獅子王・アルトリアペンドラゴンと王達の行くオーバーロードの世界 (アルトリア・ブラック)
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王達の行く異世界

『獅子王アルトリア・ペンドラゴンが行く異世界転移』のifルートで、ギルガメッシュたち王様達がいます。

彼らがプレイヤーです。


ー白亜の城ー

 

(…あー…疲れた…)

 

アルトリアは異世界に転移して来てから仲間達と協力して大陸のみを支配下に置くことが出来た。

 

ゲーム《ユグドラシル》が現実の物になってから彼らの暴走具合が凄かった。

 

(…征服王と賢王は帰還を目標にしてたけど、リアル並みにやりたいことが出来るから、最近は言わなくなったな…)

 

このギルド《キャメロット》は複数の世界で構成されており、巨大な城を中心にオジマンディアスが支配するピラミッド領域、賢王が支配するウルクなどいろいろある。

 

(…個性が爆発してるからなぁ…一度暴走すると歯止めが利かなくなるんだよな…)

 

100年前か200年前か忘れたが、その時に太陽王や征服王が大陸全土を戦火に包み暴れ回った事を思い出しアルトリアはため息をつく

 

ゲームだと思っていた故に大陸にいる異形種達をモンスターだと思っていた節があった。

 

しかし、人間達を見つけ、彼らが生きていると実感した太陽王達は侵攻を辞めて国の運営及び自分達の生活を優先するようになった。

 

(…まぁ、力はあるし、やりたいことが出来るこの世界はリアル並みに好きだって言ってたしな…)

 

悩んでいると…

 

「王、失礼致します」

 

そう言って入って来たのはガウェインで、深々と頭を下げる

 

「どうした?ガウェイン」

 

「は、先日、王からの調べるように言われた国々の調査が終わりましたので報告させて頂きます」

 

そう言ってガウェインが紙を広げる

 

「あぁ、少し待て、彼らに繋げる」

 

そう言って《伝言》を繋げると…

 

『聞こえるぞー!!アルトリアー!』

 

元気なネロの声が聞こえてくる。

 

アルトリアの背後に巨大なモニターが出現する

 

仲間達が出て来て各々、自分の領域の玉座に座っていた。

 

「はい、では始めさせて頂きます」

 

ガウェイン達が話し始める

 

 

 

 

 

 

 

ーガウェインー

 

ガウェインが仕えるのは獅子王・アルトリア・ペンドラゴンであり、ギルド長でもある彼女だった。

 

ガウェイン達円卓の騎士の創造主はアルトリアであり、彼らの絶対的忠誠心はアルトリアのみに注がれていた。

 

しかし、アルトリアの友人でもあり仲間である他の王達にもある程度の忠誠を捧げなければ、余計な諍いになると確信していた。

 

「ガウェイン、ギルガメッシュ王からの伝言で、リ・エスティーゼ王国に使節団を送る際の打ち合わせを陛下としたいらしいのだが、予定の擦り合わせを行いたい」

 

「わかりました。王と相談してみます」

 

王同士の連絡も常にその王のNPC達が行なっていた。

 

ガウェインは書類を持ち、アルトリアの元に向かう。

 

(…最近、リ・エスティーゼ王国付近で謎の組織が動き出してる…プレイヤーがまたこの世界に転移して来たのか…?)

 

アグラヴェインの見立てでは100年おきに転移してくるのならば、今回もおそらく転移して来ているだろうとのことだった。

 

(…我が王に刃を向けるプレイヤーならば即刻排除しなければ…)

 

200年前、いやもう少し後だったかもしれないが、十三英雄のリーダーはアルトリア達と友好的だったからこそ殺さないでいた。

 

ガウェインはマントをなびかせ、アルトリアの自室に向かって歩きだす




次回からボチボチ設定説明やらいろいろ入ります。

オジマンディアス、ネロ、ギルガメッシュ、ソロモン、イスカンダルなどと言った個性が爆発している彼らが出て来ます。



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大国『ブリテン王国』

今回のメインはソロモン王メインの話です。

一応、王国の話やらいろいろあります、

ナザリックが悪魔騒動を起こした後の話です

各章でメインを変えようか悩んでいる最中です。

自分で書いておいてキャラ多くてどう今後展開しようか悩んでおります。


ーソロモンー

 

ソロモンはこの世界に転移して来てから青く輝く宝石のような空に見惚れていた。

 

(…リアルのあの世界でも、あんな綺麗な星空は見なかったなぁ)

 

ソロモンは歩きながらキャメロット城内を歩いていると…

 

「ソロモンー!!!」

 

大声が聞こえて来て横を見ると庭園があるところにアルトリアとネロがいた。

 

ネロは手を大きく振って豪快に笑っていた。

 

「二人でお茶でもしてたの?」

 

そう言って近寄るとアルトリアの後ろにいたガウェインが深々と頭を下げ、ネロの後ろにいたNPCである『岸波白野』が少しびっくりしているような素振りをみせる。

 

「実質四人でだがな!!アルトリアと二人で今後のことを話し合ってたのだ!バハルス帝国とリ・エスティーゼ王国のどちらかが人間国家として相応しいか!」

 

「…話す内容が不穏なんだよなぁ」

 

「別に良かろう!我らの国は双方の国に深入りはしないと脈打っているが、話し合いの題材にしても問題なかろう!」

 

ソロモンはこの世界に来てすぐに順応したネロの快活さに微笑む

 

ネロの底なしの明るさはこのギルドが保たれている要因だ。

 

まぁ、征服王や太陽王の絡みにネロが絡めばロクなことにならないのでアルトリアかソロモンが見張るようにしていた。

 

「そういえば、ビーストマン連邦についてはどうするんだい?ある程度残してるけど」

 

「滅亡させる程の悪いことはしていないから放置しているんだ。人間を残酷に喰らい始めたら流石に考えものだが」

 

アルトリアの言葉にソロモンは『うーん』と悩む

 

(アルトリアの在り方はどっちかというと女神系統なんだよなぁ…)

 

アルトリアの種族は《竜人》であり、人間に対しての思い入れが他のギルメンより強い気がするのだ。

 

メイドが椅子を持ってきてくれたので座ると、ガレスが紅茶を持ってきてくれる。

 

「そうだねぇ…あんまり深く介入すると戦争に発展しかねないからどうしようか」

 

三人で話し始める

 

「うーん、ブリテン王国の同盟国を何処かと結べれば良いんだけどね…」

 

現状、同盟するメリットがあるのはアーグランド評議国かバハルス帝国くらいだ。

 

「スレイン法国は同盟を組んだらめんどくさいことになりそうだから余は嫌だぞ!」

 

「…嫌だから同盟組まないとかは、あんまり良くない」

 

そう言うとネロが不貞腐れる。

 

「リ・エスティーゼ王国と同盟を組むメリットもないしな、今のところバハルス帝国と同盟を組むのが良いんじゃないか?」

 

アルトリアの言葉に「そうだねぇ、やっぱりそこか」と言う。

 

そうこう話していると…

 

「えぇい!何を楽しそうに美味しそうな物を食っておる!」

 

そう言って後ろから現れたのは何故かボロボロの賢王・ギルガメッシュと豪快に笑っているイスカンダルと笑いを堪えているオジマンディアスがいた。

 

「どういう状況?」

 

「何やってきたの?」

 

ネロとソロモンの言葉にイスカンダルが笑いながらギルガメッシュを指差し

 

「いや、これがなぁ、酒を飲み始めたら全裸になってシドゥリにシバかれた挙句にエルキドゥに揉みくちゃにされておったのだ」

 

「愉快すぎるぞ、貴様」

 

オジマンディアスの声に『笑いすぎだ!』とキレるギルガメッシュ

 

ギルガメッシュがアルトリアの横に座り、オジマンディアスとイスカンダルがソロモンの両サイドに座ると今後の話について盛り上がって行く

 

 

 

 

 

 

 

ーリ・エスティーゼ王国・王宮内にてー

 

悪魔騒動の後、改めてラキュース達はラナーの元に集まり、今後の話をしていた。

 

イビルアイもいるため、王族達や貴族達が出入りしている屋敷ではない場所での対面だったが

 

「そういやぁ、あの国は今回の悪魔騒動には出張らなかったのか?」

 

「あの国?」

 

クライムはよく分からなかったが、イビルアイには伝わったのか、ため息をつき『さぁな』と答える

 

「なんでぇ、クライム、大陸中央に位置する巨大な国【ブリテン王国】のことはしらねぇのか?」

 

ガガーランの言葉にハッとなり、ラナーから教えてもらった事を思い出す。

 

「その国は知っています。その国が今回の悪魔騒動と何の関係が?」

 

【ブリテン王国】は200年前に建国された国で、瞬く間に大陸を支配下に置いた巨大な国だ。

 

大陸に今生存している国はブリテン王国の影響故なのか、小国しか無く『ビーストマン連邦』が今のところ国としてある。

 

「ブリテン王国の要人達はこの事については何の反応も示してはいないわ、でも、これが彼らの仕業なら帝国との戦争なんてしている場合じゃないのだけどね…」

 

ラナーは心配そうに言ってくる

 

「そういや、あの国の要人の一人に悪魔がいなかったか?そいつが今回の事件の黒幕なんじゃねぇのか?」

 

ガガーランの言葉にクライムは驚く

 

(…そのことは初耳だ…悪魔がいるのか?)

 

「…あまり憶測で話さない方がいい。深く話して大事になれば国家間の問題になる。現に深く話しをして問題を起こして滅ぼされた国があったしな」

 

イビルアイの言葉にクライムは息を呑む

 

「その国のことなんですけど、彼らが今回の悪魔騒動に関係していなくてもしていても、使節団が王国にくることになってるんです」

 

「「「!!!」」」

 

ラナーの言葉に青の薔薇の面々は驚く

 

「あの国は今の所どの国とも同盟を結んでません。アーグランド評議国やスレイン法国とは過去に戦争をしている経緯から、帝国かリ・エスティーゼ王国との同盟を視野に入れていると聞きました」

 

ラナーの言葉にイビルアイは無言になる

 

「…それじゃあ、今回の件についての追求は王はするの?」

 

「…訪問される王にもよるけど…獅子王殿下や魔術王殿下なら話は通じますし、今回の件も何か言うかもしれませんけど、太陽王殿下や征服王殿下が参られた場合は追求は出来ません」

 

『ブリテン王国』はかつての六大神のように一人の王が統治しているのでは無く、六人の王が国を統治している国だ。

 

「使節団が来る数日前にまた相談したいことがあるので、また呼んでも良いですか?」

 

そう言うとラキュースは「分かってるわ、任せて」と言う




ソロモン(プレイヤー)
【レベル】100
【種族】英霊(人間種)
【職業】魔法詠唱者
【カルマ値】善
【居住】キャメロット内にある時間神殿

【詳細】
プレイヤーにして富裕層出身
アルトリアと仲良し
穏やかな性格でキャメロットの良心ではある
アルトリアと一緒にギルガメッシュやオジマンディアスを止めたりする。

【英霊の種族について】
英霊は人間種であり、ゴーストの上位種。
霊体化したりすることが出来る。
寿命は80年くらいなのだが、スキルによって寿命が無くなる代わりにデメリットもあるのだが、キャメロットのプレイヤーの大半はこのスキルを持っている故に200年経過しても生きている。

ネロ・クラウディウス(プレイヤー)
【種族】半霊半人(人間種であり、部分的に英霊でもある)
【レベル】100
【カルマ値】中立〜悪
【職業】剣士(物理職)
【居住】キャメロット内にあるローマ帝国《黄金劇場》

【詳細】
アルトリアの親友であり、マーリンを作った人物
底なしに明るく、剣呑な空気になりかけると大声で歌ったりして場を静まらせる。
基本的にむやみやたらな殺生は嫌うものの、人を殺めることに関しては何の抵抗感もない。


【ブリテン王国】
大陸中央にある国家であり、巨大国家
近隣にはビーストマンの国(ビーストマン連邦)とミノタウルスの国(規模は縮小している)がある。
六人の王が統治しており、その下にNPCが存在している。
アーグランド評議国とスレイン法国と以前に戦争を引き起こしたことがある(法国とは大して戦争はしていないが)
強大すぎる力を持っているため、ツアー達からは敵視されている。


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他国訪問『黄金の姫』

ナザリックのメンツも出したいけど、いろいろあって出すと暴走しそうなので書きにくい現状になっております。

ネロ様メインの話でございます

今回はブリテン王国の日常とナザリックのメンツが少し出ます。


ーブリテン王国王都ー

 

「街の様子は良し!活気は良し!設備も問題なし!うむ!これで良い!!」

 

ネロが王都の大通りを声高々にしながら歩く

 

歩けば民達は『ネロ様だ!ネロ様ー!』と敬愛し、大人達は深々と頭を下げる

 

ここにいる者達は人間ばかりではなく、異形種もいる。

 

人間を食べる種族は基本的に長い年月をかけて食人から野生動物を食べるようにして来たおかげで、彼らと人間の間に諍いは今のところない。

 

「ネロ、王様がこんな自由に街歩いてて大丈夫なのか?アルトリア様の騎士様達を二、三人借りて出かけた方が良かったんじゃないか?」

 

白野の言葉にネロが振り向き

 

「大丈夫!アルトリアん所の騎士はランスロット以外は誘いにくいし、ハーレムを邪魔するのもいかんだろ?」

 

「…アルトリア様、そんなハーレム作る人かなぁ…?」

 

「あんな美男子に囲まれていたらそういう関係に発展してもおかしくないだろう!」

 

「……そんな噂、200年経っても聞かないけど…」

 

岸波白野はネロの作ったNPCであり、レベルは60と低いNPCで、戦闘系では無く指揮官系統の能力を持っている。

 

後方支援に適しており、回復魔法を多く取得している。

 

「しっかし、なんか暇だなぁ〜オジマン達はハーレム作って自由に暮らしたりしていたけど、余の作った黄金劇場は未だに完成しないしなぁ」

 

王都には数多くの施設があり、その中にネロが計画している劇場が出来る予定なのだが…

 

「…スピーカーとか、そういうのこの世界には無いからね…」

 

ネロにとって、音楽は最高のものだ。

 

歌一つ、音楽一つで人々の気持ちを穏やかにするモノ

 

現実世界であった歌をこの世界でも再現したいと思っていたのだ。

 

「スピーカーっていう物を作り出せる技術者生まれないのか〜!」

 

トボトボと歩いていると…

 

『ネロ、今良いか?』

 

アルトリアの言葉が聞こえてくる

 

「はいはーい、どうしたのだ?アルトリアよ!」

 

ネロの元気な声に白野が苦笑いする

 

 

 

 

ーキャメロット内・円卓の間ー

 

アルトリアの《伝言》を受け、ネロはキャメロット城に帰還する。

 

丸い円卓の席にアルトリアから順に座り、ギルメン達が並んでいた。

 

オジマンディアスは頬杖をついてNPC達の報告を聞いていた。

 

オジマンディアスは他国への訪問は無く、キャメロットに詰めて万が一のことに備える役目になった。

 

「リ・エスティーゼ王国にはネロとギルガメッシュ、バハルス帝国には私とソロモンが向かうことになった。イスカンダルとオジマンディアス、この城のことよろしく頼む」

 

リ・エスティーゼ王国にはネロとギルガメッシュ、バハルス帝国にはアルトリアとソロモンが向かうことになった。

 

「つまらん!余が留守番など暇なことしたくないと言っただろう!」

 

オジマンディアスのご機嫌斜めの言葉にアルトリアがため息をつく

 

そんな雰囲気を見てネロが手を叩き

 

「オジマンディアスの力はこのギルド随一だろう!オジマンディアスはこのギルド最強だ!」

 

「ふははは!!任せておれ!」

 

ネロの褒め言葉にオジマンディアスは分かりやすく胸を張っており、ギルガメッシュは『ちょろいな…』と笑いを堪え、イスカンダルは苦笑いを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

ーリ・エスティーゼ王国訪問日ー

 

それからネロはリ・エスティーゼ王国に訪問するために王らしくするために衣装類を見ていたのだが、露出度の高いドレスで出たらアルトリアに『それは派手すぎる』と言われて露出度の少ない衣装に変更させられた。

 

不貞腐れながら馬車に乗り、リ・エスティーゼ王国に向かっていた

 

「何を不貞腐れているのかね」

 

目の前に座っている自身のNPCである『無銘』が言ってくる。

 

本当の名前は『エミヤ』だったのだが、それと被るNPCがいたため、ネロはリアルにいた執事を思い出し、かと言って執事名をそのまま付けるのもアレだと思ったのか『無銘』と名付けた。

 

まぁ、無銘と付けたのだが『アーチャー』とネロは呼んでいる

 

「むぅ〜結局はいつも通りの格好ではないか!それに、奏者を連れてくる事出来なかったし!」

 

白野はレベル60という低いレベルであるので、レベル100の無銘と90のアナスタシアを連れてリ・エスティーゼ王国に向かっていた。

 

「リ・エスティーゼ王国は200年前から何も変わっていません。むしろ、悪化している現状ですね」

 

アナスタシアはかなりの量がある書類をめくりながら言う。

 

「国土だけはいっちょまえにあるからなぁ〜同盟国としては領土の大きさに関してのみ及第点だからなぁ」

 

(アルトリアが王国の現状を一番好ましく思っていないのは確かだし、ギルガメッシュも王国の繁栄には特にどうでも良いと思っている節があるからなぁ…)

 

同盟国としては相応しいか思案するのではなく、敵対国になったとしても使える存在がいるのかいないのか確認するのみの作業なのだ。

 

彼らには何の期待もしていない。使える存在がいるのならば引き抜く、そういう風にアルトリア達の頭の中にはあった。

 

物思いに耽っていると無銘が外を見る

 

「どうやら王国に近づいてきたようだぞ」

 

そう言って外を見るとリ・エスティーゼ王国の旗が並べられており、住民達は部屋の中からブリテン王国一行の様子を見ていた。

 

ネロはギルガメッシュに伝言を飛ばすと、特に何も気構えもせずに出ると言ってくる

 

馬車が赤いカーペットの上で止まる

 

(…流石に、他国の王を迎えるだけの準備はしてるか…)

 

馬車の戸が開き、無銘が先に出ていろいろ支度をしてくれる。

 

ネロが階段を降りて赤いカーペットの上に立つと、後ろからアナスタシアも出てくる

 

少し横を見るとギルガメッシュも出て来ていた。

 

ギルガメッシュの前(エミヤと同じ位置)にはシドゥリ、後ろにはエルキドゥがいた。

 

出迎えて来たのは老齢の王『ランポッサ三世』でその後ろにいるのは第一王子と第二王子であろう二人と、何故か金髪美女の姫らしき人物がいた。

 

ネロ達が降りて来たのを見てランポッサ三世が前にゆっくりとやってきて自己紹介をしてくれる。

 

名前が長すぎて後半は聞いていなかったネロは思わず欠伸をしそうになる。

 

「ネロ・クラウディウス殿下、私がパーティのお相手をさせてもらいます。ランポッサ三世の三女、ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフと申します。気軽にラナー・ヴァイセルフとお呼びください」

 

ラナー王女の美貌にネロは「綺麗だ!(欲しい)」と言いそうになるのを無銘が目で和やかに静止しているのを見て言葉を飲み込む

 

それからネロとギルガメッシュは王宮内に招待され、いろいろあったのだが、特に何の変化もなく過ごすことが多かった。

 

しかし、唯一の変わった事といえば『有能な者の発見』に二、三人該当する人物を見つけることが出来た。

 

ギルガメッシュ達と合流し、そのことについて《伝言》にて話し合う。

 

『余の私情を混ぜないとして、レエブン候とやらはそこそこ使えるように見えるぞ!後はザナック王子かラナー王女が才能溢れる感じがして良いと思うぞ』

 

ネロのご機嫌な声にギルガメッシュが不機嫌なのか、伝言越しでも分かるくらいのため息をつく

 

《正気か?あのラナー王女を才能ある程度で済ませるなど、相対して分からなかったか?あの女の不気味さを》

 

そう言われネロは考えるが、二、三出て来た異質さを思い出し「え?そんな不気味だったのか?」と言うとギルガメッシュが《あぁ、お前はそういうところあったな…》と呆れかえられる。

 

『先手先手を読む天才なのは見て分かったが、要はヤンデレタイプだろう?あの王女は、こっちに危害が向かないのなら別に余は眺めてるだけで楽しい!』

 

《…あの王女に関してはお前に任せるぞ…しかし、この国の状況だが、やはり良くない。あのザナック王子が王にならなければ何も変わらないだろう。故にこの国は今言った三人以外は放っておいても勝手に滅亡するだろう》

 

そう言って《伝言》が切れる。

 

ネロは椅子から立ち上がり、ドアの前に行く

 

(…うーん、ドアの前は突破できたとしても冷静に考えて王宮にはいけないな…よし!)

 

ネロはスキル《霊体化》し、ドアから出て王宮内に向かう。

 

(…うーん、魔法の気配は感じないな、兵達もみんな気が抜けているし大丈夫か?!王国軍…!)

 

ネロは普通に歩いて王宮内に入り、ラナー王女の部屋の前に行くと…

 

「クラウディウス殿下、そこにおられるのでしょう?」

 

そうラナー王女が扉を開けて言ってくる

 

流石にそれにはビックリして霊体化が解けてしまう。

 

出てきたネロに驚きもせず、ラナーは頭を下げて挨拶してくる

 

「余が来ることを分かっていたのか?」

 

そう問いかけると頷き

 

「はい、パーティ会場でクラウディウス殿下が私に興味がありそうなところを見られたので、もしかしてと思いました」

 

「立ち話もなんですし、どうぞお入りください」と言って室内に招き入れてくる

 

魔法の気配は感じないし、何もないのを確認する

 

「うむ、では単刀直入に言おう!余は綺麗なもの、可愛いものが好きだ。それに善悪も無い、美しければ良い!見た目が醜くても心が綺麗ならばそれで良し!逆に見た目が綺麗でも中身が醜い者は嫌いだ」

 

ネロの言葉にラナーは無言で聞いていた。

 

「この王国の王女に真正面から言うことでもないが、この国には未来がない。故に才能のある者だけを見つけて引き抜くというのを目的に今回きた!」

 

嘘偽りなく話すとラナーが少し首を傾げ、何かを考えているようだった。

 

「余の、余達の国にそなたを招待したい!」

 

何の計算もしないで発言するとラナーの少し困ったような表情をする。

 

「…クラウディウス殿下、私を引き抜いてメリットがあるとは思えませんが…?一介の王女を他国に抜擢したところで…」

 

「もちろん、王国を裏から操って潰すことも視野に入れたのだが、ギルガメッシュや他の仲間達もこの国は勝手に自滅するから放っておいて良いと言われたからなぁ…余がこう言ったのは単に趣味だ!」

 

ネロは欲しいものは手に入れる。

 

この世界に転移してきて、大陸を好き放題して感じた独占欲

 

【英霊】という種族故の変化

 

ラナーは考えていたが、ネロを見て

 

「クラウディウス殿下の申し入れ受けさせて頂きたいのですが…私にはどうしても離れるわけにはいかない人がいるのです」

 

「うむ、あのクライムという男の子の事であろう。見ていて分かる、彼も無論招待しよう!」

 

「………」

 

話が上手く行き過ぎている事にラナーは困惑を隠しきれていなかったが、ネロは断らないと思っているのか目をキラキラさせてラナーを見ている。

 

「…それでは、クラウディウス殿下の申し入れ受け賜りたいのですが、一つ問題があるのです」

 

「うむ、なんだ?」

 

「クラウディウス殿下が私とクライムをブリテン王国に連れて行ってくださったとしても、他の王方々が承諾してくださるのでしょうか?それが心配なので、他の王の方々が納得されるような物を用意して行って良いでしょうか?」

 

ネロはそう言われ、少し考える

 

(確かに無条件で連れて行けば、アルトリアやソロモンが怒るだろうし、オジマンディアスはこの手の女子は嫌いだと言っていたからな…うーむ、やはり条件は必要か…)

 

「してその物は?」

 

そう言うとラナーが今後について話し始める。

 

 




【ラナー王女とネロについて】
ラナー王女の最優先目標はクライムと二人で愛の巣を作るということ、その為なら家族の死など厭わない。クライムさえいればいい。
悪魔騒動の際にナザリックに手を貸していたのは、彼らと共謀した方が今後のメリットを考えたから。
ネロにあっさり寝返ったのはナザリックほど注意深く接触する必要がなくなったから、後、かなりの好条件を出してくれたのでナザリックよりキャメロットの方に着いた方が有利だと判断したから
しかし、ラナー本人はネロ本人のことを恐れている(理由は思考が読めなさすぎるから)


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100年の揺り返し

今回はラナー王女メインと後半、ギルガメッシュメインの話です。

書きたい事を書いてストレス発散する事にしました。

ナザリックがちらほらここら辺から出始めるかもです。


ーブリテン王国の来訪ー

 

リ・エスティーゼ王国、王宮内にてブリテン王国の王達を出迎える為の準備が急ピッチで進められていた。

 

ラナー王女がその当日、行う事は一つ、ネロ皇帝とも呼ばれている女王の相手を務めることだ。

 

ネロ皇帝は『美しい物好き』という話を聞いていたので、メイド達も基本的に美しい者が集められた。

 

「お兄様はギルガメッシュ王のお相手をされるんでしたよね?」

 

部屋にきていたザナック王子にそう聞くと

 

「俺はあくまで兄上のサポートだがな、ギルガメッシュ王はかなり性格が強い御方だからな、兄上のサポートを全力でやらないといけないだろう」

 

ギルガメッシュ王の性格はかなり難ありといろんな国でも言われており、彼を表す言葉に【傲岸不遜で唯我独尊、傍若無人な性格】が当てはまるだろう。

 

現に彼の気に障った国家が50年前に滅びた経緯がある。

 

法国の使者の一人が以前『基本的に鬼畜のため、相手の事情とか気持ちとか関係なく殺す男』と言い軽蔑していたのを思い出す。

 

訪問する当日になり、王国の晩餐会が行われ、本来なら政治の事柄には参加しないと言われているアダマンタイト級冒険者『青の薔薇』の面々を招待して行われた。

 

ネロ皇帝は酒を飲んでも酔わないのか、おだてる言葉に笑いながら話していたり、接待は成功したようなものだった。

 

晩餐会が終わり、ネロ皇帝とギルガメッシュ王は専用のホテルに入り、翌日ランポッサ三世と今後の話し合いを行った後、街を視察しブリテン王国に戻るという流れになっていた。

 

「今日は手伝ってくれてありがとう」

 

そう青の薔薇の面々に言う

 

「友人の手伝いをするなんて当然のことじゃない。ネロ皇帝は冒険譚も好きって言ってたじゃない。現に話に物凄く関心を持っておられたし」

 

ラキュース達が帰った後、ラナーはクライムと共に自室に居ながらとある事を考えていた。

 

ネロ皇帝の王国来訪で王国は破滅を迎えるだろう。

 

正確に言えば、今後も彼らと同盟を組むことはまずもって不可能だと言っていい。

 

理由はザナック王子とバルブロ王子が対応していたギルガメッシュ王の機嫌が物凄く悪くなっていたということだ。

 

そして、彼らの目的が【王国との同盟】ではなく、王国で使える人間を選別するということだろう。

 

(…帝国との同盟が成った暁にはこちらを滅ぼすつもりね)

 

彼らが同盟を組む事を視野に入れているのはどう考えてもバハルス帝国とであり、王国はあくまで視察程度に過ぎないだろう。

 

(…出来る限り出したくなかったのだけど…)

 

ラナーにとって世界情勢などどうでもよかった。

 

自分の頭の中にあるのはクライムと己の未来のみであり、クライムがいれば他に何も要らない。

 

(…避難する、という名目でブリテン王国に行くためには必要な事だわ)

 

ネロ皇帝との話でナザリックの事を告げると分かりやすく驚き、こちらの話に乗ってくれたと捉えて良いだろう。

 

「ラナー様?どうされました?」

 

クライムの言葉に笑顔で振り返り

 

「いいえ、なんでもありません。明日の視察についていろいろ考えていたの」

 

「!そうですか、思案中に失礼致しました」

 

「いいえ、大丈夫よ、クライム」

 

(…帝国とブリテン王国が同盟を結んでしまったら厄介ね、幸いにもネロ皇帝は領地拡大には関心がないって言っていたし)

 

勢力拡大を目的としていないのならば、自分とクライムの未来はある。

 

ラナーはザナックの家臣が呼びにきたので、立ち上がり部屋から退出する。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーギルガメッシュー

 

ギルガメッシュは現実世界では富裕層でもトップに入るくらいの者で、ゲーム《ユグドラシル》を開発した企業の副社長を務めているほどの存在だった。

 

そんなギルガメッシュがこの世界に転移してきた際には、現実世界に戻る事を目的にしていたが、現実よりも好き勝手に出来るこの世界を気に入り、今ではすっかり戻る事は視野に入れていなかった。

 

この世界の人間や異形種達は皆レベルが低く30で強いと言われる程度の世界で、200年前程に争った竜王達でも90いくかいかないかのレベルでギルガメッシュは自分より強いのは同じギルドのメンバーか、同じプレイヤーくらいだと納得し、この世界を好き勝手にしていた。

 

十三英雄のリーダーから牽制されていたりもしたが、そのリーダーも非業の死を遂げてしまった今、ギルガメッシュに恐るものはあまりなかった。

 

そして、今回の目的はリ・エスティーゼ王国に行き、使える貴族の選定に掛かったのだが…

 

(…口を開けば自慢ばかり、褒めるのが下手くそな奴か…)

 

リ・エスティーゼ王国に来訪した際に、己の相手になったのはこの国の第一王子・バルブロと第二王子・ザナック王子の二人だった。

 

(話し方から分かる。才能のある無しが…)

 

この国に未来なんて物はない。

 

放っておいてもこの国は勝手に自滅するだろう。

 

その翌日、ネロがラナー王女を引き込むことに成功したらしく、その中にプレイヤーがいるという事を言われ、プレイヤーの名前を聞いてワイングラスを握りつぶしてしまう。

 

「《アインズ・ウール・ゴウン》が転移してきたと、その王女は言っていたのか」

 

シドゥリがギルガメッシュの手を拭いてくれる。

 

「あの悪魔騒動を引き起こしたのがナザリック地下大墳墓だと言ってたぞ、転移してきたプレイヤーの名前までは分からなかったけどな!」

 

その言葉にギルガメッシュは大げさにため息をつく

 

勝手にラナー王女を引き込むことにしたネロに頭を抑える

 

「余計なことしかしないな、貴様…」

 

そう言うとネロがふてくされながら

 

「余だって、ナザリックの情報を掴めたぞ?!」

 

「確かにそれは良いことだが、それが事実である可能性が何処にある?」

 

「むぅ…!」

 

「本当か嘘かわからない以上、むやみに信用するに値しないだろう」

 

「あ!!」

 

ネロのでかい声にギルガメッシュは嫌そうな表情を浮かべる。

 

「そういえば、青の薔薇の面々が言ってたぞ!アダマンタイト級冒険者『漆黒』のメンバーにナーベと言われる美姫がいたと!」

 

「…それについては調べるが、貴様は少し落ち着け戯け」

 

「(´・ω・)」

 

落ち込むネロに『自業自得だ』と無銘が言う。

 

 

 

ネロが退出した後、ギルガメッシュがソファーに深く座る

 

「疲れた…」

 

そう呟くと地面でゴロゴロしていたエルキドゥが寄ってきて

 

「大変だねぇ〜彼女、自由気ままな人だし」

 

「であろう…彼奴はやりたい放題に何も考えずに行動しおって…」

 

「それギルが言うのー?」

 

100年前程にやりたい放題に大陸を荒らした事を指摘するエルキドゥに咳払いする。

 

「風魔」

 

「はっ」

 

ヒュンッと現れた風魔小太郎というNPCで、アサシン軍団に属しているNPCの一人だ。

 

「先ほどのネロの話を聞いていただろう?早速、アダマンタイト級冒険者『漆黒』について調べよ、相手がプレイヤーである事を視野に入れ、重装備で行け」

 

「は、かしこまりました」

 

 

 

 

 

ーエ・ランテル近郊ー

 

アインズは冒険者としての仕事のためにエ・ランテルに来たのだが、冒険者組合は今日から三日間の王都への行き来が出来なくなっていると聞き、理由を受付嬢に問うと

 

「とある国の王方々が来訪されるというので、国が安全面を考え王都への立ち入りを禁止にしたのです。冒険者の方々や他国の方も立ち入りを禁止されたようです」

 

「それは私達アダマンタイト級冒険者でも同じなのか」

 

「はい、ラナー王女様が招待された青の薔薇様以外のアダマンタイト級冒険者の方々は基本的に王都の近くで待機、あるいは休養をと宣言されたようです」

 

その言葉にナーベは不快そうにするが、アインズはここで何を言っても無駄だと感じ、組合を後にする。

 

宿に戻り、アルベドに《伝言》を繋げようとした際に、微弱な気配を感じ足を止める。

 

するとナーベも分かったのか、足を止めて警戒して辺りを見渡していた。

 

「……アインズ様」

 

そう小さく言ってくるナーベに頷きを返す

 

「ふんっ!」

 

誰もいない場所を斬りつけると、そこから何かが飛び出す。

 

「敵か!」

 

ナーベが武装状態になって攻撃をしようとしたのを止める

 

敵のレベルは隠されていないから分かるが、レベルは70近くあるのが分かった。

 

ナーベラルでは勝てないかもしれない存在がいきなり現れた。

 

忍の装束を纏った赤毛の少年は物凄い勢いで上空に飛び上がり、屋根の上に着地する。

 

「……目標確認」

 

そう呟き、その場から撤退する

 

「ナーベ、急ぎナザリックに帰還し、アルベド達を集めよ」

 

「は、かしこまりました」

 

現れた存在がプレイヤーであることを視野に入れて今後の計画を練ることにする。

 

アインズは人気のないところで《転移門》を通りナザリックに帰還する。




ギルガメッシュ(プレイヤー)
【種族】英霊(人間種)
【レベル】100
【クラス】魔法詠唱者(特殊職)
【カルマ値】善

【経歴】
現実では富裕層で《ユグドラシル》を運営していた巨大複合会社の副社長クラス。
初めの頃は現実世界に戻りたいと思っていたのだが、現実よりも好き勝手できる転移後の世界を気に入り、帰還を目標にしなくなった。
英雄王の方ではなく賢王の方である。

【詳細】
キャメロット城の外にある《ウルク》の領域を支配している。
Fateギルガメッシュ(賢王)とほとんど瓜二つの性格であり、傲岸不遜で唯我独尊、傍若無人な性格である。
相手がナザリックやアースガルズ天空城のような巨大なギルドになると英雄らしく本気を出して戦う。

【特殊職】
魔法詠唱者ではあるものの、物理職の職業を取得しており、宝物庫から無数の武器も発射させる。
基本的には魔法の杖を出し、そこから魔法を放出するのだが、時たまに武器を射出させる状態になる。

シドゥリ
【種族】英霊(人間種)
【レベル】80
【クラス】指揮官系統の魔法詠唱者
【カルマ値】極善

【詳細】
ウルク領域におり、ギルガメッシュが居ない時の領域支配を担当している。暴走しがちなギルガメッシュを唯一叱りつけれる存在。

エルキドゥ
【種族】人造人間(ホムンクルスの上位互換)
【レベル】100
【カルマ値】中立
【クラス】槍兵(物理職)

【詳細】
ホムンクルスの上位の種族であり、何でも変化する粘土細工だが、基本的に人の形態を取っている。ギルガメッシュのかつての友をそっくりそのまま作ったNPC。
肉体を槍、斧、盾、獣といった万象へと自在に変化させる能力を持つ


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王国の価値

今回は前半がツアー、後半がオジマンディアスメインの話です。

ナザリックメンツも出そうと思いましたけど、まだ出ません。モモンの名前が出てくる程度でございます。

こう書いていく上で少し変更したい点があり、最初の方が変更されてます。現実世界に戻りたいと思っていたのは征服王と賢王の二人に変更されています。後先考えず書いててごめんなさい。

オバロ4期やるって言ってましたね、楽しみ!

あと、作者の頭相当弱いので、ラナーの作戦とか原作ラナー程知略じゃないかもしれません。


ーアーグランド評議国最奥にてー

 

ツアーはやって来たリグリットと話をして100年の揺り返しについて話し合っていた。

 

「ところでツアー、その吸血鬼、あのキャメロットのえぬぴーしーではないのか?」

 

リグリットの言葉にツアーは鎧の方を見ながら思い出す

 

200年前、リーダーが転移して来てから数ヶ月後に大暴れし始めたプレイヤー達の存在

 

本来なら八欲王のような彼らは滅ぼしてしまいたい存在に他ならないのだが、今のこの世界情勢では八欲王以上の災厄に陥りかねないと判断し、彼らを牽制することしか出来ないのだ。

 

幸いにも彼らギルドのリーダーとは話が通じる。

 

彼らは人類が居れば八欲王のように暴れ回る事はしないと判断し、人類が未だ残っている王国と帝国、法国の存在でなんとか均衡を保っている。

 

「…200年前の戦いで吸血鬼のえぬぴーしーは出て来なかった。単に居なかったのか出さなかったのか分からないが、警戒しておくことに越したことはないだろうね」

 

「そうか」

 

「もし、再び彼らと戦争するとなればこの世界は破滅を迎えてしまうだろう。大陸だけに限った話じゃない」

 

ツアーにとって彼らの存在は扱いづらい存在に他ならなかった。

 

十三英雄のリーダーはかつて、彼らと話し合い、人間に被害が行かないよう。これ以上無用な殺し合いはしないよう提案した。

 

彼らは一時その条件を飲んだが、リーダー亡き今、彼らがどう出るか分からない。

 

ツアーは彼らプレイヤーの存在を思い出し、最も警戒すべき存在が脳裏に浮かびため息をつきたくなる

 

《オジマンディアス》

 

彼の存在は一番厄介で、最も八欲王に近い存在だと判断して間違いないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーキャメロット内・エジプト領域ー

 

エジプト領域にあるピラミッドは古代のピラミッドをモチーフにしたのと同時に現実のような豪華絢爛さをイメージして作った。

 

並ぶ料理は豪華絢爛で、ありとあらゆる場所から集められた料理だった。

 

オジマンディアスは自らの領域に転移して戻ってくると、領域内に配置している兵士たちが一斉に頭を下げる。

 

兵士達を目で見て『ご苦労』と言い、歩いていると…

 

「お帰りなさいませ!オジマンディアス様!」

 

そう言って走って来たのは天空神を表した魔術触媒と露出度の高い格好が特徴な褐色肌の女性が走ってくる

 

特徴的な耳が頭上に生えており、古代エジプトのファラオ『ニトクリス』をイメージして制作したNPCだ。

 

レベルは100で魔法詠唱者のクラスだ。

 

「疲れた。ニトクリスよ、ネフェルタリが準備し終わり次第、余の部屋に来いと言ってくれ」

 

「はい、かしこまりました」

 

部屋に入り、室内を見渡すと何処かしこも宝石やら何やらで絢爛に装飾されていた。

 

天幕がある巨大なベットにマントを脱ぎ置き、ソファーに座りワイングラスにワインを注ぎながら物思いに耽っていた。

 

この世界に転移して来て富も名声も思いのまま、力もゲームとそっくりそのままの力を持ち、この世界を好き勝手に出来る程の力を持っている。

 

(アルトリアの奴はこの世界に転移して来てだいぶマシな性格になった。ギルガメッシュとイスカンダルの奴は変わらんが…)

 

オジマンディアスにとってこの世界は苦行であるのと同時に幸福な世界でもある。

 

何せこの世界にはリアルで失った妻がいる。

 

本人ではないと理解してはいるが、妻と同じ言動・思考・仕草を見てしまえば、それは【本物】だ

 

「オジマンディアス様、食事をお持ちしました」

 

メイドが持って来た料理がテーブルに並べられていく

 

オジマンディアスの領域にいるメイドは《キャメロット》のメイドと違い、完全に部外者である。

 

かつて、大陸を支配した種族の生き残りだ。

 

彼らはキャメロットに降伏した折にキャメロットの奴隷としてオジマンディアスかエジプト領域に留める事にした。

 

エジプト領域はオジマンディアス、ニトクリスの許可が無ければ外部に出ることは許されない。

 

エジプト領域に住まうという事は一生外に出れないという事を意味する。

 

ソファーでくつろいでいると

 

《伝言》が入り、ワイングラスをテーブルに置く

 

「なんだ」

 

そう言うと《伝言》に出たのはギルガメッシュで、リ・エスティーゼ王国、エ・ランテル付近に《ナザリック地下大墳墓》が転移して来た可能性が高いと伝えて来た。

 

『ほう…あの極悪ギルドがか』

 

オジマンディアスにとって、あのギルドはゲームに己の全てを賭ける者達が多いギルドというイメージがあった。

 

一部を除き貧困層で構成された極悪ギルド

 

《転移して来たプレイヤーの名前は恐らくはモモンガだろう。最終日までログインしていたのあの男しかいないからな》

 

『そうであろうな、他の奴らは辞めたりアカウントを消している者が大半だからな』

 

風魔小太郎が調べた内容を聞いてオジマンディアスはワイングラスを持ち直す。

 

《伝言》が切れ、外の風景を眺める。

 

一面砂漠でピラミッドの周りにはスフィンクスなどが跋扈している。

 

「ぐぅぅう」

 

唸り声をあげてやってきた小型のスフィンクスを撫でていると

 

「失礼致します。ネフェルタリ様がいらっしゃいました」

 

オジマンディアスは『今行く』と言い、ワイングラスをテーブルに置き、入口の方に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

ーリ・エスティーゼ王国・ガセフー

 

王国な来訪2日目、ネロ達はランポッサ三世達と会談を行い、ブリテン王国に帰還することになっていた。

 

長いテーブルに座った両国の王達

 

ランポッサ三世の左右には第一王子と第二王子、対するブリテン王国の王であるネロ・クラウディウスとギルガメッシュ王の両名

 

ネロの後ろにはぬいぐるみを抱き、雪のような白い髪とドレスを纏った少女、名を確か《アナスタシア》と言っていた。

 

ギルガメッシュの後ろにはシドゥリと呼ばれる女性がおり、その女性が書類の整理をしたりいろいろ動いていた。

 

バルブロ王子が王になった暁には友好的な同盟を結びたいと誇らしげに言っていたが、二人の王は眉ひとつ動かさず、バルブロを見ずにいた。

 

それと打って変わり、ザナック王子の話になるとギルガメッシュだけがザナックの方を見て話を聞いていた。

 

その動きから察してブリテン王国がバルブロ王子かザナック王子のどちらかに関心があるのかが見て取れた。

 

会談を終え、お開きになった後、ガセフはランポッサ三世の護衛を終え、王宮内を歩いていると…

 

「貴様の忠誠心は王にのみ注がれているのか?」

 

「!」

 

その声に驚き足を止めると、先程まで誰もいなかった場所にギルガメッシュが立っていた。

 

共を連れず、武装も何もしていない状態だった。

 

一介の王がそのような状態で武装しているガセフの前に現れることなど前代未聞だ

 

「ギルガメッシュ王…」

 

直感的に感じる危機感、王宮内であるのだが、咄嗟に礼を取る

 

それを見てギルガメッシュは何か感心したのか、腕組みをやめ寄りかかっていた状態から立ち上がる。

 

「貴様、ガセフ・ストロノーフと言ったな、王の懐刀と」

 

ギルガメッシュは何か品定めするような目でガセフを見る

 

ガセフは全身から冷や汗が流れてくる

 

「…いかにも、私は王に仕える戦士です」

「その王の戦士に問おう、この国はいずれ滅びる。あのような慈悲深いがそれだけの人間に仕えてその身を自滅に追いやるぞ」

 

ギルガメッシュの挑戦的な台詞、悪魔のような笑い方にガセフは怒りが沸き起こりそうになるのを堪える。

 

他国の王に怒りを飛ばすこと程愚かなことは出来ない。

 

「我は別にどうでも良いが、貴様の戦士としての在り方に興味が湧いた。この国と同盟を結ぶなどという事はしないが、貴様の在り方によっては手を貸すとしよう」

 

そう言って何かを投げてくる

 

ガセフはそれを掴み見ると、それは小さな短剣だった

 

それも、かなりの魔法が込められた物だった。

 

「大事に使うことだな、他国の王からの物だからな」

 

そう言って背を向ける

 

「せいぜい足掻けよ、貴様はいろいろ厄介なものに気に入られているようだしな」

 

そう言って目の前が突然眩しくなり、目を瞑って開けた瞬間、目の前にいたギルガメッシュが消えていた。




ネフェルタリ
【種族】英霊
【レベル】40
【居住区】エジプト領域

【詳細】
オジマンディアスの現実の妻と性格・容姿共に瓜二つである。
戦闘職ではなく、エジプト領域にいる存在だけであり、戦いには赴かない。
オジマンディアスのリアルの前妻で、とある事件にて命を落とし、彼女の死を悲しみ自暴自棄になったオジマンディアスが《ユグドラシル》で制作したNPC。
ゲームがリアルになり、彼女が動き出すようになってからそっくりそのままの性格や身なりに彼女をみて妻を見るようになる。
彼女の事に触れるのはギルド内でもグレーゾーンであり、唯一触れて良いのは彼女と同じ性別のアルトリアとネロのみ、それ以外は触れたら激怒する。
以前、ネフェルタリの事を悪く言った者の故郷を丸ごと焼き払った事がある。


【ギルガメッシュとガセフ】
ギルガメッシュからは愉悦の道具と思われている。
腐敗した貴族や兵士の中にいる唯一の存在にコレクターの血が騒いで声をかけてアイテムを渡した。
ガセフがアインズと接触していたというのを何処からか聞きつけた。


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ラナー王女の謀略、キャメロットの目的

獅子王様はギルメン達と転移してきているので性格が少し変わってます。

後、今回は征服王メインの話からモモンメイン(イビルアイ 目線もある)話などいろいろあります。



ーイスカンダルー

 

「ふむ、今回も異変はないな」

 

イスカンダルはアルトリア達が居ない間のキャメロットの留守を守ることになり、キャメロット最上階から辺りを見渡して敵の気配を確認していた。

 

「そんなんで見えるのかよ、お前」

 

「ん?見えるぞ、余の視力はこのキャメロットの中では最も高いからな!」

 

イスカンダルの近くまで登ってきたのは、イスカンダルが製作したNPC【ウェイバー・ベルベット】だった。

 

レベル100のNPCであり、魔法詠唱者である。

 

このギルド内ではかなり重宝されているNPCで、MPを一気に回復出来る能力を持っているゆえにMPをかなり必要とするアルトリアやオジマンディアスからは、かなり重宝され連れまわされていたことを思い出す。

 

「ちゃんと正確な情報出さねぇと他の王様達が黙って無いと思うぞ」

 

「ははは、それは確かだな!特にギルガメッシュ辺りが五月蝿そうだ」

 

イスカンダルは豪快に笑いながらお酒を飲む

 

「あ!お前!飲みながらなんてもっと納得されないだろ?!」

 

「ん?そうか、余は泥酔しないように出来ている種族だぞ?」

 

「そうだけどさ!アルトリア様がキレるだろ!それ!あの人が怒るのが一番タチ悪いんだから!」

 

ウェイバーがムキーと怒りながら言う言葉には重みがある。

 

アルトリアはギルド長を務めるだけはあり、正確な情報・運営方針を定めて決定するのが上手い。

 

特にギルガメッシュは彼女がお気に入りなのかなんなのか、アルトリアの言う言葉に強い言葉で返しはしない。

 

「いやしかしなぁ、この所、プレイヤーの転移も無いし、十三英雄のリーダーやその仲間、そして、おとぎ話とやらにある八欲王のような奴らの到来も無いだろう?」

 

「念には念をとか言うだろ?警戒しておく事に越した事ないんだし、八欲王が残した天空城は脅威に他ならないし」

 

「そうさなぁ、今のところ竜王とやらは見かけんし、警戒しておく事に越した事はないか」

 

ウェイバーはその言葉に安堵のため息を着くと何処からか出したのか、ジュースを飲み始める。

 

そうこうしていると、ネロから《伝言》が入り出ると、リ・エスティーゼ王国付近にナザリック地下大墳墓が転移してきた可能性が高いという報告が入る。

 

「そうか、分かった。無事で帰って来い」

 

その言葉にネロが『了解!』とすごく元気だったが

 

伝言が切れた後、ウェイバーが気になっていたのか問いかけて来たので、事の経緯を説明する。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーイビルアイー

 

王国とブリテン王国の会談が終わり、いつもの日常が戻って来た時、イビルアイの元にラナーから晩餐会に出席したお礼の品を持ったクライムがやってくる。

 

クライム曰く『順調に終わりました。同盟は見送りとなりましたが』と報告を受け、イビルアイはその品を持ってラキュース達のいる場所に戻ろうとすると…

 

「すまない。青の薔薇の…イビルアイだったか?」

 

声をかけられて振り向くとそこにいたのはモモンとナーベで、モモンの登場にイビルアイは激しく動揺してしまう。

 

緊張やらなんやらの感情ではなく、単に恥ずかしさ故に緊張してしまう。

 

「も、も、モモン様!こんな所にどうされたのですか?!」

 

「…実はイビルアイに少し聞きたい事があるんだ」

 

そう言われてイビルアイはハッとなり、緊張感が漂う。

 

もし、このまま部屋に誘われたり…とあり得ない事を思い始めた時…

 

「大陸にある国について知りたいんだ」

 

「大陸にある国…ビーストマン連邦についてですか?それとも…ブリテン王国のことですか?」

 

その言葉にモモンは『ブリテン王国について知りたい』と言ってくる。

 

イビルアイは辺りを見渡し、話せる場所に行くべく歩き始める。

 

 

 

 

 

ー王国の荒ぶれた場所にて・モモンー

 

モモンは場末の酒場に来て、イビルアイが話し始める内容を覚えるために一言一句違わないように意識する。

 

「ブリテン王国は今から200年前に建国された国で、六人の王がいまだに支配している国です。200年前に突如として現れた六人の王達は瞬く間に大陸を支配し、一部の国家を除き絶対王政を築き上げました」

 

(…プレイヤーの国家の可能性が高いな…ブリテンって響きからしてアルトリアさん達ギルドかな…)

 

イビルアイが次々と説明を始める。

 

六人の王の到来は『八欲王の到来』と言われるくらい世界中は戦火に包まれたらしい。

 

「…らしい。とはこの地にまで飛び火はしなかったのか?」

 

そう問いかけるとイビルアイは頷き

 

「ある日、彼らはこの地に足を踏み入れそうになった際に十三英雄のリーダーと交渉。および人類がいると確信した際に侵攻は終わった…しかし、今も彼らは生きているから、アーグランド評議国やスレイン法国は常に警戒しています。再び彼らが動き始めれば世界は破滅しかないのです」

 

その言葉にモモンはふむと考え込む

 

(…人類が生存しているという事を知った瞬間に侵攻をやめた。それだけ聞けばプレイヤーだと思うが…)

 

プレイヤーの種族にもよるのだろうが、プレイヤーはかつては人間だったのなら、人間種に愛着が湧くのは当然の仕組みだろう。

 

現に人類が生きながらえているのは彼らプレイヤーのおかげでもあるのだろうが…

 

「その彼らは王国や帝国の戦争に出てくる事はあるのか?」

 

その質問にイビルアイは『私はブリテン王国の人間じゃないから分からないが、彼らが戦争に首を突っ込んでくる事は基本的にありません。あるとしたらアーグランド評議国や法国が動いた場合のみです』答える。

 

ある程度事情を聞いて、モモンガは立ち上がり礼を言って退出する。

 

去り際に泊まる場所について聞いて来たが、はぐらかしてその場から立ち去るモモンガの頭の中には、ブリテン王国の事を考えながらナザリックに帰還するために歩き始める。

 

 

 

 

 

 

ーキャメロット内・娯楽室ー

 

キャメロット内の娯楽室にてネロが王国で仕入れた情報を共有するためにギルメン達が集まっていた。

 

バハルス帝国に訪問する予定だったアルトリアとソロモンは急遽、訪問日時をずらして行くことになった。

 

「バハルス帝国はまぁ、不信感を露わにした表情してたけど、介入は今のところ特にないね」

 

ソロモンの言葉にネロが申し訳なさそうにしているのを見てソロモンが苦笑いを浮かべる

 

「して、何個か話すべき事はあるが…一番の問題は貴様が勧誘したラナー王女とやらについてだが」

 

オジマンディアスはラナーのような女性をさぞかし嫌っているのか、嫌そうに不満そうにしていた。

 

「その王女とやらは信用できるのか?平気で家族を見捨てるような輩だぞ」

 

「逆に言えば家族が100大事な存在じゃないからこそ、自分が本当に大事な存在を守ろうと思っているんじゃないか?」

 

ネロは何故かドヤ顔でオジマンディアスを見る

 

「……」

 

アルトリアは無言で珈琲を飲みながら話を聞いていた。

 

「オジマンディアスの言う事も最もだけど、一番の問題はあの人がナザリックと通じていたって時点で信用できる存在じゃないって事だよ、もしかしたら今も通じてるかもしれないし」

 

「ハサン達に探らせたらナザリック地下大墳墓の守護者の一人であるデミウルゴスと内通していたとの事だ」

 

ギルガメッシュはワインを傾けながら言う

 

「しかし、裏切ると言っているというのに内通しているとはけしからんな」

 

イスカンダルが不満そうに腕組みしながら椅子に深く腰掛ける。

 

「それがどうにも今までとは違うようだ」

 

「何?」

 

ギルガメッシュは嗤いながら話し始める。

 

「デミウルゴスからはブリテン王国についていろいろ聞かれたようだが、ある程度の事しか言わなかったようだ。ネロと会って話したことも含めて隠していた部分もあったようだぞ」

 

「つまり、本気で裏切るつもりなのか?しっかし、一介の女子があの極悪ギルドを欺く事なんて出来るとは思えんがなぁ」

 

イスカンダルの言葉にソロモンも頷く

 

ナザリック地下大墳墓はユグドラシル内において極悪ギルドとして名を馳せていた。

 

「あの王女について心配などしなくて良いだろう。得体の知れない奴らよりも国として知っている我達の国にくるだろう。それに、万が一の保険もかけてある、心配しないでも上手くいくだろう」

 

ギルガメッシュが心底楽しそうに言うとソロモンが引きながら

 

「…久しぶりに見たその意地の悪い笑顔」

 

「なんだ意地の悪い顔とは!」

 

ギルガメッシュがムキーと怒る

 

アルトリアはわきゃわきゃやっている彼らを見て笑う

 

「オジマンディアス。不満に思うのは分かるが、退屈しのぎにはなるぞ」

 

アルトリアの言葉にオジマンディアスは「退屈しのぎになれば良いがな」と返す。




イスカンダル(プレイヤー)
【種族】英霊
【レベル】100
【クラス】騎兵(戦士職)
【居住】キャメロット内のマケドニア領域
【カルマ値】中立

【詳細】
現実世界では富裕層であり、オジマンディアスやギルガメッシュと違いそれほどの富裕層ではないものの、アーコロジー内で生活している。リアルでの職は会社の社長で富裕層限定のゲームを発売している。
転移直後は状況の不可解さや転移後の世界の不満さ故に帰還を目的にしていたが、帰還の仕方が不明のため、転移後の世界で生きる事にした。
転移後にいくつかの国を滅ぼしたり戦争を楽しんでいたことがあった。
ブリテン王国が建国されてからはだいぶ落ち着き、自室で己が製作したゲームを自身が作ったNPCと共に遊んでいたりする。


諸葛孔明
【あだ名】ウェイバー
【レベル】100
【種族】英霊
【クラス】魔法詠唱者

【詳細】
ユグドラシルにおいて重要なMPのチャージが出来る人物であり、MPがかなり重要になるアルトリアやオジマンディアスからはかなり重宝されている。
味方強化スキルに加え、敵全体の攻防面をまとめて妨害する能力と、シンプルながら強力な補助性能を誇っており、ナザリックでの戦闘の際にはウルベルトをかなり苦しめた存在。
キャメロット内で円卓の騎士面々に続き、創造主至上主義。
ぶっきらぼうに返しながらもイスカンダルの事は尊敬やら忠誠心やら複雑な心情を向けている。



【娯楽室】
キャメロットのアルトリアのいる領域に設定されたギルメン専用の娯楽室。富裕層出身が多いので、かなりの大きさ
女性専用・男性専用と一応仕切りもある
テレビ以外は大体揃っている。
メイドの数人が毎日手入れしている。


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錯綜する思い

今回はソロモンのNPCが登場します。

ソロモン目線、ジルクニフ目線、ナザリック目線があります。

番外席次目線の話とか法国目線の話とか入れたい…(


ーナザリック地下大墳墓ー

 

ナザリック地下大墳墓に帰還したアインズは早速集めた情報を守護者達に共有する。

 

守護者達はプレイヤーの存在、またキャメロットの存在に一気に殺意を露わにする。

 

「アインズ様、世界征服の足がかりとしてあのギルドはどう足掻いても倒さなければならない敵に他なりません」

 

デミウルゴスの言葉に守護者達が頷く

 

「…そのキャメロットは攻撃さえされなければ攻撃しない組織だ。私はお前達を失いたくない。故に世界征服などせず…」

 

アインズは守護者達の顔を見て言葉が詰まる。

 

デミウルゴス達は世界征服を本気で行おうとしている。

 

もし、そうなればキャメロットとの全面戦争になり、必ずと言っていいほどの確率でNPCの誰かが死ぬだろう。

 

(…今途中で辞めたらきっとみんなは俺に失望してしまうだろう…それでも、友の子を死なせたくなかったって言ったら…)

 

計画したことを途中で止める事は出来ない。

 

そんことをしてみんなに失望されたくないという思いが強くなる。

 

「アインズ様?如何されましたか?」

 

アルベドの心配そうな顔にアインズはハッとなる。

 

「我らの存在意義はアインズ様の悲願達成のため、その過程で流れる血はやむ得ないものです」

 

アインズは頭を振り、キャメロットに勝つための最善策を考えようと話を始める。

 

 

 

 

 

 

 

ー法国にてー

 

スレイン法国漆黒聖典で最強と名高い番外席次はルビクキュー(ルービックキューブ)を弄りながら漆黒聖典や風花聖典が持ち帰った情報を聞いていた。

 

ある程度、情報共有が終わり解散になると、漆黒聖典隊長と漆黒聖典第五席次クアイエッセ・ハゼイア・クインティアが番外席次の元にやってくる

 

「…それで?ブリテン王国の彼らは出てきたの?リ・エスティーゼ王国に訪問してたんでしょ?」

 

番外席次はルビクキューを弄りながら言う

 

「はい、ギルガメッシュ王とネロ皇帝がリ・エスティーゼ王国に訪問。視察を行った後に帰還したようです」

 

「それだけ?」

 

「はい、その翌日にバハルス帝国を訪問される予定だったアルトリア殿下やソロモン魔術王が急遽、訪問日時をズラして訪問される予定になったようです」

 

そう告げると関心のなかった番外席次がルビクキューをいじっていた手を止める。

 

「へぇ、何かあったのかしら?」

 

「…ブリテン王国近辺に異変は特になく、何が目的で引き返したか判明しておりません」

 

「そう、まぁ、相当な事がない限り、撤退をするとは思えないけど」

 

番外席次は後ろに立てかけてあった六大神が残した神器を持って背を向ける。

 

「当分は暇だろうし、私は部屋に行ってるわ」

 

「はい、お疲れ様です」

 

居なくなった番外席次を見てクアイエッセはため息をつく

 

「……緊張しましたね、隊長」

 

そう言うと第一席次はため息混じりに「……あぁ」と頷く

 

「彼女がブリテン王国…いや、ギルガメッシュ王に敗北してから性格がだいぶ落ち着いたとは言われているが…神官長達はあれからブリテン王国の動向をヤケに気にしている様子だと言っていたし…自分より強い存在を見つけてしまった彼女がどう言う行動に出るか分からないから情報はなるべく制限しておくように」

 

「はい」

 

番外席次が敗北したのは今から100年くらい前の話であり、ブリテン王国が大陸を支配下に置き、亜人の奴隷及び食糧となっていた人間を解放して自国民にしているという話を聞いた際に、法国は真偽を確かめるために当時の漆黒聖典と番外席次を派遣したとの事だった。

 

しかし、漆黒聖典の持ち出した武器(ワールドアイテムで傾城傾国とは別物)を確認したブリテン王国が攻撃、結果隊は全滅、スレイン法国から派遣された救援部隊が確認した生存者は番外席次のみであり、彼女はギルガメッシュ王に敗北していた。

 

だからこそ、敗北を知った番外席次はギルガメッシュ王の事を崇拝に近いような感情を向けている気がしたのだ。

 

結果的に彼女の元に行く情報は少なく設定されている。

 

(…今後も何も起こらなければ良いのだが…)

 

第一席次はクアイエッセと共にその場から立ち去る。

 

 

 

 

 

 

ーバハルス帝国・皇帝の執務室ー

 

バハルス帝国皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスはブリテン王国から急遽訪問日程がズラされた事に苛立ちも何も感じず、いつも通りの仕事をこなしていた。

 

「しっかし、ブリテン王国はいつまでビースト連邦を放置してるんでしょうかね、我々にしてみれば早く滅ぼしてほしい国であるという事に変わりないですけど」

 

バジウッドの軽い口調にジルクニフはペンを置き

 

「人類側として考えればビースト連邦は厄介な国に他ならないが、私からしてみればビーストマン連邦は出来る限り存続してほしいな、でなければブリテン王国と隣接してしまうしな」

 

バハルス帝国にしてみればブリテン王国の脅威は計り知れない。

 

ブリテン王国の繁栄は人類からしてみても生きる伝説となっている。

 

長らく得体の知れない国家という話だったが、近年、ブリテン王国が落ち着き、観光業とやらに力を入れ始め、ブリテン王国の首都を見たリ・エスティーゼ王国やバハルス帝国の民は一気にそちらに移住する者達が増えた。

 

「俺としたら異形種もいる国家になんて行きたくありませんけどねぇ、まぁ、それだけ異形種も統制が取れてるって謳い文句にしたいんでしょうけど、しっかし、そんな国の王達が訪問日程を強制的にズラすなんて言うのは相当こちらとしてもナメられているんじゃないですか?陛下」

 

バジウッドの言葉に頬杖をつき

 

「だろうな、ブリテン王国が時々やる手段だろう」

 

ブリテン王国が30年前ほどに滅ぼした国は『会談日時を強制的にズラしたのは我が国を下に見ているからだ!』と言った国がブリテン王国に攻め入り、ことごとく敗れ去った歴史がある。

 

「あの国に勝てる存在なんて現れるんですかねぇ、俺としたら絶対にありえないって思うんですよ」

 

あの国が勢力を拡大しつつある今、帝国が生き残る方法は彼らと同等の力を持つ存在の到来を望むしかないだろう。

 

「陛下、失礼します」

 

秘書官・ロウネが入ってきて頭を下げる

 

「どうした?」

 

「フールーダ・パラダイン様が至急お話したいことがあるとのことですが、お呼びしてもよろしいでしょうか?」

 

「フールーダがか、珍しいな、呼べ」

 

「はい、かしこまりました」

 

 

 

 

 

 

ーキャメロット・ソロモンー

 

ソロモンは部屋から出てまっすぐとある場所に転移する

 

「相変わらずここは禍々しいなぁ」

 

そう呟くと暗がりから『そういう風に作ったのはお前だろう。ソロモン王』と言ってやってくる人影が見える。

 

「ゲーティアからきてくれるなんて珍しいなぁ」

 

自分にそっくりとよく言われるが、ゲーティアの方が禍々しく、本物の自分と違う点は肩口から垂れ下がる三つ編みに赤い目玉の模様があり、髪型に若干の差異があるなどの微妙な違いがある。

 

そして、目の色が完全に違い、異形種のそれとなっている。

 

ゲーティアは不服そうに腕を組み『用件があるんだろう』と聞いてくる。

 

「ご名答、君に渡してた指輪一つ貸してくれないかい?」

 

「…元よりこれはお前のもの。断る理由がどこにある」

 

そう言ってゲーティアがソロモンに指輪を渡す。

 

ソロモン王のスキルとして、十の指輪がすべて揃っている場合、人類が行うあらゆる魔術を無効化し、また配下に納めるという破格とスキルがある。

 

まぁ、人間種限定になってしまうので、実質使うタイミングはあまりない。

 

「ありがとう」

 

そう言って指にはめるソロモンを見てゲーティアが口を開く

 

「ナザリック地下大墳墓が転移して来たと聞いたが、その指輪はダークエルフ対策の為か?」

 

ナザリック地下大墳墓でレベル100に該当し、なおかつ最強レベルのマーレとアウラに対抗する為には『ソロモンの指輪』が必要なのである。

 

「まぁ、それもあるけどね、一番の問題はギルガメッシュがやり過ぎた場合止めれる手段でもあるからかな」

 

明らかにネロがやらかした以外にもギルガメッシュが何か裏で動いている気がするのだ。

 

「アルトリアは基本的にギルガメッシュの方にはノータッチだし、彼女が動くのは最後の手段にしたいしね」

 

そう言って手を振って転移したソロモン

 

ゲーティアは作られた夜空を眺めながらため息をつき、玉座の方に歩いていく




ゲーティア
【種族】魔神(異形種)
【レベル】100
【カルマ値】悪
【クラス】魔法詠唱者

【詳細】
ソロモンの制作したNPCであり、時間神殿ではなくキャメロット最奥にて存在するNPC
ギルメン全員の死亡・ギルド武器が破壊されたのを確認した瞬間に解き放たれる存在。侵入したプレイヤー及びそのギルドに対して徹底的に破壊行動を行う。
ゲーティア本人の攻撃力も桁外れであり、玉座に座っているゲーティアに近づけないレベル。
ギルド武器が破壊された場合、数十メートルはある巨大な柱に幾筋もの太い裂け目が縦に走り、その裂け目から十字の瞳孔が開いた赤い眼が覗く魔神柱というものを召喚し、攻撃する。魔神柱のレベルは70台と決して高くはないものの、最悪の問題点として1体1体を撃破されてもその場限りの撃退に留まり、根本的な打倒が出来ないという性質を持つ。体力・耐久が桁外れであり、倒すにはワールドアイテムを持って耐久戦に持ち込まなければならない。

【ユグドラシル時代】
一度(まだアルトリア達がレベル100ではない時)キャメロットが崩壊した際に発動し、ユグドラシルのワールド一つを魔神柱だらけにした事があり、ユグドラシル運営が『魔神柱討伐任務』というイベントを発生させるまで猛威を振るって他プレイヤーを散々苦しめ、あまりにも初見殺しが過ぎる為に数多のプレイヤーがログアウトしてゲームを辞めていた。


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愉悦に浸る王と悪魔

ギルガメッシュ目線、モルガン目線などあります。

今回はワーカー編になりますが、少しキャメロットの人間が介入しています。

前に質問コメントが届いたけど、ちゃんと送れたかな…ポチポチと真面目に考えて打ったけど、いかんせん、ちゃんと送信できたか不安や…


ーウルク領域・ギルガメッシュー

 

キャメロットにあるウルクの領域にて、ギルガメッシュは玉座に座り、今後起こりうる出来事を考え悦に浸っていた。

 

「ナザリック地下大墳墓が転移して来たか、よもや、あれが転移して来るとはな」

 

ギルガメッシュは風魔小太郎やハサン達に探らせた情報を聞きながら、呟く

 

「思ったんだけど、彼らが出てきたら人間国家は滅びない?」

 

エルキドゥの言葉にギルガメッシュは「であろうな」と返す

 

人間国家などナザリックの到来があればすぐに滅びてしまうだろう。

 

「いや、流石にそこまでの行為はしないだろうよ、モモンガとやらも元は人間だったのだ、支配下に置き、ペットとしてみるだろうな」

 

その言葉にシドゥリは嫌そうな顔をし、エルキドゥは玉座の近くに座ると「ペットって良いものなの?それ聞いたらソロモンさんとアルトリアさんがキレそうな話題だよね」と言う。

 

ギルガメッシュは愉快そうにかつてのデータを眺めていた。

 

「しばらくは退屈せんぞ、エルキドゥ、楽しみだな」

 

「ギルが楽しそうで何よりだよ」

 

「王、ナザリックの事はこのまま放置で良いのですか?万が一、ナザリックがリ・エスティーゼ王国とバハルス帝国を手中に収めた場合はこちらにも脅威が訪れると思うのですが…」

 

シドゥリの心配する理由もわかる。

 

ナザリック地下大墳墓がどのような出方をするか分からない以上、キャメロットの脅威になりかねない。

 

しかし、ギルガメッシュは余裕そうに笑いながらデータ上のモモンガを見ると

 

「安心するが良い、この狂人は決して世界征服なんぞ出来ない」

 

モモンガのことを《狂人》と呼ぶギルガメッシュはデータ上にある一つの項目を見て嗤う。

 

「ありもしない幻にいつまで経っても縋り、いるはずのない者を追い求める。それに、面白い事も思い出したしな」

 

この世界に転移する前に聞いた話では、リアルでの事を思い出す。

 

「確か、ナザリック地下大墳墓のギルドメンバーの数人が既に死亡しているという事ですか?」

 

シドゥリの言葉に返事を返す

 

転移前、巨大複合企業の副社長をしていたからこそ分かっている情報がいくつもある

 

「あの狂人は友と言いながら友の事は一切知らない。我でも知っている情報をあの狂人は知らないのだぞ、実に滑稽だ」

 

ギルガメッシュはデータ画面を消すと、玉座に深く腰掛け

 

「故に楽しみだな、今後の劇が」

 

運ばれてきた酒を持ち飲み始める。

 

酒を飲んでいると、ウルク領域に何か転移してくる気配を感じる。

 

シドゥリも感じたのか、目線を眼下に向ける

 

兵士の一人が扉を少し開けて外にいる人物を見てハッとする。

 

「王!モルガン様が参りました」

 

その言葉にギルガメッシュは酒をシドゥリに渡すと受け取る

 

「入れろ」

 

「は」

 

そう言って扉が開き、入ってきたのは黒いローブを纏っている女が入ってくる

 

「失礼します。お呼びですか」

 

モルガンの平坦な声に苦笑いしながら話し始める。

 

「アルトリアの元でなければ不満か?」

 

その質問にモルガンはハッキリと「えぇ」と言う

 

円卓の騎士は創造主・アルトリア至上主義であり、アルトリアに絶対的忠誠を誓い、その下に他の王がいる。

 

「陛下にギルガメッシュ王の言うことを聞くようにと言われたので聞くだけです」

 

その言葉にギルガメッシュは嗤い、今後の計画を話し始める。

 

 

 

 

 

 

 

モルガンはウルク領域から出ると、一度アルトリアの元に戻り、事の経緯を説明する。

 

「ギルガメッシュが何を画策しているかは分からないが、ナザリックの現在の情報は必要不可欠だ」

 

アルトリアの言葉にモルガンは深々と頭を下げる

 

部屋から退出して外に出ると、青空を見上げ一人で嗤う

 

「あー!やっと、やっと、陛下のために動けるっ!」

 

モルガンの笑顔にそばに来た粛清の騎士達が少し引くのが分かる。

 

(ギルガメッシュ王の差し金で動くことになるのが嫌だけれど…無事に任務にあたり、帰ってくれば陛下に褒められる…!200年前の失態を拭うことができるっ!)

 

モルガンは200年前の竜王&十三英雄のリーダーとの戦いで、敗北をしてしまった経緯がある。

 

それからというもの、アルトリアからなるべく安全地帯にいるようにと言われてしまい、働くことが出来なかった。

 

「そうね…実に楽しみだわ、本当に」

 

モルガンは門の外に向けて歩き始める。

 

 

 

 

ーフォーサイトー

 

アルシェは金遣いの荒い両親の借金の幾分かを返し、執事達使用人達の給金を与えた後に解雇し、なんとか家族を助けるために動いていた。

 

(…今月も借金をいくらか返せば、また待ってくれる…その間に妹達と避難して…そして)

 

アルシェはイミーナの後ろを歩きながら考え込んでいた。

 

今回の任務は謎の遺跡に行き、そこで見つけた金品財宝から少し引くという形でお金を得ることになっていた。

 

「よし、決まりだな、遺跡に向かうのは明日だ。その間までしっかりと休んでおけよ」

 

そう言ってロバーデイクと共に歩き、宿屋に戻る為に大通りを歩いていると…

 

ドンッとすれ違った女性にぶつかる

 

「失礼致しました」

 

そう言って謝罪してくる女性にアルシェは頭を下げて宿屋に入る

 

その後ろ姿をその女性が見つめて嗤っていたのに気づかず

 

 

 

 

 

 

ーモルガンー

 

モルガンはワーカーであるアルシェにぶつかった折、監視魔法を掛けてナザリック内の様子を見る事にした

 

そう簡単に発見されないように魔法を掛けていた。

 

「ナザリックの様子はあの時とは変わらないのね」

 

モルガンは椅子に座り、アルシェ目線で見るナザリック内の様子を見ていた。

 

「ナザリック地下大墳墓に転移してきたのはモモンガ一人で、近接戦の訓練をしているみたいね…我が王の真似事かしら?」

 

フォーサイト達ワーカーは全滅だろう。

 

「本当に上手く行くわね…流石は辺境の国で唯一の頭脳を持つだけはあるわね」

 

ラナー王女の存在にモルガンは興味を持ち始める。

 

(いけないいけない。下手に深入りしたらあの時の二の舞だわ)

 

モルガンは立ち上がり、転移門を潜る為に足を踏み出す。

 

後ろを振り向くと鏡に向けて助けを乞うアルシェが映る。

 

シャルティアに抱きしめられ、恐怖に歪んだ顔

 

モルガンはそれを見て微笑み、そのアルシェの悲痛に歪んだ顔を無視する。

 

助けるメリットなど何処にもない。

 

彼らが私利私欲のために潜入したのが悪いのだから

 

モルガンは笑いながら転移門を潜る

 

キャメロットに帰還し、アルトリアに話した後、賢王の元に行き調査内容を伝え自室に戻る

 

 

 

 

ー皇帝・ジルクニフー

 

ジルクニフはナザリック地下大墳墓に来訪し、謝罪した後、馬車に乗り本国に戻るために部下達と作戦を練っていた。

 

フールーダ・パラダインの裏切り、帝国は甚大な被害を受けた

 

「我々の目的は、帝国、王国、評議国、法国、聖王国などによる大連合。アインズ・ウール・ゴウンの為の大連合だ」

 

「た、戦うのですか?」

 

「なぜ驚く?帝国一国ではあの化け物には勝てない。ならばこそ周辺国家を巻き込んだ連合を作り打ち破る他ないだろう」

 

「いや、戦うほか我々の生きる道はない」

 

「ブリテン王国に協力を仰ぐことは出来ないのでしょうか?」

 

ロウネの言葉にジルクニフは頭を振る

 

「あの国に協力を求めるのは最後の手段だ。しかし、万が一のことを考えて手を打っておくことに越した事はないだろう」

 

ブリテン王国はナザリックに勝てる唯一の存在の可能性が高い。

 

故に連合軍として筆頭に立って貰いたいという思いもあったのだが…

 

「強大すぎる故に双方が拮抗した争いをすれば人類は滅びる可能性が高い。出来る限り…いや、最後の手段として助けを求める為の保険だ」

 

ジルクニフ達は帝国本土に向かいながら終わりのない議論を何度も行なっていた。




次回はカッツェ平野の戦いになるかと思います。

といってもキャメロット側視点が多いかもしれないので、原作その通りみたいな文章じゃないかもしれません。



質問コメントくださった方、返信届きました?


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カッツェ平野での蹂躙

カッツェ平野の戦いが行われる話です。

アインズ、ギルガメッシュやアルトリア目線の話です。

キャメロットがいる都合上、原作が少し変わっております。

最近バイオ5にどハマりしてしまっている…


ーカッツェ平野ー

 

カッツェ平野での戦いを行うと決定した際にデミウルゴスは『ブリテン王国』の動きを警戒してアインズの供としてシャルティアとマーレの二人が付き人としてやってきていた。

 

(…いないな)

 

超位魔法はユグドラシルというゲームの中では強大な魔法だ。

 

その為、大規模戦の際には超位魔法を使おうとする者を最初に潰すべく行動するのが基本だ。

 

(…遠くから聖槍の光が飛んでこない以上、アルトリアさん達はこの戦いには参加してないのか…)

 

この場にユグドラシルプレイヤーはいない。

 

誰にも悟られず仮面の下でアインズは笑う。

 

「もはや、囮になる必要もなしか」

 

ユグドラシルプレイヤーと遭遇しなかった事は喜びだ。

 

もし万が一、キャメロットが存在していた場合、シャルティアや己が中心に戦闘を行わなければならない。

 

己をそれなりに知るアインズは強敵と出会わなかったことに感謝する。

 

アインズが手を開くと、そこには小さな砂時計が姿を見せた。

 

「あぁ、楽しみだ」

 

今から放つ超位の攻撃魔法は王国軍にどのような結果を示すことになるのか、ユグドラシルの時はさほど強い魔法ではなかったが、この世界においては、どれだけの結果を出すのだろう。

 

「黒き豊穣への貢!イア・シュブニグラス!!」

 

黒い息吹が、王国軍左翼の陣地を吹き抜け、そこにいた左翼七万。

 

その命が即座に全て奪われた

 

 

 

 

 

 

 

 

ーキャメロット娯楽室ー

 

キャメロット内の娯楽室にて、円卓の席に座る王達はカッツェ平野で行われた戦闘の様子を眺めていた。

 

「《黒き豊穣への貢》か」

 

「一撃で七万を殺戮か…そりゃそうだ!」

 

オジマンディアスは超位魔法を観察し頷き、ネロは当たり前の光景に頷く

 

「…しかし、実に楽しそうだな、彼は…」

 

アルトリアは無表情でモモンガを見ていた。

 

「アンデットになった影響なのだろうが、これほどまでに罪悪感を感じていないとは…」

 

「余達の方が特殊だと思うけどな〜」

 

ネロの言葉にソロモンは『英霊と竜人って基本的に人間に性格が似たり寄ったりだからねぇ』と返す。

 

確かに、この世界に来て異形種の生き死にに対して特に何も感じないのだが、人間が死ぬ瞬間を見るのはどうしても慣れない部分がある。

 

といっても人間の時ほどの恐れは感じていないが

 

唯一例外があるとしたら…

 

アルトリアはギルガメッシュを横目で見ると、彼は特に人間の死に対して何も思っていないのか、興味なさそうにしていた。

 

「…ところでギルガメッシュ。私達に隠してることはないか?」

 

そう問いかけると少しビクついた気もしたが、ギルガメッシュが『何のことだ?』と嗤って返してくる。

 

「なんか挙動不審だなぁ、ギルガメッシュ」

 

ソロモンの言葉にギルガメッシュは何も言わないのを貫こうとしたが…

 

「………聖槍」

 

「分かった分かった。そのような武器をここで出すでない」

 

アルトリアの言葉にギルガメッシュが咳払いして話し始める。

 

「ガセフ・ストロノーフに神器級アイテムを渡したぁ?!」

 

イスカンダルの大声と呆れるアルトリアとソロモン、『お前だって人のこと言えないだろう』と少し怒っているネロとオジマンディアス。

 

「…神器級とはいえ、この戦いに参加している戦士に渡してあちらに回収された場合はどうする?」

 

アルトリアの言葉にギルガメッシュは『平気だ』と答える

 

「あの雑種に渡した神器級のアイテムは他のプレイヤーの物になど絶対にならん、そのように細工しておるからな」

 

ギルガメッシュの言葉にソロモンは『あぁ…やったんだなぁ』と呟く

 

ギルガメッシュは巨大複合企業の副社長の立場を利用して《ユグドラシル》ではやりたい放題していた。

 

まず、運営に賄賂を渡して自分のキャラに特別待遇。

 

ギルガメッシュの持つ職業である『特殊職』は本来ならありえない職業であり、魔法詠唱者でありながら特定のスキルを使用すれば物理職にも変化出来るというチートを使っている。

 

「それでユグドラシル内でギルガメッシュをPKする動きが流行ったではないか、その火の粉が余達にまで飛んできたし!」

 

ネロのふてくされた表情にアルトリアは何度も頷く

 

「まぁ、昔のことは良いではないか、我の職業のおかげで100年前に複数の国家を滅ぼせたのだからな!」

 

自信満々な言葉に場がシーンとなるが、ギルガメッシュはそんなものは御構い無しなのか、話し始めようとしたのでアルトリアはモニターの方を見てガセフ・ストロノーフとアインズが話し始めていることを伝える。

 

 

 

 

 

 

 

ーカッツェ平野・ガセフー

 

「どうした?ガセフ・ストロノーフ。私の配下となれ」

 

アインズ・ウール・ゴウンが花の手を差し出してくる

 

その手を掴めば多くの命を救うことができる。

 

ガセフは迷ったが、はっきりと首を振る。

 

「断る。私は王の剣。王から受けた恩義に懸けて、これを譲ることは出来ない」

 

「結果、より多くの民の命が失われてもか?お前はカルネ村を救うために己の命すらも投げ出して戦いに挑んだ。そんな男が救えるはずの命を投げ出すと?」

 

ガセフは切り付けられたような痛みを心に感じた。

 

(…なるほど、あの御仁が言っていたことはこういうことだったのか…)

 

かつてギルガメッシュ王に言われた『貴様はいろいろ厄介なものに気に入られているようだしな』

 

厄介なものという言葉はおそらくアインズ・ウール・ゴウンを指しているのだろう。

 

ガセフは剣を握りしめる

 

「愚かな男だ。では」

 

ガセフはそれ以上の言葉を言わせず、レイザーエッジをアインズに突きつける。

 

「…なんだ?」

 

「ゴウン殿。恩義を受けた身で無礼を謝罪する。汝に一騎討ちを申し込む!」

 

アインズの表情は変わらない。

 

しかし、声は出さずともその動揺が手に取るように伝わってきた。

 

「……本気か?死ぬぞ」

 

「間違いなくそうなるだろうな」

 

ガセフはクライムに開始の合図を頼み、己は剣を構える

 

「では…!」

 

クライムの緊張した声、ブレインの息を呑む音が聞こえてくる

 

「はじめ!!」

 

その瞬間、時が止まった…

 

 

 

 

 

 

 

 

ーカッツェ平野・アインズー

 

《時間停止》によって止まった世界。

 

アインズはまっすぐ歩きながらため息をこぼす

 

「…時間停止対策は必須なんだがな…」

 

剣を振り上げるガセフを見る。

 

時間停止の時間を数えながらガセフにトドメを刺そうとすると…

 

「!!?」

 

物凄い程の黄金色の光がガセフから立ち込める

 

「ゴウン殿!!!」

 

「!?」

 

ガセフが時間停止中であるのに動き、剣を振り下ろしてくる

 

アインズは慌てて避けて後ろにわずかに下がる

 

(…なんだ…?時間停止対策?ガセフのレベルじゃ対策は出来ないはずじゃ…!あれは!)

 

時間停止が止み、時が動き出す。

 

ガセフの懐から僅かに出ていた黄金色の短剣を見て、間違いなくアレは神器級アイテムだと判断し、ガセフが振りかぶった剣を飛ばす。

 

「!」

 

「…惜しい、斬ったと思ったんだが…」

 

ガセフは悔しそうに再び剣を構える

 

「………ガセフ・ストロノーフ、一つ質問する」

 

「なんだ、ゴウン殿」

 

「…その懐に入っている黄金色の短剣はなんだ」

 

アインズの中でプレイヤーの存在がちらつく

 

あの黄金色の短剣を持つプレイヤーは一人しかいない。

 

ユグドラシルにおいて猛威を振るった嵐のようなプレイヤー

 

キャメロットに所属するギルドメンバーの一人

 

「この短剣は…ある御仁から貰ったものだ。黄金の髪をする他国の王だ」

 

「…そうか、やはりあの男も転移してきていたか…」

 

アインズにとってあの男の存在は危惧すべき問題だろう。

 

常識というものはあの男には通用しないのだから

 

考えていた頭を一度リセットし、目の前の戦士長を見つめる。

 

 

 

 

ーキャメロットの娯楽室・ギルガメッシュー

 

加勢に行く事も少し視野に入れたが、ガセフの選択にすっかり関心がなくなり、神器級アイテムの回収を行う準備をする。

 

オジマンディアスやイスカンダルは結果が分かりきっていることに関心がなくなったのか、立ち上がり自身の領域に戻ってしまった。

 

ネロは机で寝始めているがアルトリアとソロモンは続行して見ていた。

 

(…結果的に彼奴は普通の人間だったということか…)

 

ガセフ・ストロノーフは己の願望のために多くの市民の命をかなぐり捨てた。

 

それは人間としてはつまらなく、ギルガメッシュの関心を削ぐことになった。

 

ガセフが敗北したのを見て短剣を回収する。

 

人間は生きてこそだ、生きて選択し続けるからこそ面白いというのに

 

「終わったな」

 

アルトリアの言葉にソロモンも頷く

 

すると…

 

「失礼致します。アグラヴェインです」

 

部屋の外から声が聞こえてきて開けるようにメイドに言うと開ける。

 

アグラヴェインは頭を下げ話し始める。

 

「ビーストマン連邦が挙兵、こちらに進行しております」

 

その言葉にアルトリア達は「え?今?」と揃う

 

「我が行く、お前達は部屋で休んでおれ」

 

ギルガメッシュの言葉にアルトリアは『頼んだぞ』と返してネロを背負って歩き始める。

 

その後に続いて退出するアグラヴェイン

 

ソロモンは去り際に『頼むからキャメロット周辺を孤城にしないでね』と言って退出する。

 

 



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プレイヤーの脅威

前回のタイトルと変更。

前回いろいろあって入れられなかったツアー目線があります。

今回はカッツェ平野での戦いと同時にビーストマン連邦がキャメロットに侵攻する話です。

今回はツアー、ネロ目線があります。ネロのリアルでの生活の話もあります。

ネロの話で少しだけ残酷とも取れるような、そんな話があります。基本的にネロの性格はアインズに似たり寄ったりのものがありますが、タチ悪いような一面があります。だって、ネロ様の属性『混沌善』だし

十三英雄のリーダーとその仲間(恐らくはプレイヤー)についての捏造が少し含まれます。十三英雄の物語聞くとどうしてもアーラッシュとかベディヴィエールが出てくる。


ーキャメロット城ー

 

「ビーストマン連邦の侵攻かぁ〜流石にそこまでアホだとは思わなかったよ」

 

エルキドゥの言葉に珍しくシドゥリもうなずいていた。

 

「人間より優れているというだけで生き残れてたのにねぇ、勿体ない、今のビーストマン連邦のトップは頭が悪い」

 

エルキドゥは侵攻してくるビーストマンの大軍を見る

 

「王、ビーストマン連邦の軍はあの時より多くおります。どうされますか?」

 

あの時とは、かつて大陸を蹂躙した際にビーストマン連邦の国を攻めた時の軍勢だ。

 

あの時は10万くらいだったが、今は18万の軍勢がいる。

 

「あの時と何も学んでおらんな」

 

ギルガメッシュは姿を変え、全身鎧姿の【英雄王】の姿になる。

 

「その格好で行くのかい?」

 

「我の本気を見せてやろう」

 

そう言ってギルガメッシュはキャメロット城の前門に行く

 

ビーストマン軍が速度を上げて向かってくる

 

「愚かな者共よ、大人しく国に篭っておけばよかったものを」

 

そう言って手を出すと鍵を出す

 

「宝物庫の鍵を開けてやろう」

 

鍵を開き、宝物庫の中にあるエアを取り出す。

 

「目覚めよエア!お前にふさわしい舞台が整った!」

 

エアが動き始め、赤い光線がエアから溢れ出す。

 

「いざ仰げ!!エヌマ・エリシュ!!」

 

ビーストマン大軍に向けて放つ

 

一瞬にして地面が割れ、巨大な空洞が開く

 

ビーストマン達はその空洞に落ちて行く

 

全員が落ちたのを確認し、ギルガメッシュが姿を魔法詠唱者である《賢王》に戻す

 

「大地よ、修復せよ」

 

その言葉と共に割れた地面は元に戻る。

 

ギルガメッシュは大きめの杖をタンッと地面に打ち付けると崩壊した土から草が生え、一面元の草原に戻る

 

《おや、私は不必要だったね、ギルガメッシュ王》

 

「その声はマーリンか」

 

花の魔術師と呼ばれるNPCで一応円卓の騎士のメンバーとして数えられているが、彼の創造主はネロ・クラウディウスであり、唯一他の領域に仕えている特殊なNPCだ。

 

《花を咲かせておくかい?楽園のように》

 

「いらん、そんなもの不必要だ。草原があるだけで良い」

 

《はい、了解!後、ここの近辺に監視魔法が発動していたから妨害しておいたよ、といっても少し見られたと思うけど》

 

「どこの監視魔法か分かるか」

 

話しながらキャメロット城の門をくぐる

 

《恐らくはアーグランド評議国の竜王で、白金の竜王とも呼ばれるツァインドルクス=ヴァイシオンじゃないかな?》

 

「…あれか」

 

ギルガメッシュはエルキドゥとシドゥリを連れて領域に戻ると、マーリンとの話を切り、玉座に座る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーアーグランド評議国・最奥ー

 

信じられない。

 

ツアーの頭のなかにはその言葉しかなかった。

 

(アインズ・ウール・ゴウンがプレイヤーだとして、あのキャメロットと何の関係もなければ再び100年の揺り返しが来たということになる…。もし、万が一にもキャメロットと戦闘になれば…)

 

魔導王達とキャメロットの戦闘になれば、世界は今度こそ焦土と化してしまうだろう。

 

(…それだけはいけない)

 

魔導国側か、ブリテン王国側のどちらかと共闘及び連携を取らなければならない。

 

絶対に双方と敵対関係は取れない。

 

「本当に、本当に困るね…」

 

魔導王による18万人の殺戮、ギルガメッシュ王一人による18万人のビーストマンを殲滅。

 

100年の揺り返しによるプレイヤーの到来。

 

「……リク」

 

ツアーは今は亡き友でありリーダーである彼を思い出す。

 

(…私はどうしたら良いのだろう、教えてくれないのか?リク、彼らは八欲王のように苦労して倒さなければならないのか…?いや、倒す事は本当に可能なのか?どうして君は、居なくなってしまったんだい?)

 

ツアーは答えてくれないリーダーを思い出す。

 

 

 

180年前ほど昔のこと…

 

十三英雄のリーダーである『リク』は大陸を蹂躙し、支配下においたギルド・キャメロットのギルド長と対話した際の事を思い出す。

 

八欲王の再来と思えるくらいの激戦だった。

 

六人の王との戦いでは誰にも勝てなかった。

 

ツアーは運悪く相性の悪い獅子王・アルトリアと戦闘を行ったが、勝てる感触が微塵も感じなかった。

 

リーダーはアルトリアとの話し合いの元、この世界は異世界だという事、そして、人類が絶滅の危機に瀕しているということ

 

それらを伝えれば彼らは途端に侵攻をやめた。

 

そして、アーグランド評議国…いや、リーダーとツアー、アルトリアとギルガメッシュ王により話し合いを締結。

 

今後、世界を蹂躙しないようにという盟約だった。

 

(…リーダーがいない今、彼らを抑えるのは私の仕事になってしまった。あぁ…それでも、やるしかないか、私が世界を守る。私が世界を守らなければ)

 

かつて父が起こした過ちは息子である己が清算しなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーキャメロット城・ネロの自室ー

 

ネロの作った領域《ローマ帝国》の宮殿にて、美しいエルフや人間、異形種など集めていた。

 

「クラウディウス様、お食事をお持ちしました」

 

「クラウディウス様、肩をお揉みします」

 

「うむ!苦しゅうない!」

 

ネロは自分の欲しいものを集め、"並べて"見て毎日楽しくてたまらなかった。

 

「はぁ〜この世界に来て良かった!」

 

ネロは温泉に浸かりながらそう話す

 

この世界に来てからギルメン達と話し合い、お互いのやる事には口出ししないという約束を交わしている。

 

といってもギルドが崩壊しかねない程の事をした場合はみっちりしごかれる事になるが

 

温泉から出て脱衣所に行くとキャメロットのメイド達が着替えさせてくれる。

 

服に着替え、自室に戻りワインを飲んでいると…

 

「む?なんか元気のないメイドがおるようだが、どうした?」

 

ネロの言葉にメイドである《ミア》は風を仰ぎながらそのメイドを見る

 

冷ややかでゴミを見るような眼差しでそのメイドを見る

 

「確か、レイラとか言ったか?」

 

レイラ・リュロ・ロガナ・ウラジミールは人間であり、10年前ほどに異形種の奴隷となっていた者の一人であり、異形種国家が滅びた際にブリテン王国の庇護に置かれた。

 

ネロはその中にいたレイラの金髪に青色の瞳に瞳を見て、美しさに惚れ、レイラを自らの領域に連れて行きたいと思い、レイラの家族の安全と生活に困らないと言う約束を交わして連れて来た。

 

レイラは家族の幸せのために臨んでここにやってきた。

 

「は、はい!ネロ様」

 

そう言ってネロの前にお菓子を持ってやってくる

 

「クラウディウス様、一度家に…『ネロ様、この者持って来る物を間違えております。一度下がらせてよろしいでしょうか?』っ…」

 

ミアの言葉にネロは『良いぞ』と言うと、ミアは深々と頭を下げレイラを見る

 

「下がりなさい。レイラ、地下室に行きなさい」

 

レイラに耳打ちするミア。

 

レイラは一気に青ざめ、震え始める。

 

「あ、あ、あの…」

 

「『地下室に行きなさい』」

 

その言葉の重圧に、レイラは震えながら退出する。

 

ミアはネロの方を向き「失礼致します。何かあったらお呼びください」と言って退出する。

 

 

 

 

 

 

ミアはキャメロットに仕えているメイド長であり、各領域のメイド長と連携を取ったりなどをしている。

 

ミアの創造主はネロ・クラウディウスであり、彼女がキャメロットに帰還した際はあまりにも嬉しくて涙を流しながら帰還を喜んだ。

 

それからというもの、ネロに対して絶対的忠誠を誓い、ネロが失望しないよう、ネロが望む事を常に考え行っていた。

 

ネロは美しいもの・綺麗なものが大好きであり、レイラの役目はメイドの教育を行う事になった。

 

「レイラ、あなたは望んでここにきました。家族の幸せのためにキャメロット《ローマ帝国》領域のメイドとしてネロ様に忠誠を誓うことになっています。そういう契約の下、ここに来る事を承諾されました。ネロ様の寛大なご慈悲を無下にするというのですか」

 

地面に座り、震えているレイラの身体には無数の傷があった。

 

傷は治癒魔法によって治るため、ミアは御構いなしに教育していた。

 

「……家に帰らせて…」

 

泣きながらそう哀願するレイラにミアはため息をつく

 

「貴女は自分の言葉に責任を持てないのですか?家族のためにならなんでもすると、ネロ様は貴女の望みを全て叶えているというのに、まだ望みますか?貴女がここから出る事は出来ません。そういう契約です」

 

「で、でも…」

 

「はぁ…」

 

ミアはため息をつく

 

「そんなに外に出たいなら、四肢を切断して、顔に醜悪の魔法をかけて、家族もブリテン王国から追い出す約束なら出すように出来るけど、どうする?」

 

ミアの瞳には光がなく、つまらなさそうにレイラに歩み寄る

 

「わ、私は…い、いや…」

 

「そう、なら分かるわよね?ネロ様のためにここで生涯を尽くす事が最高の幸せなのよ、貴女ば一から教育し直した方が良いのかしら…?」

 

「い、いいえ!わ、私はクラウディウス様の為に全身全霊で尽くします!私の、生涯をかけて…!」

 

怯えながら言うレイラにミアは微笑み背を向ける

 

「しばらくそこで反省しなさい。ネロ様の忠実なるメイドとして、ネロ様に不敬がないように」

 

真っ暗な室内にレイラを入れる

 

ミアは扉を閉め、歩き始め、階段を上ると…

 

「ミア!遅かったではないか!」

 

笑顔で寄って来るネロに深々と頭を下げる

 

「はい、遅くなってしまい申し訳ありません」

 

「別に怒ってなどいないぞ?余は白野と共に領域内を散歩しようと思ったのだが、ミアもどうだ?」

 

「私がお供して良いのですか?」

 

「無論だ!」

 

そう言って歩いて行くネロに惚れ惚れしたような表情をネロの背中に向ける

 

「はい、ネロ様」




ミア・サトウ
ネロのNPCであり、ネロの領域である『ローマ帝国』のメイド長
【種族】不老の人間
【レベル】55
【カルマ値】悪〜邪悪

【容姿】
ピンク色のロングヘアーでツインテールをしている。髪紐はネロから貰った赤色のリボン。瞳の色は赤色

【詳細】
創造主はネロであり、ネロの言う事は絶対としている。
外から来たメイド達をしごき、ネロの望む通りに教育している。
性格はネロに対しては温厚であり、他のメイドに対しては冷淡。
岸波白野については『岸波様』といって敬っている。

レイラ・リュロ・ロガナ・ウラジミール
【種族】人間
【レベル】5
【年齢】18歳

【詳細】
10年前にブリテンが滅ぼした異形種の国の奴隷であり、両親と妹の安寧と安全な生活のためにネロの元に下る。家族の絶対的幸福のためにネロのメイドになったが、ネロの領域に入ってから外に出ることが叶わなくなった。年に一度家族との連絡を許されているものの、親に会いたいと言う思いが強くなっていた。

【ツアーの天敵(ツアー目線)】
・ギルガメッシュ
規格外すぎて対策のしようがない。できるなら敵対したくないが敵に回った場合は死ぬのを覚悟して倒さないといけない。ギルガメッシュの人となりを見て慢心している状態でゴリ押しすれば勝てると確信している(ただし、2回目は高確率で負けると感じている)

・アルトリア
聖槍というとんでもない武器を持っているのと、アルトリア自体が竜に対する特攻を持っている為、高確率で負ける。どう勝てるか不明な為現在調査中。
彼女のNPCが狂信的なほど彼女を崇拝しているのを知っている為、彼女を倒せば魔神以上の災厄が再び襲ってくると確信している。

【ネロについて】
リアルでは富裕層であり、アルトリア同様令嬢としてアーコロジー内で生活していた。
貧困層の住む世界については知っていたものの、特に何も感じておらず、リアルでも美しいもの・美しくないもので全て判断していた。貧困層出身でも綺麗な者がおり、そう言ったものはアーコロジー内に呼び寄せてメイドや執事にしていた。年齢が行くとお金を持たせてアーコロジー外に出していたりと割と辛辣な扱いをしていた。(アルトリアは知らない)

【ネロのスキル】

《三度、落陽を迎えても》
課金アイテムを使わずに三度デスペナルティを食らうことなくレベル100の状態で復活できるスキル。
リスポーン地点はキャメロット城の最奥
復活した際に攻撃力及び防御力を上昇させる。

《皇帝特権》
本来持ち得ないスキルを、本人が主張することで短期間だけ獲得できるというもの。
ネロの職業は『剣士』であり、本来なら魔法詠唱者のような魔法技術のうち、特定の魔法は取得できない(例えばアンデットのみが使うスキルなど)はずなのだが、ネロのスキルがあればアンデット専用魔法や天使系統の魔法も習得できる。


【マーリンとネロの関係】
ナザリックほど創造主至上主義でもないので、アルトリアのことを主人として見ており、ネロは創造主として見ている。
アルトリアとネロの両方から同時に命令があった場合はアルトリアの命令を優先する(そのように設定されているので)

【ギルガメッシュとネロの性格】
ギルガメッシュ:何故かカルマ値は善。だけど、それは善行の善ではなく独善の善。己の価値観が世界の価値観みたいな考えであり、唯一の例外はギルメンのみ、大陸を支配して満足してはおらず、そのうち人類が生存している帝国などと言ったところにも手を伸ばそうと画策している。『悪意が凄まじく、相手の気持ちを考えない』タイプ

ネロ:人類や他の種族の者達に対しての愛はアルトリア並みにあり、ギルガメッシュのようなタチ悪い形ではない。しかし、ネロの愛は、何もかもを与える代わりに何もかもを奪うものであり、周りに理解されることはない。アルトリアの事を美しいと思っており、自分の容姿をアルトリアに近づけたのもそのため
『悪意がないものの、無自覚に相手の気持ちを無視している』タイプ


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バハルス帝国へ

キャメロットの設定を書けば書くほど、なんかカルデアみたいな感じになってしまう今日この頃

獅子王様単独の転移と違って、全領域が機能している状態なので本編より最強じみてます。

八欲王とか十三英雄とか原作の方では明らかになってないけど、そっちはそっちで捏造したくてたまらないのですが、なんとか堪えています。


ーNPCの日常・円卓の騎士(朝5時30分)ー

 

円卓の騎士の朝は早い

 

この世界に来た当初は大忙しだったアグラヴェインの仕事も均等に行き渡り、上手く回るようになった。

 

「それで、我が王の世継ぎについてですが」

 

「トリスタン…」

 

トリスタンとランスロット、ガウェインは食堂に来て話していた。

 

「真面目な話、他の王との子供というのがいささか想像できないのですが、ランスロット卿やガウェイン卿はどう思いますか?」

 

「我が王がどこの馬の骨とも知れない男と結婚するよりかは、キャメロットの王の方々と結婚される方が良いとは思いますが、ギルガメッシュ王だけは嫌です」

 

ハッキリと言うガウェインにランスロットが『それは失礼だろう…』と言う

 

「やはり、王はここから去られたかの御仁の事が好きなのでしょうかね」

 

「あぁ、確か、今はお亡くなりになったアサシンエミヤ殿を創られた御仁ですね」

 

「あの御仁は…『トリスタン、また王の結婚のことについて話していたんですか』」

 

話を遮るようにベディヴィエールが入ってくる

 

「確かに王の世継ぎが生まれれば良いとはなっていますが、王は王自身で来るべき時に結婚されると言っていたではありませんか、あまりこの話をしすぎるととアグラヴェインに大量の書類を作らされますよ」

 

「ではやめましょうか」

 

手のひら返しの早さにランスロットは苦笑いする。

 

「おやおや、円卓の皆さんではないですか、野郎揃っての食事ですかー?」

 

そう笑いながらベディヴィエールの後ろから出て来た笑っている玉藻の前と、その後ろで無表情の白野がいた。

 

「…タマモ、騎士様達の邪魔したらダメ」

 

その言葉に玉藻の前は「みこーん!」と言う。

 

「よろしいのですよ、レディ」

 

ガウェインの言葉に白野が「そうか」と言う

 

わきゃわきゃ話していると…

 

アラームが部屋に響き渡るように鳴ったのを察知した円卓の騎士達は食事を片付け始める。

 

円卓の騎士を創造した主人・アルトリアが起床する時間に近づいているアラームだ。

 

「それでは失礼します。レディ、玉藻の前」

 

円卓の騎士達がゾロゾロと居なくなったのを見て白野がオムライスを食べながら

 

「…ネロも起こしに行った方が良いのかな」

 

「まぁだあの人は早いと思いますよ〜他の王方々よりも起きるのが遅いから良いじゃありませんか〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

アルトリアは朝起きて円卓の騎士の面々に挨拶する。

 

それからいろいろ報告を受けた後、ギルメン達専用の所に向かう。

 

大きな舞踏会会場をイメージした場所で今後のことを話し合うことになった。

 

「……何故、少年の姿になっているんだ」

 

少年期姿のギルガメッシュにアルトリアが珍しくツッコミを入れる

 

「これから行くところはバハルス帝国で向こうから秘密裏に来て欲しいって言われたから、この格好で行くのが最適だと思うんですよ」

 

「…昔から思ってたんだけど、その状態だと敬語でなんで大人になるとああなったの?何か悪いものでも食べた?」

 

ソロモンの言葉に子ギルが笑いながら『嫌だなぁ〜あの大人の僕も今の僕も同じですよ〜』と話す。

 

「そこで!ソロモンさんとアルトリアには姿を変えてもらって行くのが面白…最適だと思うんですよ」

 

「…面白いって言いかけたよね」

 

「…そもそも、お前は王国に行ったから行かないと言う話になっていたが…」

 

「僕だって行きたいんですよ、だって面白そうなこと起きそうですし!ね?」

 

子ギルの完全に行くつもりの言葉にアルトリアはため息をつく

 

「……一度こうといったら聞かないからな」

 

「姿を変えるのは良いとして、連れて行くNPCどうするの?円卓の騎士のメンバーは多分全力で行こうとすると思うけど」

 

「僕の方でプランを立てておきました!キングハサンさんは行くの確定として『勝手に確定するな』姿を隠せるスキル持ちのマーリンとモルガン、アサシン軍団のNPC数名で行く方が得策です!」

 

ソロモンがギルガメッシュの後ろにいたキングハサンに『なんかごめんね…』と言うと「大事ない」と返ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

ーバハルス帝国ー

 

魔導王・アインズがカッツェ平野で18万人規模の人間を虐殺した事を聞いたバハルス帝国皇帝・ジルクニフはストレスで死にかけていた。

 

フールーダ・パラダインが裏切った以上、バハルス帝国は皇帝一人で切り盛りして行かなければならない。

 

当然、部下にも優秀な者がおり、その人物達と動けばすぐに帝国が瓦解することはないのだが

 

「彼らはまだ来ないのか?」

 

「はい、現在まだお見えになってません」

 

皇帝・ジルクニフはカッツェ平野での大量虐殺以降、魔導王に対抗すべくいろいろな対策を練っていた。

 

連合軍の結成、その陣頭にブリテン王国に立ってもらいたいという思い。

 

ブリテン王国との会談を秘密裏に行いたいという旨を伝えると、向こうも何か察知していたのか一つ返事で返してくれた。

 

(…えぇい、武王よ、魔導王を葬ってくれないか)

 

現在、魔導王と武王は一騎討ちの試合を行っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ〜やっぱり帝国の闘技場って綺麗ですねぇ〜」

 

「あんまりノリノリだとバレますよ、ギル」

 

「…今思ったけど、君らって口調本当に変わるよねぇ」

 

子ギルと騎士王形態のアルトリアとドクター姿のロマニ・アーキマンがいた。

 

「あの武王と魔導王の一騎打ちの試合を行うらしいですね、まぁ、何というか勝ち目が分かりきったような…」

 

アルトリアの言葉にソロモンが『まぁ、別にいいんじゃない?』と言ってジュースを飲み始める。

 

試合は白熱した戦いを見せていた。

 

「しっかし…この国の皇帝は喉が壊れるんじゃないかくらいの叫び声あげますね…」

 

客席にまで聞こえてくるジルクニフの大声

 

明らかに武王を応援し、魔導王が負ける事を望むような言葉

 

「分かりやすい皇帝だなぁ」

 

子ギルは宝物庫からお菓子を出して食べ始める。

 

数十分後…

 

「あ、終わった」

 

「そりゃ魔導王の方が勝つよねぇ」

 

「さてと、そろそろ会いに行こうか、会談時間になって来てるし」

 

ロマニとアルトリアが立ち上がる中、子ギルは一人座っていた。

 

「ギル?」

 

「あぁ、先に行ってください。僕ちょっと会ってみたい人がいるんで」

 

「余計な事をしないでよ?ギルガメッシュ」

 

「念のためにキングハサンを付けておいた方が良いですね、貴方はよく慢心するので」

 

「あはは、失礼だなぁ〜この姿の時は慢心しないって決めてるんですよ」

 

アルトリアとロマニが居なくなったのを見届けると子ギルは立ち上がる

 

背後にいるキングハサンが動き出すのに少しビクつくが

 

「さてと、魔導王に会ってお話してみようかな、護衛お願いしますね、キングハサンさん」

 

「…心得た」

 

 




ベディヴィエール
円卓の騎士のNPC
【レベル】50
【種族】竜人

【能力】
レベルは円卓の騎士の中では低く、モードレッドからは『ヒョロガリ』と馬鹿にされたりしているが、筋力だけは桁外れであり、レベル100でも羽交い締めにできる。

玉藻の前
【レベル】100
【クラス】信仰系魔法詠唱者
【種族】妖狐

【詳細】
創造主はギルガメッシュではあるが、所属領域はネロの領域。
白野の事を守るという設定(ネロが悪戯してそのように書かれている)になっている。
創造主至上主義の強い円卓やウェイバーを見て『そんなに創造主至上主義とかありえません』とか言ってる。ギルガメッシュの性格の悪さにうんざりしつつも、ギルガメッシュの言うことを割と聴いている。
イケメン大好き。顔の美醜は勿論だが、「魂がイケメン」であれば問題はないらしく、女でも男でも呪術でなんとかなるらしい。
ちなみにギルメン全員はお断りらしい。

【ギルメンへの印象】

アルトリア
人間至上主義が強すぎる。ギルガメッシュほどの破綻した性格ではないと思いつつも、根っこが似通っているなぁと思っている。
彼女一人で転移したら絶対世界がロクでもないことになってたと感じている。

ギルガメッシュ
創造主でありながらあんまり好きじゃない存在。
何を食ったらそんなに性格悪くなれんの?と普通に聞いてシドゥリに怒られた。

ネロ
所属領域の主人。
創造主ではないし、性格的に仲良くなれないと思っているのか割とタメ口。
白野を作ってくれたことに関しては有難いと思っている。

オジマンディアス・イスカンダル
接点がない

ソロモン
外見はイケメン。性格はモンスターだと思ってる。
お茶をする仲ではあるものの、お互い会話が何一つ噛み合ってないのに何故か話が出来てる。


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バハルス帝国へ・それぞれの思惑

ギルガメッシュとアインズ、アルトリアとソロモンがジルクニフが出てきます。

子ギルがプレイヤーとしてアインズに接触します。



評価を気にしすぎて書けない状態が続いたので、しばらく評価一覧は見ないようにして頑張ります!


ーギルガメッシュー

 

ギルガメッシュは闘技場内を歩きながらいろいろ考え込んでいた。

 

「山の翁」

 

「…なんだ」

 

後ろにいるであろう山の翁が声を発する。

 

「僕はこれから『プレイヤー』として彼に会います。何かあったらよろしくお願いしますね」

 

子ギルの笑顔に山の翁は『姿は戻さないのか』と問いかける。

 

「もちろん、戦闘になれば戻すことも考えてますけど、基本的に話たいだけなので、それに、むやみやたらに攻撃してくるようなタイプでもないでしょうし」

 

モモンガの性格を考えれば敵の情報を吟味し、勝てるか否か考えてから行動に移すタイプだろう。

 

何より、彼は石橋を叩いて結局魔法で渡ると言われるくらい慎重な人物だ。

 

アンデットになったとしてもそこは変わらないだろう。

 

「さてと、楽しみだな」

 

 

 

 

ーアーグランド評議国ー

 

ツアーにとって『ぷれいやー』と呼ばれる彼らの存在は厄介な存在そのものだった。

 

「200年前のこと、覚えているかい?リグリット」

 

目の前で紅茶を飲んでいたリグリットに問いかける

 

「あぁ、200年前のことか、覚えておるよ、リーダーが生きていた時代だろう」

 

「あぁ、リーダーやその友が必死にあのギルドと戦ってくれたおかげで今があると思ったんだ」

 

200年前、大陸全土を巻き込んだ戦いを引き起こしたギルド『キャメロット』

 

彼らは個々が馬鹿みたいに強く、八欲王のように何回か殺すことは出来なかった。

 

傷つくのはいつもリーダーやその友、あるいは十三英雄の彼らだけだった。

 

「八欲王の時とは違って、話を聞いてくれる態勢になってくれたのが唯一の救いだったけど…」

 

ツアーは鎧を器用に動かし、立ち上がる

 

リグリットは紅茶を飲み終えるとツアーの隣を歩き始める。

 

「彼らは本当に善なのだろうか、今回の魔導王の到来も知っていて静観していたんじゃないかと思うんだ」

 

「何のために?」

 

ブリテンは自国の安寧が守られるのならば他国に侵攻することはないと200年前に話が取り決められた。

 

しかし、魔導王の到来からどこかブリテンの動きがおかしい。

 

「これから僕はブリテンに向かう。リグリットは王国に行って青の薔薇のメンバーと連携をとってくれないかい?」

 

「構わんよ、ところでツアーよ」

 

「なんだい?」

 

「気をつけるのだぞ」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

ーアルトリアとソロモンー

 

ジルクニフは魔導王が圧倒的な力で武王を倒したのを見て一瞬、属国を願い出しそうになる気持ちを堪えた。

 

「こちらの要望に応えて頂き感謝する」

 

そう言ってジルクニフはアルトリアと握手をする。

 

魔導王に相応するような雰囲気を出す二人の王にジルクニフはもはや驚きもしなかった。

 

魔導王という災厄を見た以上、心の持ちようは変わらなかった。

 

魔導王がいる限り、帝国に未来はない。

 

同盟国であり続ける事はジルクニフにとっても、国にとってもよくない展開であった。

 

「あの魔導王がいるなら、我々も秘密裏に行動するのが得だと判断した」

 

アルトリアの淡々とした声にジルクニフは不気味さを感じるものの、ブリテン王国に魔導国を牽制してもらえるのなら越したことはない。

 

この世界では最強格であるブリテン王国に連合軍の一端を担ってもらえれば良いのだ。

 

「貴殿らと今後、同盟関係を結んで行きたいんだ。もちろん、そちらが優位に立つ同盟内容でいい」

 

「ふむ…」

 

「こっちとしては、なるべく向こうとは戦いたくないんだよね、僕としては…なんだけど、ジルクニフ殿の頼みなら仕方ないかな」

 

ソロモンはアルトリアの方を見る。

 

「…貴殿らと私達で同盟を結べば、あちらも黙っていない気もするが」

 

「それを承知の上でのことなんだ」

 

 

 

 

 

 

〜数時間前〜

 

子ギルはキングハサンと共に武王を倒したばかりのモモンガの元に来ていた。

 

「流石は魔導王、手加減無しの攻撃、お見それするなぁ」

 

「!」

 

そう声をかけて近づくと、アンデットなのに分かりやすくこっちを見てくるモモンガ。

 

アンデットなのに動揺しているのが手に取るようにわかる。

 

「お疲れ様です。あれ?NPC連れてきていないんですか?珍しい」

 

子ギルは辺りにいるのは、エイドエッチ・アサシンしかいないのを確認する。

 

「……そういうお前も、連れてきていないな」

 

警戒しつつも一応会話はしてくれるモモンガに笑う

 

「一応は連れて来てますよ?僕が危険に陥らない限り攻撃しないように言ってありますし」

 

子ギルはニコーと笑う

 

そんな笑顔の子ギルをよそにモモンガは早速、対プレイヤーの対策をしているのがわかった。

 

「そう警戒しないでください。僕は話しに来ただけなんですよ、モモンガさ、ここはあえてアインズ・ウール・ゴウンさんと呼びましょうか」

 

「……話?」

 

「はい、世界征服を目指してます?もしかして」

 

「!!」

 

「アンデットになっても分かりやすいなぁ」

 

子ギルはスキップしながら近くにあった椅子に座る。

 

「別にこの地帯を征服する分には僕は止めません。それに、プレイヤーの転移は久しぶりだから楽しみにしてるんですよ」

 

「……楽しみ?」

 

「はい、だってプレイヤーと対抗出来るのはプレイヤーしかいないじゃないですか、だからこそ楽しみにしているんですよ」

 

そう言って手を振って通り過ぎて行く

 

子ギルはアインズの横を通り過ぎて、アルトリア達がいる方向に向かって行く

 

「十三英雄以上に楽しませてくれるかな」

 

 

 

 

 

 

「あ、終わりました?」

 

子ギルが声をかけてくる

 

「…随分長いこと出かけてたな」

 

アルトリアの言葉にソロモンが後ろから『余計なことしてない?』と声をかけてくる。

 

「失礼だなぁ、してませんよ」

 

そう言って馬車に乗り込む

 

アルトリアの横にソロモンが座り、目の前に子ギルが座る。

 

ソロモンが小さい声で「いつまでその格好なの?」と問いかける。

 

「帰るまでです!」

 

笑顔で言う子ギルにソロモンが『あ、そうなの』と返す。

 

「それで?話とやらはして来たのか?」

 

アルトリアの質問に子ギルは頷き

 

「して来ましたよ、アンデットなのにわかりやすいぐらい驚いて来ましたから、それと、向こうは世界征服を目論んでるらしいです」

 

「ほう…」

 

「世界征服かぁ…モモンガさんって、そんな大胆なこと考える人だったっけ?」

 

「さぁ、向こうの意思なのか、NPCの意思なのかどっちか分かりませんけど、後者なら御し易いことこの上ないですよ」

 

「それで?今回の帝国との同盟の話だが、した方が良いと思うか?」

 

アルトリアの言葉にソロモンは『うーん』と考え込む一方、子ギルは『ほっときましょう』と笑顔で返す。

 

「…なかなかゲスいなぁ、笑顔で」

 

「だって、他国のことなんてどうでも良いじゃないですか、それよりも東洋の方に侵略しましょうよ、あっちの方が資源がありますし」

 

「……」

 

「様子見ってことでOK?」

 

「OKです!」

 

「…そうだな」

 

馬車はキャメロットに着く

 

 

ーリ・エスティーゼ王国ー

 

内ポケットに入れていたマジックアイテムが震え、クライムはそれを取り出した。

 

手の中に収まる大きさで、三つの針、時計と分針とそれを取り囲む十二の数字が盤面に刻み込まれた懐中時計だ。

 

時計の名称は『十二の魔法の力』と言い、1日に1回、セットした時刻になると、その時間に応じた魔法の力を発揮するのだ。

 

ただし、その恩恵に預かるには最低でも一日は時計を所有する必要があるので、借りたばかりのクライムには魔法の力は発動しない。

 

「ん?もう時間?早いね」

 

隣でぼんやりと青い空を眺めていた女性が声をかけて来た。

 

「そのようです」

 

クライムはその女性、アダマンタイト級冒険者チーム『蒼の薔薇』の構成員であるティナに答える。

 

「では、姫に声をかけてかけてきます」

 

「いってらー」

 

クライムは踵を返し、今まで後ろに守っていた建物へと向かう。

 

建築中には何度か見たことがあったが、落成した建物の中に入るのは今日が初めてだ。

 

建物に入り、通路を通り抜け、奥の部屋の扉を開く

 

そこに自らの主人がいた。

 

そして、その部屋には幾人もの子供達がいる。

 

「おい、小僧が来たぞ、もう時間だ」

 

仮面の下からか聞こえる冷たい声に、ラナーが顔を上げてクライムを真正面から見た。

 

「……申し訳ありません。ラナー様。王宮に戻る時間となりました」

 

「そうですか、それでは名残惜しいですが、行かなくてはなりませんね」

 

子供達が『えー』と残念そうな声を上げた。

 

ラナー達は馬車の方に向かう

 

孤児院を作った話になり、ラナーは孤児院を作ったことは後悔しないと話していた。

 

「ふーん。王女様、頭いい」

 

「何が言いたい?ティナ」

 

「親をは失った子供ってどうやって暮らしていくと思う?イビルアイ」

 

「…それは、なるほど…だから孤児院か」

 

「親御さんがいる子供であれば、避難民として帝国かブリテン王国が迎い入れてくれるらしいですが、近年、帝国は魔導国との関係故に避難民を受け入れる体制にありませんし、皆さんブリテン王国に向かうにも距離的な問題から断念される方が多いですね」

 

ラナーはハァとため息をつく

 

 

妹が帰って来たという報告を聞き、第二王子であるザナックは出迎えるべく部屋を出た。

 

兄・バルブロが行方不明になり、時間がそれなりに経過しているため生存は絶望視され、ほぼ次期王に内定したとも言える彼の方から妹のところに出向くのは、本来ならおかしい。

 

兄妹であろうと、明確に身分の差があるのだ。

 

今のザナックには後ろ盾に不安がある。

 

共に王国を発展させると約束したレエブン候は引き止めるザナックの手を振り払い、自領へと戻ってしまった。

 

ザナックは自分の胃の辺りに軽い痛みが走るのを感じた。妹に相談すれば、少しはこの痛みも収まるだろうか

 

ザナックはこの数週間、一つの問題を抱えていた。

 

それは魔導王に献上品を贈るかどうか、贈るとしても、建国記念として贈るか、それとも別の理由をつけて贈るかだ。

 

現状では贈らないという選択肢が妥当だろう。領土を奪われて建国された国に対して贈り物をするなど、従属の印と周辺諸国に受け取られても仕方ない。

 

下手に今出してはブリテン王国に援軍を頼む手も送れなくなる。

 

「……どうしたら良いのか」

 

ザナックはお付きの者に聞こえないぐらいの声量で呟き、歩いていく



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十三英雄とキャメロット

十三英雄と絡みがあります。

捏造に捏造があります。


ー王様の一日ー

 

この世界に転移して来てから数百年

 

最近は毎日変わらない生活が続き、アルトリアも平穏な日々に満足していた。

 

朝7:00ちょうど、メイド達数人が部屋に入ってくる。

 

「…おはよう、ガレス」

 

朝、すぐそばにいるガレスに声をかける。

 

「おはようございます。陛下」

 

そう言って肩に羽織をかけてくれる。

 

ブリテン王国内で何があったかをまとめた書類を受け取り、読み始める。

 

新聞を読みながらガレスが淹れてくれたコーヒーを飲む

 

8:00になり、朝食を摂る為に大広間にいく

 

「おはよう、アルトリア」

 

大広間にいたのはソロモンで、先に食事をしていた。

 

「今日も早いな」

 

そう言って座る。

 

「そうかなぁ?6時って早いかな?」

 

「早い方だな」

 

食べ終わり、それぞれ執務室に向かう。

 

8時以降になればオジマンディアス達も起きて来始めるが、ネロだけはいつも11時と遅かった。

 

「ネロは相変わらず自由気ままだな…」

 

そう呟くとガウェインがうんうんと頷いていた。

 

「今日も変わらないか?」

 

「はい。周辺諸国の変動も特にありません。自国内につきましては…」

 

言葉を濁したガウェインに「どうした?」と問いかける

 

「ここ最近、ビーストマン連邦からの避難民が後を絶ちません。避難民による物資略奪もあり、騎士達が対処しているのですが…」

 

ビーストマン連邦による苛烈な侵攻。

 

人間達はバハルス帝国かブリテン王国に逃げている。

 

無作為に入れる事はキャメロット内の安全から考えれば、あまりしたくないのだ。

 

無論、明らかに無害な人々は順立って向かい入れているのだが、それでも、避難民の待機場所では犯罪が横行している。

 

犯罪が横行しているという事はそういうことだ。

 

「…キャメロットの首都に入ってきた際に犯罪の可能性がある…か」

 

「はい。検問を厳しく設けてはいるのですが」

 

「………」

 

悩んでいると

 

「!」

 

キャメロット内を囲っている障壁が揺れるのがわかった。

 

『アルトリア、白銀の鎧が来たぞ』

 

《伝言》でイスカンダルが言ってくる。

 

「わかった。今行く」

 

歩きながらガウェインに事情を話し、イスカンダルの横に転移する

 

「…珍しいな、一人で来るとは…他にいたか?」

 

だいたい、ここに来るのは十三英雄のリーダーとプレイヤーの一人ぐらいだ。

 

白銀の鎧もといツアーは単独ではここに来ない。

 

「それがなぁ?辺りを見渡しても、特におらんのだ」

 

「そうか、戦いに来たわけではなさそうだな」

 

そう言ってアルトリアは結界の外に転移する。

 

「久しぶりだな、ツァインドルクス=ヴァイシオン」

 

「……あぁ」

 

一言で返してくるツアーに首を傾げる。

 

「どうした、わざわざ此処に来るなんてどうかしたか?」

 

ツアーとアルトリア達はお世辞にも仲良いとは言えない。

 

仮にも50年前に戦った仲だ。

 

「…リクが病気になった」

 

「何?」

 

『リク』

十三英雄のリーダーにして、自分達キャメロットのメンバーと同様に、この世界に転移してきたプレイヤーだ。

 

自分たちと違い、二人だけでこの世界に転移してきたプレイヤーだ。

 

「治癒魔法を使っても治らないんだ、どうして良いのか分からない」

 

「…だから、私に頼ってきたわけか…」

 

50年前の戦いの際にツアーと戦いを行い、知り合い程度の仲になったアルトリアとツアー

 

「…すまない」

 

「別に謝る必要はないが…良いのか?私に相談して、君の仲間は酷く怒るんじゃないか?」

 

竜王達はプレイヤーをかなり嫌っている。

 

この世界にとっては脅威でしかない力を持ち、なおかつ自分たちは50年前まではこの世界を派手に荒らしまくった存在だ。

 

ゲーム感覚が無くならなかった所為でもあるが

 

「それでもいい」

 

「………」

 

ツアーが頼むなんてよっぽどのことだろうと思ったものの、頼みを断るほど残酷でもない。

 

「少し待っていてくれ、用意してくる」

 

そう言って結界内に戻り、同行するNPCと共に十三英雄が拠点を置いてる場所にくる

 

「ガウェイン、外に待機していてくれ」

 

「かしこまりました」

 

テントの中に入ると…

 

「…なるほど…」

 

リーダー『リク』はかなり弱っていた。

 

主に精神面に関してなのだが

 

「…リク」

 

そう声をかけそばに座ると

 

「……驚いた、君が来たんだ」

 

リクが日本語で話しかけてくる

 

「リーダー?」

 

リグリットが心配そうに声をかけてくる。

 

「ツアーが、何処かに行ったからなんだろうと思ったけど、君を呼びに行ってるなんて」

 

「…相当心配していたが」

 

リクともう一人、ユグドラシルプレイヤーがいない。

 

「…不治の病にかかったのかもしれないから、見に来て欲しいと私に直接頼んできた」

 

「あはは、ツアーらしくないなぁ」

 

リクとアルトリアが聞き覚えない言葉で話しているのをツアーとリグリットは黙って見ていた。

 

「…それで?敵である私が来たわけだが、寝込んだ理由は仲間を失った所為か?」

 

「そうだね、それもあるよ、それと…今は日本語で話してるから、そのロールプレイしなくても大丈夫だよ」

 

「……今やめると、これからも大変な気がするからこのまま続けた方が良いと思ってるんだ」

 

「俺と違ってNPCも一緒に転移してきてるからね」

 

笑うリクの目の下に隈がハッキリと映る

 

「…それで?その、不治の病を治すには何をしたら良い?」

 

不治の病と言ったら不治の病なのだろうが、本人が立ち直る気がなければ治らないのだ。

 

「………」

 

リクは遠くを見つめ

 

「……帰りたい、アイツと一緒に帰ってバカしたかった。君たちみたいに恵まれた家庭に生まれて無くても、幸せだった」

 

貧困層と富裕層に二極化されたとしても、あの世界には確かに大切なものがあった。

 

「………」

 

「…この世界に来て、意味が分からないまま右往左往して戦い続けて…もう疲れちゃったんだよ」

 

体育座りのような姿勢になる。

 

「……少し待っててくれ」

 

そう言って耳に手を当てる。

 

「ギルガメッシュ、少しアレを貸してくれないか?」

 

そう聞くと、向こうで何か言ってきたのか、アルトリアが「……茶化すんなら早くくれない?」と敬語が崩れていた。

 

そう言って、アルトリアが手元に出したのはお守りのような袋だった。

 

「はい」

 

そう言って渡されたモノをリクは握る。

 

「……これって…」

 

「ユグドラシルアイテム『思い出の欠片』だ、ユグドラシルじゃ使い捨てのアイテムだが、まぁ…使い方はわかってると思うけれど…」

 

「…ありがとう、アルトリア」

 

この世界の言葉に直して礼を言ってくる。

 

「……こんなもので、本当に申し訳ないな」

 

穏やかに死ねるような自爆アイテムを渡したことに謝罪する。

 

リクの病気は物理的に治せるようなものじゃない。

 

「ううん、このアイテムは俺も持ってなかったから助かったよ、ありがとう」

 

「それじゃ、私はこれで帰る。あまり離れているとギルガメッシュがいたずらをするからな」

 

「引き止めてごめんね」

 

マントを翻してその場から立ち去る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数百年後〜

 

 

「……懐かしい夢を見た…」

 

アルトリアは一人、寝室で独り言をつぶやく

 

同じプレイヤーである『リク』が死んでから数百年経過したかもしれない。

 

リクが死んでからあまり外を出歩く事が無くなった。

 

「…命の終わりか…」

 

アルトリアは空を見上げる。

 

「…まぁ、まだ終われないけれど…」

 

ナザリック地下大墳墓の到来、人間国家の危機

 

ギルガメッシュが本格的に愉悦に乗り出していること

 

「アルトリア様、おはようございます。ネロ様が話したいことがあるとのことです」

 

「分かった」

 

そう言って着替え始める。

 

(…今日は早いな)

 

いつもは誰よりも遅くまで寝ているネロがいのいちに起きて、何の用だろうか



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滅亡の序章

ーキャメロット・温室ー

 

キャメロットの第一階層、温室内にて、アルトリアとネロは二人でくつろいでいた。

 

ガレスとミアは後ろで立っていた。

 

「…最近は退屈だなぁ…戦いもないし、東洋の方は無血開城でなんとかしてるし…」

 

「それを聞くと暴れるのが楽しいという野蛮な意味に聞こえるが」

 

「むぅ、だって仕方ない、ここ最近暇だからつまらないのだ!」

 

ネロはジタバタする。

 

「ところで、魔導国が建国されてから数ヶ月経過しているが、これからどうする?あの国は、人間を家畜あるいはペッドにする気満々だが」

 

「まぁ、それは言えるな、余は別にどうでも良いと思ってるぞ、逃げてくるならば守るが、逃げなければ守る筋合いもないだろう?」

 

「…それもそうだが…」

 

「アルトリアはなんでも気負いすぎなのだ。人間全体を守るなんて不可能なことは考えなくても良い!逃げてきた人間のみ、助けを乞うた人間のみを助けなければ、それこそ身を滅ぼしてしまうぞ!オジマンディアスも言っていたではないか!『限られた人間を救い、守る方が得策』だと」

 

「………」

 

ネロの考え方には一理ある。

 

確かに魔導国の侵攻をほったらかしにしていても、キャメロットに不利益はない。

 

むしろ、構えばそれなりに不利益がある。

 

「…ネロ、ラナー王女とその従者の件はどうなっているんだ?」

 

「うむ!手土産を用意して行くと言っておったぞ!」

 

自信満々に言うネロに「そうか」と返す

 

 

 

 

 

 

ーリ・エスティーゼ王国ー

 

ザナックはラナーと歩きながら、一人考え事をしていた。

 

魔導国の戦力は未だ不明ながらも、魔導王一人で十分に国を滅ぼせるというのは既に知られている事実だ。

 

彼の目が王国にこれ以上向けられるのは絶対に避けなければならない。

 

だからこそ、贈り物でもして、ザナック的には従属と受け取られても構わないと思ってはいるが…

 

しかし、それを貴族たちが認めるはずがないというのが厄介な問題だ。

 

「魔導国から使者の方でもいらっしゃいましたか?」

 

ザナックは心臓が一つ大きく打つのを感じた。

 

こちらからのアクションを考えるあまり、思考が疎かになっていた。

 

「そうではない」

 

「それ以外にわざわざ私に会いに来られるほどの事がございますか?」

 

「あぁ、贈り物をどうするか考えていてな」

 

「使者の方がいらっしゃった時に今のお兄様が考えていらっしゃる倍の物を送ればよろしいかと思います。来てくださった労で半分、残りの半分は…いうまでもありませんね」

 

ザナックは何も言わずにラナーの言葉を噛みしめる。

 

それは非常に良い手だ

 

「ブリテン王国についてはどうする」

 

ブリテン王国、数百年前から存在する最強格の国家。

 

スレイン法国やアーグランド評議国と幾度となく争い、勝ちを収めている。

 

それに、最強格であるあの国に応援を求めれば、最低でも魔導国を牽制できる力を持っているだろう。

 

「ブリテン王国に関しては、使者を送って様子見した方がよろしいかと思います。彼の国は、近年東洋の方に侵攻されてますから、こちらに構う気がなければ使者の方を追い払うと思われますし」

 

「…そうだな」

 

ブリテン王国は確かに気まぐれなところがある。

 

助けてくれる時は助けてくれるのだが、助けるメリットがないと感じられてしまえば、助けてくれないのだ。

 

「王子、陛下がお呼びです。王女もお願いします」

 

「何事か?」

 

「はい。魔導国から外交使節団が来るという報告が入ったそうです」

 

「わかった、今すぐ向かうと伝えてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「王国の半分を手土産にか」

 

ギルガメッシュはラナーからの手紙を読みながらため息をつく

 

「王国全てを渡すことは不可能だと言っておりました。魔導国をそこまで欺くことは出来ないと」

 

「…しないだけで出来るだろうな、あの女は」

 

「どうされますか?」

 

シドゥリの質問にギルガメッシュは手紙を投げ捨てる。

 

「我は別に国などどうでも良い。楽しめるのならばな」

 

バハルス帝国もその内、手中に収まるのだ。

 

「王!!白金の竜王がギルガメッシュ王に会わせろとのことです!」

 

「ほぅ、ついにきたな、出迎えておけ」

 

「かしこまりました」

 

ギルガメッシュは立ち上がり、武装した状態で出入り口に向かう。

 

 

 

ツアーはブリテン王国の首都・キャメロットに来ていた。

 

白亜の城がそびえ立つ

 

魔導国の到来は周辺諸国を動揺させるのに容易かった。

 

(100年の揺り返し…間違いなく悪だ、彼らは世界に害をなす存在だろう)

 

出来るならば、ブリテン王国と共にあの国を滅ぼしたいのだが、彼らはやる気があるのだろうか?

 

(…リクが個人的に仲良くしていたアルトリア・ペンドラゴンは、あれ以降、周囲に対して関心を向けていないし…困ったな)

 

アルトリアは他のギルドメンバーとやらより、最も話が出来るし、こちらが困っていると言えば、ある程度は力を貸してくれる。

 

しかし、彼女は近年、外に出てくることはあまりなく、あったとしても何も言わないことが多い。

 

「ほぅ、わざわざ結界を攻撃してまで来るとは相当やられたいようだな」

 

「!」

 

黄金の光と共に現れたギルガメッシュに内心嫌な感覚になる。

 

『ギルガメッシュ』

 

キャメロットにおいては最も話が出来ない存在だ。

 

そもそも、彼は己の快か不快かで行動している節もある。

 

「やられたくて来るほど変態ではないよ」

 

「そうか」

 

ギルガメッシュは腕を組み、話を聞いてやろうみたいな姿勢になる。

 

「魔導国について君は知っていたのか」

 

その問いかけにギルガメッシュが『あぁ、そんなことか』と返して来る。

 

(…やっぱり)

 

彼は知っていて黙認していた。

 

「知っていたかと問われれば知っていただろうな。だが、それがなんだ?あちらの国がどうなろうと知ったことではない」

 

「……魔導国と戦うつもりはあるか?」

 

その質問にギルガメッシュは「暇つぶしなら良かろう」と返して来る。

 

(…参ったな)

 

協力してくれることに越したことはない、しかし、下手にかき乱してしまえば対策も後手に回ってしまう。

 

「……わかった、こちらでも何か分かれば相談に来る」

 

そう言うとギルガメッシュは悪い顔をし、霊体化して消えていく

 

 

 

 

 

 

ーリ・エスティーゼ王国ー

 

ロ・レンテ城にて

 

歴代の王が執務して来た部屋に本来の主人たるランポッサ三世の姿はなく、代わりに第二王子たるザナックの姿があった。

 

ザナックは上げられた書類に目を通し、暗い表情で重いため息をつく

 

書類に書かれている内容は王国の現状を知らしめるものだ。

 

【カッツェ平野の戦い】で多くの民が死亡した。

 

とはいえ、王国が致命傷を受けたというほどではない。

 

王国の民はおおよそ九百万。戦死者はその内の十八万程度しかない。

 

それに、農村の次男・三男などの予備とも言える者達などが多く、言葉は悪いが死んでも困るわけではない。

 

「ブリテン王国との同盟関係はどうなってますか?」

 

「あぁ、動いているが、良い返事はないな」

 

ブリテン王国と会談する手はずになっているが、そこで結果を出せるのかと言ったら微妙なところだ。

 

「評議国と同盟は結ばないのですか?」

 

「…あぁ、それについても動いてはいるが、なかなかに厳しいな、ブリテン王国さえ返事してくれたら他の国も動いてくれるのだろうが…」

 

ブリテン王国は大陸を統治している巨大国家であり、この世界においては最強格の国だ。

 

彼の国が協力姿勢ならば、他国も協力してくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

リ・エスティーゼ王国に向かうことになったアグラヴェイン、ガウェイン、玉藻前が来ていた。

 

それと、キングハサンも付いて来ている。

 

「今回の王国との同盟についてですが、王国に対してのメリットがほとほとありませんね、放っておけば簡単に滅びそうですし」

 

ガウェインの言葉にアグラヴェインがため息をつき

 

「他王はリ・エスティーゼ王国を侵略するつもりの魔導国の好きにさせろと言っていたから、我らの目的は弱者の救済のみ」

 

「弱者の救済ってねぇ…助けを求めていない人々を救済するのって救済って言えるのですかねぇ」

 

玉藻前の言葉にアグラヴェインは無言を貫く

 

「…ギルガメッシュ王の考えることなど分かりたくもないが、ギルガメッシュ王の目論見は魔導国がある程度巨大化することだろう。そうでなくては張り合えないとも言っていたしな」

 

「…あの人って本当に悪趣味ですよね、何食べたらあんな性格悪くなれるんでしょう」

 

アグラヴェイン達一行は馬車が王都に着き、仰々しく出迎えて来る王国の兵士たちを見る。

 

(…明らかに質は落ちて来ているな)

 

兵士全体に緩みが見られ、なおかつ、揃ってる貴族達はある程度の礼儀はあるものの、こちらを見る目が奇異に満ちている。

 

「………」

 

出迎えて来た王にも疲れきったような表情をしていた。

 

唯一、気を張っているのはザナック王子ぐらいだろう。

 

「こちらへどうぞ」

 

ランポッサ三世の言葉に従い、宮殿に向かっていく



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愚かな王

胃薬飲まないと仕事出来ない体になりました。

今回は王国滅亡編の続きでございます。


ーリ・エスティーゼ王国ー

 

ザナックはブリテン王国からの先触れに会い、父王と共に話をしていた。

 

今後の王国としてのあり方、同盟を結ぶことで得られることを進言していたのだが…

 

(…手応えはないな…)

 

会談中もブリテン王国の宰相位の一人であるアグラヴェインの反応はイマイチだった。

 

「同盟についてなのだが…」

 

そう切り出した際にアグラヴェインは耳に手を当てていた。

 

「出来る限り助けたいというのが、獅子王陛下からのお言葉だ、だが、無条件に助けるのもこちらにとっては利益がない」

 

アグラヴェインは表情一つ変えない。

 

「私個人の見解を述べれば、悪化していく王国よりも、少しの打撃で反映する見込みのある帝国のどちらかを取れと言われたら、私は帝国を守るために動くでしょう。他の王方々もそう言っておられる」

 

「……」

 

アグラヴェインの言葉に父王は何も言わない。

 

何も言えないのだろう。

 

(…クソ、ここは…俺が…)

 

声を出そうとした際、父王が立ち上がる。

 

「ならば…ならばせめて、領民の避難を、魔導国が攻めて来た際に領民と我が子供達を避難させて頂きたい」

 

そう深々と頭を下げる父王にアグラヴェィンは無言になる。

 

「…そのように進言してみよう」

 

その言葉に父王は「感謝する」と言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーアインズー

 

「アインズ様、各階層守護者、御身の前に揃いました」

 

「うむ、各階層守護者ご苦労。頭を上げよ」

 

「はっ!」

 

歯切れの良い返事と共に顔を上げる守護者達

 

一糸乱れぬ統率された動きだ。

 

本来であればアルベドが許可を出していたらしいが、そればかりはやめた。

 

上に立つ者は下の者に軽々しく声を聞かせるべきではないと言われても、そこまで隔絶されたくない。

 

「さて、アルベドよ、ここに全員集めた理由を聞かせてもらおう。魔導国にとって重要な案件なのだろう?」

 

「はい、先日、王国にブリテン王国の騎士達が来ておりました」

 

「!そうか、観察はできたか?」

 

『ブリテン王国』

 

唯一のプレイヤーの国家にして、ナザリックと対等以上に戦える国家だ。

 

「いえ、向こうもこちらが見ていることに気づいており、会話までは盗めませんでした。申し訳ありません」

 

頭を下げるアルベドに『良い』と言う。

 

キャメロットにいるプレイヤーは皆個性が強く、富裕層であった故にアインズよりも頭が回る。

 

特にギルガメッシュやオジマンディアスなどはあの世界では支配層だったのだ。

 

「あのラナーという王女からの情報は聞き取れたか?」

 

「はい、ブリテン王国は王国との同盟を拒否したとのことです。代わりにバハルス帝国と同盟を結ぶと言っておりました」

 

「……そうか」

 

バハルス帝国がブリテン王国とつながっていると分かってしまえば、フールーダにも下手に情報を渡せない

 

まぁ、情報を聞き出す所が減ってしまうが、デメリットを考えれば仕方のないことだ。

 

「してアルベドよ、その騎士達と言うのは誰だった」

 

「円卓の騎士・アグラヴェィン。同じくガウェインと判明しました」

 

「ふむ…」

 

レベル100のNPCである二人が王国に来ているとなれば、相応の護衛をアルベドとデミウルゴスに付けなければならない。

 

「ならば、今後はマーレを連れて行くように、流石のあの騎士達もむやみに攻撃をするタイプではないからな」

 

「は、かしこまりました」

 

「最も警戒すべき敵は、キャメロットの最強のNPCであるキングハサンだ。アレが出て来た場合は至急ルベドを配置するように」

 

『キングハサン』

 

キャメロットにおいて、最強を収める存在

 

ユグドラシルにおいてかなりの違法の元製作されたNPC。

 

運営に何か根回しでもしない限り、あのNPCは誕生しない。

 

キングハサンはユグドラシルにおいて寿命のない種族に死を付与するという破格の能力を持っている。

 

そしてスキル《気配遮断》があり、並大抵のプレイヤーは首を斬られるまでその存在に気づかないのだ。

 

「はっ」

 

「さて、アルベドよ、ここに集めた理由はブリテン王国のことだけではないだろう?」

 

「はい、単刀直入に申し上げます。四日ほど前、聖王国に運搬途中の私どもの食料が王国内にて奪われました」

 

「ほう?何者に」

 

「王国の貴族です」

 

アインズは目の灯を瞬かせる。

 

アルベドにしては歯切れが悪い

 

普段の彼女ならその貴族の名前や兵力、狙いを即座に聞かせてくれたはずだ。

 

何か理由があるのだろう、と思いながらアインズはさらに質問を投げかける。

 

「運搬を任せている八本指の息がかかった商人には敬語の兵をつけているのではなかったか?それに、我が国の旗まで掲げているという手筈だったな?つまり、魔導国と正面切って戦うことを王国は望んだということか?」

 

王国の態度からすると魔導国とは戦いたがらないという考えていたのだが、それは考え違いをしていたのだろうか

 

「ブリテン王国ノ謀略カ?」

 

コキュートスの言葉にアインズもそう感じてしまうが…

 

「いや、あの国はこんな地味なことはしないだろう。彼らは真正面から戦端を切ってくるタイプだ。武力もあるからな」

 

「八本指が裏切ったという線もあるか」

 

「いえ…その」

 

言葉を濁しつつ、アルベドが目を伏せる

 

なんというか、彼女がこんな態度を取るのは珍しい

 

「どうした?アルベド。何かあったのか?」

 

堂々とした態度を崩さないように気をつけながらアインズの背中は嫌な汗に濡れた。

 

「アインズ様…王国を支配下に置くために愚かな貴族を利用するという計画を覚えていらっしゃると思うのですが…」

 

「その愚か者が何か関係しているのだな」

 

「はい。その愚か者が今回の事件を引き起こしました。ただ、アインズ様も可能性の一つとしてお気づきかもしれませんが、これ自体が王国首脳部な仕掛けて来た謀略という線もございます」

 

その馬鹿貴族が起こした証人としてヒルマがやってくる。

 

ある程度事情を聞くと

 

「貴族からの返事を見せてもらったが、あれは完全にお前に魅了されていた様子だった。あれが魔導国に敵対するとは到底思えんぞ」

 

「はい。その辺りは詳しく調べましたが、旗印として食料を奪ったのは間違いございません。ただ…魅了や洗脳などといった手段によって操られたという可能性もないわけではありません。実行したのは事実です」

 

「しかし、我々の上を行く知者による謀略という点も捨てがたいのです。そうなると下手に動くと相手の良いように利用されるだけで終わることもありますし…」

 

アルベドが苦い顔をし、デミウルゴスも同じ顔をした

 

「その貴族が何も考えずに行動しただけじゃないのか?」

 

「アインズ様、いくらなんでもそれなはないかと思うのですが…」

 

アルベドが申し訳なさそうにそう言う。

 

「いや、待ちたまえ、アルベド。私たちは知者の策を先回りする程度しかできないが、アインズ様は愚者の暴発でさえ読み切る。もしかするとその可能性もあるんじゃないか?」

 

「で、でも、そこまでのバカなんて…ありえるの……?でも、アインズ様が……」

 

「あのアインズ様がそう言うんだから正解なんじゃないの?アルベド」

 

 

 

 

 

 

 

ー玉藻前ー

 

玉藻前は一人、宮殿から離れて王国の街を歩こうとしていた

 

《一人で出歩くのは危険だが》

 

そう闇から声をかけてくる存在に玉藻前はハァとため息をつく

 

「むやみやたらに歩き回りませんよ〜ただ気分転換をしたいから出てきたんですよ」

 

《そうか》

 

キングハサンの声にため息をつく

 

玉藻前が外に出ていたことに気づいた粛清の騎士達が出てくる。

 

「…まーたく、仰々しいですねぇ」

 

《それもまた仕方のないこと、主は以前に…「はいはい!ごめんなさい!それは」》

 

割り込んで言ってくる玉藻前にキングハサンが『分かっているならよし』と言って姿を消す。

 

「玉藻前」

 

「…キングハサンの次はゴリラですかぁ〜?」

 

「ゴリラ……」

 

粛清の騎士達が間を開ける。

 

「この国についてどう思います?」

 

その言葉にガウェインは街並みを見る。

 

「人に罪はない、しかし、あの王には罪があります」

 

市民に罪はない。

 

むしろ、無辜の人々である市民は守る対象になる。

 

「そうですねぇ…優しいだけの王は王として失格ですし〜?」

 

獅子王と英雄王を思い出す玉藻前

 

あの二人は全く似ていないが、ランポッサ三世とは大きく違うところがある。

 

それは、国のためなら、多数のためなら少数を切り捨てるのも辞さないところだ。

 

玉藻前の言葉にガウェインは『そうですね』と返してくる。

 

「おや、珍しいですね〜他国の王であろうと批判しないのに」

 

ニマニマと笑う玉藻前に真面目な表情で

 

「えぇ、よその人間が他国の王を酷評するのは間違っています。しかし、今は状況が違う。かの王は判断を見誤った、今すべき選択はあれではないというのに…」

 

ランポッサ三世は優しさで人を救おうとしている節がある。

 

すると…

 

「ガウェイン卿、玉藻様、報せです」

 

小太郎が二人の横に現れる。

 

「どうしました?」

 

「魔導国が宣戦布告をリ・エスティーゼ王国に突き付けました」

 

「どうします?庇います?」

 

「………」

 

ガウェインは《伝言》で獅子王に報告する。

 

「王、魔導国がリ・エスティーゼ王国に宣戦布告を行いました。どうされますか」

 

その質問に獅子王は冷静な声で

 

『戻って来るのだ、ガウェイン卿』

 

「かしこまりました。市民の避難はいかがされますか?」

 

『来るべき時が来れば行う』

 

「はっ」

 

転移門が現れる。

 

「アグラヴェィンを待ちましょう」

 

そう言うと玉藻前が「遅いですねぇ」と言って中をのぞいていた。



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『普通』の人々

ーリ・エスティーゼ王国ー

 

その一室は今、人の集まりが生む特有の熱気に満ちていた。

 

人数はさほどでもないが、部屋自体がそこまで広くないことと、何より彼らの真剣さが室内の温度を上昇させている。

 

部屋の中央には長方形のテーブルが置かれ、その最も上座となる場所に座るのがランポッサ三世、そのすぐ右に座るのが第二王子のザナックだ。

 

ほかに着席しているのは、王国の各尚書などの重臣達であった。

 

「それでは宮廷会議を行う。今回の議題は魔導国の宣戦布告の件に関してだ」

 

宣戦布告という強い言葉を使ったが、全員に緊張感を持ってこの会議に臨んでほしいと思ってのことだ。

 

ザナックは父の横顔をちらりと盗み見る。

 

最も心配なのは父の判断だ。この件がどれほど危険なのかを十分に理解し、最適な行動をとってくれるだろうか?

 

(あいつを殺した魔導王に対して、おもうところがあるだろうかなら…)

 

戦士長・ガセフが死んだ時、父は我を忘れて動転していた。

 

以来、父は一気に老け込んだように見えた。

 

本当に骨と皮だけの人形になったかのようだった、

 

今回の議題は、数日前、魔導国から使者が訪れ、王国側に魔導国の国璽の押された正式な文書を渡して来たこと

 

その内容は『魔導国が聖王国に対する支援は一環として送っている食料を、王国の者がその武力で強奪した。これは魔導国に対する敵対行為とみなし、宣戦布告も辞さない』というものだった。

 

更にそれに、魔導国の判断は間違っていないと賛同する国まで現れた。

 

ブリテン王国の使者はまだいるが、宣戦布告の件をどういう手順で知ったのか「一度帰還する」と言って背を向けた。

 

「使者が持ってきた書面に押された六つの印。二つに関しては調べがつくのが遅くなり、申し訳ございません」

 

頭を下げた外務尚書だ。

 

「わかっていたのは魔導国、帝国、竜王国、聖王国の四つでしたな?」

 

「その通りです」

 

「評議国と法国以外は魔導国に賛同して王国を非難しているというのは、魔導国の謀略ではなく、事実なのだな」

 

「はい、陛下」

 

疲れたように父がため息を吐き出した。

 

「竜王国も魔導国に屈したか」

 

「とは言い切れません、陛下。竜王国で何かが起きたという情報は入ってきておりませんので、恐らくは言いくるめられた、もしくは王国に味方するよりかは魔導国についた方が利益が大きいと踏んだからと思われます」

 

竜王国はあくまでも魔導国に賛同しているだけであって、かの国自体がどうこう動く気配はないということだろう。

 

「ブリテン王国は何も言っていないのか」

 

父の言葉に外務尚書が首を振り

 

「"市民は避難させど王国と魔導国の戦いに首を突っ込むつもりはない"とのことです」

 

ブリテン王国の言葉に重臣達はため息をつく者もいれば、中には忌々しげに何か話していた。

 

「…今回の事件についてなのですが、陛下、犯人が誰かまでは分かっております」

 

重臣達が驚いたような表情を浮かべた。

 

「これまでに分かった事は、どうもフィリップ・ディドン・リイル・モチャラス男爵なる人物とその領民達が犯人のようです」

 

「モチャラス?」

 

「聞いた事あるか?」

 

重臣達が聞いたことのない名前に首を傾げていた。

 

「…これは陛下。やはり、魔導国の謀略なのではないでしょうか?流石に王国の貴族が主となってあのようなことをしでかすとは思えません」

 

「確かに、あの魔導国は《人間種魅了》を裁判の場でも平然と使う国ではないか。ならば、国家間においてありえないような薄汚いことも平然と仕掛けてくる可能性があろう」

 

なるほど、と言うか声が上がる。続けての指摘はザナックも己の不手際を後悔するものだった。

 

「であれば、急いで男爵の身柄を確保した方が良いだろう。私も詳しくは知らないのだが《人間種魅了》とかいう魔法は解けても魔法がかけられている間にやったことを覚えているらしい。なので、その男爵が口封じされかねない」

 

ザナック、いや、王国には魔法に関する知識は恐ろしいほどない。

 

「その男爵を早急に召喚し、その身の安全を図ると共に何があったかを調べねばなりません」

 

「父上」

 

「なんだ、ザナック」

 

「真相が解明された暁には、その男爵の首を土産に魔導国との交渉に入りますか?」

 

「何を言っている」

 

父の鋭い目が自分を刺し貫く

 

「軍務尚書、参考までに聞きたいのだが、どうすれば魔導国と戦って勝つことができる?」

 

「その前にどの国と同盟を組めるのでしょうか?我が国一カ国だけなのですか?」

 

「評議国との同盟はあまり上手くいっていない。前々から交渉はしていたのだが、良い形での同盟は結べていないのだ。魔導国との仲がより険悪になったと知れれば、断られる可能性がある。それに…」

 

《ブリテン王国》は早々にリ・エスティーゼ王国に見切りをつけたのだろう。

 

王国内にいた使者達も今朝にはブリテン王国に出立してしまった。

 

つまるところ、ブリテン王国との同盟・援助が見込めない以上、法国・評議国は動かないことになる。

 

実質、リ・エスティーゼ王国は詰み状態に陥っているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー法国ー

 

神官長達のいる場所にて、ブリテン王国の使者達の行動が逐一報告されていた。

 

「ブリテン王国はリ・エスティーゼ王国を見捨て、代わりにバハルス帝国を拾い上げたか」

 

「はい、そのようです」

 

漆黒聖典の第一席次は膝をつき、神官長に事を報告する。

 

「そうか…ならば、仕方あるまい。我らも此度の宣戦布告には黙秘を貫かなければならない」

 

「…はい」

 

『ブリテン王国』は600年前にスレイン法国に降臨された六大神と同等以上の力を持つ神々がいる国だ。

 

むやみやたらに深入りして滅ぼされたらたまったものではない。

 

つい最近、やっとブリテン王国との同盟にこじつけたのだ

 

すでに没落が確定している国に援軍を派遣してしまうよりは、黙認を貫いた方が良い

 

 

 

 

 

 

 

 

ーリ・エスティーゼ王国ー

 

リ・エスティーゼ王国にやってきたソロモンことロマニは魔導国の宣戦布告から町の人々が気が気ではないのか、無一文になってでも逃げるべきだと口論しているのを見ていた。

 

「まさに混乱期ですね〜」

 

そんな中、のんびりと話している子ギルにため息をつく

 

「あ、今呆れました?」

 

「…そりゃあ、呆れたくなるさ、国がまさに滅びようとしているのにそんなお気楽に話してるのを見ればね」

 

二人は少しだけ人気が減った場所を歩く

 

「今更じゃないですか、国が滅びるのなんて今まで何回もあったじゃないですか」

 

「…まぁそりゃそうだけど、よくアルトリアが何も言わなかったなぁと思って、この国には割と好意的だったのに」

 

アルトリアはこの国の貴族には関心は微塵も見せていなかったが、王国の冒険者達や市民達には好意的だった。

 

特に冒険者組合と最近まで遠回しで任務の依頼などをしていたぐらいだ。

 

「好意的だったとしても、今回の事件は流石にかばうつもりなかったんでしょう。あの馬鹿の行動には確かに笑いましたけど」

 

フィリップ男爵とやらが起こした愚かな行為

 

確かに人間にも馬鹿な人間はいるが、あそこまで底なしの馬鹿だとは思わなかった。

 

キャメロットの娯楽室で一連の流れを流していたときは、思わず抱腹絶倒したものだ。

 

「この世界に転移してきて初めてのエンタメでしたからねぇ」

 

「……まぁ、アレについては僕もかばうつもりはないけど」

 

苦笑いしながら言うロマニ

 

「それで、今回の件ですけど、魔導国がある程度動けるように選抜するとして、問題は冒険者の方ですよ」

 

王国にある冒険者組合もとい冒険者達は今後のために保護しておきたい対象だ。

 

まぁ、居なくても別に良いのだが、外交的な問題で保護した方がキャメロットのためにもなる。

 

「今思ったけど、ギルガメッシュって意外に人材確保には抜け目ないよね」

 

「馬鹿にされました?そりゃ、僕一人でなんとか出来ますけど、下はいくら居ても良いじゃないですか」

 

「………(やっぱ、ギルガメッシュだわ)」

 

強者に対しては割と寛容的だが、弱者に対しては容赦も遠慮もなく置いてけぼりするところがある。

 

現に働けなくなった者は遠慮なくキャメロットのウルクの領域からほっぽり出している。

 

「それで着きましたよ」

 

そう言って子ギルは蒼の薔薇の面々がいるであろう場所を指差す。

 

 



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駆け引き

タイトルがだんだん思い浮かばなくなってきている…


ー宿ー

 

リ・エスティーゼ王国内にある小さな宿にて…

 

蒼の薔薇の面々は朱の雫であるアズスと話していた。

 

アズスはラキュースの叔父にあたり、評議国付近でアダマンタイト級冒険者として動いていた。

 

「もし、ここから離れるなら俺の伝手を使っても構わないんだぞ?」

 

「離れるつもりはありません」

 

全員の視線がラキュースに集中する。

 

「ちっ、やめておけ、魔導王は住人を皆殺しにして都市を完全に破壊するつもりだ」

 

「いえ、逃げません。祖国を見捨てるなんて」

 

ラキュースの言葉にアズスはため息をつく

 

「……ブリテン王国が動き出してる」

 

「「「!!!」」」

 

全員が驚く

 

「…あの国は動いていないと言っていたが」

 

プレイヤー国家であるあの国は近年は東洋に侵攻しているだけで、こちらには何も干渉していないように思えた。

 

「公式にはな、だが、評議国の()()()()()()()()ではな、秘密裏に動いてるって話だ」

 

「公式的には見捨てるみたいな話もあったが」

 

ガガーランが腕組みをして話す。

 

ブリテン王国は周辺諸国にリ・エスティーゼ王国を助けないような遠回しな事を言っており、事実、法国も動かないと言っているのだ。

 

「あの国にしてみれば貴族やそれに準じる者は助けないんだろうな、そもそも、あの国は強者と無垢な人間にしか優しくないからな」

 

強者と無垢な人間しか受け入れない。

 

「なら、あの国と共に戦うと言うのは…」

 

「やめておいた方がいい、あの国は周りに人がいない方が戦いやすいだろうし、こう言っちゃなんだが、お前らは邪魔扱いされるだろうな」

 

その言葉にイビルアイは「確かにな」と返す。

 

あの国の要人達を唯一知っているイビルアイの言葉にラキュースも何も言えなくなる。

 

ラキュースが複雑な感情を抱いたとき、『ボス』と緊張感を含んだティアの声と同時のタイミングで「時間通りですね」という男の声が通路から聞こえた。

 

扉の入り口に立っていたティア・ティナとガガーランの三人が見えざる力で押し込まれるように室内に入り、続いて二人の男女が入ってきた。

 

十本の指にそれぞれ指輪をしており、柔和な笑顔を整った顔に浮かべていた。

 

ラキュースは警戒心を強めた。仲間達は生物としての強さ、格に押されたのだ。

 

「…フル装備で来て正解だった」

 

「…個々が私達よりおそらく上」

 

「あぁ、こんな奴らが王国にいるなんて話は聞いた記憶がねぇ」

 

「おいおい、連れてきたくせにそんな危ない気配を撒き散らすんじゃねぇよ。お前さんらは上からそう言われてきたのか?無礼を働いて来いってよ」

 

アズスが皮肉げに言うと女が鼻で笑う

 

鼻で笑った女を男は制して

 

「それよりも私どもの仲間が少し、失礼の欠いた発言をしそうになり、申し訳ありま…」

 

「おいおい、なんか隠すことでもあったか?お前ら法国の人間だろ?」

 

アズスが男の言葉を遮る。

 

「本当に法国だと言うのか、法国にこれほどの奴がいたとは…」

 

イビルアイが驚いたように言う

 

「それで?法国の人間がわざわざきてくれたようだが、ブリテン王国が勧誘している人間を少しでも減らすためにでもきたか?」

 

アズスはドカッと椅子に座りなおす。

 

「それも少しあります。あの国は近年、王国の冒険者方をブリテン王国に勧誘し、連れて行っていますから、我々も少しは動かないとなりません」

 

男は口にしないが、あの国は最強格として名を馳せている。

 

これ以上強者があちらの国に流れるのを阻止したいのだろう。

 

「そうだな、国家間の争いになれば法国は負けるからな」

 

「………」

 

男は睨むような視線でアズスを見る。

 

後ろにいる女が『クアちゃん、やって良いのならやるよ』と言っていた。

 

「叔父さん!」

 

ラキュースの言葉にアズスが両手を挙げ「悪い悪い」と笑う

 

「それで、アインドラ様の……失礼、蒼の薔薇の皆様の方はいかがでしょうか?」

 

法国に避難するならぱと言った言葉にラキュースは

 

「その前に一つ聞いて良いかしら?どうやってここから逃げるの?」

 

「味方になってくださるならば、その時にお伝えします。ちなみに幾人かの冒険者チームの方々を同じくスカウトして了承を得ましたので、この地より安全に避難していただきましたよ」

 

「…おい、力ずくとか脅しとかで連れて行ってるんじゃねぇだろうな?」

 

ガガーランの言う通りだ。彼らほどの力を持った者達が脅しをかければ、それを拒否するのはかなり難しいだろう。

 

「そう言うことはしません。意にそぐわない形で来てもらっても、いつ裏切るかわからないじゃないですか。私たちは本心から味方になってもらえる方にお越し頂いています」

 

優男の真剣な言葉に嘘の色は一切なかった

 

「私は…断るわ」

 

皆んなは?、と問いかけようとするが、それよりも早くガガーランが口を開く

 

「私は、とか言うなよ、俺たちもリーダーの言葉に賛同するぜ」

 

ガガーランの言葉に仲間の皆が頷いてくれる。

 

「そうですか、分かりました」

 

優男の言葉に従い、彼らが退出して行く

 

「ふぅ、連続で悪いが、この後にも人と約束してるんでな、お前らも待っててくれるか?」

 

アズスは少し背を伸ばす

 

「叔父さん、そんな呑気に話していたら…」

 

「言いたいことは分かるが、この後会う奴の方が大事だ。俺の友人が約束を取り付けることに成功したらしいからな」

 

「……約束?」

 

「リーダー、足音が聞こえてきた」

 

ティアの言葉にラキュースはハッとなる。

 

アズスは立ち上がると

 

「気をしっかり持てよ、次会う奴はさっきの奴らよりも上だからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーロマニ・子ギルー

 

「………その形態で行くの?」

 

ロマニは姿をソロモンに戻そうとしたが、子ギルは一向に姿を戻そうとしないのでそう聞くと「はい!」と元気に返事を返してくる。

 

「…威厳とか良いの?」

 

「子供の方が相手の本心を探れるじゃないですか、まぁ、それは良いとして、蒼の薔薇の勧誘はお願いしますね、僕はこれから行く場所があるんで」

 

「…はい?一人で行くの?」

 

「はい、それに、僕がいたらあっちも怯えきった子犬みたいになってしまうと思ったので」

 

じゃ、と言ってその場から居なくなる子ギルに『…自由すぎる…』と呟く

 

《ソロモン。着いたのか?》

 

『着いたんだけど、ギルガメッシュが何処かに行ったんだけど、迎えに行った方がいいかな?』

 

その言葉にアルトリアが《…ほっといて良いと思うな、エルキドゥが行ったから》と呆れているのがわかった。

 

『それで、もし断ったらどうするつもりだい?』

 

蒼の薔薇の面々を考えれば、ブリテン王国に行く事を断る可能性が高い。

 

なにしろ、王国を思う気持ちは常軌を逸しているような気がするのだ。

 

自爆特攻してでも魔導国の侵攻を止めそうなのだ。

 

《…断ったのなら、それでいい。だが、アズス・アインドラと協力して魔導国の戦力を一定以上削ろう》

 

『…一定以上っていうのはデミウルゴスとアルベドを殺すぐらい?それとも、マーレとアウラの二人を封印する程度?』

 

もしも、あちらとの戦争になれば、ここが更地になるのは確定事項だ。

 

《最低でもデミウルゴスを封印できるならば、それでいい、アルベドは恐らく出てこないだろうからな》

 

『うーん、それもアズスさんと話さないとなぁ』

 

そう話しながら蒼の薔薇の面々がいる部屋の前に立つ。

 

「失礼するよ」

 

そうノックして中に入る。

 

 

 

 

 

 

 

ー蒼の薔薇ー

 

「失礼するよ」

 

その言葉と共に入って来た男性は20代後半ぐらいのオレンジ色の髪をした男性が入ってくる。

 

「待ち合わせ場所はここであってたかな、アズスさん」

 

叔父を知っているような口ぶりにラキュースはえ?となる。

 

見た目は普通の男性で、先程叔父が言っていたような『気をしっかり持つべき人』とは思えなかった。

 

「よせよ、お前さんにさん付けで呼ばれたら後が怖い、そこは普通にアズスって呼び捨てにしてもらった方が今後のためにもなる」

 

「あはは、ごめん、じゃあ、アズスと呼んで良いかい?」

 

「それなら構わねえよ」

 

叔父とその男性は仲よさげに話していた。

 

「叔父さん…」

 

そう呟くように言うと、男性の方が「あぁ、ごめん」と言って

 

「自己紹介がまだだったね、僕の名前は…うーん、今はロマニ・アーキマンと名乗ろうかな」

 

「そっちで名乗るのかよ」

 

「仕方ないじゃないか、今はいろいろ危ないからね、あっちの名前で名乗ったら魔導国が最恐のNPCを派遣して来るかもしれないから嫌なんだよ」

 

「おい、待て。今えぬぴーしーと言ったか?」

 

イビルアイが会話に入ってくる。

 

「イビルアイ?」

 

ガガーランが首を傾げるが、イビルアイはまっすぐとロマニの方を見る。

 

「そうか、アンタは知ってたな」

 

アズスがイビルアイの方を見て呟く

 

「えぬぴーしーの存在を知っているのは同じぷれいやーしかいない。それは…」

 

言おうとしたイビルアイを笑顔で『待って』と言って制してくるロマニ

 

「まぁ、単刀直入に言うと、さっきの人たちと同じ要件かな」

 

「さっきの…法国の奴らと同じくらい勧誘しに来たってことか?」

 

ガガーランの言葉に『そう』と言う。

 

「アズスとは別件で用があったんだけど、君たちは避難するつもりはあるかい?」

 

その言葉にラキュースは「祖国を見捨てて逃げるなんてことはしないわ」と言う。

 

その言葉を知っていたであろうロマニは『そう』と一言で終わらせると

 

「まぁ…分かっていた上での質問というか、なんというか…うん。君ららしい」

 

ロマニはそう言ってラキュースをジッと見る。

 

「…?」

 

「キツイことを言うけど、魔導国は君たちのレベルじゃ到底勝てない相手だよ、それに、一発で死ねたら幸運、死ねなかったら絶望の始まりだ」

 

「それは…どういうことですか?」

 

「そこも気になるが、お前の口ぶりじゃ、魔導国について知っているように聞こえるが、アイツらの仲間ってわけじゃねぇだろうな?」

 

ガガーランの疑問は確かにその通りだ。

 

アズスは呆れたようなポーズをとると

 

「…その姿だと返って面倒なことになるから元の姿に戻ってくれねぇか?」

 

「やっぱり…?まぁ、あの姿だと会話になるか怖かったからこの形態だったんだよ」

 

そう言って人差し指に嵌めていた指輪を外す

 

「「「っ…!!!」」」

 

目の前に現れたのはブリテン王国の王・ソロモン王その人だった。

 

しかし、威圧感はまるっきりなく、圧迫感を感じなかった。

 

「大層な指輪して、ラキュース達を気遣ってのか?」

 

「まぁそれもあるけど、魔導国に気づかれるとそれこそ最悪なことになりかねないからね、レベルがバレるような行為はしたくないのさ」

 

「へー」

 

ソロモン王はラキュース達を見ると

 

「ブリテンはリ・エスティーゼ王国を守る気はない。僕の仲間達の大半が助けないという選択肢を選んだからね、それに、君たちの意思が聞けたから良しとしようかな」

 

そう言って姿をロマ二・アーキマンに戻す

 

「アズス、話をしたいから準備をしたらいつものところに来てね」

 

「了解だ、じゃあな」

 

そう言ってロマニが外に出る。

 

その背中を何も言えず黙って見つめていることしか出来なかった。



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錯綜する因縁

リ・エスティーゼ王国滅亡の合間の話です。戦闘回は最近本当に書くの難しい……

なんか原作の内容忘れてる傾向にあるので、原作読んできます……



ーキャメロット・エジプト領域ー

 

「…あの国にそれほどのメリットがあると、到底思えんがな」

 

オジマンディアスはエジプト領域の一室にて征服王・イスカンダルとチェスをしていた。

 

「それがなぁ、ラナーとかいう女が王国の半分をブリテン王国に献上する過程でナザリック地下大墳墓のNPCを一人渡すとも言ってたな」

 

「ほう…」

 

オジマンディアスがイスカンダルの駒を取る。

 

「どのNPCを渡すと言っていた?」

 

「デミウルゴスというNPCだったな、あのNPCはかなりの思い入れを持って作ったキャラクターだと言っていたな」

 

イスカンダルがオジマンディアスの駒を取り、それを横に置く

 

メイドが入れた酒を飲みながら盤を眺める。

 

「ほう、だから、ギルガメッシュがやる気だったのか」

 

ギルガメッシュとウルベルトの間には深い因縁があった。

 

と言ってもまぁ、ギルガメッシュが一方的にウルベルトを面白がったことにあるのだが

 

「あのNPCを抑えれば向こうの勢いをかなり抑える事ができるからなぁ、しかし、問題は一つあるわけだ」

 

デミウルゴスがこの世界に転移してきて、ある程度性格も変わったのだろう。

 

計算高いNPCとして制作されていたから、勝てない戦いには参加して来ない可能性が高い。

 

「故に奴より低レベルの者を繰り出すというわけか」

 

「左様、スフィンクスならば90近く量産できるだろう?まぁ、他のNPCも釣れるやもしれんが、それはそれで良い」

 

イスカンダルはハァとため息をつき

 

「…何処までも悪趣味な奴よなぁ、あの金ピカ」

 

 

 

 

 

 

ーギルガメッシュー

 

 

現実世界、いや、リアルでは複合企業の副社長として名を馳せていたギルガメッシュ。

 

まぁ、実質社長が遊びやらなんやらにのめり込み、機能していなかったので実質社長のようなものだが

 

リアルでは、富裕層と貧困層二極化された世界だった。

 

富裕層として生まれ、何もかも与えられるのが当たり前だったわけだが、そんなギルガメッシュはその世界はあまり好きではなかった。

 

親から与えられたレールの上を走らされる機械でしかない自分にうんざりしていた。

 

そんな中、制作途中だったユグドラシルの制作に入る事になった。

 

初めは富裕層向けのゲームだったが、そこに目をつけたギルガメッシュは貧困層にも向けたゲームとした。

 

富裕層ならば当たり前に出せる課金額も貧困層には微妙に手出しづらい価格にして売り出し、やたら強い武器やら楽しいミッションやらを提供する事になった。

 

ギルガメッシュの目論見ば見事に当たり、貧困層は酷い者では自分の食事代よりゲーム代に注ぎ込むような者が増えた。

 

そして、ギルガメッシュは運営でありながらゲームに参加した。

 

キャメロットに途中参加する事になったが、彼らはまぁリアルでも知っている人物達であり、キャメロットば富裕層のみに限定したギルドとして位置付けた

 

唯一異分子はいたが、その異分子はある日を機に居なくなった。

 

「…まぁ、ゲームがリアルになって、リアルでこうも殺し合いに発展するとは思いませんけど」

 

子ギルの姿のままそう呟く

 

「…まぁ、彼の人生は凄く面白いですけど…途中で終わった彼らの物語より、相当面白そうですね」

 

子ギルはリアルでの事件を思い出し嗤う

 

アーコロジー内に反撃を起こそうと武器を持つ彼を、社長が失敗するように仕向け貧困層に複合企業の情報を持たせた。

 

結果的にそれを取り返そうと動き出す富裕層の警察官達と企業に反逆を起こそうとする貧困層の二つ

 

「彼らの創造主の最期を話したらきっと暴れ狂うだろうなぁ」

 

足をバタバタさせながら燃え盛る家屋を見つめる。

 

「最初っから最後まで救いのない人生だったと」

 

ヨイショと起き上がり、ヴィマーナを取り出す

 

「全部支配するのもつまらないし、世界は人間がいるから楽しいのに」

 

ギルガメッシュのその感覚がツアーに協力する要因の一つなのだ。

 

「さーてと、目的地に向かいますか」

 

 

 

 

ツアーがブリテン王国の人間に約束を取り付けることに成功したと言う話を聞いて、この世界最強の竜王と言われるだからあると伝えたらツアーは何か不快なことでもあったのか

 

『アルトリア・ペンドラゴンには約束を取り付けられなかったが、まぁ…それが愉快犯であれなんであれ協力するという姿勢を見せてくれただけよしとするべきか』と話していた。

 

ツアーは知らない。どれだけギルガメッシュが愉快犯だということを

 

 

 

ー王国侵攻ー

 

ヴィマーナから王国に侵攻を始めた魔導国の動きを眺めていたギルガメッシュ

 

「異世界に転移し、好きにできるこの世界は心底面白くて、優越感を感じるであろうな、本来持っていない力を使って蹂躙する世界は心底楽しくて仕方あるまい?」

 

ヴィマーナが視認されないように魔法をかけてある。

 

ワインを飲もうと取り出そうとすると…

 

『ギルガメシュ||今どこにいるんだぃ|?』

 

耳をつんざくほどの声量が聞こえてくる

 

声の主はソロモンだ

 

「今から座表を送る…転移してこい、たわけ」

 

『たわけじゃないよ|ていうか|なんでこんなところにいんだい|?敵陣地のど真ん中じゃないか||』

 

ヴィマーナの上に転移してくるソロモン

 

子供のように怒りながら話すソロモン

 

「勧誘はもう済んだのか?」

 

中途半端に怒っているソロモンから話を逸らすために問うと、咳払いし

 

「済んだよ、案の定、こちらには来ないってさ」

 

「…この国と心中しようとは…心底つまらん選択よな」

 

ギルガメッシュはワインを取り出して

 

「さぁ、舞台の始まりだ」

 

心底愉快そうに言うギルガメシュと眼下を覗くソロモン

 

眼下をスケルトンの兵士たちと共にコキュートスが続いて進軍していた。

 

 

 

 

 

ーアインズー

 

王国に進軍する準備を始めてもキャメロットの軍勢が出てくる様子はなかった。

 

デミウルゴスの報告によれば、今回の戦争には関わらない姿勢を見せているとのことだった。

 

ラナーとか言うヤツが彼らは一切関わらないと言っていたが、本当に関わらないか不審だったため、監視魔法が働いていないか、彼らが出て来た場合、すぐに対処できるように準備していた。

 

コキュートスたちが王都に向かうのを見ながら座って見ていた

 

「さて、私も行くか」

 

そう言って立ち上がる

 

「アインズ様…本当に行かれるのですか?」

 

パンドラズ・アクターとアルベドだけで向かうことになっていたのだが、もし、キャメロットのプレイヤーが出て来たとなれば対処しなければならない、それに…

 

(もし、彼らが出て来たとしても失うのは俺だけだからな)

 

「もし、最悪なことがあればすぐにお前を連れて逃げる。コキュートスたちにもすぐに退避するよう念を押しておいてくれ」

 

「…かしこまりました」

 

 

 

 

 

 




なんか久しぶりに描いたから忘れてしまっている気がしてならない…ごめんなさい

最近異世界転生ものにまたハマり出して……

なんだっけ?絶対に勝てない魔王様なんたらにすごいハマった…なので頑張ってこっちも書こうと思っています。


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