イコール・ノットイコール・ミー (まみゅう)
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イコール・ノットイコール・ミー

 

 

 ひとまわり以上も年の離れた兄弟は、本当の意味で兄であり、弟であるのだろうか。

 カルトは目の前を行く兄の背中を追いながら、そんな益体もないことを考える。幼い頃から眺め続けたそれに続くのは懐かしい安息をもたらしたが、同時にいつまでたっても背中を預けてもらえないことに苛立ちがこみ上げた。少しの乱れもない歩調も、すっと伸びた背筋も、何もかもが憎らしく見える。カルトがどれほど神経を張り詰めて敵の急襲に備えようと、兄の注意はしっかりとカルトのはるか後方にまで及んでいるのだ。

 

「兄さん、」

 

 現在二人がいる第三層は一般渡航者区域の中でも最上の階層だった。先ほど招集されて向かった五層よりかは随分と快適だが、品性が欠落したとしか思えない騒がしさが、さざ波のように鼓膜を震わせる。だが、それでも聞こえていないわけがない。カルトはもう一度、今度は強い口調で呼びかけた。

 

「兄さん、」

 

 一体どこに向かっているのか。

 いや、それよりも一体どういうつもりなのか。

 しばらく連絡を取っていなかった兄から“オレも蜘蛛に入ることになった”と電話がかかってきたのは、カルトがこの暗黒大陸に向かう船に乗る、たった二日前のことだった。

 

「なに?」

「説明してください」

 

 ちらり、とほとんど視線だけで振り返った兄は、それでも足を止めることはない。一応うーん、とわざとらしい声をあげているものの、それがはぐらかすことを目的としたものなのか、はたまた真剣に悩んでいるのか、実の弟であるカルトにすらわからなかった。

 

「説明はさっき、下でやったと思うけど」

「兄さんがヒソカに依頼されてこの船に乗ったのはわかった。結局はヒソカの首という、目的を同じにしているところも。でも、蜘蛛に入るというところは納得できません」

「言っただろ、それも含めてヒソカの依頼なんだ。あいつにとってこれはゲームなんだよ」

 

 ゲーム、と小さく繰り返した言葉は、カルトにはあまり馴染みのないものだった。いや、本当はうっすらと理解できるが、それは常々カルトが悪癖として抑え込まねばと思っている類の愉しみだろう。前に四番を背負っていた男のことは、面識こそあるもののほとんど知らなかった。男のことを尋ねると蜘蛛の誰もが不快感を露わにして、関わるなとしか言わなかったからだ。そしてカルトの方も、嫌がる団員から無理に聞き出してまでヒソカのことを知る必要があるとも思わなかった。家族以外を信用するな、というのが幼いころからの家の教えであり、そこから他者に関心を持つことすら一種のタブーのように感じていた。けれども兄は、まるで旅団のこともヒソカのこともよく知っているかのような口ぶりで話を続ける。

 

「残すべきは蜘蛛――この考え方は合理的で悪くないと思う。残すのは頭でも足の一本でもいい。“蜘蛛”の理念を持つ者が一人でも残れば、そこからまたいくらでも再生できるというわけだ。そしてヒソカは今回、徹底的に蜘蛛を殺したいと思っている。どうすればいいか、わかるかい?」

「……残った部分から再生するなら、頭と足を同時に潰す」

「そう、殺るならいっぺんに。欠番を残して、誰かが後に蜘蛛を名乗ることすら許さない。普通なら足の数は少ないほうが楽なのに、わざわざオレを入れるあたり戦闘狂って本当に馬鹿だよね」

 

 そう言って肩を竦めた兄はそれで説明は終わりだ、と言わんばかりに口を閉じたが、カルトは話を聞いて余計に納得のいかない気持ちがむくむくと湧き上がってくるのを感じていた。入団の件はもういい。兄がヒソカの狂った依頼を了承し、自己判断で蜘蛛に入ったのならそれはカルトには関係のない話だ。けれども兄が、ゾルディック家の教えを体現したかのような兄が、家族以外の人間の世界に当たり前のような顔で収まっていることを――もっとも、先に蜘蛛に入ったカルトがイルミを責める権利などないのだけれど――カルトはどうしても受け入れられなかった。

 

「……でも、兄さんが依頼を受けたってことは、勝算があるってことでしょう。もしかして、既にヒソカの居場所を知っているの?」

 

 五層での召集の後、蜘蛛のメンバーは散り散りになった。イルミについてきたカルトのように複数での行動をしている者もいるが、団長のクロロから直々にバディやチームを組まされたわけではない。クロロがなぜそのように“集団であるメリット”を捨てたのかは謎だったけれども、お陰でカルト達は自由に行動することができる。そして解散するなり真っすぐ三層へと向かった兄に、カルトは謀略の匂いを嗅ぎ取っていた。

 

「いいや、オレはヒソカがどこにいるかは知らないね。暗殺依頼という形をとっているけれど、これは正真正銘殺し合いだ。でも、」

 

 兄が不意に立ち止まったので、カルトはここが目的地なのだと察した。廊下の突き当たりにある鉄製の扉は甲板に繋がっており、開くとぶわりと吹き込んだ風が潮の香りを鼻腔に届ける。兄は風圧で乱れた髪を軽く手で撫でつけると、カルトの知らない表情で言った。

 

「あいつは元々、殺しじゃない依頼ばっかりしてくるんだよね。わざわざオプション料金を払ってまでさ」

 

 

 

 

 ひとまわり以上も年の離れた兄弟は、本当の意味で兄であり、弟であるのだろうか。

 もちろんその関係性は、続柄の上では揺るがない。十年前、ゾルディック家の末子として生を受けたその瞬間からカルトは四人の兄たちの弟であり、それは兄たちが死のうとカルト自身が死のうとも絶対に変わることのない関係性だ。しかしカルトにとって長兄のイルミとは、兄であると同時に父親のよう――いや、当の父親よりも物理的に近く、心理的に遠い存在だった。もっと簡単な言葉で言えば、それは“憧れ”だったのかもしれない。年の離れた兄は、幼いカルトからするとなんでもできるように見えた。実際、イルミは暗殺者として恐ろしいほどに優秀で、両親からも頼りにされている。多忙を極める父親に代わり、なにくれとなく面倒を見てくれたのも兄たちの中ではイルミだけであったし、だからその兄に頼みごとをされればカルトはこの上なく嬉しかった。

 

「カルトには、オレの代わりに色々と学んでほしいことがあるんだ」

 

 そんなふうに言われて訓練が格段に厳しさを増したのは、カルトが天空闘技場での修行を終えて帰宅し、もうすぐ九歳になるかという頃だった。天才である兄キルアが約二年で二百階まで到達したのに対して、カルトは天空闘技場の攻略にほとんど丸三年かかった。その頃にはカルトも、自分が誰にも期待されていないとわかっていたけれども、才能の差はあからさまな事実として胸に重くのしかかる。さらに上の兄二人が何年かかったかなど、恐ろしくてとても聞けない。

 しかしイルミはカルトの遅い帰還を別に責めるふうでもなく、淡々と次にやるべきことを示したのだった。

 

 

「これが……念……」

 

 カルトが目の前の現象に無意識のうちに声を潜めてしまったのは、これが秘密にしなければならないことだと直感的に感じ取っていたからだろう。時折疑問に思っていた、父や兄の異常としか思えない強さやターゲットの不可解な行動は、すべてこの念能力に依るものだったのだ。

 

「お前にもこの力を身につけてもらうよ」

 

 生かして捕らえておいた侵入者の頭に愛用の武器である針を刺し――昔から、兄は妙なものを獲物に使うのだなと思っていた――完璧に傀儡として見せた兄は、カルトに向かってそう言った。逆にカルトはどうしてもっと早く教えてくれなかったのかと、複雑な思いで頷いた。

 

「キル兄さんも、もう使えるの?」

「いや。念の存在すら教えていない。キルにはまだ早いからね」

「……キル兄さんはだめで、僕はいいの?」

 

 そんなことが、この世にあるなんて思ってみなかった。特別な子であるキルアがいいことはあっても、その逆は今までなかったのだから。

 ごくり、と思わず呑み込んだ唾の音がやたら大きく聞こえて、カルトは縋るように目の前の兄を見上げる。けれども自分を見下ろす兄の瞳からは、何の熱量も感じられなかった。キルアを見るときのような仄暗い揺らめきを、カルトはとうとう見つけることができなかった。

 

「うん。カルトが覚えるべきことと、キルアが覚えるべきことは違うからね」

「……」

「キルは確かに天才だけど、精神的にはまだまだ不完全だ。その点でオレはお前を買ってる」

「……だからイル兄さんの代わり、なの?」

「まぁ、代わりと言うと語弊があるけどね。いつまでもオレが面倒見てやれるとは限らないし、同じことでも兄に命令されるのと、弟から頼まれるのとでは随分変わってくるだろう? 今となってはキルの弟はカルだけだし、うまく支えてやってほしいんだよね」

 

 今となっては、の言葉に、カルトは幽閉されたもう一人の兄のことを思い出した。一つ年上の兄はキルアとはまた別の意味で“特別な子”であり、“特別な子”同士は惹かれあうものなのか、キルアとアルカはとても仲が良かった。そう考えると“特別”から漏れたイルミが同じく“特別でない”カルトに白羽の矢を立てたこの状況は、ひどく当然の結果であるように思える。

 カルトは苦いものを懸命に飲み下しながら、小さく頷いた。たとえ“特別”でなかったとしても、イルミはカルトを選んだのだ。カルトのそういう従順な性質を、兄は買ってくれたのだ。

 

「……わかった。それで……念能力の他に、僕はなにをすればいい?」

 

 ずっと憧れていた兄イルミの代わり――それは不思議なくらいちっとも嬉しくなかった。

 

 

 

 

 ひとまわり以上も年の離れた兄弟は、いや、イルミは、本当の意味でカルトの兄であったことが一度としてあるのだろうか。

 ヒソカのもう一つの依頼の仕込みを早々に済ませ、ぼんやり海を眺める兄の横顔は、やはりカルトの知らない誰かのように見えた。蜘蛛にいるだけでは知りえなかった裏の情報を種明かしされた後でも、どうしても兄の行動には違和感が残る。カルトの知る兄イルミは仕事に命を捧げているような人だったが、それはその仕事に付随する高額な報酬のためではなく、ゾルディック家という家名が背負う誇りのためだ。だから家の為ならばどんなに危険が伴う仕事だってするが、反対に家に関係がなければ非情なまでにリスクを計算して動く。

 

 今回のこれは、果たして兄が命を賭けるに値する仕事なのだろうか。

 

 正直なところ、蜘蛛の団員として初めからヒソカの殺戮リストに加えられているカルトでさえ、この件はどこか他人事のように感じている節があった。もちろんみすみす殺されてやるつもりはないし、降りかかる火の粉は当然払うつもりではあるけれど、他のメンバーほど切実にヒソカを見つけ出して殺したいわけではない。カルトにとってのホームは蜘蛛ではなくゾルディック家なので、誰が死のうがどうだっていいし、蜘蛛の存続にも興味がなかった。兄は足が一本でも残れば、と言ったが、仮にカルトが残ったとしても蜘蛛を再建する気になどとてもなれない。関係がないのだ。なのに巻き込まれた。自ら望んで入団したカルトですらそう思うくらいなのに、兄が何を思ってこんな面倒事に関わることにしたのか欠片ほども理解できなかった。

 

「本当に、騒がしい……」

 

 都合上、三層に留まる必要があるとはいえ、仕込みを済ませてからもぐずぐずと海を眺めていたのは船内の喧騒から逃れるためでもあった。なんでも昨日からこの階層で殺人事件が続発しているらしく、この船上で警察組織の役割を果たす王立軍が駐在することも相まって非常にぴりぴりとした空気が流れている。振り返ったカルトは眉をひそめると、早く上層に戻りたいな、と考えた。潮風のせいで少し髪がぱさついたような気がして、シャワーが恋しくなる。先ほど何やら船内放送が流れていたようだけれど、兄が無視をしたのでカルトもそれに倣った。

 

「……そういえば、キル兄さんは元気でした?」

 

 二人で組んで仕事をしたことは、今までにだって何度もある。だが、カルトは上手な沈黙の埋め方を教わらなかった。二人に共通する話題は仕事か家のことくらいしかないが、それも厳密には自分たちのことではない。

カルトはよく知っていたのだ。兄の気を引くためには、自分の修行の進度を話すよりキルアのことを話題にするほうが余程効果的であると。そのせいでキルアにはチクリ魔として煙たがられているのも知っていたが、兄も母もキルアに関することならカルトの話を聞いてくれた。だからカルトはキルアに嫌がられても彼の行動を逐一報告する他なく、報告することが無い今は、逆にキルアの近況を尋ねるしかなかった。

 

「お母様から聞きました。キル兄さんが“あれ”を連れ出したって」

「心配ないよ。“あれ”はキルにだけは危害を加えない」

「それは、」

 

――特別だから?

 

 喉元までせりあがってきた言葉を呑み込んで、カルトは日差しを受けてきらきらと光る海面を眺めた。しかし言いかけた以上、代わりに何か言わなければ不審がられるだろう。「それは、心配していません。あの二人は仲がよかったから」咄嗟に出た言葉は予想以上に自分を苦しめた。今度はどろりとした嫉妬が胸を満たし、溺れそうになる。激しい感情を二度殺すのは、カルトをもってしても容易なことではなかった。

 

「兄さん、もし“あれ”が普通だったら、“あれ”に頼んでいましたか?」

 

 だから、いつもだったら絶対に聞けないようなことを聞いてしまったのかもしれない。

 

「なにを?」

 

 兄の黒い瞳がこちらを見下ろし、カルトは唇を震わせる。今ならまだ誤魔化せるかもしれない。だが、その答えをずっと聞きたいと思っていたのも本当だし、今を逃せば聞く機会は二度と訪れないかもしれなかった。

 カルトは小さく息を吸うと、それを吐き出すついでのように言葉を発する。

 

「……イル兄さんの、代わり」

 

 それはカルトがかつて憧れ、今は呪いの枷のように感じ始めている役割だった。旅団に入ったことで、外の世界を知ったからかもしれない。いや、“特別な子”であるキルアがカルトの欲しかったものをあっさりと捨て、外の世界に行ってしまったからかもしれない。

 他人が持っているものは、とても美しく素晴らしいもののように見えるのだ。それが“特別な子”の望むものであるなら尚のこと。

 今ではもう、ゾルディック家に固執しているのは“特別でない”イルミとカルトだけだった。ミルキはまだ家にいるけれど、あの兄はゾルディック家に自分の存在理由を預けてはいない。この先、自分がイルミとミルキのどちらの生き方を踏襲するのだろうかと考えたとき、答えは明白すぎるほど明白だった。

 

「うーん、どうだろう。仮定の話に意味があるとは思えないけど……オレはカルトに任せて間違いだと思ったことはないよ」

「僕に、兄さんの代わりが務まる……?」

「オレはそのつもりでお前に色々教えたつもりだけど」

「でも……じゃあ、兄さんの代わりって、一体なに?」

 

 大事な仕事だと言われた。お前にしかできないとも。でもそれが全部方便だと気づかないほど、カルトは無垢ではなかった。“特別な子”は選ばれるけれど、他の役目は全部残りもの。単純な消去法でしかない。カルトでなければならないことなど、あの家には初めから存在しないのだ。

 

「僕は、兄さんじゃないよ」

 

 そうやって心の内を吐き出しておきながら、風が言葉をさらってくれればいいと思った。そうでなければ、そこらで鳴いている海鳥でもいい。

 けれどもカルトの声はしっかりと兄に届いたようで、それを聞いたイルミは薄く笑った。

 

「だったら、お前はなんだっていうの?」

 

 カルトがこの問いの答えを持たないことを、きっとイルミは知っていたのだろう。

当然だ。カルトはイルミの背中を、生き方を追ってこれまで過ごしてきた。自らそれを捨てれば、そこには何も残らない。「僕は――」ずっと兄のようになりたかった。憧れだった。でも決して兄の代わりになりたかったわけではなく、その代わりも替えがきくというのなら。

 いつまでたってもその先の言葉を続けられないカルトに、イルミはゆっくりと目を細めた。

 

「あのさ、カルがいるから、オレは安心できるんだよ。万一今回の仕事でオレが死んでも、カルさえ残ればいいとも思ってる。むしろ、そのために参加したといっても過言じゃない」

「え……」

「ヒソカは蜘蛛を全員殺す気だ。今のお前がヒソカに勝てるとも思えないし、さすがに殺されるのがわかってて弟を放ってはおかないよ」

 

 いつものように淡々と話す兄は、カルトのよく知るものであった。しかし話の内容はにわかには信じがたく、カルトはぱちぱちと長い睫毛を瞬かせるしかない。 

だって、そんなことあるはずが――今の口ぶりでは、まるでイルミがカルトの為にこの依頼を請け負ったみたいではないか。代わりでしかない、替えのきくカルトの為に、危険を冒す価値があるみたいではないか。

 

「でも、僕は……僕はキル兄さんじゃない」

「そんなことは知ってる。だけどお前はオレの弟で、オレがいなくなったときにオレの代わりになれるのはお前しかいない」

「……」

「それでも不満? わからないな……なんの役目もないよりいいと思うけど」

 

 最後に何気なく発せられたそれこそが、おそらく兄の本心なのだろう。カルトは知らず知らずのうちに唇を噛みしめていたが、胸を渦巻いていたさみしさはいつの間にか潮が引くように消えていた。確かに何の役目も与えられないよりはいい。もしかするとこうしてやるべき使命を与えてくれるのは、この歪んだ兄なりの愛情なのかもしれない。

 そこまで考えて、ふと馬鹿馬鹿しくなった。

 

「……やっぱり呪いじゃないか」

「何か言った?」

「いえ、別に」

 

 カルトは喧騒がこちらにやってくるのを聞きつけて、もう一度船の方を振り返った。気配を探るに、人数は五。いずれも念能力者ではなさそうなので、王立軍の者だろう。IDチケットを提示すれば黙らせることができるかもしれないが、確かこの階層にはハンター協会の重役も揃っている。任務に支障が出なければいいが……。

 そんなことを考えながらちらり、と隣を見上げれば、同じように兄もこちらを見ていた。きっとほんの少し前までのカルトなら、その瞳に熱がこもっていないことにものすごく傷ついていただろう。けれども、たとえ“特別な子”に向けるような愛がなくても、この船上に兄がいる事実は変わらない。

 イルミはカルトにとって、間違いなく兄であったのだ。

 

「ねぇ、兄さん、」

「なに?」

「悔しいけど、今の僕に兄さんの代わりはまだ務まらない。だから、兄さんにいなくなられると困る」

「……」

「死ぬのは、弟が一人前になってからにしてください」

 

 カルトは薄く笑って見せると、今の表情が兄に似ていればいい、と思った。

 

「……参ったな」

 

 ぽつりと呟いた兄の、その表情に。

 

 



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