D✕D✕D《デュランダル・デート・ドラゴン》 (デュランダ流)
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暗躍
序章1


初投稿です。


Deus Ex Machina Industry(デウス・エクスマキナ・インダストリー)通称DEM社。世界規模の大企業で様々な事業を展開している。DEM社の事業で一番有名なものといえば科学技術で魔法を再現する技術、顕現装置(リアライザ)である。これは自衛隊などの各国の軍隊にも支給されている代物であり、その大多数がDEM社によって作られている。だがその実態は技術の発展のためには人体実験などの非人道的な行為も厭わない危険な企業である。

 

その本社であるビルのとある1室にふたつの人影がある。

 

「よく来てくれた。実は面白い発見があってね。君と共有したかったのさ。神蝕篇帙(ベルゼバブ)によればこの世界とは歴史の異なる世界があるらしい。これは私達が元々いたであろう世界もそのうちの一つなのかな?」

 

白い髪に光の無い青い瞳の男は座る者の地位の高さが伺える立派な椅子に座り禍々しい巨大な本を見ながらそう呟いた。

 

すると近くにいたその男の秘書であろうノルディックブロンドの長髪が特徴の綺麗な女性が彼の呟きに反応した。

 

「いえ、おそらく違うでしょう。"ナイトメア"時崎狂三が使用した刻々帝(ザフキエル)によって行われた時間改変により、彼ら霊力を持つ者たちは本来の歴史から少しずれた時間へ、言うなれば並行世界へ移動したのだと思われます。ですが今回あなたが発見したという歴史の異なる世界は我々の世界とは全く関連がないものであると推測されます。つまり異世界というのが正しいかと。隣界に近いものではないでしょうか?」

 

秘書の言葉に満足した表情で男は言う。

 

「流石だねエレン。正解だ。」

 

男の言葉にエレンと呼ばれた秘書は顔をしかめた。

エレン・メイザース。DEM社でアイクの秘書官をしているがそれは表の顔であり、裏の顔は彼のためなら何でもする世界最強の魔術師である。

 

「わかっているのなら私を試すようなことはせず素直に教えてくださいアイク。時間の無駄です。」

 

そしてアイクと呼ばれたこの男の名前はアイザック・ウェストコット。DEM社の創設者であり、トップである彼は人が絶望する様を見ると

快感を覚えるという歪んだ性格の持ち主であり、本人もそれを自覚している。そして彼女に従うエレンもまたまともな性格の持ち主ではない。その性格から彼らの目的は人々にとっては碌なものではないであろう。

 

エレンの言葉にアイクは笑いながら答える。

 

「すまないね。試したわけじゃないさ。ちょっとからかいたくなっただけだよ。」

 

全く…といった感じでエレンは呆れている。

アイクは続ける。

 

「それでその異世界なんだが、どうやら私達でも行くことが可能らしい。その方法は神蝕篇帙には2つほど手段があると書かれている。1つはラタトスクが保護している精霊が持つ天使、封解主(ミカエル)だ。だがこの方法は持ち主である精霊、もしくは彼女の霊結晶(セフィラ)を手に入れなければならない。君が行けば可能であろうが時崎狂三による妨害に合う可能性がある。イレギュラーは少しでも避けるべきだと思ってね。」

 

精霊とはこの世界に存在する特殊災害指定生命体と称される存在であり、特徴としては人間の美少女の姿をしていること、霊装と呼ばれる霊力をまとった鎧を纏っていること、天使と呼ばれる超常の武器を所有していることが挙げられる。彼女たちは隣界と呼ばれる所に住んでいるとされ、彼女たちが現れると空間震と呼ばれる空間の歪みが発生し、甚大な被害が出る。あまりに危険であるが故に彼女たちの存在は公にはされていない。

 

エレンは質問する。

 

「では2つ目の方法というのは?」

 

「なに、簡単な事さ。次元の狭間を通るんだよ。」

 

「次元の狭間?それは一体?」

 

エレンの疑問にアイクは子供のような好奇心に満ちた顔で答える

 

「隣界があるだろう?そう、私達の世界の隣に存在する隣界。この隣界も異世界に分類される。そしてその隣界と私達の住む世界の間にはある境界が存在する。この世界と世界の間に存在する境界、それが次元の狭間だ。」

 

「なるほど。たしかに異世界同士が直接繋がっているわけではない。となるとふたつの世界の間にそのようなものがあっても不思議ではないでしょう。」

 

「その通り。だが次元の狭間は無の世界、通常の人間が対策もなしに行けば短時間で体が消滅してしまう場所らしい。準備する方法はこの世界には存在しない。」

 

「ではどうするのですか?結局我々では異世界には行けないと?」

 

エレンの疑問にアイクは答える。

 

「いいや。条件さえクリアできれば可能だよ。なにせ君も私もこの世界から他の場所へ移動する者の姿を見たことがあるじゃないか。」

 

アイクに言われエレンは納得する。

 

「そういうことですか。霊結晶があれば良いということですね。霊力を持つ彼女たちは次元の狭間を通って隣界へ移動していた。つまり魔王である神蝕篇帙を持つアイクも可能というわけですか。」

 

彼女たちの体内には霊結晶と呼ばれる核があり、これが破壊されない限りは生命活動は継続できるとされている。

 

その霊結晶のひとつをアイクは1人の精霊に深い絶望を与え、反転させ、更にその霊結晶を奪取している。完全には手に入れられなかったが精霊の反転体が扱う天使と対を成す存在、魔王のひとつである神蝕篇帙を手に入れた。

 

「あぁ、前者と比べると時間がかかってしまうがね。というわけで早速だがこれから出発しようと思う。私達の目的に役立つものがあるかもしれないからね。」

 

そう言って立ち上がったアイクにエレンは慌てた表情でいう。

 

「ま、待ってください。今現在、我々は五河士道殺害のために動いています。それを中断してあなたの呼び出しに応じたのですよ?ここでやめるというのですか?」

 

「あぁ、そのつもりだよ。なに、今彼を殺すより異世界に行くほうが良いということがわかったんだ。アルテミシアにもこの件は伝えといてくれ。」

 

主であるアイクの言葉に呆れつつも自分のするべきことを考え述べる。

 

「貴方という人は…。どうせこれ以上止めても無駄なのでしょうね。わかりました。指示があればいつでも行動できるようこちらも準備しておきます。」

 

「よくわかってるじゃないか。連絡用にニコルベルを何人か置いていくから何かあったらその子達に伝えるといい。それじゃあエレン、留守は頼んだよ。」

 

そう言うと彼は空間を歪ませその中へと進んでいく。その姿をエレンは見送りながらも彼女は不満そうに呟く。

 

「おそらくアイクは何かを隠していますね。『何故異世界という言葉にたどり着いたのか』と私に聞かれるのを避けているかのようでした。おそらく知った原因を私が聞けば、彼が異世界へ行くのを阻止したか、無理にでもついていく方法を見つけるよう動くと考えたのでそょう。だからすぐ行動に出たというわけですか。」

 

「へぇ?エレンにしては賢いじゃない?」

 

声はエレンの後ろから聞こえた。そこには突然現れた謎の少女。それを振り返らずエレンは少女に少しの怒気向けて言う。

 

「黙りなさい。ずっとアイクの側にいた私が彼の思考を読めないはずがありません。それは彼も同様で、私の考えを先読みし、私に選択させないよう動いた、それだけのことです。それにアイクの身に何かあった場合、あなたを全員殲滅するだけです、ニコルベル。」

 

黒に近い灰色の髪に緑青の瞳の少女、ニコルベルと呼ばれた彼女は嘲笑しながら言う。

 

「きゃはは!あんたに言われなくても私がお父様を守るし?エレンは黙ってお留守番でもしてれば?」

 

 

神蝕篇帙は全知全能の魔王であり、真実が書き記されている。その権能は本に記載したものを具現化させたり、世界中の物語が交わった空間を作り出し対象者を閉じ込めたり、精霊の贋作を無数に作り出すことができる。その贋作というのが彼女たち、ニコルベルである。

 

ニコルベルの言葉にエレンは苛立ち、それをぶつける。

 

「黙りなさいと言ってるでしょう。あなたはアイクと私の中継役として動けばいいのです。私はやらねばならぬことができました。あなたは私が呼ぶまでどこかへ失せなさい。」

 

そう言うとエレンは部屋を出ていく。

その姿をニコルベルは笑いながら見つめていた。

 

 

 




閲覧ありがとうございます。


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序章2

主人公1人目の登場です。
序章1,2のルビ修正致しました。


俺は兵藤一誠。親しい人は俺のことを「イッセー」って呼んでくれる。俺の在学する駒王学園ではスケベな男として有名だ。そんな俺には夢がある!それは俺だけのハーレムを作ってハーレム王になることだ!

 

煩悩だらけの俺だが実は悪魔だったりする。2年の春頃、元カノである堕天使レイナーレによって協会のシスターで友達になったアーシアと俺は殺された。そのときに学校の先輩であり、上級貴族の悪魔、リアス・グレモリーに悪魔の駒(イーヴィルピース)を与えられ、俺達は転生悪魔として彼女の眷属になったんだ。

 

悪魔の駒というのは昔、数が減ってしまった悪魔がチェスの特性をもとに作り出した他種族転生システムだ。これを与えられると人間でも異形の者でも悪魔になれるんだ。上級悪魔になれば魔王様から自らを(キング)として悪魔の駒を頂ける。それを使い俺はハーレムを築き上げる!悪魔は俺の夢を叶えることが出来るんだ!上級悪魔となり、自分の眷属を持つ、これが俺の悪魔としての目標だった。

 

そんなすごいシステムの悪魔の駒だが転生させる者の強さによっては使用する駒の数が変わったりする。俺は兵士(ポーン)の駒を与えられたんだけど、8個あるはずの駒全てを使ったんだ。何故ただの人間の俺が兵士の駒を全て使ったのか。それは俺の体の中にあった。

 

神器(セイグリッドギア)と呼ばれる聖書に出てくる神様が人間へランダムに与えたものがあるんだけど、その中でも特に神も殺せるレベルの強力な神器、神滅具(ロンギヌス)と呼ばれるものがある。これは同じ時代に一つずつしか存在しないから天界や冥界で監視しているらしい。

 

実はその神滅具のひとつである、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)が俺の中にいたんだ。赤龍帝の籠手は、ドラゴンの中でも特に強力な個体、二天龍と呼ばれる存在の片方、赤龍帝ドライグの魂を封印した籠手のことだ。こいつの影響で俺は兵士の枠を全て使ってしまったんだ。

 

戦いの中で俺は一度人間の体を失っている。

俺あと何回死ぬんだろうな…。

たまたま通りかかった世界最強と呼ばれる

真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)グレートレッドと

友達となり一緒に帰ると約束した

無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィスの力により人形ドラゴンとして、俺は体を取り戻したけど奇跡の一言じゃ表せないくらいの出来事だった。2人には感謝してるし、俺にとって2人はもう1組の親みたいな存在だ。

 

悪魔としても神器使いとしても未熟だった俺は、当時歴代最弱の赤龍帝と呼ばれていたが、相棒のドライグや同じ眷属の仲間たちと共に様々な事を経験した。

 

皆頼りになる仲間だよ。

 

俺の最高のご主人様で最愛の彼女でもあり

将来を誓いあった王のリアス。

 

いつもは頼れるお姉様だけど実は寂しがり屋なところが可愛いハーフ堕天使で女王(クイーン)の朱乃さん。

 

一生守ると誓い、いつまでもそばにいると約束した僧侶(ビショップ)のアーシア。

 

リアスの自慢の騎士(ナイト)で俺の親友でもある木場。

 

将来有望の可愛い後輩で猫又の戦車(ルーク)子猫ちゃん。

 

人前に出るのも嫌がってた女装っ子だったのに

今では立派な1人の男へと変わった

吸血鬼で僧侶のギャスパー。

 

デュランダルとエクスカリバーの使い手で

パワーバカの騎士ゼノヴィア。

 

元ヴァルキリーの才女で

百均が大好きな戦車のロスヴァイセさん。

 

俺達はリアス・グレモリー眷属、家族だ。

 

そしてここに転生天使で幼馴染のイリナ。

 

かつてリアスとの婚約破棄を巡って上級貴族フェニックス家の三男と戦ったんだけど、そのフェニックス家の娘であり、冥界で忙しい俺のために

マネージャーを努めてくれているレイヴェル。

 

俺達の顧問で堕天使の元総督のアザゼル先生。

 

これがオカルト研究部のメンバーであり、約一年間ともに戦ってきた仲間達だ。他にもたくさんの仲間や人に支えられたおかけで色んな出来事を戦い抜くことができたんだ。

 

大変だったよホント。最初は他の種族とのいざこざ程度だったのに気がついたら神話に出てくる神だったり悪魔だったりドラゴンだったり。そのおかげでいろんな勢力と協力関係を結ぶことができたんだけどね。まぁとにかく濃密な1年だった。

 

そしてこの前、これまでの戦いの功績により、俺はついに念願の上級悪魔なることができたんだ!現在、唯一の魔王であるアジュカ・ベルゼブブ様から悪魔の駒を頂き、主であるリアスから独立した。と言っても俺はリアスの兵士であることは変わらないから今の生活とあまり変わりはないんだけどね。

 

そしてリアスと駒をトレードして、俺の僧侶にアーシア、騎士にゼノヴィア、戦車にロスヴァイセさん、そしてフェニックス家のお母様から、娘のレイヴェルを僧侶枠でトレードした。皆俺にはもったいないくらいの素敵な女の子だ。

 

様々な戦いを得て俺は決めたことがあるんだ。それは俺の大切なものを傷つけるやつは神だろうが何だろうが絶対に倒す。これまでの戦いで俺の仲間が何人も傷ついたし、アザゼル先生たちお世話になった方々とは長い時間の別れをしてしまった。もう誰かのせいで大切な人を失うのはたくさんだ。だから決めたんだ。俺の平穏な日々を邪魔するやつは絶対許さねぇってな。

 

リアス達の卒業式が終わって俺は仲間集めを始めている。なんでかって?レーティングゲームっていうチェスをベースにした悪魔のゲームがあるんだけどそれの国際大会が開かれるんだ。色んな神話や勢力から数々の強者が集まるこの大会に俺も出場することを決意した。

 

色んなライバルたちから声かけられちまったからな。同じ二天龍で白龍皇のヴァーリ、拳一つで語り合ったサイラオーグさん、最強の神滅具の使い手曹操。他にもたくさんのやつに戦いたいって言われたからな。答えなきゃ男じゃないぜ!

 

そのための仲間を集めるために今冥界にアーシア、ゼノヴィア、ロスヴァイセさんと来ている。レイヴェルとイリナは外せない用事があるそうで今回は来ていない。とりあえず知り合いのもとへ向かおうと思うんだが…

 

そんな俺達の目の前に1人の男が立っていた。白い髪に整った顔、だが瞳には光が宿っていない。俺達は声もかけられてないのに何故か立ち止まってしまった。そしてその男は薄気味悪い微笑みを浮かべながら口を開いた。

 

「やぁ、はじめまして兵藤一誠君。私の名前はアイザック・ウェストコット。こことは違う異世界から来た者だ。よろしくね。」

 

こいつとの出会いが、新たな戦いの幕開けだった。




DDの大まかなあらすじを書きました。間違いなかったと思われますが…分かりづらかったらすみません。


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序章3

早く本編書きたい
ルビを教えてくれた方感謝です。


時は少し遡り…

 

アイザックは今、次元の狭間を歩いていた。

神蝕篇帙(ベルゼバブ)による道案内のおかげで目的地へ迷わず進んでいる。その場所とは天使や悪魔が和平を結んでいる普通の人間が聞けば笑い話になりそうな世界だった。

 

アイザックが何故、異世界という言葉に辿り着いたのか。答えは簡単である。異世界の方から交信が来たのだ。交信してきた者の名前はリゼヴィム。彼はこちらに喧嘩を売るような発言をし、戦争を望んでいるかのようだった。

 

だがアイザックはリゼヴィムの言葉に興味はなかった。なぜなら彼の興味は異世界の存在そのものであったからである。異世界に行きそこで自身の世界にはない技術を手に入れればより多くの人間の絶望が見ることが出来る。彼はとある少年を殺し、少年の周りにいる少女たちを絶望させ、霊結晶(セフィラ)を反転させて回収するために動いていたのだがそれを後回しにした。

 

道中で彼はこの世界の情報と情勢を把握し始めた。自身を呼んだリゼヴィムは五大龍王の1体に殺されたこと、リゼヴィムの仲間だった邪龍が黙示録の獣を使い世界へ侵攻を開始したこと、

テロ対策チーム"D✕D"によって邪龍たちは倒されたこと、暴走する黙示録の獣を止めるために各勢力の主要人物たちが結界へ自分たちもろとも獣を封印し長い時を戦っていること、リゼヴィム達へ協力していた者がいること、その者は今の世の中が気に入らないこと。

 

ある程度読み終えたアイザックは興奮を抑えきれず叫び出す。

 

「面白いじゃないか、この世界は。顕現装置(リアライザ)を使わなくとも魔法を行使でき、魔法よりも強力な能力が存在する。精霊以外にも超常や異形の勢力が存在し、しかも超常の者による争いがあった!」

 

ここに来る途中で立ち寄った世界では人間が生み出した異形しかいなかった。だからとあるモノを回収だけして滞在はしなかった。

 

「そして何より、平和な世を嫌う者が神の中にいる。それはつまり、新たな争いが起きることを意味し、争いの中には必ず絶望がつきまとう。

ハハハハハハハッ!素晴らしいじゃないか!!!」

 

満足したのかアイザックは普段のように戻りまた話し始める。

 

「今後の方針が決まった。行こか、冥府へ。」

 

ハーデス、それはD✕Dや各勢力に嫌がらせのために様々なことをしてきた死を司るオリュンポス三柱神の1人である。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

冥界の下層に位置し、死者の魂を選別する場所。

冥府。その深奥には主であるハーデスや彼の配下である死神(グリムリッパー)が住んでいる『ハーデス神殿』。

 

アイザックはそこに直接出口を開いた。それはつまり、冥府に無断で侵入したことを意味している。

当然、無数の死神たちに囲まれる。

 

死神達の攻撃が仕掛けられた瞬間、突然同じ顔をした少女達がアイザックの前に現れ、死神の攻撃から彼を体を張って守る。

 

その隙にアイザックは地面に黒い結晶を落とした。するとそこから謎の生物のような何かが彼を守るかのように立ちはだかっている。

 

謎の何かが死神に襲いかかる。何かに触れた死神は体が段々となくなっていき、やがて消滅した。その現象を表現するなら『分解された』というのが一番しっくりくる。死神たちは動揺し、主に指示を求める。

 

その時、アイザックは手を挙げた。すると謎の何かたちはピタッと動きを止めた。そしてそこにいる司祭の服装をした骸骨に向かってこう発言した。

 

「初めまして、冥府の神ハーデス。私の名前はアイザック・ウェストコット。この世界とは異なる世界から来たんだ。」

 

ハーデスは突然現れた謎の男の発言に何も返さず思案する。

 

(見た目は人間のようだが妙な気配だ。この冥府で生きていられる時点でただの人間ではないだろう。それにヤツの周りにいる小娘たち。あれは人間ではないな。能力によって生み出された存在のようだ。やつの気配に似ているし間違いないだろう。そして謎の動く物体は生き物ではない。魂が存在してないからな。自立兵器といったところか。)

 

そこまで考えアイザックと名乗った男と話すことを決める。

 

「貴様がただの人間ではないことは理解した。だか最後の言葉、異世界から来たというのはどういう意味だ。」

 

ハーデスの問に対しアイザックは笑みを浮かべながら答える。

 

「そのままの意味だよ。次元の狭間を通ってこの世界に来たのさ。この魔王と共にね。」

 

そう言って彼は巨大な禍々しい本を展開する。

ハーデスは驚愕した。理由は簡単だ。

次元の狭間は対策もなしに通れば短時間で体が消滅する。それを超えてきたということは普通の人間ではまずない。それにアイザックの展開した本と彼が従えている謎の兵器。長き時を神として過ごしたハーデスが見たこともないものだった。

 

「これで理解していただけたかな?」

 

これだけの証拠を出されてはハーデスは納得せざるを得なかった。彼らは異世界からこちらへ渡ってきた。それは紛れもない事実なのだろう。

 

「これだけのものを見せられたのなら認めるしかあるまい。それで?このハーデスに異世界人が何の用だ?」

 

「提案がある、聞いてくれるかな?」

 

そうアイザックはハーデスに対して問いかける。

ハーデスはまたしても驚かされた。異世界の人間が神に提案をしようとしているのだ。骸骨せいで顔の表情はわからないがまるで笑っているかのようだった。

 

「ファファファ。提案とな。

一体どのようなものか聞かせてもらえるか?」

 

アイザックは表情を変えずに答える。

 

「この世界の情勢はだいたい調べさせてもらったよ。天使や悪魔、堕天使などを中心に各勢力で和平が齎されている。それをあなたは快く思っていないということも知っている。」

 

ハーデスは笑いをやめる。相手はこちらのことを知っている。つまりハーデスにとって都合の悪い情報を握っている可能性がある。このままでは相手の都合の良いように何かを要求されるかもしれない。そんな懸念とは別に疑問も生まれる。わざわざこちらにそのことを伝える理由がわからない。

まだ様子を見るため、ハーデスは何も言わずアイザックの言葉を待つ。

 

アイザックは続ける。

 

「私にあなたの手助けをさせてくれないか?」

 

ハーデスには予想外の内容だった。

死神をも分解させるような兵器を大量にを持ち合わせ、まだどのような力を宿しているかもわからない本を持っている。自身にかなり有利な状況であるにもかかわらず、アイザックは協力させてくれと言った。目的がわからない。故にハーデスは問う。

 

「何が目的だ。」

 

「なに、私は人が絶望する様子を見たいだけさ。

それが見られるのなら協力を惜しまないよ。」

 

この男の言葉に嘘はない。神としての直感がそう伝えていた。嘘はついていないが、こちらに伝えていないこともあるだろう。アイザックにはおそらく別の目的がある。そう思いつつもアイザックの戦力は魅力的であった。少し悩んだがハーデスは決意を固めた。

 

「よかろう。貴様の協力を受け入れようではないか。」

 

それを聞くとアイザックは微笑み

 

「交渉成立だ。」

 

満足そうにそう告げた。

 

「早速だが聞かせてもらおう。貴様の従えているモノはなんだ?」

 

アイザックは周りを見渡しながら答える。

 

「どれについて聞いているのか不明だから順に説明をしよう。まず、この本は神蝕篇帙。全知全能を司る魔王で、全ての真実を閲覧できる。そして神蝕篇帙の能力で生み出した私の娘達、ニコルベルは基本的に無限に生み出せる。そして最後に、これらの名前はアルカ・ノイズ。ここに来る前に立ち寄った世界で手に入れた自立兵器さ。」

 

彼が最初に立ち寄ったその世界では、神代の時代に人類が神の逆鱗に触れたことにより、神と語り合う手段である統一言語を奪われ、言葉を分かつ呪詛をかけられた。これにより相互理解が不可能になった人類が生み出したモノ、同じ人類のみを殺戮する自立兵器、ノイズであった。

 

「そしてそのノイズを錬金術で再現したモノ。それがこのアルカ・ノイズというわけさ。あらゆるものを分解することのできる自立兵器。前の世界に立ち寄ったときに軍事利用されているのを見つけてね。回収させてもらったんだ。」

 

ハーデスにとってアイザックの戦力は想像以上であった。おそらくまだ戦力を温存しているだろう。やはり協力を受け入れて正解だったとハーデスは笑う。

 

「私の協力は気に入ってもらえそうかな?」

 

「あぁ。もちろんだ。歓迎しよう。アイザック・ウェストコット。」

 

「こちらこそよろしく頼むよ。」

 

「ところでなんだが、実は私の考えに賛同する者たちを集めて連合を組むつもりなのだがそこに参加してみないか?」

 

「もちろん構わないよ。

あぁ、これから楽しくなりそうだ。」

 

 

 

 

 




これを書いてるときグレートレッドって異世界からの侵略守ってたっけ?あれ?ってなったので調べたけどわかりませんでした。
なのでこの物語ではグレードレッドは次元の狭間で漂っていて、敵対者にのみ牙を向くだけという設定でいきたいと思います。もしかしたらオリジナルということになるかもですがご了承ください。
仮に守ってたとしてアイザックに攻撃仕掛けたら主人公以外にやられて負けちゃうし神蝕篇帙使って666生み出して戦わせても世界崩壊の危機になっちゃうしグレートレッドを幻書館で閉じ込めてもすぐ出てきそうだし、グレートレッドには平和でいてほしいのでこのような形になりました。


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序章4

ウェストコット様主人公かってくらい出てくる…。
今回は出ません。2人目の主人公が登場します。


俺は五河士道。ついこの間まではごく普通の高校生だった。この世界における特殊災害、空間震。その原因とされる生命体、精霊との出会いにより俺の生活は一変する。

 

精霊の対処法は2つ。

1つは武力による殲滅だが彼女たちは高い戦闘力を保有している為、困難とされている。

そしてもう1つはデートしてデレさせる。

 

何言ってるかわからないよな?俺もよくわからないんだけど、どうやら俺には彼女たちの霊力を封印する力があるんだ。その条件として彼女たちの高感度を上げる必要がある。そのためにデートをするんだけど…。最初はうまく行かなくて大変だったな。

 

俺はこれまでに様々な精霊と出会い、

10人の封印に成功している。

 

鏖殺公(サンダルフォン)の使い手で天真爛漫な夜刀神十香。

俺の戦いはこの少女との出会いから始まった。

 

氷結傀儡(ザドギエル)の使い手で優しい心を持つ四糸乃。

友達のパペット、よしのんを大事にしている。

 

灼爛殲鬼(カマエル)の使い手で俺の可愛い妹の五河琴里。

いつもチュッパチャップス咥えている司令官様だ。

 

颶風騎士(ラファエル)の使い手でいつも一緒の2人、八舞。

常に競い合い、互いを尊重し合う、耶倶矢と夕弦。

とても仲の良い2人は見ていて微笑ましい限りだ。

 

破軍歌姫(ガブリエル)の使い手で歌が大好きな誘宵美九。

国民的アイドルとして絶大な人気を誇っている。

 

贋造魔女(ハニエル)の使い手で変身を得意とする七罪。

もう彼女に自分は可愛くないなんて言わせない。

 

絶滅天使(メタトロン)の使い手でクラスメイトの鳶一折紙。

彼女を絶望と憎悪から救い出せて本当に良かった。

 

囁告篇帙(ラジエル)の使い手で漫画家の本条二亜。

だらしなさに目をつむれば頼れるお姉さんだ。

 

封解王(ミカエル)の使い手で綺麗な髪を持つ星宮六喰。

純粋無垢で人一倍寂しがり屋な女の子だ。

 

そんな彼女たちを保護してくれている組織がある。

ラタトスク。精霊との対話による空間震の平和的解決を目的とした秘密結社だそうだ。俺や精霊たちの生活を全面的にサポートしてくれている。

 

そんな俺は最悪の精霊と呼ばれる少女、

刻々帝(ザフキエル)の使い手である時崎狂三と共にいる。

 

理由は簡単だ。彼女とは勝負の最中であるから。

その内容は"相手をデレさせた方が勝ち"というものである。俺が勝てば狂三の霊力を封印し、これまでの罪を償わせ、幸せに生きてもらう。狂三が勝てば彼女は俺の中にある10人分の霊力を手に入れる。

 

2月14日。バレンタインデーである今日は俺と狂三のデート当日である。デートはうまくいっていた。だがどうしても好感度が足りなかった。狂三は本当に楽しんでくれていたが、それでも足りなかった。彼女には何か硬い決意が存在し、それ故に封印にまで至れないそうだ。俺にはその心当たりがあった。

 

『30年前に戻り、"始原の精霊"を殺す。』

 

彼女はそのために行動していると聞いた。だから俺は直接質問した。何故始原の精霊を倒したいのかと。彼女は俺にそれを聞く覚悟はあるのかと問い、俺は彼女の目を逸らさずにあると答えた。

そして俺は彼女の壮絶な過去を知ることになった。

 

その昔、彼女は始原の精霊に力を与えられ、世界を滅ぼす『敵』と戦っていた。だがその敵というのは狂三と同じように始原の精霊によって力を与えられた人であった。その中には彼女の親友の姿もあった。

 

敵の正体が人間だと気づいた狂三は始原の精霊に説明を求めた。始原の精霊は答える。

霊結晶を与えられた者を精霊と呼ぶこと。

霊結晶を人間が適応できるまで精製していたこと。

霊結晶を精製する方法は人間の体に霊結晶を通し暴走させる、これを繰り返すこと。精製した霊結晶を適正のある人間に与えれば精霊になること。

そして暴走した人間を狂三に処理させていたこと。

そう、狂三は人を手にかけてしまったのだ。

騙された怒り、親友を失った悲しみが彼女を襲う。

 

故に彼女は決意した。どんな犠牲を払ってでも、

どんな手を使ってでも全てをやり直すと。そして過去に戻るためには莫大な霊力を必要とする。

これが彼女が士道の霊力を欲する理由であった。

 

狂三の拠点の一つに来ていた俺は彼女の過去と目的を知った。そして狂三に改めて霊力を譲るようお願いされた。その時だった。

 

DEMのトップ、アイザック・ウェストコットが反転した二亜から霊結晶の大半を奪い獲得した魔王、

神蝕篇帙の力によって生み出した精霊の贋作、

ニコルベルによる襲撃を受けた。

 

狂三のおかげで事無きを得たが直後、彼女は疲れたかのように気を失ってしまった。彼女に駆け寄った時、眼帯をつけた狂三の分身が現れた。狂三は刻々帝の能力により過去の自分を分身として生み出すことができる。そのうちの1人が現れたのだ

 

そして俺は眼帯の狂三から驚愕の事実を聞いた。

俺はDEMの攻撃によって、6日間で204回の死を遂げたそうだ。それを救ってくれたのが狂三だった。

 

六の弾(ヴァヴ)の能力により意識のみを過去に送った狂三は俺のことをずっと守り続けてくれていたらしい。

常に張り巡らされていた狂三の精神は限界を迎え倒れた。

 

狂三の様子を伺っていたその時、俺の背後の空間が歪み孔が生じた。また敵襲かと思った俺と眼帯の狂三はまだ気を失っている本物の狂三を庇うように前に出る。だが俺はこれが敵襲ではないと悟る。

何故なら孔から鍵の先端が見えたからだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

孔から見知った少女が出てきた。六喰だ。

六喰は俺の姿を確認すると安心した声を発する。

 

「主様、無事で何よりじゃ。」

 

「六喰?どうしてここに?」

 

「通信機が破壊されてしもうたからの。

緊急である故、むくの出番となったのじゃ。」

 

俺が身に着けていた通信機は狂三に覚悟を問われた際、脅しとして彼女が破壊してしまったのだ。

 

「あらあら、『わたくし』が失礼を致しましたわね。申し訳ありませんわ。」

 

眼帯の狂三が謝罪する。

 

「大丈夫だ。それで六喰、緊急というのは?」

 

「帰ってから二亜が説明すると言っておった。

むくは主様とそこに眠っておる娘を連れて来てほしいと頼まれたのじゃ。」

 

「俺と…狂三を?」

 

「むんっ。」

 

六喰は頷いた。

 

ラタトスクは精霊を保護する組織だ。その精霊に力を使わせてまで伝えなくてはならない用件。それに狂三は最悪の精霊と呼ばれるほどの危険な存在として認識されている。その狂三をフラクシナスへ連れて行く許可が降りたということは狂三の力が必要であるということ。よほど何かが起きたということだ。

 

「というわけなんだ『狂三』、力を貸してほしい。」

 

眼帯の狂三に士道は協力を仰ぐ。

 

「わたくしが決められるようなことではなさそうですわね。『わたくし』が起きるまで待っていただけるような時間もなさそうですし。そうですわね、

条件を飲んでいただけるのでしたら、わたくしは『わたくし』を運ぶのを手伝ってもよろしくてよ。」

 

「条件?」

 

「えぇ、『わたくし』に危害を加えないと約束してくださいまし。それが出来るのなら、わたくしは『わたくし』を運ぶことに協力いたしますわ。いかがでして?」

 

「約束する。狂三には手出しさせない。」

 

士道は即答し、眼帯の狂三は優しい笑みを浮かべた。

 

「いいでしょう。わたくしも『わたくし』をゆっくり休ませてあげたかったですしね。それでは参りましょうか。急がねばならないのでしょう?士道さん、『わたくし』を抱っこして差し上げて頂けますか?」

 

「え?『狂三』が肩を貸してくれるんじゃないのか?」

 

「そんな事をしたら起きてしまうではありませんの。わたくしは『わたくし』を休ませてあげたいと申し上げたではありませんか。わたくしでは抱っこするには力が足りませんので。」

 

「そういうことならわかった。任せてくれ。」

 

という訳で寝ている狂三を抱き上げたのだが…

 

眼帯の狂三は懐からカメラを取り出し撮影した。

 

「えぇっと…何してるんだ?」

 

「お気になさらず。ただの記念撮影ですので。

さぁ、時間が惜しいですわ。早く行きましょう。」

 

「主様、皆待っておるぞ。」

 

「あ、あぁ…わかった。」

 

「くすくすくす。」

 

こうして3人と『狂三』は孔の中へ消えていった。

 




士道にお姫様抱っこされる狂三を撮影する『狂三』

今の所シンフォギア要素が少なめですが
今後出てきますので気長にお待ちください。


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序章5

長くなっちゃった。


孔を抜けるとそこは寝室の1つだった。

 

抱えている狂三をベッドに寝かせていると精霊達が集まってきた。皆、二亜に呼び出されたようだ。

 

「おぉ!シドーではないか!シドーも二亜に呼ばれてきたのか?」

 

十香が駆け寄ってくる。他の皆も近付いてきた。

 

「士道さんも二亜さんに呼ばれたのですか?」

 

『よしのん達も呼ばれたんだけどー、詳しい事情は全員集まってからって教えてくれなくてさー』

 

十香、四糸乃、よしのんは通信機が壊れて連絡が途絶してたことを知らなかったらしい。不安にさせないで良かった。

 

「ちょっと!急に連絡つかなくなったって聞いて心配したし!どこで何してたし!」

 

「安堵。無事で何よりです。お怪我はありませんか?」

 

「だーりん大丈夫でしたか!?え!?大丈夫じゃない!?んふふー仕方ないですねぇー!それなら私が一日中付きっきりで看病してあげますね!」

 

「いやどう見たって大丈夫だから。とりあえず体は平気みたいね。良かったじゃない。あまり心配させないでよね。」

 

「きゃー!七罪さんの可愛さにやられてしまいましたー!責任を取って1週間、私の抱き枕になって下さーい!」

 

「ちょ、やめ、離れろー!」

 

一方で、事情を知っていたらしい耶倶矢、夕弦、美九、七罪には心配させてしまったようだ。皆にちゃんと謝らないとな。

 

「美九、そこまでにしてあげなさい。通信が途絶した時は焦ったけど無事で何よりだわ。とりあえずおかえりなさい。」

 

琴里にも心配かけたな。今度好きな物を食べさせてやるか。

 

「ただいま、皆。心配かけて悪かった。」

 

皆笑顔で迎えてくれた。

 

「それで?六喰に頼むほどの緊急なんだろ?一体何があったんだ?」

 

「それが…私にもまだ知らされてないのよ。二亜は皆に説明したいって言われて。」

 

するとそこに召集した張本人である二亜が姿を表した。

 

「いやぁ悪いね少年、くるみんとのデートを邪魔しちゃって。」

 

「仕方ないさ。狂三も眠ってしまってたし、あのまま起きるのを待っていもきっとデートの続きはしなかったと思うしな。」

 

「それならよかったよ。じゃあ早速だけど説明させてもらおうかな。」

 

「待って。」

 

声のする方を向くとそこには折紙の姿があった。

 

「折紙?」

 

「おかえりなさい士道。無事で何より。説明をするのは構わない。でもここに時崎狂三がいるのは聞いてない。話を円滑に進めるためにまずはそこを説明するべき。」

 

「あらあら、これはいかがいたしましょうか。」

 

眼帯の狂三が好戦的な笑みを浮かべる。

 

"ナイトメア"時崎狂三は最悪の精霊。

これまで士道と何度か共闘しているため、士道はある程度の信頼を彼女に置いている。だが他の皆は違う。警戒して当然なのだ。

 

それでも俺は…。

 

「私が呼んだんだよ。今回の件はくるみんの協力がどうしても必要だからね。くるみんは私に借りがあるから来てくれると思ってたんだけど…まさか気を失ってたとはね。」

 

皆どうすれば良いか迷っている。なら俺のすることは1つだ。

 

「皆、聞いてくれ。」

 

士道に視線が集まる。

 

「俺は狂三に何度も助けられた。狂三は誰かのために自分を犠牲にできるとても優しいやつなんだ!手段は間違えたかもしれない。でも狂三ならきっと償える!俺はそう信じたい!そして皆も狂三を信じてやってほしいんだ。皆に危害を加えないことは俺が保証する。だから…。」

 

士道は頭を下げる。すると1人の少女が前に出た。

 

「えっと、私は士道さんを信じてます。ですのでその士道さんが信じているのなら私も…彼女を信じてみたいと思います。」

 

四糸乃の言葉に皆が頷いてくれる。

 

「ありがとう、皆。」

 

すると眼帯の狂三は優しい笑顔を作った。

 

「感謝いたしますわ。今の士道さんの台詞、あとで『わたくし』に伝えておきますわね。」

 

「んなっ!?」

 

皆笑ってるし…。

 

「他にはないね?それじゃ、急いだ方が良いからね。」

 

二亜の顔つきが真剣になる。

 

「少年がくるみんデートをする少し前かな?DEMのトップ、アイザック・ウェストコットがこの世界とは異なる世界に移動したと思われる。」

 

二亜の言葉に一同が驚愕する。

 

「異なる世界って…一体どういうことだよ。」

 

「オリリンのために少年が世界を変えたんだよね?これは本来あった歴史が少しずれた世界、所謂"並行世界"と言われるものに移動したということになる。でも異なる世界っていうのは文字通り、全く異なる歴史を持った別の世界のことを言うのさ。"異世界"ってやつだね。隣界がわかりやすい例えだよ。私が囁告篇帙を持っていた頃に調べたことがあってね。その時私は興味なかったんだけど。」

 

囁告篇帙を持っていた二亜が言うのだから本当なのだろう。あまりの話に言葉が出てこない。

 

「質問。二亜はどうして彼が異世界へ渡ったと知っているのですか?」

 

夕弦の疑問はもっともだ。彼女は囁告篇帙の検索をほとんど使うことができない。ウェストコットに大半の力を奪われてしまったからだ。

 

「囁告篇帙と神蝕篇帙は表裏一体。感覚でわかるんだよね。神蝕篇帙は今確実にこの世界にはいない。なら私が昔調べた異世界にいるってことになる。

そしてそれを私達は見過ごせるわけもないよね?」

 

「そうね。二亜の言うとおりでしょうね。アイザック・ウェストコットは異世界にいる。それで進めましょう。あんな危険なやつが他の世界に迷惑かけるのは確かに見過ごせないわね。」

 

「いやいや妹ちゃん、それだけで私が皆を呼ぶわけ無いっしょ。この後が重要なのよ。」

 

「この部屋を完全防音にするよう、

突然私に言ったのも関係があるのですか?」

 

士道の携帯から突然声がした。

 

「もちろん、どこで誰が聞いてるかわからないからね。」

 

二亜はチラッと眼帯の狂三に顔を向ける。

狂三はそれを軽く受け流した。

 

「どういうことなんだ、マリア」

 

MARIA(マリア)。フラクシナスをフラクシナス・EX(ケルシオル)に改良した際にコミュニケーション機能を搭載された管理AIだ。

 

「どういうことと聞かれても。そこの飲んだくれに頼まれてこの部屋の会話を外部へ漏れないようシャットアウトしただけです。」

 

「相変わらず私の扱い酷いよね。まぁそういうことだから。それは置いといて。皆よく聞いてね。」

 

二亜はとんでもない提案をを言い出した。

 

「私は異世界へ行き、ウェストコットの野郎をぶっ飛ばすべきだと思う。そのためにくるみんの力を借りようと思ってる。」

 

『!?』

 

二亜の言葉にまたもや驚愕する俺達。

 

「ちょ、ちょっと待って。異世界に行ってあいつをぶっ飛ばすって言うけどなんでいきなりそんなことになるのよ?」

 

「あいつはおそらくあの最強の魔術師(ウィザード)と一緒じゃない。理由は簡単。霊結晶がないと異世界へは渡れないから。だからあいつは今1人で向かってる。あいつを守る者がいないのなら倒すなら今しかない思ってね。」

 

その時、ベッドの方から声が聞こえた。

 

「わたくしが眠っている間に随分話が進んでいるではありませんか。これはどういうことですの『わたくし』。」

 

本物の狂三が目を覚まして眼帯の狂三を問い詰める。

 

「あらあら、わたくしはただ士道さんの目の前で倒れるほどお疲れの『わたくし』のために安全な寝床を用意しただけですわ。」

 

「言い訳は後で聞いてあげますわ。それで?わたくしにこの状況を説明してくださるかしら?」

 

「あぁ、任せてくれ。」

 

俺は狂三が眠った後の事と二亜の提案を話した。

 

「異世界というものについてはわかりましたわ。

それで何故わたくしの力が必要になるんですの?」

 

「異世界へ行くメンバーの護衛を頼みたいんだ。

私達の戦闘力では心許ないからね。」

 

「言っていることがおかしいですわよ。

アイザック・ウェストコットを倒すんでしたよね?

わたくしが護衛なら誰が彼を倒すんですの?」

 

「そんなの決まってるよ。くるみん以外にも戦える人物がいるじゃないか、自由にしかも複数の天使を操れる人物が1人だけね。」

 

「まさか…士道さん?」

 

「え?俺?」

 

いきなりの事に頭が追いつかない。俺があいつを倒す?そんなこと可能なのか?相手は全知全能の魔王を所持している。そんな相手に俺と狂三だけで…。

 

「そんなの認められないわ!士道にそんな危険な役目任せられない!それならいっそ私も行って…」

 

「妹ちゃん、気持ちはわかるけど君は司令官だ。重要なポジションの君がフラクシナスを離れる訳にはいかない。」

 

「でも…。」

 

「それにくるみんは唯一霊力を封印されていないからね。しかもくるみんじゃなきゃ精霊もどきの数に対抗できない。だからくるみんじゃなきゃ務まらないんだよ。」

 

「……。わかったわ…。」

 

二亜の説得に琴里は渋々納得したようだ。

 

「そういうことですのね。でもわたくしになんのメリットがありますの?」

 

「少年が負けたらくるみんの目的は果たせなくなるんでしょ?是が非でも守るしかないんじゃない?」

 

狂三は痛いところを突かれたような顔をする。

そして諦めたかのように頷いた。

 

「わかりましたわ。今回だけ特別にですわよ。仕方ありませんから士道さんの護衛を務めて差し上げましょう。」

 

「待ってくれ。俺達2人だけであいつを倒しに行くのはいくら何でも無謀すぎないか?」

 

「誰も2人だけとは言ってないでしょ。他のメンバーも決めてあるよ。むっくちん、なつみん、2人にも異世界に行ってもらいたい。」

 

名前を呼ばれた2人は反応する。

 

「むくか?異世界とやらへ主様たちと行くのかえ?」

 

「え?え!?な、なんで私なのよ?私より強い人いっぱいいるじゃない!折紙とか!」

 

「おそらく異世界へ移動する手段として封解王(ミカエル)

"(ラータイブ)"も有効だと思うんだ。あれは空間を別の空間へ繋げられるから異世界の空間でも出来るんじゃないかな?それに贋造魔女も"(ラータイブ)"を使える。もちろん少年もね?緊急時にいつでも帰ってこられる3人とその護衛のくるみん、この4人が適任なんだよ。」

 

「それなら私も行く。戦力は1人でも多いほうが良い。」

 

折紙が名乗りを上げた。他の皆も思いは同じようだ。

 

「1つよろしいですか?」

 

狂三が手を挙げた。狂三へ皆の視線が集まる。

 

「3日以内にこの艦に向けてDEMの総攻撃が始まりますわ。精霊の偽物さんは主人がいないので出てこないとは思いますが、相手はあの魔術師です。不測の事態があっても対処できるよう最小限で行くべきかと思いますわ。」

 

「少年を狙った襲撃があったって聞いたから、万が一の為守りを厚くしようと思ってたら…嫌な予想が当たっちゃったねぇ。」

 

「でもそれなら私達が囮になってだーりんを匿っているように立ち回ればいいんですよ。そうすればだーりんがあの怖い人を倒す時間を稼げるんじゃないですかー?」

 

「良かろう。我ら八舞も士道のため一肌脱ごうではないか。」

 

「狼狽。耶倶矢がセクハラしています。」

 

「ちょっ!?そういう意味じゃないし!」

 

「気をつけて行ってくるのだぞ!帰ったらデェトをしようではないか!」

 

「そういう事らしいけど士道、後はアンタが決めなさい。」

 

「正直、皆が心配だ。でも俺があいつを倒せば皆平穏に暮らせるんだろ?ならやってやる。皆が幸せに暮らせるの未来のためならどんな事だって!」

 

「無事に帰ってきなさいよ。」

 

「あぁ、なるべく早く帰ってくるよ。

行こう、狂三、六喰、七罪。」

 

3人は頷いた。

俺はアイザック・ウェストコットの痕跡をイメージしながら孔を開ける。

 

「"(ラータイブ)"」

 

「さぁ、私達の戦争(デート)を始めましょう。」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ここが異世界?」

 

孔から出た俺達は辺りを見渡す。

そこには大きな施設があり、戦車などが大量に並んでいた。

 

「景色から見て日本ではないでしょう。日本が存在するのかわかりませんけれど。」

 

「軍事施設かしら?あまり長居したくないわね。」

 

「そうだな、とりあえず村とか街とか聞き込みしやすい場所を探すとしようか。」

 

そう言って俺達は施設から離れようとする。

すると六喰が聞いてくる。

 

「のぅ主様よ。何か聴こえて来ぬか?」

 

「え?」

 

そう言われて俺達は耳を澄ます。

 

 

 

聞こえてきたのは少女の歌声だった。

 

 




というわけで長い長い序章は終わり次回から本編です。
残ったメンバーにもきちんと意味がありますので予想してみてください。


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旅立ち・出会い
第一話


知ってるかもですが主人公は3人です。

ダインスレイフの能力がシンフォギアXDにあったため回復阻害の呪い→強力な呪いに変更しました。


「やぁ、はじめまして兵藤一誠君。私の名前はアイザック・ウェストコット。こことは違う異世界から来た者だ。よろしくね。」

 

俺、兵藤一誠は仲間たちと冥界でメンバー集めをしていたんだけど、突然目の前にいる奇妙な男に声をかけられていた。

 

「アンタ、何者だ。」

 

冥界で俺はかなりの有名人であるため声をかけられるのはおかしいことじゃない。だけどこいつの気配はまるで…。

 

(悪魔ではないな。妙な気配を持っているが奴はおそらく人間だ。)

 

ドライグの言う通り、こいつは変な気配がするけど人間だと思う。他の勢力の人間が冥界に来ることはおかしいことじゃない。今は国際大会前だしな。曹操のように神に使えてる人間と言うなら話はわかる。

 

だけどこいつが放った異世界から来たという言葉。俺が以前悪神ロキと戦ったときに交信した乳神様は異世界の神だったはず。ということはこいつは乳神様の世界の人間なのか?なんにしても只者じゃないのは確かだ。

 

「何者…か。そうだな…私は魔王を従える者かな?」

 

「魔王様を従える?それはつまり、冥界への宣戦布告って捉えていいのか?」

 

「半分正解で半分不正解だ。私は君達の魔王を従えている訳じゃない。それに宣戦布告する相手は冥界だけじゃない。各勢力全てだよ。」

 

男、アイザックの言葉に驚愕する俺達。

 

「それなら貴様を叩き斬ってやるまでだ!」

 

ゼノヴィアがアイザックに斬りかかる。

アイザックは避ける素振りすら見せない。

だがゼノヴィアの攻撃が当たることはなかった。

 

「いきなりお父様に斬りかかるなんてこの女ぶっ飛ばしていいかな?」

 

「いいじゃんいいじゃん!やっちゃおうよ!」

 

「綺麗な顔を台無しにしてあげようよ!」

 

「きゃははは!」

 

アイザックの前に同じ顔をした少女達が立ちはだかる。

 

「デュランダルを…受け止めた?」

 

複数人とはいえ、少女達はデュランダルの攻撃を受け止めたのだ。ゼノヴィアはその事実に驚く。

 

「随分余裕ぶっこいてるじゃない?よっ!」

 

「ぐはッ!!!」

 

そしてその隙を突かれ背後からもう1人の少女がゼノヴィアを蹴り飛ばした。

 

「ゼノヴィア!!!」

 

「私は平気だ…それより、こいつらかなり手強いぞ。」

 

「ゼノヴィアさん!大丈夫ですか?今回復させますからじっとしていてください!」

 

アーシアがゼノヴィアに駆け寄り傷を癒やす。

その光景を見てアイザックは不気味に笑う。

 

「ふむ。癒やしの力、それが君の神器と言うやつだね?」

 

奴の言葉を聞き、ロスヴァイセさんは慌てた表情を作る。

 

「イッセーくん!この者達はこちらを調べて襲撃していると思われます!撤退して体制を立て直すべきかと!このままでは我々は不利です!」

 

ロスヴァイセさんがそう提案した。確かに、俺の名前を知っていたりアーシアの力を見て神器だと言った。おそらく俺達の戦力が乏しいときを狙って襲撃したのだろう。このままでは相手の思う壺だった。

 

「わかった!俺が殿を務めるから2人はアーシアを!」

 

「わかりました!気を付けてください!」

 

「アーシアは私達が必ず守る!」

 

「おう!」

 

そう言って俺は赤龍帝の籠手を出現させ、詠唱を始めた。

 

「我、目覚めるは

王の真理を天に掲げし赤龍帝なり!

 

無限の希望と不滅の夢を抱いて王道を往く!

我、紅き龍の帝王と成りて―」

 

俺の周りに紅のオーラが漂う。

 

『汝を真紅に光り輝く天道へ導こうッ!』

 

Cardinal Crimson Full Drive(カーディナル クリムゾン フル ドライブ)!!!』

 

宝玉の音声が鳴り響き、周りのオーラが弾ける。

 

これが俺の禁手(バランス・ブレイカー)真紅の赫龍帝(カーディナル・クリムゾン・プロモーション)だ。

 

これにより俺のオーラは爆発的に高まった。

普通の上級悪魔レベルだとオーラの高さにビビっちまうやつも出てくるんだけど…。こいつはむしろ好奇に満ちた笑みを浮かべた。まるで俺の力を見たかったかのようだ。

 

「素晴らしい!こんな素晴らしい力、彼女たち以外で見たのは初めてだよ。やはり異世界は退屈しないな。」

 

「随分余裕そうだな。お前は俺の大切な仲間を傷つけたんだ。手加減はしない。全力で行ってやる!」

 

「来るといい。少し相手をしてあげるよ。」

 

「舐めるなァァァァッ!!!」

 

俺は『倍加』の力で右手のオーラを増加させ、奴に思いっきりぶっ放した。人間相手にやり過ぎかと思ったけど相手は正体不明。さっきも言った通り手加減せず放った…はずだったんだけど。

 

神蝕篇帙(ベルゼバブ)。」

 

「なっ!?ベルゼバブ!?」

 

俺の攻撃を防いだのにも驚いたけど奴の出した巨大な本の名前だ。ベルゼバブ、またはベルゼブブと言うのは魔王様の1人の名前だ。

 

「これは私の魔王、神蝕篇帙。私達の世界で超常の存在が持っている兵器を天使と言い、それが反転した姿がこの魔王なのさ。」

 

(相棒、かなりまずい状況だ。魔王というからには強大な能力を持っているはずだ。だが奴はまだ顕現させただけでその能力は未知数のままだ。)

 

確かにまずい。

これじゃ3人の逃げる隙を作るのは至難の業だ。

 

そう考えていると俺はあることに気づく。

周りから音がしてないのだ。

逃げる音も、戦闘する音も何もかもしてなかった。

 

俺は嫌な予感がして後ろを振り向きながら叫んだ。

 

「アーシア!ゼノヴィア!ロスヴァイセさん!」

 

 

 

目の前には最悪の光景が広がっていた。

 

 

 

全身血だらけになりながらもアーシアを庇うように倒れている2人。そしてそのアーシアも気絶させられていた。

 

目の前の光景に頭が真っ白になった。

 

「こいつら無駄に抵抗してくれちゃってさ。」

 

「かなりの数の『あたし』がやられちゃったよ。」

 

「まぁでもそこそこ楽しめたかなー。」

 

「金髪の女は一発殴ったら気を失っちゃったけどね。きゃはは。」

 

「テメェらァァァァァァァァァ!!!」

 

俺はありったけのオーラを少女達にぶつけた。

急いで皆を抱えて逃げなければ。

 

するとアーシアの周りから金色のオーラが溢れだす。そしてそいつは怒り狂いながら登場した。

 

「お前達はアーシアたんを傷付けた!

俺様はお前達を絶対に許さないッ!」

 

そういって五大龍王、黄金龍君(ギガンティス・ドラゴン)ファーブニルは自身の体内に収納している伝説のアイテムを射出する。

 

辺りにいた少女達は跡形も無く姿を消した。

そしてそのままアイザックの元へ突進する。

 

だが奴はそれを見てニヤッと笑ったような気がした。そしてファーブニルが奴の頭を噛み砕くために口を開いた。

 

だが次の瞬間、ファーブニルの口は閉じることなく、むしろ血を吐き出した。

 

「ファーブニル!!!」

 

アイザックの手元を見てみると黒い禍々しい剣を握っていた。そしてその剣先はファーブニルの腹部を貫いていた。

 

「アー…シア……たん…。」

 

そう言い残してファーブニルは倒れ込む。

彼の周りには大量のが血流れていた。

 

「これは別の世界では聖遺物としても扱われる魔剣ダインスレイフだ。この剣は血を啜る魔剣と言われていてね。これに斬られた者は強力な呪いを受ける。相手は龍王だから死にはしないだろうけどしばらくは戦えないだろうね。」

 

気が付くと俺達の周りを少女達が囲んでいた。

少女達だけじゃない。生き物のように動いている謎の物体もいる。そいつが触れた場所は文字通り『分解』されていた。

 

魔王に、魔剣、大勢の少女達、謎の物体。

相手はまだまだ戦力を温存している。それに比べてこちらは壊滅状態だった。何処で何を間違えたんだ?どうすればよかったんだ?

 

(相棒!しっかりしろ!こうなれば疑似龍神化を使うしかないだろう!それで一気に決めるしかない。)

 

ドライグに諭され俺は冷静になる。

そうだ、まだ俺には疑似龍神化が残ってる。

こいつらを早く片付けて皆を病院へ連れて行かないと。

 

そうして俺が詠唱しようとした瞬間奴が口を開く。

 

「今日はここまでにしようか。」

 

アイザックはそう告げて少女達と謎の物体を引き上げさせる。

俺は訳がわからず奴に問う。

 

「テメェ!どういうつもりだッ!」

 

「今日は元々君に挨拶をしに来ただけなんでね。

協力者が君をとても気にかけていたからね。

ついこの目で見てみたくなったのさ。」

 

「協力者?」

 

「あぁ、とても仲良くさせてもらっているよ。」

 

そう言いながら奴は空間を歪ませる。そして良い事を思いついたかのように告げた。

 

「そうだ、今日のお礼に1つプレゼントをしよう。」

 

奴は不気味な笑顔を浮かべていた。

 

「絶望というプレゼントをね。」

 

嫌な気配がした。

 

「神蝕篇帙――幻書館(シュフィリヤ)。」

 

奴が何をしたかはわからない。だが逃げなければまずいと直感でそう感じた。するとアーシアの下の空間が歪み巨大な本が出現した。このままではまずい!俺はアーシアへ走り出すが間に合わず、巨大な本はそのままアーシアを飲み込んでしまった。

 

「アーシアァァァァァァァァァッッッ!!!!!!」

 

「その顔が見たかったんだ。英雄と呼ばれた君の絶望した顔がね。彼女は預かっておくよ。取り返しに来るといい。私は君が来るのを楽しみに待っているから。」

 

そう言って奴は空間の中へ消えていった。

 

「クソォォォォォォォォォォォッッッ!!!!!!」

 

静寂な辺りには俺の叫び声だけが響き渡った。

 




士道くん視点続くと思わせてイッセー視点でした。

イッセーシドービッキーの邂逅はまだ先です。


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第二話

アンチヘイトを外しました。
しばらくイッセーサイドが続くかと思われます。

シンフォギアXDにてダインスレイフの効果がありましたので少し変更しました。


僕、木場祐斗とオカ研メンバーは冥界のとある病院に来ていた。

 

その理由はイッセー君達が冥界で仲間集めをしていたところ、謎の集団に襲撃され、重傷を負ったとの報告を受けたからだ。

 

案内された病室についた僕達の目に最初に写ったのは、至る所に包帯が巻かれている痛々しい姿のゼノヴィアとロスヴァイセさんだった。殴られたであろう痣や斬られたものによる傷が体中のあちこちに見受けられる。

 

その姿を見た僕は形容し難い程の怒りを覚えた。

他の皆も各々違いはあれど、怒りと悲しみの表情をしていた。特にリアス姉さんは紅いオーラを漂わせている。放っておいたら今にも襲撃者の元へ報復しに行くのではと思わせるほど濃密なオーラだ。

 

そして2人のベッドの傍らには、俯いたまま座っているイッセー君の姿があった。その目はずっと泣き続けていたことがわかるほど腫れていた。

 

僕達が病室に辿り着いてもまだ、彼は口を開いてはくれなかった。そこへ主であるリアス姉さんがイッセー君に近づき声をかける。

 

「イッセー、何があったの?詳しく教えてくれないかしら?」

 

リアス姉さんは優しく問いかけるが…

 

「俺が……皆を守れなかった………」

 

と枯れた声で呟くだけだった。彼の最愛の人であるリアス姉さんが声をかけてこの反応とは…。

一体何が起こったんだ?

 

そこへ魔王様であるアジュカ・ベルゼブブ様が病室へ到着なされた。

 

「皆集まっているかい?」

 

「アジュカ様!一体イッセー達に何が起きたのですか!?」

 

リアス姉さんが質問するとアジュカ様はその時の知りうる状況を説明してくださった。

 

「彼らは昨夜、首都リリスにある喫茶店で大会に出るメンバーについて話し合いをしていたそうだ。ある程度方向性が決まり、用事があったレイヴェル君と紫藤君はそこで別れたそうだ」

 

2人は肯定する。彼女達も相当悔しいはずだ。自分達が一緒にいればこのような事態にはならなかったかもしれないと道中ずっと呟いていた。

 

アジュカ様は続ける。

 

「その日はホテルに宿泊し、翌日に街を歩いていると目の前に現れた謎の男に声をかけられた。街の監視カメラはそこまでを写して突然途絶えた。おそらく相手の能力によるジャミングか人払いのような結界を貼ったのだろう。カメラが次に写したのは血だらけで倒れている2人と龍王ファーブニル、そして3人に駆け寄って助けを呼ぶイッセー君の姿だった」

 

『!?』

 

「ファーブニルは腹部を貫かれ、その体に強力な呪いを受けた。その効果により治癒魔法などが打ち消されているそうだ。今は初代孫悟空殿の仙術により治療を受けているが戦線復帰はかなり先になると思われる」

 

龍王であるファーブニルまでやられたのか?相手はそれほどまでに強大なのか?アーシアさんを集中的に狙われ、それを庇ったために倒されたとか?

 

と僕はそこまで考えてあることに気づく。

おそらく同じことを思ったのだろう。

イリナさんがアジュカ様に泣きながら質問した。

 

「あの…アジュカ様。アーシアは…?アーシアはどこにいるんですか?まさか2人より重傷で別の部屋にいるんですか?お願いです、彼女に…アーシアに会わせて頂けませんか…?」

 

するとイッセー君が頭を抱えながら更に俯き、泣き出した。

 

「アーシア…ゴメンな……守れなくて……」

 

アジュカ様の言葉に僕達は耳を疑った。

 

「この事は各勢力の上層部にのみ伝えてあるのだが…アーシア君は謎の男によって連れ去られた。」

 

「そんなッ…アーシアが…?」

 

アジュカ様の言葉にリアス姉さんは膝から崩れ落ちた。大切な家族は重傷を負い、実の妹のように可愛がっていたアーシアさんが拉致された。その事実に耐えられるはずがない。イリナさんも体を震わせながら嗚咽を漏らしていた。リアス姉さんを朱乃さんが、イリナさんをレイヴェルさんと小猫ちゃんが支えているが3人とも涙を流していた。ギャスパー

君は拳を握りしめ、ずっと目を伏せていた。もちろん僕だって怒りを我慢するのに必死だったけどこういう時こそ冷静でいなくちゃいけない。

そう自分に言い聞かせるので精一杯だった。

 

「……彼女の行方はわからないのでしょうか?」

 

僕はなんとか声を絞り出し、アジュカ様に質問する。

 

「現在、冥界中を捜索しているが手掛かりはつかめていない。これから各勢力と協力して捜査範囲を広げるつもりだ。」

 

敵の正体もアーシアさんの行方も手掛かりはない。

完全に手詰まりの状況だった。

 

イッセー君は今も泣いていた。仲間を守れなかった己の弱さを彼はずっと責め続けているのだろう。

 

イッセー君…君がそんな様子じゃ駄目だろ…。

僕は彼の方へ向き、そう語りかけようとした。

 

次の瞬間、イッセー君は倒れ込んだ。

胸ぐらを掴まれ、顔を殴られたのだ。

 

「いい加減にしてください…!」

 

彼を殴ったのはギャスパー君だった…。

その光景に皆が驚いていた。

 

「ギャス…パー…?」

 

イッセー君も驚いたようだ。

そして再びイッセー君の胸ぐらを掴み叫び出す。

 

「僕は常に前を向いて、何事にもまっすぐ突き進んでいくそんなイッセー先輩の姿に僕は憧れたんだッ!どんな時も諦めない、そんな先輩がかっこよかったから…ッ!」

 

イッセー君はギャスパー君の目標だった。常にイッセー君のようになりたいと鍛錬を積み重ね、苦手だったものを克服していった。だからこそ目標だった彼の今の姿をギャスパー君は許せなかった。

 

「悔しいのはわかります!僕も自分の無力を嘆いたときが何度もありましたから…!でもだからといって先輩が俯いていたら皆俯いてしまうッ!王である先輩が前に進まなかったら眷属も足を止めてしまう……っッ!」

 

ギャスパー君は声を震わせながら続ける。

 

「僕達はグレモリーの男です……ッ!僕達はいかなる時も女の子を守らなくちゃいけないんだッ!いかなる時も立ち上がらなくちゃいけないんだッ!」

 

そこにいたのは1人の『男』。

 

「絶対に諦めちゃいけないんだッ!!!!!!」

 

それはまだギャスパー君が鍛える前のサイラオーグ眷属とのレーティングゲームの際にイッセー君がギャスパー君に教えた言葉だった。

 

泣くのをずっと我慢していたギャスパー君はそう言い終えた後、イッセー君の胸で号泣してしまった。

 

ギャスパー君の言葉はイッセー君に響いたのだろう。イッセー君はギャスパー君を抱き締め笑顔を作った。

 

「……あぁ…そうだったな………。ありがとうな、ギャスパー。お前の言う通りだ。お前に言った言葉を俺が守らないでどーすんだよな…」

 

そこにはもう先程までの俯いていた彼はいない。

もう1人の『男』は誓う。後輩に、仲間に、最愛の人に、そして…連れ去られた彼女に。

 

「俺もグレモリーの男だからな。約束する。

次こそ必ず皆を守る。

何があってももう下を向かない。

どんな状況でも絶対諦めない。

そして必ず…アーシアを救い出す」

 

「イッセー…」

 

「リアス…皆…心配かけて悪かった。

アジュカ様にもご迷惑をおかけしました」

 

「いいんだよ。君が謝ることではないのだからね。むしろこちらこそ謝罪させてほしい。冥界に敵の侵入を許してしまったのだからね。君が立ち上がったのなら当時の詳しい状況を聞きたい。早速で悪いが話せるかい?」

 

「わかりました」

 

こうしてイッセー君は何が起きたのか語り始めた。

 

「俺達を襲ったのはアイザック・ウェストコット。奴は俺達に自分は異世界から来たと言っていた。」

 

イッセー君の言葉にアジュカ様が思案顔をする。

 

「異世界から?」

 

「あぁ、おそらくホントだと思う。あいつはファーブニルを魔剣で貫いたんだけどその名前をダインスレイフと言っていた」

 

「ダインスレイフだって!?

あれは今僕の亜空間に保管しているはず…ッ!」

 

「おそらく木場のダインスレイフとは違う。氷の攻撃をしてこなかったし、何より呪いなんて効果無いだろ?だからあれは別世界のダインスレイフなんだと思う。他の魔剣をダインスレイフと言い張ってるって線も考えられるけど他にも異世界から来たと思える要素があるんだ。」

 

僕の魔剣とは違う効果を持つ…。

 

「続けてくれ」

 

アジュカ様に言われイッセー君は頷き、続ける。

 

「あいつの能力は神蝕篇帙(ベルゼバブ)という巨大な本を使っていました。あいつが言うには魔王と呼ばれる兵器だそうです」

 

アジュカ様に視線が集まった。ベルゼバブに魔王…。そう言われて僕達が連想するのは間違いなくこのお方だからだ。この世界に生きている人のほとんどが同じのはずだ。

 

「私と同じ名前の兵器を使用していたと」

 

「はい。でも能力はわかりませんでした。能力を使わず、俺の真紅の鎧の一撃を兵器を召喚しただけで防ぎました。とてつもない能力を秘めてることは確かです。

 

「相手はその男1人だけだったのかい?」

 

イッセー君は首を横に振る。

 

「いえ、奴の使い魔か何かと思われる同じ顔をした大勢の少女たちが俺達を襲いました。倒したら光のように消えていったので人間ではないと思います。俺達が最初にアイザックと対面した時には数人しかいなかったのに…ッ!ゼノヴィアとロスヴァイセさんはアーシアを庇いながら少女達を倒していましたが…気がつけばその数は増え、圧倒的戦力差の前に倒れました…」

 

「他には?」

 

「他の人はいませんでした。ですけど謎の動く物体が大量にいました。生き物の気配は感じ取れなかったので兵器か何かだと思います。そいつの能力は分解だと思います。あの兵器が触れた場所が崩れて消えていったんです。もし俺達の攻撃も分解するのなら…」

 

「デュランダルの攻撃は通ったぞ」

 

「え…?」

 

声のした方を振り向くとゼノヴィアがベッドから起き上がろうとしていた。目が覚めて嬉しい…けどあれだけの傷を抱えて起き上がろうとするなんて相変わらず無茶をする彼女に僕は少しだけ呆れてしまう。

 

「まだ起きちゃだめよ!あんなに傷だらけだったんだから…!」

 

イリナさんが静止するがゼノヴィアは安心させるように彼女の頭を撫でる。

 

「ゼノヴィア…ごめんッ!俺は…アーシアを…」

 

「謝るのは私も同じだイッセー。アーシアを必ず守ると言って結局守り切ることができず、無様に負けてしまったのだから。」

 

「それは…ッ!」

 

「いいんだ。お前も私も守れなかった。なら次はもう負けない、それが私達だろ?それより今は情報の共有が先だ」

 

「…あぁ……ありがとう…」

 

ゼノヴィアは普段はあまり見せない綺麗な笑顔を浮かべた。

 

「話の続きだ。私の放ったデュランダルの一撃はあの兵器や少女たちを倒すことができてた。だがロスヴァイセの放った魔法は兵器に対して効いたものと効いてないものがあった」

 

「どのような魔法が効いたんだい?」

 

「"聖"属性といえば良いのかな?私は魔法は詳しくないが光とか浄化とかそういう類のものだと思うぞ。」

 

「なるほど。聖剣の攻撃や聖属性の魔法が効果があると」

 

アジュカ様はそれを聞いて一つの仮説を立てた。

 

「もしかしたら神器による攻撃も通用するかもしれないね。神滅具程の威力がなくともあれは元々、聖書の神が人間に与えた物だ。それに浄化も機能するというのなら天使や堕天使の攻撃と仙術も有効だろう」

 

「問題はその数ですわね。ゼノヴィアちゃん達が何体も倒したのにイッセー君を大量の兵器が囲んでいたということは、かなりの数が量産されていると見て良いかと思われますわ」

 

「朱乃の言う通りね。1人でそれだけの数の戦力を保有している異世界から来たという人物。全部が全部男の能力とは考えづらいわ。協力者がいたとしても不思議じゃないでしょうね」

 

その言葉を聞いてイッセー君は何かを思い出したようだ。

 

「そういえば…あいつは言ってました。協力者がいるって」

 

「それは本当かね?何か協力者について言ってなかったかい?特徴でもなんでもいいんだ。もしかしたらアーシア君捜索の手掛かりになる可能性がある」

 

「いえ、俺をとても気にかけていたとしか…」

 

「そうか…」

 

イッセー君を気にかける人なんてそれこそたくさんいると思うけどね。あまり絞り込めそうな情報ではないな…。

そう思っているとイッセー君は重要なことを思い出したようだ。先ほどとは変わって声量が大きくなる。

 

「そうだ!あいつは各勢力に宣戦布告するつもりだって言ってた!その前に俺に挨拶に来たって!」

 

イッセー君の言葉にゼノヴィアが肯定する。

 

「あぁ、確かにそう言ってたな。不届き者だと思い、私がデュランダルで斬りつけようとしたが同じ顔をした少女たちに防がれたな」

 

………。

ゼノヴィア…お願いだ…

もう少し頭を使って戦ってくれ…

 

「…各勢力に宣戦布告するような人の協力者。

…各勢力が嫌いな人とかでしょうか?」

 

小猫ちゃんの言葉に僕達は一つの答えに辿り着く。

 

「冥府の神、ハーデス…ッ!」

 

イッセー君の想像した人物はおそらく当たっているだろう。アジュカ様も同意してくださる。

 

「おそらく間違いないだろう。

だがその場合、いくつか問題が生じる」

 

「問題というのは?」

 

「アーシア君のいる場所が冥府だという確証がない。こちらは証拠がないため、冥府を調査することはできないだろう。それにクリフォトや邪龍たちがが使用していたアジトや隠れ家も全てが見つかったわけではない。それらのうちのどこかに隠れられた場合、見つけるのは至難の業だ」

 

「やっぱり手詰まりなのか…ッ!」

 

イッセー君が悔しそうに壁を叩く。

何か他の手がかりはないか…そう思って僕がイッセー君に話しかけようとした時だった。

 

「イッセー。我だ」

 

「リリスもイッセーのとこきた!」

 

「オーフィス?リリス?」

 

そこにいたのは2人の無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)だった。

 




ギャスパーがぶん殴りました。
ホントは木場に殴らせようとしてましたがギャスパーの言葉のほうがイッセーに響くと思いました。

またオーフィスとリリスが登場しましたが彼女たちも戦いませんし戦わせたくありません。
真龍と龍神は平和でいてほしい。
でも龍神様大好きなので登場させました。


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第三話

久し振りに忙しかった。
エタったと思われたのならすみません。
前のペースだとしんどいということがわかったので更新頻度が落ちてしまいます。
何卒お許しください〜


「一体どうしたんだよ2人とも」

 

そこに現れたのは黒い服に長く綺麗な黒い髪の女性とゴスロリ衣装を着た細身の少女。家にいるはずの龍神姉妹が2人して病室へやってきた。リリスはまぁオーフィスについてきたのだろう。つまりオーフィスが伝えたい何かあってきたということになる。

 

普段は家の敷地から出ない2人がわざわざワープしてきたんだ。もしかしたらこれ以上更にまずい状況になるかもしれない。そんな懸念はオーフィスの発言により一瞬で消し飛ばされる。

 

「我、アーシアの場所わかる」

 

「わかるー」

 

「それ本当なのかッ!?」

 

「我、嘘つかない」

 

そうか!オーフィスは前にもアーシアの気配を覚えていて俺に居場所を教えてくれたのとがあった!今回も気配を辿って居場所を突き止めてくれたのか!

 

「流石だぜ2人共!それで?アーシアはどこにいるんだ?」

 

俺はオーフィスに問いかける。

 

「この世界じゃない世界」

 

「この世界じゃない世界…ってことはつまり異世界か?」

 

コクリとオーフィスは頷く。

あいつはアーシアを異世界へ連れてったのか…。どこを探しても見つからないわけだぜ。もう既にこの世界にはいないんだからな。

 

「なぁ、その世界はどんなところかわかるか?」

 

フルフルと首を横に振るオーフィス。

 

「わからない」

 

そうだよな…だいたい違う世界にいるアーシアの気配がわかるだけでもオーフィスはやはり凄い。そのおかげでアーシアが生きてることは確認できたんだ!それだけでも十分だ。

 

どうすればアーシアのところへ行けるか皆と話し合おうとした時、オーフィスは俺達が喉から手が出るほど欲しかった情報を教えてくれた。

 

「我がわかるもの、アーシアの気配とアーシアの元への行き方のみ」

 

「………本当なのか…?行けるのかッ!?俺達はアーシアのいる世界へ行けるんだなッ!?」

 

オーフィス達によってもたらされた情報はどん詰まっていた俺達を希望へと導くものだった。これで俺達はアーシアを助けに行くことができる…ッ!

 

「私達も当然一緒に行くわ。アーシアは大切な家族ですもの!」

 

リアスの言葉に皆が頷く。だがリアス達に対しオーフィスは少し悲しそうな顔をする。何か問題でもあるのか…?

 

「我らが連れていける者、イッセー合わせて2人のみ。皆まで連れて行くこと、今の我らでは力不足。」

 

「そうなのか…」

 

今のオーフィス達の力は無限ではない。悪い奴らに利用され無限から有限にされてしまった。俺は2人と友達になることができたが元々は敵だったため、厳重な封印が施されている。今は少し強すぎるドラゴンレベルだそうだ。

 

「イッセーごめんね…」

 

リリスが申し訳なさそうに謝る。謝らなくていいんだ…ッ!そんな必要はお前たちにはないんだから…ッ!

 

「2人は何も悪くないッ!………むしろありがとうな…。お前たちのおかげで俺達はアーシアを助けに行けるんだ。誰がお前達を責められるかってんだ」

 

皆が俺の言葉に同意してくれる。

それを聞いた2人は嬉しそうに笑うのだった。

 

「…それでどうするんですか?イッセー先輩の他に誰が行きますか?」

 

小猫ちゃんが聞いてくる。皆俺の方を向いていた。え…?俺が決めるのか…?どうやらそのようらしいので少し考え、連れて行く人物に問いかける。

 

「イリナ、付いてきてくれるか?」

 

俺の言葉にイリナは二つ返事で了承した。

 

「えぇ!わかったわ!アーシアのためだもの!

それにゼノヴィアの仇も取らないとね!」

 

「おい、私は死んでないぞ」

 

「貴方が決めたのなら私達は何も言わないわ」

 

帰りを待っている。そう言ってリアスは俺の意見に賛同してくれた。流石俺の惚れた女性だ。

 

「あいつの勢力やハーデスがいつ攻めてくるかもわからない。だからリアスには冥界を守ってもらいたいんだ。そして皆にはリアスを支えてあげてほしいんだ」

 

俺のお願いを皆受け入れてくれる。

 

「わかった。イッセー君、アーシアさんを頼んだよ。僕も必ず皆を守ると君に誓う。だから絶対、無事で帰ってくるんだよ。」

 

「あぁ!任せろ!必ず助け出すから!」

 

「イッセー君、君達ばかりにこんな辛い目にあわせてしまって本当に申し訳ないと思っている。せめて私は君達へ全力のバックアップをさせてもらうよ。D✕Dのメンバーにも君が不在の間、もしものことがあったらこの世界を防衛できるよう呼びかけておく。だから君は安心してアーシア君を助けることに集中してくれたまえ」

 

「ありがとうございます。アジュカ様やD✕Dの皆なら安心してこちらの世界を任せられます。」

 

「イッセー、イリナ、行こう」

 

「たすけにいこう!」

 

オーフィスとリリスは美しい笑みを浮かべながら手を差し伸べてくれた。

 

「準備はいいか?イリナ」

 

「えぇ!いつでも行けるわ!」

 

俺達4人は手を繋ぐ。

すると目の前に龍門(ドラゴン・ゲート)のような扉が開かれた。

 

「ふ、2人とも…頑張ってください!」

 

「…アーシア先輩を連れて5人で必ず帰ってきてください」

 

「皆様のお帰りをお待ちしておりますわ」

 

「イッセー、イリナ、動けない私達の代わりにアーシアを頼んだぞ」

 

「イッセー君、イリナちゃん、どうかお気をつけて」

 

最後にリアスから送り出される。

 

「いってらっしゃい」

 

「「いってきます」」

 

そして俺達は門の中へと進んでいった。

待ってろアーシア。今助けに行くからな。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

イッセーたちが異世界へ旅立った後。

 

現在この世界における唯一の魔王である男はとある人物へ今回の件について報告をしていた。相手は歴代最強の二天龍を育て上げたとある堕天使の男だった。

 

「――ということがあり、イッセー君達はオーフィス達と共に異世界へと向かいました。」

 

その報告を聞き、堕天使の男は頭を抱えた。

 

『俺達が未来のギャスパーから聞いた『エヴィーズ』の特徴と全く異なる。ってことはつまり『エヴィーズ』とは別の『UL(ウル)』ってことかよ…っ!』

 

「彼らはおそらく情報通り30年後にくるでしょう。ですが今回の1件、彼らは全く関与していないと思われます。」

 

『そうだろうな…クソッ!俺達がここから出られない時に限ってとんでもねぇ事態になっちまったっ!』

 

「30年後に起こる事態について、

そして今回の件について各勢力に報告致します。『エヴィーズ』については

『Under world's Life from』―― 『UL(ウル)

そして今回の彼らについては

『Another Under world's Life from』――

AUL(オウル)』として伝えるつもりです。」

 

『予定が相当狂ったな…』

 

「30年後の件に関してですが詳細はまだ伏せるつもりです。しかし今回の件で多少の報告をせざるを得ません。」

 

『リゼヴィムの野郎が余計な真似をしたせいで異世界から襲撃を受ける、それを退けたとして実は30年後に他のところからも襲撃されますなんて後から言ったら面倒なことになりそうだもんな…

それなら先に"未来からの使者により、30年後異世界から襲撃されると伝えられたが、その時の干渉により、この世界の歴史にズレが生じてしまった"って報告したほうが余計な混乱を与えずに済むからな』

 

その言葉に対し魔王は頷く。

そして現在の状況を伝える。

 

「とにかく今は彼らを信じてこちらは防衛の準備を急がせています。首都に突然現れるような連中ですからね。いきなり各勢力の拠点を襲撃するということもあり得るでしょうから」

 

『そうだな…D✕Dだけじゃとても守りきれねぇ。神滅具使いやその他の協力が不可欠だろう。そういや国際大会はどうする?中止にするのか?』

 

「幸い、まだ時間はあります。なるべくギリギリまでは開催の方向で行くつもりです」

 

『ならエントリーしているチームに協力を要請してもいいな。帝釈天とか神クラスは直接動くことは無理だろうが他のチームなら開催のために動いてくれると思うぞ』

 

「では私は早速、各勢力への報告と協力要請をしてきます。何か進展がありましたらまた連絡致します。」

 

『あぁ…頼んだぜ』

 

 




AULという言葉は私が適当に考えたものなので原作にはない言葉になります。英語ができない私にしてはマシなそれっぽい名前です。安心してください。これ以降はおそらく出てこない単語です。

そういえばパワーバランスを見直しました。
真紅=シンフォギアはやはり無理があるとのことでしたので真紅>イグナイト>限定礼装≒シンフォギアくらいのイメージで書いていこうと思います。あくまで私のイメージですのでこれが絶対というわけではございません。状況によって強さはどのようにも変わりますし。あくまで目安として捉えていただけると幸いです。

感想やお気に入りをいただけるだけでモチベにつながります。よろしければ皆様の好きなキャラや形態など感想やメッセージで教えてください!


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幕間1

思ったほか前半パートが長くなったので四話ではなく幕間としました。

GXがいいかAXZがいいか悩みすぎて調と切歌とクリスの可愛さについてしか考えられませんでした。次回までに決めておきます。


ここはラタトスクの拠点である空中戦艦フラクシナスにある寝室。そこでは先程まで作戦会議が行われていた。内容は宿敵であるアイザック・ウェストコットの打倒である。五河士道と精霊たちはアイザックの元へ向かうチームとフラクシナスに攻めてくるエレン・メイザースの迎撃に当たるチームとで別れた。

 

そしてアイザックの元へ向かった士道たちを見送った琴里たちは早速部屋から出てこれからのことをクルーたちと相談しようとしていた。その時、1人の少女によって止められた。

 

「お待ちなさい」

 

フラクシナスのAIであるマリアだ。

 

「どうしたのマリア。早く令音たちとこれからの相談をしなくちゃいけないのに」

 

「二亜、私にこの部屋を完全防音にさせた本当の理由はなんですか?」

 

「どういうことマリア。それはさっき二亜が説明してたじゃない。狂三のような存在、つまりニコルベルたちに聞かれないように防音にさせたんでしょ?それ以上の理由があるの?」

 

「おかしいとは思いませんか琴里。」

 

「おかしい?確かに二亜は少しおかしいけど今回の話の中におかしな点は見つからなかったわよ?」

 

「妹ちゃんまで……」

 

「確かに敵に聞かれるのを防ぐという理由もあるのでしょう。作戦が漏れては意味ありませんからね。

では何故クルーたちにまで聞かれないよう(・・・・・・・・・・・・・・・)にしたのですか?」

 

「………え?」

 

「もう一度いいます琴里。おかしいとは思いませんか?先に私達に作戦を聞かせてあとでその後でクルーたちに作戦を伝えていては二度手間ですよね?」

 

マリアの言葉に納得する琴里たち。

確かに何故わざわざ士道と精霊のみを集めたのか。

緊急時である為、深くは考えていなかったが言われてみればおかしな話である。あの面倒くさがり屋の二亜が何故手間のかかることをしたのか?マリアの言う通り何か理由があるのではないかと考えてしまう。

 

「この作戦も人選も考えたのは二亜。アイザック・ウェストコットたちにとって野望の鍵である士道を二亜は敢えて異世界へ行かせた。本来仲間ではない狂三という護衛をつけてまで。士道のみがアイザックを倒せる可能性を秘めているというのはわかります。ですがそれでも危険なことには変わりありません。それをクルーたちにすら相談なしで二亜は行かせた。ということはつまり、二亜は私達以外には士道が異世界へ行くのを出発まで知らせたくなかったということになります。その理由は何故かと私は聞いています。」

 

二亜はあちゃーと頭を掻きながら答える。

 

「ホントに良く頭が回るねぇマリアは。流石はフラクシナスのAI。正解だよ」

 

「私を出し抜こうなど二亜の癖に生意気です」

 

「マリアの言った通り、私は少年が旅立つまで誰にも知られたくなかった。理由は簡単だ。恐らく奴さんも仕掛けてくると思ったからね」

 

「ヤッコサンとは何だ?美味いのか?」

 

「……えっと…十香さん…。多分、食べ物じゃなくて…人のことだと思います…」

 

四糸乃が十香にフォローを入れる。よしのんも空腹の心配をしたのか十香にチュッパチャップスを与えている。十香は喜びながら受け取り、四糸乃が微笑み、美九はその光景を見て2人に抱きつきながら質問する。

 

「でも一体誰が攻めてくるんですかぁ?DEM以外に私達が戦うような相手っていましたっけぇ?」

 

「こらー!離すのだ美九ー!」

 

それに対し折紙が発言した。

 

「――始原の精霊、"ファントム"」

 

「なんですって!?それは本当なの二亜!?」

 

「あくまで予想だけどね。でも今まで少年に対して直接何もしてこなかったウェストコットの野郎が本腰を上げて攻めてきた。そしてくるみんも霊力を求めて少年の元に再び姿を表した。恐らくむっくちんが最後の精霊なんだろう。ほぼ全ての霊力が少年に集まったから彼らは動いたと考えるのが自然だろうね。ってことはつまり、精霊を作り出していた始原の精霊もそろそろ動き出すと思っても不思議じゃないでしょ?奴さんの目的は精霊を作り出して何かをしようとしている。その目的の鍵もおそらく少年だ。」

 

「士道がファントムの目的にどうして関わってくるの!?変よ!だってファントムは士道が生まれる前から活動してるのよ?目的遂行の途中で見つけた鍵が士道ということなの?」

 

「それはわからない。でも以前奴さんに少年が会った時に言われたっていう、『もう絶対離さないから。もう絶対に間違わないから』ってセリフを聞いたらね。十中八九、少年は関係していると思うよ。」

 

「それ、いつ誰から聞いたの?」

 

「少年の寝込みを襲いに行ったときにね。その時少年がうなされながら言ってたんだよ。『お前は何者だ、あれはどういう意味だ』ってね」

 

「その話のお説教はまた別でやるとして、またうなされてたのね…なるほど、わかったわ。それで?ファントムが仕掛けてくる可能性があるとしてどうして他のメンバーに伝えなかったの?まさかクルーやスタッフの中にファントムがいるとでも言いたいのかしら?」

 

琴里が冗談めかしく聞いている。

それに対し二亜は

 

「私はその可能性もあると思っているよ」

 

といい精霊たちを驚かせた。

 

「何故そう思うのかしら?」

 

真剣な表情で琴里は二亜に問う。

 

「さっき言った通りファントムの目的に少年が関係している場合、霊力が集まるのを近場で監視している可能性も少なくないんじゃないかって思っただけ。それに…」

 

「それに?」

 

「少年の寝言から考えるにファントムは少年に強い執着のような感情を抱いていると思うんだよね。これもあくまで想像だけど。まぁそういう訳で私はここにいる皆以外には少年の出発は伏せておきたかったんだ」

 

「私もその可能性は0ではないと思います。相手は始原の精霊。操ったり入れ替わったり従わせたりなにをしてくるかわかりません」

 

「考えたくはないけど…頭に入れておくわ」

 

「質問よろしいですか?」

 

今まで何も言わず静観していた眼帯の狂三が二亜に問いかける。

 

「『わたくし』にその情報を伝えず、わたくしに伝えたのは何か理由がありまして?」

 

「くるみんならラタトスク全員縛り上げるとか平気でやっちゃいそうだからねぇ。私の推測だけでそんなことさせるわけにいかないっしょ。でも協力者に伝えないわけにもいかないしねぇ?なら分身体のくるみんにあとで知らせてもらおうかなって思ってね。あちらに行ったあとに知ればわざわざこっちに戻って拘束するなんてこともしないだろうし」

 

「小賢しいという言葉がお似合いですわね」

 

「全くの同意見です」

 

「ともかく!私達のやるべきことは多いわ。まずクルーたちに状況を知らせる、その後不審な動きをしてないか監視する、その上でDEMからの攻撃にも備えなければいけない。マリア、狂三」

 

「あらゆる情報も見逃しません」

 

「いいでしょう。『わたくし』に内緒で『わたくし』たちを動かしますわ。『わたくし』のためになるのなら『わたくし』たちも協力してくれるでしょうし」

 

「作戦にあたりこちらもメンバーを振り分けましょう。十香、四糸乃、耶倶矢、夕弦、美九、折紙はDEMと戦闘、エレンやアルテミシアとの交戦も必ず起こるわ。私もこちらに増援という形で行くと思う。」

 

「任せておくのだ」

 

「…精一杯頑張ります…」

 

『よしのんもはりきっちゃうよーん』

 

「我らも本気をだそうではないか」

 

「同意、けちょんけちょんにしてやります」

 

「だーりんに約束しましたからね!絶対勝ちましょう!」

 

「了解。アルテミシアは私に任せて」

 

「マリアはファントムに対して警戒と捜査。クルーの中だけじゃなくその身辺の調査もお願い。」

 

「わかりました」

 

「二亜は集まった情報の整理と対策」

 

「くっはぁ〜!!!頭の良い軍師みたいでかっこいいじゃん!!任せておいて妹ちゃん」

 

「狂三は遊撃、私が指示出すより動きやすいと思うし、ファントムは恐らくまだ私達の協力関係について知らないと思うの。下手に警戒させずに済むと思うわ」

 

「承りましたわ」

 

「艦の護衛は真那に頼むわ。エレンやアルテミシア以外にも強力な魔術師がいるかもしれないしあの子にあまり無理はさせたくないからね。マリア、連絡入れといて」

 

「了解です琴里」

 

「最後に皆、これだけは約束して

絶対に皆無事に作戦を終えること、いいわね?」

 

『おー!』

 

それぞれなすべきことのために部屋をあとにした。




二亜が頭良さそうなキャラになってしまった。でもこの子書きやすいのよ


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第四話

色々考えた結果シンフォギア時系列をGX後からXV序盤に変更いたしました。色々理由はありますが一つ挙げるなら敵のレベルを考えるとやはりAXZでは難しかったのでXVにすることにいたしました。意見を頂いた方や投票してくださった方々ありがとうございました。

さて、お待ちかねのシンフォギア装者の登場です。
シナリオを変えた影響でおかしな点が出てくるかもしれません。その場合コメントやメッセージで教えていただけると幸いです。


俺、五河士道は今、異世界に来ている。その目的は宿敵であるアイザック・ウェストコットとの決着をつけるためだ。そのために彼の痕跡を辿りこの世界へとやってきたのだが、周りには軍事施設のような場所しか見当たらない。ここにいても仕方がないのでこの世界の情報を得るため、俺達は近くに街や村がないか探し始めた。その時六喰が何か聞こえないか?と言ったのだ。

 

そこに聞こえてきたのは少女の歌声。それは美九の歌声に似たようなものを感じた。人を聞き入れさせるような惹きつける力のような何かがある。方角的には施設の方からしているような気がする。

 

歌に聴き入っていると突然施設の方から爆発音が聞こえた。振り返ると施設のあちこちから煙が上がっている。これはまずい。施設の方には歌を歌っていたであろう女の子がいるはずだ。

 

そう思うと仲間である3人に声をかけ走り出す。

 

「さっき歌ってた子が巻き込まれているかもしれない!助けに行かないと!」

 

「ちょ、ちょっと士道!?アンタ何考えてるの!?めちゃめちゃ爆発なってるんですけど!?あぁ〜もうっ!!」

 

「七罪さん、落ち着いてくださいまし。わたくし達もあとを追いかけましょう?六喰さんも行きますわよ」

 

「むんっ、了解じゃ。主様を守るのが我らの勤めじゃからの」

 

士道に続いて3人も走り出す。施設の入り口である大きな門は抉じ開けられたような痕跡があったため、4人は簡単に侵入することができた。

 

そこで俺達が目にしたものは生き物のように動いている大量の謎の物体。それらが触れた箇所は分解されてなくなっていった。そして謎の物体を倒す鎧のような装備をまとった少女たちであった。どうやら先程聞こえた歌の主であるようで歌いながら謎の物体たちを薙ぎ倒していっていた。

 

「ねぇちょっと!何あの気持ち悪いの!めちゃめちゃたくさんいるし女の子たちに襲いかかってるし!それなのにあの子たち歌いながら戦ってるし!?余裕があるっていう表情でもないのにどうして歌ってるの!?」

 

「美九さんのように歌うことにより何か恩恵が得られるのかもしれませんわね。とは言ってもここは異世界ですからね。歌わなければならない理由があるかもしれませんし。今のわたくしたちにはわかりかねることだらけですわね」

 

「あの不可思議なやつら、でーいーえむのばんだーすなっちのような兵器かもしれんのぉ。しかもやつらのモノよりも人を殺める能力が一段と高いように見えるのじゃ」

 

「あぁ、あの兵器が触れた場所が跡形もなく消えちまってる。あんなの人が触れたらと思うとゾッとするな。」

 

「わたくしとしてはそれらを倒している彼女たちのほうが恐ろしいですけれど。これはわたくしたちの助けは必要なさそうですわね」

 

狂三がそう呟いた瞬間だった。

こちらにも謎の兵器が現れ、俺達は囲まれてしまった。俺達はそれぞれ天使を顕現させ、応戦する。天使が分解されないか心配だったがそれは杞憂だったようだ。そうして周りの兵器を片付けると俺達の元へ1人の少女が駆けつける。

 

「ここは危険です!早く避難してください!」

 

ピンク色の装備を纏い、ヨーヨーのような武器で兵器を倒しているツインテールの少女がこちらに向かってそう告げた。どうやら言葉は通じるらしい。異世界に来て最初の異世界人との会話がこれだ。言葉が通じずいきなり攻撃されてもあれだったから助かった。幸い、天使は見られていないようなので俺達は言われたとおりに門の方へ向かおうとする。

 

「あぁ、わかった!ありがとう」

 

その時、謎の兵器が少女に攻撃を仕掛ける。それを避けた少女だったが、彼女のいた足元が崩れてしまった。足場のあるところへ移動しようとした少女だったが、空中で兵器による攻撃を食らってしまい、そのまま落下してしまう。ヨーヨーを引っ掛けて捕まっていたようだが上からさらに追撃されてしまい、更に下へと落ちていく。この施設は海の上に造られたものだったようで彼女は海中へと沈んでいってしまった。

 

「いけない!」

 

その光景を見た瞬間、俺は〈颶風騎士〉の風を使用し、辺りの兵器を薙ぎ倒しながら少女が落ちた場所まで一気に駆ける。急いで崩れた箇所を覗くと少女はまだ深くまでは沈んでいなかった。それを確認した俺はそのまま海中へ飛び込んだ。水中でもがく少女のもとへ辿りつくとそのまま抱きかかえ、〈封解王〉を呼び出し俺が先程までいた場所への孔を作り出す。

 

(〈封解王〉【(ラータイブ)】!)

 

孔を潜り抜けた俺は少女の様子を窺う。どうやら海水は飲み込んでいないようで、少し荒い呼吸を繰り返している程度だった。俺は少女に声をかける。

 

「おい、大丈夫か?俺の言葉がわかるか?」

 

俺の問に対し少女は小さく頷いた。良かった、意識はあるみたいだな。さて、この子をどうするか…このまま戦闘になるのなら危険であるためこの施設から離れるべきであるが…

 

すると今度は少女が俺に問いかけてきた。

 

「…あなたは……何者なの……?」

 

「俺は五河士道。たまたまこの辺りを通りかかったんだけどあの爆発がこの施設から聞こえたもんだから様子を見に来たんだ。そしたら君が落ちていくのが見えたから助けさせてもらったってわけだ」

 

「あなたが…?」

 

「あぁ、間に合ってよかったよ」

 

「そう…ありがとう」

 

彼女の表情が少し柔らかくなった気がした。

そこへ七罪たちが合流する。

 

「安心しろ、この子は無事だ」

 

そう伝えた瞬間七罪に頭をポコポコ叩かれる。

 

「ねぇ!心配させないでっていつも言ってるし言われてるでしょう!?どうしてアンタは勝手に行動して迷惑をかけるの!なんとかなったから良かったけどせめて一言〈封解王〉を使って助けるとか言いなさいよ!」

 

「そうですわねぇ。きちんと報告しないから孔が開くまで七罪さんがずっと涙目で士道さんのお名前を叫びながら待たなければならなかったではありませんの」

 

「んなぁ!?別に涙目になってなんかないし!」

 

「叫んでいたことは否定せんのかの?」

 

六喰に指摘され顔を真っ赤にしながら七罪は叫び出す。俺はいつも心配かけてばかりだな。最近反省したばかりのはずなのに全然進歩していなくて申し訳ない限りだ。

 

「悪い、この子を助けなきゃって思ったらいても立ってもいられなくなっちまって。気が付いたら助けに向かってた」

 

「それが士道さんの長所であり短所でもありますわ。如何なる時も一度冷静になることを頭に入れておいてくださいな。士道さんが飛び出してしまっては護衛であるわたくしの役目がなくなってしまいますわ」

 

「あぁ、気をつけるよ」

 

「是非そうしてくださいまし。それで?その子は」

 

「そうだった。なぁ君、教えてほしいんだが…」

 

少女に色々訪ねようとした時、俺は彼女が気を失っていたことに気付く。無理もない。敵と戦っていた最中に水中に投げ出されたのだ。助かったとわかって安心したのか気が抜けてしまったのだろう。色々聞きたいことがあったのだが仕方がない。彼女を安全な場所に移動させて謎の兵器に襲われている少女たちを援護しに行かないと。

 

そう思って辺りを見回してみたがそうこうしている内にどうやら戦闘が終わったようだ。少女たちが俺の保護した少女が落ちた穴の周りに集まっていた。早く仲間の無事を知らせてあげないとな。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「調ーッ!!!どこデスかーッ!!!」

 

「クソッ!こうなったらあたしが飛び込んで…」

 

「よせ雪音。月読が心配なのは私とて同じだ。だが彼女がまだ海の中に落ちたという確証がない以上、私に今できることはS.O.N.Gの救助が来るのを待ち、奴らを探している立花とマリアに合流することではないか?」

 

「んなこったぁわかってるッ!でもあいつが戦ってた場所にデケェ穴が空いててあいつの姿が見えねぇってのに大人しく救助を待つなんてあたしにはできねぇってんだッ!もし落ちてたんだとしたら今飛び込めば間に合うかもしれねぇ!もうこれ以上……誰も失いたくないんだよ……ッ!」

 

「雪音……」

 

この子の装備に似た装備をしているから仲間だろう。何か話しているようだがきっとこの子を心配して探しているはずだ。

 

「なぁ、あんたらこの子の仲間か?」

 

「調!!!」

 

大きな鎌を持った少女がこちらに駆け寄ってくる。この子と同じくらいの背格好なのでおそらく友達なのだろう。

 

「大丈夫だ、今は眠ってるだけだから」

 

「本当に無事で良かったデス……調ぇ……」

 

友達の生存を知り安心したのか、少女は泣きだしてしまった。助け出せてよかったなホント。少女にこの子を引き渡そうとしていたときだった。

 

「貴様…何者だ?」

 

少女の仲間の1人から刀を向けられ問いかけられる。もう1人の仲間もこちらに銃を向けている。どうやら相当警戒されているようだ。

 

そこへ狂三たち3人が俺の周りに天使を展開させながら俺を庇うように立ちはだかる。

 

「待ってくれ3人とも!」

 

「大丈夫よ士道。あちらから仕掛けて来ない限りこちらからは何もするつもりはないわ」

 

七罪がそう告げてくる。けど俺が言いたいのはそうじゃない。できるなら話し合いがしたいところであるため反撃もできるならしないでほしいところなのだが…そう言い出すのが難しい雰囲気になってしまった。

 

「月読を助けてもらったのは礼をいう。だがここはアメリカ合衆国にある聖遺物研究施設だ。民間人がいるような場所ではない。そのような場所にしかも戦闘が行われている時に貴様らは現れた。もう一度問おう。貴様らは何者だ」

 

「あらあら、人に尋ねる時はまず自分から名乗るのが礼儀ではありませんこと?あなたこそどちら様ですの?」

 

「世界的トップアーティストである翼さんを知らないなんて…。日本人なら知らない人はほとんどいないはずデス…。それに何デスかその装備…。錬金術とは違うものみたいデスけど…」

 

まずいな…この世界はどうやら俺達のいた世界と似たような世界のようだ。それはいい、だが相手は有名人であったらしい。その彼女を知らない未知の装備をまとった戦場にいる日本人。どう見ても怪しさの塊としか表現しようがない。正直に言って信じてもらうしかないな…。

 

「俺の名前は五河士道。信じてもらえるかわからないけど…俺達は異世界からこの世界へやってきたんだ」

 

俺は彼女たちにそう告げる。信じられないよな…高校生にもなって異世界から来たとか言うやついたら俺も信じられないかもしれないし。

 

笑われるのを覚悟していると彼女たちは俺の想像していた反応とは正反対の反応を示した。なんだろう…なんとなく空気が重くなったような感じがした…。

 

「異世界から…だと…?」

 

そう言い、銃を持った少女は構えたまま俯く。

 

「あぁ、嘘なんかじゃない。俺達はある男を追ってやってきたんだ」

 

「安心しな…あたしは信じるぜ……」

 

「ホントか!?信じてくれるのか!?」

 

「あぁ…当然だ……。なにせあたしたちは

テメェらをずっと探していたんだからな(・・・・・・・・・・)

 

「え……?」

 

「主様ッ!!!」

 

六喰が叫んだのと同じタイミングで少女は俺に対し引き金を引いた。いくつも放たれた銃撃だったが、俺達の前に現れた『狂三たち』によってそれらは防がれる。少女には当たらないように計算されていたとはいえいきなり撃ってくるとは思わなかった。

 

「人が増えたのデース!?」

 

「いきなり発砲とは些か失礼が過ぎるのではありませんこと?」

 

「失礼なのはテメェらの方だろうがッ!!!」

 

彼女の言っている意味がわからない。

 

「俺らの方って…どういうことだ?俺達が一体何をしたと言うんだ?俺達はさっきこの世界に来たばかりなんだぞ?」

 

「しらばっくれんじゃねぇッ!!!テメェの仲間にこっちは散々世話になってんだ…ッ!!!あの2人じゃ飽き足らずそいつまで連れてこうってのか?」

 

「仲間…?俺の仲間はここにいる3人以外は連れてきていない!それに連れていくつもりなんてない!俺はこの子を君たちに引き渡すつもりで…本当だ!」

 

「異世界から来た野郎の言うことなんか信用できるわけねぇだろうがッ!!ましてやあいつと同様に同じ顔を持つ女を護衛をにしてやがるんだからなッ!!」

 

少女の持つ弾幕を張っていた2つ銃の形が一つの狙撃銃のように変化する。

 

「返せ…あたしたちの仲間を…友達を返せって言ってんだよッ!!!」

 

彼女は瞳に涙を浮かべながら激昂する。

そして銃にエネルギーをどんどん収束させる。

 

「あれは多分まずいわ!士道、ここは一旦引きましょう」

 

「でも!」

 

「七罪さんの言う通りですわ。あちらが頭に血が上っている以上、こちらの話し合いに応じるのはほぼ不可能ですわ。それに騒ぎを起こしてアイザック・ウェストコットにこちらの存在がバレるのはあまり喜ばしくないですし」

 

「クソッ!」

 

「あまりもたもたしてられないわ!六喰、お願いできる?」

 

「心得たのじゃ!」

 

するとそこに刀を持った少女が空へ飛び、無数の刃を繰り出してくる。

 

"千ノ落涙"

 

「逃すわけにはいかない!」

 

「させないッ!」

 

七罪がこちらに迫ってくる無数の刃を〈鏖殺公〉で薙ぎ払う。

 

「やはり手強いな…」

 

「士道さん!お早く!」

 

「わかった…でもせめてこの子はあの子達のもとへ連れていきたい!」

 

「駄目よ!今行けばその子も巻き込むかもしれないわ!」

 

「……ちくしょう……ッ!!」

 

「逃がすかよッ!!!」

 

「〈刻々帝〉、【七の弾(ザイン)】」

 

少女が撃つより早く狂三が少女の持つ銃へ時間停止の弾を放った。これにより少女はこちらにしばらく攻撃を仕掛けることはできない…と思っていた時だ。

 

「逃がすかって言ってんだよッ!!!」

 

"MEGA DETH PARTY"

 

彼女の装備の腰部分から放たれたミサイルが俺達に迫る。そこに七罪が前に出て贋造魔女を振るう。するとミサイルが様々なお菓子へと姿を変える。

 

「流石に限定礼装での戦闘はきついわね」

 

「お菓子になっちゃったのデース!?」

 

「あら、そんなことを言ってる暇がありますかしら?」

 

「何デスと!?」

 

唯一攻撃を仕掛けて来なかった少女を狂三の分身体が捕まえる。そして―

 

「動かないでくださいまし」

 

と狂三が彼女たちに向けて言う。

 

「本当はこのような真似はあまりしたくなかったのですけれど、致し方ありませんわ」

 

そして少女に向けて銃を構える。

 

「わたくしたちを見逃していただきますわ。もしこの提案が承諾されないのでしたら―」

 

「―どうなるのかしら?」

 

どこからともなく声が聞こえる。そして次の瞬間、鞭のように長く伸びた剣によって鎌の少女は救出される。

 

「まだお仲間がいらっしゃったとは…これはしてやられましたわ」

 

そういう狂三だがちっとも悔しそうな表情はしていない。

 

「切歌、無事だったかしら?」

 

「マリア!助かったのデス!」

 

「外の様子が騒がしかったから来てみたけれど…まさかこうも早く異世界人と会えるなんてね。エルフナインたちの居場所をさっさと教えてもらいましょうか」

 

どうする?さらなる援軍が来る場合こちらの戦力差では不利でしかない。やはり一旦どこかへ引くべきだろうか?だが六喰と七罪が剣を持った少女と交戦している以上、〈封解王〉を使えるのは俺だけだ。俺がこの子と狂三を連れて飛ぶなんてことはできれば避けたい。そんなことをすれば彼女たちは本格的に敵に回ってしまうかもしれない。俺達の敵はあくまでDEMだ。そんなことは絶対に避けるべきだろうな。

 

ならば敢えて抵抗せずに投降して事情を説明したいところだが…狂三がさっき言った通りなるべくこの世界に俺達の痕跡を残すべきではない。本来の歴史と異なる未来を進んでしまうかもしれないし、何よりアイザック・ウェストコットに俺達が来たことが知られるのは今後勝負を仕掛けるときに都合が悪くなってしまう。

 

どうするか悩んでいた時、新たな人影が現れる。

 

「みんな!遅くなってごめん!」

 

空から1人の少女が飛来する。

その少女は黄色い装備を身に纏い、俺達の前に拳を突き出す。その歌はとても真っ直ぐで…もしかしたら美九と同等かそれ以上に胸を打たれるような歌声だった。

 

「響さんデース!」

 

「ようやく来たか、立花」

 

「これでテメェらも終わりだ…さっさとそいつを離して2人も返しやがれッ!」

 

多勢に無勢だ。やはり投降するしかないか…

そう思ってみんなに伝えようとした時だった。

響と呼ばれた少女が1歩前へ出る。

そして俺達4人にこう告げた。

 

「ねぇ、話し合いがしたいんだけどいいかな?」




なるべく伝わるように書いているつもりですが伝わっているか不安です。士道は全能の魔王を相手にしているためこちらの世界に来たという証拠をあまり残したくない。あまり他の世界の人間を巻き込みたくない。このような考えのためこの世界の組織との接触は避けたいと思っています。

一方でシンフォギア装者はどうやら既に仲間を誘拐されてしまっているようです。とある施設の調査中に仲間を誘拐した人物と条件の似ている士道が調を抱えていたため勘違いを起こしています。

切ちゃんが攻撃してこない理由としては後に書くと思います。
最初考えているときは真っ先に攻撃させようとしたのですがXVを見直している時きりしらの成長が見られ、突然襲いかかるようなことはもうしないんじゃないかなと思いました。

じゃあなぜクリスちゃんが攻撃したのかという理由は
友達と仲間を奪われ更に後輩まで奪われるのではないかという怒り、そして何よりこれ以上響や仲間を苦しめる事を誰よりも優しい彼女は許容できないかなという私の解釈です。


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幕間2

大変長らくお待たせいたしました。
卒論に半○しにされてました。
3人目の主人公視点スタートです。
と言ってもほぼシンフォギア世界のあらすじなのでシンフォギアを何周もした方にとってはつまらないかもしれません。シンフォギアだけあらすじ長めなのは理由がございます。ご了承ください。



私の名前は立花響。好きなものはごはん&ごはん。趣味は人助けのどこにでもいる普通の女の子…だったんだけれど、過去に行ったライブが原因で、ある日突然、私の日常は大きく変化していったんだ。

 

私の大好きなユニット、ツヴァイウィングのライブ中、触れたものを炭に変えてしまう特異災害『ノイズ』が襲来、多くの人が炭となる中戦っていた人がいた。ツヴァイウィングの2人、天羽奏さんと風鳴翼さんだ。2人はシンフォギア・システムという歌うことで力を得られるノイズに対抗できる唯一の装備を纏い戦っていた。これらには聖遺物の欠片が使われており、奏さんは"ガングニール"、

翼さんは"天羽々斬(あめのはばきり)"のシンフォギアを扱っていた。

 

奏さんは私を守るためにシンフォギアの切り札である"絶唱"を用いてノイズを殲滅した。だけど絶唱は使用者に大きな負荷がかかる。代償として彼女は戦場にその命を散らせてしまった。この時私は奏さんのガングニールの破片が胸に刺さってしまっていて重症だったんだけど奇跡的に一命を取り留めたんだ。

 

とても大変な毎日だったけど奏さんから受け継いだ"生きるのを諦めない"という言葉とお父さんから受け取った"へいき、へっちゃら"という言葉、翼さんの歌を胸に、辛いリハビリを頑張って乗り越えられたんだ。

 

リハビリを終え、社会に復帰した私を待っていたのは残酷な現実だった。大勢の死者を出したそのライブで唯一生き残った私とその私の家族は、世間から妬まれ迫害を受けた。そのせいで一度は家族はバラバラになってしまった。

 

そんな辛い過去を乗り越え、15歳の時に親友の小日向未来と一緒に、私立リディアン音楽院高等科に入学して少し経った、ある日の帰り道、私の目の前にノイズが現れた。近くにいた少女を連れて逃げていたけれど、追い付かれて囲まれてしまった。その時、頭の中に歌が流れてきたんだ。それを口ずさんだ瞬間、私の胸の中にあったガングニールが覚醒、その場に駆けつけた翼さんのおかげもあり私達は窮地を乗り越えることができたんだ。

 

その後、私は特異災害対策機動部二課に所属。そこの司令官で人類最強である私の師匠、風鳴弦十郎さんに修行をつけられ、私は翼さんと共にノイズとの戦いに身を投じていった。

 

ノイズとの戦闘中、ノイズを操ることのできる完全聖遺物"ソロモンの杖"を持ち、強力な再生能力を持つ完全聖遺物"ネフシュタンの鎧"を纏う少女、雪音クリスちゃんと出会った。彼女は聖遺物との融合症例である私をとある人物のもとへ連れて行くことが目的だった。

 

その人物の名前はフィーネ。「終わり」の名を持つ女性であり、先史文明期(と言ってもよくわかってないけど)から永い時を過ごしてきた人。様々な人に転生してきた彼女は二課に所属している櫻井了子さんとなり、シンフォギアを始めとする数々の異端技術を完成させていた。

 

もともと心の優しい子だったクリスちゃんは争いをなくしたいため、了子さんに協力していたんだけど、任務に失敗したクリスちゃんは用済みと捨てられ、了子さんに狙われるようになってしまう。

 

関係のない人間は巻き込みたくない彼女は"イチイバル"のシンフォギアを身に纏い、私達と共にノイズの排除と了子さんの計画の阻止に協力してくれるようになり、私達にとって大切な仲間となった。

 

そして、私は翼さんとクリスちゃんと共に最後の戦いを挑んだ。月は神様が人類に施した相互理解を阻む呪い"バラルの呪詛"の発生装置であり、それを破壊することが了子さんの目的だったんだ。全ては彼女が愛した人物のために。シンフォギアのすべての機能が向上する限定解除(エクスドライブ)モードを発動させた私達は、力を合わせ完全聖遺物"デュランダル"で了子さんの野望を阻止、消える直前に彼女は落下直後に割れた月を地球に接近させ破壊しようとする。最後には了子さんとわかりあえたけど……既にボロボロだった彼女は私に"胸の歌を信じなさい"という言葉を送って死んでしまった。そしてその後、私達は決死の覚悟で"絶唱"を使い月の欠片を破壊。こうして私は大好きな未来のもとへ帰ることができたんだ。

 

 

 

世界を震撼させたルナアタックの3ヶ月後、ソロモンの杖の強奪事件が起きてしまう。そしてその後、ルナアタックの影響で落下する月を阻止するため世界を敵に回したマリアさん率いる『フィーネ』と戦うことになった私達。私のとは違うもう一つの"ガングニール"を纏うマリアさん、彼女を慕い付き添う"シュルシャガナ"を纏う月読調ちゃんと"イガリマ"を纏う暁切歌ちゃんと対峙する。その戦いの中で私の中にあるガングニールの侵食が深刻化し、私の体を蝕んでいった。

 

そんな中『フィーネ』に未来がシンフォギアの一つ神獣鏡(シェンショウジン)の装者として誘拐、操られてしまった。未来と戦い私は神獣鏡の能力のひとつ、聖遺物由来の力を分解する光を利用して未来を救出することに成功したんだけど…その代償として私は胸のガングニールを失った。

 

彼女たちの協力者であり、杖を盗み出した張本人、ドクター・ウェルことウェル博士は神獣鏡の力を利用して古代遺跡"フロンティア"の封印を解除。英雄として世界に君臨するという野望を持っていた彼は暴走を始め、フロンティアの力を使い月の落下を早めてしまう。

 

クリスちゃんと翼さんはウェル博士からソロモンの杖を取り返すため、私は暴走する仲間を止めたいという調ちゃんの願いを受け、それぞれフロンティアへと向かう。

 

ウェル博士のやり方では世界を救えないと考えたマリアさんたちの育ての親であるナスターシャ教授は、月の落下を止めるために世界中のフォニックゲインが必要となることをマリアさんに伝える。マリアさんは世界中に対して共に歌で世界を救ってほしいと懇願するけど…それを知ったウェル博士はナスターシャ教授を宇宙へ飛ばしてしまう。それに激昂したマリアさんは彼に報復しようとする。彼女の槍を受け止めた私は聖詠を歌いマリアさんの纏っていたガングニールを装着し再び装者としての力を取り戻した。

 

教授の願いを実行するため、マリアさんは『アップル』を歌い、その歌声に世界中の人々の思いが重なる。ナスターシャ教授は、このフォニックゲインを使い、月遺跡を再起動させ月の落下を阻止に成功、その後息を引き取った。

 

その後、ウェル博士が放った聖遺物を食らう完全聖遺物"ネフィリム"を阻止するため私達は集結する。そこに調ちゃんと切歌ちゃん、そして妹さんの"アガートラーム"を持ったマリアさんがやってきてくれた。6人揃った私達は70億人のフォニックゲインによって限定解除(エクスドライブ)となり、クリスちゃんがソロモンの杖でバビロニアの宝物庫を開放。その中でネフィリムを倒し、師匠達によってウェル博士は逮捕、そしてソロモンの杖を宝物庫の中へ収納する。これによってこの世界で二度とノイズが現れることはなくなり、無事事件は収束した。

 

胸のガングニールはなくなってしまったけど…奏さんからもらった胸の歌は絶対になくしたりなんかしない。それは私にとってとても大切なものなのだから。

 

 

 

フロンティア事変から暫く経った頃。ノイズがいなくなったことにより、二課はS.O.N.Gへと変わり、国連の直轄として活動していた。マリアさんたちも加わり、私の周りは賑やかなものとなった。そんな私達の前に現れた新たな敵、錬金術師。彼女の名前はキャロル・マールス・ディーンハイム。キャロルちゃんは手下のオートスコアラーと共に彼女のお父さんが遺した「世界を知る」といつ命題を世界を分解し再構築するというふうに考え、錬金術で生み出したノイズ、『アルカ・ノイズ』を用いて行動を開始する。

 

オートスコアラーは私達の予想を遥かに超える強さであり、アルカ・ノイズはシンフォギアすら分解する力を持っていた。そして翼さんとクリスちゃんはギアを分解され、マリアさんのアガートラームは壊れたままで且つ、調ちゃんと切歌ちゃんを含めた3人はLiNKAR(リンカー)が無いため出動ができない状態となってしまっていた。唯一活動できた私もとうとうギアを分解されてしまい昏睡状態へと陥った。

 

そんな中、キャロルちゃんから亡命してS.O.N.Gに保護されたエルフナインちゃんによるシンフォギアを改良し強化する計画『プロジェクト・イグナイト』が進んでいた。

 

エルフナインちゃんが持ってきた"ダインスレイフ"の欠片を使いシンフォギアを修復・改良しアルカ・ノイズの攻撃で分解されなくさせ、更には新たな力"イグナイト・モジュール"手に入れた。

 

これは私がよく起こしていた暴走状態を制御して純粋な戦闘力としてキャロルちゃんへの対抗手段とするため、実行された強化形態であり、大きなリスクが伴う絶唱や条件の難しいエクスドライブに代わる新しい力。

 

完成が間近に迫る中、オートスコアラーが襲来。これに対して、調ちゃんと切歌ちゃんがかつて奏さんが使っていたLiNKARを持ち出し、こっそり出動してしまう。息のあったコンビネーションで立ち向かっていったけどオートスコアラーに力及ばずアルカ・ノイズによってギアを分解されてしまった。絶体絶命のピンチに翼さんとクリスちゃんが駆けつける。アルカ・ノイズを殲滅しオートスコアラーを退けたんだけどそこにシンフォギアのような装備、ファウストローブ"ダウルダブラ"を纏ったキャロルちゃんが登場し2人もピンチに陥る。そこに私が駆けつけ、3人でイグナイトを起動する。全身を襲う破壊衝動をなんとか乗り越え遂に私達はイグナイトを会得、この力によってキャロルちゃんの撃退に成功する。

 

そして、他の3人も着々とイグナイトを会得し、私以外の5人がそれぞれオートスコアラーのガリィ、ミカ、ファラ、レイアの4人を倒すことに成功。

 

だけどこれは全て、キャロルちゃんの罠だったんだ。

 

エルフナインちゃんにダインスレイフをわざと持ち出させ、私達にキャロルちゃんとオートスコアラー4人にダインスレイフの呪いの旋律を刻ませること、全てが彼女の計画通りに動いてしまった。

 

そして彼女は世界を分解する計画"万象黙示録"を決行。これを止めるべく、私達はキャロルちゃんとの最終決戦に向かう。けれど彼女の力は凄まじく、イグナイトを持ってしてもその力に圧倒されてしまった。絶体絶命のピンチ…だけどその時、別行動していたマリアさん、調ちゃん、切歌ちゃんの3人がウェル博士の決死の協力もあり、計画の要であるチフォージュシャトーの撃墜に成功し、駆けつけてくれた。あとはみんなでキャロルちゃんを止めるだけになった。

 

けれど、彼女の力は凄まじく、70億の絶唱を遥かに超えるフォニックゲインを用いて私達を襲ってきた。そこで私達は、そのフォニックゲインを新たなコンビネーション"S2CAヘキサコンバージョン"を用いてガングニールで束ね、マリアさんのアガートラームで制御、再配置することにより限定解除(エクスドライブ)へと変身することに成功する。そして暴走するキャロルちゃんをみんなのアームドギアを束ねて倒すことができたんだ。けれども私はキャロルちゃんを救うことはできなかった…。あの時、確かに手を掴んだはずなのに…。

 

今でも時々考えてしまう。もっと他にやり方があったのかな、もっとうまくできたのかなって。

 

 

 

魔法少女事変から数週間が経った頃、これまでの歴史の影で暗躍していた錬金術師たちの集まりである"パヴァリア光明結社"。私達はその幹部であるサンジェルマンさん、カリオストロさん、プレラーティちゃん、結社のトップであるアダムさんとそれに付き従うオートスコアラーのティキと対峙する。

 

幹部の3人は錬金術師の叡智の集合体である賢者の石"ラピス・フィロソフィカス"を用いてキャロルちゃんも使ったファウストローブを纏い、私達の前に立ちはだかった。ラピスにはあらゆる不浄を浄化する性質があり、イグナイトを構成しているダインスレイフの呪いを浄化することによって、イグナイトは強制解除、それによるバックファイヤーにより大ダメージを受けてしまった。でも私は感じたんだ。彼女たちとはもしかしたら分かり合えるかもしれない。そう思いずっと語りかけることにしたんだ。

 

文字通りの天敵である彼女たちに対し、かつて私の体の中から溢れ出した鉱石がラピスに対抗できることが判明。その力を用いて浄化を防ぐことに成功し、イグナイトのユニゾンを用いて対抗、彼女たちを退けることに成功する。

 

その後、アダムに反旗を翻したサンジェルマンさんと神殺しの哲学兵装の性質を持つ私のガングニールによってティキを破壊、彼らの野望を阻止することに成功した…と思われたんだけど、なんと神の力が私の中に入ってしまったんだ。

 

暴走する私は、装者の仲間たちと未来、そしてわかり合うことができたサンジェルマンさんたちの協力により助け出された。そしてこのとき米国からの反応兵器が迫っていた。それを食い止めるためにサンジェルマンさんたちはその命を散らせてしまった。

 

殴ることしかできない私の手。もっと話したかった、分かり合いたかった。私はいつも…助けることができない。悔しくて悲しくて仕方ない…。

 

だとしても。足を止めるわけにはいかない。

私には…まだやるべきことがあるのだから。

 

そして、真の力を開放したアダムに対しサンジェルマンさんたちから受け継いだ力"黄金錬成"によりアダムを撃破することに成功した。

 

だけど、最終決戦でフォニックゲイン由来ではない力に対し、S2CAヘキサコンバージョンを決行。バイパスとしてダインスレイフを利用したため、焼却されてしまい、私達はイグナイトを失ってしまった。

 

それにいくつか疑問が残ってたんだ。アダムは神の力を使って一体何をしようとしていたんだろう。生まれながら原罪を持っている人類である私がなんで神の力を宿してしまったんだろう。その疑問は後に明らかになる。新たなる戦いを引き連れて。

 

 

敗北から始まる、大切なものを取り戻す戦いが。

 




シンフォギア見直してて思ったのはクリスちゃんの「かっこいい行くぞバカ」も好きなんですけど、初期の方でしか言わない「お前本当にバカ」って顔赤らめるの良くないですか!?(語彙力)


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幕間3

再びヤツの登場です
とりあえず各陣営からのヘイトを集めるのは上手い

D✕D陣営とデアラ陣営は人数が多すぎてどうしても出せる人が限られてきてしまうのは申し訳ないなーと思いつつ、主要キャラは今後出番ある予定だから許してーと思っております。

この進行度だと当分先となってしまいそうですが…


シンフォギア世界、とある地下の隠れ家にて。

 

「へぇ。聖遺物、シンフォギア、ファウストローブ、ラピス・フィロソフィカス。実に興味深いモノばかりだ。前にこの世界に来たときは長居する暇がなかったからね。時間に余裕が生まれて調べてみたが、この世界はまだまだ面白いものがたくさんあるようだね」

 

「お父様、アルカ・ノイズ以外にも役に立ちそうなものはあるの?」

 

「アルカ・ノイズを使えば楽だものね」

 

「ホントはあたし達がいればアルカ・ノイズなんていらないけどね」

 

「でもアルカ・ノイズがあればムカつく奴らの面を二度と拝まなくて済むようになるのは良いことじゃない?きゃはは」

 

少女たち、ニコルベルの言葉に男、アイザックは返答する。

 

「聖遺物やラピス・フィロソフィカスなどの超常のモノは、不完全な神蝕篇帙では難しいね。アルカ・ノイズは君たちを生み出すのと似たようなものだから簡単なんだけどね。流石はこの世界の命運を何度も左右した代物たちだ。だが…」

 

アイザックは笑みを浮かべ続ける。

 

「再現は難しくとも、手に入れるのは難しくない」

 

その言葉でニコルベルたちは、アイザックが再び何か面白いことを企んでいると察した。そして興奮気味に問いかける。

 

「今回は何を狙うの?お父様」

 

「シンフォギアってやつ?それとも他の?」

 

「いつ仕掛けるの?もう待ちきれないわ!」

 

アイザックは神蝕篇帙のとあるページを見つめ、面白いものを見る顔をする。それは、彼が初めて精霊を見たときと似たような表情だった。

 

「聖女サマも手に入ったし、残りの必要なパーツも集めないとね。神蝕篇帙で得た知識で作れるものは作るけど、現地調達したいものがあるんだ」

 

神蝕篇帙にはこう書かれている。"シェムハ"と。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「大型船舶に偽装した、S.O.N.Gの研究施設にて事故が発生した」

 

パヴァリア光明結社からしばらく経ち、冬となったその日。学校の帰り道、未来とたい焼きを食べていた私はS.O.N.Gから連絡を受け、本部に駆けつけた。他の装者や未来も集結している。そして集まった私達に、師匠が現在の状況を説明をしてくれた。

 

私達が倒したオートスコアラー、ティキの調査を行っていたその施設は、結社の首領であるアダムの目的を探るための解析が行われていた。ティキには惑星の運行を観測し、その情報をもとに様々な現象を割り出す機能が搭載されていた。爆発は漏洩を防ぐための1種の防衛機能かもしれないんだそう。そして、その爆発が起きる直前にサルベージした情報によると、とある座標が示されていた。その場所はなんと極寒の地、南極大陸だった。

 

S.O.N.Gのエージェントである緒川さんは地下へと潜った、結社残党を追っていて捜査を勧めてくれており、今回アダムの目的を掴むことができたそうだ。その目的とは、神の力を使い、この星の支配者となるため、時の彼方より浮上する棺を破壊することだった。

 

これってつまり、アダムが目的のために調べていたのが棺の場所で、その場所が南極ってことになるのかな?一体誰の棺なんだろう。実際のところはよくわからないけど、それでも調べる他ないよね。

 

「それともう一つ、いくつか見つけた結社残党の隠れ家ですが、中には戦闘の形跡があるものも存在しました。それらは全て…血痕などは発見されたのですが、人の姿は見当たりませんでした」

 

「何者かによる襲撃…。何か持ち出された形跡は?」

 

調査結果を聞き、質問をするマリアさん。

 

「他の隠れ家にいた者から聞いたところによると、彼らは逃亡生活が中心のため、あまり多くの所持品を所有してません。主に、錬金術に使用する物くらいで襲撃されるような高価な代物は持ち合わせていないだろうと。ですので何かを狙っての襲撃というわけではなさそうです。更に彼らは、連絡が取れなくなった仲間たちについてしきりに聞いてきた様子から見るに、内輪揉めという線も薄いと考えられます」

 

報告を聞き終えた師匠はしばらく考えたあと、それぞれに指示を出す。

 

「今回の任務だが、緒川は引き続き調査を続けてくれ。隠れ家を襲撃した存在についてだ。人数も目的も何一つわかっていないため、細心の注意を払って事に当たってくれ。もし連れ去られた者がいたとしたら、そいつから新たな情報を引き出せるかもしれん。その場合の救出任務の可能性も視野に入れといてくれ。頼んだぞ」

 

「了解しました」

 

「装者は南極で調査だ。何が起きるか想像もつかん。作戦は1週間後、くれぐれも準備は怠るな」 

 

「「「「「「はいッ!」」」」」」

 

ということで、今回の任務は南極で調査活動を行うことになった。

 

歴史の裏で暗躍していた結社を壊滅させたから、大きな戦いはもうないはず…なんだけど…。私の中にはどうしても引っかかるものがあった。

アダムを倒したときに言われた言葉もそうだけど、あの棺…それに新たな謎の存在…なんだかとても嫌な予感がするんだ…。

 

 

 

「というわけで未来成分補充〜っ!」

 

寮の部屋にて、一緒に住んでいる親友の未来に抱きつき、不安を紛らわせる。悩んだときはこうするのが一番なんだよね。ん〜っ!やっぱり未来は安心するなぁ〜。

 

「そんなに大変そうなの?今回の任務」

 

私の様子が気になったのか、未来が聞いてくる。

 

「へいき、へっちゃら…って言いたいんだけどね。調査を行うだけだから命の危機!ということはないと思うんだけど…ただなんとなく不安なんだ。これといった根拠はないんだけど」

 

「クリスも心配するなとは言ってたけど、やっぱり浮かない顔してた」

 

クリスちゃんもか…。今回の任務、何事もなく済むように気合い入れて行かないと。未来を不安で待たせるなんてしたくないしね。

 

すると未来が何かを決心したみたい。

決めたっ!と、私を抱きつき返してくる。

 

「私も一緒に南極に行く」

 

未来の言葉に驚いた私は、一瞬反応が遅れた。

 

「えっ………?えぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

「実はもう弦十郎さんにはクリスの様子が変だった時、ついて行くって伝えてあるの。やっぱり迷惑だったかなって思って悩んでたけど、響の様子を見てたらほっとけなくて」

 

そう言って私の大好きな笑顔を作る未来。

 

「でもでも!今回はいつもより何が起こるかわからないんだよ?危険が多いかもなんだよ?」

 

「私は調査に参加するとは言ってないでしょ?船でみんなのことを待ってるだけ。それくらいしかできないけど、それでもみんなのことほっとけないよ」

 

「でも…」

 

「不安な顔してるみんなを、私が黙って見送れると思ってるの?それとも、響は私が来るのは嫌?」

 

こうなってしまった以上、未来は意思を曲げることはない。何が起きるかわからない場所に未来を近づけるのは気が引けるけど…。まぁでも、私がみんなを守れば良い話だよね。

 

「ううん…嫌じゃない。とても嬉しいよ!わかった、でも十分注意してね?結社残党の罠かもしれないところに行くんだから」

 

「それも説明されてるよ。それに、十分注意しなきゃいけないのは私より響たちの方でしょ?何が起こるかわからないんだし」

 

「それもそうなんだけどね。私にも未来の心配をさせてよ。それじゃあ任務に向けて、明日から皆と色々話し合おう」

 

「うん、私もできる限り、手伝うから」

 

ありがとう、と未来にお礼を言うと、どういたしまして、と返ってくる。未来には感謝してもしきれないなぁ。

 

何かお礼したいな。でも何がいいかな?

良い案がないか考えていると、今朝テレビで見たニュースの内容を思い出した。私から何かをあげられるわけじゃないけど…これなら未来も喜んでくれると思う。

 

「ねぇ、未来。今度、一緒に流れ星見に行こうよ!」

 

「それって、朝テレビでやってたやつ?」

 

「そうそう!任務を頑張った私達へのご褒美としてさ!」

 

「はぁ…まだ任務は始まってもいないのに、気が早いんだから」

 

呆れて溜め息をつきながらも、未来の表情は心做しか穏やかになったような気がする。

 

「じゃあ、夜も遅いし、今日はもう寝ようか」

 

「うん!おやすみ未来」

 

「おやすみ、響」

 

未来のためにも、無事に任務を済ませなきゃね。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

1週間後、私達が南極についたのとほぼ同じタイミング、棺から変なのが出てきて暴れ始めたので、私達は早速出動することとなる。

 

「響、みんなも気をつけてね」

 

未来の言葉にみんな笑顔で答える。

 

「それじゃ、行くわよッ!」

 

マリアさんの号令でみんな一斉に聖詠を口にする。

 

『"Balwisyall Nescell gungnir tron"』

 

シンフォギアを纏い、私達は戦闘を開始する。光線とか結晶みたいな攻撃とか、直撃したらひとたまりもないな…。みんなの攻撃も大したダメージにはなっていないみたい。火力は高くて防御力もあるなんて…こんな時、イグナイトが使えたら…。

 

「なんだよあのデタラメは!?どうする?」

 

「どうするもこうするも…止めるしかないじゃない!」

 

マリアさんは背後の基地を見つめて叫ぶ。

それを聞いた翼さんが指示を出す。

 

「散開しつつ距離を詰めろ!観測基地に近づけさせるな!」

 

みんな頷き、それぞれバラバラになる。

そして私が攻撃を仕掛けようとした時だった。

 

「…………え?」

 

対峙していた棺が真っ二つに切り裂かれた。翼さんが斬ったわけでも、切歌ちゃんが斬ったわけでもない。2人も他のみんなも、驚いたように棺を見つめていた。一体何が起こったんだろう…。あれだけ強大な力を持つ棺をたった一撃で…?目の前で起こったことに驚愕していた時、本部から通信が入る。

 

『棺の上空よりアウフバッヘン波形を検知!そんな!?この波形は…』

 

友里さんが信じられないものを見たような反応をする。本部のモニターに書かれた聖遺物の名前を見て、師匠が驚愕する。

 

"Dainsleif"

 

『ダインスレイフ…だとぉ!?』

 

『ボクの持ってきたダインスレイフの欠片の本体!?あれは既に失われた物のはず!それに、あの危険な聖遺物を扱える人物がいるというのですか!?』

 

ダインスレイフ。魔剣と恐れられる聖遺物を操ってるなんて…一体何者なんだろう?

 

空に目をやると、白い髪の男性が佇んでいた。

あの人からとてつもない禍々しい気配を感じる…。手に握られているダインスレイフより遥かに危険な感じ。こんなに寒気を感じるのに、存在に全く気が付かなかった…。ほんとにこの人は一体…。

 

「テメェ…何者だ?一体何が目的だ」

 

クリスちゃんが男性に質問する。皆、最大限に警戒している。一瞬でも油断しちゃいけない。この人は私達そう思わせるほどに、危険な存在だ。

 

一刻も早く撤退したほうが良いんだけど…まだ避難の方は完了していない。なるべく時間を稼ぐためにも、情報を得るためにもここは相手の出方を伺うべきだろう。

 

すると男性が私達に返答してくる。

 

 

「初めまして。聖遺物を纏う戦姫たち、シンフォギア装者の諸君。私の名前はアイザック・ウェストコット。精霊たちが住まう異世界からやって来たんだ。以後、お見知りおきを」

 

そう言ってアイザックと名乗った男性は、瞳に光の宿っていない、不気味な笑顔で挨拶をしてきた。

 

これが私と宿敵となるアイザック・ウェストコットとの初対面だった。

 

 




あと1話過去編というか幕間が挟まります。

シンフォギア装者の前に現れたアイザックと名乗る謎の人物!果たして彼の目的は?敵か?味方か?一体どっちなんだ…!?

感想、誤字脱字報告お待ちしております。


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第五話

幕間を書こうとしたんですけど本編差し込んだほうが良さそうだったので本編を書きました。

卒論終わったのでぼちぼち頻度上げていこうと思います。

誤字脱字報告、感想等お待ちしております。


現れた6人目の少女、黄色い装備を纏った立花響と呼ばれた少女の口から伝えられたのは話し合いがしたいというものだった。

 

「俺達を信用してくれるのか…?」

 

士道は思わず聞いてしまった。先程までどうしようもない状況だったのに、思わぬ展開である。このまま上手く事が運べればいいが…。

 

「私の名前は立花響。私はあなた達を信用したいと思ってる」

 

そう言って彼女は笑顔を向けてくる。

 

「おいバカ!正気か!?こいつはあの野郎と同じく異世界から来たとかほざいてやがるんだぞ?奴らの仲間に違いねぇ」

 

だが赤い装備を纏った少女は依然としてこちらの話を聞いてはくれない。翼と呼ばれた女性と、マリアと呼ばれた女性の2人はこちらを警戒したまま、会話を見守っているようだ。

 

すると響は士道の元へに近づいてくる。狂三たちが警戒するが、士道はそれらを静止する。そして響は士道が抱えている少女の頭を優しく撫でる。

 

「あなたたちは調ちゃんを助けてくれたんでしょ?あなたのその目は私達を襲った人とは違う、とても真っ直ぐな目をしているもの。それだけでも私は信用できるよ」

 

すると刻々帝を構えて狂三が質問する。

 

「そんな簡単にわたくしたちを信用してしまって平気ですの?この世界の人々にとって、わたくしたちは得体のしれない存在ですのよ?目を見て人を判断できるほど、世界は単純ではないと思いますけれど?」

 

「それもそうだね」

 

「わたくし達がその少女を捕らえて、貴女方を陥れようと画策してるかもしれない。そうは考えませんでしたの?」

 

「そんなことは全然考えてなかったな。だって、拘束もしないでずっと大切に抱えてくれているんだもん。そんなことするなんて思えないよ。それに… 」

 

響は真剣な眼差しで狂三に告げる。

 

「私があなた達を信じたいんだ」

 

響の言葉に狂三は少し驚いた表情を作る。

 

「それで騙され、取り返しのつかない事態になったとしても、貴女はよろしいのですか?」

 

「信じないで後悔するよりは信じて後悔するほうがマシだもん」

 

それを聞いた狂三は構えていた刻々帝を下ろす。

そして何かを諦めたかのように笑う。

 

「貴女も士道さんに負けず劣らずのお人好しですわね。『わたくし』たち」

 

狂三が号令をかけると、分身体が次々と影の中へと消えていく。

 

「私達のことも信用してもらえたかな?」

 

「ひとまずは。これでよろしいのですよね?士道さん」

 

「あぁ、嫌な役をやらせて悪い。ありがとうな」

 

「いえいえ。お礼なら彼女に言ってくださいな」

 

「あぁ。えっと…立花もありがとな」

 

「響でいいよ。調ちゃんを助けてくれたんだもん。これくらいなんてことないよ。とりあえず、お互いのことについて話し合いたいと思うんだけど、みんなもそれでいいかな?」

 

響が仲間たちに問いかける。

 

「無益な争いを避けられるのならこちらとしても歓迎だ。刃を向けてすまなかった」

 

「分かればよいのじゃ。仲良くできるのならそれが一番じゃからのぅ」

 

「あぁ、そうだな」

 

六喰の言葉に翼が微笑みながら同意する。

 

「私も構わないわ。調を助けてくれたというのならお礼もしたいし」

 

「アタシもデス!調を助けてくれて感謝してるのデス!」

 

マリアと切歌も了承してくれた。

 

「クリスちゃんも平気?」

 

「アタシはまだそいつらを信用しちゃいない。けど…」

 

クリスと呼ばれた少女は続ける。

 

「そこのバカは信用してる。だから…その……悪かったな」

 

「クリスちゃーん!!そんなに私のこと信用してくれてるの!?嬉しい!ありがとー!!」

 

「バ、バカ!引っつくな!!」

 

2人のやり取りを見て笑いが起こる。会話の行く末を見守っていた七罪は、余程緊張したのか、地面に座り込んでしまう。

 

「一次はどうなるかと思ったわ。暫く立てないかも」

 

「六喰も七罪もありがとな」

 

そう言って士道は2人の頭を順番に撫でる。

 

「むんっ」

 

「べ、別に、大したことしてないわよ」

 

六喰は嬉しそうに、七罪は恥ずかしそうに頷いた。

 

そして士道は少女たちに自らの思いを伝える。

 

「とりあえず、俺達を信じてくれてありがとう。話し合いをしたいのは俺達も同じ気持ちだ。俺達は訳あって、この世界に存在しているという痕跡をあまり残したくないんだ。ホントは長居もしない方が良いんだが、この世界のことを知らなさすぎる。だから、君たちにだけは事情を話しておこうと思うんだ。その後はこの子を君たちに引き渡して、この場を去ろうと思うんだけど…どうかな?」

 

「そっか、わかった。なら、ここで話すのもなんだし、どこか場所を移さない?」

 

「本当は本部へ連れて行くのがいいのだけれど、今はきっと無理ね。先日の1件以来、ずっとゴタゴタしているから、任務終了予定時刻まではこちらへのヘリは飛んでこないでしょう」

 

マリアの一言に、みんな暗い顔をする。

あまり触れないほうが良いのかもしれないと思った士道は、建物へ視線を向けて提案をする。

 

「なぁ、ここは研究施設って言ってたよな?なら、あの施設の1室を借りられないか?」

 

士道の言葉に響はあぁ、それならと回答する。

 

「この施設は今は無人だから平気だよ。ここの立ち入りの許可も、私達が調査のためにお偉いさんから貰っているし」

 

「そうね。調も寝かせてあげたいし、私もそれで構わないわ」

 

響とマリアから賛同をもらう。

他の3人も大丈夫のようだ。装備を解除し、こちらに歩み寄ってくる。六喰と七罪も限定礼装を解除する。狂三は万が一に備えて、礼装は解除していない。

 

そして士道達は施設へ歩き始めた。

道中、調と呼ばれた少女を抱えながら、近くを歩いていた士道は切歌に疑問に思ったことを聞いてみた。

 

「なぁ、なんでえっと、君は俺達に攻撃しなかったんだ?狂三に捕まっても抵抗らしい抵抗はしてなかったよな?」

 

「暁切歌、切歌で良いデスよ。そうデスね、咄嗟のことで体が動かなかったのもあるんデスけど…一番の理由はどうすれば良いか、わからなかったのデスよ」

 

「わからなかった?」

 

「デスデス。アタシ達は先日、仲間を連れ去られてしまって…。えーっと、士道さんデスよね?連れ去った人たちの特徴が士道さんたちに類似してたのデス。だからみんな警戒してたんデスよ。アタシも戦おうと思ったんデスけど…」

 

切歌は俯きながら続ける。

 

「調はアタシのとてもとても大切な人なんです。その調を敵かもしれない見ず知らずの人がこちらを攻撃しようとはせず、懸命に庇っている。

士道さんのその姿を見て、どうすれば良いのかわからなくなってしまったのデスよ…」

 

「切歌は本当にこの子のことが大好きなんだな。

謝らなくていいさ。元はといえば仲間を連れ去った奴らが悪いんだ。俺も仲間を攫われて、疑わしい奴が目の前に現れたら冷静でいられるかわからないからな」

 

「でも、みんなを止められなかったのデス…」

 

士道は続ける。

 

「確かに無闇に攻撃をするのは良くない。でもそれが大切な人を思っての行為なら、俺には咎めるなんてできないさ。大切な人を守りたいなんて、当たり前のことだからな。そんなに自分を責めなくていいんだ。切歌が悪いわけじゃないんだから、全部背負い込まなくてもいいんだよ」

 

士道の言葉を切歌は真剣に耳を傾けている。

 

「だから切歌は、これからも悩んで悩んで悩み抜いて、大切な人のために行動してほしい。勿論、自分や他の何かを犠牲にしちゃ駄目だぞ?そんなのは誰も望んでなんかいないからな」

 

「それはわかっているデス。昔、似たような経験をしたときに学んだんデス。大切な人に傷ついてほしくない、それは相手も同じく思っているって。いっぱい怒られて、いっぱい心配かけたのデス」

 

フロンティア事変で、魔法少女事変で、それらを学んだ切歌には、昔のような危険な行動をする考えは持ち合わせていなかった。

 

それを聞いた士道は安心したように頷き、

 

「そっか…それなら良かった。切歌は優しい子だから無茶を平気でやってのけそうだから心配だったけど、無駄だったみたいだな」

 

すると話を聞いていたのか狂三が話に加わってくる。

 

「あらあら、もう士道さんは出会ったばかりの子に対して、優しいと言って口説いてらっしゃいますの?」

 

「口説いているって言い方はやめてくれ…。俺は思ったことを言っただけだ。話してれば切歌が他人思いの優しい子なんてことわかるだろ?」

 

「冗談ですわ。少し寂しかったので士道さんに構ってほしかっただけですの」

 

気のせいかどうかわからないが、狂三の態度がここに来てから軟化した…ような気がするのだ。確証はないので感覚でしか言えないが、以前は士道以外に話しかける行為はあまりしなかったはずである。

 

それがこちらの世界に来て以来、七罪や六喰とは普通に話したり、多少ではあるが戦闘の際に連携を取ったりしている。士道が恐怖を覚えた頃の狂三とは随分雰囲気が異なる。

 

─何か心境の変化があったのかもしれない。このまま狂三が普通の女の子として生きていってくれればいいんだけどな─

 

なんてことを士道が考えていると、褒められて照れている切歌が、それを誤魔化すように質問してくる。

 

「えっと、お二人はどのような関係なんデスか?」

 

すると狂三は

 

「そうですわねぇ…わたくしは以前、士道さんに全て(・・)が欲しいとお伝えさせていただきましたわ」

 

なんて爆弾発言を(のたま)った。

 

「すすす、全てデスか!?」

 

日頃は常識人として振る舞っている切歌であるが、色恋沙汰に関しては周りにもそういった話がないため、めっぽう弱かった。耳まで真っ赤にして頬を両手で覆っている。

 

まずい。確かに間違ってはいないが、今このタイミングでその発言は、100%誤解される。なんとか話し合いに持ち込んだのに、このままでは士道は女性を誑かして仲間にしている、なんて思われかねない。

 

だが士道も伊達に精霊たちと時間をともにしてきたわけではない。二亜や美久や狂三といった個性の強い子達との会話も多いため、対処にも慣れてきていた。

 

スマートに誤解を解くためにも、ここは狼狽えず、大人の余裕というやつを見せるときなのだ。おいおい、切歌が困ってるだろ、と言おうとしたときだった。

 

「主様はむくのことを好きと言ってくれたのじゃ」

 

さて、困ったものである。まさか狂三への援護射撃が行われるとは思わなかった士道は、先程まで調子に乗っていた自分を殴りたくなった。

 

「しゅ、修羅場デス!!ドラマで見たことあるデス!!」

 

切歌は真っ赤な顔のまま喜んでいるように見えた。

 

こうなれば時間との勝負である。早めに誤解を解かなければ、二股野郎になってしまう。急いで行動に移すが…

 

「切歌、聞いてくれ。それは」

 

誤解なんだ、と言おうとしたときである。

 

「アタシも口説かれたし、他にも何人もの女性を口説いてたわね」

 

「そ、それは、なんデスか…!?」

 

「いや…………なんでもない…」

 

終わった…。七罪からとどめの一撃を喰らい、士道は誤解を解くことを諦める。全ての内容が事実であるため、否定もできない。

 

これからこの世界でどうやっていけば良いか考えていると、

 

「さて、お喋りはここまでに致しましょう」

 

と、狂三が茶番を終わらせる。どうやら3人ともグルだったようである。

 

「そうね、十分楽しめたわ」

 

「主様の顔、見たかえ?むくはとても満足じゃぞ」

 

そう言って2人は楽しそうに施設に向かっていった。切歌は状況について来れていないようで、

 

「な、何が起こったのデスか…?」

 

混乱していた。そんな様子の切歌に狂三は告げる。

 

「わたくしたちの関係はとても複雑ですの。ですからまた後ほどになりますわ」

 

「わ、わかったのデス。調を早く寝かさなきゃデスし、さっさと向かうとするデスよ。いやぁでも流石にびっくりしたのデス。そんなドラマみたいなことが日常で起こるわけなかったのデスよ」

 

どうやら女たらしにならずに済んだようだ。突然訪れたピンチであったが、なんとか切り抜けることができた。

 

「あぁ、そのことですけれど…」

 

「?」

 

「わたくしたちは1言も冗談なんて言ってませんわ」

 

「なんデスと!?」

 

くすくす、と再び笑いながら、狂三は六喰と七罪の元へ合流する。いつの間に仲良くなったのか、3人は仲良さそうに士道達を置いて、先へ進んでいった。

 

自分たちも向かわなければ。この後のことを考えないことにした士道は、驚いている切歌に声を掛ける。

 

「切歌」

 

「な、なんデスか!?もしかしてアタシも口説かれちゃうんデスか!?」

 

先程まで警戒されてなかったはずだ。

軽くヘコみながら士道は否定する。

 

「はぁ…そんなことしないから、俺達も行こうぜ」

 

そう言って士道も再び施設へ歩き始める。

それを慌てて追うように切歌も歩き始めた。

 

もしかしたら狂三たちは、切歌が少し沈んだ表情をしたのを察して、場を和ませてくれたのかもしれない。もちろん、士道の困った顔が見たかっただけかもしれないが。

 

どちらにしろ、少しは切歌とは打ち解けられたと思うので、士道は心の中で再び感謝の言葉を述べるのだった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

少女は目覚める。辺りは真っ新で何もない空間。

 

この何もない場所に何故、自分はいるのか?

与えられた役割を終え、少女は確かに消えたはずだった。

大好きな人に抱きかかえられながら、幸せな気持ちのままこの世を去った。

 

自分の存在が存在であるため、死後の世界にいるというはずがない。だが、どうやらまだ生きているらしい。この場合、生き返ったという表現が一番正しいのだろう。

 

なら誰がなんのために生き返らせたのだろうか?

 

そんなの決まっている。自分という存在を作り出したあの人だろう。その予想を肯定するように、頭の中に声が聞こえる。驚いたのが、とても焦っていたということだ。あの人が感情を顕にするのは本当に珍しい。

 

生き返らせた目的と新しい役割を伝えられ、納得する。速やかに実行するようにと言われたが、ここが何処かもわからないため、どうすれば良いかと頭を悩ませる。

 

すると目の前に当然光が差し込み、目を開けるとそこは、かつていた世界ではないらしい。あの人から聞いたところによると、似てはいるが歩んできた歴史は全く異なるそうだ。

 

目的を果たすために、現状の確認をする。どうやら力も戻っているようだ。流石に何もできない状態で放り出しても意味ないと判断したらしい。これなら未知の世界でもなんとかなるだろう。

 

当面の目的はこの世界の情報収集と監視ということになる。あの人からは大まかな情報しか聞いていないので、まずはこの世界について知らなければならない。本当は今すぐに会いに行きたい…だけど残念ながら役割を放棄しては行けない。でも…少しの間、我慢するだけ。この世界に居ればいずれ必ず会える。

 

本来なら二度と会えなかったはずなのだ。それがこうして機会が与えられた。それなら色々と準備をしよう。前回出来なかったこともしたいし丁度良いだろう。

 

そうして少女は歩き出す。やるべき事をするために。

 

きっと…目的を果せば再び消えてしまうだろう。自分は生み出された存在。これはもう決まっていることであり、その運命を既に受け入れている。前もそうであったし、今更何ということはない。

 

たとえ消えるとわかっていても…再び会えるのなら

 

それだけで生き返って良かったと

 

心の底から思えるのだから。

 

 

 

 

 

 

 




最後に現れた人物に関してはトップシークレットです。
いずれかの作品に登場してますので想像しながらお楽しみください。

案外簡単かもしれませんが…


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