魔法科高校の筋肉野郎と地球外生命体 (アグニカになりたいマクギリス)
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キャラ設定

キャラ設定から書けばいいのか本編を先に書けばいいのかわかんないです…
まぁキャラ設定を先に書いたんですけどね!
龍「手抜きすぎだろ」
エ「アホだよなぁ」
ウソダドンドコドーン!( OwO)


司波龍夜《しばりゅうや》

 

年齢 入学編:15歳

身長173cm

体重58kg

ハザードレベル 入学編:3.2

 

司波深雪の双子の弟で司波家の次男。沖縄侵攻戦で桜井穂波と共に達也を助けるが、光の粒子となって消える

 次に目を覚ますと仮面ライダービルドの世界でファウストの人体実験の実験台にされかけたところを仮面ライダービルド《桐生戦兎》と仮面ライダークローズ《万丈龍我》に助けられる

 万丈が仮面ライダークローズマグマとして戦った時から戦兎に頼み、仮面ライダークローズチャージとして4人と共に地球外生命体のエボルトと戦った。仮面ライダーローグ《氷室幻徳》と共にエボルト怪人体と戦闘し、エボルトリガーの破壊に成功するが氷室と同じく光の粒子となって再び消えた

 もう一度目を覚ますと元の世界へと戻り、司波兄妹達と再会。数日後にはパンドラボックスやスクラッシュドライバーとドラゴンスクラッシュゼリーを手に入れ、エボルトと再会を果たしてしまう

 ちなみにだが頭の良さは達也や戦兎よりも万丈よりだが万丈よりも少し良いレベル

 見た目は髪型は黒髪の万丈、瞳が達也達と同じ水色

 エボルト憑依時の見た目は髪型はボサボサになり、瞳の色が紅色に変わる

 「今の俺は、負けられねぇ!」

変身ライダー

仮面ライダークローズチャージ

仮面ライダークローズ

仮面ライダーグレートクローズ

仮面ライダークローズマグマ

 

エボルト

 

 仮面ライダービルドの世界で龍夜達と戦い、仮面ライダービルドに敗れた後、新世界にて万丈と共にキルバスを倒した。その後何故か龍夜の世界へとパンドラボックスやフルボトルなどと共に来た

 最初の頃は龍夜達の世界を破壊してやろうかと考えていたが、龍夜達と共に接していくうちに感情を覚え、丸くなっていく

 龍夜の世界に来た際に大量のフルボトルやロストボトルを落としてしまったため、責任を持って全てのスマッシュを倒すと言ってるが半ば無理やり龍夜達も巻き込んでる

 一番最初にスマッシュと遭遇し、違和感を覚えフルボトル回収と浄化のためと称して四葉の力を借りファウストを設立する

 何もない時は龍夜に寄生しているか、ファウストで研究してるかのどちらか

 余談だがやはり作るコーヒーは不味い

 分離してる時の見た目は白髪の龍夜、瞳の色が紅色

 「さぁ、楽しい祭りの始まりだぁ!」

変身ライダー

ブラットスターク

仮面ライダーエボル・コブラフォーム

仮面ライダーエボル・ドラゴンフォーム

仮面ライダーエボル・ラビットフォーム

仮面ライダーエボル・ブラックホールフォーム

 

 ファウスト

 

 龍夜達の世界でエボルトが四葉家の力を借りて設立した企業

 主なスローガンは『科学と魔法でLOVE&PEACEを』

 表向きは科学企業と魔法企業の複合系であり、CADの開発はもちろん、魔法の研究などをしてるのだが、本当はフルボトルの浄化と回収、スマッシュの研究、ライダーシステムの開発などをしている

 元FLT(フォア・リーブス・テクノロジー)の第3課の職員が多数いる。理由としては四葉の圧力に屈したFLTの技術共同のための派遣社員という名の生贄として差し出されていたが、エボルトの喝によってかなりの業績を出し続けた上でFLTに全員の辞表届を出し正式にファウストの社員となった

 また達也もトーラス・シルバーの片割れ、シルバーとしてファウストで活動している(龍夜はトーラス・シルバーのテスターという名の実験台にされているが本人は気づいていない)

 

 クローズドラゴン

 

 エボルトが龍夜の頼みでファウストのコネで作った。本来の目的は深雪の愛玩兼ボディガードだが、頭部と尻尾を折りたたみドラゴンフルボトルを入れ、ビルドドライバーにとりつけることで仮面ライダークローズへと変身可能

 女子受けされているがドラゴンフルボトル自体が万丈の恋人だったため雌になっている(オリジナル設定)。攻撃方法は口から炎と雷撃を放つ

 

 仮面ライダークローズチャージ

 

 かつて万丈龍我が変身した仮面ライダークローズの強化形態。万丈が仮面ライダークローズマグマとして戦い始めた後に戦兎がスクラッシュドライバーとドラゴンゼリーを修復したため、使用可能だが肝心の変身者がいなかったので、龍夜が戦兎に頼みこみ変身することになり共に戦った

龍夜が元の世界に戻った後もエボルトやフルボトルと共にスクラッシュゼリーとスクラッシュドライバーが現れたため、龍夜は再びこの姿を手に入れた

 

 パンドラボックス

 

 エボルトやフルボトルなどと共に龍夜の世界に渡って来た。

 エボルトが完全に管理し、ファウストで研究をしている

 完全に管理してるためスカイウォールの惨劇みたいなことは起きない

 それ以外は原作ビルドと変わりません

 

 




オリジナル展開って難しいですね…書く人ほんとすごい…
龍「お前はもっと努力しろ」
エ「だよな」
(´・ω・`)


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第1話 別れと転生と再会と

小説はじめて書くけどこんなにつらいんすね…今まで書いてた人達本当にすごい…
龍「そういう暇あったら早く書いてろ」
俺たちはこうやって書くことを強いられているんだ!
エ「そのネタもう古いし早く書け。読者に怒られるぞ」
はい…書きます…
龍「弱…」


 

 魔法が空想上での産物ではなくなり、科学と魔法が混同し、共存している世界……

 

 〜2092年〜 沖縄

 龍夜side

 (まじか……もう立てないし……死んだな……)

 

 そう思う俺、司波龍夜(しばりゅうや)は過去を振り返る。

 俺たちの遠縁にあたる黒羽家のパーティーに呼ばれ、家族で沖縄に行き海辺で遊んだり,軍の基地に行ったりした。最初はただ楽しいと思っていたが……国籍不明の軍、おそらく大亜連合──大亜細亜連合──だろう敵が沖縄に侵攻して行った

 

 俺たちは風間大尉の呼び掛けで基地に避難していった。だが、軍に裏切り者がおり、魔法を使おうとした俺たちをキャスト・ジャミングというもので俺たちの隙をついた。奴らは持ってた銃で撃たれたが反射的に俺は双子の姉である司波深雪(しばみゆき)を庇い、死にかけたが一つ上の兄の司波達也(しばたつや)が持つ固有魔法により、一命を取り留めたはずだった

 

 が、なんと奴らは駆逐艦から砲弾を発射するということをやりやがった

 兄貴は自ら戦場に行き味方の傷を魔法で無くし、敵の兵を魔法で跡形もなく消滅させるという方法で暴れ回ったが、兄貴の魔法(のちに聞いたが名称はマテリアル・バーストというらしい)を放とうとするが放つためには駆逐艦の射程距離に入らなければいけないらしい……

 

 「はは、短い人生だったなぁ……」

 「龍夜!死ぬな!深雪を置いてくのか!?」

 

 兄は駆逐艦の射程距離に入った瞬間に魔法を放ち、敵艦隊をあっという間に消滅させたが、そのせいで生じた巨大な津波が迫っていた……

 

 家のメイドであり、母司波深夜(しばみや)のガーディアンである桜井穂波(さくらいほなみ)さんと共に外に出た俺らは咄嗟に障壁魔法を張ったが……俺の得意魔法は振動加速系統であって障壁魔法は苦手だった、その上に最大限の障壁を貼ったからな……なんか身体がおかしい。体の色んなところから光る粒子が出てる……俺の命も終わりなんだろう

 

 「兄貴……姉ちゃんを……守ってやってくれ……」

 「龍夜……お前……」

 

 俺を抱えている兄貴は泣いていない……母さんに聞いたが、兄貴は魔法演算領域(簡単に言うと端末などの容量)のほとんどを二つの魔法が占めており普通の魔法が使えなかった……母さんは魔法演算領域を兄貴の精神に埋め込んだから人並みとは言えないが兄貴も激情を犠牲にして普通の魔法が使えるようになった……残った感情は姉、深雪に向けられた兄妹愛のみらしい……

 

 「じゃあな……兄貴……」

 「龍夜!」

 

 俺はもう眠くなってきた……目を瞑る俺を光る粒子が包み込んで……

 

 達也side

 

 「龍夜……」

 俺の手の中で死にかけていた龍夜は、目の前で消えてしまった……身体が粒子となって消えた……

 

 「っ……!」

 

 後ろの風間大尉達も顔を伏せている……

 

 深雪……龍夜を救えなくて、すまない……

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 魔法が存在せず、巨大な壁が日本を三つに分けた世界……

 

 〜西暦2017年〜 東都

 

 龍夜side

 

 「んん……ん?ここどこ?」

 

 俺は目が覚めると、別の場所にいた。てか俺死んでないよね? 

 

 「今どこでいつなんだ?人に会いたいが……いなさそうだよな」

 

 俺は廃工場らしき場所の近くで倒れていたようだな……だけど誰もいねぇな? 

 

 「取り敢えず何処か歩いてみるか。人がいればいいんだが……」

 

 すると沢山の足音が聞こえてきた

 

 「ん?誰だ?人でもいるのかな?」

 

 俺は気になって足音の発生源らしきとこに歩いて行ったが……そこはなんとガスマスクの男達が人達を緑色の液体に無理矢理浸けさせ、何かのデータをとっていた……そんな状況に俺は目を奪われた

 

 「なんだよこりゃ……どうなってんだよ!」

 

 俺は無意識に大声を出してしまい、急いで口を塞ぐが、手遅れのようでガスマスクの男達が俺を見る。一番上の玉座みたいな椅子にはコウモリのような印象を持つスーツの男がいた

 

 「貴様、どうやってここにきた?」

 

 「ど、どうやってって……」

 

 たまたま近くで倒れていたなんて言えねえ……が、なんて言えばいいのかもわかんねえ……どうする? 

 

 「くくっ、いいじゃねぇか。新しい実験台が向こうから来たんだ」

 

 「っ!?」

 

 いつの間に俺の後ろに!?後ろを見るとコブラのような印象を持つスーツの男が立っていた

 

 「次はこいつでやろうぜ?」

 

 「…………いいだろう。やれ」

 

 するとガスマスクの男達が俺を抱えて液体が貯蔵されている人1人は入れるであろうタンクに入れようとしていた

 

 「はっ……離せ!離しやがれ!」

 

 俺は抵抗したが多勢に無勢、どうすれば……CADは持ってる!これを使えばなんとか……そう思いCADを取り出すが、コブラの男に取り上げられる。

 

 「っ!」

 

 「へぇ、面白いおもちゃだな」

 

 CADを取られた俺は簡単にタンクの中に入れられる。そして、口に呼吸器のようなものを取り付けられる

 

 「……っ!……んんん!んん!」

 

 すると身体が変になりそうになる。身体に何かのガスが入れられてるような感じだ! 

 

 「んんんんん!」

 

 「ハザードレベル2.4……2.5……すごい、もっと上がっていきます!」

 

 「ほう、なかなかの逸材が向こうから来たか……」

 

 誰か……助けて……くれ……

 

 するとドカアアアァァァン!と音が鳴り響く

 

 「「「!?」」」

 

 「っしゃあ!こじ開けたぜ!」

 

 「なんで扉をぶち壊すのこのバカ!」

 

 「はあ!?誰がバカだ!」

 

 「お前以外いないだろバカ!」

 

 「うっせぇ!」

 

 「……侵入者か」

 

 片方は赤と青の複眼が兎と戦車のスーツの男、もう片方は龍のような複眼でその複眼の間にも龍の頭部がある男だった。一体彼らは……? 

 

 「やっぱり来たか!」

 

 「行くぞ!」

 

 兎と戦車の男はコウモリの男に、龍の男はコブラの男に向かって走る

 

 「おらぁ!」

 

 「はあ!」

 

 龍の男はコブラの男にパンチを放つが簡単に避けられる。コブラの男はパルプがついた剣でカウンターを放つが防がれる。

 

 「はぁ!せりゃあ!」

 

 「ふん!」

 

 兎と戦車の男はドリルの様な物が刀身の剣でコウモリの男を切ろうとするが、コウモリの男は避けて手にしていた銃を放つ。

 

 「うおっと!ならこれで!」

 

 《ゴリラ!ダイヤモンド!ベストマッチ!》

 

 男が腰のベルトについてるレバーを回転させるとベルトから水色と茶色の液体らしき物が中に入ったパイプが出てそれぞれ半身を作りだす。それは男を挟む様に前後に設置された

 

《Are You Ready?》

「ビルドアップ!」

 

 そういうと男の前後の半身が男を挟む様に移動し男の姿が変わる

 

 《輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!イエェーイ!》

 

 男は片方は水色で左肩にダイヤモンドを、もう片方が右腕にゴリラのような腕を持つ姿に変わった

 

 「勝利の法則は、決まった!」

 

 そういうと男は右腕で殴りかかるが、コウモリの男は回避する

 

 「くっ……ここまでか……」

 

 「なかなかやるねえ〜」

 

 「おい逃げる気か!」

 

 「そういうこと。CIAO〜♪」

 

 そういうと男達の頭部の煙突らしきとこから煙が出てきて男達を包み込む。煙が晴れると二人はいなくなっていた……なんなんだよ一体!? 

 

 「んんんんん! んんんん!」

 

 そういや俺この中に入れられたままだ! 助けてくれるように呻き声を出す。助けてくれ! 

 

 「ん?おい戦兎!人が入ってるぞ!」

 

 「マジか!助けるぞ万丈!」

 

 どうやらあの二人は助けてくれるらしい……よかった! 

 

 「はぁ……はぁ……はぁ……ありがとう……ございます……」

 

 助けられた俺は酸素を体に取り込みながら二人に感謝した

 

 「あの……貴方達は……?」

 

 「ん?俺ら?俺は桐生戦兎(きりゅうせんと)、仮面ライダービルドだ。んでこっちのバカが……」

 

 「バカじゃねぇ!俺は万丈龍我(ばんじょうりゅうが)、仮面ライダークローズだ!」

 

 「俺は……司波龍夜です……あの、ここはどこで今は何時ですか?」

 

 「ん? ここは東都のファウストの研究施設だ。んで今は2017年の……おい、どうかしたか?」

 

 東都?そんな場所は聞いたことない……それに2017年?俺がいたのは2092年のはずだぞ? 

 

 「あの、間違ってないですか?俺が確実に知ってる年代は2092年であってますよね?」

 

「ん?間違ってないぞ?今は2017年だ」

 

「え?」「え?」

 

 〜閑話休題〜

 

 俺たちはnascitaというカフェにいた。そしてカフェの地下に研究室があった、そこで話すのか? 

 〜〜〜〜〜〜

 その後お互いの情報を交換していたが……どうも話が噛み合わない。魔法が存在しない上にスカイウォールという日本を三つに分ける壁? そんなのは知らないが……

 

 「ここでお前に考えられるのは三つだ」

 

 と、戦兎さんがそう言った

 

 「一つ目は記憶喪失で年を間違えた」

 

 「それはないと思います。記憶喪失だったら俺の名前とか覚えていないばすですし……」

 

 「天才物理学者である俺は信じたくないけど二つ目、君はタイムスリップして来た」

 

 「……いや、俺の知ってる限り東都という都市もありませんでしたし、スカイウォールも存在してません。それにこの時代だと魔法の研究が存在してるはずですし……」

 

 「……これが最後、三つ目は君は俺たちの世界に来た。と思うけど?」

 

 「おい戦兎、人が別の世界に来れるのかよ?」

 

 「……」

 

 「どうなんだ?」

 

 万丈さんの意見も合ってると思う。だって人がそう簡単に別の世界に行けるわけがない……しかし魔法が存在せずに日本を三つに分ける巨大な壁(スカイウォール)、そして仮面ライダー……これは確実にわかる……俺が異世界に来たのだと……

 

 「恐らく……それで合ってると……思います……」

 

 「……マジかよ」

 

 俺の発言に万丈さんが驚きの声をあげ、nascitaのマスターである石動惣一(いするぎそういち)とマスターの娘の石動美空(いするぎみそら)も驚愕の顔をしている。そりゃそうだろう。手ぶらの子供が急に異世界から来ましたなんて誰も信じないだろう……

 

 「なるほどな。俺は信じるよ」

 

 「「「「!?」」」」

 

 そういう戦兎さんを驚愕の目でみる俺ら四人

 

 「戦兎信じるのか!?」と万丈さん

 

 「私的には信じられないし!」と美空さん

 

 「科学しか信じない戦兎が……」と惣一さん……いやまぁ、科学しかない世界の人達からしたらそうだけども……

 

 「俺はそいつを信じる。こいつの目は嘘をついていないんだ」

 

 「……戦兎が信じるなら俺も信じるぜ」

 

 「万丈さん……」

 

 「まぁ何かあったら刻むし」

 

 「美空さん……ちょっと怖いですよ」

 

 「まぁ戦兎が信じるならな。俺も信じるよ」

 

 「惣一さん……」

 

 皆の優しさに気がついたら俺の目には涙が溜まっていた……

 

 「あれ……俺なんで……泣いてるんだ……?」

 

 「皆、お前のことを信じているんだ」

 

 戦兎さんのその言葉に俺は泣いてしまった……皆信じてくれてるんだ……その言葉がなんか嬉しい……

 

 「ひぐっ……ひぐっ……うぅ……」

 

 俺は泣き始めた。信じるという言葉がどれほど嬉しかったか、それが今初めて知った。誰かに信じてもらえた

 

 「……」

 

 戦兎さんは泣いてる俺の頭を無言で撫でる。ワシャワシャする感じだから髪型がボサボサになるが今は気にしてない……

 

 〜数分後〜

 

 「落ち着いたか?」と、コーヒーを淹れながらそう言う惣一さん。だいぶ泣いてスッキリしたし、喉も乾いた

 

 「はい、おかげさまで」

 

 と、目の前に置かれるコーヒーに俺は手をつける

 

 「「「あっ……」」」

 

 なんか3人が焦ったような声を出したが、まぁいいやと飲んだら……

 

 「……マッズ! マスターこのコーヒー不味いんですけど!」

 

 「不味いわけないだろ!」と、別のコップに入れたコーヒーをマスターが飲むが……

 

 「マッズ!」

 

 不味いんかい! そりゃこの店に人来ないわ! 立地的にも店の味的にも人立ち寄らないわ! 

 

 「まぁ、よろしくな」

 

 と戦兎さんが俺に手を伸ばす。俺はその手を強く掴んだ

 

 「はい!」

 

 〜そこからは戦いの連続だった……

 

 「変身!あがあ!ぐぅ!」

 

 万丈さんが北都のスマッシュと戦うために仮面ライダークローズの強化形態、仮面ライダークローズチャージへと変身し……

 

 「面白いことしてんなぁ」

 

 「なんでお前がそれを!?」

 

 「変身」

 

 《潰れる!流れる!溢れ出るぅ!ROBOT IN GREASE!ブラァ!》

 

 北都の仮面ライダー、グリスの変身者猿渡一海(さわたりかずみ)と戦い……

 

 「変身……」

 

 《UNCONTROL SWITCH!Black hazard!ヤベーイ!》

 

 暴走した万丈さんを止めるために戦兎さんが危険な力、ハザードシステムをつかい……

 

 「やめろおおお!!」

 

 《Ready GO!オーバーフロー!ヤベーイ!》

 

 「があっ!」

 

 一海の仲間の3人の内1人、青羽を殺してしまい……

 

 「蒸血」

 

 《コブラ…コッ・コブラ…ファイヤー!》

 

 「俺がブラットスタークだ」

 

 酷い時にはマスター…いや石動惣一がコブラの男、ブラットスタークだったこともあった…

 

 「ふんりゃああああ!」

 

 「……!」

 

 そして……北都と東都とのライダー同士による決闘……勝ったのは東都だが漁夫の利を得た西都が北都を制圧した……

 

 「向こうで…見守ってますから…」

 

 西都のエンジンブロス、リモコンブロスの2人の手により、一海の仲間、黄羽も死んだ…

 

 「変身」

 

 《割れる!喰われる!砕け散る!CROCODILE IN ROGUE!ドォラァ!》

 

 西都へと亡命したコウモリの男・ナイトローグの変身者だった氷室幻徳(ひむろげんとく)が仮面ライダーローグとなり、戦兎さん達と戦った時もあった…

 

 「カシラ…ありがとうございました…」

 

 そしてローグの一撃を受け、赤羽も死んでしまった…

 

 そして西都と東都のライダー同士による3対3の代表戦が行われた

 

 一回戦、一海さんの仮面ライダーグリスとエンジンブロスとの戦いでは…グリスの勝利で終わった…

 

 二回戦、万丈さんの仮面ライダークローズチャージとヘルブロス──エンジンブロスとリモコンブロスの合体形態らしい──ーと戦い…

 

 「合体しちゃったよ…」

 

 「ヘルブロス…参上…」

 

 「…うそーん!」

 

 この戦いでは勝ったのはヘルブロスだった…

 

 そして三回戦…

 

 「俺は俺のやり方で葛城巧を超えてみせる!」

 

 《Are You Ready?》

 

 「ビルドアップ!」

 

 《紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!ヤベーイ!ハエーイ!》

 

 《鋼鉄のブルーウォーリアー!タンクタンク!ヤベーイ!ツエーイ!》

 

 戦兎さんは新たな力…ハザードを制御できるフォームでローグを圧倒した

 

 「万丈!ナックルだ!」

 

 「おう!」

 

 《ボトルバーン!》

 

 《クローズマグマ!》

 

 「俺のマグマが迸る!」

 

 万丈さんも新たな力…仮面ライダークローズマグマとして戦った

 

 だが…

 

 《コブラ!コブラ!エボルコブラ!フッハッハッハッハ!》

 

 ブラットスターク…その正体は地球外生命体、エボルトだった…エボルトは異常的な力で戦兎さん達を圧倒した…

 

 クローズマグマとして戦い始めた万丈さんのドラゴンスクラッシュゼリーと戦兎さんがなんとか修理したスクラッシュドライバーを使い、仮面ライダークローズチャージとなった俺はエボルトを止めるために戦兎さんに万丈さんと一海さんや氷室幻徳…いや幻さんと戦ったが…

 

 《Are You Ready?》

 

 「変身」

 

 《ドラゴン!ドラゴン!エボルドラゴン!フッハッハ!》

 

 「フェーズ2、完了」

 

 隙をつかれ、万丈さんがエボルトに身体を乗っ取られてしまった…俺達はその万丈さんを助けるために戦った…

 

 しかし万丈さんを救った代償に…あるものを失った…

 

 「変身」

 

 《ラビット!ラビット!エボルラビット!フッハッハ!》

 

 「フェーズ3、完了!」

 

 万丈さんを救ったが、今度は戦兎さんがエボルトに乗っ取られた…

 

 今度は万丈さんと共に戦兎さんを助けるが…

 

 「君は…誰だ…?」

 

 戦兎さんは記憶を無くす前の葛城巧へと戻り、桐生戦兎としての記憶を失った…

 《コウモリ!発動機!エボルマッチ!》

 

 「変身!」

 

 《バットエンジン!フッハッハ!》

 

 内海さんが変身したマッドローグとの戦闘…

 

 「何故ジーニアスに変身できない!?」

 

 「気合いが足りねぇんだよ!気合が!」

 

 そして…

 

 「何やってんだよ万丈、龍夜」

 

 「やっぱりサブキャラには荷が重かったか」

 

 「戦兎…」

 

 「戦兎さん…」

 

 「自意識過剰な正義のヒーロー、復活だ!」

 

 葛城巧は消失してしまったが、戦兎さんの記憶が元に戻った!

 

 《Are You Ready?》

 

 「変身」

 

 《完全無欠のボトルヤロー!ビルドジーニアス!スゲーイ!モノスゲーイ!》

 

 戦兎さんはその力で圧倒し、マッドローグを撃退する!

 

 だが2人だけが新たな力を手に、強くなったわけじゃない…

 

 《ブラックホール!ブラックホール!ブラックホール!》

 

 《フハハハハ!》

 

 戦兎さんをエボルトから助けた際、俺たち4人のライダーキックをエボルトが受け止め、暗黒のトリガー…エボルトリガーの封印が剥がれた…

 

 エボルトはその力で地球を飲み込もうとしている…それだけはなんとしても阻止しなくては…

 

 だが、俺たち5人が束になってかかっても、エボルトには勝てなかった…それどころかエボルトは黒いパンドラパネルと、ロストフルボトルという人工フルボトルを使い、より強大な力を手にした!

 

 俺たちは必死に戦ったが、怪人体と化したエボルトの前には誰も太刀打ちできなかった…

 

 そして俺たちはエボルトがパンドラボックスの力を使い作り上げたパンドラタワーへと走るが…

 

 《Are You Ready?》

 

 「──できてるよ…」

 

 《激凍心火!グリスブリザード!ガキガキガキガキガッキーン!》

 

 「心火を燃やして…ぶっ潰す!」

 

 エボルトの細胞を使って作られた三羽カラスの相手をするために残った一海さん…戦兎さんから「使うな」と止められていたブリザードナックルを使い、グリスブリザードへと変身した…

 

 「死なないでよ…グリス…」

 

 しかし三羽カラスを倒したものの一海さんは光の粒子となって消えた…

 

 

 

 そして…俺たちも命の灯が燃え尽きそうだった…

 

 「「はぁ…はぁ…」」

 

 「俺達に力を貸してくれ!」

 

 「行くぞぉ!」

 

 「自ら寿命を縮めに来るとはなぁ!」

 

 エボルトに攻撃を当てるが、どれも効果は低い…

 

 「「おおおおおおおお!」」

 

 「2人のハザードレベルが上がっている!?」

 

 「大義のための…犠牲となれ!」

 

 「今の俺は…負けられねぇ!」 

 

 《CRACK UP FINISH!》

 

 《SCRAP BLAKE!》

 

 「「うおおおおおおおお!!」」

 

 「ふん!」

 

 「があっ!」

 

 幻さんのキックが簡単に…だが!ここにいるのは幻さんだけじゃない!

 

 「今だ龍夜ぁ!」

 

 「はああああああ!」

 

 俺の必殺技がエボルトリガーに直撃する!決まった!

 

 「後は…頼んだぞ!…桐生戦兎…!」

 

 「幻さん…」

 

 「戦兎さん…龍我さん…いままで…ありがとうございました…」

 

 「龍夜…」

 

 そして俺は大の字に仰向けで倒れる…身体から光の粒子が出てきてる…前の世界の時もこんな感じだったなぁ…

 

 俺の意識は途切れた…戦兎さん…龍我さん…健闘をお祈りしときます…

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 〜2093年〜

 

 「……んんん?」

 

 あれ?またどこかへ行きました?てかここどこ?とあたりを見るために立ち上がるが何か爪先に当たった

 

 「墓…?」

 

 足元の墓には《司波龍夜》と書かれていた

 

 「どうやら、元の世界に戻ってきたようだな。俺って」

 

 思うところがある。戦兎さんや龍我さんは無事なのだろうか…エボルトは倒せたのか…あっちの世界は…どうなったのか…

 

 「ま、わかんねぇ以上仕方ないか。兄貴達探しの旅でも出ようかな?」

 

 と、冗談半分で口にする。まぁ見つかんなかったらの場合だがな

 

 すると、背後からドサッと何かが落ちる音がした

 

 「ん?」

 

 俺は後ろを見ると、驚愕した顔で立っていた兄貴と姉ちゃんがいた。どうやら落ちた音は献花の花らしい

 

 「龍夜…なのか?」

 

 「そうだよ兄貴、姉ちゃん。ただいま」

 

 俺の言葉で姉ちゃんが俺に抱きついてきた

 

 「龍夜…龍夜ぁ…」

 

 「ごめんな、姉ちゃん」

 

 姉ちゃんは俺に抱きついたまま泣き始める

 

 やれやれ…事情も話さないといけないしあれからどんだけ時間が経過したか聞かなきゃな…

 

 

 

 

 

 

 

 

  あっ、ご当主様にも事情話さなきゃいけないかも…

 

 




やっぱ小説辛い…最低10000文字超えたい…
書いてるうちにエボルトのキャラわかんなくなる…
龍「よく考えたら俺2回死んでんだよな?俺何回死ぬの?」
…ラーメンウメーイ!
エ「食っとる場合かー!」
龍「いやお前シュトロハイムかよ」
誤字脱字やその他不具合があったら教えてください!なんとかします!
龍「なんとかしますの時点で不安なんだが…」
き…気にするな!
エ「ジュラルの魔王かよ…」


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第2話 龍と変身と星狩りと

エ「何でこんなに遅くなった?」
ぴ…pixivで漫画読んだりパズドラやってたらこんなに…
龍「他には?」
最近始めたFGOハマってました!すみません!(土下座)
エ「おいおい…今回は変身シーンだろ!」
申し訳ありません!このような駄文で!
龍「まぁ…1発は覚悟しろよ!」
え!?
《Scrap Blake!》
龍「おらあああああ!!」
ぎゃあああああああ!!
エ「まぁ今回もゆっくりくつろぎながら読んでくれ!エボルトとの約束だ!守らなかったらブラックホールで吸収な!」
何回回しても星5でねぇ…って思ったらブリュンヒルデ出たぁ!?
2人「「嘘ぉ!?」
※ネロ祭のガチャで単発回したら2体も出ました。俺、単発教に入ります


 兄貴達と再開した俺は、東京にある家にたどり着いた

 

 ここが家か…俺は先に家に入った2人に続くように入る。なんか懐かしの我が家じゃない気がするが…父である司波龍郎(しばたつろう)が2人に渡した…言い方を変えれば父の居場所はこの家にないだろう

 父は母の死後に愛人と再婚、現在はとある企業の近くの家で住んでると兄貴に聞いたが…まぁ俺には関係ないだろうな

 

 と、俺が家の敷居を跨いだ時、兄貴と姉ちゃんが振り返り

 

 「「おかえり」」

 

 と、言った。俺は嬉しかった…向こうでもエボルトってわかる前の石動惣一さんにもよく言われた記憶がある…あれはあれで嬉しかったな…

 

 「うん。ただいま」

 

 うん。やっぱり『おかえり』にはこの返しが一番だ。姉ちゃんはすっごい笑顔だし、兄貴も微笑だが笑顔になってるし

 家に着いて早々、兄貴達と話をしたが俺がいなくなった後から一年は経ってたらしい。あの花束って一周忌のためのかよ…

 

 そして母である司波深夜と家政婦である桜井穂波さんは俺と同じく沖縄で死んでしまったらしい…しかし向こうの世界で見てないから…そう言うことなのだろう…俺だけ向こうの世界へと行き、そして戻ってきたことに…

 そして今は2093年、来年で高校に入るのだろう。まあ大体行く高校は国立魔法科高校だ。国立魔法大学附属高校──通称魔法科高校とは、魔法師、つまり魔法を使える人間を教育するための学校といったものだ。それが日本に九つある。俺たちは東京に住んでいるため東京にある第一高校──通称一高に入学するつもりだ

 

 「それで龍夜」

 

 と兄貴がそう言い出す。大方予想はしているが…

 

 「この1年間何をしていたんだ?」

 

 やっぱりその話だよな。だって俺は丸1年間一回も会わずにいたからな…どうするか…本当のことを言うしかないか?

 

 「にわかには信じられないと思うが…」

 

 俺はこの1年のことを全て言った。別の世界に行ったこと、そこで戦った敵のこと、かつての敵と共により強い敵と戦ったこと、地球外生命体エボルトと戦い…そして、俺が死んだことを…そんな話を兄貴はただ黙って聞いていたが姉ちゃんは驚愕の顔をしていた。誰だって家族が急にそんな話をすると確かにそんな顔するよな…

 

 「と、言うわけだ。信じられないよな…」

 

 信じてくれなくてもいい…俺はそう思った。2回も死んでいるが、生きてるだけで儲けもんだろう

 

 「たしかに信じられないな」

 

 「お兄様!?」

 

 と、兄貴はばっさりと言い放った…姉ちゃんは驚愕し兄貴の顔を見る…お兄様って…一年前、兄貴が軍の施設に見に行く際姉ちゃんと俺が着いて行くことになったが…その時姉ちゃんがお兄様って言いだしたんだよな…弟としてはこれ以上ブラコンになって結婚を逃さないか心配だな…

 

 「相手がお前じゃなかったらな」

 

 「「!?」」

 

 「…信じてくれるのか?兄貴?」

 

 「龍夜の言うことを信じるのですか?お兄様?」

 

 「もちろんだが?」

 

 と、兄貴はさも当然のように振る舞っている…

 

 「………」

 

 「龍夜…?」

 

 「…ありがとな、兄貴」

 

 「なに、弟の言うことだ。信じるしか無いさ」

 

 「ところで姉ちゃんは?」

 

 「信じ難いですが信じますよ。お兄様の言うことなら、龍夜も信じてますし」

 

 …なんだろう…俺があの世界に行く前とのギャップ差が激しい…もはや別人に近いんだけど?前までお兄様って言ってなかったよね?

 

 「…うん。ありがとな。2人とも」

 

 「あぁ」

 

 「えぇ」

 

 ほんと、俺はいい兄と姉を得たもんだ。

 

 「じゃあ俺はご当主様に報告するよ」

 

 「──え?」

 

 「龍夜?」

 

 ──ご当主様に報告?あの四葉家ご当主様に報告??

 

 「おいおいおいおい、ちょっと待ってくれ兄貴。ご当主様に報告だけは流石に…」

 

 「何か問題が?」

 

 「いえありません」

 

 うん。あの眼光の兄貴には勝てん。エボルトにも負けて兄貴にも負ける俺って…いやあの2人とかと比べると負けるわ。兄より優れた弟なんて存在しないからな

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 兄貴は既に自室に戻り、リビングにはソファに座ってる俺と何故か距離が近い姉ちゃんの2人だけだ。あの…深雪さん近くありません?

 

 「あの…姉ちゃん?」

 

 「…」

 

 「姉ちゃーん?」

 

 「……」

 

 「あの…深雪さん…」

 

 「………」

 

 やばい…怒ってるかもしれない…何言っても知らんぷりだもん…絶対怒ってるよ…

 

 「…龍夜」

 

 「はい!」

 

 急に姉ちゃんから名前を呼ばれたから咄嗟にはいって言っちゃったよ…説教なんだろうなぁ…

 

 「…本っ当に心配したんだから!」

 

 「申し訳ありませ…ん?」

 

 俺は咄嗟に謝罪しようとしたが、姉ちゃんの口からは驚きの言葉が出てきたんだが…俺何か…いやしたわ。一年くらい急に居なくなって急に出てきたら普通心配するわ

 

 「えっと…ごめんな?」

 

 「全くよ…そのかわりに、その世界での人達のお話、してくれる?」

 

 「わかったよ。まずは…戦兎さんからだな」

 

 俺と姉ちゃんがリビングで談笑していると兄貴が降りてきた。どうやら話は終わったようだな

 

 と、思ってたら兄貴の口からとんでもない一言が…

 

 「明日、ご当主様がお前に直接連絡するらしい」

 

 「……………うそ〜ん」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 〜翌日〜

 

 俺は久しぶりに姉ちゃんのご飯を食べ、部屋に行ったはいいものの連絡が来るまで何をすればいいか考えてたら俺の端末が震えた。俺は画面を見ると…

 

 「マジかよ…」

 

 そこには『四葉家』とデカデカと文字が出ていた…いくらなんでも早くね?

 

 「まぁウダウダ言っても仕方ない…」

 

 俺は通話ボタンを押し、画面を切り替える。切り替わった画面の向こうでは1人の女性と初老の男性が映っていた

 

 最初に口を開いたのは女性からだった

 

 『久しぶりですね。龍夜さん』

 

 「お久しぶりです。真夜様」

 

 この人は四葉真夜(よつばまや)、俺達の母の妹、つまり叔母にあたる人物であり、日本中の魔法師達の中で最強の家系、十師族の四葉家の当主であり、『極東の魔王』の異名を持つ人だ。ちなみに隣にいる人は四葉家の執事長の葉山という人だ

 

 『沖縄で亡くなったと聞いてましたが、達也さんの報告であんなこと言うとは思わなかったわ』

 

 「はい。兄はなんと?」

 

 『詳しいことは本人に聞いてください、と』

 

 兄貴の野郎…めんどくさくて俺に押し付けやがったな?

 

 「詳細を報告するとなると口頭での説明になりますが…それでもよろしいでしょうか?」

 

 すると真夜様は俺たちの母と同じ年齢とは思えない程の美しい微笑みを浮かべた。確か母さんも同じく年齢と見た目じゃ判断できなかったなぁ…双子だからだろうか?

 

 『いえ、戻って来たのは昨日なのでしょう?なら疲れをとってからでも遅くありません。一週間後に本家に来なさい?』

 

 「…わかりました。2人にも伝えておきます」

 

 『ふふ、待ってるわね』

 

 そう言い残し通信は切られた。一瞬遅れて、俺の身体が近くの椅子にどっかりと座り込んだ

 

 「ふぅ…緊張したぁ…」

 

 まぁ緊張するよ。何せ相手はあの『触れてはならない者たち』(アンタッチャブル)と呼ばれる四葉の当主だ。他の十師族の当主達も、緊張することもあっただろう。ましてや俺は一年も音信不通だったからかより緊張したよ…

 

 「取り敢えず兄貴達に報告していこうかな」

 

 そして俺はリビングに向かい、姉ちゃん達の元へ足を向ける

 

 「終わったよ…」

 

 「どうだった?」

 

 いきなりそれか…まぁ兄貴らしいから仕方ないか

 

 「一週間後に四葉本家まで来いとのこと。全て話すとなると結構長いからなぁ…」

 

 「それはそうでしょ」

 

 「返す言葉もありません…」

 

 たしかに俺の自業自得なんだよなぁ…

 

 …ここで俺はあることを今思い出した。大事なことだからもう一度言う。今思い出した

 

 「そういや大事なこと一つあったなぁ…」

 

 「何かあったか?」

 

 「俺が()()()()()()()()()()って言う証拠だよ」

 

 そう、俺が向こうに行った証拠があればいいんだが…当然この世界にはビルドドライバーもスクラッシュドライバーどころかフルボトルやパンドラボックスすらない。俺がこの世界に戻ってきたときは手ぶらだった…

 

 「まぁおいおい考えるとするか」

 

 「本当、能天気よね」

 

 「うぐっ…」

 

 どうやら俺は姉ちゃんにも敵わないみたいだ…

 

 

 

 

 

 だが、この世界でも俺はまたあいつと出会うことになるとは思いもしなかった…

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 〜一週間後〜

 

 あれから一週間が経ち、今日本家に向かう予定だ。

 学校はどうしたのか?一年も学校に実質不登校だったから、兄貴と姉ちゃんに行かない方がいいと言われて…まぁ勉強は向こうでも戦兎さん達に教えてもらったから大丈夫だ…魔法に関する勉強はしてなかったが…

 

 「「…………」」

 

 俺と姉ちゃんはリビングのテーブルを挟んで朝食を取ってるが…どっちももぐもぐと食べるのに動かすだけで一回も喋らない…いや、喋りたくないのが本心だ

 

 「…龍夜」

 

 コーヒーを飲んでると姉ちゃんから先に喋った。やっぱマスターが淹れたのよりも自分で淹れたコーヒーの方がうまいわ…いや待って姉ちゃん、その話をちゃんと聞けって目で見ないで…

 

 「これはどう言うことなのかしら?」

 

 「俺だって逆に知りたいよ…なんでここにこれがあんのかすら知らねぇのによ…」

 

 俺達が朝食を食べてるテーブルの端に置いてある箱状の物体…パンドラボックスが置いてあった…しかも6枚分しっかりと繋がってる…

 

 今朝、俺たちが起きてリビングに向かうと何故かこれがテーブルのど真ん中にドンッ!っと置かれてあったのだ

 

 だが俺が知ってるパンドラボックスとは違うところがいくつかある。まずは60本ものフルボトルが1個もないことだ

 

 「俺や兄貴が触れてもなにも起きなかったし…どう言うことだ?」

 

 「その言い方からして、本来は何か起きるような代物なのか?」

 

 「お兄様、朝食はこちらに」

 

 「あぁ」

 

 パンドラボックスの調査をしていた兄貴の分の朝食を渡す姉ちゃん…うん、別人って言われても信じる気しかしないわ…

 

 「まぁ、向こうの世界で聞いたんだが、エボルトが触れた時に日本をスカイウォールという巨大な壁を作り出し三つに分けたらしい」

 

 「そんな代物が何故ここに…」

 

 「俺だって知りたいよ!」

 

 俺はツッコミながらパンを口に入れる。うまいな、これ

 

 「まぁ、これ持って行くか」

 

 「持って行くの!?」

 

 「仕方ないだろ…これしか向こうの世界行った証拠ないし…」

 

 俺はそう言い、パンドラボックスを持ち上げる。しかし俺にはもう一つ、心配すべきことがある。それはフルボトルの成分が人に注入され、()()が現れるのではないかと言うことだ

 

 俺はこれを兄貴達に伝えればいいのか…わかんない…

 

 仮にスマッシュが現れても、ベルトがない以上俺に対抗できる手段はない

 

 「出てきたらどうすっかな…」

 

 「何か言った?」

 

 「いんや?それよりも早く本家に行こうぜ?」

 

 「それもそうだな。準備は済ませたのか?」

 

 「出来てるよ」

 

 アカン、グリスブリザード思い出しそう…

 

 「んじゃ、行くか」

 

 俺はパンドラボックスを持って立ち上がる

 

 ここから四葉家へはどうやって行くかだって?この世界は2093年、魔法技術だけじゃなく科学技術も発達してんだぜ!って俺誰に話してんだ?

 

 …まぁつまり、この世界の技術じゃ1日でここから本家まで行けることが可能と言うことであってる…はずだ…

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 (もう少しで着くかな?)

 

 と、思って外を見たその時、周りがおかしいことに気づいた

 

 (なんだ…?周りの人達が逃げ惑ってる!?まさか…本当にこの世界でもあいつらが!?)

 

 さらにここから少し遠いところでは火災が発生してるのか、煙も上がっている…

 

 「龍夜…!?」

 

 姉ちゃんと兄貴もこの異常事態に気づいたのか、驚愕の表情を浮かべる

 

 「どういうことだよ…これは…」

 

 これは明らかに事故とかじゃない…魔法師によるテロか?…いや…こんな壊れ方…もしかして…

 

 「まさか…!」

 

 「龍夜!?どこに行く!?」

 

 俺はパンドラボックスを抱えたまま悲鳴の発生源まで全速力で走る。後ろを見ると兄貴達もなんとか追えているようだ。

 

 そうしてなんとか現場までたどり着くと、そこは悲惨な光景だった…

 

 頭から血を流し倒れてる男性、その人をなんとか助けようとしてる女性、親と別れたのか泣き喚いている子供…そして、俺の視界の中央には、()()()が周囲を壊しながらどこかへ進んでいた

 

 「やっぱりこいつかよ…クソッ!」

 

 体は青を黄のニ色で、ゴリラの様な剛腕──それで町を破壊してるのだろう──機械と生物を混ぜたような見た目の怪物、ストロングスマッシュだった…

 

 「…なんだこいつは?」

 

 「…こいつは向こうの世界で暴れ回った怪物、スマッシュだ。見た目は怪物だが、本来はちゃんとした人なんだ」

 

 「嘘…」

 

 姉ちゃんが口を押さえる…そりゃそうだろう。あの怪物はネビュラガスの投与により作り出された所謂人造人間なんだからな…

 

 (予想はしてたが、まさかのここでかよ!)

 

 「どうする!兄貴?」

 

 「決まってる!潰す!」

 

 やっぱりそうなるか!だが、兄貴には相手を分子レベルまでバラバラにする魔法、『分解』と自分や相手の傷を一瞬で治す魔法、『再成』がある…流石にスマッシュといえども簡単に兄貴は倒せないはずだ…

 

 しかし予想と裏腹に兄貴がスマッシュに押されている…

 

 「くっ!」

 

 「兄貴ィ!」

 

 「お兄様!?」

 

 「姉ちゃんこれを頼む!」

 

 「龍夜!?貴方まで!」

 

 俺はパンドラボックスを姉ちゃんに預け、近くの鉄パイプを手にスマッシュへ殴りかかったが、簡単に防がれた上にカウンターを喰らった

 

 「ゴフゥ!」

 

 「龍夜!グッ!」

 

 俺に気を取られた瞬間に兄貴も吹き飛ばされた…もうおしまいなのか…?

 

 そう思った瞬間、目の前に何かが音を立てて落ちてきた…俺はそれを見た瞬間驚愕した

 

 「!?」

 

 それは水色のドラゴンが描かれたゼリー、ドラゴンスクラッシュゼリーと水色と黄色の二色のベルト、スクラッシュドライバーだった…なんでこれがここに…

 

 そう考える間もなく、俺はスクラッシュドライバーを腰に当てた。その瞬間、音声が流れてベルトが巻かれ始める

 

 

《スクラッシュドライヴァー!》

 

 そして次にこのドラゴンスクラッシュゼリーを左手で持ち、右手でキャップを開く。その後、ドライバーの中央に叩き込む様に入れた

 

 

《ドラゴンジェリー!》

 

 すると、工場が動く音と煙が排出される音が合わさった待機音が鳴り響き始める

 

 

 

 俺は左掌を前に突き出す様に出し、こう叫んだ

 

 

「変身!」

 

 そして勢いよく、レンチ型のレバーを拳で下げる

 

 

《潰れるッ!流れるゥ!溢れ出るゥ!!Dragon in CROSS-Z charge!ブゥルァァ!》

 

 俺自身が溶液で満たされているビーカーの中に入れられ、絞られる。それと同時に白銀の素体の頭部から水色のゼリーの様な成分が噴射され、頭部、胸部、両肩にくっつき、霧散するとアーマーが構成された

 

 これが俺の姿、仮面ライダークローズチャージだ

 

 「龍夜…」

 

 「姉ちゃん、下がってな」

 

 俺は姉ちゃんを背に、ストロングスマッシュと対峙する

 

 「今の俺は…負けられねぇ!」

 

 俺はスマッシュに向かって走り出した

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 三人称視点

 

 クローズチャージは拳を振るい、スマッシュへ攻撃するがスマッシュはその拳を防ぎカウンターを放つ。しかし、クローズチャージはその攻撃を簡単に避ける

 

 「くっ!やっぱり素手じゃ危険か!…ならこいつだ!」

 

 

《ツインブレイカー!アタッカーモード!》

 

 クローズチャージはツインブレイカーを右手に装着し、アタッカーモードへと変形する

 

 「うおりゃあ!」

 

 アタッカーモードの先端のアタッカーの攻撃で吹き飛ぶスマッシュ。その隙を見逃さず、追撃を放つクローズチャージ

 

 「ふん!はぁ!てりゃあ!」

 

 何回も殴るうちにボロボロになり、体力も落ちて行くスマッシュ

 

 「これでラストぉ!」

 

 クローズチャージはレバーを下げた

 

 

《Scrap Break!》

 

 「うぉりゃぁ!」

 

 クローズチャージはスマッシュをドラゴンのオーラを纏ったアッパーで上空まで吹き飛ばす。瞬間、彼は跳び上がりスマッシュの上に向かうと右足を前に突き出しキックの構えを取る

 

 「はぁああああああああああああ!!」

 

 落下の勢いとキックの威力が合わさり、スマッシュを地面に叩きつけた

 

 「一丁上がりぃ!!」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 ???視点

 

 くくくっ…やっと面白いことになってきそうな展開だなこりゃあ…だがあのスマッシュ、妙に変だな…何者かがこの世界の人間にガスを投与したのか…?

 それにパンドラボックスはあるがフルボトルが一本もない……まさか()()()()、こっちの世界まで来やがったのか?

 

 …仮にそうだったら、あいつを使うとするか…まぁ、今そいつの体内にいるわけだがな

 

 ここからが面白い祭りの始まりだろうなぁ…龍夜ぁ?

 

 さぁて、そろそろあいつに接触するとしますか…

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 龍夜視点

 

 さて、スマッシュを倒したはいいものの、どうするか……ん?俺、()()()()にエンプティボトルなんか持ってたんだ?まぁいいか…俺はそのエンプティボトルでスマッシュの成分を抜き取る。抜き取ったらそこには倒れてる人だけだった

 

 「兄貴、姉ちゃん無事か?」

 

 「あぁ、深雪は?」

 

 「……」

 

 「「?」」

 

 あれ?姉ちゃんなんか震えてない?怖かったのか?

 

 「姉ちゃん?」

 

 「どうして…」

 

 「…ごめん、今までこういうの黙ってて…」

 

 「どうしていつもこんなに心配させるのよ!」

 

 「ふぐぅ!」

 

 ず…頭突き!?よりによって鳩尾にダイレクトヒット!

 

 「いつもいつもいつも!心配ばっかりかけさせて!」

 

 「痛い痛い痛い痛い!姉ちゃん痛いって!!」

 

 姉ちゃんは今度は俺の腹に拳をぶつける。めっちゃ痛いんだけど!姉ちゃんいつの間に鍛えたのか!?

 

 「深雪、落ち着け」

 

 「…わかりましたお兄様…」

 

 ありがと兄貴…死ぬかと思ったよ…

 

 「龍夜。後で話がある」

 

 デスヨネー。知ってた…

 

 「はい…」

 

 『いやぁ、面白いことになってたなぁ?龍夜?』

 

 「何が面白いって…誰だ?」

 

 今、誰が話した?そして…どこから話しかけてる?なんで…俺が知ってる声なんだ?

 

 『忘れてないだろ?この声。そして、今お前の体内から話しかけている。』

 

 「まさかお前…」

 

 「龍夜?どうかした?」

 

 『そうだ…俺の名は…』

 

 『エボルトだ…』

 

 「エボルト!?テメェ!いつの間に俺の体内に潜んでたんだよ!」

 

 俺は姉ちゃん達の前で体内のこいつと会話する。つっても姉ちゃん達には聞こえないと思うから変な目で見られてるが!

 

 『何って、パンドラボックスがお前の家に来た時だよ。あん時、俺は意識を取り戻して、お前の体内に入り込んだってわけだ』

 

 「お前ふざけんなよ!何勝手に人の体内に入ってんだよ!出てけよ!」

 

 『まぁ、そうカッカすんな。すぐ出て行くさ。その前に身体を借りるがな』

 

 「はっ?ちょお前…っ!」

 

 「龍夜!?」

 

 やべぇ…この野郎…意識が持ってかれ…

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 エボルト視点

 

 ふぅ〜。やっと切り替わったか。あとは肉体を再構成するための力が貯まるまで待っとくか…後はこの状況…どうすっか…

 

 「貴様…何者だ?」

 

 おっと?確かこいつは…龍夜の兄ってとこか?

 

 「兄貴、忘れたか?俺は龍夜だよ」

 

 「…いや、龍夜とは違うな?」

 

 やっぱりバレるか…いい兄貴と姉を持ってるじゃねぇかあの野郎は。それに対してうちの兄貴ったら…

 

 「おう、俺はお前の言う通り龍夜じゃねぇ。ただ、龍夜とは関係があるとだけ言っておくか」

 

 「…わかった。まず質問させてくれ」

 

 「いいぜ?俺が答えられる限りな」

 

 「貴様の名は?」

 

 「俺はエボルト。地球外生命体さ」

 

 「地球外生命体!?」

 

 おっと、あいつの姉凄い驚いてるな

 

 「エボルト…龍夜が話してた奴か」

 

 「おうとも。あいつがなんで話したか知りたいが、今はそんなことどうでもいいさ」

 

 まずこの世界で必要になるのは…後ろ盾と資金、そして施設だな…こいつらの家の力でも借りるか?聞こえた限りじゃ、結構デカい家だろうな

 

 「チョイッと待っとけ、あと少ししたらそれなりに力が貯まるが、維持ができん。一旦変わるか」

 

 「お前は何を…?」

 

 「まぁ聞け、俺とあいつが切り替わった後には俺の言葉、聞こえるだろ?それで話すぞ。CIAO♪」

 

 さぁて、早く面白いことになれよ?この世界はトコトン面白そうなところが多いからなぁ…

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 龍夜視点

 

 「ッ…何が起きた?」

 

 あっクソ、エボルトの野郎…何か兄貴達に話したか?

 

 『おいおい、お前俺のことそう思ってんのか?』

 

 地の文にまで来んなよ…(メタい)

 

 「まぁいい…兄貴、さっさと本家行くか?」

 

 「そうだな…その前に怪我を治すぞ」

 

 「ん、ありがと」

 

 兄貴の魔法『再成』で俺の怪我が綺麗になくなる。

 

 「龍夜、エボルトの事についても話がある」

 

 「……マジかよ」

 

 話さなければいけないことが増えた…頭が痛い…

 

 『それにしても、久しぶりってことになるな。龍夜』

 

 「うるせぇ。ってかお前、なんでこの世界に来れたんだよ」

 

 『…仕方ねぇ。移動しながらだが聞け。少し長いぞ』

 

 「…わかった」

 

 そうして俺たちは四葉家に向かって移動した

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 エボルト視点

 

 さぁて、どこから話すか…取り敢えず龍夜と幻徳がいなくなった後からだな

 

 『戦兎…ありがとな!』

 

 『万丈ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 俺はあの後に万丈龍我と共に地球と地球の狭間に生まれた光の切れ目へと突っ込まれた

 

 だが、俺は逆に万丈を取り込んだ後、戦兎との一騎討ちが始まった

 

 だがな、あいつ(戦兎)は新世界を創造するためにジーニアスフルボトルを失ったから、変身解除まで追い込まれた

 

 『桐生戦兎は地球に存在してはいけなかった!ライダーシステムを作らなければ、仮面ライダーにならなければ、こんな事にはならなかった!』

 

 『お前は、俺に作られた偽りのヒーローだったんだよ!』

 

 そこで止めを刺そうとしたら、なんと俺の中の万丈の意思が生きていて、俺の身体を止めたんだ

 

 『何やってんだよ戦兎!』

 

 『エボルトは俺が止める!お前は逃げろ!』

 

 『戦兎、今どんな顔してるかわかるか?くしゃっとしてんだよ…俺の顔!』

 

 

 

 『一度しか言わねぇぞ……誰がなんと言おうと…お前は俺たちのヒーローだ!』

 

 ここで俺は万丈の意思を封じたんだが、銀のドラゴンボトルがあいつの手に渡ったんだ

 

 『…お前のその顔、見たくなっちまったじゃねぇか!ヒーローが逃げるわけにはいかねぇな!』

 

 《ラビットラビット!ヤベーイ!ハエーイ!》

 

 そして戦兎と俺の戦いが再開されたってわけだ…お互いが光の粒子となりながら戦う。文字通りのデスマッチをな

 

 《タンクタンク!ヤベーイ!ツエーイ!》

 

 だが、戦兎はその頃の俺には勝てなかった…自慢じゃないぜ?何せ俺はロストフルボトルの力で完全に強化されてたからな

 

 《ラビットタンクスパークリング!イェイイェーイ!》

 

 しかし、ラビットタンクスパークリングの攻撃もあって俺の身体も消え始めていく

 

 《ラビットタンク!イェーイ!》

 

 お互い既にボロボロ、戦兎はとうとう初期フォームのラビットタンクに戻った

 

 俺はここで余裕を出していたんだが、今にして思えば油断してたんだろうな

 

 戦兎はフルボトルバスターに金のラビットボトルと銀のドラゴンボトルを入れ、俺に切りかかった

 

 ハザードレベル7の力で変わった二つのボトルの力で俺は怯み、切り倒される

 

 『俺と万丈は最っ高のコンビなんだよ!』

 

 予想外の一撃で俺は驚いたし、よりによって封じていた万丈の意思も復活して俺の動きを封じた

 

 『バッキバキに目が覚めたぜ!』

 

 

 

 『さぁ、実験を始めようか』

 

 するとあいつは金のラビットボトルと銀のドラゴンボトルをドライバーに差し込み変身した

 

 『ビルドアップ!』

 

 本来はトライアルフォームになるはずだが、最高のコンビによるフォームにビルドドライバーはこう言った

 

 《ベストマッチ!》

 

 『勝利の法則は決まった!』

 

 名付けるならラビットドラゴンとでも言おうか。その後放たれたラビットドラゴンのキックは俺を直撃したんだよ

 

 『馬鹿な…この俺が滅びるだと!?そんな事があってたまるか!人間共がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 んで、俺とジーニアスフルボトルを犠牲にして新世界が生まれた。

 

 んで、新世界はお前と俺がいなくなり、一海や幻徳の奴は前の世界の記憶がなかった。んで、戦兎は前の世界の万丈と再会した

 

 まぁ、ざっとこんなもんでいいだろ

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 龍夜視点

 

 俺達三人はエボルトの話を聞きながら四葉家に向かって進んでいた

 

 「なるほど…んで、なんで戦兎さんはともかく万丈さんも新世界にいて記憶があったんだ?」

 

 『俺の予測だが、俺の遺伝子を持ってる万丈も新世界に存在しちゃいけない者として戦兎と同じく記憶を持って新世界にいたんじゃないか?そこんとこは詳しいことは知らないが』

 

 マジか…けど、戦兎さんも万丈さんも無事なら、それでいいや…

 

 「龍夜、着いたわよ」

 

 「意外と近い距離だったな」

 

 『だな』

 

 さて、あとはこの門を通るだけだが…

 

 「兄貴、先行ってくれ」

 

 「何故って…あぁ」

 

 俺の気持ちを知ったのか兄貴、姉ちゃん、俺の順で行く事になった

 

 『もっと堂々したらどうなんだ?』

 

 「できるか!」

 

 いかん…こいつのペースに呑まれたらツッコミきれんし周りから変な目で見られる…無視だ無視!

 

 取り敢えず屋敷の中に入る俺達。道行く人達は兄貴を侮蔑するような目で見、次に姉ちゃんを期待したような目で見て…俺を驚愕の視線で見てくる…

 

 『お前だけ変な目で見られてるな』

 

 「一年もいなかったし、死んだと思われてたからなぁ…」

 

 俺達はすでに話を聞かされていたのかメイドの1人に案内され、奥の食堂へと足を運んだ

 

 そこには本来は四十代半ばの年齢のはずが三十前にみえる美貌をもつ女性、四葉家当主の四葉真夜がいた

 

 「あら、思ったよりも遅かったですね。皆さん」

 

 「はい、少々トラブルがありまして」

 

 あれをトラブルで済ますのか兄貴…

 

 『どうみてもトラブル以上だろ、あれ』

 

 だよな。あれをトラブルで済ます兄貴は兄貴だな

 

 「取り敢えず、皆さん座ったらどうです?」

 

 「そうさせていただきます」

 

 俺と姉ちゃんは椅子に座り、兄貴は姉ちゃんの後ろに立った

 

 『なんでお前の兄貴座らねぇの?』

 

 事情があるんだよ。話すとくっっっそ長いぞ

 

 『おk』

 

 「では、龍夜さん。話してくださります?」

 

 「はい…実は…」

 

 〜カットします〜

 

 「なるほど、異世界へと行ったと…」

 

 「そういうことです。証拠もいくつか…」

 

 俺はその場にパンドラボックスとスクラッシュドライバーを取り出して机の上に置いた

 

 「これは何かしら?」

 

 「これは俺がいた世界にあった物です。俺を含めて数人が使い怪人と戦っておりました」

 

 「怪人と、ですか?」

 

 「はい…」

 

 「ま、それは置いといて、お疲れでしょう?今日はこちらで泊まりなさい?」

 

 唐突だなこの人!?まぁさっきの戦闘で疲れたけども!

 

 「では、お言葉に甘えて…」

 

 チラッと姉ちゃん見たけど大丈夫かな?まぁ気にしても仕方ないか?

 

 「あと龍夜さんは少しここで待っててくださる?」

 

 「?…はい、わかりました」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 姉ちゃん達は部屋に案内され、俺と真夜様だけになった…凄い気まずい…エボルト、変わって…

 

 『嫌だね』

 

 おい!…はぁ、なんて言われるか…

 

 「龍夜さん、貴方の中に誰かいますね?」

 

 「『ッ!?』」

 

 おいおい…簡単にバレてるぞ?

 

 『くくくっ…まさか俺のことがバレるとは…魔法って奴か?』

 

 「いいえ?今のは私の直感ですわ」

 

 直感て…この人の直感って人の中に地球外生命体が潜んでるのもわかるの?

 

 『まぁいい。俺もあんたと話がしたかった』

 

 「あら、どんな話かしら?」

 

 『ちょっと待ってろ。今から龍夜の肉体から出るから』

 

 「ん?エボルト?」

 

 すると赤いアメーバ状の物体が俺の身体から出ていき、近くに落ちるとすぐ人の形をとった。その形ってお前…

 

 「俺じゃん…色違いだけど俺じゃん…」

 

 エボルトは俺そっくりに擬態した。主な違いは瞳の色が紅く、髪が白髪なところと髪型がなってないボサボサヘアースタイルだ

 

 「自己紹介させてもらうぜ。俺の名はエボルト、地球外生命体だ」

 

 「私の名は四葉真夜、龍夜さん達の叔母で、四葉の現当主ですわ」

 

 …俺は開いた口が塞がんない程ポカーンとしてた…

 

 「何してんだマヌケ面して」

 

 「余計なお世話だろ!」

 

 「まぁまぁ、ところで話したいこととは?」

 

 「簡単だ。今回のトラブル…いや、スマッシュが現れたことはあんたの耳に入ってんだろ?」

 

 「えぇ、お陰で情報規制が難しかったですよ?」

 

 「ははっ、そりゃ面白い。んで、俺はスマッシュの成分、つまりフルボトルを浄化する装置が作れる。が、作るにしろ浄化するにしろ施設も人手もいる。そこでだ。あんたなら、()()()()()()()()()()()()()んじゃないか?」

 

 「…えぇ、作れますわよ?」

 

 「つまり取引ってことだ。なぁに、あんたには利益を、俺にはフルボトル集めができる。WIN-WINだろ?」

 

 エボルト…両手でダブルピースすんな…

 

 「…えぇ、わかりました。取引成立ですね」

 

 「おうよ。今後話し合おう」

 

 2人は握手を交わす…はぁ、頭の痛みが激しい…

 

 「龍夜、フルボトル集め、手伝ってもらうぞ」

 

 「なんで俺まで…」

 

 「仕方ないだろ?今の戦力はお前と俺だけ。しかも俺のコブラフルボトルもないし、エボルドライバーは修復が必要だ」

 

 エボルドライバーも使えないのか…乗りかかった船だ。ここは手伝ってやるか!

 

 「仕方ない!手伝ってやるよ!」

 

 「おう、これからもよろしくな!」

 

 

 

 さて、待ってろよスマッシュ!全員ぶっ潰してやるからなぁ!

 

 「ところで龍夜さん。今分家の方々も来てるの。顔見せにいきなさい」

 

 

 ………しまらないなオイ…

 

 この後俺は色んな人達に質問攻めされた…辛かった…

 




ありのまま描いてたら10000文字突破してんの草
てかこれ書いてるうちにネロ祭終わっちまったよ…
龍「まぁまたイベ来るんだろ?そん時まで石貯めたら?」
エ「てかこいつ星5がブリュンヒルデしかいないのに星4もかなり少ないな。キャスターなんか星4すらいねぇじゃん」
最推しはマリー王妃です(初めて出てきた星4)
2人「「いや聞いてないから」」
(´・ω・`)ショボーン
次回あたりから入学編になりそうです…期待しててね!


10000文字突破した事に気づいた時の俺
「な…なにぃーーーーーーッ!こうなったらトコトンやってやるぜぇ!
10000文字突破するまで書くと心の中でそう思ったなら!その時すでに行動は終わってるんだ!」
エ(ペッシ擬態)「兄貴ぃ!プロシュートの兄貴ィ!」
龍「ならつぎも早く書くようにしろ」
はい…


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入学編
第3話 入学と1科生と2科生と


思ったよりも早く更新できたぜヒャッハー!
エ「第1話と設定は5月25日、第2話は7月24日。2ヶ月もかかってんぞこりゃ」
今回は1ヶ月近くで済んだ!
龍「よし、次はこれよりも早く書け」
えっちょっとそれは…無理かも…
龍「書け」
がんばります…
あと前回で誤字報告があってCROOSからCROSS-Zに変更しました。誤字報告してくれた方、ありがとうございます
エ「てかなんでCROSSだったんだよ?」
英文にしたらこうなったから…(責任転嫁)
龍「責任転嫁すんな。ってか前回の10000文字は多すぎたんじゃないか?」
やっぱりそうだよね。今回からは10000文字行かないくらいで自重します
2人「「自重とは」」
これからは基本龍夜視点となります
たまーに台詞が原作と違うかもしれませんがお許しください


 あれから俺はエボルトと一緒にフルボトルを集め始めて一年が経った…

 

 〜2094年〜

 

 春、朝や夕焼けには冬をも思わせる寒さだが、昼間の暖かさは春の初めを感じさせる今日この頃、天候に恵まれたのか空は青々としており、この入学式を祝うように桜が咲き舞い散っていた

 

 学校内には在校生らしき人達が何人かいるのだが、新入生はほとんどいない

 

 「納得できません」

 

 「まだ言うのか…」

 

 この魔法科第一高校、通称一校の校門を通り過ぎた俺と姉ちゃんの胸と肩には華を思わせる刺繍がされており、兄貴にはそれがない。理由は後々話すとして、まずは近くで不満な口調で話す姉ちゃんをなんとかする。今は人気がないからそう目立つことじゃないが、流石にもう仕方ないじゃんと俺は口にしたい…

 

 「何故お兄様が補欠な上に、龍夜までが新入生総代では無いのですか!」

 

 「仕方ないだろ姉ちゃん、俺は理論じゃ兄貴よりいい点は取れなかったんだし、実技も姉ちゃんが俺達の中でダントツだったしさ…」

 

 「どこから入試結果を手に入れたと思ったら…エボルトか?」

 

 『正解、二人に頼まれたから仕方ないだろ。どうせ在校生にも結果は出回るらしい。多分結果の横流しは黙認されてるだろうな』

 

 はぁ…あれからエボルトは暇な時にはフルボトルやパンドラボックスの研究をするか、俺の中に入ってくるかのどちらかだ…今回は俺の中に入っていやがる。本人曰くこの世界の魔法科高校の入学式とやらを見たいだのなんだの…

 

 「…結果の件はわかったとしてもここではペーパーテストよりも魔法実技の成績が優先される。補欠とはいえ、良く一校に入学できたものだ」

 

 と、我が兄の不満が一切なさそうな発言に姉は語気を強めていく。気持ちはわかるが落ち着け…

 

 「そんな覇気のないことでどうしますか!お兄様以上に総代に相応しい方はいません。それに本来の実力を持ってすればお兄様も「深雪」っ…」

 

 「姉ちゃん。落ち着こうな」

 

 兄貴は姉ちゃんの言葉を遮り、俺は姉ちゃんを落ち着かせる

 

 「それは言っても仕方がないことなんだ。俺はここの評価方法に文句を付けるつもりはない」

 

 「ですが…」

 

 「姉ちゃん。気持ちは俺にもわかるさ。けど、兄貴が決めたことなら仕方ないさ」

 

 「龍夜…」

 

 『つってもお前途中わざと間違えてただろ』

 

 エボルトォォ!!余計なこと言わなくていい!ちょっと待って姉ちゃん、その目は怖いですって!

 

 「…深雪、俺たちは楽しみなんだ。可愛い妹の晴れ姿をダメ兄貴に見せてくれないか?」

 

 兄貴ナイス!話逸らしてくれてありがとう!…いや貴方も怖い目で見ないで…

 

 「そんな!お兄様はダメ兄貴なんかではありません!」

 

 姉ちゃんの言葉に兄貴は苦笑で返す。理由を知ってるから俺も苦笑で返事してしまう

 

 「…我儘を言ってしまって申し訳ありませんでした。それでは行って参ります!」

 

 と、姉ちゃんは入学式の会場へと向かった…とても長い時間かかった気がする…

 

 『残った時間はどうするんだ?』

 

 「そうだな…建物でも見て回るか?兄貴」

 

 「そうしようか」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 俺達2人は建物を粗方見て回った。大学附属だからだろうか、規模や施設は大学みたいな感じだな

 

 『今は開いてないがカフェテリアもあったな。俺のコーヒーとどっちが美味いと思う?』

 

 そりゃあのカフェテリアだろうが。お前のコーヒーやっぱり不味いぞ。今朝も飲まされたけどあの味はマジないわ

 

 『やっぱり豆か?』

 

 豆云々どころじゃない気がするんだが…初めてお前の淹れたコーヒーを飲んだ姉ちゃんと兄貴なんか怪訝な顔してたぞ

 

 『それよりも余った時間どうする?』

 

 「だよなぁ…兄貴、まだ時間あるしどうする?」

 

 「そうだな…近くのベンチで時間を潰そう」

 

 「『はーい』」

 

 俺達は近くのベンチに座り、兄貴は端末で小説を読み始めた。俺は何もすることないし、空でも見上げようとしたら在校生らしき2人が前を通ったが、こっちをちらりと見ただけで何もなかったように通り過ぎた

 

 「龍夜がいてよかったよ」

 

 「はは…兄貴だけだったら姉ちゃんがキレそうなこと言い出しそうだったもんなあの2人」

 

 『あの2人からしたら、何故2科生と1科生が一緒にいるのか不思議だったろうな』

 

 そう、この学校…いや正確には一高から三校までが1科生と2科生の制度を採用している。その理由としては1年間に輩出される魔法師の数には所謂ノルマというものがある。しかし魔法の技術が進歩してるとはいえ、教師陣にはノルマ分の人数全員に授業を行える人手が足りないしだからと言ってノルマギリギリの人数で授業を行うとすると下手したら事故が起き、再起不能になった場合に都合が悪くなる

 

 そこで学校はこの制度を導入したのだ。普段教師による授業を受けられるのは1科生のみとし、万が一再起不能になった場合に2科生を穴埋めとする

 

 問題はここからで1科生と2科生を区別するために1科生には八枚の花弁の刺繍をつけ、2科生にはそれがない。それによって1科生のことを花冠(ブルーム)、2科生のことを雑草(ヴィード)と呼ばれる風潮が密かに生まれていた…

 

 「ほんと、なんて風潮が生まれ出したかな…」

 

 『1科生の奴らはエリートと自称して言い出した口だろ、んで2科生の奴らは自分を自嘲するように言い出したんだろうな』

 

 「確実にそんな感じだろうな…ふわぁ…」

 

 眠い…昨日遅くまでエボルトの研究に付き合った上に朝早かったからかめっちゃ眠い…くそぉ、夜更かしするべきじゃなかった…

 

 「兄貴、ちょっと寝る。時間になったら起こしてくれ。」

 

 「わかった。いざという時は叩いてでも起こすからな」

 

 「やめてくれよ…」

 

 俺は目を閉じ、ゆっくりと眠り始めた…

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 「龍夜、起きろ」

 

 「ンン…ありがとう兄貴」

 

 俺は兄貴に起こされ、俺は目が覚めた。エボルト今何時?

 

 『入学式まであと数十分ぐらいだな』

 

 そうか、サンキュー

 

 「そろそろ行くか」

 

 「あぁ、よっこいしょっと」

 

 俺は立ち上がり、兄貴と一緒に会場まで行こうとすると

 

 「新入生ですね?間もなく開場の時間ですよ」

 

 在校生であろう人に声をかけられた。俺と兄貴は頭を小さく下げ、会釈する。その時に彼女の手首に付いてるブレスレットが視界に入った。恐らくあれはCADだろう。

 

 「ありがとうございます。すぐに行きます」

 

 兄貴のその言葉には関わらないでくださいという意思が見え隠れてる…よっぽど関わりたくない人だな?

 

 「感心しますね。スクリーン型ですか」

 

 しかし目の前の女性はその思いに気づかなかったどころか、兄貴が使ってた端末の事で話し続けた。これは長くなりそうな予感…

 

 「当校では仮想型の持ち込みを禁じています。しかしそれでも仮想型を使用する生徒が大勢います。ですが貴方たちはスクリーン型を使っているんですね」

 

 「仮想型は読書に向きませんから」

 

 兄貴のその言葉にその女性は感心の色を示したのか、表情が変わった

 

 「申し遅れました。私は第一高校の生徒会長を務めております。七草真由美(さえぐさまゆみ)と申します。七草と書いて“さえぐさ“と読みます」

 

 おっと…どうやらこの人は生徒会長のようだな…しかも十師族の一つである七草(さえぐさ)家のようだな

 

 『日本の魔法師を束ねる十師族の一つの七草か』

 

 そうだ。その七草だ

 

 「俺は…いえ、自分は司波達也です」

 

 「弟の司波龍夜です」

 

 俺達の名前に七草さんが驚いた表情を見せる

 

 「司波達也くんと司波龍夜くん…そう、貴方達があの司波くん達ね?」

 

 どうやらこの人にも俺達…てか兄貴の成績を知ってるのだろう。まさか俺も注目されるとは思ってなかったが…

 

 「先生方の間では貴方達の噂でもちきりよ。実技ではトップクラスの司波深雪さん。魔法理論で平均点70点台を満点した司波達也くん。そして実技と魔法理論共に優秀な成績を残した司波龍夜くん、ってね」

 

 「…俺は兄さん達見たいに飛び抜けた成績を収めてはいないのですが…?」

 

 なんで俺が両方とも優秀なんだ?少しとはいえ手を抜いたぞ?

 

 『それが仇になったんだろうなぁ…』

 

 「確かにそうだわ。けれども龍夜君の魔法理論は丁寧だったらしいわよ。それに魔法実技では最も模範的だったとも言われてるわ」

 

 マジかよ…手を抜いたらこうなるとか予想できないだろ普通…

 

 『まぁ自業自得だな。諦めろ』

 

 この野郎…言いたい放題言いやがって…

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 

 真由美さんと別れた後、俺達は入学式の会場である講堂へと訪れた。中を見渡すと先が並んであり、どこに座っても自由らしいのだが、前が1科生、後ろが2科生と別れて座ってた…ここも明確な差別がみえるな…

 

 「じゃあここでお別れにするか」

 

 「そうだな。態々目立つことはしなくていいだろう」

 

 俺と兄貴は途中で別れて俺は前に向かう。流石に2科生のとこに俺が座るのも1科生のとこに兄貴を座らせるのもかなり目立つからな。こうした方が妥当だろう

 

 『おい龍夜、そこ空いているぞ』

 

 そうだけど、あそこ女子が近くにいるじゃん…

 

 『でも他に座る場所がなさそうだぜ?』

 

 はぁ…もうこうなったら仕方ない…腹を括って座りに行きますか

 

 「なぁ、そこ、いい…ですか?」

 

 「ひゃい!?」

 

 おっと、突然話しかけられたからか大人しそうな茶髪の女の子がビビってる…俺もしかして怖い顔してたかな?

 

 『いや、客観的には美人だな。どちらかというと』

 

 うるせぇ。余計なお世話じゃ

 

 「あ、いいよ」

 

 するとその子の横に座ってる子が許可してくれた。茶髪の子とは違って表情が乏しいみたいだな

 

 「ちょっと雫!」

 

 「あー…なんかありがとう」

 

 許諾されたので隣に座るが隣の子、凄い焦ってる…どうしようか…

 

 『自己紹介でもしたらどうだ?』

 

 やっぱりまずは名前言った方がいいよな…

 

 「えーと、俺の名は司波龍夜。気軽に龍夜と呼んでくれ」

 

 俺の自己紹介で落ち着いた?のかまずは茶髪の子が自己紹介してくれた

 

 「あ…あの、私は光井(みつい)ほのかって言います」

 

 ほのかは慌てて自己紹介を済ますが、その横に座ってる子がその様子にクスリと笑ってた

 

 「私は北山雫(きたやましずく)。よろしく」

 

 「あぁ、北山さんと光井さんだな。わかった」

 

 「…雫でいい」

 

 「私もほのかでいいです」

 

 「……」

 

 なんかこの子達、こんな押しが強くない?…今出会ったばっかだよな?俺ら…

 

 『入学早々に女の子と仲良くなって、青春だな〜♪』

 

 うるせぇぞエボルト!他人事だと思って言いやがって…

 

 「…わかったよ。雫、ほのか。これでいいか?」

 

 「「はい(うん)!」」

 

 まぁ、友達が出来るのはいい事だな

 

 『深雪が怖いけどな』

 

 おいコラ怖いこと言うな

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 

 姉ちゃんの答辞は完璧だった。しかし、色んなとこに「皆等しく」だの「勉学以外」だの、聞く人によれば危ない言葉がいくつか入っていた

 

 しかし誰もその事に気づいていないらしいし、そもそも内容自体が聞いていても差別を助長させたりどちらかが優れていると明言してはいない。むしろ逆にお互いに仲良くしようという言葉を上手く言っている。これなら非難はされないだろうな

 

 『どっちにしろ深雪の美貌なら非難なんかこないだろうし、そもそも深雪の虜になってて答辞すら聞いてないだろうよ』

 

 それもそうだな。後はIDカードを受け取って兄貴達に合流するか

 

 そして俺は雫達と一緒に窓口へ行き、IDカードを受け取った

 

 「龍夜さんは何組ですか?」

 

 ほのかの質問に対して俺はカードを見ながら答えた。どうやら俺はA組のようだな

 

 「そうだな…俺はA組だな。二人は?」

 

 「私もA組です!」

 

 「私もだよ」

 

 マジか。3人ともA組とは凄い偶然だな

 

 『それほど、こいつらも優秀だったって事だろ。別クラスとかならわかるが知り合った奴らが同じクラスとは凄い偶然だけどな』

 

 そうだよな…そろそろ兄貴達と合流しに行くか

 

 「俺は兄と姉に会いに行くけどよかったら二人もどうだ?」

 

 「えっと…私達はこれから用事があって」

 

 おっと、どうやら用事があるようだな。俺のせいで2人の用事を遅らせたら悪いし、ここで別れるか

 

 「仕方ないさ。また明日会おう」

 

 「うん。ところで兄と姉って言ってたけど姉さんの方ってもしかして新入生総代の司波深雪さん?」

 

 …雫って勘良ずきない?

 

 「…そうだよ。まさかわかるとは思わなかった…」

 

 「それなら納得です。2人ともよく似てますよね」

 

 「よく言われるよ」

 

 「お兄さんもいるなら、もしかして三つ子ですか?」

 

 ほのかのその質問はよく聞かれたことあるからもはや定番だな。前の世界でも戦兎さん達に聞かれたことあるし

 

 「いや、俺と姉ちゃんは双子で3月生まれで兄貴は4月生まれなんだよ」

 

 「へ〜、なるほど」

 

 雫はその事に詳しく聞かなかった。まぁそれはそれで良いが…

 

 「じゃあな2人とも」

 

 「うん。また明日」

 

 「さようなら」

 

 俺は2人と別れ兄貴の所へ行く。あらかじめ集合場所を決めといてよかったな

 

 『しかし俺達が居た世界と違って、この学校のクラス分けは成績で決まるんだな』

 

 そうだな。魔法科高校は1科生にはA組からD組まで、2科生にはE組からI組まであってそこから成績順にクラスを入れているんだろうな

 

 『おい、達也がいたぞ。しかも女子2人と一緒に』

 

 どゆこと?って思ったが、確かに女子2人と一緒だな。もしかして…?

 

 「入学早々に女の子2人と仲良くなって、兄貴ってプレイボーイなんだから」

 

 「龍夜か…言っとくが違うからな?」

 

 「わかってるって!冗談だから!」

 

 兄貴の殺気が俺限定で来てるよ!やっぱり怖いわ!

 

 『お前も同じだったけどな』

 

 エボルトォォォ!!余計なことは言うなって言ってるでしょうが!

 

 「まぁいい…その2人は?」

 

 「あぁ、さっき知り合ってな。同じクラスになったんだ」

 

 やっぱり俺と同じ感じに知り合ったのかな?取り敢えず自己紹介だけはしとくか

 

 と口を開こうとしたら先にオレンジ色の髪の女の子が自己紹介し始めた

 

 「私は千葉(ちば)エリカ!達也くんのクラスメイトになったんだ。よろしく!」

 

 「私は柴田美月(しばたみづき)です。よろしくお願いします」

 

 「俺は司波龍夜。兄貴…達也の弟だ。こちらこそよろしく」

 

 「へー、弟さんもいたんだ。龍夜君って呼んでもいい?」

 

 「ああ、流石に司波じゃわからないもんな」

 

 と、自己紹介を済ませて後は姉ちゃんを待つだけ…

 

 『いや、その必要はないようだ。来たぞ』

 

 「お兄様!」

 

 エボルトの言葉に振り向くと姉ちゃんが来たが…1科生の奴らが俺ら…特に兄貴やエリカ達に対して冷たい視線を向けてきた。

 

 あれ?深雪さんなんか笑顔怖くありません?ちょっと兄貴達と距離を取るか…嫌な予感がする…

 

 「…早速クラスメイトとデートですか?お兄様」

 

 うわ寒い!何も怒ってないように見えて怒ってるやつだこれ!これガチで気温下がるやつだぞ!2人も寒気を感じてるよ!

 

 『美女の笑顔って怖いよな』

 

 本当にそう思う。それに姉ちゃんは意外と独占欲が強いから余計に嫉妬しているよ…

 

 「深雪、その言い方は2人にも失礼だろう。それにこの2人はクラスメイトだ」

 

 …流石兄貴…姉ちゃんの笑顔を難なくすり抜けて姉ちゃんを落ち着かせた…

 

 「申し訳ありません…」

 

 姉ちゃんは兄貴に諌められたことで少し落ち着いたようだな。しっかし兄貴に女が出来たらと思うと…

 

 『確実にその女の氷像が出来るなこりゃ』

 

 うへぇ、俺嫌だよ?そんなの…

 

 「自己紹介が遅れました。私は司波深雪といいます。これからよろしくお願いします」

 

 「私は柴田美月です。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 「私は千葉エリカ。よろしくね。深雪って呼んでいい?」

 

 「ええ、どうぞ。司波だとお兄様と龍夜と同じですもの」

 

 あれ?なんかデジャヴが…

 

 「ひょっとして深雪って意外とフランク?」

 

 「あら、エリカは見た目通りなのね」

 

 「ちょっとそれどう言うことよー」

 

 どうやら媚びへつらう様子じゃない2人に対して姉ちゃんも笑顔になってる。仲良くなるのも時間のもんだな

 

 「深雪、生徒会の方が見えているがいいのか?」

 

 「七草会長」

 

 姉ちゃんが振り返ると七草会長が副会長らしい男と一緒にやってきた。どうやら生徒会への入会勧誘か何かだろう。新入生総代は毎年生徒会に入ると聞いたことがある

 

 「また会いましたね。司波君達」

 

 いや俺ら同じ苗字だからって複数形にしないでほしかった…

 

 てか会長の後ろにいる副会長の顔が何故か険しい。恐らく姉ちゃんが2科生の兄貴達と一緒にいるのをよっぽど機に喰わないんだろうが…

 

 『言っとくが、お前も1科生で2科生のとこにいるからな?』

 

 そういやそうだな…てかここは俺が何か一言言うべきだな

 

 「会長、姉ちy…姉に何か話があるんですか?」

 

 「大丈夫ですよ、今日は挨拶だけをさせてもらっただけですから。それに、先約があるのでしたらそちらを優先してください」

 

 「会長!」

 

 隣の副会長は七草会長の発言に驚き、七草会長は踵を返して戻るつもりだった

 

 「では、また明日会いましょうね」

 

 と、七草会長と副会長の人はそのまま行ったが、副会長は去り際に兄貴を睨んで行った…あの人も選民思想に浸かってるのかよ…

 

 『こりゃ先が思いやられるなぁ…』

 

 だな、胃が痛くならないように注意しよ…

 

 そして2人の背中が見えなくなると姉ちゃんはしゅんと表情を変えた

 

 「すみませんお兄様。私のせいでお兄様の印象を悪くしてしまいました…」

 

 「心配ない。深雪が謝る必要はないよ」

 

 と、姉ちゃんが謝罪するけど兄貴は微笑んで姉ちゃんの頭を撫でる。んで姉ちゃんは笑顔で受け取る。当然こういうのを初めて見た美月は顔を赤くし、エリカは呆然としていた。もちろん遠くの1科生の奴らも驚愕してるし…

 

 『お前に至っては最初別人か疑ってたな』

 

 お前だって最初はうわぁ…って言いながらドン引きしてたろ

 

 「……ねぇ、いつも2人ってあんな感じなの?」

 

 「…うん。だいぶ前まではこんな感じじゃなかったんだけどね…」

 

 「へ、へ〜…」

 

 正直、俺がいない間に何が起きて姉ちゃんがあぁなったのかはこっちも知りたい

 

 

 

 その後に俺達はエリカの誘いで近くのフレンチカフェテリアで昼食にすることになったが、女性3人が集まれば話に花が咲いていき俺と兄貴の2人は相槌打ちながら夕方まで話すのを見ていた。ちなみにエボルトは途中で寝やがった




ちなみに龍夜の得意系統魔法は振動加速系統です。
理由はクローズマグマ→熱い→摩擦熱→加速→なら分子とかなんか振動させてるのを加速させたらめっちゃ熱くなんじゃね?というくっっっそくだらない理由です
龍「そんな理由で決まったのかよ…」
エ「こいつ時々適当だからな」
いい返せないのが悔しい…
ところでもうすぐセイバー終わりますね。次のリバイスに期待です
龍「この小説も全知全能の書の一部になってそう」
エ「もしかしてハーメルンの小説全部が全知全能の書に書かれてるんじゃ…」
全知全能の書にこの作品が載ってるかどうかはあなた次第です(投げやり)


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第4話 忍びと差別と騒動と

へへ…FGO全然星5出ねぇ…
エ「お前…イベント早く進めてダヴィンチ仲間にしろよ!」
それもしたいけど都合が悪くなって…
龍「早く書けよ!てか呼符めっちゃあるじゃん!単発回そうぜ!」
どうせでなi
エ「水着沖田オルタ(セイバー)でたぁ!?しかも2体!?」
うっっっそだろおまえ!? 
龍「ちょちょちょちょっと待って、キャスギル様も来たんだけど!?」
どういうこと!?!?
単発すげぇ…取り敢えず魔神沖タとキャスギル様育てます


一高への入学から翌日。俺たちは朝早くから起き、動きやすい服に着替えてある場所に向かっていた…とは言うものの普通に歩いてではないのだ

 

 まず姉ちゃんはローラーブレードで一度もキックをせずに坂を登り、兄貴はストライドが10mも近く並走している。当然だが魔法を使って登っている。兄貴達は移動魔法と加速魔法の複合の魔法を使っているが、魔法の制御をするのは見てる方よりもかなり難しいのだ。

 

 『魔法って言っても機械を中継して使うもんなんだな。てっきりそのまま使えるかと思った』

 

 まぁお前の言う通りCADがなくても使えるが、CADなしだと魔法を発生する時間が長くなってしまう──閑話休題──俺は加速魔法のみで移動しており、下手したら遠くまで吹き飛んでしまうので兄貴達よりも細かい制御が必要だ。まぁ慣れてきたなら前方の障害物を使ってパルクールのように移動することも可能だ

 

 『お前前の世界で魔法使えるって言った後、石動惣一だった時の俺がなら使ってみてよーって言ったことあったな』

 

 そういや戦兎さん達も期待してたな。あのときはCADがなかったから使えなかっ…ちょっと待て、お前あの後俺のCADどうした?*1

 

 『…バラした後にデータを見たけど膨大すぎてよくわかんなかったから捨てた』

 

 テメェ…おかげでCADなくしたって言ったら兄貴に怒られたんたぞ?

 

 『いや自業自得じゃね?』

 

 お前が奪ったからだろうが!

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 俺達は目的地の丘の上にある寺に着き、門をくぐると兄貴と俺目掛けて何人かのこの寺の門下生達が襲いかかってきた。これが()()()()()()()()()()()()稽古の一つである。最初こそ驚くが、今となっては最早通過儀礼というやつである

 

 「エボルト、姉ちゃんを頼む」

 

 『了解っと』

 

 この人達は姉ちゃんを狙わないことは知ってるが万が一のこともあるので手早く倒していく中でエボルトは俺から離れ、姉ちゃんの近くで俺そっくりに擬態していく。俺はその間に数名を気絶させていく

 

 そして最後の1人を倒した後に姉ちゃんの方を振り向くとエボルトの後ろに隠れて怯えてる姉ちゃん、姉ちゃんに近づいた人に銃を向けるエボルト、そしてエボルトに銃口を向けられてる人…

 

 「はぁ〜…またですか八雲先生…」

 

 「いやいや龍夜君、ただ単に驚かそうとしただけで別にセクハラなんてことはしてないさ。だからエボルト、それ降ろしてくれないかい?」

 

 「…まぁ仕方ないか。その代わりにあいつらをとことん鍛えろよ?」

 

 この人は九重八雲(ここのえやくも)、俺と兄貴の稽古をしてくれている人でここの寺の住職をやってる人だ。ちなみに俺たちのことも既に話していて、エボルトも紹介済みだ

 

 そんなことはさておき、俺と兄貴はアイコンタクトを取った、すぐに八雲先生へ突撃した。さて、ここからが本番だ

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 「「はぁ…はぁ…」」

 

 縁側でお茶を飲むエボルトに地面にぶっ倒れてる俺たちと姉ちゃんからもらったタオルで汗を掻きながら余裕な先生…俺たち2人を相手に余裕すぎるとかこの人もはや化け物だろ

 

 立ち上がるまで回復した俺らは稽古で汚れた服を魔法で綺麗にして、縁側で朝ご飯にする

 

 「もう体術だけなら達也くんと龍夜くんに敵わないかもねぇ…」

 

 サンドウィッチを口に運びながら八雲先生がそう言う。しかしこの人が言うとなんか褒められてる気がしないのだが?

 

 「2人がかりの体術で互角なのにあれだけボコボコにされるというのもあんまり喜べないですね…」

 

 「俺に関してはネビュラガス投与されてかなり強くなってたと思ってたんですけどね…」

 

 「それは当然のことだよ。僕は君たちの師匠で、さっきは僕の土俵で相手をしていたんだからね。半人前の君たちに遅れを取ったら弟子にも逃げられるよ」

 

 「お兄様と龍夜はもう少し素直になった方がよろしいかと存じます。胸を張って高笑いしていたらいいと思います!」

 

 「…それはそれで嫌なやつに見えると思うが…」

 

 「…なんか脳裏に誰か映った気がする…」

 

 「大丈夫かお前?」

 

 何故か脳裏に紫の土管から現れた男が映った気がするが…俺、疲れているのか?

 

 その後俺たちは他愛もない話をしながら、長いような短いような時間を過ごした

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 俺たちは制服に着替えて一高に向かった。途中で兄貴と別れ、俺たちはA組に向かう。教室に入るとわらわらと人だかりが姉ちゃんに集まっていった…

 

 『まぁ総代と同じクラス、そして美人ときた。自分たちの印象を与えたいチャンスなんだろ』

 

 エボルトの言う通りなのかもな。俺は姉ちゃんと周りの人混みを避けながら自分の席に向かう

 

 「おっ、雫にほのかじゃないか。おはよう」

 

 「おはよう、龍夜」

 

 「おはようございます、龍夜さん」

 

 2人とも挨拶をして俺は先を確認する…

 

 「俺の席は雫の近くか。よろしくな」

 

 「うん、よろしく」

 

 「ところで…お姉さん、大丈夫なんですか?」

 

 ほのかは沢山の人だまりの中にいる姉ちゃんを心配してるらしいが…姉ちゃん、悪いと思うが俺では助けきれん

 

 『まぁ、助けたら助けたでなんだこいつって目で見られるしな』

 

 エボルトの言う通りだな。態々状況を悪化したくないし…

 

 「無理だなありゃ。どうせいつものことだし仕方ないな…」

 

 「いつものことなんだ…」

 

 「あ、あはは…」

 

 2人とも、仕方がないんだ…俺にはどうすることもできん…

 

 「ところで2人は履修登録は済んだのか?」

 

 「うん、終わらせたんだ」

 

 「私も終わらせました」

 

 「じゃあさっさと終わらせるとするか」

 

 俺は自分の席に座り、利用規約などを流し読みした後登録を済ませた

 

 『流し読みなんかして大丈夫かよ』

 

 お前だってどうせアプリとかの利用規約なんか流し読みして登録とかするだろ。それと同じだよ

 

 『まぁそうだな。必要な部分だけ覚えときゃいいしな』

 

 登録終了と同時に教室の扉が開き、姉ちゃんに集まってた人達も各々の席へと戻っていった。そして教師らしき人からの説明が始まった

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 「…修羅場だ」

 

 『修羅場だな』

 

 「お兄さん妹さんをください的な?」

 

 「いや恋人との仲を引き裂こうとしてる人達的な?」

 

 「…冗談言ってる場合ですか!?」

 

 ほのかのツッコミ通り冗談言ってる場合ではないようだ。今は同じクラスの1科生数人と姉ちゃんと兄貴達2科生が話し合い?をしている。どうやら姉ちゃんと話がしたい1科生達、兄貴達と帰りたい姉ちゃんか。なるほど、大体わかった

 

 『ありゃ騒動になるぜ?』

 

 確かにな、早いうちに止めないとな。今美月が啖呵を切りそうな展開に…

 

 「いい加減に諦めたらどうなんですか?深雪さんはお兄さんと帰るって言ってるんです!」

 

 なりましたねハイ。これはヤバいことになるんじゃ…

 

 『この状況…さらに悪化するかもな』

 

 「同じ新入生じゃないですか。貴方達ブルームが今の時点で一体どれだけ優れてるって言うんですか?」

 

 「どれだけ優れてるか、知りたいなら教えてやる!」

 

 「ハッ!面白え!是非とも教えてもらおうじゃねぇか!」

 

 美月ともう1人の男の台詞で状況は悪化した。もう売り言葉に買い言葉じゃねぇか!

 

 「だったら教えてやる!」

 

 すると1科生の男子が銃型の特化型CADをホルスターから取り出そうとする…これまさか!

 

 『龍夜!あいつ魔法を人に向けて使うつもりだぞ!』

 

 「いけねえ!」

 

 俺は一気に走り出しそいつのCADの持つ手首を蹴り上げ、CADを地面に落とす。その隙に俺は奴の顔目掛けてナックルダスター型のCADを寸止めで放った。場は静まり奴のCADが近くに落ちる音が鳴り響く

 

 「「「…は?」」」

 

 こいつどころかエリカ達も困惑している。そりゃ、さっきまでここにいない奴が同じクラスの奴に武器向けてるもんな

 

 「き、貴様!ブルームのくせにヴィードに味方するのか!?」

 

 やっと状況を理解できたのか、他の1科生の連中は俺に向けて魔法を放とうとする。これは不味いな…それにどうやら事態を収集させようとほのかも魔法を使おうとしてるらしいが…仕方ない、これだけはやりたくないが…

 

 「全員相手になってや…」

 

 するとどこからか飛んできたサイオン弾がほのかの術式に直撃し術式が霧散した

 

 「きゃあっ!」

 

 「ほのか!?」

 

 倒れようとしてたほのかを雫が介抱してくれたか…あのサイオン弾、一体誰が?

 

 「止めなさい!自衛目的以外の魔法による対人攻撃は校則違反である前に犯罪行為です!」

 

 どうやらさっきのサイオン弾は七草会長が放ったようだが、騒ぎになってしまったか…

 

 「貴方達、1年A組と1年E組の生徒ね?事情を聞きますのでついてきてください」

 

 いつの間にかいた風紀委員らしき女性がそう言い放つ

 

 『確か入学式の時と生徒会紹介にいた。確か…風紀委員長の渡辺摩利だったな』

 

 なら渡辺先輩と呼ぶか。渡辺先輩の登場で1科生の連中の顔が真っ青になっている。どう言い訳しようか悩んでいると兄貴が前に出てきて

 

 「すみません。悪ふざけが済みました」

 

 「悪ふざけ?」

 

 「はい。森崎一門のクイックドロウは有名ですので、後学のために見せてもらおうとしたのですが、あまりにも真に迫っていたのでつい手が出てしまいました」

 

 兄貴のやつ、白々しいとはいえなかなかいい言い訳だな。ここは俺も乗ってやるか!

 

 「なるほど、そう言うことだったんだな」

 

 「なんだと?」

 

 「俺は兄の後学とは知らずに彼がCADを兄に向けて攻撃すると勘違いして、つい…」

 

 「…では、あの生徒が魔法を使おうとしたのは?」

 

 「恐らく俺が急にやらかして驚いたのでしょうね」

 

 「それに、あの魔法は目眩し程度の閃光魔法でしたから。それに失明したり視力障害を起こしたりする程のレベルではありませんでした」

 

 おっと、兄貴その発言はやばいんじゃ…ほら渡辺先輩が笑み浮かべてるよ…

 

 「ほう…どうやら君は展開された起動式を読めるらしいな」

 

 あーあ、兄貴が起動式を読めたからこんなことになっちゃったよ…

 

 『そもそもあんな膨大なデータの起動式を分析できる達也が凄すぎるだけなんだよ。CADの中身を見ても、魔法の知識がないだけ、分析すると俺でもキツイぞ』

 

 お前でも流石に無理か…戦兎さんならなんとかいけそうだが…

 

 まぁ起動式について説明すると、魔法師は魔法式がどのような効果を持つか直感でわかる。しかし魔法式がエイドス*2に干渉する過程で、改変されまいとするエイドス側からの反作用により、魔法式がどんな改変を行うかを読み取ることが可能だ。しかしそれ単独ではただの膨大なデータに過ぎず、それを展開している魔法師自体も無意識領域内で半自動的に処理することができるのみ。要するに起動式を読むということは、画像データを抽出する文字の羅列からその画像を頭の中で再現するようなものだ、意識して理解することなど普通はできない

 

 しかし、兄貴だけは()()()()()()()()()()()()()()()、その目で見た起動式は全て理解することができる

 

 俺がこの後の言い訳を考えてる内に姉ちゃんが兄貴を庇うように進みでた

 

 「兄の申したとおり、本当にちょっとした行き違いだったんです。先輩方のお手を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした」

 

 姉がそういうと渡辺先輩は何も言えないのか、ただ黙り込んだ

 

 「まぁ摩利、もういいじゃない。達也くん、龍夜くん、本当にただの見学だったのね?」

 

 …七草会長、貴方いつの間にここにいたんですか。なぜ名前で呼ぶんですか…?

 

 兄貴がその質問に頷くと会長は何となく得意げに見える笑みを浮かべた

 

 『貸し一つ!って言いたげな表情だな』

 

 「生徒同士で教え合うことが禁止されてるわけではありませんが、魔法の行使には起動するだけでも細かな制限があります。このことは1学期の内に授業で教わる内容です。魔法の発動を伴う自習活動はそれまで控えたほうがいいでしょう」

 

 会長が真面目な表情に戻って渡辺先輩もまた形式を意識した言葉遣いで審判を下した…俺やっちまったよな?

 

 『まぁ…だが森崎って奴が魔法を使おうとするのが悪い』

 

 でもそれに介入して場を荒らした俺も悪いようなものだけどな…

 

 「……会長がこう仰られていることでもあるし、今回は不問にします。以後このようなことか無いように」

 

 慌てて姿勢を正し、頭を下げる一同に見向きもしないで渡辺先輩は踵を返した。やっと終わった…

 

 と思ったのも束の間、一歩踏み出したと思ったら背中を見せたまま問いかけてきた

 

 「君達の名前は?」

 

 「一年E組、司波達也です」

 

 「…一年A組、司波龍夜です」

 

 「覚えておこう」

 

 あ、結構です。覚えてもらわなくても大丈夫です

 

 『諦めろ、どのみち覚えられなくても会長経由で名前知らされるだろうし』

 

 ちくしょう…なんて日だ…

 

 

 

 「…借りだなんて思わないからな」

 

 七草会長達がいなくなると兄貴と俺に向けて、先程CADを取り出し兄貴達に向けようとした1科生が棘のある口調で言った。兄貴がやれやれって顔してるな…

 

 「貸してるなんて思ってないから安心しろよ。決め手になったのは俺の舌先じゃなくて深雪の誠意だからな」

 

 「お兄様ときたら、言いまかすのは得意でも説得するのは苦手なんですから」

 

 「違いないな。兄貴はそういう奴だし」

 

 兄貴のやつ、俺らの非難に苦笑で返した。まぁ兄貴はこういう奴だからな。本当に

 

 「…僕の名前は森崎駿(もりさきしゅん)。お前が見抜いた通り、森崎家の本家に連なる者だ」

 

 俺達のほのぼの(ただし見ようによる)したやり取りを目の当たりにしたから気を削がれたのか、やや敵意の薄れた顔で森崎という奴が兄貴に名乗った

 

 「見抜いたとか、そんな大袈裟な話じゃないんだが。単に模範実技の映像資料を見た事があっただけで」

 

 「あ、そう言えばあたしもそれ見たことあるかも」

 

 「で、テメェは今まで思い出しもしなかったと。やっぱり達也とは頭の出来が違うな」

 

 エリカともう1人の男子が口喧嘩を始めやがった…無視しとくか

 

 「僕はお前を認めないぞ、司波達也。司波さんは僕達と一緒に居るべきなんだ…」

 

 そんな2人を傍目に森崎は兄貴に向けて捨て台詞を吐いて行った

 

 「いきなりフルネームで呼び捨てか」

 

 兄貴は独り言のように、しかし聞こえる音量で呟き、森崎はピクッと背中を震わせてそのまま立ち去った

 

 「お兄様、龍夜、もう帰りませんか?」

 

 「そうだな。レオ、千葉さん、柴田さん、帰ろう」

 

 「俺もう帰りてぇや…」

 

 精神的に疲れた…ここは兄貴の言う通りに真っ直ぐ帰ろう…と思ったらほのかが兄貴へと歩み寄り…

 

 「光井ほのかです。あの、さっきは失礼なことを言ってすみませんでした!」

 

 ほのかが兄貴達に頭を下げ、謝罪をする。まぁ兄貴達からしたら実質エリート意識な奴が多い1科生の中では珍しいだろうな

 

 「庇ってくれてありがとうございました。森崎君はああ言ってましたけど大事にならなかったのはお兄さんのおかげです」

 

 「…どういたしまして。でもお兄さんは止めてくれ。これでも同じ一年生だ」

 

 「わかりました。では、何とお呼びすれば…」

 

 …ん?この流れってまさか?

 

 『あれ?これってもしかして…』

 

 「達也、でいいから」

 

 兄貴が呼び名を変えてもらって、ほのかは何故かもじもじ?してるよな…なぁエボルト、これは…

 

 『お?お?もしかしてどころじゃなくね?』

 

 「…わかりました。それで、その…」

 

 「…なんでしょうか」

 

 兄貴と姉ちゃんの素早いアイコンタクト、俺でなきゃ見逃しちゃうね。んであるほのかは兄貴に何か言いたい様子、これは恐らく…

 

 「…駅までご一緒してもいいですか?」

 

 「「「「「……えっ?」」」」」

 

 やっぱり…ほのか、兄貴に惚れちゃったパターンでした

 

 『そのまさかかぁ〜〜!!』

 

 「ん?ちょっと待ってくれ兄貴、俺っていうか…ほのかの友達も連れて行って良いか?」

 

 「…いいぞ」

 

 兄貴からの許可が降りたのでほのかの衝撃発言によりフリーズしてる雫へと向かう

 

 「雫〜一緒に帰ろうぜ」

 

 「…えっ、あっちょっと!」

 

 有無を言わさずに俺は雫の手を握り、兄貴達へと走り出す

 

 「兄貴お待たせ」

 

 「そんなに待ってないが…その人か?」

 

 「あぁ、雫って言って…雫、なんで顔赤いんだ?」

 

 「あっいや、別に大丈夫だよ。うん、別に大丈夫…うんうん///」

 

 「?」

 

 なんだか雫の顔が赤くて落ち着いてないし顔背けてくるし…絶対大丈夫じゃないだろこれ…

 

 『あっ…(察し)』

 

 おいエボルト、なんださっきのあっ…は。なんか察したろ?

 

 『…いや全然?これからも面白いこと起きるんだろうなぁ〜♪』

 

 この野郎…よくわからないが、教えてくれたっていいだろ!

 

 「…ねえ達也くん、龍夜くんって昔からこんな感じなの…?」

 

 「…あぁ、あいつは昔から自分の色恋沙汰には疎いからな…」

 

 兄貴とエリカも小声で何か話してるし…なんなんだよオイ

 

 「………龍夜?」

 

 「あっ姉ちゃん。なんか知らないけど雫を…ヒェッ…」

 

 姉ちゃんの方を振り向くと笑顔なのに怒気のオーラを纏った姉ちゃんが…辺り一面凍りついてるんじゃないかこれ!?

 

 『おい龍夜、早く深雪を落ち着かせろ!ここらが南極みたいに寒くなるぞ!』

 

 「姉ちゃん!落ち着こう!?なっ!?」

 

 この後姉ちゃんを落ち着かせるのにかなり時間がかかった…今日は厄日か!?

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 

 なんとか姉ちゃんを落ち着かせた俺達はそのまま駅まで帰ることになったのだが…昨日までとは微妙な雰囲気へと変わった

 

 まずは兄貴の隣に姉ちゃんがくっつくように並んでいる。まぁここまでは普通だ

 

 『普通とは…?』

 

 細かいこと気にすんな。んで姉ちゃんの反対側、つまり兄貴のもう片方の隣にほのかがいる。これ傍からみたら美人2人を侍らせてる男にしか見えない…

 

 さらにその次、兄貴の反対側、姉ちゃんを挟んでそっちに俺がいるんだが…その反対側、俺の隣に雫が陣取ってる…

 

 『傍から見たらお前も深雪と雫を侍らせてる最低男にしか見えないぞ?』

 

 うん、俺もそう思う…てか構図的に雫、俺、姉ちゃん、兄貴、ほのかだな。ちなみにほのか、兄貴、姉ちゃん、俺、雫でも合ってるぞ

 

 「…じゃあ、深雪さんと龍夜さんのアシスタンスを調整してるのが達也さんなんですか?」

 

 「えぇ、お兄様に任せるのが、一番安心ですから」

 

 「だな、俺らもそれなりに知識はあるけど、兄貴程の知識はないしな」

 

 「でもそれって、デバイスのOSを理解できるだけの知識が無いと出来ませんよね」

 

 「CADの基礎システムにアクセスできるスキルもないとな。大したもんだぜ」

 

 「それなら、達也さんってかなりの腕じゃないですか?」

 

 ほのかの問いかけに兄貴は謙遜するように頭を横に振る

 

 「少しアレンジしてるだけだよ。深雪は処理能力が高いし、龍夜は魔法力が高いからCADのメンテに時間がかからないんだ」

 

 「だったらさ、私のホウキも見てもらえる?」

 

 「無理だな。あんな特殊な形状のCADをいじる自信はないよ」

 

 「すごいね。これがCADだってわかっちゃうんだ」

 

 兄貴の言う通り、エリカが持っていた警棒はCADらしいな。俺は言われるまで気づかなかったが

 

 「えっ、その警棒、デバイスなの?」

 

 「普通の反応ありがとう美月。皆が気づいていたら滑っちゃうところだったわ」

 

 「どこにシステムを組み込んでいるんだ?もしかして全部空洞って訳じゃないだろ?」

 

 兄貴から紹介された西城(さいじょう)レオンハルト、通称レオの質問にエリカは簡単に答えた

 

 「これは柄以外全部空洞なのよ」

 

 「なるほど、ってことは…刻印術式を使ってるのか?」

 

 「おー、さすが龍夜君、正解よ。これには硬化魔法の刻印術式を使ってるの」

 

 「刻印術式って、燃費が悪くて今じゃ殆ど使われてないはずだぜ?」

 

 レオは硬化魔法が得意だとさっき聞かされた。自分の得意分野に関して知識がかなりあるのかもな

 

 「おっ、流石は得意分野、けどハズレ。打ち込みの一瞬だけ発動するの。兜割(かぶとわ)りと同じ原理よ」

 

 なんか呆気からんと言ってるが…それって結構凄い方じゃ無いか?皆も沈黙してるぞ?

 

 「…エリカ、兜割りって秘伝とか奥義みたいなものじゃなかったかしら…?」

 

 「もしかして魔法科高校には一般人の方は少ないんですか?」

 

 「魔法科高校に一般人はいない」

 

 美月の疑問に雫が適格と思える答えを出した。皆も納得してるな

 

 

 

 

 

 レオと龍夜の出会い

 

 「龍夜、彼は…」

 

 「俺は西城レオンハルトだ!長いからレオでいいぜ」

 

 「ならお言葉に甘えてな。俺も龍夜でいいぜレオ」

 

 「「…」」

 

 「俺ら、良い仲になれそうだな」

 

 「奇遇だな。俺もそう思う」

 

 『筋肉バカ同士が出会ったか…』

*1
第1話で龍夜がファウストの実験台にされかけた時

*2
魔法を使うときに現れる事象に付随する情報体のこと。ギリシャ哲学の用語を流用してエイドスと呼ばれる




一つ!龍夜が騒動を抑えた!二つ!リバイスが始まった!三つ!雫がヒロインになった!
エ「仮面ライダーリバイス、はじまったな」
龍「最後はどうなるんだろうな。てか三つ目どういうこと?」 
龍夜、気にするな
エ「てか龍夜って鈍感にするの?」小声
鈍感にしようかな…と思ってる(小声)
龍「??」
リバイスのラスト皆さんはどう思います?私はオーズのように一輝が悪魔になってバイスと別れるエンドだと思います
龍「俺はWみたいに会えなくなると思わせて感動の再会をするパターンだと思う」
エ「そりゃバイスタンプで新世界を作り出すんじゃないか?」
龍「お前の責任だろうがあれは!!」


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第5話 司波兄弟一同、勧誘される

えー、誠に申し訳ないのですが、今回からは投稿ペースを早くしていくために本文を8000〜7000文字以内から6000〜5000文字くらいまで下げます。長い方がいいと思う方は感想でお聞かせください
エ「しれっと感想貰おうとする辺り卑怯だよな」
龍「それにそもそも投稿ペース早くなるのかどうかだよな。だけど読んでくれる皆様方には申し訳ありませんが、内容が少なくなりますのでご了承ください」
エ「内容が少ないよう…くくっ」
しょうもねぇ…けどこれからは文字数が少なくなるのでご了承ください!あと今回からタイトルも変えます
龍「このタイトル、オーズのパクリだもんな」
…ちがうもん!最初の1話と2話を投稿してから気づいただけだもん!
エ「もん使うんじゃねぇよ、気色悪い」
はい…


 俺たち3人はいつも通り、一高まで歩いていると、後ろから七草生徒会長が走ってきてた。そして大声で兄貴の名前を呼んでた

 

 「達也くーん!龍夜くーん!」

 

 「流石兄貴、早速七草会長に好かれてるな」

 

 『現実逃避してるとこ悪いがお前も呼ばれてるぞ』

 

 うっそだろ…逃げるか…と思ったら姉ちゃんが袖を強く掴んでた。姉ちゃん、伸びるのでやめてください

 

 『まぁ仮に深雪から脱出できても達也がいるんだけどな…』

 

 まさに四面楚歌…いやエボルトこっち側だから三面楚歌か

 

 『俺その気になったら、向こう側つくから実質四面楚だぞ』

 

 この野郎、速攻で裏切りやがって…

 

 「達也くん、龍夜くん、オハヨ〜。深雪さんも、おはようございます」

 

 兄貴と俺に対して姉ちゃんとの対応の差…

 

 『お前と達也、生徒会長に相当好かれてんな。もう逃げられないんじゃね?』

 

 不吉なこと言うなよ…

 

 「おはようございます。会長」

 

 「おはようございます」

 

 取り敢えず挨拶されたから挨拶する。これ大事。あとこの人生徒会長だから言葉遣いも丁寧にしなくてはならない

 

 「会長、今お一人ですか?」

 

 「うん。朝は特に待ち合わせはしないのよ」

 

 だからってついてくるのですか…

 

 「深雪さんと少し話したいこともあるし、ご一緒しても構わないかしら?」

 

 そう言って姉ちゃんに質問するが、正直な話、拒否権なんかないんだろうな

 

 「あ、はい。別に構いませんが…」

 

 「別に内緒話するわけじゃないから。それなら、また後にしましょうか?」

 

 この人悪魔だ…笑みが悪魔だ…兄貴も姉ちゃんも固まってるよ…

 

 「お話ということは、生徒会の事でしょうか?」

 

 「ええ。一度、ゆっくりと説明したいと思って。お昼はどうする予定かしら?」

 

 「食堂でいただくとおもいます」

 

 「達也くんと龍夜くんと一緒に?」

 

 「いえ、兄はクラスが違いますし…」

 

 姉ちゃんが言ったものの、消えていった言葉の続きは間違いなく昨日のことを思い出したんだろうな

 

 「変なことを気にする生徒が多いですものね」

 

 七草会長もそのことを思い出したらしい。どうやら、この人はこの状況をなんとかしようとしてるのだろう

 

 「じゃあ、生徒会室でお昼を一緒にしないかしら?」

 

 「いや、でも」

 

 「ランチボックスでよければ、自動配膳機があるし」

 

 七草会長の提案に俺と兄貴2人は最初は乗り気ではないものの、七草会長の押しに負けて昼食は生徒会室で取ることになった…

 

 『災難だなお前』

 

 やかましいわ。他人事のように言いやがって

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 昼休み、俺たち3人は生徒会室の前まで向かうことにした。先に階段を上がっていく我が姉は足取りがとても軽やか。それに対して俺と兄貴は足取りがとても重い

 

 そしてとうとう生徒会室までたどり着いた

 

 「…姉ちゃん、頼むわ」

 

 「…」

 

 姉ちゃんが扉の横にあるドアホンを押して、入室の許可を得ると、扉が開いた

 

 「いらっしゃい。遠慮しないで入って」

 

 「では…失礼します」

 

 七草会長の声を受けて最初に姉ちゃんが入り、礼儀作法の手本を見せるように綺麗なお辞儀をした

 

 俺もそれに倣って入り、お辞儀をする

 

 「…失礼します〜」

 

 姉ちゃんの丁寧なお辞儀によって七草会長を始めに、同席していた役員の人達も雰囲気に飲まれていたが、姉ちゃんと対照的に半分ふざけた感じを出した挨拶だからか、なんとか肩の力を抜いて行った

 

 『お前ら育ちの良さが出てるんだよな』

 

 反論できないから悔しい…けど姉ちゃんも兄貴のためだからってこんなことしなくていいと思うんだよなぁ…

 

 「さぁさぁ座って。お話は食事をしながらにしましょう」

 

 そういい生徒会室の上座に座る七草会長。その反対側に上座から姉ちゃん、兄貴、俺へと座って行く

 

 『普段お前か兄貴の方座らせたがるよな。お前の姉ちゃんって』

 

 そうだな。けど今回は姉ちゃんが主役だから無理を言ってでも上座に座らせる

 

 そうして俺達に食事が配膳された。渡辺先輩の分だけないが?…と思ったらこの人は弁当らしい

 

 『しかも手の絆創膏の数からして結構頑張ったよな。恋人に弁当でも渡したのか?』

 

 お前なんでそんなこと詳しいんだよ?

 

 『美空が子供の頃に一緒に見た恋愛ドラマだな』

 

 お前もそんなことに興味あったんだ…

 

 「そのお弁当は渡辺先輩が自分で作ったんですか?」

 

 話し始めに差し当たりのない程度に俺がそう質問する

 

 「そうだが…何か意外か?」

 

 「いいえ。これは俺の第六感ですけども、そのお弁当ってもしかして彼氏さんのために練習で作ったんじゃないですかね?先輩の彼氏さんって先輩のような素敵な彼女を持てて幸せでしょう」

 

 「…なっ!?」

 

 渡辺先輩は顔を真っ赤に染めて狼狽し始めた。笑えるなこりゃ

 

 『あーはっはっはっは!これだから人間は面白い!!』

 

 お前内海さんが杖折った時みたいに笑うなや…ごめん俺も笑い堪えてた

 

 

 「それじゃ、改めて自己紹介させて頂くわね。私が今期の生徒会会長の七草真由美(さえぐさまゆみ)。そして長い髪の女の子が会計の市原鈴音(いちはらすずね)、通称リンちゃん」

 

 「私をリンちゃんなんて名前で呼ぶ人は会長だけです」

 

 と、黒髪の長い女性の市原先輩がツッコミを入れる。この人も苦労してんだな…

 

 『他に誰が苦労してんだよ』

 

 お前の世話に手を焼いてる俺と一年近くかけてお前を倒そうとした戦兎さんと万丈さんも一海さんと幻さん

 

 『俺のせいかよ。まぁ知ってたけど』

 

 「そしてこちらの小さい女の子が書記の中条(なかじょう)あずさ。通称あーちゃん」

 

 「私のことをあーちゃんって呼ぶのはやめてください!下級生の前なんですから!」

 

 背が小さく最悪小、中学生にしか見えない中条先輩も七草会長に文句を言っていた。たった3日しか会ってないけど言っても無理だと俺は思う。いやもう言っても無駄だなこりゃ。この人絶対にやめる気ないだろ

 

 「それから、ここにはいないけど副会長の服部くんを入れた四名が今期生徒会メンバーです。そしてこちらは風紀委員長の…

 

 「渡辺摩利(わたなべまり)だ」 

 

 「自己紹介も終わったし食事をしながらでいいから、そろそろ本題の方に移りましょうか」

 

 食事しながら七草会長が改めてそう言った

 

 「これは毎年恒例なのですが、新入生総代を務めた生徒は生徒会の役員になってもらいます。深雪さん、あなたが生徒会に入っていただくことを希望します。引き受けていただけますか?」

 

 姉ちゃんは七草会長からの勧誘をしばらく考え始め、顔を上げると何故か思い詰めた目をして、口を開いた

 

 「会長は兄の成績をご存知ですか?」

 

 「…深雪?」

 

 おおっと?姉ちゃんが急に兄の成績のことを聞き出したぞ?これって…

 

 「ええ、知ってますよ…凄いですよね。正直にいってしまうと先生にこっそり答案を見せてもらった時には自信をなくしました」

 

 「成績優秀者、または魔法師としての実力。有能な人材を生徒会に入れるなら私よりも兄の方が相応しいかと」

 

 姉ちゃんはどうやら自分よりも兄貴を生徒会に入れた方がいいらしい。やっぱりというか、なんというか…

 

 『流石に生徒会の奴らも2科生を生徒会に入れろなんて言われてはいわかりましたで済むとは限らないが…』

 

 だよなぁ…姉ちゃんもそれを知ってるはずだろうに…そんなに兄貴と一緒にいる時間が欲しいんだろうな…

 

 「残念ながらそれは出来ません。生徒会役員は1科生から選出されます。これは不文律ではなく、規則です」

 

 と、市原先輩が冷淡に答えた。姉ちゃんはそれを聞いて落胆の表情を見せた…と思ったらまた顔をあげてまた口を開いた

 

 「…なら弟の龍夜はどうでしょうか?理論はともかく、本当は魔法力は私よりも上です」

 

 「えっ?」

 

 あまりの発言に俺は姉ちゃんの顔をガン見して変な声が出た

 

 「龍夜君の成績は2人よりも低く、総合では5位ですが…」

 

 「…それに龍夜君には元々、部活連に入ってもらう予定だったの」

 

 「…えっ?」

 

 まさかの衝撃発言に俺はもう口がまともに動くことさえしなかった

 

 「そうですか!ならそれで「ちょちょちょちょちょちょっと待って!?」どうしたの龍夜?」

 

 「どうしたのじゃないよ姉ちゃん!会長も何故そんな事黙ってたんですか!」

 

 「だって聞かれなかったし、今日言おうとしたのよ」

 

 「うっそーん……そもそも、部活連ってなんなんです?」

 

 なんでこうなったし…そう思いつつ俺が出した質問に渡辺先輩が答えた

 

 「部活連というのは主に学校内の争乱の取り締まりや、毎年ある論文コンペの警備隊員などを担うというものだ」

 

 「だけど、俺は成績で5位って…」

 

 「あれは龍夜が実技で手を抜いただけです」

 

 姉ちゃんんんんん!暴露やめてくれぇぇぇ!そんなに入学した時のこと根に持ってるのかあなたは!?

 

 「本当のことなの?龍夜君?」

 

 ヤベェ…七草会長がこっちに狙いをつけてきた…

 

 「何を言ってるんですか?そんなはずはありませ…」

 

 すると真横、隣の兄貴のさらに隣から強烈な冷気が襲ってきた!この感覚まさか!

 

 「龍夜?」

 

 『アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!』

 

 ヤベーイ!ってこんなコントやってる場合じゃねえ!

 

 「姉ちゃん、あの、冷気がダダ漏れで…」

 

 「龍夜?

 

 「いえ…あのお姉様…これには深い都合で…」

 

 龍夜?

 

 「はい、手を抜いて申し訳ありませんでした!」

 

 俺が姉に頭を下げると冷気が収まった…他の人たち引いてるよ…

 

 『お前が手を抜くからだろうが。今度からはちゃんとしろよ』

 

 もはや何も言い返せない…が、お前に言われるとなんか悔しい…

 

 「ということらしいです」

 

 「…なら決まりね。龍夜君は部活連の役員決定〜」

 

 「俺に救いはなかったのか…ん?ちょっと待ってください」

 

 「なんだ?」

 

 俺はとあることを思いつき、内心悪どい笑顔を浮かべた

 

 「あの、1科生だけの制限があるのは生徒会だけなんですか?」

 

 「ええ、確かそうだけど…」

 

 「つまり、風紀委員の生徒会枠に2科生を入れても問題はないのでは?」

 

 「…龍夜君!まさか!」

 

 七草会長はどうやら俺の考えてることがわかったようだな。姉ちゃんのおまけが俺だけとは限らないぞ!

 

 「そう、つまり兄貴を風紀委員にすればいいと思いますよ」

 

 「龍夜!?一体何を!」

 

 「龍夜君…あなた…」

 

 俺の発言に会長は目を見開き、中条先輩や市原先輩方は唖然としていた。そして会長は口を開き

 

 「ナイスよ!!」

 

 「はぁ?」

 

 と会長はそれだと言わんばかりにいい、兄貴は珍しく変な声を出す。作戦成功だな。どうせなら兄貴も道連れにしてやるぜぇ!(彼は唐突なことでテンションが変になっております)

 

 その後兄貴は必死に断ったが、昼休みが終わり放課後に持ち越すようになった

 

 生徒会室を出た後俺は兄貴に睨まれ、姉ちゃんは嬉しくキラキラした目をしていた…

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 昼休み後の授業が始まった。今日の課題は規定のCADを使いレールの上にある小さい台車を端から端まで三往復というやつだ。今日の授業はガイダンスらしく、兄貴達2科生の方も大体は同じだろう。と言っても、違いは教えてくれる人がいるかどうか、だけどな

 

 ちなみに4人グループで姉ちゃん、ほのか、雫、俺だ。理由は俺がどのグループに行こうか悩んでたら姉ちゃんと雫に強く推されたからだ。そのせいか時々他の男子から殺気を帯びた視線を感じるよ…

 

 「龍夜、生徒会室はどうだった?」

 

 後ろから雫に昼休みのことを話しかけられる

 

 「あぁ、姉ちゃんが生徒会に勧誘させられたよ。ちなみに俺は何故か部活連に入ることになるんだとよ」

 

 「…なんで?」

 

 「俺にもわからんし…あということは放課後もまた生徒会に行かなきゃ行けないことだな…はぁ〜…」

 

 「…ドンマイ」

 

 と言いつつ雫は俺の背中を軽く叩いて慰めてくれた。すっげぇいい子じゃん…

 

 『はぁ…朴念仁すぎる龍夜も悪いが、簡単に堕ちた雫も雫だろうなぁ…』

 

 なんか言ったか?

 

 『いや全然?ところでもうすぐお前の番だぞ』

 

 はいはいっと…俺は学校規定のCADの前に立ち、想子(サイオン)を流し込む。いつも使ってるやつとは違うからか、少し違和感を感じるが、なんとか堪えて魔法式を展開した。今回の魔法の工程は加速と減速の2工程を6回繰り返すだけなのですぐ終わり、台車は簡単にレールの上を三往復した

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 〜放課後〜

 

 俺と姉ちゃんは途中で兄貴と合流すると、生徒会室へと足を運ぶ。既に認証IDは登録済みらしく、そのまま生徒会室に入る…これもう俺の部活連入り、兄貴の風紀委員入りが決められてるような気がするが、もう仕方ない。腹を括っていこうとするか…

 

 「失礼します」

 

 俺はそういい、入ると敵意の視線を感じた。正確には俺の後ろの兄貴に向けてるらしいが…とりあえず俺と同じく視線を感じたらしい姉ちゃんが兄を庇うように前に出ると、視線から敵意が消えた

 

 「副会長の服部刑部(はっとりぎょうぶ)です。司波深雪さん、司波龍夜さん。生徒会へようこそ」

 

 といい、兄貴を無視して自分の席へと戻っていった。多分この人は2科生に対する優越感などではなくて1科生だという誇りを持っているのだろうが…なにしろ姉ちゃんの前で兄貴を無視する時点で姉ちゃん的にOUT…

 

 「よっ、よく来たな」

 

 「いらっしゃい。深雪さん、龍夜君に達也くんも」

 

 既にこの人達の対応にはもう何も言わない。言いたくない。言ったら負けだ

 

 「早速だけど、あーちゃん、2人をお願いね」

 

 「はい…」

 

 中条先輩に案内され、兄貴と別れようとしたその時

 

 

 「渡辺先輩、待ってください。その一年生を風紀委員に任命するのは反対です

 

 …どうやら、また一悶着起こるようだな…

 

 『くくくっ、面白いことになりそうだなこりゃ!』

 

 

 

 

 

 

 

 ネタ:ビルド世界での出来事その①

 

 〜nascitaにて〜

 

 戦兎「取り敢えず、お前が知ってることを教えてくれ」

 

 龍夜「どんな…?」

 

 戦兎「知っていること全てだ」

 

 龍夜「…わかりました」

 

 龍夜「俺が生まれたのは、四葉という家でした。2人とも3150gのとっても元気な双子の赤ん坊で…」

 

 戦兎「誰が生い立ちから話せつったよ!」

 

 龍夜「何するんですか!」

 

 戦兎「流れでなんとかわかるだろバカ2号」

 

 龍夜&万丈「「誰がバカだよ誰が!!」」

 

 戦兎「あーもううるさいよバカ共!」




魔法科高校の劣等生追憶編とうとうアニメ化ですね。あとFGOでハロウィンイベントです。ハロウィン…カボチャ…うっ頭が
龍「やってみせろよ、マフティー」
エ「なんとでもなるはずだ!」
ガンダムだと!?
\ナラナイコトバヲモウイチドエガイテー/
閃ハサ見たかったなぁ…コロナ禍の都合で見れなかった。あと追憶編多分契約チャンネルと時間帯的に見れないかも…
エ「ちなみにこの小説で追憶編やるのか?」
いや、正直な話もう1話でざっくりと解説したしいいかな
龍「姉ちゃん!兄貴!この作品追憶編ないってよ!」
密告はやめ…深雪さん凍らすのだけはk
エ「まぁ、次回も頑張るから是非読んでくれ!」
チェイテピラミッド姫路城ってなんなんだよ一体…


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第6話 お兄様、決闘を始める

今更だけども補足です
Q:設定で龍夜のハザードレベルは3.2なのになんでハザードレベル4.0以上ないと使えないスクラッシュドライバー使えるの?あとビルド世界でどうやってスクラッシュドライバー使えたの?
A:スクラッシュドライバーは3.0でも使えるよう調整しました。あとビルド世界でスクラッシュドライバー使えたのは一海と幻徳の2人と一緒にネビュラガスを再び身体に取り込んだからです。だから第1話でも2人と同じように消えました
あと前回のあらすじ
龍夜が部活連に入れられて深雪が生徒会に入って達也は風紀委員にいれられそうだ!
龍「いや雑ぅ!」
エ「あと先輩の服部って奴が達也の風紀入りを認めなかったな」
それだけだ!


 「その一年生を風紀委員に入れるのは反対です」

 

 俺達が中条先輩から案内させてもらおうとした矢先、服部先輩が兄貴の風紀委員を突如反対しだした

 

 「なんだと?服部、もう一度言ってみろ」

 

 「ですから、私はそこの雑草(ヴィード)を風紀委員に入れるのは反対です!」

 

 この人はわざわざ雑草(ヴィード)という禁止された差別用語を使ってでも、兄貴の風紀委員入りを止めたいのか?

 

 「おい、それは禁止用語だ。私の前でよく堂々と言えたな」

 

 「今更取り繕ったってしょうがないでしょう。それとも全校生徒の3分の2を取り締まるんですか?」

 

 「なんですって!?」

 

 おっと、どうやら姉ちゃんが参戦したようだな。んで傍観をしているエボルト、何か一言言ってみろ

 

 『こいつは修羅場確定』

 

 …だな。この状況、どう打開するか…

 

 「あなたが司波深雪さんですか?魔法師とは、常に冷静を心がけるべきです。身内だからといって、目を曇らせては困りますね」

 

 「っ!…私の目は曇ってなどおりません!それに、お兄様の本来の力を持ってすれば「深雪!」っ…」

 

 今のは危なかった…姉ちゃんは完全に冷静さを失いかけていた。それと対称に服部先輩はしっかりと考え、発言をしていたが…下手したら姉ちゃんの口から兄貴が隠してる力がバレる恐れもある…

 

 「服部先輩、俺と模擬戦をしませんか?」

 

 「なんだと?」

 

 どうやら、シスコンの兄貴は姉ちゃんをここまで言わせて何もしないつもりじゃ、なさそうだな

 

 「深雪の目が曇ってるなんて言われたら、黙ってはいられないので」

 

 「…いいだろう!2科生の分際で思い上がるなよ!」

 

 兄の挑発にも見える宣戦布告に服部会長は頭にきたのか、怒鳴り散らすように簡単に乗った

 

 『…そういやこいつ魔法師は常に冷静をこころがけるとか言ってたよな?こんな煽りで冷静さを失うとか…』

 

 そこは俺も思った…

 

 そして七草会長と渡辺先輩の許可を得て、30分後に第三演習室にて兄貴と服部先輩による模擬戦を始めることとなった

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 30分後、俺達は第三演習室に到着した。兄貴は事務室から返してもらったCADを入れたアタッシュケースを置くと、俺に目配せする。俺は持ってきた鞄を少し開けた

 

 「?…龍夜君、何するつもりなの?」

 

 「まぁ、見てればわかりますよ」

 

 魔法技術だけでなく科学技術も進歩した現代において、学校も教科書と言ったものがなくなったからか、鞄を持ち歩く学生は殆どいない。仮に持ち歩くならそれは必要な荷物を運ぶ際などだ。俺の場合は非常時の際に──主にスマッシュとの戦闘など──必要なスクラッシュドライバーだ。そして、()()()の巣の代用にもなっている

 

 「起きろ、クローズドラゴン!」

 

 『キュオォォン!

 

 俺の鞄の中から黄色と青の二色で掌サイズの寸胴のドラゴン型ロボット、クローズドラゴンが勢いよく飛び出る

 

 こいつは兄貴や俺がいない時の姉ちゃんのボディガード兼愛玩用として俺がエボルトに頼んで作ってもらったものだ

 

 『あの時のお前の頼み方は内心笑ってたわ』

 

 もうお前は黙ってろ

 

 「か…かわいい〜!」

 

 七草会長がクローズドラゴンに近づき出した。クローズドラゴンは七草会長の周りを少し飛び回り、会長の掌の上に乗る

 

 「きゃ〜!かわいい〜!なにこの子欲しい!」

 

 「これってデバイスの一つなんですか!?凄いですよ!このタイプは初めて見ました!」

 

 クローズドラゴンの可愛さに七草会長がクローズドラゴンを持ちながらクルクル回転し、中条先輩が詳しく俺達に聞いてくる。この人さては相当のデバイスオタクだな?

 

 「それは正確にはデバイスではありませんよ。名前はクローズドラゴン。龍夜の知り合いが作ったらしく、それを譲り受けただけです。それにそれは深雪の物なのですが」

 

 「ちなみにそいつメスらしいですよ?」

 

 「あー、早くしてくれないか?」

 

 七草会長と中条先輩の興奮で、一時他の人達が静まり返ったが、我を戻した渡辺先輩が急かす。ちなみにチラチラとクローズドラゴンを見てるから、もしかして触りたいのだろうか?

 

 「すみませんね。クローズドラゴン」

 

 『キュオォン!』

 

 クローズドラゴンが飛び立ち、ガジェットモードへと変わって兄貴の掌に落ちる。ちなみに会長と中条先輩は名残惜しそうに見送っていた

 

 そしてガジェットモードのクローズドラゴンをCADが入ってるアタッシュケースの認証装置に置く。すると、認証されてアタッシュケースが開く。中には兄貴専用の複数の銃型CADと複数のストレージが置かれていた

 

 「君はいつも複数のストレージを持つのか?」

 

 「えぇ。そうでもしないと、自分の能力では魔法の使い分けができないので」

 

 そう言いつつ慣れた手つきでストレージをデバイスへと装着させる。準備が終わると、2人以外が壁際へと下がって行った

 

 「ではルールを説明する。相手を死に至らしめる、または回復不能の怪我を負わせるのは禁止。直接攻撃は相手に捻挫以上の負傷を与えないようにすること。武器による攻撃は禁止、素手による攻撃は許可する。勝敗は相手が負けを認めるか、審判が続行不能と判断した場合に決する」

 

 ルール説明を聞いてると、横から七草会長が聞いてきた

 

 「ねぇ、龍夜君はどっちが勝つと思う?」

 

 「そうですね…身内贔屓に聞こえるかもしれませんけど、兄貴ですかね?」

 

 「ふーん、でも服部君は入学以来一度も負けなしなのよ?」

 

 へぇ、そうなのか。だが、2科生だからといって、兄貴を舐めて貰っては困る

 

 「──それでは、勝負開始!」

 

 渡辺先輩の合図と同時に勝負は終わった。服部先輩は倒れ、()()()()()()()()()()()()()

 

 「…しょ、勝者!司波達也!」

 

 一瞬で終わったこの一連にて、我を戻した渡辺先輩が思い出したかのように宣言をする

 

 俺以外の他のギャラリーは唖然とした表情で倒れた服部先輩を見つめる。それと姉ちゃんは恋する乙女のようなうっとりとした表情で兄貴を見つめてた

 

 「…達也君、今の高速移動は魔法か?自己加速術式のように見えたが…」

 

 「いえ、魔法ではありません。そんなことをしたら試合前にCADを発動させたことでルール違反になりますので。あれは純粋な身体的技術ですよ」

 

 「純粋な…?にわかには信じられん…だが古式魔法の一つ、忍術では、そのような技術があると聞いたが…」

 

 「兄貴の言う通り、あれは純粋な身体技術ですよ。俺にも出来ますし」

 

 「私も証言します。兄と弟は忍術使い、九重八雲先生の指導を受けていますので」

 

 「九重…かの"忍術使い"九重八雲か!」

 

 俺と姉ちゃんの証言に出た八雲先生の名前を聞き、先程兄貴が見せた身体技術による高速移動に納得したのか、渡辺先輩は息を飲んだ

 

 「じゃあ、服部君を気絶させたあの魔法を忍術なの!?私の目には想子(サイオン)の波動そのものに見えたのだけど!」

 

 今度は七草会長も質問をしてきたが、兄貴はその質問を肯定するように頷いた

 

 「その通り、想子(サイオン)の波動ですよ。兄貴は振動の単一系統で作った想子(サイオン)の波動で服部先輩を酔わせたという寸法ですよ」

 

 そして、俺が呆気なく簡単に答えを言う。

 

 「…()()()()?」

 

 魔法師は想子(サイオン)による音や光などを一般のそれと同じく知覚しており、魔法師になるのには必須の技術だ。しかし予想外の想子(サイオン)波に晒された場合、その魔法師は揺さぶられた感覚に陥り、船酔いなどに似た症状を引き起こす場合がある

 

 「だけど、私達は普段から想子(サイオン)波には慣れているわ。そんな私達が倒れる程の強力な想子(サイオン)波なんて…」

 

 「波の合成、ですね?」

 

 七草会長が疑問を感じていると、終始無言だった市原先輩が口を開いた

 

 「…リンちゃん、どう言う事?」

 

 「そうですね。振動数の異なる想子(サイオン)波を3回連続で打ち出し、ちょうど波が服部君のいるところで合成するように調整して、三角波のように強い波動を生み出したのではないでしょうか?」

 

 「…その通りですね」

 

 そう、つまりは市原先輩が解説した通りだ。わからなかった場合、説明しようと思ったが、意外と詳しく知っているらしい

 

 『それは生徒会だからだろうな。優秀な奴らを集めているから、そう言ったことに詳しくなれるんだろう』

 

 たしかにお前の言う通りなのかもしれない。今回だけはお前に同意だ

 

 「それにしても、あの短時間でどうやって振動魔法を3回も発動出来たんですか?それだけの処理速度があれば、実技での評価が低いわけではないはずですのに…」

 

 「あの…達也さんが持ってるCADってもしかして【シルバー・ホーン】ではないですか?」

 

 市原先輩の疑問点をデバイスの性能と察した中条先輩、今にも兄貴に飛びかかる勢いで接近する

 

 「あー、あずさ。その【シルバー・ホーン】とは一体なんなんだ?」

 

 渡辺先輩の質問に、中条先輩は待ってました!と言わんばかりに輝いていた

 

 「渡辺先輩!ご存知ないんですか!?かの"ループ・キャスト・システム"を完成させた、本名・姿・年齢が全て非公開!知らされていることは一年前に設立された"ファウスト"に所属していることだけで、その"ファウスト"がたった一年で大きくなった要因と言っても過言ではない、奇跡のCADエンジニアである【トーラス・シルバー】が、"ループ・キャスト"向けに最適化させたフルカスタマイズCADがこの【シルバー・ホーン】なんですよ!!あ、ちなみに"ループ・キャスト"というのは一度の展開で同じ魔法を何度も連続して発動できる起動式のことで──」

 

 「あーちゃん、もうわかったからちょっと落ち着いて…」

 

 …やっぱり、この人デバイスオタクだな…しかも重度の…

 

 「あの、もう少し見せてもらえませんか!?」

 

 「いや、もうしまうんですけど…」

 

 中条先輩の1人暴走にて騒がしくなった演習室でただ1人、市原先輩だけが黙り込んでいた

 

 「ですがそれだとおかしいですね。そのシステムは"全く同じ魔法を連続で発動する"ためのもの。それでは波の合成に必要な"振動数の異なる複数の波"は作れないはずです。振動数を変数化させれば可能ですが、座標・強度・魔法の持続時間に加えて4つも変数化しておくのは──」

 

 そこで市原先輩は何かを知ったような表情を浮かべる。大方、さっきのことをあの短時間でやってみせたことについてだろう

 

 その反応に対し、兄貴は

 

 「…多数変化は、学校では評価されない項目ですからね」

 

 と、自嘲するかのように笑みを浮かべた

 

 魔法科高校の評価項目は"魔法発動速度"、"魔法式の規模"、そして"対象物の情報を書き換える強度の3つだけだ。しかし兄貴は多数変化の速度は優れていても、この3つに関しては凡人とも呼べる能力だけだ

 

 『そりゃ、深雪が採点基準が合っていないと言うか』

 

 そういうことだ。人には向き不向きがあるからな。この場合は仕方がない

 

 「おーい、服部先輩。起きてくださーい」

 

 俺は気絶してる服部先輩に近づいて頬をペチペチ叩く

 

 「ぐ…やめろ…頬を叩くんじゃない…」

 

 「あ、やっと起きた」

 

 今更起きた服部先輩を心配してか、七草会長が近寄ってきた

 

 「はんぞーくん!大丈夫?」

 

 「だ、大丈夫です!問題ありません!」

 

 と、顔を真っ赤に染めて勢いよく立ち上がる。そして姉ちゃんの方へ歩いていくと…

 

 「司波さん、目が曇っていたのは私の方でした。どうか許して欲しい」

 

 「いいえ、私の方こそ生意気を申しました。お許しください」

 

 と、お互いが頭を下げて、謝罪の言葉を口にした。

 

 『ところで龍夜、達也が勝ったのはいいんだがこれってつまり…』

 

 うん、お前の言う通りだ

 

 「兄貴、風紀委員入り確定おめでとう」

 

 そう、兄貴の風紀委員会の参加をかけた戦いだ。当然勝者の兄貴は風紀委員会への参加へとなっている。俺は兄貴の肩に手を乗せてそう言った

 

 「…」

 

 「ウグッ!」

 

 無言で鳩尾に肘打ちを本気で打たないでくれ。かなり痛いぞ…しかしこうして兄貴の風紀委員会入りは決まっている。姉ちゃんも内心嬉しがってるし。てかすっごい嬉しい顔してるし

 

 『キュオォン』

 

 やれやれと言わんばかりの表情のクローズドラゴンはそのまま俺の肩の上に乗った

 

 

 

 ネタ:ビルド世界での出来事その②

 

 龍夜「万丈さん、何食ってるんです?」

 

 万丈「これ?プロテインラーメン昇龍!!一口食べてみるか?」

 

 龍夜「あっはい。いただきます」

 

 戦兎(いやこいつの言動とかを見るにどう見てもボンボン育ちのお坊っちゃまでしょ!何勝手にバカが食べる物渡してんだよバカ!!)

 

 龍夜「…なにこれうまい!!」

 

 万丈「だろ!もっと食え!まだあるぞ!」

 

 龍夜「はい!いただきます!!」

 

 戦兎「…流石は同類(バカ同士)…」

 




というわけでクローズドラゴン初登場とファウストの名前が出ました
エ「ところで俺の出番増やせよ作者!」
龍「まぁ今のところ声だけ出演だからなぁ…」
そのうちブラッドスタークと一緒に出すから…ね?
エ「…いいか、絶対に出せよ?」
はい!(震え)
ちなみにクローズドラゴンは普段学校では龍夜のカバンの中に入ってます。自宅では地下の天井の近くに巣を作ってます


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第7話 騒動、始まる

UA10000、お気に入り登録100突破しました!
エ「よかったな!!」
龍「この調子で上がっていって欲しいな」
取り敢えず今の所の目標は決めます。現在の目標お気に入り登録数、500です!
龍「目指せお気に入り登録500!!」
雫「その前に投稿ペース早くしないとね」
…おっしゃる通りです…
今回はかなり時間が飛んで部活勧誘期間のあのイベントに入ります
あと龍夜の脳内CVが決まらねえ…


 兄貴の風紀委員会参加が決まって、俺も部活連に入れられた日の翌日…今日から部活勧誘期間という一大イベントみたいなのが一週間、放課後行われるらしい

 

 『んで、なんだよそのイベント』

 

 うち(部活連)の会頭によると、クラブ…魔法科高校にも普通の高校と同じくクラブがあるが、半数近くが魔法関連だ。しかし魔法が関わったようがいなかろうが、クラブとして成立するにはある態度の人員

と実績必要らしい。つまり…クラブ総員による新入生の奪い合いだ

 

 『うっわ…マジか』

 

 先輩方によると、デモンストレーションという名目でCADの持ち出しもこの一週間、許可されていて日々魔法の打ち合い状態で、最早無法地帯といっても過言ではない。ちなみに学校側は後々説明するが、九校戦という大きな大会のために黙認状態だ

 

 「では、各自巡回に行ってくれ」

 

 会頭の言葉と同時に先輩達に続いて俺も外に出る…と俺はすぐさま戻ってドアを閉めたい気持ちが出てきた…

 

 外に出たくないなぁ…簡単に言うと小さな戦場だよ…もうやだ…

 

 『部活連に入った以上仕方ないだろ。行け』

 

 うえぇ…こん中を歩いて違反者を取り締まるのかよ…

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 「はぁ…」

 

 『おい、遠い目して現実から目を逸らすな』

 

 だってこれ想像以上に辛いのよ!?ちょっとした騒動どころじゃねぇぞ!最早激戦地区だよ!

 

 「キャアァァァァ!!」

 

 …なんか声しなかった?

 

 『飛鳴したぞ。あっちの方角だ』

 

 エボルトの言った方に顔を向けると、スケートボードが飛んでいた。そのスケートボードの上に人が乗って…なんか人みたいなの持ってない?

 

 「誰か助けて──!!

 

 「エェェェェェェェェェェェェ!??!?」

 

 仮にギャグ漫画だったら目が飛び出てた。だって飛んでるボートの上の人が抱えてるのほのかだよ!これ誘拐じゃねぇか!

 

 『おいまた来たぞ!』

 

 「えっ?…うぉ危ねっ!!」

 

 間一髪のところで回避。下手したら髪の毛が全てなくなって八雲先生みたいになっちまう!それだけは御免だ!

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 「はっくしょん!」

 

 「先生、風邪ですか?」

 

 「いや、違うと思うんだけどね…」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 なんなのこの状況!?魔法科高校ってボートとか飛ぶっけ!?

 

 『てかあのボートの奴に捕まってるの…雫じゃね?』

 

 「え?」

 

 よく目を凝らすと、雫がほのかと同じように攫われていた

 

 「…エボルト。これ…どうする?」

 

 『…取り敢えず追いかけたらどうだ?』

 

 「……だな」

 

 俺とエボルトの少ない会話の後、俺は飛んでるボートを追いかけに走った

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 2人を追いかけた俺は【SSボート・バイアスロン】という部の看板が書かれたテントに辿り着く

 

 「…おーい、ほのかー、雫ー」

 

 「お、もしかして入部希望者!?」

 

 「違います」

 

 「ショボーン…」(´・ω・`)

 

 取り敢えず中に入ると、説明…説明?を受けている2人がいた

 

 「りゅ…龍夜さん!」

 

 「おうほのか。なんかボートに連れ去られてたの見てたから来たぞ」

 

 「見てたんですか!?…ところで!あの、雫が…」

 

 「雫がどうかしたのか?」

 

 俺とほのかが話してると、説明を聞き終えた雫が近づいてきた

 

 「あっ、龍夜」

 

 「おう雫。バイアスロン部の説明聞いてたのはともかく、部活に無理やり入れられそうになった時は断った方が「私、この部に入る」いい……ゑゑ?」

 

 雫の口から突然、よくわからない言葉が飛んで来たぞ?

 

 「…雫、もう一回言ってくれないか?」

 

 「私、バイアスロン部に入る」

 

 …えぇ、どうやら雫さんはバイアスロン部に入るようです

 

 「…どうします?」

 

 「なんとか説得して断らせれば…」

 

 「無理です。こうなった雫はもう止められません…」

 

 「…だめじゃん」

 

 俺達の説得も虚しく、雫(と雫に圧されたほのか)がバイアスロン部に入部したらしい

 

 「ところで、龍夜君もどうかな!」

 

 「お断りします!!」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 バイアスロン部から抜け出してしばらくすると、前方に兄貴とエリカがいた

 

 「おーい。エリカ、兄貴ー」

 

 「あ、龍夜君。どうしてここに?」

 

 「いや、ちょっと2人が見えたからさ…2人は?」

 

 エリカの質問に答えつつ、2人がどこに行くか聞くとするか

 

 「俺達は今から第2小体育館に行く所だ。お前も行くか?」

 

 「おー、ならお言葉に甘えて。さっきは悲惨な目が起きたからなぁ…」

 

 「…何があったは聞かないであげる」

 

 「…うん、ありがとう」

 

 ここにきてエリカの優しさが目に沁みる…

 

 そうして俺達は第2小体育館、通称闘技場へと足を踏み入れた。そこは現在、剣道部のデモンストレーションが行われていた

 

 「ふーん、魔法科高校なのに剣道部とかあるのね」

 

 「剣道部なら、他の高校でもあるんじゃないか?」

 

 俺もそう思ってたところに兄貴の質問がきた。エリカは難なくそれを答える

 

 「魔法に携わる人達って大体が剣術部に移っちゃうのよね」

 

 へー、だから魔法科高校に剣道部があることが珍しいのか

 

 『…おい龍夜、剣道部と剣術部って、どう違うんだ?』

 

 …俺も知らん。だからエリカに聞こうか悩んでた所だ

 

 「…なぁエリカ、恥を忍んで聞くが…剣道部と剣術部の違いってなんだ?」

 

 「…剣道部は、龍夜君も知ってると思うから省くとして、剣術部は簡単に説明すると魔法を併用した剣技ってことよ」

 

 へー、そうなのか

 

 『なるほど、そういうことか』

 

 「エリカのおかげでわかったよ。ありがとう」

 

 「どういたしまして。ところでさ、龍夜君ってあの時凄かったよね」

 

 あの時ってことは…確か騒動が起きたことか

 

 「あー、あの騒ぎの時か?」

 

 「そうそう。一瞬であの距離を詰めてデバイスを持ってた手首を蹴って手放させて最後にあの素早い正拳突きよ。どこで学んだの?」

 

 まいったなぁ…俺は前の(ビルド)世界にて万丈さんに多少教えてもらって、その後に八雲先生に教えて貰ったぐらいだしな…

 

 「……そうだな。元格闘家の人に一年近く格闘を学んだんだ。だけどその人と別れて以降、今は別の人に学んでいるんだよ」

 

 「へー、だからあんなこと出来たのね」

 

 取り敢えずエリカにはすまないが本当のことを交えつつ、嘘を言う。だって異世界に行きその人に教えてもらった、などと言っても信じられないだろう

 

 「──キャア!!」

 

 その時、女子生徒の悲鳴がした。俺は他所を見ていた視線を会場へ戻すと剣道部の男子生徒が吹き飛んで尻餅をついていた。単なるデモンストレーションにしては穏やかではないこの状況に兄貴とエリカも険しい表情を浮かべる

 

 「おいおい、防具の上から面打っただけだろ?仮にも剣道部のレギュラーが泡吹いてんじゃねぇぞ」

 

 短い髪を立てた男子が嫌味な顔でそう言い放った。恐らく尻餅をついてる男子生徒を吹き飛ばしたのはこの男で間違いないだろう

 

 「何しているの桐原君!剣術部の時間まであと1時間はあるわよ!どうして待てないの!?」

 

 と、剣道部の女子1人が飛び出してきた。長い黒髪を後ろに纏めた凛々しい顔つきは防具を纏っていない剣道着の姿だ

 

 「心外だな、壬生。俺はただ演舞に協力しただけだぜ?」

 

 と、剣術部の男子生徒がそう返す。既に闘技場はピリピリした空気が張り巡らされており、見学者はその様子を見守っている

 

 「ごめん2人とも!少し面白くなってきたよ!」

 

 どこがだよ。俺はツッコミたいよ。兄貴だって迷惑そうな顔してるしさ!

 

 「これは中々の好カードね!」

 

 「エリカ、あの2人が誰か知っているのか?」

 

 「面識はないけどね。あの女の子は壬生紗耶香(みぶさやか)。一昨年の中等部剣道大会の準優勝者。あの男の子は桐原武明(きりはらたけあき)。一昨年の関東剣術大会のチャンピオンよ」

 

 「随分と詳しいな」

 

 「剣道とかに興味ある人なら普通に知ってる人達よ?」

 

 俺達が話してる間に、壬生先輩と桐原先輩の間の空気が張り詰めていく。これはヤバくなるんじゃ…

 

 「なぁ兄貴、今のうちに止めた方がいいんじゃ…?」

 

 「いや、今のところまだ何も魔法の不正使用などはしてないからな。大丈夫だろうさ」

 

 

 

 ………このシスコン兄貴がぁぁぁ!!いくら姉ちゃんに関わらないからってこう言った非常事態を見過ごすのかよ!仕事しろよ風紀委員!エボルトからも何か一言…

 

 『規則は大事だし、別にルール違反じゃないからいいんじゃね?』

 

 …そうだった…なんか吹っ切れて変な事言ってたわ…

 

 「…はぁ」

 

 「どうしたの龍夜君、黄昏てため息ついて」

 

 「いや、何でうちの兄は姉を甘やかして、うちの姉はベタベタになったんだろうなぁって…俺だけ、蚊帳の外なんだよな」

 

 「え?」

 

 『え?』

 

 なんか奇跡的にエリカとエボルトのセリフが被った。どうかしたのか?

 

 『龍夜お前…騒動の後に雫の手を取ったことあるだろ?』

 

 あぁあれか。何故か雫の顔が赤くなってた奴だな。あれがどうかしたのか?

 

 「龍夜君、雫の手を取った後に深雪が凄い怒ってたよね?」

 

 …2人が言ってる事がよくわからないんだが…

 

 『どんだけ朴念仁なんだよこのやろう…』

 

 エボルト、なんか言ったか?

 

 『…いや、もうなんでもない』

 

 「…ダメだこりゃ…」

 

 なんかエリカも小声で喋る。なんのことなんだ?

 

 「心配するなよ壬生。魔法は使わないでやるから」

 

 「剣技だけであたしに勝てると思ってるの?」

 

 「言うねぇ、壬生。だが、その強がりがいつまで続くか──な!!」

 

 そう言った瞬間、桐原先輩は壬生先輩との距離を詰め、怒涛の攻撃を浴びせ始めた。しかし彼女はいとも簡単に、見事な竹刀捌きでその攻撃をいなしていく

 

 激しい攻防、パシパシっと竹刀から出る音が闘技場内に響き渡る。その光景にギャラリー達は息を呑んでいた

 

 「女子の剣道、意外とレベルが高いんだな」

 

 「あぁ、まさかあそこまで接戦とはな…」

 

 「…違う。中学時代に見た彼女とはまるで別人…この2年でこんなに腕を上げるなんて…」

 

 俺達の言葉に対して、エリカが困惑の言葉を口にした。

 

 「これは壬生先輩の有利だな」

 

 「そうだな…桐原先輩は防具なしの壬生先輩に面を叩くことを躊躇ってるし、なにより魔法が使えないんだ」

 

 「それもそうね。技を制限して勝てる程、2人の実力差はないみたいだし」

 

 エリカの言葉とほぼ同時に、決着はついた。壬生先輩の竹刀は完全に桐原先輩の肩に直撃だ。しかし桐原先輩の竹刀も彼女の腕に当たっていたがその角度は浅かった

 

 「…壬生先輩の勝ちだな」

 

 「あぁ、完全に相打ちのタイミングだが、桐原先輩は途中で剣先を変えた。やはり最初から面を打つ気にはなれなかったようだな」

 

 しかし場は2科生の部員が多い剣道部が1科生の多い剣術部に勝ったことで、1科生の奴らを不機嫌にさせていく

 

 「桐原君、素直に負けを認めなさい。もし真剣だったら、その腕はもう使い物にならないわよ?」

 

 「…ははっ、"真剣だったら"だと?」

 

 すると桐原先輩が不気味な笑い声を発して立ち上がる。一体何をする気だ?

 

 「俺の身体は切れてないぜ。なんだ壬生、真剣勝負がお望みか?」

 

 そう言い、小手の形をしたCADに触れると、起動式が展開された。桐原先輩の竹刀に想子(サイオン)が覆いつくし、ガラスを引っ掻いたような音が鳴り響いた。その音でギャラリー達は耳を塞ぐ

 

 「──だったらお望み通り、真剣で相手してやるよ!」

 

 そう叫んで壬生先輩へと迫っていく桐原先輩。しかし壬生先輩は紙一重で躱していく

 

 …が、彼女の胴衣が切れ、下に落ちていく。今のが当たったら壬生先輩がヤベェことになるぞ!

 

 「兄貴!これって…!」

 

 「あぁ、振動系接近戦用魔法、殺傷レベルBランクの"高周波ブレード"だ!」

 

 俺達が桐原先輩の使ってる魔法について話してると、桐原先輩も壬生先輩に大声で話す

 

 「どうだ壬生!これが真剣だ!これが、剣道と剣術の差だ!」

 

 そういい、桐原先輩のブレードか壬生先輩へと迫る!ヤバいぞこれは!

 

 「龍夜!!」

 

 「おう!」

 

 兄貴とのアイコンタクトで俺は動き出した。目標は桐原先輩、手ぶらかつ生身でブレードに触れずに無力化はほぼ不可能、しかし桐原先輩の持つブレードの手首なら──

 

 「ふんっ!」

 

 「「っ!?」」

 

 俺は桐原先輩の手首を掴み、背負う。これが八雲先生から学んだ技と、万丈さんに鍛えられた肉体による一撃!

 

 「だらっしゃあ!」

 

 「ぐはぁぁ!」

 

 背負い投げだぁぁ!!

 

 俺は勢いよく桐原先輩を投げ倒す。ビタァン!と音が鳴り、耳を塞いでたギャラリー達も呆然としてる

 

 『…なぁ龍夜、これやり過ぎじゃねぇか?』

 

 …確かにやり過ぎたかもしれないが手加減はしてる。骨が折れるような事はさせないさ

 

 「兄貴、連絡するから桐原先輩なんとかしてくれ」

 

 「あぁわかった。桐原先輩、魔法の不正使用により同行をお願いします」

 

 すると辺りにヤジが飛んできた

 

 「おい!なんで桐原だけ同行なんだよ!壬生だって同罪だろうが!」

 

 しかし兄貴はそんなヤジの方向を向き、冷ややかな目でみつめる

 

 「魔法の不正使用、といいましたが」

 

 「…ふざけてんじゃねぇぞ!補欠の分際で!」

 

 「こいつもやっちまえ!」

 

 「…どうやら俺もみたいだな。仕方ないか」

 

 そう言いつつ俺と兄貴は襲いくる剣術部の人達を気絶させた

 

 その後俺達は報告をし、後を兄貴に任せて姉ちゃんと一緒に帰ることになった

 

 

 

 

 ネタ:ビルド世界での出来事その③

 

 美空「へぇー、龍夜ってお姉さんとお兄さんいるんだ。知らなかったし」

 

 龍夜「まぁ俺と姉ちゃんは双子の3月生まれですし、兄貴は4月生まれですけどね」

 

 万丈「でもよ、兄弟仲っていいのか?」

 

 龍夜「…いえ、どちらかと言うと、姉ちゃんが兄貴を一方的に嫌ってるような感じですかね…家でギスギスして欲しくないんですけど…」

 

 

 魔法科世界

 

 深雪「お兄様、お茶持ってきましたよ」

 

 達也「あぁ、ありがとうな深雪」ナデナデ

 

 深雪「〜♡」

 

 兄妹でイチャイチャしていた

 




作者のリアル事情(文化祭準備)で投稿が送れてしまいすみませんでした
龍「文化祭何かした?」
受付を手伝いましたね。あと友達がウマピョイ伝説踊りました
エ「…あらかじめ言うがただ踊っただけか?」
いえ、コスプレして歌ってました。ちなみに男連中で踊ってましたww
ちなみに深雪の達也と龍夜に対するブラコン度は8:2です。時々2:8になる場合も…あるのかな?


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第8話 不吉の、前兆

エ「作者、この小説が書かれたのは何ヶ月前だっけ?
ええと…確か7ヶ月前だね
エ「今月で何話だ?」
…キャラ設定を含むと9話だね
エ「そっか…も一つ聞いてもいいかな。
この7ヶ月間でなんでたった9話しか投稿してないんだ?」
龍「!?」
君のような勘のいい宇宙人は嫌いd
エ「ふん!」腹パン
ゔっ!(死亡)
いつもながら遅くなってしまい申し訳ありません。
もう少しで2022年、早いですね
今回は魔法科高校の優等生のワンシーンが多いです


 闘技場の騒動が終わり、兄貴が報告すると言って残ったので俺と姉ちゃんは2人で帰路についていたら、前に雫とほのかと…誰か知らないが赤髪の女子が何かコソコソしている

 

 「あら、何やってるのかしら?」

 

 姉ちゃんも気づいて、3人の動向をよく見てみると誰かをこっそりと尾行していた

 

 『なんかキナ臭くないか?』

 

 そうだな。尾行させられてる男も気付いてるらしく誘い込まれてる感じがする

 

 「…動き出したか」

 

 男が走り出し、それに釣られて雫達も追いかけるが角を曲がったとこで撒かれ、雫達の背後に尾行していた男の仲間らしき男達が現れた

 

 「やっぱり…」

 

 「バレてやがったな…姉ちゃん、俺は奴らの仲間がいないかどうか探ってくる。姉ちゃんは雫達を頼む」

 

 「えぇ、わかったわ。もしスマッシュが現れた際は…」

 

 「あぁ、呼んでくれ」

 

 そういい俺と姉ちゃんはひとまず二手に別れることになった

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 深雪side

 

 私は龍夜と離れ、雫達を助けるために向かった

 

 (今は少し様子を見ましょう…)

 

 雫の合図で3人が逃げようと走り出したその時、男達が右手を雫達に向けてきた

 

 

キ────ン!!

 

 「…っ!」

 

 ガラスを引っ掻いたような音が鳴り響き、雫達が胸を押さえ、倒れ込む。あの指輪…もしかしてアンティナイト*1!?

 

 男達がナイフを手に雫達へと近づいていく

 

 「このアンティナイトを使えばお前ら魔法師もただの人間だ」

 

 「組織の計画を邪魔する者は始末する」

 

 しまった。雫達は今魔法を使えない…

 

 「いや…誰か…」

 

 ほのかのか弱い声が聞こえる

 

 「誰か、助けて…」

 

 私は友を助けるためにCADを手に止めに入る

 

「私の学友に手を出さないでもらえますか?」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 龍夜side

 

 俺は近くに隠れていた奴らの仲間らしい人物を見つけて、追いかけた末に捕まえることに成功した。恐らく姉ちゃんも雫達の救出は完了した頃だろう。あとは警察とかに頼んで…

 

 『龍夜!』

 

 エボルト、どうかしたのか?

 

 『なんか嫌な予感がする…早く深雪のとこに向かえ』

 

 (なんなのかわかんないけど…了解!)

 

 俺は姉ちゃん達の方へ急いで駆けた

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 第三者side

 

 深雪は驚異的な魔法力でジャミング波を打ち破り、ほのか達を救出した

 

 「大丈夫?ほのか、雫」

 

 「うん!深雪ありがとう!」

 

 「でも凄いね。ジャミングより事象干渉力が強いなんて」

 

 ほのかと雫、そしてエイミィという女性も救い、ほっとする深雪

 

 「そろそろ帰りなさい。事故処理のため私は残っとくわ」

 

 「じゃあ、そうしようか」

 

 彼女達3人は、振り返り手を振りながら歩いていると途端に…

 

 「深雪危ない!!」

 

 そういい深雪も振り返ると、男の1人がある物を振りながら、こちらを睨んできた

 

 「貴様…よくも!」

 

 そういい中身の成分を自分に振りかける。そこには人間とは思えない姿へと変わっていった

 

 手は巨大な鉤爪にも見える羽、主色は赤で、所々に機械のような姿をした怪物、フライングスマッシュへと変貌していった

 

 「ヒイッ…!」

 

 ほのかが悲鳴をあげ、後ろへ下がる。雫とエイミィも、悲鳴こそあげなかったものの、その顔が驚愕へと変わる

 

 しかし深雪だけは冷静に、フライングスマッシュだけを見ていた

 

 フライングスマッシュが深雪へ走る

 

 「深雪!」

 

 ほのかが友達の危機に叫ぶ

 

 「大丈夫よほのか」

 

 深雪は冷静に、友を心配させないような口調で話す

 

 そのままの勢いを殺さず、フライングスマッシュが深雪へ向かって飛んだ

 

 「龍夜!!

 

 

 「オラァァ!!」

 

 横から飛び出した龍夜の拳が真っ直ぐフライングスマッシュの顔面へと当たる。ネビュラガスによって強化された龍夜の一撃によりフライングスマッシュはそのまま壁へぶつかり、尻餅をついた

 

 「よしっ!姉ちゃん、雫達を頼む!」

 

 「えぇ、3人とも、こっちに!」

 

 龍夜の指示に応じた深雪はすぐさま3人を安全な場所へ送ろうとする

 

 「でも龍夜が!」

 

 「安心して雫、しばらく時間稼ぎするだけだから」

 

 「…わかった」

 

 雫も深雪に従って、その場から立ち去る。残ったのは、既にスクラッシュドライバーを装着した龍夜と、立ち上がろうとするフライングスマッシュだけだった

 

 「悪いが、一気に行くぜ!」

 

 

《ドラゴンジェリー!!》

 

 

 龍夜は真っ直ぐ掌を見せるよう突き出し、構える

 

 「変身!」

 

 

 そしてレンチ型のレバーを一気に押し下げる

 

《潰れるッ!流れるゥ!溢れ出るゥ!!Dragon in CROSS-Z charge!ブゥルァァ!!》

 

 「おっしゃあああ!今の俺は負けられねぇ!!」

 

 そう叫びながらクローズチャージは勢いよくそのままフライングスマッシュへ突撃していく

 

 懐に飛び込んだことを許してしまったフライングスマッシュは、そのまま右手に装着されたツインブレイカー・アタックモードで何度も殴打、殴打、殴打!

 

 この連続攻撃に場が悪いと判断したのか、フライングスマッシュは高く飛び上がりその場から逃げ出そうとする

 

 「逃がすかよ!」

 

 シングル!》

 

 ツインブレイカーをビームモードへ変形させロックフルボトルを装填。そしてフライングスマッシュへ狙いを定め、撃つと鎖が飛んでくる

 

 鎖に絡まり、引き寄せられるフライングスマッシュ

 

 「もう一丁ぉ!」

 

 シングルツイン!》

 

 今度はアタッカーモードへ変形させ、ゴリラフルボトルとダイヤモンドフルボトルを装填する

 

 「だらっしゃあぁぁぁ!!」

 

 《ツインブレイク!》

 

 ゴリラの剛腕とダイヤモンドの堅実を兼ね揃えた一撃をまともに受け、フライングスマッシュは大きく吹き飛び壁に直撃。フライングスマッシュはそのまま逃げようとするのか、壁沿いに立ち上がろうとするがすでに遅かった

 

 「よっしいくぜぇ!」

 

 

《Scrap Break!》

 

 「はぁ!!」

 

 ドラゴンのエネルギーを纏った右足でフライングスマッシュの腹部を蹴り、フライングスマッシュは爆発する

 

 「よっしゃぁぁぁ!!」

 

 勝利の叫びをあげ、エンプティフルボトルを使いフライングスマッシュの成分を抜き取り、急いでその場から去る

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 その後俺は無事、姉ちゃんと雫達と無事に合流できた

 

 「姉ちゃん、今戻ってきた」

 

 「龍夜、無事だったわね」

 

 「おう、無事だぜ」

 

 俺と姉ちゃんが話してると、雫も間に入るように聞きにきた

 

 「龍夜、深雪、どうやってここまで来れたの?」

 

 あー、そのことか。これは本当のこと言わなきゃな

 

 「実は、雫達があの男を尾行してたのを見てたの」

 

 「…見てたの!?」

 

 「あぁ、あまりにも下手な尾行だったからこっちが心配で…」

 

 「…ごめん」

 

 雫が落ち込んでいく。俺は雫をフォローしていく

 

 「いや、別に大丈夫だったんだ。それでいいだろ?」

 

 「…うん」

 

 そして俺達は別れ、俺と姉ちゃんは家に帰る

 

 「龍夜、スマッシュは倒したのね」

 

 「あぁ、これだよ」

 

 俺は姉ちゃんに倒したスマッシュから抜き取った成分が入ってるフルボトルを見せながら、家へと帰った

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 我が家に帰り、後から帰ってきた兄貴に詳細を話していく

 

 「そっか、そんなことがあったのか」

 

 「あぁ、なんとか倒せてよかったよ」

 

 俺が話してると、地下に続く階段からエボルト(龍夜擬態ver.)が出てきた

 

 「おう、浄化完了したぞ」

 

 そう言いながらこちらにフルボトルを投げ渡す。俺はそれを受け取ると、フルボトルの絵柄を見る。後ろから姉ちゃんと兄貴も覗いてくるがスルーな

 

 「…タカ、のようだな」

 

 「タカね」

 

 「タカだな」

 

 エボルトから手渡されたのはタカの絵柄が刻まれたタカフルボトルだった

 

 「ベストマッチってあったっけ?」

 

 「確かビルドのホークガトリングがベストマッチだから…ガトリングフルボトルか」

 

 と、エボルトはパンドラボックスから一枚のパネルを外し、テーブルの上に置く。そしてタカフルボトルとガトリングフルボトルを挿入すると、ベストマッチの表示が現れる

 

 「やっぱりベストマッチだったか」

 

 「そうか、ならそれでいいか!」

 

 俺はソファから立ち上がり、軽く身体を伸ばす

 

 「ところでだが…」

 

 ここである疑問が生まれるだろう。火星の王妃ベルナージュなしでどうやってフルボトルを浄化してるのか?その答えは簡単だ

 

 「あの世界にいた頃はまさかエボルトがフルボトル浄化できるとは思わなかったな」

 

 そう、エボルトがフルボトルを浄化しているのだ

 

 「見直したろ?ベルナージュに出来て俺に出来ない事はないだろ?」

 

 「ならなんでテメェ美空さんにやらせてたんだよ」

 

 「仕方ねぇだろ。あれは相当力いるし、何よりベルナージュの力を持ってた美空に任せた方が、効率も良い上に、覚醒してなかったとはいえ、ベルナージュにも俺が石動惣一に乗り移っているって思われる心配はないしな」

 

 うわぁ…以外と抜け目ないなこいつ…

 

 「…ベルナージュというと、あの世界の火星の王妃という奴か」

 

 「そうそう、その火星の王妃」

 

 この世界の火星はまだ有人探査すら終わっておらず、火星に文明があるという証拠がないものの、またないという証拠も未だ見つかっていない

 

 「魔法といいこの世界の技術力はあの(ビルド)世界よりも上なのに宇宙技術は進行してないのか」

 

 と、エボルトにこの世界の事を話した当初はそう言われた。確かに本来は宇宙技術も進んでいるはずなのだが、それには大きい理由があるのだが…その話はまた今度ということで

 

 「お兄様、龍夜、食事にしましょう」

 

 「そうだな。エボルト、戻れ」

 

 「へいへいっと」

 

 エボルトは俺の中に戻っていき、俺達は食事の支度を始める

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 〜数日後〜

 

 兄貴は部活勧誘期間の間、あの事件のせいで目立ってしまい、1科生の連中が悪質な嫌がらせをしてたらしい。例えば歩いてる時に魔法で足元に穴を開けるとか

 

 『それ普通に大怪我するやつじゃねえか』

 

 しかし兄貴は冷静に対処していったらしいな。しかしそれが益々奴らの怒りを買うというもはや悪循環が走ってた

 

 『無限ループかな?』

 

 ちょっと黙って!しかし、今日から部活勧誘期間は終わったことで、兄貴はゆっくりと出来るだろう…

 

 と思っていたら生徒会から俺に指名の連絡が来た。周りの反応を確認すると皆訳がわからない顔をしていて、取り敢えず行くことになった

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 「お邪魔しま…なんじゃこりゃ…」

 

 『この部屋の温度氷点下行きそうな程寒いんですけど…?』

 

 俺が生徒会室に入るとそこは阿鼻叫喚だった。まず一つ、部屋がすごい寒い。俺は急いで魔法で部屋を温めると、七草会長がこっちに気づく

 

 「あっ龍夜君!助けて!」

 

 「会長、姉ちゃんに一体何があったんですか…」

 

 「実は…さっきからあの調子で…私にもよくわかんないの…」

 

 …何があったんですかねぇ…仕方ないから止めに入るか

 

 「姉ちゃん、なんか知らないけど何に怒ってるの…?」

 

 「あぁ龍夜、よく来たわね。実は…」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 「兄貴と壬生先輩がカフェに?」

 

 「えぇ、エリカ達が教えてくれたの」

 

 なるほどねぇ。兄貴と壬生先輩がカフェにいるとは…

 

 『おい龍夜』

 

 どうしたエボルト?

 

 『なんかおかしくないか?助けたとはいえ、そんなに顔を合わせたことがない2人が話す必要がある?』

 

 …確かに、たった数日で仲良くなるとはいえ、会ったのはたった一回だけだ。今の2人はなんの関係もないはずだ

 

 『もしかしたら、単なる告白なんかじゃない…壬生紗耶香はなんらかの派閥に入っていて、達也を引き入れようとしているかもしれない』

 

 その線をあるが…今はその証拠がない。保留にしつつ、警戒をしよう

 

 『そうだな。杞憂であればいいけど』

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 次の日の昼食、俺達は生徒会室で食事をとっていた。お前部活連だろ?わざわざこっちに来たに決まってるじゃないですか

 

 「達也君、昨日2年生の壬生を言葉責めにしたってのは本当かい?壬生が顔を真っ赤に恥じらっているところを見たっていう生徒がいるんだ」

 

 「ブフォ!」

 

 渡辺先輩の例の事による発言で俺はお茶を吹き出しかけた。危なかった…

 

 なんか少し肌寒いな…

 

 『龍夜。横、横』

 

 横に何が…いましたね悪寒の出所。姉ちゃんが怒っていらっしゃいますねこりゃ…俺は急いで魔法で部屋を温める

 

 「お兄様…一体どういう事でしょうか?」

 

 「落ち着いて姉ちゃん、兄貴がちゃんと説明するだろうから!な!」

 

 「あぁ、ちゃんと説明する」

 

 こうして兄貴は壬生先輩と何を話したかを教えてくれたが…何か思ってたよりも事態が別方向に向かってないか?

 

 『1科生と2科生との差別をどうにか…ねぇ。具体的にどうするかというのも考えられてるのか?』

 

 いや、話を聞く限り、そんな気配はないが…もしかしたら壬生先輩は、いや壬生先輩のような人たちは()()()にこの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 兄貴の説明に何かを誤魔化そうとする七草会長達、しかし兄貴はそんなことはおかまいなしと言わんばかりに追及していく

 

 「俺が聞いてるのはバックの組織のことです。例えば反魔法国際政治団体『ブランジュ』のような」

 

 兄貴のその発言にその場にいた俺達が驚愕の顔をしていた

 

 

 

 

 

 

 この時の俺達はまだ知らなかった。これから俺達を中心に起きる様々な波乱が…そして、これはまだ始まりに過ぎないということが

 

*1
サイオンノイズを作り出す金属。旧アステカ帝国や旧マヤ諸国などの高山型古代文明の栄えた地にのみ産出されている




エボルトがフルボトルを浄化出来たのはオリジナル設定です。ベルナージュがいないのでそうするしかないんですよね。てか出来そうな感じがする
龍「ならベルナージュ復活させたら?」
馬鹿野郎エボルトとベルナージュが出会ったらどうなるかわかるか?地球なくなるぞ
エ「そういや今回ネタないが何かあったのか?」
なんか小説の伸びが悪くてですね。その原因がネタなのかなと思いまして。んで一回お試しにネタを除いてみました
あとFGO報告です。ス カ サ ハ ス カ デ ィ 出 ま し た


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第9話 波乱の、幕開け

あけましておめでとうございます。たった10話しか出してないのにもう2022年ですよww
龍「お前はさっさと投稿しろよ」
だって書くのがこんなに辛いとは…
エ「言い訳してる暇あるのか?お年玉くれ」
龍(お前あげる立場じゃないの?)
アンケートの結果ですが、30という差をつけ選ばれたのは、ネタシリーズ続けることでした(綾○感)


 あれから数日経った今日この頃、俺と姉ちゃんは教室でのんびりとしていた。もう放課後で、姉ちゃんは生徒会、俺は部活連に行かなきゃいけないが、今すぐに行かなきゃいけないわけではない。とはいえそろそろ行くべきなのだが

 

 「姉ちゃん、そろそろ行こうk全校生徒の皆さん!!!…っうぅ…」

 

 『うるさっ!』

 

 すっっっごいうるさい放送が来た。急な事なので咄嗟に耳を塞ぐ余裕なんかない。現に耳がキーンってなってるし…

 

 「…何今の…」

 

 「わからん…けど、音量調整をミスったということだけはわかる」

 

 「「「うん」」」

 

 雫の質問にわからないながらもこたえ、3人が頷いた

 

 『────失礼しました。全校生徒の皆さん!』

 

 今度はちゃんと音量を調整してるみたいだ。にしても一体何者なんだ?

 

 『僕たちは学内の差別撤廃を目指す有志同盟です!』

 

 差別撤廃、この発言に1科生としてのプライドが反応したのか、何人かが大声で怒鳴り始めた

 

 「ふざけんなよ!」

 

 「どこの馬鹿だやりやがったのは!」

 

 「どうせ2科生(ヴィード)のやつらだろ!」

 

 『僕たちは生徒会と部活連に対し、対等な立場における交渉を要求します』

 

 そして放送が終わった。その言い分だと、生徒会や部活連が1科生(ブルーム)2科生(ヴィード)を差別していると言ってるものではないか

 

 『対等にねぇ…生徒会とかは、本当にそう思ってるのか?』

 

 本当に同意見だ。もしかしたら、差別されているという自覚をしていたのは、彼らだけなのかもな

 

 「龍夜、行かなくていいの?」

 

 「あぁ、どうせ生徒会長からメール来るだろうしな」

 

 そう言ってると、俺の携帯端末にメールが来た。姉ちゃんのにもきたらしく、端末を見る。内容は有志同盟が放送室に立て篭もってるらしいので、きて欲しいとのことだ

 

 「どうやら、一筋縄ではいられないかもな。姉ちゃん、行こうか」

 

 「えぇ、お兄様のとこにも来てるわね」

 

 そうして俺達は兄貴と合流した後、放送室に向かった

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 「遅れてすみません」

 

 「遅いぞ」

 

 「こっちもすみません。七草会長は?」

 

 「真由美はいま教職員のところに話をつけに行っている」

 

 俺達の到着に渡辺先輩が形だけの叱咤をする。七草会長がいなかったがそういうことだったのか

 

 「先生曰く、奴らはマスターキーを無断で手に入れた後に放送室に入っていったらしい」

 

 「それって、犯罪行為では…?」

 

 マスターキーを取られてはこちらは放送室には入れない。つまり奴らはここで籠城するつもりだろう

 

 「どうするんだ兄貴。俺が無理矢理こじ開けようか?」

 

 ハザードレベルにより普通の人間より強い俺ならば扉の破壊は可能だ。ただ扉を弁償する必要があるが

 

 「いや、その必要はない」

 

 「は?どういうことだよ?」

 

 「壬生先輩に電話してみる」

 

 …えぇ。壬生先輩と連絡先交換してるのかよ…そう思ってるうちに兄貴は壬生先輩に電話をかけていく

 

 「壬生先輩ですか?司波です」

 

 兄貴の電話相手にここにいた皆がギョッとした。そりゃ放送室に立て篭ってる人の1人に電話してるからね

 

 「今はどこに?…はぁ、放送室ですか。それは気の毒に」

 

 その瞬間、周囲に聞こえる程の音量が兄貴の携帯からなる。間近の兄貴は顔を顰めて携帯からすこし距離をとった

 

 「落ち着いてください。会頭は交渉に応じると仰っています。それに生徒会も…今、了解がとられました。そういうわけで交渉の場所や日程の取り決めをしたいのですが…えぇ、今すぐお願いします……大丈夫です。先輩の自由は保証します。それに、まだ警察沙汰になっていませんので、出来れば早めの対応をお願いします」

 

 電話の交渉は終わったらしく、端末をしまった。でも兄貴の電話相手って…壬生先輩だよな?

 

 『だよな。それにしてもほとんど嘘八百じゃないか?』

 

 …それについては仕方ないよ。うん(思考放棄)

 

 「では、取り押さえる準備をしましょうか」

 

 …は?兄貴、今なんて言った

 

 「…は?自由を保証すると言ってなかったか?」

 

 どうやら冒頭の放送の影響で俺の耳がおかしくなったわけではないようだ。渡辺先輩も聞き返してきた

 

 「えぇ、()()()()()自由は保証します。約束したのは俺個人としてのことです。風紀委員は関与してませんね」

 

 …流石お兄様、略してさすおに。つまり壬生先輩以外は捕まえる気満々です

 

 「なら、こちらもしっかり働こうか」

 

 どうやら、俺達も一働きする時だな。抵抗されないように頑張りますか

 

 『それより深雪を見てみろよ』

 

 …俺は何も見ない。嫉妬と怒りで絶対零度の微笑みを浮かべてる我が姉なぞ俺は見ていない

 

 「それよりお兄様。わざわざ壬生先輩のプライベートナンバーを登録されていたことについて、後でじっくりお話を聞かせてくれませんか?」

 

 ………兄貴、頑張れよ

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 兄貴の目論見通りに、有志同盟の奴らは放送室から出てきてまんまと捕まった。壬生先輩は兄貴に騙されただの嘘をついただの喧しく騒ぎたてるが、兄貴はそんなの関係ないとばかりに論破しまくる

 

 「司波くん!私達を騙したのね!?」

 

 「司波はお前達を騙してはいない」

 

 「っ…」

 

 この状況にキレた壬生先輩が反論をしようとするが…うち(部活連)の会頭が即座に切り捨てる

 

 紹介し忘れてた。うちの会頭は十文字(じゅうもんじ)克人(かつと)。十師族の一つ、十文字の次期当主で得意魔法は攻防一体の障壁魔法、ファランクス。何者にも攻撃を当てられない、無敵と言っても過言ではない魔法だ。あと身体がすっげぇデカイ

 

 『あいつ何食ったらあんなデカくなるんだ?巌みたいな人って達也が言ってたけど本当にその通りだな』

 

 閑話休題。十文字会頭の言葉はまだ有志同盟へ続いていく

 

 「俺は貴様らの交渉に応じてもいいと考えている。元より誤解が生んだ結果なのだからな。公に話し合える場が出来るなら願ってもない。ここで事実関係をはっきりとさせれば、憂いは残らないからな。だがそれとこれとは別だ。貴様らはマスターキーを無断で奪い、放送室に立て篭もった。これが事実だ」

 

 「……」

 

 十文字会頭の発言に反論できないのか、有志同盟は全員黙っていた

 

 「皆、お待たせ」

 

 「真由美、遅いぞ」

 

 七草会長が教職員を連れてやっと来た。遅いといえば遅いが、タイミング的にはOKかもしれない

 

 「私は交渉をした方がいいと思うの」

 

 七草会長は有志同盟との交渉を望んでいる。それは向こう側も同じ事だからか、事は簡単に幕を閉じた…かに思われた

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 翌朝、俺達はいつもより早めに起きて学校へ向かう。目的は七草会長に会い、昨日の話の結果を聞くためだ

 

 「おはようございます、会長」

 

 「あら、今日は早いのね」

 

 途中で出会った七草会長と挨拶もそこそこに、俺達は学校へ向かった

 

 「昨日の件は、どうなりましたか?」

 

 唐突とはいえ、兄貴は昨日のことについて聞き始めた

 

 「実は、あの子達1科生と2科生の平等な待遇を要求するのはいいけど、具体的にどうするのかを考えてなかったらしいのよ。むしろ、そういうのは、生徒会で考えろってスタンスだったわね。それで結局押し問答になって、最終的に明後日の放課後に公開討論会をやるつもりなの」

 

 「…明後日の放課後って、随分と急ですね」

 

 公開討論会をなんで討論する必要があるのかはわかる。これは正面から対決に持ち込んでいき、こういう事態を簡単に収拾させるというやり口だ

 

 『確かに理にはかなってるな…だけど明後日の放課後だぞ?対策の時間なんかほとんどないも当然じゃねぇか』

 

 本来はそこが一番重要なポイントなのだが、そこも対策済みなのだろう

 

 「一応こちら(生徒会)から討論会に参加するのは私一人だけね。些細な食い違いでそこから印象操作で感情論に持ち込まれる方が厄介なのよ」

 

 そう言った理由があるか。確かに有志同盟は平等だの言ってたが、具体的なことを考えてないのを見ると、おそらく会長を論破できる程の材料もないと思われるな

 

 こうして日にちが過ぎ、あっという間に公開討論会の日にちへと変わっていった

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 三人称side

 

 とある廃工場、そこのとある一室の椅子に一人の男が座っていた。男の周囲には、武装をしている男達がおり彼を護衛しているように見える。彼らの他には、魔法科高校の生徒も数名、混じっていた

 

 彼は椅子から立ち上がり、演説をするように皆に話し始めた

 

 「諸君、魔法科高校への工作を開始して2年、本日我々の活動が歴史を変えるかもしれないのだ。これも、君達が協力してくれていたおかげだよ」

 

 彼の発言に周りはただ聞いていただけで、返事の一つも返って来ない。だが彼はそんな事は露知らず、また口を開いた

 

 「本日の君たちの役割は前日話した通りだ。今日この作戦が成功したなら…自分達が優秀だと錯覚している魔法師達に、我々が現実を教えてやるのだ…」

 

 話が終わった後、メンバーはすぐさま仕事へ取り掛かるために散る。しかし彼は、椅子にどっかりと座りこむ

 

 「………くくっ、くくくっ…あっーはっはっはっはっはっは!!」

 

 その途端、彼は人が変わったように高笑いしていた

 

 「…さぁて、そろそろこっちも、動き出さなきゃいけないかもな…」

 

 そう言った彼、司一(つかさはじめ)の手元には、()()()()()()()()()()()()()()()()()が置いてあった

 

 「…しかしこれが、本当に魔法師を倒すことができる力を持っているのか??」

 

 そういいつつ、持ちながら軽く弄ぶ司一。しかし彼の目には、常人から見てみたら、狂気と呼べる目をしていた

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 龍夜side

 

 放課後になり、もうすぐ討論会が始まる。放課後なのだから生徒は部活動に行ったり帰宅したりするはずなのだが、今日に限って多数の──というより、全校生徒のほぼ半数と言っても過言では無い程の人が見にきていた

 

 『人間の野次馬根性って奴か?自分には関係ない物を見たがるのが、人間ってやつなのかもな』

 

 今日は珍しく、意見も合ってるな。

 

 「如何やら、皆さんはよほど暇なようですね。もう少しカリキュラムを増やすよう校長に進言した方がよろしいでしょうか」

 

 「やめてあげてください。最悪過労死しちゃいますよ」

 

 と、市原先輩の冗談に聞こえない発言にツッコむ俺。今更だが、もしかして俺ってツッコミ担当なのか?

 

 『今気づいたのかよ。お前ツッコミ担当だろ?』

 

 …マジか…

 

 「…ところで、有志同盟の連中、人数少なくないか?壬生先輩も見当たらないし…」

 

 話を急に変える形で、有志同盟の奴らの数が少ないことを指摘する

 

 「恐らく、別の場所で待機してるんだろう…それとも…」

 

 兄貴が口を挟む。だけどなんか口にしづらいこともあるのだろう。当然だろうな。なにせ今いない奴らは恐らく…

 

 『実力行使に出る奴ら、か…』

 

 「その可能性が高いな。恐らく…嫌、間違いなくブランシュの本隊から送られた部隊がいるかもな…」

 

 「龍夜君、何か言ったかい?」

 

 俺の呟きに渡辺先輩が反応する。ヤバいな。少し呟いてたか…

 

 「いえ、少し独り言を。やっぱりいない奴らは恐らく実力行使に出るつもりですかね」

 

 「そうかもしれないな……実力行使組か、面白い」

 

 実力行使に出る奴らがいると聞いて、渡辺先輩が笑みを浮かべる。割と戦闘狂みたいだな

 

 「委員長、自分の立場を忘れないでください」

 

 「…あぁ、すまない」

 

 この人、絶対向こうから仕掛けられなかったら自分から行きそうだな

 

 そうこうしている内に、討論会が始まった

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 『魔法競技系のクラブは、非魔法競技系のクラブよりも明らかに予算が多い!1科生の優遇が、課外活動にも表れている証拠です!不平等な予算はすぐさま是正するべきだ!!』

 

 『予算の割り切りにばらつきがあるのは、過去の実績による物です。その証拠に、実績をあげている非魔法競技系のクラブにも遜色ない予算が与えられています』

 

 『2科生はあらゆる面にて、1科生よりも劣る扱いを受けている!生徒会はその事実を誤魔化そうとしているだけだ!!』

 

 『あらゆる面、とご指摘されましたが、1科生と2科生は同じ施設で授業を受け、またその内容も同様の物です。あくまで両者の違いは、必要最低限のものであり、ほとんどまったく条件が同じであることは、両者を丹念に調べてみると自ずとわかるものです』

 

 討論会は現在、七草会長による圧倒的論破で同盟側を言い負かせてた。奴らは感情に任せて言っているような感じがはっきりする

 

 そして討論はクライマックスへ向かっていく

 

 『花冠(ブルーム)雑草(ヴィード)。残念ながらこの言葉は多くの生徒がそう口にしています。生徒の間に、同盟側が指摘した"差別意識"があることは否定しません。しかし、それだけが問題なのではありません。2科生の中にも、自らを蔑み諦め、それらを受け入れる。そんな悲しい風潮が確かに存在しています。その"意識の壁"こそが問題なのです!!』

 

 ここで七草会長が、話を切り替え、ここにいる全員に向ける

 

 確かに今ここで「1科生と2科生仲良くしよう」といっても、それは難しいことだ。しかしどちらも、同じ学校の生徒であり、同じ生徒にとって唯一無二の3年間なんだ

 

 そして、生徒会にも1科生と2科生を差別するような制度が一つある

 

 『それは生徒会長以外の役員の指名に関することです。現在、生徒会役員は1科生の中から選ばれます。私は、この規定を退任時の総会で撤廃することを、生徒会最後の仕事にするつもりです』

 

 会長の発言に周りが驚き、1科生2科生にどよめきが広がる

 

 『私の任期はまだあるので、気の早い公約となるでしょう。人の心を

力ずくで変えてはいけない以上、それ以外のことをできる限りの改善に取り組んでいく予定です」』

 

 瞬間、会場が拍手の音で溢れかえる。堂々とした発言に、1科生だろうと2科生だろうと関係なく、心から拍手が送られてきている。それと反対に、同盟側は悔しそうな表情を浮かべていた

 

 こうして、討論会は混乱もなく終わる────かと思われた

 

 『っ!…皆、窓から離れて!!』

 

 急に七草会長が叫び出し、窓を指さす

 

 『さぁて、そろそろお仕事開始といきますか』

 

 そうだな。生徒会や風紀のメンバーも臨戦体制に入った

 

 会長が指差した方へ視線を向けた瞬間、ガラスが割れ、ある物が転がってくる

 

 それは、辺り一面へ勢いよく煙を吹き出した

 

 

 

 

 ネタ:ビルド世界での出来事その④

 

 龍夜「ここ、全然人来ませんけど、どうやって電気代とか出してるんですか?」

 

 惣一「そりゃ、俺がバイトめっちゃ頑張った結果だよ。あとは…」

 

 戦兎「ただいまー」

 

 龍我「帰ってきたぜー!」

 

 惣一「二人とも、これ」

 

 二人「「え?」」

 

 惣一「今月の、家賃」

 

 二人「「…えぇぇぇぇぇ!?」

 

 戦兎「そりゃないでしょ!俺らバイトしてないのに家賃払えないじゃん!?」

 

 龍我「そうだ!それに龍夜にも家賃払わせろよ!」

 

 惣一「中学生に払えるわけないでしょ!!」

 

 二人「「…うっす」」

 

 龍夜(…こうやって稼いでるのかな…?)




今回ちょっと長くてすみません
龍「俺って、ツッコミポジだったのか…」
(書いてるうちに)自然にそうなっちゃうんだ☆
エ「なーなー、俺の出番少なくね?」
次回活躍させるから!本当に!だからそのエボルトリガーしまえ!
雫「私も出番少ない」
わかった!!いつか出番増やすから!だからCADしまって!!


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第10話 襲撃者を、殲滅せよ

小説の伸びが悪い…嘘だ…ウソダドンドコドーン!
エ「ちなみに今回は第三者視点が多いからな!」
あと今回少し長いです。でも正直言って次回に回すと尺が足らなくなるのでこうなりました
龍「でも楽しんでください!」


 1科生と2科生の平等を謳い、有志同盟が犯罪紛いのことをした。生徒会長七草真由美は、討論会を開催し、真っ向から対立することになった。結果は生徒会側の勝利し、七草会長は『自分が生徒会長を辞めるまでに、1科生と2科生の差別をなくさせる』という宣言をし、終わった──と思われたが、突如講堂にガス弾が投げ込まれ、テロリストの攻撃が始まった

 

 辺り一面へ巻かれたガス…それはここに飛び込んできたガス弾の周りに集まり、白い塊となって外へ投げられる

 

 「…服部先輩か?」

 

 そこに視線を向けると、ガス弾──実体のない気体目掛けて腕を伸ばしていた服部先輩の姿があった。先程の魔法を見るに、収束系と移動系の魔法を使い、ガスを外に送ったのだろう。言えば簡単だが、やるとなると相当の実力がないと難しい

 

 『流石生徒副会長、その名は伊達じゃないってことか』

 

 服部先輩の魔法に気を逸らしたが、ガス弾が投げ込まれた事により会場内は混乱に陥っている。パニックになり、席から立ち上がって会場から出て行こうとする生徒もいる

 

 『生徒の皆さん!どうか落ち着いてその場に待機したください。ここは我々、生徒会と風紀委員、そして部活連が守ります!』

 

 その途端、七草会長の力強い発言に会場が静かになり、生徒達は落ち着きを取り戻していった。舞台袖から出てきた生徒会や風紀委員メンバーが観覧席の通路に向かうのも、その一つだろう

 

 しかし俺達を含めた一部のメンバーは観覧席ではなく、外に出た。学校のどこかに居る不届き者(テロリスト)らを倒すために

 

 「さぁ、お仕事開始だ」

 

 『頑張れよ〜』

 

 取り敢えず講堂から出ると人が倒れていた。おそらく襲撃に来たものの、誰かの手でやられた口だろ

 

 「俺は実技棟を見てきます」

 

 「お兄様!ついていきます!」

 

 「じゃあ俺も」

 

 「気をつけろよ!!」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 

 三人称side

 

 講堂を出て実技堂に向かった3人は、偶然にも居合わせたレオに出会った

 

 「達也、なんの騒ぎだこりゃあ!?」

 

 「学校にテロリストが襲撃してきたらしい」

 

 「マジかよ。物騒だなおい」

 

 達也の発言に驚愕するレオ

 

 「レオ!ホウキ!って…もう援軍が到着したのね」

 

 そこに、CADを持ってきたエリカも合流した

 

 話を戻すが、襲撃者の中には魔法科高校の関係者に扮して中に侵入してきた者もいる。幾ら荒事を想定していた魔法科高校とはいえ、完全な強襲には手も足も出ない

 

 ──そう、思っていたのだろう。敵が彼らでなければ、の話だが

 

 「達也君、こいつら、問答無用でぶっ飛ばしてもいいのかしら?」

 

 「()()()()()()()手加減無用だ」

 

 「りょーかい」

 

 と、悪魔と思わせる笑みを浮かべたエリカ

 

 『龍夜、魔法師って戦闘狂が多いのか?』

 

 (多分エリカとか渡辺先輩くらいじゃないかなぁ…)

 

 エボルト少ない会話を挟みつつ、龍夜はテロリストのうち2人に向けナックルダスター型のCADを装着させた掌を向ける──その瞬間

 

 「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!??」」

 

 突如彼らの身体から炎が出て焼き焦がしていく。彼らは必死に火を消そうとしてるのか、辺り一面に転がり始める。テロリスト達は恐怖の目で燃えてゆく仲間を見た。目の前で突然仲間が発火し初めたのだ。当然の反応だろう

 

 「ぱ…()()()()()()()?龍夜君、そんなの使えるの!?」

 

 パイロキネシスとはかつて"超能力"と呼ばれ、CADを用いずCADを使った攻撃よりも早く攻撃することが可能な魔法である。デメリットとしては、視線をキーとして使っており、障害物越しでは無意味になるということだ

 

 「いや、今のはパイロキネシスの再現と言えるようなものだな。身体中の内側からでなく、外側の分子等を振動させて引火させている。CADを使って敵を燃やすため、視線を妨げるようなことをしても無駄だ」

 

 そんなエリカの発言に、達也が答えた

 

 「え、エグいわね…」

 

 「大丈夫だエリカ、重度の火傷とはいえ、命に関わるような事態に陥っていない」

 

 達也の言う通り、身体を燃やされた彼らは意識を失い火傷を負ってはいるものの、死に追いやるほどの怪我ではない

 

 「装甲(パンツァー)!」

 

 レオはグローブ型のCADをお得意の硬化魔法で強化させ、敵を殴り抜ける。ちなみにCADだけでなく制服にも硬化魔法を掛けてあるので、刃等の攻撃は服を貫かない

 

 「はぁぁ!!」

 

 エリカはシンプルに自己加速術式を使い、相手が認識する前に警棒型のCADで撃退していく。しかし相手の攻撃は避けるというレオとは違う一撃離脱戦法であった

 

 「沈みなさい」

 

 深雪の戦い方は多彩。加重魔法で相手を地面に叩きつける時もあれば冷却魔法で武器を破壊したりする等、臨機応変に魔法を変えていく戦い方だった

 

 「…」

 

 達也は相手の首筋に手刀を当て気絶させていく。彼の戦い方はエリカと同じく一撃離脱の戦法だが、魔法を一切使わない魔法科高校の生徒とは思えぬやり方であった

 

 「邪魔だ」

 

 龍夜は先程と同様、テロリストの身体を燃やして攻撃をする。襲ってくる生徒に対しては、達也と同じく首筋に手刀で気絶させていく

 

 戦闘…いや、蹂躙とも言える惨状は瞬く間に終わってしまった。倒れている襲撃者は魔法科高校の生徒達もいるが、大半がテロリストであった。反対に襲撃者の前で立っている5人は無傷。あれだけの人数が相手をしていても、誰一人倒せないと言うことを見せつけているようであった

 

 戦闘が終わった後、龍夜はあることに気が付いた

 

 「兄貴、なんか思ったよりも少なくなかったか?」

 

 「あぁ、そもそも実技棟は古いCADしか置いていない。さらに実技棟自体、破壊されても多少授業が出来ない程度…ということは」

 

 『「「陽動(だ/か/だな)」」』

 

 達也と龍夜、そしてエボルト。彼らはこの状況で同じ答えを導いた

 

 「だけどさ、奴らの目的はどこだ?」

 

 「龍夜、忘れたの?魔法に関する文献などがあって、尚且つ魔法科高校の関係者しか入れないような場所は…」

 

 「なるほど。図書館、しかも厳重なセキュリティがある特別閲覧室ってとこか」

 

 龍夜は図書館を滅多に使ったことがないので、特別閲覧室の存在も忘れていたのだった

 

 『だからあれほど本は読んどけって言ったのによ…』

 

 (嘘つけお前一度も言ってねぇじゃねぇか)

 

 敵の目的地を知った彼らは、急いで図書館へ向かう

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 龍夜達は、図書館へと向かって行たが、3年を主力とした迎撃部隊と襲撃者が未だ戦闘を行なっていた。そこにレオが突っ込んでいく

 

 「レオ!ここは任せてもいいか?」

 

 「おうよ!引き受けたぜ!」

 

 そして急いで図書館へ走り、邪魔する襲撃者を蹴散らしていき、龍夜達は無事にたどり着いた

 

 「…今にして思うと、こうやって会うのは初めてですね。壬生紗耶香さん…いや、壬生先輩と言いましょうか」

 

 「っ!あなた…達也君の…」

 

 「えぇ、弟の龍夜です」

 

 守っていた奴らはどうした、とテロリストは騒ぎ立てる一方で壬生紗耶香は敵対している彼らを見る

 

 「壬生!指輪を…」

 

 壬生の背後に潜んでた男が言葉を言い切る前に龍夜が飛び出し、顎と鳩尾に掌底を叩き込んだ。その間に、達也も壬生紗耶香以外の襲撃者を鎮圧していた

 

 倒れて行く仲間を、彼女はただ見て行くしかなかった

 

 「………なんで、なんで皆邪魔をするのよ」

 

 彼女の呟きにまず答えたのは、龍夜だった

 

 「壬生先輩。諦めてください。貴女達の負けなんです」

 

 「っ…うるさいわよ!」

 

 しかし、彼女は龍夜の言葉に諦めるどころか逆上して言い返してきた

 

 「どうせ貴方も、1科生だからって私も、貴方の兄も見下してるんでしょ!?そういうのはよく見てきたわよ!でも生徒会も誰も何も言ってくれない!同じ2科生のクラスメイトは、陰でコソコソ文句を言ってばかりでけっして誰もこの状態を改善しようとは無かった!私は、口先だけなのに、現状を仕方なく受け止めてるようにしか見えなかった!だからこうするしか無かったのよ!」

 

 彼女はヒステリックに、目に涙を滲ませてそう叫んだ。しかし龍夜はそれに動じず、言い返した

 

 「…確かに今はそんな状況かもしれません。ですが壬生先輩、一つ訂正させてもらいます。俺は…嫌、()()は兄貴を、兄貴のクラスメイト達を見下してなどしません」

 

 龍夜は静かに、しかし紗耶香の嘆きを沈黙させる程の怒りを込めた言葉を放った

 

 「貴女の言う通り、今この高校は差別が蔓延しています。している側も、されている側も、この状況をただ見ているだけです。だけど、貴女のやっている事は、本当にそれが改善されると…思いますか?」

 

 龍夜の発言にここに集う全員が黙っていた

 

 「今ならまだ、やり直せるかもしれません。貴女は貴女のやり方で、見下す奴らを見返してやればいい!貴女には、その力があるはずだ!」

 

 龍夜の発言に、紗耶香の頬を涙が伝う

 

 「…うっ…ううっ…うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そして、床に手をつけ、泣き出した

 

 こうして、一高への襲撃は終わった──と、思うだろう

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 その後、落ち着きを取り戻した紗耶香から、同盟の背後組織がブランジュだと言うことが語られ、現在達也達は生徒会室にいた。

 

 「…おい兄貴。今なんて言った?」

 

 「あぁ、奴らと一戦交える。正確には、叩き潰す」

 

 さらっと兄から発せられた言葉に、龍夜はげんなりした

 

 「危険だ!学生の分を超えている!」

 

 しかし、達也の意見に真っ向から反対したのは摩利だった

 

 「私も反対よ。学外のことは警察に任せるべきよ!」

 

 続いて、真由美も反対意見を述べ、厳しい表情で首を横に振った

 

 だが…

 

 「そして壬生先輩を、強盗未遂で家裁送りにするんですか?」

 

 達也の反論に絶句し、顔を強張らせる

 

 「なるほど、警察の介入は好ましくないな。だが、このまま放置すると、同じような事件が起きる。そんな事をさせるわけにはいかない。だがな、司波。相手はテロリストだ。下手をすれば命に関わるぞ。俺も七草も渡辺も、当校の生徒に命をかけろとは言えん」

 

 「当然だと思います。それに、最初から委員会や部活連の力を借りるつもりはありませんから」

 

 「…1人で行くつもりか?」

 

 「()()()()()そうしたいところなのですが…」

 

 「お兄様、お供します」

 

 兄の言葉を遮る形で、放ったのは、深雪だった

 

 「あたしも行くわよ」

 

 「おう、俺もだ!」

 

 次に、エリカとレオ。彼らも、行く気満々だった

 

 「あなた達…」

 

 真由美と摩利の2人は、龍夜に視線を移す。その目は、『こいつらを止めてくれ』と言ってるように感じた龍夜は居心地が悪い顔で、頭を掻く

 

 「無理ですよ。兄貴も姉ちゃんも、こうなったら止めようがありませんし。それに…」

 

 「「それに?」」

 

 「俺もやり返したい気持ちなので、当然行くつもりですよ」

 

 龍夜も、案外根に持つタイプてあった

 

 「しかしお兄様。どうやってブランジュの拠点を突き止めればいいのでしょうか?壬生先輩が話してた中継基地はとうに引き払われてる可能性もありますし…」

 

 「心配いらない。わからないことは、知っている人に聞けばいいだけだ」

 

 「「「知っている人?」」」

 

 達也の言葉に疑問を持つ龍夜、深雪、真由美の3人。そんな3人を傍目に、達也は出入り口に歩み寄り、扉を開く

 

 「…小野(おの)先生?」

 

 「九重先生秘蔵の弟子から隠れ遂せようなんて、やっぱり甘かったわね…」

 

 彼女の名は小野遥(おのはるか)。1年E組の総合カウンセラーである彼女が何故ここにいるのかと言うと…

 

 「さて…地図を出してもらえないかしら?そっちの方が早いからね」

 

 遥から送信されたデータに従い、敵の拠点と思しき場所のマーカーが浮かぶ

 

 「おいおい、目と鼻の先じゃねぇか」

 

 「舐められたものね」

 

 そこは、かつて環境テロリストの隠れ蓑という事が判明し、夜逃げ当然に放棄された工場だった

 

 「なるほどな。では、車で行くとするか。車は俺が手配する」

 

 克人の提案で、正面突破当然の作戦になった

 

 「十文字君が行くなら、私も…」

 

 「七草、お前は残れ」

 

 「真由美、この状況で、生徒会長が不在なのは拙い」

 

 真由美も行くと述べようとするが、克人と摩利か引き留めた

 

 「…わかったわよ。代わりに摩利、貴女も残るのよ。残党がまだこの校内にいるかもしれないからね」

 

 「はぁ…」

 

 そして、克人が手配したオフロード型の大型車が到着した。その助手席には、意外な人物が座っていた

 

 「よう、司波兄(しばあに)。俺も参加させてもらうぜ」

 

 「桐原先輩…」

 

 彼らを乗せた車は廃工場へ向かう

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 とうとう、ブランジュの待つ廃工場へ到着した司波一行

 

 「司波、お前が考えた作戦だ。お前が指示を出せ」

 

 「レオはここで退路の確保。エリカはレオのアシストと逃げ出そうとする奴の始末を頼む」

 

 達也は急に言われ、尻込みもせずに指示をだす

 

 「会頭と桐原先輩は迂回して裏口は廻ってください。俺も深雪、そして龍夜がこのまま踏み込みます」

 

 「了解」

 

 彼らは指示された通りに動き始める

 

 「龍夜、もし…」

 

 「わかってるって。だからエボルトにも()()持って来させたし」

 

 『達也お前、意外に容赦ない性格だな』

 

 「お前に言われる筋合いはない。外道地球外生命体」

 

 『酷ぇ言いようだよ』

 

 彼らはスーパーにでも入るような足取りで、中に入りだした

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 「ようこそ、はじめまして!司波達也君!そしてお隣のお姫様は、妹さんの深雪くんで…片方の彼が、弟の龍夜くんか!」

 

 「そういうお前は、ブランジュのリーダーか?」

 

 中に入るなり、いきなり敵の黒幕に出会った。というもの、相手はホール状のフロアに整列してたためであった

 

 「おおっと、自己紹介が遅れた。僕は司一、ブランジュ日本支部のリーダーさ」

 

 彼は大袈裟な口調で、達也に話しかけていく

 

 「簡単にいうよ。司波達也君。我々の仲間になりたまえ」

 

 「断ると言ったら?」

 

 「その時は…こうしようか!」

 

 伊達メガネを外した途端、一の目が妖しく光った。すると達也の表情が消え、CADを握ってる手が下に下がる

 

 「お兄様!?」

 

 「クハハハハハ!これで君は我々の仲間だな!」

 

 「この下衆が!」

 

 一の狂気に晒され、畏怖も尊敬も存在しない姿になっていた

 

 「では、まずは邪魔な弟さんから始末してもらおうかな?その後、ここまで共に歩んできた妹も君の手で始末してもらうとするか!」

 

 彼は歪んだ笑顔で、高笑いしつつ、達也に命令した──はずだった

 

 「はぁ、猿芝居はここまでだ」

 

 「…は?」

 

 達也の冷ややかな目が、一に向けられる

 

 「意識干渉型系統外魔法『邪眼(イビル・アイ)』。と言っても、本来は催眠効果の持つ光信号を明滅させる、単なる催眠術か」

 

 「そ…そんな…」

 

 「投降しろ。命までは奪わない」

 

 自身の持つ催眠も達也には効かず、諦めた──と思ったが…

 

 「くくく…くくくくっ…あーはっはっは!」

 

 「何がおかしい?」

 

 「いや実はね…こんな事もあろうかと、もう一つの策もあるんだよ…これがそうさ」

 

 すると彼がポケットから取り出したのは、龍のレリーフが掘られたボトル、ドラゴンフルボトルであった

 

 「なっ…!」

 

 「これさえあれば…魔法師を超えれる力を手に入れれるんだ!」

 

 すると彼は狂ったように高笑いしながら中身の成分を自分に振りまける。すると橙色を主色とし、右腕に火炎放射器を備えたスマッシュ、バーンスマッシュが現れる

 

 「兄貴!こいつは俺らに任せろ!他の奴らを頼む!」

 

 「わかった。深雪行くぞ」

 

 「龍夜、気をつけて!」

 

 達也と深雪は逃げ出したブランジュのメンバーを追いかけに走った。龍夜の身体からエボルトが現れ、銃に似た武装──トランスチームガンを取り出した

 

 「行くぞエボルト!」

 

 「さて、こいつのお披露目と行きますか!!」

 

《ドラゴンジェリー!》

 

《コブラ!》

 

 龍夜はスクラッシュドライバーにドラゴンゼリーを、エボルトはトランスチームガンにコブラボトルを装填した

 

 「変身!」

 

 「…蒸血」

 

 それと同時に龍夜はベルトのレバーを押し下げる。エボルトはトランスチームガンを下から上へと動かし、煙を自身の周りに撒いた

 

《潰れるッ!流れるッ!溢れ出るゥ!!Dragon in CROSS-Zcharge!ブゥルァ!》

 

《mist match…COBRA…CO…COBRA…COBRA…FIRE!》

 

 龍夜はクローズチャージに変身し、エボルトの姿は宇宙服にコブラの意趣が施された姿──ブラッドスタークへと変わる

 

 「いまの俺達は…負けられねぇ!!」

 

 龍夜のいつもより気合が入った掛け声と同時に2人はバーンスマッシュへと走る

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 龍夜とエボルトが戦闘を始めた頃、達也もブランジュのメンバーを追いかけていた

 

 「き…来た!撃て撃てぇ!」

 

 彼らは敵が迫ってくるという恐怖に駆られ、銃の引き金を引いた。しかし…

 

 「な…なんで…」

 

 「弾が出ない!?」

 

 本当は達也を襲うはずだった銃弾が、一発たりとも発射されない

 

 「さて、弟が頑張ってるんだ。兄として、手を抜くわけにはいかない」

 

 そう言いつつ達也は敵に向けCADの引き金を引いた

 

 「ぎゃあぁぁ!」

 

 「ひぎゃぁぁ!」

 

 すると男達の肩や足から次々と血を吹き出し倒れていった

 

 「…これでここらの敵は全滅か」

 

 達也の周りには、夥しい程の血と、呻き倒れる敵だけが転がっていた

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 「…」

 

 深雪は達也とは違い、一歩も動かなかった。しかし、それと同じく、彼女を襲おうとした愚か者らも、動かなかった。精神的だけでなく、物理的にも動けずにいた

 

 深雪が裁きを告げるように手を上げた

 

 「お前達は運が悪い」

 

 いつもの彼女とは思えない口調。しかしその言葉には、怒りが含まられているようにも感じとられる

 

 「私はお兄様や龍夜ほど、慈悲深くはない」

 

 白い霧が彼らの身体を這いまわるように、上がっていく

 

 「せめて、命があることだけ…感謝しなさい」

 

 霧は、男らの頭頂まで達し、濃ゆくなっていく

 

 敵に断末魔を挙げさせず、敵を倒す魔法…振動減速系広域魔法「ニブルヘイム」それが、この魔法の名称である

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 「おりゃあ!」

 

 「はぁ!」

 

 龍夜とエボルトはバーンスマッシュ相手に善戦していた

 

 「エボルト、こいつのハザードレベルは!?」

 

 「2.6!お前よりも低いし、成分抜き取っても無事だ!」

 

 「了解だ!おらぁぁ!」

 

 元々の敵のハザードレベルが龍夜よりも低いという理由もあった…だがもう一つ、ある理由があった

 

 「にしても、今の龍夜のハザードレベルは3.9…感情の昂りで急上昇してるということか…まぁ、あの敵自体向こう(ビルド世界)での万丈の恋人だったから…か?」

 

 「おい、何ボーッとしてる?一気に決めるぞ!」

 

 「了解!援護する!」

 

《コブラ!Steam Break!》

 

 エボルトはトランスチームガンにコブラボトルを再装填し、敵に向け発射。コブラのエネルギーを纏った弾がそのままバーンスマッシュへ直撃し、少しよろける

 

 「よっし行くぜ!」

 

 そのまま走り出したクローズチャージ。しかしバーンスマッシュはその体勢を変えず、右腕を真っ直ぐクローズチャージへと向け巨大な火炎弾を発射した

 

 「ってヤベェ!」

 

シングル!ツイン!

 

 すぐさまツインブレイカーに消防車フルボトルとゴリラフルボトルを装填し、アタックモードへと変更する

 

 「はぁぁぁぁぁ!」

 

 そのまま火炎弾を殴り上げた。火炎弾はそのままの勢いで天井にぶつかり、大爆発を起こす

 

 「…筋肉バカな龍夜だから出来る芸当だな」

 

 後ろでエネルギー弾を撃ちながらエボルトは呟いた

 

《Scrap Break!》

 

 「はあぁぁぁ…」

 

 右足にエネルギーを溜め、飛び上がる龍夜。バーンスマッシュも撃ち落とそうと、右腕を向けるが…

 

 「させるかよ!」

 

 エボルトがエネルギー弾を放ち、反撃の隙を与えない。そこに龍夜の一撃が放たれる

 

 「せりゃあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 その一撃はバーンスマッシュを打ち抜き、爆散する。爆発後にはバーンスマッシュは倒れ、動かなくなった

 

 「よしっ!」

 

 「それより、早く成分回収だ」

 

 成分を回収し、司一が現れた。どうやら身体に影響はないらしい。ホッと息をつき、エボルトが龍夜の体内に戻る

 

 「どうやら、そいつがリーダーのようだな」

 

 「…十文字会頭」

 

 その直後、裏口から真っ直ぐ来たであろう克人と桐原が近づいてきた。彼らの背後の壁が壊されてるので、間違いなく十文字の魔法を使って壁を破壊しながらこちらに来たのだろう

 

 こうして、一高襲撃は本当の意味で幕を閉じたのであった




パイロキネシスの再現シーンはクウガの最終決戦の超自然発火現象を真似しました
龍「マジかよ。先輩の技使っていいの?」
いいんじゃないかな?(適当)
あとこれ描いてる途中に魔法科のゲームが始まってビックリした
エ「んで入れるの?」
実は作者のスマホ、機種が古いんですよね。んで最近容量とかが少なくなってきて…買い替えたらダウンロードします
ちなみに今回ネタないのは単に作者が思いつかなかっただけです。すみません…


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第11話 襲撃の、その後

卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます
前回で入学編終わると思った?まだ少しだけ続くんですよ
龍「マジかよお前…」
今回は短めです。正直前回のライダー戦闘シーンをこっちに移せばよかった…
エ「今回投稿期間かなり空いたな」
今回がかなりの難しさで…どう表現するか考えてたらこうなりました


 1科生と2科生の平等を謳う有志同盟と生徒会との討論会の真っ只中に突如始まった国際政治団体ブランジュによる襲撃。それは生徒の防戦により襲撃は失敗した、達也を筆頭にした少数精鋭の反撃もあり、リーダーの司一を始めブランジュのメンバーも悉く確保され、事後処理も克人が引き受け、事態は無事に終わることになった

 

 しかしブランジュのリーダー、司一が使っていた邪眼(イビルアイ)により洗脳状態にされていた一高生徒は事実上のお咎めなし。壬生紗耶香などのブランジュメンバーは皆、洗脳効果が消えるまで入院ということになった

 

 龍夜side

 

 …今日は壬生先輩が退院の日。正直言うと俺は病院に行く足取りがすごく重い…

 

 『まぁ、結構傷つくようなこと言っちゃったからな、お前』

 

 エボルト、壬生先輩にどう謝ればいいかわかるか?

 

 『俺からしたら、謝ろうが謝らなかろうが俺には知ったこっちゃない。だがお前が言ったように、奴らのやった事は本当に学校側に伝わって差別が改善されると思うか?今回は怪我をした奴らが少しだけで済んだが、仮に奴らのやった事を見過ごしていたらその怪我人が死人に変わる。その数も、怪我人よりも多くなるだろう』

 

 …たしかにエボルトの言ってる事は的を当ているように聞こえる。ブランジュの襲撃が大規模だったら、大勢の人が怪我を負い、死に至る。それをやろうとしたブランジュは犯罪者となる。もちろん、その手引きをした壬生先輩も同罪だ

 

 『謝るか謝らないかどうかはお前次第だ。と言っても、もうすぐその病院に着くから急いで決めとけ。俺は知らん』

 

 本当にこいつは…俺の思ってる事ズカズカと割り込んでた挙げ句、自分は知らんと言ってこちらの話を聞こうともしない。

 

 俺がどう謝ろうか悩んでるうちに、壬生先輩が入院している病院に辿り着いた

 

 「それにしても、花束なんてわざわざ持参しなくてもよかったんじゃないか?デリバリーで届けてもらった方が楽だろうに」

 

 悩んでる俺を傍目に、兄貴は花束を持参してる姉ちゃんにそう言った

 

 「いいえお兄様、こういうのは自分の手で持っていくことに意味があるんです!」

 

 『くくくっ。全く達也、お前には風情ってモンがねぇなぁ〜。そんなんじゃ深雪にも愛想つかれるぞ』

 

 退院祝いの花束を持った姉ちゃんに続いてエボルトも茶々を入れる

 

 「…」

 

 『待て。今の発言は取り消すから無言でCADを取り出そうとするな。龍夜もなんか言ってくれ』

 

 エボルトがこっちに助けを求めやがった。けど兄貴の味方だから無理だわ

 

 『裏切りやがってこのヤロー!!』

 

 病院へ入りロビーに向かうと、何故かエリカがいた

 

 「あら、エリカじゃない。なんでここにいるのかは──聞かなくて良さそうね」

 

 「あ、深雪に達也君と龍夜君。そりゃ、壬生先輩の退院日だからね」

 

 そこには看護師や家族に囲まれはにかんでいた壬生先輩の姿があった。そんな彼女の隣には──

 

 「あれ、桐原先輩じゃないか。なんでここに?

 

 「知らなかったの?桐原先輩、あれから毎日壬生先輩のとこにお見舞いに行ってたのよ?」

 

 それは知らなかった。まさか桐原先輩がな…

 

 「龍夜、花束渡してきて」

 

 「えっ?ちょっと姉ちゃん…!」

 

 気が付いたら俺は姉ちゃんに花束を無理矢理渡され、背中を押され前のめりになりながら壬生先輩の前に立つ

 

 「龍夜君…」

 

 壬生先輩ですら、顔を俯かせた。そりゃ、あれだけキツく言った張本人が目の前にいるからな…

 

 「壬生先輩、あの…退院おめでとうございます」

 

 「…えぇ、ありがとうございます」

 

 「「……」」

 

 すっごい気まずい雰囲気が2人の間に流れる…

 

 「あ、あの…壬生先輩…」

 

 「龍夜君…その…」

 

 ここで迷っていては仕方ない!俺は意を決して壬生先輩に謝ろうとする

 

 「「あの時は本当にごめんなさい!!…えっ?」」

 

 壬生先輩と俺の謝罪の声が見事に被った

 

 「えっ…ちょっと待ってください?」

 

 「えっと…龍夜君、今なんて言ったかしら?」

 

 「いやそれはこっちのセリフで…」

 

 何故かお互いの会話が噛み合っていない。兄貴達はポカンと突っ立ったままで、エリカに至ってはなんとか笑いを噛み殺してる

 

 「…ふっ、ふふふっ」

 

 「壬生先輩……ははっ…」

 

 この状況を面白く感じた壬生先輩が笑い出し、それに釣られるように俺も笑い出す

 

 「んーっと、俺が謝ろうとしてたら壬生先輩も謝っていた?どういう事だ?」

 

 俺が困惑している一方、壬生先輩は決心した表情でこちらを見た

 

 「取り敢えず…あの時は本当にごめんなさい。あの時、実は『本当に1科生・2科生間の平等』が出来ると思っていたの。でもあの時、龍夜君のおかげで目を覚ましたの。本当の事を知らなかったら、私はもうここに居られなかった。でもこれからは違う。貴方の言う通り、私には見下してきた人達を見返せる力があった。それを気づかせてくれた龍夜君には感謝してるの。龍夜君、ありがとう」

 

 目元に涙を浮かばせながら、壬生先輩はそう言った

 

 『はははっ!お前は随分とお人好しだと思っていたが、どうやらこの女も同類な様だな!』

 

 壬生先輩が話し終えた後、エボルトはそう笑い叫んだ──叫んだと言っても聞こえるのは龍夜と達也と深雪のみのため、壬生達には聞こえない──俺が謝ろうか悩んでいたが、それと同じく壬生先輩も悩んでいたわけだった

 

 『ほれ、今度はお前の番だ。男を見せてやれよ』

 

 確かにお前の言う通り、次は俺が謝らなきゃいけない番だな…

 

 「壬生先輩、俺の方こそすみませんでした。壬生先輩の気持ちに気づかず、あんな事を言ってしまって。でも学校の生徒や先生方に被害が届かないようにしたかった。そう思っていたんですが、その結果壬生先輩にあんなことを言ってしまった…今日も、どう謝ろうか悩んでいましたよ」

 

 俺がそう言うと、壬生先輩は目元の涙を拭い、俺を──正確には俺の瞳を──見た

 

 「ふふ、私達、似た者同士ね」

 

 「えぇ、どうやらその様ですね」

 

 そう言った後、俺達2人は笑い合った

 

 「突然ですまないが、君達が司波達也君と司波龍夜君かな?」

 

 その後、謎の男性が俺達に話しかけてきた

 

 「そうですが…貴方は?」

 

 「あぁ、私は壬生勇三(みぶゆうぞう)。紗耶香の父親だ」

 

 どうやら、この男は壬生先輩の父らしいが…

 

 「君達と話がしたいのだが…いいかね?」

 

 「「はぁ…」」

 

 と、案内され、ロビーの隅に移動する

 

 「まず達也君。君には感謝している。娘から聞いたよ。あの子の行動に疑問を持ったのは、カフェで君に『それで差別制度がなくなるのか』、と問われた事らしい。そして龍夜君。娘のために怒ってくれた上に、危険を侵してまでブランジュのアジトにまで行ったとは…私はそんな事すら出来なかった…あの子が怪しい奴らと付き合っても止められず、抱えていた物すら気づかなかった。内閣府の1人として、1人の父として、私は自分が情けないと思っている。2人とも、娘を立ち直させてくれて、ありがとう」

 

 「頭を上げてください、勇三さん。俺達は特別な事はしてませんよ」

 

 「そうです。ブランジュを倒したのは、俺達の日常の邪魔をされただけですから」

 

 頭を下げる勇三さんを止め、謙遜した

 

 「…ははっ、やっぱり君達は風間に聞いた通りの男だな」

 

 勇三さんの口から出た人物の名前に俺達は驚愕した

 

 「風間少佐の事を知っているんですか?」

 

 「あぁ、今は軍を抜けているが、あいつと共に同じ兵舎で過ごしていた時期かあってね。今も親しくしている仲なんだよ。君達の事も聞いていたんだよ。後は、『口は悪い上に出すコーヒーも不味い奴もいる』と、言ってた事もあったな」

 

 風間少佐、どうやらエボルトの事も少し話してるらしい。まぁ合ってるけど

 

 『お前酷くない!?てか俺のコーヒーが不味いと知ったらあいつら紅茶なんか飲みやがってよ!そんなに俺のコーヒー飲みたくないのかよ!』

 

 誰もお前のコーヒーは飲みたくないわ

 

 その後少し話をして、勇三さんは離れて行った

 

 「そうそう、さーやって、いつ桐原先輩と付き合い始めたの?」

 

 「バッ、お前!なんで知ってんだよ!?昨日告白したばっかなのに!」

 

 「あっ、本当に告白しちゃったんだ…カマかけたつもりだったのに」

 

 「テメェ!ぜってぇ許さねぇ!」

 

 エリカのさーや呼びはおいといて、エリカにしてやられた桐原先輩の態度からみて、2人は付き合い始めたらしい。それに驚いた俺達兄弟は、壬生先輩を見た

 

 「壬生先輩…それは本当なんですか?」

 

 「えぇ、そうよ」

 

 姉ちゃんの質問に壬生先輩は躊躇わずに答えた

 

 「でも壬生先輩、ルックスなら龍夜君や達也君の方がいいと思いますよ?もしかして桐原先輩のマメな所とか?」

 

 「おい千葉。それは俺の見た目がこの2人よりも下って言いたいのか?」

 

 「落ち着いてください桐原先輩。エリカの冗談ですから…んで、なんで桐原先輩と交際したんですか?」

 

 エリカの冗談に乗る桐原先輩を抑え込んだ後、壬生先輩にその理由を聞いた。すると、壬生先輩の答えは

 

 「私…実は達也君に恋してたのかも」

 

 「「「『ゑ?』」」」

 

 壬生先輩のカミングアウトに俺やエリカ、桐原先輩だけでなくエボルトですら驚いていた

 

 「私が憧れていた揺らぐ事のない強さを持っていたから。だけど憧れるだけで私がどれだけ走っても司波君達には追いつけない…でも桐原君なら、一緒に、同じ速さで歩いていけると思っていた。だからかな?」

 

 壬生先輩はそう照れくさそうに答え、桐原先輩は恥ずかしそうに頭を掻いた

 

 「ふーん。そんなことがあったのね。桐原先輩はいつからさーやの事が好きになったの?」

 

 「う、うるせぇなぁ。お前には関係ないだろ!?」

 

 そうして俺達は、桐原先輩を弄り倒したりしながらこの時間を楽しんでいた

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 病院を後にし、帰路へ着く俺達一行

 

 「…お兄様」

 

 途端に顔を曇らせていた姉ちゃんが笑顔で兄貴の手を取った

 

 「例えお兄様が光の速さで天に駆け昇ろうと、星々の高みへ至ろうと、深雪は一生ついていきます」

 

 姉ちゃんはそう言った一方、兄貴の方は苦笑いを浮かべ

 

 「どちらかと言えば、置いていかれるのは俺の方だと思うんだがな…」

 

 「はははっ、兄貴なら置いてかれる心配なんかないだろ?仮に姉ちゃんが光の速さで駆け昇っても、兄貴もすぐ追いつくんじゃないか?」

 

 「そう言うお前はどうなんだ?」

 

 茶々を入れたつもりだったが、兄貴の方が一枚上手だったようだ…

 

 「…俺は2人よりも速く行くことも出来なければ、2人に追いつく事すら出来ないと思う。だけど、行ける限り前に進んで、兄貴達を見失わないようにするさ」

 

 「お前なら、深雪が置いて行く訳ないだろう」

 

 『かもな。ははははははっ!』

 

 こうして俺達はこれからも、この楽しい時間を過ごしていくのだろう

 

 

 

 

 

 ネタ:ビルド世界での出来事その⑤

 

 戦兎「唐突だけど、龍夜の世界って魔法が使えるんだっけ?」

 

 龍夜「はい。魔法の研究が進んでいて、誰でもって訳じゃないんですけど、魔法を使える人は大勢いますよ。魔法を主に勉強する学校もありますし」

 

 万丈「じゃあ、龍夜もそのマホーってやつ使えんのか?」

 

 龍夜「えっ?…まぁ使えますけど…」

 

 惣一「マジか!見せてくれ!」

 

 龍夜「えっ、ええっと…やって見せますね」

 

 全員「………」

 

 龍夜「はぁぁ─────!」

 

 ボオォ!(カーテンが燃える音)

 

 惣一「ちょカーテンが燃えだしたんだけど!?」

 

 戦兎「水!水!!万丈水持ってきて!」

 

 万丈「お、おう!」

 

 龍夜「…やっぱりCADないから制御が難しいな…」

 

 三人「「「言ってる場合か────!!」」」




壬生の父さんの名前知らなかったけど翻訳でゆうぞうって出たのでゆうぞうさんにしました
雫「私…出番ない…」
雫ファンの方々、申し訳ありませんでした
雫「次回から出番増やしてね?」
はい…


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九校戦編
第12話 九校戦の、始まり


九校戦編だぁ!
雫「出番!増える!」
龍「良かったな。今後も出番増えて」
雫ファンの皆さん!お待たせしました!
エ「所で龍夜はどの種目に入れるんだ?」
実は龍夜の種目決めてるんですよ。次の楽しみってね!
龍「あの作者が…まともに考えてるだと!?」
なんかスマホがバグったのか操作ミスったのかわからんけど全然投稿出来なくてあせった


 三人称side

 

 4月のブランジュの襲撃から時はあっという間に過ぎ去り既に7月。梅雨も過ぎ去り、朝晩でも暑い程に気温も上がり、夏休みまで後数日を切った。しかし夏休みを前に、学生だからこそ戦わざるを得ないイベント──そう、期末テストがあるのだ

 

 魔法科高校の校内順位は主に魔法実技、魔法理論、総合評価として生徒の手に戻ってくる。中には頭を抱えて落ち込む生徒もいれば、中にはほっと息をついて赤点を回避する事に成功した生徒と、その反応は十人十色であった

 

 「失礼しました」

 

 そんな中、何故か先生に呼ばれ、指導室に入った達也は数分後に指導室から出てきた

 

 「おっす兄貴」

 

 「龍夜…嫌、どうして皆ここにいる?」

 

 「それはこっちの台詞だぜ?指導室に呼び出さられるなんて、一体全体何しでかしたんだ?」

 

 指導室から出てきた達也の前には龍夜、雫、ほのかのA組の3人やレオ、エリカ、美月のE組の3人だった

 

 「あぁ、期末試験の事で尋問を受けていたんだ。実技で手を抜いたんじゃないかと疑われてしまってな」

 

 「手を抜いたって…そんな事してなんの得になるの?」

 

 「でも先生達がそんな気になるのも分かるよ」

 

 「そうですよ!それだけ達也さんの成績が凄いって事ですから!」

 

 美月やほのかが力説しているが、そう言うのも無理はなかった

 

 何故なら今回の期末試験の評価は、全校生徒、教職員全員に驚愕させる程のレベルだったからだ

 

 1位:司波深雪(A組)

 2位:司波龍夜(A組)

 3位:光井ほのか(A組)

 4位:北山雫(A組)

 5位:十三束鋼(B組)

 

 上位5名のうち4名がA組であると言うこの状況には、教職員らが頭を抱える程の事態になったと言うことは生徒達の間で噂になっている

 

 総合評価で噂になる一方で、実技評価でもさらなる波紋を呼んでいた

 

 1位:司波龍夜(A組)

 2位:司波深雪(A組)

 3位:北山雫 (A組)

 4位:森崎駿 (A組)

 

 3位の雫と大差をつけ、深雪が2位を取るのは当然の事実と受けとめられていたが、龍夜が堂々と1位を取った事は意外と思った生徒が多数いたらしい。このことは奇跡と言っていいのか、龍夜本人の耳には入っていない

 

 しかし実技1位の龍夜でさえ、筆記となると様子がガラリと変わる。何故なら今回の筆記試験の結果は、教職員どころか生徒間でも噂が広まっている

 

 1位:司波達也(E組)

 2位:司波深雪(A組)

 3位:吉田幹比古(E組)

 

 上位3名の内2名が2科生という前代未聞の事態となっただけでなく、17位に美月、20位にエリカもおり、上位20名に2科生の名前が所々あった

 

 ところで龍夜は?と思う読者も多いと思うので、少しランキングを下げて見てると…

 

 25位:司波龍夜

 

 実技で1位を勝ち取った龍夜でもこの有様である。戦兎が見たら「やっぱり筋肉馬鹿だな」と言っている事だろう

 

 『お前実技で1位取ったからって筆記がこれじゃ深雪に叱られるぞ』

 

 (仕方ないんだって!俺実技で頑張ってたから筆記試験の対策なんか全然してなかったんだよ!てか姉ちゃんになんて言い訳すれば!?)

 

 『諦めろ。どうせ既に深雪の耳に入ってるだろうし』

 

 (この薄情者〜〜!!)

 

 龍夜は姉に向けるべき言い訳を考えてる間、兄とその友人達の話は続いていく

 

 「ところで、筆記で龍夜が20位以内すら入ってないのは意外だったよな」

 

 「うぐっ…」

 

 レオが傷口を作り

 

 「そうよね。もし深雪が知ったらどうなるのかしら?w」

 

 「ぐぐぐっ…」

 

 エリカがわざとらしい言い草で傷口を大きく抉り

 

 「龍夜さんって意外にも勉強出来なかったんですね」

 

 「ぐわぁ───!!」

 

 ほのかの言葉がとどめとなり、勢いよく吹き飛んでいった龍夜*1

 

 「そう言えば筆記の3位の、吉田幹比古と言うと…筆記でこの点数で何故2科生なのか…」

 

 弟が精神的ダメージを受けているのを流し見しながら、達也は吉田幹比古という青年について話しかけてきた

 

 「吉田君のこと?確か古式魔法の名家、吉田家の次男の事よ。かつて神童って呼ばれてたらしいけど事故があったらしいのよ」

 

 「なるほど、それで2科生なのか」

 

 古式魔法というのは、1世紀近く経て開発されていった現代魔法とは違い、古くから受け継がれていった魔法のことだ。しかし多彩に術式を使う現代魔法師と異なり、古式魔法師は一点集中。特定の魔法を極めた術者を評価する傾向にある

 

 「龍夜、大丈夫?」

 

 「あ、あぁ…なんとかな…んで兄貴。その吉田幹比古って人のこと知っているのか?」

 

 「あぁ。少し顔を合わせたくらいだが、思った以上に体は動くし視野も広かった。昔から荒行をやっていった証拠なんだろうな」

 

 雫に介抱されながら立て直した龍夜。その質問に達也はそう答えた

 

 「ところで達也さん。話は戻すけど、誤解はとけたの?」

 

 「まぁ一応はとけた」

 

 「「「一応?」」」

 

 雫が話を戻し、達也が指導室に呼ばれた後を聞くと、達也の口から一応というさらに疑問を出すようなセリフを吐いたら

 

 「実は、第四高校に転入を勧められたんだ。あそこは魔法工学に力を入れているからってな」

 

 「そうなの?」

 

 第四高校に転入という話を聞き最初に反応したのは雫だった

 

 「雫、第四高校になんかあるのか?」

 

 「うん、従兄が第四高校に通っているの。でもあそこは確かに魔法工学に力を入れているけど、それはあくまで"他の高校よりか"と言う程度らしいんだよね。だから実技が優先される事には変わらないんだって」

 

 雫が言ったように確かに魔法科高校の採点基準は魔法実技が優先されている。仮に達也が第四高校に転入したとしても、魔法力が乏しいから当然2科生になってしまう

 

 「だが赤点ギリギリとはいえ、なんとか合格ラインは届いてるんだ。俺が了承しない限りは余所に転入なんてしないだろうな」

 

 「まぁ達也君みたいな生徒なんて先生側も初めてだろうからね」

 

 エリカの苦笑混じりの言葉に達也も同意する事だろう

 

 「ところでだけど、夏休みに入ってすぐ九校戦があるよな」

 

 「あぁ〜そういやそうよね。龍夜君も深雪も、当然選手として参加でしょ?」

 

 九校戦とは、全国魔法科高校親善──の略称名であり、九つの魔法科高校の生徒達が自らの魔法を使い競い合う。いわば魔法のみを使ったスポーツ大会の事だ。例年夏休みに10日間行われ、観客だけでも10万人、中継されている映像を含めても100万人はくだらない一大イベントである

 

 一高の選手には当然、龍夜と深雪も選手として参加する

 

 「ほのかと雫も選手として参加するの?」

 

 エリカの質問に2人はウンウンと頷いた

 

 九校戦は全学年が参加可能な"本戦"と、1年生のみが参加できる"新人戦"の二つに分かれている。龍夜と深雪の2人がヤバすぎて霞んで見えるだけでほのかや雫達も普通に見たら優秀なのだから選手として参加できるのだ

 

 「じゃあ、この4人さえいれば一高の優勝は決まったような物でしょ!」

 

 エリカが悪役みたいに高笑いするが、雫は首を横に振って否定した

 

 「それは無理かも。三校に一条の御曹司も入学したらしいから」

 

 「一条って十師族の一条が?そりゃ、強敵になるかもね」

 

 「何、そういう時には龍夜君に任せたらいいのよ美月」

 

 「はぁ?なんで俺が!?」

 

 「エリカ、もし龍夜の対戦相手がその一条じゃなかったら諦めろよ。それにしても雫、よくそんな情報知っていたな」

 

 エリカからのブーイングを無視しながら達也は雫に疑問を聞く達也

 

 「実は雫は毎年、九校戦の大会を観に行ってるんです。特にモノリス・コードがお気に入りなんだよね」

 

 「なるほどな。じゃあ今年からは観る側じゃなくて参加する側だな。頑張ろうぜ」

 

 「うん!」

 

 龍夜の激励に舞い上がる雫。その表情はもう恋する乙女当然である

 

 「龍夜の奴、あれで無意識とか逆に凄いよな」

 

 「これじゃどうしようもないわよ」

 

 「でもエリカちゃん。あれじゃ北山さんが可哀想だよ…」

 

 「仕方ないわねぇ…どうやら夏休み、一肌脱ぐ必要が出来たかもね」

 

 「「えっ?」」

 

 今ここに女子2名と男子1名による密かな会議は後に2人の仲にどんな影響を及ぼすのかは、読者達自身で考えてみてくれ

 

 『今回語り手メタくね?』

 

 そうかもしれないな…(by作者)

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 ところ変わって生徒会室、龍夜達は昼休みにそこで生徒会のメンバーと一緒に昼ご飯を食べていくのが習慣になっていた。生徒会の仕事がある深雪、その付き添い兼手伝いをする達也と龍夜

 

 しかし七草真由美がなにやら困った表情のまま食事をしていた

 

 「七草会長、なんか困ってるんですか?」

 

 「…実は、九校戦のことでね。技術スタッフが足りないのよ…」

 

 龍夜が聞くと、どうやら九校戦に関わる一大事らしい。魔法科高校に通う生徒は魔法工学に関わる人が稀らしい。特に一高は毎年そう言った問題に直面するとのことだ

 

 「へー、ソレハイチダイジデスネー」チラッチラッ

 

 「…」

 

 棒読みしつつ隣に座って昼食を食べる兄をチラ見する龍夜。しかし達也は自分には関係ないと言うように黙々と食事を続ける

 

 「せめて摩利が自分でCADを調整できたらよかったのに…」

 

 「…嫌、深刻な問題だな」

 

 真由美の責めるような視線に摩利は、気まずそうに目を逸らす

 

 「ご馳走様でした」

 

 達也は嫌な予感を感じ取ったのか、すぐさまその場から逃げようとするが──

 

 「あの…だったら司波君に技術スタッフをやってもらえばいいんじゃないでしょうか?深雪さんや龍夜君のCADの調整も司波君がしてるんですよね?」

 

 「!流石あーちゃん!そこは盲点だったわ!!」

 

 中条の提案、そこにすかさず真由美が達也を風紀委員に入れた時と同じように推薦しようとしたが

 

 「しかし俺は2科生です。それにCADの調整はユーザー、つまり選手との信頼関係が必要不可欠ですよ。全員が1科生という反感を買うようなことは如何だと思うのですが」

 

 達也の言い分も最もと言えるだろう。1科生の生徒は一部の例外があるとはいえ、プライドが高い人間が多い。そんな中、達也(2科生)がスタッフに入るとなると多数の反対意見がくるのは目に見えている。しかし…

 

 「私はお兄様に調整をお願いしたいのですが…それはダメなのでしょうか…」

 

 「…わかりました。エンジニアの件については謹んでお受けいたしますよ」

 

 「流石兄貴。そうこなくちゃな」

 

 こうして達也のエンジニア入りが確定した。

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 放課後、龍夜や深雪達参加選手、技術エンジニアなどが部活連本部に集合していた。しかし急遽決まったとはいえ、2科生として達也がそこに入室すると敵対視する者、『そんなまさか』という目をしている者などの視線が達也へ向けられる

 

 そして達也が技術エンジニアとして参加することになった旨を話すと、森崎達を筆頭に反対意見をする者が出てくる。

 

 「…つまり司波のエンジニアとしての腕が分からないから反対しているんだろう?それなら実際に調整をやらせればいい。なんなら俺が実験台になろう」

 

 そこに痺れを切らした十文字がそう提案するが、それに反対する者もいた。魔法師はCADに対して無抵抗であり、仮に調整に失敗した場合、そのダメージは十文字自身が被る。それに対して自分が達也を推薦したから自分が実験台になると言う真由美

 

 「じゃあ、俺がその実験台になります」

 

 ここで挙手したのは、まさかの桐原だった。周りの1科生は彼に詰め寄って止めようとするが、桐原は不敵な笑みを浮かべる

 

 「2科生だからなんだってんだ。会長が苦し紛れに2科生を推薦するわけがないだろ?それに俺は、こいつを信頼している」

 

 その言葉に達也は笑みを浮かべ、1科生の生徒は反論を言えなかった

 

 こうして達也の代表入りをかけ、試験が行われる

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 達也に出された指示は桐原が普段使用しているCADの起動式を競技用に用意されているCADへとコピーし、即時使用可能とすることだ。ただし起動式には変更を加えない事を条件としている

 

 しかし達也は──

 

 「スペックの違うデバイスにコピーすると言うのは本来お勧めしませんが──仕方ありません。安全第一でやりましょう」

 

 彼のお勧めしない発言に真由美達は不思議な表情を浮かべ、技術エンジニアはその意味がわかるように笑みを浮かべた。その間達也は桐原にCADを預かり、いつでも調整が出来る姿勢に入る

 

 「では、始めますね」

 

 そう言うと達也は同時に作業を開始。本来桐原のCADのデータを競技用にコピーするべきのところ、彼は調整器にそのまま保存。次に桐原の想子を測定。通常の調整なら通常設定に従うだけでも充分なのだが、ここでマニュアル操作でいかに精密な調整を行えるのかがエンジニアの腕の見せ所である

 

 途端、測定を終了したところで達也のキーボードを叩く手が止まる。その光景に龍夜と深雪は慣れているようで安心した様子で見ているが、反対にあずさが好奇心を抑えきれずに後ろから覗いてくる

 

 「──えっ?」

 

 達也の手元を見た彼女は間の抜けたような声を上げた。彼女が見ている画面には本来映るはずのデータがなく、数字の羅刹が大量に現れては消えていく。そのスピードはあずさの目でも追いつくことは出来なかった

 

 (ま、まさか達也君、原データから反映させている??)

 

 彼女が驚愕してる間に達也の手が突如動き出し自動設定されているデータを恐ろしい早さで書き換えていく

 

 「終わりました」

 

 達也のその言葉が調整を終わらせた合図と共に手を止める。調整に使ったCADは桐原に返しテストが行われる。起動式が発動し彼の得意魔法の『高周波ブレード』が現れる

 

 「桐原、どうだ?」

 

 「問題ありません。それどころか…()()()()違和感を感じませんね」

 

 桐原の言葉には部屋中からどよめいた声がする。だがすぐに達也に対して反論する者が現れる

 

 「一応の技術はあるようですが…当校の代表レベルとは言えないと思えます。仕上がりまでの時間も平凡でしたよね?」

 

 「そんなことありません!私は達也君の代表入りを推薦します!」

 

 それに対して以外にもあずさが反論をし返してきた

 

 「達也君は桐原君の想子波を原データから読み取ってそれを最大限反映させるためにすべての工程をマニュアル操作と同じ時間で調整してました!これは高校生レベルを超えた技術ですよ!」

 

 「しかし仕上がりの時間も平凡ならば、意味がないのでは?」

 

 「中身が違います!あれだけ安全マージンを取りながら通常と同様の時間で終わらせたことが凄いんてす!」

 

 「でもその分を効率アップに回した方が良いのでは?」

 

 「そ…それは、達也君だっていきなりのことだったので…」

 

 勢いがあった彼女の意見も、反論をされ続ける度に勢いが落ちていった

 

 「あー…俺からも意見を言ってもいいでしょうか?」

 

 なんとここで龍夜が手を上げた

 

 「…なんでしょうか?」

 

 「桐原先輩のCADは競技用のよりもハイスペックです。しかしそんな彼にも違和感を感じさせなかった。この事実でも兄の代表入りにする理由にはなりませんか?」

 

 「今更何を…」

 

 「私も彼の意見には賛成です。それに我が校は常にエンジニアに悩まされていますし、1年生だの2科生だの拘ることなく能力的にベストなメンバーで臨むべきです」

 

 すると今度は服部が龍夜の意見を肯定しだした。その言葉に先程まで反論していた生徒も言葉が出ず、口を閉じる

 

 「俺も服部と司波弟の意見には同様だ。司波兄は我が校の代表に相応しい技量を見せてくれた。俺も彼の代表入りを支持する」

 

 十文字の発言も的を得ており、なにより技術を見せられた以上達也の代表入りを反対する理由もなくなった

 

 こうして達也の代表入りは確定した

 

 

 

 

 番外ネタ:龍夜の試験結果

 

 深雪「ところで龍夜。筆記試験の結果は?」

 

 龍夜「あ、あれね!実はついさっき風に飛ばされてどっかに飛んでいっちゃったんだよ!だから姉ちゃんにはごめんって思ってるけど今回は見せられなi…」

 

 クローズドラゴン「キュオーン」つ龍夜の試験結果

 

 深雪「…後でお話ね」

 

 龍夜「……… ハイ」

*1
※イメージです




九校戦や古式魔法の事はat Wikiに乗ってたのを使わせていただきました
どうでもいいけど達也のCAD調整なんて作者が見たら何してるかわかんないやろうな
龍「大丈夫、黙ってたけど俺も分からなかった」
深「龍夜、今からお兄様の調整をもう一度見にいくわよ」
龍「オワタ\(^o^)/」


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第13話 歴史が変わった、一瞬

新入生、新社会人の皆様。おめでとうございます!
エ「作者もなんかタイトルのように変わったのか?」
実を言うと作者も専門学校に入学しまして、これから長い投稿期間がさらに長くなりそうです
龍「でも頑張って書いていきますのでこの作品を引き続き宜しくお願いします!」


 兄貴の九校戦代表入りが決まり数日が経ち、学校は夏休みに入った。俺は夏休みの課題+兄貴に課せられた課題を必死にやっている。あの後姉ちゃんに耳にタコが出来るまで怒られた。『次は筆記も10位以内に入りなさい』って言われたら従うしかありませんよ…

 

 『自分の兄どころか姉にすら頭が上がらないのワロタwwww』

 

 お前後で覚えておけよ?

 

 後数分で日付が変わる時間帯でも、俺は眠気と戦ったりエボルトの煽りを無視したりしながら課題を進めていくと、ドアがノックされる音がした。こんな時間に…兄貴が姉ちゃんのどっちだ?

 

 「龍夜、まだ起きてるかしら?」

 

 どうやらノックしたのは姉ちゃんらしい。しかしこんな時間になんで俺の部屋を?

 

 「姉ちゃんか。いいよ入ってきて」

 

 ドアが開くと、物語に出てくる妖精を想起させるデザインの服を着た姉ちゃんがいた

 

 『深雪、その服って…もしかしてお前が参加するミラージ・バット?って種目のコスチュームか?』

 

 「あー、そういや姉ちゃんってミラージ・バットと俺と同じアイス・ピラーズ・ブレイクに参加だったな…んで、なんでこの時間に俺の部屋に来たの?」

 

 「実はお兄様にお茶を出そうと思ってね。龍夜も喉乾いたでしょ?」

 

 なるほど、兄貴のためにか

 

 「兄貴はこの時間だと多分地下でなんか実験でもしてるんじゃないか?ついでだし俺もいくよ」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 俺と姉ちゃんはお茶を入れ、兄貴がいる地下室へと運んで行った

 

 「おーい兄貴、お茶持ってきたぜ」

 

 『こういう夜中には眠気覚ましにコーヒーでもよかったんじゃないか?』

 

 「お前のコーヒーは不味いからな。兄貴に出せるわけないだろ」

 

 「そんな事したら姉ちゃんに氷漬けにされる」と付け加えたいが本人の前で言うのもダメなのであえて言わない

 

 「おう、ありがと…深雪、その服装はミラージ・バッドのコスチュームか?」

 

 「えぇ、その…どうでしょうか…」

 

 「あぁ…凄く似合ってるよ」

 

 まーたこの2人惚気てやがる。客観的に見ている方も色々と辛いんだよなぁ…

 

 『それよりも龍夜、達也の足元見てみろよ』

 

 「?…って兄貴!」

 

 エボルトに言われるまで気づかなかったが、兄貴の身体が宙に浮いていた。俺の驚愕の声につられて、姉ちゃんも足元を見て驚く

 

 「まさかお兄様…かの三大難問とも呼ばれる『常駐型重力制御魔法』を完成させたのですか!?」

 

 「嘘でしょ!?さすが兄貴!!」

 

 俺と姉ちゃんはまるで自分のように喜んだ。その間にエボルトは龍夜の中から現れ、兄貴に近寄っていく

 

 「まさかそんなモン完成させちまうとはなぁ…達也、一体どんな手を使ったんだ?」

 

 「あぁ、それにはまず何故常駐型重力制御魔法が難問になるかを説明しようか」

 

 「あぁ頼んだ。俺は魔法はてんで苦手でな」

 

 喜んでる俺らをよそ目にエボルトに説明を請われ、否応なく兄貴は説明を始めた

 

 「一度魔法によって作用した物体の状態を変化させようとした場合、作用している魔法よりも高い干渉力を持った魔法が必要となる。魔法による飛行中、速度や角度を変えようとすると、魔法の重ね掛けが必要になってしまう」

 

 「なるほど、つまり飛行魔法の使用で移動して速度や角度を変えたい場合、魔法の重ね掛けがあるせいで干渉力を高めなくてはいけないという事か。それじゃ魔法師からしたら難しくなるんじゃないか?」

 

 「そう言う事だ。そこで逆転の発想だ」

 

 「どういう事だよ?」

 

 逆転の発想と言われ答えがわからなくなったエボルト。兄貴はヒントを与えるように言葉を続ける

 

 「つまりは、重ね掛けではなく()()()()()()()()()()()()()させることだ。それも、一度発動させた魔法を消すのではなく発動時間が短い魔法を連続で使うことでな」

 

 「それを可能にさせるのが()()()()()()ループ・キャスト・システムか。お前の事だし多分魔法の起動時点を記録して変数のみを書き換えて起動式を連続処理させる。それなら速度やら角度やら変えれるってわけか」

 

 「正解だ。まさか答えがわかるとは思わなかったがな」

 

 「兄貴ーそのデバイス貸してくれ。飛行してみたい」

 

 「いいぞ。ちょうど二つあるから、深雪と2人で使え」

 

 「サンキュー!」

 

 兄貴にデバイスを貸してもらい、俺と姉ちゃんは浮遊して楽しんだ

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 三人称side

 

 〜翌朝〜

 

 天気はあいにくだったが、龍夜達3人はとある場所へ向かっていた。郊外へと歩き、目的地へと着いた

 

 その名は『ファウスト』、創設され僅か一年で大手のCADメーカーとして瞬く間に名を挙げた企業。その認知度は凄まじく魔法師はおろか魔法関係に携わる者でも知らぬ者はいない大企業であった。またCADの開発だけでなく魔法の研究なども行われている

 

 そんな大企業の玄関口から堂々と入り、達也達はある部署に向かった。そこはCADの開発などを行う部署だ

 

 「おう御曹子、お嬢に坊ちゃん。なんかの用事ですかい?」

 

 彼らが入ると、ある男から声をかけられた。彼はこの部署の主任を務めている牛山(うしやま)。ちなみにだが主任を務めているとはいえ、それは形式だけの物であり事実上この部署には主任はいないと思ってもらいたい

 

 「牛山さん。いい加減、御曹子なんて言うのは勘弁してください。ここはFLTじゃないんですから」

 

 「いや、俺達はFLT(向こう)で厄介者扱いされていたところを、あんたらに助けられたんだ。だから俺達一同、あんたらに着いて行くことを決めてたんですよ。それにここの部署のリーダーは貴方ですよ。()()()()()()()()()

 

 「しかし、ここの売り上げは実質貴方のおかげでもあるんですよ。()()()()()()()()()

 

 「そもそも俺がファウストを設立させなかったら、お前ら全員、ここにいなかったけどな」

 

 「へっ、一応あんたにも感謝してるよ。()()さんよぉ」

 

 実はこのファウストはエボルトが四葉の力を借りて作った企業だった。牛山達は本来、F L T(フォア・リーブス・テクノロジー)という企業の社員だったが、厄介者扱いされここに出張という名の生贄に差し出された。しかしエボルトの一喝で目が覚め、多大な業績を生み出しFLTに退職届を出して正式にここの社員となったという逸話がある

 

 「ところで御曹子、そのデバイスは…まさか飛行術式のデバイスですかい!?」

 

 「えぇ、テストも成功しましたが、俺達兄弟は一般的な魔法師ではないので」

 

 ゴクリと唾を飲んだ牛山は近くの研究員を呼んだ

 

 「おいテツ、Tー7型の手持ちは何機ある?」

 

 「…じ、10機です」

 

 「馬鹿野郎!なんで補充してないんだよ!いいから全部持ってきてこのシステムをコピーしろ!テスターも全員呼べ!休みなんか関係あるか!首に縄つけてでも連れてこい!残りは今の作業を中断して観測室で精密計測の準備だ!いいかお前ら!魔法の歴史が変わる瞬間なんだぞ!」

 

 牛山の怒鳴り声に周りの研究員も慌ただしく動き始める。機械に齧り付いて起動を確かめたり、相手に怒鳴りつける勢いで電話したりなど、とにかく観測室は大騒ぎだった

 

 「いつもよりすっごい慌てようだな」

 

 「それだけお兄様が優秀ってことよ」

 

 「そんなもんかねぇ…後であいつらの給料でもアップするか」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 テストの結果だけを言うと、飛行術式のテストは成功に終わった。しかし飛べることに興奮したテスターが皆、仕事を忘れて飛び回り、果ては予定にすらなかった空中鬼ごっこを始めたのだ。そんなことをしてると、当然想子がなくなって行き、終了した時にはテスター全員が床にへたり込むほどたった

 

 「馬鹿野郎共。あれだけ飛び回ったらそうなるに決まってるだろ。超勤手当は出さねぇからな!」

 

 「そりゃないっすよ!鬼!悪魔!主任!」

 

 「社長からもなんか言ってやってください!」

 

 「だがお前ら仕事サボってあんなことやってたしなぁ。恨むんならぶっ倒れるまで鬼ごっこしてた自分達を恨めよ」

 

 「………ハイ」

 

 ブーイングしたもののエボルトの反論に言いくるめられるテスター達を他所に牛山はテスト結果を真剣に見つめる達也に話しかける

 

 「御曹子、結果を見れば分かると思いますが、当面の課題は起動式の連続処理による負担を軽減することでしょうね」

 

 「そうですね。ここは想子の自動吸引をハード面で解決した方がよろしいでしょうね。それと他の企業に出し抜かれないようにこのノウハウを発表して、9月を目処に製品化しましょう」

 

 「部品面はFLTあたりに発注しておく。後で必要な部品をリストアップしてくれ」

 

 その会話にエボルトも挟みつつ、仕事は終わった

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 龍夜side

 

 ファウストから自宅に帰宅し、俺と兄貴はリビングに座る。その間姉ちゃんは紅茶の用意をしていた

 

 「…なぁ兄貴、こないだ風間少佐が言ってたことだが…」

 

 「あぁ、あのことか」

 

 実は夏休みに入る前、風間少佐から連絡が届いていた

 

 〜回想〜

 

 兄貴が九校戦のエンジニアとして参加が決まり、夏休みに入る頃──司波家の電話に非通知と書かれた電話が来た。本来は警戒して取るか悩むところだろうが、あいにく俺達からしたら珍しくないことなので兄貴は躊躇いなく電話をとった

 

 画面に映った相手は、日焼けや火薬焼けによりなめし皮のような顔をした中年の男性。画面上に映る上半身だけでも鍛えられてる事がわかり、見る人によってはその鍛え方がスポーツの類で身についた筋力ではない事を教えている

 

 「お久しぶりです。狙ってかけたようなタイミングですね」

 

 『言ってる意味はわからないが…久しぶりだな。──大黒特尉』

 

 「その呼び方、秘匿回線で伝えてるんですか?風間少佐」

 

 『なるほど、()()1()()もそちらにいたか』

 

 電話の相手は陸軍101(イチマルイチ)旅団・独立魔装大隊隊長、風間玄信少佐──3年前に沖縄事変の際に知り合い、九重先生の弟子、つまり俺らの兄弟子にあたる人物であった

 

 『簡単にはいかなかったがな。特尉らの家のセキュリティーは一般の家と比べても厳重過ぎないか?』

 

 「サーバーの深くまでアクセスしようとしない限り、クラッキングシステムは作動しないのですがね」

 

 『ははっ、うちの若い奴らにも良い薬になっただろう。──それじゃ、事務連絡だ』

 

 途端に風間少佐の口調が変わる。その様子に俺と兄貴は眉を顰めた。何かあったのだろうか?

 

 『本日“サード・アイ”のオーバーホールを行い、部品をいくつか新型に更新、それに合わせて、ソフトウェアのアップデートと性能テストを行ってほしい』

 

 「了解しました。明朝に出発します」

 

 「俺──いえ、小官はどうすれば?」

 

 明日、兄貴がテストのために行くってことはわかった。だが俺はどうなの?

 

 『そちらにはエボルトと共に待機を頼む。今回は単なるテストだから、心配はいらないがな』

 

 「わかりました」

 

 『──それでは、いつもの場所で。本官は立ち会えないので真田に話を通じてある』

 

 「了解しました」

 

 やっと用件がおわったと思い、俺は電話を切ろうと手を伸ばした──その時

 

 『聞くところによると、今年の九校戦には特尉らも参加するらしいな。選手はわかるが、まさかエンジニアとして参加とはな』

 

 …兄貴の代表入りが決まったのは数時間前だよな?なんでこの人が知ってるんだ…

 

 「えぇ、小官は自ら希望しましたが、兄は成り行きで…」

 

 『そうか。──気をつけろよ。達也、龍夜』

 

 「「ッ!」」

 

 風間少佐からの呼び方が変わり、兄貴は目を細め、俺は驚愕してしまう。この人がこの名を呼ぶことは旧知の者として警告し、同時に軍の情報を()()()()()()である俺ら兄弟に与えるという事を意味する

 

 『九校戦の開催地、富士演習エリアに不審な動きがあった。国際犯罪シンジゲートの構成員らしき人物の目撃情報もある。時期的に見ても、奴らの狙いは九校戦で間違いない』

 

 俺や姉ちゃんなど、九校戦に参加する選手は皆が皆優秀な魔法師になり得る逸材、そんなところでテロが起きたら、日本の人材的な被害は相当な物となる

 

 『壬生の報告だと、香港の犯罪シンジゲート、『無頭竜(NO HEAD DRAGON)』の下部構成員ではないかと言うことだ』

 

 「壬生って言うと…」

 

 「あぁ、壬生先輩の父上の壬生勇三さんだろうな」

 

 あの後聞いたがあの人は現在、内閣府情報管理局の外事課長として働いているらしい。風間少佐と個人的な付き合いもあるって言ってたから、情報は間違いないのだろう

 

 『おっと、長話が過ぎたようだ。部下が焦っているから、そろそろ切らせてもらう。九重師匠にもよろしく伝えておいてくれ』

 

 「わかりました。それでは」

 

 『あぁ、それではな』

 

 そういい電話を切った

 

 〜回想終了〜

 

 「兄貴、今年って厄年かな?」

 

 「かもな。師匠のところでお祓いしてもらったらどうだ?」

 

 「あの人住職だけどお祓いとかやってんの?」

 

 「お兄様、どうかしましたか?」

 

 「「いや、なんでもない」」

 




そ〜ら〜を自由に〜飛びたい〜な〜♪
エ「ハイ、飛行術式CAD〜」
イヤそれ魔法師じゃないと使えない奴だから!
どうでもいいけどミスター・トーラスとミスター・ドーナツってなんか似てるよね
龍「確かに似てるけど…」
最近スパロボDD入れました。楽しいです
エ「そして執筆をサボる無限ループ」


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第14話 九校戦へ、出発

スパロボDDやってたらこうなった…
エ「スパロボの感想は?」
取り敢えず一言…無課金で石集めすごいムズい…


 飛行術式の正式発表も無事に行われ、今年の九校戦の開催日が始まる。開催場所は国防軍の富士駐屯地。簡単に言うと富士山に向かうのでバスに乗るところなのだが…

 

 「……」

 

 「「……」」

 

 どうも皆さん、龍夜です。誰かこの状況をなんとかしてください

 

 何が起きてるのかと言うと、九校戦へ向かうのでバスに乗るのですが、姉ちゃんの隣を巡って下心丸出しの男子生徒が猛アピール。堪忍袋の尾が切れた渡辺先輩の説教の後に話し合って姉ちゃんの隣には俺、通路を挟んで雫とほのかになりました。勘のいい人ならわかるがA組で俺と親しい人って大体姉ちゃんか雫かほのかと女子メンバーばっかりなので、男子から殺気と嫉妬の視線が来る。一高に入学してできた男友達なんてレオくらいだよ…

 

 本題はここからで、バスの発車時刻は既に過ぎているがお家の事情で七草会長が遅れるらしいので2時間ほど発車時刻を延長。チェックのために兄貴と渡辺先輩が外で待機してるのですが…

 

 「……………」

 

 俺が隣ってだけでも凄く嫌な予感はしていた。無表情を貫く姉だが、長い間弟として見てきた俺にはわかる。凄い怒ってらっしゃる。試しにバスの後ろを見てみると、そっちに座っていた生徒達は我が姉の逆鱗に触れぬよう息を殺して縮こまる。隣の俺はいつ姉ちゃんがキレるかわかんないのでビクビクしてました

 

 俺でさえこんなんだから通路を挟んだ席の雫もほのかも俺と同じくらいの恐怖を感じてるだろう

 

 「雫、変わってくれないか?」

 

 「いくら龍夜の頼みでもそれは無理かも…」

 

 「じゃあほのか…」

 

 「ごめんなさい無理です」

 

 「」

 

 頼みの綱の友人2名にも裏切られ、逃げ場を失った俺は途轍もないプレッシャーを感じていた。まさしくお前が姉ちゃんを止めるんだよ!って言われてる気がする

 

 「姉ちゃん、喉乾いてない?なんか買ってこようか?」

 

 「別にいいわ龍夜。私はお兄様と違ってこの炎天下に外で立たされたわけではないから」

 

 「アッハイ」

 

 うん火に油をたっぷり注ぐ結果になっちゃった。むしろ周りがさらに寒くなってます

 

 「…なんで逆に達也さんを思い出させるようなことするのかな…」

 

 「返す言葉すらありません…」

 

 「誰が遅れて来るのがわかってるのに、わざわざ外で待つ必要などないのに…なんでお兄様がその様な辛いお仕事をしなければ…それに機材で狭くなってる作業車で移動の予定だなんて…せめて移動の時だけは是非ともゆっくりしていけばよろしいけど…」

 

 結果、さらに悪化しました。

 

 『お前何でそんな真似するかなぁ?!乙女心が全っ然わかってねぇなこの野郎!!』

 

 喧しい!!俺だってこんな事になるとは思ってなかったんだよ!てかなんでそこに乙女心が関わるんだよ!?

 

 『あぁ〜…まったくなんでこんな事態に陥るんだよ…仕方ない。身体借りるぞ』

 

 は?と思ってる間にエボルトに身体の主導権をあっけなく奪われた

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 エボルトside

 

 フゥ〜。久々に身体を借りてみたがそんなに遜色ないな。

 

 『お前何やってんだよ!?姉ちゃんに殺される前に早く俺の身体返せよ!?』

 

 いや俺が殺される前提かよ。まぁ見てろよ

 

 「おい雫、ほのか。俺はお茶買ってくるから、その間姉ちゃんのフォロー頼むな」

 

 「「えっ??」ってか龍夜いまなんか…」

 

 なんか言われる前に素早く外に出て自販機でお茶をいくつか購入する。俺らのいた頃と違ってこっちはキャッシュレスだから早く買えるの便利だな

 

 『お前それ俺の金なんだからな!?後で覚えてろよ!』

 

 あーうるさいうるさい。いいから黙って見ていろよ。俺は龍夜を黙らせ、達也達と合流し、お茶を投げ渡す

 

 「おーい兄貴ー。お茶買って来たぞー」

 

 「…エボ…龍夜か。何故俺たちに?」

 

 「いやずっと外で立ちっぱなしだしよ。喉が渇いてるんじゃないかと思ってな」

 

 「あぁ。ありがとうな」

 

 「どういたしまして」

 

 そう言いつつ渡辺摩利にもお茶を投げ渡す。俺のコントロールが抜群なのか、それとも向こうが取るのが上手いのか、渡辺は落とさずにお茶を取った

 

 「龍夜、お茶を買って来てくれたのは感謝するが、飲料品を投げ渡すというのは感心しないな」

 

 「それはすみませんね」

 

 怒られてるとはいえ、そんな事俺にはどうだっていい

 

 『テメェェェェェ!?何やってんだぁぁぁぁぁぁ!??』

 

 ちょっとうるさいぞー。黙って見てろー

 

 『こいつ後で泣かす。絶対に泣かす』

 

 「それにしても、七草会長遅くないか?」

 

 「…確かに遅いな」

 

 「そうですね」

 

 そうこうしていると、七草真由美が今頃になって来た。真っ白なサマードレスとデカイつば付きの帽子を着て

 

 「「『…』」」

 

 九校戦への道中は基本私服でもいいらしいが、一年全員は制服だし、2年生連中も半数が制服だ。それとくらべ3年生はほぼ全員が私服で来ているのは知っていた。そのため俺と龍夜はもう来たか程度の認識だし、達也に至っては端末にチェックを入れたくらいだった

 

 「ごめんなさい達也君、摩利。私のせいでこんなに待たせちゃって」

 

 「いえ、事前に事情は聞いていましたので、大丈夫です。それにこうして会長を待ってたのは皆の総意ですから

 

 「ふふ、ありがと。あっ、龍夜君。これ、どうかな?」

 

 そう言いつつこっちに服を見せつけるように話しかけてきた

 

 「あー、似合いますね」

 

 「…もうちょっと照れながら褒めてくれもいいのに…でもありがと」

 

 そういいバスに乗った。褒めたのは実は龍夜じゃないと知ったらショックなんだろうなぁ

 

 『それよりも身体返せ』

 

 OKOK。今頃雫達も、深雪の機嫌整ってる頃だろうしな。主導権返すぞ

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 龍夜side

 

 いよっしゃぁぁぁぁぁ!!なんとか身体の主導権ゲット!!!

 

 「龍夜何してる。早く乗れ」

 

 「わかりました」

 

 渡辺先輩に急かされたので早くバスに乗り込む。座席には笑顔を浮かべてクローズドラゴンと戯れる姉ちゃんと一息ついたほのか達がいた

 

 「お待たせ。なんとか姉ちゃんを止められたか?」

 

 「うん。急に逃げるからビックリしたけど、達也さんは誰もやりたくない事を率先してやってるって褒めたらなんとかできた」

 

 「弟ながら思うが兄貴が関わると人が変わるからなぁ…取り敢えず、サンキューな」

 

 「ふふ、別にいいよ」

 

 姉ちゃんは無事に止められたし、もう一安心のようだな

 

 「…なぁおい、やっぱり北山さんって…」

 

 「…言うな。俺は入学当初からわかってる。その想いを向けている方はそれに気づいてないこともな」

 

 「……嘘だろ…そんなのあんまりだぁ…」

 

 「まさか司波弟が鈍感属性だなんて…たまげたなぁ…」

 

 「…おのれ司波弟ぉぉ!!」

 

 ひっ…!なんかバスの後ろから無数の視線を感じた…怖っ…

 

 『お前…背後には気をつけろよ…マジで』

 

 エボルトにも心配させられたか…だが俺は殺気には気付けるほど敏感だからな。安心しろ

 

 『…こいつマジで刺されるんじゃないかな…』

 

 おい不穏なこと言うな

 

 そんなこんなあったが、なんとかバスが出発した

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 三人称side

 

 「もう龍夜君ったら!もうちょっといい反応くらいしてほしいのにあの反応は酷いわよ!」

 

 バスが出発してしばらく、最前席に座る真由美はそう愚痴る。しかし隣の席の鈴音は無表情+冷ややかな目線を向けていた

 

 「お言葉ですが、龍夜君はあれで鈍いところがあるらしいので、そんな期待をしてても意味ありませんよ」

 

 偶然にも本人には聞こえていないが、仮に聞こえてたら「俺の何処が鈍いんですか!?」とツッコむような発言を真由美に浴びせる鈴音

 

 「リンちゃんちょっとひどくない…?」

 

 友人にすら見限られ、悲しむ真由美。だが、鈴音は彼女の事をよく知っているので、特に心配する素振りを見せない。しかし中には彼女の罠に引っかかる人間も存在するのである

 

 「会長、大丈夫ですか?どこか具合が悪いんですか??」

 

 真面目に自分の職務を全うする生徒会副会長も良い例だ

 

 「あ、ううん。別にそういう訳じゃないのよ。気にしないで」

 

 「いえ!そんな気遣いは無用です!我々を心配させまいと気遣って体調を崩されたら、元も子もありません!!」

 

 胸に手を当て力説する彼だが、視線が下に下がると頬を赤く染めた。真由美がだらしなく座ってるので、彼女のサマードレスの裾から太腿が覗いているのを見てしまったからだ

 

 「副会長、どこを見てるんですか?」

 

 「い、いえ市原先輩!別に何も…ただ会長にプランケットをと思いまして…」

 

 「そうですか。それではどうぞ」

 

 「いや、ちょっ──」

 

 立ち上がって促す鈴音にわざとらしく胸元を隠す真由美。この2人の先輩の悪ふざけに服部はなんもなす術はなかった

 

 「──全く、何やってんだかあの2人は…」

 

 一瞬注意しようかと思ったが、それで真由美がすっきりするならそのままにしてやろうと思い、立つのを止めた。その代わり、隣でため息ばかり吐く女子生徒の方を向く

 

 「花音。2時間くらい待つことも出来ないのか?」

 

 摩利の言葉にボーイッシュなショートヘアをした彼女──名は千代田花音──は反応したのか、その発言がスイッチになったのか知らないが、突然不満を爆発させる

 

 「私だって2時間や3時間は待てますよ!けど今回は啓も技術スタッフとして呼ばれてるからすっっごい楽しみにしてたんです!今日もバスの中で一緒だと思ったのに!!なんで技術スタッフは作業車で移動なんですか!?バスだって座席に余裕がありますしそれでも足りないなら二階建てでも三階建てでも持ってくれば良いんですよ!どうせ移動中は作業なんか出来ないのに!あぁもう納得いかーん!」

 

 彼女が言う"啓"とは現在作業車に乗っている技術スタッフ、五十里啓(いそりけい)という男子生徒であり、花音と彼は許嫁同士で学校でも有名なほどのバカップルなのだ

 

 「はぁ…毎度の事ながら、五十里が関わると人が変わるなお前は」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 龍夜side

 

 バスでの移動中は雫達と話したりして暇を潰していたが、しばらくして姉ちゃんが外の景色を眺め始めた。バスは自動車と違って車高が高いので、見える景色も変わるからつい眺めてしまうんだろう。そう思い込んだ俺は雫達との会話を再開した

 

 「え…?何あれ…?」

 

 突如姉ちゃんが何かに反応したらしい。クローズドラゴンも窓に引っ付いて外を見る

 

 「姉ちゃん。どうかしたのか?」

 

 「龍夜、あの車、様子が変なの」

 

 姉ちゃんが指差したのは反対車線の車だった。高速道路とはいえ、他の車より明らかにスピードを出していた。しかし反対車線だし間に壁もあるからこっちには被害はこない

 

 「確かにオーバースピードだけど反対車線だしこっちには問題ないでしょ──」

 

 ──そう思ったのも束の間。例の車は突如ブレーキをかけ、ガード壁に火花を散らし追突。勢いは止まらず宙を浮きこちらの車線に向かって落ちる。しかも狙い澄ましたかのようにバスの前に落ちただけでなく火の手も上がる

 

 「危ない!!」

 

 バスが咄嗟に急ブレーキをかけ、シートベルトをしてない生徒が悲鳴を上げた

 

 「きゃあ!」

 

 「ッ!?雫!!」

 

 シートベルトをしてなかったのか、雫がフラついて倒れそうになる。俺は急いで雫を抱える

 

 ──フニッ

 

 なんか触れた気がするが、俺は無視してCADを操るが…

 

 「吹っ飛べ!」

 

 「消えろ!」

 

 「止まって!!」

 

 と、他の生徒達も魔法を使用してしまい、俺は咄嗟に魔法をキャンセルした。しかしこの行動が事態を悪化させてしまう!

 

 「馬鹿!やめろ!」

 

 渡辺先輩が止めさせるがもう遅い!同じ物体を対象に複数の魔法を使うと、それぞれの想子波が干渉してしまいキャスト・ジャミングと似たことが起きてしまう。この状況を打破するにはより強い干渉力を持った魔法が必要となる。なら俺達の出番だ

 

 「姉ちゃん、俺はバスを減速させる。姉ちゃんは火を止めてくれ!」

 

 「えぇ!わかったわ!」

 

 「くっ…無茶だ司波妹!こんな想子の嵐の中──」

 

 次の瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それとほぼ同時に俺と姉ちゃんの魔法が発動。火を上げた車は鎮火し、車は徐々に減速される。しかしそれだけでも足りないから十文字会頭の防壁魔法で衝撃を緩和する

 

 「よっし!雫、無事か?」

 

 「無事と言えば無事なんだけど…あ、あの龍夜…」

 

 「ん?どした?」

 

 「左手…///」

 

 「左手がどうしt…!?!!??!」

 

 ななななんてことをしてるんだ俺!助けるとはいえ左手が雫の胸に触っちゃってる!?なんで!?

 

 『お前雫を抱きかかえた時から触ってたぞ』

 

 嘘でしょ!?と思ったけどなんかフニッて触った覚えある!アカンこれじゃ俺変態のレッテル貼られるじゃん!!

 

 「すす、すまんな雫!!」

 

 「別に…大丈夫///」

 

 なんとか謝罪してことなきを得ようとするが周りから白い目で見られてる!…ってかなんか背中が寒いな…

 

 「…龍夜?」

 

 …なんという事でしょう…我が双子の姉が笑顔でこっちを見てるではありませんか。しかも目は笑っていませんね

 

 「申し訳ありませんでしたお姉様。一回だけ何でもするので許してくださいませ」

 

 「ん?今何でもするって…」

 

 日本に古くから伝わる奥義、DOGEZAをして許しを請う俺。みっともない。てか誰だ今の

 

 「…わかったわ。九校戦が終わったら買い物に付き合いなさい」

 

 「ハイ…」

 

 なんとか(車内の)事態は収まったが、周りの俺の評価は凄い下がっただろう

 

 「くくっ、君も思いがけないことするな」

 

 座席に座ると渡辺先輩から声をかけられた

 

 「あれは偶々ですよ。助けようとしたらあの形になっただけなんです!」

 

 なんとかバスも発進するが、到着までの間渡辺先輩と七草会長から凄い弄ばれた

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 無事に九校戦の会場、富士駐屯地に到着した。小型の機器や工具などを運ぶための役目に兄貴が率先して、俺と姉ちゃんはそれについてく形となるため、他の生徒と離れることになった

 

 「兄貴、さっきのあれ。ただの事故ってわけじゃ無いよな。あんな飛び方異常だったし」

 

 「あぁ、俺もそう思って車を調べてみたら、魔法の痕跡が見つかった」

 

 その言葉に姉ちゃんと俺の表情が引き締まる。つまりあの事故はわざと起きた物なのだ

 

 「魔法が使われたのは3回。タイヤがパンクした時、車体がスピンした時、そして車体が壁を越えた時だ」

 

 「つまり魔法を使ったのは運転手…?」

 

 「そういうことになるな。小規模の魔法を最小出力で瞬間的に発動したから、魔法式の残留想子ですら検出されなかった。俺だって()()()()()気づかなかったほどだ。専門の訓練を積むことで非常に高度な技術を身に付けたんだろう。"使い捨て"にするには惜しい腕だな」

 

 「なんて卑劣な…」

 

 俺と姉ちゃんはその運転手に使い捨てるよう命令した奴らを許せない…

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 三人称side

 

 龍夜達と離れた雫達にある女性達が話しかけてきた

 

 「あ、雫にほのか!久しぶりね!」

 

 「エリカに美月にレオに…彼は?」

 

 「自己紹介するよ。僕の名は吉田幹比古。エリカ達と同じE組さ。よろしく」

 

 「北山雫。A組」

 

 「光井ほのかです。雫と同じくA組です。よろしくお願いします」

 

 幹比古と紹介を交わし、雫はエリカに問いかける

 

 「それでエリカ、なんでここに?」

 

 「まぁ深雪や雫達を応援しにきた──てのは建前で」

 

 するとエリカは雫の肩を掴み小声で話しかける

 

 「あんたと龍夜君の関係を発展するのを手助けするための」

 

 「────えっ?」

 

 「まぁその後どうするかは雫次第だけど」

 

 「……うん、頑張って見る」

 

 

 

 

 ネタ:ビルド世界での出来事シリーズ⑥

 

 戦兎「クローズドラゴンって何故か龍夜には懐いているよな」

 

 万丈「そうだよな。なんで?」

 

 戦兎「…もしかして万丈と龍夜が似てるから?」

 

 万丈「は?そんなわけないだろ」

 

 龍夜「でも俺も何で懐かれてるかわかりませんよ?」

 

 戦兎「ならその説が有力かもな」

 

 クローズドラゴン「キュオーン」




お前ら、こういう龍夜と雫のイチャイチャが見たいだろ?見せてやったぜ
エ「こいつ…やりやがった…」
Youtubeで5月10日より東映公式チャンネルで仮面ライダービルド開始!俺もこれみてビルドの知識を本編に活かすぜ!
今更ですが、大会の龍夜の衣装案リクエストをしておりますのでよければそちらでこれを着せたい!といったリクエストをお書きください
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=280047&uid=318676


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第15話 懇親会へ、参加

しばらく体調不良により投稿遅れてしまったことをお詫びします
お医者様曰く新しい環境に身体が慣れてなかったのが原因とのこと


 移動中にハプニングがあったものの、無事に九校戦会場へとたどり着いた俺達。ちなみに俺は女子から敵視されてるが…これは俺自身の罪と罰として受け入れるしかない…

 

 『でも本音は?』

 

 この事故は未来永劫俺の黒歴史として全校生徒に刻まれるのだろう…それだけは嫌だ!!

 

 「龍夜、何で頭を抱えてうずくまってるの?」

 

 「だって姉ちゃん、あんな事あって雫にどんな顔して会えばいいの!?これじゃ俺変態だと思われてるよ!」

 

 「過ぎた事は仕方ないわよ」

 

 「姉ちゃん、その言葉はあってるかもしれないけど、それ、目逸らさないで言ってくれる?」

 

 「…」

 

 うんこうなるよな。俺も姉ちゃんの立場だったらそうするわな

 

 『俺もそうする。誰だって目の前でセクハラした奴は擁護できないだろ』

 

 くぅ…エボルトのくせして言い返せねえ…てかエボルトにマウントとられまくってる俺情けねぇ…

 

 話は変わるが、本来数時間で会場まで行けるはずの距離にある一高だが、何故大会開始の2日前に現地入りするのか、その理由は今日の夜に行われる懇親会というのに参加するかららしい。その名の通り、各校の親睦を深めるためにあると思うのだが、これから闘うことになる相手にそんな事をするはずなく…バチバチと火花が散るような感じになるらしい。七草会長も「これだから本当は参加したくないんだけどね…」と愚痴をこぼしてたことからもどんな事になるのだろう

 

 だが九校戦に参加する以上、この懇親会にも参加しなきゃいけないらしい。俺と姉ちゃん…ってか、生徒全員が制服でいいのだが、肝心な事がある──兄貴の制服には1科生の校章がない。これには流石になんとかしないとと思い、兄貴に一高の校章が付けられたブレザーが支給されました

 

 「渡辺先輩、俺は普通にいつものブレザーでもいいと思うのですが…」

 

 「正面から校章が見えなければ一高生とわかってもらえないぞ?」

 

 「いや、校章よりも制服の色でわかると思うのですが…」

 

 そんな兄貴だが、いつもは俺達を除いた1科生の殆どから敵意を向けられても動じないのに、今回ばかりはそわそわしてて落ち着きがないらしい

 

 「それにしても兄貴、予備のブレザーとはいえ、案外似合うよな。どうせなら新調すれば?」

 

 「2回しか着ないのに、そんなの勿体無いだろ。ワッペンならまだしも、これは刺繍だからな」

 

 「いや、2回とは限らないぞ?秋には論文コンペもあるし、君も1科に転籍するかもしれないからな」

 

 「まさか、そんなことありませんよ」

 

 と、当の本人は謙遜してるがほのかや美月がここにいたら「そんな事ありませんよ!」って言ってくれるに違いない。そう思ってる内に姉ちゃんが兄貴のブレザーの校章が施された部分を触り

 

 「すみません、お兄様。時間があればお直しできた筈ですのに…」

 

 「いや、大丈夫だ。すまないな、気を遣わさせてしまって」

 

 はい俺が目を離した隙に2人で甘い雰囲気醸し出すんだから〜

 

 『これにゃ慣れだな。もう慣れるしかない』

 

 それもそうだな。そうするしかないよね仕方ないね(現実逃避)

 

 取り敢えず兄貴達を揶揄ったりしてるうちに懇親会の時間になった

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 懇親会の時間になると、一高から九校までの選手とエンジニア等、九校戦に関わる生徒達の数は約300人以上が会場へと集まりだす。しかし国防軍の演習場のホテルで一番大きい宴会場を使ってるからか、鮨詰めというオチはない

 

 しかし300人以上がここに来てるということは、多くのスタッフが必要になるということだ。いくらホテルの専従スタッフでもまだ足りなく、基地からの応援やアルバイトらしき人物も足を止めずにあっちこっちへ動き回るというのは、俺達兄弟は予想していたから驚くことでもないのだが…

 

 「ご主人さま、ドリンクは如何ですか?」

 

 「…エリカ、ここで何してるんだ?」

 

 「見たらわかるでしょ龍夜君。ここでアルバイトさせてもらってんの。ちなみにレオと美月は裏方で」

 

 えぇと、なぜかメイド姿のエリカがここにいた。話を聞く限り、どうやらあの2人も一緒らしい

 

 「驚いた…エリカも来ていたのね」

 

 「というかあの2人もここに来てるのか」

 

 兄貴と姉ちゃんも驚いていた。そういやエリカの実家は十師族に連なる家柄、百家の一つの千葉だったのを思い出した。どうやら実家のコネを使ってここまできたらしい

 

 「あと龍夜君に会わせたい人がいるの。おーいミキー。こっち来てー」

 

 「「ミキ?」」

 

 俺と姉ちゃんがミキという名前に困惑を示すが、兄貴だけはいつもの無表情だ。つまり兄貴と関わりがある事から、2科生か?

 

 と思ってると、給仕服を着た涙黒子の青年がこちらへと近づいてきた

 

 「あのねエリカ。何回も言ってるけど、ミキじゃなくて幹比古!」

 

 「紹介するわね。吉田幹比古君。通称ミキ」

 

 「聞いてた?!」

 

 あー、エリカに翻弄されてますねこれ

 

 「あー…取り敢えずよろしくな吉田君。俺は司波龍夜、龍夜って呼んでくれると嬉しい」

 

 「いいよ龍夜。その代わり、幹比古って呼んでくれ。苗字で呼ばれるのは好きじゃないんだ」

 

 「わかった。よろしくな幹比古」

 

 「こちらこそよろしくね。龍夜」

 

 俺との紹介も終わり、今度は姉ちゃんと紹介するのだが…

 

 「初めまして、幹比古さん。妹の深雪です。今後ともお兄様と仲良くしてください」

 

 「は、はい!!」

 

 あ〜あ、これは他の男子と同じように顔を赤くしてますね

 

 『てかあんな反応しないのお前ら兄弟だけだろ』

 

 確かにそうかもな…

 

 「てか、深雪も龍夜君も、てっきり2人の周りにいろんな人達が話しかけてくるかと思ってたけど、案外こないのね」

 

 「…まぁそういえばそうだが…あそこ見てみろよ」

 

 俺が指差した先をエリカが振り向くと、そこには密集して時折コチラを見て話し合ってる男子生徒一同がいた

 

 「兄貴が姉ちゃんと一緒に行動するから、男子が近寄ってこないんだとよ」

 

 「あぁなるほど…んで龍夜君は?」

 

 「俺は移動中の事故のせいで女子生徒からの信頼度0だから…」

 

 「何があったのよ…」

 

 言えないよな…あんなこと起きたなんて…

 

 「これじゃ、まるで達也が深雪さんの番犬みたいだね」

 

 という幹比古。あながち間違ってないな

 

 「いいえ、私がお兄様の番犬なんです」

 

 …お姉様、ブラコンがすぎますぞ…

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 三人称side

 

 龍夜と幹比古が自己紹介を済ましてる最中、一高から離れた一団が話し合っていた。紅蓮色のブレザー、黒いズボンといった彼らは戦闘系の魔法を主軸とした第三高校、通称三校の生徒達あった。彼らも、一高と同じく九校戦の優勝候補として、期待が寄せられていた

 

 そんな中、とある三校の生徒が、ある所を見て動こうとしない。

 

 「将輝、どうしたんだい?」

 

 「あ、いや…」

 

 友人に呼ばれた彼は一条将輝(いちじょうまさき)、十師族の一つ、一条家の次期当主として、クリムゾンプリンスの異名を持つ三校の一年であった。そんな彼の視線の先には、談笑している深雪と達也と龍夜の三兄弟だった。彼の名を呼んだ友人は、その視線を辿って何かを察した

 

 「…珍しいじゃないか将輝、君が女の子に興味を持つなんて」

 

 そんな彼の名は吉祥寺真紅郎(きちじょうじしんくろう)、カーディナル・ジョージという異名を持つ彼もまた、三校の生徒ととして九校戦に参加してきたのだ

 

 「ジョージ、確か彼女は…」

 

 「あぁ、一高の司波深雪さんだね。出る種目はミラージ・バットとアイス・ピラーズ・ブレイク。一高の女子で最も人気が高くて、新人戦でも優勝候補って言われてるよ」

 

 「…彼女の隣にいる彼らは…?」

 

 「もう1人の方は詳しくは知らないけど…もう片方は知ってるよ。彼は司波龍夜、出場種目は────2つとも将輝と同じく、アイス・ピラーズ・ブレイクとモノリス・コードだよ」

 

 そう言った瞬間、将輝の顔が強張った。なにせ自分のライバルになる人物がいるのだ。緊張しないはずがない

 

 「なるほどな。だが、勝つのは俺達三校だ」

 

 今ここに1人の男の恋(一方的)が成立するかどうか、それはこの九校戦に関わるかもしれない

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 龍夜side

 

 楽しく談笑していた時間はなくなり、今度は関係者の来阪挨拶が始まる。顔も名前も知らない人達か次々と舞台に現れて長い挨拶して長いカンペ読んで挨拶する。なんでこういうのは長いんだろうか…

 

 「なんでいつの時代も、こういうのは長いんだろ…」

 

 「半端な挨拶じゃ、主催者達に申し訳たたないからね。こういうイベントの時の集まりって、普段からそういう人たちと関係があるだろうね」

 

 「おーやだやだ、そんな大人の付き合いに巻き込まれちゃ堪んないね」

 

 俺の愚痴に幹比古がそう言い、エリカが嫌味を言う

 

 『続きまして、九島閣下よりお言葉を頂戴しております』

 

 そのアナウンスが()()()を言った瞬間、この会場の雰囲気が変わる。それはそうだろう。何故ならば今から現れる人物は伝説と呼ばれる九島閣下なのだ

 

 そんな彼が何故ここに来ており、来賓挨拶をするということは稀にあるのかないのかわからないが、ここに来るのは当然だろう。なにせあの人は九校戦には毎年顔を見せていることはよく知られているからな

 

 そう思いつつ、彼が現れた──訳ではなく、何故か女性が舞台に立った。これには会場の間で疑問の声が出てきている

 

 『ん?よく知られる情報じゃ確か男だろ?なんでここに関係なさそうな女が来てんだ?』

 

 それについては俺も知らないが──────待て、なんか気配を感じた。場所は先程の女性の斜め後方辺り、しかし皆それに気づかずに女性に注目している…つまり…

 

 「精神干渉系統魔法か…」

 

 『えっマジで?俺の精神も干渉されちゃってる?』

 

 それは多分ないから安心しろ

 

 「兄貴は?」

 

 「言うな。俺も気づいてる」

 

 俺が気づいたのは先程だが、兄貴はそれよりも早く気がついていたらしい

 

 その瞬間、九島閣下が背後から現れた。魔法を感じられなかった人達は恐らく彼が瞬間的に移動したと勘違いしてしまうだろう

 

 九島烈(くどうれつ)、かつて世界最強の魔法師と呼ばれ、20年以上前に第一線を引いた、十師族の一つである九島の前当主である人物

 

 「まずは私の悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する』

 

 マイクを通して、謝罪の声が出てきた。これは魔法じゃないとはいえ、たった一言で場の騒乱を鎮めたのも最早魔法の一つと言っても過言ではないだろう

 

 『今のはちょっとした余興だ。魔法というよりは手品に近いだろう。だが私の魔法に気づいた選手は見たところたった6人。つまり、もしも私がテロリストだったとして、爆弾なり毒ガスなり仕込んだ場合、対処できるのは6人だけだということだ』

 

 閣下のその言葉に会場の静寂は別のものへと変わる…

 

 『諸君、私が使ったのは低ランクの魔法だが、君達はそれに惑わされ、私を認識出来なかった。明後日から始まる九校戦はまさに魔法の使い方で競う場なのだ。諸君の"工夫"を楽しみにしているよ』

 

 会場は一斉──とはいかなかったが、会場中から拍手が巻き起こった。魔法ランク至上主義の現代魔法師において、それに異議を唱える。魔法はあくまで"道具"であると言ってのけ、それを実際にわかりやすく実践をした。誰にも真似出来ないレベルで…

 

 『すげぇな。これが世界最強の魔法師…』

 

 「あぁ…これが九島閣下が"老師"として呼ばれる所以…」

 

 「これが老師の実力か…」

 

 俺も兄貴も、拍手をしてる中でそう呟いた…

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 三人称side

 

 懇親会も終わって、各校の選手やスタッフが次々と会場から出ていくが、龍夜は1人、会場中を彷徨いていた

 

 『お前1人で何やってんの?』

 

 「ちょっと雫と話したくて。あの事も謝りたいし」

 

 エボルトの言葉に返事するが、周りは誰もいないので誰の目も気にする事なく会話をする龍夜

 

 「謝りたいけど…どこにいるんだ雫の奴…」

 

 『まぁあんなことしたから嫌われたかもな。最悪ビンタの10発や20発は覚悟しとけ』

 

 「そこは1発2発じゃないの!?」

 

 エボルトにツッコミを入れつつ雫を探していく龍夜。しかしどこを探しても彼女はいなかったが、先程無事に見つかった

 

 「お、いたいた。雫、ちょっといいか?」

 

 「…龍夜、どうかした?」

 

 「あぁ、実はあの時のことで言いたいことがあって…すまん。俺の不注意であんなことしてしまって…」

 

 「あのことか…別に、大丈夫だよ。だから顔を上げて」

 

 平謝りする龍夜を宥めつつ例の事件(ラッキースケベ)を許す雫

 

 「許してくれるのか…ありがとう。お詫びに今度遊びに行こうぜ」

 

 「そうだね。あっ、九校戦が終わったら家が持ってるプライベートビーチにでも来る?どうせなら達也さんや深雪達も誘って」

 

 「それもよさそうだな。エリカやレオ辺りにも聞いてみるよ」

 

 ────ここで一言言わせてもらいたい。龍夜と雫からしてみれば単なる友達として家に招待してるだけである。しかし周りはそうと知らず、男女の仲として二人を認識していた──つまりは、聞き方によってデートや両親への挨拶と解釈する場合も多いのだ

 

 「あらあらあの子達、結構いい仲なのね」

 

 「お家に招待…?羨ましすぎるんだが?」

 

 「なんだよ…結構進んでるじゃねぇか…」

 

 「どうして…お前らは…俺を…リア充にしてくれないんだ…」

 

 女性選手が二人を見ながらニヤけ、男子スタッフは異性の家に招待されたことに嫉妬し、銀髪男子選手は何故かボロボロで茶化し、金髪のガタイがいい男子選手は(何故か銀髪男子と同じ声で)リア充の仲間入りをさせてもらえないことに絶望していた

 

 そんなモブ達の台詞をよそに二人は、心の底から楽しそうに笑い合い話し合いながら、時間を過ごした




活動報告に龍夜の衣装案のリクエスト受け付けておりますので、よろしければ是非そちらにも行ってみてください
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=280047&uid=318676


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第16話 九校戦開始、前夜

完全復ッ活ッ
アグニカになりたいマクギリス、完全復ッ活ッ!
あと温泉回はR-15なのかわからなかったですが一応入れておきます



 

 懇親会が終わった翌日の夜中、兄貴は一人作業車でCADの調整をしていた。後から聞いたがCADの起動式のアレンジを行なっていたらしい

 

 「達也君、そろそろここまでにしないかい?もうかなり時間も過ぎたし」

 

 五十里先輩に話しかけられたところで作業を中断した兄貴。時計を見ると数時間を経過しており、周りも先ほどまで作業していた兄貴と五十里先輩、そして実はいたがCADに関する知識に乏しいので横から口出ししなかった(から存在感が薄かった)俺と、ここにはたったの3人程しかいなかったのだ。エボルトはとっくの昔に寝た

 

 「達也君の担当はまだ先だし、早めに寝た方がいいよ。僕の担当は明日からだからまだここで作業するけど」

 

 「ではお先に失礼します。」

 

 啓に先に上がる事を報告して、端末の電源を切る兄貴

 

 「…もう終わった?」

 

 「龍夜君も、こんな真夜中にここまで来なくてもいいんだよ?デバイスの調整なんて面白くないだろうし」

 

 「いえいえ、見てるだけでも学習になりますし面白いですよ。それに言いたくないんですが他の学校からのスパイもいないとは限りませんし」

 

 と言ってるが本心は兄貴に何かあったら姉が何を仕出かすか不明なので確認のためにここにいるんだがそういうのは言ってはいけない気がする

 

 「それでは五十里先輩、お先に失礼します」

 

 「明日に備えるのもいいですけど徹夜で仕上げないでくださいね?千代田先輩がキレますよ」

 

 「ははっ、痛いとこ突くね龍夜君…それじゃおやすみなさい」

 

 そう言って作業車を後にする俺達

 

  余談だが兄貴の同室は俺となっている。元々兄貴の同室となるはずだった生徒が拒否を示したが、それでは兄貴が機材と一緒の部屋になるので必然的に弟である俺に白羽の矢が立ったのだ。

 

 「どうする?俺としてはさっさと部屋に戻って寝たいんだけど…」

 

 「それもそうだな。明日に備えて寝てもいい────その前に、一仕事あるがな」

 

 部屋に戻ろうか話してたら、兄貴の雰囲気が切り替わった。どうやら非常事態らしい

 

 「マジか。まさかここに侵入者?」

 

 「そのまさかだ。数は3人、武器は主に拳銃。生垣に扮したフェンスを乗り越えてこちらに接近してる」

 

 そう言うや否や俺達は最大全力で外の森へと走る。森の中は星の光も満足に届かないが、大したことなく侵入者を視認できる場所までたどり着いた

 

 「どうやらあいつららしいな」

 

 「体つきからして男3人のようだ。向こうに気づかれる前にやるぞ」

 

 「了か──ちょい待ち。向こうにもう1人いるぞ。暗くて見えんが一高の制服か?」

 

 兄貴は特殊な目で見えてるが、どうやらもう1人はたまたま見えなかったらしい。俺は単に視力で捉えただけでそれが誰なのかは見えなかった。ただ魔法科高校の制服と色で一高と判断しただけだ

 

 「何?一体誰なんだ?」

 

 そう言ってる最中、そいつは懐から長方形の紙を取り出してそれに力を入れた…と言うより注いだの方が正しいだろう。その途端、手元が微かに輝き、侵入者…一々侵入者って言いづらいし賊でいいか…の頭上に電子らしきものが集まってパチパチと火花を散らした

 

 「あれってもしかして、古式魔法の呪符!?」

 

 「やっぱり幹比古か。そんな気はしていたが。だが…」

 

 どうやら魔法を使って対抗しようとしてたのは幹比古だったらしいがそんな事は今は置いといて──こちらが魔法を確認できたように賊共にも感知され、幹比古に反撃しようと銃を取り出した

 

 「幹比古が危険だな…兄貴!」

 

 「わかってる」

 

 幹比古の援護のために兄貴に声をかけたが、どうやら兄貴も同じ事を考えてたらしく自分のCADを取り出した一方で、俺は空気を肺にいっぱい入れるように深呼吸する。兄貴が賊共の拳銃を分解した

 

 「な、なんだ!?」

 

 奴らからしたらいきなり武器が壊れたように感じただろう。だが奴らは今度は腰に手をやり、小型爆弾か何かを取り出そうとしたその瞬間

 

 ああああぁぁぁぁぁ────!!!

 

 「「「!!??」」」

 

 俺が勢いよく叫んだ。今はなんとでもないだろうが、いずれこの叫びを聞いた警備員がここへ向かって来るに違いない。ここで撤退するか目撃者を消すか判断に困ってしまう──その一瞬が命取りだ

 

 空中に生じた雷が賊共に直撃、意識を刈り取られぶっ倒れて動かなくなった

 

 『何が起きた!?叫び声で起きた途端雷が落ちたんだが!?どういう状況!?』

 

 エボルトが俺の叫びと幹比古の雷の音で目を覚ましたらしい。めんどくさいから説明は後でな

 

 「達也に龍夜、ありがとう。おかげで助かったよ」

 

 賊が倒れた後に幹比古がこっちに来てるが、兄貴は幹比古が使っていた魔法に関心を示しているらしい

 

 「それにしても、見事な腕だな。死角から複数の標的に向かって正確な遠隔攻撃。あくまで捕獲を目的とした攻撃で相手を無力化するとはな」

 

 兄貴が他人を高く評価するなんて珍しいものだ…と思ってたが反対に幹比古の表情は暗くなってた

 

 「ても僕の魔法は本当なら間に合わなかったよ。2人がいなかったら、僕は確実に撃たれてた」

 

 「そうだな」

 

 「え?」

 

 幹比古の自嘲的な言葉にアッサリと肯定する兄貴。一瞬割って入ろうか考えてたが、兄貴は姉ちゃん以外にはいつもこうなので、余計な口出しなどせず、静観する

 

 「俺達の援護がなかったらお前は確かに撃たれてた。だが実際には撃たれてないし、それ以外に関しては完璧な結果だ。だったら、次に向けて改善することが出来るし、改善するべきポイントはハッキリしている」

 

 「改善するべきポイント…」

 

 兄貴が言った事をまるで自分に言い聞かせるように幹比古はそう呟いた

 

 実は懇親会が終わった後、俺はエリカをこっそり呼び出して幹比古について情報を聞いていた。幹比古の実家吉田家は古式魔法での名家らしく、その中でも幹比古は優秀だったことから"神童"と呼ばれたこともあったらしい。しかしとある事故により突如魔法力が低下し、2科生になったとのことだ

 

 「幹比古、自分でも気づいてると思うが、改善するべき所は魔法の発動スピードだ」

 

 そういや、さっきも呪符を取り出してから雷を発動させるまでに時間がかかっていた。幹比古が言ってたように俺達がいなかったらその隙をつかれ、幹比古は撃たれてたかもしれない

 

 「発動スピード…か。でも今の僕じゃそれを改善なんてこと──」

 

 「いや、できる」

 

 幹比古の言葉を遮り、兄貴はそう断言する

 

 「何だって!?」

 

 兄貴の言葉に驚愕する幹比古。そりゃ、今まで自分じゃ出来なかったのに、それができると言われてるから、そんな反応をしてしまう

 

 「お前の魔法には無駄が多すぎる。問題なのは自分の能力ではなく、魔法の術式自体そのものだな。それのせいで、魔法を使う際のスピードが遅くなってしまう」

 

 「ま…待って!なんで達也はその事がわかるんだ!?この術式は、吉田家が長い年月をかけて古式魔法の伝統に現代魔法の成果を積極的に取り入れ、何度も何度も研究を重ね続けた物なんだ!それなのに、なんで君は一目見ただけでそんなことが言えるんだ!?」

 

 「わかるからだ」

 

 幹比古の問いに兄貴が答えを言う。兄貴にはあって、俺にはない物がある

 

 「俺は視るだけで魔法の構造がわかる。起動式の内容を読み取って、魔法式を解析することが出来る。──まぁ、信じてもらう必要はないがな」

 

 兄貴は突き放す様な言い方で、幹比古は戸惑ってるのか視線を彷徨わせる一方だった

 

 『うん。ところでこの倒れてる奴ら放置しっ放しでいいの?』

 

 エボルトに指摘されるまで忘れてた。そういや賊がいたんだった

 

 「幹比古、話の途中で悪いが、警備員を呼んできてくれないか?」

 

 「…あぁうん、わかったよ」

 

 そう言い幹比古が走り去った。となると当然、ここにいるのは俺達兄弟と倒れたままの賊共だけだ

 

 そんな時にタイミングを見計らっていたのか、背後からある男性が姿を現した。まぁ気づいていたし、驚く事ないんだけどな

 

 「やっぱり近くにいたんですね。風間少佐」

 

 「基本的に他人に関して無関心な特尉が、他人にアドバイスするとは、随分と珍しいな」

 

 「ですね」

 

 「無関心は流石に言い過ぎだと思いますが」

 

 『とはいえ合ってるようなもんだろ。お前って基本妹弟以外には無関心ですーって、雰囲気醸し出してるぜ?』

 

 「…風間少佐、こいつらを引き取ってもらってもよろしいですか?」

 

 「別に構わんよ」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 三人称side

 

 時は先戻り、達也がデバイスの調整をしている最中、女子部屋では深雪、ほのか、雫達が話をしていると、ノックがなった

 

 「あら?誰かしら?」 

 

 「私が言ってみるよ」

 

 深雪が疑問に思い、ほのかがドアを開けると赤髪の小柄な一高生──アメリア=英美=明智=ゴールディ、通称エイミィがいた。その隣には美少年と見間違える程の中性的な少女──里見(さとみ)スバルがおり、実質九校戦の一高女子メンバーが勢揃いしていた

 

 「エイミィ、どうかしたの?」

 

 「温泉いかない?」

 

 「温泉?あるのは知ってたけど、ここって軍の施設なんだよね?使って大丈夫なの?」

 

 疑問を口にした雫の言う通り、ここは国防軍の施設。だから許可された場所以外への使用は憚られる

 

 「フロントで聞いてみたらいいってさ。湯着も貸してくれるらしいよ」

 

 「流石だねエイミィ」

 

 こうして女子達は温泉へと向かうことになった

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 地下に温泉施設があるのだが、軍事施設ゆえに観光向けのような物など存在せず、シャワーブースが別室に置いてあることくらいだ

 

 ちなみに湯着というのは帯がないゆったりした女性用の短丈浴衣をイメージとして近い

 

 「…ほのかってスタイルいいよね」

 

 「ど、どうしたの急に…」

 

 唐突に発せられた英美の言葉に身の危険を感じたほのかは少しずつ後退りしていく

 

 「ねぇほのか」

 

 「なに?」

 

 「向いてもいい?」

 

 「ダメに決まってるでしょ!」

 

 友人の悪ふざけなのはわかっているが、やはり身の危険しか感じないほのか。周りを見渡して、1番の親友である雫に助けを請う

 

 「雫!助けて!」

 

 「別にいいんじゃない?」

 

 「なんで!?」

 

 予想外なことに雫はあっさりとほのかを見捨てた

 

 「ほのか、胸が大きいから」

 

 そう言って自分の胸元見てサウナへ向かう雫。数秒後、浴場にほのかの悲鳴があがる

 

 「皆何やってるの…?」

 

 深雪の言葉に全員が深雪の方へと向いた。いつもは下ろしてる髪が今回はアップになり、普段では見えなかったうなじが色気を感じさせる。それはいくら女子同士とはいえ見惚れるには十分過ぎた代物であった

 

 「「「……」」」

 

 「な、何かしら…?」

 

 「皆!深雪は健全なんだから!やめてよね!?」

 

 自分に向けられた視線に戸惑う深雪。その沈黙はほのかが破る

 

 「いやーごめんね。つい見惚れちゃってた」

 

 「いくら女の子同士と言ってもね。性別なんて関係ないって思っちゃうんだよ。深雪を見ると」

 

 「からかうのもいい加減にして!」

 

 エイミィとスバルの揶揄に深雪は苦情を入れる

 

 「でないと、皆氷風呂に入るハメになるわよ?」

 

 深雪の脅迫に屈し、全員黙った。流石に氷像になるのは嫌だから黙るしかないのだろう

 

 「…なにこれ」

 

 サウナから出てきた雫が異様な空気を察し、疑問を口にする

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 いくら時代が変わろうとも、女子が話すことといえば恋バナやおしゃれなどである。そうすると自然に話は前日の懇親会へと移った。別の魔法科高校の男子が主にだが、例外として男性や、小父様と言った人も多い

 

 「そういや、三校に一条の跡取りがいたよね?」

 

 「あっ見た見た!結構いい男だったよね!」

 

 「それそれ。男は見た目じゃないっていうけど、顔も良ければ言うことなしよね!」

 

 流石に十師族の跡取りとなると、話が自然にそちらへと進んでいく

 

 「一条って言えば、彼、深雪のこと熱い眼差しで見てたよね」

 

 「えっ、そうなの!?」

 

 「もしかして一目惚れとか!?」

 

 「深雪ならあり得るかも。美人だし」

 

 チームメイトが十師族の跡取りに好意を向けられているときゃーなどといった歓喜の悲鳴が起きる事もあるが、反対に深雪は顔を引き攣らせていた

 

 「それで深雪、実のところどうなの??」

 

 「……真面目に答えるけど、一条さんのことはよく知らないのよ。写真でしか見たことないし…会場のどこにいたのかすら知る由もなかったわ」

 

 深雪の冷たい言葉に恋路を見守りたい少女達はあからさまに肩を落とした

 

 「じゃ、じゃあ深雪の好きなタイプってどんなの?お兄さんとか龍夜さんとか?」

 

 勇敢にもほのかが質問した。この質問を聞いた雫も反応する

 

 「お兄様も龍夜も実の兄弟よ?恋愛対象として見れるわけないじゃない」

 

 深雪の答えに雫とほのかはほっとした表情を見せる

 

 「雫は龍夜君のこと好きだもんねー」

 

 「ブフゥゥ!!!」

 

 すると英美が何を考えついたのか爆弾発言をした。突然のカミングアウトに雫は吹き出す

 

 「ちょっとエイミィ何言ってるの!?」

 

 「えー?だってさ、龍夜君と話してる時の雫、完全に恋してる乙女だもんね?」

 

 「………」

 

 英美の言葉に雫は反論出来ず、湯船に沈んでいく

 

 すると温泉に冷気が降り注ぎ、水温が下がっていく

 

 「み…深雪…?」

 

 ほのかが声をかけるが、深雪は返事をしない

 

 「……雫」

 

 「…どうしたの?」

 

 「龍夜は渡さないわよ?」

 

 「「………」」

 

 仮に漫画とかなら2人の視線の間にバチバチっと稲妻が出てきてるかもしれない。それだけこの2人が対立すると言うことを示しているのだろう

 

 (((怖いいいいいいい!!!!)))

 

 外野3名は隅っこでガタガタ震え、ただ2人の間に巻き込まれない様祈るしかない

 

 

 

 

 ネタ:ビルド世界の出来事⑦

 

 惣一「今更言うんだが、実は戦兎、記憶喪失なんだよ」

 

 龍夜「それであの天才キャラ立ててるんですか!?」

 

 戦兎「俺は元々(てぇん)(さい)物理学者なの!!」

 

 万丈「自分で天才とか相変わらず痛いよな」

 

 戦兎「そういう万丈は、殺人犯で脱獄犯」

 

 万丈「だから俺は殺してなんかn」

 

 ビュン!!(高速で何かが飛んでくる音)

 

 ガァン!(鋸が壁に刺さる音)

 

 4人「「「「…………」」」」

 

 美空「………刻むよ?」

 

 4人「「「「すみませんでした!!」」」」




衣装案のリクエストはともかく、オリジナル魔法突っ込んじゃっていいよね?答えはアンケートまで!
龍「しれっとアンケートをやりたいって言ってる感がする」
7/2 アンケート募集したのにそもそもやってなかった件について、すみませんでした。投稿して浮かれて寝てましたw


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第17話 九校戦、開始!その1

皆さん、夏休みの宿題はどうしました?作者は終わる間近まで頑張ってました
龍「でたよ夏休み最終日に宿題終わらせるタイプ」
あと今回は長くなると予想してるのでその1と言うように数字をつけました


 昨日会場に侵入者が出てきたトラブルがあったが、無事に九校戦が始まる。新人戦は4日目からなのでその間先輩方の試合を観戦するとしますか

 

 「確か一日目の種目って…」

 

 「男女スピードシューティングを決勝までやって、男女バトル・ボート予選をやるんだってよ。どうする?見に行く?」

 

 「七草会長から見にくるよう強く言われてるし、女子のスピードシューティングでも見に行くかな。んで、なんでお前出てきてんだよ。誰かに見られたらおしまいだぞ」

 

 俺の隣には何故かパンフレットを読みながらくつろぐエボルトがいた。しかもご丁寧に石動惣一としての姿でだ。俺の姿も目立ってしまう場合があるが、こっちの姿も十分目立つだろ

 

 「別にいいじゃねぇか。仮に見られても石動惣一として見られるだけだし」

 

 「それでも問題だって言いたいんだよこの野郎。惣一さんの頃の姿でもこっちじゃ十分目立つだろうが」

 

 口でそう言うが何度言ってもエボルトは聞かないのでもう諦めてる。それはそうと、これから七草会長が出場するスピードシューティングの会場に向かうべく、俺達は足を向ける

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 三人称side

 

 唐突だが九校戦の種目をざっくり説明しよう。九校戦は六つの種目で構成されており、選手1人につき参加することができる種目はその中の2種目

 

 『スピード・シューティング』

 

 通称『早撃ち』。規定のエリア内に射出されたクレーを破壊する競技。決勝トーナメントでは2人の選手による対戦型へと変わる

 

 『クラウド・ボール』

 

 低反発のボールを魔法又はラケットで打ち返し、相手側のコートへ落とした数を競う球技。早い話、魔法を使うテニスに近い

 

 『アイス・ピラーズ・ブレイク』

 

 通称『棒倒し』。両陣はお互い12本の氷柱を全て破壊する競技。龍夜と深雪と雫の参加する種目

 

 『バトル・ボート』

 

 『波乗り』と呼ばれる種目。全長3kmの水路をボートで進むレース競技。ほのかが出場する

 

 『ミラージ・バット』

 

 女子選手限定の競技。空中に投影されたホログラムを魔法で飛び上がりスティックで打ち、打った回数で競う競技。深雪とほのかが出場する

 

 『モノリス・コード』

 

 男子選手限定の競技で3VS3の団体戦。敵陣営のモノリスを指定の魔法で破壊し隠されたコードを送信又は相手チーム全員を戦闘不能にした方の勝利となる。龍夜が出場する

 

 以上の六つの種目、これの合計点でより高い点を取ったのが優勝校となるのだ

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 龍夜side

 

 会場に到着したのはいいが、人が多かった。結局、兄貴達のとこに着くと、もうすぐ会長の試合が始まる前だった。ちなみにエボルトは人気のないところで身体に戻させた

 

 「遅かったな。あと少しで始まる時間だぞ」

 

 「悪い。ちょっと道が混んでた」

 

 いつものメンバーと合流して、座席に座る。七草会長が姿を現すと観客席から歓喜の悲鳴があがる。最前列に至ってはカメラで写真撮影なんかしてる

 

 『あの女がそれほど人気があるということはわかるが…男だけじゃなくて女にもモテてないかあれ?』

 

 エボルトの言う通り写真を撮ってる人達は男性がほとんどなのに、中には女性の姿が見える

 

 「うちの生徒会長、男女問わず人気が高いのすげぇな…」

 

 そう言ってるうちに開始のブザーがなった

 

 「速い…」

 

 始まった途端に放たれたクレーが壊された。その光景に驚いた雫の台詞には同じくそう思う

 

 「兄貴、あれどうやって撃ち落としてるんだ?何か起きてるのか見えない」

 

 会長がクレーを破壊してるのはわかるが、その魔法がわからない

 

 「七草会長は空中でドライアイスを作り、奪った熱エネルギーを運動エネルギーへと変える。そのエネルギーを利用してドライアイスを発射して次々とクレーを破壊してるんだ」

 

 「ならなんで全部ど真ん中に当たってんだよ?」

 

 兄貴の答えにレオも興味を示してる

 

 「恐らく遠隔視の魔法『マルチ・スコープ』だな。それをやりながらドライアイスを作るという芸当は、情報量が多くて案外難しいものだがな。それを簡単に扱えると言うのは流石七草家といったところか」

 

 そうこうしてる内に、会長がどんどんとクレーを壊しパーフェクトを獲得し勝利。会長は決勝トーナメントへの出場が決定された

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 バトル・ボート予選会場

 

 ここもスピード・シューティングと変わらない程、人が多く見に来てる

 

 『それにしても男女比での試合と比べると明らかに女性が多すぎね?』

 

 「まぁ、あんなことしてるからだろうと思うけど…」

 

 渡辺先輩が何してるかだって?周りの選手達が膝をついて構えてるのに先輩だけそのまま直立なんだぜ。そりゃ目立つよ

 

 開始の合図と共に選手の1人が突如水面に魔法を使用。恐らく他選手の妨害と推進力を狙って使用したんだろうが…

 

 「自分まで巻き込まれてちゃいけないでしょうに…」

 

 『なんで自分の魔法で足を取られるんだか…』

 

 周囲の選手の足止めをすることに成功できてたが、自分ですら制御困難な波を生み出してしまったからかその選手ですら進んでいなかった

 

 しかし流石は渡辺先輩。そんな波を苦もせず、体勢を立て直してすぐにスタート。あっという間に渡辺先輩の独走状態になった

 

 「それにしても、よく風避けもない不安定なボートの上で立ってられるな」

 

 「恐らく硬化魔法と移動魔法の両方を使っているな」

 

 「硬化ぁ?達也、どこを硬くしてんだ?」

 

 自分の十八番(おはこ)である硬化魔法を使ってると聞いて、レオが反応した

 

 「硬化魔法というのは文字通り物質を硬化させる魔法だと思っている人もいるが、それは効果の一つというだけだな。"物体の相対位置を固定する"。それが硬化魔法だな。ボートと自分を一つの物体と定義した上で移動魔法を使ってるようだな」

 

 「つまりさっきのレオの説明は的外れだったってことね」

 

 「ンだとこのアマ」

 

 「エリカ、煽るな煽るな」

 

 「レオも誘いに乗らない」

 

 エリカがレオを煽ってしまったので仕方なく俺と幹比古が仲裁する羽目に。こいつも苦労してそうだな…

 

 「すまんな2人共。達也、解説の続きよろしく」

 

 「わかった。渡辺先輩の様子を見るに、上りで加速魔法を使ってる。それに波の抵抗を弱らせるために振動魔法も併用してる。一度に3種類や4種類のマルチ・キャストを使ってるな」

 

 「マジかよ…それって凄くね?」

 

 「凄いというレベルじゃねぇな。最早、学生の粋を超えている」

 

 『流石、としか言葉が見つからないよ。この世界面白いことが多くて、飽きる事が起きねえ!』

 

 はいはい大人しくしましょうねー

 

 『あっちょ待ってまだ出てないかr』

 

 一瞬エボルトが出てきそうだったので抑え込んで落ち着かせます

 

 「あっぶなかった〜」

 

 「龍夜、なんか言った?」

 

 「いや言ってないぞ?」

 

 「なんだ。気のせいか」

 

 そう。気のせいだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 こうして渡辺先輩はバトルボートにて予選突破。決勝進出を勝ち取った

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 バトルボート、スピード・シューティング予選。その二つが終わり一時的に休み時間になり観客や選手、スタッフ達が屋台やホテルのレストランで昼食を取っている頃だろう。しかし、俺と兄貴はとある場所へと向かって行く

 

 「ここか?」

 

 「ここのようだな」

 

 そこは国防軍の高級士官室だった。近くの兵士が俺達に近づき、中に入るよう促した。そこには風間少佐を初め、独立魔装大隊の主な面子が円卓を囲うように揃っていた

 

 「来たか2人とも。まぁかけろ」

 

 少佐にはそう勧められたが俺たちの立場的に上官に対して遠慮なくというのは無理な話だ。

 

 「安心しろ2人とも。今日は独立魔装大隊特尉としてではなく、我々の友、として呼んでいる。そう遠慮することはない」

 

 「「はぁ…」」

 

 と言われたので仕方なく座ることに。ちなみにこの円卓、わざわざ持ってきたらしい

 

 「お久しぶりですね。ティーカップでは少し様になりませんが、これで乾杯としましょうか」

 

 藤林中尉からカップを受け取ると、皆カップを軽く掲げて乾杯をとった。その後には、他愛もない近況の世間話へと話が始まると、自然に話は九校戦へと移っていった

 

 「そういえば、昨日の賊はどうですか?」

 

 「やはり無頭竜(No Head Dragon)の者だったよ。ただ詳しいことは未だに調査中だがね」

 

 「それにしても、2人は夜遅くまであそこにいたな」

 

 「兄貴はデバイスの調整で忙しかったんですよ。俺は見学であの場にいました」

 

 ここのどこかに盗聴器があるとは考えられないが、念を入れて会話は必要最低限で済ましていく

 

 「それにしても、天下のシルバー様が九校戦のエンジニアか。レベルが違いすぎてイカサマになるんじゃないか?」

 

 「真田少尉、彼らだって高校生ですよ?」

 

 兄貴、エンジニアとして優秀過ぎてイカサマ扱い受ける。これでスレ立てたら怒られるかな…?

 

 「そういや龍夜君の参加する種目って、両方ともかの一条将輝が出場するんだろう?勝てる見込みはあるのかい?」

 

 魔装大隊の治癒魔法師、山中先生にそう問われるが、俺は余裕で答える

 

 「えぇ、勝てる見込みならありますよ。ただ、本気を出させてもらいますが」

 

 「オイオイ、()()を使うのか」

 

 「もちろん使う気ですよ。一条の実力に答えるならこんぐらいで相手するのが礼儀でしょう」

 

 「「「うわぁ…」」」

 

 わぁ皆さん凄い引いてる!きっと俺の顔はめちゃくちゃ怖い笑顔なんだね!

 

 「…ところでだが龍夜」

 

 「はい?」

 

 不意に風間少佐が何か訪ねてきた

 

 「エボルトはどうした?

 

 「あー…もうすぐきますよ」

 

 「「あぁ〜…」」

 

 来ることを伝えると藤林少尉と真田大尉が苦い顔をした。この2人──特に真田大尉──はあの野郎(エボルト)によくいじられてるからなぁ…

 

 と思ってる合間に廊下からコツコツと誰かの足音が聞こえる。まぁ誰か知ってるけども

 

 「よぉお前ら!相変わらず紅茶なんか飲んでんな!」

 

 ドアを乱暴に開けエボルト(ブラッドスターク態)が出てきた。しかもよりによってコーヒーカップが乗ってるお盆を片手に

 

 「今回は自信がある。味見をして感想を聞かせてくれ」

 

 と言いながら無理やり全員の目の前に置いていくエボルト。この野郎何度止めても全然懲りねぇ!

 

 そして誰も手をつけずに傍観を決めてる

 

 「…誰が飲みます?」

 

 俺がそういうと全員が真田大尉の方を見る

 

 「………なんでこうなる度に皆こっちをみるんですか」

 

 「だって…ねぇ?」

 

 「こういうのは真田大尉が適任ですし…」

 

 「後はよろしくお願いします」

 

 そう言われた真田大尉は絶望の顔で少佐に視線を送る

 

 「…少佐」

 

 「真田、上官命令だ。飲め」

 

 「…」

 

 どうやら彼が選ぶべき選択肢は一つしかないらしい

 

 「…はぁ」

 

 とうとう真田大尉が意を決したのか、カップに手をつける

 

 「ふぅ…!」

 

 一息した瞬間一気に口に運んだ!

 

 「マッズ!」

 

 結果、不味かった

 

 「あちゃ、今回もダメだったか」

 

 「いつものことだけど、何をしたらあんな不味いコーヒーが出来るんだよ」

 

 「知らねぇよ。俺だって作りたくて作ってる訳じゃねぇし」

 

 なお残ったコーヒーは責任持って美味しくいただくわけにはいかないのでちゃんと処理しました

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 九校戦1日目午後、スピード・シューティングは今日で終わる競技のため、午後から決勝トーナメントになる

 

 「…俺帰っていい?」

 

 「ダメだ」

 

 ですよね

 

 「けどさ、どうせ七草会長の優勝で決まりだろ?」

 

 「もうすぐ始まるぞ」

 

 話逸らされた…

 

 スピード・シューティングの決勝トーナメントは予選とは違い、選手2人によって自分の色のクレーを破壊してその数を競う対戦型となる

 

 2人がCADを構えるとシグナルのライトが1つずつ減ってゆく。そして最後のライトが消された瞬間に全てのライトが光り、それと同時にクレーが空中を飛び交う

 

 「えっ?」

 

 七草会長のクレーは赤。その赤のクレーが有効範囲に入った瞬間、クレーが破壊されていった。その様子にほのかが素っ頓狂な声を上げる

 

 「『魔弾の射手』…去年よりも更に早くなってます…」

 

 姉ちゃんの言葉に俺も首を縦に振り同意の意を示した。そうしてる合間にも会長は次々とクレーを壊していく

 

 こうして七草会長は見事パーフェクトを果たし優勝。まずは一種目、一高が優勝した




リバイス…1年間ありがとう…そしてギーツ…1年間よろしく
そしてリバイスも終わったのでこの作品を終わらせて次回からは『筋肉馬鹿、同級生と付き合うってよ』をお送りしまs
龍夜「いやしねぇから!てかなんだこのふざけたタイトル!?」
という訳で(どういう訳で?)まだ続きます
あと今回ネタが思いつかなかった…


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第18話 九校戦、開始!その2

今回は2日目と3日目まとめました


九校戦2日目、今回は男女クラウド・ボールと男女アイス・ピラーズ・ブレイクが行われる…のだが、ここで想定外な事態が発生した

 

 「なるほど。昨日のバトル・ボートで男子が予想よりも勝てておらず、唯一決勝進出できた服部先輩も調子が悪いから事態を重く見た市原先輩が担当エンジニアと付きっきりで調整するけど、そしたらクラウド・ボールに回す女子エンジニアの数が足りないから代役に兄貴が抜擢された。だから今回のアイス・ピラーズ・ブレイクは一緒に見ることは出来ないと」

 

 「お前はどこに説明してるんだ?」

 

 兄貴が言ったことを復唱しただけなのに何故か俺がどこかの誰かに説明してると言われた

 

 「とりあえずそこのことは姉ちゃん達にも伝えとくよ」

 

 「頼んだぞ」

 

 「兄貴、寂しいのが嫌なら俺が一緒にi…」

 

 「お前は勉強のために行け」

 

 兄貴と別れて、姉ちゃん達と合流しに向かった

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 「──てことがあった」

 

 「…」

 

 「姉ちゃん、気持ちはわかるが落ち着け」

 

 兄貴が不在時の姉ちゃんを宥めるのに慣れてしまってる自分に驚きすら起きない自分がいる

 

 『慣れって怖いね』

 

 ほんとそれな

 

 それはともかく姉ちゃんと一緒にアイス・ピラーズ・ブレイクの会場まで向かう

 

 「そういやアイス・ピラーズ・ブレイクって誰が出場すんの?」

 

 「千代田先輩が出場するらしいわよ」

 

 『とりまさっさと行こうぜ。俺試合見たい』

 

 「なんでお前が仕切ってんだよ。まぁ行くけど」

 

 そう言いつつ歩く足を少し早めた

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 女子アイス・ピラーズ・ブレイク会場

 

 「2人とも、こっちこっち!」

 

 「エリカ、声がデカいよ」

 

 急ぎ足でピラーズの会場へと向かうとエリカ達E組と雫達A組のメンバー、後何故か五十里先輩が席を取ってくれてた

 

 「五十里先輩、どうしてこちらに?観るなら関係者席のモニタールームの方がいいんじゃないですか?」

 

 「確かにそっちの方がいいんだけど、観客席こっちから見るのもいいかなって」

 

 「あぁなるほど。それでこちらに」

 

 「そろそろ始まる」

 

 「おっとマジか」

 

 雫が呟いたのを合図に俺達は試合観戦に務める。この競技は俺や姉ちゃん、雫が参加する種目なため、色々と参考にさせてもらおうとしますか

 

 試合開始のブザーが鳴ると同時に地鳴りが鳴り響き始めた。もちろんこれは偶然起きた自然の地鳴りではない。千代田家の得意とする魔法、【地雷原】が発動された

 

 「え?」

 

 「あら?」

 

 何故か魔法を使ってるはずの千代田先輩の氷柱があっさりと倒れた

 

 「おいなんで今氷柱が倒れたんだよ?」

 

 「もしかして…千代田先輩、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 「…マジで?」

 

 多分マジで。だって今先輩の陣の氷柱がまた倒れたのに情報強化で防御すらしていない

 

 何故千代田先輩は自陣の氷柱が倒れたのに余裕なのかまだわかんないでいる俺達を余所に五十里先輩は苦笑しながら

 

 「思い切りがいいというか大雑把というか…倒れる前に倒しちゃえ、なんだよね。花音は」

 

 千代田先輩の倒れた氷柱が6本目に達したと同時に、相手の陣の氷柱が全部崩れ落ちた

 

 「「「……」」」( ゚д゚)

 

 思ってたのと全然違った先輩の戦い方に俺達は言葉が出なかった

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 午前の試合が終わって昼食の時間。俺と姉ちゃんは兄貴と一緒に食事を摂ってた

 

 「それで、どうだったんだ?千代田先輩の試合は」

 

 「…あー、その、なんというか…」

 

 「思っていたのと全然違ってて…」

 

 「「まったく参考になりませんでした」」

 

 多分皆忘れてると思うけど、俺達双子だからキッチリ息ピッタリになる時もある

 

 「…そうか」

 

 「ところで兄貴。会長の試合どうだった?」

 

 「凄い、と言わざるを得んな。パーフェクトだったぞ」

 

 「マジか、後で映像見せて」

 

 「いいぞ」

 

 他愛もない会話を挟みながら食事を進めていく

 

 「んで、市原先輩達はあそこで何を悩んでんの?」

 

 「なにやら、男子の勝率が芳しくないようだ」

 

 「…嘘だろ」

 

 話を聞くに、どうやら桐原先輩が参加してたクラウド・ボール男子が一回戦、ニ回戦、三回戦と順に落ちてしまったらしい。これには桐原先輩も気を落としてる

 

 「最悪、ポイント計算をやり直すとなると新人戦でのポイント予測は難しいですが、男子ピラーズ、女子バトルボート、それにミラージ・バットとモノリス・コードで優勝すれば安全圏だと思えます」

 

 『だってよ。特に新人戦のピラーズは一条とかいう奴がいるんだろ?やっぱり勝てる見込みあるのか?』

 

 勝つに決まってるだろ。奴にも強い魔法がある。だが俺にはまだ誰にも見せた事ない切り札があるからな

 

 『勝てるのかって聞いたのに即答で勝つ、かよ。万丈に似てきたなこいつ』

 

 そんなに万丈さんと似てる?

 

 『似てる似てる。特に後先考えず突っ走るとこらへん』

 

 うっっっそだろお前…

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 九校戦2日目夕食前

 

 「なぁ龍夜、なんでここに俺達を呼んだんだ?」

 

 「俺も知らん。詳しい事は兄貴が話すってよ」

 

 何故か知らんけど俺達の部屋にレオ達いつものメンバーが来てた。今日も見る側だけど腹減ってるのに…

 

 「呼び出してすまんなレオ」

 

 兄貴がなんか剣を手に持ってきた。

 

 「兄貴それって…」

 

 「これか?向こうが随分頑張ってくれたようだ」

 

 遊びだったんだがな、と呆れを含んだ笑みに思わず俺も笑ってしまう。兄貴はそれを机の上に乗せた

 

 「達也君、これって…法機?」

 

 「あぁ、正確には武装一体型CAD、武装デバイスと言う人もいるな。一応、小通連(しょうつうれん)という名前をつけてる」

 

 レオと雫とほのかとエリカは興味津々に、幹比古と美月は興味なさげに、俺と姉ちゃんは前々から知っていたから納得した顔をしてる

 

 そんな表情を見て、兄貴は笑みを浮かべながら小通連をレオに放り投げる

 

 「うおっと!達也、危ねぇじゃねぇか!」

 

 「試してみたくはないか?」

 

 「え?俺が?」

 

 そう言って小通連を弄びながら顔が少しニヤけてる。エリカも少し呆れてるし

 

 「これ、達也が作ったのかい?」

 

 「まぁ有り合わせの奴だけどな。兄貴が用意したのは作った魔法と設計図。後は知り合いの工房で作ってもらった」

 

 兄貴の作品はどれも結構出来がいいからな

 

 『高校生が出来ていいレベルじゃねぇんだよ達也のは。牛山達なんか本気出して手を掛かってたわけだからな?』

 

 俺に文句言っても仕方ないだろ。兄貴に文句言え兄貴に

 

 「という訳だ。有り合わせだが…レオ、試してみたくないか?」

 

 「…いいぜ、実験台になってやるよ」

 

 「堕ちた」

 

 「ブフッw」

 

 雫の一言で思わず笑いかけた

 

 取り敢えず夕食後にテストを行うらしい。え?そこは書かないのかだって?…悪いがそこは原作を読んでくれ

 

 

 

 こうして2日目の夜も終わり、九校戦は3日目へ突入していく

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 3日

 

 今日で九校戦3日目。本日の種目は男女バトル・ボート決勝トーナメントとなっております

 

 そんな会場はいつもより人だかりでできていた

 

 「まさか準決勝で去年の決勝カードが見られるって凄いね」

 

 「もしかしたら、この試合で渡辺先輩の決勝進出かどうかが決まってしまうな」

 

 って言ったら皆の視線がこっちにつき刺さってきた

 

 「…だって相手は海の七校のエースなんだぜ!?誰だってそう思うじゃん!?」

 

 「言いたい事はわかるが、渡辺委員長が負けると思うか?」

 

 「…確かにそうだけど…」

 

 「始まるよ」

 

 「また話逸らされた…」

 

 最終的に雫の手でぶった切られた上にデジャヴを感じた会話を終わらせ、渡辺先輩の試合観戦に務める

 

 試合開始のブザーがなった瞬間、渡辺先輩が一気にトップに躍り出る

 

 「それについて行けてるあたり流石は七校のエースだな…」

 

 『お前さっき海の七校って言ってたけどそれとこの競技関係あんの?』

 

 あるに決まってるだろ!?まず七校は瀬戸内海に近い場所にあるから水上で使われるような魔法がカリキュラムに含まれてるんだぜ!?ソースは兄貴

 

 『そういや今朝達也に聞いてたなそんなの』

 

 それにしてもこの試合、今もなお2人の距離の差は変わらない。距離を維持したままカーブに差し掛かった

 

 その時だった

 

 「あっ!」

 

 1人の観客が声を上げ、全員が息を呑む

 

 『おいおい、なんか速くなってね?』

 

 「明らかにオーバースピードだ」

 

 七校の選手のボートがかなりのスピードを出している。その表情は遠目でも動揺しているのが見てとれる。まさか、自分で制御出来ない…?

 

 「てかあのルート、渡辺先輩にぶつかるコースだぞ!!」

 

 選手のボートはそのまま前方の渡辺先輩を巻き込みながらフェンスへぶつかるような形になっていた

 

 渡辺先輩も背後の異変に気がついたのか、素早く振り返って受け止めの姿勢に入る

 

 「まさか受け止めるつもり!?」

 

 「無茶だ!それじ先輩諸共フェンスに激突するぞ!?」

 

 俺と姉ちゃんがそう叫び周りの皆も顔を青くするが、兄貴だけはいつも通りの表情で状況を把握した

 

 「いや、加重系の慣性中和魔法を自分の体にかけてる。あれなら仮に激突しても渡辺先輩は動く事ないだろうな」

 

 「そうか、なら安心──」

 

 兄貴の解析結果にレオがホッとしたのも束の間、渡辺先輩のボートに接していた水面が下に沈みだした

 

 それにより発動させかけた慣性中和魔法は不発しそして──激突。そのまま渡辺先輩は大きく吹き飛ばざれフェンスに激突した

 

 「なっ…!」

 

 「嘘…」

 

 他の観客もほのか達もこの非常事態にパニックになってしまう

 

 「龍夜!」

 

 「了解!姉ちゃん!皆を頼む!」

 

 「え、えぇ!わかったわ!」

 

 俺と兄貴は勢いよく会場へ飛び出した

 

 「皆さん!落ち着いてください!!」

 

 皆を宥める姉を背後に、会場に飛び降りた俺達は渡辺先輩の元へ駆け出す

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 三人称side

 

 「────っ…ここは…?」

 

 「やっと起きた?動いちゃダメよ。肋骨が折れてたから魔法で繋いでるけど、まだ定着してないから」

 

 摩利が目を覚ますとそこは医務室のベッドに寝かされてる状態だった。起きあがろうとする彼女を真由美が落ち着かせ、再びベッドに横にさせる

 

 「うぅ…試合はどうなった?」

 

 「七校は危険走行のため失格、一高は3位決定戦よ。他の選手だけど、はんぞー君が決勝進出、ピラーズの方も十文字君と花音ちゃんがそれぞれ決勝リーグに進出したわ」

 

 「と言うことは私だけか計算外という訳か…」

 

 摩利がぼやいた言葉に真由美は顔を顰める

 

 「摩利の怪我に関しての話なんだけど…完治するまでには1週間かかるらしいわ」

 

 「1週間もか!?…ぐっ…」

 

 真由美の口から出た1週間の療養期間。それを聞いて思わず飛び起きたが、傷口に障り再びベッドに沈む

 

 「ということはミラージュ・バットも…」

 

 「えぇ、棄権ということになるわ。けどそれも仕方ないのよ」

 

 「…」

 

 納得してるよう見えるが、右手で目元を隠しながら彼女は悔しい表情を浮かべる

 

 「でも、摩利のおかげであの七校の選手は大した怪我じゃなかったわ。もしあのままフェンスにぶつかってたら、魔法師生命が絶たれる程の大怪我を負ってたらしいわ」

 

 「それで自分が大怪我をしてたら、意味ないがな」

 

 自己嫌悪を露わにした彼女に対して、真由美は軽く笑みを浮かべた

 

 「それにしてもその怪我で済んだのは達也君と龍夜君のおかげよ」

 

 「そうなのか?」

 

 「えぇ、摩利は主に達也君がやってたけど、龍夜君も気絶してた七校の選手を介抱してたわよ」

 

 「ふっ…風紀委員の経験がここで活きるとはな。龍夜君に関しては、十文字の教育が良かったのかもな」

 

 笑みを浮かべてた真由美は途端に真面目な表情になり、摩利に向き直る

 

 「摩利、あの時、()()()()()()()()を受けなかった?」

 

 「第三者の妨害?確かあの時は…水面が沈んで足元から不自然な揺らぎがあったが…」

 

 「私もモニターを使って見てたけど、あれは魔法特有の不連続性があったわ。けどあなたも七校の選手も、そんな魔法は使ってない。となると、残る可能性としては、第三者が魔法を使ったという事よ」

 

 「今、達也君達が事故の映像を使って調査中らしいわよ」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 「兄貴、五十里先輩はわかるけど何で幹比古も呼んだんだ?」

 

 「順を追って伝えるから、まずはこれを見てくれ」

 

 今彼らがいるところは達也と龍夜の部屋だった。そこで小型のディスプレイを使って事故の瞬間を捉えた映像とそれのシュミレーションを映し出している。その部屋にいるのは達也、深雪、龍夜だけでなく五十里、彼の婚約者の花音。そして幹比古が部屋に来ていた

 

 達也が映像を再生すると、全員が身を乗りだして覗き込む。

 

 「み、見えない…」

 

 龍夜がメンバーの後ろにいるため見えてないらしいが、彼らには関係なく映像に注目する。龍夜も後ろから背伸びしながら覗こうとするがなかなか見れない

 

 「結論から言うと、第三者からの介入があったと見ていいでしょうね。誤差で片付かない力が"水中"から掛けられていたんでしょうね」

 

 「水中から?それだと張本人はどこから魔法を使ったんだ?」

 

 「外部から高圧の空気弾を水面に打ち出したんだと思っていたが、それだと渡辺先輩が気付かないわけがない。が、映像を見る限り水面を陥没した力は水中から生じている」

 

 「司波君の解析が外れてる可能性は?」

 

 花音の発言に深雪がムッ、とした顔をする。その発言は彼女にとって兄を乏しめる言葉なのだ

 

 「いや、司波君の解析は完璧だよ。少なくとも僕じゃここまでのは出来ないし、出来たとしてもかなりの時間がかかるんだよ」

 

 「啓がそういうなら、そうなのかも。司波君、ごめんなさいね」

 

 あまりの手のひら返しに呆然としながらも「気にしないでいいですよ」と言葉を紡ぐ。当然ながら妹の深雪はあっさりと上機嫌に戻り、龍夜はやれやれと呆れ顔だ

 

 「でも司波君の解析が正しくても外部から魔法を使ったら間違いなく監視装置に引っかかるよね?」

 

 「あらかじめコースに仕掛けるってのもあり得ないね。魔法の情報自体、コース上に存在する訳だからコースを点検するスタッフに気づかれない訳ないし…」

 

 「となると、仕掛けた張本人が水中に潜ってタイミングを見計らってやったとしか思えないけど…そうなったらスタッフから見えないはずがないしな…」

 

 「そもそもそんな荒唐無稽な事があるのでしょうか?」

 

 「水中に身を潜めたのが"人間"以外だったら?」

 

 その言葉に龍夜、深雪、花音は?を頭上に首を傾げた。しかし幹比古はわかったからか少し警戒をする仕草をした。啓は一瞬で理解したようだ

 

 「つまり司波君は《精霊魔法》の可能性を考えてるんだね?」

 

 「えぇ、だからこそ精霊魔法に詳しい吉田君の意見を聞こうかと──それで幹比古、数時間単位で特定の条件下で水面を沈没させる遅延発動魔法は可能か?」

 

 「可能だよ」

 

 その言葉に龍夜と深雪の顔が強張る

 

 「今の条件なら渡辺先輩のレースの開始時間を第一の条件。水面上を誰かが接近することを第二の条件。あとは術者本人が任意のタイミングで精霊に命令すれば魔法は発動できる。式神でも可能だね」

 

 「幹比古でもか?」

 

 「準備期間によるね。今すぐじゃ無理だけど半月くらいかけて会場に何度か侵入すれば可能だよ」

 

 ここで達也の脳裏に映ったのは開催前夜に侵入した賊のことだった。今は国防軍が捕えてるため、どんな事になってるのかは知らないが恐らく情報は吐き出せたはず──と思案してると幹比古が何か悩んでる様子に気づいた

 

 「どうかしたか?幹比古」

 

 「自分で言っといて何だけど、そんな術の掛け方じゃほとんど意味のないことになるんだよね。これだとせいぜい水面の選手を驚かせるくらいになるよ」

 

 「…いや、驚かせるくらいのレベルで十分だったのかもな」

 

 「お?なんかわかってんのか?」

 

 「龍夜。渡辺先輩の水面が沈む前に一つアクシデントがなかったか?」

 

 「アクシデントぉ?そんなの… 」

 

 悩んでいた龍夜の脳裏にのは減速せず、逆に加速したとある高校の選手のボートが思い浮かんだ

 

 「もしかして、カーブに差し掛かった七校の選手のボートが加速したことか?」

 

 「正解だ。あれも、仕組まれたものなんだろう」

 

 「達也君、どういうことだい?」

 

 「減速と加速の機動式を入れ替えれば間違いなくこのコーナーで事故が起きます。去年の記録を見れば最初のカーブではほとんど差もつかないのは予想出来ますし、優勝候補2人がもつれ合えば一気に脱落させられる、と考えても不思議じゃありません」

 

 「しかし兄貴よ、CADの細工は簡単に出来ないと思うよ?競技用のは各校が管理してるし、考えられる可能性としては七校の内部に裏切り者がいるとしか…」

 

 達也の予想に龍夜が指摘をする。各校が管理してるためなら、そんな事は起きないはず…

 

 「俺個人としては、大会委員に工作員がいる可能性の方が高いと思うがな」

 

 その言葉に全員の顔が驚きに染まるが、深雪と龍夜だけは冷静を保つ

 

 「しかしお兄様、大会委員に工作員がいたとしても、いつどのようにCADに細工をするのですか?」

 

 「確かに競技用のCADは各校が厳重に管理しているが、必ず一度は規定内かどうかを確認するために大会委員に引き渡されるな」

 

 「「ああっ!」」

 

 それに気づいたのはまた2人だけだった。しかし他の人はそれがなんなのかまだ理解できていなかった

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 皆退出し、部屋に残ったのは龍夜だけだった。数分した後、達也が部屋に戻ってくる

 

 「おかえり兄貴、試合はどうするんだ?」

 

 「七草会長との話し合いの結果、深雪が本戦のミラージ・バットに出場するようだ」

 

 「なるほど、んで俺はどうすれば?」

 

 「龍夜の場合は新人戦ピラーズとモノリスで優勝しないと、いけない状況になるな。勝てるか?」

 

 「勝てるか?じゃないよ。勝つに決まってるだろ」

 

 「……そうだったな。勝ってこい」

 

 「了解」

 

 こうして龍夜は新人戦ピラーズに備え睡眠をとり、達也は龍夜のCADに()()()()()を入れ、調整を開始した




あっれおかしいな?序盤書いてた頃はサクサク掛けたのにもう10月だよ?
龍「お前が書くのが遅いだけだろ」


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第19話 九校戦、開始!その3

皆さん、待たせたな!
龍「待たせすぎだ」
いやほんとすみませんでした。自動車免許取るために車校通ってたり学校のイベントで色々時間取られて投稿遅れましたー 


 九校戦3日目に起きたバトル・ボートの事故。それに巻き込まれ渡辺先輩は九校戦に出れない程の大怪我を負い、一高の優勝は少し遠くなっていった

 

 九校戦4日目、そして新人戦1日目が始まった

 

 1日目はスピード・シューティングとバトル・ボート両方の予選のみ。俺が参加する種目はアイス・ピラーズとモノリス・コードなのでまだ出番ない。誰だよ明日優勝するって言った奴

 

 『お前以外いねぇよ』

 

 はい俺です。これには何も言い返せません

 

 そんなことは置いといて今はいつものメンバーで朝食をとりながら、世間話をしていたが、話は新人戦へと切り替わっていく

 

 「さて、今日から新人戦よ!雫もほのかもどんな活躍をするのか楽しみね!」

 

 「エ、エリカちゃん…緊張してるからプレッシャーかけないで…」

 

 涼しい顔で期待を大きくさせるエリカに対し、ほのかはこっちが心配になりそうな声色で肩身を小さくさせた

 

 「そういえば、雫が出場するスピード・シューティングって兄貴の担当だよな?大丈夫か?」

 

 「うん、達也さんに調整してもらったけど違和感なし。それどころか普段より快適かな。うちの専属魔工師として雇いたいくらいだよ」

 

 「でも雫の家には凄腕の魔工師雇ってるでしょ?そんな事言ったらその人が可哀想だよ」

 

 雫が冗談めかした発言に姉が見えないとこでワタワタしていたが、既に雇ってる魔工師がいるのを聞いてホッとしたようだ

 

 「雫の家には専門の魔工師がいるのか?」

 

 専門の魔工師を雇ってると聞いて兄貴が反応した。魔工師ってのは簡単に言うと魔法の発動に必要なデバイスの調整、手入れなどを行う人間のことだ

 

 「母が有名な魔法師だったらしいけど父の家系には魔法師がいない。弟は魔工師を目指してるけど、魔法が使えない」

 

 「だから雫のお父さん、雫を優秀な魔法師にするんだーって張り切ってるんです。その魔工師の人も、結構な報酬で引き抜いたみたいですし」

 

 もしかして雫のお父さんってかなりの親バカ?

 

 『お前それ間違っても本人と雫に言うんじゃねぇぞ』

 

 あっはい

 

 「もしかしてよく九校戦を見に行ったって言ってたが、それも教育の一環というわけか」

 

 「そうだね。けど今年から参加できるって知ったら凄い喜んでたよ」

 

 「ほんと、伯父様らしい」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 三人称side

 

 新人戦女子スピード・シューティング予選、観客は未来のスターの試合を目撃しようと、新人戦に参加する選手はライバルになるであろう選手達がどんな手を打ち、どう攻略するべきかの視察のために、先輩達は純粋に後輩を応援しようと、それぞれが思い思いで観客席に座る

 

 「摩利、まだ寝てなくて大丈夫なの?」

 

 「病気じゃないんだ。暴れない限りは問題ないさ」

 

 大怪我を押してまで観客席に座る摩利に、心配した真由美は声をかけていく

 

 「ところでリンちゃんはここでいいの??スピード・シューティングのスタッフなんでしょ?」

 

 「半ば無理矢理休暇にされたと思えばいいですよ。私の仕事は実質司波くんに奪われたような物なので」

 

 「市原…流石にそれは冗談だよな?」

 

 「えぇ、そうですよ」

 

 口ではそう言ってるが、元々は鈴音本人が了承した上で達也に任してるため、彼女が不満を言うわけがないのだが…摩利はそれを冗談かどうか判別しにくかったため苦い顔で質問したらあっさりと肯定された。あまりの即答に摩利はため息をしながら、会場に目を落とす

 

 「それにしても、あいつのエンジニアとしての実践をこの目で見るのは初めてになるな」

 

 「それもそうね。私の試合はお手伝い程度だったから、彼が一から調整した調整したCADがどんな活躍を見せてくれるか。楽しみね」

 

 「龍夜君からメールで聞いた話ですが、北山さんだけじゃなくて他の女子選手達も達也君が調整したデバイスには好評らしいですよ。初めは抵抗があった人達も自分達のCADを持ち込んで調整を頼み込む姿もあったとか」

 

 「そうね。それはよかっ…待って鈴ちゃん。龍夜君の連絡先なんて持ってるの?」

 

 「えぇ、深雪さんが暴走した際に呼んでくれと」

 

 「「…」」

 

 深雪の暴走。そう聞いた2人は一瞬全身真っ黒に染まり破壊の限りを尽くす深雪が脳裏に映ったがすぐさまその考えを捨て去り話を切り替える

 

 「なんで鈴ちゃんだけなの!?私も龍夜君と連絡先交換したいんだけど!?」

 

 「御言葉ですが、会長に連絡先を渡すと碌なことにならないから、と本人が言ってましたよ」

 

 「ちょっとそれは酷くないかしら!?」

 

 「ははっ、それも一理あるな」

 

 「もう、摩利まで!」

 

 試合が始まるまであと数分というのに、会場で一番騒がしいのはここだろうという騒がしさだった

 

 「会長のせいで話が逸れましたが、司波くんはその辺りを考えて試合が終わった後に見ることになってるそうです」

 

 「自分の都合を優先しつつ、女子へのフォローも忘れない。達也君"も"やっぱり女たらしね」

 

 達也"も"という言葉に一瞬怪訝な顔をした摩利だったが、女子生徒をたらし込んだとある後輩の顔が思い浮かび、納得する

 

 「…確かにな」

 

 摩利はそのまま一高の選手がいるテントへ視線を向けた

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 作戦テントの中。そこにいるとある後輩こと龍夜の視点はずっと中央の兄に向かっている

 

 「…なぁ兄貴」

 

 「どうかしたか?」

 

 「俺さ、一言言いたいことがあるんだよね」

 

 「なんだ、言ってみろ」

 

 弟からの冷たい視線を背中に感じながら、CADの調整を怠らない達也

 

 「なんで俺、拘束されてんの?」

 

 「お前が逃げるからだ」

 

 「エリカと兄貴が追いかけるからだろうが」

 

 龍夜は何故かロープでぐるぐる巻きにされていた

 

 事の発端はこうだ。雫の試合を見るために観客席に向かってた龍夜だが、突如達也とエリカが強襲。それに悪ノリしたエボルトが龍夜にバレないように身体の主導権を強引に取得し、龍夜の身体の動きを止める。そこをエリカがロープで拘束させ、達也に引き渡された。そして今に至る

 

 「大体さー、俺って関係者のテントに行くほどの必要なくない?」

 

 「一部の女子からは人気だぞ」

 

 「そんなわけないだろ」

 

 「『……………はぁ」』

 

 達也だけでなくエボルトですらため息をつくほどの鈍さ、それが龍夜である

 

 「なんでため息つくんだよってか、この縄外してくれないの?」

 

 「危険になる恐れがあるから外す事は不可能だ」

 

 「弟を勝手に猛獣扱いするな」

 

 「冗談だ。これが終わったら外すから待ってろ」

 

 まるで凶悪犯のように縛られてる龍夜に目もくれず、一心不乱にCADの調整を続ける達也

 

 「早くしてくれよー。これ誰かに見られたら溜まったもんじゃ「達也さん、もう少しで試合が…失礼しました」待て待て待て!!」

 

 早く縄を解かしてほしい龍夜は愚痴るがその途中で雫(とほのかとエイミィ)が入室、何か察したのかすぐさま扉を閉めようとするが龍夜がこれを止めようする。縛られたままの姿で

 

 「…ごめんなさい。まさか龍夜がこんなプレイをしてるなんて…」

 

 「俺は至ってノーマルだよ!これは兄貴がやったことだから!」

 

 「達也さんがそんな事を!?わ、私は別にそれでも…」

 

 「待てほのか。何か勘違いを起こしてないか?」

 

 雫の誤解を解こうにも今度はほのかが別の勘違いをし顔を赤くする。誤解を解けばまた誤解が発生し、2人はその対処に追われ始めた

 

 「それはそうと…ほら、これが雫のCADだ」

 

 「ん、ありがとう」

 

 達也に調整してもらったCADを手に、雫は軽く感触を確かめるように触れる。しばらくして、満足したように頷く

 

 「うん、思った通りいい感じだよ」

 

 「それはよかった」

 

 「やっぱり達也さん、うちで働かない?」

 

 「それは無理な話だな。そうなったら、誰が深雪と龍夜のデバイスの調整をしてくれるんだ?」

 

 現場に深雪がいたら「お兄様、それほど私のことを案じて…」と涙ぐむが、あいにく彼女は観客席にて試合開始まで待機。そうなってたんだろうなと思ってそうな表情の龍夜は縛られたまま兄を白い目で見てた

 

 「おっと、縄を解き忘れてたな」

 

 「今更!?

 

 弟のツッコミですら無視して縄を解き始める達也。文句をいいながら、龍夜はただ縄を解いてもらってるだけであった

 

 「ふぅ…やっと解放された…」

 

 手首を軽く動かして様子を見、身体をほぐす龍夜。そんな彼に雫が近づいていく

 

 「龍夜」

 

 「ん?」

 

 「私、勝ってくるね」

 

 「…おうよ。優勝してこいよ」

 

 2人は軽くグータッチをして、雫は会場へ向かう

 

 そんな光景を見た達也とほのか。2人は雫を見送った後に龍夜をジト目で見つめていた

 

 「……なんなのさ?」

 

 「「なんでも(ない/ありません)」」

 

 「?」

 

 『お前さ、とっとと腹決めて逝けよ』

 

 (お前逝けって言わなかった!?)

 

 『言ってない言ってない』

 

 (言ってたよな!?聞き間違う事なくそういってたよな!?)

 

 『言ってねぇって。本当だよほんと』

 

 龍夜の質問をのらりくらりとかわしていくエボルト

 

 「なにやってんだ。試合始まるぞ」

 

 「わかってるよ…てめぇ許さねぇからな

 

 『嫌だね』

 

 「この野郎…」

 

 そういいながら関係者席に備え付けられるモニターに目を向けて、雫の試合を見ようと意気込み

 

 「達也さん、2人の恋路、なんとかならない?」

 

 「すまんが、それだけは無理だ。なんなら直球に言ったほうが龍夜に伝わると思う」

 

 「………ほのかは雫が告白できると思う?」

 

 「…私にはなんとも言えないかな…」

 

 「仮に雫が成功したらはほのかもそれを見習って…「それ以上言っちゃダメー!」むぐぐぐ!!!」

 

 ほのか、達也、エイミィの密会はほのかによるエイミィへの口封じ(物理)により強制終了。相変わらずの難聴*1によりたまたま、本当にたまたま龍夜の耳に入らず、試合開始のブザーがなった

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 試合会場に現れた雫が持っていたのはライフルを模したCAD。頭には遠視機能を備えたゴーグルを装着し、万全を整えている

 

 「流石にあれには細工されてないわね」

 

 CADに細工を施されてない事に安堵する真由美。摩利と鈴音もほっと息をつける事ができた

 

 試合開始のブザーがなり、雫の前にクレーが射出された。発射されたクレーは有効範囲に入った物から壊され始めた

 

 次に射出されたクレーは有効範囲の中心に、2つ同時に放たれたクレーは端に入った瞬間に破壊されていく

 

 雫の視線はそのまま真っ直ぐを維持しており、クレーが射出されてもそれがぶれる事はなかった

 

 「凄い豪快に行くわね」

 

 予想外と呼べる雫の戦略と魔法、それを見た真由美は率直な感想を述べた

 

 「もしかして有効エリア全域が魔法範囲内というのか?」

 

 「見た感じはその様ですね。彼女は有効エリアにいくつかの震源を設置して、固形物に振動波を与える仮説的な波動を発生させてます。震源から広がった波動に標的が進入すると、その振動波が標的内部で現実となって破壊すると言う物ですね」

 

 摩利がどんな魔法か解析してるうちに、事前に達也から聞いてた鈴音が横から解説を入れる

 

 「有効エリアは一辺15メートルの立方体です。司波くん…達也くんはそのエリア内部に一辺10メートルの立方体を想定して、その各頂点と中心に震源を設定してます。各ポイントは番号を割り振られており、展開された起動式にその番号を変数として入力すると半径6メートルの仮想波動が発動するようになってるそうです」

 

 「随分と余計な力を使ってる様に見えるな。ピンポイントで発動した方が魔法力を温存出来るんじゃないか?」

 

 「"震源を番号で管理"してると言うところに何かポイントが隠されてそうね」

 

 真由美の推測に鈴音が頷き肯定をしながら説明を続けた

 

 「そうですね。スピード・シューティングの有効エリアは試合開始以降動く事はありません。つまり細かい座標をいちいち入力する必要はありません。よって、あらかじめポイントを設定しておいて、発動する時に番号を入力するだけで事足りるとのことです」

 

 「それだけじゃなく、この魔法は威力や持続時間を考える必要がなく、制御面での操作が必要ないため魔法発動そのものに魔法力を最大限活用できるそうです。連続で使用できたり、マルチキャストも思いのまま、と本人はそう言ってましたね」

 

 説明が終わった瞬間、終了のブザーが鳴った。撃ち漏らし0、パーフェクトで決勝進出である

 

 「魔法の名前は"能動空中機雷(アクティブ・エアー・マイン)"。達也くんが作ったオリジナルの魔法ですが、色々詰め込んでいるため、北山さんのような優れた魔法処理能力がないと使えないとか」

 

 「私の発想とは真反対な魔法ね。よくこんなの思いついたわよ」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

 「それにしても、あんな魔法よく作ろうと思ったな。あれじゃ魔法大学からインデックス*2に採用されるかもしれないぜ?」

 

 「その時はその時だ。次の試合のとこ行ってくる」

 

 「俺もついてこうか?」

 

 「お前は雫の応援でもしておけ」

 

 「なんで辛辣なの?」

 

 「…自分の胸に聞け」

 

 「????」

 

 わけがわかってない龍夜を尻目にしながら達也はその場を後にした

 

 

 

 一抹の嫌な予感を内心に抱えながら。

 

 

 

 番外ネタ:龍夜確保の瞬間

 

 龍夜(観客席で雫の試合でも見に行きますか)

 

 エリカ「龍夜君発見!確保!」

 

 龍夜「エリカ!?ちょ、は!?」

 

 レオ「すまんな龍夜!」

 

 エリカ「龍夜君!逃げないでよ!!」

 

 龍夜「逃げるに決まってるだろうがって…あれ?」

 

 エボルト「なんか面白そうなことやってるじゃねぇか。俺も混ぜろよ」

 

 龍夜(エボルトォォォォォ!!!)

 

 エリカ「確保!!という訳で達也君あとはよろしく」

 

 達也「あぁ、任せた」

 

 龍夜「兄貴ぃぃ!どこにつれてくつもりだぁぁ!?」

 

 そして雫の試合前の会話に戻るとさ

*1
そこ、大人の事情とかいわない

*2
国立魔法大学編纂・魔法大全・固有名称インデックス。早い話が、様々な魔法の情報が入っている辞書




最近思うようにネタが思いつかないな…


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