がっこうぐらし 不死鳥の種火と桜色の国語教師 (唯野婆華)
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はじまり
「ふぁ〜」
と、欠伸をしながら俺、不知火 紅汰(しらぬいこうた)は授業を受ける。勉学が重要なのは良く理解しているが眠いものは眠いのである。ましてやめぐねえの優しい声で教科書の朗読なんぞされれば、それはもう寝ろと言われたようなものだ。だから俺は寝る。おやすみな「えい」とはいかなかったようだ。俺の安眠はめぐねえのまぁまぁ痛いチョップによって邪魔された。
「こら〜!紅汰くん、なに普通に寝ようとしてるんですか。まったくもう。」
「だってめぐねえの朗読心地よすぎるんだよ。それはもう寝ろと言われたようなものなんだよ。」
「どんな理論ですか!?」
プンプンといった様子でめぐねえが怒る。
めぐねえは俺の事になると敏感だ。例えば俺が小学生のときは家出した俺を30分で連れ戻し、高校デビューで髪を染めようとしたらいきなり家に押しかけられ染色剤を没収されたこともある。何が言いたいかと言うとめぐねえって何故か俺に厳しいんだよな。
「とにかく、今日の放課後は補習ですからね!」
「えぇ〜」
ほらな?また補習だよ。ちょっとした事ですぐにこれだから彼女も出来ないし…まあ高校卒業までは作る気ないからいいけどさ。寝よ。
「zzz」
「こら〜!言ってるそばから寝ちゃだめです!」
そんなこんなでもう四時半。只今絶賛帰宅中。
え、補習?速攻で終わらせた。(途中で逃げたとも言う)
にしても今日はやけにパトカーや救急車が多いな…なにかあったのか?人通りも少ないし…
「ってあれは…まずい!」
横断歩道を渡る小学生くらいの少女。途轍もないスピードでそこに襲い来るトラック。少女は気付いていない。体が勝手に走り出す。常人には届かないだろうが俺なら届く。少女を突き飛ばす。直後、トラックにぶち当たり体が宙を舞う。体から血が流れ出る。
「キャ〜!」
「お、お兄さん!お兄さん!」
トラックは走り去ったようだ。にしても騒がしい。これぐらいで死なねえっての。体を起こす。立ち上がる。良かった。少女は無事のようだ。
「えっ!」
「貴方、動けるの!?」
少女は驚き、隣の…なんだ。内の高校の生徒か。
「まあ、色々事情があるんだ。説明は…俺の家でしようか。ついて来てくれ。」
二人はコクコクと頷き了承してくれる。早く帰らないと面倒な事になるしな。
︙
︙
︙
siteりーさん
紅汰宅
「とりあえず着替えてくるから適当に寛いでてくれ。」
と、言い残し彼は血まみれのまま奥の部屋に入った。るーちゃんを救ってくれた彼は、確かにトラックに轢かれた。しかし、彼は直ぐに起き上がり、事情を説明するといってこのマンションまで私とるーちゃんを案内した。訳がわからない。トラックに轢かれて直ぐに動ける人間はいない。いやそもそも生きているだけでおかしいのだ。るーちゃんを助けてくれたのに感謝はしているが、私は彼が怖い。まるで夢を見ている気分になって頬をつねる。
「痛い…」
「りーねえどうしたの?」
「な、なんでもないのよ。」
るーちゃんに心配されて誤魔化す。そんな事をしていたら、彼が奥から出てきた。シャワーも浴びたのか髪が濡れている。服も灰色のパーカーに黒いジャージと、少し適当過ぎると思うようなふうに変わっていた。
「おまたせして悪いな。改めて自己紹介から。
俺は不知火紅汰、巡ヶ丘高校三年生だ。よろしく。」
彼が自己紹介をして来たので感情を出さないようにこちらも自己紹介を返す。
「えっと、若狭悠里です。同じ巡ヶ丘高校三年生です。こっちは…」
「わ、わかさるりなの。えっと、さっきはたすけてくれてありがとうなの。」
「悠里さんと瑠璃ちゃんだな。気にすんなって、代わりに怖がらせたみたいだし。で、さっきのことなんだが」
どうやら隠しきれなかったらしい。私が質問する前に彼から話しだした。
「ちょっとSFじみた話になるんだが、俺の母さんの事から説明しようか。」
「おかあさん?」
「ああ、母さんの名は妹紅って言うんだけど、母さんはとある実験施設で人体実験を受けていたんだ。それによって不死身に近い身体構造に作り変えられた。
その力を使って逃げ出したんだけど、逃げた先で俺の父さん、不知火清慈(しらぬいしんじ)と出会った。詳しくは面倒だから省くけどその息子の俺も母さんの力をちょっとだけ受け継いでてな。それで俺も死ににくい体になってるからトラックに轢かれても平気って訳。まあ痛いものは痛いけど。気持ち悪いよな。こんな奴。と、悪いな。えっと分かったか?」
「は、はい。なんとか…」
「るーはよくわからないの???」
私はなんとか呑み込めたが、るーちゃんは駄目だったようだ。でも…
「でも、紅汰さんはるーちゃんを助けてくれました。感謝こそすれ、気持ち悪くなんてまりません。」
「!?、そうか…ああ、この事は他の誰にも秘密な。捕まって解剖なんてごめんだし…」
「わかりました。(たの〜)」
と、同意する。…って今何時?
「ああ〜!もう五時じゃない!帰って晩御飯の支度をしないと!」
「ほんとなの!早く帰らないとパパに怒られるの〜!」
なんて私達が焦っていると、
「おっと、ちょっと話し込み過ぎたみたいだな。もう暗いし、家まで送って行くよ。」
と、提案してくれた。う〜んでも…
「いえ、ここからそう遠くないのでお気になさらず。」
「なさらずなの〜。」
「だとしても送るよ。今日は何処かおかしいし、」
なかなか引いてくれない。どうしよ『ピロピロピロピロ』
「りーねえ、お電話なの。」
「おっと、お父さんからじゃないか?」
そう言われてスマホを取り出す。確かにお父さんだが、どうしたのだろう?
「すいません。もしもし、お父さん。どうしたの?」
『悠里!無事か!?瑠璃もそこにいるな!』
「え、ええ。なにかあったの?」
『説明している時間はない!今どこにいる!』
いきなりお父さんがそんな事を訊いてくる。
「えっと同じ学校の子の家にお邪魔してるけど。」
『そうか!とにかく絶対にそこから動くな!外は危険過ぎる!』
「なんで?何があったの!?」
『すまない。もう時間がない。テレビを見るん…』
そこで電話は途切れてしまった。
site紅汰
「どうしたんだ?」
と、悠里さんに尋ねる。
「お父さんが外は危険だからそこを動くなって。ニュースを見せてくれますか?」
「Okちょっとまて。」
そうしてテレビをつける。
『引き続き臨時ニュースをお伝えします。現在日本各地で大規模な暴動が起こっています。屋外にいらっしゃる方は直ぐに帰宅し、自宅にいらっしゃる方は雨戸を閉めて外に出ないようにしてください。』
そこに映し出されたのは燃える車や崩壊した町並みなど酷い有様だった。
「そんな、こんなに静かなのに?」
「へいおん?なの〜。」
と、リアクションする二人。
「あ〜、このマンション防音設備が狂ったように整ってるからな。それで何の音も聞こえなかったんだと思う」
「そ、そうなんですか…」
と、会話しながらカーテンを開き外の様子を確認する。って何だアレ?人が…人を食ってる?
「なにか見えるの〜?」
瑠璃ちゃんがこっちに来るが
「駄目だ!」
と言って止めるが見てしまう。
「!?お、おええ…」
やはり小学生には酷すぎたようで瑠璃ちゃんは吐いてしまった。そうしていると悠里さんが
「どうしたんです?」
と言って窓に近寄って外を見てしまう。
「!?」
どうやら言葉も出ないらしい。
こいつは…面倒な事になりそうだ。
悠里さんが落ち着いたのでこれからについて話し合う事にした。瑠璃ちゃんは寝ている…というかあれは気絶に近いか。都合はいいので寝ている間に終わらせてしまおう。
「さて、外の『奴ら』についただが、聞いてくれるか?」
「は、はい…」
「これは推測に過ぎないのだが、『奴ら』はいわゆるゾンビ、もしくはそれに準ずる物であろう。よって噛まれたり傷一つつけられれば感染、そのまま『奴ら』の仲間入りだろう。よって此処で救助を待った方が良いだろうが…恐らく期待出来ないだろうな。」
「どうしてですか?」
「ニュースで見た通り首都圏は陥落しているだろう。であれば国会や内閣府も駄目だろうな。たとえ生き残りがいても官邸対策室への移行は不可能に近い。と、なれば救助隊も派遣出来ない。」
「は、はあ。でもとりあえずは籠城するしかないと思いますが?」
「と、思うだろうがこのマンションは籠城するには脆すぎる。入口はガラス戸の上一つだけだから直ぐに入られるし一斉に『奴ら』が押し寄せればここはそのまま棺桶になる。とはいえこのマンションの入居者は軽く120人だから協力すればなんとかなるだろう。」
「な、ならその生き残りの方達と協力すればなんとかなるんでしょう。」
「協力すれば、な。考えてみろ。食料はすぐに無くなるだろうから奪い合いになるのは必然だ。」
そう、問題は食料だ。ここにいても助かる訳がない。
「じゃあ…じゃあどうすればいいんですか!!例えそうだとしてもここ以外に何処に行くんですよぉ…」
と悠里さんが泣き崩れる。さて、ここからが本題だ。
「内の学校だよ。」
「え?」
そう、あの学校は、
「あの学校は避難所としてはベストだ。発電設備、地下水を汲み上げろ過する浄水設備、それにもちろん食料もたっぷりある。少なくともここよりはマシだ。」
ここで一度区切り、
「そして何より近い。ここからなら500メートルって所だから瑠璃ちゃんを連れていてもリスクが低い。よって俺はあそこがいいと思う。」
と、一番の理由を明かす。そうすると悠里さんは納得した様子でうなずいた。
「移動は瑠璃ちゃんが寝ている間に行いたい。アレをまた見たら、次は瑠璃ちゃんの精神が崩壊しかねない。だから今、動くぞ。悠里さんはキッチンにある食料をまとめてくれ。カバンは奥から持ってくる。」
「わかりました。」
そうしてと悠里さんは行動を開始する。とりあえず、奥のアレも持っていくとしよう。
「紅汰さん、こっちは準備出来ましたってなんですか?
その大荷物。」
と、悠里さんは呆れたようにこちらを見る。
「武器だよ。流石にこんな状況で一体とも遭遇せずとはいかないだろうし。」
「ああ…」と、悠里さんは頷く、と同時に苦い顔をした。
「心配しないでくれ。あくまで護身だ。進んで倒しはしないよ。さて、」
瑠璃ちゃんはまだ眠っている。この様子なら移動中に目を覚ますことはないだろう、と思う。ってあ。
「あの…悠里さん。戦闘は俺がするので瑠璃ちゃんをお願いしたいのですが…」
と頼み込む。そしたら悠里さんは「はあ…」と溜め息をつき、
「しょうがないですね。まったくもう。大きい弟が出来たみたい。」
なんて言い始める。
「と、とにかく行動開始だ!」
「おおー」
移動は順調だった。何故かわからないが学校まではほとんど『奴ら』と遭遇しなかったのである。
そう、学校までは…
「な、なんて数なの?」
校庭には50体はいるであろう『奴ら』がいた。これでは到底校舎な入れない。しかも、そのほとんどが校門、つまりこちらに向かって来ている。
「ん、ここはどこなの?」
さらに最悪のタイミングで瑠璃ちゃんが目覚めた。仕方ない、か。
「悠里さん、瑠璃ちゃんの目を隠してあげてて下さい。こいつらは俺がなんとかします。」
「そんな!無理よ!?こんな数「いいから!」わ、わかったわ。」
よし、これで思う存分戦える。
「ゾンビに炎は良く移る」
そう言って俺は両の
「!?それは?」
後ろで悠里さんが驚いているようだ。当然だろう。常人には炎は操れないのだから。
「灰は灰に。土は土に。吸血殺しの紅十字!」
カッコつけて適当に無意味な詠唱を唱える。と、同時に炎を撃ち出す。
全ては灰に熔けた。
「さて、行こうか?」
「え、ええ。」
どうやら悠里さんはあまり驚いていないようだ。まあ、屋上からこちらを見ている人を含めて説明が必要だろうな。
そこからは難なく校舎に入り、生存者がいた屋上を目指した。やはりこちらに気付いていたようで扉を開けて待ってくれていた。
「さて、自己紹介といこうか。知っている人もいるだろうが三年生の不知火紅汰だ。」
「三年生の若狭悠里です。園芸部部長も務めてます。
こっちは妹の」
「わかさるりなの。よろしくなの。」
「えっと、三年生の丈槍由紀だよ。よろしく。」
「三年生、陸上部の恵飛須沢胡桃だ。よろしく。」
「国語教師の佐倉慈です。よろしくお願いします。って紅汰くん!さっきの炎はなんなの!?私あんなの知らないわよ!」
「そりゃ言ってないし。まあ、本当の事を話そう。」
場の空気が変わる。…なんか言いづらいな。
「まず、悠里さんと瑠璃ちゃんに謝らないとな。人体実験の下りは全部嘘だ。」
「え?」
「そうなの?」
と、悠里さんと瑠璃ちゃんが反応する。
「ああ、本当はもっと現実離れしてるんだよ。
結論から言うと俺の母さんは不死鳥の力を扱う事が出来る。その力を俺も受け継いでいるからさっきのように炎を扱えるんだ。さらに母さんはかぐや姫に出てくる蓬莱の薬を飲んで不死身になった『蓬莱人』と呼ばれている。その血も流れているから半不死身って訳でな。寿命以外で死ぬ事はないらしい。質問は?」
と、足早に説明すると、めぐねえが手を挙げた。
「ほいめぐねえ。」
「なんで隠してたの、なんで私にも隠してたの。」
「…だって嫌われると思ったし。」
「そんな事ない!だって私は紅汰くんの事が…」
「俺がなんだって?」
「な、なんでもないもん。」
相変わらず可愛いな。それと、
「めぐねえ、口調変わってるよ?」
あ、由紀が先に言った。
「へ?あっ!コホン、とにかく、今日はもう暗いことだし寝ましょうか。」
確かにもう夜遅い。なので
「そんじゃ、ベッドメイキングといこうか。悠里さん、ブルーシートってあるよな。」
と、尋ねる。
「ええ、あるわ。こっちよ。」
そして寝床を作り、俺は少し離れて眠りについた。
感想をくださると作者は燃えながら喜びます。
余談ですがいつもより文章崩壊しております。
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その夜、彼は弔う。
「はあはあ…」
『奴ら』が来る。数は5人。俺の能力なら直ぐに灰に出来る。…それでも俺には出来ない。したくない。
逃げる逃げる逃げる。共に助かったはずのみんなから。俺が助けたはずのみんなから。
悠里さん、瑠璃ちゃん、丈槍さん、恵飛須沢さん、
めぐねえ。
みんな『奴ら』になって襲ってくる。…すくえなかった
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
俺には…誰も……すくえない。
「っはあ!?」
今のは…夢?全く最悪だよ。…今何時だ?3:27分、か。
さて、あんなのを視たあとじゃ二度寝する気も起きねえな…。。。ん?あれは…
「よ、おはよう、恵飛須沢さん。」
「!!、なんだ。お前か…」
やはり恵飛須沢さんか。
「にしてもどうしたんだ?まあ、粗方『奴ら』が発生してまだ現実を受け入れられないって所か?」
「……それもある。でも…そうだな。ついて来い」
「?」
いったい何だ?
︙
「これって?」
そこにあったのはブルーシートに包まれた、人一人分くらいの塊。なにかと思い隣の恵飛須沢さんに目をやると、彼女は悲しいような、悔むような辛い表情をしていた。それで分かってしまった。
きっと、この中には骸が入っているのだろう。彼女の大切な人の。だから俺は…
「なぁ、俺の
「………じゃあ、頼んでいいか?」
「お安い御用。ンじゃあちょっと待ってろ。」
「??」
そう言って扉を押さえていないロッカーを開ける。恵飛須沢さんはきょとんとしている。中身を取り出したが、
「なぁ、恵飛須沢さん。」
「どうしたんだ?」
「…俺の持ってきたリュックから雑巾って書いた小分け袋取ってくれ。悠里さんが背負ってた赤い方に入ってるから。」
「いいけど、何に使うんだ。……っとこれでいいか?」
恵飛須沢さんはそう言って袋をこっちに投げた。
「サンキュ。」
とお礼を言いつつ、雑巾を水に濡らして絞る。そのままロッカーの中を拭いていく。
…よし、こんなもんか。で、ロッカーを運ぶ…死体の隣にそれを降ろして中に死体をいれ、扉を閉める。
「なぁなぁ、なんでロッカーに入れたんだ?」
と、恵飛須沢さんが小首を傾げて聞いてきた。
「理由は3つ。
1つ、灰が舞い上がるのを防ぐため。
2つ、灰を集めやすくするため。どちらも後で埋める事を考えてだ。
3つ、…」
「3つ目はなんなんだよ」
「え〜、3つ、燃やした証拠を隠すため。」
と、俺は最も重要な理由を口に出す。
「?、なんで証拠を隠すんだよ。」
ともちろん恵飛須沢さんが聞いてくる。
「…だって」
「だって?」
「学校の屋上で燃やしたってバレたらまためぐねえが怒りそうだし。」
「…はぁ、子供かよ。」
と、恵飛須沢さんが呆れたように呟く。
「恵飛須沢さんは知らないだろうけどさ。めぐねえって俺がやらかした事だけ敏感なんだよっと。そろそろ始めるけど、いいな?」
「…うん。」
と恵飛須沢さんに確認して着火する。しばらくすればパチパチと鳴りながら煙が上がってくる。…隣に座る恵飛須沢さんに目を向けると、静かに涙を流していた。そして俺の視線に気付いたのか、
「なぁ、その…やっぱりいいや。」
と、言葉を漏らした。が、やはり今日始めて話した奴には言いづらいのかその言葉は途中で途切れてしまう。だからこそ、俺は…
「話したい事があるなら、俺なんかが聴いていい事なら…話してくれよ。それで恵飛須沢さんが楽になれるならさ。」
沈黙、そして
「私には好きな人がいた。一つ上の先輩で元陸上部、今はOBとして時々顔を出してくれてた。走るのが速くて、一生懸命で、カッコいい先輩。」
ロッカーの炎を見ながら恵飛須沢さんは語り始めた。
「今日もそうだった。いつもどおりに先輩と練習してたんだ。そしたら突然人が人を襲い始めて、逃げようと思っても腰が抜けて。噛まれかけた私を庇って先輩が噛まれた。急いで屋上まで先輩を連れて避難したけど。先輩も『奴ら』になっちゃって、怖くなってなにも、わからなくなって、ちかくにあった、シャベルで、あたま、をなんかいも、なんかい、もさし、た。由紀、に止められるまでなんかいも、な。」
「…そっか。大変だったんだな。」
恵飛須沢さんの苦しそうな話を聴いて、俺はそんな言葉しか出なかった。
「…なあ不知火。私はあの時、どうしたら良かったんだろうな。『奴ら』になったらもう駄目だから、先輩はああするしかなかった…けど、さ。やっぱり考えちゃうんだ。あの時あたしが転ばなかったら、あたしも先輩も助かったんじゃないかって。馬鹿らしいよな…。ハハ」
そう、自嘲気味に恵飛須沢さんが嗤う。でも、
「でも俺は、馬鹿らしいとは思わないな。」
「え?」
恵飛須沢さんが素頓狂な声を上げる。
「だって、当然だろう?自分の好きな人が、死んだ。それも自分のせいでな。そんな事があったのに、恵飛須沢さんは俺が屋上に来た時、誰よりも俺を警戒していた。
自分が辛くてもそういう行動が出来るのは凄いと思う。」
「だけど、それでも!私は私が許せない!ゆるせるわけない…」
と、恵飛須沢さんは自分を責め始めた。まあ、概ね予想通りだな。やはり自責の念に囚われている。さて、
どうしよ?
ここまで
どちらにしろ、ヤバイのは依存√だ。俺はめぐねえが…と、そんな事はどうでもいいがそれで一時的に安定しても、もし俺が居なくなったら崩壊、なんて事になるから駄目だ。
でも嫌われるのはやだな〜。うん。
そんな事を考えている間も恵飛須沢さんは泣き続けている。とりあえずなんとかしないと、でもどうしたら…
「大丈夫よ、恵飛須沢さん。」
という声と共に恵飛須沢さんを声の主、めぐねえが覆い被さるようにして抱き締める。
「自分の好きな人が死んでしまって辛いのに、貴方は紅汰くんがここに来てからずっと私達を守る為に我慢していたのね。本当なら私がするべき事を貴方に押し付けてしまった。だから、」
と、めぐねえは一拍おいて、
「今は泣いていいの。でも自分を責めちゃ駄目ですよ?胡桃さんは何も悪くないんだから。」
「あうっうぁぁぁあ!」
と恵飛須沢さんは嗚咽を零して泣き崩れた。暫くしてロッカーの中から炎が消える頃には、彼女も泣き疲れて寝てしまっていた。さて、
「で、めぐねえは何時から聞いてたの?」
と、気になってたことを訊く。
「え〜と、恵飛須沢さんが爆笑してたあたりかな?眠りが浅かったみたい。」
めぐねえは俺と居るときは素の喋り方になる。なんでこんなに可愛いんだよ。
そこから聞いていたという事は…
「皆を起こすといけないから今は何も言わないけど、後で
「…は〜い。てかありがと。俺じゃあきっとそんなに上手く慰められなかった。」
とめぐねえに感謝の意を述べる。
「別に気にしないでよ。こういうのは私の仕事なんだから。はぁ…」
めぐねえ、お前もか…もう
「めぐねえも抱え込み過ぎんなよ?めぐねえには俺がついてるからさ。」
「ふぇ?」
と、辺りに響く素頓狂な声。一緒に赤くなっていくめぐねえの顔。…あれ俺今なんて言った?
「え、そのこここ紅汰くん?そそれってこここ告白なななのかししら。///」
「あ、いやそそうじゃなくくてあの、えと、そ、そう!俺達幼馴染みな訳だし!?め、めぐねえの事ならよくわかるから?相談相手になる的な意味だからそんなこここここ告白じゃあない?よ。///」
「なんで疑問形なの?!」
「俺に質問するな!」
「紅汰くんは照井刑事じゃないでしょ!」
「アハハ…」と誤魔化す俺、「まったくもう…」と呆れるめぐねえ、その後ろでニヤニヤしてる丈槍さん達…
丈槍さん達!?
「?どうしたの?そんなに驚いて」
顔に出てたのかめぐねえが尋ねてきたが俺には、
「めぐねえ、後ろ後ろ…」
「後ろ?って丈槍さん!それに他の皆さんも!なんで起きてるの!?」
と、めぐねえが驚きつつ尋ねれば、
「なんでって…」と丈槍さん
「そりゃあ」と恵飛須沢さん
「もちろん」と悠里さん
「「「恋バナの気配がした」」」
「「うそーん(天才物理学者風)」」
と3人が言ったことに驚いていると、瑠璃ちゃんが
「ほんとはめぐねえの『ふぇ?』でみんなおきたの。」
と補足する。あれで起きたってさては全員まともに寝れてないな?
「と、とにかく皆さん疲れてるんですから寝ましょう。まだ…えーと何時かな?」
と、めぐねえがスマホを取り出すが、
「あれ?バッテリー切れてる?」
と、オヨオヨする。かわいいほんと。もうちょっと見てたいけど可哀想だし、
「時計なら俺の寝てた枕元にあるよ。」
と、リュクを漁りながら伝えると、「紅汰くんありがと〜」なんて言いつつそっちの方に向かう。すると横にいた瑠璃ちゃんが
「こうたお兄ちゃん、何さがしてるの?」
と、尋ねてきた。
「ん?ああ。遺灰を入れる巾着をな。」
「いはい?」
「遺灰っていうのは…なんて言ったらわかりやすいだろ?」
う〜ん。そもそも教えていいものなのか?と、迷っていると、悠里さんが
「るーちゃん、去年のお母さんのお葬式の事、憶えてる?」
「…うん」
「あの時、お母さんの体を火葬…燃やしたでしょう?あの灰の事を遺灰って言うの。大切な人が生きていた、証みたいなものなの。だから、ちゃんと埋めて、その上にお墓をたてるの。その人はここで生きていたってみんながわかるように。」
「…うん」
と、静かに返事をする瑠璃ちゃんと俺の代わりに説明してくれる悠里さん。そして
「こうたお兄ちゃん、るーも手伝っていい?」
自分も手伝うという瑠璃ちゃん。本当はよくないのだろうが…
「恵飛須沢さん、いいか?」
「ああ、いいよ。でもあたしも手伝わせてくれ。まだ何もしてないからな。」
「オーケー。ということで3人でやろうか。瑠璃ちゃん、スコップを悠里さんと持って来て、恵飛須沢さんはそれを使ってこの巾着に遺灰を入れていってくれ。俺ちょっと他にやる事があるから。」
と、指示を出し、俺が背負ってたリュックを漁る。
「「わかったの(わ)」」
「りよ〜かい。」
と、若狭姉妹はスコップを取りに行き、恵飛須沢さんはその場に残った。そうすると恵飛須沢さんが
「で、お前は何をするんだ?」
と尋ねられた。うん、まあ…
「ちょっと1階の防火扉閉めてくる。」
と、正直に言うと、
「はあ!?」
と恵飛須沢さん。
「何言ってるの!?」
と、戻って来ためぐねえ。
「あの、不知火くん。やめたほうがいいよ。なんていうか、上手く言えないけど不知火くん。帰って来る気ないでしょ?」
と、丈槍さん。それに対してリュックから遠征用ナップサックを取り出して、
「あ、めぐねえ今何時?」
「え、午前4時45分だけど?」
「よし!行って来る!!」
と、
「「「「「!?」」」」」
「あぁ!晩飯までには帰るつもりだけど駄目そうだったらリュックの無線に連絡入れるから〜!!」
その言葉と共に、夜明け前の空に火ノ鳥が駆け出した。絶対「帰ったらきっちりお説教なんだから〜!!」なんて無慈悲な言葉はなかった。いいね?
え〜、はい。取り敢えず原作改変要素について。
主人公 もこたんの子供。炎を出すととても疲れる。
めぐねえ まだ覚醒してない。かわいい。
ここの由紀ちゃん 遠い先祖の旧姓は博麗。そういう事
KRM姉貴 覚醒素材(先輩)を火葬出来たから安定してる
りーさん るーちゃんが生きてるから病まない…はず。
るーちゃん うわようjょつよい
屋上 りーさんがいないのに開いてたのは
1.モブ園芸部が開ける。
2.モブ園芸部、トイレに行く。
3.噛まれる。
以上。
モール アニメ版準拠でKとMはふたりきり
作者 原作をBook ○ffで六巻まで購入。
読んだ。
病んだ。
続きを買うか検討中。now
よって原作未読は半分消えた。
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千里眼とガーターベルトちゃんと元気っ子
あとノリでオリキャラ増やしました。
ということで炎翼を使ってリバートロンシティを目指しているわけだが…アイツまだ彼処に居るのか?出来れば学校まで連れていきたいんだが…
「っと、やっと到着だぁ〜、お腹減った。」
なんの文脈もないが俺は炎を出すと空腹に見舞われる。永琳先生によると半端に蓬莱の薬の効力を受け継いだせいでもこたんより消費エネルギーが多いから直ぐにこうなるらしい。
モールの入口付近に着陸し、炎翼を解除する。そして飛び立つ時に持って来たショルダーバッグから以前にとりさんに作って貰った弾幕射撃拳銃、名を鴉*1とヒップホルスターを取り出して装着…
「あ、」
腰に目を向ければベルトを通す穴などない白いラインが入ったズボン−ジャージとブカブカの黒いパーカー。
………、完全に部屋着のままですありがとうございました。
「…まあ、なんか『奴ら』も少ないし適当に服も貰っていくか。」
ホルスターを装着するのを諦めた俺はそれを仕舞い、鴉を片手にモールへと足を踏み入れた。
︙
中に入ると直ぐに血の匂いが鼻につく。
「…暗いな。」
そう思った俺は銃口を上に向けて『蝶型の弾幕』を展開する。そうすれば飛び回る蝶達が俺の周りを照らし、壁についた血痕や床に飛び散ったガラスを視界にいれる。
「こりゃあ酷い有様だな。」
そう思いつつも3階、衣服フロアへと向かう。しかし、少ないとはいえ奴らはいる。どうやら『蝶型の弾幕』に寄せられてきたようで3体の奴らが俺に気付いてよたよたとこちらへ向かってくる。
「ふ〜ん。光に反応する、か。まったく、これじゃあ羽虫と変わらないな!」
そうぼやきながら鴉のモードを『通常弾幕』に切り替え、1体の奴らの頭を撃ち抜くと、奴らの頭は吹き飛び、血飛沫を上げながら床に倒れ伏す。…もう少し籠めるエネルギーは少なめでいいな。うん。流石にこれは瑠璃ちゃんに見せられないし。そう思い、籠める量をさっきの3分の2くらいに減らして次の奴らを撃ち抜く。今度は頭に穴が空いたぐらいだったのでそのままラスト1体を撃ち抜く。
「…まあ、こんなもんか。」
その後も寄ってきた奴らの顔面に穴を空けつつ衣服フロアに向かった。ただ、奴らは階段を登るのが下手なのか上に行けば行くほど数は減っていった。
そうして15分もすれば衣服フロアに到着したのだが、大半の服は汚れて使いものにならないようだ。…何故女性服は全くと言っていいほど汚れてないのか、それだけが気になるが…
「さて、適当に頂いて行きますね〜っと。」
そう独り言を呟き汚れていない服を探した。
「…よし、こんなもんだろ。てかまた髪白くなってるし…」
白い半袖のカッターシャツに自衛隊の長ズボンを黒くしたようなズボン。肌を隠す為にその上から革製の黒いロングコートを纏い、茶色いブーツを履く。終いに両手にハーフフィンガーのタクティカルグローブ、右腰にヒップホルスターを装着する。
にしても相変わらずここの店はおかしいくらいガチだな。流石『リアルを追求するコスプレ用品店、COCOA*2』というべきか。…このメイド服とかシスター服めぐねえに似合いそうだな。貰っていくか?あ、カバンがない…
「そのへんのやつ使おう。」
そうして適当なカバンを探していると、ちょうど良く登山用リュックサックがあったのでそれに二着の服を突っ込み背中に背負う。後は食料品の調達もしたいが…
「まずは1度最上階まで登るか。」
そう考え、俺は再び移動を開始した。
「お〜い!誰か居ないか〜!」
そう繰り返し叫びながら歩を進めるが、返事がない。どうやらこの4階には居ないようだ。そう考え、5階への階段を登ったのだが…
「動かないでください!!」
そう叫びながら階段の裏から飛び出すうちの学校の制服を着たガーターベルトをした子と茶髪の子。
「…なんでガーターベルト?」
「別に美紀の勝手でしょ!」
「あ、ハイ。ところで犬走楓っていう君と同じくらいの女の子知らない?確かここでバイトしてたはずだしアイツのことだから生きてるとは思うんだけど。」
「!?なんで楓さんの事を知ってるんですか!ストーカーですか!」
なんて茶髪の子が言うので、
「いやただの腐れ縁だけど…」
と返せば、
「本当ですか?信用なりません。とにかくその手に持ってる拳銃を足元に置いて下さい!」
とかガーターベルトちゃんが指示して来たのでSDハンドガンを足元に置き、
「はいはい。これでいいか?」
と、訊く。
「圭、腕を手錠で拘束して」
「うん。」
そう会話して茶髪の子が俺の手に手錠をかける。…あそうだ!
「なあなあ、楓は何処にいるんだ?アイツを知ってるんだったらわかるだろ?」
「話すと思いますか?貴方みたいな不審者に。」
「そうだよ!この厨二病!」
「いや辛辣ぅ!」
ついそう叫んでしまった。しばしの沈黙。次に口を開いたのはガーターベルトちゃんだった。
「まずは今からする質問に答えて下さい。そうしたら貴方の質問にも答えてあげます。いいですね?」
「ああ、いいぞ」
そう適当に返すと、ガーターベルトちゃんは咳払いをして、
「では1つ目、貴方は誰ですか?あとその服は何ですか?」
「巡ヶ丘高校3年、不知火紅汰だ。制服じゃないのは昨日色々あって捨てた。今の服装に関しては防御力重視で適当に選んだけどCOCOAで選んだらこうなった。」
「適当って…」
と、少し引いているガーターベルトちゃんと
「え!私達の先輩だったの!じゃあじゃあ、なんで楓さんの事知ってるの?」
と、驚きつつ訊いてくる茶髪ちゃん。
「あぁ、腐れ縁だ。」
「なんか適当だね。」
と茶髪ちゃん。
「信用出来ないですね。取り敢えず楓さんが戻って来るまではこのまま放置です。」
とガーターベルトちゃん。
「ん〜、まあいいか。で、楓は何処にいるんだ?もう教えてくれるよな?あと、楓の能力は知ってるか?」
「…はい。楓さんは地下の食品売り場に食料品を調達しに行きました。」
ガーターベルトちゃんはそう答え、
「楓さんの能力って、あの壁の反対側とか遠くの奴らの場所を言い当ててた能力の事?理屈は分からなかったけど。あとすっごい運動神経が良くてね!シュタタタタって一瞬であいつらに近づいて一撃であいつらの首をへし折ってたの!」
茶髪ちゃんはそう答えた。なるほど、詳しい事は言ってないみたいだな。
「実は俺もちょっとした能力を持っててな?」
「え!そうなの!」
「ちょっと圭!」
と、茶髪ちゃんが興味津々で喰らいついてきたがガーターベルトちゃんは不安そうである。まあ、上々かな?っと、やっと戻って来たか。
母親譲りの白い髪と、同じ色の犬とよく似た耳と尻尾。そして千里先を視る事の出来る赤い瞳。手には黒い鞘に納刀された真剣と少し大振りの楓の模様が描かれた盾。その母親、犬走椛と同じ衣服。これらは確か幻想郷に置いて来たと言っていた筈なのだが……、
「よう、久しぶりだな、楓。ところでなんでその服が
そう声をかけると、
「ああ、スキマババ…紫様が持って来てくれたんだよ。逆にそっちは何もなかったのかい?」
「俺は
そう、鴉は元々幻想郷にあった筈なんだが、昨日の晩ホルスターと共に部屋に落ちていたのだ。
「君はそれがあれば充分だろう?
「その二つ名で呼ぶな!恥ずかしい!!」
「ええ〜。かっこいいじゃないかw」
この野郎、わかっててやってるなぁ?
「俺にとっては黒歴史なんだよ二代目犬パシリ楓!」
「誰が犬パシリだ!たたっ斬るぞ!!」
尚、喧嘩はガーターベルトちゃんが「いい加減にしてください!」と叫ぶまで続いた。
「では改めて自己紹介をしましょうか。巡ヶ丘高校2年の直樹美紀です。よろしくお願いします。不知火さん」
「同じく祠堂圭で〜す!よろしくお願いします!不知火先輩!」
「おう、よろしくな。で、これからの話なんだけど。」
そう前振りをして俺は説明を始めた。
1つ、元々空を飛んで楓を高校に連れて行く予定だったが、二人もいるから空を飛んで行くのは少しツラい。
2つ、なので楓の車(何故か紫に頼んで地下駐車場まで運んでもらったらしい)を使って高校まで移動するからどうせなら幾らか食料と衣類を持って行きたい。
3つ、よって食料調達班と衣類調達班に別れて行動し、地下駐車場にて合流。そのまま高校に向けて出発。
「………。とまあ以上だ。何か質問は?」
一通り説明を終え、質問はないか訊くと直樹さんが手を上げた。
「はい。何故衣類の調達をするんですか?衣類はかさばりますし、食料をできるだけ積んだほうがいいと思うのですが。」
「んじゃあ逆に訊くけどさ。ずっと同じ服を着てていい事あるか?絶対臭うぞ。あと洗濯した時に全員洗い替えがないと俺が目の行き場に困る。」
直樹さんの質問に答えると、
「な、なるほど。一理ありますね。」
なんか顔を真っ赤にしてそう納得してくれた。
「はいは〜い!グループ分けってどうするの?」
「取り敢えず楓と二人の片方が衣類調達、もう片方が俺と食料調達なのは決まってる。俺はアパートから替えの服を持っていってるから女性物を高校に残ったみんなの分も……あ、めぐねえ以外のサイズわかんねえ。どうしよ。」
しまった…。適当に選ぶ訳にもいかないし……。
「ってそういや通信機置いて来たんだったわ。ちょっとまってくれ、今全員分訊くから。」
そう言いながら通信機の電源を入れて周波数を合わせる。
「もしも〜し、こちら不知火。みんな生きてるか〜?オーバー。」
『紅汰くん!?今何処にいるの?勝手に飛び出して…。で、なんで連絡してきたの?』
「ああ〜モールだよ。リバートロンシティ。楓と合流した。ま、うちの学校の生徒も2人合流したけどな。オーバー」
『……。それだけなら連絡して来ないでしょう?何をする気なの?』
「さっすがめぐねえ、話が早い。結論から言うとさ。服とか適当に持って帰るからみんなの服のサイズ教えてくれない?」
『……。紅汰くん、それってつまり年頃の女の子達のスリーサイズを教えてほしいと?』
あ、ヤベ。地雷踏んだ。めぐねえ相手にこれはまずい。だって明らかに声に怒気が感じられるもん。
「あ〜、あの…俺じゃなくて楓に教えてあげて!ほい楓あげるわ!」
「え、いやいきなり渡されても」
「じゃあ食料調達行こうぜ祠堂さん!」
「え?ちょっと待って下さいよ!?私も服みたいのにってああ〜〜!?」
『あ、待ちなさい!帰って来たらお説教ですからね~!?』
知らない。お説教なんて聞こえない。
「ハァハァ、あっぶね〜。あのまま話してたら通信機越しにお説教コースだった…。」
あの後勢いで祠堂さんの手を引いて食料品コーナーまで全力疾走した。あ?道中の『奴ら』?纏めて燃やしてやったわ。
「し、不知火先輩って結構無茶するんですね。私ちょっと怖かったな〜…。」
「わ、悪かったな。めぐねえのお説教いっつも長いしああいう感じのときは特に怖いからさぁ。にしても暗いな……。」
そう呟きながら蝶型弾幕を飛ばし、フロア全体を照らす。
「わあ〜!とっても綺麗。」
「だろぉ?『奴ら』があんなに群がってるんだからなぁ。ま、夜の街灯に群がる羽虫と同じで『綺麗だ』これっぽっちも思ってないだろうけど。」
奴らに理性があるとは思えない。魂魄がとても稀薄で自我はとっくに崩壊しているから。奴らは本能で活動して、脳に残った僅かな記憶に頼って人だった頃の行動を模倣しているだけだと。
「不知火先輩?どうしたの?速く持っていかないと美紀達が心配するよ?」
「……ああ、そうだな。俺は缶詰めとかレトルトとかの保存食を集めるから、祠堂さんはチョコとかスナック菓子とかお菓子を集めてくれ。」
「それって私の好みで選んでいいの?」
「出来れば種類は色々揃えてほしいが…。まあ、ちょっと祠堂さんの好きな菓子が多くても誰も文句は言えないな。あと、血が付いてるのは絶対入れるなよ衛生上良くないから。」
「やった!じゃあ行ってくるね!」
祠堂さんはそう言ってカバンを片手にお菓子コーナーに走って行った。
「さて、俺も集めるか〜。」
「……、よし。こんなもんだな。さっさとずらかるぞ」
「アラホラサッサー……。なんちゃって。」
そこから
「よっ。」
「………、めぐっちから伝言。『速く帰ってきて』だってよ。あと出口を塞がれてる、殺れ。」
「あいあい」
そう返事をし、カルタの絵札の様な一枚のカード《スペルカード》を取り出し、出口へと向かう。
「え、楓さんの!なんで不知火先輩だけに行かせるんですか!?流石にあの数は…」
「そうですよ!確かにあのキラキラの…えっと弾幕?が使えるにしても不知火先輩死んじゃうよ!」
どうやら後輩二人は心配してくれているようで、案外悪くない気持ちだ。
「大丈夫だ。折角だし、俺の切り札を見せてやるよ。」
奴らを呼び寄せるついでにそう叫び、スペルカードを掲げる。
「す〜……はあ。スペルカード発動!《滅符:
スペルカードを宣言すると、俺の目の前に紅い魔法陣が展開されたと、ほぼ同時に火炎の奔流が迫りくる奴らを
暫しの沈黙。そして……、
「すっご〜い!不知火先輩、いや紅汰先輩!今のって先輩の能力ですか!?」
沈黙を破ったのはテンションの上がった祠堂さんだった。
「そうとも。俺の能力は『炎を司る程度の能力』、まあ火属性の攻撃なら大体再現出来るのさ。」
そう軽く説明すると、
「なるほど。楓さんが近接特化紅汰先輩が広範囲殲滅特化ってわけですね。」
直樹さんが冷静に解析し、俺達の能力を正しく把握した。
「あのさぁ。さっさと出発しないとまた彼奴等が集まってくるから乗って。」
そういう気の短い楓に従い、俺達はリバートロンシティを後にした。
以下補足説明。
不知火紅汰
種族:半人半蓬莱人(なんだよそれ)
能力:表)炎を操る程度の能力
名の通り炎を操る。火力はもこたんのほうが上
裏)???程度の能力
紅汰本来の能力。紫が幻想郷から追放するほどやばい。
もうひとり
それは全てを喰らい尽くす。
走犬走
種族:白狼天狗
能力:全てを見通す程度の能力
千里先に限らず、人の性格や弱点も見通すチート。
武装:母、犬走椛の装備をそのまま受け継いでいる。
父母共に白狼天狗であり、その運動能力は100年に一人の天才と謳われるほど。椛と妖夢に剣術を教わり、茨木華仙に護身術を学んだ。フランと弾幕を使わないでタイマン張れるヤベー奴。(弾幕勝負が苦手なだけ)
妖怪の山の神に天狗に河童、鬼。その全てに気に入られているので神の加護とか河童の発明した結界生成装置とかに護られてる。なんならそのへんのが使いものにならなくなったら妖怪の山総出で助けにやってくる。
めぐねえ
激おこぷんぷん丸(古いわ!)
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