原神喰種 (H/H 3i)
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目覚めた青年

深夜テンションでやってしまった。人間暇だとろくなことしないみたいですね。プロットも何もあったものではないので続くかどうかはわかりません。


ここはテイワット、その北東部にある風の国「モンド」に建てられたモンド城。自由の都でありその豊かな営みが遠くに見える星落としの湖の七天神像。その湖のそばで青年が目を覚ました。

 

「…ここは?」

 

目が覚めるとどこか知らない場所——少なくとも「東京」ではない所にいた。

 

「俺は…確かあの死神に会って、それから…ッ!!」

 

突如すさまじい痛みと死を覚悟するような空腹感に襲われた。これは喰種特有の飢えによる症状であり、理性を失い、飢えが満たされるまではたとえ友人であったとしても喰い散らかすようになってしまう。端から見れば彼の姿こそ彼が最も嫌う獣———喰種そのものであった。

 

「おッ! 俺は、‼  !ッ違う ケモノ… じゃナいッッ!!!————キヒィィイイイイ!!!!!—————」

 

バキバキと音を立てながら彼はヒトの姿から醜い獣の姿…「赫者」へと変化していた。身体は赫子を纏い肥大化し、頭からは大きくゆがんだヘラジカを思わせる角が生え、特に左手に至っては肥大化した胴体と同じかそれ以上に太く、大きく変化していた。さらに全身からは溶岩を思い起こさせるほどの熱を噴出しており、尋常の生物とはあまりにもかけ離れた姿をしていた。

 

「キヒィィィィ————————!!!!オオオオオオレハッ 俺はチガウッケモノじャナい———!!」

 

最終的に5メートル程の大きさになった獣は周囲を燃やしながら飢えを満たすために先ほど見えた城に向かって進みだす。丁度それを見た囁きの森で大事な宝物を埋めていた赤い少女はおびえながらも

 

「ジン団長にしらせなきゃ! 」

 

といち早く異常を見つけ、救援を呼ぶために走っていった。

そのころ、獣はヒルチャールの集団に囲まれていた。

 

「Nini zido! 」

 

モンド城を囲む湖のそばに居を構えるヒルチャールの集団は突如として現れた大きな獣に威嚇していたが、集団のトップであるヒルチャール暴徒が獣の左腕に掴まれ、全身を焼かれながら喰われた。それを見た他のヒルチャールは全員一目散に逃げ始め、獣はそれを追い囁きの森に入っていった。

 

数分もたたないうちにヒルチャールを捕まえ捕食した獣はふと旨そうな匂いがするのに気が付いた。どうやら木の板が立ててある穴の中からするようであり、そこを掘り返そうとした瞬間、大爆発が起きた。

 

「キヒィィィィ—————‼」

 

煙が晴れた後には左腕と下半身を失った獣が暴れまわっていた。獣が暴れることによってちぎれた胴体や腕の断面から溶岩のような熱を持った液体が飛び散り今にも森の木に引火しようとしたその時、雷とともに雨が降り始め体の熱を容赦なく奪い始めた。大量の蒸気に包まれていた獣は始めは暴れていたものの、すぐに弱っていき数分ほどで息も絶え絶えの状態になっていた。

 

 

「居たぞ!ここだ!!」

 

西風騎士団は少女からの助けを聞き、すぐに森へとやってきた。そこには焦げた木に巨大な足跡、喰い散らかされた幾匹かのヒルチャール、そして地面がえぐれてできたクレーターの底に横たわった青年がいた。

 

 




この主人公キヒィィィィくらいしか喋ってないな
あと赫者状態時のモデルは初代教区長ローレンスです


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驚きの連続

煙緋ちゃん当たりました。かわいいですね
最後のプロフィール書きたいが為にこの小説書いたところあります


はじめに目に入ったのは知らない天井とツインテールの白い女の子だった

 

「んん? ここは…?」

「目が覚めた! ちょっと待ってて! 人を呼んでくるから!」

 

気が付くとふかふかのベッドで目を覚ました。状況がよく把握できていないためか混乱しているとドアが開かれ、幾人かが入ってきた。服装はどれも「東京」では見ることのない意匠であり、ますますよくわからなくなってくる。すると浅黒い肌の蒼い髪をした男から声を掛けられる。

 

「安心したよ。まさか3日も目を覚まさないから心配していたんだ。」

「3日? 3日も寝ていたのか… そういえばいくつか聞きたいことがあるんだけど。いいかな?」

「それよりも!まず何か食べないと!何か持ってくるね!」

「あっ ちょっと待っ」

 

返事をする前にツインテールの女の子はドアを開けてどこかへ行ってしまった。

まずいことになった。

匂いからしてここには人間しかいないことはほぼ確実であり、したがって出されるであろう食事は喰種である自分には食べることのできない者であり、正体をばらす事になりかねない。

慌てる素振りを見せた俺に対して先ほどの蒼い男は

 

「本来なら大聖堂で治療するのがセオリーだが、お前の身元が分からない以上身柄は騎士団が預かることになっている。お前も何か訳ありなんだろう?俺はガイア。話してくれれば身分の証明の時融通はしてやる。」

「ありがとう。でも話す前に質問がいくつかある。ここはどこなんだ? 少なくとも東京ではないように思えるんだけど。」

 

大聖堂や騎士団といった言葉から自分の住んでいる文化圏ではないように感じたことと、見たことのない服装などからどこか遠くまで流れ着いたのかと次々に疑問が沸き上がる。

 

「トーキョー? いったいどこの国なんだ?少なくとも俺はそんな名前の土地は知らないぞ?」

「嘘でしょ! じゃあ日本は?いやアメリカとかも聞いたことはないのか?」

「ああ。おそらくお前は誰も知らないような土地から来たらしいな。 記憶喪失あるいは…! ひょっとして外の世界から来たのか?」

 

東京という誰もが知るような土地の名前に覚えがないと返され途方に暮れていると、突然外の世界というさらに突拍子もないことを言われ戸惑う一方、ここは異世界なのではないかという疑念が重くのしかかる。

部屋の中の空気が重くなっているとドアが開き先ほどの少女が入ってきた。

 

「バーバラ、胃に優しいもの持ってきたよ~。さあちゃんと食べないと元気でないよ!」

「い いや俺 腹はそんなに減って「グウゥ~」…えぇっと…これは違」

「何言ってるの!そんなお腹鳴ってるのに違うわけないでしょ!」

 

恐れていたことがさっそく起きてしまった。喰種は人間からしか栄養を摂取することが出来ない。

もし普段人間が食べているものを食べた場合まず食材を味わうことが出来ないのだ。水と珈琲を除けばすべてが不味く感じるほか消化する前に吐き出さなければ体調を崩すなどまさしく毒と言って差し支えないものなのだ。

断ろうとするが、なぜかお椀に入ったおかゆから目を離すことが出来なかった。いや、それどころか今までに嗅いだことのないとてもいい匂いがする。

いやいったい何を考えている?今までこんなことはなかった。ここにきておかしなことばかりが起こっている。

 

「…食べてくれないの?」

「! ごめん!食べるから!(ええい、南無三!)」

 

食べることを何度も拒否したためか若干涙目になったバーバラという少女は上目遣いでこちらを見上げてきた。その威力は計り知れないもので先ほどから頭にあった食材への不安や正体がばれることへの恐怖というものはすべて消し飛び、スプーンでおかゆを口に運んだ。

その瞬間

 

「!!!!!!!!!!!  これはッ!」ガツガツ

「ど どうしたの!? のどに詰まっちゃうよ!」

「ははっ すごい食い意地だな」

 

ひたすらおかゆを口に運ぶこと30秒。 すっかりお椀はからになり俺は目から大量の涙を流していた。

 

「ほんとにどうしちゃったの!? もうガイアさん笑ってないで助けて!」

「さすがに心配になってきたな。ああ手伝うよ。 大丈夫か?」

 

初めての感覚だった。 生まれて初めて味わうことのできた食事にただひたすら感動していたのだ。それに先ほどまで感じていた空腹感もすべて消え去り、代わりにこれ以上ないほどの幸福感に満たされていた。

 

「ああ。 こんなに旨いものを食べたのは初めてだ。ありがとう。 本当にありがとう。」

「ここまで言ってくれるのはなんだか恥ずかしいな。 でも私はモンドのアイドルなんだから!元気になってくれて嬉しいよ~」

 

屈託のない笑顔に心が洗われるような気持でいると

 

「そういえばお前が何処から来て、何者なのかを知らなかったな。先ほどのトーキョーという地名といいお前に興味がわいてきた。」

 

ガイアからいつ聞かれるのだろうと思っていた質問が飛んできた。喰種が食べることのできる料理が実在している状況といい、いっそすべてを話してみようと決心した。ショックが大きいかもしれないと考え、バーバラには席を外してもらった。

東京という都市に住んでいたこと。 自分は喰種であり本来はヒトしか食べられないが共喰いをすることで生きてきたということ。 そして人間に育てられたこと。 そして家族を殺した喰種に復讐を果たしたのち、死神によって駆逐され、気が付いたらここにいたこと。

10分ほどで話し終えた。ぽつりぽつりと話していたがガイアは口を挟まずに聞いてくれた。

 

「…話を聞く限りではお前は外の世界からやってきた喰種という生き物というわけだな?」

「ああ。でも気になることがいくつかあった。なぜ俺はあのおかゆが食べられたのかが分からない。何か体に異変でも起こっているのか?…これは?」

 

ポケットに何か入っているのに気が付いた。炎が描かれた赤い宝石のようなものが入っていたのだ。

 

「驚いたな。それは神の目だ。」

「?」

「それは元素の力を操れるようになる外付けの魔力器官。見たところ火の元素を操れるみたいだな。」

「よくわからないけど炎みたいのなら前から使えたよ。」

「お前には何度も驚かされるな。」

 

その後ガイアから元素の力の使い方や自分の体が人間とかけ離れている旨を伝え、改めてここは自分のいた世界ではないことを認識した。

気が付くとかなり時間がたっており、また疲れが押し寄せてきたためにあくびを漏らしてしまう。

 

「いろいろ話は聞けたことだし、俺は代理団長殿に報告をしてくるぜ。なに心配するな悪いようにはしないさ。 あとお前と同じ外からやってきた旅人がいるんだがそちらにも話を通しておこう。もしかすると同郷かもしれないな。」

 

「それは楽しみだ…すまない、かなり疲れた。今日はこれで寝ることにするよ。」

「じゃあな。 ゆっくり休め。」

 

今日は驚きの連続だった。願わくば平和に過ごせますように。そんなことを思いながら俺は眠りについた。

 




プロフィール
名前:播磨 身長:160cm 体重:58kg 年齢:23歳
好きなこと:釣り 人助け
ssレート喰種 「獣」 
赫子:甲赫 鱗赫
甲赫は鎧のように纏い、超高熱の鱗赫で攻防一体の赫子を操る。
喰種に対して非常に好戦的で共喰いも積極的に行った結果、赫者となる。
全身に硬質の甲赫と3000度を超える鱗赫が密着し生半可な攻撃が通らなくなる。
しかし赫者状態では全く制御がきかず素早さや技量が全て失われるため自分から使うことは無い。
赫者となり暴走しているところを有馬貴将に駆逐。


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分かったこととそれから

喰種にもおいしい食事を楽しんでほしかったという気持ちから書きました


「…というわけだ。」

「外の世界…栄誉騎士と同じだな。しかし、喰種か…本当に人しか食べられないのか?」

「いや、そうでもないみたいだぜ。最初は嫌がって食べようとはしなかったが、一口食べた後は泣きながら掻きこんでいたしな。ああそれとハリマから神の目を預かっている。どういうものなのかよく分かっていないみたいだったからな。」

「ガイアから見てハリマはどんな人物だった?」

「悪い奴ではないのは確かだ。まあずっと何が何だかわからないって感じで混乱していたがな。面白い奴だ」

「そうか…明日私が直接会って確かめよう。囁きの森で何があったのかも知りたいからな。」

「代理団長自ら行くのか。あいつも緊張するだろうな。」

「むっ だが実際に自分の目で確かめるのが確実なんだ。」

「まあ それもそうだな。 俺はこれで失礼するよ」

「酒は飲みすぎないようにな。 …よし、残りの仕事を片付けるか」

 

 

 

昨日は夕方に眠ったせいか朝日がまだ出ておらず、薄暗い時間に目が覚めた。

 

「それにしても神の目、テイワット、元素の力、そして喰種でも食べられる食事…」

 

ガイアから教えてもらった情報はどれも聞いたことのないものばかりであったが、状況を理解するうえでは有益なものだった。しかし、最も気になることとしてなぜ喰種の身でありながらあの食事を食べることが出来たのかが甚だ不思議だ。目を赫眼にしてみたり、赫子を出すことは今まで通りできるようだった。

 

「まあ一人で考えても仕方ないか。 ん?もうこんなに明るくなってる」

 

太陽の位置的に2時間ほど考え込んでいたみたいだった。するとドアがノックされ、二人女性が入ってきた。

 

「おはよう。私は騎士団の代理団長ジン。そしてこの少女はノエル、騎士団のメイドだ。君の人となりの確認と食事を持ってきた。」

「ありがとう。 ん?その珈琲すごくいい匂いがするな。」

「それは私が淹れたものだ。コーヒーには自信があってね。飲んでみるといい。ガイアから君の話は聞いている。珈琲は飲めると聞いたのでな、朝の目覚めにもいい。ノエル、彼に食事を」

「はい!今お持ちしますね」

 

ノエルと呼ばれたメイドからサンドイッチを受け取り口に運んだ。昨日のあの出来事があってから口に運ぶのに躊躇がほとんど無くなっていた。

しかし、

 

「うッ! ゲホッ! ゴホッ」

「「大丈夫か」ですか!」

 

まるで頭を殴られたかのような不味さにえずき、口の中のサンドイッチを吐き出そうとしてしまい、大きくせき込んでしまった。

 

「ゴホッゴホッ …あれ?」

「どうしたのか?」

 

耐えきれない嘔吐感に襲われていたものの、二人が心配して近づくとその不快感がきれいさっぱり消えてしまった。

 

「やはり体調が悪かったのか? すぐに助けを呼んでくる。」

「ちょっと待って。ッ‼ ゲホッ!  ジン団長待ってくれ!」

 

ジン団長が助けを呼びに離れた瞬間再び強烈な吐き気に襲われた。

最初、サンドイッチを口に入れた時ジン団長は少し離れていた。そしてえずいて駆け寄った時は口の中の不快感は消えた。しかし再び離れた瞬間、また吐き気に襲われた。

もしかするとジン団長は俺に何かしたのか?

 

「ジン団長… 俺に何かしてないよな?」

「私は何もしていない!」

「だよな すまない疑ってしまって。 ん?何か光ってるけどそれは?」

 

よくわからない状況につい苛立ってしまいあたってしまった。これはいけないと落ち着こうとするとジン団長の腰のあたりで何かが光っているのが見えた。

 

「ああこれは昨日ガイアから預かっておいた君の神の目だ。しかしなぜ? …! 君!これを着けて食べてみてくれないか?」

 

光っていたのは俺の神の目だったようだがジン団長からよくわからない提案を受けた。

不安ではあるものの、その提案に従ってサンドイッチを口に入れた。

 

「うまい! でもなんでだ?」

「君は昨日神の目がポケットに入った状態で食事をしたのだろう?もしかすると神の目が君の体に何らかの影響を与えているのかもしれない」

 

神の目が体のすぐそばにあるとなぜか普通に食べられることが分かった。テイワットでは外付けの魔力器官ということくらいしか解明されていないと聞いたが、自分にとっては普通に生きられるかもしれない希望の光である。

数分後、サンドイッチを食べ終わり、珈琲を味わったのちジン団長との話に入った。

 

「単刀直入に言おう。君はこのモンドに害を与える人物か?そして囁きの森で何をしていた?」

「順番にこたえよう。まず俺は喰種だが今までに人間を殺して喰ったことはない。ほとんど共喰いをして生きてきた。人間を食べることはしないさ」

「! 君はそんなつらい道を…」

「そして、森では… 記憶がややおぼろげだが、極度の飢餓状態にあった俺は暴走していたところヒルチャール?だったか、あのよくわからない生き物のボスを喰ってほかの逃げだした奴らを追いかけたところで記憶が途切れている。 もしかしてあの森を燃やしてしまったか?」

「いや、雨が降っていたし、少々焦げ目がついていただけで燃えてはいない。だがあのクレーターはなんだ?何をした?」

「クレーター? ああ思い出した。確か板が立てられた穴を掘り返そうとして爆発したんだ。」

「爆発? そういえば最初に知らせに来たのもクレーだったな。 まさかまた爆弾を埋めていたのか… あとで反省室だな」

 

あの爆発で赫者からもとに戻れたとはいえ、普通の人間なら木端微塵になる威力の爆弾を埋めて反省室に入れられるのは致し方ないと思う。

 

その後、ジン団長からの質問に答えたり、こちらからいくつか聞きたいことを聞いたりして情報交換を行った。

 

「ふう これで君の素性もある程度わかった。ハリマ、君はいたって善良な旅人として歓迎するよ。」

「看病までしてもらって感謝する。先ほど聞いたその冒険者?とやらになって落ち着いたら騎士団に何か恩返しするよ。そうでもしないと気が済まない。」

「それならもう少し待ってくれないか? 栄誉騎士がそろそろ来るはずだ。」

「俺と同じ外から来た旅人がなぜ?」

「彼女も冒険者協会で様々な問題を解決しているし、君も自分の体と神の目の関係性を知りたいだろう?ちょうど栄誉騎士もドラゴンスパインにいるアルベドという錬金術師に調べてもらう用があるみたいだから同行するといい」

「それは都合がいいな。でもドラゴンスパインってどこだ?」

「窓から見えるだろう。あの雪山のことだ。」

「なるほど。 何から何までありがとう。この珈琲もとても美味しかった。重ね重ね感謝する。またご馳走になってもいいか?」

「構わない。 さて私はそろそろ仕事に戻る。何かあったらノエルに頼むといい。彼女は優秀なメイドだ。」

 

ジン団長はそう言うと仕事をしに部屋から出ていった。

その後しばらくノエルと世話話をしていると、ドアがノックされ金髪の少女と宙に浮かぶ白いのが入ってきた。

 

「お前がハリマか? 変な服だな!」

「ちょっとパイモン、謝ったほうがいいよ…」

 

別に怒ってない。と言おうと口を開こうとした時、

 

グウゥ~~

 

ひぃっ! おいらはおいしくないぞ!」

「パイモン…」

 

思い切り腹を鳴らしてしまった。

第一印象はあまり良くないものになりそうだ。

 




パイモンがいれば三大欲求すべて満たせるのでは?
美味しそうだし、抱き枕にできそうだし…


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雪山での初戦闘

次回あたりに主人公の容姿とか書いておきます



栄誉騎士の少女とパイモンと呼ばれた宙に浮く白いのにお互い自己紹介をした。

 

「ごめんパイモンちゃん、あまりにも腹が減ってつい…」

「ついじゃない!おいらは食べ物じゃないぞ!」

「そうだよ。この子は私の非常食だから」

「おい!」

 

息ぴったりでなかなか仲の良い二人組のようだ。

 

「お腹が空いてるなら城内の案内ついでに鹿狩りに行こう」

「おお!そこの料理は絶品だからな! 早くいくぞ!」

「ああ。準備はもうできてる。 ノエルちゃん、騎士団には世話になった。いつか恩返しさせてくれ」

「はい!何か困りごとがあったらお任せを!」

 

冒険者協会で冒険者として登録した後、鹿狩りにて騎士団から餞別として受け取ったモラで腹を満たした。

その後モンド城の様々なものを見て回った。

 

「んん~ やっぱり鹿狩りの料理は最高だな! ハリマはどうだった?」

「あんな旨いものを腹いっぱいに食べられるのは最高だ。今までこんなことなかったからな」

「二人とも、ここがワーグナーの鍛冶場だよ。ハリマも丸腰じゃ戦えないでしょ」

「このワーグナーが作るものに不良品はない。どれを選んでもはずれはない」

「ではとびきり丈夫な棒が欲しい。大きさは俺の背丈ほどのものがいい

「はあ? あるにはあるが本当にいいのか?」

「ああ頼む。 値段はいくらだ?」

「いや代金はいらん。もともと処分する予定だったからな」

「「本当にそれでいいの?」かよ!」

「ああ。もし戦闘になったら任せてほしい。すごいものを見せてやるさ」

 

ワーグナーに礼を言った後蛍パイモンとともにドラゴンスパインへと向かった。

 

「結局この雪山に何をしに行くんだ?」

「アルベドっていう錬金術師になぜ私が神の目を使わずに元素の力を操れるか調べてもらうの。ハリマは?」

「俺は神の目が俺の体にどんな影響を与えているのか知りたくてな」

「影響ってどんなのだ?」

「先ほども話したが俺は皆が食べているようなものは今まで一切食べることが出来なかった。しかし神の目を手にしてからは普通に味わうことが出来るようになった。これがなぜなのか知りたいんだ」

「だから鹿狩りの料理をパイモンみたいにがっついて食べてたんだ…」

「おい!おいらはこいつほど食い意地はってないぞ!」

「ははは… あれだけ旨いものばかりだと食べ歩きが趣味になりそうだ。 ん?誰かいるぞ? おーーい」

 

雑談しつつ歩いていると、離れたところに何人か焚き木にあたっているのが見えた。他の冒険者か?と思い声をかけると突然武器を構えて近づいてきた。

 

「! あいつらファデュイだ! 気をつけろ!」

「なんでこんなところに! ハリマ私も戦う!」

「いや、ちょうどいい。こいつら悪い奴なんだろ?殺しゃしねえから覚悟しな!

 

そう言って東京で喰種相手に磨いた戦い方を見せることにした。

全身に甲赫を鎧のように纏わせ、ワーグナーから受け取った棒には甲赫と鱗赫をそれぞれ練り合わせた赫子を使い炎の大槍を形作る。

 

「おお! かっこいいぞ!」

「すごい…」

 

全身のRc細胞が沸騰するかのような高揚感。

ほんの数日だったがずいぶん久しく感じる感覚だ

 

「速戦即決」「強火で焼くぞ」

 

 

3人のファデュイがかかってくるがこちらも足に力を籠め全力で炎とともに体当たりする。他の小柄な杖を持った男、銃を持った赤い男は吹き飛び、バランスを崩しただけの一番大柄な紫の男に思い切り大槍の腹で打撃を与える。気絶したのを確認すると先ほど飛ばされた二人が戻ってきた。後は銃弾を避け槍でたたくだけだった。全員片付けると鎧を解除し、蛍、パイモンのところに戻った。

 

「すごかったぞ!お前結構強かったんだな」

「でもさっき戦ってた時口調変わってなかった?」

「あー 鎧を纏っている間は気分が昂ってああなるんだ。 それにしてもその格好じゃ冷えるだろ?ちょっとこっち来て」

「「?」」

 

二人が体をさすっていたのを見て、一ついいことを思いついた。

槍にしていた棒の先端に鱗赫を大きく丸めるようにし、発熱させることで暖をとることにした。

 

「おお~ あったかい!」

「それにしてもあの鎧とか背中から出てる触手みたいなものは何?」

「ああこれはな…」

 

二人の体が温まるまでの時間、喰種の体や赫子について話すことにした。

 

「へえ、喰種って不思議な生き物なんだね」

「不思議で済ませるのか!?」

「ははは 体は温まったか? 先に進むぞ」

 

てっきり距離を置かれるかと思っていたためむしろその反応は好ましかった。なぜか頬が熱くなったような気がしてそれを誤魔化すために二人に先に進むよう促した。

 

その後特に問題なく進みアルベドの研究所?ともいうべき場所にやってきた。件の錬金術師は何か作業をしていたがこちらに気づくと顔を上げた。

 

「おや、栄誉騎士。その隣の人は?」

「俺は播磨。あんたに俺の体と神の目の関係を調べてほしくてね」

「了解した。準備があるからしばらく待っててくれ」

 

「じゃあ準備できるまでお前がいたトーキョーの食べ物の続き話してくれ!おいらとっても気になるぞ!」

「私も気になるかな、いつか作ってもらえる?」

「ああ まずは鹿狩りの料理にも似たようなものもあったが東京では…」

 

ああ、この世界は本当に退屈しなさそうだ。

 




蛍ちゃんは男を無自覚に惚れさせそうで、
空くんは疲れ切ったOLに人気出そうなイメージ。


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爆弾魔と戦闘狂

主人公の容姿は黒目、黒髪ということくらいしか決めてません。
いつかイラストで出したいですね。そもそも画力がミソッカスなので期待はしないでください。


アルベドの調査?(どちらかと言えば実験だったが)が終わり、後日分かったことがあったら知らせるそうなので山を下りることにした。

 

「いやぁ お前の皮膚どうなってるんだ?おいらびっくりしたぞ まさか血液の調査で針が通らないなんてな」

「まあ普通の刃物なら通さないな 仮に傷ついてもすぐに治る」

「二人とも、ほら依頼にあったアビスの魔術師とヒルチャールの討伐だよ。ハリマ、準備して」

「ああ 任せとけ!すぐに終わらせてやるさ!

「あっ ちょっと」

「あいつ強いしこっから見てようぜおいらたちが手伝わなくてもすぐに終わると思うぞ」

「そうだねってああっ!」

「やばいぞ!ハリマが凍ったまま落ちた!」

 

敵は大したものではないと思い、安易に攻撃を受け止めたためかヒルチャールシャーマン・水が降らせた雨に濡れた状態でアビスの魔術師・氷の攻撃を受けた結果、凍結状態に陥り、身動き取れずそのまま崖から落ちたのだった。

 

「…大丈夫?」

「ああ助けてくれてありがとう。本当にひどい目にあった。まさか落ちた先でも氷スライムに凍らされ続けるとは…」

「おいらもびっくりだったぞ…」

「アルベドも言ってたけどこの世界にはこの世界の法則があるって言葉忘れてたの?」

「いや覚えてはいたが、慢心していた。そうそうやられるはずがないと」

 

確かに鎧で矢やこん棒では全く傷がつかなかったが元素の力を秘めた攻撃は受け止めること自体が危険のようだと理解した。

 

「確かにお前は強いけど、それにしても軽率に攻撃を受け止めるのは良くないんだぞ!」

「パイモンの言うとおりだよ。確かにハリマは強いけど、この世界の強者は元素の反応を使いこなして戦ってるんだから下手に攻撃を受け止めるとさっきみたいなことになっちゃうよ」

「反省した。次に活かすよ。さあ次の依頼だ」

「露骨に話題をそらしたぞ!」

「ははは 次の依頼は宝盗団の掃討だね。 ちょうどあそこに見えるのがそれかな?」

「ストレス発散がてらに倒してくる。まあ待ってな。 野郎どもかかってこいやオラァ!

「宝盗団も自業自得とは言え同情するぞ…」

「でもハリマ、元気になったようで良かった」

「終わったみたいだぞ、これで今日の依頼はあと一つだな!早くモンド城に戻ろうぜ!」

「そうだね」

 

その後は冒険者協会の最後の依頼を終わらせ、モンド城へと戻った。

ついでに騎士団へと赴き何か手伝えることはないかと聞きに行ったところ、明日クレーという少女が反省室から出てくるそうで一日面倒を見てくれとのことだった。聞くとその少女は俺が囁きの森で暴れているのを騎士団に報告した、言わば命の恩人でもある。ぜひともと頼んでその依頼を快諾し、蛍の紹介で借りることになった宿へと戻ることにした。

宿へと戻る途中、腹が減ってきていることに気が付きモンドショップで何か買って適当なものでも作ろう(蛍とパイモンに俺の知る料理をご馳走する約束もした手前練習が必要だ)と思い寄ることにした。

 

「いらっしゃいませ~。何かお探しですか?」

「サンドイッチが作りたいんだが、材料を見繕ってくれ」

「かしこまりました~。 どうぞ、またのご来店を~」

「ああ 感謝する」

 

宿に戻りさっそく料理の準備に取り掛かった。サンドイッチのレシピ自体は知っているものの、いかんせん料理というものに全く触れてこなかったためかなかなか苦戦した。

 

「ううむ…うまい が、あのサンドイッチと全く違うな…機会を見つけてノエルに教わりにでも行くか」

 

物思いにふけりつつ食べきった後、眠りについた。

 

起きてひと風呂浴びたのち騎士団へ向かうと、嗅ぎ覚えのある匂いの赤い少女とジン団長がいた。

 

「おはよう その子がクレーで合ってるか?」

「そうだ 昨日の件でしばらくの間騎士団の誰かが見張ることになったんだが、あいにく手が空いているのがいなくてね。君を利用するような形であるがクレーの面倒を見てくれるのはこちらとしても助かる。」

「こちらこそ命の恩人に恩を返すのは当然のことだ」

「お兄ちゃん! はやくお外へ行こう!クレー待ちきれないよ!」

「見ての通り天真爛漫で元気な子だ。振り回されないようにな」

「任せてくれ 期待に応えて見せよう」

 

だっだだーと走るクレーを追いかけモンド城の外へとやってきた。クレーを追いかける傍らふと頭に浮かんだ疑問をぶつけてみる。

 

「なあクレーちゃん。普段は一人で外にいるのか?」

「そうだよ!爆弾の材料を集めたり、お魚をどっかーんしたり、レザーと遊んだりしてるよ!」

「一人の時は危なくないのか? この周辺ではヒルチャールがいるらしいが」

「そんな時は爆弾でドカーンしてるよ? お兄ちゃんこそ何も持ってないけど大丈夫?」

「ああ 俺にはこれがあるからな ほら」

 

クレーの疑問に答えるため背中から赫子を出しクレーに見せた。甲赫に鱗赫を巻き付け煌々と燃えるような赫子を見てクレーは驚いた。

 

「すごいすごい! お兄ちゃんこれ爆弾の材料にしていい?」

「ああいいぞ。少し待ってくれ…」

 

少女にそう請われては断るという選択肢もなく、鱗赫を丸めそれを甲赫でやけどしないように包む。そして丁寧に分離させ、クレーに渡す

 

「はいどうぞ 熱くないか?」

「大丈夫! そういえばこれお兄ちゃんの背中から出てたけどなあに?」

「これはそうだな… 俺の神の目で作ったものだ」

「そうなんだ、 …んん?」

 

同じ喰種を大量に共喰いした結果できるようになったものだとは幼いこの子には言えるわけもなく適当な嘘でごまかすことにした。

するとクレーは俺の赫子を見て何かに気づいたようでおずおずと尋ねてきた。

 

「ねぇお兄ちゃん、この炎の感じ、もしかしてお兄ちゃんこの前囁きの森で何か怖いことしてた?」

「あー まーなんというか… まあそうだ。 

実は神の目が発現したのはつい最近でこの前は神の目がなくて自分では制御できずに困ってたんだ。結局は気絶して君が呼んでくれた騎士団の人に見つけてもらったから助かったよ。

ああそうだった。きちんと礼を言ってなかったね。君のおかげで俺は助かった。ありがとう火花騎士、クレー。」

「ううん… なんだかくすぐったいよ」

「ははは、こういうのはちゃんと言っとかないといけないからね」

 

そうこうしていると、囁きの森のモンド城が見渡せる崖の近くについた。着くや否やクレーは穴を掘り始めた。聞くとどうやら宝物を埋めているらしい。(穴掘りは大変そうだったので赫子を使い手伝った)

 

「ふう お兄ちゃん終わったよ!」

「そうか この後は何するんだ?」

「んんーとね… そうだ!お魚どっかーんしよう!」

「それは…大丈夫なのか?」

「うん! ここのお魚は特に美味しいからやりがいあるよ」

「…」

 

そういわれてみればなかなか良いサイズの魚が泳いでいるのが見える。それに魚料理。とても良い響きだ。そう考え始めると途端に腹が減ってくる。

そうとなればさっそく

 

「よし!今夜は魚料理だ。なあに多少とりすぎても塩漬けにすれば問題ないだろ」

「さすがお兄ちゃん!どっちが多く取れるか勝負しよう!」

「へぇ。望むところだ!本気で行くぞ!

 

それから一時間後、

普通の大きさでは足りないと判断し甲赫を編み込んで作った即席の籠がいっぱいになるまで魚を取り続けた後、もう獲りきれないということで興奮冷めやらぬままモンド城へと戻ることにした。

橋を半分過ぎたあたりでふとモンド城の入り口を見ると橋の先に誰かがたっているのが見えた。とてつもなく嫌な予感がする。

しかし、魚がたくさん獲れてご機嫌なクレーは気づいていないようでその人物の目と鼻の先まで近づいたところで止まった後、震えだした。

 

「ク レ ー ? そ、れ、に、ハリマ? 一体何をしていた?」

「ええと… ごめんなさい」

「すいませんでした」

 

俺は即座に籠を地面に置き土下座した。

 

「湖から爆発音が聞こえると報告があって、もしやとは思っていたが…

この際クレーはいい。しかし、ハリマ!本来止めるべき立場である君が問題を起こしてどうする!」

「すいませんでしたッ!」

「二人とも反省室だ! それとこの魚は没収だ!」

 

無慈悲にも魚は取り上げられ、俺とクレーは反省室へと連れられた。

 




この主人公、妙に格好つけた口調ですが腹ペコで戦闘大好きなただのおバカ


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旅人の本性

鍾離先生引けたので聖遺物厳選してたら投稿遅れました。


「はぁ 暇だ。なぁクレー、ここから抜け出さない?」

「ダメ! ちゃんと反省しなきゃ!」

「だよね」

 

湖の魚を乱獲したため一日反省室に入れられて数時間がたったが退屈で今にも脱走してしまいたい気分だった。クレーも赫子を使った新しい爆弾作りに夢中なようで時折赫子の切れ端を要求してくるため出るに出られない状況が続いていた。何度も反省室に入れられて退屈ではないかとも聞いたが、反省室では爆弾の新しいアイデアを思いつくそうで別にそうでもないらしい。

 

「そうだ! お兄ちゃんも新しいわざのアイデア考えてみるのはどう?」

「! そうだな…」

 

子供らしい柔軟な発想に頭に走るものがあった。東京で喰種狩りをしていた際、赫子を分離させる者や直接赫子で捕食する者、言葉を発する赫子を持った者と戦ったことがあることを思い出した。現在は数秒かかるものの分離が使えるが、彼らのように赫子を使いこなすことが出来れば戦闘の幅が広がるかもしれないと思い、さっそく実践することにした。

それから数時間後…

 

「おや、クレーもいたのか」

「アルベドお兄ちゃん! 遊びに来たの?」

「いや、まだ仕事だ。 ハリマに用があって来た」

「俺に?」

「ああ この前の実験の結果だが…」

 

アルベドからいくつかのことが聞かされた。

まず食事ができるようになった理由はやはり神の目によるものと見て間違いないこと。詳細はまだわからないため、まだ調査が必要であること。

そして赫子を発現させるために必要なRc細胞は食事からは賄えないが、人間およびヒルチャール、アビスの魔術師から摂取する必要があること。喰種の体質的にはヒルチャール等を捕食した方が栄養効率も良く、何日か食事の必要がなくなるがやはり精神衛生上は普通の食事の方が良いとのことだった。

 

「調査の時、ヒルチャールを倒して集めさせたのはこのためだったのか?」

「ああ これで食事の問題も解決できただろう? ボクはまだ仕事が残っているからまた今度。 クレーもいい子でね」

「うん!」

 

アルベドはそう言って反省室を後にした。

赫子を出すためにヒルチャールを喰わなければいけないのは気が滅入るが基本的に普通の食事で済ませられるというのは本当にありがたかった。

その後はひたすら赫子の訓練をしているうちにあっという間に反省室を出る時間になった。

 

「分離はまあまあ物にできたな。実戦で試してみたいが…」

「あっ!ジン団長!どうしたの?」

「今回の件で二人とも監視する人が必要という結論が出た。これからは栄誉騎士とともに行動してもらう。異論はないな?」

「うん! クレーいい子にする!」

「ああ」

「返事だけは良いんだがな… 栄誉騎士は外で待っている、何か用事があるようだから早く行ってくるといい」

「は~い!」

「さすがに反省したし今度は釣りで魚を獲るよ。ではまた」

「そうしてくれ…」

 

騎士団本部を出ると蛍とパイモン、そして見慣れない二人の女性がいた。

 

「遅いぞ!おいら待ちくたびれたぞ」

「すまない ところでその二人は?」

「私の名前はアストローギスト・モナ・メギストス、偉大なる占星術師モナです。」

「七七、キョンシーだ」

「俺は播磨、よろしく」

「クレーはクレーだよ! 早くどかーんしに行こう!」

 

占星術師とキョンシーという不思議な組み合わせであったが蛍の二人を見る目を見た感じでは彼女の趣味のようだった。

ふとパイモンを見ると何やらもじもじして何かを我慢している様子だった。太陽の高さを見るにこれは…

 

「それよりもまず腹ごしらえだ!」

 

やはり空腹だったらしい。しかし反省室での訓練の成果を試したかったためとある提案をすることにした。

 

「ハリマも腹減ってるよな?早く行こうぜ」

「まあ待ってくれ。今日は俺がご馳走しよう。ちょうど移動しながらでも作れるレシピがあるし、反省室にいる間にうまく出来たから問題ない」

「「本当か」ですか!」

 

パイモンだけでなく、なぜかモナも食いついてきた。しかしはっとしたのか目をそらし、

 

「外の世界の料理に興味があったからです! 別にお腹は空いてませんからね!」

「そうなのか? てっきり…」

「違います! さあ早く行きましょう!」

 

そういうと早足で行ってしまった。

…後姿を見て思ったがあの格好は恥ずかしくないのか?

 

その後、いくつか材料を買い出発した。

もとより精密な操作が可能なくらいには赫子を使いこなせるため、歩きながら手早く調理していく。腰の周りに赫子を展開、固定してその上に材料を置き適当な大きさに切っていく。

 

「話は聞いていましたが実際に見るとかなり便利そうですね、その赫子っていうのは」

「そんなに良いものでもない。便利ではあるがそれ以上のデメリットもある。これについては追い追い話す」

 

ヒルチャールを喰わなければ使えないと言ったら卒倒するだろう。さすがに今言うと食欲が失せること間違いなしなので言わないことにした。

熱した鱗赫にフライパンを乗せ魚を程よく焼き、バターを塗ったパンにレタスと一緒に挟む。ソースは手製のものを使ったがそれなりにうまく出来たと思う。

 

「うん 味は問題ないから安心していいぞ。ほれパイモン」

「んん~ 美味いぞ! 癖になる味だな」

「確かに独特の臭みは気になりますが美味しいです。」

「そうか 要改善だな」

「味はわからない。けど、おいしい」

「このお魚おいしいね!」

「そうだねクレーちゃん、七七ちゃん。」フーフー

…何か蛍のクレーと七七を見る目に少し不安を覚えたが、見て見ぬ振りし先に進んだ。

しばらくすると北風の狼の神殿に着いた。

 

「用事ってここか?」

「いや、そこの穴を覗いてみて」

 

どうやら神殿に用はないらしい。そして言われた通り神殿から少し離れたところにある地面の割れ目を覗いてみる。かなり大きな空間があり、真ん中には大きな植物があった。

 

「あれはなんだ?」

「急凍樹っていう魔物。あれを倒してほしい。」

「なんでまた?」

「七七ちゃんの強化素材が全然集まらないから手伝ってもらおうと思って。ハリマなんでも言うこと聞いてくれそうだし。」

「七七、もっと強くなる」

「七七ちゃんもそういってるよ。さあ!」

 

こいつロリコンか?欲望が駄々洩れで今にも西風騎士団に捕まりそうな目をしている。

 

「モナ助けてくれ こいつ想像以上にヤバい!」

「私だって何度も駆り出されているんです。勘弁してください」

「はあ…分かった。すぐに終わらせる」

「さすがハリマ!大好き!」

「心にも無ぇ事言うなよ」

 

一瞬ドキリとしたがすぐに切り替え、穴から飛び降りる。

空中で赫子を纏い全力の一撃を叩き込む

 

「久々の強敵だ。本気でいこう

 

冒険者のガイドブック曰く、コアが弱点と書いてあったのを思い出し、それをたたき割ると巨体が傾き、花弁のようなものが下りてきた。

後は持ってきた鉄の棒の先端に高密度の鱗赫を纏わせ、思い切り叩きつける。すると花弁の部分がほとんどなくなり、急凍樹はゆっくりと倒れ消えていった。

分離した赫子を爆発させる新しい試みであったが実際に試した結果、むしろ自分が爆風を食らうという初歩的な問題があることが分かった。技の改善点等を考えていると上から声がかかる。

 

「呆気なかったな」

「終わったー?」

「ああ 終わったが素材はどうするんだ?」

「見ていれば分かりますよ」

 

風の翼を使い降りてきた蛍たちは何やら地面から新たに出てきた植物のようなものから素材を取り出していた。理屈はわからないが急凍樹を討伐するとこのように地面から生えてくるらしい。

 

「はい七七ちゃん、これでもっと強くなってね!」

「七七、強くなる。」

「んん~可愛い~」

 

顔が蕩けて凄いことになっている。横ではモナもドン引きしている。なんだか気が合いそうだ。

 

「そうだお姉ちゃん、クレーも強くなれる?」

「ちょっと待ってね…」チラッ

 

クレーに渡せる素材がどうやら無い様で蛍は上目遣いでこちらを見てきた。視線に気づいたクレーも同じくこちらを見てくる。

 

「分かったからそんな目で見るな!」

「やったねクレーちゃん!」

「うん! お兄ちゃん頑張って!」

 

結局押し切られ、爆炎樹を討伐する羽目になった。

 




どこもかしこも、(ロリコン)ばかりだ…貴様も、どうせそうなるのだろう?


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遺跡(ヤーナム産)の調査

エウルアちゃん引けました
やったね


蛍に素材集めのためにこき使われた数日後、俺は単独でとある遺跡の調査をしていた。

なんでも最近発見されたものの、中は未知の敵対的な生物が居る他危険なトラップが多数仕掛けられているとの事だった。深度もなかなかのようで数日間食べずに活動できる俺に騎士団から直々に依頼が来たのだ。

最初は意気揚々と遺跡の中を探索していたが気づいた時には迷ってしまい、しらみつぶしに襲い掛かる敵を倒して回っていた。中にいた不気味な姿の原住民に対し、始めは声をかけていたが全て話を聞かずに襲い掛かってきたため意思疎通を図るのは諦めた。

 

「本当におかしな遺跡だな…かなり古いがあいつらはどうやって生きてきたんだ?」

 

通路には何らかの彫刻が飾られている。文明があったことは確かのようだが襲い掛かる原住民のような何かからは知能のようなものは感じられない。

 

「白いガリガリに白いデブ、赤いクモを出す鐘女にでかいネズミ…本当に不気味だ。それに…! うおッ!」

 

考えながら歩いているとトラップを踏んでしまい、物陰に隠されていた彫刻から火矢が飛んでくる。本当に油断も隙も無い。他にもギロチンや落とし穴など敵意満載のトラップに気を付けて進んでいく。

安全だと思える小部屋を見つけ、一旦休憩し状況を整理することにした。道中で手に入れた血の入ったパック、銀色の弾丸、血が固まったような見た目の石の様なものなど不可解なものばかりだった。

 

「この血の入ったパックは輸血用か?腐敗もしていないし、直接刺して使うみたいだ。弾丸についてはそもそも銃が無い。そしてこの石はなんだ?後でアルベドに調べてもらおう」

 

分からないことは賢い奴に丸投げして、先に進むことにした。

丸一日戦い続けたため、鉄棒に纏わせるだけにしておいた赫子もガス欠気味であり、鉄棒自体もガタが来始めている。できる限り早く脱出しなければ。そう考えているとふと遠くに人影が見えた。

先ほどまで相手していたデブやガリは布切れくらいしか纏っていなかったが遠くの人物は何らかの意匠が凝らされた服を着ており、腰にランタンを着けている。依頼を受け調査しているのは俺一人だと聞かされていたが、迷い込んだのだろうか?出口を知っているかもしれない、淡い思いを抱きつつ声をかけることにした。

 

「おーい 迷ってしまったんだが出口を知らないかー?」

「…」

「大丈夫かー?」

 

返事がないため近づこうとした時、急に振り返ったかと思うと男は右手に持った剣で切りかかって来た。慌てて鉄棒で防御したが大きく歪み、使い物にならなくなってしまった。

 

「ああクソ! 此処に居る奴は皆話が通じねえのか! 大人しくしろ!」

 

赫子を発現させ男を気絶させるために攻撃しようとした時、いつの間にか左手に持っていた銃で撃たれ、動きが止まってしまう。その隙に近づいた男は右手を俺の腹に突き刺し、中身を抉り出した。

 

がああああ! 糞が!テメェはぶち殺す!」

 

すさまじい痛みに襲われるが即座に傷口を赫子で覆い、あまりにも怪しい為使いたくなかったが、この状況では仕方がないと先ほど拾った輸血液を注射する。すると圧倒的な速度で傷口が塞がってしてしまった。さらに摂取した血からRc細胞が体をめぐり鎧を纏えるくらいには回復した。そして怒りのままに男に向かって突撃した。

 

「この血が何なのかは後で考えよう。テメェのはらわたぶちまけた後でな!」

 

こちらの攻撃が当たる直前に男は先ほどと違う散弾銃を撃ち全身に衝撃が走り、またも動きが一瞬止められてしまう。再度俺の腹に腕を突き刺そうとしたが鎧に弾かれた。腹部に走る衝撃とともに火花が飛び散る。恐ろしい威力だったが何とか耐えた。

一方男の方は体勢を崩し、その隙に全力の一撃を叩き込もうとしたがすんでの所で回避されてしまった。だが致命傷ではないものの、かなりの痛手を負わせることが出来た。

 

「…」

 

しかし男は懐から出した輸血液を太ももに刺したかと思うと、あっという間に治してしまった。

 

「はあ!? そんなのありか!」

 

どうやら男にとって輸血液は失った血を補充するためではなく、回復薬としての役割を持っているらしい。

 

「これは…かなりの長期戦になりそうだ…」

「…」

 

相手が輸血液をどれほど所持しているかわからない以上一撃で仕留めなければ決着はつきそうにない。ただ相手の回避能力は半端ではなく、それから数分間確実に当てられるタイミングを狙っているうちに男はこちらの動きに順応し始め、今では確実にこちらが劣勢だった。

 

「オラァ!」

「ッ」

 

攻撃を回避した男に追撃しようとした時再度銃で撃たれ、こちらの動きを止められてしまった。しかし前回と違い、腹に拳を突き刺すのではなく、こちらの首を刎ねようと武器を振り被ろうとしていた。

先ほどまでの隙が無い攻撃とは違う大振りな攻撃。

 

「ここだ!」

 

此方も大きいダメージをくらうためにあまり使いたくなかったが急凍樹を倒した時の赫子の爆発を使うことにした。これなら相手に回復させることなく仕留められる。

そしてすさまじい衝撃と肌を焼く熱風、爆音が遺跡の中で轟いた。

 

 

 

決着はついた。

胸に大穴が空き、盛大に血を噴出して男は倒れた。

此方も少なくないダメージをくらったが、輸血液を注射して回復した。

 

「はあ、はあ、 …服も武器も駄目になっちまった。 いや、こいつから武器は貰えばいいか」

 

倒れた男から剣を取ろうと近づいた時、男が白くなり溶けだしあっという間に消えてしまった。

 

「はあ!? 本当に何なんだ…いやまずはいったん落ち着こう…いろんなことがありすぎた…」

 

壁にもたれ掛かり、ため息をつこうとした時、口の中が甘いことに気が付いた。男の噴出した血が口に入ったのだろうか、いや全身血塗れになっているようだった。

 

「本当についてないな…」

 

悪態をつきながら口周りについた血を舐め取ると急激に意識が遠のいた。

 

 

 

土の匂いで目を覚ました。どうやら長時間地面で寝ていたらしく、体の節々が痛むが先ほどまでいた場所とは明らかに違う場所で目覚めたのだ。異常な事態だと思い、周囲を確認するとどうやらここは庭園のようだった。あちこちに白い花が咲き、古びているが丈夫そうな家、その後ろには大樹があった。

 

「ここは…?」

 

始めて訪れた場所のはずだがどこか懐かしく安心する場所のように感じる。

それに先ほどの爆発で駄目になったはずの服はもとに戻っており、全身に浴びたはずの血もきれいさっぱり消えていた。戦闘で歪んで使い物にならなくなった鉄棒は無くなっていた。

ふと気が付くと家から降りた階段の下、その段差には人間と見紛う今にも動き出しそうな人形とその膝には青黒い色をしたイカともナメクジともとれる軟体生物が居た。

 

「なんだこの…イカ?」

 

近づくとその軟体生物は触手をこちらに伸ばしており、まるで握手を求めるようなそんな気さくさを感じ、恐る恐るであるが指先で触れた。

すると大量の情報を頭に叩き込まれたかのような衝撃が走り意識を手放した。

 

 

 

気が付くと草原に寝ころんでいた。どうやらいつの間にか遺跡の入り口に移動していたらしい。夢だったのではないかと思いポーチを確認したが、輸血液や弾丸、奇妙な石が入っており、現実であったと再認識する。

 

「何がどうなってるかわからないが無事に戻れたならよしとするか」

 

考えても仕方ないと気持ちを切り替え、ジンに報告をしにモンド城へと帰ることにした。

 

 

「それで例の遺跡はどうだった?」

「殺意満点のトラップに冒涜的な魔物ばかり。それに話の通じない殺人鬼が中をうろついている。宝箱はあったが中身は誰かの頭骨や瓶に詰められた背骨等のまともじゃないものばかりだ。立ち入り禁止にするべきだと思う」

「そうか。報告ありがとう。今日はゆっくり休むといい」

「そうするよ」

 

宿に戻り荷物を整理しているとポーチから奇妙なランタンの様なものが出てきた。

 

「なんだこれは?こんなもの拾った覚えはないが… それに中のろうそくに火を点けるみたいだが、そもそも開けられるような機構がないな」

 

そう考えていると頭にこのランタンの使い方が浮かんできた。どうやら指を鳴らし、手をかざすらしい。

その通りにやってみると視界が暗くなり、目を開けるとあの庭園に立っていた。前回と違うのはあの精巧な人形が動いていることだ。驚愕していると人形が話しかけてきた。

 

「初めまして、播磨様。」

 




ボイスとか考えたので一応書いときます
思いつき次第、追加していきます。

初めまして…
俺は播磨。外の世界から流されてきた喰種だ。ああグールと言っても人は喰わないから安心してくれ。これからよろしくな。

世間話・食べ物
何かいい匂いがするな…少し見に行ってもいいか?

世間話・依頼
喰種の身体能力は良いものだぞ。なんせあっという間に依頼を遂行できるからな

雨の日
ここまでずぶ濡れだと、かえって清々しいな

晴れの日
暑い…少し休まないか? じめじめとした暑さは苦手なんだ

こんにちは…
おはよう ん?もう昼? すまない寝過した。酒の飲みすぎはいかんな…

こんばんは…
これから酒場で一杯付き合わないか?今まで旅してきた話が聞きたいんだ

シェアしたいこと
何かおすすめの料理はあるか?ここに来て色々な物を食べられるようになってからは何もかもが旨そうで堪らない。例えばパイモンとか… ハハハ、冗談だ。

料理について…
何か食べたいものはあるか?材料はそれなりにあるからリクエストしてくれれば作れるぞ。その代わりといっては何だが感想やアドバイスをくれないか?もっとうまいものを作りたいんだ。



クレー
播磨について…
ハリマお兄ちゃんはクレーと一緒にお魚をどっかーんしてくれるんだ!それにハリマお兄ちゃんと一緒だとジン団長にバレないんだよ! これはジン団長にはいわないでね! 


播磨について…
頼れる存在かな。ドラゴンスパインでは放熱瓶要らずだし、移動しながら料理ができる、素材集めも楽になったし、崖も赫子を使ってあっという間に登れるし…
…本当にいてくれてよかった。

モナ
播磨について…
彼の運命ですが、復讐を果たし、それまでに謳歌できなかった人生を満喫しているみたいですね。今は平和なひと時を過ごしているように見えますが彼の人生はいつも返り血に濡れている。
こんなこと言いましたが、私は彼に感謝してるんですよ?彼が来てからは料理も食べられますし、何より素材集めが圧倒的に楽になりましたからね…



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狩人の夢にて

久しぶりの投稿です。
エルデンリングリリースされましたね。

就活中に誘惑が多いと大変だぁ


「初めまして、播磨様。」

 

ポーチにいつの間にか入っていたランタンを触っていると遺跡で意識を失ったときに目覚めた庭園に飛ばされた。

 

「あんたは…」

「私は人形。狩人様をお世話する者です。」

「播磨様、狩人様が工房でお待ちです。どうぞ、中へ。」

 

人形がそう言って家の中を指した。中に入ると前に触れた軟体生物が古びた車いすの上に乗っていた。前回と同じように触手をこちらに伸ばしており、それに触れると頭に響くような声が響いてきた。

 

「私は狩人。夢へようこそ。ここの道具は君の好きに使っていい」

「この頭に響いてくる感じ…奇妙な感覚だな。でも本当にいいのか?結構値が張りそうなものばかりだが…」

 

この触手は狩人と名乗っているらしい。このイカのような生物は狩りをするのかという疑問が浮かんできたが元素の力を使う者たちがいること、何なら自分もその力を使っていることを思い出し、そういうものかと納得した。

そして狩人曰く、この工房の中にあるものは自由に使ってもいいらしい。

 

「ワーグナーからもらった鉄棒はお釈迦になったし、代わりになりそうなものは無いかな…」

 

どうやら箱の中に狩り道具が入っているそうで、中を漁ってみると中から魅力的な物がたくさん出てきた。中でも大型のピザカッターのような武器に心惹かれるものがあった。

 

「それは回転ノコギリ。工房の異端、火薬庫の手による仕掛け武器だ」

「回転ノコギリ?火薬庫?説明してくれ。」

 

どうやらこの武器は火薬庫と呼ばれる者によって作られた異形の「仕掛け武器」らしい。なんでも仕掛け武器とは獣と呼ばれる人に仇をなす存在を狩る者たちに使われていたそうだった。

 

「まるで喰種と捜査官みたいだな。 ん?」

「言い忘れていた。始めに言っておくべきだった。 ここの道具は好きに使っていいが、対価を払ってもらう。私に血の意志をささげてくれ」

 

感慨に耽っていると、狩人から道具を使う際の対価について話を聞かされた。血の意志なるものを人形を介して狩人に捧げなければならないらしい。

 

「血の意志?」

「人形に聞けば分かる。ただ君は獣を狩ればよい。一度試してみるといい」

 

「ってことで血の意志?というのをささげたいんだが」

「分かりました。手をお出しください」

 

狩人に言われ、人形に血の意志をささげる旨を言うと、人形は俺の手を取り祈り始めた。すると体から何かが抜け出すような感覚がしたが、特に体に異常はない。

 

「血の意志とはあまねく生物に宿るもの。貴方はそれらを集め、私に申し付けください。それがあなたの使命の力となりましょう」

 

「なんとなく理解した。 …ああそうだった、聞きたいことがあるんだが、ここに来る方法はあのランタンに触れればいいんだな?」

 

「はい。あれは灯り、 此処は狩人様にとっての家であり灯りはここにたどり着くための道標なのです。」

「他にも何か質問がお有りでしたら私にお申し付けください。狩人様はいつもいるとは限りませんので」

 

「そうか、とりあえず聞きたいことがいくつかあるんだが…」

 

人形からかなりの情報を得た。ここは狩人の夢という場所らしく、今はあの狩人と名乗る軟体生物が管理しているのだそうだ。今持っている武器もその狩人が集めたものらしい。そしてここに訪れることの出来る者は夢とつながっており、武器を自分の身にしまう、自分の血から弾丸を生成できる他、傷ついたとしても血で回復することが出来るといった技能が使えるようになるという。

 

「ってことはあのイカみたいなのは元は狩人だったのか… それにあの遺跡も」

「はい。貴方の言う遺跡にて狩人の血を摂取したことによって、この夢に来る資格を得たのでしょう」

 

どうやら遺跡で拾った輸血液や弾丸は狩人由来の品だったそうだ。

 

「遺跡については狩人様にお聞きください」

「分かった。そうするよ」

 

「なあ狩人。遺跡について聞きたいんだが…」

 

人形にそう言われ、再び狩人のもとへ戻り話を聞こうとすると、

 

「君は血晶石を知っているか?遺跡に潜ったのなら見たことはあるはずだ」

「血のような赤い尖った石のことか?それはいくつか見つけたが…」

「それのことだ。君の持っている武器にそれをねじ込むことでその武器の威力を上げることが出来る。いくつか形状に種類があるが、武器によってはめ込むことの出来る形が決まっているから気を付けたまえ。ああ、もしより威力の高いものを望むのなら呪われた血晶石を集めるとよい。まずそれには聖杯を祭壇に捧げて…」

 

「…特に特に血の攻撃力を高める血晶は…」

「もういい。もう十分だ…」

「そうか?まだ話足りなかったが…」

 

狩人の長すぎる話を聞いて血晶のことは理解した。見つけることがあったらこの武器にはめてみよう。

 

「なにぶん話し相手が人形しかいないからな。餞別だ。これを使って武器を強化したまえ」

「そうか?ではありがたく」

 

狩人からもらったいくつかの素材を使い、工房道具で武器を強化した。

 

「そうだった。服が駄目になったら工房の狩り装束を使いたまえ。しかし、回転ノコギリと大砲か… 火力主義だな。」

「…ふむ、収納できる武器に空きがあるだろう?それは物騒に過ぎる。代理団長殿の叱責は嫌だろう? 普段使いではこのルドウイークの聖剣を使いたまえ。」

 

「まあありがたく貰っておくよ。 そういえばジン団長のことを話したか?」

 

「啓蒙が高まると狩人は見えないものも見通せるようになるものだ。」

「君もその武器を持った時、使い方が頭に浮かんだだろう? いずれ理解できるさ。 さあもう行きたまえ。」

 

「そのけいもう?についてはまたいつか聞くとして、それでここから出るにはどうすればいいんだ?」

 

「祭壇に向かって祈ればいい。人形のそばにある故、見ればわかるはずだ。 また来たまえよ。」

 

祭壇で祈ると確かに宿へ戻っていた。仕掛け武器もこの手に残っており、狩人の夢であったことは確かに現実だったようだ。

 

「てっきり夢かと思っていたが、狩り装束まである。 輸血パックなんかも収納できるみたいだが、蛍も似たような事してたしまあそんなものか。」

「せっかくだし試し切りにでも行くかな… そういえば蛍はりーゆえ?ってところに行くらしいし、任務でも受けて金貯めるかぁ」

 

その後、播磨は狩人の忠告を忘れ回転ノコギリを背負ったまま城内を歩いていたため、任務から帰ってきたところを報告を受け門で待ち構えていたジンに捕縛され説教を食らった。

 




~代理団長の一日~

今日のジン代理団長はご機嫌であった。

先日の播磨が行った調査によって例の遺跡にアビス教団がかかわっていないことが分かった。
もしアビスが介入していた場合は戦闘は必然であり、内部の魔物の大規模な掃討作戦のための人員や物資の手配が必要だったが、それもする必要性が無くなり、定期的に調査を行う程度に収まった。



結果的に空いた時間を使いジンは後回しになっていた雑務を終わらせ、午後にはキャッツテールのピザを食べることが出来た。

「こうやってゆっくり城内を歩くのも久しいな。普段であれば業務に追われてこんなことはできない。本当に良い一日だ」
(珈琲は神の目がなくとも味わうことが出来ると言っていたし、今度ハリマにふるまおうか)


食後の散歩を兼ねた見回りをしているとキャサリンから播磨について話があると呼び止められた。
背負っていた武器があまりにも物々しく治安や安全上の問題があるため注意してほしいというものであった。
貨物を運搬する際の護衛の任務をしているようでもうじき戻ってくるらしく、ジンは門の前の騎士と談笑しつつ播磨を待つことにした。


数分後、貨物とともに青い顔をした依頼主と回転ノコギリを肩に担いだ播磨が城門の前に到着した。
肩に抱える所々に血が付着した殺意剥き出しの武器を見て、急に胃が痛み始めた。

「貨物の護衛ご苦労様。ところでハリマ、肩に担いでいるそれは何だ?」
「これ?……あっ えぇと」

きっと何か理由があるのだろう。

そうであって欲しい。穏やかで素晴らしい日にしたいのだ。

そんな希望を抱きながら、胃の痛みを抑えつつ笑顔で質問した。


「えへっ」





酒場で会った吟遊詩人から教わった方法で切り抜けようとした播磨であったが、それは蒲公英騎士の胃にとどめを刺した。
その日の夜ジンのスケジュールの備考欄には「胃痛薬。ハリマ。」とだけ書かれていた。


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