魔法少女リリカルなのはLOST FORCE (三月雪音)
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プロローグ

どうも三月雪音です。

ようやく話の大筋をまとめることができたのでとりあえずプロローグを投稿します。

リメイク前と同じ失敗をしないように慎重に書き進めていこうと考えているので投稿頻度はタグにある通り不定期になってしまうと思いますが、さすがに半年単位で開けるつもりはございません。

まぁ、何か問題が発生したらそうなってしまうかもしれませんけど……

それと登場はまだ先になるのですが照人くんのバリアジャケットについてアンケートを取るかもしれません。もしもそうなった場合はご協力のほどお願い致します。

何はともあれ、「魔法少女リリカルなのはLOST FORCE」始まります


「ハァハァ……早く逃げないと……ッツ!!」

 

フードを被った女性が一人の赤ん坊を抱えながら海鳴市の港を走っている。

 

「どこに逃げると言うんだ?」

 

男特有の低い声が聞こえると同時に女性の足が赤黒い弾丸によって撃ち抜かれ、女性は体制を崩し倒れてしまう。

 

すると、黒いコートに身を包んだ男が女性の前に現れる。

 

「ようやく見つけたぞ……実験体No.873」

 

「彼は……ジェームズはどうしたのよ!?」

 

「あの裏切者()ならすでにあの世だ。お前の脱走に手を貸したのが運の尽きだったな」

 

男はそう言うと紫色の宝石がついた拳銃を女性に向けると、銃口からエネルギー弾が放たれる。

 

「ッツ!!」

 

女性は立ち上がって逃げようとするが、放たれたエネルギー弾が腹部へと当たり、その衝撃で海に落ちてしまう。

 

「海に落ちたか……まあいい、あの傷では遠くには逃げられまい。探せ、最悪"死体"でも構わん」

 

男は女性の血で赤く染まった海を見てそう言うと、どこかに消えた。

 

――――――――――

 

ある日の夕方、壮年の男性―高町士郎はボディーガードの仕事が終わり、数日ぶりの我が家への帰路についていた。

 

家の近くまでくると家の前に一人の女性が倒れているのを発見する。

 

「君!?大丈夫かい!?」

 

士郎は女性に近づき、両手で女性の体を起こすと女性の腹部と足に何かが貫いたような傷があることに気付く。

 

「この傷は……」

 

「お願い。この子を助けて……」

 

女性はそう言い、自らが抱いていた赤ん坊を士郎に渡したのを最後に意識を失ってしまう。

 

「おい!!おい!!」

 

士郎は女性の肩を揺するが応答がない。

 

「あなた?帰ったの?」

 

士郎の叫ぶ声が聞こえたのか士郎の妻―桃子が玄関から出てくる。

 

玄関から出てきた桃子は士郎が抱えてる女性と赤ん坊を見て驚く。

 

「母さん!!救急車に連絡を!!」

 

「えぇ、分かったわ!!」

 

そう言った桃子は急いで家の中に戻り、救急車を呼ぶ。

 

数十分して到着した救急車によって女性と赤ん坊は最寄りの病院に運ばれた。

 

次の日、高町家に一本の電話が掛かってきた。

 

「はい、高町です」

 

『もしもし、海鳴大学病院です。高町士郎さんはいらっしゃいますか?』

 

「私が高町士郎です」

 

『今回、お電話したのはですね……』

 

電話の内容は、先日に士郎たちが発見した女性と赤ん坊についてであった。

 

「分かりました。妻と一緒に向かいます」

 

士郎はそう言うと電話を切り、桃子に事情を話し海鳴大学病院へ向かった。

 

「先生…それであの女性と赤ん坊は?」

 

士郎の質問に医者は首を横に振る。

 

「女性は残念ながら……」

 

「そうですか……」

 

「しかし、赤ちゃんの方は健康な状態で特に異常はなかったです。現在、乳児院と言う施設に預ける手続きを行っています」

 

医者の言葉に士郎は聞き返してしまう。

 

士郎は医者の言葉に女性が最後に言っていた言葉を思い出す。

 

―『お願い。この子を助けて……』

 

士郎が隣にいる桃子に視線を送ると、士郎の考えを察したのか桃子は無言で頷く。

 

桃子の反応を見た士郎は医者にある提案をする。

 

「自分達が引き取ります」

 

「……本当によろしいのですか?」

 

医者は士郎と桃子の顔を見てもう一度聞く。

 

「「はい」」

 

「分かりました。手続きに必要な書類は後でお渡しします」

 

こうして赤ん坊は高町家に引き取られることとなった。

 

士郎は赤ん坊を抱き上げて、喋りかける。

 

「今日から君の名前は照人(しょうと)だ。高町 照人(たかまち しょうと)だ」

 

照人と名付けられた赤ん坊は士郎の言葉に笑顔で返答した。

 

それから5年後、高町家に新たな家族が増える。

 

照人は兄姉である恭也、美由紀と一緒に士郎に連れられて海鳴大学病院に来ていた。

 

「皆さん、こちらです」

 

看護師は病室の中に入って行くと、士郎たちはその後に続く。

 

病室のベッドには赤ん坊を抱える桃子の姿があり、士郎たちに気付くと笑顔で迎える。

 

「あなた。それに恭也たちも」

 

「やあ、桃子。具合はどうだい?」

 

「うん、大分良いわ」

 

「そうか、それはよかった……」

 

桃子の無事な姿に士郎が安堵の表情を浮かべていると、照人は物珍しそうに赤ん坊の顔を覗き込んでいる。

 

「照人の妹のなのはよ。あなたはお兄ちゃんになったのよ」

 

「いもうと……」

 

照人はなのはと名付けられた赤ん坊の顔を見つめる。

 

「なのは、お兄ちゃん達ですよー」

 

桃子はそうなのはに呼びかけると、なのははそれに答えるようにキャッキャッと笑う。

 

それを見た士郎は照人に笑いながら話しかける。

 

「そうだぞ。照人はお兄ちゃんになったんだから、なのはのことを守ってやるんだぞ」

 

「うん!なのははぼくがまもる!」

 

「はは、照人。剣術で俺から一本も取れないのにか?」

 

元気な声で答えた照人を見ながら笑う恭也。

 

「うっ……」

 

「お兄ちゃん!いじわる言わないの!」

 

「ははは、悪い悪い」

 

言い返せない照人に美由紀が助け船を出した。

 

「「ふふっ」」

 

士郎と桃子は子供たちの様子を見て、微笑んでいた。




普通の生活を送っていた照人となのは

ある日、二人は一匹のフェレットと出会う

その出会いは二人の日常を大きく変化させていく

次回「始まりの出会い」

人の想いを利用して踏みにじったことを後悔しろ!!


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無印編
始まりの出会い


これは、高町家に引き取られた青年の物語……

ある日の夜、青年は魔法の力に目覚める。

力に目覚めた青年は数多の出会いや困難の中で、何を思い、何を成すのか……

これはその始まりの物語……

魔法少女リリカルなのはLOST FORCE、始まります。


―『ハァハァ……グッ!』

 

暗い森の中、一人の少年が不気味な黒い影と戦っていた。

 

―『お前はこんな所に居ちゃいけない。帰るんだ、自分の居場所に』

 

少年は右手を影の方に突き出すと、何かの詠唱を始める。

 

対する影も本能的に何かを感じたのか詠唱を止めるために少年目掛けて突進する。

 

―『妙なる響き、光となれ! 赦されざる者を、封印の輪に! ジュエルシード、封印!』

 

少年がそう言い切ると少年の右手には魔法陣が形成され、突進してきた影を吹き飛ばす。

 

しかし、完全に倒しきることは出来ずに影は逃走してしまう。

 

―『クッ…逃がしちゃった…追いかけなくっちゃ…誰か僕の声を聞いて…力を貸して、魔法の力を』

 

少年はその言葉を最後に気を失ってしまった。

 

――――――――――

 

(……不思議な夢だったな)

 

眠りから目覚めた照人は時計を確認すると4時を示していた。

 

「四時か。少し早いけど、着替えようかな」

 

そう言って照人はパジャマを脱いで動きやすい服装に着替えると、家に併設されている道場へと向かった。

 

照人が道場の扉を開くと、そこには誰もおらず静寂に包まれていた。

 

「流石に誰も来てないよね……少し準備運動をしておこうかな」

 

棚に立てかけられている木刀を持ち、構えると型に沿って木刀を振る。

 

唐竹、袈裟懸け、右薙、右斬り上げ、逆風、左斬り上げ、左薙、逆袈裟、突きと基本の型を順にこなしたあと、木刀を正眼に構え直す。

 

すると、道場の扉が開き照人の兄姉である恭也と美由希が入ってくる。

 

「おはよう、兄さん、姉さん」

 

「「おはよう、照人」」

 

互いに朝の挨拶を交わすと、恭也が木刀を構える。

 

「さて、朝の稽古を始めるか」

 

「「はい!!」」

 

美由希と照人の返事を皮切りに、朝の稽古が始まった。

 

照人が稽古をしている頃、照人と同じ夢を見ていたなのはは携帯電話のアラームで目を覚ます。

 

「んぅ~……ふぁ、なんか変な夢見ちゃった」

 

そう言ったなのはは背中を伸ばすと、自分が通う私立聖祥大学付属小学校の制服に着替え始めた。

 

着替えを済まし、洗面台で髪を整えたなのははリビングに移動した。

 

「おはよう」

 

「あ、なのは。おはよう」

 

「おはよう、なのは」

 

なのはの"おはよう"という言葉にキッチンで朝食の準備をしていた桃子とテーブルで新聞を読んでいた士郎は言葉を返した。

 

「はい、これお願いね」

 

「は~い」

 

なのはは桃子から渡された家族全員分の飲み物をテーブルに運ぶ。

 

「ちゃんと一人で起きられたんだなぁ。偉いぞぉ」

 

新聞を読むのをやめた士郎がなのはから飲み物を受け取りながら言う。

 

「朝ごはん、もうすぐできるからね」

 

桃子がもうすぐ朝食が完成することを告げる。

 

「お兄ちゃんたちは?」

 

なのははリビングにいない兄や姉の居場所について聞くと、士郎が答えた。

 

「あぁ、道場にいるんじゃないか?」

 

士郎の言葉を聞いたなのはが道場に様子を見に行くと、道場では恭也と照人が木刀を片手に打ち合いをしていた。

 

「たあっ!てい!ハッ!」

 

照人の木刀を恭也は余裕の表情で躱していた。

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、照くん、おはよう。朝ごはんだよ」

 

「あぁ…なのは、おはよう」

 

打ち合いを見ていた美由希はなのはに近づいて返事をする。 

 

「「おはよう、なのは」」

 

なのはの声を聞いた恭也と照人は打ち合いを終わらせ、なのはの方に向き直って言う。

 

「はい、照くん」

 

なのはは打ち合いを終えて息を整えている照人にタオルを渡した。

 

「ありがとう、なのは」

 

受け取ったタオルで照人は汗をふく。

 

「じゃあ美由希、照人、今朝はここまで」

 

「はい」

 

「続きは夜だね」

 

恭也の言葉に美由希と照人は了承する。 

 

「じゃあ、朝ごはんを食べに戻るか」

 

朝ごはんを食べるために四人は居間に戻る。

 

「ん~、今朝も美味しいなぁ。特にこのスクランブルエッグが」

 

「ほんと~、トッピングのトマトとチーズと、それからバジルが隠し味なの」

 

朝食のスクランブルエッグに舌をうねらせている士郎に桃子はトッピングや隠し味のことを話す。

 

「みんなぁ、あれだぞ~。こんな料理上手のお母さんを持って幸せなんだからなぁ、分かってるのか」

 

「分かってるよ。ねぇ、なのは」

 

「うん」

 

士郎の言葉に美由希となのはが答えると桃子が恥ずかしそうしていた。

 

「あぁんもう…やだぁ、あなたったら」

 

「んぅ~」

 

惚気る士郎と桃子を見ながら、四人は箸を進める。

 

「美由希、リボンが曲がってる」

 

「え?ほんと?」

 

美由希のリボンが曲がっていることに気付いた恭也はリボンを整えている。

 

朝食を終え、登校する時間となり、美由希と照人、なのはは各々が通う学校へ向かう。

 

「おはようございま~す」

 

なのはがスクールバスに乗ると友人であるアリサ・バニングスと月村すずかに声を掛けられる。

 

「なのはちゃん」

 

「なのは~、こっちこっち」

 

「すずかちゃん、アリサちゃん」

 

すずかとアリサが座っている後ろの席に移動するなのは。

 

「おはよう」

 

「おはようなのはちゃん」

 

「おはよう」

 

「そう言えばさ、今日って照人さんが迎えに来るの?」

 

「うん、いつも通り校門で待ってるって」

 

すずかの質問になのはは答える。

 

「そうなの!?やった~。ね、すずか」

 

「うん」

 

照人が迎えに来ることを聞いた二人は喜んでいた。

 

時刻は放課後、学校が終わった照人たち四人は帰路についていた。

 

「今日のすずか、ドッチボール凄かったんですよ」

 

「へぇ~、流石だね。すずかちゃん」

 

アリサが体育でのすずかの無双っぷりを照人に話していた。

 

「そんなことないですよ」

 

照人の言葉にすずかは顔を真っ赤にして照れていた。

 

途中、アリサが近道だという森の中を通っていたのだが、照人となのはは既視感を感じた。

 

(ここ…昨夜、夢で見た場所)

 

(ここは、昨日の夢で見た…)

 

「どうしたの?」

 

「なのは?照人さん?」

 

すずかとアリサに声を掛けられ、ハッとする照人となのは。

 

「ううん、なんでもない。ごめんごめん」

 

「あぁ、少し見覚えがあってね」

 

「大丈夫ですか?」

 

「「うん」」

 

心配するすずかに二人は大丈夫であることを伝えた。

 

「じゃあ、行こっか」

 

アリサはそう言うと再び歩き始める。

 

((まさか……ね))

 

「なのはちゃん?」

 

「照人さん?」

 

「うん」

 

「今行くよ」

 

二人の声に照人となのはは二人に追いつくように歩を早める。

 

『助けて!』

 

誰かの助けを求める声が聞こえた照人となのはは歩みを止めてしまう。

 

「なのは?」

 

「照人さん?」

 

二人が足を止めたことを不思議に思うアリサとすずか。

 

「今、何か聞こえなかった?」

 

「何か?」

 

なのはの言葉にすずかは聞き返す。

 

「助けを求めるような声が聞こえたんだけど……」

 

「別に……」

 

「聞こえなかったですけど……」

 

照人が言ったことに二人には心当たりがないのか、訳が分からないといった顔をしていた。

 

一同は止まって周りを確認する。

 

『助けて!』

 

再び同じ声が聞こえ、照人となのはは声が聞こえた方に走り出す。

 

「なのはちゃん!?」

 

「照人さん!?」

 

二人も慌てて追いかけてくる。

 

声を頼りに走っていくと倒れている動物を発見し、なのはが動物を抱える。

 

「どうしたのよなのは?急に走り出して?」

 

「あ、動物……でも」

 

追いついたアリサはなのはに走り出した理由を聞いていると、すずかが動物に気付く。

 

「あぁ、ケガしてるみたいだ。急いで動物病院に運ぼう」

 

照人の提案で近くの動物病院へ運んだ。

 

「ケガはそんなに深くないけど、随分衰弱してるみたいね」

 

治療を終えた獣医が動物の状態を説明してくれた。

 

「院長先生、ありがとうございます」

 

「「「ありがとうございます」」」

 

照人が獣医にお礼を言うと、なのはたちもお礼を言った。

 

「これってフェレットですよね?どこかのペットなんでしょうか?」

 

「フェレット…なのかな?変わった種類だけど…」

 

アリサの疑問に獣医は曖昧に答える

 

「ま、しばらく安静にした方が良さそうだから、とりあえず明日まで預かっておこうか」

 

「はい、お願いします!!」

 

「「「お願いします!!」」」

 

獣医の提案に照人が頭を下げると、なのはたちも頭を下げる。

 

その後、家に帰ってきた照人となのははフェレットのことを家族に相談していた。

 

「そういう訳で、そのフェレットさんもしばらくうちで預かるわけには行かないかなぁって」

 

「父さん、俺となのはがちゃんとやるからさ、ね?」

 

なのはと照人がそう言うと、士郎は少し考えこむ。

 

「フェレットかぁ……ところでなんだ?フェレットって?」

 

士郎の発言に恭也と美由希、照人、なのはの四人はずっこけてしまう。

 

「イタチの仲間だよ。父さん」

 

「だいぶ前からペットとして人気の動物なんだよ」

 

恭也と美由希が簡単に説明すると、キッチンから桃子が出てきた。

 

「フェレットって小っちゃいわよね」

 

「知ってるのか?」

 

士郎が桃子に聞き返していると、照人が喋る。

 

「うん、30㎝くらいかな」

 

「しばらく預かるだけなら、籠に入れておけてなのはと照人がちゃんとお世話できるならいいかも…恭也、美由希…どう?」

 

桃子はそう言って、恭也と美由希にも意見を求める。

 

「俺は特に異存はないけど」

 

「私も!」

 

恭也と美由希も反対するつもりはなさそうだった。

 

「だそうだよ」

 

「良かったわね」

 

「「うん、ありがとう」」

 

父と母の言葉になのはと照人は感謝の言葉を口にするのだった。

 

(『アリサちゃん、すずかちゃん、あの子は家で預かれることになりました。明日、学校帰りに一緒に迎えに行こうね。なのは』、送信っと)

 

食事を終えたなのははフェレットを預かれることになったことをアリサとすずかの二人にメールしていると、なのははまた不思議な声を聞く。

 

『聞こえますか?僕の声が、聞こえますか?』

 

「この声……」

 

なのははこの声が昨夜の夢の声や昼間の声と同じ声であることに気付く。

 

『聞いてください。僕の声が聞こえる方、お願いです。力を貸してください…お願い』

 

何か嫌な予感がしたなのはは動物病院に向かっていた。

 

動物病院についたなのはの耳に甲高い音が聞こえ、なのはは咄嗟に耳を塞ぐ。

 

「また、この音……」

 

甲高い音がやむと、周囲から人の気配が消えた。

 

すると次の瞬間、爆発音が聞こえ、なのはは音の方へ向かう。

 

「あ、あれは…」

 

そこにはフェレットとフェレットを追う黒い影がいた。

 

なのはは黒い影から逃げるフェレットをキャッチする。

 

「何々!?一体何!?」

 

「来て、くれたの?」

 

「喋った!?」

 

今の状況に驚いているなのはだが、フェレットが喋ったことにもっと驚く。

 

「そのぉ、何が何だかよくわからないけど…一体何なの!?何が起きてるの!?」

 

とりあえずフェレットを抱え動物病院を後にしたなのはは走りながら、フェレットに話している。

 

「君には資質がある。お願い、僕に少しだけ力を貸して!」

 

「資質?」

 

フェレットの言うことに首を傾げるなのは。

 

「僕はある"探し物"のために、ここではない世界から来ました。でも、僕一人の力では思いを遂げられないかもしれない。だから、迷惑だと分かってはいるんですが資質を持った人に協力してほしくて……」

 

フェレットはなのはの腕から降りて話を続ける。

 

「お礼はします!必ずします!僕の持っている力をあなたに使ってほしいんです。僕の力を…魔法の力を!」

 

「魔法?」

 

フェレットの言葉に更に首を傾げるなのは、その後ろからは黒い影が迫っていた。

 

なのはは急いでフェレットを守るように抱えた。

 

黒い影はなのはが抱えているフェレットを視界の端にとらえると、なのは目掛けて突進する。

 

グルァァァァ!!

 

迫りくる黒い影になのはは目を瞑ってしまうが……

 

「なのは!!」

 

聞き覚えのある声と共に、なのはの体は何者かに持ち上げられる。

 

ゆっくりと目を開いていくと、そこには自分を抱えている照人の顔があった。

 

「照…くん…?」

 

「良かった…ケガとかしてない?」

 

なのはを降ろした照人は軽く触診を行う。

 

「うん、大丈夫みたいだね。逃げ……グハッ!?」

 

「照くん!!」

 

なのはの手を取ろうとした照人が黒い影の触手によって吹き飛ばされ、コンクリート壁に衝突する。

 

照人のそばに急いで駆け寄ろうとするなのはだったが、黒い影に行く手を阻まれる。

 

グルァァァァ!!

 

唸り声をあげた黒い影はなのはに襲い掛かる。

 

「ラウンドシールド!!」

 

フェレットの叫び声と共に緑色の魔方陣が現れ、なのは達を守る盾となる。

 

グルァァァァ!!

 

黒い影は触手を何度も振り下ろし、盾を破壊しようとする。

 

(このままじゃ、なのはが……)

 

朦朧とする意識の中、腕に力を入れて立ち上がろうとする照人。 

 

グルァァァァ!!

 

「くっ、防御魔法が!?」

 

しかし、黒い影によって盾は破壊されてしまい、触手がなのはに向かって振り下ろされようとしていた。

 

「ッ!?……させるかァァッ!!」

 

突如、照人の体が銀色の光に包まれ、黒い影を吹き飛ばす。

 

「ま、魔法の光!?一体、誰が…」

 

驚きの声をあげたフェレットは銀色の光を見る。

 

そこには、銀色のオーラを纏った照人が立っており、彼の手には銀色の光でできた片刃の長剣が握られていた。




黒い影と対峙する照人となのは

名も知らぬフェレットの"探し物"とは

そして、二人の日常はどうなってしまうのか

次回「魔法の力」

人の想いを利用して踏みにじったことを後悔しろ!!


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魔法の力

これは、高町家に引き取られた青年の物語……

ある日の夜、青年は魔法の力に目覚める。

力に目覚めた青年は数多の出会いや困難の中で、何を思い、何を成すのか……

これはその始まりの物語……

魔法少女リリカルなのはLOST FORCE、始まります。


「これは…一体…」

 

照人はいつの間にか手にしていた光剣に驚きを隠せずにいた。

 

「来ます!!」

 

フェレットの言葉で我に返った照人は黒い影を見ると、黒い影は触手を伸ばし照人の体を突き刺そうとしていた。

 

間一髪で突き刺されるのを避けた照人は、すかさず光剣を振りかざし攻撃する。

 

「セァッ!!」

 

グギャァァッ!!

 

「効いてる…これなら!」

 

触手を切断され呻き声をあげる黒い影を見て、更に追撃を行う。

 

グリェェェッッ!!

 

黒い影は触手を再生させると鞭のように振るい反撃するが、照人はそれを軽々と避け、逆に触手を光剣で切り落とした。

 

ウギャァァッ!!

 

全ての触手を切られ無防備となった黒い影に、照人はトドメと言わんばかりに光剣を振りかざす。

 

「これで…終わ「グリャァァッッ!!

 

その瞬間、黒い影がもう一体現れ、照人に突進し突き飛ばした。

 

「グッ!!」

 

照人は咄嗟に受け身を取り、ダメージを最小限に抑える。

 

「もう一体!?……まさか、あの黒い影に共鳴して新しく暴走したのか!?」

 

フェレットも予想していなかったのか驚きの声をあげる。

 

「「グルォォォッッ!!」」

 

二対一になり一気に劣勢に追い込まれる照人。

 

「照くん……!!」

 

「く!どうすれば……わぁっ!?」

 

なのはは照人の名を呟くと対抗策を考えていたフェレットの体を持ち上げた。

 

「フェレットさん!さっき、私にも才能があるって言ってたよね?どうすればいいの?」

 

「だ、ダメです!危険すぎます!」

 

フェレットはなのはを制止しようとするが、なのはは止まらない。

 

「でも、このままじゃ照くんが!!」

 

(確かに彼女ならこの状況をどうにかできるかもしれない。でも……)

 

悩んだ末に結論を出したのかフェレットは自分が身に着けていた宝石をなのはに差し出す。

 

「これを!」

 

「暖かい……」

 

なのはは宝石を受け取ると両手で包むようにして持つ。

 

「それを持って、目を閉じて心を澄ませて、僕の言う通り繰り返して……いい、行くよ!!」

 

フェレットの言葉になのはは頷くと目を閉じて集中する。

 

「「我、使命を受けし者なり。契約の下、その力を解き放て。風は空に、星は天に。そして、不屈の心はこの胸に!この手に魔法を…レイジングハート、セット・アップ!」」

 

≪stand by ready.set up.≫

 

なのははフェレットの言う通りに復唱すると宝石からピンク色の光があふれ出る。

 

「なんて魔力だ……落ち着いてイメージして、君の魔法を制御する"魔法の杖"の姿を、そして君の身を守る"強い衣服"の姿を!!」

 

黒い影と戦っていた照人は突然の光に怒りの声をあげており、フェレットはあふれ出る光に驚きながらもなのはに指示を出す。

 

「そんなぁ、急に言われても……えっとえっと」

 

急いで"魔法の杖"と"強い衣服"をイメージするなのは。

 

「とりあえずこれで!!」

 

すると、なのはの服装が私立聖祥大学付属小学校を模したものに変化し、赤い宝石が目立つ杖を握っていた。

 

そこに黒い影と戦っていたはずの照人が飛んでくる。

 

「ッツ!痛ぅっ!」

 

「照くん!!」

 

なのはは照人の元に駆け寄り、照人が立ち上がるのに手を貸す。

 

「来ます!!」

 

照人が立ち上がると同時にフェレットの叫び声で戦闘が再開する。

 

「「グルァァァァ!!」」

 

2体の黒い影はなのはと照人目掛けて飛び掛かる。

 

「キャッ!!」

 

≪protection.≫

 

なのはは咄嗟に持っていた杖を黒い影に向けると、女性の声と共にピンク色のバリアが発生し黒い影を弾き飛ばし粉々にする。

 

「なっ!?」

 

「え、えぇ~!?」

 

何が起きたのか理解が追いついていないなのはと照人にフェレットは説明する。

 

「僕らの魔法は発動体に組み込んだプログラムと呼ばれる方式です。そして、その方式を発動させるために必要なのは術者の精神エネルギーです。そしてあれは忌まわしき力の下に生み出されてしまった思念体…あれを停止させるには、近距離での封印魔法か、大威力魔法が必要です」

 

フェレットはそう言うと首を回し黒い影を見ると、黒い影は粉々になった体を再生させていた。

 

「くッ!思った以上に再生が速い」

 

「具体的にどうすればいい?」

 

照人の問いにフェレットは答える。

 

「さっきみたいに攻撃や防御の基本魔法は心に願うだけで発動しますが、より大きな力を必要とする魔法には引き金となる行為が必要なんです」

 

「引き金?」

 

「はい、言葉や特定動作など人によって様々です。心を澄まして、そうすれば心の中に浮かんでくるはずです」

 

なのはと照人は言われた通りに心を澄ましていると再生を終えた黒い影が襲い掛かる。

 

「リリカルマジカル……」

 

「封印すべきは忌まわしき器。ジュエルシード!」

 

「ジュエルシードを封印」

 

≪sealing mode.set up.≫

 

なのはの持つ杖から三枚のピンク色の羽が生え、黒い影がピンク色の光の帯によって拘束される。

 

一方で照人は剣の刀身を撫でると刀身が光り輝く。

 

「デャァァァァァッ!!」

 

照人は掛け声と共に巨大な斬撃を放つ。

 

≪stand by ready.≫

 

「リリカルマジカル。ジュエルシード、シリアル21。封印!」

 

≪sealing.≫

 

なのはがそう言うと黒い影はピンク色の光なり、もう一体の黒い影は真っ二つに切断され消滅した。

 

そして、二体の黒い影がいた場所には二つの宝石が落ちていた。

 

「あれがジュエルシードです。レイジングハートで触れて」

 

フェレットに言われたとおりにレイジングハートで触れるとジュエルシードは吸い込まれていった。

 

≪receipt number XXI. and XVI.≫

 

「あ、あれ?終わったの?」

 

「そう……みたいだね」

 

「はい、あなたたちのお陰で…ありがとう」

 

その言葉を最後にフェレットは倒れてしまう。

 

「ちょっと大丈夫!?ねぇ!?」

 

なのははフェレットに近寄ると、パトカーのサイレンの音が聞こえてくる。

 

「なのは、一旦ここを離れるよ」

 

照人の言葉に頷いたなのははフェレットを抱いて近くの公園まで移動した。

 

二人がベンチに座り休憩していると、フェレットが目を覚ましたようだ。

 

「すいません」

 

「あ、起こしちゃった。ごめんね、乱暴で…ケガ痛くない?」

 

「ケガは平気です。もうほとんど治っているから」

 

なのははフェレットに謝ると、フェレットは体を震わせ包帯をほどく。

 

「ほんとだ~。ケガの跡がほとんど消えてる。すご~い」

 

フェレットを抱き上げて本当にケガが治ってることに驚くなのは。

 

「それよりも君の名前とか、その他諸々のことを教えてくれないかな?俺の名前は高町 照人、"照人"でいいよ。それで、こっちが妹のなのは」

 

「僕はユーノ・スクライア。"スクライア"は部族名だから、ユーノが名前です」

 

「ユーノ君か、可愛い名前だね」

 

なのはの言葉にユーノは表情を暗くする。

 

「すいません……なのはさんと照人さんを巻き込んでしまって」

 

「ケガしてないし、気にしなくていいよ。それとさん付けは止めてくれないかな?むず痒くて…」

 

照人はユーノの言葉に頭を掻きながら言うと、ユーノが口にする。

 

「わかりました」

 

「あ、そうだ。ユーノ君ケガしてるんだしここじゃ落ち着かないよね。とりあえずわたしの家に行きましょ。あとのことはそれから、ね?」

 

「そうだね。そろそろ時間的にも危ないから」

 

なのはと照人が家に帰り物音をたてないように入ろうとすると、恭也が現れたのでユーノを背中に隠すなのは。

 

「おかえり」

 

「「お、お兄ちゃん…(に、兄さん…)」」

 

明らかに機嫌の悪い恭也になのはと照人の声は震える。

 

「こんな時間にどこにお出かけだ?二人とも」

 

「あの…その…えっと」

 

恭也の問いになのははしどろもどろになり、照人はやっちゃった~と手で顔を覆った。

 

「あら、可愛い~」

 

「「お、お姉ちゃん?(ね、姉さん?)」」

 

すると美由希が現れ、背中に隠したユーノを見られる。

 

「あれ、なんか元気ないね?なのはと照人はこの子のことが心配で様子を見に行ったのね?」

 

ユーノを隠していたことがばれたのでなのはは潔くユーノを背中から出す。

 

「えっと…その…あの」

 

なのはは恭也と美由希の顔を交互に見て、二人の表情を伺う。

 

「気持ちは分からんでもないが…だからといって内緒でというのはいただけない」

 

「まぁまぁ、いいじゃない。こうして無事に戻ってきてるんだし、それになのはと照人はいい子だからもうこんなことしないもんね?」

 

美由希の言葉になのはと照人は恭也に謝る。

 

「「内緒で出かけて、心配かけてごめんなさい」」

 

「うん」

 

「はい、これで解決…でも可愛い動物ね~母さんなんかこの子見たら可愛すぎて悶絶しちゃうんじゃない」

 

「その可能性は否定できんな」

 

美由希はユーノを抱き上げ、そう口にすると恭也は否定しなかった。

 

士郎と桃子にユーノの紹介し、ユーノは当初話していた通り照人となのはの二人でお世話することになった。

 

その後、なのはの部屋にてユーノはなのはと照人にジュエルシードが自分の世界の物であること、自分が発見し発見後の輸送中に原因不明の事故により海鳴市近辺にばら撒かれたこと、 輸送時の管理に直接関係してはいないものの責任を感じ独力で回収しようとしたことを話した。

 

「真面目なんだね。ユーノ君は……」

 

照人はユーノの真面目さに肩を竦めていた。

 

「え~と、今夜は巻き込んじゃって助けてもらって本当に申し訳なかったけど、僕の魔力が戻るまでの間ほんの少し休ませてほしいんだ。一週間、いや五日もあれば力が戻るから、それまで…」

 

「戻ったら、どうするの?」

 

なのはの問いにユーノは答える。

 

「また一人でジュエルシードを探しに出るよ」

 

「それはだ~め。私、学校と塾の時間は無理だけどそれ以外の時間なら手伝えるから…」

 

なのはの言葉にユーノと照人は反対の声をあげる。

 

「だけど今夜みたいに危ないことだってあるんだよ?」

 

「ユーノ君の言う通りだ。なのははまだ子供なんだから怪我でもしたら大変なことになる。ユーノ君の手伝いは俺一人でするよ」

 

ユーノと照人は反対の声をあげる。

 

「だって、もう知り合っちゃったし話も聞いちゃったもの、ほっとけないよ」

 

なのはは照人の目を見ながら続ける。

 

「"困っている人がいて助けてあげられる力が自分にあるなら、その時は迷っちゃいけない"、お父さんの教えだよね?」

 

一歩も引かないなのはの様子に、照人は折れてしまう。

 

「うっ……分かった。でも、危ないと思ったら絶対に逃げるんだ。それだけは約束して」

 

「うん!!」

 

照人の言葉になのはは元気よく返事をし、今度はユーノの方に向き直った。

 

「ユーノ君は困ってて、私はユーノ君を助けてあげられるんだよね。魔法の力で…」

 

「うん」

 

「私、ちゃんと魔法使いになれるかどうかあんまり自信ないけど、頑張るから」

 

「うん、ありがとう。なのは、照人」

 

こうして、照人となのはの新しい日常が幕を開けたのだった。  




ジュエルシードを順調に集めていく照人となのは

しかし、今度は街を巻き込むほどの大事件…

事件は終わり、照人となのはは何を思うのか

次回「失敗と後悔」

人の想いを利用して踏みにじったことを後悔しろ!!


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失敗と後悔

これは、高町家に引き取られた青年の物語……

ある日の夜、青年は魔法の力に目覚める。

力に目覚めた青年は数多の出会いや困難の中で、何を思い、何を成すのか……

これはその始まりの物語……

魔法少女リリカルなのはLOST FORCE、始まります。


ジュエルシード集めは順調に進み、照人となのはは深夜の学校で五つ目のジュエルシードの封印を行っていた。

 

「デャァァァァァッ!」

 

≪stand by ready.≫

 

「リリカルマジカル。ジュエルシード、シリアル20。封印!!」

 

≪Sealing.≫

 

封印が完了し、レイジングハートの排気ダクトから魔力の残滓が放出される。

 

しかし、慣れない魔法の連発になのはの顔には疲労の色が見えていた。

 

次の日の朝、なのははベッドに仰向けになり、レイジングハートを取り出した。

 

≪Confirmation.≫

 

レイジングハートを中心に浮かぶ五つのジュエルシードを眺めるなのは。

 

すると、なのはの部屋のドアがノックされる。

 

「俺だけど、入っても大丈夫?」

 

「いいよ~」

 

どうやらドアをノックしたのは照人のようで、なのはの返事を聞くと部屋に入ってくる。

 

「ジュエルシードを見てたの?」

 

「うん。でも、もっと頑張らないと……」

 

照人の言葉になのはが答えると、ユーノは『休んだほうが良い』と休暇をすすめる。

 

それに対し、なのはは心配そうな顔をする。

 

「でも……」

 

「今日はおやすみ。もう五つも集めてもらったんだから、少しは休まないと持たないよ。それに、今日は約束があるんでしょ?」

 

ユーノの言う通り、今日は父・士郎がオーナー兼コーチを勤める少年サッカーチーム『翠屋JFC』の試合の日だった。

 

「そうだね。今日はジュエルシード集めは無し、しっかり体を休めてまた明日から頑張ろっか」

 

照人の言葉になのはとユーノは『うん』と返事をした。

 

*****

 

なのははユーノを連れてアリサ・すずかと一緒に試合観戦に来ていた。

 

「照人さんも来れたら良かったのにね」

 

「お父さんの代わりにお店を手伝ってるんだって」

 

この場にいない照人だったが、なのはの言う通りサッカーの試合で不在となる士郎の代わりに翠屋の手伝いをしていた。

 

「それならしょうがないよ。あ、始まるみたいだよ」

 

すずかがそう言うと、各チームの選手がそれぞれのポジションについていた。

 

試合はよく晴れた河川敷のグラウンドで行われ、翠屋JFCキーパーのスーパーセーブもあり、2対0で翠屋JFCの勝利に終わる。

 

その勝利に喜びの声を挙げるなのは達と翠屋JFCのチーム一同。

 

そんな中、一人大活躍のキーパーに優しく暖かな視線を送るマネージャーの少女がいた。

 

勝利を祝って翠屋での食事会となり、なのはたちもそのご相伴に預かる。

 

「それにしても改めてみると、この子フェレットとちょっと違わない?」

 

「確かに動物病院の先生も変わった子だねって言ってたし…」

 

ケーキを前に楽しく談笑するなのはたちだったが、改めてユーノを見るアリサとすずかは、ユーノが普通のフェレットとは少し違うという話で盛り上がってしまう。

 

「まぁ、ちょっと変わったフェレットってことで……ほら、ユーノくん。お手」

 

話題をそらすためユーノに芸をさせるなのは、それを見た二人はユーノを撫でまくる。

 

「あんまりやり過ぎるとストレスになっちゃうよ」

 

ユーノを可愛がる二人に紙袋を持って店から出てきた照人がそう言う。

 

「こんにちは、すずかちゃん、アリサちゃん」

 

照人の挨拶に二人も『こんにちは』を挨拶をする。

 

「それ、どうしたんですか?」

 

すずかは照人が持っている紙袋に指をさす。

 

「これ?午前中に来てた人の忘れ物だよ。さっき電話が来たんだけど、忙しくて取りに行けそうにないから届けてくれないかって」

 

「そうなんだ」

 

「うん、それじゃ行ってくるよ」

 

一言そう言うと照人は荷物を届けに行った。

 

食事会の後、今後の大会での勝利を誓った翠屋JFCのチーム一同は解散した。

 

そして、バッグから取り出した何かをポケットに入れ、マネージャーの少女に駆け寄っていくキーパーの姿。

 

その瞬間、ジュエルシードの気配に似たものを感じたなのはだったが、その場では何も起きていないことから『気のせいかな…?』と二人を見送ってしまう。

 

「はい、なのは」

 

アリサとすずかの二人に遊ばれて疲れ切ったユーノをアリサから手渡される。

 

「さて、じゃああたし達も解散」

 

「そうだね」

 

そう言ってアリサとすずかは地面に置いていたバックを持つ。

 

「そっか。今日はみんな、午後から用があるんだよね」

 

「うん、お姉ちゃんとお出かけ」

 

「パパとお買い物!!」

 

各々出かける場所があるという二人と別れたなのは。

 

一度家に戻ってひと風呂浴びるという士郎とともに、なのはは帰宅すると部屋に戻るなりベッドに倒れ込んだ。

 

「なのは、寝るなら着替えてからでなきゃ」

 

ユーノがそう言うと、なのはは目の前で着替え始める。

 

「ユーノくんも一休みしといた方がいいよ。なのはは晩御飯までおやすみなさ~い」

 

着替え終わったなのはは再びベッドに倒れ込む。

 

(やっぱりなれない魔法を使うのは、相当の疲労なんだろうな。僕がもっとしっかりしてれば……)

 

その様子を見たユーノはなのはに苦労をかけていることを気に病んでいた。

 

一方、二人で仲良く帰宅しているキーパーとマネージャー。

 

「今日もすごかったね」

 

「そんなことないよ。うちはディフェンスが良いからね」

 

「でも、カッコよかった」

 

今日の試合について、照れまじりに会話する二人。

 

そしてキーパーはズボンのポケットからジュエルシードを取り出すと、それをマネージャーに見せる。

 

「わぁ、きれい」

 

「ただの石だとは思うんだけど、綺麗だったから」

 

マネージャーが触れた瞬間、ジュエルシードは光を放ち、二人を包み込む。

 

暴走したジュエルシードは巨大な樹木となり、建物や地面を破壊し街の中にその根を広げていく。

 

「「「ッ!?」」」

 

暴走したジュエルシードに気が付いた照人たちは急いで現場へと向かった。

 

「レイジングハート、お願い!!」

 

≪stand by ready.set up.≫

 

ビルの屋上に着いたなのははレイジングハートを起動し、バリアジャケットを着用した。

 

「あぁっ!」

 

街を一望すると、街はすでに巨大樹木に浸食され、ひどい状態になっており、それを見たなのはは胸を痛める。

 

しかし、それ以上に事態は悪い方向へと進んでいく。

 

時を同じくして、街の中を走る照人も街の様子を見て唖然としていた。

 

「何あれ?」

 

「テレビの撮影?」

 

突如として巨大樹木が出現したことで、樹木の周囲には多くの人が集まっていた。

 

すると、樹木の一部が分裂し異形の怪物へと姿を変え、人々へと襲い掛かる。

 

ヴァァァァ!!

 

怪物が腕を振るうと、衝撃で地面が砕け、近くにあった車が横転する。

 

「「「「「わあぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」

 

その光景に恐怖した人々は次々と逃げ出していくが、逃げる人たちに突き飛ばされてしまい車いすの少女が倒れてしまう。

 

「はやてちゃん!!」

 

少女の名前を呼んだ女性が駆け寄り、少女を抱きかかえ逃げようとするが―――

 

「先生、後ろ!!」

 

少女の声を聴き、背後を振り返る女性。

 

そこには腕を鋭く変形させた怪物が居り、次の瞬間、怪物の腕が女性と少女を刺し貫こうとする。

 

ヴァァァァ!!

 

女性は少女を庇うように覆い被さった。

 

怪物の腕が女性と少女の体を貫く直前に照人が割り込み、光剣で怪物の腕を受け止めた。

 

更に光剣を横薙ぎに走らせ、怪物の上半身と下半身を両断した。

 

両断された怪物はその場に倒れ、動かなくなる。

 

「すごい……」

 

少女は目の前で起きたことに驚き、ついそんな言葉が口から出てしまう。

 

「大丈夫ですか。早く安全なところへ」

 

怪物の活動を停止したことを確認した照人は女性の方に向き直り、避難を促した。

 

「あなたはどうするの?」

 

女性にそう言われた照人は視線を巨大樹木の方へと向ける。

 

「俺にはまだやることがありますから……さぁ、早く!!」

 

照人がそう言うと、女性は少女を抱えてその場を急いで離れた。

 

女性を見送った照人は周囲に人がいないことを確認すると、巨大樹木の方へと駆け出した。

 

しかし、樹木の一部から分裂した異形の怪物たちが行く手を阻む。

 

「「「ヴァァァァ!!」」」

 

怪物たちを相対した照人は光剣を再度構えると、ユーノに念話で問いかける。

 

「ユーノ君、これは一体……」

 

『(多分、人間が発動させてしまったんだ。強い思いを持った者が願いを込めて発動させた時、ジュエルシードは一番強い力を発揮するから……)』

 

照人の問いかけにユーノが説明する。

 

それを聞いたなのはは、あの時の感覚が気のせいではなかったことに気付き心を痛める。

 

『(やっぱりあの時の子が持ってたんだ…私、気づいてたのに…こうなる前に止められたはずなのに…)』

 

気づいていたはずの事実…事前に止められていたかもしれないという現実に、なのははしゃがみこんでしまう。

 

「過ぎてしまったことを悔いても仕方がない。今は、出来ることに集中するんだ」

 

『(できること……)』

 

「俺はこのまま怪物たちを抑える。なのははジュエルシードを封印するんだ!!」

 

『(わかったよ)』

 

なのは達との念話を終えると、再度光剣を構えた照人は怪物たちに向かって駆け出していく。

 

「ハァァァァッ!!」

 

向かってくる照人に対し怪物は殴りつけようとするが、照人はそれを軽く躱しすれ違いざまに怪物の首を切り落とす。

 

首を失った怪物はそのまま崩れ落ち、照人は次の怪物に狙いを定める。

 

別の怪物が腕を鞭のように振るい攻撃を仕掛けてくる。

 

照人は攻撃を跳躍で躱し、怪物の脳天に光剣を突き立てる。

 

今度は怪物の体を土台にして別の怪物に向かって高く跳躍する。

 

そして、空中で身を翻して上下逆転させると、そのまま急降下して怪物を両断した。

 

しかし、再び樹木から分裂し怪物が次々と現れる。

 

「キリがないな……まとめて斬り捨てる!!」

 

そう言った照人が剣の刀身を撫でると刀身が光り輝く。

 

「デャァァァァァッ!!」

 

掛け声と共に放たれた巨大な斬撃は無数の怪物を真っ二つに断ち切った。

 

*****

 

「分かったよ」

 

時は少し遡り照人との念話で意を決したなのはは立ち上がり、レイジングハートを強く握る。

 

事態解決の方法を悩むユーノだったが、なのはの魔力の高まりにレイジングハートが呼応していることに気づく。

 

「ユーノくん、こういう時はどうしたらいいの?」

 

そう聞くなのはに、ユーノは『封印のためには元となっている部分を探さないといけないけど、広範囲に広がりすぎてどうやって探したらいいか…』と迷う。

 

「元を見つければいいんだね……」

 

「え?」

 

≪Area Search.≫

 

「リリカル…マジカル…探して、災厄の根源を」

 

なのはは迷うことなく探索魔法を発動させる。

 

探索魔法は街中に広がり、核となっている二人を発見する。

 

「見つけた!すぐ封印するから!」

 

「ここからじゃ無理だよ!近くに行かなきゃ!」

 

そう言うユーノだったが、なのははレイジングハートの新たな力を発動させる。

 

「できるよ!大丈夫!…そうだよね、レイジングハート」

 

≪Shooting Mode.Set up.≫

 

レイジングハートのヘッドが音叉状の形態に変形し、ブームが多少伸び、光の羽根を広げる。

 

「行って、捕まえて!!」

 

なのはの声に呼応するようにピンク色の光が放たれ、ジュエルシードを捕える。

 

≪Stand by Ready.≫

 

「リリカルマジカル。ジュエルシードシリアル10、封印!!」

 

≪Sealing.≫

 

射撃形態・シューティングモードから放たれた魔法『遠距離射撃魔法・ディバインバスター』により封印は成功し、巨大樹木とヒト型の怪物は消滅した。

 

≪Receipt Number X.Mode Release.≫

 

「ありがとう、レイジングハート」

 

≪Good Bye.≫

 

レイジングハートは封印したジュエルシードを回収すると、スタンバイモードに戻る。

 

「色んな人に迷惑かけちゃったね」

 

「何言ってんのさ。なのははちゃんとやってくれてるよ」

 

暗い雰囲気になるなのはをユーノが慰めていると、そこへ照人が合流する。

 

「帰ろう、なのは」

 

依然として暗い雰囲気で壊れかけた街の中を歩くなのは達。

 

「なのは、あれ見て」

 

照人が指を指した先に居たのは、怪我をしたのかマネージャーの肩を借りて歩くキーパーだった。

 

なのはの頭に手を置き、照人は言う。

 

「なのは、さっきも言ったけど起きたことは変えられない。大事なのは、その後にどうするかだ」

 

照人の言葉を聞き、なのははジュエルシード集めに対する向き合い方を改めて決める。

 

ユーノの手伝いではなく、自分の意志で……

 

『自分なりの精一杯』ではなく、本当の全力で……

 

二度とこんなことが起きないようにと、ジュエルシード集めを続けることをなのはは胸に誓った。




すずかの屋敷に招待されたなのはと照人

起こるジュエルシードの事件

事件の最中、突如現れたのは……魔法少女!?

次回「金色の魔法使い」

人の想いを利用して踏みにじったことを後悔しろ!!

――――――――――

次回予告とは関係ない後書き

すいません。大分お待たせしました↓↓

何本かストックがいるかなと書いていたら大分時間がかかりました

それと遅くなったのですが、この作品の主人公・高町 照人のプロフフィールです。

名前:高町 照人
年齢:14歳 身長:166.5㎝ 体重:54.5㎏
概要:
14年前に高町家に引き取られたが、本人はこのことを知らずにいる。
目の前で困っている人を放っておけない性格であり、これは幼少期に士郎から「困っている人がいて助けてあげられる力が自分にあるなら、その時は迷っちゃいけない」と教えられてきたこともあるが、照人本人が「悲しい思いや苦しい思いをしてる人を見たくない」と考えているためである。
尚、魔法についてだが、まだ日が浅いにもかかわらずデバイス無しで魔法を発動させるほど才能があり、そのポテンシャルはなのは以上かもしれない。
戦闘スタイルは魔力を使って作り出した光剣による近接戦闘。
光剣のイメージ画像:
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金色の魔法少女

これは、高町家に引き取られた青年の物語……

ある日の夜、青年は魔法の力に目覚める。

力に目覚めた青年は数多の出会いや困難の中で、何を思い、何を成すのか……

これはその始まりの物語……

魔法少女リリカルなのはLOST FORCE、始まります。


ある日の夜明け前、ビルの屋上に黒衣に身を包んだ金髪の少女と橙色の髪に犬の耳を持った若い女性が立っていた。

 

「ロストロギアはこの付近にあるんですよね。形態は青い宝石、一般呼称は"ジュエルシード"」

 

金髪の少女がそう呟くと、ビルの屋上に突如としてマントとフードで顔を隠した男が現れた。

 

「はい、間違いないようですフェイトお嬢様。しかし、どうやら他にもジュエルシードを狙う輩がいるようなのでお気をつけ下さい」

 

「分かりました」

 

金髪の少女―フェイト・テスタロッサはそう言うと、視線を若い女性の方へと向ける。

 

「行こう、アルフ」

 

「分かったよ。フェイト」

 

アルフと呼ばれた若い女性は返事をすると、鋭い牙と爪を持つ犬狼へと姿を変え雄叫びをあげた。

 

日は昇り、なのはと照人の二人は月村家へと出かけようとしていた。

 

なのははアリサ・すずかとのお茶会のため、照人はなのはの送迎と翠屋オリジナルブレンドの茶葉を届けるためだ。

 

バスに乗って出かけた月村家で、メイド長のノエルの出迎えをうける二人。

 

「照人様、なのはお嬢様、いらっしゃいませ」

 

「「こんにちは」」

 

互いに挨拶を済ませると、照人はノエルに茶葉を渡す。

 

「ノエルさん、こちら頼まれていた茶葉です」

 

「いつもありがとうございます。この茶葉で入れた紅茶は旦那様や奥様も気に入ってますので…」

 

「そう言ってもらえると父と母も喜びます」

 

茶葉を受け取ったノエルの言葉に照人は微笑む。

 

「ねえノエルさん。すずかちゃん達はどこにいるんですか?」

 

「そうでした。どうぞ、こちらです」

 

そう言ったノエルは二人を案内する。

 

案内されたのは猫たちがくつろぐ、日差しが差し込むテラスであった。

 

テラスの中にいたのは、すずかとアリサ、すずかの専属メイドでありノエルの妹のファリンであった。

 

「なのはちゃん、照人さん」

 

テラスに入ってきたなのはと照人を見て、すずかは椅子から立ち上がる。

 

「お茶をご用意いたしましょう。何がよろしいでしょうか」

 

なのはが『お任せします』と答えるとノエルは照人のほうを見る。

 

「照人様はどうされますか?」

 

「今日はなのはの送迎と茶葉を届けるために来ただけなので、もう帰りますので大丈夫です」

 

「え、照人さんもう帰っちゃうんですか?」

 

照人の言葉にすずかの表情は曇り、それを見て思うところがあったのか照人は言った。

 

「う~ん……今日は他に予定もないし、やっぱりいただきます」

 

「かしこまりました。それでは準備してまいりますので少々お待ちくださいませ。ファリン」

 

そう言ってノエルはファリンと共にテラスを出て行く。

 

椅子に座ったなのはは改めてお茶会に誘ってくれたことにお礼の言葉を述べる。

 

「そういえば今日は誘ってくれてありがとう」

 

「こっちこそ来てくれてありがとう」

 

「今日は元気そうね」

 

なのはの顔を見たアリサとすずかは安心したような声色で言う。

 

「え?」

 

「なのはちゃん、最近元気なかったから……」

 

思わず聞き返すなのはにすずかは話す。

 

ふたりがなのはを誘ったのは、「最近なのはが元気がないから」という理由からだった。

 

「悩みや心配があるなら話してほしい」と言うすずかとそれを見守るアリサに心が揺れるなのはだったが、ユーノが子猫に追われており話が途切れる。

 

更に運が悪いことにユーノと子猫が向かった先にはお茶とクッキーを持ってきたファリンがいた。

 

ユーノ達に驚いたファリンは転びそうになるが、照人がファリンの体を支えたことで事なきを得た。

 

庭に場所を変えてお茶会は続いていたが、庭先で一匹の子猫がジュエルシードを発動させてしまう。

 

「「「ッ!?」」」

 

ジュエルシードの気配に気づいたが、アリサとすずかが一緒にいる手前、現場に向かえない照人となのは。

 

(……そうだ!!)

 

ユーノが何か思いついたのか、なのはの膝から降りると庭先の方に向かっていく。

 

「あらら…ユーノ、どうかしたの?」

 

「何か見つけたのかもしれない。少し見てくるよ」

 

「一緒に行きましょうか?」

 

「大丈夫。すぐ戻ってくるから、待っててね」

 

なのはと照人はユーノの意図に気付き、それに便乗する形でその場を離れる。

 

木々の陰に入ったところで、ユーノが「ここじゃ人目が……」と言うと、二人の方に向き直る。

 

「結界を作らなきゃ」

 

「結界?」

 

結界が何か分からないなのはは首を傾げる。

 

「初めて会った時の空間のことか?」

 

「うん、魔法効果が生じている空間と通常空間の時間進行をずらすんだ。僕が少しは得意な魔法。あまり大きい空間は無理だけど、この家の付近位なら……」

 

照人の問いに答えたユーノは目を瞑り集中する。

 

すると、ユーノの足元に円形の魔方陣が現れ、結界が展開された。

 

だが、ユーノが展開した結界内で三人が見たものは、巨大化した子猫だった。

 

「あ、あれは?」

 

「た、多分、あの猫の"大きくなりたい"っていう願いが叶えられたんじゃないのかな?」

 

「な、なるほど」

 

ユーノの推測に照人は何とも言えない表情になった。

 

凶暴化する様子もなく、ただ大きくなっただけの子猫になのははレイジングハートを取り出す。

 

「襲ってくる様子は無さそうだし、ささっと封印を……じゃ、レイジングハート!!」

 

なのはがレイジングハートを掲げたその瞬間、金色の閃光が巨大化した子猫を襲う。

 

「魔法の光!?」

 

その光景にあわてるユーノ。

 

照人となのはは閃光が飛んできた方へと視線を向けると、そこには黒衣に身を包んだなのはと同世代らしき少女―フェイトがいた。

 

「バルディッシュ、フォトンランサー連撃」

 

≪Photon lancer Full auto fire.≫

 

フェイトがそう言うと、彼女の持つ杖から槍のような魔力弾(フォトンランサー)が子猫に向けて放たれる。

 

「レイジングハート、お願い!!」

 

≪Stanby ready.Set up.≫

 

攻撃をつづけるフェイト、悲鳴をあげる子猫を見たなのははバリアジャケットに身を包み飛翔、防御魔法で子猫を守る。

 

なのはの前に姿を現したフェイトは、なのはを見ると「同系の魔導師…ロストロギアの探索者か」と呟き、次になのはの持つレイジングハートを見て自身の杖(バルディッシュ)と同系列のインテリジェントデバイスだと見抜く。

 

「バル…ディッシュ…」

 

フェイトの呟きが聞こえたのかなのははフェイトが持つ漆黒の杖―バルディッシュを見つめる。

 

「申し訳ないけど、頂いていきます」

 

≪Scythe form Setup.≫

 

フェイトはなのはに語る間も与えず、バルディッシュを鎌を模した武器形態(サイズフォーム)に変形させ斬りかかる。

 

≪Evasion.Flier fin.≫

 

突然の攻撃に慌てながらも躱すなのはだったが、フェイトの連撃に防ぐことが精一杯の状態だった。

 

「なのは!!」

 

「行かせませんよ」

 

なのはの下へ向かおうとするユーノの前にマントとフードで顔を隠した男が現れ、魔力を帯びた手刀を振り下ろす。

 

「ユーノ、危ない!!」

 

叫び声と共に照人が男とユーノの間に割り込むように飛び込み、光剣で手刀を受け止める。

 

「照人!!」

 

「こっちは任せて、早くなのはのところへ!!」

 

ユーノは照人の名を叫ぶが、照人の言葉を聞き頷くとなのはの下へ向かう。

 

なのははフェイトと対峙していた。

 

「なんで急にこんな!?」

 

問いただすなのはに対して、フェイトは「答えても、多分意味がない」と突き放すように冷たく返す。

 

≪Device form.≫

 

≪Shooting mode.≫

 

射撃姿勢のまま一触即発の雰囲気が二人を包む。

 

≪Divine buster Stand by.≫

 

≪Photon lancer Get set.≫

 

(きっと私と同じ歳くらい、綺麗な瞳と綺麗な髪……だけど、この子……)

 

なのははフェイトを見つめ、自分と同年代であること、綺麗な金色の髪と赤色の瞳をしていることを改めて認識するが、その瞳の奥に何かがあるのを感じ取る。

 

緊迫する空気の中、二人は対峙するが、子猫が目を覚ましそちらに気をとられたなのはの隙をフェイトは見逃さなかった。

 

「ごめんね」

 

≪fire.≫

 

フェイトのかすかな謝罪の言葉と共に放たれたフォトンランサーの直撃を受けたなのはは意識を失い落下してしまう。

 

「フッ!!」

 

落下するなのははユーノが間一髪のところで魔法で救出する。

 

≪Sealing form.Set up.≫

 

子猫の前にフェイトが降り立つと、バルディッシュが光の翼を広げた封印形態(シーリングフォーム)へと変形した。

 

「捕獲!!」

 

フェイトはそう言うとバルディッシュを振り下ろすと、金色の雷が子猫を捕縛する。

 

≪Order.≫

 

「ロストロギア・ジュエルシード、シリアル14。封印」

 

≪Sealing.≫

 

金色の光が子猫を包む込み、光がやんだ先には倒れた子猫とジュエルシードがあった。

 

≪Captured.≫

 

そして、ジュエルシードはフェイトによって封印、奪われてしまう。

 

意識を失い倒れるなのはを見つめるフェイトだったが、無言で立ち去っていった。

 

*****

 

ユーノがなのはの方へ向かったのを見届けた照人は視線を男へと戻した。

 

「お前たちは何者だ!!」

 

「答える必要はありません……ね!!」

 

男は淡々とした口調でそう言うと魔力弾を照人に向かって放つ。

 

上体を逸らし、魔力弾を避けた照人に対して男は続けざまに魔力弾を放つ。

 

男から放たれる魔力弾を、光剣を巧みに使いながら防御する照人。

 

「そっちがそのつもりなら容赦はしない!!」

 

照人は男に向かって駆け出し光剣を振うが、対する男は飛行魔法を使用し上空へ飛び上がり回避すると無数の魔力弾を放った。

 

無数の魔力弾が照人を襲うが、光剣を構えた照人は跳躍し魔力弾を回避しながら男に向かって行く。

 

「ハァァァァッ!!」

 

斬りかかる照人を男は更に上空へと飛翔することで躱し、今度は上から魔力弾を放つ。

 

「グッ!?」

 

魔力弾が直撃し、地面へと落下する照人だったが受け身を取り衝撃を抑えすぐさま立ち上がる。

 

その隙を狙っていたかのように男は右手を前に出すと巨大な魔方陣を展開する。

 

「終わりです」

 

魔方陣から放たれた光線を照人は光剣で受け止める。

 

「クッ!!」

 

しかし、不安定な態勢で受け止めたせいか次第に押し負けていく照人。

 

遂には受け止めきれず、光線は照人を飲み込んでしまい爆発音を共に大きな砂煙が一帯を覆う。

 

勝利を確信する男だったが、次の瞬間砂煙の中から照人が飛び出して来る。

 

突然目の前に照人が現れたことで男の反応は遅れる。

 

「デャァァァァァッ!!」

 

その隙を逃すまいと照人は光剣を勢いよく振り抜いた。

 

防御が間に合わず光剣の一撃を受けた男は地面へと落下し、着地した照人は光剣を構え、男の出方を窺う。

 

≪Arc Saber.≫

 

背後から機械音が聞こえた直後に金色の光刃が照人に向かって飛んでくる。

 

「……ッ!?」

 

咄嵯の判断で光剣で弾き飛ばすと、男の隣にはフェイトが立っていた。

 

「ジュエルシードを回収しました。帰りましょう」

 

「そうですか。それでは……」

 

フェイトと男がそう言うと、二人の足元に魔方陣が現れる。

 

逃がすまいと照人は駆け出し光剣を振うが、あと一歩のところで二人は忽然とその場から姿を消してしまう。

 

「逃げられたか……」

 

苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら照人は誰にも聞こえない声で呟いた。

 

*****

 

フェイトは自室にてジュエルシードを入手したこと、少し邪魔が入ったことなど、今日の出来事を話していた。

 

「いくつかはあの子達が持ってるのかな……」

 

フェイトの呟きに心配するような視線を向けるアルフ。

 

フェイトは小さく「大丈夫だよ、迷わないから」と言うと、テーブルランプに照らされている写真立てを眺める。

 

「待ってて、母さん…すぐに帰ります」

 

「……」

 

静かに微笑むフェイトをアルフは無言で見守っていた。

 

そんなフェイト達を影から見ていた男は薄笑いを浮かべていた。




高町家と月村家合同での温泉旅行。

色々考え込んでしまっている照人となのはの前に一人の女性が現れる。

そして、照人となのはは黒衣の魔法少女と再会する……

次回「温泉での再会」

人の想いを利用して踏みにじったことを後悔しろ!!

――――――――――

間違って削除してしまったので再投稿です。

ほんま、すいませんでした。最近、ぼ~っとしながら作業してるせいか間違って削除してしまいました。

読んでくれてる読者の為にも同じ失敗はしないように努力し、投稿速度をあげられるよう頑張りますのでよろしくお願いします!!


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温泉での再会

これは、高町家に引き取られた青年の物語……

ある日の夜、青年は魔法の力に目覚める。

力に目覚めた青年は数多の出会いや困難の中で、何を思い、何を成すのか……

これはその始まりの物語……

魔法少女リリカルなのはLOST FORCE、始まります。


連休を利用して、高町家・月村家一同とアリサは温泉旅行へと出かけていた。

 

「見て見て、すっごい緑~!!」

 

「ホントだ~!!」

 

車内から景色を見たアリサとすずかははしゃいでいるが、照人となのはは別のことに気が向ているのかぼーっと外を眺めていた。

 

『(なのは、照人!!……二人とも旅行中くらいはゆっくりしないとダメだよ)』

 

もう一人の魔法少女とフードを被った謎の男との遭遇、それから一つも発見できていないジュエルシードのことなど色々考え込んでしまっている照人となのはにゆっくりするようにとすすめるユーノ。

 

『(うん、分かってる)』

 

『(そうだね。考えすぎは体に毒……か)』

 

そう答えたなのはは考え込むのをやめたのかアリサやすずかと楽しそうに話し始め、照人の表情も和らいだ。

 

旅館に着くや否やなのは達は温泉へと向かおうとしていたが、照人から止められる。

 

「温泉に入るならユーノ君は俺が見ておくよ。他の人もいるんだ、ユーノ君を温泉に入れるのは流石に良くないだろうし」

 

「それもそうだね」

 

照人の言葉になのは達は納得したのかユーノを照人に預けて温泉に向かい、照人とユーノは宿泊部屋の椅子に腰かけ雑談を始めた。

 

『(そう言えば、ユーノ君は温泉に入ったことはあるの?)』

 

『(公衆浴場ならあるけど……)』

 

会話を続けること数分間、ユーノが口を開いた。

 

『(照人、ずっと考えていたことなんだけど……これからのジュエルシード集めは僕一人でやろうと思うんだ)』

 

『(……どうしてそう思ったのか聞いてもいいかな?)』

 

ユーノの言葉に一瞬だけ間を空けた照人はその理由を聞き返した。

 

『(あの少女とフードの男、杖や衣装、魔法の使い方から見ても間違いなく僕と同じ世界の住人だ……彼女たちがジュエルシードを狙う理由は分からないけど、目的が同じ以上争いは避けられない。そうなれば、今まで以上に危険になってくる……)』

 

そこまで言ったところで照人が立ち上がり、ユーノを見つめる。

 

『(ありがとう、俺達のこと心配してくれて……でも、俺はジュエルシード集めをやめるつもりはないよ)』

 

『(どうして!!)』

 

その言葉に思わず声を上げたユーノだったが、照人は話を続ける。

 

『(ユーノ君の言ってることは正しいと思う。だけど、ジュエルシードのせいで誰かが傷ついたり苦しむ可能性が少しでもあるなら……それだけは絶対に嫌なんだ)』

 

照人の目を見て嘘偽りのない気持ちであると理解したユーノは何も言えなくなった。

 

すると、なのはとすずか、アリサの三人が浴衣姿で部屋に入ってきた。

 

「あれ?忍さんと姉さんは?」

 

「旅館の中とか見て回ろうと思ってたのであたし達だけ先にあがったんですよ」

 

「これから色々と見て回るつもりなんだけど、照くんも一緒にどうかなって」

 

なのはの提案に照人は少し考えこんでから答えた。

 

「……そうだね。じゃあ俺も一緒に行こうかな」

 

「やったぁ!」

 

飛び跳ねそうな勢いで喜ぶなのは、その様子を見ていたアリサとすずかも笑みを浮かべていた。

 

*****

 

その後四人で旅館内を散策していると、オレンジ色の髪を腰まで伸ばした浴衣姿の女性―アルフが歩いてきた。

 

「やぁやぁ、おチビちゃんたち~」

 

照人達の目の前まで来たアルフは腰を折ってなのはの顔を覗き見る。

 

「キミかね、うちの子をアレしてくれちゃってるのは…」

 

そう言ってなのはを値踏みするように眺めるアルフになのはは困惑の表情を浮かべる。

 

「あんま賢そうでも強そうでもないし、ただのガキンチョに見えるだけどなぁ」

 

照人がなのはを後ろに下がらせ、アルフとなのはの間に割って入る。

 

「ふぅん、あんたもかい。後ろの子よりかはできそうだね」

 

徐々に険悪な雰囲気になっていく中、アルフが突然笑い始める。

 

「ごめんごめん、人違いだったかなぁ?知ってる子によく似てたからさぁ……それにしても、可愛いフェレットだねぇ」

 

「あ、はい」

 

そう言ってユーノの頭を撫でるアルフだったが、照人となのは、ユーノの三人に念話で話しかけられる。

 

『(今のところは、挨拶だけね……忠告しとくよ。子供はいい子にしてお家で遊んでなさいね。でないと、ガブッといくよ)』

 

その一言を最後にアルフは殺気と魔法の気配を残して去っていった。

 

アリサはアルフの失礼な言動と行動に憤慨し、すずかはそれを嗜める。

 

照人たちは呆気に取られ、アルフが歩いていった方を呆然と眺めていた。

 

*****

 

その日の夜、寝付けずにいた照人は外の空気を吸いに旅館を出て散歩していた。

 

散歩の途中で小池がある開けた場所を見つけた照人は小池を眺めながら昼間の出来事を思い返していた。

 

(あの人……この間の二人の仲間だよな……)

 

照人がそんなことを考えていると、何処からか話し声が聞こえてくる。

 

話し声が聞こえた方へ歩いていくと、そこにいたのはフェイトとアルフだった。

 

気配を消し、物陰から二人の会話を盗み聞きする照人。

 

「ジュエルシードはこのあたりにあるはずだから、二手に分かれて探そう」

 

「そうだね……それにしてもあんたの母さんはどうしてあんなものを欲しがってるのかね?」

 

「理由は分からないけど、母さんが欲しがってるんだから手に入れないと……」

 

アルフがスンスンと鼻を鳴らすと、照人に気付いたのか声を荒げる。

 

「誰だい……隠れてないで出てきな!!」

 

「っ!?」

 

隠れていたことがバレた照人はその場から急いで逃げ出そうとするが、すぐにアルフに回り込まれてしまった。

 

「あ~あ、せっかく人が親切に忠告してやったってのにさ!!」

 

照人を見たアルフは呆れたようにそう言うと、鋭い牙と爪を持った犬狼へと姿を変えた。

 

「狼に変身した!?」

 

「私はこの子の使い魔だからね。この子の魔力で生きる代わりに命と力のすべてを掛けて守ってあげるんだ」

 

驚きを隠せない照人の言葉にアルフはそう言うと、地面を蹴り照人に向かって長い爪で襲い掛かる。

 

「ッ!!」

 

迫りくるアルフの攻撃を地面を転がり回避する照人だが、そこへ武器形態(サイズフォーム)のバルディッシュを振りかぶったフェイトが距離を詰める。

 

≪Scythe form Setup.≫

 

「ハァッ!!」

 

「クッ!?」

 

照人は光剣を生成し、バルディッシュの一撃を受け止め鍔迫り合いの状態になる。

 

「話し合いで解決することはできないのか」

 

「あなたも私も、ジュエルシードを狙う者同士である以上、それは不可能です」

 

照人の言葉に淡々と答えるフェイト。

 

「そうか……」

 

その答えを聞いた照人は鍔迫り合いの状態から、鍔迫り合いの状態から力任せにフェイトを振り払う。

 

大きく後方によろめくフェイトだったが、すぐに体勢を立て直すと照人に向かってバルディッシュを振り上げた。

 

「貫け、轟雷!」

 

≪Thunder smasher!≫

 

振りぬかれたバルディッシュから雷撃を含んだ魔力砲(サンダー・スマッシャー)が放たれるが、照人は大きく跳躍しその射線上から退避する。

 

着地と同時に大きく踏み込むと、二人との距離を詰める照人。

 

照人は光剣を上段から振り下ろすが、フェイトとアルフは左右に分かれて光剣を躱した。

 

光剣を躱したフェイトとアルフは左右から照人を挟み撃ちにする。

 

フェイトのバルディッシュとアルフの爪が同時に照人に襲い掛かるが、照人は体を回転させながらアルフの攻撃を躱し、フェイトのバルディッシュを光剣で受け止め再び鍔迫り合いになる。

 

やがて鍔迫り合いから二人の攻防へと発展していき、剣戟が夜闇の中で響き渡る。

 

「ジュエルシードは諦めてください」

 

「断る!!ジュエルシードは危険なものだ。放っておくわけにはいかない!!」

 

そんな問答をする間も光剣とバルディッシュで斬り合い、ぶつかり合っては離れ、また斬り合う。

 

激しい攻防の中、照人は一瞬の隙をついてバルディッシュを弾いた。

 

武器を弾かれ体勢を崩したフェイトに照人は光剣を振り下ろそうとするが、そこへアルフが割って入りオレンジ色の円形の盾(ラウンドシールド)を作り出し光剣を防いだ。

 

照人は光剣を持つ手に更に力を籠めるがびくともしない。

 

突破できないと判断した照人は飛び退いて距離を取ろうとするも、その瞬間アルフがフォトンランサー・マルチショットを放つ。

 

8つの魔力弾は一直線に照人へと向かうが、照人は半身になるように魔力弾を回避した。

 

魔力弾を回避した照人だが、そこへ間髪入れずフェイトが斬りかかる。

 

「ハァァァッ!!」

 

≪scythe slash.≫

 

横薙ぎに振るわれたバルディッシュの刃を照人は地面を強く蹴り、高く飛び上がって避ける。

 

それを追うようにフェイトとアルフも飛翔する。

 

バルディッシュの切っ先を照人に向けたフェイトはフォトンランサーを連続で発射した。

 

≪Photon lancer.≫

 

「ファイヤ!!」

 

フェイトのフォトンランサーを光剣で斬り払う照人。

 

しかし、全てのフォトンランサーを避けきることはできず照人の体にフォトンランサーが着弾し炸裂した。

 

怯んだ照人の右腕にアルフが噛みつくと、力任せに照人を振り回し地面へと投げ飛ばした。

 

地面に叩きつけられられそうになる照人だが、空中で体勢を立て直し地面を滑るように着地する。

 

照人が右腕を見てみると、アルフに噛みつかれた傷から血が噴き出していた。

 

「これ以上は手加減できません……まだ、やり(戦い)ますか?」

 

フェイトはバルディッシュを構えながら照人にそう問いかけると、照人はじっとフェイトの目を見つめる。

 

「君たちの目的はなんだ!!何のためにジュエルシードを狙う!!」

 

「答える理由がありません」

 

照人の問いかけに冷たく返すフェイト。

 

そして、フェイトとアルフは同時に照人へと飛び掛かり、対する照人も光剣を構え迎え撃つ。

 

それぞれの刃が衝突し、激しい火花が散った。

 

*****

 

時間は少し遡り、照人がアルフとフェイトの二人と対峙し始めたころ。

 

旅館の一室で眠っていたなのはは、魔力の波動で目を覚ました。

 

(ユーノくん!!これって………)

 

(うん、照人が戦っているんだ。なのは!!)

 

ユーノの言葉を受け、なのはは旅館の浴衣を脱ぎ捨て、私服へと着替える。

 

旅館の外へと出ると、レイジングハートを取り出しバリアジャケットを展開した。

 

「ユーノくん、しっかり掴まっててね」

 

ユーノを肩に乗せたなのはは全速力で空へ飛び上がり、照人の元へと飛翔した。

 

だがその時、青い炎を帯びた魔力弾がなのはを襲う。

 

「ッ!!」

 

ギリギリのところで防御魔法(プロテクション)を展開するなのは。

 

突然の奇襲に困惑するなのはだったが、後ろから近づく気配に気が付かなかった。

 

「なのは、後ろ!!」

 

「え?」

 

ユーノの叫びになのはが後ろを振り向いた瞬間、その腹部に強い衝撃が走った。

 

「かはっ!?」

 

あまりの衝撃に呼吸が止まったなのははそのまま気を失ってしまった。

 

*****

 

一方、照人たち三人の戦いは激化していた。

 

フェイトはバルディッシュを振りかぶり、光刃を発射した。

 

「ハァァァァッ!!」

 

≪Arc Saber.≫

 

光刃はブーメランのように回転しながら照人へと向かっていく。

 

襲い来る光刃を照人は光剣で切り上げて躱すが、その隙にアルフが飛び掛かった。

 

アルフの体当たりを光剣で受け止めるが体制が崩れる照人。

 

そこへ急加速したフェイトがバルディッシュを上段から振り下ろした。

 

(……これでっ!!)

 

しかし、バルディッシュが照人を両断する直前にフェイトの視界から照人の姿が消える。

 

次の瞬間、フェイトの持つバルディッシュが柄の部分から切り離され、展開していた魔力刃は霧散した。

 

「えっ!?」

 

フェイトの斬撃と躱し背後へ移動すると同時に照人が光剣でバルディッシュを切断したのだ。

 

そして、フェイトが驚いて動きを止めた隙を突き、照人が背後からバルディッシュを持ったフェイトの腕を掴み動きを抑える。

 

「フェイトから離れな!!」

 

それを見たアルフが叫び、フォトンランサーを放つ。

 

照人は宙返りして危ういところで魔力弾を躱し、着地すると光剣を構える。

 

照人がフェイトから離れたのを確認したアルフは、フェイトを庇うように前に立った。

 

「フェイト、大丈夫?」

 

「うん、大丈夫。ありがとう、アルフ」

 

アルフは照人から目を離さずに問いかけると、フェイトは問題ないと答える。

 

バルディッシュを魔力で修復し構えるフェイト。

 

互いに睨み合う照人とアルフとフェイト。

 

沈黙が続く中、どこからか拍手する音が聞こえてくる。

 

「いやぁ、お見事です」

 

拍手の音のする方を見ると、そこには月村邸で戦ったマントとフードで顔を隠した男が立っていた。

 

男の傍らには気絶したなのはとユーノが倒れている。

 

「ッ!?なのは達に何をした!?」

 

「何もしていませんよ。今は”まだ”ね……」

 

照人は男に向かって叫ぶが、男はニヤニヤと笑いながら話をつづけた。

 

「まぁ、それもあなたの対応次第になりますがね。まずは武器を捨てていただきましょうか」

 

「……分かった」

 

男の言う通りに光剣を捨て、両手を上げる照人。

 

「物分かりが良くて助かります。フェイトお嬢様、付近にあったジュエルシードは私が回収いたしました。それと彼女が持っていたジュエルシードも」

 

男の掌には7つのジュエルシードが乗せられていた。

 

人質というやり方に困惑するフェイトとアルフだが、目的のジュエルシードを前に何も言うことが出来ない。

 

「これ以上の戦闘は無意味です。ここは退きましょう」

 

「……わかりました」

 

「……バイバイ少年」

 

フェイトはバルディッシュを待機状態に戻し、アルフとフードの男と共に森の奥へ消えていった。

 

「君たちはそこまでしてジュエルシードが欲しいのか!!」

 

去っていくフェイトたちに照人はそう叫んだが、返事は無かった。

 

しかし、去る直前に見えたフェイトとアルフの顔はどこか辛そうであった。

 

「くそっ……」

 

なのはを抱きかかえて旅館へと戻った照人だったが、気を失っているなのはからすぐに目を覚ます気配は感じられなかった。




夜の街で三度交わるなのはとフェイト。

二人の杖が同時にジュエルシードをとらえたその瞬間、まばゆい衝撃と閃光が結界内を満たしていく。

そして、照人の不思議な力が目を覚ます。

次回「すれ違いと目覚める力」

人の想いを利用して、笑うやつを俺は許さない!!

*****↓以下、次回予告とは関係ない話↓*****

はい、長い間お待たせしてすみませんでしたm(_ _ )m。

今回はオリジナル主人公とフェイトの邂逅となった訳ですが、その場合のなのはやオリ敵がどう動くのか全く思いつかなくて時間がかかってしまいました。

なのはの活躍が皆無だったような気もするけど、原作からしてこの回は前話から引き継いでフェイトに負けてしまってるのでオリジナル主人公に出番を譲るような形になりました。

リリカルなのはの二次創作において、この温泉回ってフェイトがオリジナル主人公と前もって知り合いだったりとかでなのはがやられてから登場とかが多かったりするのでそこらへんが他と差別化出来てたら良かったなと思います。
あとフェイトとアルフの二人でオリジナル主人公と互角に近い勝負なのは経験時間の差で、4年しか修行してないけど魔法に関しては一日の長があるフェイトたち、対して魔法には明るくないけど剣は十年近く扱ってるオリジナル主人公(しかも修行相手は魔力無しならシグナムとも対等で、使っても勝ち筋が残るという恭也さんとその父、士郎さん)って感じです。

オリジナル展開も多かった今回ですが、真面目に酷評でもいいので皆さんから見てどんな感じなのか感想をいただければと思います。

それでは、次回もお待ちください。



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