テラに異世界転生したら不憫さん(サリア)になっていて人間関係が泥沼過ぎる件 (もふもふニキ)
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シリアスパート
file1 これからの(サリア)


というわけでシリアスルート、はーじまーるよー!!

シリアスルートの方は頭の方に持ってって投稿するから注意してね。

時系列としては、ギャグパート2話の後からとなります

シリアス、ギャグパート共にアンケートあるので活動報告見てね


「これからどうするか」

 

自室に戻り、部屋の中で独り心地に考えを巡らす。この体に転生したのか憑依したのかよくわからないけどこのままで良いわけがないのは確かだ。

 

ドクターたちの反応を見る限り、かなりの重体だったことは間違いないと見ていいだろう。アーツが使用不可になってるのが人為的なものなのかどうかは不明だけど、サリアさんの体がそんな弱いわけがないとも思いたい。だけど万が一ということもある、その場合無理やり使ってどうしようもなくなりましたじゃ困るからな。

 

「先ずは、サリアさんの部屋を見て回るか」

 

余り漁りたくはないけど、何もしないわけにも行かない。ある程度の知識は蓄えておかないと後悔することになるのはなんとしても避けたいところだ。

 

幸い、サリアさんが研究者ということもあり。資料集めには事欠かなかった、人と接触することなく情報を得られるということは今の俺にとっては極めて大きなメリットである。

 

「ふむ」

 

さっぱりわからん。いや、意気込んだは良いもののちっとも専門用語が解読できない、此れだとせっかくの資料がただの紙屑になってしまうことは避けられない。

 

「ん?」

 

ふと、一つの紙束を見つけた。他とは毛色が少々異なりそうなものだった物なので手を伸ばして見ると。どうやらかなり古い資料のようだ、紙の劣化も進んでいることを考慮するとサリアさんがまだ新人だった時代に使っていたのかもしれない。

 

「『アーツと精神の関係性』……か」

 

今の俺には必要そうだったので目を通してみるとしよう。資料片手にコーヒードリップの機械を動かす、この手の操作はあまり現代と変わりがないらしい。珈琲が出来上がるのを待ちつつ他の資料と混ぜないようにしながらめぼしいものがないか調べていると幾つか有益なものがあった。

 

出来上がった珈琲に口をつけると随分苦く感じる、どうやらサリアさんは甘めの珈琲はお好きじゃなさそうだ。

 

「さて、読み解いていくとしようか」

 

厚めの資料だけど読み解いていくしかない、此れが今の俺の仕事と考えると気分もある程度ましになる、ある程度ではあるけれど。

 

(アーツってまだまだ解明されていないことのほうが多いんだなやっぱり)

 

アーツには幾つかの種類と。基本アーツ、固有アーツに分かれていくらしい。

 

基本アーツというのは多分アークナイツで言うところの強撃等のS1のことに当たるんだろう。役職や役割によってはまた別々になっていくんだけれど、言われてみれば同じアーツを複数人が使っていることを考えると妥当なのだろう。

 

固有アーツというのは読んで字の如くなのは間違いない、ただ固有アーツに関しては発現するかどうかはランダム発生らしく一定以上のアーツを使うことができなければそもそも可能性がないらしい。この辺りだと確かフェン辺りが言っていたはずだ。

 

それを踏まえた上での説明になるとアーツは感情の起伏に左右されるらしく精神が安定していないと暴走のおそれがあるそうだ。それを考えるとロスモンティス辺りは相当無理をしていると思われる、ブレイズにしてもAEDで強制的に蘇生しているようだしな。

 

(そうなるとまた別の可能性が生まれてくる)

 

アーツが精神由来なものと仮定した場合、サリアさんではない俺はアーツが使えないわけではなく。()()()()()()()()()()使()()()()()()といえる可能性が生まれてくる。

 

そう考えると色々と前提が変わってくる、そもそもとしてサリアさんはロドスの戦い方に合わせてアーツを弄っていたことを考えると前のアーツの使い方はこうだったといえばある程度通じるだろう。他のライン生命のメンバーはあの二人を考慮しなければ問題はない、ほとんど関わり合いがないと見ていいだろうし。

 

「そうなればこうしては居られない」

 

思い立ったがなんとやら、早速行動しなくては。朝早いうちに動いたほうが良いだろうな。そう思った俺は足早に部屋を後にしつつなるべくオペレーターに遭遇しないように心がけつつ昨日訪れたアーツの測定部屋に入る、本来であれば申請等が必要になるそうだが時間が時間なのとサリアさんが所持していた研究者用のIDパスで誰とも接することなく入ることが出来た。

 

「さて、理論を読んだは良いが、果たしてうまくいく可能性があるかは未知数か」

 

物を読んだだけですべてが理解できるのであれば学者は不要だ、実践するしかないのは分かっているもの何をすれば良いのかわからないことは本当だ。

 

先ずはアーツユニットは……サリアさんのは使わないほうが良いだろう、あれは恐らくサリアさんのオーダーメイドの一品だと思われる。となると精神の変化に伴って使うことができなくなる可能性が大きい。

 

「…やるしかない、か」

 

泣き言を言っている間に時間は過ぎ去っていく、それならば今をなんとかするしか道はない。そう思いながら備品として置いてあるアーツユニットを手に取りつつ試してみる。

 

幾つかアーツユニットを試していくうちに反応があったアーツユニットが幾つか存在した。

 

先ずはやはりと言うべきか盾型のアーツユニット、此れは想定の範囲内だからどうでもいいとして。此れまた想定の範囲内だったのが拳に装着するタイプのアーツユニットだった。

 

意外だったのがいわゆる模倣中、銃の形をしたアーツユニット。後は長物系のアーツユニットだった、複数の選択肢があることは悪くないことだったのである程度どうにかならないか試してみよう。

 

「サリアさんの今後を考えた上で選ばなければ」

 

早々にこの体から離れなければならないと思っているので変な武器は使えないし使わない。というか扱いきれんだろうというのが本音、どう考えても素人です本当にクソッタレです畜生め。

 

考えられる上で最善は盾を使うこと、ただサリアさんがロドスに来てからのアーツが使えない以上これは却下。となれば近接武器だ、バグパイプ、バニラ等が長物を使っている辺りそういうものが怪しまれずに済むんだろうか、研究者がそういう物を使うかと言われれば首を傾げてしまうが。

 

そう思いつつ軽く武器を扱ってみれば認識できる速度よりも武器を振るう速度のほうが早くてかなり焦ってしまった。危うく壁を壊しそうになるのを見る辺り予想以上のスペックお化けなんだろうさ。

 

結局の所、長物を担ぎながら盾を持つのが一番良さそうだという結論に至る。

 

1つ目の理由として、いきなり盾から別の武器に変えてしまうと後々怪しまれる可能性が非常に高いということ。これをしてしまうと綻びが大きくなってしまうのが大きい。

 

2つ目は俺に槍術の知識が皆無であるということ。槍を担いで戦うにはハードルが高すぎて仕方がない。1から覚えるのは先ず不可能だろう。

 

最後はサリアさんの言葉が鍵となっている

 

『エナメル化した盾は、誰にも破れないさ』

 

サリアさんが事前にこの言葉を言っていたことを使わない手はなかった。この発言から察するに本来は防御型のアーツだったがそれをロドスの戦い方に合わせて変えたものを戻した、という理屈で行くしか道はない。

 

「あとは固有アーツの方だな」

 

そう思いつつ思考を深層へと沈めていく、まるで深い海の中へ放り込まれているようだった。そんな感覚に陥っていると途端に眠気が襲ってきた、何故かそれに抗うことなく落ちていった。

 

──思考深層

 

意識が戻る、というよりかは今の状況を認識すると自然と体が動けるようになっていた。周りにはなにもない灰色の世界にただ立っていた。体を動かした感じ不具合はない様子だ。

 

(何も、ないな)

 

とりあえず周りを散策するもあるのは辺り一面灰色の空──と呼んで良いのかわからないものが広がっており。地面も変な感触はするが此れと言って何かが起こるわけでもない。

 

そんなところを歩いていれば、青より蒼い海が広がっている場所までたどり着いたが海が広がっているだけで対岸は見えてこない。しばらくぼぅっとしていると『ナニカ』が側にやってきたのを見て振り返ると。ヴィーヴルの女性のような形を取っている何者かが現れた。髪は腰まで伸び切っていて、色は輝きを失ったかのようなくすんでいる灰色、目には光が灯っておらずまるで死人のような格好だった。

 

『此処で何をしている』

 

「……自分探し、だろうか」

 

『何なんだそれは』

 

「私にもよくわからない」

 

『ソレ』が声を出したので答えを返すと呆れたような声を出していたのでよくわからないと言っておく。実際よくわからないのだから

 

『お前は、誰だ?』

 

「それも知らないな、どうしてこうなったのか。未だによくわからない」

 

『ソレ』の問いかけに思わず脱力したかのようにぼぅっと波打っている海を眺める、まるで禅問答をしている気分だったのだが。まあ悪くはない。

 

「逆に問い返すが、そちらは何者だ?」

 

『……生きているのか死んでいるのか分からないものだ』

 

「何だそれは」

 

『私にもよくわからない』

 

同じように問い返してやると、『ソレ』も同じようなことを口走って思わず吹き出してしまう、何となくではあるもののいい感じに弛緩することが出来たから助かった。

 

『どちらにせよ、此処に長居するものではない。もうじき『潮』が満ちる』

 

「そう、か。お前はどうする?」

 

『どうしようもない、何処に行けばいいのかわからないまま漂い続けていただけなのだから』

 

「なら、着いてこい」

 

『……は?』

 

ぽかんとした間抜けな表情をしているのを見てはそのまま手を引っ張って連れて行く。何があるのかは知らないがこのままにしておくわけにも行かない。

 

「歩くぞ」

 

『いや,少し待て』

 

「断る」

 

そういうとそのまま歩いていけばまた灰色の世界に戻っていた。その後に振り返ると不満そうな顔をしている『ソレ』は此方の世界を見ると首を傾げていた。

 

『此処は何処だ?』

 

「恐らく私の精神の世界、或いは内にあるアーツの中だろうか」

 

『……そうか』

 

「所でお前の名前は何だ」

 

『名前?』

 

「名前だ」

 

『名前は……ディファレント、ディファレントだ』

 

「長い名前だな」

 

『ソレ』……ディファレントがそう言いつつ腰を下ろして横になる、どうやら宛もなくあの場所をさまよい続けているようで。眠たくなってしまったようだ

 

『しばらく、寝ている……』

 

そうしてディファレントが横になっているのを見た後、夢の世界から目覚めた。

 

──ロドスにて

 

(──体が、動かんな)

 

目を覚まして始めに思ったのは鈍いとは到底言えない鋭利な痛みだった、あれから特に何もしていない筈なのに全身が痛いとは何事だ。と思いつつ体を起き上がらせると両腕にぐるぐる巻に包帯が巻かれていた。ついでに周りには血痕がついている包帯が幾つも捨てられていた。状況がわからなさすぎるな、そう思って立とうとすると急にセンサーが鳴り響いたので困惑した、するとすぐに医療スタッフが駆け寄ってきた。

 

「サリアさん!駄目ですよ急に動いちゃ!」

 

「点滴を新しいのもってこい!」

 

「後は念の為AEDの準備もお願いしますね?」

 

等とまるで重病人を扱うような行動に困惑していると説明してくれた。

 

どうやら深層意識に潜っている間、誰かが部屋に入ってきたらしく。そこで傍から見ていると死んでいるように見えた私を運んできたらしい、その際。脈拍等があまりにも低く一種の仮死状態になっていたらしいのでちょっと反省しようと思う。

 

そこまでだったら理解したのだが。

 

「……私が全身から血を流していた?」

 

「はい、見つけてくださったオペレーターの方からそういう報告が……」

 

どうやら倒れていた際、血まみれでもあったらしい。体が痛いのはそういうことだったのか。理解した。

 

そのオペレーターが誰だったのか尋ねると、医療オペレーターは苦虫を噛み潰したような顔で

 

「本人が、言わないでくれと……」

 

といったので言及しないでおく、聞かれたくないこともあるだろうからな。そんなことを思っていると

 

『ごめんなさい、急患大丈夫でしょうか!?』

 

通信端末からオペレーターの切羽詰まったような声が聞こえると医療オペレーターが冷静に対応しつつ。此方に一礼して走り去っていく、どうやら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()らしい。

 

そんな背中を見送りつつ、ふと傍にあったアーツユニットに触れてみた

 

すると

 

「起動、した」

 

なんと、起動したのだ。アーツが…此れで何とかなりそうだと思いつつアーツユニットから手を離した。

 

どうやらこれから忙しくなりそうだな、なんて思いつつ。少しだけ痛む体を引きずってドクターの部屋に向かうことにしよう

 

しばらく歩いてドクターの部屋にたどり着くと

 

『────!!!!』

 

部屋から怒号のような声と衝撃が伝わってきた。ただごとではないと思いつつ、慎重に慎重を重ねて部屋のドアの近くまで行くと。ゆっくりドアを開ける

 

どうやら部屋のなかではサリアさんが倒れた時の作戦に着いての反省会?なるものが行われていたらしい。部屋の中を見る限り、メンバーとしてはチェン、バグパイプ、がいるようだ。そしてブチギレてるのがチェン、冷静に俯瞰してるのがW。バグパイプはというとチェンを止めることはせず、若干冷ややかな視線をドクター達に向けている。アーミヤとケルシーも居るけど何方も押し黙っているようだ。

 

「……騒ぐな、廊下まで響いているぞ」

 

そういうと、チェン達は驚いた顔をしつつ。こちらの方へ一斉に視線を向ける、大変居心地が悪いのが嫌なので手短に済ませるつもりだ、前の作戦の反省会なんかに巻き込まれたら間違いなく齟齬が出るそれはなるべく避けたい。

 

「さ、サリア体の方──」

 

「ドクター」

 

少し上擦った声を上げるドクターに此方が声を被せる。ドクターの話に付き合っていればそこでも齟齬が出る、なるべく最小限の言葉で済ませなければ。

 

「私は戦線に復帰するぞ」

 

その言葉にケルシーが目を見開き、マグカップを床に落として中身の珈琲が床にぶちまけられる。どうやらしばらくは戦線から外される予定だっただろうけど、大丈夫だ。お前達の懸念は解消されている。

 

「しかし、サリア。君はまだ病み上がりの筈だ、今日も医務室へ運ばれたと聞いている」

 

ケルシーの言葉にドクター達が狼狽え。チェンが静かに目を細めた。

 

「それは単に勘違いだ、出血のことは原因が私自身理解できては居ないが。単に瞑想しているのを気絶と勘違いしただけだろうに」

 

「………」

 

「ドクター」

 

「なん、だろうか」

 

「お前が私の容態について気にしているのは理解できる、だが時間は有限だ。何よりもレユニオンとの攻勢が終わってない以上立ち止まるわけにも行くまい。迷うな、怯えるな。戦う道を選んだのはドクター。他ならぬお前だ」

 

「アーミヤ」

 

「は、はい!」

 

「ドクターに対して言うこととさほど変わりがないが、追加でお前には言うことがある。()()()()()()、お前が救えないもの、届かないものはこの世界に転がっている。自戒の念に囚われている暇があるなら次に移れ、お前達がその調子ではロドスに帰ってこられなかった者の誇りにもならん。上に立つということはそういうことだ」

 

「は、い……」

 

「話は以上だ、私は部屋に戻る」

 

そう言葉を切ると、ドアの前に立つ。そのタイミングでケルシーが声をかけてきた。

 

「──君は、まだ戦うのか?」

 

その言葉に一瞬考えた後、振り返らないまま答える。

 

「戦うさ、戦わなければならない理由もある、なさねばならない事がある」

 

「例え、死にかけてもか?守るものを残して」

 

「──今の私にはそれしか出来ない。生憎と、守れればそれでいいという考えだ」

 

そういった後。部屋を後にした。

 

──数分前

 

「ドクター、此れはどういうことだ」

 

チェンはドクターの机の上に資料を投げ捨てる。それはサリアのメディカルチェックの結果だった。

 

()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()、そう書かれているが?」

 

その言葉には明確な非難が含まれていた。前回の事故の影響でそうなった可能性もあるが、元々この容態だった可能性もある、それを考慮するととても戦場に出してはいけないオペレーターだった。

 

「──ほんとうだ、ケルシーからの報告を受けて私も知った、恐らくは。先日の事故の影響だろう」

 

ドクターの絞り出されるような声を聞きつつ、チェンは静かに頷いた後。

 

──ドクターに刃の刃先を突きつける

 

「チェンさん!?」

 

「アーミヤ、黙っていてくれ。此れは問答だ」

 

途方も無い威圧感を出しながらチェンが()()()するとアーミヤは大人しく引き下がる。

 

「ドクター、我々は物ではない。それは理解しているな?」

 

「あぁ」

 

「ドクター、ロドスは外部からの協力で成り立っている。それも分かっているな?」

 

「ドクター、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……知っているとも」

 

「ならいい、その上で聞かせてもらうが。何故あのとき即時撤退しなかった。慢心していたのではないか?」

 

チェンはそう言いつつ、メンバー表をドクターの机の上に投げ捨てながら唾を吐くように続ける。

 

「これだけの戦力を集められることは先ずない、それで負けたのだ。これはお前達指揮官の失態だ」

 

勿論私の失態でもあると隊長をやっていたチェンは静かに息を吐きながら視線をきつく絞る。

 

「二度とこのようなことがないと誓え」

 

「……約束しよう」

 

「私からも、良いかしら?」

 

先程まで黙っていたWが声を上げる。

 

「アンタ、もしかして()()()()()()()()()()()()()()()()

 

他のオペレーターが同じ事を言ってもこの雰囲気にはならないだろう。それほどまでにWの視線は冷たかった。

 

「アンタの最後の指揮、というよりは奇襲かけられたときの対応ね。あん時のアンタ。昔のアンタにソックリだったわよ?」

 

Wが一旦言葉を区切りつつ、こう続けた

 

 

 

 

 

 

 

「昔のサクリファイス上等の、反吐が出る戦い方にね」

 

 

その言葉が飛び出した後、チェンはなにかに八つ当たりするかのように刃を振り下ろした。誰にも当たっては居なかったが、その怒気は凄まじいものだった。

 

「ドクター貴様…─!」

 

「話の途中だから落ち着きなさい」

 

憤るチェンに対してWは終始冷静だった、冷静というよりかは。何度も何度も見てきたせいで見慣れたものになっていたのだろう。見慣れているからと言って見過ごせるものではないのだが。

 

「今のアンタは昔のアンタと違ってお手々繋いで一緒にゴールを目指す戦い方してるわよね?昔のアンタからは考えられないほど甘っちょろくて、素晴らしいほど人道的な反吐が出るやり方」

 

Wが髪をいじりつつ言葉を続ける、素晴らしいというのは恐らくは嫌味なのだろう。今更綺麗事を履くような真似をするドクターに心底軽蔑するかのように

 

「だけど、あのヴィーヴルをサクリファイス紛いの使い方をしたから聞いてみただけよ?記憶が戻ったかどうか、って」

 

「戻っては居ない」

 

「あっそ、なら一つだけ」

 

ドクターの言葉にWがどうでも良さそうにしつつこう言い放つ

 

「アンタ、今ロドスの連中から懐疑の目で見られてるから」

 

「……!」

 

サクリファイス紛いのことをしたせいでバベルからいたオペレーターの一部からまたあの戦い方をするのではないか?という懸念が出るのは当然である。

 

「それはうちも思ったよ」

 

不意にバグパイプが口を開きつつ、いつもの調子で話した

 

「あんな戦い方を強要されるなら、ロドスとの契約破棄しようかなって。うち以外のオペレーターの中でも結構広まってきてるみたい。気をつけたほうが良いよ」

 

何方側でもないバグパイプはそういうとまた黙り込む。

 

そんなこんなをしているうちにサリアが来て戦線に戻る。という発言はそこに居た全員を驚愕させた。

 

そしてサリアが居なくなった後。ドクターは此れからサリアをどう扱っていけばいいのか苦悩することになる

 




とりあえず始まったシリアスルート、曇りすらない晴天の状態だけどこれからゆっくり曇ってくから安心してくれ


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file2 二つの影

ギャグパートだと思った?残念シリアスパートのお話です

※この回は喫煙描写が多数あります、序盤を読んで嫌な予感がした場合はブラウザバックしてください


「ああは言ったものの、体の鈍りが取れていないな」

 

ドクターの部屋から出た後、少し考えながら廊下を歩く。戦い方なんて俺はちっともわからない、そうなると協力者が必要になるわけで……どうするかな。

 

そう思っていると、どうやら食堂で騒ぎがあったらしい、面倒なので購買で適当に何か買って済ませるとしようか。

 

「ちょっといい?」

 

「ん?」

 

「時間、ある?」

 

「特にすることはないが……」

 

「そう、じゃあ少し付き合って」

 

そんな風に通路を歩いていると後ろから声をかけられた。

 

先程ドクターの部屋に居たバグパイプだった。サリアさんとは接点がなかったのでどうしようかなと思いつつ迷っていると、バグパイプが此方の手を取って何処かに連れていきたいようだ。

 

そうして連れてこられたところは屋外に通路からしかいけない部屋だった。どうやら込み入った話がしたいらしい、かなり見つかりにくい場所だからほとんど人が来ないんだろうな。

 

「此処は元々新しい施設を作る予定だったんだけど。往来とかの関係で駄目になった部屋なんだって」

 

バグパイプはそういうと持ち込んでいた椅子に軍服をかけながら背伸びをする、バグパイプも何方かと言うと酷使される側だからこういう部屋は欲しいんだろうな、と思いながら部屋を見渡す。なかなかに私物が多いのを見る限り、これは大分ストレス発散に苦労していそうだ。

 

「あ、そうだ。サリアは煙草って吸う?」

 

「あぁ、吸うぞ」

 

灰皿があったことから何となく察していたがどうやらバグパイプは喫煙者らしい、サリアさんの部屋にも灰皿があったから吸っても大丈夫だろう。

 

「それじゃあ吸いながら話そっか、ちょっと長くなっちゃうからさ」

 

そう言うとバグパイプは煙草が入った箱を向けてきたので1本拝借しつつ、ポケットに入ってたライターで火をつけてみる。結構キツイやつだな此れ。そう思いながら一吸いしていると、バグパイプはしきりにスカートを弄っていた。どうやらライターを何処かに無くしてしまったらしい、この時間が一番イライラする時間でもあったりする。

 

「バグパイプ、此方を」

 

「ん?あぁ、ありがと…へぇ。そういうことするんだ」

 

バグパイプが咥えている煙草の切り口に自分が火を点けている煙草の切り口をつけて火を点ける所謂シガーキスと呼ばれるものだ。

 

「こういうことするの、意外だったよ」

 

「だろうな」

 

お互いに煙草の火が点けば、少しの間だけ会話が止まる。バグパイプが何かを言おうとしていることぐらいはすぐに分かる。

 

それを待っていれば案の定バグパイプが少しだけ荒んだ目をしながら此方を眺めつつ問いかけてきた。

 

「サリアはさ、ロドスの戦い方。どう思う?うちは正直に言うとぬるいと思ってるよ。やるなら徹底的に叩かないと駄目なのにね」

 

「そうだな、確かに詰めの甘い所は大いにある。たとえ元が民間人だったとしても」

 

「そうそう、やっぱりサリアなら分かってくれると思ってた」

 

バグパイプの言葉に肯定してやると少し身を乗り出してきて此方の顔を覗き込みつつ何度も何度も頷いている。どうやら思う所はある程度あるのか結構溜め込んでいるようだ。

 

「感染者を救う、その発想は悪いことじゃないんだと思う。実際それで救われた人も居るのも分かる。ただ、人を救うってことは自分に余裕がないと上手く行かないからさ。そういうところの詰めが甘いっていうか、救うっていうことに酔ってるんじゃないかとかね」

 

割と容赦のない言葉を聞きながら紫煙を吐く、バグパイプからしたらロドスの戦い方。というか在り方は少々良くない風に思っているそうだ。軍人上がりからするとそういう風に見えても仕方ないんだろうな。

 

ほんの少し分からないわけじゃないし。此処は肯定しておくとしよう。そうするとバグパイプは上機嫌そうに煙草を吸う。鬱屈した感情は誰でも持っていることは知っていたが此処まで溜まっているとは思わなかった。

 

「シビアだな」

 

「シビアだよ」

 

その会話の後、しばらく無言の時間が続く。バグパイプは少しとはいえ溜まっているものを吐き出して気分が良くなったようだ

 

「ほら、吸い終わったならもう一本」

 

「……すまない」

 

サリアさんどうやら結構なヘビースモーカーだったのか1本吸うだけじゃ足りないようだ。バグパイプからもう1本……というか箱ごと渡された。封を切ったばかりなものだったけど押し付けられたので大人しくもらっておくとしよう

 

「なんというか、思ったよりかは話しやすいんだねサリアは」

 

「まあ、な。そちらは思いの外シビアだったが」

 

「まあね……あんまり見せられるものじゃないからさ」

 

互いが互いのイメージが違ったことに言葉を交わしていれば不意にバグパイプが視線を遠くに飛ばしながら紫煙を燻らせる

 

「ほら、うちはチェンのお世話とかしてたとか言う話がもう来る前からあったからさ。チェンも昔と変わっていないっていう認識で話しかけてくるし、そうなるとそのイメージを崩すわけにもいかないから」

 

「律儀だな」

 

「めんどくさがりなだけだよ」

 

ため息混じりのバグパイプにサリアが相槌を入れると再度溜息を吐きながら心底めんどくさそうにしている。やっぱりそういう面もあって然るべきなんだろうな

 

「ある程度の人付き合いは必要だし、道具の整備とかもさ。うちは精密機械扱うの苦手なのもあるけど…力がありすぎるのも困りものかなって」

 

「生きづらさはある程度考慮しなければならないとはいえ、割り切るのも難しいか」

 

「そうだね、割り切れないことも多いかな」

 

何もかも投げ出して、何処か遠くに行きたいなと言う風に愚痴るバグパイプはだらっと椅子に逆座りして背もたれに顔を乗せる。軍人とはいえバグパイプもまだ若いと思うサリアは同調しつつ、仕方がないと言いながら紫煙を吹く。

 

「よっと……んっ!?」

 

「……」

 

バグパイプがだらだらとしつつ体を揺らしていると、前に居たサリアごと倒れてしまう、端から見るとバグパイプがサリアを押し倒しているような構図だ

 

「「……」」

 

互いに無言でほんの少し時間が流れる、バグパイプの橙色の髪がサリアの頬にかかる、サリアはただただじっとバグパイプの顔を見つつ特に何もせず、バグパイプも特に何もせずに見つめ合っている。

 

「…何か、言わないの?」

 

「…謝れば良いのか?」

 

しばらくの沈黙を打ち破ったのはバグパイプだった、その言葉にサリアが無表情のまま問い返せば、何かが堪えきれなかったかのようにバグパイプは笑ってしまった。

 

「それ、普通逆じゃない?謝るのはうちの方でしょ?」

 

「……叫べば良いのか?」

 

「サリアのイメージじゃ考えられない」

 

「…なら何をすべきだったのか」

 

「そこは深く考えなくてい良いんじゃない?サリアってちょっとどこかズレてるよね」

 

「………」

 

一頻り笑った後のバグパイプの顔は何処かスッキリした様子で、サリアはそれを見ると軽く息を吐いた。

 

「…どうかしたか?」

 

「特に理由はないけど、駄目?」

 

「いや…」

 

お互いに煙草を咥えるとサリアがライターで火をつけると、バグパイプが体を寄せて火を貰う。先ほどよりも距離感が近くなったことをサリアが尋ねるとバグパイプはそう言いつつ紫煙を吐く

 

「うちも人恋しさは、無いわけじゃないからね」

 

等と言いつつ不思議な距離感のまま時間が過ぎていく、サリアからしてみればもう少し今後について色々考えたかった事があるのだが根を詰めすぎても意味がないのも知っていたため特に邪険にする必要性もないと判断した。同じヴィーヴルであれば、まあ接点があっても疑われないだろうということもあるのだが。

 

「そういえば戦線に戻るって言ったけど大丈夫なの?」

 

「問題はない、アーツの方も感覚も戻ってきている、ただ以前のようなアーツの扱い方をしようとすると体の負荷がよりかかるようだ」

 

「なるほど、ね」

 

何気ない会話に答えると何かを考えるようにバグパイプは押し黙った後、端末を開いて何やらいじくり回しているらしい、こういうことは普通にできるのになと思いつつ彼女は端末をじっと見ている

 

「ちょっと外すよ」

 

そう言うとバグパイプは部屋の中に戻っていたので手持ち無沙汰にしつつ煙草に火をつけ直して吸いつつこれからどうしようか考える。

 

まず必要なのはアーツの知識、やはりというかサリアさんの残した資料はあまりにも膨大であんな短時間では1割にも到底満たない、そうなると知識の吸収は急務である

 

次にやはり実戦経験の確保である。命のやり取りに飛び込む上である程度のリスク管理ができる戦場が欲しい、所謂実地訓練である。勿論訓練も大事だ、と言うかそこから始めないと話にならない。ただの素人が命のやり取りしようとか無謀の極みだ。

 

「やることが山積みだ」

 

だが一つ一つ片付けて行くしかあるまい、俺が消えた上で次のバトンをつつがなく渡すためにも弱音は吐けない、そんなことをしている暇があるなら専門用語の一つでも覚えるべきだ。

 

俺にとってはゲームの世界だったが今ではそう思えない、少なくてもこうして話している以上相手がたとえプログラミングされただけの存在だとしても、例え話の都合で呆気なく居なくなったとしても

 

当事者になった時点でそんなことは関係ない。言うなれば私はもう此方側なのだから、

 

そんなことを思っているとバグパイプが戻ってくると若干険しそうな顔をしつつ再度煙草を咥えたので此方から火を移してやると何だか驚いている顔をしている

 

「……お前からしてきただろう?」

 

「……そうだね」

 

そうして煙草を吸うと若干むせる、吸いすぎだと思いつつ背中を擦ってやると。じっと此方を見てはまた吸いつつお互い顔を前に向ける

 

「サリア、自分の体のことは知ってるんだよね?」

 

「知っている」

 

「そう、じゃあうちからは特に何も言うことはないよ」

 

どうやら先程いっていたサリアさんの体についての話についてらしい、この程度で止まるわけがないだろに。そう思いつつ回答するとバグパイプは押し黙りつつまた沈黙が続く。

 

ただ、嫌な沈黙ではなかった。バグパイプも存外聡い、此方が納得した上で戦うことも了承して、どうなるかも把握した上で何も言わないという辺りそう思う。

 

「訓練相手とか居る?」

 

「いや……」

 

「そう、じゃあうちやるよ」

 

「良いのか?」

 

「良いよ」

 

「お前にもやることがあるのではないのか?」

 

「うん、でも良いんだ」

 

「そうか…」

 

「そうだよ」

 

短い会話を繰り返してはお互いの意思を確認する、言外に様々な意味を込めている両者の会話は端から見れば簡単な会話に聞こえるだろう、当事者同士はそうは行かないだろうが

 

「物好きだな」

 

「物好きだね、サリアもだろうけど」

 

「そう、だな」

 

「ふふ」

 

「何だ?」

 

「サリアって口下手?」

 

「……自覚はある」

 

「あるんだ」

 

バグパイプの少し影がある笑みを浮かべつつの揶揄に思わず視線をそらせば、ようやく少しだけ力の抜けた笑い声を出す

 

「なんだろ、サリアってあれだよね。言うべきことは言うけど言いたいことは言わないよね」

 

「そう聞こえるか?」

 

「うん、とっても」

 

いつの間にか煙草ではなくマグカップを持っているバグパイプはカフェラテのようなものに口をつけながら言葉を区切る

 

「自分の本心とは違うことを言うんだと思う、たとえ心配してても、苦しくてもそれが不適切だと自分で感じたなら絶対に言わない、そんな感じ」

 

「……」

 

「そういうところ、チェンによく似てると思う。自分の感情を押し殺しすぎて何処かで爆発したり。何処に吐き出して良いのか分からなくて自分を追い詰め続けるような感じ」

 

そう言うとバグパイプは遠くに視線を飛ばしながら小さな声を零した。

 

「ままならないよね、色々とさ」

 




次はギャグパートかな、シリアスパートはシリアスしつつ。ギャグパートとは違った方面の百合になります

…百合SSじゃなかったんだけどな最初


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file3 Who are you?

シリアスパートしか思い付かんかったんや!許せ!


「確かに、ままならないな」

 

バグパイプの言葉に頷きつつ視線を落とす、この体を間借りしている事自体ままならない。できることなら速攻で返したい、それが本音だ。

 

テラという大陸は本当に生物に優しくない、弱さを決して許さず。努力が足りなければ呆気なく淘汰される。そういう場所だ。よくもまあこんな大陸で文明が未だに滅んでないことに奇跡すら感じてしまう

 

「ほんと、どうにかならないかな」

 

ため息混じりに力を抜いて椅子により掛かるバグパイプは疲労を隠せていない、バグパイプもよく戦闘に引っ張り出されているから休みがないんだろう。過労死しないと良いがな

 

「ならないな」

 

「だよねぇ」

 

分かりきった会話、それでも言葉にするだけ少しはましになるというもの。そんなことを思いつつ外を眺める、

 

「そういえば、訓練。いつから始める?」

 

「そう、だな…はやくても明後日以降か」

 

バグパイプの言葉に考える素振りを見せつつ答える、体調は至って良好……と言えるかは大分怪しい。体が鈍い感覚が抜けきれていない、感覚が戻って来ていないのだろう。そういう理由もあるが、それだけではない。

 

もっと情報がほしいのだ。色々と。下手をすると訓練に明け暮れて何も知らないまま戦場に放り出されるかもしれない、そう考えれば知識の蓄えは必須だ。

 

「と言うことだ、今日は少なくとも何もする気はない」

 

そう言いつつ、宙に紫煙を漂わせる.流石に病み上がりなのだから。下手に動くと怪しまれると言うかなんというか、怪我が本当なのか疑惑が出てくる。

 

「そうだね、病み上がりだし」

 

「そこまで尽くしてやる義理もあるまい」

 

なんて言っておけばバグパイプも煙に巻く事ができるはずだ。

 

──バグパイプsaid

 

 

実家に帰らなくなったのはいつ頃からだったろう。そんなことをふと思い返す。

 

ヴィクトリアの士官学校を出て、そのあと軍に入ってそこからまた抜け出して。1つの所に長く居れないんじゃないか?なんてことを思う。

 

その間も家に帰ることはついぞなかった、それを後悔してるわけでもないし。別になんとも思わないけど、ふと最近思い出してしまった。

 

親は元気だろうか、家は大丈夫だろうか、そんなことを思いつつも家に戻るという選択肢は生まれてこない辺り存外自分は薄情なのではないかと思い始めている。

 

軍から抜けた理由は単純だ、国を蝕む輩を見つけたから。ただそれだけ、そもそもそこまで軍は良いところではなかったし。

 

軍で色々なものを見た。

 

人の死体も見慣れたし、腕が吹き飛んだ同僚も何人も居た。居なくなった同僚がどれだけいたかなんて覚えていない、再会を誓いあった男女が片割れを残して。或いはその両方とも消え失せることも有り触れていた。それぐらい過酷だった。

 

移動都市に居られることがどれだけ恵まれているかも知った。

 

移動都市ではない地上は過酷そのものだ、地面は割れて谷だらけ。踏み外したら急転直下であの世行きなんて当たり前なぐらい、天候もひどかった。昼と夜の寒暖差が異常なまでに激しい、差が40度近くあるかもしれない寒暖差は並の生物が生きることを拒んでいた。

 

ヴィーヴルではない自分以外の軍人が脱水症状やら凍傷で戦闘に参加できないことはむしろ日常の1ページだった。

 

私以外の誰もが───貧弱だった。

 

そんなこと数年を過ごしていれば、ヴィクトリアで暗躍を続けている謎の部隊と交戦した。その部隊と交戦した後、隊は解散して全員バラバラ、隊長だった指揮官は天災に巻き込まれて護送車ごと消えてなくなってしまったらしい。

 

自分の身の危険を感じた私はすぐに軍を出た、名目的には知り合いの方に呼ばれたから。世話をしていたチェンが優等生──とはいうが私生活は壊滅的で他の人とは軒並み折り合いも悪かった──というのも有り、すんなりと辞めることが出来た。流石に龍門で指揮を取っているチェンの知り合いを止めることは出来なかったらしい。

 

今思えば私を外に逃がすために現れた絶好の機会だったんだろうなと思い返す。一応此れでも人付き合いは良いほうだったし、実力もあった。そういう意味でも損失が大きいと判断したに違いない。

 

私はもう正規の方法でヴィクトリアに戻れないと思っている。軍を抜けたのは割とよくある話なのだが、交戦した部隊が部隊だ。

 

あれは恐らく軍の上層部の私兵ではない、それどころか正規の軍隊でもなければ傭兵のたぐいでもない。報告を上げた上官に言われた言葉がまだ耳に残っている。

 

「バグパイプ、これは上官命令だ。今回の交戦した敵の素性を詮索することはしないように。我々が手を打つ、危ない橋は決して渡るな」

 

その上官も護送車に乗っていて天災とともに消え失せてしまった。これも何らかの意図があって行われているであろうことは間違いない。

 

別に敵討ちというわけではない、そこまで軍に思い入れはない。ただヴィクトリアという祖国を守ろうと……したのだろうか。

 

最近になって色々と忘れる事が増えてきた、家族の顔をも。幼少期の思い出も。すべて硝煙の臭いと瓦礫の山に書き換わっていく。

 

過去はとうの昔に意味を失っていた。

 

その後覚知を放浪して情報を集めたけどまあ此れが上手く行かない、パスポートが意味をなしていないこともよく分かった。

 

そんなことをしていると本当にチェンから連絡があった、ロドスという企業に来てみないか?という話だ。いざロドスに入ってみたところ

 

まあ…なんというか、形状し難い感情だらけだった。良くも悪くも人を信用し過ぎなのだロドスは。人材不足なのは知っていたけど良く言えば門が広い。悪く言うなら節操がない。そんな感じだった。

 

後妙に距離感が近いのも気になった、此れでは諜報活動がし放題だ。何処かの国が探りを入れる名目で入ったとしても筒抜けになりかねない、内通者の可能性は常に排除しておくべき。何ていう考えも思ったりしてしまう。チェンが事前に情報を寄越し切らなかったのはこういうことも予想してたのかもしれない。それを聞いた上だとロドスに来るかどうか迷っていたから、それはそれとしてチェンには怒ったけど。

 

あとは、まあ所詮大半が素人ということを感じたことぐらいだろうか。武器の扱い方は正直どうでもいい、人には向き不向きがある、戦いが腕っぷしだけで済むなら苦労はない。ついでに戦場での場数もどうでもいい、嫌でも身についてくるものだし、身につかなかったのならそれまでということ。

 

素人……というよりは、大半はただのハリボテと実感したのは実際にオペレーターとして戦うようになってからだった。

 

ロドスの戦い方は軍人のそれとは全くと言っていいほど違う。戦いはなるべく避けるべき、というのが方針だ。軍人上がりのドーベルマンや耀騎士であったニアール等が違反をしたというのを聞いて納得した、軍人に求められるのは冷酷なまでの任務の遂行だ。情なんてだそうものなら数秒後に死んでいるのは自分なんだから。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そういう言う意味でもロドスはぬるい、オペレーターがレユニオンの構成員を殺した後、ブリーフィング終わりにトイレに駆け込んでいた。恐らく吐いたんだろう──情けないにも程がある

 

命の遣り取りをするのは自分と決めただろうに、それとも。殺さず無害化できるとでも思っていたのだろうか?戦いは一度では終わらない、一度でも逃せば奴らは武器を取って仕返ししに来る。その吐いたオペレーターが次の戦場でトランシーバーだけを残して消え去ったように。中途半端な覚悟しか無いのに子供を助けようとして、其の子供が持っていた源石爆弾と一緒に地面の黒ずみに成り下がったように

 

ロドスは甘ちゃんだ、行動原理とか存在の定義とか。そういったイデオロギーの以前に戦う覚悟が薄い、末端だから。というのは言い訳にはならない。武器を持っている以上関係はない

 

そも『救う』ということがこのテラでどれほど過酷なのかは知っているはずだ、それを知らないというのであれば戦場に立つ資格はない。それを知っているのであれば弱音を吐くことは許されて言えない

 

 

そんなこんなしている内にあの作戦が始まったロドスらしからぬ殲滅作戦、それも完全破壊ときた。とうとうきな臭くなってきた、そんなことを思っていれば奇襲にあって部隊が半壊した。

 

ヴィーヴルが三人居てこのざまか、なんてことも思った。サリアは重症で昏倒、もうひとりも戦線復帰が怪しいとまで言われたのだ。

 

そんなサリアが戻ってきたから声をかけてみたら思いの外話しやすかった。もしかしたら、と思って話してみれば案の定だった

 

サリアは私と同じで根っこが冷醒めてるんだ。例のライン生命二人に関してはちょっと違うんだろうけど、ほかはそうだと思う。

 

『そうだな、確かに詰めの甘い所は大いにある。例え元が民間人だったとしても』

 

サリアは一定の理解を示しつつも突き放してくるタイプなんだろう。そっちのほうが余程酷なことだと分かってるみたいだけどね。

 

『……吸うか?』

 

喫煙者仲間が増えたということも少し喜んでいる。なかなか吸う人も少ないし、こういう雰囲気は嫌いじゃない。

 

ただ、サリアの雰囲気が変わったのは感じ取っている。前の合理性と苦悩からくる冷徹さじゃなくて役割を全うするというところから来る非情さだ。そういう意味でも、声をかけようと思った。

 

もしかしたら、今まで抱えていたものが支えきれなくなったかもしれない。先日の経験含めて、確かにあれは考え方を変えるきっかけにはなったかもしれない。だけど此れだけ軟化するだろうか?と思ってたけど。余り気にしてもしょうがない

 

『確かに、ままならないな』

 

あの言葉に嘘は感じなかったから。それだけで理由としては十分、そう思うことにする。疑うことは大事だ、だがそれは排斥しろということではない。履き違えてはいけない

 

──まだ、その時ではない



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File 3.5 lawful lie

久々の投稿




バグパイプと別れた後、とりあえず部屋に戻る。交友関係はあったほうが良いとは言うけれど。それも最低限にしておかないとやばい、幾らあの二人が今は居ないとはいえ、まあまあ危険度があるんだろう。

 

部屋に戻ってアーツに関する理論書は目を通しておくか…そもそも用語自体からの勉強である。そこはどうしても仕方ないので観念するしか無い

 

…なーんて考えてたらもう丑三つ時になっていた。絶賛体調不良中ですはい、いやよくよく考えてみれば結構なダメージ入ってたわ…このダメージ、なんというか変なんだよな。一気に来たような気がするが…まあいいか

 

そんなことはさておき、そろそろ寝る……

 

「……ふむ」

 

朝起きるとそれなりに体が動くことに気がつく。多分元々の体力回復がバカ凄いんだろう。まあサリアさんだしそうなんだろうさ。

 

「とりあえず、どうするものか」

 

珈琲に口をつけながら今日をどうすごすか決めてみるかね、アーツの資料漁りはそれなりに済んできた。となると、やはり訓練あるのみだろうか。昨日あんなことがあったわけだからアーミや達とはあまり合わないほうが良いだろうな

 

さて、行くとしようか

 

──────

 

「ふむ……」

 

とりあえず誰も居ない、となると色々できそうだが…ふむ、射撃場か。そういうのもあるのか、その辺りもやっておけるようになるといいか、そういえば前に注射器みたいなのがあったはずなんだが、あれは部屋になかったな。さて、ちょっとやってみるか…本物の銃は扱ったことないし、触ったこともない。模倣品ならあるけど…まあこれは実弾じゃなくてアーツで動くやつみたいだから問題なさそうなのが救いかね

 

「さて……まあこんなもんか」

 

動かせそう&悪目立ちするようなやつは辞めておこう、狙撃銃はとりあえず却下。あんな専門性のえげつないもの使えるかアホ、動いてるものを確実に当てるのはムリですはい。というわけで拳銃、それも一般的なセミオートのにする。フルオートは引きっぱなしで大惨事になるだろうし、バースト式も良いとは思うんだがここにはなかった。贅沢は言わないでおくとする

 

とりあえず、試し打ち…

 

「へぶっ」

 

………誰も見て無くてよかったわ。ものすげえ反動、なんだこれ…まあいいか。脇締めて。両手で撃てばなんとかなる。とりあえずこれでいい…いや、待て。

 

……おいおい、なんで此処に『こんなもの』があるんだ

 

「これ、あれだよな……」

 

()()()()()()()()M()1()8()8()7()

 

アメリカで売られていた世界初のレバーアクション散弾銃、当時だと確か連射できる散弾銃としては初めてだったはずだ。ゲージは10、別のポンプ式散弾銃と対抗馬にならないように弾薬が少なめに設定されてるらしいやつだ。

 

だが、何でこんな物が転がってるんだ?危なっかしい云々の前に色々と不味い気がする。とりあえず触らないで放置だ放置。厄介事に関わりたくなんて無いんだわこっちは。

 

「とりあえず様になったか」

 

命中率はお世辞にもいいとは言えないが、下手な鉄砲何とやら。県政ぐらいには使えるんだろうが、足腰はしっかりしてるから単に俺が慣れていないだけか。

 

さて、だいぶ長いことやってたからもうお昼すぎ。此処で変にエンカウントすると大分不味いことになりそう。

 

さてさて、こっそりこっそりお部屋に戻るとしようか…後始末はしっかりと。

 

───自室にて

 

 

「さて、お勉強のお時間だ」

 

ぶっちゃけ言語なんてよくわからんが、どうやらテラの世界だと公用語なんてものは存在しないらしい。出身地的にサリアさんはクルビア出身だから英語かなと思ったんだが、なんでかウルサス…ロシア語の論文ばっかりなんだよなこれ、まあそれは良いんだよね、何でか読めるし。流石に論文相当のものはそもそも読めないし解読不可能、んなもん素人にわかるかボケ

 

「だがやらなくてはな…」

 

よくわからん単語は辞書っぽいのを引いて調べるしか無い、やってることは完全に学生のそれだ。まあテラ一年生ということを考えれば仕方がないのだけれども。とりあえずアーツ関連のお勉強はしておかんと不味いのよねこれが。基本となるアーツの範疇、それ以外のものと。後はやっぱり種族的なこととかかな。ヴィーヴルって脱皮とかするんだろうか。龍という特異性を考えるとなさそうなんだけれど。そういうのも覚えておかないと、基礎知識皆無だと色々とまずいったらありゃしない

 

うーん、しかし時間が流れるのが早すぎる。もうお昼すぎ、やばいやばい、とはいえ部屋から出る気もないから。どうしよっかな…やっぱり、もっと勉強するとしようか。知識はいくらあっても問題ないだろう。知りすぎるとやばいこともあるんだけどそれはそれ。

 

よーし、やるか!

 

……………………………

 

…………………

 

……………

 

んお、なんか寝てたみたい。やっぱり詰め込み過ぎは良くないかねぇ。そこまで自頭良くないんだしさ、あと覚えることが多すぎてどうしようもならんのですはい。もう若く…ないのかは分かんねえんだわこれが。年齢はアークナイツ全然公開されてないし。学生とか、だいたい割り出せるのも無くはないんだが

 

はい、現実逃避終わり

 

「………何をしている」

 

「……膝枕?」

 

「何故疑問形なんだ…」

 

目を開けるとバグパイプも顔が飛び込んでくる。寝ている間に侵入されたのもそうなんだが。なんで膝枕されてるのかよくわからん。というか鍵はどうした鍵は。サリアさんの自室は文書の保管とかも色々あるからセキュリティレベルは高めだったはずだぞおい、むむ。これはどうしたものか

 

「どうやって入った。ハッキングか?」

 

「違う違う、ちゃんと正規の手段で入ったよ。ドクターとちょっとお話して合鍵?合カードキー?貰ったんだ」

 

「私のプライバシーはどうなるんだ」

 

「そこは我慢してほしいな」

 

若干ふてくされたように言うとくすくすっと笑いながらぷにぷにと頬を突っつかれる。いやほんとにプライバシーはどうなるんだ。色々と急に入ってこられると困るんだが、変に考え語としてるときに来られると非常にまずかったりする。というかそろそろ膝枕をだな……まあいいか

 

「ほら、そっちのほうが色々と便利でしょ?こっそり会いに来るのもできるし。何かあったら相談とかしたいしさ。ね?」

 

「はぁ……良いだろう。理解はしておく。納得はしないが」

 

確かに、そういう意味だとあったほうが良いんだろう。良いんだろうけど前にタバコ吸ったの部屋でも良さそうではあるんだが。それだとセキュリティと言う意味で何枚か落ちる。コルテラルダメージと思うしか無いなこれは

 

「ん、ありがと。これ私のカードキー」

 

「…受け取っておく」

 

そう言われてバグパイプのカードキーも受け取っておく。…まあ、そろそろ膝枕から脱出せねば。アングルがちょっとよろしくない。意外…というわけではないが、有るからねバグパイプも、当たるんだ。だけどなんか起きてほしくないのか手で抑えられてる。何故

 

「…何故手をどけない?」

 

「いや、こういうの好きなのかなって」

 

何でそうなるんだ…いやまあ。体勢としては楽なのは間違いない。間違いんだがちょっと精神的にな

 

「別にそういうわけではない、そもそもその先入観は何処から来たんだ」

 

「あの二人との関係性から?」

 

「…そうか」

 

なるほど、そこからか。そうなら全くもって否定できん俺もそう思うもん。絶対サイレンスとはそういう感じだと思うもん。他所から見るとね

 

「…嫌いだった?」

 

「そういうわけでは…むぐ」

 

一応傷つけないようにそうじゃないというとそのまま膨らみで顔を覆い隠される。正直息ができないだけなので丁重にお断りさせてもらうしか無い

 

「やめろ、窒息死させるつもりか」

 

「そういうわけじゃないよ?」

 

「じゃあなんだ?」

 

「…ハニトラ?」

 

「私は女だ、そしてそれをしてくるのは相手のスパイだぞ。信頼関係を崩すようなことを言ってどうする」

 

「それぐらいで崩れるとは思わないけれど…あたっ」

 

反省してないバグパイプにとりあえずデコピンして起き上がる。どうやら昼食を持ってきてくれたらしい、バスケットの中にサンドイッチらしきものが入ってる。結構痛かったのかのたうちまわってるバグパイプを尻目にムシャムシャと

 

「痛いんだけど!ちょっとは加減してほしかった!」

 

「ただのデコピンだ、加減など無い。そして有り難く頂いている、美味しいぞ」

 

「だったらパワーを考えてほしいなぁ…!どういたしまして!」

 

怒ってるんだか嬉しそうなんだかわからんバグパイプにお礼を言いつつサンドイッチを口に運ぶ。ちょっとぶーたれつつバグパイプも一緒に食べ始める。どうやら私と一緒に食べるつもりのようだ。

 

「それにしても、どうして急にこんな事を?ただの差し入れというわけでもあるまい」

 

サンドイッチをあらかた片付けつつ。珈琲に口をつけながら問いかけてみる。純粋に差し入れ、というのも一瞬考えたのだが。この状態のバグパイプにそれはないかなと思ったのだ、本来の彼女ならどちらかというと食堂に引っ張り出すことをしてきそうだし

 

「んまあ。差し入れは口実かな。本命は…此方」

 

…なるほど。そういうことか。

 

「今の状態のサリアから目を離すと。何してるかわかんないうちにぶっ倒れてそうっていう話をドクターにしたんだ。そこで私がある程度助けるからーっていつもの感じで」

 

「そこで私の部屋に入ると言うことに違和感を無くすか」

 

「そういうこと、まあ私のカードキーあげたのはあんまり意味無いんだけどね」

 

 

…やはり相手も抜け目なさそうだ

 

 




ちょっとサリア×バグパイプでR18書こうとする欲が出てしまった


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ギャグパート
第一話 不憫って? ああ、それってサリアさん


見切り発車

続かない


(…なんだこれ)

 

目が覚めると知らない天井…いや、見たことはある。というか死ぬほど見たこれはあれだあれ

 

(()()()()()()()()())

 

アークナイツ、Yostarから配信されてるスマホゲーム…いわゆるソシャゲだ。

 

ストーリーの内容が救いがなかったりもやもやしたりするけどそこを評価するプレイヤーは非常に多かった。プレイスタイルもかなり幅が広い。ただのゴリラドラミングナイツから1マス固定で戦う1マスナイツ、オペレーターを代わる代わるエクスチェンジしまくるリレーナイツ、一番やべーなのは補助オペレーターオンリーの補助ナイツだったかな、あれはヤバイって。

 

俺は至ってフツーのプレイヤー、掘りイベントで大体素材を200~300位集めて、昇進2したオペレーターは30人位、特化したオペレーターが15人いるかどうかって言う位のただののんびりプレイヤー。そして龍門はすぐなくなる、お金は儚い…

 

そういえば確か寝落ちしてたんだっけか…CE5あと40回んなきゃいけなかったのに。これは失敗した。せっかく新しい☆6オペレーター手にはいたってのに、素材も万全で龍門もたm…そういえば他のオペレーター育ててなくなったんだっけか。南無三

 

(……そういうことじゃないな今は、うん)

 

とりあえず状況確認…状況確認…状況…確認…

 

「…………」

 

──────おかしい

 

そう、感覚がおかしいのだ。俺はただのヒューマン、人間、アークナイツ的に言えば滅んだ種族、てっきり俺はドクターになるのかと思った、だって…ね?大体こういう場合ってそういう感じじゃん?

 

だけど

 

──ゆらゆら

 

(尻尾があるうううううううう!!しかもよく見るやつうううううううう!!!!)

 

本来備わっていない物を動かす感覚ってのはかなりアレな感覚だ、こう…変な気分になる。うぅ………

 

そして恐る恐る頭に手に触れてみる、一類の望みをかけた。もしかしたら、もしかしない可能性もある。多分☆6オペレーター3枚抜きする可能性ぐらいはあると思う。多分、きっと、メイビー………

 

(左右に…角が二本─────)

 

終わった。

 

俺の人生は終わった────

 

もう顔を確認しなくてもわかる、というか最初からわかっている。尻尾を見た時点でもうわかっていた、というか確定だった。

 

だが、待ってほしい。もしかしたら、クローンとかそっくりさんの可能性もある。そこは…いやないか、観念して鏡に向かう。

 

 

(──デスヨネー)

 

そこに映っていたのは──変な笑顔を浮かべていたヴイーヴル──アークナイツ過労死ランクNo.1。重装オペレーターサリアだった

 

☆6オペレーター サリア

 

素質で時間が立てばステータスがノーデメリットで上昇。おまけに回復したときにオペレーターのSPを1回復するアホみたいな素質。こっちもノーデメリット

 

S1は高難易度で光る、医療重装オペレーター…いわゆる医療盾の標準的なスキルではあるもののサリアの高い攻撃力から放たれるそれは一気に全快するレベルで高い

 

S2はS1よりも回転数、回復量より落ちるものの、味方全員回復する。だが回復範囲は広く、同時に回復できる人数に制限が無い。これがめちゃくちゃ強い、これもノーデメリット、チャージはできない。出来たら回復はサリアオンリーでいい。それぐらいヤベースキル、初期でありがちな調整ミスレベル。S1よりも回復量は少ないけどそれでもかなり回復する。編成でも医療オペレーター1、2人の医療オペレーターを省ける、というか回復はサリアだけでいい場合もある。密集陣形の場合本気であり得る。ブロックも昇進1で3になって敵を止めつつ重装の中でも素の攻撃力が高いので削れるし回復するわでサリア一人で3人分の働きをしちゃう場合もある

 

S3味方に継続+術耐性ダウン&減速の複合スキル。危機契約でよく見るあれ。なんか周りにとんでる、俺はシールド◯ァンネルっぽいと思ってた

減速で敵の進行を食い止め、術耐性ダウンでエイヤのバーニングファイヤーやイフリータのBBQなんかを補助して敵を撃滅しつつ。フィリオプシスのエンケファリンもビックリな回復速度で盤面をひっくり返すアホみたいなスキル。危機契約はサリアS3の有無で難易度が激変する。しかもこっちも減速、術耐性ダウン、回復の人数制限がない。アホか(誉め言葉)

 

という感じでサリアは激強オペレーター。大陸…本家アークナイツでもいまだに現役。というかサリアの代用が一切いないので仕方ない、というかいたらゲームバランスおかしくなる。インフレ待ったなし!

 

なのでよくサリアは「スキル全特化推奨」だの「サリアはS1とS2とS3でそれぞれ分裂してこい」とか「サリアS2は強いけどサリアが持ってくることが一番のデバフ」何て言われてる。あげくのはてには「サリアは強いけどサリアであることが一番の制限」とも。

 

言わんとしてることは分からんでもない、だってサリアつえーんだもん…本当に分裂して?…いや、今は俺がサリア(仮)だから分裂したくない。

 

サリアは強さは一級品だけど…もうひとつ話題がある。

 

それは…駄目パパである。

 

いや、女だからパパじゃないだろ?って思うじゃん?でも、サイレンス(嫁)がいてイフリータ(娘)が居たりする。うん、おかしい!

 

───現実逃避は此れぐらいにしておこう、うん。状況はちっっっっっっっっっっっとも変わらないんだから仕方ねえ!

 

(──というかサリアさん(真)はどこ行ったし)

 

少なくとも今は特に変わった感じはしない。いや、女の体からかなり…その、あれなんだけど。トイレとかどうしよ…シャワーとかも大変そうだなぁ。心頭滅却して耐えねばならん。これなんてクソゲー????

 

サリアさん(真)、俺のなかに残ってるならできれば表…表なのか?わからん。とりあえず表に出てきてほしいんだが、どうやっても俺がこの過労死ナイツを生き残れる気がしないんだけど!!!!

 

…というか。サリアさん(真)が表に出てきたら俺どうなるんだろ、やっぱり消えちゃうのかな?夢オチでしたー…ってのが理想なんだけどそれはあり得んからな。だって感覚が生々しいんだもん。なんかサリアさんの体から薬品の匂いするんだもん、ぐすん。

 

そういえば、俺の──いや、サリアさんの体で声とか出したことなかったな

 

「あー…あー…」

 

──やだ、イケメン………

 

我ながらうっとりしてしまう。やっぱりサリアさんの声は良いよなぁ。くっそカッコいい、なんというか凛々しいよな。

 

そして──やっぱりこれをやんなきゃ行けないよな!!!!せっかくサリアさんの体になったわけだしさ!!!!

 

 

「───ここは安全です!(無表情+低音ボイス)」

 

決まった─────

 

やっぱりこれやんないと駄目だよね。だってハイビスカスとサリアさんの声一緒だし、いや初見は絶対気づかないけど。それはそれ、やりたかった。後悔はしていない。

 

とりあえずサリアさんの部屋(っぽいところ)から出てきた、あそこにずっといてもなにも変わらない。というかあそこにずっといたら変なことしそうで怖かった。

 

「……どうしたものか」

 

声を出すとサリアさんの低音イケボで出てくるから困り者である。早くなれないといけないけどこれは当分馴れそうにない。

 

そんなこんなで食堂へとやって来た。腹は空いてないけど、なにか食べないと不味い、そんな気がした

 

「───?」

 

なにやら視線が此方に向かっている。名前の知らないオペレーターからネームド持ちのオペレーターまで。

 

ただ、その視線がちょっと腫れ物を見るような─いや、同情しているような眼差しだ。よくわからなくて首をかしげる

 

───ドドドドドド

 

なにやら通路の方からとんでもない足音が聞こえてくる。なにやら非常事態なのか?そのわりにはオペレーターは出払ってる感じはしない。テンニンカがご飯食べてるのがそれだ、テンニンカ抜きは辛い。とても辛いのだドクターは

 

そうこうしていると───

 

「すみませんでしたぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

──黒づくめのドクター(変態)がスライディングジャンピング土下座してきた。

 

これは…なんという完成度…!丁度此方の足元の手前に来るように速度計算をして、滑空時間も計算され尽くしている。これがドクター…!(※能力の無駄遣いです)

 

─────────────

 

「ドクター!館内を走り回らないでください!お仕事増やしますよ!」

 

「そ、それだけはご勘弁を!CCO様!」

 

「CEOです!」

 

「企業代表取締役!?」

 

「わざわざ言い直さなくて結構です!」

 

それから少ししてCEOことアーミヤがやって来た。スライディングジャンピング土下座を繰り出したドクターをハリセンで叩いている。どこから出したんだろあれ、そしてスッゴい痛そう、あと漫才のキレが凄まじい。日常茶飯事っぽいな、誰もドクター助けない

 

「状況がよく分からないが…とりあえず騒ぐのを辞めろ。埃が舞う、それが料理にかかる、そしてその漫才は他からしたら騒音だ。ここを食堂だということを忘れるな」

 

「す、すみませんでした」

 

「申し訳ない………」

 

とりあえず二人を落ち着かせる。サリアさんの言い回しはキツイ感じが大事なので言ったけど、二人とも凹んでいる。そりゃサリアさんの低音イケボで静かに怒られれば怖いわな、それはしゃーない。俺だって凹むだろうしその場から逃走すると思う

 

(良心痛むなこれ………)

 

やれやれといった風に頭を振る──ポーズを取る、うん。俺はなんとも思ってないけど二人はそうじゃないもんな

 

「──入り口に居座るな、席に座るぞ。ゆっくり話もできない」

 

──周りがどよめいた

 

え?なんかやらかした?サリアさんってかなり厳しい感じするけど優しいときは優しいと思うんだけど、もしかしてサリアさんロドス着任して間もない感じ????

 

「──────」

 

「──────」

 

「──────」

 

『─────』

 

(なにこれ気まずいんだけど)

 

とりあえず席に座らせて軽い軽食を頼んでいる、俺はコーヒーだけ。なんとなく飯を食ってる場合じゃない気がする。どうやら余人に聞かせたくないのか人払いをしていた

 

「───話があったから来たんじゃないのか?」

 

とりあえず此方から切り出さないと駄目らしい、そういうとドクターはしこたま居心地が悪い様子を取る、アーミヤはそんなドクターを肘撃ちして発言を促す

 

「サリア、からだの方は…大丈夫か?」

 

「体?なんのことだ?」

 

おずおずといってきたドクターに片眉をあげる。サリアさんの体は至って健康体だ、あんだけ戦場に駆り出されてるのに全然疲れとか残ってない、すごい

 

「なんのことって…作戦中に敵のアーツから私を庇ってぶっ倒れたんだが」

 

え、マジ?初耳なんですけど。そんな風にしているとアーミヤが説明してくれた。

 

いつも通りに作戦をやっていた

異常事態が発生して撤退を余儀なくされた

ドクターが狙われた

サリアさん(真)が庇ってドクターは無事。でも当たり所が悪かったのかサリアさんは昏睡

数日間目を覚まさなかったけど今日起きて医療室から居なくなってて慌てて探しに来た。

 

 

という感じらしい。わあ…サリアさん行動もイケメンだった。というかあそこ医務室だったんか…それに道理でサリアさんの体から薬品の匂いがしたんだな

 

「というわけなんだが、「ドクター一つサリアさんに質問しても良いでしょうか?」なんだアーミヤ?」

 

アーミヤがドクターの会話を横切る。やべ、アーミヤって心読めるんだっけ、かなり不味いんじゃねこれ?

 

「サリアさん、記憶はございますか?サリアさんの雰囲気がいつもより柔らかいと見受けられます」

 

核心をついてきたぞこの娘、やっぱり魔王だわ…

 

「───隠し事はアーミヤには通用しないらしい」

 

俺がため息をつけばアーミヤは納得顔をしつつ、ドクターは頭を抱えた。そりゃそうだよな、サリアさんの記憶がぶっ飛んで使い物にならないって考えると頭も抱えたくなるわな。

 

「サリアさん、今現在覚えていることを教えてください」

 

「私の名前はサリア、元ライン生命所属。ロドスには─摂理を踏み外した者を正すため協力している。アーツはカルシウム系のアーツ…残念ながら覚えていることはこの程度だ、今の情勢。日時、レユニオンの進行状況等は覚えていないようだ」

 

公開されてる情報だけをとりあえずのべておく、プロファイルで出されている情報はあまり出さない方が良いだろうしな。

 

「イフリータとサイレンスののことは覚えているか?」

 

ドクターが言葉を投げ掛けてくる。これも大事なことだ

 

「───あまり覚えていない。ただ一つ覚えていることは。あの二人には酷いことをしたということだけだ」

 

目を伏せて沈んだ声で言葉を投げた。半部演技だが半部本音だ、サイレンスとイフリータから向けられる感情はぐちゃぐちゃしすぎてゲーム内でもあまりよくわかってないんだ。

 

ただ、そこは重要じゃない。重要じゃないんだ

 

 

「ただ──()はあの二人に顔を合わせる資格はないことだけは覚えている」

 

そう、俺はサリアさんじゃない。サリアさんに一時的に乗り移ってるだけなんだから。本人じゃない俺があれこれ言うのは間違ってるし、今は覚えていないことにした方がいい。それがいい

 

────ドクターside

 

「──サリアさん、気落ちしていましたね」

 

「あぁ…仕方ないだろう。記憶がぶっ飛んでるようだし」

 

アーミヤと二人、廊下を歩きながら会話をする。サリアはどうやら気が滅入ったらしくコーヒーに一口飲んだだけで部屋に戻った。部屋の場所を教えようとしたが

 

『それぐらいは覚えている』

 

そういって部屋に戻った。本人からしてみたら私達が思っている以上に応えているんだろう、気落ちするのも無理はないし一人になりたいのも当然だった。

 

「サイレンスさんとイフリータさんのことも…ほとんど覚えていない様子でした。彼女の言葉からは嘘は感じられませんでしたし」

 

アーミヤがそう言葉を漏らした。どうやら嘘をついていないか、アーツに操られていないかずっと探っていたらしい。こういうところは抜け目がない、さすがCEOである。

 

最初はアーミヤは疑っていた。あのサリアがそんなちゃちなものにかかると私は思っていなかったら私は信じていたのだが。アーミヤが嘘をついていないと思ったのはサリアのあの一言だった

 

『───あまり覚えていない。ただ一つ覚えていることは。あの二人には酷いことをしたということだけだ』

 

『ただ──私はあの二人に顔を合わせる資格はないことだけは覚えている』

 

あのときのサリアはまるで罪人のようだった。長年隠し通してきた罪状を告白するようだった。遠い誰かに──多分サイレンスとイフリータだろう──懺悔をしているようだった。

 

朧気ながらも二人に対して罪の意識がある。でもどういうことをしたのか覚えていない、だけど何かしたのを覚えている。とても酷いことをしたという罪状だけが残った、そんな風だった。

 

ドクターは今のサリアの気持ちが心を覗いたアーミヤよりも理解できている自信がある。私も記憶がないのだ、だが過去に私がやった罪状だけは残っている。罪状というよりは業、というべきだろうか

 

「アーミヤ。サリアの記憶の消失のことはくれぐれも機密に頼む、今はそっとしてあげたい」

 

「はい、ドクター…」

 

アーミヤの尻尾と耳が垂れる。この子も優しい子だ、おそらくサリアのあの言葉が残っているのだろう。もし自分がそうだったら…そう考えているに違いない

 

「──今度は私が助ける番だ」

 

元はと言えば自分の行いのせいなのだ、サリアがああなってしまったのは…そう思いながらサリアの力になることを誓うドクターだった

 

 

 

 

 

 



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第二話 アーツは魔法ではありません

続いた


「これからどうしたものか…」

 

俺の──サリアさんの自室に戻り、ベッドに横になりながらため息を漏らした。ドクターとアーミヤは何とかかわせたが他のオペレーターに言えるはずもない、多分だけどあの話はあの場の3人だけの機密事項になるだろう。

 

それはそうと一人のときもサリアさんっぽい言い方で話すようにしている。どこで聞かれているか分かったもんじゃない、日頃から馴れとかないと。ただ低音+イケボなのはどうしても慣れない。うーんどうしたものか

 

(それに、一つ気になってることがある)

 

サリアさんは何時から配属されてるんだろ。これは知っとかなきゃ不味い。新入りだったらまだいい、だが古参だった場合はオペレーターとの関係性とかが大問題。長くいればいるほど会話も増えるだろうし。サリアさんは戦場に駆り出されること多いだろうしな

 

そういう感じで対人関係については不安がすごい残ってる。コミュニケーションは不得意な方ではない、仕事かやってれば愛想笑いする場面なんて良くあるし。

 

(まあ、一番の問題は────)

 

───コンコン

 

『アーミヤです、サリアさん。お時間宜しいでしょうか?』

 

ドア越しに声をかけられる。なんだろうか、アーミヤ一人…というわけではないらしい。そんな感じがする、多分ドクターだろう

 

「構わない、今から出る」

 

身支度っていう身支度はする必要ない。サリアさんの普段着って呼べるものはどうやら無いらしい、仕事一筋なサリアさんらしいや。

 

「すまないサリア、呼び出してしまって」

 

「いや、構わない。やることも…特に無いからな」

 

「…そうでしたか」

 

申し訳無さそうにしてくるドクターにそう返した。だってやることないんだもん、サリアさんの部屋は殺風景だし、あったとしても難しそうな論文。なにかわかんない怪しげな箱、極めつけはよくわからん図面みたいなもんだった。俺はなにもわからん、故にスッゴい暇だったんだ、助かる。

 

だけどアーミヤがさらに申し訳無さそうにしてくる。どうして?あ、やっぱりサリアさんの口調だとキツく感じたり、含みを感じるんだろうな…気を付けねば。でもサリアさんが言いそうなことを言わなければならない、俺の語彙力じゃ無理じゃんよ、ぐすん。

 

「ところで、何処に向かうんだ?」

 

訪ねて来た二人にそう問いかければ、ドクターが話を切り出してきた。

 

「サリア、アーツは使えるか?」

 

───ロドス館内、訓練所にて

 

『設備の準備完了しました。いつでも初めてくださいね』

 

薄い透明な防壁越しにアーミヤが声をかけてくる。限られたオペレーターしか使うことのできない施設だ。セキュリティレベルも非常に高く生半可な侵入では逆に侵入した方のデータをすっぱ抜けるレベルで高いとのことらしい。なんでそんなところでやっているかというと。サリア()がほとんどの記憶を失っていることはまだ機密事項だ。自慢ではないがサリアさんはめちゃくちゃ強いし頼られてる、頭もいいし。多方面に影響が出かねない。何せ中にいるのが戦闘経験どころか殴り合いもしたことない一般ピーポーなのだから致し方ない。いや、現実で格闘技とかやっててもテラの大陸は魑魅魍魎の化け物しかいないから通用しないと思うけど。

 

アーツ、アーツの発動か。これが一番の問題なんだよな…えーと、サリアさんがアーツを使うときに言ってたのは…たしかこれだったな

 

「──凝固しろ」

 

さあ、上手くいくか!?

 

「────」

 

『───』

 

シーン…………

 

(──やっぱり使えないですよねええええええええ!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!)

 

俺は心のなかで絶叫した、当然だよな。ただの一般ピーポーがアーツ何て使えるわけ無いんだ!いや、正確には使い方が分からないといった方がいいんだろうか……

 

アーツ適正というのは先天性と後天性がある。先天性は生まれながらにして持ってる物だ。後天性は…オリパシーに感染した場合に発現するものである

 

サリアさんは勿論先天性である、しかもサリアさん実は本来のアーツの使い方ではないらしい。やっぱりすごいよ…。

 

というわけでサリアさん自体はアーツが使えるんだが…肝心の俺が使い方が分からないと言う残念っぷり。いや、普通に考えてアーツなんて意味不明なものを使えるわけないんだけどな。だってあんな摩訶不思議な謎パゥワーなんて使い方分かるわけないやろ!!!!(魂の叫び)

 

そう考えながらも何度か試してみた、アーツユニットらしきものを起動してみた(ボタン押しただけ)けど、なんの反応もなかった。ぶっ壊れてるんじゃね?と思ったけどしっかり動いているらしい。デスヨネー…

 

(───ドクター達の視線がいてぇなぁ)

 

じっとこっちを真剣に見つめてくるドクターとアーミヤの視線が非常に痛い。そりゃサリアさん(真)なら数日寝込んだだけじゃアーツが使えなくなるわけないもんね。俺が一般人ピーポーで申すわけない、思わず泣きそうになったけど泣くわけには行かない、サリアさんは強いもん、泣かないもん。強い子だもん、ぐすん。

 

(ごめん、やっぱりつれぇわ………)

 

メンタルよわよわな俺は思わず片膝をついてしまった。ヴイーヴルは決して膝など着かぬぅ!…俺はおもいっきりついてるんだけどね……

 

(どーしよ、これ)

 

ため息混じりに冷や汗をかきながら落胆してしまった。

 

ドクターside

 

「設備の準備完了しました。いつでも初めてくださいね」

 

アーミヤの声を聞いてサリアが静かに頷く。病み上がり後のメディカルチェックと称してサリアをつれてきたのだが、本当の理由は別にある。

 

─────時は数十分前に遡る

 

「──脳に異常が見られる?」

 

『あぁ……』

 

ケルシーから伝えられたことに私は思わず首をかしげる。脳に異常があれば何らかの形で表に出てくるはずだ、会話の方はしっかりと成立していた。おそらくは記憶が失われていることについてだろうか…そんな風にケルシーから説明を受ける前はそう思っていた。

 

だが実際はそれ以上に深刻だった。

 

「おそらくだが、サリアは今後───────」

 

ケルシーから聞いた言葉に思わずよろけて壁にもたれ掛かってしまう。脳が理解を拒んで極度の目眩がしてしまった

 

「…ドクター、責任を感じるな。とはいはないが医者として言わせてもらうとすれば─────」

 

ケルシーが淡々といった言葉はおそらく金輪際忘れることはないのだろう。

 

───そして現在

 

サリアはアーツユニットを持ちつつ、()()()()()()()手慣れた様子で準備をしている。どうやら体に染み付いている動作は忘れていないようだ。だが──問題はここからだ

 

『──凝固しろ』

 

サリアがいつものようにアーツを使用するときに発する言葉を言ってユニットを起動させる、この発声も何気に大事なようでほとんどのオペレーターは無言での起動が極めて難しいようだ

 

(……ダメか)

 

サリアがアーツユニットを起動させても何も起こらなかった。彼女のアーツは回復型のアーツであり、負傷者がいなければ意味がないのだが発動したかどうかはわかる。

 

ゆっくりとアーミヤに視線を送るも無念そうに首を横に振った、機器でも計測していたのだがほんの少しも計測結果がでなかったようだ。

 

『────────』

 

障壁越しにサリアが何度かアーツユニットの電源を切り替えている、故障しているのかと思っているのか。若干の焦りが見えている、さすがに数日でアーツが発動しないなんてことはないと思っているのだろう、実際そのはずだ。

 

だが、結果は非情である

 

『───』

 

「ドクター、計測中止します!」

 

サリアが脂汗を流しながら片膝を着いたところで計測を中断する。もしかしたら此方が把握できない後遺症が彼女を蝕んでいる可能性があることを考えれば慎重に動かねばならないからである

 

──サリア(偽)side

 

『…………………………』

 

なんか分からんけどいきなり計測が中止された、俺が片膝ついたのと冷や汗かいたのが不味かったらしい。どう見てもサリアさんがやりそうにないよね、というわけで暇になりました。

 

(──何しよっかなぁ)

 

さて、困ったZO。サリア(真)さんなら普通に戦線復帰できるんだろうけどなぁ…この様子じゃ戦線復帰なんて出きるわけないし、むしろ俺なんかがなんかの役にたつわけないしで…しかも俺に難しい研究なんて出きるわけもなく。

 

──あれ?俺ただの穀潰しじゃね?

 

「…………」

 

無性に長い帯状の物がほしくなった、天井から伸ばして首にくくれるやつ。まあやらないけどさ、俺の体じゃないし

 

「…とりあえず自室に戻るか」

 

ドクターからサリアさんの普段の状況を聞いてみた。

 

ざっくり言えば。

 

・現在はレユニオンとの小競り合いは終わってない。

 

・なんか知らんけどオペレーターが時系列を無視してもういる、Wが何故かいるらしい。爆弾魔ぇ……

 

・オペレーターの総数はかなりのもんだけど一部居ないオペレーターが居るらしい

 

とのことらしい。ちなみにサリアさん(真)の状態は

 

・普段は自室に籠って研究ばっかりで作戦以外で見たことがない一般オペレーターが大半

 

・ワーカーホリック

 

・オペレーターとしては古参、でも交遊関係はほぼ無いに等しい

 

サリアさんぇ…俺としてはこう、楽でいいんだけど…ねぇ?ボッチじゃんかサリアさん。仕事一辺倒だからイフリータとかとまともにコミュニケーション取れないんだぞ。だから食堂での一件で周りがどよめいたのか

 

ちなみになんと

 

サイレンスとイフリータは居ないらしい。居ないと言うか他の方に手伝いに行ってしばらく帰ってこないそうだ。これに関しては本当に良かった、絶対ボロが出る

 

これで一安s「珍しいですね、サリアさん」できなかったわ…………

 

後ろから声をかけられて億劫そう(本当は声をかけられてどうしようか焦っている)に振り向けば……

 

「………フィリオプシス」

 

ライン生命の元データアナリストであるフィリオプシスがそこに居た。

 

「メディカルチェック中との事でしたが。もうお済みに?」

 

「…ああ、メディカルチェックは終了して自室に戻るところだ」

 

「サリアさんがオンラインになるまでおそよ4日程かかっていましたので」

 

「…そこまで眠っていたのか。私は」

 

「それはもう…いびきをかいて」

 

「………」

 

「冗談ですよ」

 

「冗談か……」

 

「はい」

 

「ならいいんだ──「ですが寝起きの際に見かけた時は髪が爆撃されたと誤認するほど弾けていました」──何故それを知っている!?」

 

「聞いた話ですので」

 

「そ、そうか…気を付けなければ」

 

フィリオプシスは機械的な言葉遣いだがユーモアも持ち合わせているのを知っている。会話は…案外しやすい方なんだろうか。冗談が一々あれなのが心臓に悪いが

 

「────────」

 

「……私の顔になにかついているか?」

 

じっとこっちを見ているフィリオプシスにたまらず声をかける。もしかして今でも髪の毛がボンバーしてるのか?いや、それはないか…ないよな?うん

 

「いえ、データを更新していました」

 

「…ふむ?」

 

フィリオプシスのいうデータベースとはおそらく印象とかそういうものだろう、更新したってことは…どういうことだ

 

「サリアさんは実は話しやすい方なのだと」

 

「あぁ…なるほど」

 

コミュニケーション不足のサリアさん(真)は堅っ苦しい奴ってイメージあるんだろうな。俺もあるわ

 

「今日は有意義な時間でした。それでは失礼します」

 

「そうか、研究は程々にな」

 

「サリアさんが発言すると説得力が格段に上昇されます」

 

「…そ、そうだな」

 

そんなこんなでフィリオプシスは去っていった。まあサリアさん(真)はずーーーっと研究ばっかりだろうしなぁ

 

さて、部屋にもどっか



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3話 ご飯は粗末に扱ってはいけません

なんか続いた


あ、この話以降の感想はサリア(偽)が返します

サリア(偽)「アイエエエエエエ!?」


「…夢オチでしたということにはならなかったか」

 

メディカルチェックという名のアーツ測定が終わった後、自室に戻って考え事をしようとしたらなんか寝ていた。やっぱり昏睡から目覚めた後は体力が落ちてるのか、単なる気疲れなのかすぐに寝ていたらしい。起きたらAM4:40だった。サリアさん早起きですねぇ…

 

朝目覚めたら夢オチでしたーってことじゃないらしいのはショックだった。

 

まだ少し時間がある…どうしたもんか。

 

(アーツ使えなかったのはショックだったなぁ…)

 

サリアさんの激ヤバアーツさえ使えれば、研究と称して引きこもり、以前のサリアさんとほぼ変わらずに生活できたってのにさぁ…はい、俺のせいです。本当にごめんなさい。

 

着替えて、その他もろもろしてたら7時を回っていた。そろそろ部屋から出るかな…なんて思ってたらインターホン押された。ロドスの部屋ってインターホン式なんだな。知らんかったよ

 

「サリアさん、おはようございます…昨日はよく眠れましたか?」

 

アーミヤが起こしに来てくれたようだ。多分昨日の様子から見て心配してくれてたらしい。なんだこのいいこ、ブラックCEOとはなんだったのか…あれは悪ーミヤだったんだなきっと。きっとそうにちがいない。きっとそうだ。レユニオンのプロパガンダなんだな

 

「…やはりお体の様子が?」

 

そんな風に思ってるとアーミヤが心配そうに見上げてくる。少し自分の世界にトリップしてたみたいだ。悪い癖だぜ…

 

「ああ、大丈夫だ…心配してくれてありがとう」

 

そういって薄く笑うとアーミヤの耳がピコピコ動いている。よし、お気に召したようだな

 

「…立ち話もなんだが、朝食でも食べに行くか?」

 

「…!はい、是非!」

 

なんとなく行けそうな気がしたのでアーミヤを誘ってみたところ、何だか分からんけどすごく嬉しそうにしてくれている。うん、良かった良かった…これもサリアさんの日頃の行いのお陰か…?

 

───

 

そんなこんなで食堂へとやって来たわけだが…

 

「………………………」

 

「~♪」

 

『……………………』

 

なにこの状況?いつものサリアさん顔(だと思う、だと思いたい)してるサリア(偽)となんか知らんけど上機嫌なアーミヤ、尻尾までゆらゆら揺れてる。何でこんなに上機嫌なんだろ?わかんねぇ…

 

問題は遠巻きに見てるギャラリー連中だよ、なんだよその珍獣を見る目!はい、珍獣ですね。間違いない(確信)

だって普段引きこもってた人がいきなり二人で朝から食堂に出現とか注目されるに決まってるんだよな。何故一緒に来たし。親睦を深めるためだよ(適当)

 

まあいいや…そんなこんなしているうちにテーブルにつく、何故か上機嫌なアーミヤがこっちの朝食まで取ってきてくれるらしい。パシリじゃないよ?パシリじゃない、あの子が自発的にやってくれてるんだ

 

──ヒソヒソ

 

──ヒソヒソ

 

絶対に何か言われてるよ…絶対に何か良からぬこと言われてるよ…これ、サリアさん(真)出てきたときヤベーんじゃねえの?大丈夫じゃないよね?ダメですねはい…

 

「………………」

 

朝イチから憂鬱なのはどうにかならんか…どうにもならんか…ならんよなぁ

 

「…はぁ」

 

これが食堂の中央だったらデストローイ確定だったけどテラスみたいなところの端っこだったからまだ即死ではない、致命傷だけど。

 

ロドスの食堂はいつもとちょっぴり変わっていた。一般のオペレーターから外部協力者までとある人物を

 

そう、サリアである。作戦行動にサリア有り、危機契約にサリア有り。どこにでもいるのがサリア、でもどこにでもいないのがサリア、そんな生きる都市伝説みたいなもんがサリアなのである。

 

そんなサリアが自室から作戦でもないのに出てきており。あまつさえアーミヤと一緒だと言うことにオペレーターではない非戦闘員まで興味を隠せないでいた。此処にライン生命出身のオペレーターが居ないことは不幸中の幸いだろうか

 

そんなときである

 

サイレンが鳴り響いたのだ

 

「なんだ、何事だ?」

 

ただならぬ雰囲気にサリア(偽)もシリアスモードになる。もしかしたら、はじめての実践になるかもしれないのだから

 

そう思っていたときである

 

「全オペレータへ、厨房で非常事態だ。容疑者は女性、153cm、髪は紫、無意識テロリスト、劇物の製作者だ」

 

…はい?

 

え、え?どゆこと?厨房で非常事態とかどういう───

 

なんだかわからない状況に内心目を白黒していると…

 

「───っ」

 

すさまじい異臭がした。無意識にサリアさんのからだが飛び退いたらしく、かなりやばい状況らしい。オペレーターも職員も蜘蛛の子を散らすように逃げていた。

 

 

だが、どうやら逃げられていないオペレーターが居たらしい

 

「これ一体何なのよ! ……ああぁ!異臭はする、パイシートは生焼け、私は拉致られる、劇物処理を手伝えなんて突然メチャクチャは言い出す。かと思ったら人を(飯)テロに巻き込んで大勢死人(胃が壊れた)は出す、挙句はハイビスカスを持ち上げる。あんた人間なの!?お次はメインディッシュときたわ。ラヴァが、劇物を撃とうとしたんで助けたわ。そうしたら私まで食べさせられる身よ!一体何があったのか教えてちょうだい!」

 

「駄目だ」

 

「駄目ぇ!? そんな! もうやだ! 食べたくない!」

 

………………………

 

どうやらハイビスカスが劇物を作ったらしいんだけど、それをブレミシャインが食わされている様子だ。あ、ニアールさんも居る。ブレミシャイン、半べそかいてるよ…よっぽど不味いんだろうな。なんというかブレミシャインは半べそが妙に似合う、それとなく巻き込まれ属性で。それとなく貧乏くじ引きそう

 

「…うぷっ」

 

ニアールさんがニアールさんらしからぬ声を出したな、よく見れば顔が若干青い。ニアールさんのメンタルでもキツいんか…メンタルがキツイというよりはあれか。不味すぎるだけなのかも、それも十分キツイが。頑張れ輝騎士、負けるな輝騎士…!姉妹ともども不運だったのかなぁ

 

 

ん?もう一組居るぞ…?

 

「や、やって見せてよ。ドクター…!」

 

「な、なんとでもなるはずだ…!」

 

「胃薬だと…!?」

 

どっかの環境テロリストみたいなこと言いながらプルプル震える手でブレイズ、ドクターも食べてた。ドクターはともかくスパルタ、スパルタ、スパルタがすべてなブレイズがダウン寸前なのか。無理するなよ…てかケルシー先生なにしてんすか。あんたそういうことするキャラじゃないでしょ。胃薬持ちながら震えてるんじゃないよ。なにそのお前になら負けてもいいさみたいな顔してるの?

 

シリアス、シリアスどこ行った?俺の知ってるアークナイツってこう。もっと泥々しててもどかしさとやるせなさ満載じゃないの?

 

ていゆか、本当に臭いぞ…これ

 

「さ、サリアさん撤退しましょう…」

 

ほら、アーミヤだって顔色悪くなっちゃってるし…俺?俺はサリアさんの強靭な体だから大丈夫、大丈夫だよな?

 

「あ、あぁ…」

 

「さすがにこの状況で食事するのは大変ですから…」

 

それもそうだよなー…さっさとおさらばすっか。

 

そう思って踵を返すときに視界にふと誰かぶっ倒れてる。さすがに見捨てるのもあれだから助け……

 

 

「…………」

 

アイエエエエエエ!?フェンチャン!?フェンチャンナンデ!?

 

フェンちゃんが泡吹いて倒れてた。とりあえず起こして気道を確保しないと…!

 

「…げ、ほっ…げぐっ」

 

何とか呼吸は出来てるみたいだ、あのままぶっ倒れてたら窒息してるか。誤嚥性の肺炎になってとんでもないことになってたぞおい…。

 

これは…死人が出る

 

などという唐突なシリアスモードになった。マイフェリバリッドフェンちゃんを犠牲にするわけにはいかん

 

 

()が守らねば────!!!!!

 

そんなことを思いつつ、アーミヤにフェンちゃんを託して俺は戦場へ向かうのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




サリア(偽)「シリアスが息してないんだけど!」

作者「シリアスならハイビスカスの料理食って死んだよ」

サリア(偽)「惜しい奴を亡くした…」


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第4話 ご飯は残さず食べましょう

評価一気に延びててうれしいけど怖いな…


さて、戦死者(ノックアウト)が一人出てしまった以上、俺もフードファイトに参加せざるをえない。

 

とまあ戻ってきたわけだが…

 

「だから、お前は…止まるんじゃねえぞ…」

 

「何やってんのよドクター!」

 

ドクターが床に突っ伏しながらキボウノハナーしていた、ブレイズはブレイズでもう顔真っ青で黒猫から青猫に変わりそうになってる

 

ケルシー先生?

 

「……………」

 

なんか食べるラー油喰らったような顔で死んでるよ、死んではいないけど。口からなんか煙出てる、何食ったらそれでるんだこれ…

 

…まずあの組はダメそうだから二アールさん達のところにいくか…。

 

「……ぐすん」

 

「落ち着け、落ち着けブレミシャイン…」

 

…此方もダメだったわ。むしろこっちの方がダメな気がする。あっちはギャグベースだけどこっちガチ泣きしてるんだもん。

 

ブレミシャイン、すっかり泣きべそかいてるよ。鼻水か涙か分かんないけどぐちゃぐちゃになっててかわいそうだわ…二アールさんは二アールさんですっかり憔悴しきってるし…。

 

とりあえず、二アールさん達助けるかな…

 

「………もうダメそうか?」

 

最初の一言目がコレなあたりサリアさんってコミュ力無いんじゃね?と言われるかもしれない。

 

だが、待ってほしい。いや、待って待って。石投げないで痛いよ!

 

「大丈夫?」と聞くのもおかしいんだ、どう見たって大丈夫じゃないんだもん。ブレミシャインもうお目々真っ赤なんだもん。どう考えてもアウトなんだもん、ならそんなこと言えるわけないじゃん?アゼルバイジャン?

 

「…ああ、サリアか…見ての通りの状況だ…」

 

二アールさんが困り顔で耳ペタンとしている、ちょっとかわいい。尻尾も垂れてるし…

 

「………」

 

ブレミシャインは泣きつかれたのか、黙り込んでしまってる。まあ仕方ないよなぁ…なんか変なもんいきなり食わされてるんだから。

 

「ブレミシャイン、まずは深呼吸だ。大分泣きつかれたのだろう?精神を落ち着け」

 

そうするとブレミシャインは素直に深呼吸して泣き止んでくれた。良かった…ブレミシャインがいいこで。二アールさんもようやく一息ついた風にしている。

 

「ごめん…ええと…」

 

「サリアだ」

 

「あ、うん…サリア…さん。あと、お姉ちゃんも…いっぱい、泣いちゃって…迷惑かけちゃったりして。もう、大丈夫だから…」

 

年相応…とは言わないか。若干幼児退化しているブレミシャインが何とか言葉を紡いでいるのをブレミシャインのペースを崩さないようにしてあげる。こういうときは本人が落ち着くまで待つべきなんだ、じゃないとせっかく取り戻した冷静さが飛んでしまう

 

「いや、私の方は気にするな。まだダメージを受けていないからな」

 

「私も、大丈夫…だ」

 

若干顔色が悪い二アールさんの背中をさすりながら答えると、二アールさんも気にするなと言っている。何とか乗りきれたみたいだな……

 

「ああ、二人とも。コレを」

 

二アールが撤退する前にサリア(偽)がポケットをまさぐってケースのなかから錠剤を取り出した。

 

「…これは?」

 

「解熱剤と鎮痛剤、あとは不安時に感情を抑制してくれる精神安定剤だ。どちらも若干微熱がある」

 

「…この恩は、いづれ」

 

「要らないさ、ロドスの一員同士なのだから」

 

二アールさん義理堅いなぁ…何て思いつつ。二アールさんたちに薬を手渡した。サリアさんの部屋にあったもんで使えそうなのを見つけてもらってきて良かったわ…

 

「まずは、此処を離れるといい…ウィスラッシュのところでしばらく安静にしているべきだ。できるか?ブレミシャイン」

 

「うん……」

 

床にへたり込んでいるブレミシャインに膝を折って視線を合わせながら話しかけると、頷いてくれた。今でも気分が良くないのにしっかり答えてくれる。やっぱり良い子だな…ブレミシャイン

 

「体調不良の所悪いが、頼めるか?二アール、耀騎士の名は伊達ではあるまい」

 

「…その、名前を出されれば…立ち上がる他あるまい…」

 

力の入らない体を奮い立たせるようにして何とか立ち上がった二アールは、肩で息をしているブレミシャインをよろけながらも何とかおぶろうとするが…

 

「…っ」

 

「お、お姉ちゃん…?」

 

「無理はするな二アール、お前とて万全ではない」

 

クソ、こんなときアーツさえ使えれば…!

 

 

「……今医療オペレーターに連絡しよう」

 

よろけてしまい、ブレミシャインもろとも転びかけたところを支えつつ内部無線があるところまで移動させる

 

「此方食堂より中枢施設担当オペレーターへ。通信は可能か?」

 

『……此方中枢施設担当オペレーター。スワイヤーよ。何かあったの?』

 

今日の担当はスワイヤーお嬢様だったか。口は悪いけど仕事はしっかり出来るから問題ないな

 

「食堂にて人災が起きた、負傷者多数。医療オペレーターの救援を要求する」

 

『はぁ!?人災!?…ちょっと待ちなさい今確認してみるわ』

 

スワイヤーお嬢様が大声を出すがすぐに冷静になる。こういうところ信頼してるぜスワイヤーお嬢様…!

 

『此方中枢施設オペレーター、食堂にいるオペレーターへ。どうぞ』

 

「此方食堂。医療オペレーターの準備は?」

 

『今日は作戦無いから暇そうな医療オペレーター15人程用意できたわ』

 

早いな、まだ数分しかたってないのにかき集めてくれてたみたいだ

 

『此方医務室より食堂のオペレーターへ、どうぞ』

 

お、この声はススーロちゃんだな。勉強中だろうけどごめんね!

 

『状況を教えてほしいな。なるべく克明に』

 

 

「負傷者2名…いや、6名だ。うち4名は自力で移動が困難だと思われる。担架の用意を、体熱感がある者が二人、もう二人は意識不明の重体だ。あとの一人は自力で医務室まで行けるだろう。もう一人は今アーミヤが医務室まで運んでいるがアーミヤ自身も体調が優れていない様子だ。出来れば手助けしてやってほしい」

 

『大惨事じゃない!すぐに医者の手配を…!メンバーを3つに分けるよ、此処に残って投与する薬と診察の準備をするメンバー、あとは現場に向かって簡易の治療を施して運ぶメンバー。あとはアーミヤ代表を発見して救助するメンバー。私は陣頭指揮取るから此処に残るから…担架が足りない?じゃあ耐久力のある布と棒を用意して簡易の担架作成急いで!重体が二名っていってたからAED準備、一応のために輸血パックの準備も!ついでに緊急治療室の手配も…あと、近くにいる力に自信のあるオペレーターが居たら手伝ってくれるようにお願いして?私達じゃ運べないかもしれないから。とにかく急いで!でも、慌てずに…ごめん、すぐに向かうから。脈拍数とかは大丈夫?』

 

ススーロちゃん越しに医務室のメンバーがあわてて準備したのが後ろから聞こえてくる。若干怒鳴り声も聞こえるけど皆助けようって必死なんだな…

 

「脈拍数は問題ない、ただ顔色がな…血圧の方と体内酸素の方が心配だ。若干の高山病の可能性もある」

 

『分かった、すぐに向かうよ!医務室の通信を終わるよ。』

 

そういってススーロちゃんとの通信は終わった、コレでなんとかなりそうだな…

 

「…中枢施設オペレーター、どうぞ」

 

『…此方中枢施設オペレーター』

 

「医務室オペレーター達に物資補給と。あとは食事の配給を」

 

『ええ、分かったわ…そういえば。貴女の名前は?聞いてなかったわね』

 

スワイヤーお嬢様からそういわれれば、やっぱりサリアさん交遊なかったかー何て若干のショックを受けている

 

「重装オペレーターのサリアだ」

 

『へぇ、あの…分かったわ。あとでお茶会でもしましょうか』

 

「…私も無事ならな。コレで通信を終わる」

 

『ええ…幸運を』

 

 

────数分後ススーロちゃん率いる医務室オペレーター達にブレミシャイン、二アール、ドクター、ケルシー先生が運ばれていった。ブレイズは自力でいって、無事アーミヤ達も運ばれていったらしい。

 

ススーロちゃんたちと一緒に力自慢のオペレーターの連中も協力してくれてた。ミッドナイトとかあんまり力に自信無さそうなオペレーターも協力してくれてるの助かるぜ。

 

「お疲れ様です、サリア殿」

 

「…ああ、其方もなホシグマ」

 

粗方運び終えた後にホシグマが挨拶に来た、どうやらスワイヤーお嬢様が真っ先に連絡して来るように頼んでくれたらしい。仕事はえーよ、んでもってホシグマさんが現場の指揮とりながらやってたからススーロちゃんも楽を出来たっぽい。頼れる姐さんだ

 

「しかし…この異臭はひどいです龍門のスラムよりもひどい」

 

「あぁ…コレが食べ物の臭いだとは考えたくないものだ」

 

「…食べ物の臭い?本当か?」

 

思わずすが出ちゃうホシグマさんに頷く。とてもじゃないけど信じられないよね、コレ

 

「さて…ん?」

 

あれは…シージか?なにしてるんだあいつ?あの劇物の前にたってて…いや待て。あれ…気絶してないか?気づかなかったけど

 

「………んぉ?」

 

「!?」

 

シージの間抜けな声が響いたと思ったらシージがゲーミングシージになったぞ!?コレがレインボーシックスシージちゃんですか…?レインボーはシージにもかかるんだな、驚いたよ…

 

俺のアークナイツって変じゃないか…?ってそんなこといっとる場合かー!!!!

 

重体が一名追加

 

 

─────数十分後、俺とホシグマさんが劇物の前に座っている。ホシグマさん的には死地に俺一人放り込むのは嫌らしい。生きて返れたら酒を飲む約束をした…

 

「…覚悟は…良いか?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

 

いざ、実食!!!!!!!!!

 

 

─────

 

──────

 

──────────うん?

 

隣を見れば、ホシグマさんも首をかしげていた。どうやら俺たちは食えるらしい。何でだろ…変な味はするけど、別にそこまで。というかちょっとなつかしいような

 

 

…………あ、もしかして…

 

「これは…くさやでしょうか?あとは納豆と…この感触はメンマ?味付けは…山椒と、生姜と…発酵してる調味料の類いですね、おそらく塩辛。小官は食べなれていますが、この味は極東以外の人には苦しいでしょう。」

 

バチクソ日本食じゃねえか!!!!!!!!!!!!

 

そうだよ、これくさやの臭いだわ!そりゃむりだわ…

あと日本食は発酵文化だから他の国の連中は消化できないのもあるし…はぁ。

 

「…そういえば、サリア殿の方は大丈夫ですか?」

 

「ああ、大丈夫だ。極東の食は好きな方だ、あと敬語は不要だ(オフで良い)

 

ホシグマさんが若干驚いたあと、フランクな雰囲気に変わった。

 

「ならサリアで良いな、しかし驚いた…極東の食を好むのは。好きな食べ物は?」

 

「タコワサ…タコと山葵の和え物だな。あとは…そうだな、だし揚げ豆腐だな」

 

タコワサはつまみにて最強、これおつまみじゃね?とか思っちゃダメだ

 

「じゃあ、今度サシで飲もうか?」

 

「スワイヤーにお茶会に誘われている。その時でも良いか?」

 

「ああ、そうしようか」

 

 

 

そんなこんなで食堂のばか騒ぎは終わりましたと。

 

ドクター始めに負傷者メンバーは無事安定したらしい。アーミヤとフェンちゃんもしっかり救助されたと聞いて安心安心

 

 

ちなみにハイビスカス(下手人)

 

「私はダメなお姉ちゃんです」

 

という看板を首からぶら下げて仕事してます。ラヴァゴーレムに怒られながら

 

 

 

 

 

 

 



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5話 見た目で物を判断するのは人としてどうかと思う

個人的に好きなメンバーぶちこみました


食堂のテロ行為のせいで1日潰れてしまった…いや、あのあと色々と大変だったんだぜ?

 

レインボーシックスシージが七色に光輝いたと思ったらなんか色ごとに分裂するし、そのあとになんか踊り出すし。どういう状況なのかって?わかんねえだろ?俺もわかんねえ…シージがノーマルシージになったかと思ったらシージに対抗意識持ったのかドクターがレユニオンに反省を促すダンス踊り始めたり。もしかしてドクターって現代人なのか?

 

んで一人だけ徒歩で医務室にいかされたブレイズはぶーたれるしさ、何でそれを俺の方に放り投げるんですかね?馬鹿なんですかね?

 

お陰でそのあと模擬戦闘になりかけた時にブレイズの口からレインボーがかかったよ。馬鹿じゃないの?

 

ケルシー先生?ケルシー先生はいきなり暑がったり、彗星がパーッと光ったりするとか言ってたんで修正しときました。

 

はー…昨日は疲れましたよ、ええ。まあ、悪いことばっかりじゃないんだがな…

 

「サリアさん、おはようございます!」

 

「あぁ、おはよう」

 

「おはようございまーす」

 

「おはよう。昨日は大変だったな」

 

「いやー、きついっす。なんなんですかね、アレ…っと。仕事しないと」

 

「無理はしないことだ」

 

「うぃ」

 

…という風に。名もなき(名前はあるんだけど俺が知らないだけ)一般オペレーターと仲良くなれてる。もっぱら医療チームなんだがな、この交遊なら問題ないだろう。

 

「あ、サリアさん。おはよー!」

 

「あぁ…おはよう。体調が戻って何よりだ」

 

ブレミシャインが元気一杯に挨拶してくる。この子も相変わらず元気だな…昨日は泣きべそかいててアレだったけどさ。

 

「…二アールはどうした?」

 

「あー…」

 

二アールさんも居るかと思ったら、何処を見渡してもいなかった。聞くとブレミシャインが目をそらした…なんかあったんかな?

 

「…お花摘みにいってから戻ってこないんだよね」

 

「(無言の合掌)」

 

二アールさんぇ…そりゃあんだけむりしてりゃそうなるわな。というか二アールさんの防御力貫通してくるあれはやべえんだと再確認した次第である

 

「…っていうことで、お姉ちゃんもおやすみ何だって。ドクターもあんな感じだしさ」

 

しかたないよねーっていう感じだ。俺も頷く、というかレユニオンとの攻勢はどうなったし、こんなのでいいのか?

 

「さーて、私は機械弄りでもしよっかなぁ…」

 

「そういえば。ブレミシャインは工学系の出身だったか」

 

「うん、本当はそっちの方がすきなんだよねー…サリアさんもそういうの好き?」

 

「嗜みはある」

 

何気ない一言にブレミシャインの背後がちょっと光った気がする。…あ、これダメなパターン入りましたね

 

「じゃ、じゃあ今日一緒に機械弄りしない!?あ、サリアさんの予定が空いてたらだけど」

 

「予定は空いている。ドクターがあの調子ではな…」

 

ブレミシャインにそう告げると随分喜んでくれた。本当はアーツ云々の使い方を再度復習するつもりだったんだが、まあいいっか…

 

「じゃあ。工房に集合ね!」

 

そう言い残してブレミシャインはスタコラと居なくなってしまった。俺工房の場所知らないんだけど…

 

────道に迷うこと10分程

 

 

「サリアさん、いらっしゃい!」

 

「あぁ…お邪魔させてもらう」

 

既に準備をしていた作業着姿のブレミシャインに声をかけつつ中にはいる。うん、この重油の匂い…やっぱり機械はこうじゃないとな!

 

そんなこんなでブレミシャインが借りてる工房にお邪魔している。どうやらヴァルカンの工房を間借りしてるらしいんだ、それはさておき

 

「今日は何を作る…いや、直す方か?」

 

「また通信装置壊れたんだってさー。早く直してあげないとね」

 

どうやら機械音痴組が壊したらしい。メテオさんとか、どうやらバグパイプもいるらしい。それは壊れるわ

 

ということで修理スタート。

 

内部構造は俺らの使ってる端末とそこまで変わんないみたいだな…その代わり、半導体の所にオリジウム関連の部品がつけられてるっぽいな。これでやってるとすると…一々交換しなきゃならんのはコストかかるなぁ。

 

何て思いつつ、配線を説明書片手につけ直していく。はんだはどこも変わんないみたいだな。直流も交流もあるらしい

 

無線は無線でも業務用無線っぽいなこれ。MCAとかIPじゃないっぽい。さすがに人工衛星ぶちあげてない限りIPはきついかな…。

 

何てことを思ってるうちに損傷して剥き出しになってる配線を取り外して、新しい配線をニッパーを使ってかわむきしていく。ストリッパーとかあれば便利なんだけどなぁ。ジョイントの断面図気になるし。ないものはしゃーないなとりあえず圧縮工具で抜けないようにして…これでいいか

 

というわけでスイッチを押してみると普通に起動してくれた。良かった…ん?

 

なんかブレミシャインがこっちをガン見してくるんだけど。

 

「…どうかしたか?」

 

「な、何でもないよ?いやー、サリアさん上手だなぁって」

 

なんだろうこの子。趣味合う奴がいなくてボッチでした~みたいな雰囲気醸し出してるんだけど…いやいや。ブレミシャインがそんなわけないっしょ?うん…だってコミュ力高そうだし。ああ、でもカジミェーシュって騎士国家だからなぁ…腐敗してるけど。

 

「…また暇があれば一緒にやるか?」

 

なーんて何気なく言ってみたりする。まあ、仏頂面のコミュニケーション取りにくそうなサリアさんがいうんだから社交辞令っぽく聞こえるから大丈夫じゃない?知らんけど。

 

なんて思ってると急に眩しくなった。何の光ィ!?

 

「本当に!?」

 

おう、ブレミシャインが輝いてるよ…物理的に。シージといいブレミシャインといい唐突に輝かないでくれる?眩しいんだけど…。

 

「あ、ああ…本当にだ」

 

「やったー!」

 

何この子、ほんとに騎士?感情豊かで可愛いんだけど…まあ、この程度の付き合いなら偽サリア()が消えても問題ないだろうさ。

 

そんなこんなで午前中はブレミシャインと機械いじりを楽しみましたとさ。

 

 

───お昼にて───

 

ブレミシャインがなんだか張り切って工房に籠ったので。何か持っていってやるか…なんて思いつつ。かつての戦場である食堂にやって来た。昨日は悲惨な状態だったが。汚れ絶対許さないウーマンことウィーディが綺麗にしてくれた。ちなみに昨日の飯テロの被害者の一人である、後片付けでのだけどね。

 

そんなウィーディちゃんがぼっちで食べてるので相席させてもらってる。この子、手袋してないと握手しないとかそういうので若干孤立気味なんだって。結構な古株らしくて、サリアさんとあんまり変わらないとかなんとか?昨日ススーロちゃんから聞いた。

 

今日の厨房担当は安心と信頼のバクパイプ製である。通信機直ったよって伝えたら大盛りにされた。ありがたく頂戴するとしよう。

 

「───ねえ、聞いてる?」

 

なんて思考を飛ばしてると隣からウィーディちゃんが首をかしげつつ顔を覗き込んでくる。この子ナチュラルに距離が近いってはじめて知った。ウィーディちゃんボイスは非常に心地い。

 

「あぁ、聞いている。水道管の根詰まりだな?昨日の騒ぎで大分痛んだそうだな…いや、料理で水道管が痛むなぞ信じられないが」

 

「まあ、ね…私だってそんなの信じたくないわ。せっかく交換したばっかりなのに…」

 

ため息混じりにパスタをくるくるとフォークで巻き付けながらウィーディちゃんが黄昏る。まあ自分の仕事台無しにされてるんだからしゃーないよな。

 

「はぁ…また仕事が増えるわ」

 

「研究どころではないのは、エンジニアとしては悲しいな…」

 

俺がしみじみ言うとウィーディちゃんがウンウンと頷いてくれた。この子、真面目だから手抜きとかできないだろうしな。なるべく手伝ってあげるか

 

「…それにしても、この子は私の頭が好きだな」

 

「珍しいとは思うわ。リーフがこんなになつくなんて」

 

シードラゴンのリーフが俺の頭に乗っかってぐでーってしてる。この子、ウィーディが作ったんだよなたしか。ウィーディの話し相手とかしてるんだろうか…やめよう、悲しくなってくる

 

そんなこんなでのんびりと談笑しながらウィーディちゃんとごはん食べてる。これだけでもう勝ち組な気がする

 

「ウィーディ、エンジンのテストの件で…おや?」

 

「あら、珍しいお二人が…」

 

あ、グラウコスとアズリウスだ。ウィーディと仲いいんだよなこの子ら、エーギル三人娘をすこれ

 

「はじめて…に、なるだろうか?」

 

「何度か作戦でお見かけしたことはあるぐらいですわね」

 

「私は新参なので本当にはじめてになります」

 

「アズリウスは…顔だけ見たことあるって感じかしら?グラウコスは初対面。この人はサリア、ライン生命の方にいた方なんだけど。私と同じ位ロドスに居るわ、私の数少ない同期よ」

 

「紹介に与ったサリアだ。よろしく頼む」

 

妙に自慢げなウィーディちゃんに若干首をかしげつつ自己紹介を済ませる。

 

そういえばアズリウスがなんか手にぶら下げてるな。これはよもやよもや…あれですね?

 

「今日もダメだった?」

 

「ええ…駄目でしたわ。昨日の騒ぎの影響も有るのでしょうけど」

 

案の定アズリウス特製ケーキだったらしい。見た目がアレなせいで受け入れられないっぽいなぁ、味は美味しいらしいんだけど…んむ、此処は一肌脱ぐとしますか。ヴイーヴル的には脱皮になりそうだが。

 

「何かの食べ物か?」

 

「ええ、アズリウス。ケーキとかそういうの作るの上手なのよ?…でも見た目が、ちょっと…ね?」

 

「私は好きですけど」

 

ウィーディが言いにくそうに説明しつつ、グラウコスがそれを擁護するように続ける。そういえばケーキなんて久しぶりだし、頂こうかな

 

というわけでアズリウスが置いた袋包みを開けてみた

 

「…刺激的な色だな」

 

「…いつもこうなってしまいますの」

 

思わずこぼれた言葉にアズリウスは拗ねたような口調で自嘲する。見た目はアレだけど匂いは普通なんだよな、甘い匂いする

 

「…では、ひとつ」

 

「あっ………」

 

アズリウスが声を漏らし、グラウコスが若干目を見開いて。ウィーディは残りのパスタモグモグしながら見てる。

 

 

 

───ふーむ

 

「…ただの何処にでもありそうな美味しいケーキだな」

 

別に体が痺れるとかそういうことはない、普通に旨い。モグモグ

 

そんな風にしてるとウィーディも手を伸ばして一緒にモグモグ。普通に旨い、なんかアズリウスがおろおろしてるけど気にせずモグモグ。

 

「あ、あの…お二人とも。無理して食べなくても…」

 

なんてアズリウスがしょんぼりしながら言ってきたのでウィーディと俺が顔を見合うと一緒に苦笑した

 

「別に無理して食べている訳ではない、普通に旨い。変な匂いしないからな」

 

「そうね、美味しいわよ?変な味しないし」

 

普通に食べれる、これ大事な?

 

なんてことをしたあと。アズリウスとグラウコスとウィーディをつれてブレミシャインの元へ行くことにする。

 

 

 

君のケーキは美味しいんだということを証明しようじゃないかアズリウス

 

 

 

 

 

 




偽サリア「申し訳ないがブレミシャインには犠牲になってもらおう」

ブレミシャイン「」お姉ちゃん助けて!

二アールさん「(トイレに籠り中)」


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5.5話 カエルとウミウシとタツノオトシゴ

今回は前回の追加エピソードなので短め


「サリアさんおかえりなさいー…ん?いつの間にか大所帯に?」

 

「…あぁ、少し…な」

 

油まみれになってるブレミシャインが出迎えたことに若干引きつつ、出迎えられた。いや、張り切ってるの分かるんだけど…そうはならんやろ?

 

そんな俺も頭にリーフちゃん乗せてるんだけどな。いや、リーフちゃんなんだか居心地がいいのかその場から動かないんだよね。若干ウィーディがいじけてるんだけどどうしたらいいの?

 

「…お邪魔しますわ」

 

「これは…電気工学のパーツ…ふむ…」

 

「結構いい工具揃えてるのね…油まみれなのが頂けないけど」

 

アズリウスは場違いなところに来て気後れ、グラウコス君は勝手にブレミシャインの作ったもん眺めてて。ウィーディは工具をみて衛生的によろしくないと平常運転。

 

割りと適応力あるよねエーギル三人娘

「とまあ、差し入れを持ってきたわけなんだが…ケーキだ、食べるか?」

 

「うん!」

 

やはり年頃の女の子、甘いものがお好きなようで。まあ今から出すのはカラフルケーキなんだけどね

 

ケーキの箱を開けると、レインボー色したケーキのお目見え。アズリウスはそわそわしながらも、気落ちしてる、まあ普通は食べないとおもうよなー…()()()()

 

「わー、カラフルな色。いただきまーす」

 

「!?」

 

そんなアズリウスを気にもせず、パクッとブレミシャインがレインボーケーキをモグモグ食べた。アズリウスさん、何故か自分が作ったケーキなのにそれを食べた奴をみて引いてる

 

「ブレミシャイン、お味のほどは?」

 

「とても美味しいよサリア君」

 

「それは何よりで」

 

なんて気軽なやり取りしてると、アズリウスはあたふたし始め。グラウコスは何故かどや顔、ウィーディはなんだか知らんけど負けたようなかおしてる。

 

「あ、あの…見た目などで、躊躇わないのですか?」

 

「…別に?」

 

ムグムグとレインボーケーキ咀嚼しながらアズリウスの言葉に俺達と同じ回答をしたのをみて、自然とウィーディちゃんと顔を見合わせて苦笑していた。

 

「変な味も匂いもしないし。ちょっと見た目が刺激的なぐらい?昨日のアレに比べたらインパクト無いもん」

 

ほんの一瞬ハイライトが消えたことでアズリウスがビビったけど、美味しいのはかわりないと伝えて一段落

 

その後。ウィーディちゃんとグラウコスとブレミシャインで電気工学の分野について盛り上がり始め、手持ちぶさたになったアズリウスの側に腰かけた

 

「…どうだ?自分の作ったものが受け入れられた気分は」

 

「………」

 

アズリウスは自分のフードを深くかぶって此方に表情が分からないようにしている

 

「…嫌だったか?」

 

そう問いかければふるふると顔を横に振り否定して

 

「…嬉しかったか?」

 

「………」

 

今度はに何度も何度も頷いている。チラリと見えた目元は若干赤く腫れており。嬉し泣きしていたようだ

 

「…そうか、それは良かった」

 

普段仏頂面である(そういう風に心がけているのも原因だが)サリアがフッと微笑みを浮かべていれば、アズリウスはチラッとサリアの方を見てはまたフードを深く被った

 

「…ありがとう、ございましたわ…サリア、さん」

 

「私はなにもしてないさ」

 

何とか絞り出されたお礼を緩く首を振ってやんわり否定する。元々ウィーディちゃんとグラウコス君がアズリウスの味方で、アズリウスをひとりぼっちにしなかった努力あってこそなのだから。おそらく、アズリウスだけだったらこうはなっていないだろう。

 

スポンジケーキ(下地)を作ったのは(アズリウス)だ。そこにホイップクリーム(外見)を整えたのが君の友人(ウィーディ)で、仕上げにラッピング(自信)を施したのが君の理解者(グラウコス)だろう?私とブレミシャインはそれを認めただけ(お客様)なのさ」

 

ケーキ作りに例えながらアズリウスに語りかけてあげると、グシグシと目元を擦っている。

 

「───良い友人を持ったなアズリウス」

 

「──ええ、自慢の友人ですわ」

 

フードを脱いで笑う彼女の顔は、ケーキよりも色鮮やかだったと言うこと事を記録しておこう。

 

「──やはりアズリウスのケーキ、購買で売り出しませんか?」

 

「それ、いいわね。私も賛成よ?」

 

「で、ですが今日失敗したばかりで…」

 

「大丈夫大丈夫、何度でもチャレンジだよ!」

 

どうしても諦めきれないグラウコス君がそう提案すれば、ウィーディはそれに賛同して。やっぱり気後れしているアズリウスをブレミシャインが持ち前のポジティブシンキングで励ましてる

 

「…青春してるな」

 

なんて思わず言葉を溢せば、頭の上に乗ってるリーフちゃんが慰めるように前足で髪を撫でてくる。この子もウィーディちゃんと同じでいいこだよな、お返しに喉の辺りを撫でてやると嬉しそうにしてる。尻尾振ってるし。

 

「いざとなったらサリアさんが何とかしてくれるよ!」

 

等と勝手に保証人みたいなことになってるけど、まあエーギル三人娘+ブレミシャインが嬉しそうならそれでいっかなぁ…なんて思いつつ。

 

「…成功は保証しないがな」

 

『ヨシっ!』

 

三氏三様で喜んでるのでまあいいか、とおもう偽サリアだったのだった

 

 

 



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第6話 アイエエエ!?サメちゃん!?サメちゃんナンデ!?

タイトル落ちも良いところである

あ、前回の投稿でデイリーランキング入りしました。ほんとありがとうございます

あとお気に入り600&UA20000突破しました。評価も20以上入れてくれた読者の方々ほんとありがとうございます。

不憫さん関連のご要望は此方に
↓↓↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=272620&uid=169733





ブレミシャインにお昼ご飯届けて、アズリウスのケーキ食べて。そのあと暇になった、グマネキのお茶会のお誘いは明日なので暇になったでござる。まあ、部屋でのんびりしつつ寝とくか…あんまりボロ出すわけには行かないので…と思ったんだが。

 

「…そろそろ降りてくれないか?リーフ」

 

最大の敵はそう、リーフちゃんなのだ。何でリーフちゃん俺の頭にずっと乗ってるわけ…?思わず(==;)見たいな顔しちゃってるよ多分。ウィーディちゃんがガン見してるから多分変な顔してるんだろうな…

 

「…なあウィーディ。リーフを動かす手段は思い付かないか?」

 

「…ダメね、かっっっぜんにサリアの頭に引っ付いてるわ」

 

ウィーディちゃんもお手上げ侍状態。一回二人かかりでひっぺがそうとしたら強制移動の【力強く】と同じ位の力っぽい感じで角に噛みついてきた。めちゃくちゃ痛かったわ…なんか三途の川の向こう側でサリアさんと同じ髪の色したヴィーヴルが必死に何かいってる幻影が見えるぐらいには。

 

絶対死にかけたよ今…そんなことを思いながら何とかリーフちゃんをひっぺがそうと格闘していた。俺らが考えている間もリーフちゃんは悠々自適に過ごしていた。

 

お の れ リ ー フ ち ゃ ん !

 

何て思っていると背後から悪寒が走った。ウィーディちゃんはまだウンウン唸っている、どうやら気づいていないらしい。サリアさんの身体のお陰か…?

 

そう思って振り返ると───

 

「──────」

 

真後ろで此方の様子を観察してる元パリピ系意地悪シスター、通称サメちゃん(スペクター)がいた。

 

アイエエエ!?サメちゃん!?サメちゃん!?ナンデ!?

 

声を出さなかった俺は偉いと思う、背後を振り替えったらSAN値直葬みたいな目をしたシスターが後ろにいたら声を出すどころか失神するわ。偉い

 

「──────────」

 

首をかしげながら俺とウィーディちゃん、ついでに頭に乗ってるリーフちゃんを交互に見ている。

 

トントン

 

スペクターがまだ気づいていないウィーディちゃんの肩をトントンと叩いたのだ。もしかしてイタズラ好きなのは残ってるのか?

 

「…ん?」

 

そしてウィーディちゃんが振り向くと…あら不思議、スペクターがいつの間にか居なくなってる。どこいったんだろ…

 

「…なんだった─────」

 

不思議そうな顔をしてるウィーディちゃんが振り返った後。俺の後ろを指差しながら硬直してる、なんかあった───

 

「──────」

 

「ぎゃあああああああああ!?」

 

そこにはいつの間にか血まみれになっているスペクターが!いや、さっきまで普通だったよね君!ウィーディちゃんからしたらホラーだよホラー!

 

「──────カフッ」

 

「ウィーディ(ちゃん)!?」

 

哀れ、ウィーディちゃんはシメヤカにキゼツ!オタッシャデー!…何て言ってる場合じゃないな!

 

※ウィーディちゃんは無事に医務室に連れていかれました、ついでにリーフちゃんも

 

「まったく…ん?」

 

ふと振り返るとスペクターは何処かに消えていた、いや。もしかしたらさっきのはほんとに幽霊みたいなもんだったのか…?

 

なんかあんまり気分が良くないので早めに休むとするか…そう思いつつ、俺は部屋に戻った

 

「…さっさと寝てしまうか」

 

なんやかんやでもう20:00回ってるな…まあ、いろいろあったしな…しかし3日目にしてこれかぁ…騒がしい場所だな全く…

 

────キヒヒ

 

何処かで誰かの笑う声がした。

 

 

───翌朝、自室にて

 

「んぁー…なんか身体が重いなぁ…」

 

あー…なんだっけ、何があってこんなに疲れたんだっけか。あぁ、そうだそうだ…()()()()()()()()()()()()()()()()()()。いろいろあったけど…まあ、悪いことばっかりじゃないんだがな…

 

医療班の面々と仲良くなって、ついでにウィーディちゃんとも仲良くなって。

 

さて、今日も頑張りますか…

 

(──おっかしいなぁ…なーんか既視感が…)

 

ブレミシャインと機械いじりして。ウィーディちゃんとご飯食べて、アズリウスとグラウコスと知り合って。その後ブレミシャインに差し入れした後、ウィーディちゃん一行と別れたサリアは首をかしげている。どうも身体の様子が可笑しいのだ、何処と無く軽すぎると言う…そんな不明瞭な感覚

 

(寝れば治るだろ…)

 

───翌%、自&にて

 

「身体が重い…」

 

妙な身体の重さに不快感が出てくる。なんだこれは、まるで…そう、あれだ。学校でやった着衣水泳みたいな感覚だ、全身が妙に重い感覚。

 

まあ、なんとかなるだろ…

 

──キヒヒヒヒ

 

何処かで誰かの揶揄う声が聞こえた

 

(またこれか…)

 

機械いじりして。ウィーディちゃんとご飯食べて、アズリウスのケーキを()()()()()()()と食べて。その後()()()()に差し入れした後、ウィーディちゃん一行と別れたサリアは首をかしげている。

 

身体の様子が可笑しい、頭がいたい、こんなことは今までなかった。明らかに異常だ。そんなことを思いながら部屋へと戻り、眠りに身を委ねて逃避する

 

───?%、*&]/+

 

「くそ、なんだってんだ…」

 

猛烈な倦怠感と共に目を覚ます、明らかに思考が定まらず。視線もぼやける、今日は二度寝してしまおう…

 

そう思ってサリアは夢の海に沈んでいく────

 

 

───カチャリ

 

 

 

────────

 

「…なんだこれ、夢か?」

 

目を覚ました…というには目の前の光景は異様だった。

 

眼前に広がるのは──『海』だ

 

もし目覚めるとして目に入るのは薄暗い天井のはず、どう見ても夢の中んだけど…

 

「──これを夢というには出来すぎだ」

 

脚を動かせば、白い砂を踏みしめる感覚と。少し磯臭い塩気のある風が頬を撫でる、明らかに現実なのだ。

 

 

「───どうしたものか」

 

何もやらないわけには行かないのでとりあえず砂浜をひたすら歩く、海のほうへはなるだけ近づかない。テラにおける『海』はただただ厄災の博覧会でしかないのだ。

 

(あれは──人か?)

 

だだっ広い砂浜にポツンと人影があるのを見れば慎重に近づく、どうせろくでもないことしか起こらないのだろうが。ここから出るにはそうする他ないのだ。

 

「───おい」

 

警戒しながら声をかける、その人影は振り向いた。

 

──格好は耐久性を確保した白衣、腕には感染防止のリング。頭には計4本の角

 

そう、それはまさしくサリア──

 

「…っ!?」

 

()()()()()()()()()()()。思わず後ろに飛び退くと同時に一気に足元が海水に浸る。

 

(不味い、引き込まれ───!!!!)

 

そう思う頃には既に水中、水圧で強制的に肺から空気が押し出され。海水が体のなかに入ってくる──だがどういうわけか呼吸に問題はないようだ。あまり取り込むことはできないがそうもいってられない

 

(どう見てもヤバイよなあれ…!)

 

自分の体と同じ物の輪郭がまるで完成された絵に絵の具を無造作にぶちまけたかのように色が不自然に滲み、歪むと言い様のない不快感を撒き散らすナニカに変わっていた。

 

追いすがるナニカから必死に海水を掻き分けて海面を目指す、だが何処まで行っても海面どころか光が差す沖には辿り着かず。それどころか一層深い深海へ染まっていく───!!!!

 

(さすがにサリアさんのスペックでもきちいか…!)

 

尋常ではない身体能力に物を言わせ、ナニカから必死に逃げ延びようとする偽サリアにナニカは悠々と距離を縮めてくる。その差がどうしようもない所とまで差し掛かった…その時である

 

──より深い、深い。光を拒み、陸を疎む底の底。深海を越えた深淵からナニカが猛烈な勢いで両者の間を通過した。

 

────幽玄に迷いこんだ只人は瞠目し、その影に視線を奪われる

 

────幽閉より出向いた異形は、その影に怯え尽くす

 

深淵より巨大な黒い靄をまとった鮫が両者を引き離した。現世と彼岸の間を移ろい、こちらに転がり落ちてきた只人をヒレを使い優しくも力付く海面へと一気に押し上げ。その鋭い牙を持ってして異形を深淵に引きづり込み、食い荒らす…そんな光景を見ながらサリアは光がある沖合いにまで戻されていた。

 

(助かった…のか?)

 

そんなことを思いながらサリアは水中を漂っている。すると先ほどの鮫がゆっくりと此方に近づき、辺りを遊泳している。いろんな角度からぐるぐると回る姿は無事を確認してるかのようにも見えた。

 

(速く上がらないと)

 

先ほどはこの鮫が邪魔をしてくれたが、いつまたアレに襲われるかと思うと背筋が凍るのでとりあえず上へ上へと上がっていく。

 

(…ついてきてるな)

 

己の何倍もある鮫はサリアの周りをゆっくりと周回しながら並走して泳いでいる、どうやら海面まで護衛してくれるようだ。

 

──だがしばらく泳いでも泳いでも海面までたどり着くことはなく

 

 

(やば、体力が…っ!)

 

さすがのサリアの身体を持ってしても疲労感は拭えず、速度は落ち、とうとう止まってしまった。

 

そんなサリアを見かねたように鮫は自分のヒレを掴ませて上昇を開始する

 

(意識が、持たな、い──)

 

水に揺られながらサリアは眠りについた

 

『───迷子の迷子の、小さな人間、貴方のお家はここじゃないわよ?』

 

そんな声を聞いた後。サリアは現実(海面)へと戻った

 

 

 

 

 

 




作者『一体何時から──現実と錯覚していた?』

偽サリア『なん…だと…』


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6.5話(上) 不思議の国の■■■■■

ネタ話だとおもった?残念、戦闘だよ!



──??? AM 8:00

「…知ってる天井だ」

 

目を覚まして開口一番そんなことを口走る、うん。これ初日に目覚めた時と一緒だ、なんだかまだ身体がだりぃわ…

 

「…………」

 

辺りを見渡すと、機械音だけが鳴り響く不自然な静けさがそこにはあった。どうやらまだ逃げ切れて…ないみたいだなこれ。明らかに現実じゃねーわ

 

(下手に動くと死にそうだ…どうするかな)

 

なんて思いつつも、泥のような倦怠感が抜け落ちきれてない身体をベッドからなんとか引き剥がす。

 

(…状況確認が最優先か)

 

──??? AM 12:00

 

(手詰まりだ…)

 

辺りを警戒しつつロドスを散策するものの人っ子一人居なかった。人で溢れ返っているであろう食堂にも、ごった返している医務室にも、果ては中核施設にもだーれも居らんかった。さすがに不気味すぎてメンタルがやられそうになる。だが此処で寝たら確実にあの世行きだ。

 

そんな風にしていれば、見慣れない通路に突き当たる。意を決してそこにたどり着けば──

 

──修道女(スペクター)がクスクスと笑いながら此方を眺めていた。

 

「……お前は」

 

「こんにちは、こんばんわ、おはよう、この場合どれが適切でしょうか…」

 

薄暗い笑みを浮かべるスペクターに思わず身構えつつ後退してしまう。確実に相手の術中の中、既に逃げられないのは確定的だがそれでも生存を諦めるわけには行かない。この体、借り物なんでな

 

「気分は如何でしょうか?」

 

「最悪だ、つまらんものを見せられてな」

 

実はあのあと、もうひとつ夢をみた。胸くその悪い夢だったよチクショウメ…

 

「そうですか、では──」

 

──二度と目覚めぬようにしてあげましょう

 

「チッ……!」

 

いつの間に構えられていたあの電ノコを構えながらスペクターが突進してくる。さすがにあれを喰らえば一発でお陀仏だ!こちとらアーツすらまともに使えねえんだわ!

 

突進にあわせて二歩下がり、体の軸をずらしながら相手の背後の方へ身を屈めながら回避

 

「おや…ふふ、意外と動けますね」

 

「─下らん世辞は要らん」

 

そこからしばらく命がけの鬼ごっこが続いた。ロドスだと思ってた地形は迷路に様変わり、どう考えても袋の鼠だけどそうもいってられない。おまけにあいつ、俺の逃げる先にばっかり出てきやがる。シザーマンかお前!

 

「─逃しませんよ?」

 

「むっ!」

 

とうとう被弾しちまった。防護衣の上から切られればうっすらと血が滲む、バッサリいかなかっただけでましってことかよ…!

 

──あら、まだこんなところに

 

なんか幻聴が聞こえるぐらいには精神削られてんなおい…!と偽サリアは悪態をつきながら電ノコの側面を蹴りつけて二度目の攻撃を防ぐ、スペック的には此方も大概化け物なのが唯一の救い。

 

そういう風にしていれば

 

───見ていられんな

 

(別の幻聴が聞こえてきた。此方は命がけの鬼ごっこ中なんだから後にしてくれ!)

 

──右に屈め

 

(っ!)

 

幻聴からの指示に従えばなんとか迫り来る電ノコから逃げおおせる。後ろの壁に食い込んで火花を散らしているが、逃げるチャンスだ

 

──逃げてばかりでは勝てんぞ?

 

「うるせえな!こちとら借りもんでやってるんだよ!」

 

──傷物にして返却するのもどうかと思うがな

 

「…戦う方法が無いんだからしょーがねえじゃん」

 

──よくよく思い出して見ることだ、ソレ(サリア)の力を

 

(サリアさんの─力)

 

───??? PM7:00

 

怪物(スペクター)はなかなか捕まらない獲物に段々と苛立ちを隠せなくなっていた。怒りは力を増すが、同時に単調になる。ソレとは逆にサリアの動きはキレを増していた。

 

 

そんなサリアがとうとう中核施設でモニターを見て背を向けているのだ、好機は逃さない。スペクターは昏い笑みをうかべながら獲物を振り下ろし───

 

 

 

───バキッ!

 

「形成──逆転だな怪物」

 

──獲物の刃を砕かれ。宙に浮かんでいた。

 

「貴様、何故攻撃を…!」

 

「おい、スペクターはそんなことを言わないぞ?(化けの皮が剥がれたな怪物)

 

激昂してる偽スペクターに偽サリアが挑発的な笑みを浮かべながら言葉を返す

 

 

「貴様、それは…!」

 

「あぁ、そうだよ──硬質化(素質)だよ」

 

瞠目する偽スペクターに拳を合わせた後に構えながらニヤリと笑う。あの幻聴のお陰だ、例えアーツが使えなくても素質の方はしっかり活きていた。全身に鎧を纏うイメージ、そうか。イメージが足りなかったイメージが、想像力が大事ってどっかの正義の味方が出てるロボアニでも言ってたしな!

 

「…たかが武器を一つ折ったところで!」

 

「もう二度と同じ手は喰わん」

 

ロドスの壁に手を突っ込めば武器が再度現れる。もうロドスじゃねえのは分かってるから特段驚かない。激昂のもと力任せに振るわれる電ノコの結合部──刃を止めてる金具の部分を偽サリアは蹴り抜いて破壊する

 

 

「──随分単調になったな、次は私の番だ」

 

「───!」

 

慌てて着地した偽スペクターに追撃を仕掛ける偽サリアはクロスガードの構えをした偽スペクターの──()()()()()()()()

 

()()()()()()

 

「!?」

 

「ネタはもう──割れてんだよ!」

 

一瞬の浮遊感、思考を奪い去られた偽スペクターが時を止めるなか、偽サリアは右足を振り抜いてローキックをぶちかます。

 

「──ぐふっ!?」

 

決壊した濁流のごとく吹き飛んで、中核施設のモニターに突っ込んだ偽スペクターを見ながら偽サリアは警戒を解かない。

 

偽サリアがいったネタとはこういうことだ。

 

偽スペクターは自分のいく先々で待ち伏せをしていた、どこに隠れても()()現れるソレに不信感を抱いていたのだ。故に

 

──ロドス艦内の一部を破壊して回っていた。

 

すると偽スペクターの待ち伏せ回数は減り、相手が苛立ちを募らせていくのがわかった。だがこれは副時効果だ、本当の狙いは──

 

──破損していた箇所がどうなっているかの確認の裏取り、そして監視カメラの見える中核施設への誘導だった。

 

ロドス艦内のまるっとコピーした相手の敗因はこれだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

偽サリアが思ったサリアの力はこれなのだ

 

──尋常ではない精神力とロジック詰め

 

俺がどうするかではなく。サリアならどうするかを考えれば容易いことだった。

 

「お前、施設を破壊されると機能が落ちるな?」

 

倒れ込んでいる偽スペクターに偽サリアは言葉を投げ掛ける。幻聴にしたがって避けたとき、壁に食い込んだ電ノコをそのまま振り下ろせばプレッシャーになった筈だ。ソレをしなかったことがヒントだった。だからまず床を砕いてダメージを与え、思考を奪ったのだ。

 

だが、これは前哨戦。本命は─

 

偽スペクターが起き上がると、またぐにゃりとスペクターの輪郭が崩れる

 

──来るか!

 

得体の知れない怪物を目の前に、偽サリアは今度こそ怯えなかった。

 

「──!」

 

怪物が方向を上げ、サリアが拳を構えたその時

 

──あらあら、まだ迷子がこんなところに

 

一閃

 

「!?」

 

「…来たか」

 

機械音を響かせながら怪物の触手をぶったぎる修道服に電ノコというアホみたいな組み合わせのオペレーター。

 

「──煩くて寝られないわ」

 

─☆5オペレーター。スペクターのお出ましだ。

 

「───」

 

スペクターが此方を見やると、手で追い払うようにしてくる。どうやらこれは自分で刈り取りたい様子、大人しくするか。

 

後方に下がった偽サリアを一瞥した後、スペクターは電ノコの回転数を上げて怪物に目線を移すのだった

 

「さあ、運動の時間よ」

 

 

 

 




主人公覚醒と思わせといて最後の最後で美味しいところを持っていくスペクター


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6.5話 不思議の国のサメちゃん

あけましておめでとうございます(激遅)

今回は短いけど許して!


怪物とスペクターがにらみ合いを効かせながら両者とも間合いを取りながら牽制し合う、スペクターが戦うお陰で腕の措置をする時間が生まれた。出血は硬質化で無理矢理止めていたので痛みが強まっていたから助かる。危なくないところに腰かけつつ趨勢を見届ける

 

「──!」

 

仕掛けたのは異形の怪物の方だった。放たれた触手の速度を見る限り、俺だと正直疲労感も相まって逃げそびれる可能性がある。

 

まあ、スペクターは余裕で避けるどころかステップを刻みつつ、触手も刻んでいるんだが…

 

 

「では、今度は此方から」

 

んでもって本家本元のスペクターが突進しながら電ノコのギアを1段階上げて突っ込む、異音を立てながら構わず触手を解体してく姿は正直怖い。偽スペクターは突進からの振り下ろしだったが此方は足を止めずに突っ込んでくる。どっちが怖いかと言われれば後者である

 

「堅~い」

 

…うん、薄々勘づいてはいだんだけど…これ素ペクターだわ、サメちゃんだわこれ。ノリが軽い

 

ただ、攻めは怒涛にて苛烈。ブンブン振り回される電ノコはまるで解体ショーさながらに怪物を切り刻んでいく、ぶっちゃけ戦いになってなかった。

 

──数分もすれば怪物はバラバラになってた。

 

ソレと同時にロドスらしき空間は消え失せ、またあの浜辺…と似てはいるが少し違った。

 

海面と陸を隔たる溝は深く、此方には来れないようすだ。

 

 

──彼岸の境界線 AM?!:]7

 

「…助かった」

 

「ふふ…」

 

極めて冷静に言うもののスペクター…いや、サメちゃんでいいか。サメちゃんは周りをぐるぐると周りながらクスクス笑ってる、ちょっと怖い。補食前に品定めされてる感じがする。

 

「…ところで、私は何故此処に居る?…此処が何処だかは分からないという事は置いておこう」

 

さすがに体力が無くなっているので砂浜に腰をかけてサメちゃんに問いかけてみる。何時から夢の中なのかいまいち良く分かっていない

 

「なるほどなるほど、つまりは自ら『此方側』に来たのではなく迷いこんで来たということですか。大方同族…あの猛毒の弓使いと、機械仕掛けの海牛、虚弱なタツノオトシゴの『潮気』に当てられたのでしょう」

 

此方側って言うのは良くわかんなかったけど、どうやらエーギル組と一度に連続接触したのが不味かったらしい。何度かに分ければ問題ないらしいのだがそんなことは分からない。

 

「…まあ、良いでしょう。どちらにしろ『此方側』にくるには少々アレだから…そういえば、アーツは此処では使えないのだけれど。どうやって使ったのかしら?」

 

あぁ、硬質化はアーツだもんな。まあ…別にアーツが此処で使えるか使えないかはぶっちゃけ問題じゃないんだよねこれ。

 

「ハッタリだ、アレは…本当はこういうカラクリさ」

 

「?」

 

首をかしげているサメちゃんを尻目に服についていた装置の電源を押した。すると先ほどのように衣服の強度がまし()()()()()()()()()()()()()()というアピールになるのだ。

 

「こういうことだ、相手はどうやらこういう設備については知識はなかったようだな。それも幸いした、相手が此方の事を知っていればこれは通らなかった。一か八かの限りなく失敗の確率が悪い賭けだったが…何とか勝つことができた」

 

相手側が此方を狙い打ちしてきたら勝機はゼロ、そんな危ない橋だったけどやるしかなかった。アーツが元々使えないからアーツ使用不可にされても問題なかったもんね!グスン…俺もアーツ早く使いたい、使いたいよ…グスン

 

「ふぅん…なるほどなるほど」

 

「…なんだ、そこまでじっと見て」

 

サメちゃんがまた囲い込み漁みたいなことしてくる。ものすごくコワイ、これが実写版ジョーズですかそうですか…

 

「…ふふ」

 

何その意味深な笑顔!?サメちゃんがそういう笑い方するととても恐いからやめようね !本当にやめようね!!!!

 

「そうそういい忘れてたのだけれど」

 

「…まだ戦いがあるとでも言いたいのか?」

 

さすがにそれはノーセンキュー、体の節々が…痛くなかったわ。痛くなかったわ…

 

「貴女、そろそろ起きるわよ?」

 

「ん?」

 

サメちゃんがそう言うと首をかしげた偽サリアだったのだが猛烈な勢いで上に引っ張られる感覚に見舞われる。

 

「これ、夢の中だから」

 

「そういうことは先に言え阿呆───!!!!」

 

衝撃的なカミングアウトの末、偽サリアは唐突に現実へと放り出された

 

「……さて、邪魔者も居なくなったことだし。そろそろ理由、聞かせてくれないかしら?彼女…っていっていいのかわからない者を引きずりこんだ黒幕さん?」

 

───ロドス医務室

 

「──っ!?」

 

ガバッと体をベッドから引き剥がすと最初目覚めた医務室だった。どうやら無事…といっていいのか分からないが帰還できたらしい。そんな風に思っていると

 

「───」

 

「……」

 

サメちゃんではなくスペクターが此方をずっと見ていた、声を出さなかった俺は偉いと思う。そんなことを思っているとスペクターはスッと何処かに消えていった。

 

「なんなんだったあれは…」

 

それに答えてくる者はない、そう思いつつもそう呟くしかなかった。此処にはいい思い出がないのでとりあえず部屋の外に出るか…そう思って扉を開けた偽サリアだったのが────

 

バタン!

 

すぐに閉じてまたしばらく横になった

 

 

 

 



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第七話 ウィーディちゃんは頼られたい

ウィーディちゃんメインのお話です

ウィーディちゃんいいよねかわいいよね

あと





この小説がアークナイツ(悪口)しないとは言ってない

加筆しました。ウィーディちゃんのイメージ壊れたらごめんなさい、代わりにエンカクさんが切腹します


さて、とりあえず状況を整理しておこう。そう思い偽サリアはベッドの上で思考を巡らせる。

 

先ずは体調面、気だるさは抜けないものの特にこれと行った不調は見られない。あの変なウネウネとの戦いで負った傷も無くなっている…いや、おそらくは傷は肉体ではなく精神の方にダメージが入ったと言うべきなのだろうか。

 

「…ふむ」

 

体を軽く動かしても違和感はない、しっかりと動く。骨に皹が入っているわけでもないので大丈夫そうだな。

 

次はあの夢の中の世界だ。正直あれが夢とは思えない、どちらかと言うと精神的な物に干渉するアーツといわれた方がまだいい。というかそうであってくれ。

 

スペクターとサメちゃんのサメ映画を見たのだが、エーギル3人娘との接触のせいだとか言われたけど本当だろうか。まあ、大丈夫か…多分。にしても、ここ数日まともに過ごせてる日が1日も無いんだがどうなのこれ?

 

「───!!!!」

 

さて、そろそろ現実逃避をやめようか…

 

「───はあ」

 

ドアを気だるげに開けるとそこは医療区画の一つ、おそらく病棟のような物なんだけど…問題はそこではない。うん…

 

何故一回部屋に戻ってたかというと、こういう理由がある。

 

「あ゛!の゛!ね゛!水゛道゛管゛に゛薬゛を゛流゛す゛な゛っ゛て゛何゛回゛も゛言゛って゛る゛で゛し゛ょ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!」

 

キーンと耳鳴りが起こりそうな位の声でブチギレてるウィーディちゃんの声が通路…というかロドス全体に響き渡っている。医療区画でやるなよ、と言われそうだがウィーディちゃんがブチギレハイドロカノンぶっぱなしたときの為だと思う。

 

ちなみに誰が怒られているかと言うと…ご察しのとおりソーンズとエリジウムである

 

ソーンズの首からは『私は連日壊れに壊れまくってトイレすら使用不可になっていた水道管を直してくれていたウィーディ含めたエンジニア一行の努力を無駄にした大馬鹿者のクソザコ海産物です』という板が

 

エリジウムからは『私は本来であれば水道管に流れなかった筈の薬品を面白半分で遊んでたらぶちまけ、あげくにそれを報告しなかった千年に一度の顔以外何の取り柄もないダメ男です』という板が

 

二人仲良く正座しつつウィーディちゃんにお説教を食らっていた。まあ、そうなるよな…ウィーディちゃんを見れば、目に隈が出来ている。夜通しの作業だったのか肩で息をしつつもブチギレている。

 

「いや、あの薬に毒性はない。本来であれば水道管に流れたとしても少し匂う位の筈だが」

 

「あー…うん、僕が別の薬と混ぜちゃったからかも」

 

「待て、その話は聞いてはいない。簡潔に言え、下手をすると水道管が壊れたのがどうでもよく──「あ゛ぁ゛?」──水道管が壊れたのと同じぐらいの損害が出るかもしれない」

 

ソーンズが首をひねりつつ言えば、エリジウムが割りと軽いのりでポロッと溢した言葉に食いつく。そしてソーンズがうっかり放った一言にウィーディちゃんが蓄水砲

の砲口を向けるとソーンズが即座に訂正する。

 

さすがにそろそろ不味いので行くか…

 

──ウィーディside

 

「──さすがに手を出すと不味い、そして一帯が水浸しになる」

 

人がせっかく苦労に苦労を重ねて直した水道管をぶっ壊した**イベリアスラング**をお説教していれば、病衣姿のサリアが現れた。

 

「体は大丈夫?サリア」

 

体調を聞くと何の心配もないって言う風に少し笑っていた。ほっと一安心

 

「──それはそうと、話の続きだが」

 

正座してるソーンズがエリジウムに促すように話に割ってはいる。エリジウムは「え?今のタイミング?今のタイミングなの?」と言っている。サリアとの会話を邪魔されたのは嫌だけど、此方も大事だから

 

「早く言え、俺達の貴重な時間を無駄にするな」

 

「お前達が薬を流さなければその前の時間も無駄にはならなかったがな」

 

ソーンズの言葉にサリアがしれっと刺すとソーンズとエリジウムは目を反らした。その通りよ**イベリアスラング**共

 

「えーっとね…ソーンズが持ってた薬って即効性がない精神安定を促す物だよね?」

 

「そうだ」

 

「それに、夢見を良くする薬品が混ざっちゃって…」

 

「はぁ………」

 

何だ、そういう薬だったんだ…それなら、まだ──

 

「─すまない、そこのヴィーヴル…名前はサリアだったか?少し質問がある」

 

「構わないが…」

 

そう思っていればソーンズが神妙な顔でサリアに声をかける。初対面だったんだ

 

「昨日、倒れたと聞いた。その上で、何か不自然なことは無かったか?例えば──()()()()()()()とかな」

 

「…妙な夢は見たな」

 

「…やはりか、エリジウム。ドクターの所へいくぞ」

 

「え?え?何で!?」

 

「これは水道管の騒ぎではない、報告しなければ」

 

ソーンズが神妙な顔で問いかけると、サリアは少し考えたあと頷き。ソーンズはため息混じりにエリジウムの首根っこをつかみながらドクターのもとへ向かった。そしてソーンズが振り返りながらこういった。

 

「エリジウムが混ぜた薬。あれは合わさると気化し多少の幻覚と軽い昏睡状態になってしまう、効力は微々たる物だが…なってしまう者はなってしまう。すまない、サリア。改めて謝罪に来る」

 

「あ、あぁ…ん?どうしたウィーディ?」

 

気がついたら、私の脚から力が抜けていた。

 

昨日サリアがまた倒れたんだ、体力が戻りきっては居なかったサリアを私達が連れ回したせいで無理をかけたんだと思う。不意に現れたスペクターが医務室に送っていってくれたけど…それでも、結構キツかった。

 

サリアは好感を持てる人だ。身だしなみはしっかりしているし衛生面も抜かりはない。ご飯を食べる前にアルコールで除菌したり、食べ終わったあともテーブルを清掃して。椅子も綺麗にしてから帰る。クロージャに見習ってほしい位…あと、私のことも結構気遣ってくれてるみたい。

 

ロドスの食堂でバイオテロ紛いの**イベリアスラング**

が起こったとき、サリアが手伝ってくれたんだ。幾らリーフが力持ちだからって機材を運ぶのは大変、そう言うときにサリアが無言で此方を手伝ってくれたの。

 

『──大丈夫か?』

 

疲れきっているリーフに話しかけたのが初めてサリアの声。少し低音で、ちょっと怖いけど。確かな気遣いを感じれた、そのあとリーフと一緒に休ませて貰ったわ。サリアって力持ちなのよね、リーフよりも沢山機材を運べるし。弱音だって吐かないし、とにかく仕事に真面目。此処も私としては好感を持てるポイント

 

『それは私が運ぼう』

 

──体に負荷がかかりそうな作業は代わってくれる

 

『リーフ、過度な負荷をかけるな』

 

──私だけじゃなくて、リーフのことも気遣ってくれる。ほとんどの人は私は気遣ってくれてるけどリーフはそうじゃないことが多い、だからリーフもサリアに懐いている…私よりも懐いている気がしないでもないけど。

 

『一旦休憩を挟む、少し待っていろ』

 

適当なタイミングで休憩をいれて、私含めたエンジニア達の飲み物だったり。軽い軽食だったりを運んでくれてたりしてすごく助かった。

 

『ホシグマ、そこのボルト絞められるか?』

 

『了解した』

 

重装オペレーターのホシグマも一緒に手伝ってくれたよ、サリアが声をかける前に手伝ってくれてたけど。サリアと一緒に高所のメンテナンスもやってくれた。

 

本来だったらもっと時間をかけて、もっと大変な作業だったんだけど。二人のお陰で直ぐに終わった

 

ホシグマは作業が終わると報告書を書きに行くって居なくなっちゃって。サリアと私で最後の後始末をしてたときだったかな?

 

『今日はありがとう、私達だけじゃこんなに早く終わんなかったよ』

 

『礼は要らん、私も助かったからな』

 

『そっか…そっか。それは良かった…ねえ、サリア?』

 

『なんだウィーディ』

 

『私、皆の役に立ってるかな?』

 

お互いに手を止めず、機材の後片付けと清掃をしながら会話を続ける。そして不意に言った言葉にサリアが動きを止めた。

 

『心配はない、ウィーディの頑張りは皆わかっている。不安に思うだろうが…大丈夫だ』

 

何度か言葉を選びながら、それでも此方を気遣ってくれるサリア(貴女)ウィーディ()は好感を持たざるをえなかった。

 

次の日も普段なら一人での食事を取るはずが一緒に食べてくれたりもした。いつも会話をする二人とも打ち解けてくれたし、アズリウスのことも受け入れてくれた。

 

──嬉しかった、本当に嬉しかった

 

昨日の水道管の掃除をするとき、知らないオペレーターが何人か手伝ってくれるようになった。サリアとの会話でコミュニケーションを取りたがらないわけじゃないってことが伝わったみたい。

 

だから──

 

だから──

 

──自分の認識の甘さに寒気が止まらなかった。そもそもサリアは重症を負って昏睡状態だった、何日も何日も。勿論体力が万全なわけがない、作戦にも参加してない辺り何処か悪いのかもしれない。

 

そんな…そんな当たり前のことを考えて居なかった。整備だって早く終わったとは言え日付が変わる前辺りだ、病み上がりの体には堪えないわけがない。その上で昨日連れ回して、さらに…

 

これ以上考えるのは精神的に無理だった。意識がぼぅっとしてくる、動悸が止まらな───

 

──────

 

「ん………」

 

気がついたらベッドの上だった。どうやら倒れちゃったみたい。気だるさが一気に来た体はあまり言うことを聞いてくれなかった。

 

「そのまま寝ていろ」

 

「…サリア」

 

両手にトレーを持っているサリアが起き上がっていた私の体をゆっくり寝かせつつ。休めと言ってくれる、どうやら私も軽度な過労らしい。

 

「薬の件、どうやらかたが着いたらしい」

 

あのあとエリジウムがこってり絞られまくって減給でケリがついたんだって。幸いほぼ効果が無かった為大事にはならなかった。

 

ソーンズ曰く

 

『過労しているオペレーターを強制的に休ませる為の試験薬のようなものだ。効果が出たオペレーターは待機だ』

 

…とのこと。

 

「というわけだ、しばらく休め」

 

そう言いつつ、トレーに乗せた食事を持ちながらベッドに横になっている私に向けてスプーンを向けてきた。

 

「じ、自分で食べられるから」

 

「駄目だ」

 

「流石にはず──むぐ」

 

抵抗していると口が空いた時にスプーンを入れられておとなしくムグムグと咀嚼する。容器にはスープにパンを浸した物で、食べやすいようになっていた。

 

「…それ、厨房から貰ってきたの?」

 

「いや?」

 

おとなしくサリアに食べさせられていると、ふと気になったことを問いかけてみる。するとそうではないと返ってきて少し驚いた

 

「じゃあ、医療オペレーターから?」

 

「いや?」

 

「なら購買部から?」

 

「いや?私が作った」

 

「ゲホゲホッ!」

 

不意にサリアから言われた言葉に思わず目をぐるぐるとさせてしまう。少し心配そうに「大丈夫か?嚥下が上手く行かないか?」と言われたのでジェスチャーで大丈夫と伝える。

 

え?これサリアの手料理?本当に?嬉しいんだけど申し訳ないし、わざわざ自分で作らなくても──

 

「サリアが、作ったの?」

 

簡素ではあるが付け合わせも有り。どれも消化に良く、胃に負担をかけないように選ばれている。しっかり考えてくれているメニューだ

 

「あぁ…そうだが?」

 

「…何でサリアが作ったの?」

 

「嫌─「嫌じゃないよ」そ、そうか」

 

なんて会話をしている間に粗方食べ終わっていた。胃に食べ物が入ると軽く睡魔が出てくる。

 

「理由としては、購買部の物は良くわからん。厨房は今忙しい様子だったからな」

 

「そっか、そういう」

 

「それにウィーディに変なものを食べさせる訳には行かないからな、大切な友人には良くなってほしい」

 

「ゴヘッ…ゴホッ !」

 

危ない、危ないよサリア。ちょっとドキッとしちゃった。当の本人は不思議そうに首をかしげてるけどそういうところだよサリア!

 

とっても恥ずかしいから食べ終わって布団に潜ろうとすると、ウェットティッシュで口の周りを軽く拭いてくれる。やっぱり敵わない…

 

「ウィーディ、此方を向いてくれ」

 

「何…って近い、近い!」

 

振り替えるとサリアが顔を近づけてきていた。私の抵抗も気にせず、おでこを合わせたり。手を握ったりしてくるからもう動悸が…!動悸が…!

 

止めは顎の辺りに指を添えられたこと、喉の様子を見てたみたいだけどそれどころじゃなかった…。

 

「声の出しすぎ以外で特に他は大丈夫そうだな」

 

サリアがカルテかなにかを見ている際、私はもうグロッキーだった。恥ずかしいぃ…!

 

─数日後

 

「あー!あー!あぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

ウィーディは無事医療区画から戻ってくるなりベッドの上にダイブしたあと、枕に顔を埋めながら大声を上げて絶叫する。本来なら枕に唾が飛んで汚いとか衣服を取り替えたりとかいろいろあるんだけどそういうことを考えている場合ではない。

 

 

 

サリアとの同室生活はいろんな意味で精神的に辛かった。だってナチュラルに距離近いんだもん、ウィーディ悪くないもん!(幼児退化)

 

 

 

(朝昼晩ご飯毎回毎回作ってくれるし、元々体が弱いからっていう理由で病衣の洗濯とかもしてくれたし…あと暇にならないように適度に話しかけてくれたりとか、本を持ってきてくれたりとか。卓上でできる機械弄りなんかも用意してくれたりとかなんなのこれサリアは私のお母さんか幼馴染みか彼女(?)か何かなの教えてちょうだいリーフ、あとナチュラルに距離が近いのもちょっと困る普通だったらちゃんと身だしなみきっちりしてるのかとかいろいろ考えるしそもそも距離が近いのを忠告するんだけどサリアは身だしなみしっかりしてるって言う信頼あるから私も自然に距離が近いのにも気にしなくなっちゃったけど距離が近すぎるのは心臓に悪いし私の方がしっかり出来てるかとか、汗の匂いとかしてないかとか気になって気になってどうしようもない。そもそもサリアと私の関係ってどれぐらい?サリアは大切な友人って言ってくれてるけど私はどう思っているんだろ。確かにサリアとは話も合うし料理の味の好みも近かったりとかいろいろ相性はいいと思うけど、大切な友人って言われたとき嬉しかった嬉しかったけどなんと言うか、こう…少し寂しいと感じてる私が居たりとか内面ぐちゃぐちゃになってくるところに気遣ってくれる台詞言うのずるいずるいずるい!そういうことを素面で言うしなんなら心配そうに言ったりとか、わざわざ言う必要も無いだろう?っていう顔でフォローしてくれるところ本当にサリアそういうところだよ!本当に!そのせいで風邪引いてもいないのに体が熱くなったりとか動悸が止まらなかったりとかして無限ループまさに無限ループ!そうやって他のオペレーターたらしこんでるんでしょ!ドクターみたいに!ドクターみたいに!かーっ!みんねリーフ!たらしかサリアばい!(早口))

 

 

 

等と言う限界オタクめいたことを高速詠唱していれば、脚をバタバタとバタつかせてうーうー唸っている。リーフはというとウィーディに呆れた様子で眠っている

 

すると

 

『ウィーディ、起きているか?良ければ朝食を───「今から準備するから待ってて!」───あ、あぁ…分かった』

 

サリアからのお誘い!とりあえず跳ね起きてさっさとシャワー済ませて準備支度…!ああもう今日に限って髪の毛跳ねるんだけど!**イベリアスラング!**

 

「お、お待たせ…っていきなりどうしたの?」

 

ジーッと此方を見てくるサリアにそういうと、サリアは無言で距離を詰めたあと。髪のくせっ毛を治してくれたり、服のしわを伸ばしてくれた

 

「これでいい、さて。行こうか」

 

だからナチュラルに距離詰めて来るの辞めてくれない?そう思いながらウィーディはサリアのあとを追いつつ談笑する。

 

彼女の足取りは軽かった

 

 

 




アークナイツ(悪口)しないとは言ってないと言ったな?

あれは嘘だ

追記
もっと腕にシルバー巻くとかさに投票したやつ出てこい、まるで意味がわからんぞ!


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幕間 ロドス掲示板にて

幕間なので少し別視点から


1:名無しのオペレーター

スレ立て乙

 

2:名無しのオペレーター

スレ立て乙~

 

3:名無しのオペレーター

タイトルからして草しか生えないんだが、不憫さんって誰や

 

4:名無しのオペレーター

不憫さんっていうのはサリアのことだぞ

 

5:名無しのオペレーター

えぇ…?

 

6:名無しのオペレーター

不憫っていうほど不憫か?大分自業自得なところあると思うんだけど

 

7:名無しのオペレーター

いや、確かに不憫さんだ

 

8:名無しのオペレーター

そうだな、不憫さんだな

 

9:名無しのオペレーター

どゆこと?

 

10:名無しのオペレーター

確かに、ロドスに来る前は不憫さんではなかったかもしれない…ロドスに来る前はな

 

11:名無しのオペレーター

あっ…(察し)

 

12:名無しのオペレーター

一時期ずっと出ずっぱりだったもんなサリアさん

 

13:名無しのオペレーター

そういう意味だと不憫か?

 

14:名無しのオペレーター

>>13

研究者なのに戦場にずっと放り込まれて、そのあとは研究に時間をかける暇もないまま危機契約とかに駆り出されてるぞ

 

15:名無しのオペレーター

ヒエッ

 

16:名無しのオペレーター

やっぱりブラックやんけ!

 

17:名無しのオペレーター

まあサリアさんが異質なだけだと思うが

 

18:名無しのオペレーター

それはどうかな?

 

19:名無しのオペレーター

それはどうかなといえるオペレーター学

 

20:名無しのオペレーター

最近の不憫さんの不憫さん要素

・ドクターを守って数日昏倒する

・昏倒から目覚めると体調不良でろくに戦えないっぽい

・飯テロに巻き込まれたあげく修理も手伝わされる

・ソーンズの薬を吸ってまた昏倒する

 

21:名無しのオペレーター

不憫さんやんけ

 

22:名無しのオペレーター

これは満場一致で不憫さん

 

23:名無しのオペレーター

サリアさん、これに関してはなんもしてないのに巻き込まれまくって草も生えないんだが?

 

24:名無しのオペレーター

ぶっちゃけ見てて哀しくなってくるゾ

 

25:名無しのオペレーター

この上にイフリータ絡みもあるってマ?

 

26:名無しのオペレーター

サリアさんの胃が…壊れるのかあれは

 

27:名無しのオペレーター

流石のサリアさんでもそうは…

 

28:名無しのオペレーター

いや、実はそうでもない

 

29:名無しのオペレーター

え?

 

30:名無しのオペレーター

え?

 

31:名無しのオペレーター

マジ?

 

32:名無しの医療オペレーター

ワイ、医療オペレーターでサリアさんのメディカルチェックやったんだけど。結構ヤバかったんだよ

 

33:名無しのオペレーター

kwsk

 

34:名無しの医療オペレーター

おk、サリアさんのメディカルチェックで分かったこと

・過度の精神負荷でメンタルに皹が入っている

・イフリータ絡みでさらに精神負荷が倍プッシュ

・ろくに睡眠取れてなかったから体のあちこちが実は厳しい、けどヴィーヴルの頑丈さでどうにかこうにかなってる

・加えてドクターかばった時のダメージが抜けきれてないのかアーツに不具合が発生中、使えるんだけど前みたいにバンバン使えるわけじゃないらしい

・後方支援に転属の可能性

 

35:名無しのオペレーター

オイオイ、ドクター死んだわ。いろんな意味で

 

36:名無しのオペレーター

サリアさんがそうなるのは流石にまずいっしょ

 

37:名無しのオペレーター

というか、これ話しても大丈夫なやつ?ケルシーせんせーに殺されない?

 

38:名無しのオペレーター

いや、これはもう情報出回ってる。アーツ関連はうっすら程度だけど

 

39:名無しのオペレーター

そういえば、不憫さん昏睡状態から復帰したら軟化してない?

 

40:名無しのオペレーター

それはある

 

41:名無しのオペレーター

ワイフーもそう思います

 

42:名無しの事務オペレーター

俺は事務担当だがそう思うぞ

 

43:名無しのオペレーター

事務担当!?死んだはずじゃ…!?

 

44:名無しのオペレーター

勝手に殺すな、だけど事務オペレーターニキがいるの珍しいな

 

45:名無しの事務オペレーター

まあなこの時期忙しいから

 

46:名無しのオペレーター

でも居るってことはそれなりに楽になったってことか?

 

47:名無しのオペレーター

そうじゃない、ここのスレの当該者のお陰で楽になったんだよ

 

48:名無しのオペレーター

というと、不憫さんか?

 

49:名無しのオペレーター

あぁ、サリアさんが手助けしてくれてな。暇だからって俺達の仕事手伝ってくれてんだわ

 

50:名無しの医療オペレーター

あぁ、医療区画にいたときか?

 

51:名無しのオペレーター

医療区画?

 

52:名無しのオペレーター

ソーンズの薬を吸ったときのやつだろうなそれ

 

53:名無しのオペレーター

あぁ…

 

54:名無しのオペレーター

それで?医療区画に居たこととなんか関係あるの?

 

55:名無しの事務オペレーター

いや、そのときにやって貰った…というよりは。仕事を分けてくれないかって頼まれたんだ。

 

56:名無しのオペレーター

最低…

 

57:名無しのオペレーター

ドン引きです…

 

58:名無しのオペレーター

懺悔の用意は出来ているか!

 

59:名無しのオペレーター

総攻撃されてて草、まあそれはそれとして病人に作業させるのはどうなん?オペレーターとして恥ずかしくないんか?

 

60:名無しの事務オペレーター

……休日に何故怒られてるんだ俺は

 

61:名無しのオペレーター

自業自得

 

62:名無しのオペレーター

それ

 

63:名無しのオペレーター

愚か者め!

 

64:名無しのオペレーター

人の心とかないんか?

 

65:名無しのオペレーター

その休みは誰のお陰だ定期

 

66:名無しのオペレーター

謙虚さが足りない。ドクターに1ー7周回+500周回

 

67:名無しのオペレーター

ドクターとばっちりで草

 

68:名無しのオペレーター

ドクター「どうしてこうなったのかコレガワカラナイ」

 

69:名無しのオペレーター

ホーウキョウテキノトウジョウダナ?

 

70:名無しのオペレーター

皇帝はカエレ!

 

71:名無しのオペレーター

…話を戻そう。どうやらサリアさんは手持ちぶさただったようでな、それで俺達の負担軽減の為にって手伝ってくれたんだ。感謝している、久しぶりに友人の墓掃除もできたしな

 

72:名無しのオペレーター

急にテラの日常(悪口)するのやめろ

 

73:名無しのオペレーター

墓参りかぁ…俺もしばらく行けてねえなぁ

 

74:名無しの医療オペレーター

ちょっと待て

 

75:名無しの事務オペレーター

どうした?

 

76:名無しのオペレーター

サリアさん、資料だけじゃなくて工具箱も持ってたんだけど

 

77:名無しの事務オペレーター

マジで?

 

78:名無しの工学オペレーター

あー、それはうちらのほうやな

 

79:名無しのオペレーター

あれはバグパイプにトランシーバーを壊されまくってる工学オペレーターニキ!

 

80:名無しのオペレーター

事実だけど思い出すと辛いからヤメロ

 

81:名無しのオペレーター

んで、その工学オペレーターニキはどうしてサリアさんが工具箱持ってるの知ってるの?事務オペレーターニキと同じく仕事押し付けた?

 

82:名無しの工学オペレーター

いやそれはねえよ。そこまで面の皮厚くない

 

83:名無しの事務オペレーター

(絶命)

 

84:名無しのオペレーター

事務オペレーターニキに被弾してて草

 

85:名無しの医療オペレーター

じ、事務仕事だと面の皮は厚い方がいいから…

 

86:名無しの工学オペレーター

実はな、我らがウィーディパイセンも入院中だったんだけど。入院って暇じゃない?だから暇潰しのもんウィーディパイセンになにかないかーって聞きに来たから簡易キッド渡したねん

 

87:名無しのオペレーター

ウィーディさんも入院してたんか…

 

88:名無しの工学オペレーター

ウィーディさんなら数日前ソーンズにぶちギレながら水道管治してたで、んでそのあとにソーンズとエリジウム取っ捕まえてお説教。だけど徹夜重ねてたからソーンズの気化した薬を吸ってぶっ倒れた

 

89:名無しのオペレーター

ウィーディさんぇ…

 

90:名無しのオペレーター

ウィーディさん、怒りの蓄水砲発射

 

91:名無しの工学オペレーター

まあそういうのもあってメンタルよわよわになってたウィーディパイセンを元気付けてくれたのがサリアさんやな

 

92:名無しのオペレーター

不憫さん自分も体調悪いのに動き回ってて草枯れるわ

 

93:名無しのオペレーター

もう少し体を労れ

 

94:名無しの工学オペレーター

だけど今のサリアさん、かなーり精神状況宜しくないんよなぁ

 

95:名無しの事務オペレーター

なにか心当たりでも?

 

96:名無しのオペレーター

いやな?実は、その前にもブレミシャインと一緒にバグパイプとかに壊されたトランシーバー直して貰ったんよ、数十台位

 

97:名無しのオペレーター

本業ではないはずの工学で実力を発揮する不憫さんが凄いのか、それとも数十台もトランシーバーを破壊するバグパイプがやべえのか…

 

98:名無しの事務オペレーター

どっちもだろう…お陰で報告書が山積みだ

 

99:名無しの工学オペレーター

んでな、その時聞いたんだけど。なんか戦場にたてへんことが苦痛っていうか何て言うか…焦燥感に駆られてるっぽいんよ。今はこれしか出来ることないーって

 

100:名無しの事務オペレーター

そういえば、俺達の仕事手伝うときもそんなことを言ってたな…

101:名無しの医療オペレーター

…おそらくサリアさんはPTSDのような心的外のストレス障害を患っている可能性も否定できない

 

102:名無しのオペレーター

こマ?

 

103:名無しのオペレーター

確かに、それはあるかもね

 

104:名無しのオペレーター

ずーっと戦場にいて、急に表面的とはいえ平和な所に居ればなぁ

 

105:名無しのオペレーター

平和…平和…?

 

106:名無しのオペレーター

バイオテロがある平和な世界?




イチャコラに票が集まるのは予想したけど王様多すぎて困惑してる


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幕間2 外部協力オペレーター掲示板

ちょっとした説明話


472:無名のBSWオペレーター

ロドスとの協力関係も随分長くなって参りましたね

 

473:無名のカランドオペレーター

相変わらず胡散臭いがな

 

474:無名のライン生命離脱オペレーター

せやな

 

475:無名の外部協力オペレーター

お前らが言うなお前らが

 

476:無名の外部協力オペレーター

カランドは頭が自分がドクターの盟友だと思い込んでるCEOだからな

 

477:無名のカランド外部協力オペレーター

否定はしない

 

478:無名の外部協力オペレーター

 

479:無名の外部協力オペレーター

 

480:無名の外部協力オペレーター

否定してやれよ

 

481:無名のカランドオペレーター

だってシルバーアッシュCEO、いきなり

「盟友が私を呼んでいる!」

とかいってロドスに来たんだし

 

482:無名の外部協力オペレーター

シルバーアッシュぇ…

 

483:無名の外部協力オペレーター

それは不審者扱いされても仕方ないわ

 

484:無名の外部協力オペレーター

ま、まあCEOは普通の精神力じゃ無理そうだから

 

485:無名の情報通ペレーター

【速報】ライン生命所属のサリア、昏睡状態に陥る

 

486:無名の外部協力オペレーター

は?

 

487:無名の外部協力オペレーター

こマ?

 

488:無名の外部協力オペレーター

うせやろ

 

489:無名のライン生命離脱オペレーター

あのサリアが?ありえない

 

490:無名の外部協力オペレーター

イレギュラーでも起こったんか?

 

491:無名の外部協力オペレーター

どうしてイレギュラーは発生するんだろう

 

492:無名の外部協力オペレーター

おいやめろ

 

493:無名の外部協力オペレーター

先日の作戦がかなりの物だったのは把握してるか?

 

494:無名の外部協力オペレーター

知ってる、知ってる。俺は後始末に駆り出さてただけだけど。ありゃひどいなんてもんじゃねえな

 

495:無名のBSWオペレーター

うちの先輩方も駆り出されてたみたいだけどかなりやばかったみたい。リスカム先輩の盾が逝ったって

 

496:無名の外部協力オペレーター

マジか

 

497:無名のカランドオペレーター

うちのCEOも珍しくボロボロだったよ。マントは焦げてたし、多分あれ大技のアーツぶっ放してたと思う、アーツロッド駄目になってたからしばらく戦線に立てないそうな

498:無名の外部協力オペレーター

シルバーアッシュがか…

 

499:無名の外部協力オペレーター

思ってたよりもやばい作戦だったみたいだな

 

500:無名の外部協力オペレーター

作戦概要はどんな感じやったん

 

501:無名の外部協力オペレーター

いつもの殲滅線てってわけじゃなかったんだよな?

 

502:無名の情報通オペレーター

流石にそう思うか

 

503:無名の外部協力オペレーター

当たり前田のクラッカー

 

504:無名の外部協力オペレーター

古いぞ

 

505:無名の外部協力オペレーター

サリアだけじゃなくほかのオペレーターもその有様じゃな

 

506:無名の情報通オペレーター

【作戦概要】とある施設の奪還および対象の回収。作戦が継続不可能、対象の回収が不可能とされた場合作戦変更。施設の奪還→施設の制圧または施設の【完全破壊】。対象の回収→対象の封印、または対象の【完全排除】

【作戦立案】ケルシー

【作戦指揮】ドクター

【実行部隊】

ドクター【陣頭指揮】

サリア【隊長】

リスカム

シルバーアッシュ

フランカ

テンニンカ

バグパイプ

エイヤフィヤトラ

シー

メテオリーテ

ASH

フィリオプシス

シャイニング

シャマレ

【回収部隊兼遊撃隊】

アーミヤ【陣頭指揮】

チェン【隊長】

ホシグマ

ニアール 

ソーンズ

スペクター

ケオベ

モスティマ

W

ナイチンゲール

ウィスパーレイン

スズラン

シージ

エリジウム

【補助部隊】

ガヴィル【隊長】

ススーロ

ジェシカ

シラユキ

カシャ

ギターノ

フロストリーフ

メランサ

フェン

クーリエ

ポデンコ

【作戦履歴】

作戦開始直後施設内部にて爆発音検知、施設奪還から施設制圧に切り替えるようケルシー女医から伝達。実行部隊が内部戦力と交戦中遊撃部隊が別ルートから侵入。対象の排除完了後遊撃部隊が施設から撤退後。施設よりアーツと思わしき濃霧発生、更新途絶。遊撃部隊が救出に向かおうとするも未確認と思われる感染生物と交戦。被害を出しつつもこれを撃退。

実行部隊は内部戦力と交戦中同じく未確認と思われる感染生物と遭遇。内部戦力は未確認と思われる感染生物によって全滅。実行部隊が相手をしたものと遊撃部隊が相手をしたもののとは別個体であり。実行部隊が交戦したものが成体、遊撃部隊が交戦したものが幼体と見られる。両部隊が撤退時に伏兵として隠れていた3体目の攻撃によりサリア、リスカム、ホシグマ、ニアールが負傷。うちサリアが重症、3体目は補助部隊も加え完全排除。ただ1体目、2体目の完全討伐が完遂されたかは不明。死体は確認できておらず、シルバーアッシュ。ソーンズ両名の手応えも薄いとの報告あり。依然として脅威は続いているため注意されたし。なおこの作戦における被害が甚大なため当面の大規模作戦は中止とし、外部協力オペレーター各位は契約に見直しも検討されたし。オペレーターサリアについては昏睡状態から復帰が見込めるかは未知数なため一時的にオペレーター契約を解除し当ロドスの患者として受け入れる方針である。また昏睡状態から復帰した場合もメディカルチェック以外のアーツの行使を禁止とし。戦闘訓練の参加も厳禁とする、万が一戦闘行為を煽るような行動が確認された場合ケルシー女医の意向の元、退艦を通知する場合があるため留意されるように

【作戦結果】  失敗

ざっとこんなもんか

 

507:無名の外部協力オペレーター

……マジか

 

508:無名の外部協力オペレーター

これはやべえわ

 

509:無名のBSWオペレーター

ロドストの契約見直しって通知きたけど……これはしかたない

 

510:無名の外部協力オペレーター

作戦概要もあやふやだなこれ

 

511:無名の外部協力オペレーター

情報通さんはもっと詳しく知ってるの?その対象のこととかさ

 

512:無名の情報通オペレーター

いや、作戦概要は聞かされてるが対象のことは知らない。知りたくもないからな

 

513:無名の外部協力オペレーター

これ、騙して悪いがとは違いそうだな

 

514:無名の外部協力オペレーター

トップ二人が出てるからな

 

515:無名の外部協力オペレーター

というか、実行部隊も遊撃部隊もやべえやつしかいないじゃん

 

516:無名の外部協力オペレーター

全員エリート中のエリートだしな

 

517:無名のカランドオペレーター

メテオリーテ氏が見劣りする異常事態

 

518:無名のライン生命オペレーター

………これを持ってしても敗北するとは

 

519:無名の外部協力オペレーター

多分アーミヤとかドクターがミスったわけではないようだな

 

520:無名の外部協力オペレーター

おそらくはな

 

521:無名の外部協力オペレーター

だが死傷者が出ないだけましってことかなぁ

 

522:無名の外部協力オペレーター

テラだと珍しい方だろうよ

 

523:無名のBSWオペレーター

そうですねぇ、うちの新人が帰ってこないまま退職……とかも珍しくはないですから

 

524:無名のライン生命オペレーター

然り、運がいいほうだな

 

525:無名の龍門オペレーター

おつー

 

526:無名の外部協力オペレーター

あ、龍門ネキ。おつー

 

527:無名の龍門オペレーター

先日の任務はほんとに危ないところだった。サリアがいなければどうなってたことやら

 

528:無名の外部協力オペレーター

あれ、ってことはもしかして

 

529:無名の外部協力オペレーター

それ以上はいけない

 

530:無名の外部協力オペレーター

まだ死にたくないでござる

 

531:無名の外部協力オペレーター

察しがいいと死ぬぞ

 

532:無名の外部協力オペレーター

アッハイ

 

533:無名の外部協力オペレーター

いい子だ

 

534:無名の情報通オペレーター

ん?

 

535:無名の外部協力オペレーター

どした情報通ニキ

 

536:無名の外部協力オペレーター

サリアが目覚めたようだ

 

537:無名の外部協力オペレーター

おっ

 

538:無名の外部協力オペレーター

良かった

 

539:無名の外部協力オペレーター

一安心だ

 

540:無名の外部協力オペレーター

でも、これからちょーっと人数減るかもなぁ

 

541:無名のカランドオペレーター

致し方ないですねこれは。あくまでも外部協力ですから我々は

 

542:無名の外部協力オペレーター

ただ、あのサリアが負けたのは意外すぎた

 

543:無名の外部協力オペレーター

まあ、ねえ

 

544:無名の外部協力オペレーター

これから先、厳しくなりそうだな 

 

 




アークナイツ(悪口)ではないけど

後々曇らせはしていこうかなって、大丈夫大丈夫。曇ったあとは晴れる晴れる(スマイル)


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第八話 隣の芝は蒼い

(寝ずに執筆して書いちゃ)いかんのか?

今回はほんのちょっぴり曇らせが有ります。ちゃんとそのあとは晴れます、大丈夫大丈夫シンパイスルナヨーチャントハレルカラサー


ロドスの訓練所。そこで剣が盾にぶつかった時の生じる金属音と火花が飛び散る。BSWのリスカムとフランカだ。

 

「ねえリスカム、そろそろ休憩しない〰?」

 

「いいえ、まだ訓練開始から2時間ほどしか経過してません」

 

「……二時間も、だと思うけど」

 

「そうでしょうか」

 

「そうよ」

 

「……わかりました」

 

フランカがリスカムに休憩しようと問いかけると。憮然としてリスカムが返す。それを受けてフランカが若干引きつった笑みで否定するとリスカムは不承不承ながらも盾をおろした。

 

「んー…」

 

「…なんでしょうか」

 

「いや、イタズラしても反応鈍いなーって」

 

「…そうですね」

 

 

なんとかこの訓練キチを休ませることに成功したフランカはやっとこさ腰を落ち着けつつリスカムの頬を突っついてイタズラするも鈍い反応しかしない、それどころかどこか上の空なリスカムにフランカが問いかける。

 

「まだ、あの日のこと忘れられない?」

 

「……はい」

 

「そっか…少し。外すわね」

 

フランカの言葉にリスカムは何度目かともしれない思考の海に溺れていく

 

──リスカムside

 

私は平凡な人間だった。BSWでもなぜ自分のような人間が有能視されるのかわからないぐらいには。

 

私はよく【優等生】と呼ばれていた。規律はしっかり守っていたし忠実に訓練もやっていた……いや、やっていたと思う。

 

今思い返せば優等生、と呼ばれていたのは別の意味ではないかとも。最近ロドスに来てからそう思うようになった………いや()()()()()()()()()

 

ロドスはテラの縮図のようなものだと思う。いろんな生まれの人がいて、いろんな種族の人がいて。

 

────いろんな覚悟を持ってる人がいる

 

私もほんの少しの自尊心というものはなくはなかった。少なくとも足手まといにはならないぐらいの自尊心が

 

だが、ロドスに来てから。具体的にはロドスで本格的にオペレーターとして戦うようになってからはそんなものは木っ端微塵に砕け散ってしまいました。

 

私の生まれは平凡で、特にこれといった過去もなくて。託されたものもそこまでなくて。精々プロ意識があるぐらいだった。それすらも消えて無くなりそうだけど。

 

輝かしい功績と家族を捨てて。国から追放されて。汚名を着せられても尚自分よりも弱い誰かのために命をかけてきたニアールさん。

 

龍門という都市を背負い、裏での暗躍や思惑が交錯する戦場でも戦いにひたむきなホシグマさん。

 

どれも、どの人も私なんかよりもずっとずっと強くて。迷いなんか微塵も周りには感じさせなくて。私なんかよりもずっとずっと戦う意味を持っていた。

 

その中でも一番強くて、一番憧れてて。一番引け目を感じていたのはサリアさんだった。

 

サリアさんは守るべき人と守りたかった人に会えないまま。会えたとしても昔のようには話せなくても。それでも戦う人だ。

 

前にドクターと話しているときにふと耳に入ってきた言葉がある

 

『二人に会いたくはないのか?』

 

と、その時サリアさんは今は会うべきではないと即座に言い返し、ドクターは辛くはないかと問いかける

 

今でも覚えている。その時サリアさんが言った言葉を。その覚悟を。私との違いを……

 

『あの二人を守る、それを決めたのは私だ。他ならない私なんだ、理解される必要はない。側にいるだけが守るということではない。何を言われようと、例えあの子が理解できなかったとしても………それでいい、それでいいんだ。わたしはそう……納得している』

 

それを聞いたとき私はたまらなく惨めな気持ちだった。任務だから戦う、BSWとしては当然だが。何故かたまらなく惨めな気持ちだった

 

そんな調子で迎えたのがあの作戦の日だった。

 

ホシグマさん、ニアールさん、そしてサリアさんとの共同任務。特にサリアさんとは同チームだったのが私は陰鬱だった、もちろん表には出さなかったけど。やっぱり動きには精彩を欠いた

 

そこでまた惨めになった。他のオペレーターの人たちとの違いも身にしみて理解させられた。でもなんとか任務を終えた

 

そう思ってたときだった、伏兵に襲われたのは。

 

あのときは本当に死ぬかと思った。何とか衝撃を殺すのに精一杯だった、そして──

 

盾が音を立てて砕けた。まるで自分の心を写すかのように。呆気なく

 

そうして敵の攻撃を受け止めきれずに吹き飛んで、地面を転がって……

 

『そのまま伏せろ!』

 

サリアさんに庇われた周りにドクターも居るのもあったと思うんですけど、サリアさんは私の前に立って──

 

───敵の攻撃を受け止めきって倒れた

 

その後のことは、よく覚えていません。気がついたら病棟でぐるぐる巻の包帯に包まれていました、隣にはホシグマさん、ニアールさんが居ましたが。サリアさんは居ませんでした

 

その後にサリアさんが昏睡状態から目覚めていないという言葉を聞いて、無事ではないけど一命をとりとめてよかったという安堵と、迷惑をかけてしまったという後悔と

 

───もう一緒に戦って劣等感に悩まされることがなくなったという浅ましい感情が生まれてしまっていました

 

あれほど自分が嫌いになった瞬間はありませんでした、だからこうして訓練に没頭して考えないようにしていました。フランカには……悪いと思っています。フランカもあれから少し悩んでいたようですから

 

お互いに、色々とロドスに来て思うことが増えてきたのかもしれない。そろそろBSWに戻ろうか、そんなことを思い始めている私が居た、これ以上足手まといにはなりたくないし。何より惨めさには耐えきれなくなってきている。

 

溜息混じりに視線を下げていると、首元に冷たい感触が当たる。

 

多分フランカが戻ってきた、そう思って振り返ると

 

──今一番会いたくない人がそこに居た

 

「さ、サリア……さ…ん」

 

「………」

 

一番会いたくなかった人──サリアさんが腰を据えているのを何とか声を絞り出して答える

 

できることなら今すぐにでも逃げ出したかった。でも、どうやら私はそれすらもできなくなった臆病者らしい。これでは戦えない

 

暗澹たる気持ちで渡された飲料水を口にするが、あいにく味なんてしなかった。本当に憔悴しきってることを自覚した。それからしばらく時間がたったが、憔悴しきってる私にサリアさんは何も言わなかった。

 

私の事を情けない奴だとかは多分思ってはいない。そうだったらわざわざ来ないし早々に飲料水をわたして帰るだろうから。憔悴しきってることにかける言葉が見つからないとか、そういう見え透いた安っぽい同情はこの人はしない、そう思っているし実際そうなんだろう。

 

ならなんでだろう、と思った。そうして少しあとになって気づいた。この距離感と前の言葉だ

 

(側にいるだけが優しさではない………か)

 

サリアさんとの距離は決して近くはない。だけど遠くでもないということ声を絞り出してさえすれば届くだろう、声を……絞り……出して

 

………

 

あぁ、そういうことか。サリアさん。貴女は、本当に不器用で、口じゃ言ってくれなくて。誤解されやすいところはかわらないんだろうけど。

 

(やさしいなぁ……)

 

多分、待ってくれているんだと思う、私が話しかけてくるのを………いや、話しかけられるまで。ずっと

 

強引に話しかければ私が壊れてしまうことも。きっと  

 

(やっぱり)

 

試しに軽く距離を取るとさり気なくサリアさんも距離を詰める。常に一定の距離感を保ってくれる。それが嬉しいけど、同時に嫌になる

ここまでお膳立てしてもらったことに対して。色々と

 

そしてお膳立てしてもらったのにまだ言えないこと、話しかけられないこと。すべてが嫌になった、やっぱりロドスを抜けようと思った

 

そんなとき、通信端末に着信音がなった。今のタイミングでまともな返答ができる気がしなかったけど、とりあえず画面を開けばサリアさんからのメールだった、とうとう呆れてしまったのかな、そう思いつつ開けば

 

『時間、まだ掛かりそうか?』

 

顔を上げてサリアさんの方を見ればサリアさんも通信端末を眺めていた。その視線は呆れているわけでもなく、催促を促しているわけでもなかった。指が動くのを見てれば続きが送られてきた

 

『私の方はもう体調も良くなっている。物も食べることもできるし動くことにも支障はない。昨日も普通に過ごしていた』

 

そのメールを見てホッと一安心し思わず脱力してしまう。本当に良かった、そう思うのと同時に一つ不安と疑問が生まれてしまった。それを感じ取ったのか知らないけど、もう一通メールが飛んでくる

 

『メールで報告したのは声が出ない、という理由ではない。しっかり声も出る、単に此方が一方的に声を出してお前が焦らないようにしただけに過ぎない。あまり深く考え込まないことだ、だから───』

 

一旦メールを区切りつつ、サリアさんが此方を向いて続きのメールを書いていたと思えばすぐに送られてくる。それを見て私は自然と泣き出していた。

 

『幾多でも待ってやる。だから、ゆっくりでいい』

 

ずっと堪えていたものが一気に溢れ出してしまう、みっともなく泣き出してしまう。涙で前が見えにくくなる、視界が悪い。それなら、それなら……少しぐらい手元が見えなくなったって仕方ない

 

『書面でも、いい、ですか。』

 

そう送るのが精一杯だった自分にまた嫌になる、せっかく時間をかけて待ってもらったのに。結局サリアさんから話しかけてもらわないと駄目だった自分に───そんなことを思う前にサリアさんがメールで返事をしてくれた

 

『構わない、言葉も文字もお前の感情を表すのに代わりはないだろう』

 

その言葉に、とうとう止まらなくなった。思いの丈をひたすらに打ち込んで送りつてしまった

 

『怖かった、怖かった怖かった!!!!

あの敵に立ち向かうのが!体を焼かれることが!もしかしたらも二度と立ち上がれなくなることが!ただ、ただこれ以上に………』

 

そう、それ以上に

 

『皆が、死ぬところを見るのが怖かった。フランカが居なくなるのが恐ろしかった、ジェシカと会えなくなるのが寂しかった───それと、サリアさんと、ホシグマさん、ニアールさんが負けるのを見るのが、嫌、でした』

 

誰とも別れたくはなかったし、目標の人たちが負けるところなんて見たくはなかった。思いの丈をぶちまけてほんの少しだけ、落ち着いた

 

 

 

「──すみません」

 

「さあ?なんのことだろうか」

 

開口一番に謝った。前に任務で迷惑をかけたこと、時間をもらいすぎたこと。その他諸々、だけどサリアさんは気にしてない様子だった

 

「リスカム」

 

「はい………」

 

サリアさんから声をかけられると思わず意気消沈した声で答えてしまう。そんな私にサリアさんは自分の端末を見せてきた。

 

そこには、一通のメールが表示されていた

 

『は、はじめまして。BSWのジェシカと申します

 この度は突然のメールで申し訳ないと思っています。ですが、宜しければ行動には移さなくても構いませんお話だけでも聞いてください!最近私の先輩であるリスカムさんの様子がおかしくって、それでなんでだろうって思ったら先日の作戦でサリアさんがリスカム先輩のことを庇って負傷したとお聞きして。書面ではありますが、リスカム先輩をまもってくれてありがとうございますと言わせてください……しゅ、趣旨から離れてしまいました。ええと、そのリスカム先輩が多分そのことで責任を感じてるんじゃないっかなって思ってます。私は、その。作戦にさんかしただけでお役にも立ててないですし、貴女との面識もないんですが。それでも、できるならおねがいしたくて。リスカム先輩はすごい人で憧れてて、元気になってほしいんです!どうか、お力添えをお願いします!                  

      BSWオペレーター ジェシカ』

 

「いい後輩を持ったな」

 

「は、い……………」

 

そこには初対面のサリアさんにお願いする文章が書かれていた、ジェシカは人見知りですぐにオロオロしてしまう、そんな後輩だった。だけど、いつの間にか成長してくれてた。

 

サリアさんに断りを入れてメールを送る

 

『ありがとう』

 

そう送るとすぐに電話がかかってきて、それに出ると

 

『リスカム先輩よ゛か゛っ゛た゛で゛す゛ぅ゛』

 

大泣きしているジェシカの声が聞こえてきたどうやら本当に心配をかけてしまっていたらしい。あとで謝らないと……また泣かれそうですね。

 

電話を切る前に

 

『今度はリスカム先輩がやられてしまう前に私が倒しますから!!だから一緒に頑張りましょう!』

 

という言葉を聞いてジェシカは電話を切った。

 

「サリアさん、その…ありがとうございました」

 

「どういたしまして、だろうか?」

 

思わず出かかった謝罪の言葉を飲みこめば、代わりに感謝の言葉をかけるとサリアさんは満足そうにうなずいてくれた

 

「私、これからもっとがんばりますから」

 

「無謀な真似はするなよ?」

 

「サリアさんには言われたくない言葉ですね、あのとき本当に怖かったんですから」

 

「……………すまない」

 

頬をかきながら謝罪するサリアさんに思わずクスッと笑ってしまう。意外と、面白い人なのかもしれない

 

「そうだ、今度ニアール達と食事することになっているんだが。来るか?」

 

「いいんでしょうか…」

 

「なんなら今聞いておくか」

 

そう言うとワタシの端末に通知が来る。端末機能に備わっている複数名と同時にやり取りできる機能だ

 

どうやらニアールさんとホシグマさんも混ざっているらしい

 

『ん?リスカムか』

 

『そのようだな』

 

おそらくホシグマさんとニアールさんと思わしき通知が来たので返信しておこう

 

『はい、この度は本当にご迷惑を……』

 

なんて返信をすれば

 

『いやいや、リスカムさんが気にすることではございません。むしろ小官達がもっと早くに動くべきでした。反省点です』

 

『然り。我々が警戒を緩めすぎたのが原因だ、これでは後輩に面目が立たないどころの話ではない』

 

『そうですね、此れからは更に強化していかなければ』

 

『チームアップの訓練も取り入れていくとしよう。同じ過ちを繰り返さないためにも』

 

という風に私をフォローするどころか自分たちの反省点を述べ始めてたりする。やっぱりすごい人たちだ

 

『ところでリスカムを入れた理由はなんだ?サリア』

 

『何。あの一件のことで悩んでいたみたいでな』

 

『そうだったのか………そうだったのか………そう、だったのか………気づいてやれずにすまない…面目ない……』

 

『三回言うほどショックだったのかニアールさん』

 

『元来こういう性格だ……』

 

『はぁ…………』

 

ニアールさんがショックのあまり3回同じことを言うとホシグマさんがそれに反応しつつサリアさんは思わず溜息をついていた

 

『さて、話は変わるが。予定している食事会にリスカムも加えたいのだが』

 

『構いませんよ小官は』

 

『私もだ』

 

『なら決定だな』

 

そう言うとサリアさんはホッとしている様子だった

 

『ところでリスカムさん』

 

『はい?』

 

『お酒は、飲めるお年で?』

 

『ええ、まあ……』

 

歯切れ悪くホシグマさんに返答をすると隣でサリアさんが何故か額に手を当てている。もしかしてなにか不味かっただろうか?そう思っていると答えはすぐにわかった

 

『よし、なら私の行きつけの場所で親睦会だな!』

 

『いや、酒を飲みたいだけでは?』

 

『そうだが?』

 

『開き直ったぞコイツ』

 

 

テンポのいい会話が終われば日程を決めて当日集合となりました。本当にお世話になりっぱなしだなとおもいつつ。サリアさんと別れて部屋に戻りましょうか

 

 

 

……………勿論ちゃんとサリアさんとの会話も続けていきますよ?色々と、話したいので




どうだ?あかるくなったろう?

というわけで次のお話はリスカムメイン。ちっこくて可愛いぞリスカム

主人公視点最近要らないんじゃないか理論が作者のなかで展開され始めてる


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第9話 Q.理性0はオペレーターにも適応されますか? A.効果が違います

お待たせしたかは分かんないけど新しいお話だぞ!

そろそろ皆さんも薄々気づいてるだろうけど。GLタグ要素が出てくるぞ。今回はリスカムがチャージ!(意味深)するお話


次の日。ドクター達が作戦に行くそうなので俺はお留守番である。どうやら例の作戦の際。サリアさんの体に相当な負荷がかかっていたらしく当面は作戦どころか訓練も駄目らしいことを今日知った、昨日迄そういうことしなくてよかったよほんとに。

 

ただ作戦にドクターが行くということはかなり暇になるということである。今回の作戦ではニアールさんたちも行くことになってるのでほとんどの関わり合いを持っているオペレーターが出払ってしまった。

 

ぶっちゃけ暇である、マジで暇である。基地でのお仕事ももらえてないから応接室での手がかり集めなんかもできないんだよねこれ。

 

そんなこんなでぶらぶらとロドス内を散策しているとリスカムからお呼び出しを受けたのだ。

 

『今日のご予定がないようでしたら、訓練室の方までお願いできますか?サリアさんが戦闘訓練に参加できないことは把握済です』

 

まあ丁度いい暇つぶしになるだろうから行くか、なんて思いながら。リスカムの元へ向かうことにする。

 

「おはようございますサリアさん」

 

「あぁ、おはようリスカム」

 

リスカムもお留守番組なのはちょっとびっくりだったが盾が破損してるのなら当然といえば当然なのだろう。まあホシグマとニアールさんが普通に戦いに行ってる辺りそこまでのダメージはないんだろうな、ニアールさんの方は……最近お腹のほうがあまりよろしくないらしく。時折お腹を抱えて青い顔をしてるのよく見るけど大丈夫なんかなあれ………。後で見舞いに行きたいところだけどあのひともよくはたらいてるからなぁ、倒れないといいけど。

 

「朝から早いな」

 

「はい、ちょっとねつけなかったので……」

 

「自己管理は大事な仕事だがな」

 

「気をつけます…」

 

リスカムはというと、ロドスから支給される普通の盾で模擬訓練みたいなのをしていたらしい、若干汗ばんでるのかインナーが少し透けかかっていて非常に目によろしくない。俺がサリアさんの体じゃなかったらちょっと危ないところだった気がする。普通ならチェンに両手を差し出してお縄コースまっしぐらなのだ。

 

「……戦闘訓練か?」

 

「はい、感覚を鈍らせたくなくて。つい」

 

「病み上がりなのはお互い様だ。なるべく体に過負荷をかけないことだ」

 

「わかっていますよ。サリアさんにはアーツの効率的な運用の仕方を教えてほしいんですが……」

 

それはさておき、リスカムが呼び出した理由を問うてみれば今一番言われて困ることだった。戦闘訓練なら、まあ、それっぽいことを言っとけばなんとかなるし。身体能力を考慮すれば多少強引な戦い方でも戦えてしまうのがヴィーヴルという種族なのだ。ただアーツの使い方とか言われると途端にどうしようもなくなる。だってアーツ使えないんだもん!!!(大声)

 

「私が?いや、リスカムと私は役割がだいぶ違うと思うのだが」

 

その言葉にリスカムはあからさまにしょんぼりしてしまうのだから困ったものだった。そういう顔されると困るんだが……。仕方ないやれるだけのことはやってみるか。そう思いつつリスカムの戦い方を思い返してふと思ったことを問いかけてみる。

 

「一つ、聞きたいことがあるのだが」

 

「何でしょうかv?サリアさん」

 

「お前、ロドスに来てから戦い方を変えたことはあったか?」

 

「いえ、特には」

 

あー。なるほどな。リスカムの実力不足とかじゃなくて単純に最適化されてないだけだわ。サリアの問いに対するリスカムの返答を聞いた上でそう考えた。

 

例題をあげてみよう。

 

足の早いやつが居たとする、短距離走で。だからと言ってどんな場所でも実力を出せるというわけではない。

 

例えば、競技場のようなゴム製の地面で走る場合と土の地面で走る場合。ゴム製の地面は適度な反発力と衝撃をそのまま上に跳ね返すのではなくある程度下に逃がしてくれる。だが土の場合は違う、力は真下に逃げやすくその上反動がダイレクトに足に来る。損耗具合がまるで異なるのだ。

 

だから競技前に下準備をするわけなのだが………リスカムの場合、なんの事前準備もなしに突然環境の全く異なる場所で結果を十全に出してこいと言われてるのと同じである。そんなクソゲーはどう考えても無理なのだ。そもそも前提が違ってくるな、そう言うのだと。

 

「リスカム、お前は実力不足ではなく。単純にアップデートが済まされていないんだ」

 

「?」

 

まあいきなりそんな事言われても首かしげちゃうわな。いきなり、『考えるな、感じろ!』とか『争うな、持ち味を活かせッ!』とか言っても意味がわかるわけがないので順を追って説明していくことにしていくか。

 

とりあえず、訓練室じゃなくて別のところにしよう。

 

うーん、サリアさんの部屋でいいかなぁ。デリケートな話だし、余人に聞かれてリスカムが気にするのも駄目だからな。

 

「とりあえず、場所を移すか」

 

「そうですね、いつまでもこの格好でいるのも………」

 

そう言うとリスカムが自分の服の裾を引っ張りながら言葉をこぼした。まあそりゃ何時までも運動したあとの衣服でいるのは嫌だよな。そこは失念だった。

 

「なら着替えてこい、ついでにシャワーで汗を流しても来るといい」

 

「お手数をおかけします……」

 

リスカムは訓練室に備え付けられているシャワールームに入ると汗を流し始めたようだ。  

 

そうして数分立つと若干髪が濡れているリスカムが現れたので問いかけてみると返答が返ってきた。どうやらシャワー室にはドライヤー等は置いては居ないらしい。まあ部屋で乾かせばいいいか

 

「そのままでは風邪を引く恐れがある、部屋に行って髪を乾かすとしようか」

 

「!?」

 

「どうかしたか?」

 

「い、いえ」

 

女の子が風邪を引いちゃいけないのでそう言うとリスカムがなんだか、めちゃくちゃ動揺したので思わず首を傾げてしまう。別に異性の部屋に行くわけでもないんだから………

 

ま、いっか。考えても仕方ないし。そう思うとサリアはリスカムを連れて部屋へと帰った。

 

 

 

 

「お、お邪魔します」

 

「あぁ……」

 

有無を言わさずにつれてきちゃったからなんか準備とかあったのなら申し訳ないなとも思いつつ。リスカムを座らせる、相変わらず殺風景な部屋だけど変に動かすわけにも行かないからな。

 

「とりあえず、髪を乾かすぞ」

 

リスカムの髪を櫛で梳かしつつドライヤーを当てていく、淡い水色の髪がゆらゆらと動いているのは少し現実味を感じない風景だな。

 

「すみません。お手数をかけて」

 

「気にするな、身だしなみは大事な要素だ」

 

この会話の後。しばらくはドライヤーの起動音と櫛が髪を撫でる音しかしなかった。リスカムはというと、このところ精神的な余裕がなかったのか船を漕いでいたのでそのままにしておいてやる。

たまにはこういう事があってもいいだろうさ

 

「んぅ……」

 

いい夢でも見ているのかは分からないけど。眠っている顔は穏やかで、寝息は一定の速度で保たれている。まあそれはいいんだけど……

 

腕に尻尾を巻き付けられてるから動くに動けないんだわ今、リスカムはこういう事するようなタイプじゃないと思ってたんだけど……勝手なイメージだったのは変わりないか。甘えられるような相手も居なかっただろうし

 

そんなこんなで髪を乾かし終わったあともリスカムが尻尾でくいくいと引っ張り続けてきてるから動くに動けない。仕方ないので抱きかかえつつベッドに横にしてやる、このまま休ませてもいいだろうしな。

 

リスカムが寝ている間、動かすついでに淹れておいた珈琲に口をつける。カフェインうめぇ、なんて思いつつサリアさんが残していった資料に目を通していく。今回の件で思った、知らないままではちょっと色々誤差が生じてやばいことになる

 

そこからしばらくまた時間が立つと、もぞもぞとシーツが視界の端で動くのを見ればリスカムが少しうなりながら寝返りを打っていた、ぽわぽわと焦点が定まっていない目で此方を眺めていたので軽く撫でてやると嬉しそうにしながら頭を擦り付けてきた。

 

「………」

 

下手に声をかけて起こすと多分錯乱しそうだからこのままでいいか。なんんてことを思っていると寝ぼけているのか、そのままこちらへおぼつかない足取りで来ると、ぽすっと体の体重を預けると眠りに再度ついた。

 

もう好きなようにさせてやるか、なんて思っていればリスカムが角を使って手が止まっていることに抗議してくる。甘えん坊め、なんて思いながらもゆっくりと撫でてやると緩く尻尾をきゅうきゅうと締め付けて来る。撫でられるのが好きなのかね。

 

そこからしばらくまた穏やかな時間が過ぎていく。資料片手にリスカムの頭も撫でていく段々と遠慮がなくなってきてるのか、頭だけでなく頬まで触らせてきており。両腕を腰に緩く伸ばして。巻き付くように寝てるのでもう動くことは無理そうだな。

 

「リスカム、そろそろ昼だ。起きなさい」

 

「んんっ………」

 

「……もう少しだけだぞ」

 

多分そろそろ昼に差し掛かる辺りだからリスカムを軽く揺すって起こしてあげるがリスカムはイヤイヤモードなのか体をきゅっと丸めてより密着してくる。もうこれはどうしようもならんかな。なんて思いながらデスクに向かいつつ。サリアさんが書いていた資料を自分なりにまとめつつテキストファイルにまとめながら珈琲を啜る。

 

そういえば、こんなにのんびりした日は初めてなのかもしれない、昨日含め色々なことがありすぎて俺も疲れてるのか、何だかうとうとしてきた。カフェインの力でも睡魔には勝てそうにない……

 

そう思ってると俺はいつの間にか夢の中へと落ちていった

 

 

───リスカムside(夢の中)

 

夢を見ていた、子供の頃。ヴィーヴルという種族だったのに身長も小さくて、あまり力も強くなかった自分が馬鹿にされていた頃の夢。

 

そういうときは決まって母親のところに泣きついて慰めてもらったのを覚えている、私の母親は強かで。優しかった。そんなことを思い出しつつ私はしばらく……もしかすると初めてかもしれないホームシックというものを味わっていた。

 

『──リスカム、そろそろお昼だ。起きなさい』

 

やだ、もう少しだけ寝ていたい。まだこの温かみから離れたくない、自分を呼びかけてくる声にそう思いつつ体を擦り寄せながら抗議する。暖かくて気持ちいいから、日向に当たっているようなそんな淡い優しさを感じられてるから。

 

『───もう少しだけだぞ』

 

また声が聞こえた。うん、もう少し………もう少しだけ、寝ていたい。また起きたら過酷な現実が待ち受けているからここで少しぐらい腰を下ろしても大丈夫だと思う。

 

そう思っていると、優しく、優しく。まるで初めて買ってもらった玩具を壊してしまわないように慎重に触る子供のような手付き。それは年の離れた姉妹が駄々を捏ねている妹に対して、困り顔をしながらも慈しむ姉のような手付きだった。

 

一言で言えばずっとずっと撫でられていたい。こうやって誰かが近くに居て、たまに甘えさせてくれて。時折こうして撫でてくれる人が側に居てくれたら嬉しいな。そんな風に思ってしまうぐらいには

 

(………温かい)

 

頬を手にこすりつければ戸惑うような動きをしても撫でて安心させてくれる

 

(………気持ちいい)

 

撫でるだけではなく、時折背中を一定の間隔で優しく撫でてくれる。まるで抱き合って心臓の音を聞かされてるみたいな感覚。寂しくない

 

(………優しい)

 

時折撫でるのが止まり、此方が催促するとちゃんと撫でるのを再開させてくれる。

 

まるで陽だまりみたいな場所だった、何時までもずっとここに居たいと思いつつも、そろそろ目覚めないとな。そう思いつつ意識を覚醒させた

 

──リスカムside

 

(んぅ………まだ眠いですね)

 

昨日あれだけ泣いた上にサリアさん、ホシグマさん、ニアールさんと沢山話して夜遅くに寝て。今日から頑張ろうかと思って早起きしつつ訓練したからはっきり言って睡眠不足なのは否めません。体調管理をしっかりしないと。

 

そう思いつつ腕を動かそうと…動かそうと……あれ?動きませんねこれ。そう思いつつ何とか朧気な意識を覚醒させると───

 

「ん……」

 

「!?」

 

サリアさんが目の前に居たしかも至近距離、どういうことなんでしょうか。おおおおちちゅけリスカム、慌てるんじゃない。思わず心のなかで噛みながら状況を確認した私は更に混乱していた。

 

サリアさんに抱きしめられていた

 

抱きしめられていた

 

…………

「くぁwせdrftgyふじこIp」

 

私は大混乱に陥っていた、意味のわからない言葉を言いつつまた意識が遠のくのを何とかこらえる状況がよくわからない。ホントによくわからない

 

(顔が近い近い近い!!!)

 

なんだかよくわからないですけど、サリアさんに抱きしめられてます。私はというと、足を開いて、サリアさんの膝上に乗りつつ頭を抱えられたまま寝ていました。

 

ちょっと待って下さい、ちょっと待って下さい。

 

私、撫でられてる夢とか見てましたけど。もしかして、もしかしますか?

 

そんなことを思っていれば答えはすぐに分かった、と言うか分からせられました。

 

寝ているサリアさんの腕がゆっくりと伸びてきて。私の頭を軽く、優しく撫で始めたんですはい。

 

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

また意味のわからないことを言いながら、顔が火を吹きそうなほど赤くなってるのがわかりました。いやこれは恥ずかしいですでも嫌じゃないと言うかむしろ嬉しいので続けてほしいので放してください、等と思考回路がめちゃくちゃになっているリスカムはぐるぐる目になりながら嬉しいのか恥ずかしいのかよくわからんと混乱している

 

そんなリスカムに更に幸運(追い打ち)が見舞った

 

これ以上は耐えきれないと思って離れようとしているリスカムをサリアが抱き寄せ、額同士がくっついたのだ。

 

これにはリスカム。過充電されたのかショート寸前だったのだが、何とか耐え忍ぶ。重なり合った額に思わず離れなければと思いながらも離れられなかった。理性よりも本能が勝ってしまったのだ。

 

なんとかしようと顔をずらせば、顔を肩に載せて直視しないようにしていた。それでも撫で回したり背中をトントンしたり、挙げ句に緩く抱き寄せられたりしていた。

 

そんなことをされてリスカムはというと

 

(もう無理、無理です、このままでは私は獣になってしまいます)

 

大混乱どころかもはやこのまま襲いかかってしまおうかとエンジンフルスロットルになってしまっていた

 

理性<マッテローヨ!!

 

                       イッテイーヨ!!>本能

 

というようにリスカムの理性と本能がデッドヒート!!空いていたのである。それぐらいには色々とおかしくなっていた。

 

本能<イヤー!  

                         グワーッ>理性

本能<イヤー!  

                         グワーッ>理性

本能<イヤー!  

                         グワーッ>理性

本能<イヤー!    

                         グワーッ>理性

本能<イヤー!  

                         グワーッ>理性                    

本能の圧倒的攻撃の前に理性はシメヤカに爆殺四散!オタッシャデー!!

 

ゆらゆらと息を荒くして、サリアの顔をじっと見つめるリスカムが唇を近づけようとすると……。

 

「ひゃいっ!」

 

腕に巻きつけていた尻尾のことをすっかり忘れていたためか、思わず変な声を上げて精神が通常時に戻ってしまう。

 

これで良かった……と思いつつも、まだ撫で回したり。抱きしめられてるのは継続中なのでリスカムの理性耐久レースはサリアが起きるまで続いたそうな。

 

 




そういえば、これのR18番とか興味あるかな。需要あるなら書かないこともないけど

それと評価みんな入れてくれてありがとね。感想も何故か知らないけど一杯増えてきた。こんな小説の更新に餓えてるのかね


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第10話 2桁になったけどそこまで話は進まない

連続投稿するぞ


「大丈夫か」

 

「ひゃい」

 

「まずは深呼吸だ」

 

「ひゃい……」

 

目が覚めると目をぐるぐるしながら顔を赤くしているリスカムがそこに居た。どうやら自分でここまで来たことを恥ずかしがっているらしい。まあそりゃ自分が駄々こねながら甘えてるのに気づいたらそうなるわな。そう思いながら何とかなだめる方向に行く。このままだとこの子オーバーロードしかねないし。

 

「先程のことは、まあ……気にするな」

 

「ひゃい…」

 

気にするなって言われる時になるよね、わかるわかる。と言うか、さっきからずっとリスカムがひゃいとしか言ってないんだが大丈夫なんかな。語彙力完全に死んでない?

 

ぽふぽふと錯乱してるリスカムをあやすかのように撫でると悪化した。解せぬ、これでウィーディちゃんは大人しくなったんだが。リスカムには効果がなかったようだな。残念

 

そんなことよりも今はやることあるからな。

 

「さて、本題に入るとしようか」

 

「…本題?」

 

「……アーツの使い方」

 

「あっ」

 

リスカム、脳内がショートして思考回路が死んでるなこりゃ、いつも出来てることが出来なくなってる。多分戦い方の問題だけじゃないのかもな……。

 

「先ずは、お前の戦い方についての話だ」

 

「はい……ええと、その前に一ついいでしょうか」

 

「なんだ?」

 

「この体勢で、やるんですか?」

 

リスカムは恥ずかしそうにそう訪ねてくる、いわゆる抱っこ状態で進めるつもりなのが不満なんだろうか。

 

「此方のほうが効率がいいと判断した、それだけのことだ」

 

「そう、ですか」

 

「嫌なら下ろす「このままでお願いします」──そ、そうか」

 

食い気味で言うの、ウィーディちゃんもそういえばあったなんて思いながらリスカムが落ちないようにしつつテキストファイルを展開しつつ説明を開始する。

 

「先ず、BSWで求められることとの違いだ」

 

そう言いながら箇条書きで簡素ぬまとめられた項目を示しつつ説明していく。

 

「BSWは主な仕事として護衛、要人警護を主としていて表立った大規模戦闘はあまりなかっただろう、ここは認識に間違いがないか?」

 

「そうですね、BSWの主な仕事はそれで間違いありません」

 

「それに比較するとロドスはどちらかと言うと能動的な行動を求められる場合が多い。護衛ではなく保護、要人を警護するのではなく此方が要人を取り押さえたりする場面も無きにしもあらずだ。そしてロドスは個人、あるいは一つの団体を相手をするだけではなく。もっと大き時代のうねりと戦わなければならない場合がある。そこも大きな違いだ」

 

「ふむ……」

 

「次に作戦内容だ、BSWのチームアップの規模は私は詳しくは把握できては居ないが多くても数人の隊が数個動く程度だろう。だがロドスの場合はドクターが指揮を担当する12人と協定を結んでいる臨時オペレーターが一人、それ以外にもエリートオペレーターを主軸とする隊が数隊。加えて諜報活動を担当する部隊、これはエリジウムなどが担当している。また斥候として足の早いオペレーターや隠密性の高いアーツを保有するオペレーター、超長距離。この場合は対移動都市用の武器を装備しているオペレーター等が含まれるだろう、このように適材適所が行われているものの。戦場は水物だ、絶対はありえない。他の隊と更新が途絶。或いは全滅してしまう場合もあるだろう。それを考慮した際、何よりも求められるのが適応力だ。自ら考え、行動し、最善を常に引き当てられなければ戦場の藻屑になるのは自分だからな。此処までは大丈夫か?」

 

「大丈夫ですよ、続けてください」

 

「了解した、それを考慮した上で話すとなると。BSWは対個人戦を重きに置き、ロドスは対集団戦、或いは一個小隊を基盤とした団体戦。BSWは契約が終わり次第撤収すると思うがロドスはそうではない、いうなれば終わらない戦場にずっといるようなものだ。モグラ叩きどころの話ではない。敵を逃せば後々の作戦に支障が出る。そういう事情も相まってロドスでのオペレーター業務と他の企業の業務とでは雲泥の差があることが予測される、この辺りの意識格差の是正についてはドクターと後で話し合う必要性がないとは言えない、現にリスカムが悩んでいる以上他のオペレーターもないとは言えないのが現実だろう」

 

「意識の格差は、身にしみて実感しています……」

 

「焦る必要性はどこにもないさリスカム、それを踏まえた上で。一番重要になっているのが柔軟性だ。リスカム、BSWでは渡された指南書の手はず通りにやるように厳命されているそうだな」

 

「そうですね、基本的に指示のないことをしてしまうと懲罰対象になる可能性も」

 

「良く言えば規格化された戦術と技術を提供しているとも言える。逆を言えば、柔軟性と対応力に欠ける古臭いいつの時代かと言ってしまうような古びた思想だな。戦士から思考能力を奪うのは死んでこいと言われてるのとさほど変わらん」

 

そう言うと言葉の辛辣っぷりにリスカムが思わず苦笑していた。ただ事実だ、マニュアルは所詮マニュアル。規格化された行動なんてありふれていて対処なんて容易なのだから

 

「此れがお前が実力を発揮できていない理由の一つだ。だいぶ駆け足になってしまったが私の言いたいことは伝わったか」

 

「はい、大まかには。やっぱり癖は生中には治りませんね」

 

「癖とはそういうものだ、さて。アーツについてだな」

 

説明したファイルを一旦閉じて別のファイルを展開しつつ説明を続ける。

 

「リスカムのアーツを見る限り、防御にも効果を発揮するが。攻撃にも転用できるな?」

 

「できなくもないのですが、その。反動が……」

 

「そこもロドスのオペレーターとしての意識の差だな、たとえ反動があるアーツでも切らねばならないときは必ずやってくる。そこをフォローアップしていくのがほかのオペレーターの仕事だ。何も一人ですべてやれとは誰も言っては居ないさ」

 

歯切れが悪い言葉を言うリスカムの頭を撫でると大人しく頷いてくれる。この子、聞き分けが良すぎるんだろうな、たまには我儘言ってもいいと思うんだが相棒があれじゃあそういう暇ないんだろうなぁ。そう思いながら。

 

「攻撃と防御の択が取れればかなり戦術の幅も広がるし相手にもプレッシャーが掛かる」

 

俺らの世界で言うところの格ゲーの二択ってやつだな。攻めるか守るかで揺さぶりをかけた時の効果はどの世界でも変わらないようだし。

 

そんな風にサリアさんが残していってくれた資料を元にリスカム用のアーツの訓練メニューなんかもしたためてみたんだが結構喜んでくれてよかった。

 

「BSWは息が詰まりそうになってて、今戻れと言われても。正直戻りたくは……ありませんね」

 

ふと、そんなことをリスカムが零したから思わずこう言ってしまった。

 

「嫌なら此処に居ればいいだろう?」

 

───リスカムsaid

 

サリアさんに恥ずかしいところを見られて思考がショートしてしまった私を落ち着けつつ、本題について色々と話しをしてくれた。

 

なんのファイルかな、とは思っていたもののまさか自分のためにいちからしりょうさくせいまでしてくれていたとかんがえるととても申し訳ない気分になってしまう。サリアさんは性分だって言ってくれてたけど後でお返しでも考えないといけませんね。

 

そんなことを聞いていればふとこんな日も長くは続かないんだろうなと思う。私はBSWから派遣されているオペレーターであって厳密にはロドスのオペレーターではないことを考えないようにしていました。

 

正直に言えばロドスのほうがずっとずっと居心地がいい。BSWは息が詰まって仕方がない、もともとはクルビアの傭兵部隊が前身なだけあって規律も厳しいし。サリアさんが言ったように古臭いいつの時代かと思ってしまうような思想だなとも私は思う。

 

だからかもしれないけれど、思わず零してしまった言葉に若干後悔していると、サリアさんがそう言ってきた。

 

一瞬何を言われたかわからないという顔をしている私にサリアさんはこう続ける

 

「兵士は奴隷ではない、お前はお前だリスカム。お前の人生なのだから、お前が決めていい」

 

「し、しかし」

 

「責任、というのなら感じる必要はない。企業が社員を選ぶように社員も企業を選ぶ必要がある。他のところに派遣した社員がそちらの方に魅力を感じて元の企業から去る場合も珍しくはないし、元の企業が文句を言う権利もない。企業努力が足りん、その一言で一蹴できる」

 

私の言葉に被せるようにサリアさんが先程とは打って変わって前のサリアさんのイメージ通りの厳格な物言いに変わっていく。

 

「何時までも変わらないものはない、絶えず変化を強いられるこの世界で変わらないことを強要する、それこそ悪だ。なんならBSWと一線交えても私は構わないとすらおもっているさ」

 

その言葉に思わず目を見開いてしまう、BSWと一線交えるということはクルビアにおけるロドスの活動が厳しくなるということなのだ、流石にまずいと思いつつも嬉しかったには嬉しかった。

 

「お前はもうロドスの一員でもある、それを本人の意志を無視して強奪してくるのであればレユニオンとさして変わらん───」

 

そこまで言わなくても、と思っていれば

 

「───まあ、それは建前上の話なのだが」

 

「え?」

 

不意に此方を抱きしめながらサリアさんはこう言ってくれた。

 

「お前は私の後輩だ、理由はそれだけで十分だろう」

 

なんてないことを言うように言ってくれたサリアさんの言葉が、深く深く心に残った。

 

「私が教えて、導くんだ。ならもう立派な後輩だろうに。成長していく姿も見ていきたいところではある。それを邪魔しに来るのだから追い返すさ」

 

フッと笑いつつサリアさんは此方を安心させるような言葉をかけてくれる。

 

「ちなみにだが、一番お前を心配していたのはニアールだ」

 

意外な名前が出てきてびっくりしている私に対してサリアさんは言葉を続ける。

 

「二アールに妹がいる事は知っているだろう?恐らくだが、それと重ね合わせるところがあったんだろうなニアールは」

 

そう言うとサリアさんは自分の端末を弄ると画面を見せてくれた

 

『すまない、時間はあるだろうか』

 

『ニアールか、珍しいな。直接話しかけてこないのは』

 

『……今は動けない』

 

『察した、皆まで言うな』

 

『感謝する。話というのは、とあるオペレーターなのだが。リスカムというオペレーターと交流はあるか?』

 

『いや、今のところは特に』

 

『特にはないが、どうかしたか?』

 

『最近様子がおかしくい、注意力が散漫になることや。上の空になっている』

 

『それは、確かにおかしいな。リスカムはBSW所属のはずだ』

 

『あぁ、きな臭いところはあるものの彼処が生半可な人員を送り込んでくるわけがない』

 

『となると』

 

『恐らくは人為的な工作を受けているか、精神的なもののどちらかだろう。私は後者と踏んでいる』

 

『だろうな、ロドスで外部協力オペレーターにそんなことをする阿呆は居ないだろう』

 

『サリア』

 

『なんだ?』

 

『リスカムを外部協力オペレーターと呼ぶのはあまりしないで欲しい。彼女ももう我々ロドスの一員でもある。疎外感は、なるべく与えたくはない』

 

『それもそうだが、やけに肩入れするな?』

 

『……彼女と同じような年齢の妹が居てな』

 

『なるほどな』

 

『そういう理由もある、だからなるべくでいい。気にかけて欲しい。私が気にかけるだけではカバーしきれないという事と。何分不相応の肩書がついて回る、多少なりとも威圧感を与えるのは良くないことだ』

 

『相変わらず真面目だなニアール、わかった。それとなく気にかけておこう』

 

「とまあ。こういうことだ。お前は私達の後輩だ、精々頼って自分の糧にするといい」

 

サリアさんが見せてくれた画面がだんだん滲んできた。また泣きそうになってしまう自分が嫌になるが、我慢しなくていいというようにサリアさんがまた撫でてくれる。

 

此処の人たちは本当に温かい人達ばかりだ。私も頑張らないといけないな、サリアさんの腕の中でそう私は決意した

 

 




とりあえずリスカム編は此処でお仕舞い

とでも言うと思ったのか!(デデーン)

次はリスカム+ニアール+ホシグマのお話です

追記

デイリーランキングに乗ってた、なして…?


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第11話 上 時と場合は考えよう

新しいお話でしてよ!


「お疲れ様」

 

「ただいま戻りました」

 

「お疲れさまでした。ニアールさん、ホシグマさん」

 

「帰還した」

 

作戦が終わったのかニアールさんとホシグマがロドスに帰還した。今回の作戦…というか物資の回収だな。1−7周回じゃなくて今日は別のところで周回してたらしい。ドクターが泡吹いて倒れたのを見る限り理性回復剤つっこんだなありゃ。あれってやべー薬らしいしな。

 

「しかし、今日は早めだったな」

 

「ドクターがあの調子ですので仕方ありませんよ」

 

「うむ」

 

「早めに帰投できましたし、今日にしますか」

 

「そちらが疲れていなければ構わないぞ」

 

なんとホシグマ達。リスカムに物を教えてるときにはもう帰投していたそうな。どんだけ理性効率悪いところに行ったんだドクター……そんなことを思っているとどうやら今日を食事会にするらしい。夕方からだけどね。

 

「しかし、今日でいいのか?ホシグマは酒を飲むのだろう?」

 

「そうですね、たまにはパーッとやりたいところです」

 

「幸い……と言ってもいいのかは不明ですが。ドクターは明日まで起きないでしょう、理性回復剤を何本か飲まされていましたので」

 

「使用が容認されてる量だけにしろ……」

 

思わず溜息をつくがよくよく考えると前はそういう事やってた跡思うと強く言えないななんて思ってしまう。

 

「というわけですので。各自準備をしましょうか」

 

ホシグマの言葉にそれぞれ別々に準備を開始する。とりあえずバラけたのを見計らうとニアールさんのいる部屋へと赴く。

 

「ニアール、大事はないか?」

 

「あぁ、すまないなサリア」

 

部屋に行くとまだ青い顔をしているニアールさんがお腹を擦りつつ出迎えてくれた。この人多分日頃の精神負荷に加えて先日のバイオテロもろに喰らったかダメージでかいんだろうなぁ。

 

「腹を冷やすといけないからな、此れでも飲むといい」

 

「……ありがとう」

 

生姜湯を渡して飲めば、ほんの少しだけ顔色が良くなる。こんな状態で食事会なんてやっても大丈夫なのか?と思うけどニアールさんは引かないだろうなぁ。フォローしとかんと。

 

「ふぅ、段々と落ち着いてきた」

 

ニアールさんの顔色が大分良くなってきたのを見ると一安心一安心。というかあれから数日立つのにまだ抜けきらないのはちょっと心配だな。なるべく無理はしてほしくないんだが。言っても聞かないだろうなぁ、ニアールさんは。

 

「それはそうと、今日は何処にくのだろうな。詳しくは聞かされていない」

 

「私も聞かされていない」

 

「ホシグマのセンスを信じるしかないか」

 

などと軽口を叩いた後、別れて身支度を整える。と言ってもサリアさんが外出する時の服なんて分かんないしなぁ。そう思っているとお誂え向きなものがあった。ちょっと此れを着るのはあれな気がするが。仕方ないか

 

──龍門郊外にて

 

「集まったようだな。サリアはまだか?」

 

「そうですね、しかし…なんと言いますか」

 

「皆まで言うなリスカム」

 

ホシグマとリスカムの言葉にサリアがニアールが不思議そうに首を傾げている。ホシグマは任務に着ている格好とそこまで変わりがない格好であり雰囲気に溶け込んでいる。対するリスカムはあまり心得がないのかフランカから押し付けられていたセミロングのスカートにカーディガンを羽織っている。本人としては足元が心もとないからイヤな様子。

 

そして問題は二アールである。

 

何故そうなったのか小一時間ほど問い詰めたくなるような恰好なのだ。何を隠そう、ニアールさんは燕尾服なのだ、本人はカジミエーシュでは特に珍しくはないと言っていたのだが此処は龍門である。とてつもなく目立っており、服装と顔立ちも相まって美形の女型の男と思われているのか好気の視線に混ざって嫉妬の目線も加わっている。

 

「二アールさん、普段からそういった格好を?」

 

「いや、そうではない。だがドレスコードがある可能性も考慮してこの服にした」

 

「そんなところへは行きませんし。事前に連絡の一つでも淹れますよ」

 

リスカムの言葉にニアールが答えると、この人天然要素強いな……早くサリア来ないかな─…なんて現実逃避をしているホシグマのもとににわかに沸き立つ声が聞こえてきた。

 

「なんだあれ?」

 

「モデルか?」

 

「いや、見たことない。多分所属してれば今頃売れっ子だ」

 

「かっこいい……」

 

「抱かれたい……」

 

「いやアンタ女でしょ」

 

「愛の前に性別はないのよ!」

 

「お、おう」

 

そんな言葉が聞こえてきているとようやく此方から視線が削がれたのを感じ取り、ホシグマはホッとしているのだがそうはならなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───すまない、遅れた」

 

そう言いながらサリアがやってきたのだが此方も此方だった。服装としてはYシャツにスラックス、そしてコートと言った極めてありきたりなコーデである。ただそのYシャツも適度に着崩しており。鎖骨部分は普通に見えるため色んな意味で危なかった。ついでに片方だけ髪をワックスかけてきたのか。何処かの専属モデルが現れたかのような雰囲気である。

 

「あ、あぁ」

 

「こ、こんばんわ」

 

「よく似合っている、流石だな」

 

上から順にホシグマ、リスカム、二アールの反応である。ホシグマは此処まで人だかりができるとは思っていなかったようで場所を変えるのか電話し始め、リスカムはボーッとした後、ハッとした表情で挨拶し、ニアールはニアールである。

 

「なんだか人集りが出来ていると思っていれば……原因はお前か、ニアール」

 

思わず貴女達二人のせいですよと言いかけたホシグマとリスカムはなんとか言うのを堪えている。それを知り目にサリアはニアールに対して胡乱げな視線を送ると此処で初めてニアールが動揺した。

 

「お前、そんな格好で出歩けば目立つのは当たり前だろう?大方カジミエーシュの礼節が抜けきらんのだろうが此処は龍門だ。しかもそのような格好ではホシグマはともかくリスカムが萎縮しかねん、次からは善処するように」

 

「わ、分かった」

 

サリアが額に顔を当てつつ苦言するとニアールはしょぼんとした顔をして尻尾を垂らしてしまう。先程の雰囲気とはあまりにかけ離れたニアールを見れば

 

「あの人、モデルみたいな人の彼女さん?」

 

「やっぱりお相手いるだろうなぁ」

 

「カジミエーシュって聞こえたから多分良いところの人じゃないのかね」

 

「人生の勝ち組かぁ」

 

等という声がチラホラと聞こえてくるが本人たちは聞こえてないようだ

 

「説教は此処まで……おい、襟元が曲がっているぞ」

 

「やれやれ、こういうところはだらしないんだなニアール。お前も女だ、しっかりしろ」

 

「そうするとしようか」

 

ため息混じりにニアールの燕尾服の襟元を正しながらそう言うと、ニアールもまた頷く。此れまた周りが騒がないわけもなく

 

「あの人女の人!?」

 

「イケメンすぎる」

 

「なんだろう、色んな意味で敗北感を覚えるぞあの二人見てると」

 

という声もあれば

 

「あぁ、あれ女同士の距離感がなせる技なのか」

 

「なんだ、そううことか」

 

「流石にあの距離感は恋人同士じゃなきゃ異性だと無理そうだしなぁ」

 

という声がある一方

 

「あの二人は女同士……つまり」

 

「キマシタワー!」

 

「此れは無限に推せる」

 

「今月の新刊此れにしよ!」

 

「男前のイケメン系女ヴィーヴルと男装のクランタの麗人……新しい…惹かれるな」

 

という邪な声も聞こえてくる

 

「これ、声をかければ───」

 

「百合の間に挟まる男を絶対に許さない切り込み隊長見参!」

 

「汗臭い男があの空間に交わることは許されない」

 

「顔がいいあの二人に対して、お前の顔面偏差値低くね?」

 

「やだ、間男のセンス……低すぎ……?」

 

「楽には死ねんぞ!」

 

「我は以下略推して参る!」

 

「死んでくれないかな?」

 

「そろそろ狩るか…♠」

 

「迷わず逝けよ、逝けばわかるさ」

 

「僕には戦う理由がある!」

 

「汚らしい手で触ろうとするなこの阿呆がァァァァ!!!!!」

 

「この虫野郎!」

 

「馬の骨め、瓦礫の中にでも埋まっていろ」

 

「それっておかしくないかな」

 

「汚ねえ真似しやがって、それでもお前男か!」

 

「ぜってえ許さねえ、間男ォォォォォォォ!!!」

 

「我の前から失せるが良い!!」

 

「だがお前はだめだね」

 

「オレハキサマヲヌッコロス!」

 

「間男ぜってえ許さねえ!」

 

「お前に今日を生きる資格はない!」

 

「百合に挟まる男を絶対殺すマーーン!!」

 

「首置いてけ」

 

「久々にキレちまったよ……」

 

「月夜ばかりだと思うなよ」

 

「百合の間に挟まるやつはクランタに蹴られて死んでしまえ」

 

「慈悲はない、ハイクを読めぬまま死ぬがいい!!!」

 

「てめえの血は何色だー!!!!」

 

「ゲームオーバーだ間男ー!!!!」

 

百合の間に挟まろうとする男(ゴミ)がいつの間にか何処かに消えていたが俺のログには何にもないな。

 




今回は短めだけど許せ


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第11話 中 顔が10割

ギャグパート遅れてすまぬ、データが飛んだんだ(白目)

短いけど赦して


「で、この状況。何とかなるのか?」

 

背後で何やら大きな音が響き渡っているのを聞き流しつつ会話を進めるサリアは腕を組みながら唸りつつ問いかける、どう考えてもここから移動するときに付け回されることは間違いないだろうからとため息混じりに問いかける

 

「流石にこのままではまずいですね」

 

「私もそう思います」

 

そういうリスカムとホシグマも唸りつつ打開策を講じるがどうしても妙案が浮かばない、どうやったって野次馬が着いてくるだろう

 

そう思っていればニアールがどうやら作があるらしい

 

「私に策がないわけではない」

 

「本当ですか?ニアールさん(元凶)

 

「目立つのは勘弁ですよニアールさん(元凶)

 

「上手くんだろうなニアール(ポンコツ騎士)

 

全くもってひどい言い草であるしかし元凶には変わりないので押し黙るほかしか無いニアールなのであった、例のごとく尻尾は垂れ下がっている。

 

「もう少し、慈悲はないのか?」

 

「無い」

 

「有りません」

 

「す、すみません…でも、無いものは無いです」

 

ニアールのつぶやきにサリアがキッパリと言い切り、ホシグマがため息まじりに、リスカムが少しためらいないながらも答える

 

テラに救いはないんだよと聞こえて来そうなほどの非情っぷり、思わず膝を抱えて隅っこに縮こまりつつ地面をいじりたい衝動にかられてしまうニアールだった

 

「で、策とは何だニアール(ポンコツ騎士)

 

「………私のアーツで目くらまして逃げるという戦法だ」

 

「諸に目立ってるじゃないですかニアールさん(ポンコツ騎士)

 

「ホシグマさんの注文ガン無視ですねニアールさん(ポンコツ騎士)……」

 

「そういうところだぞポンコツ騎士(駄目姉)

 

「……」

 

サリアに催促されて話した作にホシグマは半目になりつつ、リスカムはなんとも言えない顔で。サリアはこの中で一番親しいからか容赦ないばとうを浴びせてかかる

 

そんな言葉が途切れ途切れ周りにも聞こえてるらしく

 

「あの人、私服センスゼロじゃね?」

 

「あれが私服なのか(困惑)」

 

「そういうところ結構ズボラそうだよな」

 

「分かる」

 

「激しく同意」

 

「家だと芋ジャー着てそう」

 

「外見完璧なのに中身ズボラとかテンプレ乙!」

 

「実は私服がスエットしかなくて仕方なく燕尾服来てダメージを抑えた説」

 

「心配するな、致命傷だ。問題ない」

 

「大丈夫そうに見えないんですがそれは」

 

「ちょっとまってくれ、確かに家では家事能力皆無で食事は出来合いかだれかに作ってもらわないとだめかも知れなくて。おまけに外出用の私服がジャージかクソダサTシャツしかない『仕事だけで生きてましたが何か?別に悔しくないですけど(死んだ魚の眼)』かもしれない。買い物に行こうにもどれが良いかわかんないしそもそもとしてセンスが壊滅的で『どうせ一緒に出かける異性も居ないしそもそも休みとかないからその必要性とか無いですしお寿司』とか言ってるかもしれない、(結婚適齢期から)大分逝ってるかもしれない。もう仕事が恋人どころか仕事とズブズブでただれきった生活をしているかもしれない」

 

「物凄く失礼な言い方で草」

 

「ちょっと待つのはお前の方」

 

「ちょっとやめないか」

 

「擁護どころか止め刺しに言っててくさバエル」

 

「その上久々に誰かと食事だなと思っていたら特に親しくもない奴も呼ばれてて話題とかどうしようとか、これって公開処刑じゃね?とか思ってるかもしれない」

 

「追撃の容赦のない言葉(グランドヴァイパー)でダメージは更に加速した!」

 

「服装が−5000兆点でも顔が良ければ100点になる名ゼリフを知らないのかよ」

 

「顔が良くて良かったな、顔が悪かったらお前終わってるぞとでも言いたいんですかねぇ?」

 

「この試合は早くも試合終了ですね」

 

「だが、そのお陰でイケメンヴィーヴルとのイケメンとイケメンにしか許されない高嶺の百合を見れたじゃないか」

 

「一理ある」

 

「それは大いに正しい、ウェイ長官に+5億ポインツ」

 

等と好き勝手言っている、所々聞こえてくる罵詈雑言(?)に等々ニアールは膝を抱えながら路地の隅っこに逃げると土を弄り始める

 

「……今日は私抜きで良いんじゃないかな」

 

等と言いつつ半分泣きべそである、耀騎士の姿ははなく。底にいるのはただのポンコツクランタである。恐らく関係者に見せてもあんなの輝騎士じゃないとか言われそうなぐらい落ち込んでいる

 

「ぐすん」

 

「あー……言い過ぎましたニアールさん」

 

「そ、そうですね」

 

ホシグマとリスカムがニアールの背中を擦りつつ何とかなだめる、それは逆効果といえば逆効果なのだがそうしないとこのままずっと土いじりしそうなレベルであった。

 

「ニアール」

 

「……なんだサリア」

 

サリアがニアールに声をかければぐすんと鼻を鳴らしつつサリアの方を見ると

 

「別にいいと思うぞ、其の格好でも。様にはなっている」

 

「そうか?」

 

「そうだ」

 

「……なr「馬子にも衣装というしな」……ぐすん」

 

上げて落とされたニアールがまた膝を抱えたのですかさず耳元でサリアが何か呟くとニアールが若干体を揺らしつつ、ちょっとしたあと立ち上がった。どうやら立ち直ったらしい

 

 

「その言い方は、狡いぞ」

 

「さあ、何のことやら」

 

「何を言われたんですか?」

 

とホシグマがニアールに問うと、チラッとサリアを見た後

 

「……黙秘する」

 

と答えた。それを見た外野は

 

「完全にタラシだわ」

 

「それな」

 

「イケメンにのみ許されるタラシムーヴ」

 

「普通のやつがやったら殺されそう」

 

「私もされてみたい」

 

「夢女製造機か何か?」

 

「あれは女にモテそう」

 

「実際そうだろ」

 

「イケメンクランタウーマンがメスの顔してる……」

 

「堕ちたな(確信)」

 

「あれで堕ちないメスは居ないと思う」

 

「男でも女の子になっちゃいそう」

 

等と外野が囃し立てて居れば

 

「あのムーヴ、なら」

 

「おっとそれ以上は禁句だ」

 

「まだ生きていたか!

 

「今度は念入りに殺しておくか……」

 

「だからお前は阿呆なのだぁ!」

 

「恐れるな、死ぬ時間が来ただけだ」

 

「野郎ぶっ殺してやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「あ゛あ゛あ゛!?やってみろよぉぉぉぉ!!!!」

 

「脳みそまでカビたか」

 

「お前にそんな玩具は必要ない」

 

「ハイパーボッ」

 

「汝、敵と認めよう……(殺意)」

 

「お前は百合の均衡を乱す」

 

「死んでくれる?」

 

「>>そっとしておこう」

 

「世の中百合だな(真言)」

 

「もしかして百合百合ですかー!?」

 

「YSE!YES!YES!YES!YES!]

 

「人の皮を被った悪魔め!」

 

「せめて痛みを感じて苦しみながら死ぬがよい」

 

「あぁ!?なぁんだその目はぁ!?」

 

「上等だテメェ!!」

 

「俺の怒りが有頂天!」

 

「あの世で百合に詫続けろーーー!!!間男ォォォォ!!!!」

 

第二の間男はカカッと即座で速やかに討伐された。汚いな流石間男(忍者)汚い

 

そんなこんなで大乱闘が起こったためサリア達は英語で言うとエスケープした




もしかしたら偽サリアよりも二アールさんの方が不憫なのかもしれない


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第12話 女性に聞いちゃいけないことがある

ニアールさんが不憫になってます、キャラ崩壊もいい所


「此処か、お前の予約していた場所は」

 

「そうですね、此方になります。あまり格式張った場所は私も好みではありませんし。リスカムさんが慣れてい無さそうですから」

 

「お気遣い感謝します」

 

「ようやく、腰を据えられそうだな」

 

「誰のせいだ誰の」

 

「まあまあ、過ぎたことですし。あまり虐めるとまたすねてしまいますよ?」

 

「わ、私はそこまで弱くはない」

 

「でもついさっきまで帰る帰るーって」

 

「ゴフっ」

 

「…リスカム。お前…」

 

「良いボディブローが入りましたね」

 

龍門の大通りから外れたすこし寂れた酒場。常連客しか寄り付かないのかまばらにしか席が埋まっておらず。2階建ても相まってホシグマが予約していたところは疑似貸し切りになっていた。

 

そんな事もあって席に座るなりわいのわいの話し始める。そのたびにニアールがいじられまくっているのだがそれもやむなし、フランカへの返しがデフォルトになっているためいい感じに突き刺さっていた

 

酒を注文するだけ注文して手持ち無沙汰になっているので話は終わらずに居た。

 

「そういえば、ロドスから通知が来ていましたね」

 

「私の方にも来ていました」

 

「私は特に何も」

 

「私もだ、何だろうか」

 

ホシグマが通信端末を開きつつそう言うと3人とも確認する。ホシグマ、リスカムには来ていて。ニアールとサリアさんには来てなかった。なんだろう、通知ってのがまためんどくさそう

 

 

「確認してみましょうか」

 

ホシグマが半分流し読みを始めると段々とめんどくさそうな顔をしつつ。とうとう端末を閉じてため息、リスカムも今は話すタイミングではないという風に頭を振る

 

「いえ、何でもありませんでした。ただの連絡事項です」

 

「いや、そうは見えなかったが…」

 

「気を抜くときに抜かないと誰かのように体調不良になりますので」

 

「そ、そうだな」

 

どう見てもそうは見えなかったのでニアールさんが攻撃する(聞き返す)と割とぞんざいな返答《S2》を喰らって引き下がった(退却した)

 

そうこうしてるうちに酒とか料理が運ばれていた。いろんな酒もあるし、飲んでみるかな

 

「確かに、たまには肩の力を抜くのも良いいだろう。此処に居るメンバーは……まあ、なんというか」

 

「気苦労が多そう…です、ね」

 

歯切れの悪い言葉を言うサリアにリスカムが補足を入れる。

 

ホシグマ→チェンとスワイヤーの喧嘩によく巻き込まれている。たまに物損を起こすのでこっそり処理したりあんまりひどいとお説教したりしている。危機契約では敵のど真ん中に突っ込んでドローンの攻撃反射させられたりしてた。苦労人

 

ニアール→チェルノボーグでタルラと戦わされたり、妹を助けに行ったり。ついでにバイオテロを喰らったりと何かと貧乏くじを引きがち、苦労人

 

リスカム→相棒が相棒な時点でもはや語らずに及ばず。そのうえ後輩二人が居る、素質も相まって重要な作戦に駆り出される。バッテリーにされる、デコイにされる。数え役満である。苦労人

 

サリア→よく過労死しなかったなお前筆頭。割とどんな作戦にも放り込まれる、初見は必ずと行っていいほど放り込まれる。休ませてほしいというのを言わないのは意地だったんだろうか。苦労人?

 

「日頃の鬱憤…は感じない方も居ると思いますが。ガズ抜きをしましょう。では、乾杯」

 

ホシグマの音頭とともにガス抜き兼親睦会がスタートした。

 

「そういえば私近日起きた食堂の騒動のことを知らなかったんですけど。あれはなにが原因だったんですか?」

 

「あぁ、あれか…」

 

「そういえば私も後始末から来たからよく知りませんね」

 

「私も詳しくは知らない。ハイビスカスが行なったぐらいで。医務室に運ばれた奴が多数いたことぐらいだ」

 

「あれは…ことの発端はドクターなんだ」

 

ニアールさんがそう言うとやっぱりドクターが発端だと3人は納得しつつ何してんだあの人っていう顔をする。

 

事件の発端をかいつまんで話すとこういうことらしい。

 

ドクターが理性回復剤をがぶ飲みする→戦線を練り歩く→がぶ飲みする→戦線を練り歩く

 

これを数回やってると当然理性回復剤がなくなる。それをどうにかしようと思ったときに食事に行き着いたらしい。そういえば理性回復剤の中にお菓子っていう情報あったな。危なすぎだろ

 

マッターホルンやグムに頼めばよかったのにそこは理性ゼロのドクター。血迷ったのかハイビスカスに頼んだ結果があれらしい。

 

「何をしてるんだドクターは」

 

「明らかな人選ミスですねそれ」

 

「はぁ…」

 

それを聞いた三人はそれぞれ呆れた日表情を浮かべる、さすが理性0。もしかしたら俺らも前はそんな感じだったのかもしれない。恐ろしい

 

なんてくだらない話を数十分。すこしずつ酒も入り、ホシグマがオフモードになりつつ、リスカムも肩肘張ってたのがようやく収まった様子。

 

「あれ、ニアールさんあまり飲んでないんですね」

 

「確かに。進みがあまり良くない、酒が合わないのか?」

 

すこし酔っているリスカムがなかなか減らないニアールのグラスを不思議そうに見ていて、ホシグマはぐいっとグラスをあおりつつ問いかける

 

「いや、そういうわけではない。そういうわけではないんだ」

 

「……料理もあまり食べてないな」

 

あからさまに視線を泳がせているわかりやすい姿に思わずサリアがグラスで口元を隠してはいるものの笑っているのがうかがえる

 

「ニアールさてはお前………」

 

サリアの言葉にギクッとしたニアールは尻尾を跳ねさせ、明らかな動揺を見せる。もうなにか隠してるのはバレている。そうなればもうどうすればいいのか三人は知っていた

 

「すみませんニアールさん」

 

「職務質問だ、まあ何も隠し事がないなら怖くはないだろう?」

 

「ななな何をするつもりだ!?」

 

さり気なくホシグマとリスカムが両脇に立つと腕を掴んで捕縛する。哀れニアール、もうお前は逃げられないのだ。

 

じたばたと暴れはじめるのだがそこは警察官と護衛のプロ、ガッチリとガードして逃げるすきを与えない。

 

「すぐに終わる」

 

「そういう問題ではない!」

 

なんとなくキメ顔で言ってみるといい感じにニアールさんがツッコミを入れてくれる。まあやめないんだが?

 

「では、失礼して」

 

そろそろーっと指を突き出してお腹周りにさして見る。まあニアールさんのことだから鍛えてるだろうし。下手したら指がボキってイキそうな気が───

 

──ぷにっ

 

「──?」

 

ん?

 

もう一度突いてみよう、なにかの間違えかもしれない。もしかしたら脇腹を突いてしまったんだなそうに違いない。もう一回……

 

─ぷにっ

 

「????????????」

 

「お、おい……サリア?」

 

「大丈夫ですか?」

 

なにか理解できないものを目の当たりにしたような宇宙ヴィーヴィル顔をしているサリアにホシグマとリスカムが心配そうな顔をする。そしてニアールはなにか諦めたような顔をしている

 

「───」

 

「え、ちょ…サリアさん。待って……────???????」

 

無言でサリアがリスカムの腕を取るとリスカムが慌てた顔をするが、同じようにニアールのお腹にふれると宇宙ヴィーヴィルになった。

 

「───あっ……」

 

そして何かを察した顔のホシグマ、なんとなく同じようにお腹を押すとなんとも言えないような顔になる。

 

「…─ニアール」

 

「……なにかな」

 

ようやく再起動したサリアが二アールに声をかける。それに何故か朗らかな顔をしてるニアールが返答したのを見て、これは一息にやらねばならぬと理解したサリアはためらわずに告げる

 

「…お前、さては最近食生活気にしなさすぎで太ったな?」

 

尋問が始まった──!!!!



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幕間 ロドス掲示板 その2 

お久しぶりです、一言だけ  


プラチナちゃん、すまん


234:名無しのオペレーター

最近そういえば出撃無いよな

 

235:名無しのオペレーター

レユニオンもなんかおとなしいよな

 

236:名無しのオペレーター

龍門にクルーって話だったけど?

 

237:名無しのオペレーター

それがとんと姿を見せないらしい

 

238:名無しのオペレーター

不気味ではある

 

239:名無しのオペレーター

出ないものは出ない故、気にしないほうが良い

 

240:名無しのオペレーター

それもそうだな

 

241:名無しのオペレーター

そういえばお前らに聞きたいんだけどさ

 

242:名無しのオペレーター

なんだい?

 

243:名無しのオペレーター

ニアールさんがジャージ着てたんだけど知ってる?

 

244:名無しのオペレーター

!?

 

245:名無しのオペレーター

ニアールさんが…ジャージ!?

 

246:名無しのオペレーター

ニアールさん芋ジャーだったんか

 

247:名無しのオペレーター

それは違うやろ

 

248:名無しのオペレーター

芋ジャーはチェンさんなんだよなぁ

 

249:名無しのオペレーター

え、マジ?

 

250:名無しのオペレーター

そうだよ?

 

251:名無しのオペレーター

まじかよ

 

252:名無しのオペレーター

あの人、ほんとになにもない時ジャージ着て部屋にずっといるしな

 

253:名無しのオペレーター

たまにぺぇぷ殿がジャージ一杯持ってるのって…

 

254:名無しのオペレーター

 

255:名無しのオペレーター

 

256:名無しのオペレーター

要介護…

 

257:名無しのオペレーター

その言い方は草

 

258:名無しのオペレーター

でもあの人家事能力皆無でしょ

 

259:名無しのオペレーター

厨房出禁組の一人だしな

 

260:名無しのオペレーター

えぇ…

 

261:名無しのオペレーター

一回料理使おうとしてコンロ爆発させた

 

262:名無しのオペレーター

!?

 

263:名無しのオペレーター

!?

 

264:名無しのオペレーター

それはもう料理ベタとかそういう次元ではないのでは?

 

265:名無しのオペレーター

ポンコツ過ぎる

 

266:名無しのオペレーター

話戻すけど、ニアールさんの方は知らん?

 

267:名無しのオペレーター

知らん

 

268:名無しのオペレーター

あの人ってそういうの着ないだろ

 

269:名無しのオペレーター

せやろか?

 

270:名無しのオペレーター

だってすぐに破けそうだし

 

271:名無しのオペレーター

そっちかw

 

272:名無しのオペレーター

耐久力重視で草

 

273:名無しのオペレーター

ジャージに耐久力を求めるなw

 

274:名無しのオペレーター

あとサイズとか…

 

275:名無しのオペレーター

あー…クランタ用っていう意味か

 

276:名無しのオペレーター

尻尾大きいもんなニアールさん

 

277:名無しのオペレーター

ワイ、クランタ。激しく共感。既製品のクランタ用のジャージって尻尾出すところの規格そこまで多くないから毛量多いとサイズが合わないんだよな。だから尻尾出す部分を重視するとぶかぶかになっちゃう

 

278:名無しのオペレーター

そうなんか

 

279:名無しのオペレーター

だから特注で作らないといけないんだけど。ジャージなんかに金をかけたくない

 

280:名無しのオペレーター

それはそうやなぁ…

 

281:名無しのオペレーター

だとすると、余計にニアールさんジャージ着てる意味がわからんな

 

282:名無しのオペレーター

だね、何でだろうか

 

283:名無しのオペレーター

ジャージニアールさん、なんかしてた?例えばぺぇぷ殿のお手伝いとか

 

284:名無しのオペレーター

あー。農作業用か。それは納得するけど

 

285:名無しのオペレーター

あれめっちゃ泥だらけになるし、匂いも取れないからなぁ

 

286:名無しのオペレーター

それがさ…

 

タイヤ引いてた

 

287:名無しのオペレーター

は?

 

288:名無しのオペレーター

 

289:名無しのオペレーター

んんん?

 

290:名無しのオペレーター

状況がわからない。もう一度繰り返せ

 

291:名無しのオペレーター

だから、タイヤ引いてた

 

タイヤの上に不憫さん乗せながら

 

292:名無しのオペレーター

wwww

 

293:名無しのオペレーター

 

294:名無しのオペレーター

どうしてそうなったw

 

295:名無しのオペレーター

ニアールさんがタイヤ引いてるだけでも草なのにタイヤの上に不憫さん乗ってるのでだめだったw

 

296:名無しのオペレーター

すげえシュールな光景w

 

297:名無しのオペレーター

ちな不憫さんメガホン持ってたぞ

 

298:名無しのオペレーター

wwww

 

299:名無しのオペレーター

くっそw

 

300:名無しのオペレーター

なんだそれw

 

301:名無しのオペレーター

ニアールさんのイメージもそうだけど不憫さんのイメージ崩れるw

 

302:名無しのオペレーター

あの人面白キャラだったんか…w

 

303:名無しのオペレーター

割とノリノリだったぞw

 

304:名無しのオペレーター

あぁ、それ俺も見たよw

 

不憫さん『もっと強く踏み込めこのポンコツ騎士!ダメ姉!』

 

って劇飛ばしてたなw

 

305:名無しのオペレーター

ポwンwコwツ騎w士w

 

306:名無しのオペレーター

ダメ姉wwww

 

307:名無しのオペレーター

くっそw

 

308:名無しのオペレーター

何やってたんだあの人らw

 

309:名無しのオペレーター

※本人たちは至って真面目にやってます

 

310:名無しのオペレーター

www

 

311:名無しのオペレーター

まじかw

 

312:名無しのオペレーター

ニアールさんが

 

『ふっんぬ…ォオ!!』

 

って言ってたから真面目にやってるはず

 

313:名無しのオペレーター

それふざけてないか?w

 

314:名無しのオペレーター

いや、面白いところは此処じゃないんだ

 

315:名無しのオペレーター

え?

 

316:名無しのオペレーター

え?

 

317:名無しのオペレーター

マ?

 

318:名無しのオペレーター

まだ隠し玉があるんか?

 

319:名無しのオペレーター

いやいや、これ以上面白い状況なんて…

 

320:名無しのオペレーター

プラチナも一緒にやってる

 

ブレミシャインをタイヤの上に乗せながら

 

321:名無しのオペレーター

wwwwwwwwwwwww

 

322:名無しのオペレーター

うっはwwwww

 

323:名無しのオペレーター

絵面www絵面wwww

 

324:名無しのオペレーター

どうしてそうなったwww

 

325:名無しのオペレーター

プラチナwwwww

 

326:名無しのオペレーター

お前アサシンだろwww

 

327:名無しのオペレーター

なお上に乗ってるブレミシャインは楽しそうな様子w

 

328:名無しのオペレーター

これは煽り適正あるわw

 

329:名無しのオペレーター

どうしてそうなった、まじでw

 

330:名無しのオペレーター

プラチナ参戦!の経緯

 

いつもどおり仕事をしようとするけど任務無いので暇してた

暇なので訓練所に行った

なんか変なことしてる二人組みを見つけた

片方がニアールだったから見てたけど内容にドン引きしてた

補足される

不憫さん『一人でやるよりも二人のほうが良いだろう』

ニアールさん『それもそうだな』

プラチナちゃん『えっ』

たまたま訓練したブレミシャイン合流

現在

 

331:名無しのオペレーター

巻き込まれてるじゃねーか!!!!

 

332:名無しのオペレーター

逃げようとしたけど捕まった様子

 

333:名無しのオペレーター

あちゃー

 

334:名無しのオペレーター

プラチナちゃんの様子は?

 

335:名無しのオペレーター

プラチナちゃん『なんか巻き込まれてる…』

 

336:名無しのオペレーター

お通夜状態w

 

337:名無しのオペレーター

タイヤを引いてるニアールさんVS檄を飛ばす不憫さんVS楽しそうなブレミシャインVS何も知らないプラチナちゃん

 

338:名無しのオペレーター

三対一じゃねーか!

 

339:名無しのオペレーター

プラチナちゃんも不憫属性ありそう

 

340:名無しのオペレーター

あの子中間管理職らしいっすよ

 

341:名無しのオペレーター

あっ…

 

342:名無しのオペレーター

あっ…

 

343:名無しのオペレーター

なむなむ…

 

344:名無しのオペレーター

彼女はもう…ダメそうですね…

 

345:名無しのオペレーター

そもそもことの発端ってなんだよ

 

346:名無しのオペレーター

それな

 

347:名無しのオペレーター

こんな面白ワールド作った理由が知りたいw

 

348:名無しのオペレーター

そりゃお前らが冒頭で言ったじゃん

 

349:名無しのオペレーター

なんか言ったっけ?

 

350:名無しのオペレーター

芋ジャー?

 

351:名無しのオペレーター

要介護?

 

352:名無しのオペレーター

それはチェンだっていってんだろ!!

 

353:名無しのオペレーター

これは風評被害

 

354:名無しのオペレーター

それ以外だとなんだろ

 

355:名無しのオペレーター

…最近出撃がない?

 

356:名無しのオペレーター

正解

 

357:名無しのオペレーター

それがなんか関係あんの?

 

358:名無しのオペレーター

出撃がない…あっ

 

359:名無しのオペレーター

知ってるのかリスカム

 

360:名無しのオペレーター

何でそこでリスカムなんだよw

 

361:名無しのオペレーター

だってリスカムってものしりじゃん?

 

362:名無しのオペレーター

そういう理由かよw

 

363:名無しのオペレーター

出撃がない、つまり…

 

364:名無しのオペレーター

運動不足、そういうことだな!!!

 

365:名無しのオペレーター

あっ

 

366:名無しのオペレーター

あっ

 

367:名無しのオペレーター

そういえば最近妙にニアールさんなんかもっちりしてたような…

 

368:名無しのオペレーター

も っ ち り ニ ア ー ル さ ん

 

369:名無しのオペレーター

言い方よw

 

370:名無しのオペレーター

それが何で不憫さんがトレーニング手伝うことになったんだ?

 

371:名無しのオペレーター

昨日の騒ぎ聞いてない?

 

372:名無しのオペレーター

なにそれ

 

373:名無しのオペレーター

顔の良い重装組が飲みに出かけたやつ

 

374:名無しのオペレーター

メンバーは?

 

375:名無しのオペレーター

不憫さん、もちもちニアールさん、ホシグマさん、リスカム

 

376:名無しのオペレーター

顔がいい

 

377:名無しのオペレーター

リスカムがちょい見劣りする異常事態

 

378:名無しのオペレーター

どっちかというとリスカムが護衛されてるお嬢様に見えるメンバー

 

379:名無しのオペレーター

勝てない(確信)

 

380:名無しのオペレーター

多分そこでバレたんじゃないかな

 

381:名無しのオペレーター

その時確かニアールさん変な格好してなかったっけ?

 

382:名無しのオペレーター

変な格好ではない、場違いな格好ではあるが

 

383:名無しのオペレーター

どういう格好?

 

384:名無しのオペレーター

燕尾服

 

385:名無しのオペレーター

(頭を抱える)

 

386:名無しのオペレーター

そうはならんやろ…

 

387:名無しのオペレーター

なっとるやろがい!!!!!

 

388:名無しのオペレーター

センスの無さを顔面偏差値でカバーするのか…

 

389:名無しのオペレーター

他のメンバーの服装は?

 

390:名無しのオペレーター

グマさんはいつもの戦闘服っぽい感じ、黒を基調にしたカジュアルなやつ

 

391:名無しのオペレーター

無難ですわな

 

392:名無しのオペレーター

リスカムはセミロングスカートにカーディガン、セミロングの色は淡い青。寒色系のコーデで本人の髪色とマッチしてる

 

393:名無しのオペレーター

かわいい

 

394:名無しのオペレーター

可愛い

 

395:名無しのオペレーター

年頃の女の子って感じがするな

 

396:名無しのオペレーター

なんか安心する

 

397:名無しのオペレーター

ねー、コーディネートする余裕があるのは大事ですわな

 

398:名無しのオペレーター

女の子だからね、そういうところにも気を配ってほしいわ

 

399:名無しのオペレーター

年相応って大事だよな

 

400:名無しのオペレーター

分かる

 

401:名無しのオペレーター

任務だけじゃなくそういう生活もしてほしい

 

402:名無しのオペレーター

最後に不憫さん

 

403:名無しのオペレーター

来たな

 

404:名無しのオペレーター

来たな

 

405:名無しのオペレーター

来たわね

 

406:名無しのオペレーター

来たわね

 

407:名無しのオペレーター

Yシャツにスラックス、あとコート。カフェテリアで仕事してそうな感じの

 

408:名無しのオペレーター

不憫さんがまともな格好してる…!?

 

409:名無しのオペレーター

そこはかとなくオシャレだな

 

410:名無しのオペレーター

そういうところも気配りできんのな

 

411:名無しのオペレーター

格好はまともだな

 

412:名無しのオペレーター

おっと?

 

413:名無しのオペレーター

これは?

 

414:名無しのオペレーター

Yシャツは着崩し、色々危ない。んで片方だけワックスかけてた

 

415:名無しのオペレーター

不憫さんはそういうことする

 

416:名無しのオペレーター

あの顔でそれはまずいですよ!

 

417:名無しのオペレーター

一般人何人か倒れてそう

 

418:名無しのオペレーター

視線向けられるとガチ恋しそう

 

419:名無しのオペレーター

この中に一人だけ燕尾服のクランタが居るらしい

 

420:名無しのオペレーター

やめたげてよぉ!!

 

421:名無しのオペレーター

一人だけ著しく浮いてて草

 




大陸でまさかまさかの実装ですね、石貯めます


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第十三話 ヴィクトリアの技術は世界一ィィィィ!!!!!

お久しぶり!!!みんな元気〜〜〜??(カシャ風)

今回はヴィクトリアのお話、前半ギャグ、後半若干アークナイツしてるぜ!!


プラチナも巻き込んでのニアール減量トレーニング、無事成功して減量に成功することができた。まあ色々とあったんだけどあまりにもプラチナが不憫なことになったので割愛しておく。後で酒でも飲みに連れていくか………

 

「……騒がしいな」

 

なんだか実験区画から物音が聞こえるのでそこから避難。変なことに関わる必要もないので放置放置、まあなんとかなる

 

『ぬわあああああああ』\\チュドーン//

 

なんだ今度こそレユニオンの襲撃か!?そうなのか!?

 

\\ピーンポーンパーンポーン//

 

『先程の爆発箇所は実験棟のE‐24区画です。使用者のソーンズ、エリジウムはさっさと事務室に投降するように。さもなくば給料天引きと1ヶ月の作戦に缶詰にしますのであしからず』

 

またお前らか……いや、ほんとになんでなんだよ。爆発するの日常茶飯事なのはどうなんだろうなロドス。まあいいか、実験に爆発とかはつきものなんだろうな

 

\\ボボボボボボ!!//

 

!?!?!?!?

 

なんだなんだまだ大爆発!?レユニオンの襲撃まじで来てるんじゃないのかこれ!?

 

 

\\ピーンポーンパーンポーン//

 

『先程の爆発箇所は訓練棟のC‐2!Eー21!区画!!使用者のブレイズとスカジ!!バグパイプとホルン!!今すぐ訓練を中止して早く事務室に出頭するように!!拒否した場合は全事務処理と3ヶ月の減給としますよ!!!!!』

 

何やってんだお前ら…いやスカジとバグパイプとホルンもいるのか…ってそういうわけじゃなく。のりが戦闘狂なんだろうなと思わさられる。そもそも破壊するなよ…まあいいか、もうこんなこと

 

\\チュドドドドド//

 

また爆発!?!?!?!?今度はなんだよ!?!?

 

 

\\ピーンポーンパー『誰だ調理室にカッターとイフリータとチェン入れたやつは!!!出禁組じゃねえか!!!今すぐ消火活動しろ!!今日の責任者誰だ!!!』

 

大変そうだナー…まあいいか、そんなことよりも今日もお仕事しますかね

 

『……………』

 

……廊下に下手人共が正座させられてる。エリジウムとかは別のところで事後処理されているらしい、ちなみに此処にいるのは…

 

「流石にやり過ぎだべ隊長……」

 

「………ごめんなさい」

 

バグパイプとホルンだった。なんと下手人はまさかのホルンの方だったらしい、どうやら新しい武器の調整してたらオーバードライブかましちゃったらしい。ちょっと間抜けや過ぎませんかね……

 

「………何をしてるんだお前達」

 

「あっ、サリア!丁度いいところにっ!」

 

バグパイプがこっちを見るなり駆け寄ってきた、どうやらバグパイプはホルンの監視役?みたいなことをやっているらしいのだが、厨房がロンディニウムの砲撃受けたみたいにやばいことになってるからそっちの手伝いをしてもらうことになったらしい。まあとばっちりもいいところだけどしょうがないか、仕事だしね

 

「ってことだからお願いできる?」

 

「…あぁ、いいだろう。早くいけ」

 

「ありがとー!!」

 

此方に手を振りつつ疾走して行ってしまうバグパイプ…そして取り残された俺とホルン、めっちゃ落ち込んでる。まあ軍人がボヤ騒ぎなんてのを起こしたら落ち込むのも仕方がないかな

 

「……大丈夫か?」

 

「…えぇ、なんとか」

 

想像以上に凹んでるわコイツ。そういう性根なんだろうと思いつつ、ちょっと席を外して缶コーヒーを買ってホルンに手渡して隣に座る

 

「……で、なんでまたそんなボヤ騒ぎなんてのをやったんだ?」

 

「え?…あれはバグパイプが言ったように」

 

「それはバグパイプの主観だろう?私が聞いているのはホルン、お前の動機だ」

 

ビクッと肩をはねさせているホルンを知り目に缶コーヒーに口をつける。こいつはただのヴィクトリア人じゃない、れっきとした正規軍だ。正規軍ってのは銃器の扱いも厳格に管理されているはずだし、何よりあのバカでかい武装を自前でメンテナンスできるメカニックとしての能力もある。理由を知りたいのは本心なんだよね

 

「……焦りか、或いはわだかまりか?」

 

「……」

 

ホルンは何も答えずに、ちびちびと缶コーヒーに口をつけ始める、なんかちょっとにがそうにしてる。そういえばコイツヴィクトリア人だったわ、紅茶のほうが好きだったかな。ちょっと失敗した

 

「……貴女は」

 

「……ん?」

 

「……貴女は、戦うことが怖くなったりしないのかしら」

 

あぁ…そういえばコイツラはロンディニウムの攻防戦の経験者…いや、もう終わってるのか…え?ロンディニウムの副砲が暴走してぶっ飛んでそれどころじゃない?亡霊部隊も全員撤退した…?嘘だろ…?まさかの現場猫案件で9~11

辺りのことまるまる吹っ飛んだってこと…嘘だろ……???

 

ま、まあそういうこともあるのか………それはさておき、俺は未だに戦ったこと殆ど無いし。偽スペクターぐらいか?あんときはビビるとかそういう以前に考える余裕なかったし

 

「……私は、少し怖くなってしまったわ」

 

なんでも、サリアさんがぶっ倒れた話なんだけど。そこの作戦に行くはずだったんだけど体調不良を理由に休んだらしい、実際は戦うことへの恐怖心が拭えなくなって砲撃の照準がぶれてしまったことらしい。正規軍の方はもっとやばい戦場というかロンディニウムの戦いが当たり前とかあるんだろうな……お辛い

 

だけど

 

「戦いに恐怖心を覚えることになんの問題がある?誰しも死に直面すれば足も竦むだろう、誰にも責められることではない」

 

「………」

 

そういってもホルンは押し黙ったままだった、リスカムのようにはいかないか。リスカムとホルンじゃ経験値が違いすぎて根っこにはびこってるのが違いすぎるんだろう

 

「…ホルン、お前は殉職した連中を覚えているか?」

 

「……もちろん」

 

「なら、しっかり生きろ。胸を張れ、項垂れるな。お前の為に死んだという誇りを抱きながら後を託していった彼ら彼女らの為にもな」

 

「…分かっている、けれど……」

 

こりゃ根っこから逝ってるかもな…しょうがない、こうなったら俺も一緒に怒られてやるか

 

「ホルン、少しついてこい」

 

「まだ処罰が─」

 

「いいからついてこい」

 

そう言いつつホルンの手を取って歩いていく、向かうのは保護区画──ロドスが保護した人々がいる区画だ。天災で行き場のなくなった人達も一部収容しているらしい、大体は過ぎ去った後元の場所に戻っていくらしい。当然ヴィクトリアからの人もいる

 

「あっ、ホルンさんだ!」

 

そんなことなので当然ホルンを知っている人のことも大勢いる、すぐに回りに集まってやんややんやとはしゃぎまわっている子供達に若干押され気味だ

 

「ねえねえ、ホルンさん!これあげる!」

 

そんな中小さな女の子がホルンにたどたどしい手付きで作ったであろう折り紙のようなものを手渡している。小さな女の子だけではなく、いろんな子から手渡されている

 

「ありがとう……」

 

ほんのすこし申し訳無さそうなホルンを不思議そうな目で見つつも小さな女の子が口を開いた

 

「ホルンさん、私達を助けてくれてありがと!」

 

そういう言われると居心地悪そうにホルンが身動ぎする。殉職した彼ら彼女らのことを思い出しているのだろうか

 

「……おねえさんはね、そんなにすごい人じゃないのよ?」

 

「えー?」

 

「ほるんたいちょー、ちゅよいってばぐぱいぷがいってたよー」

 

「変なのー」

 

「ばばーんって悪い人倒してたよ?」

 

「だったらすごいじゃん」

 

「ねー」

 

「……ホルンのおねえさん、ちょっと疲れてるみたいだからあっちで遊んできて?」

 

『はーい』

 

小さい子に混じってるちょっと年上の子が他の子達をそれとなく引き離す、機微の読める子なんだろうな。ホルンがしんどそうにしているのを見て引き離してくれたんだろうさ

 

「……ごめんなさいね」

 

「……いえ、お構いなく。…ホルンさん」

 

「……何かしら」

 

言うか言わないか迷ったようにしてる年長の子が口を何度か開いては閉じてを繰り返してから、口を開いた

 

「貴女はヴィクトリア人の誇りを忘れないようにしてくださいね」

 

それだけ言い残して彼女も去っていった、少しだけうつむいた彼女の手を引っ張る。今度は何も言わずに、大人しくついてくる

 

──行き先はと言うと

 

「お待ちしてました、ホルンさん」

 

「──貴女は?」

 

訓練室、待ち構えていたのはフル装備のリスカムだった。

 

「──盾を、構えてください」

 

荒療治の始まりである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ふと思ったんだけどさ

出てきてるオペレーターだいたい重曹だけじゃね?と思った、いやフルアーマーめちゃくちゃ好きなんだけど

そういえばおテキ引けた?ムチムチ裁判官は?俺はどっちも引けたよ、おテキは4凸!やったぜ

次は前半アークナイツ、後半イチャイチャする予定


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幕間 サリアへ対するオペレーターの反応抜粋 その1

だいぶ湿度があるオペレーターの一覧のようなものになります。此処で紹介している人達は何かしら考えてます、湿度が0の人もいれば水のないところでこれだけのハイドロカノンをしている場合もあります

あくまで抜粋なので現在登場しているオペレーター全員からの反応ではありません


ドクターの回答

 

「そう、だね。本当に申し訳ないと思っているよ。サイレンスやイフリータへどう説明すればいいのかと頭を悩ませている日々かな。だけど、彼女。随分と物腰が柔らかくなったと言うか、なんというか。余裕が出てきたとというよりは、こう。別人?って思ってしまうことが多くなったかな。今のほうがいいとは思う、いやサリアが戦線に出なくなるからこれからの危機契約どうしようか頭抱えてるんだけど………」

 

アーミヤの回答

 

「サリアさんですか?そうですね…なんといいますか、彼女には失礼だと思うんですけど。こう……どちらかと言うと近所のお兄さんのような雰囲気を感じ取りました、前は厳格な父親のような。そんな雰囲気でしたが、今は相談によく乗ってくれてる人…という感覚です。たまにお話しますよ」

 

ホシグマの回答

 

「小官としては今のサリアも以前のサリアも、表面上の変化はあれど本質的には何も変わらないように思えますね。ただ出力の仕方が変わったと言うだけで、根底にあるのは生き延びてほしい。という感情ではないかと……それにしても、サリアが極東の文化に理解があるとは思いませんでしたね。後で誘いましょうか」

 

──リスカムの回答

 

「サリアさん……ですか?はい、いいですよ。あの人は……その、恩人ですね。大きな背中をしていると思います。身長の話ではありませんし私が小さいのも気にしてませんからっ!!…こ、こほん。頼りがいもあると思います。もう一度立てたのはサリアさんのおかげですから、感謝しかしてないです。はい……とても。目標ではありますけど、私はサリアさんになろうとは思いませんしなれません。私は私のやり方で、あの人の横に立てるような。そんな風になりたいですね………遠い背中ではありますけど。いつかきっと、貴女の隣で戦えるように……」

 

ジェシカの回答

 

「リスカム先輩の件は、本当にお世話になりましたっ!私だけじゃどうしようもなかったので。ダメ元で話しかけたんですけど、すぐにお返事くださって。すぐに動いてくださって、本当にありがとうございましたっ!あのあとも、ちょくちょく私の方に話しかけてくれるようになりましたし。その、怖がってたのが申し訳無かったです…また、お菓子作ってくれると嬉しいです」

 

ブレミシャインの回答

 

「サリア?うーん、お姉ちゃんと中がいい人かな。私の方も結構手伝ってくれたりとかするけれど。どっちかと言うとお姉ちゃんの方とかかわりがふかいかなぁ?機械いじり一緒にやるのは楽しいからまた一緒にやりたいな」

 

アズリウスの回答

 

「あの方は、私のケーキ。美味しそうに食べてくださいましたわ、その御蔭で。ほんの少しずつですけれど、皆様との交流が広がりつつあります……ありがとうございます。新作のケーキ、あとでお持ちしなくては」

 

 

グラウコスの回答

 

「…アズリウスさんの一件、ありがとうございました。力添えが必要なときは、声をかけてください」

 

ウィーディの回答

 

「サリア?そうね…ちょっと長くなってしまうけれど。それでもよければ。まずは身だしなみについて、特に問題はないと思うわ、研究者気質にありがちな身だしなみを疎かにする、という傾向は感じられないし。たまにだけれど。髪を梳かしてくれたりしてるよ、結構上手なんだよね、ふふ。性格面は、これも問題ないかな。実験をやって大爆発とか起こさないし、変な薬剤ばらまかないしで…結構そういうの、みんなやるんだよね。機械整備の大変さについての理解があるところもいいと思う、日常的に使うもののメンテナンスって大変なんだ。それを止めないようにしつつ、なおかつやらなくちゃいけないから。特に水回りがそうだと思うの、この前も私が手の届かないところの手伝いとかしてくれたし、肩車して作業とかも。サリアはその、あれだよね。ちょっとこう節操がないっていうか、なんえいうか。自分がどう思われているか考えているようで考えてないような気がするんだ。自暴自棄ではないんだけれど。どこか一線を引いていると言うか何というか。そういうところは良くないと思うな、私達はロドスっていうところに一緒にいるんだから。全部を全部やんなくてもいいから、もう少しだけ…距離を縮められたらなって。私は思うよ、リーフもなついちゃってるし、ふふ。めったに人に懐かないというか。あそこまで能動的だったリーフは初めて見たかも。……節操なしっていう話に戻るんだけれど、こう。なんというか。いろんな子に粉をかけてる感じがするのよねサリア。別に嫉妬とかそういうのじゃないし?のみにでかけたことに対してやつたあたりでソーンズやエリジウムに蓄水砲打ったりとかしてないし????サリアは女性だからそういうのはないと思うのだけれど、あっても私としてはどうこういう立場にはないのだけれど?外聞とか?そういうのあるからあんまり粉をかけるようなのは良くないって私は思うな!(以下長すぎるため割愛)」

 

ソーンズの回答

 

「件の件は迷惑をかけることになった、思いがけず休息を与えることになったがそういうものでもないだろう、科学者としては。一度論を交わしたいところではある…何?頭がアフロヘアになっているだと?……実験の失敗でそうなることもある」

 

誰戦旗武使の回答

 

「あのときは僕のせいで被害が拡大してしまったことは、申し訳なく思ってるけれど。たまにウィーディが蓄水砲打ち込んでくるからどうにかしてくれない?頼むよ頼むよ」

 

???の回答

 

「まあ、何というのかしらね…面白い人かしら?私達とはちょっと違う雰囲気があるわね。ふふふ…」

 

☓☓☓の回答

 

「……面白そうな人ね、あれ」

 




ニアール「(花束を摘みに行っているので回答不可)」

あくまで抜粋なので本来だとそれぞれ1話位の湿度があったりなかったりします、一番湿度があるオペレーターは誰なのか予想してみてくださいね

シリアスパートの方はどうなのかって?そりゃぺぇぷに決まってるじゃん

単体のキャラ同士のどろっどろのGL書きたいなぁ、めちゃめちゃ湿度あるのもそうじゃないのも、重力出るかもしれんが


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第十四話 声に出せって言ってんだろお前ら!!!

前半のアークナイツ書いて後半のイチャイチャ書こうとしたら温度差で風を引いたので分けることにする

湿度アンケート。ほーん…ってなる結果ですね今の所。案外湿度高い反応してるのにみんな気づかないんだな‐って感じですね


───訓練所にて、ホルンは促されるままフルアーマーのリスカムとの模擬訓練をすることになった。ホルンの方はあまり乗り気ではなかったのだが。何もしてないよりかはいいだろうという気持ちで武器を構える、互いに実弾ではなく模擬弾だ。ただ当たるとすごく痛いらしい

 

お互いに視線を交わらせて、一瞬の静寂。そして衝突

 

「ふっ!」

 

「──甘い!」

 

どちらも重装オペレーターであるはずの二人の戦いのはずが、激しい金属音をたてながらぶつかり合う。本来の戦い方を一旦捨てているリスカムは模擬中は牽制程度、間合いを詰めて戦う。ホルンのシールドバッシュを受け流して距離が空いたところにホルンが砲口を向ける、すかさずリスカムも帯電して迎撃の構え

 

「サンダーストーム!」

 

「……くっ!」

 

「雷鳴よ、轟け!」

 

 

リスカムが、チャージした電撃のアーツを放てば。ホルンのアーツによって強化された砲弾と衝突して爆散する。余波が此方まで飛んでくるのを尻目に二人を見る。互いに持ち前の防御力と威力が弱まった事を感じとり。盾で防ぎきる

 

「くっ」

 

そして、反動スタンがリスカムの体にのし掛かる。普段は自身のアーツで動かしているアーマーの重さがのし掛かり、動きが鈍くなる。それに加えてホルンの砲撃に耐えられるようにといつもよりも重装備なのが此処で仇となる

 

「─取った」

 

 

一瞬の加速、重装オペレーターとは思えないホルンの動きにリスカムは表情を変えはしないが。内心あせる。だが大丈夫だ、大丈夫。とリスカムは深呼吸をする

 

(──かかった…!)

 

「……!?」

 

体は思うように動かない、だがフルアーマーにしたのはただ防御を上げただけではない。それ自体が十分な兵器となるのだ。距離を詰めて仕留めに来たホルンに逆に前方に伸びる余剰電流を放出して間合いを詰めさせない。数秒で決着がついてしまうであろう一進一退の攻防が続く。お互いに火力のある重装オペレーター故の戦いだ、リスカムのほうが火力不足に見えるが彼女のアーツは感電を誘発する、電気系統がショートしてしまえばアーツユニットとはいえただでは済まないのだ

 

そんな光景を眺めているのはサリアだけではない、隣にはバグパイプもいるのだ。仮にやりすぎになりそうになったところに介入できるのはバグパイプぐらいだろうし、ホルンの今の状態には思うところがあるらしい

 

「でも、そろそろかな…」

 

バグパイプの視線にはお互いに息を荒くしているリスカムとホルンがいた。しかし両者には違いがあった。

 

 「…もう終わりでいい?」

 

ホルンはいまだに傷と言う傷は少ないが、リスカムの方は片膝をつき、所々アーマーに亀裂が入っている。一部のアーマーは過放電に耐え切られなくなったのか砲撃の盾にして投げ捨てている。もはややってることが模擬を超えた実践なのだが、リスカムはそれでも立ち上がる

 

「いいえ、未だです…!」

 

「へぇ…」

 

「………」

 

まだ。体は動くと言うように盾を構えたリスカムにバグパイプ感心したような声を出す、彼女から見てもタフネス性は一定の評価を得られているのだろう。だがホルンはというと

 

「─ねえ、一ついいかしら?」

 

ホルンがリスカムに声をかける、どこか苦々しい顔で 

 

「どうしてそこまで立ち上がるの?いや、君がそういう職業だってのは分かるんだけど。そのままじゃ、体を壊すわ」

 

 純粋な疑問をぶつける。これはただの模擬戦なのだ、規模が大きいが。それで肝心な時に動けなきゃ意味がないと

 

「訓練…」

 

「そう、訓練だよ。だから──」

 

ホルンの言葉を遮るようにリスカムは睨み付けるような視線を送る。普段温厚な彼女が決して見せることのない表情に思わず驚いてしまう

 

「訓練…そうです。訓練です、たかが訓練です。ですが──」

 

そのままよろけつつも、唇を噛みきってリスカムはなんとか立ち上がる。その眼差しは決して敗けを認めてはいない。足は震えてはいるものの。それでも精神性という意味では今はホルンが追い詰められている。

 

「確かに、これは訓練です。本来ならもうやめて引き下がるべきです。それは私もわかっています、これは合理的ではない……と」

 

「ならどうして立ち上がるのかしら……早く手当をしないと」

 

リスカムの言葉にホルンは問いかける

 

「それは、私が楯だからですよ、ホルンさん。楯とは、私の力や、状態。ましては能力ではありません──私の在り方。楯は突破されては行けないもの、そして護るものです。前衛で戦う彼らの。そして後衛で支援する彼女らの…そして。後を託してくれた彼等彼女達のためにも。負けない、負けられない。負けられない…!こんなところで膝をついて諦めるようなら…!」

 

気炎をあげながら、リスカムは吠える。貴女は忘れていないか、見失っていないか。戦う理由を、戦おうとした理由を。戦いの中で戦い続ける理由を見出していたことを

 

「──後ろで震えて、怯えている誰かを。守れない!」

 

──衝突する

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「…!!」

 

リスカムのには似合わない突進による攻撃、ぼろぼろになりつつも突き進んでくる姿に思わず引き金を引いてしまうホルンにが固まる、バグパイプが飛び出すのを静止しながら眺める

 

(……大丈夫さ、今のリスカムなら)

 

リスカムが楯で砲撃を弾き飛ばす、つんざく轟音を立てながらシールドを投げ捨てつつ。予備の楯でシールドバッシュでホルンに殴りかり、ホルンも一瞬の硬直から立ち直り反撃するが

 

()()()()()()()()()

 

「──あああああぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」

 

「…なっ?」

 

そのままなりふり構わずリスカムが楯を振り抜いて吹き飛ばす、体勢もろくに整えられていないホルンは壁に激突する。壁はクッション材で補強されているが、ダメージが皆無というわけではない。

 

「…もういいわリスカムさん、私の負でいいわ」

 

「立って、立ってくださいホルンさん!まだ勝負はついてません!盾を取ってください!」

 

うなだれるホルンにリスカムが発破をかける。そんなものがヴィクトリアの軍人かと。その程度なのか嵐の勤めはと

 

「……っ!何も…っ」

 

ホルンがとうとう声を上げて、情けなく喚き散らそうとして。彼女の中の最後の砦まで自暴自棄になって捨ててしまいそうになる。だけどそれを見逃すリスカムではないのだ

 

「何も!分かりません!!今は!だってホルンさん、何も言ってくれないじゃないですか!私は、私達はエスパーじゃないんです!言ってくれなきゃ!わからないんです!!」

 

ぜえぜえと息をとぎれとぎれにしながらリスカムは叫び声を上げる、彼女自身此処まで声を張り上げたことはめったに無いしこれからもないんだろうなっていうぐらい声を上げる。顔色もあまり良くはない、誰が見たって不格好だ。誰が見てもどっちが満身創痍なのかはっきりと分かる

 

誰が見ても──

 

「独りで抱え込むことが正しいわけじゃないんですよこの頑固者!!」

 

─彼女がホルンを助けたいことは伝わるだろう。だが同時にホルンに劣等感を与えることになる。自分よりも若いであろう相手に此処まで発破をかけられて何も言い返せないのだから。

 

「私達は、その!あまり仲ががいいって言うほど関わりがありません!まだお互いの名前と職歴をちょっと知ってるだけです!友達でも、戦友でも、もしかしたら同僚っていう意識もあんまりないと思います。だけど。だけど!」

 

そんな事を言いながらリスカムはバグパイプの方を見る

 

「────貴女を慕ってくれてる部下がいるじゃないですか!!」

 

弾かれたようにホルンは顔を上げる、そこには少し寂しそうな顔をしているバグパイプがいた。話してほしかったけれど、踏み込むこともできなくて。此処までのことをしてあげられなかった自分が情けないっていうふうに

 

「私達のことは、最悪。受け入れなくても、構いません。ですが、バグパイプさんだけは、しっかり受け入れてください……!!」

 

そう言い残してリスカムは気絶してしまう。そもそも病み上がりから本格的なリハビリもまだの段階でのこれは流石に堪えるのだろう。介抱しようとするとバグパイプがそっと視線を向ける。ここはバグパイプに任せるか

 

バグパイプはリスカムを背負いながらホルンに視線を向ける

 

「──ホルン隊長」

 

ビクッと肩を震わせるホルンに構わずバグパイプは少しだけ視線を泳がせた後。短く言葉を伝える。今の彼女に自分が何を言っても重しにしかならないことを理解しているからだ

 

「……待ってるから」

 

 

 




ホルン隊長ってさ、なんかこうデレると依存まで突っ走りそうなところない?考える時間を与えないでほしいっていうのもあってさ。こう、ブレーキ一回壊れると受け止めてもそのまま吉田沙保里みたいな強烈タックルくらって踏ん張り効かなくなって、止めようとするんだけどまあいいか…みたいな感じでこっちも壊れると思うんだけど貴様は?(高速詠唱A++)


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プロファイル1

現段階での偽サリア状態で入隊したときのプロファイルの一部(全公開した場合こっちは消します)


コードネーム:剛柔サリア

 

レアリティ:☆6

 

陣営:ライン生命

 

職業:重装 【職分】哨戒衛士

 

募集タグ:近距離/強制移動/爆発力/支援

 

戦闘経験 :5年

 

誕生日:4月23日

 

種族 ヴイーヴル

身長 174cm

鉱石病感染状況

メディカルチェックの結果、非感染者に認定。

 

入手方法

 

恒常ガチャ

 

能力測定

【物理強度】普通

 

【戦場機動】普通

 

【生理的耐性】優秀

 

【戦術立案】優秀

 

【戦闘技術】普通

 

【アーツ適性】──

 

個人履歴

ライン生命警備課の元主任。生命科学、微生物学、アーツの分野において多数の実績を残しており、殲滅戦や要人警護、そして緊急任務対応などで実力を発揮する。

現在ロドスとは科学研究など多くの分野で協力関係にあり、今後さらに深く提携を結ぶことも協議中。

──という状態ではあったが、作戦により負傷。別のアプローチでのロドスへの貢献に移行する様子

 

健康診断

造影検査の結果、臓器の輪郭は明瞭で異常陰影も認められない。循環器系源石顆粒検査においても、同じく鉱石病の兆候は認められない。以上の結果から、現時点では鉱石病未感染と判定。

 

【源石融合率】0%

鉱石病の症状は見られない。

 

【血液中源石密度】0.11u/L

彼女は仕事中頻繁に源石と接触するにも関わらず、関連項目の数値はどれも低く保たれていることから、恐らく特殊な方法で感染から身を守っていると推測される

 

以下セリフ

 

助手に任命:お前のスケジュールは把握している、休憩は欠かさず取ることだ、効率が落ちる

 

会話1:ライン生命……か、設立に関わったとはいえ。もはや私のいた頃のライン生命は消えている。時間の流れか……

会話2:研究者は時にすべて実現可能だと思い上がることがある、我々の持ちうる技術なぞ。大したものではない…そう、思わなければな

会話3:以前騒がしい…と言ったはずだが、最近はそれでも構わないと思っている。一人で抱え込んで解決できるとは構わない

 

信頼度上昇後会話1:サイレンスにも、イフリータにも今は関わるべきではない。私がそう判断した、それだけのことだ

信頼度上昇後会話2:盾持ちは基本、後衛を信じることができなければ臆してしまう…彼女達の手本になれればいいが

信頼度上昇後会話3:恐怖を覚えることは恥じることではない、それを乗り越えてこそ人として真に強くなる……

 

昇進後会話1:一からのスタート…また掴み取ってみせるさ、何。歩みを止める訳にはいかない

昇進後会話2:私のやるべきことは変わらない、歪みを正し。あるべき姿に返す…それだけのことだ

 

放置:今は休め、明日も戦いの日々だ

 

到着(キャラ入手時):今更挨拶は必要ないだろう、今一度自分に何ができるか。何をするべきか考え。やり直してみることにする…ふ、またよろしく頼む

 

作戦記録を見る:効率を重視しろ、時間は短いぞ

昇進1:再度の昇進か、私の我儘を聴いてもらい感謝する。前とは違うが……やるだけさ

昇進2:戦い、守ること……その大変さを改めて実感させられる。ドクター、お前も戦場が常にあることを非常識と捉えるべきだ

 

(戦闘セリフ)

部隊に合流:指揮についての意見は纏めてある、読んでおけ

隊長に任命:ブリーフィングを始めよう、時間はかけないさ

作戦準備:規律は守れ、だが柔軟さを忘れるな

作戦開始:元凶を叩く、そうすれば…ある程度静かになる

選抜1:いいだろう、前線を上げる

選抜2:被害を抑える

配置1:前に進むぞ、足を止めるな

配置2:障害が……

作戦中1:歩みは止めない

作戦中2:すぐに終わらせる

作戦中3:射線を開けろ、私が行く

作戦中4:諦めるな、合図を待て

 

★4で戦闘終了:根底にある思想は古臭いが…今ある思想が正しいとは限らない

★3で戦闘終了:規律とは自らを律する為にある。堕落することは許されない

★2以下戦闘終了:警戒態勢を維持しろ、一部のオペレーターは私と哨戒に当たれ

作戦失敗:どこで選択を間違えた…?

 

基地配属:フューチャリズムもいいが、自然を感じられるデザインも悪くないぞ

タッチ:なんだ?私に用事か?

信頼タッチ:過去の資料からしか会得できない知識も多い…未来は過去の類似なのだから

 

タイトル: アークナイツ

挨拶:ドクター、効率を求めるなら休息を取ることだ

 




湿度あるオペレーター、アーミヤに割りと票が入っててちょっとびっくり。リスカムと同じぐらい入ってる。そして圧巻のウィーディちゃんに笑っちゃう

ホルン隊長とのイチャイチャ書き終わったら湿度あるオペレーター№1の話…ではなく、あの中で5,6番目辺りのやつの書こうかな。その後1位書くかも


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15話 え、この状態で?????

ホルン隊長の話で書いてたのになんか違った

大陸版のやつ見たんだけど、思いっきりやろうとしてるネタかぶっちゃってるんだが?????????


バグパイプがリスカムを連れて行って二人きりになるサリアとホルン。ホルンはフラフラとした様子で装備を外し、隣りに座ってくる。

 

「……あの子は、強いわね」

 

そんな弱気なことをホルンは口にする、本来の彼女がこんな感じなのだろうか?バグパイプもそうだけど。この世界の軍人ってだいぶやさぐれてる…いや、軍人はみんなそうなんだろう。終わんない戦場にずーっといたらやばいことになるに決まってる

 

「……他人を見ればそう思うさ」

 

「…そうかしら?」

 

「……あぁ」

 

そんな事を言いつつ、先程バグパイプが持ってきていた甘めの紅茶に口をつける。ホルンもそのまま口につける。ほぅっとため息をつく。

 

「……貴女は、恐怖を覚えることある?」

 

「ある」

 

「──即答なのね」

 

「まあな」

 

そりゃあビビるよね。だって戦うのは怖いし。俺の場合は借り物だからっていうのもあるんだけどね、それはそれとして怖いものは怖いんだわ

 

「私も戦うことにはある程度の恐怖心を覚えている……」

 

ドンパチするのが怖くないやつなんて戦闘狂いとかそういうのだけだろうさ。軍人だってそうだろう、何もしないで過ごせるならそれに越したことはないんだろう。死ぬかもしれないのは誰だって怖いさ

 

「そう……」

 

ボーッとした顔でホルンが相槌を打つ。だいぶ参っているようだな……こういうときはこれしかないか

 

「……とりあえず着替えるか」

 

「…そうね」

 

そう言いつつ着替えに行く……のはホルンだけなんだが、とりあえず待ちながらどうするべきか考えるか……と思ったが、とりあえず腹が減った。飯でも食いに行くか……

 

「……お待たせ」

 

と、ホルンが戻ってきた。飯食いに行こうと思ったけど。人気のあるところはあんまり行きたくないだろし…部屋に行くかね。まあ問題ないだろう、そう思い部屋に連れていく

 

「……お邪魔します?」

 

「とりあえずそこに座っていてくれ」

 

そういつつ座らせて備え付けのキッチンへ行く。実は食堂とかその他諸々に行けない可能性を考慮してアーミヤに頼んで備蓄をしていたのである、俺は偉い。やはり何事にも備えてこそサリアさんな気もするしな、そんなことを思いながら何を作ろうかと考える。んー、どうせならヴィクトリアの料理が良いかな

 

シェパーズ・パイにするかな……なんだよ、俺が料理できないと思ったそこのお前!!割と自炊したり。色んな国の料理ネットで調べて作ったりしてるんだぞ!!

 

シェパーズ・パイとはラムのひき肉がメインで玉ねぎや人参のみじん切りを炒めて混ぜ、ストックとかで煮込んだのを、上からマッシュ・ポテトでふたしたやつのこと。俺はこの上にチーズのせて焼いたやつが好き。

 

まあ、ラム肉とかそういうのここにはなさそうというか、そういうのがよくわからんのでビーフで代用する。それはあったんだよね。似てるのもあればないのもあるのかもしれない

 

 

まずはフライパンに油をひいて温めておく、その間に玉ねぎ、人参、にんにくをみじん切りにしておくかな。あったまったら炒める。そこにビーフをひき肉にしたのを加えてさらに炒める。ある程度水分は飛ばしておく、その後にタイム…ハーブのことな。それ入れて塩・胡椒で味付けする。ある程度味が決まって火が通ったら小麦粉を振りかけて混ぜ、ストックを加えて煮込む。ストックっていうのは俺らで言うところのだし汁みたいなもん…わかりやすさ重視ならラーメンのスープって思ってくれればいいよ

 

それができるまでにマッシュポテト作っておこうかな。まずじゃがいも茹でます、ゆでたジャガイモにバター、牛乳を混ぜ、マッシュ・ポテトを作る。

 

そうしてると、匂いに釣られたのかホルンが後ろから覗き込んでくる、故郷の料理の匂いがしたからだと思う。クンクン…と鼻を鳴らして嗅いでいる。

 

「……ヴィクトリアの文化にも造形があるのかしら?」

 

「それなりには、な」

 

ヴィクトリア……イギリスといえば。まあ色々とネタが有る、ロングスカートはナニをしているところを隠すためだったりとか。傘を持っている理由は上から汚物が降ってくるのでそれを避けるためなのが始まりだったりとか……レディファーストなんてのは女性に毒味させるものの方便だったりとかな

 

「……」

 

お腹すいたのか、じーっと手元を見てくる。なんとなく味見を兼ねてスプーンでひとすくいして口元に持っていけばパクっと食らいつく。もきゅもきゅと口を動かして食べているのを見ると可愛いんだよなぁ…って思ってしまう、もうちょい食べたそうにしてたけど。そこは完成を待ってろという意味でぽふぽふと頭なでてやるとなんか満足したのか席にまた座る、犬かなにかか?…狼だったわ

 

マッシュポテトを作り終わり。煮汁に汁気がなくなったらとろみが付くまで煮込むのまでは終わった、味付けも問題なし。ウスターシャー・ソース、塩・胡椒で味を調えるてとりあえず終了。あとは耐熱皿に煮込んだのとその上からマッシュポテト被せてその上にチーズのせて。200℃に余熱したオーブンで、表面に焦げ目が付くくらい30分ぐらい焼く。

 

待ってる間暇なのでスープでも作りますかね、ヴィクトリア系の、いわゆる味噌汁みたいなもん、まずさっき作ったやつで余ったじゃがいもと玉ねぎ、あとベーコンみたいなのをざく切りにする。それにバター入れて電子レンジらしきものに入れる、こういうのもテラにあるんだな…ジャガイモ・コンソメ・水を入れてまた加熱、あらかじめ熱が通ってるものを入れたからいいけど。本当ならじっくりやるんだよね。ブレンダー……、ミキサーのことな。それでで撹拌する。あとは生クリームを入れて馴染ませてハーブソルトを入れてレンジでチンする。

 

そのときにもホルンが覗き込んできたので味見させてもうちょい待ってろと撫でるとまた満足そうな顔して席に戻った、うーんこのワンコ……そう思いつつ、両方完成したのでお皿に盛り付けてテーブルにつく

 

 

「いただきます」

 

「……いただきます」

 

そうお互いに言うとほぼ無言での食事がスタートした、料理自体は美味しいらしいのかしっぽフリフリしながら上機嫌にご飯を食べている。口にあったようで一安心みたいな所ある。特に会話することもなくお互いに食べきって満足してくれたみたい。日常部分が不足してるんじゃないかという見立ては。まあ間違っていなかったらしい

 

まあ、腹が一杯になったらどうなるかというと……

 

「……んむぅ」

 

お休みモードにはいった、なんかよくわからんが服を引っ張られてベッドに座らされて、膝を貸すような形でホルンが寝っ転がるとすぐに寝息を立てて眠っている。動こうとするとかぷかぷと指に甘噛みしてくるので動くに動けない、アーツ学の参考書手元にあってよかったわ……

 

そこからしばらく眠っているホルンをなるべく起こさないように過ごした、変に揺すると怒るのである。まあ寝ているときに起こされればキレるのはわかるのでしょうがないかな

 

「くぁ…」

 

起きたホルンは目を擦りながらウトウトとしている、こくんこくんと船を漕いでたのでとりあえず……そうだな、髪でも梳かしてやりますかね。そう思いながら櫛に手を伸ばして髪を梳かし始める。尻尾をふりふりしているので気持ちいいのだろうというのがなんとなく伝わった。

 

「……ん」

 

「ん?」

 

何かを催促するようなホルンに首を傾げる、どうやら尻尾もやれってことらしい。しょうがないので尻尾も毛づくろいしてやる。なんか猫っぽい、いや狼だけど

 

そのまま段々と意識が覚醒したのか、ホルン隊長はお顔が真っ赤になられました。まあ恥ずかしいよね、大人なんだし。あえて此方からは何も言わないのがお約束

 

「リラックスできたか?」

 

なんて聞くと、コクリ……と頷いてくれる。まあ恥ずかしいのは仕方ないけど、今のホルンに必要なのは休息なんだと思うよ

 

「また後で食べるか?」

 

そう言うとコクコクと頷く、なんだか子供の相手してるみたいでちょっとおかしいけどここで笑うと駄目なので堪えるのだよ

 

「とりあえず、今日はゆっくりするといい」

 

そう言うとゴロン、と横になる。今度は袖を引っ張られて一緒に横になる。まあいいか……特に用事もないので、とおもってると直にホルンは再度眠りについてしまった。これガチ寝だわ……ってなった

 

さて、暇になったが動けない。こんな時はどうしようかと思ってると着信が入った

 

相手は……バグパイプか、出ても問題ないか

 

「もしもし」

 

『もしもし?ホルン隊長寝てる?』

 

開口一番に寝てるかどうかの確認されるとは思わなかったけど、もしかしてこういう事あったりしたんかな?

 

「寝ているが……」

 

『そっか、ホルン隊長。あんまり休まないから…ちょっと安心したよ』

 

ため息混じりのバグパイプの声が響く、まあこの人も軍人だからしょうがないといえばしょうがないんだよな

 

『引き取りに行けばいい?』

 

「あぁ、頼む」

 

このあとすやすやホルン隊長はバグパイプに引き取られていった…にしても、ホルン隊長普通に担いでいけるバグパイプはやっぱり力あるなぁ。なんて考えてるとエンジニア組から報告があった

 

 

俺の武装が出来上がったらしい

 

 

───ロドス工房にて

 

「あぁ、ようやくきた」

 

「済まないな、遅れた」

 

工房に向かうとブレミシャインとウィーディちゃんとジェシカがいた。俺にはサリアさんのアーツが使えないので新しい方法を考えてたんだけどウィーディちゃんとかが相談に乗ってくれた。

 

「ジェシカ、リスカムの容態はどうだ?」

 

「リスカムさんですか?リスカムさんはその……」

 

なんだかジェシカの歯切れが悪い、リスカムを加えて4人で考えてくれてたから。お披露目に来てくれるという話だったんだけど。なんかあったのかね、流石に疲れたんだろうかね

 

「目覚めたあと、なんだか怒ってフランカさんと模擬戦してるらしくて…」

 

はい?どゆこと????

 

「あー……まあ、そこは気にしないであげて頂戴」

 

ウィーディちゃんも目をそらしながらそう言うのであまり追求することはしないでおく。まあ気にしても意味ないのでしょうがないかな。

 

「仕方ない、それはそれとしてどうなんだ?装備の方は」

 

「ふふ、ちゃんとバッチリ決めてるから!」

 

ブレミシャインが持ってきた装備を受け取る。俺にはあまり専門知識はない、なのでわかりやすい武器を取り付けて使うことにしたのだ。

 

先ずは盾だ。防御力を重視して分厚く全身を隠せるぐらいの大盾、まず自分が死なないことが大事なので。そしてただの盾ではない、何層かに分かれており。一定数攻撃を受け止めて装甲部分が傷つき耐久に難が出始めると1層目をクレイモアのように前面に撒き散らしながらダメージを与えて新しい層を出しつつ軽量化。これは5層まである。めちゃくちゃ重いけどサリアさんの体なので余裕で振り回せる。これだけでもいける

 

「いい盾だな、よくできてる」

 

そういうとブレミシャインが嬉しそうにしてる。ちなみにこれを考案したのはリスカムだ、サリアさんのフィジカルだからできるんじゃないかなということでやってみたらうまく行った感じだ

 

「私の方も完璧に仕上げてきたわ!」

 

自慢気に出してくるウィーディちゃんに内心微笑ましいな、と思いつつ『銃』を受け取る

 

『銃』というのにも色々と種類がある。これは簡略しつつ、あまり殺傷能力がないものにしてある。正確には弾の打ち分けができるようになってるんよね。閃光弾、吹き飛ばす用の圧縮空気弾、いわゆるガス銃っていうやつだ。それなりにでかいけどサリアさんのフィジカルだから以下略

 

「ありがとうウィーディ。いい仕事だ」

 

そういうとウィーディちゃんめっちゃ嬉しそうにしてる、ついでもブレミシャインも嬉しそうにしてる。技術屋はこういうのしてもらえると嬉しいんだろうな。リスペクトだいじ、徹夜してたみたいなのでそそくさとものを片付けて寝に行ったようだ、あとでなんか物持ってくか〜

 

「よ、良かったですねサリアさん」

 

「あぁ、いい出来だ」

 

ジェシカも嬉しそうにしている、可愛い。ジェシカちゃんかわいいよね、後輩ちゃんみたいな感じがすごい。…あぁ、そうだ。ついでたから付き合ってもらうことにしようかな

 

「…そうだ、訓練。一緒にするか?」

 

「!」

 

なんか目に見えて上機嫌になった。先輩に構ってもらってるジェシカは微笑ましいのよな、毛づくろいしてあげたい

 

「喜んで!」

 

そういうわけで訓練所にGOGO

 

──訓練所F2区画、射撃訓練場

 

「さて、やるか…と。その前にジェシカ。手本を見せてくれないか?」

 

「わ、私の?」

 

「不思議なことではないさ、私の方は射撃の経験も浅い。プロ相手に教えを請うのは当然のこと。それだけだ」

 

そりゃジェシカの方が狙撃とか銃の扱いが上手いのは当然だわな、狙撃オペレーターだし。BSWから出向してるから腕も確かであることは明確に評価されるべきなことなのでね。そもそも俺、銃使ったことねえし

 

「わ、分かりました……それでは、が、頑張りますっ」

 

耳に防音用のイヤーマフをつけたジェシカが銃を構えて数発撃ち込む、しっかり命中してちゃんと腕とか胴体に当たっている。ヘッドショットは制圧に関してはあまり意識することもない。

 

「流石にプロだな、素晴らしい」

 

そういうと急に当たらなくなった。どうしたジェシカ、指でもつったんかな。危ないから気をつけてほしいところである。

 

「す、すみません…ちょっと手元が狂いました…」

 

「まあ、そういうこともあるか」

 

そう言いつつ戻ってきたジェシカを出迎える、心なしか顔が赤い。何があったのかわからないので首を傾げる

 

「次は私だな……」

 

と言いつつあることに気づく。ノリで言ったけど自分の銃とかそういうの何も持ってねえわ、何という凡ミス。アホの極みですわよ

 

「あ、あのサリアさん」

 

「?」

 

ジェシカの方を見ると、恐る恐るというようにジェシカが銃とイヤーマフを差し出してきた

 

「こ、これどうぞ」

 

「ん、いいのか?お前のだろう?」

 

そういうとコクコク頷いてくれる、どうやらそのままくれる様子だ。いい子だなお前、わしゃわしゃと手癖で撫でてしまうと大人しく頭向けて撫でられてるし。なんなら自分から頭こすりつけてくる、猫は可愛いなほんとに

 

───数分後───

 

「ふきゅ………」

 

よっぽど気持ちよかったのかご満悦そうに尻尾フリフリして上機嫌。なんか距離も近くなってる、まあいいか

 

「そろそろ訓練するか」

 

そう言いつつ貰った銃を構えてイヤーマフを付ける。セーフティも解除してる。あとは撃つだけ──

 

「サリアさん、もう少し脚を前に」

 

というわけでもないらしい、ジェシカから指導が入った。先輩の教えを聞くのは大事なのでちゃんと聞いておく。色々と指導を貰ってもわからんことも多い。なので

 

「ジェシカ、後ろから姿勢を支えてもらえないか?理解度があまり深くできていなくてな」

 

「わ、分かりました」

 

恐る恐るというように後ろから姿勢を正してもらう、体が密着して色々と危ない気がするけど。変な気分にはならないならない。色々とまずいのでダメです

 

「もう大丈夫ですよ、撃って構いません」

 

言われるがまま引き金を引く。思いの外反動があるのでちょっと後ろに下がってしまう、ハンドガンなのに随分反動あるんだな。ちょっと舐めてたわ

 

「さ、サリアさんあの」

 

「…ん?なんだ?」

 

首を後ろに向けるとジェシカが目を丸くしていた

 

「ええと、アーツ。復活したんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………は??????

 

 

 

 

 

アーツ??まじで???この状態で????




ジェシカからの贈り物

・新人から使っていた手癖の染み付いてる銃、新品とは違いジェシカの手癖が染み付いてるので自然とジェシカと同じような射撃の動きになる。なので誰に貰ってるか見る人が見ればすぐに分かる、なお偽サリアは何も考えずにもらっている

・自分用に調整してるイヤーマフ、偽サリア用にちょいちょいと調整してくれている。BSWの支給品ではなく自分で買ったのでもちろん支給品よりも高価なので。見る人が見ればすぐに分かる、なお偽サリアは何も考えずに以下略

・これだけではなく、ホルスターやプロテクター一式も貰っている。必要になるだろうしよくわからないということので偽サリアは有り難く貰っている







ちなみにジェシカのホルスター、プロテクター一式も当然支給品でもなく一般で売られている安物ではなく過酷な戦場についていけるように高価なものである、プロテクター一式だけで龍門弊にして7桁に相当する。当然プロが選んでるので高性能高品質、粗悪なものとは全然ではない





なお偽サリアは何も考え(ry)






大陸版の新オペレーターはこっちも出します(推し)




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