太陽のプロミア ミルサント巡礼紀行 (黒い翠鳥)
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太陽の街

これを見てかつてプレイした人に『太陽のプロミア』という作品を思い出してもらえれば。
まだプレイしたことが無い人が興味を持ってもらえればと思って執筆しました。


彼がどうやってミルサントに来ているのかは考えない方向で…………


さーて、やって来ました太陽の都ミルサント!

毎年プロミア様の誕生祭に合わせて訪れている私だが、今年は改めてこの時期にやって来た。

なんせ今年は『太陽のプロミア』発売10周年の節目の年なのだ。

コダマ(主人公)とプロミア様、そして六花(ヒロイン)達の活躍からもう10年がたったのだ。

そんな訳で、今年は六本の聖なる大樹を巡り詣で、コダマと六花達の軌跡に思いふけってみようかと思っている。

本当はミルサント各地を巡って物語の足跡を辿ってみようかとも思ったが、残念ながら時間が無くてな。

 

 

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ミルサントの西の玄関口であるイリシアに入る。

この辺の手続きはもう慣れたものである。

門をくぐると大通り先の方に巨大な木が見えた。

聖なる大樹の一つ、大イリシアだ。

いやぁ、本当に大きいな。

目測ではあるが100メートルはあるんじゃないだろうか。

とりあえず近くまで行くことにしよう。

 

 

近くまで寄ってみたんだが、なおさらその大きさに圧倒される。

ちなみに大イリシアは大通りのど真ん中に生えている。

比喩ではなくマジで一本だけドンと道の真ん中に生えているのだ。

一応そこだけ道が円形に広がっていて、ベンチなどもあることから最初にここを広場のようにしてそこから道を伸ばしていったのではないかと考えられるが。

まぁ、そんな考察はどうでもいいのだ。

 

悠然(ゆうぜん)(たたず)む大イリシアに対して、俺は目を閉じて祈りをささげる。

大イリシアと繋がるは(被服)の光炉。

その担い手は華やかな服飾で(いろど)る紫の六花(りっか)・リノ=レノ。

 

六花の長でもある彼女は、初めは六花長レノとして、次は魔獣王伝説の元凶の者リノワールとしてコダマ達の前に現れる。

もちろんこの時点では両者は別人として描かれているのだが、いくつか同一人物である事を推測できるヒントもあった。

前髪がそっくりだったりとか。

 

レノの時は上品で凛とした立ち振る舞いと慈愛に満ちた聖母のような性格なのだが、これは六花長としての責任感からくる一種の変身であり、紫の光炉の力で作った衣服で大人びた姿となっている。

実際は性格も体型もリノワールの方が近い。

いたずら好きで負けず嫌い、だけど責任感が強くて寂しがりやな苦労人。

もっとも、彼女は被服の六花。

姿も性格も、服の数だけ作ることが出来る。

ゆえにこれが本性とは限らない。

 

まぁ、多分合ってるとは思うけどな。

リノ=レノの正体を確かめる方法は物語の中で本人が言っていたが、その状態でも特に変わらなかったし。

 

リノワールとしてミルサントを侵略に来たと宣言し、コダマ達の前に立ちふさがったが、わざわざそんな事をしたのにはもちろん理由がある。

それは憑影という得体の知れない怪物の出現によって市民がパニックを起こさないよう、わかりやすい敵として現れる事で動揺を抑える為の芝居だった。

真実を一般市民の目から隠すために、伝説の魔獣王を六花達が倒すという茶番が必要だった。

おとぎ話の悪役としての魔獣王が──三賢者達によって倒された──倒される事が分かっている悪役が必要だったのだ。

なんせ憑影は三賢者達が()()()()()()()()()()()相手なのだから。

 

ちなみにだが、リノ=レノは魔獣王伝説に出てくるリノワール本人であり、その年齢は最低でも300歳以上という事が語られている。

長命の為か精神の成熟が遅いらしく、当時は非常に子供っぽかった。

それから紆余曲折あり、彼女はミルサントの守り手として先代の六花長であるエコーと供に300年近い時をかけて憑影を倒す計画を進めてきた。

 

しかし、18年前に計画は失敗。

多大な犠牲を払って辛うじて計画の一部を完了したものの、すでに消耗は計画を実行不可能な領域に達していた。

何とか憑影を再封印することに成功するが、その際にエコーは消息不明。

 

しかし時間は待ってはくれない。

元々憑影の封印はすでに限界が来ていたのだ。

ゆえに、リノ=レノは新たな六花長として憑影の討伐に挑む。

 

新たな六花と、新たな太陽神とともに。

 

 

『太陽のプロミア』は一つの時代の終わりと、新たな時代を担う者たちの物語。

ミルサントを愛した先代の遺志を継ぎ、ミルサントを治める少女(リノ=レノ)の物語。

 

 

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祈りを終え、次の聖なる大樹に行く前に腹ごしらえをする。

向かうはもちろんマルゴーさんのおひさま焼き屋だ。

ここの『おひさま焼き』は絶品だからな。

誕生祭に訪れた際は毎回食べに来ている。

 

おひさま焼きは卵とおひさま粉で作った生地にフルーツソースなどを挟んだパンケーキのような料理で、蜂蜜やジャムなどをかけて食べる。

プロミア様の大好物だ。

そのためか、ミルサントには数多くのおひさま焼き屋があり、おひさま焼き屋の数だけおひさま焼きの味がある。

 

今回注文するのは先々代の太陽神様が愛したと言われる『ミックス盛りスペシャル』だ。

中に生クリームを挟み込んだおひさま焼きで、たっぷりの蜂蜜をかけていただく。

アクセントに各種花びらを使ったジャム。

その特筆すべきところは非常に甘いという事である。

甘党の私にはたまらない味だが、コダマは甘すぎて二個は食べれないと思ったほどだ。

プロミア様は当然のようにお代わりしていた。

 

『太陽のプロミア』の中ではコダマとプロミア様はここの二階に宿を借りていたので、もしかしたらいるかなと思ったが、残念ながらその御姿は無かった。

代わりにポッカちゃんの姿が見れたので良しとしよう。

彼女は太陽神プロミア様と先代の太陽神様を妹分として従える、ある意味ミルサント最強の女の子にしてポッカ団のオピニオンリーダー。

Flowering(フラワリング) Days(デイズ)』の数年後には小さなエノセラも仲間に加わる予定らしいが、もう入団しているのだろうか。

 

 

腹ごしらえを終え、次に向かうはランベル。

移動はせっかくなので光輪動機(こうりんどうき)をレンタルした。

これは光炉で動く自動車みたいなもので、コダマ達もこれで各地を回ったのだ。

ただし比較的大型の光輪動機は広く実用化されているが、俺がレンタルした小型の光輪動機は出力は安定しないわ速度を出し過ぎると止まるわで、これなら馬の方が良いと言われるほどのもの。

どうやら小型化はうまくいっていないようである。

まぁ、それほど速度もいらないし、一人旅にはちょうど良い。

 

いざ行かん、ミルサントの水源地帯にして水の都ランベル。

 

 

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イリシアとランベルの境界壁、紫の大水門。

ここでちょっと寄り道をする。

向かうはプロミア様御光来の地だ。

 

目的の場所は割とすぐ見つかった。

明らかに何か落ちましたよという大穴が開いていたのだ。

うん、ここがコダマとプロミア様が落ちてきた場所か。

太陽神であらせられるプロミア様はともかく、コダマはよく無事だったな。

やっぱりプロミア様が太陽神パワーで何かしたのだろうか。

 

 

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プロミア様御光来の地も見終わったので、ランベルに入り聖なる大樹へと向かう。

特に何事もなくランベル湖に到着し、聖なる大樹の一つである大ランベルの元へ向かう。

 

大ランベルは(みずうみ)に根を下ろす大樹であるが、水面に出ている部分はほんの一部に過ぎない。

その実態は湖底に根を張る巨大植物で、聖なる大樹の中では最大のサイズを持つ。

 

流石に水中には行けないので少し離れた橋から大イリシアと同じように目を閉じて祈りをささげる。

大ランベルと繋がるは(知識)の光炉。

その担い手は深遠(しんえん)なる知識を伝える青の六花(りっか)・アマリ。

フルネームはアマリ=ナ=ベムベ=ベルベル。

 

公務以外では年に数度しか図書館から出ないらしく、『青の六花様をさがせ!』なんて絵本もあるほどの出不精であり、ミルサントの住人でも顔を知っている人がほとんどいないと言われるほどだ。

しかし、その英知は青の六花に相応しく、リノ=レノからも信頼され、有事の際に自分が動けない場合はアマリに六花長の権限を託すほどだ。

記憶喪失だったコダマの正体をいち早く見抜いたのも、最初から知っていた者達を除けば彼女だった。

さすがに核心にまではたどり着けなかったようだが、あれにたどり着くために必要な情報が一切ない状態だったので仕方ないだろう。

なんせコダマの事を知っていた者達も核心部分に関しては知らなかったのだから。

 

特技は意外にも絵本の読み聞かせ。

プロミア様を相手におひさま焼きの物語を朗読していた際は、その迫真の演技でプロミア様を虜にしたほどだ。

あと、水中でも息が出来る。

かつて存在した、水中でも呼吸ができた特殊な一族の血を引いている──可能性がある──とかなんとか。

 

半面、料理は苦手……というか、食生活が貧しすぎる。

お腹が減ったらその辺にあるものを食べ、買い置きが無くなったら市場で適当にまとめ買い。

なんせミルサントの人なら誰でも食べたことがあるだろう()()()()()おひさま焼きを食べたことが無かったほどだ。

 

大ランベルが黒禍という憑影を構成する物質に浸食された影響で、大ランベルとリンクしている青の光炉の担い手である彼女は度々強制的に眠りにつくようになってしまった。

しかし、これが後に浸食の影響ではなく物語の18年前の事件が原因であり、アマリ自身はその時の記憶を失っていた事が判明する。

正確にはアマリ本人は18年前の記憶が抜け落ちている事は理解していたが、そこに強制的に眠りにつく原因があったとは思わなかったと言うべきか。

 

アマリの失われた記憶に関しては、本人も「自分の記憶が繋がっていない事が不安になる」といい、色々調べていたようだ。

それもあってコダマの記憶を取り戻す事に積極的に手を貸してくれている。

もちろん、コダマの正体に見当をつけていたため、コダマが記憶を取り戻せば流れが一気に六花側に傾くという打算もあったが。

 

彼女が強制的に眠りにつく原因。

それが憑影攻略の糸口となり、一人の少女を救う鍵になるとは、いやはや、何が転じて福となるか分からないものである。

 

 

『太陽のプロミア』は過去を解き明かし、未来を目指す物語。

失われた記憶を取り戻し、それを乗り越えた少女(アマリ)の物語。

 

 

ちなみに彼女は聖獣インフェルトンを従者としているが、このインフェルトンが実に有能なのだ。

コダマ達が水中移動をする際に背にのせ、空気の泡を張る事で溺れないようにしてくれるし、空中に投げ出された際には膨らんでクッションになってくれる。

司書としても優れていて読みたい本の大まかな内容を指定すればお勧めの本を持ってきてくれるし、特定の本を指定すればなぜかインフェルトンの背中から飛び出てくる便利さである。

 

見た目は角の生えた巨大な豚だが、アマリ曰く洗礼された知的なデザインとのこと。

なお、同じ見た目の仲間がいっぱいいて、それぞれに名前と役割がある。

 

 

 

お祈りを終え、湖水浴場へと向かう。

湖水浴場には宿舎もあるので、今日はそこで一泊する予定だ。

流石にまだ湖水浴シーズンじゃないだろうし、予約なしでも部屋は取れるだろう。

大図書館は一般人が入れる範囲で中の雰囲気を堪能してきた。

本の一つでも読んでいきたかったが、流石にそんな時間の余裕は無い。

 

 

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翌日、光輪動機を飛ばしてジュエルリップに入る。

向かうはジュエルリップの聖なる大樹、大ジュエルリップだ。

大ジュエルリップは市街地からは離れてはいるが、すぐ傍のジュエルリップ六花庁までは道もあるので行くのはそこまで大変ではない。

 

ただ、大ジュエルリップは冷気を発していて、しかもそれが理由でジュエルリップは避暑地として有名だ。

言うほど寒いわけでは無いが、念のため持ってきた上着を着ることにする。

 

頑張って光輪動機を走らせていると、見えてきた。

大ジュエルリップの周辺には草木が生えていない空間が円形に広がっている。

 

光輪動機を一旦止めて、近くまで歩いて行ってから祈りをする。

大ジュエルリップと繋がるは(結界)の光炉。

その担い手は(おごそ)かな礼節を守る黒の六花(りっか)・ジゼル。

フルネームはジゼル=ジェラルダイン。

 

髪型が犬耳にしか見えない彼女は、リノワールの配下として初めはコダマ達の前に立ちふさがる。

前記の通りこれは芝居であったのだが、赤の六花が弱体化していた事もあって圧倒的な戦闘能力と暴走した光輪動機にさえ追い付いてきた脚力で絶望感を叩き込んできた。

 

ある時は赤の六花が弱体化したままだったとはいえ、六花の内で最も連携が取れていると思われる赤と黄を同時に相手取って互角の戦いを繰り広げたほどだ。

 

アマリには万全の状態の赤の六花には劣ると分析されていたようだが、それでも『武』の六花である赤に次ぐという評価は十分なものだ。

 

性格は気まぐれな獣のそれであり、その容姿や仕草も相まってイメージは完全に獣娘。

匂いでコダマを判別し、耳に甘噛みして親愛の情を示す。

 

しかし、(礼節)の六花を拝命するに相応しく礼儀作法は完璧であり、『Flowering(フラワリング) Days(デイズ)』ではアマリに接客の指導をするほどである。

まぁ、彼女が黒の六花に任命されたのは物語中の出来事なので、物語の最初では黒の六花は空位となっているのだが。

 

ついでに言えば料理も上手く、コダマも絶賛していた。

メイドさんの姿は雰囲気ががらりと変わって可愛いぞ。

 

だが、その礼儀作法もプライベートでは一切発揮されない。

食事は生肉。

室内とはいえ夜は裸でうろつく。

コダマがいてもお構いなしである。

 

コダマの正体を最初から知っていた一人だが、それは正確ではなく核心部分が異なっていた。

とはいえその正体が間違っていた訳でもない。

本来は起こりうる筈のない事が起きてしまっただけなのだ。

その為、彼女の知っているコダマととても似ていて、しかし決定的な部分で違うコダマに困惑することとなる。

 

 

彼女は先代の六花長・エコーの養い子でもある。

最初は養い子にするつもりは無かったようだが、何度人に預けても帰ってきてしまうので、最後はとうとう折れたようだ。

ただし、その愛情は本物であり、ジゼルの行動からもエコーを母親として慕っていたことが見て取れる。

 

忙しい中、エコーはジゼルの事を精いっぱい可愛がっていた。

本当に自分の子供のように、彼女を扱っていた。

しかし18年前、ある事件をきっかけにエコーは二度と帰っては来なかった。

エコーの消息は不明となり、その後はレノ=リノが引き取った。

 

リノ=レノもジゼルも、エコーは亡くなったもの思っていた。

そしてそれは、()()()()()()()()()()()()()()()()

だが、それでもジゼルは待ち続けていた。

たくさん、たくさん、待ち続けた。

 

だからその言葉は────

 

 

『太陽のプロミア』は過去への涙と未来への笑顔の物語。

言えなかった母への言葉を、ようやく言う事ができた少女(ジゼル)の物語。

 

 

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これ以上特にジュエルリップで見る予定の物もないので、そのまま光輪動機を走らせてアルクスに入る。

アルクスは木材の一大生産地であり、金属よりも固い樹なども生えている。

これを切り倒すには相当な斬撃の技術が必要で、アルクスの木こりは剣の達人でもあるのだ。

そんなアルクスの聖なる大樹は開けた丘にぽつんと立っている。

 

 

 

予定通りの時刻に大アルクスに到着出来たので光輪動機から降り、祈りをささげる。

大アルクスと繋がるは()の光炉。

その担い手は太陽神を守る質実たる武である赤の六花(りっか)・フレアルージュ。

フルネームはフレアルージュ=リリエンソール。

 

太陽神の矛たる武人である。

 

プロミア様への忠誠心は六花一(りっかいち)

なんせその崇拝具合はプロミア様のすばらしさを説かれたコダマが気押されて思わず頷いてしまうほどの迫力がある。

コダマ曰く「崇拝の方向が間違っている気がする」だそうだが。

 

なんせ真面目な性格が空回りしてプロミア様の不遜を買う事もしばしばあったのだ。

とはいえ勝手に暴走するのではなく、「私の方がお役に立てます。私にお任せを!」みたいな感じの過剰アピールでプロミア様がプイっとほっぺを膨らませる感じ。

そうしたら素直に引き下がる……というかショックを受けて停止するので、むしろ愛嬌の一つに見えてくる。

立ち直りも早いから引きずらないし、プロミア様の機嫌もすぐに直るしな。

 

思い込んだら一直線、それがいいのか悪いのかは状況によりけりなので置いておくとして。

愚直な突撃が似合う彼女に派手さはないが、相応の鍛錬を積んでいる。

でなければもう一つの(つぼみ)の開花によって得た力を十全に使う事は出来なかっただろう。

 

 

彼女はその魂に二つ目の花を持つ。

光炉を使うために咲く魂の花の、その更に奥に秘めた黄金の蕾。

それを開花させたフレアルージュは正にミルサント最強の剣となる。

 

その蕾は今まで積み重ねてきた研鑽の証。

その種を持つ理由が特別な存在であるが故であったとしても、種が芽吹き蕾をつけるまでになったのはミルサントを、プロミア様を守るためにしてきた努力の証だ。

 

そしてその蕾は、コダマの持つ緑の光炉の力によって花開く。

別に使わなくてもそのうち咲いてたとは思うが、最後のきっかけが『つなげる』力を持つ(接続)の光炉になるというのはフレアルージュらしいと思う。

 

彼女は人の想いを力に変えることが出来る人間だ。

今を生きるミルサントの人々の想いと繋がり、大輪の花を咲かせる。

太陽神とミルサントを守るためなら、赤の六花(フレアルージュ)はどこまでも強くなれる。

 

 

彼女が二つ目の花を持つ理由やその正体は、まぁ、口にするのも無粋なので黙っておく。

しかし『フレアルージュ』という名前がその伏線だったのは見事だと思ったものだ。

いや、これはそういった話があったわけでは無いのだが、それを知った後から考えればこの名前が無関係だとは思えないという推測というか妄想だけどな。

 

 

『太陽のプロミア』は願いが繋がり、想いが繋がる物語

何も変わらず、だけど何もかも変わっていくこの町(ミルサント)で、太陽のような笑顔を繋いでいく少女(フレアルージュ)の物語。

 

 

 

お祈りも終えたので、次はローゼリアに向かおうか。

普通の観光ならともかく、今回の旅行の趣旨からするとアルクスはあまり見るべきところがないのだ。

物語の中で大アルクス以外にあんまり行ってなかった気がするんだよな。

『Flowering Days』でフレアルージュが里帰りした時くらい?

流石にトロンコさん家にお邪魔する訳にもいかないし、そもそも場所が分からない。

 

 

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特になんの問題もなくローゼリアに到着した。

ローゼリアの聖なる大樹、大ローゼリアはイリシアと同じように町の大通りの広場にある。

 

危険もないので普通に近づいて目を閉じ、祈りをささげる。

大ローゼリアと繋がるは()の光炉。

その担い手は豊かな芸術を生み出す黄の六花・エレガノ。

フルネームはエレガノ=フォン=クロイツェル。

 

伝説の3賢者の一人、エノセラに連なる直系の子孫であり、ミルサントでも有数の古い名家であるクロイツェル家の次女。

お嬢様中のお嬢様である。

 

気品あふれる音楽家で、手にしたものは全てが楽器となり、奏でる音は全てが楽曲となる。

性格は気風(きっぷ)の良い姉御肌。

同期のフレアルージュをよくからかっているが、これは彼女たちが長年の親友であり、気の置けない仲であるからだ。

というか、気に入った相手ほどからかいたくなるとの事。

 

自由奔放で猫のよう。

かと思えば自分の価値を知っていて、自分の分は知っている。

だからと言って勝手に自分の分を弁えない。

自分に限界を設けない。

不遜と謙虚という相反する要素が、彼女を形作っている。

 

あと、意外と子供好きな面もあり、面倒見も良い。

市民からも人気があり、フレアルージュに言わせれば為政者でもある六花としての役目を果たすために、積極的に市民と触れあう機会を作っているかららしい。

それがエレガノなりの六花としての役目であり、自分の分という事なのだろう。

 

戦闘面においても優秀で、憑影を相手に音の弾丸や障壁などを駆使して戦っている。

特に音を対象に纏わせて加速させる技は味方の攻撃や回避に幾度となく貢献してきた。

戦闘での立ち位置的におそらくは本人も直接の戦闘よりはサポートの方が得意なのだろう。

特にフレアルージュとの連携は正に阿吽の呼吸であり、前衛のフレアルージュを中衛のエレガノが音でサポートする布陣は戦闘での基本パターンとなっている。

 

あと、英雄エノセラの名を継ぐ姉がいる。

物語の中でエレガノは「一番大切な人」と発言してるし、エノセラも「私の希望」と称している一幕があった。

病弱な姉を気遣うエレガノと六花である妹を誇りに思うエノセラ。

二人はお互いを心から大切に思っていたのだ。

 

エレガノ……というかクロイツェル家はルディナス人の血を色濃く継いでいるのだが、ルディナス人はミルサント人に比べて寿命が長く光炉適性も高いが黒禍に対する耐性が極端に低い。

しかし彼女はルディナス人の血を色濃く残しながらミルサント人を超える黒禍耐性を持っていた。

そんな奇跡の存在である彼女の誕生が月に生まれし姫の望郷の念を呼び起こし、最後の覚悟を決めさせるきっかけとなるとは誰も思わなかっただろう。

 

 

『太陽のプロミア』は太陽の暖かさにふれた姉妹の物語。

託された願いと幸せを、心に抱いて歩む少女(エレガノ)の物語。

 

 

話は変わるが、ミルサントには子供たちに大人気な黄色い生き物、タイガージョージちゃんがいる。

(ちまた)で子どもたちに風船を配ったり楽器を演奏したりしているが、特にエレガノとは関係がない。

だって「中の人などいない」からね。

 

 

 

ちょっと探してみたが残念ながらタイガージョージちゃんは見つからなかったので、ローゼリアで一泊した後にリリに向かう。

リリは高台になっているのでそこに上るためには切り立った岸壁に掘られた曲がりくねった坂道を登らなければならない。

もっとも、道幅は十分にあるし光輪動機での移動なのでゆっくり進めばなんの問題も無いのだが。

リリに近づくにつれて気温が上がっていくのが感じられる。

なんせリリでは南国の果物が育てられているほどだからな。

まずは聖なる大樹に向かうとしよう。

 

 

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リリの聖なる大樹である大リリが生えているのは人里離れた森の中であり、リリ地区の中で最も暑い場所にある。

リリ地区は高地ではあるものの、地下に巨大な温水溜まりがあり、非常に地熱が高い。

間欠泉も多く、特に大リリの周辺には密集して存在しているので大事を取ってぎりぎり大リリが見える位置からお祈りをする。

 

大リリと繋がるは(強化)の光炉。

その担い手は健全な身体を育む白の六花・ニーナ。

フルネームはニーナ=オータム。

 

物語開始時点では彼女はまだ六花ではなく、一介の神官でしかない。

 

彼女は料理人志望であり、厨房の仕事を探していたらたまたま神官の厨房職に空きがあり、これ幸いと応募したら運よく採用。

しかし人手不足のせいで他の部署に回されているうちに偶然が重なって警備隊長に。

物語の開幕でコダマを誘拐犯と間違えて捕まえたのが縁でプロミア様のお世話係に就任する。

ちなみに誘拐犯と間違われた理由はプロミア様くらいの子供の捜索願いが出されていたことと記憶喪失のコダマが自分の身分を証明できずに逃走したせいである。

 

それからプロミア様の護衛であるフレアルージュがコダマ達と別行動を取る際にプロミア様の護衛の任を拝命。

その際に白の光炉に見合う力を示し、それを使いこなして見せた。

それにより六花長レノから白の六花として認められるという異色の経歴を持つ。

 

これは白の六花に求められる資質が他の六花と異なっている事が原因だ。

光炉は使い手を選ぶ。

等級の低い光炉はそうでも無いのだが、等級が高くなるにつれて使える人間は減っていく。

特に六花の使う光炉は秘宝12光炉と呼ばれる最上級の光炉であり、これを使えるかどうかが六花の資質を見極める基準となっているほどだ。

 

しかし、白の光炉は秘宝12光炉でありながら誰でも比較的簡単に使用することが出来る。

ただし使う人間の資質によって出力が変わるのだ。

その為、白の六花の決め方は実際に白の光炉を使ってもらって基準以上の出力を出せた者が就任するという事になっているのである。

もちろん、大前提として『プロミア様の側に仕えるに相応しい資質と教養を持つ者』に限られるので、白の光炉で高い出力が出せれば誰でも六花になれる訳では無いが。

 

そんな条件を突破し、ニーナは白の六花となったのである。

 

そんな経歴のせいか、ニーナの目線は他の六花とは異なる。

プロミア様を敬愛し、恐れ多いと言いながらも『ぷぅちゃん』の世話をする。

その姿は仕える者ではなく、小さな子供をお世話するお姉さんだ。

 

明るく優しく、一見頼りないけれど絶対に諦めない。

そんな彼女だから、六花が設立された理由を「プロミア様が寂しくないように」だと考えたのだろう。

それは先代の太陽神に対しても同じだった。

 

数多の偶然が重なってかつての太陽神と出会ったとき、彼女はそうやって六花としての務めを果たそうとした。

誰からも崇められるがゆえに誰よりも孤独だったかつての太陽神に、同じ目線で接していた。

だからだろう。

新たな太陽神(ぷぅちゃん)も六花の中で一番ニーナに懐いていたように見えたのは。

 

ぶっちゃけ、これ、コダマが主人公じゃなかったらニーナの立ち位置が主人公だよな。

多分、ニーナが主人公でコダマがヒロインでも同じ話が出来る気がする。

 

 

『太陽のプロミア』はひたすら前向きに困難を乗り越えた、勇敢なる市民の物語。

人より力が強かっただけの、特別でもなんでもない少女(ニーナ)の物語。

 

 

ふむ。お祈りも終わったので今日は温泉に入って一泊しよう。

なんせリリは温泉で有名であり、物語の中でもコダマやプロミア様が入浴している。

あの温泉がどこのやつか分かればいいんだがな。

正直手がかりが内部の背景くらいしかないから無理か。

 

 

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翌日、光輪動機を唸らせてやって来ましたミルサントの中心、太陽樹とそれを取り巻くように作られたプロミアの塔。

毎年誕生祭には訪れているので目新しさは無いが、今回の旅行でここを外すなど考えられない。

 

本当にでっかいよな、太陽樹。

これですら、かつてあった太陽樹の切り株に芽吹いた若い木でしかないと言うから驚きだ。

その切り株は現在のミルサントの円形大地だというから何とも壮大な話である。

 

この時期でも人通りは多いので邪魔にならない場所で祈りをささげる。

ミルサントの中心に立つ太陽樹。

それにつながるのは当然、太陽神であらせられるプロミア様──の筈なんだが。

先代まではその通りなのだが、今代のプロミア様(ぷぅちゃん)に関しては今一よく分からない。

 

プロミア様は本来、可憐な少女の姿で降臨するのだが、今代のプロミア様(ぷぅちゃん)は幼子の姿で現れた。

しかもコダマと決して切れない紐で結ばれた状態で。

 

その性格は好奇心旺盛でマイペース。

また、どんなことでも楽しむ豪胆さを持つ。

そして成すべき時に太陽神としての役目を果たす良い子でもある。

好物はおひさま焼きで、特にマルゴーさんの所のおひさま焼きが好みのようだ。

 

手にした杖は『神の杖 へリアンサス』。

見かけはおもちゃだが、憑影を浄化したり光炉の封印を解いたりと数々の奇跡を起こす代物だ。

 

プロミア様がミルサントに降臨すると、太陽樹は太陽の花を咲かせる。

太陽の花は光炉を活性化させ、それは人々の暮らしをより豊かにする。

プロミア様はミルサントに『在る』だけで人々に恵みを与える存在なのだ。

 

この期間を『開花期』と呼び、126年もの間続く。

そしてプロミア様が天上に戻られ、力を蓄える期間を『休眠期』と呼び、こちらは18年ほど。

合わせて144年のサイクルで降臨と帰還を繰り返している。

 

ちなみにミルサント人の平均寿命は100年に満たない。

アマリ達を見るに混血でもう少し伸びているかもしれないが、人によっては一生の間プロミア様が降臨し続けている事もある訳だ。

 

彼女(ぷぅちゃん)はこれまでの太陽神プロミアとは違う、新たな太陽神だ。

太陽の花は普通に咲いているようなので恩恵的には問題なく、太陽神であることは間違いないのだが、今までの太陽神プロミアとは異なる点が多々ある。

では、彼女(ぷぅちゃん)は何者なのかと問われれば────そうだな。

 

 

「ぷぅちゃんは真なる太陽神である」かな。

 

 

ちなみにコダマと結ばれていた決して切れない紐は『迷子紐』だ。

 

 

 

プロミアの塔でのお祈りを終え、マルゴーさんのおひさま焼き屋で食事をとる。

もしかしたら運よくコダマとプロミア様が来てたりしないかなぁと期待していたが、残念ながらいなかった。

さて、これでもう、後は帰るだけである。

出来ればもう何日かここで過ごしたかったが、休みが取れなかったからなぁ。

 

今回、六大樹と太陽樹を巡った事で思ったことがある。

やっぱり俺は『太陽のプロミア』が大好きなんだなって。

コダマと、プロミア様と、六花達と、ミルサントの人々に出会えた幸運をかみしめながら、ミルサントの門を抜ける。

 

最後に一度だけ振り返る。

 

ミルサントの人々の営みは、これからもずっと続いていく。

ミルサントを照らす、太陽の暖かさとともに。

 

 

『太陽のプロミア』は全てを照らす太陽の物語。

太陽に見守られ、今を懸命に生きる人々の物語。

 




太陽のプロミア発売10周年、おめでとう!


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