【完結】暁小南討伐チャートbyホモガキ (夜散花)
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本編
ch.1 はい、よーいスタート(ホモガキ)


初投稿、おっすお願いしまーす!


 もう始まってる!

 

 皆さん初めまして、実況者のホモガキと申します。今日からゲーム実況をお伝えしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 

 それじゃあ早速ゲームの話題に入ります。

 

 今回実況するのは、“NARUTO~影への道~”というゲームです。今からおよそ百年前、二十一世紀に流行った大人気忍者漫画“NARUTO”を題材としたVRゲームですね。

 

 “影への道”とゲームタイトルにありますが、このゲームは別に火影を目指すゲームというわけではありません。

 無論、火影を含めた影を目指すこともできますが、なんなら忍者にすらならなくてもいいです。一般人AとしてNARUTO世界で過ごしたりもできます。鉄の国で侍プレイをすることもできます。

  

 さながらNARUTOの世界を自由に生きているような体験ができる。それがこのゲームの魅力というわけです。NARUTOという漫画が大好きな人にはたまらないゲームと言えるでしょう。

 

 そういうわけで、このゲームはわりとどんなことでもできる自由度の高いゲームと言えます。行動次第によって色々なトロフィーが貰え、それを集めるのがゲームをやる上での一つの目標になったりします。

 

 それで今回の配信では、配信タイトルにありますように、暁という犯罪組織に所属している小南というキャラの討伐トロフィー獲得を目指して走りたいと思います。好感度を上限まで上げて交流系トロフィーを全て獲得した後、敵対して討伐トロフィーをゲットすることにします。

 

 一言で言えば、仲の良かった親友を裏切って殺す無慈悲なチャートです

 

 救いはないんですか!?(レ)ってチャートですが、救いはないね(レ)。小南の討伐を目指して無慈悲に走りたいと思います。

 

 ではゲームを始める前に、今回討伐を目指す小南というキャラについて軽く触れておきましょう。

 

 コナンって名前を聞くと、現在も連載が続いているあの有名探偵漫画の主人公を真っ先に思い出してしまいますが、バーローではありません。小学生探偵(大嘘)のコナン君じゃありません。NARUTOの小南です。

 

 NARUTOの漫画を読んだことがある人ならわかると思いますが、小南は紙で出来た花の髪飾りとアイシャドウのメイクが特徴的な人ですね。

 雨隠れという里の天使様で、暁という犯罪組織の紅一点のクールな紙使い爆弾魔の人です。三十五歳というアラフォーの年齢なのに、とある人に小娘扱いされてる可愛い人でもあります。

 

 ちなみに小南ちゃん、脱ぐと凄いらしいです。超見たい(クソノンケ)

 

 興味ある方は“NARUTO 水着小南”で検索してみてください。“ナルコレ”というゲームで出てくる水着姿の小南ちゃんを拝むことができます。ノンケ兄貴は見とけよ見とけよ~(ダイマ)。

 

 とまあ、ここまで言えば原作うろ覚えの人もイメージが浮かんできて思い出すことでしょう。

 

 まとめると、NARUTO世界の悪の犯罪組織の紅一点幹部で、クールな美女天使の爆弾魔で、脱ぐと凄いアラフォー小娘ということですね。

 

 うん、余計わけわかんなくなったかもしれないです。まあいいでしょう。

 

 天使様(三十五歳)

 小娘(三十五歳)

 

 とまあ冗談はさておき。では早速ゲームを始めていきましょう。

 

――GAME START――

 

 はい、よーいスタート(棒読み)

 

 ということで、まずはキャラメイキングです。名前と性別を決めます。

 

 名探偵コナンにちなんで名前は“ラン”で女の子にしましょうか。NARUTOのゲームだから名探偵コナンまったく関係ありませんけどね。

 

 まあ名前なんて飾りだからどうでもいいんです。ということで名前はランちゃんに決定です。

 

 続いて容姿設定です。

 髪はワシの趣味で淫乱ピンクの長髪にします。毛利蘭から名前とってるのに黒じゃなくて何故かピンクです。ヒロインのサクラちゃんと髪色被ってますが、まあいいでしょう。

 

 お次は生まれる時代と場所の設定ですね。

 

 小南を攻略するので、生まれは当然ですが雨隠れの里です。年代も小南たちと一緒ですね。

 

 続いてステータスの配分を行っていきます。

 

 本チャートでは修行時間がたっぷりあるので、ステータスについてはあまり拘る必要がありません。よってランダムでパパっと決めちゃいましょう。ランダムの方が総合値はやや高くなるので、拘る必要がないならランダム一択です。

 

 ランダムでパパッとやって、終わり!

 

――デデドン。

 

忍術:F 体術:E 幻術:F

体力:F 精神:F 器用:F

政治:E 知力:G 魅力:C

(ランクは上からS~G)

 

 ふむ。どうやら魅力値がかなり高めに出てる代わり、他のステータスは低めですね。特に知力が低いです。最低値です。

 

 ランちゃん知力低すぎィ!

 

 先ほども言いましたが、本チャートでは修行してステータスを鍛える時間はいっぱいあるので、特に問題ありません。低い知力でも、後で問題ないレベルまで補えるので大丈夫です。これでいいでしょう。

 

 魅力が高くても戦闘面では役に立ちませんが、キャラ好感度が稼ぎ易いので攻略を進める上でメリットはあります。

 

 本チャートでは小南の好感度を上げると同時、長門、弥彦、自来也の好感度もそれなりに上げる必要があるので、好感度稼ぎが楽になる魅力値が高いのはメリットがあります。

 初期ステータスで魅力値が恵まれてるのに加えて、魅力関係のスキルが一つくらいあると、進めるのが超楽ですね。

 

 では次に才能(スキル)を決めましょう。

 

 このゲームでは初期スキルとして五つ貰えます。スキルは選択できずランダム配布です。十回まで振り直し可能で、固定したいスキルをロックした上での振り直しも可能です。

 

 スキルはステータス値と違って後で増やしたり調整できないので、かなり重要です。ですので、スキルは拘ることにします。

 

 暁メンバーはどれも強敵なので、討伐を目指す際はスキルに拘らないとキツいです。キャラ性能をカバーできるほど戦闘でのプレイングが上手ければ話は別ですけど、普通はスキルに拘らないと無理ゲーです。

 

 ということでスキル選びは拘りましょう。目当てのスキルが出なかったら再走です。当たり前だよなぁ?

 

 具体的にどのスキルを狙うかと言いますと、小南攻略では火遁や水遁が使えると楽なので、本チャートでは【火遁の才能】か【水遁の才能】というスキルを狙っていくことにします。

 

 勿論他の関連スキルでもいいのですが、この二つが一番確率的に出やすいので、基本的にはこの二つのどちらかを狙うことにします。二つ出ればラッキーです。

 

 小南攻略では、他にも蟲攻撃、時空間忍術での攻撃も有効です。体術も極めればいけます。

 

 わりと何でもいけるので弱い印象を抱いてしまうかもしれませんが、小南は弱くはないです。

 というかむしろ強いです。甘く見ると大変なことになります。普通に死にます。起爆札六千億枚の必殺技をくらう前に死んじゃいます。

 

 ある人も「甘く見ていたな……。考えれば元暁のメンバーだ。お前も」とか言ってましたし、小南は弱くないです。

 

 イザナギなければ普通に死んでましたからねあの人。大概舐めプしすぎたせいですけど。小娘だからって、なんで舐めプしたんだろう……。貴重な写輪眼消費してアホやん……。舐め舐め小娘しすぎィ!

 

 おっと、話が逸れましたね。まあそれはともかくとして、小南は強いので攻略するにはそれなりにガチビルドでいかないと無理です、ってことです。

 

 では十分に説明も終わりましたので、スキルガチャといきましょうか。ほらいくどー。

 

――【血継限界・沸遁】

 

 ふぁっ!?

 

 いきなりとんでもないスキルが出ました。これはラッキーですね。ラッキーどころではないですね。超ラッキーです。

 

 沸遁といえば五代目水影“照美メイ”が使うくっそ珍しい血継限界です。

 

 沸遁は火と水のチャクラ性質による血継限界なので、火遁と水遁のどちらの成長にもブーストがかかります。狙っていた【火遁の才能】と【水遁の才能】を掛け合わせた上位互換スキルです。

 

【血継限界・沸遁】は確率低いので当初組んだチャートでは狙うつもりはなかったんですけど、貰えるなんて超ラッキーです。これに【火遁の才能】や【水遁の才能】が加わったら、もう勝ったも当然ですね。

 

 勝ったな(確信)

 

 ではスキル【血継限界・沸遁】をロックして、後四つのスキルを選び直しましょう。

 

 沸遁に加えて火遁か水遁の才能きたらもう勝利確定ですね。確率的には大いにありえます。どっちも来ることもありえそうですね。

 

 こりゃ勝ったな(二度目の確信)

 

 さて、後の四つはどうなりますかね……。

 

……。

……。

……。

 

 【火遁の才能】と【水遁の才能】は出ませんでした……(小声)

 

 運が良いのか悪いのか、これもうわかんねえなぁ。

 なんで一番確率の高い火遁と水遁の才能が出なくて沸遁だけが出るんですかね。あーもう滅茶苦茶だよ。

 

 まあ残り四つのスキルも大したデメリットにはならないスキルだったのでいいでしょう。沸遁だけでもチャート的には問題ないというか、むしろ恵まれてますしね。

 

 ちなみに残り四つのスキルはこうなりました。

 

――【医療忍術の才能】

――【天然】

――【人たらし】

――【アホ毛】

 

 【医療忍術の才能】は医療忍術の成長にブーストがかかるスキルです。ちょっと鍛えれば自己回復できるようになるので、あって困らないスキルですね。回復手段が増えます。

 

 【天然】と【人たらし】と【アホ毛】はどれも魅力値のプラス補正と成長ブーストかかるスキルです。好感度稼ぎが有利になるので有難いスキルと言えます。

 【天然】と【アホ毛】に関しては、知力にマイナス補正が入っちゃいますけどね。

 

 全体的に見て、魅力値ブーストが過剰すぎるくらいです。そして知力が物足りない感じです。

 

 ランちゃん、知力低すぎィ!(二度目)

 

 ですがまあこれで問題ないでしょう。魅力値上げしなくていい代わりに、知力上げを頑張らなきゃいけなさそうですが、許容範囲ですね。

 

 ランちゃん、アホの子だけどくっそ魅力的なキャラに仕上がってますね。魅力チートキャラですよ。男の子はおろか女の子までそわそわさせちゃいますねこれは。

 

 なんか討伐チャートとか無視して原作キャラとひたすらいちゃいちゃパラダイスさせたくなるキャラが出来上がっちゃいましたね。

 

 まあ討伐チャートなのでそんなことはしませんけど。小南ちゃんの好感度稼ぐだけ稼いでも、最終的には殺し合いさせるんですけどね(無慈悲)。

 

 さあキャラメイキングが終わったので、次回から本格的にゲーム攻略をしていきたいと思います。

 

 次回もよろしくお願いしまーす。ではさいなら~。




ホモガキのくせに妙に礼儀正しいのはご愛敬


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ch.1 はい、よーいスタート(小南)

小南視点です


――ザァア、ザァア。

 

 長く降りしきる雨。今日も雨隠れの里には雨が降る。

 

 雨の多い気候である雨隠れの里といえど、年がら年中降っているというわけではない。この雨もやがては晴れて虹が差すのだろう。

 

 だが私たちの心は決して晴れることはない。あの日からずっと雨が降り続いている。土砂降りの雨だ。晴れ間などない。虹が差し込むことなどありはしない。

 

 弥彦が死んだあの日から――私たちの心はずっとずぶ濡れなのだ。

 

 哀しみという雨に濡れ、身も心もすっかり冷え切ってしまっている。人の心を捨て、外道の道に堕ちてしまうほど、私たちの心は凍てつき荒んでいる。

 

 それでもだ。それでも叶えたい夢がある。たとえ外道の道に足を踏み入れようとも、叶えたい夢がある。

 

 弥彦の願い。世界平和への道。暁の夢。私たちの夢。絶対に叶えたいもの。

 

 それは武力でしか叶えられないことに違いない。

 

 この呪われた忍び世界を変えるには、圧倒的な力で以って、全てを支配するしかないのだ。甘い理想など捨て去らなければ、この世界に平和が訪れることなどない。弥彦が死んで、私たちはそう悟った。

 

 あの子は否定したけれど、それでも私たちはその道しかないと思った。

 

 だからあの子に裏切られても、長門と二人でひたすら前に進んできた。無駄な感傷など捨てて、ひたすら前へ前へと。唯一つの目的に向かって真っ直ぐに。この両の手をどれだけ血に染めても、弥彦の夢だけを追って前に進んできた。

 

 弥彦の夢をどうしても叶えたい。自分の全てを犠牲にしてでも叶えたい。それが弥彦に生かされた私の生きる意味だから。

 

「小南、侵入者だ」

 

 外道魔像を何度も口寄せした代償のせいで、もはや自分ひとりでは満足に身動きのできない長門。

 いつものように彼の世話をしていると、彼が口を開いた。

 

 里に張り巡らせた結界に誰かが引っかかったようだ。

 珍しいことではない。昔に比べれば少なくなったものの、それでも今も週に何度かはあることだ。

 

 侵入者は様々だ。

 雨隠れの里は大国に囲まれた要衝にある。だから色々な目的を持った忍びが雨隠れの里に忍び込んでくる。それでいつも戦場になる。多くの血が流れる。

 

 昔は蹂躙されるばかりであったが今は違う。力を手にした今の私たちは、それを跳ね除けるだけの力がある。

 

 侵入者は幾度となく葬ってきた。一人残らず潰してきた。私たちから大切なものを奪った報いを受けさせてきた。

 

 葬った者が優秀な忍びならその死体を加工し、目的のために利用してきた。敵はおろか死んだ仲間の死体すら利用してきた。最愛の弥彦の死体すらも利用してきた。力を得るためにずっとそうしてきた。

 

 はっきり言ってどれも外道の行いだろう。それは自分自身とて十分に承知している。長門とて、それは同じだろう。

 

 血も涙もない外道の行いを続けてきたが、それで痛むような心は私たちはもはや持ち合わせていない。

 弥彦が死んだあの時からそうすると誓った。何でもすると決めたのだ。どんな外道に成り下がってでも、弥彦の夢を実現して見せると、そう誓ったのだ。

 

 私たちのために自らの命を捨てた弥彦のためにも、彼の代わりに彼の夢を叶えなければいけない。

 長門だけにこの重荷を背負わせるわけにはいかない。だから修羅の道を共に進むと決めた。

 

 なのに――あの子はそんな私たちを裏切ったのだ。

 

 最も弥彦に近かったあの子なら、共に歩んでくれると信じていたのに……。弥彦を裏切って、長門を裏切って、私を、私を……。

 

 絶対に許さない。あの子だけは絶対に。あの子だけは私の手で必ず葬ってあげる。必ずね。

 

 その時は近いだろう。

 あの子は今は木の葉にいるという風の噂を聞いた。私たちが九尾の人柱力を確保するために木の葉に赴けば、きっと会えるに違いない。

 

「数は何人?」

「……少し待て」

 

 私が尋ねると同時、長門は即座に輪廻眼を使って探知を開始する。

 すぐさま特定したようで、いつものような憮然とした物言いで情報を伝えてきた。

 

「……見つけた。二人だ」

 

 いつもと変わらない反応――そう見えるものの、長い付き合いである私だからすぐにわかった。

 長門の表情の僅かな違い。いつも見ているから、いつも世話しているから、わかってしまう。

 

(……まさか)

 

 長門のその瞳が少しだけ揺らいだのを、私は逃さない。

 私の視線に気づいてすぐに取り繕うその仕草も逃がさない。長門の心の迷いを逃さない。

 

(今日がその時だったのね)

 

 長門の逡巡を知った私の心もまた揺れ動く。待ち望んだ時が来たのだ。

 

 長い年月を経て紙のように無機質なものとなってしまった私の心。そこに感情の火が点る。紙人形に人間の情念が宿っていく。

 

 その火は徐々に燃え広がっていく。情念という黒い油が全身の隅々にまで染み渡り、激しく燃えていく。青き炎が揺らめき、凍てついた血が沸騰していく。

 

(意外と早くその時が来たのね。早くても木の葉を襲撃した時に会うと思っていたのだけれど。まあいいわ)

 

 あの子だ。あの子が来たのだ。

 

 弥彦の夢を叶えるために私以上に外道の道に染まった長門――彼のその心を動かす存在など、もはやあの子しかいない。あの子しかいないに決まっている。

 

「知っている人かしら?」

 

 白々しくも私は問うた。今更長門が心を動かす人間なんてあの子しかいないというのに。侵入者二人の内のどちらかはあの子だろう。わかりきっていることだが、私は問うた。

 

「ああ。一人は自来也先生だ」

「そう」

 

 長門はかつて自来也先生をとても尊敬していた。

 だがそれは過去の話だ。今は恨んでいるに違いない。

 甘い理想だけを唱え、その夢に染まった弥彦を間接的に死に追いやったのは、自来也先生に他ならないのだから。

 

 だから長門は自来也先生を殺すことに躊躇いはないだろう。

 ならば長門に躊躇の感情を抱かせる存在は誰?

 

 そんなのは決まっている。あの子しかいない。あの子しかいないのだ。

 

「もう一人は? 知っている人なんでしょ?」

 

 逸る気持ちを抑え、私は長門に再度問うた。自分でも驚くほど冷たい声色であることに気づく。

 

 私の感情が伝わったのか、長門がゴクリと喉を鳴らす。

 

「もう一人は……ランだ」

 

 長門の答えを聞き、やはり――と私は思った。

 

 私の心臓はいちだんと高鳴っていく。紙人形の無機質な身体が、情念という黒い油で満たされて、激しく燃えていく。

 

「殺せるの?」

「殺せるさ。自来也など今や俺の敵ではない」

「違う。あの子――ランも殺せるの?」

「……ああ殺せるさ。自来也もランも。今の俺にとっては取るに足らない存在だよ」

 

 長門はあの子に言及する時だけ、さりげなく首を動かして視線をずらした。

 自然体を装っているけど私にはわかる。いつも長門を見ているからわかる。その僅かな異変に気づいてしまう。

 

「長門。こっちを向いてちゃんと私の目を見て言って」

 

 長門の首を紙で固定し、私の方へと強制的に向けさせる。

 

 人間が嘘を言う時は目に出る。それは一流の忍びとて同じだ。人間である限り心に動揺が生まれ、それは脳に直結した目に出やすい。

 

 一流の忍びは嘘が上手い。誤魔化すのが上手だ。

 だがこうすれば誤魔化しようはない。至近距離で目と目を合わせればわかる。

 

 それでも他人なら分かり辛いかもしれないが、私にはわかる。長門は家族のようなものだから。長門が嘘を言うのはわかる。

 

 さっきは嘘を言っていたのだ。あの子に関する嘘だけは絶対に許さない。

 

「……っ!」

 

 紙分身の私の顔が急に目の前に生えてきて、長門は少したじろいでいた。

 捕虜を尋問するみたいで心苦しいけれど、これは私にとって譲れないことだから、そうすることにする。

 

 逃げた返事など許さない。今となっては一番付き合いが長い長門だけに、それは許せなかった。

 

「嘘は嫌い。だからもう一度聞くわ。あの子を殺せるの?」

「……殺せるさ」

「嘘。ちゃんと私の目を見て言って。ちゃんとして」

「あぁ……」

 

 唯一の肉親とも言える長門にこんなことをするのは本当に心苦しい。

 けどあの子に関して嘘を言われるのは嫌なのだ。私の中に残った人間としての最後の欠片が嫌だと訴えるのだ。

 

 少しの沈黙の後、長門は観念したようにポツリと口を開いた。

 

「自来也もランも一流の忍びだ。正直わからない。場所によっては苦戦するだろう。特にランは狭い場所で戦うには圧倒的にこちらが不利だからな。アイツの血継限界は厄介だ。隙を見せればたちまち溶かされてしまうだろう」

 

 長門の答え。それは私の聞きたい答えとは遠いものだった。

 聞きたいのは戦いの相性や優劣や勝率など、そういうことではないというのに。

 あの子を殺す。何があろうとも殺す。明確にその意志を示して欲しいだけなのに。

 

 長門としては、それは答えたくないといったところだろうか。

 

 いや言えないのだ。

 弥彦に最も近かったあの子に対して殺したくないほどの未練が今もあると言えば、それは長門の心の奥にあるドロドロとした情念を曝け出すことになる。

 

 それは死んだ親友弥彦への裏切りに繋がるのであろう。あの子を愛した弥彦への裏切りになる。

 だから絶対にそんなことは言えないのだろう。口が裂けても私には言わないのだ。

 

 私にこうして至近距離で目と目を合わせられてる以上、嘘はつけない。嘘をつけないから、答えをずらして誤魔化すしかないのだ。的外れなことを言って誤魔化すしか。

 

(またあの子なのね。あの子ばかり、長門の心にまで入ってっ!)

 

 自ずと長門の本音を悟り、私は激情に駆られた。長門を罵倒叱咤したい気持ちになった。

 今までの私たちの関係は何だったのかと、この十年以上の関係はなんだったのかと、ヒステリックに叫びたい気持ちになった。

 

 でもそれを口に出したら、今までの関係が全て壊れてしまう気がした。だから私は長門の本当の気持ちを知った上で、あえて口を閉ざすことにした。

 

 その代わり、長門への苛立ちの全てをあの子への恨みに変えることにしよう。

 こうなったのも全部あの子のせいなのだから。だからあの子だけは私が必ず殺して見せる。

 

 絶対に殺す。殺す殺す殺す――。

 

 長門の迷いは私が断ち切ってあげよう。

 今となっては信じられるのは長門だけだもの。二人で絶対に弥彦の願いを叶えましょう。そのために、邪魔になるあの子を私が殺してあげるわ。

 

「なら私も出るわ。長門だけであの二人を相手にするのは大変でしょう。私があの子の相手をする。それでいいでしょう?」

 

 長門は一瞬の沈黙の後、ぎこちなく首を縦に振った。

 否なんて絶対に言わせないから。

 

「……わかった。俺本体の警護はいらん。ランを相手に紙分身は壁にしかならないだろうからな。血継限界が相手だ。十分に注意してくれ」

「ええ。そんなことは言われなくてもわかってるわ。あの子のことは私が一番よく知っているもの。この十年、何度殺しのシミュレーションをしてきたことか」

「そうか。ならばいい」

「じゃあ行ってくるわ」

「ああ」

 

 長門に別れを告げ、私はあの子を迎え撃つために出かけていく。

 

(ラン、貴方は私が必ず殺してあげるわ)

 

 先ほどまで無機質だった私の身体は、すっかり熱くなっていた。雨の冷たさを何も感じないくらい、熱く熱く。

 自分の髪色と同じくらい青く深く、私の血は燃えに燃えていた。



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ch.2 四人はどういう集まりなんだっけ?(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 どうも皆さんホモガキでーす。今日も“NARUTO~影への道~”の実況をお伝えしていきます。

 

 前回はキャラメイキングを終えたところまでですね。

 

 キャラメイキングの時に設定した内容の通り、ランちゃんは雨隠れの里に生まれました。

 両親は健在ですね。まあ土地柄アクシデントが多いので、そのうち高確率で死にますけど。

 

 勿論、両親を生かすプレイングもできます。

 ただ本チャートじゃ意味ないどころかデメリットしかないのでやりません。さっさと孤児になって弥彦たちの仲間になるイベントを起こしたいですからね。

 

 弥彦たちの仲間になれば、あの伝説の三忍“自来也”とのイベントを起こすことができます。アカデミーに通わずとも、そこで忍術等を学べます。本チャートでは必須回収イベントです。運悪くイベントが発生しなかったら途中からやり直しですね。

 

 ちょっと本筋の話とはズレますが、弥彦たちと同年代の雨隠れスタートなら、アカデミーに入るより孤児ルートの方がいいですね。勿論目的にもよりますが、孤児ルートで自来也とのイベントを狙った方が色々とお得です。

 

 アカデミーに比べて行動が縛られないですし、経験値効率的にもアカデミーに通うよりよっぽど美味しいですし、何より原作キャラとの交流が楽しいです。NARUTOの雨隠れ編ストーリーを自分で作ったキャラで追体験できるというのは凄い楽しいですよ。

 

 雨隠れアカデミールートもやったことありますけど、モブキャラオンリーの雨隠れのアカデミーでひたすら授業受け続けるのって苦痛でしたね。同級生みんな揃いも揃って変なガスマスクみたいなの装着してますし、外は雨ばかりなので室内授業ばっかりですし。陰気臭いったらありゃしません。

 同級生全員が変態的なファッションって、もうやめたくなりますよ~学校ぉ、ってな感じになっちゃいました。

 

 半蔵の部下やペイン統治下の雨隠れの里で出世を目指す場合とかは、あのクソつまらない学校に通わないとですけどね。半蔵マニアの視聴者兄貴姉貴は試してみて、どうぞ。

 

 では話を本筋に戻します。ランちゃんの育成について話します。

 生まれてから両親が死ぬまでは、基礎ステータス全般を伸ばしていきましょう。

 

 特に体力ですね。孤児になったら体が資本ですから。今のうちに少しでも悪環境への耐性をつけておきましょう。

 

 あと育成に使えそうなアイテムが市場に出ていたら、両親生きている間にゲットしておきましょう。死んだ後は金に困りますんでね。盗む以外に手に入れる方法がありません。

 

 盗みをすれば無料でアイテムをゲットできますが、失敗した時のペナルティが怖いので、必須系アイテムは事前に出来るだけゲットしておきましょう。良いアイテムほど盗み辛いですし、出来る限り正規の方法で手に入れておきたいところです。

 

 それじゃつまらないトレーニング風景は巻いてお送りします。

 

……。

……。

……。

 

 

 はい、ひたすらトレーニング漬けの毎日でしたが、イベントが発生しました。

 

――両親が死んだ。今日は土砂降りだ。

 

 どうやら両親が買い物に出かけている途中で賊に襲われて死んだっぽいですね。雨隠れに限らずこの世界じゃよくあることです。NARUTO世界ってマジで呪われた忍び世界ですね。死亡フラグ多すぎですよ。

 

 というわけで、ランちゃんは天涯孤独の身となりました。

 

 ようやく両親が死んでくれたので、今日からは自由の身ですね。やったぜ。

 

 ゲームの中の幼いランちゃんは悲しくて号泣してますが、プレイヤー的にはチャート通りに進めて嬉し涙ですね(人間のクズがこの野郎)。

 

 はい、ということで孤児生活スタートです。

 

 これから里の各地に繰り出していくことになりますが、大きな行動を起こす前に必ずセーブしておきましょう。なぜなら、これからは危険がいっぱいあって、突発イベントによる事故がかなりの確率で起きますからね。

 

 クソザコのランちゃんが危険なイベントに遭遇したらまず死亡確定といっていいでしょう。

 見目麗しいランちゃんはきっと捕らえられて新宿調教センターにでも売られてしまいます。男じゃないから売られないかもですけど。

 

 まあこのゲームは十八禁じゃないのでそんな表現はされませんけどね。ただゲームオーバーという表示がされるだけです。でもきっとゲーム世界では酷いことになってるんでしょうね。おじさんやめちくり~、みたいな状態になってるかもしれません。

 

 まあゲームだからそんなこと気にしても仕方ありませんけどね。

 

 話を本筋に戻します。

 では、数多の死亡フラグを潜り抜けながら、運命の人(弥彦や小南たち)に会いにいくとしましょう。

 

 運命のルーレット回しますよー。

 

……。

……。

……。

 

 屑運すぎて事故って何度も死にましたが、ようやく目当てのイベントが引けました。

 

――行き倒れていると、見知らぬ子供たちが近寄ってきた。

 

 弥彦たちとの出会いイベントですね。ランちゃんは空腹で行き倒れていたところを弥彦たちに拾ってもらえたようです。

 

「食べて!」

「いいの?」

「うん!」

 

 ロリ小南ちゃんがランちゃんにパンを差し出してますね。

 自分も飢えてるのに我慢して他人にパンを差し出すとかしゅごい……。天使かな?

 

天使が光臨しとる。ロリ天使が光臨してますよ~

 

 激ヤバ犯罪者のアラフォー小南ちゃんと違ってロリ小南ちゃんマジ天使。

 いやアラフォーの方でも美人で十分天使ですけど、どっちかっていうとあれは堕天使の類ですからね。

 

 暁小南ちゃんはサイコなS級犯罪者です。誘拐、殺人、死体損壊、何でもござれですよ。

 

 話変わりますけど、ペイン作る場所に侵入するのとか、もはやホラーゲームですからね。

 心臓悪い兄貴姉貴はガチでやめておいた方がいいですね。心停止不可避です。雨隠れの天使の塔に興味本位で近づいてはいけない(戒め)。

 

「美味しい?」

「うん!」

 

 ロリ小南ちゃん、ランちゃんがパン食ってるのを微笑みながら見てますね。この頃の純粋無垢なロリ小南ちゃんはマジ天使ですね。

 

ああ^~、たまらねぇぜ。

 

 このロリ小南ちゃんたちと交流したくて、雨隠れ編を周回してる視聴者兄貴姉貴たちも多いと思いますね。ロリショタ雨隠れ組と交流したくてゲーム買ったって人、結構聞いたことありますねぇ。かくいう自分もその一人でして。

 

ああ^~、たまらねぇぜ(二回目)。心がぴょんぴょんするんじゃあ^~

 

 ロリ小南ちゃんたちと出会えて興奮しすぎて話が脱線しました。

 ゲームの話に戻りますが、正史では弥彦、小南、長門という順に孤児は集まっていきます。

 

 どうやら、既に三人は邂逅を果たした後のようです。三人共揃ってますね。

 たまにモブとか紛れてたりしますけど、今回は三人(と犬一匹)だけですね。

 

「お前、俺たちの所に来いよ!」

 

――弥彦たちと一緒に行く?

――【はい】

――【いいえ】

 

 勿論【はい】を選びます。

 ランちゃんは四人目のメンバーとして加えてもらえるようです。アジトに連れてってもらい、弥彦に認めてもらうことができました。

 

 ランちゃんの魅力値くっそ高いですからね。まず拒まれません。

 

 拒まれることを知らない孤児野郎です(野郎じゃないけど)

 

 ゲームの中のランちゃん、くっそ喜んでますね~。

 両親死んでずっと孤独だっただけに仲間ができて嬉しいようです。弥彦たちも新しい仲間が出来て喜んでるっぽいですね。

 

 魅力値ブーストがかかってるので交流を重ねる度に弥彦、長門、小南の好感度がぐんぐん上昇していきますね。会話の端々にあるキーワードでわかります。

 これから孤児同士助けあって生きていって、友情を育んで青春いちゃいちゃパラダイスを送って欲しいところですね。

 

まあ最終的に殺し合うことになるんですけどね(無慈悲)

 

 悲しいけどこれ、討伐チャートなのよね。

 

 さあ無事、ロリ小南ちゃんたちと出会うことができました。

 続きといきたいところですが、今回はここまでにしまーす。また次回お会いしましょう。さいなら~。



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ch.2 四人はどういう集まりなんだっけ?(小南)

 あの子と初めて会ったのはいつだったか。

 大昔過ぎて記憶がぼやけているが、たしか長門を仲間にしてからそれほど経っていなかったと思う。

 

「弥彦、小南! あれ!」

 

 最初に見つけて声を上げたのは長門だった。

 長門は昔から目が良かった。おまけにその時は飼い犬も連れて歩いていたから、異変にはいつも一番最初に気づいた。

 

「よく気づいたな長門。女の子だな」

「うん。怪我はないみたいだ。生きてるよ」

 

 弥彦と長門が真っ先に駆けつけ、その後を私も追った。

 

 当時の雨隠れの里では行き倒れている子など珍しい存在ではなかった。

 発見した時には既に手遅れな場合も多かったが、その子はまだ息があった。

 

 行き倒れの子は皆薄汚れているから男女の区別がつかないことも多い。幼子というのは、ただでさえ男女の区別がつきにくいものだ。

 事実、長門を初めて見つけた時、私は彼が男の子か女の子かわからなかった。自己紹介をして初めて気づいたものだ。

 

 でもその子は違った。薄汚れていてもちゃんと女の子なのだとわかった。

 どんなに泥水に汚れていても、その桃色の髪は艶々として輝き、長い睫はちょこんと目立っていた。くりりとした大きな目は悲しみの雨に濡れ、玉のように光っていた。

 

 天から天使が降ってきて行き倒れているのではないか。

 そう思えるくらい、その子は薄汚れていても輝いていたのだった。

 

 何もかもが美しくて尊い。泥の中で咲き誇る一輪の花に私たちは出会ったのだった。

 

「うぅ……お腹……空いたよぉ……ママ……パパ……うぅ……」

 

 女の子はうわ言のように呟いていた。哀しみの涙を流しながら夢と現実の世界を彷徨っていた。

 もう何日も食べていないらしかった。両親を失い天涯孤独の身のようだった。

 

 少し前までの私たちと同じだった。その女の子の抱える哀しみと痛みを、私たちは痛いほど知っていた。

 

「あげる!」

 

 私は見ていられなくて、すぐに自分のお昼用に確保していたパンを差し出した。

 少しカビが生えていたけれど、そこを取り除けば十分に食べられるものだった。

 

 自分も腹ペコだったけど、惜しい気はしなかった。

 私が差し出したのを見て、弥彦も長門も自分のパンを差し出していた。

 

「ごはん……?」

 

 その女の子はパンの匂いを嗅ぎつけたのか、むくりと起き上がってこちらを見上げた。

 美しい瞳が私の姿を捉える。ようやく私たちの存在に気づいたようだった。正面から見た彼女の顔は横顔以上に愛らしかった。

 

「くれるの?」

「うん」

 

 私がそう言うと、女の子は弾けるような笑顔を見せた。見惚れてしまうくらい美しい笑顔だった。

 そして大きな声でお礼を言ったのだった。

 

「ありがとう天使様!」

 

 女の子は空腹のせいで夢現なのか変なことを口走った。

 その時はそうだと思ったのだけれど、実は素であれだと気づいたのは少し後になってからだった。

 

 降りしきる雨の中、私たちの前に突如として現れた女の子。

 彼女は天使のように可愛い子だったけど、どこか抜けていた。いわゆる天然というやつだ。でもその欠点すら尊いように思える素敵な子であった。

 

「ハハッ、天使だってよ小南!」

「弥彦、何がおかしいの!」

「だって天使だぜ天使! ハハハ! 小南が天使だって!」

「もうやめてったら!」

 

 天使というワードは存外弥彦の心に刺さったらしい。

 弥彦に茶化されて、私は憤慨して抗議の声を上げた。

 

 天使なんて言われると面映い。どう見ても天使は目の前の子だというのに。私なんてそんな大層なものじゃないのに。

 

「おもしれーから、今日からしばらく、小南のことは天使様って呼ぶことにしようぜ!」

「ちょっと弥彦!」

「長門もそう呼べよな!」

「えと僕はその……」

「長門!」

「よ、呼ばないよ僕は! 小南は小南だもん!」

「……コナンちゃん?」

 

 女の子が夢中になってパンを食べている横で、私たちは冗談を言いながらじゃれ合っていた。

 やがてパンを食べ終えた女の子は、むくりと顔を起こしてこちらを見上げた。

 

「おうそうだ。こいつの名前は天使じゃなくて小南って言うんだぜ」

「天使様はコナンちゃんって言うの? 天使様は天使様じゃなくて……えと……コナンちゃん? じゃあコナンちゃんは天使様? でも天使様じゃなくて、えとえと……」

 

 女の子はかなり頭が悪いようだった。

 最初に刷り込まれたイメージを振り払うことができなかったらしく、私の名前が天使じゃなくて小南だということをしばらく認識できなかった。

 

 何度か自己紹介をして、やっと理解した様子だった。

 

「おいおい、こいつ大丈夫か? かなり頭悪そうだぞ。連れ帰っても戦力になるのか? 足手まといは困るぜ」

「でもほっとけないよ。こんな子が一人でここにいたらどうなるか……」

「とりあえず私たちのアジトに連れて帰りましょう」

 

 少し手のかかる子であったけど、不思議と私たちはその子を見捨てる気にはなれなかった。アジトに連れて帰って妹分のように可愛がった。

 四人とも年齢的にはほとんど変わらなかったけど、一番後に仲間になったということもあって、彼女は私たちの中では妹分となったのであった。

 

「んで、お前何て名前なんだ? 流石に自分の名前くらい言えるだろ?」

「ランだよ! 私ラン!」

 

 その女の子の名前はラン。

 その名に違わず、彼女は私たちの中で一番の花であった。

 キラキラとした笑顔を見せ、雨雲に覆われた私たちの心を晴れさせてくれた。

 

 ランは度々私のことを天使と呼んだけど、私たちにとってはランこそがまさに天使だった。喜びを齎す天使であった。

 

 呪われた忍び世界に生きる私たち。喜びよりも哀しみと苦痛に満ちている世界。その中で出会った一輪の花。

 

 彼女との出会いを、私たちは神に感謝したのであった。



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ch.3 三忍に勝てるわけないだろ!! 馬鹿野郎お前半蔵は勝つぞお前!!(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 どうも皆さん実況者のホモガキです。今日も“NARUTO~影への道~”を実況していきたいと思います。

 

 前回は弥彦たちとの遭遇イベントを起こしたところまででしたね。これからしばらく弥彦たちと行動を共にして、自来也先生関連のイベントを待ちましょう。

 

 要所要所でセーブは必須ですよ。弥彦たちの仲間になったとはいえ、孤児生活は危険がいっぱいですからね。

 

 ランちゃんと同じくクソザコ状態の弥彦たちが仲間になっても戦力にはなりません。たまに長門君が輪廻眼の力の片鱗見せて助けてくれることありますが、基本運頼みです。危険は変わりありませんので、変なイベントを引き当てたら死亡確定です。

 

 下手したら四人共々死亡とかもありますからね。

 プレイングミスって主人公のせいでクソイベ引き寄せて弥彦たちを殺した日には、「ああ、弥彦君ごめんなさい。小南ちゃんごめんなさい。長門君ごめんなさい。僕を死刑にしてください!」ってな感じに発狂しちゃいますよ。

 

 幼年期雨隠れ組と楽しく交流してたら突然三人が死んで発狂した兄貴姉貴は多いかと思います。

 雨隠れは結構トラウマイベント多いっすからね。結構というか、ほとんど全てがトラウマイベントですからね。ドン引きするくらいトラウマイベントが多いです。

 

 ですので常にセーブ必須です。

 特に第二次忍界大戦が激しくなってきたら要注意です。雨隠れが主戦場になりますからね。そうなったら死亡フラグ満載です。プレイングには十分気をつけましょう。

 

 死亡イベント以外にも、自来也関連イベントが引き寄せられなかった時にやり直すためにも、セーブは必須です。そこらへん注意して運命のルーレットを回していきましょう。

 

 それでは、弥彦たちと泥棒生活をやりながら時間が過ぎるのを待ちます。

 

「盗れたよ!」

「おお、でかしたぞラン!」

 

 やってることはガチ犯罪行為なんすけど、ロリショタ窃盗団とか、絵面的にくっそ可愛いですね。

 

 ちなみに窃盗中に捕まると、虐待おじさんや虐待おばさんにやられちゃいます。

 捕まっても死なない程度なら大丈夫です。死亡可能性のあるイベントとの区別をしっかりとやって効率的にゲームを進めていきましょう。

 

 ペナルティが強そうな相手への盗みは禁物です。無理はしてはいけない(戒め)。

 

「は、放せよ!」

 

 あ、弥彦君が捕まっちゃいましたね。まあよくあることです。

 

「あぐぅうう! がぁああ!」

 

 弥彦君が虐待おじさんにビシビシと殴られています。弥彦君は血気盛んで反抗的な態度をとるので、おじさんを完全に怒らせちゃってますね。

 

 お前もう生きて帰れねえな?

 

――弥彦が危ない。どうする?

――【助ける】

――【助けない】

 

 ほっとくとヤバめなので助けにいきましょう。

 ランちゃんは魅力値高いから、捕まっても謝ると許してくれる場合多いんすよね。

 

 魅力値は戦闘には役立たないですけど、キャラとの交流や日常生活パートなど、戦闘面以外の場面では大いに役立ちます。

 誰かが捕まった時は代わりに謝りにいって助けてあげましょう。窮地を救うと好感度ぐんと上がるので、積極的に助けにいきましょうね。

 

――どうやって助ける?

――【実力行使】

――【謝罪する】

 

 戦闘スキルが高ければ実力行使で助けられますが、今のランちゃんでは無理ですね。

 高い魅力値を活かせる選択肢を選びましょう。というわけで、素直に謝った方がいいですね。なので謝りましょう。

 

 おじさんやめちくり~!

 許してください、何でもしますから!

 

「こんな子がな……悲しい世の中だ……」

 

 お、虐待おじさんが弥彦を釈放してくれましたね。ランちゃんの必死の謝罪が功を奏したようです。

 

「ほらよ。もう悪さなんてすんじゃねえぞ」

 

 おまけにリンゴまでくれました。

 釈放されるだけのパターンはよくありますが、プレゼントをくれるのは珍しいですね。ランちゃんの魅力しゅごい……。

 

 ありがとうおじさん。また今度こっそりリンゴ盗ませてもらいますね(人間のクズがこの野郎)

 

 とまあそんな感じで、ゲームを進めていきます。

 

 リンゴ屋の親父はチョロいのでいいカモです。捕まっても謝ればたいてい許してくれます。昼も夜も積極的に盗みを働いて経験値稼ぎましょう。泥棒ムーブ楽しいですよ。

 

 ああ^~、こそ泥プレイ楽しいんじゃあ^~

 

 こういう何でもできる自由度が高いゲームっていいっすよね。盗みを働いたり、やろうと思えば通行人コロコロできるゲームって超面白いですね。

 

 話変わりますけど、人でなしプレイとか結構楽しくてたまにやりたくなりますね。暁のメンバーになって非道の限り尽くす悪役ムーブするのって結構楽しいですよ。

 

 イタチの兄さんと一緒にうちは一族抹殺してサスケにトラウマ植えつけるの凄い楽しい(サイコ並みの感想)

 

「なぁなぁ、この先で半蔵様が木の葉の忍びと戦ってるらしいぜ。見に行かないか?」

 

 お、ようやく目当てのイベントが引けましたね。

 

 自来也関連イベントの前身である「三忍vs半蔵」のイベントですね。

 この戦いを見て、弥彦たちは自来也たちに修行をつけてもらおうと思いつくわけです。

 

「そんな、危ないよ弥彦」

「いいじゃん。忍びってのがどんなもんか見てみようぜ」

 

 ノリノリの弥彦君に対し、慎重派の小南ちゃんは及び腰ですね。

 

 そりゃそうですよね。戦場見物なんて正気の沙汰じゃありませんから。普通はそうです。

 

「長門はどうなんだよ?」

「僕はなんとも」

 

 長門君はどっちつかずといった感じです。

 

 プレイヤーの選択肢が結果を左右しそうですね。好感度高いので、皆ランちゃんの言うことを素直に聞いてくれるでしょう。

 

「ランはどうするんだ?」

 

――どうする?

――【行く】

――【行かない】

 

 勿論ランちゃんの返事は【行く】です。

 待ち望んだイベントですからね。死んでもロードすりゃいいだけなのでとっとと戦場行きましょう。ほらいくどー。

 

 ランちゃんが賛成したことによって賛成多数となり、戦場に行くことが決定しました。

 

 いざ戦場へ。戦場は宝物の宝庫なので、転がってる死体を調べて有用なアイテムを持ってないか欠かさずチェックしましょう。

 気分は羅生門に出てくるおばあさんです。死体漁りは生きるために必要だから許してくれよな~頼むよ~。

 

 そんな感じで死体漁りしながら何日も戦場を彷徨い、半蔵たちがいる場所を探っていきます。ようやく特定できました。

 

「雨隠れの長、山椒魚の半蔵殿とお見受けする」

「いかにも。して主らは何用だ?」

「アンタに恨みはないが、上からの命令でな。その命、貰い受ける」

「ふん。ならばやってみるがいい」

 

 イベントを挟んで戦闘が始まります。三忍と半蔵が戦ってますね。

 

 はぇ~、一流の忍びの戦いすっごい。かっこいい(小学生並みの感想)

 

 大蛇丸も自来也も綱手姫も若いっすね。美男美女で有能なスリーマンセルとか木の葉の期待の星ですね。

 

 一人違う意味で犯罪者(ホシ)になりますけどね。というか見物してるランちゃんのお仲間の二人も犯罪者(ホシ)になりますけどね。もう一人はまた違う意味で若くしてお星様になります。

 

 悲しいなぁ……(諸行無常)

 

 NARUTO世界の運命って残酷や……。

 

 まあそんなどうでもいいことより、このイベントはノンケ的に重要です。

 

 せっかくなんで若い綱手姫のおっぱいをしっかり堪能しておきましょう。命かけて戦場に来たのはそれも目当てなんですからね。スクショ撮りまくっておきましょう。

 

 綱手姫のおっぱい、セクシー、エロい!

 

 火影の時ほどではないですけど、もうかなり大きいです。もうおっぱいの成長期入ってますね。

 

 ああ^~たまらねえぜ(クソノンケ)

 

「すっげぇ……これが忍び……」

 

 三忍の戦いぶりに弥彦君たちは感動してますね。

 

 そんな凄い三忍に変なガスマスクしたモブっぽいおっさんがどうやったって勝てるわけないだろ!って思うんですが、普通に勝つんですねー。

 

 全盛期半蔵様しゅごい……。それはそうと口寄せ動物のイブセ君キモ可愛いっすね。

 

 この戦い見てると半蔵部下ルートとかやりたくなりますけど、雨隠れのアカデミーに通うのは前も言ったけど地獄なのでやりたくないですね。

 あの変態ガスマスク集団の仲間に入るのはいやー、キツいっす。やっぱロリ小南ちゃんとかと交流できる孤児ルートが最高って、それ一番言われてるから。

 

「あっ、危ない! こっちに飛んでくるぞ!」

 

 三忍たちの戦いをいつまでも見ていたいところですが、そうはいきません。孤児の立場では適当なところで切り上げないと危ないです。戦いが激しさを増すごとに、見物人のランちゃんたちは危険に晒されます。

 

 加熱した戦局は、やがて危険な領域へと到達する……。

 

「きゃああああ!」

「うわああああ!」

「チビがぁあ! チビィー!」

 

 あっ、長門君の犬、死んじゃった。イブセ君の毒の余波で死んじゃいました。また死んでるwww。

 

 いやシリアス場面で草生やしてる場合じゃないんですけど、なんか笑っちゃうんすよね。このイベントやってると、高確率で長門君の犬が死んじゃいます。このイベント以外でも結構死にます。

 

 幼少時弥彦たちと行動共にするルートやってると、「チビィー! うわあああ!」っていう長門君の迫真の叫びが毎回聞けます。

 今回はイブセ君の毒で死にましたけど、運命のルーレットによっては、死亡要因が違うこともあります。

 

 稀に自来也先生の攻撃で死んだりするんですよね。

 もうそうなったら大草原なんすよね。ゲームの中の長門君的には笑いごとじゃないでしょうけど、こっちとしてはなんかもう笑っちゃうんすよね。

 

 もっと酷いパターンだと、犬だけじゃなくてプレイヤーや弥彦たちも死にますからね。自来也先生に殺された日には、運命のルーレット狂いすぎて大草原不可避です。

 

 自来也先生が驚いた顔して「何故こんなところに子供たちが!? 俺はなんてことをしてしまったのだ……」みたいなセリフが出てきてゲームオーバーになります。

 ネタ動画として頻繁にアップされてますから、見たことある視聴者兄貴姉貴も多いでしょう。

 

 ま、というわけでこのイベントは放っておくと死亡フラグ満載です。ですので弥彦の三忍への関心が高まるキーワードが聞けたら、キリのよいところで逃げましょう。飼い犬が死んだことで放心状態の長門君を支えつつ、撤退していきますよー。

 

「貴様らでは俺は倒せん」

「何ィ、舐めるなぁあ!」

 

――ドゴォオオン。

 

 三忍と半蔵はランちゃんたちのことなど考えないで激しくやりあってますね。おー、激しい。衝撃波で石ころとか飛んで来て、HPがじわじわ減っていきます。もうこっちの事情も考えてよ(棒読み)って感じです。

 

「きゃああああ!」

「落ちるぅうう!」

 

 爆風に吹っ飛ばされて川に落ちて流されちゃいましたけど、なんとか無事に四人とも生還できました。長門君の犬は死んじゃいましたけどね。

 

 長門君の犬は犠牲になったのだ……。呪われた忍び世界、その犠牲にな

 

 長門君の犬を殺さずに寿命まで生かすプレイングもやろうと思えばできますが、そんなことしても意味ないのでやめておきます。死亡フラグ満載の世界で忍犬でもない普通の犬を殺さないようにプレイするって結構ストレス溜まりますから、初心者はやめておいた方がいいです。完全に自己満の世界ですし。縛りプレイがお好きな視聴者兄貴姉貴はお好きにどうぞ。

 

「俺、あの人たちに弟子入りしようと思う。忍者になろうと思うんだ」

 

 死んだ長門君の犬の墓を皆で作り終えたところで、新しいイベントが始まりました。

 

 三忍への弟子志願を決意するイベントですね。弥彦が悲愴な決意を語ります。幼稚園児みたいなナリしてるのに立派な覚悟っすね。漫画の主人公みたいです。

 

 まあ弥彦は主人公じゃない脇役キャラなので、その発言は死亡フラグなんですけどね。「立派な忍者に俺はなる!(死亡フラグ)」って感じです。

 

「僕も弥彦に賛成だよ。僕がもっと強ければ……チビは死ななかったんだ。このままじゃ皆も守れない……。僕は強くなりたい。大事なものを守れる強さが欲しいよ」

「長門まで……。そんなこと言ったって、きっと無理だよ。私たちが忍びになんてなれるわけが……」

 

 犬を守りきれなかったので長門君も珍しく積極的な発言してますね。

 小南ちゃんは相変わらず慎重派です。そんなこと認めてもらえるわけないって思ってるみたいです。殺されるかもしれないって言ってますね。

 

 まあ普通に考えればそうっすよね。自分の立場が危うくなることとか無視して他国の孤児に忍術教えてくれるような都合の良い人がいるなんて思えませんもんね。

 

 でもいるんだなこれが。自来也先生は男気ある良い先生っすね。ノンケホモ問わず人気キャラなのも頷けるってもんです。声優さんも渋い良い声してますし。

 

 ああ^~たまらねえぜ。はようガマ油まみれになろうぜ(OOTKボイス。同姓の別人です)

 

――どうする?

――【弟子入りする】

――【弟子入りしない】

 

 弟子入り志願するか否か、ランちゃんの意思を示す選択肢が出ますが、勿論弟子入り賛成です。とっとと自来也先生に弟子入りしてガマ油まみれになりましょう。

 

 忍術修行ができるようになれば、多少は死亡フラグを力ずくでへし折れるようになりますからね。

 なにより、激ヤバ犯罪者おばさんと化してしまった小南ちゃんを討伐するのに鍛えないといけませんし。本チャートではガマのおっさんへの弟子入りは必須イベントです。

 

 ということで、弥彦たちが忍者になる決意を固めました。

 そんじゃキリがいいので、今日の配信はここまでとします。さいならー。



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ch.3 三忍に勝てるわけないだろ!! 馬鹿野郎お前半蔵は勝つぞお前!!(小南)

 孤児の生活とは厳しいものだ。幼年期に誰の庇護にもないというのは想像を絶する過酷さである。

 

 自分たちの力だけで大人たちの世界に交じって生きていかねばならない。

 非力な子供の立場では、普通の手段をとっていては無理だ。搾取されるだけである。

 

 だから悪いことだとはわかっていても、盗みに手を染めざるを得なかった。

 それをしなければ生きてはいけなかったから、心苦しくとも茨の道を歩むしかなかった。

 

 盗みなんて嫌だったはずだけど、気づけば自然と盗みを働くようになっていた。

 他人の感じる痛みを忘れて、息をするように盗みを働く。自分と仲間のことだけを考えて、他の人の痛みには気づかないフリをし続けてきた。ずっとずっと――。

 

 そんな忘れていた痛みをふと思い出させてくれたのは、あの子だった。

 

「私……泥棒なんてしたくないよ。だって盗まれた人が可哀想だよ……」

 

 ランも私と同じ痛みを抱えていた。

 私たちの仲間に入った当初は盗みを働くことに反対していた。盗まれる人のことを考えると心が痛いと言っていつも泣いていた。少し前までの私だった。

 

「しょうがねえだろ。そうしなきゃ俺たちは生きていけねえんだからよ」

「うん……」

 

 けれど私たちに諭され、また自身の空腹に耐えかね、渋々その手を汚していった。天使の美しきその手を俗世の汚れで染めていった。

 私たち孤児は、汚れなければ生きてはいけなかった。

 

 一度手を汚してからというもの、ランは誰よりも積極的に盗みを働くようになった。昼も夜も、暇さえあれば一人で盗みに出かけていった。

 

「見て見てー! いっぱいとった!」

 

 私たちの中で一番抜けているところのある子なのに、何故か盗みの成果はいつも一番だった。

 あの子はふらふらと何かに導かれるように飛び出していっては、隠された品物を見つけ出してきた。

 まるで幸運の神様がついているかのように、高級な品物もいとも簡単に盗み出していた。計画性なんて何もないのに、何故か高級品がある場所をいつも把握していた。

 

 ランは今日も大漁だったよと、盗んだ品を誇らしげに見せてくれる無邪気で純粋な子だった。

 私たちは表面上は「でかした!」と素直に喜んでいたけど、みんな複雑な胸中だったと思う。

 

 愛らしい天使の手が汚れていくようで見ていられなかった。居た堪れない気持ちになった。

 

 妹分に負けたくなくて、ランの手を汚させたくなくて、私たちも必死に盗みを働いた。盗んで盗んで盗み続けた。

 

 リーダーとしてみんなに負けてられないと思ったのか、弥彦は次第に無理な盗みも働くようになっていった。

 捕まるのは時間の問題だったのだろう。

 

「放せよ!」

「放せとはなんだ! 泥棒したくせになんてふてぶてしい態度だ! もう許せんぞ!」

 

 ある時、弥彦が捕まってしまった。

 欲を出して店主の目があるというのに盗みを働こうとしてしまったのだ。

 

「くそっ、こんな不味そうなリンゴ一個くらいいいじゃねえか! どうせ売れなくて廃棄するんだろ!」

「不味そうなリンゴとは何だ! ウチの大事な商品だぞ!」

 

 相手は素直に謝れば許してくれそうな優しそうなおじさんだったのに、弥彦は何故かふてぶてしい態度を保っていた。

 長い孤児生活で色々とストレスを抱えていて、捌け口を探していたのだろう。だからわざと挑発じみた言動をしたのだと思う。

 

 私たちと同じくらいの歳の他の子はこんな苦労をせずに生きている。犯罪なんかには手を染めずに綺麗に真っ当に生きている。

 なのに何で自分たちはこんなことをしなければいけないのか。

 どうして、何故、何故なのか――。

 

 その不満が爆発したようだった。いつもの弥彦らしくない態度だった。

 いつまで続くかわからない孤児の生活に、自暴自棄気味になっていたんだと思う。命知らずな行動だった。

 

「だから返すっつんてんだろ! いらねーよ、そんなの!」

「何だその態度は! 君、おじさんのこと怒らせちゃったねえ! 本気で怒らせちゃったねえ!」

 

 売り言葉に買い言葉でおじさんはヒートアップしていった。

 

「こっち来いよオラァッ!」

 

 優しそうなおじさんだったというのに、何かのスイッチが入ってしまったかのように急に豹変した。

 おじさんは近くにあった護身用の竹刀に手をかけて、弥彦を激しく叩き始めたのだった。

 

「痛ぅっ!」

「痛いのはわかってんだよぉ!」

「痛いんだよぉ!」

「掴んだらかける2だぞ! かける2だぞ! いいのかぁ! 謝るんだ!」

「嫌だ!」

 

 素直に泣いて謝れば、おじさんは許してくれたのだろう。

 けれど弥彦は涙目になりながらもおじさんに反抗的な態度を保っていた。

 睨みつけたり、悪びれる様子もなく強がってヘラヘラとしたり。それはまるで見えない敵と戦うかのようだった。

 

 弥彦なりに何かの意地があったのだろう。それは私には量り知れないものだった。

 

 その弥彦のふてぶてしい態度がおじさんの怒りをますます増長させたらしい。

 おじさんはさらにヒートアップしていき、恐ろしい暴力の制裁を弥彦に加えていった。

 

「なんだその態度は! ちょっと来いよオラァ!」

 

 体格差のある大人から下される暴力の数々。弥彦は背中に痕が残るくらいに竹刀で叩かれていた。

 挙句の果てには、バケツに入った水をかけられ、水桶に沈められそうになっていた。

 

「溺れる! 溺れる!」

「一言謝ればいいんだ! さっさと謝れ!」

「いやだ!」

 

 優しそうなおじさんが豹変して、当時私たちの中では一番強かった弥彦をボコボコにしている。

 大人の容赦ない暴力を前にして、私たちは縮こまって震えていた。弥彦を助けたいのに、どうすることもできなかった。

 

「謝れって言ってんだろ!」

「やだ、絶対やだ!」

 

 おじさんにボコボコにされ、弥彦は明らかに弱っていた。なのに弥彦は謝るということをしないので、ずっと殴られていた。

 意地と意地のぶつかり合いで、不毛な争いが続いた。

 

 このままじゃ本当に殺されてしまう。そう思えるほど、弥彦はボコボコにされていた。

 

「おじさん、もうやめてよぉ!」

 

 そんな時、一番頼りにならないと思っていたあの子が勇敢にも飛び出していったのだった。

 

「うぅ、うわぁあああ! もう許してあげてよぉおお!」

 

 怖かったのだろう。恐怖を堪えながら泣きながらもおじさんの前に出ていったのだった。

 

「弥彦をもう叩かないであげてよぉ!」

 

 ランはその端整な顔をくしゃくしゃに歪めながら、おじさんに縋りつきながら許しを乞うていた。

 

「……わかったよお嬢ちゃん」

 

 天使の涙を見て、おじさんの熱くなった心は急速に冷やされていったらしい。

 いくら生意気な子供相手とはいえ流石にやり過ぎたと思ったらしく、落ち着いた声色で事情を聞き始めた。

 

「どうしてこんなことをしたんだい?」

「えと、えと、どうしてって、弥彦が叩かれて可哀想だから……」

「いや謝ることじゃなくて、盗んだことだよ」

「盗んだことっ、本当っ、ごめんなさい!」

「いや、それはわかったんだけど、俺が言いたいのはそういうことじゃなくてだな……」

 

 興奮していたせいもあるのか、ランはおじさんと満足に意思疎通ができていなかった。

 

「実は……」

 

 クールダウンしたおじさんに何かされる心配もないと思ったので、隠れていた私たちも姿を現し、私と長門が代わりに事情を説明することになった。

 

「……そうか。その歳で親を失くしたか。すまねえな。俺もついカッとなっちまって。正直やりすぎたよ」

 

 店主は弥彦に過剰な制裁を加えたことを謝ってくれた。傷を診てくれた上、謝罪の意味を込めてリンゴを沢山手渡してくれた。

 

「……ほらよ。でも二度と悪いことなんてやめるんだぞ。苦しくても真っ当に生きるんだぞ」

「ありがとうおじさん!」

「おうよ」

 

 ランが満面の笑みで感謝を伝えたので、店主のおじさんは照れくさそうに鼻を掻いていた。

 

 まさか泥棒を働いたのにプレゼントを貰えるとは思わなかった。初めて他の人に優しくされた気がした。

 弥彦は痛い目を見たけれど、そのおかげで私たちは他人がくれる優しさを少しだけ知ったのだった。

 

「弥彦、これに懲りてもう無茶なことはやめて」

「わかってるよ小南。今日は調子が悪かったんだ」

「どこか具合でも悪いの?」

「そうじゃねえよ。ちょっとムシャクシャしてただけだ」

「何かあったの?」

「小南には関係ないだろ」

「……」

 

 帰り道、私はどうしてあんなことをしたのか弥彦に尋ねてみた。

 いくら尋ねても、弥彦は誤魔化すばかりだった。

 いつも一緒にいる長門は何かを知っているようだったけど、話してはくれなかった。

 

「今日もリンゴいっぱいとれたよー!」

「「「えぇ……」」」

 

 余談だがその翌日には、ランはおじさんの所にリンゴを盗みに出かけていった。

 私たちもそれは人としてどうかと思ったのだが、ランは何かに憑かれたかのようにふらふらと一人でリンゴを盗みに行っていた。

 

 どうやらみんなで食べたリンゴが美味しかったということだけを覚えていて、おじさんにリンゴを貰ったことはまったく覚えていなかったようだった。

 いつものように自分で盗んだ品だと思っていたらしい。だからまた盗みに行こうと思ったらしい。

 

 ランは物凄く馬鹿だったのだ。当時は、の話であるが。

 

「この先で半蔵様が木の葉の忍びと戦ってるらしいぜ。見に行かないか?」

 

 いつだったか、弥彦がそんなことを口に出した。

 第二次忍界大戦の戦況がより激しくなり、雨隠れが主戦場になっていた頃だったと思う。

 

 戦場に子供が顔を出すなんて言語道断だ。

 一般人であるリンゴ屋の店主一人の暴力に怯えているだけの私たちが忍びに目をつけられてしまったら、確実に殺されてしまうに決まっている。

 

 だから私は反対した。長門は態度をはっきりと示すことはしなかった。

 

「ランはどうしたいんだ?」

「私行くよ! 忍者見たい!」

 

 勇敢にも弥彦を助けにリンゴ屋の店主の前に飛び出たランであるが、彼女は基本的には私よりも臆病だ。

 何の変哲もない安全そうな道を歩いている時でさえ、急に豹変したように縋りつき「この先は絶対に行っちゃダメ! ダメなの!」と必死に訴えてくることがよくあった。

 私たちはその度にランのわがままに付き合い、仕方なく道を変えたりしたものだった。それくらい、ランは臆病だった。

 

 だからきっと弥彦の考えに反対すると思っていたのだけど、彼女は迷わず行くと即答していた。戦場の危険など頭を過ぎらず、純粋に忍者に興味があったらしい。

 

「よっしゃ、じゃあ行こうぜ。長門も行くだろ?」

「弥彦もランも行くなら僕も行こうかな」

「小南はどうするんだ? 留守番するか?」

「ううん……私も行くよ」

 

 弥彦とランに流されるように長門も行くことになった。

 私一人取り残されるのは戦場に行くことよりも苦痛だったので、渋々私も戦場へと向かうことにした。

 

「この人、いっぱいお金持ってたー! わーい、私、お金持ちだ!」

 

 最初は戦場のそこかしこに転がっている死体に怯えたものだが、そのうち慣れてくる。

 意外にも一番順応が早かったのはランだった。怯えることもなく死体の衣服を弄り、有用なものを探し出していた。無邪気であるがゆえ、死体への抵抗も少なかったらしい。

 

 妹分であるランにだけそんなことをさせるわけにはいかない。

 ランに習って私たちもそうしていく。食べ物、衣服、何でも調達していく。そうして何日か戦場を彷徨った。

 

――ドォオオン。

 

「あっちだ。あっちで戦闘があるみたいだ。きっと半蔵様だぜ」

 

 ようやく目当ての半蔵らしき人物を見つけることができた。

 怖かったものの、ここまで来て引き返すわけにはいかない。

 私たちは戦場の中心地へと向かっていった。

 

「す、凄い……」

 

 そこで見た光景は圧巻だった。同じ人間とは思えないほどに人間離れした人たちがいた。

 

 無数の蛇のようなものを即座に召喚したり、口から火を噴いたり、女性だというのに大岩を持ち上げてそれを投げつけたり。また水面を走ったり、空中を飛び跳ねていたり、高速で殴りあったりしていた。

 

 あの力があれば。あの術が使えれば。

 もうこんな死体から物を剥ぐような惨めな生活をしなくて済むかもしれないと思った。

 

「……決めた」

「弥彦?」

 

 弥彦は私たちの中で一番真剣に食い入るように戦場を見つめていた。

 忍びたちは高速で移動を重ねている上、煙幕などのせいで余計に姿形がわかりにくくなっていたのだが、弥彦はその姿を必死に追って脳裏に刻み込んでいるようだった。

 

「危ない!」

「うわ!」

 

 だいぶ遠くから離れて見ていたのだが、戦闘の影響は徐々にこちらまで及んできた。弾かれた手裏剣が飛んできたり、衝撃波が飛んできたりした。

 

 私たちは命の危険をまざまざと感じ始めた――そんな時のことだった。

 

「弥彦、危ないから早く逃げようよ」

「もう少しだ。もう少しだけ――っ!」

 

――ドゴォオオン。

 

 戦況はよりいっそう激しさを増し、半蔵の口寄せ動物が吐き出した毒霧が不運にも風に押し流されてこちらにやってきた。

 私たちはなんとかそれを嗅がずに済んだのだが……。

 

「くぅーん……」

「ああっ、チビが! チビが!」

 

 長門の飼っていた犬のチビがその毒を吸ってしまった。

 チビは泡を噴きながら痙攣し、やがて動かなくなってしまった。

 

「チビが……死んだ……?」

 

 あっけないものだった。死とはあっけないものなのだ。突然として私たちの目の前にやって来る。

 チビはさっきまで私たちと楽しく触れ合っていたというのに……。

 

「うああああ! チビィイイ! チビがぁあああ!」

 

 生きる気力を失っていた長門を救ってくれたのがチビだ。

 そのチビを失って、長門は半狂乱になって喚いていた。

 

「弥彦、もう逃げよう」

「ああ。そうだな」

 

 チビが死に、私たちの命も危なくなった。慌てて撤退を開始した。

 

「チビが……チビがぁ……」

「長門、しっかりして!」

 

 呆然とチビの死骸を抱える長門の背を押し、必死に逃げた。

 

「また毒ガスが来る! 皆! 川に飛び込め!」

 

 弥彦の合図でみんなで一斉に川に飛び込んだ。

 

「ぷはっ!」

 

 川に押し流される形で、私たちは戦場から遠ざかることができたのだった。

 

「なんとか全員無事みたいだな。小南も無事だな?」

「うん。でもチビが……」

 

 戦場から遠ざかって自分たちの安全が確保できると、急に現実に引き戻された。

 チビの亡骸を前に、私たちは呆然となった。

 

「うええん、チビが死んじゃったー!」

 

 ランは人一倍泣きじゃくっていた。

 みんなチビのことを可愛がっていたが、ランは特にチビを可愛がっていた。長門の飼い犬なのに、ランに一番懐いていたほどだ。だから哀しみも人一倍強かったのだろう。

 

「チビのお墓……作ろっか」

「そうだな小南」

 

 私たちの体力ではチビの亡骸をアジトまで連れ帰ることはできないと思ったので、その場でみんなでお墓を作ることにした。

 そうしてチビと最後のお別れを済ませた。ランはいつまでもお墓に縋りつくようにして泣いていた。

 

「もう泣くなラン。全部俺のせいだ。俺が戦場に行こうなんて言ったから……長門すまん。お前の相棒だったんだよな」

「弥彦のせいじゃないよ。僕も戦場に行くことには賛成したし。チビが死んだのは僕のせいだ……僕にもっと力があれば……僕は強くなりたい!」

 

 ランはいつまでも泣きじゃくっていたけれど、弥彦と長門、特に弥彦の立ち直りは早かった。

 男の子として重大な覚悟を決めたらしかった。チビの犠牲を無駄にしない。その屍を踏み越えてでも何かしようと決心したらしかった。

 

「俺は決めた。忍者に弟子入りする」

 

 弥彦は徐に口を開いて宣言した。そして自分の思いを語った。

 忍者になって力をつけて、この里を平和に導く。やがては世界を平和にすると。

 

 それは途方もないことであった。私たちはしばらく呆気にとられていた。

 一番真っ先に賛同したのは、意外にも長門だった。

 

「僕も弥彦に賛成だよ。力が欲しい。大事なものを守れる力が欲しい。もう失うのは御免だ」

「長門まで……」

 

 何かの熱に浮かされるように弥彦も長門も力を求めていた。

 

 また危険なことをしてしまうかもしれない。今回はチビだったけど、次はこの中の誰かが死んでしまうかもしれない。

 そんなのは嫌だ。誰か止めて欲しい。

 

 私は縋るようにランの方を向いた。あの子はきっと私のように二人を止めてくれる、そう思った。

 

 けれどあの子は違った。

 泣きじゃくっていたものの、強い意志を持って力強く言ったのだ。

 

「私も忍者なる! 世界平和するよ!」

 

 妹分のランの力強い宣言を前に、弥彦も長門も大いに勇気付けられたようだった。一緒にやってやろうぜと気勢を上げていた。

 

「決まりだな。小南もそれでいいだろ?」

「三人が言うなら……でも弟子になんてしてくれないよきっと」

「そんなのやってみなきゃわかんねーだろ。小南は心配性すぎんぜ」

 

 こうして私たちは忍者に弟子入りすることを決めたのだった。

 その後数奇な運命を経て、私たちは運命の人――自来也先生と出会うことになったのだった。



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ch.4 大蛇丸、お前精神状態おかしいよ・・・(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 どうも皆さんホモガキです。今回も“NARUTO~影への道~”の実況をお伝えしていきたいと思いまーす。

 

 前回は長門君の犬が死んだところまででしたね。

 そう言うとどこまでなのかわかり辛いですけど、ようするに自来也先生に弟子入りを決意するところまでです。

 

 それじゃ、これから自来也先生のところに弟子入り志願に行きましょう。すぐに弟子入りできません。三忍は戦場を転々としていますので、探しにいきましょう。

 

 おっと、捜索を開始する前にセーブは必須ですよ。運悪く出会えなければもう終わりだぁですからね。クソイベ引き寄せて戦に巻き込まれて死ぬ可能性もありますから、慎重に行きましょう。じゃないと巻き戻って長門君の犬が死ぬシーンをもう一度見るハメになっちゃいますから。

 

……。

……。

……。

 

「ん、誰か来たみたいだな?」

 

 お、ようやく目当てのイベントが始まりました。

 ランちゃんたちが仮の拠点にしているところに三忍が立ち寄ったようです。

 

「あの人たちだ。声をかけにいくぞ」

「やっぱり危ないよ」

「大丈夫だって。小南は心配性だな。それにここまで来て引き下がれるかよ。ランはどいつに声をかけに行った方がいいと思う?」

 

 自分、声かけ行きますか?

 

ということで三忍への声かけイベントが始まりました。

 

 ここは慎重に相手を選びましょう。

 適当に大蛇丸とかを選んで近づいていくと、「あら敵だと思ったわ(すっとぼけ)」みたいな感じで攻撃されて死ぬ場合が多々ありますからね。

 

 まあ今回はプレイヤーの魅力値が高いんでそんなことにはならないと思いますが、わざわざ大蛇丸を選んで危険を冒す必要もありません。

 自来也か綱手姫に声をかけに行きましょう。ここは王道をいく自来也にしましょう。

 

――【白い髪の男の所へ行く】

 

「何者だっ!?」

 

 近づくと、すぐに警戒されましたね。流石三忍です。素早い対応ですね。

 自来也の叫びに反応して、三忍が武器を構えます。ランちゃんたちは悪意がないことを示すために手を挙げながら近づいていきます。

 

「子供だと?」

 

 自来也たち驚いていますね。戦場に子供が急に現れたんですから、幽霊か幻術かと思ったのかもしれません。すぐに戦争孤児だと理解して納得した様子です。

 

 三忍との会話パートが始まります。ここでは原作よろしくご飯をおねだりしておきましょう。会話を繋げて少しでも好感度を上げるチャンスでもあります。

 

 蛇のおじさんは怖いので無視して、ガマのおじさんと蛞蝓のおばさんと交流しましょう。

 ランちゃんの魅力値くっそ高いので大蛇丸相手でもご飯分けてくれそうですが、本チャートでは大蛇丸の好感度なんて上げても意味ないので大蛇丸はガン無視です。

 ネタプレイで保護者丸の姿が見たい場合とかは大蛇丸を選んでもいいかもしれませんが、今回は真面目に自来也と綱手を選ぶことにします。

 

 というわけで、

 

 ガマおじさんと蛞蝓おばさん、飯食わせちくり~

 

 ご飯をおねだりする小南ちゃんたちくっそ可愛いですね。

 自来也と綱手姫は優しいので普通にご飯を分けてくれました。仮に魅力値低かろうと、二人にはまず断られません。

 ランちゃんたちは貰った乾パンに口をつけていきます。

 

 それにしてもクソ不味そうな乾パンです。もっといいもの寄こしやがれって思いますが、戦場なので贅沢はいえません。

 あんなNKN君の料理以下のクソ不味そうな飯なのに、ゲームの中のランちゃんたちはめっちゃ喜んでますね。

 

 貧しい食生活に涙がで、出ますよ……

 

 自来也と綱手姫はそんなランちゃんたちを微笑ましそうに見ています。ちょっといい雰囲気じゃないですかね。お前らもうはよ結婚しちゃえよって感じです。

 

 大蛇丸は子供に無関心なのか、そっぽを向いてますね。拠点の外から奇襲されないか警戒しているみたいです。

 神経質なやつっすね。でもそういう奴が一人くらいはいないと、実際のところのスリーマンセルは成り立たないでしょうね。

 なんだかんだでバランスの良い三人組かもしれないです。

 

「ねえねえ、一緒にお礼の品つくろ?」

 

 飯を食い終わったところで、小南ちゃんがランちゃんに話しかけてきました。乾パンを包んでいた包装紙で折り紙をしてプレゼントしようということみたいです。

 

 粋な計らいっすね。この歳で気が利きすぎじゃないっすか。

 

 まあこの後に弟子入り志願しに行くので媚売ろうって思惑もあるのかもしれませんが。

 自分を売る、大事なことです。自分を売るための手土産を作りましょう。

 

 小南ちゃんからの提案に【はい】の選択肢を選び、早速折り紙に挑戦しましょう。

 可愛らしい幼女二人が仲良く折り紙してる光景とか微笑ましすぎですね。しっかりスクショ撮っておきましょう。

 

 ああ^~たまらねえぜ。心がぴょんぴょんするんじゃあ^~

 

 これが見たくて雨隠れ編やってるようなもんですからね。折り紙してる小南ちゃん、くっそ可愛いです。

 

「ここはこうして……できた!」

 

 小南ちゃんは折り紙の天才なので何かわけわからんことして精巧な花を作り上げてますね。凄すぎィ!

 

「うーん、折り紙って難しいよぉ……」

 

 一方のランちゃんはというと、知力と器用ステータスが低い上、小細工が得意なスキルも何もないので、折り紙に苦戦してますね。

 

「……これでいいのかな?」

 

 出来上がったのはヘンテコな作品です。もうこれ、ただ食べ終わった後の包装紙をクシャクシャにしただけのゴミっすね。こんなのプレゼントしに行くとかただの嫌がらせっすね。

 

(人間関係)壊れるなぁ

 

 結局のところ、ランちゃんは頑張ってプレゼントゴミを二個作ったみたいですね。

 二人にプレゼントしにいくことになりましたが、出来が悪いプレゼントゴミなので渡したら好感度が少し下がりそうです。

 

 ここは自来也と大蛇丸にプレゼントしておきましょう。

 自来也なら後でたっぷり交流できるので好感度が下がっても挽回できるので問題ありませんし、大蛇丸は好感度が下がろうがどうでもいいですからね。

 本チャートでは綱手姫と交流する機会が限られますので、綱手姫の好感度が下がることだけは出来るだけ避けたいところです。

 

 ということで、自来也と大蛇丸の二人にゴミを押し付けにいきましょう。

 

 素敵な幼女からのプレゼントとかゴミでも嬉しいだるォオン!?

 

「なんだお前たち? まだ何か用があるのか?」

 

 いつの間にか拠点を出発していた三忍をみんなで必死に追いかけていきます。三忍がランちゃんたちの気配に気づいて立ち止まってくれました。

 

「これお礼……」

 

 原作よろしく小南ちゃんがおずおずと三忍の前に出ていきました。そしてプレゼントを渡します。くっそ可愛い光景ですね。天使かな?

 

「これを私たちにくれるのか?」

「うん」

「ありがとうな」

「ほぉ。よくできとるな」

 

 小南ちゃんが綱手姫と自来也に花飾りのプレゼントを渡しに行きました。二人とも微笑ましいものを見るように喜んでますね。

 

 小南ちゃんに倣ってランちゃんもプレゼントを渡しにいきましょう。

 まずは大蛇丸にしましょうか。二つ作った内、出来の悪い方を押し付けましょう。

 

「何よこのゴミ……いらないわ」

 

 大蛇丸にプレゼントを渡しにいくと、その場で捨てられました。ランちゃん、ショック受けてますね。

 

 捨てるにしてもとりあえずポッケに入れるとかして後でこっそり捨てればいいのに。大蛇丸はそういうことしませんねー。その場で捨てやがりました。

 

 人間のクズがこの野郎……

 

「これは……さっきのとは随分と趣が違うのぉ。花……なのか?」

 

 自来也の方は苦笑しながらも受け取ってくれました。

 多少出来の良い方を渡した上に魅力値が高い影響か、幸い、好感度は下がらなかったようですね。好感度が下がろうが下がらなかろうが大して影響ありませんが、まあよかったです。

 

「お願いがあるんです……俺たちを弟子にしていただけませんか? 俺たちに忍者の修行をつけてくださいお願いします!」

 

 プレゼントを渡し終えた後、弥彦が土下座する勢いで三忍にお願いをしました。そして自分たちの事情を話していきます。

 三忍は神妙な顔つきでそれを聞いています。自分たちが参加している戦争の犠牲者を目の当たりにして、それぞれ思うところがあるようですね。

 

「ねえ、この子たち殺す?」

 

 話が一段落したところで、大蛇丸がそんなことを言い出しました。

 

 小南ちゃんのプレゼントを一人だけ貰えずにゴミを押し付けられたから拗ねてブチ切れてるのかと思っちゃいますが、そうではありません。

 予定調和の反応です。原作でもそうでしたからね。この人はここではこういう反応をするのです。

 

 それにしてもガチ天使の小南ちゃんたちを見て殺そうかなんて発想を抱くとは……。

 

 この人頭おかしい……

 大蛇丸、お前精神状態おかしいよ……

 大蛇丸君、病室に戻ろう!

 

「やめんか大蛇丸!」

 

 大蛇丸のサイコ発言に怯える子供たちを見て、自来也が庇ってくれました。自来也のお兄ちゃん、くっそカッコイイ。その大きな背中が頼もしいですね。

 

「俺がこの子たちの面倒を見よう」

 

 くぅ~、ガマのお兄ちゃんカッコイイ! いくぅ~!

 

 その後何だかんだ会話が進み、自来也が四人の弟子を引き受けてくれることになりました。

 

「よし、俺が今日からお前たちの先生だ。よろしくな」

 

 おっす、お願いしまーす。

 

 ということで、自来也先生への弟子入りイベントが無事に終わりました。

 

 キリがいいので今日はここまでとしまーす。ではでは。



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ch.4 大蛇丸、お前精神状態おかしいよ・・・(小南)

 一流の忍者の戦いを目の当たりにして、弥彦は忍者に対する思いを強めたようだ。それで忍者に弟子入りすることを決めた。

 

 弥彦につられるように、私たちも忍者に弟子入りする意思を固めた。

 問題は誰に弟子入りするかだった。

 

「やっぱ半蔵のところに弟子入りするの?」

「いや……半蔵と戦ってた人たちにしようと思う」

 

 弥彦は昔から山椒魚の半蔵を尊敬して憧れていた。雨隠れの長だから雨隠れの生まれの私たちが半蔵に尊敬を傾けるのは自然だった。

 だから弥彦はてっきり半蔵に弟子志願するのだと思っていたけど違った。

 

「俺たちがこんな思いをしているのも、元はといえば半蔵のせいだ。半蔵に付き従っても、今以上に里が良くなるとは思えないんだ」

 

 弥彦には思うところがあったようだ。

 雨隠れの子供である私たちがこんな思いをしているのも、考えてみれば統治者である半蔵の体制が悪いせいだとも言える。

 

 だから弥彦は、昔の憧れは捨て、木の葉の忍びに教えを乞おうと思ったらしい。旧来とは違う新しい風を雨隠れに呼び込み、私たちの里を覆う雨雲を払おうと考えたのだ。

 

「長門は木の葉の忍びに親を殺されたんだよな? やっぱ木の葉の忍びへの弟子入りは反対か?」

 

 弥彦は長門に配慮してか、慮る言葉を投げかけた。

 長門は少し考えたものの、「構わない」とすぐに答えを返した。

 

「木の葉の忍びに僕の両親は殺された……確かにそうだけど、彼らは僕の両親を殺した者とは違う。それに、今となっては半蔵も僕の家族を殺したようなものだからね。チビの仇ともいえる。どっちも変わらないさ」

「そっか。じゃあ反対しないんだな?」

「ああ。力が手に入るなら誰だっていいよ。僕は力が欲しい」

 

 複雑な思いを抱えるものの、長門も木の葉の忍びに弟子入りすることに異存はないようだった。

 

「ランはどうなんだ? 木の葉の忍びでいいのか?」

「木の葉でいいよ! 私、あのおっぱい大きい人、気になるよ!」

「おっぱい? 何だそりゃ? そんな奴いたか?」

「いたよ! 大きな岩、沢山投げる人! 地面ボコボコ殴る人!」

「確か木の葉側の忍びの一人がそんな戦い方をしてたね」

「ああそう言えばそうだったな。おっぱいなんて見てねえからわからねえよ。ったく、ランはどういうとこ見てんだよ。相変わらず抜けてんなぁ」

 

 ランは相変わらずとぼけたことを言っていたものの、忍者の戦いに惹かれたことは間違いないようだった。特に綱手姫の戦いに惹かれたようだった。

 

 確かにあの戦いを見れば、女の子が綱手姫に惹かれるのはわからない話ではなかった。

 屈強な男たちに交じりながら縦横無尽に戦場を駆け抜ける――その姿は勇ましくも美しかった。女傑という言葉が相応しい活躍ぶりだった。

 

「小南はどう思うんだ?」

「私は弥彦が思う通りにするよ」

 

 弥彦は最後に私の意向も尋ねてくれた。

 忍者の弟子になるなんて無謀に思えたし怖かったけれど、弥彦がそうしたいと望むなら私も頑張って忍者になろうかと思った。

 

 あの日、一人ぼっちで凍えて死にそうだった私を救ってくれたのは弥彦なのだから。

 弥彦は私にとっての光だ。だから弥彦が向く方向に合わせて葉を伸ばして精一杯生きていこうとするのは、私という花にとって自然なことだった。

 

「そっか。じゃあ全員一致で決まりだな。あの木の葉の忍者を探しに行こうぜ」

「うん」

 

 こうして私たちは半蔵と戦っていた木の葉の忍者に弟子入りすることを決めたのだった。

 彼らを探し、再び戦場を彷徨い歩くことになった。

 

 何日も戦場を彷徨い、もう会えないかと諦めかけた頃、運命の女神は私たちの元へと舞い込むことになった。

 偶々滞在していた拠点の中に、あの三人が雨宿りのためにやって来たのだった。先客だった私たちはすぐに気づくことができた。

 

「まったく雨ばかりで嫌になるのぉ。ただでさえ戦場などという嫌なところにいるというに。陰気臭くてかなわんわ」

「ここは昔からそういうところだからね。気候的に仕方がないことよ。攻めるに難しく守りを維持するも難しい場所。だから大国は恒常的な拠点を作らない。でも他国に攻め入る際の仮の足がかりにするにはうってつけの場所ってわけ」

「戦、戦か。まったくもって嫌になるな。戦場じゃ飯もろくなものを食えないしな。まあこれでようやくお役御免というわけだから、里に帰ったらたらふく美味いもんが食えるがな」

「お主はそればかりだの綱手。それ以上食って乳をでかくしてどうする気じゃ?」

「自来也、お前ここで死にたいらしいな」

「ジョークだジョーク! そんなマジになって怒るなっての! このジメジメとした空気をカラッとしたジョークで晴れさせようという、その俺の心意気がわからんのか?」

「そんなもん知るか!」

「痛ぅ! 綱手ぇ、お前、もっと加減せえ! 骨が折れるわ!」

「貴方たち騒ぐのはやめなさい。ただでさえ鬱陶しい雨の中で、イライラするわ」

 

 三人は見知らぬ土地での雨天行軍を続けていたということもあって、酷く疲れている様子だった。

 そのせいで警戒が緩んでいたのだろう。また轟々と降り続ける雨の消音効果もあり、私たちの存在に気づいていないようだった。

 

「みんな、誰に声かけた方がいいと思う?」

 

 三人から少し距離をとったところで、弥彦が皆に尋ねてきた。私たちはこそこそと話し合った。

 

「やっぱ女の人がいいんじゃ……」

「でもさっき白い頭の人をボコボコに殴ってて怖かったよ。鬼みたいだった」

 

 私は普通に考えて女性が一番優しいのではと考えて提案したのだが、長門がやんわりと否定してきた。

 

「ランはどう思う?」

「白い頭の人、いいと思うよ。一番優しい思うよ。次、おっぱいの人。蛇の人、ダメ絶対」

「蛇? ああ、そういえばあの黒髪の人は蛇使いだったな。お前、妙なことばかり覚えてるよな」

 

 ランは妙なところで直感力に優れていた。白い頭の人がいいと即答してきた。結果的にそれは正しいことだった。

 

 こうして私たちは白い頭の人――自来也先生に声をかけに行くことにしたのだった。

 

「誰だっ!?」

 

 いくら雨音による消音があって警戒が緩んでいるといえど、限度がある。

 私たちが思いっきり近づいていくと、三人はすぐに私たちの存在に気づいた。

 

 三人はすぐさま武器を手に取ったので怖かったけど、隠れていては余計怪しまれると思ったので、私たちは手を挙げながらゆっくりと姿を現すことにした。

 

「子供だと?」

「幻術か? それとも敵の変化か?」

「術を使用している形跡はないようね。ただのガキよ。もっともガキだからといって敵の手の者じゃないとは限らないけど」

「俺たちは敵じゃないです。ここの里に住んでいる者です。といっても、親はもういませんけど」

 

 弥彦が代表して挨拶した。

 とりあえず弟子入りのことは棚上げして、先に会話の糸口を掴もうとしているようだった。

 

「そうか。お前たちには迷惑をかけておるの。木の葉の者の一人として申し訳なく思う」

「いえ……」

 

 弥彦は緊張のせいか上手く会話が続かず距離を縮めることができないでいた。どう弟子入りをお願いしたらいいか困っている様子だった。

 

 そんな時、きっかけを作ってくれたのはランだった。

 

「凄い良い匂いするよ! パンの匂い!」

 

 ランは目を輝かせて自来也先生たちに近づいていった。

 殺されるとかいうことはまったく考えておらず、食べ物の匂いにつられたようだった。

 

「ん、俺らがさっき食っていたこれのことか?」

 

 自来也先生は乾パンを取り出すと、それをすぐにランへと渡した。

 ランはそれを手渡されると疑いもせずにすぐに口に運んでいた。美味しそうに食べるランを見て、自来也先生たちは相好を崩していた。

 

「そうか美味いか。なら全部やろう。俺らはもう今日で仕事は終わりだからな。必要のないものだ。お主らの生活を荒らしてしまったせめてもの侘びとして置いていこう。それでいいだろ、綱手、大蛇丸」

「一応里の備品なんだがな……まあいいか黙っていれば」

「興味ないわ。好きにしなさい」

 

 自来也先生は私たちが戦争孤児だというので配慮してくれたのだろう。手持ちの食料やら医療物資やらを色々と渡してくれた。

 

「わーい! ありがとうおじさん!」

「ハハ、愛いのお、お主。だが俺はまだおじさんという歳じゃないぞ。お兄さんだ」

「ぷっ、おじさんだって」

「笑うな綱手。それを言ったらお主もおばさんだぞ」

「あん? 喧嘩売ってんのか?」

「だからそうすぐマジになるなっての、ジョークだ!」

「おっぱいのお姉さん! 白いお兄さんもありがとう!」

「え、おっぱい?」

「ぶふっ、子供は正直だの! 綱手、お前のおっぱいは既に純粋な子供も認めるほどの大きさだぞ!」

「自来也ァッ、歯食いしばれ!」

「――ごふっ!」

 

 ランは人と仲良くなることに関しては天才的だった。

 何も考えずに本能のまま過ごしているように見えるのに、まるでそれが目の前の人物と仲良くなれる最善の行動のように見えた。考えるよりも先に行動が出るといった感じだ。

 

 出会って間もないというのに、自来也先生と綱手姫はすっかりランに魅了されている様子だった。

 

「ねえ自来也、綱手、ちょっといいかしら」

「ん? どうした大蛇丸?」

 

 自来也先生たちは私たちに聞こえないようにこそこそと会話を始めた。

 

 そこに割っていくこともできなかったので、私たちはとりあえず貰った食料で食事をすることにした。

 ここ数日碌な食事をとっていなかったので貰った食事は格別に美味しかった。

 食事をしながら、どうしたら弟子にしてもらえるか作戦会議をすることになった。

 

「くそ、どう話かけたらいいかわかんねえよ。いきなり言っても承諾してくれると思えないし」

「弥彦、正直に僕たちの思いを伝えるしかないんじゃない?」

「私、この紙を使ってお礼の品を作るわ。その時に頼んでみれば?」

「おお、そりゃいい考えだな。流石小南だ」

 

 折り紙のプレゼントは、弟子入りをお願いする会話のきっかけを作るためだけのものではない。

 仮に弟子入りが断られるとしても、与えられた分、何かお返しをしたかった。

 孤児で何もお返しするものがない私たちは、せめてものお返しとして心を込めた折り紙のプレゼントを作ることにしたのであった。

 

「じゃあ花飾りを作りましょ。最近覚えたの」

「いいぜ。教えてくれよ」

 

 折り紙が得意な私が指揮を執り、弥彦と長門にも花飾りのパーツ作りを手伝ってもらうことにした。

 

「ランも作る?」

「うん!」

 

 ランもお礼作りに参加したそうだったので、彼女にも手伝いをお願いすることにしたのだが……。

 

「うーん。小南ちゃん、難しいよぉ……。ヤマオリとタニオリって何?」

 

 折り紙に初挑戦だったランには基本的なことから難しかったようだった。だからとりあえずランには自由にやらせることにして、私たちは私たちで花飾りのプレゼントを作ることにしたのだった。

 

「おい大変だ!」

 

 花飾りのプレゼントが二つほど出来上がったところで事件は起きた。

 トイレに行っていた弥彦が慌てた様子で戻ってきたのだった。

 

「木の葉の忍びたちがどこにもいねえ! もう出てっちまったみてえだ!」

 

 私たちは慌てて追いかけていった。

 幸い、それほど遠くに行っていなかったようで、すぐに追いつくことができた。

 

「なんだお前たち? まだ何か用があるのか?」

 

 恐らく自来也先生たちは私たちとこれ以上関わりを持ちたくないからこっそりと出て行ったのだろう。だからまた現れた私たちを見て、なんとも言えない表情をしていた。

 

 そんな雰囲気の中、話しかけるのは少し怖かった。

 でもお返しはしたかった。せめて与えられた分のお返しだけは渡したかった。

 だから私は勇気を振り絞って一歩前に出たのだった。

 

「これお礼……」

 

 身内(弥彦、長門、ラン)以外の人にプレゼントを渡すというのは初めてだったので、少し照れくさい気もしたけど頑張って渡した。

 

「これを私たちにくれるのか?」

「うん」

「ありがとうな」

「ほぉ。よくできとるな」

 

 プレゼントを渡すと、頭を撫でられた。

 褒めて貰うつもりなんてなかったのだけど、とても嬉しい気がした。

 誰か大人に褒めてもらうなんてこと、もうずっと経験してこなかったから。

 

 そんな私を見て、ランも目をキラキラと輝かせていた。

 自分もプレゼントを渡して褒めてもらえると思ったのだろう。

 

「私もプレゼントあるよ!」

 

 ランはウキウキとした面持ちで大蛇丸のところに向かっていった。

 「蛇の人、ダメ絶対」って先ほど自分で言っていたはずなのに、何故か大蛇丸の所に自分から向かっていった。

 

「何よこのゴミ……いらないわ」

 

 ランの作ったプレゼントはその場で握りつぶされ、放り投げられてしまった。

 流石は一流の忍びだ。軽く放り投げただけで遠くにまで飛んでいった。

 

「うええん、私のお花のプレゼントがぁー!」

「おい大蛇丸、お前なんて酷いことしてるんだ! 子供の作ったプレゼントを!」

「だってどう見てもゴミじゃない。どうかしてるわこの子」

「どうかしてるのはお前だぞ!」

「そうだそうだ!」

「何で私が責められるのよ……」

 

 幼子に対するあまりの所業に、自来也先生たちは憤慨して抗議してくれていた。

 だが当の大蛇丸は何ら悪びれることなくその場にふんぞり返っていた。ゴミだという自論を曲げるつもりはないようだった。

 

「うぅ……」

 

 ランは泣きながら、残る一個のプレゼントを握り締めて自来也先生のところに向かっていったのだった。

 

「うぅ、プレゼントあげるぅ……」

「おぉ、ワシにもくれるのか?」

「うん……いらない言われる……かもだけど……」

「そんなことはないぞ! 嬉しいぞ! おぉ、何だこれは?」

「お花」

「これは……さっきの子のとは随分と趣が違うのぉ。花……なのか?」

「うん」

 

 ランからのプレゼントを貰い、自来也先生は大仰に喜んでいた。

 きっと気をつかってくれていたのだろう。自来也先生は気の良い人だった。

 

「お願いがあります。俺たちを弟子にしてください。お願いします!」

 

 話が一段落したところで、弥彦が覚悟を持って前に歩み出た。そしてその場に膝をつきながら自分の気持ちを述べ始める。

 

「もうこれ以上、奪われるだけの人生は嫌なんです。お願いします!」

 

 弥彦は必死のお願いを続けた。

 自分たちの境遇のことや今まであったことなども包み隠さず話しながら、全てを曝け出す勢いでお願いを続けた。頭を地面に擦り付けるような真似までして何度も何度も。

 長門のアドバイス通り、真正面から自分の思いをぶつけていた。

 

「私たちからもお願いします!」

 

 弥彦の必死さが自ずと伝わり、そんな弥彦につられるように私たちも膝をついてお願いをした。

 

 自来也先生たちは神妙な面持ちでそれをずっと聞いていた。

 そんな時、真っ先に大蛇丸が口を開いた。

 

「ねえ、この子たち殺す?」

 

 大蛇丸は恐ろしいほど冷たい声でそう言ったのだった。

 

「戦災孤児なんてよく聞くけど、どこも惨いものよ。醜悪な大人に利用され、惨たらしく殺される。いっそここで殺してあげた方が、この子たちにとっての慈悲ってもんじゃないかしら?」

 

 大蛇丸はクナイを取り出し、その切っ先を私たちの方へと向けてきた。

 性質の悪い冗談などではなく、本当に殺すぞという殺気が感じられた。

 本物の忍びが発する殺気というものは凄まじく、私たちは震えて縮こまってしまった。

 

「やめんか大蛇丸!」

 

 本当に殺される――そう思って怯える私たちの前に、自来也先生がバッと歩み出て庇ってくれた。

 

「大蛇丸よ。確かにお前の言う通り、この世界は残酷だ。この子たちの前には碌な運命が待っていないのかもしれない。楽しいことよりも辛く悲しいことの方が多く待ち受けている人生なのかもしれん。その中で希望の光を見つけるのは、大変なことなのかもしれない」

 

 自来也先生は私たちを庇ってくれたものの、当初は大蛇丸の言に同調するかのようなことを言っていた。

 それを聞いた弥彦は、顔に失望の色を浮かび上がらせて俯いた。孤児の自分たちに希望など何もないと思ったのかもしれない。

 

「――だが、この子たちがこの先どう生きるか、それはこの子たち自身が決めることだ。お前が勝手に決めていいことじゃねえのぉ。なあ大蛇丸よ」

 

 自来也先生は私たちの前に立ち、力強くそう言ってくれたのだった。

 

 自来也先生の力強い言葉を聞き、弥彦の顔が再び前を向く。

 暗雲立ち込める人生の中で差し込んだ一筋の光を見たといった感じだった。

 弥彦は自来也先生のその言葉をずっと宝物にして自分の人生を切り開いていくことになるのである。

 

「ふん。そんな目を向けられるとは心外だわ。私は善意で言ってあげているのだけれど。まあいいわ、勝手にしなさい」

 

 大蛇丸は自来也先生に説得され、クナイを引っ込めた。

 もう私たちをどうこうする気はなくなったようだった。

 

「俺がこの子たちの師匠になろう」

 

 話を終えた自来也先生は、私たちの方を向くとそう宣言した。

 その言葉を聞き、私たちは大層驚いた。まさか弟子入りまで認めてくれるとは思わなかったからだ。

 

「おい自来也、何を勝手なことを……」

「少しの間だけだ。この子たちが自分たちの力だけで生きていけるようになるまで、俺が面倒をみる。お前たちは先に里に帰っておれ。猿飛先生には綱手、お前の口からいいように言っといてくれんか?」

「ったく、しょうがないな。貸し一つだぞ」

「貴方の酔狂には付き合いきれないわ。勝手にしなさい」

 

 自来也先生は仲間二人を先に帰すと、私たちの元に残ってくれた。

 苦労を重ねた戦地からようやく帰れるというのに、わざわざ私たちの元に残ってくれたのだ。

 

「俺が今日からお前たちの先生だ。よろしくな」

 

 自来也先生は私たちと同じ目線にまでしゃがみ込むと、ニコリと微笑んだ。

 その笑顔は力強くも温かく、私たちは目の前に新たな光が差し込んできたような感覚を覚えた。

 

 こうして自来也先生との出会いを経て、私たちは自分たちの力で人生を切り開いていく術を学ぶことになるのであった。



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ch.5 やったぜ。投稿者:変態糞ホモガキ(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 どうもホモガキでーす。今回も“NARUTO~影への道~”の実況の続きを配信していきたいと思います。

 

 前回はガマのおっさんこと自来也先生に弟子入りを認めてもらったところまでですね。

 これから三年間、自来也先生と共に修行の日々を過ごすことになります。

 

 自来也先生と雨隠れメンバーとの共同生活は、雨隠れ編の最大の楽しみでもありますね。これをVRで追体験したくてこのゲーム買ったっていう視聴者兄貴姉貴も多いかと思います。

 

 頼りになる自来也先生と可愛い小南ちゃんたちと過ごすこの三年間はマジで最高ですよ。

 ガマのおっさんと浮浪者の兄ちゃん姉ちゃんたちと泥まみれになりながら修行したり、一緒に獲った魚をしこたま食ったり、カエル姿のコスプレして遊んだり――もう気が狂うほど楽しいです。スクショ撮りすぎてデータフォルダがおかしくなるくらいです。ああ^~たまらねえぜ。

 

 いきなり話が脱線しました。話を本筋に戻しましょう。

 

 自来也先生の弟子になったことで、ようやく忍術修行ができるようになりました。

 忍術修行に限らず、自来也先生との修行は経験値が多く入りますから最高です。年齢的な成長ボーナスもありますから、この三年間でしっかりとキャラ育成していきましょう。

 

 修行パートの合間の交流パートでは、自来也先生、小南ちゃん、その他二人という優先順位で交流していきましょう。

 何故自来也先生が最優先かといいますと、他のメンバーに比べて、自来也先生と交流する機会が一番少ないからです。

 他のメンバーとはこれまでに交流してきましたし、三年間の修行生活の後でも十分に交流できますからね。この段階で最優先すべきは自来也先生ということです。

 

 ということで三年間の生活ではガマのおっさんとの交わりを一番大切にしましょう。ガマのおっさんと交わりまくりますよー。はようガマ油まみれになろうぜ。

 

 まあ今回に関して言えば、ランちゃんは魅力チートキャラなので好感度上げはまったく問題ないと思いますけどね。特に注意しなくとも、全員の好感度は勝手に必要水準以上まで上がると思います。

 

 交流よりも能力上げをメインに頑張ることとしましょうか。

 特に知力です。知力低すぎでアホの子なのがちょっと心配ですしね。

 

 三年間の修行生活での注意点としては、自来也先生はずっと雨隠れに滞在しているというわけではないことです。定期的に木の葉に帰ったりしますので、そこらへんのスケジュール管理をしっかりしながら育成を頑張っていきましょう。

 

 それじゃ、自来也先生との修行生活を張り切っていきましょう。

 

……。

……。

……。

 

 あっという間に一年が過ぎました。

 必要技能を満遍なく鍛えつつ、知力が低すぎるのでそこを補うことをメインに頑張りました。【血継限界・沸遁】というスキルがあるおかげで火遁と水遁に成長ボーナスがあるので、火遁と水遁の初歩的な術はもう使えるようになりました。

 

 育成としては順調ですがまだまだです。これからもっと頑張りましょう。

 

「ほらこれやるよ。この魚、好きなんだろ?」

「弥彦ありがとう!」

 

 交流はほとんど意識してやっていなかったというのに、普通以上の成果を挙げてますね。どうせ後で死ぬからとあんまり交流してなかった弥彦からでさえ、頻繁にプレゼントを貰えるくらいまでの親密な関係になってます。向こうから頻繁に接触を図ってくるくらいです。

 

 流石魅力チートのランちゃんです。好感度上げに関しては全く問題ないですね。

 

「ラン、一緒に修行しようぜ!」

「うん!」

 

 ちなみに、この頃の弥彦君、修行中はいつもKBTIT装備(鎖帷子)なので、見る度に草生えちゃいます。

 

 お前を一流の忍びに仕立てあげてやんだよ!

 お金タダでいいから(自来也先生の親切)

 

 それでは自来也先生の親切に感謝しつつ、二年目に突入しますよー。

 

……。

……。

……。

 

 あっという間に二年目も過ぎていきます。

 一年目と同じく満遍なく鍛えつつ、苦手な知力を補い、また得意の火遁と水遁を鍛える修行をメインに頑張りました。

 

 育成は順調すぎますね。スキル【血継限界・沸遁】のおかげです。問題なく成長できています。

 

 火遁と水遁がそれなりのレベルに達したので、もう弱い忍びなら撃退できるくらいまで強くなれました。リンゴ屋の店主とか瞬殺レベルですね。まあネタプレイじゃないんで殺しませんけど。

 

 ある程度の危険イベントの死亡フラグは実力で叩き折れるくらいまで成長できたので、対処可能なレベルの危険イベントならあえて挑みにいって経験値獲得を狙うというのもいいかもですね。

 特に自来也先生が出かけている間はやや修行効率が落ちるので、その合間を狙って危険イベントに挑むというのはいいかもしれません。スケジュール等を見極めて、効率よく経験値をゲットしていきましょう。

 

 二年目にもなると目新しいこともなくなり、若干単調な修行風景が続くことになるんですが、やっぱ原作キャラとの交流は最高ですね。単調な風景も絵になります。

 

 修行の合間に小南ちゃんとお揃いの花飾り作って身に着けるの最高です。髪留め以外にも色々と作ってオシャレしています。

 

 オシャレを覚えるとか、だんだん雌として進化してってますね~。思春期迎えちゃってます。

 

 ああ、これで純粋無垢な幼年時代はもうすぐ終わるんやなって……

 

「お揃いだね」

「うん!」

 

 くっそ仲良しな二人組の女の子って感じですね。キャッキャウフフのロリ百合な光景が繰り広げられてます。

 

 ああ^~たまらねえぜ。

 

 まあでもこれ討伐チャートですからね。仲の良い二人は最終的に殺し合うことになるんすけどね(無慈悲)。

 

「私たち、ずっと友達だよ!」

「うん! 小南ちゃんとずっと一緒!」

 

 やっぱ小南ちゃんくっそ可愛いですね。マジで天使みたいな可憐さです。

 

 こんな純粋無垢で表情豊かな可愛いロリ娘が、人生の辛酸舐めて道を踏み外して、冷酷無比な悪の組織のクールビューティー女幹部になるとか最高や。それで正義側についた幼馴染の女の子と運命の殺し合いするって、もう気が狂うほど興奮するシチュエーションだぜ。たまらねえぜ。ああ~、もうその時が待ちきれねえぜ。はよう血塗れになりながら殺り合おうや。

 

 興奮しすぎて話が脱線しました。話を本筋に戻しましょう。

 

 さて、これから三年目に突入しますが、一年目と二年目と同じように淡々と解説するのはゲイがないので、変態糞親父コピペ風にまとめたので、それを流すことにします。

 決して喋るのが飽きて面倒になったわけではないです。手抜きじゃないです。

 

 それではAIのOOTK兄貴による読み上げ、どうぞ。

 

 

やったぜ。投稿者:変態糞ホモガキ(6月06日(日)02時02分02秒)

 

いつもの浮浪者の兄ちゃん二人と先日メールをくれたガマのおっさん、それから天使の姉ちゃんとわしの五人で砂隠れとの国境にある川の土手の下で盛りあったぜ。

今日は明日が休みなんでコンビニで兵糧丸と水を買ってから滅多に人が来ない所なんで、そこでしこたま兵糧丸を飲んでからやりはじめたんや。

五人で修行着姿になり、クナイを投げあいながら持って来た手裏剣を五本ずつ投げ合った。ガマのおっさんはやる気まんまんのようで最初から激しかったぜ。

 

そのうち浮浪者の兄ちゃんの口がひくひくと動き出し、口からドバーっと大量の水が飛び出してきた。

ガマのおっさんは慣れた手つきでそれをかわすと、おっさんも負けじと口からドバーっと火を吐き出したんや。

 

年季が入ってるだけあってガマのおっさんはテクがある。

それで浮浪者の兄ちゃんはまだ序盤だってのにケツに火がついて大変なことになり、「はようどうにかしてくれや!」と叫びながら地面を転がり回った。

わしはせっかくおっさんとやりあう機会なんで勿体無いと思い知らん顔をしてたんだが、天使の姉ちゃんが助太刀して兄ちゃんのケツを紙で拭って後始末をしてくれていた。

天使の姉ちゃんは相変わらず天使だったぜ。

 

わしもガマのおっさんに負けてられねえと思い、思いっきり口をひくひくさせながら、「兄ちゃんの仇や! 覚悟せえ!」と叫んで飛び切りのもんをひねり出してやったよ。

するといつもとは少し違う感覚だったんで、おっさんも驚いた様子で「なんじゃこりゃ!」と叫んでカエルのように飛び跳ねていた。

 

「こりゃたまらん!」

 

おっさんが慌てる様子は珍しく、わしは気をよくして攻めて攻めて攻めまくった。

途中から天使の姉ちゃんも協力してくれて、おっさんの急所を一緒に攻めたんや。前から攻めたり後ろから攻めたり、まあ色々や。

そのうち復活した浮浪者の兄ちゃんたちも加わり、四人でおっさんを攻め続けた。

 

だがおっさんは格が違い、わしらのにわかテクじゃうんともすんとも音を上げなかった。

一日中やっても勝てんかった。ガマのおっさん、とんでもねえテクニシャンだったぜ。

 

「こんなんかなわんわ」

 

わしらはまだ若いんで全然盛り足りなかったんだが、おっさんはええ歳や。

流石のおっさんも金も貰えん遊びでハードな5Pを朝から晩まで続けるのはやってられんと思ったらしい。

おっさんは今日一番というくらいに口をひくひくさせると、大量のガマ油をドバーっと吐き出した。

 

それでわしらは油まみれになりながらその場で身動きを拘束されてしまったんや。

もう顔中油まみれや。顔どころか全身がドロドロで、汚れ好きにはたまらなかった。

新手の拘束プレイみたいで楽しかったぜ。

 

浮浪者の兄ちゃんも天使の姉ちゃんもわしも、お互い油をかけあったり、塗りあいながら笑いあったもんよ。

おっさんはそんなわしらを見ながらいつまでも笑っていたよ。

 

「今日はこれでしまいや」

 

おっさんがそう言うと、わしの中にドバーっと経験値が流れ込んできた。

未だかつてないほどのもんで、そりゃもう気が狂うほど気持ちよかったぜ。

 

その後もガマのおっさんとは何度もやりあったぜ。

土手の下、森の中、時には水の上と、おっさんの望む場所でやってやってやりまくった。

その度におっさんは「修行が足らん!」と上から目線の説教をしてきて、腹を立てたわしらはおっさんをどうにかしようと頭を捻り続けることになったんや。

 

おっさんを倒すために色々と考えたぜ。

みんなで攻めるタイミングを合わせたり、クナイをぶち込む角度を調整したり、わしの飛び切りのもんを捻り出す回数を増やしたり。

とにかくおっさんを落とすための工夫を重ねた。

そんな苦労がようやく実を結んだらしい。

 

「合格や!」

 

ある日、盛りあった後におっさんが飛び切りの笑顔でそう言ったんや。

今までおっさんとやりまくってきたが、そんなことを言われたことはなかった。

 

おっさんに合格を貰うと、かつてないほどの経験値がドバーっと流れ込んできて、もう気が狂うほどに気持ちよかった。

達成感と充実感で脳汁がどばどばや。わしは奇声を発するくらいはしゃぎまくった。

 

浮浪者の兄ちゃんも天使の姉ちゃんもそれは一緒だったらしい。

わしらは雨まみれの泥だらけのまま、抱き合いながら喜び合っておっさんに感謝したよ。

 

「もうわしは必要ないな」

 

喜ぶわしらをよそにおっさんは告げた。

もうここには来れへんからこれが最後や、と。

 

「後はお前らだけでようやり」

 

夏の終わり、いつもと同じ雨の降る夕暮れのことだった。

わしらはおっさんとの別れが近いことを悟ってしまったんや。




けいふぉんと流行せコラ!


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ch.5 やったぜ。投稿者:変態糞ホモガキ(小南)

 雨雲に覆われた私たちの人生に差し込んだ一筋の光――それが自来也先生だった。

 

 物心ついた頃から地獄のような人生を送ってきた私たちにとって、自来也先生たちと過ごした三年間はかけがえのないものとなった。

 

 自来也先生は優しく時には厳しく私たちを育ててくれた。

 自来也先生という庇護者を得た私たちは、物心両面共に満たされた生活を送ることができたのであった。

 

「もう泥棒や物乞いはやめろ。俺が自力で食べていける方法を教えてやるから」

 

 先生はまず、私たちが犯罪や惨めな思いをせずとも生きていけるように取り計らってくれた。

 魚を釣ったり、罠を張ったりして獲物をとる方法を教えてくれた。

 他にも作物の育て方、衣服の補修方法、簡易的な家の建て方など――生活に必要なあらゆることを教えてくれた。

 

 先生のおかげで私たちは貧しいながらも自給自足で生活していけるようになった。

 手を汚さずとも生きていけるようになる。保護者がいることで周囲の大人たちから胡乱な目で見られなくなる――これほど嬉しいことはなかった。

 初めてまともな人間になれた気がして嬉しかった。

 

 弥彦にとって、魚釣りは食料を得るためだけの方法ではなく趣味にもなったようだった。暇さえあれば長門や自来也先生と一緒に釣りに出かけていた。

 私は気が向けばそれに付いていったり、あるいは自宅でランと遊びながら帰りを待っていたりした。

 

「弥彦たち、帰ってきたみたい!」

 

 ランは釣りから帰ってくる弥彦たちの気配に気づくと、いつも真っ先に駆け寄っていた。

 

「おかえり! 大漁だった? ねえ大漁だった!?」

 

 ランはいつも目を輝かせながら尋ねていた。魚釣り自体はそれほど興味がないようだったが、食べる魚には大いに興味があったようで、弥彦たちが釣りから帰ってくるといつも輝いた目をして釣果を聞いていた。

 

「ああ、大漁だったよ。今日は海の方に遠征したからな。ほれ、タイにヒラメにいろいろあるぞ」

「おー、本当だ!」

 

 ランは目を輝かせながら自来也先生の差し出したバケツの中を覗きこんだ。

 

「イサキは? イサキはないの?」

 

 ランはバケツの中にいた魚を一通り数え終わると、そんなことを呟いた。

 なんとも悲しげな表情だった。

 

「ああ今日はイサキは釣れなかったな」

「そう。イサキはとれなかったんだ……」

 

 ランはイサキが大好きだった。だからそれがなくて残念に思ったのだろう。しょんぼりとした様子で肩を落としていた。

 それを見た弥彦がニヤリと笑った。

 

「へへ、じゃーん! 見ろよラン、大きなイサキだぜ!」

 

 弥彦は自分の持っていたバケツに手を突っ込むと、誇らしげに大きなイサキをランの前に掲げた。

 それはとても大きなイサキだった。自来也先生は釣っていなかったものの、弥彦はイサキを釣っていたらしい。

 

「わー! イサキだー!」

「ランにやるよ! 今日はお前の誕生日だしな!」

「やったー! ありがとう弥彦! 弥彦大好き!」

「へへ!」

 

 弥彦から大きなイサキを誕生日プレゼントとして貰い、ランは飛び切りの笑顔を浮かべていた。

 それを見て、私たちも笑顔になった。

 

 ランの天真爛漫さに私たちはいつも心を和まされた。彼女は常に私たちの中心にいた。ランを見ていると笑顔が絶えない。皆の心を和ませる一輪の花――それがランだった。

 

「それにしても相変わらずランの趣味は変わっておるのぉ。普通は魚といったらタイやヒラメだろうに。なんでイサキなんてマイナーな魚が好きなんだ?」

「だって先生、イサキが一番美味しいよ?」

「そうかのぉ? 普通は味の面でもタイやヒラメなのだがの。まあランは通好みの舌をしておるということかの」

「通って何?」

「プロってことだ」

「わーい、ラン、プロなんだ!」

「お主、ちゃんと意味わかっとるのかの……」

 

 自来也先生の目から見ても、ランは随分変わった子だったらしい。ランの天然発言に振り回され、時折首を傾げていた。

 ランが変わっているのは昔からのことなので私たちはさほど気にも止めず、自来也先生もそのうちこの子はこうなんだと受け止めるようになっていった。

 

「ランに小南よ。ほれ、これをやろう」

 

 先生は生きるのに最低限必要なことのみではなく、人間らしく女らしく生きていくために必要なことも私たちに教えてくれた。

 

「先生これは何?」

「櫛じゃ。こうやって髪を梳かすのに使うんだ」

 

 先生はお洒落をするのに必要な道具と知識も私たちに分け与えてくれた。

 

 先生は男性でありながら女性の身嗜みに関する知識も備えていた。

 任務で女性に化ける際に必要で身に着けたものなのか、あるいは個人的な趣味(執筆活動その他)のために身に着けた知識なのかはわからなかったが、先生がそういった知識を身に着けていたおかげで、私たちはくのいちとして以前に女として生きていくのに必要な知識を身に着けることができたのであった。

 

「お主たちにとっては近い将来必ず必要になることだ。弥彦や長門も必要になるかもしれん。その時はお前たちが教えてやれ」

「はい」

 

 先生は男親と女親の役割を一人で二役こなしてくれた。

 女であること以前に人間としての尊厳も何もなかった私たちに、人間として生きる喜び、女として生きる喜びを教えてくれた。

 

「お洒落を身に着けたらランはたちまち評判の美人になってしまうかもしれんのぉ」

「本当!? ラン、美人さんになるの!?」

「ああ間違いない。俺が保証しよう。ランは将来有望だよ」

 

 自来也先生はランを見ながら何気なく呟くように言った。

 美人という単語にランは目を輝かせた。

 

 ランは褒められて嬉しかったのだろう。無邪気にはしゃぎ喜んでいた。

 褒められた経験の少ない孤児の私たちにとって、誰かから自分の存在を褒められ認められるというのは格別のご褒美のようなものだ。

 ランは自来也先生の懐に潜り込みながらその快感を存分に味わっていた。

 

 ただ私は少しばかり疎外感を覚えてしまった。ランに比べれば私なんて……そう思ってしまった。

 いくらお洒落をしたところで、私はランみたいな美人にはなれないかもしれない。そう思った。

 

 そんな後ろ向きな私の視線に自来也先生はすぐに気づいたらしい。

 先生は私の方を向くと、優しく微笑みかけて慮る言葉をかけてくれたのだった。

 

「勿論、小南も美人さんになるぞ。ランとはまた違ったタイプの飛び切りの美人になるのぉ」

「本当ですか自来也先生?」

「ああ本当だとも。女を見極める俺の目は確かだからな。ランも小南も、周囲の男が放ってはおかん存在になるだろう。かぁー、その男共が羨ましいのぉ!」

「私、小南ちゃんの美人姿早く見たい!」

「ハッハ、それは俺も見てみたいなぁ」

 

 自来也先生に美人になると言われて、私はなんとも言えぬ気恥ずかしさと共に恍惚感を感じた。

 女の子にとって美しさを認められるというのは自尊心が満たされ、とても嬉しいことなのだと、私はこの時初めて知ったのだった。

 

 女の子として前向きに生きられるようになった私は、それからは暇があれば精一杯お洒落を楽しんだ。

 ランと一緒にお互いの髪を梳かしあったりしながら、女の子として必要な技能を磨いていった。二人で一緒に美しく輝いていくために、綺麗な花を咲かせられるようにと頑張った。

 私たちは忍者としての修行を行うと同時、女の子としての修行も重ねていったのだった。

 

「先生これは?」

「これは髪留めだ。上に自分で作った飾りを付け足すことができる。好みの飾りを自分で作るといい。小南は紙細工が得意だったろう? ランと二人で、何か適当なものでもこさえたらどうだ?」

「はいそうします。先生、ありがとうございます」

 

 先生は弥彦たち男の子には男の子が喜びそうなプレゼントを、私たち女の子には女の子が喜びそうなプレゼントを、ことあるごとに渡してくれた。

 私たちへのそれは装飾品や化粧品であることが多かった。

 

「ねえラン、花飾りをつくろ?」

「うん、いいね!」

 

 先生から渡された髪留めを見て、私とランは花飾りの髪留めに加工することを決めたのだった。

 紙の花飾りは私たちと自来也先生が結びつくきっかけになってくれたもの――いわば大事な思い出の品だ。

 

 まだ蕾でもなかった私たちという花。それが少しだけではあるが咲き始めることができたのは、全て自来也先生のおかげだ。

 私たちという存在を表すのにこれほど相応しいアクセサリーはないように思えた。

 

「私、小南ちゃんと同じ髪色の紙にするね!」

 

 ランは私の髪色と同じ藍色の紙を手にすると、それで花を作ると言った。

 それを聞いて、私もランに倣うことにした。

 

「じゃあ私はランと同じ、桃色にするね」

「うん! お揃い!」

 

 私はランの髪色と同じ桃色の紙で作った花飾りを、ランは私の髪色と同じ藍色の紙で作った花飾りを作り、無地の髪留めに装着することにした。

 

「わーい、小南ちゃんとお揃いだ!」

「ふふ。やったね」

 

 私たちは出来上がった髪留めを身に着けながら笑いあっていた。

 いつまでも彼女とこうして笑いあって並んでいたい。そう思えるような幸せな時間だった。

 それは私の人生で最良の時間だったかもしれない。

 

「おー、これはいい! 二人とも美人さんの姉妹に見えるぞ」

「先生、本当!?」

「ああ本当だとも」

「わーい!」

 

 同じ髪型で同じ形のコサージュを身に着けた私たちは並ぶと姉妹のように見えると、自来也先生によく言われた。

 それを聞いて、とても嬉しく思った。ランもきっと同じ気持ちだっただろう。

 

 髪色、顔貌、性格、何もかもが似ても似つかない二人だったけど、姉妹のような存在であることは間違いない。

 物心ついて間もなく天涯孤独となった私たちは、それから運命的に出会い、ずっと一緒に暮らしてきた。

 いわば第二の家族のようなものだ。かけがえのない家族だ。血の繋がりこそないものの、血の繋がりよりも濃い絆で繋がれた家族だ。

 

 花の髪飾りはそんな私たちにとって特別なものとなった。

 血の繋がりがない私たちの繋がりを確かな形で示すもの――それが生まれたような気がして嬉しかった。

 

 ランの髪色を宿したコサージュを身に着けていると、離れていてもいつもランが近くにいる気がして嬉しかった。

 ランといつも繋がっている気がした。それはランも一緒だったらしい。

 

 それからというもの、お互いの色を宿した花のコサージュは私たちお決まりのアクセサリーとなった。

 土砂降りの日も小雨の日も、私たちはお揃いの髪飾りを身に着けて修行に励んだものだ。

 

「もっとだ! もう一回!」

「くっ、もう無理……」

「だらしないぞ小南!」

 

 自来也先生との日々は楽しいことばかりではなかった。

 先生は時に厳しく私たちを扱いた。厳しさに涙して恨みごとを言ったことも一度や二度の話ではない。

 

 だが今思えば、それも先生の優しさだったのだろう。

 私たちが早く自分たちの力だけで生き抜いていけるように、心を鬼にして厳しい修行を課してくれていたのだ。

 

 修行の時の自来也先生の態度は、一緒に過ごす時間が長くなればなるほど、厳しいものとなっていった。

 私たちは普段の優しい時の先生と、修行の時の鬼のような先生とのギャップに戸惑ったものだ。

 

「今日からは実戦をメインにやるぞ。下手したら死ぬ。気を抜くな」

 

 先生との生活を始めて三年目にもなると、私たちは一通りの忍術を身に着けるようになっていた。

 基礎的な訓練は終えたということで、里から離れた人気のない場所を見繕って実戦訓練を繰り返す日々を過ごすこととなった。

 

「――火遁・炎弾!」

 

 先生は常に手加減してくれていたものの、修行中に怪我を負うことも多かった。

 ある時、自来也先生が放った火遁が弥彦に直撃し、弥彦のお尻は燃え上がってしまった。

 

「あっちい! くそっ、ラン、水遁で消火してくれ頼む!」

 

 弥彦は転げ回りながら、真っ先にランに助けを求めていた。私たちの中では水遁に関してはランが一番上手かったからだろう。

 

 私たちの中では一番抜けたところのあるランであったが、実技に関しては飛び抜けた才能を持っていた。

 その才能は私たちの中では一番の才能があると思われた長門も一目置くほどであった。長門は常にランをライバル視しながら腕を磨いていた。

 

「ラン、聞いてんのか! 俺の尻を消火してくれ!」

「ダメだよ弥彦。ランは自来也先生を倒すことに夢中でこっちの声なんて聞いてないよ」

「くそ、アイツ、あれほど連携を大事にしろって言われてるのに! いてて、俺の尻が焼けちまう! 誰かぁ!」

 

 弥彦の苦しんでいる声を聞き、私はすぐに行動を起こした。紙の術式を展開し、それで弥彦のお尻を覆い、消火して治療してあげたのであった。

 

「サンキュ小南。助かったぜ」

「ううんいいの。もっと頼ってくれていいから」

 

 弥彦に褒められると嬉しかった。彼のサポートが出来ていると自分の存在を一番強く確かめられた。

 弥彦はランに頼ることが多いように感じられたので、私はもっと自分を頼って欲しいと思ってさりげなくアピールを繰り返したりもした。

 

「弥彦!? どうしたのそのお尻!」

「今頃気づいたのかよラン! さっきの自来也先生の攻撃でやられたんだよ!」

「ええ!?」

 

 成長してもランの抜けたところは相変わらずだった。

 しばらく自来也先生と夢中で戦いあった後に戻ってきて、ようやく弥彦のお尻の惨状に気づいたようだった。

 

「自来也先生めぇ、弥彦のお尻をよくも!」

 

 弥彦がやられたと聞き、ランは鬼気迫る勢いで再び自来也先生の元へと突撃していった。

 連携を大事にしろという先生の話も聞かず、がむしゃらに突っ込んでいった。

 

「先生覚悟! 弥彦のお尻の仇だ!」

 

 ランは見たこともない印を素早く組むと、口から見たことないものを吐き出していた。いつもの火遁や水遁の術ではなかった。

 

「ぐぶええええええっ!?」

 

 ランは口から粘液性の酸のようなものを吐き出していた。

 私たちは当初ランが忍術の発動に失敗したものとばかり思っていた――だがそれは違った。

 

――ジュワワワワ。ボフンッ。

 

 ランが放った酸を浴びた草木はたちまち枯れて蒸発していったのだった。

 失敗した術ではああはならない。ランが何かしらの新しい術を発動したことは明白だった。

 

「むっ、これは!?」

 

 ランの術を見て、自来也先生は血相を変えた。そしてその後ブツブツと呟きながら考え始めた。

 

「ふぇええ、いつもの水遁出そうとしたら間違って変なのが出たよぉ! 喉がヒリヒリするぅ!」

 

 ランは涙目になりながらずっと叫んでいた。

 新しい術を発動したのはなんと偶然だったらしい。興奮しながら印を組んだせいで、いつもの水遁の印を組もうとしたら途中で間違って火遁の印も組んでしまったらしかった。

 

「ストップ。一時休憩だ」

 

 自来也先生は演習を一時休止し、さっきランがしでかしたことの解説をしてくれた。

 

「ランがさっき放ったもの、あれは“沸遁”というやつだ。まさかランに血継限界の才能があったとはのぉ。驚いたわ」

 

 なんとランは沸遁という特殊な術の才能があったらしい。

 私が使える紙の術式や長門の持っている輪廻眼のような特殊な才能だ。

 

「ホント!? 私、小南ちゃんみたいな凄いことができるの!?」

「小南のようなことはできんが、お主にしかできん凄いことができるのぉ。それは俺でもできないことだろう」

「わーい、やったー!」

 

 特殊な術の才能があると聞いて、ランは目を輝かせていた。

 私と長門も嬉しかった。ランが強くなれば、私たちの安全はより堅固なものとなるからだ。

 

 一方、弥彦はどことなく元気がなかった。落ち込んでいるようだった。

 

「ちぇっ、俺だけ何の才能もなしかよ。くそっ」

 

 休憩中、弥彦は私たちから離れて川の方へと一人で向かい、そこで石投げをして鬱憤を晴らしていた。

 目尻には涙が浮かんでいるようだった。負けず嫌いの弥彦のことだから、自分一人だけ特殊な才能がなくて悔しかったのだろう。

 

 私はそんな弥彦に声をかけられなかった。

 自分が特殊な能力を持っているから、どんな言葉をかけても弥彦にとっては嫌味にしか聞こえないかもしれないと思ったからだ。

 

 弥彦に嫌われたくはない。

 でもどうにか弥彦を元気付けてあげたくて、どうしようかとそわそわしながら弥彦の方を見ていた。

 

 そんな時、ランは迷わず弥彦に声をかけに行ったのだった。

 

「弥彦は弥彦だよ! みんなにないもの、もう持ってるよ! みんなをまとめる力、弥彦にしかないよ!」

 

 ランはいつものような飛び切りの笑顔で弥彦に言葉をかけたのであった。

 弥彦はランの笑顔を見て毒気が抜かれたようで、涙を拭いながら照れくさそうに頭を掻いていた。

 見っともないところを見せたと思ったのだろう。

 

「弥彦よ。ランの言うとおりだぞ。何も特殊な才能ばかりが忍びに必要なものではない。忍びを志す者の中には、忍術の才能がまるっきりなくて体術のみで頑張っている者もいるくらいだ。お前は恵まれてる方だ」

「そうですか。俺はまだ恵まれてる方なんですね」

「ああ。特殊な才能ばかりが忍者の全てではない。諦めない心、仲間を大切に思う心、それが忍びにとって一番大事なことだぞ」

「はい。俺、もっと頑張ります。くよくよしてるなんて俺らしくないっすよね!」

「ああその意気だ」

 

 ランと自来也先生に励まされ、弥彦はいつもの自分を取り戻していた。

 自信に満ち溢れた太陽のように光り輝く笑顔――私にとっての光。

 

 私はそんな弥彦の横顔をいつまでも眺めていたのだった。

 弥彦の自信を取り戻してくれたランに感謝をしながら、ずっとずっと。

 

「お前ら修行が足らんぞ! 才能をまったく活かしきれておらん!」

「ぶー、先生のケチ!」

「ラン、ケチとかそういう問題ではなくてだな……」

 

 ランが沸遁の能力に目覚めてからも、私たちは自来也先生の影分身を倒そうと必死に努力を重ねた。来る日も来る日も人気のない場所へと繰り出し、実戦形式での練習を重ねた。

 

 教えられた術を自分の努力で磨き上げ、戦いの中で先生に披露し続ける。仲間同士の連携も重視し、数で劣る先生を追い詰める。

 

「水遁・水乱破!」

「紙手裏剣の術!」

「火遁・豪火球の術!」

 

 どれほどの時が流れただろうか。私たちは先生に一杯食わせられるくらいまで腕を磨き上げることができた。

 

「むっ、これらは全て陽動か!?」

「今だラン!」

 

 弥彦が叫ぶと同時、水中に潜んでいたランが飛び出し、先生の背後から奇襲を加える。

 

「沸遁・巧霧の術!」

 

 先生は私の作り出した紙の捕縛術で拘束され、身動き一つとれない状態だった。

 そんな状況じゃ、流石の先生といえどもどうしようもない。ランの渾身の攻撃をまともに浴びることとなった。

 

――ボフンッ。

 

 私たちは研鑽を重ねた結果、ついには自来也先生が作り出した影分身を打ち消すことができるまで強くなることができたのであった。

 

「よくやった! 合格だ!」

 

 私たちが影分身を倒すことができたのを見て、先生は今までにないくらいの笑顔を見せて褒めてくれた。

 そしてその後、少し遠い目をしながらこう言ったのだった。

 

「もう俺の力は必要ないな。お前たちだけで十分にやっていけるだろう」

「……え?」

 

 ついにその時が来たと思ってしまった。

 最近の先生の態度から薄々感じてはいたが、ついにその時が来たと思った。

 自来也先生との別れの時が来たのだ。

 

 先生は私たちの永遠の保護者になってくれたわけではない。私たちが一人前になれるまでの間、面倒を見てくれるというだけの話であった。

 だから私たちが先生の影分身を倒せるくらいまで強くなった今、先生は私たちの元を離れるつもりのようだった。

 

「自来也じぇんじぇー、行かないで!」

「先生、いつまでも俺たちの先生でいてください! 何でもしますから!」

 

 ランと弥彦は泣きながら自来也先生を引きとめていて、先生は嬉しそうでありながらも困ったように笑っていた。

 

「俺もこのままお前たちと一緒にいたい気もするが、それはお互いのためにならん。ここらが潮時だ。俺にはなさねばならんことがあるのでな。それはお前らとて同じだろう。お互い、それぞれの道を歩いて行くべきだ」

 

 自来也先生は引きとめるランと弥彦を優しく宥めながら諭してくれた。

 私たちは先生と別れる覚悟を決め、お別れを言うことにしたのだった。

 

「先生、今まで本当にありがとうございました!」

 

 弥彦は腰を直角に折り曲げるくらいまで深々とお辞儀をし、深い感謝の意を伝えた。

 弥彦に倣い、私たちも今までの感謝を伝えた。

 

「うむ。お前たち、よくぞここまで成長したな。師匠として誇りに思うぞ」

 

 先生は改まった態度で私たちの感謝の言葉を聞き、それに答えてくれた。

 

「これからはお前たちの力で、この里をより良いものへと変えていってくれ。俺は木の葉の地よりずっと見守っているからな」

 

 最後に力強い激励の言葉をくれ、自来也先生は朝日が昇ると同時、木の葉の里へと帰っていった。

 

「先生……」

 

 朝日と共に消え行く自来也先生。その姿を、私たちはいつまでも目で追っていた。先生の姿が地平線の彼方に消えるまでずっと。

 徐々に小さくなって消えていく背中だったが、その背は私たちの目にはいつまでも大きく見えていた。

 

「先生、行っちゃったね」

「うん。ランも弥彦も、いつまでも泣いてないの」

 

 長門と私はすぐに立ち直ったのだけれど、ランと弥彦はいつまでもめそめそと泣いていた。

 

 特に弥彦はランよりも泣いていた。

 自来也先生に対する思いが私たちの中では一番強いだけに、色々な感情が溢れ出てきて止まらなかったのだろう。

 

「ごめん。もう大丈夫だ」

 

 再び顔を上げた弥彦のその目には、もう悲しみの色は宿っていなかった。いつもの力強い瞳だった。

 

「これからは四人で頑張ろう。四人でこの里を変えるんだ!」

「「「おお!」」」

 

 私たちは手を重ね合わせながら、今後の健闘を誓い合った。

 

 自来也先生はいなくなってしまったけど、私たちには心から信頼できる家族のような仲間がすぐ傍にいる。

 不安はまったくなかった。力を手にした今は希望に満ち溢れていた。

 

 こうして自来也先生との出会いと別れを経て、私たちは自分たちの夢へと向かう新たなる一歩を踏み出したのだった。



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ch.6 何アオハルやってんだお前らぁ、俺も仲間に入れてくれよ~(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 皆さんどうもホモガキです。今日も“NARUTO~影への道~”の実況をお伝えしていきたいと思います。

 

 前回はガマのおっさんこと自来也先生と別れるところまででしたね。自来也先生や小南ちゃんたちとの三年間の共同生活は、雨隠れ編で一番楽しい所でした。

 

 おかげでスクショ撮りすぎてデータフォルダが大変なことになっちゃってます。後で整理しなきゃなぁ……って、そんなことはどうでもいいです。話を本筋に戻しましょう。

 

 これから四人は雨隠れを平和にするための組織作りに励むことになります。

 組織を作るにしても、いきなり作れません。まずはノウハウと資金が必要です。ということで、しばらくは四人でバイトしたりして準備をするわけですね。

 

 これからの数年間は、小南ちゃんたちと引き続き共同生活を送りつつ、バイトしたり、修行したりして、過ごしていきます。

 この共同生活は雨隠れ編で二番目くらいに楽しい所です。幼年期を脱して少年少女となった小南ちゃんたちと楽しく過ごしていきましょう。

 

 バイトは安全なものから危険なものまで色々ありますが、可能な限り危険なものを選んでいきましょう。戦闘での経験値獲得が美味しいですからね。お金を貯める意味でも、実戦経験を積んで強くなる意味でも、積極的にこなしていきます。

 

 この期間の交流は、長門君、小南ちゃん、弥彦といった優先順位で行いましょう。

 何故長門君ファーストかといいますと、三人の中で彼が一番強いので一緒に訓練したり任務を行うと経験値が一番多くもらえるからです。

 なので暇さえあれば長門君と積極的に交流していくことにしましょう。長門君が拠点にいなければ小南ちゃん、二人ともいなければ仕方ないので弥彦、といった感じです。

 

「弥彦、あんまり無茶しないで」

「わかってるよ。小南はちょっとお節介すぎんぜ」

 

 お、イベントが発生しました。この頃になると、拠点にいると面白いイベントが見れるようになりますね。

 

 バイトのスケジュールの関係で、メンバーは拠点にいたりいなかったりします。それで他のメンバーがいないと、弥彦と小南ちゃんがいい雰囲気になったりします。バイトが早く終わったりして帰ってくると、プレイヤーはそういった場面を目撃することになります。

 

 何やってんだあいつら……。

 

「だって……弥彦のことが心配なのよ」

「何でそんなに俺のことばっか気にかけんだよ」

「だって……」

 

 幼少期小南ちゃんはお化粧はしていませんでしたが、この頃になるとがっつりアイシャドーのメイクしてます。美しく着飾って意中の男の子にアピールしてやがります。

 小南ちゃんめ、性の喜び知りやがって……って感じですね。お前らアオハルかよぉ!

 

 わしの小南ちゃんを弥彦にとられるわけにはいかないので、イチャイチャしてるのを見かけたらすかさず乱入して邪魔しておきましょう。

 

 ノンケのアオハル、ぶっ壊す!(人間のクズ)

 

 別に討伐チャート的にはイチャイチャを放置してもいいです。

 原作の長門君みたいに家の扉の前で静かに腕組みして立って自身が雨にビショ濡れになるのも構わず見てみぬフリをしてひたすら事が終わるのを待つ、という人間の鑑みたいなことをしてもいいです。

 

 男キャラでプレイしてて長門君と一緒に雨に打たれながら小南ちゃんがBSS(僕が先に好きだったのに)されていく様を見るネタプレイ動画みたいなことをしても楽しいでしょう。

 弥彦と小南ちゃんのアオハルを見たい視聴者兄貴姉貴はそうしてもいいでしょう。

 

 ですがまあ、わしはそんなの見たくないので邪魔しておくことにします(自己都合)。

 

 長門君と弥彦のイチャイチャなら見たいですけどね。ノンケのアオハルなど不要です(きっぱり)。小南ちゃんはわしのもんや。誰にも渡さんぜよ(何故か土佐弁)。

 

 ということで、拠点にいる間は弥彦と小南ちゃんがくっつくのを妨害しつつ、拠点の外では危険なバイトをして戦闘スキルを高めていきます。

 危険なバイトの相棒は長門君を選ぶと安心ですね。彼が一番強いですし、いざという時に頼りになります。経験値効率もいいです。

 

 輪廻眼のお兄ちゃん、頼りになってかっこいい! いくぅ~!

 

 そういうわけで、暇さえあれば長門君と一緒に訓練や危険なバイトをしていきます。まだ成長期ですので経験値獲得率にボーナスつきますから、サボらずしっかり育成しておきましょう。

 

……。

……。

……。

 

 ランちゃん、順調に戦闘能力を身に着けていってます。もう中忍くらいの実力はあるかな?

 

「俺も一緒に修行するぞ。いいだろ?」

 

 長門君と修行していると、他のメンバーがランダムで乱入してきたりします。

 今回プレイは弥彦が乱入してくる場合が多いですね。一緒に訓練するメンバーが多ければその分獲得できる経験値も増えるので乱入は大歓迎です。

 

「私も修行するわ」

 

 お、弥彦ばかりか小南ちゃんまで乱入してきましたね。経験値がいっぱいもらえます。

 やったぜ。みんなで修行まみれになりながら盛りあおうぜ。ああ~、たまらねえぜ。

 

 そんな感じで数年間を過ごしていきます。

 

 単調な場面の繰り返しが続くので巻いて送っていきますよー。

 

……。

……。

……。

 

 幾つもの季節が通り過ぎ、ランちゃんたちは順調に成長していきます。

 

 雨隠れの里は毎日が雨模様です。陰気臭い映像ばかりが映ってますが、小南ちゃんたちと過ごしていると楽しいですね。

 

「今日でここともお別れね」

「ああ。ここから新しい俺たちの物語が始まる。しばらくはこの家ともお別れだ」

 

 お、巣立ちイベントが発生しました。

 組織立ち上げのための十分な資金とノウハウが獲得できたので、四人は自来也先生から与えられた拠点を巣立っていきます。

 

「――そして夢が叶った暁には、たとえバラバラになっていたとしても、いつかここに帰ってこよう。それで皆で祝福するんだ」

 

 リュックを背負って旅支度を整えた四人が、カエル板の前で感慨深そうに語らってますね。いつかここに皆で帰ってこようとか言ってます。自来也先生も一緒に、とか言ってます。

 

 ま、無理なんすけどね。ここは呪われた忍び世界ですから。全員が無言のご帰宅を果たすことになります。

 

 あの世で皆と一緒に再会しようね。約束だよ(暗黒微笑)

 

 まあそれはさておき、これから四人は大きな拠点に場所を移し、弥彦を中心とした組織を立ち上げるわけです。

 犯罪者集団となる前の傭兵集団“暁”の旗揚げとなります。夢と理想に燃える青年時代の始まりですよ。

 

 ああ、これでもう少年少女時代も終わりを迎えて青年時代を迎えるんやなって……。

 

「感傷に浸っている暇はない。ここからが本番だ。俺たちの手で必ずこの国を変える。やってやろうぜ!」

「おお!」

 

 リーダーシップをとる弥彦君くっそカッコイイっすね。立派な青年姿でくっそカッコイイです。幼い時の泣き虫弥彦君はもはやいません。

 

 声も声変わりしてて、卑劣様ボイスとなってて震えるくらいカッコイイです。小南ちゃんみたいな美少女が惚れるのも無理ないっす。わしも惚れるっす。

 

 ペイン(まだペインではない)のお兄ちゃん、かっこいい! いくぅ~!

 

 それではキリがいいので今回はここまでとしまーす。ではでは。



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ch.6 何アオハルやってんだお前らぁ、俺も仲間に入れてくれよ~(小南)

 自来也先生が私たちの元を去ってからというもの、私たちは自分たちの夢へ向けてその第一歩を踏み出した。

 

 私たち四人の力だけでは高が知れている。だが十人、百人と集まればそれは大きな力となり、夢へと近づけるだろう。

 そう思った私たちは、平和のための組織を作ることにした。

 

 すぐに大きな組織を立ち上げたいところだったが、そうはいかない。何事も準備というものが必要だ。

 自来也先生の教えを受けた私たちは少しばかりの力を手にしたものの、まだ世の中というものを知らない小娘のようなものだった。

 そんな私たちがすぐに大きなことをなそうとしても土台無理なことは容易に想像がついた。

 

 だからまずはもっと力を伸ばすことにした。忍者としての技能を伸ばすと同時、勉強して知識を蓄え、組織を作るための資金を貯めることにした。

 将来大きく飛躍するため、今は我慢して雌伏の時を過ごすことにしたのだ。

 

 資金集めでは色々な仕事を経験することになった。

 力のない孤児の身分では雇ってくれるところなどなかったが、それなりの年齢に成長した上に忍者としての力を手にした私たちを雇ってくれるところは数多くあった。

 

 農作業の手伝いから、建築作業、市場での売り子の仕事――第一次産業から第三次産業まで、幅広い仕事をこなすことになった。

 色んな仕事を経験することで、私たちは社会の仕組みというものを学んでいった。

 

 ただそんなまともな商売の下っ端仕事ばかりをしていたのでは何年かかっても資金が貯まらないと思ったので、危険のある傭兵的な仕事もやることにした。

 金持ちの護衛をして多額の報酬を貰い、賞金首を討伐したりしてお金を貯めた。そうやって忍者としての技能を高めつつ、効率よく資金を貯めていった。

 

 大きな夢があるものの、ストイックに励むだけでは張り合いがない。

 お金を稼げるようになって少し余裕ができたので、私たちは自分たちに少しばかりご褒美を与えたりもした。

 弥彦は趣味の魚釣り関係、長門は忍術の道具で贅沢な品を買ったりしていた。

 

 私とランは女の子らしく、さらにお洒落に気を使うことにした。

 髪飾りを豪華にしたり、装飾品だけでなく化粧品にまで手を伸ばしてみたりした。顔に塗る美容液やマニキュアに拘ったりもした。

 

 それらご褒美の品々はランとよく買いに行った。お揃いの化粧品を買って遊んで、その帰り道中、肉まんを買って分け合って食べたりした。とても楽しい時間だった。

 

 今から考えれば、あれが私にとっての青春時代というものだったのだろう。

 

「長門、今暇?」

「ランか。暇というわけではないが、これから修行しようと思ってたところだよ」

「だったら一緒に修行しよ!」

「ああいいよ。ランとの修行は俺も学ぶことが多いからな」

「私も長門との修行好き!」

 

 その頃のランは、長門によく声をかけていた。一緒に修行をして、時には危険な仕事に共に出かけていったりしていた。

 二人は死線を潜りあうことで急速に仲を深めていた。

 

 おそらく当時危険な仕事を一番こなしていたのはその二人だったので、組織旗揚げ資金の稼ぎ頭は長門とランだったことだろう。

 

(ランは長門のことが好きなのかしら? よかった)

 

 ランが長門に夢中な様子を見て、私は密かに安堵していた。

 その頃の私は、自分の気持ちについてよく理解するようになっていた。

 

(弥彦……貴方は私の太陽なのね)

 

 弥彦は私に生きる希望の光を齎してくれた太陽であると同時、私の心を焦がして止まない太陽でもあった。

 彼の光をもっと浴びたい。彼の光を自分だけで独占したい。もっともっと私という花を照らして欲しい。

 

 そう、私は弥彦のことが好きなのだ。弥彦のことが好きでたまらないのだ。

 

 弥彦のことを考えていると、いつも胸が張り裂けそうなくらい切なくなる。弥彦の前では、自分をよく見せようとつい張り切ってしまう。変なところを見せてないか少し緊張してしまう。弥彦のことを思うと夜も眠れなくなる。弥彦のことを――――。

 

 その自分の気持ちに気づいてからというもの、私はいつも以上に気合の入れた化粧をしたりして、ランと長門がいない間を狙って、勇気を出して積極的に弥彦に声をかけにいったりした。

 

「弥彦、大丈夫?」

「ああ大丈夫だよ。このくらいかすり傷だよ」

「ダメよ。ちゃんと手当てしないと。私がやったげるから」

「あっ、おい待てぃ、勝手に……」

 

 その頃の弥彦はだんだんと無茶を重ねることが多くなっていて、生傷の絶えない生活を送っていた。

 

 客観的に見て、特殊な力を持っていない弥彦は、忍びの能力としては私たちの中で一番下だった。

 だというのに、身の丈に合わない無理な仕事も多く引き受けるようになっていたのだ。

 

「なんでこんな無茶ばかりするの?」

「目標のためだよ。皆で夢を実現するって決めただろ。リーダーの俺が頑張らなくてどうすんだよ」

「でもこんな焦らなくたって。長門とランのおかげで資金集めは順調にいってるんだし、弥彦がこんなに無茶して頑張らなくてもいいじゃない」

「……」

 

 弥彦がこれ以上傷ついて欲しくなくて、私は縋るように言った。

 すると弥彦は悔しそうに唇を噛みながら下を向くばかりだった。

 

「それとも、他に何か理由があるの? 無茶してでも頑張らなくちゃいけない何かが?」

 

 私は意を決して尋ねてみた。

 弥彦の心の内にある本音を聞きたかった。私に全てを曝け出して欲しかった。

 

「……小南には関係ないだろ」

 

 けれども弥彦は答えてくれなかった。

 

 だけど私は察してた。弥彦が無理をする理由が薄々わかっていた。

 

 弥彦の目には私が映っていなかった。あの子と並びあう長門の姿ばかりが映っていた。

 

「ねえ弥彦」

 

 このままだと弥彦の心は完全にあの子の所に行ってしまう。

 そう危機感を覚えた私は、大胆な行動に出てしまった。大胆な行動は年頃の女の子の特権だ。

 

「私のことも……もっと見てよ。私はいつも弥彦のことを……」

「小南……お前……」

 

 弥彦と見つめあう。高鳴る心臓。近づいていく目線。緊張と感激で震える唇。

 

 弥彦の瞳に私の姿が映る。その瞳に自分の姿をもっと映し出したい。もっと大きく、もっともっと大きく、映し出したい。

 

 そのまま私たちの距離がだんだんと近づいていく――――かに思えた。

 

「あれ長門、こんなところで何してんの?」

「っ!?」

 

 家の外からランの大きな声が聞こえてきて、私たちの肩はビクリと跳ね上がった。そして私たちの距離は急速に離れてしまうこととなった。

 弥彦はすぐに立ち上がると、玄関の方へと向かった。

 

「お前らいたのかよ。帰ってきたなら早く声かけろよな」

「私は今帰ってきたばかりだけど……。長門、家の前で腕組んでずっと突っ立ってたんだよ。変な長門~」

「長門、お前何してたんだよ。びしょ濡れじゃねえか」

「か、蛙の面に水の練習ゥ……」

「家の前でか?」

「……ああそうだ。家に帰って来たが急に修行がしたくなってな」

「ふーん」

「……」

 

 長門は私たちのことに気づき、配慮してくれていたらしかった。

 結局その気遣いは空気を読まずに近づいてきたランによって台無しにされてしまったのだけれど。

 こうして私の初めてのアプローチは、失敗に終わってしまったのだった。

 

「長門、このままじゃ風邪引いちゃうよ。拭いてあげるね」

「す、すまないなラン」

 

 ランは親切心からか長門の濡れた身体をタオルで拭ってやっていた。

 甲斐甲斐しく世話を焼くその姿は、当然ながら弥彦の目にも映る。

 

「っ!」

 

 弥彦は下唇を噛むと、外へと駆け出していった。

 

「あれ、弥彦どこ行くの?」

「修行」

「こんな時間に?」

「ああ。夕飯までには戻る」

 

 弥彦は怪我しているにも関わらず、修行に出て行ってしまった。

 好きな女の子が他の男と仲良くしている姿を見たくなかったのだろう。

 

「弥彦、怪我してるのに頑張るねー。私も負けてられないなぁ」

 

 ランは弥彦の気持ちなどまったく気づかずに能天気に振舞っていた。いつものように天真爛漫な無邪気な姿だった。

 

 それを見た私の心はざわついた。少しだけ苛立ってしまった。

 弥彦はランのせいで傷ついて、それで無茶をしているというのに。

 そんな気も知らずにのほほんとしているなんて酷い――そう思ってしまった。

 

 でもそれを直接指摘するのは憚られた。もし指摘してランが弥彦の恋心に気づいたら、もしかしたら二人が結ばれてしまうかもしれない。

 ランは幼く未だ恋愛感情というものに目覚めてはいないようだが、弥彦に対して好ましい感情を抱いていることは間違いない。何をきっかけにして恋愛感情に目覚めるかはわかったものではない。

 そう思ったら、私はランに声をかけるなんてできなかった。

 

 おそらく、私がランに対して苛立ちを感じたのは、その時が人生で初めてだったかもしれない。

 天真爛漫に思うがまま振舞って弥彦の心を掴んで放さない――そんなランに、私は強い嫉妬心を感じてしまったのだった。

 

 今まではランの欠点も何もかもが全て可愛らしく思えていた。けれど、成長した今となってはだんだんと腹立たしく思えてきてしまった。

 ランの嫌なところが強く意識されるようになってしまった。恋敵として憎いとすら思ってしまうようになってしまった。

 

 ランのせいではない。ランは昔から変わってはいなかった。変わってしまったのは私の心だった。

 無垢で透明だったはずの心。澄み切った水のようだった心が、思春期を迎えて徐々に薄汚れていってしまったのだ。

 

(ランになんて負けないから! 弥彦のことなんて何も思ってないランになんて!)

 

 私はその後も懸命に弥彦にアプローチを続けた。

 飛び切りの化粧をして、とっておきのアクセサリーを身に着けて、少し女性らしくなってきた身体つきを存分にアピールしたりして、弥彦を誘惑した。

 

 しかしどれも上手くはいかなかった。

 途中でランの邪魔が入ったり、邪魔が入らなくても弥彦が遠まわしに拒絶したりした。

 

「弥彦、お茶淹れたわ」

「ああ、ありがとう」

「今日は家でゆっくりしましょう。長門たちは二人で修行に出かけたし、私たちは私たちでゆっくりと……」

「どこだよそこっ!? 二人が出かけたのって!?」

「え? いつもの森って言ってたけど……」

「俺も行ってくる!」

「え、ちょっ、弥彦!?」

 

 長門とランが二人で出かけたと聞いて、弥彦は血相を変えて立ち上がって二人の後を追ってしまった。

 私が淹れたお茶を一口も飲まずして……。せっかく恋にご利益があるという薬草を少し煎じて混ぜたのに……。全部無駄になった。

 

(またあの子に邪魔された……もうっ)

 

 私は恋路を邪魔するランに苛立ちを感じずにはいられなかった。内心の苛立ちを隠しながら、私もすぐに弥彦の後を追った。

 

「長門、修行するなら俺にも声かけろよな。何で黙って行く?」

「ああすまない。一人でするつもりだったんだが、出かけ際にランに声をかけられてな」

「そうかよ。まあいい。まずは男同士で組み手しようぜ。たっぷりとな」

 

 二人に追いついた弥彦は、苛立ちを隠さないまま、長門に絡んでいった。

 まずはウォーミングアップということで、弥彦と長門、私とランで組み手をすることになった。

 

「弥彦、今日は最初から激しいな。ウォーミングアップというレベルじゃないぞ」

「こんくらい余裕だろ。だってお前は俺たちの中で一番強ぇんだからよ。俺なんかよりよっぽど」

「そんなことは……」

「謙遜すんなよ。事実だろが」

「ああそうだな……」

 

 長門と激しく組み手を続ける弥彦。

 己の内にある色々なモヤモヤをぶつけるように必死に戦っていたように見えた。

 

「いいだろう。こい弥彦。全力でな」

「ああ、言われなくても!」

 

 長門はそんな弥彦の胸中を知ってか知らずか、弥彦の思いを真正面から受け止めていた。弥彦の欲求不満の捌け口に自ら進んでなっていた。長門は優しい子なのだ。

 

「弥彦たち頑張るねー! すごーい!」

 

 ランはいつも通りに能天気に振舞っていた。

 そんな無邪気なランを見て、私もつい力を込めてしまう。心の中に生まれたドロドロとしたものを発散するかの如く、ランに激しく打ち込んでいった。

 

「お、小南ちゃんもやる気まんまんだね! だったら私も張り切っちゃお!」

 

 私の心の内のモヤモヤなぞいざ知らずといった感じで、ランは嬉々とした表情で私の攻撃を受け止めていた。

 私と思いっきり修行できることが嬉しくてたまらなかったらしい。

 

 ランはいつだってそうだ。無邪気で天然で可愛くて――それが弥彦の心を惹きつける。弥彦の心を掴んで放さない。弥彦の心を、私の太陽である弥彦の――。

 

(ラン、鼻血くらいは覚悟してね!)

 

 ランのいつもと変わらないその態度がまた腹立たしくて、私はより激しく打ち込んでいった。

 そうするとランは「小南ちゃんとこんな激しい修行するの久しぶり! 最高!」とさらに表情を輝かせて喜んだ。

 それがまた腹立たしくてたまらなかった。私の苛立ちなど知らないとばかりに、ランは私がより厳しい攻撃を加える度、興奮した面持ちで一人キャッキャと盛り上がっていた。

 

「はぁはぁ」

「アハハ、みんな泥だらけだね! 自来也先生とやってた時みたい!」

「ああ、そうだな」

「そうね」

 

 弥彦と長門の組み手も、私たちの組み手も、ウォーミングアップというレベルを遥かに超えて疲労困憊するほどの激しいものとなった。

 疲労困憊となるまで身体を動かしたおかげで、心の内に生まれたモヤモヤやドロドロはいつの間にか消え去っていた。

 嫌な感情は大量の汗と共に流れ出ていったらしい。私たちは泥だらけになりながら、昔のように笑いあっていた。

 

 その後、同じようなモヤモヤが生まれては消えていくということが何度も繰り返された。

 私と弥彦はお互いに満たされぬ思いを抱え、それを修行を通じてランと長門にそれぞれぶつけた。そうして満たされぬ思いを解消した。好きな人と繋がれない不満を発散した。

 

 ランと長門は修行馬鹿なので、私たちの鬱憤晴らしを兼ねた激しい修行にも何食わぬ顔で付き合ってくれた。

 ランにいたっては嬉々とした表情で私の攻撃を受け止めていた。私と修行できることが楽しくて仕方なかったらしい。

 私は腹立たしくもどこか嬉しい気持ちで、いつも激しく修行して欲求不満を解消していた。

 

 願いが通じず思い通りにいかないことばかりで心地よくはない日々だったが、そこまで辛いことばかりでもなかった。

 四人で一緒に暮らしていると、心から笑えることが沢山あった。

 これも青春時代の甘酸っぱい思い出というやつなのだろう。悪くはない日々だった。

 

 酸いも甘いも経験して、私たちはより大人へと近づいていく。幾つかの季節が巡り、転機を迎えることとなった。

 十分な資金が貯まり、実力も身に着けたと思ったので、私たちは自来也先生たちと過ごした思い出の地を離れる決意を固めたのだった。

 

「ここで俺たちは力をつけた。全てはここから始まった。俺たちは夢の実現のため、ここより出発する」

 

 弥彦が皆の前で力強く訴える。

 成長を重ねた弥彦は背丈が大きく伸び、精悍な顔つきとなり、力強い声となり、より頼もしい存在へと変わっていた。

 

 昔の泣き虫弥彦はどこにもいなかった。長門に欲求不満のイライラをぶつけるようなこともなくなっていた。

 何もかもが大人な、格好いい弥彦。素敵な弥彦。私の太陽。

 

 私はそんな弥彦にますます惹かれるようになっていた。

 彼の夢の一番の応援者でありたい。彼の背中を守れるような女になりたい。支え合えるような関係でいたい。

 そして、彼の傍にいつまでもずっと一緒にいたい。ずっとずっと、未来永劫。歳をとって死んだとしてもずっと。

 

(大好きな弥彦は私が傍で守る。絶対に守る。ランになんて負けないから)

 

 弥彦と一つになるという願いはいまだ叶っていないけれど、いつか必ずその願いを成し遂げる。

 私たちの夢とは別に、私は私の夢として、それを密かに誓ったのだった。

 

「――そして夢が叶った暁には、たとえバラバラになっていたとしても、いつかここに帰ってこよう。それで皆で祝福するんだ」

 

 私たちは思い出のカエル板の前で誓い合った。

 

 カエル板は自来也先生から教えられた初歩的な暗号札の一つだ。

 名前の隣にある札がカエルマークになっていれば「これから帰る」という意味、つまりは外出中の証。そうでなければ家にいるという証だ。

 

 簡単すぎるので今や暗号としての意味はないが、私たちの決意を示すイニシエーションとしては、カエル板は今も意味があった。

 

 私たちはカエル板を一緒にひっくり返し、カエルマーク(外出中)へと変えた。そしていつか必ずここに帰ってくると誓い合った。

 

「その時は自来也先生も一緒にね」

「ああそうだな。みんな、いつものやるぞ」

「うん!」

「っ!?」

 

 弥彦が皆の前に手を出す。

 私が一番にその手をとろうとしたけれど、真っ先に手を重ねたのはランだった。

 彼の手を真っ先にとり、何食わぬ顔で身体を寄せる彼女が少し憎かった。

 

「ほら小南も長門も」

 

 ランに真っ先に手を重ね合わされて、それで弥彦が少し頬を緩めているのも気に食わなかった。

 精悍な顔をした弥彦の頬がほんの少しだけ緩んでいた。いつも彼の顔を見ている私だから気づく。気づいてしまう。

 だから私は――。

 

「なんだよ小南。お前、変わってんな。下から手を重ねるなんて。普通、順番に上から重ねていくだろ?」

「別にいいでしょ」

「まあそうだけどよ……」

 

 私はランへの対抗心から、素直にランの上に手を重ねることができなかった。

 弥彦の手を下から強く握りしめるようにして手を重ねたのであった。私という存在を弥彦に強く示すために。

 弥彦は困惑していたが、ランは能天気なのでまったく気にしていないようだった。

 

「どうした長門? 早くお前もやれよ」

「俺もやった方がいいのか?」

「当たり前だろ。俺たちの中で、お前が一番強いんだ。本当のリーダーはお前みたいなもんだ。なのに、ノリ悪いぞ?」

「……やれやれだな」

 

 長門がワンテンポ遅れてから手を重ねる。四人の手が一つになる。そして声を重ねる。

 

「絶対に夢を叶えるぞ!」

「「「「おう!」」」」

 

 弥彦の掛け声に大きく答え、私たちは自来也先生と共に育った家を後にしたのであった。



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ch.7 ねねねね~、暁って楽しい?(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 どうも皆さんホモガキです。それでは今日も張り切って“NARUTO~影への道~”の配信をやっていこうと思います。

 

 前回は自来也先生たちと過ごした家を旅立つところまででしたね。

 これからランちゃんたちは、弥彦をリーダーとした暁という組織を立ち上げることになります。自分たちの手で新しく手に入れた大きな拠点を中心に活動していきます。期間としては数年ほどですね。

 

 この期間も雨隠れ編では二番目か三番目くらいに楽しい所ですね。言うなれば青年期編といったところでしょうか。ほぼ大人となった小南ちゃんたちと交流を深めつつ、新興組織を盛り立てていくわけです。

 

 この時期は信頼できる幼馴染と一緒にベンチャー企業を育てていくみたいな感じで楽しいですね。

 幼年期や少年少女時代とはまた違った楽しみがあって楽しいですよ。理想に燃える青春時代って感じです。

 

 それにしても、この時期の小南ちゃん、美しすぎですね。

 すっかり大人の女性になってますねこれ。化粧とかかなり派手ですし、完全に性の喜び知りやがってますよこれ。

 

 雌臭ぇぜワッショイ! 雌野郎ワッショイ!(クソノンケ)

 

 とりあえずスクショ撮りまくっておきましょう。

 雨に濡れた小南ちゃんとか最高です。衣服がピッチリと張り付いてて、ああ~たまらねえぜ(クソノンケ)。

 

 まあそれはさておき。

 この青年期編でやることは、前回と大して変わりません。キャラとの交流や修行をしつつ、組織活動を頑張るというだけですね。前回のバイトが組織活動に変わったってだけですね。

 

 この時期の交流ですが、弥彦を中心に交流しましょう。

 なぜかといいますと、弥彦は組織のリーダーなので率先して困難な任務に挑む場合が多いからです。つまり、彼についていけば経験値がいっぱい貰えるというわけですね。

 

 というわけで変態ストーカー並みに弥彦にくっついていきましょう。それがここでのムーブとなります。

 

 ちなみに動く死体の弥彦(ペイン)じゃなくて生きた状態の青年弥彦と関われるのはこの期間だけですからね。

 弥彦生存ルートとかとれば別ですけど、そうじゃない場合、この時期だけです。

 

 弥彦を生かした場合、小南ちゃんたちは悪堕ちしませんので、暁は犯罪者集団に変貌しません。その場合は暁討伐チャートとはズレることになります。

 

 これは暁の小南ちゃんの討伐チャートですから、弥彦君には悪いですがそのまま死んでもらうことになります。弥彦は助けません(無慈悲)。原作通りお亡くなりになってもらいます。

 

 というわけで、弥彦は数年後には死ぬことになります。今の内に生きた弥彦の勇姿をこの目に焼き付けておきましょう。卑劣様のイケメンボイスもたっぷりと味わっておきましょうねー。

 

「ラン、一緒に新しいメンバーの勧誘に行きましょう」

 

 お、小南ちゃんから一緒に組織のお仕事をしようというお誘いイベントが発生しましたね。

 二つ返事でオーケーしておきます。二人で人の集まるところにいって、勧誘活動をします。

 

「私たちとお話しませんか?」

「この里の未来に関することです」

 

 小南ちゃんみたいな美女が街頭に立ってるとノンケがホイホイ釣れますね。そのまま弥彦のところに連れていき、弥彦の演説を聞かせます。

 

 何か宗教の手口っぽいですが、まああながち間違いでもないでしょう。

 初期暁って、弥彦の理念の下に平和を目指す新興宗教団体みたいなもんですしね。弥彦の死後にカルト化して変な仲間が増えて武力至上主義に走ったようなもんです。

 

「弥彦さんの演説、感動した……」

「俺、弥彦さんに一生付いていくっす!」

「弥彦さん最高!」

 

 勧誘した人々が弥彦の演説を聞いて震えてますね。弥彦の里を思う真っ直ぐな気持ちに心打たれてるようです。

 流石ナルトに通じるところがあると言われる弥彦ですね。カリスマ性は抜群にあります。

 

「ラン、もう一度人を集めてきましょう」

「そうだね」

 

 小南ちゃんと二人で再び街頭に出かけて行き、人を集めてきます。

 そうやってノンケを女で釣って弥彦に会わせてホモにする、みたいな感じで、雨隠れのパンピーを弥彦の思想( いろ)に染めていきます。

 

 そんなことをしてひたすら勧誘を繰り返しながら、組織を拡大していきます。

 

 勧誘だけでなく、賊討伐イベントとかで出会った義賊なども仲間に入れていきます。

 

「よろしく頼むぜ」

「ああ」

 

 大仏と鳩助とかいう変なモブたちが仲間になりました。大仏はそのまま大仏みたいな顔のモブで、鳩助はカンクロウの偽者みたいな奴です。

 

 組織が拡大するにつれて敵対組織との戦闘イベントが増えてきますが、皆と協力して共に潜り抜けていきましょう。

 一つの目的に向かって走る情熱溢れる集団って感じで、なんだか格好良いですね~。

 

 現実じゃ彼らみたいな危ないことなんてしたくないですけど、VRのゲームの中でそれを追体験できるってのは最高に楽しいですね。和風ファンタジー世界の革命家の人生追体験してる気分です。

 

「敵襲だ!」

「どこの勢力だ!?」

 

 心から信頼できる仲間たちと死線を掻い潜って理想のために邁進していきます。仲間の屍を踏み越えてその先にあるものを目指して突っ走っていきますよー。

 

 ちなみにこの時期も、小南ちゃんと弥彦は拠点で隙あらばアオハル繰り広げようとするので、見かけたらちゃんとアオハルぶち壊しておきましょうね。

 

 小南ちゃんはわしのもんですからね。小南ちゃんが弥彦の所に向かう前に、先にわしが弥彦に話しかけておきましょう。

 そうやって小南ちゃんと弥彦の仲が進展するイベントを邪魔しておきます。

 

 この時期は弥彦と一緒にいると経験値効率が良いので一石二鳥ですね。ノンケのアオハルをぶっ壊しつつ、効率良く経験値ゲットできて、ダブルウマウマです。

 それでは小南ちゃんから弥彦を奪って、経験値を貯めていきますよー。

 

「ラン、見送りに来てくれたのか。わざわざいいのに」

 

 そうそう、弥彦が出陣する時は見送りを欠かさないようにしましょう。

 何故かと言うと、運が良ければ「一緒に来るか?」みたいな感じで戦闘イベントに連れて行ってもらえることがありますからね。好感度高いと連れて行ってくれることが多々あります。

 

「それじゃ行ってくる」

「うん」

 

 今回はダメでしたが、ランちゃんは魅力が高いので弥彦の好感度がかなり稼げていて、試走した時よりも高頻度で連れていってもらえてますね。

 

 とまあそんな感じで、この時期は弥彦の変態ストーカーとして過ごすのが本チャートでの基本ムーブになります。

 組織がかなり大きくなると、山椒魚の半蔵による弥彦暗殺イベントが発生するようになるので、それまでは弥彦の変態ストーカーとして過ごしていきます。

 

 ではどんどんストーリー進めていきましょう。

 

……。

……。

……。

 

「誰だ? 俺たちに何か用か?」

「長門。輪廻眼を持つお前に興味がある。俺はうちはマダラだ」

 

 新しいイベントが発生しましたね。

 四人で仮拠点で雨宿りしていると、怪しげな二人組みが近づいてきました。

 一人はうちはマダラを名乗る仮面を被った包帯グルグル巻きのいかにも怪しい奴で、もう一人はウンコ大好きでいつもヘラヘラ笑ってるアロエを頭にくっつけた兄ちゃんです。

 

 NARUTOに詳しい方ならもうお分かりでしょう。

 接触してきた二人は、偽マダラ(オビト)とゼツです。これはいわゆる偽マダラの接触イベントですね。

 

「光と闇。それらは互いに密接に絡み合って、本来切り離せないものだ。だがその因果を断ち切る術があるとすれば、お前らはどうする?」

 

 偽マダラは何かわけのわからん意味深長なことをぐたぐたと語り始めます。

 月の目計画に繋がるようなことを言っているんですが、当然ですが、弥彦たちには何のことだかさっぱりわかっていません。

 ヤバい奴らが宗教の勧誘に来たみたいな感じに思っていることでしょう。見た目的にもヤバすぎる二人ですし、ドン引きでしょうね。だって仮面包帯男と見るからに人外のアロエの男ですからね。

 

「他人の痛みを知る。そうすれば、道は開ける。この世界に希望はある」

「痛みを知る? それは復讐をするということか? 他者に痛みを与えるということか?」

「そうじゃない」

 

 そんな怪しげな男たち相手でもとりあえず対話しようと試みる弥彦君は偉いですね。人間の鑑ですよ。まあ偽マダラは弥彦の話なんて聞かないんですけどね。

 

「お前の言うことは甘い戯言だ。この世界に希望などありはしないのだ」

 

 偽マダラの仮面から覗けている目は完全にイっちゃってる感じです。

 実際、もう頭が狂っちゃってますからね。大好きな女の子がカカシにNTRされた後ですから。

 

 オビト君、NTR(野原が千鳥でレ○プ)されて、完全に脳が破壊されちゃってます

 

 だから仕方ありません。オビト君、完全に悪堕ちしちゃってます。純粋無垢なリン大好き少年だったのに、いまやリンキチお兄さんと化しています。リンちゃんと過ごす理想の世界を作るためなら、どんな非道なことにでも手を染めちゃいます。

 

「帰れ。二度と俺たちの前に現れるんじゃない」

 

 弥彦が問答の末、「俺は宗教なんか興味ねえんだよ。二度と来るんじゃねえ(エア本並感)」みたいな感じで邪険に追い払います。

 話が通じないと思ったのでしょう。基本対話重視で人を拒むことのない弥彦ですが、自分の主張をゴリ押ししてくる偽マダラの相手をしても無駄だと思ったのでしょう。

 

「俺は毎日この時間、ここに来る。話が聞きたければいつでも来い。お前たちもいずれ気づくことになるだろう。この呪われた忍び世界に、希望など何もありはしないということにな……」

 

 熱心に語りかけるも四人に完全無視される偽マダラですが、食い下がって意味深なことを語りかけてきます。予言者っぽいこと言ってます。

 

 ちなみに雨隠れスタートで偽マダラの月の目計画に協力する場合、今後ここで偽マダラと接触を重ねればいいです。

 ですが今回のチャートとは関係ないので、今回は偽マダラとはこれ以上交流しません。無視です完全無視。

 

 それでは、「はよう幻術まみれの世界になろうぜ」と勧誘に来た偽マダラはガン無視して、暁の活動を頑張って続けていきましょう。

 弥彦暗殺関連イベントが発生するまで、一気にストーリーを進めていきますよ。

 

……。

……。

……。

 

 

「最近、団員が急に失踪することが多いみたいだ。敵対組織によるものかもしれん。皆、十分に気をつけてくれ」

 

 お、ようやく目当てのイベントが発生しました。

 これは弥彦暗殺イベントの前段階となるイベントですね。俗に言う“不穏な噂”イベントというやつです。

 このイベントの後、小南ちゃんの誘拐イベントが発生し、その後の弥彦の暗殺イベントへと繋がっていきます。

 

 弥彦生存ルートをとる場合、この関連イベントの段階で手を打ちます。

 例えば小南ちゃんの誘拐を防いでこちらから山椒魚の半蔵にかちこみかけて潰したり、あるいはダンゾウの企みを暴いて半蔵に伝えて半蔵と和解路線とったりすれば、弥彦の死亡フラグを折れます。

 

 ただ、今回は暁小南ちゃんの討伐チャートなので、弥彦の死亡フラグは折りません。弥彦を見殺しにして小南ちゃんのメンタルへし折って悪堕ちさせます(ついでに長門も)。

 

 ということで、このまま弥彦暗殺の関連イベントが進んでいくのを指咥えて待つことにしましょう。小南ちゃんがハイ○ースされていくのを静かに見守りましょう。

 

 美女の構成員が敵対組織に誘拐されるとか変な妄想しか浮かびませんね……エッチだぁ……(クソノンケ)

 

「小南が連れ去られただと!?」

「弥彦さん、こんな手紙が!」

「まさか……半蔵が!?」

 

 どうやら無事に小南ちゃんがハイ○ースされたようです。無事にハイ○ースされるとか若干意味不明な物言いですが、チャート的には無事ということです。小南ちゃんがさらわれるのは既定路線ですね。

 

 さあ、弥彦君の命の灯火もあと残り僅かとなりました。

 

 次回は弥彦君解体ショーの始まりや! 視聴者兄貴姉貴諸君、乞うご期待!

 

 ということで、キリがいいので今回はここまでとしまーす。さいならー。



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ch.7 ねねねね~、暁って楽しい?(小南)

 私たちは自来也先生たちと過ごした思い出の地を離れ、新たな場所へと居を移すことにした。

 そしてそこで、弥彦を中心として立ち上げた組織“暁”を本格的に始動させていくことになった。

 

 雨隠れの里を平和に導き、やがては世界に平和を齎す。その夢の実現のために、私たちは大きな一歩を踏み出したのだった。

 

「ラン、今日も一緒に勧誘にいかない?」

「うん、いいよ!」

 

 何事をなすにも数が重要であり、数は力だ。

 拠点を移してからというもの、我々は組織の拡大に力を入れていくことになった。

 

 色々と考えた結果、新構成員の勧誘は私たち女性陣がまず最初に頑張ることになった。

 (いかめ)しい男性にいきなり話しかけられても、普通の人は無駄に緊張して警戒するだけだ。

 だからまず第一コンタクトは人当たりの良い私たち女性陣がとり、対象の緊張を和らげてある程度の信頼感を獲得した後、次のステップに進むという方法をとることにした。

 役立たずや性根の悪い者が仲間になっても意味はないので、最初の段階で人材の目利きをするのも私たちの仕事だった。

 

 成長しても子供の時と変わらず抜けたところのあるランだったが、人柄を見抜く目に関してはピカイチだった。

 本能的にその人にある悪意を見抜くというのだろうか、善人か悪人かということが、彼女にはすぐにわかるようだった。

 

 人柄的なものはランが見抜き、私は能力的に使える人材かどうかを見極める。

 勧誘活動において、私たちは自然とツーマンセルで動くことが多くなっていった。

 

「今日はどこに行こうかしら? ランはどこがいいと思う?」

「本屋の近くがいいんじゃない? あそこはいい子がいっぱいいるよ!」

「そうね。本に夢中になれる子は革命家の素質があるわ。じゃあ今日もそこにしましょう」

 

 里の未来のことなど何も考えず余暇を遊興に費やしているような人間は、あまり良い人材とはいえない。

 自分の身を削りながら誰かのために励める利他的な人間、それを私たちは欲しいのだ。加えて、何ものにも染まっていない若い人材。有能であるなら言うことはない。

 

 そういった人材が集まりやすい場所は自然と限られる。本屋、図書館、学校――そういったところだ。

 だから私たちは暇さえあればそこへ出かけていき、勧誘活動に勤しんだ。一人で過ごしている真面目そうな人間を見つけては声をかけていった。

 

「お兄さん、私たちと少しお話しませんか?」

「えっ、お姉さんたち誰? き、綺麗だぁ……」

 

 若くして何かに一生懸命に取り組んでいるような真面目な男は、あまり異性経験が豊富ではない。ゆえに女の色香というものに弱い。私たちは目的のために、それを大いに活用させてもらった。

 私たちもそこまで経験豊富というわけではないが、くのいちとしての素養を磨いた私たちには造作もないことだった。

 

 特にランのコミュニケーション能力は高く、見知らぬ人物でも臆することなく声をかけに言っていた。

 

「その本、気象学の本ですよね? 気象に興味あるんですか?」

「あっ、はい。雨隠れは雨の災害が多いので……。気象学について学べば、将来里に貢献できるんじゃないかって思って……。他にも色々と勉強を……」

「お若いのに凄い立派なんですね!」

「い、いや、僕なんてただの学生でそんな! 大したことないですよ!」

「いえいえ凄い立派だと思いますよ。そういう人って、尊敬しちゃいます。カッコイイですよ」

「アハハ、う、嬉しいです! 僕、女の人にそんな褒められたことないから緊張しちゃうな!」

 

 話をする中で人物を見極める。人柄的にも問題なく、能力的にも使えそうな人材だと判断したら、私とランはお互いに合図を交わす。そうして次のステップに移る。

 

「今日は私たちとお話してくれてありがとうございます。素敵なお兄さんに、よかったらこれ、差し上げますね」

 

 私は懐から花飾りを取り出し、それを対象の人物へと渡す。

 花の中心には招待状が挟まれている。ちなみにその招待状にはランが可愛らしい文字で文言を書き込んである。

 

「これ何ですか?」

「実は私たちも微力ながらこの里を良くしようと頑張って活動してるんです。それで、お兄さんも興味があったらその活動に参加して欲しいなって思いまして。よろしければ、詳しい話を是非聞きに来てください」

 

 招待状には日付と私たちが所有している拠点への地図が示されている。

 該当日には、特設のステージで弥彦が演説をする手筈となっていた。

 

「お兄さんにまた会えるのを楽しみにしてますね」

「か、必ず行きます! ランさんと小南さんに会いに行きます! 土砂降りでも必ず行きます! 嵐の日でも!」

 

 そうやって私たちは目をつけた人間に次々に声をかけていき、勧誘活動を行った。

 演説日には大勢の人間が集まり、弥彦の演説を聴くことになった。

 

「え、男?」

「なんで男の話を聞かなきゃなんねえんだよ……」

「ランさんと小南さんに会えると思ったのに……」

 

 私たちに釣られて会場に来た人たちは、弥彦の姿を見るとがっかりしていた。

 だが弥彦の話を聞いた途端、ほとんどの人はその話に聞き入った。弥彦に魅了されていった。

 

「俺はこの国を変えたい! もう泣くばかりの日々はやめにしたい! 俺たちの力でこの国を変えていこうじゃないか!」

 

 弥彦には元々カリスマがある。人々を勇気付け、導いていく力を持っている。

 おまけに私たちが声をかけたのは、そういったことに熱中しやすい素質のある人間ばかりだ。

 当然ながら、ほぼ全員が弥彦の話にのめり込んでくれた。

 

「弥彦さん最高!」

「かっこいいぞ!」

「キャー、弥彦さん抱いて!」

 

 長門が裏方で気分を盛り上げる無味無臭のお香(身体に大きな害はない)を焚いて聴衆に嗅がせたり、分身の術と変化の術を組み合わせて作った大量のサクラ人員をフル活用してくれたりするので、なおのこと聴衆は盛り上がることになった。

 毎度、まるで著名な音楽家がライブをするような盛り上がりとなった。

 

「弥彦さん! 俺も暁の仲間にしてくれ!」

「俺もだ!」

「俺も俺も!」

 

 私たちの活動は実を結び、暁の構成員数は着実に増えていくこととなった。

 人数が増えればそれに伴って面倒ごとも増えていったが、それ以上に私たちは達成感と満足感を感じていた。

 雨隠れ内で確実に影響力を増していき、夢に近づいているという実感が得られていたからだ。

 

(またあの子、弥彦と話してる……なんで?)

 

 組織活動――私たちの夢は順調だったが、私自身の夢は順調ではなかった。

 私の夢には大きな暗雲が差し掛かっていた。あの子という暗雲が。

 

「弥彦ー、どこ行くのー?」

「ランか。例のグループと接触してくる。お前も来るか?」

「うん行く行く! 楽しそうだし!」

「やれやれ、遊びに行くわけじゃないんだがな」

 

 その頃になると、ランは弥彦にべったりくっついて行動することが多くなっていた。

 少し前までは長門にべったりとくっついていたのに、今度は弥彦ばかりに構うようになっていたのだった。

 弥彦も満更ではない様子で、二人だけで一緒に任務に出かけることが増えていた。

 

(弥彦……あんなに楽しそうにして……私の時はあんな顔してくれないのに)

 

 私は激しい焦燥感を感じていた。このままではランに弥彦がとられてしまうと、人生で感じたことのないような焦りを感じていた。

 

(あの子になんて負けないから!)

 

 私はランに負けじと、弥彦に猛烈なアピールをすることにした。

 

「弥彦。気をつけて」

「なんだ小南。見送りに来たのか」

「ええ。弥彦が心配だから」

 

 あの子が弥彦を見送りに行った直後、私も入れ替わるように弥彦の元へと向かう。

 あの子に負けられない。あの子に弥彦をとられたくない。その一心で弥彦に声をかけた。

 誠心誠意、弥彦のことを労わるように心を込めて言葉をかけた――なのに。

 

「そんな見送りになど来なくていい。長門についてやれ。あいつがこの組織の要だ。俺なんかよりもあいつの方が重要だ。お前は長門にずっとついていてやれ」

 

 ある時、弥彦は憮然とした口調でそう言ったのだった。

 私はその弥彦の態度がどうしても納得できなくて、つい口に出してしまった。

 

 言ってはいけないというのに。口に出してもどうしようもないことだというのに。

 

「どうして?」

「ん?」

「そんなこと……さっきあの子には言わなかったじゃない」

「っ!?」

 

 私が問い質すと、弥彦は目を見開いた。そして罰が悪そうに後頭部を掻いた。

 

「……聞いていたのか?」

「……ごめんなさい」

 

 弥彦の咎めるような言葉に、私の目線が自然と下がる。

 二人の会話を盗み聞きしていたと暗に白状したようなものだ。少し気まずい時間が流れた。

 

 そしてどれくらい時間が経っただろうか。それほど長い時間は経過していないように思われる。

 

「ふぅ」

 

 弥彦は大きく溜息をつき、そして私の頭に手を伸ばしてきた。

 弥彦から伸ばされた手を見て、私の心臓は高鳴った。

 

(弥彦の手が私の髪に触れる……あぁ……私もあの子と同じように……っ!?)

 

 だけど、それは私が期待していたものではなかった。

 

――ペチン。

 

「趣味が悪いぞ。もうそういうことはしないでくれ」

 

 弥彦は私の額に軽くデコピンをすると、私の元から離れていったのだった。

 

「それじゃな」

 

 そして弥彦は団のメンバーと共に任務へと出かけていったのだった。

 私は呆然とした面持ちで、彼の背中が小さくなっていくのをいつまでも見つめていた。

 

(どうして……どうしてなの……)

 

 弥彦の示した態度は、私が期待していたものではなかった。真反対のものであった。

 

(あの子にはああしてくれたのに……どうして私にはデコピンなの……どうして……)

 

 弥彦はあの子に見送られた時は、困ったように微笑みながらも「ありがとな」と感謝の言葉をかけていた。軽いスキンシップをとりながら、あの子の頭をポンポンと撫でていた。

 

 それが羨ましくて、私もあの子みたいに感謝されたかっただけなのに。私もあの子のように弥彦とスキンシップをとって、頭をポンポンと撫でてもらいたかっただけなのに。

 あの子に向けるような光を、私にも平等に向けて欲しかっただけだというのに。ただそれだけだというのに……。

 

(ずるい……どうしてあの子ばっかり……弥彦を……光を独り占めして……どうしてなの……)

 

 私の心の中にあるそういったランに対するモヤモヤとした気持ちは、日に日に膨らんでいった。

 ランの能天気な言動がそれに拍車をかけた。

 

「わー! 小南ちゃんの机、またいっぱいお手紙乗っかってる! 全部恋文だ!」

 

 私とランが勧誘活動で力を振るった影響もあってか、当時の暁内では私たち二人に懸想する男構成員が大勢いた。女性構成員が少ないということもあってか、それで私たちは毎日のように愛の告白を受けるようになっていた。

 

 ただ、いつからかランに関しては何故か弥彦の女だという認識が広まっていて(ランが弥彦とべったりくっついていた影響だろう)、そのせいで私の所にばかりそういった類の面倒ごとが集中する事態に陥ってしまったのだった。

 私の机やロッカーには、愛を告白する手紙の類が連日山のように積み重なっていた。それは毎日毎日大量で、うんざりするほどだった。

 

 だというのに……。

 

「小南ちゃん流石、モテモテだねー。羨ましいよ~!」

「っ!」

 

 あの子は私の机にラブレターが山積みになっているのを見て、呑気な顔をしながら「羨ましい」と言うのだった。

 本気でそう思っているらしかった。自分の机にはそういったものが少ないので、自分は女性的な魅力に欠けているのではと本気で心配していた。

 弥彦の女だという認識が広がっていなければ、ランが間違いなく組織内でナンバーワンの人気だというのに――。

 

「羨ましかったら弥彦とばかり遊んでいないで、この中の手紙の誰かとでも付き合えばいいじゃない。貴方なら誰でも選り取りみどりよ」

「え?」

「……もう行くわ」

「あれ、小南ちゃん……怒ってるの? 何で?」

 

 私の心中など知らんとばかりのとぼけた顔で、ランは首を傾げていた。

 私が何故怒っているのかなんてまったく理解できていないようだった。

 

「小南さん、俺の手紙読んでくれましたか?」

「ええ。でもごめんなさい。今はそういったことを考えられないのよ。暁の夢のため、恋愛なんてしてる場合じゃないもの」

「そうですか。そうですよね……雨隠れを変えるんですもんね。すみません。自分、色恋なんかに現抜かしちまって……。革命の途中だっていうのに、甘いっすよね」

「いえ、でも私のことを思ってくれるその気持ちは嬉しいわ。ありがとう」

「そう言っていただけると幸いっす……」

 

 同じ組織の仲間ということもあり、愛の告白を無下にはできなかった。手紙をそのままゴミ箱に放って無視を決め込むというわけにはいかなかった。

 ゆえに、その頃の私は愛の告白を丁重にお断りするということを毎日のように繰り返していた。

 好きでもない男たち相手に丁寧に応対する日々。うんざりするほどの毎日だった。

 

(今日はあと五人も断らないといけないのね。ああ、鬱陶しいわ。あの子は仕事が終わったらさっさと弥彦のところに向かったというのに。なのになんで私は……ああもうっ!)

 

 私の苛立ちは日に日に募っていった。

 何故私ばかりがこんな目に遭わなければいけないのか。そう思うとやるせなかった。

 

 私がそんな気苦労を重ねている間、あの子は弥彦の元へと行き、呑気にお喋りなどを楽しんでいると思うと、本当にイライラした。

 

「小南さん、今日めっちゃ怖いな。イライラしてる?」

「おい、もしかして今日アレなんじゃ……」

「それマジ? うほっ、興奮してきた!」

「馬鹿お前、声でかい! 聞こえんだろ!」

「……っ!(ギロッ!)」

「ひっ、す、すみません!」

 

 悪いことというのは重なるものである。

 私のイライラを感じ取った構成員の男共が誤解して陰で下品なジョークを言ったりして(耳聡い私には全部聞こえる)、それでさらにイライラが募っていくという負の連鎖が発生した。本当に最悪だった。

 

(他の男の愛や好意なんていらない。私が欲しいのは弥彦の……あの人の愛だけなのに。なのになんであの子ばかり……なんでなのよ……)

 

 私は日々満たされない思いを抱えながら、それを誤魔化すように仕事に没頭するようになった。

 そうやって欲求不満を誤魔化し続ける日々を送った。

 

 弥彦の夢を一番に応援する。拡大していく組織を陰で一生懸命支えていれば、いつか弥彦が私のことを評価して振り向いてくれる。

 そんな陰日向に咲く一輪の花に私はなるのだ――そう思って、必死に頑張った。

 

「弥彦が怪我したですって!?」

「はい。先ほど帰還されました。今はランさんがお世話してくれてます」

「っ!? 何故もっと早く私に伝えなかったの!」

「え? いや、小南さん忙しそうだったし、そこまで重傷じゃないですし……」

「今度からもっと早く伝えなさい! 弥彦は私たちのリーダー、彼に関することは最優先事項よ! 常識でしょ!」

「は、はい! すいませんでした!」

「わかったならいいわ。それじゃ私はちょっと所用に出るから後よろしく」

「え、ちょっ、小南さん!?」

 

 ある日、私は弥彦が怪我をしたと聞いて、その情報をすぐに伝えなかった部下を叱りつけると、すぐに弥彦の部屋へと向かっていった。

 またあの子に先を越されたと悔しさに唇を噛み締めながら、足にチャクラを込めて全速力で向かった。

 執務室の窓から飛び出し、ビルの外壁を伝いながら最上層階にある弥彦の部屋へとショートカットして向かった。

 

「弥彦ったら相変わらずドジなんだからー」

「悪いなラン。いろいろやってもらって」

 

 私が弥彦の部屋に辿り着いた時には、弥彦の治療はランによって済まされていた。

 二人はベッドの上に仲良く座りながら、親しげに話をしていた。私はその様子を窓の外から覗くこととなった。

 

(またあの子……弥彦とあんなに近づいて! ずるい! まだ仕事中なのに! さぼるな馬鹿!)

 

 このまま窓に顔を押し付けて私がここにいるぞとアピールして二人の距離を遠ざけてやりたかったが、そんな大人気ないことはできなかった。こっそりと様子を伺うしかなかった。

 

(何を話しているのかしら?)

 

 やがて二人はやけに近い距離で話し合うようになった。外からでは中の様子がいまいちわからない。

 

(――紙分身の術!)

 

 気になって仕方なかった私は印を組んで術を発動させ、室内に紙で作った目と耳をこっそりと忍ばせた。

 放ったのは、本体と感覚をリンクしている諜報用の紙の分身体だ。この分身体が部屋の中にあれば、二人の様子は丸分りだ。

 

 そうして、私は二人の会話を一言一句聞き漏らすまいと耳を傾けた。

 

「なぁラン。この間の話の答え、まだ聞いてなかったよな?」

 

 弥彦が真剣な表情で口を開いた。珍しくも緊張したような表情だった。

 

「俺は本気だ。本気でお前のことが……」

「弥彦……。うん、私も嬉しい……」

「じゃあ、いいんだな?」

「うん!」

「ハハ、やったぜ」

「そんなに嬉しいの?」

「当たり前だろ。好きな子が自分の恋人になったんだからよ」

 

 会話内容は衝撃的すぎるものであった。

 私は叫びそうになる口を必死に押さえた。ショックの余り足に込めていたチャクラが乱れ、壁からずり落ちて地上に落下してしまいそうになるくらいだった。

 

(嘘よ……嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!)

 

 私は呆然としたまま二人の様子を伺い続けた。

 やがて、二人の手が重なり、二人の姿が重なる。

 

(嘘嘘嘘嘘やめて嘘嘘嘘嘘やめて嘘嘘嘘嘘よ! そんなこと! ダメ、絶対! 仕事中なのに!)

 

 私は室内に放った紙の目を通じて二人の様子を凝視していた。

 そんな時、以前の弥彦の言葉が、不意に頭を過ぎった。

 

『もうそういうことはしないでくれ』

 

 このまま二人の間に何が起こるか気になって仕方なかったものの、私は泣く泣く弥彦の言いつけを守ることにした。

 彼の言葉は裏切れなかったから。いや、あるいは、私自身が弥彦とランのその先に起きたことを知りたくなかっただけかもしれないが……。

 

(嘘よ……そんな……弥彦があの子と……うぅ……私の太陽が……光が……うぅ……とられちゃったぁ……)

 

 私は泣く泣くその場を離れることにした。

 不意に湧き起こってくる、窓ガラスに紙手裏剣を叩きつけて二人の逢瀬を滅茶苦茶にしてやりたいという衝動を抑え、密かに紙の目と耳を回収し、そのまま雨に打たれずぶ濡れになるのも構わずに外壁伝いにトボトボと歩き、下層階へと下りていったのであった。

 

「うおっ、小南!? お前、なんで壁から降りてきてるんだ?」

 

 そんな情けない姿を運悪く長門に見られてしまうことになったが、どうでもよかった。

 その時の私は無性に雨に打たれたい気分だったのだ。

 

「どうした? 何かあったのか?」

「別に……どうということはないわ」

「いや、どうということあるだろそれは。明らかに変だぞ」

「貴方には関係ないことよ……」

「そ、そうか。あっ、そうだ。弥彦に渡すものがあったんだが、代わりに渡してきてくれないかな?」

「……自分で行ってきて。何でいつも私に頼むの。私は貴方のパシリじゃないのよ」

「えっ、ああ、そうだな。すまない(あれ、いつもなら喜んで引き受けてくれるのにおかしいぞ?)」

 

 誰とも話したくなかった私は長門との会話を乱暴に打ち切ると、そのまま執務室へと戻った。

 

「小南さん!? ずぶ濡れじゃないっすか?」

「ほっといて……」

 

 そして心ここにないまま残っていた残務を終わらせ、そのままフラフラと街の方へと出かけていった。

 なんとなく酒を呑みたい気分だったので酒場に足を運んだ。もう浴びるほど呑んでやろうかと思って、その日は呑み慣れてないお酒を沢山呑んでから帰宅した。

 

「あのね、私、弥彦と恋人としてお付き合いすることになったんだ。小南ちゃんにはちゃんと報告しておこうって思って」

「そう……おめでと。よかったわね」

「あれ、小南ちゃん、顔色悪いけど大丈夫? それになんかお酒臭いよ?」

「二日酔いよ。ほっといて」

 

 翌日、私の前にしれっとした顔で現れたランは、いつもの屈託のない笑みを浮かべながらそう報告してきたのだった。

 初めて恋人ができたこと、弥彦と結ばれたことを純粋に喜んでいた。私の気持ちなんて知らずに……。

 

 ランの口から改めて突きつけられた受け入れがたい現実を前にして、引き攣った顔だったものの、ちゃんと祝福の言葉を言えた自分は偉いと思った。

 

(まさか可愛い妹分だと思っていたあの子に愛する弥彦を奪われて恋愛の道で先を越されるなんて……。もう呑まなきゃやってられないわ)

 

 その日の仕事終わりも一人で呑みにいったのは言うまでもない。

 二日酔いなど関係なかった。呑まねばやってられなかった。

 

(弥彦……なんで……私じゃダメだったの……ああ弥彦……うぅ……)

 

 ランと弥彦が結ばれてからというもの、仕事が終われば一人街に出かけて酒を呑むということが私の日常になった。

 どこからかそれを知った構成員の男共に毎日のように酒の席に誘われることになったが、それを全て断って一人静かなところで酒を呑んだ。

 美味しい魚料理をツマミとして出してくれるお店で、余計な干渉をしてこない寡黙なマスター相手にちびちびと呑んだ。

 

(忘れなくちゃ。弥彦が望んだことだもの。それにあの子だって私の大切な家族。誰よりも大事な家族だもの。祝福しなきゃ……)

 

 忘れなければいけない。弥彦への恋心を忘れなければいけない。

 弥彦とあの子が結ばれた今となっては、弥彦への恋心を持ち続けることは二人に対する裏切りだと思った。道ならぬ道だと思った。だから忘れなくちゃいけないと強く思った。

 

(忘れなくちゃ。もっといっぱいお酒呑んで忘れないと……)

 

 弥彦への思いを忘れようと思い、私は来る日も来る日も沢山のお酒を呑んだ。

 だけど――。

 

(弥彦ぉお! なんで私じゃなくてあの子なのよぉお! 弥彦の馬鹿ぁ! ランの馬鹿ぁ! 長門の馬鹿ぁ! うぅ……)

 

 だけどどうしても弥彦のことが忘れられなくて、毎晩ベッドの中で一人静かに泣いて枕を濡らした。

 そのせいで翌朝は腫れぼったい目をしていて、それを誤魔化すように濃い目のメイクをしてから仕事場に向かうハメになった。

 

 そんな私を見て、「小南ちゃん、今日のメイクもバッチリ素敵だね! 可愛い!」とランが満面の笑みで能天気なことを言うので、軽く殺意が湧き、紙手裏剣をお見舞いしたくなる衝動を堪え、「そう、ありがと」とクールに返事をしてから執務室に入る。そしてイライラを堪えながら一日中仕事をして、仕事が終わったら同僚の男共の鬱陶しい誘いを全て断って、いつもの店で一人呑む。

 そんな荒んだ毎日をしばらく過ごすことになった。

 

 悪いことは重なるものである。まさかよく行くお店が特定され、狙われることになるとは思わなかった。

 

 言い訳をするつもりなどないが、当時の私の精神状態ではお気に入りの店で呑まなければやっていられなかったのだ。

 私にとって弥彦は太陽のような存在だった。私に生きる光を与えてくれた存在だ。幼い頃から恋焦がれていた。

 それが奪われた際の精神的負荷というものは他人には計り知れない。弥彦ロスの穴埋めをして前向きに仕事を頑張るには、そうするしかなかったのだ。

 

 酒に呑まれて軽い過ちを犯してしまう。その程度だったら、人生いくらでも取り返しがつく。小娘の過ちというものだ。

 

 だが、世の中には取り返しのつかない過ちというものが存在する。

 私はその小娘のような自分の弱さを一生後悔することになるのである。




ランちゃんと弥彦君は結ばれました
でも次回弥彦君解体ショーが始まっちゃう…


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ch.8 弥彦君解体ショーの始まりや!(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 どーも、皆さんホモガキです。今日も“NARUTO~影への道~”の配信をやっていきたいと思います。

 

 前回は小南ちゃんがハイ○ースされたところまででしたね。我らが暁の天使様がガスマスクの変態集団にさらわれてしまいました。

 山椒魚の半蔵の手の者に誘拐されたわけですけど、半蔵は小南ちゃんを人質として交渉の道具とすることで、弥彦を釣り出して亡き者にしようとしてきます。

 

 女の子を人質にとるとか凄い卑劣ですねー。

 まあエドテンした捕虜に爆弾くっつけて(しかも爆弾が爆弾を口寄せするとかいう意味不明の仕様で)里に送り返すというあの人に比べたら全然大したことないですけど。

 

 では、半蔵とのイベントが始まるまで時を送っていきましょう。

 

……。

……。

……。

 

「半蔵。約束通り、俺たちだけで来た。小南を解放しろ」

 

 とある人気のない荒涼とした場所に、弥彦たちは呼び出されることになりました。

 

 現場には暁の最高幹部だけ集められている格好です。

 原作では弥彦、長門、人質にとられた小南ちゃんの三人だけでしたけど、ここではプレイヤーであるオリキャラのランちゃんも交じってますね。

 崖上に半蔵一派と人質の小南ちゃん、崖下に弥彦、長門、ランちゃん――という構図です。

 

「ダメだ。解放するのは交渉が終わってからだ」

「何が望みだ。こんな卑劣なことをして何になる。雨隠れの半蔵も地に堕ちたものだな。俺は以前、貴方のことをとても尊敬していたというのに」

「戯けたことを。我々の手の者に散々手を出しておきながら、よくそんなことが抜けぬけと言えるものだな」

「そんなことはしていない! 濡れ衣もいい加減にしろ! こっちだってお前らの手の者と思われる奴に仲間がやられている! 証拠がないからと今まで我慢してきたのに、今回は小南にまで手を出して、ふざけるな!」

「ふざけるなはこちらの台詞だ! 我々はそんなことはしていない!」

「とぼけるな! 岩隠れとの国境沿いにある拠点を潰したのはお前らだろう!」

「そんなものは知らん!」

 

 半蔵と弥彦が激しく言い合っています。二人の間で、主張がえらく食い違ってますね。

 

 弥彦は小南ちゃんの他にも半蔵一派に仲間がやられたと思っていて、半蔵は暁に山椒魚一味が散々やられたと思ってるみたいです。

 

 ぶっちゃけ、どっちも誤解なんですけどね。

 全部、木の葉のダンゾウって奴の仕業です。ダンゾウが裏で手を回して仲違いさせているわけです。ダンゾウが直属の暗部“根”の者を使って工作したんです。

 

 二虎競食の計っていうんですかね。

 雨隠れ二強の組織を互いに争わせることで共倒れさせて、雨隠れの戦力をダウンさせようっていう卑劣な策略です。

 

 運命のルーレットによっては、弥彦暗殺イベント前にカンゾウっていうダンゾウが扮したキャラと遭遇するイベントが起きたりしますが、今回は起きませんでした。

 ダンゾウ好きな人は弥彦暗殺イベントが起こる前にセーブ&ロードを繰り返しても面白いかもしれません。他国の地で地道な謀略活動に励むダンゾウ様の姿が見れることでしょう。

 

 ちなみにそのカンゾウさん、ほぼダンゾウの姿で全然忍べてなくて笑えます。弥彦たちはダンゾウなんて知らないんで普通に騙されますけどね。

 

 話し変わりますけど、NARUTO世界の悪事って、だいたいこのダンゾウって奴が悪いってことにされてますね。大蛇丸とも繋がってたり、うちは一族の抹殺にも関わっていたり、まあ色々と酷い人です。

 

 それはそうとダンゾウさん、息がめっちゃ臭いらしいです。歯槽膿漏か何かなんですかね?

 まあおじいちゃんだからね、仕方ないね。

 

 まあダンゾウが歯槽膿漏かどうかなんてそんなことはどうでもいいことです。

 では話を本筋に戻して、イベントの続きを見ていきましょう。

 

「私のことなんていいから! みんな、逃げて!」

 

 捕らえられた小南ちゃんが悲壮な顔をしながら叫んでいます。

 

 自分が捕らえられたせいで幼い時から一緒だった家族同然の人たちが危険な目に遭っていると思えば、心中穏やかではないでしょうね。

 忍びなんで舌噛んで自決してもおかしくない状況でしょう。まあ捕虜なんで幻術か何かかけられてそれは封じられているんでしょうけど。

 

「話は通じないようだな。ならば仕方がない」

 

――ヒュンッ、ドスッ。

 

「赤い髪のお前。それで弥彦という男を殺せ。そうすれば、他の人間は助けてやる。我々が望むのはその男の命、それだけだ。我々にしたことのケジメをつけてもらう」

 

 やがて半蔵一派がクナイを長門君の前に投げてよこします。そのクナイで弥彦を殺せと命令します。原作通りの流れですね。

 

「っ!?」

 

 長門君、めっちゃヤバい顔してます。輪廻眼の瞳孔がガン開き状態で、本当にもうヤバい顔してます。

 

 小南ちゃんもメンタル的にヤバい状況ですけど、長門君のストレスが一番ハンパない状況ですね。「あああああ!」とAOK君並みにいつ発狂してもおかしくない状況です。

 

 ストーリーメタ的な話になりますけど、雨隠れ編って、暁メンバーの長門君と小南ちゃんが何故悪堕ちしたか、っていう説明のためのお話ですからね。

 つまり、雨隠れ編とは長門君と小南ちゃんのメンタルをボッコボコにして打ち砕いて粉々にして悪堕ちさせるためだけにあるような趣味の悪いストーリーなんです。

 

 そんな不幸すぎる二人と弥彦を救うプレイがしたいってことで、このゲームを買った人もいるかと思います。

 まあ今回は暁討伐チャートなので救いませんけどね(無慈悲)。原作通りに弥彦には死んでもらって、このまま二人には悪堕ちしてもらいます。

 

 おじさんはねぇ、長門君と小南ちゃんみたいな可愛いねぇ、子の曇らせ顔が大好きなんだよ!(マジキチスマイル)

 

「できない……弥彦を殺すなんて……俺は……」

「ならば全員を殺すまでだ。どちらがいいか選べ。貴様が選ぶのだ」

 

 長門君、マジで迫真の表情です。

 究極の選択を迫られ、渡されたクナイを持つ手がプルプルと震えてます。アル中のおっさんかってくらいにプルプルです。

 

「できない……選べない……選べるわけがない……」

 

 ちょっとこれ見てるとなんかもう笑っちゃいそうです。

 シリアス場面で草生やすなホモガキって怒られそうですけど、このシーンも何回も見てるんで、長門君の犬死亡シーンの時と同じ感覚なんですよね。

 

 最初は普通に長門君たちに感情移入して涙出ちゃうくらいだったんすけど、五回目六回目になると慣れて普通に見れるようになって、十回超えるともっと違う楽しみはないかって探すようになっちゃって。

 それで冷静になって見てると、長門君の顔がヤバすぎるのが気になって変なツボに入ってしまって、それで何かもう笑っちゃうんすよね。

 

――ドスッ。

 

 あっ、弥彦が長門君の持っているクナイに自ら突っ込んでいき、エクストリーム自殺かましました。

 

 自分から突っ込んでいくのか(困惑)

 

 どうせ死ぬなら弥彦自身がクナイを手にとって自分で首でも切ればいい話なのに、何でわざわざ親友にトラウマ残すような自殺方法を選ぶんですかねぇ。

 半蔵もわざわざ長門に殺させずに、弥彦に自決を迫ればいいのにって思います。このシーンを見てると毎回そう思います。

 

 まあストーリーメタ的に言えば、長門君と小南ちゃんのメンタルぶっ壊すのが目的なんですから、長門君の手で殺させて彼の心に深いトラウマを残さなきゃいけないってことなんでしょうけどね。

 それで一番見栄えがいいのは刃物で心臓一突きという構図なんでしょう。倒れこみながら口から血を吐いて最後の言葉を言うとか、何か格好良くて見栄えが一番いいですからね。

 

 ああ^~、志半ばで仲間に全てを託し逝ってしまう親友を看取るイケメンという構図、たまらねえぜ。

 

 そして仲間のために自己犠牲に走る弥彦の兄ちゃんカッコイイ! 逝くぅううう!

 

「長門……何としてでも生き延びろ……お前は……この世の救世主……だ」

 

 弥彦が全ての思いを長門君に託しながら死んでいきます。

 弥彦からすれば死に際に自分の思いをなんとか伝えたいって感じなんでしょうが、長門君にとっては呪いの言葉みたいなものですね。

 

 長門君はこの事件をきっかけにメンタルおかしくなって悪堕ちしていっちゃいます。何がなんでも世界平和を実現しなきゃいけないという強迫観念に駆られることになります。それで外道の道に足を踏み入れることになるんですね。

 

 今日は、光の長門君が死んだ日なんですよ(暗黒微笑)

 

「や……ひ……こ……」

 

 大親友であり戦友であり希望の光だった弥彦が目の前で死に、長門君の顔が今日一番ってくらいにヤバいことになってます。

 ずっと見てると笑っちゃいそうになるんで、視点を小南ちゃんの方に移しときます。

 

「弥彦ぉおおおおお! いやああああああ!」

 

 こっちもヤバすぎでした。小南ちゃんの顔もヤバいことになってますね。迫真の表情です。雨と涙のせいで化粧がグチャグチャになってます。

 

 自分が人質にとられなければこんなことにはならなかったとか、自分のせいで弥彦は死んだとか、いっそ自分が死ねばよかったとか、色々思ってるんでしょう。もう後悔しても後悔しきれないでしょうね。トラウマ不可避です。

 

 小南ちゃんもこの事件をきっかけに悪堕ちしていくことになります。表情をなくした人形みたいになっていきます。

 ああ~、表情のなくなった白痴美の小南ちゃんとか、たまらねえぜ。

 

 今日は、光の小南ちゃんが死んだ日なんですよ(暗黒微笑)

 

「死んだか。では我々は去るぞ」

「はっ」

 

 半蔵一派は弥彦が死んだことを確認し、放心する小南ちゃんを解放して、その場を立ち去ろうとします。

 

 約束を律儀に守るとか何気に偉いですね。同士討ちさせた上で全員討ち取るとかいう卑劣な真似はしないようです。

 「しゃぶらなきゃ撃つぞゴラァ」って言って脅して、しゃぶったTNOKを容赦なく射殺したDBとは大違いですね。

 

 ちなみに、運命のルーレットによっては、半蔵一派は弥彦が死んだ後に長門君たちを殺そうと追撃してきたりします。というか、そっちの方が正史です。

 

 その場合、DB並みに鬼畜な姿を見せる半蔵が見れますが、今回は違いました。今回は世界に通用する雨隠れの英雄の方の半蔵さんでしたね。ちゃんと約束守ってくれました。

 

「許さない……」

 

 撤退しようとする半蔵たち。そこに長門君が待ったをかけます。

 

「うあああああああ! お前ら許さないぃいいい! 口寄せの術ぅう!」

 

 長門君が外道魔像を口寄せして半蔵一派をぶち殺そうと暴れまくります。

 外道魔像を口寄せするには多大な生命力を消費するんですけど、そんなの関係ないとばかりに暴れまくります。

 

 長門君、偽マダラと邂逅を果たしてから六道の力に本格的に目覚め始めてるんですよね。

 おそらく偽マダラを通じて学んでいたんでしょう。危ないから普段はあんまり使わないみたいですけど、ここぞとばかりに使ってますね。

 

「これはっ!?」

「よい捨ておけ。目的は果たした。撤退する」

 

 半蔵一派は弥彦暗殺という目的を果たしたので撤退していきます。半蔵側のザコが多数巻き添えくらいますが、半蔵たちはまんまと逃げおおせました。

 

「弥彦……」

「うぅ……」

「あぁ……」

 

 物言わぬ骸と化してしまった弥彦を回収し、長門君、小南ちゃん、ランちゃんの三人はアジトに帰還していきます。

 

 雨隠れの今日の天気はいつにも増して土砂降りな気がしますね。空はどす黒い雲で覆われています。まるで世界が暗黒に包まれているかのようです。三人の心模様を映し出しているかのようですね。

 

 今日は、みんなの愛する弥彦君が死んだ日なんですよ(暗黒微笑)

 

 ちなみに、この後アジトに帰ると、暁のメンバー全員死んでます。

 救いはないんですか!?(レ)って状況ですけど、救いはありません。全員死んでます。リンキチお兄さんとアロエのお兄さんに皆殺しにされてます。

 

 今日は、暁のみんなが死んだ日でもあるんですよ(暗黒微笑)

 

 ということで、弥彦が死んでキリがいいので今日はここまでとします。

 

 次回は「雨隠れのヒーロー凌辱だぜ!」です。良い子のホモガキのみんな、必ず見てくれよな。

 それでは皆さんまた次回お会いしましょう。



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ch.8 弥彦君解体ショーの始まりや!(小南)

 迂闊だった。

 暁の幹部の一人として死線を潜り抜けてきただけに、危機対処能力に関しては問題ないという驕りがあった。また私たちの影響下にある場所だからと、完全に油断していた。

 

 まさか、信頼していた行きつけの店の店主が脅されていて、飲み物に睡眠薬を混ぜられるとは思わなかった。

 気づけば、私は敵のアジトへと連れ去られていた。

 

「ここは……?」

「目覚めたかよぉ。姉ちゃん」

 

 目覚めると、そこにはいかにも頭の悪そうな三人組みの男がいた。

 見張りの人員らしいことはすぐにわかったが、それにしては下品な男たちだった。金と暴力と女にしか興味のなさそうな、そんな顔をしていた。

 

「なあ、よく見ればこいつめっちゃ可愛いじゃん。花の髪飾りなんかつけててよう。小娘みたいで可愛いぜ」

「しばらく誰も来ないし、やっちゃいますか!?」

「やっちゃいましょうよ!」

 

 男たちはお互い顔を見合わせると、下品な表情を浮かべて私の拘束されている牢屋へと入ってきた。

 

「うっ」

 

 奴らの下品な視線ですぐに気づいた。この男たちは私の身体を弄ぼうとしていると。

 

「や、やめなさい!」

「おほっ、抵抗してくれた方が燃えるぜ」

「気の強い姉ちゃんを犯すとか最高だぜ」

「これだから看守の仕事はやめられねえ」

 

 拘束されていた私は身動きがとれなかった。ただ奴らのいいなりになるしかなかった。

 

「おほっ、こいつ! めっちゃイイ身体してんじゃん!」

「小娘みたいなアクセつけてるくせに、身体は全然違うじゃねえか!」

「いいねセクシー! エロい!」

「くっ……」

 

 このままわけもわからぬ下衆な輩に身を汚されるくらいなら、いっそ死んだ方がマシ。

 そう思って舌を噛もうとしたのだが、牢屋には自決を防ぐ特殊な術でも仕込まれているようで、どうすることもできなかった。

 

(い、いや……誰か……助けてよ……弥彦……長門……ラン……)

 

 衣服を解かれ、奴らの薄汚い手が私の肌を這おうとしてくる。

 もうダメだ。そう思って諦めて、私は目を瞑り歯を強く食いしばって耐えようとしていた――そんな時のことだった。

 救いの手は意外なところから差し伸べられることとなった。

 

「――何をしている?」

「へぇあ!?」

「あ、半蔵様……」

「何をしていると聞いているのだ」

「えと、じ、尋問の練習ゥ――ふごっ!」

 

 現れたのは、雨隠れの長、山椒魚の半蔵だった。

 脱がされかけていた私の衣服を見て全てを察したのだろう。彼は部下の不始末の清算をするように、三人の男を次々に処断していった。

 

「大切な人質だ。指一本とて触れさせるな。人質の価値がなくなり交渉が意味をなさなくなるだろうが。まったく、部下の教育がなっとらん」

「すみませんでした。次はもっとマシな部下を看守につけることにします」

「最近の若い忍びは質が悪くて困る。そのようだから、暁などというわけのわからぬ若造共にしてやられるのだ!」

「ごもっともで」

 

 半蔵は不満を隠すこともなく部下に当り散らしていた。

 

「おい、見苦しい。早く整えてやれ」

「はっ」

 

 半蔵の命令で部下のくのいちたちがすぐにやってきて、私の乱れた衣服を整えてくれた。

 そればかりか、無駄な恐怖を与えてしまった謝罪とばかりに、半蔵は不必要な拘束などを解いてくれた。

 

 不正義を許さない――半蔵のその姿は、雨隠れの英雄の名に相応しい高潔なものだった。

 

 だが、だからこそ違和感があった。

 高潔な一面を見せた半蔵が人質をとるなどという卑劣な手段に出ているのは解せなかった。

 

「私を捕らえてどうするつもり?」

「お前自身に用はない。だがお前のところのリーダーの弥彦という男には大きな借りがあるのでな。奴との交渉に使わせてもらう」

「私を人質にしたところで、弥彦は言うことを聞かないわよ。私如きで彼が動くとは思わないわ」

「それはどうかな? 暁の最高幹部四人が血よりも濃い絆で結ばれているというのは調べがついている。お前を人質にとれば、必ずや交渉の場に出てくるだろう。雨隠れの諜報網を舐めるなよ小娘」

「くっ」

 

 半蔵は私を弥彦との交渉に使おうとしているようだった。

 雨隠れの英雄と謳われた山椒魚の半蔵が、他里の敵相手に卑劣な手段を使うならまだしも、自国を拠点としている組織を相手にそんな手段に出るなんて俄かには信じがたかった。

 しかし、現状こうして私が捕えられ、半蔵本人の口から暁との交渉に使うと言われれば、信じざるを得なかった。

 

(志は違えど、私たち暁は里のために頑張っているというのに。弥彦も長門も、半蔵のことを尊敬して一目置いているというのにっ!)

 

 耐え難い怒りを感じた私は、人質という立場も忘れ、半蔵に食って掛かっていた。

 

「卑怯者っ、女を人質にとるなんて、それでも貴方はあの雨隠れの英雄である山椒魚の半蔵なの!?」

 

 私の罵倒に対し、半蔵は自嘲するかのような笑みを浮かべながらこう言った。

 

「ワシは守らねばならぬのだ。雨隠れの里を。山椒魚の同胞を。どんな手段を使ってもな」

 

 なんとも悲しげな笑みであった。堕ちた英雄という言葉が似合うような、そんな笑みであった。

 

 下衆な看守を処断して私を守ってくれた時の彼の目は英雄そのものの真っ直ぐな目であったが、たった今、里のことを語るその目は酷く淀んでいた。

 

 老いかあるいは他の要因があるのかは知れない。理由はわからないが、英雄だった彼の晴れた心には、大きな暗雲が垂れ込めているように感じられた。

 

 こうして、私は自害することも許されず、交渉の道具として使われることになった。

 最初にあんなことがあったからか、捕虜生活は捕虜にしては恵まれたものであったが、私の心は決して穏やかではなかった。迷惑をかけているであろう仲間たちに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 

 やがて幾日か過ぎ、あの日がやって来る。一生忘れることのない忌まわしきあの日が。私たちの人生を変えたあの日が、やって来ることになった。

 

「――来たか」

 

 待ち合わせ場所の崖上で待機していると、遠くから歩いてくる人影が見えた。

 遠目に見ただけでもすぐにわかった。ずっと一緒に暮らしてきたからわかるに決まっている。

 弥彦、長門、ランの三人だった。私を除く、暁の最高幹部たちがやって来たのだった。

 

(ドジを踏んだ私のことなんて放ってくれていいのに……)

 

 明らかに罠だとわかっていても、三人は命の危険など顧みず私を助けに来てくれた。

 その心意気に触れ、涙が出そうになった。

 

「小南、無事か!?」

「小南!」

「小南ちゃん!」

 

 弥彦たちは縄で縛られた私を見て怒りを感じたようで、すぐに半蔵たちに飛びかからんばかりの勢いだった。

 だがそこで、半蔵がクナイを私の首筋に突きつけて牽制する。

 

「小娘は無事だ。大事な人質だから丁重に扱っておる。もっとも、この先も無事だとは限らないがな」

「何が望みだ! こんなことをして何になる!」

 

 やがて交渉が始まった。

 半蔵は自分たちの同胞を殺したケジメをつけろと脅してきた。

 

 濡れ衣であった。私は暁の幹部だからこそ知っていた。

 弥彦は雨隠れの半蔵とは共存策をとっていた。雨隠れの忍びに手を出すような真似は決してしていない。

 

 半蔵たちの邪魔をするどころか、むしろ逆だ。我々暁は里が見捨てるような僻地の村々を賊から守ったりして、半蔵たち里の者の手助けになるようなことをしていた。

 

 だというのに、半蔵は一方的に自分たちの主張を押し通してきた。完全に私たちのことを敵だと思い込んでいるようだった。

 

 暁のメンバーの中には確かに半蔵の統治に反発を覚えている者もいる。だが本格的な対立まで望んでいる者は誰もいなかった。志は違えど同じく里を思う、広い意味での仲間だと思っている者ばかりだというのに。

 

「もう我慢できん。ならこちらも言わせてもらおう。最近、俺たち暁のメンバーにこそこそと手を出しているのは半蔵、お前たちだな。今回の小南の誘拐で確信した」

「何を戯けたことを」

「とぼけるな!」

 

 半蔵の一方的な主張を聞き、弥彦もヒートアップしていく。

 降りしきる冷たい雨にも負けず、二人は激しく言い争った。

 

 主張は平行線を辿り、やがて交渉は決裂。最悪の局面を迎えることとなる。

 

「話にならん。もういい。弥彦、お前の死をもってケジメをつけてもらう。赤い髪の男、それで弥彦を殺せ。さもなくばこの場で全員討ち取ることにする」

 

 半蔵はやがて一本のクナイを長門の前に投げて寄こし、選択を迫った。

 このまま戦って全員仲良く殺されるか、弥彦の命だけで済ませるかという選択を。

 

(このままじゃ……全滅……そんな!?)

 

 半蔵は三忍を相手に一人で戦って勝ったという伝説を持っている。全盛期から多少は衰えているとはいえ、その力は今も健在だ。半蔵を護衛する者たちも手練揃いである。

 手足を拘束された私は助けにはならず、弥彦、長門、ランの三人だけでは勝てるわけがない状況だった。

 

(不味い……このままじゃ弥彦は……)

 

 私は嫌な予感を感じていた。

 弥彦は常々、暁の最高幹部四人の中では本来自分が一番格下だと言っていた。純粋な忍びとしての能力だけを見てそうだと思ったのだろう。

 もし究極の選択を迫られる状況になったら俺を見捨てろなどと、ことあるごとに冗談めかしながら言っていた。

 

 だから不安だった。

 今日がその究極の選択の日ではないかと。優しい弥彦は自分だけが犠牲になる道を選ぶのではないかと、心配で不安だった。

 

 その嫌な予感は、残念ながら的中することになる。

 

「半蔵、本当に俺が死ねば三人は助けてくれるのか? お前は信じられる男なのか?」

 

 しばらくの静寂の後、弥彦は半蔵の目を見ながら言った。

 覚悟を決めた弥彦の真っ直ぐな瞳を、半蔵も負けじと見返す。

 

「二言はない。お前が死んでケジメをつければ、そいつらの命は助けてやる」

「……そうか」

 

 弥彦は半蔵の目を見て、何かを悟ったらしい。両手を前に広げて降参の意思を示すと、長門の前に立った。

 そして――。

 

「長門、俺を殺してくれ。頼む」

「っ!? そんなことできるわけない!」

「このままだと俺たちは全員死ぬ。この選択が一番正しい道だと俺は思う。俺たちの夢をここで途絶えさせるわけにはいかない。俺が犠牲になる。先に抜けて悪いが、お前たちで俺たちの夢を完成させてくれ」

「半蔵が約束を守ると思うのか!? 小南を人質にとった卑劣な奴だぞ!?」

「……俺は雨隠れの英雄である半蔵を信じる。なあそうだろ、半蔵」

 

 弥彦は覚悟を決め、渋る長門の説得にかかった。

 弥彦の言葉を後押しするように、半蔵が言葉を重ねる。

 

「雨隠れの半蔵の名において約束しよう。弥彦が死ねば、他の者には手を出さないと。男に二言はない」

 

 そう宣言する半蔵の目は濁った目ではなく、英雄らしい真っ直ぐな目であった。

 

「さあやってくれ長門。今の半蔵なら信じられる」

「できるわけない……できるわけない……」

 

 長門は震える手でクナイを手にし、その切っ先を弥彦の方へと向けた。そして震える唇を動かし、ブツブツと何かを呟いていた。

 

「ダメよぉお! 逃げて!」

 

 自ら死に向かおうとする弥彦を見て、私は堪らず大声を上げた。半狂乱になって叫んだ。

 

「三人とも逃げて! 私はどうなってもいい! だから早く逃げて! お願いよぉお!」

 

 私の声につられるようにして、クナイを持つ長門の手がいっそう震える。弥彦を殺すか私を見捨てるかで迷っているようであった。

 

 優秀な忍びなら誰もがわかっている。全員死ぬこと、犬死することだけは避けねばならない。それは最悪の選択だ。

 

 だから選ばなければいけない。誰が犠牲になって誰が生き残るかということを、選ばなければいけないのだ。

 私は自分が犠牲になるべく、みんなが逃げてくれるように必死に叫んだ。

 

 ランは泣き叫びながら「私が代わりに死ぬから皆を助けて」と哀願するように半蔵に訴えたが、半蔵に「お前が死んでも意味がない。弥彦が死なねば意味がないのだ」と一蹴されていた。

 一蹴されるものの、ランは泣きながら同じことを何度も頼み込んでいた。

 

「小娘共が少し五月蝿いぞ。一人の男が死ぬと覚悟を決めたのだ。黙ってそれを見届けよ。貴様らの小汚い悲鳴で男の死に様を汚すな!」

 

 そう宣言する半蔵は英雄然とした威厳を放っていた。不思議と約束を守ってくれると思わせるような説得力を放っていた。

 

 だがそんなことはどうでもよかった。

 私は弥彦に死んで欲しくなかった。私のせいで弥彦が死ぬくらいなら私が死ぬ。私のせいでみんなが死ぬくらいなら私が死ぬ。

 そんな思いだった。

 

「みんな逃げてぇええ! お願いよぉおお!」

「ええい、小娘が静かにしろ。男が一世一代の覚悟を決めたというに!」

「逃げてぇええ! お願いぃいい!」

「小娘が黙れと言うに!」

 

 私は半蔵の言葉を無視して叫び続けた。叫んで叫んで、泣き叫んでさらに叫んだ。

 弥彦が翻意して一か八かみんなで逃げるという選択肢を選んでくれることを願って叫んだ。

 

 だが――弥彦はその選択を選ばなかった。

 自らの命を砕き、私たちを助けるという選択をしたのだった。

 

――ドスンッ。

 

 それは一瞬のことだった。

 弥彦は長門の震える手を優しく握り締めてクナイを固定すると、そこに向かって自分から突っ込んでいった。

 

 泣き叫んでいた私もランも、言葉を失った。長門も半蔵たちも、全ての者が言葉を失った。まるで時が止まったかのように、雨音だけがその場に響いていた。

 

「長門……何としてでも生き延びろ……お前は……この世の救世主……だ」

 

 唯一無二の友で戦友である長門に志の全てを託し、弥彦は崩れ落ちていった。

 長門は弥彦の遺した言葉の意味を噛み締めながら、呆然と立ち尽くすのみだった。

 

「弥彦ォオオ!」

 

 ランがすぐさま倒れ込んだ弥彦に向かっていく。

 

「すまないなラン……辛くても生きてくれ……長門と小南と三人で……お前は俺の……太陽だった……ありがとうな」

 

 弥彦は最後の力を振り絞ってそう伝えると、ランの腕に抱かれながらゆっくりと目を閉じていった。

 

 弥彦の最後の言葉を聞き、その時私は悟った。

 

 人間誰しも一人では生きていけない。我々は誰しもが一輪の花である。太陽のように一人で燦々と輝き生きていくことなどできない。

 私たちは弥彦のことを生きていくのに必要な太陽だと思っていたが、弥彦にとっての太陽もいたのだ。

 それは周りにいた人々であり、そして一番の太陽はランだったのだ。

 

「弥彦! 死なないで弥彦ぉお! うぁああああ!」

 

 弥彦の亡骸に縋りつくラン。ランは弥彦に縋りつきながらずっと泣いていた。

 ランにとっての太陽が落ち、満開だった花が急速に萎んでいく。

 

「あぁ……」

 

 受け入れがたい現実を前にして、頭の中を後悔ばかりが巡った。

 私が捕らえられなければこんなことにならなかった。

 

 みんなの愛する弥彦を死に追いやったのはこの私だ。

 弥彦とラン。幸せな愛を育んでいた二人を死で別つ残酷な運命に導いたのはこの私だ。

 私さえ、私さえいなければこんなことにはならなかったのに――。

 

「いっ、いやああああああああ!」

 

 私は土砂降りの雨にも負けないくらいの金切り声を上げた。喉が引き千切れるくらいの勢いで叫び続ける。雨の冷たさも何も感じないくらい、ただひたすら叫んでいた。

 そうでもしないと頭がどうにかなってしまいそうだった。いや、もう既にどうにかなってしまっていたのかもしれないが。

 

「間違いなく死んだようだな。では人質の小娘を置いて去るぞ」

「はっ」

 

 弥彦の死を確認した半蔵たちは、私を放置して、その場から立ち去ろうとした。

 私とランは泣くばかりだったが、いち早く動き出したのは長門だった。長門はその特徴的な渦巻模様の瞳に憎しみの色を宿らせ、半蔵たちを射殺さんばかりに見つめていた。

 

「許さない……お前ら……絶対にぃいい! 口寄せの術! 外道魔像!」

 

 長門は口寄せの印を結ぶと、今までに見たこともない謎の生き物を召喚した。

 それは、生き物なのかもさえもわからない、とても禍々しい巨像であった。

 名づけるならば、外道世界から呼び出された魔の巨像――外道魔像とも呼ぶべきものであった。

 

 外道魔像のあまりの禍々しい姿に、数々の修羅場を潜ってきたであろう半蔵たちも呆気にとられていた。

 

「これはっ!?」

「半蔵様!? どうします!?」

「捨ておけ! 目的は果たした、撤退する!」

「はっ」

 

 長門の呼び出した魔像から繰り出される激しい攻撃をかわし続け、半蔵たちは辛くも撤退していった。

 

「はぁはぁ……」

「うぅ……」

「……」

 

 後に残されたのは、チャクラを使い果たし、心身ともに疲れ果てて抜け殻となった長門。

 物言わぬ骸となった弥彦と、それにいつまでも縋りついて泣き続けるラン。

 そして、その光景を雨に打たれながら呆然と見つめる私。

 

 私たちはしばらく何もする気が起きず、そのままそこで時が止まったかのように過ごしていた。

 

「帰ろう。弥彦と一緒に。みんなのところへ」

「そうだな……」

「ええ……」

 

 どれだけ時が流れただろうか。

 泣くことを一時中断したランの言葉に促され、私たちはようやく活動を再開した。

 

 弥彦の遺体がこれ以上傷まぬように、紙で包み込み移送する。出来るだけ綺麗な状態で弥彦の亡骸をみんなのところに届け、みんなで見送ってやらねばならない。

 

「……」

「……」

「……」

 

 帰り道中はずっと無言だった。足取りは重い。当然だ。

 

 私たちの太陽が沈んだのだ。世界は闇に包まれてしまった。真っ暗闇の中にいて、どうして明るく振舞えるだろうか。

 

 私たちは土砂降りの雨に打たれながら、無言のままアジトへと帰還していったのだった。



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ch.9 雨隠れのヒーロー凌辱だぜ!(ホモガキ)

 もう始まってる! 

 

 みなさんこんばんは~。ホモガキです。今日も“NARUTO~影への道~”の配信の続きをやっていこうと思います。

 

 前回は弥彦君が死んだところまででしたね。

 幼い時の弥彦君の姿から知っているだけに、死ぬと結構ショックですねぇ。小さい時から成長を見守り続けてきた知り合いの子が死んだみたいで、「悲しいなぁ……(諸行無常)」って感じです。

 

 ワシは何回もプレイしてるんで慣れてますけど、初プレイ時にショックで過呼吸起こした兄貴姉貴の話はネットとかでたまに聞いたことありますね。

 まあ嘘なのか本当なのかよくわかりませんけどね。解像度とかのオプション設定にもよりますけど、感受性の高い兄貴姉貴がより没入感の高い設定でゲームやっていたら、あり得る話ではあります。“NARUTO~影への道~”に限らず、VRゲーム全般に言えることです。VRゲーやる際は要注意かもしれませんね。

 

 ですので感情移入は、ほどほどにして下さいね。

 所詮ゲーム内のことですので。誰か実際に死んだわけじゃありませんから。メモリーの中のデータが変動してるだけですから。

 

 この配信見てる視聴者兄貴姉貴は、雨隠れの鬱イベント見る際は、是非とも長門君の変顔でも見て草生やしながら楽しくゲームを進めてくださいね。

 ホモガキとの大事な約束ですよー。

 

 さてさて前置きの話はここらへんにして、ゲームの話に戻ります。

 弥彦の死体を抱えながら哀しみの中アジトに帰還する一同ですが、アジトに帰るとさらなる絶望が待っています。

 暁のメンバー全員が何者かにぶち殺されてるんですね。その死体を発見することになります。

 

「こ、これは……!?」

 

 うわぁ、これはバラバラ死体ですね。これは首なしで、ああ、こっちは首だけですね。間違いない。なんだこれは、たまげたなぁ。

 

 グロも全部フリー設定でやってるんで実際のプレイ画面は酷いことになってますが、皆さんにはモザイクをかけてお伝えしています。

 

「そんな……」

「い、いや……」

「鳩助……大仏……みんな……」

 

 なんでこんな酷いことしゅるのぉお!って状況ですね。

 カンクロウに似た容姿の鳩助とかいうモブも、大仏に似てるので大仏とかいうくっそ安易な名前のモブも、全員仲良く死んでます。

 

 こうなると、もう暁はお終いですね。

 弥彦たちの夢は振り出しに戻っちゃった形です。振り出しどころか、リーダーの弥彦が死んでるわけですから、大幅マイナスの状態ですね。夢も希望もなくなっちゃった状態です。絶望しかないです。

 

 ちなみに、ここは長門君と小南ちゃんのレイプ目みたいな表情が見れる貴重な場面です。

 これ以降だとあんまり感情見せなくなるんですよね二人とも。人間として大事な何かが壊れたような無表情になっちゃいます。

 それはそれでグッドな表情なんですが、感情の欠片が残ってるこの時期の表情は格別に愛おしいです。愛でましょう。

 

 ということで、貴重な二人の曇り顔をしっかりスクショしておきましょう。

 

 ああ~、たまらねえぜ。今夜のオカズはこれで決まり!

 

「お墓……作らないと……みんなのお墓……」

「あぁ……」

「そうね……」

 

 見るも無残な状態の死体が幾つもありますので、弥彦以外の死体を埋葬することが決定しました。三人は放心状態のまま、レイプ目の状態でお墓を作り始めます。

 

 こいつらいつもお墓作ってんな。長門君の犬のお墓を作った時もそうでしたね。大人になっても墓作ってますよ。

 

 哀れ。呪われた忍び世界に生きる人間の末路。

 

「半蔵の手の者がやったに違いない」

「そうね。それしか考えられないわ」

「許せない……」

 

 落ち着いたところで誰が犯人か捜すことになります。

 まあ当然ですが、犯人は半蔵ってことになりますね。タイミングが良すぎですからね。

 

 普通に考えて、半蔵たちが弥彦を殺すと同時に暁のメンバーも殺しにきたとしか思えません。目の上のたんこぶだった暁を完全に潰しにきたとしか思えません。

 

 実は、ダンゾウと偽マダラが互いにスタンドアローンに暗躍して関わってるなんて想像もつきません。全部が雨隠れの長、山椒魚の半蔵のせいってことになります。

 

 ダンゾウたちの悪事を暴くイベントでも回収してれば話は別ですが、今回は小南ちゃん悪堕ちルートをとるためにそれらイベントは全スルーしたので、そのまま半蔵のせいってことになります。とんだ風評被害ですね。

 

「半蔵に復讐してやる! 俺たちの家族を奪った報いを受けさせてやる! あいつらに同じ痛みを味わわせてやる!」

「無理よ。私たち三人だけでなんて……」

「今度こそ殺されちゃうよ……」

 

 長門君がぶち切れて復讐を叫びますが、冷静な小南ちゃんが止めますね。

 ですが小南ちゃんも復讐心を隠し切れていませんね。チャンスがあるなら今すぐにでも半蔵ぶっ殺したいわ、みたいな怖い顔してます。一族郎党根絶やしにしたいわ、みたいな恐ろしい気配を放ってます。

 

 猟奇的な小南ちゃん、素敵だぁ……(ドMクソノンケ並みの感想)

 

 半蔵に復讐したいところですが、基盤も何もかも失った三人は途方に暮れるしかありません。

 そんなところで、待ってましたとばかりにあの人たちが登場することになります。

 

「話は聞かせてもらったぞ。とんだ災難だったようだな。だがこれでお前たちも理解しただろう。この現実世界に救いなどないということに。俺の話を少しは聞く気になったか?」

 

 途方に暮れる三人の前に、偽マダラとゼツが現れました。

 

 二人共とぼけちゃって……って感じですね。暁のモブ皆殺しにしたのはこいつらなのにね。真面目トーンで話し続ける偽マダラはともかく、ゼツ君はいつもの如くヘラヘラ笑ってて草生えます。いい根性してるなお前。流石真の黒幕です。

 

「俺たちが暁再興に手を貸してやろう。半蔵への仇討ちも手伝ってやる。悪い話ではあるまい? 俺とお前たちの目指すところは究極的には一緒だ。互いに手を取り合えると思うがどうだろうか?」

 

 偽マダラが三人に提案してきます。

 三人で話し合うことになってランちゃんの意見も聞かれます。

 

 プレイヤーはここで反対意見をごり押しして、暁から抜けることもできます。

 ですのでここで暁から抜けてもいいんですが、本チャートではここでは抜けず、今しばらく暁に在籍することにします。理由は後程説明します。

 

「交渉成立だな。今日から我々は志を同じくする仲間だ。よろしく頼む」

「ヤホー! よろしくね!」

「……ああよろしく」

 

 リンキチお兄さんとウンコ大好きお兄さんの変態二人組みが暁の仲間になりました。

 

 長門君も小南ちゃんも微妙な顔してます。心からは信頼できないと考えているようですね。でも半蔵に復讐して弥彦の夢を叶えるためには仕方ないと考えているようです。

 

 こうして新生“暁”が誕生しました。

 これからこの新しく生まれ変わった暁は、超傍迷惑な犯罪者集団へと成長していくことになります。

 半蔵を殺して雨隠れの実権を握った後は、傭兵活動を通して組織を拡大。その後、各地のはみ出しもんのヤバい奴らを吸収して、原作で出てきた悪の組織へとなっていきます。

 

 ランちゃんもこのまま暁に残れば暁の幹部として主人公のナルト君たちの前に立ちはだかることになりますね。

 悪の組織の幹部になって自来也先生と運命の戦いをするのも熱いです。あの赤い浮雲の黒衣を纏うのも悪くないです。悪役ムーブ楽しいです。

 

 ですが今回は暁小南討伐チャートなので、適当なとこで暁からは抜けます。

 先ほども言いましたが、今すぐに抜けてもいいんですが、本チャートでは半蔵に仇討ちを果たしてから抜けることにします。

 

 何故かというと、半蔵討伐戦で稼げる経験値がウマウマなんですよね。山椒魚の一族郎党抹殺するんで、ザコが大量に出てきてボーナスステージみたいなもんです。偽マダラとゼツも力を貸してくれるんで、ボスの半蔵戦以外なら安心して経験値稼げるんですよね。ボスの半蔵は死ぬ時に毒をばらまくので要注意ですけど。

 

 ということで、半蔵への仇討ちイベントをこなした後に暁を抜けることにします。

 それでは、該当イベントが発生するまで適当に過ごして時を進めていきます。

 

……。

……。

……。

 

「いくぞ。俺たちの痛みを、半蔵たちにも味わわせてやるんだ」

「ええ。弥彦の仇、そしてみんなの仇である半蔵を必ず討ちましょう」

「うん」

「僕たちも手を貸すよー」

「半蔵か。かつて三忍を一人で退けたというその実力、見せてもらおうか」

 

 ということで、半蔵討伐イベントが始まりました。

 これから単調な戦闘シーンばかり続きます。淡々と解説するのもゲイがないので、今回はTKYさんの怪文書風にまとめたのでそれを流すことにします。

 いちいち解説するのが面倒になったわけではないです。手抜きじゃないですよー。

 

 それでは、AIのTKYさん、読み上げお願いします。

 

 

ハンゾウ襲撃

ハンゾウが襲撃されて

腹筋ボコボコにパンチ食らって

脇腹の毒袋がヒクヒク動くと

あと3分で力尽き果てる

その時のハンゾウの苦しむ姿にドキドキするって

ヒーロー凌辱だぜ!

ガスマスクかぶった拓○ゎ前見えねぇし

息ゎ苦しいし

ハンゾウ最後の3分間ゎ30分以上にわたり

絶対に負けるはずのない雨隠れの英雄が倒れる

そんなのあり得ない!

力尽きたハンゾウが外道魔像に犯される

マヂ苦しい

酸欠で死にそう

力が入らなくなったハンゾウの四肢が緩み

長門の背中に外道魔像の黒い棒が容赦なく突き刺さる

 

脳天まで突き上げるフ○ックに苦しみ喘ぐ息もマスクで塞がれて

最初ゎ筋肉でキュウキュウに締め付けていたハンゾウの毒袋も緩み

酸欠で意識が薄れてくると

最後ゎあの痙攣がやってくるハンゾウだって死ぬときゎ射毒するんだよ

 

「あー!! 逝く!!」

 

ハンゾウにドスドスと手裏剣が撃ち込まれると同時に

ハンゾウも意識がぶっ飛び射毒

そのあとピクピクと痙攣したまま動かなくなった

 

ハンゾウの夢枕に現れたのゎ

あの、四代目風影

 

「雨隠れのハンゾウは弱いな!! オレを見ろ!! 絶対死なないぞ」

 

(あっ…あっ我愛羅の父ちゃんだ)

 

「磁遁…磁遁!!」

 

「おいおい、気安く呼ぶなよ!! 一応同盟国だから来てやったんだぜ! 尖閣守ってやらねーぞ!!」

 

四代目風影から強力なバワーをもらって帰ると

雨隠れの里で家族会議が始まった

やっぱり

新生暁ゎ抜けた方がいいかな



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ch.9 雨隠れのヒーロー凌辱だぜ!(小南)

グロ注意です!
血とか苦手な方はご注意を


 弥彦を失い、深い悲しみを味わう中、我々はアジトへと帰った。

 アジトに帰った私たちを待っていたのは、さらなる地獄だった。

 

「う……そ……よ……」

 

 少し前まで一緒に笑いあっていた暁の仲間たち。心から信頼できる気の良い仲間たち。

 

 その彼らが全員、変わり果てた姿で転がっていた。まるで見せしめであるかのように、惨たらしい状態で拠点内外に散らばっていたのだった。

 

「こんなことがあっていいのかぁああ! ふざけるなぁあああ!」

「鳩助! 大仏ぅうう! うわぁあああ!」

 

 長門が半狂乱になって地面を叩く。拳から血が滲むのも構わず殴り続ける。

 ランは特に親しかった仲間の名を叫んではその亡骸へと縋りついた。

 

 亡骸という表現は的確ではない。ほぼ肉片だ。辛うじて生前の彼らの特徴を残す身体の一部があるに過ぎない。

 ランは血の海からその肉片を愛おしそうに抱き寄せては抱きしめて泣いていた。

 

「あぁあああ! みんなぁあああ! どうしてなのぉおお! 私たちが何をしたっていうのぉおお! 神様ぁああ、酷いよぉお!」

 

 ランはみんなの亡骸を前にして枯れ果てたはずの涙をさらに搾り出し、全身の水分がなくなるのではないかというくらいに慟哭していた。

 

 ランの言う通り、私たちが何をしたというのだろうか。何か悪いことをしたのだろうか。

 そう神に問いかけたくなるような惨状が目の前に広がっていた。

 

 私たちはただ自分たちの故郷を、雨隠れの里を変えたかっただけだ。

 自分たちのような惨めで辛く苦しい人生を歩む人間が少しでも減るようにと、少しでも里を良くしようと、ただそう願っただけだ。

 邪な思いなどない。雨隠れを少しでも良くしようという純粋なる思いで、志を同じくする仲間を募り、暁を結成した。自分のために使う時間の多くを犠牲にして、誰かのためにと命の危険も顧みずに身を削ってひたすら頑張ってきた。誰かに認められずとも、神様は私たちの頑張りをきっと見ていてくれる――そう思って頑張ってきた。

 

 その答えがこれだ。

 尊敬していたはずの雨隠れの長に疎まれ、家族同然の弥彦を失い、志を同じくした多くの仲間たちが惨たらしく殺された。

 神に対して恨み事の一つや二つ言いたくもなる状況だった。

 

 太陽が消え去り、共に雨風を凌いだ仲間の花のほとんどが枯れ果てて地に伏してしまった。暗黒が支配する不毛の大地で、再び根を張ることなどできるのだろうか。この呪われた忍び世界に救いなどあるのだろうか。

 そう思い詰めてしまうくらい、絶望しかなかった。

 

「あぁ……」

 

 私は全身の力が抜けたかのように、その場にへたり込んでしまった。

 涙も出ず、ただ呆然と前を向いていた。地面に手をついた時に付着した掌の血糊を呆然と見つめる。

 

(血……みんなの……血……)

 

 視覚、嗅覚、触覚――全ての感覚が耐え難い現実を突きつけてくる。

 愛する弥彦が死んだ。私のことを慕ってくれていた男の子たちの全員が死んだ。信頼できる仲間のほとんどが死んだ。

 在りし日の彼らの顔が次々に浮かんでは血溜まりの中に消えていく。地獄とはこの世のことだと思い知らせてくる。

 

(私が……私のせいで……)

 

 私が捕まらなければこうはならなかったと思うと、今すぐにでも自害したい衝動に駆られた。弥彦と暁のみんなに心から懺悔して、この世から消え去りたいと思うくらいだった。

 

 だがそのようなことはできなかった。弥彦が生かしてくれた命を無駄にはできない。

 だから死にたいほど辛い現実が目の前に広がっていようとも、自ら死ぬという選択だけはできなかった。生き地獄の中でも生きていかねばならなかった。

 

 私たちは数刻くらいはその場にいただろうか。

 長門もランも私も、血臭で満たされた場所にずっといた。鼻を突くような臭いも汚濁にも構わず、呆然とその場に佇んでいた。

 

「お墓……作らないと……みんなの……」

「そう……だな……」

「ええ……」

 

 ランがそんなことをポツリと口に出し、長門も私もゆっくりと動き出すことになった。

 土砂降りの雨の中、何も喋らず何も考えず、ひたすらお墓を作る。感情のない絡繰人形のように動き続ける。

 

 ふと思った。墓を作るのはこれで何度目だろうか。仲間が死ぬ度に作ってきたから数え切れないほどだ。

 だが、こんなに一度に多くの墓を作るのは今回が初めてだった。

 弥彦の、鳩助の、大仏の――みんなの墓を作らねばならない。一つ、二つ、三つ、四つ――――。

 

 昔長門の飼っていた犬の墓を作った時は、忍術が使えず人力で掘っていたので、四人がかりでもかなりの時間がかかった。小さな犬の亡骸を納める墓を作るのにも苦労したものだ。

 

 だが今は簡単だった。今はたった三人だけで大量の墓を作ることになったが、忍術が使えるので凄く簡単だった。

 仲間たちの亡骸が獣に荒らされないように土遁を使って深い穴を掘り、そこにみんなの肉片を埋めていく。紙で作った沢山の花束を添える。一人、二人、三人――全員分の花を添えていく。

 

 程なくして、弥彦以外の仲間の全ての墓を作ることができた。

 雨の中、私たちはずぶ濡れになのも構わずに無言で祈り続けた。

 

「弥彦の亡骸はあそこに安置しましょう。私たちの帰るべき場所に……」

「ああ……」

「そうだね……」

 

 弥彦の死体だけは防腐措置を施し保存することにした。

 眠っているように綺麗に死んでいる弥彦が腐っていくのは耐えられなかった。だから私たちの気持ちが落ち着くまで、一緒にいることに決めた。弥彦だけは特別だから。

 

 茫然自失としたまま、破壊された拠点を修復する。

 とりあえず当面の生活の目処は立ったが、心は晴れない。ずっと雨模様だ。

 がらんどうとなってしまった拠点内で目的もなく呆然と数日過ごした。

 

「許せない……」

 

 そうしていると、もう耐えられないとばかりに長門が声を上げた。

 

「復讐しよう。このまま泣き寝入りなどできない。半蔵に復讐するんだ!」

 

 長門は憎しみに満ちた目でそう言った。

 

「無理よ。私たち三人だけでなんて……」

「今度こそ殺されちゃうよ……」

 

 私もランも反対だった。

 いくら長門が強いといっても限度がある。半蔵一派全員を相手にして勝てるとは正直考えられなかった。

 

 あの外道の力を借りれば、あるいはどうにかなるのかもしれない。

 けれどあれは長門の身体を大きく蝕むものだ。おいそれとそれに縋ることはできなかった。

 

「小南もランも、悔しくないのか! 弥彦が、皆が殺されたんだぞ!」

「私たちだって気持ちは同じだよ。けどどうしようもないよ!」

「そうね。最近の半蔵は臆病になって厳重な警備の屋敷から出ないっていうし、三人で敵の本拠地を落とすなんて無謀だわ……」

 

 復讐を叫ぶ長門。

 ランも私も気持ちは一緒だった。けれどどうしようもなかった。

 

「まだ足りないのか。俺に力がないから……弥彦も……みんなも……くそっ!」

「長門……」

 

 弥彦が、皆が殺されたというのに泣き寝入りするしかないのか。私たちは成長して力を手にしたはずなのに、幼い時と同じく無力なままなのか。

 

 そんな不甲斐ない思いを抱えながら途方に暮れていると、あいつ等が前触れもなく訪れたのだった。

 

「話は聞かせてもらったぞ。とんだ災難だったようだな。心中、お察しするよ」

 

 マダラを名乗る怪しげな仮面の男。

 それと見るからに人間ではない二つの顔を生やしたゼツと名乗る男。

 その二人(三人?)が私たちの拠点へとやって来たのであった。

 

「何の用だ。夢破れた惨めな俺たちをあざ笑いに来たのか?」

「違う。そんなことはしないさ。話し合いにきたのだ。俺とお前たち、今なら共に手を組めると思うがどうだろうか?」

 

 マダラは私たちに手を貸すと提案してきた。

 

「俺たちが暁再興を手伝ってやる。だからお前たちも俺の夢に協力しろ。俺の夢が実現すれば、お前たちの願いも同時に叶うことになる。我々が行き着く先は究極的には同じだ」

 

 全てを失った私たちにとって、それはとても魅力的な提案だった。

 我々に気づかれることなく近づけるということは、二人の実力は確かなのだろう。強力な助っ人だ。

 

 本物かはわからないが、うちはマダラというビッグネーム。それに加え、謎の組織を後援に持つゼツ。

 二人の力が加われば、暁再興は一気に進むと思われた。

 

「少し考えさせてくれ」

「ああいいだろう。では明日、同じ時間にここを訪れる。色よい返事がもらえると期待しているぞ」

 

 長門は返事を一旦保留した。

 奴らが去った後、私たちは三人で話し合うことなった。

 

「ラン、どう思う?」

 

 長門の問いに、ランは難色を示した。

 

「私は反対。あの二人嫌い。なんか凄い気持ち悪いの……。私たちのこと利用しようとしてるよきっと。ホント、気持ち悪い……。特にマダラの方……」

 

 ランはあの二人のことが心底気に食わないといった様子だった。ずっと「マダラ気持ち悪い。本当気持ち悪い」と連呼していた。

 ランの人を見る目は確かだから、きっとそれは確かなのだろう。

 

 長門も私も、ランに言われるまでもなくそう思った。

 あの怪しげな男たちが善意で近づいてくるなんてあり得ない。私たちを利用しようとする、なんらかの意図があるのだろう。それは容易に察しがついた。けれども――。

 

「前に弥彦もあの人たちのこと信頼できないって言ってたし、やめようよ」

「だがそれだと暁再興まで途方もない時間がかかることになるぞ」

「それでも地道に三人でまた一から頑張ろうよ」

 

 ランの言うように三人で地道に活動なんてしていたら、いつまで経っても弥彦の夢には近づけない。

 それに地道にやったところで、また理不尽に潰されてしまうかもしれない。そんなのは御免だ。

 

「綺麗ごとばかり言わないでラン」

「小南ちゃん?」

 

 私は綺麗ごとばかり言うランに苛立ち、少し声を荒げてしまった。

 本当に苛立っていたのはランに対してなのか、無力な自分自身に対してなのかはわからない。

 やりきれない気持ちの捌け口を探すようにランに冷たく当たってしまった。

 

「あいつらが私たちを利用するつもりなら、逆に私たちも利用してやればいい。私は悪くない提案だと思う。世の中、善意でなんて動いてないもの。お互い利用し合えばいいのよ。目的を達成できるなら手段なんてどうでもいい」

「小南ちゃん……」

「小南の言う通りだ。俺も奴らは胡散臭いと思うが、奴らの齎す力は魅力的だ。利用すれば、弥彦の夢に近づける。俺は弥彦に全てを託された。弥彦の夢のためなら、俺はなんでもする覚悟だ。この命すら惜しくはない」

「長門まで……」

「ランは反対か?」

「ううん、二人がそこまで言うなら私も従うよ」

 

 ランはよほどあの二人のことが気に食わなかったらしい。二人と手を結ぶことに最後まで反対していた。

 最後まで反対したものの、私たちが乗り気な様子を見て、渋々それを受け入れていた。

 

「交渉成立だな。今日から俺たちも暁の一員だ。よろしく頼む」

「ハロー! よろしくね!」

 

 翌日再びやって来たマダラたちに対し、私たちは承諾の返事を伝えた。

 こうして私たちは自称マダラと怪しげな男ゼツと手を結ぶことになった。

 

 弥彦たちといた頃の仲間に比べると、月とすっぽんだった。素顔を見せない人間など信頼できない。

 心から信頼できない仲間など本当の意味では仲間ではないのだろう。

 だが、私たちはそれでも怪しげな二人の力に頼るしかなかったのだ。

 

「リーダーはお前だ長門」

「ああ」

 

 マダラが仲間に入るということで、リーダーをどうするかという問題が生じたが、マダラたちは暁の席を借りるという形をとった。だからそのまま長門が表向きのリーダーということになった。

 長門としては、弥彦こそが真のリーダーと考えているようだったが。

 

「それでは当面の方針について話し合おうか。まずは雨隠れの半蔵を討ち、雨隠れを奪る。そしてそこを足がかりに組織を拡大させていく。マダラよ、それでいいか?」

「ああ。それで構わない。ゼツ、各里の情報収集は任せたぞ」

「ああ任せてよ」

「俺は写輪眼の能力を使い、半蔵の様子を探ってこよう」

 

 ゼツは謎のネットワークを持っているらしく、世界各地の情報を瞬時に仕入れてきてくれた。

 マダラは持ち前の時空間忍術と写輪眼を駆使し、どんな厳重な警備が敷かれた侵入不可能な場所の情報も探ってきてくれた。半蔵の本拠地である館の情報も逐一拾ってきてくれた。

 

 情報を集め、半蔵襲撃及び雨隠れ乗っ取りの準備を重ねる。

 そして、いよいよ復讐の機会が訪れることとなった。

 

「いくぞ。俺たちの痛みを、半蔵たちにも味わわせてやるんだ」

「ええ」

 

 我々はあえて敵が本拠地に集まっている時を狙うことにした。

 半蔵一味を一人も残さず抹殺するか捕らえ、そのままそっくり半蔵一派に成り代わって雨隠れの里を統治する計画を立てた。

 それが最も効率が良いと考えたからだ。

 

 隠密裏に館に侵入し、出来るだけ多くの忍びを始末する。

 敵も無能ばかりではない。やがて事態の異常を察知することになる。

 

「敵襲!」

「敵襲だ!」

「ここらへんが限界か。隠密行動はこれまでだ。これより、全力で戦う。雨隠れを奪う戦争だ!」

「ええ!」

 

 敵がこちらの動きに気づいてからは激しい戦いの連続となった。我々は姿を隠すこともなく戦い、敵を討ち続けた。

 館の周りはゼツが生み出した多数の分身体が包囲していて、鼠一匹逃さぬ布陣だった。

 

 五人で山椒魚の館内部を進み、敵をひたすら討ち続けた。未明に襲撃をかけ、日が昇る頃には半蔵が控えている本殿へと辿りつくことになった。

 

「何者だ!」

「半蔵。お前の首をもらいにきた。弥彦と皆の無念、ここで晴らさせてもらうぞ」

「その渦巻き模様の眼……あの時の小僧! それに小娘共もか!」

 

 半蔵は長門の輪廻眼を見て、ようやく私たちのことを思い出したようだった。それまですっかり忘れていたようだった。

 

 奪う者は奪われた者のことなど、とうに忘れている。だが奪われた者は奪った者のことを一生忘れはしない。それが世の常なのかもしれない。

 

「復讐か……。よかろう。受けて立つ」

 

 因果応報。憎しみの連鎖。

 それを受ける側となったことを悟ったのか、半蔵はなんとも言えぬ表情をしていた。

 

 そして、半蔵と私たちの戦いが始まった。

 

「口寄せ! 外道魔像!」

 

 ここが正念場ということで、長門はすぐさま必殺技を繰り出すことにした。外道の力を使い、半蔵の配下の手練の者たちを一気に屠っていく。

 

「ぬぅ、またしてもその力! 側近共では役に立たぬか! 口寄せ、イブセ来い!」

 

 老いて衰えたとはいえ、流石は雨隠れの半蔵だった。ザコはあっという間に片付いたものの、半蔵だけは中々すぐには仕留められなかった。

 

「イブセ! 奴らを近づけさせるな!」

 

 半蔵は口寄せ獣の山椒魚の化け物を呼び寄せると、毒を吐き出させて周囲を制圧してきた。半蔵と山椒魚には無害な毒で、我々にだけ害を及ぼす毒だ。

 毒のせいで迂闊には近寄れず、我々は距離をとって戦うしかなかった。お互いにアウトレンジから当たりもしない攻撃をちまちまと繰り返すしかなかった。

 

 私たちの仇討ちということで基本手を出さないマダラとゼツを除けば、唯一まともに戦えたのは長門の外道魔像だけだった。

 流石の長門といえど、半蔵とイブセのコンビを相手にするのは大変なようだった。

 

「俺が手を貸そう。半蔵とは一度戦ってみたかったところだ」

 

 長門の操る外道魔像だけでは力不足だと思ったのか、マダラが加勢に向かうことになった。

 マダラは毒霧で満たされた空間に不用意に近づいていった――かに見えた。

 

「馬鹿め! 迂闊に接近などしおって!」

「ふん、俺がそこまで馬鹿に見えるか? 侮るなよ」

「何ィ!? すり抜けただと――ぐふぅ!」

「さらにもう一発」

「がはっ!」

 

 毒霧をすり抜けて接近したマダラが、半蔵の腹に一発、さらにもう一発と、鋭いパンチを浴びせていく。

 マダラは時空間忍術を駆使し、至近距離から放たれる半蔵の毒霧をものともせず、上手く切り抜けながら攻撃を加えていった。

 その無敵とも思える圧倒的な戦いぶりは、伝説の忍びうちはマダラの名に相応しいものであった。

 

「出来れば俺の力だけで半蔵を仕留めたかったがやむを得まい。デカブツ、すぐに送り返してやるぞ」

「キィイ!」

 

 マダラが半蔵の相手をすることで、長門はイブセとの戦いに集中できるようなった。

 やがて長門はイブセに多大なダメージを負わせ、強制的に帰還させることに成功した。

 

「どうした? 山椒魚の半蔵もこの程度か? とんだ期待外れだな。どうやら頼りの口寄せ獣も長門が倒したようだな。半蔵、お前はもうお終いだ」

「ぐぅ、おのれぇ……」

 

 半蔵はマダラに手傷を負わせられた上、相棒の口寄せ獣を失う格好となった。

 既に多くの手勢を失っており、状況の打開は不可能。半蔵は己の死を悟ったようだった。

 

「ぬぅっ、これまでか……我が理想はついに実現できなかったか」

 

 半蔵は悲しげな表情を一瞬見せるものの、すぐにこちらに殺気をぶつけてきた。

 我々を道連れにして果てようと、最後の自爆攻撃をしかけようとしてきたのだった。

 

「貴様らだけはここで仕留めてくれるわ!」

 

 半蔵は複雑な印を組み始める。

 発動に少し時間がかかるようだったので、私は術が発動する前に一気に仕留めようと思い、紙手裏剣などを放った。

 

――パキンッ。

 

「なっ、堅い!」

 

 だが、奴の身体は紙手裏剣を弾き返していた。

 自爆術の発動までの時間稼ぎの策は用意してあるようだった。

 

「あれは少々不味い。退避するぞ。長門、外道魔像で半蔵の身体を押さえて時間稼ぎしろ。外道魔像なら毒をくらおうが問題ないからな」

「ああ」

 

 半蔵決死の自爆戦術を前に、マダラも少々分が悪いと思ったらしい。長門の外道魔像に時間稼ぎを行わせると、私たちを逃がすべく手を打つことにした。

 

「小娘共、俺の手を握れ」

「やだ」

「死にたいならばそれでいいがな」

「……くっ」

 

 ランはマダラの手を握るのがよほど嫌なのか、物凄いしかめっ面をしていた。緊急事態ということで渋々握っていたが。

 

「小娘共は逃がした。最後はお前だ長門」

「ああ」

 

 そうして外道魔像が覆いかぶさるようにして半蔵をおさえている間に、我々はマダラの作り出した時空間へと退避した。

 

「さらばだ半蔵。一人あの世に向かうんだな」

「ぐがああーっ! おぃううっす! おーっ! うーっす! うがぁあああああ!」

 

 やがて誰もいなくなった空間で、半蔵は毒を周囲に撒き散らしながら狂ったように暴れ、一人果てたようだった。

 雨隠れの英雄の最後にしては誰にも看取られることもない哀れな最後であった。

 

 もっとも、弥彦やみんなの命を奪った者には相応しい末路だとも思ったが。

 

「ようやくみんなの仇が討てたな」

「ええ。でもこれは始まりにすぎないわ」

 

 長門も私も、敵討ちを果たして一安心といったところだった。

 

 でもこれは始まりに過ぎない。弥彦の夢はこれから始まるのだ。

 雨隠れの実権を握り、力を伸ばす。弥彦の夢を二度と誰にも邪魔させない。

 圧倒的な力を手に入れなければいけない。感傷に浸っている暇などなかった。

 

 だというのにあの子は……。

 

「半蔵を討っても、弥彦も皆も戻ってはこないんだね……」

 

 弥彦たちを殺した連中だというのに、ランはそんな連中にも哀れみをかけているようだった。全てのエネルギーを失ってしわしわの物言わぬ骸となった半蔵を見て、感傷に浸っていた。

 

「ええそうよ。でも、これで私たちの鬱憤も少しは晴れたでしょう? 弥彦の仇を討つことができたの。雨隠れも手に入れることができた。弥彦の夢に近づける。ならいいじゃない。何を迷っているの?」

「うん……そうだね」

 

 私たちはこんなところで立ち止まっている暇などないというに、ランはいつまでも敵を殺した感傷に浸っていた。

 そんなランを見ていると、とてもイライラした。

 

(この子はこんな時でもいい子ぶって……思えば昔からそうね……)

 

 ランに対する怒りが湧いてしまう。

 愛する家族に対して抱いてはいけない感情だと思い、私は必死にそれを押し殺した。

 

「大変だよ。砂隠れの増援がこっちに向かってるみたい。指揮するのは羅砂って忍びで、三代目風影の一番弟子みたいだよ」

 

 残党の始末をしていると、ゼツがそう報告をしてきた。

 いつもながらだいぶ距離の離れたところの情報をよく拾ってこれるものだと感心する暇もなかった。

 事態は急を要していた。

 

「そうか。雨隠れ側も無能ばかりではないか。我々の包囲網を突破して砂隠れに援軍を求めた者がいたか」

「マダラ、どうする?」

「今ここで砂隠れ相手に事を構えるのは避けた方がいいだろう。奴らがここに至るまでは一両日はかかる。その間に、至急、計画を進めるしかあるまい」

 

 長門と話していたマダラが策を披露する。

 小細工に関してはマダラに一家言あり、奴の言うとおりにすることになった。

 

「小南、紙分身で半蔵に化けろ。演技力ならお前が一番だろう。半蔵のこともよく知っている」

「ええわかった」

「ゼツ、お前は例の術で雨隠れの忍びに偽装しろ。生き残った者を装い、多数の証言者となれ」

「了解だよ」

「長門は身体を休めていろ。外道魔像によって失われた体力の回復に努めろ。小娘、お前は長門の看病でもしてろ」

「わかった。ここは皆に任せるとしよう」

「小娘じゃない、ランよ。マダラ、アンタはどうすんの?」

「俺は捕虜にした雨隠れの忍びを幻術で操り、クーデターを起こした者として洗脳させよう。そいつらを処分することで、内乱が治まったように里内勢力と砂の連中に見せかける」

「……罪もない人に罪を着せるの?」

「そうだがそれがどうかしたか小娘? 何か文句があるのか小娘?」

「……別に」

 

 マダラの策にランは不服げな様子だったが、私たちは協力して砂隠れの忍びたちが里に到着するまでに偽装工作を行うことになった。クーデターが未遂に終わったように偽装することにした。

 

 そして翌日、救援に来た砂隠れの部隊の長と会うことになった。

 私は半蔵に化けてその相手をすることとなった。

 

「いつもは我等の救援になど来ぬと言うのに、今回はどういった心境の変化かな? 砂隠れの者よ」

「そう棘のある言い方をなさいますな半蔵殿。一国一里制度が根付いてからというもの、形骸化しておりますが、我々と貴方方は同じ風の国の者同士ではありませぬか。お互い助けあうのは道理というもの」

「ふん。先々の大戦では我々の領土がいくら蹂躙されようともそ知らぬ顔をしていたというのにな」

「……それとこれは話が別でございます」

「まあ今回の件に関してはとりあえず礼を言っておこうか。だがご覧の通り、内乱は既に治まっておる。とんだ無駄足となったな。ゆっくり飯でも食って観光でもして帰るがよかろう」

「どうやらそのようですな。ではお言葉に甘え、一晩だけ宿を借りましょう」

「ああ。ごゆるりとな」

 

 そうしてなんとか砂隠れの者たちとの会談を切り抜けることができた。

 無論、相手がどう思ったかは見た目からは計り知れない。

 我々は寝所へと眼を放ち、砂隠れの者たちの真意を探った。

 

「羅砂様、いかが思われまする?」

「我らの所に救援要請に来た者の話と幾らか食い違う点が見られる。そんな簡単に反乱が防げたとは思えん。そして会談で会った半蔵だ。あれは一見すると本物の半蔵に見えるが、どこか違和感を感じる。以前会った半蔵はもっと男臭かったはずだ。あんな女人のように丁寧な男ではない」

「では偽者だと?」

「かもしれん。だが断定はできん。全ては私の勘だ」

 

 上手くいったと思っていたが、向こうにも勘の良い忍びがいたらしい。

 羅砂という忍びは中々の曲者だった。

 

(どう出るかしら……)

 

 我々は事が露見するならば口封じもやむなしという判断で即応態勢を整えていた。

 二晩続けて雨隠れの夜に緊張が走る。再び血の雨が降るかと思われた――しかし。

 

「仮に誰かが成り代わったとしても、それを証明する手立てはない。それに成り代わった者は少なくとも半蔵以上の力を持つ者ということになる。そんな連中と事を構えるのは避けたいところだ。雨隠れといざこざを起こしたところで、我々砂に利はない」

「ではこのまま見逃すと?」

「ああ。我らの任務は内乱の早期鎮圧だ。多国間の要衝にある雨隠れで内乱が長引くようなら戦争を誘発しかねない。ゆえに早期介入して内乱を鎮圧するために我等が派遣されたわけだが、内乱が既に治まっているなら我らがここに留まる必要はない。これ以上、雨隠れに関わる必要もない。このまま明日には引き上げるぞ」

「はっ」

 

 羅砂という忍びは部下の男にそう説明すると、ちらりとこちらを見た。私の放った眼の方を向いたのだ。

 その眼光は鋭く、メッセージが篭められているように思われた。「そういうことだから手を出すなよ」というメッセージが。

 

 砂隠れの救援部隊の長は全てを見通していたのだ。全てを見通した上で、砂隠れに利のある道を選んだ。我々のことを見逃すという方針をとったらしい。

 

 雨隠れは深く関わっても旨みのない土地だ。だから誰も深く関わろうとしない。

 普段はそれが戦争での被害の拡大に繋がっているのだが、今回ばかりはプラスの方向に働いた。皮肉なものだった。

 

 ともあれ、こうして我々は半蔵との戦いに勝利し、雨隠れを手中に収めることができた。

 しばらくは半蔵に成り代わって雨隠れを統治していくことになったのだった。



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ch.10 やめたくなりますよ~暁ぃ(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 どうもホモガキです。今日も“NARUTO~影への道~”の配信やっていきたいと思います。

 

 前回は雨隠れのヒーローが凌辱されたところまででしたね。

 そう言うと完全に意味不明ですが、要は山椒魚の半蔵を討伐して新生暁が雨隠れの実権を手に入れたところまででした。

 

 前回説明した通り、ランちゃんはこれから暁を抜けます。

 このまま暁に残り続けると、小南ちゃんの討伐ルートに入れませんからね。小南ちゃんの敵となって戦うためには、雨隠れからサラダバーする必要があります。交流系トロフィーも全て獲得しましたんで、もう雨隠れに残る理由はありません。

 

 ということでタイミングを見て里抜けすることになるんですが、そのタイミングが重要です。

 タイミングが悪いと偽マダラ(オビト)と戦闘になったりするんですよね。

 

 偽マダラは原作でも裏切り者の小南ちゃんをぶっ殺してましたし、裏切り者に容赦ないです。

 長門君のことも「哀れな自分を慰めたかっただけだ(意味深)」とかボロクソ言ってましたし。仲間であるということを病的なまでに拗らせてるんで、裏切り者は大嫌いみたいですね。まあそれとは別にして、組織抜ける奴を始末するのは情報漏洩を防ぐためには当然と言えば当然とも言えますが。

 

 話を元に戻しますと、里抜けするタイミングが悪いと偽マダラが始末しに来ちゃいますよ、ってことです。

 偽マダラは強いので出来れば戦いたくないところです。今回は小南ちゃんの討伐チャートなので、当然ながらランちゃんの戦闘スペックは対小南ちゃん用にビルドしてますんで、偽マダラとはあんまり相性良くないですしね。

 

 ということで、出来るだけ偽マダラに絡まれないタイミングを狙って里抜けしましょう。それでも運が悪いと接触することになったりするんで、里抜け前にセーブするのは必須です。

 

 では、ちゃんとセーブしてから運命のルーレットを回していきましょう。

 

……。

……。

……。

 

「これから我々は表向きは傭兵集団として勢力を伸ばしていく。岩隠れは良い顧客になるだろう。ゆえに、俺はしばらく岩隠れの情報を集めてくる」

 

 偽マダラが岩隠れの様子を見に行くイベントが発生しましたね。ランダムイベントです。

 良いイベントが発生しました。このイベントが起きると、偽マダラはそれなりの期間雨隠れを留守にするんで、この機会に里抜けすることにしましょう。

 

 自分やめたくなりますよ~、暁ぃ

 

 ということで、暁を抜けます。ランちゃん、暁やめるってよ。

 

「ラン、どこに行くの?」

 

 おっと、里抜けする際にイベントが発生しましたね。

 小南ちゃんに見つかっちゃったようです。好感度低ければ戦闘になったりするんですが、まず大丈夫でしょう。

 

――【考え直す】

――【出て行く】

 

 やはり戦闘にはなりませんでしたね。

 本チャートだと長門君と小南ちゃんの好感度は高くなりますので、二人に見つかっても戦闘になることはありません。

 好感度高いんで引きとめイベントが起きて引きとめられますが、「出て行く」という選択肢を選び続けましょう。

 

 ということで、「出て行く」という選択肢を選びます。

 

――【出て行く】

 

「ラン、私たちを裏切るの?」

 

 また引きとめられましたね。

 だから出て行くって言ってんじゃねえか(棒読み)。こんなんじゃ選択肢になんないんだよ(棒読み)。

 もう一回「出て行く」を選びましょう。

 

――【出て行く】

 

「ラン、考え直して」

 

 やけに引きとめイベントのループが長いっすね。さっさと里抜けさせてくれよな~。頼むよ~。

 

――【出て行く】

 

「……本当に行くの?」

 

 この人、しつこい……。おばさんやめちくり~。

 まあ今回はRTAじゃないんで時間食ってもいいんですけど。もう許せるぞオイ!

 

――【出て行く】

 

「私たち、友達でしょう?」

 

 Be quiet!

 この里ではもはや有益なイベントも…カタルs、カタルシスに至る、逸話も出てこない…ただただ時間を浪費するだけだ。

 ふしだらな女め…出て行く! 出て行くと言っている!

 

――【出て行く】

 

「本当に……お願いだから……」

 

 くどい!

 

――【出て行く】

 

「そう……弥彦を……私たちを裏切るのね。だったら今度会ったら容赦はしない。私たちは敵同士よ」

 

 おっ、そうだな。

 

 これから二人は間違いなく殺し合うことになるはずだ! たぶん!

 それまで小南ちゃんはたくましく生きていてくれ! では雨隠れの諸君っ! サラダバー!!

 

 ということで無事に里抜けできました。

 今回はやけに小南ちゃんの引きとめイベントが長かったっすね。試走の時はそんなことなかったんですけど。

 

 おそらくですが、今回のランちゃんは魅力値高すぎで好感度稼ぎすぎたせいでしょうね。

 あのイベント、「出て行く」を選ぶ度にキャラの好感度が少しずつ下がっていって、一定以下にまでなると引きとめられなくなるって仕様みたいです。だから好感度が高い分、引きとめられ続けたってわけです。

 

 ランちゃんの魅力値が高すぎたことの弊害だったということですね。

 ちょっと時間ロスくらったくらいなのでチャート的には無問題です。関西クレーマー並みにしつこく絡んでくるウザい小南ちゃんという珍しい光景が見れたからまあいいでしょう。

 

 さて、無事里抜けできたというところで、これからの方針を説明しようと思います。

 

 現在のランちゃんは抜け忍で、所属なしの状態です。

 別に抜け忍のままで過ごしてもいいんですが、本チャートでは違う里に再就職することにします。

 その方が暁が犯罪者集団として台頭してきた時にイベントで絡みやすいですからね。安定して討伐することができます。

 

 本チャートでは王道を往く木の葉隠れの里に所属します。

 木の葉の重要人物である自来也先生とは既に接触しててコネがありますから、彼に関するイベントを回収して、木の葉隠れに所属させてもらうことにします。

 

 ということで、これからは世界各地を放浪している自来也を探しに行くことになります。

 ですがその前に、今回に関しましてはやっておきたいことがあります。

 

 いつもは対小南ちゃん用のスキルとして【火遁の才能】か【水遁の才能】を選んでいるので、このまま自来也先生を探して木の葉に直行することになるんですけど、今回は違います。

 今回は【血継限界・沸遁】というスキルがあるので、沸遁に関する特殊な忍術を学んでおきたいところです。

 

 それがあれば後がめっちゃ楽になります。小南ちゃんを倒すのにめっちゃ使える忍術があるんですよね。

 

 ですので、自来也先生に会う前に水の国・霧隠れの里辺りをうろついて関連イベントを回収して目当ての忍術を学んでおくことにします。沸遁の力を十分に伸ばしておいて、来る小南ちゃん戦に十分な備えをしておくということですね。

 

 ということなので、まずは水の国に向かいましょう。

 それからガマのおっさんこと自来也先生と接触して木の葉に向かいます。そういう方針で進めていきます。

 

 木の葉に入ってから沸遁関係のイベント拾うのは面倒ですからね。自由に行動できる抜け忍状態の今がチャンスということです。

 

 さあではこれから婚期を気にするお姉さんのいる国に向かいますよー。

 沸遁関連のイベントでは照美さんとちょろっと会うこともあるので、その際はしっかりスクショ撮っておきましょうね(クソノンケ)。

 

「私、照美メイと言います。よろしくお願いいたします」

 

 照美さんと出会えました。一緒に沸遁の修行をしましょう。

 ではこれから単調な修行風景が続いていくので巻いてお送りしまーす。

 

……。

……。

……。

 

――【沸遁・蒸気暴威】を取得した。

 

 沸遁の特殊忍術関連のイベントを無事回収し、目当ての特殊忍術その他をゲットできました。

 ついでにまだ婚期遅れてない照美さんのスクショもゲットできました。やったぜ。照美さんと一緒に仲良く修行したりして百合百合な光景も見れました。眼福眼福。

 

 ちなみに、蒸気暴威は原作とかだと水遁系の技らしいですが、このゲームだと沸遁の血継限界としてカテゴライズされてますね。

 まあ蒸気ですから沸遁の方がしっくりきますね。

 

 さてこれで小南ちゃんを倒す鍵は手に入れました。

 いつもは初期スキルが【火遁の才能】とかなんで木の葉の里に行っても修行漬けの日々だったりするんですけど、今回はこの特殊忍術をゲットできたので後はもう楽です。

 木の葉の里に行ったら目当てのイベントが起こるまで適当に修行して遊んでればいいだけです。ぶっちゃけ暇なんでぼっちのナルト君の曇り顔でも観察してスクショ撮って遊ぶことにしますかね。

 

 では目当ての特殊忍術もゲットできたことですし、自来也先生を探してそれから木の葉へと向かうことにしましょう。ガマのおっさんに久しぶりに会いに行きましょうね。

 

 はようガマまみれになろうぜ。ああ~待ちきれねえぜ。ガマのおっさん、至急メールくれや。待ってるぜ。

 

 それでは、キリがいいので今回はここまでとします。さいなら~。



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ch.10 やめたくなりますよ~暁ぃ(小南)

 半蔵を討ち、雨隠れを手に入れた我々新生暁は、雨隠れの里を安定的に維持していくべく種々の方策を採った。

 そこで採った一つの方針が、我々とあの子との間に、決定的な亀裂を齎すこととなった。

 

「なんで子供までも殺したの!? なんでよ!?」

 

 ある日、ランはマダラへと激しく突っかかっていった。

 生き残りとなった山椒魚の半蔵の一族を幼子も含めて皆殺しにしたことを聞いて、激しく憤ったのだった。

 

「我々が雨隠れを安定的に統治するためには旧支配者の一族には消えてもらった方が都合がいいからだ」

「だからって! 子供までも殺す必要はないでしょ!」

「今は幼い牙であろうとも将来は立派な牙となる。奪われた者は奪った者への憎しみを忘れない。それがこの世の常だ。大きく成長した牙はいずれ我々へと向くことになるだろう。お前たちが半蔵を殺したようにな。そうならないためにはどうすればいいか、答えは簡単だ。恨みが残らないように殺し尽くす。それが合理的だろう」

「っ!?」

 

 マダラの言うことは、人間性というものをかなぐり捨ててはいるものの、確かに合理的だった。

 

 新生暁は再構築中で未だ不安定な組織だった。そんな不安定な組織を率いて雨隠れを治めるには、確かにそれが一番効率的な方法だった。後々厄介になることが確定している反乱の芽は、事前に摘んでおくに限るからだ。

 我々は弥彦の夢を叶えるためにマダラの言うことを素直に聞くしかなかった。

 

「全ては偉大なる目的のための尊い犠牲だ。小娘が気にすることではない。第一、殺したのはお前ではないだろう。全ての恨みはこの俺が背負う。何の問題もあるまい?」

「アンタって人は! 本当に気持ち悪い! 大嫌い!」

「小娘は感情的になって喚くばかりだな。少しは大人になったらどうだ? いつまで小娘のつもりだ?」

「うっさい! バーカ! キモキモキモ! 超キモい! クソキモマダラ!」

「本当に小娘だな」

 

 ランはマダラに散々捨て台詞を吐くと、肩を怒らせてその場を後にしていった。

 その場はそれで一応収まったものの、二人はその後も度々衝突することになった。

 

「最近の小南ちゃんたち、おかしいよ! あんなキモいマダラの言うことばっか聞いて!」

 

 やがてマダラの方策を黙認する私たちにも、ランの怒りが飛び火していくことになった。

 そして私たちとランの関係も徐々に崩れていくこととなった。

 

「おかしいのは貴方よラン。長門も私も、弥彦の夢を叶えるために一生懸命やってるだけ。貴方は弥彦の夢を叶えたくはないの? 貴方の弥彦への思いはそんなものだったの?」

「弥彦の夢は叶えたいよ! でも弥彦はそんなこときっと望んでないよ!」

「弥彦の夢は世界平和よ。どんな形であれ、それを成し遂げるのが彼に生かされた私たちの使命」

「小南の言う通りだ。弥彦の死によって、俺たちは弥彦の理想主義だけではダメだと悟った。弥彦の死を無駄にしないためにも、現実主義的な方針を取り入れて軌道修正していかなければいけない。そのためにはマダラの力が必要だ」

「二人とも……」

 

 私と長門がどれだけ説得の言葉を重ねても、ランは「弥彦はそんなことを望んでいない」と喚くばかりだった。

 

(なんで、なんでわかってくれないのよラン。弥彦の夢に一番に寄り添うべきの貴方が、なんで!)

 

 ランの隠すことのない剥き出しの感情に触れて、私の心も熱くなっていく。様々な負の感情がふつふつと湧き起こってくる。

 

 普段から感情を抑えつけているので、私の心の奥底には負の感情がマグマ溜まりのように溜まっている。ランの言動によってそれらが刺激されていった。

 

 ランだからこそ、最も弥彦に近かった彼女だからこそ、わかって欲しいと強く思ってしまう。

 自分の中での理想の二人をイメージし、そうであって欲しいと願ってしまう。

 意固地になり、相手の心を自分の思い描く方向に矯正しようと行動してしまう。

 

 昂ぶった感情はやがて危険な領域へと突入する。

 

「何故わからないの? 弥彦に最も近かった貴方がっ、彼に愛された貴方がっ、彼の思いをわからないはずはないでしょっ!?」

 

 言ってはいけない残酷な言葉を吐いてしまう。死んだ人間を利用して生きた人間の心を縛りつけようとしてしまう。

 自分でその道を選ぶならともかく、決して他者へと強要してはいけないというのに。

 

「……ぅっ!?」

 

 私の言葉を受けたランは苦しそうに顔を歪め、そして搾り出すように言葉を繋いだ。

 

「弥彦は……私の知ってる弥彦は……きっとそんなこと望んでないよ……」

「っ!?」

 

 ランの返す言葉は、存外私の心を揺さぶった。

 ランを矯正させるために彼女の心を抉る強い言葉を放ったと思ったら、気づけば私の心が抉られていた。ランから強烈なカウンターをくらっていた。

 

 もっとも、ランはそんなことを言ったつもりは微塵もなかっただろうけど。

 

(私の知っている弥彦。ランの知っている弥彦。ランの、ランだけが知る弥彦――――ナニソレ?)

 

 ランの無自覚な言葉の刃に傷つけられ、私は自分の心の奥底に溜まったマグマを抑えきれなかった。マグマが急速に膨らんでいく。

 

「貴方はいつも我侭ばかり、いい加減にして!」

 

 そして、気がつけば手が出ていた。

 

――パンッ。

 

 降りしきる雨の中、断続的に鳴り響く雨音の中、乾いた音が鳴った。

 私の平手打ちをくらったランは、酷く驚いた様子で呆然としていた。

 長門も驚いたようで言葉もない様子だった。

 

「……ごめんね。きっと変なこと言ったね私」

 

 ランは搾り出すように言うと、地面に落ちた髪飾りを拾うこともなく走り去っていった。

 

(ラン……私は……)

 

 去り際の彼女の目尻には涙が浮かんでいて、それを見た私の背筋は急に冷えていった。

 自分がしでかしてしまったことの大きさを自覚し、罪の意識に苛まれ、ほんのり赤くなった掌を呆然と見つめていた。

 

「小南、いつものお前らしくないぞ。感情的になるなんてな」

「っ!?」

 

 何気なくかけられた長門の言葉に反応し、私の心は再び熱くなってしまう。

 

「いつもの私って何? あの子はいつも感情を素直に出して思うがまま振舞っているのに、何故私はダメなの?」

「え? い、いや、ランが感情をストレートに出すのは昔からだし……」

「あの子は感情をストレートに出していいのに、どうして私はダメなの? どうして? 何故?」

「いや、俺が言いたいのはそういうことでは……」

「じゃあどういうこと?」

「……すまない。全部俺が悪かった。許してくれ」

 

 長門に当り散らすなんて、本当にいつもの私らしくなかった。

 しばらくして冷静になり、すぐに謝罪した。

 

「あの子にも後で謝ってくるわ」

「ああ。そうした方がいい」

 

 その後、私は落ちたランの髪飾りを手にしてランの部屋に謝罪に訪れた。

 ランは赤くなった頬を気にすることもなく笑って許してくれた。

 

(ラン、ごめんなさい。私は貴方を……)

 

 ランは許してくれた。

 けれど私は自分のことが許せなかった。愛する家族を傷つけてしまった自分のことが許せなかった。

 情けなさと罪悪感に押しつぶされ、夜になると一人ベッドの中で静かに泣いた。

 

 しばらくはそんな夜を繰り返した。

 眠れぬ夜を過ごしていたおかげで、真夜中のランの異変にすぐに気づくことができた。

 

(――ラン? こんな夜更けにどこに行くのかしら?)

 

 ある晩、ランが人目を忍ぶように拠点から出て行った。背中には大きなリュックを背負っていて、かなりの大荷物だった。

 

(まさか!?)

 

 それを見た私は胸騒ぎがしてならなかった。すぐに身支度を整えると、彼女の後を追った。

 

(やはり……)

 

 国境近くまで来た時、私は全てを悟った。ランは私たちの元から去ろうとしているのだと。

 

 ほぼ同時刻に紙分身の持つ情報が還元され、彼女の部屋に私と長門宛の置手紙が残されているのを知ったので、それは間違いなかった。

 

「ラン、どこへ行くの?」

「小南ちゃん……やっぱりつけて来てたんだね」

 

 声をかけると、ランは大して驚く様子もなかった。途中で私が追ってきていることに気づいていたのだろう。

 

「私、暁を抜けてこの里を出て行こうと思うんだ」

 

 ランの口から改めて事実を突きつけられて、内心動揺した。

 やはりランは私たちの元から去ろうとしていた。

 今までずっと一緒に暮らしてきた家族なのに何故どうしてと、問わずにはいられなかった。

 

「弥彦を……みんなの夢を裏切るの?」

「ううん、そうじゃないよ。私は私なりの方法で弥彦の夢を追いたいと思ったんだ」

 

 私の問いかけに答え、ランは自分の決意を語り始めた。

 弥彦を裏切るわけではない。自分なりの方法で弥彦の夢を追いたいから里を出て行くと言った。

 

 私が「私たちと一緒に夢を追えばいい」と何度も諭しても、ランは決して首を縦に振らなかった。

 強い意志を持って決めたようだった。私はそれでも納得できず、翻意してくれるように縋るように何度も頼み込んだ。

 

「貴方がそんな決断をしたことに、もしこの間の一件が絡んでいるならもう一度謝るわ。私のことを気が済むまで叩いてくれたっていい。だからもう一度考え直して」

「あのことはもう済んだことだよ。何も気にしてない。関係ないよ」

「じゃあ何故? 私たちのことが嫌いになったの? 友達じゃなかったの? 家族じゃなかったの?」

「小南ちゃんたちのことを嫌いになるわけなんかないよ。何があってもずっと友達で家族だもん。私が大嫌いなのはあのマダラ。アイツの顔を見る度にムカムカする。顔なんて見せてなくて仮面だけどさ。素顔も見せないくせに俺たちは暁の仲間だなんだって、本当にキモい。いつの間にか長門を差し置いてまるで自分が暁のリーダーみたいに振舞ってるし、ホント超キモい」

 

 ランはマダラが心底嫌いなようだった。ランが里を出て行くと決断したことには、マダラの影響が多大にあるようであった。

 

「坊主憎けりゃなんとかでさ、このままだとアイツの言うことを聞く小南ちゃんたちのことも嫌いになっちゃいそうだなって思っちゃったんだ。小南ちゃんに叩かれた時にそう思ったんだよ」

「やっぱりこの間の一件も絡んでいるんじゃない! ねえラン、もう一度謝るからお願い。土下座でも何でもするし、気が済むまで私のことを叩いてくれていい。だから……」

「違うって。小南ちゃんに叩かれたことは、むしろ感謝してるくらいだよ。あれがあったから、私、私たちこのまま一緒にいたらいけないって気づけたんだよ」

 

 ランは「叩いてくれてありがとう。小南ちゃん」と笑顔でそう言った。

 

 皮肉でそう言っているのだと思って私は必死に謝罪を重ねたのだが、どうやら違うらしかった。

 ランは本気でそう思っているらしかった。私に叩かれて気づくことがあって嬉しかったのだとか。

 

「小南ちゃんのおかげで、私、踏ん切りがついたんだ。自来也先生みたいに一人で里の外に出て、それで広い世界を見てみようって決断できたんだよ」

 

 ランは笑顔で自分の夢を語り出した。

 

 自分は雨隠れの里以外の世界を知らない小娘であるから、外の世界を見て視野を広げてみたい。あのマダラに言われっぱなしじゃないくらいの経験を積んで力をつけ、自分なりの道を探ってみたい。それで弥彦の夢を叶えるんだと、そう力強く宣言した。

 

「だから、私はこの里を出て行く。いつか必ず戻って来るけどね」

 

 夜の雨隠れの里は、恐ろしいほどの暗黒に包まれていて寒々しい。

 ランの力強くも美しいその笑顔は、そんな雨隠れの暗闇を吹き飛ばすほどの力を持った輝かしい太陽のように見えた。

 弥彦を惹きつけた太陽のような笑顔。

 

 私はそれをとても眩しいと思うと同時、激しい嫉妬の感情に駆られてしまった。

 好き放題に自分のことだけを語るランのことが許せなくなった。彼女の言葉の全てを否定したくなった。

 

「何よそれ……。じゃあ長門はどうなるの? 弥彦の夢を追って傷つき続けてる長門を放って出ていくっていうの!?」

「長門は長門だよ。長門が決めたことは長門の責任だよ」

「無責任よ! 私たちはいつも一緒って決めたじゃない! 弥彦の夢をみんなで追うって決めたでしょ!? それを忘れたの!?」

 

 私は柄にもなく小娘のようになって叫んで訴えた。

 ランは私の話をじっと聞くと、言い辛そうにしてから口を開いた。

 

「……小南ちゃん。弥彦と長門に依存するのはもうやめなよ」

「っ!?」

「私たちはもう大人だよ。自分のことは自分で決める。そして決めたことは曲げない。それが出来ないなら、悔しいけどマダラの言うように、私たちは小娘ってことになっちゃうよ」

「っ!?」

 

 ランにそう諭され、私は強烈な劣等感に襲われた。

 ランに弥彦を奪われた時――あの時のような暗い感情に囚われる。

 

(小娘……私は小娘……ランより小娘……)

 

 守るべき妹だと思っていたはずの子にいつの間にか大きく追い越されていた。小娘のように諭されてしまった。

 私はランよりも小娘である。肉体的にも精神的にも――認めたくない現実がそこにあった。

 

「なら私は私の道を行く。無責任な貴方とは違って、ちゃんと長門を支えて助ける。それで弥彦の夢を叶える。それが私の道よ。全ての責任を放り出して逃げているのは貴方。弥彦の夢を都合の良い言い訳にして自由気ままに振舞い、弥彦に依存して全ての責任から逃げてるのは貴方の方よ!」

「……そっか。小南ちゃんらしいね」

「馬鹿にしてるの!?」

「馬鹿になんかしてない。優しい小南ちゃんらしい道だなって」

 

 私が自分の決意を語ると、ランはいつものようなヘラヘラとした笑みを浮かべていた。

 

 私はそれが憎くくて仕方なかった。嘲笑の笑みのように見えて仕方なかった。小娘のような私をあざ笑っているかのように思えて仕方なかった。

 

(ランッ、貴方って子はっ!)

 

 周囲の闇に同調するかのように、私の心が黒く染まっていく。そして今までに積もりに積もった黒い感情が噴き出てくる。

 ダメだと思っていても、つい手が出てしまう。

 

――パシッ。

 

 だがランは前のように素直に打たれることなく、私の平手打ちを掌で受け止めたのであった。

 そして悲しげな笑みを浮かべてこう言った。

 

「やっぱり、今の私たちじゃ一緒にいるとダメだね。大好きな小南ちゃんが小南ちゃんじゃなくなっちゃう気がする。私は小南ちゃんが大好きだから本当はずっと一緒にいたいけど、でもそれだと全部ダメになっちゃう気がするから、しばらく距離を置くことにするよ」

「ラン……」

「もう行くね。またね。小南ちゃん」

 

 ランはそう言うと、私の手を放して背を向けたのであった。

 私はランの背に向けて問うた。

 

「ラン。もし私たちの行く道が互いに交差して相容れないとしたらどうするの?」

「そうはならないよ。例え違う道でも、私たちの行き着く先は一緒だもん。弥彦の夢を一緒に叶えるんでしょ?」

「そうとは限らないわ。例え目標が同じでも手段が変われば目標自体が持つ意味も変わってくる。森羅万象全ての事象は常に動き続けているから、私と貴方、互いに相容れない道を辿る可能性もある。二度と戻れない道を辿るかもしれない。その時はどうするの?」

「じゃあその時は、私は自分の信じる道を行くことにするよ。自分の決めた道は曲げない。それが自来也先生の教えだから」

「わかった。その時は私も容赦はしない。友達だと思わない。敵だと思うから」

「うん。できればそうはならないことを祈るけどね」

 

 ランは困ったように笑って肩を竦めると、それから気持ちを切り替えたかのように飛び切りの笑顔を見せた。

 そして、「それじゃまたね。小南ちゃん」と大きな声で叫ぶと、こちらを振り返ることもなく駆けていったのだった。

 

(ラン……貴方は全てを放り捨てて私たちを置いていくのね。自由の翼をはためかせて、好き勝手に振舞って。許せない……)

 

 私は雨に打たれるのも気にせず、彼女の背が点になり消えていくまで、ずっと眺めていたのであった。

 その目に憎しみの種火を宿らせながら。



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ch.11 霧隠れ? 行かないよぉ、今日は木の葉行く(ホモガキ)

新着見たら名もなき忍道が更新されてて「ファッ!?やったぜ。」ってなりました
実は本作、名もなき忍道の小南討伐トロコンが始まらず気が狂った作者の妄想ノートから始まったんですよね
メメイ兄貴の一年間に及ぶ焦らしプレイの産物というわけです

ともあれ、名もなき忍道復活おめでとうございます!

P.S
登録したばっかなので10評価応援できない悲しみ…


 もう始まってる!

 

 どーもホモガキでーす。今日も“NARUTO~影への道~”の配信をやっていきますよー。

 

 前回、小南ちゃんたちと別れて、ついに暁を抜けましたね。

 その後抜け忍となったランちゃんは水の国にお邪魔して、沸遁関連の特殊忍術の修行を行いました。それで【沸遁・蒸気暴威】やその他の忍術を習得できました。

 

 前回はそこまででした。そこから続きをやっていきましょう。

 

 では水の国にはもう用はないので、さっさとサラダバーして自来也先生を探しに行きましょう。

 

「ねえランさん。貴方、霧隠れにいらっしゃらないかしら?」

 

 水の国から出ようとしてるとイベントが発生しました。

 照美さん関連のイベントですね。いわゆる「霧隠れの里への勧誘イベント」ってやつです。

 

 特殊忍術の関連イベントをこなす過程で照美さんと知り合って仲良くなったんで、それで照美さんから霧隠れへのお誘いを頂けました。

 里への勧誘イベントは、在野の忍び状態で犯罪者ではない場合、よく発生するイベントです。特定キャラと仲良くなるとわりとよく見かけられます。

 

 照美さんからのせっかくのお誘いですが、断りましょう。

 

 誰が血霧の里になんか行くかってんです。俺は木の葉行く(揺るがぬ決意)

 

「そう……残念だわ。またお会いしましょう」

 

 素敵なお姉さんからのお誘いでしたが断ってやりました。ガマのおっさんの誘いの方が魅力的ですからね。おっさん、はようメールくれや。待ってるぜ。

 

 ということで、これから各国各里を転々として自来也先生を探していきます。

 

 運が悪いと永久に出会えないんで、ここはセーブ必須です。各国をある程度回って出会えなかったらロードしてやり直し、って感じで進めていきます。

 

 それでは運命のルーレット回していきましょう。

 

……。

……。

……。

 

「ラン、お主、ランか!?」

 

 何度かロードを繰り返すことしばらく。ようやく自来也先生と出会えました。

 

 おっさん、待ちくたびれたぜ。はよう木の葉まみれになろうぜ。

 

「そうか。弥彦が死んだか……」

 

 自来也先生との再会イベントで弥彦の死を伝えておきます。

 

「忍びの世界は残酷だの……」

 

 自来也先生、弟子の死を知って悲しんでいるようですね。悲しいなぁ……(諸行無常)。

 基本陽気なガマのおっさんですが、珍しくもアンニュイな姿が見れました。

 

 では自来也先生との再会イベントを引き寄せましたんで、これからはずっと自来也先生に付いて行って関連イベントを回収していき、それから木の葉へと向かいます。

 ガマのおっさんの変態ストーカーとしてくっついていきますよー。ガマのおっさんのストーカーしてると忍術修行が効率良くできるんで、中々関連イベント引けなくても無駄ではないです。

 

……。

……。

……。

 

「なにっ!? それは真か!?」

「間違いないゲロ。二人は死んだゲロ!」

 

 自来也先生と旅をしていると、新たなイベントが発生しました。

 雨隠れで異変が起こり長門たちが死んだ、というニュースを聞くことになります。自来也先生の口寄せ動物である蛙君がニュースを伝えてきてくれました。

 

「そうか。弥彦に引き続き長門と小南までも……」

「嘘……二人がそんな……」

 

 自来也先生はランちゃん経由で弥彦の死を知っているので、こういう会話内容になったみたいですね。ゲーム進めている時の状況でイベントの会話はまちまちです。今回はこうなったようです。

 

「忍び世界とは残酷だの……」

「うぅ……」

 

 長門君たちの死を知り、自来也先生もランちゃんもショックを受けているようですね。長門たちと接触する機会が多かったので当然でしょう。

 

 実は長門と小南が死んだというのはフェイクニュースなんですが、直接確かめる術もないので自来也先生たちは信じることになります。

 

 蛙君め、ガセ情報掴まされやがって。何が間違いないゲロだこの野郎。

 

 ホモ蛙は嘘つき

 

 ところでこれからの長門君たちはというと、自らの死を偽装し、地下に潜って本格的に犯罪活動を始めていくことになります。後ろ暗いことをやってどんどん悪堕ちしていっちゃうんですねぇ。もう弥彦の死体も弄ってペインにしちゃってるかもしれません。

 

 小南ちゃん、完全に堕天使になっちゃいますねぇ。怖すぎィ!

 

 仲間の遺体を改造するとか赤砂のサソリ以上にサイコですよね。

 サソリは自分を除けば基本他人の死体を人傀儡にしてるだけですし、まだそっちの方が理解できるというものです。

 

 まあ余計な話は置いておいて、再びゲームを進めていきましょう。

 

 ガマのおっさんのストーカーを続けて、勧誘イベントを引き寄せていきます。

 

「ラン、行くところがないなら木の葉に来るかの?」

 

 ようやく目当てのイベントが引けました。

 自来也先生の「木の葉の里への勧誘イベント」ですね。このイベントを待っていました。

 

 勿論、二つ返事でホイホイついて行きましょう。はよう木の葉まみれになろうぜ。待ちきれないんじゃ~。

 

「そうか。では猿飛先生に引き合わせてやろう」

 

 自来也先生のコネで三代目火影と会います。

 

 おっすお願いしまーす。木の葉の里に移住させてください。何でもしますから!

 

「四代目亡き今、里は疲弊しておる。優秀な忍びは一人でも欲しかったところだ。自来也の紹介なら問題あるまい。歓迎しよう。ようこそ木の葉の里へ」

 

 サルのおっさんに認められて、無事に木の葉の里の住人になることができました。

 ランちゃんの魅力値高いですし、仕官して断られることはまずありません。

 

 ノンケのサルのおっさんは喜んでランちゃんの仕官を認めてくれました。

 ダンゾウは「流れ者の女など信用できるか。どうせ裏切る」とか言って渋い顔してましたけど。ダンゾウはホモ。

 

 さて、自来也先生のコネで無事に木の葉の里に就職することができました。

 これからは木の葉の里で修行したり任務をこなしたりして過ごしながら、小南ちゃんとの運命の決戦を待ちます。

 

 どのタイミングで戦うかと言いますと、正史イベントだとほぼ確実に小南ちゃんと接触できるので、それに乗っかることを狙って動いていきます。

 やがて暁が台頭してきて、その時に自来也先生が雨隠れの里に潜入するイベントが発生しますので、そのイベントに絡んで戦うことにします。

 

 正史イベントだと流れが読みやすいので、それを狙うのはまあ基本ですよね。余計なことしなきゃほぼ正史通りにゲームが進んでいくんで、その流れに乗っかればいいだけですね。

 

 これからうちはのクーデターとかのイベントが起こりますけど、全部無視していきます。下手に絡むと正史から外れちゃうんでね。

 特にうちは一族抹殺イベントには絡まないようにしましょう。イタチとか偽マダラとか面倒臭い相手と戦うことになりますんでね。

 

 これから正史に影響与えない適当な任務をこなして過ごしていくことになります。

 いつもなら里に入ってからは修行漬け任務漬けの日々を送って戦闘スキルを徹底的に極めていくんですけど、今回のランちゃんは才能に恵まれてるんで、そんなことしなくても大丈夫です。

 特殊忍術の【沸遁・蒸気暴威】を覚えているので、対小南ちゃん戦では十分すぎるほど優位に立てます。起爆札に対して火と水と油と爆発は天敵ですんでね。

 

 ということで修行はサボってもいいんで、木の葉では好きなことをやることにしましょう。

 具体的に何をするかといいますと、ワシは木の葉メンバーだとシズネちゃんが大好きなノンケなんで、シズネちゃんと絡みに行きます(自己都合その一)。

 あとナルトの曇り顔が大好きなホモなんで、その観察もしたいですね(自己都合その二)。

 

 ということで、木の葉ではシズネちゃんとナルト君。その二人をメインに交流していこうと思います。

 

 まずはシズネちゃんですね。シズネちゃんに会うため、蛞蝓おばさんのところに行きましょう。

 

 蛞蝓おばさんは定期的に木の葉へと帰って来ているのでその時を狙います。いつ帰って来ているかは里の住人の話を聞いたりしてればわかります。

 

「お前、あの時の娘か? 大きくなったなぁ。そうか木の葉の里の者になったのか」

 

 蛞蝓おばさんと会って医療忍術を勉強させて欲しいとお願いします。ガチでは修行しません。あくまでシズネちゃんとの交流目的です。

 

 医療を学ぶ動機がくっそ不純ですがまあいいでしょう(医者の卵のクズ)

 

 スキル【医療忍術の才能】があるんで、交流メインで適当にやっててもそれなりに成長できそうですけどね。

 

「――急患だと?」

 

 お、シズネちゃんたちと会っているとイベントが発生しました。

 手術が必要な人を助けるランダムイベントですね。最高のイベントが発生しました。

 

「シズネ、悪いが頼む」

「わかりました」

 

 この頃の蛞蝓おばさんは血液恐怖症おばさんと化してますから、医者なのに手術が出来ません。なので毎回代わりに弟子のシズネちゃんが執刀するんですね。そのシーンが最高なんです。

 

「これから手術を行います」

 

――ファサッ。

 

 手術する際、シズネちゃんは大胆にも着物の下裾を肌蹴て太腿に取り付けてあるメスを取り出すんですよね。脚部が丸見えです。

 

 手術前の男性患者を興奮させて血圧を上げさせる医者のクズですが、ノンケ的には最高です。最高のサービスショットです。

 

 ああ~、シズネちゃんの生脚、たまらねえぜ(クソノンケ)

 

 タイミング逃さずしっかりスクショしておきましょう。

 

 シズネちゃんの太腿最高なんじゃあ^~(クソノンケ)挟まれたいんじゃあ^~(クソノンケ)ああ^~(クソノンケ)

 

 とまあ、そんな感じでクソノンケとなってシズネちゃんと交流していきます。

 

 そろそろホモに飢えてきたんで、続いてナルトにでも会いにいきましょうか。

 ナルトはいつでも里にいるんで、シズネちゃんと比べると交流しやすいですね。

 

「ねえあの子ほら。例の……」

「ああ九尾の」

「しっ、それは禁句よ」

 

 ナルトとの遭遇イベントが発生しました。

 アカデミー入ったばかりの頃でしょうか。シカマルたちともあんまり絡んでないようです。それでナルト君、友達いなくてぼっちでブランコに乗ってます。おまけに周囲のマダムからは陰口叩かれてます。

 

「いい気味だわ」

「あんなのが忍びになったら大変よ」

「さっさとアカデミーを辞めればいいのに」

 

 くっそ哀れですね。

 

 哀れ。人柱力に選ばれた子の末路。

 

「……」

 

 ナルト君、すっげえイイ曇り顔して地面向いてますね。キィキィと空しく鳴るブランコがまたいい味だしてます。最高の光景です。

 

「……」

 

 最高すぎます。遠目からスクショするだけじゃ全然満足できないので、もっと近くまで行きましょう。接近すると人の気配を感じて顔を上げてくれるので、ナルト君の曇り顔が良く見えますからね。

 

「姉ちゃん、何か用かよ……。姉ちゃんも俺を苛めるのか?」

 

 おほっ、齢六歳かそこらにしてこの台詞。ああ~たまらねえぜ。

 

 ガキなのに完全に死んだ目してますよ。早朝電車でドナドナされてる社畜サラリーマンのおっさんよりも酷い目してます。世の中の全てに絶望してるって顔ですねぇ。

 

 おじさんはねぇ、ナルト君みたいな可愛いねぇ、子の曇らせ顔が大好きなんだよ!

 

 ということでたまらないので、膝蹴りして首ロックして家に連れ帰りましょう。チャカポコチャカポコ(BGM)。

 

「姉ちゃん!? いきなり何するんだってばよ!?」

 

 いいから来いよオラァ!

 

 ひでを拉致した虐待おじさんの気持ちがなんとなくわかります。こんな可愛い顔した子がいたら家に連れて帰りたくもなります(ひでは全然可愛くないけど)。

 

「いきなり強引だってばよ姉ちゃん……でもサンキュな(ポツリ)」

 

 ナルト君を保護して家で匿っちゃいました。

 これでナルト関連のイベントが強制進行されてしまうんですが、まあ今回は才能に恵まれてて修行パートが端折れるんで無問題です。

 

 適当に任務こなしながらナルトとの交流を行っていきましょう。ナルトだけではなくてシズネちゃんとの交流も忘れずにこなしていきます。

 

 ナルトの傍にいるといつも曇り顔が見れるんで最高ですね。勿論、曇り顔だけじゃなくて笑顔も素敵です。

 

 笑顔は後々曇り顔を引き立たせてくれる最高のスパイスですから

 

 しばらくナルト君の観察をして過ごしましょう。

 

「……こんな傷、別に大したことないってばよ。すぐに治るし」

 

 今日のナルト君はボコボコにされて帰ってきたようです。

 

 身体の傷は癒えても心の傷までは癒せないんだぜ少年。心の傷は後々トラウマとなって出ますよ~確実に。ウィヒ!

 

「ランの姉ちゃん、今日は初めての友達、出来たかもしんねえ。シカマルって奴なんだけど……」

 

 今日のナルト君は友達が出来たことを報告してくれました。

 

 シカマルはやっぱ良い奴ですね。人間の鑑ですよ。里中に嫌われてる面倒な同級生も見捨てずに配慮してくれてます。将来の火影の相談役不可避。

 

「ランよ。話がある」

 

 ナルト君を観察しながら過ごしていると、ある日、難しい顔をした三代目から呼び出しをくらってしまいました。

 

 これはあれですね。いたいけな少年を拉致監禁したことがバレて責められてしまうのですね。うちは警務部に引き渡されてしまうんでしょうか。ゲームオーバーになってしまうんでしょうか。

 

 とまあそれは冗談で、そういうわけではありません。これはあのイベントですね。

 

「ナルトの世話を引き受けてくれんか? いつもあやつの面倒を見てくれておるようだしのぉ」

 

 いわゆる「ナルトの世話人イベント」ですね。木の葉で幼少期ナルトに絡みまくってるとこのイベントが見れます。

 

 「あっ、そうだランさん、一緒にナルト育ててくれないかな? お金タダでいいから」みたいな感じで三代目にナルトの世話を頼まれます。アカデミー卒業辺りまで頼まれるんですね。

 

 ナルトの近くにいれば曇り顔がいっぱい見れるんで勿論オーケーしておきます。

 

――【引き受ける】

 

「そうか引き受けてくれるか。すまんのぉ。これでワシも少し肩の荷がおりたわい」

 

 三代目がホッとした表情を見せています。

 

 四代目に託されたんだからアンタが責任持ってちゃんと育てろよ、と思わないでもないですが、まあいいでしょう。三代目も色々と忙しいでしょうしね。里の面倒な汚れ仕事は新参者のランちゃんが進んで引き受けましょう。

 

「今日からランの姉ちゃんが俺の世話してくれんのか? へへ、何か嬉しいってばよ!」

 

 世話人になったことを報告すると、ナルト君がめっちゃ喜んでますね。

 ナイス笑顔です。流石少年漫画の主人公。

 

 おじさんを興奮させてくれるねぇ、好きだよそういう顔。その笑顔、曇らせたい!

 

「へへ、最近良いことばっかで嬉しいってばよ。俺ってば、ついに運が巡ってきたかもしんねえ! この調子で火影にまで上り詰めてやるってばよ!」

 

 シカマルという友達も出来て、最近では曇り顔よりも笑顔が多くなってきたナルト君ですが、しばらくするとまた激しく曇ります。

 

 超気になる男の子のサスケが一族抹殺されて孤高のぼっちになりますからね。サスケ君、イタチの兄さんにトラウマ植え付けられて脳が破壊されちゃいます。

 

 それでサスケが川原で一人で難しい顔してるのとかを目撃して、ナルトはめっちゃ心を痛めるわけですね。まるで自分のことのように捉えて曇ります。それでサスケに度々ちょっかいかけに行くんですけど、邪険に追い払われるだけなので、どうしたらいいかわからなくて悩んで曇ります。しばらくするとまた元の元気少年に戻りますけどね。

 

「今日みたいな日がずっと続けばいいのになぁ。そうしたら人生最高だってばよ」

 

 ナルト君が呑気なこと言ってますが人生そんなに甘くありません。ここは呪われた忍び世界ですから(オビト並感)。あらゆるイベントが主人公の君を全力で曇らせにくるんやで。

 

 さてここからはと言いますと、淡々と任務こなして修行しつつ、ナルトとシズネと交流していくだけです。

 

 ナルトの曇り顔とシズネちゃんの可愛い顔が延々と見れるのはワシ得ですが、視聴者兄貴姉貴には退屈すぎると思いますので、一気に時を送っていきます。原作関連イベントの良い部分だけ切り取ってダイジェスト的に送っていこうと思います。

 

 ですが、今日はキリがいいのでここまでとしましょう。

 

 では皆さん、それではまた~。



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ch.11 霧隠れ? 行かないよぉ、今日は木の葉行く(小南)

飛段の加入時期がおかしいですがお兄さん許して


「そうかランがな……」

 

 あの子が里を出て行った翌日。当然ながら長門もその事実を知ることとなる。

 ずっと一緒に暮らしてきただけに、少なくないショックを受けているようであった。

 

「やはり力ずくでも引きとめるべきだったかしら……」

「いやこれでいいのさ。アイツはアイツだ。俺は俺。自分の信じた道を行くだけだ。それよりもお前はどうするんだ小南?」

「どういう意味?」

「ランと一緒に行かなくて良かったのか? お前とアイツ、ずっと一緒だったんだろう。これからも一緒でなくていいのか?」

 

 長門が問いかけてきたが、それは愚問だった。

 私はあの子のような道はとらない。そう強く決めていた。

 

「私は私の道を行く。この里に残り、長門を助けて弥彦の夢を追う。あの子みたいに無責任な真似は絶対にしない。全ての責任を放り投げて好き勝手に出て行くなんて、そんな小娘みたいな真似は絶対にしないから」

「それでいいのか?」

「いいも何もそうすると決めたもの。長門は不満なの? 私じゃなくてあの子が残った方が良かった?」

「いや、そういうことじゃなくてだな……」

「じゃあどういうこと?」

「すまない。助かるよ小南。お前が残ってくれたおかげで、俺は弥彦の夢を追い続けられる。一人では力不足を感じていたところだ。お前がいてくれて感謝する」

「ええ。私も長門の助けになれて嬉しいわ。一緒に弥彦の夢を追い続けましょう」

「ああ……」

 

 こうして私と長門は雨隠れに残り、一緒に弥彦の夢を追い続けることになった。

 

 あの子のような無責任なことはしない。弥彦の夢のために身を削り続ける長門を献身的に支え続けるのが私の使命だと思い、必死に頑張ることにした。

 

(あの子は今頃どこで何をしているのかしら?)

 

 あの子のことなんてもう関係ない。そう思ってもなかなか割り切れないものだ。離れれば離れるほど、私はランのことを意識するようになっていった。

 

 以前はずっと一緒にいたからあの子が影で何をしていようがあまり気にならなかった。仮に気になっても直接聞けばいいだけのことだった。だがいなくなった今となっては違った。

 何もわからない、知りたいと思っても聞けない、というのはとてももどかしいことであった。

 

「ランは今は水の国にいるみたいだよ~。何か修行してるみたい。そこで知り合った女の子と意気投合しちゃったみたいで、『私たちずっと友達だね! メイちゃん!』とか言って楽しそうに抱き合って笑いあってたよ~」

「そう……」

 

 あの子の情報はゼツが時より齎してくれた。

 

 あの子はまず水の国に向かったようだった。()の地に長いこと留まり、そこで知り合った女の子と友情を育み、ずっと修行しているらしかった。

 よほどその女の子とやらが気に入ったと思えた。

 

(あの子は会ったばかりの子にもそういった言葉を投げかけるのね。私に対する言葉と変わらないことを。そういうことなのね。私たちの関係も所詮はその程度の関係だったということなのね)

 

 修行なら雨隠れでもできる。昔みたいに私と修行すればいい。

 ランの修行相手にならいくらでもなってあげるのに。朝から晩まで毎日付き合ってあげてもいいのに。

 忍術の腕を磨いた今の私ならランと対等に戦えるはずなのに。なんで会ったばかりの見ず知らずの子に。何で何で――そう思うとやるせなかった。

 

「ランは今は水の国を出て、自来也と一緒に旅してるみたいだよ~。各地の名物の美味しいものとか食べて温泉入って結構楽しんでるみたい。この前なんて、自来也と酒飲んで肩組んで楽しそうに歌ってたよ~」

「そう……」

 

 あれほど大言を吐いて里を出て行って、最初にやることが修行、そしてその次が自来也先生と旅行するというのは解せなかった。

 

 結局のところ、世界を見て自分の道を決めるだの何だの言っていたことは全部方便だったのだ。

 弥彦の夢を捨てて、柵を捨てて、自由に生きるための方便だったとしか思えない。

 

(弥彦に一番に愛されたくせに、弥彦の夢を捨てるなんて! 長門がこんなに苦しんでるのに!)

 

 心底腹が立った。

 長門が弥彦の夢を叶えるために毎日のように外道魔像に黒い棒を突き込まれて喘ぎ苦しんでいるというのに、あの子は温泉に入ってのんびり寛いでいると思うと、憎しみすら湧いてきた。

 

(あの子のことなんて今更どうでもいいけど、何故か無性にイライラするわ。今日も雨だし、明日も雨! 毎日雨ばかりだし! 雨隠れは雨ばかり! ああもう!)

 

 再構築した組織が拡大していくにつれ、昔のように忙しくなっていった。ただ昔のように組織は上手く回らなかった。

 昔は弥彦もランもいた。だが今は長門と私だけだった。自称マダラとゼツは信用できなくて全てを任せられない。

 

 頼りの長門はというと、輪廻眼の力を十全に操るための修行や休息などで手一杯。必然と私の仕事量が増えていった。

 私以上に苦しんでいる長門に愚痴は吐けなかった。

 

 ストレス解消の手段が必要だった。

 

(長門を置いて外に遊びになど行けないし、酒を飲むのは駄目ね。前に半蔵たちにしてやられた前轍を踏むわけにはいかない。弥彦の夢のためにも遊んでなんていられない。修行して気分転換を図るしかないわね)

 

 私はストレスが限界まで達すると、大量の起爆札を抱え、人気のない湖でそれを爆発させまくることで気分転換を図った。

 

――ドゴォオオオオン。バゴォオオオオン。ボガァアアアアン。

 

 良い修行になったし、天まで届くくらいの爆発を見ていると憂鬱な気分がスカっとするような気がした。

 湖を割るような連続した爆発はまるで芸術品のようで素晴らしいものだった。嫌なことが全部忘れられる気がした。

 

「今日は大漁ね。お鍋にしましょうか。長門、喜んでくれるかしら?」

 

 爆発の衝撃でプカプカと浮いてきた魚を持って帰れば夕飯のオカズにもなって一石二鳥だった。

 無駄な殺生は嫌いなので、浮かんできた魚は一匹残らず回収した。

 

(――ハッ!? もしかしてっ!?)

 

 湖にプカプカ浮いている魚を回収している時のことだ。良いアイディアが閃いたのは、そんな時のことだった。

 

(空間を埋め尽くすほどの起爆札があれば、この魚のようにマダラを()れる!?)

 

 マダラは油断ならない相手だ。

 いつ裏切るかわかったものではないので、私はいつでもマダラを殺せるように対策を練っていた。

 ただその対策が思うように思いつかなかった。

 

 全ての攻撃が通り抜ける時空間忍術は反則的に強い。長門の外道魔像の攻撃すらすり抜けるであろう相手にどうやって戦ったらいいか。忍びの神と謳われる千手柱間と互角に戦いあった相手を自称する輩にどう戦ったらいいのか。

 

 考えれば考えるほど悩んだが、修行&ストレス解消&食料確保のために爆発させまくった起爆札が私に重大なヒントをくれた。

 

(半蔵の毒霧よりももっと密に空間を制圧するような爆発ならあるいは……いけるわね)

 

 無敵の時空間忍術といっても、常に無敵状態でいられるわけではない。忍術である限り、少なからず隙がある。その隙を狙えばいい。

 何度も脳内でシミュレーションを重ねていると、起爆札で空間を制圧し続ければマダラを()れる、という確信が芽生えてきた。

 

(そのためには大量の起爆札を用意する必要があるわね。千いやもっと。億いやもっともっと。千億、二千億――六千億。六千億! これね!)

 

 六千億。その数字にピンと来るものを感じた私は、その日以来、六千億枚の起爆札を集めることにしたのだった。

 

(今日のノルマは千枚ね。部下の子たちにもやらせましょう。部下の子たちは暇そうだし二千枚でいいわね)

 

 暇さえあれば起爆札を自作し、あるいは組織の金を使って買い集めた。

 それから私を心酔している部下たちにも起爆札の製作と回収を命じた。

 部下たちは実習と称してアカデミーの子たちに起爆札の製作をさせたりして効率的に作業を進めてくれた。

 

(まだまだ全然足りないわ。もっと集めないと)

 

 暇さえあれば起爆札を集めていく日々。とにもかくにも、この忍び世界にある起爆札を全て収集する勢いで集めていった。

 そうでもしなければ六千億枚という途方もない数字の起爆札は集まらなかった。

 

(でもこんなに必要かしら? もっと少なくていいかも……)

 

 ある時ふとそんなことを思った。六千億枚は流石に必要ないかもしれないと。コストを考えると、そこまでする価値があるのかと思えてきた。

 

(いえ、相手はあのマダラよ。油断できない)

 

 だが相手はあのマダラであると考えると、そうも思えなかった。

 本物のマダラであるとは断定できないが、偽者だという確証もない。最悪を想定し、本物であると仮定しておけば安心だろう。

 

 伝説の忍びを相手にするならば、念入りにオーバーキルするくらいでなければいけない。そう考えると、やはり六千億枚の起爆札がどうしても必要だった。

 

(ダメね。妥協するなんて心が弱くなってる証。ちゃんと集めないと。どんな手段を使ってもね)

 

 一度決めたことは曲げない。どんなに苦しくても曲げない。それが自来也先生の教え。それができないのは小娘。

 

 ランの言った言葉が頭の中で過ぎった。あの子だけには負けない。負けるわけにはいかない戦いがそこにあった。

 

(何年かかっても六千億枚集めて見せるわ。私は一度決めたことはやり通す。あの子と違って小娘じゃないもの)

 

 そうして、私は組織の活動に励みつつ、起爆札の収集作業を進めていった。

 暇そうにしている部下を総動員して起爆札を集めていくことにした。

 

「聞いたかお前ら! 起爆札を上納した月間ランキングトップは表彰されて、天使様が直々に感謝の花束を手渡してくれるらしいぞ!」

「トップテンは天使様お手製の押し花の栞も貰えるらしい! しかも感謝のお手紙付きだぞ!」

「マジか!?」

「うおおおお! 起爆札集めるぞぉおお! 俺が天使様から花束貰うんだぁあ!」

「いや俺だ!」

「違う俺だ!」

「天使様からの花束欲しぃいい!」

 

 ご褒美の人参をぶら下げて部下たちのやる気を上手く引き出しながら、起爆札の回収を行っていった。

 それでも六千億枚というのは果てしない道のりだった。

 

(全然お金が足りないわね。もっと稼がないとダメね。暇そうにしてるアイツらに任せましょう)

 

 起爆札の収集だけに組織の金を使うわけにはいかない。起爆札以外の装備品、部下の給料、その他諸々。組織の維持には色々と金が必要だ。

 

 もっと起爆札の収集にお金をかけるとすると、さらなるお金が必要だった。支出を増やしたいなら収入を増やすしかない。

 私は暁に新しく入った二人を上手く活用することにした。

 

「俺に暁の金庫番を任せるだと?」

「ええ。ビンゴブックに乗ってる賞金首を仕留めてお金を稼いできて欲しいの」

「何故だ? 新参者の俺に一部とはいえ組織の金の管理を任せるなど、どうかしているぞ。俺が金を持ち逃げするとは考えないのか?」

「初代火影と勇敢にも戦い生き延びたという伝説の忍びである貴方を信頼してのお願いなのだけど、私の見込み違いだったかしら? 貴方は我々の信頼を裏切るの?」

「見くびるな。俺は里を裏切ったが、それは里が俺を裏切ったからだ。俺から積極的に里を裏切ったわけではない」

「では貴方は我々を裏切らないわね?」

「愚問だ。暁が俺を裏切らない限り、俺は暁を裏切りはせん」

「では金庫番の仕事をお願いしてもいいかしら?」

「ふん。面倒ごとは御免だが、まあ若い女にそこまで言って頼まれたなら仕方ない。断るなど男が廃るというものだ。ヤサを借りている礼もある。いいだろう。その任、受けてやる。その代わり、仕留めた奴の中で良い心臓があれば駄賃代わりに貰っていくぞ」

「ええそれは構わないわ。それじゃあ金庫番就任にあわせて貴方の新しい相方をつけるわね」

「俺の新しい相方か。今度はすぐに死ななければいいがな。わかった。組織のためにそいつと金稼ぎをしてこようではないか。さてさて、どんな奴が来るのだろうな。ふふ」

 

 老人で意固地なところのある角都のプライドを上手いこと刺激して煽てて、彼を組織の金集めの仕事へと回した。

 

 角都は性格に難があるものの、根は真面目だ。決して金を持ち逃げしないという確信があった。

 その根は真面目な角都に、実力はあるが馬鹿で性格に問題がありすぎて使い道のなかった飛段という少年を押し付けて、金稼ぎの任務に回すことにした。

 

 厄介者を有効利用しつつ、組織の金を稼げるという一挙両得の計だった。我ながら上手くやったものだ。

 

 そんなことをして必死に組織を回す日々を送っていると、ある日、長門が深刻そうな顔をしてやって来た。

 

「小南、相談がある」

「何かしら?」

「弥彦のことだ」

 

 話は弥彦についてのことだった。

 長門が悩むことなんて弥彦についてのことしかないからなんとなく察しはついていた。

 

「弥彦の遺体なんだが、防腐措置ももう限界に来ている」

「そう……それでどうするの?」

「外道の力を借りようと思う。弥彦の亡骸を弄繰り回すことになって心苦しいが、今のままよりはマシだ。それに俺は弥彦こそが暁のリーダーだと考えている。弥彦を形だけでも復活させ、再び組織のリーダーとして立てたい」

「弥彦が再び私たちのリーダーになる……素敵ね。私は賛成よ」

「そうか。じゃあそのように取り計らおう」

 

 こうして、私たちは一つの大きな決断をした。弥彦の遺体を外道の力を借りて改造し、人形として復活させることを。

 

 最愛の弥彦の死体すら利用する。もはや後には戻れない外道の道を突き進むことになる。

 けど構わなかった。弥彦の肉体が朽ち果てていくのは彼の夢が朽ち果てていくようで見ていられなかった。

 

 私たちはどんなことをしてでも弥彦の夢を叶えたい。そう思ったから外道の道を突き進むことにした。

 

――ブシュッ、ドグシャッ、ズグシャッ、グシュッ、ザクシュッ。

 

「ぐぅうっ、弥彦っ、生き返るのだぁっ、俺の生命力を吸い上げ、再び動き出せ! 俺がお前の魂となるぞ! 弥彦ぉおお!」

 

 弥彦の身体に受信機となる大量の黒い棒を差し込んで埋める。長門の身体には送信機となる大量の黒い棒を差し込んで埋める。

 それは見るからに痛々しい作業だった。二人の身体が外道な力に犯されていく。

 

(痛そう……長門……弥彦……)

 

 生きている長門はともかくとして、死んでいる弥彦に痛みなどないだろう。

 だがそれでも私は痛そうだと感じてしまった。

 弥彦が痛みを感じている。長門が、そして弥彦が苦しんでいる。見ていられなかった。

 

――チクッ。チクッ。

 

「小南? お前、何をやっている?」

「私も同じ痛みを共有するわ」

「それは……ピアス穴か?」

「ええ」

 

 黙って見ていられなかった私は、その場でとっさに顎と臍にピアス穴を開けることを決めた。

 同じ痛みを共有するためだ。弥彦と長門だけに痛みを背負わせるわけにはいかないと思った。

 

 小さなピアス穴を作る痛みなんて長門たちの痛みに比べればほんの小さな痛みかもしれないが、それでもやらないよりはマシだと思った。

 

「そうか。同じ痛みか。世界の人間が全てお前と同じように他人の痛みを理解してくれるようなら争いごとなんてなくなるだろうにな」

「そうね。痛みを知らない、知ろうともしない人には痛みを知らしめる必要があるかもしれないわ」

「ああ。所詮人は己の知るところしか理解できない。痛みを味わったことのない人間は他人の痛みなどわからないだろう。世界には痛みが必要だ」

「ねえ、生まれ変わった弥彦を中心として運用する六道の傀儡の名前だけど、ペイン――なんてどうかしら?」

「ペイン(痛み)か。良い名だな。そうしよう」

 

 こうして私たちは同じ痛みを共有し、弥彦(ペイン)を復活させた。

 

 弥彦の復活は本当に嬉しかった。形だけとはいえ、あの弥彦が動いて喋っている。

 愛する弥彦が私たちの元に戻ってきたみたいで嬉しかった。

 

 代わりにあの子はいなくなってしまったけれど。

 でもそれは仕方ない。弥彦の痛みを忘れてしまったあの子なんてもうどうでもよかった。

 

(どうせあの子は今頃は自来也先生と相変わらず呑気な旅してるんでしょうね。温泉に入って各地の美味しい地魚を堪能しながら美味しいお酒を呑んで、それで食後には舌がとろけるようなスイーツにまで手を伸ばしてるんだわ。旅先で知り合った子たちと呑み語らいながら楽しい夜を過ごしているんでしょうね。見目麗しいあの子のことだから行く先々でチヤホヤされてるのよきっと。人生楽しんで楽しみまくってるのよ。私たちのことなんて忘れてね)

 

 そう思うと憎しみしかなかった。

 

「弥彦。あの子のことなんて忘れて、私と長門と三人で夢を追い続けましょうね。私たちはずっと一緒よ」

「……」

「返事して弥彦」

「ああそうだな……」

 

 ペインが完成したその頃、組織の基盤は再び整いつつあった。

 我々暁は最強の傭兵集団として、各地の争いごとに本格的に武力介入していくことになった。

 

 未だ争い絶えぬ世界。戦地の痛みなど知らぬとばかりに大国は小競り合いを続けてばかりいる。

 戦争を指揮する者たちは戦場の痛みなど知らない。高楼の眺めとばかりに、末端の者たちの痛みを無視し続けている。

 

 そんな連中に我々暁が痛みを教えてやろう。

 圧倒的な武力で世界に痛みを知らしめる。そしてその力で世界に均衡を齎す。

 私たちがその嫌われ役を買ってやろうではないかと、そう思った。

 

「小南。俺はペイン六体の完成と共に表舞台から姿を消そうと思うがお前はどうする?」

「それは何故?」

 

 長門は神(ペイン)襲名を機に長門としての自分を捨て、己の死を偽装して姿を隠すことにしたようだった。

 疑問に思った私はその理由を問うた。

 

「暁は再び大きくなり始めている。過去の俺たちとの繋がりは消しておいた方がいい。足がついて不味いことになりかねん。外には俺たちを知る自来也もランもいることだしな」

「そうね。では私も過去の自分を捨てるわ」

「いいのか?」

「いいって何が?」

「ランとの繋がりを絶つことになるかもしれん。お前はそれでもいいのか?」

「あの子なんてもう関係ないもの。どうでもいいわ。里を出て行ったきり一回も帰って来ない。そんな人のことを気にしてもしょうがないでしょ?」

「そうか。お前がそう言うなら俺は構わないが」

 

 長門と私は己の死を偽装することにした。

 各地で偽情報を流し、自来也先生の口寄せ蛙の一体にもその情報を流した。

 

「大変だゲロ! 自来也の弟子の二人が死んじゃったゲロ! 早く自来也に伝えないといけないゲロ! トップニュースだゲロ!」

 

 これで確実に自来也先生に私たちの死が伝わる。

 つまり、自来也先生と一緒にいるあの子の耳にも伝わるだろう。

 

(これで帰って来るわよね? 長門と私が死んだって聞いたんだから、当然よね?)

 

 私たちが死んだと聞けば、あの子は弔いに来るか死の真相を確かめに雨隠れにやって来ると思った。

 

 最近は縁が薄くなってしまったといえど、私たちは幼い頃よりずっと一緒に育ってきた仲間だ。血よりも濃い絆で結ばれた仲間だったはずだ。

 

 それほど繋がりの濃くない人間たちでさえ、縁の者が死んだら死を弔いに訪れるのだ。

 だからあの子も当然やって来ると思った。そう思ったのだが――。

 

(なんで帰って来ないのよ……ランの馬鹿)

 

 いくら待ってもあの子が雨隠れを訪れることはなかった。

 やがてゼツの口から衝撃的な事実を知らされることとなった。

 

「あのランって子だけど、今は木の葉にいるみたいだね。自来也の紹介で正式に木の葉に移住したみたいだよ。もうここには帰って来ないだろうね~」

「そう……」

 

 私たちの死を伝え聞いても弔いにすら来ない。

 所詮、あの子にとって私たちの存在などその程度のものだったのだ。私たちが死んだと聞いてこれ幸いとばかりに木の葉へと移住を決めるなんて、そうとしか思えなかった。

 

(弥彦の夢のことなんてとっくに忘れてるのね。なんて子なの……弥彦に愛されたくせに。恩知らず! 許せない!)

 

 弥彦の夢などとっくに忘れ自分の人生の楽しみしか考えていないとしか思えないランに対し、私は未だかつてない憎しみの感情を抱いた。

 よりによって最大の大国である木の葉に寝返ったのだ。私たちの雨隠れを散々蹂躙した木の葉に、長門の両親を殺した木の葉にだ。

 

(許せない。絶対に……)

 

 あの子を殺せると思ったのは、この時が初めてだった。それからというもの、私の中でのあの子に対する憎しみは急速に膨らんでいった。

 

「弥彦、いやペイン。私は貴方を裏切ったあの子に神の裁きを下すわ。死の天使としていずれ必ず裁きを下す。いいわね?」

「……」

「ペイン、返事して。あの子は貴方に愛されながら貴方を裏切った大罪人よ。殺さなきゃダメでしょ? 神の鉄槌を下すべきでしょ?」

「ああそうだな……」

 

 私はあの子に復讐を果たすと決めた。

 あの子が木の葉の里にいる限り、必ずチャンスが巡ってくると思った。その時のために入念に準備をしておくことにした。

 

 あの子の用いる沸遁は厄介だ。火遁と水遁は私の用いる紙の天敵である。

 それに以前よりも腕を上げている今じゃ、あの子は水や霧のようになって自由自在に動けるはず。

 攻撃を当て辛いという点では、マダラにも匹敵するかもしれないと思った。

 

(これはマダラとは別に追加で六千億枚の起爆札を集める必要があるわね……)

 

 こうして、私はあの子を確実に殺すために六千億枚の起爆札を追加で集めることにしたのだった。

 

 マダラとラン対策用の起爆札、合わせて一兆二千億枚。それを集めるには莫大な金がいる。

 暁の子達、特に角都と飛段には、より一層資金集めに励んでもらうことになった。




小南が起爆札六千億枚をどうやって集めたかは諸説ありますが、本作では自来也先生譲りのど根性で無理やり集める感じです
ランちゃん分追加で一兆ニ千億枚分w


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ch.12 木の葉にぃ、すげえお似合いのホモカップル、いるらしいっすよ?(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 どうもホモガキでーす。では今日も“NARUTO~影への道~”の配信をやっていきたいと思います。

 

 前回はランちゃんが木の葉に移住したところまででしたね。

 シズネちゃんと知り合ったり、可愛いナルト君をつい出来心で拉致監禁しちゃたり――とまあ、そんなことをしてました。

 

 これからしばらくは原作のストーリーが進んでいくのを黙って見ているだけです。原作イベントに大きく関わっちゃうとチャートが変わっちゃいますんでね。

 

 原作ストーリーが変わらないように過ごしましょう。

 適当に任務こなして戦闘スキルを磨きながら、シズネちゃんとラブラブな交流して、ナルト君の保護者としてしっかりと曇り顔の観察をして過ごしていきます。

 

 それじゃ、いいところのシーンだけ流して後は巻いてお伝えします。

 

……。

……。

……。

 

「おい聞いたか? うちは一族がほぼ全滅したらしいぞ!」

「嘘だろ……誰がやったんだ?」

「それがあの木の葉始まって以来の天才のうちはイタチの仕業らしい」

「同族殺しの大犯罪者か。おっかねえな」

 

 どうやらうちは抹殺事件が発生したようですね。里中その噂で持ちきりです。

 

 抹殺事件の前段階として、うちはがクーデターを企んでいるという不穏な噂のイベントやシスイの眼のイベントなどが発生しましたが、全部スルーしたんで原作通りうちは一族は抹殺されました。

 

 許せサスケ、許せイタチ、許せその他諸々。うちはイベントに関わるとチャート的に碌なことがないんや。

 

 イタチのお兄さん許して。うちはに関わるとストーリー壊れちゃぁぅ↑

 

「イタチィ……アンタだけは許さねぇ……」

 

 うちは一族が抹殺されたことでサスケが激しく曇ります。曇るってレベルではないですね。闇に囚われます。憎しみの感情に支配されていきます。

 

 そんなサスケを見て、ナルトもつられて曇ります。

 

「やっぱ声かけときゃよかったな……」

 

 ランちゃんの家に帰って来たナルト君ですが、激しく沈んでいます。アカデミーでのサスケの様子を見て、滅茶苦茶心配しているようですね。

 

 声かけたいけど本当に辛い時は逆に誰にも声かけて欲しくなくてそっとしておいて欲しいって気持ちもわかるし、もうどうしたらいいかわかんないって感じですね。

 

 お前乙女かよって感じですが、ナルトは歴とした男の子です。少年漫画の男主人公です。

 でもサスケの姿を追い続けるナルトはどう見ても乙女ですけどね。やっぱりホモじゃないか!

 

「ランの姉ちゃん、俺ってばどうしたらいいんだろう?」

 

 ナルト君に尋ねられます。乙女ナルトからの恋の相談ですね。

 

 これはもう積極的に行けとしか言えません。

 気になる相手には自分から積極的にアタックしていかないとですから。大胆な告白は女の子の特権ですから。「まずうちはさぁ、惨状なんだけど、泣いてかない?」って言えばいいんです。

 

「そっか。そんじゃ明日は声かけてみようかな。アドバイスありがとな姉ちゃん」

 

 うちは一族が死んでくれたおかげで、しばらくはナルト君の曇り顔をたっぷりと観察できそうです。ついでにナルサス関連のホモ臭いストーリーも拝めます。ああ~たまらねえぜ。

 

 しっかりスクショしておきましょう。思い出ですからね。

 

……。

……。

……。

 

「ランの姉ちゃん! 俺ってば下忍になれたってばよ!」

 

 ナルト君が嬉しそうに額宛を見せてくれます。

 どうやら無事に下忍になれたようですね。ミズキ先生との戦いを済ませた後のようです。

 

 イルカ先生との感動のシーンですが、そのイベントはスルーしたんで見てません。ちょうどその時にシズネちゃんが里に来てたんでそっちと交流してましたんでね。

 

「そっか。俺ももう一人前の忍びだもんな。寂しいけど仕方ないってばよ。姉ちゃん、今まで本当にありがとな!」

 

 下忍になるということで、ランちゃんの「ナルトの世話人」という役目もようやくお役御免です。

 ナルトが寂しそうにしつつも、最大の笑顔を見せてくれます。

 

 おじさんのこと興奮させてくれるねぇ、好きだよそういう顔。その笑顔、曇らせたい!

 

 さてナルトが下忍になったということは、ようやく原作ストーリーが始まるということですね。

 つまり、もうすぐナルトがサスケとファーストキスを済ませる時期が近づいているということです。ナルサス的に重大イベントです。

 

 当日はアカデミー関連のミッションでも受けて、その様子を見に行きましょう。

 ナルト君の初キス、ちゃんとスクショしておかないとですからね。

 

「ああ貴方がナルトの……。一応俺があの子の担当上忍ってことになってます」

 

 当日アカデミーに行くと、カカシ先生と遭遇しました。初接触なので挨拶やら何やら済ませた後、隠し部屋から生徒たちの様子を伺わせてもらえることになりました。

 

 この隠し部屋は絶好の覗きポイントなんですよね。スクショするタイミングを逃さないようにしましょうね。

 

「サスケ君! そんな奴やっちゃって!」

「ナルトなんてボコボコにしてやって!」

 

 ナルトが机の上にウンコポーズしながら座って、サスケにメンチ切ります。

 サスケも負けず嫌いなんで自分からは絶対に逃げません。メンチきりあって、二人の顔が近づきます。周囲の女子たちがそれを囃し立てます。

 

 そんな時、話に夢中だったモブ野郎がタイミング悪くも肘打ちしてナルトのケツを押してしまいます。

 

「マジかよ! あ、悪ぃ」

 

――ぶちゅう。

 

 モブ君、ナイスでーす(レ)

 

 ナルト君の初キス、しっかりスクショできました。よっしゃ、配信してネットにばら撒くぞこの野郎。

 

「何やってんだあいつら……」

 

 様子を伺っていたカカシ先生が呆れた様子で呟いてます。マスクのせいでほとんど顔が見えませんが、口調でわかります。

 「俺、あのクソ生意気なホモガキたちの担当上忍になるのか……(困惑)」みたいな感じですね。

 

 さて、ナルトの初キスが拝めたのでアカデミーにはもう用はありません。さっさとサラダバーしましょう。

 今日はシズネちゃんが里に来てますからね。任務を終わらせて彼女と交流しましょう。

 

……。

……。

……。

 

「カカシ先生の試験をクリアして下忍になったのはいいけど、もう毎日毎日しょうもない任務ばっかで嫌になるってばよ!」

 

 里の中でナルト君と出会いましたが、レベルの低い任務に対して不満タラタラといった様子ですね。そろそろ原作の波の国編が始まりそうですね。

 

 ではストーリーイベントにちょっと関わって、再不斬と白のホモカップルの死亡フラグを叩き折りましょう。

 

 お前うちは関連の原作イベントはスルーしたのにあの二人は助けるのかよぉ、と思われるかもしれませんが、まあ再不斬と白の二人は原作死亡キャラの中ではわりと片手間で助けられる部類のキャラなんでね。戦闘になって白が死ぬ前にガトーの悪事を暴いてしまえばいいだけですから。

 

 二人を生かしたところで後々のイベントに影響は少ないです。

 せいぜい水月君が首切り包丁もらえなくて可哀想になるくらいです。あとカブト兄貴の穢土転生する対象が減るくらいですかね。

 各地を巡って死体掘りのガチブラック労働に従事するカブト兄貴的には、作業量が減ってむしろ有難いかもしれないです。ブラック労働に従事するカブト兄貴を救ってあげましょう。

 

 ということで、暁のイベントが始まるまでの暇つぶしとして二人を助けるとしましょう。

 白は貴重な男の娘ですからね。サクラちゃんよりも可愛い男の娘を殺すのは勿体ないです。男の娘は生かして愛でなければ。

 

 では事前に関連ミッションを回収し、ガトー関連の悪事を暴くミッションを発生させておきましょう。そのミッションを受注し、ナルトたちと合流します。

 

「ランの姉ちゃんも一緒に来んのか!? 一緒の任務、嬉しいってばよ!」

 

 ナルトたち第七班に同行して波の国に向かいます。サスケとサクラとは初顔合わせです。

 

 ちなみにランちゃん、それなりに任務こなしてるんで特別上忍の立場にいます。沸遁が使えて戦闘能力高いですし、一応医療忍術も使えますしね。

 

 サスケとサクラちゃん、「この人が特別上忍だと……?(困惑)」みたいな顔してますね。ただの美人の天然姉ちゃんにしか見えないからね。仕方ないね。

 

「こんなメンバーで本当に大丈夫かのぉ? 女子供ばかりで超不安だのぉ」

 

 橋職人のおっさんが失礼なこと言ってますね。嘘ついて依頼受けてもらってるくせにね。ホモは嘘つき。

 

「ランの姉ちゃん、スゲーってばよ!」

 

 途中で出会ったモブ忍びを瞬殺して任務続行します。

 イベント設定上能力値にマイナス補正がかかってるだらしない先生に任せてると時間かかって面倒ですからね。

 

「嘘ついてて超スマンかった! 波の国を助けてくれ! どうかこの通りじゃ!」

 

 途中でタズナのおっさんの嘘がバレて改心するというイベントがあります。土下座して頼み込むおっさん。もう許せるぞオイ!

 

「任務……続行だってばよ!」

 

 ということで任務続行で波の国に行きます。

 

 タズナのおっさんの家では、イナリとかいうホモ臭い名前の子の観察も忘れないようにしましょう。

 

「父ちゃん……うぅ……何で死んだんだよぉ……」

 

 イナリが曇ってるやん! イナリの曇り顔が見たくてこの任務参加したの!

 

 イナリ君を適当に慰めつつ、おっさんの家での居候生活開始です。

 

 ナルトたちが原作よろしく木登り修行に勤しみ、だらしない先生が写輪眼の使いすぎで寝て休んでいる間、ランちゃんはガトーのアジトへと乗り込んでガトー関連のイベントを回収しておきます。

 再不斬&白との決戦前にガトーの裏切りの情報を掴んでおきます。それを白に伝えておきましょう。ナルトと白が偶然出会うイベントがあるので、そこに介入して伝えましょう。

 

……。

……。

……。

 

「君には大切な人がいますか? 人は大切な何かを守りたいと思った時に、本当に強くなれるものなんです」

 

 白が再不斬への愛をナルトに告白するという原作名シーンが繰り広げられます。

 花畑での会話とかメルヘンですねー。少年漫画とは思えません。片方ガチ女装してますし。

 

「それは俺もよくわかってるってばよ!」

 

 白の問いに笑顔で答えるナルト。

 ナルトはサスケのためならチョウジの嫁に顔面変形するくらいボコボコにされようがお構いなしで、本当に強くなれますからね。当然わかっています。

 

 わかってんだよ(オビト並感)

 

 このままホモ同士の会話をずっと観察していたいところですが、適当なところでお邪魔します。

 白にガトーの裏切りの情報を伝えておきましょう。再不斬と白の生存フラグを打ち立てます。

 

「貴方は……そんな……これって……」

 

 ガトーの裏切りの事実を知り、白は少しうろたえています。こちらに正体が完全にバレているということにも驚いているようですね。

 

 俺知ってるんですよお~。ガトーが君たちを裏切ろうとしていることも、君が可愛い男の娘だってことも全部ね(ねっとりヴォイス)

 

「……感謝します。お名前を伺っても?」

 

 名前は……ナオキです。

 

「ありがとうランさん。それからナルト君も」

 

 白が去っていきます。愛する再不斬の元に戻ってこの情報を伝えに行きます。

 

 結局のところ、再不斬は「敵の話など信用できるか」みたいな感じで戦いになるんですけど、これで一応生存フラグは打ち立てられました。

 ではあとは波の国編の決戦イベントが始まるのを待ちましょう。

 

……。

……。

……。

 

「なんでだよ! ランの姉ちゃんの話を聞いてなかったのかよ!」

「お前らの話など信用できねえ! 同じ里の者すら信じられねえんだ、木の葉のお前らの言うことなど信じられるか!」

 

 再不斬&白との決戦が始まります。

 ここでは、すぐに二人を倒さずにだらだらと時間稼ぎして戦います。

 

 白はナルサスコンビに任せて、ランちゃんはカカシ先生と一緒に再不斬と戦います。

 ほっとくとカカシ先生が千鳥(雷切)使って再不斬を仕留めようとするんでね。そうなると原作と同じように白が庇って死んじゃうんで、それを妨害してやめさせます。

 

「雷切っ!」

 

 カカシ先生が雷切(千鳥)を発動したら、前に立って遊びましょう。

 

「ランっ!? 何を!?」

 

 カカシ先生、やめロッテ! リンのこと思い出してやめロッテ!

 

 そうやって時間を稼ぎます。一定時間経つとガトーが裏切りを始めます。それで生存ルート確定です。

 

「ちっ、再不斬の奴め。まだしぶとく生きておったのか! だが全員弱っている今がチャンスだ! 者共、かかれぇい!」

 

 早漏したガトーのおっさんたちが襲撃してきます。

 潜入ミッションしてガトー関連イベントをこなしていたおかげです。そうでなければガトーのおっさんは早漏になりません。

 

「ガトーの奴め、やはり裏切ったのか!?」

 

 再不斬が驚いています。

 だから裏切るって言ってんじゃねえか(棒読み)。そんなんじゃ忍びとして甘いよ(棒読み)。

 

 裏切りを理解した再不斬たちと共闘して、ガトーたちを滅ぼします。ザコ狩りで経験値がウマウマです。

 

「お前たちに一つ、大きな借りができたな。この借りは必ず返す。うずまきナルト、お前はいずれでかい忍びになるかもな」

「ランさんナルト君、それから皆さん。またお会いしましょう」

 

 敵だったはずの再不斬と白と和解し、友誼を育むことができました。

 原作では悲しすぎる結末だった波の国編ですが、大団円で終了ですね。再不斬と白の死亡フラグを叩き折れました。

 

 これにて波の国編終わり! 閉廷! 以上! 皆解散!



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ch.12 木の葉にぃ、すげえお似合いのホモカップル、いるらしいっすよ?(小南)

 あの子を殺すと決めてから幾星霜の月日が流れる。

 その間、私は暁の幹部としてひたすら起爆札を集める仕事を続けていた。

 勿論、他の仕事もしていたけれど。

 

「ご苦労様。よく頑張ってくれたわね。この調子で頑張って。これはお礼よ」

「はい! ありがとうございます! 天使様!」

 

 起爆札の上納数月間ランキング上位の人たちに賞品を渡して労いの言葉をかける。感謝のお手紙と特製の押し花の栞もプレゼントする。

 

(こんなものでやる気を出してくれるなら安いものね……)

 

 あの子と一緒にいるとあまり感じることがなかったのだが、私の容姿はかなり優れているらしい。

 あの子と離れて暮らしていると、それを感じることが多くなった。

 

「天使様、今日もお美しいぜぇ」

「くっそー、俺も天使様からの感謝のお手紙欲しかったぁ。あと千枚で俺も表彰されたのに!」

「お互い、来月は表彰されるように頑張ろうぜ?」

「ああ!」

 

 弥彦以外の男に好かれても意味はないのだけれど、目的を叶えるために自身の容姿が使えるなら使うまでだ。

 雨隠れの統治を恙無く行うために自身の容姿を利用して「天使」という偶像を生み出したように、私は起爆札の収集においても自身の見た目を最大限に活用することにした。

 

「おめでとう。今回は貴方がナンバーワンよ。特別にこれをあげるわ」

「ありがとうございます!」

「これからも暁のために尽くしてね。期待しているわ」

「はい!」

 

 起爆札上納数トップの子には、感謝のお手紙と押し花とは別に、特製の紙の薔薇の花束もプレゼントしてあげる。その上で握手をしてあげる。それを部下全員の前で見せる。

 

「ちくしょう!」

「羨ましい!」

「またあいつがトップかよ!」

「俺も天使様に花束貰いたい! 握手してもらいたい!」

「俺も天使様に手ぇ、握ってもらいたい! 特別にお声がけしてもらいたい!」

 

 皆の前で皆が信奉する偶像から施しを受けるというのは、男たちの功名心をやたらそそるらしい。

 部下の男共は競って起爆札を集めてくれた。この程度のことで頑張ってくれるなら本当に安いものだった。

 

(角都も面倒な飛段の子守をしながら資金集め頑張ってくれているようだし、今度お中元でも贈っておきましょう。老人は旧いしきたりに則ると凄い喜ぶから)

 

 多方面に配慮しながら組織を回す。そうして弥彦の夢のため、暁で必死に働く日々。暇さえあれば起爆札を集め続ける。

 

 そんな忙しい毎日を過ごしていても、暇になるとあの子のことばかりが頭に浮かんだ。

 あの子のことなんてもうどうでもいいと思っていたはずなのだけど、どうしても浮かんでしまう。

 今あの子は木の葉の里で何をしているのか。気になって仕方がない。

 

 気になって夜も眠れなくなった私は、ゼツに聞いてみることにした。

 

「あのランって子だけど、今は木の葉で子育てしてるみたいだねぇ。頑張って子育てしてるみたいだよ~」

「何ですって!?」

 

 ゼツの口から齎されたのは衝撃的すぎる事実であった。ランに子供ができたというのだ。

 

(ランに子供ランに子供ランに子供子供子供子供子供――そんなの嘘よ!)

 

 ランが弥彦以外の人とそういう関係に至ったなんて信じられなかった。

 完全に弥彦のことなんてもうどうでもよくなって、自分の幸せだけを追求しているとしか思えなかった。

 

(許せない! 弥彦の夢を捨てて弥彦の愛を捨てて、自分の欲望に走るなんて! どこぞの馬の骨とも知らない男に走るなんて!)

 

 ランが弥彦を裏切って幸せな家庭を築いているという事実が許せなかった。

 結婚、妊娠、子育てという一般的な女性の価値観でいう幸せを謳歌しているということが許せなかった。

 

(私も長門も、全てを捨てて弥彦の夢のために頑張っているというのに!)

 

 二十代も半ばを迎えアラサーという年齢に差し掛かり、私も女なので幸せな結婚という単語が頭の中に過ぎったこともある。

 だが弥彦の夢のため、暁の夢のため、そんなことしてる暇なんてないと自分に言い聞かせてきた。

 弥彦に生かされた私がそんな幸せを感じていいはずもなかったし、そもそも弥彦以外とそんな関係になりたくなどなかった。

 

 なのにあの子は自分勝手に幸せを謳歌しているらしかった。

 弥彦に愛されたくせに、弥彦に生かされた命だというのに、弥彦のことなんてもう完全に忘れているとしか思えなかった。

 

 そう思うと、憎しみしか湧いてこなかった。

 

「どういうことなの!? 相手は誰なの!? 誰の子なの!? まさか自来也先生じゃないでしょうね!?」

「ええっとねぇ、何か違うみたいだよ。相手はいないみたい」

「何ですって!? 未婚の子ってこと!? ランを弄んでぇ、その相手の男、殺してやる!」

「いや違うよ。なんか里の偉い子の養育を押しつけられてるみたい。自分で生んだ子じゃないみたいだよ」

「ああ……そういうことなのね」

 

 ゼツから真相を聞かされて安堵した。

 ランは仕事として子守りをしているだけだったらしい。

 

(いえ、予行練習という可能性もあるわね。他に誰かいい人がいるのかも……許せない!)

 

 引き続きランの監視が必要だと思った私は、定期的にランの報告を上げるようにゼツにお願いをした。

 そうして木の葉の里でのランの行動は、おおよそ私の耳に届くことになった。

 

「ランは相変わらず子育てしながら、日々一生懸命に任務こなしてるみたい。それで大変だった任務の後は、仲間と打ち上げで焼肉に行ってるみたいだよ。焼肉Qってお店。それでデザートにいつもアイスを頼んでるよ。自分へのご褒美だ、って言って。二種類のアイスをトッピングしているよ。お友達と色んな味をシェアして楽しんでるみたい」

「仲間と打ち上げで焼肉……デザートにはアイス……二種類トッピングつき……色んな味をシェア……楽しそうね」

「僕たちも打ち上げする? 僕は食べ物いらないから見てるだけだけど」

「そうね……いや、やめておきましょう」

 

 ある日いつものようにランの報告を受けていると、ゼツが我々暁のメンバーで打ち上げをしないかと提案してきた。

 暁幹部たちの親睦度を高めるためには良い案かと思ったが、すぐにダメだと判断した。

 

 まず長門が外道魔像と一体化した身体となっており、打ち上げ会場に移動できないので参加できない。長門を一人ぼっちにして私だけ打ち上げに参加して楽しむわけにはいかない。

 

 私たちの拠点でパーティーを開けば長門も参加できるが、私たちの拠点に他の連中を寄せるのは絶対に避けたいところである。いつ裏切るかわからない連中に手の内を見せるのはよろしくない。だから打ち上げ案はボツだ。

 

 さらに言うならば、仮に打ち上げに誘ったところで、ほとんどの連中は参加しないだろう。

 

 最近結成したうちはイタチと干柿鬼鮫のコンビは「自分たちのことは構うな」という鬱々としたオーラを常に周囲に放っている。仮に食事会に誘ったところで、絶対に断るに決まっている。

 

 サソリも同様だ。

 元々「俺に構うな」という鬱々としたオーラを出している上、今のサソリは自分の身体を改造して人傀儡になり、飲食排泄不要の身体となっている。

 食べられなくなった人間を食事に誘うなど嫌がらせでしかない。

 

 マダラも同様である。

 サソリやゼツと同じく食事が不要な身体となっているようなので、誘ったら「何の冗談だ小娘。冗談もほどほどにしろ小娘」と言って断るに決まっている。

 

 大蛇丸も同様だ。

 きっと「何の冗談かしら? そんなもの行かないわ。私は研究で忙しいの」と言って断るに決まっている。

 大蛇丸が打ち上げに参加するなど、幻術にでもかからなければ、そんなことは起こらないだろう。

 

 大蛇丸が焼肉店でビールジョッキ片手に移動する光景など、あり得ないことだ。六道仙人がこの世に再び現れるくらい、あり得ない話だ。

 

 誘って来るとすれば、飛段とデイダラだろうか。賑やかな場が好きなあの二人は来るだろう。

 

 あと角都も来るかもしれない。

 角都は一見来なさそうにも見えるが、あの人はケチな老人なので、会の費用を経費で落とすと言えば損をしたくないから来るに違いない。

 

 加えて言うならば、年長の自分が参加しなければ下に示しがつかないとか、そんな感じの老人特有のプライドを拗らせているので、嫌々ながらも参加するかもしれない。

 

(もし打ち上げを開くとなると、参加するのは飛段、デイダラ、角都、ゼツ、私……地獄ね)

 

 想像すると地獄すぎる。

 暁の問題児二人と気難しい老人と薄気味悪いアロエ野郎との食事会なんて最悪だ。

 

 きっと飛段とデイダラは周りの迷惑も考えずに騒ぎ、そんな二人の若者を見た角都は癇癪を起こすに違いない。

 飛段もデイダラも老人の注意を素直に聞くような性格じゃないから、話は拗れて拗れるだろう。

 下手したら店で乱闘騒ぎを起こすかもしれない。ゼツはそんな彼らを止めずにニヤニヤと見ているだけ――。

 

 結論。暁メンバーで打ち上げなど、やらない方がマシである。

 打ち上げなんて開いたら、喧嘩になって余計仲が悪くなるに決まっている。やらない方が良好な人間関係を保てる可能性が高い。

 

 ということで、暁幹部を集めた打ち上げの計画は自然と消滅することになった。

 

 我々闇に生きる者たちが馴れ合うなど笑止千万。闇を背負い孤高に生きるのが我ら暁メンバーなのである。

 

「そっか。まあ僕は食べられないからどうでもいいんだけど。皆の観察できないのは残念かな」

「じゃあ引き続きランの報告をよろしく。最優先事項よ」

「了解だよ。大国木の葉の情報は逐一仕入れる必要あるし、ついでにランの情報も調べてくるとするよ」

 

 ゼツには引き続きランの報告をお願いし、それから別れた。

 

(我々暁に馴れ合いは不要。よって打ち上げはなし――と言っても、個人的な息抜きは必要ね。ランの話を聞くと無性にイライラするし。どうせ今日も打ち上げで焼肉に行ってるんでしょうね! それともすき焼きかしらね!)

 

 孤高に生きる者とて時には息抜きは必要である。毎日毎日起爆札を集める生活を送っていると息が詰まる。ランのことを考えているとイライラして仕方がない。ストレス解消が必要だ。

 

――ドゴォオオオン。バゴォオオオン。ドガァアアアン。

 

「今日も大漁ね。焼き肉パーティーならぬ焼き魚パーティーをやりましょうか」

 

 ランが木の葉で好き勝手楽しんでいるのを恨めしく思った私は、長門と二人で魚介類の鉄板焼きをすることにしたのであった。

 ささやかな対抗心だった。

 

「長門、喜んでくれるかしら? 最近ずっと篭りっきりだったものね」

 

 起爆札の爆発実験の副産物として手に入れた沢山の魚介類。

 それらを抱え飛び立つと、私は長門のいる部屋へと向かったのであった。



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ch.13 大蛇丸さん許して! 三代目死んじゃう!(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 どうも皆さんホモガキです。今回も“NARUTO~影への道~”の配信をやっていきたいと思います。

 

 前回は原作ストーリーで言うところの波の国編が終わったところまででしたね。

 

 原作だと再不斬と白の二人は死んでしまいますが、ランちゃんが介入したことで二人の死亡フラグを叩き折ることができました。二人を生かしたとしても、チャートに大きな影響はないので大丈夫です。

 

 では波の国編が終わったところからスタートします。

 波の国編が終わってしばらくすると、ナルトたちの中忍試験が始まります。いわゆる中忍試験編の始まりですね。

 

「ランの姉ちゃん、俺ってば、中忍になれるように頑張ってくるってばよ!」

 

 ナルト君が中忍試験に挑みます。会場に行って応援してあげましょう。

 

木の葉隠れの里のうずまきナルトくんへ

最後の夏 絶対中忍試験優勝だよ

頑張ってね 応援行くからね  みお

 

 中忍試験の途中で大蛇丸が木の葉崩しを仕掛けてきますが、原作通りに進むように余計なことはしません。ナルトたちの活躍を会場の席で悠々と見学でもしていましょう。砂の忍びが襲ってきたら、適当に戦って経験値を稼いでおきます。

 

 あーもう中忍試験めちゃくちゃだよ。

 

……。

……。

……。

 

「三代目様……」

「うぅ……」

「雨か。今日は天も泣いているな……」

 

 三代目火影が己の命と引き換えに屍鬼封尽を発動することで大蛇丸を封じ込めて木の葉を守りました。大蛇丸による木の葉崩しは防ぐことができましたが、三代目は死んでしまいました。原作通りですね。

 

 里を挙げて三代目の死を悼んでいます。三代目の葬式イベントが始まりました。

 

「三代目のじっちゃん……」

「爺ぃ、何で死んでるんだこれぇ……うぅ……」

 

 三代目の葬式イベントは、色んなキャラの曇り顔が沢山見れるチャンスです。

 ナルト君もそうですし、木の葉丸君の曇り顔も見れます。モブも含めた里のちびっこ全員の曇り顔が見れます。

 

「親父……」

「三代目……」

 

 三代目の葬式イベントでは、憂いを帯びたアスマ先生やイルカ先生の顔も見れます。

 

 親子仲はあんまり良くなかったとはいえ、アスマ先生にとって三代目は血の繋がった父親です。イルカ先生にとっての三代目は、両親を失って辛かった時に優しい言葉をかけて生きる道を示してくれた恩人って感じですね。

 ですので、二人の三代目に対する思いは他の人よりも強いでしょう。

 

「俺は……アンタの守りたかった里をこれからも守っていくよ」

「三代目……貴方の火の遺志は子供たちに伝えていきます。どうか安らかに」

 

 三代目と縁浅からぬ二人だけに、その表情は曇ってますねぇ。エモいです。

 

 三代目の葬式はたいていのキャラの曇り顔が見れる最高のイベントです。

 お気に入りキャラの曇り顔を見逃さないようにしましょう。笑顔は普通の会話パートとかでも見れますが、曇り顔はこういう時しか見れませんからね。

 

 やっぱ葬式イベントはいいですね。好きなキャラの良い曇り顔の写真がいっぱい撮れます。

 

 葬式はいいよなぁ(黒鋤雷牙並感)

 

……。

……。

……。

 

「やい、エロ仙人!」

「誰がエロ仙人じゃ!」

 

 三代目の葬式が終ってしばらくすると、ナルト君が自来也先生と戯れているところを見られるようになります。

 ナルト君、ガマの口寄せの術を教わっています。ガマまみれになって楽しんでいるようです。

 

 せっかくなんで、ランちゃんも口寄せ契約させてもらいましょう。ガマ油攻撃は小南ちゃん討伐でも使えますし。

 

 楽しそうやな。おっさん、ワシも交ぜてくれや。三人でガマまみれになって楽しもうぜ。

 

「ええ!? ランの姉ちゃんってば、エロ仙人の弟子だったのか!? 初耳だってばよ!」

「こらナルト、誰がエロ仙人じゃ! 自来也先生と呼ばんか!」

 

 自来也は三代目亡き後の火影就任を打診されて里に帰ってきたようです。ですが火影就任を断ったので、これから綱手姫の捜索に赴くようです。

 シズネちゃんと会えるチャンスなので、ランちゃんもその任務に参加しましょう。

 

「おお、ランも来るのか。そういえばお主は綱手とも知己だったしの。いいだろう」

「ランの姉ちゃんも来るのか!? 一緒の任務、嬉しいってばよ!」

 

 二人に同行していくと、最初の街でイタチの兄さんと鮫のおっさんのコンビに遭遇することになりますが、積極的に戦うのは止めましょう。チャート狂いますんでね。

 

「イタチ! お前を殺すためだけに、俺は今日まで生きてきた! うぉおおお!」

 

 イベントが進むとサスケがイタチの兄さんにボコられるシーンが見れます。ヤンデレイタチ兄さんが弟をボコボコにする様を、しっかり観察しましょう。

 

「俺のことを憎め。憎み続けるがいい。お前には憎しみが足らない」

 

 イタチの兄さんが後遺症が残らない程度にサスケをボコボコにして(心に傷が残らないとは言ってない)去っていきます。

 サスケを愛するがゆえ、彼を強くして生かすために憎まれ役を買って出るとか、愛が深すぎてうちはヤバすぎィ!って感じですね。

 

 ヤンデレなイタチ兄さんが見れたので最高でした。愛するサスケがボコられて怒るナルトの姿も見れて最高でした。

 

 サスケって、イタチとナルトに愛されまくってますね。ヤンホモ二人に愛されるとか闇堕ち不可避なんだよなぁ。

 

 さて、イタサスの濃厚なホモシーンも見れたことですし、一旦里に戻りましょう。

 負傷したサスケを木の葉の病院に連れて行ったら、綱手姫の捜索に戻ります。

 

 病院ではイタチの兄さんの幻術にやられてだらしなく寝ているカカシ先生もいますが無視して、さっさとシズネちゃんに会いにいきましょう。

 

……。

……。

……。

 

「おお、ようやく見つけたぞ!」

 

 とある街で綱手姫とシズネちゃんを発見します。

 積もる話は呑みながらということで百楽とかいう居酒屋で一緒に飲み食いすることになるんですが、綱手に「火影とか馬鹿のなるものだ」とか何とか言われ、ナルトは「火影は俺の夢だ。(夢を汚すのは)おばさんやめちくり~」みたいな感じでぶち切れることになります。

 綱手もぶち切れて「ちょっと来いよオラァ!」みたいな感じになって店の表で戦うことになるんですが、当然ナルトがボコボコにされます。ですがナルトが根性を見せます。

 

「絶対に諦めねぇ、火影は俺の夢だ!」

「縄樹……」

 

 絶対に諦めないナルトを見て、綱手姫は亡き弟の影を見ます。そしてナルトに絆されます。

 

 おばさんはねぇ、君みたいな可愛いねぇ、子の縄樹顔が大好きなんだよ!

 

「一週間だ。一週間であの技を身に着けたら、この火影の首飾りをくれてやるよ」

 

 綱手姫はナルトに対し、一週間で螺旋丸を身に着けたら呪いの首飾りをやる、という約束をします。

 難易度に対して報酬がクソすぎる気がしないでもないですが、ナルトは喜んで螺旋丸の修行に入ります。掌にチャクラを集中させて風船を割るあの修行ですね。

 

 ナルトに絆された綱手姫はこのまますんなり里に帰って五代目火影の役職を引き受けてくれるかと思いきやそうはなりません。大蛇丸が綱手姫にちょっかいかけてきます。

 

 綱手姫捜索イベントが終盤に差し掛かると、弱った大蛇丸と通常カブトと戦うことになりますが、適当に戦って経験値を稼いでおきます。

 倒してしまわないように気をつけましょう。倒すとチャート狂っちゃうんでね。

 

……。

……。

……。

 

「私たちが三忍と名乗るのは今日までだ! 大蛇丸! お前を倒す!」

 

 綱手が大蛇丸の誘いを断り、その後、大蛇丸、綱手、自来也の三竦み対決を経て、綱手姫は血液恐怖症を克服し、五代目火影を名乗ります。全員で協力して大蛇丸を撤退させます。

 

「良い男になんなよ」

 

 イベントの最後、ナルトが綱手姫に認められておでこにキスされます。ついでに所有者二名死亡の呪いの首飾りも貰ったようです。

 

 ちなみに、綱手姫からのキスが、ナルト君にとってのセカンドキスですね。

 少年漫画の主人公なのに、ファーストキスがライバルの男の子で、セカンドが年齢詐欺のおばさんって草ですね。

 アニメだとさらにサスケと二回目のキスさせられてたり、フウカとかいう化け物のおばさんにガチキスされててマジ可哀想で草です。

 

 哀れ。製作陣に玩具にされた主人公の末路。

 

「私が五代目火影だ!」

 

 里に帰ると綱手姫が正式に五代目火影に就任することになります。

 

 五代目火影就任を祝う花火イベントがあるので、その際はシズネちゃんとデートして遊びましょう。今までの交流で好感度が上がっているので問題なく遊びに誘えます。

 

「私、綱手様の付き人をしていたので、実はアカデミー卒業以降、同年代の子たちとあんまり遊んだことないんです。今日は誘ってくれてありがとうございます」

 

 蛞蝓おばさんの付き人してるせいで友達と休暇の日程合わなくて遊べないシズネちゃん可哀想。

 

 アニメのカカシ過去編でガイ先生とかが同年代大集合して甘味処でお喋り楽しんでいる過去エピでもハブられてますからねシズネちゃん。

 カカシ先生もハブられてますけど、カカシ先生はガイ先生に誘ってもらった上であえて断ってるから、ぼっち度がだいぶ違います。

 

 物理的に距離が離れてるせいで誘ってすらもらえないだろうシズネちゃんに涙がで、出ますよ……。友達と遊べないばかりか蛞蝓おばさんの放蕩癖のせいで常に借金とりに追われる生活とかもうね……。

 

「綺麗な花火ですね。ねえトントン」

「ぶぅぶぅ」

 

 シズネちゃんとの花火デート。ああ~たまらねえぜ。

 黒髪和服美女とか最高すぎなんじゃあ^~。

 トントンを抱きかかえるシズネちゃん、可愛いすぎるんじゃあ^~

 

 このまま浮気してシズネちゃん討伐チャートを突っ走りたくなるくらい魅力的な光景でした。ですがこれはあくまで小南ちゃんの討伐チャートです。浮気はよくありません。

 

 では引き続きゲームを進めていきましょう。

 

……。

……。

……。

 

 綱手姫が五代目に就任してしばらくすると、サスケの里抜けイベントが発生します。

 

 イタチにボコられたサスケは己の中の闇を深めていきます。

 カカシ先生は一応それに気づくんですが、だらしないのでサスケの闇の拡大を防ぐことができず、サスケは大蛇丸の部下の音忍たちに誘われてホイホイついていっちゃうんですね。

 

 一連のイベントに関わればサスケの里抜けを阻止することも勿論できますが、スルーしましょう。原作の流れが大きく変わっちゃうんでね。チャート狂いますのでやめましょう。

 

 恋愛では別れることで愛が深まることもあります。

 ナルサスも同じです。離れることで改めてお互いのことを意識し合うんです。

 

「うちはサスケが抜け忍になったらしいぞ!」

「嘘だろ! あのうちは一族の生き残りが?」

「この間の中忍試験に出てたよな?」

「やっぱうちはは碌でもないな! 悪に憑かれた一族だぜ!」

 

 サスケの里抜けイベントには関わらなかったので結果どうなったのか直接確認してませんが、里の人たちの反応でわかります。

 イベントに関わらなかったので、当然ながらシカマルたちはサスケ奪還に失敗したようですね。原作通りです。

 

 ネジ、キバ、チョウジといった多数の負傷者を出し、さらに砂の援軍の手まで借りたのにサスケの里抜けを阻止できなかったという、木の葉的には大失態ですね。

 責任者のシカマル君、号泣案件です。シカマル君の雨顔が見たかったけど、シズネちゃんのところで遊んでてイベントスルーしたので見れませんでした。残念。

 

「サスケェ……」

 

 この時期になると、すっかり笑顔が似合うようになってきたナルト君の曇り顔がまた見られるようになります。

 サスケがいなくなったことで、街中で見かけるナルトの表情は曇りまくってます。虚ろな表情のままうわ言を喋ってます。

 

 しっかりスクショしていきましょう。シカマルの雨顔が見られなかった分、ナルトの曇り顔を堪能しましょう。

 

「サスケェ、俺はお前を大蛇丸なんかにとられたくねーんだってばよ……」

 

 大好きで親友だと思っていた奴がよくわからん犯罪者の爺のオカマの元に走ったらショックですもんね。

 ナルト君、めっちゃ落ち込んでいます。適当に励ましておきましょう。諦めるんじゃねえぞ。

 

「サンキュ姉ちゃん。俺はサスケのことは絶対に諦めねえ。何が何でも取り戻してやるってばよ!」

 

 おうその意気だぜ。しっかり気張れや。

 

 ナルトは以後九尾の力が漏れ出した半獣のヤンホモとなってサスケを追い続けます。九尾の力を制御しようと自来也先生と旅することになります。

 

「これから二年と少しばかり、ナルトと旅しようと思うのだがのぉ。ラン、お主はどうする?」

 

 自来也先生とナルトの好感度が高いので、旅に誘われましたね。

 二人と旅するのも面白そうですが、ここは男同士で旅させてあげましょう。

 女が横から入ってジラナルの発展を邪魔してはいけません。そっと横から眺めるのが淑女の嗜みです。

 

 それに旅するとなると変なイベントに遭遇したりする可能性があるので面倒ですからね。チャートが狂う原因になります。里周辺で大人しくしていた方が安全です。

 

――【断る】

 

「そうかお主は里に残るか。まあそれが良かろう。ナルトにとっての精神的な自立も必要だしの。では男同士、気楽にいくとするかの」

 

 ランちゃんは里に残ることにしました。

 

 綱手が火影になったんで、付き人のシズネちゃんは里にずっといますんでね。これから二年半、暇さえあればシズネちゃんと絡んでいきましょう。

 

 一緒に任務受けたりもできるんで、シズネ好きにはたまらない時期ですね。ああ~、はようシズネちゃんまみれになろうぜ。

 

 さて、これから二年半経つと原作的に言うところの第一部(少年期編)が終わり、第二部(青年期編)の開始となります。

 二部が始まればいよいよ暁関連のイベントが本格的に発生してきます。ランちゃんと小南ちゃんの運命の対決ももうすぐですね。

 

 このまま二部に入りたいところですが、キリがいいので今回はここまでとしておきましょう。

 では皆さん、またお会いしましょう。ではでは~。



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ch.13 大蛇丸さん許して! 三代目死んじゃう!(小南)

 あの子がいなくなってからどれだけの時間が経っただろうか。

 外道魔像に生命力を吸い取られ続けた長門は、日に日に衰弱していった。そして私の介助なしには歩くこともままならない状態となった。

 

 そんな長門を介護しつつ、雨隠れの為政者としての仕事をこなし、暁の仕事もこなす。そして暇さえあれば合計一兆二千億枚という果てしない数の起爆札の収集活動に励む――毎日が忙しすぎる日々だった。紙分身を多用することでなんとか忙務をこなせていた。

 

 そんな忙しい日々を過ごしていると、時間の感覚が次第になくなっていく。

 あっと言う間に二十代が過ぎ去って三十代になった。二十代は傀儡人形のように働き続ける日々だった。

 

 女性にとって二十代とは最も花盛る時期に違いない。私の二十代は暁の夢に捧げることとなった。そのことに後悔はない。

 弥彦に生かされた命だから元々なかったようなものだ。それを愛する弥彦の夢のために捧げることができるのは、むしろ喜ばしいことのように思えた。

 

 けれど私も人間であるので、一抹の寂しさは拭えなかった。私の人生とは何なのかと考えると空しさがこみ上げてきた。

 あの子が暁の夢なんて忘れて外で楽しく過ごしているという話を聞くと、その寂しさと空しさは憎しみに変わった。

 

「ランだけど、今回は波の国で任務をこなしてたみたい。これ写真」

「っ!? このマスクの男!? 写輪眼のはたけカカシ!?」

 

 写真の中のランはマスク男と楽しそうに肩を組んで歩いていた。

 正確には、マスク男が負傷しているのでランが肩を貸して歩いているといった方が正しいが。

 マスク男は写輪眼のカカシで間違いなかった。ビンゴブックに載っているから知っていた。

 

「その男のマスクなしの写真はこっちね」

「っ!?」

 

 はたけカカシはかなりのイケメンであった。マスクで隠すのが勿体ないくらいのイケメンだった。

 

(ラン、弥彦以外のイケメンと仲良くして……どういうつもりかしら)

 

 そんなイケメンにベタベタと接しているランに腹が立った。弥彦以外の男とベタベタしているランに憎しみが湧いた。

 弥彦とベタベタしていたのを見ていた時もそれはそれで腹が立ったのだが、今はさらに腹が立った。

 弥彦に愛されたくせに他の男に心を寄せるなんて許せなかった。

 

「そのカカシって男と一緒に楽しく任務してたみたいだよ。こっちがその写真ね」

 

 違う写真では、ランは寝込んでいるはたけカカシを楽しそうに介護していた。

 「はい、あ~ん♥」とでも言うようにニヤニヤしながら、食事のスプーンをカカシの口元に運んでやっていた。

 はたけカカシの方は迷惑そうにしていたが。

 

(楽しそうに介護なんかして……。ラン、介護を舐めてるわね。許せない!)

 

 先の見えない介護と先の見える介護。

 同じ介護をしているといえど、その意味は大きく違う。

 先の見える介護を楽しそうにこなしているランに腹が立って仕方なかった。介護現場という戦場で小娘のようにハシャいでいるランが許せなかった。

 

(こっちの気持ちも知らないで……。そんな男よりも長門の介護を手伝ってくれればいいのに)

 

 大事な家族である長門のことを放っておいてそんな怪しげなマスク男の介護を一生懸命にこなしているランに腹が立った。

 家族の介護を放り出して余所の男の介護をしているなんておかしな話だろう。

 

 もっとも、今のランにとっては、長門や私よりもその男の方が重要なのだろう。

 そう思うと本当に腹が立った。若き日にカエル板の前でやった私たちの誓いは何だったのかと問い質したくなるくらいだった。

 ひもじい思いをしながら一つのパンを分け合ったあの日々はなんだったのかと思うと、溢れんばかりの憎しみが湧いてきた。

 

「あっ、勝手にくしゃくしゃにしないでよ。その写真、後でオ――じゃなかった、マダラにも見せるんだからさ」

「ああ、ごめんなさい」

 

 苛立つあまり写真を強く握り締めてくしゃくしゃにしてしまい、ゼツに注意されてしまう。

 ゼツはマダラにもこの写真を見せるのだとか。写輪眼を持つ相手の情報だから、当然と言えば当然だろうか。

 

「その波の国の任務でガトーって奴らを潰したみたいだよ」

「ガトーですって!?」

「知ってる奴かい?」

「ええ。暁とは裏で装備品の取引をしたりしていたわ」

「そっか。じゃあ暁の活動にも多少は影響がありそうだね」

「多少どころかかなりの問題ね(起爆札の収集に大きな支障が出る! ラン、なんてことをしてくれたのよ!)」

 

 ランのせいで暁の活動に支障が出てしまう事態にすらなった。

 弥彦の夢を捨てたばかりか、その夢の邪魔すらしてくる。許せるはずもなかった。

 

(ラン、絶対に許さないから!)

 

 殺意を募らせていく日々。

 ゼツの齎すランの情報は、その全てが私を苛立たせ憎しみを増大させるものとなった。

 

「中忍試験が木の葉の里で開かれて、里はお祭り気分で一色だったよ。ランは、木の葉の忍びたちと楽しそうに過ごしてたよ。こんな感じで」

 

 ある日、ゼツは木の葉で開かれた中忍試験の様子を写し出した写真を持ってきてくれた。

 

 写真の中のランは一般人のように振る舞い、お祭り気分で過ごしているようだった。

 ポップコーン等のお菓子を頬張りながら、闘技場で戦う下忍たちに声援を送っていた。

 

(これはっ!? またしてもはたけカカシ!?)

 

 ランは隣に座ったはたけカカシの口元にポップコーンを運び食べさせてあげようとしていた。

 その隣には男女のカップルと思われる忍びがいて、そのうちの一人であるモミアゲとアゴヒゲが一体となった男は、「ついにカカシにも春が来たか?」とでも言って茶化しているかのようであった。

 そんな光景の写真だった。

 

(ラン、弥彦のことなんて忘れてイケメンのはたけカカシに夢中なのね。許せない! だから木の葉にいるのね!)

 

 本当にイライラする写真だった。思わず握りつぶしてしまったくらいだ。

 

「あー、くしゃくしゃにしないでってば。その写真もオ――じゃなかった、マダラに見せるんだからさ」

「ごめんなさい」

 

 ゼツに怒られて我に返る。私としたことが感情的になってしまった。

 ランのこととなるとどうしても感情的になってしまう。あれだけ共に過ごしたのに裏切られたのだから、当然と言えば当然だろう。

 

「三代目火影が死んで、五代目火影が就任したようだね。それで新しい火影の就任を祝う花火大会が木の葉で開かれたよ。ランは浴衣を着て楽しそうに過ごしてたよ。これはその時の写真」

「誰よこの女……」

「あーその女ね。シズネっていう名前で、なんか五代目火影の弟子らしいよ。そこまで凄い忍びじゃないみたいだけど、上忍レベルではあるみたい。ランの木の葉での友達みたいだね。凄い仲良いみたい。大親友ってやつかな。君より仲いいかもね」

「そう……」

 

 ランは黒い着物を着て豚を抱えた地味な女と楽しそうに過ごしていた。

 違う味のカキ氷をそれぞれシェアしたりして楽しんでいるようだった。

 食べ物をシェアするなんて、よほどこの女の子がお気に入りと思えた。

 

(私が朝から晩まで暁の夢のために働いて、深夜まで長門の介護を一生懸命やってる間、この子は新しい友達と遊んでばかりいるのね。許せない……)

 

 そう思うと本当に腹が立った。

 雨ばかりの雨隠れの里では花火大会など開くことができない。雨のせいで年中肌寒いのでカキ氷など楽しめない。楽しめるのは温かい肉まんくらいだ。おやつと言えば、毎日毎日肉まんばかりだ。

 

(私は忙しい仕事の合間に肉まんを食べることを人生のささやかな楽しみとしているというのに、あの子は好き放題に人生楽しんでいるのね……許せない!)

 

 雨隠れでは楽しめない行事やスイーツを目一杯楽しんでいるランを見て、私はまたしても憎しみを募らせることとなった。

 ランは私たちのことなんて完全に忘れていると思った。

 

 私たちが死んだと聞かされているのでそれも仕方ないのかもしれないが、それでも未だに死の真相を確かめに来ないのはおかしい。

 完全に私たちのことなんてどうでもいいと思ってるとしか思えなかった。

 

(これはっ!? またしてもはたけカカシ! またはたけカカシなのね! イケメンのはたけカカシ!)

 

 違う写真の中のランは、はたけカカシの腕を引っ張り無理やり屋台へと連れ出していた。どうやら何かしらの食べものを奢らせようとしているようだった。

 はたけカカシは迷惑そうにしつつも財布から金を出していた。それを見て笑う周囲の人々。

 どう見ても彼氏に物をねだる女の子とそれを囃し立てる人々という光景にしか思えなかった。

 

(華やかな場所で華やかな格好して華やかな人々に囲まれて……許せない!)

 

 雨隠れの里は常に雨雲に覆われているので非常に陰気臭い。

 おまけに年季の入った廃墟ビルみたいな建物ばかりで、その上、紙の依代が里中のそこかしこに設置されているので余計に陰気臭いムードが漂っている。

 

(あの子と比べたら私はまるでゴミ山にいるカラスみたいね……)

 

 陰気臭い雨隠れの里でカラスのような黒い外套を纏っている私。

 明るく活気に満ちている大国の木の葉の里で華やかな柄の着物を着ているラン。

 どちらが人生を謳歌しているか一目瞭然だった。

 

「あー、ビリビリに破かないでってば! それもオ――じゃなかった、マダラに見せようと思ってたのに」

「ごめんなさい。すぐに直すわ」

「おー、それが君の術か。近くでは初めて見たよ。破れた写真がちゃんと元に戻ってるねえ」

 

 見ているだけでムカムカする写真だったので、つい感情的になって写真を破いてしまった。

 私はすぐに紙の秘術を使って破れた写真を元に戻すと、ゼツへと返した。

 

(ラン。貴方は完全に暁の夢なんて忘れて自分の人生を謳歌してるのね。弥彦に愛されたくせに、弥彦に生かされたくせに、それを忘れるなんて……許せない!)

 

 ランのことを思うと、今までの思い出の全てが憎しみへと変化していく気がした。

 私の中でのランへの殺意は、日に日に高まっていった。

 

(このペースでいけばもう少しね。あと数年以内に集まるかしら)

 

 起爆札はあらゆる手段を駆使して集めているので順調に集まっている。

 マダラを殺すための六千億枚の起爆札は既に集まった。あとはあの子を殺すための六千億枚分だけだ。

 それも順調に集まってきている。あの子にそれをお見舞いする日も近いだろう。

 

(ラン、せいぜい今のうちに余生を楽しんでおくことね。私が必ず殺してあげるから)

 

――ドスッ、ドスドスッ。

 

 私はゼツに譲ってもらったあの子の写真に向かってクナイを投げつける。

 そうやって脳内であの子を殺すシミュレーションを何度も繰り返し、日頃の鬱憤を晴らすのであった。



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ch.14 アスマの死は時報。はっきりわかんだね(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 どうもホモガキです。では今日も“NARUTO~影への道~”の配信をやっていきたいと思います。

 

 前回は原作で言うところの少年期編が終わったところまでですね。

 サスケが里抜けして、ナルトが自来也先生と旅に出ようとするところまででした。

 

 ではそこからゲームを再開するとしましょう。

 

「それじゃランの姉ちゃん、俺ってば、いってくるってばよ! 帰って来たら見違えるほどになってるからな!」

 

 ナルトが元気よく自来也先生と旅に出ていきます。ランちゃんはそれを綱手姫とシズネちゃんと一緒に見送ります。

 このイベント、近くの物陰にはヒナタが隠れているので、声をかけて無理やり見送りの場に引きずり出してやりましょう。

 

 ヒナタ、お前さっきからナルトのことチラチラ見てただろ?

 

「ヒナタ! お前も見送りにきてくれたのか?」

「う、うん……。ナルト君、よかったらそのこれ……」

 

 ヒナタがおずおずといった様子で、持ってきた差し入れの品を差し出します。

 中身は兵糧丸か何かでしょう。快く受け取ったナルトは元気良く出発していきます。

 

「ランさん。その、ありがとうございました。おかげでナルト君に差し入れ、ちゃんと渡せました」

 

 ヒナタにお礼を言われました。恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら礼を言うヒナタは可愛いですね。

 

 ああ~ノンケになるぅ~

 

 さてこれからですが、ナルトたちが旅をしている二年半の間は、特に重要イベントはありません。

 里で綱手姫から医療忍術でも教わりつつ、シズネちゃんと遊んで、適当に任務でも受けて戦闘スキルを高めておきましょう。

 

「ランさん。今度俺と食事にでも行きませんか?」

 

 長いこと木の葉の里にいるんで、色んなキャラの好感度が上がってますね。

 里を歩いていると、イズモやコテツといったモブっぽいおっさんにまで食事に誘われたりします。特に絡んだ覚えはないんですがね。彼らとはたまに一緒の任務になったくらいかな?

 

 試走の時はこんなに好感度稼げてなかったんですけど、今回のプレイキャラであるランちゃんは高魅力値キャラであるせいでしょうか。

 あと【血継限界・沸遁】があったんで、才能に恵まれてて里に来てからはあまり修行漬けではなく交流メインで過ごしてたせいもあるかもしれません。それで色んなキャラの好感度がかなり稼げているようです。特に深く絡んだ覚えのないキャラにまで絡まれます。

 

――【断る】

 

「そうですか……。残念っす」

 

 ガイ先生とかの有名キャラならともかく、モブっぽいおっさんに食事に誘われても興味はないです。普通に断りました。

 ではさっさとシズネちゃんのところへと向かいましょう。はようシズネちゃんまみれになろうぜ。

 

 坦々とした交流シーンが続くだけなので、巻いてお送りしていきまーす。

 

……。

……。

……。

 

 ということで、あっという間に二年半が過ぎました。

 やっぱシズネちゃんまみれの生活は最高やな!ってな感じの二年半でした。

 

 そろそろナルト君が帰ってくる頃ですね。

 

「ただいまだってばよ!」

 

 成長して格好良くなったナルト君が木の葉の里に帰ってきました。

 少年期編はクソガキ感のあるキャラデザだったですけど、青年期編はかなりクールになってますね。

 

 イタズラっ子だったナルト君はもう見る影もないって感じです。ショタナルトの曇り顔が見れなくなるのは残念ですけど仕方ありません。気持ち切り替えて、今後は青年ナルトの曇り顔を堪能することにしましょう。

 

「ナルト、見違えたな」

「シカマル、久しぶりだってばよ!」

 

 ナルトと一緒に歩いていると、ナルト同世代キャラが次々に集まってきます。

 

 視聴者兄貴姉貴はこの二年半の過程をすっ飛ばして見ているので、各キャラの成長ぶりを新鮮に感じることでしょう。けれどワシ的にはナルト以外は全然新鮮じゃないです。

 

 木の葉の里にいたキャラに関しては度々会ってましたからね。ゲームの中で徐々に成長してるとマジで変化に気づかないです。スクショを見比べてようやく気づくくらいです。

 ナルトと一緒に旅してれば、逆に木の葉に残っていたシカマルたちの成長が新鮮に感じられたでしょうね。

 

……。

……。

……。

 

「新しい風影が連れ去られただと!?」

「暁の仕業らしいぞ!」

 

 ナルトが里に帰還してしばらくすると、新しいイベントが始まりました。

 暁のデイダラとサソリに我愛羅君が連れ去られるという事件が発生したようです。

 

 このイベントが始まると二部が始まったって気がしますね。この事件を皮切りに本格的に暁関連イベントが発生していきます。

 

 我愛羅奪還編は小南ちゃんに関係ないのでスルーしましょう。

 下手に関わってストーリーに変更が出るとチャートが狂って面倒なので、ランちゃんは大人しく里に残って他の任務でも受けていましょう。

 

 我愛羅奪還任務に参加しますと、サソリの毒くらって悶絶するカンクロウとか、尾獣を抜かれて悶絶する我愛羅とか、砂隠れの悶絶少年シリーズが見れます。

 すっげー見たい気がしますけど今回は諦めます。

 

……。

……。

……。

 

 我愛羅奪還編はスルーしたんで原作通り進み、サソリとチヨ婆が死にました。

 

 チヨ婆が無言の帰宅を果たすシーンを見れなかったのは残念ですね。我愛羅の死亡を知るシーンとか、ナルトたちの曇り顔が見れるチャンスだったんですけど、まあ仕方ありません。

 

「君、チ○ポついてるんですか?」

 

 出たわね。出ました。

 

 青年期編になると木の葉の里に出没するようになるナルト君のチ○ポの有無を尋ねてくる妖怪です

 

 というのは冗談で、サイ君です。青年期編になると表舞台に出てくる子です。里抜けしたサスケの穴埋めという形でナルトの第七班に加わる子ですね。

 

 我愛羅奪還任務を終えて里に帰還したナルトと一緒に里を歩いていたら、サイ君と遭遇しました。

 

 実は彼はナルトのチ○ポに興味津々な男の子です。

 ナルト女の子説の信者なのか、ことあるごとに「チ○ポついてんですか?」ってナルトにストレートに尋ねます。

 風呂場で確かめたりもします。男性器を確認した後もナルトに興味津々で、サスケに夢中なナルトを見てサスケに嫉妬したりします。

 

 サイ君は女の子説の信者じゃなくてただのホモですね……

 

 まあホモと見せかけていのちゃんと結婚するクソノンケなんですけどね。

 

「俺、アイツのこと嫌いだってばよ! アイツがサスケの代わりだなんて絶対に認めねえ!」

 

 ホモのホモ嫌いでしょうか。ナルトの中でのサイに対する第一印象は最悪なようです。

 サスケに似てるとか誰かが言ったので「全然似てねー! サスケの方がカッコイイ――じゃなくてマシ!」ってぶち切れたりします。

 

 そんな感じで当初は仲の悪い二人ですが、ストーリーが進むごとに仲良くなっていきます。

 サイはナルトのことが大好きになって、ナルトもサイのことを大事な仲間と認めるようになります。

 ナルトが七代目火影になった際には、サイを側近に選ぶくらいの関係になります。やっぱりホモ同士仲が良いですね。

 

 サイが登場したということは、原作で言うところの天地橋編の始まりを意味します。

 カカシ先生が万華鏡写輪眼の使いすぎでだらしない状態となっているので、第七班にはヤマト隊長が加わって、七班メンバーは大蛇丸のアジトに潜入することになります。

 

 天地橋編では七班に付いて行けばナルトが尾獣化して「自分のものみてーにサスケの名前を呼ぶんじゃねえ!(嫉妬)」と大蛇丸に向かって叫ぶ名シーンが見られます。

 さらには、大蛇丸のアジト近くまで行くと、「腕がもがれりゃケリ殺す脚がもがれりゃ噛み殺す(以下略)」と笑顔で言うヤンホモなナルトも見られます。

 

 ですがまあスルーしましょう。小南ちゃん関係ないですしね。ストーリーを崩すとチャートが狂うのでスルーです。

 

 天地橋編のナルサス関連のホモ臭いイベントが進行している間、ランちゃんは里に残ってだらしない先生のお見舞いでもしていましょう。

 カカシ先生の病室には自来也先生が度々訪れるので、自来也先生と接触したい場合は重要です。

 

 本チャートでは自来也先生の好感度が十分に稼げているんで問題ないですけど、アクシデントが発生して上手く稼げてない場合は、ここらへんで必ず上げておきましょう。

 好感度が十分に稼げてないと、自来也先生の「雨隠れ潜入ミッション」に付いて行くことができないですからね。

 

 今回はここで特に自来也先生と交流する必要ないですけど、暇なんで交流しておきましょうか。

 病院にはシズネちゃんがいる場合も多いので、シズネちゃんと交流するついでにだらしない先生とガマのおっさんとも交流しておきます。

 

 ナルトと縁浅くないおっさん二人の会話は、渋くて格好良いですね。通好みの会話をしています。

 

 白髪のおっさん同士の絡み、ああ~たまらねえぜ。

 

……。

……。

……。

 

「サスケェ……。俺はもっと強くなってお前を取り戻す。必ずな」

 

 サスケを取り戻せず、第七班は失意の後に里に帰還します。

 力不足を痛感したナルトは螺旋丸を越える術の修行に取り組むことになります。チャクラの性質変化を使った「風遁・螺旋手裏剣」という大技ですね。

 

 ちなみに修行中には「俺ってばサスケと相性良かったんだな……」とかいう名言が聞けます。

 見逃さないようにしましょう。毎日差し入れでも持って行ってイベントに絡んで台詞を聞くようにしましょうか。

 

「俺ってばサスケと相性良かったんだな……」

 

 ナルトの告白を聞いて、返答に困ってるヤマト隊長に草です。

 

「サクラちゃんに、ランの姉ちゃん、いつも差し入れありがとうだってばよ!」

「ありがたく受け取りなさいよねナルト!」

 

 サクラちゃんと一緒に修行中のナルトに差し入れに行くと、ナルトは満面の笑みで礼を言ってくれます。

 

 それはそうと、この頃のサクラちゃん、めっちゃヒロインしてますね。

 まあ差し入れしてるのは汚物みたいなゲロマズ毒団子(兵糧丸)なんですけどね。

 

 ヒロインのクズがこの野郎……(暴言)

 

「ヤマト隊長、どうしたんだってばよ?」

 

 そんな感じで毎日のようにサクラちゃんと一緒にナルトの所に嫌がらせしに行っていると、イベントが発生しました。

 いつも以上に陰気臭い顔をしたヤマト先生が近寄ってきます。

 

「猿飛アスマさんが、亡くなられたようです……」

「っ!?」

 

 アスマ先生がお亡くなりになったそうです。

 暁の角都と飛段の不死身コンビにやられたんでしょう。原作ストーリー通りですね。介入してないんでそのままイベントが進行したようです。

 

「アスマ先生が死んだ?」

「嘘……」

 

 さて、アスマ先生が死んだんで、シカマルの曇り顔の観察にでも行くとしましょう。ついでに紅先生のところにも顔を出しましょう。

 紅先生が泣き崩れる姿はこのイベントでしか見られませんからね。貴重なシャッターチャンスを逃すわけにはいきません。

 

「あっ、姉ちゃん、どこ行くんだってばよ!」

 

 修行中のナルトたちは放ってシカマルのところに飛んでいくとします。ほらいくどー。

 

「――では俺はこれから関係者に連絡してきます。それでは」

 

 火影室に行くと、ちょうどシカマルが関係者にアスマの死を伝えに行こうとするところでした。

 めっちゃ曇ってますねぇ。良い顔です。

 

――【同行を申し出る】

 

「いいっすよ。俺一人で行きます。それが俺の責任ってもんすから」

 

 同行を申し出ると断られますが、無理やり付いていくことにします。

 

 ワシは君の曇り顔の観察したいんだよ。曇り顔の観察させろやオラァン!

 

――【同行を申し出る】

 

「そこまで言うなら……もう好きにしてくださいよ」

 

 渋るシカマルにごり押しして付いて行くことができました。やったぜ。

 

 シカマル君と里を歩き回ってアスマの死を伝えていきます。アスマ先生、死んだってよ。

 

「あらアンタ、アスマ先生のとこの子じゃないかい。アンタ、アスマ先生に伝えておいておくれよ。もうツケがだいぶたまってんのよ。そろそろ払って欲しいってね」

 

 焼肉屋の女将さんが呑気に喋りかけてきます。

 シカマルは悲痛な顔をしながら搾り出すように言葉を吐き出します。

 

「猿飛アスマは……殉職しました」

「えっ……」

 

 悲報を聞いた女将は持っていた掃除用のバケツを落として狼狽します。

 シカマルの表情が曇ります。歯を食いしばって耐えてますね。

 

 いいですねぇ。シカマル君のこの顔が見たかったんです。しっかりスクショしておきましょう。

 

 そんな感じで次々と関係者の所を回っていきます。

 アスマ先生の馴染みの店に顔を出し、猿飛一族のところに行ったり、色んなところに顔を出します。

 

 死を伝えるとみんなの顔が曇って面白いです。ああ~たまらねえぜ。

 

「ここが最後だ……」

 

 日が暮れかけてから最後のお宅を訪問することになります。紅先生のお宅ですね。

 

 普通は真っ先に声かけに行くべきなんでしょうけど、シカマルは無意識に足が遠のいていたようですね。一番面倒なところを後回しにした格好です。

 

「シカマル……ランさん……何が……」

 

 何も知らず普通に応対してくれた紅先生ですが、シカマルの尋常ならざる表情を見て何かを察したようです。一転して表情を強張らせます。紅先生も優秀な忍びで察しが良いですから、碌でもないことだと感じたようですねぇ。

 

 シカマルは一呼吸置いた後、搾り出すように言葉を吐き出します。

 

「アスマが……死にました」

「……っ!?」

 

 一瞬何が起きたかわからない様子の紅先生ですが、現実を認識すると泣き崩れていきます。それを見たシカマルの表情は今日一番というくらいにめっちゃ曇ります。

 顔を背けたいけど、自分の組んだ作戦の結果起こったことだから、逃げずに紅先生の悲惨な姿を眼に焼き付けようとしています。必死に歯を食いしばって耐えています。

 

 ああ~シカマルの悶絶顔、たまらねえぜ。今日のオカズはこれで決まり!

 

……。

……。

……。

 

 アスマ先生が死んで葬式が行われました。

 葬式イベントは色んなキャラが大集合して、みんなの曇り顔が見れる最高のイベントです。

 

 やっぱ葬式はいいですね。毎日葬式やりてえなあ(黒鋤雷牙並感)

 

 さて、余計な話はこれまでとしましょう。運命の小南ちゃんとの再会までもう少しです。

 

 アスマ先生の死亡後にシカマルたちが暁の不死身コンビ相手に報復戦を仕掛けたら、いよいよ次はペイン関連のイベントがやってきますからね。

 

 ペイン関連のイベントの冒頭にあるのが、自来也先生が雨隠れに潜入するというイベントです。そのイベントに介入して小南ちゃんと戦うというのが本チャートの方針です。

 

 この後、時期は未定ですが自来也が木の葉の里に必ず帰って来るので、その時に必ず話しかけることにしましょう。好感度の高い状態の自来也に話しかけることで、雨隠れ潜入ミッションに一緒に付いて行くことができます。

 

 自来也と接触できずに、自来也が一人で雨隠れに行ってしまったら、もう今までの苦労が水の泡です。万が一見逃した時用に、必ずセーブしておきましょう。

 

 二部は暁関連のストーリーがごちゃごちゃと展開されていくので、中々チャート管理が大変ですね。

 ナルトガチ勢の兄貴姉貴なら余裕でしょうけど、慣れてない人は大変です。漫然と過ごしていると自来也先生と接触するイベントをうっかり見過ごしてしまうことが多々あります。

 

 慣れてない人は、大事なイベントの前に起きるイベント――いわゆる時報イベントに注意してゲームを進めましょう。

 こういうゲームのチャート管理で重要なのは、時報イベントを見逃さないことです。そこまで注意深くゲームをやらずとも、時報イベントにさえ注意していれば、まず問題なくチャート通りにゲームを進められます。

 

 本チャートでは、アスマ先生の死が時報となります。アスマが死んだら、そろそろペイン編が始まって自来也が雨隠れに行くから準備しとけよ、ということですね。

 

 アスマ先生の死は時報です(大事なことなので二回)

 

 ということですので、アスマの葬式が終わったら余計な遊びは控えて、自来也先生が里に訪れるのをしっかりとチェックしておきましょう。

 

 里の入口か火影室周辺で聞き込みすれば、自来也が里に来ているかはわかります。アスマが死んだら、その二箇所を毎日巡回しておきましょう。

 

 さて、これから自来也先生と接触して雨隠れ潜入ミッションを進めていきたいところですが、キリがいいので今回はここまでとします。

 

 次回はいよいよ雨隠れに乗り込んでいき、小南ちゃんと運命の再会を目指します。

 長かった討伐チャートもラストが近いですね。どうか最後までお付き合い下さい。

 

 では皆さん、次回も元気にお会いしましょう。さいなら~。



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ch.14 アスマの死は時報。はっきりわかんだね(小南)

 あの子が私たちの元から去り、どれだけの時間が経っただろう。

 

 数えてみれば十年と少しだ。かなりの長い時間が過ぎたが、今となってはあっと言う間だったと思える。

 暁の夢のために奔走していたら、時間など瞬時に過ぎ去っていた。光陰矢の如しとはよく言ったものだ。

 

 月日が過ぎるほど、私の心は闇夜に染まっていったように思える。

 目的の邪魔となるならば罪のない人間とて容赦はせずに手を下してきた。この手を血で染めていくごとに、血が凍てついていく感覚を覚えた。

 それでも夢のためにと、ただひたすら前へ前へと進んできた。

 

 もう少しだ。もう少しで夢が叶う。

 全ての人柱力が手に入りさえすれば夢が叶う。弥彦の夢が、私たちの夢が叶うのだ。

 

「サソリが木の葉の忍びにやられたそうだ。デイダラは負傷したものの無事だ」

「そうか……計画に少し修正が必要だな。ではこうしようか」

 

 暁の幹部の定例報告会で、ゼツがサソリの死を報告してくる。

 リーダーのペインが淡々と計画の修正案を提示し、各幹部に了解をとる。

 

 仲間の一人が死んだというのに、幹部たちに動揺はない。サソリを仲間に引き込んだ私とてそれは同じだった。

 

 新生暁は昔の暁と違って仲間意識が希薄だ。形だけは同じ衣装を身に纏い、似たような指輪を身に着けているものの、心はまったくの別物だ。

 仲間の死を知らされても、誰一人としてそれを悼む者などいない。ただひたすら目的へと突き進むだけだ。

 

「サソリを失ったものの、一尾の封印は問題なく完了した。次は二尾だ。角都、飛段。お前たちのノルマだ」

 

 ペインとなった弥彦が命令を下す。

 死んだあの時のままの若い姿で弥彦が喋っているが、それを操っているのは長門だ。

 

 操っている長門はというと、時が止まったかのように若々しいままの弥彦とは違って、酷くみすぼらしい姿となっている。

 まだ三十半ばだというのに、まるで老人のようだ。外道魔像に生命力を吸われ続けたせいで、そんな姿になってしまった。既に人の一生分くらいの生命力は吸われてしまっているのだろう。

 

 私が何度止めようとも、長門は危険な術の行使を止めなかった。私と同じように、残りの人生の全てを弥彦の夢のために使い潰すつもりなのだろう。

 

 ならば私も命ある限り長門を支え続けるのみだ。もはや後戻りなどできない道を、私たちは突き進んでいるのだから。

 

「うっせんだよクソリーダー。俺に命令すんなっつーの」

「黙れ飛段。さっさと行くぞ。仕事だ」

 

 ペインに命令されて飛段が反発するものの、角都に促されて渋々任に就いていく。

 癖のある二人で任務遂行に少しばかり不安が残るが、これまで金庫番としての仕事を忠実にこなしてきた角都に任せれば大きな問題はないだろう。

 

 その予想通り、ほどなくして、二人から任務を終えたと報告があった。

 二尾の人柱力である二位ユギトを捕らえたのだ。

 

「仕事は終えたぞ。もっと骨ある相手かと思ったが大したことなかったな」

「ったく、何で殺しちゃダメなんだよ。殺しこそが唯一の楽しみだってのによぉ」

「ではすぐに封印に移る」

 

 二尾の力を魔像へと取り込むために、外道魔像へとチャクラを送り続ける。

 何日もかかる大変な仕事だが、ほとんどの者は大した愚痴も言わずにこなしてくれた。

 

「クソリーダーが、毎回毎回上から目線で命令しやがってよぉ。お疲れ様でした飛段さん、とか少しは気の利いたこと言えねえのかよ!」

「ちっ、また時間が拘束されることになんのかよぉ。この時間があれば、オイラの新しい芸術作品が作れるっていうのに!」

 

 飛段とデイダラに関しては少し喧しいが、通信を切ればいいだけなので、遠い雨隠れの地にいる私と長門に影響はなかった。

 飛段と同じ場所で作業に当たっているであろう角都は鬱陶しくて大変であろうが。

 

 そうして数日間の作業の後、我々は二尾の力を抜き取ることができた。

 尾獣を抜かれた人柱力は死んでしまったが、今更誰かの命を奪ったところで痛む心などない。

 次の目標に向けて動き出すだけだ。

 

「デイダラ。三尾はお前たちのノルマだ。サソリの代役としてトビを送る。既にそっちにいるはずだ」

 

 二尾を封印した後は、三尾の確保である。デイダラには新しい相方としてトビが送られることとなった。

 

 実はトビとはマダラのことである。

 当初マダラは表には出ない予定だったのだが、サソリが死んだことでその代役として表に出ることになった。

 

 そうなったのだが……。

 

「デイダラ先輩! よろしくお願いしまーす!」

「なんだテメエは! はしゃぐんじゃねえよ!」

「きゃは。先輩のいけずー♥」

「ひっつくな! 馬鹿野郎!」

 

 一体どういうつもりなのだろうか。

 

 マダラのハイテンション具合に困惑して、私と長門は思わず顔を見合わせた。事前の打ち合わせ時には、あんなキャラでいくとは聞いていなかったからだ。

 

「なんだあのお調子もんヤローは?」

「お前がそれを言うか飛段」

「あん? この俺のどこがお調子もんだってんだ角都!」

「そのままだ」

 

 マダラの奇行に、他の幹部も困惑した様子だったが、私たちほどの動揺はないように思えた。元からそういう性格のやつだと思っているのだろう。

 

 だが十年以上も昔からマダラを知っている私たちからすれば、異常すぎる光景が目の前に広がっていた。

 

「偽者なのかしら?」

「いや違うようだぞ小南。間違いなくマダラだ」

 

 一瞬偽者かと思ったが、チャクラの質はマダラのものと見て間違いなかった。

 つまり、私たちの知るマダラとトビは間違いなく同一人物だった。

 

 私たちの知るマダラが本物のマダラだと仮定すれば、角都とほぼ同じ年代の生まれということになる。

 つまり、齢九十以上の老人が、十代後半の男の子にハイテンションで馴れ馴れしく近づいていき、甲高い声を出して「せーんぱい♥」などと言いながら、キャッキャウフフと楽しそうにボディタッチをしている――そういうことになる。

 

 俄かに信じ難い光景だった。

 

(どういうことなの……?)

 

 暁の幹部として数多の修羅場を潜り抜けてきた私と長門といえど、困惑せざるを得なかった。

 

 昔マダラが、「この世界には絶望しかない」と深刻そうなトーンで私たちに語りかけていたのは、一体何だったのだろう。

 目の前のマダラは、一回りどころか五回りも六回りも年下のデイダラと心底楽しそうにじゃれ合っていた。人間同士の触れあいを楽しんでいた。人生楽しんでいた。

 

(マダラ……気持ち悪いわね)

 

 ランが昔マダラのことを心底気持ち悪いと言っていた気持ちが、今になってよくわかった。マダラの豹変ぶりを見ていると、本当に気持ちが悪かった。あまりにも不気味すぎた。マダラ気持ち悪い。

 

「小南……見なかったことにしよう」

「そうね」

 

 長門と私は顔を見合わせると、見なかったことにした。

 

 あのふざけた姿を見ていると、あんな男のために六千億枚の起爆札を集めていた自分が馬鹿な気がしてきて空しかった。

 

 あれは他人を騙すための仮の姿。目的を達成するために恥を忍んでそうしているのだと思うことにした。本性だとは思わないことにした。そうしなければやっていられなかった。

 

「三尾は問題なく確保した。オイラのノルマはこれで達成だな、うん」

「デイダラ先輩! やりましたね!」

「オメーは鬱陶しいんだよトビ!」

「キャー、先輩に怒られたー」

 

 相変わらずふざけた態度をとり続けるマダラであったが、仕事は問題なくこなしてくれた。

 

 無事に三尾を封印することができた。これで九体中七体の尾獣を確保できたことになる。

 

 あと少しだ。もう少しで夢が叶う。

 八尾と九尾さえ手に入りさえすれば夢が叶うのだ。

 

「角都と飛段がやられたようだ。相手は木の葉の忍びだそうだ」

「あの不死身コンビがな……計画にまた遅れが生じるな」

 

 九尾の人柱力の捜索のために火の国へと向かった角都と飛段であったが、木の葉の忍びたちに阻まれて討ち死にしたらしかった。

 

(一兆二千億枚の起爆札は集まったし、角都がいなくなっても大きな問題はないわね。今までご苦労様)

 

 長年金庫番として働いてくれた角都の死に対しても、サソリと同様に特に何も感じなかった。

 組織の資金繰りに多少の問題が出て面倒だという考えが真っ先に浮かんだが、それだけだ。そんなドライな考えしか浮かばなかった。

 

 全ては目的のためだ。目的を達成するためには余計な感傷などいらない。感傷など、目的を達成するのに邪魔なだけだ。

 

「流石に奴らも無能ではない。暁が人柱力を集めているということに気づいて重厚な防衛網を敷いているな」

「ではどうするの?」

「重厚な守りがある以上、それ以上の力で攻めるしかあるまい。俺たち自ら乗り込む必要があるだろう。五大国一の力を持つ木の葉が相手だ。大国を落とすくらいの勢いで攻めねば、九尾の人柱力は確保できんだろう」

「わかった。ではそのための準備を整えましょう。木の葉が相手ならそれなりの準備が必要だから、今しばらく時間がかかるわ」

「ああ頼む」

 

 こうして長門と私は自ら木の葉へと乗り込み、九尾の人柱力を確保することになった。

 

 大国火の国の隠れ里、木の葉隠れの里。

 そこを落とすということは実質、国落としも同然だ。少しばかりの準備時間が必要だった。

 

(もうすぐあの子に会えるのね。今日の夜もみっちりと殺しのシミュレーションをしておかないといけないわ。あの子をちゃんと殺すために。殺す殺す殺す――)

 

 木の葉に行けばあの子に会える。私たちを裏切った憎きあの子に会える。やっと殺せる日が来る――そう思った。

 

「小南、侵入者だ」

 

 だが木の葉に赴くよりも一足先早く、私たちはあの子と再会することになったのであった。



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ch.15 FF外から失礼するゾ~(謝罪) そのS級任務面白スギィ!! 自分、参加いいっすか?(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 どうもホモガキです。今日も“NARUTO~影への道~”の配信をやっていこうと思いまーす。

 

 前回はアスマ先生が死んだところまでですね。アスマ先生が死んで大事な時をお告げしてくれました。

 ではそこからゲームスタートです。

 

「うっ、うぅっ……」

「アスマ先生……」

 

 木の葉の里の墓地で、アスマ先生の葬式が営まれています。彼の生徒だった山中いのと秋道チョウジが泣いて先生との最後の別れを惜しんでいます。

 

 シカマルだけは葬儀に参列してないみたいですね。面倒臭くてサボったわけではなくて、ショックすぎて参列できていないみたいです。

 

 シカマルはどっかの民家の屋根の上で寝転がってぼうっとしていることでしょう。アスマ先生から貰ったライターを弄って吸い慣れてない煙草を蒸かして咳き込んでいますねきっと。シカマル流のアスマ先生の悼み方ってやつです。粋スギィ!

 

 煙草を蒸かす粋すぎるシカマル君は原作の名場面の一つですが、それはさておき。

 ここからは重要です。

 

 アスマ先生の死は本チャートにおける時報イベント(見逃してはいけないイベントの前のイベント)であるということは、前回ご説明した通りです。

 アスマ先生が死んだら自来也先生が里に訪れるので、その時に必ず接触しましょう。そして自来也先生の雨隠れ潜入ミッションに同行する約束を取り付けましょう。

 

 そのイベントを逃すと、今までの苦労が水の泡ですからね。自来也先生が里にやって来るのを絶対に見逃さないようにします。

 アスマ先生の葬式の翌日からは、朝夕二回は里の入り口と火影室近辺で情報収集しましょう。時間拘束の強いミッション等は受けず、誰かに頼まれても断ります。そうして自来也先生の来訪を待ちます。

 

「三忍の自来也さん? いや、見かけてないけど」

「里にはいないんじゃないか?」

 

 今日は訪れてないみたいですね。

 

 そんな感じで、自来也先生を来る日も来る日も探し続けます。

 

……。

……。

……。

 

「ランか。奇遇だのう」

 

 待つこと数日。ようやく自来也と会うことができました。里の入り口で自来也を見かけたという情報が得られたので里の中を探し回っていると、通りを歩く自来也の姿が発見できました。

 

「これから綱手――いや五代目に会いに行くところだ。お主も来るかの? ちとお主の耳にも入れておきたいことがあるのでな」

 

 プレイヤーが長門や小南と知己でない場合はまた違ったセリフになるのですが、今回は雨隠れ出身で彼らと知己があるというプレイングをしていますので、自来也のセリフに変化がありますね。

 表情にも変化があります。なんとも言えぬ複雑な表情をしています。

 

 暁の拠点が雨隠れにあるかもしれないと知って、自来也は死んだと聞かされていた長門たちがもしかしたら暁に関わっているのではないか、という疑いを抱いているようですね。それで複雑な表情をしているというわけです。流石最新鋭のゲームは作りこみが細かいですね。

 

――【同行する】

 

「そうか。では付いて来い」

 

 二つ返事で同行を申し出ます。このためにずっと待ち続けていたんですからね。

 火影室まで付いていきます。そして火影室でイベントが始まります。

 

「ワシは大蛇丸の動向を探る上で、奴がかつて所属していた組織である暁の情報も収集してきた。暁と名のつく組織は各地に沢山あり、その一つ一つを調べるのは大変な作業であったが、この度ようやくそれを終えた。結論から言うと、現在暴れまわっている犯罪組織の暁と大蛇丸のいた暁は同一のものと見て間違いない。そして――」

 

 自来也が五代目火影の前で自身の集めた情報とそれに対する考察を述べていきます。

 

「ワシは今回の調査を経て、件の暁の本拠地が雨隠れにあるのではないかという結論に至った。雨隠れの暁といえば、ワシは一つだけ心当たりがある」

「お前が忍術を教えた子供たちが作ったという組織かっ!? だが、あの子らはランを除き死んだと言う話だったはずだ!」

「ああ。だがそうではないかもしれぬ。リーダーであった弥彦の死と多くの構成員の死は、ラン自身が目の前で確かめたという話だから間違いないのだろう。しかし、残る二人の死は直接確かめたわけではない。確からしい筋から間接的に得た情報のみだ。それが間違っていたという可能性もある」

 

 ランちゃんがストーリーにがっちり絡んでいるんで、ランちゃんの名前がセリフの随所に出てきますね。

 雨隠れスタートで小南ちゃんの討伐をやるとこういった感じでストーリーに絡めるので面白いです。好きな物語世界の中のキャラの一人になってロールプレイングしている感があって面白いですね。このゲームの醍醐味です。

 

「ワシは暁の本拠地の疑いのある雨隠れに単身で乗り込もうと思う」

「危険すぎる! 事実だとすれば、敵の本拠地に一人で出向くようなものだぞ!」

「危険も承知。虎穴に入らずんば虎児を得ずじゃ。それに、もしワシの教え子たちが関わっているならば放ってはおけん」

「だが、それならちゃんと隊を組んで里の総力を挙げて対処すべきだ!」

「少人数の方が諜報に向いておる。隊を組んで向かったら警戒されてしまうだろう。この任務、ワシをおいて他に適任はおらん」

「だが……」

 

 揉めているようですね。超危険なS級任務を単独で受けるって言ってるんだからそれもそうでしょう。

 

 さて、このまま見ていても自来也が一人で任務を引き受けてしまうだけなんで、それだと今までの苦労が水の泡です。ランちゃんも会話に乱入するとしましょう。

 

 FF外から失礼するゾ~(謝罪)

 そのS級ミッション面白スギィ!!!!! 自分、参加いいっすか?

 いきなりリプしてすみません!許してください!なんでもしますから!(なんでもするとは言ってない)

 

――【同行を申し出る】

 

「そうかお主も来るか。あい、わかった。ではワシとラン、二人でこの任務を受けるとしよう。それなら問題ないだろう綱手――いや五代目火影よ」

「ううむ……わかった」

 

 自来也の好感度が高い上にランちゃんの実力も十分なので、問題なく同行を認めてくれました。綱手姫も渋々ですが承諾してくれました。

 

 これでキーイベントはクリアです。あとはストーリーの流れに沿ってゲームを進めていき、それで小南ちゃんと運命の戦いをするだけです。

 

……。

……。

……。

 

「死に別れた者たちへの想いがその大きな胸に詰まっとるのかと想うとやり切れんのぉ。なあ綱手よ」

 

 出立の前日、綱手姫とシズネちゃんが居酒屋でお別れの会壮行会を開いてくれました。

 自来也はお酒を飲みながら綱手姫にセクハラじみた発言をしていますが、綱手は満更でもなさそうな表情ですね。

 

 ぐいぐいと押せばお持ち帰りして抱けちゃえそうですが、自来也先生はそんなことはしません。

 ガマのおっさん、人間の鑑です。立つ鳥跡を濁さずです。

 

 ガマの兄ちゃんかっこいい! 逝くぅ~!

 

「ランさんも、気をつけて行ってきてくださいね。私とトントンも無事を祈ってますから」

「ぶぅぶぅ」

 

 憂いを帯びた表情で心配してくれるシズネちゃん、可愛いすぎですね。豚野郎( とんとん)も可愛いです。ああ~たまらねえぜ。

 可愛い和服美女と獣に心配されて見送られるとか最高なんじゃあ^~。

 

 ここでシズネちゃんたちとの最後の交流を楽しんでおきましょうね。あとは雨隠れに潜入して小南ちゃんと激しく殺り合うだけですからね。

 

「ではランよ。行くとするかの」

 

 自来也先生と共に木の葉の里を出立していきます。本来なら一人で雨隠れに赴く自来也ですが、今回はランちゃんが一緒ですね。

 見送りはいません。極秘任務ですからね。

 

 朝日を背にいざ死地へと赴かんとする二人は絵になりますね。くっそカッコイイです。

 

 ガマの兄ちゃんかっこいい! 逝くぅ~!(二回目)

 

「ここらからは重厚な結界が張られているのぉ。普通に侵入するのは無理か。どれ、口寄せの術!」

 

 雨隠れ里の境まで来ると、大量の探知結界が張られています。

 プレイヤーだけで侵入する場合はそれに対処するためのスキルを鍛えておかないといけなくて面倒なんですが、自来也先生と一緒にいればそんな面倒はありません。自来也の口寄せしたガマの体内に隠れて潜入することができますからね。

 

 自来也の雨隠れ潜入ミッションに相乗りする形で小南を討伐するのは、原作イベントを利用することでタイミングが計れてチャート通りに進めやすいという利点もありますが、自来也の助けを借りることで潜入が楽になって、戦闘スキル以外のスキルを鍛えなくて良いという利点もあります。

 

「――どうやら無事に潜入できたようだの」

 

 自来也が口寄せしたガマの体内に隠れて進むことしばらく。無事に雨隠れの里に侵入できました。

 里内に入れば探知結界はそれほど密ではありません。重要施設とかに不用意に近づかない限り大丈夫です。

 

「さて、里内を見て回って情報収集といくかの。案内頼むぞラン」

 

 自来也先生と里の中を歩き回っていきます。ランちゃんにとっては十年ぶりくらいの帰郷ですね。

 

 歩いているとよくわかりますけど、雨隠れの里は相変わらず陰気臭い所ですねー。さっきまで木の葉の里にいたから雰囲気の違いがよくわかります。落差激しすぎです。

 

 しかも以前よりも里の雰囲気が悪くなってますよ。

 今は半蔵じゃなくて小南ちゃんたちが支配しているんで、里の景観が少し変わってます。変な紙人形みたいなのがそこかしこに配置されてて、非常に宗教臭い里になってます。

 

 シュノーケルマスクみたいなのを常時つけた変態が結構な割合で歩いているだけでもお腹一杯なのに、宗教臭い奴らまで大勢いるとか、いやー、きついっす(十年ぶりの帰郷で故郷に文句を言うクズ)

 

「むぅ。相変わらず独特な雰囲気を持つ里だのぉ」

 

 自来也先生も遠まわしにディスってて草ですね。

 こんな雨ばっか降ってる糞みたいな里で孤児たちの面倒見てたとか、自来也先生はマジで人間の鑑ですね。

 

 まあこれからその恩を仇で返されることになるんですけどね。

 自来也は原作通りだと、これからかつての弟子であったペイン(長門)にボコボコにされ、片腕をもがれて全身串刺しにされた上で冷たい湖に沈められちゃいます。

 

 弟子の屑がこの野郎……

 

「婆さん、一つもらおうかの」

「アンタ、見かけん顔だね? 余所者かね?」

「ああ、物書きをしておっての。色んな里の名物を食い歩いておるんじゃよ。隣はワシの助手じゃ」

 

 自来也が普通に豚まんを買おうとしただけで、店主の婆にいきなり出自を尋ねられましたよ。

 

 田舎特有の閉鎖性、いやー、きついっす(文句二回目)

 

「それにしてもこの里は平和だのぉ」

「んだ。全てはペイン様のおかげじゃ。ありがたやありがたや」

「ペイン?」

「そうじゃペイン様じゃ」

「山椒魚の半蔵は死んだと聞いたが、その後権力の座に就いた連中はどうなったんじゃ? 確か、長門とか言う名前だったかの? いや小南だったか?」

「あ?」

 

 自来也が長門たちの名前を出した途端、店の婆さんや周囲の通行人に睨まれます。

 ヴォー怖い。すぐにその場から立ち去りましょう。

 

 なんか雰囲気がひぐらしの雛見沢村みたいですね。里全体で都合の悪いことを隠しているような雰囲気が漂ってます。雨降ってて薄暗くて宗教臭い分、こっちの方が雛見沢より雰囲気悪いですけど。

 

 いやー、きついっす(文句三回目)

 

「お団子お待たせしましたー」

「おぉ、すまんのぉ」

 

 肉まん屋に続き、お団子屋で情報収集します。

 

 団子屋の店員のお姉さん、モブなのに無駄に可愛いっすね。こんな里には勿体ないくらいの美人です。

 

「どの店先にもあるあの紙は一体何なのだ?」

「ああ、天使様ですよ」

「天使?」

「ええ。天使様を模った折り紙で、店先に置いておくとご利益があるって噂なんです。みんな買ってますよ」

「そうか」

 

 里中に配置されてる紙人形は、里の支配者である小南ちゃんたちが住民に買わせたもののようです。お団子屋のお姉さんが教えてくれました。

 

「折り紙か……ううむ」

 

 紙使いと言えば小南ちゃんですからね。当然思い当たる節があるのでしょう。

 自来也が渋い顔して唸ります。

 

 それにしても、ロリ小南ちゃんは乾パンの包み紙で折り紙をして人を笑顔にしてくれる素敵な子だったのに、今では霊感商法みたいなのに手を染めて変な折り紙作品を店に売りつける宗教のおばさんになっちゃってるようですね。

 完全に悪堕ちしちゃってます。悲しいなぁ……。

 

「テズナちゃんか。ぐふふ、良い名じゃのぉ。綱手に似ておるしのぉ」

 

 続いてキャバクラ店に情報収集に向かいます。

 出てきた牛のコスプレしたお姉さんが綱手に似ているとかで、自来也がデレデレしてますね。

 

 お前ノンケかよぉ!

 

 実はこのお姉さんの彼氏が雨隠れの里の忍びなんです。

 

 ということで、このお姉さんを辿っていき、彼氏さんとその仲間を見つけて拉致って拷問して情報を吐かせましょう。

 ほらいくどー。

 

……。

……。

……。

 

「全て吐いてもらおうかのぉ。さもなくば」

「くっ、や、やめろぉ! なにすっ、アハハハハ!」

 

 自来也が捕虜の男を半裸にさせ、脇の下を鳥の羽でくすぐり始めました。笑わせ地獄を味わわせて情報を吐かせようということみたいです。

 

「ぎゃはは!」

「ここがいいのか? ここがいいのかのぉ」

「やめっ、やめっ、アハハハ!」

 

 おっさんが若い男の脇の下をくすぐるとか、ドマイナーな性癖を突いてきますね……。

 自来也先生、めっちゃ楽しそうに男の脇をくすぐってます。

 

 やっぱりホモじゃないか!(歓喜)

 

「ペイン様は神だ。一人で山椒魚の半蔵を倒し、奴に纏わる全ての者を滅ぼし、そしてこの国を統治してくださってる。ペイン様が本当にいるのかは俺たちも知らない。普段はペイン様の代理として、天使様が神の御使いとしてペイン様の意向を伝えてくれている。天使様は青い髪の美しい人だ」

「青髪か……」

 

 やがて拷問に音を上げた忍びが持っている情報を吐き出します。

 下っ端なので大したことは知らされていないのでしょう。フェイクまじりのいい加減な情報しか吐きませんが、ランちゃんたちが持っている情報と合わせるとすぐに結論が出ます。

 

「残念ながら悪い予想は当たっておるようだのぉ。ペインは長門、天使様とやらは小南のことか。死んだと思っていた二人は生きていた。そして暁のメンバーであることは間違いなさそうだのぉ。暁のリーダーは長門、もしくはランの言う、うちはマダラを名乗る仮面の男といったところか」

「長門に小南? それがペイン様と天使様の名前だっていうのか? それに暁だと? うちはマダラ? 雨隠れの忍びである俺たちでも知らないことを……アンタら一体……」

 

 ランちゃんの情報があるんで、それに沿った会話が流されてますね。

 事前情報がないと、ペインが長門で天使様が小南という結論にはすぐには至りません。弥彦も生きているかもしれないと思いますからね。

 

 俺、知ってるんですよぉ

 雨隠れの神様を名乗る男が三十五歳中年男性の長門君だってことも、神の御使いを名乗る天使様が三十五歳中年女性の小南ちゃんだってことも、全部ね

 

「あとはペインとやらに直接会って確かめるしかないのぉ」

 

 ということで、捕虜の男を使ってペインを炙り出すことになりました。

 自来也が蝦蟇平(がまだいら)・影操りの術で捕虜の男を操ります。このまま里の重要施設へと乗り込んでいきましょう。

 

 おっと、その前にセーブは必須ですよ。最終戦でミスってもいいようにセーブしておきましょう。

 

……。

……。

……。

 

「――っ!?」

 

 捕虜の男を操りながらとあるポイントまで歩いていくと、大量の紙が襲ってきます。

 小南ちゃんの襲来ですね。しばらくはイベントシーンが続きます。その後はいよいよ戦闘ですね。

 

 さあ小南ちゃんと運命の再会です。

 

 久しぶりだなたかし。元気してたか?

 

「ペインという奴を誘き出そうと餌を撒いたが、まさかお前がかかるとはのぉ。小南」

「……」

 

 自来也が話しかけますが、小南ちゃんは無言です。

 

「術のキレも良くなったが、美人になったのぉ」

 

 自来也が軽口を叩きます。美人を見るとすぐに口説きますね。元弟子も例外ではないようです。

 

「……」

 

 冗談を言われても無表情ですね。

 おばさんになった小南ちゃん、感情なさすぎて人形みたいで怖すぎィ!

 視線だけで人殺せそうですよ。殺戮の天使様です。

 

「使いの天使様! こいつらは侵入者です!」

 

 術が解けて正気に戻った捕虜の男が騒ぎ始めます。

 

「少し離れていろ」

「は、はい!」

 

 小南ちゃんが冷徹な口調で告げると、捕虜の男は去っていきます。

 久しぶりに聞いた小南ちゃんの声ですが、口調が少し変わってますね。怖い人になってます。

 

――バァサアァッ。

 

 小南ちゃんは紙で作った翼を広げて上空へと飛び立ちます。一段高い場所で距離をとりながらこちらを見下ろします。

 

「それで天使のつもりかのぉ。天使を気取ってご利益はあったのか?」

 

 自来也先生、結構辛辣ですね。遠まわしに「三十五歳になった小南、天使ごっこしてる(笑)」って言っているようなもんです。

 口説きをガン無視されたせいで不機嫌になっているんでしょうか。

 

「ペインとは何者だ? 長門のことかの?」

「先生たちには関係のないこと。神からの命令よ、貴方たちを殺す」

 

 小南ちゃんが問答無用で攻撃を始めてきて、戦闘開始となります。

 

 普通に小南ちゃんを倒すだけなら、このまま自来也と一緒にガンガン攻めて倒せばいいだけです。ペインがやって来るまでに倒しちゃえばいいんです。それで討伐トロフィー自体は取れます。

 

 ですが、トロフィーコンプリートしようと思ったらそれだけじゃダメなんですね。

 サソリの「赤秘技(あかひぎ)百機(ひゃっき)操演(そうえん)」の術を破って倒した時に貰えるトロフィーと似てますが、小南は起爆札六千億枚という奥の手を持っていて、その攻撃を受けた上で倒すと貰えるトロフィーがあるんですね。そのトロフィーも取らないと、戦闘関係のトロフィーはコンプできません。

 

 そのトロフィーも取るため、ここは倒さずにやり過ごしましょう。しばらく経つと次のイベントが始まるんで、それまでひたすら攻撃を受け流し続けます。

 

 小南が大量の紙手裏剣をぶっ放してきますが、避けたり火遁で撃ち落しましょう。ガマのおっさんと共同作業で頑張ります。

 

……。

……。

……。

 

「ガマ油弾! 乱獅子髪(らんじしがみ)の術! どうだ、油でくっついて動けまい!」

 

 一定時間が経ち、新しいイベントが始まりましたね。

 小南ちゃんが油をぶっかけられ、動きが鈍ったところを髪で拘束されました。戦闘は一時停止となります。

 

「……」

 

 ガマ油まみれでドロドロになった小南ちゃん、ああたまらねえぜ。

 大量にぶっかけられてて事後みたいになってます。無表情でどこか気だるそうな小南ちゃん、最高です。

 

 ガマ油ローションに髪の毛触手による拘束プレイとか、変態レベル高すぎですね。流石自来也先生です。変態ガマ親父クソノンケバージョンです。

 

 ああ^~ドロドロの小南ちゃん最高なんじゃあ^~(クソノンケ)

 

「今更私たちの前に現れて何のつもりだ」

「そんなつもりはなかった。お前たちが暁でなければの。死んだと聞いていた。それがまさかこんなことになっているとは……」

 

 自来也が「何で暁にいるねんお前ら。おっさん悲しいわ」みたいなことを悲痛に訴えます。昔は優しかったとか、情に訴えることを言いますが、小南ちゃんは相変わらずの無表情です。

 

「それが挨拶もなしにワシらに向かって攻撃をしかけてくるとは。悲しいのぉ」

 

 悲しいなぁ……(諸行無常)

 

 死んだと思っていた弟子が生きてたのはいいけどとんでもねえ犯罪者になってて孫のような存在のナルトの命を狙ってるって知ったら、もうね……。犯罪者となってしまった元弟子を討たなきゃいけない立場の自来也先生の心中を思うと、涙がで、出ますよ……。

 

「先生はあれからの私たちのことを知らない」

「ランからおおよその話は聞いた。弥彦のことは残念だった」

「そう……。なら私たちの思いもわかるはず。全ては世界を変えるため。暁の夢のためよ」

「だが今の暁のやっていることは間違っておる! 何故それがわからん!」

「それが自分で考えた結論です。自来也先生」

 

 説得を続ける自来也ですが、小南ちゃんは耳を貸しません。

 そこでペインが姿を現します。ペイン六体の内の一体です。初代畜生道ですね。

 

「自来也先生、アンタは所詮外の人間だ。俺たちのことなどわかるはずもない」

「長門ぉ、変わったの、昔のお前はそんな奴じゃなかった!」

「人とは日々成長するものなんですよ先生。口寄せの術!」

 

 会話イベントが進み、ペインが大きな蟹の化け物を口寄せします。

 その蟹が大量の泡を吐き出します。狭い空間が泡で埋め尽くされ、バブル風呂みたいになっちゃいます。

 自来也とランちゃんは一時退避し、壁に吸着しながらそれを見下ろします。

 

「小南、これで動けるな」

「ええ」

 

 拘束されていた小南ちゃんですが、油が洗い流されたことで拘束から逃れることとなりました。

 

「むぅ。流石わしの弟子といったところか。ガマの油を泡で洗い流すとはの。対処が完璧じゃ」

 

 ドロドロの油まみれだった小南ちゃんですが、今度は泡まみれのビショ濡れとなってしまいました。

 相変わらずの気だるげな無表情です。これはこれで事後みたいです。ああたまらねえぜ(クソノンケ)。

 

「ラン、いかがする?」

 

 イベントシーンも終盤に差し掛かり、自来也が尋ねてきます。重要な選択肢ですね。

 

――どうする?

――【このまま二人と戦う】

――【ペインと戦う】

――【小南と戦う】

 

 このまま二対二で戦うこともできますが、ペイン(長門)がいると邪魔です。

 味方を巻き込んでしまう状況だと、小南は起爆札六千億枚の技を使ってきません。ですので、「小南と戦う」という選択肢を選びましょう。小南ちゃんとタイマンでやり合うことにします。

 

――【小南と戦う】

 

「そうか。ではワシがペインの相手をしよう。奴が本当に長門なのか見極める」

 

 自来也も敵である二人も、すんなり要求を呑んでくれました。

 小南が飛翔していくので、それを追って違うポイントへと向かいましょう。

 広い湖上、そこが最終決戦の場となります。

 

 さて、このままラストバトルといきたいところですが、今回はここまでとします。

 

 次回、いよいよ小南ちゃんと運命の対決をします。長かった小南ちゃん討伐チャートですが、次でラストですね。

 

 次回は最終回、「君が為尽くす心は水の泡」です。良い子のホモガキのみんな、必ず見てくれよな。

 

 それではまた次回お会いしましょう。さいなら~。



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ch.15 FF外から失礼するゾ~(謝罪) そのS級任務面白スギィ!! 自分、参加いいっすか?(小南)

 長門の準備が整うまで、私が一足先にあの子たちを迎え撃つことになった。

 

「小南ちゃん!」

 

 久方ぶりに会ったあの子は、より美しい花へと成長していた。木の葉の里という恵まれた場所で新たな光を受けて、伸び伸びと成長してきたのだろう。

 

 闇の世界に生きてきた私たちとは違う。光降り注ぐ道を歩んできたのだ。過去の、私たちのことなど忘れて生きてきたのだ。

 

 そう思うと溢れんばかりの殺意が湧く。それを必死に押し殺して彼女らの姿を見据える。

 

 感情に囚われては腕が鈍る。彼女たちの放つ言葉を全て無視し、殺戮人形とならなければならない。

 暁の、弥彦の夢を叶えるためにも、私は殺戮の天使とならなければいけないのだ。

 

「神からの命令よ、貴方たちを殺す」

 

 ただひたすら彼女たちの命を奪う作業に集中する。

 自来也先生は影級の実力を持つ一流の忍びだ。成長したランの実力は未知数だが決して弱くはないだろう。

 一瞬でも気の抜けない戦いとなるのは間違いなかった。

 

「火遁・炎弾!」

「沸遁・巧霧の術!」

 

 改良に改良を重ねたことで水に対してはある程度の耐性を獲得した私の紙操の術であるが、火遁と油に関しては相変わらず相性が悪かった。

 火遁と蝦蟇油を操る自来也先生、それから沸遁使いのランは私の天敵だった。

 

「くっ」

 

 一人を相手にするのならまだしも、二人だと流石に手に余った。二人のコンビネーションは、敵ながら見事なものだった。

 

「蝦蟇油弾! 乱獅子髪の術! どうだ、これで動けまい!」

 

 自来也先生に一瞬の隙を突かれ、油で動きを止められて髪で拘束されてしまった。

 

(不味い……)

 

 このまま火遁で薙ぎ払われたら不味いと思ったが、先生たちはそんなことをしてはこなかった。

 その代わり、油まみれの私を拘束したまま、言葉による攻撃を加えてきた。

 

「昔のお前は優しかった。怪我をした皆に真っ先に駆けつけて手当てをしてくれていたな。そんなお前がいきなり挨拶もなしに攻撃を加えてくるとは……悲しいのぉ」

 

 いやらしい攻撃だ。

 硬く閉じた私の心を無理やり抉じ開け、心の奥底に仕舞いこんだはずの思いを引きずり出し、それをとことん刺激してくる。

 

 こうして私を油まみれにして髪の毛で拘束したのも、全ては昔のことを思い出させるためなのだろう。

 

 遠い昔、私たちがまだ幼く自来也先生の指導を受けていた頃、先生は修行終わりに時折蝦蟇油で私たちを油まみれにして遊ばせてくれたことがあった。

 私たちは蝦蟇油をかけあったり、塗りたくったりして遊んだ。自来也先生は伸ばした髪の毛を使って私たちのことを空中に高く放り上げてくれたりして楽しませてくれた。

 

 全ては遠い昔のことだ。弥彦も長門もランも私も自来也先生も、皆揃って笑い合っていた頃のこと。そんな懐かしき良き日々だった頃の話だ。

 

 自来也先生はそのことを思い出させた上で説得をしようとしてきたのだ。

 本当にいやらしい攻撃だった。投げかけられる言葉の全てが、私の記憶と結びついて心を責めてくる。

 

 自来也先生の最も優れたる忍びの力は、戦いにおける強さではない。人の懐に一瞬で入り込んで放さない――その人心掌握術だ。

 

 並みの人間ならば先生の人柄に魅了されてころっとやられてしまうのだろう。

 昔の私も、長門も、皆が先生に魅了されていた。

 だが――。

 

(わかったようなことを。先生に私たちの気持ちなどわかるはずもない)

 

 だが今は全てが白々しく聞こえる。先生の言葉の全てに苛立つ。

 

 先生がいてさえくれれば、弥彦は死ななかったかもしれない。乗りかかった船であるならば最後まで責任を果たしてくれたら良かったのに。そうすれば弥彦は死ななかったかもしれない。

 

 それは過ぎたる願いなのかもしれない。

 先生にそこまでする義理はない。けれどもどうしてもそう思ってしまう。

 あんな悲劇的な形で弥彦が奪われてしまったのだから、そう思ってしまうのも仕方ないだろう。

 

「小南! 今ならまだ間に合う! 戻って来い!」

「小南ちゃん!」

 

 自来也先生とランが必死に叫ぶが、全ての言葉が空しく通り過ぎていくだけだ。

 どんな言葉を投げかけられようとも、私の心が動くことはない。

 

 私の心はとうの昔に冷えて固まりきっているのだ。弥彦を、皆を失ったあの日からずっと。

 

 今更光の道になど戻れない。

 あの子たちが進む先に本当の平和はありはしないと思える。長門の掲げる理想の先にこそ、真の平和があると思える。

 

 私たちが進むのは闇の道だ。外道の道にこそ本当の理想の世界がある――そう思える。

 

 あの子たちが自分の道を信じるように、私たちも自分の歩んできた道に並々ならぬ思いを持っている。

 それを譲ることなど、今更できるはずがない。

 

「貴方の掲げる理想など所詮絵空事の綺麗ごとです。それが自分で考えた結論ですよ。自来也先生」

 

 無駄な言葉の応酬をやっていると、ようやく準備を終えた長門(ペイン畜生道)が増援にやって来てくれた。

 長門は口寄せの動物を呼び寄せ、私の身体に纏わりついた不快なものを全て洗い流してくれた。

 

「長門ぉ、変わったな! 昔のお前はそんな奴じゃなかった!」

「人は変わるものですよ先生。日々成長するものだ」

「お前には数々の忍術を教えたが、一番大事なことを伝え忘れていたようだの!」

 

 男同士、濃密な時間を過ごした二人の間には、女の私にはわからない感情の動きがあるのかもしれない。

 自来也先生はいつになく感情的になり、長門と言い争いを始めた。

 長門も柄になくヒートアップしていく。

 

 長門はかつて、自来也先生を心の底から尊敬していた。

 だがその敬愛する先生の教えに従順に従った結果、最愛の弥彦を亡くしてしまった。弥彦のみならず、かつての暁メンバーの全員を亡くしてしまった。

 先生の理想など、圧倒的な力の前には無力だったのだ。

 

 だから今となっては逆に心の底から憎んでいるのだろう。長門は自来也先生のことを否定したくてたまらないのだ。この世から消したいと思うほどに恨んでいる。

 私がランのことを憎むように、長門は先生のことを恨んでいるのだ。

 

「ラン、いかがする?」

「私は小南ちゃんと話したいことがあります。先生はペインをお願いします」

「そうかわかった。無理はするなよ。いざという時は蝦蟇の逆口寄せでお前だけでも逃げろ、いいな?」

「はい」

 

 自来也先生がランとコンタクトをとる。

 ランの提案は、私たちも望むところだった。

 

「小南、ランのことは任せた。俺は自来也先生を殺る」

「ええ」

 

 向こうの提案を、長門も私も受け入れる。

 

 私はランに軽く目配せして合図すると、飛翔して移動していく。

 私の意図を読み取ったあの子は、ほぼ無言で私の後を追ってきた。

 

(やっとこの日が来たのね。今に殺してあげるわラン)

 

 広い湖上。幼き日に皆で通ったこともある場所だ。そこが決戦場所になる。そこで、私はかつての友に死を齎す殺戮の堕天使となるのだ。

 

 弥彦の思いを裏切ったあの子に相応しい罰を与えてあげなければ。死という最大の罰を。



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ch.16 君が為尽くす心は水の泡(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 どーもホモガキです。今日も“NARUTO~影への道~”の配信をやっていこうと思います。

 

 前回はついに悪堕ちした小南ちゃんと運命の再会を果たしたところまででしたね。

 今回、二人はついに激突します。今日で最終回です。

 

 さあ最終回、張り切ってゲームをやっていきましょう。

 

 ああ^~はよう血塗れで殺り合おうぜ小南ちゃん

 

……。

……。

……。

 

 自来也先生たちと別れ、小南ちゃんの後を追っていきます。降りしきる雨の中、広い湖上で戦うことになります。

 

 戦闘前のイベントが挟まれてから、戦闘開始となります。

 

「ラン、貴方が里を出て行った時からこうなるのではないかと思っていた。どうしてもやるのね……。いいわ、貴方の命、私が奪ってあげる!」

 

 戦闘前の会話イベントが終わり、いよいよ戦闘開始です。

 

「紙手裏剣・花時雨!」

 

 小南ちゃんが多数の紙分身体を生み出し、紙手裏剣や起爆札で攻撃してきます。

 

 通常、ここでは火遁で攻撃を撃ち落し、水遁やガマの油で動きを止めてチマチマとHPを削り、相手が起爆札六千億枚の必殺技を発動するのを待ちます。

 

 普通はそういうプレイングをするのですが、今回は「蒸気暴威」という強力な忍術を覚えているので、戦闘が始まったらそれを発動することに注力しましょう。

 目くらまし技を使って相手の探知から逃れ、時間稼ぎの罠をばら撒きつつ、湖底の安全な場所に逃げます。そこで術を発動させます。

 

――“沸遁・蒸気暴威”発動。

 

 ランちゃんの身体から黒い油がポコポコと浮き出てきて、それが形を作っていきます。やがて小さな人形みたいなものができます。腕に斧みたいな刃物を生やした人形(分身体)です。

 

 人形はこの時点でも動かせますが、もっと大きくして耐久力をつけさせておかないといけません。人形を動かし始めた直後に、キャパオーバーの攻撃をくらって破壊されることが間々ありますからね。そうならないために、少し大きめに頑丈に作っておきます。人形は大きいほどHPと防御力と自動回復力が高くなりますからね。

 

 人形を操りながらでも人形を大きくできますが、本体と直結しているときが一番効率よく大きくできるので、最初の内にある程度大きくしておきましょう。そして人形がそこそこ大きくなったら、人形の方に操作キャラを変えて動かしていきます。

 

 術の性質上、人形キャラを動かしている間は本体が無防備となってしまうんですが、人形を動かして本体に近づくものを片っ端から破壊していけば本体に大きな影響はありません。水中にいてダメージ軽減効果もあるんで、相当大きい起爆札の連続攻撃がこないと本体にダメージはないです。

 水中に潜って攻撃してくる紙分身を薙ぎ払っちゃえば、まず安全ですね。小南の紙分身は水中だと動きが若干遅くなるので、よほどのヘマをしなければ本体がやられることはないです。

 

 そんな感じで人形を動かして戦っていきます。水蒸気の噴射で超加速して接近して、紙分身を一体ずつ狩っていきます。水中の敵を全て屠ったら、今度は湖上に飛び出て湖上の敵を攻撃していきます。

 

 湖上に出て戦っている時に大ダメージをくらったら、水の中に隠れて人形のHPが十分に回復するのを待ちましょう。有利な湖中に誘い込んで戦ってもいいです。そうやって戦って、小南のHPをちまちまと削っていきます。

 

 注意点が一つあります。起爆札六千億枚の技を発動させるレベルまで小南を追い詰める前に、人形を限界まで大きくさせておくことです。ある程度紙分身を屠って敵の攻撃の手が緩くなったら、その間に人形をどんどん大きくしていきます。

 

 人形を限界まで大きくできたら、気兼ねなく小南ちゃんをボコボコにしましょう。彼女を完全に追い詰めていきます。ただし、勢い余って殺しちゃわないように気をつけましょうね。

 

――分身体、膨張率100%。

 

 さて。人形がマックスまでパンパンに膨れ上がりました。これから完全に小南ちゃんを追い詰めていきましょう。

 

 ランちゃんの本気、見たけりゃ見せてやるよ(震え声)

 

 パンパンに太ったデブ人形が超高速で縦横無尽に動き回って、紙手裏剣や起爆札を全部薙ぎ払っていく様は圧巻ですね。動かしていて楽しいです。小爆発を起こしながらヒャッハーと暴れまくりましょう。

 

 キュートなオデブ人形は全身が危ない凶器です

 不用意に近づいてはいけない(戒め)

 

「くぅっ」

 

 高速で動くおデブ人形を操り、切りつけ魔となって小南ちゃんの身体を切り刻んで行きます。高速タックルをくらわせて怯んだところを刃物で滅多刺しにします。

 

 チャッキーみたいで恐ろしいですね。クソデカで見た目可愛い分、チャッキーより不気味で恐ろしいかもしれないです。めっちゃ爆発引き起こしてますし。

 

「がぁっ、うぅっ」

 

 ほとんどは紙分身ですが、たまに本体がまじってたりして、小南ちゃんのHPがどんどんと削れていきます。

 

「ぐっ、はぁはぁ」

 

 小南ちゃんの痛みに耐える声が素敵です。ああ、切り刻まれて血塗れになって苦しむ小南ちゃん、たまらねえぜ(サイコ並感)。

 

 人形遊びが楽しくてつい調子に乗ってそのまま倒してしまいそうになるので、ホント気をつけましょう。虐待おばさんはほどほどにね?

 

 十分にHPが削れたら、相手が起爆札六千億枚の技を発動するのを待ちます。相手が技を発動できるようにあえて隙を作りましょう。

 

 起爆札六千億枚、いいよ来いよ!

 

「――この起爆札六千億枚! 十分間起爆し続ける!」

 

 お、ようやく目当ての技を使ってくれました。

 小南ちゃんが決め台詞を叫びながら起爆札の展開を始めました。起爆札六千億枚の必殺技発動前のモーションですね。

 

 向こうの動きに合わせ、こちらも準備します。相手が攻撃を開始するのに合わせて、限界まで太らせた人形を自爆させます。いきますよー。

 

 芸術は爆発だ!(デイダラ並感)

 

――ドゴォオォォオォオオオオオオン! バゴォオン! ドゴォオン! 

 

 一際大きな爆発音が鳴ると同時、連続で無数の爆発音が響いていきます。画面が真っ白になるくらいです。何が何だかわからないくらいですね。

 

 視点切り替えるとわかりますが、真っ白な画面の下では湖が割れて吹っ飛ぶくらいの爆発が連続で起こっています。

 爆発音がクソうるさすぎて草です。湖にいる魚君たち、大迷惑でしょうね。根流し並みの大迷惑を被ってます。

 

 やめなされやめなされ……酷い殺生はやめなされ

 

 これだけの規模の爆発が起きているので、魚君たちはおろか、水中にいるランちゃんも無事では済みません。プレイヤーも死んでしまうんですが、同時に小南も死ぬので、討伐は達成です。

 やがて画面には「ゲームオーバー」の表示が出てきますが、同時にトロフィー獲得を告げる表示も出てきます。

 

――トロフィー「天使昇天」を獲得しました。

 

 これは小南ちゃんの討伐に伴ってもらえるトロフィーです。

 普通に倒すだけでも貰えるやつですね。普通に倒すだけなら自来也先生と共闘して倒した方が獲得しやすいですかね。

 

――トロフィー「死んだかな?」を獲得しました。

 

 これは起爆札六千億枚の技をくらった後で倒すと貰えるトロフィーです。原作で小南を倒した偽マダラのセリフをもじった名称のトロフィーということみたいですね。

 

 このトロフィーを獲得したいがために、わざわざ回りくどいことをして倒したというわけですね。

 

 死んだかな?ということですが、無事、二人とも死亡しましたね。愛する小南ちゃんとレズ心中できて、めでたしめでたしです。暁小南討伐チャート、無事に達成です。

 

 これで終わりなんですが、最後にちょっと補足説明をしておきます。

 

 本来、起爆札六千億枚のトロフィーを獲得する場合、時空間忍術で逃れて倒すというのがセオリーです。原作で小南を倒した偽マダラみたいなことをするのが王道というわけですね。プレイヤーが生存した状態で倒す場合、そうやるのがセオリーです。

 

 ですが、プレイヤー死亡になっても構わないという場合、別の方法もあります。それが今回やったように、相手が展開した起爆札を誘爆させて道連れにして倒すという方法です。

 

 この方法だと、時空間忍術特化キャラじゃなくても倒せるんで、上手くやれば他のルートを攻略するついでに攻略することもできます。討伐トロフィー取りたいだけの場合、道連れにする方法の方が楽かもしれません。

 

 今回は沸遁という特殊な技が使えたんで蒸気暴威という技を使って誘爆させましたが、通常は大量の起爆札を呼び寄せたり、火遁の上級の技をぶっ放すということで誘爆させます。

 いずれも爆発を誘発させて一緒に心中するんで、言うなれば「爆発心中パターン」といったところでしょうか。

 

 それとは違った方法では、小南を体術で掴んで爆発する海の中に一緒に身投げするという方法もあります。似たような感じで、傀儡使いの場合、チャクラ糸で引き寄せて一緒に身投げするという方法もあります。

 他にも、心転身の術や影真似の術で相手の身体を奪って心中するという方法もあります。さらに他にも、チャクラ糸を使う場合と似てますが、木遁や砂系統の縛り技を使って心中するという方法もあります。

 

 これらはいずれも爆発する海に一緒に身投げするんで、「身投げ心中パターン」といったところでしょうかね。

 これはタイミング難しいんで、「爆発心中パターン」よりも少し難易度が高いです。トロフィー取りたいだけなら、今回のような「爆発心中パターン」がオススメですね。そっちの方が簡単です。

 

 ちなみに、赤いチャクラ糸を使って身投げすると、運命の赤い糸で結ばれた二人が心中するという、素晴らしい光景が拝めます。

 天使の羽広げた小南ちゃんと運命の赤い糸に絡まりながら一緒に爆発の中に飛び込んで逝くのは、さながら映画のワンシーンみたいで芸術的ですよ。

 小南ちゃんは絡まった糸から逃れようと迫真の表情で暴れてますけどね。

 

 まあということで、普通に考えると起爆札六千億枚の技を受けた上で倒すなんて時空間忍術以外では無理だろ、って思うかもしれないですが、プレイヤーが死ぬということを度外視すれば、色々と方法があるということですね。

 今回はそんな数ある方法の中、沸遁という特殊な技を使って自爆してトロフィーを獲得する動画を紹介してみました。

 

 この動画を見た視聴者兄貴姉貴の皆さんも、興味があれば是非小南ちゃんと一緒にレズ心中して楽しんでみてくださいね。色々な方法でレズ心中すると楽しいですよ。

 

 大好きなキャラと一緒に心中するって、ああたまらねえぜ。

 

 ということで、長かった小南ちゃん討伐チャートの紹介動画でしたが、これにて終了です。

 皆様、ご視聴ありがとうございました。機会があればまたお会いしましょう。ではでは~。



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ch.16 君が為尽くす心は水の泡(小南)

「……」

 

 無言で私の背を追ってくる彼女が心中で何を考えているのか、まったく想像もつかない。

 

 昔はあの子の考えることが何でもわかった気がするが、いつしかわからなくなった。今となっては何を考えているのかもさっぱりわからない。それくらい、心の距離が離れてしまった。

 それはお互い様かもしれないが。

 

 入り組んだ排水管のパイプの上を通り、沖の方の湖上へと出て行く。

 

 広々とした湖上。いくつかの浮遊構造物があり、戦うには絶好の場所。

 

 そこで我々は対峙することになった。いつもと変わらぬ酷い雨の降る中でのことであった。

 

「……」

「……」

 

 雨ざらしになりながらしばらく無言で見つめ合っていたが、先に話を切り出してきたのはランだった。

 

「小南ちゃん、美人さんになったね。自来也先生の言った通りだったね」

 

 ランは昔のようにヘラヘラとした笑みを浮かべながら話しかけてきた。

 

 私の中で殺意が膨れ上がる。あの笑顔を見ていると苛立たしくて仕方がない。

 

 無言で強い殺気をぶつけてやると、彼女はより笑みを深めた。

 殺気をぶつけられて笑みを浮かべるなど、対抗しているつもりだろうか。

 

「覚えてる? 昔一緒に花の髪飾りを作ったこと。お互いの髪色の紙を使って一緒に折り紙をして、髪飾りにしたことを」

 

 自来也先生の真似事だろうか。ランは遠い昔の出来事を懐かしそうに振り返った。

 そして昔と変わらぬ苛立たしい笑顔を浮かべながら語りかけてきた。

 

「あんなもの、とっくに捨てた。貴方の色を宿した髪飾りなど身に着けたくないもの」

「そう……。私はずっと身に着けてたよ。小南ちゃんの髪飾り、ずっとずっと」

「どうでもいいわそんなこと」

「……」

 

 ランは私が遠い昔に作った髪飾りを未だに保持しているらしく、今も身に着けているようだった。

 確かに目を凝らせば、彼女が身に着けているのは見覚えのある髪飾りだった。私が作ったものに相違ない。

 

 だがそれがどうしたという話だ。私のことを想っているというアピールなのだろうが、そうだとしたらむしろ逆効果だ。

 白々しくも昔の関係をアピールして説得しようなどとは、本当に腹立たしくて仕方ない。

 

 弥彦の夢など忘れて十年以上も木の葉で呑気に過ごしていたというのに。

 雨隠れに帰って来ずに自分の人生を満喫していたというのに。どの口がそのようなことを言えるのだと思える。

 

「話はそれだけ? じゃあそろそろ殺し合いをしましょう。貴方のこと、さっきから殺したくてウズウズしてる」

「……今の小南ちゃんには何を言っても届かないんだね。自来也先生の気持ちも、私の気持ちも、何もかも」

「そうね。説得をしようというのなら無駄。貴方が降参して私たちの下につくというのなら考えてあげてもいいけれど」

「……それはできないよ。今の小南ちゃんたちはあの世間を騒がせてる暁の一員なんでしょ? 赤い浮雲の黒装束、間違いないよね?」

「ええそう。昔言ったはずよラン。私たちの行く道が互いに交差して相容れないとしたらどうする、と。ラン、今の貴方は木の葉の忍び。私は暁の重鎮。互いに相容れない存在」

「小南ちゃんは自分の道を譲る気はないんだね。私が何を言ったとしても」

「ええ勿論。暁の夢のため、弥彦の夢を継いだ長門の理想を叶えるため、私は引くつもりなんて毛頭ない。ラン、邪魔をするというのなら貴方もここで殺す!」

 

 私から放たれる殺気。ランはそれを受け流すと、ゆっくりと口を開いた。

 

「最後に一つだけいいかな。小南ちゃんたち暁は、尾獣を集めているんだよね。九尾の人柱力もいずれ捕らえるの?」

「無論よ」

「何のために?」

「それは貴方が知る必要のないこと。目的のために必要だからそうするだけのことよ」

「人柱力の子が可哀想だとは思わないの? 尾獣を抜かれたら、人柱力の子は死んじゃうんだよ?」

「構わない。必要な犠牲よ。それで世界が救われるなら安いもの」

「そう……か。なら私も引けないね。本当は小南ちゃんと殺し合いなんてしたくないけど、やらなきゃいけないみたいだね。今の私は木の葉の忍び。九尾の人柱力を、ナルト君を殺させるわけにはいかないから」

 

 ランもようやく殺る気になったようだ。彼女から放たれる研ぎ澄まされた殺気を感じる。とてもゾクゾクする。

 

 そうでなくては殺し甲斐がない。本気で殺り合って、今までに溜めに溜めた憎しみの全てを吐き出させてもらう。

 それでスッキリして生まれ変わった面持ちで、弥彦の夢を追い続けるのだ。長門と共に二人きりで。

 

「ラァァァァアアンッ!」

「小南ちゃぁああんッ!」

 

 そうして戦いが始まる。

 

「紙手裏剣・花時雨!」

 

 挨拶代わりにと大量の紙手裏剣の嵐を浴びせてやる。

 ランは火遁でそれを難なく迎撃すると、高速で湖上を移動しながら煙幕を張った。

 

「その程度で誤魔化したつもり?」

 

 たとえ視界が塞がれようともあの子の気配は感じられる。

 私はあの子の気配のする場所に次々に紙手裏剣と起爆札を放ってやった。爆発で水柱が何度も上がるくらいの連続攻撃を加えてやる。

 

 やがて湖上に存在する全ての気配がなくなる。煙幕が消え去ると、ランの姿はそこにはなかった。

 

(確かに手応えはあった。倒したのは影分身か……)

 

 死体が消えるほどの攻撃は与えていないし、周辺に血糊一つ残されていないということは、倒したのは影分身なのだろう。

 

(影分身を囮に逃げた……わけではないようね。となれば水中か)

 

 あれだけの大言を吐いたというのに、すぐに勝負を捨てたとは考え難い。

 湖上に姿がないとなれば、水中に逃げたと考えるのが自然だろう。

 

「湖上では不利と悟ったか。無駄なことを。姿を隠しても無駄よ」

 

 紙分身を次々に生み出し、水中へと潜行させていく。

 

(紙分身が水中を移動できないと思ったら大間違いよラン。昔の私だと思わないことね)

 

 湖上にいるランが空中にいる私を狙うのは難しい。空からの爆撃を受け続けるだけだ。

 

 おそらくランはそう思い、水中に逃げたのだろう。水中なら爆撃の影響は少なく、紙の分身体では攻めてはこれないと思ったのだろう。

 

 だがその考えは間違いだ。

 

 私の紙操の術は昔よりも遥かに進化を遂げている。雨の中でも動きにまったく問題ないばかりか、水の中とて進むことができるようになっている。

 流石に水の中では地上のようにはいかないが、それでも戦闘に耐え得るだけの紙分身を送ることが可能だ。

 

 この十年、暁の幹部として力を蓄え続けてきた。闇の中でずっと血の滲むような努力を続けてきた。

 大国の庇護の下、ずっと遊んでいたあの子とは違う。私はあの子とは違うのだ。

 

(まためくらましか。無駄よ)

 

 ランは水中にも罠を張ったようだった。水中には黒い油のようなものが漂っていて視界が優れなかった。こちらの視界を奪った上で、影分身に奇襲を行わせるつもりのようだった。

 

 己の有利な場所へと敵を誘い込み奇襲する。ランのその戦いぶりは忍者として一流のものだった。

 

(向こうも遊んでばかりいたわけじゃなさそうね。いいわ。そうでなくては殺り甲斐がない)

 

 どうやらランは水中で長時間の活動ができるようになっているらしかった。息継ぎのために浮上してくる様子はない。

 昔から水遁が得意だったから、今ではそんな芸当も出来るようになっているのだろう。

 

(また影分身か。小賢しい)

 

 やがて水中に送り込んだ紙分身体から、ランの影分身体を幾つか屠ったという連絡が届くが、本体を見つけたという情報はいつまで経っても届かない。

 追加の紙分身体を送り込み、地道に探索を続ける。

 

(ようやく本体を見つけ――ッ!?)

 

 ようやくあの子の痕跡を見つけ、すぐにその跡を追おうと思ったら、こちらの行く手を阻むかのように凄まじい勢いで進んでくる物体があった。

 その物体はあっという間に近づいてくると、私の送り込んだ紙分身をボロボロに切り刻んで屠った。そして魚のように素早く反転して動きながら、私の送り込んだ紙分身を次々に屠っていった。

 

(これは人形!? 傀儡の術!? いや違う!?)

 

 水中で私の紙分身を次々に襲うものの正体は、丸みを帯びた人形であった。あの子に似たヘラヘラとした笑みを浮かべる女の子の人形だった。

 愛らしい見た目とは裏腹に、その両腕には鋭利な斧が備わっていた。

 

「――これは蒸気暴威。沸遁使いだった二代目水影が遺したといわれる術だよ。自分用に改造したから、ボーイじゃなくてガールだけどね」

 

 私の疑問に答えるかのように、どこからともなくあの子の声が聞こえてきた。どうやら人形が喋っているらしかった。本体のランが遠隔操作で操っているのだろう。

 

(二代目水影の術だと。ラン、ただ遊んでいただけではないようね)

 

 二代目水影が使っていた特殊忍術だとすれば、認識を改める必要があるだろう。

 今のランは自来也先生と同じく、影レベルの実力があるようだ。

 

(認めてあげるわラン。貴方は強い。それでも勝つのは私よ!)

 

 あの子が予想以上に厄介な相手だとわかったのに、何故か心が躍った。

 久しぶりにあの子と戦える。しかも全力でやれる。

 

(この感覚っ、何年ぶりかしら!)

 

 大きく実力を伸ばしたあの子と本気で殺し合えると思えるとゾクゾクする。下腹の辺りがキュンとしてゾクゾクするのだ。

 

(たまらないわっ!)

 

 雨に打たれて身体の芯まで冷え切った私の身体が熱くなる。身体の底から熱くなる。興奮した心臓が激しく飛び跳ねる。

 

 この十数年、碌に表情筋を動かした覚えがないけれど、きっと今の私は笑っているだろう。良い笑顔を浮かべているはずだ。

 

「死になさいラン!」

 

 新たに生み出した紙分身体に一斉攻撃させる。並みの忍びならまず生き残れないような連続攻撃の数々をお見舞いしてやる。

 

「無駄だよ小南ちゃん。この人形はまず壊れない。人形の傷は常に自動修復されるから、通常攻撃では破壊することは不可能だよ」

 

 紙分身体の一斉攻撃をくらっても、ランの作り出した人形はピンピンとしていた。

 

 流石は二代目水影の術だ。人形はかなりの耐久性を持っているらしかった。

 

「今度はこっちの番だよ小南ちゃん」

 

 そう言うと、ランは人形を一気に加速させた。

 人形は水中を高速で動き回りながら、斧状の腕を振り回す。そうして私が水中に送り込んだ紙分身を次々に屠っていった。

 

(ランっ、相変わらず忌々しい子!)

 

 あの子に似た人形がヘラヘラとした笑みを浮かべながら私の最高傑作品である紙分身を次々に倒していくのは、本当に忌々しい限りだった。思わず歯軋りしてしまうくらいだ。

 

(あの人形がいる限り、水中に潜っても本体のランを狙うことは難しい。水中は不利か)

 

 水の弱点を克服して水中での活動も可能になった紙分身といえど、水中ではやはり満足に戦うことはできなかった。ランの作り出した人形の前では無力も同然だった。

 

(なら湖上に出てきたところを狙うまで。湖上であの人形を倒した後、水中にいるランを狙えばいい!)

 

 そう思った私は、湖上で迎撃することにした。多数の紙分身を新たに生み出し、攻撃に備える。

 

 蒸気暴威。あれほどの強力な術だ。維持するだけでも少なくないチャクラを使うのだろう。

 おまけに何らかの術を行使して水の中に潜り続けているなら、何もせずに過ごしているだけでもチャクラを食うに違いない。

 

 だから焦ってランの得意なフィールドで戦うことはない。ゆったりと構えて、自分の得意なフィールドにランを誘い込めばいいだけの話だ。

 何もせずに過ごしているだけでもチャクラを食うなら、こちらが引けばランは追ってくるしかなくなるはずだ。

 

「小南ちゃん、甘いね。このお人形さんは水中より抵抗の少ない空中でこそより輝くよ。より可愛く踊るから」

 

 私が水中から撤退するのを見て、ランはそんなことを言ってきた。

 ランのその言葉通り、人形は水中で見せた動き以上のそれを見せて襲い掛かってきた。

 

(っ!? は、速い!)

 

 水中から顔を覗かせた人形は、そこから一気に空中へと飛び上がってきた。水蒸気を噴射し、物凄い速さで加速して進んでくる。私が紙手裏剣や起爆札で迎撃するよりも速いスピードで進んでくる。ペイン修羅道が放つ追尾攻撃のように、私の紙分身が動く方向へと追って進んでくる。

 

――ドゴォオオッ。

 

 体当たりされるだけでも少なくない衝撃だ。衝撃をくらって怯んだ紙分身は、体勢を立て直す暇もなくあっという間に斧でズタズタに切り裂かれていった。

 

 あれほどの巨体だというのに、速さ重視の紙分身体よりも早く動くとは。

 おそらく水蒸気の噴射による加速があるためだろう。水と油で出来た人形はパワー、スピード、タフネス、どれをとっても一流だった。

 流石は二代目水影の使った術といったところだろうか。

 

(それでも、空なら私のフィールドよ!)

 

 時空間忍術を使って大量の起爆札を展開して攻撃する。相手の進行方向にある空間を塞いでしまえば、こちらの思い通りに相手を動かすことができる。

 いかに耐久力があるとしても、起爆札の連続爆撃を受けて無事で済むはずはない。

 

(よし、このまま力押しでいけば潰せる――ッ!?)

 

 順調にダメージを重ねられている。このままいけば破壊できる。

 そう思っていたら、人形は一旦水中へと逃げ始めた。

 

(馬鹿な。完全回復しているだと!?)

 

 しばらくして戻ってくると、与えたはずのダメージは完全に消えていた。そればかりか、人形はさっきよりも大きな巨体となっていた。

 

 人形は水中に潜っている間に水分を吸収しでっぷりと太っているようだった。

 時間をかければかけるほど大きく強くなっていく人形。その愛らしい見た目とは裏腹に、恐ろしい兵器だった。

 

(不味いっ、これほどの術とは!)

 

 丸々太った人形が相変わらずのヘラヘラとした笑みを浮かべながらこちらへと向かってくる。

 有効な打開策が見つからないまま、時だけが過ぎる。時が過ぎるごとに、人形はより強力な兵器へと進化していく。

 

 ランに戦いのペースを完全に掴まれてしまった。

 

「――がはぁっ!」

 

 やがて全ての紙分身が屠られる。それからは一方的に蹂躙されるばかりであった。

 

「うがぁっ、がはぁ」

 

 天空を優雅に羽ばたいていた私は無様にも地へと引きずり下ろされてしまう。血塗れで地面に横たわる。

 そんな無様な敗北者と成り下がった。

 

「小南ちゃん。もうやめようよ」

 

 ランの操る人形は横たわる私の傍に降り立つと、見下ろしながらそんなことを言ってきた。

 相変わらずのヘラヘラとした笑みを浮かべながらだ。私に勝ったのがそんなに嬉しいのだろうか。

 

「今の暁のやっていることは間違ってるよ。一緒に謝ってあげるから、一緒に償っていこうよ」

「っ!?」

 

 ランのその言い方はまるで親が小娘に言い聞かせるかのようなものであった。他人様に迷惑をかけた小娘を親が窘めるような、そんな言い方であった。

 

 ランのその言葉は、私の心の奥底にある闇を大いに刺激するものだった。

 

(私は小娘……ランより小娘……心も身体も小娘……)

 

 闇の中で血の滲む努力を重ねたとて、遊びながら片手間に修行していたあの子に敵わないというのか。

 必死に努力しても報いられず、大した努力もしていなさそうなあの子ばかりが報いられる。いつもいつもそうだった。

 

 私の人生とは何だったのか。そんなもの、認められるわけがない。

 

「舐めるな……」

「小南ちゃん?」

「私をっ、小娘だと舐めるなぁああっ!」

 

 血が抜けて意識が飛びそうになる身体を奮い立たせて立ち上がる。そしてありったけのチャクラを注ぎ込み、時空間忍術を周囲に展開させていく。

 

 あの術を使うためだ。ランの命を確実に奪う、あの術だ。

 

 最初からあの術を使えば、簡単にランを殺すことができただろう。

 だができればあの術以外の方法で殺したかった。あの子相手に一瞬で勝負がつくのは面白くなかったし、多大なるコストがかかるあの術はできれば使いたくなかった。

 

「ラン、貴方は強い! だからこのとっておきの術を使って貴方を殺す! 貴方を殺すために必死になって集めたこの起爆札六千億枚、十年間の私の気持ちを受け取りなさい!」

 

 敗北を受け入れるくらいならこの卑劣な術を使ってでも勝つ。勝利という目的のためなら何でもする。私は弥彦が死んだあの時からそうすると決めたのだ。

 

「これはっ!?」

 

 周囲を埋め尽くしていく大量の起爆札にランは戦いている様子だった。人形から伝わってくる声でそれはわかる。

 これだけの起爆札が爆発すれば、高い防御力を誇る人形も水中にいるランも無事では済まないだろう。

 

「貴方を殺すために集めたこの六千億枚の起爆札! 十分間爆発し続ける! これで終わりよラン!」

「ッ!? 小南ちゃん、そこまで私のことを……」

 

 次々に展開されていく起爆札の束を見て、私は笑みを深める。

 ついにあの子を出し抜いてやったのだ。今度こそは私が出し抜いてやった。

 

 あの時とは違う。敗北の涙に濡れたあの時とは違う。惨めに涙を流したあの時とは違う。

 今度こそは私が勝つのだ。ランに勝って私こそが勝者となる。

 

「私は貴方を殺して弥彦の夢を叶える! 安心していい! 貴方の大事な九尾の人柱力とやらも必ず殺してあげる! すぐにあの世で会わせてあげるから! だから何も心配せずに死になさいラン!」

「小南ちゃん……」

 

 ランはもはや何も言わず、私の名前を小さく呼び続けるだけだった。

 死を目前にして恐怖で何の言葉も出てこないのだろうか。可愛い悲鳴の一つでも上げてくれれば、この十数年の私の鬱憤も少しは晴れるというのに。

 

「小南ちゃん、ごめんね」

「――え?」

 

 ランが謝罪の言葉を述べたと同時、ヘラヘラと笑っていた人形から一筋の涙が零れた気がした。

 

――カッ。

 

 その刹那、人形から無数の閃光が放たれる。人形が割れて大爆発したのだと気づいた時には、全てが遅かった。

 

――ドゴォオォォオォオオオオオオン! バゴォオン! ドゴォオン!

 

「くぅう、不味いっ、これは!?」

 

 人形自体の爆発からはなんとか逃れたものの、それだけではどうしようもなかった。

 展開した起爆札が私の制御から離れて次々に爆発していく。もはや止められなかった。

 

 術の暴走。ランはこれを狙っていたのだろう。

 

(これは……どうあがいても無理ね)

 

 爆発が徐々に迫り来る。決して逃れられはしない。積み重ねてきた業を清算する時が来たのだ。

 自ら集めた六千億枚の起爆札の爆発の波に呑まれて死ぬ。これが私が重ねてきた悪行に対する報いなのだろう。

 

(私はここで死ぬのね。そしてラン、貴方も)

 

 押し寄せる爆発の波に身体が呑み込まれていく。連続する爆発によって身体が引き千切られて粉々になっていく。痛みも苦しみもない一瞬のことだ。

 

 そんな死の間際の刹那、私は永遠のような時を感じていた。

 永遠の時の中であの子のことを考えていた。あの子と出会ってからこれまでのことをずっと考えていた。

 

 あの子は自分の命すら投げ出す覚悟で私を止めようとしてくれていたのだ。文字通り、決死の覚悟で。

 

 あの子の張りつけたような笑みは哀しみを隠すため。

 黙っていたら哀しみで潰れてしまいそうになる心を奮い立たせ、前向きに明るく生きていくための、そんな処世術としての笑み。

 哀しみを隠すために感情を消す私とは対極的な、あの子のいつもとる仕草だ。

 

 昔はわかっていた。十分にわかっていたはずだ。

 

 私とあの子は一心同体だった。性格も顔も何もかも違うけれど、同じ境遇で同じ未来に向かって歩いていた。

 お互いの髪色を宿した髪飾りを身に着け、いつも通じ合っていた。あの子の気持ちは手に取るほどわかっていたはずだ。

 

 だがいつしか何もわからなくなっていた。この呪われた忍び世界において、愛はいつしか憎しみへと変わってしまう。

 

 明かりがあれば影ができる。光があれば闇ができる。

 光は闇を育てるのだ。あの子という光が私という闇を育てた。

 

 その運命からは逃れられはしない。

 そんな残酷な忍び世界を私たちは生きている――いや生きていた(・・)というべきか。

 

 もう全ては終わりだ。この苦しみに満ちた生の世界からは解き放たれるのだ。永遠に心安らかな死の世界がやって来る。

 

 何故死の直前の今になって、あの子の気持ちに気づけたのだろうか。

 全ては遅いというのに。あの世でわかり合ったとしても意味はないというのに。

 

(ラン、ごめんなさい)

 

 だが死の間際であの子の本当の気持ちに気づけたのは僥倖だった。

 

 心からの謝罪を直接伝えられないのがたまらなく苦しい。愛するあの子に酷いことをして、それを謝れないなんて辛すぎる。

 

 それは大罪を犯した私への罰というものなのかもしれない。どんな罰よりも苦しい罰だ。

 

(あの世があるのなら……)

 

 もしあの世というものがあるならば、大悪人の私の行き着く先は地獄だろう。

 ランとも弥彦とも違う場所に行き着くに違いない。長門と共に地獄に落ちるだろう。

 

 もし生まれ変わりがあるのならば、弥彦とランは人間で、悪行を重ねた私と長門はきっと蛙になってしまうだろう。

 それも知性のある蛙じゃなくて低位の動物の蛙だろうきっと。彼女たちの掌の上で、私と長門はずっとゲコゲコと鳴いているに違いない。

 

 それでもだ。

 

(それでも許されるのであれば……)

 

 もし何かの手違いがあって同じ人間として生まれ変われるのならば、今度こそはあの子たちとずっと一緒の人生を歩んでいきたい。

 雨雲に満ちた空ではなくて、晴れ渡る空の下を歩いていきたい。ずっとずっと、いつまでも歩いていきたい。

 

(ラン、弥彦、長門。もし生まれ変われるのならばまた貴方たちと一緒に……)

 

 永遠に思える時もやがて終焉を迎える。

 私の意識が泡となって消えていく。憎しみも何も残さず、美しい思い出だけを残しながら、泡となって消えていった。



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番外編その1(BAD)
ch.17 †悔い改めて†(ホモガキ)


 ということで、準備は整いました。あとは小南ちゃんが起爆札六千億枚の技を発動してくれるのを待つだけです。既に発動水準までHPは削っているので、待っていれば発動してくれるでしょう。

 

 起爆札六千億枚、いいよ来いよ!

 

「――この起爆札六千億枚! 十分間起爆し続ける!」

 

 よし、ようやく発動してくれました。小南ちゃんが決め台詞を叫びながら起爆札の展開を始めました。起爆札六千億枚の必殺技発動前のモーションですね。

 

 あとは簡単です。相手が攻撃を開始するのに合わせて、蒸気暴威で作り出した人形を爆発させるだけです。そうすれば敵の術が暴走して小南ちゃんを倒せます。

 

 いきますよー、逝く逝く。

 

「タケシ! さっきからご飯だって言ってるだろ! いつまでゲームしてんだい!」

 

 ファッ!?

 

 リアル突発イベントが発生しました。いわゆるオカン乱入イベントですね。ゲーム実況してる時にオカンが部屋の中に入ってきちゃいました。

 

 やめてくれよ……(絶望)

 

「タケシ、何をブツブツ喋ってるんだい! ご飯だって言ってるだろ!」

「わかってるって。今行くって」

「それとさっきから五月蝿いよ! 『ああ~』とか『うう~』とか変な声ばっか出してんじゃないよ!」

「『ああ~』じゃなくて『ああ^~』ね。発音全然違うから。オカン、そんなんじゃ甘いよ」

「何をわけのわからんこと言ってるんだい。気持ち悪い声出してんじゃないよ!」

「気持ち悪い声じゃなくて、変態糞親父の芸術的な発声の真似してるだけなんだけど」

「アンタ、お父さんのこと糞親父なんて呼んでんじゃないよ! 誰に飯食わせてもらってると思ってるの!」

「いやオトンのことじゃなくて、変態糞親父っていうネットの超人気キャラのことなんだけど。二十一世紀に生まれた岡山最高の存在を、オカン知らないの? 社会インフラ整備しつつホームレスに酒振る舞って慰安までする聖人だよ?」

「わけのわかんないことばっかり言ってんじゃないよ! いいからご飯だよ! ゲームばっかりやってると、今度お父さんに頼んでこの邪魔臭い機械、全部売り払ってもらうよ!」

「ゲーム売るとか、おばさんやめちくり~」

「聞いてんのかいタケシ!」

「わかったから、すぐに行くって!」

「早くしな!」

 

 ふぅ。なんとか撃退できました。

 オカン襲来イベントは難易度高すぎですが、無事に切り抜けることができました。

 

 オカンは撃退することができましたが、ゲームはポーズし忘れたので大変なことになってます。画面に「ゲームオーバー」って出てますね。普通に起爆札六千億枚の攻撃くらっちゃいました。

 

 小南は死なず、ランちゃんだけが死んだことになってます。

 当然、トロフィー獲得はならずです。TDNゲームオーバーですねクォレハ……。

 

 あーもう滅茶苦茶だよ。まあセーブしたところからやり直せばいいだけなので許せます。後でやり直しましょう。もう許せるぞオイ!

 

 というか何でボツ動画なのに実況続けてるんだ俺。アホクサ。

 

 いや、ボツ動画ってことで編集してアップすれば使えるか。オカン乱入とか実況者としてある意味美味しいのか? ネットで話題になって再生数爆上げになって、三十分で五万のお小遣いが稼げたりして……。

 

 いや、やめておこう。身バレしてリアルホモガキに特定されて自宅突撃されたら困るからな。別に配信で飯食ってるわけじゃないし、プライベート切り売りする必要もないしな。

 変な欲出すのはやめておこう。この動画はボツだな。

 

「タケシ、ご飯だって言ってるだろ! いい加減にしな!」

「今片付けてんの!」

 

 大学生になって暇になってゲーム三昧は最高だけど、ほどほどにしておかないと不味いな。VRゲームの機材やらなんやら、ガチで売り払われちゃ困るし。うちのオカンはブチ切れたらマジでやりかねないからなぁ。ホント、ほどほどにしておかないと。

 

 あとで家の手伝いでもして媚売っておかないとね。ゲームばっかりしてたらパパやママに怒られちゃうからね。

 

 来年にはゼミ活動が始まるし、呑気な大学生活もそろそろ悔い改めないとダメだなぁ。

 怠惰な学生生活、

 

†悔い改めて†




未来設定なのに何故か昭和風なホモガキのオカン
次回ホモガキのオカンせいで大変なことに…


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ch.17 †悔い改めて†(小南)

「――この起爆札六千億枚! 十分間起爆し続ける!」

 

 あの子を殺すために用意した起爆札六千億枚、それを解き放つ時がきた。

 周囲に起爆札の山を瞬時に展開していき、湖水に偽装していた起爆札も出現させる。

 

 この術が発動したら私の勝ちも同然だ。マダラすら殺せるであろう術だ。ランとてひとたまりもないだろう。

 

(っ!? 何かくる!?)

 

 起爆札を展開している際、ランの作り出した人形のチャクラが膨れ上がる感覚があった。私の術に対抗して、何らかの術を発動しようとしていることは明白だった。

 

(させないっ!)

 

 私はとっさに、紙で作った翼を広げて天空へと飛び立った。少しでも距離をとって対処する時間を稼ぐためだ。

 

 私の術の発動が早いかランの術の発動が早いか。

 勝負は一瞬だ。一瞬の攻防が全てを決める――そう思っていた。

 

「えっ!?」

 

 そんなギリギリの攻防の最中、信じられないことが起きた。

 私が天へと飛び立った直後、ランの作り出した人形から殺気が消え失せたのだ。

 そして、人形は見る間に形を失い、ドロドロになって溶けていった。

 

(チャクラ切れ!? いやまさか!?)

 

 あれだけ大量のチャクラが練りこまれていた人形だ。十分すぎるほどチャクラはあったはずだ。チャクラ切れを起こすはずはない。

 

 完全な形を保った術が予兆もなく一瞬で崩れていくなど、ランが自ら術を解いたとしか考えられなかった。

 勝敗を、生死を決める一番大事なところで何故?

 

 そんな私の疑問に対し、時は待ってなどくれない。

 

――ドゴォオオオオン。バゴォオオオオン。

 

 私の放った術が発動していく。私はすぐに術を制御し、術の発動を止めた。

 それでも水中にいる人間を死に至らせるには十分な爆発が連続で起こった。第一波の攻撃だけでも十分すぎるほどの破壊力があるから当然だ。

 

 やがて湖の一部分が血に染まっていく。血みどろになったランが浮いてきた。

 

「ごほっ、ごほぉっ、がはっ……」

 

 ランは飲み込んだ水を吐き出すと同時、大量の血を吐いていた。衝撃波によって内臓が完全にやられているようだった。

 もはやランの命が幾ばくもないことは明白だった。

 

 私の勝ち。それは間違いない。

 だが解せなかった。勝敗など、もはやどうでもよかった。

 何故最後に勝負を捨てたのか、理由を聞かずにはいられなかった。

 

「ランっ、どうして最後の攻撃をやめたの!? 何故!?」

 

 私は血みどろになったランに駆け寄ると、怒鳴るようにそう声をかけた。

 

「私、馬鹿だから、昔小南ちゃんに言われた通り、何度もシミュレートしたよ……。この術なら小南ちゃんを殺せるって……思ってた。思ってたよ」

「なら何故!? 何故術を解除したのラン!」

 

 昔、私が抜けたところのあるランに教え諭すために使った言葉。何か行動を起こす時は、何度も脳内でシミュレートしてそれから実行しなさい。

 ランは今もその言葉を大切にして愚直に守っているようだった。

 

 なればこそおかしな話だった。

 ランが放とうとした術。それは私を殺す、あるいは道連れに出来るほどの術であったはずだ。

 それだけのチャクラが篭められていたはずだ。何度もシミュレートして私を殺すに足りる術だと計算して判断したはずだ。

 

 それなのに何故、土壇場になってその術を使わなかったのだ。

 

「でも殺せなかったよ……」

「何故!? 何故なの!?」

 

 息も絶え絶えになりながら、ランは言葉を繋ぐ。

 そんなランに、私は鬼気迫る表情で詰め寄っていた。

 

「だって、小南ちゃんは私の天使様なんだもん」

「っ!?」

「だから、殺せるわけなかったよ……」

 

 ランは血の気の失せた顔で悲しげに微笑む。

 ランは天空に飛び立つ私を見て、昔のことを思い出したらしい。

 それで最後の最後で私を殺すことを躊躇ったというのだった。

 

(ラン、貴方は……)

 

 殺意を向けられた相手に情けをかける。自分が殺されようとも私の命を助ける。

 そんなランの真心に触れて、私の脳も昔のランの記憶で埋め尽くされていく。楽しかった頃の思い出が急激に蘇ってくる。

 

(ああ……私はなんてことを……)

 

 途端に耐え難い罪悪感が私を襲った。

 声も何も出なくなっていく。呆然としたまま、私は今際の時を迎えるランの傍に寄り添っていた。

 

 どれだけ後悔したとて全ては遅い。時間は元には戻らない。

 ランの命はもはや風前の灯だった。命消えるその間際、ランは私に必死に何かを伝えようとしていた。

 

「ずっと謝りたかった。あんな別れ方しちゃってから、ずっと謝りたいと思ってた……。小南ちゃんたちが死んだって聞いた後も、ずっと謝りたいと思ってた……」

 

 ランは息も絶え絶えになり血を吐きながらも、悔悟の言葉を言い続ける。

 私が「謝らなくていい」と何度言っても、ランは謝り続けていた。最後の力を振り絞って謝り続けていた。

 

「最後にごめんって、そう言えてよかったよ……。大好きな小南ちゃんと、喧嘩別れは嫌だから、最後は笑って別れたい。ずっとそう思っていたから……ごほっ」

 

 ランが血を吐く。ランは血を吐きながらも笑っていた。

 私の手に抱かれながら笑っていた。死ぬ前にこうして昔のように私と触れ合えて嬉しいのだとか。

 

「あ、でも、私って、やっぱり馬鹿だ。ごめんねって、伝えなきゃいけない人、増えちゃった。シズネちゃんにも、自来也先生にも、綱手様にも、生きて帰るって、約束したのに……。約束、果たせなくなっちゃった……。ナルト君にも、皆にも謝らないと……」

 

 ランは冗談めかしたような口ぶりで「自分は馬鹿だ」と言って悲しげに笑った。

 

「でも、良かった。最後に、一番大好きな小南ちゃんに、ごめんって伝えられて……。小南ちゃん……昔からずっと……迷惑ばかり……本当に……ごめ……ん……ね」

「ラン? ランっ!?」

「……」

「目を開けてラン!」

「……」

 

 どれだけ揺すっても彼女が目を覚ますことはない。私の呼びかけに答えることはない。微笑んでくれることはない。

 

 本物の天使は天へと召されてしまった。もう二度と地上へと降り立つことはない。私が殺してしまったのだ。

 

 ランの死に顔は美しかった。血に塗れながらも美しかった。

 ただその顔はどこか悲しげでもあった。悲しそうに笑っていた。

 天使の死に顔は、美しくも悲しいものであった。

 

 このような美しい天使に死の間際まで悔悟の言葉を言わせ続け、地獄のような苦しみを与えて殺したのは誰だ。

 悲しげな笑みを浮かばせたまま、あの世へと逝かせたのは誰だ。起爆札六千億枚という卑劣な攻撃で殺したのは誰だ。

 

 悔い改めるべきはあの子ではない。悔い改めるべきは……。

 

(私だ。私が殺した。私がランを殺した……)

 

 思い返せば、弥彦も元暁の皆も、殺したのは私だ。私が半蔵に捕まらなければ、皆が死ぬことはなかった。

 

 全部私だ。私が皆を殺した。

 親しくなった大事な人たちを殺し続けてきた。みんなみんな、死に追いやってきた。

 

 そうだ。この手についた血糊は覚えている。あの時と一緒だ。間違いない。

 

 あの忌まわしき日。弥彦が死に、暁の皆が死んだ日。私が皆を殺した日。

 

「ぁあ……ぁああああ」

 

 また一人大事な仲間を失った。一番大事なかけがえのない親友を殺した。

 弥彦を殺し、鳩助を殺し、大仏を殺し――――そして今、ランを殺した。この私が殺したのだ。

 

 ランは私のことを天使だと言ったがそうじゃない。里の皆が私のことを天使様だと誉めそやすが違う。そんなのは全てまやかしだ。

 

 私は天使なんかじゃない。皆を死に追いやった私は――――悪魔だ。

 

「いっ、いやぁああああああああああああああ!!」

 

 天を切り裂くような慟哭が轟く。最愛のあの子の亡骸を胸に抱き、私は小娘のように泣きじゃくる。

 

 雨隠れを覆う雨雲はより一層濃くなり、雷鳴すら轟くようになった。もうこの嵐は静まることはないのだろう。

 これからどんなことが起きたとて、私の心が晴れることは一生ないと断言できる。ずっと土砂降り。ずっとずぶ濡れだ。間違いない。

 

 この世界に救いなどない。地獄とはこの現実世界そのものだ。

 

 いつぞやにマダラが言っていた言葉が、私の胸の奥にすとんと落ちてきた。




小南ちゃんを小娘みたいに泣き叫ばせたいだけの人生だった…


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ch.17 †悔い改めて†(自来也)

「では行くかの」

「はい先生」

 

 ワシとランは暁の本拠地を探るため、綱手から極秘任務を受けて雨隠れに旅立つことになった。

 

 死ぬつもりなど毛頭ないが、最大の危険が伴うS級任務であるから、何が起こるかはわからない。それなりに緊張した面持ちで木の葉の里を出立する。

 

「さあ頂こうかの。腹が減っては戦はできぬというしの」

「……」

 

 道中寄った茶屋で一息つく。

 

 ランはいつになく沈んだ様子であった。

 一見平静を装っているがワシにはわかる。あやつの師匠だからの。

 

「ランよ。そう思い詰めた顔をするでない」

「自来也先生……」

「まだそうと決まったわけではない。長門や小南が暁だという確証はない。奴らの後釜がその名を利用しているだけかもしれんしの」

 

 ランを慰めるための言葉であるが、それは自分に対する慰めの言葉でもある。自分に言い聞かせるように、ワシは希望的観測を述べる。

 

(あやつらが生きておるかもしれんとはの)

 

 死んだと思っていた二人が生きているかもしれない。それ自体は喜ぶべきものだが、ワシらの場合、素直に喜べん。

 

 二人が生きて暁の幹部をやっているということは即ち、二人が大犯罪者となっているということを意味する。

 各里の人柱力を殺し、その尾獣の力を以って世界に恐怖を齎そうとしている。

 

 ある意味、死んでいるよりもやるせない。これほど残酷なことはない。

 

 二人がそこまで堕ちるまで、何もしてやれんかったと思うと情けなくて仕方なくなる。

 ワシは師匠失格だ。そう思えてならない。

 

 ランも自分のことを友人失格だと思っていることだろう。

 その気持ちは痛いほどようわかるわ。ワシも大蛇丸が悪に堕ちるのを救えんかったからの。

 

「でももし、もし小南ちゃんたちが暁だったら……」

「ああ。その時は……」

 

 ワシらの手で引導を渡してやるしかあるまい。

 暁は人柱力を狙っている。ナルトを殺させるわけにはいかないからの。

 

「ラン、今からでも遅くない。木の葉に帰れ。もし二人が生きていて暁だった場合、お前に友殺しをさせるわけにはいかん。汚れ役はワシ一人でいい」

「自来也先生……」

 

 雨隠れ潜入任務への同行はランたっての希望であったが、ワシはやり切れぬ思いを抱えていた。

 

 ランを巻き込みたくはなかった。知り合いを手にかけるという業を背負うのはワシだけでいい。そう思っておった。

 

 だから今更翻意するように声をかけてみたのだが……。

 

「いえ、私も行きます。もし本当に小南ちゃんたちが暁だったとしたら……余計に逃げちゃいけないですから。小南ちゃんが暁だったら、その時は私が……」

 

 ランは悲壮な決意を口にする。

 説得を試みるつもりだがそれでも小南が元の道に戻れぬと言うならば、その憎しみを背負って一緒に死んでもいいくらいの覚悟だと。

 

 それを聞いて、ワシは待ったをかけた。

 

「ラン、早まるなよ。お前にはいつか雨隠れを変えるという大きな夢があるんだろう。弥彦の夢を継ぐのだろう。その夢を忘れるでないぞ。いざという時は蝦蟇の逆口寄せで離脱しろ。ワシのことは放っておいて構わん。そうしろ」

 

 以前ランに、綱手に弟子入りした理由を尋ねてみたことがあった。

 その時、ランはこう答えた。とある病んだ国を救う医者の物語に、甚く感銘を受けたのだと。

 

 その物語の主人公の医者は、国が荒廃している原因は国民の心が病んでいるからだと考えた。そして医者として人を救うと同時、人の心も救い、やがては国をも救って見せようとした――そんな物語だったそうだ。

 

 ランは長い間暗く沈んでいる雨隠れを、その物語に出てくる国と重ねたのだろう。病んでいる里を、世界を、自分がその医者になって治してやりたいと考えたのだ。

 

 若く尊い志だ。実際、病んだ里である雨隠れには、ランのような若い志を持った人間が必要なのだろう。

 

 その夢を大事にして欲しい。

 

 ワシはその夢をもう一度ランに思い出してもらい、早まったことをさせない目的で、夢のことを口に出した。

 

「いつか雨隠れを変える。そうですね。それが私の夢です。でも、友達一人救えない人間に、里を救えるのでしょうか……」

「……」

 

 師匠と弟子は似るというが、こんな所まで似るとはの。

 今のランの姿は、大蛇丸を救えなかったワシと重なって仕方ない。

 

 大蛇丸を救えんかったこと、それはワシが火影の就任を断った理由の一つだ。友一人救えぬ男に、里を救うことなどできぬからの。

 

「私は小南ちゃんを救いたい。小南ちゃんを救って、それで雨隠れも救いたい。そうするつもりです。だから雨隠れには行きます」

「そうだな。ああその意気だ。お前ならできるさラン」

 

 ランは悲壮な覚悟を決めたようだった。

 

「ま、そう気負いすぎるな。まだそうと決まったわけじゃない。ワシらが盛大な勘違いをしとるという可能性も残っておるからのぉ。お前は馬鹿だし、ワシも意外と抜けたところがあるからのぉ」

「あはは、そうですね」

 

 ワシはできればランのその覚悟が良い意味で全て無駄になればいいと思った。

 色々と気を揉んだものの、実の所、長門も小南も関係なかった。ただの杞憂であった。ワシらはとんだ勘違いをしておっただけ。そうであればいい。

 

 そう思ったのだが、忍び世界とは残酷だった。

 

「藍色髪の天使と呼ばれる者。紙使いか……。そして輪廻眼の使い手と思われるペイン……」

「やっぱり小南ちゃんたちが……」

「残念ながらその可能性は高いようだの……」

 

 ワシらは雨隠れに潜入して暁の情報を集めた。

 あの二人が暁ではない証拠を集めるつもりで、あの二人が暁ではないと信じて、諜報活動を行った。

 

 だが集まるのは、二人が暁の幹部であるという可能性を強める証拠ばかりであった。皮肉なものだった。

 

 やるせない。忍び世界とはここまで残酷なものなのか。今更ながら再度そう実感する。この世界は呪われているとしか思えん。

 

「あとは直接会って確かめるしかないのぉ」

 

 やりきれぬ思いを抱えながら、ワシらは捕虜にした男を囮にして、二人を釣り出した。

 

 最初に罠にかかったのは天使と呼ばれておる女――小南であった。

 成長していて別人のようになっていたが、面影があり、間違いなくあやつであった。

 

「術のキレも良くなったが、美人になったのぉ小南」

「……」

 

 小南はワシの挨拶代わりの軽口にも何も反応を示さなかった。

 

(これが……あの小南だというのか……)

 

 表情がまったくもって欠落している。昔はそうじゃなかった。ランほど感情表現豊かではなかったものの、それなりに喜怒哀楽を表現する可愛い子であった。

 

 小南はワシが面倒を見た孤児四人の中では誰よりも優しい子であった。ランに聞いた話では、自らの空腹を我慢してでも誰かにパンを分け与えるような優しい子であったそうだ。怪我をしたらすぐに駆け寄り手当てをする、ワシの知る小南はそんな子だ。

 

 それなのに今の小南は……。

 

「神からの命令よ、貴方たちを殺す」

 

 ワシらの説得の声にも、小南は一切耳を貸さない。憎しみの篭った目でこちらを見据え、かつての師匠と友の命を刈り取るための容赦のない攻撃を加えてくる。

 

(本気のようだの。本気でワシらを憎んでおるのだな……)

 

 ワシは弟子を正しく導けなかったのだと悟った。

 あんな優しい天使のようだった子をこんな殺戮の堕天使に変えてしまった。悔やんでも悔やみきれぬ。

 

 小南が暁で間違いないということは、残るペインと呼ばれている者は長門の可能性が高いのだろう。ランの情報では弥彦が死んだのは間違いないというからの。

 

 その予測も当たっていて欲しくなかったが、残念ながら当たっていた。忍び世界とは真に残酷だ。

 

「自来也先生、アンタは所詮外の人間だ。俺たちのことなどわかるはずもない」

 

 大蝦蟇仙人から受けた予言の中にあった、忍び世界を救う予言の子。そうだと見込んで、ワシが誰よりも目をかけた長門。その子までもが悪道に落ちてしまっていた。

 

 もし長門が予言の子であるならば、ワシは正しく導けなかったことになる。世界の破滅へと導いてしまったことになる。

 

 だとすれば悔やんでも悔やみきれぬ。ワシはなんと駄目な師匠であろうか。

 

(長門め、お前という奴は!)

 

 悔しさと同時、憤りも湧いてくる。

 それは不甲斐ない自分に対してのものなのか、散々目をかけてもらっておきながら悪に堕ちてしまった長門に対するものなのか、わからない。様々な感情が混ざり合って爆発しそうになる。

 

「長門、変わったの、昔のお前はそんな奴じゃなかった!」

「人とは日々成長するものなんですよ先生」

「それは決して成長ではないぞ!」

「貴方の無駄な説教など必要ありませんよ先生」

 

 先生。昔何度も呼ばれた言葉だ。

 だが今のその言葉は、昔とは違って恐ろしいほどに冷たい響きを持っていた。同じ言葉でも、かつての親しみを込めた言葉とは完全に別物だった。

 心の篭りようで、言葉とはこうも違うものなのか。そう思い知らされる。

 

「私は小南ちゃんと話したいことがあります。先生はペインをお願いします」

 

 ランは小南を引き離し、もう一度説得を試みようとしているようだった。

 ならばワシは長門の説得をする。誰よりも目をかけた長門の目を覚まさせてやる。

 

「そうかわかった。無理はするなよ。いざという時は蝦蟇の逆口寄せでお前だけでも逃げろ、いいな? ワシの言ったことを決して忘れるなよ」

「はい」

 

 ランに念を押しつつも、それ以上の余計な言葉は言わなかった。

 

 今のランはワシとも互角に戦えるほどの忍びだ。昔の小さかったあの子ではない。ワシと背中を合わせて戦える立派なくの一に成長を果たしている。

 

 ならば信じて託すだけだ。ワシはワシの戦いに集中する。

 

「仙人モード! フカサク様、シマ様、頼みますぞ!」

 

 フカサク様とシマ様を呼び寄せ、合体して仙人モードとなる。

 

 仙人モードはブサイクな姿になってしまうので本当は使いたくないんだが、そんなことを言っている場合ではないからの。

 全力を出さなければすぐにやられてしまうだろう。

 

「長門ォオオオ!」

「自来也ァアア!」

 

 そして激しい戦いが始まる。

 

 拳と拳。魂と魂で触れ合っているからわかる。

 このペインと呼ばれる死体を操っているのは間違いなく長門であると、戦うごとに確信が持てた。

 

「ぐほぉっ」

 

 長門は恐ろしいほど強くなっていた。三忍と呼ばれたこのワシがほぼ防戦一方となるなど、信じられんほどの実力だ。

 

「はぁはぁ」

「忍びの命とも言える片腕を失くしましたね先生。これで貴方の力は半減する」

 

 激しい戦いの中で、片腕を失ってしまう。

 だがワシには片腕でも使える螺旋丸がある。フカサク様たちのサポートもある。片腕でもまだまだ十分に戦える。

 

 長門を何としてでも元の道に戻して見せる。それが出来ぬのなら、ワシが引導を渡してやる。

 

 そんな覚悟で身心の痛みに耐えながら必死に戦っている――そんな時のことだった。

 

――ドォオオオオオオン。

 

 一際大きな爆発音が響いた。ワシらのいる建物を揺らすほどの大きな衝撃だった。

 

 それからしばらくして、フカサク様が信じられない言葉を口にした。

 

「ランちゃんのチャクラが……消えた?」

 

 肩に乗っていたフカサク様が動揺した口ぶりで呟く。

 その言葉に大きな衝撃を受けたワシは、危うく仙人モードを解除してしまうところだった。

 

「まさか!? 離脱しただけでは!?」

「いや、蝦蟇のチャクラは感じられなかった。おそらくランちゃんは……」

「くぅっ、あの馬鹿者が!」

 

 ランは小南が改心すると最後まで信じて戦い抜き死んだようだった。

 自らの死を以ってしてでも、小南を止めたかったのだろう。

 

(大馬鹿者が。死に急ぎおって!)

 

 ワシがあれほど早まるなと忠告したのに、その言葉を無視するなど呆れるほどの馬鹿だ。

 ランは昔も、成長した今も、馬鹿だった。大馬鹿者だった。本当に馬鹿だ。

 

 だがその覚悟に関しては何も言えんかった。それはワシも同じだからだ。弟子は師匠に似るというが、ワシも大概大馬鹿だからの。そんな所まで似なくてよいというに。

 

「自来也ちゃん、その傷じゃ。ランちゃんもやられた。ここは引け。生きて帰って情報を持ち帰るんじゃ」

 

 フカサク様とシマ様が撤退を進言してくる。冷静に考えればそれは正しいのだろう。

 

 だがワシの覚悟は決まっておる。長門と小南が暁の幹部だとわかった時点で決めてある。

 

「いえ、元々引くつもりはありませんでしたが、ランが死んだのなら、ますます引けなくなりました。ワシは最後まで戦います。情報はフカサク様たちで持ち帰ってくだされ」

「何を!?」

「ここで引いたら、ワシがワシでなくなる。お願いします。(おとこ)、自来也、最後の頼みです」

 

 生きて帰ると約束した綱手には悪いが、ここでおめおめと引き下がるわけにはいかぬ。

 自来也(わし)自来也(わし)でなくなったら、愛する女と会っても空しいだけだからの。合わせる顔がないわ。

 

 男にはどんなに苦しくとも引けぬ時がある。背負わにゃいかん時があるのだ。

 

「……わかった。ワシが最後まで付き合う。母ちゃんは先に帰っておれ」

 

 馬鹿な男の意地だとシマ様はなおも撤退を勧めてくるが、ワシの意を汲んだフカサク様が背中を押してくれた。

 

「ありがとうございますフカサク様」

「ああ。自来也ちゃんの最後の頼みだからの」

 

 フカサク様と視線を合わせて頷き合うと、隠れていた場所から姿を現し、長門に再び向き合う。

 

「ランが死んだようだな。小南が殺したか」

 

 何の感情もないような長門の物言いに、ワシの心は熱くなる。

 

「お前っ、なんとも思わないのか! ランが死んで、本当になんとも思わんのか! そこまで堕ちたか長門ォ!」

「……ここに連れて来た貴方が悪い。ランを殺したのは貴方だ」

「詭弁を!」

 

 長門の心は完全に闇に支配されておるようだった。ランが死んでさらなる闇に囚われたようだった。自分の感情をさらに奥に封じ込めてしまったように思えてならなかった。

 

「お前には多くのことを授けたが、一番大事なことを教え忘れたようだの。今からそれを教えてやる」

「貴方に教わることなど、もう何もありませんよ。俺はもう貴方よりも遥かに優れている。術のキレもスピードも、全て貴方以上だ。片腕の貴方が何の術を教えるというんです?」

「術じゃない。忍びとして一番大事なものだ」

「忍びとして大事なもの?」

 

 ワシは長門が操っている死体の目をしっかりと見据えて言う。

 

「心だよ。漢、自来也、一世一代の命を賭けた大授業だ。目ん玉おっぴろげて、よぉおく見ておけのぉ」

「また貴方お得意の精神論ですか。その精神論のせいで弥彦は死に、そして今ランが死んだ。もういい、もう沢山だ。ここで貴方との因縁を全て断ち切る!」

 

 それから、最後の戦いが始まった。

 ワシは自分の命を賭けて長門に最後の授業をするつもりで戦った。

 

 激しい戦いの最中、走馬灯のようにこれまでの人生を振り返ることができた。

 

(思えば、ワシの人生、負け続きであったの……)

 

 世間では三忍などと華やかに謳われておるが、実際は違う。

 挫折。後悔。そればかりの人生であった。

 

 背中を預けあった友を悪の道から引き戻せなかった。

 初めての弟子四人は二人が悪の道に染まり、残る二人は死なせてしまった。

 その後採った弟子の中で一番の才能があったミナトが火影まで出世した時は鼻高々だったものの、結局奴も死なせてしまった。里の外に出ていたワシはミナトの死に何もしてやれんかった。

 

 悔やんでも悔やみきれぬことばかり。ワシの人生、後悔塗れじゃ。

 

 だがそれでも……。

 

「はぁはぁ」

「何故そこまでして立ち上がる? もはや立ち上がることすら困難のはずだ」

 

 どんなに苦しくても立ち上がる。たとえ両目が潰れようとも、たとえ両腕を失おうとも、たとえ腹に複数の風穴が開こうとも、立ち上がる。最後の最後まで諦めずに戦う。

 

「まっすぐ自分の忍道は曲げない。そしてどんな時も諦めない。それがワシじゃ」

「この期に及んでまだ精神論ですか。呆れたものだ」

 

 どれだけ後悔しても、突き進む。諦めたらそこで終わりだ。死のその瞬間まで諦めない。

 

(猿飛先生の気持ちが今になってようわかるわ……)

 

 呼吸するのも辛いボロボロの極限状態の中にあって、ふと、ある人物の姿が浮かんだ。大蛇丸を止めようと最後まで戦った己の師匠の姿が浮かんだ。

 

 猿飛先生は意味のない死になるかもしれないというのに最後まで戦った。最愛の弟子である大蛇丸の改心を願って、最後まで戦い続けたのだろう。自らの命が放つ最後の光が、闇に覆われた大蛇丸の心の奥に届くと信じて。

 

 ならばワシもその轍を踏むとしよう。ワシはあの人の弟子なのだからな。

 

「心だ。長門よ。心を取り戻せ」

「まだ精神論をっ、いいかげんくたばれ、この老いぼれが!」

 

 ワシの言葉に熱くなる様子を見せる長門。

 人間的な反応だ。まだ長門の心に人の心が残っているのだと確信が持てる。

 

 ならばまだ救いはある。そう信じたい。このワシの死が礎となって良い結果を齎してくれると信じたい。

 

 それが後の世、ナルトたちの生きる世のためになると信じたい。

 きっとランもそう思って最後まで戦ったに違いない。

 

(ああ、今度こそ終いじゃな……)

 

 冷たい湖の底に身体が沈んでいく。もう足の指先一つ動かせん。完全に終わりだ。

 

 三忍と呼ばれたワシも、最後は暗い湖の底か。諸行無常じゃの。

 

(ナルト。お前こそ、この忍び世界に変革を齎す予言の子に違いない……信じているぞ)

 

 死に行く中、思い浮かぶのは、最後の弟子、ナルトのことだ。

 

 ミナトの血を受け継ぎ、ランに育てられた子。そしてワシの薫陶も受けた。真っ直ぐな良い子に育った。

 きっとこの暗黒の忍び世界を変えてくれる大きな光となるに違いない。

 

 ランの命もワシの命も、全てはナルトという大きな光を育てるためのものだったと思いたい。

 ナルトこそが、ワシたちの生きた証しなのだと信じたい。

 

(漢自来也一代記。そろそろペンを置くとしよう……)

 

 ワシは全ての思いをナルトへと託し、暗い湖の底に沈んでいくのであった。



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ch.17 †悔い改めて†(ナルト)

途中まで本編共通
時空バンバン飛びます
長すぎだけどお兄さん許して


 何で俺ばっかりこんな目に。物心ついた頃からそんなことばかり思ってた。

 

 外に出れば誰かから陰口を叩かれ後ろ指を指される。仲間外れにされる。

 他の奴らでそんなことされてる奴なんていねーのに、なんで俺だけ。

 そう思うと、いつも涙が出た。

 

 ずっと泣いてばかりいるのは嫌で、いつしか感情を外へとぶつけるようになった。むしゃくしゃした時はイタズラをして、里の奴らを困らせてやった。そうやって鬱憤を晴らしてた。

 

 でもイタズラする元気もない時は、いつも一人で公園のブランコに乗っていた。プラプラとブランコをこいでぼうっとしてた。

 

 他の子供たちが親に手を引かれて自分の帰るべき場所へと帰っていく。そんな羨ましい光景を横目にしながら、ずっと夕日を見てた。

 俺には家族もいねえ。帰るべき家もねえ。

 

 正確には家族に近いもんはいる。三代目の爺ちゃんはことあるごとに俺のことを家族だって言ってくれる。寝泊りする家もある。でもそうじゃねえんだ。

 

 爺ちゃんは火影っていう木の葉の里の偉い人間だ。里の全ての人間のことを家族だと思ってる。

 だから俺もその一人に過ぎない。特別な誰かってわけではない。血が繋がってるわけでもない。

 忙しいからほとんど構ってはくれない。たまに一緒に飯を食うくらいだ。

 

 そういう意味では俺に本当の家族なんていないし、帰るべき家もない。

 俺はいつだって一人だ。一人ぼっちだ。

 物心ついた時からそんな孤独を味わい続けてきた。

 

 こんな状況があと何年続くのか。下手したら三代目の爺ちゃんと同じくらいの年寄りになるまでこの状況が続くのかもしれない。

 アカデミーに入っても誰も俺と仲良くなんてしてくれないし、この状況がこれから良くなるなんて到底思えなかった。死ぬまで一人ぼっちかもしれない。

 

 そう思うと絶望だった。六歳にして人生の絶望を感じてた。

 

 そんな時、ランの姉ちゃんと出会ったんだ。

 ある日、いつものように一人でブランコをこいでいると、姉ちゃんが俺に近寄ってきたんだ。

 

「ねえ、君……」

 

 物心ついた頃から悪意を持った人間は大勢見てきたから、相手が良い奴か悪い奴かは一目見ればだいたいわかる。

 悪い奴だったら石でも投げてすぐに逃げるところなんだけど、姉ちゃんは見るからに悪意のなさそうな優しそうな顔してた。

 

 だから少し意地悪してやった。あえて毒づいた言葉を吐いてやった。

 

「なんだよ。姉ちゃんも俺のこと苛めるのか?」

 

 絶望たっぷりって顔で言ってやる。

 こうすると良い人の場合、金を置いて立ち去ってくれたりする。

 

 金をくれるなんて良い奴に見えるがそうじゃない。本当の良い奴ってわけじゃない。罪悪感ってものを消すためだ。本格的に関わって俺をどうにかしようなんて思わない。

 

 それでも俺にとっては良かった。

 悪意のある奴よりよっぽどマシだからだ。金を置いていってくれるならそれに越したことはない。

 その金で駄菓子や玩具でも買って遊ぶだけだ。一日くらいはそれで寂しい心を満たせる。

 

 だから精一杯毒づいてやったんだ。美人で身なりも小奇麗にしてるからきっと金持ってるだろう。優しそうだから同情を誘えば金を置いてってくれるだろう。そう思った。

 

 そしたら姉ちゃんはそんな俺の真意を見透かしたように、俺に飛び膝蹴りを加えてきたんだ。

 

「てええええいっ!」

「ぐぇっ!? い、いきなり何すんだってばよ!? 姉ちゃん!」

 

 今までにそんなことをしてくる奴はいなかった。

 しけた顔をしているいたいけな子にいきなり飛び膝蹴りを加えるなんて人間のすることじゃない。そんな極悪なことをする奴は今までにいなかった。

 ランの姉ちゃんは人の良い顔してとんでもない姉ちゃんだった。

 

(何だこの姉ちゃん!? 鬼か!?)

 

 混乱するばかりの俺に、姉ちゃんはさらなる暴力を加えてきたんだ。

 

「子供がそんな辛気臭い顔しない!」

「イテテ! やめるってばよ!」

「笑え! 笑いなさい!」

 

 姉ちゃんは俺の頬を抓ると引っ張った。上下左右へと思いっきり引っ張り、それで俺は無理やり笑顔を作らされた。

 

「ぷふっ、変な顔! 面白い!」

「ね、姉ちゃんが無理やりやったんだろ!」

 

 とにかく無茶苦茶だった。

 顔はこんなに整っててスタイルもすっげーいい美人なのに、頭は本当に悪いんだって感じだった。頭の出来具合は俺といい勝負だった。

 

「君、可愛いからちょっとウチに来なさい!」

「えっ、ちょっ!?」

 

 姉ちゃんは問答無用で俺の首をロックすると、そのまま引きずるようにして自分の家へと連れ去っていったんだ。

 姉ちゃんは細い腕しててか弱そうに見えるのに、とんでもねえ力を持ってた。俺がどんなに暴れても全然逃げられなかったんだ。

 

(この姉ちゃん、人攫いか!? だ、誰か助けてくれってばよ!)

 

 人攫いかと思ったけど違った。

 俺は姉ちゃんの家で一緒に風呂に入って、その後に飯を食うことになったんだ。

 

「たんと召し上がれ! おかわりもあるわよ!」

 

 出てきたのはご飯と味噌汁と焼き魚だった。イサキとかいう見たこともねえ魚が食卓に上ってた。

 

「なんだよこの魚……」

「イサキ! この世界で一番美味しい魚よ!」

 

 アジの方がいいって文句言ったら「イサキが一番美味しいの! アジは邪道!」って言われて滅茶苦茶怒られた。

 食べてみたらアジの方がやっぱり美味しかったけど、姉ちゃんが怖くてそんなことは言えなかった。

 

「イサキ、美味しいってばよ!」

「でしょ!」

 

 でもイサキも悪くないかなって思えた。

 食べ物の味そのものよりも、食事自体が楽しかったんだ。

 

 自分のことを思ってくれてる誰かと楽しく会話しながら飯を食う。

 三代目の爺ちゃんとの飯も悪くないけど、爺ちゃんとの会話はいまいちつまらない。学校はどうだとか、俺があんまり喋りたくない話ばっかり聞いてくる。

 その点、姉ちゃんとの飯は最高だった。俺と同レベルの思考してる姉ちゃんと食う飯は、人生で最高というくらい美味かった。

 

「姉ちゃん、サンキュな」

「え、何、もう一回言って。大きな声で言いなさい!」

「やだ絶対言わない」

「言いなさいこら!」

「やだっつーの!」

 

 その日は姉ちゃんの家に泊まることになった。

 一生この家で姉ちゃんと一緒に暮らしていきたいって思えるくらいに最高に満たされた時間が過ごせた。生まれて初めて、家族っていうのはこういうもんなんだと思えた。

 

 翌日の早朝に爺ちゃんが迎えに来てくれて、俺は自分の家に帰ることになったんだけど、その後は爺ちゃん公認で姉ちゃんの家に遊びに行けるようになった。

 初めて俺を無条件で受け入れてくれる姉ちゃんの存在は、本当に嬉しかった。

 

「ナルト君、今日から正式にウチの子よ!」

「え、姉ちゃんが俺の保護者? 嬉しいってばよ!」

 

 しばらくすると、姉ちゃんが三代目の爺ちゃんの代わりに俺の保護者になってくれることが決まった。本当に嬉しかった。

 

 それからというもの、毎日一緒に風呂入ったり、飯作ったり、遊んだり、色んなことをした。

 

「そこはこうするの! こうやってこう!」

「全然わからねーってばよ!」

 

 姉ちゃんは時折忍術の稽古もつけてくれた。姉ちゃんはかなりの腕を持った忍者らしい。

 

 元は木の葉の生まれじゃないみたいなんだけど、木の葉の里に来てからというものとんとん拍子で出世してるらしかった。

 そんな凄腕忍者だから、初めて家に連れられてきた時、俺がまったく逃げられなかったのも納得だ。

 

「俺、姉ちゃんみたいな凄いくのいちになるってばよ!」

「ぷっ、ナルト君、男の子はくのいちになれないんだよ。くのいちは女の子の忍者だけの名前なの! 女の子だけの特権よ!」

「え、そうなの? じゃあ男の忍者は何て言うんだってばよ?」

「男の子はそのまま忍者よ」

「えー、男の場合はそのままなのかよ。他に何か格好良い呼び名とかないのかよ?」

「役職だったらあるわね。下忍、中忍、上忍とかね」

「もっと凄いのは何だってばよ?」

「この里だったら一番上は火影ね。今はヒルゼン様がなってるよ」

「火影か。三代目の爺ちゃんと同じ……」

 

 姉ちゃんと忍術の修行しながら話している時、人生の目標が決まった。

 どうせ忍者になるなら一番凄い忍びになってやる。里の皆に慕われてる三代目の爺ちゃんみたいな忍者になってやろうと思った。

 

「だったら俺は火影になる! そんでもって里の皆に俺の存在を認めさせてやるんだってばよ!」

 

 俺がそう言うと、姉ちゃんはキョトンとした顔で固まってた。

 いつもは茶化したり喜んだりしてくれるのに何も反応がなかった。

 俺は自分が変なこと言ったんじゃないかって思えて急に恥ずかしくなった。

 

「やっぱ変かな。俺が火影なんて……」

「ううん! そんなことない! とっても素敵! だったら、私がナルト君の夢の一番の応援者になるわね!」

「そっか。へへっ」

 

 姉ちゃんは俺の夢を一番に応援してくれると言った。本当に嬉しかった。

 それからというもの、俺は自分の夢を誰にも憚ることなく宣言することにしたんだ。

 

 他人にどれだけ笑われようがどうでもいい。俺には姉ちゃんがいる。姉ちゃんが応援してくれているなら百人力だ。

 どんな困難が待ってようと必ず火影になってやろうと思った。火影になることで、里の皆に俺という存在を証明してやろうと思ったんだ。

 

 姉ちゃんという家族が出来た。人生の夢も出来た。

 アカデミーではイルカ先生という良い先生にも恵まれ、今までの苦しみが全部嘘だったかのように、生活の全てが充実したものへと変わっていった。

 

 良いことっていうのは連鎖して起こるものらしい。

 人生前向きになれると、自分以外の他人にも優しくできた。アカデミーでも誰かに優しくできた。

 

「大丈夫か?」

「ああ」

「そっか。じゃあな」

「おいおい礼くらい言わせろよ。俺はシカマルってんだ。サンキュな」

 

 目の前で転んだ奴を起こすのを手伝ってそのまま立ち去ろうとしたら呼び止められた。話すきっかけになって、そのまま一緒に遊ぶことになった。

 

 シカマル。初めての友達って呼べる奴が出来た。とてつもなく嬉しかった。

 

 シカマルを通じて友達の輪は広がっていった。チョウジ、キバ――その他大勢の友達が出来た。アカデミーでの生活が本当に楽しいものとなった。

 

 キバは何かと突っかかってきていけ好かない奴だけど、それでも全力でぶつかってきてくれることが嬉しかった。

 アイツは俺のことを「認めない」と言うが、全力で対等にぶつかってくれるということ自体が認めてくれている証だ。

 

「いい加減諦めろ! ドベが俺様と赤丸に勝てるわけねえっつの!」

「くっそー」

 

 キバとの駆けっこは負けてばっかりだったけど、それでも一緒に駆けっこをするのが本当に楽しかった。一人居残りで練習して勝てた時は最高に嬉しかった。

 友達との競争は自分をより成長させてくれるって姉ちゃんが言ってたけど本当だと思えた。

 

 一人で里を歩いていると相変わらず嫌な目にも遭ったけど、それ以上に楽しいことがいっぱいあった。人生最高の気分を味わっていた。

 

 そんな時だ。アイツの不幸を知ったのは。

 

「聞いたか? うちは一族って、アイツを残して全滅したらしいぜ」

「それマジ?」

「哀れ。悪に憑かれた一族の末路だな」

 

 最近里が騒がしいと思ったらとんでもないことが起きていたらしい。

 同じクラスのうちはサスケ。アイツの一族がアイツを残して全滅したらしかった。

 

 サスケは昔から気に食わない奴だった。

 超エリートで忍者としての才能に溢れててアカデミーの全員から一目置かれてる。何もかもが格好良くて、授業で何かすれば女の子から常に黄色い声援が飛ぶような奴だった。

 

 俺とは対極的な位置にいる奴。絶対に相容れない奴――それがサスケだと思ってた。

 

 でもそれは違ったんだ。

 家族はおろか親戚一同皆殺しの悲惨な目に遭ったっていうのに、心配して真摯になって声をかけてくれる奴は誰もいねえ。

 調子乗ってたエリートが落ちぶれていい気味だ、落ち目だとばかりに、ここぞと陰口を叩かれていた。

 アイツは仲良く遊ぶ友達もおらず、夕暮れの川原で一人、流れる川の水面をずっと眺めてた。

 

 そんなサスケの姿を見て、サスケは俺だと思った。

 サスケは俺と同じ孤独を背負っていたんだ。絶対に相容れない奴だと思ってたのに、途端に親近感が出てきてしまった。

 

 俺が人生の絶頂を感じている時、サスケは昔の俺みたいな人生の絶望を感じている。そう思ったらほっとけなかった。

 

「鬱陶しいんだよお前。俺に同情するな。俺をテメーと一緒にするな。勝手に同一視するな。気色悪い」

「なんだよ! 人が心配してるってのに!」

「他人の同情している暇があったら自分のことを考えろドベ。このままだとお前だけ落第だぞドベ」

「サスケ、てめえ!」

「やるかドベ!」

 

 どんなに気遣った言葉をかけても、あるいは逆に挑発するような言葉をかけても、サスケはそれを拒絶するだけだった。

 仲良くなりたくて近づいたのに、気づけば思いっきり喧嘩してた。

 

(俺の気持ち、どうすればお前の心に届くんだ。サスケェ……)

 

 サスケのことが気になって夜も碌に眠れなくなった俺は、姉ちゃんに相談することにした。姉ちゃんならきっと何か良いアドバイスをくれるんじゃないかって思った。

 

「わかるよ。好きで好きでたまらなくて、それでちょっかいかけるんだけど全部かわされちゃう。気に入られようとしてわざとヘラヘラとした態度をとるんだけど、それが向こうの癇に障って逆に嫌われちゃうんだよね。すっごいわかるよ」

「嘘だろ? 姉ちゃん、なんでそんなに俺のことわかるんだってばよ? まるで俺の心が覗かれてるみたいで気持ち悪いってばよ……」

「私もそうだったから。昔ね。本当に好きな子がいたんだ」

 

 相談している時、姉ちゃんは昔話をしてくれた。

 そう言えば姉ちゃんが木の葉に来る前の話は聞いたことがなかった。

 以前に何度か尋ねてみたことがあったけど、姉ちゃんはその度に言い辛そうにしてたから、いつしか聞くのをやめちまった。

 

「私、小南ちゃんのことが大好きだったんだ」

 

 姉ちゃんは昔の友達の「小南」って奴のことを話してくれた。

 そいつは頭が良くて何でもそつなくこなして格好良くて、サスケみたいに優秀な奴だったらしい。

 姉ちゃんの憧れの人だったらしい。俺にとってのサスケと同じ存在だったみたいだ。

 

「それで、そいつはどうなったんだってばよ?」

「その子は死んじゃったんだ。だからもう一生仲直りなんてできない。もっともっと仲良くなりたかったのに、もう仲良くなんてなれないんだよ」

「そうなのか……」

「でもサスケ君は生きてるでしょ?」

「ああサスケは生きてる。生きて俺のすぐ傍にいる」

「だったら嫌われようともアタックし続けるのみだよ。私と小南ちゃんの関係とは違って、ナルト君たちはまだ未来があるんだもん。これからどんどん良い方向に発展する可能性があるよ。だったら良い未来に向けて真っ直ぐに突き進むだけだよ」

「ああ姉ちゃんの言う通りだってばよ。自分の思いは曲げねえ。真っ直ぐ、サスケの心に一直線にアタックし続けるだけだってばよ!」

「頑張れナルト君。私は二人のこと、ずっと応援してるよ!」

「サンキュ姉ちゃん! 悩みが全部吹っ飛んだってばよ! サスケェ、今すぐにお前の元に行ってやるってばよ!」

 

 姉ちゃんのアドバイスに勇気づけられた俺は、サスケのことは絶対に諦めないと決めた。

 サスケにどんなに嫌われようが関係ない。アイツが今の俺みたいに前向きに生きられるように、全力を尽くしてやろうと思った。

 

「いつも鬱陶しいんだよウスラトンカチ!」

「何を! サスケェ!」

 

 それからというもの、俺はサスケにちょっかいを出し続けた。

 ちょっかいを出し続けすぎて、アイツが隙を見せるのは昼飯の時だけだってのがわかっちまうくらいまで、アイツのことがわかっちまうようになった。

 結局仲良くなんてなれずにいつも喧嘩になっちまうんだけど、拳を交わすごとにアイツのことが少しだけわかる気がして嬉しかった。

 

「なんだその無様な変化の術は。相変わらず才能なしだなドベ」

「くっ、サスケェ……」

「印の結びも甘ければ変化自体もお粗末だな。変化の術は観察力がものを言う。ドベで注意散漫なお前では百年かかっても無理だろうな。忍者なんて辞めた方がいいな。死ぬだけだ」

「っ!?(こいつ、馬鹿にしながらもアドバイスしてくれてるのか?)」

 

 なんとなくだけど、サスケも俺のことを少しずつだけど認めてくれてるってわかった。そう思ったらとてつもなく嬉しかった。

 

 この調子で何年かかったとしても、サスケの心から闇を振り払ってやろうと思った。

 かつての自分と同じだった奴を放ってなんて置けねえ。里の仲間一人救えない奴に、火影になる資格なんてねえからな。

 

――ぶちゅぅうう。

 

「おぇええええっ!」

「てっ、てめえナルト! どういうつもりだ!」

「じ、事故だってばよ!」

 

 ちょっかいをかけすぎて、空回りしちまったこともある。

 アカデミーを卒業して間もなくのこと。サスケとガンつけ合ってたら、後ろにいた奴に肘突きされる事故が起きて、サスケとキスしちまった。

 サクラちゃんといのにはそのことでボコボコにされるし、最悪だったってばよ。

 

「ナルト君はサスケ君のことが本当に好きなのね。ラブ入ってる?」

「違う! 絶対違う! 姉ちゃん、冗談はよしてくれってばよ!」

 

 悪いことというのは重なるもので、その時たまたま仕事でアカデミーにやって来てた姉ちゃんにまで見られちまったのは一生の不覚だった。

 姉ちゃんにはことあるごとにサスケとのキスのことをからかわれて最悪だった。

 

 俺のサスケに対する気持ちは絶対にラブじゃねえ。似たもの同士の友達として好きで放っておけないってことだ。

 勘違いしないで欲しいってばよ。俺が好きなのはサクラちゃんだっつーの。

 

「へへ、俺も一人立ちすんだ。いつまで姉ちゃんに頼ってばっかじゃいらんねえからな!」

「うん、寂しいけどしょうがないね。私の元から離れても、私はナルト君のこと、ずっと応援してるよ」

 

 アカデミーを卒業して姉ちゃんとの共同生活は終わることになった。

 少し寂しい気もしたけど、俺も独り立ちしなきゃなんねえ。下忍になっても姉ちゃんにおんぶに抱っこじゃいられねえからな。

 

 下忍になってからは、姉ちゃんとの別れの寂しさを感じる暇もないくらい毎日が忙しかった。

 カカシ先生とサスケとサクラちゃん――第七班の皆と任務に励む日々。

 任務自体はつまんねえもんばっかだったけど、皆と一緒に任務するのは本当に楽しかった。

 

「え、ランの姉ちゃんも今回一緒の任務受けることになったのか?」

「正確には別件だけどね。でも第七班の皆と同行することになったの」

「姉ちゃんと一緒の任務なんて嬉しいってばよ!」

「同行者は貴方でしたか。まあよろしくです。担当上忍のはたけカカシです」

「うっそ、こんな美人がナルトのお姉さんだなんて嘘でしょ?」

「ちっ、姉さん姉さん五月蝿い奴だ」

 

 波の国の任務では姉ちゃんと一緒になった。

姉ちゃんと一緒に任務を受けるなんて初めてのことで嬉しかった。

 仮に敵に襲われても大好きな姉ちゃんは俺が守る。そんな気持ちで任務に向かった。

 

「敵襲!」

 

 それほど難しくない任務だと思われていたけれど実は全然違った。敵の忍びの襲撃があって命の危険がある厳しい任務だった。

 

「沸遁・巧霧の術! ナルト君、大丈夫?」

 

 忍び同士の本気の殺し合い。情けないことに、俺はビビって一歩も動けなかった。

 姉ちゃんを守るつもりが、気づけば守られてた。

 

「これは血継限界か。俺でもコピーできんな」

「写輪眼と同じ特殊能力だと……?」

 

 姉ちゃんの使う術は凄くて、あのカカシ先生とサスケも驚いていた。

 

(ランの姉ちゃん、本気で戦ってる所初めて見たけどスゲー)

 

 俺の姉ちゃんは本当に凄いんだって思えて嬉しかった。強くて格好良くて美人で優しくて、誰にでも自慢できる姉ちゃんだ。

 でもそんな浮かれた俺の心中を見透かすかのように、サスケは声をかけてきたんだ。

 

「怪我はねえかよビビリ君。大好きな姉さんとやらが傍にいてくれて良かったな。いなきゃ死んでたぜお前」

「くっ、サスケェ……」

 

 サスケには俺の一番痛いところを突かれちまった。

 サスケは姉ちゃんに頼りきってる情けねえ俺の心を見透かして、発破をかけてきやがったんだ

 

「任務、続行だってばよ!」

 

 サスケになんて負けてらんねえと思った。だから気合を入れるために、毒をくらった手にクナイをぶっ刺して血抜きをしてやった。

 

「何やってるのこのお馬鹿!」

「ぐええ! 痛いってばよ姉ちゃん!」

「お馬鹿な子にはお仕置きよ!」

「イタタ! 姉ちゃんのビンタの方が痛いってばよ!」

「愛の鞭よ!」

 

 馬鹿みたいな血抜きをしたせいで姉ちゃんに怒られてビンタをくらっちまった。

 姉ちゃんのビンタ、正直クナイで手をぶっ刺したのよりも痛かったんだけど。

 

「手、見せてみなさい」

「へへ、姉ちゃん、サンキュ」

 

 ビンタをくらって散々怒られた後は姉ちゃんに治療してもらった。

 チャクラを通して姉ちゃんの優しさが伝わってくるようで嬉しかった。

 

「へー、医療忍術って凄いのね。傷が一瞬で塞がっていくわ」

「ちっ、姉さん姉さん本当に五月蝿い奴だ」

 

 サクラちゃんは医療忍術に興味を持ったようで、姉ちゃんの術を真剣になってずっと見てた。

 サスケは何か知らないけどずっとイライラしてて舌打ちばっかしてたってばよ。

 

「カカシ君、担当上忍なのにだらしないわよ?」

「だらしない先生ですまない……」

 

 波の国の任務では再不斬っていう強い忍びと戦うことにもなった。

 激しい戦いになり、カカシ先生が写輪眼の使いすぎでぶっ倒れて、それで姉ちゃんに介抱されてた。

 

「カカシ君、はいどうぞ」

「いや、自分で食えますから」

「はい、あーん」

「勘弁してください……」

 

 終始姉ちゃんのペースに押されっぱなしのカカシ先生は、見てて楽しかったってばよ。

 カカシ先生、いつも俺たちといる時は余裕ぶっこいてるから、そうじゃない先生の一面を見れたのは面白かった。

 

「カカシ君、ナルト君たちの教育に悪いからエッチな本は全部燃やしておいたわよ」

「え? そ、そんな……」

 

 スケベな本を取り上げられて火遁で燃やされてたのは、流石に可哀想だと思ったけど。

 

「カカシ君! マスクの下はすっごいイケメンじゃなーい!」

「本当だってばよ!」

「先生、今度からずっとマスク外しててくださいよー。イケメンなのになんで隠す必要があるんですか?」

「くだらねえ」

「もう勘弁してくださーい。マスク返してくださーい。とほほ……」

 

 それはそうと、カカシ先生の素顔は凄い美形だったってばよ。マスクしてるのが勿体ないくらいだった。

 

「っ!? 何者だ!?」

「サスケ? どうしたんだってばよ?」

「今そこに誰かいたような気が……」

「え、誰もいないってばよ?」

「幽霊? ちょっとサスケ君、怖いこと言わないでよ」

「俺の気のせいか。戦闘後だけに気が立ってるようだな」

 

 サスケは安全な家の中にいても常に気を張って警戒を続けてた。

 流石はサスケだ。俺も負けてらんねえと思った。だから木登り修行では精一杯頑張った。

 

「うぅ、父ちゃん、何で死んじまったんだよぉ……」

 

 タズナのおっさんの家では一騒動あった。

 おっさんの孫のイナリって奴が自分の気持ちを押し殺しながら一人で泣いてた。

 俺は昔の自分を見てるみたいでもどかしかった。

 

「イナリ君、辛かったね……」

「っ!?」

 

 姉ちゃんはそんなイナリにも優しくしてやってた。昔俺がされてたみたいにな。姉ちゃんは本当に優しい人だ。

 

「この甘えん坊の泣き虫野郎が! お前なんてずっと泣いてろっつーの!」

 

 なら俺はあえてイナリの嫌われ者になってやろうと思った。

 優しくされるだけじゃダメだ。俺に対するサスケみたいに、常に叱咤してくれる奴がいないと人間ダメだと思う。

 そう思ったから、俺はわざと挑発するようなことを言ってやった。

 

 そんな俺の本心を見透かしたのか、姉ちゃんは何も言わずに微笑んでいてくれた。

 

「こんなところで寝ていたら風邪引いちゃいますよ?」

 

 波の国の任務の最中には、白っていう美人の姉ちゃんとも知り合った。

 夜の修行の最中に寝ちまって、朝起きたら白の姉ちゃんが傍にいたんだ。

 

 最初会った時は普通に美人の一般人の姉ちゃんだと思ったんだけど、実は男であの霧隠れの追忍の仮面を被った敵だと、後でわかった。

 男なのにランの姉ちゃんに負けないくらいの美人だなんて、ありえないってばよ。

 

「君には大切な人がいますか? 人は大切な何かを守りたいと思った時に、本当に強くなれるものなんです」

 

 ランの姉ちゃん、サスケ、サクラちゃん、カカシ先生、三代目の爺ちゃん――里のみんな。

 皆のことを思えば強くなれる。いやなりてえ。白に言われてそう思った。

 

「君、再不斬と一緒にいた霧隠れの追忍の子ね。ガトーに雇われてるのね」

「っ!? 何を言ってるんです?」

「私、全部知ってるのよ。変化の術!」

「その顔は……最近ガトーに雇われた謎のくのいち。そうかあれは貴方だったんですね」

 

 白との話の途中で姉ちゃんが乱入してきて、よくわかんない話となった。

 

 姉ちゃんは別件任務でガトーって奴のことを追ってたらしい。それで白と何らかの取引をしていたようだった。

 

「感謝しますランさん。それからナルト君」

「いえいえどういたしまして~」

「何だかしんねーけど、俺も白とは戦いたくねえから良かったってばよ!」

 

 姉ちゃんのおかげで戦わなくて済む。そう思ったんだけど、そうは上手くいかなかった。

 俺たちと再不斬たちは再び戦うことになったんだ。

 

「やむを得まい。雷切!」

 

 殺す気でかかってくる相手に躊躇する気はないのか、あるいは俺たちに危険が及ぶ可能性を排除しようとしてくれたのか、カカシ先生は凄い技を発動して再不斬の命を奪おうとしていた。

 そんな時、ランの姉ちゃんは迷うことなくカカシ先生の前に飛び出していったんだ。

 

「カカシ君! ダメ!」

「なっ、ラン何を!?」

 

 姉ちゃんは両の手を広げながらカカシ先生の前方に立ち塞がって攻撃を止めさせようとしていた。

 カカシ先生は酷く驚いた様子で慌てて攻撃を止めていた。あのまま突っ込んでいたら姉ちゃんの命は危なかっただろう。

 

「はぁはぁ……リン……」

 

 あわや味方の命を奪っていたかもしれないという状況で、カカシ先生の右手はずっと震えてた。胸を押さえながら激しく呼吸してた。

 

「女! どういうつもりだ! テメエに情けをかけられる覚えはねえ!」

「ダメよ! 白ちゃんから話は聞いてないの! 私たちが戦う必要はないのよ!」

「うるせえ! 木の葉の忍びであるお前たちのことなんざ信じられるか! 俺は何も信じねえ! 何も信じられねえ! 自分以外はな!」

「白ちゃんのことすら信じられないっていうの!」

「アイツは道具だ! 道具が何言おうと関係ない! 俺の命令通り動けばいいんだ!」

「貴方って人は! 半殺しにしてでも目ぇ、覚まさせてあげるから! ボッコボコにしても医療忍術で回復すれば全部オーケーよね!」

「ちっ、アイツみたいな厄介な術を使いやがるっ、くそ!」

 

 姉ちゃんは戦いながら根気よく再不斬の説得を続けてた。

 他人が信じられない。仲間である白ですら道具扱いする悲しい男。それが再不斬だった。

 そんな奴の目を覚まさせてやろうと、姉ちゃんは全力で身体張ってた。

 

「ちっ、まだ生きてやがったか。今だかかれ! 皆殺しだ!」

 

 やがてガトーたちがやって来て、再不斬ごと俺たちを始末しようとしてきた。そんで俺たちは全員で協力してガトーの奴らをぶっ飛ばしてやったんだ。

 

「女、感謝する。お前たちがいなければ、俺たちは裏切られて無様に死んでたかもしれねえ。敵にすら情けをかけるお人よしなお前たちを見て、俺は人をもう一度信じてみようと思った。白と共にもう一度人生やり直してみることにする」

「ありがとうランさん、ナルト君、そして皆さん。このご恩は決して忘れません」

 

 全てが終わり、再不斬たちは姉ちゃんに礼を言ってた。

 姉ちゃんが止めなければ、俺たちは本気で殺し合ってて最悪の結末を迎えてたかもしれねえ。こんな風に笑いあってはいなかっただろう。

 

「またいつか会うってばよ!」

 

 俺たちは笑顔で握手を交わしながら(再不斬は笑ってなかったけど)別れることになった。

 初の上級任務、どうなるかと思ったけど何事もなく終わって良かった。

 

 大きな任務を終えてゆっくりする暇もなく、しばらくすると中忍試験が始まった。

 なんとか一次試験を突破して二次試験に向けて修行してる時、エロ仙人に出会ったんだ。

 

「お前、まったく才能ないのぉ。水面歩行すらまともにできんとはのぉ」

「うるせー! 覗き魔に言われたくないってばよ!」

 

 エロ仙人は俺のことを才能ないと馬鹿にしつつも、やけに熱心に指導してくれた。口は悪いが本当に良い人だってわかった。

 

「何っ、お前、ランのことを知っておるのか?」

「そっちこそランの姉ちゃんのこと知ってるのかってばよ!?」

「ああランはワシの元弟子だ」

「嘘だろ!?」

「本当のことよ」

 

 エロ仙人は昔姉ちゃんの師匠をやってたこともあるらしい。本当に世間ってのは狭いもんだと思った。

 

「頼むエロ仙人! 俺もランの姉ちゃんみたいに鍛えてくれってばよ! 俺も姉ちゃんみたいにすっげー忍びになりてえんだ! 中忍試験にぜってー合格してえんだ!」

「そう熱心に頼まれたら考えてやらんこともないが。でものぉ、ワシも忙しいからのぉ」

「そこをなんとか頼むってばよ!」

 

 あの強くて凄い姉ちゃんの師匠をやってたというならエロ仙人も凄い人に違いない。そう思って、俺は必死に頼み込んだ。

 

 姉ちゃんに教わるという方法もあったが、昔からそうだけど姉ちゃんに聞いても「ここはこうする。ここはああする」とか意味わかんねえことしか言わねえんだ。姉ちゃんは教えるのが超下手で全然参考にならない。

 

 その点、エロ仙人は全然違った。少しの間のことだったけど、エロ仙人は教えるのが上手いと感じた。だからこの人に教われば俺はもっと強くなれると思った。

 

「ならとりあえずセンスを見てやるゆえ、一番自信のある術でも見せてみろ」

「わかったってばよ! ハーレムの術!」

「なっ、ぶほぉーー!?」

 

 一番自信のある術をやってみろと言われたので、おいろけの術の進化版のハーレムの術をやってやった。

 小さい頃から美人の姉ちゃんの裸を見て育ってるから、おいろけの術には一番の自信がある。

 スケベなエロ仙人になら通用するかと思ったが、通用しすぎて気絶しちまったのは予想外だったってばよ。

 

 そういえば三代目の爺ちゃんにハーレムの術を仕掛けた時も気絶してたっけか。「ナルト、お前はワシを暗殺する気か……。火影暗殺は重罪じゃぞ……」とか言ってたっけ。イルカ先生も丸一日気絶してたし、俺のおいろけの術は一部の人にはかなり効くみたいだ。

 

「ご、合格じゃ……。楽園は木の葉にあったか。灯台下暗しとはこのことだのぉ」

「やったってばよ!」

「といっても、ワシは忙しいからずっと木の葉にはおれんぞ。その間だけ見てやる」

「それでもいいってばよ!」

 

 エロ仙人から口寄せの術を習ってその修行をやることになった。

 

「あら自来也先生じゃないですか!」

「おおラン! 相変わらず美人じゃの!」

「ランの姉ちゃん!」

 

 途中からランの姉ちゃんも加わって修行することになった。

 俺はいつまで経っても口寄せの術が成功しなかったんだけど、ランの姉ちゃんは流石で何度か練習していると成功していた。

 

「ランちゃんっていうのねぇ。アンタと私、気が合いそうだわん」

「よろしくねガマ(りき)さん!」

 

 姉ちゃんはガマ力とかいう変な蛙を呼び出していた。

 同じ口寄せの術と言っても、相性によって呼び出される相手が違うみたいだ。俺の場合、ガマ吉とかガマ親分なんだけど、姉ちゃんの場合、そのガマ力とかいう奴だった。

 変わりもん同士、相性がいいってことみたいだな。

 

「やったー! ついに成功したってばよ!」

「やったねナルト君!」

「おお、やはり追い込まれてできるようになるタイプだったか」

 

 口寄せの術はなかなか習得できなかったんだけど、エロ仙人とランの姉ちゃんに崖から突き落とされるという荒療治の末、なんとか会得できた。

 姉ちゃんの使う術は俺じゃできないもんばっかだけど、同じ術が使えるようになって、なんだか嬉しかったな。

 

(この術を使って二次試験を突破してやるってばよ!)

 

 そう思ったんだけど、中忍試験の最中、木の葉崩しが始まったんだ。木の葉崩しはなんとか防げたものの、三代目の爺ちゃんが死んじまった。

 

「うぅ、爺ぃ、何で勝手に死んでるんだこれぇ……」

「木の葉丸君、辛かったね」

「うわああ、ランの姉ちゃぁああん!」

 

 里の皆が哀しみに沈む中、姉ちゃんは気丈だった。姉ちゃんは苦しんでる木の葉丸を支えてやってた。

 

「辛かったね」

「うわぁああ! ランの姉ちゃん!」

 

 木の葉丸だけじゃねえ。苦しそうな顔してる小さな子たち全員の所に行って励ましてやっていた。姉ちゃんは本当に優しい人だ。

 

 三代目の爺ちゃんが死んで、次の火影を決めなきゃなんなくなった。

 それで俺たちは綱手の婆ちゃんのところに向かうことになったんだ。

 

――ボキッ、バキィッ。

 

「ぐわぁあああ!」

「サスケェ! お前ぇ、サスケに何しやがる!」

「おっと、ここから先はいかせませんよぉ。兄弟の感動の対面に水を差してはいけません」

「ぐぅあああ! うぁあああ!」

「お前には憎しみが足りない。俺のことを憎め。憎み続けるがいい。哀れな弟よ」

 

 婆ちゃんの捜索中、サスケがイタチっていう奴にボコボコにされてる現場に遭遇した。

 サスケの兄貴にして復讐相手――うちはイタチは、とんでもないくらい強い忍びだった。その相棒の鮫みたいな奴もかなりの実力者だった。

 

「ちくしょう俺はまだあの男に届かないのか……」

 

 サスケはイタチにボコボコにされて手足を折られて凹んでた。

 

 姉ちゃんはいつもならそんな奴を見たらすぐに飛んで行って優しくしてやるのに、サスケにはそうしなかった。最低限の傷の手当をすると、ほったらかしにしてた。

 俺がどうしてサスケには優しくしてやんねえんだって聞くと、姉ちゃんはニコリと笑いながら言った。

 

「それは君のお仕事でしょ?」

「っ! ああそうだな!」

 

 姉ちゃんは昔に話したことを覚えていたらしい。

 サスケの闇を払えるのは俺しかいない。俺じゃなきゃダメなんだ。

 それでサスケのことをあえてほったらかしにしてたらしい。俺に任せるために。

 

(サスケェ! 俺はお前を絶対一人にはさせねえ!)

 

 姉ちゃんの言葉に促され、俺はすぐにサスケの所に慰めにいった。当然拒絶されたけど、そんなの関係ねえ。表面上は拒絶されても心の奥底では俺の気持ちがちゃんと届いてるって、信じてるからな。

 

「ナルト、サスケのことは俺に任せておけ。担当上忍の俺が責任をもって対処する。お前は自来也様と共に綱手様の捜索を頼む」

「ああ、わかったってばよ!」

 

 怪我人のサスケはカカシ先生に任せて、俺たちは綱手の婆ちゃんの捜索に再度赴くことになった。

 

「火影なんて馬鹿がなるもんだ。なる奴の気が知れないねぇ」

「火影を馬鹿にする奴は許さねえ! ぶっ飛ばす!」

「いいだろう。表に出ろガキ!」

 

 綱手の婆ちゃんの第一印象は最悪だった。大酒飲みでギャンブル狂い。おまけに火影のことを馬鹿にしてた。

 だから喧嘩になって戦うことになった。

 

「ぐはっ!」

「実力もないガキが意気がってんじゃないよ!」

 

 でも火影に推薦されるだけあって、婆ちゃんは滅茶苦茶強かった。俺は手も足も出ないでボコボコにされた。

 でも諦められなくて、必死で食いついて啖呵切ってた。

 

「……訂正しろ。火影を馬鹿にする奴は許さねえ! 火影は俺の夢だ!」

「っ!?」

 

 そしたら婆ちゃんは何故か呆けた表情をしてた。

 

「縄樹……」

 

 綱手の婆ちゃんは、昔のランの姉ちゃんと似たような反応してた。俺が火影になると言うと、誰かの名前をポツリと呼んで呆けてた。

 

「いいだろうナルト。お前のことを認めてやる。ただし」

 

 ボコボコにされながらも踏ん張った甲斐あって、綱手の婆ちゃんは俺のことを認めてくれた。

 ただし条件付きだった。一週間で螺旋丸っていう凄い技を身に着けられたら認めてやるって言ったんだ。

 

 それで俺はエロ仙人と一緒に修行することになった。修行は中々大変だったけど、なんとか螺旋丸を習得することができた。

 

 その後大蛇丸とその弟子カブトと戦うことになって、なんとかあいつらを撃退することができた。

 俺は綱手の婆ちゃんから認めてもらって初代火影の首飾りをもらって、婆ちゃんは五代目火影に就任してくれることになった。

 

「そんなサスケが!?」

「ああ里を抜けたらしい」

 

 綱手の婆ちゃんが五代目になって一件落着かと思ったら、とんでもねえことが起きた。サスケの奴が里抜けしたらしかった。

 

 カカシ先生、サスケのことは全部任せろって言ってたのに酷いってばよ。

 

「ナルト、私の一生のお願い……サスケ君を連れ戻してぇ」

 

 カカシ先生の愚痴を言ってる暇もなく、俺たちはすぐにサスケの後を追うことになった。中忍となったシカマルの指揮の下、ネジやキバたちと一緒にサスケの後を追ったんだ。

 

 サクラちゃんにもお願いされたし、絶対にサスケを連れ戻すつもりだった。

 

「サスケェ! お前の手足ボキボキに折ってでも連れ帰ってやるぞ!」

「できるもんならやってみろ!」

 

 シカマルや皆のおかげで俺はなんとかサスケに追いつくことができた。それで終末の谷ってところで、サスケと戦うことになったんだ。

 

「お前に俺の何がわかる! ずっとあの女と一緒だったお前に俺の孤独などわからない! 孤独を気取って俺に寄り添うふりをしながら、本当はずっと孤独じゃなかったテメエが何を抜かしてやがる!」

「っ!?」

「俺は復讐者だ。俺には憎しみが足りない。もっと深い孤独が必要だ。あの男を殺すためには、木の葉の里だろうが何だって捨ててやる。全ての繋がりを今ここで断ち切る!」

 

 俺はサスケを止められなかった。戦いに負けて気を失って、気づいたらカカシ先生の背中で眠っていた。俺は無力だった。

 

「くそぅ……サスケェ……」

 

 俺はサスケの孤独をわかったふりして全然気づいてやれてなかったんだ。

 俺の言葉も、力も、何もかもがアイツに届かなかった。友達失格だ。

 

「サスケェ……」

 

 悔しくて泣いた。もうずっとこのままサスケを諦めるしかねえのかなって思ったら自然と涙が零れ落ちた。

 アイツが残していった木の葉の額宛を握り締めながら、しばらくずっと泣いてた。

 

「諦めるな! サスケ君のこと好きなんでしょ! ここで諦めたら全部終わりよ!」

 

 サスケを失って落ち込んでたらランの姉ちゃんに励まされて、俺は再びやる気を取り戻した。

 姉ちゃんに励まされると、不思議とやる気が満ちてきた。

 

(サスケェ、俺は絶対にお前を諦めねえぞ!)

 

 諦めるなんて俺らしくねえ。サスケは絶対に連れ戻す。姉ちゃんに励まされて、もう一度その覚悟が出来上がった。

 

 その後、俺はエロ仙人と修行の旅に出ることになった。二年以上にも渡る長期の旅だ。

 

 サスケより強くなるためにもエロ仙人から修行つけてもらわないといけねえ。見違えるほど強くなってから木の葉の里に帰ってやるって思った。

 

「もっと集中しろ! 集中力が足らん!」

「わかってるってばよ!」

 

 エロ仙人との修行は大変だったけど楽しかった。同じ火を囲んで一緒に飯食って話をして、家族みたいに過ごせた。

 

 厳しくも優しいエロ仙人からはまるで父ちゃんみたいな温もりを感じた。

 ランの姉ちゃんからは母ちゃんみたいな温もりをもらったけど、エロ仙人からは父ちゃんみたいな温もりをもらえて嬉しかった。

 

「エロ仙人、ランの姉ちゃんのこと、もっと教えてくれってばよ」

「あんまり他人の過去のことは言いたくないんじゃがのぉ。お前がランに直接聞けばいいではないか」

「そこを何とか頼むってばよ。姉ちゃんってば、あんまり自分のことは話してくれねえんだ。女は秘密がどうたらかんたらだ、とかで」

「それを言うなら『女は秘密を着飾って美しくなる』だのぉ。仕方ないのぉ。まあお主とランは家族みたいなもんらしいし、少しくらいはいいだろう」

 

 ある時、エロ仙人からランの姉ちゃんの昔のことを聞くことが出来た。

 

「そっか。姉ちゃん、そんな悲しい過去を持ってたんだな……」

「そういうことじゃ。ランには言うなよ。誰しも誰にも触れられたくない辛い過去というものが、一つや二つはある」

「わかってるってばよ。俺だってそこまで無神経じゃねえし」

 

 エロ仙人の話を聞いて、姉ちゃんが時折見せる悲しげな笑みの意味がわかった気がした。

 姉ちゃんは楽しそうにしててもたまに凄い悲しそうに見える時があるんだ。ほんの一瞬のことで気のせいに思えるんだけど、その理由がやっとわかった。

 

 姉ちゃんは俺と同じだった。親を早くに亡くして親友を亡くして、ずっと孤独だった。姉ちゃんは俺と同じような辛く悲しい過去を持っていたんだ。

 

 エロ仙人の話を聞いて、姉ちゃんの言葉が俺の心に強く響く理由がわかった気がした。同じ境遇を持った人の話だったから、凄い共感できたんだ。

 

「それで、その長門や小南って人たちの死は確かめられたのか?」

「いや確かめてはおらん。情報を聞いたランはすぐにでも雨隠れに飛んで行こうとしたが、それはワシが止めた」

「なんでだってばよ?」

「危ういと思ったからだ。過呼吸を頻繁に起こすほど憔悴しているランを、雨隠れには行かせられんと思った。あやつらの死を確かめた時、すぐに後を追いかねんと思ったからのぉ。しばらく時をおいた方がいいと判断した。あやつらの代わりと言っては語弊があるかもしれんが、他に大切な仲間が出来た時に再度雨隠れを訪れた方が良い。そうした方が良いと、ワシは判断したんだよ」

「そっか。きっとエロ仙人が正しいと思うってばよ」

 

 エロ仙人の判断はナイス判断だと思った。もし昔の姉ちゃんが友達の後を追って死んだなんてことになってたら最悪だ。

 

 そうなってたら俺の人生もだいぶ変わっていただろう。俺が辛かったあの時に姉ちゃんがいなかったらと考えると、とても恐ろしい気がする。サスケみたいに闇に囚われてたかもしれねえと思った。

 

「姉ちゃんが俺とサスケのことをやたら応援してくれる理由がわかった気がする」

「確かランと小南は仲違いのような別れ方をしてそのままだったと聞いたのぉ。お前とサスケのことを重ねているのかもしれんな」

「ああかもしれねえ」

「……闇に惹かれていく友を助けるか。それは簡単なことではない。ワシにもできんかったことだのぉ」

「エロ仙人も似たような経験あんのか!?」

「ああ。ワシと大蛇丸はかつて同じ釜の飯を食った仲間であり友だった。結局、ワシはあやつを救えんかった」

「っ!?」

 

 姉ちゃんの話を聞く際、エロ仙人の話も聞くことができた。エロ仙人とあの大蛇丸の野郎が友達だったなんて初耳だった。

 前に綱手の婆ちゃんの捜索をした時に、エロ仙人と大蛇丸と婆ちゃんは同じチームだったとは聞いたけど、そこまで親しかったとは知らなかった。

 

「闇に染まり行く友を助ける。簡単なことではない。ワシにもできんかったことだが、ナルト、お前ならできるかもしれんのぉ」

「できるかもじゃねえ。やるんだエロ仙人」

「っ!?」

「俺は絶対にサスケを連れ戻す。完全に闇になんて染まらせねえ。俺が元の道に戻してやるんだ!」

「ふっ、お前を見ているとそうなる気がしてくる。お前は誰よりも凄い忍びとなろう。ワシやランをも超える大きな忍びへとな」

「当たり前だ! 俺ってば火影になるんだからな! 今はまだまだかもしんねーけど、いつかエロ仙人もランの姉ちゃんも超えてやんだ!」

「ハハ、そうだのぉ。だがその前にはまだまだ越えるべきハードルが幾つもあるのぉ。印を結ばぬ幻術返しも上手くできんようでは、まだまだだのぉ」

「ぐっ、明日こそはちゃんとやってみせるってばよ!」

 

 そんな感じで、修行の合間にはエロ仙人と存分に語らいあった。

 エロ仙人との会話は、まだまだガキだった自分を精神的に大きく成長させてくれた。年取ったらエロ仙人みたいな頼りになるオッサンになりてえと素直に思った。

 

 修行の際には、九尾の力が暴走してエロ仙人に大怪我させちまって本当に申し訳ないこともしちまった。

 だけどエロ仙人は怒るどころか笑って許してくれた。そればかりか自分の判断が甘かったとすら言ってくれた。

 エロ仙人は本当に良い人だ。本当の親父みたいに包容力があった。

 

 エロ仙人を二度と傷つけねえ。エロ仙人だけじゃねえ、ランの姉ちゃんも、木の葉のみんなも、絶対に誰も傷つけさせやしねえ。

 

 そんな思いで、俺は二年半にも及ぶ修行に打ち込んだ。自分で言うのもなんだけど、身心共に強くなって木の葉の里に帰ることができた。

 

「ナルト君! おかえり!」

「へへ、ただいまだってばよ姉ちゃん!」

 

 久しぶりに会ったランの姉ちゃんだけど、姉ちゃんは相変わらず美人だった。

 綱手の婆ちゃんの若作りの術でも会得したのか、まったく見た目が変わってなくて驚いた。むしろもっと若々しくなっててビビったってばよ。

 

「テウチさん、今日は私の奢りってことで二人にいっぱい食べさせてあげてね」

「いや待ていラン。女に、ましてや弟子に奢らせたとあっては、この三忍の自来也様の名折れよ。ここは当然ワシが奢るぞ」

「何言ってんだい二人とも。ナルトが久しぶりに里に帰ってきたんだ。今日のお代は全部タダに決まってるだろ。お金タダでいいから、好きに注文してくれ」

「テウチさん、素敵!」

「おっちゃん、相変わらず太っ腹だってばよ!」

「すまんのぉ店主」

「ハハ、気にしねえでくだせえ自来也様。ナルトにもランちゃんにも昔から世話になってるからな」

 

 久しぶりに姉ちゃんたちに会えて何だかほっとした。姉ちゃんたちと一緒に一楽で飯食ってると、自分の帰るべき場所に帰ってこれたんだって思えて本当に嬉しかった。

 

「我愛羅がさらわれた!?」

「ああ。砂隠れから応援要請がきた。すぐに向かうぞ」

 

 里に帰って少しは姉ちゃんや里のみんなとゆっくりできるかと思ったけど、そんな暇はなかった。我愛羅がさらわれたって話を聞いて、俺たちはすぐに救出に向かうことになったんだ。

 

 そこで暁の連中と戦うことになったんだけど、チヨ婆のおかげで我愛羅をなんとか救い出すことができた。

 

 チヨ婆は死んじまったんだけど、その死に顔は安らかだった。我愛羅や他の砂の人たちに自分の志を託して安心して逝ったらしかった。

 

「カカシさんに代わって君たちの隊長になるヤマトだ。よろしく」

 

 我愛羅救出任務でカカシ先生が写輪眼の使いすぎでぶっ倒れてしまい、俺たちの班には新しくヤマトって人が隊長として配属されることになった。

 

「君、チ○ポついてるんですか?」

「なんだと!」

 

 ヤマト隊長に加え、サスケの代わりってことでサイって奴が配属されることになったんだけど、このサイって奴がいけ好かない奴だった。

 みんなサスケに似てるとか言うんだけど、全然似てねえし。サスケの方がカッコイイ――いや全然マシだ。

 

 第七班の仲間はサスケだ。サイなんて認められるわけねえ。そう思ってたんだけど、サイも根は悪い奴じゃなかった。一緒に過ごしている内にそう思えるようになった。

 

 新しい第七班で赴いた天地橋。そこで大蛇丸と交戦してその後、大蛇丸のアジトに潜入することになった。

 

「あの時、なんで俺を殺さなかったんだ! サスケェ!」

「イタチのやり方に従うのが気に食わなかっただけだ。それに殺すほどの価値もないと思った」

「なんだと、サスケェ!」

 

 大蛇丸のアジトでサスケと戦うことになったんだけど、そこでも俺は負けてしまった。あれだけ修行して強くなったのに、サスケはさらにその上をいっていた。

 

「僕も力を貸すよ。三人でサスケ君を取り戻せるように頑張ろうよ。僕も第七班の仲間だから」

 

 サスケを連れ戻せなくて項垂れて泣いてる俺を、サイは叱咤激励してくれた。サイは良い奴だった。

 新しい第七班の皆でサスケを連れ戻してやる。そう思った。

 

 自分の力不足を知り、俺は里に帰ってからさらなる修行に励むことにした。ヤマト隊長とカカシ先生の下で、螺旋丸に性質変化を加えた大技の修行を行うことになった。

 修行は今までにないくらい厳しいものとなった。

 

「ナルト君、今日もサクラちゃんと一緒に差し入れに来たよ! ついでにカカシ君とヤマト君にも!」

「感謝しなさいよねナルト!」

「姉ちゃんとサクラちゃん、ありがとうだってばよ!」

「俺たちはナルトのついでねぇ」

「それでも十分に有難い話じゃないですか、カカシ先輩」

 

 修行の時はランの姉ちゃんとサクラちゃんが毎日のように差し入れを持ってきてくれて嬉しかった。

 ランの姉ちゃんの差し入れは美味しい食いもんでいいんだけど、サクラちゃんの差し入れの兵糧丸はゲロマズで最悪だったってばよ。

 でも不味い代わりに効果は抜群で、おかげで傷やチャクラの回復は早く済んだけどな。

 

「猿飛アスマさんが亡くなられたそうです……」

 

 新術の修行に励んでる時、ヤマト隊長が悲しい知らせを運んできた。アスマ先生が暁の奴らと戦って殺されてしまったらしい。

 その一方を聞いた姉ちゃんはすぐに飛び出していった。

 

「姉ちゃん! どこ行くんだってばよ!」

「おそらくシカマル君たちの所だろう。あの人はいつもそうだ。里の子供やお年寄り、苦しんでいる人、弱い人にいつも寄り添ってる。本当に優しい人だ。良い姉さんを持ったなナルト」

 

 カカシ先生が目を細めながらそんなことを言った。

 

 どうやら姉ちゃんはすぐにシカマルたちの所に向かったらしかった。悲しい奴のすぐ傍に寄り添ってやる。姉ちゃんは本当に優しくて良い姉ちゃんだ。

 

「アスマの葬儀の日程等はランが追って知らせてくれるだろう。俺たちはやるべきことをやるぞナルト」

「ああ、わかってるってばよ! もう誰も死なせねえ! 俺が強くなって里の皆を守ってやる!」

 

 シカマルたちのフォローは姉ちゃんに任せて、俺は修行に励むことにした。

 暁の奴らから里を守る。アスマ先生みたいに死なせはしない。そう思って、今まで以上に真剣に修行に取り組んだ。

 苦労の甲斐あって新しい術――風遁・螺旋手裏剣を完成させることができた。

 

「風遁・螺旋手裏剣!」

「ぐああああ! やっと金集めのノルマが終わったのにぃいい!」

 

 新しく身に着けた技を使って、角都っていう暁の強敵を倒すことができた。力がついてこれで皆を守れるって自信がついた。一方、課題もあった。

 

「くぅ、痛ぇ……」

 

 新しい術は反動が大きくて大怪我しちまったんだ。細胞がズタズタになるくらいの怪我だ。しばらく入院が必要だった。

 

(姉ちゃん、見舞いに来てくれねえなあ。姉ちゃんが長期間里を離れる任務なんて珍しいってばよ)

 

 入院中、姉ちゃんが見舞いに来てくれなくて寂しかったけど、その内また会えるだろうと思ってた。

 

 姉ちゃんに心配かけねえようにさっさと怪我を治して、すぐにまた修行再開だ。もっと強くなって暁の連中は全部俺がぶっ倒す。木の葉の皆は俺が守る。そう意気込んでいた。

 

「ナルト、ちょっと来い。五代目がお前を呼んでる」

 

 怪我が治ってこれから修行も任務も本格的に再開だ。そんな時、シカマルが声をかけて来たんだ。

 

「何だよシカマル。そんな怖い顔して……何かあったのか?」

「いいから来い。話は五代目が直接話すそうだ。俺からは何も言わねえ」

「何だよぶっきら棒に。わかったってばよ」

 

 シカマルの尋常じゃない様子に酷い胸騒ぎを感じた。シカマルとはそのまま言葉少なに、火影室へと向かうことになった。

 

「――来たか。ナルト」

 

 部屋に入ると、異様な光景が広がってた。

 いつもは火影の部屋だってのにこれで大丈夫なのかって心配になるくらいの、のほほんとした空気が広がってる。

 だけどその時はそんな様子は微塵もなかった。

 

「うぅ……」

「くっ……」

 

 シズネの姉ちゃんが酷い顔して泣いてた。サクラちゃんもだ。その場にいた皆が怖い顔してた。カカシ先生はマスク被っててよくわからなかったけど、いつもと違うってことだけはなんとなくわかった。

 絶対に碌なことじゃねえって、すぐにわかった。わかったけど、気づかねえふりして馬鹿なふりして尋ねてみた。

 

「いったい何だってんだよ綱手の婆ちゃん。急に呼び出したりなんかして?」

「いいかナルト、落ち着いて聞け」

 

 婆ちゃんは泣いてなかったけど、眉間に酷いくらいの皺が寄ってた。眼に力を入れて必死に堪えてるって感じだった。そして婆ちゃんは搾り出すように言った。

 

「自来也が死んだ」

「――え?」

「それから、ランも死んだ」

「――は?」

 

 婆ちゃんの口から理解できねえ言葉が次々に飛び出てきた。心臓が一気にバクバクと動いていく。与えられた情報に対し、脳みそが理解を拒んだ。

 

「綱手の婆ちゃん、何笑えねえ冗談なんか言ってるんだってばよ? ハハ、俺が馬鹿だからって、いい加減にしろよな」

「冗談なんかではない。そんな冗談など言うものか。全ては厳然たる事実だ。ここにいるフカサク様から齎された確かな情報だ」

「ああ。自来也ちゃんは瀕死の傷を負ってワシに遺言を託して死んだ。直接死亡は確認してないが、口寄せ契約が切れたから死んだのはまず間違いないだろう。それはランちゃんも同じじゃ。ランちゃんは暁の女幹部と戦って死んだと思われる。残念だが事実じゃよ」

 

 フカサクの爺ちゃんの話を聞いて頭が真っ白になって、その後はあんまり覚えてねえ。

 二人にそんな危険な任務を命じやがった綱手の婆ちゃんに喚き散らした後、サクラちゃんたちとも言い合いになって、そのまま火影室を飛び出していた。それでふらふらと里のあっちこっちを彷徨い、人気のないところで涙が枯れ果てるほど泣いた。

 気がつけば日が暮れてた。

 

(俺は守れなかった。一番大事なもん、守れなかったんだ……)

 

 初めて人の温もりを教えてくれたランの姉ちゃん。それとエロ仙人。一番守りたかった大事な人たち。母ちゃんと父ちゃんみたいな人。

 

 その二人を、俺は守ることができなかったんだ。

 

(何が火影になるだよ、ちくしょう……。大事な人すら守れねえのによぉ……くそくそ)

 

 悔やんでも悔やんでも悔やみきれねえ。真の絶望と孤独というものを思い知った。目の前で沈んでいく夕日のように、心が徐々に闇に侵食されていく気がした。

 

(サスケ……そうかお前も)

 

 色んな記憶と感情がぐるぐると巡る中、きっとサスケも大事な人を亡くした時にこんな気持ちだったのかなって、ふとそんなことを思ったんだ。



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番外編その2(HAPPY)
ch.18 ペインさん許して! 木の葉壊れちゃう!(ホモガキ)


 もう始まってる!

 

 お久しぶりです皆さん、どうもホモガキです。ご無沙汰してます。

 

 挨拶はそこそこでさておき。皆さん、最近の“NARUTO~影への道~”でいくつか新しい要素がアップデートされたのをご存知でしょうか。

 

 その中の一つに、プレイヤーが新生雨隠れの里長になって小南ちゃんに支えてもらうエンディング、というものがあります。プレイヤーが影レベルの能力値を満たしており、小南の好感度が高くて小南が生きている状態でエンディングを迎えると、見ることのできるエンディングです。

 

 実はそのエンディングを見るのに、前に小南の討伐トロコンで使ったデータが流用できることがわかりました。

 ですので、今回はそのデータを使って新エンディングを迎えるまで実況していきたいと思います。

 ではそういうことで、今回もよろしくオナシャース。

 

 ということで、小南ちゃんを倒す直前まで進めたデータを呼び起こします。

 もう前の内容全部忘れたゾっていうMUR大先輩な視聴者兄貴姉貴は、アップされてる動画を見直してもらえると有難いです。

 

 簡単に言うと、前回は討伐トロコンが目標だったんで、小南ちゃんと相討ちになって死んで、それで目標達成したんでしたね。起爆札六千億枚の攻撃をくらう直前で、蒸気暴威の人形を爆発させて、大爆発を引き起こして相討ちにしました。

 

 ですが今回はプレイヤーは勿論のこと小南ちゃんも殺してはいけないので、戦闘中に離脱することにします。契約しているガマの逆口寄せを使って離脱しましょう。

 

 では戦闘に入ります。

 

「どうしてもこうなるのね……いいわ、貴方の命、私が奪ってあげる」

 

 戦闘開始です。途中までは討伐トロコンの時と同じです。蒸気暴威の技を発動させて小南ちゃんを適当にボコりましょう。

 

 注意点としては一つ。フィールドに設置されたプレイヤーの時空間忍術を妨害する仕掛けを徹底的に破壊しておくことです。そうじゃないと逆口寄せが使えないので、逃げることができません。ちゃんと破壊しておきましょう。

 まあ小南のHPを削るついでに適当に暴れてればいいので、簡単ですね。特に問題はないです。

 

「――この起爆札六千億枚! 十分間起爆し続ける!」

 

 はい、戦いが佳境を迎えて盛り上がってますが、ガマの逆口寄せで逃げましょう。

 前はここで蒸気暴威の人形を大爆発させて相討ちにしたんでしたね。このままレズ心中したい気もしますが、我慢しましょう。

 

 じゃあ自爆レズ心中はキャンセルだ

 は?(困惑)

 キャンセルだって言ってるだろ

 でも今日の今日のキャンセルは・・・

 俺がキャンセルだって言ってるからいいんだよ

 わかりました・・・(落胆)

 

……。

……。

……。

 

 ということで、自爆レズ心中はキャンセルできました。

 瞬間移動して、画面景色が妙木山のものへと変化してます。陰気臭い雨模様だった雨隠れの里から一気に移り変わったんで新鮮ですね。

 

 こうして見ると、やっぱ雨隠れの里って糞っすね。蛙の住処よりもだいぶ糞ですよ。

 妙木山を歩いているとはっきりわかります。どっちも人間の住むところじゃありませんが、雨隠れの方がだいぶ糞です。毎日雨とか日光浴びなくて鬱発症率とかヤバそうですもんね。人間の住むとこじゃありませんホント。

 

 さて、せっかく妙木山に来たわけですが、ランちゃんは仙術の才能はないので、ここで特訓してもあまり意味はありません。蛙君たちと戯れつつ適当に休んで回復したら、木の葉の里に帰るとしましょう。

 

「ランちゃんは無事じゃったか。残念ながら自来也ちゃんは亡くなったようじゃ。ワシらとの口寄せ契約が切れてしもうた」

 

 フカサク様がそんなことを言ってます。

 自来也先生は原作通りペインと戦って死んだようですね。悲しいなぁ(諸行無常)。

 

 自来也先生、長門君が操るペインにボコボコにされて片腕もがれて串刺しになって湖沼に沈められて死んだようです。

 

 恩を仇で返す弟子のクズがこの野郎……

 

「たんとおあがりんしゃい」

 

 妙木山滞在中、シマ様が料理を食べさせてくれます。

 見た目ゲロマズでヴォエッ!って感じの虫料理ですが、栄養豊富で回復力は抜群です。しっかり食べておきましょう。

 

 数日の間食っちゃ寝の生活をしてると、小南ちゃんとの戦いで負った傷はあっという間に癒えました。

 戦いで消費したガマ油とかの補充を終えれば、もうここでやることはありません。こんな蛙臭いところはさっさとサラダバーしましょう。

 

 これから木の葉の里に帰るんですが、普通に歩いて帰るととてつもなく時間がかかるので、木の葉にいるナルトに口寄せでフカサク様を召喚してもらい、フカサク様に木の葉側から逆口寄せしてもらって木の葉に帰るとしましょう。

 ちなみに、これはガマと口寄せ契約を交わしている状態かつ、ナルトとの好感度が高いと使える手段です。ナルトの好感度は十分すぎるほど高いので、問題なく使えます。遠慮なく使っていきましょう。時間が勿体ないですからね。

 

 まあペインが木の葉を襲うまでまだ時間があるので別に歩いて帰ってもいいんですが、早く木の葉に帰って修行したいので逆口寄せしてもらうことにします。雨隠れの長になるための条件を満たすため、暇があれば修行して能力値を高めておかないといけませんからね。

 

 ということで、ナルト君とフカサク様、口寄せオナシャス!

 

「そうか……自来也が死んだか」

 

 里に帰還し、綱手姫に任務の報告をします。

 自来也が死んだので曇ってますねぇ。おばさんの曇り顔も乙なもんです。

 

「エロ仙人が死んだ……? 嘘だ……」

 

 綱手姫の曇り顔もいいですが、一番はナルト君の曇り顔ですね。

 最高っす。ああナルトの曇り顔はたまらねえぜ。

 

 自来也死亡後のイベントは、ナルトの曇り顔が見られるイベントの中でも一位二位を争うくらいの最高のイベントです。父親代わりの人が死んで嘆き悲しむナルトの顔をしっかりと堪能しておきましょう。

 

 おじさんはねぇ、ナルト君みたいな可愛いねぇ、この曇り顔が大好きなんだよ!

 

「何でそんな危険な任務を命じたんだよ、綱手の婆ちゃん! エロ仙人は婆ちゃんの仲間だったんだろ! だったら何で!」

「ナルト! 綱手様がどんな思いで任務を命じたか、アンタだってわかるはずよ!」

「くそっ」

「ナルト!」

 

 ナルトがやり場のない感情を吐き出した後、火影室を飛び出していきます。修羅場ですねぇ。

 

 ナルトの後を追ってしっかりと曇り顔の観察をしておきましょう。スクショ撮りまくらないといけないですからね。シャッターチャンスを逃してはいけません。

 

「姉ちゃん……」

 

 ナルトに追いつきました。

 曇り顔を通り越して雨顔となっているナルトを、しっかりとスクショしておきましょう。

 

 おじさんはねぇ、ナルト君みたいな可愛いねぇ、この泣き顔が大好きなんだよ!

 

「もう二度と誰も失わねえ。俺ってば、もっと強くなってやる!」

 

 シカマルやイルカ先生たちも交えてナルトの泣き顔の鑑賞会をしていると、ナルトが復活しました。

 もうご褒美タイムは終了ですね。ナルトは覚醒KMRみたいな決意を秘めた表情しています。

 

「じゃあ姉ちゃん、行ってくるってばよ!」

 

 自来也の遺した暗号(ペインの術の正体)の解読イベントは、ランちゃんが関わってパパッと終わらせます。それが終わると、ナルトは妙木山へと仙術修行に向かいました。

 好感度高いのでランちゃんも誘われましたが、付いて行っても意味ないので普通に断りました。

 

 さてこれからの行動ですが、ペインが木の葉を襲ってくるまで、シズネちゃんやサクラちゃんと一緒に修行でもして過ごしていましょう。原作キャラとの修行は経験値効率がいいですからね。一人でやるよりもいいです。

 

 ここで注意点として一つあります。里の外に出る任務は受けないことです。里の外に出るタイミングが悪いと、ペインの木の葉襲来イベントに関与できませんからね。

 

 里の外の任務受けると、ペイン襲来時に日向の外交で里の外に出かけてて気づいたら木の葉滅んでた、なんていう、うっかりヒアシ様みたいなことになりますので、十分注意してください。

 

 ペインの木の葉襲来イベントですが、今回目指すエンディング条件を考えると、必ずしも参加する必要はないです。ですが、ペイン襲来イベントは戦闘経験値を稼ぐ絶好のイベントなので、できるだけ参加しておきましょう。

 二代目畜生道ちゃんにも会いたいところですし。二代目畜生道ちゃん、くっそ可愛いですからね。

 

 それじゃ、ペインがやって来るまでの修行風景は巻いてお送りします。

 

……。

……。

……。

 

――ドゴォオオン。

 

「何だ!?」

「何事だ!?」

「里が燃えてる!?」

「て、敵襲ぅううう!」

 

 平和だった里が一転、大騒ぎとなります。ペインが攻めてきたようですね。

 里の至るところでペインが口寄せした怪物たちが暴れており、上空ではミサイルみたいなのが飛び交ってます。

 

 ペイン襲来イベントが始まったら、無闇矢鱈に動き回らないようにしましょう。面倒臭い相手と出会ったら最悪です。対処に時間食って経験値を碌に稼げないばかりか、下手すれば殺されてゲームオーバーです。考えて動きましょう。

 

 このイベントで注意すべき相手は二人です。天道と餓鬼道です。

 ペイン天道はそれ相応のガチビルドじゃないと倒せないどころか、出会ったら逃げられないくらいの強さなので、仮に出会ったら即やり直し案件です。

 餓鬼道も忍術効かないので、体術スキルに自信ないとキツいです。ランちゃんは体術キャラじゃないので、餓鬼道もあんまり出会いたくない相手です。

 

 というわけで、天道と餓鬼道に出会わないように動いていきましょう。

 

 このイベントにおけるペインたちは、陽動班と人柱力の探索班という二手に分かれて行動しています。

 探索班は天道、人間道、地獄道、小南紙分身体です。陽動班は修羅道、畜生道、餓鬼道、口寄せ怪物となっています。天道と餓鬼道が分かれて配置されてて、どっちの班にも嫌な相手がいるといった感じですね。

 

 ここではまず、ペイン天道にだけは絶対に出会わないように動いていきます。天道の所属する探索班に出会わないようにするために、陽動班が暴れているであろう場所に一直線で向かっていきます。

 つまり、人々が騒いでるところに向かえばいいんです。

 

 ただし、陽動班には餓鬼道がいる可能性があるので、向かった先に餓鬼道がいた場合は直前のセーブデータからやり直します。

 

まとめると、

①陽動班がいる場所に向かう

②敵を倒す&セーブして①に戻る(もし餓鬼道と出会ったら直前データからやり直し)

という手順ですね。

 

 そういったプレイングをしていきます。

 

 傍から見れば敵の陽動にそのまま乗っかるという池沼先輩ムーブですね。

 でもそれがプレイヤーの命を守るには最善だったりします。経験値稼ぎにも都合がいいです。池沼先輩じゃなくて、実は智将先輩です。

 

 忍者は裏の裏を読むべし(至言)

 

 このペイン木の葉襲撃イベントでは、原作キャラやモブはいくら死んでも大丈夫です。イベントさえクリアすれば、プレイヤー以外の人たちは全員復活する仕様です。

 

 ただプレイヤーだけは違います。プレイヤーは死んだらそこでゲームオーバーなんですよね。ゲームの仕様上、そうなってます。

 

 ということで、ペイン襲来イベントでは自分の命を最優先に行動しましょう。仮にカカシ先生やシズネちゃんとかが目の前で殺されそうになってても、敵が天道や餓鬼道だったら容赦なく見殺しにしましょう。

 

 かなりのクズムーブですが、助けなかったからといって好感度が下がることはないので大丈夫です。安心して見殺しにしましょう。

 プレイヤーが死んだらゲーム終了だからね、仕方ないね。

 

 では陽動班を狙って撃破して経験値稼いでいきますよー。ほらいくどー。

 

……。

……。

……。

 

 出会うのは口寄せ怪獣ばかりです。口寄せ怪獣はザコですし、良い経験値になりますね。

 

 当初の手順通り、敵を倒したらその都度安全な場所でセーブするということを繰り返してゲームを進めていきます。

 

 途中、向かった先に餓鬼道がいたので何回かやり直しました。ですがそれほど時間は食ってません。まあRTAじゃないので時間なんてどうでもいいですけど。

 

「世界に痛みを。痛みを知れ」

 

 ファッ!?

 

 まさかの天道に出会ってしまいました。

 天道に会わないように陽動班がいるであろう場所に一直線に移動していますが、必ずしも天道と会わなくて済むわけではありません。移動の際に偶然出会っちゃうことがあるんですね。今回もそのパターンでした。

 

 このイベントやってる時、卑劣ボイス聞くとドキっとしちゃいます。天道強くて怖すぎなんですよね。普通にトラウマです。試走中、何回殺されたことか。

 

 やめてくれよ……(絶望)

 

 これはリロード案件でしょうかね?

 

「ラン! 気をつけろ!」

「ランさん、こいつ強いですよ!」

 

 お、カカシ先生その他モブが近くにいて天道と戦ってたようですね。

 

 普通、天道と出会った場合、相応の能力がないと勝てないし逃げられないしで、即リロード案件です。誰かと協力して戦おうって思っても強くて倒せないですし、斥力を操作する技が強すぎて逃げようと思っても逃げられないんですよね。

 

 そんなわけで天道と出会った場合は基本リロード案件なんですが、大丈夫なパターンもあります。

 

 仲間がそれなりの数いる場合は大丈夫です。仲間を囮にして逃げればいいんですね。一対一だとまず天道からは逃げられませんが、中忍以上くらいの実力がある仲間が複数囮になってくれれば逃げられます。

 

 いわゆる卑遁・囮寄せの術というやつです

 

 それを発動して逃げましょう。この術を開発した二代目様はやっぱり偉大ですね。

 

 というわけで、カカシ先生とモブ忍びたちがいるので、こいつらを囮にして逃げましょう。

 

 囮役はもちろんオレ以外が行く

 ランちゃんはこれからの雨隠れを守る若き卑の意思だ

 

 カカシ先生たち、ランちゃんの生存のために囮役になってくれよな~。頼むよ~。

 

 ちなみに若き卑の意思とか言っちゃってますけど、カカシ先生の方がランちゃんよりも若いですけどね。

 

「オビト……リン……どうやら俺はここまでのようだよ」

「コテツ……死ぬ時までお前と一緒とはな……」

「イズモ……それはこっちの台詞だぜ……」

 

 ふぅ~、超ビビりました。

 何度か斥力で引きつけられそうになりましたが、カカシ先生たちに攻撃のヘイトが向いた隙になんとか逃げ出すことができました。ランちゃんは助かりましたが、囮役になった忍者たちは皆殺しになってしまったようですね。

 

 カカシ先生は犠牲になったのだ。プレイヤーの生存、そのための犠牲にな……。

 

 まあイベント後に復活するので何の問題もありませんね。カカシ先生は今頃死んだ父ちゃんと仲良く語りあってることでしょう。

 

 三途の川で久々に親子水入らずで話せて嬉しいだろォオン!

 

「援軍は来ぬのか!?」

「写輪眼のカカシがやられたらしいぞ!?」

「名のある上忍が次々に討たれてるのかよ!」

「もう終わりだぁ! 木の葉は今日で終わりだぁ!」

 

 里は阿鼻叫喚といった感じですね。悲鳴や怒号が轟いて酷いことになってます。

 完全に負け戦って感じです。そこら中に死体が転がってて地獄絵図です。

 

「怯むな! 最後まで諦めるな! 木の葉の忍びなら最後の最後まで戦い抜くんだ!」

「日向は木の葉にて最強! 意地を見せるのだ! ヒアシ様がご到着されるまで持ちこたえろ!」

「一族の意地にかけても退くな!」

 

 劣勢の中、悲壮な覚悟で戦場に向かう忍びたちは格好いいですね。仲間の屍を踏み越えて行けって感じです。

 

 ランちゃんもカカシ先生たちの屍を踏み越えてここまでやってきました。最後まで諦めずに戦って経験値を稼いでおきましょう。第四次忍界大戦前にこれだけ経験値稼げるイベントっていったら他にありませんからね。

 

 ちなみにこのイベントをさっさと終わらす場合、里から脱出して周囲の山々のどこかに潜んでる長門本人の首を取りにいけばいいだけです。

 RTAだったらそうするところですけど、でもそれだと経験値があんまり稼げないので本チャートではやめておきます。RTAじゃないですし。

 

 ということで、ここは時間経過でイベントが進んでナルトがやって来るのを待ちましょう。それまでしっかりと戦って経験値を稼いでおきます。

 

 おらクソザコナメクジ共、経験値置いてけやオラァン!(弱い敵には強く出るクズ)

 

「口寄せの術!」

 

 おっと、二代目畜生道に出会いました。ですが、あの可愛い畜生道ちゃんじゃないみたいですね。

 アジサイちゃんじゃありません。変なモブおっさんです。ちゃんと「口寄せの術」って言えてます。

 

 運命のルーレットによってはそういうこともあります。今回の運命のルーレットの結果では、アジサイちゃんは死んでないみたいですね。ペイン畜生道二代目になってません。たぶん生きてるのかな?

 

 「口寄せのじゅちゅ!」っていうあのくっそ可愛いボイスが聞きたかったんですが、まあいいでしょう。

 アジサイちゃんじゃないなら容赦せずボコって経験値に変えるだけです。畜生道はそこまで強くないのでランちゃんでも余裕でいけます。

 

 ちょっと眠ってろお前。落ちろ! 落ちたな(確信)。

 

 しばらく単調な戦いが続きますので飛ばします。

 

……。

……。

……。

 

 口寄せ獣とそれほど強くないペインに関しては粗方倒し終えました。手持ちアイテムの兵糧丸とか全部使い切る勢いで消費しちゃいました。その代わり、経験値大量獲得でウマウマです。

 

 さて、イベントも終盤に差し掛かってきたので、そろそろシェルターの方へと逃げておきましょう。ペイン天道が神羅天征を発動したら不味いです。対策打たないと普通に死にます。

 

 土遁系の技が使えるならばどこにいても自分でシェルターを作って隠れられますが、ランちゃんは土遁系は使えないので、頃合になったら逃げておきましょう。

 欲をかいてギリギリまで戦っては駄目です。木の葉病院が近いのでそこのシェルターに逃げましょう。

 

「ランさん! シズネさんが、シズネさんがっ!」

 

 病院は怪我人と死体が大量に運び込まれてて、カオスな状況になってます。そこで超絶ブラック労働に従事しているサクラちゃんが泣きそうな顔してます。

 

 魂抜かれたシズネちゃんの死体も転がってますよ。あーあ、可哀想にね。

 

 哀れ。戦時の医療忍者の末路。

 

 ブラック労働に従事するサクラちゃんたちは放っておいて、さっさと地下シェルターの方へと逃げます。ランちゃん医療忍術使えるけど医療忍者じゃないですし。

 

 というかサクラちゃんたちと一緒に上の階にいたら死んじゃいますからね。サクラちゃんは原作キャラ補正なのか神羅天征イベントが発生しても死なないんですが、プレイヤーは普通に死んじゃいますから。

 ということで、とっととシェルターに向かいましょう。

 

 じゃ、俺ギャラ貰って帰るから。

 

「世界に痛みを。神羅天征!」

 

――ドゴォォォオオオオオン。

 

 怪我人だらけの暗い地下室で休んでいると、凄い揺れが発生しました。

 ペイン天道が神羅天征を放ったようですね。そろそろ来ると思ってましたがやはりです。

 

 静かになった後に地上へと出てみれば、瓦礫の山ばかりです。里が跡形もなく消えてます。まさに神業ですね。神を自称するだけあります。

 

 自来也先生の故郷が見るも無残な姿に……。恩人の故郷を跡形もなく破壊し尽くす弟子のクズがこの野郎……。

 

「木の葉の里が……消えた?」

「嘘……だろ?」

 

 生き残った人たちが呆然とした表情で瓦礫の山を見ています。

 完全に戦意喪失、といった感じですね。まあ里の主だった忍びが死に、施設も何もかもなくなったら終わりですから、戦意喪失するのも無理ない話です。

 

 きっと今日は閉店の日なんだよ! 木の葉閉店の日!

 

「おい、ナルトが戦ってるぞ!」

「本当だ!」

 

 やることもないのでサクラちゃんとかの曇り顔でも見て回っていると、再び辺りが騒がしくなってきました。木の葉のピンチを聞いてナルトが妙木山から急遽戻ってきたようですね。ペインと戦っているようです。

 

「無駄だ。諦めろ」

「絶対に諦めねえ!」

 

 絶望的な状況ですが諦めずに戦っています。流石は主人公です。

 

 ここでは余計なことはせず、イベントに関わらず、見守っていましょう。

 ヒナタが半殺し状態になって曇るナルトの顔でも遠目で観察しておきます。スクショでパシャリっと。

 

「俺が諦めるのを――諦めろ!」

 

 イベントが進み、やがてナルトが戦いに勝利します。ペイン天道を倒した後、ナルトは単身長門本人の所へと向かって対話を試みます。

 

 ランちゃんはそのイベントには関わらず、ペイン天道の死体の脇にでも控えていましょう。

 ナルトの説得イベントが終わったら、ここで超重要なイベントが発生しますから、それに備えます。

 

「生き返っているぞ!」

「やったぁ!」

 

 やがて里の人たちが次々に生き返っていきます。

 ナルトの話を聞いて心を入れ替えた長門君が、己の命と引き換えに外道輪廻天生の術を発動したんでしょう。

 囮になって死んだカカシ先生たちも生き返ってます。良かった良かった。

 

「ラン、貴方たちの勝利よ」

 

 弥彦(ペイン天道)の死体のところで待機していると、どこからともなく小南ちゃんが現れました。弥彦の死体を紙でグルグル巻きにして運ぼうとしています。

 

 重要なイベントというのはこれです。

 これはただ小南が弥彦の死体を回収して去っていくというだけのイベントなんですが、そのイベントが超重要なんです。

 

 実はこのイベント、飛翔して去っていく小南を下から覗くと、マントの下がチラッと見えるんですね。俗に言う覗き見イベントというやつです。

 

 他の戦闘イベントとかでもやろうと思えばマントの下の覗き見できるんですけど、戦闘イベントだと攻撃されたり紙ふぶきが舞ってたり小南が不規則に移動したりで、ごちゃごちゃとしてて良く見えません。

 ですがこのイベントだと、小南は上空を一定方向に移動して里の外に出て行くだけなので、覗き見がしやすいんです。当然近づいても攻撃してきません。

 

 開発陣が小南のマントの下を覗いてくれとばかりに用意したイベントとしか思えません。原作でついぞ明かされることのなかったマントの下の秘密を自らの目で確かめろ、と言っているとしか思えません。

 

 素晴らしいクソノンケ開発陣の意向に背くわけにはいきません。意向に沿ってしっかりと覗きを働くとしましょう。

 

 超重要イベントと言ったわりにくっそしょうもないノンケイベントで申し訳ナイス!

 

「さようならラン」

 

 小南が去っていきます。視点を上空の小南に固定して、全力ダッシュしてその後を追いましょう。

 

――カシャカシャッ。カシャカシャカシャッ。

 

 小南の真下に差し掛かったらスクショボタン連打です。変態カメラ小僧となって小南ちゃんを追っていきましょう。

 

――ドガァッ。

 

 木とかにぶつかって視点が揺れますがお構いなしです。視点がぶれるとモザイクみたいになって、それはそれで最高の絵が撮れます。体力とチャクラの限界までひたすら小南ちゃんを追いかけていきます。

 

……。

……。

……。

 

 ふぅ。たっぷりとスクショ撮れました。

 

 小南ちゃんのマントの下、超見えました。最高でした。

 むちむちっとした黒のタイツみたいなのが見えて、ああたまらねえぜ。三十五歳美魔女おばさんの脚線美最高なんじゃあ^~。ああ^~

 

 では非常にノンケ臭くなってきたので、今日はここらへんで終了とします。それではまた。



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ch.18 ペインさん許して! 木の葉壊れちゃう!(小南)

 爆煙が過ぎ去り、湖上には無数の魚たちが白い腹を見せてプカプカと浮かんでくる。だがそこにあの子の姿はなかった。

 

「逃げたか……」

 

 せっかく用意した六千億枚の起爆札が無駄になってしまった。あの子は私の何年にも渡る苦労をあざ笑うかのようにして逃げていった。

 

 あの子を殺せなかった。奥の手を出したのに殺せなかった。ずっとあの子の術に圧倒され、向こうが情けをかけなければ、私は奥の手を使うまでもなく殺されていたことだろう。

 それは紛れもない事実だった。

 

(あの子にまた負けた……くっ)

 

 戦いは一応引き分けということになるのだろうが、私は敗北感を感じずにはいられなかった。

 拭いきれぬ悔しさを抱えながら、私は長門の元に戻った。

 

「小南、戻ったか。無事か?」

「ええなんとか。あの子は仕留められなかったようだけど」

「そうか」

 

 ボロボロになった私を見て、長門が心配そうに声をかけてくる。

 

 少なくない傷を負っているけど、どれも致命傷は避けられている。医療忍者の治療を受ければすぐに治る程度の怪我しか負っていなかった。

 あの子は最初から私を殺すつもりなんてなかったのだ。

 

「自来也先生は?」

「殺した」

「そう。遺体は?」

「そのまま湖底に沈めた。損傷が激しかったのでな。ペインには使えない。やむを得ず廃棄した」

 

 長門が淡々とした口調で説明する。平静を装っているが私にはわかる。

 

 長門は明らかに興奮していた。先生を殺して興奮していた。

 

 思えば戦闘中からおかしかった。いつになく饒舌になって先生と舌戦を交わしたり、過剰に悪ぶりながら先生を挑発したりしていた。

 普段の長門とは明らかに様子が違った。長門は自来也先生を前にして普段の自分を保てなかったのだ。

 

 自来也先生に過剰な攻撃を加えてしまったのはそのせいだろう。

 長門は先生が強かったから手加減できなかったと言い訳するが、長門ほどの忍びならやろうと思えばどうにでもなったはずだ。先生の身体を必要以上に傷つけずに仕留めるということもできたはずだ。

 

 なのに長門は必要以上に損傷を与えてペインとして利用できないくらいまで先生を追い込み殺した。

 先生の死体を利用しないというのは、長門の最後の良心だったのかもしれない。

 

「小南、俺は自来也先生の故郷、木の葉をも潰すぞ。宿敵木の葉を潰して九尾の人柱力を得る」

「ええ」

 

 自来也先生の死後、長門は今まで以上に覚悟を決めたようだった。自来也先生を殺したことで、より研ぎ澄まされた殺気を走らせるようになった。

 

 そしてその殺気が最高潮に達する頃、我々は動き出す。

 機は熟した。先生に破壊されたペインの補充も終わった。後はかねてよりの計画を実行に移すだけだ。

 

「小南、準備はできているか?」

「いつでも」

「そうか。では木の葉に向けて発つとしよう」

 

 私たちは九尾の人柱力を確保するため、木の葉へと向かった。暁の目的を叶えるための、大仕事が始まる。

 

 たった二人で木の葉を落とすのだ。今まで以上に厳しい戦いになることは目に見えていたが、我々が退くことは決してない。

 全ては弥彦の、暁の夢のためなのだから。

 

――ドゴォオオン。

 

 我々は木の葉の里から少し離れた山に陣を構え、そこからペインや紙分身を遠隔操作して戦いを挑むことにした。

 人柱力の捜索班と陽動班に分れて作戦行動を行う。事態が急変すれば、私はすぐに長門本体と共に離脱する――そういう作戦だ。

 

 全ては当初の予定通りに進んでいった。

 

「ランめ。こうも簡単に陽動に引っかかるとはな。アイツらしい。いや、あるいは陽動とわかっていて、そこにいる人間が見捨てられず動いているだけか。それもアイツらしい」

 

 戦いが始まって間もなくの頃、長門がポツリと漏らした。

 どこか昔を懐かしんでいるような口調だった。それと同時にどこか安堵したような雰囲気も持っていた。

 

 探索班には弥彦(天道)がいる。長門としては出来れば、動く死体となった弥彦をランに会わせたくなかったのだろう。

 ランが陽動に引っかかり続けていてくれれば、二人が出会うことはない。そのまま引っかかっていて欲しいと思ったのかもしれない。

 

「――っ!?」

 

 戦いの最中、長門の様子が突如おかしくなった。私はいつものように体調不良による発作でも起きたのかと思ったが、どうやら違うようだった。

 

「どうかしたの長門、何かあった?」

「いや問題ない。少し集中させてくれ。手練の忍びが集まっている」

 

 長門は明らかに動揺していた。

 今更手練の忍び相手の戦いで心を乱されるような長門ではない。何か事情があるに違いなかった。

 

「俺は殺せる。殺せる。殺せる。目的の邪魔となるものは排除する。たとえ誰であろうとも……アイツであろうとも……はぁはぁ」

「長門……」

 

 長門は狂ったように呟きながら戦っていた。

 何となく察しがついた。あの子と出会ってしまったのだ。

 

 先生殺しすら経験した長門が今更心をかき乱される存在。そんなのはあの子しかいない。あの子と出会ってしまったのだ。

 弥彦の身体を借りて出会ってしまったのだ。そうでなければここまで長門の心が乱されることはないだろう。

 

(私たちは外道ね。間違いないわ)

 

 今更ながらなんという罪深いことをしているのだと思う。

 

 かつての仲間の死体を操り、その仲間の恋人であった仲間を殺そうとしている。恩人の先生の故郷を跡形もなく消し去ろうとしている。

 

 行いのどれもこれもが、はっきり言って鬼畜のものだろう。私たちは完全に外道にまで成り下がってしまったのだと思う。

 

 だがそれでも叶えたい夢がある。

 袂を別った仲間を踏みつけてでも叶えたい夢がある。師匠を殺してその故郷を焼き払ってでも叶えたい夢があるのだ。

 

(弥彦……)

 

 私の中に残った最後の良心が訴えかける。こうまでして夢を叶えて、あの世にいる弥彦は笑ってくれるだろうか。

 

 わからない。今までなら笑ってくれると思っていた。だがこの期に及んで、ここに来てわからなくなってしまった

 

 弥彦が笑ってくれるか自信はないが、私たちは今更引き下がることなどできない。我々はもはや進み続けるしかない。引き下がることなどできないのだ。

 

「はぁはぁ……」

 

 少しして長門が落ち着く。戦闘が一段落したのだろう。私は少し緊張した面持ちで長門に尋ねてみた。

 

「あの子は?」

「逃げられた。他の忍びが殿となってランを逃がした」

 

 ランを殺せなかったと聞いて、私は安堵した。長門に新たな重荷を背負わせずに済んだと思ったし、ランを殺すなら私の役目だと思ったから。

 

「アイツは木の葉の里でも相当慕われているようだな」

「そうね。あの子はいつも人気者。木の葉の里でもそうだったようね」

「ランは取り逃がしたが、代わりにはたけカカシを討った。その他、幾人の名のある忍びも仕留めた」

「そう。これで少しは動きやすくなったわね」

「ああそうだな」

 

 暗部の一部が戦闘に加わっていないようで、木の葉の防衛部隊は想定より少ないようだったが、それでも戦いは厳しいものとなった。

 こちらは二人しかいないのだ。二人で大国の隠れ里を相手にして戦争しているから、油断ならない戦いが続いた。

 

「またランにやられたか。畜生道までやられるとはな。里を出てから一段と腕を上げたようだ」

「ええ。私を圧倒したあの術といい、血継限界の力をより磨いているようね」

 

 ランは第二の故郷ともいえる木の葉を守ろうと奮戦しているようだった。己が身も顧みず、体力とチャクラの限界まで戦っているようであった。まさに獅子奮迅といった活躍であり、敵である私たちは大いに苦しめられることになった。

 

「アイツなら俺の代わりに弥彦の……いや、今では叶わぬ夢か」

「長門?」

 

 私がこの期に及んで逡巡しているように、長門もまた逡巡しているようであった。

 

 様々な思いが巡る中、戦いは続く。

 戦いの陰で人柱力の捜索を続けるものの、一向に成果は芳しくなかった。

 

「どうやら人柱力はいないようだ。里の外に逃がしたのかもしれん」

「その可能性は十分にあるわね」

「ならこれ以上は無駄足か。ではあの術を使って撤退する」

「でもあの術は貴方の身体が……」

「このまま退いてもすぐに追っ手がかかって退却もままならんだろう。追撃部隊を出せないくらい潰さなければならん。木の葉は今日ここで潰れてもらう」

「わかった。予定通りアレを行うのね」

「ああ」

 

 長門は印を組み、あの術を発動する。大量のチャクラと生命力を消費し、苦しみながら術を発動する。

 その姿は痛々しくて見ていられないほどだった。

 

「世界に痛みを。神羅天征!」

 

 長門の放った一撃によって木の葉の里が中心から崩壊していく。栄華を極めた大国の里が一瞬にして瓦礫の山と化した。

 

 長門――いや私たちの手によって、木の葉の里は今日ここで終わりを迎えたのだ。

 

 後は撤退するだけ。体勢を立て直した上で九尾の人柱力の捜索を行う。

 そう思ったのだが、思いがけない事態となった。イレギュラーが発生したのだった。

 

「どうしたの?」

「人柱力が現れた。今更のこのこと出てきたようだ。好都合だ。ここで仕留める」

「わかった。退却は中止ね」

 

 たかが人柱力一人、長門の手なら楽勝だと思われた。

 ほぼ一人で木の葉の里を壊滅に追いやった長門だ。神を名乗るに相応しい力を持っている。今までの人柱力も問題なく仕留めてきた長門なら何も問題ない。

 

 そう思われたのだが――。

 

「ぐぅうう! くぅうう! がはぁっ!」

「長門っ!?」

 

 激戦の末、長門は敗れた。一時は長門が追い詰めたものの、追い込まれて九尾の力を覚醒させた人柱力は怒涛の追い上げを見せた。

 残るペインの全て、天道ペインさえ倒され、機能停止に追い込まれてしまった。私たちの負けだった。

 

 九尾の人柱力。まさかこれほどの力を身に着けているとは思わなかった。

 

「お前一人で来い。そして俺と話をしろ」

「長門、相手が一人で来るという保証はないわ。今すぐ撤退すべきよ」

「奴は仙術を使って位置を探れる。本体の俺を抱えて逃げたところで追いつかれるのが関の山だ。それに俺は奴と話してみたい。頼む小南」

「……わかったわ」

 

 長門は戦いの中で感じるものがあったのか、九尾の人柱力との対話を望んだ。長門の強い意志を感じた私は、そのように取り計らった。

 

「お前があれを操っていた本体か?」

 

 九尾の人柱力は他の仲間の忍びたちの制止も振り切り、約束通り、ただ一人で私たちの元にやって来た。

 

 その心意気に感じるものがあったのか、長門は我々の内に抱えるものの全てを吐き出してぶつけた。

 腹を割った話し合いが行われることとなった。

 

「お前らの気持ち、わかるってばよ……。でも!」

 

 九尾を宿した少年は我々の思いを正面から受け止め、痛みを知り共感し、でもそれでも隠せぬ怒りという感情を真っ直ぐに私たちにぶつけてきた。

 

「俺の名はうずまきナルト! この本に書かれている主人公の名を受け継ぐ男だ!」

 

 そう喝破する少年の背に、弥彦の、そして自来也先生の面影を見た。

 きっと長門もそう思ったことだろう。彼らの遺志はこの少年に受け継がれている。少年の中にある志こそが、亡き弥彦が本当に望んだことなのだと理解できた。

 

 九尾の人柱力うずまきナルト。自来也先生の弟子にして私たちの弟弟子。その存在は力強く、偉大なるものだった。

 

 自来也先生が命を投じ、そしてランが命を張った理由がこの時はっきりとわかった。

 ナルトはこの呪われた忍び世界を終わらせる真の光となってくれる存在だと、私たちは悟ったのだった。

 

「俺は今一度信じてみようと思う。お前を信じてみよう。うずまきナルト」

 

 ナルトの心意気を感じ取った長門は毒気の抜けたような清々しい表情となった。そして複雑な印を結び始める。その印を見て私は堪らず声を上げた。

 

「長門、その印は……」

「いいのだよ小南。俺に出来る最後の償いだ。すまないが後を頼む」

「……わかったわ」

「今まですまなかった。感謝する」

「いえ……」

 

 長門は外道輪廻天生の術を使い、己の命と引き換えに此度の戦いで死んだ者たちを蘇らせた。

 建物などに関しての損害はそのままだが、ひとまず人命だけは救うことができた。なんとか償うことができた。

 

(長門……)

 

 また一人、私の前で大切な者が散っていった。

 道を間違えてしまったかもしれないが、弥彦と同じく理想に殉じたことに違いはないだろう。

 もうこんな思いは沢山だ。こんな思いをするのはこれで最後であって欲しい。

 

「お前は散ることのない花であってくれ」

 

 うずまきナルト。彼が本当にこの呪われた忍び世界を変えてくれる男なのかはわからない。真実はわからない。確証はないが、心からそうであって欲しいと願って、親愛の印として花束を授ける。

 ナルトは和解の印としてそれを受け取ってくれた。

 

 ナルトは花束を受け取ると静かにその場から去っていった。見逃してくれるらしかった。

 私は長門の死体を巻物に収納すると、すぐに弥彦の死体の元へと向かった。

 

(ラン……)

 

 弥彦の死体の傍にはランがいた。あの時のように弥彦の死体に縋りついて泣いていた。

 

 あの子に二度も辛い思いをさせてしまった。これは私の罪だ。贖うことの出来ない罪だ。

 

「小南ちゃん……」

 

 あの子はそう呟くように言うと、ずっと無言だった。悲しそうな瞳でこちら見ていた。

 

「貴方たちの勝ちよ」

「勝ち負けなんて……」

「そうね……。その通りね」

 

 弥彦の死体を巻物に収納する。弥彦も長門もしかるべき場所、私たちの帰るべき場所に葬ると伝えると、あの子は小さく頷いてくれた。

 

「小南ちゃんあのね……」

 

 ランは何を言おうか迷っているようだったが、私は聞きたくなかった。

 それを聞いたら、自分の覚悟が鈍ってしまう気がしたから。だから自分から別れを切り出した。

 

「さようならラン」

 

 私はそう搾り出すように言うと、翼を広げて空へと飛翔した。

 

「っ!? 小南ちゃん、待って!」

 

 あの子は抜けているようで妙なところで鋭い。だから私の態度から何かを察したのだろう。必死の形相で叫んでいた。

 

「待って! 待ってよ!」

 

 ランが泣き叫んで言うが、待つことはない。私はより高い大空へと飛翔して移動していく。

 

「待って、待って!」

 

 あの子が息を切らせながら追ってくる。体力もチャクラも限界を迎えているというのに、必死で追ってくる。

 

「小南ちゃんっ! 待って!」

 

 木にぶつかろうが、木の根に躓いて地面を転がり泥だらけになろうが、必死に追ってくる。足が動かなくなっても上半身だけで這ってでも追おうとしてくる。

 

(ラン、どうして貴方はそこまで私のことを……)

 

 ボロボロになりながらも私のことを必死に追ってくるあの子を見ていると、あの子の本当の思いが理解できた。あの子の温かい気持ちが自分の中にすっと流れ込んでくる気がした。

 今となっては何もかもが遅すぎるけれど、あの子とやっと分かり合えた気がした。

 

(ラン、ありがとう)

 

 立ち止まりたい。そして手を取り合っていつまでもお喋りをしていたい。もっと一緒に色んなことを、そう思うけれども――。

 

(ごめんなさい)

 

 あの子の本当の気持ちを知った今、私は本当の自分を取り戻せた。

 だからこそ、私は自分のことが許せなかった。

 

 最愛の友を裏切り、弥彦の夢を汚し、自来也先生を間接的に殺した。

 己の罪と向き合った時、あの子と再び手を取り合う資格など私にはないと思った。

 

 許されざる罪を贖う方法は一つだ。謝って済まされるのは子供だけ、小娘の時だけだ。

 私はもう立派な大人だ。小娘ではない。贖えない罪の責任のとり方は一つしかない。

 

 私は散っていい花。散るべき花だ。

 ならばせめて、あの子とうずまきナルトの生きる未来が輝けるものとなるための人柱となる。

 世界の闇を道連れにして、あの世へと連れていく。それが自分のとるべき最後の道だ。

 

「小南ちゃぁああああん!」

 

 ランが慟哭する。彼女の悲痛な叫びに背を向け続けるが、堪らずに私は一瞬だけ振り返った。

 

(ありがとうラン。そしてさようなら)

 

 最後になるであろう最愛の友の姿を目に焼け付け、私は雨隠れへと帰還していったのであった。



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ch.19 虐待おばさん(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 どうもホモガキです。今回も“NARUTO~影への道~”の配信やっていきたいと思います。

 

 前回は撤退していく小南ちゃんを必死で追いかけてマントの下を盗撮しまくったところまででしたね。そう言うと完全に意味不明ですが、要はペインの木の葉襲撃イベントが終わったところまででした。

 

 原作ストーリー的には、これから物語は終盤に突入していくこととなります。ペイン襲来イベントの影響で綱手姫が眠ってるのをいいことにダンゾウが暗躍したり、偽マダラが第四次忍界大戦引き起こしたりと、NARUTOという物語の核心に迫るイベントが次々に起きてきます。

 

 基本ストーリーに乗っかってイベント進めていけばいいだけなんですが、今回目指すエンディングの条件を達成するためにやらなきゃいけないことが二つあります。

 

 一つは小南の生存です。このまま放っておくと、小南は原作通り偽マダラに決戦挑んで死んでしまいます。ですから助けにいきましょう。それがやらなきゃいけないことの一つです。

 

 もう一つは、木の葉所属から雨隠れの所属に鞍替えしなければいけないことです。それは雨隠れの長エンドを見るために必須事項です。これから里抜けして雨隠れに向かわねばなりません。

 

 小南助けるのにも都合がいいんで、ここらへんで里抜けしましょう。ペイン戦の傷が癒えたらすぐに里抜けしちゃいましょうね。せっかく木の葉で上忍まで出世しましたが、全部捨てて雨隠れへ里帰りしましょう。

 

 ナルトも英雄扱いされるようになって、里の住人に苛められて曇るなんてこともなくなっちゃいましたしね。寂しいもんです。

 

 晴れ男となったナルトに興味はありません。もう木の葉では見るべきイベントもないです。さっさとこんな里からはサラダバーしましょう。

 

「これから木の葉はどうなるんだ?」

「五代目様も昏睡状態が続いているというし……」

「はたけカカシが六代目に就任するらしいぞ」

「あの白い牙の息子か」

 

 戦後復旧の進む木の葉の里では、六代目就任の噂やらでもちきりですね。活気はありますが、どこか不穏な雰囲気が漂っています。これからダンゾウが暗躍してさらに不穏になっていきます。

 

「ナルトの兄ちゃん久しぶりー!」

 

 イナリが来てるやん!

 

 成長してガテン系兄貴となったイナリが木の葉に来てますね。ついでにタズナのおっさんもいます。二人とも木の葉の復旧を手伝ってくれてるようです。

 

「世話になった木の葉の一大事と聞いての。皆でやって来たわい」

「ナルトの兄ちゃん、大工仕事は俺たちに任せといてよ!」

 

 助けられた恩を忘れずに恩返しするとか、イナリ君たち、めっちゃいい子ですね。師匠の故郷を跡形もなく消し飛ばしたどっかのクズ弟子とはえらい違いです。

 

「ランの姉ちゃんも久しぶり!」

 

――【無視する】

 

 すっかり晴れ男になってしまって曇り顔を一切見せなくなったイナリ君になど用はありません。無視して里抜けしましょう。

 

 俺はそんなさ、晴れ男になんて興味はねんだよ

 

「木材調達任務を受けるのか?」

 

――【はい】

 

 肝心の里抜けですが、この状況だと普段やるより簡単です。里がボロボロになってて警戒網とかが弱まっている今は、絶好の里抜けチャンスです。適当に資材調達任務を引き受けて里の外に出て、そのままとんずらこいちゃいましょう。

 

 里が滅んでも、五代目が倒れても、木の葉のみんなはたくましく生きていてくれ。では諸君、サラダバー!

 

「ランの姉ちゃん! どこ行くんだってばよ!」

 

 ファッ!?

 

 里抜けしようと思ったらナルトと遭遇しました。他の第七班のメンバー、サイとサクラもいますね。どうやら追い忍イベントが発生したようです。三人が追ってきたようですね。三忍に勝てるわけないだろ!

 

――どうする?

――【対話を試みる】

 

 ナルトが追ってきたんで、強引に力ずくで突破することは無理そうですね。この時期のナルト、強すぎですから。最終戦前ほどじゃないですけど、それでも強すぎです。サイもサクラちゃんもそこそこ強いんで、戦うのは無理ゲーです。

 幸いナルトもサクラも好感度が高いので、説得して見逃してもらいましょう。

 

 ナルト君許して! 小南ちゃん死んじゃう!

 

「何か事情があるんだな……。わかったってばよ……」

 

 必死に説得した甲斐あって見逃してくれました。魅力値が高いことも影響してるかもしれません。戦闘に突入してたらやり直し案件だったので助かりました。

 

……。

……。

……。

 

 ということで無事に里抜けできました。許してくれたナルトお兄さんたちに感謝です。

 

 これからは雨隠れの里に向かって小南VS偽マダラの戦いに乱入しましょう。

 運命のルーレットによっては発生時期がずれて既に戦いが終わってたなんてこともありえますので、里抜けした時点でしっかりセーブしておきましょう。それから雨隠れに向かいましょうね。

 

 今回は少し短いですけど、キリがいいんでここまでとします。

 

 あっ、このまま終わるのはゲイがないんで、今回もTKYさんの怪文書風にまとめたんで、それを流して終わりとします。

 

 ではAIのTKYさん、読み上げお願いしまーす。

 

 

小南ちゃんゎね

本当ゎ優しい女の子だったんだよ

小さい頃ゎ

本当に優しくて天使みたいな小南ちゃんだけど

弥彦が死んで

なぜか鳩助たちも死んで

したら

こんな私産まれなきゃ良かった!

って

虐待が始まったんだ

それで小南ちゃんゎぐれて不良になったんだ

新生暁でゎ子分たくさん引き連れていたけどね

 

サソリを殴って仲間にして

角都に面倒な金庫番の仕事押しつけて

一人になると毎日起爆札作ってた

 

ビンゴブックに載るようになったら

オマエ生意気だぞって

五大国の忍びグループにイジめられて

しょっちゅうボコボコにされてた

 

サソリが心臓の真ん中刺されたり

飛段が奈良一族の森で生き埋めにされたり

角都がナルトの新術の玩具にされたり

 

だから小南ちゃん

人手不足になって

それで表舞台に出るようになったんだ

 

弥彦の夢の中なら全てが忘れられる

弥彦のことが大好きだった

 

でもって

なるべく遅くに帰宅して

冷えた飯食って

夜になると同い年の不良の影分身がやって来て

部屋の窓ガラスに極小の石を投げつけると

「小南、すまないがトイレ」って音がするから

そっと寝所を飛び出して一生懸命介護してた

 

そん時にガマのおっさんに出会っちゃったんだよ

それゎまたあとで話すけど

 

小南ちゃんのことゎ

ずっと心底、大好きだった

だから戦いなんて絶対したくなかったし

仲違いなんてしたくなった

でも暁の小南ちゃんは許せなかった

 

けどね、

ペインが木の葉襲撃して長門が死んで

小南ちゃんが去っていって

オレしか頼る人がいなくて

急に思ったんだよ

 

最初の10年間ゎ

大事にしてくれた

だから

10年分の愛ゎ

お返ししなきゃってね!

 

だから去っていった時に

初めて思った。

小南ちゃん、今死んじゃだめだよ!!

絶対に死ぬなよ!!

オレが絶対に寂しくさせないからねって



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ch.19 虐待おばさん(小南)

 里に帰って弥彦と長門の亡骸を埋葬し、その後しばらく身辺整理に努めた。

 全ての準備を整えてあの男に伝書を送る。あの男に引導を渡すためだ。

 

 そして約束の日がやって来る。その当日、私は引き出しの奥底に仕舞ってあったアレを取り出した。

 

 あの子のくれた髪飾り。とうの昔に仕舞いこみ、もう二度と身に着けることもないと思っていたそれを身に着ける。

 

(温かい。あの子がいる……)

 

 紙と金属で出来た無機質なものだが、身に着けると不思議とあの子の温もりが感じられる気がした。

 あの子と一緒なら戦える。死すらも何も怖くない気がした。

 

 最愛の友に勇気づけられながら、私は約束の場所へと向かった。私の死地になるべき場所だ。

 

「――来たか」

 

 降りしきる雨の中。里から少し離れた湖上に浮かぶ構造物の上で待っていると、やがてあの男が現れた。奴はいつものように空間を切り裂くようにして唐突に姿を現した。

 

 自称マダラ。私と長門を闇に誘い込んだ張本人だ。あの子と仲違いする原因にもなった忌まわしき男。この忍び世界の闇を凝縮したような男である。

 

「なんだその悪趣味な髪飾りは。色合い、デザインといい、まるで小娘だな」

 

 マダラは会うなり開口一番に私の髪飾りのことを指摘してきた。

 

(自分だって変な仮面被ってるくせに……)

 

 自分の被る変な仮面のことは棚に上げて酷い言い草である。デイダラとコンビを組んでいた時は、向こうの方がよっぽど小僧だったというのに。

 

 あのはしゃぎようは今考えても異常だった。何故何十歳も年下の少年にベタベタとくっついていたのか。謎すぎる。

 まあそれは今更どうでもいいことだが。

 

「貴方には関係のないことよ」

「小娘にも程があるというものだ。突然癇癪を起こして目的を違えるなど小娘もいいところだ。この期に及んで甘い理想に縋るなど、長門といいお前といい、まだまだ青臭いガキだったということか。そんな悪趣味な髪飾りをしているようだし、まさにその通りのようだな」

 

 私のことはどう言われても構わない。だがこの大事な髪飾りを貶されるのはあの子が馬鹿されているようで許せなかった。

 無言で睨み返してやると、奴は私の視線など意に介さず、失笑してから話を進めてきた。

 

「まあ今の俺にとって、お前はただの小娘ではない。長門の輪廻眼の在り処を知る小娘であるが」

 

 マダラの計画には、長門の持つ輪廻眼が不可欠のようだ。だから輪廻眼を餌にすれば奴は必ず私の元に現れると思ったが、予想通りだった。

 

 これで奴を私の領域に引きずり込むことができた。後は隙を見て殺すだけだ。

 

 もっとも、そう簡単にいくとは思っていないが。

 相手は忍び世界の頂点に立つとも謳われる人物を自称する男だ。己の腕にそれだけの自信があるに違いない。一筋縄ではいかないだろう。

 

 おそらく激戦になる。だがなんとしても勝利して奴を殺さねばならない。

 

 あの子たちの生きる未来。そのための人柱となる。

 それが私のなすべき償いの形だ。絶対に果たさなければいけない。

 

「長門の輪廻眼の在り処、素直に話す気はなさそうだな」

 

 マダラの殺気が膨れ上がる。向こうも最初からやるつもりのようだ。隠しているこちらの殺気にも気づいていることだろう。ならばもうこちらの殺気も隠す必要もない。

 

 お互いの殺気がより膨れ上がる。出遅れるわけにはいかないと気を張って出方を探っていると、奴は少しだけ殺気を萎めて口を開いた。

 

「戦う前に一つ聞いておこう。何故お前らほどのメンバーが俺を裏切った?」

 

 その言葉には怒気が含まれていた。仲間を裏切ったことに対する怒りだろうか。あるいは自分の計画通りに動かなかったことに対する不満だろうか。

 

「忍び世界に裏切りはつきもの。ましてや犯罪組織である我々が今更裏切りの理由を求めるの? おかしな話ね」

「いや違う。お前らほどの人間が裏切るはずはない。お前らほどの闇を抱えた人間が裏切るはずはないのだ。だが裏切った。何故だ?」

 

 マダラは私たちを信用していなかった。仮面の下の素顔すら見せたことがなかったのだからそれは明らかだろう。

 

 だがある点においては信用してくれていたらしい。同じ闇を抱えているという点においては、妄信というほどに信用してくれていたらしい。私たちを信用してはいなかったものの、裏切るとまでは思っていなかったようだ。

 

「うずまきナルト。奴にそれ程の価値があるとでもいうのか?」

 

 私が無言でいると、マダラは自ら答えを口にした。

 長門と私がナルトと接触した所を、ゼツあたりが見ていたに違いない。マダラはそれを伝え聞いていたようだ。それで大方の察しはついていたのだろう。

 

「そう彼は光。だからこそ皆、希望の花を持てる!」

 

 うずまきナルトとの出会いを経て、長門と私は本当の自分を取り戻した。闇のどん底にあって日の光を思い出した。

 

 今更光の道を歩くつもりなどない。その資格などない。だがせめてもの償いにと、長門は自らの命と引き換えに殺めた木の葉の人々を復活させた。

 

 そして今度は私の番だ。私は今、忍び世界の闇の元凶とも言えるこの男と対峙している。

 自分の命と引き換えにしてでもこの闇を振り払う。そう決めている。あの子たちの生きる未来のために。

 

「貴方は闇! 呪われし忍び世界の元凶! 光のない世界では花は枯れるしかない!」

 

 マダラに私の覚悟を見せるつもりで、殺気をぶつけながら言い放ってやった。すると奴は不可解なことを口に出した。

 

「お前は一つ勘違いしている。俺は忍び世界の闇の元凶などではない」

「……?」

 

 新生暁を組織するにあたって裏から手を回していた男。それがこの目の前の男マダラだ。第一次忍界大戦よりも昔の戦国時代から生きているという忍び世界の化け物。

 そのマダラが実は闇の元凶ではないという。

 

(何を言っているのかしら?)

 

 表面上冷静を保っていたが、私は内心で酷く困惑していた。

 

「まあいい。俺からすればお前は何も知らない小娘。親の示した道を歩いていただけの小娘。今はただ、長門の輪廻眼の在り処を知るというだけの小娘だ」

 

 マダラはこれ以上言葉を交わすつもりはないようだ。殺気を再び膨れ上がらせてくる。

 

「お前を捕らえさえすればどうにでもなる。この俺に挑戦状を叩きつけるなど、うちはの瞳力を舐めるなよ小娘!」

 

 戦いの始まりを告げるかのようにマダラの殺気が一気に膨れ上がる。私も負けじと殺気をぶつける。

 

――スゥゥ、ズザザザザァッ。

 

 私はすぐに紙の翼を広げて距離をとると同時、奴に向けて大量の紙手裏剣をお見舞いしてやった。紙手裏剣は弾かれても形を変え、紙飛行機のようになって敵を襲い続ける。空間を制圧する勢いで、敵の動きを封じていく。

 

(大した余裕ね……)

 

 マダラは悠然と構えていた。焦るわけでもなく、わざと攻撃を受ける素振りすら見せていた。先手をわざわざ譲ってくれるらしい。レディーファーストということだろうか。

 

 大層な自信だ。この私を小娘扱いするのだからそれもそうだろう。

 その減らず口、二度と叩けないようにしてくれる。

 

(ここだ!)

 

 私はマダラが時空間に逃げるタイミングを見計らって起爆札を送り込んでやった。

 大量の起爆札が奴の逃げ込んだ時空間で爆発する。確かな手応えがあった。

 

「ほぉやるではないか」

 

 しばらくして再び姿を見せたマダラは満身創痍だった。その余裕な口ぶりに反して、全身ボロボロであった。術の発動のキーとなる印を組むのに必要な、忍びの命であるはずの腕も片方失っていた。

 

「甘く見ていたな。小娘といえど、まあ考えれば元暁メンバーだ。お前も」

 

 マダラは片腕を失いながらも余裕を崩していなかった。全身に傷を負いながらも焦る素振りがまるでない。不自然すぎた。

 

(この余裕は何故? 確実に攻撃は当たったはず。あの怪我は変化の術でも幻術でもないのに何故?)

 

 忍びにとって命とも言うべき腕を失ってなお余裕を保つなど、普通はあり得ない。仮に片腕で発動できる術があったとしても、大事な腕を失ったということには変わりはないはずだ。

 

 あの歴戦の猛者である自来也先生だって、長門との戦いで腕を失って少しは動揺していたと聞く。螺旋丸という片腕だけで使える技がいくらあろうと、忍びにとって腕を失うというのは大きな損失に変わりがないからだ。

 

 以前、デイダラが角都の持つ技術によって失われた腕を回復させたことがあった。似たようなことをして戦闘後に機能が回復できるとしても、それは生き残ってこその話だ。戦闘中に腕を失うということは、大きなディスアドバンテージになるはずだ。

 

 なのにマダラは片腕を失ってなお冷静であった。己の持つ瞳力にそれほどの自信があるとでも言うのだろうか。

 

「片腕を失って何ができる! このまま終わらせてあげるわ!」

 

 写輪眼の能力にはわからないことが多い。未だ知らぬ秘めた力があるのかもしれないことは気がかりではあったが、だからといってどうすることもできない。

 この日のために練り上げた必勝のパターンで攻めるしかない。今までの努力を信じて、このまま押し切るだけだ。

 

(またこれを使う日が来たのね……)

 

 雨の日も風の日もせっせと集めてきた起爆札一兆二千億枚。半分の六千億枚に関してはランとの戦闘で使ってしまったけれど、残りの六千億枚はまだ残っている。

 今こそ、その力を解き放つ時だろう。

 

(みんな、力を貸して!)

 

 今は亡き角都と飛段に必死に金集めをさせた資金で購入した彼らの血と汗の結晶。

 長門の介護をしつつ夜なべして作った私の努力の結晶。

 雨隠れのみんなをせっせと働かせて作らせたみんなの絆の結晶。

 

 それを全て使って、ここでマダラを仕留める!

 

「むっ、これは!?」

 

 ここぞと思ったタイミングで、私は起爆札を展開していく。

 周囲に大量に展開していく起爆札を見て、マダラは驚いた様子だった。

 

 それもそうだろう。予め湖の水にすら偽装して仕込んでいる。マダラの周囲一帯全ての空間が起爆札に覆われていると言っても過言ではない。

 

 空間を支配する六千億枚の起爆札は脅威的だ。物理的のみならず精神的にも相手に打撃を与える。いかなる相手と言えど動揺しないはずがない。

 

 奴に逃げ場などない。のこのことここにやって来た時点で、奴は大きく後れをとっていると言っていい。自らの力を過信し慢心したのが運の尽きだ。

 

「これで終わりよ!」

 

 奴にとって最後になるであろう言葉を投げかけてやると同時、術を発動した。六千億枚の起爆札が炸裂していく。

 

――ドゴォオオン。バゴォオオン。ボガァアアン。

 

 マダラの存在しているであろう空間で連続した爆発が起こる。爆音と水柱が絶えることなく発生し続け、辺り一帯を薙ぎ払っていく。それは一分二分と続いていき、十分間発生し続ける。

 

 ここでミスをするわけにはいかない。私は細心の注意を払いながら起爆札をコントロールし続けた。

 

 いかなるマダラといえど、十分間の爆撃を堪え続けられるわけがない。これで間違いなく終わりだろう。そう思った。

 

「はぁはぁ」

 

 十分間が過ぎ、爆発が止む。私は息を切らしながら膝に手をついた。

 

 紙操の術は解けなかった。まだ余力は残っている。限界に近づいたが、チャクラ切れにはならなかった。

 

 ランとの戦いにおいてチャクラが枯渇してしまったのを反省し、術の運用方法を見直したので、そのおかげでチャクラがギリギリ残ったのだ。

 まあ残す必要もなかったようだが。

 

「これでマダラは確実に……」

 

 安堵してそんなことを口にしかけた――そんな時のことだった。

 

「死んだかな?」

「っ!?」

 

 背後から奴の声がかかると同時、鋭いものが私の身体を貫いた。私は血を吐きながらよろめいてしまう。

 

「がはっ」

「ほう。僅かに身体をずらして急所は回避したか。やるな小娘。だがその身体ではもう満足に動けまい?」

 

 マダラが貫いた刃をなんとか抜き取り、距離をとる。振り返った先にいた奴の姿を見て、思わず目を見開いてしまう。

 

(ば、馬鹿な!?)

 

 マダラは信じられない状態でそこにいた。

 あれだけの攻撃を受けて生きているばかりか、全ての傷が塞がった五体満足の身体でそこに存在していたのだった。失ったはずの右腕も回復していた。

 

「ぐっ、どうして……」

「どうして生きている。確実に死んだはず――か」

「私の――」

「心を読んでいるのか――か。貴様の心は手に取るようにわかるぞ小娘」

「くっ」

 

 マダラは私の心を先読みするかのように喋り、そして私の疑問に答えた。

 

「イザナギ。光を失う事と引き換えに幻と現実を入れ替えることができるうちはの禁術。うちはと千手、両方の力を持つ者だけが使える瞳術。それがイザナギ」

「幻と現実を入れ替える、だと? 馬鹿な!?」

 

 そんなことができるはずがない。出来るとしたら人間離れしすぎている。写輪眼の力とはそれほどまでのものなのか。

 

「何も知らない小娘のまま死ぬのは不憫。冥土の土産に教えてやろう。俺は千手柱間の力を手に入れたうちはマダラ。六道の力を得し、長門と同じ存在。いや正確には長門の六道の力は俺自身のものだ。長門に輪廻眼を渡したのは他ならぬこの俺なのだからな」

「なっ!?」

「お前たちは踊らされていたのだ。全てはこの俺の掌の上。輪廻眼とは、うちはの中でも選ばれた者だけが使える特別な瞳術。うちはでもない長門が使えるのは、そもそもおかしな話なのだ。お前たちは何も知らずに受け入れていたがな」

 

 長門に輪廻眼の力を渡したのはマダラだという。信じがたいことだったが、嘘だとは思えなかった。

 

「さあ真実を知った上で心置きなく死ぬがいい小娘。まあその前に輪廻眼の在り処を吐かせてもらうがな」

「くっ」

 

 マダラはそう告げると、凄まじいスピードで迫ってきた。一気に片をつけるつもりのようだった。

 

「はぁはぁっ、あっ、ぐっ、ふぅふぅっ、はぁはぁ」

「諦めの悪い小娘だな。無駄なことはやめるがいい」

 

 相手の目を見ぬように動きつつ、接近させぬように攻撃を繰り出す。体力とチャクラを失い傷を負った状態では、それは尋常ではないくらい大変なことであった。

 

 だがやるしかない。どんな絶望的な状況でも戦う他ない。

 ナルトだって諦めなかったのだ。姉弟子の私が簡単に諦めるわけにはいかない。あの子のためにも負けるわけにはいかないのだ。

 

「あうっ、はぁはぁ、うぐっ、ふぅふぅ」

 

 必死に攻撃を繰り出す。奴に貫かれた部分を片手で押さえて止血しつつ、必死に攻撃する。

 

「死ぬ前にもうひと踊りして俺を楽しませてくれるのか? いいだろう小娘、付き合ってやろう」

 

 私が必死に抵抗しているのが面白かったのか、マダラはじゃれ合うかのように私の攻撃をいなし始めた。

 本気では戦っていないようだった。私が必死で攻撃を繰り出しているのを見て、楽しんでいるらしかった。趣味の悪い男だ。

 

(くっ、この私が完全に遊ばれている……)

 

 酷い屈辱を感じたがどうにもならなかった。圧倒的なまでの力の差を感じてしまう。肉体的にも精神的にも圧倒されてしまう。

 

(同じ暁メンバーだったというのに、これほどの差があるとは……)

 

 先ほどまでは向こうが重傷で私は無傷だった。圧倒的有利だったはずだった。

 

 だが今はその逆だ。一瞬にして立場が逆転してしまった。写輪眼とはそれほどまでの力を秘めているものだったというのか。

 

「俺は最初に言ったはずだぞ小娘。うちはの瞳力を舐めるな、とな。だがお前は舐めた。お前の敗因はこの俺の瞳力を舐めすぎたことだ。我が最強の写輪眼、イタチ程度と一緒だと思い込んでくれるなよ小娘」

 

 どうやら私は知らぬ内に、名門うちはのプライドを強く刺激してしまっていたようだ。そのせいで、マダラは大層な怒りを感じているらしかった。小娘に無礼な挑戦状を叩きつけられた上、己の持つ瞳力を侮られたこと。それが酷く癇に障ったらしい。それで私のことを必要以上に甚振っているというわけだ。

 

「どうした小娘。その程度か。やはり小娘だな」

「ぐっ、あっうっ、ぐっがっ」

 

 マダラは嬲るように徐々にペースを上げた攻撃を繰り出してくる。

 重傷を負ったままで手当てすら碌にできない私は、やがて単調な攻撃すら浴びてしまうようになる。

 

「どうした? もうお終いか?」

「くぅっ、はぁはぁ……」

 

 抉られた腹からどんどんと血が流れ、股下の方まで伝って垂れていく。血が抜け落ちていく度、意識が飛びそうになっていく。限界が近づいていく。

 

「そろそろ長門と会えそうだな。向こうに行ったら二人で後悔するといい。ナルトの戯言に乗せられた事をな。お前たちはナルトを信じる事で哀れだった自分を慰めたかっただけだ。この世界に真の平和などありはしないのだ!」

 

 マダラは狂気に染まった瞳でそう告げる。それから一気に接近してきた。これまでとは違う、加減のないスピードでだ。お遊びはこれまでということか。

 

「小娘との戯れもここまでにしよう。思ったよりも楽しめたぞ小娘」

「――がはっ」

 

 マダラは一瞬にして近づくと、私の首を鷲掴みにしてきた。息ができずにもがく私に、そのままゆっくりと顔を近づけてくる。

 

「さあ俺の(もの)を見ろ小娘。夢の世界へと旅立たせてやろう」

「くっ……」

 

 目を閉じても強制的に開かせられてしまう。いやなのに、見たくないのに、無理やり見させられてしまう。

 

(ごめんなさいラン。私は……)

 

 贖罪のために投げ打つと決めた命。今更惜しくはない。けれど、何もできずにやられてしまうことだけは、とてつもなく悔しかった。

 弟弟子に、大切なあの子に、何も報いることができないだなんて……。

 

 あまりの悔しさに目尻に涙が浮かんでしまう。滲む視界の先。夢現の世界に、あの子が現れた気がした。

 

 そんな時のことだった。

 

「――沸遁・巧霧の術!」

 

 私たちの辺り一帯を見覚えのある霧が包み込む。

 マダラは咄嗟に私の首を掴む手を放すと、私から離れていった。その直後、マダラのいた場所に熱風が襲いかかる。

 

「小南ちゃん!!」

 

 夢ではない。愛すべき友の姿がそこにはあった。



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ch.20 小娘小娘言うんじゃねぇよ年下のくせにオォン!?(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 はい、どうもホモガキです。では今回も“NARUTO~影への道~”の実況していきたいと思いまーす。

 

 前回はランちゃんが里抜けしたところまででしたね。十年以上お世話になった木の葉の里が復旧作業で忙しい隙を狙って里抜けするという、だいぶクズムーブなことしちゃいました。

 まあ目指すエンディングのためには必要なことですから仕方ありません。

 

 ではこれから雨隠れの里に向かうとしましょうか。道中出会うクソザコナメクジな山賊とかをぶっ飛ばしながら、雨隠れを目指していきます。ほらいくどー。

 

 雨隠れに近づくたびに雨が酷くなり、陰気臭い様相を呈していきます。華やかな木の葉の里からあの糞みたいな雨隠れの里に里帰りすると思うと憂鬱ですが、小南ちゃんに会えると思うとまあ悪い気はしません。

 

 道中、単調なので巻いてお送りしていきます。

 

……。

……。

……。

 

 幼少期ランちゃんならともかく、今のランちゃんだったらモブ敵など眼中に入りません。出会ったら即瞬殺です。何の問題もなく無傷で雨隠れに到着できました。何の問題ですか?(レ)

 

 では雨隠れに入ったら、小南ちゃんを探しましょう。生きていればどこかでイベントが発生しているはずです。

 

 小南が偽マダラと決闘を行う場所は幾つか候補地があります。どこでやるかはランダムですので、順番に巡っていきましょう。

 

 もしかしたらもうイベントが終わってるかもしれません。そうだったら痕跡が見つけられるはずです。血塗れの小南の花飾りが散っているのを発見できるはずです。

 もし小南の遺品が見つかれば、時既に遅しってことでアウトですね。そうだったら、少し前のデータからやり直しましょう。

 

――捜索したが、何も見つからなかった。

 

 候補地を一つ一つ虱潰しに探していきます。ですが、全然見つかりませんね。候補地は残り一つとなってしまいました。うーん、今回は外れかな?

 

 最後の一箇所を探すのイヤですね。絶対小南ちゃんの遺品落ちてるじゃないですか、やだー。あー泣きそ泣きそ。

 

――爆音が聞こえる。戦闘が行われているようだ。

 

 おや、どうやら間に合ったようですね。最後の最後で当たりを引いたようです。

 

 戦闘中のようです。戦闘の雰囲気からして野良敵の戦闘ではありません。目当てのイベントが発生しているようです。では近づいていきましょう。

 

「そろそろ長門と会えそうだな。向こうに行ったら二人で後悔するといい。ナルトの戯言に乗せられた事をな。お前たちはナルトを信じる事で哀れだった自分を慰めたかっただけだ。この世界に真の平和などありはしないのだ!」

 

 げっ、台詞から判断するに、だいぶ終盤までイベント進んでますね。小南ちゃん、もう虫の息じゃないっすか。マントとかボロボロになっちゃってます。肩で息しててなんだか淫らです。

 

 いいねセクシー、エロい!

 

 っと、そんなことを言っている場合じゃありません。とっとと助けに入りましょう。ではセーブしてから戦闘に入りまーす。

 

――戦闘に乱入しますか?

――【はい】

 

 ほらいくどー。三人入り乱れての大乱闘スマブラとなります。

 

 乱闘になりますが、この戦闘イベントにおける小南のヘイトは偽マダラ最優先となっておりますので、こちらから小南に攻撃を当てない限り、小南の攻撃がこちらに向くことはありません。ですので落ち着いて攻撃しましょう。ひたすら偽マダラを狙って攻撃します。自然と小南と共闘する感じになります。

 

「くっ、あぅっ、があっ」

 

 あっ、小南ちゃんがボコられてますね。虐待(される)おばさんになってます。HP残り少ないっていうのに。このままだと小南ちゃん、死んじゃうじゃないですか。

 

「ふぐっ、がはっ、うぅ……」

 

 アッー、さらにHPが!! もう重傷の小南ちゃんばかり狙うのやめロッテ!!

 

 もう許せんぞお前!

 君怒らせちゃったねぇ! 俺のことね! おじさんのこと本気で怒らせちゃったねぇ!

 

――沸遁・巧霧の術。

――沸遁・巧霧の術。

 

 小南ちゃん狙ったら沸遁×2だぞオラァアッ!

 酸の中に頭からぶち込んでやるぞオラァアッ!

 FFSNJの蝋燭攻めよりキツイ一発くれてやるよオラァアン!

 

「小娘! 邪魔立てするな!」

 

 小娘小娘言うんじゃねぇよガキのくせにオォン!?

 

「小娘が舐めた真似を!!」

 

 調子こいてじゃねーぞこの野郎! 年下のくせによ!

 何が舐めろだ? お前が舐めろよ、上手いんだろー?

 

 ほら舐めろよ(熱い水蒸気)

 

「がはっ、おのれぇ、小娘ぇ!」

 

 従順になるまでやるからなオイ!

 お前もう生きて帰れねぇな?

 

 最後の一発くれてやるよオラ!

 

「――この雪辱は必ず果たす。夢幻の世界のため、オレは決して諦めはしないぞ」

 

 攻撃加えまくってある程度HPを削ると、偽マダラは捨て台詞を吐いて撤退していきました。

 

 逃げ足速すぎですね。止めを刺す暇もありません。時空間忍術チートすぎです。残念ながら仕留め切れませんでした。

 

 俺はそんなさ、殺すほど悪魔じゃねぇんだよ(負け犬の遠吠え)

 

 とまあそれは冗談で、普通に倒すつもりで攻撃しましたが、やはり無理でしたね。偽マダラは専用ビルドで挑まないと無理ですね。対小南用ビルドのランちゃんでは仕留めきれないです。小南攻略ついでに偽マダラ仕留めようとかいうのは無理ゲーですね。やめておいた方がいいです。違うキャラでやった方が早いです。

 

 偽マダラは仕留めきれませんでしたが、撤退させることはできました。撤退させるだけでも、原作ストーリーイベントにおける小南の死亡フラグは折れるので、問題はありません。とりあえずこれで一安心ですね。

 

 まあ偽マダラは輪廻眼を決して諦めないので、輪廻眼を渡すか殺すかしない限り、一生付きまとってくるんですけどね。雨隠れにいる限り、これから変態ストーカーと化した偽マダラの襲撃に悩まされることになります。俗に言う「偽マダラの無限襲来イベント」ってやつです。

 

 ですからこれで完全に小南の死亡フラグが折れたわけじゃないんですが、しばらくは襲ってこないです。僅かな猶予期間を得ることができました。

 

 この猶予期間の間に、雨隠れの所属となっておきましょう。そうして偽マダラの再襲来に備えます。雨隠れの所属になったら、小南ちゃんの護衛任務があればそれを受けましょう。

 

 雨隠れは人材不足の影響なのか、下忍でも上級任務受けられるんですよね。里長の護衛とか本来S級任務ですけど、ある程度実力があれば下忍でも受けることができます。ですので雨隠れの所属になったら必ず受けましょう。

 

 偽マダラの無限襲来イベントをクリアし続けることで、里への貢献度が上がり、短期間で一気に出世できます。偽マダラの無限襲来イベントを、里への貢献値稼ぎに利用するんですね。

 

 偽マダラを殺した場合、小南生存フラグが完全に成立するので楽ですが、反面、里への貢献値稼ぎが辛くなります。メリットデメリットあります。

 

 まあランちゃんは偽マダラを殺すことができないので、どっち道とる方法は一つしかありませんけどね。偽マダラの無限襲撃イベントを利用してある程度出世したら、マダラに輪廻眼を渡してループイベントを終了させましょう。それがこれからとるべきムーブとなります。

 

 ではこれから雨隠れの所属になるわけですが――っと、その前に小南ちゃんを助けておきましょう。

 

「あぅ……」

 

 小南ちゃん、大ダメージ負って地面でピクピクと震えてます。自分では帰還できないみたいですね。このまま放っておくと死んじゃいます。

 このまま放置してピクピクしてる小南ちゃんを観察したい気もしますが、助けにいきましょう。ぶっ倒れてる小南ちゃんに近寄っていきましょう。

 

 おっ、大丈夫か大丈夫か。

 

「うぅ……」

 

 小南ちゃんは虫の息ですが生きてますね。よかったよかった。

 

 ランちゃんは医療忍術使えるので回復させてあげましょう。回復アイテムである兵糧丸や増血丸もプレゼントしておきましょう。

 

 アイスティーしかなかったんだけど、いいかな?

 

「ありがとう助かるわ」

 

 回復させたり回復薬を渡すと好感度が上がります。仲違いしたことで失われた好感度を、ここで取り戻しておきましょうね。小南ちゃんを全快させて好感度を稼ぎます。

 

「助かるわ。貴方がいてくれて本当によかった」

 

 現雨隠れの里長的立場である小南に気に入られれば、再就職も出世も早く済みますからね。全力で媚売っておきましょう。

 自分を売る、とても大事なことです。就職活動でも世界に通用するビジネスマンになるためにも大事です。

 

 それにしても、シズネちゃんと交流するためだけに鍛えた医療忍術がまさかこんな所で役に立つとは……。元が討伐チャート用のデータなんで意図したことじゃないですが、ラッキーでした。おかげで好感度稼ぎする時間が短縮できます。

 

 医療忍術を教えてくれたシズネちゃんと蛞蝓おばさんに感謝しておきましょう。

 二人とはもう交流する機会はないですけどね。第四次忍界に参戦した時に運がよければ会えるかもですが。恥じることを知らない里抜け野郎なんで、まあ会わす顔がありませんけど。

 

「ラン、雨隠れに戻ってこない?」

 

 回復した小南ちゃんと会話していると勧誘されました。元々知り合いだったので、好感度が戻ればすぐに勧誘してくれます。当然答えは諾です。雨隠れに所属させてもらいましょう。

 

 自分、雨隠れに再就職いいっすか?

 

――雨隠れに所属する?

――【はい】

 

 雨隠れの変態マスク野郎たちよ、ランちゃんが帰ってきたぞー!!

 

 ということで雨隠れに再就職しました。

 捨てた故郷にしれっと戻って来るというクズムーブをかましたところで、キリがいいので今日はここらへんまでとします。

 それでは皆さん、また次回お会いしましょう。



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ch.20 小娘小娘言うんじゃねぇよ年下のくせにオォン!?(小南)

メスガキ(小娘)に煽られるオビト君回


「小南ちゃん!」

 

 そこには、あり得ないはずのあの子の姿があった。夢幻なんかではない。正真正銘、あの子がそこにいたのだった。

 

「ラン、貴方何故ここに……」

「小南ちゃん。色々言いたいことはあるけど、今はそれよりもアイツをどうにかすることを優先しようよ」

「ええそうね……」

 

 ランは私の援護に来てくれたらしかった。

 後で知ったことだが、別れ際の私の姿に鬼気迫るものを感じ、居ても立ってもいられなくなり、それで木の葉を飛び出してきたようだ。

 

 馬鹿な子だ。木の葉の里にはあの子を思ってくれる沢山の人がいるであろうに。

 それなのに全てを投げ出して、大犯罪者であるこんな私のために尽くしてくれるなんて。大馬鹿だ。本当に馬鹿だ。

 

「小南ちゃんは無理をしないで。私が前に出るから。私の攻撃に合わせて援護してくれる?」

「わかったわ」

 

 あの子が前に出て私が援護する。負傷していて私が満足に動けない現状、そうするしか他に方法がない。

 私たちは視線を交わして頷き合うと、すぐにツーマンセルでのフォーメーションを組んだ。

 

 いつぶりだろうか。あの子とこうして戦場に立つのは。

 袂を別って以来並び立つことなどなかったから、山椒魚の半蔵を討った時以来だろうか。随分と昔のことである。

 

 記憶も薄れるほど長い間離れていたというのに、私たちはまるで長年一緒にいたかのように自然と息を合わせることができた。自来也先生の下で修行していた時に身に着けたものが、身体の奥底に染み付いていたらしい。

 

「いつぞやの小娘か。木の葉にいると聞いていたが、まさかこの場にやって来るとはな。今更里心でもついたか?」

「そんなことどうでもいい! 小南ちゃんに大怪我させて、アンタ、絶対に許さないから!」

「貴様などもはやどうでもいい存在だが、俺の計画を邪魔するというのなら容赦はしない。後ろの小娘と一緒に消えてもらうぞ」

「やれるもんならやってみろ! いつかアンタをぶっ飛ばしたいと思ってた! ここでぶっ飛ばしてやるわよクソマダラ!」 

「相変わらず口汚い小娘のようだ。その台詞そのまま返すぞ。やれるものならやってみろ小娘!」

 

 私がやられたということ以外にも、長年積もりに積もった怒りがあるのだろう。怒りを抑えきれないといった様子で、ランはマダラに向かっていった。

 

 あのマダラ相手に昔のように猪突猛進に向かっていくのは危険だと思ったが、それは杞憂だった。言葉尻は乱暴でも、ランのその動きは極めて冷静であった。精密で的確な攻撃を、ランは繰り出していった。

 

 大気中に散らばって複雑な動きを見せる蒸気。ランはそれらを巧みに操りながら、マダラを追い詰めていく。

 不安定な蒸気のコントロールなど難しいだろうに、決して私の方に攻撃が及ぶことはない。見事な技だった。

 

(この前戦った時も思ったけど、本当に成長しているのね。私も負けてはいられない!)

 

 この戦いはそもそも私のものだ。ランだけに任せておくわけにはいかない。痛む腹を押さえながら、私も負けじと攻撃を繰り出していく。

 

 負傷していたとしても、今なら昔以上の動きを見せることができる。

 この十数年間頑張ってきたのは、ランだけではない。ランと私、それぞれの場で己の技を磨き続けてきた。

 その動き、連携は昔よりも洗練されているに違いない。長い時を経て熟成されたかのようにだ。

 

「煩わしい小娘共が! 女が揃うと姦しいというのは本当のようだ!」

 

 私たちの息の合った連携攻撃を浴び、マダラは苦戦しているように思えた。私一人と戦っている時よりも、明らかに苦戦していた。

 

 不規則な動きを見せる水蒸気による攻撃と、紙による連続攻撃。どちらか一方ならともかく、両方を対処するのはいくら戦いに長けたマダラといっても難しいようであった。

 

(ああ私たちって……)

 

 紙操の術の天敵である火と水。それと油。

 それらの扱いに長けたランは、私の天敵であると思っていた。仲違いしていた時は決して相容れない存在だと思っていた。だがそれは違ったのだ。

 

――ドォオン。ドドドォオオン。

 

 私の放った起爆札が着火起点となり、ランがばら撒いた水素を多量に含む蒸気に引火して、燃え広がっていく。予想も付かないような不規則な爆発攻撃となり、マダラを苦しめる。

 

(実は相性よかったのね……)

 

 紙は沸遁と相性が悪いのではない。その逆で、助ける存在だったのだ。

 爆発物の導火線となるのは紙。沸遁を助けることができるのは、着火起点となる紙だけだ。

 

 ランと最も相性がいいのは、弥彦でもなく長門でもなく、この私だったのだ。

 成長した今だからこそ、透き通る水のような澄んだ心を取り戻した今だからこそ、それを十二分に理解することができた。

 

(マダラ……感謝してあげるわ)

 

 マダラに感謝なんてしたくないけれど、あの子との繋がりを再確認させてくれたこと、それだけは感謝してもいいだろう。

 感謝してひと思いに殺してあげよう。さっさと死になさいマダラ。

 

「どうしたのマダラ! 小娘如きに追い詰められてるじゃないの! うちはって実は全然大したことないのね! 写輪眼なんてザコよザコ! 白眼の方がよっぽど優秀ね! ザコ、ザーコ♥」

「昔から口の減らない小娘がっ! 写輪眼が白眼以下なわけなどあるかぁあ! 殺すっ、貴様だけは絶対に殺す!」

「マダラなんて所詮初代火影に負けた先の時代の敗北者だもんね。うちはなんて千手に破れたザコよザコ! ザコ、ザーコ♥」

「敗北者だとぉっ、取り消せ! その言葉ぁっ!」

 

 ランはマダラのプライドを刺激し煽っていく。

 

 うちは一族は(おの)が一族の特質である写輪眼に絶対の自信と誇りを持っている。それを貶されるのは、最も腹立たしく心をかき乱されることなのだろう。極めて的確な煽りだった。

 

 どうやら心理戦も上手くなっているらしい。

 昔のあの子なら頭脳プレーなんて決してできなかっただろう。昔は相手の心理なんて関係なしに猪突猛進に突っ込んでいくだけだった。むしろ逆に煽られて罠にはまるだけだった。

 

 だが今はまったく違った。お馬鹿だったあの子が立派な策士に変貌していた。

 並大抵の努力では無理だ。相当な努力を重ねたのだろう。

 

(あれは……ラン、本当に成長しているのね)

 

 ランはマダラを煽って注意を引きつけつつ、裏で罠を仕掛けていた。マダラの死角に、水素蒸気による隠れ爆弾を仕込んでいたのだ。

 

 頭に血の上ったマダラはそれに気づかず、安全地帯だと思って、爆発物で満たされた空間に転移して逃げ込んでいく。

 

「小南ちゃん!」

「ええ!」

 

 ランに言われずとも、私は目標地点近くに潜ませた起爆札を操り爆発させる。マダラが転移した直後の絶妙なタイミングで、一帯が弾け飛ぶ。

 

「がはぁっ、おのれぇ、小娘共がぁっ、調子に乗りおってぇ!」

 

 異空間から戻ってきたマダラは大ダメージを負っていたが、すぐに回復する素振りはなかった。

 大きなダメージを無に帰す夢と現実を入れ替える人間離れした力を持つ写輪眼といえど、多用はできないらしい。

 少なくとも、すぐに体勢を立て直すことはできないようだ。

 

 力には代償がつきもの。いかに強力な瞳術といえど、ノーコストで使えるわけではないということか。

 

 ならばこちらにも十分に勝機はあるだろう。このまま押し切ればいい。

 

「罠に気づかないなんてやっぱり写輪眼なんて大したことないじゃない! 広い視野と透視能力を持つ白眼なら気づけたはずよ! やっぱり白眼の方が優秀ね!」

「違う! 白眼の視野の広さと探知能力は確かに写輪眼以上だと認める! だが総合的に考えれば確実に写輪眼の方が上だ! 万華鏡の力を入れれば、白眼なんて敵うはずもない! 幻術対策もできない白眼なんてザコだ!」

「日向は木の葉にて最強! うちは一族は二番目ね! いや、千手を入れると三番目ね!」

「違うと言っているだろうがぁあ! 人の話を聞けぇえ! 絶対にうちはが最強だ! うちはが木の葉最強に決まっている!」

「いやもっと下ね! 奈良一族も山中一族も秋道一族も優秀だし、六番目くらいね!」

「絶対に違う! うちはがその御三家より下なわけがあるかぁ! 奈良なんて影を操るしか能がないし、山中なんて尋問しか能がない一族だ! 秋道なんてただのデブ一族だ! 三人揃ってようやく力を発揮できるようなザコ一族を、うちはと比べるな!」

「そういや木の葉には犬塚一族もいたわね。犬塚一族も優秀だから、うちはは七番目ね。あっ、猿飛一族と志村一族もいるから九番目かもね~」

「ありえない! 絶対にありえんぞ!」

 

 マダラは満身創痍だというのに、ランの挑発に乗り、ムキになってどうでもいい口論を始めた。

 

 私が最初に大ダメージを与えた時と同様、あの状態から復活する手段があるのだろう。だからあんな状態でも口論なんてしていられる余裕があるのだ。

 

 やはり油断できない。なんとかして回復する前に仕留めきらなければ。

 

「うちはなんて里の重役にも選ばれてないから、やっぱり無能のザコ一族よね~」

「それはうちはが里から差別されていたからだ! 全てはうちはを差別する土台を作った二代目火影が悪いんだ! アイツのせいで、うちはは苦難の道を歩むことになったんだ!」

「差別差別ね。能力ない人に限って環境のせいだとか言い訳するわよね~。本当に才能ある人だったら環境を言い訳になんてしないし乗り越えられるはずよ。コミュ力さえあればどうにでもなるしー。やっぱコミュ力を入れた総合能力が実力よね。ってことは、やっぱうちははプライド高くて周りと馴染めない戦闘しか能がないザコ一族じゃない! ザコ、ザーコ♥」

「貴様ぁあああ! うちはに対するそれ以上の侮辱は絶対に許さんぞぉおお!」

 

 マダラは言い合いで打ち負かされ、激昂しながらランに向かっていく。

 その様はまるでガキであった。デイダラと馬鹿騒ぎをしていた時のことをどうしても思い出してしまう。こっちがマダラの本性なのだろうか。

 

 だとしたら余りにも幼すぎる。まるで少年時代で時が止まり、そのまま身体だけ大人になってしまったかのようだ。そんな違和感が感じられる。

 

 私にも似たような経験がある。

 弥彦が死んだあの時。かつての暁の皆が死んだあの時。あの時からずっと時が止まったかのような感覚に陥っていた。つい最近までそうであったと言える。

 耐え難いトラウマを抱え、心がその時から止まってしまったのだ。

 

 この世界に救いなどない。俺はお前らと一緒だ。我々は同志だ。

 

 かつてマダラが私たちの前で放った言葉。聞いた当時は、マダラが戦の絶えない世を憂えているのだと素直に思った。

 

 だが今なら違う意味が見えてくる。その言葉の真の意味を考えると、私たちと似たような体験をしたからこそ出てきた、マダラの本音だったのではないかと思える。

 

 きっとマダラも、私と同じような体験をしたのかもしれない。少年時代に耐え難い出来事を経験し、そのまま時が止まってしまったのかもしれない。

 そうして肉体だけが成長を重ねてしまったのかも。肉体と精神の成熟が釣り合わないアンバランスな人間となってしまったのかもしれない。

 

(このマダラ、本当に本物のマダラなのかしら?)

 

 今までのマダラの言動を合わせて考えると、もしかしたらこのマダラは本物のマダラではないのではないか。そんな疑惑が浮上してくる。

 

 元からマダラだと信じていたわけじゃないが、今はその疑いがより強くなった。忍びの神とも謳われる初代火影と比べられるほどの英傑であったマダラが、こんな幼い人格なはずはないだろう。

 

 まあ元々のマダラがどんな性格をしているかわからない以上、確かなことは何も言えないのだが。

 百年の時を生きようがいつまでも子供の心を忘れないおめでたい人物だという可能性もあるだろう。

 

 身体は大人、精神は子供――その名はうちはマダラ。

 マダラがそんな変態的な人物という可能性も、なきにしもあらずだ。

 

 真実はわからない。されど私の中では、このマダラは偽者なのではないかという、どこか確信めいたものが生まれたのであった。

 

「ザーコ、ザーコ、クソザコマダラ! うちはは時代の敗北者! 木の葉最弱のクソザコ一族ぅ~♥」

「黙れぇえええ! 小娘がぁあああ! 死ねぇえええ!」

 

 マダラを煽るランは、戦術だからとか関係なしに楽しそうであった。憎き相手を弄り倒せて心底嬉しそうであった。昔言われ放題だった鬱憤をここで晴らしているようだった。

 

 ランは成長を果たそうがいつまでも子供の心を忘れてはいないようだ。

 昔からそうだ。あの子はいつも無邪気で、それが人の心を惹きつける。それが昔から変わらないあの子の姿だ。

 

 なんとも微笑ましい。昔に戻ったみたいだ。

 命を賭けた戦場にいるということを忘れて、思わず彼女の横顔に見入ってしまう。

 

「マダラって絶対モテないわよね! キモすぎてカノジョとかいたこともないでしょ? ぷふっ、やっぱザコじゃない! ザコ、ザーコ♥」

「ふざけるなああ! オレにだってリ――げふんげふん。黙れ小娘がぁああ! このオレを舐めるなぁぁああ! 死ねぇえええ!」

 

 マダラは未だかつてないほど激昂すると、ランを執拗に攻撃し始めた。

 異性経験の少なさを指摘されたのがよほど腹に立ったようだ。ラン、可愛い顔してえぐいことを言うわ。

 

(異性経験が少ない……ぐふっ、お腹が抉られる感覚が……ああ実際抉られていたわね……)

 

 ランの何気なく放った言葉で私の精神にも少なくないダメージが来たが、それは私の心に仕舞っておくことにした。

 マダラと一緒だなんて、絶対に思われたくない。この真実は墓場まで持っていこう絶対。

 

 やめてラン、その煽りは私にも効く。やめて。

 

「ラン、冗談はその辺で。一気に畳み掛けるわよ」

「うんわかってる」

 

 マダラを煽りつつも準備を進めていたランに声をかけ、次の攻勢に出る。

 マダラの周囲一帯に満たされた水素蒸気。それに、私が点火していく。

 

「小娘小娘言って、舐めてんじゃないわよ! そんなに舐めたきゃ、これでも舐めてなさい! 私特製の飴ちゃんよ!」

「これは……またしても水素蒸気の塊か?」

「もっとヤバい奴よ! 酸素も混じってるから派手にいくわ! いくよ小南ちゃん!」

「ええ!」

 

――ドゴォオオン。バゴォオオン。

 

 引火した蒸気が連続した爆発を起こしていく。

 さすがに起爆札六千億枚の爆発には及ぶまいが、それでもかなりの規模の爆発となる。マダラは捌ききることができず、爆発に飲み込まれていくこととなった。

 

「ぐぅっ、はぁはぁ、小娘ぇ、この雪辱は必ず果たす!」

「こらクソザコ! 逃げるの!? うちはのプライドはないの!? また敗北者に成り下がるの!?」

「一時引くだけだ。お前は必ず殺す! タダでは殺さんからな! 覚えておけ小娘!」

 

 マダラは興奮していようと引き際を見誤ることはなかった。

 さすがは暁のメンバーといった所だろうか。この場では不利と悟ると、すぐに引いていった。

 

「――はぁはぁ、はぁはぁ、うぅ、ぐっ、がはっ」

 

 マダラの気配がなくなり緊張が解けると、一気に身体から力が抜けていった。堪えられず、その場で倒れこんでしまう。限界を超えて身体を酷使し、かなり無理をしていたようだ。

 

「小南ちゃん!?」

 

 どうやら血を流しすぎてしまったらしい。意識が朦朧としてくる。

 そんな私に、ランがすぐに駆け寄ってくる。

 

「待ってて! 今治療するから!」

 

 温かな光と共に、腹部の痛みが和らいでいく。ランが医療忍術を施してくれたのだ。

 

(この子、医療忍術も使えるようになったのね……)

 

 医療忍術は精密なチャクラコントロールを必要とする。大雑把だった昔のあの子では、到底扱いきれるものではなかったはずだが。

 

(努力したのね……)

 

 本当に昔のあの子とは違う。相当な努力を重ねたに違いなかった。

 

「ラン。貴方の傷の治療を優先して。私はこのままでいい」

「小南ちゃん!? 何を言って!?」

 

 私はランのその手を掴み、治療をやめさせた。

 

「いいのこのままで。このままでいい。このまま死なせて。私には生きる資格がないから。貴方に合わせる顔がないわ」

 

 これが今際の言葉になるだろう。そう思って、自分の素直な気持ちを吐き出す。

 

 今までのこと、それに対する謝罪と感謝を。そしてすぐに木の葉に戻るように伝える。

 

 ここにいたらマダラの襲撃を再び受けてしまうだろう。それに、暁の本拠地だとバレた雨隠れは、これから苦難の道を歩むことになる。ここにいて良いことなど一つもない。

 

 だから貴方を思う大事な人がいる場所に帰るように説得する。貧しき雨隠れではない、豊かな木の葉に帰るように説得する。

 

 ランのためを思ってそうしたのだが……。

 

「勝手なこと言わないでよ!」

 

――バシンッ。

 

 あの子から返ってきたのは怒りだった。腹部の痛みなど忘れるような、鋭い一撃で頬を張られることになった。

 

「私を一人で置いていかないでよぉお!」

 

 ランはその端整な顔をくしゃくしゃに歪めながら叫んだ。

 

 ランの心底悲しそうな顔を見て理解する。

 

 そうか。弥彦が死に、長門が死に、そして私が死ねば、この子は一人取り残されてしまうのか。

 あの孤児グループ四人の中で一人だけ残されてしまうのだ。血よりも濃い絆で結ばれた私たちにとって、それは何よりも辛いことに違いない。

 

「生きて罪を償って! どんなに苦しくても生きて! 私が一緒に生きるからぁ!」

 

 ランは涙を流しながらそう叫ぶ。ランの真っ直ぐな言葉が私の心を打つ。

 

 私はまた逃げていたのだ。弱い自分を見つめることができず、自分が苦しまずに済む方法を選んでいた。

 

 私はなんと卑劣な女なのだろう。正面から問題に向き合い、真っ直ぐに生きるランと比べると、恥ずかしくなってくる。

 大人なあの子と比べると、私はまるで小娘だ。

 

「絶対に死なせない! 小南ちゃんは私が助ける! 死なせるもんか!」

 

 ランは泣き顔を拭うと、毅然とした表情で治療を再開する。最大のチャクラを篭めて負傷箇所を癒していく。

 軽傷とはいえ自分も少なくない傷を負っているのに、そんなことは構わずに私の治療に専念する。

 

(これは……なんて温かいの……)

 

 私を思うあの子の気持ちが、チャクラを通して流れ込んでくる。

 私はそれを拒まずに受けることにした。二人の心が一つになる。

 

(絆が……あの子と繋がっている……)

 

 チャクラとは本来、争いの道具ではなく、人と人を繋ぐ平和のための道具なのだという。古き六道仙人の言葉にそうある。

 

 それを聞いた当初の私はなんとも馬鹿馬鹿しいことだと思った。上辺を取り繕った偽りの言葉だと思った。

 

 チャクラとは、天が与えてくれた生きていくための力だ。火を操り、水を作り出し、土地を耕し、生活の糧となる。時には平和を脅かす侵略者を撃退する力となる。

 孤児であった私たちが生きてこれたのはチャクラの齎す力の恩恵のおかげだ。だからそうに違いないと思っていた。

 

 だが、今ならわかる。六道仙人の言っていたことが、真に理解できるのだ。

 チャクラを通してあの子の気持ちに触れていると、理解せずにはいられない。

 

 チャクラとは人と人を繋ぐ絆。人と人が理解しあうための道具。争うためではなく、争いを未然に防ぐためのもの。

 

 そうなのだと、心から理解できる。

 

「貴方のこと……昔から馬鹿な子だと思っていたけど……本当に馬鹿だったのは……私の方だったわね」

 

 正面からあの子の顔を見ることができず、横を向きながら本音を呟く。

 ランは言葉を返さず、黙々と治療を続けてくれた。その間も、あの子の気持ちがずっと流れ込んできていた。

 

 気づけば、降りしきっていた雨はやんで日が差していた。やむことのないはずの雨隠れの雨がやみ、鮮やかな虹が私たちを覆っていた。

 

 だが私はそれを碌に見ることができなかった。なぜなら……。

 

(晴れの日でも雨は降るのね……)

 

 晴れでも雨は降る。私はこの時、それを初めて知ったのであった。



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ch.21 不法侵入ですよ不法侵入! たぶんマダラだと思うんですけど(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 どうも皆さんホモガキです。今日も“NARUTO~影への道~”の実況をお伝えしていきたいと思います。

 

 さて前回は、偽マダラに襲われてる小南ちゃんを助けたところまででしたね。仲直りして、それで雨隠れの里に再就職したところまででした。

 

 ではそこから再開していきましょう。雨隠れで下忍としての生活をスタートします。高い貢献値がもらえる任務を選んで受けていきましょう。

 

 ここで注意点が一つ。今は偽マダラのイベントが終わった直後なので気にしなくても大丈夫ですけど、ある程度時間経過したら偽マダラの小南襲撃イベントが再び発生しますので、それに備えましょう。

 

 具体的に言うと、偽マダラのイベントが発生しそうになったら、小南の傍から離れないようにしましょう。それで襲って来る偽マダラに備えます。

 

 要するに、そろそろ偽マダラがやって来そうだなと思ったら、小南ちゃんの変態ストーカーしていればいいわけです。小南ちゃんを変態ストーカー(偽マダラ)から守るために、小南ちゃんの変態ストーカーになるというわけですね。

 

 ミイラ取りがミイラになる(至言)

 

 ちなみに、護衛任務を受けていなくても偽マダラを撃退すれば貢献値がもらえますが、依頼受けてるとより貢献値がもらえますので、護衛任務が出ていれば必ず受けておくようにしましょう。

 そうやって、輪廻眼を手に入れるまで無限ストーカーしてくる偽マダラをボコり続けて出世するのが、これからのムーブとなります。

 

 マダラ襲撃イベントを終わらせるタイミング――つまり、どこまで貢献値を稼いで切り上げればいいのかといいますと、上忍に上がる前くらいまでです。

 別に上忍になるまで上げても構いませんが、この後起きる第四次忍界大戦に里代表として参戦すれば少なくない貢献値が稼げますので、わざわざ上忍まで上げる必要はないです。ですので上忍ちょっと手前まで上げて、それで切り上げましょう。

 

 ではそんな感じで、小南が偽マダラに暗殺されないように気をつけながら、雨隠れでの新生活をスタートしていきまーす。偽マダラをボコってスピード出世していきましょう。ほらいくどー。

 

……。

……。

……。

 

「私の名前はアジサイ。よろしく」

 

 下忍のランちゃんは任務を受けると、中忍以上の上司の下につくことになります。今回の上司はアジサイちゃんになりました。

 

 おお、やはりアジサイちゃん生きてましたね。ペイン木の葉襲撃時の畜生道がアジサイちゃんじゃなかったので生きてる可能性があるとは思っていましたが、やはり生きていましたか。よかったよかった。

 

「足手まといにはならないでね」

 

 だいぶ歳の離れた年下上司とか現実なら「いや~キツいっす」って感じですけど、アジサイちゃんみたいな二次元美少女なら大歓迎です(クソノンケ)。

 初顔合わせなんで元気よく挨拶していきましょう。

 

 三十五歳、下忍です

 アジサイ先輩、おっす、お願いしまーす

 

 新しく配属された無能っぽい下忍が実は優秀で里長と対等に戦えるくらい強いって、なんだか中二的な展開っすね。なんかなろう系小説っぽい展開です。

 

 では、アジサイ隊長の下で任務に励んでいきましょう。猫探しとかクソつまらない単調な任務が続くので、巻いてお送りしていきます。

 

……。

……。

……。

 

「小娘、今日こそ長門の輪廻眼を渡してもらうぞ!」

 

 出たわね。出ました

 

 偽マダラです。そろそろ来る頃だと思っていましたが、やはりやって来ました。

 

「夢幻の世界のため、俺には輪廻眼が必要なのだ! 邪魔はさせん!」

 

 我らが雨隠れの里のアイドル三十五歳天使様に迷惑をかける変態ストーカーをシバきましょう。アジサイちゃんたちと一緒にボコボコにしますよー。

 

 おらぁ、大人しくしろ。シュバルゴ!

 

「小娘共がまた邪魔を!」

 

 小娘小娘言うんじゃねぇよ年下(ガキ)のくせにオォン!?

 

「口寄せのじゅちゅ!」

 

 アジサイちゃんは小南みたいに紙使いであり、時空間忍術を主体にして戦うスタイルです。

 小南ほどの実力はありませんが、そこそこ強いです。ですからすぐには死にませんが、偽マダラに集中攻撃されると危ういです。

 

 せっかく運命のルーレットに打ち勝って生き延びたアジサイちゃんをここで死なせるのは忍びないです。守ってあげましょう。偽マダラに攻撃を当て続け、偽マダラのヘイトをランちゃんの方に向けておきましょう。

 

「おのれ小娘……この雪辱は次こそ必ず!」

 

 ある程度HPを削ると、偽マダラは撤退していきました。撃退成功です。

 

 相変わらず逃げ足超スピードですね。止めを刺しきれません。

 

 とまあ、そんな感じで偽マダラ撃退ループを繰り返していきます。単調な戦闘イベントの繰り返しですので、巻いてお送りしていきます。

 

「小娘があ!」

 

 二回目撃退成功。

 

「またして貴様か小娘!」

 

 五回目撃退成功。

 

「小娘ぇええ! 輪廻眼を寄こせぇええ!」

 

 十一回目撃退成功。

 

「小娘ぇええええええッ! 小娘ぇええええええッ!」

 

 二十四回目撃退成功。

 

……。

……。

……。

 

 ある時は天使の塔、ある時は市中、ある時は市外――。雨隠れの里の色んなところで、変態ストーカーに襲撃されました。それを全部撃退していきました。計三十回以上です。長い。しつこい。

 

 偽マダラの執念は凄まじいですね。何回撃退されても決して諦めはしません。くじけぬ心を持っています。

 

 オビト君、リンちゃんと夢の世界で幸せに暮らすために命かけてますからね。リンキチおじさんの本領発揮といったところでしょうか。

 

――上忍までの貢献値、あと2020。

 

 さて偽マダラを撃退し続けることで、一気に出世できました。短期間でのスピード出世です。上忍への道が目前まで見えてきましたので、そろそろ偽マダラの襲撃ループを終わりにしましょう。

 

 ではどうやってループを終わらせるかといいますと、色々と方法があります。

 例えば、主人公が長門の死体から輪廻眼を剥ぎ取って偽マダラにプレゼントしてもいいですし、長門の死体が安置される場所の近くで戦闘イベントが発生した際に、そこに誘き寄せてもいいです。

 

 ただ、上記の二つの方法だとちょっと問題があります。

 一つ目の方法だと、小南の好感度が下がっちゃうんですね。好感度激下がりです。

 二つ目の方法だと、ランダムに委ねることになるので面倒です。

 

 ここにきて好感度が下がるのは、目指すエンディングの条件的に避けたいところです。

 ランダムに委ねるのは、チャートの安定性を損ないます。リロードしまくるのは大変です。

 

 ということで、本チャートではちょっと変わった方法をとります。偽マダラに敗北して捕まるという方法をとります。

 

 敗北すると普通は死ぬんですが、条件によってはイベントが発生し、捕虜になるケースもあるんですよね。

 

①単独で偽マダラと戦闘

②自身のHP四分の一以下で幻術にかかる

③小南の好感度が高い

 

 今回、この三つの条件を満たすと、捕虜イベントが発生します。偽マダラが主人公の身柄と引き換えに小南に輪廻眼を要求するというイベントを引き起こすことができます。

 

 捕虜イベントは小南の好感度が下がりませんし、自分で能動的に動けるのでチャート的に安定します。ということで、これからこの捕虜イベントの発生を目指して動いていきます。

 

 では次回の偽マダラ襲撃時に単独で偽マダラと出会えるように調整していきましょう。護衛任務は受けず、自分一人で里に潜んでいる偽マダラを探しに行きます。偽マダラが小南に襲いかかる前に、こちらから襲いかかって撃退されましょう。

 

 自分からやられに行くのか……(困惑)

 

「小娘、貴様一人か。ここで消させてもらうぞ」

 

 いました。茶屋の中にいました。さあ戦闘開始です。ボコボコにされて負けましょう。

 

「どうした小娘? 動きが鈍っているぞ?」

 

 自ら敵の攻撃の前に飛び込んでいき、虐待されるおばさんになりましょう。

 

 ランちゃんゎね、本当ゎ虐待おばさんだったんだよ

 

「小娘、オレの(もの)を見ろ!」

 

 HPが十分に減ったところで、偽マダラの幻術攻撃を受けます。幻術返しをせずにそのまま受けます。ランちゃんは気を失いました。

 

 普通はここでゲームオーバーなんですが……。

 

「……こいつをここで殺してしまうのは少し惜しいな。利用させてもらうか」

 

 戦闘パートが終わり、イベントが挿入されました。倒れ込んだランちゃんを見下ろしながら、偽マダラが意味深な言葉を吐いています。

 

 何か凄いエッチな意味に聞こえますが、別にエッチな意味はないでしょう。偽マダラはリンちゃん一筋だからね!

 

 ということで、ランちゃんが囚われの身となったところで、今回は終わりとします。

 ではまた次回お会いしましょう。さいなら~。



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ch.21 不法侵入ですよ不法侵入! たぶんマダラだと思うんですけど(小南)

 マダラに重傷を負わされた私には、今しばらくの療養が必要だった。腹部に大きな風穴を開けられ、臓器の一部に傷がつけられたのだから、それもそうだろう。

 

 命が助かっただけでも儲けもので、後遺症も残らないとなれば奇跡的なことだった。ちゃんと療養さえすれば元の状態に戻れると聞いて、本当に有難い話だと思った。

 

 全てはランが適切な治療を施してくれたおかげだ。

 

 医療忍者として名高い綱手姫の下で修行を積んだランは、一流の医療忍者と言っても過言ではない実力を身に着けていた。流石に綱手姫には及ばないものの、医療技術に乏しい雨隠れにおいてはトップクラスの医者と呼べるまでの存在になっていた。

 

 幼い頃は簡単な折り紙にも四苦八苦していたラン。そんな彼女が、医療という高度な知識と技術が要求される分野において活躍しているとは俄かに信じられなかった。

 でもそれは疑いようのない事実であった。瀕死の私を死の淵から救い出したのだから疑いようなどない。

 

 ランには医療忍術の才能が秘められていたらしい。昔と変わらず座学などの面では不安があるようだが、実際の治療など、実技の腕前はピカイチだった。感覚だけでなんとかなるらしかった。いわゆる天才というやつだ。

 

 血継限界ばかりか医療忍術の才能まで持っていたとは驚きだ。あの子にはいつも驚かされる。

 

 そう言えば、ランは昔から何をやるにしてもセンスだけはあった。盗みをやるにしても、修行をやるにしても、暁のメンバーを勧誘するにしても、まるでそれが物事を為すのに最短のコースであるとわかっているかのように行動していた。

 本能のままに動いているように見えるのに、全て上手くいくのだ。折り紙などの些細なことを除けば、彼女が大きな失敗をしているところを見たことがなかった。

 

 偶然とは思えない。まるで運命に導かれて動いているかのようだ。彼女は天に選ばれし運命を持つ子のようだった。その運命に導かれ、悪に染まった私を救い出し、その命までも救ってくれたのだ。

 

「小南ちゃん、今日も診察させてね! お腹見せて!」

「ええよろしく」

 

 大きな治療は終えたとはいえ、完全に治療が終わったわけではない。私はランから定期的に診察され、適宜追加の治療を施されることになった。

 

「これで合ってるよね? シズネちゃんがいればすぐに聞くんだけど、今シズネちゃんいないからなぁ。たぶん合ってるよね?」

「……あのラン、本当に大丈夫なの? 何故疑問形なの?」

「たぶん大丈夫だよ、私に任せて小南ちゃん!」

「たぶんって言われると凄く不安よ……」

 

 治療中のランの言動には、大きく振り回されることになった。

 

 ランは治療中、難しい顔をしながら「あれ? どうだったっけ?」とか「たぶんこうだったかな?」とか、そんな疑問形の独り言をぶつぶつと喋りながら治療をするのだ。患者をとても不安にさせる。

 

「大丈夫、私に全部任せておいてね! 綱手様にビシビシ鍛えられて、頭で覚えてなくても身体で覚えてるから!」

「頭では覚えてないのね……」

 

 ランは不安がる私に対し、自信を持って笑顔で答える。

 

 その根拠のない自信はどこからくるのか不思議でならなかった。毎回治療が終わるまで、私はハラハラドキドキさせられることになった。

 

 結局の所、ランは失敗なんてしなかったのだけれど。その腕前は最初に私を治療してくれた時と同じで見事なものだった。

 

 けれども受診中の患者を徒に不安がらせて血圧を上げさせるのは本当にやめて欲しいものだ。凄く不安になる。患者がお年寄りなら怖すぎて心臓が止まってしまうだろうし、子供なら不安で泣き喚くに違いない。

 

(ランのサポートのおかげで里内の仕事も何とかなっているわね)

 

 雨隠れの実質里長を務める私が満足に動けないとなると里の一大事なのだけれど、ランのサポートのおかげでどうにかなった。

 

(雨隠れにランがいる。幻術でもない、現実のことなのね……)

 

 痛みを誤魔化す麻酔の影響もあってか、私は夢現な気分のまま、しばらく過ごすことになった。あの子が隣にいる現実をどこか実感し切れぬまま、夢のような気持ちで過ごす。

 

 そうだ。あの子が帰って来た。私の元に帰って来てくれたのだ。優しい夢のように思えるけれども、それは確かな現実だ。ランは私の傍で手助けをしてくれているのだ。こんな幸せなことはない。

 

(馬鹿な子。木の葉にいた方がよっぽど得で楽しいでしょうに)

 

 あの子は木の葉で築いた全てを投げ打ってまで、私の元に帰ってきてくれたのだ。損得を完全無視した馬鹿のやる行動。でもその馬鹿さ加減が何よりも身に染みた。あの子の大きすぎる愛を感じ、それが私の胸を強く打った。

 

「はい小南ちゃん。おかゆできたよー」

「ありがとうラン」

 

 療養中の私に、ランがおかゆを作ってくれる。魚介ベースの出汁が効いた、味良し栄養良しの一品だ。

 

 いつの間にこんな料理まで上手にできるようになっていたのだろうか。木の葉にいる間に、生活面でも色々と努力を重ねていたらしい。

 

「はい、あーん」

「自分で食べられるわよ」

 

 重傷を負っているので満足に身体を動かせない。けれども紙分身を使えば事足りる。

 

「ダメだよ小南ちゃん」

 

 私はランに余計な手を煩わせたくなくて紙分身の印を結ぼうとしたのだが、その手はランによって止められることとなった。

 

「チャクラはなるべく使わないようにしないと。里の執務をやるのに紙分身を使っているんだから、それ以外には使っちゃダメだよ」

 

 ランは強い口調で私の行動を諌めてくる。医療者として譲れないものがあるらしい。

 それでも私にもプライドがあるので断ることにする。

 

「食事くらい大した手間じゃないし大丈夫よ。自分でやるから。子供じゃあるまいし」

「はいあーん」

「だから自分で……」

「はいあーん」

「……」

 

 こうなったランは昔から意地でも我を貫き通す。逃れることなんてできない。

 

「はい、あーん」

「あ、あーん」

 

 私は恥ずかしさを堪えながら赤ん坊のように口を開けるしかなかった。

 

 とんだ屈辱である。三十五歳になって小娘どころか幼児のように扱われるなんて……。

 

(なんなのこの気持ち、下腹が……くっ、殺して!)

 

 でもどこか幸せな気分を感じてしまった自分がいて、それが許せなくて、ランがいなくなった後、私は枕に自分の頭を何度も打ちつけることになった。

 

「小南ちゃん、身体拭くね」

「大丈夫、自分でやるから」

「ほらほらダメだよ。小南ちゃんは怪我人さんなんだから。はい、お体拭きますねー」

「ちょっ、ラン、やめなさい!」

 

 ランは綱手姫の下で医療忍術の修行をしたからか、介護に関しても一通り行えるようになっていた。影分身まで使って暴れようとする私を押さえ込み、無理やり介護しようとしてきた。綱手姫譲りの怪力を持ち、影分身まで使うランに、私は抗うことができなかった。

 

 そして――。

 

「駄目よ! そこは、そこだけは、そんなところは絶対に拭いては――――あぁ……」

 

 私はランから介護という名の辱めを受けることになった。

 

 身体は綺麗さっぱり清められることになったが、ランが私の身体を拭く度、私の心は鉋で削られていくような気がした。

 

(もうお嫁に行けないわね……行く予定なんてないけど……)

 

 ランの介護によって尊厳がゴリゴリと削り取られていく気がしたが、不思議と悪くない気分だった。それだけあの子に愛されているのだと思うと、心が満たされていく気がした。下の世話をしてくれるなんて、愛がなければできない。

 

 私は治療中、ランから無償の愛を受け続けることになった。

 

「ラン、本当に下忍からスタートでいいの? 私から話を通せば上忍からでもいけるわよ」

「ううん、いいの。一からやり直したいから。それで雨隠れのみんなに認められたいの」

 

 木の葉で上忍をやっていたというランは、雨隠れの上忍でも十分に通用するはず。雨隠れの実質代表である私を救ったという功績もあるし、いきなり上忍でも問題はない。

 

 そう提案したのだが、ランは決して首を縦には振らなかった。

 

「貴方がそこまで言うのなら。わかったわ」

 

 私はランの思いを酌み、彼女の言う通りに配慮することにした。

 

 こうして、ランは雨隠れで一からスタートを切ることになった。

 

「これは……部屋に違和感があるわね」

 

 ランが正式に雨隠れの所属になって幾日か経つと、マダラの影が我々の元に再び忍び寄ってきた。

 

「どうやら留守中に荒らされたようね」

 

 帰宅すると、室内に荒らされた形跡があった。普通の人が見れば物色した形跡などわからないが、忍びである我々にはわかる。マダラが輪廻眼の在り処をこっそり探っているに違いなかった。

 

「あのクソマダラ! 女の子の机を漁るなんて! 小南ちゃんの秘密のお手紙があったらどうすんのよ!」

「そんなものはないけれど……。それはともかく、マダラが再び我々に近づいてきたのは問題ね。向こうの怪我は完全に癒えたと見て間違いないわ。これからも接近を繰り返してくるに違いない。四六時中つけ狙われるかも。困ったわね」

 

 時空間忍術を使うマダラは神出鬼没だ。いつ奇襲を受けるかわかったものではない。

 

「アジサイたちにも情報を流し、里全体の警戒レベルを上げて対処しましょう」

「うん。アジサイ先輩たちとも協力しないとね」

 

 こうして我々は里に不法侵入を繰り返すマダラの対策に乗り出していった。

 

 不安の種は尽きない。強大な力を持つマダラは危険すぎる存在だ。だけれども、ランが傍にいてくれればなんとかなる。そう思えた。

 

 ランが隣にいることの心強さと幸せを噛み締めながら、私は雨隠れでの新しい日々を送っていくことになったのであった。



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ch.21 不法侵入ですよ不法侵入! たぶんマダラだと思うんですけど(アジサイ)

 木の葉隠れ及び砂隠れの里で行われた合同中忍試験。そこで成果を挙げて中忍になった私は、その後すぐに拝命することになったS級任務で地獄を見ることとなった。

 

 フヨウ、スイレン。その二人を除いた、同期の全員が戦死。お世話になった先輩も、部下の後輩も、ほぼ全員が戦死。

 そんな地獄の体験をすることとなったのだ。

 

 辛うじて任務自体は成功したものの、失ったものは大きい。ただでさえ里は人材不足だというのに、さらに少ない人員で里の仕事を回さなければいけなくなった。

 

 仲間を失った心の傷を癒す暇もなく、私たちはすぐに上忍へと昇格し、働き続けることとなった。昼も夜も関係なく、ほぼ毎日働き続ける日々。

 

 そんな私たちの努力は報われることなく、さらなる悲報が飛び込んでくることとなった。

 

「ペイン様が……亡くなられた!?」

「嘘……でしょ?」

「本当よ。さっき天使様から内々に伝えられた。元からご病気を抱えてらしたみたい。それが原因で亡くなったらしいわ」

 

 フヨウ、スイレン。最も信頼できる仲間であるその二人に、私は天使様から聞いたトップシークレットの情報を伝える。

 

 情報を伝え聞いた二人の顔色は悪い。それも当然だろう。

 

 雨隠れの里の絶対的支配者であるペイン様の死。それが意味することは大きい。

 ペイン様が亡くなられたと里内の不満分子に知られたら必ず内乱が起こるだろうし、里外の勢力に知られたら周辺国がちょっかいをかけてくるに違いない。

 

 ペイン様の死で、里は内憂外患といった最悪の状況に陥ったと言える。動揺するのは当然だった。

 

「どうするのよ?」

「どうしようもないわ。ペイン様の死はしばらく伏せ、今後は天使様がリーダーとなられる。私たちはそれを支えるのみよ」

「そうね……それしかないわね」

 

 うろたえる二人に、私は天使様を支え続けるしかないと言う。私たちにできることはそれしかないのだ。私たちに生きる道を示してくれた敬愛する天使様に、愚直に尽くすのみだ。

 

 それからしばらくの間、ペイン様の死のショックから立ち直る暇もないまま、任務に没頭する日々が続いた。天使様に滅私奉公する気持ちで働き続ける。

 

 そんな私たちの苦労は報われることはなく、ペイン様の死から程なくして、さらなる悲報が舞い込んでくることとなった。

 

「天使様が仮面の男に襲われて重傷!?」

「そんな!?」

「命は辛うじて繋ぎ留められたらしいわ。不幸中の幸いね」

 

 ペイン様に代わり里の代表となった天使様が、仮面をつけた襲撃者に襲われ、重傷を負ったのだった。一命は取り留めたものの、しばらくは安静にしていないといけないらしかった。

 

 里の中枢を襲い続ける悲劇に、私たちは叫び出したいような気持ちに駆られた。それでも私たちは必死に働き、里の仕事を回す他なかった。

 

 誰も助けてくれない。自分たちでどうにかするしかない。里の中枢が大混乱に陥る中、私たちは泥の中を駆けずり回るような思いで働き続けた。

 

 今までにないくらいの量の任務に忙殺される日々。そんな中、少しだけ報われることがあった。後輩の世代が育ち、追加の人員が補充されることになったのだった。

 

 そして、私の班にも一人の下忍が新たにつくことになった。

 

 その下忍なのだが……。

 

「ランです! 年齢は非公表です! よろしくね! アジサイちゃん!」

 

 ピンク色の髪をした見目麗しい女性。年齢は非公表と本人は言っているが、調査書には三十五歳雨隠れ出身としっかり書かれていた。

 

 見た目からはまったく想像できないが、かなり年齢を重ねているようだった。三十五歳の中年と言っても差し支えない年齢なのに、天真爛漫な少女のような人だった。

 

 そんな年齢の鯖を読んだような人が、私の部下として配属されることになったのだった。

 

(三十五歳、下忍、任務経験ゼロ……あっ)

 

 私よりも一回り以上年上で下忍というからには、よほど才能がないに違いない。

 任務経験もないということは、忍者の仕事なんて長年やっていなく、急遽用意した埋め合わせの人員に違いない。きっとアカデミーの落ち零れで忍者になれなかったような人を繰り上げて補充したに違いない。

 

 雨隠れの人材不足、ここに極まれりといった感じだった。

 

(それにしてもなんで私の班だけこんなアホそうなハズレの人が配属されるのよ……フヨウ、スイレン、貴方たちだけずるい……)

 

 まともな人員が配属されたであろう同期の顔を思い浮かべ、私は内心羨ましく思うのであった。

 

 それにしてもこのランという下忍、アホそうだが一目見たら忘れなさそうな美人である。こんな美人、今まで里で見たことない。どうやら雨隠れ出身だが、長いこと他国で暮らしていたようだった。

 

 そんな人を信じていいものかと思ったが、聞けば天使様が直々に引っ張ってきた人材なのだとか。天使様が推薦された人材ならひとまず大丈夫だろうと、私は次々に浮かんでくる不安を一旦飲み込むことにしたのだった。

 

「アジサイちゃんの髪飾り可愛い! こな――天使様の真似してるの?」

 

 そのランという下忍はお喋り好きのようで、暇さえあれば馴れ馴れしく話しかけてきた。会って早々、上司の私をいきなりちゃん付けで呼んできた。馴れ馴れしいにも程がある。

 

 その日の私は、たまたま花の髪飾りをつけていた。毎日任務に忙殺されるばかりでゆとりがない心を潤すため、気分転換のために付けていた。

 その下忍はそれを目敏く見つけ、話題にしてきたのだった。

 

 天使様の真似。ストレートに言い当てられて、私は恥ずかしくなった。

 

 自分よりも遥かに美人である人にお洒落をしていることを指摘されて気恥ずかしく思えたのもあるが、何より恥ずかしいと思ったのが……。

 

「私と同じだ! 私も天使様と同じ髪飾りしてるの! 一緒だね!」

 

 この三十五歳の下忍も天使様の熱烈なファンらしく、私と同じような髪飾りをつけていた。天使様がいつも付けていらっしゃる花のコサージュを模した髪飾りをつけていた。

 

「お揃いだー! やったー! アジサイちゃんと一緒!」

 

 三十五歳下忍は無邪気にはしゃぎ回る。

 

 こんなズレた人と同じ感性を持っていると思ったら急に恥ずかしく思えてきた。天使様とお揃いというのは誇らしいが、こんな人と一緒だというのは恥ずかしい。

 いい歳して「お揃いだ仲間だー! わぁい!」と幼子のようにはしゃいでいる彼女を見ていると、耐え難い羞恥心が湧いてきた。普段クールで通っている私の顔が紅潮し崩れていく。

 

「ふ、ふざけるのはやめなさい!」

 

 恥ずかしさを誤魔化すように、私はその下忍に強く当たるのであった。上司として舐められたら終わりだ。小娘だと舐められてはいけない。

 

 私は彼女を強く叱りつけた。そうやってその変な下忍に上下関係の厳しさを教えてやった。

 

「余計なことは喋らないの。私の方が階級は上よ。貴方は下忍。舐めた口を利くのはやめて」

「はいすみません。アジサイ先輩、以後気をつけます!」

「本当にわかってるんでしょうね?」

「はいアジサイ先輩!」

 

 彼女は怒られてしょんぼりしていたが、数秒後には忘れたようにケロリとしていた。そして明るく振舞っていたのだった。図太い性格をしているようだ。

 

 実力や性格はともかく、天使様はやる気と明るさとメンタルの強さを評価して、この人材を推薦してくれたのだと思った。

 

「足手まといにはならないでね」

「はい! お仕事一生懸命頑張ります!」

「貴方、返事は凄くいいわね……」

 

 そうして、私はそのランというアホそうな下忍と一緒に任務をすることになった。

 

「それじゃ後片付けの雑用よろしく。私は上に呼ばれてるから」

「はい! 任せてください! アジサイ先輩!」

 

 そのランという変な下忍は変人すぎた。年下に命令されても嫌な顔せず仕事をしていた。年下の女の子に偉そうな態度をとられているというのに、なんとも思っていないようだった。いつもニコニコしていた。

 

(この人、神経通ってるのかしら?)

 

 年下の人間にこき使われたら、少しはイラッとするのが人間というものだ。だが彼女はまったく気にしていないようだった。

 

 お人よしと言えば聞こえはいいが、悪く言えば鈍い。だからこの歳で下忍なんてやってられるのかもしれないと思った。

 

 お人よしの優しい人。鈍い人だが悪い人ではない。だが厳しい忍び世界には向いてなさそうな人だとも思った。

 

 見目麗しいし、忍者ではなく店の売り子でもやっていた方がよほど似合っているだろう。平和に暮らしているのが凄く似合う人だ。

 

 そのような忍者が似合わないような人でも戦わなければいけないのが今の雨隠れの実情なのだ。

 それを思うと忸怩たる思いに駆られる。私たち、雨隠れの忍者の力が足りないのだ。彼女の上司として、私はもっと精進せねばいけない。そう思った。

 

(身のこなしは悪くないわね。でも下忍ってことは忍術が大したことないのかしら?)

 

 そのランという下忍はアホそうに見えて、仕事は真面目にちゃんとやっていた。挨拶もできる。無能そうに見えて、意外と能力は高かった。特にコミュニケーション能力に関しては抜群だった。

 

「ランちゃん、ありがとねー」

「お婆ちゃんもお元気でね!」

「ランちゃん! こっちも頼むよ!」

「はいはい! 今行くよー!」

 

 少し一緒に働いてみて、すぐに気づいた。そのランという下忍は、人を和ませる不思議な魅力を持っていた。

 

 雨隠れには降り続く雨のせいか、無表情で能面をつけたような陰気な人間が多い。私自身、どちらかと言えばそっち寄りの人間だ。

 そんな陰気な人間の表情を自然と崩させて笑わせる魅力を、その下忍は持っていた。天性の資質というやつだろう。

 

(あの依頼者、私にはあんな顔してくれないのに……)

 

 人と仲良くなることが苦手な私は、ちょっと羨ましい気持ちになった。十代半ばで上忍にまで駆け上がったエリートの私が、三十五歳で下忍をやっている落ちこぼれに嫉妬するなどおかしなことかもしれない。

 

 だが素直にそう思ってしまった。彼女のように伸び伸びと生きられたらどれだけ人生楽だろうか。

 

(またあの人の指名依頼か。凄いわね……)

 

 ランという忍びの雨隠れでの人気は、すぐに高まることとなった。ご指名で大量の依頼が入るほどだった。

 私への指名依頼なんてほとんどないので、それもちょっと嫉妬した。

 

「今日はフヨウちゃんとスイレンちゃんも一緒の任務なんだ。よろしくね!」

「こらラン、その子たちは上忍よ。私と同期のエリート、舐めた口利かないの。下忍の貴方と違って幾つもの死線を潜り抜けた歴戦の忍びなんだからね!」

「あっ、はい、すみませんでした!」

「ホント、返事だけはいいわね貴方……」

 

 ランはフヨウ、スイレン相手にも臆することなく話しかけていた。気軽すぎて礼儀を弁えていないようだったので、毎回上司である私が注意することになった。

 

「アジサイの所に配属された人、凄い面白いね。私の所の子と全然違う」

「面白いじゃないわよフヨウ。こっちは大迷惑してるんだから。だいぶ年上の部下とか勘弁して欲しいわ」

「え、あの人年上なの!?」

「三十五歳よ」

「え、嘘でしょ?」

「本当よ」

 

 フヨウ、スイレンの所に配属された下忍は普通だった。普通に年下の子だった。なんで私の所だけこんな変な年上の下忍がやって来るのか、とんだハズレくじを引いた気分だった。

 

「こらラン、任務中に肉まん食べないの! 私だって我慢してるんだから!」

「ごめんなさい! アジサイ先輩! すぐに食べればいいかと思って……」

「そういう問題じゃないでしょ!」

 

 そうしてランという年上部下に振り回されながら、しばし任務に没頭する日々を送った。

 

「天使様をつけ狙っている輩がいるですって? それって本当、アジサイ?」

「ええ天使様から直々に命令が下されたの。天使様の身辺警護を強化するようにって」

 

 ランという下忍に振り回されるのにも慣れた頃、再び雨隠れに危機が訪れることとなった。仮面の男が再び天使様を襲撃しようとしていると、情報が入ったのだった。

 

 ペイン様亡き今、天使様まで倒れられたらこの里は完全に終わりだ。どこの勢力の者かは知らないが、そんな不埒者は叩き潰すしかない。全力で天使様をお守りするしかない。

 

 そうして私たちは日夜天使様の警備を行うこととなった。不審者から天使様を守るための戦いが始まった。

 

「それじゃラン。見回りよろしく。ちゃんとやってね。サボったらダメよ? 前みたいに任務中に肉まん食べたら絶対にダメよ? 今日は天使様の警護なんだからね!」

「はーい。了解ですアジサイ先輩!」

「まったく毎回返事はいいんだから……」

 

 太陽のような笑顔で去っていくピンク髪の下忍。どんな時でも能天気な彼女に呆れながら、私はその背を見送った。

 

(嫌な雨だわ。何かが起きそう……)

 

 その嫌な予感は的中することとなった。その日、変な仮面をつけた黒装束の男マダラが、不遜にも天使様のおわす塔に不法侵入してきたのであった。

 

「小娘ぇえ! 今日こそ雪辱を果たすぞ!」

「曲者! 曲者が天使様の塔に上ってるわ!」

 

 汚れなき天使様の聖なる住居に土足で侵入して踏み荒らす。挙句の果ては天使様を小娘扱いして、天使様を亡き者とし、大切なものを奪おうとしている。

 

 マダラはとんでもないクズであった。

 

「天使様には近づけさせない!」

「小娘が邪魔立てするなぁ!」

「ぐぅうっ!」

「フヨウ大丈夫!? アジサイ、いくよ!」

「ええ!」

「ええい、次から次へと小娘共が、姦しすぎるぞ! 小娘が三人集まって姦しい! 四人集まったら何になるんだ?」

「知るかそんなこと!」

 

 上忍である私たちを前にしても、マダラは不気味なほどに余裕を保っていた。まるで私たちのことなど路傍の石にすぎないと言わんばかりの舐めきった態度で軽口を叩いていた。上忍の私たちを小娘呼ばわりとはいい度胸だ。

 

「口寄せのじゅちゅ!」

「ほうパンダか。舌足らずの声で可愛らしいパンダなんか口寄せして……まさに小娘だな!」

「くっ、黙れ下郎!」

 

 マダラは私の呼び寄せた口寄せ獣を見て馬鹿にしてきた。

 

 私のこともそうだが、天使様に対する重ね重ねの侮辱行為。絶対に許すわけにはいかない。私たちの偉大なる天使様を小娘扱いなど許せるはずないだろう。

 

 私たちはマダラを殺そうと必死に戦った。だが……。

 

「ほう小さな小娘、あの大きな小娘と同じ技を使うか。だが大きな小娘の技よりも遥かに未熟だな。その程度の未熟な技、オレには効かんぞ!」

「――がぁあ!」

「ふん。所詮は小娘未満の小娘だな。さて煩わしい小さな小娘共はいなくなった。大きな小娘の所へ行かせてもらうぞ」

「くっ、ダ、ダメ……」

 

 マダラは強敵であった。今までに戦ったどんな敵よりも強かった。

 

 時空間忍術使いである私だからこそ、マダラのその異常なほど高い時空間忍術の技量に気づくことができた。

 おまけに写輪眼も持っている。無敵にも思えるほどの強大な力を、マダラは持っていた。

 

 悔しいが、フヨウ、スイレンと協力して戦ってもまったく歯が立たなかった。呼び寄せた相棒の口寄せ獣も大した役には立たなかった。

 

 マダラに唯一対抗できているのは天使様だけだった。だがその天使様も怪我から復帰したばかりで本調子でないのか、押されていた。

 

「小娘、まだ怪我が治っていないのか? こちらとしては好都合だ」

「くっ」

「さあオレの(もの)を見ろ小娘。今度こそ夢の世界に連れてってやるぞ小娘」

 

 このままじゃ天使様が危ない。あの変態仮面野郎に命を奪われてしまう。

 

 里の希望である天使様を死なせるわけにはいかない。私たちが犠牲になってでも天使様を守らなければ。かくなる上は道連れを狙って自爆を。

 

 そう覚悟を決めた時のことだった。

 

「マダラ! 性懲りもなくまた現れたのね!」

 

 違う場所の巡回に向かわせておいた下忍のランが、運悪く戻ってきたのだった。

 ランは、地面に倒れ伏した私たちと襲われている天使様を見て激怒し、マダラへと一直線に突っ込んでいった。

 

「このクソマダラぁああッ! よくもアジサイ先輩たちをっ!」

「だ、だめよ、やめなさいランッ!? あなたが敵う相手じゃないのよ!?」

 

 無謀にも突っ込んでいくラン。それを見て、私は思わず悲痛な声で叫んだ。フヨウ、スイレンの表情も凍りついていた。

 

(下忍の手に負えるような相手じゃないのに!?)

 

 上忍の私たちがトリオで戦っても歯が立たなかったのに、三十五歳で下忍をやっているあの人が戦って勝てるはずがない。犬死するのが目に見えている。だというのに、あの人は馬鹿なのか果敢にも前に向かっていった。

 

(そんなっ、またあの日を繰り返すというの!?)

 

 脳裏に浮かぶのは、初めてS級任務を受けたあの日のことだ。自分たちの力不足のせいで仲間たちが次々に死んでいく、地獄のようなあの光景。

 

(死なせたくないのに!)

 

 散々振り回されてイラついたこともあったが、私はこのランという三十五歳の落ちこぼれ下忍を嫌いにはなれなかった。むしろ好ましい感情すら抱いていた。いつか来るであろう平和な雨隠れに絶対に必要な人だと思った。あんな優しくて面白い人を、絶対に死なせたくない。

 

(何で動けないのよぉっ!)

 

 死なせたくないのに、ダメージを負った自分の身体は満足に動いてくれない。戦おうにも勝てるヴィジョンが浮かばない。

 

 思わず目尻に涙が浮かぶ。自分の実力不足をこれ以上恨んだ日はない。

 

 また私は大切な仲間を失ってしまうのか、命より大事な敬愛する天使様すらも失ってしまうのか――――そう思ったのだが。

 

「沸遁・巧霧の術!」

「――――え?」

 

 忍術なんてまったく使えないと思っていたはずのあの下忍が、凄まじい速度で印を結び術を発動させていく。上忍の私でも何をやっているのかわからないくらいの、見たこともない忍術を発動させていく。

 

「はぁあああ! 吹っ飛べクソマダラ!」

「くっ、小娘がぁ、舐めた真似を!」

 

 さらには岩をも砕けるような勢いのある拳を次々に繰り出し、マダラに距離をとらせる。そうしてマダラを一時引かせ、その隙に天使様と合流していた。熟練の忍びが見せる動きだった。

 

「ラン、合わせるわよ!」

「うん!」

 

 そして天使様と合流した後は、見事なコンビネーション攻撃を決めていく。

 

 あんなコンビネーション攻撃、長年チームを組んだフヨウ、スイセンと一緒でもできない。私でもできないそんな凄いことを、あの下忍はさらりとやってのけたのだった。

 

「小娘がぁあっ、オレの邪魔ばかりしおってぇえ!」

 

 そうしてマダラは追い詰められていくこととなった。

 

「――くっ、またしても小娘にしてやられたか……」

 

 少なくない手傷を負ったマダラが撤退していく。絶体絶命だと思ったピンチは、あっけなく過ぎ去っていった。

 

「やったわねラン」

「うん!」

 

 里のトップである天使様とハイタッチを交わす三十五歳下忍。ハイタッチはおろかハグまでしていた。いかにも親しげだった。あんな緩んだ天使様の表情は見たことがなかった。

 

(どういうことなの……?)

 

 私、フヨウ、スイレンの三人は、ポカンとした表情でそれを見送っていたのだった。

 

 後で聞いた話だが、あのランという下忍は、実はとんでもない人であった。

 

 現在の雨隠れ体制の創成期メンバーとして加わり、あのペイン様と天使様の無二の親友なのだとか。三忍の自来也から教えを受け、沸遁と呼ばれる血継限界を持ち、火遁と水遁に関しては右に出るものがいないのだとか。さらには三忍の一人である蛞蝓姫の綱手から医療忍術を教わり、その医療忍術で危篤状態にあった天使様を救ったのが、他でもない彼女なのだとか。

 

 任務経験なしだなんて真っ赤な嘘。理由あって木の葉の里に身を寄せた際、上忍にまで出世したことがあるらしい。

 人材豊富な大国の隠れ里の木の葉で上忍レベルということは、雨隠れの上忍でも十分通用するのは間違いない。

 

 つまり、三十五歳の落ちこぼれ下忍というのは大嘘。影レベルの実力者だったのだ。

 

 ナニソレ。本当にナニソレ、である。

 

 なんでそんな人が下忍をやっていたかというと、彼女を招いた天使様は当初、特別待遇で迎え入れようとしたのだが、当の彼女が特別待遇は嫌で一からやり直すと主張して聞かなかったそうで、そういうことになったのだとか。それで、何も知らない私の所にお鉢が回ってきたのだとか。

 

(わ、私はそんなお人に、先輩風吹かせて、かなり失礼なことを……い、いやぁあああ!)

 

 その事実を知った私は赤面し、しばし悶絶することとなったのは言うまでもない。年頃の小娘のように悶絶した。

 

 天使様もお人が悪い。ランさんもだ。そうならそうと最初から言ってくれれば、絶対にそんな対応はしなかったのに。

 

 事実を知ったフヨウ、スイレンにも冷やかされることになったし、しばし赤面しっぱなしの日々を送ることになった。私だけ酷い恥を掻くことになって恥ずかしかった。クールキャラが台無しである。

 

(でも嬉しいな……)

 

 気恥ずかしい思いをしたが、同時に嬉しい気もした。

 

 影レベルの強く偉大な人。誰もが振り返って見るような美しい人。それほどの人ならば、木の葉でそのまま暮らした方がよっぽどお得だろう。

 

 だが彼女は雨隠れを選んでくれた。私の故郷、大好きな雨隠れを選んでくれた。この生きるのに大変な貧しい里を見捨てずに、どうにかしようとして戻ってきてくれたのだ。

 

 そのことに対し、私は心から嬉しく思うと同時、ランさんのことがもっと好きになったのであった。



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ch.22 いくつも仕舞ってあるんだぜ。(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 どうもホモガキです、皆さんこんにちは。今日も“NARUTO~影への道~”の実況をお伝えしていきたいと思います。

 

 さて前回は偽マダラに自ら虐待おばさんされに行って捕虜になったところまででしたね。

 ではそこからスタートします。捕虜になったことで、特別イベントが挿入されます。

 

「小娘、この小娘の命が惜しければ長門の輪廻眼を寄こせ」

 

 マダラが幻術にかかったランちゃんにクナイを突きつけながら、小南ちゃんと交渉します。

 迫真のシーンですね。TNOKに銃を突きつけたDBみたいです。

 

 輪廻眼寄こさなきゃ刺すぞゴラァ!

 

「……わかったわ」

 

 悩んでいた小南ちゃんですが、苦渋の決断といった感じで、取引を受諾します。長門君の輪廻眼が偽マダラに渡っていきます。

 

 まあ本当は長門君の輪廻眼じゃないですけどね。本物のマダラおじさんから借りパクしてただけです。ネタバレですが。

 

――長門の輪廻眼がマダラ?に渡ってしまった……。

 

「これでようやく夢幻の世界に近づける。もう少しだ。××よ。待っていてくれ」

 

 輪廻眼を手にした偽マダラは、意味深な言葉を吐いて去っていきました。

 

 会話文の伏字“××”に入るのは、偽マダラの大好きなあの子の名前ですね。ずっと見てるあの娘です。カカシ先生に千鳥で心臓を貫通レ○プされちゃったあの娘です。

 

 特定のイベントこなしていると、伏字が解放されて見れるようになりますが、今回そんなイベントこなしてないので、普通にそのまま伏字になってます。

 

 小南たちからしたら、意味不明な行動ばかりとる偽マダラはマジキチおじさんに見えることでしょうね。原作を知っているプレイヤーからすれば、十分意味のわかる行動なんですが。まあ意味がわかっても行動がマジキチなことには変わりないですけど。

 

 まあうちはだからね、仕方ないね(諦め)

 

 うちは一族のヤバい行動は全部、「うちはだから」で説明つくのは草ですね。写輪眼という大きな力の代償は、愛を拗らせすぎちゃうってことです。

 

 ちなみに、うちはが愛に狂ってるのは二代目火影のお墨付きです。脳科学的根拠があるらしいです。

 

 何でそんなことわかるんでしょう。二代目火影って、うちはの脳でも解剖したんすかね? だったら怖すぎィ!

 

 おっと、話がズレましたね。ではゲームの話に戻しましょう。

 

 偽マダラが輪廻眼を手にしたので、偽マダラの小南襲撃イベントのループはこれで終わりになります。

 

 ストーリー的には、これから第四次忍界大戦に向かっていきます。輪廻眼を手にした偽マダラがカブト君と手を結び、第四次忍界戦争を引き起こします。五大国が忍び連合軍を結成したり、ダンゾウがサスケに殺されたり、まあ色々と関連イベントが進行していきます。いよいよNARUTOという物語がラストイベントに向かっていくというわけですね。

 

 関連イベントに関わらなければ、ほぼ原作ストーリー通りに進んでいくことでしょう。偽マダラが輪廻眼を手にするのが遅れた分、原作より時間軸は遅れてますが、ストーリー的にはほぼ同じです。

 

 それでは肝心のこれからランちゃんがとるべきムーブはといいますと、前にも言いましたが、第四次忍界大戦に雨隠れ代表として参戦することです。ラストイベントの戦争で暴れまくりましょう。

 

 このゲーム、キャラのビルドによっては、主人公のナルト差し置いて大戦で俺TUEEEとかできるんですが、ランちゃんでは無理ですね。ランちゃんは決して弱くありませんが、NARUTO世界の最高峰クラスの実力者と戦うのは流石に無理です。

 

 ですので本筋イベントには極力関わらず、ザコ狩りして俺TUEEEして遊んでましょう。

 

 白ゼツを狩りまくったり、そこまで強くないエドテンされた忍者を狩ったり、大名守ったり、死にかけの忍びを医療忍術で助けたり、ほっとくと挿し木の芸術品になっちゃうネジ兄さんを観察助けたりして遊びましょう。

 

 そんなことをして貢献値を稼ぎ、雨隠れの里長に推薦されるレベルまで名声を高めておきます。

 

 では、方針説明し終わったところで、ゲーム再開します。

 

――復帰まで残り、二週間。

 

 捕虜イベントのせいでランちゃんは重傷を負ってしまいました。少なくないタイムロスですが、他にやることもないですし、回復に専念します。静養して復活したら第四次忍界大戦の参戦イベントに乗っかって参戦します。

 

 ではそれまで巻いてお送りしまーす。

 

……。

……。

……。

 

 

「忍び連合軍に私たちの里からも人員を派遣することになったわ。ラン、貴方はどうする?」

 

 復帰した後、小南ちゃんから呼び出されます。

 勿論返答はイエスです。チャート的にもそうですが、最後の祭りに参加しないとかあり得ません。

 

――第四次忍界大戦に参戦する?

――【はい】

 

 ということで、参戦決定です。大勢の忍者とエドテンされた死人たちと一緒に大乱闘スマブラしましょう。

 

 ああ^~はようエドテンまみれになろうぜ。最後の祭りだぜワッショイ!

 

 ではこれから第四次忍界大戦イベントに突入します!と言いたいところですが、キリがいいので今日はここまでとします。

 

 このまま終わるのはゲイがないので、今回は六尺兄貴コピペ風に第四次忍界大戦の始まりを告げて終わりにしたいと思います。

 

 ではAIのKNN兄貴、読み上げお願いしまーす。

 

僕は177cm-65kg‐38cm 24歳 もっぱら死体専門のド冷血な鬼畜眼鏡。

NARUTOの忍界大戦といえば、忍び装束の忍者達が、影を担いでぶつかり合う、

勇壮な戦として、この地方に知られている。

戦のあと、忍者達は安置所に集まり、死装束に着替えさせられ、安置される。

忍者は、激しい戦でドロドロボロボロになるから、使い捨てで、ゴミとして出される。

僕はいつもそれが狙いだ。

捨てられている死体の、できるだけ強い奴を10数体ほど、

こっそりさらって家に持ち帰る。

そして、深夜、僕一人の戦が始まる。

僕はもう一度汚れた忍び装束に着替え、部屋中にかっさらってきた死体をばら撒き、

ウォーッと叫びながら、死体の海の中を転げ回る。

汚れた死体は、腐敗臭がムンムン強烈で、僕の鼻腔を刺激する。

墓掘りで酷使された前腕は、もうすでに痛いほど膨れ上がっている。

死体の中に顔を埋める。臭ぇ。

汗臭、アンモニア臭や、腐敗死体独特の酸っぱい臭を、胸一杯に吸い込む。溜まんねえ。

臭ぇぜ、ワッショイ! 死体野郎ワッショイ!と叫びながら、メスを持つ手を激しく動かす。

嗅ぎ比べ、一番強いチャクラを持つ奴を主食に選ぶ。

その死体は、激しい傷跡がくっきりとあり、歴戦の猛者であることは間違いない。

その死体は、戦で一番威勢が良かった、もっさり長髪頭のうちは一族頭領、

うちはマダラだろうと、勝手に想像して、切り取る部分にメスを押し当て、

思いっきり腕を振りながら、うちは野郎臭ぇぜ!僕が生き返らせてやるぜ!と絶叫し、

メスを思いっきり激しく動かす。

他の死体には、ミイラのような野郎や愉快なちょび髭野郎もいる。

そいつらも一緒に加工を施す。予備のメスを口に銜えながら、ウォッ!ウォッ!と唸りながらメスを動かしまくる。

そろそろ限界だ。

僕は前袋から予め培養してあった柱間細胞入りの注射器を取り出し、うちは野郎の肉体の中に、思いっきり種付けする。

どうだ!気持良いか!僕も良いぜ!と叫びながら発射し続ける。

千手とうちは。忍界最高峰と謳われた二人の肉体が融合して究極の存在となって現代に蘇る。そして僕の手駒になる。

そのことを考えるとメチャクチャ気持ち良い。何の才能もない落ちこぼれの僕が忍び世界の頂に立つんだ。愉快に決まっている。

うちはマダラ、君はもう僕のもんだぜ!

僕の戦が済んだあと、他の死体とまとめて、ビニール袋に入れ押し入れにしまい込む。

来るべき時まで、大切に保管しておく。

僕の研究室の倉庫にはそんなビニール袋がいくつも仕舞ってあるんだぜ。



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ch.22 いくつも仕舞ってあるんだぜ。(小南)

 ランが行方を絶った。その衝撃的な報告は、突如舞い込んできた。

 

(そんな、ランが!?)

 

 ランが行方を絶ったと報告を受け、私は動転して気が気じゃなかった。

 

 あの子が消えてしまうなんて。せっかくまた一つになれたのに、その絆が断たれてしまうかもしれないなんて、受け入れ難いことだった。

 

 ランが自分から行方を絶ったとは考えにくい。地位を築いていた木の葉を捨ててまで雨隠れに戻ってきてくれたのだ。そんなことはあり得るはずがない。

 

 仮に何らかの事情で木の葉に戻ったとしたら、我々に一報くらいは残しておくだろう。となれば、誰かに拉致されたか、考えたくないことだが死亡したか、いずれかの可能性が考えられた。

 

 ランは歴戦の忍びである。そこらへんにいるような柔な忍びにやられたとは思えない。彼女は雨隠れの実質的な長を務めるこの私と対等に戦えるほどの実力があるのだ。影レベルの実力があると言える。里内の不満分子程度にやられたとは到底思えなかった。

 

 だとすれば、自ずと答えは見えてくる。ランを狙い、彼女を倒せるだけの実力がある者――マダラ。考えたくないことだが、奴の手にかかったのではないか。そう考えるのが妥当だった。

 

 その最悪の予測は残念ながら当たっていた。

 

「敵っ!? ラン!?」

 

 ランが行方を絶ってからすぐ、マダラが我々の前に姿を現した。いつものように唐突に空間を切り裂くようにして現れた。いつもと違うのは、奴の腕の中にランが抱えられていたことだ。

 

「小娘、この小娘の命が惜しくば長門の輪廻眼をよこせ」

 

 マダラはランの首にクナイを突きつけながらそう脅してきた。

 

「……ぅあ」

 

 ランは幻術に囚われているようで、虚ろな目をしていた。その表情はとても苦しげで、酷くやつれているようにも見えた。

 

 ランのその尋常じゃない様子を見て、私はすぐにマダラに事情を問い質した。

 

「ランに何をしたの!?」

「なに、少し夢の中で遊んだだけだ。イタチの月読ほどではないが、俺も似たようなことができるのでな」

 

 そう言って、マダラは冷淡に笑った。

 

 うちはイタチの使う写輪眼の瞳術“月読”は、目を合わせただけで、対象を幻術世界へと引き込むことができるという。その幻術世界で負った痛みの感覚は、現実世界のそれと何一つ変わらないらしい。

 マダラもそれと似たような高度な幻術を使い、ランを苦しめたらしかった。

 

「ランをよくもっ!」

 

 幻術世界でランを甚振ったと聞き、私は殺気を抑えることができなかった。今すぐにでもマダラを殺してやりたい、八つ裂きにして殺したい、起爆札で粉々にしたい、そう思った。

 

 だが手を出すことはできなかった。ランの命は今まさにマダラの手中にあった。手を出せるはずがなかった。

 

「たいした小娘だよ、この小娘は。俺の拷問に耐え抜き、長門の輪廻眼の情報をついぞ吐かなかったのだからな。まあ、小娘らしく多少見苦しく泣き叫びはしたがな。躾のなっていない小娘に立場の違いというものを存分にわからせ、この間の無礼な言動の借りは返させてもらったぞ」

「き、貴様ぁああ!」

 

 マダラの挑発的な言葉を聞き、腸が煮えくり返りそうになる。

 

「この変態っ、天使様はおろか、ランさんにまで!」

「許せない!」

「最低!」

 

 私の側に待機しているアジサイたちもそれは同様だったようだ。憎々しい表情でマダラを睨み付けていた。

 

「御託はもういいだろう。どうした、早く渡せ。この小娘がどうなってもいいのか?」

「輪廻眼を渡したところで、貴様がランや私たちを見逃すという保証はない……」

「ふむ、そうだな。裏切り者のお前と散々手を焼かされたこの小娘は必ず始末してやろうと思っていたが、まあいいだろう。長門の輪廻眼を渡せば、この小娘を解放してやる。お前にももう手を出さないでおいてやろう。これ以上、俺の計画の邪魔をしないならばの話だがな」

「……」

「今の俺にとって、半壊状態にある暁など、もはやどうでもいい存在だ。元暁のお前にも興味などない。暁の裏切り者をどうしても粛清してやろうという気はない。今俺が関心があるのは長門の輪廻眼のみだ。さあ小娘、どうする?」

 

 マダラは輪廻眼さえ渡せばこれ以上手を出さないと言った。その言葉を素直に受け取れないし、大事な長門の眼を渡すということにも大きな抵抗感があった。

 

 悩んだが、私にはランを見捨てるということなどできなかった。ランの命には代えられない。マダラが約束通りにしてくれるという確証はなかったが、要求を呑まざるを得なかった。

 

「……わかったわ」

「賢明な判断だな小娘」

 

 私は大事に仕舞ってあった長門の輪廻眼を持ち出すと、それをマダラへと引き渡した。

 

「これで夢の世界に近づける。待っていてくれリン」

 

 マダラが果たして約束を守るかどうか。輪廻眼を渡す際は緊張が走ったが、マダラは約束通りに手を出さずに立ち去っていった。

 

 ひとまず危機は去ることとなった。しかし……。

 

「ラン、しっかりしてラン!?」

 

 解放されたランを受け止め、必死に呼び掛ける。

 

「……ぅう」

 

 いくら呼びかけても、ランは私たちの呼び声に答えない。苦しそうに呻いているだけだ。

 

「医療忍者を! 早く!」

「は、はい!」

 

 すぐに医療忍者を呼び出して治療を施させるが、ランは昏睡したままで、いくら経っても意識を取り戻すことはなかった。日に日に衰弱していく一方であった。

 

 マダラはランを返すと言ったが、無事な状態で返すとは一言も言っていなかった。マダラは酷く侮辱したランのことを決して許すつもりはなく、最大限苦しめた上で衰弱死させるつもりのようだった。

 

(このままではランが……)

 

 医療技術に乏しい雨隠れでは満足な治療を施すことができない。このままではランが死んでしまうことは明らかだった。ランの命は風前の灯だった。

 

(こうなればあの方法しか、木の葉に助けを求めるしかないようね)

 

 ランの過去の伝手を頼り、大国木の葉の医療忍術の助けを借りるしか、ランを助ける方法がないと思った。

 

「アジサイ、貴方たちにお願いがあるの。木の葉への伝言を頼みたい」

 

 私はアジサイたちを呼び出し、全てを話した上で、彼女たちにお願いを聞いてもらうことにした。

 

 今までのこと――私が暁にいたということを正直に話して、腹を割って話し合わなければいけなかった。



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ch.22 いくつも仕舞ってあるんだぜ。(アジサイ)

 不幸なことに、天使様をつけ狙うストーカーにランさんが捕まってしまった。

 

「小娘、この小娘の命が惜しくば輪廻眼をよこせ。おっと、そちらの小娘共も動くんじゃない。この小娘の命が惜しいのならな」

 

 天使様を狙うストーカー男――うちはマダラはそう言って我々を脅してきた。

 

 小娘小娘うるさい男だ。おまけに卑劣な男である。女を人質にとって脅してくるなんて最低だ。

 

 うちはマダラなんて、男の風上にも置けないろくでもない奴である。マダラは最低な男だ。

 

「……わかったわ」

 

 天使様はマダラの要求を呑む。ランさんを見捨てることはできなかったようだ。

 

 ランさんは現雨隠れ体制の創成メンバーで、天使様にとって唯一無二の同志であるらしい。ともなれば、それは理解できない話ではない。誰よりも大事な同志を、見捨てることなどできなかったのだろう。

 

「長門の輪廻眼は手に入った。もはやこの小娘に用はない」

「ランさん!」

 

 天使様が保管していた大事なものを差し出すことで、ランさんは解放された。

 

「医療忍者をッ! 早く!」

「はい!」

 

 ランさんは解放されたが、幻術世界で酷い拷問を受けたようで、なかなか意識を取り戻さなかった。

 

 このままではランさんが死んでしまう。焦燥ばかりが募った。

 

「アジサイたち、聞いて欲しいことがある。それとお願いしたいことがあるの」

 

 ランさんが昏睡を続けるある日。私はフヨウ、スイレンと共に天使様に呼び出された。そしてそこで大事な話を打ち明けられた。

 

 ペイン様と天使様が暁という犯罪者集団にいたこと。暁でやった悪事の数々。マダラが暁でのかつての同志だったこと。雨隠れの忍びたちがかつて毎日のようにせっせと製作に励んでいた起爆札がわりと天使様の私的目的で使用されていたこと――などなど、衝撃的な事実の数々を知らされることとなった。

 

「軽蔑してくれて構わない。私は本来雨隠れの象徴としてあるべき存在じゃないの」

「そんな……」

 

 ペイン様と天使様は、神聖不可侵の存在。過ちなど犯すはずがない絶対の存在。そう私たちの中で長年築き上げられてきた天使様の偶像が、崩れた瞬間だった。

 

 戸惑う私たちをよそに、天使様は淡々と言葉を重ねた。

 

「私のことはこの際どうなってもいい。でもこの子は違う。ランはこれからの雨隠れにとって必要な存在。ここで失わせるわけにはいかないの。木の葉に助けを求めてでも救わなければいけない」

 

 天使様はランさんの命を救おうと必死だった。今までに自分が築き上げてきたものの全てを壊してでも救わなければいけないと思っているらしかった。

 

「暁の本拠が雨隠れにあったことは既に木の葉に知られているし、ペインと私がその一員だったということも知られている。ペインと私は木の葉と戦争をして木の葉の里を跡形もなく粉々にしたから、木の葉の人々によく思われていないことは確実。ランは木の葉の抜け忍状態。そんな中で木の葉に赴いてランの助けを求めるのは、むざむざ死にに行くようなもの。だけどランを助けるためには、誰かに行ってもらわねばならない」

 

 天使様は今回の任務の背景をそう説明した。

 

 事情はわかった。それはともかく、ペイン様と二人だけで木の葉の里を粉々にしたってさらっと言ってるが、凄すぎないだろうか。

 

 しかもほとんどペイン様がお独りでやったことらしい。たった一人でそんなことができるなんて、ペイン様はやはり神だったのだ。間違いない。

 

「本来は私自身が行くべきなのかもしれない。だが不安定な里を放置して、ランを置いては行けない。貴方たちに頼むしかない。これは命令ではないわ。お願いよ。嫌なら引き受けてくれなくても構わない。その場合は私自身の身柄を渡すことを条件にしてでも、木の葉と交渉するわ」

 

 自分の身柄を利用してでもランさんを助ける。天使様の覚悟は本物のようだった。天使様の覚悟のほどを見て、私たちの覚悟も自ずと決まった。

 

「親もなく、明日をも知らぬ私たちに生きる道を示してくださったのは他ならぬペイン様と天使様です。たとえ何があろうと軽蔑などいたしません。私たちの心はこの里と天使様と共にあります」

 

 私たちの天使様への忠誠心は何があろうと揺るがない。

 

 過去に多少の過失があったとて、それは貧しく脆弱な雨隠れをどうにかしようとした中で生まれてしまったやむを得ないものだったのだろう。

 大量の起爆札だって、そのために必要であったもののはずだ、たぶん。そう理解した。

 

「いつも通りにお命じください。死地であろうが行って参ります。木の葉に向かい、ランさんの治療をお願いして参ります」

「そう。三人とも、ありがとう」

 

 私たちの言葉を聞いた天使様の目尻には涙が浮かんでいた。私たちにとって、それは初めて見た天使様の素顔だったのかもしれない。

 

 こうして私たち三人は天使様の密書を携え、急ぎ木の葉へと赴くことになったのだった。

 

(もう復旧している。雨隠れの里よりも町並みが整ってる。大国の力は凄まじい……)

 

 木の葉の里は相変わらず豊かだった。

 

 ペイン様によって里が粉々になったと聞いていたが、木の葉の里はその大部分が復旧していた。以前中忍試験に来た時ほどではないが、それでもかなりの水準で里が元通りになっているようだった。

 

「止まれ。何者だ?」

「雨隠れからの使者よ。ここに五代目火影宛の密書がある。五代目に会わせて欲しい」

「雨隠れからの使者だと? それは本当か?」

「ええ」

 

 密書の存在とランさんの名前を出すと、すぐに五代目火影と謁見することができた。

 しかし、五代目は我々の来訪に良い顔をしなかった。

 

「ずいぶんと虫の良い話だな。木の葉を崩壊させておいて、困ったら助けてくれなどとは」

 

 密書を読んだ五代目は顔をしかめながらそう言った。

 

「綱手のばあちゃん! ランの姉ちゃんが危ねえんだ! 助けてやってくれよ!」

「アイツは抜け忍になったのだ。抜け忍を助けるために貴重な人員を派遣などできるか。それに雨隠れは暁の本拠地だったのだぞ。かつて里を襲ったくノ一の言うことなど信用できるか。あの紙使いの女は自来也殺しにも関わっているんだぞ」

 

 五代目火影は怒りを隠さずに言う。やはり天使様の予測通り、交渉はかなり難しいものとなった。

 

 交渉は決裂か。そう危惧したが、救いの手は意外なところから差し伸べられた。

 

「頼む! 頼むってばよ綱手のばあちゃん!」

 

 見覚えのある金髪の青年が五代目火影にすがるようにして頼み込む。木の葉の人柱力であるうずまきナルトだ。

 

 中忍試験の際、天使様の命で、私は人柱力に関してその素性を調べたことがあった。だから人柱力のうずまきナルトのことは知っていた。

 

 どうやら件の人柱力は、木の葉時代のランさんと縁浅からぬ関係にあったようだった。渋る五代目に対し、ナルトは救援を派遣するように必死に訴えてくれた。

 

「頼む! 行かせてくれ! 俺一人でも!」

「お前が一人で行ってなんになる」

「ここで見捨てたら絶対に後悔する! だから頼むってばよ綱手のばあちゃん! ばあちゃんだって、本当は助けたいって思ってんだろ!?」

「それは……」

 

 今のナルトは木の葉でかなりの影響力を持っているらしかった。彼の発言を受けて、五代目は迷っているようだった。

 

「綱手様……」

 

 五代目の隣にいた秘書と思われる黒服の女性も、五代目のことを急かすようにちらちらと見ていた。

 

「綱手様、私からもお願いします。ランさんを助けるのもそうですが、雨隠れに行けば、その小南って人から、マダラの詳しい情報を聞けるはずです。ランさんを昏睡状態に陥らせたのはマダラのようですから。マダラの情報があれば、後の戦いで有利に働くはずです。未来の犠牲を減らすことに繋がります。木の葉としても十分にメリットはあるかと。それでお偉方を説得できませんか?」

「サクラちゃん……ありがとうだってばよ」

 

 ナルトの訴えに共感したのか、ピンク色の髪のくノ一も賛同してくれた。理路整然とした物言いだった。

 

「ナルトとサクラが行くなら、連絡係の僕も必要になるかな。僕も第七班の一員だし、行くなら同行するよ」

「ということは第七班の先生である俺も行くことになるのかな? ま、雨隠れには何度か行ったこともあるしね。命じられれば行きますよ」

 

 救援を送ることに、続々と賛同の声が上がる。

 

 賛同してくれる人の全員が、ランさんと関わりがあるようだった。ランさんの人徳の賜物だろう。

 

「カカシ、騙し討ちの可能性もあるぞ。そう易々と言うな」

「五代目の言う通り、確かにその可能性もありますがね……」

 

 写輪眼のはたけカカシはそう言うと、私たちの方をちらりと見た。私たちに注目が集まる。

 

「誓って騙し討ちなどではありません。我々の内、誰かがこちらに残って人質となっても構いません。仮に何かあれば人質を即座にお討ち下さい」

 

 木の葉側の懸念を払拭するため、私はそう言って交渉のカードを切った。

 

「だそうですが五代目、どうします?」

「うぅむ……」

「綱手のばあちゃん! 何迷ってんだ、らしくねえ! 俺たちは死なねえ! エロ仙人の時とは状況が全然違うってばよ! 俺たちを信じてくれ!」

 

 迷う五代目火影だったが、ナルトの声が最後の一押しになって決めたようだった。

 

「いいだろう。ただし、雨隠れのお前らの内、二人は木の葉に残れ。何も起こらなければ悪いようにはせぬ」

 

 なんとか話がまとまり、私たちは胸を撫で下ろした。

 人質に関しては、事前に決めてあったようにフヨウとスイレンが残り、私が木の葉の人たちを連れて雨隠れに戻ることになった。

 

 話が決まれば物事は早く進む。木の葉側で雨隠れに派遣するチームがすぐに組まれ、統率役の上忍として写輪眼のはたけカカシ、医療忍者として春野サクラ、連絡要員としてサイという男、そしてうずまきナルト。彼らによるチームが組まれた。

 

 メンバーはその四人だけかと思ったのだが、もう一人いた。それは私のよく知っている人物であった。出立の時刻となってその人物は現れた。

 

「久しぶりねアジサイ。元気してた?」

 

 最後の一人は、中忍試験の時に出会って色々あって仲良くなったテンテンというくノ一だった。彼女が最後の一人として同行することになった。

 

「テンテン。貴方も来るの?」

「ええ。医療器具を収納したりするのに、私の時空間忍術が必要でしょう?」

 

 どうやらテンテンは時空間忍術が得意なので、それで荷物運び係として選ばれたらしかった。

 

「まあ積もる話はそれくらいにしてお二人さん。さっさと向かうとしよう。ランが危ないんだろ?」

「ええそうですねカカシさん。では行きましょう。道案内は私にお任せください」

「ああ頼むよ」

 

 こうして私と木の葉の五名は雨隠れへと向かった。道中、何事もなくたどり着くことができた。

 里に着くとすぐにランさんの治療が開始された。

 

「これは……カカシ先生が前にくらった技じゃ?」

「みたいだねぇ。聞いていた通り、ランは写輪眼を使った幻術にやられたようだ。可哀想に。あれって、結構きついのよ」

 

 医療忍者として名高い五代目火影の弟子を名乗るだけあって、春野サクラの医療忍者としての腕は確かだった。ランさんの容体を診てすぐに原因に心当たりがあるようだった。

 

「カカシ先生の時の治療には私は直接関わっていませんが、カルテは何度も見て勉強しました。大丈夫ですよ。ランさんは助かります。私が助けてみせますから」

 

 サクラはそう力強く宣言してから治療に当たってくれた。その様子を見て、天使様も心底ほっとしたようだった。

 

「サクラちゃんに任せておけば、もう大丈夫だってばよ!」

「とりあえず治療に当たるサクラ以外はお役御免になるのね。待ってる間、私たちはどうする? やることもなしにこの塔に缶詰めじゃ息が詰まるわよ」

「よかったら里を案内するわ。何もないところだけど」

 

 暇そうにしていた面々に、私は里の案内を買って出た。

 

「お、じゃあよろしく頼むってばよ!」

「ナルト。お前は暁が狙う人柱力でしょ。うろちょろしないの。お前はここにいろ」

「えー、少しくらいいいじゃんか?」

「天使さんは暁を抜けたそうだが、この里には暁の残党がどこにいるかわからんそうだ。マダラがまた仕掛けてくるかもしれない。ナルトは念のため待機。これは命令ね」

「ちぇっ、仕方ないってばよ」

 

 出歩きたそうなナルトだったが、それは上忍のカカシによって止められた。

 

「僕も待機するよ。いつ木の葉側から連絡が来るかわからないし」

「えー、ってことは私だけ? カカシ先生は?」

「隊長がうろちょろするわけにもいかないでしょ。雨だし俺も遠慮しとくよ」

 

 テンテン以外は宛がわれた施設の外に出ないことを決めたようだった。

 

 出ないことを決めた面々は、それぞれ思い思いの方法で過ごし始める。

 

 何かしらの術の制御の練習を始めるナルト。窓際に立ち連絡を待つサイ。カカシは懐から一冊の本を取り出した。

 

 その本の題名は、“イチャイチャパラダイス”と書かれていた。

 

「さてと、本でも読も。最近忙しくて全然読んでなかったからな」

 

 カカシは、天使様の前で堂々と卑猥な本を読み始めたのだった。

 

(この男……なんて無礼な)

 

 天使様の前でなんたる無礼だ。天使様の留守中に何度も不法侵入して家捜ししやがった変態マダラほどではないけども、それでも無礼だ。

 

 だがこちらから招いた客人だけに注意できないのが辛い。はたけカカシ、卑猥な本を読むのを即刻止めろ。

 

「はたけカカシ、暇なら貴方に少し話がある」

「えっ、俺ですか?」

「ええ聞いて確かめておきたいことがあるの。いいかしら?」

「はあ、そうですか……。別に構いませんが」

 

 天使様は、はたけカカシを個別に呼び出していた。その眼光はいつになく鋭かった。きっと卑猥な本について注意するのだろう。そうに違いない。

 

 たっぷり怒られろ、はたけカカシ。

 

「みんな出歩かないのね、じゃあ私もどうしよっかなぁ」

「よかったら貴方だけでも案内するわよ」

「え、いいの?」

「ええ構わないわ」

 

 テンテンは出歩きたそうにしていたものの、みんなに遠慮しているようだった。私は気を使い、彼女だけでも連れ出すことにした。

 

「凄い雨ねえ。滝みたいだわ」

「雨隠れはいつもこんな感じよ」

「それじゃいつも大変ね。洗濯物とか乾かないでしょ?」

「ええ普通の手段ではね。いつも乾燥させる機械を使ってるわ」

「へえそうなんだ」

 

 テンテンと私は世間話をしながら里の中を歩く。そうして色々な店やスポットを見て歩いていく。

 

 テンテンからしたら、あまり面白いものなどないのかもしれない。大国木の葉に比べれば、雨隠れにあるものなんて何もかもがみすぼらしいものなのだろう。紙細工のプレゼントなど貰ったところでガラクタにしか思えないのかもしれない。

 

 里を紹介しつつもそんなことを思い、私はなんとなく後ろめたい気持ちになった。

 

「あ、美味しそう!」

 

 しばらく歩いていると、テンテンが指差しながら声を上げた。視線の先には一軒の肉まん屋があった。それを見て足を止めたのだ。

 

「この里で一番有名な店よ。入る?」

「うんそうしよう。お腹空いちゃったし」

 

 その肉まん屋さんに入ることになった。二人で美味しい肉まんをつつく。

 

「うーん、美味しいわ! 絶品よこれ!」

「そんなに喜んでもらえるとは恐縮ね」

 

 テンテンは肉まんが好きなようで、たいそう喜んでくれた。彼女の溌剌とした太陽のような笑顔を見て、私も思わず頬を緩める。

 

 なかなか楽しい時間だ。近頃は任務ばかりに没頭していたから、こうして誰かとゆっくり過ごす時間などなかった。

 交換条件として人質となっているフヨウ、スイレンには悪かったが、私は久しぶりの休暇を満喫することにした。

 

 思えば、フヨウ、スイレン以外の子と連れだって歩くのは初めてかもしれない。他国の子となれば間違いなく初めてだった。

 

「あー、食べ過ぎたわ!」

「ふふ、そんなに美味しかったの?」

「うん! あ、そんなことより奢ってもらっちゃったけど、本当にいいの?」

「ええ構わないわ。最近まったく遊んでなくてお金使ってないし」

「悪いわね。紙細工のプレゼントまで貰っちゃったしさ」

 

 食事が終わり、近くの公園で一休みすることになった。相変わらず雨は降り続いている。私たちは屋根つきのベンチに座りながら語り合う。

 

「……何もないところでしょ。雨隠れって」

 

 以前よりも親しくなった彼女に、思わず本音を溢す。

 

 自分たちの里を自虐的に言いたくなんてないけど、つい言ってしまう。大国木の葉と比べると何もかもが劣って見えてしまう。

 

 雨隠れには、何もない。雨が降り続き肌寒いので冷たい食べ物は楽しめないし、日差しが届かないので花も育てることができない。だからおしゃれな甘味処も花屋さんも何もない。肉まん屋と紙でできた偽物の花を売る花屋くらいしかない。

 

 夜空を見上げても、雨雲に覆われているので綺麗な星々を眺めることもできない。雨による浸食に耐えるため、分厚い鉄でできた建物はまるで牢獄のようだ。何もかもが木の葉以下に見える。

 

「そんなことないわよ。さっきの肉まん屋さんだって、木の葉じゃ味わえないくらい美味しかったし、雨隠れにだって、いいとこいっぱいあるわよ!」

「そう、かしら?」

「そうよ! 確かにこの雨はだいぶ鬱陶しいけどね」

 

 テンテンは舌を出した変な顔をしながら雨への愚痴を言う。思わず私もつられて笑った。

 

 確かに雨は鬱陶しい。今日もうんざりするほど降っている。

 

「私は嬉しいよ。アジサイの故郷を見て回れて。ランさんの故郷でもあるしね。一度見てみたかったの。夢が一つだけ叶ったわ」

 

 テンテンはそう言って屈託のない笑みを浮かべた。

 

「仮に肉まん屋さんも紙の花屋さんもなくて、雨ばっかりだったとしても、私は満足よ。だって友達とお出かけしてるんだもの。この雨空だって、それだけで素敵な思い出じゃない?」

 

 テンテンはそう言って、軽くウインクしたのであった。

 

「ありがとうテンテン」

「お礼を言うのはこっちよ。紙細工のお土産も肉まんも奢って貰ったし、おまけに素敵なお思い出まで貰ったしさ。今日はありがとうねアジサイ」

 

 テンテンは、花開いたような笑顔を浮かべる。雨隠れには似つかない明るい笑顔だ。

 

 あんな素敵な笑顔、雨隠れ育ちの子にはまずできない。ランさんはともかく、他の子には絶対できない笑顔だ。

 

 明るい土地が明るい性格の子を育てるのだろうか。卑屈な私とは違って、テンテンは凄い良い子だ。私には勿体ないくらいの素敵な友達だ。

 

「雨止まないわねぇ。せめて小降りにならないかしら」

「そうね」

 

 うんざりするほど降り続く雨。いつもと変わらないように見えるが今日はどこか違うように思える。

 

 隣に彼女がいるからだろうか。それだけで、景色がだいぶ違って見える。雨が降っているのに、まるで晴れているかのように感じられる。

 

 こんな気持ち、いつぶりだろうか。もしかしたら生まれて初めてかもしれない。とても心地いい。

 

(今日の雨は悪くないかも……)

 

 この気持ち、この景色、大切にしたい。

 

 心の奥にずっと大事に仕舞っておこう。ずっとずっと仕舞っておこう。ずっと忘れない。たとえお婆ちゃんになっても忘れないでおこう。

 

 今日のこの素敵な一時の思い出は、私にとってかけがえのない宝物なのだから。



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ch.23 二人は幸せな和解の印を結んで終了(ホモガキ)

 もう始まってる!

 

 皆さんにんにちは、どうもホモガキです。今日も“NARUTO~影への道~”の実況をお伝えしていきたいと思います。

 

 さて、前回は第四次忍界大戦に参戦を決めたところまででしたね。これからクライマックスイベントが始まっていくわけですね。

 

 もうエンディングは間近です。どうか最後までお付き合いのほど、よろしくお願いします。

 

 ではゲームの話に入っていきましょう。

 第四次忍界大戦イベントの行動方針はシンプルです。ぶっちゃけ、プレイヤーと小南が死ななければ何しててもいいです。

 

 かなり大雑把な方針ですけど、実際そうです。エンディング条件を達成するためには、プレイヤーと小南を死なせず、影レベルの能力値を満たし、上忍に昇格できるくらいまで貢献値稼げればいいだけですからね。

 

 前に偽マダラの襲撃イベントループで貢献値はかなり稼いであるので、このイベントで無理に貢献値を稼ぐ必要はありません。適当にイベントをこなしていれば自然と上がるので大丈夫です。能力値も既に十分に満たしているので、プレイヤーと小南が死なないことにだけ、気をつけていればいいです。

 

 イベントの終盤は要注意です。この第四次忍界大戦イベントでは、終盤に差し掛かるにつれ、死亡フラグ満載のイベントが待ち構えています。

 具体的に言うと、本気出したオビトもそうですが、柱間大好きなあの人とか、カグヤおばさんとかですね。化け物級の敵と連戦することになります。

 

 ランちゃんの場合、本物マダラ戦やその後のカグヤ戦は言うまでもなく、その前哨戦であるオビト戦ですら、積極的に関わると死にます。

 

 ぶっちゃけ、第四次忍界大戦の終盤イベントに関わるには、俺TUEEEするためだけに用意したガチビルドのキャラじゃないと無理です。

 ガチガチに鍛え抜かれたガチマンのキャラ以外だと、マダラたちに簡単にHPゲージ掘り抜かれてすぐにゲームオーバーです。

 

 無理に関わろうとすると、ネジ兄さんみたいに死んで恋のキューピッドになっちゃうだけです。

 だから下手に関わるのはやめましょう。ここまで来て、ネジ兄さんみたいなモズの早贄みたいな状態になりたくないですからね……。

 

 ということで、今回の第四次忍界大戦イベントでは、序盤イベントを適当に頑張ることにして、後のイベントは基本スルーしましょう。

 

 具体的に言うと、白ゼツを潰すお仕事や、カブト兄貴のエドテンで復活した忍刀七人衆とかを倒すお仕事をやりましょう。

 それで終盤イベントに突入したら、戦闘区域外のマップの端っこで静かにしていることにします。後はナルトたちの活躍を指咥えて見ていましょう。

 

 余裕があれば途中セーブして、ネジ兄さんやシカクのおっさんたちの救済とかやってもいいですけどね。

 

 あーでも、今回は無理ですね。ランちゃんは時空間忍術での移動できませんし、土遁系のシェルター技も使えないので、シカクのおっさんたち本部組みの救済は無理そうですね。

 

 ネジ兄さんの救済だけ余裕があればやりましょうか。そうしましょう。

 

 ネジ兄さん、日向宗家の奴隷でナルト君のかませで恋のキューピッドになるために生まれて来た人生かと思うと、悲しすぎますからね。

 

 哀れ。日向一族とかいう特徴被りキャラが大勢いる一族のサブキャラの末路。

 

 というわけで、このイベントでは適当に戦いつつ、ネジ兄さんの救済を目指して頑張ります。

 方針の説明が終わりましたので、早速イベントに突入していきたいと思いまーす。

 

……。

……。

……。

 

「――頼む、みんなの力を貸してくれ!」

 

 イベントの冒頭、我愛羅君の演説シーンが流れます。忍び連合軍の士気がドーンと上がります。ウォオオと雄叫びが上がります。これから最後の祭りが始まるって感じでワクワクしますね。

 

 雄臭ぇぜわっしょい! 雄野郎わっしょい!

 

 それにしても我愛羅君、木の葉でリー君をボコボコにしていた時とは全然雰囲気違いますね。立派になったもんです。

 

 まあランちゃんとは関わり皆無ですけど。今回、砂隠れの悶絶少年シリーズは全無視したノンケプレイだったですからね。

 

「雨隠れの中忍ランよ、君には遊撃部隊として働いてもらう」

 

 モブ司令官からそんなことを言われました。

 プレイヤーは遊撃部隊に配属され、自由に行動できます。このゲームではそういう仕様です。

 

――どこに行く?

――【忍び連合軍本部】

――【医療部隊本部】

――【大名の隠れ家】

――【砂漠エリア】

――【森林エリア】

――【山岳エリア】

――【海岸線エリア】

 

 いよいよ第四次忍界大戦が始まりました。遊撃部隊のランちゃんがどこに行くか、色々と候補地が出ていますね。さてどこに行きましょうか。

 

――【医療部隊本部】

 

 とりあえずシズネちゃんとかと遊びたいので、医療忍者の集う拠点に向かいましょう。医療忍者として忙しなく働いている彼女たちを冷やかしに行きましょう。レッツゴーです。

 

「ラン! 久しぶりね!」

 

 シズネちゃんと久しぶりの再会となります。ですが、とりあえず全力で顔面ぶん殴っておきます。

 

 くたばれやシズネちゃん、オラァンッ!

 

「――ごふっ」

 

 顔面に渾身の一撃をくらったシズネちゃんが、吹っ飛んで壁に叩きつけられます。

 

 周りにいる医療忍者たちがざわついてますね。いきなり人をぶん殴ったらそりゃそうなります。和やかな再会の空気、壊れるなぁ。

 

「……何故わかったのだ。ぐふっ」

 

 シズネちゃんかと思ったら変化した白ゼツ君でした。

 やっぱりな。ワシにはわかるぜ。全部お見通しや。

 

 これはいわゆる“白ゼツ擬態イベント”ってやつですね。白ゼツが味方キャラに擬態しているイベントです。

 一見すると見分け辛いのですが、何度もイベントを経験したプレイヤーなら余裕で見分けられます。

 

 口調とか表情が微妙に違うんですよね。シズネちゃんはもっと丁寧な物腰です。できる美人秘書キャラですから。フランクリーすぎる態度だったので、一発で見分けられました。

 

 この白ゼツ擬態イベントでは、調子乗って本物をぶん殴ったりしないように十分注意しましょうね。

 一回二回くらいなら間違えても大丈夫ですが、やりすぎると裏切り者扱いされて忍び連合軍との戦いになりますからね。やりすぎなくても間違えて攻撃すると貢献値にマイナス入りますし、基本間違えないようにしましょう。

 

 まあネタプレイで味方ぶん殴って遊ぶのならいいですけどね。そういうネタ動画は巷に溢れているので、ここではあえてやりません。

 興味ある方は検索してみてください。突然乱心して五影の首を狙いに行くネタ動画とか、大草原不可避です。

 

「ラン先輩! お久しぶ――ぐごっ!」

 

 はい、サクラちゃんもぶん殴っておきます。

 口調は正しかったですけど、変な顔した偽者でしたからね。ぶん殴ったことでもっと変な顔になりました。

 

 ああ、美少女のボコ顔たまらねえぜ(リョナラー並みの感想)

 

「ランさん! また会えて――ふぎぃい!」

 

 偽者のいのちゃんも殴っておきます。おへそ丸出しの可愛いお腹を思いっきり腹パンしておきます。

 

 ああ、美少女の腹パンたまらねえぜ(リョナラー並みの感想)

 

 偽者とはいえ、原作キャラに似た容姿のキャラを次々にぶん殴っていくなんて、変な性的嗜好に目覚めてしまいそうなイベントです。

 このイベント、やりすぎ注意です。リョナラーの扉が開いてしまいます。これ以上は、いかんいかん危ない危ない(レ)。

 

 ということで巻いてお送りします。視聴者兄貴姉貴に変な性癖を植え付けてはいけませんので。

 

「ええい、力押しだ!」

「医療忍者共を討て!」

 

 擬態を見破り続けていると、白ゼツは諦めたのか今度は数の暴力で押してきます。全て撃退していきましょう。

 

 白ゼツは擬態がウザいってだけで、戦闘力自体は全然大したことないです。貢献値と経験値稼ぎには良いカモです。モグラ叩きみたいに倒して遊びましょう。

 

 では、単調な戦闘シーンが続くので早回ししていきます。

 

……。

……。

……。

 

――この辺りに敵はもういないみたいだ。

 

 このエリアの全ての敵を掃討したみたいですね。そんなメッセージが流れます。

 

 では次の場所に向かいましょう。その前に、セーブすることも忘れないようにしましょうね。

 

――次はどこに行く?

――【砂漠エリア】

 

 お次は我愛羅君たちが戦っているであろう砂漠エリアに向かいます。

 

 ここにはエドテンされた水影、雷影、風影、土影がいるはずです。

 霧隠れの忍刀七人衆よりちょっと難易度高い敵ですが、このエリアで戦うことにします。このエリアをクリアすれば、もう貢献値は十分すぎるくらい稼げますからね。

 

「これは? 幻術なのか?」

 

 はい、我愛羅君からあの有名なセリフいただきました。二代目水影様との戦いが始まります。

 

「お前さん、俺の術を使うのか? そうか受け継がれてるのか。俺の術の後継者が現代にもいたとはな……感慨深いぜ」

 

 二代目水影と接敵して“蒸気暴威”の術を披露してやると、そんな会話が流れます。

 後継者っていうか、術だけ学んで霧隠れには仕官しなかったんですけどね。術を盗んだだけです。

 

「当然、今代の水影やってんだろ?」

「いえ、雨隠れの中忍です」

「何で俺の術を使う奴が他里の忍びなんだよ!? しかも中忍ってどうなってんだ!? おかしいだろが!?」

 

 適当に会話していると、二代目水影がツッコミを入れてくれます。

 このちょび髭おじさん、脇役ですけど良いキャラしててわりと好きです。

 

 まあそんなことはどうでもいいですね。我愛羅君と協力してさっさと倒してしまいましょう。さらばちょび髭。来世で会いましょう。

 

「次は俺が相手だ」

 

 二代目水影戦後、エドテンされた四代目風影とも戦っていきます。

 砂攻撃は水で止められるので、わりと相性良いです。援軍で我愛羅とかもいるんで、戦ってもまず死ぬことはありません。積極的に戦っていきましょう。

 

 このエリアでは、二代目土影が要注意です。

 二代目土影は姿を隠して奇襲で即死攻撃の塵遁使ってくるので、厄介すぎます。しかも本体と分裂してますからね。

 二代目土影は卑劣すぎる戦法を使ってくる敵です。できるだけ戦わないようにしましょう。

 

 二代目火影の卑劣な術だという名言を残した二代目土影ですが、アンタも十分卑劣だってそれ一番言われてるから。

 

「金を利用するとはな……流石だ」

 

 四代目風影を倒し、無事に封印することができました。

 我愛羅君と父親の感動シーンが流れます。虐待おじさんが今更改心するシーンは見物です。

 

「我愛羅……立派になったな」

「父上……」

 

 我愛羅君のアンニュイな表情、しっかりスクショしておきましょう。

 今晩のオカズ、決定です。美少年の曇り顔、たまらねえぜ。

 

――敵はまだいそうだが、この区域を離脱する?

――【はい】

 

 二代目土影と三代目雷影がまだ残っていますが、そいつらは無視して他の戦闘区域に向かいましょう。

 塵遁使いとなんて戦ってられるかってんです。雷影も動き速くてダルい相手なので逃げましょう。

 

「ランの姉ちゃん!」

「ラン? ランなのか!?」

 

 おお、移動していたらナルト君たちと遭遇しました。

 エドテンされた長門君とイタチの兄さんもいますね。小南もいます。

 

 イタチ兄貴はもうエドテンの支配から逃れてますね。エドテンの支配から逃れるって凄いっすね。流石天才。

 

「ナルトたち、ここは任せたぞ」

「ああ!」

 

 イタチの兄貴はエドテン部隊を操っている大元であるカブトを狙うため、このエリアから離脱していきました。

 ではナルト君と小南ちゃんと三人で、長門を倒すとしましょう。

 

「地爆天星!」

 

 長門の輪廻眼はマダラに奪われましたが、この穢土転生体は何故か輪廻眼の力が扱えます。ですがペインほど恐ろしくはありません。長門君が必死に抵抗して支配に抗おうとしているせいでしょう。

 

 ナルトも小南もいますし、安心して戦えます。早いとこボコボコにして、あの世へと送り返してあげましょう。

 

 長門君、さっさと成仏しろやオラァン!

 

「……物語の第二部ってのはだいたいが駄作になる。第一部が自来也先生、第二部が俺だ。ナルト、お前が第三部を最高傑作にしてくれ」

 

 封印された長門君が天に召されていきます。

 悲しいなぁ……(諸行無常)。雨隠れはランちゃんが適当にパパッと治めとくから、長門君は天から見守っていてくれよな~頼むよ~。

 

 さて、長門君のイベントも終わりました。もう十分すぎるほど活躍しましたし、消耗したので休むことにしましょう。

 

 では休息所で昼寝でもして回復しましょう。ワシ、もうちかれた……。

 

……。

……。

……。

 

――物凄い音がする。ナルトが戦っているらしい。

 

 寝て起きると、どうやらオビト戦が始まったようですね。ネジ兄さんがモズの早贄になる時間が刻一刻と近づいているようです。

 

 別にほっといてもいいんですが、回復できましたし、参戦して救っておきますか。セーブしてから向かいましょう。

 

「死ね、木遁・挿し木の術!」

「ヒナタ様ぁあ!?」

 

 オビト戦を端っこの方で見ていると、イベントが挟まりました。

 オビト君が口寄せした十尾が凶悪な術を放ち、ネジ兄さんがかっこよくヒナタの前に飛び出ていきました。ネジ兄さんの命は風前の灯です。

 

――ネジが危ない。どうする?

――【助ける】

――【そのまま見送る】

 

 原作シーンを見たいなら後者です。

 ネタプレイなら見送るを選んでも面白いです。ワシもいつもならヒナタたちの曇り顔が見たいんで迷わず見送るんですが、今回は貢献値のためにも真面目にやるとします。

 

 ちなみに、キャラのステータスの状態が悪かったり、能力値が低いキャラで【助ける】という選択肢を選んでも、助けられないです。そればかりか、プレイヤーが死んでゲームオーバーになることもあります。ネジ兄さんもろとも挿し木の芸術品になっちゃいます。

 

 ですが、今のランちゃんは大丈夫ですね。それなりに戦えるキャラに仕上がってますので。回復したばっかなのでステータス状態も万全です。

 

 沸遁の術で挿し木攻撃を撃ち落して威力を弱めて、ネジ兄さんの窮地を救っておきましょう。問題なく助けることができました。

 

「またお前かラン、俺の邪魔ばかりしやがって!」

「ランさん、助かりました。礼を言います」

「ナイスだってばよ、ランの姉ちゃん!」

「ネジ兄さん……本当によかった……」

 

 ネジ兄さんを挿し木の芸術品に仕立て上げられなくて、オビト君が激怒しています。マダラムーブしてないので、素の口調に戻ってますね。ネジ兄さんやその他の面々からはお礼を言われます。

 

 さて、もうやることはないです。後は適当に戦ったら撤退しましょう。

 挿し木の芸術品制作を邪魔したことでオビト君のヘイトがランちゃんに向いてて危ないですし。HPが減って重傷になって逃げられなくなる前に撤退します。

 

――戦線離脱する?

――【はい】

 

 オビト戦の後はマダラ戦とカグヤ戦が残ってますが、当初の方針通り無視します。

 あんな化け物と戦ってたら幾つ命があっても足りませんからね。HPゲージ速攻で掘り抜かれちゃいますよ。

 

 無事、戦闘区域外まで逃げてこれました。もうやることはありません。ゆっくり休むだけです。あとはナルトとかに全部任せて休みましょう。

 

――ナルトたちが戦っている。とてつもない強敵のようだ。

――【この場に留まる】

 

 このまま第四次忍界大戦が終わるまでスキップしてエンディングに突入していきたいところですが、いい時間なので今日はここまでとします。

 

 次回、エンディングです。どうか最後までお付き合い下さいませ。ではさよなら~。



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ch.23 二人は幸せな和解の印を結んで終了(小南)

ご注意ください
(はじ)を知れ聡を」は淫夢ネタですので誤字ではないです
親切な方が何人も同様の誤字報告してくださるので念のためここに記しておきます
紛らわしいネタ仕込んですみませんm(_ _)m


 ランの治療が続けられている間、私は暇そうにしているはたけカカシを呼び出した。どうしても尋ねておかねばならないことがあったからだ。

 

「あの、俺、なんかやっちゃいましたかね?」

 

 私の鋭い視線を浴び、はたけカカシは気まずそうに頭を掻く。そんな彼に、私は尋ねる。

 

「はたけカカシ、単刀直入に聞くわ」

「はあ、何でしょう?」

「ランとはどういう関係なの?」

「…………はい?」

 

 思いきって尋ねてみるのだが、はたけカカシはとぼけたような表情をするばかりだ。あくまでしらばっくれるつもりなのね。

 

「とぼけないで、貴方とランの関係よ。かなり親しいものだと聞いている。男女の仲、そうなんでしょ?」

 

 ゼツの持ってきた写真に映っていた二人はかなり親しそうにしていた。ランは身動きできないこの男の介護までしていたし、祭りでも親しげな様子だった。ただの友人関係というわけではないだろう。

 

「えぇ!? なんでそんなことを貴女がご存知で!?」

「ネタはあがっているのよ。正直に話しなさい」

 

 私がランのことは全て知っていると言うと、はたけカカシは物凄く焦ったような表情をする。

 

「いやランとは別にそんな関係じゃ……」

「ただの遊びだったということ? 私の親友を弄んだというの? だったら覚悟はできてるわね?」

「えぇ!? いや、ちょっと!?」

 

 純粋なランを弄んだ。そうだとしたら絶対に許せない。例え木の葉と戦争になろうとも、この男をここで抹殺しなければいけないだろう。起爆札六千億枚はもうないけれど、残っているありったけの起爆札を使って、この男を確実に冥府に送ってやる。

 

 そう思って私は圧力を加えるのだが……。

 

「ほ、本当に何のことだか、いや、本当ですよ?」

 

 はたけカカシは心底慌てるように弁明する。その様子は真に迫っていて、嘘をついているようには思えなかった。

 

「本当に何もないの?」

「本当ですって。何もないですから。生憎オレには一人もそんな奴はいないんで……」

 

 はたけカカシはどこか遠い目をしながら親しくしている女性がいないことを告白した。今にも過去にもいないことを告白した。つまり、彼女いない歴イコール年齢ということだろうか。

 

 改めて考えてみれば、こんな時にも自来也先生のすけべな本を読んでいるような男だ。おまけに覆面を常に被っている怪しげな風貌。いくら素顔がイケメンだとしても、女性に好かれるタイプではなかった。

 

 ランが好きになるはずもなかったかもしれない。ランはもっと明るく感情を表に出すタイプが好きなはずだ。弥彦のように。

 

「そう。私の勘違いだったのね。ごめんなさい、変なことを聞いて」

「まぁ別にいいですけど……」

「もういいわ。用はそれだけよ。わざわざ呼び出して恥ずかしいことを聞いて悪かったわね」

 

 はたけカカシはどこか気落ちした様子で部屋を出ていく。「俺もテンテンたちと里の観光でもしてくりゃよかったかな……何でこんな目に。とほほ」とぼやきながら出ていった。

 

 そんな情けないはたけカカシの姿を見て、私はとても申し訳なく思いつつ、その背を見送ったのであった。

 

 それから数日後、ランは意識を取り戻した。

 

「ランっ!」

「小南ちゃん……ナルト君……みんな?」

「ランの姉ちゃん、気がついたんだな! よかったってばよ!」

 

 私たちはランの復活を喜んだ。私たち雨隠れの者は勿論、木の葉の者たちも心から喜んでくれた。

 

「本当によかった。ラン」

「小南ちゃん、長門の輪廻眼、守れなかったんだね。ごめんね私のせいで……」

「いいのよ。長門もきっとわかってくれるわ」

 

 ランは長門の眼が奪われたことを気に病んでいたが、あの状況ではああするしかなかっただろう。そうでなければ、ランの命が奪われていた。きっと、長門も理解してくれる。そう思うことにした。

 

「春野サクラと言ったわね。貴女たちには心から感謝するわ」

「いえ、ランさんは私にとって姉弟子ですし、当然のことをしたまでですよ」

「俺にとっても姉弟子だってばよ。小南の姉ちゃんもな」

「本当に感謝するわ。何もない所だけど、肉まんだけはあるから是非食べていって」

「やったってばよ!」

 

 感謝の印に私のポケットマネーで肉まんを大量に奢った。特にアジサイと親しくしていたくノ一は大量の肉まんを前にしてとても喜んでいた様子だった。とにかく喜んでもらえたようなので幸いだった。

 

「それじゃ、俺たちは帰るってばよ」

「ええ世話になったわねナルト。そしてみんな」

 

 ランの容体が安定したのを見て、木の葉の面々は帰ることになった。

 

 ランが意識を失っていた時はどうなることかと思ったが、終わってみれば全て良し。ランは無事に命を繋ぐことができたし、アジサイたちは木の葉側の面々と絆を深めたようだし、将来の雨隠れの里にとってはいいことばかりであった。

 

「はたけカカシ。火影殿への言伝てを頼むわね」

「わかりました。貴女がもたらしたこの情報、大変貴重なものです。ですが、これだけで貴方の今後の立場が保証されるものではありませんよ。木の葉や五大隠れ里の忍びたちの前に出たら、依然として命が狙われるかも。貴方はそれだけの恨みを買っている恐れがありますから」

「わかっているわ。その時はその時よ。覚悟はできているわ」

「そうですか。まぁ上には伝えておきますよ。できるだけ良い風に言っときますんで。過度な期待はしないで欲しいですがね」

 

 別れ際に、はたけカカシに伝言を頼んだ。

 

 私の知りうるマダラの待っている情報。その他の暁に関する情報。心からの謝罪。暁と事を構える際には雨隠れも全力でサポートすること。それとこれからのことについて、伝言を頼んだのだ。一種の司法取引のようなものだ。

 

 それから木の葉側から返答はなかった。対応を決めかねているのだろうと思われた。

 

 そうしている間に時は過ぎていく。ランが復活し、それから幾日が過ぎた。

 

 危惧していた通り、マダラによって世界は大きく動き始めた。

 

 自称マダラが引き起こした第四次忍界大戦。それに伴い、五大隠れ里が結集し、忍び連合軍が結成されることになった。忍び世界の危機を救うため、五大隠れ里以外の隠れ里からも、多くの忍者が参戦することになった。

 

 私たち雨隠れの里からも人員を派遣することになり、復帰したランが真っ先に志願し、里長として私も勿論参加することになった。

 

 私も加わることになったのだが、そこで一悶着が起きた。私を受け入れるかどうかで影たちが揉めることになったのだ。

 

 わかってはいたことだ。私は元暁のメンバー。償いきれぬ大罪を犯した。既に足を洗ったからといって、周囲はそう簡単に受け入れてはくれなかった。

 

「ふざけるな!」

 

 戦いが始まる少し前。私は雷影から激しく詰られることになった。

 

「この女を今すぐ殺すべきだ! 暁の大罪人だぞ!」

「そうじゃぜ。この女には散々迷惑をかけられた。この女たちのせいでうちの老紫は殺されたんじゃぜ」

 

 雷影が鼻息荒くまくし立てるように言い、それに土影も続く。他の影たちも私のことを擁護などしなかった。

 

 ただ、その場に臨席していたランとナルトだけは違った。

 

「待って! 小南ちゃんを許してください! 何でもしますから!」

「俺からも頼むってばよ! 小南の姉ちゃんは心を入れ換えてやり直そうとしてんだ! マダラの野郎をぶっ潰すのにも力を貸してくれるって言ってんだよ!」

 

 ランが土下座をして雷影の右足にすがりつき、ナルトが同様に左足にすがりついた。

 

 私のためにどうしてそこまでしてくれるのか。彼女たちのひたむきなその姿を見て、思わず目頭が熱くなった。

 

(ラン……貴方……約束を守ってくれたのね)

 

 以前戦った時、ランは言っていた。私の罪について一緒に謝るから、と。

 

 あの時の私は小娘扱いするなと、その言葉を素直に受け取れなかった。だが今のランを見ているとわかる。

 

 あの言葉は本気だったのだ。いつ無礼討ちされてもおかしくない状況で、ランは私のことを庇ってくれていた。必死に擁護してくれていた。

 

「ええい! 鬱陶しいぞ! 小娘と小僧! 放せ!」

 

 しがみついていたランとナルトを、雷影が力ずくで振り払う。

 ナルトはすぐに吹っ飛ばされて引き剥がされてしまったのだが、ランだけはずっとしがみついていた。

 

「この小娘がぁ! 放せと言っておるだろうが!」

「放しません! 小南ちゃんを認めてくれるまで放しません!」

「ええい、放せ! この小娘、見かけによらずなんという馬鹿力だ! 五代目火影譲りか! このワシが全力で振り払っているのに振り払えんとは!」

 

 ランは嵐の中で揺れる木に必死にしがみつく猿のように、雷影の脚にまとわりついていた。

 

「小娘っ、貴様は猿か! 放せというに!」

「離しません! 小南ちゃんを認めてくれるまで離しません!」

 

 何度やっても振り払えず、雷影は困り果てていた。

 

「火影! 貴様からも何とか言え! この暁の女は即刻殺すべきだろうが!」

「そうじゃぜ。この女は木の葉壊滅の主犯格だろう。おまけに三忍の自来也だったか、あやつもこの女のせいで殺されたというではないか。しかも自来也はこの女の師匠だったというではないか。師匠殺しなんて、とんでもない恩知らずの女じゃぜ。(はじ)を知れ聡を」

 

 雷影と土影は変わらず私をなじり続ける。

 

 自来也先生の話を出されると辛い。実際に先生を殺したのは長門とはいえ、私も同罪だ。罪の意識に苛まれる。私は大恩ある先生を殺してしまったのだ。

 

無表情を装うが、私は内心動揺していた。

 

 そんな中、雷影に話を振られた火影が、徐に口を開いた。火影は心底悩んでいるといった様子で、絞り出すように言葉を吐き出す。

 

「木の葉としては、この戦争が終わるまで、その女の処遇については保留にする。木の葉はそう決断した」

「なにぃ! 自来也が殺されたというのに、この女を許すというのか!」

「許したわけではない。保留だと言っておるだろう。先の戦いを見据えて、恨みを一旦飲み込むことにしただけだ」

 

 火影はいかにも苦渋の決断であると言うかように、苦々しげな表情で言う。私のことは許していないものの、口添えしてくれたランやナルト、はたけカカシなどの顔を立ててくれたようだ。

 

「お前らはどうなんだ! 風影、水影! 殺すべきだろうが!」

 

 雷影は他の影たちにも話を振る。

 

「その女に最も被害を受けたのは木の葉だろう。その木の葉が恨みを一旦呑み込んで様子を見ると言うのなら、我が砂隠れもそうしよう。異存はない」

 

 風影がそう口にする。

 

「そうですね。暁には我が里もウタカタを殺されておりますが、木の葉ほどの被害ではない。木の葉がそうするならばそうしましょう。何かあればランさんが責任をとるとまで言っていますし、彼女を信じましょう」

 

 風影のみならず水影も賛同してくれた。

 

 ランは水影と知己のようだった。顔が広い。ここでもランに救われることになった。

 

「なんだとぉ、お前らどうかしているぞ!」

「雷影よ。元暁であるこの女に恨みがあるのはわかる。だがそれを言い出したら、キリがない。忍び連合の理念にも関わることだ。ここは先を見据えるべきではないか?」

 

 五影の中で最年少ながらも、風影は臆することなくものを言う。

 風影の言に、雷影は唸りながら考え込む。そして結論を下す。

 

「……よかろう。ワシもそうしよう」

「本気か雷影!? 聡を知らない女じゃぞ!」

 

 納得した様子の雷影に、土影が噛みつく。

 

「それを言ったらオオノキ、貴様もだぞ。暁を利用していたのだからな。先程からこの女の批判ばかりをしておるがな。聡を知らないのはお前も一緒だ」

「ぬっ、そ、それは……」

 

 雷影に痛い所を突かれ、土影はたじろいでいた。

 

 そうだ。土影は過去に私たちを利用していたのだ。他の影に何を言われようとも甘んじて受け入れるが、過去に私たちを利用していたこともある土影にだけは言われたくない。聡を知らないのは彼も一緒だ。彼は聡を知らない男だ。

 

「ふん、何かあれば責任をとると言うておるし、この小娘に免じてこの場は見逃してやるわ。この俺の全力を受けて、目を回しながらもしがみつき続けているこの小娘の根性に免じてな」

 

 雷影は喋っている間もランを振り払おうと全力で脚を動かしていた。その間、ランは目をぐるぐるに回しながらも、ずっとしがみつき続けていた。

 雷影はランのその根性に一目置いたようだった。

 

「雷影様、ありがとうございま……うぇっ、おえっ」

「っ!?」

 

 我慢に我慢を重ね、とっくに限界を超えていたのだろう。ランは会談部屋で吐き気を催し始めた。口を押さえて酷い顔をする。そのままリバースしそうな勢いだった。

 そんなランを雷影は慌ててつまみ出す。

 

「これでお前たちの話は済んだ! とっとと出ていけ!」

 

 私の処遇に関してひとまず話が済んだので、我々は部屋から追い出されることになった。

 

「ヴォエッ、おえっ」

 

 ランはすぐにトイレに駆け込むとゲーゲーと吐いていた。私はそんな彼女の背にそっと手を寄せた。

 

(ラン……そこまでして私のために……)

 

 一度は命すら奪おうとしたこの私のためにそこまで尽くしてくれるなんて。胸が熱くなった。

 

 ランたちの必死の口添えのおかげで、私の命は繋がれた。

 このチャンスを大事にしなければいけない。忍び連合に貢献し、恩赦がもらえるように振る舞わねばならない。私は覚悟を新たに起爆札の準備に取りかかった。

 

(マダラ、絶対に殺す! 殺す殺す殺す!)

 

 六千億枚の起爆札はないけれど、ありったけの札を使ってマダラを吹き飛ばしてやろう。ランの命を危険に晒したアイツを確実に殺す。そんな意気込みで準備を行った。

 

「力を貸してくれ!」

 

 やがて風影の演説を皮切りに、戦が始まった。私とランは遊撃部隊へと組み込まれることになった。

 

「小南ちゃん、ちょっと医療部隊に顔を出してくるよ。木の葉を出る時、シズネちゃんには挨拶もしないで出てきちゃったし。ちゃんと謝っておかないと」

「シズネ。たしかランの木の葉時代の友人だったかしら」

「うん、すっごい良い子だから小南ちゃんにも紹介するね!」

 

 戦争が本格的に始まる前に、ランは医療部隊の拠点に顔を出そうとしていた。そこの責任者のくノ一とは縁浅からぬ関係で、一言伝えておきたかったのだとか。それでそのくノ一を私にも紹介してくれることになった。

 

「シズネちゃん!」

「ランさん、お久しぶりです!」

 

 二人は会うなり、親しげに声をかけあい、近づいていく。

 

 黒髪の女。ゼツの写真で見たことのある女だった。

 ランはその女に近づいていき、久方ぶりの再会を祝おうとしたのだが……。

 

「てぇええええい!」

「――ふごおおお!」

 

 ランはいきなりそのシズネという女の顔面を殴ったのだった。

 

「ちょっ!? ラン、貴方何をしてるの!?」

 

 私は柄にもなく酷く慌てた。会って言葉を交わすなりいきなり殴り付けるなんて相当だ。異常すぎる。

 

 実はそのシズネという子と喧嘩でもしていたのかと、私は戸惑うばかりであったのだが……。

 

「何故だ……何故わかった……」

 

 ランの友人だと思われたくノ一は、実際のところ、変化した白ゼツであった。医療部隊の長が偽物とあって、周囲は騒然となる。

 

「やっぱり偽物だったんだ。シズネちゃんはあんな顔しないもん」

 

 ランはやはり、と一人頷く。

 

 あんな顔ってどんな顔だ、と私は思ったが、ランには何故かわかるようだった。細かな違いがわかるようだった。

 

 ランは昔からそうだ。抜けているようで鋭い。危険に関しては極めて聡いのだ。

 

「本物のシズネさんはどこだ!?」

「大丈夫。シズネちゃんはどこかにいるよ安心して」

 

 医療部隊は騒然となるが、ランは叱咤激励してその混乱を静めた。その後も的確に行動して敵を撃破し続けた。

 

「ランさーん!」

「てぇいやぁああああ!」

「ぷごぉおおあ!」

「ちょっ!? ラン!? その子は命の恩人の春野サクラよ!?」

 

 ランが春野サクラの顔面を躊躇なくぶん殴った時は本当にひやっとした。春野サクラはランを救ってくれた恩人だ。もし万が一本物であったなら、一大事だ。

 

 そんな相手の顔面を躊躇なく全力で殴れるランは、元暁の犯罪者の私よりもいい根性してると思った。

 

 まあランには偽物だという確かな確信があったのだろう。だから躊躇なく拳を振り抜くことができたのだ。

 

「ぐぅ、何故わかる……」

「だってサクラちゃんはあんな顔しないもん。もっと女の子の顔してるもん」

「そんな……俺の成り代わりの術は完璧のはずなのに……」

「女の子になる修行が足りないわよ。出直してきなさい」

 

 ランの眼力は確かだった。そうしてランは変化したゼツを次々に見破り倒していった。

 

「ええい、ならばこのまま数で押してやる!」

 

 ランの活躍もあり、ゼツはもう変化の意味がないと悟ったのか搦め手をやめ、途中から強引に数の力で押してくるようになった。

 

「小南、暁の裏切り者め、覚悟!」

「そのへらへらしたむかつく顔、いつか起爆札で吹き飛ばしたいと思ってたわ。くらいなさい!」

 

 敵を見分けるのに関しては大した役に立てなかった私だが、明確に敵だとわかる相手となら戦える。元暁の実力者は伊達じゃない。

 

 私とランは周りの者たちと共闘し、医療部隊の拠点にいる敵を全て排除していった。

 医療部隊の拠点の敵を掃討できた後は、砂漠エリアへと赴くことになった。そこでも我々は力の限りを尽くして戦った。

 

 ランは私と戦った際に発動したあの術を使い、多くの白ゼツを屠り、穢土転生された歴代の影とも渡り合っていった。

 

「ほぉ、俺の術が現代に受け継がれてるのか……」

 

 ランと対峙することになった二代目水影は、ランの術を見て、感慨深そうに言った。

 

「当然今代の水影やってんだろ?」

「いえ雨隠れの中忍です。水影はメイちゃんですよ!」

「なんで中忍なんだよ! しかも雨隠れなんてめちゃくちゃ弱小の隠れ里じゃねえか! 水影のメイちゃんって誰だこら! 弱小の雨隠れの中忍が水影をちゃん付けで呼んでるって、今の霧隠れはどうなってやがる! 舐められてんじゃねえだろうな!」

 

 あのチョビヒゲ男、ランと漫才をするどさくさに紛れて私たちの雨隠れを馬鹿にしやがった。元水影だかなんだか知らないが起爆札で吹き飛ばしてやろうと思った。

 

「って、おいおい、そっちの女、めっちゃぶちギレてるじゃねえか! 謝るから落ち着け! なんでお前がキレてんだこら!」

「雨隠れを馬鹿にした罪、万死に値する。死になさい二代目水影」

「もう死んでるっつーの! つか、池の鯉に餌やるみたいな気軽さで起爆札ばらまいてんじゃねえよ! 危ねえ女だな!」

 

 いけ好かないちょび髭男は、ランたちと共闘し、封印することができた。

 

「ここはもう俺たちだけでいい。他の場所の救援に行ってやってくれ」

「わかったわ」

 

 風影に言われ、私たちは違うエリアに向かうことになった。そこで、穢土転生体となってしまった長門とうちはイタチと会い(まみ)えることとなった。

 

「小南! よかった、生きていたのか!」

「長門……」

「俺の後を追うのではと心配していたが杞憂だったか」

「いえ実際そうなりかけたわ。ランに助けられて命拾いした。恥を晒しながらも生きているわ」

「そうかランがな……。恥などいくらでも晒せばいいさ。命長ければ恥多し。生者の特権だ。死人の俺が言うのもなんだがな。とにかくお前が生きていてくれてよかった」

 

 生きて長門に会えるとは思わなかった。我々は穢土転生体となった長門と久方ぶりに話し合うことになった。

 

「さて、感動の再会はこれくらいにしておこうか。僕も暇じゃないのでね」

 

 どこかからそんな幻聴が聞こえた気がしたと同時、長門が激しく苦しみ出した。

 

「ぐぅ、そろそろ限界のようだ。小南、ラン、ナルト、イタチ。すまないが俺を止めてくれ」

 

 長門は本格的に身体の自由を術者に奪われてしまったようで、私たちへ攻撃を始めた。

 

「悪いがここはナルト君たちに任せよう。俺は大元の術者を叩く。それに他にやらねばならぬこともあるのでな」

「ええ任せて頂戴」

「すまない感謝する」

 

 イタチは私たちにこの場を預けると、一目散に離脱していった。

 

「長門、今楽にしてあげるわ」

 

 ランとナルトと共闘し、長門を封じ込める。ナルトとランが協力して戦って倒し、復活するまでの間、足止めをする。そこで私が紙で拘束し、封印術を施す。

 穢土転生体となって己が身を顧みず戦う長門は厄介であったものの、程なくして封印することができた。

 

「世話をかけたな三人とも」

 

 完全に封印される前の長門が私たちに最後の言葉をかけてくる。

 

「長門……」

「ラン。小南を頼む。許されぬ過ちを犯した俺が今更頼みごとなんておこがましいかもしれないが、それだけが俺の願いだ」

「うん、それはわかったよ」

 

 この期に及んで私の心配など長門らしい。彼は本来優しい人間だ。他人の痛みに敏感で誰よりも共感できる人間なのだ。長門は完全に昔の彼に戻っていた。

 

 私たち雨隠れ三人、昔に戻ったかのような時間が流れる。だがそれも長くは続かない。長門の仮初めの命が消えていく。

 

「そろそろ時間のようだな。俺はいくよ」

 

 長門の身体が崩れていく。そのまま言葉少なに消えていこうとする長門であったが、ランは一歩前に出ると拳を突き出した。

 

「それは……」

「和解の印。長門とは、喧嘩して別れたままだったから」

 

 ランは木の葉を襲撃した時のことを言っているのだろう。確かにあの後、長門は言葉を交わすこともなく輪廻転生の術を発動して逝ってしまった。

 

 ランからしてみれば喧嘩別れしたまま。だからここで和解の印を結んで区切りをつけようということなのだろう。

 

 長門にとってもそれは願ってもないことだったようだ。長門はどこか喜ばしそうな顔でそっと拳を突き出す。

 

「和解の印か。そういえば昔、稽古をした後に何度も結んだな」

「うん」

「これで最後だな」

 

 二人は静かに和解の印を結ぶ。言葉を交わさずとも、理解し合っているようだった。

 

「ラン、お前ならきっと、弥彦の思いを正しく継げる。俺とは違って、正しい道を行くことができるだろう。俺は一足先にあの世で、あいつと一緒にそれを見守っているよ。俺たちの雨隠れをどうか頼む」

 

 ランに全ての思いを託した後、長門の体が完全に崩れていく。穢土転生の術が解け、彼は再び冥界へと旅立ってしまった。

 

「いってしまったわね」

「うん」

 

 長門と最後の別れを果たし、少し沈んだ様子のランであったが、目元を袖で拭い涙を払うと、しっかりとした眼差しで前を見据えた。弥彦やナルトに似た、強い意思の篭った目だ。

 

「行こう小南ちゃん。戦いを終わらせるために」

「ええ」

 

 長門との別れを経た私たちは、その後も戦いに身を投じていく。

 

「ランの姉ちゃん、小南の姉ちゃん。あいつは俺にやらせてくれ。オビトだけは、俺がぶん殴って目を覚まさせてやらなきゃなんねぇんだ」

「……わかったわ」

 

 第四次忍界大戦はナルトの活躍もあり、なんとか終わりを告げた。

 多くの犠牲を払ったものの、忍び世界の危機は去り、世界はいまだかつてない安定と平穏に包まれることとなった。

 

「帰ろう小南ちゃん。私たちの里に」

「そうね帰りましょう。帰ってもやることは沢山ね」

 

 大戦の活躍によって恩赦を得た私は、ランと共に雨隠れに戻った。

 

 世界を賭けた戦いは終わったが、私たちの戦いは続く。

 平和な雨隠れを築き、それを保ち続けるという終わりのない戦いに、私たちは全力で挑んでいくのであった。



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ch.24 いつしか雨はやみ、そこには虹がかかるんだよなぁ(ホモガキ)

最後のサブタイは名無しのホモガキの残した名言から


 もう始まってる!

 

 皆さんどうもホモガキです。今日も“NARUTO~影への道~”の実況をお伝えしていきたいと思います。

 

 今日でいよいよ最終回です。どうか最後までお付き合いくださいね。

 

 前回は挿し木の芸術品になる所だったネジ兄さんを助けた所まででした。第四次忍界大戦がクライマックスを迎える所まででしたね。

 

 ではそこから始めていきましょう。

 

「まさか五影が共に戦うことになる日が来るとはな……」

「この戦い、勝つぞ!」

 

 オビトとナルトが激しく盛り合っている一方、違う場所では、本物マダラ(エドテンver)と五影たちが激しく盛り合ってます。五影相手に勝てるわけないだろって感じですが、普通にマダラが圧倒してます。

 

 五影に勝てるわけないだろ! 馬鹿野郎お前マダラは勝つぞお前!

 

「木遁も使えず、柱間の足元にも及ばない医療忍術。そして何よりか弱い女。弱い者は醜い。弱い千手などいらぬ」

 

 マダラが綱手姫に辛辣なこと言ってますね。

 

 まあ柱間ガチ勢のマダラ兄貴からしたら、全てにおいて劣化柱間の綱手姫とか、正直ガッカリでしかないでしょうからね。仕方ないね(レ)。

 

「柱間ァ!」

 

 大蛇丸によってエドテンされた歴代火影たちも参戦し、祭りは一気に盛り上がっていきます。

 特に最愛の柱間を見つけたマダラのテンションはマックスです。フルフルニィのおじさんと化します。

 

 その後、マダラはオビトに輪廻天生の術を使わせ、完全復活を果たします。

 

「ふん、他愛もない」

 

 ナルトはサスケと合流し、マダラと戦っていきます。ですがマダラに圧倒されてますね。マダラ強すぎィ!

 

「うぉおおおお!」

 

 マダラは外道魔像を呼び寄せ、尾獣の力を取り込み、十尾の人柱力と化してさらに暴れまわります。最強のお祭り野郎の誕生です。

 

 最強のお祭り野郎を、もはや誰も止められません。止められるとしたら、それはマダラ以上に雄臭い野郎だけです。

 

「八門遁甲・第八死門・開! うぉおおおおおお!」

 

 雄の中の雄であるガイ先生が八門全部開いて特攻していきます。

 

 雄臭ぇぜわっしょい! 雄野郎わっしょい!

 

 ガイ先生は一時マダラを圧倒しますが、あえなく敗れます。

 

 マダラほんと強すぎィ!って感じです。いやこの場合は、一時とはいえ十尾の人柱力のマダラに対抗できてるガイ先生ヤバスギィ!って言った方が正しいんですかね。

 

 本当、ガイ先生は人間やめてますね。珍獣です(鬼鮫兄貴並みの感想)

 

 その後、マダラはオビトから輪廻眼を回収して無限月読を発動させますが、黒ゼツに裏切られてしまいます。最後の最後で、お祭り男の座を奪われてしまいます。

 

 哀れ。真の黒幕に踊らされたお祭り男の末路。

 

「コノ時ヲ待ッテイタ。蘇レ母サン!」

 

 黒ゼツはマダラを利用してカグヤおばさんを復活させます。ラスボスの登場ですね。

 

「チャクラとは……わらわ唯一のもの。もう一度チャクラを一つにする!」

 

 カグヤおばさんが暴れまくって戦場は酷いことになります。時空間がどんどん切り替わる怪獣大決戦って様相を呈していきます。おばさんやめちくり~って感じですね。

 

 こんな神々の戦いみたいなのに、一般ピーポーが参戦していくのは無理ですね。ランちゃんはとっくの昔に身動きできなくなって神樹に囚われて夢見てます。

 

 ランちゃんは身動きできませんが、プレイヤーは視点切り替えで戦場の様子の観察ができます。このゲームはそういう仕様です。

 

 ナルト君たち、化け物おばさん相手に頑張って戦ってます。

 オビト君がカカシ先生を庇って粉々になって死んだり、カカシ先生の目に万華鏡写輪眼の瞳力が宿ったり、イベントが進んでいきます。

 

「このチャクラの祖であるわらわが、この様に分散したチャクラ共に敗れるとは……何故だ!?」

 

 ナルト君たちが激闘の末、カグヤを再封印します。

 

 おばさんさっさと消えちくり~って感じですね。雄臭い祭りの最後に空気読まないノンケおばさんの乱入とか、ホント勘弁しちくり~。

 

「マダラ……」

「柱間……」

 

 カグヤおばさんが消え、戦いが終わります。

 戦いが終わり、最愛の柱間に見守られてマダラが昇天したり、ナルト君が両親と最後の別れをしたり、色々と感動的なイベントが起こります。

 

 これにて一件落着かと思いきや、そうはなりません。

 

 あれだけ暴れたというのに、若い奴等は全然盛り足りてないようです。祭りの最後を変な白いおばさんに汚されたからか、野郎だけでもう一度盛りたいようです。

 

「サスケェ!」

「ナルトォ!」

 

 祭り終了後、ナルトとサスケは人気のない場所で二人だけで盛り合います。それぞれ片手失うくらいまで激しく盛り合って、最後は血でハートマークを作って和解します。

 

 リアルタイムで漫画を追っかけていた二十一世紀のノンケガキたちをドン引きさせたという、あの有名なシーンですね。

 

 二人はようやく結ばれました。

 前前前世のそのまた前前前世よりももっと前から因縁のあるヤンホモ二人が和解したことで、呪われた忍び世界はようやく救われることになりました。

 

 あ、やっと……戦いが終わったんやな……

 

 戦いが終わり、忍び連合軍は解散となります。忍びたちはそれぞれの隠れ里に帰っていきます。ランちゃんたちも雨隠れに帰還していきます。

 

「ラン、雨隠れの長を頼まれてくれないかしら?」

 

 帰還してしばらくすると、イベントが発生します。

 小南ちゃんから呼び出され、新しい雨隠れのリーダーに推薦されます。能力値と貢献値の条件をちゃんと満たしていたから推薦されました。

 

――【受ける】

 

 当然受けます。

 レズ心中エンドからチャート変更してからというもの、雨隠れの長になるために頑張ってきましたからね。ここで受けなくてどうするんだって話です。

 

 (影になることを)拒むことを知らない沸遁野郎です

 

 

忍術:A 体術:B 幻術:B

体力:A 精神:B 器用:C

政治:A 知力:D 魅力:S

(ランクは上からS~G)

 

階級:上忍

 

 これがランちゃんの最終能力値になります。最初の頃に比べるとだいぶ成長しましたね。

 

 相変わらず知力が低いですが、影になるための要求水準はギリ満たしていますので大丈夫です。知力Gのアホの子だったのに、影レベルまでよく頑張りました。

 

 ベストを尽くせば結果は出せる(至言)

 

「では上忍ランの雨影就任について、多数決をとる。各々、意見を言うがよい」

「認めるわ」

「認める」

「認める」

「認めない」

「認める」

 

 雨隠れの有力者五人中四人の承認を受けて、無事、ランちゃんは雨隠れの長になることができました。

 

 これでエンディング条件を達したので、エンディングを見ることができるようになります。

 

――エンディングを見る?

――【はい】

 

 さあいよいよエンディングです。

 最近新しくアップデートされて生まれた“新生雨隠れエンド”というやつです。それを見ていきましょう。

 

 ネタバレ含みますので、未プレイの視聴者兄貴姉貴は要注意です。

 

……。

……。

……。

 

 時は第四次忍界大戦終結後から数年後。雨隠れの里で記念式典が開かれることになりました。先の大戦の戦没者追悼と、新生雨隠れのお披露目を兼ねたイベントのようです。

 

 新生雨隠れの里長は、勿論プレイヤーであるランちゃんですね。

 

「この里は新しく生まれ変わる。雨に隠れて生きる里ではなく、隠れた虹を探す里として、希望に満ちた里に生まれ変わるのです」

 

 雨隠れの里は虹隠れの里と呼び名を変え、ランちゃんは初代虹影に就任するそうです。

 

「虹の架け橋を!」

 

 ランちゃんの台詞と共にイベントが終わり、スタッフロールが流れていきます。

 

 スタッフロールの最後に、虹影となったランちゃんを支える小南ちゃんの絵が現れます。空には綺麗な虹がかかっています。そして端っこに「Fin」と表示されて終わりです。

 

 いつしか雨はやみ、そこには虹がかかるんだよなぁ(名言)

 

――トロフィー「虹の架け橋」を獲得しました。

 

 エンディングが終わり、エンディングに関連するトロフィーをゲットできました。この前のアップデートで追加されたトロフィーですね。

 

 ということで、これでチャート達成です。小南ちゃん討伐チャートから派生して、新生雨隠れの長エンドを見ることができました。

 

 成し遂げたぜ。やったぜ。

 

 今回はレズ心中じゃない幸せな二人の姿が見られましたね。レズ心中の方がド派手に爆発して芸術的で面白いんですけど、まあたまにはこんな地味な終わり方もいいでしょう。命は大事ですから。

 

 命は一つしかないから(名言)

 

 紹介する動画はこれで終わりです。視聴者兄貴姉貴の皆さん、最後までお付き合い下さいまして、本当にありがとうございました。また何か実況することがあるかもしれませんが、その時はよろしくお願いします。

 

 それではまたいつか会うその時まで。では諸君、サラダバー! 



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ch.24 いつしか雨はやみ、そこには虹がかかるんだよなぁ(ナルト)

 長く続いた忍び世界の戦いは終わった。

 三代目の爺ちゃん、エロ仙人、アスマ先生、シカクのおっちゃん――。色々と失ったもんはあるけど、忍び世界は以前よりも平和になった。命を賭けて戦ってくれたみんなのおかげだろう。

 

「ここらへんは、前には野盗がよく蔓延っていたんだがな。随分綺麗になったもんだ」

「ああそうだな。きっとみんなが日頃から力を合わせて頑張っているおかげだってばよ」

 

 人が行き交う往来を眺めながら何気なく呟くサスケの言葉に、俺は頷いて答える。

 

 こうして里を出てみるとよくわかる。以前よりも明らかに治安がよくなっている。

 第四次忍界大戦が終わった後も各里の協力の枠組みが残り、各里が手を取り合って平和を保とうと努力しているからだろう。

 

 そんな平和を保つ試みの一環として、毎年式典が行われている。

 今年は雨隠れで行われる予定だ。ついでに雨隠れの体制が新しく生まれ変わってランの姉ちゃんがその長になるので、そのお披露目の式典も行われるらしい。

 

 その式典に木の葉代表として出席するべく、現在、俺とサスケは雨隠れに向かっている最中というわけだ。

 

 サスケと二人、こうして喧嘩もせずに隣を歩いているなんて、十年くらい前の俺たちの関係なら考えられないことだよな。

 だけど今はこうして穏やかな気持ちで二人歩いていられるんだ。

 

 世の中、変わらないもんはないってことか。悪い方に変わることもあるけど、良い方に変わることもあるもんだとつくづく思う。

 

「雨隠れまでまだ先は長い。そこの茶屋にでも寄るか」

「そうするってばよ。小腹が空いたしな」

 

 昼時になり、近くにあった茶屋へと立ち寄る。

 

「いらっしゃいませ。二名様ですね?」

「ああ」

 

 何気なく立ち寄った茶屋だが、そこにいる店員や客の表情は明るい。カップル同士で楽しげに過ごしている姿も見受けられる。

 

 これも平和な世の中になったおかげなのだろう。そうでなければ、誰もこんな安心しきった姿は見せられない。

 

「甘くない団子はあるか?」

「はい、みたらしではない醤油団子がありますよ」

「そうか。じゃあそれを頼む」

「かしこまりました」

 

 サスケは相変わらず甘いものが苦手らしく、甘くない醤油団子を注文していた。甘くない団子があると知ると喜んでいるようで、口元が少し柔らかくなっていた。

 

 そんなサスケの様子を見て、俺は内心でニヤリとする。

 

 サスケが隙を見せるのは飯の時だけだ。随分大人びて成長しちまったサスケだが、そこらへんは昔から変わらない。

 

 世の中色々と移り変わっていくが、変わらないものもある。そう思うと安心する。

 

 できれば、今の俺とサスケの関係もそうであって欲しいと思う。永遠に変わらないで欲しい。また昔みたいに激しく()り合うのは勘弁だからな。

 

 まあそんなことは万に一つもねえと思うがな。そんなこと、俺が絶対にさせねえし。

 

 サスケもきっと同じ気持ちだろう。バラバラだった昔と違って、一つになった今ならわかる。俺たちはずっと一緒だ。

 

(またかよ。店員の姉ちゃん、不躾にサスケの腕を見やがって……気分悪いってばよ)

 

 注文している間、店員がサスケの失われた片腕をチラチラと見ていたのが凄く気になった。

 

 里を出てから何度もそんな事態に遭遇している。サスケは毎回慣れた様子で何も気にしていないようだったが、俺はそれを見る度、胸がチクリと痛くなった。今回もだ。

 

「サスケ、お前本当によかったのかよ。やっぱ綱手の婆ちゃんに言って、俺みたいに腕を生やしてもらえば……」

「構わない。これは自分への戒めのためにあえて残しているものだ。お前が気に病むことではない」

「そうか。それならいいけどよ……」

 

 店員が去った後に堪らず声をかけてみるが、サスケの返答はいつもの如く、「ノー」だった。

 

 罪を償う一環として、サスケは失われた腕をそのままにしている。片腕で常に不便な暮らしをしているだけでなく、里にもほとんど帰ってこない。

 カカシ先生――六代目火影からの仕事の依頼を受けるという形で、サスケは世界各地を回って贖罪の旅を続けているのだ。

 

 といっても数ヶ月に一度くらいは里に顔を出しているけどな。最近ではもっと頻繁に里に戻ってきている。

 

 頻繁に里帰りしているのは、サクラちゃんが身重だからだろう。サクラちゃんの両親が付きっ切りでサポートしてくれているとはいえ、身重の妻を放っておきっ放しというのは体裁が悪いし、サスケとしても心苦しいのだろう。

 

 昔はサクラちゃんのことなんて突っぱねて好き放題していたというのに、随分丸くなったもんだと思う。

 

 まあそれを言うなら俺もそうなんだけどな。昔みたいな馬鹿なんてやってられねえ。

 

 なぜならサスケだけでなく、もうすぐ俺も親になるんだからな。

 

「サクラちゃん、もうだいぶお腹大きくなってんだろ」

「そういうお前の所のヒナタもな」

 

 サスケはサクラちゃんと結ばれ、俺はヒナタと結婚することになった。近々子が生まれる予定だ。

 

 火影になる夢はまだ道半ばだけど、好きな女の子と結婚して家庭を持つ夢は先に叶えちまった。

 

 まあ火影になったら忙しいから良い人がいるなら早いうちに身を固めておけって、カカシ先生にそう言われたのが結婚の決め手になったんだけどな。

 

 他にもシカマルんとこのテマリも妊娠しているし、サイと結婚したいのも妊娠しているし、ネジと結婚したテンテンも妊娠しているし、チョウジとリーの奥さんも妊娠している。

 

 木の葉の里では同世代揃っての、空前の結婚&妊娠ラッシュとなっている。別に示し合わせたわけでもねえのに、そうなっている。

 

 俺たちの同期で独身なのはキバくらいだ。でもそのキバも恋人がいるみたいだから、その内結婚するだろう。

 

 近頃おめでたい話ばかりだ。数年前に悲惨な戦争してたってのが考えられねえくらい明るい話題が飛び交っている。

 

「キバも早く結婚すればいいのにな。そうすれば俺たち世代全員が揃って結婚しておめでたいってばよ」

「いや、独身にはまだシノがいるだろ」

「え、シノ?」

「ナルトお前……まさか自分の結婚式に来た同期の奴の名前を忘れているわけじゃねえだろうな?」

「えっ、いや、そんなこと、シノシノ、えっとシノ……」

 

 胡乱な目をサスケに向けられ、俺はシノのことを必死に思い出そうとするものの、咄嗟に顔が思い浮かばなかった。

 サスケは呆れた様子で口を開く。

 

「本当に忘れているようだな。サングラスをかけた、油目一族の蟲使いの奴だ。アカデミーの教師を目指して、イルカ先生の所で勉強しているだろ」

「あっ、アイツか!」

 

 サスケに言われてようやく思い出す。

 確かヒナタとキバと同じ班のやつだったっけか。ヒナタ繋がりで俺とヒナタの結婚式にも来てくれてたんだったな。

 

 アイツ影が薄いからたまに忘れちまうってばよ。そういやシノも独身だったな。

 

「シノかぁ、アイツ、もっと存在をアピールしないと、女の子はおろか男友達も寄って来ないってばよ。絶対カノジョいねえし。虫の友達はいっぱいいそうだけど」

「ナルト……それを本人の前で言うのはやめておけ。たぶん、物凄くショックを受けるぞ。そして一生根に持たれるに違いない」

「あはは、確かにな。いまだにお前の里抜けの際の追跡任務で仲間外れにしたことでぐちぐち言われるからな。別に仲間外れにしたわけじゃないんだけどさ。普通に忘れてただけで」

「仲間外れにするよりも忘れる方が酷い気がするがな……」

 

 珍しくシノの話題で盛り上がった後、休憩を終えて店を出る。

 

「さあ改めて雨隠れに向かうってばよ」

「ああ」

 

 美味しい団子を食ってエネルギーを補給した俺たちは、雨隠れに向けて張り切って歩いていく。雨隠れに近づく度にぬかるんだ悪路となっていくが、忍者である俺たちには何のその。

 

 やがて雨隠れの里に辿り着くことができた。

 

「ここだな」

「相変わらず雨が降ってるってばよ」

 

 前に雨隠れに来たのは、たしかランの姉ちゃんがオビトに昏睡させられた時だったか。第四次忍界大戦の少し前だからそれほど前ってわけじゃないけど、随分前のように感じられるな。ここ数年で色んな経験を一気にしたせいかもしれない。

 

「相変わらずの雨だけど、里の雰囲気は前よりもよくなってるってばよ」

 

 門で手続きをしてから、里の中を歩いてみる。

 以前よりも街並みが少し華やかに見える。前は廃墟のビル群みたいなのばっかりだったのに、今はそうでもない。人々の表情も心なしか明るい気がする。

 

「俺は前の雨隠れを知らんから何とも言えんな。だが変わったとすれば、お前の姉さんの影響があるだろう」

「ああそうだな。きっとランの姉ちゃんたちが頑張ってるからだな」

 

 サスケの言う通り、きっと姉ちゃんの影響だ。馬鹿みてえに明るい姉ちゃんに影響されて、あの鬱々とした里も大きく変わろうとしているんだろう。

 

 今日の式典は、きっとそんな姉ちゃんたちの努力の集大成となるに違いない。そしてこれから先、もっともっとこの里は変わっていくに違いない。

 

 勿論、良い方向にだ。ランの姉ちゃんたちがいる限り、この里は安泰だろう。そう思える。

 

「木の葉の方々、よくぞお越しくださいました。どうぞ」

「ああ悪いな」

 

 式典の会場に着くと、木の葉代表だということで、一般客とは違った場所に通された。それで係り員から紙で作られた花束とか、記念品やら色々なお土産の品を渡されることになった。大量の手荷物を抱えることになったが、全て一つの巻物に収納してくれるようで助かった。

 

「へえ見事なもんだってばよ」

 

 高級紙で作られた赤い十三本の薔薇の花束。きっと小南の姉ちゃんが作ったんだろう。

 

 芸術のことなんてよくわかんねえけど、そんな俺でも見てて惚れ惚れするように作られた、式典の贈答品として配るに相応しい一品となっていた。

 

「持って帰ってヒナタにも見せてやるってばよ」

「持って帰ってサクラに見せてやるか」

 

 この綺麗な花を愛する妻であるヒナタにも見せてやりたい。喜びを分かち合いたい。

 サスケも同じ気持ちだったらしい。俺たちはほぼ同時に似たようなことを口に出した。

 

「ははっ、考えることは一緒だな」

「ふっ、そのようだ」

 

 二人揃って新妻に惚けているようで、俺とサスケは照れ臭そうに苦笑した。

 

「式典が始まる前に腹を満たしておくってばよ」

「そうだな」

 

 係り員に荷物を巻物に収容してもらった後、俺たちは会場をうろつくことになった。

 

 会場は立食パーティーみたいになっていて、各里のお偉いさんたちが勢揃いしていた。これも外交の場というやつなのだろう。積極的に場を回って話をしている人らもいる。

 

 俺たちも適当に回るかどうするか、そんなことを考えていた時のことだった。

 

「ナルト君たち、お久しぶりです」

 

 見知った二人組みが声をかけてきた。

 

「白! 再不斬! 久しぶりだってばよ!」

「本当にお久しぶりですね」

「久しいな小僧たち。いやもはや小僧とは呼べないか。立派になったもんだ」

 

 白は成長してより美人になったし、再不斬はより逞しく精悍な顔つきとなっていた。

 

 二人共、変わりすぎだってばよ。まあそれは俺たちも一緒かもしれないが。

 

「白……何か昔よりも美人になってねえか?」

「ふふ、そうですか? ありがとうございますナルト君」

 

 妖艶に微笑む白は、完全に女にしか見えなかった。

 

 人妻となったサクラちゃんやヒナタより美人って、いったいどんだけ美人なんだってばよ。

 

(実は男だってのは大嘘で本当は女、じゃないよな?)

 

 女と見せかけて男、と見せかけて実は女。本当はそうなんじゃないだろうか。

 忍者は裏の裏を読むべし、ってカカシ先生も言ってたしな。今更ながら疑うレベルだってばよ。

 

「お前らが木の葉の代表か?」

「ああそうだってばよ。ってことは、再不斬たちは霧隠れの?」

「そういうことだ。本当はこの式典には、親友の晴れ舞台だってんで、水影のあの女自ら出たがっていたが、生憎忙しくてな。代わりに俺たちが来たというわけだ」

 

 再不斬たちは霧隠れの抜け忍だったけど、今は許されて霧隠れに戻っている。水影の姉ちゃんから信頼されており、里の顔役を任されているようだ。それで今日もこの場にいるってわけだ。

 

「俺たちも似たようなもんだってばよ。カカシ先生――じゃなかった、六代目は出たがってたんだけど、忙しくて俺たちが来たんだ」

 

 カカシ先生は雨隠れに出張すれば休暇代わりになると思ったらしく、自ら雨隠れでの式典に出ようと画策してたんだけど、それはシズネの姉ちゃんやシカマルたちに阻止された。

 

 たぶん今も火影室に缶詰になって仕事していることだろう。出前のラーメン食べながら書類仕事に忙殺されているに違いない。

 

 カカシ先生は最近は忙しくてスケベな本も読めなくて、たまにガイ先生と外出して食事するのが唯一の息抜きという状態らしい。

 火影という大役を務めているから仕方ないとはいえ、少し可哀想だ。雨隠れ名物の肉まんでも巻物に収容してお土産として持って帰ってあげようか。

 

(そうだ。ヒナタへのお土産は当然として、ネジとテンテンのお土産も買っていかないとな)

 

 前に来た時は確かテンテンが肉まんを食べて凄い喜んでいた記憶がある。ならばテンテンの分のお土産も持って帰れるなら持って帰ってやりたいところだ。

 

 ヒナタの兄貴分であるネジ。その嫁であるテンテンは、俺の義理の姉のようなもんだしな。親戚付き合いは大事だってばよ。

 

「写輪眼のカカシも今や火影か。時代は移り変わるもんだな。血霧の里と呼ばれた俺たちの里が変わったように」

「良い変化なら喜ばしいことじゃないですか再不斬さん」

「まあな」

 

 軽食をつまみながら、俺たちはしばし昔話に興じる。そんな俺たちに声をかけてくる奴がいた。

 

「ナルトたち、久しぶりじゃん」

「カンクロウ!」

 

 砂隠れのカンクロウもこの場にいたようだ。

 カンクロウは独特の化粧で塗られた顔をニイっと歪めて朗らかに笑う。

 

「カンクロウが砂隠れの代表だったのか?」

「ああ。我愛羅の代理でな。帰りに木の葉にも寄っていこうと思ってる。姉貴の様子を見ていきてえからな。良かったらナルトたちと同行させてもらうぜ?」

「構わねえってばよ」

 

 カンクロウは里を出たついでに木の葉に寄り、シカマルに嫁いだテマリの様子を見に行くそうだ。

 カンクロウの申し出に、俺たちは二つ返事で頷いておく。

 

「砂はカンクロウしか来てねえのか?」

「いや他の奴らも向こうの方にいるぜ。あと、こいつもな」

 

 カンクロウはそう言って、背負った箱を指差す。その箱には、俺たちもよく知るあの傀儡が納められていた。

 

「こ、これは!?」

 

 赤い髪の少年を模った、まるで人間そっくりな傀儡。それが納められており、俺たちは思わずギョッとする。

 

「お前、こんな時にまでサソリを持ち歩いてるのか?」

「ああ。俺の商売道具だし、大事な相棒になってるからな。いつ有事が起きるかわからねえ。どんな時も一緒にいないと駄目じゃん?」

「ま、まあそうかもだけどよ……」

「サソリとは便所も風呂も寝る時も一緒だぜ。俺の大事な相棒じゃん」

 

 傀儡使いだからどんな場所でも人形を持ち歩いているのは当然なのかもしれない。けれど俺たちとしては、なかなか受け入れ難いものがあった。

 飯食ってるパーティーの会場にそんなもん持ってくるなっつうの。食欲なくしちまうってばよ。

 

 サソリを肌身離さず連れ歩いているカンクロウに表情を強張らせる俺たち。そんな俺たちに、これまた懐かしい顔ぶれが声をかけてきた。

 

「おうナルトじゃねえか! ブラザー、会いたかったぜ!」

「久しぶりだな。ナルト」

「ビーのおっちゃん! それにモトイのおっちゃんも!」

 

 雲隠れの二人がやって来た。二人は既に結構な量の酒を飲んでいるらしい。赤ら顔だった。

 

 モトイのおっちゃんは前よりも随分老けたな。

 ビーのおっちゃんはあまり変わりがない。元から老け顔だから、違いが全然わからねえってばよ。

 

 ビーのおっちゃんたちは雲隠れの里の代表としてやって来たようだった。

 

「ナルト、サスケ、相変わらず仲が良さそうだな二人共!」

「ビーのおっちゃんたちもな」

「当たり前よ! モトイと俺は友達! 永遠のブラザー!」

「ビー、ちょっと飲みすぎだぞ。この後に式典が控えているんだからほどほどにな」

「これくらい全然平気だぜ! ノープロブレム!」

 

 ビーのおっちゃんは、酔っているのか酔っていないのかわからないテンションで騒ぐ。

 元からハイテンションだからな。いつも酔っているみたいで、シラフなのか正直よくわからねってばよ。

 

 ビーのおっちゃんの登場で盛り上がっている俺たちに、これまた懐かしい顔が現れた。

 

「あらあら賑やかな様子じゃない」

「大蛇丸!」

 

 かつての敵の登場に俺は警戒を強める。

 大蛇丸は俺の結婚式にもビデオメッセージを送ってくれたけど、正直何考えてるかわかんねえ。警戒するに越したことはねえ。

 

「そんなに怖い顔しないの。何もしないわよ。ちゃんと目付け役もいることだしね」

 

 大蛇丸はそう言って苦笑しながら、後ろに控えている人物に視線を送った。

 

「ヤマト先生!」

「やあナルト。相変わらず元気そうで安心したよ」

 

 ヤマト先生が大蛇丸の目付け役となっているらしかった。

 ヤマト先生との久しぶりの再会に話は盛り上がる。

 

「大蛇丸は何でここに招待されてんだ?」

「私は技術協力の一環で、雨影代理――いやこれからは虹影代理と呼んだ方が正しいかしら。彼女に乞われてこの里に滞在していたのよ。それでこのパーティーにも呼ばれたってわけ」

「小南の姉ちゃんにか?」

「ええ。元暁の誼で彼女には色々と技術協力を乞われていてね。私も贖罪の一環としてそれに参加してるってわけよ。ふふ、別に元暁同士で悪巧みなんてしてないから安心してちょうだい。テンゾウも私のすぐ傍にいて、怪しいことしてないか見張っているからね」

「それは昔の名です。ヤマトと呼んでください。大蛇丸さん」

 

 大蛇丸は更生の道を歩んでいるらしい。

 だが信用しきれねえ。小南の姉ちゃんはともかく、大蛇丸のことは信用できねえってばよ。

 

「ねえそこのウェイターの貴方、これと同じものを手配して包んで後で渡してくれるかしら。勿論お金は払うから」

「かしこまり!」

「あ、それなら俺も頼むってばよ」

「かしこまり!」

 

 大蛇丸は、係り員にお持ち帰り用の肉まんを注文していた。

 それに便乗して俺もヒナタたちのお土産を頼むのだが、すぐにハッと我に返った。

 

(大蛇丸が肉まんをお持ち帰り? 幻術じゃねえよな?)

 

 大蛇丸が肉まんをお持ち帰りするという異常事態を見て、俺は理由を尋ねずにはいられなかった。

 

「大蛇丸が肉まんをお持ち帰りするなんてどういうことだってばよ?」

「バイト先の焼肉屋の若い子たちと仲良くてね。そのお土産よ」

「バイト先!? 大蛇丸って焼肉屋でバイトしてんのか!?」

「私のことだから分かるでしょ。被害者への賠償とか色々あってお金が必要なの。いちいちその辺はつっこまなくていいの君は」

 

 大蛇丸は更生の一環として、焼肉屋でバイトしているらしい。

 

 つまり、あの大蛇丸がビールジョッキ片手に店内移動して、「生中、お待たせしました。カルビセット、この後すぐにお持ちしますね」とか言って接客しているってことか。正直、考えられねってばよ。

 

 それはそうと、あの大蛇丸相手に普通に付き合えるなんて、最近の若い奴らって怖いもの知らずなんだな。まあ俺も二十歳で十分若いけどさ。時代の移り変わりは速いってばよ。

 

「この会場の受付で貰った花もバイト先に飾る予定よ」

「大蛇丸があの花を律儀に持って帰るなんて意外だってばよ……すぐに捨てちまいそうなのに」

「そうね。価値のないガラクタだったら即捨てる所だけど、まあ今回はちゃんと持って帰ってあげるわよ。泥の中を駆けずり回りながらようやく咲かせた花みたいだしね」

「今回? 泥の中の花? 何言ってんだ?」

「ふふこっちの話よ」

 

 大蛇丸は含み笑いをする。相変わらずよくわかない奴だ。

 前より丸くなっているようだが、得体の知れなさは相変わらずだった。

 

「大蛇丸、お前、本当に更生したんだな?」

「ええ、だから何度もそう言ってるでしょ。私が今興味あるのは、研究を除けばサスケ君の行く末。ただそれだけよ。もっとも、サスケ君が世界を相手にまた何かしたいというのなら、私は喜んで手を貸すけどね」

 

 大蛇丸の大胆な挑発により、瞬く間に不穏な空気が出来上がる。だがそれを霧消させたのは、当のサスケだった。

 

「それなら永遠にその必要はないな。俺が俺である限り、この世界に変革など起こさせん。今あるこの世界の秩序を守るために働くだけだ」

「ふふ、サスケ君がそうならそういうことね。なら私も何もしないわ」

 

 サスケが真っ直ぐな目で言うのを見て、大蛇丸は面白そうに笑った。

 

 何故だかわからねえけど、大蛇丸はサスケに前とは違った意味で執着しているらしい。サスケが何もしなければ何もしないのだと言う。

 

 本当に信用していいのかわからねえ。けど信用してみるしかねえ。

 

 人を信じる。難しいことだけど、皆がそれをする努力をやめちゃ、また昔のような暗黒の時代に戻っちまうだろう。

 

 だから俺は大蛇丸のことを少しだけだが信用してみることにした。

 

「それよりサスケ君、ナルト君もだけど、近々子が生まれるそうじゃない? おめでとうと言っておくわ」

「何!? それは本当か!?」

「おい、初耳だぞ!?」

 

 大蛇丸は思い出したかのように俺たちの子のことを話題にしてくる。それで初耳だったらしいビーのおっちゃんたちが騒ぎ始めた。

 

 その後しばらく、俺とサスケは冷やかされたり揉みくちゃにされることとなった。

 

「ビーのおっちゃんたちは結婚しねえのか?」

「俺はもう年だしなぁ。もういいかなって思ってるよ。ビーはどうだ?」

「俺は火影のおっぱいを追い求めてるからな。結婚なんてしねえぜベイビー」

「ぶほぉ!」

 

 ビーのおっちゃんの発言によって、ヤマト先生は飲んでいた飲み物を噴出した。

 

「ごほごほっ、ビーさん、誤解を招くような発言はやめて下さい。今の火影は六代目のカカシ先輩ですから。五代目の綱手様は元火影ですからね?」

「細けえことはいいんだよ。俺が追い求めるのは、あの逞しい魅惑の火影のおっぱいだぜ!」

「いや全然細かくないですから! 重要情報ですから! そのままだと大変な誤解を生み出しますからね!」

「俺が好きなのは、火影のおっぱい! デカデカおっぱい!」

「だから頭に五代目とつけてくださいって!」

 

 珍しく焦った様子でつっこむヤマト先生が面白い。ビーのおっちゃんは面白がってわざと誤解を生むような言い方してるみてえだな。

 

「ビーのおっちゃんは大人な女性が好みなのか。なら小南の姉ちゃんとかランの姉ちゃんとか、ピッタリじゃねえか?」

「おー、虹影代理はダメダメ。まだまだ小娘。虹影はもっとダメダメ。完全小娘」

「いやビー、あのお二方は全然小娘じゃないだろ。見た目若いけど結構な年いってる……」

「年増で悪かったわね」

 

 モトイのおっちゃんの話を遮るようにして、周囲に紙が集まってくる。紙が寄り集まって人型となり、小南の姉ちゃんが現れた。

 

「所詮私は元暁の犯罪者で年増で行き遅れの雨女よ。司法取引をして罪から逃れた小狡い女よ」

「いやそこまで言ってないですけど……」

「でもね、ランは違うの。あの子は私たち雨隠れの希望なの。私のことはどう言われたって構わない。けど、あの子を馬鹿にした、舐めたような失礼な発言は謹んでもらいたいわね」

「は、はい、すみませんでした……」

 

 小南の姉ちゃんによって、モトイのおっちゃんは謝罪させられていた。

 

 小南の姉ちゃん、年食ったせいか迫力が以前よりも増している気がするってばよ。暁の時でも十分怖かったけど。

 

「ナルトたち。今日はよく来てくれたわね」

「ああ久しぶりだな小南の姉ちゃん。ランの姉ちゃんには会えねえのか?」

「ごめんなさい。式典の準備で手間取っていてね。式典後に会談を予定してるからそれでいいかしら?」

「ああ構わねってばよ」

「ありがとう。それじゃ私は別の所に向かうわ。今日はゆっくりと楽しんでいって頂戴」

 

 紙分身が解けて、小南の姉ちゃんは違う場所へと飛んでいった。本当に忙しいみたいだな。

 

「ビーが小娘って言ったのはよくて、何で結構年いってるがアウトなんだ……」

「それは女心をまったく理解していない発言ですね。女性はいつまでも若く見られたいものですよ」

「そうね。本当に小娘である内は、大人びた年上に見られたいもの。でもいざ本当に年を食ったら、逆に若く見られたいもの。女心ってそういうものよ」

 

 小南の姉ちゃんが去った後に思わずといった感じで漏らしたモトイのおっちゃんの言葉に、白と大蛇丸が口を挟む。

 俺はつっこまずにはいられなかった。

 

「なんで白と大蛇丸は女目線で語ってるんだってばよ……」

「うふふ、何ででしょうね?」

「私たちのことだから分かるでしょ。いちいちその辺はつっこまなくていいの君は」

 

 俺のつっこみに、白は妖艶に微笑み、大蛇丸の奴はピシャリと斬って捨てた。

 

 その後も知り合いたちとワイワイやっていると、やがて式典の時間がやって来る。

 

「そろそろ時間のようだな。行くぞナルト」

「ああわかってるってばよサスケ」

 

 俺たちは会食をやめ、式典会場の方に移動していく。

 

 さて、ランの姉ちゃんの晴れ姿、しっかり目に焼き付けておかねえとな。




次回ラストです


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ch.24 いつしか雨はやみ、そこには虹がかかるんだよなぁ(小南)

「雨晴れないね小南ちゃん。今日は雨の中での式になりそうだね」

 

 日が昇る前から起きて原稿を読み込んでいたランが、朝日が昇ったのを見計らって、窓辺から空を見上げて呟く。

 雨隠れの里の空は、いつもの如く分厚い雨雲に覆われていた。

 

 心配げな彼女に向かって、私は安心させるように口を開いた。

 

「大丈夫よラン。式典の直前には晴れる予定だから。雨雲は全部私の起爆札で吹き飛ばすから」

 

 大蛇丸の技術協力もあり、私は一時的にだが雨隠れから雨雲を取り除く(すべ)を得た。特殊な起爆札を使うことにより、雨雲を散らすことに成功したのだ。

 

 まだコストダウンできていないので費用がかかって常用はできないが、大事な式典などの際には使える術だ。

 

 今日は雨隠れの再出発の晴れ舞台だ。各国から代表団を招いて盛大な式典を行う。多少コストがかかっても、その術を使うに相応しい日である。

 

 この日のために用意した新術があるから心配ないと、私はランに胸を張って答えた。

 

「え、大丈夫なの? そんなことしたら小南ちゃん、前みたいにチャクラ切れて倒れちゃうんじゃ……」

 

 雨隠れを覆う雲は分厚い。その全てを一時的に吹き飛ばすとなれば、かなりのチャクラを消費すると考えるのが自然だ。上空まで大量の起爆札を運び、それを爆発させなければいけないから、普通に考えれば、膨大なチャクラが必要だ。

 

 普通の考えだとそうなるので、ランは私の肉体への負担を心配したようだった。普段から紙分身体を多用して激務を行っている上、そんな負担までかけられないと思ったのだろう。

 

 だが心配はない。肉体の全盛期を過ぎようとも、その分知恵はある。頭を働かせて効率的に動けばいいのだ。何の問題もない。

 

「安心して。ある人から効率的ないい方法を教わったのよ。教わったというか、勝手に術を盗んだんだけどね。だからチャクラの心配は必要ないわ」

「へえ凄いねその人。起爆札の扱いじゃ右に出る者のいない小南ちゃんに術を盗ませるほどの術を持っているなんてね」

「そうね。悔しいけどあの人は凄いわ。起爆札が起爆札を口寄せするなんて、普通考えつかないもの。天才の発想ね」

 

 起爆札が起爆札を口寄せする――互乗起爆札の術。

 その技術を利用することにより、上空まで起爆札を運んで爆発させるまでに消費するチャクラをかなり節約できる。

 この術の技術を使うことで、少ないチャクラで大量の起爆札を運んで爆発させることができ、分厚い雨雲を散らすことが可能になった。

 

 元々この術を開発した二代目火影は、雨雲を散らすためなんて生易しい使い方ではなく、穢土転生によって蘇らせた人間に起爆札を貼り付けて凶悪な無限爆弾兵器として使っていたようだ。

 人間一人の命と大量の起爆札さえあれば、それだけで一つの里を壊滅に追いやれる危険な術。卑劣な術の使い手として有名な二代目火影らしい術だろう。

 

 二代目火影は多くの外道の術を生み出したことから、木の葉以外では卑劣な悪魔のような男として扱われることが多い。

 そんな二代目火影であるが、これからの雨隠れの里では、悪魔ではなく天使として扱われることになりそうだ。

 

 なぜなら、彼は一時的にだが雨雲から人々を解放する救いの天使となるのだから。

 

「予行練習も兼ねて雨雲を散らしておきましょうか。朝の作業をしている人たちの助けにもなることだしね」

「うんうん見せてよ、小南ちゃんの新しい術。私、見てみたい!」

「ふふいいわ見せてあげる」

 

 ランにせがまれたこともあり、私は本番前のリハーサルも兼ねて新術を披露することにした。

 巻物を取り出し、そこから一体の人形を用意する。雨雲の中に起爆札を送り込むための傀儡だ。

 

「行きなさい二代目火影の人形。雨雲の中で自爆して、雨隠れを雨から救って頂戴。雨隠れの里に光を齎すのよ」

「了解した。ワシに任せておけ。雨隠れはワシが救ってみせる。ワシは雨隠れに光を齎す天使だ」

 

 天使の翼を広げた愛らしい見た目の二代目火影の人形(扉間ちゃん人形と後にランが名づけた)が、上空に舞い上がり、分厚い雨雲の中で爆発する。

 その爆発は連鎖し、何度も爆発を繰り返していく。爆発するごとに雨雲は晴れていく。

 

――ドォォオン。バゴォオオン。ドガァアアアン。

 

 これこそ忍術の平和利用だ。二代目火影も、自らが生み出した卑劣な術が平和利用されるのならば本望だろう。

 

「凄いね小南ちゃん! 本当に雨がやんだよ! 天才だよ!」

「ふふ褒めすぎよ」

 

 ランも術の出来具合に満足してくれたようで良かった。この調子なら本番でも問題ないだろう。

 

「この日のために術の練習はたっぷりとしたから安心して。本番でも抜かりはないわ」

「ああそれで最近ずっとお空が五月蝿かったんだね」

「ええ。術の練習にもなって雨も晴らせる。一石二鳥でしょ?」

「やっぱ頭いいね小南ちゃんって。美人で頼りになって、私――いや雨隠れにとってなくてはならない存在だよ!」

「そんなに褒めないの。照れるわ」

 

 ランと和やかに朝の会話を楽しむ。それから式典の準備のために本格的に働き出す。

 

「アジサイたち、追加の仕事よ」

「あっ、はい」

「貴方たちには苦労をかけるわね」

「いえ! お気遣いなく!」

 

 夜を徹して下働きをしていたアジサイたちに追加の指示を出して忙しなく働いていると、あっという間に時間が過ぎていく。

 

「ラン。そろそろ時間だけど、準備はいいかしら?」

「うん。あー、何か今更になって緊張してきたよ……」

 

 ランは本番を前にしてかなり緊張しているようだった。影の衣装を纏った彼女は頼もしくもあるが、その表情はどこか物憂げでもある。

 

「大丈夫よ。貴方は誰よりも強い。大丈夫」

 

 私はそんな彼女に寄り添い、不安を解消してあげる。

 

「ねえ、心細いから入場する時は小南ちゃんも一緒にお願い!」

「貴方のための式典なのよ。私は控え目にしているわ」

「お願い小南ちゃん、小南ちゃんがいないと私駄目なの!」

「もう仕方ないわね……」

 

 ランにお願いされて断りきれず、二人で入場することになった。

 

 私は後ろの方で控え目にしているつもりだったのだけれど、まあ仕方ない。護衛という名目なら付き添えるだろう。だからそうすることにした。

 

(ふふ、いつまでも子供みたいね)

 

 昔は彼女の無邪気さを憎んだ頃もあったが、今ではそんなことはない。

 

 こんな穏やかな気持ちであの子を見ていられるとは。そんな日が再び来るとは思わなかった。

 

「あ、晴れてるね」

「ええさっきも二代目の人形を使って雨雲を吹き飛ばしたから。しばらくは晴れ間が持つわ」

「扉間ちゃん人形に感謝だね。それじゃ行こっか」

 

 時間になり、ランが会場に向かう。それに寄り添うように私も付いていく。二人で花道を歩いていく。

 

「女神様ー! 女神様がいらっしゃったぞ!」

「雨隠れの女神様だ!」

「天使様のお姿もあるぞ!」

「ありがたやありがたや!」

 

 ランの入場と共に、観衆がどっと沸く。

 天性のカリスマを持ったランは今や雨隠れの象徴と言っても過言ではない。なくてはならない存在となっている。

 

 ランは熱狂する人々に笑顔で答えつつ壇上に上り、そこで徐にスピーチを始めた。

 

「皆様、本日はこの場にお集まりいただき、誠にありがとうございます」

 

 何千という聴衆を前に、ランは口上を述べていく。その口舌は滑らかだ。難しい言葉など到底喋れなかった昔とは違う。

 

 あの子のことを誰よりも昔から知っている私だからこそわかる。これまでに血の滲むような努力を重ねてここまでたどり着いたのだろう。

 

「かつてここ、雨隠れの里は戦乱の中心地でした。各里が覇権を争い、多くの人命が失われました。この地に住まう人々のみならず、大勢の方が亡くなりました。私自身、沢山の大切な人たちをこれまでに失ってきました。沢山の涙を流してきました。枯れ果てるほどの涙を流してきました。雨隠れは多くの雨に濡れてきました。悲しみの雨から逃げるように隠れて暮らす、ここ雨隠れはそのような里でした」

 

 実体験を伴うランの言葉だからこそ、その言葉は人々の心に真に迫るものとなり得る。聴衆はランの言葉に真摯に耳を傾ける。

 

「やむことのない雨に打たれ凍え、闇夜の深さに絶望し、何度打ちひしがれてきたことでしょうか」

 

 我々はこれまでに多くの屍を築き上げてきた。逃れられぬ不条理な世界の中で、家族、仲間、その他大勢の大事な人を失ってきた。

 奪われるだけでなく、時には奪ってもきた。敵とその仲間の命を奪ってきた。殺し殺される長い復讐の連鎖の中でもがき苦しみ続けてきた。

 雨隠れのみならず他の里とてそれは同じであろう。

 

 そんなランの迫真の演説に、聴衆は聞き入る。

 

「そのような地獄の苦しみの中において、我々は一つの希望を見つけました。先の大きな戦いの中において一つの希望を見つけ出しました。我々に与えられた力は互いを傷つけ合うための力ではないということを知りました。我々に与えられた力は支え合い、協力し合うための力だと、チャクラの真の意味を理解しました。土砂降りの雨の中で、我々はようやく希望の虹を見つけたのです」

 

 五大隠れ里を中心とした協力体制は戦後も続いている。それは長く続いた戦乱の歴史の中で初めて作り出せた確かな形あるものだ。長く続く忍びの世界において、やっと見つけ出した唯一の希望、虹の架け橋とも言うべきものだ。

 

 それを守っていかねばいけない。それを守るのが残された私たちの使命だと、ランは強く訴える。

 

「この虹の架け橋を築くため、柱となり散っていった者たちのためにも、我々はこれを未来永劫繋いでいかねばなりません」

 

 平和を愛して散っていった弥彦の思いを誰よりも強く受け継いだ彼女だからこそ、長門からも託された思いを受け継ぐ彼女だからこそ、その言葉は多くの者の心を揺さぶる。

 その小さな背中に、二人の確かな意志が宿っているのだ。

 

「火の赤、水の青、風の緑、土の橙、雷の黄色。様々な色により、虹は成り立ちます。ここにいる皆様方全ての協力なくして、虹は成立しません。どうか切に願います。この虹を守り育てることに、これからも協力していただきたい」

 

 殺されたから殺す、殺したから殺される。やむことのない復讐の連鎖のあの暗黒の時代に戻らないためにも、我々は協力し合わねばならないと、ランは訴える。

 

「奇しくも今日、雨隠れの里は新たな門出を迎えます。虹隠れの里として新たに生まれ変わります。悲しみの雨から逃れるようにして暮らすのではなく、皆様と見つけた虹を未来へと守り繋いでいくための、そんな素敵な里に変えていきたいと思います」

 

 虹影としての抱負をランは語る。その思いは雨隠れに住まう人々全ての思いを代弁するものだろう。

 

「虹影としてここに誓います。微力ながら、皆様と繋ぐ虹の架け橋を閉ざさぬように、不断の努力を惜しまぬことを誓います。かつて戦乱の中心地だったこの雨隠れの地から、この平和を保つ一大事業を始めていきたいと思います。何年先も、何十年先も、我々が旅立ったその先も、繋いでいきたい。この思いを、この平和を、この虹の架け橋を!」

 

 ランの演説が終わると同時、轟くような拍手が巻き起こる。

 

 かつて雨隠れで殺し合っていた里の者たちが手を取り合い、喜びと悲しみを分かち合っている。それは夢のようであるが、確かな現実だ。

 

 この光景だ。この光景を見るために私たちは今まで頑張ってきた。泥の中を駆けずり回り、血反吐を吐くような思いをしてきたのだ。

 

(弥彦、長門。貴方たちが命を賭けて目指したものがやっと形になったわ)

 

 やっと雨隠れを変えることができた。平和な雨隠れを作り出すことができた。幼き日に四人で誓ったあの約束を、ようやく果たすことができたのだ。

 

 だがここで終わりではない。これがスタート地点だ。ここから第二の旅路が始まる。

 

 弥彦が成し遂げたかったもの、長門が繋げたかったもの。それを未来へと繋いでいかねばならない。

 

(それはあまりにも長く険しい道ね……)

 

 強く賢く逞しくなったあの子だけれども、背負うその荷は重すぎる。

 

 影の名を拝したあの子はあまりにも大きな荷物を抱えている。一人で抱えるには大きすぎて、すぐに潰れてしまいそうな荷物を。

 

 そんな大荷物を抱えて、彼女はこれから果てしない旅路を歩まねばならないのだ。命尽きるその時まで。それは長く苦しい旅となるだろう。

 

 そんな彼女の重荷を分かち合い、少しでも楽にさせてあげたい。彼女の歩む果てしない道の露払いをしてあげたい。

 

 それがかつて過ちを犯した私の償いであり、私自身が心から願ってやまないことだ。

 

 自らの身も顧みず、私の心にかかった闇を振り払い、共に生きたいと言ってくれた愛しのあの子のため。私は残る私の全てを費やしてでも、彼女の助けとなり生きていきたい。この命尽きるまで。

 

(綺麗ね……)

 

 雨上がりの雨隠れの里はとても晴れやかで、晴れ渡った空には美しい虹がかかっている。この虹に、私も誓おう。

 

 ラン、いつまでも貴方の傍に。

 

――Fin.




24サブタイ、完結です(完結作者並みの感想)

ということで、ここで物語は終了です。

これまでお読みくださりありがとうございました。また、沢山の感想、お気に入り、評価、誤字報告等ありがとうございました。少しでも楽しんでいただけたのならば幸いです。

アイディアと時間ができたらまた書くこともあるかもしれませんが、その時はよろしくお願いします。それではまたいつかノシ


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