転生する世界を間違えた (ああ)
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プロローグ

 

 

「二度目の人生。今度は後悔しないように生きてくださいね」

 

 女神サマの声が脳内に聞こえた瞬間、僕の身体は光に包まれた。

 

 ……そう、女神である。

 

 テンプレ通り友人を庇ってトラック(異世界へ飛ばす現代兵器)に撥ねられ、テンプレ通り女神サマに「来世逝ってみない?」と言われ、テンプレ通り僕は転生することになった。

 

 凄く急展開である。

 

 もちろん某慎重系勇者のように落ち着いて女神サマの話を聞けた……はずがなく、終始テンパっていた。

 

 まあ、女神サマの笑顔(背後には魔王ゾーマの姿が見えた)によって黙らされたんだけどね。女神サマが真のラスボスだと言われても否定はできない自信がある。あの笑顔は恐ろしかったよ……思わずチビりかけた。てかチビった。

 

 バレないように内股になって立ってたけど女神サマに「それが神の話を聞く態度ですか?」と言われ死んだかと思った。もう死んでるけど。

 

 まあそこは仮にも女神サマ。何かに気付いたかのように目を細めると笑顔(すごく幸せそうな)になって可愛いですねと呟いていた。こいつラスボスじゃない、ドSだったんだ!

 

 それと、僕はテンプレよろしく転生特典を貰うことになった。

 

 無論、僕はテンションMAXに……ならなかった。女神サマの衣装の一部に手錠があったのを見つけたからだ。うん、病んでるドS女神ってなんだよチクショウ。それ無敵やん。もう貴方がラスボスで良いです。属性多すぎです。

 

 その手錠をどんな用途で使用するのか気になったけど、その時僕は自分を洗脳するかのように必死に自分に話しかけていた。

 

(逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ)

 

 

 ってね。

 

 逃げたとしても絶対に追いつかれるだろうし、どこに逃げれば助かるかなんて知らない。逃げた方がデメリット大有りなのだ。

 

 話を戻すが転生特典は三つまで選べるとのことだった。

 

 最初に頭に思い浮かんだのは二次創作でよく見かける『無限の剣製』や『王の財宝』。この能力には確かにロマンや憧れが詰まっていて僕もテンプレ通りそれにしようかと思った。

 

 その時だった。

 

『僕たちを見捨てるのかい?』

 

『一緒に旅をしないかと言ってきたのは君の方じゃないか』

 

『十八人の自分を、お前は捨てれるのか?』

 

  たぶん幻聴だったのだろうけど、頭の中でもう一人……じゃなくて十八人の僕が語り掛けてきた。

 

 お前らハサンかよ。確かにFGOではお世話になったけどさ、流石に来世と今世の区切りをつけたいっていうか、ねぇ?

 

 ちょっと現実実のないことが連続していたからなのだろう。脳内に複数の僕が存在することに驚くことなく僕は脳内?に話し掛けた。

 

『そ、そんな……。僕達十八人で特異点も修正してきたじゃないか……』

 

『いつだって一緒だ』

 

『そうだぜ。苦楽を共にしてきた仲だろ』

 

 自分の声でそんな悲しげに喋られると罪悪感半端なかったよ……。

 

 しょうがない、別に三枠の一つぐらい良いだろう。それに十八人も僕がいるんだから判断に困らなさそうだし、いっか。そう考え女神サマに伝えると朗らかにオッケーしてくれた。

 

『っしゃああああ!異世界転生マジ神ィ!無双の始まりィ!』

 

『ゲヘヘ……。美少女寝取りRTAのときが来たか……』

 

『手始めに国興して知識チートで人気上げて一夫多妻制で……ぐふっ』

 

 こいつら本当に僕か?と思ったのは無理もなかった。なんせ僕はエロのエの文字も知らない純朴少年だから!

 

 

 ま、まあそれは置いといて。他の二枠についてだ。

 

 まず絶対に欠かせないのは容姿についてだった。思いっきりイケメンにしてくれとは言わないけど、今よりかはマシになって欲しい。どうも、彼女いない歴=年齢の男です……。

 

 容姿は上の下ってところかな。超絶イケメンだからと寄ってくる女は大抵クズだし(個人の感想です)。何より超絶イケメンになってモテ始めたら悔しい。やっぱ大事なのは見た目なのかよ……って挫折しそうだからね。うん。

 

 そのことを伝えると女神サマは「ふっ」と鼻で笑った。確かに邪な願望だってのは分かってるけど女神でそれはないだろ。女神辞めて邪神に仕事替え(ジョブチェンジ)したらどうですか?

 

 

 最後に選んだのは、やはりというか……定番のやつだった。

 

 僕は貧しい家庭に生まれたが、両親が必死に働いて稼いだお金のおかげで何不自由なく生きていけた。僕が大学を卒業し仕事に就職した後も両親は働き続けていた。両親が定年に差し掛かっても仕事を止める気配がなかったので、必死にもう働かなくていいんだと説得したのがつい先日。

 

 そして僕はトラックに撥ねられ……。

 

 仕事を辞めた両親に親孝行もせず逝ってしまったせめてもの贖罪だ。両親には幸せな人生を送って欲しい。だから僕は女神に願った。

 

 女神も流石に笑ったりはせず、真顔で頷いただけだった。

 

『へっ………僕らしくない、な』

 

『まあ、転生したのに前世のコトが気になったら気分が削がれるし』

 

『特に願うこともないからね』

 

 頭の中で僕達も賛同する。

 

 はっ、照れんなよ。男のツンデレに需要はないぞ。あーあ、ちくしょう。絶対来世は美少女とキャッキャウフフしてやる。僕、ラッキースケベを期待しています。ばっちこい。幼女も幼女も幼女もオッケーだ。僕の守備範囲は広大だ。鳥取砂丘並み。いや、そんなに大きくなかったな……。

 

 

 

 とにかく、待ってろよ美少女ォーーーーーー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕を包んでた光が、その輝きを増した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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