とある鎮守府は楽園の夢を見る【短編】 (アルカナクライ)
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とある鎮守府は楽園の夢を見る【短編】

エデンさんAnotherARKだと出番ないからここで活躍してくれ()

アークゼロワン買えなかったので初投稿です。


「遂にこの母港まで侵攻を許すとは」

 

司令室の壁には大穴が空き、外に見える港には無数の深海棲艦が押し寄せていた。

 

12:00(ヒトフタマルマル)、人類最後の砦の一つである楽園鎮守府()は人外未知の化け物(深海棲艦)による侵攻を受け事実上の陥落。

楽園鎮守府に発令された避難命令を受け現在残っている者は楽園鎮守府最高責任者である提督とその秘書艦である吹雪だけだった。

 

「ギギ…ギギギギギィィィ…」

 

無数の駆逐級深海棲艦が金属が溶けて固まった様な不気味な手で這いずりながら吹雪と提督の元に迫り来る。

 

「シズメ、オロカナニンゲン」

 

そして無数の駆逐級深海棲艦を使役しているのは楽園鎮守府陥落の原因でもある南方棲鬼だった。

 

大本営と言えど深海棲艦が鎮守府を破壊する為内部にスパイを送り込むとは予想外の事だった。

深海棲艦の指揮艦である鬼クラスが内部から破壊工作を行えば楽園鎮守府が崩壊するのも無理はない。

 

「提督っ!!逃げてください!!」

 

震えた手で砲塔(12.7cm連装砲)を深海棲艦に向ける吹雪。

幾ら楽園鎮守府最高戦力の一人といえど単艦で鬼級を相手取った事は無く、6艦で形成された一個艦隊では無い大軍勢を相手しなければ行けない恐怖。

逃げ出したいと言う思いを押し込み提督が逃げる時間稼ぎだけを行う気なのだろう。

 

「君を置いて逃げる訳にはいかない」

 

提督は静かに腰掛けていた椅子から立ち上がる。

その物静かな表情は決して生きる事を諦めたわけではなく、何かの決意の様に感じられる。

 

「でもっ…!!」

 

私達に勝機は無い。

そんな事は誰が見ても明らかだ。

 

「_________祈り続けろ」

 

提督の右手に握られていたのは見た事の無い端末。

深い青で成形されているその端末にはまるで血管のような赤いラインが装飾されていた。

 

提督が端末上部のボタンを押し込むとキィィンと鈍い音がし、青赤色の部品が大部分を占めた黒いベルトが現れる。

 

『エデンドライバー』

 

赤いレバーを力任せに引き下ろし、展開された端末を黒いベルトに接続する。

 

「ナニヲスルツモリ?」

 

「……変身」

 

プログライズ!!
【ARK】

 

憎悪に満ちた「方舟(ARK)」を呼ぶ声。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

掲げた指先から血液の様な物が地面に零れ落ち、血溜まりから血管の様な物が提督の身体を包み込んでいく。

 

 

Imagine!!

 

Ideal‼

 

Illusion!!

 

✙✙EDEN the KAMEN RIDER✙✙

 

ワタシハアナタダケヲアイシテル

ダカラワタシノチカラヲツカッテホシイ

アナタにワタシダケヲミテホシイアイシテホシイ

ダイスキダッタノヨ、アナタノコト

 

「……楽園の創造を始めよう」

 

"The creator who charges forward believing in paradise."

 

「私は仮面ライダーエデン、楽園鎮守府の想像者」

 

提督が姿を変えたのは人間の皮が剥がれ落ちた様な見た目のエデンと名乗る化け物だった。

血管が折り重なったような剣を持ち、身体からポタポタと血を零しながら、南方棲鬼に迫っていく。

 

「ナゼオマエガ……離島ノ……」

 

狼狽える南方棲鬼を見てエデンは静かに祈る様な動作を見せる。

それはもう会う事の出来ない()()()に向けられた物の様で、決して叶うことのないの無い愛を()()()に向ける様だった。

 

「……彼女の知り合いか」

 

「ソレヲドコデテニイレタァァァ!!!!」

 

「_______無駄だ」

 

激昂する南方棲鬼の攻撃を血液の防壁で凌ぎ、エデンは剣を南方棲鬼の右腕に振り下ろす。

抉れる様に右腕が切断された南方棲姫は絶叫もせず、残った左腕の砲塔をエデンの顔面に向ける。

 

「キサマモミチズレダッッッ!!!!!」

至近距離では撃ち抜かれたエデンは頭部と胴体が胸にかけて吹き飛んだ。

人間であれば確実に即死。

 

「提督っ!!!!」

 

動揺を隠せない吹雪。

目の前で慕っている提督が死ぬ様を見れば彼女の精神状態も危うい。

 

「_____私に死と言う概念は存在しない」

 

「ガッッ…!!ナゼイキテイルッッ…!!」

 

砕け散った頭部はいつの間にか血液に変わり、血液は再びエデンの身体と頭部を再構築している。

意思を持つ様に動き、形を得る血液が杭となって南方棲鬼の腹部を貫き、動きを止める。

 

「ギギィ!!」

 

南方棲鬼を守る様に飛び出してくるイ級の群れを血液の矢雨で地上に叩き落とし、ベルトに接続された端末を再び強く押す。

 

「__________死ね」

 

 

不気味な声が響き渡る。

悲鳴の様にも聞こえるその声を聞いた吹雪は悪寒が止まらない。

 

「提督…貴方は…」

 

本能で不味いと感じ取った南方棲鬼は自らの腹部に砲撃。

胴が千切れ、吹き飛んだ上半身を海へと還す為駆逐イ級の群れは南方棲鬼の上半身を庇うようにエデンに襲いかかる。

 

しかしイ級の群れに襲いかかったのは無数の血液で形成された無数の槍。

一匹一匹を確実に潰す為、執拗に何度も何度も突き刺さし続ける。

最後の一体、南方棲鬼を抱え海へ飛び込もうとしたロ級を襲うのは無数の血液。

まるで母が赤子を包むように血液はロ級達を包み込み、赤子の鳴き声と共に爆発した。

 

 

崩壊した楽園鎮守府に血の雨が降る。

腰が抜けてしまった吹雪は立ち上がる事も出来ず、ただ呆然とエデン(化け物)を見つめる事しか出来なかった。

 

醜い音が響き渡り、エデンを構成していた皮膚が剥がれ落ちた。

エデンが消え去り、その場所に居たのは見慣れた提督の姿だった。

 

「___また1から作り直さないとな、この楽園(鎮守府)を」

 

「____悪いがまた付き合ってくれ、吹雪」

 

「提督……貴方は…一体……何者なんですか…?」

 

震える声で質問をする吹雪に提督は静かに語りだす。

 

 

 

「…私はエデン、楽園の創造者」

 

「________未だあの日の彼女を忘れられないんだ。(まだ、俺は彼女を愛しているんだ)

 

 



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