所だね。

 

…僕の家はね。代々病院を経営してる。兄2人も揃って東大医学部。10億って金は、うちの家族には働いて稼げる額なんだ。『出来て当たり前』の家なんだ。出来ない僕は家族して扱われない。

 

僕が10億手にしたとして、家族が僕を認めるなんてありえないね。『よかったな。家一番の出来損ないがラッキーで人生救われて(笑)』……それで終わりさ」

 

一同「…………」

 

……竹林…。

 

竹林「昨日初めて親に成績の報告が出来たよ。トップクラスの成績を取って…E組から脱けれること。『頑張ったじゃないか。首の皮一枚繋がったな』……。その一言をもらうために、どれだけ血を吐く思いで勉強したか……!!

僕にとっては、地球の終わりよりも、100億よりも、家族に認められる方が大事なんだ。

裏切りも恩知らずも分かってる。君たちの暗殺が上手くいくことを祈ってるよ」

 

竹林は後ろを振り向き、この場から去っていく。

 

渚「ま、待ってよ竹ば……」

 

神崎「…やめてあげて渚君」

 

渚「…神崎さん」

 

竹林を追おうとする渚を神崎が引き止めた。

 

神崎「親の鎖って、凄く痛い場所に巻きついてきて離れないの。だから、無理に引っ張るのはやめてあげて」

 

 

友「……親の鎖…か。今回ばかりは…俺は口出し出来ないな…」

 

 

渚「…………」

 

渚(僕らのうちの何人かには、呪いがかけられてる。竹林君が、その呪いに殺されていくように感じた。呪いの解き方を…学校の授業は教えてくれない)

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日──

 

殺「おはようございます」

 

………殺せんせー…なんでそんな黒いんだ。

 

前原「どうしたんだよ殺せんせー……いきなり黒くなって」

 

殺「急遽アフリカに行って日焼けしました。ついでにマサイ族とドライブしてメアド交換も」

 

ローテクかハイテクかわからん旅行だ……。

 

殺「これで先生は完全に忍者!人混みで行動しても目立ちません!」

 

前原・友・新「恐ろしく目立つわ!!」

 

岡野「そもそもなんのために……?」

 

 

殺「もちろん。竹林君のアフターケアです」

 

アフターケア……?

 

殺「自分の意思で出ていった彼を引き止めることは出来ません。ですが、新しい環境に彼が馴染めているかどうか、先生にはしばし見守る義務がある…」

 

見守る義務……ね。

 

片岡「……私達も、様子見に行こっか」

 

前原「暗殺も含め、危なっかしいんだよ。あのオタクは」

 

杉野「なんだかんだ同じ相手を殺しにいってた仲間だしな!」

 

友「口出しは出来ないけど、見守るくらいならな」

 

倉橋「脱けんのはしょーがないけど、竹ちゃんが理事長の洗脳でヤな奴になったらやだな〜」

 

 

殺「……殺意が結ぶ絆…ですねぇ」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ということで、本校舎まで竹林の様子を見に来た。

 

烏間先生に教わったカモフラージュを実戦してはいるけど、本校舎とE組じゃ植物が全然違うから見る人が見りゃ余計怪しいんじゃ……。

 

特に横にいるツヤツヤの黒い物体!!

 

 

片岡「結構上手くいってるみたいじゃない」

 

前原「むしろ普段より愛想よくね?」

 

寺坂「ケッ。だからほっとけって言ったんだ。あんなメガネ」

 

磯貝「メガネの色艶も良さそうだな」

 

倉橋「うん!」

 

友「てかこれ大丈夫…?本当にバレない?」

 

不破「大丈夫だよ!殺せんせーがいるから!」

 

友「国家機密(そいつ)が一番心配なんだけど!」

 

 

新「……!おい見ろよ…浅野と話してる」

 

前原「教室出ていくぞ…!?」

 

殺「……理事長室に入ったようですねぇ…」

 

杉野「くそっ…カーテンで中が見えねぇ…」

 

友「これは打つ手なしか…」

 

 

殺「むむ…長居は禁物です。そろそろ皆さんは帰りましょう。あとは先生に任せてください!」

 

……大丈夫だろうか。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日──

 

この日は椚ヶ丘中学校の創立記念日で、全校集会を行うことになっている。

 

 

すると、壇上に竹林が上がった。

 

狭間「はぁ…?」

 

中村「また竹林がスピーチ…?」

 

なんだろう……。

 

竹林が…この前の集会の時とは、また違うオーラを放っている気がする。

 

前原「なんなんだ…あいつ」

 

友「……胸騒ぎがする」

 

前原「えっ…?」

 

友「竹林から…殺気を感じるんだ。なにか、大事なものをめちゃくちゃに壊してしまいそうな…」

 

前原「むちゃくちゃに……?」

 

 

竹林『僕の……やりたい事を聞いてください』

 

竹林が話し出した。

何する気なんだ……?

 

竹林『僕のいたE組は…弱い人達の集まりです。学力という強さが無かったために、本校舎の皆さんから差別待遇を受けています。

 

 

でも。僕はそんなE組が、メイド喫茶の次くらいに居心地良いです』

 

なっ……!?

 

竹林『僕は嘘をついていました。強くなりたくて…認められたくて…。でも、E組の中で役立たずの上裏切ったの僕のことを、クラスメイト達は気にかけ、様子を見に来てくれた。先生は、僕のような要領の悪い生徒でもわかるよう、手を替え品を替え工夫し、教えてくれた。

家族や皆さんが認めなかった僕のことをE組の皆は同じ目線で接してくれた。

世間が認める明確な強者を目指す皆さんを、正しいと思うし、尊敬します。でも、僕はもうしばらく弱者でいい。弱い事に耐え、弱い事を楽しみながら、強い者の首を狙う生活に戻ります』

 

竹林はスピーチの原稿と思われる紙の下から、表彰の盾を取り出した。

 

竹林『……理事長室からくすねてきました。私立学校のベスト経営者を表彰する盾みたいです。……理事長は本当に強い人です。全ての行動が合理的だ』

 

竹林は懐から木製のナイフを取り出し、盾に向かって振り下ろした。

盾は凄まじい音を立ててバラバラに砕け散った。

 

竹林『……浅野君の言うには、過去これと同じ事をした生徒がいたとか。前例から合理的に考えれば…

 

E組行きですね。僕も』

 

 

竹林はそう言って、スタスタと戻っていった。

 

浅野「待てよ…。救えないな君は……強者になる折角のチャンスを与えてやったのに」

 

竹林「…強者?怖がってるだけの人に見えたけどね。君も……皆も……」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

烏間「二学期からは、新しい要素を暗殺に組み込む。そのひとつが火薬だ」

 

前原「か、火薬!?」

 

結構危ないもの追加してくるな……!

 

烏間「空気では出せないそのパワーは暗殺の上で大きな魅力だが、寺坂君達がやったような危険な使用は絶対厳禁だ」

 

寺坂「う……」

 

 

烏間「…そのためには、火薬の安全な取り扱いを1名に完璧に覚えてもらう」

 

そう言うと烏間先生は、参考書くらいのページ数がある本3冊と、広辞苑並の分厚さの本1冊を取り出した。

 

烏間「俺の許可と、その1名の監督が火薬を使う時の条件だ。さぁ誰か覚えてくれる者は?」

 

不破「あの本分厚っ……!」コソコソ

友「やだよ…あんな国家資格の勉強まで…!」コソコソ

 

竹林「……勉強の役に立たない知識ですが、まぁこれもどこかで役に立つかもね」

 

……!

 

烏間「暗記できるか?……竹林君」

 

竹林「ええ。二期OPの替え歌にすればすぐですよ」

 

 





さぁ…二学期の開始と共になにやら不穏な新キャラが……

友たちとどう関わっていくのか………とは言ってもA組の出番がここから体育祭まで無いので…
この回で覚えといてくださいね←



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第55話 茅野の時間

《新 side》

 

今日は渚、茅野、カルマ、杉野と5人で学校帰りにご飯を食べています!

 

友達と飲食店入るとか中々無かったから幸せ〜……。

 

ふとテレビの方を見ると、『全国で鶏卵が供給過剰に』というニュースをやっていた。

 

杉野「えっ…?あの卵食べれるのに捨てちゃうのか?」

 

新「勿体ない……」

 

ニュースでは養鶏業者の方にインタビューもしていた。『国が生産調整に失敗しちゃって、国内の鶏が増えすぎてな。卵の値段も急落でさ。運送費の方が卵より高くて、出荷するだけマイナスなんだ』とのこと。

 

カルマ「ま、生鮮食品はたまにあるよね。こーいう事」

 

杉野「とはいうけどなぁ……」

 

渚「……ん?茅野?」

 

茅野(……来た!チャンスが…!!)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一週間後──

 

《友 side》

 

ある日のこと。茅野が暗殺計画を立てたと言って、E組皆を集めた。

茅野は今まで目立った暗殺はしてこなかったから、新鮮味があるな。

 

茅野「─というわけで!廃棄される卵を救済し、尚且つ暗殺もできるプランを考えました!」

 

三村「卵を暗殺に?」

 

寺坂「どーせ飯作ってBB弾混ぜるつもりだろ?そんなモン、とっくにやって見破られてるっつーの」

 

茅野「ふふふ……もう少し考えてるのだ。烏間先生にお願いして下準備もOK!どうぞ皆さん校庭へ!」

 

校庭には、これから作るであろう物の形をした巨大な容器等の器具が並べられていた。

 

友「……こ、これって…」

 

不破「あの形で卵って…まさか…!」

 

茅野「そう!今から皆で巨大プリンを作りたいと思います。名付けて、プリン爆殺計画!!

既に殺せんせーから証言も得ています!『いつか自分よりもでっかいプリンに飛び込んでみたい』……ええ!叶えましょう!そのロマン…!!ぶっちゃけ私も食べたい!!」

 

新「俺も飛び込みたい!!!」

 

茅野だけじゃなく新の目の色まで変わった…。

 

あいつ、かなりのスイーツ好きだからな。

特にプリン。

 

茅野「プリンの底に対先生弾と爆薬を密閉しておき、殺せんせーが底の方まで食べ進んだら、竹林君の発破でドカン!」

 

磯貝「やってみる価値あるかもな!」

 

岡島「殺せんせー、エロとスイーツには我を失うとこあるもんな」

 

竹林「後方支援に徹してた茅野が…前に出て計画してるのも意外性がある」

 

新「よっしゃあ!先生のいないこの三連休で勝負に出るか!!」

 

一同「おーう!」

 

そして、俺たちは巨大プリン造りに取り掛かった。

 

茅野「大量の卵はマヨネーズ工場の休止ラインを借りて、機械で割って混ぜてもらった。それに砂糖と牛乳、バニラオイルが基本の材料!」

 

倉橋「でもカエデちゃん。前にテレビで巨大プリン失敗してたよ?」

 

新「あー…大きすぎて自分の重みで潰れちゃったんだっけ?」

 

茅野「うん。その対策として、凝固剤にはゼラチンの他に寒天も混ぜてる。寒天の繊維が強度を増すの」

 

新「なるほどね…。あと、寒天はゼラチンより融点が高いから、熱に溶けにくく9月の野外でも崩れにくいと」

 

茅野「そーゆーこと!」

 

凄いな…。意外ときちんと計画されている…!

 

悠馬達1班がゼラチンが多く含まれたプリンの素を流し込む。

 

茅野「その調子!下の層はゼラチン、上の層は生クリームを多目にしてるの。自重をしっかり支えつつ上はふんわり!あと…はい。ときどきこれを投げ入れて」

 

箱の中には真四角のゼリーのような物が…。

 

片岡「何これ…?」

 

茅野「オブラートで包んだ味変わり!ずっと同じ味ばっかじゃ飽きちゃうでしょ?フルーツソースやムースクリームが溶けだして、あちこち味に変化がつく部分が生まれるの!

カップの中にはパイプを通して冷却水を流す。これだけの容積のプリンになると、外気だけじゃ冷えないからね!」

 

す…すげえ……!

 

友「どこまでプリンの特性を熟知してんだ茅野……」

 

不破「科学的に根拠がありつつ、味もしっかり研究してある……!」

 

 

カルマ「やるねー茅野ちゃん。卵のニュースから一週間の間にこれ全部手配したの?」

 

茅野「うん!……っていうか、前から作ってみたかったんだ。諸経費も防衛省が出してくれる。最高の機会だと思ってさ。そうと決めたら、一直線になっちゃうんだ。私」

 

新「わかるぞ茅野!巨大プリンはスイーツ好きのロマンだよな!!」

 

茅野「でしょでしょ!!」

 

茅野は普段の暗殺でも後ろでそっと手助けをしてくれる。

サポート向きのタイプだと思ってたけど……

 

好きなものをテーマにした暗殺となると、こんなに行動力があるとは思わなかったな。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

茅野「一晩冷やしたらパイプを抜き、その穴から空気を吹き込んで、型枠を浮かせて外し、緩めのゼラチン寒天でプリン肌を滑らかに整え、カラメルソースをかけ、表面をバーナーで炙れば……!!」

 

一同「出来たぁーーーっ!!!」

 

巨大プリンが…完成したぞーー!

 

杉野「やべー!超美味そー!」

中村「あの下に爆弾あるの忘れちゃうね〜!」

 

 

しばらく鑑賞して、殺せんせーを呼んできた。

 

殺「……!!こ、これ…全部先生が食べていいんですか!?」

 

中村「どうぞ〜。廃棄卵を救いたかっただけだから!」

 

倉橋「勿体ないから全部食べてね〜」

 

殺「もちろん!ああ!夢が叶った!いただきま〜す!!」

 

 

 

磯貝「茅野。教室で起爆を見守るぞ」コソコソ

 

茅野「……う、うん」

 

殺せんせーはプリンを一心不乱に食べ続けてる。

 

 

不破「凄い勢いだね…」

 

友「ああ。あれなら底まで辿り着くのも時間の問題だな」

 

プリン底にはリモコン爆弾と観察カメラがセットしてある。

 

リモート起爆のタイミングは、周りのプリンが無くなってゆき、暗闇の画面にうっすら光が映った瞬間…!

 

茅野「………プリン…爆破」

 

この時、茅野は思い出した。

プリン計画を立ててから、何度も実験を重ね、わざわざ研究所に電話をしたり、計画を何度も何度も練り直したり……。

 

茅野「ダメだーーーーーっ!!!!!」

 

一同「ええっ!?」

 

茅野「愛情こめて作ったプリンを爆破なんてダメだー!!!」

 

杉野「ちょ、落ち着け茅野!!」

 

友「寺坂!茅野を抑えろ!」

 

寺坂「プリンに感情移入してんじゃねー茅野!!」

 

茅野「嫌だ!ずーっとこのまま!校庭でモニュメントとして飾るんだ!」

 

友「腐るわ!!」

 

新「俺も─」

 

……待って。嫌な予感する。やめろよ?茅野だけじゃなくお前も……。

 

新「俺も殺せんせーみたいに飛び込みたいーー!!!飛び込ませろーー!!」

 

一同「お前もか!!」

 

友「新落ち着け!!あんなか爆弾入ってるんだぞ!」

 

新「知らないよそんなの!プリンの中に飛び込みたいんだ!」

 

友「んなもの今後のバラエティ番組でやってろ!!」

 

殺「ふぅちょっと休憩」

 

 

………え?

 

一同「……!!」

 

竹林「爆弾……。起爆装置も外されてる…!?」

 

殺「異物混入を嗅ぎとったのでねぇ。土を食べて地中に潜って外してきました。プラスチック爆弾の材料には強めの匂いを放つものもある。先生の鼻にかからない成分も研究してみてください竹林君」

 

竹林「………!はい…」

 

殺「そして、プリンは皆で食べるものですよ。綺麗な部分をより分けておきました!」

 

全員分分けてある……!

 

新「殺せんせー……!!」キラキラ

 

凄い目輝かせてんな……。

まぁ、新が収まってくれてよかった…。

 

殺「ただし。廃棄される予定の卵を食べてしまうのは、厳密には経済のルールに反します。食べ物の大切さと合わせて、次の公民で考えましょう」

 

一同「はーい」

 

 

 

渚「…惜しかったね茅野。むしろ安心した?」

 

茅野「あはは……」

 

渚「でも、茅野がここまで徹底してやるとは思わなかったな」

 

新「凄く楽しかったし、プリンも食べれて大満足だけど、意外だったね」

 

茅野「ふふ…本当の刃は親しい友達にも見せないものよ!また殺るよ。プリンマニアもE組(ここ)では立派な暗殺者!ぷるんぷるんの刃だったら、他にも色々持ってるから!」

 

不破「それにしても、新君があそこまで暴れるとはね……」

 

友「あいつも茅野や殺せんせーと同じ。スイーツに目が無いんだよ」

 

不破「そういえば、松井先生もプリンマニアらしいね」

 

友「ああ。この話はかなりガチで考えたみたいだな」

 

渚「不破さん…?友君…?」

 



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第56話 鬼ごっこの時間

《友 side》

 

今日は烏間先生の体育の授業で、新たな訓練が開始されるらしい。

そのためか普段のグラウンドではなく、E組の裏山の奥の方に来ていた。

 

烏間「二学期から教える応用暗殺訓練。火薬に続くもう1つの柱が『フリーランニング』だ」

 

中村「フリーランニング…?」

 

烏間「例えば、今からあの一本松まで行くとしよう」

 

烏間先生は数m先にある、岩場に1本だけ生えた松の木を指さした。

 

烏間「三村君。大まかでいい。どのように行って何秒かかる?」

 

三村「……えーっと、まずこの崖這い降りて10秒。そこの小川は狭いとこから飛び越えて、茂みの無い右の方から回り込んで、最後にあの岩よじ登って………1分で行けりゃ上出来ですかね…?」

 

航輝に同感だ。1分より短いタイムで行ける人は多分化け物。

 

烏間「…では、俺が行ってみよう。三村君、時間を計っておけ。これは一学期でやったアスレチックや崖登り(クライミング)の応用だ。フリーランニングで養われるのは、自分の身体能力を把握する力、受け身の技術、目の前の足場の距離や危険度を正確に計る力、これが出来れば、どんな場所でも暗殺が可能なフィールドになる」

 

烏間先生は背中から崖へと落ちていった。

そして下で受け身を取り着地。その後も凄い速さで進んでいく。

小川は横の大きな岩場を足で蹴って越え、近くの木を登り、岩場をまるでマリオの壁ジャンプのように登っていき、一本松の枝に掴まった。

 

烏間「タイムは?」

 

三村「…じ、10秒です……」

 

10秒!?……化け物ォ!?

 

烏間「道無き道で行動する体術。熟練して極めれば、ビルからビルへ忍者のように踏破することも可能になる」

 

友・不破(忍者のように………!?)キラキラ

 

岡野「…す、すごい…!」

 

村松「あんなん身につけたら超かっけくね?」

 

 

烏間「だがこれも火薬と同じ。初心者のうちに高等技術に手を出せば、死にかねない危険なものだ。危険な場所や裏山以外で試したり、俺の教えた以上の技術を使うことは厳禁とする。いいな!」

 

一同「はーい!」

 

烏間「ではまず、基本の受け身から─」

 

この時、俺たちは気が付かなかった。

殺せんせーがうずうずしていたことに……

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

翌日─

 

今日はジャンプの発売日!優月と2人で浮かれてコンビニに行った……のだが売り切れていた。

 

その後3件くらいコンビニによってようやく見つけたのだが……遅刻確定である。

 

それでも行かないと殺せんせーが過剰に心配するので登校したのだが……。

 

不破「ふぅ…どこもジャンプ売り切れてて探しちゃった…」ガラガラ

 

友「でも最後に見つかって良かったよな~」

 

カシャン

 

…!?

 

殺「遅刻ですねぇ。逮捕する」

 

なんか目の前にタコ警察がいる。

 

そして何故か俺の右腕と優月の左腕が1つの手錠に掛けられている。

 

友「……どうしたんだ殺せんせー。その悪徳警官みたいなカッコ」

 

殺「ヌルフフフ。最近皆さんフリーランニングをやってますね。折角だからそれを使った遊びをやってみませんか?」

 

フリーランニングを使った遊び…?

 

殺「それは『ケイドロ』!!裏山を全て使った3D鬼ごっこ!皆さんには泥棒役になってもらい、身につけた技術を使って裏山を逃げて潜んで下さい!

追いかける警官役は先生自身と烏間先生」

 

烏間「何…!?」

 

殺「1時間目以内に皆さん全員を逮捕(タッチ)出来なかった場合、先生が烏間先生のサイフで全員分のケーキを買ってきます」

 

烏間「おい!!」

 

殺「そのかわり、全員捕まったら宿題2倍!」

 

…は!?

 

新「ちょっと待てよ!殺せんせーから1時間も逃げれるかよ!!」

 

前原「マッハで捕まって終わりだろ!!」

 

 

殺「その点はご安心を!最初追うのは烏間先生のみ。先生は校庭の牢屋スペースで待機し、ラスト1分で動き出します」

 

矢田「なるほど、それならなんとかなるか……」

 

なんとかなるのか…?

 

磯貝「よしやってみるか皆!」

 

一同「おーう!」

 

皆やる気のようだ…。うん。それは良いんだけどさ…。

 

友「あの…いい加減手錠外してくんない!?1つの手錠を2人で付けてるからさ!意外と恥ずかしいんだよこれ!優月さっきから目合わせてくれないもん!」

 

不破「………///」

 

カルマ「面白いしそのまま逃げちゃえばー?」パシャパシャ

 

友「撮るなカルマァ!!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

なんとか手錠を外してもらい、ケイドロがスタートした。

 

現在俺は優月と千葉ちゃんと岡島と速水と行動中だ。

 

岡島「つってもさ!警官役たったの2人だろ?しかもほとんどの時間は烏間先生だけ!いくら烏間先生でもこの広い裏山だ!俺らを逮捕(タッチ)出来たとして2、3人が限度だろ!」

 

速水「うん。本番はラスト1分」

 

不破「殺せんせーが動くまでに、全員残って上手に隠れられてるのがベストだね」

 

友「どうだろうね…。なんたってあの烏間先生だぜ?もしかしたら、今こうして話してるのも遠くで聞かれてるかも……なんてね」

 

岡島「ははっ。んなまさか……」

 

 

烏間(…枝が折れている。ついさっきここを通ったな。足跡から男子3人、女子2人。…聞こえた。稜線の裏側。距離八十!)

 

友「……ん?」

 

今…強く踏み込む音が聞こえたような……。

 

……!

今、草が揺れる音が…。風ではなく、人に当たって聞こえるような…!

 

まさか……!!

 

友「まずい…!来るぞ!!」

 

岡島「えっ…!?」

 

不破「来るって…!?」

 

既に俺が叫んだ時には…皆の背後に烏間先生がいた。

 

烏間先生は素早く優月、速水、千葉ちゃん、岡島をタッチ。

 

友「うおっ…!?」

 

烏間先生の一発目はなんとか避けたが、体制を崩し、そのままタッチされてしまった。

 

烏間「…岡島君、速水さん、千葉君、不破さん、友君。

 

 

逮捕だ」

 

 

岡島「な、何〜!?!?」

 

烏間「友君が気付き、皆に伝えたのは良かったが……もっと早くに気付くべきだったな」

 

友「は…はぁ」

 

この先生化け物だ……!!

 

 

律『岡島君、千葉君、友君、不破さん、速水さん、アウトー♪』

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

牢屋スペース──

 

不破「よく気付けたね…友君」

 

友「なんか微かに音が聞こえた気がしてな…。銃ゲーじゃ音を聞くことは大事だからな~」

 

岡島「嘘じゃねーって!現に俺ら今牢屋にいるんだよ!」

 

岡島は創ちゃんに現状を伝えているようだ。

 

岡島「とにかく気をつけろ!もしかしたら…もうお前の後ろに……」

 

すると、『ぎゃああーーっ!!』という悲鳴が聞こえてきた。

 

不破「……!?」

 

岡島「菅谷…!?菅谷ー!!」

 

友「そ、創ちゃん…!?」

 

岡島「…ダメだ。殺られた」

 

律『菅谷君、ビッチ先生、アウトー♪』

 

創ちゃんの後すぐにビッチ先生もやられたのか。

てか何で参加してんだ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

兄貴や姉貴達含め、現在7名捕まっている…。

 

新「……やばいな」

 

茅野「どんどん殺られてく…!」

 

奥田「殺戮の裏山ですね…」

 

渚「逮捕じゃなかったっけ…」

 

杉野「…あっ!そうだ!これケイドロだろ?牢屋の泥棒にタッチすれば解放できる!」

 

杉野はそう言って牢屋へと走っていき、俺とカルマはその後を追った。

 

カルマ「バカだね〜。杉野は。ラスト1分まで、牢屋の前から動かないって言ってたじゃんかよ。誰があの音速タコの目を盗んでタッチできるよ…できる位ならとっくに殺してるって」

 

杉野(この2人のコンビ無敵すぎるだろ……!!)

 

最強の生物と、最強の人間が…俺らの宿題を増やすために襲ってくる!

 





ちなみに僕はFPSのゲームする時足音とかほぼ気にしてません。
だって聞こえないんだもん。


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第57話 泥棒の時間

《友 side》

 

なんとか脱出しないと……。

このまま捕まれば、殺せんせーが動くまでにゲームオーバーだ!

 

岡島「………!あれは…杉野と新、カルマ!」

 

殺「ヌルフフフ。泥棒共が悔しそうに見てますねぇ。本官がここにいては救出出来まいて」

 

岡島「くそ…警官の恰好した途端に高圧的になりやがって…!」

 

殺「黙らっしゃい囚人共!大人しく刑務作業に没頭したまえ!」

 

不破「刑務作業って……」

 

友「要はドリルで勉強させたいだけだろーが…」

 

その時また逮捕の通知が……!

 

律『竹林君、原さん、アウト〜♪』

 

岡島「どうする…?このままだと30分もたずに泥棒全滅だ……!」コソコソ

 

友「烏間先生も本気だしな……。何か無いのか!?殺せんせーの気を引ける何か…!」コソコソ

 

岡島「何かって……。あっ…!そうだ!」コソコソ

 

おお!何か思いついたのか岡島!見直したぜ!

 

岡島「殺せんせー……これ」スッ

 

岡島がポケットから取り出したのは…巨乳美女のグラビア写真数枚だった。

 

………うん。やっぱ岡島は岡島だ。

 

いくら殺せんせーとはいえ、今は警官だぞ?こんなにつられるわけ……。

 

殺「………行け。見逃してやる」

 

えええええええええええ!?!?

 

岡島「今だ助けに来い!!」

 

杉野とカルマと新は俺たち(ビッチ先生を除く)をタッチして復活させた。

 

不破「あれで買収されるんだ…」

 

友「あのタコ、今警官なんだよな…?」

 

 

【殺警察の不祥事① 収賄】

 

 

律『6名脱走……』

 

烏間「……おい。どうして捕らえた泥棒が逃げてるんだ…」

 

殺「思いの外奴らやり手でねぇ…。ぬっひょー!この乳やべぇ!!」

 

烏間「お前物で吊られたな!?間もなく7、8名ほどそっちに送る!次また欲に負けたら承知しないぞ…!!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

矢田「実はね殺せんせー……。弟が重い病気で寝込んでるの。ケイドロやるってメールしたら…『絶対に勝ってね』って…。捕まったって知ったら…きっと、あの子ショックで…」

 

殺「……行け。本官は泥棒なんて見なかった。行け」

 

矢田「わ〜ありがと〜!」

 

【殺警察の不祥事② 純情派】

 

殺「烏間さん聞こえるか!?どうして牢屋から犯人が脱走するんだ!」

 

烏間「こっちのセリフだザル警官!!」

 

 

その後も泥棒の取り逃しは続くのだった。

 

賄賂やサボリで次から次へと取り逃し。

 

世界中で取り逃しブームを巻き起こした。

 

烏間「あのバカタコはどこにいる!出てこい!!」

 

原「暇だからって長野県まで信州そば食べに行きましたよ」

 

 

友・不破「こんな警察みたことある!!」

 

 

新「E組(うち)の警察はチームワークゼロだ…」

 

カルマ「やっぱ合わないね〜。あの2人は」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《烏間 side》

 

烏間「これではゲームとして成立しない。次逃がしたら俺は降りるぞ」

 

殺「ええ。もう絶対に逃がしません。─ですが烏間先生。ここから先は泥棒の性能も上がっていますよ」

 

烏間「……何?」

 

…どうしたことだ。生徒の気配をとらえることが難しくなった。

 

 

 

─数分前

 

殺『ちなみに烏間先生は、君達の残した痕跡を追跡しているはずです。足跡や植物の乱れに注意して逃げるといいでしょう。その上で、フリーランニングの基礎的な動き、縦移動や枝移動、ロングジャンプを駆使すれば、棄権の動きをしない範囲でも格段に追跡を困難に出来るでしょう』

 

岡島・友「……!」

 

 

 

 

 

……足跡が消えた…!?

 

…なるほどな。生徒達が牢屋にいる間に逃走のコツを吹き込んだのか。

 

友「……!来たぞ、散れ!」

 

不破「おっけー!」

中村「はいよ!」

菅谷「おう!」

 

 

生徒が俺に気付くのも早くなった。

 

4人小隊で前後左右を見張っているな。

 

これだけ上手く警戒されると、俺1人で全員捕らえるのはまず無理だ。

 

短時間でよくここまで学習した!

 

俺と奴とが、同じ分野を違う視点から同時に教えるとここまで急激に成長するのか!

 

 

だが、だからといって奴と協力する気はない!

 

そもそも奴1人でも…。1分あれば全員捕らえてしまうだろうな。

 

……!

 

前原・岡野・木村・片岡・新「………」

 

機動力が特に優れた5人…。

 

俺を待ち構え、挑戦しようというのか。

 

面白い…。

 

烏間「左前方の崖は危ないから立ち入るな。そこ以外で勝負だ」

 

前原・岡野・木村・片岡・新「はい!!」

 

……おお、良い逃げ足だ。一学期から積み上げた基礎が身についている。

 

…が、まだまだ。

 

木村「うおっ…!?」

 

本気の俺から逃げ切るには足りないようだ。

 

片岡「なっ…!?」

 

岡野「……!!」

 

 

前原「うおっ……!」

 

新「くっ…!」

 

5人全員逮捕……。

 

烏間「随分逃げたな。だかもうすぐラスト1分。奴が動けばこのケイドロ、君らの負けだな」

 

前原「……へへ。俺らの勝ちっすよ…烏間先生」

 

烏間「……何?」

 

岡野「だって、烏間先生は殺せんせーと一緒に空飛んだりしないでしょ?」

 

……?

 

烏間「……当たり前だ。そんな暇があれば刺している」

 

木村「じゃあ烏間先生……」

 

片岡「ここから1分でプールまでは戻れませんね!」

 

プール………!?

 

烏間「…しまった…!!」

 

新「烏間先生さえ戻らなければ……。殺せんせーだけじゃ1分間水底にいる渚達には触れない!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

律『タイムアップ!全員逮捕ならず、泥棒側の勝ちー!』

 

おびき出されたという事か。

 

恐れ入った。教師2人を出し抜くとは……。

 

 

倉橋「なんか不思議〜。息が合わない2人なのに、教える時だけすっごい連携取れてるよね〜」

 

殺「当然です。我々は2人とも教師ですから。目の前に生徒がいたら伸ばしたくなる。それが教師みんなの本能ですから」

 

寺坂「立派なこといいやがって汚職警官が。泥棒の方が向いてんじゃねーのか?」

 

殺「にゅやっ!?何を言います聖職者に向かって!この先生が泥棒なんてするはずが……」

 

 

 

この時…俺たちは気が付かなかった。

今日発売の週刊誌に…とんでもない記事が載っていたことに…。

 



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第58話 泥棒の時間-2時間目

《友 side》

 

殺「二学期も滑り出し順調!生徒達との信頼関係もますます強固になってますねぇ。今日も生徒は親しみの目で私を見つめ…………汚物を見る目!?!?」

 

…無理もない。

 

今朝の新聞にこんな記事が乗ってるんだから。

 

『多発する巨乳専門の下着泥棒。犯人は黄色い頭の大男。ヌルフフフと笑い、現場には謎の粘液を残す』

 

中村「……これ、完全に殺せんせーよね」

 

三村「正直ガッカリだよ」

 

岡野「こんなことしてたなんて……」

 

殺「ちょ、ちょっと待ってください!?先生、全く身に覚えがありません!!」

 

速水「……じゃ、アリバイは?」

 

殺「アリバイ……?」

 

速水「この事件があった昨日深夜。先生どこで何してた?」

 

殺「そうですね…その時間帯は高度1万m〜3万mの間を上がったり下がったりしながらシャカシャカポテトを振ってましたが」

 

友・前原・杉野「誰が証明出来んだよそれをよ!!」

 

吉田「そもそもアリバイなんて意味ねーよ」

 

狭間「どこにいようが大体一瞬で椚ヶ丘市(このまち)戻って来れるんだしね」

 

まぁそれもそうだな……。

 

 

磯貝「待てよ皆!決めつけてかかるなんて酷いだろ!?」

 

……悠馬…!

 

磯貝「殺せんせーは確かに小さな煩悩いっぱいあるよ。けど今までやった事といったらせいぜい…エロ本拾い読みしたり、水着生写真で買収されたり、休み時間中狂ったようにグラビアに見入ってたり、『手ブラじゃ生ぬるい。私に触手ブラをしてください』と要望ハガキ出してたり……

 

 

…先生、自首してください……!」

 

殺「磯貝君まで!?」

 

うん。思いの外ヤバいことしてたね。

 

殺「先生は潔白です!失礼な!いいでしょう、準備室の先生の机に来なさい!先生の理性の強さを証明するため…今から机の中のグラビア全部捨てます!」

 

机の中にグラビア入れてる時点でアウトじゃね?

ていうか何冊入ってんだよ。

 

殺「ほら見なさい…!机の中身全部出し……て………えっ……?」

 

机の中から…グラビアでは無いものが出てきた…。

 

女性の下着……!?

 

寺坂「マジか……」

 

 

岡野「ちょっと!皆見てクラスの出席簿!女子の横に描いてあるアルファベット……。全員のカップ数が調べてあるよ!」

 

茅野「私だけ永遠の0って何よコレ!?」

 

新「そこ!?」

 

 

……マジかよ。

 

…てか…やばい。どうしても目がいってしまう…いくら興味無いとはいえ…男の性だから……。

 

…優月の…は……

 

友「………B…」ボソッ

 

不破「…………友君?」ニコッ

 

 

……あれ…?声に出てた……?

 

不破「………ふん!」ゴスッ

 

友「ぐはぁっ……!?」

 

優月は俺の腹に膝蹴りを何度も入れてくる。

凄く怒ってらっしゃる。

 

友「やめて…死ぬ……これ以上は死ぬ……」

 

 

前原「お、おい…これ見ろよ!」

 

今…それどころじゃない……。

 

前原「最後のページ…街中のFカップ以上の女性のリストがあるぞ!?」

 

殺「ちょ、ま、そんなはずが…!そ、そうだ今からバーベキューをしましょう皆さん!放課後やろうと準備しておいたんです!ホラ見てこの串!美味しそうで……しょ……」

 

バーベキューの串に刺さっていたのは野菜や肉ではない……。

女性の下着が刺さっていた……。

 

…………どういう性癖…?

 

村松「……やべぇぞこいつ…」

 

片岡「信じらんない…」

 

速水「不潔…」

 

 

不破「……友君、どう思う?」

 

友「待って…今死にかけてる…」

 

不破「私の考え言ってもいいかな?」

 

友「君話聞かなくなったね……。でも、多分俺と考えてることは同じだと思うぞ?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

キーンコーンカーンコーン

 

殺「…きょ、今日の授業は…ここまで……」ガラガラ パタン

 

 

カルマ「あっはは。今日1日針のムシロだったね〜。居づらくなって逃げ出すんじゃね?」

 

渚「でも、殺せんせー本当にやったのかな?こんなシャレにならない犯罪……」

 

カルマ「地球爆破に比べたら可愛いもんでしょ」

 

新「そりゃそうだな……」

 

カルマ「でもさ、仮に俺がマッハ20の下着ドロなら、急にこんなボロボロ証拠残さないけどね……。見てみ?渚君。体育倉庫にあったボール」

 

バスケットボールに……女性の下着がついている。

 

…は?ナニコレ。

 

カルマ「こんな事してたら…俺らの中で先生として死ぬこと位わかってんだろ。あの教師バカの怪物にしたら、E組(おれら)の信用を失う事するなんて、暗殺されるのと同じ位避けたい事だと思うけどね……」

 

渚「うん。僕もそう思う…」

 

茅野「でも、そしたら一体誰が……」

 

 

友「偽だ」 不破「偽よ」

 

茅野「……不破さん?」

渚「……友君?」

 

不破「にせ殺せんせーよ!!」

 

友「ヒーロー物のお約束!!」

 

友・不破「偽物悪役の仕業だ!!」

 

 

不破「体色とか笑い方とか真似してるってことは……」

 

友「犯人は殺せんせーの情報を得てる何者か!」

 

不破「私と友君は律に助けてもらいながら手がかりを探してみる!」

 

律「お任せ下さい!」

 

 

カルマ「その線だろうね〜。何の目的でこんな事すんのかわかんないけど…」

 

カルマは立ち上がって、帰ろうとする寺坂の首元を引っ張り、連れ戻した。

 

カルマ「いずれにせよ、こういう噂が広まることで、賞金首がこの街に居れなくなっちゃったら元も子もない。俺らの手で真犯人ボコッてタコに貸し作ろーじゃん?」

 

友・不破「おー!」

 

茅野「……永遠の0…」

 

新「だからそこ!?」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして夜──

 

友・不破「体も頭脳もそこそこ大人の名探偵、参上!」

 

渚「やってる事はフリーランニング使った住居侵入だからね…」

 

俺、優月、渚、カルマ、茅野、寺坂は真犯人が次に選ぶであろう建物の敷地内へと侵入した。

 

新はもし住居侵入がバレたら事務所に処分されるかもしれないということでついてきていない。

 

寺坂「んで友、不破。なんでこの建物を次に選ぶって思ったんだよ」

 

不破「ここは某芸能プロの合宿施設。この2週間は巨乳を集めたアイドルグループが新曲のダンスを披露してるって…!」

 

友「その合宿は明日には終わる……。真犯人にとって極上の獲物であろうあの下着を逃すはずがない…!」

 

寺坂「なるほど…」

 

ふと反対側の草むらを見ると、殺せんせーがいた。

布巾を一昔前の泥棒がやるような巻き方で被っており、サングラスまでかけている。

 

不破「なんだ…。殺せんせーも同じこと考えてたか」

 

寺坂「いや…どう見ても盗む側の恰好なんだが」

 

友「見ろ…!真犯人への怒りのあまり下着を見ながら興奮してる…!!」

 

寺坂「あいつが真犯人にしか見えねーぞ!!」

 

 

カルマ「……!あっちの壁……」

 

カルマが指さす方の壁……。その上から…:

 

友「誰か来る……!」

 

壁から降りてきたのは……黄色い(ヘルメット)の大男!!

 

不破(やっぱり…!)

 

友(真犯人は別にいた……!)

 

寺坂「あの身のこなし只者じゃねーぞ!?」

 

渚「やばい持ってかれる!」

 

真犯人が下着に手を出した瞬間…!

 

殺「捕まえたーー!!」

 

殺せんせーが取り押さえた。

 

殺「よくもナメたマネしてくれましたね!押し倒して隅から隅まで手入れしてやるヌルフフフフフフ」

 

茅野「……なんか下着ドロより危ない事してるみたい」

 

カルマ「笑い方も報道されてる通りだしね……」

 

殺「さあ顔を見せなさい!偽物め!!」

 

殺せんせーは男のヘルメットを取った。

 

その顔に、俺たちは見覚えがあった。

 

不破「あの人……!確か…」

 

友「烏間先生の部下の…鶴田さん…?」

 

 

殺「なんで貴方がこんな……」

 

その時、殺せんせーの周りを白いシーツが囲んだ。

 

一同「…!?」

 

 

 

シロ「国にかけあって烏間先生の部下をお借りしてね。この対先生シーツの檻の中まで誘ってもらった。君の生徒が南の島でやった方法だ。当てるよりまずは囲むべし」

 

殺「この声は……!」

 

シロ「……さぁ殺せんせー。最後のデスマッチを始めようか」

 

イトナ「…………」

 

 

 

寺坂「……イトナ…!!」

 

一連の事件は全てこいつらが仕組んだ事だったのか!

 

シロ「まずフィールドを劇的に変化させ、それから襲う。当てるよりまずは囲うが易し。君達の戦法を使わせてもらったよ」

 

シーツの中では乱闘が起きているのだろうか。凄まじい音が鳴り響き、時々シーツがへこむ。

 

友「シロ…!これ全部お前の計画か…!!」

 

シロ「そういう事。街で下着ドロを重ねたのも…殺せんせーの周囲に盗んだ下着やら色々と仕込んだのもね……。この彼を責めてはいけない。仕上げとなるこの場所だけは、下着ドロの代役が必要だったもんでね」

 

 

鶴田「…すまない。烏間さんの更に上司からの指示だ…。やりたくないが…断れなかった」

 

………!!

 

殺「生徒の信頼を失いかければあの怪物は慌てて動く。そこにきて巨乳アイドルの合宿という嘘情報。多少不自然でも飛び込んできてしまうあたりが間抜けだねぇ」

 

嘘情報……!?そこまで仕組んでいたのか…!!

 

寺坂「くそ…俺らの標的(エモノ)だぞ…!」

 

不破「いっつもいやらしいとこから手ぇ回して…!!」

 

シロ「それが大人ってものさ。そうだ!中の様子が見えないと不安だろう。私の戦術を細かく解説してあげよう…。

シーツに見せて囲ったのは対先生繊維の強化布。とても丈夫で戦車の突進でも砕けない。独特の臭いは洗剤臭でごまかせた。

そして、イトナの触手に装着したのは、刃先が対先生物質で出来たグローブ。高速戦闘に耐えられるよう混ぜ物をしてあるので、君達が使うナイフと比べて効果は落ちるが……触手同士がぶつかる度じわじわ一方的にダメージを与える。

そしてイトナの位置取り。常に上から攻撃して標的を逃がさない。これで仕留められないようではね……」

 

布越しにイトナの声が聞こえてくる。

 

イトナ「俺の勝ちだ。兄さん。お前を殺してたった1つの問題を解く。即ち…最強の証明…!!」

 

次は殺せんせーの声が聞こえてきた。

緊迫した声ではなく、いつも通りの声で。

 

殺「ええ見事ですイトナ君。一学期までの先生ならば殺られていたかもしれません。でもね、君の攻撃パターンは単純です。いかに速くても、いかに強くても、いかに保護者が策を積み上げても、いかにテンパりやすい先生でも、3回目ともなればすぐに順応して見切ることが出来るのです」

 

イトナ「バカな…こんなはずが…!!」

 

殺「イトナ君。先生だって学習するんです。先生が日々成長せずして…どうして生徒に教える事が出来るでしょうか」

 

殺せんせー……!!

 

殺「さて、厄介な布の檻を始末しますか。夏休みの完全防御形態の経験を通して、先生もひとつ技を習得しました。全身ではなく……触手の一部だけを圧縮して、エネルギーを取り出す方法…」

 

布の向こうで何が起きてるんだ…!?

それに、このパワーは……!?

 

殺「覚えておきなさいイトナ君。先生にとって暗殺は教育。暗殺教室の先生は…教える度に強くなる」

 

その時、強い衝撃波が起きた。

 

シーツが吹っ飛び……窓ガラスが割れ、俺らも飛ばされそうになった。

 

不破「きゃあっ…!」

 

友「優月…!大丈夫か?」

 

不破「う、うん…!////」

 

衝撃波で体制を崩した優月をギリギリで支える。

 

 

イトナ(なぜ…勝てない…。俺は…強くなったはずなのに…)

 

殺「…そういう事ですシロさん。この手の奇襲はもう私には通じませんよ。彼をE組に預けて大人しく去りなさい。あと、私が下着ドロじゃないという正しい情報を広めてください」

 

茅野「私の胸も正しくは…び、Bだから!」

 

茅野…まだ諦めてなかったのか……。

 

Bねぇ…優月より無さそうに見えるけど…。

 

不破「……友君…?」

 

友「いや今声出してなかったよね!?心の中読まないでもらえる!?」

 

不破「あとで覚えといてね♡」

 

友「は…はい」

 

 

その時、イトナが突然うずくまった。

 

イトナ「い……痛い…!!脳みそが裂ける…!!」

 

友・不破「…!?」

 

 

シロ「…度重なる敗北のショックで精神を蝕み始めたか。ここいらがこの子の限界かな。これだけの私の術策を活かせないようではね……」

 

な、何を言って……!?

 

シロ「イトナ。君の触手を1ヶ月健全に維持するのに火力発電所3基分のエネルギーがいる。これだけ結果が出せなくては組織も金を出さなくなるよ。君に情が無いわけじゃないが…次の素体を運用するためにもどこかで見切りをつけないとね。

 

さよならだイトナ。あとは1人でやりなさい」

 

こいつ……!!

 

殺「待ちなさい!あなた、それでも保護者ですか!?」

 

シロ「教育者ごっこしてんじゃないよモンスター。何でもかんでも壊すことしか出来ないくせに。私は許さない。お前の存在そのものを。どんな犠牲を払ってもいい。お前が死ぬ結果だけが私の望みさ。それよりいいのかい?大事な生徒をほっといて…」

 

シロはそのまま去っていった。

 

ふとイトナの方を見ると……。

 

イトナ「ハーッ……ハーッ………」

 

どうやら我を失っているようだ。

その視線の先には……。

 

不破「え…っ…?な、何……?」

 

優月……!

イトナは優月に向かい飛びかかる。

 

友「危ないっ…!!」

 

不破「ゆ、友君……!」

 

俺は優月を突き飛ばし、代わりに攻撃を受ける……。

 

と思ったら…

 

殺「ぐっ……!!」

 

殺せんせーが俺の代わりに攻撃を受けてくれた…。

 

友「殺せんせー……!」

 

イトナはそのまま叫びながらどこかへと消えてしまった……。

 

一同「………!!」

 

イトナ……。

一体どこに行ったんだ……?

 

それにシロのやつ……許さねぇ…!

 



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第59話 執着の時間

めっちゃ久々ですね
久々すぎて感覚忘れてますもん

いや違うんすよ
1回投稿忘れてね?
もういいやって思っちゃって、
そこからめんどくさくなっちゃったんすよ
いや違うんすよ
完結させる気はあるんすよ
いやちg




《友 side》

 

殺「……………」ツーン

 

矢田「わ、悪かったってば殺せんせー!」

 

三村「俺らもシロに騙されて疑っちゃってさ!」

 

殺せんせー…凄い根に持ってんな…。

 

殺「先生の事はご心配なく。どーせ体も心もいやらしい生物ですから」

 

めっちゃ口尖らせてるよ……。

 

事あるごとに蒸し返してきそうだなこりゃ…。

 

殺「心配なのはイトナ君です。触手細胞は人間に植えて使うには危険すぎる。シロさんに梯子を外されてしまった今、どう暴走するかわかりません」

 

結局あの後、俺達も先生も防衛省の人らも、闇に消えたイトナを見つける事は出来なかった。

 

不破「名義上はクラスメイトだけど…私たち、イトナ君のこと何も知らないよね……」

 

友「そうだな…。なぜあそこまで強くなる事に拘るのか、シロと出会って触手を持つことになった経緯も不明だ」

 

律「……!皆さん…!たった今こんなニュースが…!」

 

律はニュース番組の映像を映し出した。

 

『椚ヶ丘市内の携帯電話ショップが破壊される事件が多発。店内の損傷が激しいため、警察は複数人の犯行の線で捜査を進めている』

 

新「…このニュース…!」

 

前原「イトナの仕業…だよな?」

 

殺「ええ…。使い慣れた先生にはわかりますが、この破壊は触手でなくてはまず出来ない」

 

不破「でも…どうして携帯ショップばかりを…?」

 

友「うーん…調査の必要があるな……」

 

殺「……担任として責任を持って彼を止めます。彼を探して保護しなければ」

 

岡島「……助ける義理あんのかよ殺せんせー」

 

木村「つい先日まで商売敵だったみたいなやつだぜ?」

 

中村「あいつの担任なんて形だけじゃん」

 

カルマ「……シロの性格上、あいつにとって他人全てが『当たればラッキー』の捨て駒だ。そーゆー奴は何してくるか戦術が読めない。ほっといた方が賢明だと思うけど」

 

殺「………それでも担任です。『どんな時でも自分の生徒から触手()を離さない』。先生は先生になる時誓ったんです」

 

友「…俺も行くよ。どういう事情であろうと、一応クラスメイトだしな。救ってあげたい」

 

不破「友君……」

 

磯貝「俺らも行こう!」

 

前原「…おう!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

俺たちは次にイトナが襲うと思われる携帯ショップへと向かった。

 

案の定、イトナはいた。

 

 

 

イトナ「……綺麗事も、遠回りもいらない…。負け惜しみの強さなんて……反吐が出る…。勝ちたい…。勝てる強さが欲しい……」

 

イトナ……。

 

殺「やっと人間らしい顔が見れましたよイトナ君」

 

イトナ「兄さん……」

 

殺「殺せんせー…と呼んでください。私は君の担任ですから」

 

寺坂「拗ねて暴れてんじゃねーぞイトナ。テメーには色んな事されたがよ。水に流してやるから大人しくついてこいや」

 

イトナはふらふらと歩き出す。

触手はかなり萎れており、以前までとは違いかなり遅く動いている。

 

イトナ「うるさい…勝負だ…今度は…勝つ…」

 

殺「勿論勝負してもいいですが、お互い国家機密の身、どこかの空き地でやりませんか?暗殺(それ)が終わったら、そこでバーベキューでも食べながら皆で先生の殺し方を勉強しましょう」

 

イトナ「…………」

 

カルマ「…そのタコしつこいよ〜。ひとたび担任になったら地獄の果てまで教えに来るから」

 

殺「…当然ですよ。目の前に生徒がいるのだから、教えたくなるのが先生の本能です」

 

イトナ「……!」

 

その時、何かが投げ入れられ、爆発した。

 

原「ゲホッ……な、何!?」

 

友「グレネード…!?」

 

イトナ「ううっ……!?」

 

イトナの触手が溶けている…ということは対先生物質の粉爆弾(パウダー)か!!

 

殺(くっ……!イトナ君の殺気に紛れて気付かなかった…!)

 

シロ「これが今回第二の矢。イトナを泳がせたのも予定の内さ」

 

友「シロ……!!」

 

今回はシロだけじゃない…シロと同じ対先生繊維で出来た服を来た部下までいる…!

 

突如、シロの乗っている車に付けられた砲台のようなものから、イトナに向けてネットに放射され、イトナは捕まってしまった。

 

シロ「さぁイトナ。君の最後のご奉公だ。追ってくるんだろう?担任の先生……」

 

シロはイトナを引きずりながら車を走らせていく。

 

殺「大丈夫ですか皆さん!」

 

磯貝「多分…全員何とか」

 

殺せんせーも少し皮膚が溶けている……。

 

殺「では先生はイトナ君を助けてきます!」

 

殺せんせーはシロの車が向かった方向へ飛んでいく。

 

友「……俺らを気にして回避反応が遅れたな」

 

寺坂「あの白野郎…。とことん駒にしてくれやがって……!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

俺達はある作戦をたて、イトナの救助に向かった。

 

恐らく相手は対先生物質を大量に使ってくる。殺せんせー1人じゃどうにも出来ない可能性が高い。

 

…案の定、殺せんせーはイトナに攻撃が当たらないように防ぐので精一杯だ。

 

木の上には対先生物質で出来た服を来た男たち。

対先生弾を放ち続けて、『俺ら』には気付いていない。

 

新「……行くぞ!」

 

カルマ「OK〜!!」

 

前原「とりゃあっ!!」

 

男たち「なっ……!?」

 

まずは木の上の連中を下へ落とす!

 

そして下に待機してた皆が簀巻きにして身動きを取れなくする!

 

寺坂「これ、対先生(タコ)の布の服だろ?ご丁寧に完全防御かよ。お陰で人間(俺ら)がタコに代わって落とさなきゃなんねーだろうが!」

 

男「くっ…ガキ共が!お前ら、返り討ちに…!!」

 

岡野「ダメだよ〜烏間先生に追われるばっかでこっちだって悔しいんだから!」

 

友「このケイドロはテメーらが泥棒側な!!」

 

よし、木の上のシロの部下共はこいつで最後だ……!

 

 

シロ「………!!」

 

イトナ「お前ら…なんで……」

 

速水「カン違いしないでよね。シロの奴にムカついてただけなんだから。殺せんせーが行かなけりゃ、私達だってほっといたし」

 

 

岡島「速水が『カン違いしないでよね』って言ったぞ」

 

竹林「生ツンデレはいいものだね」

 

お前ら後で消されるぞ……?

 

カルマ「こっち見てていいの〜シロ?打ち続けて殺せんせーを釘付けにしてたのに……。撃つのやめたら、ネットなんて根本から外されちゃうよ?」

 

カルマの言う通り、殺せんせーはネットの根本を引き抜いていた。

 

友「イトナ……!ネットが触手が溶かしてる!」

 

前原「茅野!毛布持ってきてくれ!間に挟むぞ!」

 

茅野「うん!」

 

 

殺「……去りなさいシロさん。イトナ君はこちらで引き取ります。あなたはいつも周到な計画を練りますが、生徒達を巻き込めばその計画は台無しになる。当たり前の事に早く気付いた方がいい」

 

シロ「モンスターに小蠅たちが群がるクラスか…。大層うざったいね。だが確かに、私の計画には根本的な見直しが必要なのは認めよう。………くれてやるよそんな子は。どのみち2〜3日の余命。皆で仲良く過ごすんだね…」

 

シロはそのまま車で去っていった。

 

イトナは、凄く苦しそうだ。

とりあえず、ネットから出してあげないと……。

 

殺「…触手は意志の強さで動かすものです。イトナくんに力や勝利への病的な執着がある限り…触手細胞は強く癒着して離れません。そうこうしている間に、肉体は強い負荷を受け続けて衰弱してゆき、最後は触手もろとも蒸発して死んでしまう」

 

新「それは…いくらなんでも可哀想だ……」

 

片岡「後天的に移植されたんだよね…?なら、なんとか切り離せないのかな」

 

殺「……彼の力への執着を消さなければ。そのためには、そうなった原因をもっと知らねばいけません」

 

中村「でも…この子心閉ざしてるから…」

 

前原「身の上話なんて素直にするとは思えねーな……」

 

その時、俺と優月の携帯が鳴った。

 

どうやら、律に頼んでいた調べ物が終わったらしい。

 

友「優月…」

 

不破「……うん。…その事なんだけどさ」

 

渚「不破さん、友君…」

 

友「気になってたんだ。どうしてイトナは携帯ショップばかり襲ってたのか」

 

不破「それで、律に調べてほしいって頼んでたの。機種とか、戸籍とか、彼につながりそうな物を調べてもらって……そしたら」

 

俺は皆のスマホに、律に調べてもらったことを送信した。

 

友「…『堀部糸成』って、ここの…『堀部電子製作所』ってところの社長の息子だった」

 

竹林・矢田「……!?」

 

不破「世界的にスマホの部品を提供してた町工場だったんだけど…」

 

友「一昨年、負債を抱えて倒産…。社長夫婦は息子残して雲隠れ……だとさ。」

 

不破「……何となく、これで想像がついてきたよ。イトナ君の力や勝利への異常なまでの執着の理由……」

 

一同「………」

 

寺坂「ケッ。つまんねー。それでグレただけの話か」

 

磯貝「寺坂…!」

 

寺坂「皆それぞれ悩みあんだよ。重い軽いはあんだろーがよ。けどそんな悩みとか苦労とか、割とどーでもよくなったりするんだわ。

俺らんとこでこいつの面倒見させろや。それで死んだらそこまでだろ」

 

寺坂…吉田…村松…狭間…。

 

大丈夫だろうか……。でも、この4人に…頼ってみよう…。

 

 



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第60話 吐きそうな時間


暗殺教室読んでたら少しモチベ上がったので久々に更新します
やったね。すごいね。


《友 side》

 

新「……対先生ネットをリメイクしたバンダナか…」

 

友「気休めに過ぎないよ…。また発作が出て暴走しだしたらあんなのじゃ止められない…」

 

イトナはフラフラと歩いている。

寺坂達がその後に着いてっている……。

 

寺坂の奴…どうやってイトナの心を開く気だ…?

 

家族を失った人の心を開かせるのは大変だ。

自分がそうだったからわかる。

 

寺坂…どんな作戦を思いついたんだろうか…。

 

不破「寺坂君…きっと何か作戦があるのかな…?」

 

友「流石に何も考えてないのに自分から名乗り出るなんて事ないだろ…」

 

カルマ「……それはどうかな」

 

…え?

 

寺坂「さて、おめーら…。

 

 

どーすっべこれから」

 

 

吉田・村松・狭間「………………は?」

 

…は?

 

カルマ「だって……あのバカだよ?」

 

友「……嘘だろ」

 

 

吉田「考えてねーのかよ何にも!!」

 

村松「ホンッット無計画だなテメーは!!」

 

寺坂「うるせー!4人もいりゃ何か考えあんだろーが!!」

 

コイツら………本当に大丈夫なのか…?

 

狭間「村松んちラーメン屋でしょ?一杯食べたらこの子も気ぃ楽になるんじゃない?」

 

寺坂「お、おお」

 

4人もいて頼りになるの狭間だけかよ…。

 

殺(そう…。とにかく彼の肩の力を抜かなければ。イトナ君が触手の力を必要としているうちは、触手も彼に癒着したまま離れない…。どこかで彼が、力に対する考え方を変えなければ……!)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

村松家─

 

イトナ「………」ズズズ

 

村松「どーよ。マズいだろ?うちのラーメン。親父に何度言ってもレシピ改良しやしねぇ」

 

イトナ「……マズい。おまけに古い。手抜きの鶏ガラを化学調味料で誤魔化している。トッピングの中心には自慢君気に置かれたナルト。四世代前の昭和のラーメンだ」

 

村松(こいつ意外に知ってやがる…!!)

 

村松のラーメンめっちゃ酷評されんじゃん……。

 

まぁ前に食った時ヤバかったけどさ。

勿論、悪い意味で。

 

イトナ(…こんな店、チェーン店でも近くに出来たらすぐ潰れる…。うちの親は勉強してても無惨に負けた…)

 

寺坂「………」

 

吉田「じゃ、次はうち来いよ。こんな化石ラーメンと比較になんねー現代の技術見せてやっから」

 

村松「んだとぉ!?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

吉田家──

 

吉田の家は…確かバイク屋さんだったな…。

 

吉田「どーよイトナ!スピードで嫌な事なんざ吹き飛ばせ!!」

 

吉田はイトナをバイクの後ろに乗せて走り回す…。

 

友「……てか中学生が無免許でいいのか…?」

 

原「吉田君の家のバイク屋の敷地内だからね。たまにサーキットとかも行ってるらしいよ」

 

友「大分走り慣れてると思ったら……」

 

 

吉田「テンション上がってきたか!?」

 

イトナ「……悪くない」

 

吉田「おっしゃ!じゃーもっと上げてやらぁ!!」

 

 

まぁこれはこれで良い気分転換になりそうだな。

 

吉田「必殺…高速ターンブレーキだっ!!!!

 

 

 

 

 

………あ」

 

 

吉田がブレーキをかけた衝撃で後ろに乗ってたイトナは吹き飛ばされ、近くの茂みに刺さってしまった。

 

……何してんだ。

 

寺坂「バカ早く助けだせ!このショックで暴走したらどーすんだ!」

 

吉田「いやいや…この程度なら平気じゃね?」

 

 

中村「………何にも計画ないみたいだね」

 

矢田「うん…ただ遊んでるだけな気が」

 

あいつらに頼むの失敗だったかな……。

 

カルマ「ま…あいつら基本バカだから仕方ないよ」

 

奥田「あ…でも、狭間さんなら頭も良いから……」

 

んー…狭間はこの中じゃマシな方だけど……。

 

狭間「…復讐したいでしょシロの奴に。名作復讐小説『モンテ・クリスト伯』全7巻2500ページ。これ読んで暗い感情を増幅しなさい。最後の方は復讐やめるから読まなくていいわ」

 

寺坂「難しいわ!!狭間、テメーは小難しい上に暗いんだよ!」

 

狭間「何よ。心の闇は大事にしなきゃ」

 

こういう人だからなぁ…。逆効果になるんじゃねーのコレ……。

 

 

寺坂「もーちょっとねーのかよ!簡単にアガるやつ!だってこいつ頭悪そ……」

 

イトナ「…………」プルプル

 

イトナが震えてる……。まさか……!

 

吉田「やべぇ…なんかプルプルしてんぞ!」

 

村松「寺坂に頭悪いって言われりゃキレんだろ…」

 

狭間「……違う。触手の発作だ。また暴れ出すよ」

 

イトナは再び触手を出した…。

このままだと…寺坂達も危険だ!!

 

村松「に、逃げねーと!!」

 

イトナ「俺は…適当にやってるお前らと違う…。今すぐ…あいつを殺して…勝利を……!」

 

寺坂「…………」

 

吉田、村松、狭間が逃げる中、寺坂は立ち止まり、イトナの方を向いた。

 

吉田「…寺坂!!」

 

寺坂「…おうイトナ。俺も考えてたよ。あんなタコ今日にでも殺してーってな。でもな、テメーにゃ今すぐ奴を殺すなんて無理なんだよ。無理あるビジョンなんざ捨てちまいな…。楽になるぜ?」

 

イトナ「うるさいっ……!!」

 

イトナは触手を寺坂に向かって繰り出した。

 

が、寺坂は前のように触手をガッシリと捕まえた。

 

寺坂「……2回目だし、弱ってるから捕まえやすいわ。吐きそーな位クソ痛てーけどな……」

 

イトナ「………」

 

寺坂「吐きそーといや、村松ん家のラーメン思い出した」

 

村松「あん!?」

 

寺坂「あいつな…。あのタコから経営の勉強奨められてるんだ。今はマズいラーメンでいい。いつか店を継ぐ時があったら、新しい味と経営手腕で繁盛させてやれってよ……。吉田も同じ事言われてた。いつか役に立つかもしれないって」

 

イトナ「……」

 

寺坂「なぁ…イトナ。一度や二度負けた位でグレてんじゃねぇ。いつか勝てりゃあいいじゃねーかよ」ゴッ

 

寺坂はイトナの頭を少し軽く殴った。

 

寺坂「…タコ殺すにしたってな。今殺れなくていい。100回失敗したっていい。3月までにたった1回殺せりゃ…そんだけで俺らの勝ちよ。親の工場なんざそんときの賞金で買い戻しゃ済むだろーが。そしたら親も戻ってくらァ」

 

イトナ「…耐えられない。次の勝利のビジョンが出来るまで……俺は何をして過ごせばいい」

 

寺坂「はァ?今日みてーにバカやって過ごすんだよ。そのためにE組(俺ら)がいるんだろーが」

 

イトナ「………!!」

 

 

カルマ「…あのバカさぁ、あーいう適当な事平気で言う。でもね、バカの一言は…こーいう時力抜いてくれんのよ」

 

 

イトナ「……俺は、焦ってたのか」

 

寺坂「…おう。だと思うぜ」

 

イトナは触手をダランとさせ、さっきよりも優しい表情になった。

 

殺「目から執着の色が消えましたねイトナ君。今なら君を苦しめる触手細胞を取り払えます。大きな力のひとつを失う代わり…多くの仲間を君は得ます。殺しにしてくれますね?明日から」

 

 

イトナ「………勝手にしろ。この触手()も、兄弟設定も、もう飽きた」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~〜~~~~~~~

 

翌日─

 

 

前原「お、来たかイトナ。もう壁壊して入って来んのは無しな!」

 

 

不破「おはよーイトナ君!」

 

友「似合ってんじゃん。そのバンダナ」

 

 

 

倉橋「おは〜」

 

新「やっほ〜。これからよろしくね〜」

 

 

 

殺「おはようございますイトナ君。気分はどうですか?」

 

イトナ「…最悪だ。力を失ったんだから

 

 

でも、弱くなった気はしない。最後は殺すぞ……殺せんせー」

 

 

“問題児”堀部糸成は、これでようやく俺らのクラスに加入した。

 

 

 

 

イトナ「おい村松、金が無い。吐くの我慢するからタダでラーメン食わせろ」

 

村松「あァ!?」

 

 

 

………因みに寺坂グループだ。

 

 





~~~の中に一つだけ〜が混じってることに気づいた人は何人いるかなぁ?(謎の遊び心)


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第61話 紡ぐ時間

《新 side》

 

イトナが何やかんやあって正式にE組のクラスメイトになって一日。

 

放課後、俺と渚がイトナの席に向かうと、イトナは何かを作っていた。

 

渚「い、イトナ君……?」

 

新「それ、何作ってんの?」

 

 

イトナ「見ての通り、ラジコンの戦車だ。昨日一日あのタコに勉強漬けにされてストレスが溜まった。腹が立ったから…こいつで殺してやる。寺坂が馬鹿面で俺に言った」

 

寺坂「アァ!?」

 

イトナ「『100回失敗してもいい』と。だから失敗覚悟(ダメ元)で殺しに行く」

 

渚「殺しに行く…って」

 

杉野「でもこれ…なんかスゲーハイテクだぞ!?」

 

並の中学生が作るもんじゃない…。

電子工作のレベルが高すぎる…!

 

磯貝「すごいなイトナ…。自分で考えて改造してるのか」

 

イトナ「親父の工場で基本的な電子工作は大体覚えた。こんなのは寺坂以外誰でもできる」

 

イトナ…触手を持ってた頃と全然違う……!

毒舌は変わらないけど。

 

気付けばイトナの周りにはほとんどの男子が集まっていた。(兄貴とカルマ以外)

 

イトナ(……触手が俺に聞いてきた。『どうなりたいのか』を。『強くなりたい』と答えたら、それしか考えられなくなった。ただ朦朧として、戦って勝つ事しか。

 

『最初は細い糸でいい。徐々に紡いで強く成れ。それが『糸成』…お前の名前に込めた願いだ』

 

なんで忘れてたのかな。自分のルーツを)

 

イトナはラジコン戦車を走らせた。

そして、置いてあった缶ジュースに向かってBB弾を発砲した。見事に全弾命中し、缶は倒れた。

 

菅谷「すげぇ…。走ってる時も撃つ時もほとんど音がしねぇ」

 

千葉「こいつは使えるな…」

 

イトナ「電子制御を多用する事で、ギアの駆動音を抑えている。ガン・カメラはスマホの物を流用した。銃の照準と連動しつつ、コントローラーに映像を送る」

 

前原「お〜!スパイっぽい!」

 

イトナ「それと…。もう1つお前らに教えてやる。狙うべき理想の一点。シロから聞いた標的(ターゲット)の急所だ」

 

殺せんせーの急所…!?

 

イトナ「やつには“心臓”がある。位置はネクタイの真下。そこに当たれば一発で絶命出来るそうだ」

 

一発で……!?

 

 

 

前原「お、そろそろ職員室だな」

 

三村「でも…殺せんせーいないな」

 

村松「チッ。出かけた後か」

 

岡島「しゃーねぇ。試運転兼ねてそこら辺偵察しようぜ」

 

 

その時、女子の声が聞こえてきた。

 

『校庭まで競走ね〜!』

 

『あ、ずる〜い!』

 

そして、戦車の上を通り過ぎて言った。

 

男子のほとんどは…カメラに釘付けになっていた。

 

 

 

岡島「……見えたか?」

 

前原「いや、カメラが追いつかなかった……!」

 

三村「視野が狭すぎるんだ…!」

 

あれ?なんか皆さっきまでと様子が……。

 

 

村松「カメラ、もっとデカくて高性能なやつにしたらどーよ?」

 

イトナ「重量がかさむ。機動力が落ち、標的の補足が難しくなる」

 

竹林「……ならば。カメラのレンズを魚眼にしたらどうだろうか」

 

一同「竹林…!!」

 

─参謀─ 竹林孝太郎

 

竹林「送られた画像をCPUを通して歪み補正すれば、小さいレンズでも広い視野を確保できる」

 

岡島「……わかった。視野角の大きい小型魚眼レンズは俺が調達する」

 

─カメラ整備─ 岡島大河

 

竹林「律!歪み補正のプログラムは組めるか?」

 

律「はい!用途はよくわかりませんがお任せください!」

 

前原「録画機能も必要だな」

 

岡島「ああ。効率的な改良の分析には不可欠だ」

 

下着ドロにはドン引きしてたくせに……。

 

前原「これも全て暗殺のためだ!女子(ターゲット)を追え!えーっと…試作品一号!!」

 

戦車は勢いよく飛び出し……

 

 

段差で転がってしまった。

 

 

木村「……復帰させてくる!」

 

─高起動復元士─ 木村正義

 

竹林「段差に強い足回りも必要じゃないか?」

 

吉田「俺が開発する。駆動系や金属加工には覚えがある」

 

─駆動系設計補助─ 吉田大成

 

村松「車体の色が薄いカーキなのも目立ちすぎるな」

 

岡島「戦場に紛れる色だからな。学校の景色に紛れないと標的に気付かれる」

 

菅谷「引き受けた。学校迷彩、俺が塗ろう」

 

─偽装効果担当─ 菅谷創介

 

前原「ラジコンは人間とはサイズが違う…。快適に走り回れるよう俺が歩いて地図を作ろう」

 

─ロードマップ制作─ 前原陽斗

 

岡島「よし、明日朝集まって試運転だ」

 

一同「おう!」

 

 

磯貝「……みんな、エロのことになると我を忘れるんだな」

 

渚「ほんとにゲスいね…」

 

新「これ…一応暗殺に使うんだよな…?」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

翌日──

 

女子のスカートの中を覗くために男子が集まった。

俺、渚、磯貝、千葉辺りは巻き込まれただけだが。

 

岡島、前原、吉田はそれぞれの役割を果たし、菅谷は完璧な学校迷彩を戦車に施してきた。

 

なんでこんなにも仕事が早いんだこいつら。

 

村松「お前ら、腹が減っちゃ開発()は出来ねーだろ。飯作ってきてやったぞ」

 

─糧食補給班─ 村松拓哉

 

 

岡島「よっしゃ!早速走らせるぞ!!」

 

磯貝「お前ら、一応言っとくが暗殺のための戦車だからな?」

 

岡島「わかってるって!」

 

渚「……なんでこういう時は誰も遅刻しないんだろ」

 

竹林「………律が起動する前に終わらせる必要がある。彼女を傷つけたくない」

 

渚「……う…うん…」

 

 

戦車は校庭の中を走っていく。

ロードマップのお陰でかなり走りやすそうだ。

 

その時、カメラの向こうから声が聞こえてきた。

 

『ん…?なんだこれ』

 

今の声……兄貴!?

 

三村「おい…今の」

 

岡島「ああ…!友の声だ。一体なぜだ…!?」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

今日、俺はいつもより早く学校に来て、時計型麻酔銃を優月に披露していた。殺せんせーに麻酔が効くかを試したいので、バレないように校舎裏でこっそりとね。

 

友「どーよこれ!『時計型麻酔銃』!!イトナと奥田に頼んで作ってもらったんだ!」

 

不破「凄い……!!ほんとに麻酔針出るの?」

 

友「おう!」

 

そう言って俺は時計を構え、スイッチを押す。

 

時計から麻酔針が打ち出され、近くの木に刺さった。

 

友「ほら!ちゃんと発射される!」

 

不破「凄い!探偵には必須の道具じゃん!」

 

友「そうだろ〜……ん?なんだこれ」

 

振り向くとそこには…小さな戦車があった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

《新 side》

 

いつもより早く出ていったと思ったら……。

 

前原「お、おい…まずくねーか」

 

兄貴は戦車を持ち上げた。

 

友『戦車?イトナかな……こっち側に来ないでくれよ?麻酔銃の練習するんだから』

 

兄貴は戦車を少し遠いところへ移動させ、再び麻酔銃の練習をし始めた。

 

岡島「…な、何とか無事で済んだな」

 

菅谷「ああ…」

 

前原「じゃあ…校舎裏方面じゃなくて森の方面に行ってみるか」

 

三村「なぁイトナ。こんだけ皆で改良に参加するんだ。機体に開発ネームでも付けたらどうよ?」

 

イトナ「……考えておく」

 

 

寺坂「おい!慎重に近付かねーとまた転ぶぞ!どけ、俺が替わる!」

 

イトナ(……最初から、ここから始めれば良かったのかな……)

 

 

前原「おいまたぶつかったじゃん!寺坂下手すぎ!」

 

寺坂「んだとォ!」

 

岡島「………ん?何だこの影」

 

戦車の目の前には……ニホンカワウソがいた。

 

 

前原「バケモンだぁぁぁ!!!!」

 

菅谷「に、逃げろ!!」

 

寺坂「いや撃て…!!」

 

戦車はカワウソに向かって発砲するが、全く効いていない。

 

木村「ダメだ!銃の威力が全然足りねぇ!」

 

岡島「ここも要改造だ!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

なんとか木村が回収しに行ったものの…戦車はボロボロになっていた。

 

岡島「次からはドライバーとガンナーを分担しないとな…射撃は頼むぞ。千葉」

 

千葉「お……おう」

 

─搭載砲手─ 千葉龍之介

 

イトナ「開発には失敗(ミス)がつきもの」

 

イトナは機体に、マジックペンで『糸成Ⅰ』と書いた。

 

イトナ「糸成一号は失敗作だ。だが、ここから紡いで強くする。100回失敗してもいい。最後には必ず殺す。よろしくな。おまえら」

 

前原「おうよ!」

 

殺意が結ぶみんなの絆。また楽しくなりそうだ。

 

岡島「よっしゃ!三月までにはこいつで女子全員のスカートの中を偵察するぜ!」

 

渚「趣旨が変わってるよ岡島君……」

 

片岡「スカートの中がなんですって…?」

 

岡島の後ろには、既に女子が複数名登校していた。

勿論、今の岡島の発言は聞かれている。

 

岡島「か、片岡ァ!?」

 

岡野「聞いてたわよ」

 

矢田「男子サイテー」

 

 

片岡「ちょっと…これ誰が言い出しっぺ?」

 

イトナ「岡島」

 

岡島「おい!!」

 

 

律「おはようございます!あ、岡島さん!歪み補正のプログラム出来てますよ!」

 

岡島「ちょ……!待ってくれ!俺だけじゃない!なぁ前原!」

 

前原「いや知らん。俺を巻き込むな(棒)」

 

岡島「汚ぇぞ!!」

 

 

磯貝「いいや。皆観念するんだな」

 

 

片岡「どっちみち…あんたら全員共犯ね?」

 

矢田・岡野「男子サイテー……」

 

 

岡島「い、いやこれは……!!」

 

友「岡島……」

 

岡島「ゆ、友……!?」

 

兄貴までやってきた。しかもちょっとキレてる。

 

友「女子全員ってさぁ…優月も含まれてんのかなぁ……?」ギロリ

 

姉貴のスカートが狙われてると知って粛清しようとしてんのか…。

さすが…恋人思いですこと。

 

 

不破「友君……同情の余地は無いよ」

 

友「おう。この時計型麻酔銃の出番だな」

 

岡島「ま、麻酔ィ!?」

 

友「えい」プシュッ

 

岡島「うぉっ……ふにゃぁ……」zzz

 

その後、岡島はしばらく熟睡した。

 

 

その後、兄貴は教室にやってきた殺せんせーに麻酔銃を撃ち、殺せんせーは避けることなく麻酔針を受けたが一切効かなかった。



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第62話 恋人の時間

《友 side》

 

友「優月。一緒に帰ろ」

 

不破「うん!」

 

今日も一日が終わり放課後。

 

いつも通り、優月と2人で帰っていた。

 

不破「凄かったね〜時計型麻酔銃!」

 

友「ああ。優月の分も頼んでみるか?」

 

不破「いいの?欲しい!」

 

友「じゃあ明日イトナと奥田に聞いてみるか」

 

不破「やったー!」

 

 

友「……なぁ優月。明日…うち来ないか?」

 

不破「えっ…!」

 

友「…その…俺ら、付き合ったじゃん?だから…お家デートって言うの?したいなって……///」

 

やばい…めっちゃ顔赤くなってる…。

 

不破「い、いいよ!じゃ…じゃあ私、直接友君の家行くから…待ってて!」

 

友「う、うん!わかった!」

 

不破「じゃ、じゃあ!私もう家着くし、帰るね…!////」

 

友「…おう!」

 

やばい…!

デート決まった……!!

 

なんだろ…今まで2人で出かけるとかあったけど、今までの数倍緊張する…!

 

 

不破(………学校ではなんとか意識しないように頑張ってたけど…お家デートって…あぁ…緊張する…!////)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

《不破 side》

 

……うん…。割とお洒落した方じゃないかな…。

緊張しすぎて何着ればいいのかわかんなくて…可愛いの選んでみたけど…。似合ってるかなぁ…これ。

 

うう…インターホン押すの緊張しちゃうなぁ…。

 

ピンポーン

 

鳴らしちゃった…。この待ってる時間が1番緊張するんだよなぁ…。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

ふぅ…。新に頼んで結構お洒落してみたけど…。

似合ってんのかな…。

新は似合ってるって言ってくれたけど、優月はどう思うかなぁ…。

ホントなら優月に買ってもらったやつ着たいけど、夏用だし…。

今日寒いし…。

 

ピンポーン

 

そうこうしてるうちにインターホンが鳴った。

 

優月かな…?早く出ないと……!

 

俺は急いで玄関に向かい、ドアを開けた。

 

 

不破「……友君。お…おはよう///」

 

ドアを開けると、優月がいた。

いつもの数倍可愛い……。

 

不破(友君……いつもの数倍カッコいい…///)

 

友「おはよう…。上がっていいよ」

 

不破「お、お邪魔します!」

 

ど…どうしよう。とりあえず服を褒めよう…!

 

友「…に、似合ってるよ!その服!」

 

不破「ほんと?似合うか心配だったんだよね…。私には可愛すぎる服かなって…」

 

友「似合ってる!凄く可愛い!」

 

不破「!!////」

 

や、やばい…。つい思い切り可愛いって言ってしまった!

は、はずい…。

 

不破「……友君も。その服…凄く…カッコいいよ//」

 

……!!!

 

友「ほんと?嬉しい!」

 

やばいやばい!緊張する…。

 

……緊張ほぐさないと…上手く話せない。

 

 

友「………とりあえずジャンプでも読むか」

 

不破「そ、そうだね!」

 

……緊張してお互い話せないとか…らしくないな。

 

いつも通りでいいんだ。いつもの様にジャンプを読んで、他愛も無い話して……。

 

それでいいんだ…。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《不破 side》

 

友君はいつもの様に2階へ向かおうとする。

 

ふと辺りを見渡すと、1階には大きいロビーやキッチンの他に2、3個部屋がある。

 

1階を自分の部屋にした方が楽な気がするんだけど…。

 

 

不破「ねぇ友君…。気になってたんだけど、1階にも沢山部屋あるよね?2階も、友君と新君の部屋以外にも色々…。他の部屋って何があるの?」

 

友「………」

 

友君の表情が曇った。

まずい……私、余計な事言っちゃったかも…。

 

友「…まだ話してなかったね。じゃ、折角だから部屋紹介するよ。1階から」

 

友君は2階に登る足を止め、1階の部屋へと向かった。

 

友「このロビーとキッチンは知ってるだろ?まずはこの部屋。書斎だよ」

 

扉を開けた先には、かなり多くの本が並んでいた。

 

小説や図鑑、絵本、漫画、歴史的な書物もある。

 

不破「凄い……」

 

友「元々叔父はこういうの集めるの好きだったからね。その後、残った親の遺品の書物もこの辺に入れてあるし…。俺も新も読まないからホコリまみれだけど」

 

不破「なんか…勿体ない感じするね」

 

友「そうなんだけど…。何せこんな沢山の本、少しずつ売っていっても5年くらいかかるし、一気には持ち出せないし…………まぁ最大の理由は虫が居そうで怖いからだけど」

 

友君らしいって言えば友君らしい……。

 

友「倉橋とか狭間辺りを呼ぼうか迷ったけど面倒くさくてやめた。ていうかあの二人一緒に呼ぶと温度差凄そうだなって」

 

不破「そ…そうなんだ。そういえば、私のお父さん古本屋経営してるんだけど…」

 

友「マジで?金はいいからこれ引き取ってくれないかな?」

 

不破「でも、大切な遺品でしょ?」

 

友「そうなんだけど、叔父が亡くなる前言ってたんだよね。凄く邪魔だって。実際俺らにとっても邪魔だし、誰かに読んでもらう方が幸せでしょ」

 

不破「じゃあ、今度紹介するよ!」

 

友「よろしく!じゃあ次の部屋行こう!」

 

 

次の部屋の中もかなりホコリが溜まっていた。

 

友「俺と新の部屋は、小さい頃叔父の家に遊びに言ってた時に俺が使ってたからあそこに決まったんだ。んで、ここは父が使ってたところ」

 

書斎に比べると少ないけど、それでも多くの本が並んでいる。

近くの段ボールには、友君のお父さんの遺品と思われるものが入っていた。

 

友「……前も言ったけど、両親かなり金持ちで、色んな所連れてってくれた。でも、その分色んな人に恨まれてたのかもな。俺の前では優しい父親だったけど…」

 

不破「友君…」

 

友君の表情はどこか悲しげだった。

 

まるで…幼い頃のお父さんとの記憶を思い出しているような……。

 

 

友「…次の部屋行こう。母の部屋だ」

 

 

友君のお母さんの部屋にはホコリは無かった。

 

パッと見不思議だったけど、中を見て納得した。

 

友君の家族のお仏壇があった。

 

友君のお父さん、お母さん、叔父さん、お爺さん、お婆さんの写真が飾られてあった。

 

こうして見ると…友君は多くの家族を失ってしまったんだな…。

 

友「………。俺…E組で皆と会えて良かったよ。もし会えてなかったら…俺は……」

 

友君の表情が段々弱々しくなっていく。

 

私は咄嗟に友君の手を取った。

 

不破「友君は1人じゃないよ…!私や、新君や、皆がいるから……!」

 

友「……優月……ありがとう。……父さん、母さん、爺ちゃん、婆ちゃん、叔父さん。俺さ…いい仲間に巡り会えたよ…。可愛い恋人も出来たし…。だからさ。天国で見ててね…」

 

友君は写真に向かって話し続ける。

 

私は…『可愛い恋人』と言われて赤面してしまった。

 

友「さ、1階はこれで終わり。2階に行こっか」

 

2階の階段を登り、辺りを見回すと、友君、新君の部屋以外に2つ部屋があった。

 

友「1つは…ご覧の通りなーんも置いてないよ。元々置いてあった叔父のものを移動させたからね。他と比べて掃除しやすいからここは結構綺麗だね」

 

本当に何も置いてないみたい……。

 

 

友「……もう1個は…叔父の部屋だよ。ここには、叔父だけじゃなくて、父や母、祖父母の遺品もいくつか置いてある……。よくここで遊んでたよ」

 

棚には何冊か本が並んでいて、レコードも置いてある。机にもメモ帳のようなものが乱雑に置かれていて、近くには蓄音機がある。

 

不破「このメモ帳って…」

 

友「父や叔父が書いてた日記だったっけな。俺は読んだことないから……ホコリまみれだな」

 

友君は1冊メモ帳を取り出して中を見始める。

 

友「かなり前のだけど、多分父の字だね。……ん?」

 

友君はペラペラとページを捲っていくが、途中で日記は終わっていた。

そして、少し気になったのか、白紙の数ページ前から読み始めた。

 

『×月×日 最近何者かに命を狙われている気がする。以前も似たような事があったな…。あの時の殺し屋は追い返したが、また私の命を狙いに来たのか…?私が死んだら家族が困るだろう……。ボディーガードをもう少しつけておこう。』

 

『×月×日 やはり誰かに見られているような気がする。ここのところ海外に行かず、この椚ヶ丘に定住していたせいで居場所がばれ、誰かが殺し屋でも雇ったかもしれない。人に恨まれる事が多い職業だから仕方がないか。』

 

『×月×日 妻にこの事を相談すると、自分も感じていたと言うではないか。もしかしたら、何者かは私だけではなく、妻まで狙っているのかもしれない。』

 

『×月×日 今度船で海外へ行くことになった。仕事で行く上、殺し屋が狙っているとなると迂闊に子供を連れては行けないが、友も新も行く気満々だ。無理もない。最近はどこも行かなかったからな。最後かもしれないし、連れて行ってやろう。』

 

『×月×日 新が高熱を出した。とりあえず、出かける間は父に見てもらおう。兄も友も残念そうにしている。船に乗るのは明日だと言うのに…。』

 

『×月×日 今日は船で海外へ向かう。もしかしたら今日が私と妻の命日になるかもしれないから、朝のうちに書き記しておく。もし私が死んだら、これを友と新は読んでくれるだろうか…。読んでくれると信じ、2人に何か書き残しておこう。

まずは友。私の自慢の息子よ。私が死んでも、健康で、楽しい人生を送ってほしい。沢山の友達と遊んだり、恋をしたり……普通の人生を送ってくれると嬉しいよ。

そして新。君と出会ったのは運命かもしれない。これからも、友と2人で仲良くしてくれると嬉しい。君にも普通の人生を送って欲しいし、君は人を笑顔にさせるのに長けている。そんな職業に就いてほしいなぁ。

2人とも私の愛する息子たちだ。

私たちよりも長生きしてくれよ。

いつでも見守っているからな。』

 

 

友君は、日記を読み続けた。

 

最後のページには、父親から友君、新君へのメッセージが綴られてあって…友君は瞬きもせずに見入っていた。

 

しばらくすると、友君は日記を閉じ、元の場所に戻した。

友君の目は…涙を浮かべていた。

 

友「……こんなことが書いてあるなら、もっと早く読んでおくべきだったな…。ごめんな父さん……思い出したら辛いからって…今まで手付けなくてさ…」

 

不破「…きっと、お父さんも天国で喜んでるよ」

 

友「……うん。ずっと…ずっと見守ってくれてるからね………うっ…うう…」

 

友君の目から涙が零れた。我慢していたんだ。私に…弱いところを見せたくないから。

 

不破「……友君、泣きたい時は泣いてもいいんだよ」

 

友「……うん……う…うあぁ……うわぁぁっ……!」

 

友君は…泣き崩れた。

いつもよりも弱々しく…。

 

私は…友君の手をそっと握った。

私に出来ることは、寄り添ってあげることしか無いから……。

 

 

 

しばらくすると、友君は泣き止んで…立ち上がった。

 

友「……ごめんな。折角のお家デートなのに…しんみりした雰囲気にしちゃって」

 

不破「そんな…私は全然気にしてないよ」

 

友「そっか……。ありがとうな。優月のお陰で、あの日記を読むことが出来たから」

 

不破「……私はね。今まで何回も友君に守ってもらったから。少しでも友君の力になりたいんだ。だから、何でも相談してね」

 

友「…ああ。ありがとう。……優月が俺の恋人で良かったよ…。これからもよろしくね」

 

不破「……!/// う、うん!///」

 

それから、2人でジャンプを読んだり、アニメを見たり、ゲームをしたりして……

 

時間が過ぎていった。

 

 

不破「あ…そろそろ帰らないと……」

 

友「じゃあ送るよ。夜道は危険だからね」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

不破家の近辺──

 

 

不破「今日は楽しかった!誘ってくれてありがとう!」

 

友「こっちこそ。優月のお陰で、日記読めたんだから。凄く感謝してるよ」

 

不破「じゃあまた学校でね!」

 

友「ああ。お互い頑張ろうな!」

 

私は家の中へ、友君は自分の家へと帰っていく。

 

 

 

 

 

私たちは、気付くべきだったのかもしれない。

 

私の家へと向かっている途中──

 

背後に『あの男』がいた事に。

 

 

 

???「………………。今回で決着をつけたいところだね……。

 

 

 

 

 

 

『真弓友』君……」

 

 





なんか不穏な雰囲気ですねぇ
でも『彼』が再登場するのはもう少し先かな?


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第63話 名前の時間

《友 side》

 

茅野「ジャ、ジャスティス!?……てっきり“まさよし”かと思ってた…」

 

茅野が驚くのも無理はない。

 

『木村正義』。E組一の瞬足として、暗殺には欠かせない生徒の1人だが、名前の読みは『まさよし』ではなく、『ジャスティス』という…所謂キラキラネームというやつだ。

 

木村「皆武士の情けで『まさよし』って読んでくれてんだよ。殺せんせーにもそう呼ぶように頼んでるしな」

 

菅谷「最初入学式で聞いた時はビビったよな……」

 

木村「卒業式でまた公開処刑されると思うと嫌ったらねーよ…」

 

木村の両親は警察官らしい。

正義感で舞い上がっちゃって付けられた名前だそうで…。

 

木村「親は『親のつけた名前に文句を言うとは何事だ!』って叩いてくるしよ……。子供がどんだけからかわれるか考えた事もねーんだろーな…」

 

狭間「そんなもんよ…親なんて」

 

狭間……。確かに狭間もぽくない名前だよな…。

 

狭間「私なんてこの顔で『綺羅々』よ。『きらら』!『きらら』っぽく見えるかしら?」

 

木村「い、いや……」

 

うん…正直全然見えない……。

 

狭間「うちの母親メルヘン脳のくせに…気に入らない事があったらすぐヒステリックにわめき散らす。そんなストレスかかる家で育って…名前通りに可愛らしく育つわけ無いのにね」

 

 

カルマ「大変だねー皆。ヘンテコな名前つけられて」

 

いや(カルマ)が言う!?!?

 

カルマ「あー俺?俺は結構気に入ってるよこの名前。たまたま親のヘンテコセンスが子供にも遺伝だろうね…」

 

木村「うーん…」

 

殺「先生も……名前については不満があります」

 

どっから湧いて出たタコ。

 

不破「殺せんせーは気に入ってるじゃん。茅野さんが付けたその名前」

 

殺「気に入ってるから不満なんです。未だに2名ほど…その名前で呼んでくれない者がいる」

 

烏間・イリーナ「………!」ギク…

 

ああ……気に入ってる名前を呼んでくれないのが不満だと…。

 

殺「烏間先生なんて私を呼ぶ時、『おい』とか『おまえ』とか…。熟年夫婦じゃないんですから!」

 

イリーナ「だって、いい大人が『殺せんせー♡』とか…正直恥ずいし……」

 

烏間「…………」

 

 

矢田「じゃあさ!いっそのことコードネームで呼び合うってのはどう?」

 

新「コードネーム…?」

 

矢田「そう!みんなの名前をもう1つ新しく作るの!南の島で会った殺し屋さん達さ、互いの事本名隠して呼びあってたじゃん!なんかそういうの殺し屋っぽくてカッコよくない?」

 

殺「なるほど良いですねぇ。頭の固いあの二人もあだ名で呼ぶのに慣れるべきです」

 

烏間・イリーナ「……………」

 

殺「それに、皆さんが親になった時の為に名付けセンスも鍛えられる」

 

それはどうだろうか……。

 

殺「こうしましょう。皆さん各自全員分のコードネーム候補を書いてもらい、その中から先生が無作為に一枚引いたものが皆さんの今日のコードネームです」

 

岡野「面白いけど、全員分考えるのか……」

 

村松「思いつきで適当に書いちまうべ」

 

 

殺「では今日1日…名前で呼ぶの禁止!!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

美術ノッポ「『野球バカ』!『野球バカ』!標的に動きはあるか!?」

 

 

菅谷創介 → 美術ノッポ (考案者:三村航輝)

 

杉野友人 → 野球バカ (考案者:ビッチ先生)

 

 

野球バカ「まだ無しだ『美術ノッポ』。『堅物』は今、一本松の近くに潜んでる」

 

 

烏間惟臣 → 堅物 (考案者:ビッチ先生)

 

 

野球バカ「『貧乏委員』チームが『堅物』の背後から沢に追い込み、『ツンデレスナイパー』が狙撃する手筈だ」

 

 

磯貝悠馬 → 貧乏委員 (考案者:前原陽斗)

 

速水凛香 → ツンデレスナイパー (考案者:岡島大河)

 

 

貧乏委員(よし…行くぞ!)

 

『貧乏委員』達が『堅物』に攻撃しようとしたが、『堅物』は物凄いスピードで間を駆け抜けて行ってしまった。

 

堅物「甘いぞ2人!包囲の間を抜かれてどうする!特に『女たらしクソ野郎』!銃は常に撃てる高さに持っておけ!」

 

 

前原陽斗 → 女たらしクソ野郎 (考案者:岡野ひなた)

 

 

女たらしクソ野郎「くっそ!逃がすか…!『キノコディレクター』!『神崎名人』!『ゆるふわクワガタ』!そっち行ったぞ!」

 

 

三村航輝 → キノコディレクター (考案者:菅谷創介)

 

神崎有希子 → 神崎名人 (考案者:竹林孝太郎)

 

倉橋陽菜乃 → ゆるふわクワガタ (考案者:前原陽斗)

 

 

ゆるふわクワガタ「任して〜!……あっ!方向変えた…!」

 

鷹岡もどき「『ホームベース』!『へちま』!『コロコロあがり』!」

 

ホームベース「おう!」

 

鷹岡もどき(…と地上に注意を引き付けて…!)

 

『鷹岡もどき』は『堅物』の背中に1発命中させた。

 

堅物(やるな…『鷹岡もどき』…!)

 

 

寺坂竜馬 → 鷹岡もどき (考案者:赤羽業)

 

吉田大成 → ホームベース (考案者:杉野友人)

 

村松拓哉 → へちま (考案者:堀部糸成)

 

堀部糸成 → コロコロあがり (考案者:吉田大成)

 

 

堅物「だが足りない!俺に対して命中1発じゃ到底奴には当たらんぞ!『毒メガネ』!『永遠の0』!射点が見えては当然のように避けられるぞ!」

 

 

奥田愛美 → 毒メガネ (考案者:寺坂竜馬)

 

茅野カエデ → 永遠の0 (考案者:村松拓哉)

 

 

永遠の0「く…気付かれた!そっちでお願い!『凛として説教』!」

 

凛として説教「OK!行くよ、『ギャル英語』と『性別』!!」

 

ギャル英語・性別「りょーかい!!」

 

 

片岡メグ → 凛として説教 (考案者:岡島大河)

 

中村莉桜 → ギャル英語 (考案者:磯貝悠馬)

 

潮田渚 → 性別 (考案者:中村莉桜)

 

 

堅物(……!今度は射手の位置を特定させない巧みな射撃だ。『凛として説教』の指揮能力だな。背後から距離を保って隙を伺う…『変態終末期』と『ジャンプ系主人公』と『名探偵ユヅキ』も中々のものだ)

 

岡島大河 → 変態終末期 (考案者:茅野カエデ)

 

真弓友 → ジャンプ系主人公 (考案者:不破優月)

 

不破優月 → 名探偵ユヅキ (考案者:真弓友)

 

 

メガネ(爆)(『中二半』が退路を塞いだ…。頼んだぞ!『ギャルゲーの主人公』!)

 

 

竹林孝太郎 → メガネ(爆) (考案者:三村航輝)

 

赤羽業 → 中二半 (考案者:狭間綺羅々)

 

千葉龍之介 → ギャルゲーの主人公 (考案者:竹林孝太郎)

 

 

ギャルゲーの主人公「………」

 

『ギャルゲーの主人公』は堅物へ発砲した…が、『堅物』は木の板を使い防いだ。

 

ギャルゲーの主人公「……!」

 

堅物「『ギャルゲーの主人公』!君の狙撃は常に警戒されてると思え!」

 

ギャルゲーの主人公(……わかってます。だから仕上げは俺じゃない……。『ジャスティス』…!!)

 

 

木村正義 → ジャスティス (考案者:殺せんせー)

 

 

『ジャスティス』が堅物の背中へ弾を数発当てたところで…今日の訓練は終了になった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

殺「で、どうでした?1時間目の訓練をコードネームで過ごした気分は」

 

一同「なんか…どっと傷ついた……」

 

 

ポニーテールと乳「誰よ…私の名前考えたの」

 

すごいサル「『すごいサル』って連呼された……」

 

 

矢田桃花 → ポニーテールと乳 (考案者:岡島大河)

 

岡野ひなた → すごいサル (考案者:前原陽斗)

 

 

永遠の0「ていうか…!私の名前考えた人誰よ!永遠の0ってどういう事よ!!」

 

へちま「……うっ」ギク

 

E組の闇「……あんたか」

 

 

狭間綺羅々 → E組の闇 (考案者:不破優月)

 

 

萌え箱「『萌え箱』とはどういう意味でしょうか?」

 

椚ヶ丘の母「そのままの意味じゃないかな……」

 

 

自律思考固定砲台 → 萌え箱 (考案者:寺坂竜馬)

 

原寿美鈴 → 椚ヶ丘の母 (考案者:吉田大成)

 

 

ビッチビチ「ちょっと!なんで私までこんな名前付けられなきゃならないのよ!!」

 

 

イリーナ・イェラビッチ → ビッチビチ (考案者:前原陽斗)

 

 

毒舌アイドル「おい『ジャンプ系主人公』……。俺の名前付けたのお前だろ……!」

 

ジャンプ系主人公「……なんの事かなぁ?」

 

 

真弓新 → 毒舌アイドル (考案者:真弓友)

 

 

毒舌アイドル「いいぜ…そっちがその気なら。『中二半』と『ギャル英語』に色んな情報リークしても…」

 

ジャンプ系主人公「頼む!それだけはやめろ!!」

 

あいつらに沢山の弱みを握られたら人生が終わる!!!

 

 

ジャスティス「殺せんせー。何で俺だけ本名のままだったんだよ」

 

殺「今日の体育の訓練内容は知ってましたから。君の機動力なら活躍すると思ったからです。さっきみたいにカッコよく決めた時なら…『ジャスティス』って名前でもしっくり来たでしょ?」

 

ゆるふわクワガタ「確かに〜」

 

ジャスティス「……うーん」

 

 

殺「安心のため言っておくと、君の名前は比較的簡単に改名手続きが出来るはずです。極めて読みづらい名前であり、君は既に普段読みやすい名前で通している。改名の条件はほぼほぼ満たしています」

 

ジャスティス「そうなんだ…」

 

殺「…でもね、もし君が先生を殺せたなら、世界はきっと君の名前をこう解釈するでしょう。『まさしく正義(ジャスティス)だ!地球を救った英雄の名に相応しい!』と」

 

ジャスティス「……!」

 

殺「親がくれた立派な名前に正直大した意味は無い。意味があるのは、その名の人が実際の人生で何をしたか。名前は人を造らない。人が歩いた足跡の中に、そっと名前が残るだけです。もうしばらくその名前…大事に持っておいてはどうでしょう。少なくとも暗殺に決着がつくときまでは……ね」

 

ジャスティス「……そうしてやっか」

 

 

 

殺「さて、今日はコードネームで呼び合う日でしたね。先生のコードネームも紹介するので、以後この名で呼んでください」

 

どんなコードネームだ?『タコ』とか?

 

殺「『永遠なる疾風の運命の皇子』………と」ドヤァ…

 

……は?

 

 

ジャスティス「1人だけ何スカした名前つけてんだ!」

 

毒舌アイドル「しかもなんだそのドヤ顔!!」

 

殺「にゅやっ!?いいじゃないですか1日くらい!!」

 

 

このあと殺せんせーは……

 

一同「『バカなるエロのチキンのタコ』!!」

 

と1日呼ばれた。

 

バカなるエロのチキンのタコ「えっタコ!?」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後──

 

ジャンプ系主人公「よ、『名探偵ユヅキ』。帰ろうぜ」

 

名探偵ユヅキ「そうだね…。……まさかだけどこの名前考えたの『ジャンプ系主人公』?」

 

ジャンプ系主人公「そうだよ。そっちこそ、この名前考えたのお前だろ?『名探偵ユヅキ』」

 

名探偵ユヅキ「バレてたか……」

 

ジャンプ系主人公「こんな名前付けそうなの他にいないしな。それにしても疲れた…。みんなのコードネーム覚えるのが1番辛かったぜ」

 

名探偵ユヅキ「……もう二度とコードネームで呼び合いたくないね」

 

ジャンプ系主人公「そうだな…。かなり酷い名前付けられてるやついたし」

 

名探偵ユヅキ「そうだね…永遠の0さんから凄く殺気出てたもん」

 

ジャンプ系主人公「………そういえば、そろそろ体育祭の時期だな…。まーた本校舎の奴らがなんか仕掛けてきそうだな…」

 

その予想は…後日的中する事になる────

 

 




最近コメントに返信出来てないんで…今後は極力返していきます!うん!頑張る!
忘れそうだけど!()


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第64話 体育祭の時間


もしかして…なんかいつもより長い?


《友 side》

 

放課後、今日は優月、陽斗、片岡、渚、茅野、岡島の6人ととある喫茶店に来ていた。

 

茅野「うーむ。イケメンだ」

 

茅野がイケメンだと評したのは、E組(うち)のリーダーで、前回の話で貧乏委員というコードネームを付けられた『磯貝悠馬』だ。

 

磯貝「いらっしゃいませー!あ、いつもどうも原田さん、伊東さん」

 

客「ゆーまちゃん元気〜?もうコーヒーよりゆーまちゃんが目当てだわこの店!」

 

磯貝「いやいや、そんなん言ったら店長がグレちゃいますよ。原田さんモカで、伊東さんエスプレッソWでしたよね。本日店長おすすめでシフォンケーキありますけど」

 

客「じゃあそれ2つ!」

 

磯貝「まいど!」

 

 

友「じつにイケメンだ…うちのリーダーは」

 

岡島「殺してぇ……」

 

皆それぞれいいところがある。

でも、E組一番のイケメンはと問えば、皆迷わず悠馬を選ぶだろう。

 

磯貝「お前ら粘るな…紅茶一杯で」

 

友「いーじゃんいーじゃん!」

 

前原「バイトしてんの黙っててやってんだからさ〜」

 

磯貝「はいはい。ゆすられてやりますよ。出がらしだけど紅茶オマケな」

 

渚・茅野・不破(イケメンだ……!!)

 

 

何よりその人格だろう。

陽斗やカルマのような危なっかしさも無く、友達には優しく、目上の人には礼儀正しく。

 

全ての能力がE組(クラス)内でもトップクラス。

どんな事でもそつなくこなす。

 

ほら、今も沢山の食器を運んでる。

 

片岡・岡島(あんなに一度に運べるなんて…イケメンだ!!)

 

不破「そういえば…磯貝君ってどうしてE組に落ちたんだっけ?成績も素行も悪くないし……」

 

友「ああ。椚ヶ丘中学校はバイト禁止だからな。それが原因で落ちたんだ。よく考えたらバイト禁止で芸能活動OKってどうなってんだ。設定ミスったな(←作者の本音)」

 

渚「友君……?」

 

 

客「なーに?またお母さん体調崩されたの?」

 

磯貝「ええまぁ…。うち母子家庭なもんで。俺も少しは家計の足しにならないと。前に一度、学校にバレてちょっと痛い目見ましたけどね」

 

茅野(イケメンだ!!)

 

 

前原「あいつの欠点なんて貧乏くらいだけどさ。それすらイケメンに変えちゃうのよ」

 

友「私服は激安店のを安く見せず清潔に着こなすしね」

 

一同(イケメンだ!!)

 

前原「この前祭りで釣った金魚食わせてくれたんだけど、あいつの金魚料理メチャ美味いし」

 

一同(イケメンだ!!)

 

前原「あとあいつがトイレ使った後よ……紙が三角にたたんであった」

 

片岡・茅野・不破(イケメンだ!!)

 

岡島「あ、紙なら俺もたたんでるぜ。三角に」

 

片岡・茅野・不破(汚らわしい!!)

 

友「見ろよ。あの天性のマダムキラーっぷり」

 

一同(イケメンだ!!)

 

渚「あ…僕もよく近所のおばちゃんにおもちゃにされる」

 

一同(シャンとせい!!)

 

前原「未だに本校舎の女子からラブレター貰ってるしよ」

 

一同(イケメンだ!!)

 

片岡「あ……私もまだもらうなぁ…」

 

一同(イケない恋だ!!)

 

 

殺「イケメンにしか似合わない事があるんですよ…磯貝君や、先生にしか」

 

一同(イケメ……………何だ貴様!?)

 

殺せんせー何でいるんだよ!お前教師だろ!?

 

殺「ここのハニートーストが絶品でねぇ。これに免じて磯貝君のバイトには目を瞑っています」

 

それでいいのか…?

 

殺「でも皆さん。彼がいくらイケメンでもさほど腹は立たないでしょ」

 

片岡「え?」

 

渚「うん…」

 

殺「それは何故?」

 

前原「何故って……だって、単純に良い奴だもんあいつ」

 

友「それ以外に理由いる?」

 

一同「うんうん」

 

 

その時、店のドアが開いた。

入ってきたのは……あの5人組…。

 

荒木「おやおやおや…?情報通りバイトをしてる生徒がいるぞ?」

 

小山「いーけないんだ〜磯貝君」

 

一同「!!!」

 

五英傑(浅野とその他)……!?

 

 

浅野「これで2度目の重大校則違反。見損なったよ磯貝君……」

 

 

磯貝「……浅野、この事は黙っててくれないかな?今月いっぱいで必要な金は稼げるからさ…」

 

浅野「…そうだな。僕も出来ればチャンスをあげたい」

 

…よからぬ事を企んでいる時の浅野は…本当に理事長そっくりだ。

 

 

浅野「ではひとつ条件を出そうか。闘志を示せたら、今回の事は見なかった事にしよう」

 

磯貝「……闘志?」

 

浅野「椚ヶ丘(うち)の校風はね。社会に出て闘える志を持つ者を何より尊ぶ。違反行為を帳消しにする程の尊敬を得られる闘志。それを示すには───」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

E組教室──

 

新「体育祭の棒倒し……?」

 

友「そ。A組に勝ったら目を瞑ってくれるんだと……」

 

全く……明らかに不公平な条件出しやがる……。

 

木村「でもさ、俺ら元々ハブられてるから棒倒しには参加しない予定じゃんか」

 

竹林「第一、A組男子は28人。E組男子は17人。とても公平な闘いには思えないけどね……」

 

友「浅野は『君らが僕らに挑戦状を叩きつけた事にすればいい。それもまた勇気ある行動として称賛される』だとか言ってたけどさ……」

 

寺坂「ケッ。E組(俺ら)に赤っ恥かかせる魂胆が見え見えだぜ」

 

二学期中間の前に潰しておこうって考えなんだろうけど……浅野のやつ、どんだけ俺らを痛めつけたいんだよ…。

 

杉野「どーすんだよ。受けなきゃ磯貝はまたペナルティだ。もう既にE組には落ちてるし、下手すりゃ退学処分もありえるんじゃね?」

 

 

磯貝「いや、やる必要は無いよ皆」

 

悠馬……!?

 

磯貝「浅野の事だから何されるか分かったモンじゃないし、俺が播いた種だから、責任は全て俺が持つ。退学上等!暗殺なんて、校舎の外からでも狙えるしな!」

 

 

一同「イッ…イケ……………

 

 

 

 

 

イケてねーわ全然!!!」

 

 

磯貝「ええ!?」

 

友「何自分に酔ってんだアホ毛貧乏!!」

 

磯貝「アホ毛貧乏!?」

 

 

 

前原「難しく考えんなよ。A組のガリ勉共に棒倒しで勝ちゃ良いんだろ?楽勝じゃんか!」

 

陽斗はそう言うと、対先生ナイフを机の上に立てる。

 

友「そりゃそーだ」

 

三村「むしろバイトが奴らにバレてラッキーだったね」

 

俺と航輝はナイフを掴んだ陽斗の手の上に、自分の手を乗せた。

 

寺坂「日頃の恨み、まとめて返すチャンスじゃねーか」

 

吉田「倒すどころかへし折ってやろーぜ!」

 

杉野「なぁイケメン!」

 

磯貝「……お前ら」

 

クラス全員がナイフに手を乗せる。

悠馬のために、クラスが一丸となったのだ。

 

磯貝「よっし…!やるか!!」

 

一同「おう!!」

 

 

殺(……普段の行いですねぇ。イケメンも高い能力も彼の一番の強みではない。決して傲らず、地味な作業も買って出て、自分の事よりクラスの調和を第一に考える。積み重ねて身につけたのが『人徳』。先導者(リーダー)には最も大事な資質です)

 

殺「どうれ。イケメン同士私も一肌脱ぎますかねぇ……」

 

 

 

友「…さて、やる事が決まった所で…気になってる事があるんだ」

 

前原「気になってること?」

 

友「ああ。浅野の本心だよ。あいつの事だ。徹底的に俺たちの事を潰しに来るはず。でも、浅野以外のA組の連中にそんな能力があるとは思えない。……もしかしたら、何か作戦があるのかもしれない」

 

磯貝「作戦か……」

 

友「イトナ。偵察頼めるか?」

 

イトナ「………ああ。丁度、2号が完成したところだ……」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そして、体育祭当日────

 

《100m走》

 

荒木『100m走はA、B、C、D組がリードを許す苦しい展開!!負けるな、我が校のエリート達!』

 

 

うーん……いつものアウェイ感。

 

E組って言えよ。木村頑張って走ってるだろ。

 

杉野「体育祭でも相変わらずだよな……」

 

岡野「でもいるじゃん。うちらにも味方が…」

 

 

殺「ふぉぉ!!カッコいい木村君!!もっと笑いながら走って!!ほら!ジャスティス!!」

 

 

不破「なんでこんな親バカなんだろう…」

 

友「国家機密が体育祭の応援来ていいのかよ……」

 

てか国家機密(トップシークレット)1番(トップクラスで)目立っちゃダメだろ…。

 

殺「ヌルフフフ。この学校は観客席が近くていいですねぇ。ド迫力を目立たずに観戦できます」

 

いや大分目立ってるよ。なんで目立ってないと思えるんだよ。

 

 

倉橋「でもトラック競技、木村ちゃん以外苦戦してるね〜」

 

新「2位は取るけど陸上部とかには中々勝てないな」

 

倉橋「暗殺訓練で自信ついてたんだけどな〜」

 

 

烏間「当然だ。100m走を2秒も3秒も縮める訓練はしていない。開けた場所で速く走るのは、それを専門に訓練してきた者が強い。君らも万能ではないということだ」

 

 

《パン食い競走》

 

烏間(だが、訓練の成果は思わぬ所で発揮される。例えば……)

 

パン食い競走……。

他の生徒は既にパンを食べようと頑張っている。

わぁ滑稽。

 

こんなもの、E組(うちら)の代表、『原寿美鈴』にかかれば…

 

原「…………!!」

 

原は勢いよくパンに食いついた!

 

岡島「うぉぉ!原さんやべぇ!!」

 

三村「足の遅さを帳消しにする正確無比なパン食い!」

 

烏間(まぁ…ああいうのだ)

 

荒木『しかしまだだ!完食しないとゴール出来ないルールだぞ!』

 

ふっ…うちの原を舐めてもらっちゃ困るぜ……?

 

原は咥えていたパンを……一口で呑み込んだ。

 

 

原「………飲み物よ。パンは」

 

一同(かっけぇ!!)

 

木村「やったな原さん!」

 

菅谷「異次元の食いっぷり!」

 

原「訓練の日々で食欲が増してしまってね。飲み物よ。パンは」

 

 

不破「凄いね…。皆意外なところで活躍してる」

 

友「ああ…。あ、そろそろ俺も行かないとか」

 

不破「頑張ってね!」

 

友「おう!」

 

 

 

殺「暗殺で伸ばした基礎体力、バランス力、動体視力、非日常的な競技でこそ発揮される」

 

 

《二人三脚》

 

……凄いな。陽斗と岡野。いがみ合ってるのに息ぴったりだ。

 

岡野「セクハラ!!」

 

前原「あぁ!?」

 

 

《障害物競走》

 

生徒「あのチビ、網抜けめっちゃ速え!」

 

生徒「体に抵抗が無いからだ!」

 

茅野「………」

 

茅野…障害物競走速すぎるだろ。

 

でもなんだろう。凄く可哀想になってくる。

 

 

 

 

殺「あのように各自の個性も武器になる。棒倒しでどう活かすか、それは君次第ですよ」

 

磯貝「…………」

 

 

《借り物競争》

 

さて、俺が出場するのは借り物競争。

 

ルールは、お題通りのものを持ってきて、早い人が1位!というシンプルなもの。

だが、今回の借り物競争は3つお題をクリアしないといけない。

 

1つ目のお題をクリアしたら2つ目のお題が出てきて、それをクリアしたら3つ目が……。

そして早く3つクリアした人が1位。

 

 

ふと、となりA組の女子生徒を見る。

すると……どこかで見た顔だ。

 

確か、転校生の『古見錦』…!

俺に殺気を向けてた…。

 

 

古見「……よろしくね真弓友…」

 

友「お…おう」

 

 

何なんだ…こいつ…?

 

総七「よ、友」

 

友「あれ……総七?!」

 

総七「俺も出ることになったんだよ。頑張ろーぜ」

 

友「こいつと一緒かよ……」

 

 

 

しばらくすると、スターターピストルが鳴った。

 

俺はお題の紙を1枚取り、中身を確認した。

 

『メガネ』

 

 

友「メガネ……か。竹林だな」

 

俺はE組の方へと行って、竹林を探す。

 

 

友「竹林ー!メガネプリーズ!」

 

竹林「メガネ…?それがお題かい?」

 

友「そゆこと!せんきゅ!」

 

 

俺は急いで審査員に紙とメガネを見せて、2つ目のお題をもらう。

 

審査員から直接渡されるため、E組は必然的に難しいのが来るだろう。

 

さて、2つ目のお題は……

 

『わさび』

 

いや難易度ハードだろ!?

 

『普通の奴』は持ってないぞ!?

 

 

 

……ま、うちには普通じゃないやつが揃いも揃ってるんだけどさ。

 

俺は急いでE組の方へ向かい……

 

 

友「やっほー!また来たよ!カルマいる?」

 

不破「カルマ君ならあそこで寺坂君にわさび食べさせようとしてるけど……」

 

友「おっけー!おいカルマー!そのわさびくれ!」

 

カルマ「なに?食べるの?」

 

友「食べねーよ!!借り物競争のお題なんだよ!」

 

杉野「借り物競争のお題が『わさび』って作ったやつどうかしてんだろ…」

 

 

 

俺は審査員に紙とわさびを見せた。

審査員はまさか持ってくるとは思わなかったんだろう。かなり悔しそうだ。

 

余程悔しかったのか、次のお題の紙にペンで何かを書き足した。

 

いや反則じゃね?

 

まぁ俺が今んとこぶっちぎり1位みたいだけど。

 

 

さて、どんな無茶ぶりかな…?

 

『クラスメイトの女子 お姫様抱っこで持ってくる』

 

………は?

 

この審査員…。

俺を羞恥心で殺そうってのか…?

 

まぁいい。その考え、ぶっ壊してやる!

 

俺はまたE組の方へと向かった。

 

友「おーい!優月!」

 

不破「えっ……私?////」

 

友「そ、クラスの女子をお姫様抱っこして持ってこいって。じゃ、いくよ」

 

不破「ふぇっ!?/////」

 

 

俺は問答無用で優月をお姫様抱っこして審査員の元へと向かった。

 

 

岡島「……すげぇなあいつ。よく出来るよな」

 

三村「いや、あいつも内心ではパニクってるよ」

 

前原「ポーカーフェイスは得意だからな…あいつ」

 

殺「………」パシャパシャパシャ

 

渚「殺せんせー、後で怒られても知らないよ…?」

 

カルマ「大丈夫っしょ」パシャパシャパシャ

 

中村「そーそー」パシャパシャパシャ

 

渚「皆撮りすぎでしょ!?」

 

 

 

不破「ゆ、友君!?こ、これ全校生徒が見てるんだけど…!///」

 

友「仕方ないだろ?お題なんだからさ。優月以外の女子選んだ方が良かった?」

 

不破「えっ…それはその………それは…嫌かな…///」

 

友「………っ!///」

 

その顔は反則級(チート)だろ……!!

 

何てことを思ってる内に審査員の前まで着いた。

まさか本当にクラスメイトの女子をお姫様抱っこしてくるとは思わなかったのか、開いた口が塞がらないみたいだ。

 

友「さ、お題3つクリアしましたよ。クリアでいいですよね?」

 

審査員「……い、1位……E組……」

 

 

荒木『なんという事だ!借り物競争でもE組が勝ってしまったーー!』

 

『なんという事だ』じゃねーだろ。

 

 

不破「ゆ、友君…そろそろ……」

 

そういえばお姫様抱っこしたまんまだった。流石にこれは俺でも恥ずかしい。

ていうかそうじゃん…。これ下級生含め皆見てたんじゃん。

うわぁ…これハッズ……!!!!!

 

総七「あいつ…やるじゃん……」ニヤニヤ

 

なんだろ。総七が腹立つ顔してくる。殴りてぇ…!

 

 

前原「カッコよかったぜ友!!」

 

中村「よっ!王子様!!」

 

友「やめろぉ!!///」

 

新「姉貴、顔赤いよ〜」

 

不破「姉貴って呼ぶのやめてくれる!?///」

 

 

うう…案の定E組の席に戻ったら弄られる…。

 

 

不破「うう……///」

 

友「ご、ごめんな優月。お題の為とは言えあんなこと…」

 

不破「べ、別に大丈夫だよ…!……少し嬉しかったし……///」ボソッ

 

友「ん?何て?」

 

不破「な、何でもない!!///」

 

 

 

菅谷「ふつーの体育祭だったら俺らがぶっちぎり優勝だけど…E組はほとんどの団体戦に出る権利ねーからな」

 

吉田「その分ラストの棒倒しに集中出来るぜ」

 

村松「おう」

 

 

片岡「棒倒しにさえ勝てれば…磯貝君のバイトの事は咎められない。お願いね、男子。腹黒生徒会長をぎゃふんと言わせてやって…」

 

男子の顔に…特に悠馬に緊張の色が隠せないのは、知ってしまったからだろう。勝負を仕掛けた浅野の本心と、本当の目的を。

 

 

《綱引き》

 

荒木『続いての綱引きはA組対D組!レディー……ゴッ…!?』

 

開始の合図と同時に、D組の生徒が宙に浮いた。

 

A組の綱を引く力があまりにも強すぎたのだ。

 

A組には…普通の生徒ではない、外国人の留学生が4人来ていたのだ。

 

荒木『A組は幸運に感謝すべきでしょう!たまたま偶然!この4人の外国の友人が研修留学に来ていた事に!』

 

たまたま偶然とはよく言うぜ……。

明らかに俺らを潰すために呼んだろそいつら…。

 

イトナ2号のおかげで既に留学生が来ることは偵察済みだったが…ここまで強大とは…!!

 

しかも、本当なら全部の作戦を聞きたかったけどA組が途中から体育館に移動したせいでそれ以上は探ることが出来なかった……。

 

 

磯貝「……殺せんせー、俺にあんな語学力は無い。俺の力じゃ、とても浅野には及ばないんじゃ……」

 

殺「……そうですねぇ。率直に言えばその通りです。浅野君を一言で言えば『傑物』です。彼ほど完成度の高い15歳は見たことがありません。君が幾ら万能と言えども、社会に出れば君より上はやはりいる。彼のようなね」

 

磯貝「……どうしよう。俺のせいで、皆が痛めつけられたら」

 

 

 

殺「……でもね、社会において1人の力では限度がある。仲間を率いて戦う力。その点で君は浅野君をも上回れます」

 

磯貝「……!」

 

殺「君が劣勢(ピンチ)に陥った時も…皆が共有して戦ってくれる。それが君の人徳です。先生もね、浅野君よりも君の担任になれたことが嬉しいですよ」

 

磯貝「………!!」

 

 

不破「友君…気をつけてね」

 

友「……ああ。よし、行こうぜ?悠馬(リーダー)!」

 

 

 

 

磯貝「…ああ!よっし皆!!いつも通り、殺る気で行くぞ!!」

 

E組男子「おう!!!」

 

 



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第65話 リーダーの時間

 

磯貝「よっし皆!!いつも通り殺る気で行くぞ!!」

 

E組男子「おう!!」

 

 

ついに、A組 VS E組の…棒倒しが開幕する!!

 

実況『両者整列!椚ヶ丘中体育祭棒倒しのルール説明!相手側の支える棒を先に倒した方が勝ち!掴むのは良いが殴る蹴るは原則禁止!武器の使用も勿論禁止!例外として、棒を支える者が足を使って追い払うのや、腕や肩でのタックルはOKとする!なお、チームの区別をする為、A組は帽子と長袖を着用すること!』

 

 

帽子って………。

 

友「あれヘッドギアだろ……」

 

岡島「要するにあっちだけ防具ありか」

 

確実に潰しに来てんな…。

 

 

磯貝「……行くぞ!『完全防御形態』!!」

 

─E組初期陣形─ 完全防御形態

全員が防御に回り、攻められてもビクともしない無敵状態!

 

 

実況『おっと!?E組ガチガチの全員守備!戦力差に今更ビビったか?』

 

 

A組の方は……アメリカの留学生が小隊引き連れて来るな。つーか明らかに体格おかしいだろあれ。

 

…多分向こうは俺らが普通のカウンターを狙ってると思ってるな。だからアメリカでビビらせてボコボコにするって算段だろう。

 

アメリカがこっちに駆けてくる。

あんなの普通の人がまともに受けたらひとたまりもねぇな。

 

吉田「くっそ!」

 

村松「無抵抗でやられっかよ!!」

 

吉田、村松の2人がアメリカに向かって走っていく。

 

しかし、アメリカタックルにより2人は観客席までぶっ飛ばされてしまった。

 

実況『まずは2人ーー!』

 

 

新「……なんて威力だ」

 

木村「客席まで10mあんのに…」

 

 

茅野「や、やばいよ殺せんせー!」

 

不破「どんなに固まってても、1人ずつ吹っ飛ばされたら意味無いよ…!」

 

 

 

アメリカ[亀みたいに守ってないで攻めたらどうだ。フン。と言っても通じないか]

 

流石アメリカ人……。流暢な英語使うぜ。

 

カルマ[いーんだよこれで…]

 

新[今の2人はE組の中でも最弱って感じだよ]

 

カルマ[ごたくはいいから攻めてくればぁ?]

 

お前らも流石だよ…。よくそんな会話できるな…。

 

 

アメリカ達はその言葉を聞いて、俺たちに掴みかかろうとする。

 

磯貝「今だ皆『触手』!!」

 

棒を守っていた数名が飛び上がり、アメリカ共を上から押さえ込む。

 

E組陣形……『触手絡み』…!!

 

実況『E組、上からかわして押さえこんだ!さ、さらに…自軍の棒をなんと自ら半分倒して、棒の重みでガッチリ固めた!!』

 

掟破りの自軍の棒倒し……!!

流石の浅野でも想定外だろ!

 

寺坂「棒を凶器に使うななんてルールは無いからよ!」

 

 

実況『しかし、すかさずA組温存部隊が救援に行く!いよいよ激戦も本格化か!?』

 

 

A組が両サイドから攻めてきた……!

 

磯貝(……真ん中に隙がある。攻めるなら敵戦力が分散してきた今しかない…!)

 

 

磯貝「よし出るぞ!攻撃部隊!!作戦は『粘液』!」

 

前原・友・岡島・木村・新・杉野・カルマ「おう!」

 

 

実況『おおっとE組ここで攻める!たった8人で中央突破だ!これを見たA組、E組を追って防御に戻る!』

 

 

杉野「な、何!?」

 

岡島「攻撃はフェイクかよ…!」

 

磯貝「……行くぞ皆!作戦決行だ!!」

 

 

烏間「まるで詰将棋だ。守備陣があれほど完璧に抑えたのに、戦況はどんどん不利になる一方だ……。こちらはどうする。彼らが負傷するのは防衛省としても避けたいぞ」

 

殺「ヌルフフフ。大丈夫ですよ。社会科の勉強がてら助言しました。『作戦の全てに常識外れを混ぜなさい』とね」

 

 

メガネのモブ(高田)「お、囲まれた囲まれた〜」

 

ニキビのモブ(田中)「さぁリンチタイムだ……ってん?………なんで全員こっち来んの!?」

 

E組陣形 『粘液地獄』!!

 

客席に逃げ込み、混乱を招く!!

 

カルマ[来なよ。この学校全てが戦場だよ]

 

 

実況『なんとE組、客席まで逃げ始めた!!それを追うA組で会場は大パニック!かわす!かわす!かわし続ける!椅子と客を器用に使って逃げ回るE組!客席はカオス状態だ!』

 

浅野(……体育祭の動きを見ている限り、E組の運動能力はやたら高い。その中でもあの8人は上位に入る。逆に言えば、あいつらさえ押さえ込めばもうE組は何も出来ない!)

 

 

 

渚(…野球の時と同じだ。棒倒しとはとても言えない異形の棒倒し…)

 

寺坂「…見ろよ。渚」

 

渚(ただ、全校生徒の目が変わり始めているのを感じた。『今度のE組らどんな手で勝つ気なのか』という、興味の視線に)

 

 

浅野「…橋爪!田中!横川!深追いせず守備に戻れ!混戦の中から飛び出す奴を警戒するんだ!」

 

 

浅野(棒倒しで最も危険な敵の攻撃は、先端に取りつかれる事だ。揺さぶられると少人数でも棒が不安定されてしまう。あの8人でその攻撃が可能なのは……前原、杉野はスピードはあるが加速が遅い。岡島も良い動きではあるが、この8人の中では劣る。真弓友は反射神経はあるがスピードにやや欠ける…)

 

 

浅野「磯貝、木村、赤羽、真弓新の4人は特に注意だ!その位置で見張っていろ!」

 

 

 

殺「親譲りですねぇ。浅野君は。敵味方の能力、そして戦況をよく把握している」

 

 

 

浅野(…この棒倒しが異形になるのも想定済み…。E組の目的はA組の棒を倒す事。A組の目的はE組を潰す事。ゴールが違う……。A組はいざとなれば、E組の棒も数に任せて容易く倒せる。棒を倒されて敗北しても、磯貝は校則違反を告発され路頭に迷う。それが嫌なら攻める指令をみんなに出せ…。鉄壁の防御で全員まとめて潰してあげよう。選ぶのは君さ…E組リーダー!!)

 

 

磯貝「…!」

 

友「悠馬!そろそろじゃないか!?」

 

磯貝「ああ!」

 

 

E組の作戦の土台になったのは、椚ヶ丘中の名物『観客席の近さ』だ。どの競技も一番迫力がある距離で観戦できる。この学校の粋な所だ。

 

それを利用した客席に逃げ込む戦術と、そして…次の手だ。

 

 

A組「おいどうなってるあっち」

 

A組「うーん…素早いなあいつら」

 

A組の防御が俺らに釘付けになっている隙に……観客席から、吉田と村松の2人がA組の棒へ!!

 

浅野「何……!?」

 

実況『なっ!?ど、どこから湧いた!?いつの間にかA組の棒にE組2人が…!?』

 

 

浅野(こいつら、序盤でぶっ飛ばされた…!?)

 

吉田「ヘッ…受け身は嫌ってほど習ってっかんな!」

 

村松「客席まで飛ぶ演技だけが苦労したぜ!」

 

2人には負傷退場のフリをして別動隊になってもらい、客席の外側から忍び寄ったのだ!A組全員の注意が逆サイドの乱闘に向いた隙にな!

 

磯貝「今だ…!逃げるのは終わりだ!!全員『音速』!」

 

前原「よっしゃあ!!」

 

俺たち攻撃部隊8人はA組の棒へと向かう。

 

そして、飛びかかる!!

 

実況『E組、A組の懐に入ったーー!』

 

 

前原「どーよ浅野!どんだけ人数差あろうがここに登っちまえば関係ねー!」

 

そう…!無理に引きはがそうとすれば棒まで倒れる…!

 

 

その時、浅野は自らのヘッドギアを投げ捨てた。

 

そして、浅野は吉田の腕を掴み、そのまま棒の下へと落とす。

 

更に岡島に向かって蹴りを入れ、棒の下まで吹き飛ばした。

 

友「吉田……!岡島……!」

 

実況『な、なんと浅野君!一瞬で2人落とした!!』

 

浅野「君達如きが僕と同じステージに立つ……。蹴り落とされる覚悟は出来ているんだろうね……」

 

浅野はバランスを崩すことなく俺らに攻撃を続ける。

俺らは防御で一杯で棒を倒す所ではない……!

 

 

 

速水「……やばい。詰みかけてる。客席に散ってたA組も戻りつつある。このままじゃ囲まれてリンチだよ」

 

矢田「そんな…!」

 

不破(友君………!!)

 

 

殺(1人で戦況を決定づける強いリーダー。彼が指揮をとる限りA組は負けない。磯貝君はそういうリーダーにはなれないでしょう。なぜなら、君は1人で決めなくてもいいのだから)

 

悠馬は浅野によって棒の下へと落とされてしまう。

 

しかし、その悠馬の背中を踏み台として使い、新たに4人…守備部隊の渚、航輝、千葉ちゃん、創ちゃんが棒にしがみついた。

 

 

浅野「何……ッ!?」

 

 

A組「ちょっと待て!?あいつら守備部隊だぞ!?」

 

A組「ってことは、E組の守備は2人だけ!?どーやって押さえてんだあれ!」

 

そう。現在アメリカ達を押さえているのは竹林と寺坂だけだ。

 

竹林「……梃子の原理さ」

 

生徒「……梃子なのか?」

 

生徒「梃子なら…そうなのか?」

 

 

寺坂「梃子って言っときゃ案外どいつも納得すんな」

 

竹林「もちろん方便さ。さすがに2人で5人も押さえるのはちょっと無理だ」

 

寺坂「だろうな」

 

竹林[でも君たちは抜けれるけど動けないよね。5対2なら棒が簡単に倒せてしまう。けど、君たちの第一目標はE組全員を潰す事だろ?棒を倒す指示はまだ出てないはずだ……。指示を出せる君らの司令塔(リーダー)は、今ちょっと忙しそうだ。浅野君だからまだ何かすごい作戦があるのかもね…。迂闊に動かず大人しく指示を待ってた方が懸命だろうね]

 

アメリカ[このメガネ腹立つ!!]

 

 

 

浅野(指示が……出せない…ま、負ける……!?)

 

友「もう落とさせねぇし…指示も出させねぇよ…!」

 

小山「慌てるな!支えながら1人ずつ引き剥がせ!」

 

実況『A組も防御の姿勢が整ってきた!!ここさえ耐え切ればE組に打つ手は無いはず!』

 

磯貝「今だ…!来いイトナ!!」

 

 

友「秘密兵器は…最後まで取っておくものだ!!」

 

 

イトナは磯貝を踏み台にして高く飛び上がった。

 

そして、A組の棒の先端にくっつき……

 

 

そのまま……

 

勝利(ゲームセット)

 

 

E組男子「よっしゃぁぁ!!!」

 

 

友「やったな悠馬…!」

 

磯貝「ああ!皆のお陰だ!!」

 

 

茅野「す、すごい!!」

 

中村「本当に勝った……!」

 

殺「ヌルフフフ……E組の大勝利ですねぇ…」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

後輩「磯貝先輩〜!カッコよかったです〜!」

 

磯貝「おーありがと!危ないからマネすんなよ」

 

木村・菅谷「クソ…イケメンめ……」

 

悠馬大人気だなー……。今回のでもっと好感度上がったんじゃね?

 

前原「でもよ、本当空気変わったよな。特に下級生中心にE組見る目が」

 

村松「当然だべ。こんだけの劣勢引っ繰り返して勝ったんだからよ」

 

 

岡島「へへ、なんか俺ら…マジですげーのかもしんねーな!」

 

初めの頃、俺を含めて皆…自分たちが『エンドのE組』で、色々と諦めてた。

でも、暗殺を通して…ここまで強くなれた。

自信を持った眼になった。

 

これなら、殺せんせー暗殺も夢じゃないかもしれない。

 

 

 

 

原「……あっ。浅野君だ…」

 

前原「……おい浅野!二言は無いだろうな?磯貝のバイトの事は黙ってるって」

 

 

浅野「……僕は嘘をつかない。君達と違って姑息な手段は使わないからだ」

 

前原(よく言うよ……山ほど姑息を使っといて…!!)

 

 

磯貝「でも、流石だったよお前の采配。最後までどっちが勝つか分からなかった。またこういう勝負しような!」

 

浅野「……消えてくれないかな。次はこうはいかない。全員破滅に追い込んでやる」

 

 

 

寺坂「ケッ負け惜しみが」

 

中村「いーのいーの。負け犬の遠吠えなんて聞こえないもーん」

 

竹林「彼も君と同じく苦労人さ磯貝。境遇の中でもがいてる」

 

磯貝「…俺なんて、あいつに比べりゃ苦労人でも何でもないよ。皆の力に助けてもらった今日なんかさ、『貧乏で良かった』って思っちゃったよ」

 

渚(浅野君のような派手さはない。けど、さらっと目立たずチームを勝利に導いていた。前でも上でもなく、磯貝君は気がつけば横にいる。リーダーでイケメンな暗殺者だ)

 

 

 

 

不破「凄かったね友君!」

 

友「……ああ」

 

不破「……?友君…大丈夫?なんか……フラフラしてるけど…」

 

優月に言われて気がついた。何故かフラフラしてしまう。眠気も凄い。

 

不破「ちょっといい…?」

 

優月は俺の額に手を当てた。

 

不破「ちょ……凄い熱だよ!?早く休まないと……」

 

友「あ、ああ……」

 

頑張りすぎだろうか…自分で額を触ってみても確かに熱い。どうやら本格的に風邪をひいたようだ……。

 

 

 

そしてこの後、数日間欠席する事になってしまった。

 

勿論、ゲームも出来ない。

 

こんなのあんまりだぁ!!

 



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第66話 間違う時間

《新 side》

 

殺「さぁさ皆さん!二週間後は二学期の中間ですよ!!いよいよA組を越える時が来たのです!熱く行きましょう!!熱く!!熱く!!」

 

新「暑苦しい!!」

 

浅野の体育祭の罠もかわしきり、

俺たちは全力で中間テストに集中出来る。

なんか1名休んでるけど()

 

……一方で、

どこか皆落ち着かない様子だった。

殺せないまま…

勉強の時間だけが過ぎていく。

 

焦りの10月。

殺せんせーの暗殺期限まで、あと5ヶ月!

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一方その頃───

 

《友 side》

 

……あれから大分良くなってきた。

 

勉強も捗るようになってきている。

 

とりあえず今日病院に行って診察してもらおう。

一日でも早く復帰したいからね。

 

殺「友君!」

 

……ん?窓からなんかタコの声が……

 

友「ってなんでいんの!?」

 

殺せんせーが窓に張り付いてた…。気持ち悪い。

 

 

殺「体調はどうですか!」

 

友「え…あ、ああ。この通り大丈夫だよ。今日病院に行ってもう行って良さそうか見てもらおうかなと…」

 

殺「なるほど!では行きますか!」

 

…へ?

 

友「行くって…?」

 

殺「病院です!マッハで連れて行ってあげましょう!」

 

友「は?ちょ、待って?」

 

殺せんせーは触手で俺を掴み、自分の服の中へ入れる。

 

友「嘘!?マジで連れていく気かよぉ!!」

 

殺「ゴー!!!!」ビュン

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

そして、殺せんせーはガチで病院まで連れて行ってくれた。

診察結果を待っている間、救急車の音がした。

 

ま、病院なんだから当たり前なんだけどね。

 

 

 

 

診察が終わり、病院を出るとそこには烏間先生がいた。

周囲には防衛省の人と思われる人達もいる。

 

烏間「……!友君…」

 

友「烏間先生…?なんですかこれ…こんな人集まって……」

 

烏間「…実は────」

 

 

 

友「えっ……?老人に怪我を…?」

 

E組数名が街中でフリーランニングの練習をして、老人に衝突、怪我を負わせてしまったと言う。

 

烏間「ともかく、君は帰って…」

 

友「……いや、僕も残ります」

 

烏間「………!わかった…」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数十分前───

 

《不破 side》

 

岡島君に連れられて、私たちE組数人はE組の山の端っこに来ていた。

 

不破「ここは……?」

 

岡島「すげー通学路を開拓したんだ。ここからフリーランニングで建物の屋根を伝ってくとな、ほとんど地面に降りずに隣駅の前まで到達出来る!ただ通学するだけで訓練になる。今日から皆でここを行こうぜ!」

 

倉橋「え〜……危なくない?もし落ちたら…」

 

片岡「そーだよ…。烏間先生も裏山以外でやるなって言ってたでしょ?」

 

うーん……。危険な気はするけど、でも暗殺のスキル高めたいし……。友君の事を守れるくらい強くなりたいって思いもあるし……。

 

岡島「へーきだって!行ってみたけど難しい場所はひとつも無かった!鍛えてきた今の俺らなら楽勝だって!」

 

磯貝「うーん…」

 

前原「いいじゃねーか磯貝!勉強を邪魔せず暗殺力も向上出来る!2本の刃を同時に磨く!殺せんせーの理想とするところだろ!」

 

杉野「……良いかもな!」

 

渚「うん」

 

 

岡島「よっしゃ!先導するぜついてこい!」

 

前原「おう!」

 

中村「不破ちゃん、私達も行くよ!」

 

不破「う、うん…!」

 

 

岡島君を先頭に、木村君、前原君、寺坂君、吉田君、村松君、岡野さん、千葉君、速水さん、渚君、杉野君、三村君、菅谷君、矢田さん、片岡さん、磯貝君、中村さん、そして私の18人がフリーランニングで駆け抜けていく。

 

でも、確かに今の私たちなら楽勝な気がする…!

 

前原「うは!きもちー!」

 

三村「楽勝だな!」

 

岡島「だろ?体育祭でわかったろ!?もう俺ら、一般生徒とは段違いなのよ!」

 

棒倒しでE組は、訓練の日々で身につけた力でヒーローになった。本校舎生徒も少しずつ私達E組の事を認め始めてる……。

 

どんどん出来る事が増えている……!

これなら暗殺だって…!!

 

 

木村「よっしゃ一番乗りゴー………ル…!?」

 

岡島「えっ…!?」

 

その時、ガシャンとすごい音がした。

 

不破「え……?!」

 

下を見ると、お爺さんが横たわっており、岡島君や木村君達がお爺さんを見て呆然としている。

 

音と現場の状況から察するに……

 

一番乗りで下に降りた岡島君と木村君が、丁度路地裏を自転車で通っていたお爺さんに衝突してしまった……。

 

 

花屋「い、今の音何があった!?……た、大変だ!救急車を……!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

病院に着くと、既に烏間先生達がいた。

 

そして……友君も。

 

 

友君は何も言わずに壁に寄っかかっている。

 

私達も……誰も、何も話さなかった。

 

 

烏間「……右大腿骨の亀裂骨折だそうだ。君らに驚きバランスを崩して転んだ拍子にヒビが入った。程度は軽いので二週間ほどで歩けるそうだが、何せ君らのことは国家機密だ。口止めと示談の交渉をしている。頑固そうな老人だったが、部下が必死に説得中だ」

 

……とんでもない事をしてしまった…。

 

その時、後ろから寒気が…。

殺せんせーだ…。

 

顔は真っ黒になっている…。

怒っている……。

 

 

磯貝「こ…殺せんせー……」

 

岡島「だ、だってまさか…あんな小道に荷物いっぱいのチャリに乗ったじーさんいるとは思わねーだろ!」

 

岡野「そーだよ……」

 

矢田「もちろん悪い事したとは思ってるけど……」

 

中村「自分の力磨くためにやってたんだし…」

 

寺坂「地球を救う重圧と焦りが…テメーにわかんのかよ」

 

 

……私は何も言えなかった。

ただ…俯くことしか出来なかった。

 

その瞬間……頬に衝撃が走った。

 

殺せんせーが…私達をビンタしたんだ。

 

 

殺「……生徒への危害と報告しますか…烏間先生?」

 

烏間「……今回だけは見なかった事にする。暗殺期限まで時間が無い。危険を承知で高度な訓練を取り入れたが…やはり君らには早すぎたのかもしれん。俺の責任だ」

 

烏間先生はそう言うと、病院の中へと歩いていく。

 

 

一同「……ごめんなさい」

 

私を含めて、皆…小さな声で言った。

 

殺「……君たちは、強くなりすぎたのかもしれない。そのために、身につけた力に酔い、弱い者の立場に立って考えることを忘れてしまった。それでは本校舎の生徒と変わりません」

 

叩かれると痛くて悔しい……だけど、返せる言葉がひとつも無かった。

 

これが…『間違う』ってことなんだ…。

 

殺「……話は変わりますが、今日からテスト当日まで丁度二週間…クラス全員のテスト勉強を禁止します」

 

一同「!?」

 

ど、どういうこと…!?

 

殺「罰ではない。テストより優先すべき勉強をするだけです。教え忘れた先生にも責任がある。まずは被害者を穏便に説得します」

 

そう言って、殺せんせーはマッハでどこかへ行ってしまった。

 

 

また、皆何も話さず……沈黙が続いた。

 

その時、今まで一言も発さなかった友君が口を開いた。

 

友「……『力』や『強さ』ってのはさ、使い方を間違えると凶器にもなってしまう物だ。間違った使い方をしていても、自分ではそれが正しい使い方をしていると思い込んでしまっている。それが『間違い』であると自分だけで気付くのは難しいんだ…。

俺も、『自分を犠牲にしてでも皆を守る』って考えは間違いだって、自分では気付けなかった。皆に気付かされたんだ。

……今回、皆は『力』、『強さ』の使い方を間違えたかもしれない。でもさ、良かったんじゃないかな。結果的に…今の自分達が間違っているって事に気付けたんだから。

人間…皆間違えるんだよ。間違えない人なんていない。大切なのは、間違いだと気付いて、反省して、次へ繋げる事だと思うよ」

 

 

不破「…友君……ごめん…なさい」

 

無意識に…言葉が出た。

皆も、私に続いて口々に謝罪を言う。

 

 

友「……謝る相手…違うだろ?俺でも、先生達でもない」

 

友君は病院内へと歩いていき、途中で振り返った。

 

友「ほら行くよ。こうなったら連帯責任だ。俺も一緒に謝りに行く。さ、早く」

 

 

不破「……う、うん…!」

 

友君に続いて、私達も病院内へと入っていく。

 

そして、怪我を負ってしまった『松方さん』の病室へと入った。

 

殺「おや来ましたか皆さん……。保育施設を経営している松方さんです。まずはしっかり謝りましょう」

 

一同「……ごめんなさい…」

 

皆頭を下げて謝る。友君も…深く頭を下げていた。

 

 

殺「プロの殺し屋である以上、君たちは責任のある1人前の人間だ。訓練中の過失には君達自身が責任を持つべきです。治療費ばかりは烏間先生に払ってもらう外ありませんが……慰謝料と仕事を休む分の損害は、君達が支払いましょう」

 

 

前原「……支払うって…どうやって?」

 

殺「要するにタダ働きです。この人の職場をクラス全員で完璧に手伝いなさい。二週間後、松方さんが歩けるようになった時点で、賠償分の働きぶりが認められれば、今回ので事は公表しないでくれるそうです」

 

 

松方さん「……ワシのところは大変だぞ。保育所から学童保育まで手広くやっとる。お前たちにつとまればいいがな……」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

あの後、皆それぞれ解散した。

 

私も…誰かと帰る気力は無かったから、1人で帰ろうとした。

 

友「優月!」

 

帰ろうとした時、友君に呼び止められた。

 

友「……そんな暗い顔すんなよ。間違える事なんて誰でもあるって言ったろ?」

 

不破「……でも…」

 

友「……焦るのは分かるよ。俺だって、あの場にいたら一緒にやってただろうし」

 

不破「………」

 

友君は…私を元気付けるために優しい言葉をかけてくれてるけど、私にとっては…それが辛かった。

 

辛さに耐えかねて…涙が零れてしまう。

 

友「ちょ…優月…!?」

 

不破「ごめん…私……」

 

友「……大丈夫だって。俺が間違えた時、皆が教えてくれた。次は…俺の番ってだけの話だからさ」

 

不破「うん……」

 

 

友「ほら涙拭いて。家まで送るからさ」

 

不破「ありがと…友君…」

 

友「……当然だろ?彼氏なんだからさ」

 

友君は私を抱きしめた。

 

私は…凄く嬉しかった。

 

そして誓った。もう間違えたりしないって。

 

きっと…今回の件で皆が思っている。

 

 

殺せんせーと友君の言葉のお陰で…。

 

 



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第67話 ビフォーアフターの時間

《友 side》

 

翌日、E組全員で松方さんが経営している保育施設、『わかばパーク』へと向かった。

 

保育士「みんなー!園長先生はお怪我しちゃってしばらくお仕事出来ないの」

 

子供「えーっ!」

 

子供「園長先生かわいそ〜」

 

保育士「代わりにね、このお兄ちゃんお姉ちゃん達が何でもしてくれるって!」

 

子供「はーい!」

 

 

思ったよりも子供いるな……しかもほとんどの子が元気いっぱいだ。

 

狭間「全く……何で私ら無関係の生徒まで連帯責任かねぇ…」

 

子供「まじょだ〜」

 

子供「まじょ〜」

 

狭間…子供にまじょ呼ばわりされてる…。

 

寺坂「面目ねぇ…」

 

狭間「すっごい噛みつかれてるよ」

 

子供まで寺坂に対して敵意抱くのか…。

 

 

原「私達ももっちりとビンタされたよ。全員平等に扱わないと不公平だからって」

 

ちなみに俺もされた。なんか変な感触だった。

 

岡島「ごめんよ…」

 

神崎「気にしないで。他人に怪我とか予測出来なかった私達も悪いし」

 

狭間「そーね。私にも監督責任あるかもね。こいつら面白サーカス団の調教師として」

 

吉田・村松「あぁ?」

 

 

竹林「ま、勉強なんて家でこっそりやればいい。E組(クラス)の秘密を守るための二週間労働か。賞金に対する必要経費(コスト)と思えば安いものさ」

 

竹林………。

 

友「パンツ一丁じゃなきゃいい事言ってくれてるんだが」

 

不破「中々やんちゃな子が多いみたいだね……」

 

 

さくら「……で?何やってくれるわけおたくら。大挙して押しかけてくれちゃって…。減った酸素分の仕事くらいは出来るんでしょうね……?」

 

一同(中々とんがった子もいらっしゃる!!)

 

男の子A「やべぇ…さくら姐さんがご機嫌斜めだ」

 

男の子B「ああ…」

 

男の子A「殺されるぞ…この兄さん達」

 

男の子B「入所5年の最年長者…」

 

男の子A「学校の支配を拒み続ける事実に2年…」

 

男の子A・B「エリートニートのさくら姐さんに……」

 

吉田「お前ら急にスイッチ入ったな!」

 

村松「カッコ良く言ってるけど不登校だろ要するに!」

 

とんがった女の子…さくらちゃんは近くのほうきを手に取った。

 

さくら「まずは働く根性あんのかどうか試してやろーじゃないの!」

 

さくらちゃんは渚に攻撃………しようとしたが床が抜けた。

 

男の子A「あーあ。そこの床痛んでるって言ってたのに」

 

男の子B「悲しきかな。暴力では真の勝利は掴めない」

 

吉田「お前らのキャラの方が掴めねーぞ」

 

 

新「…修繕はしないんですか?この建物…老朽化がかなり……」

 

保育士「お金が無いのよ。うちの園長、待機児童や不登校児がいれば片っ端から格安で預かってるから。職員すら満足に雇えず本人が一番働いてるわ」

 

一同「………!」

 

松方さんは大量の荷物を運んでいたという。

かなり大きな戦力を潰してしまったというわけか……。

 

 

前原「30人で2週間か…。なんか色々出来んじゃね?」

 

原「できるできる!」

 

磯貝「よし皆!手分けしてあの人の代役(かわり)を務めよう!まずは作戦会議だ」

 

前原「おう!あのじーさんの骨の倍額仕事してやる!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

それから俺たちは働きまくった。

 

茅野、カルマ、寺坂、奥田は子供たちを楽しませるための劇を披露。

 

……一方的に寺坂がカルマにやられてるだけのように見えるけど。

 

新や、中村、渚、竹林達は子供達に勉強を教えてくれている。

さくらちゃんは渚が担当してる。

 

優月、倉橋、矢田達女子は子供たちと遊んでいる。

 

 

前原「…で、俺ら力仕事班は?」

 

友「今千葉ちゃんが設計図面仕上げてる。烏間先生の部下の鵜飼さんに助言貰ってるよ。あの人建築士の資格もってるんだって」

 

前原「中々心強い味方だな!」

 

すると、女の子の声が聞こえてくる。

 

女の子「おーい!猫ちゃん!」

 

後ろを振り返ると……どうやら猫が木に登って降りられなくなってしまったようだ。

 

寺坂「ベタな騒動起こしやがって」

 

木村「俺が行くよ。岡島、棒倒しのアレな」

 

岡島「オッケー!今度は下の安全見とかねーと!」

 

体育祭の時の磯貝とイトナのように、木村が助走をつけ、岡島を踏み台にして木の上へと飛び乗った。

 

そのまま猫の元へと伝っていき、なんとか捕まえたようだ。

あ、めっちゃ引っかかれてる。

 

 

他にも、沢山…初めてのことをした。

 

学校でやらない勉強をしていくうちに…あっという間に二週間が過ぎていった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

殺「さて、私の生徒は良い働きをしましたかねぇ」

 

松方さん「フン。何十人いようが烏合の衆だ。ガキの重みで木造平屋が潰れて無ければ上出来だが……ん?

 

 

なんということでしょう!!」

 

そこあったのは今までの小さな木造平屋ではなく、大きな多目的施設……!!

 

新(ナレーション)『E組の裏山から間伐した木と廃材を集めて作られた家……。窮屈で貧弱だった保育施設が広くて頑丈な多目的施設に!』

 

松方さん「なんと…たった二週間で……」

 

新『コンピュータの計算で強度も完璧。崩れそうな母屋ごと新しい柱で補強しました』

 

 

保育士「まるで鳶職人みたいでしたよこの子達。休まず機敏に飛び回って…」

 

 

新『二階の部屋は二部屋に分かれ、ひとつは図書館。子供たちが勉強や読書に集中できます』

 

松方さん「……だだっ広いな」

 

千葉「時間と資材が限られてたんで単純な構造に」

 

矢田「近所を回って読まなくなった子供向けの本もらったの」

 

倉橋「私のも〜!」

 

うーん…千葉ちゃん流石だ。

 

 

新『そしてもう一室は室内遊技場。ネットやマットを入念に敷き、安全性を確保。雨に濡れない室内なので…腐食や錆びで遊具が脆くなりません』

 

松方さん(……こやつら…!!)

 

吉田「あの回転遊具、覚えといてな」

 

磯貝「さ、次は職員室兼ガレージへ」

 

松方さん「……ガレージ?」

 

友「そう。このリフォームの目玉です」

 

 

新『なんということでしょう。倒れて前輪が曲がってしまった園長の自転車を技術班が改造。安全性が高く、大積載量の電動アシスト付き三輪自転車に!』

 

律「上の部屋の回転遊具が充電器と繋がっています。走行分の大半は遊具をこげば賄える計算です」

 

新『つまり、沢山の子供たちが沢山遊ぶほど……園長先生が助かる仕組み…!』

 

松方さん「…う、上手く出来すぎとる!お前ら手際が良すぎて逆にちょっと気持ち悪い!」

 

……それはちょっとわかる気がする。

 

新『園長先生の思い出のこもった古い入れ歯は自転車のベル再利用!』

 

松方さん「そんな匠の気遣いいらんし!」

 

入れ歯(それ)に関しては必要だったのか……?

 

松方さん「第一、ここで最も重要な労働は建築じゃない。子供たちと心と心を通わせる事だ。いくらモノを充実させても、お前たちが子供達の心に寄り添えていなかったのなら……この2週間を働いたとは認めんぞ」

 

 

その時、さくらちゃんの声が聞こえてきた。

 

さくら「おーい渚!!じゃーん!なんとクラス2番!」

 

さくらちゃんが持っていたのは算数のテストだった。95点と中々の高得点だ。

 

渚「おーすごい!頑張ったね!」

 

さくら「お前の言う通りやったよ!算数の時間だけ不意打ちで出席して…解き終わったら速攻で帰った!」

 

渚「いじめっ子もテストの最中じゃ手の出しようがなかったでしょ」

 

さくら「うん。先生以外誰にも行く事言ってなかったしね!」

 

渚「自分の一番得意な一撃を、相手の体勢が整う前に叩き込む。これがE組(僕ら)の戦い方だよさくらちゃん。今回は算数だけしか教えられなかったけど、こんな風に一撃離脱を繰り返しながら…学校で戦える武器を増やしていこう」

 

さくら「……だ、だったら…これからもたまには教えろよな…」

 

渚「…もちろん!」

 

さくら「!!」パッ

 

 

前原「……怖い男だ」

 

片岡「本人も無自覚でやってるのが恐ろしい…」

 

皆が渚の怖さに気付き始めた……。

 

 

松方さん「…クソガキ共…文句のひとつも出てこんわ」

 

さくら「あ!園長おかえり!見てよコレ!」

 

松方さん「もとよりお前らの秘密なんぞ興味は無い。ワシの頭は自分の仕事で一杯だからな。お前らもさっさと学校に戻らんか。大事な仕事があるんだろ?」

 

一同「……はい!」

 

こうして俺たちは起こした事故の賠償責任を自分達でなんとか果たし、二週間の特別授業は幕を下ろした。

 

 

…だけどそれは中間テストの前日だった。

 

2週間も授業を受けずにテストに臨むだなんて…この学校じゃ裸でバトルをするに等しい。

 

 

 

結果は惨敗。

 

前にも増して猛勉強したA組に蹴散らされ、E組の大半はトップ圏内から弾き出された。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

皆…結果に落胆している。

当然だろう。前回より大幅に順位を下げてしまったのだから。

 

渚・岡島・杉野「はぁ……」

 

潮田渚

総合 54位(31→54)

 

岡島大河

総合 76位(50→76)

 

杉野友人

総合 65位(41→65)

 

 

その時、五英傑が話しかけてきた。

 

小山「拍子抜けだったなぁ?」

 

荒木「やっぱり前回のはまぐれだったようだね〜」

 

瀬尾「棒倒しで潰すまでも無かったな〜」

 

浅野学秀

合計点数 493点

総合 1位

 

うわうぜぇこいつら。

 

でも、杉野も渚も岡島も言い返せない。

 

 

小山「言葉も出ないねぇ。まぁ当然か」

 

榊原「この学校では成績が全て。下の者は上に対して発言権は無いからね……」

 

榊原がそう言った直後、五英傑の後ろから声が聞こえてくる。

 

カルマ「へーえ…。じゃ、アンタらは俺に何も言えないわけね……」

 

カルマ…!

 

殺(……E組の中に2人だけ、2週間のハンデなどとのともしない生徒がいる)

 

 

カルマ「まーどうせうちの担任は、『1位じゃないからダメですねぇ』とかぬかすだろうけど……」

 

赤羽業

合計点数 492点

総合 2位

 

殺(一学期中間のクラストップの再現。だが、前回とは少し違うはずですよ…)

 

 

カルマ「ね〜新もそう思うっしょ?」

 

新「…そうだな。『カルマ君に負けるとはまだまだですねぇ』とか言ってきそうだよ…」

 

 

真弓新

合計点数 491点

総合 3位

 

 

 

カルマ「…気付いてないの?今回本気でやったの、俺と新だけだよ。他の皆はお前らのために手加減してた。お前らも毎回敗けてちゃ立場が無いだろうからって」

 

瀬尾「…な、なに……!」

 

カルマ「…でも次はE組(みんな)も容赦しない。三学期になれば、内部進学のお前らと高校受験の俺らじゃ授業が変わる。同じ条件のテストを受けるのは次が最後なんだ……。

 

 

2ヶ月後の二学期期末……そこで全ての決着つけようよ」

 

 

浅野「………上等だ」

 

 

 

 

 

渚(…カルマ君、僕らの事フォローしてくれたんだ)

 

殺(敗北を経験したからこそ出てくる、敗者を気遣う言葉。カルマ君は一足先に、弱者に寄り添う事を覚えた。失敗も挫折も成長の源。今回の事は、また皆を強くする───)

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

俺たちは全員で職員室へと向かった。

 

磯貝「迷惑かけてすいませんでした。烏間先生」

 

烏間「これも仕事だ。気にしなくていい。……君らはどうだ?今回の事は暗殺にも勉強にも大きなロスになったと思うが…そこから何か学べたか?」

 

 

渚「……強くなるのは自分のためだと思ってました。殺す力を身に付けるのは名誉とお金のため。学力を身に付けるのは成績のため。でも…身につけたその力は、他人のためにも使えるんだって思い出しました。殺す力を身につければ、地球を救える。学力を身につければ、誰かを助けられる…」

 

岡島「もう下手な使い方しないっス。多分」

 

前原「気をつけるよ…。色々」

 

 

今回の件を通して、クラス全体で成長出来たと思う。

また一歩…前身出来たんじゃないかな。

 

 

烏間「……考えはよくわかった。だが『今の君ら』では高度訓練は再開できんな」

 

岡島「えっ…!?」

 

烏間「何せこの有様だ」

 

烏間先生が取りだしたのは体育で使うジャージ……だがボロボロだ。

 

岡島「股が破れたジャージ……俺のだ」

 

友「なんだろう。岡島のってだけで卑猥に見えてくる」

 

岡島「何でだよ!」

 

てか何で股破れてんだよ。何したんだ。

 

 

烏間「ハードになる訓練と暗殺に…もはや学校のジャージの強度では耐えられん。ボロボロになれば親御さんにも怪しまれるし、第一君らの安全を守れない。防衛省()からのプレゼントだ。今日を境に君たちは…心も体もまたひとつ強くなる」

 

新たに支給された…E組専用ジャージ。

 

烏間「先に言っておくぞ。それより強い体育着は地球上に存在しない」

 

これで、また暗殺の幅が広がる…!!

 

 



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第68話 プレゼントの時間

《友 side》

 

殺せんせーへの…俺たちからのプレゼント。

 

 

殺「ヌルフフフ、フランスの直売所でこっそり買ったフォアグラでバーベキュー。こればかりは生徒達には内緒ですねぇ」

 

バーベキューで浮かれている殺せんせー…。

 

そのバーベキューの台に…

 

中村がダーイブ!

 

 

殺「にゅやーーっ!?な、なんて場所から落ちてくるんです中村さん!?」

 

中村「すっげー…あの高さからバーベキュー台に落下しても痛くも熱くもない…」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

烏間「軍と企業が共同開発した強化繊維だ。衝撃耐性、引っ張り耐性、切断耐性、耐火性、あらゆる要素が世界最先端だ。丁度性能テストのモニターを探していたから、君ら用に作らせたというわけだ」

 

 

服を持ってみると、かなり軽い。

 

木村「すげぇ…ジャージより軽いぞ」

 

矢田「しかもこの靴すごい跳ねるよ」

 

矢田の言う通り、跳躍力が普通より上だ。

 

 

烏間「機能がそれだけだと思うなよ?特殊な揮発物質に服の染料が反応し、一時的に服の色を自在に変える。全5色の組み合わせで、どんな場所でも迷彩効果を発揮する!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

創ちゃんに迷彩を施してもらい、千葉ちゃんと速水が狙撃に向かう。

 

殺せんせーは……

 

 

殺「まったく油断ならない生徒達です。フォアグラの匂いに誘われて来たんでしょうか…。ここなら問題ない。友君から中古で買ったジャンプの時間です」

 

俺から買ったジャンプ読んでた。

ま、いい小遣い稼ぎにはなった。

 

 

そして…千葉ちゃんがジャンプに向かって狙撃!

 

殺「にゅやーっ!?ち、千葉君ですか今のは!?ハンターとトリコの2大異世界編が両方読めない!!」

 

それは可哀想に。じゃ、次は優月から買ってくれ。

 

 

烏間先生は他にも機能を説明してくれた。

 

肩、背中、腰は衝撃吸収ポリマーが効果的に守ってくれる。

フードを被ってエアを入れれば頭と首まで完全装備。

 

 

つまり、危険な暗殺も無傷で実行できる!

 

 

殺「先生と言えども芸術には時間をかけます。特にこのロケットおっぱいの再現の難しさ!かれこれ1時間はかかってますね…」

 

教師が何を作ってるんだ。

 

俺たちは窓を突き破って侵入し、先生と丹精込めたであろう作品に向かって銃を乱射する。

 

 

殺「いやーっ!?愛情込めたロケットが!」

 

隣にいた茅野が物凄い殺気を出しながら作品に銃を撃っていた気がするが触れないでおこう。

 

殺「な、何なんですか今日は!?息つく暇もない!」

 

 

烏間「…折角の新装備。手の内を晒すのはやめとけと言ったんだがな。彼らがお前に見せたかったそうだ。新しい『(ちから)』の使い方を」

 

殺「……!」

 

寺坂「教えの答えは暗殺で返す。それがE組(ここ)の流儀だからな」

 

不破「怒られた後だしね。真面目に殺しで答えなきゃ」

 

磯貝「約束するよ殺せんせー。俺たちのこの『力』は…」

 

前原「誰かを守る目的以外で使わないって…ね」

 

 

殺「…満点の答えです。明日からは通常授業に戻りますよ」

 

一同「はーい!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

《殺せんせー side》

 

私がここに来た頃は

 

教室の所々に澱んだ殺意があるだけだった…。

 

暗殺の危険は少ないが、冷たい空間。

 

 

それが今は…

 

敷地のどこでも温かい殺意で溢れている。

 

 

???『いつかあなたも…そんな相手に巡り会えますよ…』

 

 

ええ。目の前に…沢山います。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

三村「すげぇプレゼント貰ったな!あーいうのはテンション上がるな男子としては!」

 

 

イリーナ「…女子のはね。私がデザインを出したのよ」

 

不破「ビッチ先生……」

 

イリーナ「カラスマの奴、男女同じ服にしようしてたから…こんな感じで『女子はもっと体のラインを出しなさい』って」

 

三村「明らかに防御力落ちてんな…」

 

友「ビッチ案ナメとんのか」

 

イリーナ「なんでよ!」

 

不破「恥ずかしくて来てらんないよこんなの!」

 

中村「でも友は喜ぶかもよ?」

 

不破「ちょっ…!?///」

 

友「本人の目の前でそれ言うの?……ビッチ先生の案採用されてたら流石に可哀想と思うぞ」

 

 

イリーナ「あいつ本当女心分かってないから…結局私にはプレゼントもくれなかったし!あのタコでさえ分かってたのに!あー思い出したら腹立ってきた!」

 

 

菅谷「……え?烏間先生がビッチ先生にプレゼントする理由なんてあんのか?」

 

岡野「さぁ…?」

 

 

倉橋「…あっ!思い出した!4日前の10月10日、ビッチ先生の誕生日だ!」

 

新「そうだったのか……」

 

岡島「俺らが課外授業やってる間に過ぎてたのか…」

 

友「烏間先生がくれるのを期待したけど案の定何も無く、プライド高いビッチ先生からは言い出せず…ってとこかな」

 

 

杉野「相変わらずぶきっちょな人だな…」

 

中村「でも、私達が騒ぎ起こしたのにも一因あるかもね」

 

 

前原「よし…また俺らが背中押してやろうかね!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

イリーナ(……仕事で利用させてもらった石油王からの誕生祝い。スポーツカーなんて他からいくらでも貰ってるし…第一今は、こいつ以外のプレゼントなんて欲しくもないし……ロヴロ師匠(センセイ)も相変わらず連絡取れないままだし。あーあ。孤独ったらありゃしない)

 

 

【ビッチ&烏間くっつけ計画第二弾!まずは2人を別の場所へ引き離すべし!】

 

まずはビッチ先生を俺や片岡達、引き付け班が烏間先生と引き離す。

 

片岡「ビッチ先生、また仏語会話教えてください!」

 

イリーナ「ああメグ…。アンタそーいや外国で仕事がしたいんだっけ?」

 

片岡「はい。漠然とだけどね」

 

イリーナ「しょーがないわね…そこ座んなさい」

 

片岡「あ、天気もいいし外でやろーよ外で!」

 

イリーナ「ちょ、な、何よ?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

【その隙に買出し班!彼女へのプレゼントを買いに行くべし!】

 

新「て言ってもな…」

 

杉野「ビッチ先生、大概のプレゼント貰った事あるだろ?」

 

茅野「難しいね……」

 

渚「クラスのカンパは総額5000円。この額で…烏間先生からビッチ先生へ。大人から大人に相応しいようなプレゼントは……」

 

その時、近くの花屋の店員さんが話しかけてきた。

 

花屋「…!やっぱりそうだ!ねぇ君たち!あの後大丈夫だったのかい?ほら、おじいさんの足の怪我の…」

 

渚・杉野「あっ…!」

 

杉野「あの時、救急車呼んでくれた花屋さん…」

 

松方さんと事故を起こした時、たまたま近くにいて救急車を呼んでくださった人のようだ。

 

渚「まぁなんとか…お詫びしてタダ働きして許してもらいました」

 

花屋「そっか。大事にならず良かったね……。それと今、プレゼントが欲しいとか言ってたね。大人にあげるに相応しい……」

 

神崎「あ…はい」

 

花屋さんは神崎に一輪の花を手渡した。

 

花屋「こんなのどう?」

 

茅野「なるほど、花束かぁ!」

 

 

花屋「ものの1週間で枯れるものに数千〜数万円。ブランド物のバッグより実はずっと贅沢なんだ。人の心なんて色々なのに、プレゼントなんて選び放題の現代なのに、未だに花が第一線で通用するのは何故だと思う?

 

心じゃないんだ。色や形が、香りが、そして儚さが、人間の本能にピッタリとはまるからさ」

 

 

奥田「お~……説得力ありますね!」

 

カルマ「だねー。電卓持ってなきゃ名演説だけど」

 

花屋「うっ…一応商売なんで……。どうする?これも花の縁だ。安くしとくよ?」

 

もちろん答えは決まってる。

俺たちは5000円で買えるだけの花を買った。

 

かなり綺麗な花束だ。これなら喜ぶだろう。

 

それに、さっきの花屋さん…。

どことなく安心できる人だった。

ふわっとしてて…それこそ花のような。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

一方その頃──

 

矢田「ねぇそれでそれで?フランスの男はどういう殺し文句に弱かったの?」

 

イリーナ「なによ桃花…。今日はいつもに増して喰い付き良いわね」

 

矢田「だって知りたいんだもーん!」

 

とりあえず何でもいいからビッチ先生を引きつける!

それが俺たちの役目だ!

 

不破「ビッチ先生!」

 

友「それ終わったらこの前みたくピアノ弾いてくれないかな?」

 

 

岡島「ビッチ先生!」

 

菅谷「いつもの悩殺ポーズしてくれよ!絵描くからさ!」

 

岡野「ずるい!私が先だよ!」

 

イリーナ(な、なんなのよ…。今日の私大人気じゃない!)

 

イリーナ「よーし上等よ!片っ端から片付けてやるわ!せいぜい発情しない事ねクソガキ共!」

 

一同「おーう!!」

 

 

 

 

殺(生徒たちを下の名前で呼ぶことも増え…今やすっかり姉のような友達のような…良い教師になりましたねぇ)

 

殺「さて、生徒達も何やら企んでいる様子。先生も参加しましょうかねぇ」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

さて…次は買ってきた花束を烏間先生に渡さなくてはならないんだが…。

 

烏間「イリーナに誕生日の花束?何故俺が?君らが渡した方が喜ぶだろう」

 

うーん…。この人やっぱり全然気付いてないのか?

 

茅野「どうする?」コソコソ

 

杉野「何でもいいから渡しとけ」コソコソ

 

新「そっからはなるようになれって感じでいこう」コソコソ

 

カルマ「あのビッチが必要な戦力だと思うならさぁ烏間先生。同僚の人心掌握も責任者の仕事じゃないの?あ、俺らが用意したのは内緒ね」

 

烏間「……一理あるな。わかった俺が渡す。気遣い感謝する」

 

烏間先生は花束を受け取った。

任務完了!

引き付け班に律を通して連絡してと……。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

片岡「あ、ビッチ先生ごめん!」

 

岡島「準備完りょ……」

 

友「おいバカ!い、いや!俺ら用事思い出してさ!」

 

中村「じゃーね!」

 

イリーナ「えっちょ…何でいきなり全員帰るのよ!何よ用事って……!…なんなのよ一体」

 

 

 

 

 

イリーナ(訳わかんない…!また寂しい一日に逆戻りよ…!)

 

 

イリーナ「あーカラスマ!聞いてよガキ共がね…!」

 

烏間「丁度いいイリーナ」

 

イリーナ「……カラスマ?」

 

烏間「誕生日おめでとう」

 

俺たちは2人の様子を窓からバレないように観察する。

 

どうやら、烏間先生はちゃんと花束を渡したようだ。

 

イリーナ「………!?……うそ、あんたが…?」

 

烏間「遅れてすまなかったな。色々と忙しかった」

 

イリーナ「やっば…超嬉しい。ありがと…」

 

やっぱり人間って本当に嬉しい時リアクションが少しだけ小さくなるんだね。

大分喜んでくれてるようで何よりだ…。

 

イリーナ「あんたのくせに上出来よ。なんか企んでるんじゃないでしょうね」

 

烏間「バカ言え。祝いたいのは本心だ。恐らくは最初で最後の誕生祝いだしな」

 

……え?

 

イリーナ「…何よ。最初で最後って」

 

烏間「当然だ。任務を終えるか、地球が終わるか、二つに一つ。どちらにせよ、後半年もせず終わるんだ」

 

ビッチ先生は窓を勢いよく開け、外にいた俺たちを睨みつけた。………見てたのがバレたようだ

 

イリーナ「…こんな事だろうと思ったわ。この堅物が、誕生日に花贈るなんて思いつくはずないもんね」バァン!

 

ビッチ先生は…俺らの後ろの木に『本物の銃』を撃った。

 

イリーナ「楽しんでくれた?プロの殺し屋が、ガキ共のシナリオに踊らされて舞い上がってる姿見て…」

 

殺「それは違いますよイリーナ先生。生徒達は純粋な好意から貴方を…」

 

イリーナ「説得力ないわタコラッチ!!」

 

イリーナ(……思い出したわ。こいつらとはただの業務提携関係。平和な世界のガキ共と…先生ごっこをしてただけ)

 

ビッチ先生は花束を烏間先生に突き返し、校舎を出ていってしまった。

 

イリーナ「お陰で目が覚めたわ。最高のプレゼント…ありがと」

 

磯貝「ちょ……!」

 

片岡「ビッチ先生…!」

 

呼びかけるが、ビッチ先生は振り向くことなく歩き続ける。

 

殺「そっとしておきましょう。明日になれば冷静に話も出来るでしょう」

 

 

友「……烏間先生。なんか冷たくないですか?さっきの一言」

 

岡野「まさか…まだ気づいてないんですか!?」

 

烏間「…そこまで俺が鈍くみえるか」

 

倉橋「……えっ…」

 

烏間「非情と思われても仕方ないが、あのまま冷静さを欠き続けるなら他の暗殺者を雇う。色恋で鈍るような刃なら、ここで仕事する資格はない。それだけの話だ」

 

 

 

 

 

あれから──

 

ビッチ先生は学校に来なくなった。

 

 

 



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第69話 『死神』の時間

《友 side》

 

 

新「ビッチ先生が来なくなって…もう3日か」

 

倉橋「余計な事しちゃったかな…」

 

 

殺「…烏間先生。任務優先もわかりますが、少しは彼女の気持ちになってあげては?」

 

烏間「……この後次の殺し屋との面接がある。先に帰るぞ」

 

磯貝「か、烏間先生…!」

 

烏間「…地球を救う任務だぞ。君達の場合は中学生らしく過ごしていいが、俺や彼女は経験を積んだプロフェッショナル。情けは無用だ」

 

そう言って、教室を出ていってしまった。

 

烏間先生は厳しい人だ。

 

特に、一人前の大人には……。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

殺「イリーナ先生に動きがあったら呼んでください。先生これからブラジルまでサッカー観戦に行かなければ!」ビュン!

 

不破「……あれ?殺せんせーってそんなサッカー好きだったっけ?今日の試合は絶対行くって前々から言ってたけど……」

 

友「典型的な4年に1度のにわかファンだよ。普段は野球派」

 

 

 

片岡「ビッチ先生は大丈夫かな…」

 

矢田「うーん…携帯も繋がんない…」

 

千葉「まさか…こんなんでバイバイとか無いよな?」

 

 

花屋「そんなことはないよ。彼女にはまだやってもらうことがある」

 

岡野「だよね」

 

前原「なんだかんだいたら楽しいもんな」

 

花屋「そう。君たちと彼女の間には充分な絆が出来ている。それは下調べで確認済みだ。僕はそれを利用させてもらうだけ…」

 

 

 

 

 

友「………えっ…!?」

 

不破「なっ…!?」

 

寺坂「………!?」

 

カルマ「……………!」

 

 

その人は、平然と教室に溶け込んで来た。

 

 

死神「僕は、『死神』と呼ばれる殺し屋です。今から君達に授業をしたいと思います」

 

 

なんだ……こいつ…。

 

 

死神「花はその美しさにより、人間の警戒心を打ち消し、人の心を開きます。渚君、君達に言ったようにね」

 

すると、律の元に一通のメールが届く。

 

死神「でも、花が美しく芳しく進化してきた本来の目的は……。律さん送った画像を表示して」

 

律に送られてきた画像には……。

 

 

死神「虫をおびき寄せるためのものです」

 

 

手足を縛られたビッチ先生の姿が…!

 

 

一同「び……ビッチ先生……!?」

 

死神「手短に言います。彼女の命を守りたければ、先生方には決して言わず、君達全員で僕が指定する場所に来なさい。来たくなければ来なくていいよ。その時は彼女の方を君達に届けます。全員に行き渡るよう小分けにして。そして多分次の『花』は、君達のうちの誰かにするでしょう」

 

何故だ…?

 

恐ろしい事を平気で口にしてるのに。

 

それがただの脅し文句では無いとわかるのに。

 

 

どうして…こんなに安心できるんだ?

 

 

寺坂「おうおう兄ちゃん…好き勝手くっちゃべってくれてっけどよ…。別に俺らは助ける義理ねーんだぜあんな高飛車ビッチ。俺らへの危害もチラつかせてるが、烏間の先公やあのタコはそんな真似許さねーぜ。第一、ここで俺らにボコられるとは考えなかったか誘拐犯?」

 

 

死神「不正解です寺坂君。それらは全部間違っている。君達は自分達で思ってる以上に彼女が好きだ。話し合っても見捨てるという結論は出ないだろうね」

 

 

……『優れた殺し屋ほど万に通じる』。

 

俺達の思考を読むなんてお手の物だ…。

 

 

死神「そして、人間が死神を刈り取る事など出来はしない。

 

 

畏れるなかれ。死神が人を刈り取るのみだ」

 

辺りに花びらが舞う。

 

そして……いつの間にか死神はそこにいなかった。

 

 

目に映るのは舞い上がった花びらと、ビッチ先生が監禁されたと思われる場所が記された地図だけだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

友「……3日前の花束に盗聴器が仕込んであったのか」

 

前原「くそっ…!これで俺らの情勢を探り、ビッチ先生が単独行動になる隙を狙ったってことかよ!」

 

友「それだけじゃない。殺せんせーがブラジルに行くのも、烏間先生が仕事に行くのも知っていた。その上で大胆にも1人でここへ乗り込んできたんだ」

 

倉橋「でも…あの人そこまで悪い人には見えなかったよ?実は良い人だったっていうオチはない…?」

 

カルマ「……凄いよね。そう思わせちゃうんだから」

 

新「あいつの前じゃ多分皆がそう思うよ。自分が殺される寸前まで……ね」

 

倉橋「……うん。実際のとこ攫ってるしね。ビッチ先生…」

 

 

 

不破「……地図の裏にメモが書いてあるよ。『今夜18時までに、クラス全員で地図の場所に来てください。先生方や親御さんにはもちろん、外部の誰かに知られた時点で君達のビッチ先生の命はありません』……だって」

 

 

千葉「鷹岡やシロの時と同じだな。俺らを人質にして殺せんせーをおびき出すのが目的だろう」

 

杉野「くそっ…!厄介な奴に限って俺らを先に標的にする……!」

 

狭間「しょうがないんじゃない?私ら大金稼ぎの一等地にいるんだから。狙われて当然…。そりゃあ世界一の殺し屋とやらもそうするでしょうよ」

 

 

寺坂「……使うか?これ」

 

寺坂が指を指したものは…。

 

友「超体育着……か」

 

中村「守るために使うって決めたもんね。今着ないでいつ着るのさ」

 

岡島「ま、色々世話になってるしな」

 

前原「最高の殺し屋だが知らねーけど……」

 

寺坂「そう簡単に計画通りにさせるかよ」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

俺たちは、時間通りに指定場所に着いた。

 

磯貝「……あの建物でいいんだよな」

 

新「ああ。地図からして間違いないよ」

 

イトナ「糸成3号で空中から偵察したが、周囲や屋上に人影は無い」

 

速水「あのサイズじゃ、中に手下がいたとしても少人数だね」

 

不破「それと、花束に盗聴器を仕込む必要があったって事は、逆に考えるとその直前のE組(こっち)の情報には詳しくない確率が高いってこと」

 

友「恐らく、花束がE組(こっち)に来た直前に支給されたこの超体育着……。皆がそれぞれ殺せんせーを殺すために開発した武器は知られてないはず」

 

磯貝「敵がどれだけ情報通でも、俺達の全てを知る事はまず不可能。それがこっちの強みだ。大人しく捕まりに来たフリをして、隙を見てビッチ先生を見つけて救出。全員揃って脱出する!」

 

友「……律。12時を過ぎて戻らなかったら殺せんせーに連絡を頼む」

 

律「はい。皆さんどうかご無事で……」

 

磯貝「よし……行くぞ!」

 

『ビッチ先生救出作戦』が開始した。

 

入口から建物内に入る。

やけにだだっ広い。あちこちに散れば皆が一気に捕まる事態は避けられそうだ。

 

死神『全員来たね。それじゃ閉めるよ』

 

…上に監視カメラが設置されてある。

 

カルマ「やっぱこっちの動きは分かってるんだ。死神って言うより覗き魔だね」

 

死神『皆揃ってカッコイイ服を着てるね。隙あらば一戦交えるつもりかい?』

 

やっぱり…超体育着の事は知らないようだ。

 

片岡「クラス全員で来る約束は守ったでしょ!ビッチ先生さえ返してくれればそれで終わりよ!」

 

死神『ふむふむ。部屋の端々に散っている油断の無さ。よく出来ている。』

 

突如、ガゴッと轟音がした。

すると…この部屋全体が下へと下がり始めた。

 

不破「きゃあっ…!」

 

友「優月…!大丈夫か?」

 

不破「う…うん…!何とか…」

 

 

下に着くと、左右と後ろをコンクリートで、前を檻で囲まれた…牢屋のような所についた。

 

そして、檻の前には死神がいる。

 

死神「捕獲完了。予想外だろ?部屋全てが昇降式(エレベーター)の監獄。ちゃんと君達のために作ったものだ。一人一人捕らえるのは予想外のリスクがある。こうやって一斉に捕獲するのが一番早い」

 

矢田「死神…!それに、ビッチ先生…!!」

 

死神の後ろには、縛られているビッチ先生がいた。意識も失っているようだ。

 

死神「お察しと思うが、君達全員あのタコをおびき寄せる人質になってもらうよ。大丈夫。奴が大人しく来れば誰も殺らない」

 

皆が一斉にコンクリートの壁を叩き始める。

 

寺坂「畜生…!出しやがれ!」

 

片岡「本当…?ビッチ先生も今は殺すつもりは無いの?」

 

死神「人質は多い方が良い。奴を確実に狩場に引き込むために、場合によっては大量の見せしめがいる。交渉次第では…30人近く殺せる命が欲しいところだね」

 

新「………でも今は殺さない…。本当だな?」

 

死神「ああ」

 

岡島「俺たちがアンタに反抗的な態度を取ったら…頭にきて殺したりは…?」

 

死神「しないよ。子供だからってビビりすぎだろ」

 

岡島「……いや」

 

新「ちょっと安心したよ」

 

 

コンクリートを叩いていくと、1ヶ所だけ他の壁とは違う音が鳴る場所があった。

 

友「…!ここだ竹林!空間のある音がした!」

 

竹林(指向性爆薬…!)

 

奥田(カプセル煙幕…!)

 

 

竹林と奥田が開発した、殺せんせーに試す用の武器だったが、思わぬ所で効果を発揮した。

 

空間があった壁を竹林の爆弾で破壊し、奥田の煙幕で死神の視界を悪くし、全員で破壊した穴から脱出した。

 

 

 

 

しばらくすると、死神の声が聞こえてきた。

 

死神『聞こえるかなE組の皆。君達がいるのは閉ざされた地下空間だ。外に通じる出口には全て電子ロックがかかっている。ロックを解く(キー)は僕の眼球の虹彩認証のみ。つまり、君達がここを出るには…僕を倒して電子ロックを開かれる他ないって事だ』

 

寺坂「…くっそ」

 

死神『実はね。竹林君の爆薬で君達が逃げて嬉しかったよ。これだけの訓練を積んだ殺し屋達を、一度に相手にできる機会は滅多に無い。人質にするだけじゃ勿体ない。未知に大物の前の肩慣らしだ。君達全員に僕の技術(スキル)を高める相手をしてもらう……。期待してるよ。どこからでも殺しにおいで。……じゃ』

 

狂ってやがる……!

 

速水「…まるでゲーム感覚……」

 

鷹岡のような単純な執念じゃない。さっきまであんなに話していたのに……。

 

 

『死神』の顔が見えない……!

 

 

磯貝「……とりあえず、役割を決めて3手に分かれよう。狭い屋内じゃ全員でいても身動き取れない」

 

友「賛成だ。固まってるより散らばった方が色々と都合がいいと思う」

 

A team

カルマ・磯貝・岡野・茅野・木村・渚・千葉・前原・村松・吉田

 

磯貝「まず、A班は戦闘。連絡役の茅野以外はバトル要員だ。死神や、部下もいるかもしれない。積極的に探して、見つけ次第一気に叩く。BC班が敵と会ったらすぐA班に連絡だ。助けに行きつつ挟み撃ちを狙う」

 

 

B team

岡島・片岡・神崎・倉橋・杉野・中村・速水・三村・矢田・新

 

磯貝「B班は救出。気絶してたビッチ先生が心配だし、人質として敵の手駒にさせたくない。片岡、杉野、新が守りながら助けに行ってくれ」

 

 

C team

奥田・菅谷・竹林・寺坂・狭間・原・不破・友・イトナ

 

磯貝「C班は情報収集。友と寺坂は万が一のバトル要員だ。各自の力で偵察と脱出経路を探してくれ。」

 

友「監視カメラは厄介だから…見つけたら即破壊した方がいいな」

 

磯貝「ああ。そして律、各班の円滑な連絡頼んだぞ」

 

 

ハックド律「やる気しねぇ〜…。死神さんに逆らうとかありえねーし」

 

……あれ?

 

ハックド律「働くぐらいなら電源落とす」

 

無力化(ハッキング)されてる!!

 

 

竹林「この建物電波が通じてない。モバイル律は律本体よりハッキングが容易だろうけど…この短時間で乗っ取るとは…!」

 

まさに…優れた殺し屋ほど万に通じる……!

 

不破「ま、まぁ…トランシーバーアプリでも連絡は取れるから…臨機応変に対応していこう」

 

磯貝「……よし。警戒を忘れるな!散るぞ!」

 

一同「おう!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《C班》

 

イトナ「よし。とりあえず糸成4号で壁を探ってみる」

 

友「おう。周り警戒しとかないとな…。いつ不意打ちしてくるかわからない」

 

原「……やばいよ。吉田君に持たせたマイク聞いてたけど、A班全滅みたい」

 

寺坂「何!?1分前に散ったばっかだぞ!」

 

予想以上だな……。

まさかこんなに早くA班がやられるとは…!!

 

狭間「冗談じゃない強さみたいね。戦えるA班を中心に据えた作戦だったのに、C班(うちら)だけじゃ勝ち目無いわよ」

 

寺坂「バカ言ってんじゃねぇ!俺と友とイトナでA班以上の戦力だっつの!てめーらは安心して構えとけや!」

 

竹林「…安心できるかはともかく、なんか変だよこの建物。脱出の手がかりにと内部構造を探ってるけどドアのない壁の向こうにやたら大きな空洞がある」

 

不破「私たちのためにそんな大袈裟な仕掛けを作るとは考えにくいね…」

 

友「ああ。もしかしたら、これが殺せんせーを殺す罠……かもな」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《B班》

 

片岡「…多分このドアの先がビッチ先生が捕まってる部屋」

 

新「この鍵くらいなら竹林爆薬で壊せそうだな。三村、頼んだ」

 

三村「ああ」

 

 

岡島「……どうする?A班やばいみたいだから俺達男子が救出に…」

 

新「いや、慌てたら死神の思うつぼだ」

 

片岡「死神を倒せばこっちが勝ちなのは変わらない。いずれどこかで襲ってくるから、返り討ちにするだけよ」

 

岡島「ったって…A班抜きでどうやって…」

 

新「この爆薬を使えばいい。人に向けちゃダメだけど…トラップや脅しになら充分使えると思うよ」

 

片岡「更に、奥田さん製催涙液入りペイント弾。顔の近くに当てるだけでパニックに出来るそうよ」

 

杉野「おう。バトる手段は存分にある。生簀の中に小魚放して遊んでるつもりだろうけど…その小魚はピラニアだと教えてやろうぜ」

 

竹林爆薬で鍵部分を破壊し、中に突入した。

 

中には予想通り…

手足を縛られ、気を失っているビッチ先生がいた。

 

片岡「ビッチ先生…!」

 

岡島「とりあえず…天井と繋がってる縄を切ろう」

 

三村「第一目標クリアだな…!」

 

新「…目は覚まさないけど息はあるね」

 

片岡「じゃあまずC班と合流しよう。協力してA班を救出しつつ、死神が来たらぶっ飛ばす!ビッチ先生とビッチ先生を背負った杉野を守りながら、新君、岡島君、三村君が先導、私が後衛!敵が1人なら充分渡り合える!」

 

新「よし、じゃあ行くぞ」

 

俺は先導してドアの外を見る。

左右を見渡したが敵はいないようだ。

 

倉橋「良かったよ〜。ビッチ先生無事でさ〜」

 

矢田「だね。まだまだ教えて欲しいことあるもん」

 

中村「まー先生ってかダベリ友達だけどね〜」

 

その時、後ろからドサッと音がした。

 

振り向くと……片岡と杉野が倒れていた。

そして2人の傍には…ビッチ先生が立っていた。

 

 

イリーナ「………6ヶ月くらい眠ってたわ。自分の本来の姿も忘れて。目が覚めたの。死神(カレ)のお陰よ。…さて逝かせてあげるわボーヤ達」

 

矢田「……ビ、ビッチ先生…!?」

 

倉橋「……本気なの?」

 

イリーナ「あんた達と可能性の見えない暗殺を続けるより、確率の高い奴を組む。悪いわね。商売敵は黙らせろってカレが言うのよ」

 

マジかよ…!裏切られるなんて…!

 

中村「ビッチ先生…そんな人だと思わなかったよ」

 

イリーナ「フフ…どんな人だと思ってたわけ?」

 

中村「…身勝手で、欲望に弱くて、男がいないと性欲で全身が爆裂して死ぬ…………。あ、わりとこんな人か」

 

イリーナ「怖い設定付け足すな!!」

 

確かにこんな人だわ。

 

岡島「……な、なぁビッチ先生。死神の手先になってたのはショックだけどよ」

 

三村「…その、今から1人で俺らを相手するつもり?一応…俺らも毎日訓練積んでるしさ」

 

岡島「先生1人じゃ…もう勝負にならないと思うよ」

 

…普段のビッチ先生ならそうだろう。

でも今の…『暗殺者(本来の姿)』を思い出したビッチ先生なら…もしかしたら…。

 

イリーナ「…そうかしら?なら…最後の授業をしてあげるわガキ共」

 

ビッチ先生はこちらに歩み寄る………。

何をする気だ…!?

 

イリーナ「あっ痛うっ……!ぐ…裸足で石踏んだ………」

 

…え?

 

矢田「大丈夫……!?」

 

三村「なっ…!?」

 

ビッチ先生は一瞬で矢田と三村に麻酔針を刺した。

 

そのまま岡島と中村に寄りかかって同じく麻酔針を刺した、足で神崎と速水にシーツを被せて麻酔針をシーツ越しに刺す。

 

今まで見たことが無いような素早い動き…!

 

岡島「ず…ずりぃ…!」

 

矢田「弱ったフリするなんて…一瞬心配しちゃったじゃん……」

 

イリーナ「訓練には無かったでしょ?こんな動き。いいことひよっ子共。訓練が良くても結果が出せなきゃいみないの。手段はどうあれ、私はこの場で結果を出し…あんた達は出せなかった。経験の差よ。修羅場を踏んだ数が違うと心得なさい」

 

残ったのは…俺と倉橋だけだ。

 

倉橋「…う、嘘……」

 

イリーナ「さ…残るは2人……どうするの?」

 

倉橋「……新君」

 

………こりゃ無理だ。

 

新「…降伏しよう」

 

倉橋「えっ……」

 

新「今のビッチ先生相手に…俺ら2人じゃ無理だよ。無駄に戦う必要は無い…。俺が無理して戦って…倉橋を傷つける訳にはいかないからな」

 

倉橋「…新君…」

 

イリーナ「あら…思ったより利口じゃない」

 

死神「…なんだ君一人に負けちゃったか」

 

死神……!いつの間に…!

 

イリーナ「あんたの言った通りだわ。やっぱりこの子達とは組む価値は無い」

 

死神「そういうこと。世界が違う。この子達が透明な空気を吸ってる間…僕らは血煙を吸って生きてきたんだ」

 

イリーナ(……そう。世界が違う。あんたともよ…カラスマ……)

 

 

死神「だがそれにしても呆気ない。もう少し戦術や用意があるものとわくわくして居たんだが…」

 

死神が消えた…!?

まさか…C班の方に…!?

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《C班》

 

死神「………期待外れだ」

 

寺坂「なっ…!?」

 

死神が現れた……!?

いつの間に……!

 

死神「他の班は全員捕らえた。もう充分だ。君達では僕の練習相手は務まらない。どうする?大人しく捕まるか…。戦闘に不向きなメンバーで絶望的な戦いを挑むか……」

 

寺坂「…上等だよ。行くぜ友!イトナ!俺らで叩きのめすぞ…!!」

 

イトナ「…………」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

《イトナ side》

 

殺『イトナ君、シロさんが君に施した肉体改造は徐々に薄れ…君の体は自然な中学生に戻りつつあります。だから、しばらくは無理な動きをしては駄目です。昨日は越せた障害(カベ)も今日は超せない危険がある。そのような超せない障害(カベ)と出会った時は……』

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

《友 side》

 

不味いな…このメンバーじゃ、死神の言う通り絶望的だ。

 

イトナ「……降伏だ。多分格が違う。戦っても損害だけだ」

 

寺坂「……イトナ」

 

友「…同感だな。ここで戦って…無駄に体力を消耗したり、ダメージを負う必要はないよ。降伏が妥当だろうね……」

 

寺坂「……友」

 

イトナ「今日敗北してもいい…。いつか勝つまでチャンスを待つ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

俺たちは全員…さっきのとは違う牢屋に入れられた。

今度は…手錠と首輪を付けられ、身動きは取れなさそうだ。

 

死神「…この牢屋は脱出不可能だ。練習台はもう結構。あとは人質でいればいいよ」

 

 

倉橋「……はーあ。ビッチ先生に裏切られて悲しい…」

 

イリーナ「…フン」

 

 

カルマ「…どんな方法で殺せんせーを殺そうとしてるか知らないけどさ。そう計算通り行くのかね?」

 

死神「ん?」

 

カルマ「だってあんた俺らの誰にも大したダメージ与えられなかったじゃん。超体育着の情報を知らなかったからさ。この計算違いが…俺らじゃなく殺せんせーに対してだったら、あんた速攻で返り討ちでやられるよ」

 

死神「…で、結果はどうだ?君らは牢屋(そこ)にいるじゃないか」

 

……その通りだ…。情報不足なのを技術(スキル)でカバーした…。

 

死神「情報なんて不足して当然さ。ましてやあの怪物は…どんな能力を隠し持ってるか誰も知らない。例えどんなに情報不足でも結果を出す。それが世界一の殺し屋だよ」

 

……これがもし暗殺なら…気絶や、降伏した時点で俺らの死は確定していた。

 

俺らを一蹴し、

 

ビッチ先生を容易く引き抜き、

 

幾多の技術で結果を出す。

 

『桁違い』だ。今の俺らじゃ…百人いてもこいつに勝てない。

 

 

死神「さて、次は烏間先生だ。誘い出して人質に取る。彼ならば、君達よりは良い練習台になるだろう。それに彼を捕らえておくと色々メリットが多いんだ。計画の下準備の仕上げだね」

 

烏間先生を……!?

…いや、こいつならやる。

 

寺坂「…なぁイトナ、あっさり降伏なんざ…戦闘狂だったお前とはえらく変わったな」

 

イトナ「…あの頃は、俺は1人の殺し屋だった」

 

 

……ん?あの監視カメラに映ってるのって…

 

友「なぁカルマ…あれって…」

 

カルマ「……フッ。死神さーん。モニター見てみ。か?たまた計算違いしたみたいよ」

 

死神「……なぜわかった?」

 

 

 

イトナ「今は……俺はE組(ここ)の生徒だ。タコが言った。『生徒に超せない障害(カベ)があったのなら…その時は先生の出番です』と」

 

外についてある監視カメラには……犬の姿をした殺せんせーと、リードを持つ烏間先生がいた。

 

 

 

殺「ここです。犬に変装したお陰で自然に臭いを辿れました」

 

烏間「こんなうすらでかいイヌのどこか自然だ……!」



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第70話 『死神』の時間-2時間目

《友 side》

 

原「殺せんせーと烏間先生!」

 

中村「殺せんせーブラジル行ってたんじゃ…!」

 

死神「……まいったな。かなり予定が狂ってしまった。仕方ない計画(プラン)16だイリーナ。まずはエレベーターで所定の位置まで来てもらう」

 

イリーナ「ええ…。私の出番ね」

 

 

……まずいな。

 

先生2人は…ビッチ先生の裏切りを知らない……!!

 

 

不破「どうしよう…あいつなら殺せんせーを殺りかねないよ」

 

前原「…でもよ、殺せんせーならきっと……」

 

友「……どうだろうね。今までの殺し屋とは段違いだよ。それに、殺せんせーは急激な環境変化に弱い。『裏切り』も環境の変化に当てはまる。信じたくはないけど……」

 

不破「そんな……!」

 

渚「………」

 

茅野「………渚…」

 

 

 

その時のことだった。

 

上から……殺せんせーが降ってきた。

 

一同「……!?」

 

岡島「こ…殺せんせー!?」

 

吉田「嘘だろ…!?」

 

矢田「そんな…!」

 

 

 

死神「…気に入ってくれたかな殺せんせー?君が最期を迎える場所だ」

 

殺「……皆さん、ここは…?」

 

死神「洪水対策で国が造った地下放水路さ。密かに僕のアジトと繋げておいた。路上にある操作室から指示を出せば、近くの川から毎秒200tの水がこの水路一杯に流れ込む。その恐るべき水圧は君の体から自由を奪い……対先生物質の頑丈な檻に押し付けられ、ところてん状にバラバラになるって寸法さ」

 

なっ……!?それって……!

 

烏間「待て…!生徒ごと殺す気か!?」

 

死神「当然さ。今更待てない」

 

なんてやつだ……!!

 

死神「生徒と一緒に詰め込んだのも計画のうちだ。乱暴に脱出しようとすればひ弱な子供が巻き添えになる」

 

烏間「……イリーナ!お前それを知った上で…!」

 

イリーナ「……プロとして結果優先で動いただけよ。あんたの望む通りでしょ…」

 

烏間「……!!」

 

 

殺「ヌルフフフ…確かに厄介な対先生物質ですが、私の肉体はついにこれを克服しました」

 

何だって…!?

 

死神「……本当?」

 

殺「初めて見せますよ……!私のとっておきの体内器官を…!!」

 

そう言うと殺せんせーは…

 

 

 

檻をペロペロ舐め始めた。

 

 

 

……は?なにこれ。

 

でもよく見ると檻が少し溶けてるような……?

 

 

前原「いや…確かに殺せんせーのベロ初めて見たけど…」

 

殺「消化液でコーティングして造った舌です。こんな檻など半日もあれば溶かせます」

 

一同「遅ーよ!!!」

 

 

死神「…言っとくけど、そのペロペロ続けたら全員の首輪爆破してくよ」

 

殺「ええっ!?そ、そんなぁ!?」

 

村松「あたりめーだ」

 

 

それにしても、殺せんせーまでこうもあっさり捕まるだなんて…。

 

全部…死神(こいつ)に狩られるっていうのか…?

 

賞金も…俺らの命も……!

 

 

死神「さて急ぐか。他にもどんな能力を隠しているかわからない。来いイリーナ。今から操作室を占拠して水を流す」

 

操作室へ向かおうとする死神の方をガシッと烏間先生が掴む。

 

死神「……なんだいこの手は?日本政府は僕の暗殺を止めるのかい?確かに多少手荒だが…地球を救う最大の好機(チャンス)をみすみす逃せというのかな?……そもそも烏間先生。本当なら君も倒して人質に加える予定だった。君の腕ではこの僕は止められないよ」

 

烏間「…………」

 

烏間先生はしばらく考えると……死神の頬を強く殴った。

 

死神「ぐっ………!」

 

烏間「…日本政府の見解を伝える。29人の命は…地球より重い。それでもお前が彼らごと殺すつもりならば、俺が止める」

 

一同「烏間先生!!」

 

殺(カ、カッコいい!!)

 

 

 

死神「……へぇ」

 

烏間「……言っておくがイリーナ。プロってのは…そんな気楽なもんじゃないぞ。…どうする死神?生徒ごと溺死させるこの暗殺計画。続けるなら俺はここでお前を倒す」

 

死神は標的の暗殺を優先したのだろう。素早い動きで烏間先生とビッチ先生の間を抜けドアから出ていった。

 

烏間「チッ……!させるか!」

 

烏間先生もそれを追ってドアから出ていく。

 

殺「烏間先生!トランシーバーをONにして!」

 

イリーナ「……フン。死神(カレ)を倒そうなんて無謀ね…」

 

ビッチ先生はそう言って自分の首輪を取り外す。

 

イリーナ「確かにカラスマも人間離れしてるけど…死神(カレ)はそれ以上。このタコですら簡単に捕らえたのよ」

 

矢田「……ビッチ先生」

 

前原「あの野郎が俺らごと殺すって知ってたのかよ…」

 

岡野「何でよ…。仲間だと思ってたのに…」

 

ビッチ先生は俯いて黙っている。

 

カルマ「…怖くなったんでしょ?プロだプロだ言ってたアンタがゆる〜い学校生活で殺し屋の感覚忘れかけてて。俺ら殺してアピールしたいんだよ。『私冷酷な殺し屋よ〜』って」

 

ビッチ先生は檻に首輪を思い切り投げつけた。

 

 

イリーナ「…私の何がわかるのよ。考えたこと無かったのよ!自分がこんなフツーの世界で過ごせるなんて……!!弟や妹みたいな子と楽しくしたり、恋愛の事で悩んだり……。そんなの違う。私の世界はそんな眩しい世界じゃない…!」

 

ビッチ先生がそう言い終わった直後、どうやら死神から連絡が来たようだ。

 

イリーナ「…わかったわ」

 

そう言い残してこの場から去っていった。

 

 

殺「……流石は歴戦の殺し屋達です。『味方だと思ってた人が敵だった』。それは先生の苦手とする環境の急激な変化ですが、彼女の演技はその変化を一切私に悟らせなかった。死神はもちろん…イリーナ先生も素晴らしく強い。まだ君達が実力で勝てる相手では無い。

…死神が設置していた監視モニターですが、断片的にではありますが強者対強者の戦いが覗けそうです」

 

モニターには烏間先生が映っている。

ドアノブを捻り開けようして…ピタリと止まった。

恐らく、向かいにトラップが仕掛けられていて、それに気付いたんだろう。少し触っただけで気付くとか…相変わらず化け物ですね。

 

その時、烏間先生はドアを思い切り開けた。すると、案の定仕掛けられていたトラップが爆発した。

 

不破「か、烏間先生……!?」

 

烏間先生は爆発に巻き込まれた………

 

と思ったら、何事もなく先へと進んで行った。

 

寺坂「……え?何が起こった今」

 

殺「烏間先生はトラップの内容を見抜いていました。この短時間で仕掛けられるのはせいぜい爆薬まで。しかも建物全体を壊す量とは考えにくい。それを見越して時間短縮のためあえてそのままドアを開け、爆風と同じ速さで後ろ受身を取ったのです」

 

爆風と同じ速さで後ろ受身…だと…!?

 

殺「ドアも盾になり、烏間先生に爆発はほとんど届かなかった」

 

前原「冗談だろ…!?」

 

岡島「判断も行動もあの一瞬でやれねーよ!」

 

 

次に烏間先生が映るのは…あのモニターか。

 

……ん?今なんかあのモニターに一瞬……!

 

友「行っちゃダメだ烏間先生!多分そこの曲がり角に……!」

 

曲がり角から銃弾が飛んでくる。烏間先生は間一髪で避けることに成功した。

 

曲がり角には銃火器が取り付けられているドーベルマンが数匹いた。

 

 

倉橋「犬…!?」

 

殺「銃を撃てるよう調教されたドーベルマン。あれだけの数をきっちり仕込んで使いこなすとは…死神の手腕ですねぇ」

 

杉野「烏間先生はどうするつもりだ……!?」

 

烏間先生は……。

 

ニコッと笑った。

優しい笑顔と言うより…なんかその…怖い笑顔で。

多分本人は優しく笑いかけてるつもりなんだろうけど……。

 

ドーベルマンはモニター越しでも分かるほど怯えている。

 

そして……笑顔ひとつで抜けてしまった。

 

嘘だろ…!?

 

千葉「…いやでも犬の気持ちちょっと解るな…。あの人の笑顔メチャメチャ怖えーもん」

 

不破「そういえば…笑ってたシーン思い出しても半分は人を襲ってる時ね…」

 

確かに…。

 

殺「そう。普段は強い理性で押さえ込んでいますが、烏間先生の真価はその奥に潜む暴力的な野性!彼もまた……この暗殺教室に引き寄せられた…比類なき猛者なのです」

 

殺せんせーがそう言っている間にも、いくつものトラップを回避していく。

鉄骨を両手で押さえ込んだり、ボウガンの矢を手で受け止めたり……。

 

殺「そして、死神という殺し屋も。この短時間であれだけの罠を仕込むとは…知識、技術、機転、全てが怪物レベル」

 

一同(じ……人類最強決定戦……!!)

 

 

木村「勝てないわけだ…。才能も積み上げた経験(モノ)も全て段違いだ」

 

殺「……そう。彼らは強い。それにこの牢屋もとても強固。対先生物質と金属とを組み合わせた2種の檻。爆薬でも液状化でも抜けられません。では君たちはどうしますか?今この場で彼らや檻より強くなるか?彼らにはとても適わないと土俵を降りるか?

両方とも違いますね。弱いなら弱いなりの戦法がある。いつもやってる暗殺の発想で戦うんです」

 

 

岡島「……つってもなぁ…。この状態でどうやって…」

 

三村「……………」

 

友「…航輝?」

 

三村「…全部が上手く行けばの話だけど…。出来るかも。死神に一泡吹かす事……!」



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第71話 『死神』の時間-3時間目

《烏間 side》

 

死神(……思っていたより化け物だった。これだけ迅速にトラップを破られては足止めにならない。操作室を占拠して水を流す前に追いつかれる。まぁ檻の中の標的に脱出の動きは見られないし…仕方ない。止まって迎え撃つか)

 

 

 

先へ進もうとすると、尋常じゃない殺気を感じた。

恐らく…死神がいる。

 

死神「殺気の察知も完璧か…正直見くびってたよ烏間先生」

 

烏間「まるでトラップの見本市だった。多彩なもんだな」

 

死神「人殺しの技術(スキル)を身につけたらね…。片っ端から使いたくなるのが殺し屋の性さ」

 

すると、後ろから銃を撃たれた。

頬に掠ったが、少し血が出た程度…。

そして銃を撃った主は…。

 

死神「…ちゃんと当てなよ。イリーナ」

 

イリーナ「ごめんね…。次はちゃんと当てるわ」

 

烏間「……死ぬぞ。イリーナ」

 

イリーナ「死ぬなんて覚悟の上よ。アンタには理解出来ないだろうけど……死神(カレ)は分かってくれた。『僕とお前は同じだ』って…」

 

死神「そうだね。昔話をしてあげたっけ。テロが絶えない貧困のスラムに生まれ、命なんてすぐ消えるあやふやな世界。信頼出来るのは金と、己が技術(スキル)と、『殺せば人は死ぬ』という事だけ」

 

烏間「…………」

 

死神「イリーナなら僕の気持ちを分かってくれる。例え…僕が君を捨て石に使おうとね」

 

 

死神がリモコンを押すと上の天井が崩れてきた。

 

咄嗟の判断で何とか瓦礫に埋もれる事は無かったが…足止めされてしまった。

 

死神「生きてるとは流石だな。だが閉じ込めた。恐らく、君やタコ単独だったらこのトラップも抜けただろう。彼女は…そんな怪物を惑わすためだけに雇った」

 

後ろを振り向くと、イリーナが瓦礫の下敷きになっていた。それに、気を失っているようだ。

 

烏間「………!」

 

死神「可愛らしい位迷ってたよね彼女。かつての仲間を巻き込んでいいものか。その迷いは伝染する。君も彼女を攻撃すべきか迷った。結果君は…彼女を気にして反応が遅れた。これで当分追ってこれまい。遠慮なく最後の仕上げに入るとしよう」

 

烏間「くっ…!」

 

殺『烏間先生!』

 

スマホから奴の声がした。おそらく、モニターで見ていたのだろう。

 

殺『モニターを見ていたら爆発したように映りましたが…大丈夫ですか!?イリーナ先生も!』

 

烏間「……俺はいいが、あいつは瓦礫の下敷きだ」

 

一同『……!!』

 

烏間「だが構っている暇はない。道を塞ぐ瓦礫をどかして死神を追う」

 

倉橋『ダメ!!どうして助けないの烏間先生!!』

 

烏間「……倉橋。彼女なりに結果を求めて死神と組んだその結果だ。責めもしないし助けもしない。一人前のプロならば自己責任だ」

 

倉橋『プロだとかどーでもいーよ!十五の私がなんだけど…ビッチ先生まだ二十歳だよ!?』

 

矢田『うん。経験豊富な大人なのに、ちょいちょい私達より子供っぽいよね』

 

倉橋『多分…安心の無い環境の中で育ったから、ビッチ先生はさ…大人になる途中で大人の欠片をいくつか拾い忘れたんだよ』

 

烏間「……!」

 

矢田『助けてあげて。私達生徒が間違えた時も許してくれるように…』

 

中村『ビッチ先生の事も…』

 

烏間「…だが、時間のロスで君らが死ぬぞ」

 

友『大丈夫!死神は多分目的を果たせずに戻ってきます!』

 

磯貝『だから、烏間先生はそこにいてください』

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

イリーナ(……私の村は内戦に巻き込まれた。そして、私以外全滅した。私は民兵の1人を殺して脱出した。その時、師匠(センセイ)と出会って、殺し屋になることを決意した。そして、1人…また1人と殺すごとに、血の温度を感じなくなってゆき、穢れた温もりを思い出す事は減っていった。冷たい血の海が私の日常。裏切られて死ぬくらいが丁度いい。終われてよかった。陽の当たる世界で…温もりを思い出してしまう前に…)

 

烏間「……おい」

 

イリーナ「えっ…?」

 

烏間「……さっさと出てこい。重いもんは背負ってやる」

 

イリーナ「……!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

不破「……そろそろ、死神は操作室に着いたかな」

 

友「恐らくな。死神は操作室に着いてから水を流す前に標的を確認するはず…その時、俺たちが『いない』ことに気付くはずだ」

 

その時、『床に置いてあった』首輪が爆発した。

 

友「……爆発したってことは、推理通り…ここの映像見たようだね」

 

三村「焦った死神は烏間先生の所へ戻って来るはず。結果がわかるまでこのまま我慢だ」

 

寺坂「……ぐぐ…きついな……」

 

殺「それにしても…よくこんな手を考えましたねぇ三村君……」

 

 

中村「保護色になって壁と同化…これで本当に騙せてんの?」

 

三村「多分ね。光の加減もバッチリだ」

 

片岡「全く。ラジコン盗撮の主犯共が大活躍とはね…」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

少し前──

 

三村「ビッチ先生が投げつけてった首輪……。俺らのと同型だよな。どうだイトナ?」

 

イトナ「…通信(リモコン)回線は起爆命令と鍵解除の2ch(チャンネル)だけだ。簡単な構造だから乱暴に外しても起爆しないし奴にもバレない」

 

三村「…だそうで。殺せんせー頼むよ」

 

殺「お安い御用です。死神も首輪も解析されるのは想定外でしょう」

 

友「……さて、次は手錠だね。監視カメラに映らないようにこっそり外さないと」

 

殺「勿論です」

 

三村「岡島、監視カメラは?」

 

岡島「強めの魚眼だな。忙しい時でも一目見れば部屋全部がチェックできる。それと檻の外…絶対に壊されない位置にひとつ。この2つに死角は無いけど…お前の読み通り『正確に見えない』場所がある。例えば…『ココ』とかな。外のカメラからは遠いし、魚眼の端は大きく歪む。モニターを見る限り魚眼補正もしてないし…盗撮するなら高い機材使わなきゃ!」

 

うーん…カメラの知識をエロに使わなきゃ岡島も素直に凄いと思えるのに…。

 

三村「その見えづらい所に上手く紛れる。菅谷に迷彩を塗ってもらって、横に10人、縦に3人…一番下は男子で…」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

菅谷「マジ使えるよ。超体育着の暗殺迷彩。壁の色そっくりに変えれるぜ」

 

岡野「カメラに衣装……。まるで映像作品の段取りだったね」

 

前原「三村こーいうの好きだよね」

 

友「新……。大丈夫か?俺と優月を上に乗せてるけど…」

 

不破「お…重くない…?」

 

新「う…うん。兄貴も姉貴も軽いから何とかね…それより、殺せんせーはどうしてんの?」

 

不破「先生は普通に保護色になれるから…」

 

友「俺らの隙間を自然に埋めてるんだよ」

 

中村「てことは…今素っ裸なんだよね…」

 

殺「恥ずかしい…恥ずかしい…」

 

友「赤くなるなよバレるから…!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・¹

一方その頃──

《烏間 side》

 

烏間「左腕は骨折の疑いがあるな。とりあえず応急処置で固定する。他に痛む所はあるか?」

 

イリーナ「ぐっ…」

 

烏間「おい!鼻血が…!」

 

イリーナ「いや……あんたが良い体すぎて興奮した…」

 

烏間「脳に異常かと思ったが…お前の場合それが正常だな……。

お前に嵌められてもなお…生徒達はお前の身を案じていた。それを聞いて…プロの枠にこだわっていた俺の方が小さく見えた。思いやりが欠けていた。すまない」

 

イリーナ「………」

 

その時、壁の向こうから殺気を感じた。

 

烏間「……………戻ってきたな。生徒たちが言った通りだ。イリーナ。お前が育った世界とは違うかもしらん。だが、俺と生徒がいる教室(世界)には…お前が必要だ」

 

 

 

ドゴォッ…!

 

壁が爆発して、そこから死神が出てくる。

 

死神「………イリーナ。烏間は?」

 

イリーナ「………別の道を探しに行ったわ。酷いじゃない死神。私ごと爆破するなんて」

 

死神「……いやあごめんよ!ああでもしないと目的が達成出来なくてね!」

 

イリーナ「……」

 

死神「僕らの世界は騙し騙されの世界だろ?文句あるなら…今度は確実に殺してやるよ?」

 

イリーナ「…別にいいわ。私も、すぐ男を乗り換えるビッチだから」

 

死神「…えっ……」

 

死神の背後を烏間先生がとり、死神をがっしりと捕まえる。

 

死神「な…なに……!?」

 

烏間「自分の技術(スキル)を過信せずに…信頼出来る仲間を作るべきだったな。この場所じゃどんな小細工されるかわからない。スッキリした場所へ移ろう」

 

死神(こ…こいつ正気か!?)

 

烏間先生は死神と共に飛び降りた。

下には下水路がある。

 

烏間「おもったんだが…お前そんなに大した殺し屋か?」

 

2人は下水路の水に着地して、バシャッと大きな音が鳴った。

 

烏間「受身の技術(スキル)はさすがだな。一つ一つの技術(スキル)の凄さで強引に結果は出せるだろうが…生徒達には踊らされ、イリーナにも騙された。ツメも脇も甘すぎる。ブランクでもあったのか…?」

 

死神「………」

 

死神は何かを投げ捨てた。

 

それは……人の顔の皮だった。

 

死神「黙って聞いてりゃ言ってくれるね…」

 

烏間「……おまえ…!なんだその顔は…!」

 

死神「顔の皮は剥いで捨てたよ。変装の技術(スキル)を極める上で邪魔でしかない。全てを犠牲に磨き上げた死神の技術(スキル)!お前も殺して顔の皮も頂こうか!」

 

烏間「…この教室(世界)から退出願おう。お前は生徒の教育に悪すぎる!」

 

 

 



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第72話 世界の時間

《友 side》

 

【※ここからは殺せんせーの実況でお送りします。】

 

不破「な、何今の音……!」

 

友「向こうで水に落ちた音がしたぞ!」

 

殺「上からの立坑ですね…。そして…烏間先生と死神…!」

 

殺せんせーはズーム目で烏間先生たちの様子を見ているようだ。

 

岡島「殺せんせー!どういう状況か伝えてくれよ!」

 

 

殺「え…えーっと!死神がナイフを…!あっ違う次はワイヤーだ!烏間先生これを……おぉスゴい避けざまに返しの肘!あっダメだナイフを盾に…それを見て瞬時に蹴りに変えたけど…えーとえーと…ど、同時!!

 

なんか…なんか凄い闘いだーー!」

 

 

岡野「何言ってるかサッパリだよ殺せんせー!」

 

前原「わかるように説明しろよ!!」

 

友「実況下手くそか!!」

 

殺「にゅやっ!?」

 

あの説明じゃ一切情景が浮かんでこないんだけど!

 

【※ということで実況は終了です。】

 

殺「心配せずともそう簡単に烏間先生は殺られません。死神の持つ技術(スキル)は確かに多彩。しかも全ての技術(スキル)が恐らく高度。いくら警戒しても彼の前では裏をかかれる。だから烏間先生は敢えて接近戦に持ち込んだ。場所も…水とコンクリだけのシンプルな舞台。

 

罠を仕込むヒマもない通常戦闘なら烏間先生の技術(スキル)レベルは死神以上。烏間先生にイリーナ先生。彼らのようなエキスパートが君らを教えているからこそ…先生も退屈せずに殺される日々を送れるのです。

 

ただ心配なのは……死神はこんな状況でも秘密兵器を隠し持っているだろう事」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

烏間(……手強い技術(スキル)だ。まともに()り合っても長引くだけだ)

 

死神「……真実を言うよ烏間先生。僕は実は大金持ちの何不自由かい家庭で育った。悲惨な境遇で育ったなんて嘘っぱちさ。知人の話を自分の話のように脚色しただけ。あの女を引き入れるトークの技術(スキル)さ。フフフフフ……」

 

烏間「お前……!」

 

死神「だが僕の親は…殺し屋に殺された」

 

烏間「……!」

 

死神「色々恨まれる商売してたからね。家でも横暴だったし、死んでも特に悲しくなかった。その代わり…目の前で親を瞬殺した殺し屋の動きに……僕はこう思ったんだ。

 

 

なんて…美しい技術(スキル)だろうかと」

 

烏間「………」

 

 

死神「目の前で見るのプロ野球選手の華麗なキャッチは…それだけで少年の進路を変えてしまう衝撃(インパクト)がある。僕の場合はそれが暗殺だった。その場で僕は殺し屋になる事を決めた。殺傷法、知識、対人術……暗殺とは美しい技術(スキル)の集合体だ。人を殺せば技術(スキル)が身につき…殺して得た死神の名声は更なる仕事と技術(スキル)をもたらす……」

 

死神は懐から何かを取り出そうとしている。

 

烏間(銃か……!?)

 

取り出したのは…一輪の薔薇だった。

 

 

死神(ご覧に入れよう……。死神の技術(スキル))

 

死神は人差し指から何か小さな物を発射した。

 

烏間先生の左胸に当たり、そこから血が垂れる。

 

 

死神(…わずか10口径!極小サイズの仕込み銃から放たれる弾丸は…!普通に撃っても殺傷力はゼロに近いが…死神の射撃技術(スキル)は不可能を可能にする!

筋肉と骨の隙間を通し…大動脈に裂け目を入れる!1ヶ所が裂けた大動脈は自らの血流圧で裂け目を広げ、血が噴き出し大量出血で死に至る!!)

 

烏間先生の胸から血が大量に出る。

そのまま烏間先生は崩れ落ちた……が。

 

死神「極小の弾丸は血流に長され体の奥へ。銃声はしないから凶器すらわからない。標的の体と精神の波長を見極め…鍛え抜かれた動体視力で急所。撃ち抜く…死神にしか出来ない総合芸術さ……………ん?」

 

よく見ると…血を噴いているのは烏間先生の胸ではなく、皮膚と同じ色のチューブだった。

 

更に…そのチューブは奥まで続いている。

正体は……

 

 

 

 

 

殺「ヌルフフフ…」ゴクゴク

 

殺せんせーの触手だ。

血に見えるものは殺せんせーが今飲んでいるトマトジュース。

 

殺「この短時間で脱出するのは難しいですが、触手一本ならギリギリ外に出せます」

 

不破「殺せんせー、トマトジュース飲むっけ?」

 

殺「あまり好きじゃないですが…。烏間先生とこのアジトへ向かう途中にコンビニで買いました。必要になると思いまして」

 

友「あのクオリティ低い犬の変装で国家機密がコンビニに行ったのか……」

 

新「よく売ってくれたな…通報されてもおかしくないぞ」

 

 

 

烏間先生は死神が触手を見ている隙に、死神の男の急所を思い切り殴った。

 

死神「うぐおおおお!?」

 

烏間「やっと決定的な隙を見せたな。死神でも急所は同じでホッとしたぞ」

 

死神(血管の位置に触手を貼り、そいつで弾丸を受け止め、ジュースを吹いて出血に見せかけた…!?)

 

烏間「あのタコの頭の回転は半端ではない。お前に殺られた殺し屋の様子を話したら…瞬時に技術(スキル)の正体を見抜いたぞ。『私と一緒の空間にいるなら必ず守れる』と言っていた。狙う標的に守られるのは癪だがな

 

……覚悟はいいな死神。俺の大事な生徒と同僚に手を出したんだ」

 

死神「待て…!僕以外に誰が奴を殺れると…!?」

 

烏間「技術(スキル)なら…E組(うち)に全て揃ってる」

 

烏間先生は死神を投げ飛ばした。

 

死神はそのままコンクリに頭を打ち付けて気絶した。

 

烏間「殺し屋なんて辞めたらどうだ。職安に行けば役立つ技術(スキル)が沢山あるぞ」

 

 

殺「全生徒と全先生…。クラス皆で掴んだ勝利ですねぇ」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

烏間「ぬぬ……ぐっ……何とか…何とか手は無いものか……!こいつだけを閉じ込めたまま殺す方法は…!」

 

殺「考えても無駄ですねぇ烏間先生」プークスクス

 

このまま殺せんせーだけ閉じ込めればそのまま暗殺出来そうなのに…。

 

あと笑い方うぜぇ…。

 

殺「出ようと思えば出れるんですこんな檻。マッハで加速して可部に何度も体当たりしたり、音波放射でコンクリートを脆くしたりね。ただ、それはどれも一緒にいる生徒に大きな負担をかける。だから貴方に死神()を倒してもらったんです」

 

烏間(……言われなくても承知の上だ。こいつがE組(クラス)の結束を強めるために…最小限しか手を出さずにいた事もな)

 

烏間先生がボタンを押すと、上の穴が開いた。

そっちが開くんかい。

檻が開くと思ってた。

 

 

下水路へと向かうと、人の皮を剥いだ死神が拘束されていた。

 

不破「これは……」

 

友「中々グロいな…。あんま見ない方がいいぞ」

 

不破「う…うん」

 

 

烏間「驚異的な技術(スキル)を持つ男だったが…技術(スキル)を過信しすぎていた。人間としてどこか幼かった。だから隙もあった」

 

矢田「そういう意味じゃビッチ先生と同じかもね」

 

倉橋「うん…」

 

吉田「けどよ…なんでここまで……顔潰してまで技術(スキル)を求める心理がわかんねーよ…」

 

烏間「幼い頃の経験だそうだ。殺し屋の高度な技術(スキル)を目の当たりにして…ガラリと意識が変わってしまったらしい」

 

渚「………」

 

殺「影響を与えた者が愚かだったのです。これほどの才能ならば…本来もっと正しい道で技術(スキル)を使えたはずなのに…」

 

烏間「人間を活かすも殺すも…周囲の世界と人間次第…か」

 

殺「そういう事です」

 

その時、コツンという音がした。

 

振り返ると……

 

こっそり逃げようとするクソビッチがいた。

 

前原「てめービッチ!!」

 

友「何逃げよーとしてんだ!!」

 

イリーナ「ひぃぃ!!耳のいい子達だこと!!」

 

そして速攻でビッチ先生を吉田と村松が拘束した。

 

イリーナ「あーもー好きなようにすりゃいいわ!裏切ったんだから制裁受けて当然よ!男子は溜まりまくった日頃の獣欲を!女子は私の美貌への日頃の嫉妬を!思う存分性的な暴力で発散すればいいじゃない!!」

 

新「発想が荒んでるな……」

 

中村「それ聞いてむしろやりたくなってきたわ」

 

 

寺坂「いいから普段通り来いよ学校。何日もバックれてねーでよ」

 

イリーナ「……!」

 

矢田「続き気になってたんだよね。アラブの王族たぶらかして戦争寸前まで行った話」

 

片岡「来ないなら先生に借りてた花男の仏語版借りパクしちゃうよ」

 

イリーナ「……殺す直前まで行ったのよ…?あんた達のこと…」

 

新「…おう」

 

イリーナ「過去に色々ヤッてきたのよ…?あんた達が引くようなこと…」

 

友「それで?なんか問題あるの?」

 

竹林「裏切ったりヤバい事したり…それでこそのビッチじゃないか」

 

中村「たかがビッチと学校生活楽しめないで…うちら何のために殺し屋兼中学生やってんのよ」

 

烏間「そういう事だ」

 

烏間先生はビッチ先生に歩み寄った。

その手には……一輪の薔薇が…!

 

中村「おおっ…!」

 

殺「……!!」

 

烏間「その花は…生徒達からの借り物じゃない。俺の意思で敵を倒して得たものだ。誕生日は…それなら良いか」

 

イリーナ(何よそのムードの無い渡し方…!しかも前より花減ってるし!ガツンと文句言ってやるわ。こういう時何て言うんだっけ…。えーとえーと…)

 

 

 

 

イリーナ「…はい」

 

 

友「おーいい感じじゃん!」コソコソ

 

不破「可能性出てきたね…!」コソコソ

 

 

殺「……ただし烏間先生。いやらしい展開に入る前に一言あります」

 

烏間「断じて入らんが言ってみろ」

 

殺「今後……このような危険に生徒を決して巻き込みたくない。安心して殺し、殺される事が出来る環境作りを防衛省(あなた方)に強く要求します」

 

烏間「……わかっている。打つ手は考えてある」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《烏間 side》

 

上司「『暗殺によって生徒を巻き添えにした場合…賞金は支払われないものとする』…か」

 

烏間「手配書にこの条項を明記しない限り…生徒全員があの教室をボイコットすると言っています。暗殺の選択肢は狭まりますが…生徒が安全を求めるのも当然の権利かと」

 

上司「……随分と子供好きになったもんだな烏間。まぁいい。条件を飲もう。どのみちもう終わりだ。個人レベルのフリーの殺し屋に頼る時期はな」

 

烏間「…………?」

 

上司「気付いてないだろうが…椚ヶ丘市は目下空前のマンションの建設ラッシュだ。最近の住宅バブルに見せかけてその正体は…

 

各国共同で進めている…暗殺最終プロジェクトだ。

 

概要を見たがとんでもない超技術だ。あれの前には殺し屋等出る幕無しだ」

 

 

 

 

 

更には…シロはシロで最終兵器の用意があるとか。

 

上司「全ての準備が整い次第…最終兵器同士の共同作戦が発動される。今のところ結構予定は…来年3月!もはやE組に必殺までは求めていない。3月までのんびり楽しく暗殺を続け…奴さえ逃がさないようにしてくれればそれでいい…」

 

 

 

 

この教室が…どんな結末を迎えるのかはわからない。

 

イリーナ「…おはよ」

 

烏間「おはよう」

 

イリーナ「寒くなったわね…。明日から服替えなきゃ」

 

烏間「なんだ。2種類しか服ないんじゃなかったのか」

 

イリーナ「なわけないでしょ!あんたが落ち着く服で統一しろって言うから!大体あんたは私の服なんて見やしない!昨日はあんなに優しかったのに……!」

 

だが…この場所はいい世界だ。

 

殺「ヌルフフフ……犬の格好をした先生を殺せますかねぇ?」

 

友「くっそ…四足歩行でも速くて当たんねぇ!!」

 

岡島「うすらでかい癖にちょこまかと!!」

 

殺「散歩する犬も殺せないとはまだまだですねぇ」

 

 

烏間「…指揮を執るべきだな。行くぞ」

 

イリーナ(なんにも変わってないじゃない堅物の鈍感…!ええい!いつものよーにおっぱい攻撃で…!)

 

 

ここに居ると…誰もが正しく成長出来るチャンスがある…。

 

イリーナ「……………」

 

イリーナ(いや…やめておこう。…私も……変わるべきね)

 

 

烏間「…腕は」

 

イリーナ「平気」

 

 

3月まで待つ必要は無い。この教室は今が最高の殺し時(コンディション)だ。

 

 

 

 

 

 

 



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第73話 進路の時間

渚の進路の回はあんまり友君介入出来ないんで次回で終わりです
その後はオリ回入ります


《友 side》

 

片岡「…進路相談?」

 

殺「もし誰かが先生を殺せて地球が無事なら…皆さんは中学卒業後も考えなくてはなりません

 

ま……殺せないから多分無駄になりますがねぇ」

 

うわ腹立つ。久々に見たこのナメてる顔。

 

殺「一人一人面談を行うので…進路希望が書けた人から教員室に来てください。勿論相談中の暗殺もアリですよ」

 

友「……進路ね」

 

杉野「地球を滅ぼすモンスターに相談してもなぁ…」

 

茅野「手厚いんだかナメてるんだか…」

 

 

新「渚は進路どうすんの?」

 

渚「僕は……あれ、なんか勝手に書かれてる」

 

新「『志望校:女子高、職業(第一希望):ナース、職業(第二希望):メイド』…。お前その道に行くのか」

 

渚「行かないよ!?中村さん!何で勝手に人の進路歪めてんの!」

 

中村「渚ちゃん。君には漢の仕事は似合わんよ」

 

まぁそれは一理ある。

多分ナースとメイド似合うでしょ渚なら。

 

カルマ「渚君、卒業したらタイかモロッコ旅行いこうよ。今はタイの方が主流らしいよ」

 

渚「カルマ君はなんで僕からとろうとするの!?」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

磯貝「俺は公立行きます!中学入った頃とは…家の経済事情が違うもので」

 

殺「うんうん。磯貝君ならかなりの難関公立へ進めるでしょう。その際も環境選びは重要ですよ。高校までの交通費やバイトの可不可、奨学金制度も視野に入れつつ今後も相談していきましょう」

 

磯貝「…はい!」

 

 

 

 

杉野「俺は今はとにかく野球!でも勉強からも逃げないよ!前に先生も言ってたしな。2本目の刃も大事だって」

 

殺「その通りです杉野君」

 

 

 

 

岡野「私は杉野みたくはっきり出来ないな……。私も体動かすの好きだけどさ。それで生計立てるのって今めっちゃ大変じゃん」

 

殺「よくわかります岡野さん。どの道にも進めるように…先生といくつか人生プランを作ってみましょう」

 

岡野「うん」

 

 

 

 

 

奥田「私はやっぱり研究の道に進みたいって言ってきます。ついでに言葉巧みにこの毒コーラ盛れたらいいな。茅野さんは?」

 

茅野「うーん未定…。決まってない人まだ結構いるんじゃないかな。多分…この教室で殺る事殺れたら…初めて答えが見つかる人もいると思うよ」

 

ん?陽斗が珍しく悩んでる。

進路希望…なんか書いたかな?どれどれ…………。

 

友「………陽斗。『志望校:モテ系高校、職業(第一希望):ジゴロ系会社員、職業(第二希望):ヒモ系ニート』はさすがに怒られると思うぞ」

 

前原「う……」

 

てかモテ系高校ってなんだよ…。

 

 

 

倉橋「私はやっぱり生物の道に進みたいな〜。動物園の飼育員とか〜」

 

新「倉橋は動物好きだからね。良いと思うよ」

 

倉橋「新君は〜?」

 

新「俺はとにかくグループのインテリ枠目指したいから…名実ともに高い所に行こうかなって」

 

 

 

カルマ「ねぇ奥田さん。そのコーラにG(ゴキブリ)の卵粉末にしたやつ入れてやろーよ」

 

中村「じゃあカマキリの卵もブレンドしよ。昆虫の中でも近縁種だから相性良いはず」

 

渚「あの二人の将来が心配だ……」

 

あいつら…才能を悪い事に使わなきゃいいんだけどな…。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

友「さて…俺の番か。失礼しまーす」

 

殺「どうも友君」

 

……ん?

 

友「殺せんせー、どうしたのその顔」

 

殺「原さんの塩分多め弁当を食べてむくんで、狭間さんの呪いで髪が生えて、菅谷君に落書きされました」

 

友「散々だな…」

 

てかそれ髪じゃなくてトゲだろ。

 

 

殺「それで君の将来の目標は…『私立探偵』ですか」

 

友「そ。勿論、探偵物の漫画の影響受けたっていう理由じゃないよ。落し物やペット探しとか、浮気調査とかさ。警察に頼みづらいような悩みを持ってる人の助けになりたいんだ。ま、殺人事件の解決も憧れてはいるけどね」

 

殺「なるほどなるほど。君らしいです。高校はどうするつもりですか?」

 

友「んー…まぁ自分の学力にあった所に行こうかなって。剣術道場の土方さんが通ってる高校もありかなとは思ってるけど未定だな」

 

殺「ではまずは自分に合った高校探しですね。あと、自分の探偵事務所を経営するのであれば経営学も学ぶ必要があります。高校だけでなく大学も視野に入れてみましょう」

 

友「はい。そうします。…ありがとうございました」ガララ

 

 

 

不破「あ、友君終わった?」

 

友「おう。優月は何になりたいんだ?」

 

不破「私はジャンプの編集者!絶対メガヒット作品出すわ!」

 

友「流石だね…。…優月さ。俺が探偵事務所設立したらそこで助手として働いてよ。1人だと寂しいからさ…」

 

不破「……えっ。それって…」

 

友「………や、やっぱ何でもないっ……!///」

 

やべぇ……自分で言ってて凄くはずかしい…!!

 

 

前原「お、友戻ったかー。どうした?顔赤いぞ」

 

友「えっ…?!そ、そんなことないよ…?」

 

やばい…バレた。

 

 

イリーナ「なによガキ共。進路相談やってんの?」

 

ビッチ先生が教室に入ってきた…。

 

でも…いつもの露出高めの服じゃない…!!

 

矢田「……ビッチ先生」

 

倉橋「フツーの服だ…」

 

イリーナ「そ。フツーの安物よ。あんた達のフツーの世界に合わせてやったんじゃないの…。何よ、やっぱりもっと露出が欲しいわけ…?」

 

岡島(いや…隠した事でむしろエロに凄みが出た…!)

 

三村(あの人もある意味成長したなぁ…!)

 

 

不破「友君、私も終わったよー…って、ビッチ先生の服…!」

 

友「ああ…普通の服……。ん?サイズシールつきっぱなしじゃないか?あれ」

 

不破「あ、ホントだ…」

 

カルマ「安物慣れしてないね〜あの人」

 

杉野「どーする?そっと言おうか?」

 

渚「……いや。僕が取るよ」

 

渚は席を立ってビッチ先生の方へ向かうと…。

 

素早い動きでサイズシールを取った。

そして…何事も無かったかのようにサイズシールを手で潰し、教室を出ていった……。

 

友「……今の…」

 

……渚には、恐らく殺し屋の才能がある。

沖縄で鷹岡を倒した時とか…。

 

でも…渚が殺し屋の道へ進もうとするとは思えない。

むしろ、殺し屋になるべきか悩んでる気がする。

 

死神の一件以来、渚がぼーっとするようになったのもそのせいかもしれない…。



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第74話 ヅラの時間

《友 side》

翌日──

 

渚から衝撃的な事を聞いた。

 

なんと、渚の母親が渚をE組から脱出させようとしているそうだ。

 

しかも、先生との三者面談を希望しているのだとか…。

 

杉野「渚の母ちゃんか…。1回家に遊び行った時見たけどさ。割とキツい反応されたよな…」

 

渚「殺せんせー任せとけって言うんだけど…」

 

新「いや…三者面談であの不審さが怪しまれないわけないだろ……」

 

イリーナ「じゃあ私が代わりにやってやる?担任役」

 

友「お、ビッチ先生か」

 

イリーナ「まず人間だし…あのタコとカラスマの次にあんたらの事知ってるわよ」

 

確かに…今この場で一番適任なのはビッチ先生だな。

 

片岡「じゃかちょっと予行練習してみようよ。私が渚のお母さん役で」

 

こうして片岡、渚、ビッチ先生による三者面談予行練習が始まった。

 

片岡「担任として最も大切にしている事は?」

 

イリーナ「そうですね…。あえて言うなら『一体感』ですわお母様」

 

お〜…それっぽい。

 

片岡「じゃあ、うちの渚にはどういった教育方針を?」

 

イリーナ「まず渚君には…キスで安易に舌を使わないよう指導しています」

 

は?

 

イリーナ「まず唇の力を抜いて数度合わせているうちに…相手の唇からも緊張感が消え柔らかくなります…。密着度が上がり、どちらがどちらの唇かも分からなくなってきた頃……『一体感』を崩さないようそっと舌を忍ばせるのです……」

 

思わず片岡が銃を持って立ち上がるが、なんとか渚が抑えている。

 

吉田「問題外だ…」

 

寺坂「訴えられるぞこんな痴女担任……」

 

速水「……ていうか、E組(うちら)って名目上の担任は烏間先生だよね。うちの親も三者面談希望したけど…その時は烏間先生がやってくれたし。統一しないと親同士で話が合わなくなっちゃうよ」

 

不破「そっか……」

 

 

殺「…ヌルフフフ。むしろかんたんです。烏間先生に化ければいいんでしょう?」

 

殺せんせー…。あんたは正直不安しかないんだけど…。

 

新「いつものクオリティ低い変装じゃ誤魔化せないぞ?」

 

倉橋「すれ違うくらいならまだしも…面と向かってじっくり長く話すからね〜」

 

殺「心配無用。今回は完璧です!」

 

ふむ…。そこまで言うくらいならさぞかし再現度の高い変装をしてるんだろうな…。

 

 

 

殺「おうワイや。ワイが烏間や」

 

友・岡島(再現度ひっく!!!!)

 

何となくそんな気はしてたけど!

予想の遥か上を行く再現度の低さだった!!

 

前原「いつも通りの似せる気ゼロのコスプレじゃねーか!」

 

倉橋「烏間先生そんなダサいパンタロンはいてない〜!」

 

殺「い、いやでも眉間のシワとかそっくりやろ」

 

岡島「その前に口!鼻!耳も!」

 

新「なんで腕がソーセージみたいになってんだよ!」

 

殺「烏間先生のガチムチ筋肉を再現したんや」

 

木村「無駄なとこばっか凝るな!」

 

三村「あと何で関西弁なんだよ!!」

 

 

不破「うーん…。いつもはギャグのノリで誤魔化してたけど…真面目に人間に似せるって難しいね」

 

友「まずは口だな。うーん…人間の口に近いのは…

 

( ˙-˙ )(これ)か…

( ˙o˙ )(これ)か…

( ˙ε˙ )(これ)か…

(๑'ڡ'๑)(これ)か……」

 

磯貝「④はそもそも烏間先生が絶対やらない口だな…」

 

矢田「じゃあ①②③しかやっちゃダメね」

 

岡野「あとサイズ!体も顔も大きすぎる!」

 

矢田「あ、じゃあさ。殺せんせーは座りっぱなしにするのはどう?常識的なサイズ分だけ上に出して…あと全部机の下に詰め込むの」

 

友「うーん……。気色悪いがそれしかないな」

 

男子数名で殺せんせーの体を無理やり机の下にぐいぐい詰め込んでいく。

 

殺「ちょ…!?そんな無理やり…!?」

 

中村「あとは眉毛と耳と鼻だね」

 

菅谷「おっけ。烏間先生そっくりなの作ってやるぜ」

 

渚「みんな楽しそうでなによりです…」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして放課後……ついに渚の母親がやってきた。

 

俺たちは窓の外から渚の母親に気付かれないように監視する。

 

原「あの人が渚のお母さん…?」

 

前原「結構美人だな…」

 

村松「けど確かにキツそーだ」

 

渚と渚の母親は教員室へと入っていく。

 

渚母「失礼します…」

 

殺「ようこそ。渚君のお母さん」

 

………うん。特に怪しまれてる様子はないな。

 

殺「まぁどうぞおかけ下さい。山の中まで大変だったでしょう。冷たい飲み物とお菓子でも」

 

渚母「まぁこんな豪華な!グァバジュース…私これ好きなんです」

 

殺「存じております。渚君のこのクラスでの成長ぶり…ここまで利発に育ててくれたお母さんへのお礼です。渚君に聞きましたが、体操の内脇選手のファンだそうで。この前の選手権大活躍してましたねぇ」

 

渚母「あら、先生もご覧になっていたんですか?」

 

殺「彼の頂点を目ざす真摯な姿勢は素晴らしい!」

 

渚母「そう!先生もわかりますか?」

 

殺「もちろん」

 

凄いな…。見事に渚の母親のツボを押さえて回してくれている。

 

これだけ打ち解けてくれたら上手くいくんじゃないか?

 

殺「まぁしかしお母さんお綺麗でいらっしゃる…。渚君も似たんでしょうかねぇ?」

 

その瞬間…渚の母親の眼から光が無くなった。

 

……あれ?殺せんせー地雷踏んだ?

 

渚母「この子ねぇ…女でさえあれば私の理想に出来たのに…」

 

殺「……貴方の理想…?」

 

渚母「ええ。この位の齢の女の子だったら長髪が一番似合うんですよ。私なんか子供の頃短髪しか許されなくて…3年生になって勝手に纏めた時は怒りましたが、これこれで似合うから見逃してやってます」

 

殺「………」

 

渚母「そうそう進路の話でしたわね。私の経験から申しますに…この子の齢で挫折させる訳には行きませんの。椚ヶ丘高校は蛍大合格者も都内有数ですし、中学までで放り出されたら大学も就職も悪影響ですわ。ですからどうか…この子がE組を出れるようにお力添えを」

 

殺「渚君とはちゃんと話し合いを?」

 

渚母「この子はまだ何にもわかってないんです。失敗を経験している親が道を造ってやるのは当然でしょう?」

 

渚「…母さん、僕は……」

 

渚母「渚、少し黙ってましょうね」

 

渚「…………」

 

 

殺「………何故渚君が今の彼になったのかを理解しました」

 

殺せんせーはそう言うと、頭に付けていた烏間先生の髪の毛に似せたヅラを勢いよく取った。

 

渚母「ヅ……!?」

 

殺「そう!私、烏間惟臣は…ヅラなんです!!」

 

大丈夫なのかこれ…。後で怒られても知らないぞ…。

 

殺「お母さん。髪型も高校も大学も、親が決めるものじゃない。渚君本人が決めることです。渚君の人生は渚君のものだ。貴方のコンプレックスを隠すための道具じゃない」

 

渚母「………!!」ピクピク

 

殺「この際ですから担任としてはっきり言います。渚君自身が望まぬ限り…E組から出ることは認めません」

 

殺せんせーがそう言うと、渚の母親は大きな声で怒鳴り始めた。声を張りすぎて最早何を言ってるのかすら分からないほどに怒鳴っている。

 

菅谷「お、おっかねぇ……」

 

竹林「大分キレてるね……」

 

渚母「渚!最近妙に逆らうと思ったら!この烏間ってヅラ担任にいらない事吹き込まれたのね!見てなさい!すぐにアンタの目覚まさせてやるから!!」

 

そう言うと、渚の母親は校舎を出ていってしまった。

 

 

渚「………殺せんせー」

 

殺「うーむ…つい強めに言ってしまった。しかし最も大事なのは…君自身が君の意志をはっきり言うことですよ」

 

渚「…でも今は…1人じゃ何にも出来ないうちは…母さんの2周目でいた方が…」

 

殺「何にもできないわけがない。殺す気があれば何でもできる。君の人生の1周目は…この教室から始まって居るんです」

 

渚(……僕の、1周目…!)

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日──

 

茅野「……渚、どうなっちゃうんだろう…」

 

新「かなりキレてたし…。無理やりにでもE組から出そうとしてくるんじゃ…」

 

渚はまだ登校して来ない。

 

このまま…渚が来なかったら……。

 

そう思った時、教室のドアが開いた。

 

渚「皆、おはよう……。って、どうしたの?」

 

茅野「渚!」

 

杉野「渚…!どうなったんだ?渚の母ちゃんの件」

 

 

渚「うん…。あの後何とか…殺せんせーのお陰で説得できたよ。これからもE組で皆と暗殺出来るよ」

 

磯貝「本当か!?」

 

前原「よっしゃあ!」

 

寺坂「ケッ。心配かけさせやがって」

 

渚「あはは…ごめんね」

 

 

 

何とか渚はこのままE組…暗室教室の一員でいれるようだ。

これで一件落着………。

 

 

…したのだが。

 

 

また新たな事件が起こってしまうようだ…。

 

 



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第75話 誘拐の時間

《総七 side》

 

総七「ふぅ…」

 

今日は大分帰りが遅くなっちまったな…。

 

姉さん心配してるだろうな…。

 

 

???「……やぁ。沖田君」

 

総七「……えっ…?」

 

いつの間に目の前に…!?

 

???「君には少しの間…眠ってもらう」

 

そこで…俺の意識は途絶えてしまった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《近藤 side》

 

近藤さん「ザキ。もう夜遅いが…外の掃除頼めるか?」

 

山崎「お任せ下さい!」

 

 

それにしても…今日は総七の奴来なかったな…。

 

あいつが連絡もなしに道場に来ないなんて珍しい…。

 

近藤さん「なぁザキ」

 

………。

 

……ん?返事がない…?

 

近藤さん「……おい、ザキ…?」

 

外を見渡すと…誰もいない。

 

ふと…後ろから気配を感じた。

 

近藤さん「誰だ…!?………何…?」

 

振り返るが…誰もいない。確実に何者かの気配がしたのに…。

 

そう思って前を見ると…1人の男が立っていた。

 

???「流石だね…。気配を察知するとは。だが…君にも眠ってもらうよ」

 

近藤さん「こいつ……!?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

友「えっ…!?剣術道場の皆が…!?」

 

土方さんから突然電話が来た。

 

内容は…近藤さん、山崎、総七の3人が突如消えてしまったというものだった。

 

土方さん『ああ。とりあえず、今すぐ道場に来てくれねーか?犯人が残したと思われるメモがある。あと、登校少し遅れるだろうから友達とか先生とかにも言っておけ』

 

友「……わかりました」

 

さて…まずは優月に今日は一緒に登校できないこと連絡しておかないと。

 

その後、殺せんせーにもね。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《不破 side》

 

家を出て友君の家へと向かう途中…携帯が鳴った。

 

友君からのLINEだった。

 

U[ごめん!今日一緒に登校出来なくなった!学校にも少し遅れると思う!先に行っててくれ!]

 

遅れるって……どうしたんだろう…?

 

 

仕方が無いのでそのまま学校へと向かうことにした。

 

でも…いきなりどうしたのか気になるなぁ…。まぁ後で聞けばいいか……。

 

 

???「見ーつけた」

 

突如…私の目の前に黒服の男が現れた。

 

その顔には…見覚えがあった。

 

不破「何で……あなたがここに…!?」

 

???「……しばらく眠ってもらうよ」

 

私は…男にスタンガンで気絶させられてしまった。

 

心の中で何度も友君に助けを求めた…。

 

けど…その心の叫びは誰にも聞こえることは無かった。

 

???「…さてこの子には、やってもらわないといけないことがある。…急ぐか」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

友「土方さん…!」

 

土方さん「来たか。俺が来た時には…既に近藤さんはいなかった。そして、こんな紙がポストに入っていたよ」

 

手紙にはこう書かれてあった。

『近藤勇、沖田総七、山崎透は誘拐した。真弓友、土方歳次は椚ヶ丘中学校3年E組の担任と生徒全員で指定場所へ来い。指定場所は後ほど…椚ヶ丘中学校の旧校舎へと送る』

 

…この感じから見るに、恐らく殺し屋だろう。

 

担任…つまり、殺せんせーを狙った暗殺計画…!

 

土方さん「……なぁ。俺は最近不審に思ってるんだ。お前らの急激な学力の上昇……何日も道場に通っていなかったのに剣術の腕前をキープできていた事……。お前ら、なんか隠してる事があるんじゃねーのか?」

 

土方さんは…やはり勘が鋭い。

 

その時、俺の携帯が鳴った。新からの電話だった。

 

友「…もしもし」

 

新『兄貴!大変だ!今すぐE組の校舎に来てくれ!』

 

友「え……?何があったんだ!?」

 

新『律にメールが届いたんだ。そのメールには……

 

 

『不破優月を誘拐した』……って…!』

 

友「……えっ……」

 

 

嘘だろ……。何で…優月まで……!?

 

殺せんせーの暗殺計画に…生徒を巻き込んだら賞金は払われないってことになったはずじゃ……。

 

待てよ…。

 

今まで会った殺し屋の中に…1人だけ、殺せんせーの暗殺が目的では無かった人物がいる……。

 

まさか…『あいつ』が………!?

 

友「……わかった。今すぐ向かう。あと、殺せんせーにも伝えといてくれ。……俺の剣術道場の先輩も旧校舎に行くから…烏間先生に、殺せんせーの正体を明かすことを聞いてくれ……って」

 

新『…………わかった。早く来てくれよ…』

 

そう言って、新は電話を切った。

 

土方さん「……何だって?」

 

友「……俺の…大切な人が攫われました。あと土方さん、これから旧校舎で見るであろうことは…絶対に他言しないでください」

 

土方さん「………ああ」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

俺たちは急いで旧校舎へと向かった。

 

教室に入ると…殺せんせーと生徒全員が律に注目していた。

 

友「殺せんせー…!」

 

殺「友君…。このメールの内容…恐らく殺し屋でしょう。それも、推測ですが南の島で出会った……君を狙っていた男…」

 

土方さん「……おいちょっと待て…。なんなんだ…そのタコは…!?」

 

殺「初めまして。詳しいことは後で話しますが…私はこのE組の担任です」

 

土方さん「……よくわからんが、今は一刻を争う事態だ。詳しくは聞かない。ところで…そのメールには他に何て書いてあった?」

 

律「メールには不破さんを誘拐した事と…地図にある指定場所へ向かうように書いてありました。地図はメールに添付されてしました。こちらです」

 

その地図が指している場所は…数ヶ月前に廃墟になってしまったビルだった。

 

カルマ「犯人は俺ら生徒と殺せんせーも来るように要求してる…」

 

寺坂「クソ……!」

 

友「どうして……優月まで……!!」

 

 

???「…決まってるでしょ?」

 

 

後ろから女性の声がした。

振り返ると……3年A組の『古見錦』がいた。

 

友「お前は……A組の『古見』…!?」

 

前原「なんでこいつが…!?」

 

 

古見「なんでって…そんなこともわからないの?私はこの計画をした男の仲間だから……よ」

 

友「なんだと…」

 

古見「変な気は起こさない事ね…。大人しく廃ビルに向かいなさい。そうしないと…人質がどうなっちゃうかわからないわよ」

 

古見はそう言うと…教室から颯爽と出ていってしまう。

 

 

土方さん「……行くしか無さそうだな」

 

 

中村「……皆、超体育着(これ)…着てくよね」

 

寺坂「…ああ。勿論だ」

 

前原「誰だが知らねーが…こんなことするやつ許せねぇ」

 

 

友「…ああ。絶対に…優月達を救い出すぞ!」

 

一同「おう!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

指示通り、地図の廃ビルについた。

 

外からだと…特に変わった様子はないな。

 

イトナ「ドローンで周りを見ているが…異常は無い」

 

新「……とりあえず、入ってみるか…?」

 

俺たちは音を立てないよう、静かに廃ビルへと入っていく。

 

全員が入り、少し進んだところで…ガシャンと大きな音がした。

 

岡島「な…なんだ…!?」

 

倉橋「い、今の音…何が起きたの!?」

 

 

突如、床から鉄格子が現れ、ほとんどが檻の中に入ってしまった。

 

檻の中に入らずに済んだのは…俺と新と倉橋だけだ。

 

友「皆…!?」

 

殺「……これは…死神の時と同じ、対先生物質の檻…!」

 

土方さん「くっそ…おい!ここから出せ誘拐犯!!」

 

 

突然、床が動いた。下へと下がっているのだ。

 

友「これは…!?」

 

磯貝「皆!鉄格子に掴まれ!」

 

殺「先生掴めませんけど!」

 

寺坂「テメーは適当に誰かに掴まってろ!!」

 

殺「では寺坂君に…」

 

寺坂「なんで俺なんだよ!!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

下へ着くと…そこには古見がいた。

 

古見「来たわね…」

 

友「古見……!!」

 

俺は持参してきた木刀を手に取った。

 

すると……どこからともなく声が聞こえてきた。

 

???『やあ、E組の皆。半分くらいは初めましてかな?』

 

その声は…以前にも聞いた事がある声だった。

 

???『どうも…。僕が不破さん達を誘拐した殺し屋です…。

 

『歳』と呼んでください』

 

沖縄のホテルで会った殺し屋の1人…。

 

殺せんせーではなく、俺の殺害を目的にしていた男…。

 

歳『今は放送で話してるけど…その内会えるからさ。まずは友クン、近くの鉄扉の先に更に下へ続く階段がある。下に降りたらとても大きな空間に着く。そこに僕はいるよ。でも、新君と倉橋さんはダメ。そこで待ってなさい。牢屋の諸君も、あとで下に降ろしてあげるからさ』

 

友「歳……貴様…!!」

 

 

 

歳『待ってるからね友君。それじゃあね…』

 

 

新「兄貴…言うこと聞く必要は…」

 

友「いや…。指示通りにしないと…優月達が何されるかわからない。俺は行くよ。皆はここで待ってて」

 

俺は…歳の言われる通り、扉を開け、その先の階段を降りていった。

 

絶対に……助けてやる…!!

 

 



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第76話 洗脳の時間

《新 side》

 

新「………あんた、古見とか言ったっけ?あんたらの目的は何?」

 

古見「私たちの目的は…あなた達兄弟を殺すこと…。そこのタコはおまけに過ぎないわ」

 

カルマ「ホントに友の事殺せると思ってる?あいつ結構強いよ〜?」

 

古見「師匠にかかれば…あんな奴瞬殺よ。まぁ…師匠は少し手加減すると思うけど…」

 

新「兄貴が負けるわけが無い…!!」

 

古見「ふーん…随分と信頼してるのね」

 

古見は懐から銃を取り出す。

 

古見「言っとくけど…この場で逆らったら問答無用で殺すわよ?元より真弓新も殺す予定だしね…」

 

その時…古見が持っていたトランシーバーから歳の声がした。

 

歳『古見……新君を殺すのはまだ早いよ。それに、友クンもすぐには殺さないさ。安心してくれよE組の皆…』

 

すると…また大きな音がした。

 

今度は檻の中だけが下へと下がっていく。

 

渚「うわぁっ…!」

 

茅野「また地面が…!」

 

 

歳『君たちには特等席で戦いを見てもらうよ。新クンと倉橋さんは友君が行った方とは違う扉の向こうの階段から行ってね~。あと、古見。君は…もう用済み』

 

古見「……えっ……?」

 

歳『………じゃあね』

 

新「な…何を…!?」

 

その瞬間…天井が崩れてきた。

恐らく、歳の仕業だろう。

 

新「倉橋危ない…!!」

 

倉橋「きゃぁっ…!!」

 

落ちてくる瓦礫から倉橋を何とか守る。

 

超体育着のお陰でダメージは少ないが…それでもかなり痛い…。

 

 

倉橋「し…新君、大丈夫…?」

 

新「ああ…何とか……そう言えば古見は…!?」

 

倉橋「あ…!あそこ…!」

 

倉橋が指さした先には…瓦礫に埋もれ、横たわる古見がいた。

 

新「おい古見…!しっかりしろ…!!」

 

倉橋「古見さん…。し…死んでないよね?」

 

新「ああ…。息はあるよ。とりあえず瓦礫どかさないと…」

 

古見の上に乗っていた瓦礫を2人がかりで何とかどかす。

どかしてる途中、古見は目を覚ましたようだ。

 

古見「……なんで…私を助けたの…?」

 

新「……まぁ…事情はわからないが…助けない選択肢なんて俺には無いよ。…きっと兄貴でもこうしてただろうし」

 

古見「………」

 

新「さて…とりあえず下に向かわないと。兄貴が心配だ…」

 

倉橋「で…でも、瓦礫でドアが開かないよ!」

 

古見「……こっち」

 

古見は別の方向を指さす。

 

古見「こっちからも行けるから…案内する」

 

新「古見……」

 

古見「私は…多分、歳に洗脳されてた……でも、今…ようやく目が覚めた……」

 

新「えっ……!?」

 

倉橋「洗脳…!?」

 

古見「………あの人は…真弓友を殺すことより、精神的に痛みつける事が目的なのかもしれない…。この作戦…殺しが目的とは思えないの…」

 

殺しが目的ではない作戦……?

どういう事なんだ……?

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《磯貝 side》

 

俺たちが乗っている地面はどんどん下へと下がっていく。

 

しばらくするとようやく動きが止まった。

 

土方さん「……!お前ら…!!」

 

隣の牢屋には…近藤さんと沖田、山崎の3人がいた。

 

 

近藤さん「土方君…!」

 

山崎「土方さぁぁぁぁぁぁん!」

 

前原「あれ?…あんたらはいるのに…なんで不破はいないんだ…?」

 

確かに。不破も連れ去られたはずじゃ…?

 

総七「不破は……あっちだよ」

 

沖田の視線の先には……歳と、眠っている不破がいた。

 

殺「……間違いありません。沖縄で会った日本刀使いの男ですね……。そして近くに不破さんも…」

 

カルマ「……その反対側の扉から入ってくるの…友じゃない?」

 

カルマの言う通り……歳の反対側の扉が開く。

 

そして、思った通り友が入ってきた。

 

前原「特等席ってことは…ここで友がボコられるのを見てろってことかよ……!」

 

友……頼む…頑張ってくれ……!!

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

扉を開けると…歳と優月がいた。

 

横には…皆が入っている牢屋がある。

総七達も牢屋に入っていた。

 

友「………何するつもりだ?歳」

 

歳「そう構えないでくれよ。感動の再会じゃないか」

 

友「…優月を返してもらおうか」

 

歳「その前に…僕の話を聞いてくれるかな?僕は…両親を殺し屋に殺された。そして…その殺し屋に誘拐されたんだ。そして…僕はその殺し屋の元で暗殺の技術(スキル)を学んだ。親を殺した殺し屋が僕の師匠……ってわけ。

 

そして…そんな師匠の暗殺者としての人生を……友君、君の親は終わらせたんだ。師匠は…君の親の暗殺を依頼され、実行に移った…が、それは君の親の罠だった。結果重症を負わされた…。僕は何とか看病したけど亡くなったよ。

 

その時…死に際の師匠に依頼されたのさ。真弓家殺害をね」

 

歳は淡々と話し続ける。

 

歳「それから僕はその依頼に呪われたかのように…技術(スキル)を学び続けた。そして…遂に君の親を殺した。だが…まだ君らが残っていた。数年後…『先生』の暗殺依頼をされて…そこの生徒の名簿を見た時驚いたよ。君の名前があったんだからね…!友クン!!」

 

友「……つまり、俺を殺すのは師匠の仇討ち…ってことでいいな?」

 

歳「まぁ分かりやすく言うとそうなるね…。そうそう。暗殺の技術(スキル)を磨く過程で身につけた技術(スキル)があるんだ。……洗脳の技術(スキル)なんだけどね。さっきの古見もそう…。孤児だった古見を拾って洗脳させた…。そして…友君への殺意や憎悪を生ませた。僕の洗脳は君のとこの理事長のとはひと味違う…。常識外の行動をすれば比較的簡単に解ける代わりに…『ありもしない殺意、憎悪』を生ませることが出来る…!」

 

友「……何が言いたいんだ」

 

歳「……今にわかるさ」パチン

 

歳が指を鳴らすと……。

 

バァン!!

 

どこからともなく銃弾が現れ、俺の横を掠める。

 

友「……嘘…だろ」

 

俺は…銃を撃った人物に驚愕した。

 

 

友「……そういう事か…。洗脳したのは…古見だけじゃない…ってことか」

 

銃を撃ったのは───

 

 

 

優月だった。

 

 

不破「………」

 

目に光が宿ってない……。

本当に洗脳されてしまってるようだ。

 

歳「まぁ…頑張ってくれよ。これは言わば『中ボス戦』。僕と言う『ボス』を倒す前の戦い……所謂前座さ。せいぜい楽しませてくれよ」

 

優月は銃を捨てて、懐からナイフを取り出す。

 

そのナイフは…もちろん本物のナイフだ。

 

不破「………」

 

 

 

友「……優月。

 

 

 

絶対…助けてやるからな……!!」

 

 

 



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第77話 優月の時間

《磯貝 side》

 

どうなってるんだ…!?不破が友に向かって銃を…!?

 

殺「…恐らく、殺し屋の洗脳技術(スキル)でしょう…。恋人である不破さんを洗脳させ…友君に敵対させる事で戦意を削ぐ…。あわよくば…不破さんに殺して貰おうということでしょうか…」

 

中村「そんな……!!」

 

友は…おそらく不破に攻撃出来ない…!!

 

なんて卑怯な……!!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

古見に案内され、下の開けた空間についた。

 

そこには、歳の他に兄貴と…兄貴にナイフを向ける姉貴がいた。

 

倉橋「ど…どういう事……!?」

 

古見「あれが…歳の作戦。彼の技術(スキル)で…不破優月を洗脳して、真弓友と戦わせる…」

 

新「そんな…!!」

 

まずい…!確実に兄貴は姉貴に攻撃出来ない…!

逆に姉貴は洗脳されているから兄貴を攻撃を繰り返す…!

 

圧倒的に不利じゃねーか…!!

 

倉橋「どうしよう…!不破ちゃん…本物のナイフ持ってるよ…!」

 

このままだと…兄貴が殺られる…。

 

もし姉貴が兄貴を殺したら…洗脳から解けた時、確実に精神が壊れてしまう…!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

優月は俺に向かってナイフを振るう。

 

何とか避けれてはいるが……防戦一方だ。

 

こちらから攻撃するわけにはいかない…。

 

優月を助けに来たのに…優月を傷つけては元も子もない…!

 

だが…優月は絶えず攻撃を続ける。

 

俺も…避けて…捌いての繰り返しだ。

 

友「ぐっ……」バッ

 

何とか……いい作戦は無いものか……!?

 

優月の洗脳を解く…常識外の行動……!!

 

 

考えている間にも優月は攻撃してくる。

 

やはり普段から訓練を積んでいるからか…動きが早い。

 

 

早く助けてあげたいのに……。

 

中々策が思い浮かばない……!!

 

友「……クソっ…!」

 

このままじゃ…俺が殺られてしまう……!!

 

どうすれば…。

 

 

 

 

その時…。

 

俺の頭に…1つ…考えが過ぎった。

 

だが…これで本当に洗脳が解けるのか…!?

 

でも、やるしかない…!!

 

 

タイミングは……。

 

 

 

優月がナイフを正面から突いてきた時…!

 

 

左手で優月のナイフを持つ右手を抑える……!

 

 

 

そして…右手で優月の背中を押してこっちに近付かせる…!

 

 

 

不破「………!?」

 

 

 

そしてそのまま……。

 

 

 

友「優月……ごめん…」

 

 

 

 

優月に………

 

 

 

 

『キス』をした。

 

 

 

 

新「なっ…!?」

 

倉橋「え…!?」

 

 

殺「…!!」

 

総七「おいおい…」

 

カルマ「ふーん…」パシャパシャ

 

中村「へー…」パシャパシャ

 

渚「……!」

 

 

 

 

 

不破「………っ!?」

 

 

【5 HIT】

 

 

優月……。

 

 

不破「………んっ…」

 

 

【10 HIT】

 

 

絶対に……。

 

 

不破「…………っ………」

 

 

【15 HIT】

 

 

目を覚まさせてやる…!

 

 

不破「………っ…!?////」

 

 

【20 HIT】

 

 

絶対に……!

 

 

不破「~~~~!?///」

 

 

【25 HIT】

 

 

助け出す…!!

 

 

不破「………………っ////」

 

 

【30 HIT】

 

 

優月の目に…光が戻ってきた。

 

数秒後…優月の唇から自分の唇を離した。

 

不破「………友…君……?」

 

何とか…洗脳からは戻ったようだ。

 

でも、今はとりあえず休んでいて欲しい…。

 

友「……優月。悪いな」

 

だから俺は、優月に向かって『腕時計型麻酔銃』を放った。

 

優月は…麻酔針で眠ってしまった。

 

崩れ落ちる優月をそっと支え、床に寝かせた。

 

友「……今は…休んでてくれ…」

 

 

そして…歳の方へと向く。

 

歳は…笑っている。

 

 

歳「フフフ…。流石だねぇ友君…。まさか攻撃すること無く突破するとは…。

 

 

 

さぁ…『ボス戦』だよ友君。ルールはそうだね…君は僕の剣を折る…もしくは僕を降参させる事が出来れば勝利。僕は君を殺す…もしくは気絶させたら勝利…でどうだい?」

 

 

 

友「……上等だよ…。

 

 

 

優月に…皆に…危害を加えたお前だけは許さねぇ……!!!」

 

 



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第78話 剣術の時間-4時間目

《友 side》

 

俺は勢い良く歳に攻撃を仕掛ける。

 

が…簡単に避けられてしまう。

 

友「クソッ……」

 

歳「どうしたんだ…?そんな攻撃じゃ当たらないよ」

 

その後も攻撃を続けるが、躱されたり、剣で弾かれてしまう。

 

友「ぐあっ……!?」

 

歳は俺の腹に蹴りを入れてきた。

俺は少し後ろに飛ばされてしまう。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

………兄貴が押されている。

 

歳は兄貴の攻撃を軽々と避けている。

 

兄貴も歳の攻撃を何とか避けているが…余裕が無さそうだ。

 

……兄貴の顔を見たらわかる。

 

多分……怒りで冷静さを失っている。

 

 

何とかして…冷静さを取り戻さないと……!!

 

その時…隣から銃声が鳴った。

 

古見が……歳に向かって撃ったのだ。

 

新「なっ…何を…!?」

 

古見「……真弓友!!怒りに任せて戦うんじゃない…!!それでは…歳には勝てない…!!」

 

友「………!」

古見……!

 

新「…古見の言う通りだ!!いつもの冷静さを取り戻せ!!バカ兄貴!!」

 

友「…………」

 

殺「新君達の言う通りです。怒りに任せた戦闘で彼に勝てるはずがない。いつもの君なら……きっと勝機が見えるはずです」

 

友「……」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

友「……ふ〜。何とか落ち着いた…」

 

歳「…………困るな。君に殺す気で来てもらわないと…」

 

友「安心しろよ…。お前への敵意は一切変わってねぇから…。でも、ここからは俺のターンだ」

 

歳「フン……何をするつもりだ」

 

俺はポケットから『奥田製カプセル煙幕』を取り出す。

 

そして、地面へと投げて発動させる。

 

歳「煙幕………!?」

 

俺は素早く歳の方へと走る。

 

そして…歳の腰についていたリモコンを取った。

 

歳「何……!?リモコンを…!?」

 

歳はすぐさま攻撃するが…もうそこに俺はいない。

 

煙幕が晴れていく。

 

俺は歳からかなり離れていた。

 

 

俺が手にしたリモコンには…檻の扉を開けるボタンがあった。

 

友「…………このボタンか」

 

俺はボタンを押した。

 

すると、殺せんせー達が入ってる牢屋と、近藤さん達が入ってる牢屋の鉄格子が上がっていく。

 

そして…殺せんせーはマッハで歳の元へ近付いた。

 

殺「私の生徒を巻き込んだあなたは許しません…。これ以上戦闘を続けるようなら…私が手入れしてあげましょう…」

 

 

歳「……………参ったな」

 

 

近藤さん「どうする?こちらは30人近くいる」

 

カルマ「もう降参した方がいんじゃなーい?」

 

新「それとも…殺る気?」

 

 

歳「……はは…ははははは!いやぁ…まさか檻を開けるためのリモコンを取るだなんてね…。君は本当に面白い……!が…それも終わりさ。今日は退こう。だが…次は決着をつける。3学期頃…再び君の前に姿を現すよ。See you また会おう……」

 

 

歳は走り去っていく。

 

友「ま…待て…!」

 

俺は追いかけようとしたが…殺せんせーに止められた。

 

殺「深追いはよしましょう。それよりも…君は休んだ方がいい。超体育着を着ているとはいえ…身体中ボロボロですよ」

 

友「………はい」

 

新「…兄貴……」

 

友「…ありがとな。新、古見、殺せんせー。皆がいなかったら…俺負けてたかも…」

 

新「……ダメな兄貴を叱るのも弟の役目だからな」

 

友「……!…ああ!」

 

不破「……うーん…」

 

その時…優月の声がした。目を覚ましたようだ。

不破「こ…ここは……」

 

友「優月…!良かった……!!」

 

不破「私………そうだ…歳に誘拐されて…洗脳されて…!」

 

友「無事で良かった……。本当に……」

 

 

不破「………。ごめんね…友君。私…友君を守るって言ったのに…友君を傷つけて……。歳の洗脳に負けないように頑張ったけど……それでも…」

 

友「良いんだって。悪いのは歳だ。自分を責めるんじゃない…」

 

不破「でも……私…洗脳されてたとは言え…友君の事殺そうとして…私…友君の恋人失格なんじゃ……」

 

友「そんな事ない!!」

 

無意識に…大声を出してしまった。

 

友「優月は悪くないよ…。あいつの洗脳の技術(スキル)が高かっただけさ。ヒロインを助けるのが主人公の務め…だろ?優月は…いつまでも俺の大切な恋人だから…!!」

 

不破「……!///」

 

カルマ「お、言うね〜」

 

友「おいカルマ!中村!お前ら今の録音したろ!」

 

カルマ「なんの事〜?」

 

中村「ちょっとよくわかんな〜い」

 

コイツらこんな時まで……!!

 

 

友「……あ、そうだ不破……。さっきの…ごめんな」

 

不破「え…?さっきのって……」

 

友「覚えてないならいいんだけど…その…お前を洗脳から解くためにした事……///」

 

不破「……っ!!///////」

 

優月の顔が一瞬で赤くなった。多分覚えてる…。

 

友「ご…ごめんな……その…初めて…だった?」

 

不破「…う……うん…でも……///」

 

友「でも…?」

 

不破「………ファーストキスだったけど…友君なら…いいよ……///」

 

……………!!/////

それは…反則だっつーの…!!

 

友「………そ…そうか。俺も…初めてだったけど…初めてが優月で…良かった……/////」

 

不破「……!////」

 

 

カルマ「ねーねー。ラブラブなとこ悪いけど皆見てるよ〜?」

 

友・不破「あっ…………!!////」

 

中村「録音はバッチリよ」

 

岡島「撮影もな」

 

前原「よし。よくやった」

 

ああああああああぁぁぁ!!!!

 

もうダメだ!恥ずかしすぎる…!!!

 

殺「ヌルフフフ……」

 

このタコはピンク色になりやがって…!

 

土方さん「……お前らがイチャついてる間にこのタコから説明された。お前ら…このタコの暗殺を任されたんだってな…」

 

総七「ようやく説明がついたよ…。E組の不気味なまでの成長ぶり…」

 

近藤さん「それに…剣術道場での成長もだ。暗殺の訓練してりゃあ、道場に来なくても剣術の技術(スキル)は上がるってわけだ」

 

山崎「先輩…。僕らの知らないところで色々と頑張ってたんですね…」

 

友「…E組の秘密知っちゃったか〜…。ま…いいけどさ。………近藤さん、土方さん、これからも御指導お願いします。殺せんせーを殺すためにも……!」

 

土方さん「……おう」

 

近藤さん「ああ!」

 

殺「今日のところは皆さん帰って疲れを癒しましょう。友君、君はとても頑張りました。ここまで成長してくれて先生は嬉しいですよ」

 

友「……殺せんせー。

 

 

顔が薄ピンク色のせいで成長の意味が変わってきそうなんだけど、その成長って強さの方だよね?」

 

 

殺「にゅやっ!?……あ、当たり前じゃないですか〜」ピューピュー

 

 

絶対違うじゃねーか!!!

 

 

とりあえず…殺せんせーの言う通り各々帰っていった。

 

 

が……俺は1人だけ土方さんの家に呼ばれた。

 

 



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第79話 兄弟の時間

ちょっと間空いちゃってすみません!
お詫びとして一気に4話出します!
ストック減るとか関係ねえ!


《友 side》

 

友「お邪魔します……」

 

歳の件の後、土方さんの家に呼びだされた。

 

友「それで…一体何の用なんですか?」

 

土方さん「……友、お前に話さないとならない事がある」

 

友「……?」

 

土方さん「1年ほど前だったかな。俺は小学4年生の時…両親を亡くしているとお前に話したのは」

 

友「……そうですね」

 

土方さん「念の為に言っておくが、その事をお前以外の誰かに話したことはない…。お前も話してないよな?」

 

友「はい……。でもそれがどうしたんですか…?」

 

土方さん「……親が死んだ時…同時に俺の兄貴も消えた」

 

………!!

 

友「それって……」

 

土方さん「…兄貴の名前は『土方歳朗(ひじかたとしろう)』。俺が兄貴を最後に見たのはガキの頃だが…さっきの殺し屋に…兄貴の面影が残っているんだ…!!つまり、あの殺し屋が…俺の消えた兄貴…ってことになる…」

 

友「……やっぱり…!」

 

コードネームが『歳』だったこと……。

そして南の島で電話で土方さんから聞いた『兄がいる』ということから予測はしていたが…。

土方さん「あと……俺にはもう1人兄弟がいる。……弟だ。名前は土方歳三(ひじかたとしみつ)…。兄と同じく、両親が死んだ時に消えた…」

 

友「その弟さんは今どこに…?」

 

土方さん「……そうだな。兄と一緒に消えてから会ってなかったが…。俺の思い違いじゃなけりゃ…今はお前の身近にいる……はずだ」

 

友「俺の近く……?」

 

土方さん「……ああ。とりあえず…それだけ伝えたかった。多分あいつはまたお前の命を狙ってくる。気をつけろよ。何かあったら呼んでくれ」

 

友「……えっ……ちょっと…!弟さんの正体教えてくれないんですか…!?」

 

土方さん「…当時、弟は小学校にすら言ってない年齢だ。…顔も声も“名前も”変わってるだろう。正直、俺の思い違いの可能性が高い。俺もちゃんとした根拠は無いからな。だから誰とは言わない。……じゃあな」

 

友「……」

 

『歳』と土方さんの弟…。

 

確か、土方さんが小学4年生の時に土方さんの両親は死んだんだよな……。

 

その当時に小学1年ってことは…俺と同い年……。

 

それでいて俺の身近………ってことは椚ヶ丘中学校に通っている…?

 

ふと…1人の顔が過ぎる。

 

まさか……あいつが…?

いや…そんなわけないか…。

土方さんと顔も似てないし……。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

土方さんの家を出ると、外に古見がいた。

 

古見「………」

 

友「大分ボロボロみたいだが……大丈夫か?」

 

古見「私のことはいい……それよりも、ごめんなさい…」

 

古見はいきなり頭を下げた。

 

友「ちょ…別に謝る必要ないぞ?お前は歳に洗脳されてただけなんだろ?」

 

古見「そう…だけど…」

 

友「…それより歳のこと…少しでも教えてくれないか?近くで見てきたんだろ?」

 

古見「……あの人は…意外と臆病者。その癖に心優しい…。まぁもしかしたら私を洗脳するための演技かもしれないけど……」

 

臆病者で心優しい……?

なんでそんなやつが暗殺者をやってるんだ?

 

というか、そもそも俺が対峙した歳は全く性格が違うじゃないか…。

 

古見「……多分、あの人は実践になると…自分の気持ちを無理やり押し殺すことが出来る人。何か…強い呪縛に縛り付けられているみたいに…。」

 

強い呪縛……か。

そういえばあいつ、師匠を俺の両親に殺された……みたいな話してたよな…。

 

古見「私が知っていることで…有益なことはこれぐらい。一緒に活動していたと言っても…あの人が1人だった私を路地裏で拾ったのはほんの数ヶ月前だから」

 

友「…そうか。じゃあ…1個だけ質問に答えてくれないか?」

 

古見「……何?」

 

友「その…歳の兄弟について何か知ってないか?」

 

古見「……残念だけど私は知らない。…でも」

 

友「…でも?」

 

古見「あの人…真弓友のことは狙うけど…真弓新のことはほとんど狙わない…今回の計画も、真弓友が最優先…真弓新は二の次だった。まぁ…真弓新が養子だからかもしれないし、芸能人だから大事にしたくないだけかもだけど…」

 

………新のことはほとんど狙わない……。

 

やっぱり……いやでも……。

 

友「……ありがとう。お大事にな」

 

古見「………あなたもね」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

真弓家──

 

新「あ、ただいま兄貴。土方さんの話って何だったんだ?」

 

友「…………『歳』は…土方さんの消えた兄なんじゃないかって話だった」

 

新「えっ……!?『歳』が土方さんの兄の…!?」

 

友「ああ……。なぁ、土方さんの兄の名前って何だか覚えてるか?」

 

新「え?えーーっと……『土方歳朗』…とかじゃなかったっけ…?」

 

…!!

 

友「そうだったな……。あ、俺はもう疲れたから寝るよ。明日も普通に学校だし…」

 

新「………うん」

 

 

 

何故…新は土方さんの兄の名前を知ってるんだ……。

 

友「………まさか…な」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日───

 

不破「……おはよう!友君!」

 

友「ああ…!おはよう!優月!」

 

俺は…いつも通り優月と登校している。

 

いつも通りって……こんなに幸せな事なんだな…。

 

友「優月……ごめんな。昨日は苦しい思いさせて」

 

不破「友君が謝ることはないよ。それに…助けてくれて嬉しかった。ありがとね!」

 

友「……うん!…なぁ、久しぶりに…2人でデートしない?」

 

不破「いいね!…じゃあさ、この前は私が友君の家に言ったから…私の家に来ない?」

 

友「…………えっ…!?……い…いいの?」

 

不破「うん…。多分私の家族はいいって言うと思う」

 

友「…そうしようかな。じゃあ土曜日に優月の家行くよ」

 

不破「…う…うん…!!」

 

優月の家…。

 

何度も送ってるから場所も外観もわかるけど……。

 

入ったことはさすがにない……!

 

やばい…今から緊張して来た……!!///

 

不破(………やばい。簡単に言っちゃったけど…男子を家に入れるの初めてだ。………やばい…掃除していつもより綺麗にしないと…/////)

 

 




シリアスな長編終了!文才の無さが垣間見えます!
この話…少し短くなりましたが割と重要な事書かれてるよ!

『土方歳三』……。一体誰なんでしょう。
ですが敵では無いです!味方です!大丈夫ですよ★

そしてまだオリジナル回!友君と不破さんの家デート!今度は不破さんの家!!
頑張れ友君!


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第80話 アルバムの時間

《不破 side》

 

先日──

 

私は『歳』に誘拐された。

 

そして『歳』に洗脳され、あろう事か、友君を攻撃してしまった。

 

友君の隣に立つ資格なんて無くなってしまった──。

 

洗脳され、身体の自由が効かない中そう思った。

 

でも、友君は優しく声をかけてくれた。

 

そして私を洗脳から解くために……

 

 

【キス】をした。

 

初めてだった。

 

戸惑ったけれど……嬉しかった。

 

 

 

そして一件落着した翌日……

 

私の家でデートする事が決まった。

 

しかも、私から言い出した。

 

………。

 

 

 

何やってるんだ私はー!!

 

数日前にキスした相手を家に招き入れるとか…学校でもずっとドキドキしながら友君と話してたし!

 

やばい……!まともに顔見れる気がしない……!!

 

 

そんなことをデートの当日に考える。

 

あと数分で…友君が家に来る。

 

うう…緊張する……。

 

緊張しすぎて自分の部屋の真ん中で正座しちゃってる…。

 

気を紛らわすために漫画を何冊か手元に置いてあるけど読む気になれない……!

 

 

その時……。

 

ピンポーン

 

インターホンが鳴った。

 

 

不破「……き…来たかな…!」

 

私は急いで玄関へと向かった。

 

もしも友君じゃなかったら恥ずかしいのできちんと外に誰かいるかドアアイを覗いて確認する。

 

そこに立っていたのは……紛れもない友君だ…!

 

私は急いで扉を開けた。

 

不破「友君……!」

 

友「…おはよ。待たせちゃった?」

 

不破「ううん全然!さぁ入って入って!」

 

友「お邪魔します」

 

男子を家に入れるのは初めてだ…!

 

あーやばい…尋常じゃない程緊張する……!

 

不破兄「あ、友君じゃん」

 

友「あ、優月のお兄さん。お邪魔してます」

 

お…お兄ちゃん…!?

 

不破兄「いらっしゃ〜い。優月大分そわそわしてたよ。カレシ君が来るって嬉々として報告してたし〜」

 

不破「よ…余計なこと言わないでよ!ほ、ほら!こっちが私の部屋だから!友君行こ行こ」

 

友「お…おう」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

もう…本当にお兄ちゃんってば……。

 

毎回余計なこと言うんだから…。

 

友「ここが優月の部屋か…。思った通り漫画が多いけど……女子の部屋って感じする」

 

不破「友君は……女子の部屋入ったの初めて?」

 

……待った。なんで私こんな質問したんだ。

これでもし誰かいたらどうするんだ…!!

 

友「あー……そうだね。入ったこと無いかな。E組来るまでは女子との関わりはほとんど無かったし……小学校は転校しまくってて…落ち着いたと思ったら『あんな事』が起きたし…」

 

不破「……ご両親の事件?」

 

友「うん…。俺さ、幼稚園の頃から色んな場所転々として…友達なんて出来たこと無くてさ。小5の頃…椚ヶ丘の学校に通うってなった時も、仲良くなりたくても…その方法忘れちゃって…。結局…あの事件以来不登校。数ヶ月しか通ってないから…同級生の顔も名前も覚えてないよ」

 

不破「そうなんだ…」

 

友「……優月の小学校時代見てみたいな」

 

………へ?

 

不破「えっと…今なんて…?」

 

友「俺さ、小学校の時のアルバム捨てちゃってさ。まぁ新が持ってるとは思うけど…見る気になれなくて。だから他の人の見ようかなって」

 

あー…成程……………いやどういうこと!?

 

友「それに、優月の小学校の頃の写真見たいし」ニコニコ

 

これはダメだ。友君の中のSのスイッチ入ってる。

 

不破「えー……じゃあ待ってね。探すから…。引き出しの中見ないでよ?」

 

友「女子の引き出しの中を勝手に見るほど無神経な男じゃないよ」

 

私は少し大きめの引き出しの中から小学校の卒業アルバムを取り出した。

 

中々見る機会無いから少しホコリが付着している。

 

不破「これが私が通ってた小学校…【椚ヶ丘第三小学校】の卒業アルバムだけど……」

 

友「えっ……今なんて…!?」

 

友君が妙に食いついてきた。

 

不破「え……【椚ヶ丘第三小学校】…?」

 

友「それ……

 

 

 

 

 

 

俺が通ってた小学校(トコ)と同じだ……」

 

 

不破「…………えっ?」

 

ええええええええええええ!?

 

嘘でしょ…!?そんな偶然ある!?

 

ちょっと作者さん!?

あまりにもご都合展開過ぎない!?

いくら二次創作でもそれはどうかと思うよ??

 

……待って。

 

少し記憶を遡ろう。

 

確か第34話で…

 

『最初は友達が出来るか不安だったけれど…クラスメイトとも話すことは出来てたし、当時好きな子もいた。……もう友達も…好きだった子も……名前と顔覚えてないけどな。』

 

って…回想シーンの途中で言ってたよね…。

 

友君の…小学校時代の好きな子がここに……!?

 

……怖い。もし…またその子に恋をしてしまったら…。

 

 

友「……優月、大丈夫か?ずっと固まってたけど…」

 

不破「え……あ、うん」

 

友「何考えてるか当てていい?」

 

不破「えっ…?」

 

友君は私に顔を近づけながら小声で言った。

 

友「もし…俺の好きだった人がそこに載ってて…その人に俺がまた恋してしまったら……って考えてるでしょ」

 

不破「……うん///」

 

図星です……!

友君には敵わない…!

 

友「…大丈夫。今…俺が好きな人は優月だからさ。それに、昔好きだった人を今更好きになった所で会えるはず無いし……。…だからお願い。見せて欲しいんだ。過去と向き合うために……」

 

友君は私の眼をまっすぐ見つめてくれている。

 

不破「……うん。じゃあ…見るね」

 

友「…多分、俺が写ってる写真はほとんどないと思う。この学校行ったの数ヶ月だし、卒業アルバム用の写真撮ってないし…。でも…少しでも思い出したいんだ」

 

不破「じゃあ…私の写真探そうかな…。確かクラスは2組だったはず……」

 

6年2組の写真を見ると、私…【不破優月】の写真があった。

昔はまだ髪型がボブではなく、ただ髪を切って短髪にしただけだった。

 

友「これが……昔の優月…」

 

不破「うん…」

 

友「………なぁ優月。聞きたいことがあるんだけど…いいかな」

 

不破「き…聞きたいこと?」

 

 

友「優月さ…。小5の5月頃…校舎裏で男子に絡まれてたこと無かった…?」

 

不破「……!!」

 

なんで…それを…?

 

確かに私は小学校5年の時…別のクラスの男子数名に校舎裏に呼び出された。男子の1人が告白してきて…私は特に好きでも無かったし、名前も知らなかったから断った。

そしたら…他の男子が怒り出して…私に暴力を振るおうとして来たんだ。

 

その時……。

 

不破「……まさか…」

 

私は…その時1人の男子に助けられた。

私を呼び出した男子は…助けてくれた男子を『最近転校してきた奴』って言ってた…気がする。

 

……私はその時…恋に落ちたのかもしれない。

『かもしれない』というのは…当時は恋愛感情というものを上手く理解していなかったから…。

でも…多分私はその助けてくれた男子を好きになった。

私の初恋……だと思う。

 

名前は……聞いてなかったと思う。

顔もあまり覚えてなかった。

その後はたまに廊下ですれ違ったりはしてたけど…夏休み以来全く会わなくなってしまった。

 

その男子って……まさか…。

 

友「……俺さ。転校してきたばっかの時…学校を一通り探索しようと思ってぶらついてたんだよ。校舎内を見終わった後、校舎裏の方に行ったら、怒鳴り声がしたんだ。ちらっと見てみると、女子1人を男子数名が虐めてて…思わず俺は飛び出して助けに行った。その女子が…俺の好きだった人だ。顔は…忘れてたけど、今…ようやく思い出したよ。

 

 

 

……優月。ようやく…会えたみたいだな」

 

 

不破「……そうだね…。ようやく…私たち会えたんだね。私も…その男子が初恋の人だったんだ。まさか…こんな奇跡が起きるとはね…」

 

友「ホント……。見てよかったよ…。ありがとうな…」

 

不破「…こちらこそ」

 

まさか…本当にあの男子が友君だったとは…。

 

夏休み以来見なくなったのは…多分両親を無くして不登校になったからだろう…。

 

それ以来疎遠だったのに……今こうして同じ教室で、同じ標的(ターゲット)を狙って……そして、恋人になっている。

 

事実は小説よりも奇なり…。

 

なんて言うけれど、小説でも…起こそうと思えばいくらでも奇跡って起こせるんだね…。

 

友「……改めて見ると…やっぱ可愛い…」ボソッ

 

不破「ひゃいっ!?///」

 

友君は小学校時代の私の写真を見ながら呟いた。

 

思わず変な声が出てしまった……。////

 

友「俺の写真あるのかな…?あっ……」

 

友君が見つけたのは…7月中に行った遠足の写真。

 

少し小さいけれど、友君らしき人物が写っている。

 

今に比べると子供っぽくて可愛げがあって……。

 

それでいて顔が整ってるから…。

 

不破「カッコいい…」ボソッ

 

友「……っ!?///」

 

あっ………!///

 

……つい声に出てしまった…!///

 

私のバカ!!何してんだ!!///

 

 

友「……それは…」

 

不破「えっ…?」

 

友「それは……反則だろ……///」

 

友君の顔が今まで見た事が無いくらい赤くなっている。

それにつられて私も赤くなってしまう。

 

友「……優月」

 

不破「……な…何?」

 

友「この前の進路相談の時言ったこと…覚えてる?」

 

不破「……探偵事務所の事?」

 

友「うん…。もし…俺が探偵事務所設立したらさ…。俺と…その…す…住み込みで…一緒に働かないか?///」

 

不破「そ…それって……///」

 

友「も…勿論、優月の編集者になりたいって夢は邪魔しないよ。こっちは副業とか…ただの手伝いとかでもいいからさ…。ダメ…かな?」

 

不破「…ダメじゃ…ないよ…。私も…友君の力になりたい…!!」

 

友「…優月。…ありがと!」

 

不破「…友君、どういたしまして!」

 

友「さて…じゃあいつも通り、漫画でも読むか!」

 

不破「うん!」

 

それから…私たちは色んな漫画を読んで…先の展開を考察したりした。

一緒にお菓子を食べたり…家族に聞かれないように暗殺の事について話したり……。

 

でも、楽しい時間はあっという間に過ぎていってしまう。

 

 

 

友「…今日はありがとうね。優月」

 

不破「…うん。また明日!」

 

 

不破兄「あれ?もう帰っちゃうの?夕飯食べてけば良いのに」

 

不破「お兄ちゃん…!!」

 

友「あはは…それはまたの機会に」

 

…え?今遠回しに次も来るって言った!?

いやそこまで遠回しでも無いかもだけど…!

 

友「では…お邪魔しました」

 

不破「気をつけてね!」

 

友「おう!」

 

 

……行っちゃった。

 

楽しかったなぁ……。

 

まさか私の小学校時代の初恋の人が友君だったなんてね…。

 

…明日まともに顔見れるかな…。

 

平常心保たないと…!

 

 



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第81話 週刊誌の時間

《新 side》

 

倉橋「ねぇ新君!」

 

いつもの授業が終わった放課後、倉橋が話し掛けてきた。

 

倉橋「この前駅前に新しいスイーツ店出来たんだ〜。渚君とカエデちゃんと行く予定なんだけど新君もいこーよ!」

 

新「行く行く!」

 

俺はかなりスイーツが好きだ。

 

よく変装をしてスイーツ店に食べに行っている…。

 

が、絶対バレる。ファンの人だったから何とか口止めしてもらってるけど…。

 

ま…変装はいいか。正直友達といる時くらいそういうのに縛られたくないからね…。

 

渚「新君も行くの?」

 

新「おう!新しいスイーツ店とか行かない訳にはいかない!」

 

茅野「プリンもあるらしいよ!」

 

新「プリン!!」

 

渚「目の色が変わってるよ2人とも…」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

倉橋「スイーツ美味し〜!」

 

茅野「まさかプリン1人1個限定だなんて……」

 

渚「あはは…仕方ないよ。かなり人気みたいだもん」

 

新「人多いな……バレなきゃいいんだけど…」

 

倉橋「今日くらいは気にしないで楽しもうよ〜!」

 

新「それもそうだな…!よっしゃ!沢山スイーツ食べるぞ!」

 

俺たち4人はスイーツを食べるのに夢中で……。

 

気が付かなかったんだ…。

 

 

その光景が…『撮られていた』事に…。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

《友 side》

 

友「……は…?なんだよこれ…」

 

何気なくスマホでネットニュースを見ていると…

 

『RainBow7 真弓新 活動休止中に同級生の女子数名とスイーツ店デート』

 

…という見出しのニュースを見つけた。

 

内容はタイトルの通り…

 

受験のため活動を休止していたRainBow7の真弓新が同級生の女子3名とスイーツ店でデートしていたという内容だった。

 

SNSでは、『受験に集中したくて休止したんじゃないの?』、『女子とデートしてるとこ撮られるとかプロ意識無さすぎ』、『グループに迷惑かけないで』等…批判の声が相次いでいるという…。

 

 

友「……新」

 

俺は新の部屋の扉をノックした。

 

返事が無かったので…少しだけドアを開けて隙間から覗くと……誰かと通話しているようだ。

 

新「……はい。以後気をつけます。…はい。勿論、彼女達はただの友人です。…はい。申し訳ございませんでした…」ピッ

 

友「……新、今の電話…」

 

新「……副社長から。今回はそこまで大きなスキャンダルじゃないから見逃すけれど…次は気をつけろって…。あとブログで謝罪文も書けってさ…」

 

友「…ま…まぁ…そう落ち込むなって…。なんて言ったらいいのかわかんないけど…一生週刊誌撮られずにプライベートを過ごせるアイドルなんて中々いないし…」

 

新「……俺はいいんだ。でも…一緒にいたあいつらが批判くらうんじゃないかって…」

 

友「…………」

 

新「…俺は今日学校行かない…。また撮られる訳には行かないから…さ」

 

友「……そっか…。でも…あんまり思い悩むなよ。なんかあったら…相談してくれて構わないから」

 

新「……ああ。ありがとな…兄貴」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

友「………」

 

不破「…友君、大丈夫?ずっとぼーっとしてるけど…」

 

友「えっ…?あ、ああ…ごめん」

 

不破「……新君の事…やっぱり心配?」

 

友「……うん。あいつ…俺と一緒で1人で背負うタイプだからさ…」

 

 

学校に着くと…皆が新の心配をしてくれていた。

 

渚「新君…大丈夫だった?」

 

友「結構…落ち込んでる。自分がスキャンダル食らったことより…皆が批判されるんじゃないかって…」

 

倉橋「そんな……!誘ったのは私だから…悪いのは私だよ…!」

 

友「倉橋は悪くないよ…。勿論、新も悪くない…」

 

倉橋「……今日、新君に会いに行ってもいいかな?」

 

友「えっ…?」

 

倉橋「私のせいでもあるんだよ…。何とか元気付けてあげたい!」

 

渚「僕も行くよ」

 

杉野「俺も!」

 

前原「普段から世話になってるしな」

 

磯貝「ああ!」

 

中村「あいついないと友をからかうネタが無くなっちゃうしね〜」

 

カルマ「まだまだ聞きたいことあるからね…」

 

友「なんか別の目的の奴いない!?」

 

殺「ヌルフフフ…。新君は素晴らしい仲間を持ちました。そうと決まれば放課後、新君に会いにいきましょう!」

 

友「先生も来るのかよ…」

 

 

まぁ…正直嬉しいけどね。

何とかして新を元気にしてあげないと…!

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

新「え…えっと…なんでこんなに来たの…?」

 

兄貴がクラスメイト全員を連れてきた。

 

殺せんせーまでいる。

 

流石にこんなに入らないって!

 

倉橋「……新君、ごめん…。私、こんな事になるとは思わなくてさ…」

 

新「…何言ってんの。倉橋は悪くない。悪いのは俺だよ。あんな沢山人がいる所に変装もせずに行ったから…」

 

倉橋「でも…誘ったのは私だし…!」

 

新「…倉橋は悪くないって。自分を責めないでよ」

 

友「…それはお前もだよ新。俺の悩みを…皆背負ってくれたんだ。次は俺が背負う番。だから…自分を悪く思うな」

 

新「……でも…」

 

友「週刊誌に撮られたことなんて…ただの笑い話にしちゃえばいいんだよ。例えばほら。『新と女子3人が』ってとことかさ。渚も女子に含まれてるじゃん!って」

 

渚「確かにそうじゃん!!」

 

中村「まぁしゃーない」

 

 

新「あはは…。それもそう…かもな。…ありがとう兄貴。…ありがとう皆。…ありがとう渚」

 

渚「なんで僕は個別で感謝されてるの!?」

 

その時…俺の電話が鳴った。

 

新「……!!」

 

副社長からの着信だった。

 

手が…震えてる。何とか落ち着かないと…!

 

倉橋「……新君。落ち着いて。私たちが傍にいるから…」

 

新「……!………そう…だね。…電話、出るよ」

 

俺は…副社長からの電話に恐る恐る出た。

 

新「……はい。真弓です」

 

副社長『真弓。大変な事が起きた。今日……あと一時間後にRainBow7のライブが椚ヶ丘で行われる。…が、今彼らは中部の方らしい』

 

新「えっ…!?なんで…!」

 

副社長『椚ヶ丘の前は長野での公演…。本来ならとっくに移動を済ませているのだが…高速道路がかなり渋滞してしまったそうだ』

 

新「そんな…」

 

副社長『……そこで真弓。頼みがある。トークでも…ダンスでも…歌でもいい。何とかして…ライブの時間稼ぎをしてほしいんだ』

 

新「え…!?ぼ…僕にですか…!?」

 

副社長『ああ。……言わば、汚名返上のチャンスをあげると言うこと。ライブの会場はメールで送るから…You、頑張ってね』プツッ

 

新「……!!」

 

…副社長なりの…俺へのチャンス…。

 

でも…1人で時間稼ぎなんて出来るはずがない…!!

 

友「何…?どうしたんだ…?」

 

新「……俺のグループのライブが椚ヶ丘でやるらしいんだけど…まだメンバーが着いてないらしい。メンバーが着くまでの間…俺に時間稼ぎをしてほしいって…。でも…そんなの俺1人じゃ…」

 

 

友「……その時間稼ぎって…例えばどんな?」

 

新「まぁ…トークとか歌とかダンスとか…?」

 

友「……簡単な方法があるよ」

 

新「えっ?それって……」

 

友「新と…E組の男子の選抜メンバーでステージに立つ……ってのは?」

 

新「………え?

 

 

 

 

ええええええええええええええ!?!?」

 

 

前原「男子からの選抜メンバーって言うと…やっぱ顔が良い奴だよな!てことは俺か!?」

 

友「むむ…少しイラつくが陽斗と…悠馬と…カルマもかな」

 

カルマ「え~……まぁいいけど、友も出なよ?」

 

友「俺もか……まぁいいが」

 

カルマ「あとは渚君も」

 

渚「なんで僕も!?」

 

カルマ「ほら。グループって可愛い枠いるじゃん。あれだよ」

 

渚「そんな……」

 

磯貝「まぁ仕方ないよ…。でも顔出す訳にはいかないよな?」

 

友「確かに…。創ちゃん、今から仮面作れる?」

 

菅谷「オッケ。任せとけ。アイドルっぽいの作ってやる」

 

竹林「ステージに立つなら衣装も必要だよね」

 

吉田「衣装作りっつったら原だな」

 

原「任せておいて!」

 

三村「代役とはいえ、どんなことするか台本も作っておかないとな」

 

中村「セットリストとかも組んでおかないと…」

 

速水「ダンスとか…早く覚えないと間に合わないね」

 

矢田「じゃあ早く決めないと!練習の時間が無くなっちゃう!」

 

不破「あと、念の為殺せんせーは理事長に確認取っておいて。無許可でやるとまた何されるかわからないし…」

 

殺「勿論ですとも!」

 

新「……皆…」

 

友「……新。大丈夫だ。お前は1人じゃない。皆で力合わせて殺ってやろうぜ!」

 

新「………ああ!!じゃあまずは会場に向かおう!台本や小道具等の準備はそれから!ダンスは基本的なことは俺が教える!少し難しいのは俺に任せてくれ!」

 

一同「おう!!」

 

俺のために…クラスが一丸となってくれている…。

 

今まで…こんなに嬉しいことは無かった。

 

 

 

俺……E組来て良かったな…。

 



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第82話 ライブの時間

ストック無くなりました☆


《新 side》

 

RainBow7の…椚ヶ丘でのコンサートライブ。

 

メジャーデビュー前とは思えないほど観客がいる。

 

本当に…俺らで出来るんだろうか。

 

顔が良いとはいえ…兄貴、磯貝、前原、カルマはダンス初心者だ。

 

渚なんてもはや女子だ。

 

渚「ちょっと!?」

 

岡島「おー…衣装カッコいいじゃん!」

 

原が作ってくれた衣装…。

元々用意されていたメンバー6人の衣装に寄せたそうだが…かなり完成度が高い。

 

三村や中村達が決めたセットリストに…。

 

菅谷が造ってくれた仮面。

 

カルマ「ふ〜ん。いいじゃん」

 

友「まぁ…顔はバレなくて済むな」

 

 

不破「殺せんせー、理事長先生なんて?」

 

殺「許可は出ました。大方、それで学園祭や期末の成績に影響が出れば良い等と言う考えでしょう。あとね新君、君には…悩みを背負ってくれる仲間がいる。そう思い詰める必要はありません。仲間と思う存分力を発揮して来てください」

 

新「……はい!」

 

友「まずは…新の挨拶からだけど…」

 

狭間「……事務所から公式に発表されてから…妙にザワついてるわね」

 

寺坂「無理もねぇ。昨日週刊誌に撮られたばっかの奴が出るんだからな…」

 

竹林「それに…もし撮られるアクシデントが無くても、活動休止中のメンバーが出るとなれば観客は充分ザワつくだろうね」

 

新「………じゃあ、行ってくるよ」

 

友「…ああ」

 

そう言って俺は…ステージの上へと上がった。

 

ブーイングばかり飛んできたらどうしようかと思ったけれど…幸い、喜びの歓声ばかりだった。

 

新「……皆さん。お久しぶりです。活動休止中の…真弓新です。昨日は…本当に申し訳ございません。アイドルとしての意識が欠けていたと深く反省しています。ですが安心してください。彼女達はただの友人です。というか1人男子です。女っぽいけど」

 

渚(それ別に言う必要ないよ!?)

 

新「……他のメンバーの代役に選ばれて…初めはどうしていいかわかりませんでした。本当に代わりが務まるのか……ステージに立つ資格があるのか……1人でどうにか出来るのか……。でも、僕の兄や、クラスメイト達は…優しく手を差し伸べてくれました。この衣装も…セットリストも…僕の友人達が用意してくれました。そして…これから歌を披露する訳ですが…僕の友人もこのステージに上がってくれます。皆の推しに比べたら…歌もダンスも素人かもしれません…。でも大丈夫。うちのクラスは顔面(ルックス)偏差値高いし、殺る気は誰よりもありますから…!

それでは…僕の兄と、友人達の登場です」

 

友「…行こっか」

 

前原「おう!」

 

磯貝「緊張するな…」

 

カルマ「渚君似合ってるね〜」

 

渚「僕だけ方向性違くない!?」

 

ステージの舞台袖から、5人が出てくる。

 

何故か渚だけ可愛らしい衣装だ。

 

やっぱ女子じゃん…。

 

観客はザワついている。でも…批判の声じゃない。

『あれ?仮面越しだけど想像してたよりもイケメンじゃない?』と言った声が聞こえてくる。

 

友「……あー…どうも。隣のインテリアイドルの兄の『ユウ』でーす。可愛い弟のために来たはいいけどダンスも歌も初心者なんで多めに見てくださーい」

 

前原「どうもー!『ヒロト』でーす!お、思ったより可愛い子多いじゃん!」

 

友「おい女たらしクソ野郎」

 

前原「大丈夫だって!手出さないから!」

 

友「当たり前だろ。手出したら大問題だからな?」

 

磯貝「あはは…。どうも『ユウマ』です。まぁ…変わったヤツが多いけど、皆優しいんで。俺たちじゃ力不足かもしれないけど…代役務められるように頑張ります!」

 

観客一同(イケメンだ!!!)

 

 

 

【舞台袖】

片岡「磯貝君はさすがね…」

 

茅野「うーむ。イケメンだ」

 

不破「でも問題は…」

 

矢田「うん……変なこと言わないかな?」

 

 

 

カルマ「ども〜。『カルマ』でーす。まあよくわかんないけど…とりあえず笑顔振りまいて観客いい気にさせればいいの?」

 

友・前原「言い方考えろ!!」

 

カルマ「ごめんごめん。今回ばかりは自重するからさ」

 

友「して貰わないと困るんだけどな……!」

 

渚「………」

 

磯貝「ほら、次『ナギサ』だぞ」

 

渚「え…うん。そ…その…『ナギサ』です。こ…こんな格好させられてるけど…一応男ですから!」

 

観客から『嘘でしょ?』『可愛い〜』と言った声が聞こえてくる。

 

カルマ「……見せればみんな納得するんじゃない?」

 

渚「何を!?」

 

 

新「………ま…まあ変わり者だらけだけど……。皆顔はいいし、勉強もそこそこ出来る人らだから…。…じゃあ早速…1曲目行きますか!!」

 

一同「おう!」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《倉橋 side》

 

私は……華やかな衣装を見にまとい、ステージ上で輝く新君に見とれていた。

 

さっきダンスを覚えたばっかの磯貝君達も負けず劣らずに輝いているけれど…新君は別格だった。

 

普段…学校で話している新君は別人のようだった。

 

でも…どちらも新君らしいと思った。

 

思えば新君は……DVDで見た時は凄くアイドルっぽかったけれど、初めて会った時は凄く男子中学生っぽかった。

友人と共通の話題で盛り上がったり……。

一緒に目標に向かって取り組んだり……。

 

私は…遠目で新君の事を見ることが多かった。

 

たまに近くに行って話すことはあったけれど…席が遠いから遠くから見ている方が多かったと思う。

 

……正直、友ちゃんと不破ちゃんが羨ましかった。

 

 

私は新君の事が好きだ。

 

『アイドルとして』の新君ではなく、

 

『1人の男性として』の新君が……。

 

でも…言い出せない。

 

新君には……沢山のファンがいるから。

 

私は……新君と付き合うには不釣り合いだと思うから。

 

こうして…舞台袖から見ているのが丁度いいのかもしれない…。

 

茅野「凄いね…皆。渚達初めてのはずなのに…凄く頑張ってる」

 

殺「優れた殺し屋は万に通じる……。まさしくその通りですねぇ。出来ればイケメン代表として先生も出たかったですが」

 

菅谷「国家機密が何言ってんだ……」

 

三村「烏間先生に怒られるぞ…」

 

 

不破「…………」

 

倉橋「…不破ちゃん、友君ばっか見てるね」

 

不破「えっ……!?そ…そんなこと…///」

 

倉橋「隠さなくてもいーよ。不破ちゃんは…彼に思いを伝えられるんだから…ね」

 

不破「……倉橋さん…?」

 

殺「…さて。そろそろ…『彼ら』が到着した頃ですかね」

 

岡野「彼らって…?」

 

岡島「……!おいあれ…!」

 

岡ちんが指さした先には…RainBow7の他のメンバーがいた。

 

赤峰「……あんた達が新のクラスメイトか?」

 

坂田「可愛い子多いね〜」

 

林「止めとけ…。副社長に何言われても知らないぞ」

 

坂田「え〜それ困る〜!」

 

山中「…君たち、感謝してるよ。このライブの事だけじゃなくて…新の事も」

 

高橋「さっき…ライブがどんな感じかスタッフさんが映像送ってくれたんやけど…新のやつ、前よりも生き生きしてる感じがするな」

 

金杉「いい先生や、クラスメイトさん達に囲まれたおかげかな!」

 

赤峰「さて…ここからはバトンタッチだ。君たちが頑張ってくれた分の2倍は頑張らないとな」

 

坂田「派手に行っくよ〜!」

 

林「桃也…!はぁ…やれやれ…」

 

高橋「相変わらず元気やな〜」

 

山中「君らも…是非最後まで見て行ってくれ。先生も良ければどうぞ」

 

殺「ヌルフフフ…。では遠慮なく見させて頂きましょう」

 

金杉(だいぶ奇妙な笑い方する先生だなぁ……)

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

あれから4曲ほど歌い終わった。

 

皆…さっき覚えたとは思えない位歌もダンスも上達していたけれど、流石にそろそろ限界そうだ…。

 

赤峰「新!!」

 

その時…翔君の声が聞こえた。

 

後ろを振り向くと……メンバーの6人がいた。

 

観客も翔君達に気付いたようで、大きな歓声をあげた。

 

カルマ「……どうやら俺らはここまでみたいだね」

 

友「ああ。とっとと舞台袖に行きますか」

 

赤峰「……君たち。…本当にありがとう」

 

友「……当然ですよ。困ってる弟やクラスメイトを放っておけないのがうちのクラスなんでね」

 

そう言って…兄貴達は舞台袖へと行ってしまい、残ったのはRainBow7の7人だけだった。

 

 

新「…皆」

 

赤峰「……気にすんなよ新。お前には味方が沢山いるからな」

 

坂田「…真弓っちも入れて…久々に7人でパフォーマンスしようよ!」

 

林「それはいい考えだな」

 

金杉「よっしゃやろー!」

 

高橋「盛り上がってきたでー!」

 

山中「よし!RainBow7!行くぞ!!」

 

一同「おう!!」

 

久しぶりに…7人でステージに立った。

 

久しぶりに…7人で踊った。

 

久しぶりに…7人で歌った。

 

久しぶりに…7人で笑った。

 

凄く…楽しかった。

 

たった数ヶ月しか休んでないのに…まるで何年も前の事を思い出したような…。懐かしい感覚だった。

 

観客達もかなり盛り上がっている。

 

 

いつの間にか不安もどこかへ行ってしまった。

 

ただ…この瞬間を楽しんでいた。

 

そして…結果的にライブは大成功。

 

RainBow7の歴史に残る日になった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ライブ終了後……

 

赤峰「新。久々にお前と踊れて楽しかった」

 

坂田「全然ダンス劣って無かったね〜」

 

林「やっぱ俺たちは7人じゃないとな」

 

高橋「復帰するのは…3月やったっけ?」

 

新「…うん。来年3月…。この学校を卒業したら……。必ず戻るよ。今、俺たち3年E組は…とても大きな目標に皆で力を合わせて立ち向かってる。その目標をクリアして…無事卒業出来たら…正式に皆の元に帰るから!」

 

山中「おう!楽しみにしてるよ!」

 

金杉「僕らも頑張るからね!」

 

新「ああ!」

 

 

 

磯貝「良かったな。一件落着して」

 

友「ああ。新も…いつもの笑顔に戻ったしな」

 

前原「さて…とりあえず新の件は乗り切ったけど…」

 

友「次は……『学園祭』だな」

 

 

 

 

10月。

 

椚ヶ丘中学校の10月の行事と言えば……。

 

『学園祭』だ。

 

俺たちは知る由もなかった。

 

本校舎では……A組vsE組の話題で持ち切りだった事に。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜 真弓家 新の部屋

 

新「………はぁ」

 

今日は色々あって疲れた。

いやまぁいつも色々あるけど。

 

 

………今回は…目の前の出来事から逃げなかった。

 

……あぁ…またあの記憶が…。

 

 

 

 

新『母さん……父さん……?』

 

???『……俺はここに残る。お前は好きにしろ』

 

???『君には選択肢がある。ここから逃げ、普通の日常に戻るか……ここに残って…『殺し屋』としての訓練を受けるか……』

 

???『僕は……僕は………っ』

 

 

 

……思い出したくない記憶。

 

……でも忘れてはいけない記憶。

 

……まだ兄貴にも言ってない記憶。

 

……幼稚園の頃から、決して離れることは無い記憶。

 

……俺の数少ない…『家族』との記憶。

 

 

 

 

 

 



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第83話 学園祭の時間

またリアルが忙しくなりそうなのと、ストックが足りないのでしばらく不定期更新になりそうです!
書きたい時に書いて、出したい時に出すので気長にお待ちください。


《友 side》

 

椚ヶ丘中学校の秋の行事……といえば、

 

毎年恒例、椚ヶ丘学園祭だ。

 

ここの学園祭は他の学校とは違い、ガチの商売合戦となる。

 

収益がトップだったクラスは商業的な実績として就活でアピール出来るほど。

 

そんな学園祭だが、総七から聞いた話によると…

 

ここでもA組 VS E組の話題でもちきりになっているそう。

 

三村「本校舎じゃかなり盛り上がってるんだ。勝てないまでも、何かE組はやるんじゃないかと」

 

殺「………勝ちに行くしかないでしょう」クルッ

 

友・新「カッコ良くねーからなその振り向き!!」

 

目と口に団子指しながらカッコつけてんじゃねぇ!!

 

殺「今までもA組をライバルに勝負することでより君たちは成長してきた。この対決…暗殺と勉強以外のひとつの集大成になりそうです」

 

渚「集大成……?」

 

殺「そう。君たちがここでやってきた事が正しければ…必ず勝機は見えてきます」

 

やってきた事……?

どういうことだろう…?

 

吉田「つったって…勝つ方法はよ」

 

狭間「店系は300円まで。イベント系は600円までが単価の上限って決められてる。材料費300円以下のチープな飯食べに……誰が1kmの山道登ってくるかしら」

 

友「状況はかなり厳しいな……」

 

新「それだけじゃない……。A組……というより浅野は…色んな企業とスポンサー契約結んだらしい」

 

倉橋「流石理事長の息子……」

 

磯貝「相変わらず強敵だな…」

 

友「あいつらの集客力もかなり高いだろうし……。今回はほんとに無理ゲーに近いぞ」

 

殺「……浅野君は正しい。必要なのはお得感です。安い予算でそれ以上の価値を産み出せれば客は来ます。E組におけるその価値とは……例えばこれ」

 

殺せんせーが手に持ってるのは……その辺によく落ちているどんぐりだ。

 

新「それ…どんぐりだよね…?」

 

殺「裏山にいくらでも落ちています。色々種類はありますが…実が大きく、アクの少ないこの『マテバシイ』が最適です。皆で拾って来てください。君たちの機動力なら一時間あれば山中から集めてこれるはずです」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

というわけで…俺と優月とイトナの3人でどんぐりを探している訳だが…

 

 

友「思った以上に落ちてるな…マテバシイ」

 

不破「普段あまり気にしてなかったけど…相当な量が拾えそうだね。あ、あっちの方にもある!」

 

友「じゃあ…俺はこっちの方見てくる……ってイトナ?なにやってんの」

 

イトナが草むらをじっと見つめてる……。

どんぐりか?はたまた………虫じゃないだろうな。

 

友「お…おーいイトナ…?何見てんだ?」

 

イトナ「……見ろ。エロ本落ちてた」

 

友「どんぐり探せ!!!!」

 

イトナ「読むか?」

 

友「読まない!!岡島か殺せんせーにでもあげとけ!!」

 

イトナ「いや。俺が回収する。そして寺坂の家に置く」

 

友「寺坂に迷惑かかるわ!!!」

 

なんでこんな時にまでエロ本なんだ……。

 

不破「友君、イトナ君、そっちどんぐりあった?」

 

友「あー……優月は来ない方が…」

 

イトナ「エロ本が落ちてた」

 

不破「ふぇっ…!?/////」

 

やっぱりこうなった……。

 

 

 

………かわいい。

 

不破「ちょ…ちょっと…!真面目に探そ!わ、私ちょっと遠くの方見てくるから!////」

 

友「あ…俺も行くよ。おいイトナ行くぞ」

 

イトナ「ああ」

 

友「おい、エロ本は持っていくな」

 

イトナ「仕方ない。帰りに拾っていこう」

 

友「拾わなくていい!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

皆が裏山中を探したおかげでかなりのどんぐりが集まった。

 

前原「そんで…このどんぐりどうすんだ?」

 

殺「まず……水につけて浮いたものは捨てます。そして殻を割って渋皮を除き…中身を荒めに砕いたら……布袋にいれ、川の水に晒して一週間ほどアクを抜きます。その後3日ほど校庭で天日干しし…更に細かくひいてどんぐり粉の完成。これが小麦粉代わりに使えます。そして出来上がった物がこちらになります」

 

友・三村「料理番組か!!」

 

殺「客を呼べる食べものといえばラーメン!!これを使ってラーメンを作りませんか?」

 

村松「ラーメン……だと?」

 

さすがラーメン屋の息子の村松。

ラーメンという言葉にすぐ反応する。

 

村松はどんぐりの粉をひと舐めするが、すぐに苦い顔をした。

 

村松「……ちょい厳しいな。味も香りも面白ぇけど粘りが足りねー。滑らかな食感をこの粉で出すには大量の『つなぎ』が必要だ。普通は卵でつなぐんだが…結局その分材料費かかるぜ」

 

うーん…。コメントが本職だ。ほぼ料理しない俺は全然ついていけない。なんだ『つなぎ』って。

 

殺「それもあります。このツル、『むかご』という小さなジャガイモみたいなのが目印です。この根元を慎重に掘っていくと……」

 

殺せんせーはザクザクとシャベルで掘っていく。

すると……。

 

杉野「うおおっ…!とろろ芋だ!」

 

殺「正しくは『自然薯』です。天然物は店で買えば数千円します。とろろにすると香りも粘りも栽培ものとは段違い。つなぎとして申し分ないでしょう」

 

村松「おお……!」

 

殺「自然の山にはどこにでも生えている。標的を捕らえる時の観察眼でこのツルを探しましょう」

 

殺せんせーの一声で、みんなが自然薯を探しに行く。

まさかこんな高級食材が近くの山でタダで手に入るとは…!

 

磯貝「ああ…俺中学でたら自然薯掘りになろっかな~…」

 

片岡「磯貝君!?タダで得た高級食材に将来設計を見誤ってる!!」

 

悠馬がバグってしまった……。

自然薯という高級食材は悠馬には刺激が強すぎたか…。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

しばらくすると、みんなが大量に自然薯を取ってきていた。

こんなに大量に自然薯が積み上がってるの初めて見たぞ…。

 

殺「これで麺の材料の大半が無料。残った資金を贅沢にスープ作りにつぎこめます」

 

村松「なるほどね…。だったらラーメンよりつけ麺がいい。この食材の野性的な香りは濃いつけ汁の方が相性がいいし、スープが少なく済む分利益率も高ぇ」

 

すごいな…。最初はどうなるかと思ったのに…段々見えてきている。

 

村松「でも具はどーすんだよ」

 

原「メニューもつけ麺だけじゃ寂しくない?」ウズウズ

 

殺「それも今皆さんが探しています」

 

殺せんせーがそういった時、丁度寺坂と竹林が帰ってきた。

 

寺坂「戻ったぞ。見ろ、プールにわんさか住み着いてたぜ」

 

寺坂が見せてきたのは、ざるの上に大量にのった魚やエビだった。

 

倉橋「ヤマメ、イワナ、オイカワ……あ、テナガエビもおいしいんだ~」

 

竹林「控えめに獲ってもサイドメニューには充分な量だ。激安で出して客寄せに使う手もあるね」

 

 

木村「おーい、殺せんせー。適当にそこらの木の実獲ってきたけど…」

 

矢田「クリやカキやクルミはともかく…これとか食べれるの?」

 

矢田が手に持っているのはいかにも毒々しい粒が幾つかついた木の実だ。

見た目は毒ありそうだけど……。

 

殺「ヤマブドウですねぇ。甘酸っぱくて美味しいですよ。砂糖で微調整すれば立派なジュースの出来上がりです。ですが、こっちの芯の色が桃色の方は有毒のヤマゴボウなので気をつけて」

 

ヤマブドウにヤマゴボウ…見た目も名前も似てて分かんねぇけど片方は美味しくて片方は有毒って……。木の実怖っ。

 

殺「そっちのアケビはゼリー状の果実をそのままスプーンで、皮も味噌炒めにすると大人の味です」

 

カルマ「おーい、殺せんせー」

 

カルマがどっかの草むらから大量のキノコを持って出てきた。アイツいつの間にあんな集めたんだ…?

 

カルマ「そのキノコ鑑定してよ。猛毒のキノコ混ざってたら俺が預かるよ。俺が責任持って捨てとくからさ」

 

渚「何に使うのカルマ君…」

 

カルマの笑顔が輝いてんな…

 

カルマ「この毒々しいやつなんか明らかに…」ワクワク

 

殺「それが?とんでもない。西洋では『皇帝のキノコ』と称されるタマゴタケです。濃厚な美味はバター炒めで。人工栽培がまだ出来ない希少食材です」

 

カルマ「ふーーーーーん」

 

うわ…明らかに期待はずれな顔してる…。

そんな毒キノコ欲しかったのか…。

 

殺「ただし、毒キノコのベニテングタケと良く似るので要注意。この中の半分くらいは毒キノコですが…」ポイポイ

 

殺せんせーは毒キノコを捨てていく。

そして後ろでカルマが拾っている。

マジで何に使う気なんだあいつ…。

 

殺「……でもねカルマ君。中にはとんでもない価値ある物が潜んでいる」

 

殺せんせーが触手で持ち上げたのは……

 

高級食材…『マツタケ』……!!

 

突然の高級食材にE組の面々は思わず、その輝かしさに目を伏せてしまう。

 

悠馬に至ってはどこかへ飛んで行った。

 

殺「これらを店で買ってフルコースを作れば、一人前三千円は下らない。ところが、この山奥ではほとんどが当たり前に手に入る。ハンデどころか最大の強みです。この食材は君たちと同じ。山奥に隠れて誰もその威力に気付いていない」

 

寺坂「隠し武器で客を攻撃か。まぁ殺し屋的な店だわな」

 

 

殺「殺すつもりで売りましょう。山の幸(君達)の数々の刃を!!」

 

そして11月中旬の土曜、日曜。

 

学園祭戦争が幕を開けた!!

 

 



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第84話 客の時間

後書きで色々書きました。



《新 side》

 

 

椚ヶ丘の学園祭はネット等で日本中で話題になっていて、色々な場所から色々な人が来ることになる。

 

新「…はぁ」

 

村松「何ため息ついてんだよ。とっとと仕事しろ仕事!」

 

俺は村松や原と共に料理担当だ。

 

なのだが、俺は2人とは違って外に顔を出すことは出来ない。

帽子とかサングラスとかを付ければ出られるが流石にその姿で接客するのは不自然すぎるし…。

 

村松「そんな出たいなら出たらいいじゃねーか。つーか、むしろお前が矢田と下で接客した方が客来るんじゃねーの?」

 

新「そんなことしたらまた週刊誌撮られるだろ…」

 

村松「あー…。それもそうか」

 

原「アイドルって大変だね…」

 

新「まぁ…その分楽しいけどね」

 

なんて話していると、すこし外が騒がしい。

チラッと窓から見てみると…。

 

杉野「何しに来たんだよ」

 

カルマ「また女子でも拉致るつもり~?」

 

新「…?あの高校生誰だ?」

 

原「あ、確か修学旅行の時に4班とトラブったっていう…」

 

村松「そういやそんなこともあったな…。そんときゃ俺は寺坂や吉田と一緒にクラス内で浮いてたが…」

 

修学旅行……ってことは大分前だな。確か俺は仕事で行ってない上に、まだA組だったな…。

 

リュウキ「もうやってねーよ…。どっかの学校みたく化け物先公に出てこられちゃたまんねーしな。だが、別に力を使わなくても台無しに出来る。例えば、ここのメシがクソマズいと叫びまくったり……ちょいとネットでてぶやたりなァ」

 

……どうやら大分性根が腐ってるらしい。

 

杉野「……!」

 

リュウキ「オラ、早く出せよ」

 

 

奥田「か…看板メニュー…どんぐりつけ麺です……」

 

 

不良A「うおーうまそーー!!」

 

不良B「なーリュウキ君!モンブランも頼んでいい!?」

 

不良C「俺も魚の燻製喰ってみてぇ!!」

 

リュウキ「はしゃぐな!!バカがバレんだろうが!!」

 

もう大分バレてると思うけどな…

 

リュウキ(こんなモン…中坊の思いつきだ。1口喰ったら吐いてやる…!

 

 

 

 

 

 

う………うめぇ……!!!!)

 

 

 

友「漫画で言うと8ページぐらいかけてリアクション取らせたかった」

 

不破「でもそれは他の作品の独壇場だわ」

 

おーい漫画好きカップル何言ってんだ?

 

村松「いけるだろ。みっちり1週間研究したからよ」

 

不良D「確かにラーメンだけど…喰ったことねー味だ」

 

村松「くせの強い食材ばっかで苦労したぜ。究極のバランスを求めた結果の豚骨醤油どんぐり麺よ」

 

うーん。流石だ。村松の店は将来繁盛するだろう。ていうかテレビや雑誌で言いたいくらいだ。

 

イトナ「村松にしては奇跡の味だ。マズさが売りのキャラが崩れる」

 

村松「うるせーイトナ!てめーも働け!!」

 

 

不良B「他のも喰おうぜ他のも!!」

 

不良C「なんだこのタマゴタケって!喰ったことねぇ!」

 

リュウキ「てめーら!!マズいって言え!マズいって!」

 

イリーナ「え?マズいの?あらぁ…うちの生徒の料理…お口に合わなかった…?」

 

不良共「マブい!!!!!!!」

 

やべぇ。対バカ男用最終兵器が来た。

 

リュウキ「いやいやいや!超ウメーっス!」

 

イリーナ「そーお?じゃこの柿とビワのゼリーとかいかが?私の肌と丁度同じ柔らかさよ」

 

リュウキ「喰うっス!」

 

イリーナ「いっそ全メニュー食べてくれたら嬉しいな~」

 

リュウキ「え…で、でも金が……」

 

イリーナ「駅前にあるわよ。A、T、M……」

 

不良共「下ろして来るっス!!」

 

イリーナ「はぁい待ってるわ♡」

 

貢ぎコース確定した……。

 

 

 

木村「山のふもとで矢田が客引き、頂上にはビッチ先生……。師弟コンビ恐るべしだな」

 

竹林「ただ…やっぱり客足伸びないね。立地の割にはよくやってるとは思うけど」

 

殺「まだ一日目。勝負はこれからですよ。菅谷君のポスターに、岡島君の食品写真。狭間さんのメニュー解説文。三村君の特設ホームページ。客の興味を引ける材料はそろっています」

 

イトナ「偵察しているが、客の興味を引くのならA組の方が上手だ。客席を半分に区切り、片方のステージが終わったら仕切りを閉じて客を出す。すぐさま反対のステージで次が始まる。1回入場する時は500円払い、飲み食いはタダ。何度もリピートで入場を繰り返していくうちに利益が溜まっていく」

 

殺「うーん…。流石浅野君ですねぇ」

 

木村「バンド演奏クオリティ高ぇな…。こんなヤツらに売上で勝つ手あんのか?って…ん?」

 

竹林「イトナ大丈夫か?映像、大分乱れているけど…」

 

イトナ「マズいな。予期せぬ不具合(バグ)だ。こっちからの操作も効かない。本校舎まで行って回収して、新しい物を置かないといけない」

 

殺「なるほど…。では、あの2人に行かせるのはどうでしょうか」

 

木村「あの2人…?」

 

殺「ええ。では、まずは倉橋さんを呼んできてください」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

近藤さん「よう友!来てやったぞ!」

 

友「近藤さん達!」

 

沖田「おい達でまとめてないで名前呼べよ」

 

友「いやいちいち読んでたら文字数かかるだろ?」

 

渚「友君…?」

 

近藤さん、土方さん、総七、ザキ、イツさんの5人が来てくれた。仕方ないから全員名前呼んだ。

 

 

イツさん「不破ちゃん久しぶり。最近会えてなかったね」

 

不破「イツさん!お久しぶりです!」

 

イツさん「友君と上手くいってるみたいで嬉しいわ」

 

不破「ちょ…!/// イツさんやめてくださいよ!////」

 

 

総七「こんな山奥なのに大分客来てるな。まぁどんぐりつけ麺始め全メニュー美味そうだしな!」

 

山崎「僕山の幸沢山食べたいです!!」

 

友「おうどんどん食べてけ!」

 

土方さん「……」

 

土方さんがじっとこっちを見つめてくる。

 

土方さん「なぁ。新はどこだ?」

 

友「新なら教室内で料理作ってますよ。活動休止中とはいえアイドルなんで、あんまり顔出せないですから」

 

土方さん「……そうか」

 

友「……」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

新「………」

 

剣術道場の人達が来たようだ。

…でも、顔を出すわけにはいかない。

 

アイドルだから…というわけではない。

もちろんそれもあるけれど……。

 

思い出したくない記憶を……思い出しそうになるから…。

 

村松「………おい新。どーしたさっきから。手止まってんぞ」

 

新「あ、ああ。ごめん」

 

 

 

倉橋「ねぇ…新君」

 

新「え…?………倉橋?」

 

いきなり後ろから声をかけられ、振り向くと倉橋がいた。

 

倉橋「実はね、その…殺せんせーからお願いされて。イトナ君が偵察の為に送ってた小型ドローン?みたいなのが壊れちゃったみたいで、新しいのを本校舎までもっていって壊れちゃったのを回収しにいかないといけないんだって」

 

新「あー…なるほどね。で、それを俺と倉橋に取りに行ってほしいと?」

 

倉橋「う、うん。そういうこと」

 

新「んー…俺はいいけど…」

 

俺はチラッと村松と原の方を見る。

 

原「気にしないで行ってきていいよ!」

 

村松「おう。ちょっくら一休みしてこいよ」

 

新「そ、そうか?ありがとう!じゃあ、サングラスと帽子取ってくる!」

 

俺は急いで荷物を取りに行った。

 

 

倉橋「……ふぅ」

 

原「……陽菜乃ちゃん、頑張ってね!」

 

倉橋「ふぇっ…!?な、なにが!?///」

 

村松「殺せんせー……絶対狙ってるよな」

 

倉橋「村松君まで…な、なんの事!?///」

 

原「さーあ?なんの事だろうね~」

 

村松「さて、料理の続きしますかね」

 

倉橋「ちょ、ちょっと……!!///」

 

 

新「お待たせ倉橋。じゃ、行こっか」

 

倉橋「ひゃっ!し、新君…!いつの間に…!」

 

新「え、今来たところだけど…」

 

急いで来たら驚かれてしまった……。

 

倉橋「じゃあ……い、行こ!」

 

新「あ、ああ」

 

こうして、俺と倉橋は本校舎へと出発した。

 

 

 




どうもお久しぶりです。
最近めっきり投稿しなくなって、このシリーズも失踪かよと思われた方もいると思います。
なんで投稿しなくなったかというと、理由は2つ。
1つ目は、学業の方が忙しくなったこと。
2つ目は、小説を書こうという気が起きなかったこと。
これらの理由から、しばらく書いていませんでした。
ちなみに、今もこの話以降のストック無いのでまた次の投稿も大分後になるかと思われます。
そして最後に、このシリーズについて。
この話以降のストックが無い=もう書く気がない、ということでさようなら……という訳ではなく、まだ書いてませんが、ちゃんと完結させるつもりです。
自分自身、完結せずに途中で勝手に終わっちゃうのは好きでは無いので、無理やりにでも続けて完結させます。いつ頃になるかはわかりません。2~3年くらいかかっちゃうかもしれません。でも、完結はさせてみせます。頑張ります。ええ頑張りますとも。(内心不安)
以上。後書きでした~。


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第85話 偵察の時間

《新 side》

 

さて……殺せんせーの指示で倉橋と2人で本校舎に向かったはいいものの……

 

倉橋「…………///」

 

新「……」

 

気まずい……。

 

さっきから倉橋が目を合わせてくれない…。俺なんかしたのかな……?(鈍感)

 

新「…な、なぁ倉橋」

 

倉橋「ふぇっ!?な、何?///」

 

新「いや…さっきから全然喋らないからどうしたのかなって…」

 

倉橋「え、えっと…な、なんでも…ないよ?」

 

新「ならいいんだけど……。ていうか、バレないか凄く怖いんだけど…。学校外の人とか沢山いるだろうし…」

 

倉橋「うーん…。帽子やサングラスとかしてるから大丈夫だと思うけど…」

 

新「そうだな。さて…本校舎ついたぞ」

 

本校舎は旧校舎とは比べ物にならないほど賑わっていた。校庭には数々の出店が並び、窓越しで校内に沢山の人がいることが確認出来る。体育館にも多くの人が列を作っており、学校の学園祭とは思えないほどの人だかりが、本校舎では出来ていた。

 

他校の女子生徒「ねぇねぇ…あそこのサングラスと帽子してる人、凄くイケてない?」

 

他校の女子生徒「ほんとだ…!この学校、浅野君といい、榊原君といいイケメン多いね!」

 

なにやらコソコソ話しているのが聞こえるが…目線的に俺に言っている…のか?

まずい…あまり見られるとバレてしまう…。

 

倉橋「……」

 

他校の女子生徒「あ、でも彼女さんいるっぽいね」

 

他校の女子生徒「やっぱりイケメンはみんな彼女持ちなのかな~?彼氏欲しいのに~」

 

他校の女子生徒「まだチャンスあるって!次のイケメン探しに行こ!」

 

倉橋「………」ホッ

 

…行ったようだな。

バレずに済んで良かった……。

 

新「なぁ倉橋」

 

倉橋「ふぇ…!?///な、何?」

 

新「えっと…大丈夫か?さっきから…その、変な声出てるけど」

 

倉橋「だ、大丈夫だよ!人が多くてちょっと緊張してると言うかなんと言うか…!」

 

新「そ、そうか…。それより、さっさとイトナのドローン回収しに行こうぜ」

 

倉橋「そうだね!A組の出し物のとこ行こっか!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

A組のイベントカフェはひとつの客席を2つに分け、各ステージで全く違うイベントを行っている。

一方でバンド演奏をしていれば、もう一方ではお笑いのステージが準備され、バンド演奏が終わればお笑いのステージがすぐさま始まる。

とんでもない商法だ……。

 

倉橋「偵察ドローンがある所は……今は浅野君達が演奏してるみたいだね」

 

新「うーん…浅野達にバレると厄介だな。倉橋、入口付近で待っててくれないか?俺一人で行ってくる」

 

倉橋「う、うん。分かった」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【A組 イベントカフェ】

 

だいぶ盛り上がってんな~…。

 

ま、入るだけならたったの500円だもんな。

まぁその後エンドレスで搾取されるんだろうけど。

 

浅野は演奏とファンサに夢中かな…?なら今のうちか

ほか4人は………警戒しなくていいや。

どうせ気づかないだろ。

 

会場内の右側で…後ろの壁沿いで…隅っこに…お、あったあった。

とりあえず回収……っと。

 

さて、早く出るか。浅野以外にもその辺にA組のやついるだろうし…。

A組以外にもこの学校のやつは俺の存在に気付きかねない。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

新「倉橋」

 

倉橋「新君、大丈夫だった?」

 

新「もちろん。さ、早く帰ろうぜ。いつバレてもおかしくなくてヒヤヒヤしてんだよ…」

 

倉橋「そ、そうだね…。じゃあ殺せんせーにもメールで伝えておくね」

 

新「ああ。……ん?」

 

倉橋「どうしたの?」

 

新「いや…なんか兄貴からメッセージが…」

 

U[めっちゃ面白いこと起きてる]

 

そのメッセージと共に遅れられてきたのは…

 

隠れた場所で、一人の男性客にメイド姿で接客する渚の姿だった…!!

 

新「………これ………」プルプル

 

やべぇ…笑いこらえきれねぇ……!!

 

倉橋「え!?これ…渚君!?かわいい~!」

 

新「何やってんだあいつ……」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

新にメッセージが送られる数十分前……

新と倉橋が裏山を出た直後まで遡る。

 

教室内で渚と優月と中村の3人でごみ捨てをしていた時のこと。

 

中村「そーいや渚さ。聞いたよ。髪伸ばしてた理由。……悪かったね。イヤイヤやってたんなら…私がからかう時も傷つけてた?」

 

渚「あ、ぜ、全然!中村さんやカルマ君にいじられる分には」

 

中村「そっか。でももうあんまりいじらないようにするよ」

 

友「中村にも人の心あったんだな」

 

中村「うっせ」

 

その時……

 

???「おーい!!」

 

外から軽薄な声が聞こえてきた。

声の主は……

 

 

 

ユウジ「渚ちゃーん!!遊びに来たぜー!!」

 

渚「げっ…!ユ、ユウジ君…!?」

 

中村「ユウジ?」

 

友「誰だ?あいつ」

 

不破「…あ!南の島で女装した渚君にホレた人だ」

 

中村「へぇ~……」ニヤ

 

中村の顔が変わった…!すごくゲスい顔になった…!!

 

渚「ど、どうしてこの学校ってわかったの?」

 

ユウジ「あれから島の宿泊者調べたんだよ~。で、HP見たら丁度学園祭やってたからよ」

 

渚「そっ、そっか…。……!?や、あっ!?ちょ、中村さん……!?」

 

あろうことか中村は自分のスカートと渚のズボンを交換した…!

 

ちなみに俺は中村が脱ぎ始めようとしたところから優月にずっと目隠しされていた。

なので目を開けたらいきなり性転換してて割とビックリした…。

 

中村「今回で最後…今回で最後…」

 

渚「し、舌の根も乾かぬ内に…!!」

 

中村「金持ちなんでしょあいつ…。この際手段を選ばず客単価を上げてかなくちゃ~」

 

渚「だ、だからって…!」

 

中村「さぁ行ってこい渚ちゃん!!クラスの命運は君の接待に託された!!」

 

 

不破「相変わらずだね~中村さん」

 

友「さっきの言葉はどこへやら……」

 

カルマ「お、面白そうなこと起きてんじゃ~ん」

 

友「やべぇもう1人の悪魔が来た」

 

カルマ「ちょっと俺紙とペン取ってくる」

 

中村「おっけー、よろしく」

友「やべぇ2人が結託した」

 

不破「渚君流石のいじられっぷりだね」

 

友「ね~。……新に渚ちゃんの写真送ってやろ。ちょっとこっそり撮ってくる」

 

不破「友君もたまに人のこと言えなくなるよね…」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

友「さて渚ちゃんは……いたいた。…って中村何してんだ」

 

中村「よ、友く~ん。あそこ見てみ」

 

そう言われ、草むらの間から覗いてみると……

 

接客している渚ちゃんがいた。

 

ユウジ「学園祭来て良かったな~!渚ちゃんに接客してもらえるなんて~。しかも、『見えないとこでこっそり食べよう』とか、色々期待しちゃうな~」

 

渚(知り合いの客に見られたくないだけなんだけど……)

 

 

友「渚…凄いぎこちないな」

 

中村「あのボンボンから金を搾取するには渚ちゃんをうま~いこと誘導してあげないと」

 

そう言いながら中村はカンペを書いていく。

そして渚にだけ見えるように掲げた。

 

渚は気づいたようでカンペを読み始めた。

 

渚「わ、私のオススメぜーんぶ食べて欲しいなー(棒)」

 

ユウジ「おうおう!渚ちゃんの頼みならメニュー全て!」

 

めっちゃ棒読みなのに気づかないのか…?

 

さては…………あいつアホだな?

 

そう思いながら、渚の写真を撮り、新へと送った。

 

中村「クックック…やっぱ金持ってるわあのボンボン…。食いっぷりも良いから稼いでよ渚ちゃ~ん」

 

 

ユウジ「あ、怪しいハーブはもうやめたよ。渚ちゃん、心配してくれたもんな」

 

渚「そっか」

 

 

友「なんか普通に世間話してる感じだな。まぁあのまま金出してくれりゃだいぶ稼げそうだけど…」

 

カルマ「お、やってるね~」

 

友「そんな居酒屋の客みたいなノリで来ないでくれない?」

 

カルマ「中村~。ちょっとそのカンペ貸して~」

 

中村「いいよ~。何書くの?」

 

カルマ「デートで1万払えるか聞いてもらおうかなって」

 

友「それもう違う商売!!渚に何させるつもりなんだよ…」

 

カルマ「あ、そうだ。いいこと思いついた」

 

中村「いいこと?」

 

カルマ「ちょっとコスプレ衣装買ってくる」

 

友「何するつもりだ!?」

 

俺の問いに答えることなくカルマは全速力で言ってしまった。行動力化け物すぎるだろ……あいつ。

 

すると、近くの草むらからとある男が…!!

 

 

レッドアイ「手土産だ、烏間サン。この山は色合いが豊かで良いな」

 

渚・ユウジ「!?!?」

 

烏間「『レッドアイ』!『死神』にやられたと聞いていたぞ」

 

レッドアイ「一時は死線を彷徨ったがな。若い分回復も早かったわ」

 

烏間「それはともかく…銃は隠せ!!」

 

レッドアイ「平気平気!世界各国の狩猟免許持ってるから」

 

 

中村「ねぇ友、あの人…」

 

友「あぁ。修学旅行の時の…スナイパーだよな…?思いっきり銃持ってるけどあの人…」

 

中村「まずいわね…」

 

そう言いながら中村はカンペに文字を書いていく。

 

 

ユウジ「な、なんだアイツ、銃持ってるぞ…?ケーサツにかけた方がいいんじゃ…」

 

渚「わーーーっ!!わーーーっ!!ち、違うの……あの人は…………

 

 

地元の猟友会の吉岡さん…」

 

ユウジ「吉岡さんどー見ても外人だけど!?」

 

中村はカンペにだいぶ無理がある言い訳を書き、それを渚に見せたのだが……。

いや吉岡さんは無理あるよね!?

 

中村「あいつ反応面白いな~」

 

友「…楽しんでるよな?お前」

 

 

渚「き、帰化したんだ。日本のアニメとかが大好きで…」

 

ユウジ「そ、そうなんだ……。…ま、吉岡さんはいいけどよ。渚ちゃん。し、正直…俺の事どう思…///」

 

 

烏間「あんたもだ。こんな時まで気配を消すな」

 

ロヴロ「………」ヌッ

 

渚・ユウジ「!?!?」

 

いやあの人怖すぎるだろ……。

ホラー演出じゃん。ホラゲーのびっくりポイントじゃん。

 

 

ロヴロ「あの標的(タコ)に招かれてな」

 

烏間「そうか。あんたも生きてて何よりだ」

 

ロヴロ「失礼かもしれないが…よく君が『死神(ヤツ)』を倒せたものだ。いかに君が手練でも…『死神(ヤツ)』だけは次元が違うと思っていた」

 

烏間「俺一人じゃ無理だっただろうな。あんたの弟子が心配してたぞ。行ってやれ」

 

ロヴロ「ああ」

 

 

ユウジ「な、なんだあの怖いオッサン…どー見ても一般人じゃねぇ…」

 

渚「え、えっとあの人は……

 

 

マイルド柳生。浅草演芸場の重鎮なんだ…」

 

ユウジ「お笑い芸人!?」

 

いやだから無理がある!!

吉岡さんといいマイルド柳生といい、中村絶対面白がってるよね!?

 

中村「………」プルプル

 

ほらもう笑いこらえてるし!!

 

 

渚「さ、さっきの会話もネタ合わせでさ。弟子がここでお笑い辞めて教師になってて……」

 

ユウジ「……ふーん。じゃあれは?」

 

ユウジが指をさした先は……

 

殺せんせーを殺せなかった殺し屋たちが俺たちの料理を食べている様子だった。

 

ガストロ「銃うめぇ…!!ガキが作った味とは思えねぇ」

 

スモッグ「うーむ。この味だったら毒混ぜても喜んで食うな」

 

グリップ「ふむ。美味そうだぬ……辛っ!!!わさびぬ!?!?」

 

 

ユウジ「……………」

 

渚「げ、芸人仲間!!浅草の!!わさび入りモンブラン食べてるのも…マイルド柳生直伝のリアクション芸で……。わ、わりと私たちそういう人に縁があって…」

 

ユウジ「………渚ちゃん」

 

渚「……え?」

 

ユウジ「……嘘、ついてるよな」

 

渚「……!」

 

………やっぱりバレたか。

 

 

ユウジ「親父が大物芸能人だからさ。すり寄ってくる奴らの顔はガキの頃から沢山見てきた。わかっちゃうんだよ。うわべとかごまかしの造り笑顔は。……島のホテルで会った君は、そういう笑顔する娘じゃなかったんだけどな」

 

渚「……すごいね。観察眼」

 

ユウジ「すごくねーよ。いやらしい環境が育てた望まぬ才能だ」

 

渚「……言う通りだよ。うそついてた。僕もね、この外見は子供の頃から仕方なくでさ。ずっと嫌だった」

 

ユウジ「………?僕?」

 

渚「けど、望まぬ才能でも、人の役に立てば自信になるって最近わかった。だから今はそこまで嫌いじゃない。

 

 

 

……ごめんね。僕、男だよ。」

 

ユウジ「…………………」

 

あ、放心してる。……まぁ無理もないか。

 

 

ユウジ「………またまたァ」

 

渚「ほんと」

 

ユウジ「………またまたまたまたァ」

 

渚「ほんとだってば」

 

中村のカンペ『見せれば納得!! 』

 

渚・友(何を!?!?)

 

渚「………ウソついてる顔に見える?」

 

ユウジ「……マジかよ」

 

渚「欠点や弱点も裏返せば武器になる。この教室で学んできたのはそういう殺り方で。この出店もその殺り方で作られていて。今日ここにいる人達は……皆、暗殺(それ)が縁で集まってるんだ。殺意(こころ)が踊って、すごい楽しいんだよ」

 

ユウジ「………!」

 

渚「あ、で、でも、騙してたんだし、飲食代は返すから…」

 

ユウジ「いいよ。なんか…自分がアホらしく思えてきた。……帰るわ」

 

渚「………」

 

友「渚…」

 

その時、全力疾走でカルマが戻ってきた。

 

カルマ「あれ、もう帰っちゃったの?コスプレ撮影会で金取ろうとメイド服やらサンタ服やら買ってきたのに」

 

渚「カルマ君は僕でいくら稼ぐつもり!?」

 

中村「ま、思ってた以上は稼げたね」

 

渚「中村さん!さっきのカンペもっとどうにかならなかったの!?」

 

友「いやほんと……渚お疲れ様」

 

渚「もう……。……ユウジ君、悪いことしちゃったかな…」

 

 




新はこの後しばらくして帰ってきました。
そして倉橋はカルマや中村に色々尋問されたとかされてないとか……。


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第86話 縁の時間

《新 side》

 

-学園祭 2日目-

 

現在、俺たちE組の生徒数名は、準備のために朝から旧校舎へと向かっていた。

 

倉橋「1日目はそこそこの売上だったね」

 

新「あぁ。でも今日で最後…」

 

三村「本校舎に売上速報が貼られてたけど、このペースじゃA組と勝負にならないよ…」

 

渚「………」

 

そんな会話をしていると…後ろから誰かが走る足音が聞こえた。

 

マイク持ってる人「急げ!朝の中継に間に合わねーぞ!」

 

カメラ持ってる人「はい!」

 

速水「……?今のって」

 

新「テレビ局の人だな。しかも有名なニュース番組に出演してる人だ」

 

千葉「何撮るつもりだ?」

 

菅谷「この先にはE組しか………ってなんだこりゃ!?」

 

菅谷の視線の先には、E組方面から並ぶ大量の行列があった。

 

千葉「これ全部うちの開店待ちかよ……」

 

速水「昨日から今日でこの差は何?」

 

昨日は客は来たものの知り合いが多くて、それ以外の人は少ししか来なかった。

なのに今は全然知らない人達が列を作って、開店を待ちわびている。

 

友「大変だ!」

 

不破「ネットで口コミが爆発的に広がっててさ」

 

後ろから兄貴と姉貴が走ってきた。

 

律「少し潜って情報の発信源を探しました。その結果出てきたのが……」

 

不破「『法田ユウジ』。今一番勢いのあるグルメブロガー」

 

友「小さい頃から良いモン食ってたおかげで……憎たらしいけど舌の確かさは折り紙付き」

 

不破「金に任せた食い歩きはすごい信頼性高いんだって!」

 

渚(ユウジ君……!!!)

 

片岡「ホラ!あんた等も早く店の準備して!お客さん待ってるんだから!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ユウジ『椚ヶ丘の学園祭で……メチャ美味い出店と出会いました。

詳しいメニューは次で書くけど、人生観が変わりました。

不利な立地を逆手に取った自給自足の食材の数々!

『欠点や弱点を武器に変える。』

店で働く友達がそう言ってたのを聞いて、偉大な親の影に隠れて甘やかされ、どこかそれを後ろめたく思ってた自分が……なんかアホらしくなりました。

甘やかされた小遣いだって自分の武器。皆の役に立ちゃいいので、開き直ってオススメの情報を発信します!!

まずは人生観の変わる山の上の店!

味わえるのはあと1日だけ!!』

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《友 side》

 

そして………学園祭はスパートに入る!

 

 

そこからは皆必死だった。

 

注文が入る度に……

 

採って

 

作って出して

 

また売って

 

 

知り合いや、ゆかりがあった人達が…

 

来て

 

 

来て

 

 

いらっしゃって……

 

 

 

奥田「まずいです!どんぐり麺もうすぐ在庫なくなります!」

 

1番の人気メニューはどんぐり麺。

それ故にどんどんと数が減っていき、残り7、8人分くらいしか残っていなかった。

 

磯貝「予想以上に売れたからな……」

 

不破「でも、A組はそれ以上に稼いでるはず」

 

原「サイドメニューの山の幸も売れ行きいいよ。残り時間はこれでねばろーよ」

 

木村「もう少し山奥に足を伸ばせばまだ在庫は生えてるぜ…」

 

新「…………どーすんの。殺せんせー」

 

殺「ふーむ……」

 

殺せんせーは暫く悩んだ後………

 

殺「…いや。ここいらで打ち止めにしましょう」

 

と、触手でバツを作りながら言った。

 

渚「で、でもそれじゃあ勝てないよ!」

 

殺「いいんです。これ以上採ると山の生態系を崩しかねない」

 

倉橋「確かに……」

 

 

殺「植物も、鳥も、魚も、菌類も、節足動物も、哺乳類も、あらゆる生物の行動が『縁』となって恵みになる。この学園祭で……実感してくれたでしょうか。君たちがどれほど多くの…『縁』に恵まれて来たことか。

教わった人。助けられた人。迷惑をかけた人。かけられた人。ライバルとして互いに争い、高めあった人達…」

 

岡野「…あーあ。結局今日も授業が目的だったわけね」

 

村松「くっそ……。勝ちたかったけどなー」

 

こうして……俺たちの学園祭は幕を閉じた…。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

あの後、残っていた在庫もほとんど売り切れ、後片付けをしていた。

 

?「………」

 

矢田「……あ!すみません!売り切れちゃって閉店なんです。ごめんなさい!」

 

?「……そうなの。すごい人気だったのね」

 

矢田「……あっ!」

 

外で片付けている矢田が誰かが来たのに気付き、閉店を伝えていた。

 

渚「……!」

 

その人に…俺たちは見覚えがあった。

 

渚「……母さん」

 

渚の……母親だった。

 

 

 

 

 

渚「……はい。最後の山ぶどうジュース。美味しいよ」

 

渚の母親「……ありがと。テレビで紹介されてたわ。すごいのね、アンタのクラス。残りたがる理由もわかるわ」

 

渚「……うん」

 

渚の母親「……渚。この前のこの校舎での出来事ね、ここでアンタが私を守って、一瞬であの不良をやっつけた時……背中を見て思い知ったわ。私の息子は私と別人だって…。私から卒業するって言ったのも虚勢じゃない。それだけの力を…知らぬ間に身につけていたんだって」

 

渚「………」

 

渚の母親「……でもさ渚。せめて成人までは一緒にいてよ。そっから先は好きに生きればいいからさ。…せっかくアンタの親になれたんだもん。もう暫く心配させてよ」

 

渚「……!…うん!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

烏間「渚くんの母親が謝っていた。火をつけようとしたそうだな」ボソッ

 

殺「ええ……過ぎたことです」

 

烏間「それと、彼女が俺に囁いて帰ったんだが……

 

 

 

俺のヅラの事は黙っておくって…どういう事だ?」

 

 

殺「………………シラナイ!!」シュバッ

 

烏間「待てっ!!!!」

 

 

やっぱり烏間先生に怒られた…。

コスプレ自体低レベルなのに謎にヅラ設定つけるから…。

 

茅野「『縁』かぁ…」

 

カルマ「烏間先生はあのタコと関わったのが縁の尽きだね~」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

本校舎にて………

 

 

生徒「すげーなA組。高校の店を押さえてトップだよ」

 

生徒「さすが浅野君~」

 

生徒「でもさ。やっぱE組が目につくな。2日目途中で店閉めたのに3位だぜ。最後まで勝負してたらどうなってたか」

 

生徒「お前食い行った?」

 

生徒「そりゃテレビに出てたら興味も湧くわ」

 

生徒「E組って地獄みたいなとこだと思ってたけどさ」

 

生徒「あの自然の中で自給自足って…案外羨ましいかもなー」

 

 

理事長「…………」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《古見 side》

 

学園祭終了後……

理事長・浅野學峯に呼ばれ、五英傑と共に理事長へ来ていた。

 

何故か転校後、生徒会役員に入れられて以降五英傑と共に呼ばれることが多くなった。

ただ、正直に言うと私としては少し不服。

 

榊原蓮はうざいし、浅野学秀は意味わからないし、他の奴等にも色々と不満がある……。更には、浅野学秀や榊原蓮のファンクラブの連中に目をつけられる始末。

 

E組に行けば良かったと多少後悔しているが…本校舎の連中に悪口を言われた途端攻撃を仕掛ける未来が見えたのでその事を考えるのはやめた。

 

さて、私の話はここで終わりにして……

今の状況は、浅野学秀が理事長に色々と報告しているところだ。まあ、行事後のいつもの光景なのだが。

 

 

浅野「僕等は努力の全てを注ぎ込みました。勝利に満足しています」

 

理事長「……ほう。ずいぶん接戦だったようだが」

 

浅野「それだけE組に戦略があったという事。圧倒的大差をつけるのはほぼ無理かと…」

 

理事長「違うな。相手は飲食店だ。悪い噂を広めるのは簡単だし、食中毒なら命取りに出来る。君は…害する努力を怠ったんだ」

 

………!

 

何処までやらせたいのこの男は……!

そんなことをすれば…大きな問題になって学校自体が危ういはずなのに…。

E組だってこの中学の生徒のはずなのに……。

 

一歩間違えたら……訴えられたり捕まったりするのはこちら側のはずなのに……!

 

この男は……平然と非人道的な要求をしている…!!

 

 

浅野「……理事長先生。あなたの教育は矛盾している。どうやったか知らないが…E組はこの1年で飛躍的に力を伸ばした。僕等選ばれたA組と張り合うまでに。癪だが…僕自身も能力の伸びを感じます。奴等が刺激になっている事は否定できない。強敵や手s………いや、仲間との縁に恵まれてこそ強くなれた」

 

瀬尾「今お前手下って言いかけたろ」

 

ホンット親子揃っていい性格してるわね……。

 

浅野「弱い相手に勝ったところで強者にはなれない。それが僕の結論です。それは……あなたの教える道とは違う」

 

理事長「浅野君。………それと古見さん。三分ほど席を外してくれないか」

 

浅野「…………?」

 

……なぜ私も?

 

理事長「友達の4人と話がしたい。なに、ちょっとした雑談さ」

 

浅野「………」

 

榊原「出ていろ浅野君、古見さん。3分位別にいいよ」

 

浅野「……ああ」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

あの男は何がしたいのか………一切わからない。

 

当然だ。

浅野学秀だって理解していない。

 

あの男の息子である浅野学秀が分からないことが、私に分かるはずがない。

 

だが……妙な胸騒ぎがする。

 

そろそろ期末考査が近づいてくる。

 

あの男にとって……E組を潰す絶好の機会(チャンス)

となれば……手段を選ばず妨害をするはず。

 

……まさか。

 

浅野「……そろそろ3分だな。……ん?どうした?」

 

古見「………いいえ。…ただ、嫌な予感がするの」

 

浅野「嫌な予感…?」

 

その時……理事長室の扉が開いた。

 

浅野「…!蓮、瀬尾……………っ!?」

 

……やっぱり。

 

『まさか』が的中してしまったようだ。

 

榊原荒木小山瀬尾「E組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺す」

 

 

浅野「なっ……!?何を………!」

 

理事長「ちょっと憎悪を煽ってあげただけだよ。君の言う『縁』なんて…二言三言囁くだけで崩壊する。私が教える『強さ』とは……そんな脆いものではない。圧勝できない君の強さ等、もはや誰も信じないよ」

 

浅野「………!」

 

………この男、思っていた以上に危険人物だ。

 

本気を出せば……市や都だけじゃない。国すら動かせるだろう。

 

理事長「……私が出るしか無いようだね。期末テストは私が全て執り仕切る。強くなければなんの意味も価値も無い。それを一から教えてあげよう」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

《新 side》

 

殺「さぁて。この1年の集大成。いよいよ次は『学』の決戦です。トップを取る心構えはありますか?カルマ君」

 

殺せんせーがそう言うと、皆が一斉にカルマの方を向く。

 

カルマ「……さぁねぇ。バカだから難しい事わかんないや」

 

 



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