腐女子、イナイレ世界に転生する。 (楓/雪那)
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腐女子、イナイレ世界に立つ
しばらくリアルで忙しくモチベーションもダダ下がりで読む専になってましたが、ある方に触発されてモチベーションを取り戻しました。
二年近く更新してない作品もありますが、まずは感覚を取り戻すのと少しずつスキルアップするためにこの作品メインでやっていきます。
拙い作品ですがどうぞよろしくお願いします。
『イナズマイレブン』
それはサッカーを愛してやまない少年、円堂守を中心とした少年たちが繰り広げる熱血スポーツ作品だ。
友情・努力・勝利の王道展開、見た目やプロフィールの癖がモブも含めて一人ひとり強すぎるキャラクター達、そして常識では理解できないトンデモない必殺技の数々。
ゲームから始まりアニメ、漫画、新世代の続編などといまだに広い人気を集める作品である。
他のゲームや作品とは一線を画すのは、そのキャラの多さだろう。
「円堂世代」や「無印」と称されるイナズマイレブン3の段階では仲間にできるキャラはなんと3000人以上にもなる。
そんなにいて埋もれたりしないのかと思う人も多いだろう。
実際ストーリー本編にしっかりと関わるキャラなんてメインとなる雷門およびイナズマジャパンのメンバーがほとんどで、あとは各チームのキャプテンが50人ちょっとだろう。
え?それでも十分多い?いやまあ確かにそうだけどね?
しかし本筋に登場しない=影が薄いというわけではないのだ。
あるキャラは覚えるキャラが一桁しかいない強力な必殺技を習得したり、あるキャラはほんとに同じ中学生、いやそもそも人間かどうかを疑う容姿をしていたり、あるキャラはTCGの販促のために生み出されたり、あるキャラはネット民の絶大なる支援という名の悪ふざけを受けて人気投票一位に輝き続けたり……
例を挙げればキリがないほど一人残らずキャラが立っている、それがイナズマイレブンに登場する
選ぶのに悩みまくるほど育成の幅が広いのが、イナズマイレブンが高い人気を誇る理由の一つだ。
さて、ここまで長々とイナイレのモブについて語ったが、そろそろ本題に入ろう。
私、前世腐女子の限界オタク、イナイレ世界に乙女乃スピカちゃんに転生しました☆
あばばばばばばばば(歓喜)
よし一回落ち着こう、そしてもう一度状況を整理しよう。
確か私はメロンブックスで推しの方が描いたイナイレのBL本を買った。えーと、そのあとは……サッカーボールを追いかけて道に飛び出たショt……ゲフンゲフン少年がいたんだっけ?あぁ、そうだ。私思わず飛び出しちゃったんだっけ。それで代わりにトラックに轢かれたんだ。おっけおっけ思い出したわ。いやぁ、異世界トラックって本当にあったんやなって思いのほか冷静。しかし前世の私は今頃少年とBL本がたんまり入ったバッグを抱えて死んだのか。割とシャレにならない事故現場なんですがそれはその死にざまは後々笑い話にしかならなそうな感じするわ。
いや、もう前世の事を考えるのはいったんやめよう。現実逃避現実逃避。
さて、それで問題は鏡に映る今の私。
腰ほどまで伸びたワインレッドの長髪、青く輝く瞳、右側だけ若干色素が薄くハートマークみたいになっている前髪
どうやら私は『ヴァーゴ』こと乙女乃スピカに転生したようだ。
乙女乃スピカというのはイナズマイレブン3から登場したキャラで、名前とあだ名の通りおとめ座をモチーフにしたスカウトキャラの一人だ。ストーリーには一切絡むことのないチーム未所属キャラではあるものの、その愛らしい容姿からイナイレ女子の中でも人気は高く、続編であるイナズマイレブンGO2にも再登場を果たしたキャラの一人でもある。
いや、自画自賛ではないけれども私の顔、可愛すぎじゃね???こんなの惚れるなってほうが難しいわ。顔がにやけるんじゃ~。
待て待て、見とれるのは後だ。まずは『ヴァーゴ』のおかれている状況だ。どうやら今は小4だ。ロリスピカもかわいいですわね~。
閑話休題。
住まいは北海道ということになっている。元々ヴァーゴはイナズマジャパンとイタリア代表・オルフェウスが戦ったコンドルスタジアムでエンカウントしたから日本のどこ出身かは不明だったけど、北海道なのか。星だからかな?
しかし日本国内に住んでたのはほんとにありがたい。日本在住と海外在住では原作にかかわりに行くハードルが断然違うからだ。海外で暮らしているとどんなに頑張っても世界編、しかもFFI本戦からでないと関われないうえに本戦出場チームのキャラは大会中スカウトできないからだ。そうなると仮にイタリア代表となったとしてもチームKと対決するときの共闘、コンドルスタジアムでの対決、アニメを含めれば天空の使徒と魔界軍団Z、そしてダークエンジェル戦が円堂たちと関われるチャンスだ。その数最大で4試合、物足りない。しかも今のはイタリア代表になる前提だ。そもそも世界編に登場するチームは2で日本を侵略しようとした自称宇宙人のハイソルジャーとそれに打ち勝ったメンバーが苦戦の連続という修羅の世界だ。こう言っては何だが原作にめちゃくちゃ関わりたい私としては努力と成果の差が釣り合っていない気がする。もちろん海外勢のキャラが嫌いというわけではない。イタリアの白いロリコ…じゃなくて白い流星ことフィディオ・アルデナやアメリカのスタープレイヤー、マーク・クルーガーなど魅力的なキャラは多々いる。が、そもそも国が違うためどうしても関わる機会は限られてしまうんだよね。一之瀬や土門みたいに日本に帰国って可能性もあるけどそれも望みは薄いからね。だからこそ日本住まいはラッキーだ。
環境のほうはけっこう整っている。次の問題は私の身体のほうだ。
ゲームにおけるヴァーゴのステータスはあまり高いとは言えない。しかしボディ(ドリブル突破のステータスの競り合いの値)が高くあの豪炎寺よりも1低いだけ、鬼道や吹雪、ヒロトなどにも勝てる数値なのだ。なお世界組はこれをあっさりと上回るやつらが山ほどいます。インフレの極致すぎんか。また自身のシュート時に成功率をアップさせるスキル『シュートプラス』を所持している。このスキルのおかげでキックの数値があまり高くなくともフォワードとして活躍できるのだ。
しかしこれはあくまで転生前のゲームでの数値のみを見ただけの話だ。今このゲームじゃない世界で生きている私にとって数値にのみこだわるのは非常によくない。「この数値になるから」という理由で特訓を怠ればきっとステータスは低いままだろうし、逆に言えば特訓次第ではゲームの時のヴァーゴを超えたステータスを得ることだって可能なはずだ。というかしっかりと自分自身を鍛えないと死にかねない。フットボールフロンティア編から絡むのか、それとも驚異の侵略者編からか、はたまた世界への挑戦編かはわからないが、帝国なり世宇子なりエイリアなり負傷して離脱なんてタイミングはいくらでもある。ダークエンペラーズ堕ちなんてしたら目も当てられないわ。せっかく大好きなイナイレ世界に転生したんだから、負傷して選手生命絶たれましたーなんていうのは絶対に嫌だもの。でも必要以上にヴァーゴちゃんの肉体を筋肉質にはなりたくないです(鋼の意思)。
ん?そもそも原作に絡むってことに迷いはないのかって?
……一応ね?原作にかかわらず、そもそもサッカーをしないで普通の女子として生きるってルートもありかなとは思ったよ?
でもさ、言ったじゃん?私は腐女子だって。それで大好きなイナイレ世界に転生できたんだよ?
それってさ、努力次第で推しカプを間近で見守り続けられるんだよ?
イケメンキャラや美少女たちを間近で見れるんですよ?
同じチームに入れればあんなことやこんなことも見れるんですよ?
これはもう頑張るしかなくないですか?( ◜ω◝ )
状況は把握できた。当面の目標も建てられた。
動機が不純だろうが知ったことか。
目指すは推しカプをこの目で見届けるため
乙女乃スピカ、頑張ります!フゥィヒィヒィ
乙女乃スピカ
FW 火属性
物事に夢見がちだが、過去だけでなく未来にもいつも(腐った)夢を持っている。
ヴァーゴちゃんはイナイレ女子でもトップクラスにかわいい。あれでも部とかやばくないですか?ほかのソシャゲだったら限定SSRものよ。
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腐女子、必殺技を研究する。
もちろん育成シーソー限界値極振り込みだとこの辺りには負けるけど最終的には剣城兄と同じ数値でバダップより一低いだけって飛んでもねえな。
キックプラス20って偉大。
転生してから特訓を初めて早二年。
最初はもしかして必殺技なんて使えないのでは?って疑念もあったけど杞憂民でした。
や っ た ぜ
しかし必殺技以前の問題点が浮かび上がってきてしまった。
まずとにもかくにも力の調整が難しい。
あの後自分の状況を整理してから親に頼んで地元のクラブチームに入れさせてもらえた。
円堂や天馬みたいに一人で延々特訓続けるのもありっちゃありだけど実戦経験を積むのは大事だし、なによりサッカーはチーム競技だ。
他の子たちのプレーからインスピレーションを受けて自分の実力を高めることが有意義だと私は思うんです。
……あわよくば吹雪兄弟に会えるんじゃねって邪推を抱いたりはしてないです。いや一割二割ほどはあったかもしれんが。
ちなみに親からは二つ返事でOKもらえた。今までインドアだった娘が突然言い出して驚いてはいたけど。てかヴァーゴちゃんインドア派だったのね。なんとなくそんな感じするけども。
しかし入団してすぐコーチの方から私がどれくらいできるか試すためのちょっとした試験を受けたんだけど、ここで事件が起こってしまった。
試験はドリブル、ディフェンス、シュートの三つでこれらがどれくらいできるかによって初心者かどうかを判断してどこから練習するかを決めるという、よくある感じのやつ。
で、まず最初のドリブル。
あっさり突破できました☆
ビックリしたわ、こんな簡単にいくものなのかって。
もちろんコーチは最初手を抜いていた。そりゃそうだ、初心者だろう子供に経験者の大人が本気でやったらそんなん試験にならんわ。
しかし私が右に行くと見せかけて左へのフェイントをかけつつ、さらにそのフェイントにフェイントを重ねがけして股抜きなんてことやろうとしたら、大きく後ろに下がって態勢を立て直された。
うーん、普通なら抜かせてくれるもんじゃないすかねぇ…
再び私が距離を詰め、さらに素早くマルセイユルーレットをかけ、コーチは驚きつつも後退して進行方向を塞ごうとする。
だがそれを予想していた私はルーレットをかけたほうとは逆側にボールを蹴り出す。
周りはコントロールをミスったように思っていただろうが私はこのボールに強力な回転をかけており、蹴り出されたボールは地面につくとバウンドせずにスピンして前方へ半円を描くような軌道で飛んで行った。
あらぬ方向へ飛んで行ったように思ったらあり得ない軌道で跳ねたボールにコーチらの注意がいっている間に私は加速して抜き去りコーチの裏でボールを再びキープ、突破に成功した。
まさかイチかバチかで試した『ひとりワンツー』が成功するとは私も驚いたがやろうと思えばできるもんなんだなぁ、まる
次にディフェンス。
これは残念ながら抜かれてしまった。
素早く距離を詰めてプレスをかけていこうとしたが、コーチは自身の身体をクッションにして私からボールを取られないようにコントロールする。
さすがに子供と大人、しかも男女の対格差ではパワーではどうにもできず、かといって回り込むと裏取りされる。
股から足を差し込んで取ろうとしても、先のドリブルので警戒されて奪い取れずターンをかけられて突破されてしまった。
まぁディフェンス面に関しては私はパワーじゃどーしようもないしね。
基本的にスピードプレーでパスカットとプレス中心になるでしょ。
そして最後のシュート。これが一番ヤバかった。
コーチ、全力で撃ってきなさいと指示
↓
私、言われた通り全力で蹴る
↓
ボール、なんかすごい勢いで風を纏う
↓
コーチ、キャッチしきれず胸部にボールが突き刺さる。
↓
ボール、コーチもろともゴールネットを揺らす。
↓
コーチ、気絶
\(^o^)/オワタ
【悲報:乙女乃スピカ、前々世ゴリラ説が浮上】
マジィ…?頭おかしなるでこんなん。
というかすごい勢いで風纏ったシュートってもしかして『ソニックショット』?
それをデフォルトで使ってるとかバランス壊れるわ。いや、『ソニックショット』は初級技のはずだからまだ大丈夫なはず…いや初級でも必殺技だからやっぱあかんわ。
私のプレーを見た他の大人たちは小学生とは思えないほど強い選手が入って嬉しいって感情もあるようだが、それ以上に危険じゃないのかって意識が強く私の入団には否定っぽい雰囲気があり、最終的にお断りされました。ぴえん。
でも私も一緒に練習する子たちや、試合する相手チームの子たちの無事は保障できないので渋々納得した。
結果中学入学までの間は黙々と一人で特訓してました。円堂と同じやんけ!
ぼっちで練習をするにあたってまずはどれくらい力を出せるのか改めてシュートで試したところ、的にしてた樹が折れました\(^o^)/
やっぱりゴリラじゃないか!
自分のキック力にビビりつつどうやって力を抑えて安全にプレーできるかを最初に考えたものの。「いや、超次元サッカーで力セーブする理由なくない?変に抑えてたら私がケガするわ」って理屈で考えるのはやめた(脳死)。
だってどんなに力込めてもボールさんとゴールさんは壊れないですしおすし。なんで樹は折れて備品は壊れないんや……
パワーセーブを放棄した後はひたすらシュートとドリブルの個人テクニックの練習と威力の増強、そして必殺技の開発に取り組んだ。
前者の必殺技を使わないテクニックに関しては、一人であってもできることは多かった。
まずシュートなのだがヴァーゴが本来持っているスキル『シュートプラス』がうまく練習に作用した。
勘違いしがちだがゲームでは「シュートの威力をあげる」のではなく「シュート時のコマンドバトルの成功率をあげる」というのが効果だ。
字面にすると何の違いがあるのかわからないが、練習中に気づいたことがあった。
どうやらこのスキルは習得者にシュートにおける感覚を引き上げる効果があったのだ。
わかりやすく言うとボールのどの辺にキックを入れれば威力が上がるか、どのように回転をかければ曲がりやすくなるか、今の自分の位置とキーパーの立ち位置、ゴールとの距離から考えてどこに向かって蹴ればゴールを決めやすくなるか、などといった理論ではわかってもいざ実践すると難しいことがすらすらと感覚できるようになるのだ。
これに気づいてからスキルって偉大って思い始めた。対戦ガチ勢がスキルモリモリの選手使う気持ちがよく分かる。
余談だが入団テストの際にはこんなこと一切気づかずにボールを蹴っていたため、素のキック力が化け物ってことも再確認されてしまった。こっわ。
ドリブルのほうは超次元じゃないサッカーでもよく使われるコーンをつかった練習をメインでやる。
あとたまに森で樹を選手に見立ててやる。アニメのカッパ回でヒロトがやってたあれである。
ディフェンスとパスについては軽く壁などに蹴って跳ね返ったボールをトラップしたりダイレクトで返したりでなんとかやったが、それでも1人ではいろいろと限界がある。
特にダイレクトで蹴り返し続けてたら、次第に力が入りすぎて凹みができたときにはまたもや恐ろしくなった。これで小学生とか将来怖すぎんか?
そして必殺技、イナズマイレブンの醍醐味ともいえるものだ。
テストのときに『ひとりワンツー』と『ソニックショット』もどきができたからこの二つの精度をあげつつほかの技もできないか色々試したみた。
え、秘伝書?(使わ)ないです。
シュートではヴァーゴの初期技『あびせげり』や威力は低いもの使うキャラが多い『スパイラルショット』や『彗星シュート』、『ローリングキック』。
ドリブルではおなじみ『疾風ダッシュ』に『ダッシュアクセル』、『竜巻旋風』、さらには『フーセンガム』。
ブロックはまだ『クイックドロウ』のみ。
まだ未完成ではあるもの『スピニングカット』や『イリュージョンボール』なども完成は近づいている。
……いや、多くね?
習得できる技最大六個とはいったい何だったのだろうか。
しかし技が多く習得できるということは実際のプレーでは選択できるカードが増えるということだ。特段悪いというわけではない。
ちなみになんとなく予想はついていたがTPという概念はないが、連続して技を使うと負担がかかりやすくなるというのはある。
常時『疾風ダッシュ』してたらそりゃ疲れるだろうし、そのうち相手にも技攻略の糸口をつかまれるかもしれないからね。そこは使い分けだ。
そして重要なのはここからで、私がいくつか研究したところどうやらこの世界の必殺技とそれを使う選手にはそれぞれ密接な関係があるようだ。
まず技ごとに「難易度」、「属性」、「種類」、そして「特性」という四つの要素がある。
最初の三つはゲームでもあった要素だが厳密にはゲームとは少し異なる。
まず「難易度」は技を習得するにあたってのものであり、難易度が低いほど多くの人物が簡単に覚えられる。
加えて難易度には「練度」という要素も含まれている。原作で言うところの「改」や「V2」だ。
練度が高いほど威力が上がり、さらに技の出が早くなったり発動者への負担が減ったりもする。
(なお威力についてはゲームと同じなので説明には含めない)
次に「属性」。これはゲームと同じ風林火山の四つの中からどれかが当てはまる。(無印には無属性はない)
ゲーム同様技と技の対決時に技の元々の威力に属性一致や属性の有利不利が加味される。
それとは別に属性が一致している技を習得するときに通常よりも速いスピードで覚えられるということが判明した。
テストのときにとっさに『ひとりワンツー』を使えたのも同じ火属性だったかららしい。
そして『種類』。
これは「シュート」、「ドリブル」、「ブロック」、「キャッチ」の四種類に加えて「個人技」、「二人技」、「三人技」などといったようなものも当てはまる。
どうやら必殺タクティクスも大きなくくりでとらえると複数人で使う技として捉えられるようだ。
最後が『特性』。これが私の一番の収穫ともいえる。
これは技の内容によって決められるもので、技を構成する要素、まさしく属性ともいえるものだった。(紛らわしいから特性と呼ぶことにしたが)
いくつか具体例を挙げよう。
例えば『ファイアトルネード』、これには大部分を「炎」の特性が占めていて少しの「回転」の特性が入っている。
例えば『ドラゴンクラッシュ』、これは「竜」特性が全てを占めている。
例えば『エターナルブリザード』、これには「氷」と「風」の属性でほぼ半々となっている。
このように技を構成する要素、カテゴリをまとめて『特性』と名付けた。
今あげた例は比較的わかりやすい要素だが他にもいくつかある。
例えば「学校」の特性、いわゆるチーム共通の技だ。
『キラースライド』や『デスゾーン』は「帝国」の特性、『アストロブレイク』や『メテオシャワー』は「エイリア」の特性といった具合だ。
『特性』は試合には直接影響せず、必殺技の習得に大きく関わる。
再び『ファイアトルネード』を例に挙げよう。
さっき言ったようにこの技は大部分を「炎」の特性が占めている。
そのためこの技を習得するにはその習得者が「炎」の特性を所持していないと不可能ということになる。
絶対に無理、というわけではないが対応する特性を持っているのといないのとでは、習得時間に大きな差が出るし、最終的には選手の特性次第で『ダークトルネード』や『バックトルネード』といった派生形に行き着くこともある。
アニメの世界編で綱海が立向井にアドバイスしたように技名をつけてイメージしてから取り組むというのがわかりやすいだろうか。
あのイメージがまさしく選手が持つ特性に直結してくるため、結局自分がどんな技を作りたいかのイメージが必要なのだ。
『特性』の種類は大きく分類して「性質」、「スタイル」、「学校」、「ポジション」がある。
性質は「炎」や「氷」、「竜」や「ペンギン」など、スタイルは「回転」や「加速」、「ラフプレー」、「パンチング」など。
学校には「専用技」などの独自のものも含まれる。『ゴッドノウズ』や『流星ブレード』などがいい例だ。
ポジションは技ではなく選手のほうにあてはまる。
また技の進化にも特性が重要になる。
またまた『ファイアトルネード』を引き合いに出すが、豪炎寺の使う『爆熱ストーム』や『爆熱スクリュー』は『ファイアトルネード』の進化に当たる。
では改やV"はいったい何なのかというと、あちらは純粋な成長であって進化とは別物であり、進化すると特性が追加されたり、特性の割合が変化したり、拡張されたりするのだ。
まあ要するには比較的簡単な技を中心とした系統樹があるのだよ。
じゃあ技を習得するときには自分の持つ特性と属性から適したものを選ぶのがいいのかというと、そう簡単には行かない。
まず基本的に今まで述べた必殺技を構成する四つの要素なのだが、種類以外はわからないというのが現実だ。
というか技に限らず自分の属性や特性だってまずわからない。だいたいが直観になってしまうのだ。
豪炎寺や染岡さんみたいに偶々自分にベストマッチする技を覚えて、そこから進化させるというのが理想的ではあるが、そんなんぶっちゃけ直観という名の運次第だ。
ただそれは「性質」に限った話で「学校」の特性は後天的に獲得できるし、「スタイル」の特性はあくまで得意不得意の範疇だ。
そのためこの二つ、あるいはどちらか片方で成り立っている技は比較的簡単に覚えられる分威力は控えめなのだ。
逆に言えば「性質」がある技は高威力だったり派生形、進化形が多かったりする一方、習得者との相性次第で困難になる、といった具合だ。
話が逸れたが基本的に自分や他人が何の特性、属性を持っているかはわからないため、意図せずして属性不一致の技を覚えたり、いつまでたってもある技を覚えられないといったことはザラにある。
…のはずなのだが、どうやら私は自分や他人、技ごとの性質や要素が視えるらしい。
いわゆる転生特典というものなのか、神様なんかに会ったことはないが。
けどこの能力があれば効率的にオリジナル必殺技を開発できるし、チームメイトに適切なアドバイスが送れるためとてつもなく便利だ。
まあいまはアドバイス送る仲間なんていないけどな!!!
……さて、冒頭で述べたようにあれから早二年、明日からは中学生。
いよいよ原作に近づいてきたはずだ。
二年間のボッチ式武者修行の力、原作メインキャラどもに存分に振るってやろう!フハハハハハ!!!(魔王風)
……あれ、そもそも円堂や鬼道って私と同級生だったっけ?(震え声)
GO2では2年生って表記されているのでしっかり同級生です(安堵)
補足:ほんへでは書かなかったけど連携技だとより複雑かつ細かくスタイルの部分が指定されます。エイリア編のデスゾーンとデスゾーン2の差とかがわかりやすいはず。
あと連携技にも「連携」か「融合」のどちらかの特性があります。
前者は『デスゾーン』や『イナズマブレイク』などで後者は『ドラゴントルネード』や『カオスブレイク』など。
「融合」のほうが技の特性を二つ以上かけあわせたもの(アレスの天秤におけるオーバーライド)でそれ以外が「連携」って感じです。
これをほんへで説明しなかったのはスピカが連携技やるパートナーがいなかったため研究の仕様がなかったから。
スピカの特性については次回に多分出る。
他にもわからないところあったら聞いてください。きっと穴だらけなんで()
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腐女子、渇望する
星之宮学園。
私が進学した中学はマンモスといえるほど多くはないが、札幌市内にあるため比較的規模は大きく三棟の校舎の屋上がそれぞれ違う方角を向いた巨大な天体望遠鏡があるのが特徴だ。
三個もいらなくね?とは思った。思うよね?
もちろんサッカー部はちゃんと存在するし、毎年地区予選決勝まであがり本戦にも何度か出場したこともあったらしい。いやー、去年廃部になりましたとかじゃなくてよかった。
とは言いつつも中々人数はギリギリらしく、私たち一年生が4人(+マネージャー1人)が入部して現在13人となんとか試合できる人数だ。
まあそれでも雷門よりはマシですけど(マウント)。
部員は私ら一年生が4人(2度目)
二年生が5人で三年生、つまり今年卒業する先輩が4人だ。あとマネージャーは三年生と一年生の二人である。
それじゃあイカれたメンバーを紹介するぜ!!
まずは三年から。
黒柳〇子さんにも負けないくらいボリュームかつ鮮やかすぎて恐ろしい髪が特徴、目立ちたがり屋である一方でディフェンステクニックとテンションで常にチームの士気を高く維持し続ける現ディフェンスリーダーの
七美先輩とは逆に落ち着きのあるもののやはり高飛車であり結局似た者同士として扱われる、的確な指示でパスコースを塞がせてプレスをかけに行く守備的ミッドフィルダーの
物静かで白い長髪に赤と青のオッドアイとかいういかにも腐女子受けしそうなビジュアル、勝負ではタイマンなら攻撃・守備問わずチームでも一二を争うほどの実力を誇るリカバリーに長けた
チーム内では一番普通な見た目をしている癖に彫刻作品で日本一とれる才能持っててサッカー部に来た理由が謎すぎる、しかし鋭く相手からしたら嫌なタイミングでスライディングを仕掛けてくる中盤の切り込み隊長である
続いて二年。
三年生の先輩方を差し置いて現キャプテンを任されているわれらがリーダー、チーム全体を前向きに引っ張っていく適正はあるものの人の話を中々聞かなかったりする難儀な面も。即断即決でその場に応じた指示を出し一直線に素早く駆け上がり点を取りに行くミッドフィルダーの
我が強く点を取ることを一番の楽しみとしているため七美先輩や射手先輩としょっちゅう衝突するものの、不利な状況を苦ともしないガッツの高さと持ち前のワイルド感あふれる勢いで攻めあがるさまからオフェンスリーダーを任されている
マイペースではあるもののチーム内では貴重な理知的に性格で我の強い皆々様の細かな穴を埋めていくチームのブレーン、流れる水のようなしなやかな守備と観察眼で相手の勢いを削ぐ戦法を得意とする
正義感が強くチームのいざこざを率先して治めに行くものの逆に火に油を注ぐことが多い、チーム内では獅子谷先輩と並んで持久力が高く、どんな相手でも恐れずに勇猛果敢に突撃していくディフェンダーの
水瓶先輩とは違う意味で珍しい穏やかな性格で後輩のケアが上手い一方で騙されやすく中立的だからこそ板挟みになりやすい苦労人、安定した体感でどっしり構える現在チーム唯一のゴールキーパーの
最後に一年
強面が原因で同級生からは恐れられているが本当のところは慎重かつ堅実な性格で社交的というギャップがすごい人、試合では一転して羊家先輩よりも恵まれた体格から繰り出すタックルを始めとしたパワープレイを得意とする『暴れ牛』こと
穏やかな顔つきから「菩薩」などともよばれておりそのあだ名が示すようにチームの仲裁を引き受けることの多い知識人、普段は中立ゆえの優柔不断が目立つが試合ではフェイントや相手のパス先を迷わず防ぐ揺さぶり特攻持ちの
私と同じく一年の女子選手でありマルチワークを易々とこなし文武両道を絵にかいたような才女、飽きっぽさはあるものの攻守両方をこなせるバランサーであり私の親友の
そして噂の美少女、キック力はゴリラの私こと乙女乃スピカ。
うーん、私だけ簡潔でひどい言い様じゃないか?まあ事実なんですけどね。
それにしても入部直後はひどかった。
なにが大変って先輩方の我が強すぎるのよ。
わかりやすく言えばこいつらプロトコル・オメガの前世かよってくらい仲悪い人が多い。
実は最初のころは20人くらい新入部員がいたんだけど、内輪揉めが多すぎてほとんどがストレスで辞めてったんだよね。ちなみに毎年恒例らしい。いやな伝統。
残った私らはというとそれなりにやりすごしてた。
それこそ温厚な鶴賀先輩や水瓶先輩が練習手伝ったりはしてくれたけど、紅白戦とか練習試合になるとそうはいかない。
ひとりの先輩にパス渡すとその先輩の事が嫌いな先輩から圧をかけられる。ハーフタイム中に煽りあいは日常茶飯事。初期カオス波のギスギス具合よ。
特に私は同じフォワードの獅子谷先輩から目つけられてた。
私にパス回ってシュート指示出たとき露骨に舌打ちしてたくらいだからね。
じゃあどうやって連携するのかっていうと、それはもう別種の信頼よ。
「こいつならこれくらいのパス届くだろ。」とか、「この状況なら自分よりあいつ適任」みたいな口には出さないけど分かってはいるから何も言わずともできるようになってしまった。
あ、できるようになったのは私たち一年ズね。
先輩たちはさすがにできるよ。むしろ一年二年経ってもできてなかったらジャッジスルー決めてたわ。
まあチーム内でのいざこざは多々あったけれども無事今期のフットボールフロンティアの地区予選は突破した。
え?展開早い?だってスカウトキャラにもなってないようなもMOBが多すぎるんだもん。
ちなみに白恋中は出てなかったよ。まあ影山の仕業ですね。知ってた。
そんでもって地区予選一回戦目の相手なのだが…
「木戸川清修、ですか…」
FF本戦常連校の名門、木戸川。
イナイレに出てくる学校としてはかなり普通な感じのキャラが多いが、攻守ともに強力な連携を有する強豪だ。
しかも今年は向こうには「彼」がいる。
ジュニア世代から地区で名を轟かせた、無印イナズマイレブンの主人公の一人とも言えるストライカー。
そう……その名は…
「おやおやぁ?なんでこんなとこに女子がいるんだ?みたいな?」
「そのユニフォーム、本戦1試合目に戦う星之宮学園のものですね。」
「北海道から来たのに俺たちに負けるなんてご苦労なことだぜ!」
……いや君たちじゃないよ、グラサンタラコトリオ。
日本代表候補に選ばれるものの、オフサイドトラップで出番がなくなった長男。
ネオジャパンには入れたものの、クソダサZ教えただけで後はベンチ温め係だった三男。
そしてどっちにも入れなかった次男。
うーん……キャラは立ってるし実力もあるはずなのになんかパッとしないよね。
「…友、なんか俺たち馬鹿にされてる気がする?みたいな?」
「奇遇ですね。私もそう感じました。」
「こっち視る視線が呆れてるっぽくね?」
顔も大して良いわけではないし、漫画版だと出番95%くらいカットされてるし、なんていうんだろう…
キャラは立ってるからストーリー的には扱いやすいけどゲーム的には使いづらい、微妙な立ち位置よね。
ゲームプレイヤー的にも腐女子的にも。
「はぁ……」
「初対面でいきなりため息つかれたんだけど!?みたいな!?」
「し、失礼な方ですね…」
「喧嘩売ってんのかコラァ!」
やっべ、つい本音のため息がもれてしまった。
てかいきなりダル絡みしてきた君らに失礼がどうこうとか言われたくないなぁ。
「おい武方、問題を起こすのはやめておけ。」
「あぁ!?あっちが俺らのこと馬鹿にしてきたんだぞ!」
「さきに煽ったのはどうせお前たちのほうだろう。監督が呼んでるから戻るぞ」
「ちっ…仕方ねぇ。みたいな?」
「この喧嘩は試合で返してあげますよ。」
「ビビッて逃げんじゃねぇぞ!」
どうしたものかと悩んでると、彼らと同じく赤色の木戸川のユニフォームを着た少年が声をかけてきた。
どうやら連れ戻しに来てくれたみたいだね。助かるわ~。
なんて思ってたらあいつ豪炎寺やんけ!
噂をすればなんとやらってやつ?たまげたなぁ。
「すまなかった。チームメイトが迷惑をかけたな。」
「いえいえ、むしろ試合前に君と話せただけでもラッキーものですから!」
「俺の事を知っているのか?」
「少なくとも本戦に上がってきたチームはみんな知っていると思いますよ、炎のストライカーさん?」
「フッ……まさか北の果てまで知られているとはな。だが俺も君の事は知っているよ、『北国のヴァルキュリア』」
「……その誰がつけたかもわからない恥ずかしい二つ名で呼ぶのやめてほしいんだけど。乙女乃かスピカでいいですよ?」
「それなら俺のことも豪炎寺で構わない。この後の試合、お互い全力でぶつかり合おう。」
「ええ、楽しみにしています、豪炎寺君。」
私と握手をかわしてくれた炎のストライカーこと豪炎寺修也。
短いやり取りではあったが、彼からは心に秘めた熱い闘志を垣間見た。
…うん、私も久しぶりに燃えてきちゃった。
ていうか豪炎寺から握手いただいたんだが!?
感激ものですよこれは!!
はーこれから一か月は手洗わないでおこ。いやご飯食べる前は洗ったほうがいいわ(冷静)。
『さあついに始まりました、フットボールフロンティア全国大会!!中学サッカーに帆に血を決めるこの大会で本戦1試合目を飾るのはこの二校!北海道地区予選を突破、過去何度も本戦まで勝ち上がってきた北の覇者!星之宮学園!対するは関東地区予選Bブロックを突破、強力なストライカーが四人も新一年生として加入し攻撃力がさらに上がった名門!木戸川清修中!果たして勝利をつかむのはどちらなのか!?』
「…ん?どうしたスピカ?緊張してんのか?」
「そりゃあもちろん。私今までこんな大舞台に立ったことないですから。」
「はっ!それじゃオメーは今までの試合緊張してなかったってことじゃねーか!肝座りすぎなんだよ!」
「ふふっ……確かにそうかも、ですね。」
今までの試合、もちろん全部本気で挑んだし、楽しかった。
でも満たされることはなかった。
相手が名も知らないモブだったからとかそういうのが全ての理由じゃないし、私にも不完全燃焼の原因はわからない。
けど今は、この場所は、
実況の声がスタジアムに響き、観客席が熱狂する。
前を見据えた先には日本が誇ることになるストライカーがいる。
……うん、今わかった。
ギリギリの試合。
絶対勝てるって言いきれない試合。
最後の最後まで何が起こるか、勝敗が読めない、そんな試合を私は望んでたんだ。
今までは、二次元のキャラに会えるとか、必殺技使えるとかに浮かれてたけど、
今はその先のもの、闘志のぶつかり合い、それを望んでいるんだ。
だから私は、目の前の
……まいったね、私が実はこんなバトルジャンキーだったなんて。
「……豪炎寺君、私のこと
【悲報】主人公、デザーム化。
恐ろしいくらい話が進まない。
先週にこれ投稿したかったけど忙しすぎたんや、許してください。
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腐女子VS炎のストライカー
クソダサZも割と好き。
アレスの爆熱ストームは許さん。
ーーーー試合開始10分前・星之宮学園ベンチーーーー
「全員もちろん知っているでしょうけど、木戸川の選手の中で最も警戒すべきは10番・豪炎寺修也です。ジュニア時代からその得点率は高く、今大会も初参戦ですが早くも向こうのエースストライカーとして活躍しています。ですが今までの試合を分析したところ、彼の強みはシューターであると同時に中盤の司令塔であるというところです。豪炎寺同様に新入部員である三人のFW・武方三兄弟、彼らがスターティングメンバーとして出場している試合は必ず三人揃ってです。おそらくは三つ子故の連携テクニックに目を付けたからでしょうね。」
「豪炎寺はともかく新入生4人に攻めをすべて任せているのは、チームメイトとの連係ミスを起こしにくくするため……ってことか。」
「その考えで間違いないでしょうね。実際に地区予選とそれ以前の練習試合では独断専行で連携もうまくいってませんでしたし。さすがに少しくらいは改善されてるとは思いますが、それでも三兄弟のスリートップにするか豪炎寺を前線に上げて中盤を多めに配置するかのどちらかがあちらの定石でしょう。それはつまり豪炎寺が木戸川メンバーと武方三兄弟を結ぶルーターであり、武方三兄弟が2,3年生よりも攻撃面では強力ということです。」
新人マネージャーの
同じ1年生なのにもうこんなに情報集められてるとか有能すぎひん?
てかこの子、ゲームだとキーパーだったけどこの世界だとマネージャーなのね。
「佐曽利が集めてくれた内容からわかるように、木戸川は武方三兄弟を起点とした速攻を仕掛けてくるはずだ。そして三人に注意が高まったところを豪炎寺が追加点というのが向こうの理想だろうな。豪炎寺か武方か、どちらかに注意を寄せすぎるのは悪手、MFとサイドバックは両方に警戒して状況に応じてマークを変えるように。」
「武方三兄弟はだれか一人でもマークについて動きを止めておけば選択肢はかなり削れるはずです。単独シュートは連携よりも得点率は低いので脅威度は落ちるかと。」
「その通りだ。逆に豪炎寺は単独が厄介だから、柵木、水瓶、シュートブロックは頼むぞ。」
「「はい。」」
監督から作戦を聞きそれぞれのポジションにつく。
さて、どんな試合になりますかね。
星之宮学園・フォーメーション
ーー乙女乃ーー獅子谷ーー
ー鶴賀ーー射手ーー二面ー
ーーーーー樫御ーーーーー
ー羊家ーーーーーー七美ー
ーーー柵木ーー水瓶ーーー
ーーーーー魚勝ーーーーー
木戸川清修・フォーメーション
ーー友ーーー勝ーーー努ーー
ー跳山ーー豪炎寺ーー茂木ー
ー西垣ー中井ー光宗ー黒部ー
ーーーーー軟山ーーーーーー
試合開始のホイッスルが鳴り響く。
先行は木戸川からであり、中央の勝から三男・努へとボールが渡る。
彼は自分の正面に位置する少女、乙女乃に向かって勢いよくドリブルしていく。
「さっきの喧嘩、ここで返させてもらうぜ!!」
『木戸川FW・武方努!勢いよく星之宮陣営に攻め込んでいく!対するは背番号11番・乙女乃スピカ!!どう動くか……おぉーっとぉ!?なんとブロックせずに素通りしました!』
まさかのガン無視、意外なプレーに観客も木戸川陣営も動揺する。
そして無視された努含めた三兄弟は憤っていた。
(俺らの事なんて眼中にないみたいな!?)
(なめやがって!)
(目にもの見せてやりましょう!)
乙女乃への対抗意識を燃やす三つ子、その意欲は今までになく高まっており星之宮イレブンにとっては厄介になりかねない気の上がりようだ。
だがそれは仮に後半以降、スタミナが落ちてくるころに自分自身を奮起するものだったらの話。
試合開始直後、たった一人の選手に、しかもFWの三人全員が意識を向けてしまうとそれは大きな隙になる。
「勝っ…!?」
長男にパスを返そうとする努だったが、彼のほうを見て足を止めてしまう。
いつの間にか彼を挟むように射手と樫御がマークしていたのだ。
さらに逆サイドの次男・友も二面からマークを受けている。
こうなってしまってはパスは出せない、そう考えた努は意識を切り替えドリブルしようとするがすでに遅かった。
「『スプレッドウイング』!」
「うおっ!?」
努の視界に入らない上空へと飛んだのは三年の鶴賀。
十数枚の白い羽を自分の周囲に呼び出し、努めがけて射出し、地面に当たると小さく爆発する。
巻き起こった土煙に視界が封じられているうちに鶴賀はボールを奪う。
「よしっ!スピカ!」
『星之宮三年・鶴賀眞白!華麗にボールをカットしました!そのまま乙女乃につないでいく!!』
受け取ったボールをトラップする乙女乃、その正面に立つのは豪炎寺。
両者は間合いを保ったまま睨みあう。
「最初のプレイングで武方達を挑発し、チームメイトが注目されず接近できるようにするとは、考えたな。」
「そりゃあもちろん、名門木戸川はこれくらいやらないと止まってくれませんからね。」
乙女乃の策は単純なヘイト管理である。
作戦中にも言われたように三兄弟の連携は厄介である。
それこそ全員でかかっても止めるのは困難だろう。
それを止めるには初動が一番のタイミングと考えた彼女は、三兄弟の負けず嫌いかつ沸点の低さを利用して出鼻を挫いた。
当たり前だが何度も通じる手ではない。おそらくこの一回とあってもう一回くらいか。
だが、だからこそこの手は出合い頭に最適であり、強豪相手に先制点を取ることは重要である。
(そんでもってこっちの考えお見通しって…さすがだなー)
予想外だったのは豪炎寺が乙女乃の速攻カウンターを警戒していたことである。
正直なところは2割1割くらい、豪炎寺ならもしかしたら予想してるか?とは思っていたもののほんとに来るとは思っていなかった。
だが
右側へと鋭くボールを蹴り飛ばす。
ミスキックか、そう思った豪炎寺だが着地したボールが勢いよくスピンして自分の背後に飛んでいき驚く。
「何…!?」
「『ひとりワンツーV3』!」
彼女が最初に習得した『ひとりワンツー』は初歩の技であるため認知度は高い。
が、彼女はそれを何度も練習し強化させたことで通常とは比べ物にならないスピードと角度で使えるようにさせた。
豪炎寺が抜かれた、その衝撃は武方三兄弟を止められたことも合わさって木戸川陣営に後れをもたらす。
『星之宮1年・乙女乃!素晴らしいプレイングだ!木戸川のエース豪炎寺を抜き去りディフェンス陣も必殺技を使わせずに次々突破していく!残るは木戸川の守護神・ゴールキーパーの軟山のみだーーーー!!』
臆病そうな顔つきをしているGK・軟山だが、2年生として他のメンバーより落ち着いている彼は動揺からの立ち直りも比較的早く、DFの中井が抜かれた段階で顔つきを引き締め準備をしていた。
しかし、目の前の少女、乙女乃スピカはそんな彼の覚悟を一瞬で崩すような妖しい微笑みを浮かべていた。
右の回し蹴りでボールを上空に打ち上げ、彼女も跳躍。
そして
「『リゲルオリオン』!!」
「『タフネスブロック』ぅぅ!!……っうおおおお!?」
自身の胸部に前身のエネルギーを集中させてシュートを防ごうとする軟山だったが、シュートを止めることは叶わず、ボールはゴールネットを揺らした。
『ゴォォォォォォォォォォォル!!!先制点を決めたのは世代最強の女子選手!『北国のヴァルキュリア』こと星之宮学園1年!乙女乃スピカだぁぁぁぁぁ!!!』
「~~~~~~~っっし!!」
スタジアムが揺れたかと感じるほどの熱狂と。
歓喜で思わずガッツポーズをする乙女乃。
心技体、自分のすべてで臨むこの状況。
今までの試合とは比べ物にならない高揚感を彼女は感じていた。
(これだよ!この感覚!いま私は全力を出せている!本気のもっと上で舞える!!)
木戸川ボールで試合が再開。
勝から努へとパスされ、再び勝へと戻される。
やはり乙女乃はブロックせずに通り過ぎていく。
勝は内心腹を立てるものの、先ほどよりかは怒らず両側の弟たちがマークされていることを把握し、前線へ一人上がっていく。
「一点くらいすぐに俺が取り返してやるぜ!みたいな!『グレネードショット』!」
青いエネルギーを内包した強力なシュート。
初心者でも使いやすいシュートであるため威力は低いが、モーションの短さゆえに多くの選手がシュートの基礎として習得する技である。
勝は三兄弟の中でも特に脚力があり、技術面や戦略などでは劣るもののストライカーとしては豪炎寺にも並ぶほどであり、『グレネードショット』の出の速さも併せてまさに切り込み隊長とでも言うべき選手である。
しかし、その速攻は弟たちと連携が取れない今、単純なものになってしまい星之宮のディフェンスにも読まれてしまう。
「『シェイブカッター』!」
「『ハイドロカーテン』!」
柵木が右脚を大きく振り上げ刃型のエネルギーを三つボールにぶつけ威力を落とす。
さらに水瓶が放った水の幕がシュートの勢いを落とし、失速したボールは水瓶にトラップされる。
「樫御さん!」
「双子!」
「獅子谷先輩~!」
カウンターとばかりの連続パスが繋がり、ボールは木戸川サイドの中盤にいた獅子谷へと渡る。
シュートを撃とうとする獅子谷だが、そう何度もチャンスを作らせるほど古豪のディフェンスは甘くはない。
「っしゃあ!今度は俺の番…」
「「「通すか!『ハリケーンアロー』!」」」
「うおおおお!?」
光宗、黒部、中井の三人が獅子谷の周囲をぐるぐると回ると、巨大な竜巻が彼を包む。
強風で宙に浮かばせられた獅子谷に追い打ちとばかりに彼のボールめがけて三人がスライディングアタックを仕掛けて吹き飛ばす。
「跳山!茂木!このまま前に行くぞ!」
「「おう!」」
「「「『ブーストグライダー』!」」」
獅子谷からボールを奪った黒部がチーム一小柄な跳山の身体を上空へ投げ飛ばす。
ボールを器用にも頭でキープした跳山を茂木が空中でキャッチし、さらに勢いをつけて投げ飛ばす。
すると跳山はきりもみ回転をしながら星之宮のディフェンスを搔い潜る。
「決めろ!豪炎寺!」
右サイドに位置する水瓶の裏に着陸した跳山は間髪入れずに少し後ろへセンタリング、そこにタイミングを合わせた豪炎寺が回転しながら跳躍する。
「『ファイア…トルネード』!」
炎を纏った一撃。
『ブーストグライダー』に翻弄されたディフェンス陣はシュートブロックに入れず、キーパーの魚勝が構える。
「『サラディンアーム』!うわぁっ!?」
どこからともなく表れた大量のイワシが魚勝の右腕に集まり巨大な腕を形成、シュートを抑え込むが勢いを殺せずボールごとゴールに押し込まれる。
『ゴォォォォォォォル!!!!!木戸川が誇る炎のストライカー、豪炎寺修也!!早くも一転を取り返しました!これで1対1!同点です!!』
ゴールを守りきれなかったことを謝る魚勝や、それを励ましたり悔しさを表すディフェンス達。
ミッドフィルダーの面々は如何にあの連携技を攻略するか話し合っており、乙女乃も射手や獅子谷と共に作戦を練っていた。
しかし彼女の胸中の思いは悔しさなどではなく、悦びだ。
(あれが生で見るファイアトルネード…今まで見た必殺技も十分超次元なのに、あの技は迫力が違う!撃っているのが豪炎寺だからなのかな?それとも原作でも主要な技だから?やばい笑いが止まらなさそう!こんなに楽しいのはやっぱり初めて!)
圧倒的、とまではいわないものの乙女乃は先のシュートから感じた気迫で自分より豪炎寺が上だと直感的に悟った。
普通なら自分より格上だと知ったらネガティブ施行に陥ってしまうのがほとんどのはずだが、彼女はまるで折れない。
どころかこの勝負を楽しみ、ある考えにまで至る。
あのシュートを止めたい、と。
前半は乙女乃の一点と豪炎寺の一点で同点のまま終了した。
星之宮側のほうがボールキープ率は高かったものの、『ハリケーンアロー』を突破することができずにいた。
対して木戸川は武方三兄弟へのマークを一人に絞り、代わりに豪炎寺と跳山に張り付くことで『ブーストグライダー』の使用を阻止させられており、武方達の単体シュートはシュートブロックとキーパーによって止められてしまう。
どうやってこの状況を打破するか、お互いのチームは悩んでいた。
「獅子谷。後半開始のキックオフ、俺に回してくれ。」
「あぁ?……策があんのか?」
「ああ。少なくとも流れは持っていけるはずだ。乙女乃もちょっと来てくれ」
星之宮のキャプテン、射手は同学年のライバル、獅子谷と期待のホープ、乙女乃にある作戦を伝える。
「なるほどな。てめーに合わせるのは癪だが乗ってやるぜ。」
「ああ、一点リードできれば何とかなるだろう。」
「ですね。インパクトがある分効果的かと。」
そして後半が始まる。
キックオフと同時に作戦通り、乙女乃から獅子谷へ、そしてバックパスで射手へと繋がる。
そしてすぐさま射手はシュート体勢に移った。
「『ソニックボウガン』!」
スピンをかけたボールを空中に固定し、両足でボールを挟み込んで前後にスライド。
さながら引き絞った弓のような一撃が一直線に木戸川ゴールへと迫る。
ディフェンダーの光宗と西垣の二人はシュートブロックが可能なため迎え撃つ体勢を取るが、それと同時にボールへと迫る二人の存在に気が付く。
「『ライオネルシャウトォォォォォ』!!」
「『真・あびせげり』!」
獅子谷が回し蹴りをするとボールは回転しながらその場にとどまる。
が、獅子谷の激しい咆哮に合わせて先程よりも威力を増して再び発射される。
さらに乙女乃が上空にボールを蹴り上げ踵落としを決める。
シュートにシュートを重ねるシュートチェイン。
その威力はもちろん通常の必殺技の何倍も強力であり、『ソニックボウガン』の速度も合わさって軟山に反応さえさせずにゴールに突き刺さった。
再び歓声をあげる星之宮チーム。
普段は仲の悪い射手と獅子谷も無言でハイタッチをしている。
その様子を見て豪炎寺は、その二人ではなく乙女乃のプレイに驚いていた。
(後半開始すぐにロングシュート、意表を突き心理的な負担をかけるなら最適な方法だ。だがさらに二度のシュートチェインをダメ押しで掛けるとは…。しかも最後に蹴ったのは乙女乃。普通なら女子は男子よりパワーが劣るだろうから獅子谷がとどめだろうと思ったが、あそこまで綺麗にあわせられるとは……)
木戸川ボールで再び試合再開。
スリートップの武方達が同時に攻め上がるが、今度はディフェンスはボールを所持している中央の勝以外の二人にマークをしていない。
「シュートブロックのためってことか!みたいな?」
「その通り!」
いつの間に戻ってきたのか正面に立ちふさがる乙女乃。
いくら血の気の多い勝でも、さっきまでのプレイと今の位置取りでは弟たちにはパスを出せない。
なら後ろの豪炎寺に回すか?
いや、それではダメだ。
今しがた自分でも言ったように星之宮の守備はシュートブロックのためのポジションを取っている。
つまりここで安易に豪炎寺に頼ってしまえばカウンターを決められてしまう。
(…上等っしょ!木戸川の真のエースストライカーはだれか教えてやるぜ!)
それならば自分が勝負に出るしかない。
そう決心した勝は勢いよく再び駆け出す。
豪炎寺に渡すと読んでブロックに入った乙女乃は虚を突かれて隙が生まれてしまう。
「『ムーンサルト』!」
「っ!ディフェンス!任せます!」
まるで新体操選手のような華麗な動きでボールとともに空中を舞う勝は見事に乙女乃を抜いて見せた。
乙女乃は焦り交じりでディフェンスに指示を出すと、自分は再び下がらずに豪炎寺へとマークにつく。
(ここで豪炎寺に張り付いておけば、バックパスは封じれる!三兄弟単独でなら先輩たちがなんとかできる!問題ない!)
「…俺を止めておけば点は入らないと思っているみたいだが、あまりうちのチームを舐めないでもらいたいな」
短い間で導き出した最適解を否定する豪炎寺の発言に、乙女乃はある可能性を考えてしまう。
そしてそれはまさに目の前で起こってしまった。
「努っ!!」
「おう!友!!」
「っしゃあ!」
「「「『トライアングルZ』!!!」」」
長男から三男へ、そして長男を踏み台にして飛び上がった次男が蹴りを入れる。
間髪入れずに兄と弟の手のひらに足をのせて、三角形を模した謎のポーズを取る三兄弟。
観客から見ればなんだあのポーズはと思うだろうが、星之宮のディフェンスはそんなものに意識を割けるほどの余裕はなかった。
「『シェイブカッター』!ぐあぁぁ!」
「『ハイドロカーテン』…!くっ!」
柵木と水瓶、二人のシュートブロックを突き破り、ゴールへ突き進むシュート。
しかし稼いだ時間は残されたキーパーの魚勝の準備には十分であった。
「『サラディンアーム』!!うぉぉぉ!?」
無数のイワシが集まって形成された巨大な腕が、シュートを包み込む、。
しかしその威力を完全には抑えられず、腕に風穴をあけて決まってしまう。
2-2 試合は再び振出しに戻った。
「すいませんでしたっっっ!!無効を侮った結果、先輩方に負担かけすぎて…」
「いや、舐めてたのは俺らも同じだからな…」
「止められなかったのはお前ひとりのミスじゃない。気負いすぎるな。」
ぺこぺこと頭を下げて謝罪する乙女乃を窘める柵木と水瓶。
この失点は彼女のまさかこの時期に『トライアングルZ』なんてないだろうという先入観から来たミスであり、もしかしたら防げた一点であるという可能性が彼女の罪悪感を引き起こした。
しかし二人からしたら、後輩からの信頼に応えられず、豪炎寺のみに注意を向けていたのも事実なので彼女だけの問題ではない。
「今は後悔よりもこの後どうするかだろう。三兄弟にマークをつけるのは当然……と言いたいが、豪炎寺をどうするか、になるな。」
「それなら私がセンターバックに下がります。射手先輩にFW務めてもらって、樫御先輩に上がってもらいましょう?」
「けどそれであの連携ブロック崩せるのか?正直きついと思うが…」
「いえ、自分で言うのもなんですけど今『ハリケーンアロー』を突破できる自信がないです。それなら射手先輩のロングシュートのほうがまだ期待できますので。」
「それもそうだな。守備の数増やしてカウンター決めるのがいいか…」
乙女乃の提案通り、射手、樫御、乙女乃のポジションを交代。
そして星之宮ボールで試合再開。
獅子谷から射手、そして樫御へとボールが渡り、攻め上がる。
だが再び『ハリケーンアロー』により樫御が止められ、発動メンバーの一人である黒部がボールを奪う。
MFの鶴賀と二面がブロックに入ろうとするが、それよりも早く黒部がボールごと跳山を投げ飛ばし、茂木が空中でさらに勢いをつけて投げる。
「「「『ブーストグライダー』!」」」
「行けっ!勝!」
二度目の強力な連携ドリブル。
着地寸前を狙ってDFの羊家がタックルを仕掛けるが、跳山は着地する前にヘディングで勝へとボールをつなげた。
「今です!!次男と三男にマーク!」
乙女乃の号令と同時に七美と水瓶が友に、羊家と柵木が努に張り付く。
『トライアングルZ』を封じるための陣形、しかも正面にはこの場面を考えていた乙女乃。
『ムーンサルト』はさっき見せた。
唯一単独で撃てる『グレネードショット』じゃあ力不足だろう。
ならば、信頼するアイツに繋げよう。
「『グレネードショット』!豪炎寺!」
正面ではなく、後ろ、正しくは自軍側の斜め上に向けて必殺シュートを放つ勝。
上空へ打ち上げられるボール目掛けて飛び上がるのは、木戸川のエース、豪炎寺。
「『ファイア…トルネード』っ!?」
仲間からの信頼が込められたシュートに重ねて炎を纏いながら自分の必殺技を叩き込もうとする彼の目の前に映ったのは、深紅の髪の少女だった。
「『リゲルオリオン』!!」
豪炎寺の蹴りに合わせるように反対側から打ち込まれたオリオンの左足。
灼熱の炎と星の煌めきが拮抗する。
ほんの数秒、だがその場にいた者たちからしたら何時間にも感じるほどの力のぶつかり合い。
押し負けたのは豪炎寺のほうだった。
「くっ…!」
「いっけぇぇぇ!」
二人とも空中から落下しながら木戸川ゴールへと突き進むシュートを見る。
しかしそのシュートを前に立ちはだかる人物が一人。
「『スピニングカット』!!」
西垣守、彼こそが今このグラウンドの中で最初に動けたものである。
豪炎寺を破ったということで乙女乃のことを信じすぎてしまった星之宮。
豪炎寺がプレーではなくシュートで負かされたことで驚愕し、それ故に動きが鈍った木戸川。
しかし西垣のアメリカでのディフェンス経験の長さが予想外の状況から彼をいち早く立ち直らせた。
青い衝撃波がシュートの威力を下げさせる。
しかし西垣は単独でこれを止められるとは思っていない。
本当の狙いは自分たちの守護神を立ち直らせる時間稼ぎ。
「軟山先輩!あれ頼みますっっ!!」
「!!」
衝撃波を突き破り西垣を吹き飛ばすシュート。
それを見つめる軟山の表情が、後輩からの願いを受けて一段と引き締まる。
「うおおおおお!!『カウンターストライク』!!」
右の拳に青いエネルギーが集まり、勢いよくパンチをボールへとかます。
押され気味の軟山であったが、踏ん張りながらシュートを跳ね返す。
そしてそのままボールは青いエネルギーを纏ったまま、星之宮陣地へと跳ね返っていく。
「っ!?しまった!」
名前通りのカウンター。
宙に浮いたままの自分では対応はできない。
両サイドのDFは三兄弟の次男と三男にマークしたまま。
このままマークにつくのが正解か、それとも止めに行くべきか。
彼らの取った行動は、「マークを続ける」であった。
『リゲルオリオン』を跳ね返したとはいえ、キーパーのパンチング程度なら魚勝ひとりでなんとかなる。
乙女乃が動けないのと同じように、豪炎寺もいまだに空中。
それならばこの二人を止めておくのがいいはずだ。
確かに普通ならそう考えるだろう。
しかしそのシュートへ向かって一人走り込む男がいた。
「『グレネード…ショット』っ!」
三兄弟の長男、武方勝である。
ただ一人地上でフリーだった彼が、キーパーからのカウンターパンチにチェインを重ねてきたのだ。
「やらせるか!『サラディン…』うおおお!?」
キーパー・魚勝も対抗して必殺技を使おうとするが、向こうのゴールからダイレクトで飛んできたボールくらいなら必殺技なしで止められると考えていた彼の技では、勝がチェイン↓シュートの速さに対応しきれなかった。
2-3
ゴールネットが揺れると同時に試合終了のホイッスルが鳴った。
勝者、木戸川清修
文才をください
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腐女子、勧誘される
多分、青ざめた表情っていうのは今の私みたいな顔のことを言うんだろう。
この先の人生、私の願ったように進んだとしたら波乱万丈になることは間違いない。
けど、そうだとしても、私の場合は原作知識があるから前もって身構えることはできる。
だから、今日みたいに、今日以上に「肝が冷える」ことはこの先ないかもしれない。
「乙女乃スピカ君、君の才能を見込んでの申し出だ。私の元でサッカーをする気はないかね?」
いやです(鋼の意思)
あ…ありのまま今起こったことを話すぜ!
全国トーナメント一回戦で木戸川に敗北して、悔しさを感じながらも帰る準備を終えて出発っていう時に少年サッカー協会副会長を務める『だいたいすべての元凶』こと影山零治からサッカー協会の応接室に呼ばれていきなり勧誘を受けていた。
な…何を言ってるのかわからないと思うが(いや、わかる(反語))私も何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
鉄骨落としだとかキンダンノワザだとかそんなチャチなもんじゃねぇ…
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
というわけでまさかの影山教への入信勧誘を受けました。
なんでや…
まあ思い当たる節がないわけではないんだよなあ。
本戦始まって、FFスタジアムで開会式行われた後に実はサッカー雑誌用の個別インタビューに選ばれてたり(会ってはいないけど、豪炎寺や鬼道なんかも同じく取材を受けてた)、それ以前にも二つ名が知らないうちに広まってたし。
極めつけは木戸川戦で豪炎寺のファイアトルネードを撃ち返したことが原因だろうね。
原作だと豪炎寺を脅威に感じて夕香ちゃんを事故に遭わせてた。
その豪炎寺以上の力を持っていることは否が応でもわかるだろう。
基本的には迷いがないしね、この人。
「……なんで私なんですか?私はリトル時代の経験もないし、さっきの試合も負けちゃいましたよ。39年間無敗を誇る帝国学園の監督のお眼鏡に適うような選手じゃないと思うんですが…」
「ふむ……それでは一つずつ説明をしていこうか。まずリトルの経験の有無だが、これは関係ない。私は実力で選手を判断したいと思っている。『名門帝国だから優勝して当然の選手』ではなく『優勝して当然の選手がいるが故の帝国』、と言えば伝わるかな?それに何より今まで公式試合の記録がない無名の選手がいきなりフットボールフロンティアという伝統的な大会でその名を広めたんだ。私は君みたいな才能のある選手をより良い環境で育て上げたいと思っている。」
とりあえず謙虚に下手に出て聞いてみたけど、まあそうだよねえ。
脚力ゴリラだし。
自分で言うのもなんだけどやっぱり金の卵なんか私。
「そして次の点だが、もし君が私の用意した環境でサッカーをしてくれるのであれば、君の所属するチームは帝国ではない。」
……は?
「というよりかは君は帝国サッカー部には入部できないのだよ。私が帝国学園サッカー部を設立してから立てた方針の一つでサッカー部には女子生徒がいないのでね。だが少し前に君と同じく非常に優秀な才能を持った少女を発見し、彼女のために帝国とは別のもう一つのチームを創設した。こちらは男女混合だからぜひとも君に入ってもらいたい。」
……影山の下にいた女子選手?真・帝国の小鳥遊ちゃんか?いやでも真・帝国は不動含めて二流呼ばわりされてたし……まじで誰のことだ?
頭の中の記憶を探っているとき、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「来たか、入れ。乙女乃君、同じ女子同士話が弾むだろうと思って、件の彼女を呼んでおいた。仲良くするといい。自己紹介を。」
「はい、総帥。初めまして、亜風炉照美です。よろしくね、乙女乃さん。」
「………………はえ?」
まさかのTSアフロディのこととは思ってもいませんでしたよええおかげで一瞬気を失いかけました。
いや…まじでええ?(困惑)どうなってんやこの世界…あ、今更かHAHAHA。
え、てかまじでリアルアフロディ可愛すぎんか?なんだそのサラサラの髪は!まるでウン百万する絹のようじゃないか!なんだその真っ白な肌の色は!視覚だけでサラサラ感分かるぞ!
こんな美少女が本来は男の娘だったなんて……許せる!!
「……?ボクの顔になにかついているかい?」
「あ、いえ、とてもかわいい顔をしているのでつい……スミマセン」
やべ、あまりにもかわいいからじろじろ見ちゃった。
女という生き物は視線に敏感だからね。
「私は一度席を外すとしよう。亜風炉、お前が練習の様子などを伝えてやれ。乙女乃くんは彼女の話を聞いて考えるといい。結論が出たら教えてくれたまえ。」
影山さん、なんて空気の読める大人なんだ…
なんて冗談は置いといてマジでどうしよか。
正直影山の部下にはなりたくない。
どうあがいても獄中生活まっしぐらか身体ぶっ壊れるかのどっちかはほぼ確実だからだ。
女の子アフロディのチームはつまりは世宇子、ドーピングで強化された一期のラスボス。
現実世界だったら間違いなく逮捕されてサッカーなんてさせてもらえないだろう。
まあ超次元時空なら大丈夫かもしれんが、私はドーピングとかは嫌だ。
かといって影山の誘いを断った場合は間違いなく物理的なやり方で排除されるだろう。
オルフェウスメンバーやかつて円堂大介が率いたイナズマイレブンのように、私本人を消しにかかるか。
あるいは夕香ちゃんや真・帝国のときの佐久間と源田みたいに近しい人間に危害を加えて、揺さぶってくるか。
つまりは影山に目をつけられてしまった時点で人生ハードモードになってしまうんだよ。笑えねぇ。
「…そんなに悩むことかな?総帥の元に来れば恵まれた環境でサッカーができるんだよ?君もボクと同じサッカー選手なら行きたいって思うはずじゃないかな?」
「うーん……そうなんだけどね…影山さんの方針は私には合わない気がするというか……」
ハッとした。
初対面のアフロディからもわかるレベルで悩んでしまっていたらしい。
それだけならともかく、影山に心酔してる彼女の前で敵対発言ともとれるようなことを言ってしまった。
「ごめん!今のは聞かなかったことにして…」
「いや、乙女乃くん。それなら君はやはり
いきなり、彼女の眼が真剣になった。
敵意や怒り、そういう感情ではなくて『警告』。
なんだ……なにが彼女に引っかかった?
私はそんな変なことを言ったか?
「……急にどうしたの?私なんか変なこと言ったかな?」
「いや、変なことでは言ってないよ。ただ私はアドバイスしただけだよ、君は
「……どういうこと?言ってることがわからないんだけど」
「隠さなくてもいいよ、君は『私』と同じ転生者なんだろう?」
「っ!!……そういうことね。」
なるほど、まさか同じ境遇の人がいるとは思わなかった。
それでこの子からしたら『神のアクア』の犠牲者を増やしたくないから、いきなりこんなことが言えるってわけね。
確かに原作だと二期で雷門に加入する前はナルシストだったもんね。
こんな他人の事を心配できるキャラじゃないもんな。
「ちなみに、どこで気づいたの?」
「気づいたのはついさっきだよ。いくら帝国によくない噂があるにしても、悩み具合がおかしいと思ったからね。うちのチームメンバーもさっき言ったみたいに環境と力に目がくらんで加入したからさ。」
「なるほどね。それで乗り気じゃないからおかしいかも?って感じか。」
「うん、あとは君は元の私とは違って原作に絡まない上、出てくるのは世界編からだからさ。雑誌やFF参加のときはあれ?くらいだったけど、影山がスカウトしようとしたときにまさかと思ったんだよ。それで影山に頼んで君と話す場を作らせてもらったんだ。」
た、助かる~~~~~
私一人だとイレギュラー起きたときに対策できないみたいなこととか逆に起こさなくて済むイベント発生させないとかありそうだもんなぁ。
具体的に言えばダンペラ。
シナリオ的に見たら感動モノなんだけどメンバーギリギリでできた裏ボス的存在だからジェネシスで完結できるならそれに越したことないよね。
ジェミニ初戦で抜けたメンバーはともかく、染岡さんとか栗松くらいはどうにかできると思う。
ま、希望的観測に過ぎないんですけど。
「ただ、君もわかっているだろうけど影山に敵対するのは危険な行為だ。おそらく周りにも被害が及びかねない。私だって助言を出したり情報共有はできるけど、影山の監視の目がある限り実質不可能に近い。それでもやれるのかい?」
「ん~……でも実際覚悟決めるしかないよ。影山に出会っちゃった時点で逃げの手段考えてたからさ。私は私のサッカーをしたい。そのためにも影山のやり方には従わないよ。」
「……そうだね。私もそれがいいと思うよ。君はこれから円堂守たちと関わっていくんだろう?」
「ん?もちろん。せっかくこの世界で生きていられんだしね。」
「ふふっ、やっぱりそうだよね。それならそのうち一緒にサッカーすることもあるかもね。」
「確かに。その時は手加減しないよ?照美ちゃん?」
「……!ああ、もちろん。逆に手加減させないでよ?スピカちゃん」
初対面、だけどまるで昔からの仲のような感じ。
そんな雰囲気で私とアフロディ……いや、照美ちゃんとの会話は〆られた。
ついでに連絡先も交換した。クソ嬉しい。家宝にするわ。
あと、影山からの誘いは丁重に断った。
あたりまえだよなぁ?
影山零治は困惑していた。
彼をよく知らない人物からしたら明らかに困惑している様子ではないため気にも留めないような変化だが、彼をよく知る人物からしたら非常に珍しいことである。
何日、何か月、何年も先の事を計画し、その通りに味方も敵も駒のように利用し、意にそぐわないことが起きたら始末する。
さながらチェスのような機械的にすら見える人生計画。
そんな彼が動揺、困惑を浮かべるなど非常に稀なことであった。
「引き続き奴を探せ。捜索範囲を東北まで拡大しろ。もちろん奴の住まいの周辺の人員をゼロにすることはないように。」
昨年のフットボールフロンティア本戦第一試合後、彼は木戸川清修相手に敗北した星之宮中の一年生にしてエースである少女、乙女乃スピカをスカウトしていた。
それも彼が監督として育て上げた帝国学園ではなく、秘密裏に作り上げた帝国を倒すためのチーム『世宇子』へと。
そもそも乙女乃をスカウトしたこと自体、側近たちからしてみれば異常な話だ。
勝利に強く執着しているこの男にとって、負けたチームの選手など才能があっても無価値のはずだからだ。
しかし負けたという事実を差し置いても彼女は手元に置いておきたい選手だった。
結論から言うとスカウトは失敗した。
『影山さんは完全な勝利を好みますよね。その象徴があの帝国学園の経歴。でも私は心技体全てを出して、魂がギリギリまですり減るような戦いをしたいんです。だからあなたのお誘いは嬉しいですけど、お断りさせていただきます。』
そう理由を告げ彼女は去っていった。
この時はまだ面白い少女、それくらいにしか感じなかった。
だがしかし同時にどこかシンパシーのようなものを感じてもいた。
自身の内のわずかな感情には気を止めず影山は、次の手を打った。
自分に従わないのであれば周りを排除していき、手中に収める。
影山零治の定石である。
しかし実際はどうだ。
何一つ事が上手く進展しないではないか。
なんと星之宮の選手たちが北海道に戻った直後、彼女は失踪したというのだ。
『武者修行してきます。心配しないで大丈夫だヨ♡』
この置手紙を残し、親や教師、チームメイトに一言も告げず、消息を絶った。
北海道にエージェントを送ったが全く情報が入らず、どこで暮らしているのか、何をしているのか、まるで分からずじまい。
唯一分かっているのが、星之宮を退学しているわけではないということ。
ならば周りに危害を加えれば、彼女をおびき寄せることができるか?
そう考えたものの一度たりとも成功はしなかった。
彼女の家族を事故に遭わせようとしたり、エージェントに暴行を加えさせようとするも、どこからともなくサッカーボールが飛んできてエージェントを気絶させる。
それを何度も繰り返され、これ以上の人員削減を防ぐため、周囲への攻撃は断念せざるをえなかった。
間違いなくボールを蹴ったのは乙女乃なのだろう。
だがすぐにまた行方をくらまし、発見にはいたらない。
他にもサッカー部がある中学にいきなり謎の少女が現れ1VS11で試合を行い、完敗するチームが多発するなど彼女の存在を匂わせる出来事があっても決して彼女にたどり着くことはできなかった。
つい最近も守備力だけなら帝国にも匹敵する東北の強豪、千羽山が敗れたという噂が伝わってきていた。
そして影山は今になって彼女の恐ろしさを感じ取った。
なぜ私が勝利に拘ることを知っているのか。
なぜここまで警戒していきなり姿をくらませたのか。
なぜ私の目的に気づいたのか。
補足しておくが、目的に気づかれたと確定しているわけではない。
しかし彼女の行動を顧みる限り、高い確率で気づいているのだろう。
そしてあの時感じ取ったシンパシーの意味に気づいた。
彼女の求めているものは私とは異なる。
だがその戦いへのあくなき渇望、戦闘欲は自分にも並ぶ狂気を秘めている、ということに。
目下の悩みは多数ある。
彼のかつての師、円堂大介の孫である円堂守率いる雷門中の快進撃。
同じくスカウトし損ねた、『炎のストライカー』こと雷門中のエース豪炎寺修也。
自身の最高傑作と認める『天才ゲームメイカー』鬼道有人からわずかに漂う離反の雰囲気。
しかしこれらすべて、『世宇子』と同じく影山が生み出したドーピング薬『神のアクア』の力があればすぐ始末できるもの。
だが、彼女だけは。
ひとりで世宇子を倒してもおかしくない。
その『恐怖』といえる感情が珍しく影山を焦らせていた。
何としても雷門と戦う前にあの娘を手中に置いておかねば、と。
亜風炉照美は困惑していた。
いつの間にか『イナズマイレブン』の世界に転生していた彼女は、原作のように諸悪の根源、影山零治の支配下に入れさせられ、世宇子中のキャプテンとして何十人もの選手を蹂躙させられてきた。
彼女は独りぼっちだった。
あの男のせいで家族とも友達とも引き離され、スポーツマンシップに反する行為をさせられ、圧倒的な力を使い他人を壊すよう命じられてきた。
だが彼女の心は死ぬことはなかった。
彼女もまたイナズマイレブンという作品が大好きだったから。
ゲーム画面でしか見れなかった憧れのキャラたちと本気の楽しいサッカーをできることを夢見ていた。
FF編が終われば、その願いを叶えられる。
その一心で彼女は本来ならあり得ないことに、『神のアクア』を使用することなく『神のアクア』を使用した状態の世宇子メンバーと同等以上の実力を身に着けた。
長年願い続けた夢のために。
そして、自分と同じ立場、もともとはこの世界の人間ではない、明るくてあっけらかんとして、それでいて星のような静かな優しさを持った不思議な親しみやすさがある友人と戦えることを望み、全力でぶつかるために。
だが実際はどうだ。
アフロディは乙女乃は原作と関わりを持つために、雷門に転入するんだろうと想像していた。
故に原作通り決勝戦で戦うことになるだろうと思っていた。
しかし彼女は雷門に転入することなく、約一年影山の目をくらまし続けながら失踪しているではないか。
上司である影山は、自分が彼女と連絡先を交換していることに気づいており、私の居場所を突き止めるよう指示してきたことがあったが、まじで連絡がとれなかったのだ。
そして迎えたフットボールフロンティア決勝戦。
やはりというか乙女乃はいない。
フィールドにも、観客席にも。
この世界で初めて出来た親友との勝負ができないことに不満、そして行方が知れないことに心配を抱きながらも、アフロディ、いや照美は意識を切り替える。
今はこの試合を、伝説のゴールキーパー、円堂守との戦いに全力を尽くそう、と。
主人公、まさかの失踪。
TSてるみんが第二の転生者
やぶのてんや先生ばりの爆速展開すまんぬ。
初期案では星之宮と帝国の試合とか書こうとしたけど、あってもなくてもいいかなとか思ったし、それやると主人公強化が難しくなるのでカットしました。
帝国メンバー見て「ア!ゴジョウサンオルヤンケ!」みたいなことをやれなかったのは心残り。
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腐女子、教祖と出会う
それはそうといきなりエイリア編です。
乙女乃スピカが失踪してから一年後
今年のフットボールフロンティアは無名のチーム同士が決勝戦で対決した。
方や実力こそ低かったものの、驚異的な成長速度で野生や帝国、木戸川といった強豪を不屈の闘志で突破してきた円堂守率いる雷門中。
方や帝国を作り上げた影山零治が新たに作った、対戦するチーム全員を負傷させ圧倒的な点差で勝ちすすんだ亜風炉照美率いる世宇子中。
人間の力を神ともいえるレベルにまで引き上げる劇薬、『神のアクア』を使用する世宇子に雷門中は何度も傷みつけられるが、円堂が伝説の技『マジン・ザ・ハンド』を土壇場で完成させて世宇子からゴールを死守。
円堂の覚醒を皮切りに雷門の反撃が開始、逆に自分たちの力を絶対的なものだと信じていた世宇子のメンバーは一気に崩れてしまった。
結果、雷門が4-3で逆転勝利、40年前までに無敗を貫いた伝説のイナズマイレブンの再来と話題になった。
だがその一週間後、事件は唐突に起こった。
東京各地の学校が謎の集団によって立て続けに破壊されていった。
『エイリア学園』
遠き星・エイリアより飛来した侵略者。
犯人たちはそう名乗り、この星で勝者を決める手段である『サッカー』を利用。
敗北した学校を未知の黒いボールで破壊して、同じく未知の技術でその場から忽然と姿を消す。
かの雷門中もサッカー部員たちが不在の際に襲撃を受け崩壊。
その後他校を守るため、エイリア学園からの刺客『ジェミニストーム』と対決するものの一点も取れずに大差で敗北。
さらにうち五名が入院するほどの大怪我をして離脱を余儀なくされた。
しかし残った雷門のメンバーは一度の敗北では挫けなかった。
エイリア学園に対抗するため、日本各地の凄腕の選手たちを集め『地上最強イレブン』を結成するために活動し始めた。
最初の行先、奈良では日本の総理大臣、財前宗助がアメリカ大統領との式典の最中に誘拐され、ジェミニストームによりテレビ局がジャック、宣戦布告を仕掛けられる。
雷門イレブンは総理の護衛を務めるチーム『SPフィクサーズ』のキャプテンで総理の娘でもある財前塔子を新たにチームに加えて戦いを挑むものの、結果は以前よりも点差を広げられて二度目の敗北。
負傷者こそおらず何故か財前総理も解放されていたが、新監督・吉良瞳子の指示でエースストライカーの豪炎寺修也がチームから離脱することになった。
そして現在、一行は北海道へと向かっていた。
その目的は北海道にある学校『白恋中』のストライカー・吹雪士郎をスカウトするため。
チーム自体は弱小でFFにも出場できなかったものの、彼一人の実力は一試合で10点近く叩き出すほど凄まじく、そもそも白恋がFFに出られなかったのも吹雪の能力を警戒した影山の陰謀によるものである。
「豪炎寺君がいない今、雷門には決定力が不足しているわ。エイリアを倒すためにも彼の力は必要不可欠です。」
「…すみません、監督。決定力、という言葉で思い出したのですが、俺にも一人だけ心当たりがある選手が北海道にいます。」
瞳子が納得のいってなさそうなメンバーに説明しているとき、司令塔である鬼道有人が彼女の言葉を遮って提案を出す。
「お兄ちゃん、それ本当?」
「ああ、俺も直接戦ったことはないが映像で見た奴のプレーは俺や豪炎寺を上回っているのは確かだ。技術の点で言えばアフロディと同格だろう。それこそ以前に影山がスカウトしようとしたほどにな。」
「影山が…!?」
一選手として高い自信を持つ鬼道が自分よりも上だと言い切れる選手。
数日前に自分たちを一蹴するほどの力を示したアフロディと並ぶかもしれない選手。
そんな選手が加わってくれれば心強いと思う反面、チームの支柱だった豪炎寺の離脱ゆえに簡単に受け入れられない気持ちも吹雪に対して同様にあった。
ただ一人、サッカーバカのキャプテンだけは違ったが。
「そんなすっげー奴がいたのか!フットボールフロンティアにも出てたのか?」
「いや、出場したのは去年だけだ。木戸川相手に一回戦で敗北したがあれはチームの実力が低かったのが原因だな。ただやつが本気で挑んでいたら帝国と決勝で当たっていただろう。」
「へぇ!……あれ?じゃあ去年は出てなかったのか?」
「それが……どうやら失踪したらしい。」
「え!?」
「理由などは一切不明だが去年のFF終了後にいなくなったそうだ。本人が置手紙を残したり、定期的に健在報告をしていたから事件とまではならなかったらしいが…」
「そんな居場所もわからないやつを探す暇なんてあるのかよ!」
鬼道の言葉にかみついてきたのは、豪炎寺とともに雷門のツートップを務めてきた染岡竜吾である。
誰よりも彼の離脱を認められない染岡にとって、吹雪士郎だろうが乙女乃スピカだろうが自分と並んでプレーすることを認めることはできない状態だ。
だが一方で現在チームの方針を決めている瞳子は鬼道の提案に賛成した。
「わかりました、鬼道君の意見を取り入れるわ。響木さんに連絡して情報を集めてもらうことにしましょう。ただ最優先は吹雪君のほうです。先に白恋中に向かいます。」
一行は改めて雪原目指して進んでいった。
「や、遅かったね、雷門中御一行さん。」
数日かけて白恋へと向かう雪原を超えて目的地へと辿り着いたイナズマキャラバン。
そこで円堂たちが目にしたのは、サッカーグラウンドで息を切らしている11人の男女、そしてそれとは対照的に平然としている一人の少女。
コート外のスコアボードには20対0となっている。
つまりはこの少女一人で1チーム、恐らくは白恋イレブンを下したのだという光景。
着いて早々に異様な光景を目にして雷門の面々は何も言えなくなっていた。
「……あなたが乙女乃スピカさんね?」
「そうですよ~。そちらがここ数日私の事探してるって聞いたので、先に回り込んで待ってたんですよ。」
「…これはどういうことかしら?」
「あ~、皆さん待っている間暇だったので、白恋中のサッカー部員たちと試合してたんですよ。ただ吹雪士郎君は不在だったんですけどね~」
「う~、まさかこんなコテンパンに倒されるなんて思ってもいなかったっぺ…」
「僕ら弱小でも一人相手だったら勝てるかなって思ったのに…」
「やっぱり全国クラスの選手は強いずら。」
悔しそうな顔を浮かべる白恋中の面々。
その様子を見てこの状況を作ったのが、あのか弱そうな少女であることを再認識して雷門イレブンは驚愕する。
しかしその中で二人、周りとは全く違う思いを抱いていた。
「すっっっげーな乙女乃!お前とってもサッカー上手いんだな!俺、お前と一緒にサッカーやりたいよ!」
「アタシもだよ!同じ女子として負けられない!」
やはりというかサッカーバカ円堂と、彼と似た者同士である女子選手の塔子である。
二人とも今すぐに試合をしたいという目をしていたが、瞳子は吹雪が不在だからと試合を許可しようとはしなかった。
ちょうどその時、吹雪士郎がやってきてまたもや驚く雷門イレブン。
彼らが捜していた人物は、ついさっきまで一緒にキャラバンに乗っていたマフラーの少年だったからだ。
改めてエイリア学園との戦いに協力してもらいたい、そのために試合をして二人の実力を見せてもらいたいと乙女乃と吹雪に申し出る瞳子。
二人ともそれを快諾して、雷門と白恋の試合が始まった。
雷門キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
どうも乙女乃スピカです。
歓喜しております。
ようやく雷門に合流できたわ。
ここまで長かった…ひたすら自然を相手に武者修行するだけだったからなぁ。
でもそれするか、ほかのチーム一人でボコすしかやれることなかったしなぁ。
影山に見つからないようひたすら特訓してたもんね。
ある時は猛吹雪の雪山をドリブルしたり。
ある時は影山の部下を気づかれずにぶちのめすために市街地の屋根パルクールしたり。
ある時は対人戦したいからって適当なチームにワンサイドゲームしたり。
…うん、よく居場所つかまれなかったな私!
戦ったことないからまだわからんけど、ぶっちゃけイプシロンくらいなら互角で戦えそうなんだよなぁ。
自信過剰かもしれないけどね。
というわけで長い苦節を経て教祖もとい主人公、円堂守に会えたんだけど…
うーん、あんま歓迎ムードじゃない?
うん、染岡さんとかがそういう目を向けるのは分かるよ。
豪炎寺抜けた直後だし、吹雪に向けてた感情がこっちに向くのもまだ分かりますねてぇてぇんだよなこれが(限界スレスレ)。
ただ風丸とか鬼道までそんな怪しいやつ見る目しないでよ!
あれか!白恋ボコボコにしてしまったからか!?
まあ時期が時期だしね。
負傷させてはいないけどエイリアと同じことしてるし。世知辛い。
まあなんやかんやあって原作通り雷門と白恋の練習試合はっじまっるよー。
ちなみに私は白恋側です。
なんでや!って言いたいとこだけど吹雪以外のメンバーが私相手にするのが嫌なんだとさ。
しかも追加で日本一のチームだししかたないね。
というわけでフォーメーションはこんな感じ。
雷門フォーメーション
―――――染岡―――――
―風丸――――――目金―
―――鬼道―一之瀬―――
―栗松――――――土門―
―――壁山――塔子―――
―――――円堂―――――
白恋フォーメーション
――乙女乃――喜多海――
―居屋――氷上――空野―
―――――荒谷―――――
―目深――――――雪野―
―――吹雪――押矢―――
―――――函田―――――
本来なら吹雪のポジションに合わせてFWとDFを切り替えている真都路ちゃんがベンチに入り、私がFWとして参加する。
対して雷門は豪炎寺離脱で現在10人。
そのため雷門の同じみ『ベーシック』のフォーメーションを染岡さんのワントップにした形だ。
『さあ始まりました、雷門中対白恋中!!実況はお馴染み角馬圭太が北の大地よりお送りいたします!』
あ、生角馬実況じゃん。
アニメだと沖縄まで自転車で来たらしいけどまさかあの雪原も自転車で越えてないよね…ね?
それはさておき、鬼道から染岡へのパスで試合開始。
「ふざけてんじゃねぇ!どけぇ!」
めっちゃキレてるやんけこっわ。
まあエースストライカーって期待されてた吹雪がまさかのDFとしてスタートだからな、舐められてると思っても仕方ない。
怒りを込めたドリブルで白恋メンバーを次々と抜いていく染岡さん。
ちなみに私は普通に避けた(いつもの)。
とりあえずね、吹雪君の実力みたいだろうからね、お先にどうぞということで。
「そういう強引なプレイ、嫌いじゃないよ。『アイスグランド』!」
はい、凍結岡さん。ヒャド岡さんとも言う。
フィギュアスケートのような動きでジャンプした吹雪が着地の際に足元から氷柱を発生させ、染岡を凍らせる。
まあドラゴンタイプに氷技は抜群だし、ちかたないね(ポケモン感)。
吹雪が奪ったボールは荒谷に渡り、続けて喜多海にパスされるがそのボールを風丸がカット。
さて、それじゃあ行きますか!
「もらった!……なっ!?」
「ふふっ。」
カットした後、持ち前のスピードで駆け上がろうとした風丸の前に立ちふさがる私。
まさか逆サイドにいた奴がいきなり目の前にきたらそりゃ驚くだろう。
けどここで風丸は動揺せずに、少し後ろへ下がってボールをキープする。
「通させてもらう!『疾風ダッシュ』!」
自慢のスピードにさらに加速と左右への揺さぶりをかけて抜き去ろうとする風丸。
でもその技、私も使ったことあるんだよね。
その技は振れ幅以上の範囲を同時に防げばいいんだよ。
「『ホロロギウムカット』!」
左足を軸にして右足で足払いをかけるように回転。
時計の針のようなオーラを足に纏う。
風丸が私の間合いに入った一瞬、わずかに彼の動きが遅くなり代わりに私は一気に回転をかけボールをカットする。
「なに!?」
「今度は私の番だね!」
一気に前線へと上がる私。
視界にいるのは栗松、鬼道、壁山、塔子、円堂。
土門、一之瀬、目金は逆サイドだしマークを全部外すみたいなことはしないだろうから、4人警戒で十分だね。
「やらせないでやんす!」
「遅いね!」
「まだだ!『スピニングカット』!」
「甘い!『竜巻旋風V2』!」
まずは栗松のスライディング。
これをジャンプで回避。
続けて空中で無防備な私に対して、着地目掛けて鬼道の『スピニングカット』が繰り出されるが、滞空したままボールにスピンをかけて『竜巻旋風』を打ち相殺。
問題なく着地すると同時に再び走って鬼道を抜き去る。
「は、速いでやんす!」
「あの速度…ジェミニストーム以上か!?それになんて体幹だ…!」
このままシュートを撃てるけど、シュートブロック二枚は厳しいかも。
ならもう一人突破しておくか。
立ちふさがるのは塔子。
すでに必殺技のモーションに入っている。
「通すもんか!『ザ・タワー』!」
天高くそびえたつ巨塔。
その頂上から雷を落とそうとしてくる塔子。
しかし私は焦らずに必殺技の構えに入る。
右手に鮮やかな光を纏い、塔子を巻き込んで宇宙空間を展開。
「『サザンクロスカット』!」
まるで瞬間移動したかのように塔子を抜き去る。
それと同時に巨塔の根元から十字に爆発が起きて、塔子を吹き飛ばした。
本来は『ザ・ジェネシス』の技なんやけどなこれ。
一応ここで説明しよう!
私の特性は「星座」。
88星座をモチーフにした技を使いこなすことができるのだ!
私の十八番の『リゲルオリオン』はオリオン座、さっきのブロック技『ホロロギウムカット』は時計座でドリブル技『サザンクロスカット』は南十字座をもとにして作り上げた。
そういうわけなんだ、許してくれクイール、君の技をパクったことを許してくれクイール。
てかカット三連続ってやかましいな。
閑話休題。
残るは壁山と円堂。
無印主人公の神の手を持つ伝説のキーパー円堂と、この先もずっとスタメンディフェンダーとして欠けることなくその円堂を支え続けた壁山のコンビ。
相手にとって不足はない!
「いくよ!『リゲルオリオン…V2』!」
戦士のオーラを顕現し、その左足と重ね合わせて撃つ利き足ではない一撃。
利き足ではないという縛り故に威力が上がるという矛盾を抱えた必殺のシュートは確実に1年前より上がっている。
「うおおおお!『ザ・ウォール』!」
気合を込めて叫んだ壁山の背後にせり上がってきた巨大な壁。
シュートを通さないと意気込んだものの僅かの拮抗後、壁は崩壊した。
だけど彼の努力は決して無駄ではない。
後ろで上半身を捻った守護神の姿がそれを物語っていた。
「『マジン・ザ・ハンド』!」
心臓に注ぎ込まれたエネルギーを全身に巡らせて解放、背後に魔神のオーラを顕現させる。
魔神の右手と円堂の右手が同時にシュートとぶつかり、完全に防ぎ切った。
「すっげぇシュートだったぜ乙女乃!腕がビリビリするぜ!」
私の得意技が止められた。
『リゲルオリオン』しかないわけではないが、最初に編み出したオリジナルの、思い入れのある技が。
まだ主人公を破れるものではなかった。
けど
それが
途轍もなく嬉しい。
「私も嬉しいよ、円堂君!まさかいきなり最強の技『マジン・ザ・ハンド』で対抗してくれるなんてね!」
悔しいのは事実。
決められたらきっと嬉しかっただろう。
でも今は、目の前の主人公の壁が高く感じられる。
その感情が、私を強くしてくれる
進み続ける原動力になってくれる。
まだ強くなれるのが、たまらなく嬉しい。
試合はまだ始まったばかりだ。
こんな戦闘狂みたいなキャラになる予定はなかったんですけどね。
当初は外から見たら人見知りで奥ゆかしい女子、中身は限界オタクだったんですけどどーしてこーなった(白目)
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腐女子、風になる
シュートを防いだ円堂のスローインが逆サイドの土門、そして一之瀬へと繋がっていく。
やはり白恋の実力はお粗末なもので必殺技を使わせることすらなく突破されていく。
「よし!染岡…っ!?」
雪野を抜いた一之瀬が染岡へとパスを出そうとするが、そのパスは通らなかった。
吹雪が急接近してパスをカットしたのだ。
「なんて速さだ!」
「居屋君!」
吹雪からパスを出されたのはウィンタースポーツ用のゴーグルをつけた少年、居屋だがトラップに失敗しこぼれ球を栗松が拾う。
すぐに帽子をかぶった少年、目深がブロックしようとするが栗松はそのまま勢いに任せて加速する。
「『ダッシュアクセル』!」
必殺技で目深を吹き飛ばし喜ぶ栗松だがその目の前にいつの間にか乙女乃が回り込んでいた。
「うわわ!?」
「ほらほら、突破した直後に油断しちゃダメじゃん?」
揶揄うような口調で再び雷門陣営に切り込んでゆく乙女乃。
シュートブロックのために壁山と塔子が先程よりも下がっており、その分風丸、そして土門までもが止めにかかってきた。
吹雪と乙女乃以外のメンバーがそこまでではない分、二人に全力でぶつかるのがいいと考えたのだろう。
「『クイックドロウ』!」
「ここだね。」
「まだだ!『キラースライド』!」
「ほっと。」
居合のような構えから一瞬で加速してボールを奪おうとする風丸を最適なタイミングでターンすることで回避。
立て続けに繰り出された土門の連続スライディングをヒールリフトを利用して突破する。
どちらも習得自体は簡単な技で、それゆえ対策もとりやすい。
しかし持ち前のスピードを生かした通常より精度の高い風丸の『クイックドロウ』に、帝国一軍メンバーと遜色ない実力の土門の『キラースライド』を連続でかわすのは至難の技であり、それこそ世宇子やエイリアのようなごり押しで行くのが最適解のようなものである。
それを正攻法で突破した乙女乃の実力をベンチから瞳子は高く評価していた。
(スピードも技術も日本トップクラスとみて間違いないわね。ストライカーとしてはもちろんだけれども、それ以上に鬼道君のような司令塔、いえ、一之瀬君のようなテクニカルなプレイヤー寄りね。何よりも堅実なプレー…敵味方一人一人を冷静に分析して確実に一手一手を封じていく。引き入れられれば非常に強力な戦力になるわ。)
二人を突破し残るはキーパー円堂とディフェンス二名。
さっきよりも強力な布陣で守りを固めていく雷門。
「壁山!塔子!頼むぞ!」
「はいッス!」
「任せてよ!」
ボールを宙に浮かしシュート体勢に入る乙女乃。
その目線はしっかりとゴールを捉え、左足を振り下ろす。
「いくよ!…喜多海君!」
「なっ!?」
「ええ!?ボク!?」
なんとゴールのほうを見つつ土門が外れたことでフリーとなっていた逆サイドの喜多海へとパスを渡す乙女乃。
まさかのフェイントに意表を突かれてしまい、必殺技のモーションに入っていた壁山と塔子は喜多海のほうに対処できなくなる。
もっともパスを出された喜多海本人もまさか自分にパスがくるとは思ってなかったのだが。
「『フリーズショット』!」
「止める!『爆裂パンチ』!」
喜多海のシュートは地面を滑るように進みながら氷塊へとなっていき、ゴールへ突き進む。
『フリーズショット』は威力は低いものの、スピードがある上滑るためキャッチしづらいという性能がある。
しかし、円堂相手にはその程度の技は通じない。
目にも止まらない勢いで連続で繰り出されたパンチが氷を削り最後ははじき返す。
へへっと笑う円堂だが、直後鬼道から「油断するな!」と声が上がる。
なんと弾いたボールを乙女乃がカットしていたのだ。
「今度はこれでいくよ!『ツインベアインパクト』!」
右足で一撃、逆側から左足で一撃、最後に両足同時にキックを打ち込む。
蹴り出されたボールはまるで熊の親子のような勢いをもって突き進む。
「『ザ・ウォール』!うわぁ!」
「『ザ・タワー』!きゃああ!」
サイド出現する巨壁と巨塔。
しかしさっきのフェイントが原因で発動、解除、再発動を絶え間なくすることになり、一瞬発動が遅れてしまう。
その結果本来よりも威力が落ちて、あっけなく崩れてしまった。
「くっ!『ゴッドハンド』!」
円堂もまた『爆裂パンチ』を使ったことで態勢を十分に整えられておらず、『マジン・ザ・ハンド』では間に合わないと判断し、原点の技『ゴッドハンド』で対抗する。
右手から生み出された神の手がボールを受け止めようとするも、破られてしまった。
ついに白恋側が初得点、一歩リードする形となった。
「円堂!大丈夫か!?」
「ああ、平気だ風丸!それにしてもすっげぇシュートだったぜ!」
「シュートだけじゃない、攻守の技術や戦略も強力だ。フェイントとシュートブロックのライン回避に時間差での速攻、恐らくは円堂が『爆裂パンチ』を使うことまで予想していたんだろう。」
「彼女と白恋のメンバーは初対面だよね。にもかかわらずあそこまで連携をとれるなんて…」
「連携、というよりは利用だな。なにが弱くてなにが強みかを理解して勝つための筋道を立てている。どっちにしろ初対面でそれをやっている以上、天才的なことには変わらないがな。」
「全部あの子の手の上で踊らされているってことでヤンスか!?」
いままでのプレーを冷静に分析している鬼道ですら動揺を隠しきれていない。
一之瀬や栗松もキャラバンで鬼道の話を聞いたときにすごい選手だと思ってはいたものの、実際のプレーを目にすると桁違いだと感じてしまう。
そんななか風丸と染岡の二人は乙女乃、そして吹雪のほうを睨んでいた。
(宇宙人どころか、同年代の女子にもあっけなく負けてしまう……俺の持ち味で勝てないなんてどうしたら…)
(くそっ…いくらあいつらがすげぇ奴だからって豪炎寺の代わりはいねぇんだよ!)
ここで白恋側が選手とポジションを交代する。
MFの氷上と入れ替わりで女子選手の真都路がイン。
吹雪がFWの乙女乃の位置、乙女乃がMFの氷上の位置、真都路がDFの吹雪の位置へと移る。
雷門ボールで試合再開。
先程同様に鬼道から染岡へとボールが渡り、またもや吹雪へと突っ込む。
対抗心から同じ行動をとる染岡だが、吹雪のほうは違った。
「出番だよ……」
誰にも聞かれないくらい小さな声で呟き、マフラーに手をかけると彼を包むようにブリザードが発生して染岡を吹き飛ばす。
やがてその中から出てきたのは髪が逆立ち瞳はオレンジ色に輝いた吹雪士郎。
その表情は穏やかなものから獰猛な笑顔に変わっていた。
「この程度かよ!甘っちょろいやつらだぜ!」
口調も雰囲気も何もかもが別人のように豹変した吹雪。
そのプレーは凄まじく、一之瀬、鬼道、風丸、土門のディフェンスをすべて力押しだけで突破する。
さっきの華麗に舞うようなプレーとは真逆の強引なプレーはその体つきからは想像もできないほど力強い。
そのまま吹雪はボールを両足で挟んで回転、そのボールを中心に冷気を吸収していき巨大な氷塊と化す。
「吹き荒れろ!『エターナルブリザード』!」
氷塊となったボールに回し蹴りを叩き込む吹雪。
その勢いは途轍もなく、しかも打ち出されてからも冷気を纏い大きさと威力を増していく。
「はあああ!『ゴッドハンド』!」
再び『ゴッドハンド』を発動する円堂。
しかしシュートを受け止めた瞬間にオーラの手は凍り付き、砕け散る。
そしてボールはゴールネットを揺らした。
「いいかよく聞け。俺がエースストライカー、吹雪士郎だ!」
尊大に言い放ち自陣へと戻る吹雪。
吹雪のシュートを受けた手のしびれに笑みを浮かべる円堂。
試合開始直後とは真逆のプレイングに感嘆する鬼道やマネージャーたち。
悔しそうな顔で睨む染岡。
三者三様の反応を浮かべる中で瞳子の試合中断を促すホイッスルが鳴り響く。
しかし吹雪の事を認めたくない染岡はその指示を無視して吹雪に対してシュートを撃つ。
「お前に負けるわけにはいかねぇんだ!」
「やる気か!おもしれぇ!」
染岡のシュートをダイレクトで宙へ蹴り返す吹雪。
そのボールの落下地点目掛けて二人は同時に走り出し蹴り込む。
押し合いに競り勝ったのは吹雪のほうだった。
「その程度か。話にならねぇ。」
染岡の事を見下しながら、そう吐き捨てる吹雪。
さらにそのまま円堂目掛けて再度必殺シュートの構えに入る。
「『エターナルブリザード』!うぅぅらあぁぁ!」
猛吹雪を巻き起こしながら突き進むシュート。
円堂は体を捻って『マジン・ザ・ハンド』の構えを取り、壁山と塔子もシュートブロックのために行動する。
「よっと。なんでみんなそんなに喧嘩っ早いかなぁ。」
が、それよりも早く乙女乃が間に割り込みシュートを宙へ浮かしてトラップする。
再三の驚愕、この時点で吹雪より乙女乃のほうが格上であることが証明された。
自身のシュートが止められたことで今度は吹雪が対抗心を燃やすが、グラウンドに介入してきた瞳子によって完全に中止されたことで、初めて会った時の雰囲気へと戻る。
「吹雪君、乙女乃さん。あなたたち二人に正式にイナズマキャラバンへの参加を要請します。一緒に戦ってくれるわね?」
「もちろんですよ。彼らとなら思い切り楽しいサッカーができそうです。」
「私も同じくです!そのためにここに来たんですから!」
新戦力の参加、それを瞳子は新ストライカーの誕生と宣言するが染岡は歯ぎしりをしてどっかへ去って行ってしまった。
そして直後、ジェミニストームキャプテンのれーぜから白恋中への襲撃予告が来るのだった。
どうも、雷門に加入しました乙女乃スピカです。
試合の後は原作通りみんなでスノボーしてました。
ちなみに私はスノボー未経験なんだよなぁ。
まあ筋がいいから割とすぐできたんですけど(自画自賛)。
「そういえば乙女乃も北海道育ちなんだよな?どんな特訓してたらそんなスピードになったんだ?」
「え?雪山ドリブルとパルクールだけどやる?あまりお勧めはできないよ?」
円堂から特訓方法聞かれたから教えたらドン引きされたり(ちなみにお勧めできないのはガチ。初心者は遭難してもおかしくない)
「吹雪、俺と勝負しようぜ。」
エースストライカーの座をかけた染岡さんと吹雪の対決があったり(勝者は染岡さん)
なんやかんやあってジェミニ襲来当日の朝です。
私は朝のルーティンとして北ヶ峰で練習中、これやらないと落ち着かないんだよねー。
やっぱり一日でも練習抜くとなまってしまうって感じる。
私だけかな?違うよね?
「ん~、試合当日だしこれくらいで今日は切り上げるかなー。……ん?」
無理は禁物として白恋に戻ろうとしたとき、雷門メンバーが練習で使っていたスノボ―コースに青い人影を見つけた。
それがだれか気づいたときついため息を漏らしてしまう。
「マジかぁ……風丸かぁ…」
雷門の疾風ディフェンダー、またの名を腐女子の餌こと風丸一郎太。
こんな時間から練習してる時点でやっぱり彼はすでに鬱丸絶望太の片鱗を見せている。
彼はスノボー練習に否定的だったメンバーの中で最初に吹雪に賛成していた。
それは自分より速い人間への嫉妬からの行動。
「ここで放っておくのはしたくないけど……めんどいんだよなぁ、性格。」
いや、いい子なんだけどね?
ただ抱え込みやすいから非常にめんどくさいというかなんというか。
…まあ闇堕ちしないに越したことないし?ここはね、私がなんとかしますか。
「や、風丸君。おはよ。朝早くから練習?」
「あ、あぁ、乙女乃か。おはよう。そういうお前こそ。」
「スピカでいーよ。てか雷門に入ったときにみんなにそう頼んだのになんで円堂君と塔子ちゃんと音無ちゃんしか名前で呼んでくれないかな~?」
「いや、塔子もそうだけどお前も距離感が近いんだよ…」
星之宮にいた頃は最初に頼んで名前呼びにしてもらったから雷門でもそのテンションで行こうと思ったんだけど中々受け入れてもらえないなぁ、悲しみ。
「今日、襲撃予告日だよ。練習するのはいいけどさ、速めに切り上げないと本番きついよ。」
「ああ、忠告ありがとうな。でも俺はもう少しやっていきたいからさ…」
「そんなに吹雪君が羨ましい?」
「……っ!」
うん、知ってたけど図星か。
「彼、ストライカーとしてスカウトされたけどディフェンダーとしても優秀だもんね。スピード自慢って点からポジションが同じ風丸君からしたら意識せざるを得ないんでしょ?」
「……その通りだよ。俺はさ、元々サッカー部の助っ人って形で陸上部から転部したんだ。だからサッカーの経験は壁山や栗松と同じ…いや、あいつらよりも短いかもな。けど壁山はシュートブロックで円堂を支えて、栗松も『トリプルディフェンス』って連携技で円堂たちとゴールを守ってきて……なのに俺はディフェンスとしては全然活躍できなくて、だったらスピードを活かして守備と攻撃両方を支えようって思ったんだけど、世宇子にもエイリアにも通用しない……ついには攻守両方を完璧にこなせる吹雪が加入。……ははっ、俺って雷門にいる意味あるのかな…」
…まあ、気持ちは分からなくもない。自分の特技が通用しない相手が現れるのはギリギリ納得できるだろう。けどその相手に自分と同じ戦い方で勝てるやつが味方になったら?
そりゃあコンプレックス抱えるわな。
しかも私は画面越しに見てたことあるから初めましてではないけど、向こうからしたら初対面の相手にここまで相談するくらい追い詰められてて、さらにジェミニ以上に強いやつらがまだ何チームかあって…
うーん、闇堕ちが妥当に感じてしまう。
「なあ…乙女乃はさ、すぐに力が入る道具があったら使おうって思うか?」
「……それはドーピングって意味でとらえていいのかな?」
「ああ…世宇子のメンバーが使っていた『神のアクア』。エイリアから地球を守るためになら使ってもいいんじゃないのかな…」
「……地球を守るっていう大義名分があれば、確かにいいのかもしれないね。
でも、私は風丸君には使ってほしくないな。」
「…どうしてだ?」
「戻れなくなるからだよ。君は今の自分がチームにとって力不足だと思っていて、そんな自分が嫌だから強くなりたいって思っているんでしょ?そんな心で『神のアクア』なんてものに頼ったら、君はいよいよ君自身を好きになれなくなっちゃう。弱い自分を認められず強さだけを求めたら、君だけのサッカーができなくなる。君はかつての帝国学園や世宇子中みたいに他人を再起不能なまでに痛めつけるために、サッカーをしているの?」
「違う!俺はただ……円堂や、みんなの力に…」
「そうだよね。だったら君は君自身の力で何ができるかを考えよう?君だけができるサッカーでエイリアを倒そうよ。」
「俺のサッカー……通じるのかな、エイリアに。」
「…ここだけの話ね、私と照美ちゃん…あ、世宇子中のアフロディのことね。私とあの子、友達なんだ。」
「え!?」
「だからね、『神のアクア』や世宇子の他のメンバーのことも彼女伝手に聞いたことあるんだけど、実は彼女だけ唯一『神のアクア』を使ってないって知ってた?」
「……そういえば、あいつだけハーフタイムに何も飲んでなかった。」
「彼女は自分のプレーを見失いたくないから『神のアクア』を拒んだ。けど影山に目をつけられている以上、切り捨てられるわけにはいかなかった。だから自力で『神のアクア』を使用した選手と同等以上の実力を身に着けたの。私も似たようなもの。去年のFFで豪炎寺君がいた木戸川に負けて、そのあとに影山に目をつけられたんだけど断ったの。価値観の違いってやつでね。けど変に意地っ張りでさ、『スカウトは受けないけど、受け続けられるくらいの実力を持って影山を倒したい!』って思ったんだ。だから必死で練習した。だからさ、風丸君だって強くなれるんだよ。」
「……」
「吹雪君やほかの人を目標にしてもいい。けど焦って自分を見失わないで。風丸君の力を私は信じてるよ。」
「…………ははは!参ったな、初対面のやつにこんなに励まされるなんて。ありがとう、乙女乃。少しは気持ちが落ち着いたよ。」
よかったああああああ!!!
思いつく限りの言葉羅列したらなんとか鬱丸フラグ壊したぞ!見たかワレェ!
あ、でもイプシロンとかジェネシスとか出るたびにまた病み期に入るのかぁ(遠い目)
いやでもダンペラ戦やらずにすむなら全然構わない!
まじであのクソダサタイツ集団は見たくないんだ。
ごめん嘘、風丸だけは若干見たい気がしないでもない。(手のひらドリルスマッシャー)
「ふふっ、それならよかったよ。さっきよりいい顔してる。」
「ああ、それじゃあキャラバンに戻ろうぜ。」
「うん!…………ああ、そうだ。二つくらい風丸君にアドバイスあげるよ。」
「ん?アドバイス?」
「うん。一つ目、君は信頼を集まること、仲間との連携、特に後輩との連携はうまいはず。付き合いの長さってところもあるけど仲間からの信頼は絶対吹雪君よりも厚い。これはこの先もきっと同じ。二つ目、吹雪君は風になるのは上手だけど、『風』を駆使するって見方をすれば君のほうが格段に得意だよ。」
「……言ってることがさっぱりなんだが」
「ふふっ、少し考えてみてよ。私、人の素質見抜くの得意なんだ!」
教えられることは教えた。
あとは風丸次第だね。
ダンペラフラグは果たしてほんとに折れたのか
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腐女子VS翠嵐の侵略者
白恋上空を突如暗雲が覆い、グラウンドの中央に11人の男女が出現する。
エイリア学園第一の刺客・ジェミニストーム。
刺客、なんてたいそうな言い方ではあるが実際のところは控え選手の集まりというようなエイリア最弱のチーム。
エイリア石の力で身体能力、特にスピードは人間離れしているが、よくよく見るとパスは最短ルートを選ぶパターン化されたプレイング。
故に奈良での対決で二回目にも関わらず鬼道はその単調さを見抜いた。
今回は吹雪のスピード特訓を積んでいる。
それならばジェミニにも対応しやすいだろうね。
頭抹茶ソフトことレーゼは雷門が北海道にいる理由を問うが、円堂は白恋中に代わって戦うことを宣言。
レーゼもそれを了承し、両チームが準備を始める。
「吹雪君、君には前半ディフェンスに専念してもらいます。いいわね?」
雷門ベンチでは瞳子監督が今回の秘密兵器である吹雪を攻めではなく守りに回すことを宣言。
それに対してほかの面々は反発する。
「ちょっと待ってください、監督!吹雪のスピードを活かして点を取りに行くんじゃないのかよ!?」
「いや、監督の作戦のが正しいよ。君たちは吹雪君との特訓でスピードを上げたけれど、その自分たちのスピードとジェミニストームのスピードとのすり合わせは出来てないでしょ?吹雪君を攻めに回しちゃうと守備陣が対応できない可能性があるからね。技術力では君たちのほうが上なんでしょ?それなら前半時間かけて慣らしたほうが得策だよ。」
「なるほど…吹雪やシュートを撃たれる円堂に負担を集中させないためか…」
「それじゃあ乙女乃さんがフォワードとして出るでヤンスか?」
「いいえ、乙女乃さんにはミッドフィルダーとして出場してもらいます。今までの試合、ジェミニストームはレーゼの『アストロブレイク』以外の必殺技を使ってこなかったわ。あなたには相手の必殺技を分析してもらうわ。できるわね?」
「ええ、任されましたよ。」
「吹雪が攻撃に上がる必要はねぇ。俺が点を決めてやる。」
瞳子監督の指示に疑問を投げかける土門に私が丁寧に解説。
それを聞いてほかのメンバーも納得してくれた。
お願いですから監督、もう少しコミュニケーション取る努力をしてください。
指示の内容は間違ってないけど指示の出し方がダメなんです。
「よし!絶対やつらに勝って半田達に勝利の報告を届けてやろうぜ!」
円堂が手を前に出し、みんなが重ねていく。
円陣ってやつですね!
「やるぞ!今度こそエイリア学園との戦いを終わらせるんだ!」
「「「「おう!!」」」」
(終わら)ないです(無慈悲)
ほんとにまだ序盤中の序盤なんすよこれ…
すでに鬱展開の影がちらほら見えてますけどまじで。
雷門フォーメーション
―――――染岡―――――
一之瀬――――――乙女乃
―――鬼道――風丸―――
―土門――吹雪――栗松―
―――壁山――塔子―――
―――――円堂―――――
ジェミニストームフォーメーション
―リーム――――ディアム―
グリンゴ――レーゼ――イオ
―――――パンドラ――――
―ガニメデ――――カロン―
―――コラル――ギグ―――
―――――ゴルレオ――――
『さあ両チーム準備完了です!果たして運命はどちらに味方するのか!?一之瀬から染岡へのキックオフで試合開始です!』
ボールを持った染岡に続いて鬼道たちも駆け上がる。
不敵な笑みを浮かべていたレーゼだったが、すぐにその余裕は崩れ去った。
雷門のスピードが非常に速くなっている、それこそ自分たちに並び立つほどに。
油断大敵とはまさにこのこと。
動き自体は捉えられてはいるが、地球人(こいつらもだけど)を見下していた彼らにとって今の雷門は明らかに格上であることを察してしまった。
フォワードツートップのリームとディアムは動揺のため棒立ちのまま何もできず、少し遅れて仮面をつけた男・イオとヘルメットをつけた小柄な選手・グリンゴが襲い掛かるものの、染岡のボールさばきに翻弄され地面を転がってしまう。
そのすきに一之瀬へとパスを出すもののお団子ヘアーの女性・パンドラがこれをカット。
しかし彼女もまたパスを出す直前に鬼道にカットされる。
鬼道曰く前回の試合でパンドラはパスを出す方向へ舌なめずりをする癖があるらしく、それがばれた今彼女のパスは格好の餌食というわけだ。
再び染岡にボールが渡り、右足を振りかぶってシュートの構えに移る。
「喰らえ!『ドラゴンクラッシュ』!」
「くっ…『ブラックホール』!」
青い竜のエネルギーを帯びたシュートがゴールへと突き進む。
しかし巨漢のキーパー・ゴルレオは右手に黒い渦を発生させ、シュートを吸収、がっちりと捉えた。
必殺技を止められた染岡は悔しそうな顔をするが、ほかの面々はジェミニのスピードについていけてることに喜んでいる。
けど私は見逃さなかった。
ゴールを守ったゴルレオの顔に焦りが見えたことを。
彼もまた自分が必殺技を使わざるを得ない状況に追い込まれたことに動揺しているのだろう。
やっぱりこういうチームって……
「もろいんだよねぇ…」
私の呟きはだれにも聞かれずに宙へと消えてった。
ゴルレオのスローインから試合が再開、肥満体型のギグへとボールが渡る。
鬼道がそれを奪おうとするも、小柄な体系に似合わずパワーを活かしたタックルで鬼道を突破し、パンドラへとパスを出す。
風丸がブロックに入り彼女の口元に注意を払うが、今度は舌なめずりをせず右手にエネルギーを集める。
「『ワープドライブ』!」
「なに!?」
右手のエネルギーを手前に発散すると、彼女の身体とボールは出現した穴へと消えていき風丸の背後に再び現れる。
「イオ!」
「レーゼ様!」
パンドラからイオへのパスを彼は栗松のディフェンスに間に合われる前にダイレクトでレーゼへと繋ぐ。
最高速度で疾走するレーゼ。
雷門メンバーは目で追うのが精いっぱいだ。
ただ一人を除いて。
「『アイスグランド』!」
そう、吹雪だ。
フィギュアスケートの動きでレーゼを凍らせてボールを奪う。
やーい抹茶かき氷ー。
吹雪のロングパスを鬼道が受け取り、彼の前に眼帯をつけた細身の男・カロンが立ちはだかる。
「『イリュージョンボール』!」
「おせぇ!『フォトンフラッシュ』!」
ボールを三つに分裂させ、相手を惑わす鬼道の十八番。
しかしカロンはボールを気にも留めず空中で高速回転し、発光する。
まばゆい光に目をくらまされてる間にボールを奪い取ったカロンはグリンゴへパスを出すが、これも吹雪がカット。
今度は私へとパスを出し、私は染岡へとパスを飛ばす。
「今度こそ!『ドラゴン……』!」
「やらせん!『グラビティション』!」
再び右足を振りかぶりシュートを撃とうとする染岡だが、牙をむき出しにした大柄な男・ガニメデが両手を地面に叩きつける。
すると彼を中心に強力な重力波が発生し、染岡を地に伏せる。
ボールをカットしたガニメデが攻めあがろうとするものの、今度は一之瀬が立ちはだかる。
「ボールは貰うよ!『フレイムダンス』!」
逆さ踊りをする一之瀬の周囲に炎が発生し、ガニメデを包みこむ。
もだえ苦しんでいる間にボールをカットした一之瀬から私へとパスが渡る。
「これならどう?『リゲルオリオンV2』!」
戦士のオーラに合わせて叩き込む左足。
ゴール目掛けて進むシュートに対してゴルレオは再び『ブラックホール』を発動しようとするが、その間に一人の男が割り込んでくる。
「『アステロイドベルト』」
その人物はディフェンダーのコラル。
彼は自身の周囲に小さな隕石群を召喚してボールにぶつけることで威力を落とす。
おかげで余裕をもってゴルレオにブラックホールを使わされ、キャッチされてしまった。
と、同時に前半終了のホイッスルが鳴り響いた。
0対0、引き分けではあるが、私たちのほうが支配率は上だ。
同点、一点もとれなかったこの状態は本来なら焦りを見せるところだけど、今まで散々苦渋をなめさせられた相手に無失点という結果は雷門を大いに奮い立たせた。
「同点…けど流れは俺たちのほうに来ているな。」
「ああ、この調子なら勝てるはずだ!」
「乙女乃さん、ジェミニストームの特徴は掴めたかしら?」
「ええ、だいたいですけどね!」
「ほんとかスピカ!」
「うん、ディフェンス技はまだ微妙だけど『ブラックホール』と『ワープドライブ』に関してはね。」
私の分析にみんな興味を持って真剣な顔で聞き始めた。
恥ずいなこれ。
「まず『ブラックホール』だけど、
「威力がないってどういうことッスか?」
「いい?基本的にキーパー技のほとんどは自身の身体のエネルギーを放つことによってシュートの威力に対抗してるの。けどあの技は『ボールを引き寄せることに特化している』んだ。恐らくあのキーパーに瞬発力がないからだと思うんだけど、コース狙いを防ぐため、自身の一番欲しい位置にシュートを誘導するためだね。」
「つまり、あのキーパーはすべてのシュートを自分の腕力だけで受け切っているということか?」
「そういうこと、鬼道君。ただ初撃のドラゴンクラッシュのときにエネルギーを吸い取ってる感じもしたから多少は威力を落とす効果もあるだろうね。けど基本はあのキーパーの基礎能力だけだよ。」
「でもあいつは『イナズマブレイク』を止めたんだぜ?それを力押しで突破するなんて…」
「それなら大丈夫。染岡君なら破ることができる。」
確固たる自信を持って言い切る。
染岡さんなら、あいつから一点取れるって。
それを聞いた染岡の顔は一瞬驚いたものになるが、すぐに引き締まったものになる。
「……おう、任せろ!」
「次に『ワープドライブ』。これは間違いなく距離制限がある。なかったらボールを持った直後円堂君の後ろに出ればいいだけだもん。私の目算だと発動場所からだいたい11歩まで、5歩下がってちょうどいいって感じだね。」
「ほんとにそれでピッタリなんでヤンスか?」
「いや、試してみる価値はあるだろう。」
「ええ、その通りよ。吹雪君、後半からはフォワードでいってもらうわ。」
「はい、わかりました。」
お互いに後半への準備が完了した。
フォワードを吹雪と染岡のツートップにしてディフェンスを4人の雷門の基本陣形だ。
後半はジェミニボールからスタート、リームからディアムへのパスでスタートする。
吹雪は「士郎」から「アツヤ」のモードに変わり、ボールを奪おうと突進するが、ジェミニは最短ルートのパス回しでボールを回していく。
その程度の技術なら吹雪にすぐに取られそうなものだが、ジェミニは最短のパスルートに素早く駆け込むことでよりパスを短縮化して、目にも止まらない速さで攻めあがる。
フォワードのディアムがボールを受け取り、正面に風丸が待ち構えているのをみて右手にエネルギーを集める。
「『ワープドライブ』!」
(発動位置から目算11歩…ここから5歩くらい)「ここだぁ!」
「なに!?」
ディアムの姿が消えた直後に風丸は乙女乃の予想したようにその場から5歩下がり、ピンポイントでディアムの出現場所を探り当てた。
『ワープドライブ』はその性質上、相手に自分の位置がばれないがそれは裏を返せば相手の位置も入る直前の状況でしかわからない。
つまり出口で待ち構えられてたら対処できないんだ。
ボールを奪った風丸はそのまま前線に駆け上がっていく。
「通さない!」
「ボールヲヨコセ!」
「いや、通らせてもらう!『疾風ダッシュ』!」
パンドラとグリンゴがブロックを仕掛けるが、風丸は必殺技で二人抜きを成し遂げた。
ずいぶん吹っ切れた顔してるじゃんか。
メンタルケアの甲斐があったね。
突破した風丸はパスを出そうとするが、その視線の先の吹雪はカロンとギグにマークをされて動けない。
前半で唯一彼らのキャプテンに勝るスピードを見せたんだ。
マークは妥当だろう。
(くっ…吹雪には出せない…どうする?)
「風丸!染岡にパスだ!!」
「風丸君!染岡君を信じて!」
偶然にも私と吹雪の叫びが重なる。
風丸はハッとしたように意識を取り戻し、ボールを蹴る。
「いけっ!染岡!」
(乙女乃が教えてくれた活路を、風丸が繋いでくれたパスを、なによりも、大嫌いなアイツが託してくれた思いをここで無駄にするなんてできねぇ!)
「今度こそ、俺が決めてやる!これが俺の…………『ワイバーンクラッシュ』だ!!」
染岡が宙へボールを蹴ると、それに合わせて大地から翼が生えた青い竜が出現する。
ボールとともに天に昇ると再び染岡の足元に戻ってきて、蹴り込みを入れられる。
『ドラゴンクラッシュ』よりはるかに威力の上がったそのシュートはゴルレオ目掛けて突き進む。
ゴルレオは3度目の『ブラックホール』を発動。
なんとかして翼竜を吸い込もうとするもののそれは叶わず、彼の身体もろともボールはゴールへ押し込まれた。
雷門の初得点。
そして宇宙人相手にした初得点だ。
宇 宙 人 の 初 め て を 奪 っ た 男
なんか卑猥だな。
てか染岡さんが吹雪からの思いを受け取ってワイバーン誕生させたとか実質セッじゃん!
豪染もいいけどやっぱり吹染やね。てぇてぇ。
「風丸君もよく『ワープドライブ』攻略できたね!」
「ああ!乙女乃のおかげだ!」
「よーし!このまま勝つぞー!」
雷門側が盛り上がってる中、ジェミニには焦りの氷上が目に見えて浮かんできた。
再びジェミニボールで試合再開。
今度はリームからレーゼへと渡る。
そしてレーゼは一気に最高速度で動き出した。
「我々が!人間ごときに!負けてたまるかぁぁ!!」
もんのすごい形相で攻めあがるレーゼ。
鬼道、一之瀬、土門を必殺技を発動する隙すら与えず抜き去る。
「通さないッス!『ザ・ウォール』!」
「『ザ・タワー』!」
「邪魔だぁ!」
壁山と塔子の必殺技をシュートで粉砕。
弾きかえったボールを再びキープし、円堂のみが残る。
しかし、レーゼ一人ではない。
彼の後ろからディアムが追従、レーゼと同時にジャンプする。
「「『ユニバースブラスト』!」」
黒と緑のエネルギーをボールから解放すると宇宙空間が展開、さらに同時に踏みつけることでボールは宇宙空間をゴムのように引っ張りながら突き進む。
前回止められなかったレーゼ単体の『アストロブレイク』よりも威力の高い連携シュート。
しかもシュートブロック可能な味方は突破された直後。
まずい、円堂のアシストに間に合わない……!
「――――やらせるかぁぁぁぁぁ!!!」
「風丸!?」
なんと風丸がシュートの前に割り込んでくる。
ちょっと待て君シュートブロックできないやろ!
あれか!?お手軽タフネスブロックか!?それは入院ルートまっしぐらだからやめろ!
…いや、違う。
風丸は左足を軸に、右足を上げた状態で回転し始める。
すると彼を中心に風が巻き起こって、だんだん大きくなって台風へと変わる。
風丸の姿が台風の中で隠れるほどになると、その竜巻をシュート目掛けて打ち出した。
竜巻はゴールを守る障壁となってシュートの威力を削っていく。
けど単体じゃ止めきれない…少しづつ竜巻の内側に入り込まれてる。
このままじゃ破られるのは時間の問題……いや、そっちが目的か!
「時間は稼いだぞ、円堂!あとは頼んだ!」
「!…わかった、お前の思い、受け取った!」
竜巻が消滅するが、『ユニバースブラスト』は止まらない。
だけど魔神の出る準備は整った。
「『マジン・ザ・ハンド』!」
円堂の背後に現れる黄金の魔神。
その右手をシュートに向かって叩きつける。
少しずつ円堂が押されていき、彼の足元の地面が靴跡で削れていく。
シュートブロックを挟んでもなおこの威力。
『ユニバースブラスト』の強力さを物語る光景だが、それでも魔神はしっかりとボールを受け止めた。
「馬鹿なっ……!」
「いよっしゃあああああ!!止めたぞぉぉぉぉぉ!!」
レーゼは愕然とし、円堂が歓喜で吠える。
ボールは円堂のスローインで風丸へ、そこに初期の冷静さ、余裕の表情なんて微塵もないレーゼが襲い掛かる。
ただボールをとる、そのことだけに突き動かされた彼のスピードは吹雪と乙女乃以外の面々では追いつくことができなかった、はずだった。
「はあああああ!!」
「なっ!?うわああああ!!?」
『疾風ダッシュ』の動きで加速する風丸。
けどその体には赤い熱風を帯びており、レーゼを抜き去るとともに爆風で彼の身体を吹き飛ばす。
「いけっ!
「っ!うん、任された!」
風丸からボールを受け取った私は敵陣目掛けて疾走する。
「これがラストワンプレー、絶対にもう一点決めてやる!」
「くらえ!『フォトンフラッシュ』!」
「ここ!」
空中で発光するカロンの身体を覆い隠すようにボールを軽く浮かせ、目くらましを阻止。
「通さん!『グラビティション』!」
「そーれ!」
「うおっ!?」
ガニメデのグラビディションの発動のラグを見越して、もう一度ループパス。
今度は彼の真上に来るように蹴り上げる。
重力が強まるとボールは彼を押しつぶさんと言わんばかりの勢いで落下、思わず彼は両手を地面から離してしまい、『グラビティション』が解除され彼を突破しボールをキープ。
「『アステロイドベルト』!」
「ほっ!とっ!それ!」
自身の周囲に無数の小隕石を呼び出しこちらに向けて射出するコラル。
その中から「私に命中するルート上にある隕石」のみに対象を絞ってボールを蹴る。
隕石に当たり破壊するとこちらにボールが跳ね返ってきてそれをまた蹴る。
連続でこれを繰り返していると、次第にコラルの集中力が切れ、一瞬の隙を縫って突破する。
「二度も点は決めさせん!『ブラックホール』!」
私の必殺技よりも先に必殺技を使用するゴルレオ。
ボールを自身に引き寄せることでシュート態勢を崩そうという魂胆だろう。
確かにこの状況で私なら決めるのは難しい。
ボールが引き寄せられている以上、3回蹴りを入れる必要のある『ツインベアインパクト』が使えない。
でも『リゲルオリオン』じゃあパワー不足。
それならどうするかって?
「出番だよ!吹雪君!」
「待っていたぜ、この時をよぉ!吹き荒れろ!『エターナルブリザード』!」
荒れ狂う吹雪を纏った強烈なシュートが、ゴルレオの右手に吸い込まれている。
ガシッと、彼が取ったと認識した時には、彼はすでにゴールごと凍てついていた。
2対0
スコアボードが変動するとともに試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
無失点で勝利、地球人が宇宙人に勝った瞬間だ。
吹雪の影…薄い、薄くない?
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腐女子、西へ行く
あと勢いでGO3スパノヴァ買ってしまいました。
当時はソウルとメイン3人以外リストラを受け入れられなかったから買わなかったんや
ジェミニストームに勝利した直後に、エイリア学園から第二の刺客としてファーストランクチーム・イプシロンが登場。
再び侵略宣言をして去った。
私と吹雪は北海道を離れ雷門の一員としてイナズマキャラバンに乗り込み、イプシロンが襲撃予告をした京都の漫遊寺中へ向かっていた。(もう着いてる)
チームの空気はやっとこさジェミニを倒したのに、また強いやつらが出てきて若干暗いムードになっている。
まあ実際強いもんな、オサーム様。
今の円堂みたいに「攻めあがることもできるゴールキーパー」じゃなくて「フィールドプレイヤーとしても出場できるけど得意なのはキーパー」だもん。
同じことでは?と思うけど実際違うんだよねー。
原作だとダイヤモンドダスト戦で円堂が攻めあがることで守備が格段に落ちるって欠点があり、さらにペナルティエリア外で手を使いかけたってことがあった。
だけどデザームの場合は状況に応じてポジションを入れ替えられる、正しい意味でのマルチプレイヤーでしかも鬼道同様に司令塔でもある。
円堂のように自由に動き回るリベロとは違うのだ。
てか八つ橋うま!やっぱ和菓子は神、はっきりわかんだね。
「スピカ……お前それ何個目だ?」
「え?3箱目。」
「いや、お前……ごめん、いいわ。」
「??」
もしかして食べ過ぎって言いたいのか?
失礼な。甘いものは別腹やぞ。
それに全部別々の味だから飽きもせんぞ。
あ、あとジェミニとの試合の後、みんな私の事名前で呼んでくれるようになりました。
仲間って認めてもらえたみたいで嬉しいね。
なんてことを考えてたら、前のほうから叫び声が聞こえた。(私は後ろのほう)
なんだなんだと覗いてみると、円堂、塔子、栗松、目金、壁山が落とし穴に埋まっていた。
「おいおい、大丈夫かよ?」
「待って、染岡君。」
落っこちた面々を引き上げようと染岡が近づくのを制止する。
よく見ると落とし穴の手前にワックスが敷かれている。
恐らく最初に引っかかった円堂や塔子を引っ張り上げようとした壁山たちが連鎖して落ちたんだろう。
「危なかったね。このまま近づいてたら君も落ちてたよ。横から引っ張り上げよう。」
「ああ…にしても誰が…」
その時横の茂みから視線を感じた。
そこ目掛けて勢いよく持ってきたボールを蹴る。
すると驚いたように青髪の小柄な少年、木暮夕弥が現れる。
「うわあ!!お前あぶねーだろ!なにすんだよ!」
「なにすんだはこっちのセリフよ。この罠仕掛けたの、君でしょ。」
「はぁ?証拠もないのに何言ってんだよ!」
「その茂みでこっちを見てたのがいい証拠でしょ。さっきまですれ違った漫遊寺の生徒はみんな挨拶してくれてたのに、君だけ様子を疑うようにそこにいたってことはだれかがその罠に引っかかるところを見たかったってことだよね」
「うぐ…」
「こらーーー!!木暮ーーー!!客人に何をしてるか!!」
「げっ!めんどくさいのが来やがった!」
奥のほうから怒声が飛んできたかと思うと木暮は逃げだした。
怒声の主は漫遊寺サッカー部の主将、垣田だ。
まーそのあとは原作通りの展開よ。
木暮は親に捨てられて人間不信だとか、邪念岡さんだとか、イプシロン相手に対話しますとか。
最後のは無理です(断言)。
あっ、ちなみに漫遊寺との練習試合は3対0で終わりました。
あんま強くなかったんだが、裏の優勝校…
イプシロンが襲撃してくる日の早朝。
ふと目が覚めて寝床にさせてもらってる漫遊寺の部屋から出ると、グラウンドで木暮と古株さんがサッカーをしていた。
そういえばアニメでもこんなんあったな。
「古株さーん、変わりましょうか?」
「おお、頼むよ。さすがにこの歳じゃきついわい。」
そりゃきついでしょうよ。
ここで古株さんぎっくり腰で離脱とかになったら富士山で死ぬから勘弁してください。
「さて、木暮君だっけ?今度は私が相手してあげるよ。」
「舐めやがって~!今に見てろよ!」
木暮の最大の武器はそのスタミナだ。
漫遊寺でのしごきから足腰が非常に強く、一試合丸々走り続けても息切れしないであろうほどだ。
ただし練習には参加させてもらえなかったため、技術のほうはほぼ素人であり蹴ったボールがあらぬ方向に飛んでしまっている。
約一時間後、一度も私からボールを奪うことができず、何度も地面に顔面スライディングしてしまっている。
「なるほどね…木暮君、君はスタミナと身体能力はすごいね。小柄な体で縦横無尽にボールを取りに行こうとしてくるから一度避けただけじゃ相手は中々前に進みづらい。うん、けっこう厄介だと思うよ。」
「お、おう……」
素直に称賛すると恥ずかしそうにする木暮。
まあ原作の様子だとあんまり褒められる経験なさそうだし、慣れてないんやろな。
「ただし!それは動きのパターンをもっと増やせたらの話だよ!今の君は動きが単調すぎるね。フェイントに引っかかりやすいのも弱いところ。それじゃあ相手に言い様に手玉に取られるだけだよ。」
「うぐっ…でもあいつらが一緒に練習させてくれないし!」
「練習場がないことを言い訳にしちゃだめ。一人でできる練習なんて山ほどあるよ。それに今は私がいる。私の動きから学んでみなよ。」
「…やってやるよ!」
確かに技術はまだまだ拙い。
だけど今はしっかりボールと私の足の動きを見て喰らいついている。
フェイントにはまだ弱いけれど、リカバリーを利かせてなんとか抜かれないように立ち回る。
うん、成長速度はやっぱり早いな。
「そりゃあ!!」
「!!」
何度かの攻防の末、ついに木暮の足が私のボールに触れかけた。
直後、私は爪先で軽くボールを浮かせ空中でキープしようとするが、木暮は足を延ばして地面すれすれの体勢から両手を地につけ逆立ちをし、そのまま勢いをつけて腕をばねにして逆立ちのままジャンプしボールを奪おうとする。
これには私も意表をつかれ、反応が遅れてしまい木暮の両足にしっかりとボールを挟ませてしまった。
「やった…!」
「まだ…まだぁ!」
しかし簡単には諦めない。
一度後ろに下がり、軽く身を屈めて勢いよく私も前方へ飛ぶ。
そして木暮の挟んでいるボールを右足で蹴り上げ前へと飛ばす。
力では私のほうが勝っているのでたまらず木暮はボールを離してしまった。
「くっそぉ~!あと少しだったのに!」
「今のは私完璧に読めなかったしすごい惜しかったよ。これなら漫遊寺の人たちも認めてくれるんじゃない?」
私が素直にほめると、木暮も嬉しそうに笑う。
あと、そこの茂みに隠れて観てた音無ちゃんも喜んでる。気づいていたからな。
「ふむ、なかなか興味深いことをしているではないか。」
瞬間、嫌な気配を感じ振り向くと、黒い靄が発生しており中からデザーム率いるイプシロンが現れた。
いや、来るの速すぎじゃね?
イプシロンと漫遊寺の試合は一方的だった。
ドリブル技は一切の抵抗すらないまま、何事もないように打ち砕かれる。
ブロック技は発動よりも早く体にボールを蹴り込まれて不発に終わる。
イプシロンのシュートはDFを何人も巻き込み、キーパーの垣田はなすすべもなく吹っ飛ばされる。
シュートを撃ててもデザームは一歩も動かず、DFが身体を張るだけで止められる。
明確な力量差を物語っていた。
グラウンド外で私は円堂たちとともにその試合を見ていたけど、感想としてはなんともまあ整ったチームだなあというところだ。
キャプテンで司令塔であるデザームはキーパーであるため、どうしてもFWやMFには指示が届くのが遅くなってしまうはずだ。
しかしそれを意にも介さず的確なプレイングを行うイプシロンの統率力は圧巻の一言だろう。
恐らくスピードで言えばジェミニと大差はない。
故に今の雷門でもその動きを捉えることは容易のはず。
だけどエイリア石で増強されたパワーは現段階ではまだ厳しそうだ。
そして厄介なのは『メテオシャワー』だ。
天高くに飛んで発動するため妨害されにくいうえ、発動も早くゲームでは消費TPも少ないというとんでもなくコスパのいい技。
その技をFWワントップのゼルを除いたMF四人が使えるのだから、止めるのが困難だ。
まあ厳しいからって戦わない理由にはならない。
私は私にできることをやるだけだ。
雷門フォーメーション
――乙女乃―――染岡――
―風丸――鬼道――一之瀬
―木暮――吹雪――土門―
―――塔子――壁山―――
―――――円堂―――――
イプシロンフォーメーション
――――――ゼル―――――
―――――メトロン――――
クリプト―スオーム―マキュア
タイタン―ケイソン―ファドラ
――ケンビル―――モール――
―――――デザーム―――――
完敗した漫遊寺に代わって円堂がイプシロンの相手になると宣言、さらに音無ちゃんが木暮をチームに推薦し監督が承諾。
そのため今回は栗松をベンチに下げて木暮を投入した。
吹雪は相手の力量を計るため、またカウンター狙いでDFとしてスタートになった。
試合は雷門ボールからスタート。
鬼道から風丸、一之瀬へとボールが回されていき、イプシロンのゴール目指して進んでいく。
しかしイプシロンメンバーは止めようとしてこない。
恐らくはデザームの指示だろうね。
「決めろ!染岡!」
「任せろ!『ワイバーンクラッシュ』!」
飛竜のオーラを纏った染岡の強力なシュートがデザームへと襲い掛かる。
しかしデザームはそれを片手で抑える。
「なんだと……!?」
「俺の『ワイバーンクラッシュ』をあんな簡単に…!」
前回ジェミニストームからゴールを奪った新必殺技をあっさり破られたことに動揺する雷門メンバー。
抑えたボールをじっと見つめてデザームは私のほうへボールを転がす。
「ふむ…次は貴様だ。撃ってこい。」
なるほど、品定めってわけね。
それなら存分にやってやろうじゃない!
「いくよ…!『ツインベアインパクト』!」
両足で一度ずつ蹴りを加えて最後に同時に撃ちこむ。
しかし二頭の熊のようなオーラを持ったシュートはデザームの両手にがっちりと捕まり勢いを失った。
そして再度デザームは私へとボールを渡してくる。
いや『ツインベアインパクト』が一番火力でるんですが…
それ破られちゃった以上、単体シュートでは突破は不可能なんだよなあ。
『皇帝ペンギン二号』か『ザ・フェニックス』でもぶっちゃけ厳しいのではないか?
それならば…と後方確認、うん、準備オッケーっぽいね。
とん、とボールを軽く宙に浮かせる。
「ならこれはどう!?『リゲル……』なんてね。吹雪君!」
「ドンピシャだぜ!!吹き荒れろ!!『エターナルブリザード』!!」
後方確認した時にはすでにこっちへと駆け上がっていた吹雪はアツヤモードに変貌し、氷塊と化したボールを蹴りつける。
さらに私は前へと走り出し、氷塊に続けて左足での蹴りを加える。
「まだまだ!『リゲルオリオンV2』!」
シュートチェインで威力マシマシとなったボールを見て、デザームが不敵に笑う。
そして彼は両手を回し、胸から緑色の網のようなエネルギーを放出する。
「この胸の高鳴り…ククク…いいぞ、もっと私を楽しませろ!!『ワームホール』!!」
シュートは網の中央へ吸い込まれて消失する。
かと思ったらデザームの手前上空から網の穴が再度展開され、そこからボールが落ち地面へ突き刺さる。
「そんな……あの二人の連携シュートでもダメなのか…!?」
「あの男…なんてやつだ!」
雷門は当然動揺しているが、一方でイプシロンもかなり動揺しているようだ。
「デザーム様に技を使わせるとは……」
「ただジェミニを倒しただけかと思ったが……意外にやるようだな。いいだろう!イプシロンの戦士たちよ!やつらを叩き潰せ!」
「「「ラジャー!」」」
デザームのスローインはDFへと渡る。
彼らはそのスピードに加えて高い身体能力を活かし立体的なパスを繋いでいく。
そしてボールはMFの扇風機みたいな髪形の少女、マキュアに渡る。
鬼道、土門、塔子が止めに行くが、マキュアは天高く飛び上がりオーバーヘッドでボールを地上へと蹴りつける。
「『メテオシャワー』!」
するとボールは無数の隕石へと分裂し、雷門メンバーを襲う。
やっぱりあの技、きついな。
思った以上に範囲が広いし出も速い。
これどうにかしないとこの先きついぞ。
ボールはマキュアからFWの褐色肌の男、ゼルが受け取る。
彼は手のひらにエネルギーを集めるとボールを浮遊させる。
「『ガニメデプロトン』!」
そのまま両手で貯めたエネルギーをビームのようにボールとともに撃ちだす。
どうみてもハンドですありがとうございます。
「『ザ・ウォール』!」
「『ストームドライブ』!」
壁山が背後に壁を生み出し、風丸が台風を発生させる。
二人の技がシュートを防ごうとぶつかるが完全に威力は殺せず破られる。
しかし、十分に止められる威力にまでは落ちた。
「『マジン・ザ・ハンド』!」
やっぱりね。
これなら円堂も止められるのは分かってたよ。
ただディフェンスの体力がどこまでもつか、それが不安要素だね。
シュートブロックされると入らないってわかったら間違いなく『メテオシャワー』で抜いてくるだろうし。
今度は円堂のスローインから風丸へ、そして土門、鬼道、吹雪へと渡る。
DFがブロックに動こうとするがデザームはそれを制止する。
「待て!やつに撃たせろ!」
「舐めやがって…!お望み通り撃ってやるよ!『エターナル…ブリザード』!!」
本日二度目の氷塊となったシュート。
そして今度は鬼道がボールと並走する。
ピィィ!と口笛を吹くと彼の足元から5匹のペンギンが出現、吹雪のシュートに重ねるように追加で撃ちこむ。
そこに両サイドから私と染岡が合流、ツープラトンシュートを叩き込む。
「『皇帝ペンギン』!」
「「『二号』!」」
さっきと同じ二つの技のシュートチェイン、しかしさっきとは違い連携技でのチェインだ。
しかも雷門の中で特にキック力が高いメンバーでのチェインならどう…?
「いいぞ…!もっとだ…!『ワームホール』!」
またもや展開された緑の網がボールを消し去り、空中から再度出現、地面にボールが突き刺さった。
これでもまだだめか…
「クク……いいだろう。聞けぃ!雷門中!貴様らの実力を称えて時間を与えてやろう!10日だ!10日後再び我らは貴様らの前に現れ戦いを挑む。それまでに私をもっと楽しませられるよう強くなって見せるがいい!」
満足そうに笑うデザームが高らかに宣言する。
そしてそのままボールを投げるような構えを取る。
いやちょっと待て、それはあかんのでは!?
「ただしこれを喰らって生き延びていればな。」
そのまま勢いよく投球、さらに続けて両手からエネルギー砲、すなわちガニメデプロトンを撃ちだす。そんなんありか!?
デザームのシュート(?)は雷門メンバーを吹き飛ばしながらゴールへと突き進む。
壁山、風丸、塔子はそれぞれ必殺技でブロックしようとするが、発動が間に合わない。
円堂は体を捻り心臓から右手に気を集める。
だがその手前で一人逃げ惑う木暮が、壁山に躓いてしまいこけてしまう。
避けられない、誰もがそう思っていたがこけた状態の木暮を中心に竜巻が起こり、シュートの威力を完全に消してしまう。
周りが呆然としている中、私はイプシロン側のコートを見る。
すでに彼らは消えていた。
試合開始から3分、デザームが試合開始前に宣言した時間通りに終了してしまった。
前回出た風丸のオリジナル技『ストームドライブ』が早くも『旋風陣』と被りそう問題。
違いとしては『旋風陣』が使用者を中心とした技。
『ストームドライブ』は竜巻を手前に撃ちだす技です。
使い手次第でドリブル技にもなる万能技です。
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