オリキャラ×デ×ハンター×ハンター (apple12)
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1 

「さて…」

 

 そう言うと、その男は着崩したスーツの胸ポケットからハンター語で「ハンター試験会場案内」と書いてある一枚の紙を取り出した。そこには試験会場が行われる大まかなエリアの情報と何かの時刻表のようなものが載っていた。

 

「…3時45分…ドーレ港行き…まぁ、恐らく、あの船で間違いないだろうな。」

 

 男はこう呟くと港に泊っている巨大な船の方をチラリと見、紙を大事にそうに胸ポケットにしまい込んだ。

 

「ドーレ行き、一枚ね。」

 

 船のチケット売り場で小太りの男に話かける。

 

「…あんたも空を見たら分かるだろう?酷い曇天だ。それに小雨だって降り始めてる。…本当に良いんだな…?」

 

「これくらい分かり易い方が逆に助かる。覚悟って意味では。」

 

「…あんた名前は…?」

 

「ウィルター。ウィルター=カルタシス」

 

「…そうか、頑張れよウィル。ほれ、25Jだ。」

 

「サンキュー」

 

 ウィルはチケットを貰い受け、そのままの足で船に乗り込んだ。ゴツイ大男に案内された部屋に入った瞬間、殺意のこもったような視線が一斉にウィルの方を向く。

 

「…ちったぁ仲良くやろうぜ…ったっく…」

 

 ボソッと呟き、ノソノソと空いているペースに体を寄せ、抱えていたカバンから一枚の写真を取り出した。そこにはウィルともう一人、ウィルの肩を抱いている大柄の男が写っていた。

 

「…ここまで来たんだ…お前の為になるかは知らねぇが…仇はきっちり取ってやるぜ…」

 

 暫く写真を見つめた後、大事そうに写真をカバンに戻し、そのままタバコを取り出し、一本口に吸おうと咥えた瞬間、先程の殺意のこもった視線とはまた違う視線がウィルを貫いた。

 

「…ハイハイ…皆さん、見た目スゲーアレなのに、こうゆうのは気にしてんのね…」

 

 頭を掻き、苦笑いしながらタバコを箱に戻す。すると、隣で座っていた男が急にウィルに話掛けてきた。

 

「お前さっき、仇って言ったか。」

 

「あぁ、だから?」

 

 ウィルがそっけなく返す。

 

「そうなれば懸賞金ハンターってところか。まぁ、お前みたいなのは受かんなさそうだがな。アーハッハッハッハッハ。」

 

「あっそ。ほっとけ」

 

「良いか、ハンター試験ってのは毎年何万人も受けてんだぜ。しかも合格率は0.1パーセント未満!合格者もいない年なんてザラだそうだ。なんというか、お前にはそれに受かるような覇気ってもんが感じられねぇんだよなぁ。」

 

 死んだ魚のような目をして天井を見つめながら男の戯言を聞き流していると、扉が勢い良く開き案内人の大男が「出航だ!」と部屋全体に響き渡る声で言い放った。

 



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2

「船長!雨風酷くなってきやがった!このままじゃ波に飲まれちまう!」 

 

 出航からおおよそ一時間。操舵室にどたどたと騒ぎ立てながら船員が押しかけてきた。

 

「うるせぇ!雑魚虫が!せっかく面白くなってきたところじゃねぇか!」

 

 舵を握っている船長と呼ばれた小太りの男が船員の方を向き怒鳴り散らす。

 

「せ、船長!前!前!前!!!」

 

 天まで聳え立つ巨大な風の柱が近づいてくるのを操舵室のガラス越しに目の当たりにした船員がたじろいだ様子で騒ぎ立てる。

 

「来やがったな!さぁ荒れるぜお前らぁぁあ!ガハハハハ!」

 

 こう言うと船長は片手に持っていたウィスキー瓶をどこかに放り投げ、豪快に舵を切り始めた。

 

「おい!お前!そこでビクビクしてねぇでとっとと野郎共の様子でも見てこい!」

 

「イ、イエッサー!」

 

「さぁ、最初の試練の始まりだぜ、おめぇら」

 

 船員が慌てて出て行ったのを尻目に船長がにやりと笑った。

 

 同じ頃、客室内ではあまりの揺れに船酔いを起こした受験者達によって凄惨とした状況に陥っていた。ある者はその場に項垂れ、ある者は揺れの衝撃で頭を打ち青ざめたまま気絶し、またある者は「帰してくれ」と叫び続けていた。

 先程までウィルにハンター試験について力説していた男もすでに黙りこくってしまっていた。

 

「お、おい、大丈夫かよ。」

 

 ウィルが心配そうに隣の男に話しかける。

 

「う、うるせぇ…だ、大丈夫だっつってんだろ…」

 

「はぁ…ったくしょうがねぇな…今、水持ってきてやっから」

 

「うるせぇ!こ、ここまできたんだ!い、今更、こ、こんなところで諦めてたまっかよ…!!大丈夫っつってんだから、大丈夫なんだよ。」

 

「じゃあ、なおさら誰かの助けが必要だろ。すぐに水持ってきてやるよ。」

 

 男が震えるような声で言ったのを聞いて、ウィルは内心こいつはたいした奴だと思いながら応えた。

 更にここから10分程の時間が過ぎ、隣に座っていた男がとうとう黙りこくってしまったかと思えば急に立ちだし、「トイレに行ってくる」とだけ言い残してその場を去った。

 

「おう、スッキリしてこい」

 

 男が部屋から出て行った後、入れ替わるようにして船員らしき男が入ってきた。船員が部屋を見渡し、一人はウィルより二回り程小さい小太りのワシャワシャとした胸毛が見える膝丈の短い着物を着た、いかにも気性が荒そうな髭面の親父。もう一人は、ウィルよりもきちんとスーツを着こなしているウィルと同じくらい高身で細身のメガネを掛けた知的な男。そして最後にウィルの三人を指さしで指名し、

 

「船長がお呼びだ。ついてこい。」

 

 と言い放った。三人は立ち上がり黙って船員の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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3

「お、来たか」 

 

 三人が案内された部屋に着くと、そこにはどっしりと構えている船長の姿があった。

 

「よし、まぁ適当にそこに三人並べや」

 

 言われた通り、左から先ほど指を指された順番に三人が並んだ。

 

「じゃあ、いまから面接を行う。左から順に適当に自己紹介してくれや。」

 

「…ひとつ良いか?」

 

「なんだ」

 

「これは、既に試験が始まっていると捉えて良いのか。」

 

眼鏡をかけた男が船長に問いかける。

 

「…あぁ、始まっているというのには少し語弊があるが、そう捉えて貰って構わない。まぁ、正確にはハンター試験会場に辿りつけるかどうか、という試験だがな。分かったらとっとと自己紹介してけ。その方が身の為だぞ。」

 

「俺の名前はユミヒデ。ユミヒデ=ツダ。だ。歳は32だ。」

 

 左の胸毛男が自己紹介を始めた。

 

「私はパーシア。パーシア=ホワイトナイトだ。歳は21だ。」

 

眼鏡男が続いた。

 

「俺はウィルター。ウィルター=カルタシスだ。歳は29。」

 

「おぉ、随分歳食った受験生共だなこりゃあ。」

 

「歳を取っているということを愚弄してはいけない。その分、知識も経験もより多く得られているということだから。」

 

 パーシアがボソっと呟いた。

 

「なんだそりゃ、ママからでも教わったか。経験のすくねぇガキみてぇな大人の方がこの世は多いんだよ。まぁ、俺様を愚弄しちゃいけねぇってのはホントのことだがな。さて、じゃあ次の質問いくぞ。お前らは何でハンターの資格を取ろうと思った。ユミヒデ、お前から答えろ。」

 

 船長がユミヒデの方を向いた。

 

「俺は、ある刀を探す為にハンターになりたいんだ。」

 

「刀?」

 

「あぁ、俺はとあるちっこい島国の産まれなんだが、そこに、昔、サムライと呼ばれる男達がいてな。その男達が島国の覇権争いの為に日々戦いに身を置いていた時代があった。その戦いに武器として使用されたのが刀っていう、まぁ実物見せた方が早いよな。」

 

 こう言うとユミヒデは腰にぶら下げていた鞘を取り出し、中から刀を抜いて見せた。

 

「まぁこういう刃物のことを刀っていうのさ。」

 

 そう言うと、また刀を鞘に納め腰にぶら下げ直した。

 

「で、俺が求めているのはある刀師が造った伝説の一本。その名をマサムネという。言い伝えによれば、その刀を一回振るだけで天が裂け、地が砕けると言われている。その強さゆえにその刀はどこかに封印されたらしい。それを探しだしたいんだ。」

 

「…で、お前さんはその刀で何をするつもりだ」

 

「まぁ、何をするってワケでもないよ。ただ、一回拝んでみたいのさ。侍の末裔なら誰もがそう思うと思うがね。」

 

「まぁ、長くなりそうだから、それくらいで良いだろう。次。」

 

「私は…とある薬草を探している。どうしても…助けたい人がいて…どうやらそれを治療するには…それしかなくて…それはとある場所でしか採れない…ハンターでないと行けない場所にしか…」

 

 ウィルはパーシアの瞳から一滴の雫が垂れ落ちるのを見て、この男の良さを感じ取っていた。

 

「そうか、そいつぁ…助かると良いな。次」

 

 この一言を聞いてウィルは船長のことも存外良い奴だと認めた。

 

「俺か、俺は、まぁなんというか、まぁ、復讐みたいなもんさ。」

 

 ウィルが顎に生えた無精髭をいじりながら答え始めた。

 

「こりゃあまた、驚いたな。お前みたいな飄々としてそうな奴から復讐なんて言葉が出るとは。」

 

「いや、別に良いだろ。まぁ復讐のためにとある集団を追ってる。」

 

「幻影旅団かなんかか?」

 

「ゲンエイリョダン?なんだそりゃ。俺が追ってんのは血の六血衆っていう奴等だよ。」

 

 このとき、パーシアの瞳が激しい憎悪のようなもので濁ったのをウィルは見逃さな     かった。

 

「初耳だな。」

 

「あー、えーと、鮮血の~だったかな。」

 

「いや、どっちにしろ知らんし。」

 

「あ、っそうか。ならいいや。そいつに俺の親友が殺された。そいつの結婚式中に。そう、俺が惚れてた女との結婚式にな…。そして、その女は誰とも口を聞かなくなり、その後、自宅で自殺しちまった…。良い女だったのにな…。確かに、俺は復讐するなんてタイプには見えないだろうが…何となく悔しかったんだ…親友を奪って、その女まで奪って…だから、俺は…なんというか…そいつ等の顔面を一発殴りてぇって…そう思ったんだよ…」

 

 ウィルはそのまま思いに耽るように黙ってしまった。

 

「あ、わりぃ。別に雰囲気暗くするつもりはなかったんだがな。この話になるとどうしてもなって、おい、まさか、船長泣いてる?」

 

「ば、ばっきゃろう、お前、俺がそんなんで泣くワケねぇだろ!」

 

 船長が腕の裾で顔を覆いながら下を向く。

 

「歳取ると涙腺もおかしくなるもんな」

 

「馬鹿、おめぇ、泣いてねぇよ!…だが安心しろ、お前らは俺が責任もって港まで連れてってやるよ!!馬鹿野郎!このやろう!だから、とっととここから出てきやがれ!」

 

 船長は三人を背にして声を大にして言い放った。最後、ウィルが部屋から出ていこうとしたとき、船長が呼び止め、次のようなことを言い残した。

 

「良いか、港に着いたら、大きな一本杉を目指せ。お前が、もしあの二人を気に入ってるならあいつらにも教えてやれ。ただし、他の奴には教えるな。あの二人だけだ。まぁ、他の奴に言っても、全員不合格とハンター協会側には言ってあるから意味は無いがな。またいつか受ける奴にはちっと意味があるかもしれないが。」

 

 「サンキュー」と一言だけ言い残し、ウィルは部屋を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




船員「船長!嵐イベントで人が吹き飛ばされる恒例のあれやんなくていいんすか!」

船長「…行かせてやれ…あいつ等なら大丈夫さ…目をみりゃ分かる」


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4

「さて、まずはザバン市行のバスを探しましょうか。」

 

 出航からおよそ4時間。受験者達を乗せた船がドーレ港に着き、船長に合格を言い渡された三人は行動を共にしていた。

 

「いや、パーシア、ちょっと待て。俺らはこの先にある一本杉を目指すぞ」

 

 バス停に向かおうとしたパーシアをウィルが呼び止めた。

 

「いやぁ、お前さん、ウィルとか言ったか?ここの地図見てみろよ。」

 

 ユミヒデがドーレ港前広場にある地図看板を眺めながら話し始める。

 

「いいか、現在地はここでザバン市はこの位置からだと右に行ったところだ。そしてお前が言った一本杉はここから左の方に行った場所にあるじゃねか。いくらなんでもよぉ、遠回りなんてもんじゃねぇぞこりゃあ。」

 

「同感だな。寄り道などしている場合でない。」

 

 パーシアが追い打ちをかけるようにユミヒデに続いた。

 

「まぁ、落ち着けよお前ら。実は、あの船長が一本杉を目指した方が良いと言ってたんだ。」

 

「だが、それだけでは…」

 

「おいおい、パーシア、良く考えろよ。いいか、あの船長は試験会場に辿り着けるかどうかの試験とか言っていたよな。つまり間違いなくあの船長は受験者を試験会場に導く案内人だったってことだろ?」

 

「その案内人が嘘を付いていたらどうする?もし、その嘘を見破れるかどうかという試験だったら?」

 

 パーシアが冷たい目でウィルの方を見てから、およそ数秒間、無言の時が過ぎた。その後、ウィルがため息を付きながらやれやれといった表情で口を開き始めた。

 

「ハイハイ、わーたわーた。お前らが信用しないってならそれで良いよ。俺は船長を信じるけど。バスでも何でも乗っていけよ。それと、親友だが家族だが知らないが助かると良いな。ユミヒデもサカナだがなんだが知らんが頑張って見つけろよな。じゃーな!」

 

 そう言うとウィルは後ろに手を振りながら左の方へと歩き始めた。

 

「いや、恐らくここはウィルに従った方が良いぞ。」

 

 ユミヒデが唐突にウィルの肩を持つかのように話始めた。

 

「どうゆうことだ。」

 

「さっき、そこの物陰で誰かが話しているのを聞いたんだけどよ、どうやらさっきからザバン市に向かったバスの中で実際にザバン市まで辿りついたバスは一つもねぇらしいんだ。」

 

「私にはそんな話声聞こえなかったぞ。」

 

「おらぁ地獄耳なんだよ。つーワケで俺もウィルに付いていくぜぇ。おーい!ウィル待ってくれ!」

 

 そう言うとユミヒデはウィルの方を追うようにして走り去っていった。

 

「ったく!これでもし会場に辿り着けなかったら、あなた方のことを永遠に恨みますからね!」

 

 大きな声でそう言うとパーシアも二人の後を追うようにしてその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 




船員「船長!情景描写少なすぎやしませんか!」

船長「いや、あの、職業物書きとかじゃないんで、本当にマジで勘弁してください。あの、こんな拙い文章でも二時間、三時間かかってるんで…あの、マジで勘弁してください…」

船員「誤字脱字もパナイっすよね!」

船長「うるせぇよ!集中力だって金魚が糞してるくらいの時間しか持たねぇんだよ!いちいち気に出来ないんだよ!」

船員「ボキャも少ないっすよね!」

船長「ほんと、あの、自分の脳メモリ3ビットしか無いんで…勘弁しろしてください」

船員「次回はドキドキ×ニタク×クイズ!絶対読んでくれよな!」

船長「いや、お前が言うんかい…」


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5

投稿はほぼ週1


「これで本当に間違っていたらどうするんですか?もう何時間も歩いている気がするんですけど。それと、あなた方きちんと髭くらい剃ったらどうです?同じ大人として恥ずかしいです。それと何ですかその着崩れしたスーツ。本人はカッコいいとか思ってるんでしょうけど、まぁそういう認識のまま周りから寒い目で見られてるということにも気づけず一生を終えるんでしょうね。それとユミヒデ、あなた毎日お風呂入ってます?酷い野生児のような異臭がしますよ?」

 

 一本杉を目指していた三人はその途中にあるスラム街に身を寄せていた。このスラム街に着く間、ユミヒデとウィルの後ろでは先ほどの話に未だ納得出来ていないパーシアがそのイラつきを露わにしていた。

 

「…お前なぁ…さっきから大人しく聞いてりゃ愚痴愚痴と…大体、お前自分で年上は愚弄してはいけないとか云々抜かしといてなんだその態度はよぉ。ったくこれだから育ちが良すぎる坊ちゃんみてぇな奴は好きになれねぇんだよな。ちったぁ空気読んで仲良くしようぜ。まったくよぉ。」

 

 ウィルがげんなりとした口調でこれに応える。

 

「…あの船長が言っていた意味がようやく分かりましたよ。大人になりきれてない大人とは貴方方のような人を指すということが。大体あなた方は…」

 

「おい、お前らその辺にしとけ…誰かいるぞ…」

 

 ユミヒデが何者かの気配を感じ取り歩みを止めた。

 

「さっきから俺らの後ろをコソコソ付いてきてる奴だろ。」

 

 三人はずっと後ろから付けてきている男の気配をすでに感じ取っていた。

 

「いや、違うな…」

 

「…!!おい!そこの物陰でコソコソしてる奴出てこい!」

 

 ウィルがユミヒデと同じ気配を感じ取り、大声で叫ぶ。

 

「…出てこないならこっちから行くぜ!」

 

 ウィルが物陰に入ると、そこには杖をついた老婆の姿があった。

 

「ウィル!」

 

 パーシアの方に向かうと白い布に身を隠した人の群れがウィル達の前を塞ぐようにしてどこからか現れていた。

 

「ドキドキ…」

 

 老婆が物陰から出てくると静かに「ドキドキ…」と囁き始め、それに合わせるかのように周りの集団も「ドキドキ…」と囁いた。

 

「…ドキドキ?」

 

 ウィルがごくりと唾を飲む。

 

「ドキドキ…ドキドキ!二択クイズ!」

 

 周りの集団が楽器のようなものを取り出し軽いファンファーレを鳴らした。

 

「はぁ?」

 

「お前たち…あの一本杉を目指しているのだろう。あそこに辿りつくにはこの街を抜け出す他無い…これから、クイズを一問だけ出題する。」

 

「おいおい、婆さん、上手く状況が飲み込めねぇんだがよ。」

 

「考える時間は5秒間。間違えたら即失格。今年のハンター試験は諦めることだね。」

 

 老婆がウィルを遮るようにして話続けた。

 

「見ろ!パーシア!やっぱり俺が正しかったじゃねぇか。次からはもう俺らの後ろでグチグチ垂れるんじゃねぇぞ。」

 

 ウィルが意気揚々とした様子でパーシアに言い放った。

 

「グチグチとはなんですか!そもそもですね、あれは貴方方がきちんとした身なりをしていればそれで済むことだったでしょう!」

 

「そうじゃなくて、信用するかしないかって話だ!」

 

「ハァ…婆さん、こいつらはいいから続けてくれ。」

 

 ユミヒデがうんざりした様子で老婆に話を戻すよう促した。

 

「答えは1か2で答えよ。それ以外の曖昧な答えは全て間違いとみなす。」

 

「婆さん、ちょっと良いか?その質問は三人で一つか?」

 

「三人で一つでも、一人一つでもどちらでも良い。好きな方を選べ。」

 

「だってよ、どうするよ。」

 

 ウィルがユミヒデとパーシアの方を向いた。

 

「三人の方が良いんじゃないか。誰か一人でも答えを知っていればそれに越したことは無いと思うが。」

 

「あぁ、それなら俺もその方が良いな。あんまり頭を使うってのは好きじゃ無いんでね。こういうのはパーシア、お前に任せてぇしな。」

 

「よっし。決まりだな。婆さん。俺らは三人で……。」

 

「おいおい、早くしてくんねぇかな。後ろが詰まってんだよな。なんなら俺が先に受けてやってもいーぜ。」

 

 ウィルが婆さんに向かってクイズを受けると言いかけた時、後ろから一人のヘラヘラした様子の男が現れた。

 

「俺らが一本杉を目指し始めてから誰かの気配すんなとは思っていたが…お前かよ」

 

「わりぃなおっさん。港であんたらの話を偶然聞いちまってよぉ。」

 

 男が意地悪げな笑みを浮かべながらウィルの方を見た。

 

「どうするかね」

 

「まぁ、良いんじゃないですかね。先に受けて貰って私たちは問題の傾向でも探りましょうか。」

 

「確かに。その方が良いな。よし、じゃあ、あんた先に受けてくれ。」

 

 ウィルが男にその場を譲った。

 

「じゃあ、お先失礼するぜ。さぁ、どんな問題でもこいよ」

 

 自信たっぷりに男が老婆に質問をするよう促す。

 

「よし、それでは問題。お前の母と友人が悪党に捕まり、どちらか一方しか助けられない。1、母親。2。友人。お前はどちらを助ける。」

 

 男の後ろで質問を聞いていた三人組は全員その場に固まってしまった。

 

「答えは1だな。何故なら、母親は替えが効かないが親友はまたつくり直せば良いだろ。」

 

 二秒程考えると男は得意げな表情でこう答えた。この答えを聞いた瞬間、ウィルはこの男のことをどうしても殴りたくなった。あの写真に写っていた男のことを思いながら。

 

「…通りな。」

 

 老婆がそう言うと、白い布を羽織った集団が道を開けた。男は先に行って罠を仕掛けてやろうなどと思いながらその道を通っていった。

 

「婆さん…俺らは答えるしか無いんだよな。この質問に…そうしないとハンター会場には辿り着けないんだよな。」

 

 憎しみにも近い感情のこもった眼で老婆を見つめ、ウィルは拳を握りしめながら震えるような声でこう問いかけた。

 

「あぁ、そうだ。」

 

「…俺にはさっきの答えはどうしても出ない。…正解が無いというのが正解でも無い限り…な…」

 

 正解が無い。パーシアにはこの言葉がどうしても引っかかっていた。確かにこの問題に答えは簡単に出せない。もし、本当にそんな場面に遭遇してしまった場合、自分は一体どうするか等と。

 

「そうか…」

 

 老婆はパーシアが質問の意図に気づいたのを感じ、薄らと笑みをこぼした。

 

「ウィル、ユミヒデ、このクイズ、私に任せてくれ」

 

「…パーシア、もし…お前が今の質問と似た質問をされ…どちらかを選んだ場合…例え正解だったとしても俺はお前をぶん殴る…それでもいいな……」

 

「あぁ、任せてくれ。」

 

「準備は良いんだな。それではいくぞ。お前の妹と弟が悪党に捕まり、どちらか一方しか助けれない。1、妹。2、弟。さぁ、5秒以内に選びな。1…」

 

 老婆がカウントダウンを行っている最中、ウィルはその場に立ちすくんでいた。俺にはどうしても答えは出せない。さっきの男のような、あんな薄情な奴がハンターになるというのなら、俺はそんなものにはなりたくない。あんな奴と一緒になるくらいなら…

 

「3…」

 

 パーシアは沈黙を続けていた。その様子を見てウィルはやっぱりこいつは良い奴だと思った。この質問に答えるくらいならここで黙りこくってハンターになるのを諦める。それが人として正解なのだろうと。

 

「5…ブー!終了!」

 

「…ウィル…ユミヒデ…」

 

「何も言うな。パーシア。俺にとってはそれが一番の正解だよ。お前は正しい。」

 

 ウィルは夕焼けを背にゆっくりと来た道を引き返していた。

 

「あぁ、俺もウィルと同じ気持ちだぜ。」

 

 ユミヒデもまたゆっくりとウィルの後を追うようにして歩き始めた。

 

「二人共何を言っている?私達は正解したのだよ。」

 

「へ?」

 

 ウィルは驚いた表情でパーシアの方を振り向いた。

 

「そう、この質問には答えが無いのだ。つまり、まぁ恐らくだが答えるか沈黙か。そういった二択だったのだよ。」

 

「だけど、さっきの奴は…」

 

「まぁ、通れとしか言われて無いところを見る限り正解ってワケでも無さそうだが。」

 

「だけどよぉ」

 

 ウィルは非常に混乱していた。自分でもワケがわからないくらいに。

 

「いや、ウィル、恐らくパーシアの言ってることは本当だぜ。さっきよぉ男の行った方角から叫び声らしきもんが聞こえたぜ。どうやらあの道は本当の道じゃねかったらしいな。そうだろ、婆さん。」

 

 ユミヒデが老婆の方を向くと老婆は表情を和ませ、ゆっくりとその場から動き出した。

 

「…あぁ…その通り。本当の道はこっちだ。」

 

 白い布を被った二人組が横にあった建物の大きな扉を開けると、先に光の見える道が現れた。

 

「一本道だ。二時間も歩けば頂上に着く。」

 

「あ、っそう」

 

 ウィルがポカンとした表情で道の方を向いた。

 

「一本杉の下の山小屋に住む夫婦は試験会場までのナビゲーターをやっている。彼らの眼鏡にかなえば試験会場まで案内してくれるだろう。」

 

「全く気が抜けちまったぜ…パーシア!…サンキューな。」

 

「…っ!!べ、別に大したことじゃない。さ、先に急ごう!…そ、それとさっきはその、すまなかったな…その…疑って悪かった…非礼を詫びよう。」

 

 ウィルが肩を抱いたのをパーシアが照れくさそうにほどいた。

 

「おっ!なんだぁ、照れやがって。まぁ、良いってことさ!先急ごうぜ!」

 

「別に照れてなどいない!」

 

「おい!おめぇら!早くしないと置いてくぜ!」

 

 ユミヒデが道を少し進んだところから二人を呼んだ。

 

「ユミヒデ!先に行きすぎだぞ!まったく…おいウィル行くぞ!」

 

「はいはい…じゃあな、婆さん。」

 

「お主ら、頑張って良いハンターになりなよ。」

 

 老婆が優しさのこもった笑みをウィルに見せた。

 

「…あぁ頑張るさ。」

 

 そう言うとウィルは後ろに手を振り、パーシアと共にその場を去った。

 

「…ウィル…ユミヒデ…もし、本当にどちらか一方を助け出さないといけない…そんな状況になったら…貴方方ならどうしますか…」

 

 一本道を通る途中、パーシアが急に歩みを止めて下を向きながら二人に質問を問いかけた。

 

「…足搔くさ。どっちも助かるまで。絶対に足搔いて、絶対にどっちも助ける。ただそれだけだ。」

 

 ウィルが夜の星空を眺めながら答えた。

 

「俺もウィルに賛成だな。」

 

 この二人の答えを聞いたパーシアは安心したように前を向き、「えぇ、そうですよね」と一言呟き、二人の背中を追うかのようにその後を付いていった。




船員「船長!なんかこの話ってハンター×ハンターである必要あるんですか!」

船長「ハンター×ハンターって沢山のハンターがいるってんでこういうタイトルになったって話きいたことあるか?じゃあ、こういうハンターがいても良いんじゃないかなぁっていう二次小説は別にそれはそれで良いんじゃねぇのか」

船員「強気で草」

船長「念には浪漫あるしよぉ」

船員「船長使えなさそうで草」

船長「それとよぉ今回の話は書いてる時糞難しくてよぉ。ほんとはもっと早く投稿しようと思ったんだけどよぉ。まじでうんこですいませんでした。」

船員「富樫先生の気持ちわかりましたよね!」

船長「でもよぉせめてあっちは売り出しにしてるもんだからよぉ、世間からも仕事として評価されてるわけでよぉ。頑張ってください。お願いします。」

船長「あとよぉ今回の話は納得できる作りじゃねぇからよぉ。そのうち改変しまくると思います。」

船員「職人気質で草」

船長「なるべく週1投稿しますんで読んでやってください。お願いします。」

船員「本文より長くなりそうで草」

船長「ぶっちゃけ後書き書いてる方が楽しいよね。」

船員「てなわけで、次回はオリキャラ×デ×ハンター×ハンター、マジュウ×ナ×キツネ!絶対読んでくれよな!」

船長「タイトル適当だな…」



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6

「見ろよ。また魔獣注意の看板だぜ…はぁーあ…まだ小屋は見当たらねぇし…歩き疲れた…」

 

 老婆の言われた通り3人は一本道を2時間程ひたすら歩き続けていた。

 

「ウィル!早くしないと置いていきますよ!」

 

 遠くからパーシアが呼ぶ。

 

「はぁーあ…ハイハイ…今行くぜ…」

 

「おい!二人共、家が見えてきたぞ!」

 

 ユミヒデが薄暗い道先に佇む建物を指さす。

 

「…何か様子が変ですね…こんなに暗いのに明かりが消えている…」

 

 その時、三人の居る位置でも良く聞こえるくらいに大きな女性の悲痛な叫び声が家の方から聞こえてきた。

 

「おい!早くいくぞ!」

 

 悲鳴を聞き、三人は急いで建物の方へと駆けて行った。

 

「大丈夫か!」

 

 3人が思い切りドアを開けたすぐ先で、人の二倍程はある狐のような化物が、苦しそうにもがく男の首を掴み持ち上げその場にたたずんでいた。

 

 その傍らでは男の妻と思しき女性が壁の方にもたれながら血の湧き出ている右腕を懸命に押さえ、恐々とした表情で化物の方を見つめていた。

 

「あれは変幻魔獣キリコ…人の姿にも化けることの出来る、高い知能を持ち合わせた魔獣です!!」

 

 パーシアの声に反応したのか、キリコが三人の方を向き不気味に笑う。

 

「おい!そいつを離せ!」

 

 ウィルが叫ぶとキリコは近くの窓ガラスを割り、薄気味悪い高い笑い声を出しながら闇の中へと消えていった。

 

「待て!」

 

「ウィル!落ち着きなさい!まずは女性が最優先です!」

 

 キリコを追いかけようとしたウィルの肩をパーシアが掴んだ。

 

「助け…て…」

 

 女性がか細い声をあげる。

 

「大丈夫だ。俺の鞄の中に止血剤入りのガーゼが入ってる。」

 

「お願いです…私を庇って…旦那が攫われたんです…助けてあげて下さい!」

 

「あぁ、大丈夫だ。俺たちに任せろ。パーシア、ここで彼女の様子を見ててくれないか?」

 

「えぇ、任せて下さい。」

 

 パーシアはウィルからガーゼを受け取ると女の腕にそれを巻き始めた。

 

「待て、ウィル、パーシア。こいつぁは恐らく罠だ。」

 

 暫く後ろからこの一連の様子を伺っていたユミヒデが妙に神妙な面持ちで口を開いた。

 

「罠?罠だと?!怪我人もいるんだぞ!?」

 

 ウィルにはユミヒデが何を言っているのかさっぱり分からなかった。

 

「匂いだ。」

 

「匂い?」

 

「あぁ、この女からさっきの巨大な生き物と似た匂いがしやがる」

 

「そりゃあ怪我して引っかかれたら…」

 

「そう、怪我した部分は…な。確かに、この女の匂いはその怪我した部位とは違う匂いだ。だが、微かに違うだけなんだよ。」

 

「何を言ってるのかさっぱりだぞ…」

 

「お願いします!早く旦那を!」

 

「そうだ!早く旦那を助けねぇと!まだ遠くまでは行ってねぇと思うが…」

 

 ウィルが割れた窓の方を見る。

 

「ウィル。私もユミヒデに賛同です。」

 

 女の腕をじっと見つめながらパーシアが言った。

 

「パーシアまで!一体どうしちまったんだお前ら!」

 

「この入れ墨を見て観なさい。」

 

 パーシアが袖をまくった女の腕をウィルとユミヒデが良く見えるように持ち上げた。

 

「血で少し濁ってはいますが…この入れ墨は女性が生涯独身を誓う為にするものです。…貴方、さっき言いましたよね…「旦那」を助けてくれと…」

 

 パーシアが女性に問い詰める。

 

「…白状したらどうだ?なんなら俺がそうさせてやっても良いんだぜ?」

 

 パーシアの後ろでユミヒデが腰にぶら下げていた鞘から刀を抜いた。

 

「ふ、二人とも何を言っているのかさっぱりだわ!は、早く旦那を追って下さい!」

 

 パーシアの腕をほどき、女性が切羽詰まった様子で三人に訴える。

 

「強情な奴だな!さぁ早く白状しやがれ!それと!建物の外でコソコソしてる奴!さっさと姿を現しな!なんなら二人共俺が切り刻んでやったって良いんだぜ!どっかで観察してんだろ!この様子をよぉ!」

 

 その場にいる全員がユミヒデのうねり荒ぶるような殺気に圧倒され、誰もが黙りこくってしまった。

 

「…出てこねぇのか…なら、仕方ねぇな…今からこの女を本気で斬る!三秒待ってやるよ!言っておくが俺は本気だぜ!3…」

 

 パーシアはユミヒデの異常なまでな殺気の前に体をガクガクと震わせていた。そして前にも似たような経験をしたことを、脳裏に焼き付いた悲惨な過去の映像と共に思い出し、みるみるとパーシアの顔が蒼白に染まっていった。

 

「やめろ!!ユミヒデ!正気に戻れ!」

 

 ユミヒデが秒読みを終える寸前、ウィルが女の前に歩み出た。

 

「やめるんだ。」

 

 強い意志を持った目でウィルがユミヒデを睨み付ける。

 

「止めるな。ウィル。なんならお前もろとも叩き斬るぞ」

 

 暫くの沈黙の間。ドアから入ってきた夜風がウィルの髪を靡かせ、そのまま窓の方へと突き抜けていった。

 

「良いぜ。斬れよ。」

 

 ユミヒデは一瞬の短いため息を吐くと、目の前の獲物を捕らえるような目付きでウィル目掛け襲い掛かった。その時、

 

「やめろやめろ!お前ら!」

 

 ドアの外から慌てた様子のキリコが現れた。

 

「試験はもう終わりだ!ったく!」

 

「へ?試験?」

 

 ウィルが気の抜けた顔をする。

 

「たっくあんた!その物騒なもんしまってくれ!おお大丈夫かい!娘よ!」

 

 そういうとキリコは女の方に歩みより、強く抱いた。

 

「こ、怖かったー」

 

 女性がホッとした表情を見せる。この時、パーシアもハッと我に返った。

 

「まぁ、騙して悪かったよ。皆外出てくれ。改めて自己紹介と合否判定するから。」

 

「お、おいちゃんと説明してくれよ」

 

「良いから外に出てくれ!

 

 キリコに連れられ3人が外に出ると、そこにはキリコに捕まった筈の男ともう一匹のキリコがいた。

 

「改めて、我々はナビゲーター。家族でハンター試験のナビゲーターをしている。ちなみに私がこの子達の妻だ。」

 

 ドアから入ってきた方のキリコが紹介を始めた。

 

「娘でーす」

 

「息子でーす」

 

 先ほどの女と男がそれぞれ紹介をする。

 

「て、ことは先に外いた方が…」

 

 ウィルが先に出ていた方のキリコを指さす。

 

「俺がこの子達の夫だ。」

 

「どっちがどっちだ…」

 

 ウィルにはこの夫婦がどっちも同じキリコにしか見えなかったが、それはパーシアにとっても同じことだった。

 

「ハンター試験の会場は毎年変わる。その場所を自力で探すのは非常に困難。」

 

「そこで、我々が受験者をそこまでナビゲートしてやるのだ。」

 

「だが、受験者全員を案内するわけでは無い。」

 

「そこで、こうやってハンター試験を受けるに相応しいかどうか我々が試しているのだ。」

 

 キリコ夫婦が交互に説明を始めた。

 

「そこでまずパーシア殿、貴方は入れ墨のことに気づき、この子達が夫婦では無いことを見破った。よって合格。」

 

 パーシアの顔に安堵の色が浮かんだ。

 

「次にウィル殿、貴殿の優しさと温かな人情味は十分にハンター試験を受けるに値する。よって合格。」

 

「ハハッ…まぁなんもしてないけど良かったぜ…」

 

 ウィルもまた安堵の表情を浮かべた。

 

「そして、ユミヒデ殿…」

 

 ここで少しだけ夫の方のキリコの声が濁った。

 

「…確かに…ちとやりすぎっちまったよ…すまねぇ…その…初めから試験だって分かってりゃあ……嬢ちゃんを怖がらせるつもりは無かった…これで不合格だってならよ…別にそれはそれで仕方ねぇよ…」

 

 力無くユミヒデが応える。

 

「…ユミヒデ殿の観察力と洞察力。それに合わせて鬼気迫るような凄みといったら、何と言えば良いのやら…取り合えず、ユミヒデ殿も合格だ。」

 

「だってよ!良かったなユミヒデ」

 

「あぁ…」

 

「まぁ、そんな凹むなよ。俺なんてこいつらが全部同じキリコだってことすら見抜けなかったんだぜ。」

 

「同じでは…無いがな…」

 

 キリコ夫とキリコ妻が顔を見合わせた。

 

「…ウィル、すまなかったな…」

 

「…気にすんなよ。」

 

 ウィルがユミヒデの肩を叩いた。

 

「さぁ!君たちを試験会場まで案内しよう!」

 

 そう言うと、息子と娘も元のキリコの姿に戻り、全員翼を広げ宙へと浮かんだ。

 

「3人とも足に捕まれ!」

 

 言われるまま3人はキリコの足を掴んだ。そのままキリコ達は月が真ん前に見える位置まで浮かび、夜の心地良い追い風を背に飛び去った。3人を試験会場へと運ぶ為に。

 

 




船員「船長!随分遅い投稿ですね!このまま失踪するんじゃないかってビックリしましたよ!」

船長「ぐぇえええ。小説なんて全然読まんから情景描写だの、背景だのくっそムズイ。アヒィアヒィ。大体月~木曜でこんな感じにしようみたいな。そんで木曜にセリフだけのssみたいの作って、そっから情景描写だの背景だの書き足して、投稿日に完成→投稿じゃん?」

船長「完成した瞬間は一生懸命作ったものって自分の中で神作になるやん?でも投稿して1日経った後に、もう一回読むと、まるで幼稚園児がやるお遊戯会の台本…みたいな。冷静になって考えると~みたいな。そんでそっから僕の作品うんち!ってなる」

船員「書いた後ってどんなに糞でも光輝いて見えますよね!」

船長「そう、うんこが輝くうんこに見えるんだわ。ぜってぇ人気でるだろこれぇみたいな。アヒィアヒィアヒィみたいな。」

船長「ハァ…いや頑張ってるけどね。なんか俺んちに謎の何故買ったか分からない小説が四冊だけあるからそれ読んで表現磨こうとかしたりね。」

船員「青空文庫面白いですよね!」

船長「小学校高学年くらいの子が読むようなやつらしいけど。」

船員「で、次はちゃんと投稿出来るんですか!次からいよいよハンター試験ですよね」

船長「腰痛いんで無理です」

船員「てなわけで!次回は!……」

船長「畑仕事して腰痛いんで無理です」

船員「…いや、書けよ」

船長「腰が無理です」

船員「…」

船長「次回は!ヨウツウ×デ×キュウソク!イキナリ×フテイキ×ナ×コウシン!ユミヒデ×ハ×ユダ×ミツヒデ!タノシイ×アトガキ!サクシャ×ガ×シッソウ!」

船員「なんかさらっと」

船長「楽しいと思ってたものが急に辛くなる気持ち分かる。俺は富樫の休息を応援するぞ。」

船員「てなワケで次回はハンター試験開始!絶対読んでくれよな」

船長「頑張ります。てか、普通だ……」







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7

「ここが試験会場…」

 

 巨大なビルを前に三人の表情が無意識に強張る。

 

「二人共、準備は良いか…」

 

 ウィルがスゥと息を吸い込む。

 

「おい!お前ら!何してんだよ!こっちだこっち!」

 

 三人が覚悟を決め、ビルの自動ドア前に立ったちょうどその時、巨大なビルの隣にあるカフェの方から人間に化けていたキリコが慌てて飛び出してきた。

 

「ちゃんと付いてこいって言ったろ!何勝手に試験会場決めつけてるんだ!」

 

「……おいおい、キリコ。俺らはもう覚悟決めてんだぜ。今更そんな冗談良してくれよ。大体よ、そんな店に何百何万といる受験者が入りきるワケねぇだろ?」

 

「良いから付いてこいって。ほら早くしろよ!」

 

 キリコに連れられ三人は渋々とカフェの方に入っていった。

 

「いらっしゃいませ。何になさいますか。」

 

「熱々のホットコーヒーと香味料たっぷりのサンドイッチ。三人分ね。」

 

「では整理券を持って奥の部屋へどうぞ~」

 

 店員に言われるがまま四人は案内された部屋へと入っていった。

 

「あぁ、あれ、合言葉ね」

 

「そういうこと。まぁ、三人共そこで座って待っててくれ。」

 

 三人は円卓の周りを囲むようにして置いてある椅子に各々腰掛けた。

 

「ホントにこんなところが試験会場なのか?」

 

「ここなら応募者が数万と集まるハンター試験の会場だとは誰も思わないだろ?」

 

「まぁ、言われてみれば。」

 

「…一万人に一人。受験応募者がここに辿り着くまでの確率だ。お前ら新人にしちゃ上出来ってとこだな。……三人共頑張れよ。」

 

「センキューなキリコ。」

 

 ウィルがニッと笑った。

 

「…ま、まぁお前らならまた来年でも案内してやっても良いぜ!じゃあな!」

 

 キリコが部屋のドアを閉じると、大きな衝撃音と共に部屋が下の方へと動き出した。

 

「なるほど。部屋自体がエレベーターってワケか…」

 

 エレベーターが動いている間、ウィルは天井を見ながら一本杉下の家での出来事を思い起こしていた。あの時、ウィルはユミヒデから発せられる殺意とは違ったまた別の圧に押される感覚を味わっていた。それは、敢えて言葉にするなら、体に恐怖というものが纏わりついてくるような、暗い何かが心身共に蝕んでくるような、そんな不気味な感覚だった。

 

「…三年に一人らしいです。ルーキーが試験に合格する確率は。」

 

 パーシアが眼鏡を拭きながら呟く。

 

「ふ~ん…」

 

 ウィルはあの時のパーシアのことも思い返していた。明らかに何かに恐怖しているような、まるで過去に起きた悲惨な何かを思い返しているような、そんなパーシアの様相を。

 しかし、ウィルはユミヒデの前でパーシアにあの時のことを聞いてはならない気がしていた。恐らく、長い付き合いになるであろう今後の三人の為にも。

 

「ファ~ァ。何階まで下りんだろうな。このエレベーター」

 

 B97、B98と下って行き、階数がB100になったところで部屋の動きが止まった。

 

「お、着いたか。」

 

 三人がドアを開けると、床がフローリングのだだっ広い空間が目の前に現れた。その丁度真ん中辺りに今年の受験者らしき人の姿があった。

 

「どうぞー。番号札とこのカウンターをお取りください。紛失されませんように番号札は必ず胸に付けてくださいね。」

 

 スーツを着こなした人間なのかすら疑わしい緑色の豆のような顔した謎の生き物から、数を数える為のカウンターと、ウィルは210番、ユミヒデは211番、パーシアは212番と書かれた番号札をそれぞれ受け取った。

 

「あ、それと靴の方もこちらで預けさせてもらいます。何しろ床がフローリングなものですから。」

 

 言われるまま三人は靴を豆に渡した。

 

「後は、向こうの方で試験開始まで少々お待ち下さい。それでは試験の方頑張って下さいね」

 

 そういうと謎の豆人間はどこかへと去っていった。

 

「…この世には不思議な生き物も沢山いるんですね」

 

「あ、あぁ、そうみたいだな…だが、あの生き物より…」

 

 ウィルは壁に寄りかかっている菅笠を被った人物の方をチラと見た。顔は包帯に隠れていて良く見えないが、その包帯の上あたりから単一の赤い目のようなものが不気味に光輝いているように見えた。

 

「あれは…一体何を持っているんでしょうか…」

 

 パーシアがその人物の持っている金色の何かしらの紋様がついた棒に興味を示す。

 

「ありゃあ、俺の国の僧かなんかだな。」

 

「ユミヒデ、知ってるのか」

 

「あぁ、あいつが持ってるのは錫杖つってな、まぁシャカシャカ音するからそう言われるんだが、ありゃあ層が山に行った時、熊だのに襲われないように持つもんだ。」

 

「その、ソウってのはお前が良く言ってる刀だの侍だのってのにも何か関係してんのか」

 

「まぁ、大昔にはあっただろうが、今は大したこともねぇーよ。」

 

 ウィルとユミヒデがこんな話をしてる間、パーシアはその怪しげな人物のことをじっと見つめていた。どこかで見覚えのあるあの赤い目のことを思い出す為に。

 

 この時、近くにいたある男が三人組に話掛けようとしていた。この三人に下剤入りのジュースを飲ませようと企てていた男が。しかし、この男はこの三人には近づけ無かった。

 それは、ウィルもパーシアも気づいていないようなユミヒデの異様な雰囲気がそうさせていたのである。そして、その雰囲気に気づいていたのはその男を含めその会場のたった数人でしかなかった。

 

「そろそろじっかんヨ~ン!試験始めっちゃうワヨ~ン!!」

 

 皆が集まっている空間の奥の扉が勢い良く開くとこの殺伐とした雰囲気とは対照的な明るい雰囲気を持った全身ピンク色の筋肉質な男が現れた。

 

「私は第一次試験の試験官を務めるマッツル=デラクッスよ!あら~今年も皆、イ・イ・オ・ト・コ!一人くらいお持ち帰りしちゃおうかしら~なんちゃって❤」

 

 この男の異様な雰囲気に誰も一言も声を発せられずにいた。

 

「アラン。今年は合計200人とちょっとなのね。試験に来れなかった男の子達皆可哀そうだわん…でも、そんなこと考えてても仕方無いわよねん。うん。じゃあ、早速第一次試験始めるわよん!」

 

 かくして、ハンター試験の第一次試験が始まったのだった。




船員「ヤッダ~やっと試験始まったわ~ん」

船長「書くの超大変だったんですけどぉマジドンダケ~~」

船員「絶対皆に古って思われてますよね!」

船長「チョベリバ~~」

船員「ウワッ…」

船長「すいませんでした…まぁ、そんなわけでハンター試験始まったワケだが、一つ重大な問題がある。」

船員「なんですかそれ」

船長「うむ。ユミヒデってさなんか最初気性荒いとか書いたけど、めっちゃ冷静じゃね。」

船員「キャラ定まってから物語書かないと大変なことになりますよね!」

船長「けどさ~まぁ銀魂の神〇だってなんか太陽に弱いとか言って平気で太陽下で動いてたとかあったやん。多分。なんか原作でネタにしてたし。まぁキャラクリのプロだって間違えるワケでさ、別に素人が間違えても仕方ないよねってことで。本当にすいませんでした…」

船員「船長はプロでもなんでもないそこらへんのただの馬鹿すもんね!仕方ないです!」

船長「はい…ミジンコなんで…糞雑魚ナメクジなんで…あと、今回の話はマジで全文に(byWiki)ってつけたい。」

船員「めっちゃ頑張って調べましたもんね!」

船長「いやマジで頑張った…」

船員「というわけで次回は!オネエ×ト×ジゴク×ノ×キントレ!」

船長「絶対読んでくれよな!!」


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8

「じゃあ、試験内容を言い渡すわね!」

 

 受験者達に緊張が走る。

 

「最初の試験は…腹筋1万回に腕立て1万回。それがあなた達の最初の試験よん!」

 

 マッツルの禿頭がキラリと光る。

 

「ふ、腹筋1万に、う、腕立て1万?なんじゃそりゃぁ!」

 

 受験者達が大きく騒めく。

 

「皆、最初に配ったカウンターを腕にはめて頂戴。それはあなた達の腹筋と腕立ての回数を正確に測ってくれるわん!カウンターの表示を見て貰っていいかしらん。」

 

 受験者達は一斉に自分の腕にはめたカウンターを見た。カウンターの表示の右側にはハンター語で「腹筋」と、線を挟んで左側には「腕立て」と、そしてそれぞれの下には「0」の表示がしてあった。

 

「制限時間は半日よん!それじゃあ!始め!」

 

 マッツルがどこから取り出したのか分からないゴングを鳴らした。

 

「なんてーか、試験っていうからもっとスゲーもん期待してたけど…ふ、腹筋と腕立てって…ていうか、体力テストじゃん…」

 

 ウィルがボソボソ呟く。

 

「そこのイケメン、何か文句でもあるのかしらん?嫌ならいーのよん。別に。」

 

 マッツルがウィルをギラリと睨む。

 

「そ、そうじゃなくて、なんてーか、こうもっと厳格なもん想像してたからさ…」

 

「はぁ~私も結構メンドクサイのよねぇん。試験内容いちいち考えるのって。まぁ、でもぉ、あのネテロのイケおじ様がどうしてもって言うからん。私断れなくってん。あのイケ目であんなに熱く見つめられたら…キャー私ったらイッけな~いん!ヤッダーもう!ってゆうかぁ、相思相愛?じゃあん、私、別部屋であなた達のこと監視してるから。あなたもが・ん・ばっ・て・ネ!」

 

 軽くウィンクを決め、お尻をプリプリさせながらマッツルはそのままどこかに行ってしまった。この時、ネテロ会長及び、ウィル、そして受験者全員の背筋に冷たい何かが走った。

 

「ハンターにはあんなのも…いるんだな…」

 

「ウィル、早くこんな試験終わらせましょう。」

 

「あ。あぁ、そうだな。てか、何でお前上脱いでんの?」

 

 パーシアの白い肌が照明でより一層白く輝く。

 

「この方が動きやすいですし。それに汗気持ち悪いですし。」

 

「…まぁ一理あるわな…仕方ねぇ。俺も脱いでやるか。」

 

 こう言うとウィルも上半身を脱ぎ捨てた。この時、この様子を監視カメラで見ていたマッツルの鼻から血が噴水のように飛び出した。

 

「…なんだ…パーシア…俺の裸じっと見つめて…まさか、お前もあーいう気があるってんじゃないだろうな。」

 

「傷…」

 

 ウィルの上腹部には何かに抉られでもしたかのような大きな傷跡があった。

 

「あぁ、これか…」

 

 ウィルの脳裏にあの日の記憶が蘇った。六血衆の攻撃から友を庇おうと身を挺した記憶が。

 

「なんでもない…ただの古傷だ…てか、パーシア!触るなよ!」

 

「はっ!つい!」

 

「お前、まさか、あいつになんか影響されたんじゃないだろうな…」

 

「違います!…昔、良く怪我した時とか良くこうやって母親がやってたのを思い出して…」

 

「…なぁ、船で自己紹介した時…お前、六血衆って言葉に反応してただろ。」

 

「………私の一家と親族は血の六血衆によって妹と私を残して全員殺されました…私が8歳の時です。」

 

 パーシアの瞳が深い悲しみを色濃く写し出す。

 

「…じゃあお前も復讐の為に…」

 

「…いいえ…私はそんなことは考えていません…言ったでしょう…助けたい人がいるって…私はその人の為にハンターになろうと決心したのですから…ウィル、私は復讐に駆られて生きるより、大切なものを守って生きる決心をしたんです……ハッ!すいません…」

 

 この時パーシアは、深い傷を負ってまでして守ろうとしたものを殺されたこの男を前に、口にしてはいけないことを話してしまったのでは無いかとひどく後悔した。

 

「…良いんだよ。どう生きるかなんてそいつ次第さ。…頑張って守り抜けよ。」

 

 少し寂し気にウィルは微笑んだ。

 

 

 

 

 




船長「二日間も放置してしまって誠に申し訳ありませんでした。」

船員「今後こそ真面目に失踪かと思いましたよ!」

船長「日曜だからってさ…絶対暇とは限らないじゃん?予定入ったりするやん」

船員「月曜とか何してたんですか?」

船長「家帰ってから、じゃあこれから小説書くかぁってさ…疲れんだよね…ぶっちゃけさ…」

船員「最近だと、家帰って疲れて寝るだけですもんね」

船長「GWあんなに暇だったのにさ…何でこうなるかな…」

船員「あと、huluでケロロ軍曹一気見してますもんね!」

船長「いやぁ、懐かしくてつい…ってそれを言うなよ!」

船員「あと、ゲームで死体撃ちされてブチ切れてたら一日終わるとかありましたもんね!」

船長「ゲロ~ッ!!やめてやめて!」

船員「そんなものに呆けて無いで更新しろよ」

船長「すいませんでした・・・」

船員「あと、今回ちょっと手ぇ抜いてんだろ?」

船長「だってだって平日に更新って吾輩だって疲れるでありますよぉ!」

船員「まぁ、今回は仕方無いっすもんね!」

船長「畑がね…色々ね…」

船員「あんた、海の男だろ…てなワケで次回はトクニ×タイトル×キマッテ×ナイ」

船長「決まって……無いんだ……不安だな……」


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9

「きゅ…9998…9999…10000!ど、どうでらっしゃい!やってやったぞ!腹筋1万に腕立て1万!」

 

「わ、私も今終わりましたよ…あ、案外キツイですね…これ…」

 

「よぉ。お前ら随分ギリギリだったじゃねぇか。俺はもう四時間前に終わったぞ。」

 

 死にそうになっているパーシアとウィルの隣でユミヒデが元気そうに笑う。

 

「お、俺、も、もうかなりきついぞ」

 

「わ、私も…」

 

 ウィルとパーシアが息をゼーハーと切らす。

 

「も、もう駄目だ!…腹と腕の感覚が全然ねぇ!」

 

 パーシアがちらと他の受験者の方を見る。目に入ったうちのおよそ半数は腹や腕を押さえながら悶え苦しんでいた。

 

「は~い!じゃあ、終了よん!」

 

 マッツルの声が空間内に響き渡る。

 

「今回の合格者は42名ね!良く頑張ったわん!じゃあん、合格者の番号を今から読み上げるわね!」

 

 マッツルが次々と番号を読み上げる。その中には最初にウィル達が気にかけていた包帯人間の番号もあった。

 

「210番、211番、212番!以上よ!今呼ばれた受験者は左奥にあるドア前に集合して頂戴!」

 

「お、呼ばれたぜ。」

 

「い、行くか…」

 

「え、えぇ…」

 

 パーシアとウィルが何の疲れも見せていないユミヒデの後を這いつくばるようにして追いかける。

 ドアの前に着くと、既にそこには合格した受験者全員とマッツルの姿があった。

 

「とりあえず、一次試験合格おめでとん!じゃあん、これから一人ずつ番号順にこの部屋に入って貰うわん。そこで二次試験の説明があると思うから、後は試験官の言うことをちゃんと聞いてねん。」

 

「一人ずつ…番号順…なのか…」

 

「さ、最後の方で良かった…す、少しは休めますね…」

 

「そうだな…」

 

「はぁ~ぁ、君たちこんなので疲れるなんて。なんていうか、試験を受けに来たって自覚あるのかなぁ」

 

 35番の番号札を付けた生意気そうな男がウィルとパーシアの方を見ながら煽るようにまくし立てる。

 

「…ウィル、相手にするだけ…」

 

「分かってるよ…」

 

「プッ、喋る元気も無いのかい。そんなんじゃ今回の試験は無理そうだね。おっと、僕の番だ。まぁ、せいぜい君たちも頑張りなよ。じゃあねぇ~」

 

「何だあいつ…」

 

 次々と番号順に受験者が部屋の中に入っていき、おおよそ40分が経った。

 

「大分疲れもとれてきましたね。」

 

「まぁ、さっきよりはな…」

 

「じゃあん、次は210番ね。」

 

「俺だ。じゃあな。先行って待ってるぜ。」

 

 こう言い残し、最初に渡していた靴をマッツルから受け取り、ウィルはドアを開け中に入った。部屋の中は、第一次試験場に辿り着く為に乗ったエレベーターと同じ構造になっていた。

 

「ってことは…」

 

 ウィルの予想通り、大きい衝撃音と共に今度は上へと部屋全体が動き始めた。

 

「今度は何階までいくんだ…。」

 

 階数の表記が1000になったところで部屋全体が止まった。

 

「着いた…のか…」

 

「もたもたするな!早く出ろ!」

 

 ドアを開くと、壁一面ガラス張りの広い部屋に出た。ガラスの向こうには青々とした空が広がっている。その中央で、全身緑色の軍服のようなものを身に着け、星印の付いた緑の軍帽から長い金髪を垂らした女が手を後ろに組み、堂々とした様子でたたずんでいた。

 

「私は二次試験を務めるロケロ=ラミウスだ!早速だが、これより二次試験を始める!では、まず、これを付けて貰うぞ。」

 

 ロケロがウィルにパラシュート入りのバッグを渡した。

 

「パラ…シュート…?」

 

 ロケロに言われた通りウィルはそのバッグを身に着けた。

 

「着けたか。よし、後は分かるな。では、飛んでもらおう。詳しい試験内容はまた後で話す。では、検討を祈る!」

 

「へ?」

 

 ウィルが立っていた箇所の床が突然開いた。その次の瞬間にはウィルは青々とした空の真ん中に放り投げだされていた。

 




船員「あれ、今回も何か短いような…」

船長「これねぇ、三次試験と四次試験は結構考え付いていたんだけどさ、一次試験と二次試験ってマジで何も思いつかなくてさ。今、超行き当たりばったりで書いてるのよ…だから、つまり、なんていうか、許して」

船長「まぁさ、本編なんて後書きに比べたらおまけみたいなもんだし。というワケで次回からは「船長~漢の涙と潮干狩り~」が本編で、ウィルとか出てくる方がおまけってことで」

船員「いや、頑張れよ」

船長「すいませんでした…まぁ、次回からかな。内容が少しずつ色ついてくるの。今回のは自分で書いてて思ったけど、先週のとセットで良くね?って思ったくらい内容無いし。」

船員「てなワケで次回は、サバイバル×デ×デスゲーム!」

船長「絶対読んでくよな!」




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10

「オンハゾロドバンハヤソワカ…オンハゾロ…」

 

 第一試験を突破した受験者達はウィルと同様に空中に放り出され、二次試験の会場となるであろう薄暗い森の中へと各々着地していった。

 

「オンハゾロドバンハ…」

 

 その森の最も深い場所でウィル達が目を付けていた謎の包帯を巻いた人物が何か呪文のようなものを怪しく唱えていた。

 

「よぉ…」

 

 呪文を唱えているその人物の後ろの草木を掻き分けながらユミヒデが現れ、その人物に話しかけた。

 

「…………ユミヒデか」

 

 暫くの無言の後、謎の人物がユミヒデに話しかける。

 

「全くよ…昔からホントに不愛想だよな…久しぶりだなぁ!!メイセイよぉ!!」

 

 そう言うとユミヒデは腰に掛けてあった鞘から刀を抜き、そのままメイセイの方を目掛け刀を振り下ろした。

 

「………オンハンドモドバンハヤソワカ」

 

 そう唱えながらメイセイが手を組み八葉蓮花の印を結んだ。途端、空中に白い風が渦巻き、その中心から金で彩られた無数の刀や槍がユミヒデ目掛け雨のように降り注いだ。

 

「たっく変わんねぇなお前は!」

 

 声を喜喜として荒げながらユミヒデは無数に降り注ぐ武器をたった一本の刀で全て切り落とし振り払っていった。

 

「…一緒にいた二人組は何だ…」

 

 メイセイがユミヒデに問いかける。

 

「あぁ、ここに来る途中で知り合ったんだ。何だって俺らに恨みがあるみてぇでな!」

 

「ほぅ…我々に…か…」

 

「あぁ、あのがたいの良いウィルって奴は親友を殺されたんだと!眼鏡を掛けてるパーシアってガキは直接口には出してねぇが、あの様子だとあいつも何らかの恨みがあるみたいだぜ!」

 

「……ほぅ…殺せるのか…そ奴らに…我々を……」

 

「ん、まぁ無理だろうな!今のところは。な」

 

「………見込みがあるのか」

 

「さぁな。俺の念をチラっと見せただけであのパーシアってガキは相当ビビッちまってたが、ウィルって奴は俺の念を前にしてもある程度堂々とは出来てた。まぁ内心ではチビッてただろうがな!!」

 

「念の存在すら知らぬ者がお前程の念使いを前に堂々と……か」

 

「だが、そんなんじゃ意味がねぇんだよ。あいつ等が本当に俺らと対峙するってんならな!」

 

 そう言うとユミヒデは念を込めた刀を力強く振り下ろした。周りの空気と風を強く纏ったような衝撃波がメイセイの上空に渦巻いていた白い風ごと吹き飛ばした。

 

「……そうだな…本気で我々を殺したいのなら…」

 

「強くなって貰うしかねぇんだからよ」

 

 ユミヒデは刀を地面に突き刺し鋭く強い目をしてメイセイの方を向いた。

 

「……死ぬためにも………この業を断ち切り魂の平穏を得る為にも……それより…例の件は…」

 

「…あぁ、やっぱりハンター協会が一枚噛んでるみたいでな…まぁ、その為にもやはりハンターライセンスが必要になるみてぇだ…。」

 

「……なぜ…奴は…まぁ良い…とにかく…ライセンスとやらが必要だ…」

 

 メイセイがどこか悲しそうに俯く。

 

「…そうだな。…さて、俺はそろそろ行くわ。それと、万が一お前がこの試験落ちても大丈夫だぜ。どうせ俺は受かるんだからよ。ま、お前なら大丈夫だと思うけどよ。じゃーな。」

 

 こう言うとユミヒデは手を後ろに組み、そのままそこから姿を消していった。

 

「……さて……私も瞑想に耽るとしよう……オンハゾロドバンハヤソワカ…オンハゾロドバンハヤソワカ……」

 

 森の最も深い場所で深い哀しみを帯びたかのような掠れたメイセイの声が静かに響き続けた。




船員「更新…した…だと…?」

船長「バ、馬鹿な…ありえぬ…」

船員「およそ4…4か月ぶり…だと…??」

船長「一体何が…」


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11

「逃げろ…!ブラド…!逃げてくれ…!」

 

 それは、これから婚姻する者同士の幸せな生活を祝福するかのような、強く日差しの刺さる晴天の日のことだった。

 

 突如、冗談を述べながらも面白おかしく誓いの言葉を述べていた神父の首が飛び、その血が天使が神に供物を捧げる様子が描かれたステンドグラスにべったりと血糊のように付き、その様子を目の当たりにした皆が恐怖に怯え逃げ惑っている中、大きく肉を裂かれた傷口を押さえながら息も絶え絶えの声でウィルが叫ぶ。

 

「は…やく…」

 

 ウィルは神父を殺した男が自分の親友目掛けてナイフを向けながら襲い掛かったのを見て、咄嗟に親友を突き飛ばし、親友の身を庇った。

 

「君はさ…吸血鬼を赦せるかい?僕にはそんなこと出来ないんだよ…」

 

 ウィルの体からナイフを抜きながら、ウィルの眼前で濃い血の混じったような、どす黒く赤い瞳をした男が満面の笑みでウィルに語りかけ始める。

 

「見てよ…この呪い…」 

 

 そう言うと、男は先ほどウィルの肉を裂いたナイフで自分の腕を切り落としてみせた。すると周りのウィルの裂かれた腹から湧き出た血がその男の腕に纏わりつき始めた。

 

「これは皆不幸にするんだ…僕自身も…周りの人間も!」

 

 ウィルには切り落とされた男の腕に纏わり付いた血がその腕を形成していくかのように見えた。瞬間、男の腕は切り落とされる前の元の状態へと戻っていた。

 

「…なんなんだ…なんなんだよ!お前は!」

 

 ウィルにはこの男が何を言っているのか、何をしているのか全く分からなかった。

 

「君ならこの呪いがなんなのか分かるよね。君たちが作ったんだ。この呪いを!この連鎖を!」

 

 そう叫ぶと男はウィルと共に写真に写っていた男の方を向く。

 

「僕さぁ幸せに生きたかったなぁ…君みたいに!普通に暮らしたかったよ…今日はさ、結婚式かな…いいなぁ…僕もしたいなぁ結婚って…」

 

 男の顔が濃い怒りの感情で歪んでいくのがウィルには分かった。

 

「ブラド……!早くそいつから離れろ………!」

 

 ウィルが全てを振り絞った声でブラドに叫び続ける。

 

「なぁ早く殺っちまおうぜエイブラ!」

 

 この様子を後ろから見ていた金髪で、白く細くか弱そうな見た目の少年が真っ赤な瞳を大きく開きながら騒ぎ立て始めた。

 

「この血見てると…なんだかムラムラしっちまって…我慢出来なくなるんだよ!」

 

 そういうとその少年のような男は自分の体を裂き自分の内臓を取り出しそれを床にぶちまけ始めた。

 

「こ…これっやばぁ…ウヒヒッこれだよ!これ!」

 

 そう言うとその少年が先ほど殺したのであろう女の体の血を使い、エイブラと同じように自分の臓器を再生させ始めた。

 

「女の血ってさ…なんか馴染むんだよね…しかも凄い興奮する。ウヒッエへへへ。も、もっとやろう…」

 

 少年が再生した自分の体を裂き、また自分の臓器を取り出したと思えば、自分の裂いた箇所に殺した女から切り取った腕をいれ、それを使ってぐちゃぐちゃと自分の中をかき回し始めた。その悍ましい光景を見ていたウィルは恐怖と酷い悪寒に襲われ、身を震わすことしか出来なかった。

 

「僕の弟だよ…弟は昔はあんなのじゃなかった!これも!これも!おまえらのせいで!弟は…呪いの影響が強すぎるんだ…それで好きだった子も亡くしてさ…狂っちゃって…!なのに吸血鬼が好きな人と結婚だって!殺す!ズタズタにしてやる!」

 

 エイブラがブラド目掛けて駆け出したの見てもウィルにはそれを止めるれるだけの意識も余力も無くなっていた。朦朧とした意識の中で、真っ赤な血の霧の中、ウィルは親友の名を叫び続ける

 

 ブラド…ブラド…!ブラド…!

 

「ウィル!」

 

 本当に薄れていきそうな意識の中、その聞き覚えのある声がウィルの魂を引き戻かのように響く。その声につられてウィルは目を覚ました。

 

「ようやく目が覚めましたか。全く。いい大人ならしっかりしてくださいよ。あと、ブラドって誰ですか?僕はパーシアですよ。」

 

 パーシアがやれやれと言った様子で今だにどこか彷徨っている亡霊のようなウィルに語り掛ける。

 

「パーシア…?…俺は………そうだ!急に空中にほっぽり出されて!」

 

 ウィルが先ほどまでのことを思い出す。ハンター会場までのこと、一次試験のこと、そしてこれから始まるであろう二次試験のことを。

 

「良かった!僕が見つけなければ貴方死んでましたよ!」

 

「はいはい、ありがとうな」

 

「で、なんの夢を見てたんですか」

 

「え…あぁ…まぁ…いいんだよ…昔の…ことだ…」

 

 パーシアはウィルが思いつめたような表情で拳を強く握りしめたのをみて、何か気の利いた言葉を聞かせようか悩んだがそれ以上何も言わなかった。

 

 森が静かに迎えた満月の光がウィルの顔にかかった影をより濃く落としていた。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 



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