クソ雑魚貧弱オリ主 (ルクシア)
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番外編
【番外編】ニーゴについて語るスレ【196時、スレッド板で】


196時というのは196スレ目ということです。
ちなみにアンチやらなんやらは作者権限によって即刻BANになるやさしいせかいになっております^^

13話を読んでから読むことをオススメします


1:名無しのニーゴファン 2021/7/30 1:00:00 ID:i/IpZoQuq

ここは25時、ナイトコードで。のファンが書き込むスレです。

次スレは1000を踏んだ人が作る。

簡略テンプレ、完ッ!

 

2:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:iJwag6kF6

>>1 ざっついけど乙

 

3:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:lfhkDDiZy

>>1 乙

 

4:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:d5jo/gZgp

まあ既に196スレもしてればこうなるわな

 

5:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:KO34Y4tGZ

まあそんなことはどうでもいい。お前ら聞いたか新曲

 

6:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:C9tmld2Xl

>>5 当たり前なんだよなぁ…

 

7:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:RBF+8x0hr

新メンバーが男だったのは驚いたけどあれだけ歌うまかったらなんも言えんわ

 

8:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:LvtSYIIZX

>>7 それな

 

9:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:WfdPX4CrW

>>7 病人らしいけどな

 

10:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:46BdqGSVo

>>9 病人だろうがなんだろうが歌がうまけりゃいいんだよォ!

 

11:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:/v6Ky7InB

実際めっちゃ歌うまいよね

 

12:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:meuzv+EoV

なんか儚げな歌声って感じ

 

13:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:t1aOZAFz0

>>12 分かる

 

14:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:P1p4dnIYg

ちなみにニーゴメンバーとは前々からめちゃくちゃ仲良いらしいぞ

 

15:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:alUu94JUd

うらやけしからん

 

16:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:li7sMWscY

変わって欲しい

 

17:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:ABmC9CSb/

>>16 歌声を鍛えてから出直せ

 

18:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:S9bXHrQEj

>>17 辛辣www

 

19:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:nIAoIHS6y

>>17 実際それはそう

 

20:名無しのニーゴファン Invalid Date ID: li7sMWscY

>>17 (´・ω・`)そんなー

 

21:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:bsCHwO4Et

Amia情報によるとイケメン好青年らしいなSick。歌上手くてイケメンとか無敵か??

 

22:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:x6tUKxIbR

ただその代償で死ぬほど体が弱い

 

23:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:bq/fuUNIY

>>22 ヴッ…

 

24:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:fwPGirKUE

雪様が言うには何度も死にかけてるらしいからな…

 

25:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:Cw3eZYcBR

イキテ…イキテ…

 

26:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:DWRnzb7Hb

でも美少女たちと知り合ってるぞ?

 

27:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:9c0OryQWo

>>26 だとしても体の弱さでプラマイゼロでしょ。

 

28:名無しのニーゴファン Invalid Date ID: zgI65Dusq

雪様に看病されてるとしても?

 

29:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:bxacXULgu

>>28 焼き討ちの準備を

 

30:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:f4S83aMtR

>>28 我々はリア充を許さぬもの

 

31:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:k1T1fUSmK

>>28 これは許されない

 

32:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:t/nOWxpaE

お前らの手のひら返しで風邪ひくわwww

 

33:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:zgI65Dusq

しかもえななんやAmiaもよくSickの病室に行ってるらしいぞ?

 

34:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:Ey9Q91Jnz

>>33 なんでそんなに知ってるんだ…

 

35:名無しのニーゴファン Invalid Date ID: zgI65Dusq

>>34 自分らで言うてたで。速攻で消してたけど通知オン勢のワイからすればもう遅い。特に悪いことは書いてなかってんけど。まあプライベート的なことだから消したんやろ、多分。知らんけど。

 

36:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:J8QDe6/iT

>>36 ほーん。天才か?

 

37:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:s+Si880KA

ちょくちょく現れるガチ勢だったか

 

38:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:xMtGqzfc8

ガチ勢の中でも恐ろしい情報量を持つ博識ニキだったのか…

 

39:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:gzdYFJ2Wf

博識ニキ!?博識ニキじゃないか!

 

40:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:g7bASQzbN

これが伝説の…

 

41:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:yuDSQ3+2Y

>>39 >>40 知り合いか?

 

42:ニーゴの博識ニキ Invalid Date ID: zgI65Dusq

誰だこいつら

 

43:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:olHfYEc6H

>>42 名前変わってて草

 

44:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:KTBn9ORNq

本当に博識ニキになってしまった…

 

45:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:luhdQ6HVD

…え?これマ?

https://ni-gonamahaisin.com

【新メンバーSickがゲストのニゴラジ生放送版をやるよ~!by Amia】

 

46:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:LbeZda4+z

>>45 ファッ!?

 

47:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:R5swi3tC/

>>45 Really?

 

48:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:ofvD7ti8E

>>45 神はいたのか…

 

49:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:ok5JT1cMX

>>45 多分Amiaが無理やり企画したんだろうなあ…

 

50:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:TcS7vb45w

>>45 そんでもって拒否ったえななんを口車で乗せたんやろなぁ…

 

51:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:MLL+nPkIe

>>45 雪様は割とノリノリなんやろなぁ…

 

52:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:uE+j9/jUx

>>45 Kはぐったりしてるんやろなぁ…

 

53:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:0v4sKhm3l

この連帯感よ

 

54:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:Oe8WqsIQv

実際ここに来る人ほとんど100スレ分くらい経験してるから連帯感くらいは生まれる

 

55:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:NDoeKafKZ

実質兄弟

 

56:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:ld1CNCriB

>>55 勝手に兄弟にすんな潰すぞ

 

57:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:hEoT4or35

>>55 は?

 

58:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:rBR+j30rK

>>55 100年ROMれ

 

59:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:4JxO4mjlM

言いたい放題すぎるwww

 

60:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:3o+b27m2y

そんな言わんでも…でもやっぱスレ民と兄弟は嫌よ

 

61:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:PoP4ut1Zj

吐き気がするぜ

 

62:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:zoSVekctM

そういや、ニゴラジ生放送って何時よ

 

63:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:4XwPaJSgw

>>62 明日の25時やで

 

64:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:YryCr0GZW

つまり明後日の1時か

 

65:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:mac02np5B

Sickが混ざるとどんな感じになるんだろ

 

66:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:ytPNNBiVA

というかどんな感じの奴かも分かってないからな

 

67:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:GjCZL3G8o

これでめちゃくちゃヤベー奴だったら笑う

 

68:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:YxGMyKiml

>>67 ヤベー奴をKがニーゴに入れるか?

 

69:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:f3b5b1s9m

まあそらそうよな

 

70:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:PfIKZzL1a

Amia曰く聖人、えななん曰く天才らしいけど…雪様とどっちが天才なんだろ

 

71:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:g22pI/TO+

間違いなく雪様やろ

 

72:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:2Ro797Fpe

分からんぞ?案外Sickの方が天才かもしれん

 

73:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:j9gRdClQG

まあそれはニゴラジで分かるやろ

 

74:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:1U8EvTOTy

話変わるけどさ。ジェヘナの歌詞を病人が歌ってると考えるとくっそ重くね?

 

75:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:T4XyXexmo

>>74 それはマジでそう

 

76:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:GcIAKjiij

生きていたいとか言うしな

 

77:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:ELEjNGumg

死にかけてる人が言うと重みが違う

 

78:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:YC9N9AIJV

心の底に来る重さ

 

79:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:MpJU8PD76

でも歌い方は明るめだからそこのギャップもいい

 

80:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:39ZhNGQQ7

ニーゴの曲は基本暗めな曲だったけど今回のは明るめか~とか思ってた自分を殴り飛ばしたい

 

81:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:eflJ65q0o

>>80 明るめに見せかけた暗黒だからしゃーない

 

82:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:bUn7djniV

良く良くかんがえるとニーゴってバケモノ集団だよなぁ…

 

83:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:msCqQPvnV

Sickも含め全員高校生なのにこの完成度の曲作るってヤベーよな

 

84:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:K8+R0czvL

天才ってやつか…

 

85:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:76AxRm6zP

才能が無いとか言ってるえななんに関しても努力だけでついて行ってんのもすげーよな

 

86:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:PlzxpvId4

えななんには努力の才能があるから…ワイらは努力の才能すらないから

 

87:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:/56EAQhEA

>>86 やめろ

 

88:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:yNRBEs1wj

>>86 ぜってぇ許さねぇからなお前

 

89:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:TCKWq7VUu

>>86 怒ったかんな?許さないかんな?顔と名前と住所控えたかーんな

 

90:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:11wD/Hml2

>>89 可愛さの欠けらも無い脅し文句で草

 

91:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:Wp6V19MG2

可愛さどころか心の底から脅してるやろアレ

 

92:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:3/QzgnqRe

というかシンプルに才能がある人材たちを見つけてきたKがすごいのでは?

 

93:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:NHQnUyVMz

>>92 それな

 

94:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:f3HgS+xf2

>>92 まとめるとそうなる

 

95:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:DQTuBx/kF

>>92 でもKがスカウトする程の才能を持つみんなもすごいのでは?

 

96:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:MEazSN26m

>>96 それもそう

 

97:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:jueExZ5ZN

つまり全員すごいってことだな!

 

98:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:ezJyDwwGG

そういうことでヨシ!(現場猫)

 

99:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:2N6b6YLCD

ヨシ!

 

100:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:X8WhGrWtD

というか、Sickって他にも歌うんかな?

 

101:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:Gs8yj0KwM

そりゃそうやろ

 

102:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:nEvHMtvha

でも体調が悪化すると歌えなくなる可能性も…

 

103:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:vaIbIfdlW

>>102 あっ…

 

104:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:msR3Al6R+

>>102 嫌な想像をさせるなよ!!こえーわ!!

 

105:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:z3VZIEhhO

>>102 まあ人間何があるかわからんし…Sickに関しては"何があるか"の部分が身近だからな

 

106:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:tV5pa6AIw

>>102 そう言われるとジェヘナが国宝級のお宝に見えてきた

 

107:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:AnhL9rVsW

>>106 草

 

108:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:hTJMB3Fzm

>>106 なんかそう言われるとそんな気がしてくるの草

 

109:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:dWLT6WAFx

【朗報】ジェヘナは国宝だった

 

110:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:mVCGLmQu/

えぇ…

 

111:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:MOv6lZ1vD

ワロタ

 

112:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:/x/zZbL2H

そうはならんやろ

 

113:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:0oosPWwK0

>>112 なっとるやろがい!

 

114:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:/VjXM4QWT

でもSickって最近は体調良いんでしょ?

 

115:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:lHJedp167

まあそんなニュアンスの話をしてはいたな。ただ、体が弱い人の体調崩すタイミングなんか分からんからな

 

116:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:tl5uVZn4g

それは健康な人でもそうよ

 

117:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:VRNdhEBiR

頼むからこれからも歌ってくれぇ…

 

118:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:Sc1+zkS9S

というかSickが倒れるとただでさえ色々背負ってそうなニーゴの面々が悲しむからヤメテクレー

 

119:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:FRpfBnEuX

>>118 ファンもニーゴも悲しませることになるダブルパンチ

 

120:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:iCv+Tfn6o

健康でいて欲しいでござるなぁ…

 

121:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:mAOQKCwrv

そうでござるなぁ…

 

122:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:0PvNU3KLm

Sickは良く無理をするって雪様がツイートしてるwww

 

123:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:g/2XHeMMO

おい、体弱いやつ筆頭格みたいなやつが無茶してどうする

 

124:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:uX9EMe/aT

倒れそうな状況で一時間精神力だけで耐えきったぁ!?

 

125:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:sJRo8Tz7G

>>124 バケモンかな?

 

126:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:FhIa7Appd

これは精神オリハルコン

 

127:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:Kv47RnBjI

いや、右腕の骨が折れたまま普通に歩き回るのヤベーよ…

 

128:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:lmYBPIJ5B

もしかしてSickって大概やべぇ?

 

129:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:BFf5TWACR

ヤバいって言うか…自分が傷ついたり体調を崩すことに慣れてる?

 

130:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:r8nns1i1I

>>129 それヤバいやつじゃ…

 

131:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:HA2BPKJAk

いつかそれで耐えきれなくなる時が来るとなると怖いな

 

132:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:PA0Gtchis

骨が折れるなんか死ぬほど痛いはずだしな

 

133:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:QFIbzH2RM

だから聖人か…それだけの精神力があるなら何言われても怒ることなんて無いだろうし…

 

134:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:2pvy8DQgX

傍から見れば聖人でもSickのことをよく知ってるやつが見れば痛々しいだけだぞそれ

 

135:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:748zZvwVj

というか数ヶ月前にも死にかけたって…ええ…(困惑)

 

136:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:AkP/m+OLQ

インフルエンザか…確かに風邪と比べれば毒性も高いしここまで極端に体が弱いと瀕死になってもおかしくない

 

137:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:4PZMbGe9o

血を吐くほど叫んで、体がボロボロになった…って、良く生きてるな

 

138:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:sLNmninTz

良い医者がついてるんだろうな

 

139:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:nXSiLh/kI

それと運もあるだろうし…

 

140:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:DujqGvVDy

あとは雪様の看病

 

141:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:Tda9NMYiQ

>>140 これに尽きる

 

142:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:UrmhF2V8k

>>140 これだけで1000年は生きれる

 

143:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:CbeG6UOTi

>>140 それだわ

 

144:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:TGQXf4mC+

医者<雪様の看病なのか…そらそうだわ(確信)

 

145:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:hvJj+Rwic

雪様の看病に勝る薬も医者もいねぇ!

 

146:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:7oChSvJCk

おまけと言うにはあまりにも大きいおまけでえななんとAmiaも付いてくるぞ

 

147:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:7oOhaHdRC

>>146 Kは?

 

148:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:DtqDNe7QE

>>147 Kが看病なんて出来るわけないだろいい加減にしろ!

 

149:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:z7s4Kq46Q

>>148 推しに対する言葉じゃねぇwww

 

150:名無しのニーゴファン Invalid Date ID:hiXUwBRMU

>>148 案外出来るかも知れないだろ!いい加減にしろ!

 

 




掲示板ムッズゥ…


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Happy Birthday まふゆ&凛(前編)

ハピバ(一日遅れ)
お久しぶりです(n回目)
色々試行錯誤してギミックを組み込んでるので探してみてね(見つからなくても話の進行には問題ありません)
パッチノート
間違えて花里みのりさんの苗字を上里と表示してしまう不具合を修正しました。ゆゆゆに侵食されてました。許せサスケ。


1月27日 木曜日

今日はまふゆと凛の誕生日ということで、ニーゴのメンバーは誰もいないセカイでパーティの用意をしていた。…と、言っても用意をしているのはほとんど瑞希と絵名だけなのだが。

 

何しろ、凛とまふゆはパーティの主役であるし、そもそも学校があるからまふゆはどちらにせよ無理、凛と奏はパーティの用意をしている間に入院することになりそうなので無理。という訳で瑞希と絵名が用意をしていた。

 

「ねぇ絵名、後何がいるっけ?」

 

「えっと…後はケーキと飲み物くらいじゃない?」

 

「机は?」

 

「それはこの突如出現したコタツ使いましょ。狭いけど無理くり入れば良いでしょ」

 

絵名が視線を向けた先には、年末年始に突如出現したコタツ。ミク曰く、これもまふゆの想いだとか。

 

「そういえば絵名、二人の誕生日プレゼントって買った?」

 

「え?そりゃ買ったわよ」

 

「だ、だよね…」

 

「…あんたまさか」

 

顔を引き攣らせて目をそらす瑞希に対してジトっとした目を向ける絵名。そんな視線に耐えきれずに慌てて弁明する瑞希。

 

「ち、違うんだよ?忘れてたとかじゃなくて…凛くんって、何が欲しいのかなって…」

 

「ああ…」

 

まふゆの誕生日プレゼントは直ぐに決まったのだと瑞希は言う。ただ、凛の欲しいものが分からないと言う。そして、その言葉に何となく共感した絵名。凛は、あれをしたいこうしたいとは言うが、何か物を欲することは少ない。物欲が無いと言うより、何かを貰っても持て余すからだろう。

 

幾ら体調がマシになってきたとはいえ、それでもあまりに弱い。今でも、怪我をすれば普通なら数日で治る怪我も何ヶ月もかかるし、病気にかかれば何時死んでもおかしくない。というか、病室はそんなに広くないので物を置くスペースもあんまりない。

 

「…で?まふゆには何を買ったのよ」

 

「えっとね──」

 

瑞希の伝えた誕生日プレゼントを聞いて、絵名は一瞬考えるように目を伏せて…ふっと口元を緩めた。

 

「瑞希、なら──」

 

絵名の言葉に瑞希は笑顔で頷いた。

 

場面は変わって、凛の病室。誕生日だろうがなんだろうが、凛のやることは変わらない。病室で安静にすることだ。

 

「ふっ……HI☆MA」

 

ぼんやりと外を眺めながら呟く凛。実の所を言うとコイツ、自分の誕生日を忘れている。祝われることはあっても、それはまふゆや悠斗と言った少ない人達からなので、思い出が無いとは言わないが非常に記憶に薄い。

 

そのままぼおっとしていると、誰かからのメッセージが携帯に送られてきた。携帯を開くとそこには桐谷遥の文字。

 

「遥から?珍しいな」

 

メッセージには、今から病室に行っても良いか?というメッセージだった。それに、人数は四人。

 

「四人?…ああ、なんか前言ってた新しいグループの人か?」

 

凛はOKと返すと、直ぐに既読がついて---ドアがノックされた。凛は驚いてドアの方を見て、諦めたように溜息をつきながらどうぞと言う。

 

「お誕生日おめでとう、凛」

 

「ありがとう遥。出口はそこだぞ」

 

「酷いね、せっかく祝いに来たのに」

 

「いや、今祝ったじゃん」

 

打てば響くような掛け合いに遥の背後にいた三人-一人は前に来てくれた愛莉だった-が困惑したように顔を合わせていた。

 

「おい遥、客人がいるんだろ?」

 

「あっ、そうだった。みんな、入ってきて」

 

忘れんなよお前、という凛の目線をガン無視する遥の後ろから入ってくる3人。

 

「どうも、浅野凛です。遥がいつもお世話になってます」

 

「お、お世話になってるだなんてそんな!むしろお世話になってばかりで!」

 

「あらぁ、二人はとっても仲良しなのねぇ」

 

茶髪の少女が慌てたように返し、銀髪の少女が天然なのか少しズレた返答をする。そんな二人を見て、呆れたような目を向ける愛梨。

 

「ちょっと二人とも、自己紹介忘れてるわよ!」

 

「へ?あ!ごめんなさい!私は花里みのりです!」

 

「私は日野森雫です。よろしくねぇ」

 

二人の自己紹介に合わせて頭を下げる凛だったが、雫の方を見て首を捻って何かを考えていた。

 

「どうしたの?」

 

「んにゃ、日野森って苗字に覚えが…ああ、そうか。あの、違ったらあれなんですけど、日野森さんって志歩って名前の妹さんいらっしゃいませんか?」

 

「しぃちゃんの事知ってるのね!」

 

「ええ、志歩…と言うより、咲希ちゃん…天馬咲希ちゃんと知り合いで」

 

「そうだったのね。なら、司くんとも?」

 

「ええ、もちろん。いつも良くしてもらってます」

 

雫と楽しげに話す凛の様子にどこかほっとしたように息をついた遥。それを見てこいつも大概不器用だな…と思う愛莉。なお、みのりはそんな遥の様子や雫の楽しそうな表情にオタクの顔が出ていた。楽しそうだなお前。

 

「…共通の知り合いがいると話が長くなるな…ああ、椅子持ってきますね」

 

「ちょっと、私が持ってくるからベッドに居て。凛に任せると腕が折れそうだし」

 

「そんなんじゃ折れ…な……くもないかも」

 

「ダメじゃない…」

 

遥と愛莉が椅子を用意してくれたため、四人は凛のベッドの周りに座って雑談をする。

 

「というか、遥と桃井さんが来てくれるのは分かるけど、何でお二人が?」

 

「えーっと、前に遥ちゃんが幼なじみが居るって教えてくれて、会ってみたいな~って」

 

「えぇ、そうなの!いつも遥ちゃんに話を聞いてたのよ」

 

「話を?どんな話を聞いたんですか?」

 

「クソ雑魚貧弱おバカって教えてるんだ」

 

「シンプルわるくち!?」

 

アイドルの口から出たとは思えないような悪口に思わず凛が起き上がって咳き込む。涙目になりながらジト目を遥に向けるが、目を向けられている遥は素知らぬ顔をしていた。

 

「え、えっと…聞いてた話と違うような…」

 

「みのり?」

 

「イエ!ナンデモナイデス!」

 

「えぇ…」

 

余計なことを言おうとしたみのりににこやかな笑顔を向けた遥。その笑顔を見たみのりは高速で言葉を撤回する。そんな様子を見て困惑する凛。

 

「まあいいや。で?今日はなんの用?顔見せだけじゃ無いんだろ?」

 

「まあね。誕生日プレゼントだよ、感謝してね」

 

「どうも。その言葉が無かったらもっと素直に感謝する気になるんだけど」

 

カバンから取り出したプレゼントを凛に渡した遥は手を向けて開けろよと指示する。なんやこいつ、と思いながらも凛はプレゼントを開ける。

 

袋の中に入っていたのは二つの包み。上に置いてある方を開くと、綺麗な写真立てが入っていた。だが---

 

「…写真が無い?」

 

「そうだよ?ほら、こっち向いて?」

 

「は?って、おい!?」

 

「ほら、ピースピース」

 

写真立てを見て困惑していた凛を引っ張って笑う遥の手はピースをしており、困惑しつつ凛もピースをする。周りを見てみると、みのりや雫、愛莉もピースをしており、その視線はドアに向けられていた。そして、開かれたドアの向こう側にいたのは悠斗。

 

「はい、チーズ」

 

悠斗の手元にはカメラが収まっており、困惑した凛の様子を笑いながらシャッターを切り、パシャリと写真が撮られる。機械が駆動する音と共にカメラの上部から写真が出てくる。その写真を遥は受け取って写真立ての中に入れて凛に渡す。

 

「…なるほどね」

 

「アイドル四人との記念写真だよ。大切にしてね」

 

「もうちょいやり方あったろ…てか悠斗もサラッと協力してんじゃねぇ!」

 

「ははは!サラバだ!」

 

悠斗がさっさと立ち去ったのを見て苛立ちが募るが、それを振り払うように頭を振って気持ちをリセットする凛。

 

「あいつ!…もういいや。で?こっちのは?」

 

「それは朝比奈さんの分。ちゃんと渡してね?」

 

「はいはい、どうもありがとうございます」

 

まふゆ用のプレゼントを机の上に置いて写真立てを見る凛。そして、一瞬笑って写真立てを手に取って遥に渡す。

 

「どうしたの?」

 

「ついでだしサインくれよ、アイドルさん」

 

「…ふふっ、良いよ。ペンは?」

 

「あるよ。ほら」

 

ペンを渡すと、遥、愛莉、雫がサインをする。そして、みのりの手元に渡ってくるが、焦ったように目を揺らす。

 

「花里さん?」

 

「え、えっと…あの…私が書いても良いんですか?」

 

「もちろん。…どうしてそんなことを聞くんだ?」

 

「その…私はまだアイドルとしては遥ちゃんたちと比べるとまだまだなので…」

 

サインペンを机に置いて、目を伏せながら言うみのりの姿に三人が目を軽く伏せる。凛は知らないことだが、有名なアイドル三人とユニットを組むことになったみのりには相当な数のアンチが湧いた。誰とも知らぬ相手から誹謗中傷を受けたこともある。そんなみのりの言葉を聞いた凛は軽く笑ってペンをみのりに握らせる。

 

「そんなのは気にしなくていい。俺は君に書いて欲しいんだよ。ほら、君たち四人で一つのアイドルグループなんだろう?」

 

「…はい!」

 

その言葉を聞いたみのりは、拙いながらも写真立てにサインをする。それを右手で凛が受け取ろうとするが、ベッドの上にぽとりと落ちる。

 

「凛?どうしたの?」

 

「…いや、なんでもない。ちょっと力が抜けただけ」

 

凛は左手で写真立てを手に取ると、窓際に飾る。それを見て微笑むと、チラッと右手を見てため息をつく。

なにせ、右手はノイズがかって今にも消えそうだったからだ。

ため息をついたあと、凛はなにかに気がついたように四人の方を見てにっこりと笑った。

 

「誕生日プレゼントありがとう。それと…こっち見ない方がいいかも」

 

その言葉を聞いた瞬間、遥と愛莉が状況の分かってない二人を掴んで後ろを振り向かせた瞬間。

 

「ゴフッ…」

 

凛は口から血を吐いた。…まあ、いつもの事である。長々と話しすぎただけだ。本当に?

 

「凛くん、本当に大丈夫なの?」

 

「ああ、まあいつもの事ですし」

 

「い、いつものことって…」

 

「まあ、昔から体が弱くてさ」

 

「限度があると思うんだけど」

 

心配そうに見られるが、肩をすくめる凛。そんな様子を見て、遥は静かにため息をついた。

 

「あんまり長居も良くなさそうだし帰ろっか」

 

「そうねぇ。ああ、そうだわ!連絡先の交換をしましょう?」

 

「え?ああ、良いですよ」

 

連絡先を交換して、その場はお開きになった。雫の電子機器音痴が出て凛が困惑したりはあったが。

 

そして四人が出ていった後に凛が右手を見ると、そこにはいつも通りの右手があった。

 

「…時間はあんまりないかなぁ」

 

どこか寂しそうな凛の言葉が静かな病室に浮かんで消えた。そんな言葉を外で聞いてる少女に気が付かずに。

 

「…やっぱり」

 

青い髪のアイドルは、静かにその場を立ち去った。




意欲が沸けば後編が上がります。上がるかどうか…コレガワカラナイ


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本編
1話


名前 浅野凛
性別 男性
誕生日 1月27日
身長 175cm
学校 通信制学校
学年 ─────
趣味 読書
特技 完全記憶能力。歌が上手い。
苦手なこと・もの まふゆに怒られること
好きな食べ物 まふゆのお弁当
嫌いな食べ物 病院食
容姿 白いメッシュの入った黒髪に優しげな青い目、常に微笑んでおり、10人中10人がイケメンと断言するほどに容姿が整っている。初対面は儚げな美青年と言った感じ。中身は能天気なオリハルコン製の精神持ち。トレードマークは赤いマフラー。CVはこんな感じの声かー程度で考えてくれればありがたいです!


見慣れた白い天井。周りには清潔感が保たれた白いベッドと、同色の部屋。相も変わらず風景の変わらない部屋に辟易──する時間はとっくの昔に過ぎ去り、もはや諦めが着いてきて早数年がたつ。とはいえ、仕方の無いことなのでとっくに諦めているのだが、それでも暇なものは暇なのだ。なので、少し昔話をしようと思う。

 

── あれは今から36万 いや、1万4000年前だったか?うそだ。実際問題これは生まれつきなもので。生まれつきあらゆる身体器官がカスみたいな性能をしていたらしく、立てば貧弱座ればクソ雑魚、歩く姿はまさにほぼ死人というね。オレは神に(悪い方の)二物を与えられたらしい。ふぁっきんごっど。とはいえ、実在するかも分からない神に喧嘩を売っていても仕方ないので普通に諦めて今に至るわけだ。小学生の頃は割と荒れていたような気もするが、年齢だけ見れば今のオレは高校生なわけで、それだけ時間も経てば諦めがつくってモノよ。一応通信の高校には通わせてもらっているので感謝感激雨嵐である。まあ、お金に関しては株取引でなんとでもなるので良いとして。何はともあれ暇なのである。暇すぎて近くの本でジャグリングするレベル。

 

それから無心で本ジャグリングを続けていると、ガラリと扉が開く音がする。本ジャグリングをしているオレと目が合った扉を開けたソイツは静かに扉を閉めようとする。

 

「ちょっと待てぇ!」

 

「叫ばないで。それで血を吐いたらどうするの?」

 

「誰のせいだと思ってんの??」

 

まあ実際、叫びすぎると血を吐くので微妙な気持ちではあるがオレ悪くないと思うんだ。

 

「…本でジャグリングしてる人がいたら引くと思うけど」

 

「うーん、残当」

 

オレが悪かったわ。だからそんなジト目で見ないでください穴が空いてしまいます…えっ、流石のオレでも視線で穴空いたりしないよね…?

 

「視線で穴空いたりしないよな…?」

 

「…バカなの?」

 

「やかましいわい。…はあ。いらっしゃいまふゆ。いつもわりーね」

 

「…別に。暇だったし」

 

「奇遇だな、オレも暇なんだよねー」

 

あっはっはと笑いながら言うと呆れたような目で見てくる我が幼なじみ朝比奈まふゆ。かれこれ十数年の付き合いで、割とお世話になってる少女だ。

 

「全く、もう少し笑ったらどうだ?」

 

「…いはいよ(いたいよ)

 

相も変わらず一切の感情を消し去った顔を見て、なんだか無性に腹が立ったので頬をムニムニしながら笑えよと言うと痛くないくらいの力加減で手を叩かれる。まああんまり強く叩かれると骨折れるからね、仕方ないね。

 

「──それで、何があったんだ?」

 

「…何がって?」

 

「いつもに増して機嫌悪いじゃーん?なんかあったんでしょ?」

 

笑いながら言うといつもの二割増くらいの呆れを含んだ目でこちらを見てくるまふゆ。えっ、なにかしましたっけ?

 

「…今日、お母さんに本をいくつか捨てられたの」

 

「そっか。…全く変わらないなーあの人も」

 

朝比奈まふゆという少女の両親──特に母親は良い親の振りをした毒親だ。自分のやりたいこと、やって欲しいことを自分の娘にやらせ、第二の人生を楽しむ愚か者。オレの両親の幼なじみではあったが、オレの母親と父親は怒りを通り越して呆れ、関わりをほぼ絶っている。まあ正直オレも関わりたいとは思わない。まふゆがいなかったら関わってなかったね、絶対。ただまあ、この少女は良くも悪くも放っておけない。放っておけば消えてしまいそうだから。

 

「ほら、おいで」

 

「ん…」

 

いつものように手を広げるとそこにすっぽりと収まるようにまふゆが抱きついてくる。昔からまふゆに何かあればこうしていた。なぜだか随分とオレの精神の習熟は早かったから、昔からまふゆをあやすのも慰めるのもオレの役目だった。

 

「全く、無理はするなよー?」

 

「…別に、無理してない」

 

「んなわけ」

 

馬鹿なことを言うまふゆの頭を少し強めに撫でるとまふゆは猫のように目を細めた。

 

「…ありがとう」

 

「なんか言ったかー?」

 

「別に何も」

 

「嘘つけぇ!」

 

なんか言ったのを聞き漏らしたんだけど何言ったんだこいつ。悪口だったりしないよね?




浅野凛/クソ雑魚貧弱オリ主
オリハルコン製の精神を持った肉体クソ雑魚オリ主。人を殴れば自分の骨が折れ、少し走るだけで吐血する。幼なじみや友人からはとんでもなく心配されているが、本人が脳天気なため特にシリアスになる予定は無い。他の人の視点になるとシリアスになる可能性が高い。大抵こいつのせい。朝比奈まふゆの感情を見抜けるチートを持っているが、だからなんだと言うのか。

朝比奈まふゆ/幼なじみ
皆さんご存知毒親の被害者。オリ主にいつも精神面で助けられてる節がある。原作ほど病んでいない。ただ、みんなの前ではいい子なのでそこら辺はほとんど変更なし。地味に依存気味。誰も優等生の自分しか見てくれない中で唯一しっかりと自分を見てくれる人がいたらそら依存するよねって話。ちなみに既にニーゴのストーリーは終わっている。そうでもしないと関わるタイミングなくなるからね、仕方ないね。


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二話

やあみんな、浅野凛だよ。前話では自己紹介してなかったのを詫びよう。え?前話ってなんだって?HAHAHA、気にする事はないさ。さて、今私はどこにいるでしょう?正解は~?

 

「病室なんすよねぇ…」

 

当然病室です。それも外に出ることを禁じられてる。いつもは散歩くらいなら許してもらえるんだけど、生憎今日は雨模様。湿気で地面が滑りやすくなってるから外に出れない。転けて頭なんて打ったら確殺だからね。仕方ないね。

 

「暇だなぁ…誰か来ねぇかな」

 

ぽけーっとすること数分、先程の発言がフラグだったのかオレに試練しか与えない神の好意かは知らないが、よーく聞きなれた声が病室に近ずいて聞こえてくる。

 

「入ってもいいか?」

 

「どぞー」

 

「うむ、失礼する」

 

ノックをして入ってきたのは二人の男女。オレの知りうる人の中で最もキラキラしていて、なおかつ誠実な人間である天馬司と明るく元気な可愛い子、天馬咲希ちゃんの天馬兄妹だった。

 

「こんにちは凛くん!!」

 

「こんにちは、咲希ちゃん、司。ちょうど暇してたんだよ。助かる」

 

「ハァーハッハッハ!そんなことだろうと思ってな!まあ、咲希が会いたがったというのもあるが…遊びに来てやったぞ、凛!」

 

「おー、ありがたやー」

 

ははーっと崇めるオレと機嫌良さげに笑う司。それを見てニコニコ笑っている咲希ちゃん。うーん、カオスだなぁ。まあ賑やかでいいけどね。咲希ちゃん、可愛いし。

 

「それで、体調はどうだ?」

 

「今日はまあまあかな?まあ多分外出たら死ぬけどね」

 

「雨の日は特に気をつけねばならんぞ?」

 

「ふふふ、分かってるさ。さすがにまだ死にたくないしなぁ」

 

そう、まだ死ぬ訳には行かんのだ。具体的にいえばまふゆや司、咲希ちゃんたちが結婚するくらいまでは生きていなければ…!

 

「そういえば、凛くん!」

 

「んー?」

 

「凛くんのアドバイスのおかげでみんなと仲直り出来たんだー!」

 

「へぇ、それは良かった。仲のいい子は──それも幼なじみなんてそうそう出来ないんだから大切にしないとね?」

 

「うん!」

 

咲希ちゃんには同い年の幼なじみがいる。…とはいえ、なんだか色々あって仲違い?だかすれ違いが起こっていた様だけれど仲直り出来たようで何より。と言っても、アドバイスしたことなんて咲希ちゃんのやりたいように引っ掻き回したらいいと思うよって言っただけなんだけど。

 

「そうだ、司」

 

「なんだ?」

 

「ワンダショの方はどうよ?」

 

「ああ、上手くいっている…と、言っていいだろうな!あの一件以来特に目立った問題もないしな!…いや、強いて言うなら幾つかあるのだが…」

 

「ははは、さすがになんの問題もなくショーをやるってのは難しかろうよ」

 

司はフェニックスワンダーランドという遊園地でショーをやっており、時たまうちの病室に遊びに来る鳳えむや、割と遊びに来てくれる神代類、あまり話すことは出来なかったけど少しだけ話してくれた草薙寧々の四人で構成されたユニットらしい。外に出ることがあまりできないため見れたことがないんだよなあ。

 

「ショー見に行きたいんだけどなぁ…」

 

「ふむ…えむに車を出してもらえば見にこれるか?」

 

「車椅子に乗ることになると思うけど…」

 

「無理しちゃダメだよ、凛くん!」

 

「ふふふ、さすがに無理はしないさ。ただ、咲希ちゃんも復学したし文化祭とかもやるんだろう?見に行きたいものが多いなぁ」

 

相も変わらずこの体は不便だ。強いていい点を上げるならほかの人たちよりも頭がいいことくらいしかない。とはいえ、まふゆに頼めば行けなくもないか…?いや、絶対停められるな。

 

「まあそこら辺は要相談というやつだな。凛の体調にもよるし」

 

「でもでも!文化祭とか来てくれたら歓迎しちゃうよー!」

 

「まじぃ?これは行くしかないなぁ~!咲希ちゃんの幼なじみの子達とも話してみたいし!」

 

咲希ちゃんの幼なじみの子とは会ったことがない。どんな子達なのかは分からないが、恐らくいい子たちなのだろう。それは間違いない。

 

「俺も文化祭があるんだがなぁ…」

 

「神校にもあるのか…そりゃ、見に行かんとな」

 

「ふっ、その時はうちのクラスまで来い。全力で歓迎してやろう!」

 

「死なない程度で頼むよ」

 

おどけて言うと司と咲希ちゃんが笑い、それにつられてオレも笑う。この2人といると空気が和やかになってとてもありがたい。一人になると余計なことばかり考えてしまうから。例えば…そう、晩御飯のこととかね。

 

「ねぇねぇ凛くん」

 

「どしたの咲希ちゃん」

 

「実はね、アタシたちバンド始めたの」

 

「バンド?そりゃ凄い」

 

多分オレがギターとか引いたら弦で指切れると思うし、ピアノ弾こうとしたら指の骨折れるだろうしドラムなんかやろうものなら死ぬね。まず間違いなく。

 

「うん!Leo/needって言うの!」

 

「何その名前かっけぇ」

 

「えへへ、いいでしょ~」

 

Leo/need…いい名前じゃん。咲希ちゃんらしいいい名前だ。

 

「そっか…幼なじみの子たちと?」

 

「うん!」

 

「そっかそっか…うん、応援してるよ。ライブとかするのかはわかんないけど…」

 

「ライブ…うーん、結成したばっかりだからわかんないけど…いつかやると思うよ!」

 

「じゃあ見に行かないとね、司その時は車椅子係よろしく」

 

「何故俺なんだ!?」

 

「司、咲希ちゃんのライブ見に行かないの?」

 

「行かないわけがないだろう」

 

「じゃあいいじゃーん」

 

「むっ、良いだろう!全力かつ安全運転で運んでやる!」

 

相変わらずノリがいい司を弄りつつも未来を想像するオレ。そのライブが行われている時、オレは生きているのだろうか?まあ死ぬ気は無いけど…正直自信はない。無理してでも生きるけどね!

 

「…ま、これからもよろしく二人とも」

 

「…?ああ!よろしくな!」

 

「うん!よろしくね凛くん!」




咲希ちゃんとは病弱繋がりです。


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三話

※この話は三人称です。
※感想ください(小並感)


右手にスマートフォンを持ち、どこか驚いたような表情で画面を見ている凛。スマートフォンにはメッセージが一件来ており、そこにはまふゆからのメッセージが送られていた。そのメッセージにはサークルのメンバーが会いたいと言っているから明日病室に連れて行ってもいいかと書いていた。そのメッセージ──主にまふゆが知り合いを連れてくるという点に驚きつつも珍しいこともあるものだとクスリと微笑みいいよと返信を送る。

 

★★★

 

翌日。相変わらず代わり映えのない病室でどこか楽しげに笑う凛。何せ、()()()まふゆが友人を連れてくるからだ。まふゆは今まで誰も連れてこなかったのか?その答えはYESだ。なぜなら真の意味でまふゆの友人と呼べるの他でもない凛しかいなかったからだ。まだ感情を持っていた頃の友人で、しっかりとまふゆのことを見ているのは凛だけだった。故に"仲良くしている"と思っているのはまふゆと話している相手だけだったりする。なにせまふゆに取って彼ら彼女らはどうでもいい存在でしかないのだから。

 

なので、凛は今日という日をとても楽しみにしていた。もうその楽しみようは近年稀に見るレベル…というよりは、天馬兄妹が来た日くらいにはテンションが上がっていた。数分たった頃、凛の病室の部屋がノックされた。

 

「どうぞー」

 

凛が入室の許可を出すとガラリと扉を開け、四人の少女たちが入ってくる。一人は当然まふゆなのだが、ほかの三人は今まで一度も見たことの無い人だった。少なくとも、まふゆに見せてもらった学校生活などの写真の中に彼女らの姿は凛の記憶には覚えがなかった。

 

「へぇ~キミがまふゆの幼なじみ?」

 

「ちょっと瑞希、初対面の人に失礼でしょ!」

 

「あはは、構わないよ。──さて、瑞希さん?の問いに答えるとするとYESかな。なんなら生まれた病院まで一緒だしね」

 

幼少期から病弱だったから生まれた病院が一緒でお互いの両親が幼なじみでない限りは恐らく関わることは無かっただろうしね、と付け加えるように言うと凄い奇跡もあったもんだね…とピンクの髪にゴシック風の服を着た少女──会話から察するに瑞希という名前なのだろう──が苦笑をこぼす。それに全くだ、と凛が笑うととりあえず自己紹介をしようかと長い銀髪にジャージを着た少女が言う。

 

「ああ確かに。どうも初めまして、浅野凛です。いつもまふゆがお世話になってるようで」

 

「あはは、こちらこそ。ボクの名前は暁山瑞希、よろしくね」

 

「東雲絵名です。よろしく浅野さん」

 

「宵崎奏。よろしく」

 

三者三様、多種多様とも言える自己紹介に苦笑いを零した凛は個性的だなぁと呟き、そもそもまふゆが個性的だからそれに張り合うくらいは個性的なのか…?更に呟き、まふゆに頬をつねられる。

 

「まふゆ、いはいいはい」

 

「余計なこと言わないで」

 

「はーい…全く、怒りん坊なんだから」

 

「何か言った?」

 

「なーんにもー?」

 

凛と初めてあった印象が儚げな美青年といった様子であったところから一転、まふゆと唐突に漫才を始めた凛に目を白黒させる三人。それを見てあっやべと言った顔をする凛。しかし、唐突に何かを思い出したのかあれ?という顔をする。

 

「そういや、他の人がいるのにそっちなんだな」

 

「そっちって?」

 

「え?ああ、まふゆは素で接してるな~って。いつもいい子ちゃんって感じなのに」

 

ぽつりとこぼした独り言に反応した暁山瑞希の問に凛とまふゆ以外の人がいるのに学校生活や親の前で見せる『優等生』の面ではなく素っ気なく冷たい素を見せていることに驚いたとあっさりと告げる凛。

 

「…別に、隠しても意味ないから」

 

「意味ない?バラしたの?バレたの?それとも成り行き?」

 

「…成り行き」

 

「よくそれで今までバレてこなかったなとオレは今猛烈に感心してるよ」

 

「別に。学校のクラスメイトの子たちとはそこまで深く関わらないから」

 

「ここで友達って言葉じゃなくてクラスメイトって言うところが筋金入りだよねほんと」

 

まふゆのクラスメイトは友達としてすら認識されていないことにどこか哀れみを感じながらも肩をすくめる凛。まあ素でいるなら楽でいいやと言い、静かに三人の方を見すえる。ちなみに、全員椅子に座っている。まふゆがせっせと用意しており、それを見て三人は相変わらず驚いていた。

 

「まあ細部…というか、答えたくないことは言わなくてもいいんだけどさ。とりあえずどういう集まりで、どういう経緯があってまふゆがこうなったか教えて貰っていいかな?」

 

「いいよ~奏と絵名もいいよね?」

 

「…ま、仕方ないわね」

 

「うん、私もいいよ」

 

「…私は?」

 

「いや、まふゆに拒否権はねぇから」

 

暁山瑞希がはいはーいと言わんばかりに手を伸ばし、ほかの2人にも了承をとる。それを見たまふゆが自分が含まれていないことに疑問の声を上げるがその言葉はあっさりと凛に切られて消える。凛は気がついていた。まふゆが何かしらをやらかしていることを。そして、だいぶ迷惑をかけていることを。

 

「ええと…とりあえず始まりから話すね」

 

その言葉から話が始まる。まふゆを含めた四人の繋がりは『25時、ナイトコードで。』という音楽サークルであるということ。そしていつも通りに曲を作っていたある日、『セカイ』という不思議な場所に誘われたこと。そして、そんなことがあってからまふゆが失踪したこと。そして、見つけたと思ったらまふゆに全員がボロクソに言われたこと。そして紆余曲折あり、まふゆが帰ってきたこと。そしてある日、まふゆが凛のことを話題に出し、気にしたほか三人が会いたいと言って今に至るということ。その説明を聞いて頭が痛そうに頭を抱え、ため息を着く凛。ちなみにまふゆが失踪したというところから凛は頭を抱えていた。

 

「えっと…その…アホが実にご迷惑をおかけしました」

 

「コイツ連れ戻すのほんっとーに疲れたんだからね!!」

 

「ほとんど奏が連れ戻したみたいなものだと思うけど…?」

 

「あんたねぇ!?」

 

まふゆが余計なことを言い、東雲絵名が怒る。それを見た凛の顔が全てを悟ったような無表情に変わる。

 

「まふゆ?」

 

「…何?」

 

「明日、朝七時にここに来ること。久しぶりのお説教ね」

 

「…どうして?」

 

「どうしてもこうしてもねぇよ!!!このおバカ!!」

 

ほんとにこいつ何やってるんだ…だの、もうなんか申し訳なさで死にそう…だとかブツブツ呟き始めた凛に真実を告げただけで、なにも悪いことはしていないのにだんだんと悪いことをした気分になってくる3人。しかし、数分もすれば落ち着いてきたのか凛が躊躇いがちに口を開く。

 

「まあ、うん。色々…あったんだな」

 

「うん、色々…あったよ」

 

「ええ、色々あったわね…」

 

遠い目をする凛、瑞希、絵名。まふゆのストッパーである凛とニーゴのストッパーをすることが多い瑞希と絵名はあっ、こいつ気が合うなと悟ったような思考になるがはぁ…とため息を着く三人。

 

「…なんか、すごい疲れた」

 

「アンタも苦労してるのね…」

 

「キミらもね。…そういえば宵崎さん」

 

「なに?」

 

「いや、本当に単純な疑問だから聞き流してくれて良いんだけど」

 

「うん」

 

「まふゆや世界中の人を救いたいって願いがあるってさっき言ってたけどさ…」

 

言っていいのか迷うなと顔を顰め、数秒黙り込む凛。しかし、意を決したように宵崎奏の青い瞳を見つめて聞く。

 

「その理想は凄く素晴らしいものだと思うんだけど──君自身は誰が救うの?もしかしてずっと自己犠牲で生きていくの?」

 

そう聞くと固まる宵崎奏。いや奏だけじゃない。その場にいた全員が固まる。『宵崎奏(救世主)』を救うなんて誰も考えたことも考えようとすらしてこなかったからだ。

 

「この世界には、色んな思いや理想を抱えてる人がいる。『家族に応えたい』、『才能が欲しい』、『容姿を良くしたい』…まあなんでもあるだろうし、その理由も理想も様々だろうけど─言ってしまえばそれは所詮自分でも何とかできてしまうものだ」

 

あっさりとそう言い切る凛。凛だって、『自由に動き回りたい』という理想を持って生きている。だがそれは叶わないと知っているからこそ、割り切れる。理想とは心の持ちよう、考え方によっては叶ったり叶わなかったりするものでなければならない。なら、『全ての人を救いたい』という理想は?それは割り切れるものなのか?──不可能だろう。だって、『全ての人を救いたい』という理想はあまりにも主軸に『他人』を置きすぎている。

 

「断言するよ、ここにいるオレを除いた4人の中でキミが最初に理想に潰される。どれだけ才能があろうと、どれだけ足掻こうとキミは最初に潰れる。──それでも今の理想を貫くかい?」

 

ぶっちゃけてしまえば、『浅野凛』は『宵崎奏』を憐れんでいる。どこまでも憐れで哀しくて、そして優しい存在だと気がついてしまった。だからこれはお節介だ。唯一この場で『他人』であり、抽象的に見れる凛にしか出来ない事だと確信している。なんたってほかの三人は少々宵崎奏に対して盲目的だから。

 

「それ、は…それは…」

 

「今ならば辞められる。今ならば間に合う。今ならば逃げられる。だから今聞こう。理想を貫いて潰れるか、理想を捨てて生きるのか」

 

「私は…」

 

悩む宵崎奏にどこか悲しげな目を向ける。このままだと自分の問のせいで宵崎奏が潰れると判断した凛は静かに口を開こうとする…が。

 

「奏は作るよ」

 

「…まふゆ?」

 

凛より先にまふゆが口を開く。凛の問いにあっさりと奏は理想を貫くと確信したように告げるまふゆに驚いたように目を向ける凛。

 

「私が救われるまで、曲を作り続けるって言ったもの。私はそう簡単に救われないと思うよ。──それこそ、人類最後になるくらいまで」

 

その答えを聞いて静かに笑う凛。その言葉を聞いて静かに宵崎奏の目に火が灯る。その目には覚悟があった。

 

「私は──私は作るよ。理想に潰されるまで…ううん、まふゆを救うまでは絶対に」

 

「そっか…そっかぁ」

 

どこか眩しいものを見るように目を細めた凛は口元をゆがめてそして笑う。もうそれは大爆笑だった。

 

「クッフ…クフフフ…アハハハハハ!まふゆが救われるまでかー!それはそれは長い道のりになるだろうなぁ」

 

どこまでも楽しそうに笑う凛。ああ、もうまふゆには仲間がいるのだと悟ったから。少しづつまふゆの未来が明るいものになっているのを感じたから。

 

「そっか…じゃあ、これからもまふゆをよろしくお願いします」

 

「うん、任せて」

 

しっかりと頭を下げた凛にしっかりと笑みを返す宵崎奏。その様子を見て慌てたように残りの2人──暁山瑞希と東雲絵名が再起動する。

 

「はっ、ボクたち忘れられてない!?忘れるなら絵名だけにしてー!!」

 

「瑞希ぃ!なんで私はいいのよ!?」

 

「えー?だって絵名はここにいる人に忘れられてもSNSで覚えてもらってるからいいじゃーん」

 

「なぁんにも良くないわよ!」

 

しんみりとした空気を払拭するように叫ぶ瑞希と絵名を見て笑う凛と奏。まふゆは相変わらず無表情だったが、凛に頬をつままれ無理やり笑わされる。

 

「あっ、ちなみにお説教は忘れてないから」

 

「…余計なことは覚えてる」

 

その言葉にまた他の全員が笑った。

 

その笑い声が病院に響くと同時に、凛のスマートフォンが独りでに起動し、その画面には『悔やむと書いてミライ』という曲が自動でインストールされている画面が表示されていた。




救世主が全てを救うなら、救世主は誰が救うんだろう?

ちなみにこの後凛は全員とナイトコードを交換しました。
※宵崎奏が病室にお見舞いに来るようになりました。
※暁山瑞希が病室にサボ──遊びに来るようになりました。
※東雲絵名が暁山瑞希に連れられて来るようになりました。
※『誰もいないセカイ』に行けるようになりました。

凛の容姿を書いていないことを思い出したので一話の前書きに書いておきます。


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四話

困ったような様子で携帯を眺める凛。その困っている原因…それは、ダウンロードした覚えのない音楽がファイルに追加されていたからだった。

 

「ほんとになにこれ。ウイルスとかじゃないよね…?」

 

まあウイルスでも何とかできるが手間はかかる。めんどくさい事に自ら首を突っ込む趣味は持っていないのだ。──まあ無論、周囲にいる人物のくせが強すぎてめんどくさい事を連れてくることもままあることなのだが。

 

「…何はともあれ聞いてみないことには分からない、か」

 

諦めたようにつぶやくと、静かにその音楽を流す──その瞬間視界が膨大な光に包まれ、凛の目を焼く。そして、光が晴れるとそこは灰色の謎のセカイだった。

 

「…うっそぉ」

 

突然の怪奇現象に目を瞬かせる凛だったが、さすがメンタルオリハルコン。数秒もすれば落ち着き、周囲の探索を始める。

 

「これ多分音楽止めれば戻れるっぽいし…まあ探索するかな」

 

フラフラと周囲に何があるのか探索し始める凛。しかし、数分もすれば息が切れ始める。

 

「ここ…なんにも…なくない…?」

 

膝に手を付き、一度深呼吸をしてまたぐるりと周りを見廻す。やはり、何も無い。

 

「寂しい場所だなぁ」

 

そう呟いたとき、遠くから──徒歩数分で着くであろう場所から、唄が聞こえてきた。静かで優しい唄が。

 

「歌…?」

 

その唄に反応しそちらに向かって歩いていく凛。唄の聞こえてくる場所に行くと、そこには白い髪をツインテールにし、目を閉じて歌っている少女がいた。

 

「邪魔するのも悪いか…」

 

ボソッと呟いた凛は近くのなにかの建物が壊れたような瓦礫に腰掛けて、少女の歌を聞く。機械的な声でありながら、込められた感情は本物のヒトのような不思議な歌。それにこの曲は──

 

「──ニーゴの歌?」

 

少女が歌っていたのは最近知り合った三人とまふゆの四人の音楽サークル、『25時、ナイトコードで。』の曲そのものであった。当然、この少女がただのニーゴファンという可能性もあるが、そんな偶然もないだろう。そんなことを考えていると、歌が終わる。歌の余韻に浸りながら、拍手を送る凛。すると、凛がいたことに気がついたのかこちらを見てくる少女。赤と青のオッドアイを持った少女は一切の感情を浮かべずに凛を見ていた。───その様子は、どことなく朝比奈まふゆに似ていた。

 

「…ええと、キミは誰?」

 

「私はミク。初音ミク──いらっしゃい、凛。あの子の心を支えてくれている人」

 

「あの子…?」

 

「まふゆのこと。ここはまふゆの思いで出来た場所」

 

「もしかしてここが『セカイ』?」

 

暁山瑞希たちの話にでてきた謎の場所、『セカイ』と呼ばれる場所がここなのかと納得したように頷く凛。しかし、その時だった。

 

「───ッ!?」

 

ガクリと体制を崩す凛。その顔には疲れと焦りが入り交じったような表情が浮かんでいた。

 

「大丈夫?」

 

「ちょっとマズイかも…ごめ、ん…」

 

ドサリと倒れた凛は倒れ、意識を失った。

 

★★★

 

「──っと、大丈夫!?」

 

「ん…?」

 

誰かの声が聞こえ、静かに目を開く凛。未だに痛む頭を抱えながら周りを見るとそこには二人の少女が立っていた。

 

「東雲さんに暁山さん?…ってて」

 

慌てて立ち上がろうとした凛だが、立ち上がった瞬間ガクリと体制を崩し膝をつく。

 

「ちょっとちょっと!無理しちゃダメだってば!」

 

「アンタ本当に大丈夫なの!?顔色真っ青よ!?」

 

「あ、ははは…ちょっと無理しただけだから…大丈夫だよ…」

 

心配する二人を安心させようと笑みを浮かべる凛だが、体調が明らかに悪いのが目に見えるため、痛々しいだけだった。

 

「瑞希、まふゆ呼んできて!今すぐに何とかできんのアイツだけでしょ!」

 

「わかった!ちょっと待ってて!」

 

「あぐっ…あっ」

 

一度無理したのが祟ったのか、また気を失う凛。それを見て慌てて頭を抱え地面にぶつからないようにする。

 

「そもそもなんでコイツがここに…?」

 

絵名は湧いてでた疑問に首を傾げながら、早くまふゆが来ることを願う。

 

「────凛ッ!」

 

聞きなれた声が聞こえ、そちらを絵名が見るとそこには焦ったような表情で走ってくるまふゆ。

 

「…アンタ、どんだけ走ったのよ」

 

「凛…凛?…これならまだ大丈夫そう。凛の携帯を貸して」

 

「え、ああコレ?」

 

「そう。ありがとう」

 

凛のことを調べていたまふゆはそれだけを端的に告げるとまふゆは凛の携帯で再生中になっていた『悔やむと書いてミライ』を停止させると二人同時に光に包まれその場から消える。それを見た絵名は呆れたように笑う。

 

「まふゆもあんな顔するのね…」

 

「絵名ー!まふゆと浅野さんはー?」

 

「遅かったわね、二人とももう帰ったわよ。結局浅野さんは目を覚まさなかったけど」

 

それを聞いて、心配そうにしつつもとりあえず無事ならいっかと呟いた瑞希。

 

「でも驚いたなー」

 

「なにがよ?」

 

「あのまふゆが学校早退してまで病院に走るなんて」

 

「はぁ!?アイツが学校早退したぁ!?」

 

その会話を静かに見つめていたミクはもう一人の人影の方を振り向いて話しかける。

 

「行かなくて良かったの────IA」

 

「今の彼に私の手助けはいらないから」

 

静かに微笑みながら、本来居ないはずのバーチャルシンガーが告げた。




次に続く。
今回倒れたのはセカイが悪いのではなく、無理して探索を続けた(バカ)が悪いです。精神的に強すぎて肉体の苦痛に耐えられるのが割と原因。

IA
銀髪ロングで赤目かつ常に微笑んでいる。本来は存在しないバーチャルシンガー。


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五話

ピッ…ピッ…っと凛の心拍を伝える音だけが響くいつもの病室。しかし、そこにはいつもの暇をして外を眺めてぼんやりとする凛の姿は無く、酸素を供給するためのマスクを付け、目を閉じて一切動かない、見ようによっては死んでいるのではないかと感じるほど生気の無い凛がベッドで横たわっていた。その傍には心配そうに凛を見つめるまふゆ。

 

「…んん…?」

 

「凛!」

 

「まふ…ゆ…?」

 

「よかった…!」

 

静かに目を覚ました凛とそれを見て思わず声を上げるまふゆ。そんなまふゆの方を見たあと、周囲を見回す凛。

 

「病室…?」

 

「そう。凛がセカイで倒れてたから」

 

「そっか」

 

「…あんまり無茶しないで」

 

「ごめんね」

 

どこか泣きそうな雰囲気のまふゆに申し訳なさそうに笑いながら頭を撫でる。充電されているスマートフォンを起動してみるとそこにはたくさんのメッセージが来ていた。メッセージを送ってきていたのは天馬兄妹を初めとしたよく遊びに来る面々だけではなく草薙寧々や最近はあまり見なくなったが昔は時々雑談程度のことはしていた桐谷遥など様々な面々からメッセージが来ており、迷惑をかけたなと顔を顰めた凛。

 

「凛」

 

「ん?」

 

「次セカイに行く時は私に知らせて。ついて行くから」

 

「…わかった。そうするよ」

 

正直な話をすれば、あの時凛が倒れたのはもとよりそこまで体調が良くない日であったことも起因する。日によって体調が上下する凛は、体調が悪い時になると歩くことすら困難であり、倒れた時の体調はそれより多少ましな程度──少し歩ければ僥倖というレベルの体調であった。しかし、『セカイ』への好奇心や突如として知らないところに連れてこられたことによる興奮でアドレナリンが分泌され、体調が悪くなっていることに気がつけなかったというのが大体の流れである。しかし一度倒れ、皆に迷惑をかけている以上文句を言う訳にも行かない。

 

「んん…っと、体調は元通り、かな?どれだけ寝てた?」

 

「ほぼ丸一日──23時間47分かな」

 

「いや細かいな!?」

 

そう当たり障りのない会話をしているとガラリと扉が開かれる。そこからゆっくりと入ってきたのは一人の男性。

 

「げっ」

 

「なぁにがげっ!だこのバカが!医者を見てそんな反応をするやつがあるかこのアホ!」

 

「アホとはなんだこのバカ!」

 

「無理して倒れたやつのどこがアホじゃねぇんだよ!」

 

「ぬぐっ…!」

 

入ってきて早々にやいのやいのと口喧嘩を始める凛と男性の二人。この男性の名は桐谷悠人。浅野凛の担当医であり、数年前のある出来事の命の恩人だ。とはいえ、二人の関係性を簡単に述べるなら年の離れた男友達と言ったところだろうか?お互いがお互いを尊重しつつも、口汚く罵り合うこともままある不思議な関係。

 

「ま、今回の診断結果は伝えるまでもねぇだろ?」

 

「過労」

 

「正解。全く、朝比奈さんに心配かけんなよこのバカ」

 

「ぬぐぐ…!」

 

ケケケと口元を歪めながら凛をバカにしたように笑う悠人を歯をかみ締め悔しげに睨みつける凛。

 

「ま、今回に関しては後遺症の心配もないしもうほとんど元通りっぽいしな。まあ今日くらいは安静にはしろよ?」

 

「さすがに起きて早々に無茶なんてしねーわ!」

 

「ほんとか~?」

 

「信頼ZEROか!?」

 

「当たり前だろ」

 

「ですよね」

 

無茶をするということに関しては定評のある凛のことなので、いつ無茶をしてもおかしくないのだが──まあ今日は無理かと笑う悠人。その視線の先にはスっと鋭くなった視線で凛を見つめるまふゆの様子があった。あの様子なら、無茶しようとしたら殴ってでも止めそうだと退出する悠人。

 

「はぁ…疲れた」

 

「…メッセージ返さなくていいの?」

 

「ん?…あっ、やべ忘れてた」

 

その手にあるスマートフォンには着実にメッセージが送られてきており、その総数は約20以上とどんどんと恐ろしい速度で増えていく。凛の人徳のなせるところではあるのだが──その数に口元をひきつらせる凛。

 

「とりあえず返すからちょいまち」

 

「わかった」

 

そこからは無言の時間が続く。その無言の空間の中で謎の胸のざわつきに顔を顰める朝比奈まふゆの姿があったが凛がそれに気がつくことはついぞ無かった。




桐谷悠人
皆さんご存知大人気アイドルの父親。天才的な腕を持つ外科医であり、大抵のことは出来る万能医。この人がいなかったら物語は始まらなかった。なんだか原作では職業が出ていたような気がするがこちらの世界線では医者。数年前のある出来事での命の恩人。その出来事は後々分かる。ただ分かるのはシリアスになることだけだ。

桐谷遥
大人気アイドルで、最近多忙なため凛と会うタイミングがない。元々世間話をする程度の仲でしか無かったが、父親から倒れたと聞きまた今度お見舞いでも行くかと考えている。つまり…?

朝比奈まふゆ
色々とフラグを建てられてる可哀想な人。でも大抵主人公が悪い。桐谷悠人には感謝はしているが、特段興味が無いため凛との掛け合いが起こっているときは口を開くことは無い。


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六話:KAMIKOU FESTIVAL!

1000UA感謝のイベント編突入
ちょこちょこ個人設定入ってるので注意。


凛が倒れてから2週間ほどが経った。いつものようにぼんやりとしていると、友人の天馬司からメッセージが来た。そのメッセージを見た凛は目を大きく見開いて驚いたあと──楽しげに口を歪めた。

 

天馬司:『明後日、学園祭があるのだが来ないか?』

 

そんなメッセージを見て、どうしようかと頭を悩ませる凛。正直な話をすれば行きたい。とても行きたい。なんなら無理してでも行きたい──のだが。それを許さないであろう人物がいた。そう、朝比奈まふゆだ。明後日開催──つまり今日は水曜なので金曜日開催ということだ。また過保護になりだしている朝比奈まふゆはついていけないところで何があるか分からないのだから行っていいというわけがない。

 

「どうしよ…」

 

「なにが?」

 

「うぉあ!?びっくりしたぁ…」

 

どうやれば行けるのかと頭を悩ませていると背後から噂の人、朝比奈まふゆが現れた。

 

「あーっとだな。実は──」

 

かくかくしかじか四角いムーブと説明するとまふゆは少し考えたあと、あっさりと答えた。

 

「行ってもいいよ」

 

「やっぱダメだ──うえええ!?いいの!?」

 

「ただし─────私も行くよ」

 

「えっ?」

 

★★★

 

二日後、頭を抱えたまま車椅子に座った凛とそれを押す朝比奈まふゆの姿があった。

 

「ほんとに来るってガチ…?」

 

「本当だよ。ほら、行くよ」

 

「はぁ…わかったわかった」

 

車椅子を押しながらニコニコと外行きの笑顔で微笑む朝比奈まふゆを見て、諦めたようにため息を着く。

 

「そういえば、司さんからのお誘いなら咲希さんは来るの?」

 

「んにゃ、咲希ちゃんは来ないって。学校休めないからってさ」

 

「へぇ~偉いね」

 

「ほんと、どこぞの幼なじみさんとは違ってな」

 

「え~誰のことだろう?」

 

「お前だよお前」

 

二人で雑談しつつバスに乗り、神山高校の最寄りでおりる。なお、バス代は凛が二人分払ったものとする。

 

「ありがとう、凛」

 

「どういたしまして。──って、あれか?」

 

「うん、多分あれだね」

 

カラカラと車椅子が進む音が響く。数分進むと少しづつ人が増えていき、また数分もすると大量の人が出入りする大きな建物──そう、それは。

 

「神校へようこそって感じかね?」

 

「そうかもね」

 

KAMIKOU FESTIVAL !!

 

★★★

 

「まずは司に挨拶だな」

 

「そうだね」

 

二人は先に司に挨拶をしておこうと集合場所と伝えられていた二年生のクラスのある所へと向かう。

 

「階段つっら」

 

「大丈夫?」

 

「へーきへーきっと…おっ、あそこか?」

 

階段はさすがに自分で歩く必要があるため、少し苦労しつつも2年生のクラスがある場所へと向かい、階段を登りきったあたりで金色のよく目立つ髪色をした男が手を振っていた。

 

「ハァーハッハッハッ!よく来たな二人とも!歓迎するぞ!」

 

「いや~来れてよかった!今日はそこそこ体調が良くてな」

 

「体調が悪かったら来させないよ」

 

「分かってるって」

 

司は割とお見舞いに来る部類なので、まふゆともそこそこ長い付き合いである。まあ当然優等生スタイルで接してはいるが、ニーゴを除けば気安く話せる類の人物ではある。

 

「司のクラスは何をやるんだ?」

 

「俺たちは──っと、二人も来たようだな。おーい、こっちだ!」

 

「う、うるさ…って、二人ってあの二人かよ」

 

「あれは…草薙さんと神代さん?」

 

「うむ、劇に出てもらうことになっていてな」

 

「あの二人って別クラスなんじゃ…?っていうか草薙さんは一年だろ?」

 

「ああ、寧々は手伝いをしてもらっただけだ。類も演出を考えてもらってな。基本は俺が脚本した。だが、演出となるとどうしても安全性を問われるからな。そこら辺は類に任せた方が安全だと思ってな」

 

「草薙さんは?」

 

「歌のレッスンをしてもらった」

 

なるほどぉ…と納得したように頷く凛。しかし、知らない人相手にレッスンを出来るようになるなんて大分人に慣れたんだなと感じる凛。それとも、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「おお類、寧々!ご苦労だった!」

 

「うん、ありがとう司くん。──おや、凛くんに朝比奈さんじゃないか。こんにちは。ようこそ神校へ」

 

「こんにちは…」

 

「草薙さん、類こんにちは。歓迎感謝!高校を見る機会なんてあんまりないからな、今日のうちに楽しんどかないとな~」

 

「こんにちは草薙さん、神代さん」

 

凛とまふゆの姿を認めた瞬間すっと類の後ろに体を隠した寧々に苦笑いしながら周りを見渡す凛。高校というものどころか、中学や小学校すらもほとんど行けていない凛は高校というものを間近で見れてとてつもなく喜んでいた。人前ゆえに出してはいないが。

 

「私の学校も見に来てもいいんだよ?」

 

「女子校に!?死ねと申すか!?」

 

さすがに女子校は無理じゃろ…と呟くと冗談だよと笑うまふゆ。

 

「ならば俺と共に咲希の体育祭でも見に行くか!」

 

「…へぇ、そりゃ楽しそうだ。それなら行ってもいい…かも?まふゆの学校での姿も見たいし」

 

「じゃあその時までに体調整えておいてね?」

 

「そうするよ」

 

楽しみが増えたと笑う凛の姿にニコニコと微笑むまふゆ。

 

「すまんが、俺たちはまだ準備があるのでな!是非ともショーを見に来てくれ!」

 

「おお、楽しみにしてるよ。それじゃ、草薙さんと類もこの辺で。またな」

 

「また何時でも凛の病室に来てくださいね」

 

「うん、またお邪魔させてもらうよ。凛くんほど機械について語れる人は少ないからねぇ…」

 

「類、程々にしなよ。…また今度」

 

相手は病人なんだからと類に警告しつつもすっと体を隠す寧々。それを見て苦笑いを零してその場を去るまふゆと凛。

 

「ねぇ、寧々。どうしてキミはそこまで凛くんを恐れるんだい?」

 

「…分からない、けど…()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「何かを隠しているだと?」

 

「うん。何かは分からないけど…ね」

 

寧々は凛がいい人なのは分かるけどいい人な分何を隠しているのかわからなくて怖いと呟いた。

 

★★★

 

「さて、どこ回ろうかね」

 

「そういえば、絵名の弟さんがやってるお店があるらしいよ?」

 

「へぇ、何?」

 

「お化け屋敷」

 

「入れねぇじゃねぇか!」

 

叫ぶと血を吐くからね、仕方ないね。しかし分かってからかったのか、ふふっと微笑んだまふゆにはぁ、と呆れた声を漏らす凛。

 

「ああもう疲れた、甘いもん食いてぇ」

 

「丁度そこにわたあめ屋さんがあるよ、食べる?」

 

「食べるか…金はオレが出すけどな!」

 

それだけは譲れないとばかりにまふゆに指をさしながら胸を張ると呆れたようにまふゆが笑う。なんだその顔は…とブツブツ言いながら店員にわたあめふたつと言うと分かりました、と店員の青年がクラスに入っていく。

 

「あれ、あの店員さん…」

 

「どうしたの?」

 

「ん?…ああ、あの店員さんに見覚えがあってな」

 

「どこで?」

 

「どこだっけな…」

 

うーんと頭を悩ませていると、店員がカラフルなふたつのわたあめを持って帰ってくる。

 

「おまたせしました、わたあめです」

 

「ありがとうございま…す……って、あー!思い出した!司にみせてもらった友人と撮った写真ってやつに写ってた人だ!」

 

「司先輩を知っているんですか?」

 

「ええ、昔馴染みみたいな感じですね。咲希ちゃんと同じ病院に入院してた繋がりで」

 

「なるほど…間違っていたらすみませんが、もしかして浅野凛さんですか?」

 

「…知ってたんですか?」

 

「いえ、司先輩が時々良い友人だと言ってた方の中に咲希さんと仲の良い方がいると言っていたので…」

 

「なるほど。ああ、自己紹介が遅れて申し訳ない。浅野凛です。よろしく」

 

「こちらこそ遅れてすみません、青柳冬弥です」

 

「朝比奈まふゆです。凛の付き添いできました」

 

三人が軽い雑談に興じていると一人の青年が歩いてくる。オレンジの髪の青年だった。

 

「おう冬弥…知り合いか?」

 

「ああ、先程知り合ったんだが。司先輩の知り合いでな」

 

「へぇ…ああどうも、初めまして。東雲彰人です。よろしくお願いします」

 

「東雲…?ああ、浅野凛です。よろしく」

 

「朝比奈まふゆです。…あの、東雲絵名のご兄弟ですか?」

 

「絵名…姉貴のこと知ってるんですか?」

 

「はい、同じサークルに入ってるんです」

 

「へぇ、そうなんですね」

 

そんなこんなあり、冬弥も今から休憩時間との事で四人で軽くまわることになったが、そんな時凛とまふゆにとってよく見知ったピンク色の髪の少女がこちらに歩いていていた。

 

「いやわたあめうまっ…って、あのピンク髪」

 

「う~ん、瑞希かな?」

 

「ねぇキミ、もしかして東雲絵名の弟くん?」

 

冬弥と彰人の後ろを歩いていたためまだ瑞希には気が付かれていないのか、どこかで聞いたような発言が聞こ軽く吹き出す凛。目の前で彰人と冬弥、瑞希が話しているのを見ていつ話しかけようかな~とか考えていると。

 

「いやいつまで笑ってんだよ浅野さん」

 

「あはは、ごめんごめん。さっきも聞いた質問を知り合いがしてたからつい…っと、呼び捨てでいいよ彰人くん。東雲さん…ああもう下でいいか。絵名さんと被るから下の名前で呼ぶし」

 

「ええ!?凛くん!?それにまふゆまで!?」

 

「司に誘われたから来ちゃった☆」

 

「凛の付き添いでね。瑞希は?」

 

「ん?ボクは杏に誘われたし気になったから来てみよっかなーって!」

 

瑞希が混ざり、五人でわちゃわちゃしていると、冬弥が話し始める。

 

「すまない、今から見に行きたいものがあるんだが…一緒に見に来てくれないだろうか?」

 

「見に行きたいもの?…ああ、前に言ってた催しか」

 

「へぇ、面白そうだな。まふゆはどうだ?」

 

「私も大丈夫だよ」

 

「ボクもボクも~って、何を見に行くの?」

 

「ああ、司先輩がショーをやるらしくてな。それを見に行きたい」

 

「おお、奇遇だな。オレも見に行く約束してたんだよな。脚本天馬司ってのがなんともイヤーな予感がすっけどな」

 

「奇遇だな、俺も嫌な予感しかしねぇ…ただまあ、見てみねぇと分かんねぇだろ。行ってみっか」

 

五人の意見が纏まり、さっさと歩いていく五人。なかなか異色なメンバーのため視線を集めているがそんなことはいざ知らず雑談に耽ける五人。まあ、他校の女子生徒に神校の一年生二人によく話題になるピンク髪の一年生に車椅子に座ったいかにもな病人…とはいえ、痩せすぎていたりする訳では無いが明らかに病人なのは見てわかる凛という五人なのだからそりゃ視線を集めるだろう。

 

「っとここか?」

 

「みたいだな…よし、行くか」

 

「いやぁ…何があるんだコレ…てか七人のロメオって何…?」

 

「なんだか、凄く個性的だね」

 

「いやいや、フォローしきれてないから」

 

五人で仲良く座って待っていると、ショーが始まった。

 

★★★

 

ショーが終わり、出てきた五人は、爆笑してお腹が痛くなっている瑞希、途中から頭が痛くなってきてぐったりしている彰人、生まれて初めてショーを見た感激とストーリーのカオスさに挟まれ死にかけの凛、キラキラ目をして見ていた冬弥、安定の笑顔だったがどこか顔の引き攣ってるように見えたまふゆの五人が出てくる。そりゃまあそうもなる。演出や歌の面は手を借りた二人の力もあり、良い出来に仕上がっていたが如何せんストーリーがカオスすぎる。なぜロメオが七人で争っているのだろうか…?

 

「なんだったんだあれ…」

 

「ヒィー…お腹痛い…」

 

「あれだね、笑いすぎもあるけど色んな意味で血を吐くかと思ったよね」

 

「なんというか…個性的だったね」

 

「…どうしたみんな、大丈夫か?」

 

ああ、こいつ天然かとその場にいた全員が納得したところで冬弥がそろそろまた店番の時間だと呟く。

 

「ありゃ、そりゃ大変だ…あっ、そうだ五人で写真とろーよ。どうせオレ外出る機会もほとんど無いし」

 

「おっ、いいねー!みんなもいいでしょ?ねっ?」

 

「まあ俺は良いけどよ…冬弥は?」

 

「俺も構わない」

 

「私も良いよ」

 

「よーし、みんな集まってー!はい、チーズ!」

 

カシャッという軽い音と共に五人が集まって皆一様に笑顔を零している風景が携帯に収められる。

 

「じゃあこれは後で送っておくね。連絡先交換しよ?」

 

5人は各々連絡先を交換すると全員に瑞希から写真が送られてくる。

 

「…ま、悪くねぇな」

 

「ああ、そうだな」

 

「いやぁ、死ぬまでにやりたいことがひとつ出来て感激感激…っと、そういやそろそろ帰らなきゃ行けないんだっけか」

 

「えー、そうなの?」

 

「ああ、病院の外出許可時間がそろそろ終わるからね。みんな風に言うと門限かな?」

 

「そっかー…ざんねーん」

 

「まあまたいつでも病室にさえ来てくれればいつでも話せるし、通話アプリもいくらでもあるからね…んじゃ、またね冬弥くん、彰人くん、瑞希。いつでもうちの病室遊びに来ていいからね~」

 

「暇があったらな」

 

「ああ、またな」

 

「んじゃまた。行こ、まふゆ」

 

「うん。それじゃあまたね、みんな」

 

そういうと凛とまふゆの二人は静かに帰って行った。それを見つめて瑞希が口元をゆるめる。

 

「いや~今日の凛くん楽しそうだったな~」

 

「そうなのか?」

 

「うん、そうだよ。だっていつもは…何かを隠してるような微笑みしかしてないから」

 

そうどこか悲しげに笑う瑞希だったが、まふゆのような仮面ではなく何かしらの()()があるのだろうと考えているが…どうなのかは凛しか分からない。

 

KAMIKOU FESTIVAL !! END




KAMIKOU FESTIVAL!!編は終わりです。
次からまた色んな人が病室に来る感じに戻って…五話おきぐらいにイベスト挟みます。分からんけど。多分ね。

浅野凛
草薙寧々や暁山瑞希によって闇の一部を暴かれた人。ニーゴに関わる上に朝比奈まふゆの幼なじみということでしっかり闇設定あり。なお、オリハルコン精神によって出てくるかは不明。出てきたらドシリアス確定案件。ドシリアスってガブリアスに似てるよね。ちなみに今まで書く必要が無かったから書かなかったけど類との会話で機械いじりができることが判明。なお、それ以外に関しても才能がある模様。体を使う系?無理に決まってんだろ。

草薙寧々
なにかを感じ取った人。いい人なのは分かるが、なんかしら闇を抱えてそうで怖い。でもいい人だから邪険にできない。うーん、この。

神代類
そこそこ凛の事は気に入ってる。類曰く、浅野凛は真の意味で天才。あれで身体が健常だったとしたら、世界的に有名になっていただろうとのこと。

天馬司
やべー脚本した人。

青柳冬弥
天馬司が凛に対して頼れる後輩と紹介してた人。逆に凛のことは頼れる親友と紹介されていた。

東雲彰人
凛とまふゆを普通にいい人だなと感じてる。少なくとも変人ワンツーフィニッシュよりは絡みやすいとは思っている。凛の体を正直心配している。実はそこそこ凛とメッセージで会話してる。

暁山瑞希
何かに感付いてる人。それが何かは分からないが多分ほっとくとやばいことは分かっている。。



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七話

さて、楽しい学園祭も終わりいつもの病室。安定のぼんやりタイムが来るかと思いきや、凛の携帯に一つの通知が来る。それはナイトコードに送られてきたメッセージの通知だった。

 

えななん:『ちょっと!学園祭行くなら私も呼びなさいよ!』

 

『ごめんごめんw』:Sick

 

病人だからSickという馬鹿みたいな理由で付けられたアカウントのDMにえななん──東雲絵名からメッセージが来ていた。

 

えななん:『全く、瑞希も誘ってくれないし!それにまふゆに関してはVCで自慢してきたのよ!?』

 

『まふゆが?』:Sick

 

えななん:『そうよ!それも心做しか嬉しそうな声でね!!』

 

これ多分誘われなかった苛立ちよりもまふゆの声に腹たったパターンだと悟り、諦めたように笑う凛。絵名と知り合ってから凛の話の聞き方が上手いのか、はたまた一番絵名を苛立たせているであろうまふゆの幼なじみだからなのか、よく凛は絵名の愚痴を聞く機会があった。それは今日のようにDMであったり、VCであったり、病室まで来て話を聞くこともあった。

 

えななん:『それで、どうだったのよ学園祭。楽しかった?』

 

『そりゃもちろん!楽しかったよ』:Sick

 

えななん:『そ。ならまあいいわ』

 

相も変わらず素直じゃないなと笑ってしまう凛。そうこうメッセージでやり取りしていると、絵名から一つのメッセージが送られてくる。

 

えななん:『そういや、私の友達がアンタと会ってみたいって言ってるんだけど連れてってもいい?』

 

『全然良いよ』

 

友人って誰だろうと考えつつも、その日の会話は終わった。

 

★★★

 

そして、絵名の友人が来るという日。いつものように外を眺めているとコンコンっとノックの音が部屋に響く。

 

「どうぞ」

「来たわよ」

 

「ああ、絵名いらっしゃい…って、そちらの方が?」

 

「そうよ。ほら、愛莉」

 

「はいはい。こんにちは、桃井愛莉です」

 

「どう…も……?って、えええええええ!?」

 

凛が絶叫する。絵名で隠れていた少女が姿を見せると、桃色の髪に整った顔つきの少女。その姿は良く見た事のある少女のものだった。──そう、なぜなら桃井愛莉という少女はアイドルなのだから。

 

「ええ…うっそぉ…あの、浅野凛です。よろしくお願いします…?」

 

「ええ、よろしくね!」

 

「凛ってあんな叫ぶのね…ってか、喉大丈夫なの?」

 

「いや、大丈夫じゃないかもしれない」

 

コフッと血を吐きながら無表情で告げる凛に慌てる絵名と愛莉。それに大丈夫大丈夫と笑いながら口をゆすぐために洗面台に向かう凛。

 

「お騒がせしましたっと…いやぁ、久しぶりにあんなに叫んだよ」

 

あっはっはっはっと笑いながら告げる凛に呆れたような目を向ける絵名。

 

「アンタ、ほんとに大丈夫なんでしょうね」

 

「大丈夫だって、昔と比べると大分マシだし…ってか、友人が『桃井愛莉』だとは思わんでしょ?普通」

 

「うっ…それはともかく!なんで愛莉は凛と会いたいって言ったの?」

 

ジトっとした目で凛に見られた絵名はうっと目を逸らし、愛莉に話を振る。

 

「ここでアタシに振るのね…ねぇ、浅野さん」

 

「なんですか?」

 

「浅野さんって桐谷遥って知ってる?」

 

「桐谷遥…?ああ、知ってますよ。知り合いです」

 

「やっぱり!アタシ今、その桐谷遥とユニットを組んでるのよ」

 

「…えっ、マジですか」

 

ピキリと固まった凛に愛莉と絵名が首を傾げる。すると唐突に凛が頭を抱える。

 

「あのバカ先に言っとけよ…!」

 

「あ、浅野さん…?」

 

「いえ、親子揃ってふざけたヤツらだなと思っただけなのでご心配なく。…とりあえず、うちの担当医はシバく。慈悲はない」

 

一切の感情を消し去ったような目を外に向けながら呟く凛に顔を引きつらせる2人。

 

「まあいいや。それで、遥がどうかしました?」

 

「ううん、時たま遥の話題に出てたから気になってね」

 

「おっと、悪口でも言われてました?」

 

「そんなんじゃないわよ!?体が弱いらしいから心配してたわよ」

 

「へぇ、遥がねぇ。…というか、遥アイドルだったんですね」

 

その言葉にその場にいた全員が固まる。桃井愛莉を知っていて、桐谷遥を知らないなんてことがあるのかと。

 

「ええ!?知らなかったの!?」

 

「いや、まあ桃井さんを知ったのも咲希ちゃんから教えてもらったからだし…テレビ見てると目から血が出てくるから長いこと見れないし…」

 

「…ああ、なるほど」

 

そういやこいつ一歩間違えれば死ぬレベルで体弱いんだったと絵名が納得したように頷く。

 

「あら、ならアタシが唯一知ってるアイドルってことかしら」

 

「うーん、確かにそうですね。確かにテレビの向こう側の人であると知ってるアイドルは桃井さんだけかも…?」

 

まあ幼なじみがアイドル顔負けの美少女なので特にアイドルに興味が無いのもあるかもしれない。その上、凛自身もアイドルとしてやって行けるであろうと言うくらいにはイケメンなので今更かもしれないが。

 

「というか、咲希ちゃん…って、天馬咲希のこと?」

 

「ん、ああそうですよ。咲希ちゃんともお知り合いなんですね」

 

「ええ、後輩なのよ」

 

「咲希ちゃん、桃井さんの大ファンなので仲良くしてあげてくださいね」

 

ニコニコしながら言う凛にもちろんよ!と返す愛莉。その2人の様子を見て案外気が合うのねと笑う絵名。

 

「それに、敬語も要らないわよ?」

 

「そう?じゃあ普通に話すよ。遥の事もよろしくね」

 

「まあ遥に関してはアタシ達が宜しくされる側かもしれないけどね」

 

「えっ、アイツそんなに凄いやつなの?」

 

「本当に何も知らないのね…桐谷遥は日本でトップレベルのアイドルだったのよ?」

 

呆れたように告げる絵名の言葉を聞いて苦笑いを零す凛。あいつそんなに凄いのか…と。

 

「そうなんだなぁ…遥も頑張ってたのか。そりゃ音沙汰無くなるもんだ」

 

「どういうこと?」

 

「ん、まあここ数年見舞いにも来なくなったなと思ってたんだよね。まあ元気でやってるならそれでいいんだけど…」

 

「見舞いにも…?」

 

愛梨の脳裏に過ぎるのはどこか心配そうな顔をしていた遥の顔。あんな顔をする少女が一度もお見舞いに来ないなんてことがあるのだろうか…?と疑問に思うが、トップアイドルだった時期に考え無しにお見舞いに来れるかと言われるとNOなので仕方ないのかもしれないと気を取り直す。

 

「まあトップアイドルなら仕方ないんじゃない?」

 

「そうだね」

 

儚げに微笑んだ凛の姿にどこか絵名は違和感を覚えながら二人は帰る時間になったため帰宅する。

 

「遥がアイドル…ねぇ」

 

どこか無機質で機械的な目をしている凛が笑った。




桃井愛莉
絵名や遥から話を聞いていて会ってみたかったから絵名に頼んで着いてきた人。

東雲絵名
大人気アイドルの友人という地味にすごい人。

浅野凛
連絡先に桐谷遥と桃井愛莉がいるやべーやつ。ただし遥がアイドルをやっていることを知らなかった。


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八話

瑞希ちゃんくんの性別の話が出てきます。嫌な方はブラウザバックを推奨します。


「やっほー!」

 

そう明るい声が響き病室の扉が開く。それに驚いた凛がバッと扉の方を見ると、そこには明るいピンク色の髪を持った存在、暁山瑞希が立っていた。

 

「瑞希か、ビックリした…いらっしゃい」

 

「あはは、ゴメンゴメン」

 

明るく笑いながら謝る瑞希に笑顔を向ける凛。

 

「何か用?」

 

「ううん、特に用は無いかな~!暇だったから来たって感じ?」

 

「そっか、まあ何も無いけどゆっくりしてってよ」

 

ニコニコ微笑む凛にありがと~と笑顔で返す瑞希がそういえば、と声を上げる。

 

「ん?」

 

「その赤いマフラー、いつもしてるけど…大切な物なの?」

 

「ああ…これ?これ父親の唯一の遺品なんだよね」

 

そうなんでもないように告げられた凛の言葉にぐっと言葉に詰まる瑞希。どこか悪いことを聞いたような気分になり顔が少し暗くなるが凛が笑いかける。

 

「まあ、もう何年も前の話だからさ。八年近く前だから…もう吹っ切ったよ」

 

「そっか、ごめんね」

 

「気にしないで」

 

柔らかく笑う凛に少し安心したように笑う瑞希。そこから数分間特に内容のない会話が続く。

 

「ああ、そういえばなんだけどさ」

 

「ん?なーに?」

 

はた、と思い出したように凛が話しかける。それに対して普通に聞き返す瑞希。──だが、次の質問に瑞希は息が苦しくなるような思いをすることになる。

 

「ねぇ、瑞希ってさ…男の子だよね?」

 

「…え?な、なんのことかなー?」

 

「いや、別に誤魔化すようなことでも無いでしょ。骨格や声質、歩き方とかで分かるよ性別くらいはね」

 

なんてこともなさそうに告げる凛。普通はそんなこと出来ないというツッコミは置いておこう。普通にできるなら気がついていない彰人がおバカさんになってしまう。

 

「あはは、バレちゃったか」

 

「ああ、やっぱりそうなのか。…その服装、自分で作ってるの?」

 

「え?うん」

 

「へぇ、やっぱりそうなんだ!男の人の骨格に合う服なんて有るのかなって思ってたんだよね」

 

「そこなんだ…」

 

そこなの?と明らかに呆れたような口調で瑞希が呟く。その一言を凛が拾う。

 

「そこって?他に気にするところある?」

 

「いや、なんで男なのにそんな服着てるの?とかさ」

 

「いや、そんなの趣味以外にある?もしくは流行り」

 

あっさりと趣味か流行り以外ないでしょと告げる凛にどこか嬉しさを感じながらも瑞希は言う。

 

「変だとかは、思わないの?」

 

自分の声が少し震えているのを感じながら瑞希は言う。それにピタリと停止した凛が呆れたように笑う。

 

「似合ってるならなんでも良くない?」

 

「…あっはは、凛くんはそういう人だよね…」

 

これもしかして聞いちゃダメなやつ…?と呟きながら頭を抱えた凜に大丈夫だよと笑いかける瑞希。

 

「ねぇ、暇つぶしついでに聞いてくれない?ボクの話」

 

「──もちろん。聞かせてよ」

 

どこか憑き物が落ちたような顔で話を切り出した瑞希の言葉に当然と首を振る凛。そこから瑞希が話し出した話はどこまでも『人間』という存在の愚かさを表すような話だった。その話を聞き進める事に少しづつ凛の顔が無表情になり、話しきった頃には瑞希は涙声に、凛は明らかにキレたような様子になっていた。

 

「…こんな、所かな…?」

 

「そっか…ごめんね辛いことを話させて」

 

「ううん、大丈夫。聞いてくれてスッキリしたよ」

 

「そっか」

 

泣きそうな顔で笑う瑞希の様子にここまで追い詰めた周囲の環境を憎む凛だが、過去を憎んだところでどうしようもない。時間を巻き戻すことは出来ないのだから。しかしそんな瑞希の様子をただ見ているだけではおれず、凛はいつもまふゆにしているように静かに瑞希の頭を撫でる。

 

「辛かったろう」

 

「…うん」

 

「嫌だったろう」

 

「…うんっ」

 

「大丈夫、オレが──仲間がいるよ」

 

「…うん!」

 

「よーし、いつものカワイイ瑞希になった!」

 

「あはは、そうかな」

 

いつもの明るい笑みを瑞希が取り戻したのを見た凛が柔らかく微笑むと瑞希も笑顔で答える。

 

「もし、まふゆたちに伝えるのが怖かったらオレもついてってあげるからさ。いつか教えてあげてよ」

 

「うん!ありがと!…って、もうこんな時間!?」

 

「あらら、もうこんな時間か」

 

話し込んでいるうちに夕方になってしまっていたため、時計を見た瑞希が慌てて立ち上がる。それを見て優しく微笑んだ凛がまたおいでと言うと瑞希が笑顔でうん!と返して慌ただしく出ていった。

 

「…それにしても、服装一つでそんなに対応が変わるのか」

 

無機質に呟いた凛は納得がいかないと言ったように首を傾げたあとまあいいか。と呟いてベッドに寝っ転がった。凛にとって、性別も性格も容姿もどうでも良いものだからだ。自分と関わりを持ち騒いで遊べるのなら、どんな存在であれ歓迎する。それが『浅野凛』という人間なのだから。

 

「ただまあ──瑞希を傷つけたヤツらは、許さねぇ」

 

一切の感情を排斥したような顔でそう呟くと近くに置いてあったパソコンを掴んで何かを打ち込み始めた。




原作では明言されていませんが、私の作品では男であるとさせていただきます。

暁山瑞希
男であることにあっさり気が付かれていた人。凛にはバレてないと油断していたところを唐突に刺されて死ぬほどビビった。ただ、受け入れてくれていたことと気にも留めていない事を知り関係は更に良好になったと言える。

浅野凛
自分と関わりを好んで持ってくれ、なおかつ周りに迷惑をかけない人物であれば誰でも──例え、犯罪歴があろうと受け入れるヤベー奴。時代が違えば聖人と呼ばれていたであろう素質を持つ者。なお、絶許リストに入ったかつての瑞希の友人たちは知らない。慈悲など無いのだ。パソコンで何かをしようとしている。少なくとも、良いことではない。


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九話

二話続けてでなんなんですが閲覧注意的な描写を含みます。
詳しく言うと激しく体調を崩した凛くんの話なので血やらなんやらの描写が出てきます。
次の話はイベストだから許して…許して…


…風邪をひいた。そのことに気がついたのは朝目が覚めた時の事だった。体が異常に重い。身体中から警告音が鳴り響いているかのように響く耳鳴りに視界がぼやけるほどの頭痛。軋む体に鞭打って、無理やりナースコールを押すと意識が少しづつ薄れていく。ああ…これヤバいやつだ…。

 

「凛どうかしたか?…って、オイ凛?凛!?…オイ!誰か輸血の準備と点滴の用意をしろ!今すぐにだ!!」

 

しかし、いつもなら気を失い目が覚めればことが終わっているのだが、意識が消えるよりも前に、無理やり意識を叩き起されるような痛みが体を襲う。

 

「ア゛、カ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛! 」

 

痛みになれているとはいえ痛いものは痛い。口から血がこぼれるのが分かるが口から漏れる絶叫が止まることは無い。涙が溢れ、その際当然のように目の血管が切れて両目から血の涙が流れる。凄まじい苦痛と風邪と思わしき気だるさが同時に襲いかかってくる。

 

「グ ゥ…ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛! ! !」

 

体をよじり痛みを逃そうとするが痛みはオレを掴んで離さない。ああ…クソ…今度こそ死ぬかも…。

 

「凛…!凛!?」

 

薄れゆく意識の中、切羽詰まったような声が聞こえたような気がした。

 

★★★

 

凛の体調が崩れたと聞いた時、初めに思ったのはどれくらいのレベルで体調を崩したのだろう?ということだった。大切なはずの人が体調を崩したはずなのに良い子の仮面は心配を上回るほどの理性で冷静さを失うことは無かった。──そう、病院について凛の姿を見るまでは。文字通り血を吐きながら絶叫し、悶絶する凛を何とか抑えながら輸血や点滴、鎮痛剤などを打っている医者や看護師の姿を見て簡単に良い子の仮面は打ち壊された。自分でもわかるほど顔を青ざめさせながら慌てて駆け寄るが、ただの高校生の私に出来ることなんてない。自分の無力さと、絶叫する凛を見ていられなくて私はいつものようにセカイに逃げ込んだ。

 

「まふゆいらっしゃい…まふゆ?」

 

ミクが私を見つけて話しかけてくれるが、その言葉に何も返せずただ踞る私。どこか普通でない様子の私に少し混乱したようにミクがこちらを見て来て、数分もするとパタパタとどこかへ駆けて行った。

 

「凛…凛…!」

 

ほとんど感情なんて分からないはずなのに、凛が死ぬかもしれないとなると唐突に湧き上がる恐怖心。その恐怖をどうすることも出来ず蹲っているとミクに呼ばれたのか瑞希や絵名、奏が駆け寄ってくる。

 

「まふゆ!?どうしたの!?」

 

「ちょっとどうしたのよあんた!」

 

瑞希と絵名が背中を摩ってくれたり、奏が飲み物を渡してくれたりしたが恐怖心が薄れることは無い。無意識に震える体を押さえつけるように両腕を固く握りしめると奏がその手を取って優しく話しかけてくる。

 

「まふゆ、ゆっくりでいいから話して?私たちはまふゆの力になりたいんだ」

 

ああ、ここでもヒーローのような言葉を吐くんだな、と少しづつ復活しつつある良い子の仮面が無機質に考えるが、脳裏に過ぎる凛の姿にその仮面をすぐに砕かれる。

 

「…凛が」

 

「凛くん?凛くんがどうしたの?」

 

「凛の体調が悪くなったって…それで、病院に行ってみたら凛が血を吐いててそれで…」

 

いつもなら考えられないほど言葉や思考が纏まらない。しかし、凛の体の弱さを知っている三人は納得がいったように頷く。

 

「凛くん…今回そんなに体調崩してるの?」

 

「…うん。ここ数年あそこまで崩したのは久しぶりかもしれない。多分何かしらの病気…風邪とかにかかったのかも」

 

凛は体が弱いだけでなく、あらゆる病気への免疫も弱い。そのせいで、何かしらの病気にかかるとこうして体調を崩すことが多かった。ただ、今回ほど体調を崩すのは稀なのだが。

 

「そうなんだ…あ、そうだ!ねぇまふゆ、今からお見舞いって行けるのかな?」

 

「ちょっと瑞希!」

 

「えななん、言いたいことは分かるんだけど…友達が苦しんでるのに見て見ぬふりなんて出来ないよ」

 

瑞希が真剣にそういうのを見て軽く目を見張る絵名。まふゆも驚かなかったといえば嘘になるが、今はそんなことはどうでもいい。

 

「…お見舞い自体は出来ると思う。でも、良い気分にはならないと思う」

 

ある程度時間も経ち、落ち着いてきた頃ではあろうがそれでもまだ予断を許さぬ状態だろう。いつまた容態が急変するかも分からない。

 

「はぁ?そんなこと私たちが気にすると思ってんの?さっさと行くわよ」

 

「…外は暑いけど…うん、分かった。行こう」

 

奏達がセカイから退出した。恐らく病院へ向かう準備をしたのだろう。少し気分も落ち着いたため、私もセカイから出ることにする。もう一度病室に戻ると呻きながらも眠っている凛が見れる。

 

「ああ、朝比奈さんか。…一応、今のところは落ち着いた。ヤマも超えたしな…だが、予断は許されねぇな。それにこりゃあインフルエンザだな。たくっ、めんどくせぇもんにかかりやがって」

 

医者が明らかに苦虫をかみ潰したような顔をする。インフルエンザと聞き、私も顔を顰めてしまう。風邪ならまだしもインフルエンザだとすると最悪だ。本当の意味でいつ死んでもおかしくない。

 

「だがまあ、安心しな。コイツが死なねぇように手は尽くすからな」

 

「…お願いします」

 

頭をぺこりと下げると医者はさっさと外に出ていった。医者──桐谷悠人は少なくとも凄腕の医者だ。彼のことは信用できるだろう。今まで何度も凛の命を救ってきている。

 

「失礼します…あ、今は落ち着いてるんだね。良かったぁ…」

 

「失礼するわよ…って、これ血の匂い?」

 

凛のことを気にして気がついていなかったが、落ち着いてきて気がついたが病室には血の匂いが蔓延していた。まあアレだけ血を吐けばそうなるかと思いつつ、病状を軽く説明する。

 

「インフルエンザァ!?…って、それ私たちに移ったりしないの?」

 

「…しないよ」

 

「なんでそう言いきれんのよ」

 

「凛の体質。体からウイルスを一切出さない体質をしてるの。…その代わり体に入ったウイルスは体内で消滅するまで残り続ける。数年分溜め込んだ微量のインフルエンザウイルスが今になって発症したんだと思う」

 

「そんな体質あるんだね…」

 

凛の体質は今まで凛のことを見てきた全ての医者が首を傾げるような不思議な体質ではあるが、何年も付き添ってきたのだからもうそういうものなのだろうと割り切っている。

 

「あぐっ…」

 

「凛!?」

 

目が覚めたのか、胸元を強く握りながら体を起こそうとする凛。それを慌てて止めればポテッと頭が枕の上に落ちる。

 

「まふ、ゆ…?それに瑞希たちまで…ゴホッ!」

 

口から血が零れるが、それを意に返さず無理して笑おうとする凛。あまりに痛々しいその姿に眉をひそめてしまう。

 

「ゴホッ…ゴホッ…!」

 

しかし、流石の凛とは言えどもう話す元気も目を開く元気も無いのか定期的に漏れる咳と苦痛に呻く声だけが静かな病室に響く。

 

「…本当に体弱かったのね、凛って」

 

「確かに、いつも会う時は元気な時だからね~」

 

「こんなに苦しい思いをしてたんだ…」

 

どこか悲しげな様子の三人の声を聞きながら凛の手を握ってただ祈る。どうか、神様──凛を死なせないで。私から凛を奪わないで。

 

「…凛」

 

そう名前を呼ぶと、軽く握っている手に力が籠ったような気がした。




浅野凛
体内にウイルスわ溜め込む特殊な体質。というか、これ以外にもおかしなところがありすぎて医者もお手上げ状態。誰が呼んだかびっくり箱。体質のことが詳しく分かれば、ウイルス対策の大きな一歩になりそうなものだが、凛の体が弱すぎてどうしようもなかった。次の話では快復してる模様。

朝比奈まふゆ
また悲しい思いしてるよこの子…。暗い話になるのはだいたい作者のせい。でも次の話は楽しい話にするから許して。

桐谷悠人
しっかりと凛の体調や体質を加味して完璧な処置を施した。マジモンの有能。この人がいなかったらこの回で凛は死んでた。


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十話 走れ!体育祭!~実行委員は大忙し~ 【前編】

長くなりすぎたの前後編に分けます!



我完全復活也!!!!いやぁ、死ぬかと思いましたよ、ええ。シンプルに死にかけてたからね、マジで。血が足りないし身体中ボロボロだしで本当にやばかったでござる。五日間寝たきりだったらしいしね。本当にギリギリで、悠人がいなかったら死んでたらしい。なんか気に食わないが感謝は伝えておいた。

 

「お、いらっしゃいまふゆ」

 

「…うん。ねえ、凛」

 

「ん?何?」

 

まふゆが来た。最近来る頻度が少し落ちていたのだが、何かあったのかと思っていたところだ。

 

「…インフルエンザから体調が快復の傾向にあるでしょ?」

 

「ん、ああ…らしいな」

 

「…うん。だから、私の学校の体育祭見に来ない?」

 

「…え、行くけど」

 

「分かった。一応私の学校は招待式の体育祭だから、私が呼ばないと見にこれないの」

 

「お嬢様学校だなぁ…」

 

招待式の体育祭ってなんだそれ…大抵誰でも見にこれる感じじゃないのか…?いや、それは文化祭なのか?いやまあいいか。それにしても体育祭か、楽しみだなぁ。

 

★★★

 

走れ!体育祭!

~実行委員は大忙し~

 

さて、日にちは変わって体育祭本番。まふゆに車椅子を押されやってきたのは宮益坂女学院そう、女学院である。右を見ても女子、左を見ても女子。上を見ても女──まふゆが見える。うーん、これは気まずい。

 

「随分気まずそうだね、凛」

 

「当たり前なんだよなぁ…あ、そういや知り合いに話しかけに行っていいか?」

 

「うん!もちろん良いよ?」

 

なるほど、そりゃ外だから良いこのお面被るか。というか、まふゆの両親は来てねぇんだな。…ま、そりゃそうか。あの人らも忙しいだろうし。

 

「つーか、俺どこで見るんだよ」

 

「ふふふ、それはね…」

 

カラカラと車椅子を押され、連れていかれたのは──まふゆのクラスメイトが座る場所。つまり、保護者席では無く生徒側の場所だった。

 

「なんでやねん!」

 

「こら、叫ばないの」

 

「いや、叫ぶよね?おかしいからね?なんでここなの?」

 

「じゃあ保護者席で一人でみれるの?」

 

「それは…うーん…うーん…」

 

「ほら、無理なんじゃない」

 

「ぬっ…」

 

なんか言いくるめられたら気がするんだが?ほら、見ろよ!周りの生徒たちがめちゃくちゃこっちのことを好奇心たっぷりな目で見てるだろうが!

 

「…まあいいや。まふゆはなんの競技で出るん?」

 

「二人三脚とリレーだよ?あとは学年全員でやるやつかな」

 

「へぇ、リレーってあれか?走るヤツ」

 

「それ以外あるのかな?」

 

「いや、やったことも見たことも無いし」

 

「ああ、そうだね」

 

リレー見たことないなぁ。走るってことしか知らない。まあ見てれば分かるかな?…兎にも角にもだ。

 

「よし、知り合い探しの旅に出よう」

 

「良いよ。誰から行く?」

 

「え…うーん、そうだな。じゃあ遥の方──桐谷遥のとこ行くか」

 

「うん、分かった」

 

車椅子を押してもらいながら一年生の所へ向かう。あ、居た。相変わらず人気だねぇ。

 

「…あれ?もしかして凛?」

 

「もしかしなくても凛ですが?…よお、久しぶりだな遥」

 

「うん、そうだね…って、朝比奈さん?」

 

「こんにちは桐谷さん。凛とは幼なじみなの」

 

「そうなんですね…ちょっと凛、聞いてないけど?」

 

「言う必要あります??」

 

「は?」

 

俺と遥の視線がぶつかり火花が散っているような幻影が見える。昔からこいつと話すと煽りあいになる。

 

「まあいいや、回るところ多いからこんくらいにしとくわ…後ろの人らも聞きたいことが多そうだしな」

 

「え?…って、ちょ、ちょっとみんな?」

 

人の波に飲まれてった遥の姿を見て笑いながらまた別のところに行こうとして…後ろから呼び止められる。

 

「あー!凛くんだ!」

 

「…お、咲希ちゃんじゃん!やっほー」

 

「うん!あ、朝比奈先輩こんにちは!凛くんの付き添いですか?」

 

「こんにちは、咲希さん。そうなの、私の招待枠で呼んだから」

 

「そうなんですね!あっ、そういえば朝比奈先輩のことを先生が呼んでましたよ?」

 

「本当?…うーん、じゃあそうだね…咲希さん、凛のことお願いしていい?」

 

「はいっ!任せてください!」

 

「うん、よろしくね。凛もお行儀良くね?」

 

「俺は子供か?…まあいっか、じゃあちょっとの間よろしくね」

 

「うんっ!エスコートしちゃうよ~!」

 

レッツゴー!とニコニコしながら車椅子を押してくれる咲希ちゃんと会話をしながら色々なことを教えてもらう。最近の学校のことや幼なじみの事。

 

「あ、そうだ凛くん!」

 

「ん?どうしたの?」

 

「みんなが会ってみたいって言ってたから会ってみない?」

 

「みんなって言うと…幼なじみの?」

 

「うんっ!どうかな?」

 

少し不安げに聞いてくる咲希ちゃんだが、答えは決まっている。それはもちろん

 

「当然。俺も会ってみたいしね」

 

「ほんとっ!?…えへへ、実はねこの部屋の中にもう集まってもらってるんだ」

 

「あれ、それつまりどうなっても会わせるつもりだったのでは??」

 

「だった、凛くんは断らないだろうな~って思ってたから!」

 

「まあ断らないけどまね」

 

いつの間にやら誘導されていたようで、俺の目の前には教室がありその中に集まっているのだそうだ。咲希ちゃんが扉を開くと、そこには三人の少女。左からクールそうな黒髪の子と、その右には茶髪の穏やかそうな少女、そしてこちらを静かに見つめてくる銀髪の気の強そうな少女。なるほど、彼女らが…

 

「君たちが幼なじみちゃんって訳か…浅野凛です。よろしくね?」

 

「あっ、はい!星乃一歌です。よろしくお願いします」

 

「望月穂波です。よろしくお願いしますね」

 

「日野森志歩。…まあ、よろしく」

 

「天馬咲希でーす!よろしく!」

 

「うん、咲希ちゃんは知ってるからね?」

 

えへへーなんて笑う咲希ちゃんにつられて笑うと少し緊張気味だった三人も笑う。

 

「話は昔から咲希ちゃんから聞いてたからね、一度は会ってみたかったんだ」

 

「私たちも、咲希から話を聞いてて会ってみたかったんです」

 

「うーん、それは悪い虫は私たちが払う!的な?」

 

意地悪く聞いてみると銀髪の子を除いて二人がどこか慌てたように手を振りながら違います!なんて言う。これがまふゆだったら普通に殴られてたかもしれない。

 

「あはは、冗談だよ。からかっただけ…あ、まふゆには内緒な?殴られるから」

 

「朝比奈先輩が?あんまりイメージ出来ませんけど…」

 

「そうか?案外ツッコミとか入れるタイプだぞ?」

 

まあその前に毒舌という言葉が付くが。毎度毒舌を吐かれている絵名はキレていい。うん、もう本気で。しかも悪気ないのが本当にタチが悪い。

 

「まあまふゆの事はいいや。…あっ、そういえばバンドやってるんだっけ?」

 

「はい、Leo/needって名前でバンドをやってます」

 

「Leo…しし座流星群だっけ?見たことないんだよね」

 

「…見たことないの?」

 

「うん。見ての通り昔から病気がちだったからさ。つい最近も死にかけたところなんだぜ?」

 

それもインフルエンザでと笑うと目を見開いて固まる三人。すると笑い事じゃないよ!と咲希ちゃんに怒られる。

 

「まあこういう身だからね、普通の人が体験してることは出来てないんだよ」

 

今回は死ななかったが、次の病気で生き延びる自信はない。まあ何せいつ死んでもおかしくない身だ。

 

「だからまあ、笑って生きるのが良いさ。病は気からとも言うしね」

 

「凛くんは生まれつきだからその理論効くのかなぁ…」

 

「効いてもらわないと困るなぁ!なにせ次こそほんとに死んじゃうぞぅ!」

 

「えぇ!?それはダメだよぉ!ほら、笑って笑って!」

 

「いやいや痛い痛い!頬引っ張っても笑顔にはならないって!」

 

咲希ちゃんとわちゃわちゃしてると三人がくすくすと笑い出す。

 

「笑ってないで助けて欲しいかなって!!」

 

「ふふ、咲希ちゃーん。ストップだよぉ」

 

咲希ちゃんのことを穂波ちゃんが回収していく。やっぱりキミそういう役割なんだね。でも多分この三人の精神的な支柱は咲希ちゃんと一歌ちゃんだろう。だから、まあ。

 

「なにか相談があるなら何時でも聞くよ。何せ、病人だけど知り合いの数だけは人一倍だからね」

 

何せ俺のスマホの中には科学者、医者、アイドル、ストリートミュージシャン、音楽家…なんでも出来そうなくらいの連絡先が入ってる。

 

「…まあ、頼れそうなことがあればね」

 

「あっ、身体的な事はやめてね」

 

「そんなことするはずないでしょ」

 

志歩ちゃんに氷のような冷たい目で見られるがそんな眼力ではまふゆには勝てないぞぅ!…いや、あれはなんだろう…氷とか言うより…地獄とか深淵とかを煮詰めた冷たさだ。

 

「あっ、そうだ。バンドの演奏をする時があったら呼んでね。体調が良ければ見に行くから」

 

「ねえ、一歌」

 

「…うん、私も同じ事考えてると思う。咲希!穂波!」

 

「いっちゃん?どうしたの?」

 

「二人とも、あそこ、行くよ」

 

「え?…あっ!うんっ!分かった!ほなちゃん!」

 

「えぇと…うん!」

 

咲希ちゃんが俺の手を軽く掴むと四人同時でスマートフォンを取り出す…まさか。そこまで考えが至ったところで、四人のスマートフォンの音楽ファイルが起動され、そこへと至る。そう、その場所の名は──

 

「──セカイ?」

 

「…凛くん知ってるの?」

 

「…ああ、まあ。知り合いから聞いた程度だけど」

 

さすがにまふゆのセカイのことは話せないので濁して伝える。…しっかしマジか。咲希ちゃんたちもセカイに関わってるとは…。

 

「ミク、居る?」

 

「あれ?一歌?それに貴方は…?」

 

「ええと、浅野凛です。よろしく」

 

ミクに手を差し出すとミクも手を差し出してくれ、手を握ってくれる。…その瞬間だった。

 

「あっつぅ!?…って、これって…?」

 

手元のスマホには新たな音楽ファイル、needLeが追加されていた。これが、このセカイへの鍵?

 

「…まさか、これって…」

 

「…レオニミクさんや、多分気にしない方がいいよ。これは俺の問題だから」

 

「…そっか。うん、そうだね。その代わり何時でもここに来てね、歓迎するから」

 

「はは、そっか…うん、ありがとう。暇が出来たら来るよ」

 

俺とミク──Leo/needを略してレオニミクと呼ぶことにする──が話していると咲希ちゃん達に呼ばれる。そちらに行くとそこには楽器を携えて立つ四人の少女たち。そこに車椅子を押してくれていたレオニミクも歩いていき、ギターらしきものを手に取る。

 

「時間的に一曲しか出来ないけど…聞いてください、『needLe』」

 

その瞬間、5人同時に演奏を始めた。

 

★★★

 

…始めて聞いた五人の演奏は圧巻とも言うべきものだった。レオニミクも含めた五人の確かな絆と練習の証を感じる良い歌だった。…ふふ、これはまふゆに自慢出来るかも。パチパチと拍手をする。

 

「…どうでした?」

 

「…うん、とてもいい曲だった。…また、聞かせてもらってもいいかい?」

 

「当然でしょ。私たちはもっと上に行く…その時まで生きててよ」

 

「うんうんっ!凛くんにも聞いて貰うためにもっと上手くなるぞ~!」

 

「咲希ちゃん…それだと目的が変わってきちゃうよ?」

 

柔らかい雰囲気で話す四人の光景をミクと微笑みながら眺めていると、時間がそろそろ危ういことに気がつく。まだ挨拶できてない人もいるけど…まあ、それよりもっといい経験ができたから良いかな。

 

「そろそろ戻らないと不味そうかな?まふゆも探してそうだしね」

 

「あっ!そうだった!みんな、戻ろ!」

 

「うん。…凛さん、行きましょう」

 

俺の手を取って全員の手が俺の手を包み込むように掴んだ四人は同時に曲を停止させ、元の教室に戻る。

 

「…良い経験をありがとう。体育祭も応援してる」

 

「うんっ!必ず勝つから!」

 

「ならまふゆも倒さないとな」

 

「…えっ」

 

「行けるさ…まふゆも人間だ。勉強方面なら俺の方が賢いしな」

 

「そうなの!?」

 

「そうとも。これでも俺は賢いんだぜ?…ま、学ぶ時間もあったしな」

 

「へぇ、じゃあまた今度テスト勉強でも教えてもらおうかな」

 

「あはは、俺の病室に来てくれれば何時でも教えるよ」

 

少し打ち解けてきたみんなと話しているとまふゆが俺の姿を認めたのかこちらへと歩いてくる。

 

「やっと見つけた。咲希さん、ここまでありがとう」

 

「いえいえ!それじゃ私たちはこの辺で!」

 

「うん。じゃあ失礼します、朝比奈先輩、凛さん」

 

「うん。…あっ、忘れてた。俺の連絡先渡しとくよ。またね~」

 

「はいっ、またお話しましょうね!」

 

「ん、またね」

 

四人が後ろで手を振っているのに手を振り返す。すると、まふゆが笑っているようで笑っていない笑顔で話しかけてくる。

 

「随分、仲良くなったんだね?」

 

「…え、まあ、うん。…なんでそんなに怒ってるんですかね?というか抓るなよ!痛えな!?」

 

脇腹を抓られ地味に痛い。インフルエンザの時の百分の一くらい…あれ?それそこそこ痛くない?

 

「まあちなみに秘密」

 

「…そう」

 

「仮面、剥がれてんぞ」

 

「…いい事あったんだね、凛」

 

「ああ──初めて、流星群を見た気がするよ」

 

そう笑うとまふゆは首を傾げる。分からなくていいさ、いつか話すよ。…いつか、ね。




凛は 教室のセカイへ 行けるように なった ! \テテテテーン/

Leo/needの 面々と 仲良くなった ! \テテテテーン/

そしてここで明かされる新情報:凛はまふゆより頭がいい。というのも、知識量やらなんやらを加味すればの話であって、学校的な学力で言うと互角──まあすなわち両者満点ということになります。チートしかいねぇのか。

Leo/needの面々からの凛の印象は好印象かつ儚げな印象。何せ、つい最近まで死にかけてたからね、仕方ないね。

ということで後編でお会いしましょう。Leo/needの面々がちょろくないか?という意見がありそうですが、どうしてもここでバンドとセカイへの鍵を手にして欲しかったのでこういう流れにしました。ユルシテ…ユルシテ…


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十話 走れ!体育祭!~実行委員は大忙し~ 【後編】

さて、そろそろ体育祭が始まる頃だ。まふゆにも勝って欲しいが咲希ちゃんたちにも勝って欲しい。…まあ、もちろん勝負だからどちらが負けるのは確実なのだが。そう考えていると、元気な少女の声が響いた。

 

『宣誓~っ!あたし達は正々堂々戦って、笑顔いーっぱいの、楽しい体育祭をすることを、ここに誓います!』

 

すごく見知った顔だった。と言うかえむちゃんだった。

 

「あっははは!えむちゃんらしい宣誓だな」

 

「鳳さん、体育祭のために色々頑張ってたからね」

 

「へぇ~そりゃ楽しみだ」

 

最初は玉入れらしい。玉入れって言うと…あのカゴに玉を入れるやつか。つーかさ。

 

「俺なんで最前線で見てる訳?」

 

「あはは、みんなに頼んだら快くOKくれたんだよ?」

 

「…いや、なんかすんません」

 

ペコッと頭を下げると全員が苦笑いを向けてくる。うん、何となくわかったよ。とても申し訳ない。

 

「おっ、始まった…って、一年生の競技なのか」

 

「うん。…あっ、あそこにさっき話してた子がいるよ?」

 

「ん…?おお、志歩ちゃんか。頑張れ~」

 

あんまり声を出すと喉がやられるので軽く応援するとさすが音楽関係者と言うべきなのかそれだけで気がついたのかこちらに手を振ってくれる。優しい。

 

「あらら、なんか投げれてないな」

 

「そうだね。何かあったのかな?」

 

「いやあれ多分ペンギンが可愛くて投げれてないだけだろ」

 

「あはは、そうかも」

 

志歩ちゃんが大切そうに抱える玉にはペンギンが描かれており、周りの友人であろう少女達があわあわしてるから多分そうなんだろう。可愛いのはわかるけど投げないと勝てないんだよなぁ…。

 

「ま、それよ体育祭の楽しみってとこか」

 

「ふふ、そうだね」

 

そうこうしていると、玉入れが終わり次の競技に移る。これは棒取り…?

 

「棒取りってなんだ?」

 

「文字通りだよ?ああやって倒して置いてある棒を取って取った数で点数が決まるの」

 

「超肉体派ぁ…」

 

俺がやるとミンチになるんだろうなと思いながら見ていると見覚えのあるピンクの髪の少女が凄まじい勢いで飛び出し次々に棒を奪っていく。

 

「あははは!なんだありゃ、愛莉の独壇場じゃん!」

 

「あはは、あれは強いね」

 

「…って、あの人が取りに行ってる棒のとこには誰も行かねぇな」

 

「ああ、日野森さんね?多分怪我させちゃ行けないとか思ってるんじゃないかなぁ?」

 

「ああ、そう言う…」

 

そういえばここは女子高。絵名や瑞希が言うには女子が多ければ多いほど面倒なしがらみ…そして、一部の生徒を崇めるような扱いになることが多いらしい。まふゆと同じく日野森さんとやらもそういう扱いなのだろう。というか日野森…?いや、まあいいか。

 

「うーん、これが無双か…」

 

「文字通り無双だったね…」

 

心做しかまふゆの顔も引きつっているような気がした。いや、一人で棒を五本奪ってくアイドルがいるらしいですわよ。いや、愛莉なんだけどね?

 

「まあ面白かったな…で、次の競技は──お、まふゆの出番だな?」

 

「うん、二人三脚だね…行ってくる」

 

「おう、いってら…俺もちょっとその辺見てくるか」

 

周りの人達に断りを入れて場所を変えることにする。こういうのは話せる相手がいた方が楽しいだろう…っと、あれは。

 

「やっほー、志歩ちゃん。玉入れ見てたよ」

 

「知ってる」

 

「なんか一個だけ投げれてなかったけどね」

 

「うっ…あれは可愛すぎて投げれない…」

 

「あはは!ペンギン好きなの?」

 

「あの距離から見えてたの?」

 

「え?ああ、体が弱い代わりに他の機能がより発達してるんだよね、目とか耳とか」

 

耳に関しては生まれついての絶対音感だし、目に関してはまふゆに人外認定されるレベルで良い。まあひとつのものを見すぎると目の血管が切れるのでプラマイゼロだろう。

 

「そうなんだ…そろそろ二人三脚始まるけどいいの?」

 

「んげっ、これみてないと怒られる。またね」

 

「うん、また」

 

カラカラと車椅子を押しながらグラウンドがよく見えるところへ移動すると丁度いいタイミングでまふゆと…あれはえむちゃん?なんだ、あの二人がチームだったのか。

 

「…うーん、あんまり良くない感じ」

 

まふゆもえむちゃんも身体能力が高いことがバレているからか、周りの面々がブロックするように走っていた。勝ちに拘ってるねぇ…でも、それはちょっとつまんないかな?

 

「──まふゆッ!」

 

喉が切れて血の味がするが、この程度ならばすぐ治る。俺の声が聞こえたのか聞こえなかったのか、ぐんっとまふゆとえむちゃんが加速する。その加速についていけずに周りのブロックが剥がれ──そしていつの間にか二人は一着でゴールしていた。その結果に笑みを浮かべながら生徒側の席ではなく、選手として出ている生徒たちが出てくる出口の方面に向かう。

 

「まふゆ、えむちゃんお疲れ様」

 

「うん、ありがとう…届いたよ、応援」

 

「そりゃよかった…えむちゃんもね」

 

「凛くん!来てたなら教えてくれれば良かったのに~!」

 

「ごめんごめん、他の人と話してたら時間無くなっちゃってさ」

 

ぴょーんと飛んできたえむちゃんを受け止め、軽く笑いながら言うとえへへと笑顔を見せてくれる。ぐっ、眩しい…!

 

「何馬鹿なことやってるの?戻るよ」

 

「あーい。またね、えむちゃん」

 

まふゆに車椅子を押されながら元の場所に戻る。周りの生徒たちの歓声に答えて対応してるのを尻目に一年生の徒競走を眺める。案外早いんだなと思ってみていると、一人の少女が走り終えた後に明らかに足を気にしている動作をしていた。…ふむ。

 

「まふゆ、保健室って空いてるのか?」

 

「え?うん、空いてるよ?体調悪くなった?大丈夫?」

 

「…いや、それならいいや。多分、あそこの子足痛めてるから空いてなかったら心配だなと思っただけ」

 

まあ空いてるならいいやと思い、様々な競技が移り変わる様子を見ているとまふゆが静かに立ち上がる。つまり、次はまふゆの出る競技ということだ。

 

「なんの競技?」

 

「学年対抗リレー…まあ要するに全学年で戦うリレーかな?」

 

「…へぇ、そりゃ面白いな。頑張れよ」

 

「うん。勝ってくるね」

 

そう言って走っていくまふゆ。…一人だけで走るなら朝比奈まふゆが最強だろう。何せ、あれは天才だ。どんな経緯であれ勝ちを譲ることは無いだろう。でも、チーム戦ならば…負けも有り得るかもしれない。

 

「負けても勝っても面白い…最高のゲームだな」

 

まあ個人的には全員同着とかの方が精神的に安らぐのだが。あまり勝ち負けという括りは好きじゃない。全員に勝って欲しい。笑っていて欲しい…そう願ってしまう。

 

「…始まった、か」

 

始まった当初はほぼ横並びで差はなかったが、少しづつ二年生が突出し始める。…こういうのって三年が勝つものだと思っていたんだがな。すると見覚えのある青髪の少女が駆け出した。

 

「ははははは!遥も出てるのか!」

 

笑いすぎて血を吐きそうだ。なんだこれは、俺の知り合いのドリームマッチでは無いか。ほぼ同時に二年生と一年生のバトンがアンカーに渡る。そしてアンカーは鳳えむと朝比奈まふゆ…つまり、フィジカルお化けVS才能お化けだ。後は──想いの差、かな?

 

「うん、やっぱりこうなったね」

 

熱戦とは打って変わってあっさりと決着が着く。

 

一着:鳳えむ

二着:朝比奈まふゆ

 

…まあ、そういうことだ。俺の前で初めて、朝比奈まふゆが負けた。まあそういうこともある。…まあそれでも、慰めてやるくらいはするか。

 

「おつかれ、まふゆ」

 

「うん…負けちゃった」

 

「まあそういうこともある…しゃーねーよ」

 

肩を軽く叩きながら笑うと曖昧に笑うまふゆ。また後で慰めて上げよう。優しいからね。

 

「ほら、行ってこいよ。閉会式だぞ☆」

 

「ウザイね」

 

「よし、お前後で覚えとけよ」

 

拳を握りながら言うとさっさと歩いていくまふゆの後ろ姿を見ながら笑う。まあ、昔より大分マシかな?

 

「うん、まあ来てよかったかな」

 

ライブや体育祭を見れてとても充実した時間だった。…はぁ、またこういうの来たいなぁ。祭りとかそう言うの。

 

走れ!体育祭!

~実行委員は大忙し~

END




浅野凛
くそ強メンタルボーイ。ほぼまふゆの保護者になりかけてる。

朝比奈まふゆ
くそ強メンタルボーイに良いところを見せれなくて少し悲しかった…気がする。



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十一話

赤帯になっててビビり散らかしてます。
おそロシア…


なんだか、最近体の調子がとても良い。インフルエンザが治った影響だろうか?…いや、それ以外の影響かもしれないけど体の調子が良いのはとても良い事だ。

 

「んー…よし、いいこと考えた!」

 

セカイに行こう。誰もいないセカイって最近行けてないし…それに、何となく行った方がいい気がする。

 

「ということで、レッツゴー」

 

音楽ファイルから『悔やむと書いてミライ』を再生する。ちなみにちゃんと車椅子には乗った状態で再生した。光とともに俺は灰色一色で出来た何も無いセカイに降り立つ。

 

「相変わらず何も無いなぁ…」

 

とりあえずミク…うん、このセカイのミクはニーゴミクって呼ぼう。レオニミクと分からなくなるからね。

 

「あ、居た」

 

「いらっしゃい、凛。久しぶり」

 

「うん、久しぶり。元気にしてた?」

 

「うん。元気だよ」

 

そうニーゴミクと話していると、誰かの視線を感じる。視線を感じる方向を見てみると黒と白のツートンカラーのリボンをつけた金髪の少女がこちらをじっと見つめていた。

 

「ええと…君は?」

 

「…リン。鏡音リン、よろしく」

 

「ああ、うん。浅野凛だよ、よろしく」

 

鏡音リンと名乗った少女──十中八九バーチャルシンガーであろう少女に手を差し出すと握り返してくれる。あら、思ったより素直。

 

「いつからこのセカイに居たの?」

 

「…さあ?私にも分からないけど。いつの間にかここにいた」

 

「へぇ、そんな感じなんだ」

 

そういえば絵名に何かあったと聞いたような気がする。それが起こったのは俺が体調を崩していた時だったから詳しくは知らないがその関係でこのセカイにやってきたのだろう。てかリンって名前被ってるじゃん。

 

「ところでニーゴリン」

 

「…待って、ニーゴリンってなに?」

 

「『25時、ナイトコードで。(ニーゴ)』が関わるセカイの鏡音リンだからニーゴリン」

 

「じゃあ私はニーゴミク?」

 

「そうなるね」

 

ニーゴリンにとんでもなく不可解なものを見る目で見られている気がするが、仕方が無い。まさか二つ目のセカイに関わるとは思ってなかったし、他のセカイにもバーチャルシンガーがいるとも思ってなかった。まあ呼び名なんてなんでもよかろうて。

 

「まあそれはそれとして」

 

「うん」

 

「ここって他にもバーチャルシンガーが増える可能性もあるの?」

 

「さあ?あるんじゃない?セカイは想いによって形を変えるから」

 

「ふぅん…そっか」

 

まふゆの『自分を見てもらいたい』って想い見たいのが絵名や瑞希達にもあるってことかな?俺には…無いか。

 

「そっか。ねぇ、ニーゴリン」

 

「なに?」

 

「なにか歌ってくれない?前にニーゴミクには聞かせてもらったからニーゴリンの歌も聞きたいなーって」

 

「…まあ、別にいいけど」

 

「ほんとに?やったぜ」

 

フー!とか言いながら手を上げると呆れたようにこちらを見てくるニーゴリン。ニーゴミクは無表情ながら手を上げてノってくれていた。ええ子や…

 

「…じゃあ行くよ」

 

「おう」

 

すぅ…と息を吸ってニーゴリンは歌い出した。ニーゴミクに教えて貰ったところこの曲の名前は『限りなく灰色へ』というらしい。絵名の曲、か…

 

「才能、か…」

 

才能ってなんなんだろうか…なんて、暗いことを考えるのはやめて、ニーゴリンの歌に聞き入ることにした。ちなみに歌が終わったあと、ニーゴリン褒めちぎると顔を真っ赤にしてプルプルしてました。可愛い。




満たされないペイルカラー
才能に苦しむ系ツンデレ少女ことえななんがああやらこうやらする話。ちなみに、なぜ凛が関われなかったのかと言うと、インフルエンザで寝込んでいたから。正しく無能。でも仕方がない。

浅野凛
アグレッシブ貧弱クソ雑魚オリ主。ニーゴにいるからニーゴリンとか言うネーミングセンスをしている。ニーゴリンは弄ると楽しいことに気がついた。絵名と同じく古き良き趣あるツンデレを感じた。

ニーゴリン
ツ ン デ レ !些かデレが多い気がするがツンデレである。作者の大好物だが、書きにくくて仕方がない困った子。


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十二話

ニーゴの作業風景配信見ながら書いてます。
天才か?この企画。


パソコンを開き、アプリを開く。アプリの名前はナイトコード。招待されたサーバーへと飛ぶと、そこには雪、K、Amia、えななんと見慣れた名前たち。まあつまり──

 

『いらっしゃい凛く──んんっ!もといSick!』

 

「やっほーAmia。招待頂き歓迎だよ」

 

『いらっしゃい、Sick』

 

「まふ…あー、雪か」

 

今俺は25時、ナイトコードで。のグループにいる。夜暇なんだよね~とAmiaに相談するとそれが雪に伝わり、その流れてKとえななんに伝わった結果何故かナイトコードのグループに招待してもらえたというわけだ。最近夜眠れなくて暇だったからありがたい限りだ。

 

『Sickって…前も思ったけど名前安直よね』

 

「いや、えななんにだけは言われたくなかったけど?」

 

『そーそー!えななんだけは言っちゃダメでしょ!』

 

『うっさいわね!別に名前なんてなんでも良いでしょ!?』

 

テノヒラクルーしてますよお嬢さん…まあ名前考えるのめんどくさいよな、マジで。

 

『……ごめん、ミュートしてた。いらっしゃいSick』

 

「ありがとうK。…いやほんと、暇なのよ夜」

 

『…寝れないの?』

 

「昼間に寝すぎて寝れない」

 

『贅沢な悩みよね、ほんと』

 

『えななんも人のこと言えないでしょ?』

 

『なんであんた私にだけそんな感じなわけ!?』

 

『そんな感じって…どんな感じ』

 

『あんたねぇ…!』

 

みんないつもはこんな感じなのかと口元が緩む。俺が知ってるみんなは病室に来てくれる時のみんなと体調がいい時に外に出た時のみんなくらいだ。

 

「ふふ…いいなぁ」

 

『ん?何か言った?Sick』

 

「ああ、いや…なんて言うか、友達とこんな感じで通話したりなんて今まで出来なかったからこういうのもいいなって」

 

『そっか…でもほら!今なら話せるよ!ね、えななん!』

 

『なんで私に振るのよ!雪に聞きなさいよ!』

 

『…よく分からない。えななんはどう思ったの?』

 

『はぁ!?嘘でしょ!?…べつに、その…良いじゃない今は私たちがいるし…』

 

「え?」

 

『なんでもないわよ!』

 

「えぇ…なんで怒鳴られたんだ…?」

 

『あははは…』

 

理不尽じゃない…?いや、まあいいや。多分俺が悪いんだろう。分からんけど。何かした覚えもないけど!

 

『ふふ…あ、そういえばSick』

 

「ん?なにー?」

 

『雪から歌得意って聞いたんだけど、また今度ニーゴの歌を歌ってみてくれないかな?』

 

『K!?それは難しいんじゃない?』

 

「歌を…?どんなものかによるかなぁ?あんまりハイテンポだったり高音を求められるようなのは厳しいかも。血を吐く事になるから」

 

『それは大丈夫、バラード調の曲だしそれにSick用の曲も用意してるから』

 

『その曲ってもしかして…』

 

『うん、少し前に作ったあの曲。実は前々から雪と相談してて…』

 

なんでもまふゆの感情を取り戻す一環になるのではないか?との事らしい。そういえば昔は歌ったりもしてたなぁ…まあでも、そういうことなら。

 

「当然。聞いてみてからになるし歌詞も覚えないといけないから少し時間かかるかもだけど…」

 

『うん、大丈夫。今からデータを送るね』

 

ポンッと通知音がなり、KとのDMを開くと件の音楽ファイルが入っていた。ミュートにしてからその曲を再生する。…うん、このくらいのテンポの曲なら大丈夫かな。ミクが歌ってる音程も十分出せる音程だし…よし、OK。

 

「数日練習させて貰おっかな。自分的にいい感じになったらまた言うね」

 

『うん、待ってる』

 

歌詞をざっと見る…相変わらずいい曲を作るなぁ。…って

 

「…この歌詞」

 

『もう気がついたんだ』

 

「ははっ、粋なことをしてくれる」

 

これはちょっと楽しくなってきたかもしれない。




次回に続くッ!
別に前後編って訳では無い。


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十三話

誤字訂正
ジュヘナ→ジェヘナ
完全に覚え間違いしてました!ごめんなさい!!


すぅ…と息を吸い、マイクに向かって静かに歌う。曲を渡してもらってから数日がたち、ある程度歌えるようになったため、今俺は瑞希の家で録音させてもらっている。

 

「~~♪~~♪!」

 

最後まで歌いきると、後ろで見ていた瑞希が拍手してくれる。久しぶりに歌なんか歌ったなぁ…。

 

「凄く上手だったよ」

 

「おう、ありがと…疲れた。というかこれどうすれば…」

 

「あはは、任せて」

 

音源をどうすればいいのかあたふたしていると瑞希が笑いながらさっさと音源をKに送る。

 

「よーし!これでOKかな!」

 

「ありがと。というかこの音源どうするの?」

 

「ふふふ~それはね~!な・い・しょ!」

 

「えぇ…」

 

すごく気になるヤツだ。兎にも角にも病院戻るか…。

 

「じゃあすまんけど…」

 

「大丈夫大丈夫!まっかせて~!」

 

「助かる~!こっから帰ろうとすると物理的に骨が折れるからさぁ」

 

「うーん、洒落にならないね…。ねぇ、凛くん」

 

「んー?なにー?」

 

「もしさ、ニーゴに入れるって言ったらどうする?」

 

「は…?いやまあ入れて貰えるって言うなら入る…かな?急にどうしたの?」

 

「あはは!なんでもなーい!仮定の話だよ仮定!」

 

「ふぅん…」

 

瑞希の様子に首を傾げながらふぅっと息を着く。こっそりと笑を零している瑞希に気が付かずに。

 

『みんな!入ってくれるってさ!』

 

『…わかった。じゃあ25時、ナイトコードで』

 

俺の知らないグループでそんな会話があったことを知らずに。

 

=======================================

25時、ナイトコードで。【公式】 @ni-go.nightcode

本日25時に新曲をアップします。その際にお知らせがあるので25時にまた会いましょう。by K

 

RT 3.5万 ♡ 5.2万

 

=======================================

 

★★★

 

25時、ナイトコードでみんなに呼ばれログインする。

 

『やっほー』

 

「Amiaこんばんは…ええと、何事?」

 

『なによAmiaに聞いてないの?』

 

「なにが?」

 

何か言われただろうか?特に何かを言われた覚えはないんだが…

 

『雪も?』

 

『…うん。今日はSickと会ってないから』

 

『ふぅん…ねぇ、Sick』

 

「なに?」

 

『アンタ、ニーゴに入らない?』

 

「…はい?」

 

聞き間違いか?いや、聞き間違いじゃなさそうなんだよなぁ…。

 

『HA?じゃないわよ。なんのために録音したと思ってんのよ!』

 

「いや、知らないけど…」

 

『ニーゴの曲として投稿すんのよ!』

 

「ああ、そういう…」

 

まあ投稿する分には全然構わない。投稿するとは思って無かったが無許可でも全然許した。

 

『まあ、そういうことかな』

 

「本当に入っていいんだな?」

 

『当然!むしろ入って欲しいってお願いしたいくらいだよ~!』

 

「…うん、わかった。じゃあ入らせてもらおうかな」

 

『分かった。じゃあ投稿するね』

 

「え、ああうん。なんかいざ投稿するってなるとなんか恥ずかしいな…」

 

『あはは!分かる!ボクも最初は恥ずかしかったよ~』

 

『…私も』

 

『『「いや、雪は嘘でしょ」』』

 

まふゆが恥ずかしがるわけがないんだよなぁ…それも今よりもっとなんとも思ってなかっただろうし。

 

『とりあえず、SickにはSNSを始めてもらいます!』

 

「え、あ、うん。分かった」

 

Amiaの言う通りにアカウントを作成し、ニーゴの新メンバーとして入る云々とをツイート。

 

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♥25時、ナイトコードで。【公式】、えななん【ニーゴ】、Amia【ニーゴ】がいいねしました

RT25時、ナイトコードで。【公式】、えななん【ニーゴ】、Amia【ニーゴ】が共有しました

Sick @ni-go.Sick

新メンバーのSickです。体が弱く、身体面最弱なためあまり浮上したり歌ったりは出来ませんがよろしくお願いします。

 

RT 1.5万 ♡ 2.3万

=======================================

 

五分。たった五分で万単位のいいねやRTが着く。恐ろしきかなニーゴの人気。

 

「ひぇ…」

 

『まあそうなるわよねぇ…』

 

「とりあえずえななん達だけフォローしとく」

 

『うん、ボクたちも返しとくね!』

 

そうこうしているうちに25時になる。

 

『じゃあ投稿するね』

 

=======================================

 

25時、ナイトコードで。【公式】@ni-go.nightcode

新曲投稿

ジェヘナ

https://ni-go.dougahaisin.com

歌唱:Sick

作詞:Sick、雪

作曲:K

イラスト:えななん

MV:Amia

 

RT3.8万 ♡5.9万

 

=======================================

 

 

ほんとに投稿された…動画配信サイトでニーゴのチャンネルを調べてみると本当に投稿されていた。

 

「まじかぁ…」

 

『よーし!じゃあ見てみよっか!』

 

『…楽しみ、かもしれない』

 

『そこは普通に楽しみでいいのよ!』

 

『ふふっ…ニーゴへようこそ、Sick』

 

「…ああ、ありがとう」

 

俺は始めて動画配信という形で全世界に歌を公開した。なるほどね、これはあれだ恥ずかしいってやつだ。

 

「ふぅ…でも楽しいなぁ」

 

こういう日々が続きますように。

 




wotakuさんのジェヘナすごくいい曲なのでぜひ聞いてみてください!
曲名だけなら音楽コード要りませんよね…?
次回掲示板とかやってみようかなとか思ってるのでよろしくお願いします!


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十四話

配信ネタを書こうかと思いましたが都合が変わったので別の話を書くことになりました。


俺は今、いつもの退屈な病室…では無く外にいる。そう、外にいるのだ。なんと体調がだいぶん良くなってきて、外出の許可が出たのだ。当然無理のない範囲でのことではあるが。というわけで無理はしないようにシブヤまでやってきたわけだ。とはいえ、やることも特にないのでいつもあまり見ることの出来ない街並みを見て歩いていたのだが…

 

「…あつい…」

 

一時間も経たずにダウンした。気温が高すぎる。もう本当に暑すぎて死にそうだ。とりあえず体力の回復のために奇跡的に日陰になっているベンチがあったためそこでぐったりしている。あー…あついー…。つーかこのフードが暑すぎる。外出する際に瑞希と絵名にフードは付けろと言われて仕方なくフードを付けているのだが、あまりに暑すぎる。なんでフードしないといけないんだ…?

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

「…ん?彰人?」

 

「誰かと思えば凛じゃねぇか。なんでこんなとこに?って、顔色やべぇな…ちょっと待ってろ」

 

「…分かった…」

 

聞き覚えのある声に顔を上げるとオレンジ色の髪の毛友人…東雲彰人がこちらを見ていた。彰人はぐったりしていたのが俺であると分かった途端に呆れたように目を細めたが、よっぽど顔色が悪かったのか心配そうに顔を歪めるとどこかへ歩いていった。

 

「ほら、スポドリ」

 

「ありがと…あ~生き返る~!」

 

スポーツドリンクを買ってきてくれたらしく、手渡されたそれを一気に飲む…と喉が切れるのでゆっくりと嚥下する。うめぇ…スポドリうめぇ…。

 

「で?なんでこんなとこでダウンしてたんだよ?」

 

「その前にお金払うよ」

 

「いや、要らねぇ。病人から金せびるほど金欠でもねーしな」

 

「でも」

 

「はあ…んじゃ、いつも絵名が世話になってる礼って事にしとけ」

 

「…わかった」

 

なんだか上手く丸め込まれたような気がするが、千日手になりそうだったのでありがたく受け取ることにする。

 

「で?ここにいる理由は?」

 

「ん?ああ、散歩してたら暑すぎてダウンした」

 

「そりゃそんなクソ暑そうな服着てたらそうなるだろ」

 

「だよね!?実はこれ絵名と瑞希に着てけー!て言われてさぁ」

 

「は?んでアイツらがそんなこと言うんだよ」

 

「さあ?なんでも目立ちすぎるからとか何とか」

 

「は?…ああ、そゆことか。なら納得はできるがにしても暑すぎんだろその服装」

 

「え?なんで納得出来たの?」

 

え?納得出来る要素あるか?無くないか?

 

「…とりあえず涼めるとこ行くか。歩けるか?」

 

「え?ああ、うん。多少体力も回復したから行ける」

 

「んじゃ、ついてこいよ」

 

彰人に言われて着いていく。慣れた様子で歩いていく彰人について行くとなんだか歌ったり踊ったりという人が増えてくる。

 

「…これ、ストリートってやつ?」

 

「おう。俺がよく通ってるストリートだ…っと、着いたぞ」

 

「WEEKEND GARAGE?」

 

俺のつぶやきに何も答えることなく彰人は店内へと入っていく。俺もそれに続いて入ると体を心地よい涼しい風が迎え入れてくれる。

 

「あ゛~゛!涼しい~」

 

「どっから出てんだその声…兼さん、こんちわっす」

 

「おう、いらっしゃい彰人。それにそっちの子はお前の友人か?」

 

「はい。…凛、自己紹介出来るか?」

 

「お前は俺のおかんなの…?どうも初めまして、浅野凛です」

 

「ああ、初めましてだな。俺は兼。ここのマスターをやってる。おい杏!彰人が来たぞ!」

 

「え!?もう!?ちょ、ちょっと待ってて!」

 

兼さんが誰かを呼ぶが、その人はまだ用意ができてなかったようでバタバタと駆け回る音が聞こえる。それに思わず苦笑してしまう。彰人と兼さんは頭を抱えてため息をついていた。

 

「悪いな、うちの娘が騒がしくして」

 

「ああいえ、気にしてませんよ。彰人、杏さんはもしかして彰人とユニット組んでるってあの?」

 

「おう。あとの二人ももうちょいで…噂をすればなんとやらだな。来た見てぇだな」

 

入口を見てみると、帽子をかぶった小柄な少女と文化祭の時に知り合った冬弥がいた。

 

「四人組なんだね」

 

「おう。おい冬弥!こはね!こっちだ!」

 

「彰人、先に来ていたのか…ん?凛さんもいたのか、こんにちは」

 

「こんにちは、冬弥。それにキミもこんにちは」

 

「あ、はい!こ、こんにちは!」

 

「おいこはね、そんなに怯えんなよ」

 

「安心しろ小豆沢、凛さんは決して悪い人じゃない。」

 

「う、うん。ありがとう二人とも…凛さん?もごめんなさい」

 

「あっはは、気にしてないよ。俺は浅野凛。見ての通り体が弱いただの一般人だよ。よろしくね」

 

「小豆沢こはねです。えと…よろしくお願いします!」

 

わたわたとする小豆沢さんを見て笑いが込み上げてくるが、それを何とか飲み込んで三人で雑談をする。兼さんが持ってきてくれたコーヒーを飲みつつ雑談をしているとバタバタと一人の少女が駆け寄ってきた。

 

「ごっめーんみんな、待たせちゃって!」

 

「おせーぞ杏。凛、こいつは白石杏。見ての通りガサツなやつだ」

 

「ちょっと彰人!そんな説明の仕方は無いでしょ!?白石杏です。よろしくね!」

 

「うん、浅野凛だよ。よろしくね…なんか、凄い目立ってない?」

 

「ああ、俺たちはここら辺ではある程度知名度があるユニットだからな。それで目線が集まってるのかもしれない」

 

「へぇ…そりゃすごい」

 

軽く手を叩きながら言うと彰人が呆れたような顔をする。

 

「あのなぁ、そりゃ俺たちの知名度もあるだろうが…お前、自分が目線集めてるのに気がついてねぇのか?」

 

「はぁ?なんで俺が視線集めるんだよ」

 

「…まあいいか。気がついてねぇなら。とりあえず外ではそのフードとんなよ?」

 

「え?…わかったよ。なんでみんなフード取るなって言うのかねぇ…」

 

まあ多分これに関しては教えて貰えないと思うのでもやもやを飲み込んでコーヒーを飲む。周りを見てみると、数名はまだこちらを見ていたがそれ以外の人はほとんど自分たちの席で会話をしていた。そのまま店内を見回していると気になるものを見つける。

 

「ねぇ、彰人」

 

「なんだよ」

 

「あれ何?」

 

「ああ、あれか…あれはあそこで演奏できるんだよ」

 

「演奏?」

 

「おう。歌を歌うのも良いし、楽器を弾くだけでも良い。まあスナックにあるカラオケみたいなもんだ」

 

「そんなことまで出来るのか…面白いから俺の病室に付けてくんないかなぁ…」

 

「いや、無理だろ」

 

「だよねぇ」

 

へらりと笑ってみせると彰人が呆れたようにため息をつく。なんか、今日俺めっちゃ彰人にため息つかれてるんだけど?

 

「ピアノでもあれば演奏出来るんだけどねぇ…」

 

「あ?ピアノ弾けんのか?」

 

「ん?まあね。前会った司っているだろう?アイツの親がピアノ講師だからついでに教えて貰ってた」

 

「へぇ…なあ兼さん!」

 

「なんだ?」

 

「ピアノかなんか無いっすか?」

 

「ピアノ…?ああ、あるぞ。それがどうした?」

 

「実は凛がピアノを弾けるらしくて」

 

「そうなのか?演奏してみるか?」

 

「まあ、迷惑でないなら」

 

「分かった。じゃあ取ってくるからちょっと待ってろ」

 

兼さんが裏へと回ってピアノを取りに行く。多分電子ピアノかなぁ?ならまあ弾けそうかな。グランドピアノとかだとちょっと調整に時間かかるし。

 

「ついでに何か歌うか…マイクもあるし」

 

「え!?凛さん歌もやってるの?」

 

「実はこっそり音楽サークルに所属してる。どのサークルかは言えないけど」

 

「凄い…!」

 

「いや、そんなに凄い人でも無いけど…っと、やっぱり電子ピアノか」

 

なんの曲にしようかなぁ…ジェヘナはそこそこ再生数が言ってるから歌えないし…なんの曲にしよっかな~。

 

「うーん…よし。アレにしようかな。椅子借りますねー」

 

「おう。上等なピアノじゃないが許してくれよ」

 

「ピアノがあるだけマシですよ。無かったらアカペラになるところでしたし…うん、調整完了。…え?なんかめっちゃ見られてない?」

 

「まあ物珍しさもあるんだろう。まあ失敗しても気にするな、のびのびと歌えばいい」

 

「そうですね…んじゃ、聞いてくださーい。『ラグトレイン』」

 

ピアノを弾きながら昔に作った曲を歌う。懐かしい気持ちになりながらも最後まで歌いきり、軽く礼をすると拍手が起こった。

 

「ありがとうございました。久しぶりにこの曲歌ったから上手く歌えたかわからんけど」

 

首をまわすとバキリと嫌な音が鳴るがまあいつもの事なのでそのまま立ち上がりピアノを仕舞おうとするがそれを見て慌てて彰人が手伝ってくれる。

 

「いやぁ、久しぶりにあれ歌ったわ」

 

「…おい、冬弥」

 

「ああ、分かっている。小豆沢たちも行けるか?」

 

「当然!行こっ、こはね!」

 

「うん、杏ちゃん!」

 

「えぇ…何事…?」

 

俺が席に戻った瞬間、四人同時に立ち上がる。それを見て顔を引きつらせる俺。いや、普通にびっくりした。

 

「良いものを見せてもらった礼だ。俺たちの歌も見せてやる…行くぞ、冬弥」

 

「ああ!行こう彰人」

 

「ほんと、あんなの見せられて黙ってられるかって!行こっ、こはね!」

 

「うん!私たちも頑張ろうね、杏ちゃん!」

 

四人が俺が先程までいたステージまで歩いていくと四人にマイクを持って顔を見合せ頷くと、曲が流れ始める。

 

「行くぜお前ら!盛り上がっていけよ!!『Ready Steady』!」

 

歌が響く。それを聞いて、純粋に凄いと思った。歌から感じる厳しい練習の跡や四人の固い絆。その曲を聞いていたその時だった。

 

「熱っ…!」

 

スマホが熱を発する。ポケット越しに感じるほどの熱に顔を顰めながらスマホを開くと音楽ファイルが1つ増えていた。…これってもしかして…。

 

「Untitled?」

 

そこにあったのは新たなセカイの入口だった。だが、今はそんなことはどうでもいい。今は彰人たちの歌を聞こう。セカイについてはどうとでもなる。そんな気がする。

 

「ーーー♪!!…ハァッ…ハァッ…っし、悪くなかったな」

 

「…ああ、今日もいい歌だった」

 

「ふー!彰人も冬弥もおつかれー!みんなも聞いてくれてありがと~!こはね~!今日も絶好調だったね!」

 

「ありがとう!杏ちゃんも絶好調だったね!二人もお疲れ様!」

 

四人が笑い合うのを無言で見つめていたが、周りに合わせてとりあえず拍手をする。俺も体が強かったらあんな風にみんなと────

 

「おいおい、何をしけた面をしてるんだ?」

 

「…あはは、分かります?」

 

「当たり前だろう?これでも一人の子供の親なんだ。子供の顔見れば大体のことは分かる」

 

「親、か…はは、親ってのはすごいんだなぁ…」

 

俺の親はそんなこと教えてくれなかった。…教えてなんてくれなかった。

 

「体が弱いんだってな」

 

「え?はい、そうですね」

 

「それも相当悪いって聞いた。今日外に出れてるのも奇跡的だって彰人が言ってたからな」

 

「そう、ですね…俺は──」

 

口をついて出た言葉に兼さんが目を開いて固まる。この事は、俺と友人しか知らないことだった。でも、何となく兼さんは傷つくことなく受け入れてくれそうな気がして口を滑らせてしまった。

 

「…あはは、忘れてください。口が滑りました」

 

「そう、か。そうだな。俺は何も聞かなかった、それでいいか?」

 

「はい。それでお願いします」

 

「おい凛!何話してんだ?」

 

「ん?いや、なんでもないよ。…って、もうこんな時間!?悪い、病院戻らねぇと医者に怒られる」

 

「なら俺が送っていこう。彰人、お前も乗ってくか?」

 

「いや、俺はもう少し練習して行きます。またな、凛」

 

「うん、またね──多分、すぐ会うことになるだろうけどな」

 

スマホを手に弄りながら笑うと俺の言葉に首を傾げた彰人とお客さんや杏さんたちに手を振って兼さんの車に乗り込む。車は楽だなぁ…。と、そんなこんなあって、俺は病院に送って貰って病室で眠りについた。明日はこの謎の音楽ファイルを開いてみようか。




浅野凛
なにか重大なことを隠してる人。兼さんには口を滑らせた。親に関してもなにか思うことがある模様。ちなみにコイツが視線を集めてたのはイケメンだったから。まふゆのAPPが18だとしたらコイツもAPP18くらいある。イケメンめ!

兼さん
重大な秘密を知っちゃった人。知らないフリに務める気ではあるが、もしも言う必要があると感じれば躊躇なく彰人達に話すだろう。


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十五話

イベストの前にセカイに関すること書きます。
多分今日か明日にもう一話上げます!


昨日手に入れたUntitledを見つめてもうそろそろ五分がたった。とりあえず兎にも角にも起動しないことには話が始まらないのでポチッとUntitledを起動するといつものように光に包まれ──光が晴れると俺は教室とも、誰もいない場所とも違う、これは…

 

「ストリート?それにカフェまであるし…」

 

とりあえずカフェに行ってみようかと歩いていくと、後ろから誰かに肩を叩かれる。

 

「うん?…むぐっ」

 

「あはは、引っかかっちゃった?」

 

くるりと後ろを振り返るとほっぺたに突き刺さる指。びっくりして目を白黒させていると前にいた少女が意地悪そうに笑う。

 

「…このセカイの、ミク?」

 

「せいかーい。知ってるだろうけど、私はミク。よろしくね、凛くん」

 

「ああ、よろしく。ここは彰人たちのセカイなのか?」

 

「うん。まあ()()()()()()()()()()()()()()

 

「知ってるんだ?」

 

「まあね。貴方は色々特別だし…ね?」

 

「…そうだね」

 

やっぱり、俺の秘密はセカイの住人にはバレている…いや、初めから知られてると考えた方が良さそうだな。幸いセカイの住人は善良な奴らが多く、勝手に言いふらされる心配は無いだろう。

 

「カフェへ行くんでしょ?珍しいお客さんだからメイコも喜ぶよ」

 

「メイコ?このセカイには何人バーチャルシンガーがいるんだ?」

 

「今のところは四人かな~。私とメイコ、後はリンとレンがいるよ」

 

「賑やかなんだね、このセカイは」

 

誰もいないセカイとは大違いだ。それに教室のセカイとも全然違う。なんというかここは他のふたつのセカイから感じない熱量を感じる気がする。

 

「あら、いらっしゃいミク…あら貴方は…」

 

「浅野凛。よろしくね」

 

「ええ、いらっしゃい。私はMEIKO。あなたの事は噂で聞いていたわ。ゆっくりしていってね?」

 

「うん、ありがとう」

 

「あれー?彰人たち以外のお客さんがいるなんて珍しいなー!」

 

「キミは…鏡音レン?」

 

「うん、そうだよ!ねぇねぇ、もしかして君が浅野凛?」

 

「その通り。よろしくね」

 

そんなこんなあって、途中から鏡音リンも混ざって雑談をしているとガチャリとカフェの扉が開く。それを見て俺とミクは顔を見合わせてニヤリと笑うと俺はそっと入口付近で姿を隠す。

 

「ちわーっす。あん?なんだよお前ら集まって」

 

「彰人くんいらっしゃい。コーヒーは飲むかしら」

 

「ああ、貰います。で?また何か悪巧みでもしてんのか?」

 

「その通り!」

 

「うおぁ!?…って…は?…いや、おま…え?なんでここに!?」

 

俺の前を通り過ぎ、油断しているところに後ろから声をかける。ビクッ!と体を硬直させた彰人が恐る恐る振り向いた後、俺を見て固まる。まあそうなるだろうよ。

 

「よっ、彰人。お邪魔してます」

 

「いらっしゃい。…って、違ぇよ!そうじゃねぇ!なんでお前がここに来れたんだよ!」

 

「さあ?俺のスマホにUntitledが入ってたからだけど」

 

「あはは、実は私が呼んだんだ。スマホ越しに凛くんの曲を聞いて話してみたいなって思ったの。それに、貴方たちの想いを叶える手助けにもなると思って」

 

「…訳わかんねぇ…」

 

頭を抱えた彰人に苦笑いしながらMEIKOさんのコーヒーを飲む。うめぇ。相変わらずコーヒーはうめぇ…って、熱ッ!?

 

「熱っ!?またこのパターンかよ!」

 

スマホが熱を持ったので、何事かと思えばUntitledが『Ready Steady』へと変化していた。

 

「このセカイに認められたって訳ね」

 

「そうみたい。これからよろしくね、凛くん」

 

「…ったく、来ちまったもんは仕方ねぇ。その変わり、俺たちの手伝いをしてもらうぞ」

 

「手伝い?」

 

俺は首を傾げると不敵に笑った彰人が続ける。

 

「おう。お前は俺たちの歌を聴いて感想を言うだけでいい。あんだけのもんが歌えるんだ、それくらいは出来んだろ?」

 

「まあそれくらいなら出来るよ」

 

「んじゃ、それでいいな。おいお前ら!いつまで聞き耳立ててんだ!」

 

「…すまない、盗み聞きするつもりは無かったんだ」

 

扉を開けて入ってきたのは冬弥と杏とこはねだった。昨日ぶりの面々に手を振るとこはねが小さく手を振ってくれる。彰人の言う小動物見てぇなやつってのが今わかった気がする。…ま、案外こういう子に限って凄い才能を秘めてたりするのかもね。

 

「まあなんだかんだあったけどよろしく。俺がするのはあくまで手伝い、だけどね」

 

厳しく言うから覚悟しろよ?と言うと上等!と口元を不敵に釣り上げる彰人。なんだか、楽しくなってきたな。心做しか体調が良くなってきた気もするし。




次回のクソ雑魚貧弱オリ主は!

凛です。貧弱かつ病弱な俺がミステリーツアーに!?…まあ最近めちゃくちゃ体調良いから多分大丈夫なんだけどさ。つーか、絵名と瑞希はよく悠人やまふゆの許可を得られたよな?

次回、凛死す!デュエルスタンバイ!


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十六話 シークレット・ディスタンス

凄まじく長くなり遅れました。
9000字ってなんなんだ…


「ということでミステリーツアー行こっか!」

 

「待て待て、まったくわからん!」

 

何がということでなのか説明してくれない!?いや、まふゆもなんでさっさと俺の荷物まとめようとしてるわけ?案外お前ノリノリだな?それに絵名も手伝わんでよろしい!奏…は、うん。そこの席空いてるから座ろっか。

 

「まあまあいいじゃん。泊まりで行くわけじゃないんだしさ!」

 

「え、おう…まあいいけどさ」

 

シークレット・ディスタンス!

 

★★★

 

まあそんなこんなで拉致られ、電車に乗せられた。電車ってこんな感じの作りなのか。初めて見たな。

 

「で、ずーっと電車に乗ってる訳だけど…いい加減にどこ行くか教えなさいよ!」

 

「えぇ~!えななんってば堪え性が無いな~!こういうのは着くまであれこれ想像するのが楽しいのにー。ま、もうすぐ着くし、ネタバラシでもしちゃおっかな~」

 

「はいはい、勿体ぶらずにさっさと言いなさいよね」

 

「ゴホン。今日行くのはなんと──」

 

そこまで言って数秒溜めると瑞希はにっこりした顔で告げる。

 

「──今最も激アツな心霊スポットでーす♪」

 

テッテレーと音がなりそういい笑顔で言い切った途端、奏と絵名が青ざめる。心霊スポットって言うとあれか?富士の樹海とかそういう感じのやつ?

 

「…し、心霊?」

 

「幽霊ねぇ…正直、セカイやミクたちの方が謎な気もするけど」

 

「まあ確かにそうかもね~!でも、幽霊の中には害があるものだっているじゃん?ミクたちはボクたちに害をなさないから安心しない?」

 

「そんなもんか?」

 

「そんなもんだよ!」

 

まあ確かにミクやリンがまふゆや瑞希に何かするかと言えば…まあ、そんなことはないとは思う。

 

「は!?え、なんで心霊スポット!?」

 

「まーまー落ち着いて。これには深い理由があるんだよ」

 

「…深い理由?」

 

「うん!ボクが前文化祭で絵名の弟くんと会ったって話したでしょ?その時に弟くんのクラスがお化け屋敷をやってたんだよね~。それで──」

 

ああ、これただ一緒に肝試しやりたいだけだなとため息を着くとにっこりとまた笑って瑞希が告げる。

 

「──ボクもみんなと肝試しやりたいなーって思って♪」

 

「…ただあんたが行きたいだけじゃない!」

 

「そうとも言うかも~☆」

 

「あのねぇ…!」

 

絵名の怒りが爆発する寸前、横から思いがけない言葉が入る。

 

「…何か問題あるの?」

 

そう、我らがまふゆ様である。相変わらず空気を読まないというか、読む気がないと言うか…。

 

「は?」

 

「奏が曲を作れるようになるなら、行く場所はどこでもいいじゃない」

 

「うっ……わたしにつきあわせてごめん…」

 

やめとけやめとけという意を込めてまふゆの肩を掴んでそっと下がらせると溜息をつきながら黙り込むまふゆ。飛び火がすげえんだわ。絵名に言ったかと思えば奏にダメージを負わせてみたりね。

 

「あ、えと、奏は別に悪くないってば!悪いのは行き先を心霊スポットにした瑞希で…!」

 

「大丈夫だよ奏!ボクはみんなと旅行できてとっても嬉しいよ!」

 

「そういう問題じゃなーい!」

 

「…まあそこまでにしときなよ。そろそろ着くし、もうどうしようもないだろ?それに、心霊スポットとか行ったことなくて楽しみだし」

 

「うっ…まあ、そういうことなら…」

 

「あっはは~やっぱりえななんってば凛くんに甘~い」

 

「はぁ!?そんな事ないでしょ!?」

 

「…絵名は奏にも甘いよね」

 

「うっさいわよ!」

 

また始まった口論に肩を竦めて電車の揺れに身を任せた。

 

★★★

「とうちゃーく☆」

 

「へ~心霊スポットってこんな感じなのか」

 

目の前にあるのはいかにも!という感じの不気味な雰囲気を醸し出すトンネル。初めて見る心霊スポットへの好奇心から周りのことをスルーして杖をつきながら歩こうとすると急に後ろからガシッと腕を掴まれる。

 

「…ん?奏?」

 

「ま、待って…置いていかないで…」

 

「…分かったよ。みんなで行けば怖くないだろう?」

 

プルプルと子鹿のように震える奏に苦笑いしながら手を差し出すとカタカタと震えながら手を掴む奏。

 

「あー!凛くんと奏が手を繋いでる~!」

 

「あら、ほんとね…映そう」

 

「心霊写真になっちゃうかもね」

 

「…やめとくわ」

 

なんだか後ろが騒いでいるが、とりあえず早く来いよ!と声をかけるとパタパタと駆け寄ってくる三人。

 

「いや~やっぱり名所だけあって雰囲気あるねぇ」

 

「心霊スポット…って言う割には地味だな」

 

「あはは、怖いもの知らずだね凛くん。まあ奏が怖がっちゃうから一人くらいそういう人がいて助かるよ~!ほら、まふゆとかは怖がりそうにないけど…」

 

「気遣いが出来ないから仕方ない」

 

プルプル震えながら腕にしがみつく奏を見て肩を竦めると、瑞希がトンネルの壁に出来た凹みを撫でながら呟く。

 

「これ、事故で出来た跡かな?」

 

「確かに、軽自動車くらいのものがぶつかったくらいの凹みだな」

 

「そうだよね!?ねぇ、凛くん写真撮ってみてよ!」

 

「ん?…まあいいけど。ハイ、チーズ」

 

「イエーイ!」

 

パシャリと写真を撮る。見ようとすると奏がその手をガシッと掴んで止める。少しも見たくないのだろう。お楽しみは後にとって置こうとスマホをしまう。

 

「楽しみが増えたなぁ!帰りにみよっか」

 

「ああ。…って、奏!?大丈夫か?」

 

「う、うん大丈夫…ちょっと足くじいちゃって…」

 

「そっか…背中乗るか?奏くらいなら行けるでしょ」

 

「ちょ、ちょっと凛くん!危ないよ!?」

 

「…ねぇ、何してるの?」

 

「…ナイスタイミングまふゆ。奏が足くじいたらしいから背負ってやってくれないか?」

 

「…いいけど、瑞希じゃダメなの?」

 

「まあまあ、いいから…さ!」

 

「あ痛ぁ!?」

 

バシッ!と瑞希の背中を叩いて笑う。絵名が遅れて走ってきたので何してたかと聞くと暗闇で俺たちを見失ったのだとか。まあ確かに暗いし仕方ないか…。

 

「お、あそこが出口かな~」

 

少し立ち止まり、くるりと後ろを向いて先程写真を撮った所を見て俺は一言。

 

「──失せろ」

 

「おーい凛くん!何してるのー?」

 

「悪い!なんでもない!」

 

さっさとここから瑞希を離した方が良いなと考えながら駆け足で瑞希たちの元へ向かう。その背後で暗闇の中、何かが蠢いたような気がした。

 

★★★

トンネルを往復し、第二のスポットとやらに来ることになった。

 

「はい、次のスポットへ到着~!」

 

「外、だな。というか神社?」

 

「神社…だね…」

 

「ここも不気味だけど…まあ外だし、さっきのトンネルよりはマシかな」

 

「ただの神社に見えるけど、どこが心霊スポットなの?」

 

「ふっふーん!よくぞ聞いてくれました!ここは通称『呪いの縁切り神社』って呼ばれてる場所なんだ!」

 

「呪いの縁切り神社?」

 

神社なのに縁を切るのか…まあ八百万の神とか言うし。そういう神がいてもおかしくない…のか?いややっぱおかしいだろ。恐れが集まると神になるみたいな寸法なのかね。

 

「そう!──昔、大きな御屋敷仲のいい姉妹が住んでたんだ。ふたりはどんな時も一緒にいてお互いに大切に思いあっていたんだ。だけど…ある日、姉妹がかくれんぼをして遊んでいた時、火事が起きたんだ。お姉ちゃんも妹も、火の中でお互いを探し回ったんだけど──結局見つからないまま死んじゃったんだ」

 

「またすぐそう言う話する…」

 

「…かわいそうだね」

 

「そんなことがねぇ…」

 

それが本当だとすれば可哀想な話なのだが…それで何故心霊スポットになるんだ?その姉妹がお互いを探して…とか?

 

「それで、バラバラのまま死んじゃったから、ふたりは、一緒にいられる人がうらやましくなって──強く思い合う人同士がここに来ると、呪いをかけて、離れ離れにしちゃうんだ。で、そんなふたりの魂を鎮めるために、この神社が出来たんだってさ」

 

「いやとばっちりじゃねぇか」

 

「それだけやってもらってるんだからそろそろ成仏しなさいよね…」

 

しかし、案外心霊スポットってバックストーリーみたいなものがあるんだな。創作か真実かは置いておいても興味深い。いやでもやっぱり…。

 

「──案外、見えるもんなんだな

 

「何か言った?」

 

「なんでもない。案外面白い話だったなと思って」

 

「あはは、確かにそうかも。よく考えられてるお話だよね~」

 

「話は面白いかもしれないけど、死んでもお互いを呪うほど仲のいいきょうだいなんていないでしょ!」

 

「えー、そう?ボクはお姉ちゃんと仲良いけどなー」

 

「そういえば、瑞希はお姉ちゃんがいるって言ってたっけ。海外に住んでるんだよね」

 

へぇ、それは初耳だなぁ…なんて思いつつ神社に向かって手を振る。それを見てまふゆが怪訝そうな顔をしていたのでにっこり笑って誤魔化しておく。

 

「ねぇねぇ、まふゆと凛くんは死んでも会いたいって思う人っている?」

 

「私は…特に無いかな」

 

「まふゆは…そっか。じゃあ凛は?」

 

「俺?…いるよ。死んでも、死ぬような思いをしてでも会いたい人」

 

「えっ…?」

 

「…ははっ…冗談だよ、冗談。さすがに死んでまで会いたい人はいないかな」

 

「そ、そうよね!ちょっとアンタが言うと洒落になんないんだからやめてよね!」

 

「おやおや、もしかしなくても心配?」

 

「うううううっさいわよ!ほら瑞希!他にもまだあるんでしょ!?」

 

「わわっ!ちょ、ちょっと待ってよ!えななん!」

 

そんなふたりの姿を見て口元を緩めつつ、まふゆたちに行こうと言うと奏とまふゆは何かが引っかかったような顔をしつつも着いてくる。くるっと最後に神社を見て、笑う。──案外、逸話ってのは間違ってるのかもな。そう思いながら、()()()()()()()()()()()()()に軽く手を振って立ち去る。

 

★★★

誰もいないセカイ。そこで、三人バーチャルシンガーが話していた。

 

「…ねぇ、メイコ」

 

そこにいるのは、初音ミク、鏡音リン。そして──新たに現れたバーチャルシンガーMEIKO。凛が行ったステージのセカイとは似ても似つかぬメイコは静かに首を傾げる。

 

「どうして、みんなにあんな風にいったの?」

 

「あんな風、って?」

 

「『私のことはいないものだと思って』って」

 

「…うん。みんなのことを知りたいなら、みんなと話した方がいいと思う」

 

リンとミクの言葉を聞いて静かに頷くメイコ。だが、それではダメなのだと首を振る。

 

「…そうね。それも一つの手段だわ。でも、近くなりすぎて見えなくなることもある。だから私は、距離を置いてあの子たちを見守ることにしたの」

 

「え…?」

 

リンが訳が分からないという風に首を傾げる。それを見たメイコは静かに口を開いた。

 

「まふゆの想いでできた、このセカイにあの三人だけは出入りできる。つまり、まふゆにとって、あの三人はとても大切で、欠かせない存在。でも、あの三人も何かを抱え込んでいる気がするの。私は、その正体を知りたい。特にあの子──瑞希は、大きな想いを抱えているみたいだから」

 

そこまで言って息を着くメイコ。そして、空の遠い彼方を見つめ悲しげに微笑むメイコ。

 

「そして、『セカイ』に愛された少年。あの子はとても辛い運命を背負っているわ」

 

「…もしかして、凛のこと?」

 

「そう、貴方たちは知らないのね…なら教えておくわ。もしも彼がこのままセカイに関わり続ければ───()()()()()()()()()()()()()

 

そう悲しげにメイコは笑う。その表情を見て、メイコの言っていることが本当のことなのだと悟ったミクは顔を青くする。なにせ、彼がセカイに関わるようになったのはミクが無意識のうちに彼を呼び寄せたからだ。『まふゆ』を救う助けとなると信じて。リンとしても悲しいことだ。時たまやってきては、話をしてくれる友人が消えるかもしれないのだから。

 

★★★

 

最後の場所である。前にあるのは校舎らしきもの。というか校舎。完全に学校だった。

 

「学校も心霊スポットになんの?」

 

「まあ割とポピュラーではあるわね。トンネルやら学校、あとは廃病院とかもね」

 

「へぇ~そうなのか。初めて知った」

 

廃病院…なるほど、人がたくさん関わる場所や、人の生き死にが関係してくる場所はやばいのか。

 

「さて、奏!ここで曲のイメージまとまんないと帰れないから、頑張ってね~!」

 

「うっ…が、頑張る…」

 

「ま、題材程度に考えれば良いのかもな。ところで、ここにもそういう話はあるのか?」

 

「うんっ、ここは音楽室に生徒の霊が出るっていうウワサがある学校なんだ」

 

「ふぅん…案外、その生徒もセカイに関わってる人とかだと面白いな」

 

「はぁ?なんでよ」

 

「だって、セカイに入ると元々いた場所から消えるわけだろ?その生徒が音楽室でセカイに行こうとしたのを見られたけど傍から見ればその生徒は消えたように見えるわけだ」

 

「あっ、だから幽霊が居たって話になったって事か!面白いこと考えるな~凛くんは」

 

「まあそう考えると怖くないだろ?」

 

「まあ、今ので怖さ半減ってレベルじゃなかったわね」

 

「まあ残念ながらちゃんとしたお話があるんだよねぇ~。なんでもピアノの全国コンクールに出られるくらいすごい女の子がいたらしいんだけど──みんなからの期待がプレッシャーになってそれに耐えられなくなって死んじゃったんだってさ。…で、校舎を取り壊そうとするとその霊が邪魔していつもケガ人が出ちゃうから取り壊しの計画が無くなっちゃったと言う!」

 

「ほらまたそういう話するー…!せっかく凛のおかげで怖くなくなったのに!」

 

「えーだってせっかく心霊スポットに来てるんだし、そういう話した方が──」

 

「…期待をかけられて、か」

 

「…まふゆ?」

 

ずっと黙り込んでいたまふゆが静かに呟く。なんだか嫌な予感がしてまふゆの方を向くが、既にまふゆはどこを見ているかも分からない目でフラフラと歩き出した。

 

「それでよかったのかも。余計なものがなくなって、ひとりになれたなら」

 

「え?なんでよ」

 

「──その方が、ずっと楽だから」

 

「まふゆ…」

 

「みんなと旅行してる最中に言うことじゃなくない?…って、ちょっと!」

 

「あ、校舎の方へ行っちゃった…」

 

それを見て瑞希がまふゆを追いかけていくが、俺は静かにため息を着くと校門で座り込む。なんだかすごく疲れた気分だ。

 

「…大丈夫?」

 

「奏?…まあ、久しぶり色々動いたからちょっと疲れたかも」

 

「…そうだね。私もちょっと疲れた」

 

「まふゆは?」

 

「分からない…今絵名がメッセージを送ってて瑞希が向こうを探しに行ってる」

 

「なんだ、そうだったのか…安心しなよ、まふゆはそろそろ…っと、ほらね」

 

「ま、まふゆ!?」

 

パタパタと駆けていく奏を見て大切にされてるなぁと思う。──もう俺の助けが無くても手を引っ張ってくれる奴らがいるんだな、まふゆ。

 

「なーに黄昏てんのよ」

 

「…ははっ、子供の成長を喜ぶ親の気持ちが分かったよ。…ほら、あっちにまふゆはいるから行こうか」

 

「えっ、ちょ、ちょっと!ああもう!瑞希呼んでくるから待ってて!」

 

「はいはい」

 

ダッシュで瑞希を捕まえに行った絵名を待ちながらスマートフォンの写真を見る。…やっぱり真っ赤だ。全然いい予感がしなかったからあのもやもやを散らしたが良かったのだろうか?

 

「お待たせ、ほら行こ!」

 

「ああいや、俺はここで待って──」

 

「馬鹿っ!まふゆが一番頼りにしてんのはアンタなのよ!こんな時に行かないでどうすんのよ!」

 

「お、おわっ!?」

 

手をぐいっと引かれてそのまま連れていかれる。そのまま連れていかれた先にあったのは桜だった。美しく咲き誇る桜。

 

「あ、まふゆ!」

 

「…いたんだ」

 

「いたんだって…こっちは散々探したんだけど!?フラフラとどっか行かないでよ!」

 

「ごめん」

 

「…え?あ、うん。わ、わかればいいけど…」

 

「桜、見てたの?」

 

「うん。なんとなく、目が離せなくて」

 

「…どうしてこんなに綺麗なんだろう。花の、最期なのに」

 

「本当に…こんなに綺麗に終れるなんて……ずるい」

 

「ずるい、かぁ…泥臭くてもいいんじゃないか?別に」

 

「え?」

 

虚をつかれたとこちらを見てくるまふゆに笑う。

 

「なにせ、俺は泥臭く生きて来てるわけだしな。綺麗に終わろうって思うなら…俺は数年前に死んでる。それでも今生きてるのは、泥臭く生にしがみついてるからだ。それに、最期まで泥臭くても、最期に笑えるならそれでいいんじゃないか?」

 

「…凛…」

 

「…なんて、旅行の時にする話じゃねぇな。そろそろ帰らねぇとまずいな。特に俺が。閉め出される…!」

 

「へ?あっ、やばい!ほんとだ!凛くんが閉め出されちゃう!」

 

「アンタらねぇ…もう少し余韻に浸るってのはないわけ?」

 

「余韻よりも屋根の下で寝れることの方が重要だっての!ほらほら、さっさと帰るぞ!」

 

「まあチケットは取ってあるから大丈夫なんだけどねー」

 

「先に言えよ!」

 

「ふふっ、それじゃ帰ろっか」

 

「おう。…奏、曲はできそうか?」

 

「…うん、なんかいい曲出来そう」

 

「だってよ!良かったな、まふゆ」

 

「…そうだね」

 

そんなこんなあり、電車に乗った俺たちは疲労がありつつも雑談に花を咲かせていた。

 

「ねーねー!みんなが同じクラスだったらどんな感じだと思う?」

 

「俺らが同じクラスねぇ…いや、学校のことなんにも分からんからなぁ…」

 

「まあ凛はそうよね。…というか、みんなで体育の授業受けたりするわけでしょ?イメージわかなすぎ」

 

「体育なんてしたら死ぬと思うんだけど。いや、最近の俺ならそこそこ出来るか…?」

 

「やらせないよ」

 

「はい、すいません」

 

やっぱりまふゆには勝てなかったよ。でも学校ねぇ~。みんながクラスメイトなら楽しそうだけどね。

 

「まあ体育はそうかもだけど、勉強のことはまふゆと凛くんに聞けばオッケーでしょ?」

 

「……答えしか教えないよ」

 

「まあ授業で起きてて分からないなら教えてやらんことも無い」

 

「うんっ、それで十分!めちゃめちゃ助かる!」

 

「…いや、まふゆの奴じゃ勉強にならないでしょ。それに、凛って案外厳しいところもあるわよね」

 

「まあ甘やかすだけだとダメだし…ねぇ?」

 

「…なんでそこで私を見るの」

 

「なんででしょー」

 

お前は甘やかすだけだとダメやってことやでまふゆゥ!厳しくしていくからなまふゆゥ!でももうちょい人に甘える癖をつけろよまふゆゥ!

 

「あはは…ねぇ、まふゆはどう思う?みんながクラスメイトだったら!」

 

「…絵名は毎日遅刻してそう」

 

「は?サラッと失礼なこと言わないでよね」

 

「思ったことを言っただけ」

 

「でも、美術の授業にはちゃんと出てそう」

 

「わかるー!でも、絵名って描いてる時うんうん唸ったり急に『こんなんじゃない!』って言うから、隣になったらかなりうるさそうだよね~」

 

「そんなことしてないでしょ!」

 

「え、自覚してなかったの?」

 

「…え、嘘。そんなに独りごと言ってる?」

 

瑞希のマジトーンに固まる絵名。それに追い打ちをかけるように奏が言う。

 

「…たまに、ミュートし忘れている時とかは…」

 

「たまに?結構、の間違いじゃない?」

 

「え、ちょっと、教えてよ!」

 

「あっはは!でも、あの声聞くと絵名頑張ってるなーってわかって結構すきだよ、ボク」

 

「はぁ!?…はぁ、もういいわ。じゃあ凛がクラスメイトだったらどう思うのよ」

 

「凛くんが?…うーん、どうだろう。あっ!すんごいモテそう」

 

「…へ?」

 

ぼーっとしているとよく分からない話になっていた。俺がモテるわけ無いんだよなぁ。

 

「ああ、分かるかも。めちゃくちゃモテてファンクラブまで出来るやつよ」

 

「ふふっ、もしかしたらまふゆと同じくらいのファンがいるかも…」

 

「あー!奏それ有り得る!二人してめちゃめちゃモテるんだよね!」

 

「…よく分からない」

 

「…分からんなぁ…」

 

二人して首を傾げていると三人に笑われる。なんでやそうはならんやろ。そうこうしている内に疲労のせいかずっと瞼が落ちてくる。やべぇ…これはアレだ。眠い…

 

「…凛?」

 

「あはは、凛くん寝ちゃったね」

 

「凛に無茶させ過ぎたかな…」

 

「奏は悪くないわよ、悪いのは全部瑞希」

 

「…奏はトンネルの中でずっと凛にくっ付いてたけど」

 

「うっ……ごめん、凛」

 

するりと凛の頭がポテッとまふゆの膝に落ちる。それを見て苦笑いをするまふゆを除いた3人。まふゆは呆れたようにため息をついて、凛の髪の毛を弄り始める。

 

「いやあ、こうやって見るとほんとにイケメンだよね凛くん」

 

「ほんとよね、ムカつくくらい整ってるわよね」

 

「そう、だね…みんな整った顔つきだと思うんだけど…」

 

「いや、それは奏もだからね」

 

そこからは凛を起こさないように静かな会話が続いたが、初めに体力のない奏がダウンし、その次にまふゆがダウン。そして最後に絵名もがダウンする。最後には、どこか物悲しげな瑞希だけが残っていた──はずだった。

 

「痛っ…あれ?もしかして俺寝てた…って、うわお瑞希以外全員ダウンしてる」

 

「あれ?凛くん起きたの?」

 

ゴンッ!と割と鈍い音と共に凛が目を覚ます。頭を擦りながら顔を上げると周りを見て苦笑いを零す。

 

「おう、まふゆの肘が降ってきた。…なんだよ、随分としみったれた顔してるな」

 

「あはは、分かっちゃうかー」

 

「…まあ、そんなに気にすることもねぇだろ。みんな受け入れてくれるだろうし…まふゆにいたってはだから何?くらいは言いそうだしな」

 

「…あっはは、確かにそうかも」

 

「まあ、言いたい時にいえばいいんじゃねぇの?俺はもう一眠りするわ。良い枕もあるし。おやすみ」

 

パタッと頭をまふゆの足に倒すとまた眠りについた凛。自由だな~と思いつつも瑞希は外の景色を眺める。少しだけ、心が軽くなったような気がした。

 

★★★

さて、ようやくシブヤに到達した全員。体をのばしつつ軽い雑談に花を咲かせる四人。

 

「いやーみんなおつかれ!すっかり暗くなっちゃったねー」

 

「首…痛い…」

 

「あはは、奏、途中から思いっきり横向いて寝てたもんねー!」

 

「…私は早く帰らないと」

 

「そっか。まふゆは家族より早く帰らないとだもんね…って、何してるの?」

 

「凛が、起きないの」

 

「えぇ!?それ大丈夫なの!?」

 

「…うん、多分疲れてるだけ。もう病院は閉まってるし私の家に泊まらせる。お母さんもお父さんも凛には何も言えないから」

 

凛を背負ったままそういうまふゆ。

 

「え?そうなの?」

 

「…昔色々あってお母さんもお父さんも凛に色々言われたみたいで」

 

「そ、そうなんだ…。とりあえず、もう暗いから気をつけてね!」

 

「まふゆ、またね」

 

「じゃあね~…で、私たちはどうする?」

 

まふゆたちを見送った三人だが、やはりバラけて帰ることに。そうして、楽しかった旅行も終わりを告げた。色々あったが、概ねみな楽しめたと言ってもいいだろう。

 

シークレット・ディスタンス!

 

END!




浅野凛
このまま放っておくと消滅することが判明。本人が知っているかは不明。心霊スポットで明らかにヤバそうなやつと幸せそうな姉妹を見たが、それを言うとやばそうなので胸の中にしまった。写真に関しても何とかして見せないようにしている。


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十七話

ジェヘナ追加記念
この小説のテンション忘れたのでノリとフィーリングで書きました。


ミーンミーンミーンミンミンミン‎!!!!!!ミーンミーンミーンミンミンミン!!!

 

「まだ耐えれる‎…まだ耐えれる‎…!」

 

ミーンミンミンミン!!!ミーンミンミンミン!!!ミーンミンミンミン!!!ミーンミンミンミン!!!ミーンミンミンミン!!!ミーンミンミンミン!!!ミーンミンミンミン!!!ミーンミンミンミン!!!

 

「無理だわ!うるせーよ!」

 

耐えきれずにブチ切れながら起き上がる。叫んだ反動で口の中に血の味が充満するがそんなことは知ったことか!

 

「蝉うるさ過ぎるが!?いい加減にしろ!!」

 

セミの鳴き声というセリフアラームのせいで半強制的に目が覚めた怒りで震えてきました。全セミは爆発してください。ぷるぷると震える貧弱ボデーの右腕の力を解くと、時計を見る。うーん、朝の5時40分。おじいちゃんかな?

 

「肉体スペックならおじいちゃんにも負けるけどな!」

 

はっはっはっー!と乾いた笑いが病室に木霊する。えっ、虚しい。めちゃくちゃ虚しい気分になったので、気を紛らわせようとテレビをつける。

 

「最近の日本の気象バグってんなぁ~。ま、外出れないから関係ないんだけども」

 

実を言うと、ココ最近全くもって外に出れてないのだ。というのも、最近の日本と来たら、気温が30℃を超えたりだとか、三連休に二連続で台風がぶつかってきたりだとかで動くに動けなかったのだ。ちょっとしたことが致命傷になるからね、仕方ないね。熱中症とか笑えないので!台風とか外に出たら一瞬でミンチになる自信があります。嫌な自信だなぁ‎…。

 

「でも、ここ最近は気温が落ち着いてきたのでそろそろ外に出たい所存」

 

ちなみに、一週間前くらいに外でたいって話をしたら、フルボッコにされました。特にまふゆに。ちょっと体が良くなってきたとはいえ、アイツ俺に対して容赦なくなってきてない?ニーゴの活動の影響か?‎…うーん、良いこと、なのかなぁ‎…?

 

「ま、良いことだろうよ。多分ネ!」

 

そんなこんなしてたらそろそろ七時だ‎…七時ぃ!?時間飛んだ!?キン○・クリムゾンされた!?‎…そんな訳もなく。病室に封印されてから、あまりにも暇すぎて会得した、ぼーっとすることで時間を潰す暇人の極みみたいな能力だ。いや、能力と呼んでいいものか分からんけど。

 

「うむむ‎…とはいえ流石に暇だな。あ、そうだ。誰かに電話かけよう。そうだ、それがいい。」

 

ぷるるるる‎!!!という軽快なコール音が数秒鳴り響いた後、プツッと言う音と共に通話が開始された。画面に表示された名前は東雲彰人。ツンデレイケメンだ。

 

「やあ、元気?調子はどうだい?」

 

『あー‎…まあ、普通。てかなんだよこんな朝早く』

 

「え?暇だったから起きてそうなやつに電話掛けてる」

 

そう言った瞬間、あぁ?とドスの効いた声が聞こえてくるが、なんだかんだ話に乗ってくれる彰人に軽く笑う。ほんとに絵名に似てるんだから。姉弟ともに古き良きツンデレの波動を感じるよね。まあ、絵名はどちらかと言えば姉みを感じるし、彰人からは空気の読めるいい男感が溢れてるけど。

 

『つか、絵名のやつがお前と遊びたいー!とか言ってたぞ』

 

「えっ、まじ?でも俺が外出るの全力で阻止して来たけど!?」

 

『いや、そりゃそうだろ』

 

何言ってんだお前‎…みたいな雰囲気を感じる。いや、俺の事をなんだと思ってるんだお前らは。

 

『目を離した隙にぽっくり行きそうだろうが』

 

「確かに」

 

『納得すんのかよ‎…』

 

まあ否めん。確かに目を離した隙にぽっくり逝きそうだよなぁ‎…だって、ちょっと叫んだだけで口の中で血の味するんですよ?そりゃあ‎…まあ、ねぇ?

 

『つか、そろそろ練習あっから切るぞ』

 

「おけー!暇つぶし付き合ってくれてありがとねー」

 

『おう。んじゃな』

 

プツリと通話が切れた。なんだかんだ三十分くらいは話したが、流石に暇だな~。

 

「なんかないかなぁ‎…?」

 

なんかないかなぁ‎…?ないか、ないよな。この部屋にある本は全部読み切ったし、テレビもつまらんし、セカイに行っても誰もいないだろうし!もう仕方ないよね!よし!

 

「外出よう!」

 

「ダメだよ」

 

「うわびっくりしたぁ!?」

 

ノックをしろよお前ェ!てかいつの間に来てたんだまふゆぅ!せめて来るなら来るって連絡入れてくれませんかね!?その後、何故か絵名やワンダショの面々もやってきたはちゃめちゃになりましたとさ。チャンチャン!

 

PS.結局外には出れませんでした。次こそ出ます。




三十分クオリティー


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