英雄伝説リリカルREBORN! 炎の軌跡 (蒼空の魔導書)
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プロローグ 『繋がる三つの世界。 集いし若き英雄達と次元魔王軍襲来!』
新たなる英雄伝説、開幕の前奏
主人公はタグにも書いてある通り、『閃の軌跡シリーズ』と『
尚、自分、これが活動停止から復活してから初の新作ですので、本文にルビや傍点を振ったり等、色々と書き方を変えてみました。 作品の内容だけでなく、やっぱ自分自身も日々進歩しなくっちゃね♪
イメージOP『冥夜花伝廊』(TVアニメ『刀語』OP1より)
果たして、ただ神や精霊といった超常的上位存在に選ばれて、力を手にすれば“勇者”か?
格好良い派手なコスチュームを身に纏い、悪党や怪獣などの人類社会の害敵をやっつけさえすれば、それだけで“正義のヒーロー”になれるのか?
……否、たとえ神に選ばれて光の力を手にしたとしても、それを己の欲望の為に振るったとしたら、その者は魔王よりも深い闇に堕ちる事だろう。 人々への自己顕示で見栄えの良い衣装を着て、相手の事情を欠片も汲み取ろうともせず自身の正当性を誇示する踏み台とせんが為に問答無用の武力行使で強制排除を行おうものならば、それは
輝かしく高潔な
……ならば、
【英雄足り得る心】とはどういったもので、それを手に入れるにはどうすればいい?
いったい
新暦75年9月中旬頃。 数多の次元世界の秩序と法の統制管理を行う司法組織──《時空管理局》の転覆とそれによる自らの科学力を中心とした世界支配を目論んだS級広域次元犯罪者《ジェイル・スカリエッティ》とその一味によって、管理局の法の中心である《第一管理世界ミッドチルダ》に未曾有の大空襲事件──《
《
……だがしかし、スカリエッティ一味の世界変革の野望はこれまでであった。 時空管理局が誇るトップエース級の魔導師である少女達が集った少数最精鋭部隊《古代遺物管理部機動六課》の決死の奮闘により、事件の首謀者スカリエッティと彼の配下であったナンバーズら全員の無力化に成功し、スカリエッティの切り札であった聖王のゆりかごも機動六課の尽力による時間稼ぎが功を奏して到着が間に合った管理局本局の主力艦隊の総砲撃によって撃沈された事で、JS事件は管理局の勝利に無事収束したのだった。
戦いで払った犠牲は決して少なくはなかったが、事件が解決した事で被害にあった街の傷跡や人々の暮らしは徐々に回復に向かい、事件解決の立役者である機動六課の戦乙女達も日常に戻って戦いの傷を癒しつつあり、これでミッドチルダと次元世界の平和は取り戻された……かに思えた。
新暦75年10月10日 時刻 14:00──第一管理世界ミッドチルダ中央区、首都クラナガン南市街エリア。
「だ、駄目だ……手が付けられないぞ!」
「クソッタレ! 反管理局軍の卑怯者が! ゆりかごの空襲で地上の防衛戦力が著しく低下したこの時を狙って奇襲を仕掛けて来るなんてよっ!!」
砲撃を受けて崩れたビルの残骸を背に地上部隊の武装隊員数名が敵軍の索敵から身を隠し、苦境に立たされた現状に阿鼻叫声を上げている。 陰から顔を少し出して覗いてみれば街中を敵軍が放った謎の自律機械ユニットや小ビル程の巨大甲冑騎士の姿をした有人ロボット等が闊歩して展開し、其処かしこに散って武装抵抗する地上部隊と激しく交戦を繰り広げている。
市街の奥に雲より高く聳え立つ塔の偉容を曝す【地上部隊本部】の上を見遣れば、空を埋め尽くす無数の航空艦隊と飛行ブースターを背中に装備した巨大甲冑騎士型有人ロボットが我が物顔で占拠し、次々に迫り来る首都航空隊魔導師を恐るべき火力と物量で威圧して近づけさせない、難攻不落の制空権を敷いているのが眺められた。
先のJS事件より一月経たずして、時空管理局の中心である第一管理世界ミッドチルダは再び管理局の法に仇名す者達による襲撃を受ける事態になっていた。 敵の名は約六年前に時空管理局の多次元世界に対する司法体制を「魔法技術の独占による武力支配だ」という言い掛かりを動機に起こされた反管理局軍《ミッドナイト》といい、連中は先のJS事件のゆりかご決戦の打撃の影響で経済インフラの停滞と管理局地上部隊の防衛戦力が消耗した隙に狙いを付けて、どこからか管理局の知り得ない未知の異端技術で製造された機械兵器どもを引っ提げ、昨日未明にミッドチルダに向けて総力を揚げた奇襲を仕掛けて来たのだった。
「戦況は芳しくないようね……」
この隊を率いる隊長と思われる青紫色の長髪をした少女隊員がミッドナイト軍の投入してくる戦力の物量と未知の異端技術兵器によって劣勢を強いられている状況に、額に手を当てて呻きを漏らした。 共に居る部下の隊員達も上官である彼女の言葉に同意を表すが、しかし誰一人としてその目に絶望の闇は無く、寧ろまだまだ諦めないという希望の光を宿している。
「なぁに、きっと大丈夫ですよナカジマ隊長。 我々は苦境を極めたあのゆりかご決戦をも乗り越えたのですからね」
「そうですよ。 それにあの決戦を我らの勝利に導いた機動六課が今回の作戦の主役を引き受けてくれているんですから、今度も絶対に勝てますって♪」
「そうそう。 確かにゆりかご決戦の直後に疲労が溜まっていたところに連続で襲撃されたのは勘弁でしたけど、あの管理局が誇る“奇跡の部隊”がある限り、ミッドナイト軍の腰抜け共が何を持ち出して来ようが、きっと敵じゃないですよ」
「まあナカジマ隊長は機動六課の事をここにいる他誰よりも信頼しているでしょうから心配する必要な無いでしょう? だって貴女はあの決戦の時、洗脳されて敵側に寝返ってたから、実際に機動六課と戦って無様に倒されてた訳だし☆」
「ちょっと、リブロ二士!? あの時の事は話さないでって言ったでしょう! アレは私の黒歴史なんだから……くすん」
「「「「「あっははははははは!」」」」」
苦境の真っ只中だというのに呆れる程に笑顔が絶えない戦場の武装局員達であった。
そう、どんな劣勢に立たされようと、彼らに絶望はない。 次元世界の危機を何度も奇跡を起こして救ってきた英雄である戦乙女達が必ず、明日への勝利を齎してくれると信じているからだ。
「スバル、フェイトさん、なのはさん……どうか、御武運を……」
首都クラナガン中央、地上部隊本部正面玄関道路。
「──ディバインバスタアアアァァーーーーッ!!」
「ジェットザンバー! ハァァッ!!」
砲撃音と爆発音と銃撃音が鳴り響く戦場の真っ只中を、生身で浮遊し高速で低空を翔けるツインテールの美女二人が、後方から走って付いて来ている武装した六名の部下の先頭を切り、それぞれ機械の杖と光の大剣を振るって立ち塞がる敵ユニットを撃破しつつ突破していく。 片や凜とした大きな碧い瞳を持つ穢れ知らずの白いロングスカートバトルドレスを身に纏った長い栗毛の美女が手に構えた黄金の槍のような形状の機械の杖の穂先から巨大な桜色の閃光を盛大に撃ち出し、片や宝石のように美しい真紅の瞳を持つ白いマントを肩に取り付けた黒い軍服風の戦闘服を身に纏った長い金髪の美女が斬馬刀サイズに巨大化させた光の刀身を天上高くから豪快に振り下ろして、目の前に見えた地上本部エントランス前に防衛線を張っていた自律機械兵器達を纏めて薙ぎ払い、内部へと突入していく。
【魔力】という自然エネルギーを用いて科学術式で自然法則や概念事象を書き換える、《魔法》という名の科学技術を使って戦闘を行う《魔導師》……何を隠そう、彼女達こそ次元世界の秩序と法を守護する使命に務める時空管理局の主戦力。 そしてこの二人の美女こそ、先のJS事件を解決に導いた“奇跡の部隊”──《古代遺物管理部機動六課》の前線部隊を率いる分隊長にして、管理局が次元世界に誇る二大エース──
≪エース・オブ・エース≫高町なのは CV:田村ゆかり
≪金色の閃光≫フェイト・T・ハラオウン CV:水樹奈々
「……どうやらミッドナイト軍は本気みたいだね、フェイトちゃん」
「うん……」
地上本部のエントランス広場に広がる惨状を目の当たりにしたなのはとフェイトは一旦足を止め、厳しい顔付きになって辺りを見回し確認。 二人互いに緊張感を共有したその時、丁度彼女達の背中に続いて追い駆けて来た後続の部下達がエントランス広場の玄関口から突入して来た。
「なのはさん、フェイトさん、お待たせしまし──なッ!!?」
白い鉢巻を額に巻いた青いショートヘアの少女を先頭にして隊長二人に追い付いた六名の魔導師……彼女達もエントランスに足を踏み入れた瞬間視界に飛び込んできたエントランスホールの惨状を見て全員が忽ち真っ青な顔に変えて絶句した。
≪機動六課FW≫スバル・ナカジマ CV:斎藤千和
「こ、これって……!?」
「いったい何が……」
「酷い……」
「人の死体が、こんなに沢山……」
「キュルルゥゥ……」
大きな瞳を揺らがせて動揺に全身を強張らせるスバルをはじめ、彼女の背後から場の惨状を眺めるオレンジ色のツインテールの少女、赤髪の歳幼い少年、白い帽子を被った桃色の髪の幼女とその腕に抱かれた純白の幼竜らもまた悲痛に表情を歪めつつ戦慄を口から漏らしていた。
≪機動六課FW≫ティアナ・ランスター CV:中原麻衣
≪機動六課FW≫エリオ・モンディアル CV:井上満里奈
≪機動六課FW≫キャロ・ル・ルシエ CV:高橋美佳子
≪使役竜≫フリードリヒ CV:高橋美佳子
彼女達機動六課
「……どうやら、完全に地上本部はミッドナイトの連中の手に堕ちてやがるようだな」
「ああ。 少なくとも一階から五階まで気配を探ってみて、生きている人間はいないようだ。 人質すら取らないとは……奴等は本気で管理局を相手に勝てる自信があると見えるな」
先行部隊の殿を務めていた歴戦の雰囲気を感じさせる、残りの真っ赤なゴスロリ調騎士服を纏った御下げ髪の幼女と背の高い女騎士然としたピンクブロンドポニーテールの女性の二人がなのはとフェイトの隣へと毅然と歩み出て、自分の見識から分析した地上本部の状況予想を二人に話す。 百戦錬磨のトップエースである隊長二人でさえも気分を害する程惨たらしいホールの惨状を見渡しても、この二人は少しも精神を乱さず冷静を保てる程に戦場慣れした歴戦の猛者のようだ。
彼女達はなのはとフェイト──機動六課の若き分隊長の二人の補佐である副隊長。 そして現在は珍しくなった古代ベルカ術式魔法の使い手で、単騎の戦においては天上天下無双とされている古代ベルカの魔導騎士──
≪鉄槌の騎士≫ヴィータ CV:真田アサミ
≪烈火の将≫シグナム CV:清水香里
「クソッ! 連中、ゆりかご決戦で
「うん……。 そこら中の死体には【質量兵器】によるものだと思う切断痕や弾痕以外にも、殺傷設定の魔法のものとは違う
ヴィータとフェイトが敵軍の戦力情報を確認し合っていると、突然此処に居る全員の意識に、此処には居ない若い女性の声が届いて来る。
『──機動六課、
聴こえてきた方言なまりの女性の声は、どうやらなのは達機動六課の総部隊長のもので、後方支援から《念話》を通じての定時連絡だった。
《念話》とは通信機器を使わなくても魔導師同士が魔力を精製する体内の幻想臓器──《リンカーコア》を通じ、直接脳の意識領域に
『うん、大丈夫。 みんな誰一人欠ける事なく、ちゃんと無事に付いて来てるよ』
『地上本部前の敵の防衛網が思ったよりも厳しくて、ちょっと突破するのに時間を掛けたけれど、なんとか順調に進めてる。 そっちはどう?』
『う~ん。 首都航空武装隊とギンガ達地上部隊の陽動がちょいキビシー感じかなぁ? ミッドナイト軍がクラナガン中に展開し放っちょる妙ちくりんな機械兵器ども、スカリエッティのガジェットドローンと違って
『確かあの敵軍の
『我々の方も敵軍が戦力に導入してきた異世界の異端技術についての情報は、未だに掴みかねています。 昨日の宣戦布告の放送で敵軍の司令官が語っていた情報が真のものなら、奴等に未知の技術を渡した“異世界の協力者”なるものが、今回の奇襲の裏で糸を引いた可能性が……』
『あーもー! 言われなくても分かっとる分かっとる! とりあえず一番厄介な敵のガ◯ダム……もとい魔煌機兵への対抗戦力は今クロノ君がゆりかご決戦の時と同様に本局の主力艦隊を連れてミッドに向かって来てくれとる途中やから、それまでなんとか踏ん張って持ち堪えてみるわ。 ミッドナイト軍の協力者については警戒しとるが、今のところは姿を見せへんようやし、敵を引き付けるので手一杯やから、今は作戦に集中するで!』
『それじゃあわたし達は手筈通り、そっちの陽動の隙に地上本部の内部から屋上に昇って、上空を占拠している敵軍航空艦体の中央から抜けて、ミッドナイト軍の総司令官──《ラコフ・ドンチェル》を確保しに、彼が乗艦して敵全軍に指令を出していると予測される敵軍の司令母艦《ガラハッド》へ乗り込みに向かうね』
『頼んだで、なのはちゃん達。 この電撃作戦の成功は君ら攻略部隊に賭かっとるんや。 ゆりかご決戦の疲労はまだ回復しきっておらへんから当然無理は禁物やけど、折角スカリエッティ達から苦労して守った次元世界の平和を、卑怯モンのミッドナイト軍なんかに壊されるわけにはアカン。 ギンガ達地上部隊の皆が頑張って敵を引き付けてくれとるし、 本局からの援軍もすぐそこまで来とる。 せやから皆、ここが頑張り所や。 気張って行くんやで!』
『『『『『『『『了解ッ!!』』』』』』』』
作戦確認を終えて全員念話越しに敬礼すると、部隊長との連絡が切れる。 するとなのは達隊長陣が真剣な面持ちでスバル達FW陣へと向き直った。
「そういう訳だから皆、屋上まで高いけれど、一息に走って行くよ!」
「こんな状況だし、たぶんエレベーターは使えないと思うから、非常階段を上って行く事になるけれど、焦って転んだり、無理はしないように気を付けてね」
「はやても言っていたが、先日のゆりかご決戦後にアタシ達は全員疲労と怪我で入院して、まだこの間に退院したばかりの病み上がりだ。 だけどそれを言い訳にして退く訳にはいかねぇ。 スカリエッティ一味との戦いで数多くの戦力を失った今の管理局にはアタシ達以外の主力は下手に動かせねぇ状況だからな」
「故にお前達、我ら機動六課の敗北は管理局の敗北と思え。 ここに居る全員と部隊長である主はやて、ツヴァイにシャマル、ザフィーラやヴァイスら機動六課全員の望む
「「「「はいッ!」」」」
隊長達に鼓舞されて、部下であるFW陣がそれに元気のよい返事で応える。 だがその直後、スバルが一瞬玄関口に振り向き、そこから覗く戦闘音が飛び交う戦場の街並みの遥か先を気に掛けて誰かを心配するかのように表情を沈める。
「大丈夫かなぁギン姉……」
「スバル、やっぱりギンガさんが心配なの? ……まあ、先日のゆりかご決戦では
「ううん、ギン姉はきっと大丈夫だよティア。 作戦前あの決戦以来久しぶりに顔を合わせた時はギン姉、すっかり立ち直って元気にドカ盛りのスタミナ丼をドカ食いしてた程に回復していたし、後方の作戦指揮を任されている八神部隊長だって、ギン姉に下手な無茶はさせないと思う」
ティアナに心配されたスバルだったが、自慢の逞しい姉を信じて気丈に笑顔を作り、自分の頬を両掌でパンッと叩いて気持ちを引き締める。
「だからあたし達は前を見て進もう。 このくらいの困難は今までだって何度もそうやって乗り越えて来たんだ。 きっと今回だって皆で全力全開の力を合わせれば、この先に何が待ち受けていてもきっと勝てる筈」
「うん、その息だよ」
スバルの前向きな意気込みを聞いたなのはがそれに感心してそう言ってから、最後に攻略部隊全員に向けて自分の意気込みを語りかける。
「大切な人達や夢と未来を守る為に、もう一度全力全開で頑張って行くよ! わたし達の背中を預けて後方で戦ってくれているはやてちゃんやギンガ達、縁の下でわたし達を支えてくてれているクロノ君やユーノ君やリンディさん達管理局の仲間、ミッドチルダに住まう善良な人達、そしてわたし達の帰りを待っててくれている“あの子”の為にも……この作戦を絶対に成功させて、この中の誰一人も欠けることなく全員無事に六課へ帰って来よう、みんな!」
「「「「「「「はい(うん)(おう)(うむ)ッ!!」」」」」」」
次元世界の平和と未来、それぞれの大切な知人を思う気持ちは皆なのはと同じだ。 機動六課前線メンバー八名全員、返事と共に心を一つにして、ひたむきに
「なのは、作戦前にもきつく言ったけれど、今回【リミットブレイク】は絶対に使用禁止だからね」
「……うん、大丈夫。 今回は使わないよ」
「本当に? 君が自分自身に向けて言う【大丈夫】はイマイチ信用できないからなぁ……。 先日のゆりかご決戦だって、そう言っておいて結局最終形態のブラスター3までも解放しちゃって、それで限界を超えるまで身体とシステムを酷使した挙句に、またリンカーコアに重い負担を……」
「にゃはははは。 ごめん。 あの時は“あの子”を絶対に助ける為に負けられない戦いだったから、ああやって約束を破っちゃったけれど、今回は頼れる皆が一緒だからさ」
「なのは……」
「それに自分の身体が負担でいっぱいで、これ以上の無理をやったら今度こそ危ないって状態なのは、自分が一番よく理解しているから……」
「……ふぅ。 わかったよ……でも本当に何があっても絶対に無茶しないでね、なのは。 君の身体が大切なのは君だけじゃないんだからね」
地上本部内部の区画通路を疎らに徘徊する敵の機械兵器達と交戦を繰り返しながら、百階を越える高さの中央棟屋上まで駆け昇って行くなのは達……。
「屋上の扉が見えたよ!」
「よし、全員覚悟はいいな? ……開けるぞッ!」
この半年間毎日基礎体力トレーニングを怠らず地道に身体の体力を鍛えてきたおかげで、息は絶え絶えになったがスタミナに余裕を持たせて屋上に出る扉に辿り着く事ができた彼女達は、戦う覚悟を決めて先陣を引き受けたシグナムが扉をバンっ!と勢い良く音を立てて開いた……その瞬間──
「──ッ!!? 全員、散れッッ!!」
敵が来るのを待ち構えていたのであろう
「「「「「「「きゃああああぁぁぁーーーッ!!」」」」」」」
「ぐぬぉぉっ!!」
アンノウンの推進力が乗った頭突きを咄嗟にシグナムが愛剣の《レヴァンティン》で受け止める。 だが相手の鉄頭の固さと推進力があまりにも強烈な威力を齎した為、一瞬の拮抗の末にシグナムは踏み留まれず突き飛ばされて出て来た屋上と内部階段を繋ぐ出入口を突き崩し屋上の縁を飛び出して宙へ投げ出され、更にはその余波によって一瞬前に彼女の指示に応じて全員それぞれ緊急回避の態勢を取っていたなのは達も吹き飛ばされ七人バラバラに離された位置に屋上のヘリポートを転がった。
「おのれ、姑息な真似をッ!」
「ランスターの弾丸をお返しよ。 喰らいなさい!」
しかしそこはさすが先のJS事件を解決した英雄部隊と言ったところであった。 全員直ぐに受け身を取るや浮遊魔法を使用して宙に止まるやで相手に追撃の隙を与えず体勢を立て直し、屋上の枠から少しはみ出た空中に滞空したシグナムが敵の不意打ちに対して憤慨し跡形もなく崩れ散った屋上の出入口の残骸山に頭から埋もれた敵アンノウンを見据えて悪態を吐くと、それを合図にティアナが双銃《クロスミラージュ》を両手に隙を晒した敵アンノウンのケツに魔力弾のグミ撃ち連射をしこたま撃ち込み、全弾命中。 出入口の崩壊に巻き込まれた貯水タンクの中身が雨となって魔法の戦乙女達の身に纏う魔法防衣──《バリアジャケット》を打ち濡らし、敵アンノウンが居た場所を包み込んだ粉塵と爆煙を剥がす。 だがそこには既に奴の姿は無かった。
「嘘、いない……一体何所に──」
「ティア、上だッ!」
「──え……っ!!?」
周りを見回して撃ち逃した敵アンノウンの行方を捜すティアナはスバルが呼び掛けた警告に反応してはっと空を見上げた刹那、眼前に迫る
──しまった!? 油断した、避けられない!
そう思って一秒後に業火球に飲み込まれてこの身を焼き尽くされる想像を思い浮かべ、死の恐怖のあまりキツく目を閉じるティアナだったが、何故か一秒以上経過しても身を焼かれる感覚どころか炎が放つ熱さすら感じなくなった。 寧ろ優しいように暖かいものを感じて恐る恐る閉じた目を開けると、視界に飛び込んできたのは熱波に棚引く艶やかな栗毛といつも自分が遠い目標に追い駆けてきた不屈のエースの背中だった。
「なのはさん……!」
「ティアナ、油断大敵だよ!」
自分を庇い立ってくれた誰よりも頼りになる隊長の背中を見て、ティアナは驚きと安堵を入り交じらせた声音を漏らした。 二重四角の魔法陣の模様をした大円盾の防御結界を展開して眼前に迫っていた業火球を、歯を食いしばって逞しく阻み立ちながら、なのはは背中に庇った大事な部下に注意散漫を叱咤しつつも、優しい微笑みを向けて気遣いを促していた。
ティアナが業火球に飲み込まれそうになる直前、15m程離れた位置に居たなのはがそれに気付いて咄嗟に高速移動魔法《フラッシュムーヴ》を使い、コンマの一瞬でギリギリティアナの前に割り込んで庇い、前方防御結界魔法《ラウンドシールド》を瞬時に展開して業火球を防いでいたのだ。
だがしかし、敵アンノウンの二段構えの不意打ちもこれで防げたかに思えたが……。
──な、何この赤い炎!? わたしのラウンドシールドが徐々に構築術式ごと削られて……いや、
「くっ……それだったら──バリアバーストッ!!」
ラウンドシールドに阻まれながらも消滅せず、それどころか意志を持つように結界に噛み付いて少しずつ体積を削り砕こうとしてくる業火球に、普通の炎とは違う異質な性質が秘められている事を読み取ったなのはは、このままでは数秒持たずこの炎に結界を破られてしまい、自分も背中に庇ったティアナも危険になると判断を下し、容量限界を超える魔力量を流し込みラウンドシールドを暴発させ、それに喰らい付く業火球を爆風によって吹き飛ばした。
「ハァ、ハァ……ゲホッ、ゲホッ!」
「な、なのはさん。 ごめんなさい。 油断した私を庇ったばかりに、大変な無理をさせてしまって……」
「ううん、ティアナが無事なら、わたしは大丈夫だよ。 ……それよりも、敵は」
「……あそこです」
ティアナは自分を庇ったが為に病み上がりの身体にムチを打って余計な負担を掛けさせてしまった上司に肩を貸しながら、空に視線を向ける。
ミッドチルダ随一の階層を持つ地上本部を駆け上がって来るのにかなり時間を掛けた為、現在時刻は既に16時を過ぎている。 その為、空はもう夕焼けに染まっており、ミッドチルダという世界特有のものである昼時にもクッキリと見れる二つの月が夕陽の光に照らされて色鮮やかな朱色に染まっている……のだがしかし、その風情高い黄昏の空模様は今は無骨極まりなく物々しい無数の空飛ぶ巨大な鉄の箱の夥しい大群が、そこに在る夕陽と二つの月を貪る羽蟲の如く群がり、夕焼け空のキャンパス全体をほぼ隙間なく薄気味悪い黒の斑点で塗り潰していた。 その正体は地上本部上空を不当占拠したミッドナイト軍の主力航空艦隊であり、その中心を陣取った一番星の如く一際巨大な偉容を構える航空母艦が、なのは達の作戦拘束目標である敵軍総司令官ラコフが乗艦していると予想される敵軍航空艦隊の司令母艦《ガラハッド》だろう。 次元世界にとって全くの未知である異世界の異端技術を存分に注ぎ込み量産した手駒達が地上の街中や艦隊の外側から飛び掛かって来て必死の抵抗を見せている管理局の魔導師達を、読んで字の如く高みの見物で嘲嗤っているかのような錯覚すら覚えてなんとも忌々しいが、ティアナが見据えたのは天空に座す鉄の玉座の下を守護するように、両脚と背中に背負った飛行推進装置で
“導力結晶回路機構、畜炎変換機能武装、
他の敵機械兵器とは明らかに一線を画した雰囲気、四つの推進噴射口から轟々と噴き出す“赤い炎”、眼元のあたりから『ピピピ』という計測音を小さく鳴らして地上本部屋上ヘリポートの自分達全員の能力を計視しているような様などは、魔法を封じられた無防備状態を晒して周りから一斉に無数の銃を向けられるよりも何十倍もの畏怖を感じ取れる……それ程の威圧を放つ敵アンノウン──オーバル・モスカの姿をなのは達八人全員は険しい目で見上げる。
「いったい何なんでしょうか、あの人型の敵機械兵器……今までのとは違う怖さを感じます……」
「うん、そうだね……。 二段構えの不意打ちができる高度な戦術AIと見掛けによらない高速機動力もそうだけど、それ以上にあの“赤い炎”が脅威的だ。 機動六課の中でもザフィーラと一二を争う防御力を持つなのはが展開した防御結界魔法を
「だな……。 しかし、勿論それもそうなんだけどよ……なんて言うか、アイツは他の敵とは規格が──」
『──ピピピッ、敵性戦力ノ解析完了。 時空管理局ノ保有スル暫定最高戦力、【古代遺物管理部機動六課】ノ前線主力部隊ト判定。 総合戦力脅威度認識ヲSランクニ引キ上ゲマス』
「──って、なにっ!?」
「喋った!」
『【畜炎変換機能武装】ノ出力設定ヲ上方修正。 並ビニ【導力結晶回路機構】ノ
警戒の姿勢を向ける機動六課前線攻略部隊を余所に、唐突とオーバル・モスカが明確な機械音声言語を発して彼女達を驚かせると、計測に出た相手戦力の脅威度に合わせて機体性能を引き上げる。 すると今度は自分の全身を覆うように、次元世界の魔導師にとっては全く未知の魔法術式を球状に展開し出した。 しかし、なのは達にはつい先程その様な術式を使用してくるモノに見覚えがあった。
「あの術式って……まさか、ここまでに交戦した敵機械兵器達も使用してきた
「みんな、気を付けて! 来るよ──ッ!!」
『
オーバル・モスカが詠唱駆動を完了させて自らを覆っていた青い魔法術式を消滅させた刹那、水属性中級導力魔法《ブルーアセンション》が発動し、防御姿勢を取るなのは達が立つ地上本部屋上ヘリポート全体が超高圧水流の渦によって蹂躙された。
一方その頃、機動六課の部隊長が全体指揮を務めている
「八神部隊長、大変です。 たった今、クラナガン上空に【次元震】の予兆と思われる、次元空間位相の“揺らぎ”を観測しました!」
「何やて工藤! 予測規模はどの位や!」
「私はルキノです。 それと予測規模自体は小規模程度なんですが……そのぉ……」
「ん? なんや、歯切れ悪いなぁ。 問題が有るんならハッキリと言ってくれへんか?」
「その……“揺らぎ”というのは余震というよりも……まるで
「……はいぃ!?」
観測通信士の意味不明な報告に戸惑いを漏らして呆然と可愛らしい大きな目を丸くする部隊長の女性。 彼女の手元にある空間小モニターに転送されてきた映像に映し出されたのは、クラナガン中央に在る地上本部の上空を陣取ったミッドナイト軍主力艦隊の丁度真上に出現した二つの“灰色の炎”が
数多の海を守護する叙情的な魔法少女達、覚悟を炎に灯すアサリ貝の家族達、そして空の女神の祝福を受けた大陸で絆の軌跡を紡ぐ英雄達。
三つの英雄伝説が交差する時は──近い!
いやー、軌跡シリーズ×REBORN!×リリカルなのはstsのガチクロスは、実はずっと前から書きたかったんですよー。 「この御時世だと何時どうなるか分からないから、やりたい事があるなら今のうちにやっておきなさい」という、親父殿の言葉が切っ掛けで、今年1月に入ってからプロット作成して、この『英雄伝説リリカルREBORN! 炎の軌跡』の投稿連載に思い切って踏み切る事ができました!!
この調子で未だに更新停止している作品も徐々に復活させていきたいですが、取り敢えず当分の間は『THE LEGEND OF LYRICAL 喪失の翼と明の軌跡』とこの作品の二枚看板で更新していきます。
次回こそ、主人公であるリィンとツナを出したいです。 てか絶対に出します! リリカル伝説の方みたいにずっと主人公不在になるなんて、もうやってたまるものかッ!!(決意)
尚、主人公の二人以外の軌跡とREBORN!キャラも続々と登場させていきます。 さ~て、最初に来るのは誰かな~?
では読者の皆様、応援よろしくお願いします!
イメージED『super survivor』(PS2専用ゲームソフト『ドラゴンボールZ スパーキング! メテオ』メインテーマより)
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黄昏の空に翔け昇る戦乙女達
ミッドチルダの首都クラナガンの上空を余すことなく埋め尽くした、反管理局軍ミッドナイトの主力航空艦隊……その他のどの艦よりも物々しい物量の兵器が艤装されていて、巨大で豪奢な威容を見せつけている銀色の次元航行母艦が一隻、玉座のようにデカイ顔をして艦隊の中心を陣取っている。
ミッドナイト軍、主力艦隊司令母艦──
その眼下で自軍の放った秘密兵器であるオーバル・モスカと機動六課の前線攻略部隊が熾烈な交戦を展開している中、突然艦隊の更に上空に出現し、空間を燃やす二つの“灰色の炎”──
「──ふははは。 まったく、相も変わらず早い仕事をするものだ。 さすがは我が片腕にして我が親友、と言ったところだな」
その様子をガラハッドの中央に高く聳え立つ
その男の存在感は冥府の深淵よりも底が知れず、とてもじゃないが人の枠組みには収まりきらない、超級の怪物と呼んでもまだまだ表現するには足りぬ、埒外の化物であった。 身から発せられる気質は他人が見るからに凶悪な性質だが、しかし其処に孕まれた色はいっその事逆に全くの無邪気な程に清々しく純粋無垢で、それが輪をかけて人に途轍もなく悍ましい印象を抱かせる。 真下では征く手に立ちはだかる強敵を相手に勇敢に立ち向かっている
「これで三つの英雄伝説が一つに交わる夢の物語に相応しい舞台は整った。 絆の軌跡を空へと紡ぐ若き英雄達よ、死ぬ気の覚悟を炎に灯すアサリ貝の家族達よ、数多の海と星々を守護せし魔法少女達よ、さあ今こそ集うがいい。 おまえ達が倒すべき“魔王”は此処にいるぞ」
「うぉぉぉおおっ、リボルバーキャノン!」
「ラケーテンハンマー、くらぇぇええええッ!!」
床面全体に発生した
まずオーバル・モスカの体勢を崩すべく相手の前後からスバルとヴィータによる同時挟撃が仕掛けられた。
空中に青く輝く光の道を敷く特殊移動魔法──《ウィングロード》を相手の正面に向けて伸ばして道を作り、その上を両足に履いたインラインスケート型デバイスの《マッハキャリバー》を転がして高速滑走し、右手に取り付けた武装籠手──《リボルバーナックル》の手首部分に取り付けられている
それと同時に、“鉄の伯爵”の名を表す歴戦の鉄槌の騎士の長年の相棒たる鉄の戦槌──《グラーフアイゼン》の長い柄を小さな両手に強く握り締めたヴィータがその片方のハンマーヘッドを推進剤噴射口に変形させた《ラケーテンフォルム》で、馬力の凄まじいロケット噴射を利用した
『……ピピピッ』
「「なに──ぐあぁぁっ!?」」
しかし、完全に相手の急所へ打ち込んだかに思えた二人の息を合わせた挟撃は打撃が届く前に両方共打ち払われて返り打ちにされてしまう。 スバルとヴィータがそれぞれの
まるで暴れ馬から振り落とされるかのように勢いよく横殴りにフッ飛ばされた二人はそれぞれ個別のウィングロード上へと叩き付けられる。 だがしかし、二人が行ったそのアクションは後続の攻撃に繋げる為の囮であった。
「「隙ありだ(です)ッッ!!」」
上半身プロペラ回転攻撃を行った事でその間に完全な無防備状態を晒したオーバル・モスカの頭上を、高速機動に定評のあるフェイトとエリオが亜音速移動魔法《ソニックムーヴ》で強襲する。 フェイトは己の身よりも巨大な光の
『ピピッ、防御不可能ト計測。 回避行動ヲ選択──畜炎式三次元推進機動装置、
スカッ!
──嘘っ!?
──この完璧な隙を狙ったタイミングで放った僕とフェイトさんの攻撃が……躱された?
不意打ちが決まらずに虚しく空を切った自分達の
そして更には──
『──相手ノ性能ニ対シ適切ナ効果ノ
「うっ……これ……は……ッ!?」
「身体の動きが……鈍……く……」
攻撃を外してもめげずに自慢の高速機動を使って追撃を試みようとしたフェイトとエリオを対象にオーバル・モスカの妨害系
──まず……い。 このまま……じゃ……。
「させるものか──ッ!」
動きを鈍くされたフェイトとエリオに向かって四つの推進装置を全開で吹かし、全速馬力の飛翔突進を仕掛けて来るオーバル・モスカ。 だが、その両者の間に割って入って来たシグナムが手に携えたレヴァンティンで、オーバル・モスカの突進を受け止め、身動きを封じられた二人への攻撃を阻止する。 シグナムは背中の二人を同時に穿つ為に突き出されていたオーバル・モスカの両鉄拳に加乗された相手の推進馬力と何
「高町、ティアナ、キャロ、今が好機だ──ッ!!」
オーバル・モスカの突進を止めた状態のままシグナムが、自分から見て左方に飛翔し展開していたなのはと、丁度逆側の右方に敷かれたウィングロード上に構えていたティアナ、そして真上で立派な大人の竜へと《竜召喚魔法》を使用して変身させたフリードリヒの背中に騎乗しているキャロに、自分が敵を抑えている隙に遠距離から一斉攻撃を撃ち込めと叫んで促した。
≪白銀の飛竜≫──フリードリヒ
「ギャォォオオオオオッーーー!」
「フリード、お願い! ブラストレイーーーッ!!」
『ティアナ、合わせるよ!』
『了解ッ!』
「「クロスファイヤー──シューーーーート!」」
真上よりはフリードの口から吐き出された巨大な炎の
敵に回避の隙は与えない。 この四人と一匹のコンビネーション攻撃ならば今度こそ──
『──ピピッ、三方向カラノ魔法攻撃ニ対応。
そう誰もが疑わなかったが、
「グギュッ!?」
「「「きゃぁぁあああぁあああーーーーッ!!」」」
「高町! ティアナ! キャロとフリードまでも、そんな馬鹿なッ!! 三方向から放たれて来たAAランクの魔法を同時に跳ね返す程の強力な魔法反射効果を持つ防御結界を、こんなにいとも容易く──なっ!!?」
クレセントミラーで反射された自ら放った魔法攻撃が直撃し、成す術無くダメージを被って苦鳴を響かせた三人と一匹を傍目にしてシグナムが目の当りにしたその結果に信じ難い驚愕を露わにする。 攻撃反射効果を持たせた防御結界魔法を構築するのは高位の魔導師でも容易ではない。 況してやAAランク以上の威力がある強力な魔法を三つ同時に受けて難なく反射できるような強度と性能の高い結界を高速で展開するなど、もはや
「しまっ──」
泡を食った声を上げる間も無く、眼前に突き付けられた十門の砲口から『ゴォォォオオオーーーッ!』という凄まじい轟音を鳴らして膨大な熱量を孕んだ赤色の火炎放射が放出される。
シグナムはなのはの堅牢なラウンドシールドをも
『ピピピッ、敵ユニット《烈火ノ将》撃墜ヲ確認。 敵性戦力、残リ七人。 広範囲殲滅ニ移行』
シグナムがやられたのを見て気を動転させる暇もなく、マークを剥がして自由になったオーバル・モスカが上半身を回転させて両手の指砲を全方位に散っている機動六課前線攻略部隊残りの七人全員へ無差別に乱射してくる。 何もかもを
「う、うぁぁああああーーーッ」
「くっ、容赦がない……」
堪らず無差別に降り注ぐ“赤い炎”の雨から逃げ惑うなのは達。 しかし更には敵の殲滅行動はこれだけにとどまらず──
『──ピピッ、攻撃
「ちょっと、嘘でしょうッ!?」
『
オーバル・モスカはあろう事か“赤い炎”の弾丸全方位乱射を行いながらも同時に広範囲殲滅系の
「ふぇぇえええええっ!?」
「こんなのって、ありぃぃーーーっ!?」
「ふざけんなクソッタレェェエエエーーーッ!!」
「逃げろぉぉぉぉおおおおーーーっ!!」
数に物を言わせて広範囲を埋め尽くすように殺到して来る“赤い炎”の雨と、規則的に列を引いて疎らの集中箇所を引き裂くように飛んで来る白銀のレーザー光線。 それ等が空中全体を無差別容赦無く蹂躙し尽くし、地上の都市に降り注いでは街並みを破壊していく光景は、先のゆりかご決戦以上の大空襲かと思わせる程に凄惨であった。 空にも地上にも逃げ場など無く、これには百戦錬磨の魔導師であるなのは達も情けない悲鳴や汚い悪態を叫び散らして、容赦なく殺到してくる弾幕の隙間を必死に縫って逃げ惑うしかなかった。
「なのはさん! このままじゃヤバイですよ!!」
「うん、わかってるよスバル。 いい加減、此処で全員足止めを食っていたら作戦が台無しになっちゃうし、何か打開策を……」
しかし、敵の無差別全方位攻撃は止まる事を知らずに継続され、まるで手が付けられない。 時間を掛ければ掛ける程、電撃作戦の成功率は下がっていく。
「シグナムさん!?」
「高町! テスタロッサ! FW達を連れて先に行け! 此奴の相手は私とヴィータだけで十分だ!!」
地獄の底から舞い戻って来てオーバル・モスカと再び至近距離の迫り合いに持ち込みながら、シグナムは全身の酷い火傷を気にも止めない鬼気迫る瞳で腹の底から声を張り上げ、ここは副隊長である自分とヴィータに任せて先に行けと、呆気に取られている隊長二人へ指示を飛ばす。 しかしなのはは「で、でも……」と言い淀んで行動を躊躇する。 確かに電撃作戦の定石として、この難局を切り抜けるには誰か少数に撃破困難な難敵を抑えさせて目標へ急いだ方が妥当だというのは彼女も歴十年のベテラン魔導師として百も理解しているが、敵は未知の異世界の力を使用してくる強敵であるが故にたった二人だけに相手をさせて残して先に行くのは、とても心配でどうにも不安が拭えないのだった。 故に彼女を後押しするようにしてヴィータも飛び出して行き、シグナムと共にオーバル・モスカの動きを抑えだしながら、なのはへ必死の形相で告げる。
「いいから、とっとと行けよ! アタシとシグナムなら心配要らねーよ。 単騎無双の古代ベルカの騎士をなめんなよな!」
「そういう訳だ。 我らも此奴の事を片付けたら直ぐにお前達を追う。 故にテスタロッサ、高町とFW達の面倒は任せたぞ!」
「シグナム……うん、分かった。 任せて!」
フェイトはシグナムからの激励に力強く応えると、身に纏っている黒い軍服調のバリアジャケットをパージして防御力を犠牲にし超高速機動に特化した《真ソニックフォーム》になる。 彼女の瑞々しくスラリとした細身でありながらも扇情的に豊満の美極まった肢体の曲線と白い肌を丸々と曝け出した際どいレオタードに近い薄地姿になる為、
「なのは、それとみんな! 私が先陣を切って上空に浮かぶ《ガラハッド》への道を切り拓くから、急いで後を着いて来て!!」
「あっ、ちょっとフェイトさん!?」
フェイトはなのはとFW陣にそう伝えると、ティアナから呼び掛けられた制止を聞かず、オーバル・モスカに先征く仲間達の後を追撃させまいとして奮闘する女騎士二人を背にし、上空真上に待ち構えるミッドナイト軍主力艦隊の司令母艦ガラハッドヘと向けて、自身の持つ二つ名の通り
「そこをどけぇぇええええええええーーーーーッ!!」
そう吼え猛りながら司令母艦へと猛スピードで迫り来る美しき金髪紅眼の死神の接近に気付き、母艦の周囲を守り固めて遊弋していた飛行機能を備える機械兵器達が飛んで火にいる夏の虫が来たと言わんばかりに敵空戦魔導師を迎撃せんとして、大群でわらわらと彼女へ向かって殺到して行く。 しかし鈍足で飛行する戦闘ドローンや戦闘機ヘリの形を取った敵機械兵器達なぞ、マッハ1の音速で飛翔できる真ソニックフォームのフェイトにとっては取るに足らない雑兵に過ぎない。 行く手を阻むようにして眼前広くにバラ撒かれて来る導力機関砲やドンキーミサイルなどが入り混じる弾幕の嵐を物ともせずに突っ切り、道往く壁となって立ちはだかる飛行機械兵器の隊列を超高速で擦れ違う度に
そうやって幾らか機械兵器群の波を斬り払って行き、やがて敵防衛線の層が薄くなった箇所の隙間から敵軍主力艦隊の司令母艦であるガラハッドの荘厳な銀色の外観が見えてきた。
「もう少しで……っ!!?」
最終防衛線も無事に突破し、ガラハッドの船底が視界に近付いたあと一息のところで、フェイトは唐突に身体に凄まじい重荷が掛けられた感覚を感じ取り、急速に速度を低下させた……否、正確には
「しま……った。 また……ッ!!」
真ソニックフォームの音速機動を封じられたフェイトは先程のオーバル・モスカに続いてまたしても同じ
「く……そ……っ!!」
真ソニックフォームの装甲は音速の機動力の犠牲にしているが故に、近距離の収束砲なんて受けたら即蒸発は必至だった。 クロノブレイクに掛けられて機動力を極限に低下させられた所為でフェイトは逃げる事が出来ず、抵抗虚しく敵隊長機の
「──させない! レイジングハート、A・C・Sドライバー!!」
『
間一髪で追い付いて来たなのはが両手に握った自身の
「はぁぁあああああッ! エクセリオンバスタァァァアアアアアーーーーッッ!!!」
そしてそれだけにとどまらず、なのはは裂帛の気合いで導力砲に突き刺したレイジングハートをペイルアパッシュ本体にまで届かせるように豪快に抉り込んで突き上げると、そのまま続けて零距離の高火力砲撃魔法をブッ放ち、敵の巨大な機体にエグイ大孔を貫通させ、ペイルアパッシュを鉄の藻屑に変えた。
「はぁっ! はぁっ! ぜぇ、ぜぇ……ふぅぅ」
「なのは……ゴメン、助かったよ」
「気にしないで、フェイトちゃんが無事ならそれでよかった……えへへ」
「……」
そんな時、群に指令を出していた隊長機が撃墜された事で統率力を失った敵機械兵器群最終防衛線をようやく抜けたスバル達FW陣の四人と一匹が、後方から伸延されて来て目先に在るガラハッドの甲板上へと橋架けられたスバルのウィングロードや成長飛竜形態のフリードに乗って追い駆けて来る。
「なのはさん!」
「フェイトさんも、隊長二人だけで無茶しないで下さい!」
「確かにまだまだ僕等は未熟ですけれど、もう隊長達の足を引っ張るだけの頼りにならない新人の立場でいるつもりはありません!」
「わたし達だってお役に立ちたいんです。 危ない時はもっとわたし達FWを頼ってください!」
「キュォォオン!」
追い付いたスバル達はまず、自分達を置いて無茶に先走って行った隊長二人に対してカンカンに怒った表情を向けて全員で叱り飛ばしてきた。 上官に対して無礼千万な部下達の物言いだったが、その文句に含まれる彼女達の真剣な想いが感じられてくる。
「……ぁ……」
「……うん、そうだったね。 なのはの事は言えず、私も随分と焦ってたみたい。 悪かったよ、みんな……」
部下達からの厚い信頼を叱責と共に受け取った隊長二人は自分達の失態を認めて素直に謝罪し、なのはは自分が育ててきた教え子達の頼もしい成長をしみじみと感じながら、気を取り直して目先に浮かんでいる敵軍司令母艦を見据えた。
「コホンッ! それじゃあ、いよいよ目標の確保に乗り込むよ! みんな、力を貸してね!」
「「「「「「はい(うん)(キュク)ッ!!」」」」」」
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そしてなのは達の前に立ちはだかるオリ敵(かませ)と死ぬ気の炎を扱う畜炎システムを搭載したオリジナル魔煌機兵がこの回に初登場!
敵艦隊の真下を抜けて司令母艦ガラハッドの周囲を固めていた飛行機械兵器群の航空防衛網を突破した機動六課前線攻略部隊の分隊長二名とFW陣四名と一匹は仲良く横に並んで、彼女達の確保する目標のミッドナイト軍総司令官が乗艦しているであろう、敵主力艦隊の司令母艦ガラハッドの甲板上へと乗り込む。(フリードは成長竜体だと艦内部への突入に連れて行けない為、ここで一旦幼体に戻した)
それまでにガラハッドの周辺を固めている他の敵艦や其処らを行き来遊弋する魔煌機兵や、ガラハッド本体からすらも迎撃してくる動きはまるで見られず、すんなりとガラハッドの甲板上に到達できたなのは達はその事を不気味に感じながら、乗り込んだ甲板上を警戒しつつ見回してみる。
現在時刻は16:40。 夕陽とミッドナイト艦隊が放つ火砲と硝煙の臭いが大気中に混ざり合い、血潮のように淀々しい真紅色に空が染め上げられている。 それだけでも寒気を感じる不気味さだが、加えてガラハッドの艦上には一切の照明が点いていない為に、無数の鉄機物によって配置構成された殺風景の甲板上は非常に昏くて不気味さ加減が更に益し、気分が凍えるような殺伐とした雰囲気を醸し出している……そして更に輪をかけて不気味なのは。
「これは……いったいどうなってるの?
その様子に呆気に取られてティアナが呟いた通り、甲板上に艦の乗組員の姿が誰一人も見当たらず、敵が潜入してきたというのに敵襲警報も鳴らさず、彼女達を迎撃にやって来る白兵戦闘員も自律機械兵器も艦上の至る箇所に備え付けられた対白兵戦迎撃用兵器も……ガラハッドに乗っている敵戦力が鼠一匹たりとも一切姿を現す気配が感じられなかった。 言い知れぬ不穏を感じさせる静寂が漂う中、隊長二人は薄暗い甲板上の周囲を警戒しつつFW陣へ行動指示を出す。
『とりあえずみんな、このまま
『この不可解な状況で敵がどんな罠を仕掛けて来るのか分からないから、周りをよく警戒して進みましょう』
敵陣の真っ只中では迂闊に声に出すとどこに盗聴されるかもしれない為、念話を使ってここからの行動指針とそれを実行するにあたる要点を話し、六人全員その内容を共有できた事を恙無く確認し終えると、話した内容の通り周囲の気配に気を付けながらフェイトを先頭にして薄暗く広い航空迎撃機体専用滑走路上を慎重に歩き進み、艦上の中央に聳え立つ中層ミラービルのような外観をしているガラハッドの
『この中に今回のミッドチルダ襲撃の主犯であるミッドナイト軍のトップが……』
『この建物の内部も照明が点いてないようだけど……恐らく暗闇の中で暗視の魔法かそういったゴーグル機器・赤外線レーダー等を装備したこの艦の乗組員や機械兵器達が息を潜めて待ち伏せているかもしれない』
『じゃあ正面の通用口から突入するのは危険かなぁ? この建物は全面ガラス張りの構造みたいだし、それなら拘束目標の敵司令官が居そうな階の壁ガラスを打ち割ってショートカットをするなんて方法どうかな、ティア』
『う~ん、そうね。 視た感じ、たぶん対魔防弾材質の強化ガラスが使われているのだろうけれど、アンタの
目の前に聳え立つ内部照明の点いてない
「──ドンッ、チェルルルルーーーー! 敵陣のド真ん中に堂々と突っ立ってコソコソ話をするなどとは……んあ、ちょ~~~~っと、緊張感が足りてないんじゃな~~~い?」
なのは達が暗闇の中からいきなり眩しい光に照らされて一瞬眩まされた目を庇うように腕で光を遮っている間に、
反管理局軍ミッドナイト──≪総軍司令官≫ラコフ・ドンチェル イメージCV:千葉繁
「これはこれは、誰が来たかと思えば。 管理局が誇る《エース・オブ・エース》高町なのは嬢。 それに並び称される《金色の閃光》フェイト・
暗闇の中からなのは達の前に悠々と歩み出て来てその正体を現した、ミッドナイト軍の総司令官のラコフは下卑た笑みと耳障りな御調子の饒舌で彼女達の素性を確認してくる。 こうしている今も艦の下で強敵の人型戦闘兵器との交戦を続けているヴィータが此処までの道中で幾度か敵軍の司令官であるラコフの事を
「ラコフ・ドンチェルッ!!」
「ノコノコと現れたわね。 探す手間が省けたわ!」
「この前のゆりかご決戦の所為で街もみんなも凄く傷付いて、それ等がやっと回復しはじめてきたところだったのに、また傷付けに襲って来るなんて、許せないッ!」
「反管理局軍ミッドナイト、総軍司令官ラコフ・ドンチェル。 時空管理法に則り、【管理局への武装反乱行為】【次元空間渡航技術の横領、並びに次元空間航行戦艦の大量密造と違法による無断次元世界間航行】【質量兵器の大量違法所持と魔法・異端技術の犯罪転用】【管理指定世界への武装侵略、及びに公的重要施設へ対する武装占拠】【建築・器物損害多数】【地上本部に勤めていた公務・管理局員の大量虐殺】【公務執行妨害】その他諸々などの次元犯罪行為多数に渡り、《第二次ミッドチルダ大空襲》の主犯である貴方の身柄を拘束し、ミッドナイト軍へ対する全軍武装解除と全面降伏を求めます!」
「無駄な抵抗をしないで、大人しく投降してください! 僕達が此処へとやって来れた限りで、貴方達ミッドナイト軍はもう御終いです!」
相対する敵軍との戦力差が圧倒的に悪く、管理局側劣勢の戦況を一発逆転させて一気に戦いの収束へ持って行く為に起こした、今回の電撃作戦の最終拘束目標である敵軍の司令官の姿を前に、六人は全員咄嗟と手にそれぞれの
なのはが瞬間に腹の底から沸き上がった激情を表に顕し。 ティアナが緊迫感を不敵な笑みに被せて粋がる素振りを見せながら戦意を起こし。 スバルが先のゆりかご決戦で深い傷を付けられていたミッドチルダやそこに住まう強かな人々による復興活動を二度目の大空襲という形で踏み躙られた事に対する義憤を向ける。 フェイトが剣の立った目でこれまでに相手の犯した罪状を読み上げて内容を確認してから、それに対する相手への対応と要求を述べ。 エリオがこれ以上の抵抗は自分達には無駄だと相手へ強く告げて、ミッドナイト全軍への降伏を勧告する。 しかし、百戦錬磨のエースとストライカーである彼女達に幾ら敵意を向けられても、ラコフはその余裕と嘲りの笑みを僅かも崩しはしなく、それどころか逆に調子付いてなのは達へ対する挑発を強めていく。
「御終いだぁ? ……プププッ。 ドンッ、チェルルルルーーー! 君ら六人だけでこの吾輩を捕らえられると思ってんのかいィィ? それはそれは、流石はかの天才魔導生体科学者にしてS級広域次元犯罪者の《
「な、何が可笑しいのよ!?」
「可笑しいも何もぉ──こういう事だぜぃ☆」
挑発に目くじらを立てたスバルの疑問にお答えして、ラコフは何処からともなく何かのリモコンを取り出した。 そして「ポチッとな!」というお約束のセリフを言ってリモコンの赤いボタンを手に持った親指で押す。 するとその直後に『ガコン! ゴゴゴゴゴッ!』という機械の駆動音とそれに伴う母艦全体の大きな横揺れと共に、丁度ラコフの足下にある自動開閉床板が彼の立つ逆方向にスライドして開き、それによって甲板下層にある格納庫まで一直線に吹き抜ける、凡そ縦5m、横8m程の長方形をした昇降運搬口が出現した。
「なっ、何をするつもりなn──きゃあっ!?」
更には突然床の奥下から『シュパァァンッ!』という何かを小気味良く射出したような音が木霊したその2秒後、昇降運搬口の奥下から勢いよく突き抜けるようにして巨人のような形をした何かがド派手な轟音を鳴らして現出する。 それの甲板上到達に伴って発生した強い衝撃によって今度は母艦全体が縦に激震し、なのは達が一瞬脚元をよろめかされて体勢のバランスを崩れさせた。
「い……たた……ん? ……な──ああッ!!?」
「もう、いったいなんだっていうの……よ? ──ッッ!!!」
母艦の激震が収まり、床から立ち上がったなのは達は眼前に聳え立っていた謎の巨人を見上げてその姿を確認し、あまりの驚愕に六人全員口から出る言葉と表情を硬直させてしまった。
その巨人の正体は現在も尚、ここから後方彼方に見えるミッドナイト軍航空艦隊の防空域で管理局首都航空武装隊の空戦魔導士達を圧倒的な質量数をもって一歩も寄せ付けず、またこのガラハッドの外周に配置されている防衛艦隊の間を哨戒飛行している、ミッドナイト軍が謎の何者かの協力者から譲り受けという異世界の人型有人機動兵器──《魔煌機兵》であった。 それも首都航空武装隊が大苦戦を受けている、人の骸骨に紫色の軽装甲を身に着けさせたような外見をした《ゾルゲ》《メルギア》や、その軽装甲の代わりに分厚くもシャープな甲冑装甲を身に着けさせている外見の《ヘルモード》ともまるで違った。
その外観はヘルモードに似ているが、機体全体のカラーリングは想念を孕んで燃える紫焔を思わせる赤紫色で、騎士よりも武士が被る三角兜型をした頭部とその下に覗く顔部分には架空に記される妖怪が持つ不吉の三ツ目を連想させる三角の配置で怪し気に光り放つ赤いレーザーアイレンズが三つ嵌められている。 巨木のように太い両手の手甲部位には何かを放射する為に空いているものだと思われる円形の孔、腰の装甲部分の両脇後ろの二ヶ所に長い四本のバルブを有する噴射推進装置が取り付けられていて、搭乗者を乗せる
畜炎体循環出力増幅機関搭載型魔煌機兵──≪スクルド≫
「ムゥフッフ……シュワッチッ!」
ラコフは取り出した機体の
無骨な武威を感じられる三角兜を被った頭部の下に赤く光る三ツ目の眼光が、前に首を揃えて立ち並ぶ戦乙女達を射貫いた。
『ドンッ、チェルルルルーーーッ!! どぉだ、驚いたか? これこそが、我がミッドナイト軍が異世界の異端技術──【導力器】と【死ぬ気の炎】とやらの力を、数日前に我々の崇高な思想に理解を示してくれた
分厚い三重装甲に守られていて安全な
──なな、何この巨大ロボット……ッッ!? 姿を目に入れただけで、心臓を握り潰されるような凄まじい圧迫感に襲われるなんて……。
──JS事件で戦ったスカリエッティのガジェットドローンや聖王のゆりかご。 今もヴィータとシグナムが下で戦っている強力な人型ガジェットを含み、此処へ辿り着くまでに交戦してきた異世界の異端技術で造られた機械兵器。 ……恐らくは、目の前の巨大ロボットは私達機動六課が今までに戦ってきたどの兵器よりも、確実に強さと存在の次元が……違う……ッッ!!
酸素を肺に取り込めずに息が詰まるような錯覚を覚え、少女達の白い肌から滴り落ちる大量の冷汗が身に着けているバリアジャケットどころかその下に穿いている
『おやおやおやぁ~? どうしたのかなぁ? もしかして……チビッちゃった? プッ! ドンッ、チェルルルルーーーッ! これは愉快♪ あのJS事件を解決した“奇跡の部隊”とあろうものが、戦う前からビビッちゃってまあ、なんとも、なっさけないねー☆ チェルルルルーー!』
「フン。 そんな何所かの余所様の力を我が物自慢して見せびらかして、調子に乗ってんじゃないわよ! そのJS事件の決戦を終えたばかりで、
「そうだそうだ!
「
スクルドと動作をシンクロさせて、相手に人差し指を差して蜻蛉を捕るみたいにグルグルと回しておちょくってみたり、腹を抱えて嘲笑してみたり、両掌を肩の上で上向きに翳して肩を竦めてみたりして、怖気づき畏縮してしまっているなのは達の事を小馬鹿にし、挑発しまくるラコフ。 どこまでも図に乗った彼の態度が癪に障ったティアナとスバルが怒りの反論を返し、なのはが管理局の皆が頑張ってJS事件を解決しやっとの苦労で手に入れた念願の平和を台無しにされた事への義憤と慨嘆を訴える。 だがしかし、ラコフは戯けるように耳部へ片掌を付け翳して【何、よく聴こえないなぁ?】的なジェスチャーをスクルドに取らせ、なのは達が言ってきた事に対していったいどの口が言うのかと異議を唱えてくる。
『ふぁい? 正々堂々と立ち向かった? みんなDrジェイル氏の所為で傷付いたって?
「な──っ!?」
スクルドに己の腹部をバシバシと叩かせつつ耳障りに嘲笑いながらラコフが実に滑稽だなと言わんばかりに並べてきた事の内容を聞いたフェイトが驚愕を漏らした。 他の皆も「どうしてお前がそれを知っている?」と顔に書いて大小の動揺を呈している。 何故なら、ラコフの口から話されてきた内容が先のJS事件の裏で取り行われていた管理局上層部の不祥事で、なのは達もその情報を知らされたのが事件解決後の事後処理会議中だったという、最近の
『そうだなぁ。 確か……【プロジェクトF】とそれを土台にした【戦闘機人量産計画】とか、Drジェイル氏にそれ等の人造魔導師を作らせたのって、あの
「貴方は……その情報を何所で聞いたというの……!?」
『チェルルルルー! なぁに、この前ちょっとした伝手を手に入れてねぇ。 JS事件の顛末の詳細は勿論。 十年前に第97番管理外世界《地球》に第一級ロストロギアの【ジュエルシード】が落とされたのを契機に其処の管理外世界の一般住人だったなのは嬢が魔導師の力を開花させたという事も、そのジュエルシードを巡ってなのは嬢がフェイト嬢と相争った事も、その事件の主犯であったプレシア・テスタロッサ女史が過去に行った魔導炉の駆動実験の失敗で犠牲にした実の娘のアリシア嬢を蘇生させる目的でDrジェイル氏の提唱した記憶転写型模倣人造魔導師創造計画【プロジェクトF】を自ら完成させて
「そんなっ! 管理局内でもごく一部の高官にしか公表されていないPT事件の機密部分の詳細情報まで……」
『勿論、吾輩はその年内に続けて起きた《闇の書事件》の詳細だって秘匿部分の内容まで隅々と知っているんだけどさぁ……それもこれも、大体の不幸な大事が起きてきた数々の原因の大元はぜ~んぶ、これまでに管理局の老害のお偉いさん方が闇でコソコソとやらかしてきた汚職のオンパレードだったのではぁ、ないんですかねぇん? そこん所はどうなのよ、キ★ミ★タ★チィ~?』
ラコフの御道化た口からなのは達が過去に関わってきた重大事件の極秘概要がアレよコレよと語られ、そもそもそれらの悲劇が起きるに至った大元の原因というのも今は亡き最高評議会をはじめとする時空管理局上層部の老害共が組織の掲げる正義の正当性を絶対のものとする為に、遥か昔から日の当たらない所で幾つも執り行ってきた後ろ暗い裏工作が連綿と続いて糸を引いてきて成った
「……確かに、管理局は管理世界の法と秩序の守護を掲げて魔法やロストロギア等の異端技術の統制管理を行ってきた、その裏で今は亡き最高評議会を中心に管理局の絶対正義を過信するあまりに正道を外れて裏で非道に手を染めていた汚職局員は決して少なくはない。 だから巨大な組織であるが為のそういった闇の部分が管理局の内に数多く存在していた事実は否定しません」
周りの仲間達が過去の深い傷痕に塩を塗られて、憎たらしく「ベロベロバー!」ポーズを大仰に晒してこちらを挑発しまくってきている相手の機体に向かって今にも喰って掛かりそうな剣呑な空気を漂わせている中で、なのはは一人冷静になって相手の指摘してきた内容に対して肯定の返事を返した。 強固な正義感と何が有ってもその想いを絶対に曲げない頑固さでよく知られる不屈のエース・オブ・エースの口から発せられた意外な言葉に、彼女の仲間達が虚を突かれたように驚きの反応を表し、対峙する機体の中に搭乗するラコフもまた予想外そうに若干驚いた表情を一瞬浮かべてから感心した反応を示してきた。
『ほおぅ? 意外にも物分かりが良い様じゃないか、なのは嬢。 君の言った通り、管理局の掲げる正義などぉ~、所詮は嘘嘘嘘ォォウ! 不正塗れのインチキな~のさっ♪ だ~か~ら~さぁ、
「なのはさん……」
かの管理局の切り札である不屈のエース、高町なのはが遂に己が与する組織の行いに非がある事を認めて屈したのかと思い、溢れるばかりの愉快のあまり嗤いが止まらずにピョンピョンとスクルドを跳びはねさせて、調子の良さを最高に上げて侮辱という侮辱の限りをこちらへと吐き散らしまくるラコフを前にしても、一切の憤りを表さずに無言で俯き前髪の影で眼元を覆い隠して表情を伺わせる様子がないなのはに、スバルが不安を向ける。 他の仲間達も同様に黙するなのはへと注目を集めている。 まさか本当に自分達の最も頼れる不屈のエースは敵の言った事を素直に受け入れて管理局の敷く秩序が過ちであったと認め、屈服してしまったというのだろうか……その真相は次に彼女が毅然となった口を開いて語り出した事によって明らかにされる。
「だけど……管理局にあるのは闇の部分ばかりじゃないよ」
『あぁん?』
「組織の正義を求めるあまりに正しい心を失くしてしまった一部の局員達が犯してきた汚職による
「な、なのはさぁん!」
「そうよ、その通りよ!」
「こんなふざけた人の言う事なんかに惑わされたりはしない!」
「少なくとも
「グキューーッ!」
管理局には旧い歪んだ正義の思想に負けず正しき人道の先に在る光を信じて組織に勤めている人間だって大勢いる、そう真っ直ぐ相手の悪意と向き合って堂々と言い断じたなのはを見て心の底から安堵した仲間達も彼女の言葉に便乗して消沈しかけていた士気を捗々しく天上高くまで引き上げた。
機動六課のエースはラコフの戯言などに屈してなどいなかった。 旧い歪んだ思想に囚われた昔の人間達が過去に作った闇は今の自分達が光で照らしてやり直せばいい……次元世界の英雄である彼女の不屈の意志と叙情的にどこまでも真っ直ぐな行動や言葉はいつだって皆の心の中の深い暗闇に希望の光を照らしてくれるのだ。
『だだだ、黙らっしゃい! 貴様達みたいな小娘共が何をどうほざこうと、管理局が不正をやっていたのは紛れも無い事★実ぅっ! よって我々ミッドナイト軍こそが……否、この吾輩ラコフ・ドンチェル様こそがッ! 数多の次元世界を統べるのに相応しいのだァァァアアーーーッ!!』
ラコフは自分の立場が悪くなってきたのを感じ、苦し紛れに論破を試みるが……。
「不正と言うのなら……貴方だって過去に相当な事を犯したでしょう? ねぇ──ラコフ・ドンチェル
『ひょっ!?』
「執務官隊の過去の容疑者検挙記録データによると、貴方は元々ミッドチルダの悪徳政治家で、6年前にこの首都クラナガンの代表知事に就任してから直ぐに都市知事選挙結果の不正操作や公金の横領などといった数々の政治犯罪が次々と明るみに出た結果、貴方は執務官隊の強制検挙が執り行われる直前に夜逃げを敢行し、その後に管理局から政治犯罪の逃亡犯として次元犯罪者認定されて広域指名手配され、就任日から一月経たずしてクラナガン知事を追い遣られた……と記載してありました」
『あばばばばばば!?』
「更には、貴方はその夜逃げをした後に次元犯罪者にされた事を逆恨みして、ミッドチルダ国際銀行から持ち逃げした莫大な横領金を資金源に《反管理局軍ミッドナイト》を組織し、管理局への反乱を起こした……などとも書かれていました」
『ぐぬぬぬぬーーーっ!!』
「極論、貴方は色々と見苦しい言い訳を並べているだけで、結局はただ自業自得に対する腹いせを自分の地位を追い遣った管理局へ不当な矛先を向ける事で払拭したかっただけの、ただの小悪党にしか過ぎn──ッ!!?」
フェイトが人差し指を相手にビシッと差し、お前の醜い本性は見破ったと突き付けようとしたその途端、痺れを切らしたラコフがそれ以上は言わせないと言わんばかりにスクルドの太い左腕を動かして彼女に殴り掛かってきた。 話している最中に相手から不意打ちが飛んできた為にフェイトは目を見開いて咄嗟に真横へと
「ちょっとアンタ! 自分の立場を悪くするような事を言われそうだからって、逆上して他人が話をしている最中に不意打ちして来ないでよっ!!」
『うるさいうるさいうるさーーーいっ! こうなりゃあ予定通り、実力行使で全員叩きのめしてくれる!!』
激震でその場から動かされまいとして甲板上の至る所に固定設置されている運搬用の自動ベルトコンベアーに必死の形相でしがみつきながらスバルが猛抗議してきたのを、ラコフは我儘な子供が癇癪を起こすように言って返し、完全に自分へ向けて怪しくなった雲行きを無理矢理にでも戻してやるとして、相手を力尽くで黙らせてやると吐き捨てる。 すると彼はスクルドの左肩後ろの機体武装収納部を展開して、その中に収納してある機体台サイズの機関砲剣を自動射出し、宙を舞って目の前に落下したそれをスクルドにキャッチさせて戦闘態勢に構えた。
更にはガラハッドの防衛装置が作動し、甲板の至る所の床が開いては下の格納庫から運搬昇降機で導力駆動式の自律機械兵器が無数に迫り上げられ、それ等がわらわらと陣形を組んで既に臨戦態勢のなのは達を完全包囲してきた。
『ドンッ、チェルルルルーーーッ! 管理局に吾輩の積年の恨みと、反乱軍を組織してからの六年間ず~~~っと【弱小】だの【臆病に隠れ回るのだけは上手いドブネズミ集団】だのと随分舐められてきた屈辱の数々を、管理局の英雄として祀り上げられて調子付いている生意気な貴様達をボッコボコのメッタメタにしてやる事で、今此処でキレイさっぱりと晴らしてくれるわ! あ、覚悟しろぉいっ!』
最早完全に化けの皮が剥がれたラコフは清々しいまでの開き直りを見せて、
「なのは、これ以上は……」
「うん……こうなったらもう話し合いで説得するのは無理みたい」
「それなら、もう遠慮はいらないですね!」
「JS事件をやっとの苦労で解決して、ようやく取り戻せた平穏を一ヶ月経たずに壊された挙句、今もこうして耳障りな小悪党の下らない逆恨みに付き合わされて、将来私が執務官になる為の貴重な勉強と鍛練の時間をよくも悉く潰してくれて……鬱憤溜まってんのはこっちだって同じなのよ!」
「次元世界の平和と僕達の未来は誰にも破壊させはしないぞ。 いくよ、キャロ!」
「うん、エリオ君! フリードも力を貸してっ!」
「ギュオォォーーーン!」
立場の優劣は今此処に決した。 義は機動六課に在り。 ならば最早、是非も無し!
「古代遺物管理部機動六課、最前線攻略部隊、総員六名。 これより“第二次ミッドチルダ大空襲事件”を引き起こした主犯である反管理局軍ミッドナイトの総軍司令官ラコフ・ドンチェル容疑者の身柄を拘束する為、機動六課・航空武装隊・地上部隊によるミッドナイト軍撃破の為の《合同電撃作戦》、
「「「「「了解ッ!!」」」」」
……いったいどういう事だってばよ? 事前に作っておいたキャラ設定メモには書いてはいなかったのに、ラコフのセリフ回しが書いてて自然と超絶変に個性的になったんだけどぉぉぉおおーーーっ!!
と、とにかく次でいよいよリィンとツナが登場します。 それもこの後で更新するので、楽しみにしていてください。
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“閃の軌跡の絆で繋がるⅦの輪”と“大空の下に覚悟を炎に灯すアサリ貝の家族”来る!
いやー、この一ヶ月の間、一日も早くリィンとツナを登場させたいという思いを掛けて、バイトの時間以外は他の趣味にかまけず炎の軌跡の下書きを書いて書いて書きまくり、やっとの思いで目標のシーンを書き切って見れば、何時の間にか三万字以上書いていましたよ~♪ おかげで三話に分ける作業もして、あー、疲れた……。
三話とも殆ど書き殴ったままに上げたから、大変雑な文章構成になってしまいましたが、今回は更新を優先する事にしました。
あと、今回は主人公初登場回という特別な話という事で、リィンの技名にフォント機能を使ってみました。 しかしW主人公なのにこれでは不公平なので、ツナの技には色付けてます。
そして今回から後書きコーナーを不定期にやります。 メインの司会を務めるのはあのファルコムキャラ全員大崩壊四コマ漫画でお馴染の“超ヒロイン(自称)”です。
それと、黎の軌跡の最新PV見ましたが、創の軌跡の追加コンテンツの小説に出ていた新最年少A級遊撃士のエレイン・オークレールさんらしき人物の姿がプレイヤブルキャラとして映されていたのもそうですが、空の軌跡シリーズから実に七作品ぶりに登場が確定したジンさんとヴァルター……それに帽子を被ったフィーらしき銀髪の双剣銃使いと、エレインさんに同じく創の軌跡の小説に登場したリィンの姉弟子を名乗っていた“姫”らしき着物姿の美女剣士が八葉一刀流壱の型の螺旋撃っぽい技を放つ姿も確認できて、今回もマジテンションアガットしてしまいました! 発売日が来るのが超楽しみ過ぎてヤバイ。(笑)
では、本編をどうぞ!
「この拳でブチ抜く! うぉぉおおおおおーーーっ!!」
スバルが先陣を切って包囲に突撃し、真正面に突出する一体の
「この程度の数、どうって事無いわよ! ランスターの弾丸と幻影に踊り惑いなさい!!」
ティアナが幻影魔法《フェイクシルエット》を使用して自身の幻影体を複数人投影し、それ等に取り囲む敵機械兵器群を攪乱させて攻撃と陣形の足並みを乱し、その隙を見て本体の彼女が
「この半年間今までになのはさんの教導訓練とJS事件での死闘を乗り越えて培ってきた魔法と
エリオがストラーダの穂先を前方の縦一列に密集陣形を取っている敵小型ユニット隊に向けて突貫し、柄尻から吹かした
「一緒にやるよ、フリード!」
「ギュオオオオーーーン!!」
キャロが鎖状捕縛魔法《チェーンバインド》で敵ユニットの動きを次々と束縛し封じ込めていき、彼女の直射魔力弾攻撃《ウィングシューター》と成長竜形態のフリードが吹き放つ《ブラストレイ》の同時掃射をもって無防備状態にした敵ユニット達を纏めて焼き払い、広範囲を駆逐していく。
「一気に道を切り拓く! いくよ《バルディッシュ》ッ!!」
『イエス、サー!』
そしてFW陣の攪乱攻撃で敵の包囲に綻びが生じた所に真ソニックフォームのフェイトが一筋の閃光となって突貫。 両手に持った
「なのは! スバル! 今がチャンスだ──ッ!!」
フェイトが切り拓いた敵大将首への道をなのはとスバルが並走(前者は飛翔魔法での低空飛行、後者はマッハキャリバーを床に転がして高速滑走)してスクルドの正面へと突撃。 操縦者が素人だからか攻められて来ているのに相手機体の反応が鈍く迎撃態勢への移行が遅い、というか全くその場から動く気配が見られない。
──相手の無反応がなんだか嫌な予感を漂わせるけれど……わたしの体力も限界に近いし、相手が何かを仕掛けて来る前にスバルとの大技コンビネーションで一気に決着を着ける!
「スバル、魔力を合わせて!」
「わかりました、なのはさん!」
無言で佇むスクルドを射程位置に捉え、なのはとスバルは身を寄せ合って一緒に
「いきますよ!」
「これがわたしとスバルの全力全開!」
なのは&スバルのコンビクラフト──
「「──
猛烈な轟音と共に撃ち出された薄紫色の魔力大砲丸が射線上の物を跡形も無く蹴散らし、
『……ニヤァァ』
だが、薄紫色の破滅が迫る中でも不動を崩さない柴焔の武士の腹の中で、ラコフはしめしめと笑みを浮かべた。
『バ~カ~メェェ! 引っ掛かったなぁぁああああ! 《リアクティビ・アーマー
Wディバインバスターが当たる直前になって、仁王立ちしていたスクルドが身を丸め竦めて強力な導力エネルギーの防御結界が巨大な機体全身を丸く包み込むようにして形成される。 そしてその直後に超濃度の薄紫色の魔力大砲丸がその障壁に正面衝突し、間に
「「「「「「な────ッッ!!?」」」」」」
眼を疑うようなその結果を目の当たりにして思わず大口を開ける程の驚愕を露わにするなのは達……そして、跳ね返されて来たWディバインバスターがそれを撃った二人を無慈悲にも飲み込んだ。
「「きゃぁあああああああああっ!!!」」
自分達自らが創った魔力大砲丸を受けて為す術もなくその圧倒的に巨大な暴力の塊に全身を嬲られて、なのはとスバルは爆音を突き破る勢いで錐揉みと吹き飛び、艦首へと向かう滑走路とその上に偶々陣取っていた敵機械兵器達をド派手に爆砕した末に、艦首に取り付けられたラコフの黄金巨像の後頭部へと叩き付けられてそれを粉砕した。
「ななっ、なのはああぁぁあああぁあああーーーーッッ!!!」
「スバル……ッ! よくも、お前ぇぇええええっ!!」
二人がやられた事にその親友達が悲痛に友の名前を叫び、大切な友をやった紫焔の武士へ嚇怒を向ける。 だがそれも直ぐに無駄な行為となる。
『うるさーーーーい! ピーピー騒ぐな。 お前達はこれでも喰らっとけーーーっ!!』
フェイトとティアナの絶叫を耳障りに感じたラコフが逆ギレを呈してスクルドに機関砲剣を構えさせ、忽ち
「チィィーーーーッ!」
「嘘でしょ!? この紫色の炎の弾、
「持ち堪え……られない……っ!!」
「この……ままじゃ……みん……な……っ!!」
「ギュクゥゥ……」
フェイト達は全員咄嗟に防御障壁(フリードはキャロが自分の身と一緒に守っている)を張って雨嵐の如く飛んで来る紫色の炎の弾幕から被弾しないように防いで攻撃が止むまでやり過ごそうとしたが、スクルドの機関砲剣の乱射は止まる事を知らず、紫色の炎の弾丸は無尽蔵に放たれてくる。 弾切れの無い無差別攻撃を前にフェイト達は絶望の色を見せ始め──
「「「「うあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ァァァァーーーーッッ!!!」」」」
四人全員の防御障壁の耐久値がとうとう限界を超え、その瞬間にそれがガラスのように無惨に撃ち砕かれた。 忽ち紫色の炎の雨嵐に飲み込まれた四人と一匹は成す術も無く全身を紫色の炎に燃やし尽くされて地獄のような苦鳴を叫び、もはや何もかも燃やし尽くされて何一つ物が残らない焼け野原と化したガラハッドの甲板上に転がり倒れるのだった。
これでこの場に戦闘継続可能な魔導師は誰もいなくなった。 新暦開闢以来、次元世界最大の危機とまで呼ばれたJS事件を解決し“奇跡の部隊”と謳われた古代遺物管理部機動六課は今ここに完全敗北を喫したのだった……。
ラコフは機関砲剣の乱射を止めて甲板上を見渡し、機動六課全員が全身潰れた蟻のような満身創痍で野晒し倒れ伏し、誰一人として立ち上がる気配を見せず沈黙している様子を確認すると、スクルドの三重胸部装甲越しに大歓喜を上げた。
『グヘヘヘヘ……ドンッ、チェルルルルルーーーーッ!! イィィィヤッターーーーッ! 遂にあの生意気な管理局のエースの小娘共を──管理局最強の部隊、機動六課を吾輩がこの手でやっつけたんーーだっ! イエェーーイ★ ザマーミロォォ♪』
ラコフは管理局の英雄である魔法少女達を自分が倒した事に抑えきれない喜悦に酔いしれ、彼の喜びを表すかのようにスクルドが愉快に頭部の真上で両手を叩きながら巨木のような脚でコサックダンスを踊りだした。
『どーだ参ったか忌々しい時空管理局めっ! これが次元世界の外に存在する二つの異世界の異端技術──《可能世界》の“導力技術”と《七輪世界》の“死ぬ気の炎”を取り入れた新生ミッドナイト軍の力なのだぁ! 最早今ッ、魔導師やロストロギアなんてものは時代遅れなのだぁぁい! そんなものを最強の力などと勘違いして持ち上げている管理局などに次元世界の秩序と法の統制管理なぞ任せられん。 これからはミッドナイト軍の……否、次元世界の英雄をも下したこの吾輩、ラコフ・ドンチェル様の時代となるのだぁぁ!! ドンッ、チェルルルルルルーーーーッ!!!』
「そうは……させない……っ!」
ミッドナイト軍の完全勝利……ミッドチルダの全ての空に轟き渡らせる勢いで高々と上げられたラコフの勝鬨を破ったのは……艦首の方に濛々と立ち込める爆煙の中から脚を覚束なくよろよろと、しかしまだ倒れはしないという覇気を纏って一歩一歩確実に焼け焦げた床を踏みしめてゆっくりと歩み出て来た、不退転の意志を凜然と秘め続ける白き不屈の魔導師──高町なのはの声だった。
『……おやおやぁ? これはこれは……そんなにゴミみたいにボロボロな姿になっても、まだ懲りず吾輩に抗うつもりのかい、なのは嬢や』
「なの……は……」
見るも無残な程に満身創痍のダメージを負いながら毅然と退かない意志を奥に燃やし続けている碧い瞳でしっかりと相手の巨体を厳かに見上げ、やれやれと機関砲剣を肩に担いだスクルドの目の前へ堂々と立ちはだかった次元世界の英雄……その雄姿を闇に閉じかけた視界に薄らと映し、其処らに疎らと倒れて戦意喪失しかけていたフェイト達が意識を振るい起こす。 なのはの背中を追うようにしてスバルも怪我を負った利き腕の右腕をもう片手で押さえながら覚束ない脚で後ろから現れ、自身が負っているダメージの大きさに耐え切れずに力尽きてなのはが立っている真後ろの床に倒れる。
「なのは……さん……やめて……ください……」
スバルが床に腹這いになりながらなのはの背中に届けとばかりに震える手を伸ばし、縋るような声で彼女に何かを収めるように訴え掛けているようだ。 周囲の注目がなのはに集まると、彼女の全身から桜色の燐光が立ち昇り始めた。
「急激な魔力量の上昇……ま……まさか!?」
「なのはさんは【リミットブレイク】を……《ブラスターモード》を使うつもりですッ!!」
周囲に離れて倒れている仲間達が動揺し出すのを余所になのはは
『チェルルル、先日のJS事件の決戦時に聖王のゆりかご内部の玉座の間から何十層もの壁を撃ち抜いて最深部に居たDrジェイル氏の戦闘機人を超遠距離砲撃したという、管理局の切り札たる《エース・オブ・エース》高町なのは嬢の
ゆりかご決戦中にあったそんな細かい場面の出来事の情報まで、どうして貴方が知っている? などという疑問を聞いている余裕は今のなのはにはない。 極限の集中を貫いて胸の激痛に歯を食い縛って堪えつつ、限界を超える魔力を練り上げる。
圧倒的な力の差を見せつけてこれだけ叩きのめしても倒れずに立ち向かう意志を見せる不屈のエースにラコフが呆れ半分に彼女が悪足掻きする様に、足下の小さく無力な蟻を踏み潰して遊びたがる残虐無邪気な子供のような嗜虐的悦楽を擽り、ボロボロな身体で頑固として自分に逆らい続けて目の前に立ち塞がるなのはをこれ以上の絶望を与えて虐め抜いてやろうと思い付く。 彼女の不屈の心をへし折ってやるべくして、ラコフは挑発するように言ってゲラゲラと嗤いながら手元の
「これって……」
「ま、まさか……!?」
先程も見た
「やだ、嘘でしょう!? さっき地上本部の屋上で戦った物凄く強い人型ガジェットまで、しかも三体も出てくるなんて……っ!」
「あいつ、本気の本気でなのはさんを叩き潰すつもりだ……!」
「そ、そんな……!」
「逃げて、なの……は……ッ!?」
甲板上に出現して来た敵の増援がわらわらとなのはの周りを取り囲み、絶望的な戦力差がボロボロの身体で無防備な姿を曝している親友に向けて差し向けられていく光景を倒れて見ている事しかできないフェイトとFW達はこれまでに無い焦燥と絶望感に苛まれた。 しかし次には彼女達の目に更なる絶望が映る。 それは敵機械兵器群の増援によって完全包囲されたなのはが己の中の魔力を限界以上に絞り出さんとまでに意識を集中させた事で極限の負荷を受けて拒絶反応を起こし、彼女の全身に巡る血管が次々と沸騰・破裂を起こして大量の血を流し出し、惨く危険極まりない無茶を晒している姿だった。
──多分……このボロボロになった身体とリンカーコアで、リミットブレイクを使って戦ったら、良くてリンカーコアを破損……最悪なら命は無いかもしれない……だけど、それでもみんなを……大切な人達を守れるんだったら……!
「だ、駄目だなのはッ!」
「もう止めてええぇぇっ!!」
大切な親友と教え子達が必死に制止を呼び掛けても、彼女達を含める彼女の大切なもの全てを護る為に、高町なのはは止まらない。 己の全てを犠牲にしてでも戦い抜く覚悟を決めて、英雄はどこまでも己の限界を超えていくのだ。 たとえその先で独り果てたとしても……。
「このままじゃ……あたし達の
「「──任せろ!」」
自分が最も憧れ、最も敬愛し、だけど大切な友や仲間達を護る為にならその人は逡巡せずに己の身を傷付ける。 そんな誰よりも優しい不屈の英雄を、誰か破滅の運命から護ってください……頭上空高くに浮かぶ“二つの灰色の炎”に届けと言わんばかりに手を伸ばして叫んだスバルのその願いは、直後に突如としてその“二つの灰色の炎”それぞれの中から勢いよく飛び出して来て、ミッドチルダの黄昏空に只今参上した、二つの異世界の若き英雄の二人によって聞き届けられた!
【“無明の闇を斬り裂く一閃”の如き強さ】と【“遍く総てを抱擁する大空”のような優しさ】を思わせる、その何処までも頼もしさを感じる青年と少年の声が頭上高くから聴こえてきた瞬間、ガラハッドの艦上に乗る人間全員がはっと真上を見上げる。 すると彼女達の目に飛び込んできたのは、“立派な業物の太刀を携えた精悍な黒髪の青年”と“【橙色の炎】を額と両手の甲に【Ⅹ】という数字が大きく刻まれている指抜きグローブに灯した凛々しい茶髪の少年”を先頭にして【武装した歳若い男女の集団】計11人が上空から隕石の如く真っ直ぐとガラハッドへ向けて高速落下して来ているという、誰もが一度眼元を手で擦るような常軌を逸した事象の光景であった。
「えっ、ええええぇぇーーーっ!?」
「空から人が大勢、こっちに墜ちて来る……!!」
いきなり上空に現れてはどんどんとこちらへ向けて落下して来る謎の武装集団を見上げて、ガラハッドに乗っている一同は皆一斉に訳が解らなく狼狽えた。 安全なスクルドの三重胸部装甲の内側で、先程まで余裕気分で調子に乗っていたラコフですらも、この乱痴気な事象を前にはビックリ仰天し、凄まじい動揺の声を荒げてしまう。
『ななななっ? なんだぁ貴様らh──』
ラコフの言葉を待たずして、謎の武装集団の先頭を切ってガラハッドの甲板上へと飛来してきた黒髪の青年と茶髪の少年が、それぞれが手に構えた得物に煌豪とした凄まじい“炎”を纏わせて上から振り下ろし、ラコフが駆るスクルドの頭上へと叩き付けられた。
「
「ナッツ、
落下の勢いを利用して黒髪の青年が大上段より振り下ろした業炎の龍を纏う太刀が、茶髪の少年が右手の指抜きグローブを甲に【Ⅰ】と刻まれた
実のところ、ガラハッドの甲板は先のゆりかご決戦において首都航空隊が破壊できなかった聖王のゆりかごの外部装甲よりも頑丈な作りに出来ていたのだが、二人が叩き付けた技の衝撃が途轍もなく重過ぎた所為で、機体が踏みしめていた足下から半径約10m程の床に蜘蛛の巣状の亀裂が入り、挙句の果てには床下から船底にまで届いた衝撃エネルギーが母艦の真下をド派手に爆破して刳り貫き、底に大孔を空けたのだった。
『──って、ぎにゃああぁぁああぁあああっ!!!』
結果、スクルドの頭部上半分が陥没して首の付け根が胸の位置まで凹まされ、丁度その真下に在る操縦席に座っていたラコフの脳天を強打した。 機体全身が鉄鐘を打ったかのように高速小刻みに振動して瞬間的に麻痺し、焼け焦げた頭部と胸部装甲の表面から濛々と爆煙を上げながら一歩脚を後退させて大きな怯みを見せた。
「バルキリースマァァアアアッシュ!」
「ランブルスマッシュ、でりぇああぁっ!」
その隙に次々と艦上へ飛来してきた後続集団が着地と同時に甲板上中央でなのはとスバルを包囲している機械兵器群を攻撃し蹴散らしていく。
まず最初に黒髪の青年の背中を追って落ちて来たピンクブロンドのショートポニーテールをした明朗快活な雰囲気を放つ美少女が、両手に力強く握った機械仕掛けの
それと同時に、彼女の横に並んで落下して来た金混じりの茶髪をした大胆不敵加減が前面に滲み出ている顔付きの少年が、小型の機械兵器が数多く密集している地点の上へと勢いよく着地すると共に長柄の戦斧を頭上から大きく振り下ろし、ド派手に床へ叩き付けて発生させた凄まじい衝撃波が命中地点付近に居た機械兵器達を薙ぎ払って母艦の場外までブッ飛ばした。
「果てろ、ロケットボムッ!」
「紺碧の翼よ……オゾワー・アズレ、シュートッ!」
「《アルカディス・ギア》展開。 ブリューナク──掃射!」
それに続いて、見るからに未成年喫煙禁止法を思いっきりガン無視して銜え煙草をしている銀髪の不良中学生が、
ミント色のゆるふわショートカットをしたあざとそうな雰囲気を醸し出している美少女が、ティアナの側に優雅に降り立つと、膝立にマスケット銃を構えてその正面に隊列を組んでいた敵機械兵器群を狙い撃つ。 紺碧に輝く鳥の形状と取った高エネルギー弾がスラリと細長い銃筒の先の砲口から飛び出し、碧い雷のような尾を引いて機械兵器達を貫いては夕焼けの空の彼方へと飛び立って征き、貫かれた機械兵器達が連鎖的に爆散する。
黒い案山子のような機械兵器と合体してアニメとかで視る露出の多い軽鎧を身に纏った武装少女のような恰好に変身した艶やかな銀髪の
「
「往くぞ──ラグナッ、ストライク!」
最後に黒い短髪をした背の高い少年剣士と蒼髪をした中性的な顔付きの美少年双剣士が、それぞれ右翼付近と左翼付近に陣取っているオーバル・モスカに目掛けて、短髪の少年剣士が“青い炎”、蒼髪の美少年双剣士が翠の雷電を、それぞれ突き伸ばした刀剣から全身に向けて展開するように発生させて、隕石の如く高速突撃落下。 強敵の人型戦闘兵器に何もさせる間も与えず、“青い炎”と翠の雷電の
こうして突然上空に出現し、落下してきて絶体絶命の窮地に立たされたなのは達へ加勢しに参上した謎の少年少女達によって、ガラハッド艦上をほぼ埋め尽くしていた機械兵器群の内、三分の二という頭数が一気に殲滅させられたのであった。
「……え……?」
「ななな……何なんだ、この人達は……!?」
甲板上の其処ら中に散乱した大量の敵機械兵器の
動揺が広がる中、謎の集団のリーダー的存在だと思われる黒髪の青年と今も額に橙色の炎を灯している茶髪の少年が歩を合わせて、背後のなのはとスバルに振り向いた。
「もう大丈夫だ。 安心してくれ」
「オレ達は君達の味方だ。 警戒しなくていい」
レイジングハートを床に着いて倒れそうな身の支えにして疲労困憊の様相をしているなのはには黒髪の青年が、全身のダメージが酷い所為で床に伏せたまま自力で立ち上がれない様子のスバルには茶髪の少年が、それぞれの身体と心境を気遣って安心させるように言葉を掛け、頼もし気な笑みを浮かべた。
この二人こそ、次元世界の外に存在する二つの異世界からやってきた歴戦の若き英雄──
≪灰色の騎士≫リィン・シュバルツァー CV:内山昂輝
≪ボンゴレ
“空の女神”の加護を受けし大陸に数多の絆の軌跡の伝説を紡ぐ若き英雄達。
“虹”の導きで遥か過去から連綿と受け継がれてきた大空の想いを継承し死ぬ気の覚悟の炎を灯すアサリ貝の家族達。
“数多の海と星々”を守護する叙情的な魔法少女達。
このミッドチルダに今、三つの英雄伝説が交わったのだった……。
あとがきコーナー『リリカルマジカル
アリサちゃん「超絶最強ヒロイン、アリサ・ラインフォルトちゃん、リリカルマジカル
シグナム?(ね◯どろいどぷちサイズ)「ショウブ! ショウブ! ショウブ!」
アリサちゃん「そしてこの子は、この“炎の軌跡講座”で私の助手を務める、自律機動型ね◯どろいどぷち【シグナムちゃん人形】の“グナちゃん”よ。 この小説の作者が別に投稿している『蒼空の魔導書 カーニバル・クロノファンタズマ』で使うのに量産された余り物を、私がこのコーナーのマスコット欲しさに一体(勝手に)拝借してきたわ!(エッヘン)」
グナちゃん「マタセタナ!」
アリサちゃん「てな訳で、今回から偶に後書きで、私とグナちゃんと一緒に『英雄伝説リリカルREBORN! 炎の軌跡』の謎に迫っていくわよ! 例えば【軌跡シリーズ原作ではゼムリア大陸の全生命は“女神の枷”という謎の因果律に縛られている所為で誰がどうやっても大陸の外に出られない、という設定が明かされていた筈なのに、何故リィン達はゼムリア大陸の外にある異世界のミッドチルダへ来られたのか?】とか、【今回登場したツナヨシ君は初撃でナッツを“一世のガントレット”に形態変化させてビッグバンアクセルを放っていたけれど、REBORN!サイドの原作時系列って未来編後? それとも原作終了後?】とか、今話だけでもこの作品の設定に色んな疑問点やツッコミ所が出てきたと思うわよね? ぶっちゃけると、このコーナーはそれ等の謎についてを、閃の軌跡シリーズのメインヒロインであるこの私が、知りたがりのせっかちな読者達の為に手取り足取り丁寧に解りやすく補足説明してあげる場所なの!」
グナちゃん「ワタシノコトワスレンナ!」
アリサちゃん(某鉄機隊筆頭の鎧コスに早着替え)「でも、今回は教えて差し上げませんわ!」
グナちゃん「ホワッツ!?」
アリサちゃん(某鉄機隊筆頭の鎧コス)「気になって気になって、夜も眠れなくなるといいですわ! フンッ、ザマーミロですわっ!」
グナちゃん(ミニレバ剣装備)「シデンイッセン!」
アリサちゃん「んぎゃー!?」
グナちゃん「チャントヤレ」
アリサちゃん「いたたた……そんなに目くじら立てなくてもいいわよ。 この二つの疑問については此処で説明しなくても、後数話程度更新を進めれば解るんだから……」
グナちゃん「ソウカ……」
アリサちゃん「てな訳で、今回はここまで! 次回の『英雄伝説リリカルREBORN! 炎の軌跡』の本編も『炎の軌跡講座』もお楽しみに!」
グナちゃん「サラダバー!」
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繋がる世界
最近で新たに出てきた公式の情報だと、何やら新主人公のヴァンが《
う~んそれにしても
他にもジンさんやフィー、ヴァルターの参戦決定や、新たな《剣聖》シズナ・レム・ミスルギと新登場の執行者《黄金蝶》ルクレツィア・イスレの詳細情報解禁などなど、最近黎の軌跡のワクワクする新情報が盛り沢山に公開されて、9月30日の発売日が待ち遠しくて仕方がありませんよ~。
てか《黄金蝶》のCVが植田佳奈さんで、しかもなんとエセ関西弁キャラですとぉぉっ!? こいつはやべぇ。 メッチャこの作品の本編に出したい。 そして彼女と同じ佳奈様ヴォイスのエセ関西弁キャラであるタヌキ娘とどっかで絡ませたい!
???「ちょい待ちぃ! 誰がタヌキ娘やねん!? て言うかもう五話目なんやし。 ええ加減に私の名前、早う本編に出してぇな~(泣)」
なのは達の絶体絶命の危機にリィン・シュバルツァーと沢田綱吉が数名の仲間達と共に馳せ参じ、三世界の若き英雄達が運命の邂逅を果たしていた丁度その時。 彼等が乗って居るミッドナイト軍主力艦隊司令母艦《ガラハッド》の浮かぶ遥か真下の地上部隊本部屋上ヘリポート近空では、なのは達六名を先行させてガラハッドに向かわせる為に、強敵の人型戦闘兵器《オーバル・モスカ》の足止めに此処に残った機動六課前線部隊のスターズ・ライトニング両分隊副隊長のヴィータとシグナムが今も奮闘を続けていた。
「うおおおおっ! いい加減にブッ壊れちまいやがれええええぇぇーーーッ!!」
『ギガントフォルム!』
ヴィータは小さな全身を火傷塗れにして、決死の闘志を激しく燃やしていた。 上空に浮かぶ敵軍の司令母艦へ先に向かわせた
「轟天爆砕ギガントシュラァァァァアアーーークッ!!」
……だがしかし、オーバル・モスカはあろう事かこの威力を全く意に介さず巨木のように太い右腕でヴィータのギガントシュラークを軽々と一薙ぎで打ち払ったのだった。 自身が渾身で繰り出した
──そんな嘘だろ!? コノ鉄人形ヤロー、渾身で振るった
「危ないヴィータ、避けろ!」
──ダメだ。
「ここまでかよ、チクショォォオオオオーーー!」
そのままオーバル・モスカが岩石のように硬く大きい両手の拳を握って旅客機が追突してくるレベルの推進エネルギーを加算させた威力を乗せ、両腕を正面目前に迫ったヴィータに向けて突き出してくる。 シグナムがカバーに入ろうとするが距離が離れていて両者の衝突までに間に合わない。 これで万事休すかと諦めかけたヴィータが悔しさのあまりに目を強く瞑って絶望を叫んだ……その刹那──
「大地の盾よ彼の者を傷付けんとする災厄から護れ──《アダマスシールド》!」
突然、何処からかヴィータにもシグナムにも全く聞き覚えのない女性の声が聴こえてくる。 その瞬間、今まさに自分の幼い全身よりも巨大な質量を持ったオーバル・モスカの双鉄拳が突当たる寸前だったヴィータの前に
「カラミティ……ホーーーークッ!!」
直後、正体所属不明の青年が十字穂を持つ槍を手に、狙いをつけた地上の獲物を仕留めに上空から急降下していく鷹さながらに、オーバル・モスカの頭上へと落雷の如く落下した。 オーバル・モスカの脳天に槍の穂先から長い柄の半分以上まで貫き通して深々と突き刺したと同時に青年の長い健脚でその後頭部を凹ませる程の強い衝撃で踏み落とされ、両者そのまま真下に見える半壊した地上部隊本部屋上ヘリポートへと墜落していく。
「……アレ?」
ド派手な衝撃音が鳴り響いたその直後になって、ヴィータはいつまでもオーバル・モスカの鉄拳に殴られる痛みがやって来ない事に違和感がして目を開き、漸く急変した状況に気が付いた。 突然一体何が起きたのかと恐る恐る衝撃音が鳴って来た地上部隊本部屋上ヘリポートを見下ろしてみると、其処には先程シグナムが敵の火炎放射によって一度墜とされた際に出来た中央の大孔、その側に蜘蛛の巣状のクレーターを造って全身の所々の箇所から放電火花を上げさせながら腹這いに倒れ伏したオーバル・モスカと、その鋼鉄の大きな背中の上に立って足下の頭部に突き刺さった十字槍を引っこ抜く謎の青年の高く幅広い背中が眺められた。
「突然いったい何が起こったってんだシグナム?」
「私にも分からん。 何者だあの男? 不意打ちだったとは言え、我らヴォルケンリッターが二人掛かりでも苦戦していた人型ガジェットを一撃で突き墜とすなど、到底只者の腕ではないぞ……」
ヴィータとシグナムが並んで困惑の表情を浮かべながら、倒れ伏したオーバル・モスカの上から十字槍を持って降りた謎の長身の青年に警戒の目を向ける。 年齢は目測で凡そ二十歳前後だろう。 離れた空中から観ても190は余裕で超えていると判る高い背丈、雄大な大地を連想させる褐色の肌と広い肩幅、茶髪の短い三つ編みを一房背中に下ろし、渓谷に吹く風のように清涼な顔付きと雰囲気に反し、どこか神聖さを感じさせる土色の外套を身に纏って自身の長身をも上回る長さの柄を持つ十字槍を携えて立つ姿は鷹のように鋭い覇気を漂わせていた。
七耀教会星杯騎士団──
「エマ、取り敢えず暴れていた【人形兵器】は沈黙させた。 襲われていた二人の安全確保を頼む」
オーバル・モスカが起き上がる気配を見せない事を目視確認した長身の青年──ガイウスがそう呟いた直後に未だ彼への警戒を解かないヴィータとシグナムの側の宙に敷かれるように、二人の全く見覚えが無い形式の模様が描かれた魔法陣が出現。 そしてその上に薄紫色の魔力光が睡蓮の花弁状に開き、その中からガイウスと同年代ぐらいの若い女性が姿を現した。
「そこのお二方、御怪我はありませんでしょうか?」
現れた女性はヴィータとシグナムへ恭しい丁寧な口調で話し掛けてきた。 彼女の外見は一応時空管理局所属の魔法使いとして名が通っているヴィータとシグナムよりもずっと“魔法使い”っぽい格好と雰囲気を放っていた。 シグナムのものにも勝るとも劣らない程に豊満な胸元の前で両手に握り締めている、この世界の魔導師の持つデバイスにも似通った機械仕掛けの錫杖とその先端上部分の円輪状金属フレームの中心に取り付けられている球体部分から発せられている、溢れんばかりに膨大な薄紫色の魔力を使って足下に敷かれた魔法陣の足場を維持しているのを認めるに、この女性も相当な使い手だろう。 それも次元世界トップクラスの実力を持つ魔導師として知られるなのはやフェイトにも匹敵出来る程の……。
「……気遣い感謝する。 しかし少々(?)の火傷は負ったが命に別状はないから心配は無用だ」
「それよりも、お前等はいったい何所の何モンなんだよ? 視たところお前は魔導師のようだが、足下のその魔法術式はこの世界で一般的に使われている【ミッド式】でも【ベルカ式】でもねぇようだし……それにアタシとシグナムが二人掛かりで苦戦していたあの人型ガジェットを一撃で墜としやがったあそこの褐色ノッポの優男に至っては、なんだか
「お前達……もしやこの世界の人間ではないな?」
「あはは……やっぱり、此処って《ゼムリア大陸》ではないのですね……」
警戒の色を濃くして問い詰めてくる魔導騎士の二人に対して魔法使い風の女性は苦笑交じりに自らが置かれている状況を確認するかのような事を口から漏らした。 左肩側に垂らした薄紅毛の長太い三つ編みが彼女の今の微妙に困った心境を代弁するかのように一瞬萎れたように見えた。
≪
「取り敢えず、まずはお互いに自己紹介を交わしましょうか。 私はエマといいます。 下に居るのは私の仲間のガイウスさんです」
「時空管理局、古代遺物管理部機動六課所属、ライトニング分隊副隊長を務めるシグナムという。 それとこっちが──」
「同じく、機動六課のスターズ分隊副隊長のヴィータだ」
「えっ? ヴィータ……」
薄紅毛の魔法使い風の女性──エマがヴィータの名前を聞いて一瞬何故だか驚いたような反応を顔に浮かべる。 その反応を見て若干気を害したヴィータがエマにいちゃもんを付けてくる。
「んだよ、人の名前に何か文句でもあんのかテメェ?」
「あ、ご、ごめんね。 別に悪気は無いの。 ただちょっと君の名前が私のn──「油断するなガイウスとやら! 彼奴はまだ倒せていないようだぞ!!」」
ヴィータに失礼を言ってしまった事を弁解しようとしたエマの声をシグナムが横から遮って倒したと思ったオーバル・モスカがガイウスの背後でゆっくりと上体を起こす挙動をしているのに気付き、緊迫した声でガイウスに警戒を呼び掛けた。 ガイウスが咄嗟に踵を返して背後に振り向くと、頭部天辺に大きく空けられた槍の貫通孔から黒い煙を上げて全身から
『──ピピピッ、敵ノ新タナ増援ヲ確認。 次元世界内ノ高位戦闘能力保有者
「エマ、すまない。 どうやら打ち損じたようだ。 こっちに来て手を貸してくれないか」
「分かりました、すぐに行きます……そういう訳で話は後にしましょう。 視た所御二人共、相当腕の立つ魔導師のようですし。 怪我に支障が無いのなら、後方援護をお願いしますね!」
「あっ!? 待て、民間人が勝手に戦うんじゃねぇ!」
ヴィータの慌てた制止は届かず、エマが薄紫色の魔力光の中に姿を消し、その瞬間に足下に敷かれた魔法陣の足場も『パシュゥゥン!』という効果音を鳴らして消滅する。 それと同時に真下の地上本部屋上でオーバル・モスカと対峙しているガイウスの隣位置に、たった今ヴィータ達の目の前でエマと共に消えたのと同じ術式の魔法陣が顕れ、その上に光の睡蓮が花開く。 すると其処に勇ましく錫杖を構えた姿のエマが再出現する。 どうやら彼女は瞬間移動か転移系の魔術を使用したようだ。
そして、臨戦態勢の二人の間に謎の
「
「それに何なんだアイツらの間に繋がれた
「とにかく、このまま無関係な部外者に戦いを任せて引き下がっては次元世界の法と秩序の守護を務める時空管理局員、ひいては古今無双の誇り高き古代ベルカの騎士の名折れだ。 呆けていないで我らも直ちに加勢するぞヴィータ!」
「当たり前だッ!」
「ミュゼ。 この人達全員の回復を頼めるか?」
「もちろんです。 わたしの愛しいリィン教官の頼みならば、お任せを♡」
「「「え? “わたしの愛しい”って……」」」
「この子の戯れだから、三人共彼女の言葉を真に受けないでくれ……」
リィンや綱吉達の来襲によってラコフの操る魔煌機兵スクルドを中破させて一時的に怯ませ、ガラハッドの甲板上に展開されていた機械兵器──リィン達の呼称では《人形兵器》という、自律駆動兵器ユニットの大群の内の半数以上を機能停止させた事によって、なのは達機動六課の絶体絶命の危機が救われた。
敵の大将が動けず、リィンと綱吉の仲間達が生き残っている人形兵器達を牽制している隙に、酷くダメージを受けている機動六課最前線攻略部隊の六人を回復させようとして、リィンがこの場に居る自分の仲間の内で最も回復の術に長けているミント髪の美少女に呼び掛ける。
彼女はリィンからの頼みを快く聞き入れるが、それと一緒にあざとい笑顔をリィンと彼の側に居る三人(綱吉、なのは、スバル)に向けて、他人を勘違いさせるような発言を(強調して)どさくさに言葉の間に挟みつつ返事をしてきたものだから、リィンの側に居る三人が目を丸くしてリィンとミント髪の美少女を交互に疑惑の視線を行き来させる。 明らかにミント髪の美少女が確信犯でリィンを困らせる発言をしたのが判る為、直ぐにリィンはこちらにジト目を集めている三人の誤解を解くようにフォローの言葉を淡々と慣れた口で言って注意すると、
トールズ士官学院第Ⅱ分校≪Ⅶ組特務科≫ミュゼ・イーグレット CV:小清水亜美
「あらあら、ごめんなさいね。 教官の困った御顔は何時見ても可愛いらしいので、つい♪」
「いいから、早くやってくれ」
──あ、あざとい……。
──にゃはは……なんだかこの子、リンディさんと会ったら意気投合しそう……。
「うふふ、それでは戯れはこれぐらいにしておいて、怪我人の皆様を回復します。 ……《
戦闘再開する前にリィンの精神を疲弊させるような事を言ってくる、あざとい性格のミュゼに底知れぬ手強さを覚えて戦慄を禁じ得ないように片眉を小刻みにピクピクとさせるスバルと、性格相性的に彼女と組み会わせて手の付けられない程の化学反応を起こすだろうと思う知り合いを思い浮かべて苦笑を浮かべるなのは。
その直後にミュゼが身に着けている動きやすさを追求した作りの青い学院生服のミニスカートの脇ポケットから携帯電話と酷似した形をしている謎の端末機を取り出した。 学院生服と同色の背面カバーには学院章であろう“有角の獅子”が描かれている。 それを彼女が片手に掲げると、彼女の全身を丸ごと覆うようにして黄金色に光る球形の術式方陣が展開され、それを目の当たりにしたなのはとスバルが目を見開いて驚愕を露わにする。
「……えっ!?」
「この詠唱は……ミッドナイト軍の機械兵器も使ってきたやつだ!」
「──聖浄なる熾天使の環よ、悪しき刃によって深く傷付けられし者達の身体を癒せ──《セラフィムリング》!」
ミュゼが駆動詠唱を唱えきると彼女を囲っていた術式方陣が弾け、直後に空属性最高位の全体回復
「綺麗……それに──」
「あれだけ敵に酷くやられたあたし達全員のダメージと負傷が全部治ってるし、底を尽きていた体力も全快になってる……凄い!」
──これは“死ぬ気の炎”と完全に違う力みたいだな。 この女の人達と周りに倒れていた彼女等の仲間らしい人達だけじゃなく、此処にやって来る前“あの男”に付けられていたオレと獄寺君達の傷痕まで全部完治させている……なるほど、大した力だ……。
ミュゼの使った
──だけどどうしてミッドナイト軍の機械兵器達が使用して来ていた異世界の魔法を、突然上空から落下してきた人間が使えるのだろうか……いや、そもそもミッドナイト軍の艦隊が陣を敷いているこの空域より上空にはただ何もない夕焼け空が広がっているだけで、人が降って来るなんてどう考えても不自然だね。 もしかして彼等は──
「君、立てるか? 良ければ手を貸す」
「あ……ありがと」
リィン達空から現れた謎の助っ人等の正体を掴みかけて思案に耽っていたなのはは、不意に隣で床に倒れ伏せたままの体勢だったスバルを気遣って助け起こそうと彼女に手を差し伸べていた綱吉の呼び掛け声を耳に入れ、ふと我に返る。 たどたどしく伸ばされたスバルの腕を優しく取りなるべく負担を掛けないようにして彼女を引っ張り立ち上がらせた、茶髪の少年の顔付きは淡々と凛々しいが思春期特有の幼さも入り混じっていて、15歳のスバルと同年代か少し歳下ぐらいの年齢だと思える。 そして何故が髪を燃やさずに彼の額に灯り続ける謎の
──グローブ越しなのにこの人の手からとても暖かい気持ちが伝わってくる……見た目は冷淡で怖そうな雰囲気だけど、こうしてあたしの事を気遣ってくれるし。 この人、本当は凄く優しいんだ……それに何だかクールイケメンに見えて、実際こうして間近で見てみるとなんだかカワイイ顔しているなぁ……ヤバイッ、なんか母性が目覚めそう。 今直ぐ抱き寄せて頭をナデナデしたい──
「……スバル、アンタ大丈夫なの?」
「──っは!? ……ティア? それにフェイトさん達も、みんな何時の間にこっちに集まって?」
スバルが如何わしい感じにニヤけさせた顔をして口から涎を垂らしただらしない表情で我に返ると、彼女の視界には既に見惚れて(?)いた綱吉の顔は離れていて、入れ替わりに先程ミュゼのセラフィムリングで瀕死の重傷から完全回復したティアナやフェイト達機動六課最前線攻略部隊メンバーが周りからこの場へ集結し勢揃いを果たしていたのだった。 いやらしく指をワキワキさせて伸ばしかけていたスバルの両手の目前には、頭が変な他人を見るかのように冷ややかなジト目で呆れ果てるように彼女の顔を覗き込んでいるティアナ……その発育途中のやや大きめの丸みを主張している胸元の肉まんが二つ……。
「……イタダキニャス!」
「ひゃうん♥ ──って、何すんのよバカッッ!!」
「ぶがっ!」
丁度伸ばせば掴める位置にそれがあったので、取りあえず某蒼を巡るストーリー格ゲーに登場する食いしん坊キャラの口真似をしながら二つともムニュン♥ と鷲掴んだら、顔が真っ赤になった目の前の親友の少女に右手に持った銃底で思いっ切り殴り飛ばされた。 自業自得にも再び床に倒されて垂れ流れる鼻血を手で押さえつつ悶絶しながらのたうち回るスバルを見下ろして、ティアナは胸元を両腕で隠す格好をしてセクハラを受けた羞恥と頭の惚けた相棒の醜態という二つの恥ずかしさに大変赤面しており、その熱がどうにも冷めやらず怒りを通り越して何だかとても情けなく感じ、忽ち落胆の様相を呈した。
「まったく、寝ぼけてんじゃないわよ。 こんなアンポンタンなんかを心配する必要は少しもなかったわ……」
「ま、まあまあティアナさん。 スバルさんが大変無事なようでよかったじゃないですか」
「あらあら、うふふ。 皆様は随分と仲良しなんですね♡」
「ミュゼ、あまり茶化してやるなよ。 ……それよりも、クルト達が威嚇してくれているとはいえ、よく人形兵器達の網を掻い潜って、彼女達を集めてくれたな。 ユウナ、アルティナ」
スバル達機動六課FW陣が四人全員集まって互いの身の無事を喜び合うその様子をミュゼが側で他愛無さそうに眺めて口許に手を添えながら悪戯っぽく微笑しているのを、リィンは一言軽く戒めて溜息を漏らす。 その背後へ、明朗快活そうなピンクブロンドのショートポニーテールをした美少女と、精巧な
敬慕する教官に褒められて、成人前の少女の平均以上に大きく実らせて健康的な丸みを持った美乳を張って隠そうとせず素直に得意気な鼻を鳴らすショートポニーテールの美少女。 銀髪の美少女も希薄だが満更では無く嬉しがっている様子が見て取れる。 銀髪の美少女は先程まで黒い案山子のような機械兵器と合体して防御力より機能性に特化したような武装軽鎧を身に纏っていたが、少し前に合体は解除したようであり、ショートポニーテールの美少女共々ミュゼが着ている学院生服と同じものを身に着けている。
トールズ士官学院第Ⅱ分校≪Ⅶ組特務科≫ユウナ・クロフォード CV:東山奈央
トールズ士官学院第Ⅱ分校≪Ⅶ組特務科≫アルティナ・オライオン CV:水瀬いのり
「フフン! この程度あたし達なら朝飯前ですよリィン教官。 伊達にあの《黄昏》と《逆しまのバベル》での死線の数々を乗り越えてきてはいませんよ! ねっ、アル?」
「そうですね。 少なくとも【黒の工房】に囚われたリィン教官を取り戻しに行った時のよりはずっと低難易度のミッションでしたしね……」
「ハハハ……あの後から何度もしつこく言って、皆いい加減にしろと思っているだろうけれど。 改めて、あの時の事は俺の所為で皆に散々迷惑を掛けてしまって、すまなかった。 深く反省しているよ」
「本当にそうですよもう。 あの救出作戦の時は【朱のロスヴァイセ】にされたアンゼリカさんや【鋼のゲオルグ】を演じていたジョルジュさんや暴走して我を失っていた教官、挙句の果てには無茶苦茶強い宰相さんと聖女さんの最強コンビとの休み無しの連戦を強いられて、あたし達新旧Ⅶ組全員が死ぬ程苦労したんですからね!」
「……」
そんな風に褒めた筈のユウナとアルティナからそれぞれ意地悪いニヤけ面と皮肉を訴えるジト目を向けられてきて、リィンが苦笑して片頬を人差し指で掻きながらタジタジに参った様子を見せ、その近くで綱吉が周囲を見張りながら三人の話を興味深そうに盗み聞きしていると、その四人に向けて不意に外野から女性の訊ねる声が掛けられてくる。
「あの~、皆さんちょっとよろしいでしょうか?」
話の最中に急に割り込んで来た事を申し訳なさそうにして訊ねてきた女性はフェイトであった。 その隣にはなのはも伴って来ている。 二人とも先程のミュゼの回復
「貴女方は……確かあそこの四人(スバル達)と一緒に人形兵器達に襲われていた……」
「どうも初めまして。 私は時空管理局、機動六課のフェイト・T・ハラオウンと申します」
「同じく、高町なのはといいます」
──うっわ~、凄く綺麗な人達……それも下手をしたらクレアさんレベルの美人度まで行くかも♡
──しかし、タカマチと名乗った方の女性からは何故だか
「……それで、何か用でもあるのか?」
二人の姿を見てリィンが思い出すような言い回しで相手に素性を確認し、それに応えてフェイトとなのはが背筋を伸ばしてビシッと右手を額に上げる敬礼を見せて所属組織と共に毅然と名乗りを上げる。 そんな二人の立派で凛々しく美しい容姿に見惚れるユウナと、なのはの放つ性質の気配と声質に何故か既視感を覚えて拳を己の白い小ぶりな顎に添えて思案顔を作るアルティナ。 そんな彼女達の脇に立っていた綱吉が相変わらず淡々とした口調でフェイトとなのはに用件は何事なのかを聞いてくる。 するとなのはが一歩前に出て感謝の気持ちを表すかのようにリィン達四人に深々と頭を下げた。
「あの……さっきは大変危なかったところを助けてくれて、どうもありがとうございます! 貴方方の救援のお蔭でわたし達機動六課最前線攻略部隊は全員九死に一生を得られました!」
「
「いや、そんなに畏まって頭を下げなくてもいい。 そこで転げ回っている青い髪の女の人に傷だらけで助けを求められたから咄嗟に助けに入ったってだけで、特に礼を言われるような事はしていないからな……」
「ああ、そうだな。 当然の事をしたまで。 困った時はお互い様さ。 ……それに見たところ、君達は俺達と歳が近いみたいだし、硬い言葉も必要ない。 出来れば普通に話してくれないか?」
畏まった敬語を使って命を救われた事への御礼の意とその恩を伝えてきた二人の熱心さに、綱吉とリィンはそこまで大袈裟に持ち上げられる程立派な事はしていないから無理に遜った態度で接するのは止して欲しいと頼む。 初対面とはいえ、ほぼ同年代……それもなのはやフェイトのような美人秀麗の女性にずいずいと謙虚にされるのは流石に彼等も少々こそばゆいらしく、平静を装った己の面の前に右の掌を翳して軽く二三度振る素振りをしたり、蟀谷を人差し指で掻きながら苦笑を浮かべたりして、勘弁してくれという意志表示を見せている。 それは確かにとなのは達も同意を示して一度頭を上げ、肩の力を抜いた自然体になって、改めて砕けた口調に直し「どうもありがとう」と一言の御礼をリィン達へ伝えた。
「それにしても、いったい何所なんだ此処は? 【時空管理局】や【機動六課】なんて名前のファミリーは聞いた覚えがない。 それと、今オレ達が乗っている空飛ぶ船はRPGとかに出てくる飛空艇か? 此処周辺の空にもこれと同じような空飛ぶ船が浮かんでいるし。 さっき
「それに、何故こんな場所で“結社”が保有している【人形兵器】や【魔煌機兵】が運用されていて、それがどういう訳で
なのはとフェイトと軽く握手を交わしたリィンと綱吉は敵の牽制へ戻って行くユウナを見送ると周囲一帯に広がっている異様な光景を見渡して、現在自分達が置かれている場を不可解に思い、思案に耽り出す。
この
その何から何まで、リィンと綱吉の中の常識にとっては既知と未知の要素がごちゃごちゃに入り混じった混沌の絵面であった。 理解の範疇を超え過ぎて、頭の中の情報の整理が追い付かない。 これが全て未知のモノばかりなら二人共そういう経験は豊富である為に直ぐに適応してみせるのだろうが、よく知るモノやそれと酷似しているモノが未知のモノと
──この次元世界全体の治安維持を執り行っている時空管理局を全然知らない素振りをしているうえ、今回ミッドナイト軍が持ち出してきた異世界の異端技術を知る風なその口振りは……。
「もしかして、貴方達は次元漂r──」
彼等の話の内容から推測してフェイトは半信半疑リィンや綱吉達の素性に当たりを付け、彼等に確認を取ろうとする。 しかしその刹那、リィンと綱吉が何かの動きを察知して振り向き、鬼気迫る声でその近くの仲間に叫んだ。
「アッシュ!」
「獄寺君!」
「「今すぐその魔煌機兵(ロボット)から離れろ──ッ!!」」
「何だとッ!?」
「十代目、それはどういう──ッ!!」
それぞれのリーダーに注意を呼び掛けられた金混じりの茶髪の少年と銀髪の少年は反射的に注意の意図を理解するのが一瞬遅れる。 それが二人の致命的なミスとなってしまった。
丁度その時、彼等は迫り来る人形兵器の部隊に包囲されぬように、先程リィンと綱吉が落下同時攻撃で一時的に沈黙させた魔煌機兵スクルドを背にして迎撃していたところであった。 それが急に動き出して床に着けていた膝を上げ出したのをリィンと綱吉はそれぞれが持つ敏感な空間認識スキルをもって察知したのだったが、危険が迫る仲間に彼等が振り向いた時にはもうスクルドは二人の同時攻撃を受けて深々と陥没していた首部分を自身の巨大な右手で鷲掴み万力クレーンのように引っ張って強引に元の状態に戻して、丁度眼前に無防備な背中を曝していた二人の不良少年を確認し、好機とばかりに大木のような重質量の左腕を大きく振り被っていたのだった。 その光景を目の当たりにしてリィンと綱吉が、危機迫った仲間の金茶髪の少年と銀髪の少年に向かって背後のスクルドから早急に距離を取るように緊急指示を飛ばしたのは良かったが、二人がその指示を拾って内容に一瞬の疑問を抱いた為に意図を把握し行動を実行するまでの
『ヴァーーカメッ! くらえぇぇいッ!!』
「「ぐああああああーーーッ!!」」
水平一閃に薙ぎ払ってきたスクルドの左腕を不良少年二人は背中に受け、胸をこれまでもかと大きく張った
「アッシュ!」
「獄寺君ッ!」
咄嗟の高速反応でリィンは金茶髪の少年、綱吉は銀髪の少年を全身で受け止める。 その瞬間に大砲から放たれてきた鉛弾のように凄まじく重い衝撃と反動がリィンと綱吉を襲った。 しかし、リィンは受け止めた瞬間に腰のバネと足の位置取りを置き換える事によって、その衝撃を柔軟に左足から床に流して後方に押し飛ばされる勢いをその場で殺しきる。 一方、綱吉は少しばかり押し退かされはしたものの、右手のグローブを背後に向けて翳し、額に灯している
「アッシュ、大丈夫か!?」
「ゲホッ!……悪ィ。 俺とした事が、少しドジッちまったぜ……」
トールズ士官学院第Ⅱ分校≪Ⅶ組特務科≫アッシュ・カーバイド CV:前野智沼
「お手を煩わせてしまって……申し訳ありません……十代目の的確な指示を……オレは……」
「あの一瞬じゃあ仕方がなかったさ、自分を責めないでくれ」
十代目ボンゴレファミリー≪嵐の守護者≫獄寺隼人 CV:市瀬秀和
「バリアジャケットを纏っていない生身であの質量の攻撃をまともに受けたにも関わらず二人共五体満足だなんて……相当鍛えられているようだね」
「でもさすがに受けたダメージが大きい。 回復させないと戦闘継続は危険だと思う」
「なら今度は私が回復します。 《クラウ=ソラス》──」
それぞれのリーダーに抱き留められたまま朦朧とした意識の獄寺とアッシュの許に颯爽と近づいたアルティナがそう言って右手を天に掲げる。 すると
──ふえぇぇっ、何コレェェーー!?
──これって……カカシ?
「──《アルティウムヒール》!」
不意に顕れたクラウ=ソラスを見てなのはとフェイトが内心で仰天している間に、手を上げたままアルティナが
だが此処は高度な戦術性能を持つ人形兵器が展開する戦場のど真ん中だ。 案の定、その無防備な隙を狙って
「油断大敵ってな♪」
「アッシュ、無事か!」
自らが持つ重機関砲の暴発に本体も巻き添えになり黒い煙を上げてスクラップと化した
十代目ボンゴレファミリー≪雨の守護者≫山本武 CV:井上優
トールズ士官学院第Ⅱ分校≪Ⅶ組特務科≫クルト・ヴァンダール CV:江口拓也
「チッ、野球バカが……だが、オレが不甲斐無く足引っ張った所為で身動き取れなかった十代目を守った事は、取り敢えず褒めておいてやるよ……」
「ま、フォローの礼は言っておくぜクルト。 チビ兎も回復サンクスな」
獄寺とアッシュがそれぞれのリーダーに支えられていた身体の自由を解放されながら、敵の不意打ちからフォローしてくれたそれぞれの
『フフッ。 どうやら彼等は少なくとも悪い人間じゃあ無いみたいだね。 使用している異端の能力やその知識からミッドナイト軍との関与を一瞬疑ったけれど、目の前の助け合う彼等の姿からはラコフのような下衆には決して真似できない高潔さが感じられる』
『にゃはは。 それに何でだか、わたし、この人達とはとても心から通じ合える気がするの。 彼等の醸し出す雰囲気が
リィン達の尊い信頼関係を真後ろから垣間見ていたフェイトとなのはも微笑ましく念話で彼等を信用できそうである事を交信してその旨を確認し合っていた。 仲間で助け合う精神は
「なのはさん! フェイトさん!」
「リィン教官やみんなも休んでいられる場合じゃないわ! アッシュ達を回復させたのなら早く手を貸して! あたし達だけじゃ、そろそろ持ち堪えられそうにないわ!」
そんな時、前衛から下がった山本とクルトをフォローする為に入れ替わり前に出てスクルドと人形兵器達を引き付けて攪乱攻撃を行っていたスバル達機動六課FW陣とユウナから要警戒の声が後衛の全員に呼び掛けられてきた。 前衛に目を向けると、陥没させられていた頭部をすっかり治した巨いなる紫焔の武士が他人の目に憤怒の形相を錯覚させるように脳天を凹まされたままでいた三角兜の頭部下から覗く三つ目のレーザーアイレンズを灼熱のように真っ赤に激光させて、巨大な全身を覆う甲冑装甲の表面全体に“
射撃の出来るユウナとティアナとキャロが遠距離から、異世界の鉄鉱素材である【強化レディアントスチール】で造られた実弾と魔力弾で暴れるスクルドの足下を狙い撃って進撃を足止めし、スバルとエリオと成長竜体のフリードが機動力を活かしたヒット&アウェイでもって翻弄する事で、後衛で取り込み中の仲間達にスクルドを接近させないようになんとか今のところは踏ん張れている。 だが周辺に展開している人形兵器達による絶妙に計算された妨害射撃や、スクルドの中に乗って操縦しているラコフが怒りのあまりに我を忘れて機体に搭載された【畜炎体循環出力増幅機関】を限界以上に酷使しスクルドの性能出力を天上を越えて上昇し続け暴走させている、等々の要素が重なって、ユウナ達だけでは段々と手が付けられなくなってきている様子だった。
畜炎体循環出力増幅機関、最大出力強化モード──紫焔大将軍≪スクルド≫
『このッ、部外者のガキ共風情がァァァアアアアーーーッ!! よくもよくも次元世界の真の支配者であるこの吾輩の顔にィィーー! その薄汚い“炎”で傷を付けてくれやがったなナアアアァァーーーッ! もう謝っても絶対に許してやんないもん! 忌々しい機動六課のエース共諸共、吾輩が持つ“雲属性の炎”の炎鎧を纏った、この無敵の《柴焔大将軍スクルド》で燃やし尽くしてくれるわああぁぁあぁああああああああッ!!!』
《紫焔大将軍》と為ったスクルドは機体も
その様子を見兼ねたリィンは同じくして両手のグローブに覚悟の熱量を秘めた
「……そこの二人。 フェイトと……タカマチって言ったか?」
「え~っと……わたしの産まれた国では上の名が家名で下の名が名前なんだ。 だから出来たら“なのは”って呼んで欲しいかな~」
──“高町なのは”って名前の雰囲気はどことなく東方風の感じがしてくるが、国民が家名が上に来る名前を名乗る国なんて俺の知る限りでは《西ゼムリア大陸》の何所にも存在していない。 じゃあやっぱり此処は
「そうか……それなら、なのは、フェイト、君達との話は後だ。 今はこの場を収めるのに、力を貸してくれないか?」
「う……うんっ!」
「それは勿論だよ。 次元世界の秩序と平和を守るのは管理局の魔導師である私達の使命だからね!」
「よし。 じゃあ行くぞ、みんなッ!!」
「「「「「「「応ッ!」」」」」」」
今此処に、共に肩を並べて戦い、目の前の“壁”を乗り越える意志と覚悟を示し合わせた“Ⅶの輪の絆で繋がりし有角の獅子の子ら”と“アサリ貝の家族達”、そして“数多の海を守護する戦乙女達”……産まれた世界は違えども、大切なものをこの手で護りたいという思いは彼ら皆同じだった。 その為にはこの場に居る全員が力を合わせる必要があるという事も、それぞれが培って来た経験と本能で理解した。
そしてリィンと綱吉が先頭に立ち、若き英雄達は怒り狂う紫焔大将軍と相対する。 敵は
強大な敵を眼前に、勇壮な面持ちで共に並び立ったリィンと綱吉。
「ところで、さっきから君に聞きたいと思ってたんだが、いいかな?」
「奇遇だな。 オレもアンタに聞きたい事があった……」
そう言って二人は妙な遣り取りを交わすと互いに視線を見合わせて、同時に聞いた。
「「……いったい君(アンタ)達は、何所の誰なんだ……?」」
それは自然に、さっきから気掛かりだったと言う風に首を傾げた二人の口から全く同じ内容の問いが飛び出した。……直後、二人の背後でそれを聴いていたなのはとフェイトの時が一瞬の間氷結し、解凍されたと同時にこれまで以上にない程の驚愕を孕んだ絶叫が、夜の帳を下ろし始める首都クラナガンの空全体へと響き渡った。
「「ええぇえええぇぇええええええええええ────ッッ!!?」」
長年共に戦場を駆け抜けてきた戦友同志のように並んでおいて、君達も初対面同士だったのかいッ! と……。
あとがきコーナー『リリカルマジカル
※「」はセリフ、[]は内心の呟きになります。
アリサちゃん「イエーイ☆ 前話の第一回に続けて連続掲載、【アリサちゃんの“炎の軌跡”講座】! 今年の夏は暑いけど、気合いを入れてやるわよー、グナちゃん!」
グナちゃん「ナツハヤッパエダマメニカギルナー(もきゅもきゅ)」
リィン[このね◯どろいど、人形なのに枝豆食ってる……確かルーファスさんが連れていたローゼンベルク人形のラピスも食事ができていたし、最近の人形技術は恐ろしいな……]
アリサちゃん「ご飯中を邪魔したりしたらグナちゃんは怒って爆発しちゃうので、勝手に進めるわよ。 今回はこの作品のW主人公の片方であるリィンを紹介するわね」
リィン「爆発するのかコレッ!?」
アリサちゃん「今、深海魚がギョッとしたようなリアクションをした残念黒髪イケメンこそが、我らが《英雄伝説 閃の軌跡シリーズ》の
リィン「本人の前で堂々と悪意と嫌味まみれの紹介!?」
アリサちゃん「そんなリィンは今や《
リィン「しっかりと聞こえているぞ、舌打ちが」
アリサちゃん「だけど、リィンがこれ程までにVIPな立場を得るまでに辿ってきた道筋ときたら、それはもう悲惨で災難だらけだったわね。 『後に帝国宰相となる父が持つ家に生まれるも間もなく猟兵の襲撃を受けて実母を亡くし、赤ちゃんだったリィンも心臓が串刺しにされて死にかける』『それからあれやこれやで実父から心臓移植されたおかげで辛くも命を繋いだはいいが、その後に極寒の雪が降る帝国の辺境に棄てられる』『悪運良くその辺境を治めていたシュバルツァー男爵家に拾われて養子になるが、実父から移植された心臓は呪われていた』『時が経って帝国随一の名門校であるトールズ士官学院に入学し、特科クラスⅦ組の中で大勢の絆を育むが、仲間の一人に裏切られて内戦勃発』『内戦の最中あれやこれやと襲い来る試練や死闘の連続を乗り越えて、一度裏切った仲間と決闘の末にようやく和解できたものの、直後の決戦で和解できた仲間が致命傷を受けて死亡。 しかも直後に出てきた黒幕の宰相の正体が自分の実父であった事が判明する』『再会して変わり果てた実父によって内戦の英雄に祀り上げられて、その重い立場を背負わされた苦悩によって日に日にストレスを蓄積させながら、一年の時が経過』それから──」
リィン「いや、もうそこまでで十分だってば! 閃シリーズの内容を半分もネタバレしてしまっているし、これ以上は原作ゲーム未プレイの読者達に配慮してくれないか」
アリサちゃん「え~、これはまだ序の口なのにィ~。 ぶーぶー!」
リィン「序の口って……はぁ。 今思い返すと俺の人生、産まれてからこれまで本当に波乱万丈の連続だったんだなぁ……まあでも、アリサ達トールズⅦ組の掛け替えのない仲間達をはじめ、ゼムリア大陸の大勢の人達が力を貸してくれたから、俺はそれらの艱難辛苦を乗り越えて来られたんだ。 俺は、これからも皆と共に力を合わせて──」
アリサちゃん(リィンにコブラツイスト)「それはいいけどリィン。 あなたの教え子である新Ⅶ組の子達は仕方がないとしても、閃の軌跡シリーズの超ヒロインであるこの私を差し置いて、何でガイウスとエマが先に本編に出ているのよおおぉぉぉーーーッ!!」
リィン「──って、ぎゃああああーーーっ!? ギブ、ギブウウゥゥーーー!!」
グナちゃん(ミニレバ剣装備)「ウルサイ。 シデンイッセン!」
アリサちゃん&リィン「「うぼぁーー!」」
グナちゃん「コンカイノコーナーハココマデダ。 タベタラネムクナッタ」
アリサちゃん&リィン(ボロ雑巾状態)[[ぼ、暴君だーー!]]
グナちゃん「デハ……サラダバー!」
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共闘する英雄達
『
てかシリーズ前半終わって一段落したから一旦インフレが落ち着くだろうかと思っていたら、全然そんな事はなかったZE☆ 何だよあの魔人と化物のバーゲンセールは!? エプスタイン博士の遺産の古代導力器オクト・ゲネシス? 宇宙基地開発計画? 世界全体が
しっかし、今作の宿敵だったマフィアのアルマータは思った以上にヤベー連中でしたね。 まさか“あの大陸最低最悪の邪教団”がシャロンさんの元巣の暗殺組織と合併していまだに生き残っていて、そのヤベー組織と繋がっていたのには背筋が凍りました……。 ボスのジェラールといい、その右腕でサイコホモのメルキオルといい、その他の幹部も本当に良い悪役でしたね。 もし自分がツナ達REBORN!キャラを軌跡シリーズ本編に介入クロスさせるものを書くとしたら、絶対黎の軌跡でやりたいと思いました。(まあ、これ以上連載作品増やすと手が回りそうもないので、書く可能性は限りなく低いですがね……)
突拍子もなく上空から落下して来て助っ人に参上したリィン達《トールズⅦ組》と綱吉達《ボンゴレファミリー》によって絶体絶命の窮地を救われたなのは達時空管理局機動六課前線攻略部隊。
時空管理局地上部隊本部上空に陣取った反管理局軍ミッドナイトの主力航空艦隊、その中心に座する艦隊の司令母艦《ガラハッド》甲板上を守っていた無数の機械兵器群……もといリィン達曰く“人形兵器”と呼ばれた自律機械ユニットの大軍を一息に大半殲滅してみせた異世界からの助っ人達が機動六課前線攻略部隊と共に一丸になって、残る敵軍の御大将のラコフ・ドンチェルが駆る《紫焔大将軍スクルド》と対峙するその光景を、六課の部隊長が予め飛ばしておいた
「あ、ありのまま今起こった事を話すで? 敵の大将のラコフが鎧武者みたいな姿をしたデッカイ魔煌機兵を出して乗りよって、ソイツに前線攻略部隊の皆が全員やられてしもうて、そんでなのはちゃんが全身血だらけになってリミットブレイクを解放しようとしたらさっきこっちで余震観測しとった小規模次元震が発生したと思ったら、いきなり震源座標空間に発生して燃えておった二つの灰色の炎の中から私等と歳が近い二組の武装した集団が出現しおって、そんで何故だかなのはちゃん達を絶体絶命の危機から助けてくれて、トントン拍子に彼等と共同戦線を張る事になって、全身紫色の炎を纏って更に巨大化しおった敵大将の魔煌機兵と全員で向き合った途端に、何でかなのはちゃんとフェイトちゃんがいきなりクラナガンの空中に反響する程の大声で素っ頓狂な奇声を上げた! 何を言っとるのか理解できへんかもしれへんが、私も何が何だかサッパリ分からへんのや! 頭がおかしゅうなりそうやった! 闇の書の復活やとか、聖王のゆりかごが百隻出現やとか、そんなチャチな出来事じゃあ断じてあらへん! もっとハチャメチャが押し寄せてくるような事象の片鱗を見たで! 泣いてる場合じゃあらへんな!」
「落ち着いてください八神部隊長。 寧ろ今の貴女の方がハチャメチャになっていますよ。 大丈夫ですか、頭?」
「IPPAI OPPAI 私は元気や! そんな事よりもあの助っ人の協力者達の事や。 次元震の震源座標空間から出現したという現場状況から推察するに、あの人等は
「はい。 しかも、どうやら彼等が使用していた力はこの度の戦いでミッドナイト軍が正体不明の協力者からの提供を受けて投入してきた異世界の異端技術・異能と同じもののように視られます。 恐らくは敵軍を陰で支援している謎の協力者と同じ世界からやって来た可能性が非常に高いと思われますね」
「これは凄い……映像データから推定される戦闘力も彼等全員、魔導師のトップエースやストライカーと同等かそれ以上の数値が計測されています。 特に助っ人のリーダー格らしき黒髪の剣士の青年と茶髪の
「そんならどうあれ、頼れる助っ人の彼等は敵軍の裏に潜む影の正体を暴く鍵になりそうやな。 この作戦が無事に終わったら、是非とも彼等から詳しく話を聞かせてもらわんとアカンな……」
せわしなく端末ボードを打つ通信士達からリィンやツナ達異世界からの助っ人等の情報が伝えられ、そう呟いて異世界からの助っ人であるリィンやツナ達と共になのは達最前線攻略部隊六名が紫焔大将軍スクルドとの決戦に挑もうとしているガラハッドの甲板上や異世界からの助っ人の別動隊であるガイウスとエマがシグナムとヴィータに合わせて即席ながらも見事な連携を組んで強敵のオーバル・モスカを追い詰めていっている地上部隊本部屋上ヘリポートや地上部隊の武装隊が敵軍の人形兵器群と激しい市街地戦闘を繰り広げている首都クラナガンの各所など、戦域各所の状況が映し出されている空間モニターを流し見した部隊長の女性は、ふと丁度鮮やかな槍捌きを回し鮮烈な竜巻を起こして
「大地のようにガタイのイイ長身の褐色肌でおって、尚且つ涼風のように優しそうな雰囲気を纏う、包容力高い系イケメン……タイプやな」
「……はい?」
クラナガンの時刻は18:00を過ぎる。 地上約5000m以上という管理世界最高層の建築を誇っている地上本部屋上から更に約1000m上空……陽が西へ完全に沈み、ミッドナイト軍主力航空艦隊が未だに陣取るこの空は完全に暗闇に染まりきり、二つの月光と空の中心に君臨せし《紫焔大将軍スクルド》がその巨大な全容に煌々と纏う
「共に戦うのなら名乗っておく。 オレの名前は沢田綱吉。 後ろにいる二人は俺の友達。 皆からは“ツナ”って呼ばれているから、気軽にそう呼んでくれ」
「じゃあそう呼ばせてもらうよ。 俺はリィン・シュバルツァー。 “トールズ士官学院”という所の戦術教官を勤めていて、後ろの青い学生服を着ている五人は俺の教え子達だ。 よろしく頼む。 共に力を合わせて戦おう、ツナ、それになのは達も」
「うん! よろしくね、リィン君、ツナ君。 奇遇だけどわたしもリィン君と同じ戦闘の教官だから、この戦いが終わった後で時間が出来たらお互いの教え子達にやっている戦技教練についてお話しようね♪」
「あ、あのっ! あたし、スバル・ナカジマっていいます! さっきは危ないところを助けていただき、どうもありがとうございました! この御返しはこの自慢の拳で存分に!」
実は互いに初対面だったリィン達トールズⅦ組勢と綱吉改めツナ達ボンゴレファミリー。 こちらを赤い三ツ目のレーザーアイレンズで睨み真正面に機体の肥大化に合わせて
『お前ら吾輩を無視して、な~にを和気藹々としとるんじゃーーーい! どこまでもコケにしやがって、もう許さんぞぉ! 纏めてギタギタにしてやるから、覚悟しろいッ!!』
怒りに燃え盛った紫焔で機体を纏い大幅にパワーアップしたスクルドの威圧を前にしておいて、畏怖するどころか愉しそうに友好を交わしているリィン達の構える態度が凄まじく気に食わなかったのか、紫色の炎に覆われて更に分厚くなった機体の胸部装甲越しにラコフはもう我慢の限界と言わんばかりに怒声を張り上げて、スクルドに構えさせていた機関砲剣を大きく振り上げ、先制攻撃に切り掛かって来た。 ガラハッドの鋼鉄の床を踏み砕き大きく陥没させる程の機体重量と脚力でズッドン! ズッドン! という激震と衝撃波を撒き散らしながら、人形兵器達が包囲する中心に密集しているにっくき英雄等に向かって一直線に突進してくる。
『でりゃぁぁあああああああッ!!』
「ッ! 総員、分散して回避しろ!!」
進行上に陣取っていた味方の人形兵器すらもお構いなく無用に蹴散らし踏み潰して、機関砲剣の砲身の先に取り付けてある高周波ブレードに激しく迸る紫色の炎熱を纏って豪快にリィン達へと振り下ろした。 リィンの咄嗟の指示が功を奏し、全員スクルドの不意打ち先制攻撃を緊急回避する事に成功するが、周囲を取り囲む人形兵器達が彼等の行く手を阻む。
「俺が敵大将の魔煌機兵を引き付ける。 トールズⅦ組特務科各員、ARCUSⅡの戦術リンクを駆使して敵の包囲を破れ!」
「山本と獄寺君、残った一体のモスカの動きを封じてくれ。 オレはリィンと共に大将を叩く!」
「スバル以外のFW陣とフェイトちゃんは周りの援護をお願い! スバルはわたしと一緒にリィン君とツナ君のサポートを!」
「「「「「「「了解ッ!!」」」」」」」
だが彼等は全員、それぞれ過去に数多く死闘を潜り抜けてきた歴戦の英雄だ。 リィン、ツナ、なのは──団体別にそれぞれのリーダーの三人が指揮下にある仲間達に適格な役割分担と行動指示を即座に伝達し、敵の人形兵器群からの一斉射撃が来る前に全員一目散と回避して、皆それぞれ役割分担された通りの標的へと向かっていく。 この程度の対処などはお手の物だ。
「アル、あたしとリンクを繋いで一緒に行くわよ!」
「了解です、ユウナさん」
「ヘッ、ならオレはクルトとだな。 遅れんじゃねぇぞ!」
「言われるまでもない。 そっちこそ下手を打つなよアッシュ!」
鉄の粉塵を撒き散らして派手に打ち付けた床から機関砲剣の高周波ブレードを引き抜いてこちらを追撃して来る敵軍大将の足止めに、太刀を手に頼もしく向かっていく、頼れる自分達の教官を背にユウナ達トールズ士官学院第Ⅱ分校Ⅶ組特務科生徒一同は早速、敵人形兵器群の包囲を破りに取り掛かる。 その際に
「あらあら、わたし一人だけ溢れてしまいました♡ なんだかちょっぴり淋しいですねぇ、うふふ」
『あの人達、いったい何をしているんでしょうか?』
『さあね。 見たところミッドナイトの連中も使っている“導力”という異世界のエネルギーの
トールズⅦ組の五人の中で奇数という人数の事情でリンクを繋ぐパートナーがおらず一人余ったミュゼが何故か愉しそうに微笑む横で、彼等の援護に来ていたティアナ達がユウナ&アルティナとクルト&アッシュの二組を繋いだ不思議な“
しかし、魔法の世界しか知らないティアナ達にとって、魔法ではない未知の異端技術である
「真っ直ぐ一直線に、正面からブチ破る! でやぁぁあああああああッ!!」
まずは裂帛の気合いと共に銃
「ええーーっ!?」
「あのピンクのポニーテールの人、一人で真正面からあれだけ多くの数が集まった敵の包囲網の中央へ突貫していってますよ!」
「うそ、冗談でしょう!? あの数のど真ん中にバカ一直線の突攻をかますだなんて、無謀すぎるわ! バカスバルじゃあるまいし」
無謀にも敵集団の中央に単独で突撃していくユウナに顔を青ざめさせて驚愕を露わにするティアナ達。 それは当然の事だ。 圧倒的な物量の敵に完全包囲されている状況で単独で飛び出せば容赦なく挟撃されて即蜂の巣にされる事は火を見るよりも明らかだろう。
「っ!? 正面左翼と右翼の敵部隊の砲門が一斉にあの人の背中に!」
「あ、危ない!!」
突破を狙っている
普通ならそうなるのが必至だろう……しかし、今のユウナには“繋がりの力”で結ばれている
「させません!」
「敵部隊
『崩したわ!』
そして
ユウナとアルティナによる目にも留まらぬ超速の
「今だ! タコるぜクルト!!」
「ああ!」
「「そらァ! / セイッ!」」
敵部隊が怯んだまた一瞬の内に跳び掛かってきたアッシュが長柄の
「よしッ! 最後は五人で一斉に蹴散らすわよ!」
「了解」
「承知」
「これを待ってたぜ!」
「うふふ、ようやくわたしも皆の輪に加わって活躍できますね♡」
「「「「「ヴァリアントレイジ!!!」」」」」
その名が勇壮に叫び放たれた直後には、既に彼女達トールズ第Ⅱ分校Ⅶ組特務科による一斉攻撃が壊滅状態の
「一瞬で敵の一部隊を……全滅させた……!!」
「え……ええええっ!!?」
「今……いったい何が起きたんですか……?」
「キュルルーーッ!」
開いた口が塞がらないとはこの事か。 ざっと数百体は居た
──あのバカスバルに近しい突撃一直線の女性(ユウナ)が無闇に突出して背中を攻撃目標外の敵部隊に狙い撃ちされそうになった時に、彼女と“
だが驚く事に、機動六課随一の分析力を有するティアナの思考回路は確信無くも、たったの一見でユウナ達の使う“繋がりの力”の核心部分を見抜きつつあった。 これは《ARCUSⅡ》同士を介して接続した導力の
“戦闘は数が多い方が勝利する”と言われているが、
そんな集団戦闘において、連携する際に味方と
──極めつけに最も驚愕したのは、あの人達が《ヴァリアントレイジ》とか言っていた最後の“全員一斉総攻撃”ね。 アレは正直、私の目じゃああの人達が攻撃した瞬間が全然見えなかったわ……。
しかし、極めて有能な分析力を持つティアナも、流石にユウナ達が最後に敵部隊を全滅させた時に行った、電光石火の如き早業の全員一斉総攻撃──《ヴァリアントレイジ》は見破れなかったようだ。 詳しいシステムの詳細については後々の機会に話すが、今のところは《ARCUSⅡ》を持つ五人以上が集まる事で
「これって、僕達の援護は必要ないのでは……」
「あ、ははは……確かにそうかもね」
たったの五人、しかも誰一人無傷で数百体もの敵人形兵器部隊を難なく全滅させてしまう程の強さとチームワークを見せたユウナ達に、先のJS事件でスカリエッティ一味とガジェットドローン程度ぐらいしか交戦経験値の無い未熟者の自分達が手助けに割って入るなどと、余計な御世話なのではないかと思った機動六課前線メンバー最年少ペアの少年少女が無理して苦笑を浮かべている……だが、その間に先程ユウナの背中を弾幕で狙い撃っていた、
「どうやら私達の出番が無くなる心配については杞憂のようね。 ……エリオ、キャロ、フリード、助けに入るわよ!」
「「は、はい!」」
「キュクー!」
FW陣年長者のリーダーであるティアナの号令と共に、今度も逆境を破壊すべく三人と一匹のストライカーはユウナ達を挟撃しようとしている敵人形兵器群の背後へと踊り掛かっていった。
……その一方で、未だに生き残っているガラハッド上の人形兵器の中でも強敵中の強敵である、残り一機のオーバル・モスカの足止めに回っていたのは、獄寺&山本コンビにフェイトを加えた三人の精鋭チームであった。
「フォトンランサー!
「くらえっ!
三人は飛び道具や射撃魔法を多用して、オーバル・モスカを隠れる障害物が無く逃げ場のない空中へと巧みに誘導。 フェイトは飛翔魔法、山本は左手の指に挟む三本の“
「
数多の死線を潜り抜けてきた十代目ボンゴレファミリーの一員である山本と獄寺、時空管理局の執務官のフェイト。 いかにリィン達の世界の技術である“導力結晶回路”を搭載した最新鋭の“モスカ”であろうとも、流石にこの百戦錬磨の精鋭三人に挟み撃ちにされては下手に身動きが取れなかった。 包囲を突破しようと試みて一人に向かって突進してみれば背中を残りの二人に狙い撃ちにされ、ならばと指先から炎弾を連射して満遍なく三人へ弾幕をばら撒いてみれば山本の刀が放つ“
「オレの“雨属性の炎”は万物の全てを
「す、凄い……相手の射撃や動きの速度も威力も減衰させてしまうだなんて、反則的な……(だけど、なんで煽り言葉の例えが野球?)」
その右手に誇らしく握られた“燕の彫刻が施された両刃の刀”──《
マフィアや
『──ピピピッ、敵性戦力ノ解析完了。 時空管理局遺物管理部機動六課所属《フェイト・T・ハラオウン》──固有戦力脅威度判定“S”ランク……並ビニ、データベースニ該当ガ無イ
「ドヤ顔してる場合か野球バカが! 油断してんじゃねぇぞ。 あの紅いモスカのヤロー、何か仕掛けて来やがるつもりだぜ!!」
山本の時雨金時の刺突を受けた腹部を押さえて巨体を蹲らせながら不気味に機械音声で何やら呟いている敵のオーバル・モスカを対面に挟んだその先から獄寺がそう警戒を呼び掛けてくる。 そうとも、死ぬ気の炎を持ち、その他にも
『直チニ敵ノ包囲網ノ突破ヲ敢行シマス。 攻撃
機械音声でそう言ってガスマスク越しのアイレンズが気の緩んだ山本に狙い定めたように殺伐と朱く発光した直後にオーバル・モスカの巨体を青く光る魔法術式が球状に覆う。
「この術式はさっきの……まずいっ! 発動する前に奴の詠唱を止めて!!」
「ちっ!」
その術式と同じものを、先程の地上本部屋上ヘリポートで交戦し今現在も足止めに後方に残ったシグナムとヴィータが助太刀に現れた異世界の騎士と魔法使いと共に奮戦継続中である別のオーバル・モスカが使用していたのを、見たのを記憶していたフェイトが【それを撃たせては危険だ】と感じ取り鬼気迫る形相になって敵の詠唱を妨害するように獄寺へと呼びかける。
獄寺にとって
『
「ダメだ、間に合わないッ!」
『《ブルーアセンション》!!』
「ちぃぃっ! 避けろ山本ッ!!」
「嘘……やられちゃ……た……ッ!!?」
渦の中心に居た山本は完璧に水流爆発の勢力が最も強いだろう爆心に完璧に取り込まれてしまっていたのは見るからに明らかだった。 余波によって発生した水蒸気の濃霧が辺りに蔓延していく中、フェイトは知り合ったばかりの自分より歳下の少年剣士の尊い命が卑劣な次元犯罪組織の兵器によって奪われてしまった可能性を脳裏に思い浮かべて茫然自失と立ち尽くす。
「……」
獄寺も浮遊台の上で腕を組み、硬い表情で山本が水流爆発に飲み込まれた方を見据えている。 山本が居た空間は高圧水流の炸裂爆発により発生した真っ白な濃霧に覆いつくされて中の様子を目視では確認できない。 従って敵の《ブルーアセンション》の直撃を受けたと思われる山本の安否は不明。 しかし、もし彼が無防備に超高圧水流の渦に巻き込まれたのなら、仮に悪運良くも生存していたとしても五体満足でいる可能性は絶望的だ。 何しろ超高圧の水流は
『……ピピピ、
術を放った
「おいおいモスカさんよぉ、つれねーな。 人を勝手に
『──ピピッ!?』
突発として蔓延していた真っ白な濃霧が濛々と
「時雨蒼燕流、守式七の型──
「……生き……て……ええええっ!?」
「ちっ! 水の攻撃じゃ、やっぱピンピンしてやがったかコノ野球バカ」
「そしてこっちの子もさっきのあの黒髪の子に【避けろ】と言ってた割に、まるでそれと矛盾して心底残念そうに悪態を吐いてる!?」
あれだけの規模の水流爆発を高速回転剣だけで受け流しきった山本と同じ世界の仲間の身をあんじているのか素っ気ないのか判らない態度の獄寺に、フェイトは思わず白目で素っ頓狂な声をあげてビックリ仰天してしまう。 いったい何なんだ、このどこか調子を狂わされる異世界の助っ人達は?
「ったく……遊んでんじゃねぇぞ。 ちょっと変わった機能が追加されてようが、
「へへへっ、りょーかい♪」
そんなこんなで未だに白目を剥いて泡食ってポンコツ化している執務官の事は横に置いておき、そろそろ本気を出して敵を撃破するとして示し合わせたボンゴレの嵐と雨の守護者両名は、それぞれが身に付けていた【
「出て来やがれッ、《
「ニャアア!」
「待たせて悪かったな、出番だぜ《
「ピュイ!」
獄寺の
≪
≪
──今度はカワイイ子猫ちゃんと小さな燕が、あの二人の手に掲げられた、
何故そこで愛ッ!? ……ではなくて、何故そこで愛くるしい小動物ッ!? フェイトは獄寺と山本が反撃に転じるこの局面で見るからに可弱そうな小動物を出してきた事に、更なる困惑を覚え内心で忙しく疑問の声をあげている。 いかに無数にある次元世界を股にかけて数々の魔法事件や厄災神秘と相対して解決してきた時空管理局員魔導師である彼女達とて、これだけ立て続けと自分の理解の及ばない事象を矢継ぎ早に前にしては、頭から煙が昇るのも無理はないと言うものだろう。 これでどうやって戦えばいいんだ?
「そんじゃ、いくぜ瓜ッ!」
「こっちもやるぜ、小次郎!」
だが災難な事に、まだまだフェイトの脳細胞はボンゴレ守護者二人による非常識劇場によって休みなく焼き殺され続けるのだった。
「「
意★味★不★明。 二人が同時に叫んだ直後、瓜が「ニャアアア!!」と咆哮して眩く光放った刹那に獄寺の左手の
荒々しく吹き荒れる疾風──≪Gの
すべてを洗い流す恵みの村雨──≪
『ピピッ!!? 敵性戦力SランクUNKNOWN二名、共ニ
「おっと、逃がさねーぜ! 同時に決めるぜ獄寺、金髪のねーちゃんも!」
「あは、あはははは……あんなにカワイイ小動物が武器と合体しちゃった……
「テメェがオレに指図すんな! それから其処の“デカパイケツマルダシ女”も何をテンパってんだよ! 数えてんのそれ全部素数じゃない合成数だからな!!」
「──9……10……ハッ!? デカパイケツマルダシ女……って、それ私の事ッ!!?」
山本と獄寺の武装が変化したと同時に二人の戦闘能力値が格段に
『退避! 退避!』
「ほら、あーだこーだ言ってる間に敵さんが逃げちまいそうだぜ? 文句なら後で聞いてやるから、さっさとやろうな♪」
「チッ! 後で覚えてろよ野球バカ。 デカパイケツマルダシ“痴女”もいい加減に正気に戻ったか? なら、とっととあのモスカのヤローをスクラップにするぞ!!」
「一言増えてるし!? ああーっ、もうこうなったら何も考えずにやってやる!!」
フェイトは近いうちに真ソニックフォームの衣装デザインを変更する事を決意して、考えるのを止めた。
「貫けぇぇッ!
「時雨蒼燕流、総集奥義──
「ライオットザンバー・カラミティ! てりゃあああああああッッ!!」
夜天の暗闇の中へと逃亡しようとし両手両足の噴射口から炎を全出力で吹かして上空高くへと飛び立とうとするオーバル・モスカに、三人三方向からそれぞれが持てる必殺技で全力全開の挟撃を仕掛ける。
獄寺がGの
今回の『炎の軌跡講座』はお休みです。
代わりに活動報告では、昨日からこの小説の物語中に登場する味方陣営の合体戦技──《コンビクラフト》のアイデア募集を開催しました。
これからはこの作品の更新が進み次第で、オリキャラやオリジナル
ではまた次回更新で会いましょう! コンビクラフトのアイデア応募もお待ちしております♪
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更に共闘する英雄達
ファルコム公式では『
活動報告のオリジナルコンビクラフトもまだまだ募集中です! (てか、まだ誰の一つも書かれてないな。 やはり企画が地味だったかも……)
第一管理世界ミッドチルダの首都クラナガンの夜空を我が物顔で埋め尽くす反管理局軍ミッドナイトの主力艦隊。 その中心に未だ陣取っている空中司令母艦《ガラハッド》の銀色豪奢だった外観は、その艦上にてミッドナイト軍が擁する人形兵器群を相手に取って大太刀回る、三世界の若き英雄達による八面六臂の大攻勢によって至る所を隅々まで爆砕され、今や元の威厳高い玉座の如き荘厳さは見る影も失くなっていた。
『こぉぉぉの異世界のクソガキどもぉぉおおおーーーっ!! 部外者の分際でよくもこの新たな次元世界の支配者たるこの吾輩の邪魔をしたばかりか、吾輩の大事な
ユウナ達の大暴れで周囲の景色が無数のドーム状の爆発によって次々と吹き飛ばされていく。
そのド真ん中で、今まさにミッドナイト軍の
ラコフが内部に乗って操る、“
「はっ!」
しかし、彼は冷静に、あろう事か手に携えていた太刀一本を盾にその何百倍も巨大な質量を持つ紫焔の機関砲剣を受け止めてみせた。
『ななな、なっにィィィイイイイイーーーーッ!!?』
そんなバカなッ!? スクルドの
しかし、リィンは過去に起きた世界を脅かす数々の事件や災厄に立ち向かう中、幾多の試練と死線と運命を乗り越えて、今や彼の故郷の世界において一流の武人の一人に名を連ねる程に至っている。 攻撃を受けるのに合わせた絶妙な重心移動と全身運動を利用して、
それに付け加えると、スクルドの攻撃を罅割れ一つ生じさせずに受け止めたリィンの太刀は《神刀【非天】》という銘の業物であり、これは少々
「今だツナ、打ち込め!」
『しまっ──』
「うぉぉおおおおお!」
スクルドの得物をリィンが抑えている隙を突いて、闇夜の大空から“
直線の飛翔速度は文字通り爆発的であり、真ソニックフォーム時のフェイトよりも頭一つ速く、何よりも夜の闇や周囲に今も巻き起こっている無数の戦闘爆発をも
『のぎゃあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ーーーーッ!!!』
そんな速度と猛威を丸ごと乗せて叩き込まれたツナの拳の威力は、紫炎大将軍の分厚く高熱の紫焔に覆われていた顔面を数十
「
『って、穴の中から六課の戦闘機人の小娘がっ!? ちょっ──』
「一撃必中、ディバインバスタァァアアアアーーーーッ !!」
スクルドが殴り飛ばされて来るのを見計らって昇降運搬口の中に身を潜めていたスバルがカタパルト発進する戦闘機の如き勢いで飛び出し、丁度真正面に迫り来たスクルドの広い脳天に零距離魔砲弾を叩き込んだ。 右手のリボルバーナックルで大振りに殴りつけるようにして撃ち出された水色の魔力の塊が紫炎大将軍を
『──そんなバナナァァァアアアーーー!!』
畜炎体循環出力増幅機関をフル稼働させて
『んゲゲッ!? なのは嬢!!』
「うん、丁度いい角度で打ち上げたねスバル。 ピッタリ計算した通りなの!」
スクルドが吹っ飛ばされた軌道上に何故なのはが事前に砲撃魔法の
──四人でスクルドに攻撃を仕掛ける直前、リィン君がツナ君に耳打ちで多分「俺が敵の攻撃を受け止めるから、その隙になんとかして背後に見える穴へ敵を突き落としてくれ」って感じのお願いを伝えながら、同時に“二つの月の間”を指差しして、わたしに空に飛び上がるように促してきた。 わたしは一瞬それがどういう意味なのか理解できなかったけれど、その直後にリィン君がスクルドの背後に見える穴──
その後はリィンに送られた手信号に従い、飛翔魔法で上昇しスバルが身を潜めた運搬昇降口から見上げて夜空に浮かぶ“二つの月の間”の位置に待機。 そしてスバルから打ち上げられてくる紫焔大将軍に連携攻撃の
「そして手筈通り、
『チチ、チキショォォオオオオオオオオオーーーーーッッ!!!』
相手にしてやられた悔しさのあまりラコフは軍帽の上から頭を狂うように掻き毟り、盛大に癇癪をあげる。 先程のように
「《エクセリオンバスター》
ズキッ!
「──グッ!?」
カートリッジによって瞬間増幅された炸裂魔力で撃鉄を打ち、黄金の穂先に留められていた四つの魔力球体が目前に迫った紫焔大将軍に向かって巨大な魔力の奔流と化して解き放たれる……まさにその決定的瞬間、急になのはの胸の奥に
──しまった!
そう彼女が自分が致命的な失態を犯してしまった事を認識した時にはもう取返しは付かなかった。 砲撃発射は中止され、撃ち放たれようとしていた四つの魔力球体は無数の桜の花弁の如くクラナガンの夜空に舞散って消えていく……。
『えっ!? 不発? ひょっとしてなのは嬢、魔法ミスっちゃったの? ……ニヤリ!』
エクセリオンバスターは不発……それを垣間見たラコフはこれを絶好の好機と視てほくそ笑んだ。 なのはが自らの失態に狼狽えている隙に武装を持っていないスクルドの左手を操作して機体の頭を押し上げているスバルの
『ドンッ、チェルルルルルルーーーッッ!! 管理局の
壊滅的打撃必至の窮地から一転して反撃の好機を得たラコフは両目から汚い涙を
「くっ!」
『にっくき時空管理局のエース・オブ・エースよ。 吾輩の積年の恨みをしこたまブチ込んでくれるわ! そして奈落へ墜ちろぉぉぉおおおおおおーーーーーいっ!!』
「
『ひでぶっ!?』
身を隠す障害物が一切無い空中域で無防備な様を迂闊に晒してしまってその凛々と美しく整った顔に焦燥の色を浮かばせて呻く次元世界の英雄たる白き魔導師の少女へと向けて、紫焔の機関砲剣の持つ燃える刺突剣付きの太くて大きな砲身から今まさに不屈の星をも撃ち落とす無限の炎弾が撃ち放たれようとしたその直前に、炎を纏う
『ぎにゃあ"あ"あ"あ"っ!? 吾輩の黄金の大王おマンモスがぁぁくぁwせdrftgyふじこlpーーーーッッ!!!』
不意に死角からの攻撃を受けた事への動揺に加え、機体が受けたダメージ箇所から昇ってきた衝撃によって尻に敷いていた
「今の声は……?」
撃たれる前に飛来し割り込んできた
「リィン……君……う"っ……げほっ、ごほっ!」
彼に再び危機を救われたなのはは一瞬だけ申し訳半分嬉しそうに口元を綻ばせるが、痛んだ胸から咳がこみ上げてきて息苦しそうに手で胸を押さえだした。 そう……実はエクセリオンバスターが不発になったのは、病み上がりのその身体でこれまで無理に高ランクの魔法を酷使し続けたツケが回って彼女のリンカーコアに掛かっていた負担が重なりに重なって、もうとっくに限界を迎えていたのだ。 リィン達が援軍に現れる前までに蓄積していた身体の負傷と体力こそはミュゼの
これではもう今のなのはは高出力の砲撃魔法は無論、己の魔力を消費し続ける飛翔魔法を維持し続ける事も苦しいだろう……そうなると当然、彼女は飛翔魔法の制御を失ってそのまま事切れたように真下へと落下していく……しかし、彼女の身は硬い鋼鉄の床の上に叩き付けられる事はなく、それよりも前に咄嗟に縮地を使い目にも留まらない速さで落下地点へと駆け付けたリィンの逞しい両腕によって抱き止められた。
「なのは、大丈夫か?」
「う……うん。 ごめんね。 また、君に助けてもらっちゃった……」
「すまない……君の身体に流れる“
そう心の底から申し訳なさそうに両腕に横抱きしたなのはの眼を真っ直ぐ見つめて真摯に謝罪の言葉を彼女に伝えるリィン。 彼は自分以外の他人を危険な目に遭わせる事を大いに忌避する
「にゃはは……気を遣ってくれてありがとう。 君はとても優しいんだね」
気遣いが少し大袈裟じゃないかと思うところもあった為に少し苦笑を漏らしたが、相手に負けず劣らず律義であるなのはは助けて貰った御礼はちゃんと言う。 他人に怪我をさせたくない気持ちはなのはにも
「でも……そろそろこの恰好でいるのはちょっと恥ずかしい……かな? 自分と歳の近い男の人にこうして抱っこされるのって、あんまり慣れてないからさ、わたし……」
なのはは若干頬を朱に染めて戸惑う気持ちをリィンの胸に文字通り直接訴えて、乙女の恥じらうようにそっぽを向く。 なのはの身体は今、リィンの剣で鍛え抜かれた逞しい両腕によって横抱きに抱えられている姿勢だ。 それは所謂“お姫様抱っこ”と言われる、女の子に生まれたなら誰もが一度は夢に見るであろう憧れの異性にしてもらいたいシチュエーションというもので、況してや美形に生まれる者が大半居る次元世界中においても稀に見ない
「ぁ……ああっ!? ごご、ごめん!! 直ぐに降ろすよ」
言われて今の自分達の体勢が男女の関係に大変不健全な恰好である事をようやく認識したリィンは華も恥じらううら若き女性であるなのはに対して大変失礼を働いた事を大慌てで謝りながら、しかし割れ物を扱うように彼女の身体を足から丁寧に床へ降ろした。 いかんな、これではまたアルティナに「不埒です」などと言われてしまう……そう懸念を思い馳せつつリィンは少々気まずく指で蟀谷を掻いて、もう二度と同じ過ちはしないと誓い反省した。 (まっ、彼は前科だらけで女難を受ける運命の星の下に生まれているのだろうし、深く反省しても正直無駄だろうとは思うが……)
「そ……それにしてもよくあんな即興でわたし達三人の能力を把握した連携攻撃を考え付くなんて凄いよリィン君! わたしでも映像データを取らないと、会ったばかりの人との連携を考えるなんて難しいのに」
「いやいや、さすがにトリム級の重量がある魔煌機兵を上空に吹っ飛ばすだなんて俺にも想定外だったさ……。 まあでも、初めて会ったばかりの人間と組んでも、その“立ち振る舞い”や“纏っている空気”などを
そうリィンが一瞬艦首の方を横目で流し見ながら説明してくれた戦闘分析方を聴いてなのはは思わず「す、凄い……」と目を見張った。 彼が横目に見ていたのは、
目先に映した視覚情報を並の人では意識し得ない隅々まで委細把握して十全に使うばかりか、戦場の環境状態を少し観察しただけでその場で交戦していた者達の戦闘能力をまるで前もって見ていたかのような精確さで理解するなどと、とても人並みの観察力では成し得ない御業だろう……そのような普通から大逸れまくった分析方を難の事など無いように言ったリィンに対して、聞いた本人であるなのはは無論の事、鉄床に刺さった頭部をなんとか引っこ抜こうと必死に足掻いているスクルドから反撃が来る可能性を警戒しつつも近くで話をちゃっかり盗み聞きしていたツナもまた驚き混じりに関心を向けている。
──驚いたな。 戦う相手の手札を出す前から読めるだなんて、リィンの見切りはスクアーロや幻騎士以上かもしれない……これは
それに並ぶか上回る予測が出来るとするなら、己が過去に記憶している猛者の中だと
『ムギュー! ムギュー! ……ぶはぁぁあああッ!! 死ぬかと思ったーーー!』
丁度彼らの目の先でさっきまで甲板の鉄床に頭部から突き刺さって犬○家のポーズになっていたスクルドが機体の胴をブリッジに曲げて両足を床面に下ろし着け、鉄床の下にすっぽりと埋まった頭部を昭和ギャグ漫画のようなシュールな絵面になって強引に引っこ抜いていた。 床下に埋まっていた間は内部の
そしてそれを止めた紫焔大将軍が、敵大将の戦闘復帰によって緊張感を戻したリィン達の方へと向かい、彼らの前に再び聳え立ち相対した。
『キキキキ、キサマ等よくもよくもぉぉぉおおおおーーーーーッ!! こぉぉの異世界の青二才とクソガキと魔導師の小娘共風情がっ! 次元世界一……否ッ、全多次元宇宙一、偉大なる支配者にして世に生きる誰よりも尊ばれるべき高人たるこのラコフ・ドンチェル様をっ! キサマらのような恥知らずに“正義の味方”ぶった偽善者の若造共がっ! よくもこんな好き放題にやってくれやがったなーーーーーッッ!!!』
ここまでにリィンやツナら異世界の英雄達が現れて機動六課にとどめを刺すのを邪魔に入られてからというもの、結託した三世界の若き英雄達の巻き返しによって散々ボロクソやられてきた事で、ラコフの怒りとストレスはもう限界の天元を突き破ってしまっていた……その狂乱の殺怒を叫び散らかすがままにスクルドが自身の巨体を弓形に大きく海老反らせ、機関砲剣の
『四人全員纏めて串刺しの刑じゃーーい! くらえぇぇぇえいっ!!』
「っ!? 総員散開!」
憎き英雄達を射殺さんとして、
リィンが他の三人に咄嗟の緊急回避を促し、四人はバラバラに散らばってスクルドの強刺突から逃れる。 その直後、一瞬前の時に四人が居た空間を紫焔の機関砲剣が巨竜を貫く撃鎗のように刺し貫いた。 獲物を仕留め損なった為に、空を切って穂先が止められた直後そこに纏わりついた
「げげっ!? 突きを空振りした余波が
回避直後に《ウィングロード》を敷いて宙を
「気を付けろ。 奴のあの攻撃がまともに当たったらオレ達は一巻の終わりだ」
「ていうか、なんだか
そうスバルが敵大将に起きている明らか強大化に理不尽を喚いている間に、その敵大将が両手に携えた
『くらえくらえくらえくらえくらえええええぇぇぇーーーーーい!!』
「ちょっ!? アイツまたメチャクチャ撃ってきt──って、あぶなっ!」
矢衾の針のような絵面に飛んで来た炎弾の横雨を寸でのところでスバルが魂消たような格好を取って避ける。 その直後に機関砲剣を乱射するスクルドの方から見て丁度その奥側に位置取るように滑空しているツナに外れた流れ弾が降りかかっていくが、彼は
スバルはスクルドの周囲をぐるっと何週も旋回するようにして螺旋街道状にウィングロードを追加展開し、
ラコフが逃げる鹿を追う狩人のように周囲の宙に逃げ回るスバルを執拗に狙い撃ちして視線と意識を
それでも掠り傷程度の僅かなダメージは入ったようだが、それが逆に悪く、宙に逃げ回るスバルに意識が向いていたラコフに気付かれてしまった。 リィンとなのはは得物を弾き返された反動を受けて麻痺した利き手の震えにかまけず、スクルドからの反撃が振るわれる前に咄嗟とその場から大きく跳び退いて敵の
『ドンッ、チェルルルルーーーッ! どんだけ避けたって無駄無駄無駄無駄ーーーッ!!』
「くっ! いったい、どうなっているんだ? 幾ら撃たせても、あの
「それだけじゃない。 放たれてくる
非常に優秀な陸戦機動力を持つリィンは絶妙な呼吸と脚捌きで急速な加速と減速を連続しながら駆ける事で複数もの“自身の残像”を生じさせ、それ等を疎らの位置間隔に皆バラバラの軌道を疾走させる事で敵からの射撃に的を絞らせない。 その一方、なのはは自分のような空戦魔導師にとって主戦機動能力で命翼とも呼べる飛翔魔法が使用不能となり、あまり得手としていない自らの足を地に着けての二次元機動をせざるを得なかったが、巧妙に
だがしかし、スクルドが紫焔の機関砲剣で無尽蔵に乱発してくる“雲属性の炎”の弾丸は、それぞれが巧みな回避走行技術を駆使して逃げ回る二人を掠めてガラハッド艦上の彼方此方に被弾から炸裂爆発していき、それは
奴にこのまま撃たせ続けていたら、たとえ誰かに当たらずともいずれこの
「──って言うか、
「恐らく【雲属性の炎】が持つ“増殖”の特性が原因だ。 あの
「ええーーーっ!? それじゃあ、あの中で操縦している
「そうなるな……」
スクルドが下平面を駆け逃げるリィンとなのはに攻撃の意識を向けている間、空中で反撃の隙を伺っていたツナとスバルは奴の
「じゃあどうしようもないじゃないですか!? だって、
無限に
先のJS事件で使われた古代戦艦《聖王のゆりかご》も首都航空隊の主力部隊の攻撃でも傷一つ付けられなかった程に堅牢な外部装甲と艦の破損個所を復元する防衛機能、そしてこの第一管理世界ミッドチルダの衛星軌道上に上がる事で二つの月から大量の魔力を取り込む事で艦の持つ性能を強化するといった、非常に強力な性能を誇っていた。 だがしかし、紫焔大将軍の無限強化能力にはそれすらも遠く及ばないだろう。
ならばスクルドを操縦し無限強化能力を発揮させている供給源の“雲属性の炎”を機体へと流し込んでいる敵軍総司令官のラコフを直接叩いて無力化すればいいのだが、しかし奴は今も無限に分厚く肥大化し続けている紫焔の鎧に覆われている
「ナッツ!」
「ガウッ」
ツナは下で紫焔の機関砲剣を無限乱射し続けながら尚も自らが纏う紫焔の鎧も肥大化させ続ける紫焔大将軍をキッ! と鋭くした目で見据え、同時に《ナッツ》という
≪
「炎の鬣の子供ライオン!?」
「ガオ」
「かっ、かわいい……♡」
眼は大きくクリクリしてて口は小さい、身体は手乗りサイズで手足もちっちゃく、首回りを覆う“
「いくぞナッツ!」
「ガオォォーーッ!」
「ツナさん!?」
そして肩に乗ったナッツと共に脇見も振らず、未だ留まる事なく破壊力を上昇させて炎弾を撃ちまくりながら全身に纏う紫焔の鎧を増大させ続けて最早手が付けられない状態の紫焔大将軍へ宙から正面突撃していくツナに、スバルはナッツに見惚れて一時和んでいた表情を一変させて忽ちに慌てふためきだす。 リィンとなのはが折角敵の視線と意識を下へ引き付けてくれているってのに、正面から行っては気付かれる!
『ドンッ、チェルルルーーー! どうやらキサマから死にに来たようだなぁ?』
当然、スクルドを中から操っているラコフは、よく見える正面の空中を派手に
「いけない、あの無限に炎弾を連射できる敵の
「ツナさん、逃げて!!」
無謀にも敵の正面に神風突攻を仕掛けに行って、相手射線の
二人が焦っているのも当然だ。
『うっちゃりぃぃ! んあっ、死ねぇぇぇええええーーーーいッッ!!!』
「やめてーーーーーーーーッッ!!!」
二人の麗しき戦場の
しかし、可憐な美少女がどんなに叫んだところで、もう止められない。 機関砲剣の砲口から火を吹くように撃ち出された無数の炎弾が無防備を晒して滑空突撃するツナとナッツへと襲い掛かる。 最早万事休すか……ッッ!?
「──ここだッ! 吼えろ、ナッツ!!」
「GAOOOOーーーーN!!!」
無限の炎弾が雪崩掛かろうとしたその一寸前、
『ンナッ、ヌァァニイイィィィーーーッッ!!? 吾輩の《十二月の子持ちししゃも(機関砲剣の名前)》が撃った“愛と
どう見たってひ弱そうな小獅子から放出された羽虫の鱗粉の如き脆弱な炎なんかに自分の持つ最強(自称)の“雲属性の炎”の
「八葉一刀流──
ツナの“大空属性の炎”でスクルドを石像化してから間髪入れず、ツナがやられない事を
「秘技・
そしてそのまま、灰色の闘気を全身に纏って閃光と化し、フェイトやツナに勝るとも劣らぬ
「仕上げだ!
秘技を放ち終えたリィンが左腰に差した鞘へ緋色の刀身を収める間も待たず、今度は彼が追撃をしに来る事を
「見たか……八葉が一刀」
「これで終わりだ!」
かくして、激しく燃える炎に包まれて山のような巨体を崩壊させていく紫焔大将軍を背にして、異世界の歴戦を潜り抜けた《灰色の騎士》と《大空の守護者》両雄は並び立つ。 静かに緋色の太刀を鞘へと収め、炎の拳を掲げて夜空を
あとがきコーナー『リリカルマジカル
※「」はセリフ、[]は内心の呟きになります。
ツナ「リボーンに言われて来てみたけど、誰も居ないし、真っ暗じゃないか……」
ふみゅ☆
ツナ(足下を見る)「ん? 何か踏んだ──」
グナちゃん(踏まれてぐちゃり)「リバースカードオープン! キンガシンネン!!」
ツナ「──んげげーーっ!!?」
グナちゃん(発光)「サラダバー!」
ドッカーン!
ツナ(爆心地)「ぎゃーーーーっ!!」
アリサちゃん(茄子を頭に乗せ、鷹に運ばれて空から登場)「1フジ、2タカ、3ナスビ! 新年明けましておめでとー!(お正月過ぎちゃったけど) 天空の花嫁も足下に平伏す、RPG界No.1ヒロイン(願望)【アリサちゃんの“炎の軌跡講座”】! 待望の第3回目よッッ!!」
グナちゃん(形状記憶素材の特別製なので爆発しても無事)「イクラナンデモオソレオオイワ。 ビ○ンカニヤキドゲザシロ」
ツナ(黒コゲ)「フ○ーラには!? ていうか、何時の間にか景色が富士山の頂上に変わってるーーーッ!!」
アリサちゃん「前回この小説の二人居る主人公の内の片方であるリィンを紹介したので、今回はこの通り見るからに冴えなくて頭悪そうでダメダメオーラを全身から滲ませているもう片方の主人公で『
ツナ「いや、ダメダメなのは自分で自覚してるから別にいいんだけどさぁ。 初対面の相手に対してその紹介はちょっと失礼過ぎるんじゃないですか!? そしてリボーンも温泉宿の宿泊利用券なんかでオレを売ってんじゃねーーーッ!!」
アリサちゃん「それじゃあさっそく彼のプロフィールについてOHANASHIするわね♪」
グナちゃん「イヨ、マッテマシター(棒)」
アリサちゃん「“並盛町”に住む宇宙一ダメダメな中学生、ひと呼んで【ダメツナ】こと沢田綱吉のもとに、ある日イタリアから殺し屋の赤ん坊《リボーン》が彼の家庭教師としてやってきたの」
ツナ「いやいやいやっ! 【ダメツナ】は合ってるけれど、さすがに宇宙一は言い過ぎだろ!? オレは某ラッキーなヒーローに変身するツイてない中学生じゃねーから!!」
アリサちゃん「実はツナヨシ君はこんなチワワにビビるようなダメダメ弱虫君だけど、イタリア最大のマフィア《ボンゴレファミリー》を創設した初代ボス──《ボンゴレ
ツナ[チワワにビビるようなダメダメ弱虫君で悪かったなチキショー!]
アリサちゃん「リボーン君が家庭教師に来てからツナヨシ君のダメダメ平凡ライフはハチャメチャデンジャラスに死ぬ気でスパルタに鍛えられるマフィア騒動の毎日へと激変したわ! ツナヨシ君はリボーン君の銃で頭の額に【死ぬ気弾】という特殊な銃弾を撃ち込まれて死ぬと、ダメダメな自分への後悔が火事場の馬鹿力を呼び起こし、撃たれた額に“死ぬ気の炎”を灯して
ツナ「“死ぬ気モード”の事だね。 この力のおかげでオレは剣道部首相の持田センパイとの決闘に勝ったり、腕を怪我して自殺しそうだった山本を助けたり、色々と本当にアリサさんの言う通り普段のダメダメなオレからは今でも信じられない程、大活躍できたんだ。 それまで自分のダメダメさの所為で友達一人作れなかったオレも、その甲斐もあって、前から憧れだった笹川京子ちゃんと知り合いになり、獄寺君や山本をはじめとして沢山の友達や知り合いができていったんだ。 リボーンに銃で頭をしょっちゅう撃たれて死ぬのは超嫌だったけど、ホント死ぬ気弾様々だよな」
アリサちゃん「その代わりに“死ぬ気モード”になると、何故だかパンツ一丁の素っ裸になって暴走状態になっちゃってたから、毎度毎度何か騒動が起きる度に“パンツ超人”が現れて暴れ回るという変態的構図になってたのよねーww」
グナちゃん「タイヘンタイヘンタイヘンタイ! ツナヘンターイ!!」
ツナ「放っとけー!(泣)」
アリサちゃん「……さて。 今隅っこにしゃがみ込んで、いじいじと指で富士山の土に“の”の字を書き出したツナヨシ君の“死ぬ気モード”の説明を聞いて、画面の前の読者の皆は疑問に思った事でしょう?」
グナちゃん「コノショウセツノホンペンニデテイルツナハ、ヒタイニシヌキノホノオヲツケテイルガ、パンイチジャナイシ、フンイキモクールナンダガ?」
アリサちゃん「そう! 何を隠そう、その本編で今リィンと肩を並べて戦っている物凄く強くてクールなツナヨシ君の姿こそが、“死ぬ気モード”より更にパワーアップした《
グナちゃん「オダヤカナココロヲモチナガラ、ハゲシイイカリニヨッテカクセイスル、デンセツノパツキンヤサイジンテキナアレカ?」
アリサちゃん「いい線いってるけど、ちょ~っと違うのよねぇ。 確かに意志によって内に秘めていた潜在能力を覚醒させ飛躍的にパワーアップをするところはド○ゴンボールの超サ○ヤ人と似ているけれど。 ツナヨシ君の“超死ぬ気モード”はリボーン君に【小言弾】という死ぬ気弾の上位特殊弾を額に撃ち込んでもらうか、或いは【死ぬ気丸】という特別な錠剤を飲む事で、
ツナ(復活)「そうなんだけど、その代わりに戦い終わった後で超死ぬ気モードが消えた直後は、そりゃあもう地獄のような筋肉痛が身体中ピキピキと走りまくって超痛いのなんのってさぁ。 それをリボーンの奴は情けないだあーだこーだいって【超化戦闘時の負担に耐えれる肉体を作る】とか言ってきて、益々オレに超理不尽なねっちょり特訓をいっぱいさせてきやがったんだぜ? ……あ″あ″ーーーっ! あの時の事思い出すだけで猛烈な恐怖が込み上げてくるぅぅーー!! もうあんなクソ重い亀の甲羅を背負って、並盛町中を牛乳配達に走らされたり、蜂の巣がある木に縛り付けられたり、何故か人食い鮫が居る川の中を泳がされたりされたくないよぉぉーーッッ!!」
グナちゃん「モロクソニ、カ○センリュウノシュギョウナイヨウトカブッテンジャネーカヨ!」
アリサちゃん「ツナヨシ君の強さの秘密は他にも色々とあるのだけれども、これ以上はいい加減あとがきコーナーが長くなるから、今回はここまでよ! この続きの内容は後の本編内に話題が出てきた時詳しい説明があるので、皆安心してね♪」
グナちゃん「テナワケデ、ニドメノ──サラダバー!」
ツナ「ギャー、もう爆発はイヤだーーーっ!!」
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今こそ一つに束ねられし三つの勇気と絆の
テイルズ・オブ・アライズ、ガルド集めんの超絶面倒くせーーー!!(発狂)
「ぁ……ああ……」
燃え盛る
──凄い……リィン君とツナ君……二人共、凄すぎる……!
操縦者のラコフが持っていた“雲属性の炎”の
更にはそれだけに止まらず、リィンとツナは互いに初対面である事が改めて信じられなくなる程に、お互いの行動を完璧に把握した超神速の
「ハッ!?……あ、あれっ? どうしてかツナさんが無事だ。 それに、紫色の炎の鎧で超デッカクなってた敵大将の
ツナが無謀な突撃をしてスクルドに返り討ちにされる結末の想像に恐怖した為にキツく閉じていた両瞼を、恐る恐るながらもようやく開いたスバルもまた、宙に敷かれたウィングロードの上からその様子を見下ろして、自分がしていた最悪の結末予想に反して五体無事な様子のツナに安心半分、夜天高く燃え盛っている橙色の炎の中で石炭のように崩壊していく紫焔大将軍の眼前にてツナとリィンが並び立ちながら勝利のポーズを取っている絵面に大変戸惑った様相を浮かべていた。 仲間の一人がやられたと思ったら、自分が目を離している間の一瞬で形勢逆転して敵大将が倒されていたのだ、無理もない。
「リィン教官! 甲板に居た人形兵器達は全滅させましたので、今からそちらの援護に……って、もう敵の大将の新型魔煌機兵を倒しちゃったんですか!?」
「さっすが十代目! あんな巨大ロボットをもこうも簡単に撃破してしまわれるなんて、相変わらず見事な腕前ッス!」
「なのは! スバルも無事? よかった……」
そして経った今、ガラハッド艦上に展開されていた敵人形兵器群を余さず全て
「みんな……無事に人形兵器達を片付けてきたみたいだな?」
「はい。 予想より敵の頭数が多めだったので少々手こずりましたか、協力者たちの助力のおかげで誰一人として怪我をせずに殲滅できました」
「まっ、何処の誰だか知らねー他人の手助けがなかったとして、俺らⅦ組だけでも十分余裕で倒せてたがな。 だがまあ、おかげで余計に疲れず済んだのは確かだな」
「それでリィン教官。 敵大将の新型魔煌機兵はその後ろの炎の中でしょうか?」
クルト達が自分達の教官であり指揮官であるリィンに戦果の報告を交えつつ、彼の背後に赫灼高々と燃え盛っている
「これ……もしかして機体の中に居た
「心配は要らない。 オレの“大空属性の炎”は
「それじゃあ、これで僕達はミッドナイト軍に勝ったんですか?」
橙色の業火に映るスクルドの機体の影はその凄まじい炎圧に嬲られて、先程までその機体全身に纏って巨大怪獣並に
だがしかし、この炎を放った
橙色の炎の中に映されていたスクルドの影も時間が経って段々と薄くなって消失していき、これでようやく一件落着かと思われた……その刹那、ツナの中の“超直感”が
「いや、まだだ──ッ!」
「ッッ!? 全員、避けろ!!」
直後、
「うへぇ、あの炎に丸ごと燃やされて装甲の表面が焦げ付いただけなんて、どれだけタフなのよ? あの新型魔煌機兵……」
「だけど、全身に纏っていた“雲属性の炎”は消えたのな。 これでもうあのサムライ巨大ロボは無限巨大化も永続パワーアップもできねーだろ?」
赤紫色だった甲冑装甲が焦げて少々黒ずんだ程度でピンピンしながらツナの炎の中から出てきたスクルドを目の当たりにして若干嫌になりそうに項垂れるユウナだったが、山本がしめた笑みを浮かべながら言ったようにスクルドの全ステータスを無限増幅させて天上天下無双の《紫焔大将軍》にし得ていた
『クッソ~! クソクソクソッ! クソォォォオオオオオッ!! さっきはあとちょ~っとのところで、にっくき管理局の英雄部隊、機動六課の小娘共をけちょんけちょんにフクロ叩きにして、管理局をブッ潰せたってところだったのにィ~! こぉの異世界のクソ虫けら共がぁっ! 【魔法技術の独占による武力支配】で非魔導師に不利極まりなき法を敷く悪逆非道の時空管理局をブッ潰して全次元世界を吾輩の手にするという崇高な夢を、悉く邪魔しやがりやがってェェ……』
「アンタって奴はどこまでいっても小悪党キャラよね? 逆恨みも甚だしい言い掛かりで管理局をアンタの汚れきった頭の中で都合のいいように捏造解釈して、ただの薄汚い底辺犯罪組織の親玉風情が崇高ぶってんじゃないわよ! このデカッ
「そうだそうだ~、ティアの言う通りだ~! だいたい【魔法技術の独占による武力支配】って何さ? あたしのお父さんだって非魔導師だけど、立派に三等陸佐の階級持ってて陸士第108部隊の部隊長の地位に就いているんだから。 管理局が非魔導師に不利な法を敷いているだなんて、でっち上げだ! このデカッ
『ぬぁぁぁにおおおおーーッ!? 吾輩のスッとした鼻立ちをよくも“デカッ鼻”などと! 二十にも満たないガキの癖してムダに乳だけデッカくしただけの処○共が、偉そうに
「あ……あんですってぇっ!!」
──何故ユウナさんが憤慨しているのでしょうか? それもエステルさんの口真似で……。
リィンとツナにやられたい放題にやられた事に、全身真っ黒コゲになったラコフが被っていた軍帽が燃え散って消滅した事で露わになった素頭から文字通り煙を出して激昂し癇癪を起こしながら、スクルドに地団太を踏ませる。
このような子供の口ゲンカ染みたやり取りをして場の空気がシュールに混沌となったところで、ラコフが痺れを切らしたように汚い顔面全体を真っ赤に沸騰させつつスクルドに右手でビシビシと指差させて、リィンやツナら異世界の英雄達へと警告する。
『大体キサマ等、《可能世界》の“戦術オーブメント”と《七輪世界》の“死ぬ気の炎”を使ってくるっちゅー事は、大方それ等“次元世界外世界”の
「「ふざけるな──ッッ!!」」
『おのふっ!!?』
まるで自分が正義で
「確かに
「組織は巨大になる程に深い闇ができるという事はオレもよく知っている。 お前の言ったように
二人は慄く相手の顔面部分の
二人の口から漏れ出た公比不確かな内容を耳に、なのは達機動六課前線攻略部隊の面々は少々不安の色が顔に浮かび出し、反対にラコフは機体越しに手応え有ったという不敵な笑みを浮かし出す。 ……だが次の瞬間、二人は目頭を大きく寄せて更にギッ! と相手を睨む強さを厳しくして迷いなく言った。
「「だが少なくとも、今此処で共に肩を並べて戦っている
二人の若き英雄の口から放たれた淀みない確信の言葉が
『なななっ、ぬぁんだとーーーッ!!?』
「リ、リィン君……!」
「ツナさぁん!」
『ぬぁぜだぁぁ!? 何故キサマ達は
先程に出会ったばかりでまだ見ず知らずの関係である自分達の事を信じると言ってくれた異世界からやって来た助っ人達のリーダー二人に機動六課の魔法少女達が心嬉しい声をあげる中、その事をとても信じられないとしてラコフは相手の正気を疑うあまりに蕁麻疹を発症し、スクルドの動きとリアクションを同調させて激しく震える頭部を両手で抱えつつ夜空に仰いだ。 彼の管理局に対する弁は、実に見苦しく己の都合の良い改竄を盛沢山して醜悪なイメージを押し付けようとした完全なでっち上げであったものの、リィン達は
それがどうしても納得出来ないラコフは発狂した金切り声で今一度異世界の若き英雄達へ問い質したが、そんなの聞くまでもないという素振りでリィンとツナが甲板の縁下へと視線を促し、逆に問い返す。
「この艦の遥か下に燃え広がる都市の彼方此方から聴こえて来る、鉄が鳴り響くような交戦音と、
「時空管理局とやらがもしお前の言った通り内側がどうしようもなく腐敗した最悪の独裁司法組織だったとしても、絶望的な戦力差で罪の無い人々が住む街と生活を壊そうとする敵から命懸けで戦う事の出来る
元居た世界の危機を幾度も救済してきた
「今すぐにこの世界と
「お前が乗っている機体に組み込まれていた【畜炎強化システム】はオレの“大空属性の炎”の
自分勝手にでっち上げた言い訳で
『だだだだ、黙れぇいっ! 数多の次元の海の広さを知らん異世界の青二才とクソガキ風情が、生意気に知った風な口を聞くんじゃあないわ! この世界を牛耳る管理局が創設された百年も昔から今まで、連中が正義を誇示し続ける為に裏でどれだけの不正行為を行ってきたのか、ちっとも知らん癖に、次元世界に正しい革命を起こそうとしている吾輩の崇高な聖戦を邪魔して否定して悪者扱いして、正義の味方ぶってんじゃねーやい! 顔がカワイイだけで清楚ぶりっ子した、クソ○ッチの集まる機動六課の小娘共なんかに唆されてんじゃねーよ、このヤリ○ン共がッ!!』
「誰がクソビッ○よ!? この悪の総統コスプレ趣味のデカッ
「リィン教官は確かに毎度毎度、何処に行っても不埒なToLoveるを起こしますが、基本女性から向けられる好意に鈍い朴念仁なので、ヤリチ○という表現は大分的外れであると断言します。 訂正してください」
──フォローしてくれるのは有難いんだが……アルティナ、毎度毎度他人に誤解を植え付けるような言い方をするのは、いい加減に止めてくれないだろうか……。
残念ながら自分達の教官が女性からの好意に何処までも鈍い朴念仁だというのはトールズ士官学院第Ⅱ分校Ⅶ組特務科のクラス生徒五名全員の共有評価なのだから、もう諦めるがいい、リィンよ……www。
『ぬぇぇえええーーーいっ!! これ以上罵り合っても埒があかんわ!!』
ふざけるのもここまで。 いい加減に決着を付ける為、最後の激突と洒落込もうじゃあないか!
『炎なんぞに頼らずとも我が《紫焔の武士》はまだ此処に立っているぅぅーーっ! この機体が纏う“黒ゼムリア鉱”と精製度Aランク以上の炎製石を合成し開発した特殊耐炎合金板に対抗魔法防御素材コーティングを施した鉄壁の武者鎧装甲と、ゼムリア大陸の《エレボニア帝国》が軍事運用しているという“機甲兵”の隊長機《シュピーゲル》のものよりも遥かに高い反射性能を発揮する対攻撃反射防御結界【リアクティビアーマー
まるで
物の一切全てが焼却された甲板上の殺風景に夜風が靡き、焼けた鉄の臭いが戦いにおける最後の激突前に感じる特有の緊迫感を演出している。 その真っ只中で三つの世界より集いし若き英雄達と悪しき侵略軍の総大将たる
「こうなったら話し合いは無用か……」
「そうだね。 お話が出来ない相手にはいつも通り全力全開でぶつかって、叩きのめしてから“お話”するまでなの!」
「ハッ! 虫すら殺さなそうな善人面してんのに反して随分と物騒な提案をするじゃねぇか、白魔導師のネーチャンよぉ? ……だが、いいぜ。 そういうのは
「
「ああ、もちろんだ。 ……しかし、実際に敵が言った通り、あのスクルドとかいう
総力戦で最後の決着を付けに行く雰囲気にトールズⅦ組、ボンゴレファミリー、機動六課の三連合一同総員が意気揚々と最高の闘志を燃やす。 だがツナが言った懸念の通り、スクルド本体が纏う武士甲冑装甲の防御性能は鉄壁だ。 なのはとスバルによる
「そういう事なら、ここは
「リィン……?」
「何か
「ああ。 俺達が今まで、立ち塞がる強大な“壁”を幾度も乗り越えられてきた、“繋がりの力”の
皆の前に踏み出て自信満々気にリィンはスクルドを倒せる“切り札”を自分らトールズⅦ組は持っていると言う。 そして彼の教え子達がその言葉を待っていましたと言わんばかりに、教官に続いて皆の前へ意気揚々と踏み出ると、トールズ士官学院第Ⅱ分校Ⅶ組特務科の担任教官とその生徒五名が威風堂々と横一列に整列して、機関砲剣を手に身構える
『ほほぉう? この絶対無敵の《紫焔の武士》の前に整然と並び立つなどとは、キミタチは殊勝にも銃殺刑をお望みか──』
「ユウナ、
「了解です、教官!」
『──って、
相手が煽ろうとしたのを完全スルーされて機体をズッコケさせそうによろめかせた隙に、ユウナがⅦ組の担任教官であり指揮官であるリィンに出された指示に従って、右手に持ったARCUSⅡの内面端末画面を開いて簡単に操作を施すと、『BRAVE ORDER Standby』と表示されたカバーディスプレイを前に翳しだした。 背中から見守るボンゴレファミリーと機動六課の面々から不可思議に思われる視線を集める中、彼女は凛々とした顔付で
「壊せ──『トールハンマー』ッッ!!」
その如何なる堅牢なモノをも破壊する雷神の大槌の名を冠する《ブレイブオーダー》が溌剌勇壮とした声で発令された直後、
『キキキキ、キサマらぁぁーー! いったい全体何なんだ、その不愉快な感じがする“
「あのユウナっていうリィンの生徒の女の子が、さっきミュゼという生徒さんが重症だったなのはやみんなの傷を回復させる
Ⅶ組陣の持つARCUSⅡが突然発しだした
「い……いったい
「それはオレにも分からない……だけど」
「この光……なんだかとっても優しくて暖かい感じ……何故だか心の奥底からどんな強敵相手にも立ち向かえる“勇気”がどんどんと湧いてくるような気分になってくるよ、ティア!」
「そうね。 まるで号令を発した人を中心にして、ここに居る全員の夢や想い、勝利を諦めない希望などといった
ARCUSⅡの《ブレイブオーダー》システム……それは端末にインストールされてある
この《ブレイブオーダー》システムの強みは
その筈だが……。
「ぇ……ええぇぇーーっ!? あたしのリボルバーナックルとマッハキャリバーのデバイス
「嘘、レイジングハートまで不思議な光を発しだした……!?」
更には……。
「おおうっ? オレの《雨のネックレスVer.X》も光りだしたってか? ナハハハハ、なんだか粋な感じじゃねーか」
「笑ってる場合じゃねぇよ野球バカ! どういう事だかオレの《嵐のバックルVer.X》までもが、
ユウナの《ブレイブオーダー》──【トールハンマー】が発令され、
突然発生したその常軌を逸する現象はあまりにも埒外だった為、システムの概要を知らないボンゴレ組と機動六課組は無論の事渾沌の様相で大騒ぎになり、約一年前から今までゼムリア大陸で起きてきた大事件の数々での戦いで幾度も《ブレイブオーダー》を使ってきたトールズⅦ組の面々も流石にこのようなシステムの規格を超越し過ぎる
「ちょっ!!? これどうなってるの!? あたしの
「そんな、有り得ない。 《ブレイブオーダー》システムによる集団強化はARCUSⅡを所持していない者には及ばない筈なのに……!?」
「システムの故障……とは考え難いですね。
「異世界転移した事といい、今回もまたまたオカルトの類かよ……まっ、《黄昏》やら《エリュシオン》やらで、もういい加減
「わたしの“異能”でもこのような常軌を逸した事象が起きる可能性は段々と
普通ならば起こり得ない
「ARCUSⅡを介して強化効果が共有される筈の《ブレイブオーダー》が、何故ARCUSⅡを持っていないツナ達やなのは達にまで発揮されたのかは分からない……だが、この誤算は寧ろ
「ああ!
この“奇跡”を千載一遇の
頼もしいリーダー二人の言葉を聞き、仲間達もそれに応えるようにして一人また一人と目の奥に覚悟の炎を灯していく。
「各員戦闘配置に着け! オーダー効果を駆使し、敵新型魔煌機兵を撃破するッ!!」
「今度こそ、この戦いを終わらせてやる! 覚悟しろ!!」
英雄達は立ちはだかる巨大な敵を前に壮観と並び立つ。 その誰もが敗北の恐れなど抱いてはいなかった。
さあ、
その勇気とキズナの
三つの世界の偉大なる英雄伝説に語られし
ブレイブオーダーの仕組みについては独自解釈です、あしからず。
最後の文章は何者かに思考を乗っ取られて書きましたけど、お気になさらずに……は、ムリか。(汗)
今回の『炎の軌跡講座』はお休みします。
その代わり、活動報告でゲスト参戦作品のアンケート投票を実地しましたので、活動報告に投票をよろしくお願いします。
オリジナルコンビクラフトの方もまだまだ募集しております。
ポトフーポットさん、とても素晴らしいオリジナルコンビクラフトのアイデアを数多く御提供してくださり、どうもありがとうございます!
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三つの“軌跡”が交わりし今この時こそ、皆が力を合わせて物語の最初の
「トールズ士官学院第Ⅱ分校Ⅶ組特務科各員、皆、一気呵成にいくぞっ!」
「「「「「了解(応)ッ!」」」」」
先陣を切ったのはリィン達トールズⅦ組の六名だった。 Ⅶ組の担任教官兼指揮官であるリィンがミッドナイト軍艦隊が陣を敷いているこの空域全体に響き渡らせるように一斉突撃指令を発すると共に、彼を先頭にして六人それぞれ得物を構えて指揮官の指令に士気を上げて応えると、
それに対して
『ドンッ、チェルルルーー! 大勢で掛かって来たって無駄無駄無駄無駄なんだよ。 ヴァァァカめッ! 生身なんぞでそんなちんまい武装なんざ幾らの数持って掛かって来たところで、この吾輩の最強の機体であるスクルドの絶対無敵の装甲を破壊する事なんざ、何処をどう攻撃したって不可能だってーの! グビッ、グビッ……』
幾ら相手が三つの世界それぞれで未曾有の危機を幾多と救ってきた百戦錬磨の英雄達だからと言ったところで、生身では流石に自分の操る無敵の
「──せいっ!」
「ていっ! てりゃぁっ!」
「はっ、せい!」
「えいっ!」
「オラッ、砕けろ!」
「うふふふ……シュートッ!」
それと同時に、リィン達の一斉攻撃がスクルドの外部装甲を叩き、砕いたのであった。 リィンが目にも留まらぬ太刀の振り下ろしで右脚首部分を切り裂き、ユウナが両手のガンブレイカーを
『ぶぶゥゥーーーッ! ほぁぁあ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″ーーーっ!!?』
攻撃された部分の外部装甲がいとも容易く砕けて罅割れ、
『ひでぶっ!!』
これまでにリィンやツナ達から受けた数々の高威力攻撃によって
『ぐぬぬぬ……いい、いったい何がどうなっとんだぁああ? ナゼナゼナゼェェエエーー! 何故に
今やまるで落ち武者のようにボロボロの姿になった
確かに先程まで、現れ出てきた上空から落下してきて重力落下と高位置エネルギーを上乗せした登場不意打ちをリィンとツナによって頭部に叩き凹まされた時以外は、スクルドの特殊耐炎合金素材の外部装甲に大したダメージを与えられていない。 だが、今のリィン達の攻撃は、ユウナの発令した《ブレイブオーダー》の『トールハンマー』によって【6
ブレイク状態にされた
「崩れたぞ! 今だ!」
「追撃します! やあっ! それっ!」
「崩した! 今が好機!」
「追撃します。 やあっ!」
「崩してやったぜ! 追撃しやがれ!」
「任せてください! ショット!」
このようにどんな攻撃でもその相手の体勢を崩させる事ができ、ARCUSⅡ同士による“戦術リンク”接続を駆使すれば立て続けに追撃を加える事が可能なのだった。
『ぐへっ! じょぼっ! わらばっ!』
トールズⅦ組による戦術リンクの即時追撃で無防備の機体を
『ハラホレヒレハレー☆ ガーガー! ベケーッ!!?』
てんやわんやと散々
『ぐおらぁぁああ! ザッケンナコラー!!』
しかし、そんなにこっ酷くやられてまでも、小悪党という人種はどうしてか、どこまでもしぶとく諦めの悪いド根性を持っているものであった。 幸いにもそれのお陰で我を取り戻し、
『こんな事で、まだやられてたまるかーーいっ!!』
先程にアルティナの《クラウ=ソラス》の攻撃によって
「次はオレ達の番だ。 獄寺君! 山本! 一緒に畳み掛けるぞ!!」
「合点招致です十代目! 遅れるんじゃねぇぞ山本!!」
「お前こそな!
すると丁度、スクルドの
ツナ達三人共が身に装備している【
故に今は彼等の攻撃でもまともに叩き込めれば今のスクルドの罅割れだらけになった外部装甲なぞ容易に破壊してしまえる事は確実だった……だがしかし、まだラコフには
『おのれぇい生意気なクソガキ共が! キサマ等が図に乗るのもこれまででぇぇい! 対攻撃反射防御結界《リアクティビアーマー
ラコフは
「隊長機の
スクルドの周囲に展開されたリアクティビアーマーAを目の当たりにして焦燥の色を滲ませたリィンが、飛翔突撃に乗じた威勢のままに突撃して結界を突破しようと試みようとしていたツナ達へと険難を張り上げて一時制止を呼び掛けてくる。
現在から約3年前、当時大陸最大の軍事力を誇っていたエレボニア帝国における最名門の軍士官候補生養成校《トールズ士官学院》の第Ⅱ分校Ⅶ組特務科の担任教官であるリィンがまだトールズ特科クラスⅦ組生徒の
あの時はその直後にリィンが後に自身の相棒となる、とある“
「三人共、ここは一旦下がってくれ! 奴の結界は俺の最大の
しかし今のリィンには相手の機体が展開したリアクティビアーマーAを打ち破れる“奥技”がある。 故にその切り札を今こそ解禁し、《紫焔の武士》の最後の砦を自らの剣をもって破壊すべきが最善。 そう考えた彼はツナ達に前線から下がるように呼び掛けたのだが、他二人の
『ふふ、ふざけた事ほざいてんじゃねー! 吾輩最強の専用機体である《紫焔の武士》の展開する、この絶対無敵の《リアクティビアーマーA》をっ、キサマ等中坊程度のクソガキ三人風情がっ、突破できる訳がねーだろっ!! 手汚い管理局の不当な当てつけを受けて6年前にその席を追われたとはいえ、腐ってもこの元クラナガン都市代表知事たるラコフ・ドンチェル様を相手に、そんなガキの駆引きごっこ遊び程度の見え透いた
「なら
「御任せ下さい、十代目!」
相手の苦し紛れの挑発に敢えて乗ってやるとしたツナはまず獄寺に攻撃するように促した。 敬信するボスから先陣を任された信頼に応えるべくして意気揚々と返事した獄寺が颯爽と前へと突出し、「奴のドテッ腹に風孔空けてやるぜ!」と
「標的射程距離700。 甲板上の温度12度(炎上後温度上昇値込みの数字)。 気圧480
瞳に付けたコンタクトレンズ型の照準計算装置を使って相手の急所への最適精確な命中射線を算出する為に環境分析を行いつつ、極薄の“
「──《
「貫け、《
獄寺がそう言い放つと同時に左手の髑髏型火炎放射器の放射口より
──見たところ先程から
「アルティナ……もしもの場合は
「……了解」
外側でリィンとアルティナがそのようなやり取りを交わしたのを他所に、獄寺の放った《
『ドンッ、チェルルルーーー!! この見た目通りに頭の足りん、
だが何かおかしい。 通常ならば《リアクティビアーマーA》への外部からの攻撃は結界に触れた瞬間に例外なく全て一瞬の拮抗もする事なく
『どどどっ、どういう事だァァーーッ!!? いったい何故! 何故
ラコフは透過映像越し眼前で自分の搭乗している
そんな機体越しに外から視てもそのような分かりやすい驚愕の形相を晒していると分かる中の操縦者へ、炎の
「ハッ! バーカ、その結膜炎の汚ねぇ二つの眼玉ひん剥いてよーく見てみやがれ。 その《
『なん……だとォォッ!?』
獄寺に指摘された通り、《リアクティビアーマーA》を少しづつ着々と鉄削りのように
『──なんと吾輩ビックリ仰天! これはッ、“嵐属性の炎”の赤色に薄っすらと“雨属性の炎”の
「御明察だぜ。 もっとも、嵐属性単体で放つ《
そう獄寺が極薄の“
実のところ獄寺が過去にこの嵐属性と雨属性の炎を配合した【鎮静分解炎弾】を初めて使用した時はまだ《
「
『ぐぬぬぬぬ、うぉのれ~……だがこぉぉんな色変わり損ないのガスバーナーなんぞ、この《十二月の子持ちししゃも(機関砲剣の名前)》で
そう言ってラコフは諦め悪く、スクルドに右手で握った機関砲剣をめいいっぱい高々振り上げさせ、それを今にも眼前の結界を突き破って来そうになっていた《
「おっと! 試合中に焦りと不注意は禁物だぜ。 これで
『ちょっ!? おまっ、それ
「いくぜっ! 時雨蒼燕流──攻式・三の型」
そして足下へ水平の姿勢を保たせたまま真っ直ぐと落下させた時雨金時の柄尻を──
「──遣らずの雨!!」
右足の爪先で勢いよく
『そそそ、そんなヴァカナァアアアーーーッ!!? 絶対無敵の反射防御結界がウソダバドンドコドーn──』
ボコッ! ゴオオオオオォォォォォーーーーーッ!!
『おぎゃああああああああああ!!?』
《リアクティビアーマーA》を粉砕してその勢いのまま間髪入れずスクルドの腹部中心上部の三重構造炎伝導板胸部操縦席ハッチを纏めて突き破り、
「よっしゃあ! 特大
「これであの鎧武者ロボヤローの防御能力は総崩れにしたッス! 一発決めてください十代目!!」
「ああっ!」
ユウナの『トールハンマー』による
「うぉぉおおおおおおーーーっ!!」
砕け散った結界の細かな導力エネルギーの破片が粉雪のように降り注ぐ中を、ツナは勇ましい雄叫びをあげつつ、胸に大孔を空けて完全な無防備状態に陥ったスクルドへと飛翔して向かい、堂々の突撃を敢行。
究極の一撃──≪
「ツナさんが右手に着けてるあの
「まさかあの
次の追撃に備えて
皆からの期待(内約一名は困惑)を一身の背に受け取ったツナは引き絞った右手の《
「いくぞ……覚悟しろ!」
拳に勇気と覚悟の炎を纏い──
『やっ、ヤメテッ! くくく、来るんじゃねぇぇぇえええええ──ッッ!!!』
己の身の安全を守ってくれていた炎も鎧も結界も全て憎き英雄達に破壊されてしまい、恐怖に駆られて情けない悲鳴をあげだした
「バーニングアクセル────ッ!!」
大空に煌く太陽の如き
原作ゲームの[ブレイブオーダーの残りカウント数=行動回数]をそのまま使ってやると、オーダー発令してからたったの数行文章書いたらカウント0になってしまう為、本作品では[カウント数=分刻み]の設定にしました。
後編は4月中に更新できる予定です。
ここで活動報告で行っている『ゲスト参戦作品キャラクター投票』の途中経過を発表します。
*2票
『落第騎士の
*1票
『ハイスクールD×D』(兵藤一誠 木場祐斗 ヴァーリ・ルシファー)
『空戦魔導士候補生の教官』(カナタ・エイジ ユーリ・フロストル クロエ・セヴェニー)
『ロクでなし魔術講師と
『出会って5秒でバトル』(白柳啓 天翔優利 霧崎円)
このような様子になっておりまして、今現在は『落第騎士の英雄譚』が一票リードしています。(仮にこのまま決定したらアニメに出ていないエーデルワイスのCVどうしようか……)
石蓮花さん、聖杯の魔女さん、原罪さん、rock 1192さん、オウガ・Ωさん、ポトフーポットさん。 アンケートにご投票ありがとうございました!
アンケート投票期限は四月末までですので、皆様どしどし投票よろしくお願いします。
ところで、【カップリングフラグ予定のキャラクター組み合わせ】って公表した方がいいかなぁ? 一応大方の組み合わせは決まっているのですが……。
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今話は大ボリュームとなる文字数十八万以上。 物語最初のボスで小者にも拘らず案外しぶとかったラコフも、遂に今回で撃破です。 皆様長らくお待たせしました!
パロディー技や
『ホゲラア″ア″ア″ア″ア″ア″ア″ァァァーーーーッッ!!?』
爆発! 衝撃! 激震! そして夜天に轟く
ツナが右手の《
一体何が起きたのか? 一瞬そう思って気が付くと、ツナが炎の拳で殴った箇所から生じて爆発的な勢力をもって解き放たれた
『ハラヒレホレハレェェ……』
そして当然、その中に居る
無論、味方への被害も尋常ではなかった。 皆が乗っている
「きゃあああっ!!?」
「なななっ、なんて凄まじい威力なんだ! 衝撃波が
「
攻撃を仕掛けた前線のボンゴレ三人組を除く全員が空間すらも揺すられる尋常ではない大規模激震を受けて堪え難い様子を呈している。 特に戦闘の場数が他の面子よりも少ない機動六課FW陣は身体能力に優れるスバルを除く三人共々まともに立っている事すら儘ならずに完全に足を崩して転倒し、甲板から縁の外へ転げ落とされないように鉄床の砕けた出っ張り部分に手を引っ掻けてへばり付きながら悲鳴や驚嘆や難色などの声をあげて大騒ぎしている。
「おおっ! バーニングアクセルの威力、前のよりも遥かに上がってるのな♪」「さっすが十代目! あの《虹の代理戦争》が終わった後にも腐らせず益々腕を御上げになっておられるとは、大変感服したッス!」などという
「だけど、敵の防御機能が今のツナ君の一撃で完全に崩壊した、今がチャンスだよ!」
「次は
「「「りょりょ、了解っ!!」」」
『ククッ、クッソゥ……吾輩はまだ……全ての次元世界を……この手中に入れるまで……諦めて……たまるもんk──』
「残念だけど貴方の野望は此処までだよ、ラコフ・ドンチェル! 《レストリストロック》!」
「「《ライトニングバインド》!」」
「なのはさん直伝、《チェーンバインド》!」
「我が求めるは戒める物、捕らえる物。 言の葉に答えよ、錬鉄の縛鎖。 錬鉄召喚! 《アルケミックチェーン》!」
『──って、のっほぉぉおおぉぉおおおーー♥』
「
「うおおおおおっ!!」
ティアナから大声で敵へ攻撃しろと投げ掛けられ、
──
劣悪非道の次元侵略犯罪組織たるミッドナイト軍から
「《ギア・エクセリオン》!!」
スバルの
「いくぞおおおおぉぉ──ッ!!」
ユウナの『トールハンマー』のカウントは数秒前に【0】を刻んだ事で
空を翔けて、銀色の矢に変わる!
『ふざけてんじゃねーよ』
「な──っ!?」
弾丸のように闇夜を貫き跳躍突撃して来たスバルが拘束されたスクルドを
「うぅ……ダメ……もう……魔力……が……ッ!!?」
更にはその直後に、全身の身動きを完全に封じられている筈のスクルドが右腕を縛る
『キサマのような矮小な戦闘機人の小娘風情が。 全多次元並行宇宙一最も高尚なる価値を生まれ持ち、貴く崇高な選ばれし人間である、このラコフ・ドンチェル大司令官様を打ち倒せるなどと、思い上がってんじゃねー、身の程を弁えろよ。
「ッッ!!!」
容赦なく冷徹酷薄と投げ落とされたラコフの底知れない侮蔑が籠められた言葉の刃に、スバルは心臓を突き刺されたように血の気が抜けて、引き絞った一撃必当の拳を突き放てずに硬直させてしまった。 戸惑いに大きく見開かれた“黄金色の瞳”は彼女が人外たる力を行使する印であり、
ラコフの言った通り、実際にスバル・ナカジマという少女は普通の人間ではない。 それは人並み以上に高い魔力や才能を持つ魔導師だからとかいう理屈ではなく、真実として
彼女の元々青色だった瞳が黄金色に変色した時は彼女の内に秘められた戦闘機人としての力である特殊戦闘固有技能《
『これから吾輩の支配する未来永劫の魔法無き人間の次元世界に、キサマのようなガラクタ人形なぞ要らんわい! これで鉄屑のジャンクになってしまえーーーいっ!!』
「ぁ……」
ラコフの死刑宣告と共に圧倒的な暴威を纏いつつこちらの頭上へと落ちて迫り来る《紫焔の武士》の巨腕を、戸惑いに勇気の
「──そうは、させません! 煌け、『ノワールクリスタル』!!」
スクルドのカウンター攻撃がスバルに直撃するよりもコンマ1秒前、狙い澄ましたかのような絶妙なタイミングで後方から新たな
カンッ!
結果、直撃した攻撃の質量の大きさの割には実に味気ない金属を軽く叩いたような鈍い音が鳴った。
「え……っ!?」
スクルドの右腕に叩き落とされる衝撃に備えて歯を食い縛り両目を強く閉じたスバルだったが、一寸先の闇になっても痛みも衝撃もまるで来なかった為、恐る恐る目を開いて眼前に再び映った相手の機体を見上げてみる。 そしたら彼女の黄金の瞳に驚くべき事象が映る。 なんと、こちらへ振るい落としてた筈のスクルドの右腕の
『ぐああああーーーっ!? ててて、手がっ! 手が撥ね返されて我が《紫焔の武士》の渋い顔がああああああーーーっ!! ついでにその衝撃に揺らされた所為で吾輩のイカスお顔も内壁に思いっきりぶつけてペシャンコにぃぃいいいいーーーっ!!』
「いったい、どうなって……そうか!」
「スバルさんと言いましたね……正直言って、
その透き通るように綺麗な声が聴こえてきた背中を振り向くと“絶対反射”の
「そうよバカスバル! アンタはバカなんでしょう? だったら自分が戦闘機人だからどうとか、柄にもなくウダウダと考えてんじゃないわよ!! アンタの危なっかしい背中はいつだって私達が
「戦闘機人とはちょっと違いますが、僕やフェイトさんも人の手によって造られた人造魔導師ですから、他人から人間じゃない事を軽蔑されて酷い事を言われる辛さは凄く解ります。 ですが、なのはさんやティアナさんをはじめとする機動六課の普通の生まれの人達は皆、
「スバルさん、あなたを酷く言う人なんかに負けないで! 同じ機動六課
「キュククルルーーー!」
周りを見渡せば、これ以上ラコフの好き勝手にはさせまいとして、尽きかけの魔力を限界以上に振り絞って
「スバル……君は最初、
最早体力も魔力も底を尽き、さすがに立っているのもやっとといった疲弊の様相を見せながらも相変わらず不屈の姿勢を崩さず
「スバル……まだ君達とは知り合ったばかりで君の事をよく知らないオレなんかが、君に言える事はこれだけだ……君にも絶対に守りたい大切な人達が居るんだろう? だったら君も、その
そして先程初めて出逢い、それなのに
──ティア、エリオ、キャロ、フリード、なのはさん。 それと助っ人の御人形みたいな銀髪の女の子(アルティナ)とツナさんも、みんな励ましてくれてありがとう! あたしはもう誰に何を言われようと迷わない。 あたしの大切な皆を守る為に、あたしは──
「──ありったけの想いと“覚悟”を込めたこの拳を、全力全開の死ぬ気で
金色の瞳に再び勇気の
「IS《振動破砕》
そしてスバルは遂に
「──
『まっ、待て待って! のわああああっ!!?』
「これが
集いし星が、新たな力を呼び起こす……Sクラフト開眼!
「A・C・Sブレイク──スクラップフィストォォォォーーーッッ!!!」
銀の矢が貫く……そして超速回転の威力と一撃粉砕の振動、更には背中から後方へ魔力放出を行う事でそれを
『アギャ……ア……ッ!!?』
そのあまりに暴威的な破壊力を受けて、破壊された
《振動破砕》によって機体の内部機構を隅々まで破壊し尽くされ、空けられた腹部の風穴から覗く内側部の配線や骨組の断たれた箇所から
「よっしゃああああっ!!
「「応ッ!!」」
スバルが半壊して罅割れだらけとなった艦尾の柵壁前に着地して、右拳を高らと夜天へ掲げながらとびっきりの笑顔で、敵大将にとどめを刺す役目を
──リィン。 アンタにオレの“炎”を預ける。 決めてくれ!
──分かった。 俺の“剣”と君の“炎”を合わせて、闇を切り拓こう、ツナ!
疾走と滑空で上下縦一列に並走する二人は
「いくぞ……!!」
“覚悟”はいいか? そう一言呟いたツナはその場を急上昇すると、前に先行して行くリィンへ向けて
「オペレーション……
『了解シマシタ、ボス』
ツナの口から静かにそう命令が発せられると、彼の両耳に被されている【VONGOLA X】と刻まれたヘッドホンから機械音声が発せられて了解の意を示した。
『《
ヘッドホンの機械音声がそう言った直後、後方へ突き出されているツナの右手のグローブから放出されている“柔の炎”の出力が急激に高められて、後方に大きなエアバッグを膨らませるような形に勢いよく拡散逆噴射される。 彼のその動作は知らない傍から見たら意味が全く理解できず、それを目の当たりにしてツナの守護者である獄寺と山本以外は
「え……ええっ、ツナさん!?」
「あんな空中に留まって、いったいあの人は何をする気なんだ?」
「ツナは《X BURNER》を放つ気なのな」
「え……?」
「
「へぇ~、そうなの……って、
「ちょっと待って? それじゃあ何であのツナっていう子は
「さあ、どうだろーな? だけど全然心配しなくていいぜ。 ツナが何の考えも無く仲間を攻撃する筈ねーからな」
ツナが完全停止したスクルドではなくて、何故だか先行してそれに向かって駆けて行っているリィンの背中に“剛の炎”を
『
周囲がそうこう揉めている内にツナは空中に滞空したまま、右手の“柔の炎”を逆噴射して背中へ形成した砲撃反動を抑える為の炎のエアバッグを完成させてその場に固定させると、
『
両眼のコンタクトディスプレイに表示された中心の
先程ツナ本人が言っていたように彼の持つ“大空属性の炎”はその
『38万……39万……40万FV!!
画面上側のスロットルバーが最大値まで緑色に染まりきり、同じように
『ゲージシンメトリー!! 発射スタンバイ!!』
ボンゴレ
「受け取れぇぇえええ! リィィイイイン──ッッ!!!」
ツナの相手に届けという想いの叫び声がミッドチルダの夜空高くに響くと同時に、聴くに耳まで燃やし尽くされそうな程に凄まじい放射音を鳴らして彼の左掌から
「キャアアアアアーーーッ!!?」
「ななな、なんっつうデカさの規模と熱量の砲撃だよ!? 発射の余波で生じた熱風が、此処から遥か遠くに離れた空域に広がっていた雲海にまで届いて、跡形も残さず吹き飛ばしやがった!!」
「嘘でしょう!? あの砲撃の
「あ、あんな規格外に膨大なエネルギーが生身の人間にまともに直撃したりしたら、まず確実に細胞の一粒も残らず塵と化して消し飛んでしまうわ! ……というか、あんなに
放たれた《X BURNER》より散布されてきた猛烈な熱風を浴びせられながら、周囲に散らばる仲間達の誰しもがその
発射時に生じた余波の影響範囲を見ただけで、ツナの《X BURNER》が底知れ無く絶大な火力を孕んだ砲撃である事が全員に理解できた。
「お願いリィン君、避けて──ッ!!!」
故に幾ら
「オオオオオオオッ!!」
だがしかし、美しくも可憐な白き
──
この“炎”は、なんだか
「八葉一刀流──参の型、
前方の
「嘘……だろ? 今の十代目の最大出力である40万FVでブッ放たれたあの《X BURNER》を、炎の刀で全部吸収しやがった……っ!!」
「オオオオオオオッ!!」
「
「す、凄い……!!」
「それにとっても綺麗な“炎”。 まるで夜明けから昇ったばかりの朝日が放つ曙光のように……」
ユウナやスバル、なのはをはじめとする周囲の仲間達はリィンが掲げる太刀に纏われた曙の如き光輝を激しく放つ煌炎を目に入れて、そのあまりの煌々しさに驚きを雑じらせながら、呆然と立ち尽くし見惚れている。
──ツナ……君の
二つの世界の英雄の“炎”が合わさって、常夜を照らす“太陽”が創造された……今こそ、
「これで最後だ……征くぞッ!」
リィンは満を持して小太陽を纏う太刀を脇に構え、一息に縮地で
『ま……まだだっ! 吾輩は……こんなところで……終わるような器じゃあ……ない……わ……! 吾輩が使えぬ魔法なんかを中枢に据えた世の中を作って、次元世界を我が物顔で牛耳ってやがる時空管理局なんぞに……お花畑の綺麗事とガキの甘ったれた理想を掲げて、無知蒙昧の
だがしかし、機体が崩壊寸前まで大破させられ動かせなくなっても、ラコフは諦め悪く最後の足掻きをしてくる。 自己への崇拝と狂信、己が生まれ持てなかった魔法という力へ対する忌避、それを
ガコンガコン! 幾つもの機械駆動音が重く鳴り響き、甲板上の至る所の床に続々と中正方形状の昇降運搬口が開かれていく。 それ等全てが開ききったその直後に奥底からゴゴゴゴ! という
「これってまさか、また甲板底の格納庫から予備戦力を出してくるつもり……ッ!!?」
『ドンッ、チェルルルーーッ! 大正解だぜぇ! キサマらのような烏合の衆なんぞに吾輩はやられはせんわい! たとえ最強無敵の我が
そして憐れにもこれで形勢逆転したと思い込んだラコフが勝ち誇った莫迦笑いをして言い終える前に各昇降機の全てが甲板上に到着する。 だがしかし、その上に乗っかっていた物はどれもこれも一ケ所の例外も無く、黒い煙と
『──……は?』
『ま……さか……!? この黒髪の青二才の剣士とコイツに“大空属性の炎”を撃ち渡しやがった茶髪のガキが……いきなり上空から現れて落下してきて、二人同時に
そう……それは先程、なのは達機動六課前線攻略部隊を絶体絶命の窮地に追い詰めたその時に、突如次元世界外の二つの異世界より次元間転移されて上空に出現したリィン達トールズⅦ組とツナ達十代目ボンゴレファミリー、そして彼等が
『嘘……だろ……!? 全次元並行宇宙で最も崇高な人間である、このラコフ・ドンチェル大司令官様が……こんなアタマ御花畑の理想を夢見て仲良しこよししているような……青臭い
これでリィンとツナの炎の剣に抗える全ての手段が尽き果て、ラコフはどうしようもない悔しさの余りに何処からか取り出した白いハンカチを歯茎の血で真っ赤に染める程強く噛み締めて猛烈に癇癪を喚き散らすしか、もはや出来る事は無いのだった……。
「今が勝機だ。 決めてくれ、リィン!」
「ああ! ツナ、君と俺の力と思いを一つに重ね併せた、この炎の太刀で──」
ツナから“炎”を渡して敵大将への最後のとどめを託されたリィンは背中へ送られてきた彼の声に任せてくれと頼もしい応答を返すと、遂に
「──
それは三つの世界より集い、新たなる一筋の
「合奥義・
そして背中から外へと通り抜けて、その先の艦尾前で暖かな安堵の微笑みを浮かべたなのはと満身創痍の重体を引き摺る彼女に肩を貸しながら歓喜の笑みを表わして手を大仰に振るスバルに出迎えられる。 二人の手前に閃光の尾を引きながら
「ポナペティーーーーッッ!!!」
結果、その爆風によって機体は粉々に吹き飛び、全身ズタボロの真っ黒クロスケに成り果てた
「クククッソー! 今日のところはこれぐらいで勘弁してやるが、次は絶対にメッタメタのギッタギタにしてやるからなクソ英雄共が! これで勝ったと思うなよォォォォーーーッッ!!」
キランッ☆
ラコフは最後に、まさしくヒーローにやっつけられた小悪党の捨て台詞を全開で吐き捨てて、そしてそのお約束に倣うようにミッドチルダの夜空のお星様になったのであった……。
てな訳で、ラコフは小悪党キャラのテンプレに従って、最後はお空のお星様になりましたとさ☆ (再登場フラグ乙)
活動報告の『ゲスト参戦作品キャラクター投票』に進展があったので、途中経過を発表します。
*2票
『落第騎士の
『ロクでなし魔術講師と
*1票
『ハイスクールD×D』(兵藤一誠 木場祐斗 ヴァーリ・ルシファー)
『空戦魔導士候補生の教官』(カナタ・エイジ ユーリ・フロストル クロエ・セヴェニー)
『出会って5秒でバトル』(白柳啓 天翔優利 霧崎円)
こんな感じでロクアカが落第騎士に並びました。 う~ん、締め切りが近くなってトップが二作品になるとはね。 さて、このままトップ同票で終わったらどうするかな?
ダブルマークⅡセカンドさん、アンケート投票にご協力いただき、誠にありがとうございました!
アンケート投票期限が間近に迫りました。 4月末まで投票できるので、皆様投票にご協力の程よろしくお願いします。
あとがきコーナー『リリカルマジカル
※「」はセリフ、[]は内心の呟きになります。
アリサちゃん(まじかる☆アリサRコス)「勇気と愛、希望を導く、熱き灯火──超絶史上最強ヒロイン魔法少女、まじかる☆アリサちゃん! リリカルマジカル只今参上ッ!!」
グナちゃん「イイトシコイテ、ナニヤッテイルンダ? オマエ、ハタチコエテ、ゼンシンピンクノマホウショウジョゴッコトカ、サスガニイタイゾ」
アリサちゃん(まじかる☆コス)「フッ、ピンクの厨二病魔法女騎士の人がモデルの人(形)にそんな事を言われたって、痛くもかゆくもないわ☆ ……それに私が魔法少女コスをしているのは、今回お呼びしたゲストが“魔法少女界の超VIP”と言っても過言じゃあない、この御方だからに他ならないわ!!」
なのは(バリジャケ装着)「身体は穢れ無き白、胸には闇を撥ね返す
グナちゃん(カンペ持ち)「マホウショウジョデセイジンマエノオトメトハwww」
なのは[シグナムさんのね○どろいどぷちに草生やされた!? というか、いったい何でお人形がカンペ持っておしゃべりできるの!]
アリサちゃん「そう、何を隠そう、この御方こそが、時空管理局の《エース・オブ・エース》にして魔法少女界を代表する御一人にあらせられる“
グナちゃん「ナンダカオマエ、タカマチノコトヲイヨウニモチアゲテイルナ? コウシキノ4コママンガ(『閃の軌跡講座』『みんな集まれ! ファルコム学園』など)ノオマエハ、ニンキガタカイヒロインヲテキシスルダロウガ」
アリサちゃん(大興奮)「ちょっ!? おバカ! 口を慎みなさい! 魔法少女界の代表格であらせられる
グナちゃん(アリサちゃんの勢いにドン引き)「オ……オウ……」
アリサちゃん(なのはの頭上に紙吹雪を撒く)「そんな大変立派で素晴らしい魔法少女作品シリーズの顔にして主役であらせられる、この高町なのはさんは、大きくつぶらな垂れ目の可憐な美貌と相俟って白地の魔法少女衣装(バリアジャケット)がよく似合った凛々しさを併せ持ち、困っている他人を見過ごせない御人好しで悲しむ心に手を差し伸べずにはいられない慈悲深き優しさを内に秘める一方、誰かを助ける為ならたとえ自分がどれだけ傷付こうともどんな困難や強敵にも立ち向かい、どんなに理不尽な運命が立ち塞がろうと決して諦めない、不屈の心と星光の魔砲をもって壁と己が信念を貫き通す。 まさに王道を征く本物の
なのは(ちょっと赤面)「にゃはは……。 こんなに褒めてくれると、なんだか照れくさいね。 だけど17年以上根強い人気で続いてきているのは
グナちゃん「トイウカ、ナニゲニタカマチノプロフィールショウカイヲスマセテシマッタナ。 モウスルコトネージャン?」
アリサちゃん「う~ん、そうねぇ……それじゃあ折角だし、なのはさんに御得意の【魔砲】を披露してもらいましょうか♪」
なのは[何故だろう、【魔法】の字が違っているような……]
アリサちゃん「的は……これでいいわね」
メガネの怪人「メガネール!」
なのは(突然出現したメガネの怪人にビックリ)「──って、にゃあああーーっ!?」
グナちゃん「ナンダァ、コノダサイメガネノバケモノハ?」
アリサちゃん「昔に公式から売り出されていた『魔法少女まじかる☆アリサ 決定稿』の第一話に登場した、まじかる☆アリサの記念すべき最初の敵キャラよ。 閃の軌跡シリーズ本編では帝国司法監察官やってる生真面目メガネ風紀員のクソダサメガネを宿敵である魔界皇子リィンが闇のパゥワァーを使って眷属化した怪人“メガネール”といって、コイツはリリなの無印に出てきた【ナンタラシード】を某監察官から(無断で)借りてきたメガネに埋め込んで再現してみました(テヘペロ☆)」
グナちゃん「【ジュエルシード】ダロ! オマエナンテモノツカッテンダ、アホー!!」
なのは「と……とにかく魔法を使ってやっつければいいんだよね? レイジングハート!」
レイハ『イエス・マスター!』
なのは(メガネールにレイハの砲身を向けて)「ディバイィィン──バスタアアアァァーーッ!!」
レイジングハートから放たれた膨大な魔力量のピンク色光線がメガネールを飲み込んだ。
メガネール「メ……メガネール!?」
メガネールはピンク色の光の中にカッ消されて消滅した。
アリサちゃん「さすがはエース・オブ・エース、お見事ッ!」
某帝国司法監察官(メガネ無しで遠くからやって来た)「お~い、アリサ君。 僕のメガネを勝手に持ち出して行っただろう? 返してくれないか」
なのは(たった今ジュエルシード再封印した)「えっ? もしかして、そのメガネって……」
アリサちゃん「それじゃあ今回の“炎の軌跡”講座はここまで! 次回、本編は『魔王降臨』の予定みたいだから、みんな楽しみに次回更新を待っていなさい!!」
グナちゃん「サラダバー!」
メガネ無し監察官「いや、だから僕のメガネを返してくれ……」
なのは「あ……ははは……なんかゴメンナサイ」
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魔王降臨
『光の魔王系ラスボス』のタグの意味が第十一話目になってようやく明らかになります。 元ネタを知ってる夢界の眷属諸君、勇気の
時刻 20:32──戦火に包まれし第一管理世界ミッドチルダの首都クラナガン。
時空管理局の撲滅を掲げる卑劣なる次元侵略組織、反管理局軍ミッドナイトの主力航空艦隊で埋め尽くされていた夜空の隙間に汚い星が煌いた。
『ギギギ……』
『ピ───』
その直後に首都の各エリアを蹂躙していた無数の人形兵器の軍勢が一機残らず一斉に稼働を停止し、都市の中心に高く聳える地上部隊本部に向かう上空で首都航空武装隊の航空魔導師達と激しい
「ナカジマ隊長、これってもしかして……」
「ええ。 どうやら
尽きる底が見えない程の圧倒的な物量をもって敵軍の人形兵器群集団に地上部隊の防衛網が全て突破された事でクラナガン全域が完全制圧される目前だった、この局面で突然の敵軍撤退……絶体絶命の窮地に追い詰められかけていた地上部隊各隊は、絶対優位に立った途端に活動機能を停止していく人形兵器達や撤退して行く魔煌機兵部隊の姿を目の当たりにして、電撃作戦にあたっていた機動六課の最前線攻略部隊が無事作戦を完遂し、敵軍の総軍司令官たるラコフ・ドンチェルの無力化に成功した事を確信する。
「作戦完了。
陽動部隊の指揮を執っていた青紫髪の少女が盛大な声で勝鬨をあげた直後、「ウオオオオーーッ!!」という地にも響くような地上部隊員達の大歓声があがった。 拳やデバイスを手に高く掲げて「やったぞー!」「おおーっ!」という勝利の雄叫びをあげて歓喜を表している者、二人で手厚い抱擁を交わし無事に戦いを生き延びられた喜びを分かち合っている者。 激戦の跡火が残る首都クラナガンの中で、地上を守護する法の勇士達は皆、長く苦しかった戦いを
──スバル、そして機動六課の皆さん。 先日のJS事件も含めて、二度も
地上部隊員達の大歓喜の中心に立つ青紫髪の少女は、反管理局軍ミッドナイトという強大な次元犯罪組織を撃退し、再びミッドチルダを危機から守った機動六課の戦乙女達へ心よりの感謝を想い謳う。
その次元世界の英雄たる少女達に、二つの異世界からやって来た別世界の若き英雄達が助太刀していて、彼等が後に【
一方その頃、地上本部屋上の戦いも佳境に入っていた。
「
経ったの先程までは、旅客機ジェットをも上回る超馬力と内蔵された【畜炎炉】と導力結晶回路機構を使った分解火炎放射砲と
炎噴射推進装置を最大出力にした爆速で空中を縦横無尽に飛び回りつつ空間制圧的に息も吐かせぬ猛攻をするオーバル・モスカに、シグナムとヴィータが全身滅多打ちにされながらも遥か長年戦場の空を翔け抜けてきた
「はああああっ……! 《イクスペル・ランサー》!!」
そうして、魔女の空間結界に全ての力を封じられて捕縛されその場から出られず逃げる事も出来なくなった鉄の守人に、ガイウスが
「ふぅ……どうにか倒す事ができたか。 この戦技は三年前のあの内戦以来しばらく使っていなかったから上手く放てるか少々不安があったが。 これも法国で守護騎士の先達方から御教授して頂いている修練法の賜物だな……感謝します」
「ほう、お前も“守護騎士”の肩書を持っているのか」
雪崩のような音を立てて崩れ落ちる鉄機人を背にし、強敵に無事勝利した余韻に浸りながら長い間使用していなかった
「時空管理局、機動六課所属、前線戦闘分隊のライトニング隊副隊長。 並びに《夜天の魔導書》の主が守護騎士──“ヴォルケンリッター”の《烈火の将》シグナムだ。 異世界の守護騎士よ、エマ殿共々に助太刀感謝する」
「エレボニア帝国、元トールズ士官学院特科クラスⅦ組。 それから、アルテリア法国、七耀教会《
「……【シグナム】で構わない。 仕える主は違えど同じ守護騎士の肩書を持つ者同士のよしみ。 硬い言葉遣いは不要だ」
シグナムは同じ騎士として、強敵相手に助太刀してくれたガイウスへ感謝と敬意を示して己の名と所属部隊と共に騎士としての肩書を明かしたら、相手から丁寧に畏まった礼と自己紹介を返されたばかりか【シグナム卿】などと今までに自分が誰からも呼ばれた事がない敬称でこちらの名を呼んできた為、少々こそばゆく感じる。 それが当たり前であるかのように偽りなき畏敬の目を真っ直ぐこちらに向けているガイウスに照れ隠しするように目を伏せながら自分への呼称と会話は気楽にするように願い申し、そうしたら相手がこれまた素直に「了解した。 改めて宜しく頼む、シグナム」と言い直したところで、オーバル・モスカとの戦闘で散っていた残りの仲間二人がそれぞれ飛翔と転移で集まって来た。
「シグナム!」
「ガイウスさん。 作戦、上手くいきましたね」
「ああ。 シグナム達二人の陽動とエマが張った捕縛結界のお陰だろう。 俺は拘束した敵にとどめを刺しただけで大した事はしていないしな」
「ふふ、そんなに謙遜せずともよいではないか。 ガイウスがあの敵を仕留めた時に放った《イクスペル・ランサー》という必殺戦技は
「あ……あの程度の竜巻なんて大した事ねーし! あの“ゆりかご”の動力炉だってブッ壊したアタシのツェアシュテールングスやなのはのスターライトの方が上だっての!」
「因みに、さっきのイクスペル・ランサーはガイウスさんの最強の
「おいコラ、エマ。 ガキをあやすみてーに人の頭撫でてんじゃねー。 ……っていうか、初めて会ったばかりで気安く“ちゃん”付けで呼んでんじゃねーよ!? アタシはこれでもテメー等よりもずっと歳上なんだよ。 呼ぶなら“ヴィータ姉さん”と呼びやがれ!」
ガイウスとエマ、シグナムとヴィータはお互いにオーバル・モスカの撃破成功を喜び合う。 一度肩を並べて戦ったお陰様か、両組は互いに初めて知り合って間もない関係にも拘らず和気藹々として会話を交わせるようになったようだ。
やがてエマに子供扱いされて拗ねたヴィータを宥めている内に今まで下の街から聴こえて来ていた戦闘の銃爆音がピタリと止み、真上に無数と浮かぶミッドナイト軍の主力航空艦隊へと遠くの空で戦闘展開していた魔煌機兵部隊が尻尾を巻くようにして引き揚げてくる様子が見て取れてきた。 すると丁度この屋上ヘリポートの真上に浮かぶ
「あれはテスタロッサの魔力光信号弾……フッ、作戦完了の合図か」
「って事は、なのは達、無事にあのラコフっつう敵軍の総司令官のチョビヒゲオヤジのヤローをブッ倒せたんだな。 よっしゃー!
「あの母艦の上で謎の魔煌機兵と人形兵器の大群と戦っていた少女達の事か。 危機に陥っていた様子を視たリィン達が俺達と分散し、あの者達の救援に向かってあそこへと落下していたが、どうやら上手く助けられたようだな」
「そうですね……確か、先程私達が
互いの
「それではガイウスさん、そろそろリィンさん達と合流しに向かいましょうか。 あの程度の距離なら転移魔術で十分行けるでしょうし。 折角ですから、シグナムさんとヴィータちゃんも御一緒に──」
ゴオオオオオオオオンッ! ドドドドドドドドドドーーーッッ!!!
「「「「────ッッッ!!!?」」」」
戦勝ムードで四人が今宵の戦いの最功労者である仲間達のもとへと向かおうとしたその瞬間の事であった。 突然にして全員の視界に映る全体の景色の色が瞬時にしてドス黒く塗り潰されたかと思うと、今立っている
「なん……だよ……コレ……空が急に……!?」
「この身体と精神に現実味を覚える錯覚は……“威圧”か? だが何だ、まるで星よりも巨体を持つ巨人の足で魂諸共に圧し潰されるような、この尋常ではない規模は……! とても人間が発せれる気当たりではないぞ……!!」
得体の知れない重圧が天高くから叩き付けられ、頭から床面に圧し倒されそうになるのを丹田に力を入れ脚下を踏みしめてなんとか堪えた四人。 だが圧し掛かる重量に実体はなく、それは何者かの生物が発してきた気当たりによって起こされる幻覚作用に過ぎないものであるが、それは肉体、精神、魂魄という
ヴィータやシグナムなど一定レベル高い実力を有している猛者なら“威圧”を放つ事で対峙する人間複数に対して己の手によって殺傷を受けるなどといった幻覚を見せる事は可能だ。 しかし、そんな猛者達すらをも床に膝を着かせ、生命どころか物質や空間、更には霊的な概念存在にも干渉し、果てには
「内側の
「ああ、わかっている……。 この奈落よりも底知れない“霊圧”は、下手をすればあの半年前の【幻想機動要塞】で対峙した結社最強の《火焔魔人》が“堕ちたる外の魔神”の姿を顕現させた時に感じたものをも上回っているやもしれん」
歴戦の古代魔導騎士二人が揃って立つこともままならない状態の中、エマとガイウスは世界一つをも圧壊させかねない尋常ならざる霊力威圧に魔女の眷属や教会騎士として鍛えられた霊的抗体と精神胆力で抗い、どうにか耐え忍びつつ真上に佇む
「どうやら
「な……ッ!!? ガイウス、それは確かなのか!」
「じょじょ、冗談じゃねー! あそこにはなのは達が居るんだぞ?
「わ、わかりました! 今から私の魔術で四人一緒に転移しますので、皆さん、戦闘に備えてどうか身構えていてください……!!」
王道の
平凡な日常を送っていた主人公の若者が苦難の運命に立ち向かう為の力や仲間達と出会い、共に平和な世に降りかかる災厄や悪の徒へと挑み、次々と立ち塞がる試練や難敵などの分厚い壁によって阻まれ幾度も打ちのめされようとも、幾度も立ち上がり脅威へ挑む勇気、苦楽を共にしてきた仲間との絆、大切なものを守りたいという愛の力等々、そういった実に尊い人の
そんな輝かしい王道の
そして今此処で、“この男”が狂おしい程に心に想い焦がれて愛した三つの英雄伝説の
それぞれの
「──ああ、だめだ。 もう、辛抱たまらん……ッッ!!!」
その男……勇者や英雄の持つ高潔な光を愛し過ぎて狂った“魔王”はもう我慢の限界だと三日月状になるよう両端を吊り上げた口から言い漏らしたと同時に、今まで心の内に必死に抑えていた底無しの“うずうず”を外界へと解き放った。
「「「「「「「な────ッッッ!!!?」」」」」」」
瞬間、第一管理世界ミッドチルダとその星が存在している
「なん……だ……このデタラメな
「う……わあ″あ″あ″あ″──っ!!!」
「心と身体が……それに世界も……嫌ああァァーーッ!!」
肉体も精神も魂までも、今居る次元世界丸ごと圧殺されてしまいそうな程の埒外の重圧に上から圧し掛かられ、ツナやスバル、なのはまでも発狂を催せざるを得ない。 他の皆も同様に床に伏せて、気分は嘗てないほど最悪の様相であった。 生存本能が絶えず全神経を絶叫させ、肌が粟立ち、呼吸も異常に乱れさせられる。 それは国や世界規模を害する力を持ったレベルの難敵達を幾度も打ち破ってきた百戦錬磨の英雄達ですら覆しようもない“格差”を骨の髄まで感じている証左に他ならなかった。
──この
リィンは文字通り“次元違い”なまでに規格外の霊圧をその心身両方に受けて、その
だがしかし、引き合いに出した彼の知る中で最も強大な力を持っていた“堕ちたる外の魔神”のと“これ”のとは、趣を異にするものだ。 荒れ狂う天災のようである様は同じなれど、己の乾きの癒しを求めて闘争を欲するよりも、これの中には徹底した整然さも同時に感じるのだ。
一言で具体的に表わすなら“裁定者”とでも言うべきだろうか? 何であろうと公平でいて容赦がないという二面性を孕んでいて、故に一瞬でも気を抜いたならその者は即座に魂ごと
例えここに居る全員が万全を期して束になって掛かっても、この霊圧を放っている者には恐らくは敵わないだろうと予感できる……。
「そんなのが、どうしてこんな
今相手と対峙すれば、ほぼ100%の確率で自分達は命を落とすだろう……だがそのような尋常ならざる危険な存在を二度に渡った大空襲事件で防衛戦力が著しく消耗したミッドチルダにおいて見過ごす訳にはいかない。 リィンは今まで共に
「ああ、いい、実に素晴らしいぞ。 そのような満身創痍の身体で、この俺との絶対的な力の差を感じて決して勝てない事を理解して、尚も世界を護り抜く為に不撓不屈の意志を振り絞って立ち向かおうというのか……!」
その男は憲兵のものと思われる群青色の外套付き軍服を錬鉄のように鍛え上げられた長身の肉体に纏い、リィン達と
「西ゼムリア大陸【エレボニア帝国】の英雄《灰色の騎士》リィン・シュバルツァーとトールズ士官学院Ⅶ組。 表向きは【並盛町】という日本の小さな町に住む中学生で、真の顔は世界最強のマフィアである【ボンゴレファミリー】の十代目ボス《ボンゴレ
まずは先程、初対面同士でありながらもお互いの百戦錬磨の戦闘経験を活かした即席の
ギラめく目元を際立たせる闇を目元に被せている軍帽の後ろから長く伸びた極太の三つ編みが夜風に煽られて鞭のように撓って闇夜を鋭く打ち鳴らし、その姿を見た者ら全ての魂にどんな絶望よりも
「俺はイノケント──三世界を統一し、永劫不滅の“
≪次元魔王≫イノケント・リヒターオディン イメージCV:伊藤健太郎
「三世界の
物語最初のボスに勝利した喜びも束の間。 此処に早くも魔王降臨。 果たしてリィン達の運命や如何に……っ!?
今回の『炎の軌跡講座』はお休みです。
《次元魔王》イノケント初登場! この明らかに「趣味でラスボスはじめました」というバカ憲兵大尉っぽいオリキャラこそが今作のラスボスとなります。
ん? ラスボスがプロローグの章でメイン主人公パーティに相対してくるのは早すぎるだろって? あの
九月末に発売予定日が決まった黎の軌跡Ⅱの新情報も続々出てきていますね。
遂にプレイヤブル参戦のJKレン、また色々とスッゴイファッションセンスが光る新衣装お披露目のシズナ姐さん、黎シリーズ最強キャラ候補の一角であるカシム警備主任らが本格パーティ参入決定。(たぶん全員ではなく、誰が仲間になるかは前作同様LGCの上がり方次第だろうと予想される)
他にも【メルヒェンガルテン】という創の軌跡の真・夢幻回廊にも似た異界ダンジョン探索やメアのアバターを使ったトランスミッション系ハッキングミニゲームなど、ワクワクする要素が今回もてんこ盛りですね♪ ホント10月がやって来るのが楽しみ過ぎてまたまたテンションアガットが止まらーん!(興)
黎Ⅱの発売日が待ちきれない間に電子本サイトで買い置きしていた『魔法戦記リリカルなのはforce』の出ている六巻分を一気読みしました。 今までに無いバイオレンスな展開運びや流血描写の多い殺伐とした雰囲気にも驚かされましたが、シリーズ初の男性主人公であるトーマをはじめ、なのは達特務六課のライバルであるフッケバイン一家や底知れぬ実力と凄みを秘めた事件の黒幕のハーディス社長など、相変わらず個性の強い魅力的な登場キャラクター達に自然と惹かれましたね。 自分的には五巻に登場したグレンデル一家の四馬鹿が意外といい味を出していたと思いました。(しかし彼等のような小悪党の監獄脱走を待ち伏せするのに
しかしフッケバイン一家ってStrikerSの系列時にはもう組織が創られて暗躍をはじめていたんですってね。 う~ん、この小説のどこかで暗躍中のフッケバイン一家を登場させるのもいいかも?
あと最後に、アラサーなのはさんのフォートレス形態、重装甲なのに胸元を主張しすぎでしょ? ていうかデガ盛り過g「エクサランスカノン フルバースト!!」
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初めて相対する三世界の英雄達と次元魔王……そして発令される、新たなるオーダーシステム
「な……なんやねん、あのごっつう素敵な笑顔の男は──ッ!!?」
真空中のように息苦しい沈黙を破った六課の部隊長である茶髪ショートボブの女性局員が未だ嘗てない戦慄の震え声で此処に居る全員の今の気持ちを代弁するように全身全霊吐き叫ぶ。
なのは達最前線攻略部隊が謎に包まれた異世界からの助っ人達と即席の共同戦線でもって、敵侵略軍──ミッドナイト軍総司令官のラコフ・ドンチェルが駆る強力無比な性能無限強化能力を持っていた“畜炎体循環出力増幅機関搭載型”魔煌機兵スクルドを辛くも撃退し、見事逆転勝利を収めた……作戦の最大目標は敵軍の
先日にあったJS事件の【ゆりかご決戦】を受けて第一管理世界ミッドチルダの防衛戦力が著しく疲弊していた為にまともに戦える人員も装備も相当限られていて、故に今回の戦いは極限と言える程に過酷だった。 正直、勝てる可能性は1%以下だったと言って過言ではないレベルの
それ故に敵軍の頭を押さえる事は出来なかったが、味方の犠牲を少なく隔絶された戦力差の相手を撃退できた事は、まさに奇跡と言えよう。 ほんの数分前、二つの異世界からやって来た英雄達のリーダー二人(リィンとツナ)が互いの“炎”を混ぜ合わせて放った
「わ……解りません。 余震もなく突然計測不可能な
一難去ってまた一難。 勝利の余韻に浸る間もなく謎に包まれた正体不明の男が出現し、機動六課と異世界からの助っ人達の敵だと、威風堂々、爛々として名乗りをあげたのである。
「保有魔力総量……
「うわああっ!? ののっ、能力計測機が暴発を起こしました!!」
「推定脅威度……
「なん……やて……ッ!!?」
新たに現れた敵の持つ力は
彼女達が今までに相対してきた全ての敵が
「こうなると、頼みの綱は異世界の助っ人の皆さんになるでしょうね……ですがしかし、もしあの男の戦闘力が本当にUNLIMITEDランクだとすると、先程のラコフ・ドンチェルとの
「たぶんアカンやろな……ふうぅぅ……しゃーないな」
正面に座ってメインモニターの端末を打っている通信士の女性部隊員が漏らした不安に神妙な面持ちをして答えた部隊長の女性は重い溜息を吐くと踵を返して作戦指令室の出入り口へと足を向ける。 それを見ただけで
「出撃するつもりなのですね。
「正直“総合SSランク”を持っとる私でも、あないなアホみたいな次元の敵相手に何が出来るんか分からへんけどな……部隊長として、部隊のみんなのピンチに助けに行かへんでどないすんねんって」
子狸のようにあどけない幼さが残る童顔を引き締めて、部隊の仲間達を助けるべく命を賭ける覚悟を決めた部隊長の女性のもとに明らかに人間ではない妖精サイズの銀髪の女の子が飛んで来る。
「はやてちゃん、
「おっと、グッドタイミングやツヴァイ♪ ……ほな、こっちは任せたで、ひよ里。 ちょっくら行ってくるわ」
「はい、御武運をお祈りしています……ですが八神部隊長、以前から何度も言ってますが私の名前はルキノです」
部隊長の女性は他愛ないやり取りで部下にこの場を任せて緊張をほぐすと、妖精サイズの女の子を連れて作戦指令室を出て行ったのだった……。
「
リィンは焼け落ちかけた
「“魔王”って、
「ちょっとアンタ、何を寝ぼけた事言ってるのよ? 自分で勇者に打倒される
魔王という架空の……しかも悪役の通り名を恥じる事なく堂々と自ら名乗った新たなる敵に、ツナやティアナをはじめとして此処に居る全員が荒唐無稽の心を露わにして疑念や苦情などの文句をギャーギャー挙げている。 確かにこのイノケントという男が今もその身から放っている、人の身には度が過ぎる程に絶大な“霊圧”や世の
「だいたい貴方、いったい何時からこんな所に──「テスタロッサ! 皆も全員無事かッ!?」──って、シグナム!?」
皆で文句を投げつけても爛々とした笑顔のままで微動だにせずにいるイノケントに、外部の次元世界から
「ヴィータちゃん! よかった、あの凄く強い人型ガジェットを無事に倒せたんだね……」
「おうよ! あんな鉄屑ロボットなんざ、この《鉄槌の騎士》ヴィータ様とグラーフアイゼンにかかれば……ってか、なのはテメェ、ヤバイ程身体がズタボロになってんじゃねーかよ!? 口酸っぱくしてあんだけ止めろと言ったのに、また無茶しやがったんだなコラッ!」
「あ……アハハ……ごめんn──「その声は……まさか“ヴィータ姉さん”!?」──ふえっ!? 誰なの?」
「おっ? へへっ、なんだよエマ。 やっとアタシの事を素直に歳上と認めてヴィータ姉さんと呼ぶ気になったのかよ♪」
「いや、ヴィータちゃんの事じゃなくて……えっ、どなたですか? “ヴィータ姉さん”の声にそっくりだったけど、私、もしかしなくても人違いして……」
「エマ! ガイウスも無事でよかった」
「あ……リィンさん!」
「後輩の皆も、全員大した怪我は無いようだな」
「はい! 御二人にも大きな怪我は見当たらないようで、安心しました♪」
「えっと……リィン君、そちらの御二人は……」
「
──風……?
「そ、そうだったんだ……御二人共、ヴィータちゃんとシグナムさんを助けてくれて、どうもありがとうございました。 わたし、機動六課の教導官と前線分隊指揮を務めている、高町なのは一等空尉です。 そちらはガイウスさんと、えっと……」
「あ……はい。 はじめまして、タカマチさん。 私はエマ・ミルスティンと申します。 こちらのリィンさんとガイウスさんとは元トールズ士官学院特科クラスⅦ組の卒業生同士です。 詳しくは後程お話ししますが、私は
「そ、それはご丁寧にどうも……にゃはは。 でも、出来ればわたしの事は“なのは”って気軽に名前で呼んでください。 お互い歳も近いみたいだし、あまり硬くならないで、普通に接してくれると嬉しいかな」
「は、はい……それでは改めて。 よろしくお願いします、なのはさん……どう聴いてもやっぱり似ているなぁ、姉さんの声に」
「確かに、先程より何処か聴き馴染みのある良い声をしているとは思っていましたが、
「?」
なのはは自分の方を眺めてきながら口元に手を添えた思案顔をして何やらブツブツと呟き合っているエマとアルティナに訳が分からず首をコテンと傾げて頭の上に?マークを浮かべている。 しかしそこで全員がハッと気付く。 和気藹々と自己紹介し合っている場合ではない、今彼等は
「うむうむ。 実に良い♪
「──って、うぉっちょぉおお!? ちょっとあの人、何だかあたし達とエマさん達の再開を律義に見守ってるみたいなんですけど!」
リィン達は自分等全員よりも遥かに格上だろう相手の前で迂闊に隙を見せてしまったかと思い、全員慌てて再び気を引き締めつつ
「ふははは! なに、当然だろうユウナ・クロフォードよ。
「へ……っ!? どうしてあたしの名前を」
「そういや、このクソデカ三つ編み野郎。
「貴方、確かイノケントって言ってましたね……。住む世界が異なっていた私達全員の
イノケントが童子の如く純朴過剰に満ちた素敵な笑顔で嬉しい哄笑をあげながら、まだ名乗りもしていないユウナのフルネームを呼んでみせた事に対して、名前を呼ばれた本人は呆気にとられて固まってしまう。 それに獄寺が、先程イノケントが現れた時に
「ふはははは!
「「「「「「「────ッッ!!!」」」」」」」
イノケントは誤魔化す事など微塵もせず、両腕を高らかに大きく広げて今回の戦いに己が関与していた事の全容を盛大に暴露した。 そう、何を隠そう、ミッドナイト軍に取り入ってリィン達やツナ達の世界の力を与えていた匿名の協力者の正体はこの男、《イノケント・リヒターオディン》だったのだ。 今明かされた衝撃の真実を受けて三世界より集結した歴戦の若き英雄達は皆目をはち切れんばかりに大きく見開いて驚愕の様相を露わにし、全員相手への警戒レベルを最大値まで一気に上昇させた。 もう疑う余地はない、奴は紛れもなく自分達の敵だ。
「はは、俺が黒幕だと判って直ぐに全員が戦う目付きに変わったな……ふは、良いぞ。 ようやく俺を倒すべき敵だと認めたか」
「ああ……だが、どうしてだ? そこまでの事をしてまでオレ達の敵になりたい訳が分からない。 イノケント、いったいお前は何が目的なんだ!」
英雄達に己を敵だと認定されて、まるで昔から憧憬を抱き続けていた人から承認を受けたかのように悦びを顔に表わす此度の戦いの黒幕である自称魔王に、ツナは剣呑な雰囲気に理解に苦しむような思いを混ぜた表面を浮かべつつ橙色の煌炎を灯した右手の人差し指をさし向けて、何を企んでいるのか教えろと問い詰めた。 リィン達もツナの質問に同感を示す頷きを呈している様子だ。
確かに疑問を感じるのはもっともだ。
「そう急かすな。 今宵の物語はまだ始まったばかりなのだ。 このようなプロローグで主人公たる英雄達がラスボスの目的を知ってしまったら、物語の面白味が薄くなるだろう?」
しかし、お楽しみは後まで取っておくものだと期間限定販売の極上スイーツを買えて上機嫌で家の冷蔵庫にしまっている女子高生のような調子で勿体ぶり、回答を拒否したイノケント。 リィン達は眩暈を覚えた。
「俺は今、胸が高鳴り張り裂けてしまいそうな程に感動している。 トールズ士官学院Ⅶ組、ボンゴレファミリー、古代遺物管理部機動六課……ずっと以前より長年この目を焦がれて狂おしいほどの尊敬をこの胸に懐いてきた
夜天を見上げてバッと両腕を大きく開き、宝くじの一等を当てたかのように盛大に歓喜して大はしゃぎをする自称
「な……なんなのよ、あの男は!?」
「ハッ! どうやら相当に頭がイカレた野郎のようだぜ、ありゃあ……」
「つーか、如何にもバカの類だろアレは? 言っている事の意味不明さ加減が
「……さてと。 本当ならプロローグに登場してくるラスボスの
「「「「「「「──ッッ!!?」」」」」」」
イノケントが気持ちよく一通り哄笑を終えた途端、再び奴は絶大なる霊圧を放ち出して眼下のリィン達へ先程よりも猛烈にギラギラを増させた眼光で見据えてきた。 今度のは鷹が地上の獲物に狙いを定めるように、明らかに攻撃を仕掛けてくる意思が向いてきている。 未だ嘗てない程に重厚な空気に殴りつけられて、リィン達は意識を戦闘モードに切り替えた。
「折角だ。 お前達の素晴らしい
完全に一戦やる気になったイノケントはニヤリと口角を吊り上げると、夜風にはためく軍服外套の内側から意気揚々として長方形状の携帯端末機の形をした謎の
「アレは……まさか“戦術オーブメント”か?」
「ですが、私が記憶している限りでは、あのような形式の物が造られているというのは帝国政府情報局の導力技術開発記録にはありません」
「以前エリカ博士の話にも聞いていたカルバード共和国のヴェルヌ社が単独一社で新開発を推し進めているという、噂の“第六世代型”とはまた違うみたいですね……」
「どちらかと言えば
イノケントが左手に持った得体の知れない未知なる戦術オーブメントを目の当たりにしてトールズⅦ組勢が一早くに臨戦態勢を取り、それに引きつられボンゴレ勢と機動六課勢も最大の警戒と共に身構える。 目の前の敵がどのような力を持っているか判らなかろうが、毅然として立ち向かう覚悟を決めれる歴戦の若き英雄達の雄姿に、光に焦がれた魔王は尊大なまでの敬意を表する。
「くくく、いいだろう。 ならば、まずは魔王と英雄達が戦うのに相応しい舞台を“創る”とするかな」
「何を言って──」
実に嬉しそうに不敵なる微笑を浮かべてまた理解し難い事を言い、左手の未知なる戦術オーブメントの表画面を持った指で何故か素早く器用になぞり出したイノケント。 それはどういう意味なんだとリィンが問う前に、イノケントは
「《次元魔王》の名において《
そうこの宇宙の法則そのものへと命ずるように魔王が
あとがきコーナー『リリカルマジカル
蒼い空、碧い海。 水面に揺蕩う
アリサちゃん(アロハ水着姿でデッキプールサイドに寛ぎバカンス満喫中)「夏休みということで、豪華客船の旅の中よりお届けするわね♪ 真夏のセクシィー超ヒロイン【アリサちゃんの“炎の軌跡講座”】第5回──」
ポチャン!
グナちゃん(甲板端で足を滑らせて海に落ちて、ピカー!)「サラダバー!」
アリサちゃん「──始まるよ……ってちょっとおおおっ!? 待って! 此処海のド真ん中d──」
ちゅっどーん!!
アリサちゃん(大パニックで逃げ惑う)「きゃあああ! グナちゃんの爆発で空いた船底の穴から海水が大量に入ってきたわ! 沈没する前に急いで逃げなきゃ──!!?」
船内へと駆け込んだアリサちゃんの前から、入り込んだ海水が濁流となって押し寄せてきた。
アリサちゃん(“しぇー!”のポーズ)「ウッソー!? 浸水してくるのハヤスギ! 美人薄命なんてイヤァァァーッ!!」
???「うおおおおおっ!!」
濁流が迫り、アリサちゃん絶体絶命かと思われたその時、某赤毛の冒険家の永遠の相棒の如く隣りの壁を拳一発でブチ破ってきた白鉢巻のボーイッシュ青髪少女が間に割り込み、間一髪
ボーイッシュ青髪少女「お待たせしました! あたしが来たからにはもう大丈夫ですよ!」
アリサちゃん「た、助かったわ……という訳で、本日のゲストはこの其処らの男よりも男前な魔法格闘少女で、前回紹介した【リリカルなのはシリーズ】のTVアニメ第3期『魔法少女リリカルなのは
スバル(魔法障壁で必死に濁流を塞き止めながら)「“救助隊”志望です! ていうか、何この非常時の中で
アリサちゃん「彼女は時空管理局の陸戦魔導師で《古代遺物管理部機動六課》の前線実動員“
スバル(障壁片手にデレて、そして濁流に押され出して慌て出す)「ふぇ!? い……いやぁ、そんななのはさんの一番弟子だなんて、それほどでも──って、のあああっ? 一瞬気が散った所為で魔法障壁の構成強度が脆くなっちゃってる!」
アリサちゃん「11歳の頃に遭った空港火災から当時15歳だったなのはさんによって救い出されたスバルは、なのはさんのように“誰かのピンチを救う事の出来る立派な魔導師になる”という夢を志して、陸士訓練校を首席で卒業し、時空管理局の陸上警備隊に入って、それからなのはさんと再会を果たして、彼女が隊長として率いている【スターズ分隊】の一員として機動六課に入隊していったのよ。 自分と同じ新入隊員でFWのティアナ、エリオ、キャロの三人とともに部隊入隊から日々、部隊の戦技教導官でもあったなのはさんからビシバシと魔法戦闘の訓練指導を受けてメキメキと強くなっていき、僅か半年の期間で高位の魔導師にも引けを取らないレベルまで成長して、遂にスバルは敵に攫われて洗脳された格上の魔導師であった姉を打ち負かして救い出すまでに至ったわ。 それはまさに彼女自身が夢に志してきた“誰かのピンチを救う事の出来る立派な魔導師”の姿そのものだったわね♪」
スバル(あたわた)「うわあああ、通路の水嵩が増しすぎて、水圧で魔法障壁に罅が入った!」
アリサちゃん(目の前のスバルが張っている魔法障壁が破られそうになっているのに気付いていない)「自身と姉の“特殊な出生”の事など色々と難題事を抱えているけれど、持ち前のガッツと負けん気と憧れたなのはさんから貰った薫陶を逆境を壊す力に変えて、スバル・ナカジマは夢を目指して走り続けるのよっ!」
スバル(限界)「もう……ダメ……だ……。 アリサさん……逃げ……て……」
アリサちゃん(未だ目の前の危険に気付く事なくマイク片手にデッドヒートマッハしているアンポンタン)「イケイケゴーゴー! 未来のレスキューレンジャー、スバル! 君こそが真のストライカーだッ!!!」
バッリーーン!
アリサちゃん「……え?」
ザッバアアアーー!!
アリサちゃん(逃げ遅れて濁流に飲み込まれる)「うにゃあああ!? 押し流されるーーー!!」
スバル(強烈な水圧を零距離で受けて気絶&水没)「ぶくぶくぶく……」
グナちゃん(空のボトルに入って水源から流されて来た)「ダイサンジデコウザドコロジャネーシ、コンカイノコーナーハココマデノヨウダナ……ソンジャ──サラダバー!」
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終末の世界
プレイの感想を一言でいうと、主役はピクニック隊(レン含む)。
創の軌跡の時もそうだったけど、すーなーカップルがとにかく尊いですね。 閃Ⅱの戦闘後ピンチ→助っ人登場のテンプレを最後まで連発しまくった展開も「主人公達以外も皆が戦っているというのが分かるのが軌跡シリーズらしいな」と言って許容できていた自分も流石に【死に戻り】というクソ地雷要素を間章の時のように事前行動で回避もさせてくれずに乱発してきた今作の第3章は進めるのがとても苦痛になってました。 しかし章最後のラストバトルでナーディアのピンチを敵に操られていたスウィンが呪縛を破って救い出した場面がもう激熱過ぎて、これまで貯め込んだ不満が一気に吹き飛びましたよー♪ ホント終わり良ければ総て良し!
それに【死に戻り】がクソ地雷だった半面、絶賛できたのは戦闘システムが過去最高の出来ッ! 新システムの《EXチェインアタック》は連発できると凄く爽快で、今まで出そうで出ていなかった二属性複合導力魔法の《デュアルアーツ》はド派手でカッコイイ! 何よりも今作はボス級ネームドキャラ限定だったけど、なんと敵も遂に《Sブレイク》を使ってきて割り込み必殺を仕掛けて来るんですよ! 最初のガーデンマスター戦で相手がSブレイク使ってきた時はマジで思わず「何イイィィーー!?」ってなりました。 おかげでボス級ネームド戦の度に「何時Sブレイクしてくるのか」とドキドキしながら戦えたので非常にバトルが楽しかったです♪
そしてなんと言ってもレンですよレン! 空の軌跡SCから長らく謎だった結社入り前のレンの過去の闇が今作で遂に明らかになり、彼女自身の手でその過去に決着をつける間章のストーリーはマジで素晴らしかったですね♪(クソ地雷要素の死に戻りイベントも完全な初見殺しのもの以外は事前行動の対処で回避できたのもマジでGOOD! どうして第3章もそうしなかった?)
更にレン関係で超感動したのは苦難だった第3章を乗り越えた最終章の最終コネクトイベに限りますね、やっぱ。 これの内容について詳しくはここでは控えておきますが、とにかく空の軌跡シリーズから碧の軌跡までプレイ済であるレンファンは超必見ですよ! もう感動し過ぎて涙が止まらなくなるので要注意ですね。
それにしても、黎シリーズの最強格キャラである某姉弟子さんがバトルキャラ性能とムービー戦闘描写共々バケモノ過ぎてワロタww。 前作に引き続いてフィールドバトル最速最強だったし、クラフト全部チート性能な上にザイファセッティングできてCP回復スキルを付けまくれば戦闘全部一人でやって手が付けられなくなるし、同じ最強格キャラである某警備主任がブッ放した極太バスターキャノンを一刀両断するわ、くの字体勢砲弾一直線で壁にブッ飛ばされても無傷で出てくるわ、異能やアーティファクト無しで次元空間を切り裂くわ……いったい何なのあの人は、ド○ゴンボールのZ戦士か何かか?(汗)
さて、長文のゲームプレイ感想失礼しました。 では本編をどうぞ!
神の裁きの如き無数の雷が世界中に降り注ぎ、地や街を穿つ。 撃ち剥がされた大小の地表・岩盤・街や道路のコンクリートの破片やら、木・動物・車両・住宅から高層ビルといった建造物が宙へと浮かび上がっていき、それ等が丸ごと渦を巻いて退却途中だったミッドナイト軍の艦隊を嬲り砕く様子は意思を持った大蛇のようだ。
亡者の悲鳴を連想する割れるような響音が煉獄に染められた大空に轟くと天上が罅割れて、割けた孔の中から異様な漢字で描かれた巨大方陣──“天”を中心にして“
「そ……そんな、
「嘘……だろ……何がどうなってやがるんだ? あの自称魔王の軍服ヤロウが何処の物か得体の知れねぇ戦術オーブメントを使って何か
一瞬にして崩壊した世界を目の当たりにし、この場に集った歴戦の若き英雄ら皆が顔面蒼白となって果てしない当惑と戦慄を露わにした。 煉獄の焔のような
「お前……いったい何をしたんだ!!」
重力崩壊時に発生した時空間衝撃波を受けて大きく罅割れた甲板の鉄床にダンッ! と足を踏み、ツナが怒りの形相をしてこの地獄の惨状を造った魔王へと問い詰めた。 訊かれた魔王イノケントは実に愉快そうな笑顔で答えてくれる。
「なに、事前に言ったであろう、沢田綱吉よ。 魔王と英雄達が戦うのに相応しい舞台を
「舞台を
イノケントが言った断片的な説明を聞いてリィンが自分の知り得る戦術オーブメントの機能知識と掛け合わせて解釈し、眉根を寄せてその解答はとてもじゃないが有り得ないという感情を含んだ声を張り上げる。 リィン達トールズⅦ組勢が所有している《ARCUSⅡ》の“オーダーシステム”は導力技術的に因果律へ干渉する事ができ、そこにルールを書き加える事で一定時間
「帝国最先端の戦術オーブメントである《ARCUSⅡ》をもってしても、世界一つ程の大領域規模を創り変えれる程の
リィン達は元の世界で約三ヵ月前に【エリュシオン】という現在のゼムリア大陸各国における導力技術では到底実現不可能である“機械知性”と邂逅し、“世界最後の兵器”【逆しまのバベル】においてゼムリア大陸の全人類の命運を懸けた最終決戦を行った。 詳細は今は省くが、エリュシオンは
そのような事もあった為、リィンは自分がしてきた経験則から
「くくく、流石なかなかに良い解釈をするなリィン・シュバルツァー。 もっとも次元世界そのものを創り変えるのではなく、高位相次元空間に創造した俺の
「高位相次元空間に創造した
「そうだ。 これは『
「なん……だと……!」
瞳を揺らしてそう口から洩らしたリィンと同様にツナやなのは達も皆一様に驚愕を露す。 イノケントの持つ《PARAISO》なる未知の技術が使われた近未来の戦術オーブメントに、高位相次元に端末所有者の【心象世界】──つまり奴が心に思うが儘に創った
次元や時空に関係した事象や事件にはトールズⅦ組勢もボンゴレ勢も機動六課勢も全員何度か巻き込まれて経験してきているが、戦術オーブメントのような人の片手に納まる程の携帯機器一つで多重時空の改変を成し此処にいる大人数を高位相次元空間に創造構築した自分の
──高位相次元空間……何故だろう、
──多重時空への接続と改変か……それを聞くと【10年バズーカ】での未来渡航や白蘭の並行世界移動能力を思い出すな……。
──どうやら
「くくく。 さあ、舞台は整ったぞ! 三世界より集いし歴戦の英雄達よ。 おまえ達のキズナの力と勇気の
《TTO》の概要に三世界の英雄達がそれぞれ自分の世界で見てきたそれと関連がありそうな要素を思い浮かべて半分思考に耽っていたところに、イノケントが嬉々として戦闘準備万端を告げる。
「──っ! 来るぞッ!!」
「全員身構えろ! 決して一瞬たりとも奴の動きから目を逸らすn──」
相手が戦意を持って動いたのを見て一早くに槍と剣を取り仲間達を守護するように前へと踏み出したガイウスとシグナムが得物を構えつつも鬼気迫るような大声で背中の仲間達へと最大の警戒を呼び掛ける……それよりも一瞬速く、群青色の光の軌跡を空に描く魔王の太刀筋が仲間達の盾となった守護騎士の二人の目前に
──な……にっ!?
──
敵が十階以上も有る中層艦橋ビルの屋上からまるで瞬間移動して来たかのように目が錯覚を覚え、守護騎士二人の顔が驚愕と戦慄の二色に染められる。 二人の懐に飛び込んできて、着地の姿勢から風圧で捲れ上がった外套の内側より黒漆の光沢が塗られた鞘ごと引き抜かれた長軍刀は計り知れない暴威の慣性を持って孤月を描き、異次元の速度と威力を纏う。 鞘に納められし魔王の刃が逆袈裟に群青色の破壊光線を引いて振り上げられてくるその凶撃を開ききらせた瞳孔に映して、二人の守護騎士は極限すら生温いと思える程の絶対零度の悪寒に襲われる。 不可避の絶死の予感が
「「──クッッッ!!!」」
停止した世界の中を破滅の残光を追従させながらゆっくりと迫り来る絶死の風を纏った魔王の剣……自分達二人がそれによって断たれたら、そのまま背中に守る仲間達をも纏めて引き裂かれてしまう事だろう……守護騎士の肩書きに懸けてそうはさせるものか! 二人はその意志を極めて強く握り締めた槍と剣へと注ぎ込み、絶対零度によって凍り付いた全身に活を入れて無理矢理動かした。
「「ぬおおおおおおおおおッッ!!!!」」
「ふうん──ッ!!」
停止した世界が再び動き出して色を取り戻した。 それと同時にガイウスとシグナムが互いに持つ槍の長柄と騎士剣の刀身を前に交えさせて十字盾を作り翳し、イノケントが魔速の抜剣をもって振るってきた鞘付きの絶刀と正面衝突した。
「「ぐわ──あ″あ″あ″あ″あ″あ″────ッッ!!」」
「「「「「「「うわああああああああーーッ!! / きゃああああああああーーッ!!」」」」」」」
守護騎士二人の十字盾と魔王の剣による衝突の結果は途方もない凄惨なる大災害を齎したのだった。 壮絶に繰り出された両者の得物が触れ合った刹那、僅かな鍔競り合いも許されず守護騎士の十字盾が一瞬で槍と剣に分離させられて得物の持ち主二人諸共に斜め45°の鋭角で上空へと弾丸ホームランの如く打ち飛ばされた。 それと同時にその場に撒き散らされた暴嵐の如き埒外な程に猛烈な衝撃波がドーム状の圧層となって広がり、守護騎士二人に守られたリィン達も全員為す術なく散り散りにされて母艦の外へと吹き飛ばされていく。 その直後、一瞬前に彼等が立っていたミッドナイト軍の司令母艦ガラハッドは内側から膨張破壊されるようにして球形の衝撃圧によってバラバラに分解され、直下に見える荒廃した首都クラナガンへと崩落していったのだった……。
「──ゲホッ! ……ハァ、ハァ……」
地上の荒廃都市へと崩れ墜ちていく銀色の母艦の残骸。 其処から約300アージュ(m)離れた空中に漂っていた都市ビルの内部ロビーで、自らの背中で抜き砕いた外壁の瓦礫に埋もれる状態で倒れていたリィンが肺に溜まった息を吐き出して数秒失っていた意識を取り戻した。
「うぅ…う……ここ……は……?」
幸い身体の上に被さっていた瓦礫は彼よりも小さく軽量の欠片だけだったので、上体を起こせば自動的に全部上から零れ落とせた。 まだ朦朧とする頭を抱えて立ち上がったリィンはまず周囲の状況を確認しようとしてロビー内を見回してみる。 地上から折れて浮き上がったビルであるので当然だが電気は通っていなくて照明も全滅している為、辺りは不気味に薄暗い。 重力崩壊を受けて壁も天上も崩落個所だらけにされていて、ビル内に設置されていた大小さまざまな機械や物が其処らに積み上げられて酷く散乱された有様はまるで大地震が起きた直後のようである。
そして何よりも異常だったのは、
「いったい何が……っ! そうだ、俺達は魔王を名乗るイノケントという男と戦闘になったんだ。 それで相手からの初撃が速度も威力も凄まじく規格外過ぎて、その一撃を受けて仲間全員乗っていた飛行母艦から吹き飛ばされて、分散させられてしまったんだった。 みんな──ッ!!?」
リィンはふと気を失う直前の記憶を明瞭に思い出し、直ぐにイノケントの初撃をくらって散り散りに吹き飛ばされた仲間達の行方と安否が気に掛かった。 忽ち彼の蟀谷に焦燥の汗が浮かんでくる。 記憶が確かなら地上から約5000アージュ上空に停泊していた
常人ならば
「落ち着け……兎に角、まずは一旦外を確認してみよう」
仲間達の安否は気になるが、現状を把握しない事にはどうしようもない。
リィンは壁の上を歩いて近くのテナントルームの出入り口らしき扉を足下に見下ろした。 扉を開けて中を覗き込もうと思ったが、そこにはドアノブが付いておらず、代わりにカードリーダーらしき小箱型の読み取り機が扉の傍に備え付けてあった。
──カードキーセキュリティー式の扉か……参ったな。 建物内の導力(
リィンは正方で扉を開けるのは諦めて、裏技を使う事にした。
「八葉一刀流──
居合いに構え、静の呼吸で抜刀。 同時にシャラン! という金高い切断音が響き渡り、緋色の太刀が鮮やかに振り抜かれた直後、齎された一瞬の静謐が過ぎると同時に足下の扉に暁の横一文字が刻み込まれる。 そして扉は音も立てず刻まれた暁の一文字に沿ってバターのように滑らかに両断された。
──昔、Ⅶ組入学後の最初の特別課外活動でルナリア自然公園入口の南京錠を切った時にも思ったが。 緊急事態とはいえ、人の手が入った施設を八葉の技で破壊するというのは、なかなかに心が痛むな……。
「さてと、中のテナントから窓の外を……うおっと!?」
リィンはズキズキと痛む内心で技を自分に授けてくれた老師へ謝罪をしてから罪悪感を持って切断した扉の奥へと
剣の達人にして帝国一の名門士官学院の戦術教官であるリィンに掛かれば急に重力の向きが変わって不測の方向に墜落したところで、即応的に受け身を取るので大事に至る事はまずない。 先に落ちた右手の掌を床へ着けて、その腕を追突と同時にしなやかなに曲げる事でバネのように衝撃を殺し、そのまま上から圧し掛かった身体を横へと投げて転がす事で怪我無く対処してみせた。
「ふぅ……。 油断大敵だったな。 俺が壁の上に立っていたのは横に倒れているビルの中に居るからだと思っていたが、建物内に置いてある物や機械が壁になった床面に貼り付いているのはどう考えても不自然だった……」
そう自身の油断を反省しながら、身体を床に転がした際に巻き付いたカーペットを剥がして立ち上がる。
「確か先程にイノケントが《PARAISO》と言っていた未知の戦術オーブメントを使って《TTO》と呼んでいた未知のオーダーシステムを発令した際に大規模な重力崩壊が起きていたな……『
【黄昏】……凄く、嫌な出来事を思い出させてくれるオーダー名だな……と、リィンはそう思いながら眉根を寄せた視線をテナントルームの窓側へと向ける。 案の定、その壁一面に貼られていたらしき窓ガラスは一枚残らず無惨に割れ砕けて、窓際の床に砕け落ちたガラスの破片が大小無数に散らばっている。 それ故に吹き抜けと化した窓側から外に広がる崩壊世界の景色を一望できた。
「自分の目を疑いたくなるような絶景だな、悪い意味で……今までに帝国やクロスベルで対峙してきた異変の中で幾度となく現実改変された魑魅魍魎の世界や神秘の異界は目の当たりにしてきたが、これ程までに滅亡的な光景は流石に見た事はないかもしれない……」
想像を絶する破滅と渾沌に染められた
過去に自分がトールズⅦ組の仲間達や大勢の同志と共に立ち向かい乗り越えてきた《煌魔城》《黒キ星杯》《七の相克》《逆しまのバベル》──ゼムリア大陸を幾度となく渾沌に塗り替えようとしてきた世界改変級の災厄の数々ですら、これ程までに希望も光も見当たらない世界ではなかっただろうとリィンは悲愴に物思った。 これが今度の宿敵《次元魔王》イノケント・リヒターオディンと奴が持つ未知なる技術で作られた近未来戦術オーブメント《PARAISO》の力なのか……終末の世界を創造して現実の上から塗り替えてしまう程の因果律改変の力を有する規格外に強大な
バキィィ! ガァァンッ!
──っ!! 聴こえた……骨を砕くような打撃音と、岩か何か硬質な物に何かが激突したような衝撃音が……此処から見える空の何処からか、微かに……。
道半ばながらにして“
──今、俺達の敵はこの終末の世界にイノケントただ一人だけだ。 見るまでもなく交戦している相手は彼に間違いは無いだろう。 なら打ち合っているのは誰だ? 何処で、何人で戦っている……。
瞼を閉じて戦闘音が響いて来た方角へ気配を飛ばし、戦闘地点を探る。 音や人の気配だけでなく、空気の流れや宙に漂う浮遊物の配置と動き、そして今までの戦いを得て培ってきた経験からの予測──全身の五感と第六感で感じ取れるその全てが手掛かりになる……見つけた。
「其処か──ッ!!」
閉じていたリィンの双眸がカッと強く見開かれ、確信を宿した剣先の如き鋭い視線を探り当てた場所へと差し向けた。
まず彼が今居るのは崩壊都市のゴーストタウンと化した首都クラナガンを下にして真横に倒された格好で地上約5000アージュ上空に浮遊しているオフィスビルの16階だ。 重力崩壊に巻き込まれて地からビルが引っこ抜かれた際に衝撃圧で色んな箇所が崩落し、吹き飛ばされて来た彼が先程の16階ロビーへ着弾する際に直前に突き破った箇所が見分けられないくらいに穴だらけの廃塔と化している。
また、この高位相疑似世界の全体は重力崩壊の真っ只中に在るようだが、宇宙空間のように無重力化したのではないようだ。 リィンは今崩落した窓の吹き抜けから
まだ曖昧だろうが、この終末の世界のルールを理解した上でリィンが見据えた先に注目してみよう。 戦場は彼の居る浮遊ビルから上空へ向かって250、奥行きへ1500程の空域に漂っている直径150平方アージュ程の岩石浮遊島の上。 その中央で針山のように隆起した無数の岩に取り囲まれて、周囲の時空を歪ませる魔障を放つ長軍刀を遊園地のアトラクションを愉しんでいる真っ最中の子供の如く嬉々として嗤いながら手に構えるは、この終末の世界を創造した張本人たる《次元魔王》イノケント。 それと相対しているのは
「ゼェ、ゼェ……ま……だだ……ゴハァッ!」
「スバ……ル……」
全身に手酷い負傷を受け、息も絶え絶えになって血反吐を吐く程の満身創痍を負いながらも、異次元の強さを持つ魔王の前に一人スバルは歯を食いしばって立ち塞がり続けている。 彼女の背中には彼女以上の重傷を負って岩柱に背を預けてぐったりとしている次元世界の英雄たる白き魔導師──高町なのはが朦朧と消えそうな意識を必死に保ちつつ、大切な教え子が傷付けられていくのをただ見ているしかできないでいた。
病み上がりで身体に重い負担を抱えていた挙句、先の戦いで魔力を全て使い果たしてしまったなのははこれ以上まともに戦闘を行う事ができない状態だった。 それでいて先程イノケントの初撃によって全員散り散りに吹き飛ばされた際に、彼女は運悪く其処から一番近場を漂っていた妙に頑丈な造りをしていた公衆トイレの屋根に激突して其処に停まった所為で最悪にも敵に一番最初に見つかり、頼れる仲間が離れ離れになっている中たった一人で最強の魔王と対峙する事を余儀なくされた。
無論、魔力という魔導師最大の戦闘手段を全て失っていて無謀な玉砕突攻を選ぶ程、時空管理局きっての
だがしかし、相手はSランク魔導師をも圧倒的に凌駕する人知を超えた
彼女の残存魔力は0ではあったがその前から身に纏っていた
こうなってはいかに不屈のエースといえども最早まともに動く事すら叶わなかった。 それでもなのははその不屈の意思によって意識は酷く朦朧としながらも皮一枚で保ち続け、計り知れない深刻なダメージによる地獄のような激痛に喘ぎながら耐えて、尚も硬い岩の地面を這い擦って逃げようとした。 しかし、魔王からは逃げられない。 この終末の世界の創造主にして支配者たるイノケントはなんと別の浮遊島に乗ってそれを念力で自在に操るように飛ばして来るという予想だにできないような移動方法を使ってあっという間に追い付いてきたのだ。
なのはは魔力も体力も底を尽き、敵に完全に追い詰められて絶体絶命のところだった。 全身血塗れで地を這う彼女の目の前に再び立ちはだかったイノケントが
結果から言って急所に入ったスバルの一撃はイノケントに大したダメージを与えるまでには至らなかった。 果たして相手が所持している戦術オーブメント《PARAISO》の身体強化機能によるものか、奴の全身に漲る絶大な霊力を意識的に操作して打点防御に回したのか、その両方かはスバルには全く判別できない。 ……しかしそれでも、今年春先にあった機動六課の部隊発足からこれまでの約半年間、管理局の
その僅かに距離が開いた隙を決して逃さずにスバルは背後に庇っていた
「──ハハハッ、成程よなぁ。 流石はあの『
「はぁ、はぁ! ……そ、そんなに余裕ぶっこいて、よく言うな! アンタなんかに褒められても……ぜぇ、ぜぇ! ぜ……全然嬉しくなんか……ない……よ……ッ!!」
結果は御覧の通り、全く歯が立たずにギッタンギッタンに叩きのめされ、惨たらしい程の満身創痍で肩で息をしている有様であった。 この背を見守る恩師のように力無き人々を護るべくして錬磨してきた自慢の拳は、目の前でこちらが健気に頑張る姿を見て一人勝手に感動している
相手との実力の差は文字通り次元違いであった。 残念ながらスバル一人だけではこの《次元魔王》を打倒できる可能性は万が一にも存在していない。
「スバル……もういいから……わたしを置いて君は……逃げて……!」
「はぁ、はぁ……断じて……ぜぇ、ぜぇ、御断り……しますッ! ゲホッ、ゲホッ! 幾らなのはさんの……言う事でも……はぁ、はぁ……あ、貴女を見捨てて逃げるだなんて、死んでも……嫌です……ッ!!」
「ああ、それも美しいよなぁ……。 傷付いた互いを労り、大切な相手を護る為に自ら進んで己の命を差しだそうとする慈愛と自己犠牲に溢れた
「うる……さいッ!! 魔王を名乗っている癖に人をよく褒めるな。 気持ち悪いんだよ──ッ!!」
スバルは背中に庇った恩師の言う事に逆らい、自分達の庇い合う姿をまるで恋愛舞台ドラマの告白シーンでも見ているかのような恍惚とした微笑みを浮かべながら賞賛を述べてきたイノケントへと向かって残る力を振り絞って岩地を蹴り、渾身の跳び回し蹴りを奴の側頭部へと薙ぎ放つ……が、遠心力を乗せて叩き付けた黄金の右脚すらも次元魔王を微動だにさせる事すらできず。 超合金でできた柱を生足で蹴りつけたかのように首元で勢いを止められると同時に痛烈な反動が返ってきて打面部分より痙攣の波が全身に駆け巡る。
「痛────っつあああッ!!?」
「ふははは! 非常に真っ直ぐで良い蹴りだ。 だが
「ぐほああッ!!」
イノケントの首元に蹴り入れて痙攣した恰好のまま、クレーンで大きく振られた巨大鉄球のような破壊力が乗った相手の
「スバル──ッ!!」
「が……あが……ガホッ、ゴホッ! ……まだ……だ!」
「クハッ、そうだ。 まだまだこんなものでは終わらないだろう? 俺がずっと思い焦がれてきた不屈の
「言われ……なくても……!」
壁に叩き付けられた衝撃で持っていかれそうになった意識を気合いで持ち堪え、スバルは壁から剥がれ落ちさせた満身創痍の身体に限界を超えろと鞭を打ってよろよろと立ち上がる。 彼女が魅せる不屈の
「駄目だよスバル……これ以上やったら……戦闘機人の君でも只じゃ済まないよ。 ……そうなったら君の目指してきた夢だって……叶わなくなるんだ。 だからわたしの事は──」
「絶対に嫌です! だってあたしには貴女が必要なんだ、なのはさん! それに、今大切な人一人も守れないで逃げ出したりしたら、あたしは一生貴女のような助けを求める誰かを救う事のできる立派な魔導師にはなれやしない──ッ!!」
「ッ!?」
先日に起きたゆりかご決戦の前に【五番目】の名が付けられていた
大事な教え子の未来が敵の手によって無情にも打ち砕かれる光景を見る事は教導官としてもなのは個人としても非常に耐えがたいのだろうが、スバルだって自分の敬愛する恩師にこれ以上傷付いて欲しくないと思う気持ちは負けていない。 仮にもし立場が逆だったならば、なのははスバルが自分を置いて逃げろと訴えても今の彼女と同じように相手の要求を拒否して最後まで諦めず傷付いた相手の事を守って敵に立ち向かい続けるのだろう。 相手を大切に思う気持ちは二人共同じなのだから。
「四年前に遭った空港火災であたしが一人逃げ遅れて火の中に取り残された時も、機動六課に入隊してからその後も、なのはさんは何時だって未熟なあたしの事を助けてきてくれたんだ! 今度はあたしがなのはさんの事を守ってみせるんだ!! だから、絶対に逃げたりなんかするもんか──ッ!!!」
「スバル……」
「くは、ふははははは! いいぞ、それでこそ我が崇拝と賛美を掲げし光の英雄だ。 己が愛する人や世界を害せんとする魔の手から護る為に抗いようのない絶大な力を持つ敵へ愛と勇気を持って立ち向かい、たとえ己の持つ全ての力が相手に全く通用せずどれだけ打ちのめされようとも決して諦めずに幾度も立ち上がって限界を超えていく。 その
血が滴る歯を噛み締めて不退転の意思を叫ぶ愛弟子の頼もしくも痛ましい背中を見てなのはは見開いた大きな瞳を当惑と悲痛に揺らがせる。 既に
「だが、まだまだ俺は物足りないぞ。 故に、
イノケントは最高潮に感極まって両腕を盛大に広げ、
「んぐ──!!?」
「きゃ……あ″あ″あ″あ″──ッッ!!!」
さあ、どこからでも掛かって来るがいい勇敢なる三世界の英雄達よ。 その
「「──させるかッ!!!」」
そのあわや万事休すとなりかけた、まさにその寸前であった。 イノケントが発した闘気によって彼等が立っている岩石浮遊島の外周を囲んでいた無数の針岩がへし折れてそれが浮上し、直後に確固たる意志と覚悟を乗せた青年と少年の声が聴こえてくると共に島の下二方向からそれぞれ灰色と橙色の閃光が一直線に襲来。 島の周囲上に浮遊した針岩の残骸を空中の反射足場に利用する形で二色の閃光が対峙していたスバルとイノケントの間へと割り込んでその地面に突き刺さり、その場に爆発したような多量の粉塵が舞った。
「なのは、待たせてすまなかった。 もう大丈夫だ」
「スバルもよく頑張ったな。 あとはオレ達に任せてくれ!」
間も無く粉塵が晴れて姿を現したのは勿論
「リィン……君!?」
「ツツッ、ツナさん!!」
「くはははは! 此処で真打登場か。 そうであろうそうであろう♪ やはりヒロイン達が絶体絶命となったこの土壇場のタイミングに満を持して参上するよなあ、
非常に頼もしく、安心感がある背中を見せて只今馳せ参じたリィンとツナに思わず驚きの声をあげるなのはとスバル。 そして彼等二人がこのタイミングで現れる事を確信していたように愉快に嗤い声をあげたイノケントが諸手をあげて主人公二人の登場を歓迎した。 だが二人は静かなる嚇怒を灯した目でイノケントを睨む。
「御託はいい。 たとえお前の目的が何であろうと、お前はなのは達をこんなにも酷く傷付けたんだからな……」
「絶対に許さないぞ、イノケント! 力尽くでの手段は嫌だったけど、お前だけは別だ。 オレ達の全力でお前を叩きのめして、お前が傷付けたスバル達と
二人はイノケントがなのはとスバルの事を理不尽に傷付けた事へ対して激怒していたのだった。 普段は基本的に誰にでも優しく接する温厚な性格である二人だが、今は修羅の如き剣呑とした視線を対峙する魔王が向けてきている好奇な視線と衝突させて火花を散らさせ、噴火直前の火山のような赫々とした雰囲気を放っている。 全身には相手が発しているものに勝るとも劣らない凄みが掛かった気迫と闘気が包んでおり、魔王が創った支配領域であるこの終末の世界全体を相手の重圧と共振し諤々と震撼させている。 その影響を受けて地上から剥がれた木々や建造物ばかりか細かく砕かれた岩や瓦礫までもが上空に浮き上がってくる。
二人の怒りはそれ程までに
「ククク、いいだろう。 俺も
「くっ! お前──」
「ツナ、相手の言葉に冷静さを失うんじゃない。 心頭滅却すべし、されど内なる意思と魂には覚悟の炎を燃やして……やるぞ、ツナ!」
「ああ! お前も頼む、ナッツ!!」
「ガオ!」
乱れた心や半端な力ではこの埒外の魔王を倒す事など絶対に不可能だろう。 ツナが相手の挑発に冷静を欠いて思わず食って掛かりそうになったのをリィンが今にも爆発しそうな自身の内なる激情も共に諫めると、二人は我を制して静かなる闘志を燃やして“全力”を解放する。
灰色の騎士は明鏡止水の心に精神を統一し、空の女神の加護に祝福されし大陸に伝わる黒鋼で鍛えられた天地を切り裂く緋色の神刀を正眼に構えて、胸の内に秘めた“神の氣”を己が
大空の守護者は“大切な皆を守る”という自身の抱く覚悟を額と拳に灯した炎へと籠め、肩に乗せた己の分身たる炎の鬣を持つ小獅子に自身の全力を引き出せる最強の武装となって一体となるように命じる。
「すぅー……こぉぉぉ────
「
「GOOOOON!!」
そして両雄絶唱ッ! 灰橙爆放ッ! 大気をも激震させる無限の力が爆発するように解き放たれ、二人の若き英雄から天上を衝く程に巨大な灰色と橙色の光柱が高々と立ち昇るのだった……。
今回の“炎の軌跡講座”はお休みです。
本日は『THE LEGEND OF LYRICAL 喪失の翼と明の軌跡』の最新話もこの後に続けて更新します。 そちらの方もお楽しみに♪
アリサちゃん「次回はリィンとツナヨシ君が全力(全開までではない)を出して大暴れするわ! サブタイ予告は『
グナちゃん「オイコラ。 サイコウチョウニモリアゲルバトルカイデ、サブタイヨコクガネタスギルダロ!」
某元《殲滅天使》兼未来の生徒会長「この身はオーバルギア……じゃなくて普通のクールな美人女子学生よ。 馬鹿一直線に叫ぶのは義姉のキャラだしね」
フェイト「サキモリ? バイクの乗り捨ては危ないし、壊すと勿体ないからやらないよ(それに私、車派だし)」
某B級遊撃士《零駆動》「ハハハ、まさしく愛だな」
某映画女優兼痴女怪盗「何故そこで愛ッ!?」
某大空のアルコバレーノ「カップラーメンはこの前に初めて食べましたけど美味しいですね。 ヨーヨーとスケートはまだやった事がないので、是非一度やってみたいです」
アルティナ「世界を壊す、歌があるッ! ……そんな歌があったら最悪ですね。 もしそんなのを歌うような凄く迷惑な人には問答無用でソラリス・ブリンガーします」
某ラニキ「ちょっと待て!? 俺は錬金術師なんかじゃねぇし、局長でも全裸でも神様モドキでも大佐でもねーっての! だからオラオラは止めてくれーーー!!(泣)」
某庭園《棘の管理者》のキチホモ「女の身体が完璧だってぇ? アハハハ、笑える冗談じゃないかww。 だって完璧なボスは大陸一イイ男だからねぇ♪」
う~ん、カオスになったな……とにかく、次回更新の執筆も頑張りますね。(もう今年年内には無理っぽいけど……)
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神氣絶唱ボンゴレギア
ゴールデンアーマー終焉BBA「心は確かに折り砕いたはずだ……なのに、何だそれは。 私が作ったものか? お前が纏っているそれは、いったい何なのだ!!」
EXビッキー「シ・ン・フォ・g……って、誰ですかッ!!?」
悪夢を纏ってます。(笑)
2023年初更新初っ端から、くだらないボツネタをごめんなさい。(土下座)
「「きゃあああっ!?」」
リィンとツナが高らかと終末の世界に絶唱を響かせたと同時に二人を
「素晴らしい……!」
地上から見上げたなら煉獄の大空に浮かんだ岩石島に灰色と橙色の光の巨塔が並んで聳え立ったように映っている事だろう。 まるで絶望の闇に覆われた世界に天から希望の光が二つ射したかのような非常に神々しい光景を眼前にして
このまま無限に湧き出し続けるかと思われた二色の光塔はやがて収束をしはじめ、細くなって消失する。 するとそこに姿を現したのは【迸り輝く灰色の神氣を纏いし剣聖】と【橙色の神炎を灯す
リィン、黄昏の鬼の力──≪神氣合一覚醒状態≫
ツナ、《ナッツVer.
「ううっ……いったい何が──ふ、ええっ!?」
「どど、どうなってるの!? ツナさんとリィンさんが叫んだら二人から物凄い光が出て、変身しちゃった……!!」
リィンとツナから立ち昇った光の柱が消失して目の眩みから回復したなのはとスバルは恐る恐る瞼を開き、灰色と橙色に塗り潰されていた視界が景色を取り戻すと同時にリィンとツナの非常に様変わりした姿を眼に映し、二人は思わず背筋をピンと反らして豊満な胸元を弾ませてしまう程に物凄い驚愕を発していた。
燃え盛る炎のように激しく漲らせて灰色に迸り輝く神秘的な霊圧
「スバル、なのはの事を頼む」
「は……はい」
リィンは一瞬チラリと肩の後ろに目を向け、全身に見るも悲惨な程の重傷を負ってぐったりとしているなのはを自身も片腕を欠損するレベルの負傷を負いながらも必死に背に庇っていたスバルに此処でなのはの身を守っていているようにと頼む。 咄嗟に言われて一瞬戸惑いながらその頼みを了承するスバルの返事を聞いたリィンはツナと共に威風堂々と並び立って
「よし……いくぞ、ツナッ!!」
「
「ふははははー! さあさあ来るがいい、リィン・シュバルツァー! 沢田綱吉! “可能世界”と“七輪世界”を代表する偉大なる
リィンが周囲の空気を陽炎のように揺らがせる程に濃色な灰色の
……
そして緊張感が頂点に達するよりも早く、繰り出しの初動だけで周辺の大気を彼方まで吹き飛ばす威力を乗せた太刀と拳が魔王の長軍刀と激突した。
今宵の物語の主役たる三世界より集いし若き英雄達とその
終末の世界の煉獄の大空に巻き起こされた入道雲の如き巨大な爆煙の中から三つの孔を空けて突き破り、それぞれ
左右に弾き飛ばされた灰色と橙色の閃光は重力崩壊された終末の世界の宙空に浮遊する
すると今度は灰色と橙色の閃光が弾き飛ばされた矢先で疎らに散らばり漂っていた浮遊障害物群を利用してプリズムのように乱反射しながら加速し、群青色の閃光の前に先回りして仕掛けた。 だがしかし結果は変わらず灰色と橙色の閃光が明滅する波濤と甲高い衝撃音と共に群青色の閃光に蹴散らされる。
それでも諦めず灰色と橙色の閃光は行く先に散らばる浮遊障害物で縦横無尽の乱反射加速を繰り返しながら群青色の閃光へ絶え間なく
熾烈な
空中橋状を取る浮遊首都高の中心に大きな蜘蛛の巣状の
「くは、ふははははは! 実に良い。 まさか二人共に初見にも拘らずにこの『
群青色の閃光の正体は山並みに巨大な霊圧
「う……ぐっ。 二人掛かりの波状挟撃をほぼ
「ゴホッ、ゲホッ! おまけに鞘に入れたままの刀なんかでこっちの攻撃を全部的確に
無論、灰色の閃光は《神氣合一》の強化
「ははは。 まあ確かにそうだな。 先程のスバル・ナカジマは割り込みの不意打ちだったとはいえ、この俺に確かな一撃を入れたのだからな。 ……だが、彼女よりもずっと数多くの強者と戦って打ち倒してきた
イノケントはそう少し失敬だったなと肩を竦めて言いながら先程のスバルとの戦いで彼女の鉄拳を受けた腹部を摩り、そのままその手を外套の懐に入れるとその中から長方形状の二重層構造携帯端末機の型をした戦術オーブメント──《
「さて、次は魔法攻撃も交えてゆくぞ……《PARAISO》
「っ! そうはさせるか!!」
イノケントが《PARAISO》を片手に持ち掲げて、
「八葉一刀流──
太刀を肩の上に振り掲げて突撃の構えを取ったと同時に一陣の疾風と化して、“火”を想わせる赤色の詠唱法陣を足下に展開し駆動開始した魔王へと駆け出す灰色の騎士。 常人の動体視力では疾走する姿すらも映すことは適わない、縮地の歩法をもって一息に相手へと距離を詰めて斬り抜けるという、八葉一刀流の“七つの基本の型”の中で最速の太刀が第
──
「──
「何──ッ!!?」
その刹那、誰の目にも映らぬ疾風の速度で駆け出したリィンは加速する世界の先にとても信じられない衝撃の現象を視る。
浮遊首都高橋の端からその反対側の端に立つ相手まで約200mもあるが、彼は1秒と掛からずに橋の中央にある
「《ファイアボルト》──
──そんな馬鹿な、
「クッ──!!」
リィンは音よりも速く迫り来る三発の巨大火球を目前にして苦難を示すように表情を歪めると脚捌きを駆使する事で高速を維持したままジグザグの
──
リィンは雷速の疾風と全身から溢れ出る灰色の神氣を伴った一太刀をイノケントの肩口から袈裟に振り下ろす。 さすがにこれで仕留められるとは甘く考えていないが、少なくともこの一刀で大ダメージを与えられる自信があった……だがしかし、振り下ろした緋色の刃はガキィィン! という鈍い金属同士の衝突音を鳴らして虚しい火花を散らせた。
「な……に──ッ!!?」
あまりにも衝撃的な攻撃結果を瞳に映したリィンの双眸が唖然と大きく見開かれていた。 相手の
「くはは! 初見で《PARAISO》の
「嘘……だろう……」と未だに到底信じられないという呻き声を漏らすリィン。 彼の【滅・疾風】を受け止めた衝撃が心底愉しそうに嗤うイノケントの背を通り抜けて橋の切れ端から数百メートル先に漂っていた崩壊ビルの側面に巨大な蜘蛛の巣状のクレーターを造ると同時にそのビルがビリヤードの球の如く遥か後方の彼方へと弾き飛ばされて行っている光景がその戦技の威力を物語っている。 これを難なく素腕で受け止めてみせたイノケントの肉体は
──この男が持っている未知の戦術オーブメント《PARAISO》による身体能力強化機能によるものか、それとも何らかの“現世の
『──リィン! 一旦ソイツから離れてくれ!!』
「っ!?」
イノケントの左腕に《神刀【緋天】》の刃を圧し付けて鍔競り合いをしつつ相手が人の
そして上空を見上げてみると、リィンが《疾風》で駆け出した時から既に移動していたツナが浮遊ファミレスの屋根の上に構えていて、《Xガントレット》を装着した右掌をイノケントの頭上へと向けて突き出すように狙いを定め、発射体勢を取っている姿が確認できた。
「ふはははは! 成程よなぁ。 先程の戦いの中でお前達二人が開眼させた、
「今頃気付いたところでもう遅い! これでも、くらえっ!
天から轟かす威勢で叫んだツナの突き出された右掌からギャギャ!! という発砲音が鳴ると共に凄まじい速度を伴った炎の砲弾が二発撃ち出された。 それに込められた熱量はイノケントが放っていた巨大ファイアボルトの三倍以上はあるであろう
「いっけええええええーーっ!!」
ツナが大声をあげて《Xカノン》の勢いを増させる。 二発の火炎流星弾が熱量を上げて激しく燃焼し、煉獄の大空を丸ごと
「ぬおおおおおおッ!!」
イノケントは負けじと両腕を大きく広げて己の鋼鉄の肉体全てを使ってXカノンを二発共受け止め、雄叫びをあげて気合い一発押し返そうとするが、勢いは止められず忽ち足場にしている浮遊首都高橋ごと炎の中に飲み込まれて、そのまま大爆発を起こした。
「やった? ……いや、全然駄目か」
「どうやら、そのようだな……」
爆心地点から直接的な被害を受けずに爆風が届く程度に離れた浮遊ファミレスの屋根の上からキノコのような形をした爆煙に覆われた爆心地点を見下ろすツナはXカノンがイノケントを直撃した手応えを確かに感じたのだが、その直ぐに爆煙の中に浮かんだ人影を見つけて眉を顰めた。 爆風に煽られてツナが足場にしている浮遊ファミレスの側に流されて来た浮遊流木の上に居るリィンも見据えた爆心地点から流れてくる益々と
すると爆煙の中の人影が手にしている棒状の何かを一振りしたと同時にその人影を中心の目にして爆煙の中から天に突き破る一陣の大竜巻が発生し、直前の爆発の余波に巻き込まれて大小無数の残骸と化して散らばった周辺の浮遊障害物諸共に爆煙が全体纏めて吹き消されていく。 その中から人影の正体であるイノケントが轟々と吹き荒れる極光の威風を全身に纏いて現出。 その鋼鉄の肉体には少しの傷も付いておらず、焼け煤が被った顔は更に色濃い喜悦に染まっていた。
「ふはははは! なかなか上々だな♪ 二人共、今の連携は大変素晴らしかったぞ。 数刻前に出会ったばかりである相手同士なのにも係わらず、百戦錬磨の経験と培われた能力を最大限に発揮し、もう既に阿吽の呼吸に近しい相互伝達を獲得している程とは、予想以上だったよ。 流石は歴戦の若き英雄達だ。 まったく何度惚れても、益々惚れ惚れしてしまうよなぁ♡」
「好色に染めたような目をこっちへと向けて、気持ち悪い事を言うんじゃない」
「それに、
「ククク、それは失礼した。 だが断じて
「どうにも
「前者の質問については、流石に
「「何故、そこで愛ッ!!?」」
一瞬素っ頓狂になった
「さて、我が愛しの英雄達と他愛ない対話を続けるのも素晴らしく有意義な体験になるとは思うが、
イノケントがビミョーな空気を断ち切って、またまた《PARAISO》を手にした左腕を天高く掲げてみせる。 すると《PARAISO》の表面の
「なな、何だ……!?」
「お前、いったい今度は何をしたんだ!!」
リィンとツナは地上から湧き上がるようにして聴こえてきた大量の岩雪崩が起きたような地震音に耳の鼓膜を激しく叩かれて、痛烈な耳鳴りを両側から両掌で強く押さえつけながら、この事象を意図的に起こしたのであろう相手へと非難する視線を刺し、その詳細について問い詰める。 上空に居る為にどれだけの震度で揺れているのかは判らないが、約5000m上空まで耳に堪らないような地響きが届いて来ているのだから、大震災規模の大地震が地上を襲っている事は想像に難くはない……しかしその想像は大きな間違いであった。
「ククク、先程言った筈だよなぁ。 『
イノケントがまだまだ英雄達と戦える悦びに興奮し過ぎて網膜が色濃く血走る程大きく見開いた両目の眉間に刀印を結んだ右手を添えてみせる。 すると終末の世界の天の中心に座して下々を睥睨していた巨大方陣に刻まれた十干十二支を示す漢字が
そして右手の刀印を一度解いて眉間から離し、握り携えていた鞘付き長軍刀《信長》を外套の内に一度佩き戻した左手と共に胸の前で組合わせ、九字護身の印を結ぶ次元魔王──
──・
「『
ズドドドドドドドド──ッ!!
イノケントは九字全ての護印を結び終えると、これまでのものとは全く響きが異なった
「な……に……いぃィィッ!!!」
「真下に見える都市に建っていた……沢山の高層ビルを……!!」
常軌を逸脱した景色に大きな戦慄を露わにする二人の視界に映るのは、見渡す限りの【浮遊超高層ミラービル】の群団──その総数はざっと1000棟を超え、その全てが20階層以上もある巨大ビルディングであり、それがイノケントの後方に葬列して煉獄の大空を天上から奥まで埋め尽くしていたのだった。
己の意のままに動く超巨大な下僕を大軍で従えた魔王の姿は言葉にできない程に圧巻であった。
「ふはははははー! さあ、三世界の若き英雄達よ。 此処からが魔王との戦いの本番だぞ。 これまで以上の不撓不屈の勇気をもって、見事乗り越えてみせるがいいッ!!」
その宣言と共に再度全身に莫大な霊圧を纏ったイノケントが激しくはためかせた外套の内側から再び《信長》を鞘ごと抜き放つ。 ブレーキが破壊された暴走列車の如く止まる事を知らない愉悦に全身全霊を浸り尽くして高嗤い続ける彼は人為的に
う~ん、このペースで行けばあと2・3話あたりでプロローグ編を書き切れる……かな?(
“炎の軌跡講座”は今回もお休みです。
代わりに活動報告の方でアイデア募集第二弾を開始しました。 興味のある方は活動報告の募集内容をご確認の上、よければ是非コメント覧にアイデアの応募をお願いします♪
では読者の皆様、今年も『英雄伝説リリカルREBORN!
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天地無用の超熱戦!
活動報告の募集で御応募頂いたリィンとツナのコンビクラフトが登場します。(貴重な時間を使ってアイデアを考えてくれた【ポトフーポット】さん、今一度御礼申し上げます。 御協力ありがとうございました!)
ドドドドドドドドーーーッッ!!!
煉獄の大気と瘴気を無数の20階以上の高層ビル群が突き貫き、怒涛の如き勢力音を轟かせながら突撃して来る様は塔並の巨大釘が豪雨となって降り注いでくるかのような圧倒的畏怖を感じさせてくる。
「幾らなんでも無茶苦茶だろう!」
凡そ60アージュ(m)以上もの特大の体積を持った四角柱の鉄物が千を超える大規模の量で迫り来るという非常識極まりない光景を真正面から受けて衝撃的な動揺を覚えたリィンが大きく開かせた双眸の瞳を戦慄に揺らがせて不条理を叫ぶ。 彼に並び立つツナも声を失って全身から大量の汗を流し出しているという有様だ。 この攻撃はあまりにも超常災厄的で迎え撃つにはとても人の身に余り過ぎている。
──だけど、退く訳にはいかない!
──ああ、死ぬ気で突破するッ!
「「うおおおおおおおおっ!!」」
高層ビルの流星群が殺到すると同時に死ぬ気の腹を括り、二人の英雄は勇猛な雄叫びをあげると再び
「「イノケントォォーーーーーッ!!」」
「ふはははははーー! やはりこの程度は突破してみせるか。 そう来なくてはなっ!!」
物理的に破壊不可能の結界をも斬り砕く神氣の膂力で振り下ろされる《灰色の騎士》の閃光の一太刀、“究極の一撃”以上の炎圧を放つ神炎の
煉獄の大空を包んだ爆煙の中から絶え間なく剣戟や連打による壮大な
「むむっ。 歴戦を乗り越えて磨き抜かれた電光石火の如き剣閃と疾風怒濤の如き連撃による攻め入る隙間を見せぬ攻勢は大変素晴らしい。 だがその程度の
「「ぐ──ああああああっ!?」」
群青色の斜線によって灰色の剣閃と橙色の花火が全て塗り潰されると同時にリィンとツナが全身に無数の打撲痕を刻み付けられながら、浮遊小島から吹っ飛ばされた。 お前は漫画やラノベの編集者か!? と、鞘付き長軍刀を豪快に振り切った体勢で「ワーハッハッハッハ!」と愉快そうに高笑いをあげているイノケントにはツッコミ入れたいが、奴は正真正銘“魔人
──くっ……ツナ!!
──分かっているさ!
故に幾ら歴戦の勇者や
イノケントが立つ浮遊小島から数百メートル程飛ばされて来た所の宙空には先程彼が『天覇星群』で飛ばした高層ビル群の一部が漂っていた。 その内の
「行っけええええええええ!!」
そしてツナの爆炎拳がリィンを乗せた浮遊高層ビルを文字通り大爆発の勢いで
「フハハハハハハ──」
それでも哄笑を止めず、一歩も逃げ出さず、それでいて自身へと凄まじい速度と質量と上側壁面に屈み乗る
直後、彼の鋼鉄の肉体は足下の浮遊小島ごと20階建築の巨大鉄柱に圧し潰される事となった。 見事魔王へ直撃した高層ビルはその瞬間に衝突の反動を受けて中部分からへし折れるようにして崩壊。 その刹那に轟いた天をも激震させる破壊音と共に大中小無数の破片となって地上に崩れ落ちていく高層ビル、その一部の成人男性約百人分は有ろう巨きさの鉄塊が
「
斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬────ッッ!! 刹那の剣閃が幾筋走り、鉄塊は人四人分程のサイズの鉄岩に複数分割される。 そしてそのまま
死者達は踊り、中つ大地の塔は虚しく砕け落ちる……先のJS事件の最中にとある教会の予言者が著書に書き残していた予言の一節が遅ばせながらも現実となった刹那、塔に直撃した流星群が群青色の衝撃波によって爆砕される。
「くは、ふはははははは!!」
未だ黒漆の鞘に刃を納めたままの《天魔刀【信長】》を右腕一つで豪快に一閃して己を隠す煙を自ら払い除け、上層が折れ砕けた塔の上に無傷の姿を現した次元魔王イノケント。 60mの高層ビルや鉄岩の
「ハァアアアアッ!」
それでも世界の
背後からの不意打ちで、煉獄の空を
しかし身躱しで後ろを突いたツナの跳弾加速パンチをもイノケントは長軍刀の柄尻を脇の下から滑り下げる事で曲技的に受け止めてみせた。 その反動に乗って片足軸に背後へクルっと迅速華麗に振り返ったイノケントと怯むことなく神炎の拳を握り相手の懐へと踏み込むツナが拳と拳を衝突させて、鋼で鉄を打つような鈍く甲高い打撃音が鳴り響き盛大な火花が散った。
「くぅ──っ!」
死ぬ気の炎のお陰で純粋な攻撃力こそ若干上回らせられたが相手とは体格と筋力の差が開き過ぎていた事により、ツナの拳が打ち負けた。 結果相手の拳に押し込まれ、後ろに仰け反って体勢を崩されて苦悶が浮かんだツナの顔に、イノケントの裏拳が追撃で叩き込まれた。
「ぐああああっ!!」
イノケントの鋼の拳の甲が減り込んだツナの左頬はドグシャアア! という小気味イイ音と共に圧し潰れ、彼はそのまま痛烈な当たりで地上本部から打っ飛ばされてしまった。
「ARCUSⅡ“
撃退されたツナと
「
連続行動を用いる事で
そして魔王に接敵すると同時に《灰色の騎士》は双頭の炎龍を巻き付けた刃を豪快に振り落とし、同時に炎龍が双頭同時に牙を剥いて魔王へ襲い掛かった。 左右から大口を開けて挟み込む形でイノケントの鋼鉄の肉体に喰らい付いた刹那、双頭の炎龍が二重の大爆発を引き起こし、彼の規格外に頑強な肉体を特大の業炎で飲み込む。 そのまま足下の地上本部を半壊させる
「おおおおおおォォォッ!!」
直後、あと一つ吹けば崩壊寸前の有様となった地上本部上に着地したリィンも吹っ飛ばしたイノケントの後を追って真上を漂う上層棟に向いて咆哮し、罅だらけの足下を《ARCUSⅡ》と霊圧
灰色の霊圧闘気を纏いて《灰色の騎士》が舞い上がったと同時にその超越的強化を施された脚力で踏み砕かれたのがトドメとなり、地上本部は折れた塔の頭から砕け散っていった。 この終末世界の建物はイノケントの近未来戦術オーブメント《PARAISO》の
「フハハハハハハ!」
「──ッ!!」
斜めに傾いた廊下の床・壁・天井を蹴り高速乱反射で奥へと進むと、エレベーターホールに出た瞬間広場の中央で待ち構えていたイノケントに奇襲を受けた。 新
「《
「ぬぅぅぅんっ!!」
無型の神速二連太刀と戦技の名すら無い渾身の孤月落ろしで振り下ろされた鞘付き軍刀が正面衝突し、特大の火花がエレベーターホールに散りばめられる。 その直後に英雄と魔王両者の姿がピシュン! という空気を切り裂くような効果音が鳴り響くと共に一瞬残像を残してその場から消失。
「オオオオオオォォーーーッ!!」
「クハハハハハハハーーーッ!!」
同時にその階の西側端に在ったパソコン事務室の出入り口扉が木端微塵に破壊され、室内を灰色と群青色の閃光が駆け回った。 英雄の雄々しい裂帛と魔王の戯れる哄笑が反響する中で室内中を縦横無尽に乱反射しながら二つの閃光は超速連鎖的に衝突と火花を撒き散らし、室内に置かれていた大量のパソコン事務机を根こそぎと轢き散らかしていく。
「そぅらっ!」
「ぐあああっ!?」
そうして経ったの四秒間で事務室内の物品が一切合切鉄屑と塵山化した直後に散々室内中を暴れ回った二つの閃光は消滅し、それと同時に建物の外が覗ける窓際側に出現したリィンとイノケントが再び互いの得物を衝突させる。 体力も無尽蔵に有り余るイノケントに対し、この激しい高速戦闘で蓄積したダメージにより消耗していたリィンは先程より若干勢い衰えていた。 結果、リィンの太刀はイノケントの鞘付き長軍刀に打ち負けてしまい、彼は背後の窓へ払い飛ばされ背中から硝子を突き破って外へと吹っ飛び、苦鳴を煉獄の大空に虚しく響かせて浮遊地上本部上層棟の近辺を漂っていた浮遊障害物複数を音速の弾丸ライナーで打ち抜いてから約80アージュ飛ばされた先に立ち塞がった浮遊岩盤に巨大な
「ハハハハハーーッッ!! これではまだまだ足りんぞ? もっとだ。 もっと強い英雄の
「──なら、望み通りオレの
砕け割れて地上へと降り注いだ
『
浮遊上層棟内部でリィンとイノケントが大暴れしていた間にバラバラになって舞い上がっていた無数の地上本部の残骸、その中心部は浮遊上層棟全体を狙い撃てる絶好の
『
後方に真っ直ぐ突き出された右掌と対角線になるように位置調整しつつ棟壁面の割れて吹き抜けた窓際に顔を出したイノケントに両眼のコンタクト型ディスプレイの照準を合わせて前方に左掌を突き向ける。 全身を支える右手の“柔の炎”と同等に砲門である左手にも“剛の炎”を
「沢田綱吉……待ち伏せによる不意撃ちの
『ゲージシンメトリー!! 発射スタンバイ!!』
「これがオレの全力全開だ!! くらえイノケント──ッッ!!!」
見せつけてやる、オレの覚悟の全力を! そうはち切れんばかりの咆哮をツナが叫ぶと同時に彼の左掌に極限収束された“剛の炎”が天地をも割る程の爆発音と共に発射された。 神ですらも燃やし尽くしそうな程の超密度となった神炎が極大の光禍と為って終末の世界の総てを飲み込みながら大空の王と彼の仲間に仇名す《次元魔王》を焼滅させんとして爆進する。
「ぬおおおおおおおおお──ッッ!!!」
対して自身へ向かって放たれて来る砲撃がSランクオーバー級魔導師の
しかして現在のツナが制御可能にしている炎圧数量は脅威の40万
終末の世界全体を激震させる天災規模の爆風により浮遊上層棟とその周辺に漂っていた浮遊障害物と地上の街の中心部が粉微塵に吹き飛ばされ、やがて巨大なキノコの形をとっていた爆煙が晴れるとその空間には木端微塵に破壊された地上本部上層棟の残骸破片が宇宙を漂う隕石群の如く無数に密集して、殺風ながらも幻想的な
「──くは、ふははは! さすがに今のは少し効いたなぁ……」
その巣の隙間にイノケントは健在していた。 核兵器にも見劣りしない絶大な破壊力を発揮したツナの《X BURNER 超爆発》には《次元魔王》の鋼鉄の肉体もさすがに無傷とはいかなかったようで、彼の身に纏う憲兵軍服の様な群青色の外套衣装は火事場に入ったように黒澄み焦げてボロボロになっていた。
──ククク……いやはや、まったくもって我が信奉する三世界の英雄達は素晴らしい事この上ないな。 1200年の時を得た悪意の呪いをもって世界を絶望に染め上げ、数多と枝分かれる並列時空を渡り滅ぼす事をも出来るような難敵を幾度となく打ち倒してきた彼らの力を侮る事など微塵もしてなかったが、まさか“黄昏の七属性”に未覚醒で【
しかし、そのような手酷い見た目にされて尚もイノケントは愉しそうな嗤いを絶やさない。 光の勇者や英雄達の軌跡で描かれる伝説や御伽噺をこの上なく愛しているこの男にとって、強大な力を持つ敵へと勇敢に立ち向かい、愛や絆でどこまでも限界を超えてくる彼らの
「ツナ! 《ブレイブオーダー》で畳み掛けるぞ!」
「
「燃やせ──『
ほら見ろ。 世界を脅かす魔王になど絶対に負ける訳にはいかないという
岩盤へ吹っ飛ばされながらも瀕死級の大ダメージを根性で耐え切り即座に
リィンの《ARCUSⅡ》のシステムにツナの身に纏っているボンゴレギアが
「「オオオオオオオオオ──ッッ!!」」
そして二人の
「さあ、
360度視界周囲を無数の
今度は完全に両雄の攻撃力は拮抗した。 それは文字通り爆発的な威力が出ていた為、三人の得物が打ち重ねられた部分に大爆発の如き反発衝撃波が生じる。 その結果、三者の得物は反発衝撃波によって勢い良く吹き飛ばされるようにして弾き返され、それに腕を引かれた三者はバラバラの方向に弾き飛ばされた。 そして再び灰色と橙色の閃光と化した英雄二人と
プリズムのような乱軌道で空中足場の間を跳び回るイノケントの隣をツナがピッタリと追従し、連続跳躍移動を行いながら両者は互いの手足が多重にブレて映る程の神速肉弾戦を繰り広げる。 ズダダダダーーッ!! という打ち合いの音を途切れなく超速連鎖で響かせながら嵐が過ぎるような猛烈な余波を撒き散らして通り越した軌道の周囲に浮かんでいた小中サイズの障害物を次々と吹き飛ばしていく。
並走しつつ
真っ二つに両断された巨大鉄岩の切断面間に落下したイノケントに反対側から突入してきたリィンが一閃をもって斬り掛かった。 しかし若干斜め予想外の処から来た為コンマ数秒対処が遅れたものの彼が
永遠に続くかと思われたリィンとイノケントの熾烈な上下殺陣はイノケントが足着けていた側の鉄岩半分、それに丁度その外側に回り込んだツナが
軌道上の空中足場を複数反射して
「セイィィッ!!」
「ハアァァッ!!」
「──フハハッ」
ドッ! ガァァンッ! 拳が硬いものを打った音と鉄同士がぶつかる音がほぼ同時に打鳴らされる。 特大の炎を《Xガントレット》に灯し渾身の威力で突き放たれたツナの
「「負ける──もの(ん)かあああああああああああっ!!!」」
護りたい人達や世界がある限り、俺達は絶対に勝つ! そう揺ぎ無き誓いと覚悟を乗せた気迫を
「ぬううううう────ッッ!!?」
迸る真紅の
『ツナ! 今こそ俺達が
『問題無い! 息を合わせていくぞ、リィン!』
遥か天空から終末の世界を見下ろしている十干十二支の真下まで吹き飛んで群青色の放物線を描き出したイノケントが背中をこちらに向けて無防備を晒している様子を見上げた二人はこの瞬間こそ
「光の
右に、緋色に煌く刃を静寂と鞘に納めて居合い抜きの構えを取る《灰色の騎士》。
「その焔に闇を切り裂く一閃の生き様と大空を守護せし覚悟を宿して、天の星々を穢す魔を貫け!!」
左に、左拳に装着している神炎を灯す
並び立つ
「「
そして二人で
あとがきコーナー『リリカルマジカル
アリサちゃん「ヘイ、お待ちどう! 【超絶最強ヒロイン、アリサちゃんの“炎の軌跡講座”】第6回目のお届けよ♪」
グナちゃん「サテサテ。 ゼンカイマデデ、コノショウセツノシュジンコウトメインヒロインコウホヲダシタコトダシ。 ソロソロキャラクターショウカイイガイノヤレヨナ」
アリサちゃん「ん、待てーいッ!! まだメインヒロイン候補にはこの超ヒロイン、アリサ・ラインフォルトちゃんが居る事を忘れてもらっちゃ困r──」
グナちゃん(ミニレバ剣でシバく)「シデンイッセン!」
アリサちゃん(シバかれた)「ンギャー!?」
グナちゃん(威圧)「ムダナモジスウヲツカウナ。 サッサトコウザハジメロ」
アリサちゃん(泣きそうに項垂れて)「うー。 分かったわよぉ。 チキショー」
アリサちゃんがグチグチ言いながら頭上に垂れ下がった紐を引っ張ると、天井から導力スクリーンが降りてきて【西ゼムリア大陸】の世界地図が投影される。
アリサちゃん(気を取り直し)「てな訳で、今回はこの小説の舞台であるクロス元三原作の世界観をざっくり簡単に教えちゃうわね♪ まずは私やリィン達トールズⅦ組や歴代シリーズの若き
アリサちゃん(知的女史っぽく見える伊達眼鏡を掛け、指し棒で世界地図を差しながら講義開始)「《ゼムリア大陸》──空の女神《エイドス》への信仰により人々の秩序が成り立つ祝福の大地。 しかし、大昔に空の女神より授けられた《
グナちゃん「オオッ!? オマエニシテハイガイトテイネイナセツメイダナ──」
アリサちゃん「そんなこんなで、導力技術で自分の能力を自由にカスタマイズできる《戦術オーブメント》やRPGお馴染みの飛行艇が造られたり、《
グナちゃん「──ッテ、ケッキョクテキトージャネーカヨ。 チャントマジメニヤレ!!」
アリサちゃん(自棄っぱち)「だってだって! 私の世界ってば、科学と魔術が交差するだけじゃ飽き足らずにマジカル武術やらSF系やら超常ミステリーやら異世界やら大怪獣やらOTONAやらOYAZIやらと、矢鱈滅多に混ぜ過ぎて本当に
グナちゃん(あんぐり)「マジカヨ……ソノナイヨウデイテ、ヨク18ネンイジョウモゲームシリーズガツヅクモノダナ……」
アリサちゃん(どーしょーもないなと言いたい表情)「どうせその辺については本業の歴史
アリサちゃんが手元のリモコンを操作し、導力スクリーンに映る西ゼムリア大陸の世界地図が【並盛町】の風景写真に切り替わる。
アリサちゃん「んじゃ、次は『
グナちゃん「フムフム、ソレデ?」
アリサちゃん「表社会は平和そのものなんだけどね。 REBORNの世界は無法が蔓延る裏社会に生きるマフィアや殺し屋といった
グナちゃん「ブッソウダナ……」
アリサちゃん「そうよねぇ……まあ、そんなおっかない掟があるのに、並盛町のマフィア関係者は意外と気にしない様子で日常的に人前で派手に暴れているのよね。 リボーン君は1歳の赤ん坊の姿なのに普通に一般人と喋ってるし、ツナヨシ君は人前でも死ぬ気モード化してパンイチになって暴れているし、ゴクデラ君は何所でもダイナマイト投げるし、ヤマモト君は常識人に見えてもバットに刀を仕込んでるし……そもそも、不良風紀委員の中学生達が町を取り締まっていたり、爆弾魔が大手を振って建物を爆破しまくっていたり、明らかに不審者な黒服スーツの人達が白昼堂々と出没しているのに、一般人や警察は普段事のようにスルーしちゃってるのよねぇ。 つまり一言で言い表すとカオスな世界だわ☆」
グナちゃん(ガクッ)「オイオイ、マタカオスカヨ」
アリサちゃん(フッ……のポーズ)「赤ん坊が殺し屋で家庭教師やってる時点で
アリサちゃんが再び手元のリモコンを操作して、導力スクリーンに映る並盛町の風景写真が【首都クラナガン(『
アリサちゃん「ラストは本編のメイン舞台となる『魔法少女リリカルなのはStrikerS』の《次元世界》を解説するわ!」
グナちゃん(白目)「オイマテ。 コノエイゾウッテ、ホンペンノナマホウソウジャネエカ?」
アリサちゃん(
グナちゃん「イワユル“シホウキカン”トイウヤツダナ。 シカシ、ホウテキソシキトイウノハウチガワガクサリヤスイモノダガ……」
アリサちゃん「ま、そうよね。 一つの世界の国一つだけでも政府法制にロクな人間は少ないから、組織が星の数程の世界を管理できる程に巨大な規模なら尚更よ。 実際に上層部には汚職やマッチポンプでより高い実権を手に入れようとする将官や官僚も少なくないらしいし、マッチポンプの結果ジェイル・スカリエッティやラコフ・ドンチェルのような時空管理局を叩き潰そうとする広域次元犯罪者が出てきて全次元世界を巻き込む極大規模の戦いが勃発する場合もあったからね。 これも“人の業故に”というやつよ……」
グナちゃん「オーイ。 ハナシガダッセンシテルゾ。 ジゲンセカイノセツメイシロヨ」
アリサちゃん「それもそうね。 時空管理局についての説明はまた別の機会にしときましょう。 話を戻すと、次元世界は大まかに5種類に分けられているわ。 魔法技術が表に認知されていて日常文化にも取り入れられ、時空管理局の法管理下に入っている惑星世界群は【管理世界】。 魔法技術が認知されていない又は魔法の存在は有っても都市伝説化や人里隠れる一小規模部族の秘蔵魔術として扱われ表沙汰にされていない、非魔法文化で人間社会が成り立つ有人世界である為、時空管理局が表社会への干渉を控えて次元災害対応の為の監視のみに留めている惑星群の事を【管理外世界】。 そもそも人間や知的生命体が全く存在していない宇宙の星々を【無人世界】。 禁忌指定級魔法生物の生息支配圏だったり生き物が生活できない超絶過酷な自然環境だったりして、時空管理局の力を持ってしても管理不可能だと見なされた惑星領域を【進入禁止指定世界】。 次元空間内に存在している事は確認されてはいるものの現在有る次元航行手段では到達不能であるとされている完全未知の宇宙領域を【未到達世界】。 それで時空管理局はそれぞれの種類別に分けた世界に番号を付けて監視し易くしているらしいのよね。 《ミッドチルダ》は時空管理局が発祥された世界だから管理世界の中心にするとう意味で“第一管理世界”だという風にね」
グナちゃん「チツジョヲチャントマモッテイルンダナ」
アリサちゃん「ところがどっこい! 次元世界は尋常じゃなく監視範囲がバカッ広くて、時空管理局の実働員である魔導師の数は万年不足しているのよ。 だから全部の次元世界をカバーしきれずにロストロギアの暴走が頻発して幾つもの世界が消滅したり、狡猾な野心家が監視の目を離した隙に禁止されている兵器を持ち出して紛争を起こしたり、何処からか世界を殺してしまう未知のウィルスが発生したり、魔法少女(19歳)が極大魔砲をブッパなして飛行巨大戦艦に風穴を空けたりしている風景が日常茶飯で見られる、カオスな世界なのッ!!」
グナちゃん(頭を抱えて青天井発狂)「ケッキョク、ミッツトモゼンブカオスナセカイジャネーカアアアアアッッ!!!」
ボルサリーノ帽の喋る赤ん坊、来る!「
グナちゃん(ビックリ)「──ッテ、ウワァァッ!? ダレダコイツハ!」
アリサちゃん(事前に来る事を知らされてた)「あら、《リボーン》君もう来てたの? 出演は次回からなんだから、ゆっくりしていればよかったのに」
リボーン「なぁに、紳士の嗜みとしてレディー達に早めの挨拶をしておこうと思ってな。 それに、本編ではオレの出番はしばらく先になるらしいから、暇してたんだよ」
グナちゃん「ム? マスコットノチイハワタサヌ!」
リボーン「いらねーから安心しろよ。 そんな訳で、次回の【炎の軌跡講座】第7回からは、オレがレギュラーに加わってツナ達の事をねっちょり解説してやるからな。 死ぬ気で楽しみにしていろよ!」
グナちゃん「サラダバー!」
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英雄足り得る心
英雄伝説軌跡シリーズ初作『英雄伝説 空の軌跡FC(PC版)』2004/06/24発売
『家庭教師ヒットマンREBORN!』週刊少年ジャンプ2004年26号連載開始
『魔法少女リリカルなのは(無印)』2004/10/01TV放送開始
そして来年2024年、三作とも同年シリーズ開始20周年…………マジかよ?(今まで気にしてなかった)
──
己の眼に焦がれし三つの世界の真なる英雄達が紡ぐ勇気と絆の軌跡が放つ
その緋炎の燕の群れは裂空の頂点から急速落下しているイノケントを目掛けて対空砲火による弾幕のように矢衾となって猛スピードで向かって来ている。 普通ならば決して交わる事など有り得なかった二つの世界の歴戦の
「──勇気と絆を武器にして強大なる敵に立ち向かう王道の
満面の悦びを浮かべたイノケントが三日月に吊り上げられた口の奥底に在る魂からの大感激を溢れ出させたその刹那、矢衾の列で飛翔して来た緋炎の燕の群れが一直線に雪崩れ込むように彼へと殺到した。 矢頭の緋燕が《次元魔王》の鋼鉄の肉体を直撃し被爆を起こすと、それから途切れなく後続の群れが次々と突撃して機関砲の乱射さながらの連続爆音を煉獄の天に響かせていく。 裂空に乱れ咲く緋色の爆花が真上に座して回る十干十二支の巨大方陣と共に終末の世界の空全体を大きく揺るがした。
「「く──っ!?」」
生じた爆風は合体戦技を出し終えたリィンとツナがいる空の巣を蹴散らし抜けて地上の
自分達の放った合体戦技の余波が思いの他に強烈で二人が身に襲い掛かった災難に堪えている合間に緋燕の群れが全て先行から生じていた被弾爆玉の層を貫いてその中のイノケントへと突撃し切り、彼を包み込む爆玉の層がまるで泡立つかの如く一気に膨張して盛大に弾けたのだった。 見事に全弾命中である。
「う″っ……どう……なった……?」
しばらくして余波は止まり、暴風と大気震動によって滅茶苦茶に搔き回された空の巣……彼方此方にすっ飛ばされて他の浮遊障害物と滅茶苦茶に衝突を繰り返したお陰でジャガイモのような凸凹球形に変形した空中足場の上、どうにか振り落とされずにしがみ付き堪え切ったリィンとツナは安全を確認し、伏せていた身を上げて立ち上がる。 激しくすっ飛んで色々とぶつかった空中足場が齎した連続的な反動によって、表面に腹這いに密着していた全身を強く打ちのめされた所為で手酷い筋肉痛を受けたリィンは肩の呻きを漏らしながら爆煙の入道雲を見上げて、その中のイノケントはいったいどうなったのかと溢した。 彼の隣で腹に受けた強打痛を庇いつつ立ち上がったツナも同様に見上げて呟く。
「や、やった……の……か?」
流石にここまでやれば倒せただろうと淡い期待を口にするツナだが、その疲労で擦れ切った声に込められた確証は薄い様子であった。 彼の中の“超直感”は警告音を一向に止めてはいないし、血も冷え切って全身がブルブルと震え、どうしても足下を落ち着かせられないのだ。
「……」
リィンも剣呑な双眸で天を濛々と覆った爆煙の入道雲を無言で睨みつけて「ゴクリッ!」と息を呑んでいる。 彼もまたあの黒雲の中に一宇宙よりも遥かに
《次元魔王》イノケントは人の世界の理外に在る“魔人”と同等か、或はそれ以上の位階に在る未知数の超越者だと思われる。 本来なら只人の身で相手にできるような存在ではなく、初見で打倒するなど例えどんな英雄や実力者を大勢集めてもほぼ不可能というもので、ましてやたった二人だけで戦うなど自殺行為と言っていいだろう。
二人がそれぞれの元居た世界で過去に幾度も苦難の末に勝ち抜いてきた強敵達との戦いから得てきた豊富な経験値に加え、《神氣合一》《大空のボンゴレギア》という異能と特殊装備を用いた
「──くは、ははははははははーーッ!!!」
「「────ッッ!!!!」」
散々強化を重ね死力の限りを尽くして相手に食らい付いていった末に作れたたった一度きりの絶好の
「本当に、
自身の周囲を覆っていた
説明の中に聞き慣れない
──極限まで無理に近づけて幾つもの
──《絶対障壁》……だって!? そんなバカなっ! 炎の純度を最高に高めた大空属性の
千載一遇の決定打をいとも容易く防がれてしまい、軋む音を鈍く響かせる程に歯を強く噛み締めて厳しい表情を浮かべて愕然と深い落胆を露わにする二人の
極限の激闘を超えて作り出した僅かな勝機をも掴ませてくれない……そんな理不尽を目の前に突き付けられて、絶望しない人間はいない筈だ。
「それでも尚、己の意志で世界や大切な者達を守ろうと必死覚悟で奮起し、絶対に勝利を諦めないのが
「無論だ。 少し前に
「オレは自分自身を英雄だと思った事は一度もないけれど。 それでもこの手で大切な友達と
高潔な英雄達への信頼と期待を込めた圧を孕ませた眼光を軍帽の下にギラリと光らせて問いかけてくるイノケント。 だが相手の言う通り、目の前の
そう、【英雄足り得る心】とは、決して己の栄誉や利益を得る為に格好をつけるものでも、常に正しい立場でいたいが為に自身の力と正当性を周りに見せつけるものでもない。
聖人か偽善者か血筋か立場などで決めるものでもない。
弱く罪無き誰かが卑劣なる悪者や災厄が齎す理不尽などによって脅かされる事を決して許さない。 心より大事に思う場所や愛する者を奪おうとする魔の手から守りたいと願い、身を挺して立ち向かう。 たとえ己の立場が危うくなったとしても無辜の民の居場所と尊厳を守るために悪政を振るう権力者を討つ。 ──即ち愛をもって人道を尊び、義をもって外道を許さぬ、その行為と意志そのものなのである!
「ククク、そうだ。 本物の勇者や
「「……」」
「果たして神に選ばれて力を手にすれば“勇者”か? 格好良い派手なコスチュームを身に纏って悪党や怪獣をやっつければ、それだけで“正義のヒーロー”になれるのか? ……くは、はははは! そんな訳があるまいよ。 何故なら、俗物は
「お前は……」
期待の圧を乗せた眼光で睥睨してきながらリィン達が持つ身を挺して他者を護る高潔な英雄の精神を尊び、その裏で低俗な願望で英雄の皮を被る俗物を否定する言葉を吐き捨てるイノケント。 英雄の
「さて、お前達の英雄の資質は期待した通りに極上だった。 ……次はその高潔な
「な──ッ!!?」
イノケントが語った主張に対してリィンが何らか意見しようとしたが、言葉を投げるよりも先に相手が話を切ってリィン達の持つ英雄としての器を試してやると投げつけてくる。 そして外套の懐から二重層スライド構造のスマホに似た近未来の戦術オーブメント《PARAISO》を手に取りながら、なんと既存世代の戦術オーブメントで発動する事のできる最上位の
「そんなに驚いて、どうしたんだリィン?」
「有り得ない……最上位導力魔法は“ロストアーツ”を除く現代の戦術オーブメント端末の規格で使用可能な導力魔法の中で文字通り最大威力・効力を発揮できる駆動術式なんだぞ? それを上回る【究極上位導力魔法】は四年前の《リベールの異変》時期に使用されていた第四世代型から今現在の第五世代型まで実用不可能だったと
リィンが信じられないと言いたい焦燥の声で
リィンとツナはまだ知らない事だが、なのはやフェイトをはじめとする次元世界のトップランクの魔導師が使用可にしている【
「ふはははは! さあ、我が宿敵にして敬愛せし三世界の若き英雄達よ。 その尊き勇気と絆の
「「────ッッ!!!?」」
そして遂には煉獄の天の中心に座す十干十二支巨大方陣の上へと昇り立ったイノケントは更に天高々と《PARAISO》を掲げると、本日最高潮のはしゃぎ様を露わにして
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ──!!
その直後、炎のように赤く輝いて超速回転を開始した巨大方陣から尋常ではない“圧”が発せられ、高位相次元の壁ごと終末の世界を激しく震撼させる。 同時に術者が立つ巨大方陣の上部が同じ赤色に光る
「まさか……
「ふははははー! 概ねその通りだ、リィン・シュバルツァー! お前も沢田綱吉もこれ程に巨大な駆動術式を見せられたならば、俺の言った事が実現可能であると理解できたであろう? エレボニア帝国の第五世代型戦術オーブメント《ARCUSⅡ》で適応されている火属性最上位攻撃導力魔法《ゼルエル・カノン》──その更に上位に位置付けされる“火属性究極上位攻撃導力魔法”を、今から御見せしようぞ!!」
「っ!! 来るぞ。 何をしている、早く構えろリィン──ッ!!!」
火属性究極上位攻撃導力魔法の駆動術式と化した巨大方陣の回転速度が《ARCUSⅡ》で強化を施された達人の動体視力をもってしても最早其処に刻まれた術式を読み取る事は不可能になった程に加速され、太陽の如き目が焼け焦げるような極光の輝きに染められた。 それに伴って何故か巨大駆動術式方陣から放たれていた“圧”は急消滅し、終末の世界全体の激震も水のように鎮められた。 だがしかし、ツナの中の“超直感”はそれが相手の詠唱駆動が完了した合図だと伝えてきて、それがとんでもなく危険な攻撃が来ると非常警報を甲高く鳴らした為、彼は一早く防御の身構えを取りつつ、まだ現実感を持てずに精神的衝撃からの回復を遅れさせていたリィンへ咄嗟と怒鳴り飛ばして正気を取り戻そうとさせた。
……だが、もう遅かった。
「外宇宙のその果てより来たれ。 その爆炎の息吹で惑星をも焼き尽くす、
天に立った次元魔王の盛大なる呼び声が那由他の次元時空を超えて轟き渡る。 直後に彼の足下の巨大駆動術式方陣が急に超速回転を止め、同時に心臓の鼓動の如き脈を一度打つ。 その静謐な脈動音が森羅万象をも畏怖させる霊的な“威”を伴って終末の世界全体のモノへと伝わり、その一瞬の間『
──ぁ……ああ……っ!!
──な……んだ……
見上げた事象への不信のあまり刹那の一瞬見せてしまった心の綻びに付け込んで来た霊的威圧を受け、その精悍な顔付きを今にも凍死しそうな酷い青紫色に染めたリィンの瞳に映し出されたのは、この世のものとは思えない程に想像を絶した戦慄の光景だった。
詠唱駆動を完了して特大の脈を打ったイノケントの巨大駆動術式方陣……朱炎に燃ゆるその下面の内側より産出されるかのようにして顕れ
刹那に齎された静謐を破り、魔王の呼びかけに応え出現した埒外級の幻獣を目の当たりにし、ツナまでもがそれから放たれてくる超越的な威圧感に圧倒的な畏れを懐いて身を石のように硬直させた。 遂にここまでずっと彼の額に灯され続けていた死ぬ気の炎も鎮火され、ミッドチルダにやって来る直前に飲んでいた特殊な丸薬により内面から外されていた全身の
『ギャオオオオオオオオオオンッッ!!』
「ひっ……ひいいいいいいぃぃ!! なんか凄くデッカイ、ドラゴンが出たーーーーッ!!!」
身に纏っていたボンゴレギアも強制解除され、死ぬ気の炎を灯していた時の冷静な威風とクールな雰囲気を完全崩壊させて、ダメダメな感じで気弱な風の少年に一変したツナが白目を剥いて情けない悲鳴をあげる。 イノケントが最高に愉快な気分で召喚した悪魔の頭を持つ巨大黒竜が巨大駆動術式方陣から飛び出してその圧倒的に絶大な全身を煉獄の大空へと現したのだ。
「火属性究極上位攻撃導力魔法《バハムートフレアボマー》。 それは三世界から遥かに離れし外宇宙の狭間に君臨している【竜王バハムート】が吐く爆炎の
業火を纏う三対六の大翼を羽ばたかせ、終末の世界に召喚された外宇宙の竜王の化身。 凡その目測で地上の
しかし、それが事実ならば幾らなんでも冗談では済まされないだろう、これは……。 幸いこの終末の世界『
「ふざけるな……そんなものを放たれたら俺達もこの
「そんなの絶対イヤだーーーー!! でも酷い怪我していたスバルとなのはを後ろに待たせて、このままだと離れ離れの山本や獄寺君達だって危ないから、逃げる訳にはいかないし……うわああー! いったいどうしたらいいんだああああああっ!!?」
パワーインフレにも程がある究極上位導力魔法の発動を目の当たりにして極限の緊迫を強く噛み締めながら絶体絶命の危機感を叫ぶリィンと、隣でそれを聴いてノイローゼのように自分の頭を両手で挟み込んで大混乱に陥るツナ。 だがしかし、二人の攻撃ダメージを上昇させていたリィンのブレイブオーダー『烈攻陣《焔群》』は既に
「ふははははー! さあ、リィン・シュバルツァー! 沢田綱吉! そして我が信奉せし三世界の若き英雄達よ! お前達の素晴らしい勇気とキズナの力と
──くそっ! ……こうなったらやむを得ない。 異世界で使うとリスクは高いが“無想の極致”を解放する以外に方法は無いか──
──もうしょうがない。 この“新しい死ぬ気
竜王の化身が終末の世界ごと英雄達を爆炎の
リィンが全身から放出していた灰色の霊圧
……だがしかし、リィンの切り札は
──くそっ、焦りで集中が……駄目だ間に合わない──ッ!!
「
イノケントの火属性究極上位導力魔法《バハムートフレアボマー》がいよいよ撃ち放たれようとして、三世界の英雄達が万事休すとなるその直前だった。 相手の対界戦略級殲滅爆撃が繰り出される寸前を見て“切り札”の使用を急ぐに焦ってしまって集中を途切れさせてしまい、“無想の極致”の領域にまで届かせられず遂ぞ諦めかけるリィン。 だがその刹那、遥か真下から凛然と美しい女性の声が届いてくると同時に一筋の“金色の閃光”が疾風迅雷の如き
「フェイト……!?」
「リィン、ツナ。 待たせてゴメンね。 その魔法は
遂に
リボーン「一兆度とかイカにも頭の悪い数字が出やがったしな」
グナちゃん「テイウカ、【アルティメット・アーツ】ッテ、ソノママノネーミングジャネーカヨ。 コンナブットンダインフレオリジナルアーツヲプロローグヘンショッパナカラダシヤガッテ、ドクシャタチハワケガワカラネーダロ?」
アリサちゃん「心配御無用ッ、その為のこのあとがきコーナー『超絶最強ヒロイン、アリサちゃんの“炎の軌跡”講座』じゃないの! 【
※【究極上位導力魔法】の詳細は次話の本編で説明されます。 ついでに『炎の軌跡講座』の次回はプロローグ編後の序章に書く予定なので、プロローグ編が完結するまでお休みです。
アリサちゃん(ハンカチ噛み締め)「チックショーーーーーッ!!!」
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三世界の若き英雄集結。 究極の導力魔法を打ち破れ!(前編)
所持していた全弾の
「雷光一閃……プラズマザンバァァァ──ブレイカアアアアアアーーーッッ!!!」
しっかりとした浮遊鉄骨の上に足場を固めてフェイトは大きく肩の後ろに振り被った光の斬馬刀を一息に打ち振い、自身の出せる最大火力の
『グギャアアアアッ!!?』
竜王の化身が矮小な英雄達と終末の世界を灰も残らず焼き尽してやるとして一兆度の爆炎を吹き放とうとした寸前に勢いをつけて振り下げた首下にある肺部位に金色の極太砲撃が命中。 フェイトが撃ち込んだ膨大な魔力量に比例した特大級の被爆が生じて8000m下の
「す、凄い……ッ!」
「や……やった! フェイトの物凄い雷砲撃がイノケントの【
全身の肌が
『グルルル……ギャオオオオオオオオオンッッ!!!』
「──てない!? 嘘おおおおおおおっ!!」
ところが、驚くことに究極上位導力魔法は一度止めても
「ひいぃぃっ! もう駄目だー! おしまいだあああああっ!!」
死ぬ気の炎が額から消えてすっかり“元のダメダメな普通の少年に戻ってしまったツナ”、ひと呼んで【ダメツナ】。 しかしこのギリギリの窮地においては急に雰囲気を様変わりさせてクールな歴戦の炎拳士から情けない悲鳴をあげている臆病な普通の少年に変貌した彼を気にする余裕はリィン達には無い。 三人が見上げた先で竜王の化身が再生した喉の奥に再び星を焼滅させる爆炎の息吹を溜め込み始める。
「くっ! だが、何が何でも絶対に放たせる訳にはいかない! 今度こそ俺が──」
「リィン教官ッ!」
「──っ!? この声は……!」
フェイトは
「──うふふ。 ユウナさん、アルティナさん。 ごめんなさいね。 今回はわたしの方が速かったみたいです♪」
「ミュゼ!?」
「ええ、そうですリィン教官。 教官が一番に愛する生徒の
不意に何時の間にかリィン達の直ぐ側を漂っていた浮遊バスの屋根の上へ跳び乗って来ていた、リィンの担任クラス生徒の一人にしてトールズⅦ組の仲間であるミュゼ・イーグレットがいつものあざとい微笑と蠱惑的な声音で自身のクラス担任であるリィンに経った今合流した事を報告する。 彼女はその手に携えた豪華な装飾のマスケット銃のような外見をしている魔導騎銃──《玲銃マルグレーテ》をパレードバトンのように華麗に回して真上へと放り投げる。
「さあ、舞台の幕を上げましょう!」
綺麗に真っ直ぐミュゼの眼前に落下した魔導騎銃は彼女がとある秘密結社の魔女に教わった魔術によって
「レッツ──スタート!」
まるで徒競走のスタート合図を出すように頭上へ真っ直ぐと上げた右手で小導力拳銃の
「まだまだ、此処からが佳境です!」
勿論の事、エレボニア帝国内随一の名門で超難関士官学院であるというトールズの筆記試験の採点数を自分の好きに出来てしまう程に明晰な頭脳を持つ彼女は、たかが十数条のエネルギー光線程度だけでどうにかできるなどとは微塵も思っていない。 間髪入れずに眼前に整列する魔導騎銃達を魔術で
「ロード……ガラクシア──ッッ!!!」
「や……やった?」
「いいえ、まだです。 ですが城を崩す為の
ミュゼの
「わたしに出来るのは、これまでです。 あとはお願いします、ユウナさん達」
「フフン、任せなさい! あたしに合わせてアル! ティアナさんもお願い!」
「了解です」
「仕方がないわね。 急ごしらえの
合流した美少女三名はユウナとアルティナのトールズⅦ組特務科女子ペアと、機動六課FW陣
ガラハッドが爆散して仲間達全員が終末の世界に散り散りに飛ばされた後、アルティナの《クラウ=ソラス》が自動防衛機能で守ってくれた事で三人は近い場所に落ちていた。 それで三人は一緒になってリィン達の戦いに加勢しようとして、ずっと前から《クラウ=ソラス》で戦場に向かっていたのだが、終末の世界の
「
「《クラウ=ソラス》──
「前は未完成で使えなかったけれど、今なら撃てる! くらえ──ッ!!」
《クラウ=ソラス》がリィン達の前へと躍り出て、其処らを漂う横広の浮遊足場の上に意気軒高と飛び降りたユウナ達三人。 竜王の化身が破滅の爆炎を吹き放つのを阻止すべく、または遅れて来た事を挽回すべくして、三人一斉に大技を繰り出す為の構えを取る。 両手に一つずつ握り締めた銃
「エクセル──ブレイカアアアアアアアア!!!」
「ソラリス……ブリンガー!!!」
「行っけえええっ!! ファントムブレイザーーーーーーーッッ!!!」
三人は上手く息を合わせてほぼ同時に戦技を撃っ放った。 射出口に迸る導力エネルギーを充填し、ユウナが凛然と雄々しく
『ギャオオォオオォォーーッッ!!?』
未来に夢見る三人の美少女戦士が夢へと向かう希望の未来を守るべくして全力で放った
「よし、どんなもんよっ! やったわねアル、ティアナさん♪」
「むぎゅ……ユウナさん、嬉しいのは分かりますが、いつもいつも急に抱き着かないでください」
──何で昨日まで見ず知らずの他人同士だった私まで一緒に……このユウナって人、お調子者で他人に馴れ馴れしいところも
「それと、別に私の事は呼び捨てで構わないわ。 見たところ歳は近いようだし……」
「ほんと! じゃあ“ティア”って呼ぶわね♪ よろしく、ティア!」
──(ガクッ)少し親しくなっただけであだ名呼びしてくるところまで……しかもあだ名付けのネーミングセンスもバカスバルと全く同じって……。
三人同時の
「は……はは。 何はともあれフェイト、ミュゼ達も危ないところに駆けつけてくれて助かった。 みんな無事だって信じていたよ」
「うふふ、それは当然のことですリィン教官。 愛する殿方の危機に馳せ参じてこそ、真の乙女なのですから♡」
「それにリィンとツナこそ、此処まであんな途轍もなく人に過ぎた魔法を使うような規格外の強敵相手にたったの二人で戦って、よく頑張って持ち堪えたね。 イノケントに危うくやられそうになっていた
「もしかして、二人には会って来たの?」
「(ツナさん、先程と雰囲気が変わっているような……?)はい。 御二人共ほぼ瀕死の重傷を受けていましたので、とりあえず手持ちに有った【アセラスの薬】で戦闘不能状態を回復させてから《クラウ=ソラス》の
「だけど、
「ぐっへへ~。 アルのスベスベな触り心地も相変わらず最高だけど、ティアのお肌も艶々でなかなかイイわね~♥」
此処に来るまでの道中でやった事をリィン達に話している間にユウナが百合百合スキンシップからエロオヤジモード化した為、身の危険を感じたティアナとアルティナは
『ギャオオオオオオオオオン──ッッ!!!』
「な──にィィッ!!?」
「う″……あ″あ″あ″あ″っ!!」
「耳が……壊れ……る……!!」
大気を伝播してこの終末の世界全体の大空に悲鳴をあげさせ、創造の地上本部があった地の中心から東西南北の果てまで伸びる十字型の大地割れが発生する
「ククク……なるほどな。 主人公が絶体絶命の局面においては必ず頼れる仲間達が駆けつけ、皆で力を合わせる事で危機的状況を打破するか。 過去には立場の違いや性格的に反りが合わず、仲違いや衝突をしてきた事もあっただろうが、時に行く道に立ち塞がる壁を乗り越えるべくして手を取り合ったり、時に止むを得ぬ事情の前に敵対し本音でぶつかり合ってきた事で、繋がりの環を広げ強固に育まれてきた英雄達の絆の力よ。
竜王の化身が業炎の火の粉を煉獄の空に撒き散らしながら羽ばたく頭上に輝きまくる巨大方陣の上面に立つ
「イノケント──ッ!!」
「ふはははは! そんな大声で叫ばずとも、ちゃんと聴こえているぞリィン・シュバルツァー。 ……しかし、なるほどよなぁ。 単騎や二人の力だけで食い止められぬものには三人以上で協力して掛かってゆくか。 確かにとてもシンプルで合理的であり、単純な戦力と制圧力を大幅に上昇させる事で、より強大な相手を制せる可能性を上げるという実に強力な戦法だ。 実際にこうして俺が発動した《バハムートフレアボマー》の攻撃が放たれるのを加勢による戦力数増加を活かした波状連携攻撃をもって絶妙に妨害し、一度ならず二度までも
「そ、そんなぁ。 フェイト達の攻撃だけじゃ、足りないって言うのか……」
一兵卒の軍人や並大抵の魔導師が受ければ即泡吹いて気絶する程の“威圧”が込められた激昂をリィンから向けられても平然と嗤うイノケント。 奴からフェイト達の加勢と連携で竜王の化身の爆炎放射を阻止し続け大変健闘している事に対し相変わらず嘘偽りの無い賞賛が送られ、しかしそれだけでは《バハムートフレアボマー》を
【
究極上位導力魔法の
そして召喚された魔導巨像には
「──ハッ! だったらアタシ等の手で、足りねぇ分をそのギガ暑苦しいクソデカ竜に食らわせてやりゃあイイってだけのハナシだ!!」
一度0になったHPを全回復し、竜王の化身──改め《バハムートフレアボマー》の魔導巨像が長首を天へと伸ばして三たび星を焼滅させる爆炎を放つ為の火属性導力エネルギーを
「「ヴィータ(副隊長)!!」」
「おう! お前ら、待たせたな! 古今単騎無双の
リボーン「ツナの大馬鹿ヤローが、プロローグの戦いのクライマックスなんかで日和ってダメツナに戻りやがった。 異世界の連中の前であんな情けねー悲鳴出しやがって。 裏社会天下最強のボンゴレファミリーの次期ボスがナメられたら終わりだろーがよ? オレが本編で
ダメツナ(超直感で次元超越電波受信)「ひぃっ!?(今何か背中に感じ慣れたような恐ろしい殺気が──ッ!!)」
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三世界の若き英雄集結。 究極の導力魔法を打ち破れ!(中編)
シグナム(同上)「なに、気にする事はない。 我らヴォルケンリッター、姿と心は
湖の癒し手(本編の出番まだの人)「でも“
盾の守護獣(同上)「なに、気にする事はない」
ヴィータ達の主のタヌキ娘(本編にはセリフだけ出ていて、名前の紹介はまだの部隊長)「てか、んな事はどうでもええやろ! それよか本編の私の出番はまだなんか!? 何話か前にツヴァイと一緒に出撃していた筈やろ、どないなっとんねん!!」
某運命の物語の空気王(自然に混ざり込んでいる)「なに、気にする事はない」
獰猛不敵に覗かせた犬歯を光らせて戦友達に立ち塞がる全ての障害は己が壊してやるから安心しろと豪語し放った騎士ヴィータがその小さな両手に握り締める
「【聖王のゆりかご】の駆動炉をもブッ貫いた、この
煉獄の天にその名を轟かせて、火花を散らし唸りを上げる
『グオォォォッ!!?』
不意を突かれて背中に叩き付けられた絶対破壊の鉄槌によりその巨体全身のあちこちが凄惨な暴発音を鳴らして崩され亀裂を刻み、まるで激痛に喘ぐような悲鳴を鳴らす竜王の化身。 特大のダメージが入った。
「アアッ、アッヂヂヂィィーーーッ!? ふー! ふー! ……んだよこのデカ竜、ギガクソ熱ぃ! ブッ叩いた瞬間にアイゼンがコイツの中の熱にやられて、ハンマーヘッドから柄まで真っ赤っ赤になりやがったし! お陰でアタシの手が焼けちまっただろうが、ボケーーッ!!」
現在放てる最強の
こんなとんでもなく熱いものに突き刺したままにしたら古代より共に数多の戦場を越えてきた己の相機がドロドロに溶かされて蒸発してしまうと思ったヴィータは持ち前の気合いとド根性で鉄焼ける両手の痛みを堪えながら、どうにか竜王魔導巨像からグラーフアイゼンを引き抜いて、巨像の上から離れる。 彼女は巨像が放出する熱気がマシに和らぐ距離まで一足跳びして、その辺りを漂っていた浮遊馬の背中に跨る。 そうしてグラーフアイゼンを一旦
「ふむ……ならば私は、十分な距離から“大弓”で射るとしようか」
空飛ぶ馬に跨って火傷した両手を何故か給水管が千切れているのに水が出る浮遊洗面台の蛇口で洗うヴィータのなんともシュールな姿を上から見下ろして、思案顔で自分の首筋を触りながら次に到着したのはシグナムだった。
「という訳だ、レヴァンティン。 《ボーゲンフォルム》を頼む」
『
「ああっ!? テメェ、後から来てそれは汚ねぇぞシグナム!!」
「ブヒヒww」
「ウルセェ嗤うな! それとテメェは豚じゃなくて馬だろうがぁぁ!!」
竜王魔導巨像に近接攻撃して手痛いしっぺ返しを受けたヴィータの失敗を見て接近するのはリスクが高いと理解したシグナムは
「あれだけ的が巨大ならば外す事はあるまい……
『《シュツルムファルケン》ッ!!』
シグナムの凛然と透き通る掛け声が空高々とあげられてレヴァンティンのAI音声が戦技名を発したと同時に射出された魔力の矢は音の層を破って真空波を引き連れ、軌道上を遮る無数の浮遊障害物を塵へと変えながら山程巨大な的目掛けて直進する。 新手の存在に気付いた竜王の化身が背中を振り返り、文字通り一羽の光の隼と化した魔力の矢がその胸の中心に真っ直ぐ吸い込まれるように突き刺さった。
『グッ!? ギャアアアアアアアアアッ!!』
《烈火の将》が撃ち出した矢は巨大な的に命中すると突き刺さった鏃から発火して射抜いた敵を地獄の業火で燃やし尽くす鎮魂の聖杭。 衝撃波と共に竜王魔導巨像の胸元から首下にかけて鮮やかな紫炎が盛大に弾けて迸り、烈々とした熱波が煉獄の天壌を撫でる。 あまりにも刹那的で洗練を極めた一矢は鈍重な巨像では回避する事は適わない。 もっとも太陽よりも遥かに熱い爆炎を内包している竜王の化身に対してたかだが一人の魔導騎士の魔力変換で生み出される
これで三回目だ。 しかし、それでも星を焼き尽くす竜王の化身を消滅させる為には、あと四回も撃破しなければならない。
「十代目、長々と御傍から離れてしまって申し訳ありませんでした! 後は右腕であるこのオレにお任せ下さい!!」
「獄寺君!?」
「真打の御到着だぜ! やられた分、利子付けてキッチリと返してやらぁ!!」
「アッシュもか!」
故に、更なる
「覚悟しやがれよ、どんなに図体がデカかろうが十代目とボンゴレファミリーの敵は右腕の名に懸けて必ずブッ倒す!
「仕込みはバッチリだ。 そんなに熱いものが好きだってんならイイもんをくれてやるよ、このデカブツ火トカゲ野郎!!」
獄寺は右手の指に四つ嵌めている髑髏ヘッドを模った指輪の一つに
「嵐+雷! 爆ぜ果てろ──《
「剛撃省略版《ギルティーカーニバル》だ! たらふく食らいやがれぇぇっ!!!」
雷轟音と共に強大な破壊力を持つ遠距離攻撃戦技を放つ嵐の守護者の真後ろからアッシュが浮遊足場を蹴って高く跳び上がり、竜王魔導巨像へと向かって一直線に爆進して飛んで行っている《
まずは軽量のダーツが《
「おっと? ハハッ、獄寺達に先を越されたか。 アイツら随分と
「だが、あの火力でも動きを止めるには少し足りてないようだ。 ここは僕達が追撃して畳み掛けるのが最善だろう」
「オーケーオーケー。 それじゃあ、いっちょ
「ピュイ!」
「ワンッ!」
肌が痺れる爆風の波濤を正面に受けつつも怯む事なく、続く援軍が到着する。 獄寺の《
山程に
≪
「本気を出してやろうぜ、二人とも!
山本が不敵な笑みで全力を解放して形態変化しろと二匹の炎の
山本武、《小次郎Ver.
「っ!? 僕と同じ双剣……いや、双太刀か」
「さぁて、まずはオレが
刀で爆煙の中に隠れた敵の急所を見つけるって、そんなのどうやってやるんだ? クルトがそう訊き返してくるよりも素早く、山本は静かに右腰に差してある【次郎の太刀】の柄に左手を添える。 彼はそのまま重力崩壊のルールを利用して高々と上空へ跳躍し、左手に掴み取った太刀を抜く。
「な……山本っ!?」
「時雨蒼燕流──特式・十二の型“
目立つ宙空に姿を現した
「よっと! へへっ、お待ちどうな♪ 斬撃音が聴こえてきたと思うが、急所はアソコのようだぜ」
──煙の中に斬撃を飛ばしただけで何故判ったんだ? ……などと訊いている場合ではないか。
「そんじゃあ、アソコへ向かって
「承知!」
二人の双剣士は頷き合い、山本が放った《霧雨》の真空刃が探し当てた爆煙の中に隠れている竜王の化身の弱点予測箇所へ獲物を狙う鷹のような鋭い眼光を差す。 山本が左腰に刃を納めた【小次郎の太刀】の柄を右手で掴み、壮烈な
「時雨蒼燕流──特式・十二の型“
「我が全霊を以って、光牙の一撃を為す!」
山本が放つ濃厚な殺気が右手で抜き放とうとしている太刀の内に宿る小次郎の意思と
「──
「光よ、滅せよッ!」
そして二人の双剣士は奥義を解き放った。 山本が抜刀した超高速の太刀筋が彼に纏わる無数の燕の炎閃を刹那の
「こぉぉぉ……奥義──」
どんなに相手が巨大でも間を置かさせず一ヶ所に集中して立て続けに強力な戦技を重ね当てたなら、塵も積もれば山となるように、その分だけ肉厚が削り取られて薄くなり脆くなるものだ。 故に竜王の化身が持つ星をも焼き尽くす熱量もその箇所だけは多少軽減されるのは当然の帰結となる。 クルトは休まずに双剣を極光の
「──
『グギャアアアアアアアアアッ!!?』
結果、身体に火傷一つ無く無事に灼熱地獄を斬り抜けて竜王の化身の背後を破ったクルトは、丁度その先に漂っていた
「見たか、ヴァンダールの剣!」
「完全無欠最強無敵の時雨蒼燕流は伊達じゃねーぜ!」
四回目の撃破。 残すは後三回。
「雷鳴よ貫け! 《サンダーレイジ》──ッ!!」
「フリードも一緒にお願い! 《ブラストレイ》──ッ!!」
「キュオオオオオオーーッ!!」
山本とクルトが奥義を出し終えた直後、南東の空より一筋の雷撃と特大の火炎弾が飛来する。 爆発が晴れ、未だ消滅するまでには至っていないが度重なり英雄達の大威力の
『グギョ!?』
なんだぁ、今のはぁ? 不意を突かれて背中に感じた二発分の衝撃に対し、変な声が出てしまった竜王の化身。 振り向いて見ると、立派な白銀の飛竜──キャロの使役竜フリードリヒが《竜魂召喚》によって変身した成長竜体が美しい白翼を羽ばたかせて煉獄の空を翔けてやって来ていた。 その背中には竜の召喚士であるキャロが跨り、彼女を守護する小さき竜槍騎士のエリオもまたその背後でバランス感覚抜群に飛竜の背中の上に立ち乗りながらバチバチと迸る
「エリオ! キャロ! よかった無事で……」
「まさか、あれは
「うぜぇ。 幻獣見て興奮なんかしてんじゃねぇよ! ……しかし、あのガキ共、何かするつもりみてぇだが。 あんな俺達が立て続けに高威力
ずっと離れ離れになっていて心配していた養子の子供達が無事に見つかって、フェイトが心からの喜びと安堵の声を漏らした。
「キャロ。 僕がちゃんと見守っているから、思いっきりやって!」
「うん。 エリオ君が傍に居てくれれば、わたしは何だってできるよ!」
頼もしい声で元気付けてくれたエリオに振り向いて満面の笑顔でやってみせると返事するキャロ。 大好きな男の子が傍で応援してくれれば女の子は無敵なのだという。 なんて、メルヘンチックな話だが侮る事なかれ。
「天地貫く業火の咆哮。
エリオから勇気100倍を貰ったキャロは小さな右手を天高らかに上げて、微塵の恐れ無く自身の使役できる中で最も強大な“真竜”を呼び出す
キャロ・ル・ルシエは嘗て【アルザス】という守護竜を奉る里の少数民族、その守護竜に選ばれた“巫女”であった。 しかし、彼女は生まれながら“
「──我がもとに来よ、黒き炎の大地の守護者──」
己が力を恐怖し他者が傷付く事を憂う。 そんな優しくも力を使う勇気が足りなかった竜召喚士の幼き少女の傍らには自分と同じ歳でフェイトの養子となった騎士志望の赤髪の少年が在るようになっていた。 彼もとある不幸な事情により愛する両親のもとから引き離されていたが、それでも大切な人達を守りたいと強く願い、いつも一生懸命に守ろうとしてくれる……キャロはそんな彼の姿に心惹かれ、彼の事を誰よりも大切に想うようになっていた。 故に彼が敵にやられて谷底へと落下した時、キャロは彼を救うべく勇気を出して、再び“白銀の飛竜”を召喚する事ができたのだ。 自分の居場所である機動六課の拠点が敵襲によって破壊され襲撃者によって大切な彼が深く傷付けられた時も、暴走を恐れて呼び出す事をずっと恐れていた“真竜”を召喚して襲撃者を撃退した。
「──竜騎招来、天地轟鳴!」
キャロが辛い過去から恐れていた竜召喚の力を使えるようになったのは、いつだって傍らで自分を護ってくれる
「来よ──《アルザスの真竜》ヴォルテェェエエエエル──ッッ!!!」
そして、幼き召喚士が召喚するその竜の真名を呼んだ。 その直後、選ばれし竜の巫女の呼びかけに応えるかのように彼女が跨る白銀の飛竜が羽ばたき滞空している宙空直下の地面に獰猛な眼光が『ピキィン!』と光ると、その周囲を半径約10m四方大に広げられた桃色の召喚魔法陣が囲い敷く形で展開される。 リィンやユウナ達トールズⅦ組はキャロが高らかに叫んだ直後『
「グオオオオオオオオッ!!」
しかしその隆起の正体は地上の岩や土ではなかった。 岩だと思っていたのは如何なるものも砕き割る爪と牙、土と見間違えたのは剣も大砲も傷付ける事適わぬ漆黒の竜鱗。 地上から約15m程せり上がって全貌を現したものは終末の世界全体を激震させる天災の如き咆吼を放つ、
≪アルザスの真竜≫──ヴォルテール
「な……っ! 黒い……竜……!?」
「さすがに目の前の《バハムートフレアボマー》と見比べると小さめに見えるが、それでもなんという
「真竜ヴォルテール……実際に見るのは初めてだが、聞いていた以上に凄まじい威圧感だな。 吼えた音を浴びただけで身体の芯まで震えさせられるようだ……!!」
キャロが召喚した真竜ヴォルテールの威容を前にツナ・リィン・シグナムといった歴戦の戦士達ですらも圧倒されている。 そしてそんな
「目の前の敵を殲滅しなさい、ヴォルテール! 《
そして白銀の飛竜に跨る召喚士の少女が精一杯の勇ましい声を張り上げてそう命じると、巫女の仰せのままにとヴォルテールが大地より分けて貰った高密度で莫大な量の魔力を強大なる敵を殲滅する火焔に変換し、大気を震わす咆吼と共に口から放出した。
「ピッギャオオオオオオオオオッ!!」
放たれた真竜の叫びは破壊の音津波となって周囲に漂う目障りな浮遊障害物を大小構わず粉塵に変え、邪魔するものを全て消し飛ばした。 真っさらになった敵との間を
「くっ……とんでもない威力だな……!」
「さ……さすがにこれならあのデッカイ炎のドラゴンでも消滅したんじゃn──」
『ギャオオオオオオオオオンッ!!』
「──ひいいいぃぃっ! やっぱりダメだったーーー!!」
天地構わず一切合切を蹴散らす真竜の
「グルルルル!」
「嘘……だろう……?」
「そんな……ヴォルテールでも倒せないなんて……」
「キュルルル……」
主の巫女の敵を殲滅できなかった悔しさに唸る
「──いいえ、そんなに気を落とさなくても大丈夫ですよ。 君たちの攻撃のおかげで、あの魔導像に大きな痛手を与えられましたので」
詰めを誤り攻め手を失った機動六課最年少魔導師二人は失敗した責任に押し潰されるように弱気になりかけたが、その時、子供達の頑張りを褒めて勇気づけるお姉ちゃんの質を纏った優しい声が後ろから掛けられてきた。
「貴女は……」
「確か……エマさん……でしたっけ?」
「はい。 よく覚えてくれましたね」
経った今、
『ギャオオオオオオオオッ!!』
「わわッ!?」
「あの
「あの魔導像はあくまで術を繰り出す為の導力エネルギー媒体に過ぎません。 そこに意思など無く、一定量のダメージを与えて消滅させるか、攻撃が繰り出される前に術者を倒さない限りは、止められないでしょう」
だが、天上に座す巨大方陣の上で完全防御の因果律結界に護られている
「君達の頑張りは私が絶対に無駄にしません。 ですので、私も三年ぶりに、この
エマは子供達の意志を引継ぎ、彼らが力を尽くして削ってくれた竜王魔導巨像のHPを何としても削り切ってみせると約束して、手に携えた
「天道を司りし、大いなる星々よ……! その神秘なる輝きを以って、我が声に応えよ──」
秘術を発動する為の呪文を唱えながら機敏な手回しで《命杖ユグドラシル》を右腰の横下へ持っていき、斜めに下げた魔導杖の先端上部分の円輪杖金属フレームの中心に取り付けられている球体の核にエマが練り上げた膨大な量の魔力が
「──《ゾディアックレイン》ッ!!」
『グギャ!? ギャギャギャアアアアアアアアアッ!!!』
一番先に落下して来た赤い流星が脳天に直撃してオヤジの拳骨を頭に落とされた悪ガキのように片目を星にした竜王の化身へ畳み掛けるかのようにして無数の流星の雨が襲い掛かった。 忽ち七色の光の連鎖爆撃に巨大な全身を袋叩きにされた竜王魔導巨像は幼き魔導師達の攻撃によって大きく削られていたHPを一瞬で全て削り尽くされ、阿鼻叫喚をあげたのだった。
これで五回目の撃破だ。 残すはあと二回。
「ほっ……どうやら十分な手応えを与えられたようですね。 これで恐らくは後一息でしょう」
「す……凄い」
「な、なんていう魔法なんだ、隕石を落とすだなんて……!」
「キュクー!」
トールズ士官学院を短期卒業してから三年間封印していた秘術《ゾディアックレイン》を無事に出し終えたエマは空高く掲げた魔導杖を下ろし、隕石の爆撃を受けて外部の罅や剥がれなどといった破損個所が全体に濃く広げられ形を保つのもそろそろ限界に近い有様となった竜王魔導巨像を眺めて、自身の豊満な胸を撫で下ろしながら緊張で肺に留めていた息を吐く。 伝承の真竜の一騎たるヴォルテールの《大地の咆吼》にも全く引けを取らない破壊規模を叩き出した異世界の魔法使いの大魔法を目の当たりにして開いた口が塞がらない程に大きな瞠目を露わにした未成熟の幼き魔導師二人と彼等を乗せる白銀の飛竜が感嘆の鳴き声をあげている様を前に見ながら、彼女はまだ終わっていないと気を引き締め直す。
「ですが、私にできるのはこれまでのようですね。 後はお願いします──ガイウスさん」
「ハァァ……オオオオオオオッ!!」
焔の魔女が後を託した風の聖騎士は彼女の遥か後方に浮かぶ土岩の小島に長い脚を踏みしめて黄金の咆吼をあげた。
「《絶空鳳翼》の力……思い
ガイウスは成人男性の平均値から視てもかなり高めである自身の丈よりも長い十字槍を片腕で軽々と頭上に持ち上げて振り回し、清涼なる緑の陣風を起こす。 それを身に包む内なる憤怒の黄金衣の上に纏う事によって猛る意志を自身の内の深淵へと沈め、其処に刻まれし七耀の守護騎士の証にして力たる《
「我が深淵にて煌く、“金色の刻印”よ──」
一旦頭上から十字槍の穂を前へ下ろし、静寂に双眸を閉ざして自身の
「──その猛き咆吼を以って、我が槍に、無双の力を与えよ──!!」
そして再び聖十字槍を頭上へと振り回し上げ、勇ましい槍投げの構えを取る。 だがしかし、その巨大な穂先は400アージュ前方で一兆度の爆炎
「あれは、ガイウスか?」
「な、なんだぁ? アイツあんなところから何かを空へと放り投げやがった……!」
少し離れた空域に浮かぶ小島の上からガイウスが遠目からでも分かる輝きを放つ長物を空高くへと放った様子はシグナムとヴィータが目撃していた。 先程に最強の
「「……は?」」
百戦錬磨の《烈火の将》と《鉄槌の騎士》が二人雁首揃えて天を仰ぎながら目を点にする。 彼女らの視界には今、山よりも
「
黄金の聖痕の主が雄々しく高らかに
『グ……ギャ……アアアアアアアアアアッ!!』
巨大駆動術式方陣を術者を護る完全防御結界ごと貫通して真下の竜王魔導巨像を悪魔のような頭から串刺しにした直後、後から引いていた鈍い風切り音が追い付いたと同時に聖十字槍の穂先から極大の十字衝波が発生し、魔王の火術を聖なる光で徹底的に焼き尽くした。 事前に全回復して上限満タンになっていた筈のHPがたった一撃の
「とんでも……ないな。
「バ……ババ、バカじゃねーのか……!? 隕石落としたエマも大概だけどよ。 あんなのもう反則だろ……っ!!」
ガイウスが星杯守護騎士の力を解放して繰り出した最強の
ガイウスが自身の内に秘める静かなる憤怒を黄金の咆吼をもって引き出し
「──くは、ふはははははははーーっ!
「イノケント、やっぱり無傷だったか……」
『ギャオオオオーーーン!!』
「ひっ! そそそ、そんなぁ!? あの
《極・吼天鳳翼衝》の炸裂で生じた十字衝波が徐々に収縮されて消え去ると、清浄な白に照らされていた終末の世界に煉獄を思わせる
その結果、六回目のHPを0にされた竜王魔導巨像はツナが奴の健在を見て顔を青褪めさせながら言った通り見るも無残な程ボロボロになっていた。 大山よりも
だがしかし、この竜王の化身はイノケントの持つ数多の並行宇宙より異端技術を集めた
「……これは計算外だったかもしれませんね。 わたしに視えていた未来の盤面ではガイウス先輩の
「謝らないでくれ、ミュゼの所為じゃない。 ……しかし、非常に拙い状況になったな。 みんなが無事に集合できたのは良かったんだが、全員一通りに
「だ……だめだ。 こ、このままじゃ、みんなみんな
「それは……俺も同感だ。 『己を捨てて他を活かすのではなく、己も他も活かすのを最後まで諦めるな』。 あの“黒”の呪いを討ち果たし《七つの相克》に決着をつけた時、“あの人”は女神のもとへと逝く間際に俺へそう言い遺してくれた。 『資格がどうこうの話じゃない。 俺は幸せにならなくちゃいけないんだ』。 三ヵ月前の《逆しまのバベル》での決戦の最中、
仲間達が持てる力を全て出し切り、それでも倒しきれない絶大な敵や力に絶体絶命に追い詰められて尚、英雄達は決して絶望しない。 彼等がこれまでに自分達の世界や掛け替えのない大切なものを護る為に幾度となく高い苦難や試練の壁を乗り越え、強大な力を持つ相手や組織と世界の命運を賭けて熾烈な死闘を戦い抜き、時には力及ばず敗北を喫して、その度に幾度となく立ち上がり身も心も強くなれたのだ。 故に今回も同じ事だ。 沢田綱吉は死ぬ気の炎で精神のリミッターを外していなければ脆弱な自尊心故に何をやっても自信の無さが足を引っ張り失敗ばかりして逃げ出してしまう事もあるダメダメ中学生だが、大切な友達の危機を前にしたなら迷わず守る覚悟が炎に灯る、その優しさと度胸を持っていたからこそボンゴレの血の運命に翻弄されながらも裏世界の死闘を何度も戦い抜いて日常を取り戻せた。 リィン・シュバルツァーは幼少期に義妹を魔獣に襲われて以来
「そうだね。 わたし達も同じ気持ちだよ。 たとえ敵がどんなに強くて理不尽な力を持っていて、わたし達の力の全てが通じなくても。 それでどれだけ傷付けられて断崖ギリギリに追い込まれたとしても。 心を折らずに諦めなければ、必ず勝機は掴めるんだ」
「だけど、それでも力が足りなくて相手に届かせられないというのなら、頼れる仲間が足りない分の力になります。
外側をボロボロと剥がれ落としながら再び長首を天上に伸ばした竜王の化身の悪魔の口が大きく開かれ、その中へと向かって終末の世界中から導力エネルギーが幻想的な光帯状の形を取って次々と吸い込まれ
キャロ「来よ──《アルザスの真竜》ヴォルテェェエエエエル──ッッ!!!」
ヴォルテール(全身騎士鎧姿)『
リィン「あれは、まさか九機体目の騎神か!?」
フェイト「キャロの召喚竜だよ、たぶん……」
アルティナ「“ヴァリマール”や“オルディーネ”とかと名前のニュアンスが似ていますからね」
思いついたからやった。 反省も後悔もしていないww。
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三世界の若き英雄集結。 究極の導力魔法を打ち破れ!(後編)
しかし、果たしてその先にはどんな結末がリィン達を待ち受けているのか? 衝撃の展開に御注目あれ!
「え……なのは!?」
「スバルも、どうして此処へ!?」
「決まってるじゃないですか。 あんな超デッカクてものすっごい力を使ってくるような強敵を相手にツナさんとリィンさんが二人でずっと頑張って、フェイト隊長達も加勢してみんな力を出し尽くして戦っているのに、あたしとなのはさんの二人だけ後ろでじっとなんてしていられませんよ。 あたし達にも手伝わせてください!」
「「……」」
「心配しないで。 此処へ来るまでに魔力を大分回復できたから、スバルと一緒ならあと一回強力な攻撃を撃てると思うの。 それと、まだこんな情けない見た目で来たけれど身体の怪我はもう大丈夫。 たぶんアルティナちゃんからもう聞いているとは思うけれど、イノケントにやられた負傷はアルティナちゃんの空飛ぶ黒いカカシ──「なのはさん、《クラウ=ソラス》です」──あっ、ゴメンねアルティナちゃん。 クラウ=ソラス君がマシに動ける程度にまで回復してくれたからね。 直接戦闘じゃない遠距離狙撃砲なら十分イケるよ!」
リィンとツナは経った先程にティアナからなのはとスバルは体力的に戦線復帰は厳しい状態であり後方待機していると報告を受けていた為、その二人がこの場に現れた事に驚く。 二人共重い身体を引き摺っていて何故戦場に来たのかと言うツナにスバルがなのはの肩を支えていない方の腕を上げて勇猛不敵に力瘤を作りながら自分達も攻撃に加勢すると申し出る。 しかし、なのはもスバルもさっきイノケントに手も足も出せずにこっ酷く叩きのめされて二人共これ以上の戦闘続行は到底不可能な程に手酷い重傷を負っていた事はその時その場で二人を助けに割って入ったリィンとツナは自分の目で実際に確認していた為、非常に彼女達の身体の具合を心配してしまってどうしたものかと訝しい目をする。 だが断りそうな空気を作りはじめたリィン達に対し、なのはが安心させるような微笑みを見せて自分達の魔力と負傷は遠くから攻撃を放つぐらいなら可能な程度に回復している事を説明して心配無用だからやらせてくれと訴え掛ける。
確かになのはとスバルが負わされていた重傷はアルティナと《クラウ=ソラス》の
「だだっ、駄目だよなのは! 君の身体にこれ以上の負担は──」
『グォオオォォオオオオンッ!!』
なのは達の前に立ち塞がるように腕を大に広げて、これ以上危険な身で無茶をするのは止めてくれと語気を強くして十年に渡りずっと隣で付き添ってきた大切な親友へ厳しく警告するフェイトだが、悠長に話し合っている時間など無かった。 終末の世界全体を位相次元ごと激震させ煉獄の大空いっぱいに無数の罅が刻み込まれる
三つの世界でそれぞれ幾多の試練や死線を潜り抜けてきた若き英雄達がこれまでに培ってきた強固な精神力をもって極寒の宇宙すらも丸ごと沸騰させそうな霊的熱エネルギーを孕む衝撃に耐えきり身体から剥がされそうになった魂を肉体に押し留めて、絶叫を放った竜王の化身へと戦々恐々の視線を集める。 そして、彼等全員の瞳に今宵最大の絶望が映し出された。
「な……ななななあっ、何しようとしているんだ!!? あのデッカイドラゴン炎を大量に吸い込み過ぎて、まるで破裂しそうな風船みたいに身体を膨らませてるーーーーーっ!!!」
「あれは……まさか自爆するつもりか!!」
「うう、嘘でしょう!? 追い詰められて自爆するって、ド○ゴンボールのセ○じゃあるまいし!!」
「ドラゴ○ボールとか○ルとか、フェイトさんが言っている異世界用語は分からないけれど。 アレが自爆なんてしたら、もしかして超ヤバイんじゃないのミュゼ!?」
「ええ、もしかしなくても超超超ヤバイですよユウナさん。 あの魔導像が内包している一兆度などという桁外れの導力エネルギー量はゼムリア大陸全土に眠る
ゴクリ! ミュゼが口にした竜王魔導巨像の自爆による被害規模予想を耳に入れ、皆が息を呑んでそのまま喉が張り裂けてしまいそうなレベルの緊張を表した。 《バハムートフレアボマー》を
「どうやら迷っている場合じゃなくなったようだね……こうなったら出し惜しみ無しの全力全開でやるよ、スバル!」
「了解です、なのはさん!」
もう後に退く事はできない。 なのはは気を引き締めて、機動六課スターズ分隊長として自分の肩を支えてくれている
「「ハアアアアアアアアッ!!」」
なのはとスバルは互いに寄り添って身体を支え合い、二人一緒に
彼女らが最後の攻撃に望み託したこの魔法は先刻撃退した
「く……う″ぅっ──ッ!!」
当然、強力な戦技の対価に術者達の身体に掛かる負荷と疲労は相当なものであった。 《Wディバインバスター》が形成され始めた直後になのはが身体に抱える大きな負担が急激に増して非常に苦しそうな呻き声を漏らし出した。
「なのはさん、大丈夫ですか!!?」
「平……気……だよ! わたしの大切な人達とそのみんなが暮らす平和な世界を守る為にも……この程度の苦しみなんかで、わたしが引き下がる訳には……いかない……の……!!」
必死に魔力を練り上げながらレイジングハートを握り締める手に大汗を滴らせて凄く辛そうに顔を歪めているなのはを気遣うスバル。 優しい教え子を持って自分は果報者だと思うなのはだが、彼女は次元の海の守護者として甘える訳にはいかないと使命感に駆られ、もはや限界間近に迫っていた自分の身体に更なる鞭を入れて奮起する。
高町なのはは若干9歳の頃に魔法の力を手にしてから、数々の世界の理不尽やどうしようもない運命によって傷付き苦しんでいる人をより多く救う為、不幸や寂しい思いに泣いている子達の涙を止める為、やむを得ない事情や立場の違いで分かり合えない連中とぶつかって分かり合おうとする為、今日まで十年間管理局の魔導師として日夜年月魔法の戦技を磨き続け、次元世界の数多くの事件や戦いに身を投じてきた。 しかし、未熟な幼少から十年という長き歳月の中で負担が大きい高威力の砲撃魔法を酷使し続けた彼女の胸の内に秘めるリンカーコアには徐々に見えない傷が増えていき、それが原因で八年前に起きたとある雪の世界での戦いで不覚を取り撃墜された不幸な出来事を得て彼女のリンカーコアに目に見える大きな傷が刻みつけられてからは身体の内側に大きな爆弾を抱えるようになってしまった。
それから撃墜で受けた重傷を治して魔導師業に復帰してから彼女は魔法の出力を制御し持続性を重視した《アグレッサーモード》を標準使用して魔法戦闘の負担を軽減する事により長い間どうにかやれてこれたのだったが、先日のJS事件解決における“ゆりかご決戦”の際に事件の黒幕であったスカリエッティと
「くっ! ……わたしは絶対に……負けない。 わたしが……みんなを……守らないと……」
身体の負担過剰により魔導師生命を狩る死神が大鎌を携えながらじりじりと背中へ迫って来ている中、失敗すれば
「うあっ、ああああああっ!!?」
そう究極の焦燥に駆られた想いは破滅の糸となってエースの手元を狂わせる。 重ね合わせた二人の
──魔導像が自爆するまでもう時間が無いのに、ここで《Wディバインバスター》が不発になったら、みんな仲良く一兆度の爆炎で蒸発して御陀仏になっちゃう! 今直ぐに魔法結合を修正して早く固定化しないと。 お願い、上手くいって──!!
ここまで繋いできた仲間達の奮闘を自分の失敗の所為で水の泡にする訳にはいかない。 なのはは上から更に背中へ圧し掛かってきた重大なる責任感に神経を磨り潰されて極限の焦燥に苛まれながら、即行で制御を取り戻してどうにか魔力大砲丸を形成し直そうと躍起になった。
集中、集中、集中、集中、集中、集中……。 常人の精神ならば即発狂を起こすレベルの
──あともう少し……もうちょっとだけ……っ!!
そうして遂になのはは超絶の負荷に耐えきり、魔力大砲丸の修正を完了させた。 そして時は動き出す──
「──スバル、今だよッ!!」
「はいっ!!」
「「Wディバイィィィン──バスタアアアアアアアアアアァァァァーーッッ!!!」」
世界に色が戻った瞬間、完成した薄紫色の魔力大砲丸が二人の
砲撃手二人分の全体より約三倍以上もの質量を持つ大きな光の砲弾が
「「いっけえええええええええええええええええっっ!!!!」」
煌星の魔砲弾は超速回転数で撃ち出された
『グギャアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』
天を蔽い尽くす程に膨張化された体面積とその内部一杯に溜められた太陽を遥かに超える熱量に達した火の導力エネルギーの中を突破するのは難かと思われたが、超速回転により竜巻のドリルを装着する事で熱を撥ね退けて究極の爆炎をアッと言う間に掘り進み、煌星の魔砲弾は無事に竜王の化身の背中を突き破る事に成功したのであった。
『ガ……グ……オォォーーーーン……──』
竜王魔導巨像を撃ち抜いた《Wディバインバスター》が煉獄の彼方へと消えて行き、体内に
魔導巨像が消え去った直後、終末の世界の天上の中心で展開されていた究極上位導力魔法の巨大駆動術式方陣が罅割れだし、
「や……やったああああっ!!」
「「「「「「「おおおおおおおおおっ!!」」」」」」」
《バハムートフレアボマー》の竜王魔導巨像と巨大駆動術式方陣の消滅を見てようやっとのように我慢して溜めていた苦しい息を吐き捨てて歓喜の声を張り上げたツナの後に続き、英雄達の大歓声が終末の世界に響き渡った。 もし魔導巨像に攻撃を放たせていたら恐らくは抵抗も許されずに全滅していたであろう究極の攻撃導力魔法を何度も危うく詰みそうになりながらも諦めずに全員一丸となって死力を出し尽くして立ち向かった末に、やっとの思いでようやく阻止する事が出来た。 その喜びは、まだ戦いに勝利できた訳ではないにも拘らず皆が諸手を上げてしまうのも仕方がない程に大きなものであった。
「やった……なのはさん、やりましたよ! あのイノケントとかいうトンデモないオジサンのトンデモないドラゴンの魔法を、
「は……はは。 うん、やったねスバル。 でも流石にわたしは、もうダメかな……」
「え? ……ななっ、なのはさん!?」
「なのはっ! 大丈夫? 君はまたこんな酷い無茶をして……!」
「にゃはは……いつも凄い心配させちゃってゴメンね、フェイトちゃん……でも、わたしは本当に大丈夫だよ。 ちょっと……いや、正直凄く疲れちゃったけどね。 身体の方は問題無いよ」
「嘘だね。 君の身体の負担はもう
「う″っ……ごめんなさい」
「まったくもう……。 じゃあ君は今日はもうこれ以上絶対に戦わないで。 帰ったら大人しく
「はい……」
「……」
無茶を重ね続けて体力の限界に至った身体に意識を朦朧としているなのはが、オロオロしているスバルの腕に抱かれたまま、腰を低くしてガミガミ説教をたれるフェイトに全く反論ができず面目無しに萎縮させた声で弱々と返事をしている。 しかし、一見微笑ましく思えるその様子を彼女達の後方から眺めるリィンが両腕を組みつつ口元をへの字に紡ぎ、やや訝しそうな表情を作っている。
──なのは……もしかして君は──
「──ククク、実に見事であった。 さすがは我が敬信する三つの英雄伝説の
「「「「「「「──ッッ!!!」」」」」」」
どうあれ、埒外級の
「イノケント……!」
「ふはははは! しかし、星の数程の強敵を打ち破ってきたお前たちの絆の力を信じてはいたが、まさか俺が発動した
「今更になってトンデモない捕捉説明してるんですけど、この人ーーーーっ!!?」
足下の浮遊鉄骨を念力操作して、全員一ヶ所に集合したリィン達と同じ高さまで降りてきたイノケントはちょっとしたお茶目をしちゃったと言うかのように軽快な笑いをしながら、今さっきリィン達が全員総力をあげてようやっと
「
「ええ。 数字的に視て通常の威力でも十分全滅必至の火力になるでしょうけれど。 さすがは
「ていうか、もしあたし達が
「マジかよ……さすがに今回のは
「正しく【
導力技術の出所であるゼムリア大陸において現在時点最新世代型の戦術オーブメントである《
「ククク。 そんなに瞠目する程のものではないだろうよ。 寧ろ
「テ……テメェ、いい加減にふざけた事言ってんじゃねぇっ!」
「かはっ! いいや、俺は一言たりとも戯言なぞ言っておらんぞ、《鉄槌の騎士》ヴィータよ。 現に、経った今、位相の壁をも破壊して
「──っ!!」
「フハ、フハハハハハー! これだ、俺が求める尊き英雄の
それはまるで己が最推すアイドルを称えるかのように諸手を上げて英雄達をこれでもかとまで褒めちぎり、位相を越えて現実の宇宙遥か彼方にまで届けと叫ばんばかりの哄笑を轟かす光の魔王。 上下に引き千切れそうな程に大きく見開いた双眸を血走らせながら恍惚と陶酔しきった面を上げて三日月状に両端を吊り上げた大口でひたすら狂うように嗤い続ける眼前の宿敵に、リィン達は途轍もない寒恐ろしさを覚えて全身に鳥肌を立たせる。 いったい何なんだ、この男は? 百戦錬磨の戦士とて得体の知れない挙動を行う不気味な者を目の当たりにすれば顔面を引き攣らせて身を硬直させる。 加えてその者の全身から煉獄の大空に無数の罅が入る程に極大の霊圧
「切り札を破られて、まだ戦闘を続けるつもりなの!?」
「はははは!
「な────ッ!!?」
惑星系列を焼き滅ぼしてしまえる究極の導力魔法が切り札ではない? 空を持ち上げるように両腕を大きく広げてこちらに惚けたのかと言うように少々嘲笑いを浮かべつつ悪夢すら優しく感じるような衝撃的告白を何て事の無いようにブチ撒けてきたイノケントに対し、彼に問いかけたなのはは言葉を失った。 まさか、
「ククク。 究極上位導力魔法を打ち破ってみせた、真の英雄であるお前達にならば、いいだろう……」
まだまだ御楽しみはこれからだ。 イノケントがそう含み笑いを浮かべながら左手に着けていた群青色の手袋をリィン達によく見えるように前に掲げてゆっくりと外した。 露わにされた彼の左素手は実に男らしい岩のように大きくて硬質な太骨の甲であったが、反してその肌はうら若い子女すらも羨む程に真白く艶潤っていて、その
「な……何だ、あの凄い妙な装飾の“リング”は──!!?」
ツナは此処に来て
「さあ見せてやろう。 “黄昏の七属性”を統合せし、究極の
…………
「「「「「「「────ッッッ!!!!?」」」」」」」
その炎はほぼ無音と言ってもいいぐらいに小さな点火音を響かせ、圧倒的な虚無感を覚える程の静寂と共に発芽された。 イノケントの左手中指に嵌められた荘厳な門の装飾の指輪の中心に神々しく光る宝石と同じ色──“白亜色の炎”が其処に着火され、燦爛と美しい輝きを放ちながら荘厳と静寂を混ぜ合わせたような
「が──は────ごほっ! はぁ……はぁ……いっ、今のは?」
「大丈夫ですか十代目!? どうやらあの三つ編み野郎が中指の趣味悪ぃ変テコなリングに灯しやがった謎の炎の所為のようですね。 畜生、いったい何なんだ、あのイタリアの実家に居た頃によく見た大理石のようにスゲェ気に入らねぇ小奇麗な色をした炎はよ!!」
「白亜色に
彼はこれから先に何があろうと絶対に忘れる訳がない、今から約三ヵ月前にあの西ゼムリア大陸の英雄達が集結し皆の総力をあげて挑んだ《クロスベル再占領事件》の決戦の時、敵の決戦兵器であった《逆しまのバベル》の中枢にて対決した事件の真の黒幕が駆り出してきた【黄昏】の最終到達点──“
『降臨せよ──原初にして究極の存在』
『《
──まさか、
「くは、ふはははははー! さあ、我が宿敵たる光の英雄らよ。 その勇気を示す覚悟はいいか?」
「だめだ! みんな、奴にその炎の力を使わせるな──ッッ!!!」
「リィン君!?」
「もう遅い! 星の外側より落ちよ、神の杖──ロッズ・フロム・ゴッ──」
「
「──dうぬ?」
「なに──ッ!?」
英雄達の覚悟の炎と勇気の
突然この場に出現し、三つの世界の
衝撃の今作オリジナル新属性の炎+強者の予感を漂わせる新キャラクター登場!
リボーン「白亜色の宝石が嵌められた謎のリングに《
アリサちゃん(真面目な顔)「それに魔王が口にしていた“黄昏の七属性”……その名前は何かと凄く
グナちゃん「アリサガシンケンニカンガエルナンテ、ソウトウナコトノヨウダナ。 コレハジカイノテンカイニヨウチュウモクダ」
さ~て、プロローグ編のクライマックスとなるだろう次回、第二十話。 今作の物語の鍵を握る重要な内容が明かされる? そして三世界の英雄達が相対する《次元魔王》イノケントが率いる【次元魔王軍】も登場! 乞うご期待下さい!
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次元魔王軍
本当はこの第20話で章の終わりまで書き切りたかったのですが、また文字数が長くなってしまいまして、申し訳ございませんが少し区切らせていただきました。 次回が今章のラストとなります。
リィンは己が最速の縮地と最高の鋭さで振るい放った会心の一刀をその片腕に携えた“黄金の剣”で軽々と受け止めた謎の青年の顔を極寒の氷中に閉ざされたかのような戦慄に震えさせた瞳で見上げる。
その青年はまるで森の草木を根こそぎ燃やし尽くした跡のような
「お前は……ぐっ!?」
鍔競り合った謎の青年の素顔を見上げた瞳に映したリィンは何故だかその貌に見覚えがある含みの驚愕を漏らし、その直後に相手の剣に払われて仲間達の許へと打ち返される。 その剣圧は刃同士を重ね合わせて
「リィン!?」
「大丈夫ですか、リィン教官!?」
「どうにか……な。 ……だが、あの男は確実に俺達を助けてくれたわけじゃない。 何故なら、
「ぇ……っ!!?」
動けない程に大きなダメージを受けた自分を心配して周りに駆け寄ってきた仲間達にリィンは痙攣する腕を庇いつつ、イノケントの腕を掴み抑えた謎の青年を厳しい視線で差して彼の事を
「あっ、ああーっ!! あの変な半面
「なにィ? あの男を知ってやがんのか、エマ達!」
「うん……たぶんあの凄絶な修羅のような鬼気と氷の獅子の如き玲猛な雰囲気、そして彼がその手に持っている“黄金の剣”から視て、恐らく人違いなどではないかと思います。 あの人は──」
「──あの灰青毛のスカシヤローは
イノケントの腕をまだ掴んだまま無言の圧を放っている謎の青年を指差して最近とても嫌な目に遭わされて根に持っていた顔見知りを見つけたように大声を張り上げたユウナに続き他のトールズⅦ組のメンツも次々と謎の青年に視線を向けて剣呑な表情へと変えていく。 事情を全く知らない機動六課組を代表してヴィータがあの謎の青年と知り合いなのかとその相手へ大きな警戒を表わしはじめたトールズⅦ組全員に訊ねると、彼女に名前をあげられたエマが鋭い視線を謎の青年の方へと縫い留めながら答えようとする。 だがその前に、機動六課組と同じくトールズⅦ組の事情とは出身世界が異なっているが故に全く無関係の筈であるボンゴレ組の獄寺が何故だか彼女達と同じように謎の青年を見て顔見知りの敵手を発見したかのような怒声を発してアイツが自分ら三人を元の世界から次元世界に強制転位させたのだと張り上げだした為、彼の側でその憤慨の内容をハッキリと聴いたアッシュが信じられないと言わんばかりに驚愕を露わにした。
「なん……だと? おいゴクデラ、まさかテメェらもあの粋好かねぇ顔した氷野郎に
「その口ぶりからすると、
「ああ。 どうやら
「偶然……ではないでしょうね。
矢継ぎ早にトールズⅦ組とボンゴレ組の間で御互いのグループと謎の青年との接点と次元世界に次元間転位されてきた経緯が交換された。 それにより双方のグループが同時刻に元の世界であの謎の青年剣士と戦って敗北し、彼の手によって次元世界へ次元間転位させられたのだという驚愕の事実が判明する。 ミュゼが口にした不可解な矛盾点や、過去に渡り世界を滅ぼせるレベルの強敵達と幾多と死闘を繰り広げて勝利を掴んできた歴戦の英雄たるリィン達トールズⅦ組とツナ達十代目ボンゴレファミリーがたった一人の剣士によって敗戦を喫した等、とても信じ難い話ではある。 しかし確かなのは、あの“黄金の剣”を振るう謎の青年はリィン達の味方などでは決してないという事であった。
全員が情報を共有し“黄金の剣”を携える謎の青年剣士を新たな敵存在と認めて三世界の英雄達が針のような視線を向けた先では、彼等の今宵の宿敵《次元魔王》イノケントが“
「おやおや。 クハハ、誰かと思えば我が【次元魔王軍】が誇る七名の最高幹部《
「悪い癖はその辺にしておけ。
次元魔王軍最高幹部《
「大体、お前は今何を
「ハハッ、何を言うか。 人の身では絶対不可とされていた武道の“
「確かに
「100億%無理であろうなぁ。 だがしかし、俺が憧れを抱く伝説の英雄達ならば、その勇気と絆の力で当たり前のように奇跡を起こしてくれる事だろう。
「……フッ」
駄目だコイツ、もう英雄達へ対する狂信の度が過ぎて自分の中の量りとブレーキを粉々に破壊してやがる……“黄金の剣”を振るう謎の青年剣士改め、《灰氷の剣帝》ジークレオン(以後“ジーク”と呼称する)は自軍の総大将である
「だが、さすがに今回はもう十分だろう、魔王様よ? 《TTO》の発令から展開される高位相次元空間
「ハハハハ! 言われてみれば確かに。 実際に生で間近に見る伝説の英雄達の
やれやれと澄ました顔になって腕を組んだジークに初戦で手札を出し過ぎだと
「『
『“Disaster Ragnarok” Close Add Territory』と《PARAISO》の表面
「なっ……いきなり空の色が変わった……!?」
「空の色だけじゃない。
「っ!? みんな足下を見てくれ」
リィン達は大空の色が藍色に移り変わり、その天蓋に姿を現した闇に輝く星々と朧気な白の光を纏った二つの月を見上げて目を大きく見開く。 この
「嘘……この場所って、まさか“地上本部の屋上ヘリポート”じゃないの……!?」
大きな瞳に自分の見知った景色を映したスバルが動揺を表した。 ミッドチルダへ空襲した反管理局軍ミッドナイトを撃退する電撃作戦の為に夕刻時に雲の上まで伸びる超高層ビルの一階から百階を越える階段を駆け登って来た機動六課最前線攻略部隊が階段出入口の扉を開いた際に待ち受けていた敵軍の
「間違いない……俺達はあの『
「その通りだ、リィン・シュバルツァー」
まるであの終末の世界など最初から存在しなかったかのようなミッドナイト軍撃退直後の第一管理世界ミッドチルダ首都クラナガンの惨状をそのままにした夜景が突然終末の世界を塗り替えるようにしてガラリと一変させ顕れたのを目の当たりにし、言葉を失って当惑に暮れる仲間達の中心でリィンがこの状況を頭で整理して得た確信についてを口にする。 そしてその直後、お前の言った事は当たっていると、終末の世界を消去した魔王の隣に立つ“黄金の剣”を携えた灰青毛の青年剣士ジークが三世界の英雄達の前へと一歩あゆみ出て答えてきた。
「我が《次元魔王軍》の“
「お前は……やっぱり今朝
「“可能世界”の英雄《灰色の騎士》リィン・シュバルツァーとトールズ士官学院第Ⅱ分校Ⅶ組特務科、“七輪世界”の英雄《ボンゴレ
はぐらかしは一切許さないという凄みを込めた剣呑の双眸で睨みつけるリィンからの詰問に対しジークはほんの僅かすら動じずに自分とこの場に居る三世界の英雄達全員との関連を一つも偽る口調もなく受け答える。 彼が淡々と口にした内容と英雄達三組それぞれが記憶している過去遡る数時間前の相手との面識・出来事の概要が全て一致し、英雄達はこの灰青髪の青年剣士に対する認識を完全に敵と定めた。 再び得物を構えて新たに現れた敵のジークレオンへ警戒の視線を集めるリィン達……
「たった今
左手の“黄金の剣”を全員によく見えるよう腰の前に下げて少し気取らせた
「【次元魔王軍】……やっぱり貴方、
「《灰氷の剣帝》……“剣帝”だと?」
「なるほど……【
「……些か不本意だが組織内でそう呼ぶ者は多いな。 まあ、お前達の好きに呼ぶがいい」
ジークが
「
「それと、とっととその剣返しやがれ、この墓荒らし野郎! それはレーヴェ兄ちゃn──……ハーメル村の剣士レオンハルトの墓標に祀ってあった、大切なものなんだからよ!!」
「オレらを誘い出す為に
ツナに便乗してアッシュと山本が何やら盗った物を返せとジークに強く要求している。 どうやらトールズⅦ組とボンゴレ組は両者共に先刻元の世界で何か彼らにとって非常に大切だった物品をジークの手に奪い取られていたようだ。 性格上による温度差はあるものの二人が張り上げた声には共に灼熱と煮え滾った溶岩の如き憤りが込められていて、両組にとってその物品がそれ程までに大切なんだという事がよく伝わってくるが、ジークは微塵も悪びれようとする口も無く「フッ……」という嘲笑を一つ吐いてから何も握っていない右手を身に纏う
「──っ!! やっぱ見間違いなんかじゃなかったぜ……テメェ、よくもレーヴェ兄ちゃんの墓を荒らしやがったばかりか、アイツの遺品の《魔剣ケルンバイター》を盗み取って、まるで自分の物みてぇに振り回しやがって……!!!」
「予想的中だったな。 アイツ、オレらを負かして
「リィン君、ツナ君。 《魔剣ケルンバイター》とか《夜炎加速式7³半永久機関》とか言ってるけれど、いったいアレは何なの?」
「西ゼムリア大陸の武芸者が志す“武の
「あのジークという男が右手に掲げている大きな硝子ランプみたいな物が《夜炎加速式7³半永久機関》──“ペルマネンテ・トゥリニセッテ・ディ・アチェレラツィオーネ・フィアンマノッテ”っていう、かなり長ったらしくて覚え難い読み方をするから、みんな【
奪われた物品の返却を要求した二人が口端を切る程に強く歯を噛み締めながらジークの両手に掲げられた異様な存在感を放つ二つの代物──《魔剣ケルンバイター》と《夜炎加速式7³半永久機関(以後【7³半永久機関】と呼称する)》を怒りを孕む視線で睨みつけ、他のトールズⅦ組勢とボンゴレ勢も皆同様の怒りをジークへと向ける。 その両物に全く縁が無かった機動六課勢はジークが二つの代物を掲げてみせた途端に二つの異世界から来た頼もしい助っ人達が全員尋常ではない怒気を放ちだした事に一瞬驚き、困惑する六課前線部隊員達を代表してなのはが異世界転位陣のリーダー二人にジークが手に掲げた物は何なのかと訊ねてみる。 リィンとツナがジークへ嚇怒の炎を纏う刀剣の如き視線を伸ばすままに要点を絞って簡潔に事情を説明すると、敵の手にある二物が異世界から来た新しい仲間達にとってどれだけ大切な物なのかを理解したなのは達機動六課勢もまたジークへ対する敵意の目を厳しく強めた。
「フッ……皆、誰一人例外無く煉獄の炎よりも熱く重厚な怒気を放ってくるときたか……成程、流石は歴戦の英雄達と言いたいところだが──
「「「「「「「な────ッッ!!!?」」」」」」」
カッ! と双眸を大きく見開いたジークの全身から猛烈な威力を伴う“圧”が放出され、一瞬にしてリィン達全員の怒気を押し返した。 獅子の咆哮の如く大気を震わせる荒々とした威力を持ちながら、絶氷の吹雪にも見紛わせる何処までも冷徹な空気の圧が
「「「「「「「ぐああああああっ!!! / きゃあああああっ!!!」」」」」」」
空気圧の
「ハァッ、ハァッ! ゼェッ、ゼェッ! チ……チキショウ!!」
「な……なんという……“剣氣”なん……だ……」
「と、とんでも……ねぇ……。 アタシ達全員の“威圧”が……たった一人の威圧で……ゲホォッ!」
歴戦の英雄達の誰しもが敵の前に屈し、乱れた呼吸で胸を大きく上下させながら今にも失神してしまいかねない程に枯れそうな喉で途方もない屈辱や戦慄に侵された声で呻いている。 《灰氷の剣帝》の二つ名に違わずジークの放った“威圧”は百戦錬磨の猛者の大勢を無力化する程にとんでもなかった。
「こんなものか……悪いが、この程度の気当たりで屈するような実力では、まだコレらを返してやる気はさらさら無いな……」
「クッ……!」
「そ、そんなぁ……」
無様に跪かされて惨めな醜態を曝す三世界の英雄達にゼムリア大陸の《剣帝》の墓標から奪い取ったという《魔剣ケルンバイター》の牙のような形状の切っ先で差しながら睥睨した新たなる剣帝が期待外れだと言って切り捨て、奪い盗った物品の返却を断った。
ケルンバイターはトールズⅦ組……特にアッシュにとっては生まれ故郷の村の亡き隣人の忘れ形見である為どうしても取り戻したかっただろうし、7³半永久機関に至ってはツナの話が事実ならば硝子ランプの中に灯されている虹色の炎が消されたりしたらツナ達の故郷の世界が滅亡してしまうなどという非常に重大な物であるので絶対に奪還しなければならないものだ。 どちらも取り返すのを早々と諦める訳にはいかないだろう。 床に膝を着かされ、圧倒的な力の差を見せつけられても尚食って掛かろうとする目で見上げてくる
「フッ……そんなに返して欲しければ、精々この場に巡り合った別世界の力と技術を取り込み合いながら互いに鍛え上げ、より一層強くなって奪い返しに来い──
──“黄昏の七属性”とその炎を灯せし【ラダマンテュスリング】を持つ、俺達《
リィン達へ向けていたケルンバイターの切っ先を下ろし、声に大きな期待の圧を込めて出来るものならやってみせろと彼らを焚付ける《灰氷の剣帝》ジークレオン。 ミッドチルダの夜風に乗って次元世界の果てまで響いていきそうな烈然とした気迫がこれまでに三つの世界で幾度となく起こされてきた異変や危機に立ち向かい解決してきた歴戦の英雄達の精神へと直接叩き付けられ、全員の魂が
「クッ……!!!?」
それでもリィン達は此処で負ける訳にはいかないと気をしっかり持って途切れかけていた意識を現世に繋ぎ留め、眩みそうになった視界をどうにか取り戻した……その時、彼らは目の前に映った連中を見て目を疑った。 森羅万物を断ち斬る黄金の剣を携えて泰然と立ちながら冷然として余裕と澄ました微笑をリィン達へと向けている剣帝ジークとその右斜め後ろに少し下がった位置から相変わらず素敵な笑顔で絶対不利となったこの状況下で必ず逆転できると信じて不屈と諦めず足掻こうとする英雄達の様子を実に尊く想っているような熱を込めた目で見つめてきている魔王イノケント──彼ら二人の背後に何時の間にか
「なっ! あの六人、いったい何処から現れたんだ……!?」
やってくる気配も無く唐突として其処に出現していた異様な雰囲気を纏う六人にリィンと仲間達は瞳孔を開いて大きな戸惑いを露呈する。 現れた立ち位置や目の前の二人の背中に襲い掛からず付き従うように立っているという状況から
「──十代目! あの変な黒マント共の手の指に嵌めている
「それと、アイツらのリングにそれぞれに灯されてる“六色の炎”、どれも全部
黒マントの六人が唯一肌を曝している手の薬指にそれぞれ嵌められている“荘厳な二枚開きの門”の模りの金縁の装飾が施された
“深淵”の底に妖しく揺蕩う湖水を連想させる【蒼色】の炎。
“煉獄”に燃え盛り永遠と罪人を焼き苦しめ続ける灼熱地獄を連想させる【緋色】の炎。
“闘争”の戦場に漂う無念と死の怨嗟を身に浴びながら殺戮に狂い敵兵を狩り続ける死神兵士を連想させる【紫紺色】の炎。
“鋼鉄”の鎧兜で全身を包み込みながら幾多の戦場を駆け抜けて剣傷の一筋も作らず返り血の一滴をも浴びずに無傷の完全勝利を持ち帰る至高にして無敵の英雄騎士を連想させる【白銀色】の炎。
“不滅”にして永久に消える事の無い理想郷の輝きを連想させる【黄金色】の炎。
“呪怨”と人の業に塗れた悪意を以て全ての世界を絶望に染め上げる無限の暗闇を連想させる【暗黒色】の炎。
そのどれもこれもツナ達の世界では未だ存在を確認できていない未知の属性であり、山本ら感の鋭い武芸者にはそれ等の炎にそれぞれとても計り知れない未知数の力が秘められている事が感じ取れた。 無論ツナの“超直感”にも。
──ヤバイヤバイヤバイ! あの人達がしている
「もうダメだリィン……に……逃げなきゃ……! どうにかして隙を作って、みんな一緒に──」
「【
「──回れ右して退却しよう……へっ?」
また新たにやって来た敵が出してきた未知の六色の炎から直感的に
「すると、その“黄昏の七属性”の炎とやら……最後の一つはお前が今朝
リィンは相手に緋色の刃を向け返して強気に問い詰めた。 その直後、彼の推理が正解である事を示すように一瞬口端を吊り上げて「フッ、御明察だ」と一言口にしたジークが右腕に抱えていた7³半永久機関をコートの懐にしまい(サイズ的に衣服のポッケに収納は無理じゃないかとツッコムでしょうが、RPG仕様の四次元アイテム袋補正となっておりますので、あしからず)、空いた右手の甲を顔の前に翳して、その中指に嵌めている“灰色をした門の装飾の
…………
そしてそのリングに灯されたのは彼の背後に控える黒マント達の門のリングが灯している炎の六色に加える“七色目の炎”だった。
聖善なる光の世界と暗陰なる闇の狭間の“境界”の景色を連想させる【灰色】の炎が、《灰氷の剣帝》が掲げた指に儚く小さく、しかし煌く鋼の刀剣の煌きの如く燦然と燃えている。 リィンはその炎の聖にも闇にも染まらぬ色とそれに宿る
「やっぱりそうか……“黄昏の七属性”の名は、
「「「な──っ!!?」」」
「い……言われてみると、確かにリィン教官の言う通りだわ!」
「あの《相克》を競い合い、“黒”の討滅と共に消えていった騎神の七体それぞれの装甲の
「ええ、間違いなくあの騎神達と何か関連があると視ていいでしょう。 ジークさんと後ろの六人が指のリングに灯している七色の炎や先程イノケントさんが同じ装飾のリングに灯していた《零の炎》からは、それぞれと同じ色の騎神が放っていた
「それ等の炎を灯している門の彫刻が施されたリングもヴァリマール達に繋がる
敵が灯した“黄昏の七属性”の炎の所縁に当たり目をつける憶測を述べたリィンに、彼以外のトールズⅦ組の面々がまさかと驚愕を露わにした。 リィンのクラス生徒の中で最も聡明な頭脳を持つミュゼは教官の憶測を簡潔に纏めてみて彼の考察は凡そ正解だろうとし、話にあった《七騎神》にとても深い関わりを持っていた《
「まあ、俺個人としてはこの場で全て暴露してやっても構わないと思うのだが、“英雄の物語には謎と試練を与えよ”というのが我らが魔王大将の方針なんだ、悪いな。 王道漫画の主人公とその愉快な御仲間らしく、自分達で真実を探し当てるがいいさ。
「またしてもアタシ達が過去に経験してきた出来事の詳細を知っているような口ぶりを……ダァアアアアーッ!! いい加減にしやがれ!【次元魔王軍】だかフ○ーザ軍だか知らねーけど。 マジでいったい、テメェらは何者なんだよッ!!?」
ジークが灰色の炎──《灰の炎》を灯した右手の掌を肩の上にヒラヒラとやりながら、仕方がないだろうというスカシ笑いを浮かべて、ガイウスから投げられた要求を断る。 その際に、今宵の戦いの中で何度も何度も対峙した敵達が
「フハハハハハー! よくぞ聞いてくれたな。 ならば答えてやるのが世の情けだろうが、今はまだ全てを明かす時ではないのだ。 故に今はこう名乗らせてもらうとしよう──」
今はまだ物語のプロローグ、主人公達が対峙する宿敵の掘り下げをするにはまだ早い段階だろう。 イノケントは両手両足を大に広げて肩に羽織った憲兵衣装の外套を盛大にはためかせ、三世界の若き英雄達に向けて大声を張り上げた。
「我らは【次元魔王軍】! “空の女神の加護”を受けしゼムリア大陸の若き英雄達による絆の軌跡が伝説となり受け継がれてゆく《可能世界》。 “7³”という21個の至宝に灯る覚悟の炎が大空を照らす《七輪世界》。 “次元を隔てる海”を越えて無数に在る世界に科学と魔法が織り成す《次元世界》。 三つの世界に語り継がれる英雄伝説の
「そして《
「三つの世界に“勇気とキズナの光の伝説”を語り継ぐ若き英雄達の最強の敵として、我々【次元魔王軍】は立ち塞がろうッッ!!!」
今更ですが、『英雄伝説 閃の軌跡』発売十周年おめでとうございます!
あのリィンとトールズⅦ組の青春と感動の物語が始まってから、もう十年の月日が経ってしまったのかと、私《蒼空の魔導書》は大変感慨深く──
グナちゃん「──ッテ、コラァ! アトガキノハジメカラゲンサクゲームノワダイヲムリヤリブッコンデ、メチャクチャヤリヤガッタホンペンカラハナシヲソラソウトスルナ!!」
アリサちゃん「アンタこれ、どういう事なのよ!? 新登場のオリキャラが魔王軍幹部筆頭で《灰氷の剣帝》で? コイツがハーメル廃村の《剣帝》の墓を荒らして《魔剣ケルンバイター》を盗み出して? んで、リィン達がコイツに負けて次元世界に強制次元間転位されて来て……んァァアアアアッ!! もうッ、情報量多過ぎ! 頭パンクするわっ!!」
リボーン「てか、オレらの世界から盗みやがったブツなんか超ヤベーモン過ぎて、アリサの世界の方と比べて被害のデカさが割りに合ってねぇんだよ。 つーかあのダメツナめ、オレが留守にしている時に何とんでもねーヘマやらかしてやがる(怒)」
因みに新オリキャラの“ジークレオン”は自分が応援しているとあるユーザー様の活動報告でオリキャラ募集していたところに応募したキャラクターでしたが、彼の設定は今作の方が大きく活かせるかなと思ったので、事前に先方から許可を頂いて、設定を見直して今作のライバルキャラクターに登用させていただきました。 ラスボスのイノケントに次ぐ強敵ですね。
今回、このジークとの戦いにリィン達とツナ達が敗れて次元世界に飛ばされて来たという経緯がザックリと話されましたが、プロローグ編完結後の序章ではリィン達とツナ達に過去語りさせて、その時の背景を書いていく予定です。
次回こそプロローグ編を完結させます! 11月の頭あたりに上げるつもりでいるので、楽しみにしていてください。
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新たなる英雄伝説の始まり
「楽炎……計画?」
「トワイライト……トゥリニセッテだってぇ!?」
「多元並行宇宙中より集められた“勇士の軍団”ンン──ッ!!?」
一時訳が分からなく混乱し身を硬直させていた間に
敵陣営が最終目標として完遂を目指すと言った企ての名称に、自分達が過去にゼムリア大陸における大きな戦いの中で時に敵対し時に共闘もしてきた“とある秘密結社”が昔から今も段階を分けて推し進めてきている長期の企み事の名称とどうにも類似している気がして、曖昧に両者の関係性を疑うような声を漏らしながら首を傾げるリィン。
《
《
文字通り三者三様の動揺を表した三世界の英雄達が騒然とざわめきたてている。 イノケント達が語った事はどれも荒唐無稽な話にも程がある、
「リィン・シュバルツァー。 言っておくが、我々の《楽炎計画》はかの“蛇”が【可能世界】で推し進める《オルフェウス最終計画》とは全くの別物だ。 ……いや寧ろ、我々の目指す【楽炎】は“蛇”の計画を頓挫させる可能性が高いだろう。 そうなれば“蛇”もいずれ近い内に我々の計画を潰しに、この次元世界へと参入して来る事だろうな……」
「なん……だと? それはどういう……ッッ!!?」
一応念の為にとジークが自分達の計画に件の秘密結社は関与してはいないという捕捉を伝えてきたが、しかしその後に彼は腕を組んで五秒間考える素振りをしてから、自分達の計画を叩き潰す為にかの結社も異世界の壁を越えて今宵の戦いに参戦して来るかもしれないと付け足してきた。 途方も無く頭痛がしてくるような話を連続で耳に聴かされて、一介の武芸者として日頃から精神鍛錬を欠かさずやっていても隠せない程の酷い動揺を表情に浮かべたリィンはジークに詳しい説明を求めようとする。 だがしかし、ジークの方は残念ながらもう時間切れだと言いたい顔をして両肩をやれやれと竦めていた。 何故なら、何時の間にか彼等の大将たる魔王様が右手に
「な……っ!?」
「おいツナ、アレは……」
「まさか……《
経った今イノケントが右手の親指・人差し指・中指で摘み、挿し込み孔の空いた面を上側にしてリィン達全員の目に入るよう前に掲げて見せた謎の正四角形の小物……その正体が何なのか獄寺・山本・ツナのボンゴレ三人組はよく存知ていたが為、三人はそれを目に入れた瞬間に目付きを鋭くして過敏な反応を示した。
ツナは確信を持って口にしたそれの名を《
イノケントが右手に摘まみ上げた“匣”には孔が空いていない五面に、先程まで展開されていた『
「ククク……さあ、我が次元魔王軍の力を刮目して見るがいい──いざ、開匣だッッ!!」
《次元魔王》が早く見せびらかしたくて辛抱堪らんとウキウキさせながら翳した左手の白亜色の“
「「「「「「「な──ッッ!!!?」」」」」」」
「あのような小さな
「しかも、なんてとんでもない
リィン達はイノケントが《零の炎》で開匣させた
まず艦体の
甲板の外装甲はこの戦艦が収納されていた“
次元間相転移式核融合炉搭載超越弩級型──次元間潜航幻想機動要塞母艦《
ミッドチルダの夜空を出現しただけで一瞬の内に席巻した超越弩級の空中要塞戦艦──《甘粕》を見上げて戦慄と畏怖を表す三世界の英雄達……彼らは過去に世界を滅ぼしたり大きな因果を捻じ曲げたりといった規格外規模の難敵と幾度となく対峙してきたが、今度の敵はいったいどれだけ桁外れの力を持っているのかと、皆息を吞んだ。
しかし、彼等が上に釘付けられてる隙にイノケントがまた《
「転位陣!?」
「あの《PARAISO》という戦術オーブメント、“結社”や“黒の工房”のもののような空間転位機能まで備えているのですか!」
転位の術に精通しているエマと過去にそれを機械的な技術に転用させていた暗躍地下組織と深い繋がりがあったアルティナが驚愕の声を発したその直後、夜天の上にデカデカと座した《甘粕》より魔王の奴の馬鹿笑いが響き渡った。
「くは、ふはははははっ! どうだ我が信奉する三世界の英雄諸君、驚いただろう? これが我が【次元魔王軍】の旗艦、その名も《甘粕》だ。 この艦には俺の
「イノケント、自慢がしたいのなら次の機会に取っておけ。 今回はこれまでにして引き揚げるぞ」
リィン達が時空管理局地上部隊本部の真上に浮かぶ《甘粕》を非常に厳しい面持ちで睨み上げると、白翼の牛鬼の艦首像の横合いから
そして高揚の熱を冷ました【次元魔王軍】の大将が凄く名残惜しそうに目を閉じて配下達へ「撤退だ」と指示を出すと、彼等を乗せた《甘粕》の甲板縁から地上の街へと長く降ろされていた大樹のように極太い錨の鎖が引き上げられ、
「もしかしてアイツら、逃げる気!?」
何処をどう見ても【次元魔王軍】が圧倒的に優位に立っていたこの状況で奴等は何故逃げ出す選択をするのかと疑問に思える一方で、イノケントやジークのような超次元
「テメェら、待てや!
「頼む、その7³半永久機関を持って行かないでくれ! その中の炎が消えちゃったら、俺達の世界が崩壊してしまうんだ──!!」
《剣帝》と同じ故郷の村の出身で彼の者と深い縁を持つアッシュは金茶色の短髪を逆立たせて凄まじく憤り、散々大嫌いな戦いを繰り返しやっとの思いで小さな家庭教師達を虹の呪いから解放する事ができたのにその呪いの立替えにした器を持って行かれるなんてとても冗談じゃないと思ったツナは必死の形相で相手へ懇願するように、それぞれの奪った大切な物を今すぐ返せという要求を撤退準備の為に艦内へ引っ込もうと背中を向けたジークへと投げつけた。 それで彼をもう一度こちらに振り向かせる事はできたものの、しかし相手は何処吹く風の様子で取るに足らない連中を見下すような冷徹な視線で英雄達を射抜き、残酷な返答を投げ返してくる。
「先程も言った筈だ、断るとな。 お前達の大事なコレらは俺が預かっておく。 返してもらいたいのなら、次に剣を交える時までに【炎の絆】を結び、精々更なる腕を磨いておけ……特にトールズⅦ組と機動六課の面々は、ボンゴレに習って早いところ【覚悟の炎】を灯す術を身に付ける事だな」
「くっ……!」
「そんな……」
「リィン君達とツナ君達の大切な物を人質にするなんて……許せない!」
「みんなの力を合わせて、絶対にアンタらをブッ倒して捕まえてやる──ッ!!」
「フッ……面白い。 次に会った時は、俺達《七星勇士》が相手だ。 我らが大将たる《次元魔王》イノケント・リヒターオディンの慧眼によって数多の異世界より選出されし七名の【勇士】を相手に、
《魔剣ケルンバイター》と《夜炎加速式7³半永久機関》を人質に取った上に挑発的な忠告を叩き付けてきた次元魔王軍幹部《七星勇士》筆頭のジークレオンに猛烈な怒りを覚えた三つの世界の
そっちがそのつもりなら上等だ、お前達がどれだけ理不尽に強かろうと絶対に負けてなるものか! リィンが、ツナが、なのはが、スバルが、三つの英雄伝説に炎の名を刻みし光の勇者達が天上異次元・多元並行宇宙規模の戦力を有する【次元魔王軍】へ対して臆する事なく一斉に絶対の反抗の意志を示す紅蓮の弓矢を向けた!!
是非も無し、それでこそ最強の
「さあ、敬愛する伝説の英雄諸君よ。 今より始めようではないか。 『全ての星空を【楽炎】で燃やし尽くす、三つの英雄伝説と次元魔王が交差せし、新たなる“炎の軌跡”の
今此処に、三つの“炎の軌跡”は交わった……次元の海に集いし物語に語られる光の英雄達が【炎の絆】を結び、数多の世界の命運を懸けて超次元の魔王達と壮絶な激闘を繰り広げる、新たなる王道の英雄伝説が今、始まる──ッ!!
やっっっっと書き終わったーーーーーッ!! いやー、プロローグ編は今年六月までに書き終わらせる予定のつもりだったけど、まさか十一月まで掛かるなどとは思わなかったぜ。(疲)
アリサちゃん(怒)「当たり前でしょうが! プロローグで合計21話30万文字以上も費やした長編を書く奴か何処に居るってのよ!!」
リボーン(やれやれ)「まったく、別作品の感想でも『文章が非常に長く、テンポも遅い』と指摘されただろうが。 濃厚で細かい描写を書こうとして要点を纏められないからこうなるんだぞ」
グナちゃん(ジト目)「“セッテイノツメコミスギ”モゲンインダロウナ。 ジョウホウリョウハオオスギルトイケナイシ、ドクシャノリカイモオイツカナイカラ、チャントチョウセツシロヨ」
ぐ……ぐうの音も出ねぇ。 反省して次章からどうにかしよう……。(危機感)
さて、プロローグ編『繋がる三つの世界。 集いし若き英雄達と次元魔王軍襲来!』はこれにて完結ですが、いかがでしたでしょうか?
次回からは“序章『《三世界英雄連合》発足』”を開始しますが、その前にプロローグ編完結を記念して、今作の『オリジナル敵キャラクター募集』を活動報告の方で開催しました。
オリ敵募集は内容を変えて三回する予定で、今回の募集第一弾は『【次元魔王軍】の中堅幹部』です。(詳しい内容と応募は活動報告で)
イノケント「フハハハハ! 画面の前の
ジークレオン「優秀な人材なら出身世界年齢性別罪科を問わず歓迎しよう。(
次の章のストーリープロットチャートの作成や『THE LEGEND OF LYRICAL 喪失の翼と明の軌跡』の方もそろそろ続きを進めていきたいので、恐らく“炎の軌跡”の更新はこれで今年最後になるだろうかと思います。
来年2024年は『英雄伝説軌跡シリーズ』『家庭教師ヒットマンREBORN!』『リリカルなのはシリーズ』三原作が揃って開始20周年記念迎える、楽しみな年ですね♪
以前のアンケートの結果で今作にゲスト参戦する事が決定した『落第騎士の
では読者の皆様。 また次回、序章で御会いしましょう!
グナちゃん「サラダバー!」
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序章『《三世界英雄連合》発足』
【三世界対談会】開会
六課の部隊長の女性「今話で私もようやっとパーティ参戦や♪ よっしゃあ、今日をもって不遇な名無しキャラの立場からはオサラバやでぇ!」
フッ、果たしてそうかな? 某共和国の準S級遊撃士不動産のように最初のシリーズから主人公パーティINしている強プレイヤブルキャラなのに公式にまともな活躍をさせてもらえていない人もいるからね。
部隊長の女性「そんなまっさか~! 私は長いことリリカルなのはシリーズのメインキャラで張っとる、スーパーヒロインなんやで? そないな人気者の私が、ゲームのメイン舞台が活動
不動産「それを俺に聞かないでくれよ……orz」
王道だろうと邪道だろうと、何事も主役の登場人物達が運命の流れの中で出会い、彼らの間に関係が結ばれる事で物語は大きく動き出すものだ……。
例えば……そうだな。
桜舞い散る始まりの季節に光輝く夢と無限の可能性を胸に秘めながら希望への未来を目指して学園の門を潜った新入学生の主人公が、これから同じ教室の中で長く共に手を取りっ合って助け合いながら色様々な学問や経験を学んでゆく事となる同年代のクラスメイト達と出会い、青春の学生生活がスタートする。
運動も勉強も最底辺で纏う雰囲気も冴えない所為で恋人も友達も一人もできず、周りの人間から馬鹿にされて鬱暗い日々を過ごしていた主人公の落ちこぼれ劣等生の少年のもとへある日何処からか忽然と現れた、一度教えればどんなにダメダメな子でも必ず優等生にしてしまう高名な家庭教師や現代工学では絶対に造れない未来の超高性能ロボットなどの
平凡で退屈な日常に飽き飽きして自分の将来の夢も描けないでいた主人公の幼い少女が邪悪な侵略者に襲われた魔法の世界から助けを求めに地球へとやって来た妖精や魔法使いと運命の邂逅を果たし、魔法の契約や変身アイテムを貰うなどをして魔法少女へと変身し、邪悪な侵略者との戦いの日々が始まる。
その他にも、特に優れた能力の一つも持っていない平凡な一般人の主人公が車に轢かれそうになった幼子を助ける為に身代わりになって轢き殺され、その勇気ある善行を気に入った神様が死んだ主人公を特別に全知全能級の魔法が使える特典付きで中世ファンタジーの異世界へ転生させたり。 第三次世界大戦が勃発して世界は核の炎に包まれ、全ての国と文明が滅亡し荒廃され尽くされた灰と絶望の世界に生き残った主人公が、同じ生き残りの人々を見つけ彼等と共に世界に文明を立て直そうと立ち上がっていく。 等々、切っ掛けとなる事件や展開は無数に考えられるものだが、確かに主人公が主人公の人生を大きく変える力や影響を持つ重要人物との邂逅を果たす事で物語の流れに激的な変化が確実に生まれてくる。
そう、
「──新暦75年10月11日 時刻03:08。 ……武装所持した不審な次元漂流者計11名、【管理世界司法外の違法武装介入】と【質量兵器無断所持】の罪により、今回の事件の重要参考人として全員身柄を拘束させてもらう」
ガチャリ! という手錠機器が掛けられる鈍い音が、戦闘跡が刻まれた時空管理局地上部隊本部屋上ヘリポートに虚しく響いた。
今宵の【第二次ミッドチルダ大空襲】の戦犯であった反管理局軍ミッドナイトに出所不明の管理局の極秘情報やリィン達とツナ達の世界の技術を売り渡す等といった多大なる支援提供を執り行い、支援先のミッドナイト軍が時空管理局の最精鋭部隊たる古代遺物管理部機動六課に加わり二つの異世界より次元間転移されて来て現れたトールズ士官学院Ⅶ組と十代目ボンゴレファミリーによって撃退された直後に彼ら三世界の英雄達へ戦いを仕掛けてきた、《次元魔王》イノケント・リヒターオディン……
ところが、敵の強大さを思い知らされた《次元魔王》との激戦が終わってから数十分後にやっとミッドチルダに到着した時空管理局本局主力の次元航行艦隊に何故か完全包囲されてしまい、今回の戦いの立役者である筈のリィン達トールズⅦ組とツナ達ボンゴレ組は11人全員、近未来SF映画などで見た事あるようなカラフルな
「嘘だろおおおおおおおおっ!!?」
ハイテク手錠に引き繋げられた自分の両手を前に眺めて、白目を剥きながら素っ頓狂に嘆き叫ぶツナ。 一体何なんだこの状況? 突拍子も無くこんな理不尽な仕打ちを受けるだなんて、何がどうして訳が分からない。
右を見れば獄寺が自分の大事なボスに手錠を掛けた次元航行艦隊の武装局員達に激怒してダイナマイトを投げつけようとしたら、その瞬間にトールズⅦ組とボンゴレ組の身柄確保を武装局員達に命令を出した黒髪長身の男性魔導師が空の上から放った
「そそ、そんなぁー! こんな知らない世界に飛ばされて来て、警察に逮捕されるなんて、嫌だよおおおおおおおっ!!!」
やむを得ずリィン達異世界勢は武装局員達の御縄に頂戴されて、艦隊の司令艦であると思われる大型の黒い次元航行艦に乗せられて時空管理局の本局へと護送されて行ってしまう。 海の波のように歪む紫色をした次元空間にボンゴレファミリー十代目ボスの慟哭が響き渡り、なんとも言えない哀愁が次元世界に木霊するのだった……。
新暦75年10月12日 時刻 9:31──第一管理世界ミッドチルダ北部ベルカ自治領、聖王教会本部応接室。
「異世界の助っ人の皆さん。 昨日は大いに私の部隊を助けて頂いた御恩をあのような仇で返す事になってしまい、どうも申し訳ありまへんでしたアアァァァァァ!!!」
「ゴメンナサイですぅぅぅ!」
あれから本局へ連行されたリィン達は保護観察の名目で客室に押し詰め込まれ、其処に丸一日拘留された後に彼らの許へやって来たのは、なのはやフェイトと同じ歳の茶髪の女性局員と同じ茶色の局員制服を着た蒼銀髪の妖精(?)であった。 彼女達の計らいによってようやく釈放されたトールズⅦ組とボンゴレ組はこの二人に連れられて銀色の次元航行艦に乗り、再びミッドチルダへと戻って来られた。
そして此処《聖王教会》でなのは達機動六課と再会し、隊長陣と六課の後見人三名を交えて異世界勢への事情聴取を表向きにした対談会が開かれる事になったが、その前に先日管理世界の司法組織の一員である立場上に則らざるを得ずに【第二次ミッドチルダ大空襲】【魔王降臨事件】という管理世界の危機から救ってくれた英雄達に対して身柄の拘束を行ってしまった事に対し、機動六課の
≪夜天の主≫八神はやて CV:植田佳奈
≪蒼天の融合機≫リインフォース
「ほんまにすまへんかった。 機動六課総部隊長並びに昨日の戦いの作戦現場の全指揮兼責任者として皆様に大変失礼な対応を執り行ってしまった事を深~く謝罪します!」
「謝罪しますぅ!」
高町なのはやフェイト・T・ハラオウンら時空管理局のトップエースや未来のストライカーが集う最精鋭部隊、機動六課の部隊長──八神はやて二等陸佐は背中を縮こめて丸めつつ両手と頭を冷たい床に付けて平伏す姿勢を保ち続け、無礼を行ってしまった目の前の異世界から来た英雄達に許してもらうまで謝罪の言葉を吐き続けるその誠意的な姿は、それはもう見事な“JAPANESE・DOGEZA”であった。
「い、いえ! そんな大袈裟に謝らなくても許しますってば!」
「ツナの言う通りですよ。
「ケッ! 十代目がお許しになるなら仕方ねーな。 さっさと頭上げて立てよ」
誠意を籠めて深々と下げられたはやてのショートボブカットの後頭部の上に鏡餅の蜜柑のように乗りながら同じく平謝りをする小さな六課部隊長補佐官──リインフォース
リィン達もツナ達も今回の事件の黒幕であった次元魔王軍の最高幹部《
「え、ほんまに許してくれるん? よっしゃ! これで仲直りやな♪ いや~、よかったよかった☆」
「「「「「「「……」」」」」」」
誠意が籠ったDOGEZAによる謝罪から早変わりし、にへら~っとして緩んだ笑顔を見せて右手で後頭部を掻きながら一瞬前の悪気が無かったかのような調子の良い態度を取り出したはやてに、異世界の英雄達が全員言葉を喪失させて細い目になってしまう。 このやり取りだけで皆がこの子狸のように小柄で小顔の可愛らしい機動六課の部隊長の性格を理解したのだった。
「もう、はやて! 許してもらったからって、その態度はリィン達に失礼でしょ!」
「あははは、せやな……。 戦いが終わってから現場にやって来ようたから事情を全然知らへんかった
「まったくもう。 疲れてるのは解るけど、
『いや~みんな~、助けに来んの遅れてどうもすまへん。 今日はツヴァイと二人でちょっと人生という道に迷ってしもうてな?』
「──じゃないよ! 君は任務の待ち合わせに遅刻して来たカ○シ先生か? 全てが終わってから救援に来たって、既にもう後の祭りだよ!!」
「せやかて工藤。 今回の敵の《次元魔王》とか言うておったごっつぅ素敵な笑顔のおっちゃんが所持しておったっつぅスマホっぽい導力の携帯端末器……え~っと、確か《
「な~にがもん♪ だよ? そして工藤って誰なんだよ!? 言い訳は理屈が通っているからいいとしても、人に悪いと思っているのならヘラヘラしないで真面目な態度をしなさいッ!!」
「フェイトちゃん! はやてちゃんの悪ふざけがウザ過ぎてムカっ腹が立つのは分かるけれど、少し落ち着いて! リィン君やツナ君達、
短くてカワイイ舌を出して【てへぺろっ♪】というお茶目でしたと装う顔をしながら友人を揶揄う時に使う軽々しい口調で言い訳し続けるはやてが凄まじく小憎らしいあまり、公共の場なのにも拘らず蟀谷に大きな青筋を作って彼女に掴みかかろうとするフェイトを必死に羽交い絞めにして制止しようとするなのは……機動六課が誇る麗しき美女の三隊長が年頃の中学生のように稚拙な揉め合いをしている光景を眺め、リィン達異世界の助っ人勢も、取っ組み合う三隊長の背後に設置してある会議用の大きな円卓テーブルの奥の席に座っている偉い地位を持つ者独特の雰囲気を放ってきている三名の要人も、皆疲れたように呆れ果ててしまっていた。
「あのー……もしもし?」
「なのは、フェイトと……ヤガミ総部隊長といいましたか? 三人共、喧嘩する程仲が良いのは
「「「……ハッ!?」」」
どうにか沈黙の線を切ったツナとリィンの口によって諫められた三隊長が淑女らしからぬはしたない姿をこの場の皆の視線に晒していた事にようやく気付いて、正気を取り戻したような呆け面をしてから慌てて喧嘩を停止した。
「皆さん大変見苦しい姿を見せて申し訳ございません、調子に乗り過ぎました……じゃあ気を取り直して、早速【三世界対談会】を始めよか」
「ハ、ハハハ……みんな、とりあえず奥の円卓テーブルの席に適当に着いてくれるかな。 機動六課の後見人を務めてくれている御三方も出席するけれど、あまり硬くならなくても大丈夫な人達だから気軽にしてね」
畏まって今度は普通に頭を下げて本日二度目の謝罪をしたはやての音頭と恥を誤魔化したような苦笑を浮かべるなのはの案内で、リィン達異世界からの助っ人総勢11名はぞろぞろと円卓テーブルに着いていく。
談話室の扉側から正面手前の椅子に、中央の左側からトールズ士官学院第Ⅱ分校Ⅶ組特務科担任教官でトールズⅦ組勢の
「異世界から助っ人に来て頂いた英雄の皆様方、重ね重ねになりますが昨日は大変な失礼を致しまして本当に申し訳ございませんでした。 そして本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。 ……まあ、校長先生のような長い前話は退屈になるから抜きにして、【三世界対談会】開会や!」
異次元の戦力と数多くの異端技術を保有する次元魔王軍の打倒を目指す為、三つの世界の若き英雄達が“炎の絆”を結び始める。 その大事な第一歩となる【三世界対談会】が今、開会した……。
もう既に2月後半になってしまいましたが、2024年明けましておめでとうございます♪
前話のあとがきにも書きましたけれど、今年は本作のクロス先である『英雄伝説軌跡シリーズ』『家庭教師ヒットマンREBORN!』『リリカルなのはシリーズ』、三つの原作が揃ってコンテンツ開始20周年を迎える記念すべき年度。
軌跡シリーズ公式では、早速ゲームシリーズの物語の佳境を迎えてくるといい、大作の予感をビンビンに感じる最新作『英雄伝説
ゲームの内容がどうなってくるかはまだ出てきている情報が少な過ぎて予想不可能ですが、新作サブタイトルの頭に書かれている“Farewll”とは英語で「別れ」を意味し、特に再会の見込みが薄い場合に使われる単語……この言葉からしても凄く不吉なヤバイ予感をせざるを得ないですね。 ゼムリア大陸は本当に滅びてしまうのだろうか……。(自分の考えでは、結社の『永劫回帰計画』が重要な鍵になってきそうな気がしてならないです)
なにはともあれ20周年記念の今年、軌跡シリーズは『界の軌跡』。 REBORN!とリリなのシリーズからは何を出してくるのか、果たして?
昨年から活動報告で開催している【“炎の軌跡”オリジナル敵キャラクター募集その1『【次元魔王軍】中堅幹部』】に四名のユーザー様方から大変魅力的な個性溢れるオリ敵キャラの応募を頂きました!
貴重な時間を使って大変素晴らしいオリキャラのアイデアを考えて応募してくださった《聖杯の魔女》さん、《SOUR》さん、《ursus》さん、《D》さん(メールでの匿名希望の応募の為、当ユーザー様の頭文字アルファベットのみ公表)、御応募ありがとうございます!
そして大変残念な話ですが、今回のオリキャラ募集は今月末の2月29日23:59の時刻をもって締め切りとさせていただきます。(詳しくは活動報告の募集の追記にて)
【次元魔王軍】中堅幹部として是非参戦させたいオリキャラがいるというユーザー様は月末までに活動報告の募集へ応募をお願いします。
さーて、ここまで長くなってしまったので、予定していたあとがきコーナー『リリカルマジカル
アリサちゃん(散々出番遅らされてストレス怒マッハ)「おいッッ!!」
グナちゃん(マイペースなのでノーストレス)「ヤレヤレダナ」
リボーン(退屈で昼寝中)「zzz~」
次回もお楽しみに!
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