IS〜総てを守り、総てを砕く牙〜 (白銀色の黄泉怪火)
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1話

初投稿です。
感想お願いしますm(_ _)m


ISと呼ばれる物がある。

正式名称インフィニット・ストラトスというそれは、宇宙空間での活動を想定されたパワードスーツの事で、ある一人の科学者が製作した事で有名である。

しかし、ISには『女性にしか使えない』という致命的とも言える欠陥があり、それによって今の世界は女性が過剰に優遇される女尊男卑の世界となっていた。

そして、女尊男卑の世界になって約十年、世界が再び騒然となった。

 

世界初のIS『男性操縦者』織斑一夏の発見によって。

 

世界は他にもISを起動できる男はいないかと各地で一斉に検査を始める。

そして......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがIS学園か......」

 

 

近未来的、というより最先端の科学を集めた建物を前に俺はポツリと呟く。

 

久々にあの二人......あ、三人か。

三人に会えるんだが、まさかこんな形で再会する事になるとはな......。

軽くため息をついているとツカツカと前からヒールで歩く音が聞こえてくる。

そこには狼の様な鋭い目をした女性、世界最強という異名を持つ織斑千冬が立っていた。

 

 

「やっと来たか」

「やっとって、これでも急いで来たんですよ?」

「まあいい、もうHRも始まっている。お前が所属するクラスに案内するからついて来い」

「ヘイヘイ」

 

 

言われるがままに彼女の後ろを付いて行く。

 

 

「そーいや、俺は何組で、誰が担任何ですか?」

「お前は一組所属で、担任は私だ」

「......一人目もですかね?」

「ああ」

「うん、完全に面倒事を押し付けられてますね」

「そう思っているならくれぐれも問題を起こすな」

「現在進行形で問題児みたいなモンなのに、それは無理な話ですよ......因みに、箒と簪は何組ですか?」

 

 

ピタッと、織斑先生の動きが止まり、振り向く。

困惑、というより疑問って感じの表情を浮かべてる。

 

 

「あの二人を知ってるのか?」

「ええ、因みにその二人の姉貴達......CCRと......更識ダンゴムシだっけ?その二人とも知り合いですよ。箒と簪は接点無いですけど」

「更識楯無だ、馬鹿者。それとCCRとは何だ?」

「え、クレイジー・チャイルド・ラビットの略ですが?」

「......的確だな」

 

 

何か呆れた様な、諦めた(?)様なため息付かれたんだけど?

 

 

「篠ノ之はお前と同じ一組で、更識妹は四組だ」

「分かりました。簪の方は時間見つけて会いに行きます。姉貴の方はどうでもいいや」

「お前は更識姉の事が嫌いなのか?」

「いや、優劣があるだけですよ。『家族』とそうではない奴、優先するのはどっちか決まってるでしょ?」

 

 

その言葉にフッ、と笑う織斑先生。

 

 

「『家族』、か。お前の住む街は、家族の定義のスケールが大きいらしいな」

「まあ、先ず街の人間全員を『家族』って言い切る奴等の集まりですからね、スケールもデカくなりますよ」

 

 

それもそうか、と微笑を浮かべながら再び歩き出す織斑先生。

そして一年一組と書かれたプレートのやたらと騒がしい教室で止まると「呼ばれるまでここで待て」と言い残し教室に入っていく。

 

......さてと、自己紹介の台詞でも考えとくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺、織斑一夏は今、とても気分が悪い。

理由としては簡単だ。

現在俺は、教室の最前列中央の席で左右と後ろ全方位から視線と言う名の無言の攻撃を浴びてるからだ。

 

 

(......幾ら一人しかいない男って言ってもなぁ、見すぎだろ)

 

 

そう、この教室、というよりこのIS学園には男子生徒は俺一人しかいない。

何故なら、『ISは女にしか動かせないから』。

その固定概念というか、基本中の基本を覆しちゃった俺は受験しようとしていた藍越学園ではなく、IS学園に強制的に放り込まれた。

どうしてこうなったかというと、それは高校受験の日まで遡る。

藍越学園受験の為に勉強していた俺は、受験日の二日前にカンニング対策として突然試験会場が変わった事を知らされる。

それなりにコツコツと勉強をしていたお陰か、時間的に余裕があったので受験日前日にその試験会場の下見をして、当日に迷ったりしない様に道筋を把握しておいた。(会場そのものが複雑な構造になっている、と追記で書かれていた為)

そして当日、トラブルは勘弁願いたいので、試験開始の一時間前に会場に到着した。

......ここまでは良かったんだ、ここまでは。

自分の席で最後の復習でもしようと歩いてると、明らかに一人で運ぶようなサイズでは無い荷物を運んでいる女性が目に入った。

台車を使って運んではいるけど、かなり重いらしく、台車を押す度に顔を歪ませてるので、時間的に余裕もあったせいかふと湧いた親切心で「手伝いましょうか?」と声を掛けたのがいけなかった。

突然声を掛けられたのに驚いたのか、その女性は台車に脚をかけて転んでしまい、台車がバランスを崩す。

俺は咄嗟に台車に乗せてあった荷物を支えようと、荷物に手を掛けた。

そしてキィィィンといった音が鳴り響く。

梱包されていて分からなかったが、それはIS......確か打鉄だっけ?だった。

どうやら梱包の一部が破れていて、そこに触ってしまったらしい。

電子音と共に流れてくる情報に頭を痛めていると、ふと浮遊感が訪れる。

恐る恐る足下、正確には自分の体を見てみると ......俺はISを装着していた。

そんな経緯があって、俺はここに居る。

そして、回想に浸っている間にも無遠慮に刺さる視線視線視線視線。

しかもガン見ではなくチラチラ見てくるから質が悪い。

それに右隣、教科書読んでる振りしてチラ見してるのはいいが、教科書逆さまだからな?読んでないの丸分かりだからな?

そんな俺の胃が痛む様な空間となっている教室のドアがガラガラと音を立てて開かれる。

 

 

「全員揃ってますねー。それじゃあSHRはじめますよー」

 

 

緑色の髪の先生が教卓の前に立つとにっこりと微笑む。

おっとりとした雰囲気を持ち、どこか幼い......というか、子供が無理して大人ぶってる、って感じの先生だ。

着ている服もサイズが合ってないのか、全体的にダボっとしている。

それにしても、どこかで見たような......あ、自爆乳先生か。(失礼)

なら服に関しては納得だ。恐らく、自分の体(胸部装甲)に合うサイズの服を選ぼうとすると自然とダボっとした感じになるのだろう。

 

 

「私は一年一組の副担任の山田真耶です。皆さん、一年間よろしくお願いします」

 

 

笑顔のまま俺達に向け自己紹介をする自爆乳......山田先生。

だが、聞こえてて無視しているのか、そもそも聞いてないのか、相変わらず俺に意識を向けて反応しない女生徒達。

それを見て困ったような顔をしてちょっと涙目になっている山田先生......ってメンタル弱っ!?

 

 

「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で」

 

 

狼狽えながらもSHRを進めていく山田先生。

クラスメイトの自己紹介に耳を傾けながら、俺はチラッと窓側の席の方を見る。

そこには、凛とした雰囲気を纏ったポニーテールの少女、俺の幼馴染みである篠ノ之箒が座っていた。

俺の視線に気づいたのか、箒は俺はへと顔を向けると、「大変そうだな」という意味を込めてか、苦笑をしてくる。

俺はそれに肩をすくめると、顔を教卓の方へと戻す。

 

 

「次は、織斑一夏くん、お願いします」

「あ、はい」

 

 

どうやら俺の番らしいな。

返事をして立ち上がり、後ろに振り向く。

途端に襲いかかって来る、箒を除いた二十八対の視線。

真正面から見ると、ある意味恐怖を感じるなぁ......。

思わず顔が引き攣りそうになりながらもそれを留めて、自己紹介をする。

 

 

「織斑一夏だ。高校受験の日に偶然ISを触って動かしてしまった事が理由でここに入学する事になった。今までISとは殆ど縁のない生活を送って来たから、皆より『知識面』に関しては劣っている。暫くは迷惑をかけたりする事が多くあると思うが宜しく頼む」

 

 

最後に一礼をする。

そして顔を上げるが、拍手も無く、クラスメイトは静寂を保ったままだ。

え、俺何かミスった?

 

 

『キ......』

「え?」

『キャアアアアアアアア!!!!!』

「うおっ!?」

 

 

爆音。

女生徒達から発せられた声と言う名の爆弾に驚き耳を塞ぐ。

 

 

「男子!男子がいる!!」

「クールな感じのイケメン!!」

「お母さん産んでくれてありがとう!!」

 

 

......元気だな、このクラス。

耳を塞いでも貫通してくる爆音に顔を顰めてると、再びガラガラと教室のドアが開かれる音がする。

 

 

「む、騒がしいと思ったら、お前の自己紹介だったか」

 

 

ん? この声は......。

声のした方向に振り向くと、そこには見慣れた顔があった。

 

 

「......職業不明で何やってんのか分かんなかったけど、ここで教師やってたのかよ、姉貴」

 

 

ヒュンッ

ガッ!

 

 

咄嗟に腕を頭上でクロスさせてガードをする。

が、ガード越しに伝わる衝撃に腕が痺れる。

 

 

「織斑先生だ、馬鹿者」

 

 

うるせぇよバル〇トス。

またの名を筋肉蒼ダルマ、Mr.理不尽。

そして再び振るわれる黒い板。

次はバックステップで距離を取る。

というか、それ出席簿じゃねぇか。

アンタにはディア〇リックファ〇グの方が似合ってると思うんだが。

 

 

「貴様、今失礼な事を考えていただろ。それと、避けるな」

「俺は叩かれて喜ぶような性癖は持ち合わせて無いんでね、そりゃ避けるわ」

 

 

腰を低くして、何時でも動けるように構える。

目の前の狂戦士は、恐らく出席簿を一振りするだけで零戦を縦に割るだろう。横では無く、縦に。コレ大事。

 

 

「お、織斑先生、もう会議は終わられたんですか?」

 

 

うん、今あなたのことすげー尊敬したわ、山田先生。

この空気の中話し掛けるって、かなり勇気いると思うんだが。

 

 

「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」

 

 

姉貴が纏っていた空気が変わったのを尻目に、素早く席にもどる。

というか、そんな優しい声も出せるんだな、姉貴。

 

 

「い、いえっ。副担任ですから、これぐらいはしないと......」

 

 

若干熱っぽい声で姉貴......織斑先生へと返す山田先生。視線も声に合わせて何か熱っぽい。

 

 

「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言う事はよく聴き、理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる。私の仕事は弱冠十五才を十六才までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが、私の言う事は聞け。いいな」

 

 

完全に暴君じゃん。

「貴様等は俺の最高の玩具だったぜぇ!!」とか言いそう。

そして、織斑先生の登場に一気に沸き立つ女子達。

 

 

「キャアアアアアア!千冬様、本物の千冬様よ!」

「ずっとファンでした!」

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」

 

 

ここって倍率凄くなかったっけ?

憧れだけで受かるなんてスゲェなオイ。

 

 

「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」

「私、お姉様のためなら死ねます!」

 

 

最後の奴、命は大事に。

 

 

「……毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」

 

 

クラスの反応に本気でうっとうしがっている織斑先生。

それに対して、更にヒートアップするクラスの女子達。

 

 

「きゃあああああっ!お姉様!もっと叱って!罵って!」

「でも時には優しくして!」

「そしてつけあがらないように躾をして〜!」

 

 

……このクラス変態しかいねぇ。

俺が内心このクラスでやっていけるのか頭を悩ませていると、織斑先生の声が響く。

 

 

「静かに!SHRを終わる前に、事情があって入学が遅れた者を今から紹介する……それでは、入って来い」

 

 

そういえば、俺の左隣の席が空いているな。

サボりとかじゃなくて、入学遅れか、納得。

そんな事を考えていると扉が開き、生徒が一人入って……え?

 

 

「簡潔に自己紹介をしろ、藤木」

「ヘイヘイ。俺の名前は藤木総牙、世界で二人目の男性IS操縦者だ。宜しくな」

 

 

入って来たのは、男だった。




という事で第1話でした。

オリ主ほとんど出てねぇ……。

一夏の性格が変わってますが、話が進んでいったら変わった理由を書くつもりです。


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2話

遅くなりました。

箒が結構性格変わってますけど、それはほぼ総牙と総牙の街の人間のせいなので。


感想あればお願いします。


 

 

 

 

 

「お、男……?」

 

 

クラスの誰かがそう呟く。

俺も驚きを隠せない。

確かに「もう一人ぐらい出てこいよ」なんて事を考えもしたが、まさか本当に出てくるとは……。

 

 

「おう。まぁ、仲良くしてくれ」

 

 

手を上げて笑顔を見せる藤木を改めてまじまじと見る。

茶髪の短い髪に、俺よりも少し高い身長。

体格を見れば、程よく鍛えられていると考えられる。

だけど、一番目を引くのは、顔の左側にある大きな傷だ。

こめかみから首元まで伸びた傷が何とも野性的な印象を与えて……『キ……』あ、やばい。耳塞ご。

 

 

『キャアアアアア!!!!!』

「ギャアアアア!!」

「ぐぅ……っ!」

 

 

今日三回目だってのにこの威力かよ。ISなんて目じゃない音響兵器だな。

ちなみに、藤木はまともに喰らったらしく、頭をぐらんぐらんさせている。

 

 

「二人目!二人目の男子!!」

「クール系の織斑君にワイルド系な藤木君!!」

「私一組で良かったーー!!」

「神様ありがとう!!」

「織斑×藤木、これは売れる!!」

 

 

最後のは聞かなかった事にしよう、そうしよう。

 

 

「……な、な、なん、で」

 

 

ん?

ふと窓側の席を見ると、壊れた人形の様に口をパクパクさせている箒がいた。

 

 

「何で、お前までISを動かしているんだ、総牙!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で、お前までISを動かしているんだ、総牙!!」

 

 

ガタッ、と音を立てて窓側の席の見知った女子が立ち上がり叫ぶ。

 

 

「お、箒久しぶり」

「あ、ああ、久しぶりだ……って、そうじゃない!なんでお前までISを動かしている!」

「んなもん知るか。お前の姉貴にでも聞けよ。……まぁとりあえず次に会ったらシバくけどな」

 

 

俺の呟きに箒の頬が引き攣る。何処かで「理不尽だよ!!」と声が聞こえた気がするが無視だ無視。

 

 

「何で私の周りには非常識な奴等しかいないのだ!姉さんはISを開発するし、千冬さんは世界最強になるし、その弟の一夏はIS動かしてしまうし、そして最後はお前か総牙!?お前まで非常識の仲間入りするのか!?」

 

 

久々に会っていきなり酷いなコイツ。

 

 

「え、篠ノ之さんって織斑君と藤木君の知り合い……?」

「今の話からすると、織斑君は織斑先生の弟?」

「それに今、姉さんがISを開発したって……」

「じゃあ、篠ノ之さんのお姉さんって、篠ノ之束?」

 

 

箒の暴露で教室が騒がしくなる。

だけど俺は一つ物申したい。

 

 

「違うぞ箒。お前の周りに非常識しかいないんじゃない、お前が非常識を呼び寄せているんだ……ドンマイ!」

「なお悪いわ!そしてそのドヤ顔にイラッと来たから殴らせろ!!」

「おっしゃあ!喧嘩か?受けて立つから屋上に行こうぜ!!」

 

 

箒にイイ笑顔でサムズアップすると額に青筋を立てて箒が拳を作り殴らせろと叫ぶ。

俺はその喧嘩を二つ返事で買うと箒を屋上に連れ出そうとするが、

 

 

「いい加減にしろ貴様等!!」

 

 

パンッバァァン

 

 

「痛っ!」

「ゴハッ!?」

 

 

箒、俺の順に織斑先生がその手に持っていた出席簿で頭を叩く。って、俺を叩いた時の方が若干音でかいんだけど?

 

 

「藤木、くれぐれも問題を起こすなと言った筈だが?」

「いや、そもそも箒が叫ばなければ問題にはならなかったんですが?」

「それはそうだが……それと篠ノ之、誰が、非常識、だ?」

「……あ」

 

 

しまった、という感じで箒の顔が青ざめていく。

知り合いとはいえ、目の前で自分の事を非常識呼ばわりされればそりゃ気に障るわな。

 

 

「大太刀持てば生身で空母艦縦に割りそうな人間は常識人とは言わないだろ……あ、やべ」

 

 

織斑、お前もか。

今の言葉で織斑先生の額に青筋立ったぞ?

つか、「しまった!」って顔すんなら口に出すなよ。

 

 

「……織斑、言い残す事は無いか?」

「……俺は悪くねぇ!!」

 

 

バァァァン!!

 

 

某我侭公爵のセリフと共に織斑が出席簿によって崩れ落ちる。

合掌。

 

 

「全く……さあ、SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいか、いいなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ。私の言葉には返事をしろ」

『はい!!』

 

 

織斑先生の鬼発言に皆一斉に返事をする。軍事学校かここは。……いや、兵器の扱い学んでる時点で軍事学校に近いものはあるか。限りなく女子高寄りだけど。

 

 

「ああ、藤木、お前の席は織斑の隣だ」

 

 

だろうね、空いてる席そこしかねえもん。てか、何で視線が集中砲火する最前列の席に座らせる。

 

……ああ、問題児だからか。

 

 

「さあ、授業を始めるぞ。さっさと準備をしろ」

 

 

入学初日から授業って、IS学園鬼だよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー……疲れた」

 

 

一限目のIS基礎理論が終わり、ゴキゴキと首を鳴らす。

予想はしてたけど……誰も話しかけてこねえな。

皆遠巻きに俺と織斑を見てヒソヒソと話している。耳を澄ませば「あなた話しかけなさいよ」とか「抜け駆けする気?」とか、妙な緊張感を出している。

 

 

(しかも、それが廊下でも行われてるからどうにもできねえな)

 

 

リボンの色からして二年と三年か?休み時間潰してまで来るとはご苦労なこった。

 

 

「藤木、ちょっといいか?」

「ん?」

 

 

隣から声をかけられたので顔を向けると、疲れた顔をした織斑がいた。

 

 

「お前も疲れてるみたいだな」

「そりゃあな。最前列で視線を浴びまくるし、職業不明のバル○トスが教師やってた事に驚かされるし、お前がいなきゃ既に心折れてたかも」

「確かに。てか、織斑先生はバルバ○スというよりガイ○スだろ」

 

 

天性のカリスマ性を持つ人間なんてそうそういないしね。

 

 

「……やめてくれ、姉貴なら覇道滅封を普通に使えそうだ、ノーモーションで」

「何その鬼キャラ」

「何時か『生けるバグキャラ』とか『つーかあの女剣刺さんねーんだけど』とか言われそうだし」

「ラ○ンか!」

「……二人とも千冬さんの事をどう思ってるんだ」

 

 

織斑と共に呆れたような声の方を向くと、声と同じように呆れたような顔をした箒。

 

「よ、箒。一年ぶりだな」

「ああ、久しぶりだな総牙。変わってなくて何よりだ」

「そう簡単に変わってたまるか。お前こそ、初日から盛大にぶちかましたな」

「……忘れてくれ」

 

 

プイ、と顔をそむける箒。どうやら思い返したら恥ずかしくなったらしい。

 

 

「……?」

「どうかしたか織斑?」

 

 

俺達の会話を聞いて、織斑が不思議そうな顔をして首を傾げてるので理由を聞いてみる。

 

 

「いや、お前、本当に箒か?」

「なっ!?」

「ブッ」

 

 

箒を指さし、そんな事を聞く織斑に箒は狼狽えて、俺は何となくそれを聞いた理由が分かる故に、思わず吹き出す。

 

 

「い、一夏、私を忘れてしまったのか!?」

「いや、俺が知ってる箒と今のお前が何か雰囲気とかが違うからさ。忘れた訳じゃないぞ?むしろ一目見て箒だって分かったぐらいだ」

「そ、そうか。忘れた訳じゃないのだな」

「ああ、それに……」

 

 

あ、箒ニヤケそうになるのを我慢してる。

好きな男が自分の事を覚えてくれてただけでそこまで嬉しいのかよ。

 

 

「そ、そういえば、箒と総牙ってどこで知り合ったんだ?一年ぶりって言ってたけど」

「ん?ああ、箒が俺の通ってた中学に転校してきてな。最初は取っ付きにくいやつだったんだけど、ガチンコで殴りあってその末に仲良くなった」

「いや、お前ら何やってんの!?何処の熱血青春漫画だよ!?」

 

 

だって事実だし。

違うところと言えば、素手と木刀だったぐらいだからな。

 

 

「まあ、私は総牙にそれを含めて二度も助けられた。総牙は私の恩人であり、親友だ」

 

 

……面と向かって言われると照れるな。

 

 

「俺は今、箒に俺以外の友達ができた事に感動してる」

「お前の中の箒はどんだけコミュ障なんだよ」

「そこまで言われると流石に傷付くぞ?」

「……悪い」

 

 

ガックリと大袈裟に肩を落とす箒に掌を垂直に立てて謝る織斑。

 

 

「あ、後さ箒。新聞で読んだけど、剣道の全国大会優勝おめでとう」

「え?」

 

 

ガバッと箒が顔を上げる。

 

 

「凄いな、優勝だぜ?幼馴染みとしては鼻が高いよ」

「あ、う、え、と、あ、ありがとう」

 

 

落ち着け箒。

どもりまくりじゃねーか。

 

 

「今度見せてくれよ、久々に箒の剣が見たいからさ」

「う、うむ。なら暇な時にでも剣道場に来てくれ。私は剣道部員だからな、大抵はそこにいる」

「分かった。って、もう時間ないな。また後で話そうぜ?姉貴の滅席簿食らいたくないし」

「出席簿な?」

 

 

俺のツッコミと同時に予鈴のチャイムが鳴る。

そしてチャイムが鳴り終わるタイミングで織斑先生が教室に入ってくる。

 

 

「全員席に着け。次の授業を始めるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ―――」

 

 

現在授業中。教壇に立ち、スラスラと教科書を片手に説明をしていくのは、副担任の山田先生だ。

 

 

(あ〜、ちょっとこれはヤバイな……)

 

 

山田先生の説明を聞きながら、俺は授業スピードの速さにちょっとした焦りを感じている。

流石エリートが集うIS学園、授業スピード半端なく速い。

一応、入学前に鈍器という名の参考書を渡されたから、予習はしていたんだけど、このままじゃ一ヶ月程で着いていけなくなりそうだ。

てか、それ以前に十日足らずであの鈍器読破しろって無茶な話だよね!

 

 

「織斑君、藤木君、どこかわからない所はありますか?」

 

 

俺が悪戦苦闘してるのを気づいたのかどうかは知らないが、山田先生が俺達に聞いてくる。

 

 

「俺は大丈夫です」

「俺も……と言いたい所ですけど、あの参考書読むための時間が足りなかったです。補習か何かお願いできます?」

 

 

途端に織斑が驚いた顔をして俺を見る。

うん、何考えてるか分かったからイラッときた。

 

 

「オイ織斑、お前俺の事勉強できない奴だと思ってたろ?」

「あ……顔に出てた?」

「ちょっとは否定しろよ!正直なのは良いことだけどさ!それと俺は人並みには勉強できるからな!?」

「いや、お前の印象からだと『学生の本分は勉強じゃなくて喧嘩』とか言いそうだし」

「あ、それは否定しない。勉強の合間に喧嘩してるんじゃなくて、喧嘩したいが為に勉強してる感じ」

 

 

俺が通ってた中学じゃ「ある程度勉強できればタバコ吸っていようが酒飲んでようが特に何も言わない、だから勉強しろ」って教師が言ってたからな。皆やんちゃしてるけど、勉強はそこそこできる。理由がしょーもないけど。

 

 

「弾みたいな事言う奴だな……」

 

 

何か織斑に呆れられた。てか、弾って誰だ?

 

 

「藤木、時間が足りなかったと言ったな? 後どれぐらいあれば参考書を読み終える?」

「ん?あぁ、一人でやるなら後十日ぐらい欲しいですね。補習とか受けさせてくれるなら一週間ぐらいで終わりそうですけど」

 

 

織斑先生にそう答えると織斑先は、「そうか」、と何処か満足そうな顔をして頷く。

なんで若干嬉しそうなの?

 

 

「ふ、藤木君、分からない所があったら、放課後教えてあげますから、ね? 頑張りましょう?」

「分かりました。それじゃ、放課後よろしくお願いします」

 

 

山田先生にそう返答する。普通の教師と生徒の会話だと思うんだけど。

 

 

「ほ、放課後……放課後に二人きりの教師と生徒……。あっ!だ、ダメですよ。藤木君。先生、強引にされると弱いんですから……それに私、男の人は初めてで」

 

 

何か勝手にトリップし始めた。

 

 

「……山田先生、授業を再開してください」

 

 

呆れ返った織斑先生がトリップしたままの山田先生を現実に戻して、山田先生は慌てて授業を再開しようとしてーーー何もない所でこけた。

 

 

「うー、いたたたた……」

 

 

(……大丈夫なのか?この先生……)

 

 

恐らくこのクラスの考えが初めて一致した瞬間であった。







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3話

更新速度安定しねえ……。
安定して更新している人ホントに尊敬します。

今回はセシリア登場です。
性格どうしようか悩んで、変えました。




 

 

「織斑さん、藤木さん、少しよろしいでしょうか?」

「ん?」

「んあ?」

 

 

二時間目の休み時間、隣の織斑と箒を捕まえて参考書と徒手格闘してると、金髪の女生徒に声をかけられる。

 

 

「……セットに時間かかりそうな髪型だな」

「そこに目が行くのかお前は」

 

 

思った事がポロッと口に出てしまい、織斑にツッコミを入れられる。だって、縦ロールだよ?初めて見たんだよ?最初に目が行くでしょ。

 

 

「それで、何か用か?見ての通り、俺と箒は藤木に勉強教えてるんだけど?」

「一夏、もう少し優しく言えないのか?」

「……悪い、棘があったな」

「気にしなくて大丈夫ですわ。単純に、ご挨拶しようと思っただけですので」

 

 

金髪の女生徒はそう言うと両手でスカートの端を摘みながら優雅に一礼をする。

 

 

「イギリス代表候補生のセシリア・オルコットです。宜しくお願いいたします」

 

 

セシリア・オルコット。

俺はその名前を聞くと、ガバッと顔を上げる。

 

 

「イギリス代表候補生……、イギリスのエリート、って所か」

「ふむ、凄いな。確か代表候補生は一つの国に何人も居るが、その中でIS学園に行けるのは片手で数える程だった筈だ。優秀なのだな、オルコットは」

「それ程でもないですわ。まだまだ未熟な所が多いので」

「……んなワケねーだろ」

 

 

織斑と箒の賛辞の言葉に謙遜するオルコットに思わず呟く。それが聞こえたのか、三人が俺に顔を向ける。

 

 

「ん?何か知っているのか、総牙?」

「……セシリア・オルコット。イギリス代表候補生にしてイギリスの貴族オルコット家当主。IS学園入試首席。代表候補生としての成績は同年代で比べるとイギリスの中ではトップクラスの実力。唯一オルコットより上なのは確かIS学園二年のサラ・ウェルキンだけ。そしてなにより……専用機持ちだろ、オルコットは?」

 

 

専用機。

俺のその言葉にクラスがざわっとする。

意味は文字通りISを個人の専用機体として持てるという事。

現在、世界中にあるISのコアは467個であり、製作者である束さんがコアの中身をブラックボックス化させてるから誰も量産できないらしい。作ろうと思ったらまず現存するコアの一つを解体する所から始めなきゃならないし、それで何も成果が得られなければ国どころか世界中から集中放火だからな。

 

閑話休題。

 

まあ、そんな大事なコアの一つ、しかも自分用にチューンナップされた機体を持っているという事は彼女はかなりの実力者だ。

 

 

「……よく調べてますね」

 

 

何とか言葉を捻り出したオルコットは、驚きの表情で俺を見る。ついでに言うと、織斑も。箒は何か苦笑してる。

 

 

「藤木、なんでそんなに詳しいんだ?」

「IS学園に入学しろって言われた後、勉強の息抜きとして世界中の代表候補生を調べてたんだよ、同年代だけだけど。俺達は男性操縦者だからな、一般学生は兎も角、代表候補生とは接触する機会が多くなると思ってな。知っていて損は無い」

「建前はいいとして、本音は?」

「(ISで)喧嘩しようぜオルコット!!!」

 

 

立ち上がってファイティングポーズを取ると、クラス中がズッコケた。織斑なんか頭を机に打ち付けてる。オルコットは引いてる。ちょっと傷付いた。

 

 

「やっぱりな、お前が喧嘩に結びつく理由も無しにそんな調べ事等する訳無いからな」

「モッピー酷いね……ごめん、謝るから秋沙雨放とうとしないで。てか木刀どこから出したんだよオイ」

「知らん。どこかのネクロマンサーと同じ技術じゃないか?それと今の私なら一人で武神双天破を放てそうだ」

「どうやってやるのか知りたい気持ちと知りたくない気持ちがせめぎ合ってる」

 

 

知ったら俺が死ぬから。てか一人で双天ってこれ如何に。

箒とそんな馬鹿なやり取りをしてると予鈴のチャイムが鳴る。

 

 

「あら、もう次の授業ですわね。それでは皆さん、御機嫌よう」

「ああ、またな、オルコット……お前らもアビ○オンが来る前に席に着いた方がいいぞ」

 

 

ホントに織斑の中では織斑先生ってどうなってんだろうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、この時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」

 

 

腰に手を当てて教壇に立つ姉貴。よほど大事な時間なのか、山田先生もノートを開いて姉貴の授業を聞いている。

 

 

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

 

思い出したように言う姉貴。それって、授業潰してまで決めなきゃいけない程大事なことなのか?

 

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。まあ、クラス長と捉えてくれて構わん。決まると一年間は変更ないからそのつもりで。自他推薦も良しとしよう」

 

 

つまり委員長的なポジションという事か。だけど、このクラスでそれを言うとーーー。

 

 

「はい!織斑君を推薦します!」

 

 

こうなる。

 

 

「私もそれがいいと思います!」

「私は藤木くんを推薦します!」

「私も私もー!」

 

 

大方、貴重な男子だから持ち上げておこうと思っているんだろう。それか、対抗戦で恥をかけという女尊男卑主義者の考えか。

チラッと、藤木を見ると……笑っていた。何考えてるんだ?

 

 

「では候補者は織斑一夏に藤木総牙……他にはいないか?先程も言ったように自他推薦も問わないぞ?」

「はい。俺は、セシリア・オルコットを推薦します」

 

 

姉貴の言葉に手を挙げてオルコットを推薦する。

 

 

「ほう……何故だ織斑?」

 

 

なんで俺の時だけ理由聞くんだこの姉貴は。

 

 

「オルコットはイギリス代表候補生、加えて入試首席で専用機を持っているらしいですから。対抗戦で優勝するとしたら、ぽっと出の男性操縦者より経験豊富な代表候補生を推薦するのは当然じゃないですか?」

 

 

さっき藤木から聞いた事をつらつらと述べていく。

別に、クラス代表になりたくない訳じゃない。だけど、それ以上に戦うのであれば……勝ちたい。そんな理由だ。

 

 

「ふむ、そうか……それでは候補者は三人か。オルコット、構わんな?」

「はい、私は大丈夫です。それで、選定の仕方はどうするのでしょうか?」

「そうだな……それでは、三人でーーー「三人で喧嘩して決めるに決まってんだろ!!」……藤木」

 

 

姉貴が言葉を続けようとしたところに藤木が割って入ってくる。

 

 

「多数決とかまどろっこしいモンは必要ねえよ、戦うんだったら一番強え奴が代表者でいいじゃねえか!」

 

 

目を爛々と輝かせて叫ぶ総牙を見て俺はふと思った。

 

ーーーこいつ、喧嘩中毒か?

 

 

「お前らもそれで良いよな、な!」

「え、ええ、それで良いですわ」

「俺もそれで構わない」

「だってさ、織斑先生」

「はあ、勝手に決めおって……まあいい。それでは三人でクラス代表者を決める模擬戦を行う。が、アリーナの時間が取れるかどうかが分からんな……」

 

 

ため息をつきながらアリーナの空き時間でも探しているのか、教師用の端末を開く姉貴。それを見て藤木がキョトンとした顔になる。

 

 

「え、そこはバトロワで良くね?」

「……三人同時に戦うという事か?」

「織斑正解。三人で戦ってその中で生き残った奴が代表でいいだろ」

「ルールが少し特殊ですが、面白そうですわね」

「確かにな、それに単純に時間短縮にもなる、か」

「そういう事」

 

 

拳をグッと握り締める藤木。

 

 

「ルールも決まったか。それでは今から丁度一週間後の月曜の放課後、第三アリーナにて模擬戦を行うとしよう。各自、準備をしておくように。それでは授業を再開する、全員教科書を開け」

 

 

こうして、一週間後にクラス代表者決定戦が行われる事となった。

だけど、少し気になる事も増えた。

 

 

(喧嘩好き、左頬の傷、藤木……もしかしてかも、な)




総牙、喧嘩中毒疑惑浮上


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4話


感想宜しくお願いしますm(_ _)m


 

 

「箒、誕生日おめでとう」

「箒の誕生日はまだ先だぞ?」

 

 

織斑に「何言ってんだコイツ」みたいな目で見られる。

 

 

「ごめん、何か言わなきゃいけない気がして。てか、山田先生まだかよ?」

「さあな、IS学園は教員が少ない気がするし、一人頭の仕事の量が多いんだろ」

「成程」

 

 

現在、放課後の教室で山田先生を待っている状況。「渡さなきゃいけないものがあるので、帰らないでくださいね、絶対に帰らないでくださいね!?」って念を押された。分かった、待ってるからそんな泣きそうな顔しないでと思ったわ。

 

 

「あ、織斑君と藤木君、まだ教室にいたんですね、よかったです」

「いや、山田先生、アンタが帰らないでくださいって念を押したんじゃん」

「そ、そうでしたっけ……アハハ」

 

 

教室に入って来た山田先生にツッコミを入れる。何この人、天然?天然合法ロリ巨乳とか初めて見たわ。オルコットといい、IS学園自己主張強い人多いな。

 

 

「えっとですね、お二人の寮の部屋が決まりました」

 

 

そう言って部屋番号が記されたキーを渡してくる山田先生。

IS学園は全寮制。理由としては、学生の保護。

言ってしまえばIS学園の生徒は優秀な操縦者や整備士に成り得る可能性のある金の卵達。国としては優秀な操縦者や整備士はいればいるほど良いからな、早めに唾を付けておきたいだろう。が、そんな各国の思惑に三年生は兎も角として、一年生や二年生を巻き込んでいたら学べる物も学べなくなる。簡単に言ってしまえば「IS学園に在籍のうちには、生徒に手を出すな。破ったら殺劇舞荒拳な?」って事だろう。

 

 

「……俺、一週間は自宅から通えと言われていたんですが」

「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理矢理変更したらしいです。……織斑君、そのあたりのことって政府から聞いてます?」

 

 

織斑と山田先生が話し始める。

恐らく、一人目の男という事でどういう扱いしたらいいのかわからんかったんだろうな。俺は動かした後に寮暮らしになる事を説明されたから、寮に入れる事に決まったのは四月に入る直前だった、て所か。

 

 

「とりあえず、着替えも何も持ってきてないんで一回家に帰っても良いですか?」

「あ、それならさっきーーー」

「私が手配しておいた。ありがたく思え」

 

 

アンノ〇ンネ〇リム登場。と思ったら頭に衝撃。

 

 

「貴様、今失礼な事を考えただろ」

「割と間違ってない事は考えましたけど……」

 

 

何で頭の中覗けるんだこの人。開心術でも会得してんのか?てか、出席簿がマジでインディグネイション。

 

 

「まあ、持ってきたと言っても生活必需品だけだがな。着替えと、携帯の充電器があれば充分だろ?」

 

 

織斑先生、それ長旅しない男の荷物。

 

 

「はあ……、まあ、それでいいですけど」

「では時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂で取ってください。各部屋にはシャワーがありますけど大浴場もあります。でも、織斑くん達は今のところ使えません」

 

 

まあ、当然だな。流石に混浴とかにする訳にはいかないし。

……街の奴等で銭湯行ったらよく誰かを女湯の方に放り込んだり、逆に放り込まれたりしてたけどなー。

 

 

「分かりました。使えるようになったら連絡ください」

「はい、任せてください!えっと、それじゃあ私達は会議があるので、これで。ちゃんと寮に帰るんですよ。道草くっちゃダメですよ」

 

 

校舎から寮まで大して距離ないのにどう道草くえと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そういえば、藤木の部屋番号って何番だ?」

 

 

寮に着いた後、キーに記された部屋番号を探してると織斑がそんな事聞いてくる。

 

 

「俺か?1030だけど……お前と同じだろ?」

 

 

何気なく返した言葉に織斑が固まる。どうかしたのか?

 

 

「……俺、1025だぞ」

「は?マジで?」

 

 

織斑のキーを奪って確認。うん、どっから見ても部屋番号違う。

 

 

「何考えてんねん、IS学園……」

「本当にとりあえず捩じ込んだんだだけなんだな……」

 

 

頭を抱える俺とため息をつく織斑。確か寮は二人で一部屋って言ってたし、部屋違うって事はルームメイトは女子って事だよなー……。

 

 

「ハニトラとか勘弁して欲しいんだがな……」

「ハニトラ?何それ?」

 

 

織斑の呟きに思わず質問する。

 

 

「ハニートラップ。色仕掛けで既成事実作って、それを盾に俺やお前を手に入れようとする国や企業も居そうだろ?」

「あー、そ〜ゆうことか」

 

 

成程な……、そんな事考えて無かったわ。

今、後ろをぞろぞろとピク〇ンの様に着いてきてる女子達にもそういう類がいるのかね。

織斑も色々考えてるんだな。

 

 

「オイ、今失礼な事考えなかったか?」

「何でお前ら姉弟は人の頭の中見れんの?」

 

 

織斑性の人間はサトリの血でも引いてんのかよ。

 

 

「まあいい、それより、俺の部屋はここだよな?」

 

 

いつの間にか、織斑の部屋の前に着いてたらしい。部屋にはしっかり『1025』と表示されてる。

 

 

「んじゃ、また明日な」

「ん?夕食はどうするんだ?」

「部屋でどうにかする。これ以上視線の集中砲火は喰らいたくない」

「……それもそうだな。それじゃ、また明日」

 

 

そこで織斑と別れ、自分の部屋へと向かう。

といっても、織斑の部屋から歩いて一分もかからないんだけどな。

 

 

「えーと、とりあえずノックしとくか」

 

 

三回、ドアを軽く叩く。

…………反応ねえな、入るか。

ドアノブに手をかけて、ドアを開けるとーーー

 

 

「おかえりなさい。お風呂にします?ごはんにします?それともわ・た・し?」

 

 

目の前に痴女がいた。





という事でルームメイトは生徒会長にしました。
男性操縦者だから、一般生徒と一緒にはできないと思ったんで。

後、一夏変わりすぎかな?
どうなんでしょう?


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5話


ネット喫茶からの投稿。

てか、今まで携帯で投稿してたけど、やっぱりパソコンからの方がやりやすい←当たり前


感想お願いします。


 

 

 

目の前で指を三つ折りにして座る裸エプロン姿の青い髪の女が微笑む。

ここだけだと新婚か?と、思う奴もいるかもしれないが残念ながらそうじゃない。

 

 

「うふふ?どうしたの?おねーさんに見とれちゃった?」

 

 

何も言わない俺に気を良くしたのかどうかは知らないが、女は胸の谷間を見せ付ける様に前屈みになる。

 

とりあえずそのまま無言で携帯を取り出して、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カシャッ

 

 

「さて、と。簪のアドレスどこだっけ?」

「待ってーーーーーーーー!!??」

 

 

簪のアドレスを探しながら壁に張り付く。

 

そしたら「へぶっ!?」と、蛙が潰れた様な声を上げて女がドアにぶつかる。

 

あ、あったあった。更識簪じゃなくて、簪で登録してたんだ。

 

 

「待って!連絡しないで!簪ちゃんにこれ以上嫌われたら私死んじゃう!!」

「オイ、お前今度は何やらかした?」

 

 

携帯をしまい、女―――更識楯無―――を見る。名前から分かる通り、簪の姉だ。

 

え、写真? しっかり保存したわ。コイツが何かやらかした時に簪へ送る為に。というか、既に何かやらかしてるらしい。

 

 

「もう一度聞くぞ?冬休みに会った後の三ヶ月間で何をした、ミイデラゴミムシ?」

「更識楯無!最後の『し』しか合ってない!!」

 

 

立ち上がり、手に持っていた扇子を広げる。そこには『憤慨』の文字が。…意外と余裕あるな、コイツ。

 

 

「仲直り、手伝わなくて良さそうだな」

「ごめんなさい手伝ってくださいお願いします」

 

 

ボソッと呟いた一言に態度を百八十度変えてマジ土下座をしてくる。てか、パンツとエプロン以外マジで何も着てねえ。

 

 

「はいはい、分かったからとりあえず着替えろ。風邪引くぞ」

「むー……」

 

 

なんでむくれるんだよ。相変わらずよう分からんな。

 

しっしと手で追い払う仕草をして、楯無は漸く立ち上がり、部屋にある扉を開けて中に入る。風呂場…いや、シャワー室だっけな、確か。

 

と、そんな事を考えてると、シャワー室の扉が開き、楯無が顔だけ出して―――

 

 

「―――覗いちゃダメよ?」

「とっとと着替えろ馬鹿女郎」

 

 

扉蹴っといた。「むぎゅぅ」とか何か聴こえた気がしたけど無視して部屋の中に入る。てか、部屋の入口で何でこんなにも疲れなきゃいけないんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、やっとあの視線地獄から開放的されたな」

 

 

俺は藤木と別れ、自分に割り当てられた部屋に入るとそのままベッドにダイブをする。

 

チラっと姉貴が持ってきたと思われる俺の荷物が目に入るが、どうせ娯楽品等入ってないと思うのでそのままで大丈夫だろう。

 

 

「だけど、驚いた。まさか、箒が居るなんて、な」

 

 

体勢をあおむけに変え、天井を見つめながら一人呟く。

 

思えば当然だ。箒はIS開発者、篠ノ之束の妹。その重要度は計り知れない。

 

そして、ここは国の干渉を受け付けないIS学園。保護するにあたっては最適とも言える場所だ。実際、俺も身柄の保護を理由にここに強制入学させられたんだから。

 

……そんなことよりも。

 

 

「綺麗になったよな、箒…」

 

 

ボソッと無意識に呟く。

 

六年という時間を嫌でも意識させられるぐらい箒は変わっていた。

 

とても良い方向に。

 

昔はいつも仏頂面で不機嫌そうな顔してたから、教室で見た、笑ったり、呆れたり、慌てたりした顔は余り見た覚えが無かった。

 

そして、間違いなく、箒を変えた人物は……

 

 

「藤木総牙、か。アイツが『あの』藤木だとしたら……」

 

 

――今の俺では勝てない。

 

その考えに辿り着くと思わず歯軋りしてしまう。

 

 

「誰かに仕組まれたモノなのかもしれない。必然かもしれないし、偶然かもしれない。だけど…!」

 

 

三回だ。

 

俺は、三回失った。

 

そして、その内の一回がまた俺の近くに戻って来た。

 

 

「守りたい、な。いや、守るんだよ、俺が」

 

 

もう、もう失うのは十分なんだよ…!

 

 

「だから、強くなるんだ、織斑一夏」

 

 

自らを鼓舞するように呟くと、眠ろうとそのまま目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そこでやっと気付く。微かに聴こえる、水音に。

 

 

「は?」

 

 

ガバッと跳ね起き、シャワー室がある方向を見つめる。

 

というか、水音が止んでる。

 

 

「む、誰か居るのか?」

 

 

そして、今日、藤木の次に多く会話したであろう人物の声が耳に入る。

 

 

「こんな格好ですまない。今日から同室となる篠ノ之――」

「ほ、箒」

 

 

シャワー室から出てきたのは、髪を下ろし、バスタオル一枚という格好の箒だった。

 

 

「い、いち、か?」

 

 

互いにフリーズ。

 

俺を見たまま固まる箒と、箒を見たまま固まる俺。

 

数秒、もしくは数分だろうか。頭が冷えてくると次第に自分の視線が箒の顔から下へと移動していく。

 

……山田先生よりかは劣るが、それでもかなり――

 

 

「み、見るな!」

 

 

箒の声に我に返る。

 

 

「わ、悪い!」

 

 

顔を横に向け、箒を見ないようにする。

 

 

「な、なんで、お前が、ここに、いる?」

「姉貴が渡して来た鍵がこの部屋のだったんだよ」

「な…」

 

 

視界の端に真っ赤な顔をして口を開いている箒が映る。

 

 

「ちょ、ちょっと待て!」

 

 

そう言うと一瞬で窓側のベッドに移動し、剣道着を抱えてドタバタとシャワー室に駆け込む箒。

 

この間にかかった時間が三秒程。ビデオの早送りを見ているみたいだった。

 

 

「…待たせたな」

 

 

未だに頬が紅潮している箒が懐かしい仏頂面でシャワー室から出てくる。

 

いつもしているリボンを持って行ってなかったらしく、髪は下ろしたままだった。

 

 

「そ、それで、お前が私の同居人、という事か?」

「あ、ああ。多分姉貴が仕組んだんだろうな」

 

 

見ず知らずの生徒よりも、気の知れた幼馴染みの方が変に緊張しなくて済むだろ、的な。

 

 

「そ、そうなのか…」

 

 

窓側のベッドに座るとモジモジとする箒。

 

相変わらず仏頂面を保ってるが、何となく分かる。今の箒は、頬が緩みそうになるのを我慢してるんだ。六年離れていたとはいえ、伊達に幼馴染みはやってない。

 

あ、そうそう、これだけは言わないとな。

 

 

「箒」

「な、なんだ!?」

「そんなデカイ声出さなくても聞こえるぞ?」

「あ、す、すまない…」

「そんなにショボくれなくても気にしてないからな?」

 

 

耳を塞いで指摘する俺を見て、ショボンとする箒。

 

 

「お前、本当に変わったよな」

「そ、そうか…?」

「ああ、綺麗になった」

「え…?」

「綺麗になった、美人になったよな、箒」

 

 

自然と頬が緩み、笑顔で今日何度も思った事を口にする。

 

因みに、これは弾から『相手を見て感じたことは、相手を侮辱するような事ではないなら素直に言っておけ。褒め言葉なら尚更』と何度も言われたからだ。

だから、最近は凄いと思っした相手を正直に褒めるようにしてる。

 

 

「……………」

「あれ?箒?」

 

 

何故かきょとんとした顔で俺を見つめる箒。

手のひらを箒の目の前で振ってみるが、全く反応がない。どうしたんだ?

 

 

「……(ボンッ)きゅぅ」

「箒ーーーっ!!??」

 

 

突然何かが爆発した様な音と共にハムスターみたいな鳴き声を出しながら倒れる箒。

慌てて箒の側に近づき、顔を見ると、何とも幸せそうな顔をして気絶していた。

 

 

「チクショウ!なんで俺が女子を褒めると何時もこうなるんだよ!」

 

 

弾に言われて中学の時から実践してきたが、ここでも同じか!

 

ホントになんでだよ!

 

というか、本気で箒はどうしようか?

 

 

「誰か、誰でもいいから助けてくれ!」

 

 

俺の叫びは、虚しく部屋に響いて消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん?」

「どうしたの?」

「いや、今織斑が世界の中心で何かを叫んだような気がする」

「意味がわからないわよ…」

 

 

多分、気のせいだろうな。

気を取直して、俺はテーブルを挟んで座っている制服に着替えた楯無の方へ向く。

 

因みに今は飯食ってる。視線地獄を教室で嫌と言うほど味わったのに、食堂でもそれに晒されるのは勘弁願いたいという俺の文句に

「じゃあ、食事持ってきてあげるわ」

と、楯無が態々部屋まで持ってきてくれたのだ。

感謝。

 

 

「それよりも、京弥と会えなかったから簪が拗ねてる、ねぇ…」

「うう、流石に悪い事をしたと思ってるわ…」

「そりゃ拗ねるわ。お前だって好きな奴に会いにいくのを邪魔されたりしたら怒るだろ、って悪い、楯無は好きな奴いないんだったな」

「アンタはイチイチ腹立つわね!?だって、簪ちゃん酷いのよ!?家に居たらずっと京弥さん京弥さんって、折角仲直りしたんだからもっと構ってくれてもイイじゃない!私だって『簪ちゃん』『お姉ちゃん』って互いに呼び合いながら簪ちゃんとイチャイチャしたいわよ!!」

「……うわぁ」

 

 

最後の最後に欲望ぶちまけやがった。

 

 

「だけど、拗ねた簪ちゃん、可愛かったなぁ…」

「あ、もうダメだコイツ」

 

 

思わず引いて距離を取る。

なんかもう、妹を想う姉の目をしてない。完全に恋する女の目だ。恋してる相手が実妹ってなんなんだお前。

 

 

 

 

 

こいつ等―――更識姉妹に会ったのは約三ヶ月前、ちょうど冬休みの時だ。

その時は……というよりそれ以前から楯無と簪は仲が悪い、というか、色々あって簪が楯無に劣等感を抱いて避けてる様な状態だった。話は聞いた事あるが、常に姉と比べられ、『優秀』な姉と『出来損ない』の妹、って感じに言われていたらしい。

うん、言った奴マジで殺したい。ボッコボコにしてやんよ♪

……ゴホン。そして年が明ける五日ほど前に、それに耐えきれなくなった簪が家出した。

季節は冬で、計画的に行うなら兎も角、感情に任せて飛び出して来たもんだからいざ冷静になったら寒さと空腹で途方に暮れていたらしい。

 

―――簪はその時に、俺達と出会った。

 

見つけたのは俺の一個年上の京弥って奴で、その時の簪に色々としてやったらしい。主に上着を貸したり、匿ってやったり、ココア作ってやったりとかだったな、確か。

そして、簪が俺達と出会って二日ぐらいたった日に、京弥の一言で簪は俺達の新たな『家族』となった。

 

 

 

 

 

『私には、もう居場所なんて無い。あの家に、私の居場所なんて……』

『なら、作ればいい』

『え?』

『無いなら作る、簡単な事だ。だけど、もし、自らの手で一から作る勇気が出ないのであれば―――』

 

 

 

 

 

―――俺達がお前の居場所になってやるよ、簪。誇れ。俺達が、お前の新たな家族だ―――

 

 

 

 

 

今更ながらも、言ってる事がイケメン過ぎるだろうよ、京弥……。

まあ、そんな事があって、そこから更に色々とあったりして、簪は楯無と仲直りをしたんだ。

因みに、簪はその時に京弥に惚れていて、楯無の話を聞く限り家でも京弥の事を話してるらしい。

え、飛ばし過ぎ?過去はそこまで振り返らない主義なんで。

ということで簪は俺達の『家族』だ。血縁とか、んなもん超越してやるよ。

 

 

「まあ、一応、簪の機嫌取りは手伝ってやるからさ……早く現実に戻れ。気持ち悪い」

「ホントに酷いわねアンタ! 姉として妹を大事に想うのが悪い訳!?」

「一回脳味噌煮沸消毒してこい」

 

 

ギャアギャアと叫ぶ楯無を適当にあしらいながら飯を食べる。

 

 

「そうそう、聞いたわよ?藤木君、織斑君と一緒にイギリスの代表候補生と模擬戦をするのよね?」

 

 

何やら微笑を浮かべながらそんなことを聞いてくる楯無。

 

 

「もう広まってるのかよ。女子の噂話の広まり方は光の速度だなホントに」

「IS学園はイベント好きな人が多いのよね。それに、世界で二人の男性操縦者よ?注目度は計り知れないわ」

「正確には注目されてるのは織斑の方だろ。世界初の男性操縦者にしてブリュンヒルデ、織斑千冬の弟。それに比べりゃ俺は唯ISを動かせただけの男だ。注目度で言えば織斑の方に集まる」

 

 

これが世間から見た俺と織斑の差だ。気にしてる訳じゃ無いけどな。

 

 

「マスメディアが発信する情報を鵜呑みにするとそうなるわね。それに藤木君の事は情報規制されていたし。でも藤木君は、そんなものをひっくり返しちゃうような実力を持ってるじゃない」

 

 

何を考えているのか分からない笑みで俺を見る楯無。

 

 

「アホか、俺は所詮喧嘩が強いってだけでIS操縦なんてド素人だぞ?」

「…勝つ気は無いの?」

 

 

『意外』と書かれた扇子を広げてそんなことを聞いてくる楯無。

 

便利だなその扇子、ってそうじゃなくて。

 

 

「俺は別に勝ち負けなんてどうでもいいんだよ。俺は唯―――」

 

 

―――強い奴と戦いたいだけだ。

 

 

「アナタ、バトルジャンキーね」

 

 

心底呆れた様に溜息をつく楯無。

 

 

「つーかよ、お前も知ってんだろ。俺が住んでる街の特性をよ?」

「…そうね、今更言う事じゃないわね」

 

 

はあ、と再び溜息をつかれる。

 

 

「老若男女問わず規格外な人たちが多いものね…もうロアナプラから来た運送屋がいても驚かないわ」

「そこまで荒れてねえよ」

 

 

あんな地の果ての様な場所と一緒にすんな。

 

 

 

 

 

そして飯を食った後、色々と下らない事を話して、疲れのせいかシャワーも浴びずにそのまま寝た。





やっとIS学園一日目が終わった…。

もう少し展開速くしたいんだけどな…。



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6話

大変遅くなりました、すみません。

久々にアーマードコアfaやったらハマっちゃいまして、気付いたら二ヶ月放置してました(滝汗)
しかも話自体もほとんど進まないという亀進行。


入学式翌日の朝。

食堂へ向かう道中に織斑と箒の二人に会って、現在三人で朝食を食べているんだが…。

 

 

「ほ、箒、この鮭美味いな」

「あ、ああ、そうだな」

「…なあ、お前ら昨日何かあったのか?」

 

 

滅茶苦茶ぎこちなく会話をする織斑と箒を見て、その原因について聞いてみる。

というか、朝に寮で会った時からこんな感じだったら嫌でも気になるわ。

 

 

「い、いや、なんでもないぞ。なあ?」

「そそそ、そうだな!何にも無かったぞ!」

「嘘つけコラ。顔赤くなってんぞ」

 

 

コイツら隠し事下手すぎるだろ。

それよりも本当に何があったんだ?

さっき聞いた話だと二人は相部屋らしいが…あっ(察し)

 

 

「織斑、箒」

 

 

箸を一旦置き、両指をどこかの司令官の様に組む。

きっと今、俺の目はこれ以上にないくらい暖かく優しいモノに二人には映っている事だろう。

 

 

「――避妊は、しろよ?」

 

 

直後、味噌汁と水のアーチが食堂に現れた。

 

 

「お、おおおおお前は何を言っているんだ総牙!?」

「え、だって、ヤっちゃったんじゃないのか?」

「ち、違う!」

 

 

顔を真っ赤にして叫ぶ箒に俺は左手の親指と人差し指で丸を作り、そこに右手の人差し指を抜き差しする。

それを首まで真っ赤にして否定する箒。

やっぱり、これ系のネタには耐性無いのな。

 

 

「……藤木」

 

 

織斑復活。

だが、声色がとてつもなく低い。

実際、箒が真っ赤だった顔を若干青くして織斑を見ている。

 

 

「…何だ?」

「鼻に練りわさびと砥石で歯磨きと目にデスソース、どれがいい?」

「地味に怖えな!?どれも嫌だわ!?」

 

 

滅茶苦茶イイ笑顔で恐ろしい事言ってきやがった!?

お手軽に出来る拷問じゃねえかそれ!?

つーか、砥石で歯磨きって何!?

磨くどころかドンドン削れていってそのうち無くなるぞ!?

 

 

「全部無くなっちまえよ」

「だから心を読むのをやめてくれませんかね、織斑くん?」

 

 

もう、俺の中で織斑姉弟はサトリの子孫で確定。

コイツらの前で迂闊な事を考えるのは止めよう。

 

 

「お、織斑くん、藤木くん、隣いいかなっ?」

「ん?」

 

 

見ると、トレーを持った女子が三人立っていた。

 

 

「構わないぜ?どうぞ?」

 

 

俺の言葉に女子三人はガッツポーズを取る。

 

 

「ああ~っ、私も早く声かけておけばよかった……」

「大丈夫、まだ二日目。焦るような段階じゃないわ」

 

 

周囲からそんなざわめきがチラホラと聞こえてきた。

今なら動物園のパンダと酒を酌み交わせそうだ。

 

 

「……………」

「な、なんだよ箒?」

「……ふん」

 

 

ふと、視線を感じ、その先を見ると、箒が不機嫌面で俺を睨んでいた。

その目に冷や汗をかきながら箒に声をかけると鼻を鳴らしてそっぽを向かれる。

……はい、分かってますよ。「何私と一夏の時間を邪魔しているんだお前は」って事ですよね。

でもさ、お前ら相部屋なんだからこれぐらいいいじゃねえかよ。

恋すると女は心の余裕が無くなるのか?

 

 

「それでさ、お前らの名前なんだっけ?」

 

 

気を取直して、俺の隣に座った女子に聞く。

すると、ガーンと擬音が付きそうな顔をされる。

 

 

「え、え?名前覚えて無いの?」

「いや、顔は覚えてるよ?でも自己紹介された記憶もないし、そもそも昨日俺が話した人間は織斑と箒とオルコットぐらいだし」

 

 

教師は話してて当たり前だから除外。楯無は言っても分からんと思うから除外。

 

 

「そ、そっか。そうだよね。私は谷本癒子、よろしくね」

「た、鷹月静寐です」

「布仏本音だよ~」

 

 

ツインテが谷本でショートカットが鷹月。んでこの袖がダボダボでパンをハムハムしてるのが布仏と…って。

 

 

「おい、布仏、口にジャム付いてんぞ」

「え、ホント~?」

「いや、袖で拭こうとするな。ほら、拭いてやるからじっとしてろ」

 

 

袖で口を拭おうとする布仏を手で制し、持っていたポケットティッシュで口に付いているジャムを拭き取ってやる。

ついでにダボダボな袖を捲くっておく。

 

 

「えへへ~、ありがとが~くん」

「どういたしましてって、が~くん?」

「えっとね~、総牙だから~、が~くんなんだよ~?」

「そ、そうか…」

 

 

一瞬、布仏が年齢を考えたらとても痛い格好をした兎と被るが、あの人は天才が一周して馬鹿になってしまったような人なので違うと断定、記憶の隅に蹴りとばす。

あ、違う、天才か馬鹿かじゃなくて、変態か馬鹿かのどっちかか…いや、どっちもか。

この際どっちでもいいや。

とりあえず水飲もう。

 

 

「総牙、お前まるで布仏の兄みたいだな」

「ぶふぉっ!?」

 

 

箒の一言に水を吹き出した。

 

 

「お前は何言ってるんだ箒?」

「いや、お前がなんだかんだ言って面倒見がいいのは知っているが、こうして見ると兄妹みたいだと思ってな」

「が~くんがお兄ちゃんか~」

「いや、俺は同い年のクラスメイトに兄と呼ばせる癖は持ち合わせてねえぞ?てか谷本と鷹月、何納得したように頷いてんだ。布仏もお兄ちゃん呼びは止めろ、俺の人格が疑われる」

「喧嘩中毒者の癖に人格もクソもないだろ」

「おーし、織斑、食後の運動とシャレこもうぜ?ニードロップ腹にカマしてやるよ」

「なんで食ったもの吐き出させようとするんだよお前は。お断りだ」

 

 

絶え間なくツッコミを入れる。

それより織斑の中で俺が喧嘩中毒者になってた。

そんな風に思わせるような発言した覚えが…いや、あるな、うん。

 

 

「そ、それよりも、二人共、朝すごく食べるね」

「やっぱり男の子だねっ」

「まあな、朝飯食わねえと力入んねえしな」

「健康維持の為には夜は少なめに、朝は多めに食事を摂るのが一番無駄が無いからな。……それにしても、鷹月さんたちはその量で平気なのか?」

 

 

織斑の視線は谷本たちのトレーに乗っている朝食を捉えている。

それぞれがパンと飲み物、それから少なめのおかずが乗った皿だけだ。

 

 

「わ、私たちは、ねえ?」

「う、うん。平気かなっ?」

「お菓子よく食べるしー」

「布仏、お前な…」

「間食は程々にな…?」

 

 

布仏の間延びした声に脱力しながらもその言葉に呆れる。

朝食を既に食べ終えた織斑もため息混じりにツッコミを入れる。

 

 

「…一夏、食べ終えたのなら行くぞ」

「ん?ああ、わかった。それじゃ藤木、また教室でな」

「おう」

 

 

俺をジト目で一瞥し織斑を連れていく箒に苦笑する。

後でフォローでもしておくべきか?

いや、そもそも俺が悪いのかコレ?

 

 

「藤木くんって、篠ノ之さんと仲良いの?」

「うん?ああ、俺の通ってた中学に箒が転校してきてな、それで仲良くなった」

「へー。じゃ、じゃあ、織斑くんとは?何か知ってる?」

「箒と織斑は幼馴染みらしいぞ」

 

 

瞬間、周囲がどよめいた。『え!?』という声が聞こえるレベルで。

それに続くように、手を叩く音が食堂に鳴り響く。

 

 

「いつまで食べている!食事は効率よく迅速に取れ!遅刻したらグラウンド十周させるぞ!」

 

 

白ジャージに身を包んだ織斑先生の声に途端に食事を再開する谷本たち。

ぐるっと見渡せば他の面々も同じような感じであった。

俺は食事の合間に喋ってたからもう食べ終えてる。

 

 

「そんじゃ、おっ先ー」

「あ、待ってよ藤木くん!」

「せっかくだから一緒に行こうよ!」

「が~くんの薄情者~!」

「あー、もう分かった分かった。まだ時間あるし待ってるからそんな目で見るな。って、布仏パン屑こぼし過ぎだし次はケチャップが口に付いてんぞ。何歳だお前は」

 

 

この後、ちょくちょく布仏に世話を焼きながら谷本たち三人と教室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑、藤木、お前らのISだが準備まで時間がかかる」

「は?」

「へ?」

 

 

織斑先生の言葉に間の抜けた声を出す俺と織斑。

 

 

「予備機がない。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」

 

 

その言葉に教室がざわめいた。

 

 

「せ、専用機!?一年の、この時期に!?」

「つまりそれって政府からの支援が出てるって事で……」

「ああ~。いいなぁ……。私も早く専用機欲しいなぁ」

 

 

皆が思い思いの言葉を口にする中、俺は専用機が用意されるという事実に顔を顰める。

横を見れば、織斑も俺と同じような顔をしていた。

 

 

「お前ら、何だその顔は。専用機を用意される事に不満でもあるのか?」

 

 

俺たちの顔を見て織斑先生が聞いてくる。

騒いでたクラスメイトも「不満を持つなんて訳が分らない」といった感じで俺たちを見る。

 

 

「……体のいいモルモット扱いされている気がしたんで。その前にもしデータ取りが目的なら学園の訓練機でも出来る筈なんじゃ?」

「もっと言い方を考えろ馬鹿者。それに、確かにデータ取りが目的だが、訓練機だと皆が扱える様に設定されている為細かいデータが取れない。よって、一人に最適化される専用機が用意される事となったんだ。理解したか?」

「…一応は」

 

 

織斑先生はああ言ってるが、恐らく自衛という目的も含まれてるんだろうな。

流石に二十四時間三百六十五日監視や護衛なんてそうそう出来る事じゃないし。

 

 

「それで、藤木は?何故そんなに不満そうな顔をしている?」

「あ~、俺の場合は不満というより疑問ですね。織斑はともかく、俺はIS動かせるのが判明してから半月も経ってないのに、なんで専用機が作られてるのかとか、専用機ってそんな簡単に作れるもんなのかとか、そもそもどこからISコア持ってきたの?とかですね」

 

 

俺が感じた疑問点を言うと織斑先生は眉間を抑えてため息をつく。

 

 

「なるほど、確かにいきなり言われたらそう思うのも無理はないな……。まあ、それらの疑問は全てお前らの専用機は『とある兎』が手掛けてるといえば解決してしまうんだがな。……おかげでこっちは書類の山だ」

「マジでお疲れ様です。今度会ったらシバいときます」

「よろしく頼む」

 

 

思わず立ち上がり直角の礼をする。

とある兎って、もうあの人しかいないよな。

何か嫌な予感がしてきたが、流石にアホみたいな専用機にはならないよな……あの人ならやりそうで怖い。

 

 

「さて、と、話は以上だ。授業を始めるから教科書を開け」

 

 

…まあ、専用機が来ても来なくてもやるだけやればいいだけの話だよな。

そう自己完結し、教科書を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし、専用機か。ISを動かしただけでこの待遇とは良い身分だな、俺らは」

 

 

午前中の授業を消化し、昼休み。

俺は食堂で昼食のカツ丼を頬張りながらそう呟く。

ちなみに、俺の正面には箒、その隣には織斑が座っている。

というか俺が座らせた。

 

 

「仕方が無いだろう。総牙も一夏も世界で二人だけの男性操縦者だ。ある意味では世界中にいる大多数の男達の希望みたいなものなのだからな」

「そんな期待、どうでもいいんだけどな」

「そうだな……俺も、自分の家族さえ守れれば他はどうでもいいし」

 

 

友人とかも確かに大事だとは思う。

IS学園に三年も居ればそこそこ仲の良い奴も増えていくだろう。

だけどもし、そいつらと家族が同時に危険な目にあっているとすれば、俺はその友人達を迷わず見捨てる。

…歪んでるなあ、俺も。人の事言えねえよな。

 

 

「ふ、だが総牙、もし私が『友人を助けて欲しい』と言ったらお前は助けてくれるだろう?」

「当たり前だろそんな事、聞くな。つかお前も俺の思考を読むのかよ…」

 

 

俺ってそんなに考えてる事分かりやすいのか?

真正面に座る箒の微笑にむず痒い気持ちになりながら、カツ丼のカツを口に放り込む。

笑うな箒。お前は俺が家族最優先の人間だって事知ってるだろうが。

 

 

「それよりも、まずはオルコットとの試合に向けて特訓しないとだな」

「ナイス織斑」

「は?」

「いやこっちの話」

 

 

話題変えてくれてありがとう。

箒も俺へ向けていた視線を織斑に移動してくれた。

 

 

「特訓、と言うのはいいが具体的な方法は決まっているのか?」

「出来るなら学園の訓練機に乗りたいんだけどな」

「あ、それ多分無理っぽいぞ?」

 

 

俺の言葉に二人が顔を向ける。

まあ、俺も昨日楯無から聞いた事なんだけどな。

 

 

「なんでだ藤木?」

「二月から四月にかけては二、三年生の予約が馬鹿みたいに多いらしい。多分三年生は卒業が近くなると訓練機の予約を少なくするみたいだからな」

「ああ、成程。自分たちは卒業するから、訓練機の予約を在校生に譲っているのか」

「そういう事。更に言えば、四月から入ってくる一年生はまだ浮き足立っている状態だからな、すぐさま訓練機の予約をする新入生ってのは珍しいらしいぞ」

「確かに、入学していきなり訓練機を借りて訓練を開始する生徒なんてそうそう居るものでは無いな」

「そうか…、なら訓練機を借りるのは難しいな」

「その悩み、解消してあげようか?」

 

 

不意に、声をかけられる。

声の聞こえた方向を見ると、赤色のリボンの生徒が立っていた。

ちなみに、IS学園はリボンの色で(俺と織斑はネクタイの色で)学年が分かるようになっている。赤色は三年、つまり最上級性だ。

 

 

「噂で聞いたわよ。君達、代表候補生と勝負するんでしょ?」

「藤木、もしかしてもう広まってるのか?」

「織斑、女子の噂話の広まるスピードを嘗めるなよ。正しく光速だから」

 

 

一人が喋ればそれを聞いた五人が別々の方面で喋る。その後、その五人から聞いた奴等がまた別々の方面で……って感じだな。しかもよく尾ひれはひれ付くから噂の中でとんでもない事になってたりする。

と、そんな事を考えてる間に先輩が俺の隣に座ってくる。

 

「私、訓練機を友達と一機ずつ予約しているからよかったら私達が教えてあげようか、ISの操縦?」

 

ずずいと俺と織斑を交互に見ながら身を乗り出してくる先輩。

あ、箒の眉間に皺寄った。

 

 

「結構で「大丈夫です。俺達は彼女…『篠ノ之さん』に教えてもらう事になってるんで」い、一夏?」

 

 

箒が何か言おうとするのを遮って、織斑が箒の苗字を強調しながら先輩の誘いを断る。

って、オイオイ、それを言うと……。

 

 

「篠ノ之って――ええ!?」

 

 

ほら、驚くだろ。

物珍しさから俺と織斑に目がいくが、箒――IS開発者篠ノ之束の妹ってのも十分に珍しいからな、当然といえば当然の反応だな。

 

 

「ですので、気持ちだけ受け取っておきます。すみません」

「そ、そう。それなら仕方ないわね……。それじゃあ、頑張ってね?」

「あ、その前に一つだけいいですか?」

 

 

織斑が頭を下げると先輩は顔を少し引きつらせながら何処かへ行こうとするが、引き留める。

 

 

「な、何?」

「いや、先輩の名前が分からないんで名前だけ教えて下さい」

「……宮代よ。宮代香織」

「あざす。んじゃ宮代先輩、お手を煩わせてスンマセン。ありがとうございました」

 

 

織斑に倣い、俺も頭を下げる。

宮代先輩はその光景にどうしたらいいか分からず、暫くオロオロしていたが「それじゃ、頑張ってね?」とさっきと同じセリフを言うと食堂から出て行った。

 

 

「ふう、行ったか」

「行ったか、じゃねえよ織斑」

「そうだぞ一夏。それに、なんでいきなり私を苗字で……」

「悪い悪い。箒の苗字を言った方が効果的だと思ったんだよ。実際、箒も言おうとしてただろ?」

「それは……」

 

 

言おうとしてたのか。

まあ、箒は確実に嫉妬から思わず出そうになったってのは分かるんだけどな、織斑はなんで断ったんだ?

 

 

「し、しかしだな一夏、折角ISに慣れる機会を無駄にしたのだぞ?本当にいいのか?」

「いや、よくはないと思うけどな。ハニトラとかを警戒しておくべきだろ?」

「あ、そういう事か」

 

 

織斑の言葉でやっと断った意味が分かった。

箒は織斑の言葉の意味が分からず、「ハニトラ?」と首を傾げている。

 

 

「確かに単純な厚意で俺達を誘ってたのかもしれないが、もしそうじゃなかったとしたら危険だからな、だから断った」

「流石に警戒しすぎだと思うけどな」

 

 

入学してから一日二日で行動を起こすのは早すぎるだろうよ。

 

 

「しなさすぎよりかはマシだろ」

「ま、確かにな」

「むう…、だが特訓はどうするのだ?」

「訓練機を借りれないならさ――」

 

 

箒の疑問に対し、俺はさっきから考えていた事を笑顔で二人に言う。

 

 

「――剣道場行って、軽く戦り合おうぜ?」





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