もしもウマ娘世界に神座があったら (どるふべるぐ)
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わしはウマ娘の神様じゃ(ガチ)
ウマ娘はアニメ視聴だけなんでキャラが上手くつかめてません。神座万象シリーズはエロはやったけど全年齢版は未プレイのにわかです。
格好いい詠唱とか考えらんないので獣殿と練炭のをパクりました。
以上が受け付けられない方はブラウザバックしてください。
――んじゃ、神になった馬の話をすっか。
彼は、とても優れた競走馬だった。
艶やかな葦毛を靡かせた堂々たる立ち姿。駆ける姿はまさに荒波すら切り裂き疾走する不沈船。恵まれた血統が生んだ強靭な肉体と脚力。なにより無限にも思えるスタミナで全てを抜き去るその走りは、見る者全てを魅了し熱狂させた。
彼に魅せられた者は誰もが愛した。
何者にも媚びず縛られず、己の走りたい時にのみ走るその自由な在り方を。
舌を出しながら菊花賞を制し、出遅れすらも物ともせぬ猛追で有馬を制覇し、騎手と人馬一体となり宝塚すらも連覇して一つの時代を席巻したその強さを。
築き上げた名声と数々の栄光は彼がターフを去ってからも決して色褪せることなく、彼を愛する者達の記憶の中で黄金の輝きを放ち続けている。
そう、人々は満足していた。満たされていたのだ。
だが――彼はそうではなかった。
競走馬としての生に不満があったわけではない。彼はたしかに調子や気分で勝負を放棄し億の馬券を紙屑にした事はあったが、それでも走りたい時はその全霊を以て駆け抜け、最後のレースは一着こそ叶わなかったものの、それでも己の全てを出し尽くし完走した。ゆえに一頭の競走馬としてはやり切ったと思っている。
そして現役を退いた後もまた、種牡馬としてその性豪ぶりを存分に発揮し多くの仔を産ませた。より多くの子孫を残すという生物の務めも十分に果たし、牡としてもこれ以上ないほど充実した日々を送っているといえるだろう。
世に競走馬は数多あれど、彼ほどに充実した生を送る馬が果たしてどれほどいるだろうか。
だが、やはり彼は未だ満たされていないのだ。
やり残したことが……否、やりたくとも出来なかった事がある。
人と共に走る競走馬であるがゆえに、決して叶えられなかった願いがある。
『己だけで、あのターフを自由に走ってみたい』
一度でいい。たった一度でも、騎手に指示される事は無く、重苦しい馬具を付ける事も無く、裸の自分自身で駆けてみたかった。
これはきっと、自分だけではないと思う。
どれほど騎手を信頼していても、絆で結ばれてはいても、それでも馬ならば本能で思ってしまうのだ。
誰も背負わず、何にも縛られる事無く、この身一つと意思のままに自由に駆け抜けることができたのなら、嗚呼、それはどれ程気持ちいいのだろうと。
馬達が己の意思と肉体だけで競い合い駆けるターフ。
そんな場所を、走ってみたい。かつて共に駆けたあいつらと。いや、過去から現在に至るまで存在した――全ての名馬らと全身全霊で競い合いたい!!
決して叶わぬはずのその夢想、狂おしい願いは、時を経てもなお消えず、むしろ更に強く激しく燃え上がっていく。そうして人ならざる畜生の身でありながら、人の域すら超えるほどに願い想い望み続け――そしてついに、その《渇望》は神域へと届き流れ出した。
かくて彼の馬は神へと至り、新たなる天を創る。
神となった存在、またはその統治世界や法則──『神座』。
第一の天たる
かつての世界の名と魂を宿した人に似て非なる存在──ウマ娘が騎手ではなく己の知恵と意思で自由に競い走る、ウマのウマによるウマのための可憐なる畜生道。
「──それがこの天、第564神座。アタシの渇望した世界ってわけだ」
そこは見渡す限りの、大宇宙。
暗黒の宇宙空間には無数の星々が煌めき、だがその中を何故か麻雀牌やらルービックキューブやらといった場違いにも思える奇妙キテレツな品々が浮遊している、あり得ない混沌の宇宙だった。
「ここでは皆が好きに走れる。もう人間を乗せることもねえ。重苦しい鞍をつけられることもねえ。余計なもんから全部解放されて、自由に競い合えるんだ」
あり得ざる光景だ。少なくとも人類の知る宇宙では土星の輪がドーナツであるわけがないし、ましてや金平糖の流れ星が火星から飛び立ったアダムスキー型UFOを直撃大破させるなどもはや意味不明である。
この光景はすなわち、ここが通常宇宙とは異なる空間である事を示していた。
「しかも前の世界じゃとっくに引退しちまった奴らや、アタシらの後にデビューした奴らとも走れる。あんなこといいな出来たらいいなと願ってたあんな夢こんな夢いっぱいあるけどそれがリアルになるんだぜ」
ここは物質的手段ではけして到達できぬ最奥の神域。ここは正しく世界の中心。天の主の座す真なる宇宙。
──そこに、かつて彼であった『彼女』は君臨していた。
「スペは現役だしスズカは生きてレースに帰ってきた。テイオーなんて三度骨を折っても走り続けてる。そんでまさかじいちゃん──あのマックイーンと同じチームで走れるなんて、全部昔なら夢にも思わなかったな」
宇宙の暗黒に艶やかに広がり、銀の流れを描く髪。すらりと長く引き締まった脚で悠然と立つ豊満そのものの肢体は女性としての黄金比を体現し、麗し過ぎてもはや怖気立つほどの美貌は見る者に神々しさすら感じさせる、至上の美女。
「どうだ、最高にイカしてっだろ? このゴルシちゃんワールドは」
彼女こそがこの天に覇を唱える当代の神──《第564天 ゴールドシップ》である。
「つーわけで──いくらアンタでも、こんな素晴らしパーフェクトなパラダイスをアッサリくれてやるほどアタシはサービスサービスしてないんだなあ・こ・れ・が」
そして今、かの女神に対峙し挑まんとする者がいた。
それは彼女と同じように、その渇望によって覇道の神へと至った一人のウマ娘。
神としては成り立てであるものの、神座の主たるゴールドシップと真っ向から対峙し、その強き瞳に戦意を燃やす威風堂々たる立ち姿はまさに王者の風格。
「しっかし、最初に『ここ』に来るのはどいつかと思ってたけど、やっぱアンタか。ウマ娘ってのはテイオーみてえに自分磨き大好きな求道ちゃんが多いから、自分じゃなく世界を変えようっていう覇道ちゃん──アタシと神座を獲り合える奴は少なくてよ。その点、アンタなら百点満点花丸パーフェクトだ」
然り。己を磨き、更なる高みを目指す者が大勢を占めるウマ娘において、彼女は己ではなく世界を変えるために走っていた。
その誰もがウマ娘の頂点に立つ一人と認める程の才を以てしても、誰もが叶わぬ夢物語の理想論だと言った願いを抱き続け、決して諦めず渇望して遂には神へと至りここまで来た。
全ては今代の神を倒し、己が理想とする世界を創らんがために。
「いいねえ。そのやる気まんまん闘志爆発な感じ、アメリカで三日三晩三泊四日の日帰りバトルした不死身のトカゲを思い出すぜい。そんじゃさっそくバトろうぜ。とは言ってもどつき合いや木魚ライブバトルじゃねえぞ。……いやそれも面白そうだなやべえちょっと迷ったけどやっぱり君に決めた!」
瞬間、世界が変わる。
満天の星々がかき消え、無限の大宇宙が神の指先一つで書き換えられる。それは正しく神の御業。己が意思で森羅万象を支配する覇道の権能。
そして現れるは、彼女らにとって縁深き場所。
中山競馬場。──かつての世界において、ゴールドシップのラストランとなった有馬記念の舞台である。
「神座の取り合いってのは別に殴り合いだけじゃねえ。どうするかはその代の神次第。昔なんて惚れた女にプレゼントした変態なんていたみたいだぜ。で、アタシらはウマ娘だ。だったら──これだろ」
懐かしき芝の上に立ち、ゴールドシップは笑う。
どこまでも美しく、どこまでも不敵に。己以外の何者にも従わなかったかつてから同じ笑みを浮かべて
「さあ戦ろうぜ。ルールは簡単シンプルイズベスト。──一番速い奴がウマ娘の神様だ。オーケー?」
その言葉に否など無い。挑戦者たるウマ娘は頷き、そして二人は同時にゲートに入る。
このゲートが開いた時、この世界の座の覇権を巡るレースが始まるのだ。
その瞬間を前に静かに高まる緊張。昂る戦意。並ぶ両者から放たれる神気がぶつかり合うその最中に、ゴールドシップの唇から覇道の詠唱が流れた。
『ゴルシの日。宝塚記念の時。120億馬券は塵と化し、ダビデとシビラの競馬予想の如く砕け散る』
朗々と唱うそれは彼女という神の覇道のカタチ。渇望の流出。この全宇宙を覆い尽くす世界法則の脅威に、挑戦者は戦慄し、だが戦意を更に燃やし真っ向から受け止める。
戦慄しはしよう。だが恐れはしない。
これは、己が願いのために勝たねばならぬ物なのだから。
ゆえに彼女もまた、その渇望を唱える。
『ターフは幅広く、無限に広がって流れ出すもの。輝く未来こそ永久不変』
二人の詠唱が重なり合い、二つの渇望が流れ出す。
『我が総ファンに響き渡れ木魚の調べ。ハジケリストの号砲よ』
『永遠なるウマの速さと共に、今こそ疾走して駆け抜けよう』
一つの天に覇を唱える神はただ一柱。それを決すべく、彼女らは唄う。己が世界の渇望を。
『彼の日、涙と罪の爆笑を。オマエら、外れ馬券より蘇らん。さればゴルシよ。天主を許したまえ』
『どうか聞き届けてほしい。世界は賑やかにうまぴょいできる日々を願っている』
そうだ。願っている。
彼女は全てのウマ娘が幸福となれる世界を願っている
だがウマ娘は別世界の名と魂と共にその業すらも宿している。彼女らはその名と魂を持った馬達と同じ故障をし、同じ病に倒れ、同じ不幸に苛まれる運命にあるのだ。それでは彼女の願う幸福な世界など実現できない。
ゆえに変えねばならぬ。この世界を。その法則を。己が天を獲る事で!
負けられぬさ絶対に。この渇望に懸けて。
それはゴールドシップも同じ事。
ようやく叶ったこの渇望。夢に溢れた最高の世界。まだまだ味わい足りぬ遊び足りぬ。己はこの夢の舞台を心行くまで楽しみ尽くすのだ!
『ネタ深き者よ。今永遠のうまぴょいを与える。ラァメン』
『自由なウマと自由なターフで、永遠なる皇帝が願う。 ウマを幸福へと導くと!』
世界の中心でウマ娘は叫ぶ。
その狂おしい想いを。魂に輝く願いを。
この神座を染め上げんとする、その覇道の名は──
『
『
唯一抜きん出て並ぶ者無きウマ娘達のラストラン。
その競走の果てに天を獲るのは果たしてどちらか。
その答えは誰も分からない。ただ一つ、かつてのある神の言葉を借りるのならば
──その筋書きは、ありきたりだが。役者が良い。至上と信ずる。ゆえに面白くなると思うよ。
運命のゲートが今──開かれた。
《第564神座・競走可憐畜生道(プリティーダービー)》
神の名は競走。
旧世界の競走馬が名と魂をそのままに人の如き姿を得た存在――ウマ娘へと転生する世界。
この世界の中心はウマ娘であり、全ては彼女らが全身全霊での競走を楽しむためにのみ存在する。ゆえに人間は彼女らを支え応援しその走りに歓声を贈るためだけの一種の舞台装置に過ぎず、さながら世界そのものが一つの巨大な競バ場である。
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