絶対に寝ないドクターvs絶対に寝かせるオペレーターズ (8OROCHI丸)
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vsアーミヤ

ふと別のアークナイツ2次小説書いてる知り合いと話してるときに唐突に思いついたネタ
書けって言われたから書いた


突然だが私は全く睡眠をとらなくて良い体質のようである。

ようであるというのは以前の記憶が全く無いからなのであるが……

 

私はチェルノボーグという場所で目覚め、ロドス・アイランドという組織に救出された。私を救出してくれた皆は、私のことをよく知っているようだった。だが、当の私は記憶喪失に陥り、以前の記憶、自分の名前、救ってくれたオペレーター達の顔と名前すら全くわからなかった。

皆は私のことをドクターと呼んでいる。自分の名前がわからない以上、個人を呼称する名称は都合がいいので特に不思議に思わない。

それに、私は鉱石病の研究をしていた博士だったようなので、ドクターという呼称自体が間違っておらず、()()()()私にとっては都合がいいに違いない。

 

みんなが求めているのは右も左も分からない今の(ドクター)ではなく、かつてのロドスの重鎮であるドクター()なのだから。

 

ロドスというのは製薬会社である、最近の業務はそれだけではないが。

ロドスは感染者の治療を第一理念として挙げている。そのため薬剤の研究・開発だけでなく、患者の診察や治療なども業務に含まれる。

また感染者の保護をする際、荒事になることも珍しくないため、ロドスが雇用、または治療の対価として志願した者たちがオペレーターとして戦場に赴く。私は戦場での指揮も業務なので、各オペレーター達との交流も決して欠かせない。

医療部門はケルシー医師、経営はアーミヤCEOが担っているので、今のロドスは実質3トップ体制と言っても過言ではないだろう。

 

 

そんな私は睡眠をとらなくていい体質のようだ

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

「ドクター、もうそろそろお休みになられては如何ですか?もうそろそろ日付が変わりますよ?」

 

「んー、そうしたいのはやまやまなんだけどねぇ。まだ仕事終わってないんだよ。ごめんね」

 

「いや、ドクター………

 

 

 

もう既に1ヶ月睡眠を取られてないんですよ!?はっきり言って異常です!!今すぐに!休息を取るべきです!!!」

 

「仕事が終わっていないから休んではいけないと言ったのはアーミヤ、君だろう?現にまだ仕事は終わっていないし、私は何回も言っているが全く睡眠を取れないんだ。ずっと暗い部屋で意識を失うこともできずに横になっているだけなら、こうして書類仕事をしていたほうが何倍も建設的だと思うが」

 

「うっ………。た、確かに言いましたが……」

 

 

ああ、まただ。

こうしてこの人は、絶対に休みを取ろうとしない。

 

「で、ですが、この書類も、この書類も!これだけの数は既に今月の分をゆうに超えています!!今しなければいけない緊急の書類じゃないんです!ね?休みましょうドクター?」

 

「じゃあ書類仕事の代わりになるものを提案してくれるかい?アーミヤ」

 

「…………え、えっと…………」

 

「さっきも言ったが、私にとって睡眠は休息たり得ないんだ。何故なら厳密に睡眠という行為を行うことができないからね。それより、こんな時間だ。アーミヤこそ明日に備えて休息を取るべきだろう?君は私と違って寝なくていい身体ではないんだ。さあ、お疲れ様アーミヤ」

 

「私が休むならドクターもです!!たしかに最初こそ右も左も分からない状況で熱心にやっていただけるとは思いました。それにかこつけて書類仕事をさせてしまったことも認めます。あのときは私達も余裕がありませんでしたので……。ですが、最近のドクターはあまりにも酷すぎです!!ご自分でロドス艦内の設備点検・修理に始まり戦闘訓練、指揮訓練、オペレーター達との交流からカウンセリングまで!!!明らかにオーバーワークです!!!一刻も早く休むべきです、ケルシー先生もそう言っています」

 

「……それでも、私は休むわけにはいかないし、仮に休息を取るとしても、君の思うような休息にはなれないんだ、アーミヤ。それに、私は一刻も早くかつての(ドクター)としての私を取り戻さなければいけないんだ」

 

「………?」

 

 

 

「君たち、私を知るオペレーター達が、(ドクター)を通してドクター()を見ていることは知っているんだ」

 

「……!!」

 

 

「きっと、君たちは失望しただろう。エリートオペレーターが、中堅オペレーターが、新人オペレーターが、命を賭して救おうとしたドクター()は、なんの記憶も知識も能力も持ってないただの無能の(ドクター)だったのだから」

 

「………」

 

「私は私なりに頑張ろうとはしたさ。だけど、どうやってもだめなんだ。私は私であり、私はドクター()にはなれない。記憶を取り戻し、知識を取り戻し、能力を取り戻さなければ、本当の、君たちにとってのドクター()にはなれないことを悟ってしまったんだ。だから君たちの期待に応えなければいけないんだ、アーミ……ッ!?」

 

 

――私は、きっと今、酷い顔なのだろう

 

 

「……どうして、そんな事、を………っ、仰ら、れる、の…ですか……っ?」

 

「ア、アーミ……ヤ?な、何故、泣いているんだ?」

 

――私は、きっと、悪い娘なのだろう

 

 

「わた、私…たち、はっ、ド、クター…が、ぶ、無…事で、よかっ……た…っ、た、ただ…、それだけ、それ、だけ……っ、なの、なのに……!」

 

「アーミヤ!!」

 

 

――私は、それなのに、幸せを感じています

 

 

「……すまない、どうやら私が悲しい思いにさせてしまったようだ。私は、君たちの知っているドクター()になれれば、君たちも安心するのではないかと思っていたんだ。」

 

「…………ぐすっ」

 

「泣かないでくれ、アーミヤ、すまなかった」

 

 

「……私たちにとっては、前のドクターも、今の貴方も、かけがえのない、ドクターなんです。」

 

「………ああ」

 

「ですから、どうか、どうか…。そのようなことを、言わないでください、ドクター……。私は、あなたの……こ、とを…………」

 

「……………」

 

「……スゥ……、スゥ………」

 

 

「……きっと、疲れていたんだな。アーミヤ」

「すまない、私が不甲斐ないばかりに、君に苦労をかけさせてしまっていて」

「……おやすみ、アーミヤ。いい夢を」

 

 

――わたしと、どくたーと、けるしーせんせい

みんな、わらっている。

 

ああ、わたしはとっても、しあわせですよ?ドクター……。




第一戦、アーミヤ、敗北


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vsパフューマー・メランサペア

例の知り合いは
「感想もらえたらやる気が出るのはマジ」
って言ってたけどこれはマジだった。

あと書いてるうちに楽しくなってきたから
書こうと思った。


「……というわけなんですよ、パフューマーさん」

 

「あらあら、困ったドクターくんね……。どう思う?メランサちゃん」

 

「え、えっと……。私としても、ドクターには、その…、ちゃんと、休んでほしい、と思います……」

 

「そうよねぇ?ドクターくんは周りを熱心に見てくれているけど、彼、絶対に自分のこと採算に入れてないもの。困っちゃうわ」

 

「なので、お二方のアロマの力で何とかならないかなと思いまして…」

 

「お姉さんに任せなさいアーミヤちゃん。必ず、ドクターくんを安らかな睡眠に導いてみせるわ!」

 

「わ、私も、お手伝いします。頑張ります、アーミヤさん」

 

「よかった!お願いしますね!パフューマーさん!メランサさん!」

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

というわけでドクターくんの部屋にメランサちゃんと来たのはいいけど、ちゃんとできるのかしらね……

コンコンッ

「……どうぞ」

 

「失礼するわ、ドクターくん。今、時間空いてるかしら?」

 

「パフューマーと……、メランサか。どうかしたのか?」

 

「し、失礼致します…」

 

「ふふっ、私達二人がアロマを作っているのはご存知でしょう?今回は新作を持ってきたから、ドクターくんに試してほしいと思ったのよ」

 

「なるほど、そういう事か。なら、そこのスペースに置いておいてくれ。後でじっくりと堪能させてもらうことにするよ」

 

「あら、今じゃ不都合かしら?」

 

「仕事が終わってないんだ。まだ就業時間だしな」

 

「…そういう事なら、私達も手伝うわよ?ドクターくん。早く終わらせて、一緒に楽しみましょう?」

 

「わ、私も、お仕事、手伝わせて、ください」

 

「……そう言うなら、お言葉に甘えて」

 

 

 

カリカリ

「……ねぇ、ドクターくん」

 

カリカリカリカリ

「どうした?パフューマー」

 

カリカリ

「貴方、書くペース速すぎやしないかしら?」

 

カリカリカリカリ

「これが普通じゃないのか?アーミヤはこの速度でも遅いと言いたげな目をしていたが」

 

カリッ…カリッ…

(……絶対、ドクターの仕事が早すぎて、驚いていただけでは……?)

 

カリカリ

「あ、あら……。そうだったのね……」

 

カリカリカリカリ

「それに、仕事が早いのはなんのデメリットもないだろう。それだけ終わる時間も早ければ、他のことに時間を使えるしな」

 

カリカリ

「他のことって?」

 

カリカリカリカリ

「施設の点検やオペレーター達の仕事の分担、作戦記録や資金の確保、オペレーター達を昇進させるためやスキルを上げるための素材集め。やることは山ほどある」

 

カリッ…カリッ…

(……やることが多すぎて、不安になります……)

 

カリカリカリッ……

「……よし、今日はこんなものでいいだろう。お疲れ様だパフューマー、メランサ。手伝ってもらって悪かったな。すまなかった」

 

「いいのよ、ドクターくん。むしろ、あなたはもっと他の人を頼ったほうがいいわ。貴方はひとりじゃないもの。」

 

「……そうか、そうだな。それじゃ、約束通りアロマを堪能させてもらうことにするよ」

 

「私達もご一緒していいかしら?やっぱり作る側としては、ドクターくんの意見も聞きたいもの。ね?メランサちゃん」

 

「は、はい……そうですね」

 

「ふぅむ、そういうものなのか。わかった、別に拒否をする必要もないしな」

 

「助かるわ、ドクターくん。じゃあ、開けるわね?」

 

パフューマーがアロマオイルの入った蓋を開けた瞬間、爽やかで、とても良い香りが漂い始めた。

 

 

「……おお、いい香りだ、どういう花を使ったんだ?」

 

「ふふ、ラベンダーとプチグレンっていうのを使ったのよ。リラックス効果の高いもので、例えばストレスを和らげたり、不眠なんかにも効果があるわね」

 

「…ああ、これはいい、心がとても穏やかになったのがわかる。私なんかのためにありがとう、パフューマー、メランサ」

 

「良いのよ、これはドクター君のために作ったんだもの、気に入ってくれて良かったわ」

 

「……はい。良かった、です」

 

「ふむ、せっかく作ってきてくれたのだし、こっちが何も出さないというのも失礼だな。コーヒーでも出そうか?」

 

「あら、じゃあお願いしようかしら?」

 

「わ、私は、ミルクを入れていただけると、嬉しいです」

 

「メランサはミルク入りだな、わかった。パフューマーは?」

 

「じゃあ私もミルクを入れてもらおうかしら」

 

「わかった、すぐ淹れてくるから待っててくれ」

 

 

 

 

「で、だ。二人に聞きたいことがある」

 

「「?」」

 

「これはアーミヤからの差し金か?」

 

「………あら、どうしてそう思うのかしら?」

 

 

「とても簡単なことだが、先程パフューマーが言っていたラベンダーとプチグレン、これは2つともリラックス効果があり、更にパフューマーの不眠なんかに効果がある、という点だ。昨日アーミヤが私が睡眠をとらないという点にひどく不満を持っていたからな。大方アロマに精通している二人にどうにかしてくれと泣きつかれたんじゃないか?」

 

「…………そうね、そのとおりよ。中々鋭いわね」

 

「短い間とはいえ君達オペレーターと関わっているんだ。部下である君達の事を把握せずに上司などやっていられないさ」

 

「ふ~ん…、そうなのね。わかっているのなら、ちゃんと休んだら良いじゃないの」

 

「いや、だから、昨日もアーミヤに対して言ったが、私は意識を手放すことができないんだ。暗い部屋でずっと覚醒したまま横になって何もしないくらいなら、なにかしてたほうがずっとマシなんだ。それこそ仕事だろうとな」

 

「でも、睡眠欲とか、眠気とかってこないの?どんな種族でも睡眠は必要よ?体が休まらないじゃない」

 

「いいや、充分なほど休んでいるさ。こうして君達が私のためにアロマを作ってくれたように、私のことを手伝ってくれたりするオペレーターもかなり多い。そういうオペレーターたちと会話しながらコーヒーを飲んだりすることこそ、私にとっての休息なんだ。それは、今君達とこうしてコーヒーを飲んでいることも含んでいる。つまり、君達が元気にいてくれることこそ、私が一番休める状況なんだよ、パフューマー」

 

 

「……ずるい人。そんなこと言われたら、こっちだって強く言えないじゃない。まったく、ドクターくんは卑怯ね」

 

「……なにか、気に触ってしまったか?」

 

「いいえ、いいえ。私は満足よ、ドクターくん。でも、これには睡眠欲を掻き立てる効果もあるのに、そんな素振り見せないんだもの。残念ね」

 

「…すまん」

 

「謝ることじゃないわ。今回は駄目だったけど、このくらいでは諦めないわよ?」

 

「…………できれば、諦めてくれると助かるんだがなぁ…」

 

「ふふっ、じゃあ、お邪魔したわね。帰りましょう?メランサちゃん」

 

「……は、はい」

 

(しまった、メランサが全く話に入っていなかったことに気づけていなかった、これはいけない)

 

「…メランサ、私とパフューマーだけが話していてすまなかったな。君にも感謝しているよ。ありがとう」

 

「…い、いえ。」

 

「なんだか私のほうが眠くなっちゃったわ、就業時間は過ぎたし、このまま寝させてもらおうかしら」

 

「すまなかったな、二人共。今度、私にできるお礼であればなんでもさせてもらうが」

 

「気にしてないわよ。私達の目標はドクターを眠らせることだったのに、失敗しちゃったわね」

 

「……無理だと、思うが…」

 

「いいえ、絶対に諦めるもんですか。こうなった意地でも私たちのアロマで寝てもらわなきゃ」

 

「……まぁ、君たちの調合するアロマは全部素晴らしいものだ。また、作ってくれるか?」

 

「もちろん!ね?メランサちゃん」

 

「は、はい。今度、こそ、ドクターを、眠らせてみせます…!」

 

「気合い充分みたいね、それじゃ、ドクターくん、いい夢を」

 

「……ああ、いい夢を」

 

バタン

 

 

「……いい夢、か」

「私に、そのいい夢を見る権利が、はたしてあるのだろうか」

「皆を死地に送り込んでいるのは私なのに」

「私が、幸せになるのを享受して良いものなのだろうか……」




第二戦、パフューマー&メランサペア、敗北

地の文少なすぎて笑える


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vsシルバーアッシュ

寝かせるオペレーターのイメージがつかなさすぎて禿そう
誰がどんなことするのかわからなさすぎるしこれさせていいのかっていう疑問が尽きない
書くのすっごい難しい、誰か助けて


コンコンッ

「失礼するぞ、我が盟友」

 

「ん……、シルバーアッシュ………に、プラマニクスとクリフハートまで?どうしたんだ。3人揃うなんて珍しいじゃないか」

 

「…この人が、どうしてもと、頭を下げてきたので。最近、ドクターのオーバーワーク気味な姿勢に、目も当てられないから、一緒に説得してくれと」

 

「そうだよドクター!仕事ばっかりでつまらないじゃん!一緒に遊ぼうよ!イェラグで登山とかどう!?」

 

「…とは言ってもなぁ、やらなきゃいけないことは山ほどあるんだ。それに、君たちが安心してオペレーターを継続できる環境を作るのも私の役目だ。おいそれと休むわけにはいかないんだよ」

 

「それを一ヶ月も続けているという環境に、疑問を抱いたことはないのか?私も一企業の主ではあるが、過ぎた仕事は却って苦難を生む。上の者が全く休んでないとなれば、他のオペレーター達であろうと、気を張ってしまうだろう。休息も仕事のうちだぞ、盟友」

 

「大丈夫じゃないかなぁ……。今まで大丈夫だったし」

 

「……むぅ。たまには業務以外のこともやってみては如何ですか?英気を養うことも大切でございますよ?」

 

「私としては君たちが健康でいてくれて、私と会話してくれるだけで充分養えていると思っているんだけどなぁ……」

 

「………ねぇ、ドクター。これ、なんで日付が1ヶ月後なの?」

 

 

 

「うおっ!?いつの間に!?」

 

「ねぇ、ドクター。質問に応えて?なんで、この書類は、処理期限が1ヶ月も先なのかな?」

 

「い、いや、それは………」

 

「……どういう事だ、エンシア」

 

「どうしたもこうしたも無いよお兄ちゃん!ドクターは特に緊急性のない書類ばっかり作業してる!!今月処理が必要な書類なんて一枚もないよ!!」

 

「……なんだと?」

 

「待て待てクリフハート!確かに緊急性は無いがいずれ処理しなければならない書類なんだ!処理できるときに処理しておいて損はないだろう!?」

 

「それがオーバーワークだって言ってるの!!このままじゃドクターすぐに壊れちゃうよ!?死にたいの!??」

 

「いや、死にたくないからこうして仕事をしているわけなんだが………」

 

「……やはり、無理矢理祝福を授けて……」

 

「エンヤ「気安く、呼ばないで、頂けますか?」………………………プラマニクスよ、祝福を授けたらドクターは仕事を休むのか?」

 

「…さぁ、どうでしょうか。一筋縄では、いかなさそうですが」

 

「とーにーかーくー!!外に出るのー!!運動足りてないんじゃないのー!?」

 

「待て待て引っ張るなクリフハート!!エンカクと戦闘訓練してるから身体は動かしてる!!引っ張らないでくれ頼むから!!シ、シルバーアッシュ!!助けてくれ!!!」

 

「自業自得だ、盟友。流石の私でも今回だけは盟友の力にはなれんらしい」

 

「……エンシア、程々にしてあげてくださいね」

 

「わかったよお姉ちゃん!!ほーらー!!いーくーよー!!!」

 

「うわあああああぁぁぁぁぁぁああああああああああああ………………」

 

「……行ったか」

 

「…はぁ、手間のかかるお方です事……」

 

「済まなかったな、エンヤよ」

 

「……貴方が、誠意を、見せてくれたからです。次は、ありませんが」

 

 

 

 

「はぁ、どうしてこんな事に……」

 

「まーだ言ってるのドクター?そんなんじゃダメダメ!ほーら、もっと笑って笑って!」

 

…内心、ドクターは辟易としていた。

何故、こうまで執拗に自分に仕事をさせまいと妨害してくるのか、それがどうしても分からなかった。

自分が救出されるまでロドスの大半の施設が機能していなかったわけでもなく、特に業務に支障が出ていたわけではない。

であるばらば、自分一人潰れたところで、特に問題などあるはず無いと思っているのだ。

 

「……なぁ、クリフハート」

 

「?どしたの、ドクター」

 

「なんで、そんなに私が仕事をしようとするのを阻止するんだ?」

 

「なんでって、ドクターのことが大切だからに決まってるじゃん!ほんとにどうしちゃったの?ドクター」

 

「私は、君たちに大切にされるようなことはしていない。君たちが私を大切にする理由はないはずだ。それに、仮に私が居なくたってロドスは動き続ける。私がいようといまいと変わらないんじゃないのか?」

 

「……っ」

 

「それに、君たちが見ているのは過去のドクター()だろう?もう、過去には戻れない。嘗てのドクター()でなくなった(ドクター)に、存在価値などないに等しいだろう」

 

「………じゃあさ、ドクター」

 

――クリフハートの声は、震えていた。

 

「ドクターはさ、私達のこと、大切じゃないの?」

 

「大切に決まっているだろう」

 

「じゃあ、答えは出てるじゃん。私達が、ドクターを大切にする理由なんてさ」

 

「だが、それはあくまで業務上の関係で…」

 

 

 

「業務上の関係でしか無かったら、私達が怪我をしたときにあんなに慌てふためく必要ないじゃん!!!!!」

 

「っ、ク、クリフハート?」

 

「怪我をしたとき、毎回毎回必死な形相で声をかけてくるじゃん!!あれは何なの!?業務上の関係だけだったらあんなことやる必要ないよね!?違う!!?」

 

「………」

 

「ドクターが私達のことを大切に思ってくれてるのと同じくらい、私達はドクターを大切に思ってるんだよ!!どうしてそれをわかってくれないの!?」

 

「……クリフハート」

 

「もういい!!知らない!!!!」

 

 

「………はぁ」

 

またやってしまった。

以前のアーミヤと同じように泣かせてしまった。

 

私はいつもこれだ

他人に辟易して、冷たくあしらって、自分に辟易する。永久にこれを繰り返している。救いのようのないクズだ。

 

「……ははっ、何をやってるんだ俺は……」

 

自分に存在価値がないと言っておきながら、そのくせ今の自分を受け入れて欲しい気持ちばかり人一倍強い。何という自己顕示欲の強さ。

 

「…………ほんっっとうに、反吐が出る」

 

やっぱり私は、存在するべきではない。

ドクターとして、いていい存在じゃない。

 

「………………帰ろう」

 

帰ろう、ドクターの居場所へ(私ではない者の居場所へ)

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

「ドクター、おはようございます。今日の業務開始時間です」

 

「…ああ」

 

「……クリフハートさんを、泣かせたと聞きました」

 

「……ああ」

 

「私だけに飽き足らず、彼女にも言ったんですか?」

 

「………ああ」

 

「…………今回ばかりは、私としても看過できません。罰として、一週間仕事を取り上げさせていただきます」

 

「…………わかった。甘んじて受け入れよう」

 

「えっ」

 

「……ん?どうした、アーミヤ」

 

「随分素直に、引き下がるんですね」

 

「今回ばかりは私に非があるのは明白だ。そこで駄々をこねるほど私は幼稚ではないつもりだ」

 

「……まさか、熱でもあるんですか!?」

 

「なんでそうなるかなぁ…………」

 

「やっぱりこんな生活じゃ体調管理なんてできません!!さぁ!!今すぐ休んでください!!!ハリー!!ハリー!!」

 

 

 

 

 

(……もしかして、これが目的だったんじゃ……?)

 

 

 

〜〜〜

 

 

「……お兄様」

 

「…どうした、プラマニクス」

 

「ドクター、エンカクさんと、戦闘訓練をしていると、仰っていましたが?」

 

「……たしかに言っていたな」

 

「……どうして、五体満足で、生きていられるのでしょう……?」




第三戦、シルバーアッシュ(一家)(+アーミヤ)、辛勝(?)
シルバーアッシュとは言ったがシルバーアッシュ単体とは言ってない
これを詭弁と言う
しかも就寝させられてないから勝ったのかどうかすら凄まじく微妙だけど仕事休ませられたし辛くも勝利でいっかーになった


例の知り合いがフレンド募集してたんで
僕も募集しまーす

紀伊#9364か
12769818でどうぞ


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停戦1日目

何を書けばいいのか
何を書いていいのか
わからない


仕事を取り上げられる宣言から夜が明け、

ドクターは自室に籠もっていた。特に何もすることがないからである。目覚めてから1ヶ月、仕事以外をしてこなかった人間が趣味など持っているはずもなく。

時間の潰し方さえわからずにいた。

 

(……はぁ)

 

このドクター、おおよそ娯楽と呼べるものに触れてこなかったせいか部屋に生活感が全くと言っていいほど無い。監獄と見間違えるかのようになにもないと言って差し支えないだろう。

 

(……何をしよう、仕事したいんだけどな…)

 

おまけにワーカーホリックと来たもんだ、救いようがない。

 

(……腹が減ったな。食堂に行ってみるか)

 

 

 

 

「あっ、ドクター!おはよう!いらっしゃい!!」

 

「おはよう、グム。今日も元気がいいみたいだな」

 

「へっへーん!お腹が空いたの?待っててね!今日の朝のメニューはたまごサラダとコーンスープだよ!主食はパンかご飯のどっちかを選んでね!」

 

「ふむ、それならばパンを頂こうか」

 

「おっけー!ヤーカのおじさん!お願いね!」

 

「お………、……いや、承知した」

 

「……グム、マッターホルンのことをおじさんと呼ぶのはいかがなものなんだ、彼だってそこまで年くってるわけでもないだろう」

 

「ごめんね、でも、お兄さんって言うには貫禄がありすぎて…」

 

「いや、まぁ、気持ちはわかるけども……」

 

「……ドクター、俺は気にしてませんよ。はい、今日のメニューです」

 

「うん、ありがとう。今日も美味しそうだ」

 

 

「……ドクター、隣、失礼してもいいかしら?」

 

「ああ、スカジか。良いぞ」

 

私の隣にスカジが腰掛けてくる、今思えば、彼女も随分変わったものだ。

 

「…ふっ」

 

「…どうして笑ったのかしら?」

 

「いやなに、君がここに来た当初のことを思い出していただけだ。あの時の君は…」

 

「………その話はやめてちょうだい。恥ずかしいわ」

 

「ふむ、君にも羞恥心というものがあったのか。これは初耳だな」

 

「斬るわよ」

 

「冗談だよ、すまん」

 

「……」

 

「……最近、どうだ」

 

「…まぁ、ドクターのおかげで、それなりに交友関係も築けてきたわ。特にエンカクやヘラグ、メランサは素晴らしい強者ね。是非ともハンターになってくれないかしら」

 

「ロドスがとんでもないことになるからやめてくれ。ただでさえナマモノが多いんだから」

 

「冗談よ。これでおあいこね」

 

「……本当に、丸くなったもんだな」

 

「人は変わるもの、と教えてくれたのはドクターだもの」

 

「…はは、そうか」

 

「…御馳走様。じゃあ、私は行くわね。また会いましょう、ドクター」

 

「……ああ、また、な」

 

 

 

 

「スカジさん、最近よく笑顔を見るんだよねー。ドクターのおかげかな?」

 

「まさか。私は何もしてないさ。それだけこのロドスという場所が歓迎的だということだろう」

 

「…えへへ、ドクター、ありがとね」

 

「ん?私はなにかグムに感謝されるようなことをしただろうか?」

 

「…私達を、助けてくれたもん。もしロドスに拾われてなかったら、どうなってたか……。ソニアちゃんたちも、口ではつっけんどんだけど、きっとドクターには感謝してるよ。だから、ありがとね!!」

 

「…………、礼を言われるほどの事じゃないさ。困っている人がいたら、助けたいと思うのは人間の性だろう?そこに、感染者も、非感染者も関係ない。救いたいと思ったから救っただけだ。……だから、こちらこそお礼を言わなければならない。生きててくれて、ありがとう……ってね」

 

「……ふふっ、なんだか改まると照れくさいね」

 

「……そうだな。朝食、美味しかったよ。いつもありがとうな」

 

「気にしないで!皆がお腹いっぱいになってるのを見ると、こっちも幸せだから!」

 

そういうグムの顔は、まるでひまわりが咲いたかのような満面の笑みだった。……私には、眩しすぎるくらいの。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

どうやら、ロドスは今日もうまく回っていたようだった。……私なんて、本当に居なくてもいいかのように。

 

(……こういう考え方だから、アーミヤやクリフハートを泣かせてしまうんだろうなぁ)

 

わかっている。

わかっては、いるのだ。

 

だが、それでも、自分がここに居ることによる疎外感は凄まじい。彼ら、彼女らは今の私を求めていない。どう考えようとも理念はかつての私を取り戻すことにある。それがたまらなく辛い。謂わば一つの人間の体に宿ったもう一つの自我を完全否定されているようなものなのだから。

オペレーター達はみんな優しい。中には少々言葉にトゲがあるオペレーターもいるが、それでも気遣いなどを忘れない。そんな彼ら彼女らだからこそ、今の私に直接具申しないのだろう。だが、心の奥底、本人でも自覚ができないような深層心理では、かつてのドクター()への渇望、今の(ドクター)への失望がきっとあるに違いない。それがどうしようもなく居た堪れない気持ちを掻き立てる。

私は要らない存在なのだから(ドクターが必要なのだから)




この世界線のオペレーター達の親密度200%どころじゃ済まなさそう
例の知り合いとやるApexは楽しいね

あとすんごい数のフレンド申請あざした
フレンド5人しかいなかったのがいつの間にか30人近くになってて面白かったです


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停戦2日目

ご都合主義と捏造と独自設定って
考えるのはいいんだけど後で相当詰まりやすいよね


さてアーミヤより仕事を取り上げられてから2日目。今日はロドス自体が珍しく休みであり、職員の大半は龍門に遊びに行っている。そんな中ドクターは……、

 

「……………………」

 

……執務室で溶けていた。

厳密に言えば椅子からずり落ちているレベルまで深く腰を落としているだけなのだが。学校の椅子でそれをやると後ろにガッタンと倒れるから、あの音は何故か無性に恐怖心を抱いていた記憶がある。

 

閑話休題(それはそれとして)

 

さしてやることもない上にやれることもないドクターは、外出するわけでもなくただひたすら一人執務室でダラダラとしていた。

 

「……………………………あぁ〜」

 

そもそも趣味といった趣味を持ち合わせてこなかった人間が趣味の作り方などそう簡単に覚えられるわけもなく。

戦闘指揮にはとんでもない才能を発揮するドクターではあったが、私生活方面ではこれでもかというほどポンコツであった。

 

アーミヤはエイヤフィヤトラやスカイフレアなど術師たちの集まりに行き、ケルシーはレッドとともにウェイ長官の元に赴いている。首脳陣……というか、最高責任者3人のうち二人がいないというか、そもそもロドスに残っている人間も数人いるかいないかである。

端的に言えばぼっちを満喫していた。

 

オペレーター達とは業務上の関係でしか関わってないとずっと思っているドクターは個人個人の好きなものとか趣味とかなど一切把握できていないのだ。というかプライベート自体無いも同義なのだが。

 

 

…………オペレーター達の外出理由の9割はドクターへの贈り物だという点だけは余談として伝えておこう。

 

 

 

「失礼するぞ、ドクター」

 

「……んおぉ…、フロストノヴァかぁー…、どうしたぁー……」

 

「…見事なまでのだらけようだな。あのウサギに見つかったらなにか言われるのではないか?」

 

「だいじょーぶだいじょーぶぅ……。アーミヤは私に対してめちゃくちゃ休んでくれって言うからさぁー……」

 

「私としてはその体勢で休めているというお前の精神状況を疑わねばならないのだが」

 

「……じょーだん、じょーだんだよぉ。流石に起きるさ。よいしょっと……。……さて、どうしたんだフロストノヴァ。私を訪ねてくるなんて、珍しいじゃないか?」

 

「……その切り替えには素直に称賛を送るべきなのか疑問ではあるが……、まぁいい。父さんを知らないか?」

 

「え、パトリオットさん?いや、私は見てないけど……」

 

「…そうか」

 

 

「……パトリオット卿なら、今朝方外出をしていたぞ。ドクター」

 

「おわっ、ファントム?驚いたよ」

 

「……何処に行ったかはわかるか?」

 

「……さてな。私はロドスから出ていない。依って、パトリオット卿の外出先までは、把握していない。」

 

「…そうか、邪魔したな。ドクター」

 

「構わんさ。何かあったらいつでも訪ねてくるといい。力になれるかどうかはわからないが、必ず協力しよう」

 

「……ああ、何かあったら、な」

 

 

 

「ありがとう、助かったよファントム」

 

「礼には及ばない。フロストノヴァ嬢の疑問に応えただけだ」

 

「それでもだよ。私の把握していない部分を見てくれているんだ。感謝しているよ」

 

「…であるならば、ありがたく謝辞を受け取ろう。しかし、君はかつて敵であった彼女らに対して平等に接するのだな」

 

「……かつて敵だった、という観点から言えばイーサンもスカルシュレッダーもそうさ。他にも、元レユニオン所属だった者たちだっておおい。彼らだって、やむを得ない事情があったから、自分の信念を信じてレユニオンに入ったんだ。このロドスという機構は、敵味方なんていう些細なものに縛られてはいけない。鉱石病を患ったすべての感染者に平等であるべきなのだから」

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

時はフロストノヴァ戦まで遡り……

 

「……フッ……、砕けた、か」

「あの石頭が……どこぞの巫にもらってきたものだ。……私の命を繋ぎ止めることができる、などと言っていたが」

「一度の戦闘すら持ち堪えられないとはな。フフ、やはり贋物か」

「私達の『親子関係』も同じようなものかもしれんな……。そして今のデタラメなレユニオンも……同じようなものだ」

 

「うっ!ぐ……。」

 

「ゴホゴホッ……。ブレイズさん!」

 

「寒流が……消えた。私は大丈夫!アーミヤちゃん、早く、あの白ウサギを!」

 

「素晴らしい。お前たちの完勝だ、ロドス。私の兄弟姉妹たちは……私がむざむざ死なせてしまった」

「私たちには、何もできなかった。私の命には……なんの価値もなかった」

 

「…いいや、それは違う。違うぞ、フロストノヴァ。君の志は、彼らに確かな信念を与えたじゃないか!!」

 

「……」

 

「死にゆく私に、これ以上付き合う必要はない」

「お前たちがまだ救える者たちを救うんだ。急げ。早く行け。」

「あの黒装束たちの阻止、帰る場所を失った感染者の収容……。なんだっていい」

「往くんだ。そして価値あることを成せ」

 

「……。ドクター……」

 

「……アーミヤ、ブレイズ、グレースロート。すまないが、先に行っててくれ」

 

「……わかりました。ドクター、フロストノヴァさんに、あの言葉を伝えてください……。……お願いします」

 

「……ああ、わかった」

 

「フッ…、本当に甘い子ウサギ…だ。……似ているな。あの頃のタルラに、そっくりだ…」

「死を前にしてそんな奴に出会えるとはな。堅い意志で理想を成そうとする者に……」

 

「……フロストノヴァ。君は、言っていたじゃないか。責任はどうするんだ!?」

 

「…お前のことだ。もう分かっているのだろう?悪人には、悪人としてあるべき姿がある。この結末に、私は不満などない」

「お前たちを傷つけ、レユニオンと共に罪なき龍門人を標的にし、結果的にウルサスの感染者たちの暗い未来の訪れを早めた。……そんな者には、ロドスに行く資格などありはしない」

 

「資格なんて関係ない!君を守って散っていたスノーデビル達は、みんな君が生きることを望んでいたじゃないか!!」

 

「…ああ、そうだろう。私の兄弟姉妹は……あの馬鹿者たちは、私が生きることを望むだろうな」

「私が死んだとしても、あの馬鹿者たちには生きていくことのできる居場所が見つかるだろうと考えていた」

「……だが、それは間違いだった。彼らは皆死んでしまった。この元から先の長くない、私を守るために。……無念だ。私たちの命は、全部いいように利用されてしまった」

「そして、私のこの最期の一時は、自身で勝ち得たものなどではない。これは彼らの血を代償に手に入れたものに過ぎないのだ!!」

「…この残された僅かな命は……せめて信頼できる者のために使うとしよう。………ありがとう」

 

「………フロストノヴァ……………」

 

「……フッ……、仮にもし我々が生き延びたとしても、どこに行けと言うのだ?我々には元より他に行ける場所などない。唯一知る場所といえば、あの凍原だけだ」

「……龍門は、ウルサスにはなり得ない。同胞と感染者を救い出し、暖かく、食べ物も住まいもある場所に連れて行くとしても……。その場所は、龍門であるべきではない。…初めから、龍門を目指すべきではなかった。龍門の市民とて同じように苦しんで、日々の生活を生きながらえているのだから」

「…我々が帰るべきは、ウルサスだけだ……、我らが、祖国に……」

「雪……、静かに流れる河……、風に揺れる松林……、深緑の苔……。…ああ、この大地は、なんと美しいのだろう……」

 

「……フロストノヴァ、聞かせてくれ。全てを画策したのは、タルラだと、そういうのか?」

 

「……ああ、そうだ。私の推測が正しいのならば……、すでに力を蓄えた陰謀が、虎視眈々と機会をうかがっている」

「ボジョカスティの老いぼれが、いくらか時間を稼いだとしても、あのタルラがこのような陰謀を画策したからには、必ずなにか対策をしているだろう」

「龍門には、もう手出しをする機会はないだろう……。ウルサスも、成り行きを見守るだけだ」

「だが、まだお前たちがいる。感染者には、まだ希望が残されている。たとえ一繡の望みであったとしても――

 

――タルラを討ち滅ぼせ。彼女の狂気を止めろ、レユニオンがさらに多くの感染者を飲み込まないために。レユニオンに、タルラは必要ない。いかなるタルラも必要ない……」

「……あるいは……。私個人としての願いだ…、彼女を、救ってやってくれ。……いや、彼女の助けになってほしい。私たちのような数多の感染者の同胞たちと共に……」

「あの本物の……、泥に塗れながら進み続ける……、タルラを……」

 

「……フロストノヴァ」

 

「…………なん………だ……?」

 

「……君の父は、君のことを心から愛していたと思う。君のために死んだ両親を、…君が、覚えていたように」

「父が君のためにやってきた全てのことを、…君は覚えている」

 

「………。そんなこと……、もちろん知っているさ……。…ただ……、いま私は奴よりも先に、死のうとしているのだ……」

「……もし、奴が私を拾わなければ……、どんなに良かったか……。そうすれば……、奴も私のために……、苦しむことはなかった……。……元から……、あれほど、苦しい思いを、してきたというのに………」

 

「……苦しい思いをしてきたからこそ、ボジョカスティは君を大切にしていたんだ……」

 

「…フフ……。………『ドクター』……。…そう、呼んでも……いいだろう……?」

「ドクター……、この大地では……、我々の選択など……意味を成さないのかもしれない……。……だが、それでも……、たとえ結果は変わらなくとも……、私は、自ら選びたいと願った……。…そして、自ら、選んだのだ……」

「……この、手で。拭ったのだ…、…己の行いが……実らせた果実を……」

 

――つぅ、と。フロストノヴァの指が、ドクターの頬をなぞった。

 

「……フロストノヴァ、君の指が、とても温かい………」

 

「…フフ……、変だな……。…お前の顔が、冷たく……感じるなんて……。……私の、体温は……、もうそれほど……低くないと……いうのか……?」

 

「……ああ、温かい。とても、とても温かいよ…、フロストノヴァ……。君の手が……、温かいんだ……」

 

「……死を、前にして……、ようやく……、再び人と触れ合えるようになったか………」

 

「…フロストノヴァ。アーミヤも、君がロドスに来ることを、望んでいる…!」

 

「……この私に……、…本当に……、その、資格が…、あるのか……?」

 

「さっきも言っただろう。資格なんて、関係ない。関係ないんだ、フロストノヴァ。……ただ、死ぬだけでは、過ちを挽回することもできなくなってしまう」

 

「…フッ……。それに…、応えない……というのは……、…非礼と、いうものか……」

「……ドクター。どうか…アーミヤに、伝えてくれ。……この大地では、人は、一人の力では……何も、成し遂げられない……」

「……だが、……お前は、一人ではない……」

「…今、この瞬間から……。私が、お前の側にいる……。……私が、お前と、共に歩む……。…………私も……、ロドスの…一員となろう…………」

 

「……ありがとう、フロストノヴァ…」

 

「……いいや…。感謝、したいのは……、私の、方だ………。…ドクター、…お前の、その目は…、私の、古い知り合いに……、よく似ている………」

 

「……古い、知り合い…?」

 

「…遠い昔に、出会った男の子だ……。…あの子の、兄は……、敵の許しを、請うために……、頭を、…下げるくらい、なら……吊るし上げられたほうが、…マシだと……、言ったそうだ……」

「その…意思を継ぎ……、あの子は…、雪原を、越え…ウルサスの地を、踏襲しようと……、目標が異なる、我々とは別れたが……」

「……あれは……、私が、出会った中で……、最も、理想に生きた、者だった……。…少なくとも、今までは、そう考えていた……。……だが…、お前と、アーミヤを見て…、理想すらも、一つの信念に…、…なり得ると、知った……」

 

「……ロドスは、感染者を救いたいという、一つの理念の元で戦っている」

 

「……レユニオンも、最初は、同じだった…、はず、さ……。」

「……ああ、ドクター……。…お前は、本当に、よく似ている……。…お前の、目は、……あの子に、本当に…そっくりだ……」

「……ただ、お前は……、あの子の、ような……揺るぎなさの、代わりに……、優しさを、持っている……」

 

「……」

 

「……もう、放していい……。兄弟、姉妹たちが……、私を、待っている……」

 

――父さん…、私は本当に…、馬鹿な娘だったよ……。

…でも……、許して………。

 

「……いいや、駄目だ」

 

「……え………?」

 

「私は、私の目の前で人が死ぬのを絶対に許容しない。絶対に、絶対にだ!!」

「私は、なんとしてでも、君を救ってみせる!!!!」

 

「……ド、クター…」

 

 

そうだ。

私はドクターだ。

目の前の命をみすみす落とすことを見過ごしていいわけがない。いや、見過ごすわけにはいかない!!

 

「――ぅぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」

 

――フロストノヴァの周りに、淡い光が集まっていく。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「…ドクター、もう、いい。もう、いいんだ……」

 

――集まった光が、ゆっくりとフロストノヴァの身体を包んでゆく。

 

「……あたた、かい……。……この、光、は……??」

 

「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」

 

――眩い光に包まれ、思わず目を閉じる。

…目を、開けたときには……。

 

「…ドクター、ドクター!!」

 

「……ああ…、フロスト……ノヴァ…。……成功して、よかった……」

 

「何故だ、何故私のために、こんな無茶を……!」

 

「……君、には…、生きていて、欲しかったから……」

 

「…大馬鹿者め、お前は、大馬鹿者だ……!!」

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

「……ああ、懐かしいな」

 

「フロストノヴァ嬢がドクターを運んできたとき、ブレイズ嬢が殺意を全開にしていたそうだな?」

 

「あははは……、私のアーツのようなもののせいだろうね。アーミヤがとりなしてくれたらしくて助かったよ…」

 

「……自己犠牲も、程々にするのだな、ドクター。私を含め、ドクターに好意を向けている者は少なくないぞ」

 

「……うーん、皆私の何がそんなに良いんだろうね?」

 

「……さてな。私の口からは何も出さないでおこう」

 

 

 

「……父さん、どこに行っていたんだ?」

 

「…お前への、贈り物を、買いにな」

 

「……私へ?」

 

「あの、お守りは、砕けた。これは、私からの、個人的な、贈り物だ」

 

「……蒼色の、ペンダント?」

 

「…お前の、イメージに、合わせて、みた」

 

「……ああ、すごくいい。ありがとう、父さん」

 

「………ああ。よく、似合って、いる」




長くね?
例の知り合い1日1万文字以上書いてたらしいけどおばけにも程があらん?僕みたいな文才のないくそざこなめくじドクターにはとんでもないけどそんな分量書けないし書く気もありませんごめんなさい(

この世界線だとアレックス・ミーシャ姉弟は生きてるし、
ファウスト・メフィストも保護されてるので、
態度は軟化

さぁご都合主義と独自設定と独自展開のオンパレードだ
忙しくなるぞー(白目)


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停戦3日目

何が起きたんでしょう
先日12時投稿→翌6時に見てみたら
UAが3000近く伸びてるじゃありませんか
お気に入りもとんでもねぇことになってるし

な、何を言っているかわからねーと思うが
俺も何をされたのかわからなかった
頭がどうになっちまいそうだった
超能力だとか催眠術だとかそんなちゃちなもんじゃねぇ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ………

皆様の感想とお気に入りと評価が恐ろしいまでの励みになります、私が失踪しないように頑張ってください

???「頑張ってじゃねぇんだよ、おめぇも頑張んだよ!!」

…はい、ものすごいモチベに繋がっておりますので、当分は失踪しません
一月投稿しなかったら遊んでるか飽きてるか大学生活で死んでいるかなのでそこらへんよろしくお願いしときます

ついでに日間総合45位!
日間二次37位!!

マジでわからん
何がそんなに良かったのだろうか()
めちゃくちゃありがたいんですけどね


アーミヤから仕事を取り上げられて3日目……

 

「…ロン、これはー……あぁ、四暗刻単騎。64000点だな」

 

「だーーーーっっ!!まぁーただ!!まぁーたドクターに振り込んでやがる!!イカサマしてんじゃねぇだろうな!?」

 

「うーむ、私としては普通に打ってるだけのつもりなのだが………」

 

「ケッ、6回連続でW役満以上で上がられてたまるかってんだ!!絶対にサマ見破ってやる!!」

 

「…正直、ドクターが豪運すぎるだけだと思うんだが?」

 

「豪運でかたをつけられるレベルではない気もしますが。というか隊長、なぜ小官たちはドクターの執務室で麻雀などやっているのでしょうか?」

 

「さぁな。ニェンに聞いてみろ」

 

「あぁ?ドクターが働きすぎでぶっ倒れたって聞いたからよぉ。息抜きに麻雀でもしようぜって誘いに行こうと思ったら、お前ら見つけたから丁度いいな!って思っただけだぜ?」

 

「……まぁ、私は今日は職務中ではなかったからいいが……」

 

「小官もそうではありますが、とはいえ中々強引でしたな」

 

「カタブツのお前らじゃ口でなんて言おうと付いてこなかっただろうがよ」

 

((……まぁ、一理ある))

 

「まぁまぁニェン、彼女らは真面目なだけだ。カタブツなんて言うものではないよ。あと私は別に倒れてないからね?誰がそんなこと言ったんだ?」

 

「あのCEOだが?」

 

「…………はぁー…………………」

 

「凄まじく深いため息を見ましたね。中々苦労をされているようですな、ドクター」

 

「仕事したいのにさせてくれないストレスをどうしようか常に考えるのが日課になってしまったよ。おかげで理性が有り余っているせいで却ってしんどさがました気がする」

 

「(理性が有り余る?)……っつったってなぁ。ドクターが心配なのはウサギちゃんだけじゃねぇぜ?私だって多少は心配してんだからな?」

 

「え、いつの間にか住み着いてた居候がなんで私のことを心配するんだい?」

 

「よーし表出ろドクター。ギャンブルじゃ埒が明かねぇ、大人しくこいつで決めようぜ」

 

「そこまでですよ。今のはドクターの言い方も悪いですが」

 

「……ふん、自分の管理もできずに仕事に傾倒するだけの人間なぞ、三流にも劣る。覚えておけドクター」

 

「……ああ、覚えとくよ、チェン」

 

「……っだあああ!!むしゃくしゃする!!よし、飲もうぜお前ら!!」

 

「……まだ昼前だが?」

 

「今日は休みじゃねぇか!こういう日くらいパーッと飲もうぜ!!」

 

「飲みたいなら働いてくれないかなぁ……。職人であることに誇りを持つのは良い事だけれど、それ以外の時間ずっとだらけたり、挙げ句仕事中のオペレーターを麻雀に誘ったりするのはかなり痛いんだよ?」

 

「……カてぇこと言うなよドクター。私だって分別くらい弁えてるさ、当然な!」

 

「じゃあ今までニェンがしてきたこと全部取り敢えずアーミヤに「オーケーわかった何がほしい?何でも言ってみろ」……仕事がほしいんだけども」

 

「駄目だね。ウサギちゃんから絶対に仕事与えるなって言われてんだ。っつーわけでよ、飲もうぜ!!」

 

「……どうします、隊長」

 

「…まぁ、偶にはだが、こういう催しに付き合うのも良いだろうよ」

 

 

 

「……んー、やはりお酒というものは、中々どうして美味しいものだね」

 

「……う、ウイスキーをストレートで飲んで、なんで平然としてられんだドクター……」

 

「…………………うっ」

 

「……小官も、ドクターがここまで強いとは……」

 

「そうかなぁ。なんでお酒に強いのかも、私は覚えていなんだからな……」

 

「つ、強いって、レベルじゃ、ねーぞ………うぐぅ」

 

「おやおや、隊長は元よりそこまで強いわけではないですし、仕方ありませんね」

 

「……君は、強いな。ホシグマ」

 

「まぁ、鬼ですし」

 

「いいや、違う。お酒の強さではない。君自身の強さだ。それに、もう彼女らは寝ただろう。いつものように接してくれて構わない」

 

「……はて、私はドクターに何を見せたかな?」

 

「……レユニオンが、龍門を襲撃したときさ」

 

「………」

 

「私は、まだ目覚めてからほとんど時間が経っていなかった。ロドスにいたオペレーターの殆ども把握できていなかった時だ。そんな折、龍門に協定を結ぶために赴く日があっただろう?」

 

「……ああ、あったな」

 

「あのとき、スカルシュレッダーたちが襲ってきたとき、恥ずかしながら私は何もできなかった」

「目の前の助けられるはずだった感染者を、感染者を開放するという名目を掲げる組織に殺されたんだ」

「……彼らを守ったのは私ではない。近衛局と、近衛局を信頼して戦ってくれたオペレーター達の成果だ」

「私は決して襲われない場所から、彼らに、死地に赴けと命令しただけだった。……自分が、不甲斐なかった」

 

「……でも、ドクターは」

 

「皆まで言わなくて大丈夫だ。……あのときは、馬鹿なことをしたと思うよ」

 

「……私は、そうは思わない」

 

「………」

 

「あのとき、我々近衛局も、感染者に対する態度をどうすべきか非常に物議を醸した。感染者である以上、温情を与えるという選択肢が上層部には無かったからな」

 

「………」

 

「ドクターは、決して安全圏から偉そうに命令してるだけではない。だって、あの姉弟をきちんと救ったじゃないか」

 

「……あぁ、あのときは、あれ以外に方法が思いつかなかっただけさ。おかげで後でアーミヤとケルシーにこってりと絞られたよ」

 

「当たり前だろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()行くやつがどこに居る」

 

「……彼らを説得するには、これしかなかった」

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

―――スカルシュレッダーが奇襲を仕掛けてきたとき………

 

「き、貴様……!!」

 

「…終わりだ……!!」

 

「い、いやっ――!だめっ――――!!」

 

「―――――ッ!!」ギュッ

 

「!?き、貴様!!離せ!!!!」

 

「ドクター!!?」

 

「…目の前の感染者を、離すわけにはいかない!!!」

 

「馬鹿か貴様は!?なぜ自分から死にに来た!?」

 

「私はドクターだ!!!感染者を救うことができないこの命など、いくらでも投げ捨ててやろう!!!」

 

「ドクター!ドクター!!離れてください!!今!すぐに!!!」

 

「――後悔、するなよっ―――――!!!!」

 

 

――ドガアアアアァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!

 

「ドクターーーーーーーーー!!!!!!」

 

 

 

「……ごほっ、ごほっ!!がはっ!!」

 

「ドクター!?ドクター!!?しっかりしてください!!!」

 

「…わ、私のことは、いい……!ご、ぶっ……!げっほごほっ!ス、スカル、シュレッダー、は?」

 

「……彼なら、あそこに拘束されています。って、ドクター!?安静にしてください!!源石爆弾をもろに喰らったんですよ!?」

 

「い、いん、だ…!ごほっ……!!……か、彼と、話が、したい」

 

「ド、クター……。………っ、肩を、お貸しします」

 

「…あり、がとう。アー、ミヤ。ごほっごほっ!」

 

 

「……貴様、なんだ、あの真似は?」

 

「ごほっ!……君が、源石、爆弾の、爆発力、を、下げて、くれて、助かった、よ。ごほっ」

 

「貴様……!!!」

 

「…私、たちは、鉱石病を、無くし、たい。感染者、たちを、一人も、残さず、に、治療、して、あげたい、だけ、なんだ。スカル、シュレッダー……ごほっごほっ」

 

「ならば貴様にもわかるだろう、俺たちの苦しみが、俺たちの怒りが!!同胞をいともたやすく切り捨てる貴様らが、感染者を救うだと?笑わせるな偽善者!!感染者を真に理解できているのはレユニオンだけだ!!」

 

「……じゃ、あ。どう、して、タルラ、は、助けに、来ない……?」

 

「―――」

 

「君たちの、こと、を。真に、理解して、いるので、あれば、ごほっ!…彼女は、きっと、助けに、くる、はずなの、に……」

 

「…タルラさんは、タルラさんは他の感染者の同胞をたくさん救っているんだ!今だって、こうしている間に、他のクソッタレな都市から感染者を救っているに違いない!!」

 

「……スカル、シュレッダー、ごほっ。彼女、は、君たちを、見捨て、たんだ」

 

「黙れ偽善者!!これ以上その口を開けば今度は全力を以て貴様に源石爆弾を喰らわせてやる!!」

 

「……聞いて、くれ。スカル、シュレッダー……。……タルラ、は、ミーシャ、の、君たちの、父親の、情報が、ほしい、だけだ」

 

「……っ」

 

「…彼女、だって、ごほっ!…このまま、では、無事には、済まない、だろう、ごほっごほっ……。…姉が、大切、なんだ、ろう…?」

 

「…だからどうした。貴様らなら治療できるから付いてこいとでも?そんな妄言をたやすく信じろと?同じ感染者だから与し易いとでも考えたか?寝言を言うんじゃない偽善者め!!貴様らが俺たちの同胞を殺したのは覆らない結果だ!!同胞を殺した貴様らを信用することなんて天地がひっくり返ろうとありえない!!!俺が、俺たちが信じるのはタルラさんと、それに追随するレユニオンの同胞だけだ!!!」

 

「……ごほっ……、ロ、ロドスに、付いてこい、とは、言わない。…ただ、君たちの、身を、案じ、させては、くれない、か?」

 

「………」

 

「…私、たちは。感染者を、救い、たい、理念の、元、活動、している、だけだ。……だけ、ど。それを、押し売る、ような、真似は、しない。……ごほっ」

 

「………」

 

「…ミーシャ、は。彼女は、非、戦闘、員…だろう…。このまま、戦火に、呑まれる、さまを、見過ごす、のは、あまりに、無情、じゃ、ないか……ごほっごほっ」

 

「………」

 

「……私、たちを。信じて、くれとは、言わない……。…だけど、だけど、感染者の、味方だ、という、ことだけ、信用、して、くれない、か?ごほっ」

 

「……ドクター」

 

「……すま、ない、アー、ミヤ。……そろ、そろ、限、か………」

 

「ドクター!?ドクター!!医療オペレーター!!すぐに緊急治療を!!!」

 

「………っ」

 

「…スカルシュレッダーさん。あなたが、同胞を大切に思うように、私たちは、ドクターを、オペレーターを、このロドスそのものを大切に思っています」

「……誰もが好きで、感染者になったわけじゃないんです。大地の流れに逆らえず、やむを得ない事情を抱え、感染者になった人がほとんどなんです」

「私たちは、感染者を、決して見捨てたりなんかしません。あなたたちレユニオンが、仲間を見捨てないように」

 

「………」

 

「……どうか、どうか。私たちを、信じてくれませんか?」

 

「……お前たちは、信用に値しない」

 

「……っ」

 

「…………だが、あの馬鹿みたいな男に、少しだけ興味が湧いた」

「あの男の言っていた理念……。我々レユニオンと、どっちが上か、比べてみるか?」

 

「……いいえ、比べるまでもありません」

 

「………」

 

「感染者を救いたいという気持ちに、優劣が必要ありますか?」

 

「………………………………………」

 

「今回のことを、水に流そうと言う気はありません。……私たちは、お互いに血を流しすぎました。……大切な人を、また守れなかった………」

 

「…………」

 

「……スカルシュレッダーさん。ミーシャさんを、大切にしてあげてください。…きっと、彼女にとってそれが一番のはずです」

 

「……ふん。貴様なんぞに言われなくとも、そうするつもりだ」

 

「………ええ、そうしてあげてください」

 

「…良いだろう。貴様らのことを僅かにだが信じてやる。1週間だ。1週間タルラさんが来なければ、俺は貴様らを信用しよう」

 

「……ありがとうございます、スカルシュレッダーさん」

 

「…ミーシャの治療、頼めるか?」

 

「ええ、お任せ下さい。私たちは、鉱石病を治すための組織ですから」

 

「……恩に着る。………それと、……その、なんだ………。……ドクターとやらを、傷付けて、悪かった」

 

「……許します、と手放しでは言えません。…ですが、私たちも、あなた方の大切な人を奪ってしまっています。……つらいですね」

 

「……………ああ、そうだな」

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

「結局タルラは来ず。そのままスカルシュレッダーはなし崩し的にロドスに加入。いやはや、分からないものだな」

 

「……でも、彼らがロドスを信じてくれて良かった。……きっと、救ってみせるさ。必ず、ね」

 

「……ああ、ドクターらしいな。さぁ、まだ夜は長いぞ。飲め、ドクター」

 

「……頂こうか」

 

 

後日、龍門近衛局の隊長や居候の鍛冶職人が二日酔いを起こしている中、ケロッとした様子でエンカクと闘っているドクターがいたとかいないとか。

ドクターの様子を見た二人が、寝れない体質というものは二日酔いすら起きないのかと謎の勘違いをすることになるのはまた別の話……。




モチベが上がりすぎてもう次の話を書いてしまった
なにこれ、魔法????
ただクオリティが高いかと言われると多分そうじゃない

あ、そうそう
アークナイツのフレンド埋まりました
皆様本当にありがとうございました

来たるアークナイツマルチプレイでぼっちを回避できたことに喜びを隠せません

ずっと引き合いに出してる例の知り合いは
RTA小説書いてるのでそっちも見てね!!
私のより3倍は面白いよ!!


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停戦4日目

これ時系列的に8章終わってね?(超今更)


「暇なのだ!!」

 

「開口一番何を言っているんだ駄目探偵」

 

いつもの執務室。

探偵(笑)と楽しく(?)お話をするドクターはそこにいた。

 

「むっ!?その言葉だけはいただけないのだ!いくらドクターといえども名誉毀損で訴えてやるのだ!!」

 

「はいはい、わかったからアビサルの謎を解こ

うとするのはやめようね」

 

「それは無理な話なのだ!飽くなき探究心を持つ私にとって、アビサルの謎というのは興味しか沸かないのだ!!これを取り上げるなんて、そんなことは絶対に不可能なのだ!!」

 

「……そっかー、じゃあしょうがないな。キミが命を落とすことだけは避けたかったけど、命に替えても知りたいのであれば私は止めないよ」

 

「えっ」

 

「だそうだよスカジ。君たちのことをもっと、もーっとよく知りたいそうだ。教えてあげたら?」

 

「……そうね。そこまで言うのなら教えるのも吝かではないわね。いいわよ、行きましょ」

 

「ちょ、ちょっと待つの、だぁ!?ち、力つっよ!??や、やめるのだーー!!死ぬのはいやなのだーーー!!!!」

 

「……冥福を祈っとくか、南無南無。……さて、艦内の見廻りにでも行くかな」

 

 

 

「お、ドクター、よっす」

 

「ん、おお、アンブリエルか。またビスケットの補充か?」

 

「いやー、それもお願いしたいんだけどさー、ちょっち付き合ってくんねー?」

 

「……?何にだ?」

 

「そりゃーもちろん射撃訓練っしょー。あたしだけじゃわかんないことも多いしねー」

 

「……それは私ではなく、他の狙撃オペレーターに見てもらうべきではないのか?」

 

「いやいや、戦場で実際に指揮を取るドクターに見てもらったほうが運用方法とかも考えられて楽っしょ?あたしは実力が上がるし、ドクターは作戦立案しやすくなるし、Win-Winじゃんかさー」

 

「…というか、アンブリエルってきちんと訓練しているんだな。面倒くさがりのイメージしかないから驚いたよ」

 

「なによー。あたしがいっつもサボってるかのような言い方してさー」

 

「いやいや、そういうわけじゃないんだが……。それに、一般的なボウガンや弓を使った射撃オペレーターならともかく、サンクタのように銃を扱う訓練はかなり疎い。正確なアドバイスが出せるわけではないと思うが、それでもいいのか?」

 

「全然いいよー。あのいけ好かない仕事人よかましだよー」

 

「…あんまり、イグゼキュターは好きではない?」

 

「あたしはね。少なくともあんな真面目ちゃんとは反りが合わないからねー…。あたしは確かに面倒くさいことは嫌いだし、サボったりもするけど、その度に小言貰ってんのマジうぜぇー。こないだもウタゲとショッピングやったときも色々言ってきたしさぁ」

 

「……まぁ、イグゼキュターはああいう性分だから、そこは許してあげてほしいな。」

 

「いやー、あたしも一応社会人だしわかるんだけどさー、堅苦しいっていうか、なんというか……。あっこまで真面目ちゃんやってて疲れないのか疑問なんだよねー」

 

「…君は、今の仕事は楽しいかい?」

 

「…そりゃ、金はもらえるし、休みもくれるし、いい職場だよ。当然、楽しいに決まってんじゃん」

 

「それに、苦痛を感じることは?」

 

「ないかなー」

 

「…じゃあ、彼もそういうことなんじゃないかな?彼も、今の仕事に誇りを持って楽しんでるはずさ」

 

「……ふーん、なんか気が変わったわー。アイツに見てもらお、ごめんねー」

 

「構わないよ。私ではどうせまともな意見など出せそうになかったしな。私は艦内の見回りを続けるから、何かあったらいつでも呼び出してくれて構わない」

 

「ありがとー、じゃあねー」

 

 

「…サンクタについての知識を増やすべきだな」

 

 

 

医務室。

主に怪我をしたオペレーターが訪れる場所である。戦場から戻ってきたオペレーター達が、バイタルチェックを受け、適切な処置を施してもらうための施設。

もう一つの役目はカウンセリング。精神的になにかしらの不安を抱えているオペレーター達も訪れる。今訪れているオペレーターはまさに後者の立場なのだ。

 

「……ケルシー先生。艦内の仕事が回りません」

 

「…私に言われてもな」

 

現在訪れているオペレーターはみんなご存知CEOであるアーミヤであった。そんな彼女の悩みは――

 

「まさかドクターが3日間仕事しないだけで書類仕事が2週間以上遅れるなんて思わなかったんですよ……!!」

 

――他オペレーターたちの壊滅的なまでの書類処理能力であった。

ドクターが自分の居場所(ドクターとしての居場所)を守ろうとして不眠不休で書類を処理する能力のせいで、他オペレーターの書類処理能力がほぼ皆無と言えるまで育たなかったのだ。唯一まともなのは人事部とシルバーアッシュ程度という体たらく。

その影響で本来既に一月分以上処理されていたはずの書類は既に2週間をゆうに超える膨大な量の書類が溜まることとなった。

 

「では、ドクターに再びあのような仕事をさせるか?これで立ち行かなくなるレベルまでドクターが必要だと言うならば、彼に休息を取らせるわけにはいかなくなるが?」

 

「それとこれとは話が違うんです!!仕事ができるからといって自己犠牲精神まで磨かなくて良いって話をしているんです!!」

 

「…そもそもの発端は、熱心に仕事をするドクターに感化されて、常人なら発狂するレベルの膨大な量の書類を書かせたアーミヤじゃないのか?」

 

「……うぐっ」

 

「それで他オペレーターの書類処理能力が欠如していると私に泣きつくのは流石に庇い立てできない。元はと言えばドクターのみならず、他の秘書に仕事を振ればよかっただけのことをしなかったアーミヤの責任だろう」

 

「……うぐぐっ」

 

「お前はCEOなのだろう?せめて社員の仕事量くらいしっかりと割り振ってやれ。アレは私でも引いたぞ」

 

「…ド、ドクターが大丈夫って仰られてたので……」

 

「ほう?では本人から大丈夫の言葉を得れば何をしても良いのだな?どれだけ膨大な量の仕事を振ろうが、本人が大丈夫であればいいんだな?」

 

「………いえ、あの」

 

「…すまない、言い方が悪かったか。とにかく、ドクターが必要不可欠であるという状況が要らなくなるまで、オペレーター達に仕事を割り振れ」

 

「……はい、分かりました」

 

「とはいえ、オペレーターの数も相当数増えた。アーミヤだけでは手が足りなくなるだろう。今の状況となると、ドクターにも協力を要請しよう。後塵を拝するわけではないが、オペレーターの育成となれば断りはしないはずだ」

 

「……大丈夫、でしょうか」

 

「それを決めるのは私でもアーミヤでもない」

 

 

 

『……ドクター………要らなくなる……』

 

『…はい、分かり……』

 

『…………オペレーター………手が足りなく………………状況…………協力を要請…………』

 

 

聞かなければ良かったと、心底後悔した。

アーミヤが医務室に入っていくのを見て、つい魔が差してしまった私にも問題はあっただろう。

……だが、それでも、私は認めたくなかった。

 

「……そうか、ついに来たか」

 

レユニオンとの戦いも終わり、ロドス艦内にはひとときであろうと平穏が訪れた。

――そこに、自分自身がわからない(記憶を取り戻せない)ドクター()は必要ない……、そんなことは百も承知だった。

 

…だが、それでも

「…私は最後まで、彼らを救うことはできなかった……か」

 

ああ、惜しむらくは、何もかも半端に終わった私の責任なのだろう。私が最初から記憶を失いなぞしなければ、こんなことにはならなかった筈だ。

 

「老兵は死なず、ただ去るのみ……。自分の正確な年齢すらわからない、痴呆に過ぎないか……ハハハ……」

 

考えるだけ、自分自身への嘲笑は止まらない。

これは、全て(記憶)を失った私への罰なのだ。

 

だから、私は止まらない。

今更、止まることなど許されない。

 

これが、彼らへの、せめてもの贖罪になると信じて。




自分で書いてて思ったけど想像以上にめんどくせぇなこのドクター
拗らせ系自己犠牲精神ってゴミだと思う
そんなゴミを生み出している私もまたゴミであると

フレンド申請いまだに送っていただけてるんですけど
もう上限の50人になってるので
これ以上送られても泣きながら謝罪して切るしかないです。ごめんなさい。


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停戦5日目

最近お気に入りとかUAとかが多すぎてびびる


私は思えばずっとこうだった。

チェルノボーグから救出されてからずっと。

 

私は個人の考えのもと行動を起こしていない。ほぼすべてがロドスにとって、という考えで行動している。

 

私の自由意志はどこだ?ただただお飾りの役職に身を置いているだけじゃないか。

 

別にロドスのために、という考えが嫌いなわけではない。むしろ、こんな私を救い出してくれたことに感謝してもしきれないほどなのだから。ロドスの利益になりうることは可能な限りやろうとしたし、結果もそれなりに伴っては来た。

 

しかし、実態はなんだ?オペレーターを死地に追いやり、安全圏からのうのうと指揮をしているだけじゃないか。戦闘で精神的苦痛を受けたオペレーターのカウンセリング?それに感化されたオペレーターがより私を慕うようになる?とんだマッチポンプだ、くだらない。

 

『いい加減、認めちまえよ』

 

――五月蝿い

 

『お前は、此処(ロドス)に必要ないんだ』

 

――五月蝿い、五月蝿い!

 

『アーミヤとケルシーの会話を聞いただろう?もうお前は用済みなんだよ』

 

――違う!違う!!

 

『何が違う?記憶も戻せず、かつての栄光に縋り続けるオペレーターの期待に応えることもせず、ただ生き続けているだけの木偶の坊が、今になってようやく棄てられるだけの話だろう』

 

――黙れ、お前は誰だ。一体何様のつもりだ。

 

『私はお前だ。お前のその不安定な精神が生んだもう一人の自分。表に出ない二重人格。……お前の、唯一の理解者だ』

 

――ちがう、私は私だ。お前など私ではない。

 

『そうだ。お前はお前で、私は私だ。だが私はお前でもあるし、お前は私でもある。私は私でないかもしれないし、お前はお前でないかもしれない。だがそれを決めるのは誰だ?お前か?私か?』

 

――違う……ちがう………チガウ……。

 

 

 

「…ター、ドクター。おい、ドクター、聞いてるのか?」

 

「っ……、…すまない、エンカク、少し考え事をしていたようだ」

 

「そんな生易しいもんを考えてるような表情じゃ無かったがな。何があった?お前らしくもない」

 

「…何も、無いさ。そう、何も、無いんだ……」

 

「…フン。時間も忘れて考えるような事が、何もないで済ませることができると思っているのなら、俺はお前を買いかぶりすぎているだけなのかもしれんな」

 

「……あ」

 

「いつになっても訓練場に来ないからわざわざ出向いてやったんだ。それ相応の説明はしてもらうぞ?」

 

「……済まなかった。だが、これは本当にエンカクではどうしようもない事なんだ。私自身が、私自身と向き合って解決しなければならない事だ」

 

「……まぁ、いい。そんな顔では、何方にせよ今日の予定はなしだ。何を考えているのかは知らんが、お前がそんな顔をしているようでは下の者に示しがつかんぞ」

 

「……あぁ、わかっている」

 

「どうだかな」

 

「済まなかった。この埋め合わせは後日必ずさせてもらうよ」

 

 

 

……最近、どうにも奴の調子が優れてないように思えて仕方がない。なぜ俺がこんなことを考えねばならんのだ…。

 

「……ほぉ、エンカクか。今日は一人か?」

 

「…これはこれは、将軍様じゃあないか。なにか用か?」

 

「なに、普段この時間であれば、ドクターと共にいるはずだったが、珍しく一人だったのでな」

 

「…それだけか?」

 

「何か、あったのか?」

 

「…彼奴は、何もないと言っていた。……あの思い詰めたような表情を、俺は知っている。戦場で、何度も見たからな。……あれは、追い詰められて、追い詰められきって、どうしようもなくなりかけている顔だ」

 

「……ふむ。ドクターが斯様な表情をするまでに、何か精神的な苦痛を断続的に受け続けている、と?」

 

「おそらくはそうだろうな。何について悩んでいるかまでは俺も知らん。……ただ、欠かさず自ら続けていた俺との模擬戦を忘れるまでに考え込むようなことだ。確実に、何かがある」

 

「……君も、丸くなったものだな。嘗ての君であれば、模擬戦などという遊戯はくだらぬと言いそうなものであったが」

 

「人は如何様にでも変わるものだ、将軍。お前とて、ロドスに来てから変わった事の一つや二つあるだろう?」

 

「…フッ、そうだな…」

 

「……どうせここに来たんだ、死会おうぜ将軍」

 

「…良かろう。私も君と闘ってみたかったところだ。お手柔らかに頼むとしよう」

 

 

 

「……ド、ドクター、宜しいですか?」

 

「…ああ、アーミヤか、構わないよ。どうした?」

 

「…そ、そのですね……」

 

視線が明後日の方向を向いている。

明らかに落ち着いていない。

 

「……じ、実は……」

 

「…実は?」

 

「…え、ええと、その……」

 

 

「…キミは踏ん切りがつかないのだな、アーミヤ」

 

「ケ、ケルシー先生……」

 

「全く、ドクターから仕事を取り上げたのは自分だからと、自主的にやるのではなかったか?」

 

「………すみません」

 

「あのー、私、状況、掴めない。おーけー?」

 

「どうにもアーミヤは君の前だとすんなりとものを言えないようだ。代わりに私が言うが、いいな?」

 

「…はい、すみません先生」

 

「ではアーミヤから許可も降りたことだし、単刀直入に言わせてもらおう」

 

「………何かな」

 

「…そのだな、ここまでドクターに対して休むように言ってきたわけだが…。手が足りない」

 

「………?」

 

「…つまり、少々早いが、君に仕事に戻ってもらわざるを得ない状況になっているということだ。」

 

「……ええと、仕事が追いついてない?」

 

「そういうことだ。今まで君一人がほぼ全ての書類作業をしていた結果、君が仕事をしなくなって数日経ったが、数日で既に2週間以上の遅れが出ている。これは非常に由々しき事態だ」

 

「……私、一月先ぐらいまでの仕事やってなかった?」

 

「何故なら書類仕事ができるのが人事部と会計部、それからカランドの主とライン生命から来た二人程度しか居ないんだ。しかもライン生命から来た二人に関しては鉱石病のせいできっちりした時間を取れない。実質戦力になっているのがロドスの人員の1割未満だ」

 

「……えーっと……。仕事に戻るのは了承するんだけど、それ、まずくない?色々と」

 

「そう、非常にまずい。それもこれもドクターが大丈夫だからと言って散々仕事を押し付けたアーミヤの責任が大きい」

 

「………(申し訳無さで今にも泣きそう)」

 

「そこで、君に他オペレーターの教育の助力を頼みに来た。仕事ができる人員が増えれば、君が必要なくなり、私達としても助かる、引き受けてくれるか?」

 

「…………………ああ、わかった。協力しよう」

 

「そうか、ありがとう、では必要なことは伝えた。私はこれで失礼する」

 

「…わざわざ、伝えに来てくれて感謝するよ」

 

「あっ、…ド、ドクター、私も失礼しますね」

 

「ああ、お疲れ様、アーミヤ。……お疲れ様」

 

「…?なんで2回仰られたんですか?」

 

「…ああ、気にしなくていい。これからのことを考えるだけだ」

 

「そうですか…、では、お疲れ様でした!」

 

「………ああ」

 

 

 

「……面と向かって、要らないと言われたか」

 

やはり、記憶のない私に、利用価値など無かったのだ。

必要な事。そう、ロドスから私を切り捨てるという重要な事を、わざわざケルシーとアーミヤは伝えに来た。オペレーターの育成の仕事とともに。

 

「……はは、人生とは、ままならないものだな。はっはっはっは………」

 

仕事は仕事だ。

与えられるものに対してはそれ相応の対価を示さなければならない。

私の最後の仕事だ。

 

 

 

「…あの、ケルシー先生」

 

「どうした、アーミヤ」

 

「先程の、ドクターが必要ないというのは……?」

 

「ああ、ドクターだけに仕事を任せっきりにしてしまう状況が必要なくなるし、その分の時間をオペレーター達との交友に使ってもらえれば作戦立案もしやすくなるだろうから私としてもそっちのほうが助かる、という意味だったが?」

 

「……そうでしたか」

(ケルシー先生は明らかに言葉が足りていない………。ドクターが、変な勘違いを起こさなければいいんですけど…)




皆こんな駄文を見て面白いと思ってくれてるのかしら………
感謝しかない

それにしても、このドクター
ロドスのためを思って自分を切る気だぜ?

いい話だ。感動的だな。だが無意味だ(•‿•)


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停戦数日経過

えー、深くは語りません、ええ(


あれから数日が経過した。

膨大な量の書類を処理しつつ、秘書に代わる代わる書類に関する注意などを口頭で伝えるなど、私にとってはかなり充実した生活であったことは明白である、と言おう。

 

…これが、私の最後の仕事になる、と。

誰にも言えない、言わない、言う必要がない。私は終ぞ、記憶を、経験を、思い出を、思い出すことは出来なかった。

 

私はがらくただ。自我をもつ事を許されなかった、ドクター(記憶にない誰か)として生きることを強いられた、哀れな人形。

 

私が居なくても、もう大丈夫。

私を慕ってくれる、私を尊敬してくれる、私を心配してくれる大切なオペレーター達を最後まで裏切ってしまう事になるが、きっと、彼ら彼女らなら乗り越えていける。

 

本物(偽物)になれなかった偽物(私自身)は、今日を以て私自身の手で処分するとしよう。

 

 

「…やぁ、見回りお疲れ様」

 

「ど、ドクター!?お、お疲れ様です!!」

 

「特に異常はないかい?何かあったらすぐにアーミヤや私達に知らせてくれて構わないからね」

 

「はっ!特に異常などはありません!ドクターは何用で此方まで?」

 

「…少し、外を歩きたくてね」

 

「……?でしたら、ハッチをお開け致しますよ?」

 

「すまない、そうしてくれると助かるな」

 

…ギギギ、と鈍い音を立てて、外出用のハッチが開く。

 

「……ありがとう、『君は私を外に出したことを綺麗サッパリ忘れ、そのままロドスを発艦させてくれ』て構わない」

 

「はっ!!了解いたしました!!お気をつけて!!」

 

ガゴン…と、閉まる。

閉まって、しまった。

 

「本日も異常なし!!」

 

 

……ロドスを、出た。

これは、私が、私のために、私の意思で、ロドスを離れた。

 

……私に残された時間は、あとどれくらいだろうか。

ここから、どこに行こうか。

ああ、私は、本当の意味での自由を手に入れたのだろうか。例えそれが、翼を持ちながら、飛び方を知らない、哀れな雛鳥であろうと。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「ケルシー先生!!ドクターはどこですか!!?」

 

アーミヤが、ひどく焦燥した顔でケルシーに詰め寄る。

 

「なんだ、騒々しい。奴ならいつものように執務室にいるのではないか?」

 

「……居ないんです。執務室にも、自室にも、パフューマーさんの温室にも、ドクターが自発的に行きそうな処をくまなく探しましたが、どこにも居ないんです!!!」

 

「…何?」

 

流石のケルシーも、慌てたように立ち上がる。

 

《全艦通達。ドクターが消息不明。直ちに総力を上げて捜索せよ。繰り返す。ドクターが消息不明。直ちに総力を上げて捜索せ

よ。また、ドクターを最後に見かけたものは速やかに第二医務室へ来るように。以上》

 

 

「何故だ、何故誰一人ドクターを見ていない!!」

 

……ロドスにとって最悪だったのは、今日に限って、ドクターを見かけた人間が極少数しか居ないこと。その極少数の人間が任務で()()()()外出していたこと。入り口を見回っていた見張りが何者かによるアーツ攻撃によって記憶混濁状態になっていた事だろう。

 

「ドクターは見かけてませんよ、私が通した人はドクターではありませんでした。私が通したのは……、はて、何故、思い出せない。何故、何故、何故何故何故何故何故何故何故何故ナゼナゼェェエエエェ?!?!????」

 

……錯乱した見張りは鎮静剤を投与された後、ベッドに拘束された。

 

「くそっ……!!何故だ、何処に行ったというのだドクター…!!!」

 

「ケルシー先生……、どうして、…どうしてですか……、ドクター………」

 

 

「ドクターが行方不明になったというのは本当か」

 

「ふ、フロストノヴァさん!?なにか心当たりが!?」

 

「…フン、あいつめ、本当に私以外に言っていないのか……」

 

「話せ、フロストノヴァ。どんな些細なことでも構わん、今わたしたちが欲して止まないのは情報だ」

 

〜〜〜

 

…あいつのアーツの効果は知っているか?そもそもアーツを持っている事自体を知っていたか?

知らないだろうな。これは私が救われたときに初めて知ったことだ、やつは私以外に話したことはないと言っていたが、まさかそれが真実であったとは思いもよらなかったな。

 

あいつのアーツは『未来改変』。本来未来で起こるべくして起こるはずだったことを強引に捻じ曲げ、自分の理想とする未来に作り変えるという最悪のものだ。

 

…顕著なのは私の生存だろう。やつは私がどう足掻いても死ぬしかないという未来を強引に捻じ曲げた。やつが心のなかで強く念じた、私に死んで欲しくない、という精神に作用したと話していたな。

 

………少なくとも、私は見回りをしていた人間にアーツを行使した、と考えるのが妥当だとは思うが。『ドクターがロドスの外へ出た』と伝える未来を捻じ曲げたんだろう。

 

未来を変える、という能力が並大抵の代償で済むとは思わん。そもそも、私を生かしておくのだってやつは満身創痍と言うのも生温いレベルのダメージを受けていた。当然だろう、死が確定している人間を生かすなど、死人を生き返らせるのと同等の禁忌にも等しい。

 

たしか、やつは体質的に寝れないのだったな?私が思うに、やつは記憶を無くす前、睡眠という大きな代償を払ったのではないか、と推測するが…。だとすれば、私を救った分、そして、見回りの人間にかけた分で一体どれほどの代償がやつに降り注いでいる?

 

未来改変の能力は絶対のようだ。現にドクターが外出したことを、今ここに至るまで誰も知らなかったわけだからな。

 

〜〜〜

 

「……だが、そうなると面倒になったな」

 

フロストノヴァは沈痛な面持ちでアーミヤとケルシーを見据える。

 

()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「「っ!!?」」

 

「朝なのか、昼なのか、はたまた今すぐなのか、それすらわかっていない状況だ。……どう探す?どう捉える?お前たちに明確なビジョンがあるか?」

 

「……現時点では、無い」

 

「だろうな。…大方、こうなる事も予想しなかった……、いや、予想()()()()()()()の間違いか?」

 

「…何が、言いたい」

 

「お前たちはいつまで、やつに理想を押し付けるつもりだったんだ?記憶を失い、嘗ての同胞の名前、顔、声、全てを失ってしまったやつに、お前たちは何を要求した?お前たちは嘗てのドクター(すでに失った理想)ばかり追い求め、今のドクター自身を見ていなかったのではないのか?」

 

「……」

 

ケルシーとアーミヤは、何も言えない。

正しくその通りだったからだ。

 

ドクターに記憶を取り戻してもらうことを第一に考えた。それがドクターにとっての幸せだと断じて疑わなかったからだ。

ドクターの為に考えた、考えた、()()()()()()()()()

 

彼自身のことを、何回見ただろうか?

彼自身のことを、何回考えただろうか?

 

後悔は、戻らない。戻れない。




はい大変申し訳ございませんでした。
えー、精神を病んで8月に実家に帰り、そのままなぁなぁで全く更新してませんでした。はい。

例の知り合いが更新したから僕も勇気を振り絞って更新しようと頑張ってみました。
おそらく今後とんでもないくらい不定期になる可能性が高いというか不定期になる可能性しかないというか何というか保険を書けさせてください()


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きっと、彼方に

なんにも釈明できません………
これ書き始めたのどうやら4月らしいんですよね
何をやってたんでしょうね


ドクターは、……いや、”元”ドクターは、宛もなく荒野を彷徨っていた。

 

自由というものは、真に自由な選択を得られてきた者にしかわからない。彼は常にロドスの為に生きてきた、そこに自由意志は無かった。だから、何をすればいいのか、何をしていいのか、まるでわからない。

 

今、この場における彼は、産まれたての赤子にも等しい行動権しか持っていなかったのだ。

 

「……自由というものは、果たして本当に”自由”なのだろうか」

「私は今、ありとあらゆる(しがらみ)から解放され、自由を得たと思っていた」

「…しかし、私は何を求めている?」

「行く宛も無い、ただの浮浪者に成り下がった私は、一体何をすればいい?」

 

嘗てのドクター(もうひとりの私)であれば、悩むことのない課題だったのだろう。……いや、もうひとりの私であれば、そもそもロドスを離れるという行為すら頭の中には浮かんでいなかったのだろうな、と思案する。

 

「……待てよ?」

 

私が記憶を失った原因は未だに不明だが、私が記憶を失った事柄に深く結びついている場所がある。

 

「ならば―」

 

「―どこに行くんだい?ドクター」

 

「……モスティマ」

 

堕天使モスティマ。

なぜ、ここにモスティマがいるのか……。

 

「…ドクターでなくなった私が、君にすべてを打ち明ける必要はない、そうだろう?」

 

「そうだろうね。だけど、それじゃ私が納得できないかな。ドクターがどうしてロドスから逃げ出そうと思ったのか、それは私にもわからない。…けど、君をこのままみすみす行かせるわけにはいかないね」

 

「…………、モスティマ。『私に関わり引き留めようとしたことは忘れろ』」

 

「………っ、う……っ!!へぇ、…それが、君のアーツかい?…ふぅ、危ない危ない、これは強力だね」

 

「…最後通告だ。モスティマ、全て無かったことにして、帰ってくれ。……でなければ、私は―」

 

―ワタシは、キミを殺さなければならなくなってしまう

 

 

……きっと、ドクターがそれを言わなかったのは、せめてもの情けだったのかもしれない。

ありとあらゆる事象を自分に都合良く書き換える能力の代償として、[身体の85%が源石(オリジニウム)と同化ないし置換されている]今の状況で、正しい判断なぞ下せるわけもなかっただろう。

身体が源石(オリジニウム)そのものになっていく感覚というものが、果たしてどれほどの人に理解してもらえるのか…。

 

―呼んでいる

 

―呼んでいる

 

―ワタシを呼ぶ声がする

 

「……ああ、なんだ、そんな簡単なことだったのか」

 

「…ドクター?」

 

 

「さよならだ、モスティマ」

 

「!!?」

 

………ドクターは消えた。

この場から、跡形もなく、瞬時に。

 

「これは、一体……!?」

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「総員、なんとしてでもドクターを探し出せ!!今彼に消えられては不味い!!」

 

ケルシーは焦っていた。

ようやく、ようやく目処が立ったというのに。

 

「全ての捜索行為は私の名の下に許可する!!責任は私が後でいくらでも負う!!何をしてもいい!!」

 

「ケルシー女史。緊急事態である故、我らカランドは独自の情報網で探すが構わんか?」

 

「それで見つかるなら御の字だ!シルバーアッシュ、頼んだぞ!!!」

 

「承知した。盟友は必ず見つけ出して見せる!」

 

 

「探偵の出番なのだ!!いっくのだー!!!」

 

 

……いや、ケルシーだけではない。

多かれ少なかれ、ロドスにいるということは、ドクターに恩義を感じている人が多いのだ。

 

「レッド、ドクター、失いたく、ない」

 

「…へぇ、キミとは珍しく気が合うねぇ。ボクの狂気を肯定してくれる彼は、きっとこの先見つからないからねぇ、アッハハハ!!」

 

 

それぞれ思惑はあれど、皆考えることは一つ。

 

ードクターを、失いたくない。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「……此処に、きっと」

 

すべての答えは、此処にある。

そんな予感を、疑うことはない。

 

 

始まりの地。チェルノボーグ跡地。

天災から始まり、レユニオンの暴動、更にはタルラとの死闘によって移動都市としての機能を完全に失った廃墟。

 

ここに来た目的はただ一つ。

―石棺。ただそれだけ。

 

元ドクターの天才的な頭脳で導き出した”仮説”が本当のことであるとすれば、この石棺に全てが隠されているはず。

 

石棺を開けようとして…

 

 

「…ドクターっ!!!!」

 

…ああ、忌々しい。

よりにもよって、このタイミングとはな。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「ドクターっ!!!!!」

 

見つけた。

私たちの希望!

 

「ドクター!探しましたよ!!帰りましょう!!!ロドスへ!!」

 

 

「…ああ、アーミヤ。キミは、賢い子だな。あぁ、とても賢い。……その賢さが今は、とても煩わしく感じてしまうよ」

 

「…ド、ドクター?」

 

「…ハ、ハ、ハ、ハハハハハ……。大方、ケルシーの伝手だろう。この気配は、カランド…、ペンギン急便…………、ああ、アビサルも、S.W.E.E.Pもか。全く、揃いも揃ってご苦労さまと労いたいね。」

 

 

様子が、おかしい。

いつものドクターじゃない。

 

「ドクター…?もう、いいんです。帰りましょう、みなさんが待ってます。お願いですから」

 

「…いいや。その願いだけは、今は聞けない。賢いアーミヤであれば、分かるだろう?」

 

何故?

どうして、ドクターは私たちを拒むのですか?

 

「…なぁ、ケルシー。満足か?君が創り出した幻想の世界は、君にとって満ち足りるに値するものだったのか?」

 

「…………、ドクター。君の妄言に付き合っている暇はない。これだけの騒ぎを起こしたんだ。それ相応の処罰が下るのは覚悟しているんだろうな??」

 

……そうだ、

ケルシー先生なら、きっと…!

 

 

 

「ハ、ハ、ハ、ハ、ハ……。妄言?笑止だぞ、ケルシー。ワタシをこうしたのは他ならぬキミのはずだ。まるで私が狂っているかのような印象操作はやめてもらおうか?」

 

ケルシーの目が、ほんの僅かに左右に揺れる。

……ああ、動揺したな。

()()()()()()()()()()()()()()

 

「目を揺らしたな?ワタシにこう言われて、思い当たる節があるからそのように動揺するんだ、キミもまだまだ未熟だなぁ?」

 

「…ドクター、いい加減にしろ。これ以上お前に付き合う暇はないと言っているだろう。今すぐその喧しい口を閉じろ。でなければ」

 

「でなければ何だ?ワタシを殺すか?やってみせろよケルシー。お前に出来るならな」

 

 

膠着。

まるで動かない空気。

 

「なぁ、ケルシー()()?どんな気分だ?ワタシは全てを理解したぞ。キミが何をしようとしたか、何をしたかもな」

 

「…………めろ」

 

「あぁ、アーミヤにはわからんか。教えてあげよう。ケルシーはな」

 

「……やめろ」

 

「ケルシーはな、ワタシの主人格に…」

 

「やめろと言っているだろう!!!Mon3tr!!!!」

 

ドガァァァァァァァァン!!!!!!

 

さしものアーミヤも、ケルシーがいきなりドクターを攻撃するとは思わなかったのだろう。反応が一呼吸遅れた。

 

「ケルシー先生!!?」

 

「奴の言葉に耳を貸すなアーミヤ!!勝手な憶測に形成された下らん妄言に過ぎん!!!絶対に聞くんじゃない!!」

 

 

「ハ、ハ、ハ………まだ、ワタシが間違っていると言うんだな、キミは」

 

ガラガラガラ、と崩れる瓦礫。

そこから出てくる()()のドクター。

 

「アーミヤ、ケルシーはな」

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだよ」

 

 

 

 

 

ケルシーは、崩れ落ちた。




こっからハッピーエンドまで持ってけんのかな俺


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”記憶”

よっしゃ!
エピローグまでもうちょいや!!
めちゃくちゃ筆が載ったので投稿します。
めちゃくちゃ急いで書き上げたので
何が何だか……


「……………え?」

 

アーミヤは、すぐに言葉を出せなかった。

敬愛するケルシーが、そんな非人道的なことをしているとは信じられなかった。…いや、信じたくなかった。

 

「ハ、ハ、ハ。理解できないって顔をしているね、アーミヤ。キミでも、直ぐには分からないか」

 

「ど、どういうことですか!?ケ、ケルシー先生…!?」

 

 

震えていた。

地面にへたり込み、耳を抑えて、震えていた。

まるで、小さな子供が、怒られるのを怖がっているように見えた。

 

「…う、うぁ……!」

 

「どうした?ケルシー。キミが望んだ結末だろう?」

 

 

 

「笑えよ」

 

 

 

「ち、違う…。わ、私が、望んだのは、こんなことでは…!こ、こんなはずじゃ…!!!」

 

「やれやれ、仕方がない。アーミヤ、ワタシが説明してあげようじゃないか」

 

ドクターは、アーミヤに向き直った。

バイザーに隠された目は、どのような感情をアーミヤに向けているのか、まるでわからない。

 

「……さて、アーミヤ。先ずは、キミに一つ聞きたいことがあるんだが、いいかね?」

 

「…な、なんでしょうか?」

 

 

 

「キミらのよく知るかつてのワタシ(ドクター)は、アーツなんぞを保持していたか?」

 

「…………ぁ」

 

 

…アーミヤはまたも答えに窮した。

それもそのはず。ドクターはただの指揮官であり、アーツを使うはずがないのだ。

なのに、目の前のドクターは自身がアーツを行使したと言っている。何故だ?

 

「…ワタシがアーツを使えることに気づいたのは、フロストノヴァを救おうと考えたときだった。目の前で死に絶えようとする彼女を、救えと頭に声が響いてきた。…思えば、あれは源石(オリジニウム)の声だったのかもしれん」

 

「…その、フロストノヴァさんは、ドクターのアーツは、未来を改変するものだと…」

 

「ああ、あれは方便に過ぎない。…何故なら、()()の本当の力は別物だからね」

 

ドクターは一呼吸置いた。

 

 

「ワタシのアーツの真の正体。それは源石(オリジニウム)()()()()()。それが答えだ」

 

 

 

「…ワタシははっきり言って疑ったよ。なぜ自分にアーツがあるのか、まるで理解が及ばなかった。しかし今起こっていることは事実であるということは認めなければならない。だからワタシは考えた。()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()を調べるために、色々探し回ったよ」

「その結果、興味深い事実が発覚した。ケルシーの隠された私室を見つけてしまってね。興味本位で入ってしまったんだ」

 

「…!!?!? ま、まさか貴様!!」

 

「見つけてしまったんだよ、アーミヤ。ワタシは真実を知ってしまった。これを知ったワタシはショックを隠しきれなかったよ。幸い、普段顔を見せてないから誰にも気取られることはなかったがね」

 

「…その、見つけてしまったもの、とは?」

 

 

「ドクターはアーツを発現していない。その確固たる事実が、ケルシーの私室から出てきた。ただそれだけだった」

「だがその()()()()()()()の事実が、ワタシには到底受け入れられなかった。何故なら、アーツを持っているワタシはドクター(かつての私)ではないという事実を否が応でも認識させられるからだ」

 

「で、ですが、ドクターの指揮能力は本物でした!!偽物と疑うなんて!」

 

「だから言っただろうアーミヤ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とね。その証拠も出てきた」

 

「もうやめろ!!それ以上何も言うな!!ドクター!!お前はロドスに帰って来るべきなんだ!!!!」

 

「黙れよケルシー。まだワタシの話の途中だ」

 

 

ケルシーの悲痛な叫びは、無情にも切り捨てられてしまった。最早、彼を止めることはできない。

 

()()()()が失踪して数日後、一人の一般オペレーターが行方不明になる事件が起きた。懸命な捜索にも関わらず、発見されなかったため逃亡扱いになっていたことがある。ワタシはそこがどうも引っ掛かってね、情報を精査してみたんだよ。そしたらドンピシャだった」

「…前の(ドクター)、いや、キミ達のよく知るドクター()は既にこの世から居なくなっていた。ケルシーは、それを心底恐れた、恐れてしまったんだ」

 

「もういい、やめろ、やめてくれ…!私が悪かった、頼む、それ以上は…!!」

 

「ケルシーは禁忌を犯した。既存の人間の意識・記憶を完全に剥奪し、新たな人格と能力を植え付けた結果が、キミたちがチェルノボーグから助け出したワタシだ。つまり、別人なんだよ」

 

嗚呼、終ぞ止まることはなく。

彼は、全てを暴露した。してしまった。

 

「記憶が思い出せない?当たり前だろう。ワタシには、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「………………………………」

 

アーミヤは、何も言えない。

顔は血の気が引いて青くなり、極寒の中にいるように身体は震え、歯がガチガチと鳴っている。

ケルシーの所業は、アーミヤとしても到底許せるものではなかった。

 

「…なんで…っ、なんで、なんでっ、そんなことを……!どうしてですか、ケルシー先生っっ!!!」

 

「ち、違う!違うんだ、アーミヤ!」

 

「何が違うと言うんですか!!いくらケルシー先生とはいえ、そ、そんな非人道的行為をするなんて…!!!」

 

糾弾。当然の結果だろう。

既に生気を失っていたケルシーを責め立てるアーミヤの顔も、また焦燥に刈られていた。

 

「あ、あのときは仕方が無かったんだ…!!あの時、ドクターを失ってしまえば、それこそバベルが崩壊しかねなかった!」

 

「だからといって人一人の人生をめちゃくちゃにしていい道理はないでしょう!!?ケルシー先生にとって、ドクター以外はどうでもいいと思っていたんですか!??」

 

「これはキミの為でもあったんだぞアーミヤ!キミは心底ドクターに信奉していた!だからキミを壊さないようにドクターを救おうとしただけだ!!」

 

 

「…ハ、ハ、ハ。アーミヤ、もういいんだ」

 

アーミヤとケルシーの対談を黙ってみていた彼は、ようやく口を開いた。……だが、その口調はさっきまでのような怒気は含まれていなかった。

 

「…もう、いいんだ」

 

「ド、ドクター…!!しかし!」

 

「どのみち、ワタシの人生は既に終わっているんだ。なぜ今になってこの話をするのかも、結局ワタシの八つ当たりに過ぎない」

 

「…ドクター…………」

 

「だが、もうワタシはロドスに帰れない。これだけは、覆すことはできない」

 

「な、なぜです!?」

 

()()()()()()()()()()8()0()%()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…なっ…!!??」

 

 

さしもの二人も、彼のカミングアウトには驚きを隠せなかった。重厚な装備に見を包んでいるとはいえ、融合率が80%を超えているなど、想像つくはずもなかった。

 

「…まァ、おかげさまでアーツの力は最高潮だ。感謝すべきなのかもしれんな」

 

「だ、だったら尚更ロドスに帰ってきて、治療を受けるべきでは…!??」

 

「無理だよ、アーミヤ。治療法は確立されてない。融合率が80%を越えてしまっているワタシに延命も不可能だ。どうあがいても、ワタシは近々死ぬ。それは絶対に覆せない」

 

「そ、そんな……」

 

「……、かつて、ドクターを失い、助けたかと思えば別人だった。おまけに源石融合率が既に手の施しようがないときた。ワタシは、やはり助かるべき人間では無かったのだろうな」

 

「ドクター…………」

 

「ハ、ハ、ハ。アーミヤ、心配することはない。ワタシが()()()()()()()()

 

「……えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Bei mir kommt alles zusammen(総ては吾が元へ集う)

 

 

ドクターが何かを呟いた瞬間、猛烈な風がドクターを中心に吹き荒れ始めました。

 

「ど、ドクター!!?」

 

Ich habe kein Zögern in meinem Herzen(吾が心に迷いなく)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砂嵐が起き、

 

「い、いかん…!!アーミヤ、やつを止めるぞ!!!」

 

「ケルシー先生!?」

 

「何やら嫌な予感しかしない!!御託を述べている暇はない!!!」

 

Ich bereue nichts in meinem Leben(吾が人生に悔いはなし)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凍えるような極寒が吹き荒び、

 

「ぐぅぅぅっっ……!!ち、近付けん…!!」

 

「アーツ、全て弾かれました!!ど、どうすれば…!!!」

 

Mein Körper wird ein Opfer(吾が肉体は生け贄となり)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燃えるような灼熱に見舞われ、

 

「いやだ、待ってくれ、まだ、私は君に謝れていない……!!頼む、ドクター!!」

 

「ドクター、お願いです、やめて…!!」

 

「………Werde ein Keil, der diese ganze Welt verbindet(この世すべてを繋ぎ止める楔とならん)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、視界が光り、

 

「「ドクター!!!!!!!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さよならだ。Viel Glück(君たちに幸福あれ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗になりました。




俺「おい、俺書いたぞ、オメーも出せよ」
例の「やだ(はぁと)」

なんでや!!!!

多分次でラストぉ!!


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平穏

これがエピローグ。
マジ?


あなたが新しく入られるドクター希望の方ですね?初めまして!私はロドス・アイランド製薬会社営業部門最高統括官のアーミヤと申します。よろしくお願いします。

 

さて、ここでの業務内容は、ありとあらゆる病気に対する治療薬の研究、及び開発・製造、また治験や治療をベースとする研究員と医者を兼ねたものとなっております。

 

私は営業部門の管轄なので、これから貴方の直属の上司に当たる、医療・研究合同部門最高統括官のケルシー先生という方にご紹介致します。付いてきてください。

 

このロドス・アイランドは各国と多数の業務提携を結んでおります。なので、場合によっては各国に医療チームを派遣するので、あなたにも要請がかかるかもしれません。

 

もし要請がありましたら、書類で出張を申請の上、オペレーター指揮管理最高責任者のエレーナさんに、届け出をしていただくことになります。

 

一人のエリートオペレーターを基準とした数人で構成されるチームで、派遣されるという形になりますので、ご了承ください。

 

さて、ここがあなたに使用していただく執務室になっています。平時の際はここでの書類業務や、オンラインによる会議への参加などをしていただくことになります。

 

…え?この花瓶のお花、ですか?ああ、それは、パフューマーさんという調香師のオペレーターが、何方かからプレゼントされたものをいたく気に入られたようで、新規で入られるという方にもれなく贈っているお花です。

 

―確か、『ベルフラワー』と、『ナナカマド』というお花らしいですよ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

あの後、目が覚めたとき、全てが変わっていました。

ケルシー先生と共にロドスに帰ったとき、すべての鉱石病(オリパシー)が消え去っていました。原因は、おそらくドクターの最後の行動だと思います。

 

そして、私を除く全員から、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。まるで、最初から居なかったかのように、振る舞っていたんです。私と一緒にドクターに会いに行ったケルシー先生ですら、何もかも覚えていなかったんです。

 

これは夢だと思いました。あれだけ、ドクターを心配していた皆さんが、ドクターを救いたいと思っていた皆さんが、ドクターの事を綺麗さっぱり忘れてしまったなんて、信じたくありませんでした。

 

………でも、現実は変わりませんでした。

ロドスは鉱石病(オリパシー)を根絶したとして、各国から比類ない称賛を浴びました。また、それに伴ってロドスに様々な依頼が、かつてないほど舞い込んでくるようになったんです。

 

私は、CEOという立場もあり、かつてドクターが抱えていたような書類作成に悩殺されていました。ドクターの能力の高さにかまけていたバツが、ここに来てしっぺ返しを喰らってしまったんです。

 

ですが、それでも、私は諦めることはできませんでした。ここで諦めてしまったら、私たちに全てを託してくれたドクターに顔向けができない。そう考えていたんです。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

許されることではない。分かっていたんです。

でも、周りの人は、ドクターが居ないほうがあたり前である、という記憶に変わっていたんです。私だけ引き摺っているのは、それこそ異端だったんです。

 

だから、せめてもの手向けとして、私しか知らない場所に、私しか知らないドクターのお墓を作りました。

 

パフューマーさんから譲っていただいた、ピンク色の鮮やかなエゾギクというお花を植えました。

 

 

 

私たちの幸福を祈って頂いたドクターに、

自分の身を省みず全てを救おうとしたドクターに、

 

 

―私が、心から愛した、一人の男性に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

Ruhe in Frieden, schlaf(安らかな眠りを)




花言葉?サーナンダロウナー

というわけで完結でございます!!
一時期は消そうかとか迷うくらいにはエタってまして、最後もかなり駆け足になってしまったのはだいぶ申し訳ないんですが、初めて完結を迎えられたということで、わたくしだいぶ嬉しく思います。

さて、今回のエピローグ、実はいくつか考えていたもののうち、3番目くらいに思いついたものを採択したんですよね。最初何もかも曇らせてやろうかなーとか思ったんですけど流石に救いがなさすぎて怒られるかなと思ってこうしたんですよ。え?どっちみち救いない?知らんな。

で、一応ネタとしては置いてあるのでアンケートします!見たいIFを選んで頂ければ書きます!!勿論選ばなくても結構です!!

自分の書きたいものがよくわかんなくなった結果がこれなのでほんとに申し訳ない気持ちでいっぱいです。ですが、こうして描ききることができたのは、ひとえに見ていただけて、感想まで書いて頂いてる方たちのおかげです。ほんとにありがとうございます。

これにて閉幕!!


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