陰キャトレーナーの逃避行 (blue ponta)
しおりを挟む

episode 0 プロローグ

いえーい☆
こういうの書きたかったんです。
許してください!何でもはしませんから!

誤字脱字あればご指摘よろしくお願いします。


星がチラつく午前1時。

理事長から優勝記念に貰った、高そうな万年筆を走らせる。

「…おし。終わったあああ!」

ナントカ記念とかいうレースの事後書類を書き終えた。

提出用boxにどっさりと書いた書類を提出すると小さく欠伸をして伸びをする。

すっかり寝静まった学園内で、電気をつけているのはこの部屋だけだった。

「ったく…なんでトレーナーが事務作業なんかしなきゃいけないんだよ。俺は会社員じゃないっつーの!」

愚痴をこぼしながらエナジードリンクを一気飲みする。

「まぁいいわ…これで終わりだぁ…」

B級RPGのボスみたいな口調で机に隠してあった1枚の紙を取り出し、ニヤリと笑う。

 

『退職届』。

これが俺にとっては神のビザだった。

 

 

 

 

大学受験に失敗後、勉強したくなかった俺は第4志望の大学に入学。無事大学生活デビューに失敗し陰キャと化した俺が始めたのがトレセン学園での非常勤トレーナーとしてのバイトだった。

軽く勉強してこのバイトをまったり始めたところ、奇跡的に担当したウマ娘がなんかURAファイナル?みたいな名前のレースで優勝した。

たんまり稼げたので調子に乗って、シフトをめちゃくちゃ入れ始めたのが運の尽き。

担当するウマ娘たちが連戦連勝でポンポン優勝したので、「神童トレーナー、現る!」みたいな感じで雑誌に掲載されてしまった。

このままこの界隈で食っていこうかなと思ったところ、親がまさかの大反対。最初はこのまま続けたいと説得しようとしたのだが、ウマ娘達の逆スカウトや理事長から押し付けられるブラックまがいの仕事量にうんざりしてしまい、親の言う通りこの仕事を辞めて一般企業に入ることを決心した。

最初はテング気分で心地よかったのだが、この量はちょっと…。

 

 

 

そうこう回想しているうちに、退職届を書き終えた。理事長に直接出すのは100%アウトだ。泣きつかれるか、何かしらの力をかけて俺を追い込むに違いない。ここは理事長室の机の上に提出してひっそりと逃げることが適策だと踏んだ俺は、抜き足差し足忍び足で自分の部屋を出る。

 

よし、あと理事長室まで数十メートルと思ったところー

「ん?あら、トレーナーさん?」

まさかのマックイーンとばったり遭遇してしまった。

「おおぅ、マックイーンか。もうこんな時間だぞ。早く寝ないと明日のトレーニングが大変だろ?」

退職届を後ろに隠し、冷静を装って語りかける。心臓バックバクだ。

「いえ、トイレに行くところですの。トレーナーさんはなぜここに?」

「あ、いや…今仕事終わったからさ。これからちょっと見回りだ。」

真っ赤な嘘である。普段見回りなぞすることなどない。この時間ならとっくに帰って深夜アニメを鑑賞しているはずだ。

「そうですの、夜遅くまでお仕事お疲れ様ですわ。」

「ありがとう。体調崩さないように早く寝ろよ。」

キメ顔でその場を離れた俺はマックイーンがいなくなったことを確認して理事長室に突入した。

サササッと机に退職届を置くと逃げるように学園を逃げるように去っていった。

 

 

 

 

 

明らかに怪しいですわね、トレーナーさん。

真夜中まで仕事をしていたのは知っていましたが、わざわざ見回りなどするはずなどありませんもの。ちょっとつけて行ってみましょうか。メジロ家としてこのような行為は相応しくないですが、しょうがありません。

明らかに周りを気にしているトレーナーさんは傍から見ると不審者そのものです。

…理事長室に素早く入り、素早く退出してきたトレーナーさんは再び周りを見渡すと玄関の方へ一目散に走っていってしまいました。

 

 

トレーナーさんは私を夢の舞台まで連れて行ってくださいました。最初に会った時にはいかにも卑屈そうで気だるげのような顔をしてらっしゃいました。メジロ家出身のこの私のトレーナーがこんな人だなんて、頭を抱えたこともありましたもの。ですが、トレーナーさんはトレーニングを真剣に考えてくれた。私にしかできないようなことを見つけて、伸ばしてくれた。だからURAファイナルにも優勝できたのですわ。そんな彼に私はいつの間にか惹かれていました。だから、恩返しをこれからしたい。

いつか、彼を引き付けるようにーーー

 

 

私が理事長室に入った時に目に飛び込んできたのは、

真っ白な封筒の中央に「退職届」と書かれた文字ですの。

それを見た瞬間、全ての感情が無くなった…いや怒りという感情だけが残りましたわ。

 

「何故」、「どうして」

そんな感情よりも遥か先にある感情が出てきました。

 

「逃がしませんわ、トレーナー。」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

episode1 逃走開始

連続投稿だゴラァ!!
ダイヤキタサンのシリーズ、色々な方に評価して頂き、ありがとうございます。
まったり更新していくと思いますので、よろしくお願いします。

誤字脱字あればご指摘よろしくお願いします。


無事何事もなく家に舞い戻った俺はとてつもない開放感に包まれていた。

「それでは…トレセン学園退職を祝って、カンパーイwww」

コンビニで買ってきた缶ビールを開けて1人虚しく乾杯する。

時刻は午前3時。こんな時間から飲み出すのはマズイかと思ったが、どうせ明日は予定がない。

缶ビール片手に見逃していた今期の注目アニメを視聴する。

あぁ…幸せだ…

毎日毎日、遅くまで仕事したあと明日のために直ぐに寝るような規則正しい生活なぞ、俺には合うはずがないんだよなぁ…

 

そうこうしているうちに夜も更けていき、いつの間にか俺は眠りに落ちていた。

 

 

 

 

 

…ゆっくりと目を覚ます。時計を見ると、午前11時を指していた。

なんて気持ちのいい朝だ。顔を洗うと、弾むような足取りでコーヒーを入れて菓子パンを食べ始める。

さぁーて、今日はどうしよっかなー。大学は一応単位は取れてるしなぁ。新しいバイト、探さなきゃかなぁ…

親に無事辞めたことをメールで送信した後、何気なくテレビをつける。

「神童トレーナー、まさかの辞職!

ウマ娘界隈に大きな打撃か!?」

…ウッソだろお前wwwwバカじゃねぇのww

まさかテレビで俺のことが出るとは思っていなかった。

雑誌にこれまでちょくちょく載ったことはあったが、テレビは初めてだ。

すると、ウマ娘がインタビューを受けるシーンが流れる。

「トレーナーがいなくなってしまってボク、ホントーに寂しいです…」

トウカイテイオーだ。この娘も担当したウマ娘の1人である。

てかなんでこんな特集組まれんだよ!俺特に何もしてないだろ!

トウカイテイオーは今泣き出しそうな表情でインタビューを受けていた。

ウーン…こんな少女を泣かせるなんてやっぱり罪悪感があるなぁ…

複雑な気分で答える様子を見ていると、「最後に」とレポーターが質問をした。

「もし、あなたのトレーナーさんがこの放送を見ていたとしたら、伝えたいことはありますか?」

おうおう、見てるぜーっ!さて、どんなこと言うんだろうと聞く準備をする。

「トレーナーにはホントーに戻ってきて欲しいです…ボクをここまで成長させてくれたから……だから……」

 

「今すぐ迎えにいくよ、トレーナー?」

 

…さてと。

久しぶりに遠出するか!

 

 

 

ggってみると、朝からトレセン学園は大混乱で理事長は俺が出した退職届を見るや否や、ビリビリに破り捨ててしまったらしい。

まぁ、届を出した時点でこっちの勝ちなんだよなぁ。

電車を何本か乗り継いで、久しぶりに大きな街に来た。ここに来た理由として、

1つ。生活に必要な物を買い直すこと。

2つ。新しいバイト先を見つけること。

3つ。逃げること。(最重要)

恐らく、今俺の家はウマ娘達に占拠されているはずだ。

帰った瞬間ウマ娘達に捕まり、トレセン学園に監禁されることは目に見えているので新しいバイト先を見つけるまでネットカフェやらを使うことになるかもな…

かと言って油断してはならない。ウマ娘達は俺を血眼になって捜索しているはずだ。その上、ウマ娘達には富豪の家系の娘もいる。金を武器に俺を見つけようともしてくるだろう。

気を引き締めて、力強く1歩踏み出したところーー

 

「見つけたぞ、トレーナー君。」

…出鼻をくじかれるということはこんなにも気分が落ち込むことなんだなぁと実感した。

 

 

声の主は品行方正、冷静沈着な現学園生徒会長、シンボリルドルフだ。

これは…誰が見ても分かる。明らかに怒っている。

「君に問いただしたいことは山ほどあるが…先ずはなぜ君が退職届を出したのか、理由を聞かせてもらおうか?」

成程、これはよくある運命の分かれ道というやつであろうか。

下手な答えを言ったら終了だ。学園へと強制送還される。

その場で思いついた嘘をいかにも本当のようにして答える。

「実はな…俺はとある団体から圧力を受けられてトレーナーを辞めざるを得なかったんだ…」

ルドルフの耳がぴくりと動く。

やったか?

「そうか、じゃあ私と共に学園に凱旋するとしよう。」

??????

「いや、なんで?」

思わず聞き返してしまうと、溜め息をひとつついて

「トレーナー君が圧力を受けるわけがなかろう?そんなことがあれば理事長や生徒会に話が伝わっているはずだ。」

普通に嘘がバレてしまった。迂闊だったか…

「学園の皆が君を待っている。君にはまだやることがあるんだ。」

ルドルフが俺の腕を掴んで力をかけてくる。人間はウマ娘の力には勝てるはずもない。

「さぁ……一緒に戻ろうか……?」

目が笑ってないぞ…これはまずいと判断した俺は一瞬の隙を見計らって逃げ出した。

 

 

 

「やはり逃げてしまったか。手荒な手段だが、そっちがそうなら私もそうさせて貰うぞ…?」

『永遠なる皇帝』は彼を捉えて駆け出した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

episode2 最高の景色

そういえば、サイレンススズカのヤンデレってあまりないですよね?
もっと増やして!もっと!
最近、セイウンスカイの可愛さに気づきました。
書きたいとは思うんですが、難しそうだなぁ…

誤字脱字あればご指摘よろしくお願いします。


ひたすら走る。

ひたすら翔ける。

これまで担当してきた娘たちがナントカをカケルみたいな歌を歌っていたが今の俺の場合、命をかけている。

平日の昼下がり、多くの人は会社や学校が行っているため通りにはあまり人は多くはないが、俺はただ人混みに向かって走っていた。

「ぬおおおお!!」

行き交う人々が全力で走る俺を「なんだコイツ」みたいな目で見てきているが、なりふり構っていられない。

後ろを振り向くとーーー

ルドルフが全速力で追いかけて来ていた。

距離は100mくらい離れているものの、危険を察知した俺は人混みに突っ込んで撹乱させる作戦を変更し、とにかく細い道へと曲がりに曲がりまくった。

 

テキトーにトレーナーをしていた俺でも、ウマ娘の速さは約70km/hくらいということは知っている。鬼ごっこのようにまともに逃げてスタミナ切れを狙う事などウマ娘に通用するはずがない。

てか、ウマ娘が通りで全力で走るの禁止されてただろ!生徒会長なのに平気で破ってて大丈夫なのか…?

 

そうこうしているうちにかなりの路地裏に辿り着いた。

日が当たっていないこの路地裏は当然人は全くおらず、ジメジメとした雰囲気が漂っていた。

恐る恐るもう一度振り返って見たが、ルドルフの姿は見えない。

撹乱成功。思わずガッツポーズをする。さてこれからどうしたものかとバックからマナーモードに設定していたスマホを取り出してみてみると、ルドルフからの着信が73件来ていた。その他、他のウマ娘からの着信も合わせて1572件。

ついでにLINEも確認する。

 

「トレーナー♪ボクが今から迎えに行くね♪」

「(逃がして)あげません!!!」

「さーてとっ♪トレーナー君。今行くわね♪」

「グラスワンダー、参ります…」

「マヤから逃げられると思ってるのー?」

「お兄様…。ライスが助けてあげるね!」

「もう貴方を受け入れる準備は整いましたわ…トレーナーさん。」

「マスターにも『調整』が必要であると判断しました。これより実行に移ります。」

「モルモット君…キミは私の『実験対象』なんだぞ…?脱走とは困るじゃないか…」

「あらあら〜?これじゃあトレーナーさんに『よしよし』出来なくなっちゃうじゃないですか〜」

etc…etc…

 

はい、たくさんのメッセージありがとうございました。それでは大変失礼ながら、ウマ娘の皆さんの連絡先を全部消させていただきます。

 

 

foo!気持ちい〜!

スマホの動作が軽くなったところでこれからの行動を確認する。とりあえず、寝床の確保だな。出来ればビジネスホテルでもなんでもいいから泊まれるところが欲しいところだが…。

そうして考えていると、背後から声が聞こえた。

「トレーナーさん…こんな所にいたんですね…?」

後ろを思わず振り返るとそこには「最速の機能美」と称された彼女がいた。

 

 

自分でも顔が引きつったのが分かった。こんな路地裏に入ってくるとは思ってもみなかったからだ。今の彼女は、明らかに様子が変である。俺はその事を分かっていながらも鈍感系主人公を演じた。

「やぁ!サイレンススズカ。調子はどうだい?見ての通り、俺はトレセン学園を退職したんだ!みんなの応援もあるし、これからも頑張っていくよ!」

気さくに話しかけてみるが、

「……」

彼女は全く答えずに俺との距離を縮めていく。

不味い。全身の細胞が今すぐ逃げろというアラームを発する。

だがこの状況で逃げられるはずもない。ここは誰もいない路地裏であるからだ。

思わず一歩二歩、後ずさってしまう。

「…初めて会った時、私は絶望の真ん中にいました。」

え、何?なんか回想が始まったみたいですよ?

「何回レースに出ても負けばっかりで…自分には走る資格がないのかなとも思っていたんです。」

「でも貴方が言ってくれたんです。『お前に最高の景色をみせてやる』って。」

ウーン、覚えてないですねー…

「私はまだその景色を見てないですよ?なのにいきなりそんなこと言って…。冗談ですよね?」

ヤバいぞ、雲行きが怪しくなってきた。

「もし、冗談じゃないのなら…、分かりますよね?」

(分から)ないです。

いつの間に彼女との距離は手を伸ばせば触れられる距離になっていた。彼女の目は淀み、ただらならぬオーラが漂っている。

「…!!」

彼女はいきなり、俺の手をとてつもない握力で掴んで来た。

「スズカ…ッ!痛い!」

「ふふっ、可愛いトレーナーさん…。早く冗談でしたって言ってください?」

クッソ…ここで終わりなのか…

オワコンと思ったその時、快活そうな少女の声が聞こえた。

 

「トレーナー!約束通り、ボクが迎えに来たよ♪」

 

ええ…(絶望)



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

episode3 修羅場?

あ、ワイの1番の推しはマルゼンスキーです。

飼っている猫が最近臭うんですよね。お風呂入れなきゃかなぁ?
連日の雨とニュースでドンヨリとした気分が続きますが、元気だしていきましょう!

誤字脱字あればご指摘よろしくお願いします。


まさか、本当に来るとは思ってもみなかった。

来るとしても、もっと時間が掛かると思っていたからだ。

スズカの握っていた手が反射的に離される。

ちらりと握られていた部分を一瞥すると、薄らと赤みを帯びていた。

 

「ボク、トレーナーに感謝してるんだ。ボクが苦しい時にいつも近くに居てくれたから……だから…

っておっと、スズカもいたんだね?」

 

重くなっていた空気が更に張り詰めたように感じた。

まとわりつく様な風が彼女達の髪を揺らす。

 

「ええ、トレーナーさんを学園に連れて行こうと思って。ウマ娘の皆さんがトレーナーさんを待っているから…」

 

嘘だ。先程のスズカの目は俺を学園に連れていく様な目ではなかった。まるで独占するような…

 

「奇遇だね♪ボクもトレーナーを迎えに来たところなんだ。」

テイオーがこちらへとゆっくり歩みを進めていく。その歩きは「帝王」と呼ぶに相応しいオーラを放っていた。

 

\( ˆoˆ )/‬オワッタ

この状況から逃げられる訳が無い。我が逃避行、一遍の悔いなし…

手を広げ、観念したように目を瞑り投降の意を示す。

「えへへっ♪やっと気づいてくれた、トレーナー?ボク、ずっとアピールしてたのになぁ…好きだってこと。なのに、トレーナー全然気づいてないフリして…、ずっとガマンしてたんだよ?トレーナーがホントーに楽しそうに他の娘とお喋りしてて…いつの間にかトレーナーのことしか考えられなくなって…。でも、今夢が叶ったんだ♪これからずっと一緒にいられると思うとワクワクが止まらないよっ!…これからいっぱいトレーナーのこと『お世話』してあげるからね…?」

淀んだ目をしたテイオーは何処から取りだしたのか、

黒く光る……そう「手錠」を取りだした。

「これ随分と便利そうだなぁって思ってたんだよね、ボク。だってずっと一緒にいられるしお互いに逃げることなんてできないでしょ?これからたっくさん辛いことがあってもその苦しみを半分ずっこできるもんねっ♪」

手錠の一方をテイオー自身の手に付けたと思うと、彼女は目に見えぬ速さでスタートダッシュを切った。

 

 

………その瞬間目の前に影が現れた。

「…どうして邪魔するのかな、スズカ?」

「テイオーちゃん、今とても危険だから。」

 

…ポケットからキュンです(嘘)

ナイスゥ!俺を守ってくれるのか…!

スズカは先程の様子とは打って変わって俺を守ってくれていた。

 

「へぇ。そっちがそうなら力ずくで行かせてもらうよ?」

「望むところだよ…?」

 

これからバチバチ繰り広げるのかーと思いながら、そろそろかなと1歩退いて後方を見る。

 

ブォォォォン!ブォン!ブォォォォン!

けたたましいエンジンを響かせながら「そいつ」がやってきた。

 

「こんなところまでバイクで来る馬鹿お前しか居ないわ!」

「とりあえず早く乗れ!」

一言交わすと彼女らがこっちへとかける瞬間にバイクに乗って掴まった。

 

「行くぞ!」

 

アクセル全開で発進し、彼女達に別れを告げる。

 

「お元気で!アデューwww」

 

 

 

 

「あっぶねぇ…お前もうちょっと早く来いや!」

「ごめんて、道が混んでたんだよ」

「嘘つけ!」

こいつは俺の高校生時代の唯一の友人だ。ややおバカな面もあるが、困った時に助けてくれる良い奴である。

 

「いやぁ、トレーナー様は罪深いおひとですな!年端もいかぬ少女をあんなふうにするだなんて…」

「うるせぇよ、俺だって好きでやってた訳じゃねーんだ」

「…まぁ!危機一髪ってところだな!」

 

何故こいつに助けられたかというとこいつがたまたま通りかかった訳ではなく、俺が呼んだからである。

 

路地裏に着いて一息着いた時、ウマ娘に襲われた時用のショートカットアプリを作っていた。そして、サイレンススズカがやってきた時にそれを作動させて危機一髪のところで回避したという訳である。

まぁ、友人を呼んだところですぐに来られる訳でもないし備えあれば憂いなし的な感じで作っていたのだが、それが幸をなしたと言うわけだ。

 

「そんで、これからどこ行くんだ?」

ヘルメット越しに友人に話しかける。

「お前、どうせ家戻れないだろ?だったら俺の家に行くしかないじゃねーかよ?」

「ああ、そうか…ってなんで俺が家に戻れないって知ってるんだよ?」

「そりゃあ、だってニュースにもなってるんだからな」

 

ええ…(困惑)

 

 

 

 

「もう逃げられちゃったじゃないか!どうしてくれるんだよっ!?」

「まさか、お友達さんが来るとは予想外だったね…」

「せっかくいい所までいってたのに……ボクたちにはあのお友達はちょっと『邪魔』かな?」

「まぁ、発信機付けているし…後追おうか?」

 

共に2人は駆け出した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。