Ariadne;Yarn (鯨蓮根)
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絶望と希望のアンヴァンシオン
5pb.とMAGES.をメインに据えたものがあまりなかったので、じゃあ自分で書こうってノリです。
4月3日 13:24 プラネテューヌ 駅前広場
「あれ?MAGES.?」
「む、5pb.、どうしたのだ?こんなところで」
「ちょっと用事があって。そうだ、MAGES.も来る?」
「何の用事か知らないが、付き合うことはできん。私はこれから、ゲイムギョウ界を新たな段階へ導くための実験を行わなければならないからな。フゥーハハハハハ!」
「な、何するのか知らないけど、あまり危ないことしちゃだめだよ?」
「ああもちろんだ。心配するな、完成すれば、きっとお前も驚くぞ」
「あー、うん、じゃあ、また今度ね」
「あぁ」
思えばこの時、私は実験などすべきではなかったのだ。全ては偶然である。世界を新たな段階へ導くというのなら、もっと慎重に事を進めるべきだったのだ。残念ながら、私は慎重じゃなかった。愚かだった。浅はかだった。こうなることが分かっていれば...いや、今大切なのは過去を後悔することではない。今どうするかを考え、大胆かつ慎重に行動することだ。そうでなければ、私は”彼女”を救えない。
4月3日 14:06 プラネテューヌ ラボ
自宅、もといラボに戻ったMAGES.は、早速机に向かい、実験を始める。一見何の変哲もない電子レンジのプラグをコンセントにさし、ケータイ電話をひらく。
「時間は...5分でいいか」
慣れた手つきで電子レンジのダイヤルをいじり、ケータイから電子レンジに電話をかける。何も知らない人が見れば意味不明な行動だろうが、本人はいたって真剣。
「これで良し、と」
そう言ってMAGES.が通話キーを押すと、電子レンジのチンという音が部屋に響く。
「時刻は...ククッ...フゥーハハハハハ!!」
時計を確認するや否や、彼女はお得意の高笑い、それもいつもより大声で。
「もしもし、私だ。ああ、ついに手に入れたのだ、神にも等しい力を」
手に持ったケータイ電話を耳元へ持って行き、彼女は話し始めた。しかし、ケータイは通話中にはなっていない。
「これがあれば、もはや我々の勝利は目前、ついに“機関”の連中への逆襲の刻が来たのだ!」
傍からみれば誰かと会話しているように見えるかもしれないが、これは独り言。MAGES.の興奮した声が、彼女以外は誰もいないラボにこだまする。
「しかしまだ油断はできない。ヤツらを侮るな。ああ、ではまた連絡する。ルクス・トゥネーヴェ・イメィグ・ノイタミナ・シスゥム…」
お決まりのキメ台詞を言い終え、満足げに笑いながらケータイをとじるMAGES.。その表情には、確かな喜びが浮かんでいた。
この時までは。
4月4日 13:03 プラネテューヌ ラボ
「これが新しい発明なんですね、何に使う装置なんですか?」
さながら新しいおもちゃを与えられた子供のようにその紫の瞳を輝かせているのは、プラネテューヌの女神候補生ネプギア。MAGES.の作るガラクt...超次元ガジェットに対して興味を示す数少ない人物である。
「う~ん、ただの電子レンジに見えるけど...」
その隣で疑わしげに見つめるのは、ラステイションの女神候補生ユニ。ネプギアとは違い、あまり興味をひかれていないことがわかる態度をとっているのだが、そんなことお構いなしにMAGES.は話し始める。
「二人とも、今日はよく来てくれた、さぞかし嬉しいことだろう。なんせ人類の歴史を変える発明を、開発者である私以外では初めて見ることができるのだからな、フゥーハハハ!」
「ええっ!人類の歴史を変えるって、MAGES.さん、そんなにすごいものなんですか!?」
「なんでもいいけど、何の装置かを早く教えてほしいんだけど...」
「ふふ、よかろう、聞いて驚くがよい。この電子レンジはな...」
MAGES.がためを作り、ラボに数秒間の沈黙が走る。
「タイムマシンなのだ!!」
右手を前方に広げ、決まった...という顔をするMAGES.。ネプギアとユニは少しの間ぽかんとしていたが、すぐに各々の反応を示す。
「えええっ!!タイムマシン!?」
「何を言い出すかと思えば...はぁ、無駄足だったわ...」
「ほう、ユニはこの私を疑っているのか」
「当たり前でしょ、こんな電子レンジがタイムマシンだなんて。扉が上に開く車出された方が、まだ信じられるわ」
ユニは小ばかにしたような表情を浮かべ、MAGES.に背を向ける。
「なんなら試しに使ってみてもいいんだぞ?」
「ええっ!使わせてくれるんですか!」
ネプギアの瞳の輝きが一層増す。
「って、ネプギア、アンタ信じてるの?」
「さすがはネプギア、私とともに狂気の道を歩むとの契りを交わしただけのことはある」
「アンタ何を約束してるのよ!?」
さらっととんでもないことを言ったMAGES.に対し、ユニの声のトーンが2段階くらい上がる。
「ではこれより、第1742回円卓会議を始める!ネプギア、何か変えたい過去が、一昨日までに無かったか?」
「一昨日まで?ええっと...」
「私はスルー!?」
4月4日 13:12 プラネテューヌ ラボ
「ではネプギア、準備は良いな?」
「はい、OKですよ」
「本当に...やるのね」
結局実験は行われることに(暴走気味のMAGES.とネプギアによって)決まり、半ばあきれ顔のユニ。ネプギアの右手にはケータイ電話が握られ、MAGES.がその始まりを告げる。
「それではこれより、
「カッコよく言ってるけど、それってプリン作戦ってことじゃ...」
ユニの指摘など聞こえていないという感じで、MAGES.が続ける。
「作戦の概要は覚えているな?ネプギアよ」
「はい、私が昨日の今頃の時間に戻って、お姉ちゃんのためにプリンを買えばいいんですよね?」
3人での話し合いにより、実験の内容はネプギアが昨日に戻りプリンを買うことと決まった。なんでもストックを切らしてしまい、姉のネプテューヌがプリンを食べられず駄々をこねたのだとか。バカバカしいとため息をついたユニと、それなら確認がしやすく確実で、実験にもってこいだと言ったMAGES.により、速攻で決着。円卓会議は1分で終了した。
「そういえばMAGES.さん、1つ聞いてもいいですか?」
「む、なんだ?まさかとは思うが、この期に及んで怖気づいたのではあるまいな?」
「いえ、そうじゃなくて。元の時間に戻るときは、どうするんですか?」
ネプギアの質問に対し、MAGES.は薄笑いのような表情を崩さぬまま答える。
「フフッ、そんなものはない!」
「「ええっ!?」」
2人の女神候補生の声がシンクロする。
「そ、それどうゆうことよ!ネプギアはどうなるの!?」
すかさずユニが食って掛かる。しかしMAGES.は飄々と答える。
「心配するな。私の行った実験の通りなら、ネプギアはなるべく昨日と同じ行動をとりつつ、今日この時間まで過ごせばよい。そして私に報告してくれ、なに、たかが1日だ、それくらいどうにでもなるだろう?」
ネプギアは少し考え込むような身振りをしたが、すぐに顔をMAGES.の方に向け、
「わかりました、私、やります!」
そう響いた声は、満足げな微笑と不安げな困惑の、2種類の表情を生み出した。
更新は不定期になると思いますが、完結させたいですね。
評価、感想いただけると幸いです。
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実状記憶のディスクレパンシー
4月4日 14:28 プラネテューヌ ラボ
「じゃあMAGES.さん、今度また新しい発明品が出来たら教えてくださいね」
「あぁ...」
「まあ、今回はダメだったけど、落ち込まなくても大丈夫よ。あっ!これはMAGES.のためじゃなくて......そう!アンタが落ち込んでると、ネプギアまで落ち込んじゃうからよ!勘違いしないでよね」
「むぅ...」
帰り際に放ったネプギアとユニの言葉は、MAGES.には届かなかった。耳には入っているが、脳には届いておらず、腕を組み生返事を繰り返すのみ。
「まさかとは思うけど、本当におかしくなっちゃったんじゃないでしょうね...」
「だ、大丈夫だと思うんだけど...MAGES.さん、また遊びに来ますね」
そう言って2人はラボを後に。しかしMAGES.は、そのことにも気づいていない様子だった。
「ひとまず情報を整理するか...」
しばらくMAGES.は椅子に座り考え込んでいたが、やがて思い出したように立ち上がると、ホワイトボードの前に。すでに書かれていた数式を消し、半分ほどまっさらな状態にして、
「あれは...1時間ほど前か」
4月4日 13:14 プラネテューヌ ラボ
「ではネプギア、さっき言ったとおりにケータイを操作するのだ」
「はい、ええっと、この電子レンジに...」
ネプギアがケータイのキーを操作するそばで、不安げなユニが声をかける。
「間違えないようにしなさいよ...ただでさえどうなるかわかったもんじゃないのに...」
「さっきから聞いていればユニよ、お前は私を信用していないのか?この狂気の魔術師、MAGES.の頭脳を」
不満げにMAGES.が言う。
「そりゃ私だって、銃の形してるリモコンみたいな発明なら文句言わないわよ」
「ガン粒子砲、だ」
「そこは今どうでもいいでしょ...」
「よし、動きました!」
2人の会話をネプギアが止め、タイムマシンがヴーンという音を立てる。
「よし、これで成こ...うっ!」
次の瞬間、MAGES.はとてつもない頭痛に襲われ、その場に倒れこむ。まるで脳を引っ張られているかのような、激しい痛み。
「ちょっと!MAGES.!?どうしたn......」
声をかけられた気がしたが、聞き取れたのは最初のみ。MAGES.の意識はそこで途絶えた。
?月?日 ??:?? プラネテューヌ ラボ
「...じすさん!め...さん!」
耳元で誰かが何かを言っている。体をゆすられてもいる。いったいなんだというのだ、騒々しい。
「今...私は...実験を...」
(実験...?そうだ、私はタイムマシンの実験を...)
「MAGES.さん!」
「はっ!」
「うわぁ!?」
「む?ネプギアと...ユニ?」
視界に入ってきたのは、2人の女神候補生。あたりを確認すると、そこは自分の家兼ラボ。
「ちょっとMAGES.!いきなり顔上げないでよ!ぶつかるところだったじゃないの!」
「よかったあ...MAGES.さん、急に倒れちゃうから、心配したんですよ?」
「......?」
脳が状況を把握できていない。
(ええっと、確か私は、タイムマシンの実験をネプギアに...)
少し時間はかかったが、自分が実験中に倒れてしまったことを思い出したMAGES.。たとえ体調が悪かったのだとしても、今狂気の魔術師たる自分が優先すべきは
「そうだネプギア、タイムマシンはどうなった?」
「ほぇ?」
「タイムマシン?急にどうしたのよ?」
しかし帰ってきたのは、気の抜けた返事と、何のことかわからないといった表情。
「タイムマシンだ、さっきまでお前たちも一緒に実験をしていただろう」
「?」 「?」
2人の女神候補生はともに顔を見合わせる。
「ユニちゃん、私たち実験なんて...してたっけ?」
「してないわよ、私たちついさっきここに来たばっかりじゃない」
「ついさっき来たばかり...?いやまさかそんなはず...」
目を覚ました脳が、再び混乱の渦に巻き込まれる。
「今は何月何日の何時だ!?」
ひょっとしたらタイムマシンの影響で、別の時間に飛ばされたのかもしれない。それならばまた新たに研究が進む。そんな思いでMAGES.は壁に掛けられているはずの時計を見る。
「13時、18分...?」
2つの針は、MAGES.が倒れた時間とそう変わらない時間を示していた。
「なによMAGES.、頭打って記憶が飛んでるんじゃないでしょうね?今日は4月4日よ」
もしや年が変わっているのではと思い確認するも、時計に表示されるのは寸分たがわず同じ日付だ。
「待てよ...お前達は今、“ついさっき来た”と言ったな?」
そういうと、2人は怪訝そうな顔をしながらもコクリと頷く。
「フッ、なんだそういうことか」
それを見てMAGES.は妙に納得したような表情。
「うそをつくなら、もう少しばれないようにつくことだな、狂気の魔術師でありこの灰色の脳細胞を持つわたs」
「MAGES.、あなた本当に記憶飛んだんじゃないでしょうね?」
「む?」
調子よく話しているところを割り込まれ、不満顔で目線を向けるMAGES.。しかしユニの顔にうそをついているような雰囲気は微塵も混じっておらず、まるで子供に言い聞かせるように話し始める。
「アンタの家に行く途中、交通事故で道が通行止めになってたのよ。おかげで回り道して遅れちゃったって、来てから一番最初に話したし、メールだってしたはずよ?」
「なっ!?」
(おかしい、そんな話はしていなかったし、それに確かに2人は時間通りに来たはずだぞ...?)
慌ててケータイ電話を取り出し、メールボックスを確認。するとそこには、確かにネプギアからの[遅れます(>_<)]という件名のメールが。
(しかも返信までしている...?)
「私は変身して、飛んでいこうって言ったんですけど、ユニちゃんがせっかくだから私とお喋りしながら歩こうって言ったんですよ」
「なっ!?ネプギア、それ言わないって約束...」
「? してないと思うよ?」
「だから...私が言いたいのはそんなことじゃなくて...その...ええと...お姉ちゃんみたいな女神になるためには...そんなことのために女神の力を使っちゃいけないというか...その...」
「え?でもお姉ちゃんは...」
「ネプテューヌさんは一緒にしちゃダメなような...ってそうじゃなくて!」
女神候補生2人により、部屋がにわかに騒がしくなるが、MAGES.の耳には入っていない。顎に手を当て、眉間にしわを寄せ思考を巡らせる。
(さっき確認したとおり、今は間違いなく私が2人と約束を取り付けた日。だが交通事故などなかったはずだし、何より2人は時間通りに来たはずだ。それもこれも、ネプギアが実験のためにタイムマシンを起動させて私が倒れてから...)
「ネプギア、ユニ」
「はい?」
「何よ?」
2人の言い合いがぴたりと止まる。
「本当に、交通事故も遅れたことにも、嘘はないんだな?」
「だから最初からそう言ってるじゃない」
「ふむ、ではネプギア、一つ聞いてもいいか」
「なんですか?」
「お前の姉は、昨日プリンを食べたか?」
「? はい、食べましたよ。ちょうどなくなってたから、私が昨日買って帰ったんです」
「!?」
MAGES.は大きく目を見開き驚きの表情を見せ、すぐにケータイ電話を開き耳に当てる。
「もしもし、私だ。あぁ、一時は失敗かと思われた実験が、驚くべき結果を示した」
「あの...MAGES.さん?」
ネプギアが恐る恐るMAGES.に話しかけるが、残念ながらこの状態のMAGES.とコミュニケーションをとることは不可能といってよい。
「原因はまだ不明だが、これでこのタイムマシンの絶大なる力を再確認するとともに、新たな発見が得られたことを今は喜ぼうではないか!フゥーハハハハハ!」
「ダメよ、ネプギア、なんか触れちゃいけない気がするわ...」
「私はこれから更なる実験を行おうと思う。あぁ、もう少しだ、もう少しで“機関”との
「ユニよ」
通話()を終えケータイを閉じたMAGES.は、何事も無かったかのようにユニに話しかけた。
「な、何よ?」
「一昨日までに、変えたい過去があるか?」
一番悩んで書いてるのはサブタイトルです...本家のセンスが良すぎる
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平穏無事なるフィンブルヴェトル
4月4日 14:34 プラネテューヌ ラボ
ホワイトボードにペンが擦れるキュッキュッという音が響く。MAGES.は書き終えてペンを置くと、冷蔵庫からデュクテュアープェップァーを取り出し、椅子に腰かける。
「んくっんくっ、ぷはぁ」
よく冷えた液体が乾いた喉を潤し、独特の香りが鼻を抜けてゆく。来る日も来る日も実験と開発に明け暮れるMAGES.にとって、数少ない至福の時である。
「さてと」
しかし今は余韻に浸る暇もなく、再びホワイトボードの前に陣取る。
「ネプギアは確かに昨日プリンを買い、それをネプテューヌが食べたといった...」
ネプギアのいう事をそのまま信じるのならば、タイムマシンによる過去の改変は成功したという事になる。
「しかしネプギアは、タイムマシンを使った記憶が無いとも言った...そしてユニも同様に...」
MAGES.はあの後、ユニにもタイムマシンを使わせ実験を行った。説得に時間はかかったものの、とにかく実験の数をこなし多くの結果が欲しいMAGES.の熱量に、ユニの方が折れるのは当然ともいえた。
「ユニの方も過去は確かに変わっていた...」
そう言ってMAGES.は、ホワイトボードに書かれた
「しかしユニがタイムマシンを起動した瞬間、私はまた頭痛を感じ気を失ってしまった、だが...」
MAGES.は眉間にしわを寄せ考え込む。
「今回も交通事故は起こっていた、しかし今回は2人は女神化して飛んできたから遅れて来てはいなかった...」
何よりMAGES.を当惑させたのは、改変した過去とそれによってもたらされた副産物とでもいうべき現象にまるで接点を見いだせないことだった。
「プリンと交通事故、カレーのジャガイモと女神...何の関係が...」
MAGES.はソファに深く腰掛け、トレードマークの1つでもある帽子を脱ぎ捨てる。
「わからないことが多すぎるな...」
MAGES.が上を向き大きく息を吐くと、気を引き締めなおす。
「やはり、さらに実験を重ねなければ...!」
4月5日 13:34 プラネテューヌ ラボ
「なるほど、事情は分かったわ、で、なんで私1人だけなのよ!?」
「できれば人数は多い方がよかったのだがな、ネプテューヌは仕事が溜まっているとイストワールに断られ、白の女神は執筆で忙しいと言っていた。緑の女神は新作ゲームの体験会...つまり今日暇なのは助手だけだったというわけだ」
「私だって仕事はあったけど、あなたがどうしてもって言うから来たのよ!あと誰が助手よ!」
昨日実験をさらに行うことが必要と結論付けたMAGES.は、四女神を実験のテスターとして呼んだ。結局来たのはラステイションの女神ノワールだけであったが。
「まあこの際、ぜいたくは言えまい。助手だけで我慢するとしよう」
「人を呼んどいてとる態度じゃないでしょ...あと助手じゃない!」
「では助手よ、さっき言った通り...」
「だから、助手じゃない!」
「じょsy...」
「助手じゃない!!!」
「相変わらず助手と呼ばれると我を失うな、黒の女神よ」
深呼吸をしてようやく落ち着いたノワールに、MAGES.が呆れたように声をかける。
「うるさいわね、私だって好きでこうなってるわけじゃないわよ」
1つ大きなため息をついて、ノワールが続ける。
「でも助手って言われたら、なぜか全力で否定しなきゃいけない気がするのよね...」
「ふむ...何か本能的なものでも働いているのか...?」
と言ってMAGES.は少し考え込む様子を見せたが、すぐに本題に戻る。
「まあ今はそんなことよりもタイムマシンの方だ、黒の女神よ、実験に協力してくれるな?」
そう言ってMAGES.はノワールの肩をトントンとたたくも、帰ってきたのはそっけない返答。
「あ、言っとくけど私、その実験に協力する気ないわよ」
「何っ!?」
ここまで会話の主導権を握っていたのはMAGES.が、初めてうろたえる。
「だって別に変えたい過去なんて無いし」
「か、変えたい過去がなくても、私の言う事をやってくれるだけでも構わないぞ...?」
「そもそももう起きたことをやり直すってのが、私の性に合わないのよね」
「なっ!?」
きっぱりと拒否する姿勢を突き付けられた挙句、間髪入れず発明の根幹を否定されてしまう。
「ほ、ほう...、なかなか面白いことを言うではないか」
引きつった顔でMAGES.が返す。
「そう?結構いると思うけど?同じ考えの人」
「どうしても協力する気はないのか?」
「悪いけど、無いわね」
ここまできっぱり拒否されてしまってはどうしようもなく、MAGES.は落胆の表情を浮かべる。しかしMAGES.とてこのまま黙っていられるほど大人しくはなく、
「そうか、では今日はもう帰っていいぞ、“助手”よ」
そう言って再びノワールの逆鱗に触れるのであった。
4月5日 21:15 プラネテューヌ ラボ
「もしもし、私だ」
「あ、もしもし、MAGES.?」
MAGES.は右手でペンを回しながら左手で電話を取り、5pb.相手に通話を始める。
「あのね、明日のことなんだけど...」
「あぁ、ライブの件か、この間貰ったチケットで入れるんだろう?」
「うん、それで、終わった後のことなんだけど...」
「お前の誕生日祝いも兼ねて、食事に行くんだったな、店はちゃんと予約してあるぞ?」
「ライブの後片付けでちょっと遅くなるかもしれないから、それについて言っておこうと思って」
「なんだそんなことか、時間に余裕はあるから、焦る心配はないぞ」
「うん、ありがとう、MAGES.」
「そうだ、機材に不備は無かったか?」
「大丈夫だよ、だって...MAGES.が作った物だもん」
「そうだな、なんといっても、狂気の魔術師たるこの私が作った物なのだからな!フゥーハハハ!」
「ふふっ、そうだね、......いつもありがとう、MAGES.」
心許せる幼馴染との会話で、互いにリラックスする2人。その後も他愛のない会話を交わし、明日のライブの成功を信じ通話を切った
このペースだと完結するまでに数年かかりそう
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時空迷宮のオーバーチュア
4月6日 20:41 リーンボックス ライブ会場
人々がいまだ冷めやらぬ興奮を顔に浮かべながら、大きな塊となって一斉に駅やバス停に向かう。5pb.のバースデーライブは熱狂の中終わり、すっかり暗くなった中で警備員の赤い誘導棒が輝く。MAGES.はその流れから抜け出し、待ち合わせの場所で5pb.に電話をかけると、数回のコールののち応答。
「はい、もしもし」
「もしもし、私だ、今待ち合わせの場所にいるぞ」
「あ、ごめんねMAGES.、今楽屋を出たところだよ」
「お前...喉は大丈夫なのか?」
数時間歌い続けたため当然ではあるが、少し枯れたような声を発した5pb.をいたわるMAGES.すると5pb.はコホンと咳払いをして、
「大丈夫だよ、ケアはちゃんとやってるから」
「そ、そうか、ならよいのだが...」
MAGES.はその後に、お前が歌えなくなったら私も困ると言いかけ、やめた。
「あ、いたいた」
MAGES.が声のする方を向くと、そこにはステージ衣装を着替え、白のワンピースに変装の眼鏡をかけた5pb.が。
「お待たせ、じゃあ、行こっか」
その声に、MAGES.は少し笑って返した。
4月6日 21:59 リーンボックス 市街地
今やゲイムギョウ界№1といってもよい5pb.のコンサートの後という事もあり、今宵のリーンボックスの街はいつもより少し騒がしい。MAGES.が見る限り、飲食店はどこも人でごった返している。
「やはり予約を入れておいたのは正解だったな、これも私の灰色の脳細胞が導き出した完璧な
「中二病も、ほどほどにね...」
5pb.が苦笑しながら言う。
「私は狂気の魔術師だからな、たとえ近しい運命を持ち、盟友たる5pb.といえど、止めることはできないのだよ」
「あはは...」
プラネテューヌほどではないとはいえ、近代的な街並みの広がるリーンボックス。今日こうしてライブを行った5pb.、そしてMAGES.の故郷であり、そこを久しぶりに2人で歩くことに、MAGES.の心は弾んでいた。
「あっ、ねえねえMAGES.」
「なんだ?」
5pb.が早歩きを始め、見つけた公園の中に入ってゆく、それにMAGES.もついて行き、やがて目に留まった遊具はブランコ。それに腰かけて5pb.が漕ぎ出すと、MAGES.もその隣に陣取る。
「この公園、小さいころ一緒に遊んだよね。懐かしいなあ」
「ふっ、私がまだ機関の陰謀に気付いていなかった頃の話だな」
昔話をしながら、5pb.のブランコは次第に高さ、速さを増してゆき、それと対照的にMAGES.は動かない。
「ふふっ、あの頃のMAGES.には、いつも助けてもらってた気がするなぁ...あっ、今ももちろん助けてもらってるけどね」
「何?」
MAGES.は返す言葉を失った。自分が5pb.に助けてもらった記憶こそあれ、自分が5pb.を助けた記憶はなかった。ましてや、「いつも」など。
「5pb.よ、私がお前を助けていた、といったな、それはいつの話をしている?」
「えー?MAGES.、忘れちゃったの?ほら、昔...」
そこまで5pb.が言ったとき、一発の銃声が響き、直後に地面が音を立て、少量の砂煙が上がる。
「え?」
先ほどまで5pb.の乗っていたブランコは、その操縦者を失いながらも元気に振り子運動を続ける。その光景は金具がきしむ音と相まって、不気味に映ったことだろう。
「5pb.!?」
しかしそんなことを考える時間もなく、MAGES.は5pb.に駆け寄り彼女の身体を抱きかかえる。
「おい!5pb.!5pb.!」
必死に声をかけるも応答はなく、眉間から出る赤い液体が5pb.の顔を濡らし続ける。
「あ、あぁ...はは...」
死んでいる。そのことを理解してしまった脳による信号を、体と心は処理しきれなかった。中腰になっていた体は力なくへたり込み、感情は涙のない嗚咽の後に笑いという感情を選択した。しかし、世界はMAGES.に放心することすら許さなかった。
「MAGES、だな?」
5pb.の遺体とMAGES.を、男達があっという間に取り囲む。軍隊のように統率された動きの後全員銃を構え、その先は円の中心に向けられる。映画のスクリーンから飛び出して来たかのような、あまりにも街中の公園には似つかわしくない光景。
「ぇ...?」
男の言葉から数泊置いて、MAGES.の口を衝いて出た言葉は、春の優しい風にもかき消されそうなほどか細かった。次の瞬間、MAGES.の目には涙が今になってあふれ出し、それと同時に脳も回転を始めた。
「一緒についてきてもらおう、その娘みたいになりたいんだったら、抵抗することを進めるよ」
男達の内の1人が銃口で5pb.を指しながら言う。
男が話す間、MAGES.は自分でも驚くほど冷静に現在の状況を分析していた。男の話から、5pb.は自分との要件に邪魔であったというだけで殺されたのだという事を。
「もっとも、君のような頭の良い子なら、どうすべきかは分かると思うけど」
本来であれば怒りで男たちに向かっていったであろうが、銃に囲まれているという状況を判断したためか、はたまたあまりの悲しみに心が壊れてしまったためか、表面上は大人しくしつつも、MAGES.は自分がすべきことを結論づけた。
(タイムマシンだ、タイムマシンを使って時間を戻せば...)
「おーい、聞こえてる?」
煽るような男の声を聞きながら隙を伺う。相手が銃を持っているにもかかわらず、怖さはほとんど感じなかった。湧き上がる怒りと覚悟がMAGES.を突き動かす。
「......コキュートス」
「ッ!?」
MAGES.の唱えた魔法により、男達を氷塊が襲い1人を除いて一網打尽に。
「チッ!小賢しい真似を...待て!」
(駅前の人流に紛れ込むことができれば、連中を撒きつつ空港に行ける。そしてそのままプラネテューヌのラボに...!)
「逃げるなっ!」
先ほどとは打って変わり、余裕を失った声と同時に再び銃声がこだまする。
「ぐっ!?」
撃たれた。本来なら大事なのだが、今のMAGES.はいわばトランス状態。激痛を訴える左腕を抑えた以外には、何事も無かったように駅に向かって再び走り始める。
「はぁっ...はぁっ...」
日ごろの生活からくる体力不足に加え、左腕からの出血も止まっていない。息はすぐに荒くなり、体全体が限界に近いことを伝えてくるが、それでも足を止めるわけにはいかない。
(駅までは...それまでは持ってくれ...!)
4月7日 1:42 プラネテューヌ ラボ
「料金は1500クレジットになりま」
「釣りはいい!」
右手で乱暴に紙幣を渡し、そのまま流れるようにタクシーを降りラボの戸を開け、MAGES.は言葉を失う。
「...戻ってきたか、あいつらも大した事ねーな」
そこにはラボを我が物顔で占領する男達が。しかも武装や口ぶりからして、先ほどの連中の仲間だと推測できた。
「まあ良い、俺たちの手柄が増えるからな」
「なっ!?」
そう言いながら男が銃を構えると、別の男に背後を取られ、後ろ手に拘束される。絶望的な状況。折れそうになる心を無理やり奮い立たせ、男達に問いかける。
「お前達は、何が目的だ!?何のために、5pb.を!」
震えながら吐き捨てるように言うと、男はケラケラと笑った。
「何が可笑しい!?」
「こっちも遊びでやってるわけじゃないんでね、そうベラベラ喋れるワケ無いだろ」
すぐそこにこの状況を一変させうる切り札がありながら、触れることもできない。抑えられる力はどんどん強くなっていき、撃ち抜かれた傷も相まって泣き叫びそうになる。
(5pb....すまない...)
薄れゆく意識の中でそんなことを思っていると、体が持ち上げられる。よく聞こえないが、どうやらここを移動するようだ。
(せめて近いうちに5pb.のもとへ...いや、私は地獄か...ははは...)
その時だった。
「そこまでよ!」
その声がラボ内に響いた瞬間、MAGES.も含めその場にいた全員の動きは止まり、声のしたドアの方を向く。おかげでMAGES.は男の手を離れ、床にダイブ。
「ラステイションの...女神?」
「助...手?」
「助手じゃない...って、まあ今は良いわ、はぁっ!」
そう言うとブラックハート/ノワールは素早い動きで距離を詰めると、男達との戦闘に入る。
「MAGES.!今よ!」
「え...?」
何が起こっているのか整理しきれず、一瞬固まるも、すぐにタイムマシンのもとに誰もいなくなっていることに気付く。満身創痍の身体に鞭を打ち、机に倒れこむようにして何とかたどり着く。
「ッ!させるか!」
「危ないっ!」
男がMAGES.に向けて発砲し、それをノワールが身を挺して防ぐ。
「くっ!」
「ノワール!?血が...」
「私のことは良いから早く!5pb.ちゃんを助けるんでしょ!?」
「!?なぜそれを知っている!?」
「早く!!」
「......っ、分かった!」
聞きたいことはあまりにも多い。しかしこの状況における最善の手はそれを聞くことではない。そう判断してタイムマシンの方に振り返り、設定を行う。
(6時間前に...飛ぶ!)
ケータイ電話の発信ボタンをいつもより力強く押し、タイムスリップの準備が整ったその時。
「かはっ!?」
流れ弾がMAGES.の背中に命中
「MAGES.!」
口から血を吐き、その場に膝をつく。ノワールもいかに女神といえど、1人の人間を守りながら大人数の戦闘員を相手取るには苦しく、MAGES.に攻撃する隙を与えてしまう。しかし、
「私は...まだ......ごふっ、死ぬわけには...」
力の限りを尽くし、叫ぶ。
「飛べえええぇぇぇっ!!!」
MAGES.の視界は暗転し、意識が途絶えた。
MAGES.ちゃんと5pb.ちゃんの公式供給をいつまでもお待ちしております
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消魂でのエヴァンジェル
4月6日 17:21 リーンボックス ライブ会場
「うっ...」
視界が歪むのを感じ、MAGES.はその場に膝をつく。そのまま周りを確認すると、5pb.のマークがプリントされたTシャツを着た男性が視界を通り過ぎていった。
「成功...したのか...」
ふと左手に触れると、先ほどまで巻いていたはずのタオルはなく、時計も17時を指している。いつもならこの時点でタイムスリップの成功を確信するが、今回は勝手が違う。迷惑になるとわかりつつも、5pb.に電話をかけ、数回のコール音ののちに聞きたかった声が。
「もしもし、MAGES.?どうしたの?」
「良かった...」
思わず言葉が漏れる。5pb.は不審がっているが、今はそれを無視してでも、彼女が生きているという事実に浸っていたかった。
「?良かったって、何が?」
「いや、いや、いいんだ...また後で」
「?変なの」
通話が終わると、急に涙が溢れてきた。深く深呼吸をし、小さくつぶやく。
「まだだ、まだ何も終わっていない...」
MAGES.はポケットに携帯をしまうと、手をこめかみのあたりに当て、頭を落ち着かせる。
「必ず...私が助けて見せる」
4月6日 20:40 リーンボックス ライブ会場
ライブが終わり、5pb.のために集まった多くのファンが会場から掃けてゆく。その人だかりを華麗にかわし、MAGES.は1回目と同じ場所、同じくらいの時間で5pb.に電話をかける。
「はい、もしもし」
「5pb...」
「ど、どうしたのMAGES.?もしかしてライブで疲れちゃった?」
しまった、と思った。5pb.を救う事に気を取られ、今の5pb.を心配させるなど、本末転倒である。一つ咳払いをし、いつもの自分に戻る。
「コホン、5pb.よ、私を誰だと思っている。狂気の魔術師たるこのMAGES.が、ライブ程度で疲れるなどという事があると思うのか?」
「ふふっ、そうだよね、でもMAGES.、さっきも電話の時、いつもと感じが違ったから...何か悩み事があるなら、私聞くよ?」
1回目と同様、少し枯れたような声でこの上なく優しい言葉をかけてくれる5pb.。しかし、相談できるはずもなく、その優しさが逆に自分への重りのようにのしかかる。
「いや...大丈夫だ」
絞り出すように強がって見せる。
「そっか、今楽屋出たから、もうちょっと待っててね」
電話越しの声は、少しかすれていた。
4月6日 22:00 リーンボックス
「ねぇMAGES.、具合悪いの?」
「え?そ、そんなことはないぞ。......いつも通りだ」
「ほんとに?ねえ、私でいいなら、いつでも話聞くけど...」
「だから大丈夫と言っているだろ!」
周囲の視線が2人に集まると、考える前にMAGES.は5pb.の手を取り走り出していた。
「どこに行くの!?MAGES.!?」
「......」
5pb.の呼びかけも無視して、不安を振り払うように足を動かす。
(もう少しか...今回は...)
時計をちらりと見ると、人通りが少なくなったところで足を止める。
「ねえMAGES.、こんなところに連れ出して一体どうし...っ」
「ぁ...」
5pb.の身体が、自分にもたれかかってくる。受け止めても、重さを感じない身体が。MAGES.はそっと抱きしめると、ケータイ電話を操作し3日前にタイムスリップした。
4月3日 22:03 プラネテューヌ ラボ
タイムスリップの成功を確認したMAGES.は、朝起きた人間が洗面所に向かうかのように自然な動きでタイムマシンの改造を始めた。すでに何回も行っている作業であり、物の2時間程度で完成する。MAGES.はラボから少し離れたコンビニの前でケータイを操作した。
4月1日 0:07 プラネテューヌ ラボ
「...よし」
MAGES.が行っていた改造は、タイムマシンを遠隔操作できるようにするというもの。これにより、5pb.の死を確認してすぐに、リーンボックスにいながらタイムスリップができるようになったのだが...
「ふぅ...」
MAGES.はよどんだ目のままソファに体を預ける。何度目かもわからない長い長いループの中で、本当にいろいろなことを試した。5pb.を無理やり病院に連れて行ったり、眠たくなったふりをしてレストランで粘ったり、ルウィーやラステイションに連れ出したり、ライブ後の待ち合わせにわざと遅れて行ったり。
そのどれもが、失敗した。5pb.は、世界の定めかのように死んだ。病院に連れて行っても心臓発作による即死では無意味であり、レストランの中に武装集団が乱入してきたり、他の国に行くと待ち伏せを食らい、時間を遅らせれば敵の数は増えていた。
失敗するたびにMAGES.は疲弊していった。タイムスリップにより体は何ともなくとも、5pb.を何回も看取ったことによる心労は計り知れなかった。次第にMAGES.は心の余裕をなくし、それを感づいた5pb.に対する罪悪感により、さらに心にダメージを負う。絶望の
「......」
そのままMAGES.が瞳を閉じようとした、その時だった。バタンとラボの扉が開くと、MAGES.の視界がまだぼやけているうちに来客が口を開く。
「やっと...会えた...」
「ん...?あえ...?」
眠りかけていた脳が目からの情報を処理し、数秒で息を切らした相手を特定する。
「じょ......しゅ...?」
そこにいたのはラステイションの女神、ノワールだった。
「なに呑気に寝てるの、5pb.ちゃんを助けるんでしょう?」
「なっ...!」
ノワールの言葉は、、間違いなく本来この世界ではMAGES.しか知りえない情報が含まれていた。眠気が消え去った脳は、現在の情報から1つの答えを導き出した。
「お前も...タイムスリップしてきたのか...?」
ゆっくりと、彼女が首を縦に振った。
「とりあえずはそのままでもいいわ、MAGES.、私が今ここに来るまでに起こったことを順を追って話すわ、聞いてくれる?」
「あ、ああ!」
ずっと1人で時空をさまよっていたMAGES.にとって、初めての協力者。彼女は食いつくように肯定を示した。
「まず...5pb.ちゃんが突然亡くなったわ、これは知っているわね?」
今まで観測した無数の5pb.の最期を思い出し一瞬表情が曇るが、MAGES.は首肯する。
「当然ゲイムギョウ界中の人が悲しんだし、陰謀論めいたものも流れたわ...」
MAGES.の様子がいつもと違うと感じたのか、ノワールは子供に話しかけるかのように優しく語っている。
「でもここからが本題、5pb.ちゃんの殺人容疑で、MAGES.、あなたが全国指名手配されたの」
「ぇ...?」
MAGES.がふるふると首を横に振る。するとノワールはMAGES.の手をそっと握り、
「大丈夫、あなたがやったわけないって、ユニ達もちゃんとわかってる」
その言葉でMAGES.が落ち着いた頃合いで、ノワールは話を続ける。
「私と他の女神、それにケイ達教祖も一切聞いてないって言うから、おかしいと思ってみんなでずっとあなたを探してたの。このラボにも何かないか探しに来たけど、棚の一つ一つ全部が荒らされてて...」
「タイムマシンは...?」
MAGES.が恐る恐る問いかける。するとノワールは首を横に振り、
「それも含めて、あなたが作った物はラボから消え去ってた」
「っ......!」
MAGES.は時間遡行を繰り返すうちに、5pb.を何度も葬った男たちの目的に薄々気づきつつあった。しかし、目を背けようとしていた、苦しい現実から。
「...私のせいだ」
「え?って、MAGES.!?」
MAGES.はカッターナイフを机の上から取ると、それの切っ先を首元に伸ばす。
(もう...疲れたんだ......5pb.、すまない......)
刃が首元に触れた、その時。
「ドリーク・ソアーク」
どこからともなく声が聞こえると、MAGES.の手にはカッターナイフではなく、ペットボトルのドュクプェが握られていた。
「まだ死なれては困るよ、私。もっとも、まだ私は”死ねない”んだがね」
「誰...?」
狐に包まれたような表情のMAGES.の前に、ほっとした表情のノワールを押しのけて、その人物は現れた。
「ちょっと、押さないでよ」
「フッ、助手よ、少しは状況を考えるべきだ。私のせっかくの登場シーンが台無しではないか」
「どうでもいいわよそんなこと、それよりも、ほら」
「そうだな、そこの死んだ魚のような眼をしている私を、早いとこ狂気の魔術師の眼にしなくてはな」
「まさか...」
そこにいる青髪で泣きボクロの謎の人物とノワールのやり取りに、MAGES.は既視感を覚え、その正体に気付く。
「お、どうやら気付いたようだな、そうだ、私は10年後のお前...狂気の魔術師、MAGES.だ!!」
深夜のラボに、その声はよく響いた。
あと1,2話で終わると思います
新作にMAGES.と5pb.が出てくれるといいなあ...
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自作自演のオラクル
4月1日 0:20 プラネテューヌ ラボ
「私は10年後のお前...狂気の魔術師、MAGES.だ!!」
「10年後の...私?」
目を見開いて驚くMAGES.と、あきれたようにため息をつくノワール。少しの間ラボが静寂に包まれた後、10年後のMAGES.が口を開く。
「おい、もっと驚いてくれなければ張り合いが無いではないか」
「ふざけてないで早いとこ説明しちゃいなさいよ...タイムマシンが見つかっちゃいけないんでしょ?」
「おお、そうだったな。よし、ではお前にプロジェクトの概要を説明する」
「ち、ちょっと待って!」
自分を蚊帳の外にして話が進んでいることに気付き、MAGES.は慌てて何か話そうとした2人を止める。
「2人は私に何がしたいんですか?それに...プロジェクトって...」
動揺、混乱、不安、様々な感情の怒涛の流入により、MAGES.は言葉を紡ぐ途中で訳も分からず涙をあふれさせる。しかしそんなMAGES.を見て
「ククッ、フッ、フゥーハハハハハ!!!」
10年後のMAGES.は高笑い。
「"私"よ、いや、この腑抜け!」
「なっ!?」
「ちょっと、MAGES.!?」
いかに未来の自分であろうと、腑抜けなどと呼ばれて黙っているほどMAGES.は温厚ではない。食って掛かろうとソファから立ち上がるも、10年後のMAGES.は人差し指をMAGES.に向け、芝居がかった口調で話し始めた。
「"私"よ、お前が何回もタイムスリップを繰り返している理由は何だ?」
「それは...」
5pb.を助けるため。そう言おうとする前に10年後のMAGES.が話し始める。
「5pb.を助けるため...そうだろう?」
「っ...」
「お前はその目的のために、自分の心を犠牲にしながら終わりがあるかもわからない迷路をさまよい続けている...違うか?」
「......」
「だがお前に残念なお知らせがある。お前がやっているような方法では、絶対に彼女...5pb.は死ぬ」
言葉を発するほどに彼女の顔は真剣さを増してゆく。
「原因は..."私"ならもうわかっていると思うが、世界は定められた結果に向かって収束してゆくからだ。お前が身をもって経験したようにな」
「だったら、もう...放って......」
MAGES.は涙を流し、その場にへたり込む。心の負担が限界に...というよりとっくに限界を超えていたのかもしれないが。
「フッ、らしくないな、"私"よ、口調まで昔の私に戻っているではないか。本当にどうしようもないのなら、私は今ここにいない。言っただろう?プロジェクトの概要を説明するとな」
そう言って10年後のMAGES.はにやりと笑う。
「え?」
「まだわからないのか、"私"。5pb.を助けるためのプロジェクト、
(私は...10年後も...それに世界を救えるのは私だけ...?)
「フッ、ははは」
MAGES.は口角を上げ、しばらくぶりに笑った。
(相変わらずおかしな作戦名を付けるわ、過去の自分とは言え初対面で腑抜け呼ばわりするわ、世界を救うだとか...)
少々特殊な自虐を脳内で行うMAGES.。
(中二病は治らず...か)
「"私"よ...」
「何だ?10年前の私」
「その作戦について...聞かせてくれ」
その絞り出したような声に、ノワールは優しく微笑み、未来のMAGES.は今のMAGES.の肩をそっと叩いた。
4月1日 10:21 プラネテューヌ ラボ
「......」
重い瞼を少しずつ開け、入ってきた光で日がすでに上っていることを認識する。どうやら昨日はソファで寝落ちしてしまったようで、被りっぱなしの帽子がそれを証明している。
「夢...というわけではなさそうか...」
MAGES.はそう言って、未来のMAGES.がホワイトボードに書いていった文字を見ながら、昨夜のことを反芻する。
~(では、我々はこれから未来に飛んでくる。しっかりやれよ?"私")~
~(未来?まだやることがあるのか?)~
~(助手に救われたことがあったんじゃないのか?)~
~(え...?)~
~(いいのよ、今のあなたは作戦に集中して。今のあなたには、もう過ぎたことよ)~
~(あ、あぁ...)~
昨晩、
「えっと、私はとにかく、5pb.のライブでの歌とパフォーマンスを完コピすれば...いいんだよな?」
~(5pb.が死ぬのはこの世界線における一つの決まりのようなもので、それを捻じ曲げることは不可能だ。そこで、世界が"5pb.は死んだ"と誤認させるんだ。ただ、仮死状態にするみたいな方法では不可能だと、この私が行った10年間の研究の中で分かっている。だから、目の色くらいしか誤差のない従妹であるお前...MAGES.が5pb.の影武者となり、世界を騙すのだ!)~
「......」
久しぶりにしっかりと睡眠をとり、冷静になった頭で作戦に少しの不安を覚えながらも、クローゼットから去年のハロウィンで使った、5pb.の衣装と全く同じのコスプレ衣装を取り出す。
「いや、本当にこれで良いのか?この格好で歌って踊って...死んだふりして世界を騙す?」
思い出したくも無いが、MAGES.は5pb.を救う為に考え得る限りの方法を試したのだ。それがこんな、コスプレをして替え玉ライブを行うだけで解決して良いのだろうか。
「この衣装...やっぱり露出が多いな...」
そんな事を考えつつも着替えを済ませ、姿鏡の前に立ち、細かい部分を整える。以前着用した時に、多くの人からそっくりだと言われた事を思い出す。
「そう言えば...赤のカラーコンタクトをつけるように言われていたな。後で買ってくるか...」
5pb.は綺麗な、赤い瞳をしていたな...そんなことを考えながら、ホワイトボードの『ライブ曲一覧』に書かれた項目を一瞥。
「一曲目は...『My Dear,』だったな...よし」
5pb.が今まで出した曲のCDは全て買っている。おまけにタイムスリップを繰り返したことによって、ライブのプログラムは未来のMAGES.に言われるまでも無く把握していた。それだけでは無い。ダンスの振り付けも、パフォーマンスの内容も、MAGES.は迷宮を彷徨う中で、5pb.の一挙手一投足を目に、頭に、そして心に焼き付けていた。
「ダンスはあまり得意ではないし、歌も5pb.ほど上手くはないが...やるしかないか...」
甘えたりあきらめたくなる心に鞭を打ち、MAGES.は必死に5pb.の替え玉ができるように練習をした。それはアイドルとしての活動経験がないMAGES.が数日でマスターできる程度のものではなかったが、彼女はタイムマシンを使い何度も4月の第1週をやり直すことによって、少しずつ、しかし確実に5pb.としての動きを身に着けていった。
4月6日 16:41 リーンボックス ライブ会場:楽屋
「それで、いったい何の用事?ライブ前の楽屋に来るなんて」
暖かい紅茶を飲みながら、5pb.がMAGES.に問いかける。5pb.はライブの直前、いつもリーンボックス名産の紅茶を飲むと決めている。それが一番落ち着くのだと。
「...いや、陣中見舞いにでもと思ってな」
「もう...ボクが通りかかったからよかったけどさ...」
「......」
MAGES.からすれば、例え追い返されたり捕まったとしても、タイムマシンを使えば良いと思っていたが...
「でも...ありがとうね、ちょっと緊張、ほぐれたかも」
カップの紅茶を一口啜り、優しく笑う。
「......そ、そうだな、何せこの狂気の魔術師たる私が来てやったのだからな!」
「ふふっ、そうだね。あ、MAGES.も紅茶飲む?」
「あ、ああ、頂くとしよう」
5pb.がティーポットとカップを取りに行くため、MAGES.に背中を向ける。彼女はこの時を待っていた。
(5pb....少しの間だけだ...すまない)
心の中で謝罪しながら、5pb.のカップに用意していた液状の睡眠薬を入れる。懐に薬をしまったのと同時に5pb.はこちらを向き、MAGES.の前に紅茶を差し出す。
「どうぞ」
「ああ、ありがとう」
怪しまれないようにカップを口元に運び、一口飲む。が、焦りや緊張からか、味は全く感じられなかった。
「美味しいでしょ、この紅茶」
5pb.が紅茶を再び飲む。
「やっぱりリーンボックスの紅茶がボクは...」
そこまで言った所で5pb.の身体は支えを失ったかのように前方に倒れこむ。カップは5pb.の指にかかり振り子のように揺れ、紅茶は楽屋の絨毯を濡らす。MAGES.は予知していたかのように彼女を支え、その身体を楽屋のクローゼットに運んだ。
「5pb....」
小さくつぶやいた後、彼女は自分で自分の頬を3回叩き、たった1人に向かって宣言する。
「これより、
次で(多分)終わり
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狂気のマッドサイエンティスト(終)
4月6日 21:01 リーンボックス ライブ会場
「はい、もしもし」
「もしもし、私だ、今待ち合わせの場所にいるぞ」
「あ、ごめんねMAGES.、今楽屋を出たところだ...よ」
「そうか、待ってるぞ」
「うん...また後で.........ふぅ...」
廊下の隅で電話を切ったMAGES.は、天を仰ぐような動きをした後でスマホをバッグにしまう。2時間と少しのライブを終えたのち、一息つく間もなくマネージャーと明日の仕事の打ち合わせ。当然MAGES.がそんなことを把握しているはずもなく、無駄に時間を要し当初の予定よりも遅れて過去の自分に電話を掛ける羽目に。
「5pb.は...タフだったんだな...」
ライブ後に自分と会っても疲労の色を一切見せなかった5pb.を思い出し、自嘲気味に呟く。気が抜けそうなところだったが、自分の目的を思い出して大きな伸びをしてから
4月6日 21:40 リーンボックス レストラン
「美味しいね、MAGES.」
スパゲッティを口に運んだ5pb.が、私に微笑みかける。
「ああ、私が選んだ店だからな、当然だ」
私は自信満々に返したが、今日の5pb.はどこか変だ。
「...?ボクの顔に何かついてる?」
「い、嫌何も!」
5pb.が先ほどまで口をつけていた飲み物はドュクプェ。普段なら彼女がそれを選ぶことはなく、苦手としているくらいだ。まあ、好きになってくれたのならそれはそれでよいのだが...。もう一つ言えば、今日の5pb.からはこう...何というか...アイドルとしてのオーラが出ていないように感じる。一ファンとしての勝手な考えだが。
まずい。非常にまずい。ついいつもの癖でドュクプェを注文してしまった。ウエイトレスに言った手前訂正することもできず、「たまには飲んでみようかなと思って」などと苦しい言い訳をしてしまった。思えば、絶対に私がMAGES.だと知られてはいけないにもかかわらず練習の詰めが甘かったのではないか。こんなことを考えている間にも、自分が5pb.らしくない行動をとっているのではないかと心配になってくる。今のところ一人称「ボク」を間違えてはいないはずなのだが...。
「......」
「......」
2人のMAGES.の会話がピタリと止まり、フォークとナイフがさらに当たる音のみがやり取りされる。
(まずい、何か話題を出さねば...)
(5pb.が死ぬ時刻の22時頃までに店を出なければ...)
「「あの...っ!」」
気まずい沈黙が数十秒続いた後、5pb.の格好をしたMAGES.が切り出す。
「......ボクもMAGES.も食べ終わったし、お会計、しよっか...」
4月6日 21:57 リーンボックス 市街地
レストランを出た2人は、つかず離れずの距離を保ちながら夜道に歩を進める。落ち着かない様子で思わず早足になる私を、過去の私はどう見ていたのだろうか。
「ひ、久しぶりだよね、こうやって2人でリーンボックスの街を歩くの」
「そうだな、昔はよく2人で遊んだものだが...」
大きくなるにつれて、私と5pb.が会う機会は少なくなっていた。私は魔法と科学、5pb.はアイドルという別々の道を選んだのだから当然ともいえるが、特にここ最近は一気にスターダムを駆け上がる彼女に引け目を感じ、無意識のうちに避けていたかもしれない。
「こんな風に2人で会う機会を増やしたいものだな...」
「あ...」
その言葉で、私は思い出した。5pb.の死、そしてそれに伴う時間旅行の末にすっかり忘れてしっまっていたが、私は今日5pb.に、その言葉を伝えたかったのだと。私は道の真ん中で動けなくなり、視界がにじんだ。
「5pb.?どうしたんだ?」
過去の私が心配して話しかけてくる。麻痺していたはずの5pb.の死への悲しみが、堤防が決壊したかのように押し寄せてくる。私は自分が何のために5pb.に成り代わっているのかも忘れ、一滴が頬を伝おうとしたその時。
ダン!
それは平穏なリーンボックスの夜にはあまりにも不似合いな銃声。はっとしたのもつかの間、胸元に感じるのは今まで感じたこともないような熱さ。
「え...?」
思わずその熱さの元へと手を運ぶが、何が起こったのかは手を触れた瞬間に襲い掛かる激痛に分からされた。
「ぐ、ああぁぁぁぁっ!?」
撃たれた。苦しい。死ぬ。計画通りに事は進んでいるのだが、そのあまりの苦痛に一瞬「後悔」の二文字がよぎる。
「&%$%#%@*!?」
私を抱きかかえるようにして過去の私が何か呼びかけている。が、何を言っているのかは全く聞き取れない。出血多量のためか、意識が朦朧としてきた。未来の私はこの作戦でお前が死ぬことはないと言っていたが、何せ過去を変えようとしているのだ。何が起こっても...私が死んだとしても何もおかしいことはない。それでも5pb.を救えるのならば、惜しくはない。この狂気の魔術師MAGES.、最後の実け...ん......
私はそこで、瞼を閉じた。
「......ん...ん...?」
眩しい。視界がぼやけ、意識もいまだ覚醒しきってはいない。
「良かった...」
聞きなれた声が聞こえる。思わず首をそちらに向けると...
「MAGES.!」
声の主、5pb.が私に抱き着いてくる。
「おわっ!?」
押し倒される格好となったが、その身体からは温もりを感じ、ループを繰り返す中で幾度となく抱きかかえた彼女の死体とは違う事を認識させられる。
「MAGES.が死んじゃったら、ボクもう立ち直れなかったかもしれないから...ホントに...ぐすっ...」
辺りを見渡しここが病院だと察するとともに、5pb.の言葉から自分が何らかの要因で死にかけていたこ事を知る。
「えーっと、5pb.、今日は何月何日だ?」
5pb.が落ち着いたのを見計らい、自分にとって最も重要な事を問いかける。
「え?えーっとね...」
5pb.は傍らから携帯電話を取り出すと、その画面を私に見せる。
「4月...7日...」
4月10日 12:58 プラネテューヌ ラボ
『今月6日、リーンボックスで発生した銃撃事件について、容疑者の男は"嫉妬によるものだった"などと供述しており...』
春の陽気が確かなものとなってきた4月の午後、MAGES.は薄く汗をにじませながらラボで研究に精を出して...
「ふあぁ...」
いなかった。机に突っ伏し、気の抜けた表情。
「退院してからずっとその調子じゃない?」
ソファの上で雑誌を読んでいた5pb.が呆れたように言う。
「何を言うか5pb.、私はこう見えてもこの灰色の脳細胞をフル回転させてだな...」
「やっぱりあの...タイムマシンだったっけ?あれ壊さなかった方が良かったんじゃない?出来た時、ボクに嬉しそうに話してくれたでしょ?」
5pb.が少し笑いながら、無邪気に言う。
「.........大丈夫だ、私の第六感がアレは必要ないと判断したんだ。それに......」
「それに...?」
MAGES.は何かを言いかけて止めた。
「なんでもない、それよりもあと少しでラジオが始まるぞ」
「あ、本当だ、でもMAGES.と一緒に聴くのは恥ずかしいな...」
5pb.は事件の影響により、少しの間活動を休止している。彼女のラジオ番組『ふぁいらじっ♪』は数回分収録を行っていたため、こうして放送が行われるわけだが。
『5pb.のふぁいらじっ♪』
「お、始まったぞ」
「ふふっ...」
「なんだ?5pb.」
「MAGES.と一緒に居ると楽しいなあって」
「っ...!」
5pb.が笑う。そんな彼女の笑顔を守れたことへの喜びからか口角が上がり、5pb.に背を向ける。
(私がやった事は、きっと正しかったんだよな......きっと)
ふうと息を吐き、5pb.の方を向く。
「わ、私も楽しい...ぞ?」
MAGES.は顔を赤らめながら言ったのだが、5pb.はそれに気づかずこっちに来るように誘う。MAGES.はその誘いにさらに顔を染めながら乗る...そんな2人のやり取りを、開いた窓から入る春の日差しが見つめていた。
『5pb.ちゃんはもし明日世界が終わるなら何をしますか?うーん、ボクは......大切な人と過ごすかな。例えば......従妹のMAGES.ちゃんとか!じゃあ次のコーナーは...』
完結です。閲覧ありがとうございました。
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