地上最強現る!!!!!! (バイク)
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鬼 襲来!
名前はあれだから、オーガにしておきます
トレセン学園では今現在未曽有の危機に陥っていた。
ウマ娘が通う学園に鬼がやってきていると、学生は興味本位で一目見ようとこぞって理事長室近くに集まりわずかな隙間から覗いていた。
理事長と話し終えたのか扉に足音と人影が近づき慌てて隠れた。
「いったい鬼とはどんな、いえ、どのような人なのか気になりますね」
「怒った時のグラスのような人デスかねー」
「エ~ル~」
「ひ!、じょ、冗談デスよ~」
「あ、きますよ!」
一斉に隠れて様子をうかがう一同、扉が開かれ姿を現した際全員が本能で感じた。
圧倒的な強者であることを
身長は190近く、靡く髪に、女性の胴体なみに太く分厚い筋肉の腕と足、大きな胸板、なにより、鬼と思わせる要素はどこにもないが今までに見たことのない姿だからこそ鬼と呼ばれたのだろうと考えた。
「おお~すごい筋肉デース」
「なんだかとても怖そうな人」
「あの人は絶対に怒らせたらまずいですね、尻尾がさっきから震えています」
「流石のセイちゃんもあれは無理かなー」
「うわー、大きいねー、ご飯いっぱい食べたのかなー」
「ウララさん、さすがにご飯だけではあそこまで大きくなりませんよ」
「きっとすごい鍛錬をしてきたにちがいありません」
「・・ゴルシちゃんはあいつにはちょっかいはかけたくないなー」
「・・・・・噓でしょ!!」
「あの人とカイチョー、どっちが強いんだろう」
「ステータス、恐怖という感情を獲得」
「ライス・・・あの人と会いたくない」
他にも隠れているウマ娘がいるが全員顔を青くしていた。鬼のような人が学園にやってきたという事は全員が認知し、見た目が怖いから鬼と呼ばれていると思い込んだ。ただ、本当に意味で鬼と呼ばれることは今はまだ知らなかった。
「指導員として呼ばれたが何を指導するのかさっぱりだ」
鬼と呼ばれる彼はウマ娘を鍛えてほしいという依頼でやってきたが全く何をすればよいのかわかってはいなかったが、トレーニングを自分がやっているようなものをやらせてみればいいと思い明日から何人かに教えていこうと考えていた。
全体的な筋力の成長と精神面の成長、レースの結果が良くなるように指導をしてほしいと言われもしたが正直そのような指導をしたことがないのでわからないことが多かった。なので自己流で鍛えていくことにした。
「強くなりたくば、俺からどれだけ盗めるものを盗めるのか、それとも血か努力か、いずれにせよ退屈せずにはいられそうだ」
不敵な笑みを浮かべたまま学園を後にした。
どうしよう、思いつかない
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オグリと鬼
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「オグリよ貴様、かなりの量を食べるのだな」
「オーガこそ、ウマ娘なみに食べるのだな」
カフェテリアでは異様な空気に包まれながら、テーブルにおかれた異常なほどの料理を食らい続けている二人がいた。片や葦毛の怪物、片や鬼、誰も近くで食事をしようとはせず遠巻きに眺めているという光景だ。いつも一緒にいるタマモクロスやスーパークリークもオグリと一緒に食べることはなく離れた場所で食べている。
「なんや、あれ、えらい恐ろしいのとおるやんか、オグリ」
「ええ、タマちゃん、私もさすがに怖くて近づけませんねー」
「クリークあんたふざけててもいい子とかしたらあかんで、殺されてまう」
「わかってますよ、その分タマちゃんを思う存分甘やかしますから」
「そうか、ならええ・・・ってあほか、なんでウチをしれっと甘やかす気なんや」
遠くから意気揚々なツッコミが披露される中、二人は無言で料理を食らい続けていた。
そんな中でオグリはいつもなら楽しく食べているこの食事の時間に、何をこの男と話せばいいのか、どうすればいいのか考えながら食べていた。普段のペースより遅く食べながら気が付けば一部の皿が空っぽなことに気が付かなくて虚空をつかんでもいた。
「・・なっちゃいない」
「え!?」
オグリは小さな声を漏らした。
「漫然と口に物を運ぶな」
「日常生活でとやかくを言うつもりはない、友人と楽しく食卓を囲むのもいい、談笑をしながら食べるのもいい」
「あ、ああ」
「そういった事がないのであれば、何を前にし、何を食べているのかを意識しろ」
「何を食べているのかを」
「それが命食らう者に課せられた責任、義務としれ」
「・・・義務」
オグリは言葉が出なかった、普段ならばタマなどと一緒に食事をすることもあれば一人であっても、美味しいと感じながら食べていた。しかし今はどうだ、オーガに言われたこと、意識をしたことのなかったこと、生まれてから今日まで、このようなことを言われたことがなかった。
「・・あいつ、えらいマトモなこというやんけ」
「そうですね~反論の余地もないですね、博識というか、なんというか」
「あいつのいうとおり、意識したことは確かになかったな」
「これは、委託所の子どもたちの勉強にも使えそうですね~」
関心をしながら見守る二人、なるほど~といった声がちらほら聞こえる
「運動をする分、エネルギーが必要なのだろうが、人間とウマ娘ではエネルギー量が圧倒的に違う、オグリよ、貴様は強いと聞いた、ならばたくさん食べ、練習し、結果を出せるようにしなければな」
「!、ああ、もちろんだ、それにトレーナーに健康を考えてもらって、体にいいものなども食べているからな、本番でも負けるつもりはない」
「・・体に良いものか」
「・・駄目なのか?」
耳が少し垂れるオグリ、オーガは違うとジェスチャーで反応し、説明する。
「多くの食品には、防腐剤、着色料、保存料、様々な化学物質・・身体によかろうハズもない」
「そうなのか?」
「ああ、しかし、だからといって健康にいいものだけを採る、これも健全とは言い難い」
「・・どういうことだ?」
「毒も喰らう、栄養も喰らう、両方をともに美味いと感じ、血肉に変える度量こそが食には肝要だ」
「血肉に変える」
「・・・簡単に言えばなんでも美味く感じ血肉に変えていくことが大事だ」
「!!、なるほど、ならばたくさん食べねばな」
感心したオグリはすぐに気が付けば止めていた食事を再開させた。食事が終わったオーガはいなくなり、残された生徒たちは先ほどの言葉を思い出し、普段道理の食事をするなか、食事をする際に意識をしながら食べるようになった。
「いやー、なんというか、えらい賢い人というか、なんというか」
「とてもいいひとなんですかねー?」
「まあ、見た目とのギャップがありすぎてまだ信じられへんは」
「ふふ、そうですねタマちゃん」
「血肉か~勝つためにはそれくらいできんとな」
「ええ、いっぱい食べましょうね~」
「おう、ってなんでウチにあーんをしようとすんねん!」
「あらあら、駄目ですよ、しっかり食べなきゃ」
「かんにんや~!!」
知らぬところでクリークの甘やかしが始まったことをオーガは知らなかった。
あ~難しいもんですね、どうしよう
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スズカと鬼
晴れ渡る空のもとターフではチームスピカと鬼が一緒にいた。スピカのトレーナーだけでなくメンバー全員がドキドキしながら整列していた。
「えー、き、今日はオーガさんに一緒に練習を見てもらう事になりましたので、みんなが、頑張りましょう」
震える声で頑張ろうと言うが、見るからに全員が青い顔をしながらオーガを見ていた。彼女たちは全員心の底から自分が声を掛けられることがありませんようにと願っていた。
「えー、スズカはオーガさんに指示を貰ってください」
「・・・・・噓でしょ!!」
スズカは一瞬でこの世の終わりのような顔をした。周りからは頑張れなど心配される声、あげくには骨は拾ってあげるなどの声がかけられた。
そして場所を少し移動し、二人きりになると、オーガからは特に教えることはないと言われた。
「え、ええっと、私はどうすれば」
「・・・あいにく走ることに関しては教えられることは俺にはない」
「え?」
「貴様のトレーナーにレースの映像を見させてもらったが、速くゴールに向かって走っているとしかわからん」
ならいったいどうすればいいのか、スズカは左回りになりながら考えていた。
「貴様はいったいどういった気持ちで走っている」
「え、ええっと、誰にも先頭の景色は譲りたくない気持ちで走っています?」
なぜ疑問形なのかは、いきなりこう言った質問をされたからであろう。緊張と驚きと不安が埋め尽くされる中、何かを考えるオーガ、数分経つとようやく口が開いた。
「ならばスタートダッシュを変えてみるか」
「スタートダッシュですか?」
「脱力という言葉はわかるな」
確か、体の力を抜くような言葉だったはず、あっているかは分からないが、それとどう関係あるのか、疑問に感じた。
「脱力という技を教えよう、過去・・・多くの競技者や武術家がおこなった難行だ」
「難行、それを覚えれば、さらに早くなれるんですか」
見せてやろうと、直線距離を走る準備し、説明をしながら実践する。
「今から見せるのは、脱力を超えた脱力、最終的に目指す形だ」
「形・・ですか」
「いわば、イメージを具現化させ、体現する。筋繊維を液体、さらには気体レベルにまで弛緩させ、しかる後に、緊張へと転ずる、そこに発揮される爆発力、期待を大きく上回る」
「イメージ、液体?」
いったい何を言っているのか、どうするのか分からなかったが、何かが目の前で起こるとスズカはなぜか確信していた。
「仮に忌み嫌われる虫、ゴキブリが人間サイズ以上ならば起きえる可能性、実力、あの生物だけ可能とされる最高速を初速に実現させる技」
「え、む、虫?ご、ごき?」
「目に焼き付けておけスズカよ」
二人の空間にだけ異様な空気が流れるのを他のメンバーも気づき、食い入るように見入る。これから何が起きるのかを彼女たちはまだ知らない、これから起こる現象が後に彼女たちにも影響を与えることを。
オーガは脱力を液体レベルから気化へとイメージし、超脱力をおこなった。
静かになった場では、もちろんスタートの合図もなく、ただ風が吹いていた。
なにか言おうと思ったその瞬間、オーガの姿がブレた、いや、消えたのだ。
「え?」
その瞬間、地面が抉れる音と爆発が起きたような音、そこから発生した風がスズカにたたき押せた。ほんの一瞬、一瞬で姿が消え、はるか先の方でオーガがたっていた。
「え、なにが起こったの?」
「え、そこにいて、今あそこだから、ワケワカンナイヨー」
「おいおい、嘘だろ、反則だろうあれ」
「これが脱力、今のはその先の脱力だが、ウマ娘ならばこれくらいならたやすくできるだろう」
「いや、無理だろこれ」
一同が頷き、肯定する。普通の人間でも無理だと、人間業ではない、けれどこれをものにしたときどうなるのか、今以上に早くなれるのかと考えたが、オーガのある一言で全員が身に着けようとしたのをやめた。
「時間はいっぱいある、ある程度できるまで、やり続けろ」
「え?、い、いつまで?」
「俺がいいというまでだ」
「・・・・・噓でしょ!!!!!!」
本日何度目の噓でしょなのか、鬼がいると全員思いながら、あー、相手は鬼だったと思い返しながら練習に戻った。その後ある程度脱力を身に付けることができるようになり、併走トレーニングでは驚異的なスタートダッシュを身に付けたスズカに勝てる相手はいなくなり、本番のレースでは圧倒的な大差で勝利を手にした。
ライアンかタイシンかブライアンか、それともゴルシか、次は誰にしようか悩む
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タイシンと鬼
うるさい、黙れ、私を見下すな!、小さい体で体格差で勝てない?、うるさい、そんなことあたしが一番分かってるんだ!、消灯時間もとっくに過ぎた学園、ターフではまだ一人、小柄なウマ娘がなりふり構わず走っていた。
「まだ、まだ、こんなんじゃ」
息も切れ、疲弊している身体、追い込み追い込み、勝利を求めて練習する彼女はまさしく今にも壊れそうであった。最近のレースでなかなか勝てずにいた彼女は勝つために自身の身体をひたすら追い込んでいた。彼女のトレーナーもどうすればいいのか、あらゆるアドバイスを、トレーニングを実践するが成果はなかなか出ない、正直なところ行き詰っていた。
「クソ、どうしたら」
「ほう?貴様、確かナリタタイシンといったか」
「は、なに、あんた誰!?」
名前を呼ばれ振り返るとそこには巨大な男がいた、暗く顔は見えなかったが、月明かりに照らされ近づいてきた瞬間に何者かは理解した。最近よく話題に上がる鬼である。
初めて見る大きさと身体、本能的に恐怖を感じ震える声で尋ねた。
「お、オーガがい、いったいなに」
「ただの暇つぶしだ、そしたらたまたま貴様がいただけにすぎん」
「そ、そう」
暇つぶしとはいったい、こんな時間にこんな場所でできることなんてない、けれど今はそんなことどうでもいい、そう考え練習に戻ろうとした。
「やめておけ、そんなことをしても無意味だ」
「は、なに?、あんたも否定すんの、無理だって!!」
切羽詰まっている彼女にとって先ほどの言葉は火に油を注ぐ行為であり、先ほどまで震えていた声とは思えない怒号がオーガに向けられた。
「・・・ただがむしゃらに走ることに何の意味がある」
「そ、それは」
「意味もない行為などやめてしまえ」
それだけを伝えると踵を返し立ち去ろうとするオーガ、静寂な場に遠くなっていく足音だけが響いた。
「だったら、あんたがあたしを鍛えてよ!!」
オーガの足が止まり顔だけ振り向いた。
「あんた、強いんでしょ、見た目からそうだし、周りを黙らせるほどの力をあたしに叩き込んで!!!!!!」
心からの叫び、強くなるためにどんなことでもやってやるという強い意志が目に宿っていた。オーガはにやりと笑うとタイシンに近づきいいだろうと声をかけ明日からと伝え、そのままどこかへ向かっていった。
次の日のターフではタイシンのトレーナーとオーガが一緒に練習を見ていた
「・・・・・ってな感じなんですけど、どう思いますか」
「・・・冷静さを欠いているな」
「はい、なので普段のような走りが本番で、できなくていつも勝てないんです」
「あいにく俺はそういった脚質での話はできなくてな、本職に任せる」
「はい、わかりました、ではメンタル面ではお任せしてもいいでしょうか」
「・・・ん」
現状と今後の予定を確認し、練習を見ていると併走トレーニングになるとうまく走れなくなる彼女の姿が良く目に入った。
「・・・ナリタタイシンよ、貴様、なぜ持ち味を生かさない」
「はぁ、はぁ、え?、持ち味?ちゃんと生かしてるでしょ」
「その割には、相手と競い合いながら、無駄が多い」
「なに?何が言いたいの?」
「競うな!持ち味を生かせ!」
「・・・持ち味」
言っていることが少し理解できたのか、先ほどまでの顔とは少し違った。終盤まで脚をため、驚異的な末脚で勝ちに行くのが彼女のスタイルであり、無意識とはいえそのスタイルができていない状態が続いていた。
「レース本番、貴様は余計なことを考えすぎている」
「それは、仕方ないじゃん、こういう性格だから」
少しムッとした表情で腕を組み可愛らしく見えるが本人はいたって真面目にふてくされている。
「たかがレースの競争相手に勝利するという単純な行為に、小さいだの、勝てないだの、見下すなだのーーーーー、上等な料理にハチミツをブチまけるごとき思想!!!」
大きな声での一喝、タイシンが考えていることに対しての一喝でもあった。
勝つためには無駄なことを考えるな、純粋な闘争で、結果勝てばいいなど次々と言葉が投げかけられていく、トレーナーも同じように頷き、肯定する。いや、急な大声で内心かなりビビりながらうなずいている。
「ナリタタイシンよ、貴様は力が欲しいと言っていたな」
「え、う、はい」
「ならば貴様の身体にある技を叩き込む!」
見ておけとその場で上の服を脱ぐ、いきなりの行為に驚きもしたが、それ以上にオーガの身体に驚いた。異常に発達したファイティングマッスル。すべてが大きくあ間で合った。
(おいおい、なんだこれ、背中が)
後ろから見ていたトレーナーはオーガの背中の筋肉の形に驚いていた。普通なら目にすることのない筋肉の結晶、どれだけ鍛錬してもこのような筋肉にはならない。絶対と言っていいというほどのものであった。
(凄い、背中に、お、鬼が)
彼がオーガと呼ばれる由来が分かった気がした。背中に鬼が宿り今、目の前で何が行われるのか全く予想がつかなかった。
「これより見せるは象形拳、熊の戦闘形態を真似た熊象拳、虎の勢いをイメージした虎形拳、蟷螂の戦闘法を採り入れた螳螂拳、様々型を工夫するも、言うなれば所詮はモノマネッッ」
「え?ちょ、なに?モノマネ?型?」
「型を見せるのはイメージを作るための手本だ!!!、競い合っている中で型を披露することなど到底できまい、だが、イメージを体現化、具現化することでその迫力を周囲に知らしめることは可能!!!」
一つ一つの型を披露するオーガ、虎、熊、蟷螂、素人目でもはっきりとわかるほどの型を採り入れた生き物の姿が!!!、タイシンは今目の前で起きていることにはっきりと言えば追い付いてはいない、けれどその動きから見せられる生き物のイメージ、迫力は伝わっていた。
弱肉強食だけが旨、苛烈な自然界を幾千世代、彼等に備わる戦闘法、この世の法則に沿う、絶対強者の戦闘法だ、強者から学び、生き残った者から学ぶ、選ばれし者から学ぶ、絶対的解答、モノマネとはいえ、彼女にとっては十分であろう。
「今見せた型、それ以外にも採り入れる、貴様が使えるようになるまで徹底的に叩き込む、泣き言は許さん」
「!!、上等!」
レースでも使える象形拳を身に着けるため、オーガとタイシンとトレーナーによる新しいトレーニングが始まった。出走予定のレースまでにどこまでできるのか、毎日毎日走り、採り入れ、走ることを繰り返す。そんな中で迎えたレース当日。
「タイシン、今日までやれることはやってきた、あとは思う存分発揮するだけだよ」
「わかってる、あと暑苦しい、うざいから」
「うぐ、でも頑張って」
「はいはい」
いつものやり取りが終え、ゲートに向かう中オーガがいた。腕を組み凭れている彼は何も言わず眼だけで勝って来いと言っているような気がした。不思議となぜか笑みがこぼれそのままゲートインをした。
レースが始まり後方での立ち位置のナリタタイシン、いつものように走り、脚をためている。ただ勝つことのみを考え余計なことは一切考えていなかった。
「まだ、まだ、ここじゃない、もっとギリギリで」
最終コーナーを超え、上り坂に差し掛かった瞬間先頭で走っているウマ娘達が異変を感じ掛かり始めた。
(やばいやばい、なにかがくる)
(怖い、逃げなきゃ)
(無理無理、脚が勝手に!!!)
「はぁぁぁぁぁ!!!!!!」
一気に上がってくるタイシン、その動きはとても素早く、そして獲物を狙うような目で合った。彼女が採り入れた生き物はシャチであり、陸上の生物とは無縁ではあるが、海では立派なハンターでもある。型とは言えないが、この状況なら型に捕らわれるよりもイメージから繋げた方が得策である。
狙った獲物は逃さな獰猛なハンター。今目の前で走っている彼女たちを喰らうほどの迫力があった。完全とは言い難いが獲物を定めた時の加速を真似た。驚異的な末脚でグングンと追い抜いていき、タイシンは久々の一着をとることができた。
今日出走したウマ娘たちは食べられるかと思った、怖い、泣き出す子もいたという練習の結果としては上々で合った。
「オーガさん、ありがとうございました」
「・・・まだ、粗いがいいだろう」
「名づけるなら、鯱形拳、ですかね?」
「・・・くだらん」
特に興味もなさそうな感じで応援場所から離れていくオーガ、最後に一言だけ、今以上に強くなりたくなったら尋ねろとだけいい、歩いて行った。そんな彼にここまでしてくれたことに対しても含めて
「優しいんですね、オーガさん」
その一言に足を止めたオーガは、髪がゆらりと立ち上がり、顔だけ振り返った。眉間にしわが寄り睨みつける表情でありこういった。
「それ以上喋ると、犯すぞ!!!」
その一言にトレーナーは全身に衝撃が走った。ぼ、僕をかッッ!!!!!!?
このトレーナーである男の僕を手込めにするとーーー!!!!?
「い、いやぁ~、そ、それはチョットォ」
青い顔をしながら下を向くトレーナー、気が付けばオーガはいなくなっており、先ほどの言葉を思い出し少し体が震え、タイシンを迎えに、控室で着替え終えたタイシンをトレーナーは急に抱きしめ、急なことに赤面したタイシンが蹴るというなんとも締まらない形で一日が終えたのをオーガは知る由もなかった。
ライスシャワー、最強強化されたハルウララ、タキオンどれにしようかな
それとも大穴でメジロパクパクですわ~?
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トレーナーと鬼
とあるバーでチームスピカのトレーナー沖野とチームリギルのハナトレーナーが一緒に飲んでいた。そしてそこに呼び出されたオーガも一緒に一杯やっていた。
「いやーこうして久々に飲めるってのもいいもんだね~」
「まったく、いつも金欠のくせに、悪いけど奢る気はないからね」
「あ、あはは」
苦笑いをする沖野、あきれた表情でくぎを刺すハナ、興味なさそうに飲んでいるオーガ、店主であるマスターとこの三人以外に人はいないため、何ともないが、他に人がいればオーガの存在が大きく、ゆっくり飲むこともできないだろう。
「・・・俺を呼んだ理由はなんだ」
「いやー、いろんな娘に色々教えてるって噂で聞きますけどどんなことを教えているのか気になって」
「あら、あなたのとこのスズカも教えてもらっていたでしょ」
「そうだけど、それ以降他のところで教えてる感じで、この前なんかBNWのナリタタイシンが物凄くレースで化け物になったとか」
「・・・・・」
グラスに入った琥珀色のウイスキーを流し込み一息つく、少し考えるようにグラスを見つめ口を開く
「強くなりたい、強くなる可能性があるものに少し教えただけだ、俺の使わない技を教えただけだ」
「使わない技って、まるで格闘技でもやっていたのかしら」
「確かに、凄い筋肉だもんな」
「あなたが食いつかないってそういえば珍しいわね、ウマ娘ならだれでも飛びつくあなたが」
「まるで変態みたいな言い方しないでよオハナさん」
「もし触れていたら殺していた」
「ひっ!!!!ふ、触れませんよ」
軽く殺気を出し脅し口でいうと青い顔でビビりながら触れないという沖野、その姿を見て笑いをこらえるハナ、何とも言えない空間ができていた。
「そうね~せっかくだし私のチームにも来てもらおうかしら、まだまだ成長の見込みがある娘が多いのよねー」
「・・・・考えておく」
「そうしてもらえると助かるわ、なにせ最強と言われるメンバーが勢ぞろいだもの」
「シンボリルドルフもさすがにビビったりして」
「あら、あの娘初めてオーガにあった時顔には出してなかったらしいけど内心凄い怖がってたらしいわよ」
「嘘~あの皇帝が~、想像つかないな」
「ほんとよ、それに、彼女は期待している」
「期待?」
「そう、簡単なことではないけれど多くのウマ娘が強くなれることを」
「強く変わっていけるのかな」
カクテルを飲み、喉を潤す、その瞳には何が映るのか、まるで遠い何かを見ている眼だった。
「猫が獅子に変貌ることもある」
「え?」
「強者と弱者、中には親と比べられる者もいる。親が優秀であれ、子は出来損ない、また、出来損ないの親のボンボンとしては上出来だと言えるだろう、世の中はそうやってみる者もいる」
「それは、流石に」
言い過ぎではないか、それではまるで今までの努力を含めて否定しているものでは、捉え方がどうであれ、そう感じた二人、だがまだ言葉は続く
「貴様等は重大なミスを犯している!!!」
「重大な」
「ミス?」
ミスと言われても思い浮かぶ事はない、いったい何がミスなのか、改めて考えてみるも何も思いつかない、だが沖野は何か思い浮かんだのか、浮かび上がった言葉を口にした。
「もしかして、甘やかしていると?」
「ほう、自覚があるとー?」
「いや、多分だが、必要以上に過保護になってる。ウチは自由にやらせている分、それ以外が甘かったりする、特にゴルシに関しては物凄く甘いんだろう」
「あ~、あの娘よくわからないけれど、普通なら練習に参加すればメニューをこなすのだけれどそれが通じないものね~」
「そう、皆を強くするためにいつも財布の中を空っぽにしているけど、壊れないように限界以上の練習は組まないからな~」
カランとグラスの氷が音を立て、思い出すように目を細め、ハナのように遠い眼をしていた。トレーナーとしては優秀な2人、けれど彼らは優しすぎた。
「おい」
「はい」
「ポート・エレン10年物を……」
「かしこまりました」
マスターの後ろにある何百種類ある酒、その棚から一つのボトルを取り出し飲み方を聞いた。ロック?、ストレート?、それとも割るのか
「ボトルとジョッキを・・・・・・」
「・・・・ッッ」
ボトルを受け取ると、逆さにし瓶の底部分である場所に手を乗せ、まるでペットボトルのふたを開けるような感覚で瓶を切った。
(((エ~~~~~~ッッ)))
切った部分をジョッキに向け、なみなみと注いだ。そして注ぎ終わるとジョッキを持った。それを見ていたマスターはひどく驚いていた。
(飲む気!?、スコッチをジョッキで・・・ッッ、アルコール分70パーセントのスコッチをジョッキで・・・ッッ)
「いや、オーガさん、それはやばいですって」
「そうよ、死んじゃうわよ」
止めに来る2人にお構いなくといった感じで一気に飲み干すオーガ、それを見た三人は、おおおおおお~~~~~と声を出した。
「限界を超え、幾度も超えた先に手にしたい頂がある。なのに限界を超えるのは一度や二度、それ以上は越えない、いや、貴様等が超えさせないようにしているからだ」
タバコを取り出し咥え、マッチで火をつける。そして吸い始めるとみるみると先端から灰に変わっていき、フィルター部分まで灰に変わり灰皿に全て落ちた。
とんでもない量の煙がマスターに噴出され咳き込むマスター、その光景を見て口を開けるトレーナー二人
「誰もが勝利を欲するならば幾度もなく限界を超えていかなければいけない、それができないのなら夢を掴むなど、幻想にすぎん」
言いたいことを言い終えたのか、金を置いていき二人を残してバーを去った。
残された二人は再起すると軽く飲みなおし、チームメンバーのことを考えながら、練習メニューのことを考えながら帰宅した。
感想何人か書いてくれてありがとうございます、頑張っていきますんで、多分
評価も上がればモチベも上がると思いますのでお願いします。
ライス・ターボ・チケット・アマさん・マヤノ、誰にしようかが悩む・・・
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ウララと鬼
ウララはそのうち魔改造される予定です。ウララさん? ウララ様? なんになるんだろう、ピンクの彗星? ピンクの悪魔?
「わー高い高ーい」
「・・・・・」
トレセン学園では本日生徒が思わず二度見をする、驚愕することが起きていた。見た目もさながら怒れば怖いあのオーガがなんとハルウララを肩車しているという。
どうしてそうなったかというと相変わらずレースで一度も勝てないウララ、いつも楽しかったと笑顔で帰って来るあのウララが落ち込んでいたからだ。
レースで負けて悔しいから落ち込んでいるのだろうと思い、同室のキングヘイローが悩みを聞くと、レースのことではないらしく、何か心当たりがあることがないのか聞くとないと答えた。
きっと時間が経てば解決するだろうと思いきや一週間落ち込んだ状態であったため、もはやお母さんのような立ち位置になっているキングがウララの担当トレーナーとどうしたらいいか話し合っていた。
その時に丁度オーガが近くを通り、最近色んなウマ娘に教えている彼ならどうにかできるのではないかと思い、頭を下げお願いしたのである。もちろんオーガは断ったがキングがどこにいてもお願いしてくるため、仕方なく引き受けたのである。
ちなみにお母さんという単語に引き寄せられたウマ娘が片手にスモッグを着せられて死んだ眼をしていたウマ娘を持ってやってきたがお引き取り願いました。そして現在に至る。
「ねぇねぇ、オーガさんはどうしてこんなに背が高いの?」
「・・・・さぁな」
「え~、教えてよ~」
「・・・腹いっぱい飯を食って鍛えた」
「なるほど~ご飯をいっぱい食べればいいのか~」
「ああ」
「じゃあ、好きな食べ物は~私はね~ニンジン!」
「何でもだ、特に好きなものはない」
「え~ニンジンは~、じゃあ~次はね~」
「・・いい、それよりも貴様が悩んでいる訳を話せ」
単刀直入に聞く、この状態で長くいるのも癪だからである。するとウララは先ほどまでの元気はなくなり、少し時間が経ってから語り始めた。
「あのね、最近胸が痛いの」
「・・・・・」
「レースを楽しく走ってたのにね、今も楽しいのに胸が痛いんだ」
「そうか」
「それにね、勝ってる子を見てると変な気分になるの」
「そうか」
「それでね、・・・それで・・元気が・で、でない、わからない」
徐々に話す元気もなくなり嗚咽が聞こえる。肩の上で髪に温かい水が落ちる。気にすることもなくただ歩くオーガ、ターフの芝コースまで来ると足を止め口を開いた。
「貴様は今悔しいという感情を持っているのだろう」
「・・・・」
「心の成長とでもいうべきか、勝利への欲求に一歩踏み込んだ。それが胸の痛みだ」
「悔しい?」
「ああ、あいにく俺には悔しいという気持ちを抱いたことはないがおおよそ予想は付く」
「・・・・そうなんだ、これが悔しい気持ちなんだ」
「・・・友人たちと過ごせばそのうち解決するだろう」
「うん、わかった」
「・・・少しばかり元気付けてやろう」
肩車の状態のウララの首根っこを掴み引き下ろす。そこから手のひらに足を乗せ直立状態のウララを思いっきり天高く投げ飛ばした。投げた場されたウララは学園の屋上以上に飛んでいき空高く飛んでいる。そして重力にひかれて落下してくるウララをキャッチした。
「凄い凄い、今お空をビューンって飛んだ、もう一回してー」
「いいだろう」
そこから何回も何十回も投げ飛ばし、周りで見ているウマ娘は投げ飛ばされるウララを見て悲鳴や青い顔をする。その中にはキングも混ざっていた。十分に満足したのか楽しかったと、元気になり次は何をするのか楽しみに目をキラキラさせオーガに話しまくる。
背中にのっけて全力で走り抜くオーガ、プールで一番体力を消耗するバタフライで2.3時間背中にのっけて泳ぐオーガ、鬼ごっこをしたいというので無理やりそこら辺にいたウマ娘を強制参加させ、オーガだから鬼役という事で全力で追いかけまわした。(参加させたのはウララである)
ただ追いかけるだけでは面白くないので鬼のような形相で追いかけまわした。ウララ以外のウマ娘はガチ泣きしながら全員その日のタイムレコードをたたき出していたらしい。
「ひっぐ、ひっぐ、もうやだおうち帰る!!!?」
「うわーん、トレーナー、ごわがっだ~!!!」
「グス、ひっぐ、ひっ、お兄様~あぁぁぁ!!!」
「エラー、バッドステータス恐怖を獲得、目から涙が止まりません」
「・・・・トレーナー、ルナ今日離れたくない、一緒にいて」
「おがぁぢゃ~ん、都会の人、おびが、ごばいべ~、もう北海道帰る~」
「カイチョー、うわ~~ん、えっぐ、グス、怖かったよ~!!!」
「およよ~限定スイーツパフェが」
巻き込まれた者たちでカオスな空間が浮かび上がっているが、なぜかウララだけは笑顔だ。むしろ参加させたウララの方が圧倒的に鬼である。本人はいたって無自覚である。
担当トレーナーに泣いて抱き着くウマ娘、家に帰りたい、北海道に帰りたい、無表情で目から涙を流すウマ娘、キャラ崩壊してトレーナーに抱き着くウマ娘にさらに抱き着くウマ娘、1人この鬼ごっこで逃げたウマ娘の被害により違う意味で泣いているウマ娘が1人であった。
「楽しかった~、またみんなやろうね~」
「「「「「「「やらない」」」」」」」
「うわ、みんな揃ってる!」
「・・・・・ちとやりすぎちまったか」
「でも楽しかったよ!」
「そうかい、ならさっさと帰りな」
「うん、オーガさんまた遊ぼうね!」
「・・・・他の奴に遊んでもらえ」
寮へと帰っていくウララを見送り特にもう用はないので自分も帰ろうとする。帰る前にこの状況をどうにかしてくれと各トレーナーに言われるので黙れと一喝、すると先ほどまで泣いていたウマ娘はピタッと泣き止み、これでいいだろうとその場から立ち去った。
ちなみにウララはいつものように元に戻り、オーガはさらに怖がられる始末となった。
全然ほのぼのしてなかった、ほのぼのは無理かな~、泣くか泣かないかになりそう
ここからネタ切れにならないようにしなければ
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グラスと鬼
昼のカフェテリア、そこでは様々なジャンルのメニューがありウマ娘は好きな料理を頼みそれを平らげていく、そんな中でもグラスワンダーとエルコンドルパサーの2人組は一緒に昼食をとっていた。
一つのテーブルに集まり仲良く食べているとグラスの向かい側のテーブルにあのオーガが座っていた。普通ならば、あの人もお昼ですかで終わるのだが、彼のテーブルには10人前はあるだろうか、ウマ娘の量並みに料理が並べられていた。ジャンルは、和・洋・中の3つであった。
「あら~、凄いですねあの量」
「ケ!本当に人間デスか?」
「それにお箸の持ち方も食べ方もきれいですね」
「う~エルには無理デス!」
「エルはその前になんにでもホットソースをかけるのをやめなさい」
「ノー、それはできません!」
手持ちのホットソースを料理にぶちまけ、そのはねたソースの一部がグラスの刺身定食にかかってしまった。
「エ~ル~?」
「ひ!しまった!グラス、ごめんデ~ス!」
「謝ってすめば切腹いらないんですよ~」
「ノーーーーーー!!!!」
眼だけが笑っていない、表情は柔らかでも底知れぬ何かがエルを襲った。それよりもオーガの方が気になり視線を戻すとすでに半分ほど平らげられており、空の皿を見て驚いたことがあった。
「!!、とても綺麗にお魚の骨がはがされています」
「ほんとデース!」
「それに身だけがない」
「!!」
そう、魚の骨には必ずと言っていいほど多少は身が残る。だがオーガの皿には身が一つもついていない魚の骨があった。ただそれだけではなかった。ウマ娘は耳がとてもいい、人間には聞こえない小さな音でも聞こえるほどにである。
「音がしない」
「音デスか~?」
「ええ、ナイフとお皿が触れるほどの音は聞こえたりしますが、それを除けば音が全くしないんです」
「ええ!!、ほんとデスか?」
「それに姿勢もとてもいい、まるで高級旅館やホテルで食事をしているようなとても素晴らしいテーブルマナーを身に付けています」
「ええ~そんな風には全然見えませんけどね~」
「ええ、人は見かけによらない、まさしく言葉通りですね」
初めてこのような美しい食べ方を見たと言わんばかりに、食い入るようにオーガを見つめるグラス、それ程にまで美しくあったのだ。
自分の料理も堪能しつつ、ちょくちょくとチラ見していると料理をすべて平らげたオーガがいた。食べ終わると手を合わせるのではなく、会釈をした。
「あれは?ごちそうさまという事でしょうか?」
「ケ?さ~よくわからないデス」
「多くの作法や技術を身に付けているのか、少し気になりますね」
「ならグラス、聞いてきたらどうデスか?」
「!、そうですね、あとで聞いて来ようと思います」
食事を終え、トレーニングも終わり少し時間があるのでオーガを探し食事の作法などを聞き出した。あまり多くは語ってはくれなかったが満足する話ではあったのでとても嬉しそうであった。
次の日の昼では教えてもらったことを思い出し実践、いつもより綺麗に食べられるようになり、またエルがソースを飛ばしてきたときはとうとう眼すら笑っていなかった。
「あああああああ、ごごごg、ごめんなさい」
「どうしましたエル?」
この時エルはグラスの後ろに般若らしき姿が見えたという。オーガから作法だけでなく仕留め方や何かを学んできたのかもしれないとスぺ達に語った。
そろそろあの人を出してみようかと、顔に傷がある人を
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クリークと鬼
この世の終わり、世紀末、学園の滅亡、誰もが恐れていた、誰もが恐怖した。タマモクロスが犠牲になった。ナリタタイシンが犠牲になった。ルドルフがルナちゃん化したなんてことをしてくれたんだ、なぜそいつにそんなことを言ったんだ、怖いもの知らずか、あのオーガに…………でちゅね遊びだと!!!!!!!!!!
スーパークリークがいつもの発作のように担当トレーナーを甘やかすだけでなく、タマモクロスを強襲、なすべなく慈悲もなく園児服を着せられ、何か嫌な予感を悟ったナリタタイシンはタンスに隠れるも、青〇のようにゆっくりとタンスを開けられ捕まってしまいタマモクロスと同じ道を歩んだ。
そんななかでクリークが次に目を付けたのがオーガであった。大きな母性の塊と母のような優しさ、完全にママであるクリークがオーガに目を付けたのはなんでも最近頑張っている姿を見るので甘やかしてあげて元気になってもらおうとのこと、もしオーガに何かすればきっと個々の学生はみな見たものを含め絶滅させられるであろう。
そんな未来を予想したルドルフはハナさん以外のある男性トレーナーに抱き着いていた。もうやだと弱音を吐きながら。
「貴様、迷いごとを抜かすならここで仕留めるぞ」
「もう、ただ私なりにねぎらおうとしてるだけですので、そんなに怖い顔をしないでください」
「……ほう、殺されたいらしいな貴様!!!!!」
一触即発、お互い譲らないプライド、周りからは頼むからやめてくれとの懇願のまなざしがクリークに突き刺さる。だがそんなものはお構いなしに暴走するクリーク
「困りましたね~それでしたらいいこいいこしてあげますよ~」
「この俺に触れたら貴様を殺す」
「もう、そんな怖い言葉を使わないでください」
「けっ、付き合ってらんねー」
下らん遊びに付き合う気はないとその場を離れてどこかへ行く、だが来る日も来る日も同じようなことがたて続きに起こるので、オーガのいら立ちが限界に達していた。だが、問題を起こすわけにはいかない、彼にとってウマ娘など赤子の手をひねるようなもの簡単に壊れてしまう、しかしながら心のどこかでクリークのあのわがままを貫き通す力を認めてもいた。
「もう、何回目だ」
「ん~~わかりません」
「いい加減にしろ、貴様のままごとに付き合うつもりはない」
「はい、なのでもうあきらめようかと思います」
「なに?、諦めるのか?」
「ええ、それに最近他の子が怯え始めていて、このままだと嫌な予感がするので」
事実そうであった。もしここで先ほどのやり取りが再開されるのなら威嚇程度に校舎の壁を軽く粉々に破壊するつもりであった。ある意味危機察知能力が高いクリークであった。
クリークの命知らずの暴走が止まり学園に平和が訪れた。安心して日常生活を送れるようになったウマ娘たちはもしクリークがまた暴走を始めそうになったら全力で止めに行くと決意した。一方で、暴走は止まれど、タマモクロスへの被害率が多くなり、ほとんど毎日死んだ眼でクリークに抱っこされている姿を見るようになったとかならなかったとか
「なんでや~助けて~」
「すまない、タマ、カレーを作ってくれると聞いて」
「オグリ~」
カレーのために友を生贄に差し出す輩がいた。
はい、短めです。ネタ切れです。あ、次はあげません!のスぺちゃんとオーガかもしれないし、違うかもしれない
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ウオッカとヤクザ者
「2馬身差から3馬身差で距離を開けていくウオッカいったいどこまで伸びるのか~、今ゴール!!!!、レースを制したのはウオッカ!!!」
「くうう~また勝ちやがった!」
「…………」
「二代目!かっこいいでしょう」
「……そうだな」
筋肉質の巨体に白の高級そうなスーツを身に纏い大きな顔の傷に眼鏡、場所は病室、右手の瓶に入っている酒をあおりながらその巨体はある人物の近くで静かに鎮座していた。
「あ~抗争で怪我してなかったら見に行ってたのにな~」
「…………」
「あ、すみません二代目」
「…………いや、いい」
「もしこの怪我が治ったら一緒にレース場に行きませんか、物凄く熱い気持ちになりますよ」
「…………そうかい、治ったらな」
「はい、ありがとうございます」
「…………なにか欲しいものはあるか」
「いえ、こうして見舞いに来てくださるだけで十分です」
「…………そうか」
ある程度話が終わり退室しなければいけなくなったので、無口のまま病室を後にする。何かを考えるように無言のまま黒の車に乗り帰宅していった。
帰って来ると机の上でずっと腕を組み考えている。
「…………」
「二代目、どうしたんですか」
「…………見舞いの品」
「ああ、先日の抗争で、怪我した者にですか」
「ああ」
「う~ん、それでしたらなにか好きな物とか送って差し上げればいいでしょう」
「…………酒の嬢ちゃんか」
「…………はい?酒?」
助かると一言告げその日は寝た。次の日からの行動はとても速かった。白のスーツを身に纏い、とある場所まで送迎をしてもらった。到着すると少しばかり歩いて大きな学園の門前にたどり着いた。
「…………」
「あの~すみません、何か御用でしょうか?」
「…………ああ、すまねぇ人を探してて」
「人をですか?」
「ああ、確か……酒の嬢ちゃん」
「…………酒?えっと、お酒ですか?」
「ああ、そんな名前のウマ娘?というらしい」
目の前でツインテールのやけに胸のデカいウマ娘が話を聞いてくれている。ただ怪しみながら話しているので、警戒されているのだろう。無理もない、顔に傷のある大男が訪ねてきているのだから
「あ~すまねぇ嬢ちゃん、無理ならいいんだ」
「あ、えっと、すみません」
「…どうすっかな」
仕方ないので帰ろうとすると学内の方から誰かを呼ぶ声が聞こえてきた。駆け寄ってくるその姿は病室のテレビで見た少女であった。制服を身に纏い、目の前にいるツインテールの少女に駆け寄った。
「何してんだよ、トレーナーが探してたぞ」
「あ、あんたなんで今ここに!」
「あ?来ちゃダメなのか?」
「あ~も~う~」
願ってもない、会いたかった人物がこうして目の前に来てくれたのだ、帰ろうとしたが帰るのをやめ、話しかけに行く
「…………酒の嬢ちゃん」
「あ?、ひっ、なな、なんだ?酒って、ウォッカじゃなくてウオッカだ!」
「すまねぇ、ウオッカの嬢ちゃん、実は頼みがあってな」
「え、たた、頼み!?」
「駄目よ聞いちゃ!絶対やばい話だから」
見た目からにして威圧感のある大男、どこぞのオーガよりはるかにましといえども顔に傷のあるしかもスーツ男なんて普通の一般人とは思えない、目の前でギャーギャー言い合っている二人を見てただ無言で突っ立っているだけだが、このまま騒ぎを大きくするわけにもいかないので、今のうちに帰るとする。
「ほう、まさか貴様がここに来るとは」
「!!なんであんたがここに!!」
「な~にただの気まぐれだ、それよりも何をしに来た」
「…………ウオッカの嬢ちゃんを少し貸してもらいたい」
「……いいだろう」
「「え??」」
トレーナーでもないましてやオーガにさらりととんでもないことを告げられた二人は驚愕する。約一名に関しては青い顔どころか震えている。
「安心しな、こいつは大丈夫だ、何かあったとしても俺が叩きのめす」
「……」
「い、いや、トレーナーは、トレーナーに許可を貰わないと?」
「そんなものいらん、俺が許可する」
「「えーーーーーーー!!!」」
さっさと行って来いと一喝し、ツインテールの胸のデカいウマ娘を引っ張っていきウオッカだけがその場に残された。
「……すまねぇ、ちょいと病院までついてきてくれ」
「え?び、病院?」
とりあえず、車に乗ってもらい目的地まで向かう、車の中でウオッカは飲み物やらを渡されVIP扱いを受けていた。移動している間に何か話さないと落ち着かないため何か話そうとするが何も思いつかない、重い空間の中男が口を開いた。
「……実はな、うちの組の者があんたのファン?らしくてな見舞いの品であんたを連れていこうと」
「あ、え、く、組?まさか、や、ヤクザ!?」
「……ああ」
(いやいや、嘘だろ、ヤクザ、え、俺どうなるの?」
「……それにしてもあのオーガがまさか」
「あ、え、オーガを知ってるのか?」
「ああ、戦ったことがある」
戦ったことがある?それってまさか喧嘩?ヤクザと!!!!とんでもないやつについてきちまったし、ヤクザに勝ったのか?……まさかな
「着きました二代目、ウオッカさん」
病院に到着すると慣れた足取りで病室まで向かう。病室前にたどり着くと少し待っててくれと言われしばし待つウオッカ、五分ほど経っただろうか、入ってくれと追われたので扉を開けて入室した。
「え、ええ?に、二代目、どういうことですか?」
「……見舞いの品だ」
「いや、品って、え~、どうやって連れてきたんですか!!!!」
「……頑張った」
ベットの上で物凄い驚いている男と無口なヤクザの男、正直早く帰りたいなと思いつつ軽く自己紹介をすました。ベットの男はどうやら自分のファンであるらしく、ヤクザの男が口数が少ないが経緯を説明している。
「あ~ウオッカちゃん、なんかすまねぇ、まさか二代目がこんな風に連れてくるとは思ってなかった」
「あはは、いいっすよ、全然、それよりファンって聞いたんですけど」
そこからは時間が経つのが早かった。推しのウマ娘にこういった形ではあったが会えたこと、サインを貰えたこと、時間が許す限りではあったが存分に語り合い、その様子を見守るように1人酒をがぶ飲みしながら眺めていた。
「……時間だ」
「もうそんな時間ですか、今日はありがとうございました二代目にウオッカ」
別れの挨拶を済ませ病院を後にする二人、トレセン学園へと車を走らせ、ウオッカを送りに行く
「今日はあんがとな嬢ちゃん」
「いいっすよ、全然、それに部下のためにこうして行動できるなんてチョーかっこいいっすよ」
「……そうかい」
車に揺られながらあれやこれやと話す二人、学園についてからはウオッカを降ろしてから一枚の名刺を差し出した。
「こいつは?」
「俺の名刺だ、もし何かあったら尋ねるなり、電話するなりしてくれ、そん時は力になる」
「え~と花山薫?って読むのか、わかった、貰っておくぜ!」
「……世話になったな」
車に乗り込み、家へと帰っていく花山、後日トレセン学園では、この光景を見ていた他のウマ娘からヤクザと仲を持っている怒らせたらヤバイウマ娘認定され、しばらく怖がられるなどのこともあった。しばらくして寮の部屋に戻ると大きなダンボールの荷物があった。
「これは?」
「さぁ?あんた宛だってさ、何も書いていないけど」
「あ、もしかして」
ダンボールを空けるとそこにはニンジンや酒が入っていた。花山が飲んでいたあの酒、ワイルド・ターキーが何本か入っていた。8割ほどはニンジンであった。
「……あんた飲まないでしょうね」
「……一本だけなら」
「駄目よ、未成年が飲んじゃいけないは」
「なんだよ、分かってるけどよー、ちょっとくらいならいいじゃん」
一本ではなく、少しくらいならいいだろうといつものギャーギャーした喧嘩に近い話し合いが始まった。結果としては飲むのではなく、部屋に飾っておくだけとなったが、残りはすべてスピカのトレーナーが処分という名の飲酒することになったが、酒を持っているところをエアグルーヴに見つかり、小一時間ほど説教をされた。
すんません、書いてて無理でした。もういっそレースじゃなくバトルシーンでも入れようかな、無口キャラ厳し~、そろそろ裏ボスのデジタルを投入すべきか悩む
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ゴルシ、裏を知る
「あんだここ?、まさかここはお宝が眠ってるんじゃねーか、いやっほーいついに埋蔵金見つけたりかー!!」
とあるドーム地下、一般人なら足を踏み入れることはないだろうとある場所に足を踏み入れたゴールドシップ、いつものようにあらゆる所、場所を探索し、面白いものを探しに回っていたら、たまたまここをみつけたゴルシであった。
「にしてもこんなところがあるとはなー、ゴルシちゃんセンサーがなかったら見つけられなかったぜ!!!!!」
何があるのか、ワクワクしながら歩き続けるゴルシ、暗い暗い廊下を歩き続け、ついに出口らしき場所にたどり着いた。
「…………なんだこれ、砂場?、……闘技場か?」
出口の先にはまるでドームのような観客席に真ん中に砂場の隔離されている闘技場らしき場所があった。彼女はこうみえてもウマ娘、人より耳も嗅覚もいい、だからこそこの場所の違和感にすぐに気づいた。
「おいおい、ここはやべーな、血の匂いがプンプンするぜ……いったいここは何なんだ」
「ほう、こんなところにウマ娘とは珍しいのう」
「あん?誰だ!!!!!」
背後を振り返るとそこには袴を着たとても小さなご老人がいた
。
「おうおう、あんた誰だ、というか、ここはなんだ?」
「ほほう、お主、何も知らずにここにたどり着いたのか?」
「ん?ああ、ゴルシちゃんセンサーにビビッときてよ、お宝があると思ってきたわけよ」
「お~何を言っているのかわからんが、ここを見つけるとは並外れた嗅覚とでも言っておこう」
「ゴルシ様にとってこんなもん朝飯前よ!!!!!」
ところでここはいったいなにか、場合によってはいつでも駆け出せるように準備しながら警戒を怠らないゴルシであった。
「ここは地下格闘技場、あらゆる猛者共が己の力を試しトーナメント形式でこの場所でのチャンピオンを決める場所じゃ、それ以外にも非公式ながらも夢の競演バトルも見ることができる」
そもそもこの場所自体が非公式なものでよっぽどの人間でなければここに来ることはできないし、表には公表されない、ここの秘密を漏らしてはいけない暗黙のルールがある。
「闘技場、それにしてもこの血生臭さ、普通の格闘技じゃねだろう」
「鋭いのう、ここではあらゆる攻撃が可能であり、武器や火気厳禁での反則技も含めてやりたい放題のルールでやっとるからのう、血生臭いのは対戦相手同士が流した多くの血がそこの砂に染みついておるからじゃろう」
どのような選手が参加しているのかは答えることはなかったが少なくともここはやばいところ、良い意味でも悪い意味でも、そしてこのご老人は何者なのか
「あんた、名前は」
「おお、忘れとった。なーにしがない爺じゃ、御老公とでも呼んでくれ」
「…………」
「さて、儂は帰るからの、もし興味があれば一週間後にまたここに来たらええ」
その後ゴルシは何かを考えながらその場を離れた。好奇心は猫を殺す。普段から行動が読めない、珍行動でもあり、誰も手が付けられない彼女であったが、持ち前の頭脳を現在ではフル回転させている。知ってはいけない事、あの場では自分以外にも人がいたこと、一週間後に何かがおこなわれること。
「…………まあいいや、あたしたちには関係がなさそうだしな、帰ってマックちゃんのシュークリームの中身をからしに変えとくか」
スーパーでからしを買い、マックイーンのいる寮にこっそり侵入し計画を実行、次の日鬼の形相をしたマックイーンがゴルシの目に鼻にからしをぶちまけ、目と鼻を抑えながらのたうち回るゴルシであった。
出てきたね~レース関係ないの、バトル系は無理かも~
ハイボールでもカラカラ言わすか、飲みながらステップするか、悩む
あ、次は達人が出ます。渋川だよ~
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友情トレーニング、鬼情トレーニング 1
オーガによる友情トレーニング、オーガの友情トレーニングがどんなのか、トレーニングを受けたものを紹介していこう。
メジロライアン
「無理、これ以上は壊れちゃいます」
「・・・・・続けろ」
「はぁ、はふ き、キツイ」
「そのうち楽になってくる」
「そ、そんなこと、い、言われても身体が、もたない」
「限界を超えろ」
山で身体中に重りを付けている状態で走ったり、ロープの上り下りをさせたり、道がない道を走らせたり、身体が限界のサインを出しても関係なしであった。
ツインターボ
「うわーーーーーんん!!!!!イグノー!!!!! ネイジャー!!!!!」
「ごめんターボ、無理」
「…………すみません」
スタミナを強化するためにターボが全力で逃げるのをオーガが追いかける。もう逆噴射とは言わせない、スタミナを切らさずに走り切る力も身に着けられる。
むしろ逃げ切らなければどうなるか想像したくないので全力で逃げるターボ。
トレーニング後はマチカネタンホイザに慰められていた。
「怖がったよー!!!」
「いや~あれは誰でも泣くよ絶対」
ライスシャワー
「飛べ」
「む、むむ、無理です!」
「飛ぶか落とされるか」
「ひいっ!!!!!」
飛び込みで有名なスポットの飛び込み場所で水着のライスシャワーに飛べと脅すオーガ、臆病な彼女を強くしたいとの彼女のトレーナーに頼まれライス本人の依頼でもあった。
「オーガさん、流石にこれは」
「お、お兄様、助けて!」
「貴様が落とされるか、トレーナーが落とされるか、自らの意志で飛び込むか……好きな方を選べ、ライスシャワー」
「いいっっ!!!お鬼様だ……おにいさま……ライス」
「あ~~~~~!!!」
「お、おお、お兄様ーーーーーーー!!!!!」
痺れを切らせたオーガがトレーナーを落とし、悲鳴を上げて落ちていくトレーナー、その光景を見て助けに行こうとすぐに飛び込みに行くライス、その様子を見て笑うオーガ、ここに鬼がいると周りが呟いていた。
ゴールドシップ
「…………なんだこれ」
「岩だ」
「そりゃあ、見りゃわかんだよ」
「球体に砕いていけ」
「は?」
「己の五体のみでその岩を砕き球体に仕上げろ」
「いやいや、ちょっと待て、ゴルシちゃんこんなの無理だって」
「やれ」
「いや、だから」
「やれ」
「…………」
大きな岩を殴る蹴るなどで砕き、球体に仕上げろと、そんな芸当がゴルシにできるはずもなく、途中から泣きながら拳や足をボロボロにしながら岩を叩くゴルシがいた。数時間後には号泣しながらトレーナーに抱き着き二度とこんなトレーニングは受けないと叫んでいた。
スペシャルウィーク
「うう、お腹すいた」
「できたぞ」
「どうして、どうして」
「…………」
「エア夜食なんですか!!!!!??」
減量中のスペシャルウィーク、彼女が食べ過ぎないように食事の量も減らし、日に日に元気がなくなっていく彼女は寝る前の時間帯などでは常に空腹と戦っている。そんな彼女を見たスズカはどうにかしてほしいとオーガに頼んだ
。
「水ほどにも味はない、だが、自然なまでの動きによって再現された調理過程からのこの料理、味はしなくても、匂いなどするだろう」
「た、確かに!!!」
「たかがままごと、だがイメージによる脳の記憶からその料理の味や匂いを再現する。意味はないがな」
「うう~ご飯食べたい、なしてー、なしてー」
エア夜食により空腹が強まり、朝食でオグリに引けを取らないほどの量を朝から平らげていた。
ただの拷問な気がしてきた。トレーニングとは……なんぞや?
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鬼神トレーニング 2
ナリタブライアン
ミリミリ ブチ クチャクチャ ガプ ミリーー クチャクチャ ガプ モグモグ
クチャクチャ ブチリ ハグ モニュ クニュ モチャモチャ ギリ ゴクン
山奥の小屋で焼けた肉にかぶりついているオーガとブライアン、ブライアンが強くなりたいという事で、山に籠りに来た。食料はなく、オーガが熊などを素手で倒しその肉を喰らっている。熊を一撃で倒すオーガを見てその時ブライアンは恐怖で震えあがっていた。
「ん、美味いが、獣臭さがな」
「文句を言うな 内臓の塩漬けもある。刺身もな、強くなりたくば喰らえ!!!」
「ああ、喰らいつくしてやる、肉は正義だ!」
次々と肉がなくなっていき、保存食にも手を付ける。量はまだまだあるので問題はないがそれも時間の問題である。また後で狩りに行かなければいけない。
そこからブライアンは一緒に熊を倒しに行ったり、ボス猿、巨大な猿と命を懸けた戦いをしたり、崖から川に落とされたり、学園に帰ってきたころには歴戦の猛者のような風貌であり、姉であるハヤヒデはオーガに文句を言い詰め寄った。
「ブライアンがいつも以上に野菜を食べなくなった!いったいどんな食生活をしていたんだ!!!」
「…………」
「答えろ!!!!!!!!!!」
「…………」
スーパークリーク
ガラガラとおしゃぶりを持ちあたりのウマ娘を誰であろうが幼児化させるクリークそれを眺めているオーガ。オーガいわく、己の我儘を貫き通すことが最強であると、強くなりたいのであれば我儘を貫き通すことだとクリークに伝えた。その結果が今である。
「あかん、もう、おしまいや」
「タマ諦めるには早いぞ、まだ他にも仲間はいる」
「あんた、そこでおしゃぶりつけられて死んだ眼してるタイシンが目に映らんのか!!!」
「映らないな、犠牲者は……知らない」
「お、オグリが壊れてもうたーーあんたそんなこと言うキャラちゃうはずやー!!!」
学園内はカオスであった。次々と幼児化し、死んだ眼をするもの、中身まで子供になるもの、希望である生徒会長であるシンボリルドルフは生徒を数十人助けてからルナちゃんにされてしまい、仲のいいある男性トレーナーがこの子の失態を見せるわけにはいかないと回収していった。
「クリークさん、こっち来ないでください!!!」
「逃げろー!!!」
「待て待て~逃がしませんよー」
「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
学園内に複数の絶叫が響いた。
「あー」「バブー」「キャッキャ!!!!」「遊ぶのー」
「とれーなーをくすりでほぞんするの~」「んぶぶぶぶぶぶぶ」「うっらら~」
「おねえちゃ~~ん」
地獄が出来上がってきていた。これには閻魔も顔が真っ青になるだろう。
エアグルーヴ
「うう、会長、トレーナー、ブライアン、誰でもいい……助けてくれ」
涙腺が崩壊直前のエアグルーヴ、レースで掛からないように精神面を強化するためエアグルーヴをある部屋に閉じ込め、人体に対して影響を持たない、与えない無害である虫を大量に放り込んだ。虫が嫌いである彼女は泣きそうになりながらも女帝としてのプライドでこらえる。
「ひ!よ、よるな、たわけども!!!!」
カサカサ ブーン ピト
「んぶぶぶぶぶぶぶ、も、もうやだ……誰か~」
心の何かが折れる音がした。毒虫を大量に集めて最後に生き残った者が一番強い、蟲毒を再現させるようなことになっているが、無害な虫なので問題はない、……はずである。
「あはは、カイチョー、ブライアン、私は……もうだめだ~」
泣きながらエアグルーヴは気絶した。オーガはその光景を見ながら酒を飲んでいた。気絶から目覚めてもまた気絶を繰り返す。日が落ちてからようやく解放されたエアグルーヴは数ヶ月誰かと一緒に寝るか、虫を見るとすぐに気絶することになっていた。ハナさんから物凄く怒られたオーガであった。
メジロマックイーン
「うう、スイーツ………………すいーちゅ~」
「食いたいか?」
「あ~、物凄く食べたいですわ~」
「ほう、ならば食すか?」
「うう、でも我慢ですわ、我慢しなければ」
ランニングしながらスイーツを食べたいとの禁断症状が出てきているマックイーン今は減量中であり、大好きなスイーツが食べれないのである。もし隠れてスイーツを食べようものならオーガによるビンタの仕置きが待っている。ふざけてちょっかいを出したゴルシが喰らい、泣きながら飛び跳ね、転がっていたのを目撃したのである。もしあんなのを喰らえば彼女は様々な失態を犯すだろう。
「うう、マックイーンファイトですわ」
「…………」
「えいえいおーですわ」
「…………」
「あ、あの雲まるで綿菓子みたい」
「…………」
「あ、パフェみたいですわ」
「…………」
「あ、すい~~ちゅ~~」
「……ふん!」
「------------!!!!!」
集中力が落ちてきておるマックイーンの背中に鞭打を打ち込んだオーガ、それを喰らい声にならない悲鳴を上げ転げまわるマックイーンであった。遠目から見ていたゴルシもその光景を見て震え上がっていた。
コメントも増えてきて嬉しいです、評価も上がってきているのでモチベ上がります!
ただ更新スピードは落ちてきますのでご了承ください、ただ・・・・ネタが切れてきたという理由です。
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用務員とウマ娘達
私はトレセン学園の用務員、今日は学園に通うウマ娘達の日常を教えよう。
まずは、BNWのビワハヤヒデだ。彼女は理論に基づいた考えで作戦やトレーニングメニューを考える。丁度練習をしているようだ。
「ふう、休憩にするか」
おや、何かを取り出したぞ?、スポーツドリンク…………ではないな、何やらタッパーが出てきたぞ、おや、バナナも…………なるほど、練習の合間のエネルギー補給ですか。
「ふむ、やはりバナナはいいものだ、手軽に食べれて栄養も満点」
バナナを食べ終えると、次はタッパーに手を伸ばす。中身はおじやだ。しかもウメボシ付きのおじやである。
「ほほう、タッパーいっぱいのおじやに梅干しですか、どれも即効性のエネルギー食ですね、しかもウメボシもそろえて栄養バランスもいい」
おじやを食べ終えると最後に何やら黒い色の飲み物が出てきた。
「あれは!!!」
コーラだ、しかも炭酸を抜くためにコーラを激しく振っている。炭酸が抜けたことで中身が少なくなったが、気にすることもなく飲み干す。
「ほう、炭酸抜きコーラですか……たいしたものですね」
炭酸を抜いたコーラはエネルギーの効率がきわめて高いらしく、レース直前に愛飲するマラソンランナーもいるくらいです。しかも練習中、オグリキャップほどではないとはいえ、消化力は高いというほかはない
「よし、これで必要な栄養は問題ない、後はエネルギーになり替わるのを待つだけだ」
「いや、素晴らしい、流石ビワハヤヒデだ」
次はあのシンボリルドルフ、学園の会長であり圧倒的なカリスマの持ち主だ。あまり係わることはないが、たまになんというか、ダジャレを考えている場面に遭遇する。言いにくいが寒いのだ。そして見つけてしまった。
「ふむ、このカレーはかれえと」
「…………」
「ライスが横に移動する。スライス!」
「………………」
「スペシャルウィークと過ごすスペシャルなウィーク」
「あ…………」
「テイオーは落ち着きがないな、そこにステイオー」
「……見てられない」
「スーパークリークがクリークで勝つ!」
何も見ていない……そうだろう、あんな姿誰にも見せられない
次はセイウンスカイ、彼女はよく昼寝をしている。よく見かけるし、サボり魔である。
「ZZZZZZZZZZ」
「あ~完全に寝てるね」
気持ちよさそうに昼寝しているセイウンスカイ、彼女のトレーナーも大変だな、いつも探し回ってるし、それに……なんというか……まぁいいや
「どーこーだーウンス!!!」
「お、探してるな相変わらず」
あれ、いつの間にか逃げてる!恐るべし策士セイウンスカイ!
次はアグネスデジタルのアグネスだ。ウマ娘なのにウマ娘オタクと、なんとも珍しい分類だ。
「うひょー、滴る汗にもつれ合う2人、しゅごい!!!」
「……おいおいおい」
「は、あれはウララちゃん!ライスちゃんも一緒!はう、尊い」
「おいおいおい。死んだわあいつ」
「はっ!会長とテイオーちゃん!いつも仲が良くて、はう、あんなにくっついて嬉しそうな2人……押せる~!」
知らぬが仏、うん、見なかったことにしておこう
最後はオグリキャップ、大食いのウマ娘だ。丁度おやつかな?
あれ?なんか物凄く悲しそうだし泣きそうだ?何があったんだ?
「オグリあんた、また食べ過ぎで食事制限かいな」
「ああ、そうなんだ、おやつのニンジンケーキを20個までと言われた」
「おお、そうかー」
「20個しか食べれないんだ、私はたくさん食べたいのに」
「いや、20でも十分食いすぎや!」
ケーキ~と呟いているオグリキャップ、食べすぎだから制限されているんだから我慢しような、でも見ていると可哀そうに思えてきたからキャンディーでもあげようかな…………いや、たくさん買ってあげよう!
いや~毎日が楽しいな~いろんな子がいるから飽きないね!
いけるか~、頑張れ~、どこまでネタを引っ張れるか!
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アンチェイン登場
「お~久しぶりの日本、さてオーガに合いに行くとするか」
アロハシャツからでもわかるその巨体、まるで筋肉の塊が歩いていると周りの乗客たちは話していた。いったいどんなトレーニングをしたらそうなるのか、男はタクシーに乗りある学園へと向かう。
「…………」
「なんでオーガは正門にずっと立っているんだろう」
練習中のウマ娘達がずっと気になっていること、いつもふらふらとどこにいるのか分からないあのオーガが正門でずっと立っている。誰かを待っているのか、それともなにか恐ろしいことでもあるのか、するとタクシーが一台止まる。中から出てきたのはオーガ並みのガタイを持つ大きな人だった。
「お~ごぶさただな~オーガ」
「遅いぜ、アンチェイン、待ちくたびれるとこだったじゃね~か~」
巨体と巨体、しかも両方筋肉が化け物、嫌な予感がしたウマ娘は即座に逃げ出した。なにか絶対に巻き込まれそうだと思った。
「それにしても、オーガが指導員としていると聞いたときはとても驚いた」
「だろうな、俺だってこんなことはする気はなかったさ」
「一体どんな心境の変化だ」
「ここにはレースでは強いやつがわんさかといる。もしその中からレース以外に格闘技などで強くなりたい奴がいれば鍛えてやろうと思ってな」
「ほう、それならますますわからなくなった、なぜ鍛えるんだ?」
「簡単な話、いずれこの俺に牙を向けるやつを育てて喰う、家畜を育てて喰うのと一緒だ、可能性の塊の宝庫だからな」
「おいおい、それは可哀そうだぜ、流石に同情するぜ~」
ついつい我が子を喰らってしまった時と違い今度は自らの手で育てて喰う、おまけに女性ときた、いくら強くてもオーガのお目にかなう奴がいるのか、正門から移動しながらアンチェインはトレーニング施設を見て驚いた。
「おいおい、オーガ、ウマ娘ってのはここまで重たいものを持ち上げられるのか!」
「100だろうが300だろうが中学生で持ち上げられる奴もいる」
「……クレイジー」
「常識外れのトレーニングは一緒だろう」
砲弾で撃たれようが、腹筋の上を車で引かれようが、ヘリと綱引きしようが、そんな人間外れの技に比べたら、かわいく思える。もっともウマ娘には絶対に無理なトレーニングをアンチェインはおこなっている。
「収監されているお前がこうして出てきたのも観光やバカンスなどではないだろう」
「ああ、ある犯罪者が逃げ出してな、日本に逃げてたことが分かってな、私が来たんだよ」
「ほう、アンチェインが出るほどなのか」
「ああ、変装と人攫いの達人でな、少々私としても難しい案件だ」
「ならとっとと捕まえることだな」
「そうにもいかないさ、情報がなくてな、一つだけわかるとしたら、人攫いの対象が決まっていることだ」
「…………」
「残念なことにウマ娘が対象さ、いい金額になるらしくてな、裏の人間が好き勝手に売り買いしているのさ、おまけに綺麗ときた、いい愛玩動物になるらしい」
何とも言えない話、周りに誰もいないことが幸い、聞かれてはまずい話だ。ただオーガにとって攫われようが関係のないこと、興味のないことだ。
「オーガにとっては興味がないだろうが、狙われるのは強いやつ、つまりこの学園の生徒である可能性が非常に高い」
「……なるほど、はっきり言ったらどうだ、生徒を守っておけと」
守れるのかとの挑発に対して誰に言っていると返す強いやつを攫う、つまりオーガの野望の敵になる。十分過ぎる警備員だ。
「まぁいい、もし立ち合ったら仕留めればいいだけのこと」
「な~にささっと捕まえてここでバカンスでもしとくさ」
仕事ぶりも気になるし、いいトレーニング相手もいるからな、もし、もしもだ、オーガに牙をむくことのできるウマ娘がいたならば一目見ておきたい。近いうちに牙をむくであろう実の息子以外に張り合える相手がいるのか
「そうだ、オーガ、お目にかなう子がいて戦ってどうする気だ?」
まさか、殺してしまうことはないだろうが、戦場が遊園地であったオーガにとって戦いは殺戮、敵と言う名のアトラクションを楽しむ、もしそうなれば、ここの生徒は一体何人犠牲になるのか、想像するだけでも恐ろしい
「そうだな、殺すことだけは絶対にないな」
「…………はは、冗談だろう。あのオーガが?」
まさかオーガの口からそんな言葉が出てくるだなんて、丸くなったのか、それとも
「…………いいのがいたらその時は」
「…………その時は?」
「俺の子を産め!!!」
そう言うさ
「おう、ジーザス、正気かオーガ?」
「正気だ、強者の種と強者の身体、一体どんな餓鬼が生まれるのか、どれだけ血が濃く生まれるのか、楽しみで仕方ない」
もう行くぜと、歩いてどこかに向かっていくオーガ、引きっつった笑みで考えるアンチェイン、この学園で生徒に手を出す。つまりそれはこの国の法律的にまずいのではと、いや、オーガをさばける法律などこの世にはなかったな
「…………オーマイガー、なんだか可哀そうになってきたぜ、犯罪者を捕まえる前にオーガが犯罪者にならないことを願うぜ」
捕まえるのは骨が折れるからなと、それに、犯されるなんて事を知ったら絶望するだろうな、何もないまま興味がなくなっていくのを願うアンチェインだった。
無理やり出した感半端ない……だめだこりゃ
渋川、本部、独歩、烈までは書けたけど、これ以上はきつい、どうしよう……もうやっちゃう?地下格闘技出しちゃう?もう、ハルウララ魔改造やっちゃう?サポートカード全部パワートレーニングだけど、それでもいい?ゴルシの格闘技デビューしちゃう?
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護身術を学ぼう
ウマ娘に人が力でかなうはずはない、これは常識であり事実である。人間がどれだけトレーニングしようが、どれだけ重量のあるバーベルを持とうが、それをいとも簡単に持ち上げる、超えてくる。むしろ人間が持てないような重量も持ち上げることもできる。仮に痴漢をしようものなら病院送りは確実である。
けれど全員が全員であるとも限らない、中身は思春期の女の子だ、それは普通の一般の女の子と変わらない、いざって時に力を出せない、なんてことがあって泣き寝入りなんてことはあってはならない、ただでさえ綺麗な子が多いのだ。
「諸君!そんな訳で身を守るすべを覚えてもらう!」
「今日は護身術の達人に来てもらいましたので、身に着けられるように頑張りましょう」
体育館に集められた全校生徒、理事長とたづなさんが説明する。達人がどのような人か、ワクワクしていた。
扉が開かれ中に入ってくる小さな老人、なんというかとても弱そうと全員が思った。
「どうも、渋川といいます。今日はよろしくお願いします」
腰の低い、本当に達人なのか、達人はもっと強そうな、それこそオーガのような人間ぐらいと思っていた。
「それでは、二人一組になってペアを組んでください!」
仲の良いメンバー、ライバルなどで組んでいき、あっという間にペアができていく
「おいおい、本当に達人か~?なんかすごく弱そうだぞ?」
「ゴールドシップさん、貴方なんてことを、失礼ですよ!!!」
渋川に近づき上から見下ろすゴルシ、必死に止めにかかるマックイーンを無視しジロジロと見回す。
「お~、随分デカいの~」
「おい、どこ見て言ってやがる」
ゴルシの背ではなくその豊満な胸を見て答える渋川、なんとも食えない爺さん、それがゴルシの感じたことであった。
「失礼!ゴールドシップ元の場所に戻れ!」
「あ~いいですよ、全然、せっかくなので立ち合いましょうか」
「お、なんだ~やんのかゴルシちゃんと」
ざわざわとざわめく、一触即発といった感じではなく、一方的なものではあるか実に興味深かった。実力を知れるのだから
「それじゃあ~えんりょなく~」
いつもの笑顔で近づき肩を掴もうとする。それに対して渋川も笑顔である。特に動くこともなくそのまま捕まれる。その時になんとなくではあるが直感で嫌な予感がしていた。けれどもうすでに遅く次の瞬間には身体が地面に倒れていた。
「え?」
「なにが?」
流れるような動きで組み伏せられるゴルシ、周りからはただ掴みに行ったゴルシがそのまま倒れたようにしか見えなかった。
「合気とはこういうもんじゃよ」
「おいおい、まじかよ」
背中に冷や汗が流れるだけでなく本能で勝てないと理解したゴルシ、そのままの状態からゆっくりと立ち上がり元の場所へ戻っていく。練習が始まるとほとんどの生徒が力任せにやるので、実際に転ばせたり、教えたりして、身につけさせていく。
最後は学生全員対渋川の立会いのがおこなわれ、学生側が全員転ばされるといったことになった。
後日ゴルシはさっそく身に付けた合気でマックイーンを転がしまくっていた。
体調崩して更新スピードがおっちゃった。
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ライスと鬼 天皇賞春
天皇賞春
王者メジロマックイーンの三連覇を阻止するか
極限までそぎ落とした身体に鬼が宿る。漆黒のステイヤー ヒールかヒーロか、悪夢か奇跡か
そのウマ娘の名は
ライスシャワー、ミホノブルボンの三冠を阻止、続いて春の天皇賞でマックイーンと一騎打ちになるだろうと予測される。漆黒のステイヤー、祝福の名を関するが、ミホノブルボンの三冠を阻止という形でヒールと呼ばれ嫌悪された。偉業をまた阻むものとして報道、それ故に彼女は走ることをやめた。
だが、偉業を阻まれ、敗北したミホノブルボンの説得により天皇賞春に出場することに決めた。
「…………」
「オーガさん、お願いします」
天皇賞春は3200メートル、並の体力や精神力ではマックイーンに勝てないだろう。それ故に力をつけるためオーガに練習を手伝うように頼みに来た。
「…………どう言うつもりだ」
「…………勝ちたいんです。マックイーンさんに」
「………はぁ、貴様のトレーナーにもしつこく頼まれたからには地獄を見てもらうぞ」
「はい、勝つためになんでもします」
意思は固いようだ、ならば地獄を見てもらい、耐え抜けば勝てるだろう。
ライスを連れ山にやってきた。道なき道を進むとそこは渓谷であった。岩が露出し尖ってもいる。かなりの高さであり、川はとても深い、落ちれば間違いなく上がってこれないだろう。
「飛べ」
「え?」
聞き間違いだろうか、飛べと言われた気がした。
「あの、なんて」
「飛べ」
「ひい!!!!」
聞き間違いではなかった。飛べ=死ねと言われているものだろう。
「貴様は弱い、主に精神面が、精神力は肉体を超越すると言うが、あながち間違いではない、だが、それ以上に大事なものがある。」
「大事なもの?」
「飽くなきまでの闘争本能だ!!!!」
拳を握りニヤリと笑いながら訴えてくるオーガ
「勝利への欲求が己に力を与える、それ故にハードなトレーニングになる。ここから飛び降りれなければ教えることはこの先ないと思え」
無茶苦茶だ、ここで死んでしまえばすべてが無駄、関係が全くない。というか、なんで飛び降りるかが理解できない
「極限までの集中力を身に付けるのならば死にかけるのが手っ取り早い、走馬灯を見て、極限にまで集中され、スローになった世界を見てこい」
そして無慈悲にライスを突き落とした。聞いたことのない悲鳴と絶望した顔が重力に逆らえず落ちていく。心なし優しかったのは川へと落としたので障害物にぶつかることはなかったことぐらいである。命の安全はあるので、その後はしっかりとオーガが回収しました。
「ひっく、ひっく、グス、ああ、怖がった、うう」
「次行くぞ」
「あ、ああ」
泣いていようが、言葉が出なかろうが関係ない、首根っこを掴み連れていくオーガ、連れてこられた場所は大きな洞窟であった。
「ここから、そうだな、あの山の頂上まで来い、先に待っている。」
「ええ、物凄い遠いよ、無理だよ、オーガさん」
「無理なら死ぬだけだ、その前にまず己の身を守れるように死ぬ気で走るんだな」
「え?、死ぬ気?、な、何を言っているの?」
「追いつかれたら喰われる。シンプルだ、死ぬ気で上がってこい」
訳の分からないことを言うオーガ、テイオーなら、ワケワカンナイヨーと言っているだろう。だがすでに頂上へと向かったオーガの姿は見えない。いったい何に喰われるのか、熊だろうか?
「とにかく、頑張ろう、えいえいおー、頑張れライス!」
可愛らしく一人で鼓舞するライスの後ろの洞窟の洞穴から、足音が聞こえてきた。
本能で何かがいると、振り向いてはいけないと感じとったライス。しかし、ほんの些細な出来心であった。、ちらりと後ろを向いてしまったのである。
「ひぃ!!!!」
「ホギャァァ!!!!」
そこには馬鹿でかい大猿がいた。片手には何かの動物の頭蓋骨が握られており、先ほどの言葉の意味を理解した。捕まれば喰われる。あれは捕食者だ。
恐怖で足が震えることはなく、それ以上に逃げなければという判断が勝った。全力で逃げ始めるライスを餌と認識した猿が追いかけてくる。
ライスは走った。追いつかれまいと必死に走った。ウマ娘の脚力には勝てない猿は距離が徐々に空いていき気が付けば完全に巻いていた。だが、ライスは走った。死にたくないと、そしてたどり着いた。オーガのいる場所にと
「はぁ、ふぁ、ああ、は、はは、生きてる……ライス生きてるよ」
「……今から学園まで走って戻れ」
「え……今走った……ばっかり」
「行け」
「は、はい」
逆らうなと言わんばかりに圧をかけ走らせる。そもそも学園から物凄くかけ離れているので数十時間かけてたどり着いたときにはライスは疲労も含めて限界に達していた。寮に帰ると泥のように眠りについた。
目が覚め全身の筋肉痛と戦いながらもハードトレーニングをおこなう。
ライスはトレーナーの指導の下勝つための最適で効率的なメニューをこなしていく、たとえ体力の限界が訪れても根性で走り続ける。勿論トレーニングをこなしつつオーガによる命を懸けた特訓を受けさせられる。
何度も何度も死にかけた。レースに関係のないトレーニング、渓谷に落ちるのも慣れてしまい、大猿から逃げきるのも楽々とこなせるようにもなった。最初の頃のようにただ恐怖に負けるのではなく次第に順応し、身体が徐々に絞られていった。恐ろしくも彼女は変わっていった。
「ライス天皇賞春は3200、マックイーンに勝つためには仕掛けるギリギリまで喰らいついていく方針で行く」
「はい、お兄様」
「併走トレーニングでなるべくスリップストリームも意識しつつ仕掛けポイントで一気にぶっちぎる」
「…………」
「いいか、時間が限られている中でどこまで強くなれるかはライス次第だ」
「はい!」
そこからもハードなトレーニングが続きトレーナーによるアフターケアもバッチリ限界を超えた身体は次第に引き締まっていき痩せているように見えるが最高の身体が出来上がりつつあった。そして本番当日前夜、ライスはオーガに呼び出されすでに真っ暗であるターフで二人きりとなった。唯一の明かりは月明かりのみ
「ライスシャワーよ、今の貴様は精神面も含め十分に強くなったと言えるだろう」
「えっと、は、はい、ありがとうごじゃ・・・かんじゃった~」
「…………」
「す、すみません!」
頭を下げて謝るライス、そんなことはどうでもいいとオーガは話を続ける。
「貴様と併走した奴は鬼のように怖いなど言葉を並べるが序の口程度、置いてきたのか、あるいはもって生まれなかったのか、貴様の中に流れる血が今、開花し勝利への渇望が明日完全に覚醒するのか、否か、今ここで確かさせてもらおう」
何を言っているのか、前半はまだわかる、けれど後半が意味が分からない、覚醒?開花?血?オーガは服を脱ぎ鍛え抜かれた身体をあらわにする。
一体どのように鍛えればそのようなファイティングマッスルが出来上がるのか、そしてライスは今までで一番驚き生涯忘れることはないだろうモノを目の当たりにした。
「お、鬼」
背中を見せたオーガの背中には鬼が宿っていた。これがオーガと呼ばれる所以、目が奪われる中ほんの僅か、自分の顔に拳が迫ってきているのを察知した。けれどなぜかとても遅く感じ、ひらりとかわす。かわすと同時に蹴り、突き、アッパー、回し蹴り、すべてがスローモーションの世界で躱す。
「ほう、すべて避けるか」
「ひ、、どどど、どうして」
「自覚がないのか、それともあるいは」
手加減をしたとはいえ躱せるライスに考えるオーガ、怯えているライスは何が目的なのか混乱していた。
「ライスよ、今の感覚を、スローモーションになった世界を忘れるな」
「え?、スローモーション?」
「…………」
オーガはそこからは何も話さず暗闇の中帰っていく。
「あの猿ほどのプレッシャーなんぞ小娘共が出せるはずもあるまい、勝利は確実だろう」
そして迎えた本番当日、控室からゲートまで続く長い通路、意気揚々と進むマックイーンの後ろを、コツコツと静かな足音を立てながら極限にまで集中しており、今にも喰い殺さんと言わんばかりのオーラを放ちながら歩くライスシャワー、極限にまでそぎ落とした身体に鬼が宿っていた。
ファンファーレが鳴り響く、これから戦う彼女たちは極限にまでそぎ落とした身体に宿る鬼、ライスシャワーと戦わなければいけない。敗北か勝利か、結果は分からずとも異様な雰囲気は感じ取っていた。
G1天皇賞春各ウマ娘、ゲートイン完了しました。いよいよスタートであります。
ゲートが開いて15のウマ娘がゆっくりと飛び出しました。ゆっくりと飛び出しました。早くも9番メジロパーマーが行きます。メジロパーマーが行く
ああ、外からゆっくりとメジロマックイーン、メジロマックイーンが2番手に上がる勢いであります。ライスシャワーもマチカネタンホイザもあんまり行きません。
「いいわね、マックイーン」
「いや、まだスタートしたばかりだぞ、逃げるパーマーなんて気にしてたら駄目だ」
「そうだ、気にしてたら駄目だ!」
ここで違和感に気づくスピカのトレーナー、気にしているのはパーマーじゃない
現在マックイーンは四番手その後ろ、漆黒の髪をなびかせているのはライスシャワーです。
「ライスずーっとマックイーンにピッタリだ」
「完璧にマークしてるね」
「けどなんで背後に入んないんだろう?」
もしやあえて自分の姿をマックイーンに見せているのか?
「まるで鬼気迫るグラスちゃんに、いえ、それ以上」
数万の歓声に応援される、正面スタンド前を通過するウマ娘、ライスはただただマックイーンについて行っている。ただ一つ他のウマ娘と違うのは完全にZONEに入っていることだ。今のライスには歓声も何も聞こえてはいない、ただ目の前の獲物を捕食するかの如くマックイーンにプレッシャーを与えていく
「2分4?」
「おい、それって」
「2000メートルのタイム前回の天皇賞より2秒以上早い」
驚くスピカのメンバー、ただ一人テイオーはマックイーンを信じていた。
先頭はメジロパーマー、リードは5バ身ほど、2回目の第三コーナーの坂に入ります。さぁ、第三コーナーの坂を上って天皇賞春はスタミナ勝負
なぜだろう、脚が軽い、声が聞こえない、どうして走っている音、みんなの心臓の音、自分の心臓の音だけが聞こえるのだろう。
ライスは自身がZONEに入っていることには気が付いていない、嫌、その先のFLOWと呼ばれる先に脚を踏み込んでいることはオーガのみが知っていた。
しかしそれは彼が求めている力ではなかった。
ただ勝つ、負けたくない、それだけで走り続けるライス、圧倒的なプレシャーをその身に受け走っているマックイーンは次第に恐怖を感じ取っていた。
「この恐怖、怖さはまるで…………鬼!?」
鬼と言うが、最初に思いついたのはあの男、しかし、そんなことはどうでもいい、マックイーンはパーマーを抜かすために仕掛けた。そしてライスシャワーもマックイーンの外から仕掛けてきた。鬼気迫るような表情、勝利を望み、積み上げてきた今までをここで発揮するため全力超えた全力を解放した。
第四コーナーカーブ、マックイーンの独走になるか、外から、外からライスシャワーだ!マックイーンかライスシャワーか、僅かにマックイーン先頭か!ライスシャワー並んだ-!!
外から外から、ライスシャワーか、あ、マックイーンか、ライスシャワー躱した、ライスシャワー躱した、もう一度マックイーン、頑張れマックイーン
しかしライスシャワーだ!
「菊花賞、ミホノブルボンの三冠阻んだライスシャワーだ!」
「マックイーン頑張れ!」
「負けるな!」
「ライスシャワーまたヒールになるつもりか!!!!」
勝つ、勝つ、負けたくない、極限以上に研ぎ澄まされた感覚はあの時、無意識とはいえ体感したあのスローモーションの世界を味わった。ほんの一瞬ではあるが驚き、けれど関係ないとゴールまであと少し、脚を止めない、隣にいるマックイーンの鼓動、息、足音、自身のも含めてすべてが聞こえ、ゴールまでがとても長く感じた。
ああ、これがあの時言っていた事か、この感覚、走馬灯を見た時と似ている。
並んでいる状態でマックイーンはライスを見た。その眼には絶対に負けないという眼とそれ以上の何かを感じた。
「ライスは……」
ライスを見るマックイーン、そしてライスの瞳に、オーラに鬼の姿がマックイーンには見えた。
「ヒールじゃない!」
マックイーンは息を飲んだ。
ライスシャワーだ!、ライスシャワーだ!菊花賞でもミホノブルボンの三冠を阻んだライスシャワーだ!!! ライスシャワー完全に先頭!!!
2バ身から3バ身と開いた。
追い抜かされていくマックイーンはライスの背中にオーガの姿が重なって見えた。
まるで鬼が走っているような気がした。
……いったいどんな練習をしたのか
ライスシャワーだ、ライスシャワー1着!!!、マックイーンは2着!!!
ライスシャワー、天皇賞でも圧倒的な人気のメジロマックイーンを破りました!!!
昨年の菊花賞でも、ミホノブルボンの三冠を阻んだライスシャワー!!!
春の天皇賞ではメジロマックイーンの大記録を打ち砕きました!!!
レコードタイム3分17秒1、メジロマックイーンの野望を砕きました。
「…………駄目だ」
きっかけを与え、モノにしたと思いきやまぐれに過ぎなかった。もう興味はないと言わんばかりにオーガは会場から姿を消した。
「ああ、退屈だ」
命を脅かすような存在、そのレベルになれるのか、彼女はなることができなかった。所詮スポーツ、やはり走ることでしか進化することしか出来ない。
後半レース部分、実際のレースの実況とアニメのも混ぜたのでかなりしんどかったです
ライスのレースはこれにて終了!、とりあえず引き続きよろしくお願い致します。
はやく競馬場工事終わってほしいな~(笑)
ちょっとオーガが暴走しそうです
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鬼ぴょい伝説??
あ、なんか評価上がってきてたのありがとうございます。
これからもネタが続く限り頑張るんで、応援お願いします!
ウイニングライブ、それはレースに出場したウマ娘が応援してくれたファンに向けてアイドルのように歌って踊ってするファンサービス的なものだ。日ごろからレースに向けての練習だけでなくライブの練習もしている。
「はい、ワンツーワンツー」
「~女神が~」
「チュウする~」
「そこ、ワンテンポ遅い」
エアグルーヴの指導の下、数名が放課後にレッスンを受けているがなかなか上達しない子もいる。厳しい指導の下に最高のパフォーマンスをファンに届けるため、鬼のように練習で指導するエアグルーヴ、そんな練習風景をなぜか見せられているオーガであった。
「たわけ、集中力が落ちているぞ!」
「え~、疲れたよ~」
「う~厳しい」
「ウララさん、しっかり身体に刻み込んで踊れるようにならなくては一流になれませんわよ」
「くだらん、俺は帰るぞ」
「あ、おい、待て」
これ以上みてられないと、興味もないので帰ろうとする。エアグルーヴが止めようとするが無視する。だがそこにウララが立ちはだかった。
「ねーねー、一緒に踊ろうよ~」
「…………」
「いいでしょ~、うっらら~な気持ちになれるよ~」
「…………踊らん」
「え~少しだけ踊ろうよ~」
いやいやいや、誘う相手間違えている。全員が見事にシンクロして思ったことだ。けれど少し興味がある。あのオーガが踊る姿を、好奇心は猫を殺すやらなんやら言うが、正直物凄く見たい
「知らん、貴様等だけでやってろ」
「やろーよー」
「…………」
帰ろうとするのを阻まれ尚且つ踊ろうと、ここで無理に引き離し帰ることもできるが後々がめんどくさそうである。
「……見るだけだ、そもそも貴様らがする練習だろ、俺には関係ない」
「わーい、やったー」
ウララ頼むから、これ以上ひやひやさせないでと、目の前で友人の死を拝みたくないと心の中でウララに念を伝える一同。
その後も練習するがウララだけが上達しない、それを流石に見飽きたオーガは帰ろうとするがここでウララが先ほど同様に爆弾発言をする。一緒に踊ってほしいと
オーガは踊りに興味もなくやる気もないが嫌と言うほど踊りを見せられているので踊れると言えば踊れるが、ウララが踊れるまで帰えることができないので、仕方なく一緒に踊ることにした。
「おい、これ絶対やばいって」
「に、逃げた方がいいような気が」
「ああ、ウララさんが」
青い顔をする生徒が数名、エアグルーヴはなぜか恐怖で体が震えだしている。
そしてウマぴょい伝説が流れ始める。
「うまぴょいうまぴょい」
ウララがとても可愛らしくやっている横でオーガも踊る
「うっ、気分が」
「ああ、だめ」
「…………」
「鬼ぴょいだ」
「あたしだけにチュウする~」
ウララがキスをする、ああ可愛らしい、そしてやらなくていいのにやるオーガ
「ゆ、夢に出る」
「………吐きそう」
「おい、しっかりしろ!意識を保て!」
「エアグルーヴ先輩、遺言を頼みます」
「あああああああ!!!!」
「はは、地獄だ」
「……鬼のキス……うえ」
吐き気を催すもの数名、泣くもの発狂するもの数名、今日確実に寝れないもの数名
カオスだ。
「ずきゅんどきゅん走り出し~」
「君の愛バが!」
天使の笑顔のウララ、この世のものとは思えないオーガ
「衛生兵~!!!!」
「誰か、すぐにAEDを持ってこい!心臓が止まっている!」
「メディック~!!!!」
「スネーク!!!!」
「鬼だ、悪魔だ、踊りだけで私たちを殺せる……」
「ダンボールで身を隠すぜ!」
「ああ、オロロロロ~~!!」
「ああ、発狂ゲージが!」
心臓が止まるものまで出た。
「うーーfight!!」
「楽しかったー」
「…………そうか」
踊り終えるとそこは地獄のようになっており、誰一人意識を保つ者がおらず、地に伏せていた。一人だけ意識はあり、中には地文字でオーガと書く者もおれば、泡を吹くもの、電気ショックを受ける物、溶接でシェルターを作るものまでいた。
これを機にルドルフはオーガに踊ることを禁止、各トレーナーは担当ウマ娘のメンタルケアなどに追われることとなった。
最強って恐ろしいですね、違う意味で……何かいてるんだろう
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ライアンと虎殺し
パワートレーニング! 流石にレース関係なくなってきたな~
「よーし、いいぞライアン、その調子だ」
「はい!館長!」
サンドバックをただ力任せで殴るのではなく、捻りや体重を乗せるやり方などで、メジロライアンはパワートレーニングをしていた。
「ふっ、はぁ!」
ドスンドスンと響く音、何度も何度も殴り飛ばすサンドバックは勢い良く帰って来るそれをもう一度殴り返すことを何時間も続けている。かれこれ3時間は殴り続けている。それが終わると休憩を挟み、エネルギー補給と水分補給をおこなう。
「次は脚の補助をしてやる逆立ちで拳を握っている状態で親指のみで逆立ち歩きだ」
「逆立ちでですか?」
「おうよ、1人で出来る頃にはその拳で人間どころか牛ぐらいなら一撃で仕留められるパワーが手に入るぜ」
「いや、そこまでは求めてないです」
「なんでい、場内を一周したらできるんだぜ」
走るのにつけるパワーを人や牛を仕留めるのに使えるわけがない、むしろ身に付けてどうすればいいのか、上半身の強化だけでなく下半身の強化、なんでも中国からきている師範のような人が教えてくれた鍛錬方法なんだけれど、これが物凄く効く、ただ同じ体制を何時間もキープするだけ、汗が物凄くかけて下半身に筋肉痛が次の日に出るけれど走る際の力強さがとても上がった。
「はぁはぁ、これ……とってもキツイですね」
「そりゃあ、ウマ娘の基準でやってるんだ、人間がやったら即ギブよ」
笑いながら片手でライアンの両足を掴む館長こと愚地独歩、強靭な肉体は独歩の実年齢が分からないほどである。
「これが終われば、そうだな…………ドラム缶でもぶっ壊すか」
「ど、ドラム缶……です……か?」
「おうよ、水の入ったドラム缶を殴ってぶっ壊せるなら上出来だろう」
できるのか、何tあるか分からないタイヤを引きながら練習することはあれど、殴るや壊すはサンドバックや瓦割くらいしかない。
「瓦なんざ、ただの土塊よ、オーガに言わせれば土ほどの塊の煎餅さ」
しれっととんでもないことを口にしているが今の状況が苦しすぎてあまり耳に入ってこない、何とか場内を一周し終えるとその場で倒れ大きく息を吸って呼吸をする。腕がすでに限界に近く、指まで力が入らない、プルプルと震えるが関係とないと言わんばかりにドラム缶が吊るされ準備されていた。
「ライアン、おめぇ強くなりてえんだろう?」
「……は、はい」
「だったら、根性見せな、俺たち空手家は空手に、ウマ娘は走ることに命を懸けてる。だったら強くなりたいのなら根性を見せな」
「はい!」
ふらふらと立ち上がり水の入ったドラム缶に拳を打ち込む、ガンガン・ゴン・ドンという音が響き、ドラム缶は形を変えていき変形していく、打ち込み打ち込み、変形させていき、ついにはライアンの拳がドラム缶を貫通しそこから水があふれてくる。
「…………ほう、やっぱ威力はけた違いだな、こうも簡単に破壊するとは」
「え?そうなんですか!」
「おうよ、俺は簡単に壊せるが、門下生はそう簡単には壊せねぇ、実力あるものはできても数は多くない」
「へ~、そうなんですか」
「ま、ウマ娘のほうが俺たちより圧倒的に強いだろうがな」
豪快に笑う独歩、確かにウマ娘の方が力は強い、けれど技術や経験からくる強さは独歩の方が圧倒的に強いという事は分かっていた。もし、もし立ち合ったのならば一瞬で負けて天井を見上げる自分が想像できる。
「館長はどうしてそこまで強いんですか?」
「あん?」
「門下生からも聞きましたけど、虎を倒したこともあるって」
「ああ、そいつはな簡単な話、基礎を怠らない事だ」
「基礎ですか?」
毎日毎日空手の基礎の正拳突きなど基礎の技や型を一日一万回繰り返せるかい?
毎日やらなくてもいい、そうじゃねんだよ、繰り返して繰り返して身体に馴染ませていつでもどこでもどんな状況でも戦えるようにしておく、言わば訓練みたいなもの、そして、最後は勝利への本能だ。
「毎日同じことを、筋トレとはまた違った感じですね」
「当たり前よ、重量を増やしたりトレーニングを変えたりするんわけじゃねぇ」
「でもどうして虎と?」
「試したかったんだよ、どれだけ自分が強いのか、ウマ娘の嬢ちゃんたちもそうだろう、自分がどれだけ強いか、それをレースで発揮する。それで自分が誰よりも強いんだって証明する。やりかたが違うだけで同じことさ」
「でも、負けたら、レースでは悔しいですけど、虎は」
「男はな、一度は最強を目指したい生き物なんだよ、だからこそ勝負に命を懸ける。強いやつに勝って俺が最強だって証明する。だから虎を倒した。けど違う事でな~……ま、俺は負けちまったけどな」
種目や信念は違っても根本的な部分は一緒である。けれど一つ気になるには負けたという事、いったい誰に負けたのか、それ程強い人がいるのか
「館長に勝った人って誰なんですか?」
「オーガさ」
「ええ!!!!??」
オーガが館長を倒した?確かに見た目も強そうだけど、そんなに強かっただなんて知らなかった。でも……空手だよね?
「さて、お喋りはここまでだ、次は立ち合いだ」
「はい!お願いします!」
ウマ娘の力に人間が敵うはずがない、しかしこの男には関係ない、生涯を空手に注いだこの男にとってライアンの動きなど簡単にあしらい、反撃をさせないほどである。この立ち合いを持って本日のトレーニングは終わりであるが、いつも練習後には一人ででもできる練習を教えてくれる。トレーナーのメニューとは違い、かなり厳しいものがあるがやり遂げていく自分の身体が強くなっていくのを実感できていた。
「館長、ありがとうございました。」
「おうよ、また来な」
頑張って更新していかないと、ネタ切れがつらい、ネタ募集しています。
助けてくださーい
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ゴルシと徳川
雑談会です
「いやーそれにしてもまさかお偉いさんだとは思わなかった」
「なんじゃ、儂のことなーんも知らんかったのか」
「おうよ、だって興味なかったし」
地下闘技場で会って以来の再開、ゴルシセンサーに反応があったので周りにいたボディーガードをドロップキックで蹴り飛ばし麻袋に袋詰めして拉致、逃亡、そして徳川家にて一緒に食事中である。
「命知らずなウマ娘じゃのー、一歩間違えていたらおぬし死んでおったぞ」
「おうよ、ゴルシちゃんは簡単には死なないから大丈夫だ」
「いやいや、そういう意味じゃなくて」
流石歩く非常識、やることなすことすべてが規格外である。そんな二人が今一緒に餃子を食べながら談笑している。しかも何気に御老公が何者かはすぐに知った。
「にしても餃子って野菜料理なのに全然野菜入っていねーじゃねーかー、ま、いいんだけど」
「お主よく知ってるのう」
「雑学王なめんなよー、あ、今日捕った金目鯛やるよ」
「おお、それはそれは、って、どこに隠し持っていた?」
背中からぴちぴちの金目鯛が現れ、生きのいいのが渡される。本当に一体どこに隠し持っていたのか、普通に渡してくる。
「そうそう、あの闘技場って誰が出るんだ?」
「ああ、簡単に言えばあらゆる強者が出るとだけ言っておこう」
「へー」
「なんじゃ、その興味なさそうな反応は」
「嫌だって、強者って、どのくらいのレベルよ」
「…………ボクシングヘビー級チャンピオンやあらゆる武道の達人などじゃ」
「おお、そいつはすげーな、ゴルシちゃんも戦ってみようかな」
「やめておいた方がいいぞ、特にチャンピオンに挑むのは」
「ん?チャンピオンは駄目でも他はいいのか?」
「ま、そんなに強くないのもいるからのう、全盛期は過ぎてしまった」
「ふーん、ところでチャンピオンってどんなんよ」
「ふむ、喧嘩の強い高校生じゃ」
「あ、バカにしてんのか?」
「ホントじゃよ、嘘は付いとらん」
嘘はついていないが本当のことでもない、ただの喧嘩の強い高校生がのし上がれるほどのレベルではない、なんせガチの勝負であり、ボクシングや空手、ムエタイに合気、達人などのそんなレベルの輩が参加していたのだから
「ま、いいや、あたしの戦う場所はレースだからなー」
「そうかい」
餃子を食べながら肉まんを作り始めるゴルシ、もうめんどくさくなりツッコムことすらやめ、ただ黙って茶を啜っている。そしていつの間に作られたのか分からない肉まんを一緒に食べつつ特に意味のない雑談を繰り広げる。時間が経ちゴルシが帰るころに帰り際に衝撃の話題を置いていった。
「あ、オーガって知ってるか?なんかすんげーやばそうなやつが学園にいるんだけどなんか知ってたらまた教えてくれよなー」
どういう原理で浮いているのかは知らないがゴルシは空へと消えていった。
「は?オーガが学園?……儂……知らんかったぞそれ」
最後の最後に一番気になる話題をできなかったため、その日の晩はなかなか寝れなかったそうだ。
あと少しで、あと少しで、時間があれば、ウララが……
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ハロウィンパーティー
後関係ないけど最近ブラボクリアできた!
ハロウィンそれはなんか物凄く楽しめる日であり、お化けやらの仮装をしてお菓子を貰う、配るなどの行事的な祭り的なものである。本日トレセン学園ではハロウィン使用になっており生徒たち皆が仮装して楽しんでいた。
「トリックオアトリート!お菓子をくれなきゃいたずらするぞー!」
「いたじゅらでお願いします!!!!!!!!」
「デジタルさん!涎、涎!」
「なんでや!なんで配ってる側やのにみんなウチにお菓子をくれるんや!」
「…………タマの仮装が可愛いからじゃないか?」
「そ、そうか、ってオグリ!あんたはさっきから餌付けされすぎや!」
「ハロウィンはいいな、みんながお菓子をくれるんだ!」
「それにしても喰いすぎや!腹出てもうとるやないか!」
「モルモット君、君は私にお菓子を献上しささやかないたずらを受けてもらおう!」
「え、強制トリック? え、待ってなにその禍々しい色の薬品!!!!」
「なーに大丈夫、最近見たゾンビ映画の薬を真似てみたのさ」
「おい、ふざけんな!そのラベルの傘マーク! アンブレまがぁ!」
「くっくっくっ」
「おい誰かタキオンを止めろー!!!!」
「タキオンさん!!!!」
「おい、ここの廊下の仮装エリアは誰だ! ここを通った生徒が気絶して保健室に運ばれると苦情が来ているぞ!!!!」
「エアグルーヴさん、ゴールドシップです!」
「あ~い~つ~か~!!!!」
「いました! ヒッ!!!!」
謎の服装に巨大な頭、たくさんの目玉と発光する光、らんらんと声が聞こえながら廊下に置かれている障害物の隙間から姿を現す。
「うっ、何故か頭が!」
「ああ、あああ」
「らんらんらんら~~~ん」
「「「あああああああああああ!!!!!!!!」」」
「副会長~~!!!!!!!!」
騒がしいこともありながら問題も起きつつにぎやかであった。お菓子を配るトレーナーの中には同じように仮装するものもいる。仮装をしていないのは学内でただ一人
「と、トリックオアトリート!! お、お菓子をくれなきゃ、い、いたずらするぞー!」
「………………」
オーガであった。ハロウィンは彼にとっては関係もなく、そもそもどうでもいいことであった。
「………………ほらよ」
「あ、ありがとう、ございます」
何かしらの包みをかぼちゃの入れ物に入れるオーガ、貰った学生は恐る恐る受け取り速足で退散していく。その後も訪れる学生にぶっきら棒に渡していく。
「まさか、あのオーガがお菓子を配るとは」
「ふん!貴様も配っているだろう烈海王」
「あまりなじみのある文化ではないがこういった日常も悪くない、渡せるのは飴玉ぐらいだがね」
「けっ、ドリアンに与えすぎて飴しか選択肢がないのか」
「あまり菓子類はよくわからなくてね、オーガ、君こそ何を配っていたんだ」
「中身は知らん、徳川の爺からもらった物を配っただけだ」
廊下を歩きながら談話する二人、烈は仮装というにはあまりそれらしい格好ではないが母国の服装で参加をしている。おそらくオーガは中身は知らなくても高級なお菓子を配っているのだろう。この光景を息子の刃牙が見たら固まるだろう。
「それにしても騒がしい」
「無理もない、こういったイベントに子どもは参加するのが楽しいのだろう、私たちでいう闘技場のようなもの」
「燃えもしない、戦えもしない、退屈で仕方ねぇ」
「オーガにとってはそうかもしれないな ん?」
バタバタと騒がしい音がする。様子を見に行くと奇妙な姿の生徒とこれまた奇妙な恰好をした生徒が対峙していた。
「ゴールドシップ!これ以上被害を広げないため貴様を止める!!」
「お、やんのか?さっきは発狂して保健室送りになったみたいだけどな」
「五月蠅い!皆の者行くぞ!」
「「「はい!」」」
「おいおい、なんで女帝様が慈悲の刃と鴉の服持ってんだよ!」
「安心しろ、鳥葬の意味を込めて狩ってやる」
「つーかなんで他三人はヤーナムの格好で、回転ノコギリ、ローゲリウスの車輪、獣狩りの斧持ってんだよ!」
「知らない!」
「なんか目覚めたら!」
「変な骸骨に貰った!」
「ふざけんな!狩られてたまるか、悪夢にとらわれるじゃねーか、悪いが逃げるぜ、あばよう!」
持ち前の脚で逃げていくゴールドシップ、いったい何の仮装なのか、ボロボロの服に頭に変な被り物をしている。まるで自分の頭を閉じ込めているような檻の被り物だ。
「「………………」」
「まるで嵐だな」
「ま、まぁいいのではないか?」
流石に言葉が出てこない2人であった。その後オオカミのコスプレをしたウララに出会い、吸血鬼の姿をしたライスに遭遇しお菓子を配る。道中異様に巨大化し学内を徘徊する男に出会ったが、オーガにケンカを売ってしまい軽く叩きのめされた。
オーガと烈が分かれしばらくすると討伐されたゴールドシップの姿が見えたが興味もないので素通りして別の場所に向かった。
「アアアアアアアッ!」
「手間を掛けさせよって、たわけが!」
「ああ、これが目覚め、すべて忘れてしまうのか……」
「何を訳の分からんことを!」
「残念ながら忘れられないお説教が待っていると思います」
「そんな、ガクシ!」
時間もかなり経ち日が暮れてくる。配っていったお菓子も次第になくなっていき学園では後片付けがおこなわれている。片付けが終わるまで中庭で時間をつぶしていると先ほど討伐されたゴールドシップがマックイーンを抱きかかえながら涙を流している。
「くっ、なんでや! なんで マックイーンを見殺しにしたんや!」
「いや、マックイーンさん死んでませんよ!」
「マックちゃんは今日、どれだけ楽しみにしていたか!」
「そ、そういわれても」
「減量中だからってお菓子がもらえないのは可哀そうだろう!!」
「だからあげられないんじゃないんですか!」
「このままじゃあ、パクパクできませんわ、メジロとしてパクパクする所存でしたのに」
「ちょっと、ゴールドシップ、変なモノマネやめてくださいまし」
急激な綺麗な声でモノマネをするゴールドシップ、顔を赤くし止めるマックイーン、しかし彼女は声を荒げるとすぐに先ほどのようにしおらしくなった。トレーナーが詰められているのを見たオーガは余っていたお菓子を全てトレーナーに向かって投げつけた。
「うわ、なんだ?ってお菓子?」
「お、お菓子ですの!!」
「うお!マックちゃんが復活した!」
「いったい誰が?」
あたりを見渡すが投げ付けた者の姿は見えない、しかしラッキーに思ったのでそのお菓子をマックイーンに渡すトレーナー、投げた時にはその場から姿を消していたオーガは再び時間をつぶせる場所を求めてさまよい始めた。
生徒会室にて
「それにしてもオーガがハロウィンのお菓子を配るだなんておかしなこともあるんだな」
「カイチョー、またダジャレ~」
「おっと、すまないなテイオー」
ハロウィンでもダジャレを呟くルドルフであった。
二週目がクリアできない、ガスコイン神父めっちゃ強いんだけど
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アンチェインとライアン
「どうすれば私のような筋肉が付けられるかと?」
「はい!私筋トレが好きなんですけど、どうすればそこまでの素晴らしい筋肉が付けられるんですか!」
トレセン学園のトレーニングルームに珍しくいるアンチェイン、仕事が終わったついでに日本に来てからは己の身体を鍛えてはいなかったので鍛えようとやってきたところメジロライアンに声を掛けられ、筋肉の付け方を教えてくれと言われているところだ。
「あ~ん、お嬢さん、素晴らしい筋肉とはとても嬉しいが、かなりハードな内容だからな、あまりオススメはしないぞ」
「ならせめてどのようなメニューでその筋肉をつけたのか教えてください!」
筋肉フェチともいえるライアン、誰よりも鍛えるのが好きな彼女と出会ったのが運の尽き、少なくとも聞き出すまでは動けないだろう。
「まぁ、教えるだけならいいが、想像を絶する内容だぞ」
「はい!」
「当たり前だが己の限界を超えるために日々ハードな練習メニューを組んでいく、例えばダンベルなどの重量と回数を増やしていく」
「はい!」
真剣に聞くライアン、アンチェインは話を続ける。
「次に腹筋を鍛えるためヘリと綱引きをする」
「へ?ヘリ?」
「ああ、ヘリコプターと綱引きをするんだ」
すでに理解が不能な内容が出てきた。ライアンは驚いた顔をしながらも話を聞く
「他には線路用の釘を指の力で曲げる」
「な、なるほど」
「それと犯罪者を素手で捕まえること」
「は、犯罪者?」
「ま、そこはどうでもいいさ、とにかく常人ではできないようなトレーニングをすることだな!」
「は、はい」
「そして最後に食事だが、これが一番重要だ」
「食事」
「私は一日10万キロカロリーを摂取している」
「10万キロカロリー!!!!」
10万キロカロリーとは、おにぎり500個ほどに相当する量であり、摂取するのは至難である。
「体脂肪を徹底的に無くし、筋肉を作り上げる。その結果が今の私の身体だ」
「す、すごい!」
「おかげでショットガンを打たれても僅かな傷しか負わないほどの厚さと硬さを持っている」
この男、実際に撃たれ、怪我を負ったが、ステーキとワインをたらふく食べわずかな時間で回復する自然治癒能力も持っている。
「例えジャパニーズソードで斬られても弾き返せるほどさ」
普通のトレーニングとは違う内容、そもそも腹筋を鍛えるためにヘリと綱引きをする者がこの男以外にいるのか、ライアンは驚きの中で筋肉に対して徹底的に向き合い鍛えるこの男に尊敬の念を抱いた。
「ありがとうございました。さっそく鍛えてみようと思います」
「ああ、頑張りたまえ、ただし君たちは走ることが大事なんだろう、無理に私のようにならなくていい、自身にとってベストな肉体を作りあげたまえ」
「はい、レッツ・マッスル!」
後日、学園内でとんでもないトレーニングを行っている生徒がいると噂になった。どこから調達してきたのかわからないヘリと綱引きしたり、錨に身体を巻かれて引っ張られるのを耐えていたり、ウマ娘の限界で持てる重量のダンベルを持って筋トレしたり、また、オグリのように大量の食事を食べている生徒がいるとの噂もあった。
その結果今まで以上の抜群の身体を手に入れ圧倒的なパワーでレースに圧勝するウマ娘の姿があったとか
投稿がだいぶ遅れてすみません。頑張ります。
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最強と最恐
学園は今再び危機に陥ろうとしていた。悲鳴・恐怖・亡者の群れ、予想だのしないことが起きていた。
「逃げろ!」
「このままじゃあやられる」
「何としてでも食い止めろ!これ以上犠牲者を増やすな!」
「駄目、バリケードを完全に作る前にやってくる数が多すぎる!!!!」
「く、会長、いかがいたしますか!!!!」
「……私がここに残ろう、その隙きにみんなは逃げてくれ」
「………なりません!それでしたら私が!!!!」
「ならん、一刻を争う、すぐに生き残っている生徒の避難を!!!!」
エアグルーヴの静止を振り払い残っている学生と一緒に行動することなく一人残る。後ろから会長との声が聞こえるが次第に声が遠くなっていく。
「これでいいんだ、学園の皆はこの私が守る」
逃げなんてレースでもすることがないが、今日だけ、今だけは逃げウマになろう
そしてバリケードが崩れぞろぞろと無残な姿になったウマ娘が仲間を増やそうとやってくる。
たとえどのような相手でも私を捕まえることはできない、逃げ切ってみせる!!!!
「あまり私を舐めるなよ!!!!!」
そしてついにルドルフに襲い掛かるウマ娘達、両手にはおしゃぶりと哺乳瓶、中には園児服を持っているものもいる。そう、彼女たちは発作を起こしたクリークの被害者たちだ、中にはトレーナーもおり、大の大人がとんでもない恰好をしているため、見るだけで精神がやられる。これでは完全にゾンビゲームと同じ状況、捕まれば仲間入りだ。
最初から全開で飛ばして逃げるルドルフ、追いかける化け物達、悲しい戦いが始まってしまった。
「はぁぁぁぁぁ~~~~」
盛大な溜息、学園の屋上からこの惨状を見下ろす漢、オーガ、彼も巻き込まれたものである。
「たった一人の雌の母性にやられ傀儡と化す、下手な軍隊よりよっぽど厄介だ」
「…………それでどうする」
「ふん、どうでもいい、寝る」
「…………そうか……ん?あれは会長か?」
「ほう、あの数から逃げるか」
「時間の問題だ、いずれスタミナは切れる」
「………」
「……」
「いや、助けないんですか?」
無言になる二人に対していつからいたのか沈黙に耐え切れずセイウンスカイが問う。あいにく助ける気はなく、助けに行ったとしても飲み込まれるのがオチとして目に見えている。
「いや~セイちゃんは助けに行った方がいいと思うんですけど~~」
「だったら貴様が行け!!!!」
「すいません、無理です」
「仕方ない、私が行く」
「流石ブライアンさん、そこに痺れる憧れる~」
「何言ってる。お前も一緒だぞ」
「え?無理無理無理、流石に捕まって園児服は~にゃはは」
関係ない行くぞと首根っこを掴まれ連れていかれるセイウンスカイ、騒がしいのが消え一人となったオーガ、そんなオーガの下にまた一人の者が現れた。
「ほう、まさか貴様もそちら側と言うわけか」
「………………」
「言葉を発することもできないか」
「………………」
「ふん、まぁいい、おとなしくしておけば何もせん」
静寂が包み込む中何処から汚い声がこだました。
「ぎゃああああああああ!!!!!!!!」
「タマ落ち着くんだ」
「そないなこと言われても無理や、あいつらなんでウチだけ以上に追い回してくるねん!」
「………タマだから?」
「いや、理由になっとらんは」
走りながらツッコミをかますタマモクロスと天然ボケを発揮するオグリキャップ、必死に廊下を走り逃げる2人、逃げ切り撒いた2人はそのまま外へ出る。そして2人の逃げた先はエアグルーヴ率いる残された組が集まっていたターフであった。下手に体育館や教室だと逃げ場がなくなるため少なくとも広く逃げるのに時間が稼げる場所を安全地帯として選び集まっていた。
「な、何とか逃げ切れた」
「恐ろしいものだな、あれは」
「ああ、もうでちゅねは嫌や」
「…………お腹すいた」
「って、緊張感ゼロか!!」
「2人ともよく無事でいた」
2人を安堵するエアグルーヴ、ルドルフがいない今頼れるのは自分だけであると気を引き締めこの状況を打破する方法を考える。しかし先ほどの大きなツッコミの影響か声を聴いた犠牲者たちがまさかの集団でやってきた。
「な、なんでこんなに!」
「あ、あそこにいるのカイチョーだ!」
「な、か 会長!」
悲しいことにルドルフは見るも無残な姿となってその場に現れてしまった。おしゃぶりを加え園児服、片手にはガラガラを持っている。
「くっ、そのようなお姿になられてもカリスマ性はご存命なのですね」
「いや、そこはどうでもいいやろ!」
「待ってクリークさんもいる」
「おい、クリーク馬鹿な真似はよせ!」
目を覚ませと多くの言葉が飛び交うが聞く耳持たず。聖母のような優しい表情で悪魔のような決断を下す。
「み~んな私がお世話してあげますね~、じゃあみんな~あそこにいるお姉ちゃん達を捕まえようね~」
「バブ、アダ~~」
ガラガラを構えて振り下ろし号令をかけるルドルフ、それをきっかけに一斉に進軍してきた。
「くそ、皆散れ!」
「副会長、すでに囲まれています!」
「何?どういうことだ」
「わかりません」
「まるでアイ○ニオン○タイ○イだな」
「いや、どっちかというと死の河」
「ガラガラとおしゃぶりばっかだしもう王の○宝に近いんじゃ」
「あれスピカのトレーナーじゃない?」
「ああ、子どもになっても脚は触るんだね」
「ブルボンのトレーナー、あのいかつさでおしゃぶりとかチョー受けるんですけど」
「いや、あんたら実は余裕やろ!」
状況に似つかわしくないことを目が死にながら話すものもいれば捕まり園児服を着せられ亡者の仲間入りするものもいる。しれっと捕まりあちら側にいるブライアンとセイウンスカイもいた。もう犠牲者も増え始め皆クリークのプレイの餌食になると思われたその時救世主が現れた。両ポッケに手を入れ堂々と歩くオーガ、オーガの迫力に圧倒され逃げていく者たち、まるで近くのコンビニに行くように自然な流れでクリークの前に立つ。
「あら~オーガさん、貴方のところには刺客を放っておいたのですが」
「あの程度造作もない」
「もう、せっかくたづなさんを差し向けたのに」
「「「「「!!??」」」」」
驚愕、あの緑の悪魔と恐れられしガチャ爆死の鬼がやられていたこと、衝撃の事実に驚きを隠せない一同、あの人を平然とあしらったのだろう。オーガ、いったいどのような手であの人を抑えたのか
「頭に猫を乗っけている小さいやつを投げ付けた」
「いや、それ理事長!オーガあんた何してくれとんねん!!」
まさかの答えが返ってきたがオーガがいればこの地獄から解放されるのではないかとの期待の目が向けられる。正面から対峙する2人、2人の周りの空間だけ揺らいで見える。固唾をのんで見守る。何故か目を離せないが瞬きをした瞬間、オーガの口にはおしゃぶりが加えられていた。
「え?」
「は?」
「!!?」
いつの間にか口に入れられていたおしゃぶり、それを吐き出したオーガ、いったい何が起こったのか誰もが分からなかった。
「ちっ、よもや貴様が持っているとはな」
「あらあら~」
「古の剣豪レベルならば当然持っていたとされる知覚、トール・ノーレントランダーシュが著作、ユーザーイリュージョン、意識のという幻想で述べた言葉」
「………………」
「脳の命令0.5秒前の意識の引き金」
「はい」
「不用意に発した俺の信号、脳が命じるまでの0.5秒をお前は手にした」
「な、なんや、どうなっとる」
「おそらくだが、我々の理解できない範疇での攻防が繰り広げられているのでは」
「いや、攻防って、一方的やったやんか」
会話の内容も分からない、動きも見えない、気が付けば二回目のおしゃぶりを咥え涎掛けを付けられ上から園児服を着たオーガがいた。
「ってまたかいな、しかも気持ち悪!!」
「何故か吐き気が」
「ふふ、オーガちゃん、ママでちゅよ~」
「……………バブ」
その時全員に電流が走った。被害にあったものと同じ姿を見て、見たことない姿、普段とのギャップ、ダメだ。今笑ったら殺されると
「はい、オーガちゃんいいこでちゅね~笑顔笑顔~」
まるで最高のおもちゃを見つけたように、獲物を見つけたようにニタ~~と笑顔になるオーガ、それを見てしまったものはあまりの気持ち悪さに吐き気を催すもの、吐くもの、意識が飛ぶもの、そしてクリークの被害にあったものたちは気絶した。
「あかん、最悪や」
「あれを見なければまだ笑った方がマシだった」
「ひどい顔だ」
ゆっくりとクリークのところに近づくオーガ、そしてほぼゼロ距離になった。
「は~い、ママでちゅよ~」
「アホウが」
「え?」
口にくわえていたおしゃぶりを吐き出し、見えない攻撃で意識を刈り取るオーガ、気絶するクリーク、先ほどまでの姿を見ていた者たちは混乱した。
「あ、あんた正気に戻ったんか?」
「ハナから正気だ」
「ならなんで?」
「敵をだますならまず味方からと言うだろう」
「お、おう、そうか、でも助かった~・・・・・・・・・あかんまだ助かってないんや」
そう、この悲惨な状況、どうやって片付けるのかであった。幸い気絶してくれているものが多いので、楽に片づけられるが、もし、記憶が残っていたらと考えると恐ろしい、エアグルーヴ筆頭に後片付けがおこなわれ、悪夢は終了した。
翌日、覚えていない者もいたが、覚えている者の顔は死んでいた。特に生徒会長であるシンボリルドルフは涙を流しながら暗い顔をしていたそうだ。
特に重傷だったのはたづなさんであり、理事長も同じく重症だったのでしばらく学園を休んでいた。
一方元凶であるクリークは多少満足したのか、変わりない生活を送り、相変わらず犠牲に合うタマモクロスがいたとか
色んな意味で最強はクリークだと思います。
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登場、烈海王
ガツガツ ガツガツ ガツガツ ガブ ミリッ モニュ モグ
パクパク パクパク パクパク ジュル ミリリ ガジュ!
「………今日の……中華……料理……」
「ああ………とても……美味い」
「この餃子、いつもより味が深くておいしいです!!!!」
パリッ! ジュルッ! ジュル! モニュ!
噛むたびに心地のいい音をパリパリと奏でる皮に濃厚な肉汁と野菜のうま味が溢れる。一口食べると止まらなく、中から溢れる肉汁に火傷しそうになるが、そんなの知るかと次々と口に放り込む。
「エビチリも甘辛く、優しい味……美味い」
あ~ん パクッ! モグ モグ
甘辛い味付けがより食欲をそそり、次々と皿から姿を消していくエビチリ
「麻婆豆腐も最高デース!このホットソースをかけるとより美味しくなり・・・・・・・あ!」
エルのかけたソースが隣にいたグラスの魚の刺身に降りかかる。
「エ~~ル~~??」
「ヒイッ!ごごごごごごめんなさいデス!」
「あら、別に怒っていませんよ?」
「でも、グラス、目が笑ってないデスよ・・・・」
「ふふふ」
「は、はは、は」
目が笑ってはいないがいつもの調子でエルを見つめるグラス、するとゆっくりと立ち上がり近くに置いていたナイフでエビの頭を落とす。
「・・・・・あの・・・・・グラス」
「なんでしょうか?」
「どうして・・・エビの頭を」
「ふふふ」
不気味な笑いをしながらどこからともなく取り出した薙刀
「あの・・・まさか・・」
急に嫌な予感がして震えが止まらなくなるエル
「なに、今からこのエビのようにエルの頭を落としてあげようかと」
「ケッ!」
「大丈夫ですよ、痛くありませんから、少しホットソースが溢れるだけですから」
「ノーー!!」
「安心してください介錯はしてあげますので」
カランとテーブルの上に投げ出されるナイフのようなもの
「ケッ!もしかして切腹するんですか!」
「苦しまないように一撃で落としてあげますからね逝きますよ、エル」
「た、助けて~、グラスにやられるデース!!!!」
食堂から引きずられ姿を消すエルとグラス、何故かセイウンスカイが「グラスちゃんを怒らせたらヤバイ」と呟いていたが、その呟きをかき消すような悲鳴が外から聞こえてきた。
そんな状況お構いなしに食べ続ける2人
「チャーハンも最高の塩加減!」
パク モグ カンカン! モグ ムグ!
「北京ダックも美味い!」
凄い食欲で姿を消す北京ダック
「春巻きもこのパリパリした音と食感がたまりません」
パリパリ パリッ! ミチッ モグ ゴクン
「子豚の丸焼き、ジュルリ」
ほんの数秒で姿を消した子豚
あらかた食べ終えると満足したのか、大きなお腹で椅子に座っている2人、とてつもない量がいったいどこに消えていくのか、不思議ではあるが2人だから仕方ない、それにしてもなぜここまで今日の中華は美味しかったのか疑問を持つ2人
ガヤガヤとしている厨房の方、何故かウマ娘だけでなくトレーナー達もいるので気になって中を覗きに行く、するとそこには青い衣装を着た長い三つ編みの男が必死に鍋をふるっていた。
「ふん!」
「おお、凄い鍋捌き」
「あんたやるじゃないか」
「いえ、これくらいなら」
「次はこっちを頼むよ」
「わかりました」
厳しそうな、少し厳つい顔をしている男、衣装から見て中国系の人物なのか、時々掛け声なのか、聞いたことのない言葉が出てくる。それよりも気になるのがその人の身体である。明らかに料理人の身体ではない、かといってアスリートレベルの身体ではない、まるで武術を習っている人の身体、時々学園に訪れる館長と呼ばれる人のような雰囲気を持っている。
「ほう、なぜここに貴様がいる、烈海王」
後ろから姿を現すオーガ、オーガを見て驚愕な表情を浮かべる烈海王と呼ばれる男
「なぜ、貴方がここに」
「質問を質問で返すか、まあいい、ただの気まぐれだ」
「気まぐれだと?」
「ああ、それでお前は」
「私は、ここの職員の1人が神心会の出身、怪我のため代わりとして料理を作りに来た」
「なるほど」
納得した表情で立ち去るオーガ、緊張から解放されたのか、息を吐き肩の力を抜く烈、2人の関係を知らない生徒にとってはどういう関係なのか気になるが、それ以上に気になるのが料理の方であった。
「ほら、さっさとしな、まだまだ作らないといかんからね」
「ハッ!失礼、すぐに!」
すぐに先ほどのように料理を作り出す烈、次々と出てくる料理に満足そうな表情を浮かべ食べ進めるウマ娘達、これも鍛錬の一環としておこなっている烈は苦でもないが流石に1人で何十人分を食べるウマ娘に出会った時はあのオーガの子を思い出したほどだった。
後日、改めて臨時料理人であり職員として頻繁に通うことになるとはまだ誰も知らなかった。
暴力シーンはないほうがいいんだろうけど、難しい、ジャックとタキオンを混ぜるとどうなるのかな?
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ごきげんな朝食集
トレセン学園の生徒は朝が早い、中には朝練をしてから登校する者もいる。そんな学園では毎日毎日大喰らいの生徒がいるので朝から大変である。中でも恐ろしいのがオグリキャップ、毎日毎日とんでもない量のご飯を食べるため、食堂は毎日悲鳴が上がる。
「今日のご飯も美味そうだ」
ぐぅぅぅぅぅぅ~~~~~
オグリの目の前には大量の朝ごはんが置かれていた。オグリにとって活動するのに最低限の食事、ご機嫌な朝食だ。
山もりのキャベツ
山もりのご飯
山もりの焼き鮭
山もりのベーコンエッグ
山もりの味噌汁
山もりの肉とニンジン
「いただきます」
パク…パク、メリ………モニュ、モニュ………ズズッ、ブチュ、ミリ、ナポッ
次々と料理が消えていく、なくなるたびにお代わりに行くオグリキャップ
ギュポ、メリ…………パク、パク、ズズ、ゴクン
「ご馳走様」
わずか数分で平らげるオグリであった。
「いただきます」
次はスペシャルウィーク、オグリと同じで良く食べる子だ。
山もりのご飯
山もりのサラダ
山もりのニンジン
山もりの卵焼き
山もりのお肉
「あ~ん」
パク、パク、モニュ、モニュ………ミリ、パリッ…………ニュポン………ゴクン
モグ、モグ ガツ、ガツ…………シャキ、シャキ、パキ、ムニュ、ゴクン
そしてお代わりが入るがまたもや物の数分で……完食
「ごちそうさまでした!」
山もりのスイーツと睨みあいの格闘をするメジロマックイーン
「………………」
「あれ、食べないのマックイーン?」
「…………減量中ですの」
「そっか~なら代わりにボクが食べてあげるね!」
パクパク、パクパク、ペロ、モグモグ
「……………ッッ!」
「うーん美味しい~」
「………………ッッ!!!!!!」
「なんで減量中なのにスイーツを朝からこんなに用意したの?」
「用意したのは私じゃありません!!!!!!」
「え、じゃあ誰?」
「………………ゴールドシップ」
「あ、ああ~」
血涙を流しながら親を殺されたような目でテイオーを睨みつけるマックイーンがいた。ちなみに用意したのはゴルシであったため、その後ゴルシは逆鱗に触れたためかマックイーンによる正中線四連突きを喰らいノックアウトされた。
エアグルーヴと一緒に朝からヘビーではあるがステーキを食べるシンボリルドルフ、ナイフを入れただけで簡単に切れるその柔らかさ、フォークで切った肉を持ち上げ何か思いついたようだ。
「このステーキ、ステキだな……ふふっ」
「……………会長」
エアグルーヴのやる気が下がった。
「ルドルフ~面白くないよそのダジャレ」
シービーの容赦のない一言
シンボリルドルフのやる気が下がった。
短めの小話です。偶にはこんなのもありかなと思いました。
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節分
トレセン学園では本日節分という事で鬼役がいたりする生徒や豆を投げる生徒、恵方巻を食べたりする生徒、楽しそうに自由にやっている。そんな中あるウマ娘の一言からお遊びの節分が、ガチの鬼退治に変貌した。
「鬼は外なんだろう?ならオーガに鬼の役やってもらおうぜ~、さっすがあたし、あったまいい~」
そして始まった節分、豆まき、鬼もお面をかぶらなくとも名前が鬼なので歩くだけで豆をぶつけられる。本来なら、鬼は外、福は内で済むのだが、ルールも変更
捕まれば体育館送りで、豆を投げながら時間内に逃げ切れば報奨として特性ニンジン恵方巻がもらえるとのこと、それをきっかけにやる気が出た生徒は逃げ切るつもりで本気で勝つ気であった。
豆を投げられればオーガは動けず、豆がなくなったものは真っ先に狙われるという恐怖を味わうのだが、それも一興、ここにトレセン学園節分パーティーが始まった。
「「「鬼は外~」」」
「………………」
「オーガは外~」
「………………」
「あ、豆なくなっちゃった」
「ほう」
「あ、待って、ちょっとみんな豆投げて!」
「ごめんニンジンほしいから」
「もう少しでなくなりそうだから」
「…………犠牲者が増えれば貰える可能性が増える」
「この裏切り者~!!!!!!」
「くっくっくっ、アホウが」
「い~や~助けて~」
「「あなたのことは一生忘れない」」
肩に担ぎ上げられて連れていかれるウマ娘、さながら獲物を運ぶ鬼と運ばれる者にしか見えない、何度も何度も生徒を体育館に放り込み数が減ってきたところ徹底的に捕まえ気が付けば全校生徒の9割は捕まった。流石のオーガも驚いた豆まきでもあった。
「鬼は外ですわ~」
「しゃおら~」
「!!!!!!」
「お、オーガがよけた!」
「いや、あれはよけないと死にますわよ」
カワカミの投げる豆とゴルシの固められた豆、壁に穴が開き、少量の冷や汗を流すオーガ、そして壁を壊したことで現れるエアグルーヴ
「豆……こまめに豆を投げる、まめに豆を投げる、豆を投げすぎて手に豆ができてしまった。……ふふっ」
カワカミの投げる豆はショットガンの勢いになりダメージを与えていく、本来ならよけられる程度ではあるが、所詮豆、そこまでダメージはないと考えていた。
「ほう、やるな小娘」
「ひいいいいいいい、くたばれですわー!」
「完全に殺気満々ですわ!」
「これ以上壁を壊すなカワカミ!!!」
「ひいいいいもう一人鬼が出ましたわ!」
「ほう、説教が必要らしいな」
「「あ」」
「ん?」
「・・・・・」
猫をつかむようにエアグルーヴの首根っこを掴み確保するオーガ、あまりにも破壊するものだからつい目の前で立ち止まり説教をしようとしてしまった。しかしオーガにとっては関係なかった。
「おい下ろせ!」
「目の前に立ちはだかるのなら全て獲物だ」
「あ、おい、待て!私を連れて行くな!」
「このおれの前に背を向け、立ちはだかるのならば狩られても文句は言えない」
「くそっ、カワカミ!!!後で説教だからな!」
「ああ、捕まっても鬼が待ってますわ~」
無慈悲につれて行かれるエアグルーヴ、なんとか助かったと安堵する者もいるが結局その後あっけなく捕まってしまった。その後も死角から現れては捕まえ、体育館に放り込むを繰り返していた。
「おいおい、マジもんの鬼じゃねーか」
「ま、オーガだしね」
「ああ、また捕まってます」
次々と捕らわれる生徒たち、先ほどもキングが捕まり残すは、ゴルシ、テイオー、スペシャルウィークのみであった。
「くっそ、ふざけて金棒なんか渡すんじゃなかった」
「ナニ渡してるの!」
「でも渡された金棒、簡単に折ってましたよね?」
そう、ゴルシに渡された金棒はカニの脚を折るかの如く簡単に折り投げ捨てていた。その一部光景を見たものは戦意を喪失し、自ら捕まるものもいた。
「とりあえず豆がもうない」
「そうだね、豆の代わりに小豆を投げたらマックイーンが食べちゃって捕まったしね」
「マックイーンさん食いしん坊ですしね」
「スぺ(ちゃん)もだけどな(ね)」
「あれ?」
「ほうここにいたか」
「「「逃げろ!」」」
ウマ娘の本気の走りにはさすがのオーガもついてこれまい、豆を温存するべく逃げる3人、落ちている豆を使うことはできないので時間内になるべく逃げるしかなく、いざって時にしか使えない、それでも脚はこちらが有利!
「って、なんで追いかけてこれるんですか~!」
「流石ウマ娘、いい脚だ」
平然と追ってくるオーガ、逃げるスペシャルウィーク、遠くから安全場所に隠れたテイオーは嘘、まじかといった表情をしていた。ゴルシは空に逃げた。
「うおおおおおおおスカイウォーク!!!!」
「えーー空飛んでる!」
一人だけ空に逃げるゴルシ、一体どこで修行してきたのか空に逃げる、逃げて逃げて逃げた。そしてその光景を見て足が止まったスペシャルウィークは捕まった。
「へへ、これなら絶対に捕まらない!・・・・・あれ?」
「あの、その、なにを?」
「所詮小娘の知恵、その程度で逃げられるとも?」
スペシャルウィークの首根っこをつかみ空を見上げるオーガ、すると驚異的な行動に出た。砲丸投げの構えを取り、まさかの空にいるゴルシに向かってスペシャルウィークをぶん投げたのだ!
悲鳴を上げながら空へと飛んでいくスペシャルウィーク、まさに鬼の所業、そのままゴルシにぶつかり、仲良く落下してくる。
「おいおいおいおいおいおいふざけんな化け物かあいつ!」
「ああ、お母ちゃん、あたし空飛んだべさ」
「やばいって落ちるって!」
地面が見えてきたが落ちる寸前でオーガにキャッチされる二人、さすがに安堵したのか恐怖なのか、腰が抜けて動けなくなる二人であった。最後の一人になったテイオーはあまりの恐怖にどこぞの別作品の鬼のシリーズよろしく、タンスの中でガクガク震えているところを確保された。
捕まる瞬間この世の者とは思えない悲鳴を上げていたが、オーガ相手ならば仕方ないであろう。これ以降オーガは鬼の役として参加することはなくなったが、トレーナー達が鬼をやったがあのスリルを忘れられないのか、結局もう一度やることになった。
もうなんでもありの節分、死者が出ない方がある意味救いなのか?
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異質な出会い
人は何か取り返しのつかないことをしてしまったとき過去に戻りたい、数分前に戻って欲しいと考える。普通の日常、大事な日、あらゆるタイミング存在するミス、過去には戻れないがミスを防ぐ手段は存在する。しかし起こしてしまったミスは元には戻せない
「・・・・・・・・・」
「ご、ごごご、ごめんなさいなのだ」
「本当にすみません!」
商店街にてトレーナーにいたずらをするつもりが間違えて一般人に噛みついてしまった。身長は2メートルを超える大型の外国人、服装からでも分かるがたいの良さ、身長も異質だが、それよりも全身の傷、普通の生活をしていた人間の身体ではない
「おけがはありませんか!」
「・・・・・」
「あああ・・・ああ」
「モンダイナイ」
「・・本当に大丈夫ですか?一応ウマ娘の噛みですし、加減されているとは言え歯形や痛みはあるはず」
「イタミ?・・・アノテイド・・カマレタトハ・・イワン」
「そ、そうですか」
きれいな日本語ではなく、カタコトで話す外国人、怒っているようには見えないが痛みを感じているようにも見えない、むしろ子犬が甘噛みをした程度にしか感じていないのだろう。
「ウマムスメ・・ナマエハ」
「こ、この子はシンコウウインディ、ボクはその担当トレーナーです!」
「ウインディ・・・マダマダヨワイナ」
「よ、弱いですか?」
「ココナッツ・ヤシノミクライカンタンニ・・カミチギレナケレバ」
「のだ?」
「あの・・・一体何を?」
買い物袋からココナッツを取り出す男、片手で持ち上げたそれを口元に持ってくる。今から見た光景は二人にとって忘れられない光景となった。まるでパンを囓るように、柔らかい料理を食べるように、まるで最初から柔らかいものを食べているような感じで、サクッといい音を立てながらココナッツを噛みちぎった。
「凄い」
「の、のだ~」
中身にある水分を飲み干し殻となったココナッツ、それをウインディに差し渡した。
「ヤッテミロ」
「のだ!」
「いやいやいや、無理無理!流石にウマ娘の咬筋力でも無理!」
全力で否定するトレーナーとは違い、無言で見下ろしてくる男、早くやってみろと言わんばかりにプレッシャーをかけてくる。流石に怪我をさせるわけにはいかないので止めさせるが、何か意を決したのか噛みついた。
「か、堅いのだ~」
当たり前だが、噛みちぎることは無理だったが、くっきりとした歯形を残すことは出来ていた。ウマ娘ならば簡単に肉を噛みちぎることはできるが堅すぎるものは歯形を残せるかなんとかできるかのレベルであった。
「マダマダダナ・・・モットショウジンシロ」
「のだ~?」
「ツヨクナリタイナラ・・・キタエロ・・・ソレカ・・マタアウコトガ・・アルナラ」
「あ、あるなら~?」
「ツヨクシテヤル」
「のだ!」
「い、いやいやいや!」
確かにどんなスポーツにおいても意外と歯は使う、特に踏ん張りどころは歯が欠けるくらいにアスリートなどは力が入る。そのため専用のマウスピースがなければ本来の力を100パーセントはっきできないともいう、レースにおいては最後の直線勝負、全員が全員というわけではないが少なからず強く噛む子をいる。
「ジャアナ」
「あ、な、名前はなんというのですか?」
「・・・・・・ジャック・ハンマー」
「ジャックさんですか」
悪い人ではないのだろう、しかしなんとも凄い咬筋力であった。あの力がもしウインディに加われば更に実力を伸ばすことが出来るのかもしれないが、他の子に噛みついた際怪我をさせてしまうのではないこと不安になってしまう。
「・・・・とりあえず帰ろうか」
「そ~なのだ~」
そう遠くない未来にもう一度出会うことになるとはまだ二人は知らなかった。
まさかの出ます!ドーピングではありません、ドーピング以外で出します!
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象形拳の完成形
3連複はコナコースト切っちゃったよ~、なんでいつも勝ちきれないんだろう、教えて競馬上手い人!!(切実)さて、それはともかく完成形です
象形拳、あの時教えてもらった技、あらゆる生物の動きなどをモチーフにした拳法とでもいうべきか、いわゆる所詮真似事、真似をしたところで本物のような力はない、ナリタタイシンは海洋生物をモチーフにした象形拳を生み出し、レースに勝利するなど輝かしい功績を残していたが成長はそこで止まっていた。
本来の持ち味である末脚に象形拳の組み合わせ、しかし周りも力を付け始め油断ならない相手になってきた。ならば真似事を辞める。単純であるが単純ではない、それは新たな方法をゼロから生み出すのと等しい考えであった。
「どうしよう、なんにも思いつかない」
ヒントを探すとしてトレーナーと一緒に水族館に行ったり、動物園に行ったり、あらゆるところに一緒に出掛けていた。これを見ていたモジャモジャのメガネはまるでデートではないかと思っていたが心のうちにしまっていた。
モノマネ、つまり今のままモノマネを続けていても意味はない、モノマネ…………あれ?なんで私、モノマネに引っかかるのだろう?
僅かな引っ掛かりを気にしながら今日も過ごすタイシン、そこにハヤヒデとチケットが姿を現す。もしかしたらなにかいいアイデアをくれるかもしれないと考え、2人に相談する。
「え~わかんないよ」
「ふむ、難しい相談だな」
「………………」
チケットに聞いたのは間違えだったかもしれない、けれどハヤヒデは真剣に考えてくれている。モノマネという部分に引っかかるのか、ブツブツと言葉を漏らしながら考え込んでいる。
「ん~あたしにはわかんないな~」
「チケット、ちょっと黙ってて」
「なんでー!!!!!」
「………モノマネを辞める、いや、そもそもモノマネをするほどその原点が優れていると言うべきか」
「え?どういう事ハヤヒデ?」
「チケット、仮にだがブライアンのような力強い走りを真似しようとする。それは真似されるほど素晴らしい走りともとれる。象形拳とはそのオリジナルの戦い方を真似する。つまりだが、象形拳はモノマネ、オリジナルには近づけない」
「「あ!」」
「場合によってはそれを越すこともできるだろうが、そもそもの原点がオリジナル、つまりタイシンはタイシンのチケットはチケットの私は私の走りと言ったところか」
「でもそれだと意味がないんじゃ」
「ああ、問題の改善はされないだろう、つまり最初から戻ることになる。象形拳を使える前の段階に」
まさしくゼロからのスタートになる。確かにハヤヒデの言う通り問題は解決されていない、次のステージに向かうことはできない、しかしヒントは手に入った。
ヒントを探すために、原点を探るために己の過去を思い返した。しかしいくら思い返してもいい思い出はなく、どうすればいいのかわからない
「タイシン、無理に思い返そうとするな、些細なきっかけがヒントになるかもしれない」
「モリゾー」
「ちょっと待て、今なんて言った!」
「ハヤ・・・・もじゃもじゃ」
「チケット、少し説教が必要なようだな」
「あーーーーーー」
ドナドナされていくチケット、どこかに去って行く二人を眺めながら考える。
考えても結局何も思いつかず一日が終わった。次第に考えることをやめ、モノマネをやめ、いくつもの時間が経ち、日だけが過ぎていく。
結局何も変わらず時間だけが過ぎていく日々にイライラし始めるタイシン、普段なら願うことをすることはないが、神にすらすがりたくなる気持ちであり三女神の像の前にいた。
「どうすれば・・・・」
「相変わらずモノマネに捕らわれ脱却することが出来ず、ただただ悩んでいるようだな、ナリタタイシン」
不敵な笑みを浮かべ現れるオーガ、ニヤニヤとバカにするような顔でこちらを見下してくる。
「うっさい、どっかいって」
「助言をやろう小娘」
「はぁ?」
「貴様らは何だ?」
「は?」
「走るために生まれてきた種族の貴様ら、元は別の世界の魂から派生したもの、貴様らは未だに謎が多い種族ではあるが、根本的な部分は変わらないはずだ」
「・・・意味が分からないんだけど」
「血を感じろ!!!」
「え?」
「己に流れる血を感じろ、それだけだ」
「血を?」
「血のなせる技だ」
「技」
まだピンとこない、一体どういうことなのか、血のなせる技とは一体
「さて、もうすこしお節介を焼くなら、象形拳のなるものの理想」
「り、理想型?」
「或いは、目指すべき方向とでもいうべきか、キサマにおしえよう」
熊の戦闘形態を真似た熊掌拳、虎の勢いをイメージした虎形拳、蟷螂の戦闘を採り入れた蟷螂拳、そしておまえのオリジナルシャチの拳
「様々型を工夫するも言うなれば所詮はモノマネッッ」
知っている、モノマネということは、初めて型を作るときにも言われた言葉だ。ゴジラの形を完成させ、火を吐いて戦おうがマネはマネだということを
「見逃すな象形拳の理想型」
「え・・・・象形拳・・・・・って・・型・・・も、モノマネじゃん!」
両腕をゆっくりと持ち上げ手の甲をたたき合わせる。いい音が響き渡り両腕は頭の位置にまで伸ばされた。改めて、弱肉強食だけが旨、そんな苛烈な自然界を幾千世代、彼らに備わる戦闘法、この世の法則に沿う、言うなればそれは、絶対強者の戦闘法だ
そんな神のお墨付き、人は学んだ、強者から学ぶ、強者から学ぶ、生き残った者から学ぶ、選ばれし者から学ぶ、絶対的回答、先人から受け継がれた英知を、オーガは揶揄する。所詮はモノマネと、あまつさえ、ここに象形拳を完成させるとまで・・・・・・
ナリタタイシンは考えた。何から採り入れる・・・・・・?何をマネるのかと、しかしそんな考えとは裏腹にオーガは笑う
「バ~~~~カ、こんな動作、テキトーにキマッてんじゃん」
「は?」
高く上げた拳を勢いよく前に持ってくるとオーガの着ていた服が破けた。破けたと同時に服に隠されていた筋肉があらわとなった。いったいどのように鍛えたらそのような身体になるのか、異常に発達した筋肉はまるで一つの芸術作品、並の格闘家とは比べものにならない
本当に簡単な動きだった。振りかぶったオーガが虚空に向けて放つ直突き、回し蹴り、それら全ては実態となり視覚として捉えられた。オーガ自ら演じるオーガ拳、本人が本人を真似る。これ以上自然な象形拳はまたとあるまい、とても、とても美しく感じた。
「どうだった」
「・・・きっと完璧、本人が本人を真似る完璧に決まってんじゃん」
「ならばどうする」
「・・・・私も私をマネする」
「ならばより己の血を感じることだな」
「普通ならウマソウルとかなんだろうけどね」
「ウマソウルなど知ったことか、己に流れる血が全てを知っている」
「あ、そ・・・どうも」
不器用な感謝を伝えるタイシン、もうこれ以上教えることはないと言わんばかりにその場から去って行くオーガ、血を感じろ、それを意味することは分からない、感じたところで何が分かるのか理解できない、しかしなぜか感じる。
「血を感じろ・・・か」
ゆっくりと己に流れる血を感じ始める。初めは目をつむり感覚を引き上げる。風の音から始まり、虫の音、心臓の音と鼓動が聞こえ始める。より集中し流れる血をイメージする。
「聞こえる」
一定のリズムで鼓動を繰り返す心臓、血を全身を巡らせるためのポンプ、更に集中することで手から足、全身に流れる血液を意識する。しかし意識したところで何かが変わるわけではない、ただただ流れているだけでありそれだけである。
魂、ウマ娘は本来別の世界の魂が人の形となり生を受けると言われている。本来謎が多い生物であり未だに解明できていない超難問である。しかし血と魂、これらは共通するものでもある。
「血と魂・・・原点」
ボソボソとつぶやきながら己を感じる。血が沸騰するような感覚、全身が熱くなり胸の中心が熱い、これは一体何なのか、これが魂なのか、嫌心臓だろう。非現実的な感覚、あのときもそうだ、モノマネの姿が本物に見える目の錯覚、意味が分からないが事実でもある。
仕方なくその場から離れターフに立つ、イライラしたときや不満なときは走ることで少しはましになる。今日は走らないがここはとても落ち着く、芝が、ターフがとても落ち着く、やはりウマ娘、普通の人間ならこんな気持ちにはならない
しかし身体が熱い、焼けるように熱くなってくる。まるでレースの最中のように血が、全身が沸騰するような感覚、ナリタタイシンは一度目を閉じ全身を押さえるように身体を丸めた。しかし身体はどんどん熱くなる。まるで身体の内側から何かが飛び出すような感覚、次第に熱を抑えきれずその場で這いつくばり意識を失った。
意識を失ってからどれだけ時間が経ったのか、目を開けるとそこは普段自分が見ている光景ではなかった。目線の高さが違う。身体がおかしい、人がたくさんいる。ここはどこだ?
一番の驚きは自身の姿だ。謎の生き物に変わり四足歩行、口には何かをつけられており背中には人が乗っている。身体の自由がきかない、思うように動かない、まるで自分の身体ではないようだ。
「なにこれ?どうなってるの?」
不安と疑問、焦りなど様々な感情があるが一番驚いたのはチケットとハヤヒデの姿だ。同じような姿で目の前を歩いている。背中に人を乗せて番号と名前が書いたゼッケンをつけている。なぜ分かるのか分からなかったがなんとなくわかったと、ゼッケンが最終的な決め手ではあったがなんとなくわかった。
聞いたことのあるファンファーレが鳴り響く、ゲートが目の前にある。これはもう本能で分かる。今からレースをする。他にも多くの何かがいるが視線は前を向いている。これは自分の身体ではないがおそらく別の世界の自分なのだろう。チケットとハヤヒデがいるそしてこれは皐月賞、私が勝ったレース、そしてゲートが開いた。
皐月賞2000メートル、4コーナーにさしかかり一気に全員が仕掛けてきた。やはりハヤヒデが先頭トップに躍り出た。続いてチケット、背中に乗っている人に鞭で叩かれる。勝ちたいという気持ちが乗ってくる。勝たせたいという気持ちが乗ってくる。胸が熱い感覚、あのときのレースとはまた違う感覚、得意な末脚でゴールを奪う瞬間景色が変わった。
今度は謎の生き物と正面で対峙している。お互いを見つめ合い、何かで繋がっている感覚がする。ウマソウル、つまりこの生き物が別世界の私なんだろう、何かを語りかけてくる。しかし言葉は話せない、しかしなにかしら通じるものがある。
「血を証明しろ?」
「勝ちたい気持ちはあるのか?」
「血統を証明しろ!」
「覚醒させろ」
「おまえは俺だ、俺はオマエだ」
なんとなくだが言いたいことが分かる。手を伸ばし鼻先に触れる。暖かく、そして光となり一体になる感覚がする。別の世界での経験が己の経験となり流れ込んでくる。まるでかけていたピースが見つかったような感覚
象形拳の完成形はこれではないのか?原点にして頂点、自身が自信をまねする。そのまねが自信であることが一番、象形拳の理想型は見つかった。オーガの助言を思い出す。
気がつけば世界は元に戻っていた。しかし何かが違った。その場から立ち上がり深呼吸をする。
「・・・いける」
型に捕らわれずただイメージする。仮に型を作るとしてもテキトーでいい、あの生き物をイメージする。最初から自分は四足歩行の生き物だと意識し形をはっきりとさせる。段々とイメージが現れる。そしてゲートに入るイメージ、あの光景を全て構築する。先ほど見た光景をより鮮明に思い浮かべる。
「驚いた」
「え?」
「どこに行ったか探しに来たのだが一体何があった、雰囲気というか何かが違う」
「ハヤヒデ」
「まるで懐かしい感覚、そしてとても恐ろしい」
いつからそこにいたのか、チケットの姿は見えないがそこにいたのはハヤヒデだけであった。いつものようにキリッとしているわけではなく、なにかが見えているのか少しばかり眉間にしわが寄っている。懐かしい感覚、もしかしてだが宿っているのか
「何があったんだタイシン」
「・・ないしょ」
「はは、そうか、しかし」
「なに?」
「私には得体のしれない生き物がこちらをずっと見ている風に見える。嫌、言葉にするのが難しいな、オーラなのかそれともスタンドなのか・・・言語化が難しいな」
「さあ?」
「なにかを掴んだようだなタイシン」
「明日ちょっと三人で併走しない?」
タイシンからの珍しい言葉に驚くがそれ以上に今戦ってみたいという気持ちがある。無論問題ないと言い、次の日の併走では圧倒的な差でハヤヒデとチケットは負けた。併走の際、まるでこの世の者とは言えない生き物と併走している気分で走ったと、懐かしくそして今までにないくらいに強かったと感じたハヤヒデであった。
チケットは四足歩行の生き物と併走している錯覚が見えたと、そして人が背中に乗っていたと、懐かしくそしてとても熱い気持ちになったと、まるであの時のようだと感じた。なぜか涙があふれて止まらなかった。
これにて完成!後は二人をどんな風に魔改造するかが悩む、そして明日のディープ記念はどうしよう、個人的にはゴッドファーザーかトップナイフを軸に考えようかな
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シャドーロールの怪物と鬼
夕方のターフ、練習が終わり帰宅するものが増えてきた時間帯、まだちらほらと練習している生徒もいるがある場所を除いて誰も近づかないようにしている。
そこにいるのはオーガとナリタブライアン、対峙する二人、まるでそこだけ別空間のような扱い、まるで龍と虎が対峙している幻覚も見える。
「………………」
「………………」
「……………何の用だ」
「……………聞いたぞ」
「何をだ」
「あんたが教えた生徒が急激に強くなっていると」
「それで」
「私も鍛えろ」
あのオーガに対しての命令口調、だがオーガはニヤリと笑う、ブライアンの目は本気の目、この学園に来てから初めてみる飢えの目である。
「いいだろうナリタブライアン、貴様がついてこれるか楽しみだ」
「望むところだ」
怪物と鬼、誰もが想像したことのないコンビが誕生した。怪物コンビが誕生してから毎日毎日常識を逸脱したトレーニングがおこなわれていた。
山に出向き大猿から死ぬ気で逃げる。
「ホキャキャーー!!!!!!!!」
「ついてこれるか化け物!!!!!!」
「キャキャ~~!!!!」
「・・・・あの夜叉猿から余裕で逃げるか」
毎日毎日大きな丸太に斧を振り下ろし一振りで切断できるように繰り返す。
「ふー・・・・・・・・はぁぁぁぁぁぁ!!!!」
丸太に勢いよく刺さる斧、残念ながら切断することはできなかった。次の日も、次の日も、毎日毎日斧を早朝に振り下ろす。
「くそっ!」
「まだ力が足りねぇな~」
「ふん、見てろそのうちたたき割ってやる!」
「せいぜい頑張んな」
ある日の晩飯、イノシシやシカの内臓の塩漬け、いわゆる保存食が鍋いっぱいに入っていた。
「これは?」
「喰え」
「喰って大丈夫なのか?」
「ああ」
「…………わかった」
取り分ける用の器にたっぷりと入れ、かきこんでいく。
「野生の、自然で生きる者のパワーを身体に詰め込め、そして己の血肉に変え、力に変えろ」
ブライアンは喰った。喰って、喰って、喰って、強くなってやる!その思いで限界まで詰め込んだブライアンは苦しい表情だったが食べてすぐに寝た、朝起きると昨日の苦しかった感じはなく身体から力が溢れてくる感覚だった。
「………よし!」
そして、そこには・・・・・・・・・丸太を切断したブライアンがいた。
野生の熊に拳を打ち込み一撃で仕留める。
「よく見ていろ、ブライアン」
「ガアアアア!」
「!!!!」
熊の心臓に向け拳をふるう、厚みのある脂肪を打ち抜くだけでなくはっきりと残るほどの打撃痕、断末魔を上げ倒れる熊、ズシンと音を立て生命活動を停止した熊を見下ろしたオーガはこちらに振り向いた。
「今日の飯だ、鍛えればいずれここまでできる」
「いや、無理だろ」
流石に熊を一撃で倒せるようになるのは難しく、確かにウマ娘が鍛えれば可能かもしれないがよくてコンクリの壁を破壊できるとこまでだろう。仕留めた熊を背負いブライアンとともに帰るオーガであった。
宿泊用の小屋の外で焚火をしながら毎日毎日たらふく肉を喰らう、ブライアンは肉を食べる時が一番幸せそうであった。勿論栄養バランスも考え嫌々ではあったが野菜も食べていた。野草や山菜はあるが明らかに山で手に入ることのない野菜が毎日小屋に置かれていた。
オーガはなぜか毎晩白くてフワフワの大きい生き物が野菜を置いて姿を消していると伝えるとブライアンは苦虫をかみつぶした顔をした。おそらく誰か分かっているのだろう。
巨大な岩を身体に括り付け坂を何本も往復した。
「ハアアアアアア!!!!」
「ふむ、大岩程度ではまだまだ余裕か」
岩と言うにはあまりにも大きすぎる岩石をブライアンに背負わせ走らせる。慣れてきたらさらに大きな岩を背負わせるを繰り返していた。
腰を落とし肩幅より足を開き両こぶしを前で構えるの体制で何時間も耐え続けた。
「くっ……なかなかキツイな」
「これだけでも下半身は強化されるあと2時間耐えろ」
「……………上等だ!」
渓谷のような崖に身を放り投げる。
「おい待て、いくらなんでもここから飛び降りるのは死ぬだろう」
「死んだらその程度と言うわけだ」
「……………限度と言うものがあるだろう」
「ライスシャワーは飛び込んだがお前は飛び込めないほど弱いのか?」
「なに?」
安い挑発、ニヤニヤとしながらブライアンを見つめるオーガ、正確には飛び込んだのではなく落とされたが正しいがそこはどうでもいい
「………………」
「………………」
「いいだろう、強くなるためだ飛び込んでやろうじゃないか」
「ほう」
覚悟を決め崖から飛び込むブライアン、飛び込んでから少しして離れたところから白い生き物がブライアンの名前を呼びながら飛び込んでいった。こればっかりはさすがのオーガも驚きを隠せなかった。
その後無事に帰ってきたブライアンとどこかに姿を消した者がいた。ブライアンいわく飛び込んでる落下の最中に「姉貴に名前を呼ばれた気がした」と語っていた。
命を懸けた修行と言う名のトレーニング、極限まで鍛えこんだパワートレーニングで気が付けばブライアンの身体は一層引き締まり筋肉が肥大化していた。
「ほう、やり遂げるとは」
「力が、溢れてくる」
「今の貴様なら大抵は敵なしと言えるだろう」
「ああ、早速姉貴と勝負するか」
学園に帰ってきた2人、さっそくトレーニングの成果を試すため姉であるビワハヤヒデと模擬レースを行う事となった。
「ブライアン、相当鍛えてきたようだな」
「ああ、負ける気はない、姉貴、本気で掛かってこい!」
「ふっ……いいだろう、来いブライアン」
オーガの立会いの下、早速レースが開始した。距離2000、これまでの成果を見せつけるかの如く、鍛えるに鍛えられたブライアンの成果が発揮される。
「どうした姉貴、こんなものか」
「やるなブライアン、だがここからだ」
両者接戦の模様、お互い前は譲らず熱いレースが繰り広げられている。だが力のブライアンと理論のハヤヒデ、どちらが勝つかによって改善すべき点が見つかる。それよりも気になるのはあれだけ鍛えてブライアンに平然と追いついているハヤヒデだ、毎晩のおそらく白い生き物の正体は彼女であっただろう。そうなると毎晩学園から山までかなりの距離があるが毎日荷物を届けに走りに来ていると考えると相手も相当鍛えられている。
悲鳴を上げるほど鍛えられた身体、力に変えた栄養の数々、それを発揮するように最終コーナーで仕掛けた。
「蓄えてきた力を開放できるか?」
「はあああああああ!!!!!!」
ブライアンの踏み込む脚に途轍もない力が注ぎ込まれ、地面は抉られたようになり、抉られたというにはクレーターができるほどだった。負けじとハヤヒデも仕掛けラストの直線、デットヒートが始まる。
力みなくして解放のカタルシスは語れねぇ、いつぞやの大会で言い放った言葉、まさに目の前で行われている光景にふさわしい言葉だろう。鍛えに鍛えた身体、蓄えたパワーを全て解放するがごとく、足下がえぐれていく、そこからは圧倒的であった。解放されたパワーはスピードに変わってビワハヤヒデを追い越し、差をどんどん広げていく
距離が縮まらない、差が徐々に開いていき最終的には何バ身なのか、決着はついていた。全てを出し切ったブライアンは気がつけばゴールしていたという感覚であった。これが解放、力みなくして解放のカタルシスは語れない、より強くなれた事への喜びとより強者と戦うことが出来るようになったと、大きく成長した。
ためて、ためて解放~、気がつけば40話、持ちベ維持のために感想と評価お願いします。後何かネタ提供お願いします、結構厳しいです。
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ゴルシと徳川2
「これより死者蘇生を開始する」
「なーにを言っとるんじゃ」
「ここに遙か昔のウマ娘の骨がある」
「話を聞け」
「これを割ってクローンを作成する」
「ちょいと待て、話が見えん」
「なんだよじっちゃん今から調理開始するんだよ、上手に焼けました~するんだよ」
「ええい、言いたいことは山ほどある!まずこの研究施設にどうやって来たんじゃお主は!それとその骨は何じゃ!ウマ娘じゃと?勝手なことをするではない!」
「え、しょうがねーなー、とあるデンジャラスなじーさんにこのドリルブーツ貰ってさ、それで地面掘り進んでたらなんかここ見つけた、この骨は岩塩の中にあった~」
もはややりたい放題のゴルシ、息を切らしながらツッコム御老公、本来限られた人間にしか公開されないこの場所、出入りできるのも選ばれた人間のみ、奇想天外、まるでぬらりひょんのように現れるゴルシに驚きを隠せなかった。
「それよりあの中の人間クローンだろう」
「急に話を普通に戻すな、そうじゃが」
「倫理的にまずいだろそれ」
「さっき作ろうとしたウマ娘の言う言葉じゃないじゃろう」
急に真面目なことを言うゴルシにもうどうすればいいのか分からない御老公、しかしゴルシの言っていることはまともである。クローンの想像は禁忌でもあり秘匿しなければいけないものである。
「なあ、これって誰だ?
「宮本武蔵さんじゃ」
「あの三刀流のゾロか!」
「宮本武蔵と言うとるじゃろうが、誰じゃそれ」
「ならばゴルシちゃんも金属器を用意しなければ王になる準備で、ダンジョン攻略してジンを手に入れてラスボスとして待っといてやる」
「もうすきにせえ」
「んで、戦国時代の人だろう、本当にいいのか?」
「・・・・創作じゃよ、どんな強さの人物か気になってのう」
「やめといた方がいいと思うぜ絶対、きっと取り返しのつかないことになる」
「それでも止められん、もう時期に完成する」
「きっと完成したら後悔するぜじっちゃん」
「かもしれんな」
「止められなくなるかもしれないぞ、暴走するこの時代を!」
「なーに大丈夫じゃ」
流石になれたのか無視してあしらうことを覚えた御老公、しかしこの創作が後に大きな悲劇を起こし、いなくなるまでにとあるウマ娘に指示することになるとは今は誰も思わなかった。
とりあえず何か作ろうとしているゴルシは止められないので好きにさせているが、何かしらよく分からない物を取り出して何かをしている。
「何しとるんじゃお主は!」
「いやークローンはやべーしAIでなんとかするけど、代わりに懐かしいビル○○ワースの学生メンバーとともに遺跡のとある墓を暴いたときに手に入れたこの聖遺物!・・・・は流石にやべーから、このウマ娘の毛、とある生き物の毛を使って創作でもするか」
「本当におかしなやつじゃな」
そんなことをしている間に完成が近づいてきた。そしてさらっとよく分からない小さな四足歩行の生き物を創り出したゴルシがいた。それはとことこと歩き回り意外と素早さそうな感じであった。瘤のないラクダ、ポニーのような感じの見た目でありゴルシそっくりの葦毛であった。
「よし、できた!おまえの名前は○貝・・・・・いやうま、UMA、鹿?なんかだ!」
「ちゃんと名付けろ!」
かねて血を恐れたまえ、狩人よ、今も悪夢に捕らわれているのか?
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ゴルシと徳川3
「結局その生き物はなんて名前をつけたんじゃ?」
「ん?こいつか?こいつは~白いアレ」
「名前ですらない」
「いいんだよ、なんか最初小さかったくせにすげーでかくなったし、流石に学園は厳しいな」
「あのな~変な者を生み出すのはいいが、そこら辺はしっかりしなさい」
「あ、ごめん増やしちゃった」
「何しとるんじゃお主は!」
なんかデカイ生き物が二匹増えたが気にしない様子のゴルシ、一体どこで飼っているのか聞いてもゴルゴル星の放牧地と答えるゴルシ、とりあえず手に入れたDNAから創り出しては量産しているがいった何をするつもりなのか
「とりあえずカレンチャンとスイープの毛で創ったけど、池ちゃん喜んでたな~」
「誰じゃあそれ」
「やっぱカレンチャンカワイイって言ってたけどスイープはいやーきついっしょって言って蹴飛ばされてたな~」
「だから何の話をしとるんじゃお主は!」
「あん?こいつら量産して有馬記念で走らせるんだよ!」
「絶対に表に出すな!」
おそらくとんでもないことをしようとしているのは間違いない、世界を激震させるどころかこの話自体が消される可能性もある。もはや勝手に出入りして創ってることにもうどうでもいいと諦めている御老公、にんじんをあげて餌付けしているがいつか勝手に暴走しそうである。
「とりあえずフルゲート目指して量産するか~」
「これ以上問題ごとを増やさないでくれ」
「堅いこと言うなよ~」
「こっちの身がもたんのじゃ!死んでしまう!」
相変わらず好き勝手にしているゴルシ、途中であることに気がつき、前回あったものがなかったことに気がついたのか質問してくる。
「じっちゃん、前ここにいた聖徳太子は?」
「宮本武蔵さんじゃ!聖徳太子はつくっとらん!」
「確かに創ったら飛鳥文化アタックかまされるからな」
「そんな物騒なお方じゃないじゃろう」
「んで、どうした?」
「今は屋敷にいらっしゃる」
「そうか」
先ほどとは打って変わって真剣な表情、黙っていれば美人、奇想天外な行動さえ起こさなければビジュアルは良い、何やらブツブツ言っているが聞き取れない
「御老公、真面目な話だが、宮本武蔵はトレセン学園の生徒とかには接触しないようにしてくれ」
「何じゃ急に真面目に気持ち悪い」
「頼む、戦国時代の人、少なくともこの平和な時代にふさわしくない人物を野に放つのは取り返しのつかないことになるかもしれない、トラウマになるもの、もう二度と戻ってこれないものも出るかもしれない」
「・・・・・・お主のその真面目さに生じてそうしたいのは山々じゃが、行動が読めないからのう、それに学園にはいかんじゃろう」
「本当か?」
「ああ、そんなとこ行っても意味はないからのう、それにあの地下にどっちかというと赴く」
「ああ、あそこか」
「ああ、あそこじゃ」
トレセン学園に来ることはなさそうということに安堵するゴルシ、先ほどの真剣さが消え、いつも通りに戻るが少しシリアスな表情でもあった。
「仮に何かあっても全て悪い悪夢ならいいんだが」
「それはもう手遅れじゃ」
「狩人の夢に帰るくらいならいいんだが」
「もう意味が分からんことを言い始めた!」
「とりあえず宮本武蔵に言うか、オドン教会を登りたまえと」
そんな教会は聞いたこともないと、フロムゲーならよそでやってくれと知る人は知るから言えるが年老いた老人にはそんなことを知るよしもなかった。
「よし、湿っぽいのはここまでにして錬金の続きをするか!」
「もう帰れ!」
「だが断る!まだまだ創るんだー!宝塚3連覇で立ち上がる白いやつ量産するんだ!」
「もうそこにおるじゃろ!」
「気性難フルゲート杯開催するんだー!もうちょっとだけ頑張るから!」
「ええい、言うことを聞かんか!」
その後結局よくわからない生き物が量産され、レースが開始されるのであった。
深夜テンションで創るものじゃね~
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ゴルシと徳川4
「ついにフルゲート出来るほど揃ったぜー!」
「最近姿を見ないと思ったら完成させておったんか!」
ハイテンションでうれしそうに興奮してるゴルシ、一体何を創ったか聞いてみると紹介してきた。
「一枠、マ○バオー!」
「やるもん!」
「喋った!」
「二枠、シャ○ラング(黒○号)!」
「マル○バーンのあのウマか!」
「三枠、し○ん!」
「いやそれキン○ダム!」
思ったよりツッコミのレベルが上がってる御老公、むしろどこからその知識をつけてきたのかが知りたいところではあったがまだまだ紹介は続いた。
「四枠、赤兎!」
「呂○はおらんのか?」
「いや、そっちは専門外だ」
てっきり創ってるものだと思っていたと御老公は考えていたがそこまで非常識・・・非常識だったのでここで考えることをやめた。
「五枠、マキ○マス!」
「それはしゃれにならん!」
「六枠、カ○ン!」
「七枠、ブル○アイ!」
「自重せい!消されるぞお主!」
とある大きなネズミの国家に消されるかもしれないことに震えつつもそんなもん関係ないといわんばかりに勧めていくゴルシ、こいつに自重するという文字が辞書にあるのか気になるくらいであった。
「八枠、ギャ○ップ!」
「おお、全身が燃え取る」
「九枠、ウマ○ン!」
「メルメルメーーー!!」
「それはなんの生き物なんじゃ?」
おそらく白いアレのようなもの、というよりこの世界には存在しない生き物が次々と創り出されている。あまり下手なものを出すと問題になるためハラハラしていた。なぜか本と一緒にいるウマ○ン、何かを訴えかけているがまったく理解できない御老公であった。
「十枠、パト○シア!」
「前回の白いアレと一緒な気がする」
「十一枠、白いアレ!」
「ついに出よった」
「十二枠、ミー○ィア!」
「それは姫じゃ!」
「十三枠、カス○ード!」
「おお、立派なバ体じゃ!とても美しい!」
「十四枠、黒王○!」
「とてもデカイ!なんと強そうな生き物じゃ!」
なぜか呪われた姫様が混じっているが気にしないことにした。それにしても美しく強そうな身体を持つ生き物もいるので是非とも欲しいものだが、アレが創った生き物なのできっと大変なんだろうと思った。
「十五枠、バーニ○グビーフ!」
「それはもうただの闘牛じゃ!」
「おいしそうな名前だろう?」
「喰う気かお主!」
「いらね」
「いらんのかい!」
ぜえぜえと息を切らしながらもツッコミ続ける御老公、やはりゴルシ、きっすいのハジケリストの前ではどんな権力者でも手のひらの上だ。
「十六枠、サバンナ○トライプ!」
「色違いどころか少し似ているだけじゃ!」
「シマウマだもんな」
「十七枠、ジ○フ!」
「キリンじゃよ」
「首が非常に長い生き物だな」
「十八枠、ハリ○テエ○ジー!」
「ただの手作りじゃないのかそれ?」
「回を重ねるごとにバージョンアップします」
「作り直し取るじゃろそれ」
きっと走ってる最中にガムテープの剥がれる音がするのか、コーナーで転倒するのか、鉄の破れる音がするのか、いったいどんなハプニングが起るのか知るものは数少ない、しかしそれでも最後には夢を見せてくれるだろう
「以上だ!どうだ凄いだろう!」
「はいはい、凄いのう」
「なんだよ~ノリが悪いな」
「もうこっちも歳じゃ少しは労れ」
「こっちだって引退して余生を送ってるんだよ、今度スカー○ットテ○ルと会うんだよ」
「だから自重せんか!怒られるぞ!」
「まめちゃん可愛いよな」
「もう黙れお主!」
調べるのに苦労した~ウマのキャラ
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河川敷での出会い
今日も勝てなかった。この前も勝てなかった。何度も何度も勝てなかった。けれど諦めることはなかった。プライドがそれを許さなかった。例え泥にまみれようが、優雅でなかろうが、泥臭くあきらめが悪かろうが、いつか絶対に一流であると証明してみせる。そう誓い決意したあの頃、今の自分はどうなのだろうか。
ただ一人で河川敷を歩くキングヘイロー、今日のレースでも敗北しまた一着を取れなかった。そのたびに母から連絡がかかってくる。勝っても褒めてはくれない、意地を張り頑固に一流を証明しにかかる娘に呆れているのだろうか
「駄目よ、キングがナイーブな気持ちになっちゃあ!」
気持ちを切り替えようと夕日の河原を見つめる。すると土手のところで大きな身体の少年が拳を構えて1人、シャドーボクシングをしていた。
「あら?ボクシングの練習かしら?」
特に興味もないので寮に帰ろうとその場から離れようとしたが、なぜか目が離せなかった。なぜだかわからないが見入ってしまう。そしてある異変に気が付いた。
「え?身体に痣が……血も出てる!」
ただのシャドーボクシングのはず、なのに身体には痣ができ、出血もしている。そして極めつけはシャドーボクシングをしている相手がハッキリと見えるわけではないが、ゆらゆらと見える。もしここにカフェがいたらな相手がどんな人物なのか教えてくれそうだ。
「凄い」
徐々に真剣になっていく男、動きも激しくなり拳のスピードも速くなっていく、気が付けば完全に見入っていた。そして突如終わりを迎え、目が合った。
「あ、」
「やぁ」
「えっと、そのごめんなさい、ずっと見ていて」
「ああ、いいよ別に」
「ねぇ、どうして身体にそんな傷ができてるの?」
「ああ、これ、リアルまでイメージしたシャドーだからね」
「イメージって、全然想像つかないは」
「はは、ま、そりゃそうさ、簡単にできるものじゃないからな」
笑う少年、土手から上がってくると驚いたのは痣や傷だけでない、その大きな筋肉と古傷だ。
「貴方、いったい何をしたらそうなるのよ」
「ん?ああ、いっぱい戦ったからな」
「戦った?」
「ああ、喧嘩したり、化け物みたいな猿とも喧嘩したし、あらゆる格闘家とも戦った」
「嘘」
「嘘じゃないって」
「だって喧嘩で出来る怪我じゃあないでしょう」
「参ったな~」
信じてもらえない、無理もないだろうこの少年のことを知らないとこの傷のことは理解ができない
「ま、いいや、それでお嬢さんは何をしていたのかな?」
「私はただ歩いてただけよ」
「ふ~ん、そっか」
「………………嘘、少し悩み事」
なぜ今この言葉を口にしたのかキング自身も分からなかった。ただなぜか出てしまった。それだけである。
「悩み事ね、あんた、ウマ娘って言うんだろう」
「そうよ、私はキングヘイロー、一流のウマ娘よ!」
「へぇ、俺は刃牙、ただの高校生さ」
嘘である。こんな高校生がいてたまるか
「それで、一流のウマ娘がどうしたんだい?」
「……………最近なかなか勝てなくてね、それで悩んでるの」
「勝てないか…………そいつは大変だな」
「貴方ね~」
「はは、悪い悪い」
悪気なさそうに笑う男、なんでこんな男に話したのか、バカらしくなってきた。
「勝てないか、なら勝つまで鍛えるしかないだろ」
「ええ、でも」
「俺にも勝ちたい人がいる」
「え?」
「けどまだ駄目だ」
「………………」
「もっと強くならなくちゃいけない、もっと鍛えなければいけない」
「ねえ、あなたの勝ちたい人って?」
「…………親父さ」
「お父さん?」
「ああ」
いったいどのような父親なのか、想像もつかないがなぜかあの人の面影を見る。嫌、考えすぎか、あの化け物のような人に似ている訳がない。
「想像がつかないけど、きっと凄いお父さんなのね」
「ああ、凄いさ、なんせ正真正銘の化け物だからな」
「もうよくわからないわ」
ため息をつきながら川を眺めるキング、勝ちたい相手がいる。託された思いがある。己を証明したい、様々な葛藤がある中でこの青年は何を背負っているのか気になった。
「貴方は何を背負ってるの?」
「……………いや、何も」
「え?」
「ただの親子喧嘩さ、ごく普通の」
「え?」
「そのために鍛えている」
「ちょっと待って、本当に意味が分からない」
「わからなくていいさ」
笑いながらそういう青年、けれど何故かとても楽しそうでスッキリとした表情をしていた。キングもよく電話越しの喧嘩はよくする。しかし拳で喧嘩はしようとしたことがない
「貴方はいったい」
「おっとそろそろ帰らなきゃ」
「え?」
「じゃあ!またあったら話そうか」
「ちょっと待ちなさい!」
こちらの言葉に耳を貸さずにその場から走って立ち去る青年、なんというか忙しい人、けれどこの出会いが何度か続きキングヘイローの人生を大きく変えた。それを知るのはもう少し先であった。
ついに登場、そして長らくお待たせしました。
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トウカイテイオー編
トウカイテイオーと生きる伝説
日本ダービーを走り終えたトウカイテイオーに骨折が発覚、完治までに時間がかかり菊花賞に出走できないことが確定した。夢であり目標である無敗の三冠、テイオーは泣いた。悔しくて悔しくて、ここにきて走れない、大好きなシンボリルドルフと同じ三冠がもう目の前なのに、どうして、どうしてボクがこんな目に合わなければならないんだ。そう考えていた。
それとは別に日本に生きる伝説がオーガに会いにやってきていた。あのオーガが指導をしていると、天変地異の前触れか、それとも戦争でも起きるのか、事情を聴いても気まぐれとしか答えてくれない、それよりもいったい教え子は誰なのかが気になってしょうがなかった。オーガの息子では絶対ないだろう。
「まさか、日本にある学校、しかもウマ娘とやらに教えているとは」
好奇心で来てしまった。トレセン学園、手続きを済ませ中に入り気ままに歩き回る。ターフを駆け抜ける彼女たちはまさしく車だ。いったい何キロ出しているのか、あれがウマ娘、とてつもなく恐ろしい、目的地もなく歩いているとターフ近くのベンチに一人脚を固定され松葉杖を持ち座っている娘がいた。
「こんにちはお嬢さん」
「え?あ、こ、こんにちは?」
「ああ、すまない驚かせて」
帽子と黒いサングラスに身元が分からない格好をしている大きな男にいきなり話しかけられたら誰だってびっくりする。
「ウマ娘とやらはとても速いんだな」
「おじさんウマ娘見るの初めてなの?」
「ああ、格闘技の方をたしなんでいたためこのようなスポーツは見たことがないんだよ」
「へーそうなんだー、じゃあボクが教えてあげるよ」
さっきまでの緊張は消え、笑顔で説明するテイオー、最高時速70まで出せるなど、大食いなど、人間以上に力が強いなど、初めて知ることだらけでとても驚いた。そして何よりオーガが指導する意味も分かった気がした。そしてテイオーが走れないことに対しての不満や夢がかなわないことに対しての苦しさも教えてもらった。
「そうか、つまりタイトルのようなものが取れなくて落ち込んでいる訳か」
「うん、ボクはね、カイチョーみたいに、シンボリルドルフのようなウマ娘になりたかったの、でもね脚がこんなことになって走れなくなっちゃったんだ」
「なるほど、それは残念だったね、夢を叶えられない辛さは私にもよくわかる」
気が付けば、ぽろぽろと涙が溢れてきているテイオー、その光景が何時しかの自身の息子を思い出させる。彼女もまた似た部分があるのか、それとも別の何かがあるのか、そんな時テイオーの所属するチームのトレーナーがこちらにやってきた。
「すみません、どちらの方でしょうか?、それとどうしてテイオーは泣いているん
だ?」
「あ、トレーナー、ううん、三冠が取れなくて悔しいって話をしてたんだ」
「すまない、君のところの教え子と話していただけなんだ、ただの見物人さ」
「すみませんが、帽子とサングラスを外してもらってもいいですかね?」
「ふむ、これでいいかな?」
サングラスと帽子を外し素顔をあらわにすると、トレーナーは口にくわえていた飴をポロリと落とし声は挙げなかったもののとても驚いた。
「え、なになにどうしたのトレーナー?」
「も、申し訳ありません、すぐに戻してもらって大丈夫です」
「え、ほんとどうしたのトレーナー?」
「テイオー、この方は、アメリカ大統領より有名人と呼ばれた人だ、素顔で出歩けるはずがない、むしろなぜここに」
「え、有名人なのおじさん?」
「ああ、私はマホメド・アライという名前だ」
「ボクシング界の生きる伝説、アメリカだけでなく世界中で有名なお方だ、試合での動きはまさしく蝶のように舞い蜂のように刺す、ガードを取らずすべての攻撃をかわし拳を打ち込むリングでは最強ともいわれ、ボクシングの動きではないと言われたほどの異端、それ程にまで強いお方だ」
そんなあなたがなぜこの日本、ましてやトレセン学園に?そんな疑問を振り払うかのように答えはすぐに返ってきた。オーガが指導をしているという事で興味がわき見に来たと、友人に会いに来てどんな娘を育てているのかが気になってねと
「なるほど、そうですか、すみません貴重なお時間を取らせてしまい」
「え、おじさんオーガと友達なの?」
「ああ、若い頃からの付き合いさ、最も初めて会ったのは路上でのストリートファイトだったがね」
しかもトレーニング中のねと付け加え、いったいどのようなトレーニングをしていたのかを尋ねると想像以上でありウマ娘ですらやったことのない超絶ハードトレーニングをしていたことを知った。今では息子が私の動きなどすべてを引き継いでいると、親子そろって恐ろしい才能だと感じた。
「それにしても勿体ないな」
「何がですか?」
「この子だよ、テイオーのお嬢さん」
「え、ボク?」
「ああ、骨折で夢をあきらめてしまうとは仕方がないとはいえ勿体ない、まだまだ強くなれる可能性を秘めているのに」
「……ウマ娘にとって脚は何よりも大切なものです。骨折させてしまったのは私にも責任があります」
「…………そうだな、しかし、脚を早く治すには時間が必要だろうね」
「ええ、医師の判断で復帰レースは決めますが、元の走りのように戻れるかは分からないと」
「ふむ、そうか」
邪魔をして悪かったとその場から離れたアライは高級ホテルのある一室に訪れていた。
「オーガよ、トウカイテイオーというウマ娘を知っているか?」
「ほう、テイオーか、勿論知っている。やかましい小娘だ」
「私はあの娘に何かを感じたのだよ」
「ほう、マホメドアライが気に掛けるとは、一体どのような気まぐれだ」
「それは君も同じだろう、わたしの質問に答えずはぐらかすじゃないか」
それもそうだと笑いながら煙草を取り出し一服、一本を一吸いで煙を吐き出し、灰を捨てる。ウマ娘という変異種はもしかすれば俺以上に強い存在になるかもしれないと、その可能性を引き当てて育てるために気まぐれで指導していると語った。
なるほどと、我が子刃牙が聞いたら真っ先に確かめにきそうだなと、あのオーガがここまで言う種族の生物がどれほどなのか、熊でも像でもイノシシでも持ち前の腕っぷしで殺してきたあのオーガに匹敵するかもしれない存在
「似ているのだろう」
「なにがだい」
「トウカイテイオーとマホメド・アライのステップが」
「なに?」
「やつは天才の領域、足首や体が異常に柔らかい、それこそ格闘技をやれば、全局面対応格闘技術、マホメド・アライ拳法を使えるほどだ、それに頭も良く、飲み込みも早い」
まだまだクソガキではあるがなと付け加えるオーガ、アライは驚いた。彼女にそれ程の動きができるとは、ウマ娘の話は聞いていたが、彼女自身の話は聞いていなかったからである。アライジュニアはアライを超えたが、地に足がつかず有頂天であり、ようやく足が付いたかと思いきやオーガの息子に瞬殺されノックアウト、プライドも何もかも負けた。けれど今はあの頃と違い強さを求めて修行中である。
「なんとも、驚いた」
「テイオーステップ、鍛えればジュニアと肩を並べるかもしれん」
「けれど彼女は歩けないのだろう、松葉杖なしでは」
「知ったことか、あの程度の怪我、簡単に治せるだろう」
簡単に、骨折を簡単に治すことは難しい、けれど一つだけ方法は確かにある。実の息子が成し遂げたこと、日本のマーシャルアーツが、達人たちがくぐり抜けてきた道
何度も何度も破壊し壊し、砕き、折れ、潰れ、それでも鍛錬を続ける猛者たち、人体には科学では証明できない境地がある。ならばウマ娘の身体にもそれを覆す何かしらの何かがあるはずだ。
「たかがそこらの人間より強い雌だ。だが、それより弱い人間ができることをできないと言うのはおかしな話だろう」
ニヤリと笑いながら語りかけてくるオーガ、自分の実の息子以外に試練を与えるのは気にひけるが、興味もあった。けれど先ほどの会話からすべてが無茶苦茶である。もし失敗すれば責任を問わされる。けれどオーガには責任というものがない、弱かったからできなかった。ただそれが事実であり責任はない、けれどアライは違う、オーガほどの権力はない、博打のような賭けだ。
それからは何度か学園を訪れテイオーと一緒にいる時間が多くなったアライはテイオーの闘争心を煽ることに躊躇っていた。それに痺れを切らしたオーガがテイオーを捕まえレースに出たいかを問いだたす。いきなり捕まり鬼のような顔で詰められたテイオーは号泣した。鳴き声を聞いた者が次々と集まるが睨みつけるだけで周りを静止テイオーの返答を待っていた。
無論帰ってきた言葉はレースに出たい、けれどこの脚では出られないと、そんなこと知るかとの一蹴り、すぐに練習を始めると無理やり着替えさせトレーニングルームにてバックを殴らせていた。
「ここからはお節介は無しだ」
「ああ、わかった」
ひたすらにバックを打ち続けるテイオー、トレーニングルームから姿を消したオーガはどこかに消え、テイオーとアライ、そしてこの騒ぎを聞きつけ、途中から参戦したルドルフの三名だけである。静かな部屋にバックをつく音だけが響く、脚のトレーニングはできないが、上半身を鍛えることはできる。松葉杖無しで撃たせ、テイオーの足回りは気が付けば汗の水たまりができていた。本来ならターフを走らせるところだが、サンドバッグの方がやりやすい。
「一体、何時間ああして」
「かれこれ3.4時間ほどかな」
「なぜこのようなことを、テイオーはああしてトレーニングを」
「三冠最後の菊花賞に出るためだ」
「なに?」
「普通なら出走できるはずはない、なんせ脚が折れているのだから」
「ならば、なぜ!!!!」
「科学的ではない、古流武術にはいくつもの実証例がある。人体にはそれほどの力がある。己の体の一部を壊し続け強化していき、気が付けば壊れなくなるほど、何度も積み重ね、次第に慣れ、身体の回復も早くなる」
「つまりテイオーは今から体を壊し続けるというのか!!!!」
「私たち人間にできて君たちウマ娘にできるはずがない、君たちは甘えすぎなのだよ」
「甘いだと!!!!、私たちを舐めるなよ!、人間より力も強い私たちが甘えているだと言いたいのか」
「事実そうさ、種目は違えど、人の身体に耳と尻尾が生えている程度、このようなことができても不思議ではない、むしろなぜやらないのかが分からない」
「今後の人生がかかっている身体!!!!そう簡単に壊していいはずがないだろう!」
「もっともな意見だ、そしてやはり甘い」
「甘いだと!」
握りこぶしを作り今にも喰い殺さんと言わんばかりの眼力で睨みつけるルドルフ、他の学生がいれば確実に気絶しているほどの覇気を出している。三冠、確かに簡単な偉業でもないし多くのウマ娘が勝ち取れるものではない、夢破れ、二冠、一冠だけ、それが現実であり結果でもある。三冠を獲得できるのは文字通り化け物のみ、その重みは三冠バであるルドルフは分かっていた。
三冠の凄さ、三冠に届く者たち、挑む者たち、敗れる者たちが多くいる中こう呼ばれる。
「最も速いウマ娘が勝つと呼ばれる皐月賞」
「最も運のあるウマ娘が勝つと呼ばれる日本ダービー」(東京優駿)
「もっとも強いウマ娘が勝つと呼ばれる菊花賞」
その全てを勝ち抜き手中に収めたも者が呼ばれる三冠バ、そもそも日本ダービーを勝った時点でテイオーは強かった。一生に一度の同世代のウマ娘が夢見て憧れ、そして数多の傑物がその夢に敗れてきた最高峰のレース
ダービーウマ娘であるトウカイテイオー、ダービーウマ娘とはその夢の屍の頂点に君臨する者、三冠バともなれば日本のウマ娘の頂点と言っていいほどである。
「ハッキリ言おう、君たちのレースにかける思い、闘争力は我々をはるかに凌駕する。大勢の観衆の中、持ちうるすべてを出し切り勝ちに行く、とてもじゃないが真似できない」
「…………」
「だからこそ勿体ない、一時期の躓きで夢をあきらめる?馬鹿を言うな、あと少しで手に入る夢ならば、追いかけて何が悪い」
「だが、仮に手に入ったとしても、この先にレースに支障が起きるのならば、二度と走れることがなくなるのならば、諦めた方がいい!」
「それも間違っていない、だがねお嬢さん、最終的に決めるのは彼女だ」
「テイオー!!!!」
「あ、あれ?カイチョー?」
「一度休憩しようか、30分程席をはずそう」
トレーニングルームでの二人だけの時間、水分補給しながら汗を拭くテイオー、アドレナリンがあふれ出しているおかげか、脚への痛みはさほどなかった。
「テイオー、無理にやらなくていいんだ、私はお前の身体が心配だ」
「カイチョー」
「ウマ娘にとって骨折は痛いこと、骨折前のように走れるかは努力次第になるが、二度と走れなくなるよりかはいい、頼む、安静にしてくれ」
「カイチョー、ボクは」
「そこまでだぜ、シンボリルドルフ」
「!!!!」
気配もなく音もなく後ろに現れたオーガ、あきれた表情で立つ男、テイオーを無理あり練習させるに至った張本人でもある。
「貴様!」
「ちょいと過保護すぎやしねーか?」
「過保護で何が悪い!」
「そんなんじゃあ何時まで経っても甘いままだ」
「だがそれで怪我が悪化して走れなくなるよりかははるかにましだ!」
「それを決めるのはそこの小娘だ」
「え、ボ、ボク?」
「え?」
「どうするかは自分で考えな」
邪魔したなとその場から出ていくオーガ、静寂の訪れるこの場に先ほど席を外したアライが帰って来る。
「ん?どうしたのかね?」
「いや、オーガが先ほどな」
「なるほど、教育熱心なんだなオーガは」
「え?」
「は?」
「ん?」
え、あれが教育熱心?理不尽の塊とかではなく?そういった表情をする二人にどうしたのかと言った表情を浮かべるアライ
「カイチョー、ボク決めたよ」
「テイオー」
「ボク、夢をあきらめたくない!」
「な、テイオー!」
「それは!」
「唯一抜きん出て並ぶ者なし、カイチョーがよく言っている言葉だよ」
トレセン学園のスクールモットー、常に頂点を目指せとのこと、まさかテイオーの口からこの言葉が出るとは思わなかった。それと同時にテイオーの目は燃えていた。
「ボク、絶対にあきらめない、それに骨折がなんだ、ボクは最強無敵のウマ娘、トウカイテイオーだ!」
「テイオー」
「よくわからんが、話は付いたみたいだな」
テイオーのことは以外にもよく知っている。この目はあきらめない目、頑固なる意思があるときの目だ、だがこちらも引けない
「テイ「信じてやれ」オー」
「なに?」
「確かに、二度と走れなくなる可能性がある中、こうして夢を追うと言っているのだ、先駆者である君が信じてあげなくてどうする」
「しかし」
「君は優しすぎる、それだと彼女の成長が止まってしまう、この決断も大人になるためへの一歩と考えればいい」
「カイチョー、お願い、もし治らなくて無理そうだったらちゃんと休むから!」
「だが…………いや…………わかった」
「え?いいの?」
「はぁ、ただし常に監視はつけさせてもらう、万が一の時に備えてな、それと練習は私も参加する。このままだと心配で寝れやしない」
「カイチョー!! わーいやったー」
怒り、戸惑い、緊張、焦り、そしてついに折れたルドルフ、安全に越したことないと、それなりの条件下の中で練習することを許可された。するとアドレナリンが切れたのか脚に軽い痛みがテイオーを襲った。
「う、痛い」
「ふむ、やはり痛みには慣れていないか」
「大丈夫かテイオー!」
「安心しろ、そんなこともあろうかとちゃんと準備している」
「え?準備?」
「先ほど席を外した際、万が一に備えて来てもらったのだよ」
「え?」
「先ほどマックイーンお嬢様から連絡を受けこちらに参りました」
「えええええええ~」
「ふむ、医者がいるなら大丈夫か」
「か、カイチョー!」
「すまないがよろしく頼む」
「わかりました」
「ナンデオチュウシャモッテルノー!」
「それはお嬢様の主治医だからです」
「ワケワカンナイヨー!!!!」
本当に訳が分からないので間違ってはいないテイオー
「痛み止めを打っておこう」
「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤ」
「三冠バを目指すんだろ?たかが注射ごときで駄々をこねるな」
「だって嫌いなんだもん!」
「テイオー大丈夫だ、私もいるから」
「カイチョー」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
トレーニングルームにテイオー声が響いた。こうしてトウカイテイオーの三冠への道が再び開かれた。
思った以上に長く書いてしまった。無理やり感が半端ないがなんとか頑張って魔改造していこうと思います。テイオーの扱いとしてはアライジュニア感覚です。
文才がないと難しい~、刃牙キャラで書くのも難しい~
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トウカイテイオー復活までの道のり
放課後のターフ、トレーニングを指示しているのはあのマホメドアライ、かの伝説を認識しているのはチームスピカのトレーナーと生徒会長であるシンボリルドルフとチームリギルのトレーナーのみである。
「さて、まずは痛みになれるため杖アリでもいい、脚を付けながら一周しろ」
「いきなりハードなのが来た!」
「もちろん私も一緒に歩く、トレーニングを含めて」
「え、おじさんも?」
「いや、テイオー、おじさん呼びは」
「かまわん」
サングラスと帽子は被ったままだが動きやすい服装にやけに重そうなブーツを履いている。監視役としてルドルフが少し遠くから眺めているが何も言わない
「何事も慣れだ」
「わかったよ」
渋々と歩きだすテイオー、脚をつけるたびに訪れる痛み、苦痛の表情と冷や汗をかきながらも歩みを止めない、テイオーの横ではゆっくりと自然な動きで歩くアライの姿、何も知らないものからするとリハビリにも見えなくはないが、どう見ても痛めつけている様子にしか見えない
「おい、トレーナー、あのブーツ」
「ああ、かなりの重量だ」
「2キロはあるな」
「ああ、実際軽いと思うかもしれないが、そんなことはない、時間が経てば経つほど脚への負荷はそれなりに来る」
「そうなんですか?」
「ああ、ウマ娘としては軽いかもしれないが普通の人間にとってはかなりキツイ、言い換えればマックイーンが一時期はいていた錘の蹄鉄を付けた状態で走るのと一緒だ」
「なるほど、確かにそれは負荷が来ますね」
「あの時はゴルシちゃんの背中にも負荷が来たな」
「あの時はごめんなさい」
「あははっ」
「ま、ゴルシちゃんにとってはあんなのジェットコースターに乗りなが亀ラップするくらいのレベルだぜ」
「意味が分からん、つかなんでラップ」
テイオーの練習を見ながら見守るチームメンバー、一周し帰ってきたテイオーは物凄い汗をかいていた。無理もない、骨折して間もない段階でこの練習、常人なら歩くことすらままならない
「ふむ、見てわかる程度にかなり辛そうだな」
「あたり……前だよ、物凄く……痛いんだから」
「なら次は杖無しで行こうか、私の手を取りなさい、体重をかけても構わない」
「おいおい、マジか」
「テイオーさん、大丈夫かな」
「まるで減量中のマックイーンみたいだ」
「ちょっとどういうことですの!」
「テイオー」
再び歩き出す2人、明らかにやばい量の汗、だけど先ほどよりかは歩けている。
「おいトレーナー、テイオーはどこまでできると思う」
「少なくとも俺の知る限りだと、この2周で限界だな」
「あ、帰ってきた」
「体の構造はともかく、精神面も考慮するといったんここで切り上げだろうな」
「初見で死にゲーをプレイするようなもんだからな」
「あれ?また歩き始めた?」
「おいおい、マジか」
「しかも今度は補助なしだぜ!」
「裸縛りでミラ〇レアスを倒しに行くようなもんだぞ」
「貴方は先ほどから何を言っているのですか!」
今度は補助なしで歩き始めるテイオー、万が一に備え、後ろからついていくアライ、ゆっくりとゆっくりと亀のような遅さではあるが、着実に一歩を踏み出している。いったいどれだけの時間が経ったのだろうか、何周したのだろうか、痛みに耐え、慣れ、苦痛で表情を浮かべようとも泣き言を一切言わないテイオー、それもそうであるが誰もが一番驚いているのはテイオーを見守りながら歩くアライの方であった。
「テイオーも凄いが、あのおっさん、息が乱れるどころか汗すらかいていない」
「歩くスピードは遅くても脚への負荷はあるはず」
「恐ろしいなあの人は」
「マグロ漁一緒に来てくれねーかな?」
何周したのかは分からないが一度休憩を挟むことになった。掻いた分の汗を、水分を補給しながらもただ休憩するだけではなかった。
「なにこれ?」
「飯だ」
「え?ボクお腹空いてないけど」
「空いていなくても食べるんだ、確実に消費しているカロリー、骨折を治そうとしている今の君はどんどんカロリーを消費している。今の君に必要なエネルギー補給だ」
並べられる料理の数々、たんぱく質やカルシウム、ビタミンが豊富なメニューである。遠くから食べたそうに見つめる者もいるが無視する。何故か変な猫と一緒に肉を焼いているものもいるが無視する。
「それを食べたらまた一周だ」
「え~休ませてくれないの~」
「食べている間休めているだろう、時間はあるが君の目指すタイトルに間に合うのかな?」
「それは」
「ならさっさと食べるべきだ」
「わかったよ~」
文句を言いつつもしっかりと食べるテイオー、遠くから腹の音が聞こえるが無視する。しっかりと食べ終えるとすぐさま再スタートする。それを毎日毎日ひたすら繰り返していた。時間が経てば痛みにも慣れ、練習中は杖無しで歩けるようにはなれた。
毎日ではないがルドルフが監視し、他のウマ娘も監視していた。
そんな中ある日のトレーニング、スタミナと上半身の強化でひたすらにサンドバックを打つテイオー、あの時と同じ3.4時間ほどテイオーの足元には汗の水たまりができていた。そしてあの時と同じようにルドルフもいる。
「はぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
「ふむ、いいパンチだ」
「凄い集中力だな」
「限られた時間の中でどれだけ本気になれるかが問題だからな」
「もう慣れたとはいえ、いまだに来るものがあるな」
「仕方ない、固唾をのんで見守るしかない」
ドスドスと音を立てるサンドバック、最後の冠を手に入れるため死力を尽くすテイオー、だが次第に音が止んでいく。
「どうした?テイ……オー!?」
「…………」
「……………心が先に来たか」
「なに?」
「………っく……ぐ……ぐすっ」
「テイオー」
どれだけ、どれだけ頑張ろうが一向に治る気配のない脚、そして過ぎる時間、テイオーは不安と焦りと恐怖で塗りつぶされ、ついに限界を超えてしまった。そんなテイオーを優しく抱きしめるルドルフ、涙を流す少女を慰めようと頭を撫でる。
「すまない、今日はここまでにしてくれ」
「そうか」
「ああ、行こうかテイオー、気分転換しに」
ゆっくりと手をつないでトレーニングルームから出ていこうとする2人、涙を流し、まだ幼い少女はぐちゃぐちゃな心境でその場を後にしようとした。
「ああ、そういえばトウカイテイオー」
「……なんだよ~」
「最後の冠を目指すものが決まったらしい、そしてトウカイテイオーの挑戦を受諾した」
「!?」
「……………ごめん、カイチョー、少し待ってて」
「テイオー?」
ルドルフから離れサンドバックに戻るテイオー、すると先ほどのようにサンドバックをたたき始めた。目の色が変わった。
「て、テイオー?」
「君の目指す最後の冠に出走する予定のメンバーからの言葉だ」
先ほどまでの弱弱しかった音が変わった。
「はぁはぁはぁはぁはぁ!」
サンドバックの音が次第に大きくなっていく、そして踏み込むたびに脚のギブスが砕けていく、叩き、叩き、砕け、最後には完全に脚があらわとなった。
「はぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!」
そしてその脚でそのままサンドバックを蹴り上げ吹き飛ばした。凄い音を立て吹き飛んでいくサンドバック、ルドルフにはあの時の言葉を思い出した。。
正直半信半疑でもあり、ほぼ信じることはなかったあの言葉、だがどうだ、今目の前で起きた光景を信じるなと?バカを言うな信じるしかないだろう、走ることができない、歩くことが精いっぱいのあの脚でサンドバックを蹴り壊したのだ。
驚愕しているルドルフ。全身からオーラのようなものが溢れているテイオー、マホメド・アライはルドルフの方に顔を向けた。
出ましたあの名言、ここからは一気に魔改造されていく予定です。気が向いたら、面白いと思ったら読んでください。
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トウカイテイオー復活までの道のり2
「テイオー、貴方、本当に治ったのですか?」
「うん、治ったといっても過言じゃないよ」
「そう」
「うん」
昼休み、カフェテリアで食事するメジロマックイーンとトウカイテイオー、あの日から完全に杖無しで歩けるようになり医者に診てもらったところ
「……ありえない……こんな短期間で……治るとは」
と、驚愕していた。
「それでは、完全に走れるようになったという事ですの?」
「どうだろう、まだわかんないや」
「私としては、治ったのは喜ばしい限りですが、無茶しすぎでは?」
「うん、だけど本気でほしいんだ、最後の冠が、カイチョーと同じ三冠ウマ娘の称号が!」
骨折前と同じいつもの表情、だがメジロマックイーンはトウカイテイオーが別の何かに見えていた。そう、それは普段の能天気な感じではなく、まるで自分と同じ、メジロの悲願を叶える為、それに全力で挑むときのような、言葉に表せない何かが
「それで今日からターフでのトレーニングですが、しばらくあの方は来られないのですか?」
「そうなんだ、なんでも息子との用事があるとかなんとか、仕方ないけど代わりにオーガがトレーニングを見るらしいんだ!」
「あら、家族思いの方なんですね、それにしてもオーガですか」
「どうしたの?」
「いえ、噂なんですが、オーガのトレーニングを受けたものはごく僅か、けれどトレーニングを受けることができたものは才能を開花させ、まるで鬼が宿ったと呼ばれるほどの成長を遂げたと」
そう、オーガのトレーニングを受けたものは片手で数えるくらいの者だろう。頼んでも鍛えてくれることはなく、気まぐれにオーガが見定め、声を掛けられた者がオーガに鍛えてもらえる。トレセン学園の生徒たちの間ではこう呼ばれている。
まるで生贄を選んでいるように聞こえるが、オーガに与えられる鍛錬は厳しく、それをクリアしたものは勝利を手にすることができるとの噂もある。
「え~なにそれ」
「ま、あくまで噂ですわ」
優雅に紅茶とデザートを嗜むマックイーン、テイオーの中で不安は膨らむが同時に噂が本当なら強くなる可能性がある。期待も膨らんでいった。そして迎えた放課後
「………………」
「………………」
「……………はぁ」
「え?なに、どうしたの?」
「これから教えようとしてる技、こいつは本来、俺の流儀じゃねぇ」
少し嫌そうに語るオーガ、いったい何を教えるのか、トウカイテイオーは緊張してきた。
「……………及第点」
「え?」
「なんとか骨折を治したようだがまだまだ、どのみちもう一度本気で走れば折れるだろう」
「え?」
「だが、折れないようにする技術、技をお前に叩き込むんだが、トウカイテイオー、貴様は体は柔らかい方か?」
「え、うん、柔軟には結構自身があるよ?」
「ならいい、これから教える術、名をシャオリーという」
「シャオリー?」
「中国拳法の一つ、極意と呼ばれるもの」
「極意」
「が、シャオリーそのものを修得するには積み重ねた鍛錬の先、貴様が習得することはほぼ無理だろう」
「え、じゃあなんでそれを教えるの?」
「シャオリーの特徴は脱力、いわゆるリラックスだ」
「リラックス?」
「ああ」
「力を抜けってこと?」
「百閒は一見にしかず、百見は一触にしかず。ゴールドシップ来い!」
「あいよ~呼ばれてジャジャジャジャーン!!!!!!」
「え?なんでゴルシ?」
「ま、あたしも良くわかんねーけど呼ばれた」
「え~」
「ゴールドシップ貴様の錨で俺の顔面を攻撃しろ」
「了解~」
「え~~~~!!!!!!」
「面白くなってきたぜ~!!!!!!」
驚いているテイオーを置き去りにノリノリでオーガの顔面に錨をフルスイングで叩きつける。ウマ娘のパワーで関係なく錨で殴られれば最悪死に至る。錨を叩きつけられたオーガは勢いよく後ろに飛んだ。
「え~~~オーガ!!!!!!」
「お~飛んだな~」
「ちょっとゴルシ!オーガ死んじゃったよ絶対!」
「いや、よく見てみろテイオー」
「見てみろって!……あれ?」
2人の見つめる先には何事もないように平然と立っているオーガの姿。顔には傷どころか叩きつけられた後すら残っていない、というか死んですらいない。
「これがシャオリーだ」
「いやいや、なに、どうなってるの?」
「簡単な話、受け流したそれだけだ」
「説明になってないよー!」
「脱力によって肉体へのダメージを限りなくゼロにする。薄っぺらい紙に剃刀を勢いよく振り下ろし切り裂かないようにする。握った卵を握り潰さないようにする。さらに分かりやすく言うならば合気の稽古のようなもの」
「いや、ごめん、全然ワカンナイや」
「………………」
「なるほど、攻撃を受けるときに脱力で最小限にダメージを抑えるってことか」
「ナンデワカルノ!?」
「……風呂に入っているときに身体の力が抜けるだろう。それと一緒だ」
「あ、なるほど」
「ようやくわかったかクソガキ」
とにかくリラックスしている状態で最小限に抑える。そういった技術を叩き込む。
「そしてこの技は受けと攻めの両方がある」
近くの壁に向かってゆっくりと拳を近づける。そして拳が触れると同時に破壊音と壁にクレーターができた。
「えええええええ!!!!!!」
「お~すげー」
「リラックスした状態から瞬時に緊張へと転ずる。格闘技・アスリートほどこういったことはよくできる。いずれにしても強調されるのはインパクト、優れたアスリートほど柔らかいのはそのためだ」
「リラックスとインパクト」
「ま、所詮お遊びの中国拳法、俺は二度と使う事はねぇ、だがそこに使われる技術をトウカイテイオー、貴様に叩き込む!」
「あ、うん」
「なんだよテイオー、反応悪いな」
「いやだって、現実味がないというかワケガワカラナイんだもん」
「ま、考えても仕方ねーからさ、やるだけやってみろよ」
「う~ん、そうだね!」
「安心しな、リラックス、つまり脱力を身に付けている者はすでにいる。これからはそいつと一緒に練習だ」
「え、誰と?」
「……サイレンススズカ」
「え、スズカ!」
「そいつと共に脱力におけるダメージの最小限とインパクトによる加速力の向上を図る」
「うん!」
「地味な練習だが内容はアライに伝えて置く」
「おいおい、オーガが教えるんじゃねーのかよ」
「見るのはあいつだ、どうするかは貴様次第、な~に心配いらねぇ、どうにかなるさ」
「なんか不安だけどボクやってみるよ」
「そっか~頑張れよテイオー、ゴルシちゃんはこれから岩塩層を掘って恐竜を見つけてくるから、それじゃあな~」
こうして奇妙にも始まることになった練習、最後の冠、菊花賞に間に合うのか
シャオリーは難しいです特に説明が、流石に簡単に身につけれるようにしてしまうと安く見えてしまうのであくまでもその技術のみということで進めていこうと思います。そこにアライのステップを組み合わせていこうと思います。あれ、あんまり変わらないのかな?
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極意のヒントを探せ
「わっかんないよ~シャオリー」
「………ごめんなさい」
「脱力はある程度理解したけどさー、無理だよ」
そもそも中国拳法におけることを何も知らないテイオー、感覚で脱力ができるようになっているスズカと違い頭で考えるテイオーには中国拳法がどのようなものか、シャオリーとはどのようなものかを改めて知らなければならない。
「ならば聞くしかないだろう」
「え~知ってる人いるの?」
「いるじゃないか、たまに厨房で鍋を振っているあの男」
「「あ!」」
「なに?シャオリーだと?」
「うんそう、どんなのか知ってたら教えてくれない?」
「教えるのは構わんが、身に付けることはほぼ不可能と思えるがそれでもいいなら」
「うん、とにかく教えてくれるなら!」
「わかったしばし待ってくれ、今は少し手が離せなくてな」
高速で鍋をふるう烈海王、いつものように食堂で料理をふるうが今日はかなり忙しそうである。
「ああ、なるほどね」
「ああ」
「おかわり」
「オグリィ!!!!!!まだ食べるか!!!!!!」
「ああ、まだまだいけるぞ」
「まだ食べるんだ」
大量に積み重なった山のような皿、流石葦毛の怪物、食欲も怪物級であった。そして時間がかなり経ってから烈海王による中国拳法の講座とシャオリーとはどのようなものかを教えてもらっていた。
「つまり脱力から覚えなければいけないけど、そもそも理というものを学ぶことが重要と」
「そうだ、老師いわく、長年の積み上げてきた筋肉トレーニングを一切禁じ、何十年もかけ身に着けるもの、今の君にはそれは絶対にできない」
「確かに、競争者としては痛いところだな」
「ええ、アライさんのいうとおりウマ娘にはできない事です」
「そっか~でも脱力はできるんだよね」
「ああ、しかし脱力、リラックスを自然体で出来る用になれば可能かと」
「ふむ、ボクシングにおけるジャブ、つまるところパンチは拳を繰り出す際に身体に力を入れない、拳が相手に当たる瞬間に力を籠め、威力を跳ね上げる。これはシャオリーにおける攻めの部分としてとらえられるのではないのかな?」
「ええ、おしゃる通りです。しかしシャオリーは半生ほどかけて身に着けるほど難易度が高く、半年では無理です」
「攻めと守りがある。走りながら踏み込む際に力を籠め踏み込む以外はリラックスする。ふむ、確かに不可能だ」
シャオリーは戦いの中で発揮することは可能ではあるが、競争となるとそうはいかない、走るとは即ち全身運動、全身の筋肉を使い緊張が必ず生まれリラックスできるほどの余裕はなく、故に修得することは不可能である。
「だけど疑似的にはできるんでしょう。シャオリーは?」
「………………ああ、完璧とまでは無理だが、強調するはインパクトとリラックス、そこだけ身に着けられるのならば大丈夫であろう」
先ほどからテイオーの質問はできるのだろうという質問、確かに理論上はできるだろうが、現実はそう甘くない、しかしその眼にはやってやると言った意志が込められていた。
「しばらくは瞬間的に力を籠めること、リラックスした状態で過ごすことを視野に入れ練習した方がいいな」
「ええ、もし何かわからなくなれば言ってください、助力いたしますので」
「ああ、ありがとう」
「では」
「私たちもさっそく練習しようか」
「うん」
烈と別れ、まずは瞬間的なインパクトを覚えるためアライとボクシングでタイマンすることになった。
「さあ、どこからでも打ち込んできなさい」
「え、大丈夫なの?」
「問題ない、ただし君の攻撃は当たることはない、勿論遠慮はいらない当てるタイミングで力を籠めるように」
「いったな~セイッ!!!!」
「フッ」
「嘘!」
体格差があるとはいえ、ウマ娘と人間、反射神経とスピードはウマ娘の方が圧倒的有利であるはずなのにテイオーの拳は簡単によけられた。
「えい!」
「やあ!」
「なんで?」
「ふふ、日本では確かこういうのだったな」
テイオーの攻撃、ジャブをひらりひらりとかわすアライ、徐々に大降りになり空回りしてくるテイオーの顔面ギリギリを狙って認識するのが送れるほどの素早いジャブを見せられた」
「ぴえ!」
「当てることはない安心しなさい」
「でも怖いよ~」
「……………ああいったがウマ娘のパンチを受ける私の方が怖いのだが」
「でも、よけるじゃん」
「ボクシングだからな」
「むう~」
「そう膨れるな、本来の趣旨から外れているぞ」
「あ、そうだった!」
何度も当てる瞬間に力を籠める練習、それに伴い並行して動き回るのに余計な力を抜く練習、同時に二つのことを無意識に行っているテイオー、あえてそれを教えることなくひたすら攻撃をかわし、お手本として顔面ギリギリに高速のジャブを打ち込むアライ
休憩を挟みながら何度も同じことを繰り返し、身体に叩き込んでいく、次第にテイオーはジャブの感覚を掴み、瞬間的に意識せずに拳に力を籠めることができるようになってきた。
「その調子だ」
「でも……ぜんっ…ぜん……あたん…ないじゃん///」
「息が上がってきたか」
「なんでおじさんが息が上がらないんだよ///」
「それは最小限の動きしかしていないからだ」
ジャブが攻めのシャオリーのヒントとしたら最小限に動くのも守りのシャオリーのヒントである。両方ともリラックスした状態で瞬間的に力を籠めるため共通点はあるだろう。もっとも共通点があるのが高いとすると、それは始まってから一切防御の構えを取らないアライの状態である。
防御を上げることが珍しいアライではあるが現役でも同様に防御をしない、防御をせず、攻撃をかわし打ち込むスタイルである。もっとも今では関係にない話であるがある意味ヒントでもある。
「もう無理」
「そうか、何かつかめたかな」
「……多分」
「多分?」
「瞬間的に力を籠める事は分かったけどそれ以外はわかんないよ」
「そうか」
「でも絶対に身に付ける」
「ならまずはしっかり休んで明日に備えることだな、明日からはハードなメニューで行くぞ」
「望むところだー!」
「さて、もう少ししたら再開だ」
「あれ?終わりじゃないの?」
「なにをバカな、まだまだこれからだ」
「え~、またすれすれのやるの~」
「そうだな、もし一発でも当てることができたり少しでもかすれたら、褒美を用意しようじゃないか」
「ご褒美!」
「ああ、そうだな~……ああ、ゴルシといったお転婆なウマ娘が言っていたが君の好物の七味~とやらを御馳走しようじゃないか」
「待って、ボクが好きなのは、ハチミ~だよ!」
「うん?違ったか?」
「全然違うよ!七味って辛いやつじゃん!」
「ならそのはちみ~とやら特大サイズで御馳走しようか」
「いったね、よーしやる気出てきた!」
「ま、当てられたらの話だけどね」
「ふふん、テイオー様は無敵ぞよ~、すぐに当ててあげる!」
練習を再開し、時間の許す限り打ち続けるトウカイテイオー、何時間も拳は空振りのままだが、目的のためとなじませることを中心に必死に頑張る。結果としては一発も当たるどころか、かすることもなく終わりを告げたが、頑張ったご褒美という事でテイオーは特大サイズのハチミー、固め、濃いめ、多めを買ってもらい大満足して帰宅した。
シャオリーとボクシングって意外とどこかしら共通点ってあるんですね、まだまだ続く予定ではありますが長い目で見守っていただけると幸いです。あとモチベーション上げるために高評価お願いします!
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一日だけの師匠
「お願い出して!!!」
「………………」
「嫌だよ、出してよ~」
「学べ」
「嫌だ、やだやだやだやだ」
「学べるまでここから出さん」
「無理だよ、助けてカイチョー!!!」
泣きながらドアを何度もたたくテイオー、薄暗い密室の部屋、あるのはかろうじて全体が見える程度の明かり、そしてある生き物
「脱力とは何か、学び、そして身に付けることができたならば出そう」
「鬼! ひいいいいいいいいい!!!」
時をさかのぼる事一時間前、トウカイテイオーはいつものように練習をしていたが、脱力を身に付けるまでに至らず、ただ時間が過ぎるだけであり、オーガはある生き物と閉じ込めることにした。最初は師匠を用意してやると呼ばれ、簡単についていったテイオー、ここが地獄への一歩とも知らず。
案内された部屋は窓も何もなく、いわゆる昔の反省部屋、扉ただ一つだけ、外からカギがかけられ中からは開けられず。ウマ娘用の頑丈な扉であるため、出ることはかなわない
そして部屋に入ってから時間が経つと一つの虫かごを勢いよくぶん投げ壊し、扉を閉め閉じ込めた。最初は一体何なのか理解できなかったが、虫かごから出てきた生き物を見て即座に理解した。
「ご・・・ゴキ・・・・・ゴキブリ!!!」
虫一匹とウマ娘一人が完全な密室に閉じ込められ今も攻防を繰り広げていた。
「やつの速さを見習え、感じろ、体験しろ」
「無理無理無理無理無理無理無理!!!!!!!!!!!」
「あまり長く話すと来るぞ」
「え、ぴええええええええ!!!!!!!!!!!」
特有のあの音が響き、テイオーの顔めがけて飛んでくるゴキブリ、涙目になりながら全力で躱し距離を取る。
「やだやだ、気持ち悪いよ」
「………………」
「ぴえ!またこっち来た!」
鳥肌が全開で、恐怖も全開でもう何時泣いてもおかしくない状況、飛んでは走り、少し目を話せば足元まで来る。自分の方が力も体積も何倍も大きいのに、恐怖する。
「スズカにも話したが、最高速を初速に実現できる生き物」
「ぴええええええええええ!!!!!!!!!!!」
「よく見、観察し、己の武器にしろ」
もう何を言っても開けない、聞きやしない、出るには身に付けるしかない、過酷な状況に追い込まれたテイオーは泣きながらもゴキブリから目を離さない。
よく見て観察し、早く身に付けてここから出る。もうそれしかない、覚悟を決め、涙を拭きながらゴキブリと対峙する。
「………………」
カサカサ、シュッ!
「!!!!!!!!!!!」
躱す、逃げる、逃げる。脱力を身に付けるべく今までの鍛錬を思い出しながら戦う。いったいどれほど時間が経ったのか分からない、蒸し暑く、汗が流れ、疲労がたまる。
「はぁあぁあぁあぁあぁ」
「そろそろか」
ゴキブリは環境への適性が高くそして素早い、人に見つからず行動することが多い、昼より夜の方が頻繁に活動する。つまり知能が高いという事だ。
そう、やつは疲弊してくるのを待っていた。油断をしたその瞬間、喰らいにかかるだろう。
「暑い、水が欲しい」
「………………」
暑さで水を求める。一瞬気を抜いた。その瞬間を狙ってたかの如く、ノーモーションからの最高速を発揮するゴキブリ、だがそれを予測したテイオーは素早くよけようとした。だがそれすら予測していたゴキブリは漆黒に輝く翼を広げた。
テイオーの顔、しかも口にめがけて飛んでくるゴキブリ、まるで死にゆく瞬間に見る走馬灯のごとく、あらゆる脳の記憶がテイオーの頭を過る。
しかし現実は無慈悲だ、止まることはなく、水を求めてか、それとも一体何なのか、一点めがけて飛んでくる。
理解したくない、認めたくない、すぐそばまで迫ってくるただ黒い生物を見ることしかできない、絶望が迫ってきている。諦めの二文字が浮かび、全身の力が抜ける。もうこのまま受け入れて死のう。
しかしそれを許さないプライド、そしてオーガ、おそらく同じことをまたしてくるだろう。ならばこの瞬間に開花させる!
考えることを辞めたテイオー、それはあきらめたのではなく考える時間が無駄と判断した。瞬時に足に力を入れ、横に飛ぶ、そしてその時気が付いた。いつの間にか壁にぶつかっていたことに、その事実を認識するより早く襲い掛かる痛み、そしてすぐさま自身の身体を確認する。奴はいない、あたりを見渡すと壁に張り付いていた。
「え?」
「見事」
扉が開けられ、入ってくるオーガ、部屋から連れ出され、訳も分からず廊下を歩く、ただあの地獄から抜け出せたただそれだけが今認識で来ていた。
「意識を液体レベルまでと行かなくとも、ほんの一瞬その領域に足を踏み入れた。全身から力が抜け、瞬時に力を入れると同時に動く、脱力をよくぞ身に付けた」
「え?」
「その感覚を忘れるな、そして精進しろ」
それだけ言い残し姿を消すオーガ、呆けた状態でただ廊下を歩くテイオー、そしてようやく理解した。自分は脱力を身に付けたのだと。
「………………やった?」
嬉しさよりも安堵が大きく、気が付けば涙を流していた。たまたま通りかかったシンボリルドルフが慌てて駆け寄りどうしたのかと尋ね抱きしめる。しばらくして落ち着いたテイオーは大丈夫と言い、喉が渇いていたことを思い出し、水を求めて自販機へと向かった。
水を買い喉を潤すと徐々にうれしさが混みあがってくる。二度と体験したくないし思い出したくはないがアレから学ぶことができた。いや、元々持っていた基礎がようやく開花したのであった。
平和な日常の中、いつものようにトレーニングをしていると気が付いた。身体が軽くいつもより走れると、これが脱力、そのすごさを改めて実感していた。
「ほう、身に付けたようだね」
「あ、おじさん」
「あとは意識を変えるだけか、ともかくこれで準備はできた。最終調整に少し早いが入ろうか」
「え、うん」
グローブではなく芝を走るためシューズを履き、脱力を意識しつつ自然で出来るように体に覚えさす。何度も何度も繰り返し、いつしかトウカイテイオーは潜在意識下に残る筋繊維の強張りを溶かし、溶かすことに成功。
さらには筋繊維は繊維ですらなく液化へ、さらにイメージは液化から気化へと変わり、超が付くほどの脱力に成功、そしてその瞬間緊張へと転ずる。
そこに発揮される爆発力、想像を、期待を大きく上回り、圧倒的な速度を出せることに成功、ここに超脱力が完成、いわゆるゴキブリダッシュを身に付けることができた。
菊花賞まであと少し、まだ課題は残るが成長出来ている。最終調整に向けてのトレーニングとシャオリーの習得に邁進するのであった。余談ではあるが、しばらくの間テイオーは黒い小さなものや、カサカサした音を聞くとゴルシも驚くようなスピードでその場から距離を取ることがあった。
最近バイクに乗った後にバイクカバーをかけてマフラーのおかげか温かいのか、奴らが暖を取りに来た挙句、家庭を築いていたので泣きそうになりました。いや泣きました。
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前日
あれからしばらく時が経ち、菊花賞に向けての最終トレーニングがおこなわれていた。クラシック三冠目、京都でのレースを控える中、ひたすら長距離になれる練習とスタミナアップの練習、脱力、シャオリーの取得に向け日々精進していた。
多くのライバルが出走する中、メジロマックイーンとゴールドシップと共に併走を行い仕掛けるタイミング、息を入れるタイミング、勝つために必要なことを身に付け、万全の準備を進めていた。
「それにしてもテイオーは脱力のおかげで速くなったよな~スズカがもう一人増えたみたいだぜ」
「ええ、ですがシャオリーの習得はできていないそうですは」
「ま、なんとかなるだろう、要するに衝撃を分散させる。水の上を走るようなもんだろ」
「あえて何も言いませんが似た感じでしょう」
ツッコムことを放棄しストレッチしているテイオーを眺める2人、時間がなく焦るような表情を時々見せるテイオーにマックイーンは心配をしていた。閉じ込められた事件以来、時々相談ごとに乗り話を聞く中で弱気な部分を見せることもあった。
しかしレース当日ならいつものような笑顔を浮かべ走り、勝つ、そう信じている。彼女はトウカイテイオー、誰よりも速く、誰よりも楽しく走る最高のライバルである。
「さて、ゴルシちゃんもそろそろ行かねーと」
「あら?どこへ?」
「ちょっとアメリカの地下の岩塩層にな!」
「まったく貴方は、今度は何をするつもりですの」
「あん?古代人の発掘か、もしかしたら恐竜かもしれねーな」
じゃあちょっと行ってくると言い、走ってどこかに行ったゴールドシップ、あきれた表情でため息をつくマックイーンであった。
その日の晩はとても長く感じた。今日寝て朝起きれば本番、なのにまだまだ時間が足りない、修得することもできていない、できたのは脱力、スズカと同じ舞台に立っただけである。
ひどく疲れた身体を解すために全身を湯船に着けリラックスする。悩み始めるときりがなく逆に疲れてくる気がしたので何も考えずただ今この瞬間、じわじわと体が温まってくるこの感覚に集中していた。
身体が温まると同時に疲労のせいか眠たくなってくる。もしかするとお腹いっぱいご飯を食べたからかもしれない、いや、全部かもしれない。次第に考えることができなくなり視界がブラックアウトした。
あれ?なんだろう、とても心地いい気分、まるで暖かい日に外でお昼寝をしているときのような気分、それよりもっと気持ちいい、まるで全身が湯と一体化しているような
湯船に浸かったままのテイオー、身体がまるで溶けていくかのような感覚、溶けて溶けて水のような、身体だけでなく思考までドロドロに溶けていくような感覚、そしてついには意識すら完全に水と一体化、湯船と一体化した。
ああ、とても気持ちいい、何も考えなくていい、ただ自然と、まるで最初からこうであったような、溶けて溶けて~そして蒸発していくような
自然と液体から気化するようになっていくテイオー、そこには意識することもなく自然とそうなっていた。そして誰かに名前を呼ばれている。このままの気分でいたいのに呼ばれると現実に意識が持っていかれる。まだ覚めたくない。このままでいたい。
しかし身体を揺さぶられ、名前を呼ばれている。あの感覚はどんどんなくなっていきそして目を覚ますことになった。
「あれ?…………マヤノ?」
「あ、やっと起きた!風邪ひいちゃうよテイオーちゃん!」
「うん、寝てたの?」
「そうだよ、何度も呼び掛けても反応しないから焦ったよ!」
「あはは、ごめんごめん」
同室のマヤノトップガンに起こされ、寝ていた事を指摘された。心配されながらも風呂から一緒に上がると少しのぼせたのかクラクラした。
少し風にあたろうと寮から出る。火照っている身体に丁度いい風、少し肌寒いが心地よくも感じた。立って目を閉じ風を感じる。木々と草の揺れる音、自然の匂い、風呂場とはまた違った一体感もあった。
試しに先ほど湯船での一体化をやってみよう。心地よさに身を任せ、ゆらゆらと脱力していく、身体だけでなく思考すら緩めていく…………ああけれどあまり長いすると風邪をひいてしまう。部屋に戻ってやろう。緩める思考を停止する。
「止めるな!」
「!!!!!!!」
「緩めて、緩めて、思考すら緩めろ!」
なぜここにオーガがいるのか普通に女子寮の敷地内侵入で問題になるだろう。しかし緩めるなと怒られた。先ほど停止しようとしたことを再開する。
「そうだ、それでいい」
緩めて、緩めて、思考すら緩めて、液体にまで志向を緩める。そして液体から気化へと自然と行う。
「そのままだ、そのまま俺にぶつけてこい」
脚を開き、肩より高く腕を構え、まるで大型の猛獣が威嚇するようなポーズをとる。ゆらゆらと髪が揺れ、おもちゃを見つけたような笑みでこちらを見つめるオーガ
そして発動!あの生物のみに許された初速最高スピード!踏み込んだ足場はコンクリが抉れ、圧倒的なスピードでオーガへ突っ込んでいくテイオー、オーガは優しく抱き留める。そう思っていたが高く構えた腕が握り拳を作り、突っ込んでくるテイオーの頭を目掛けて振り下ろす。
直感、当たれば確実に大怪我をするだろう。脱力から一気に緊張へと転じ、初速最高スピードでオーガへ突っ込んでいくテイオーは直感で回避すことにした。考える時間がない、考えていたら間に合わない。
振り下ろされた拳は突っ込んでいくテイオーの頭にタイミングを合わせて振り下ろされていた。ただ突っ込んでいくテイオーは回避することができない。
拳が脳天を捕えた。当たるその瞬間、機器察知能力が全開に察したのか、それとも本能か、極限にまで集中力を高めているテイオーの全身がビリビリと震えダメージを最小限にしようと身体が無意識に動いた。
まさに直感、頭に触れる振り下ろされた拳、ダメージを最小限にしようとする身体、テイオーは頭に拳が触れたまま重力に逆らうことをせず拳と共に地面へと頭を下げる。それと同時に下半身は地面を蹴り上げ重力に逆らう。
拳を頭に乗せたまま前方宙返りを披露するテイオー、一回転するとオーガの拳はテイオーの頭からコンクリへ、テイオーはオーガの後ろに立っていた。
「見事!」
「え!」
「シャオリー修得したり、トウカイテイオー」
振り下ろされた拳はコンクリを粉砕し、穴をあける。拳を引き抜くとオーガは振り返り見事と褒める。
「嘘!本当に!」
「ああ」
「……………やった!!!!!!!」
嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねるテイオー、ようやく身に付けることのできた極意、実感より嬉しさがこみ上げってくる。
「シャオリーとはダメージを最小限に抑える技術、極めると最小限どころかゼロにすることも可能、トウカイテイオー、貴様は最小限どころかゼロにすることに成功した。脱力も意識レベルまで液体化に成功、自然に気化へと転ずるのも実にいい」
「えへへ~そうかな」
「だが!」
「貴様が明日のレースに勝てる保証は一切ない!」
「え、なんでええ!!!!」
「レース中に周りの敵は待ってくれるのか」
「あ!」
「貴様は動かない状態で脱力ができる。ゲートから出る瞬間だけ初速は問題はない、しかしレース中になれば話は別だ」
「ああ、そっかどうしよう」
「問題ない、きっかけはいくらでもある」
「え、なになに教えてよ」
「断る。明日自分で見つけろ」
「ええええええ!!!!」
「せいぜい頑張りな」
暗闇に姿を消すオーガ、その後何事かと騒ぎを聞きつけた他のウマ娘達に誤魔化しながら説明、その後部屋に戻り就寝することになった。
「…………明日か」
不安が入り混じる中、これまでやってきたことを全て出し切る。そう決意し夢の世界へと旅立った。オーガが立ち去ってから道路である人物と鉢合わせした。いや、待ち構えていた。
「何の用だ烈海王」
「いやなに、まさかシャオリーを修得するとは思わなくてね」
「貴様と同じで、奴も天才であった。それだけだ」
「恐ろしいものだ」
「それだけなら帰るぞ」
「オーガ、君に聞きたいことがある」
「ほう」
「彼女は明日どこまでできる」
「……………なぜそれを聞く」
「レースには疎くてもシャオリーを修得した。そんな彼女がどのような結果を残せるのか純粋に興味がある」
「せいぜい、2、3着、悪くて最下位」
「なに?」
オーガは数々の戦いを経験、数多の人体を破壊していた。そのおかげかオーガの目には人体の急所、病魔や怪我などが手に取るように見えていた。トウカイテイオーの治った脚はもう一度折れる可能性がある。しかしそんなことを伝えるつもりはない。
「貴様が知る事ではない」
「待て!オーガ!!!!」
「知りたきゃ明日その眼で知れい!」
貴様に興味はないと言わんばかりに立ち去るオーガ、緊迫した空気が流れ列の顔には一滴の汗が流れ落ちた。
「……………仕方ない、いざとなればこれを使うか」
烈の手に握られているのは目覚まし時計であった。よくわからないが葦毛のはっちゃけたウマ娘から渡されたものである。意味はないのかもしれないが何故か得体のしれない不気味さもあった。もしかすると何かしらの力を持つのかもしれない。
アメリカ合衆国コロラド州某所、核廃棄物隔離施設、地下701メートル厚さ1000メートルに及ぶ岩塩層、1億9000万年前に形成された。透明な塩の壁。掘削作業員達は目の前の現実を受け止められず立ち尽くしていた。
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
そしてその場に、目の前の現実に受け止められず立ち尽くしている男たちを気にする様子はなく、葦毛の特徴的な帽子をかぶり、長身のスタイルのいいウマ娘がドリルを使って採掘をしていた。
「うっひょー!!!!世紀の大発見!まさにこのゴルシ様の冒険にふさわしいお宝だぜ!」
しかし簡単には削れない、中の物を壊さないように慎重に削ってはいるが、お目当てである恐竜と人間が一向に触れることができない。
「仕方ねえ、少し別の場所を削るか」
別の場所から削るゴールドシップ、かなり掘り進むと何か人のシルエットが浮かび上がってきた。
「おいおい、これって」
特徴的な耳、尻尾、そして獰猛な目つきで何かを追いかけるウマ娘が岩塩層にいた。
岩塩層、アメリカ、発掘、今更だけど出して大丈夫なのか。ガイドライン引っかからないか?下手したらウマぴょい…………関係ないけど新シナリオ難しい
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本番
菊花賞当日、朝日が昇る前にトウカイテイオーは目を覚ましジャージに着替え朝練に赴いた。気温が低い中、肌寒さで少し震え、体を温めるために軽くランニングをする。
身体が温まるころには日が昇り、一日が始まったかのように思える中、テイオーは昨日のオーガの言葉を思い出す。
「本番、どうしよう」
誰かが答えるわけでもなく、その独り言は静かに響く、しかしやれることはやった。やるしかない、勝つしかない、勝利への渇望を胸に秘めながら時間を費やしていく。
トレーナーとチームと共にやってきた京都、観客は大勢で誰もが新たな歴史を目の当たりにしようと競バ場に集った。控室で着替えを済ませたテイオーはこの日のために新しく新調した勝負服を身に纏い、精神を落ち着け集中していく
「………………うん、大丈夫」
問題ない、できる。あの感覚、脱力も問題ない、レースで全てを発揮するだけだ。
「テイオー、いいか?」
「いいよ」
トレーナーが入室し、最後の打ち合わせを行う。
「テイオー、俺が言える作戦はただ一つ、すべてを出し切れ」
「うん、わかってる」
「それともう一つは個人的なものだが…………今日のレースを大いに楽しめ」
「なにそれ?」
トレーナーなりの緊張の解し方なのか、苦笑いを浮かべながら若干呆れる。そう言えばこういうトレーナーだっけ、仕方ないなと思いながらいつもの調子で答える。
「ふふ、見ててよ最強無敵のトウカイテイオー様の実力を!」
「いいかね?」
「あ、おじさん」
マホメド・アライも入ってくる。相変わらずの格好であるが、彼も今日まで育ててきた一人である。
「ふむ、調子は大丈夫そうだな」
「緊張は少ししてるけどね」
「なに、君なら問題ない」
「そう?」
「ああ、私も観客として応援させてもらう。頑張りたまえ」
「ありがとう」
今度はチームスピカのメンバーが頑張れと喝を入れてくる。期待を一身に背負い、パドックへと姿を披露しに行く。
「さあ、やってきました一番人気トウカイテイオー、日本ダービーから骨折、復帰は難しいと思われたが奇跡の復活、最後の三冠の門、菊花賞へと挑む!」
姿を見せると多くのファンが応援の言葉をくれる。完成に身を震わせ、満面の笑みでテイオーステップを披露する。ボクは帰ってきたよと言わんばかりにアピールすると一層歓喜が強まった。
「テイオー、頑張れよ!」
「テイオーさん頑張って下さい!」
「テイオー見せてあげなさい、貴方の実力を」
「テイオーさん頑張ってくださーい応援してまーす!」
「え~焼きそばはいらんかね~」
「ゴルシ、今売るなよ」
「いったれテイオー、ハジケリストの魂見せてみろ!」
「いけ~勝ったらこのドンパッチソードをやるぞー」
「俺からはぬのハンカチをやるぞー!!!!」
「うおおおおおお鼻毛祭りだ!!!!」
「 ぬ 祭りだ!!!!」
「コーラ祭りだ!!!!」
「ええ、ええっと、テ、テイオー祭りだ!!!!」
「「「「「え?誰?????」」」」」
オレンジ色のトゲトゲ、なんか動くし喋るところてん、あと黄色のアフロの奇妙な三人組が変な応援をしていた。その中に混じっていた黒い髪の幼い少女は負けずと応援していた。
「ソードって、ねぎだし、後ハンカチはいらない」
「「な、なに~~~!!!!」」
「つーかお前ら誰だ!」
「テイオー勝ったらゴルシちゃんからはこの金属器をやるぞ」
「え、なにその金ぴかの剣」
「あん?ダンジョン攻略したらゲットした」
「あ~も~ツッコミが追い付かないわよ!!!!」
相変わらずなメンバーと一部人外を除く、ツッコミが追い付かず怒るスカーレット、姿のお披露目から、場バ入場しに行く、もう一度心を落ち着け、高鳴る鼓動に耳を傾けながら集中していく
「トウカイテイオー」
「!!!!」
目の前に現れたオーガ、笑みを浮かべながらこちらにやってくる。
「勝ちたければ自己を高めろ、何が起きても動揺するな、ただ勝利に貪欲であれ」
「………………」
「邪魔したな」
相変わらずなオーガ、けれどなぜかその言葉が異様でありながらもありがたかった。もう一度集中し、笑顔を浮かべながら蹄鉄の音を響かせ、場バに姿を表せに行った。
次々とゲートに収まるライバル、その中で一人がこちらに来た。ナイスネイチャである。
「テイオー」
「ネイチャ」
「負けないからね」
「うん、ボクも負けない」
「はあ、やっぱキラキラしてるね~」
「そうかな?」
「ま、ネイチャさんも頑張りますか」
「うん、お互い頑張ろう」
「う、まぶしいやっぱオーラが違うね~」
「さあやってきました。京都競バ場、距離3000メートル G1菊花賞、クラシック三冠の最後の冠を手にするのは誰だ!一番人気はこのウマ娘、ここまで無敗二冠ウマ娘トウカイテイオー、勝利を手にしシンボリルドルフに次ぐ新たな三冠バが誕生するか」
「私も期待しているウマ娘ですね」
「各バ、ゲートイン、出走の準備が整いました」
ああ、始まる。集中、集中、今日のために頑張ってきた。必ず勝つ。勝って憧れを手に入れる、勝利を手に入れる。
テイオーは意識レベルを気化へと変え、極限まで脱力する。緩めて、緩めて、準備は万全であった。そしてゲートが開くと同時に緊張へと転じ、あの生物に許された初速最高速を、ゴキブリダッシュを発動させた。
京都競馬場早く改修終わらないかな~早く見に行きたいよ
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菊花賞
ゲートが開くと同時に驚異的なスピードでスタートダッシュを決めたトウカイテイオー、これにはほかのウマ娘も動揺し、慌てた様子で後を追う。
「よし、いいぞテイオー」
「ええ、これにはさすがの周りも動揺を隠せませんは」
「普通に考えれば掛かってるかもしれないと思うが、実際はそうじゃない」
「あのスタートダッシュをきっかけに逃げのウマ娘は思わぬスタミナの消費を強いられる」
「それだけではなく、3000メートルを走り切るためのスタミナの温存とリズムがすべて狂いますは」
「ああ、出だしは好調だ」
スタートダッシュを決め、最初に先頭に躍り出たテイオー、しかし本来の脚質は先行、逃げのウマ娘が上がってくると同時に中段の位置まで下がってくる。
よし、出だしは好調、このまま自分のペースで脚をためてスタミナの温存だ。みんな驚いてる驚いてる。
「まさかのトウカイテイオーが驚異的なスタートダッシュを決めました。これには動揺を隠せないか、まだ始まったばかりの菊花賞これは荒れるぞ!」
「まずは先頭に躍り出たトウカイテイオー、しかし中段の位置までペースを落とし、フジヤマケンザンが上がってくる。しかし内からはフジアンバーワン、半バ身離れてホクセイシプレー、あるいは内をついて、シンホリスキー」
「くっ、まさかあんなスタートダッシュを決めるとは」
「流石トウカイテイオー」
「けどまだ始まったばかり!」
ふふ、みんな驚いてるけどまだ始まったばかり驚くのはここからだよ!ボクはこんなものじゃないよ!
「これから一週目、スタンド前に入ってきました。大勢の観客の声援の中を走り抜けます」
「……………タイムは少し早いが問題ない、スタートダッシュの分少し時間が縮まっただけ」
「テイオーさん頑張って!」
「テイオー頑張れよ!」
「念だ念を送れ~」
テイオーに念を送るスピカのメンバー、スタンド正面を走り抜け第1コーナーに差し掛かる。中段の位置にテイオー、その後ろにナイスネイチャが付いてくる。先頭のウマ娘が何度か入れ替わるが関係ない、ペースを一定に保ちながら自分の走りを見せる。余裕の笑みを浮かべている。
「そろそろ問題の坂か」
「ああ、最長距離2400までしか走ったことのないトウカイテイオー、最初のスタートダッシュには驚いたが、スタミナは持つのか?」
「だが、それは他のウマ娘も同じ、ラストのコーナーから直線にかけてが勝負」
「だな」
「テイオーさん頑張って!」
「いけー!」
まだ、行ける。思ったよりスタミナは消費してない、このまま前のウマ娘に付きながら風の抵抗を受けずに前に進む!
「はあああああ!」
「!!!!」
テイオーの前に行くウマ娘の踏み込んだ脚、蹴り上げられた脚の部分に付着していた土がテイオーの顔に迫る。思ったより量が多いが、その土を走りながらもあのステップで躱していく。
「おおっとトウカイテイオーが軽やかな動きで顔に迫ってきた土を避けた!」
そしてさらに避けたはずみでやや内から外に出ることになったが元の場所に戻るため差す。
「なに?」
「ふふん、ボクにかかればこんなの関係ないよ」
けれど上り坂、思わぬスタミナの消費があったが、まだ余裕の笑みを浮かべながら走る。
「流石テイオー、けどここから」
「え、ネイチャ!」
下りに差し掛かると同時に後方に控えていたウマ娘とナイスネイチャが一気に上がってくる。
「くっそやられた」
「ああ、まずいな、一気に上がってきたせいで抜け出すのが難しくなった」
「このままだとバ郡に飲まれてズルズルと順位を落としていくことになる」
「みなさん、早い仕掛けですね」
「いや、下りの勢いと合わせて一気にコーナーから前に出るつもりだ、直線は長いが追い込みや差しのウマ娘には問題はない」
「問題は抜け出せなくなっているこの状況」
「ああ、無理に抜け出そうとすると直線のスパートが厳しくなる。かといって抜け出せずにいると先頭に出ることはできない」
「つまり、テイオーは無理やり抜け出すしかないってことね」
「けどよ、そうすると」
「ああ、スタミナを一気に持っていかれる」
「じゃあどうすんだよ」
「方法は2つ、コーナーから直線に入る際に必ずどこかしらの抜け道ができる。そこをつく、もう1つは内からシンプルに差す」
「ですが内は」
「ああ、通行止めだ」
「てことは」
「抜け道を期待する。最悪、無理やり外に抜け出すか」
仕方ない、多少強引だけど外に出るしかないか、ペースが上がってきてる。肺が苦しい。けど中々抜け出せない!…………仕方ないけど一気に無理やり抜け出す!
無理やり外に出ることにしたテイオー、出ることはできたが一気にスタミナを持っていかれる。そのせいで大きくコーナーのカーブを曲がることになる。
「行けると思うか?」
「どうした急に?」
「最終コーナーから直線に入ったが、思ったよりスピードが出ていない」
「ああ、しかしまだ距離はある」
「ラストの直線、勝てるのかトウカイテイオー」
「勝てるもん、テイオーさんなら絶対」
「「ご、ごめん」」
「あはは」
「さあ、先頭はフジヤマケンザン、レオダーバンも上がってくる、ナイスネイチャも突っ込んできた!」
「ここで仕掛ける!」
「外から、外からトウカイテイオーも上がってきた!」
一気にギアを上げ前に出てくるテイオー、先頭との差を縮めるために全てをかける。力強く踏み込むテイオー、その瞬間、左脚に激痛が走り笑みが消えた。
VIP観客席
「まさか?」
「そのまさかだろうな」
「まずいな」
「…………」
「オーガ、どう見る」
「折れただろうな」
「…………そうか、いや、彼女はよく頑張ったよ」
「まだここからだ」
「なに?」
「見せてみろトウカイテイオー、貴様の勝利への飢えを」
酷い、天井してキタちゃん引いたのに、次はダイヤちゃんだと!
おのれ、おのれ、おのれ~、課金させるきか!運営!!!!…………金がない!
頼む、もう一度無料10連を!
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勝利への渇望
脚に痛みが走る。恐らく、嫌、確実に折れたであろう感覚、アドレナリンがドバドバと出ている今の状況ですら感じる痛み、一度自覚してしまえば意識を全てそちらに持っていかれる。
「おい、テイオーが伸びてこないぞ!」
「まさか?」
「スタミナ切れですの?」
「いや、違う!脚だ!」
「怪我?」
「………折れたかもしれない」
「「「「え?」」」」
「僅かだが左脚に力が入っていない、庇いながら走ってやがる!」
トレーナーの言う通りテイオーは左脚に力が入らず思うように走れなくなっている。普通に見ているとスタミナ切れを起こしているように見えるが実際はそうではなかった。
痛い、痛い痛い! こんな大事な時に脚が!どうして! どうして!
痛みに意識を持っていかれスピードが落ちてくる。後方から集団が迫ってくる中テイオーはがむしゃらに脚を動かした。
「ここまでか」
「ああ、テイオーはよく頑張った」
ファンからは諦めと頑張ったとの声がちらほら聞こえてくる。もうここまでだと。
「大丈夫、テイオーは勝ちます」
「マックイーン」
「テイオーにはまだ秘策があります」
「秘策って、あれか」
「ええ、あれです」
秘策、シャオリー、しかしこのままだと使うどころか一歩間違えれば選手生命を絶たれる恐れがある。最後の賭け、希望の一手。ゴールまでまだ距離があるとはいえ、今の状況では使うのはほぼ無理であろう。
「可能性を」
「ゴールドシップ?」
「あいつはここで使うしか勝ち目はない」
「ああ、けど」
「あたしらが諦めてどうすんだ、応援してあいつに元気を与えるしかねーだろ!」
「……………そうだな」
「それにゴルシちゃんに任せな!」
チーム一丸となって声を張り上げ応援する。僅かでも可能性があるなら、絶望的な状況にあった中でも彼女は這い上がってきた。仲間を信じて応援する。
痛い、苦しい、もうここまでなのかな、カイチョーのように無敗で三冠は取れないのかな、嫌だな、負けたくないな
まるで何かが足を掴んでいるようなイメージ、実際折れているだけなのだが、マイナス的な感情が生み出した幻影がテイオーの脚を掴んでいる。幻聴も聞こえてくる。
もういいよ、頑張った。仕方ない、諦めよう。
嫌だ嫌だ、勝ちたい、勝ちたい、けどこのままじゃあ勝てない、シャオリーは使いたくても使えない、集中できない、どうすれば!
「アホウが」
「………………」
「くだらんことを考えやがる」
「しかしだなオーガ」
「少しとはいえ、この俺が手伝ったんだ、負けることは許されない」
「むう」
「見せてみろトウカイテイオー、貴様の執念を、勝ちへの欲望を」
痛みに意識を持っていかれようと諦めない、ただ勝ちたい、夢を、あと少しで届く夢をあきらめたくない、けれどどうすればいいのか分からない、脚を止めることなく走り続けるテイオー、思考が早く、現実の世界のスピードが遅く感じる。まるでスローモーションの世界にいる状態、世界が暗くなっていく。
ふと気が付いた。目の前にもう一人の自分がいることに、諦めた表情をし、目に光がないまま話しかけてくる。
「もうあきらめなよ」
嫌だ
「頑張ったよ」
うるさい
「所詮夢だったんだよ、僕にそんな力はない」
なんで?
「折れたんだ、もういいよトウカイテイオー、楽になろう?」
黙れ!
感情のこもっていない言葉が吐きつけられてくる。諦めたくない、もしここで諦めたらきっと二度と立ち上げれない、どれだけ恐ろしい恐怖が待ち構えているのか分からない、確実に走ることはなくなるだろう。
「シャオリーだっけ、使えないよ、今のキミじゃあ」
じゃあどうしろっていうんだよ!
「どうしようもないよ」
…………
「後ろを見てごらん?」
え?…………ヒっ!
そこには無残な脚で倒れている自分の姿があった。脚は折れるどころかもっとひどいことになり出血している。
「その光景は未来のキミの姿だよ」
…………
「走れなくなりたくないでしょ?」
…………うん
「あんな風になりたくないでしょう」
うん
「だからさ、今回はあきらめようよ、もう二度と走ることができなくなることより全然いいよ」
……………………
「さ、ボクの手を取って、走るのはここまでにしておこう」
手が震える。震えながら逆らえず。ゆっくりと手を伸ばしていく、ああ、ここでこの手を取ればきっとボクは駄目になる。でも、もうわからないよ
「え?」
震える手を突如誰かに握られた。温かい手だ。それも一つじゃない、複数の手だ。肩に、脚に、手に、いろんな温かい手が触れられる。
「マックイーン?」
「!」
「マックイーンだけじゃない、スピカのみんな?」
応援してくれるみんなだ、優しい表情でこちらを見てくる。優しくそして心にしみこむような温かい声がかけられる。
「みんな」
「テイオー、さっさとこんなところおさらばして勝ちに行こうぜ」
「ゴルシ!」
「おうおう、お前何もんだよ、うちの舎弟をいじめてんじゃねえよ!」
「いや、舎弟じゃないし」
「テイオーのドッペルゲンガーか? そんなヤンデレみたいな表情しやがって、曇らせ怪文書系はお呼びじゃないんだぞコラ!」
「ちょっと待って何の話!」
「消え去れ、エクスなんちゃら・パトなんとか~」
「ええええええええ!!!!!!!」
ゴルシの指先からまばゆい光が放たれ消え去っていく。もうワケワカンナイヨー
「よし!」
「よしじゃないよ!」
「あんだよ、シリアス系は苦手なんだよ、そろそろ甘い系の話を執筆したいんだよ」
「そういう問題じゃないよ、最後作者の心境だよね!」
「こまけーことはいんだよ、テイオー頑張れ」
「!」
急にまじめな表情で話すゴールドシップ、みんなも話しかけてくる。頑張れと、諦めるなと、スタンドにいるみんなの方を見る。声を枯らさんとばかりに応援してくれている。周りは諦めていなかった。チームのみんなが、仲間が、ライバルが、応援してくれていた。
「ははっ」
嬉しさのあまり涙が溢れてくる。きっとみんな今の状況を知っていてもボクが勝つって信じて応援してくれている。なのにどうしてボクは諦めようとしていたんだろう。もう幻聴も脚を掴まれている感覚もない、世界に色が戻ってくる。明るい色が、希望が、すべてが変わっていった。
「ありがとうゴルシ、それとみんな」
光となって消えていき、左脚にその光が纏わりつく、痛みが引いていく感じがした。最後にゴルシも光となって消えていく。
もう迷わない、夢をあきらめない、勝利をあきらめない、絶対に勝つと決めた。
すべて元に戻った今、やるべきことはただ一つ。ぶっつけ本番でシャオリーを使う、それだけでは駄目だ。テイオーはある日のルドルフの言葉を思い出す。どうして三冠を取れたのか、なんで強いのか、純粋な疑問だった。それに対してこう答えた。
「時代を作るウマ娘は必ずこの領域に入る」
「領域?」
「自分も知らない剛脚、限界の先の先、ゾーンへ」
「へ~ボクも入れるかな?」
「さあ?どうだろうな」
「じゃあボクも入る!だってボク天才だし」
「ふふっ入れるといいな」
「あ~バカにしてるでしょ~」
「そんなことはないさ、もしかしたらテイオーは可能性があるかもしれないな」
勝ちへの執念を燃やせ、引き出せ、欲望を、願望を、夢を、己のエゴを!勝利を求めろ、心の底から魂に至るまで!!!!!!!
「もっと」
小さな声で呟く、誰にも聞こえないほど小さな声で
ここまでこれたのはボクの力だけじゃない、みんなのおかげだ。だから恩返しがしたい。勝ってありがとうと伝えたい。
心臓が一段と強く音が鳴り、跳ねた。
トレーナー、ゴルシ、スぺちゃん、スズカ、スカーレット、ウオッカ、マックイーン、カイチョー、学園のみんな、見ててよ、目を離さないでよ
もう一段と強く心臓が音を鳴らした。
絶対に勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ、勝つ
世界にヒビが入り、ヒビは次第に大きくなっていった。
シリアスクラッシャーゴールドシップ
え~、領域名どうしようか考えていなかったのでアイデアください、あとガチャで理事長来てくれないのですが、どうしたら来てくれるんだ!!
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勝者は
心臓が一段と強く跳ねる。余計な音が聞こえなくなる。ただゴールを目指すのみ、世界にヒビが入っていく、徐々に徐々に割れていく、負けたくない気持ちと勝利への渇望、そしてチームのみんな、絶対に勝つ、そしてみんなに見せてあげたい、勝利し新たな歴史に名前が載る瞬間を!
「オーガよ」
「ああ、やつはもうスタミナも含めて限界だ」
「だが」
「やつはこじ開ける。ゾーンまたはフロー、ピーエクスペリエンスとも呼ばれる超集中状態」
「ああ、一度足を入れると感覚が研ぎ澄まされ普段以上のパフォーマンスを発揮できるあれか」
「そもそもだ、奴は脱力の段階で出来ていたんだ、やり方は違うだけで入ることはたやすい」
「なるほど」
会話の途中でオーガが不敵に笑いだした。
「クックっクッ、入るようだぜ」
「なに?」
「見せてみなトウカイテイオー」
初めは憧れからだった。子どもの頃、カイチョーの、シンボリルドルフのレースを見てあの人のようになりたいと思った。その為に一杯頑張った。レースにも勝った。G1にも勝った。皐月もダービーも勝った。けどを怪我した。でもいろいろあって治った。
練習は辛かった。正直わけがわからないこともいっぱいした。でもそのおかげで強くなれた。心が折れそうにもなった。さっきもそうだったけどみんなのおかげで立ち上がれた。ようやくここまで来れた。もう今からは余計なことは考えない、勝つこと以外何も考えない。
空気が変わった。それは一目瞭然、すべての人が、ウマ娘が気が付いた。先ほどまでの苦しそうな表情が一変し、ただ一点を集中し見つめている。その中で一人のウマ娘が呟く
「テイオー…………ようこそ領域へ」
脚が軽い、痛くない、まるで羽が生えたかのようだ。まるで折れていないかのようだ。先ほどまでの苦しさが消えた。音が聞こえない、嫌、応援が、歓声が聞こえる。それによく聞こえるみんながボクを応援してくれている声が聞こえる。
ああ、心地いい風が、応援が、力をくれる。ああ、なんだろうなんでだろう身体が妙に軽いや、しかもドロドロに溶けていく、どんどん水のように、あれ?この感覚は確か、似たようなことがあったような…………いいか♪
ゴールまであとわずか試しちゃおう今ここで、シャオリー!
踏み出す一歩に力が入る。地面を蹴り上げる瞬間に衝撃を、痛みを全身を使って分散、脚から体へ、身体から腕へ、腕から外へ、本来生じるはずであろう痛み、衝撃を全て分散、残るのは純粋な威力のみ!
極限までの集中状態に入ったテイオー、まるでスローモーションの世界の中でどんどんと加速していく、周りをどんどん抜いていく、ゴールまで駆け抜けていく
「おいトレーナー!」
「ああゾーンだ!それだけじゃない!」
「あれは、脱力…………いいえまたべつの」
「テイオーいけー!」
「そのまま駆け抜けなさーい!」
一体何が起こったというのかトウカイテイオーが再び息を吹き返した!驚異的な末脚で他の追随を許さず駆け抜けていく!ものすごいスピードだ、誰も追いつけない追い越せない、そしてついに先頭に立った~!
後続も追い抜きにかかって来るが追いつけない、完全に抜け出したトウカイテイオー!ゴールまで残り僅か、もう言葉はいらない完全な独走!
ああ、ああああ、やりました。やりました! トウカイテイオーがシンボリルドルフ以来の無敗の三冠を!再び京都競馬場に菊の大輪を花咲かせ新たな歴史の1ページを残しました~~~!!!!!!!
大歓声が響き渡った。駆け抜けたテイオーはゾーンが切れ一気に疲労と足の痛みが襲い掛かる。いったい何の歓声か、掲示板を見なくともわかる観客からのテイオーコール、自分は勝ったのだと確信した。
「……………やった」
不意に自分の名前を呼ぶ声がした。スタンドの方を見るとチームのメンバーが駆け寄りに来ていた。全員涙を流しながら名前を呼ぶ
「テイオ~~」
「よくやった!」
「「ああ~デイオー」」
「うう、テイオーさん、よかったです~」
「スぺちゃん、鼻水が‥あの待って………噓でしょ!」
「はは、みんな、ありがとう」
駆け寄る仲間、全員が涙し、顔をぐしゃぐしゃに汚し鼻水を流しながらスズカに抱き着くスぺちゃん。長年の夢が今果たされた瞬間であった。ターフにまで響き渡るテイオーコール、彼らはこのレースを、記憶を忘れることはないだろう。
「勝ったな」
「ああ」
「まさかこうなるとはな」
「少なくともこの俺が手を貸したんだ、負けは許さねー」
「………………なぁオーガよ」
「なんだ」
「君は一体、本当に何を考えている」
「………………」
「君らしくない、本当にだ、教えてくれないか、本当の理由を、ウマ娘という種族に、個人に、いったい何を期待している」
「…………最強を生み出すこと」
「なに?」
「いずれ芽吹くであろう世界中にばらまいた俺の種、奴のように俺に立ち向かってくる存在、ゼロではない、ウマ娘という種族、ならばレースと言う世界で血を証明できるか、範馬を名乗ることができるか、その為に下準備をしておくこと」
「つまりいずれ彼のような存在が産まれると」
「自ずと目指す最強、頂点に君臨する者を生み出しいずれ競わせる、俺を楽しませる存在として目の前に現れるのが楽しみだ」
「……………なるほど」
「ふん、おしゃべりが過ぎたな俺は帰るぜ」
「………………なんというか、末恐ろしいものだなオーガの血は」
オーガのいなくなった部屋で一人呟いたのであった。
はい、投稿遅くなってすみませんでした。ぼちぼちまた投稿しようと考えていますのでこれからもお願いします。テイオー編はこれでおしまいです。あまり面白くもなかったと思いますがこれからも頑張ります。
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キングヘイロー編
キングヘイローと刃牙再び
親が偉大で子供は頑張って成長するところとか
あの時以来の河川敷、何週間ぶりなのかもう覚えていない、あの不思議な少年と出会い、よくわからないまま分かれた、その間のレースでも勝ちきれず、ただ気がつけばここにいた。まるで答えを探すべく、答えを貰うべくここに足を運んでいた。
ただあの時のように少年はシャドーはしていなかった。なぜか蟷螂を持ち、うれしそうに持ち帰ろうとしていた。こちらの視線に気がついたのか、虫を持ちながらこちらにやってきた。
「やあ、久しぶり」
「ええ、久しぶりその虫は何に使うのかしら?」
「こいつかい?これからこいつと戦うためさ」
戦う、この虫と?一体何を言っているのか理解できなかった。否、理解は出来ていた、しかし簡単に踏み潰せるし叩き潰せる、戦うに値しない脆弱な生き物だ。正直なところ戦うなら同じレベルかそれ以上のファイターと戦うのがセオリーだろう。
キングヘイローは困惑の表情とあきれた感情が入り交じった状態で見つめていた。それに対して少年の刃牙は笑った。
「確かに、普通に戦ったらこんな相手すぐにぺしゃんこさ、けど普通じゃない相手にするんだ?」
「普通じゃない相手?」
「そうだな、キングだっけ、まだ時間あるならうちにおいでよ、見せてあげるから」
「・・・・まだ二回目なのにいきなり殿方の家に行くのはちょっとね」
「あ~それもそっか・・・・どうしようか」
悩む刃牙に対してこんなことを思うのはどうかと思ったが相手は普通の人、普通の人より鍛えられているがウマ娘の方が圧倒的に強い、もし襲われたとしても簡単に返り討ちにできてしまう。それとすこしばかりなプライドもあった。女性の誘い文句がなっていないなどのちょっとした令嬢のプライドだ。
しかし気になることもある、この蟷螂との戦い方だ、前回の時もそうだ、この人は何かを持っている。おそらく今の私にはないものを絶対に持っている。己の感が告げている。天秤にかけたとき最終的には好奇心が勝ったキングであった。
「仕方ないわね、興味があるから連れて行きなさい」
「・・・・なんかわがままなお嬢様だな」
「あら、こうみえても一流の女性よ、わがままは余計だけど」
「そうかい、ならお嬢様行きましょうか」
河川敷から出会い、奇妙なまま彼の家に向かう、異性の家に行くのは担当のトレーナーを除けば初めてなのかもしれない、一体どのようなところに住んでいるのか、大きな家なのか、普通の家なのか、はたまた賃貸なのか、そんな考えを張り巡らせていると奇妙な光景が目に入った。
「な、なにこれ?」
道路や壁、あらゆる場所に落書きがされている。住宅街なのに、スプレー缶で書かれた文字やペンキもある。しかもそれが絵ならどれだけマシだっただろう。全て罵声罵倒の文字、ほとんどが悪口、もはや都心の公衆トイレのようなものすごい落書きのように書かれている。その落書きが、文字が行き着く先は一つの一軒家であった。
「あ~これ?気にしないで」
「き、気にしないでって無理があるわよ!なによこれ異常じゃない!」
「まともに俺とはケンカできないからね、落書きでケンカするしかない」
部屋に入ってからは、すぐに柔軟体操を始めた刃牙、その身体はウマ娘のキングヘイローですら驚いた、信じられないくらい柔らかく、いったいどれだけ長いことやっていたのかが分かってしまうほどであった。
「そういえば、刃牙さんはお父さんと戦うのよね」
「ん?ああ、ちょっとしたケンカさ」
「そのお父さんはいったいどんなひとなの?」
「全地球全生物統一無差別級チャンピオン、ライオン・トラ・象・シャチ・癌細胞だってかなわない」
ケンカをする、戦う相手である父の強さを話す刃牙はなぜかキングにはちょっと誇らしげに見えた。地下室に案内されると先ほど捕まえたカマキリを用意しこれからこいつと戦うと言った。
「普通じゃない相手って、やっぱり無理があるわよ」
「無理じゃない、こと闘うという点において昆虫はプロ中のプロだ、猛獣なんてめじゃない」
「まさか?このサイズよ!」
「冗談で言っているのではない、まず体力が桁違いだ」
「た、体力?」
虎やライオンは800キロ前後の獲物をなんとか引きずって運ぶらしいが、彼らが約200キロとしてもせいぜいが3~4倍
「ならば昆虫はどうか」
自重の7~8倍の餌を自分の巣まで楽々とノンストップで長距離輸送する。30キロくらいの子が200キロの男を学校から自宅まで運ぶことを考えてみな
「無理よ、絶対に」
一っ飛びで10メートルを超える鹿類は珍しくないが
「ノミやバッタに比べたらカワイイものだ」
彼らが人間の大きさなら10階建てのビルなど楽々飛び越えるだろう、手に取ったとき感じるハズだ、体重は俺たちの数千分の一だ、なのに指先に感じる彼らのパワー、同じ体重なら絶対に勝てない、あの脚で蹴られたら・・・・・・ッッ
あの前脚でホールドされ、押さえ込まれたら・・・・・・ッッ
あの牙に挟まれたら・・・・・・ッッ 無事ではすまない
キングは想像した。確かに人間サイズならとてつもないかもしれない、それこそウマ娘以上に強いかもしれない
「そしてこのカマキリだ、彼こそが闘いの専門家だ」
「専門家?」
古代中国拳法でも蟷螂の闘法から、蟷螂拳を作り上げたことはあまりにも有名だ。打撃、押さえ込み、咬みつき、凶暴性、なにをやらせても超一流、非の打ち所のない完全格闘家だ。彼らが100キロを超えたなら、必ずアフリカ象を捕食する。
「でもこのサイズ、小さい」
「大きくする」
「どうやって?」
刃牙は頭と胸でと答える。初めて会ったときあの川で、遠いアメリカのしかも今は存在しない最盛期・・・チャンピオン時代のアイアン・マイケルを呼んで闘っていた。現在この世に存在しないマイケルが現れた、創れるんだと、体重100キロの蟷螂との試合が創れるだと言い放った。
そして今からその戦いが始まろうとしていた。
キングヘイローと福永○一が出てくるけど、キングヘイローと刃牙なんだけど、どこかで出してみたい、いっそのことトレーナーをそういう風にするか悩む~どうしたらいいんだ~
それと右腕の肘近くの靱帯を痛めて固定中なので投稿スピードが大幅に下がります。
見てくれている人すみません
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キングと異種格闘技と思い込み
刃牙が目の前でファイティングポーズを取り、動き出した。パンチやキック、時々躱す動き、緊張状態に移行したとき見えない彼の脳が創り出した想像上の蟷螂に緊張しているのが目に見て分かる。
顔の角度が徐々に上がっていき、見上げている。一体どんな怪物を見ているのか、大きな音が響き、空中で一回転、キングは思った。刃牙の言う通り、体重100キロの蟷螂は200キロ以上の虎やライオンより遙かに強い
戦いの最中、動きが止まった。必死に抵抗している姿を、ひょっとして捕まっている、蟷螂に!!!膝蹴りがおそらく顎にヒット、しかし投げ飛ばされてしまう、この光景を見てキングは思った。
弱くって、簡単に勝てるカマキリにしてしまえばいいのに、踏み潰してしまえばいいのに、なんて自分に厳しい人なんだと、この瞬間、彼の強さの秘訣はこれではないかと、自分にはなくて刃牙に持っているものを見つけた気がした。
戦いは続き本物のカマキリに普通の格闘技は通用しない、彼の動きは徐々に格闘技ですらなくなっていった。
薄暗い部屋の中、刃牙が動いている。何もない空間を攻撃し何もない空中から来る攻撃を防いでいる。それをずっとキングは見ていた。何一つ見逃すまいとッッッ、めまぐるしく刃牙の動きを追い続けた。みつめた。
すると、ホルスターを見るとそこに入るモノの形がわかるように、本のケースを見るとそこに入る本の大きさがわかるように、こんなペンダントがあると、もう一つこんなペンダントを創造するように、見えてくる!
何もない空間に少しずつ、あるハズのない姿が、少しずつ、少しずつではあるけど、確実に見えてくる!!!、刃牙が創り出したそれは、昆虫のくせに体重100キロ以上、実際に眼の前にすると、笑ってしまいたくなるほど絶望的なシロモノ、そんなものと刃牙は堂々と向き合っている。
先ほどこの世である意味強いという刃牙の父親はどれほど強いのか、今目の前にいるこの生き物以上なのか、想像が全くつかなかった。それは突然きた。ハイキックがスピード、タイミング文句なしのジャストヒット、KOの予感、しかし天井に向かって投げ飛ばされ、激突した。
刃牙は気がついた。蟷螂の頭部には脳がないに等しいことを、だから人間には必ず起こる脳震盪がない、頭部への攻撃が効かないッッ、背後に周り首をとった。しかし見られている。バックを捕ってもしっかり見られている。
しかも恐ろしく器用、簡単に頭を掴まれ前に持って行かれる。く、喰われる!!
力が強い、昆虫との力比べ、刃牙の腕が血管を浮かべて筋肉が肥大化しあらわとなっている。
「なんて筋肉なの」
相手が、相手が誰であれ、人であれ猛獣であれ、昆虫であれ、やることは同じ、やれることは決まっている。普通に闘う、そう言っているようにキングには聞こえた。右のパンチがヒットする。蹴りもヒットするもまるで金属、それでも何が起こってもやる、急所や弱点もクソもない
そして刃牙は蟷螂相手に、蟷螂の逆関節、人間がかけている。そのまま折るのかと思いきや思いっきりぶん投げられた。格闘技が通用しない相手、全身に傷が増え、あまつさえ出血、そこまでやるのか
こんなの普通じゃない、こうまでしてやることじゃない、いくらリアルに敵を想像することが効果的とはいえ、現実は目の前に誰もいないわけで、何もない空間に一生懸命思い描き、そこに幻影を造りだし、そいつと闘うわけでー、試合や決闘じゃあるまいしこうまでしてやることじゃないッッ
「刃牙さんもういいは、もう十分だから、それ以上は駄目よ!・・・ああ」
もう聞いちゃいなかった。キングの心配をよそに対戦者はますます実物チックになりまるで体温まで感じるほどの、そこからは戦いが続き激しく動く、戦いの最中あることに刃牙は気がついた。首の下に感じた柔らかな感触、使った打撃は二本貫手!
構えが変わった。そのファイティングポーズは蟷螂を真似ているように見えた。キングは知らない、格闘技の世界が野蛮であることを、他の競技にはあり得ない考え方が存在する。格闘技にはあって他の競技には存在しないもの、それはどっちが強いかだ。
野球とバスケットボールが闘う何で絶対にあり得ない、けれど格闘技は違う、同じ競技者同士はもちろんのこと異種競技とも闘える。異種生物とだってやる。人間の強さへの探究心はどこまでも深く、異種生物からついには想像上の巨大な昆虫へ、そしてとうとう刃牙は一周回って異種の世界から同種格闘技の世界に踏み込んだ。
先ほどとは打って変わって攻防の競り合いがほぼなく、一方的に刃牙が攻めている。攻めて攻めて、幻影はこちらに飛んでくる。
「きゃっ!」
「こいつらは同じ昆虫界に天敵がいない、こいつらは攻撃というものを受けたことがない、攻撃は強力で抜群に巧いが防御はからっきし」
なんとなく終わりが近づいていると感じた。そして刃牙が勝つと感じた。そこからの戦いは一方的であった。蟷螂は防戦一方、刃牙の顔がなんか余裕に見える。動きも、蟷螂ではない別の何か、鳥VS昆虫を見ているようにキングは感じた。
あんなに凶暴だった蟷螂も今は逃げてばっかりで刃牙さんは余裕で、あんなに見上げていた刃牙さんの顔がまっすぐよりも低く幻影の蟷螂を捕まえていた。
「キング、弱点が見えちまえば100キロも実物大も一緒だ」
「・・・・文句なしの完全勝利ね」
「さて、何か掴めたかな?」
「ええ、絶対に私が持っていないもの、その創造力」
「できそうかい?」
「・・・・わからない、少なくとも無理よ」
「そうか、じゃあ改めて」
左手を挙げ手のひらをこちらに見せてくる。その手のひらには一本の線が入り血が出た。それを見てキングが驚いた。先ほどとは違う光景、衝撃を受けた。
「え、なにが?」
「ある日を境に幼児は火バシが熱いことを知る。ふざけた大人が熱くない火バシを幼児に触れさせると火傷と勘違いした幼児はリアルに苦痛を感じるという、極端な例ではその幼児の手に火ぶくれが生じた記録すらある」
「・・・・・・・嘘!」
「思い込みの力だ、人間がリアルに、リアルに思い描くことは実現する」
確かに思い込みの力、先ほどまでの光景と照らし合わせると否定は出来ない、しかしそれを出来るかと言われればほぼ皆無であろう。どれだけ思い描こうとも集中力がいずれ途切れ霧散する。鋭利な刃物で掌が切れたことを強烈にイメージしたと言うが、そこまでいくと一種の才能だ・・・・・・・強烈に?
「強烈にイメージした?」
「キング、君たちにそれが出来ないのは当然だ、思いが実現することなど頭から否定し不可能であるという思いの方がはるかに強烈だから」
ウェイトトレーニングを一例に取っても目標とする体型をイメージするのとしないのでは全く同じ種目のトレーニングをしても結果に圧倒的差が生じることは実験データで明らかになっている。
「このイメージトレーニングを繰り返すことでさっきのようなことが可能になる」
「・・・・・」
「ようするに練習すれば誰でも出来ることさ」
「貴方はこれをよくやってるの?」
「ん?ああ毎日ね」
「そう、ありがとう、いい物が見られたわ」
「どういたしまして」
門限が近いので帰るため家を後にしたキング、その後寮に帰る道中でキングはとんでもないことに気がついた。
「毎日やってるって事は、何百、何千って闘ってるって事よね!」
もし、もしこの創造力を手に入れられたら、ただ練習するだけより、併走するより、いいのではないのか、もちろん手を抜くつもりはないが本番さながらのレースを再現することが出来れば、G1級、それこそシンボリルドルフのような強者をイメージすれば、誰よりも強者と闘った経験が手に入る、練習中に採り入れながら走ることで更なるレベルアップが出来るのではないか、否定から始めるのではなく何事もやってみる。
そうキングは決め、寮へと帰っていった。キングはこの日の出来事をきっかけに強くなっていくのであった。
魔改造が始まる予感!キャラが壊れないか、壊れるか
それ以上に文才が壊れているからどうしようもない
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イメージトレーニング
あの日刃牙のトレーニングを見て以来、早速キングは練習にイメージトレーニングを採り入れた。まずは簡単に何でもいいので頭に思い浮かべる。思い浮かべるのはいつも身近にいる存在、同じ部屋の住人であるハルウララを思い浮かべた。
桜色の髪に瞳、いつも楽しそうに話す姿や頑張っている姿、寝ている姿やあどけない姿、それを鮮明に思い浮かべ脳内に今はいないハルウララを創り出す。創り出してからは今度は具現化だ、目の前に存在を創り出す、頭だけでなく心でも創り出す。
「・・・・・・難しいわね」
頭の中では創り出せても視界に映し出せるレベルまでにはまだ至らない、一体どれほどの研鑽を積めば出来るのか、キングヘイローは諦めず練習を続けた。
「・・・・違う、何というか言葉に出来ない」
それもそのはず、すぐに出来るほどの技術ではない、キングヘイローは必死にイメージトレーニングを繰り返したが習得できず、一日が終わった。毎日毎日イメージトレーニングと普通のトレーニング、習得できない日々が続き手詰まりとなった。
「ってわけなのよ、何かいい方法ないかしら?」
「ありゃりゃ、それはセイちゃんにも分かりませんな~」
「難しいですね、そんなことできるのでしょうか?」
「にんじんハンバーグなら思い浮かべるだけでお腹がすくんだけどな~」
「それならエルにいいアイデアがあります!」
「本当!」
「そんなのあるの?」
カフェレリアにてキングヘイロー、スペシャルウィーク、グラスワンダー、セイウンスカイ、ツルマルツヨシ、エルコンドルパサーとの仲良くランチタイムを楽しんでいた時、ふと相談したら、エルコンドルパサーがいいアイデアがあると言う、一体何かと聞くと
「グラスの怒った顔を思い浮かべるデース!」
「エ~ル~」
「ケッ!ででででも本当デス!怒ったグラスは本当に衝撃的で、インパクトが凄いんです!頭から離れません!」
「あらあら~お仕置きが必要ですね」
「ひいいいいいいいい!!!!」
「確かに怒ったグラスちゃんは怖いもんね」
「スペちゃんまで!」
「確かに怖そうだもんね~」
「それよ!」
「「「「「へ?」」」」」
頭に残るほどのインパクト、イメージするのに足りなかったものはそれだと言わんばかりに勢いよく立ち上がるキング
「な、なにが?」
「インパクトよ!」
「グラスのですか?」
「エルコンドルパサー?」
「ひっ!い今のは違うデス!しかもフルで呼んでます!」
強烈なイメージを連想させるには強烈な衝撃、いわゆるインパクトが必要、ならレースの時のようなインパクトがあればいけるのではないか?強烈なインパクトを与えられる存在は数多く存在するが、一番いい方法は過去のレースの映像を見ること、そのためキングは早速放課後に過去のレースの映像を見返した。
ただ見返すだけでなく、その場にいるイメージで見ること、実際に走るイメージで集中して見ることであった。重賞レース、G1レース、特に黄金世代のレースの映像を中心に見返す。
「・・・・改めてみると仕掛けるタイミングが早いわね」
自信の弱み、焦ると早めに仕掛けてしまうところ、一流といいながらまだまだ改善点が多い、なるべく負けているレースの中から共通している部分を見つけ出す。
確実に勝てるというタイミング、それを見据えるため何度も何度も確認する。しかしインパクトが足りない、ならば実際に併走で確かめるか、それが一番だろう。翌日グラスワンダーに併走を頼み、何度も競い合う、競ううちにグラスワンダーの迫力がより鮮明になる。
休憩中でもイメージトレーニングの練習を行う、先ほどの迫力が残っているうちに何度も姿を思い浮かべる。幾度と繰り返すと次第に鮮明になっていき目をつむっている間はハッキリと思い浮かべることが出来るようになった。
それからもスペシャルウィークやエルコンドルパサーなどと併走をし、休憩中に思い浮かべる。さすがは一流と言うべきか、一度出来てからはスムーズに思い浮かべることが出来るようになり、日頃のトレーニングでも本番さながらのレースをイメージしながら走れるようになっていた。
「キング、最近なんか変わったね」
「ええ、よくわかったわね」
「そりゃあ、トレーナーだし」
「次のG1レース、絶対に勝つわよ」
「当たり前だ、キング」
毎日毎日、イメージをしながら練習する。本番のレースで、本気の走りをするライバルをより強くし挑む、何度も何度も挑戦し敗れ、僅差で白星を逃す。勝った回数などたかがしれている。毎日続けているだけでも戦歴はかなり増え、負けた回数も勝った回数も100はくだらないだろう。
その変化は周りにも影響する。キングの練習への熱に当てられたのか、いつも以上の負荷で練習するウマ娘が増えたのだ。しかしそれでも彼女には及ばないだろう。彼女はすでに勝負回数は圧倒的な数を持っており、トレセン学園1のウマ娘になっただろう。
そして月日が流れ、短距離のG1レース高松宮記念、勝負服に着替えながらも一向に控え室に姿を現せないキングヘイロー、トレーナーは心配して探しに行こうとするが、ドアノブに手をかけた瞬間キングヘイローが扉を開けた。
「キン・・・グ?」
「はぁ・・・はぁ・・・何よ」
「どうしたんだその汗は!まるでレースが終わった時みたいだぞ」
「ええ、終わったのよ」
「何を言って!?」
「安心しなさい、勝ったから」
「は?」
意味が分からない、しかし汚れてもいない、ただ汗をかいているだけまるでサウナ上がりのようだ。しかしもう本番が始まる。できる限りの疲労回復としてマッサージなどをしようとするが全て断る。ただ一言、見ていなさいといい、ペットボトルの水を飲み干しターフへと向かった。
一体どうなるのか、漫画持ってないから無料漫画で読んでるため更新はかなり時間が掛かります。
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勝者の名は
「あら?ここは関係者以外は立ち入り禁止よ?」
「そうかい、そりゃあ知らなかった」
「・・・・・どうやって侵入したのかしら?」
「さぁ?」
本来関係者以外立ち入り禁止のターフへと続く地下の道、普通なら絶対にいない青年刃牙がそこにいた。こちらを見ながら感心したかのように笑う。
「俺とは違う形だが、掴んだようだな」
「ええ、よくわかったわね」
「わかるさ見れば、俺の場合なら周囲に被害があるがあんたは違う、今は肉体そのものにだけ結果が出てる」
「流石に格闘技じゃないから貴方ほどは無理よ」
「で、どうだい?」
「なにが?」
「やれそうかい?」
問いかけてくる刃牙に対してキングヘイローは腕を組みながら笑う。今日という本番までにどれだけの研鑽を積んだが知るのは二人のみ、見ただけで分かる者、積み上げてきた者、これまでにどれだけイメージしながら戦ってきたか、その結果をこれから披露する。
相手は生身のウマ娘、イメージ通りに行くかは保証はない、しかしそれでも彼女はやりおおせた。だからこそ余裕の笑みを浮かべる。勝利を確信した笑みを。
「あら愚問ね、私の勝利は確定事項よ」
「そうかい、なら見させて貰うよ、一流の姿を」
「ええ、見ていなさい、このキングの勝つ瞬間を」
バシンッと手を叩き合う。ハイタッチとは違う音、光指す道へとキングヘイローは脚を進めた。G1のファンファーレが鳴り響く、観客が盛大な拍手で場を盛り上げる。ゲートに各ウマ娘達が収まる中、挑発してくる者もいる。勝ち宣言をしてくる者もいる。しかしそれでも彼女は、キングヘイローはすでに勝者はこの私といわんばかりの表情をする。
ただ一言、今日のレースの勝者はこの私だと、それだけを言いゲートに収まる。そしてついにゲートが開いた。全員出遅れなくゲートから飛び出す。先頭争いはメジロダーリングやアグネスワールドが先頭争い、ほとんどのウマ娘が混戦状態の中でもキングヘイローは冷静に周りを見ていた。3、4コーナー中断を33秒台で駆け抜けていく、まずまずのスピード
「このままマーク!」
「逃がさない!」
「勝つのは私だ!」
「・・・・・・」
練習通り、今のところは読めている展開、しかし負ける可能性もあるが、キングは確信していた。イメージトレーニングの中で一番勝率が低かった勝ち方。大外からまくって勝つ方法。自身の能力を理解した上で何度も何度もあらゆる戦法で勝負した。
その中で一番勝率が低く、しかし現実的であるであろう勝利へのルート。何十何百という勝負の中、見つけ出した勝利へのルート。
やはり全員ペースが速い、混戦状態のままコーナーを駆け抜けている。それでも想定内、このまま直線に入れば一気にペースを上げて先頭は逃げ切るはず。内側と中断から一気に前に出る娘もいる。
なら私は大外から一気に行くとしましょう。見ていなさい、このキングが勝利する姿を!今日という日に数え切れない敗北と手のひらで数えるほどの厳しい勝利を手にしたこの私にひれ伏しなさい!
最終コーナーを回って直線に入る。先頭は以前アグネスワールド、各ウマ娘も一気にペースを上げゴールへと駆け出す。そんな中大外から一気に仕掛ける。
「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「なに!?」
「くっ!」
メジロダーリング、アグネスワールド、ブラックホークが先頭を譲らんばかりにギアを上げ逃げ続ける。しかし途中スタミナ切れで失速する者もいれば一気に末脚で抜け出してくる者もいる。
そんな中大外から一気にまくって上げてくるキングヘイロー、何バ身あったのかわからない距離を段々と縮めてくる。声を荒げながら余裕なんてない表情を浮かべ走り続ける各ウマ娘達
栄光のゴールまであとわずか、一切気を緩めずただゴール盤を駆け抜けること、他のライバル達も私が勝つと言わんばかりに走り続ける。しかし大外からやってくるキングの末脚の驚きを隠せない。
「なんで、なんで」
「あんたが!」
「キングヘイロー!!!」
「どうしてそこにいる!!?」
マークをしていないわけではなかった。ただ途中から完全に眼中になかった。いつも通りに逃げたり先行で駆け抜けたり、己の走りをしていた。勝手に沈んでいったと思った。まさかこんな最後の直線で一気に先頭まで来るとは思っていなかった。
だからこそどんな手品を使った。レースの最中答えろと言わんばかりに睨みつける。キングヘイロー自信も余裕の表情ではない、レース前とは打って変わった表情。しかしほんの一瞬笑みを浮かべた。
「レース前に言ったでしょう。勝者は私だと」
「ふざけるなぁぁぁ!!」
「ブラフも脅しもきかないね!」
「勝つのは私だ!!」
先頭がついに変わる中大外から一気に末脚で上がってくるキングヘイロー。各ウマ娘達もラストスパートをかけているがどんどん追いつかれ追い抜かれていく、しかし先頭との距離はまだ遠い、だからこそほんの一瞬油断したのだろう。ペースが一瞬落ちた。そこを見逃さなかった。
全身全霊を駆けて走り続ける。このままいけば誰が最初にゴールするのか分からない状況。それでも最後に勝つのは私だと確信していた。異変に気がついたのはすぐにわかった。
「なんで・・・なんで笑ってるんだ!?」
「本当に勝つってこと??」
「いいえブラフよ!差し切れるはずがない!」
「いいえ、ブラフでも冗談でもないわ」
笑みはなくなり真剣な表情に戻る、もう語ることはないと、差を詰めながら徐々に追い上げてくる。後少しで、あと少しでゴール。G1の栄光のゴールまであと少し、逃げ切れる。
「勝てる!勝てる!」
「負けるかぁぁ!!」
デットヒートの中、静かではない中それでも周りは聞こえた。大外から迫る脅威の足音が、キングヘイローがやってくる。負ける可能性が出てくる恐怖に打ち勝つべくもう残り少ないスタミナを、すでにないスタミナを使い、根性で、執念で走る。
ついに二番手まで上がり先頭に追いつく、抜かれる者、抜き返そうとする者にキングは笑みを浮かべ先ほどの続きを答えた。
大外から飛んできたキングはゴール直前で纏めて撫で切り勝利した。ついに手が届いたG1、喜びの感情を爆発させる。スタンドからはキングの名が、勝者の名前が、これがG1、これが勝利、久しく味わえなかったこの勝利をキングは噛みしめた。
控え室に戻ろうとするとまたいた。お疲れさんとねぎらいの言葉をくれる。
「見てたぜ、ギリギリの勝利」
「ええ、私もまだまだね」
「ならもっと鍛えないとな」
「そうね」
「改めておめでとう一流のウマ娘」
「ええ、ありがとう」
刃牙と別れた後、全てのプログラムが終了し、トレーナーと勝利を分かち合う。おめでとうとの連絡がたくさん来る中キングはただ空を見つめこう呟いた。
「はぁ~早く練習したい」
キング編は終了です。過去のレースを見返して書いたのですが、やっぱり難しいです。
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