PERSONA in デート・ア・ライブ (零之悪夢)
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設定&小話

原作のネタバレがありますので読んでいない方は見ない方が楽しめます。


人物紹介

 

五河 士道

 

原作通りだが、最初から強い。人脈が広くいろんな人と関わっていく……

 

所持ペルソナ

 

オルフェウス

 

ステータス

 

level 1

人間パラメータはカンスト済み。

 

コミュ紹介

 

愚者 フラクシナスの船員達

 

魔術師 崇宮 真那

 

女教皇 本条 二亜

 

女帝 夜刀神 十香

 

皇帝 鳶一 折紙

 

法王 エリオット・ポールドウィン・ウッドマン

 

恋愛 誘宵 美九

 

戦車 夜刀神 天香

 

正義 五河 琴里

 

隠者 氷芽川 四糸乃

 

運命 鏡野 七罪

 

剛毅 エレン・M・メイザース

 

刑死者 八舞耶倶矢 八舞夕弦 風待 八舞

 

死神 時崎 狂三

 

節制 星宮 六喰

 

悪魔 アイザック・レイ・ペラム・ウエストコット

 

搭 日下部 遼子

 

星 分身体 時崎 狂三

 

月 アルテミシア・ベル・アシュクロフト

 

太陽 或守 鞠亜 或守 鞠奈

 

審判 万由里

 

永劫 園神 凜祢 園神 凜緒

 

世界 崇宮 真士

 

道化師 蓮

 

信念 五河 士道 (シャドウ)

 

顧問官 村雨 令音

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

ある日、町を歩いていた時に道を聞きたいと外国人に聞かれたので案内した所、まさかのDEM社の人だった。この天宮市でも有名な企業で支社もあるほどだ。そこの偉い人に案内してくれたお礼ということで会社の食堂で昼食をおごってもらう事になった。

 

 「大丈夫ですか……俺がこんな所に居て。場違いじゃないですか?」

 

 「問題ないですよ。私が居る時点で重要な人と思われてますので」

 

この人はエレンさん。どう見ても圧倒的美人でキャリアウーマンといった印象を受けたが、思いのほかドジっ子気質で運動神経が悪い。それが心配でついて来たところこうなってしまったのである。

 

 「エレン……?……!。お客さんかい?君が連れてくるなんて珍しいじゃないか」

 

食堂で注文した物を待っていた所、如何にも偉い人が話しかけてきた。見るからに社長といった感じだが……年齢が間違っている気がする。

 

 「ああ、申し遅れたね。私は、此処で業務執行部長をしているアイザック・ウエストコットだ」

 

勘が当たったようだ。だが、かなりの信頼を置いているのかこちらに来る時に護衛を一人も付けていなかった。

 

 「アイク……彼……ですよね。”あの時”の」

 

 「まさか、君に関わってきたとは思わなかった……運命は分からない物だ」

 

こそこそと何か話しているが……俺にはさっぱりだ。しかし、それを遮るように注文した物がテーブルに置かれた。

 

 「アイクもどうです?私が一人で食べようとしても余ってしまうので」

 

そうして、三人で食事をしながら会話を他の新dあ。何故か、此処の社員証を貰ったのでいつでも此処に来ることが出来るようになった。

 

我は汝……汝は我……汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、真を知る一歩なり。

汝、悪魔 剛毅 のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

俺には絆が見える。絆を強くすれば俺も強くなると信じている。この力で皆を救うと決めた。この力を使って……

 

 「ふむ、何時でも来てくれて構わない。場所は……社長室で良いか……」

 

 「分かりました……時間があったらお邪魔させてもらいます」

 

そうして外に出たのは良いが……この場所に一人で来るとなると気まずいなぁと改めて思ったのだった。




DEM社の社長コミュ、DEM社の秘書コミュが開放されました。
悪魔、剛毅のペルソナを召喚可能になりました。
難易度 ノーマルで開始します。


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第1章  Date・A・Live
Princess……


この物語はフィクションです。実際の場所、地名、団体などとは一切関係ありません。
クエスト Dead End が開放されました。
クリアするとコミュの開放とアイテムが入手できます。


4月10日。春休みも終わりを告げ、学校が始まる。俺も妹の琴里も同じように今日が始業式だ。いつもの様に、朝食を作り、テレビを見る。この町では突発的な災害”空間震”が良く発生していて今日のニュースでも空間震についてのニュースが報道されていた。丁度、隣に居た琴里が意味の分からない事を言っていたのだが。

 

 「予定よりも……少し早いわね……」

 

早いとはどういうことなのだろう?最近の琴里は何かぼそぼそと独り言を言っていることが多い。何を企んでいるのだろうか。

 

 「琴里ー?お昼で終わるから何食べるー?」

 

 「デラックスキッズプレート!!」

 

 「当店ではご用意出来かねます……ファミレスで良いか?」

 

こういう所は子供っぽいと言うか何というか……偶に突拍子もない事を言ったり、俺の事を虐めようとしてきたりと何か俺に恨みでもあるんだろうか?朝、起こすときに腹の上でダンスしたり……何かやったかなぁ?

 

 「絶対だぞ!!火事が起きても、テロリストに占拠されても、空間震が起きても絶対だぞ!!」

 

不吉なことを言っているが気にしないようにする。気にしたら負けだ。そんなことがあれば、激怒どころではない。

 

 「……2年4組、か」

 

学校へ登校して自分のクラスを確認した。知っている名前もあったので友人関係には困らないだろうと思う。

 

 「五河士道……」

 

自分の席を確認していた所、見知らぬ人に声を掛けられた。白いというか、銀髪というか……人形を思わせるという第一印象を受けた。

 

 「覚えてないの?」

 

 「ああ。覚えてないな……ごめん」

 

俺はこんな人と出会った事があっただろうか?少なくとも俺には覚えがないのでどうしようもなかった。彼女は俺との会話を終えると自分の席に着いて本を読み始めた。

 

 「よう……五河。まさか、あの鳶一と話してるなんていつの間にお近づきになったんだ?」

 

 「知らないんだが……鳶一っていうのか」

 

俺の友人、殿町によると彼女は鳶一折紙。誰がどう見ても優等生と言う位すごいらしい。

 

 「へぇ……優等生かぁ。しかも、俺の隣の席だし」

 

運命なのか、何なのか。彼女とは何か縁がありそうだ。そんなことを考えながら、ホームルームや始業式を受ける。あっという間に帰りのホームルームになりそれを終えると殿町が話しかけてきた。

 

 「五河ー。飯食いに行こうぜー」

 

 「妹とファミレスに行くんだが……」

 

それを言うと条例に引っかからない程度に仲良くしてなぁーと言われた。俺は決してそういう事はしないつもりだし、そんな感情を他の女性に抱いた事が無いので条例に引っかからないと思う。そう考えていると空間震警報が鳴った。

 

 「おおう、とりあえずシェルターに行けばいいんだな……」

 

 「普通にいけばいいだろ?直ぐ近くなんだし……」

 

この来禅高校には空間震対策が施されているシェルターがあるので避難するならそこに行けばいい。天宮市にはそういう場所がいくつもある……それは、此処が空間震を受けて再開発された土地だからという理由だ。

 

 「………あいつ、ちゃんと避難してるかなぁ。一応、見ておこう……」

 

琴里の携帯にはGPSが付いているので、自分の携帯で確認する。するとファミレス前で動かない。あの馬鹿は本当に言った事を実行したのだ。

 

 「連れ戻さないと……!!」

 

 「何処行くんだー!五河ー!」

 

 「忘れ物だ!!」

 

そうして外に出て走る。見つけたらデコピン乱舞の刑に処して説教をすることを決める。とりあえず今は琴里を連れ帰ることだ。それだけを考えて走る。

 

 「はぁ……はぁ……」

 

走って走って、ファミレスの前まで来たがそこには琴里の姿は見当たらなかった。携帯では、此処を示しているが此処に居ない……何故だ?何処に行った?そればかりが俺の思考を埋め尽くす。

 

 「っ……がっ!!……ごほっ……」

 

目の前で空間震が起きた。考えることに集中しすぎて受け身すら取れず、崩壊した瓦礫に体を打ち付けた。所々、制服が破れそこから血が溢れ出ている。

 

 「……は……?お、ん……なの……こ?」

 

目の前に玉座とそこに立っている少女を見た……それを見て、意識は途絶えた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

目覚めると其処は青い部屋だった。自分の前にはテーブルが、奥には鼻の長い奇妙な老人。その周りには、女性二人、少女一人、男性一人が居た。

 

 「ようこそ、我がベルベットルームへ……」

 

此処はベルベットルームと言うらしい。それにしても、奇妙だ。何処からか、オペラ歌手が歌っている声が聞こえる。

 

 「わたくしの名はイゴール。お初にお目にかかります」

 

 「ああ、どうも……五河士道です」

 

とりあえず簡単に自己紹介をする。すると、イゴールは何処からかタロットカードを取り出しそれを広げ始めた。

 

 「占いは信用されますかな?」

 

 「まあ、一応……」

 

手慣れたようにカードを広げ、表にする。

 

 「搭の正位置。貴方様は、どうやら困難に立ち向かわねばならないようですな。そして、刑死者の正位置。最後には自己犠牲で終わらせるといった所でしょうかな。最後に……星の正位置。しかし、貴方様には希望が見えている。決して諦めることのない力を持っておられるようですな」

 

とりあえず俺の人生は困難に満ち溢れ、自己犠牲をするが希望があるらしい。要するに好きな人の為に死ぬみたいなドラマチックな展開なのだろうか。と言うより、俺は死んだんじゃ?

 

 「此処は夢と現実……精神と物質の狭間にある場所……貴方様は気絶しているだけで死んではおりません」

 

死んではいないようだ。これから俺は一体どうすればいいのだろうか?

 

 「では、こちらを……」

 

テーブルの上に紙と銃が置かれた。其処に書いてあったのは、「汝、絶望に染まりし者達を救い、自らの運命を変えてみせよ」。要するに誓約書みたいなものだろう。

 

 「これにサインしていただければ、貴方様が求める力を手に入れることが出来ます」

 

俺は無力だ。意識を失う前に見た少女も、暗い目をしていた。俺はそんな顔が嫌いだし見て見ぬふりをすることは出来ない。力があれば、俺は……助けられる。

 

 「………これで良いですか」

 

自分の名前を書くとそれが消えた。

 

 「ええ、結構です。それと、これをお持ちになってください。貴方様が望むときにこちらに来られる鍵でございます」

 

俺は銃と青い鍵を持った。そうすると周りがぼやけ始める。

 

 「貴方はきっとできるはずです。運命を……変える力を」

 

それを聞いて、また意識を閉ざした。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 「っ……帰ってきたのか。制服は……破れてるけど、血は止まってるどころか傷すらないな……」

 

一応、銃と鍵は持っていた。とりあえずの現状確認をすると周りは瓦礫まみれなので空間震の影響だと思われる。そして震源だと思われる場所には意識を失う前に見た少女が居た。そして、戦っている空を飛んでいる女性の集団。こんな所だろうか。

 

 「あれって……あしらってるだけなのか?」

 

その少女は暗い目をしながら怒り狂っていた。綺麗な大剣をを振り回し、圧倒する。気づくと、全員が全滅……そして、俺がターゲットにされた。

 

 「っ!!……あぶねえ……」

 

 「お前もか……一切合切消えてしまえっ!!」

 

BGM Mass Destruction

 

 「どうすればいいんだよっ!!……くっ!!」

 

ターゲットにされてから数分。俺は攻撃を避け続けていた。攻撃するのは気が引けるがこうも攻撃的だと反撃しないと終わらない気がしてきた。ポケットから銃を取り出すが使い方が分からない。

 

 「どう使えばいいんだよっ!!弾は入って無いし……」

 

考える。何となくこの銃をこめかみに当てた。使い方はこれであっているのだろうか?意識が集中され、研ぎ澄まされる……これなら。

 

 「ペ……ル……ソ……ナッ……!!」

 

引き金を引いた。高揚感が身を包む。これなら戦える。

 

 ー我は汝……汝は我……我は汝の心の海より出でし者……幽玄の奏者”オルフェウス”なり!!

 

オルフェウス……これが、俺の力。これを使って……

 

 「ふん。私の前から消え去れっ!!」

 

大剣を振り下ろすのと同時にオルフェウスが攻撃する。攻撃は相殺されて、次の攻撃に移る……それを繰り返した。

 

 「俺は!!……お前を!!……攻撃するつもりは!!……無いっ!!……だから!!……止めてくれっ!!」

 

 「お前も!!私を!!殺しに!!来たのだろう!!騙されんぞ!!」

 

こんな会話を続けている。どうしたらこれを終わらせることが出来るだろう……ふと、思いついた。

 

 「燃えろ……これでどうだ?」

 

少女に炎を纏わせると後退して火を消した。これでちゃんと話が出来る。

 

 「君はどうして、こんなことをするんだ?」

 

 「私を殺しに来るやつらを追い払っているだけだ。お前も、そうだろう?」

 

 「違う。攻撃するつもりなんて無いって言っただろう?君が攻撃してくるから受け流してたんだ」

 

少女は、来る者全てを敵として見ている。と言うよりも、今まで見た人たちは攻撃してきたからそういう考えになっているのだろうと思った。

 

 「お前は一体何をしに来た……」

 

 「人を探してたんだが、居なくてな。そうしたら君が居たから助けたいと思った……ただ、それだけの理由だ」

 

 「変な奴だな。お前はあいつ等とは違うようだ……それだけは分かった」

 

我は汝……汝は我……

汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

汝、女帝のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

友人とまではいかないと思うが、繋がりを持てた気がした。少女との絆を深めるためにはどうすればいいのだろう……そう考えているといつの間にか居なくなっていた。

 

 「不思議な子だったな……前の俺みたいな感じと、無邪気な感じ」

 

緊張が解けて地面に膝を付く。思ったよりも、疲れが溜まっていたようだった。また、意識を閉ざした。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 「ん……えっ?」

 

目を覚ますとベットに寝かされペンライトで眼球の動きを見られていた。そのペンライトを持っていた人は眠そうな女性だった。

 

 「起きたかい?気絶していたのを此処に運んだんだ。私は、村雨令音だ……此処で解析官をしている」

 

解析官?よく分からないまま話は進む。とりあえず付いて来てくれと言われて付いて行く。SFチックな場所なので見渡してしまう。

 

 「此処だ……君もよく知っている人が居ると思うが……」

 

知っている人?誰だろうと考えながら重要そうな場所に入った。其処には、軍服を着た自分の妹、五河琴里が中心の椅子に座っていた。

 

 「ようこそ……ラタトスクへ。歓迎するわ」

 

この場所、フラクシナスと言うらしいが空中艦だという。ラタトスクはさっき会った少女、精霊を対話によって保護しようとしているボランティア団体みたいなものだと言う説明を大雑把に受けた。それに対して、陸上自衛隊のASTと呼ばれる組織は精霊を殲滅させようとする……何となく、理解は出来た。そうして琴里に言われたことが精霊を”デートしてデレさせなさい”だった。何処のギャルゲーだよっ!!

 

 「で、あれは何なの?炎出したりとかしてたけど……」

 

 「何て言えばいいんだ……もう一人の自分って言った方が適切かな」

 

ペルソナの事に関しては言いずらい。ただ言えることは……

 

 「俺だけの力。皆を救うための……俺がこれを使って精霊を救って見せるっ!!」

 

俺の意気込みは琴里も嬉しがっているようで良かった。そうして、よく分からない書類にサインをする作業を夜中まで続けた。あの時にサインしたお陰か、文章を見ながらサインをするという作業が素早くできるようになっていた。時間も夜中と言っても11時には終わったので、シャワーに入って寝た。

 

 「こっちに来て」

 

次の日の昼休み。隣の鳶一折紙に手を引かれ、屋上の前の扉まで連れてこられた。

 

 「貴方は何故昨日、あそこに居たの?」

 

 「妹を探してたんだ。まあ、そこじゃなくて別の場所に居たんだけどな」

 

鳶一折紙の信念は復讐に塗れていた。精霊を殺す、そのことばかり。そうして、最後に。

 

 「貴方は、人間?私達が敵わなかった精霊相手にあそこまでの力を使える貴方は何者?」

 

どう答えようか。言えるとするならば……

 

 「通りすがりの高校生……かな?」

 

その会話の後、空間震警報が鳴り始め彼女は何処かに走り去っていった。一応、副担任と物理を持っている解析官の村雨令音さんと合流し、船に転送してもらった。説明でも聞いたが、顕現装置と呼ばれる現実で魔法を使える機会にはいつも驚かされる。

 

 「震源地は士道の学校よ。其処に、お姫様は籠城してるみたいね……ラッキーな事にASTの奴らも入ってこられない教室だから今ならいけるわね。出番よ、士道」

 

学校に転送してもらうと其処は瓦礫塗れで歩きづらい場所になっていた。その少女が居るのは自分のクラス、2年4組。教室の前に着き扉を開けると、横一文字に斬撃が飛んできたのでそれを咄嗟にしゃがんで回避した。

 

 「セーフ……死ぬかと思った。昨日も会ったのに、危ない挨拶じゃないか」

 

 「ああ、お前か。すまんな、敵だと思って斬ってしまった」

 

彼女と会話しようと思うと、琴里から渡されたインカムから指示が来たのだが……選択肢で会話をするらしい。馬鹿かっ!!そんなもんじゃ精霊は口説けないと思うんだが……とりあえず無視して会話する。

 

 「名前……聞いてなかったよな。教えてくれるか?」

 

 「私には名前は無い……お前は何と呼びたい?」

 

これまたハードなのが来たわね……とインカムから話し声が聞こえ始めるが不穏な空気が感じられたので俺が咄嗟に考えて名前を言ってみる。

 

 「………十香、とかどうだ?こう書くんだが」

 

黒板に十香と丁寧に書く。そうすると隣で十香と書き始める……指で黒板を斬って書く姿は子供の様に思えた。

 

 「私の名は、十香だ。素敵だろう?」

 

 「ああ、俺が考えたのを気に入ってくれて嬉しいよ」

 

さっきから指示を無視して行動しているが、あっちでは好感度なるものが上がっているのでこのまま続けろと言った話が聞こえてきた。

 

 「そういえば、お前の名前は何というのだ?」

 

 「五河士道……士道で良いよ」

 

名前を言うと伏せなさいと琴里から言われた途端、窓が割れ始めてそこから銃弾が降り注いできた。恐らくASTが痺れを切らして攻撃をし始めたと思われた。

 

 「シドー逃げろ。同胞に討たれてしまうぞ」

 

 「今は、十香とのお話タイムだ。あいつ等は気にしないで話そうぜ」

 

他愛も無い話をした。彼女、十香は何も知らない場所で目覚め気が付いたら、ASTに攻撃されという日々を送っていたらしい。だから、俺の事を最初は敵だと思ったという話だ。今は、俺のことは敵ではなくよき理解者という立場だと言われた。

 

 「何かが近づいてくる!!シドー!!」

 

俺はそのまま教室から廊下の窓に投げ出され、転送された。後から聞いた所、ASTの隊員が突撃していったという話だった……恐らくは鳶一折紙だと思った。

 

 「はぁ……当たり前に休校だよなぁ。無駄足だったし、買い物して帰るか……」

 

昨日会った十香という漢字を書いた黒板の欠片が目に入り、それを拾ってなぞる……彼女にまた会えるだろうかと考えてしまった。恋する乙女かっ!!と自分にツッコミを入れて気持ちを切り替える。

 

 「シ……おい!!……シドー!!」

 

 「ん?……なんだ十香か。……!?十香何で此処に居るんだ?」

 

精霊は出現する時、空間震を起こすはずだが今回は空間震警報は鳴っていないので起こさずに出現したと言う所だろうか。彼女の言い分によると、昨日の最後に思いっきり外に投げ出してしまって俺が怪我していないか心配で来たという話だ。

 

 「そういえば……デートしろって言ってたな。流石にデート位はやった方が良いか?」

 

妹の琴里が言うにはデートしてデレさせろ……デレてくれるかは分からないがやってみよう。

 

 「十香、少し付き合ってくれないか?知らない物を沢山見せてやる」

 

 「うむ!!では早速行こう!!」

 

 「その前に服!!服を変えよう!!な!!」

 

一悶着ありつつも、十香と商店街を周った。精霊は服を制服などに変えることが出来るらしい……何て便利な力なんだと思いつつも、十香に色々と紹介する。十香は食べることが好きなようで最初に食べたきなこパンを酷く気に入ったらしくいろんな場所できなこパンを探している。だが、きなこパンが無くてもそこの大盛メニューを食べきっても次の場所に行こうと言ってくるあたり胃袋はどれだけ入るのだろうかと思ってしまう。

 

 「こちら、これでもかセットになりまーす!!」

 

店員が琴里だった店で、耳元でサポートするからこのままデートを続けてと言われて黒いカードを渡された。俺も初めて見るブラックのクレジットカード。触るのが怖い。

 

 「次の所に行こう!!シドー!!」

 

 「分かったから……服を引っ張らないでくれ!!」

 

その後もクレジットカードで決済しながら、食事を楽しんだ。食事を終えた後は商店街を進んだ奥にある、高台に来たのだが……その道で色々と促された。恐らくフラクシナスの人だと思うのだが手を繋げだとかドリームなランドに連れて行こうとしたりとか……それを無視しながら高台まできた。其処の道でも誘導された。何処まで手が入ってるんだ?

 

 「おお!!絶景だな!!あそこの奴は合体するのか?」

 

 「合体はしないが連結はするな……何処のロボットアニメだよ」

 

時間は丁度いい夕方で、日が沈む所を見ることが出来た。これを狙って誘導していたのだろうと考える。其処は評価できるなぁと思う。

 

 「私はこんな世界を壊していたのだな……やっぱり私は……」

 

 「別に壊したっていいだろ。壊すのは悪いことかもしれない、だけど今日は壊さないで来れたじゃないか。十香を攻撃する奴らなんて俺と過ごしているときには居なかったはずだ。十香が悲しむ顔を見たくないんだ。だから、俺と一緒に居よう。何があっても俺がどうにかして見せるから……」

 

十香に手を差し出し、そして彼女も手を伸ばした。手を取れた時、俺は腹部に痛みを感じた。やっぱり誰かに狙われてたんだと思いつつも十香に寄りかかる。

 

 「シ、ドー?どうしたのだ?急に寄りかかって……」

 

 「あ……っ……十香……お前だけは……生きろっ!!」

 

十香を最後の力で突き飛ばし、俺は意識を閉ざした。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 「………また来れたのか?」

 

 「失礼。お呼びする必要があると思い呼び出させていただきました。貴方様は、ペルソナ以外にも持っているものがあるのです……エリザベス」

 

 「こちらをご覧ください……」

 

エリザベスと呼ばれた女性が持っていた本を見ると、其処には琴里が居た。火災……五年前だろうか?その時の服装はまるで精霊の様だった。

 

 「貴方様は、その身に力を宿しております。ペルソナと合わせれば貴方様のより強い力として顕現するでしょう……」

 

 「只今、悪魔と剛毅、女帝のコミュを開放しています。これをお持ちください」

 

そうして、三枚のカードをエリザベスから手渡された。ペルソナである事は分かった。

 

 「ワイルドをお持ちになる方はこれで五人目……わたくし達も初めて見るワイルドですな」

 

ペルソナを複数使える人をワイルドと言うのだろう。その前にも居るとなるとかなり前からこの場所はあるのだろう。

 

 「さあ、お行きなさい!!貴方様の旅路はまだ終わっておりません」

 

そうして周りが白くなり現実に戻る……

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

目が覚めると其処は地獄でした……そう思っても仕方がない光景になっていた。俺の体は燃えて治療されたが周りは地面は抉れ、山は切り裂かれ、空気は軋んでいる音が聞こえる。立ち上がって周りを見渡しているとインカムから聞きなれた声が聞こえてきた。

 

 「目覚めはどうかしら?士道?」

 

 「ああ、最悪だ。起きたら知らぬ間に壊れてるし……」

 

現状について琴里は、俺が死んだことに激怒した十香が狙撃したASTの隊員やその周りに居た隊員に殲滅しようとしているらしい。それを止められるのは俺だけだと言う事。さっき貰った力を使えば、止められるだろうか?

 

君はそんな人間じゃないだろう?もっと君の力を見せてくれ……

 

 「はは、笑われちゃしょうがないですね……やりますよ」

 

そのカードを思い浮かべ引き金を引いた。

 

 「リリムッ!!」

 

それは、羽が生えた女の子。悪魔である事はすぐにわかるような見た目をしているが侮ってはいけない。

 

 「十香っ!!もうやめろっ!!うっ……」

 

リリムで近づこうとすると跳ね返され、近づくことが出来ない。どうすれば……

 

貴方の事は気に入ってますから、助けてあげましょう。最強の名において……

 

 「ヴァルキリー!!」

 

神話に出てくる神の使い、ヴァルキリー。彼女が持つ刀で切り裂いて十香に近づく。

 

 「とおおかあああ!!」

 

 「シ、ドー?」

 

声が届いた。俺は地面から、十香は空中からそれぞれ見る。

 

 「シドー!!本物だな!?幻ではないな!?」

 

 「死んでると思うか?死んでたら動くわけないだろうに」

 

再会を喜び合っていると十香が持っていた紫の巨大な大剣が光り始めた。なんだろう、すごい嫌な予感がする。

 

 「しまった!<最後の剣>の制御を誤った!何処かに放出するしか……」

 

それを聞いた時に、琴里の言葉を思い出した。現状説明をしているときに精霊を目覚めさせるには王子様のキスでしょう?と言っていたのを思い出した。

 

 「なあ、十香。それをどうにかできるかもしれない……だからじっとしててくれ」

 

 「む?どうにかできるのか?……なら、早く……っ!!」

 

口づけをした。キスはレモンの味とか言ってたりするが、それは無い。甘いパフェの味がした。

 

 「これで終わり……っ!!見てないからな!!」

 

力が流れ込んでくる感覚と共に、十香の服が消えていた。初めて救うことが出来た安堵感と緊張が解け力を抜いてしまった。

 

 「っと……ゴメン。大丈夫か?」

 

 「シドーもお疲れさまだ。私のために頑張ってくれたのだろう?」

 

 「十香に気づいてもらうのに色々考えて頑張ったんだぜ?」

 

そんな会話をしていた二人。景色は、日が沈んで夜空が広がっていた。

 

 「なあ、シドー。また遊びに連れて行ってくれるか?」

 

 「まあ、遊びじゃなくてデートだけど……ああ、何時でも連れてってやるよ」

 

そこで俺は守るべきものが増えたと思ったんだ。

 




クエスト Dead End をクリアしました。
女帝コミュ プリンセスの開放と鏖殺公<サンダルフォン>を入手しました。
levelが10になりました。
悪魔、剛毅のコミュランクが2になりました。


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Frozen city……

クエスト Puppet が開放されました。
クリアするとコミュの開放とアイテムが入手できます。



俺が精霊を知り十香を救ってから数日。自分のクラスに転入生として転校してきた。彼女が言うには自分の力の9割が無くなっているので普通の人と見られるからと言う理由と精霊にも社会性を持って欲しいからと妹である司令官が言っていた(ほぼ聞き流したが)。そして包帯ぐるぐる巻きになった鳶一折紙が俺に謝ってきた。と言うことは狙撃したのはこいつと言うことになるので十香と敵対するのは当たり前であった。それが今後の悩みの種となって俺が苦しむことになろうとは……

 

 「はぁ……人生は辛いもんなのかなぁ?」

 

一人、帰路を辿りながらそんなことを言う。最近は喧嘩を止める為に体を張って止めているため、身体のあちこちが痛い。風呂に入って体を見ると痣だらけで少し自分でも引いた。こんなのが毎日続いてみたらと考えるだけで震えが止まらない。

 

 「………雨?天気予報じゃ晴れって言ってたはずなんだが……」

 

最近は天気予報が当てにならない。洗濯物が濡れて乾かないとか制服が乾かなくなるとか色々、主夫目線で考えているのでそういう事ばかり気になってしまう。早く帰ろうと、走り出そうとした時目の前の神社で不思議な子を見た。この感覚は、十香と同じような感覚だった……ということは。

 

 「精霊……なのか?」

 

少し観察していると、ずるべったぁぁぁんと思いっきり転んだ。流石にあの転び方をするなんて思ってもいなかったので、助けに行く。緑のフードを深く被った少女は体をガタガタ震わせながら、後ろに下がっていた。怯え方がすごい。

 

 「いたく……しないで……ください……」

 

掠れた声で言ってくる。どうすればいいか考えていた時に地面に落ちていたカラフルなパペットを見つけそれを差し出すと彼女はそれを受け取って左手に装着した。

 

 「いや~。助かったよ~お兄さん」

 

パペットがくねくねと動き始め、話し始めた。その時の彼女は話しているわけではなかったのでパペットが本当に話していると感じた。

 

 「転んだところ痛くないか?流石にあれはびっくりした……」

 

うんうん。そうだね~とパペットが話す。さっきとは打って変わって、陽気な感じで話す……何となく人格が入れ替わってるという事が頭の中に浮かぶ。

 

 「あ、でも時間みたいだから。じゃあね~」

 

そのまま走り出して消えていった。今気づいたが、ずぶ濡れである。ブレザー乾くかなぁ?と言う事と洗濯物が多くなったなと思いながら家に帰ることにした。

 

 「帰ってきたのは良いけど……どうしようか」

 

とりあえず風呂に入ろうと思い、買い物袋を玄関に置き、二階で着替えを取り脱衣所に向かう。さっと服を脱いで風呂に入る。幸いにもお風呂は沸いていたので湯船に浸かる。

 

 「あったけぇ……やっぱり熱いのは良いなぁ……」

 

ゆっくり湯船に浸かっていると奥で何かゴソゴソ動いている影が見える。そして、扉を開けた。

 

 「………!!シドー!?入っていたのか!?」

 

 「着替え置いてあっただろう?分かるかなって思ったんだが……まあいいや、俺は上がるし、十香も入ったらどうだ?」

 

そうして交代し、リビングに行くと琴里と令音さんが座って待っていた。すごくニヤニヤした顔で。

 

 「どうだったの?お姫様の裸体は?」

 

 「見てないし、普通に入れ替わっただけだが?別にそれぐらいでアワアワしたらこの先不安しかないだろ?」

 

何時の間に男らしくなったのかしら……と言われた。悲しい。さっきよくもまあ、落ち着いて対処出来たなと疑問に思ったりもするが気にしないで話を聞くことにした。案の定、精霊は十香だけではなく、他にもたくさんいるとの事だ。で、精霊用の家を作るのに時間が掛かるのでそれまで五河家に居ると言う話だ。訓練も兼ねたと言っているがどんなことをするのやら……

 

 「とりあえずは分かった……あと、もしかしたら精霊に出会ったかもしれない。何て言うのかな……緑のフートを被って、パペットを左手に持ってる小さい女の子っているか?」

 

 「………<ハーミット>かしら?よくもまあ、普通に会話して帰ってきたわね。逃げてばっかりで直ぐいなくなっちゃうのに……」

 

話を聞くと彼女、<ハーミット>はASTに攻撃されても反撃しないので危険度は低いらしい。臆病と言う事はパペットを外した時の状態の事だろうか?それとも陽気な状態でも攻撃をしないのだろうか?悩みながら話を聞いていると十香がタオルを首に掛けながらリビングに入ってきた為そこで話は打ち切りになった。

 

 「さっきは済まぬ……居るとは思わなかった」

 

 「別にいいさ。俺も注意不足だったし……飯直ぐ作るから待っててな」

 

その会話を見ていた妹は、こんなの士道じゃない!!と言っていた。人は変わる物だろうとツッコミを入れたいところだが十香が腹を空かせているので夕飯の準備に取り掛かった。その日は夕食を食べ終えてから直ぐに眠りに着いた。

 

 「………?何だ?」

 

柔らかい、そしてすべすべ。俺は一体何を触っているんだ?

 

 「ん!……シ、ドー……もっと、食べさせてくれ……」

 

ん?名前呼ばれたよな……って十香のベットじゃないか!?あの司令官はこんなことを仕込んでいたらしい。

 

 「ん?……シドー?夢じゃなかったのか?」

 

 「おはよう……間違って入ったみたいだ。今出るから……」

 

 「待ってくれ……もう、少しだけこのままで居させてくれ。あの時を、思い出してしまった……」

 

あの時とは俺が死んでしまった時の事だろう……まあ、少しぐらいは良いだろう。

 

 「何やってんのよー!!」

 

遅めの朝食を食べながらゆっくりとテレビを見ていると琴里が激怒しながらリビングに入ってきた。妹よ、怒ると血圧が上がるぞ。

 

 「別に……お前がやった事が裏目に出ただけだろう?好感度維持とか何とか言ってたけどこういうのでいいんだろう?」

 

 「そうだけど……!!私の考えてたことと違ったの!!なんでこんなに紳士的になってるのよー!!」

 

朝から騒がしかったが、そのまま学校へ登校し昼休み。今日は屋上で昼食を食べることにした。

 

 「早く昼餉を食べよう!!シドー早く出してくれ!!」

 

 「はいはい……ほら、弁当」

 

受け取った十香はすぐさま食べ始めた。相変わらずの食べっぷりで直ぐに完食してしまった。もう少し量を増やした方が良いだろうか?

 

 「シドー?私以外にも精霊は居るのか?」

 

恐らく琴里から何か聞いたのだろうか?俺はそれに答える。

 

 「居るみたいだな。俺には精霊の力を封印する能力があるみたいだしな……十香の鏖殺公みたいなもんだな。これを、使って他の精霊も助けてやりたいんだ……十香みたいに幸せに過ごしてほしい……俺にはそれが出来るかな……」

 

 「出来る。シドーは私を救ってくれた……私は他の精霊も同じように救ってやって欲しいと思う。ただ……私の事もちゃんと見て欲しい。約束だ」

 

 「おう、約束する。じゃあ、教室に戻ろうか……」

 

そうして立ち上がると、空間震警報が鳴り始めた。その後は、十香をシェルターに避難させ令音さんと一緒にフラクシナスへ転送してもらった。

 

 「士道、対象はデパートのおもちゃ売り場に居るわ。さっさと行ってデレさせちゃいなさい」

 

 「言い方が気に食わんが、行ってくる。約束があるからな」

 

 「約束?誰と?」

 

 「俺の事が好きなお姫様。お前、余計なことを言うなよ?」

 

不敵に笑っている俺はとある精霊と似ているらしい。そんなことを言われながらも、デパートに向かう……昨日会ったばかりだし覚えていると思うのだが、前回の十香の事も踏まえて一応身構えておく。

 

 「あ~れ~?昨日の優しいお兄さんじゃない~。何しに来たの~?」

 

 「何となく来てみたら君が居た。まあ、偶然だよ」

 

其処からは順調すぎるほど進んで行った。陽気なままで話す彼女は本当の彼女ではない気がした。パペットから聞けたのは自分の名前はよしのんでASTに攻撃されて此処に避難してきたと言う事だけ。一応、自己紹介はしておいたが色々ボケがすごい。

 

 「ねえねえ士道君。かっこいいしょ?」

 

ジャングルジムに上った彼女はふらふらしながら、てっぺんに立っていた。其処から体勢を崩して下に落ちそうになったところをキャッチ……できなかった。好感度も上々と司令官も言っていたのでこのままだったら封印できるわよと言っていたが……キャッチするのを失敗してキスしてしまったが力が流れ込んでくる感覚が無かった。要するにパペットの方と会話していたので本体の好感度は低いままなのだろう。

 

 「大丈夫か……って言っても問題なさそうだな」

 

 「ごめんね~。よしのんとしたことが、バランスを崩しちゃったよ~」

 

 「君の名前を教えてくれないか?」

 

思い切って、聞いてみる。よしのんも不思議そうにこちらを見ているが、多分答えてくれると信じて待ってみる。

 

 「四糸乃……です……」

 

我は汝……汝は我……

汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

汝、隠者のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

 「さっきはゴメンな、四糸乃?嫌だったよな?」

 

 「大丈夫……です……助けてもらったので……」

 

インカムからは違うパターンで反応が出始めたという話し声が聞こえる。やっぱり、人格が変わっている可能性が高まった。四糸乃が話している間は少なくともよしのんは話さなかった。さっきまでよしのんと話していたので話しづらいと言うか、何というか……

 

 「………時間なので……また、会えますか?」

 

 「会えるさ。きっと」

 

その言葉を言った時にはもう、四糸乃は居なくなっていた。その日はフラクシナスで四糸乃について色々会議をしたのだが、やっぱり四糸乃とよしのんは違う人格である事が分かった。そしてその後、艦橋に戻ると令音さんが話しかけてきた。

 

 「シン、精霊と話すことには慣れたかい?」

 

 「どうなんですかね……よく、分かりませんけど」

 

令音さんによると十香よりも格段に話せるようになっているとの事だ。その後ろには、ギャルゲーが見えた気がしたが見なかったことにする。俺はあんなゲームやりたくは無いし、見たくもない。トラウマが増えそうだ。

 

 「君は、よく頑張っているよ。琴里は素直に言っていないが、ね」

 

我は汝……汝は我……

汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

汝、顧問官のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

 「そういう所も、妹だなって思うんですよ……」

 

 「やはり、司令の兄になると色々分かっていますねぇ……私と代わってください!!」

 

副司令の神無月さんが叫ぶ。それの乗っかって他のクルーの人たちも琴里の事について、聞いてくる。どれだけ司令官の事が好きなんだ?ホワイト企業にも程があるなぁと思ったのだった。

 

 我は汝……汝は我……

汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

汝、愚者のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

フラクシナスの船員達から逃げるように家に帰った。あの場所に入ると自分の要らないことまで言ってしまいそうで怖い。まあ、根は良い人たちで琴里を慕っているのだろう。自慢の妹の職場は安定しているようだ。

 

 「何考えてるのよ……顔が気持ち悪いわよ」

 

 「うるせぇ、お前の職場が思ったよりも印象が強くてどう解釈しようか悩んでたんだよ」

 

 「まあ、仕事が出来る良い人たちなんだけど……癖がね」

 

癖、と言われると確かにそうだなと思う。令音さん以外。至って真面目に仕事をしているのだが趣味に走りすぎていると思ったりもしない、特に神無月さんがМ過ぎるのが印象に残っている。

 

 「私にとっては、あそこは第二の家みたいなもんよ。家族って言うのかしらね……」

 

我は汝……汝は我……

汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

汝、正義のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

 「神無月さんが俺のことをお兄さんと呼ぶ日も近いのかぁ……気持ち悪っ」

 

悪寒を感じながらその日を終え、翌日。その日は雨で学校に来るのも一苦労だった。都心で起こるゲリラ豪雨の様な大雨が降っている。そういえば、四糸乃に会った時も雨が降っていたなぁと思い出す。なら、感情によって天候を左右させているのだろうかという疑問が出てきた。そんなことを考えつつ、授業を受けて放課後。空間震警報が鳴り、またフラクシナスに転送してもらった。

 

 「今日である程度決着を付けたいわね……でも、何か暴走してるみたいなのよね……」

 

映像を見ると、氷のドームが形成されASTの隊員たちがその周りで、銃などを撃っていた。俺は何となく、暴走している理由を考えていた……原因はよしのんが居ないからだろうかと思いつき、琴里に消える前の映像を洗ってもらうとよしのんをその時に落としていたと言う事が分かった。よしのんはデパートのサービスカウンターに置いてあるとの事。それを拾って四糸乃に帰し、あわよくばキスをして封印すると言う話だ。

 

 「今回は、ちょっと危ないわ……それでも、行くでしょう?士道」

 

 「当たり前だろう?俺の決意は揺るがない……」

 

それを聞いて安心したわ、と司令官の激励を受けながらデパートに転送された。その後はよしのんを回収し、ドームのある場所に向かった。

 

 「士道、その中に四糸乃が居るわ……でも、近づけない」

 

どうしようか……一応、ゾンビも顔負けの灼爛殲鬼の治癒能力があるが無理に行ったら体を壊しかねない。ペルソナは……氷に対して耐性を持っている奴は居ただろうか?いないような気がしていたので路頭に迷う。

 

シドーは私を救ってくれた……今度は私が助ける番だ!!

 

 「ありがとう、十香……ヤクシニー!!」

 

十香との絆によって顕現したペルソナ、ヤクシニーは氷結に対して耐性を持っている。これなら安全に入ることが出来る。

 

 「さて、落とし物を届けてやらないとな」

 

覚悟を決めて、ドームの中に入った。中はとても静かだった……台風の目と言ったほうが適切だろうか。それほど静かな場所で、すすり泣く声だけが響いている。その声を辿り目的の人に会うのは簡単だった。

 

 「うっ……ひっぐ……」

 

 「迎えに来たぞ、四糸乃」

 

その声を聴いた四糸乃は振り向いて驚く。まあ、自分が作った場所に人間が入ってくる時点でおかしい。

 

 「士道……さん。よしのんが……」

 

 「うん、落とし物だ。消える時に置いて行ったみたいだから探してきた」

 

手に持っていたよしのんを四糸乃の左手に装着させる。そうすると、パペットは器用に体を動かし始めた。

 

 「っぷは~。助かったよ士道君~。四糸乃ったら置いてっちゃうんだもん……」

 

 「まあ、あれは仕方ないだろ……精霊は時間があるしな。でも、それを無くす事が出来る方法があるんだけどやってみるか?」

 

その質問は封印してもいいですか?という質問だ。一応、琴里によると好感度は封印できる所に入るので問題ないとの事だった。その質問に四糸乃は……

 

 「やって……みたいです……!士道さんが……言う事なら……信じられるんです……!」

 

 「そっか……じゃあ少し目を瞑ってくれないか?」

 

目を瞑った四糸乃にキスをした。そうすると、氷のドームは消えていき、空は晴天になった。

 

 「温かい……」

 

 「これからは、俺が守ってやる……よしのんよりとまではいかないと思うけどな」

 

 「当たり前じゃない~四糸乃と一緒に居る歴はよしのんの方が上なんだからさ~」

 

二人目を救えた俺は精霊を救う自信が付き始めた気がしたんだ。




クエスト Puppet をクリアしました。
隠者コミュ ハーミットの開放と氷結傀儡<ザドキエル>を入手しました。
levelが20になりました。
愚者 フラクシナスの船員達、正義 イフリート、顧問官 無表情な解析官のコミュが開放されました。
女帝のコミュランクが2になりました。
愚者、女帝、正義、顧問官、隠者のペルソナを召喚可能になりました。


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Nightmare Party……

クエスト Gift が開放されました。
クリアするとコミュの開放と???の条件が達成されます。


四糸乃を救ってから数日。俺の家の隣に恐ろしく大きなマンションが建てられていた……精霊を住まわせるための専用のマンションだそうだ。防音なども徹底していて、フラクシナスにある転送装置に使われている顕現装置も使われているらしい。そういう機械的なことはあまりよく分からない。一時期追っていた時期もあったけど、それは封印したのだ。

 

 「……遅いな、そろそろ来るはずなんだが」

 

今日の朝、琴里から一緒に登校しろと指令を受けた(目がマジだった)のでこうして待っているのだが……来ない。そうして入り口を見ていると其処から、麦わら帽子をかぶっている少女がこちらに走ってきた。

 

 「士道……さん……!!おはよう、ございます……!!」

 

 「うん、四糸乃とよしのん、おはよう」

 

あれからというもの、四糸乃は人前でもはきはきと話すようになった。よしのんも一緒に練習しているらしく、会った時とは比べ物にならないくらい会話出来ている。

 

 「今日は……どうしたんですか……?」

 

 「十香が出てこないんだよな……知らないか?」

 

四糸乃も知らないとの事だったので、部屋に行ってみることにした。チャイムを鳴らすと、空いてるから入ってくれー!!と遠くから聞こえてくる。何があったのだろう。そして、部屋に入り十香の元へ向かうと……

 

 「シドー!助けてくれ……これが付かないのだ……」

 

其処には半裸の十香がブラジャーのホックを付けることが出来ずにあたふたしていた。なので、俺は見ないようにホックを付けてすぐさま部屋から出た。四糸乃も同様に手で目を覆っていたが隙間からちょっとだけ見ていた。可愛い。

 

 「助かったぞ……あれを付けないと見えてしまうと琴里に言われて付けようと思ったのだが……」

 

 「今度から前で止める奴にしてもらえ……俺からも言っておく」

 

四糸乃とマンションで別れ、今は十香と一緒に登校中だ。その道中でよく分からないがトラブルに巻き込まれているがそれを全て無視して学校に着いた。其処でも、トラップと思わしきものを全て無視して教室に向かった。

 

 

 「何やってんだ……小学生じゃあるまいし」

 

 「良いだろ~別に。お前らカップル越えて夫婦とか言われてるんだぜ?これぐらいいいだろ?」

 

黒板の日直の名前の欄に俺と十香で相合傘をしている絵が描かれていた。アホなのか馬鹿なのか……

 

 「夫婦?私達は結婚はしてないぞ?」

 

 「ああ、表現の仕方だよ……俺達が夫婦みたいに仲が良いからだろ」

 

朝から騒がしい日々になりそうだなと思いつつホームルームを受ける。担任の通称、タマちゃん先生が転校生を紹介した。何だろうか……すごい、ミステリアスな少女?女性?何か歳が違う気がしたが気のせいだろうと頭の片隅に追いやる。そうすると彼女は自らを精霊と言った、俺の方を見て。そして学校をあんなにして欲しいと俺を指名してきた。なんの意図があるんだ?

 

 「琴里……今、大丈夫か?」

 

 「大丈夫だよ~。どうかしたのか~?」

 

 「精霊が転校してきた……時崎狂三って知ってるか?」

 

時崎狂三……最悪の精霊、識別名<ナイトメア>。少なくとも、俺に何か悪意を持って接触してきていることはよく分かった。琴里からは私達のやることは変わらないけど……気を付けてと言われた。今は、質問攻めにあっているので心配はないが……鳶一折紙は睨みながらそちらを見ていた。今日、話を聞こうと思った。

 

 「ちょっといいか……屋上で話がしたい」

 

 「分かった……」

 

 「十香……狂三を見ててくれ。何か不審な動きがあったら帰ってきた時に教えてくれ」

 

それぞれにお願いをして教室を出て、屋上へ向かう。今は、昼休みなので弁当を食べながら話をする。

 

 「時崎狂三って……どんな奴なんだ?」

 

 「少なくとも一万人以上の人間を自らの手で殺している。それで、今日一人新しい隊員が入ってくる」

 

話を聞いていく……人殺しを好んで行う精霊。それが救うのに躊躇う理由になるか……彼女の事について少しでも情報が欲しかった。

 

 「私は……精霊を、殺す」

 

 「何でそこまで、恨むんだ?」

 

自分の両親が精霊によって殺されたこと。それを実行したのは、精霊<イフリート>であると……琴里からも聞いたが、妹は精霊<イフリート>である。妹がそんなことをするはずが無いし、あの時は泣いていたはずなんだ。

 

 「俺の妹が<イフリート>だったら……どうする?」

 

 「妹が<イフリート>?」

 

本人から自分が精霊である事。精霊になった時の記憶が無い事。あの時は、俺が泣きわめいていたところを見ていたことを話した。

 

 「あの時、動けるはずが無いんだ。俺と琴里は一緒に居た……だから、絶対にありえない。他に精霊が居る可能性があるんだ……心当たりはないか?」

 

 「他の……精霊……!!。あの時の……天使!!」

 

どうやら心当たりがあったらしい。

 

 「ありがとう、本当の事を見つけてくれて……」

 

彼女の笑う姿を見るのは始めてだった。やっぱり笑う姿が一番いい。

 

我は汝……汝は我……

汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

汝、皇帝のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

 「いや、いい。話が聞けて色々整理出来たしな」

 

 「……夜刀神十香の事を十香と呼ぶなら私の事も折紙と呼んで欲しい」

 

 「分かったよ、折紙……」

 

何かイケナイ感じになってないか?じりじり近づいて来てる……その時にチャイムが鳴った。ナイスチャイム!!

 

 「教室に戻ろう……遅れるから走っていくぞ」

 

教室に戻り十香に話を聞くと特に不審な行動は見られなかったという報告だったが。

 

 「何と言うのだ……感情を押し殺してるような……笑い方が作り笑いみたいな感じがするのだ」

 

純粋な十香だからこそ気づけたのだろう。作り笑い、人殺し。何か違う所がある。それを考えながら放課後、件の少女を案内する時間になった。

 

 「時崎さん?……案内します……」

 

 「狂三で構いませんわ。こちらも士道さんでよろしくて?」

 

インカムを一応付けているが、怖い。誘惑してくる彼女が怖い。少し体をこわばらせながら彼女を案内する。購買、保健室、屋上に連れて行った。その屋上で景色を二人で見ていると足を掴まれ、壁に追いやられる。

 

 「きひひ!!士道さん?少し油断しすぎではなくて?」

 

 「……………」

 

無言だ。俺は話すことなく彼女の瞳を見ていた。瞳は時計になっていて一秒ずつ確かに進んでいた。

 

 「わたくしは士道さんを”いただく”為に此処まで来たのですわ!高鳴りますわ!」

 

 「……………」

 

いただく、比喩表現でもなく食べるつもりなのだろう。色々勉強したから分かるが俺には霊力という不思議なパワーがいっぱいあるとの事。これから精霊を封印していく俺の霊力はどんどん増えていくとの事だ。それを狙っている狂三は何がしたいのだろうか。

 

 「士道さん?何か言ったらどうなんですの?」

 

普通の女の子にしか見えないはずなのに……こんなにも虚しいのは何故だろうか。どれほど罪を重ねても、貫こうとする意志が感じられた。その手を取ってはならないと思っているかのように。彼女が何をしたいのか分からないが、封印は後回しにした方が良さそうだと考えた。

 

 「………!!士道さん、何を、してらっしゃいますの?」

 

 「可哀想だなって、思った。俺を殺してでもやりたいことがあるんだなって分かった。でも、それは今じゃなくてもいいだろ?俺はこの後も精霊を救い続ける。最後の刻に俺と狂三で決着を付けないか?そうしたら、狂三は今の俺よりももっといいものが手に入って、俺にとっては狂三を封印できる。いいバトルだと思わないか?」

 

彼女を抱きしめながら呟く。彼女は笑いながらその言葉の答えを話し始めた。

 

 「きひひ……わたくしよりも頭が回っていらっしゃいましたのね……一本取られましたわ……その話にわたくしは乗りましょう」

 

 「それまでは、俺だけに連絡してくれないか?色々、バレたら面倒だしな……俺は精霊とか関係なく狂三を友人として視たい……こんなの、駄目かな?」

 

彼女と連絡先を交換した。彼女は最後に戦う、俺には俺の、彼女には彼女の目的がある。それを果たすためにはどちらかが犠牲にならねばならない。その期間を延長しただけだが、これで良いと思った。

 

我は汝……汝は我……

汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

汝、死神のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

 「友人、ですか……あの時以来ですわね。わたくしには友人と言うのはあまりいませんでしたから」

 

 「そうか?狂三ってお嬢様みたいだから結構友達と言うか、大人の人にも友人が居そうな気がするけどな」

 

少し話をして狂三と別れた。どう、報告しようか……琴里にはバレてはいないが本当の事を言うと、某ロボットアニメの二号機の人みたいにアンタバカぁ?って言われそうだからなぁ。

 

 「はぁ……どう報告しよう。困ったなぁ」

 

悩みながら帰路を辿っていると、路地裏に立っている少女が目に留まった。特徴的な泣き黒子とポニーテール。靴には血の様なシミが付いていた。

 

 「に……」

 

何か言おうとしてるな。何だろう?

 

 「兄様ー!!」

 

その後家で詳しく、お話をすることになった。彼女の名は崇宮真那。俺の妹を自称している、証拠は彼女が持っていたペンダントにある写真が物語っていた。確かに俺と思わしき人物が居るのだが、この歳ならばこの五河家に引き取られているはずなのだ。

 

 「確かに、俺の妹みたいな感じは……するかなぁ。一応、ご両親にご挨拶をしたいのだが……」

 

 「今は、全寮制の職場で働いてると言うか……帰りますね!!」

 

真那はそれを言った途端、逃げるように帰っていった。嵐の様だったと思い返す。そうしていると、琴里が狂三の報告を聞きたがっていたので、報告をする。

 

 「今は、封印は出来ないと思う。俺達の事も知ってたみたいだし、今は情報収集に徹した方が良いんじゃないか?」

 

 「報告ありがと。士道の言う通りね……彼女は後回しかしら」

 

その日は話し合いをして終わった。夜に狂三にデートの誘いを入れるとすぐに返事が来て、行きますと返信してきた。明日は開港記念日で休みなので、彼女の事を知る為にも一度くらいはデートをした方が良いだろうと思った。

 

 「待ったか……?時間よりも早めに出たんだが」

 

翌日、かなり早めに家を出た。服装はおしゃれを意識して眼鏡をかけている。まあ、バレないようにするためである。狂三も、髪を結ばずに眼鏡をかけていた。まさかの眼鏡被りである。

 

 「いえ、待っておりませんわ。士道さんも眼鏡をかけてきたのですわね……少し新鮮ですわ」

 

 「狂三も髪を下ろして眼鏡って、モデルさんみたいだな。まあ、とりあえず行こうか」

 

何となくデートと言ったらゲーセンである。ゲーセンで時間を潰した。UFOキャッチャーやシューティングゲームをやったのだが、全て狂三が一枚、上手だった。手さばきがプロの様で見とれてしまう。ゲーセンで時間を潰した後はよく分からないが、狂三の希望でランジェリーショップで狂三の下着を選ぶことになってしまった。こうなると引き下がれないので、しっかりと選んだ。狂三には黒が似合いそうだと思い、それを着てもらった所すごい、綺麗だった。語彙力が足りないと言われそうだが、とても綺麗だったのだ。それを購入した後、公園のベンチで二人で座って空を見ていた。

 

 「………平和でしたわね。こんな、戦いの無い日々を過ごせればいいのに……」

 

 「まあ、少しづつ考えていけばいい。答えは最後に聞くから、さ」

 

そう話していると、あちらの方から誰かが走ってきて辺りを見回している。よく見ると真那だった。

 

 「ここまで来てしまいましたの……」

 

 「まさか、狂三を狙って殺しているのか……狂三、此処で待っててくれ。話を付けてくる」

 

俺は少し落ち着いて、真那の方へ足を向けた。

 

 「真那?ここで何してるんだ?」

 

 「えっ?に、兄様?随分とイメチェンしていやがりますね……どっかのメイザースとは大違いです」

 

 「メイザース?……エレンさんの事か?」

 

何やら、真那はDEMに就職しているらしかった。まあ、社長と秘書と顔見知りの俺は知っているのはおかしいと思ったが。そうすると真那は精霊を探していたとの事……それは最悪の精霊、殺しても殺しても何処かに現れるのでそれを倒しに来たという。

 

 「で、兄様は何をしていやがったんですか?」

 

 「あそこに居る……(名前どうしよう……時子さんでいいか。)、時子さんとデートしてた。ちょっと休憩しようかって話してたんだ」

 

 「兄様はジゴロになりやがったのですね……矯正したいですが、まあ兄様と会える時間が分かったので今日は帰ります。此処には居なかったようなので」

 

我は汝……汝は我……

汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

汝、魔術師のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

 「そうか、じゃあ会社でまた会おうな。真那」

 

そうして、帰るのを見送って狂三の元へ戻る。

 

 「どうやって帰らせましたの?」

 

 「お前とデートしてるって言った。今の所、狂三は時子さんっていう人になってるけどな……名前が思いつかなかった、すまん」

 

その日はそれで解散した。帰ると妹が玄関に仁王立ちしていた。

 

 「お帰り、おにーちゃん。おめかしして、誰とデートに行ってたの?」

 

 「………友達と……デートに行ってました。精霊を救わなきゃいけないのに浮気してすいませんでした」

 

 「よろしい。さっさとご飯作って……十香がお腹を空かせて死にかけてるわ」

 

夕食を作って、その後の仕事を終わらせて自分の部屋に戻ろうとしたが、自分の部屋の隣に青い扉が出来ていることに気づいた。確か、イゴールが言っていた自らの足で来いと言う事が出来るはずだ。

 

 「ようこそ……我がベルベットルームへ」

 

 「自らの足で来ましたけど……」

 

 「貴方様に少し、お話したいことがありまして……」

 

話を聞くと、俺のペルソナは絆を深めていくとペルソナは変わっていくらしい。そして、俺も聞きたいことを聞く。

 

 「あの、ペルソナの武器って使えるんですかね?」

 

 「それに関しては私が……」

 

テオドアと名乗った男性が説明をしてくれた。一応、使えないことは無いらしいが実際は武器に宿して使うらしい。

 

 「まあ、うちの姉たちや妹がそんなことをしなくても直ぐに終わらせるんですがね」

 

 「そういえば名前をちゃんと聞いてなかったな……って」

 

名前を聞くと、一番上の人がマーガレット、エリザベス、テオドア、ラヴェンツァという順番だ。それ以外にも居るらしいが……

 

 「今の貴方様は、選択を迫られる時が近づいてきます……それまでに覚悟を決めておいた方が良いでしょう」

 

そしてベルベットルームから出た。覚悟を決める……選択を迫られる。それを頭の片隅に入れつつ、今後の事を考えながら眠りに着いた。

 

 「狂三……絶対救って見せる」

 

狂三だけは絶対に助けたいと思った。だけど、それは出来ないかもしれないと思う自分も居た。




クエスト Gift をクリアしました。
死神コミュ ナイトメアの開放と???の条件を一つ満たしました。
levelが30になりました。
魔術師 魔術師の妹、皇帝 エンジェルのコミュが開放されました。
魔術師、皇帝、死神のペルソナが召喚可能になりました。


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Star Festival & Utopia

番外イベント 七夕 が発生しました。
クリアするとコミュの開放と???の条件が達成されます。
隠しイベント Utopia が開放されました。
普通の難易度よりも高難度です。推奨レベルは30以上です。
選択肢を間違えると最初からやり直しになります。
クリアするとコミュの開放と???が仲間になります。


狂三と出会ってから一か月程度。何事もなく学校生活を行っていた俺は今日ぐらいは外に出ようと思い中心街を歩いていた。今日は七夕祭り、浴衣や屋台が並んでいる。俺には予定がなかったので一人で人々を眺めていた。

 

 「し……さ……?」

 

声が聞こえた気がして横を見ると狂三が居た。今回は普通の格好をして。

 

 「どうした?普通の格好で来るなんて珍しいじゃないか」

 

 「今日ぐらいは、いいでしょう?七夕ですもの」

 

 「そうだな……じゃあ、デートとしゃれ込むか」

 

我は汝……汝は我……

汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

汝、星のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

そうして、予定にないデートをすることになる。デートと言っても屋台を巡って食べ歩いたりプラネタリウムを見たりなどしただけだが。プラネタリウムでは乙姫と彦星について色々と談義になったがそれも面白かった。

 

 「士道さん……写真、撮ってみません事?」

 

狂三が行ったのは……結婚式場。俺たちの年齢では無理だと思うけどなぁ。

 

 「ちょっと待っててくださいまし。話を付けてきますわ」

 

その後ろを付いて来ている三人に気づかずに五河士道はその場所で待っていた。

 

 「シドーは狂三と何をしているのだ?」

 

 「でも……楽しそう、でしたね」

 

 「油断はできないわ……今は、士道が話しているけど暴れる可能性だってあるからこうやって尾行してるんだから」

 

数分待つと狂三がそこから出てきた。何て言ったのかは分からないが写真が撮れるようだ。俺も流石に緊張する……結婚式に着るスーツなど着たことが無いし、動きづらかった。

 

 「さあさあ、早く早く!!」

 

それはとても美しかった。早くと言われ、テレビでよく見る誓いの言葉を言う所に立っていた狂三はまさに花嫁だった。いつも着ている黒ではない対照的な白のウエディングドレスに身を包んだ彼女に俺は見とれてしまっていた。

 

 「士道さん……どう、でしょうか?」

 

 「すごく……似合ってるよ。見たことが、無いくらい、綺麗だ」

 

そして写真を撮った。一番、印象的だったのは二人で抱き合いながらのポーズだっただろうか、それとも別のポーズだっただろうか。どれも取る時の狂三の顔はとてもにこやかだった。その笑顔だけが俺の頭からこびりついて離れなかった。

 

 「写真、どうでしたか?士道さんも緊張なさってましたけど」

 

 「当たり前だろう……初めてだよ、結婚式場で写真を撮るなんて。まあ、狂三でよかったとは思うな」

 

顔を真っ赤に染めながら狂三がこちらを見てくる。あの時よりも感情的にはなっているのだろうか?それとも七夕だからだろうか?

 

 「士道さん、最後に願い事でも書きません事?」

 

狂三の言う通りに短冊に願い事を書く。今ある幸せが長く続きますように……と。これと空間震が無くなりますようにという願いも追加しておいた。そして掛けようと笹に手を伸ばしたところで見知った名前が見えたので願い事を見る。十香は今日の夕飯はカツカレーが食べたい。四糸乃はもっと話せるようになりたい。琴里は士道が使える人間になりますように。だけど黒く塗りつぶされているところをよく見ると士道と結婚したいと書いてあった。一応結婚は出来るけど……そこまで好きなのか?俺の事。と思いつつ、笹に掛け終わった。

 

 「あらあら、楽しそうな事をしてらっしゃいましたのね?わたくし」

 

 「狂三が二人?そういう事か……」

 

前、真那から聞いた何回殺してもまた蘇ってくることが分かった気がする。要するに分身が居るから何回も殺しても生きているのだろう。それで今日過ごしたのは分身体の狂三だったというわけだ。

 

 「別に殺そうとは思っておりませんわ。ただ回収に来ただけですわ」

 

 「そう、ですの……」

 

もしかしたら、時崎狂三が普通の人間であったならこういう人間だったのかもしれない。恋をしてみたくて、愛を感じたくて、今日この日に願いを書いたのだろう。彼女の願い事は士道さんと一緒に居られますように……この意味は狂三の敗北を意味してしまう。

 

 「狂三……また、会える。これを持っててくれ」

 

隠れて買っていた指輪を彼女の左手の薬指に付ける。安い指輪だが俺の想いが込められている。それだけでも意味があるだろう。ただの恋する乙女に、俺は思いを託した。

 

 「俺は忘れない……また、会える時まで付けていてくれ。それが俺の想いだ」

 

我は汝…… 汝は我……

汝、ついに真実の絆を得たり。

真実の絆……それは即ち、

真実の目なり。

今こそ、汝には見ゆるべし。

星の究極の力、ルシフェルの

汝が内に目覚めんことを……

 

 「なら、わたくしからも……これを」

 

渡されたのは先ほど撮った写真だった。現像してもらったのだろう。少し熱かった。

 

 「わたくしは忘れません。士道さんが思ったことを……」

 

そうして、影の中に消えていった、短冊を俺に託して。そうして本体の狂三も影に消えていった。俺はそれを出来る限り高い所に括り付けた、願いが叶うように。また、彼女に会えるように。

 

 「帰るか……カツカレーだったよな」

 

食材を買って、家に帰った。その日は皆、俺を励まそうとしてくるので何かしただろうかと疑問に思った。会えるのは先になるだろうけど、俺は前に進まなきゃいけない。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 「<凶禍楽園>は存続させなければならない……彼の為にも……彼が幸せになる為に私は……」

 

誰の声だ?でも、何か懐かしいような?

 

 「今だけは、いい夢を……」

 

待ってくれ!!まだ……

 

 「はっ……ゆ、め?」

 

 「シドー!!……シドー!!……」

 

夢から覚めると、十香が泣きながら抱きついてきた。何があったかあまり思い出せない。

 

 「また、死んでしまったのかと……思ったぞ……」

 

 「十香……琴里を呼んでくれないか。何があったか聞きたい……」

 

十香が下に降りて呼んできた。その後に四糸乃と令音さんも部屋に入ってきた。とりあえず何があったのかを聞いた。聞いていくうちにだんだんと思い出してきた……十香が霊力暴走を起こして、それを止めようと十香に近づいて屋上の壁に叩きつけられた……それで三日も寝ていたので皆心配していたらしい。実感はないが。

 

 「十香と同じく、四糸乃も暴走しちゃったのよ。おかげで、マンションの居住区格が氷漬けだからうちに住まわせることにしたわ」

 

 「りょーかい。……なんか、大事なことを忘れてる気がする?」

 

 「大丈夫?今のあなたは、直ぐに死んじゃうんだから……」

 

何故か精霊の力が失われているらしく、灼爛殲鬼が無い俺はただの一般人なので直ぐに死んでしまう。そのことではなく、他にもっと大切なことを、覚えてないと駄目なことを忘れている気がする……

 

 「………全然、思い出せん。とりあえずは体力を戻すことに専念するか……」

 

 「明日から、学校には行けると思うから。ちゃんと休んでおきなさい……倒れられたら困るから」

 

翌日、朝食を作り登校しようと玄関を出た。その時に知らない女の子を見た……いや、知っているはずなんだ。彼女は……

 

 「凜祢……おはよう」

 

 「!?……おはよう士道と十香ちゃん、琴里ちゃん」

 

我は汝……汝は我……

汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

汝、永劫のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

一瞬、驚いた顔を見た気がするが気のせいだろう。そうして四人で登校するが……見知らぬ建造物が見えた。何だったか……新、天宮タワーだっただろうか?あそこで「   」と話に……何を考えてる?俺は何を今、思った?”何度かこの世界を繰り返している”感じがした。記憶が断片的にあるのはどういう事だ?それを考えながら、登校した。

 

 「……………」

 

教室についてもそれを考えていた。何か”既視感”があるような……

 

 「士道?まだ、体調良くないの?」

 

 「いや、考え事してただけだ。良くはなったけど、無理は出来ないかな」

 

凛祢が顔を覗き込んでくる。凜祢という存在は俺のストライクゾーンと言うより、理想像の彼女なので此処まで顔を近づけられると恥ずかしい。

 

 「顔、赤くなってるよ?」

 

 「恥ずかしいだけです……見ないでください……」

 

それに気づいたのか、凜祢も恥ずかしがる。それを見た時、俺のハートにダイレクトアタック!!俺のライフはゼロになった。

 

 「……………」

 

 「……………」

 

お互い気まずくなる……その時にチャイムが鳴る、タイミングが良かった。そうして授業を受ける……顔をお互い見ることが出来ないまま昼休みになってしまった。

 

 「なあ、凜祢……屋上、行かないか?」

 

 「うん、分かった……」

 

何故か十香や折紙が止めることなく、屋上へ来ることが出来た。いつもなら俺にくっ付いてくるはずなのに……何か不思議だ。

 

 「とりあえず、朝の事を忘れよう。この後、非常に困るから……」

 

 「うん、そうだね。忘れよう……」

 

昼食を食べながら話す……俺は何となく、新天宮タワーを見ながら話を聞いていた。今までの事を振り返ってみると何か”都合が良すぎる”と思う。凜祢と一緒に居ようと思うとそうなる。誰かがこの世界を”操作”しているみたいに……

 

 「凜祢は……俺の事を、どう思ってるんだ?」

 

 「どうしたの急に……別にいいけど」

 

何となく聞いてみただけだと言って、答えを聞く。

 

 「私は士道が好き。大好き。誰よりも士道の事が好き。でも、私以外の人を選んだら私はそれを祝福する。十香ちゃんと結ばれたい、鳶一さんと子供を作ったり、四糸乃ちゃんと一緒に過ごしたり、琴里ちゃんと旅行に行ったり、時崎さんと交わったり……もちろん、誰も選ばなくても構わない。逆に、全員を手に入れたいっていうならそれも応援するよ。士道が幸せなら何でもしてあげる。士道が望むなら、私が何でも叶えてあげる。私は士道の幼馴染でも、恋人でも、妻でも、妹でも、姉でも、母でも、娘でも、上司でも、部下でも、敵でも、仇でも、他人でも、構わないの。―――士道が幸せなら、それで……ちょっと言いすぎちゃったかな?」

 

常人ならば聞いているだけで震えが止まらなくなる話だろう。でも、俺はそれが凜祢の想いなんだと思う。単純に俺の事を見てくれている、俺の事を案じている。そんな、凜祢が俺は……

 

 「そっか……じゃあ、両思いだな」

 

 「……?もう一回言って?聞き間違いかもしれないから……」

 

 「俺は、凜祢が好きだ。凜祢が思ってる事をちゃんと受け止めたい。まあ、それ以前に皆が迫ってくると思うけどな……十香とか折紙とかが」

 

それを話すと、凜祢がくすっと笑う。何となくそれは認めない!!って結婚する時に入ってきそうだなー、と言ってみた所。凜祢も笑い始め、二人で笑いあった。

 

 「ふふ……でも、私は士道の事を尊重するよ?皆をどうしたいの?」

 

 「最低な男って言われるかもしれない……だけど。俺は皆を選びたい。皆と一緒に居たいんだ……もちろん、凜祢も入ってるからな?お前がどっかに行こうとしたら絶対止めるからな?」

 

昼休みにそれを話したことにより、恥ずかしいものは取り払えただろうか。授業を終えて、今日の予定を整理する。確か、今日は何もなかったはずなので……凜祢とデートでも行こうかと思い凜祢を誘う。

 

 「凜祢……デートに行かないか?」

 

 「えっ?私でいいの?他の人じゃなくて?」

 

 「屋上で話しただろ……俺は凜祢が好きなんだ。デートに誘うのは普通だろ」

 

凛祢を誘う事に成功して、デートをする。まあ、ただウインドウショッピングをしただけなのだが。少し休憩しようと思って、公園にあるクレープ屋でクレープを買いベンチで食べる。

 

 「んーー、俺のクレープと凜祢のクレープ少し交換しないか?ちょっと恋人みたいな事してみたくなった」

 

 「いいよ、はい。あーん……」

 

やっぱりやってみると少し恥ずかしかったが、満足だ。凜祢にも同じように食べさせて残りのクレープを食べた。

 

 「士道、クリームが付いてるよ?ちょっと動かないでね?」

 

そうして頬をペロリと舐められた。これを”何度か”された気がした。……今、一瞬、狂三と凜祢が重なって見えた。俺はやっぱり何か忘れている。それだけは分かった。

 

 「ご馳走様でした。士道?どうしたの?」

 

 「こんな事されたの初めてだからさ……ドキドキした」

 

その後、買い物の続きをして一緒に帰った。まあ、五河家と園神家は隣なので夕飯を一緒に食べるのは当たり前であろう。帰ると空腹で今にも倒れそうな十香とそれをなだめている四糸乃とよしのん。椅子に座りながら飴を舐めている琴里が居た。リボンが黒だったが気づかれないうちに白リボンに変えた。

 

 「お帰り―二人とも。十香が死んじゃいそうだから早めにご飯作ってねー」

 

 「まあ、思った通りだったな。じゃあ、夕飯をちゃっちゃと作りますかぁ……」

 

凛祢も居たので、直ぐに夕飯を作ることが出来た。夕飯を食べ終わると凜祢は家に帰った。十香と四糸乃はゲームをしているし琴里は、飴を舐めながら雑誌を読み漁っているので部屋に戻ることにした。しかし、あの人たちに聞きたいことがあったので、ベルベットルームの扉を開けた。

 

 「お邪魔します……あれ?居ない……何だこれ?」

 

床には、ポエムが落ちていた。俺の黒歴史の一つとしてポエムがあるがこれは世に出しても恥ずかしくないどころか、有名になりそうなポエムであった。俺はそれを熟読して感動していた。

 

 「何処に落としたかな……あっ!!それ返して!!勝手に見て!!オタンコナス!!」

 

すごい勢いで奪い取られた。奪い取った彼女は、今までのベルベットルームの人とは違い服装が異なっていた。

 

 「君は?後、イゴールさんは何処に居るんだ?」

 

 「ああ、マーガレットが言ってた新しい人か。イゴールなら席を外してるよ。私はマリー。ベルベットルームの人間じゃないけど偶に此処に来る人だと思っておいて」

 

その少女、マリーはポエムを持っていたポーチに仕舞いこみ近くに会った椅子に座った。

 

 「君も、座りなよ。ちょっと話したいし……」

 

 「じゃあ、遠慮なく。後、ポエムすごく良かった。あれは世に出すべきだと思う。絶対」

 

その後はポエム談議で盛り上がったが、話がずれてるからと話題を変えた。

 

 「君さ、世界が変だと思ったりしなかった?」

 

 「少し変だなって思った。何か、世界を繰り返してるみたいな感覚があった……都合が良すぎるって言った方が良いのか?」

 

 「やっぱり……私みたいな人が居るんだね」

 

そうしてマリーは話し始めた。自分がシャドウと言う化け物であった事。それをペルソナ使いの仲間たちに救ってもらった事。

 

 「君は、その原因の子を救ってほしいの。私と同じ目に逢わせたくないから。君は特別な力を持ってる……奇跡を起こすことだってできるかもしれない。君の絆の力が君を助けてくれる。私を助けてくれたあの人もそうだったしね」

 

 「絆の力と選択。俺がしたいことを貫けばいいのか……?」

 

 「あの人なら全部やるって言って聞かないけど。君もそれが出来るんじゃないかな?」

 

全部やる。それを目標として動くことにした。

 

 「……やりたいことが分かったよ。ありがとう、マリー」

 

 「どういたしまして。偶に居るからポエム読んで感想聞かせて?」

 

 「了解。じゃあ、またな」

 

そうしてベルベットルームを出て、そのまま眠りに着いた。

 

 「何故?私の記憶がある?記憶はリセットしているはず……記憶の消去が不完全だった?それとも、私が不安定になりつつあるのか?」

 

昨日の……待ってくれ!!話がしたい!!

 

 「どうして?私は貴方を幸せにするために動いているだけ。貴方は永久の幸せを投げ出そうとするのか?」

 

違うっ!!幸せは嫌なことがあって幸福と感じられるんだ!!幸せしかないのは駄目なんだ!!

 

 「なら、貴方は幸せを求めないと言うの?」

 

いいや、求めるさ。皆が幸せになる為の道を俺が創る。だから、前に進まなきゃいけない。

 

 「……………」

 

だから、君も無理しなくていいんだ。君がやった事なんだろ?俺に何かして幸せにしようとしてる。でも、俺は十分幸せに過ごせた。だから、終わらせよう。

 

 「えっ?ゆ、め……凜祢?」

 

 「あれ?私、寝ちゃってた?」

 

今日は休みのはずだ。なのに凜祢が来るなんて珍しい。

 

 「今日は休みだろ?何でうちに来たんだ?」

 

 「何となく、士道と一緒に買い物に行こうかなって思って。琴里ちゃんがまだ寝てるから起こしていいよって言われてたけど……私も寝ちゃったみたい」

 

凛祢の顔には疲労が見えた。疲れていると言うか無理をしていると言うか……

 

 「時間は……まだ、7時じゃねぇか。なら、いいか……よっと」

 

 「え!?士道!?何するの!?」

 

 「凜祢、疲れてるだろ。少し寝てから行こうぜ、どうせお店も空いてないしな……そんな無理していく必要はないと思う」

 

そうして、凜祢を無理やり俺のベットに入れ込んだ。俺が手前で凜祢が奥という位置だ。彼女のいい匂いが香ってくる……なんだか眠くなってきた。

 

 「ふぁぁ……まだ、寝れるな。凜祢ちゃんと休めよ?俺が一緒に居るから、さ……」

 

 「うん、私も休む……ありがと、し、どう……」

 

それを聞いて眠りに着いた。其処では夢を見ないで寝れた。彼女は、俺の事についてどこまで知っているのだろうか。そうして、起きたのは数時間たった後だった。

 

 「ん……?抱きついて寝てちゃってたのか。結構、ホールドされてるし。時間もいいし、起こすか」

 

 「しどう……いかないで……わたしを……おいてかないで……」

 

寝言だと思うが、非常に怖い事を言っている。俺が離れる、か。何となくそんなことも可能性として考えてはいた。その可能性を消していくことが目標なのだが、心配させすぎた俺の失態だろう。

 

 「置いてかないよ……ずっと、一緒だ。凜祢……」

 

 「ずっと……いっしょ?しんじて……いいの?」

 

 「―――もう、離さないから。もう、絶対間違わないから」

 

何故か”聞いたことのある”言葉を話していた。誰から聞いたのかもよく分からない。でも、俺の言いたい事をいう事は出来たので問題はないだろう。

 

 「あれ……士道起きてたの?起こしてくれれば良かったのに」

 

 「うん?今起きたばっかだから……」

 

とりあえずは嘘を言っておく。あんな凜祢を見たことはなかった。いつもなら弱音を言わない凜祢があんなにも悲しい声で弱音を吐いたのだ。俺はそれを支えなければならない。

 

 「疲れは、取れたみたいだな。じゃあ、行こうか」

 

 「じゃあ、下で待ってるね」

 

着替えて凜祢と一緒に出る。凜祢が行きたいところに付いて行くことにした。まあ、彼女はショッピングが好きなのでそれについて意見を言っていくだけなのだが。そして、最後に人気のない給水塔で話をしようと言われた。何か嫌な予感がするので、ペルソナを出せる用意をしておく。一応、この銃は召喚器と言うらしい。

 

 「士道は、掛け間違えたボタンに気づいた時、どうする?」

 

 「直そうとする。でも、やろうとしたらどんどん綻びが出来ていく。それを元に戻したいけど戻せない。戻すのなら、全て終わらせるか、最初の様に戻すか、だな」

 

 「そう、だよね。ちょっと待ってて」

 

凛祢は奥の給水塔の方へ歩いて行った。最初からか終わらせるか。一般的な答えを言ったが俺はどちらも選択はしない。綻びを戻していく、それが俺の答えだ。

 

 「来たか……」

 

案の定、何者かが俺に攻撃を仕掛けてきた。其処に現れたのは、夢で出てきた人物だった。

 

 「貴方が幸せを否定した。なら、最初に戻すだけ……さようなら、五河士道……」

 

 「オルフェウス……」

 

攻撃してくるものをペルソナで打ち消す。思ったより威力が高く、ダメージを受けてしまった。

 

 「くっ……前に進むだけなんだ!!俺は、幸せを否定してない!!」

 

 「この<凶禍楽園>は貴方を幸せにするための物。其処から出ると言うのであれば幸せを否定したことになる……」

 

 「現実にだって!!幸せはある!!ここだけで掴んだ幸せは本当の幸せじゃないっ!!」

 

そうして、彼女はこう、言った。

 

 「なら、私を倒してみて。そうすれば、此処から出られる……【無へと帰す者】……これを使った私に貴方は、勝てる?」

 

そうして何処かへ消えていった。正体は分かった。後は、マリーの話を信じてやってみるだけだ。

 

 「シドー!!大事ないか!?」

 

 「十香……それに皆。大丈夫だ、皆も気づいたのか」

 

 「ええ、一応、霊波が観測されてたの。日を追うごとに不安定になって行って……今の状態で爆発したら日本という島国が吹き飛ぶくらいの威力があるわ」

 

不安定になっている。俺がイレギュラーな事をしでかしたから、それと俺が接触したから、それが原因だろう。

 

 「折紙も協力してくれるのか?」

 

 「緊急事態。それに士道が困っているのなら助けたい」

 

 「狂三?いいのか?霊力使っちゃうけど……」

 

 「別に構いませんわ……そういう”約束”でしょう?」

 

こそこそと狂三と話す。それを不思議そうに見つめる二人、怪訝そうに見つめる二人に当てられた俺は話を変える。

 

 「とりあえず、こんな景色になっているのはさっきの奴のせいだ……何て言ったらいい?「ルーラーよ」……じゃあ、ルーラーは俺を管理して、この世界を繰り返そうとしてた。だけど俺がそれを壊したからこうなったみたいだ。俺はそれを止めたい。協力してくれるか?」

 

全員頷く。そうして、俺は”知っていた”事を話す。

 

 「あそこに行くには、三か所の要を壊さなきゃいけない。神社と住宅街と新天宮タワーのモニュメントだな。そうしたら、タワーに入る。でも、其処には守護者が居るはずだから戦闘は避けられない……だから皆にそれを任せたい。後は、俺が決着を付けてくる」

 

 「私達が付いて行かなくて大丈夫か?シドー?」

 

 「俺がされた落とし前は俺が付ける。皆は知らないと思うけどな……俺がどれだけ失敗したかなんて」

 

そう、全て思い出した。忘れていたことを。あの時、間違ったことを。

 

 「じゃあ、俺達の戦争を始めよう……」

 

狂三、折紙、四糸乃は要の破壊に、十香と琴里は、タワーの守護者を倒しに行った。俺は階段を上っていく……しかし、其処には俺が出会っていない敵が待っていた。

 

 「此処にも守護者!?やるしかないのか……時間がないのにっ!!」

 

士道さん……貴方様の、思い。私が手助けいたしますわ

 

 「ありがとう……狂三。来いっ!!ルシフェルッ!!」

 

それは巨大な天使。俺が絆を深めたことで出来たペルソナで……

 

 「……明けの明星……!!」

 

それを唱えれば辺りは光に包まれ、敵は消し炭となった。先に進むにつれて敵は増えていくがルシフェルを使い消し炭にしていく……そして、最上階に着いた。

 

 「やっぱり来たんだね……士道」

 

 「はぁ……はぁ……流石にこんなに敵が居るとは、思わなかった」

 

ルーラーの正体は、幼馴染の園神凜祢だった。そんなことよりも、俺は聞きたいことがあった。

 

 「なあ、俺は今回で”何回目”だ?」

 

 「今で100回かな……それも気づいてたんだね」

 

繰り返す。そのトリガーは俺が”死ぬ事”。何故なら灼爛殲鬼が無いからである。それが引っかかる理由であった。

 

 「でも、もう遅いよ。【無へと帰す者】を使っちゃったし……この世界は終わらない」

 

 「いや、俺は終わらせる。やり方は分かってるからな……」

 

そうして、キスをした。拒まれると思ったが拒まれなかった。

 

 「……この<凶禍楽園>は私の意志に関係なく動くの。だから、もう誰にも止められない……」

 

 「凜祢……お前って、もしかして……”霊力で出来た存在”なのか?」

 

彼女は沈黙で返してきた。要するにイエスと言う事だろう。何故なら彼女は消えかかっているからである。楽園は止まらず彼女は消える。そんなことを認めたくはないんだ!!

 

 「士道……もう、会えないかもしれない。だから、言うね。士道の事、ずっと好きだったよ……」

 

 「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!」

 

こんな所で、諦めるかっ!!

 

―君なら奇跡を起こせる。君は特別だよ―

 

 「メサイアッ!!」

 

俺のペルソナ、オルフェウスが奇跡を起こす者<メサイア>に転生した。これなら……

 

 「凜祢!!俺の手を取れっ!!ずっと一緒に居たいんだろっ!!なら、一緒に居ようっ!!」

 

 「居たいよ……もう、離れたくないよ……」

 

凛祢の手を取った時、世界は白く塗りつぶされた。俺は絶対にその手を離さないで引き寄せた。

 

 「……戻ってきた?のか?」

 

 「……あれ?私、生きてる?」

 

気づいたら高台に居た。彼女、園神凜祢も一緒に。

 

 「成功、したのか……っ……」

 

 「士道!!……無茶ばっかり……自分も大切にして」

 

緊張から解けて、膝を付いてしまった。奇跡を起こす……それが実現できた。俺は、凜祢を救い出すことに成功したのだ。

 

 「良かった……本当に。凜祢を助け出せて」

 

 「士道は、奇跡を起こしたんだね。自分の意志を貫いて……そのおかげで大切なことに気づけた。私の考えてたことは間違ってたみたい」

 

 「人は間違いを知って次に生かす。凜祢もそうすればいいさ。もう、間違わないように」

 

我は汝…… 汝は我……

汝、ついに真実の絆を得たり。

真実の絆……それは即ち、

真実の目なり。

今こそ、汝には見ゆるべし。

永劫の究極の力、カグヤの

汝が内に目覚めんことを……

 

 「迎えが来たみたいだな。皆に自己紹介しないと……駄目じゃないか?あっちの事は皆知らないんだろ?」

 

 「そうだね……どう、自己紹介しようか?」

 

 「……幼馴染ですみたいな?いや、インパクトに欠けるか……」

 

二人で話し合った結果、士道の彼女ですに決定した。

 

 「おっ……転送されたな。てことは、来た来た。凜祢は見るのは初めてだよな?琴里の黒リボンモード」

 

 「黒リボンだ……何が違うのかな?」

 

 「見れば分かる……」

 

そうして、俺の鳩尾に某仮面ライダーの様なキックを仕掛けてきたので足を掴んでからお姫様抱っこの形にして下ろす。

 

 「ちっ……読まれたか。勝手に居なくなって何してるのよ?」

 

 「此処では、そうなってるのか……まあ、精霊を封印してきた」

 

 「はぁ!?精霊を封印したの!?」

 

ほら、自己紹介。と凜祢に進める。

 

 「士道の幼馴染の園神凜祢です。関係は、士道の彼女です」

 

 「えっ?色々、よく分かってないのだけど……」

 

 「知らなくて当然だ。お前らは忘れてるんだからな。忘れたままでいいけど……」

 

そこで奇跡を起こした俺は、次も頑張ろうと思ったのだ。




番外イベント 七夕 をクリアしました。
星コミュ 恋するナイトメアの開放と???の条件を一つ満たしました。
星コミュが最大になったので、ルシフェルが召喚可能となりました。
 狂三の写真 を入手しました。
効果 どんな即死攻撃でも体力を1残す。 (食いしばり)
隠しイベント Utopia をクリアしました。
永劫コミュ ルーラーの開放と園神凜祢が仲間になりました。
永劫コミュが最大になったので、カグヤを召喚可能になりました。
愚者 オルフェウスから審判 メサイアに転生しました。
星、永劫のペルソナを召喚可能になりました。
第2章 Daily Life が開放されました。


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第2章 Daily Life
Tempest Island……


これまでのコミュ

愚者 フラクシナスの船員達 Rank1

魔術師 崇宮 真那 Rank1

女教皇 本条 二亜 未開放

女帝 夜刀神 十香 Rank2

皇帝 鳶一 折紙 Rank1

法王 エリオット・ポールドウィン・ウッドマン 未開放

恋愛 誘宵 美九 未開放

戦車 夜刀神 天香 未開放

正義 五河 琴里 Rank1

隠者 氷芽川 四糸乃 Rank1

運命 鏡野 七罪 未開放

剛毅 エレン・M・メイザース Rank2

刑死者 八舞耶倶矢 八舞夕弦 風待 八舞 未開放

死神 時崎 狂三 Rank1

節制 星宮 六喰 未開放

悪魔 アイザック・レイ・ペラム・ウエストコット Rank2

搭 日下部 遼子 未開放

星 分身体 時崎 狂三 Rank Max

月 アルテミシア・ベル・アシュクロフト 未開放

太陽 或守 鞠亜 或守 鞠奈 未開放

審判 万由里 未開放

永劫 園神 凜祢 園神 凜緒 園神凜祢のみRank Max

世界 崇宮 真士 未開放

道化師 蓮 未開放

信念 五河 士道 (シャドウ) 未開放

顧問官 村雨 令音 Rank1

所持ペルソナ

審判 メサイア 

星 ルシフェル

女帝 ヤクシニー

悪魔 リリム

剛毅 ヴァルキリー

第一章をクリアしたので、<天使召喚>が可能になりました。対象(鏖殺公、氷結傀儡、灼爛殲鬼、凶禍楽園)
クエスト Tempest が開放されました。
クリアするとコミュの開放とアイテムが入手出来ます。


あの奇跡を起こしてからかなりの時間が経った。凜祢の事を説明し、彼女を高校に転入。そして、十香にテスト勉強を教えるなど……少し、忙しかった。テストが終わると修学旅行の話になった。行き先が沖縄から、或美島に変更になったという。

 

 「或美島……結構近いな。観光地だし」

 

 「でも、急に変更になる物かな?誰かが裏で手を引いてるみたいな……」

 

班決めや部屋割りをするために皆で話し合っているのだが……班は凜祢と十香、折紙、狂三。部屋は俺だけ一人部屋になっている。どうしてかって?男子どもが俺をハブったからさ!!

 

 「まあ、いいか……一人の方が落ち着くし」

 

 「あはは……士道に寄ってくるから仕方ないかもね」

 

その日はそれで終了した。その後、家に帰ると飴を舐めながら唸っている妹、琴里と令音さんが資料を見て会議をしていた。

 

 「何やってるんだ?……会議もほどほどにしろよ。後、修学旅行先が変わったんだが……或美島に行くことになった」

 

 「場所が変わったの?変ね……」

 

どうやら、沖縄の宿が崩落したらしくうちの高校は困っていたところクロストラベルから声が掛かったと言う話だ。クロストラベルはDEM社の傘下なので、多分、エレンさんが来ると思う。

 

 「DEM社?きな臭いわね……あそこは精霊を実験に使う所だからあんまり行かせたくはないわね」

 

精霊を実験に使う。裏でそういう事をしているのだろうか。明日は休みなので、行ってみることにすると決めた。

 

 「大丈夫だろ。何かあったら、俺と凜祢で対処するし……フラクシナスでも来るんだろ?」

 

 「そうなんだけど……私が行けないのよ。その日は円卓会議があるから……」

 

 「それは私が対処しよう。副司令にも言っておく」

 

まあ、どうにかなると言う精神を持って寝る準備をしていると凜祢が部屋に入ってきた。本当なら、マンションの方に自分の部屋が出来ているので普通は自分の部屋で寝るはずだが。

 

 「士道……今、いいかな?」

 

 「別にいいけど……どうしたんだ、急に。何か、怖いぞ?」

 

じりじりと迫ってきて、俺はベットに押し倒された。彼女も寝間着に着替えているのだが色っぽい雰囲気が漂っている。そういえば、部屋に入ってきたとき鍵を閉めたような……

 

 「ねえ士道……私の事、好き?」

 

 「お、おう。好きだぞ……なあ、凜祢?どうして服を脱がしてるんだ?折紙みたいで怖いぞ……」

 

 「私、我慢できないの……だから、士道……」

 

その流れに身を任せて彼女と肌を重ねた……今思うと、皆と一緒に居ると言う事はこういう事をする可能性がある……最初が、凜祢で良かったと思う。

 

 「士道……嫌じゃなかった?」

 

 「別に……俺も経験出来て良かった。皆とこういう事するかもしれないしな……もう一回いいか?」

 

その後、俺が何回もやってしまった……寝不足になったのは言うまでもない。一緒に部屋から出てきたときの妹は泣いていた。ありえない……そんなことを言いながら泣いていたのだ。理解は、出来なかったが。

 

 「シャワー入ってくる……泣くなよ琴里。俺達も成長してるんだ……」

 

 「あ、私も入る……」

 

二人でシャワーに入った……やっぱりやる事やると心が強くなるみたいだなと思う。その後、DEM社に行った。食堂に、真那が居たので話しかけた。

 

 「真那、遊びに来たぞ」

 

 「あ!兄様!遊びに来てくれやがったんですね!!」

 

食堂でかなり話し込んだと思う。自分の事や会社の事など……真那は色々話してくれた。俺から話すことはあまりなかったと思う。

 

 「あ、仕事みたいですね。じゃあ兄様、また……」

 

 「おう、行ってらっしゃい」

 

そうして、受付の人に社員証を見せると社長室へ案内された。一応、ノックをして扉を開けると……奥に座っているのが見えた。

 

 「やあ、来てくれて嬉しいよ……」

 

 「まあ、ちょっと話したいことがあってきたんですけど……」

 

隣には、エレンさんが書類を片付けていた。すごく、汗をかいて。

 

 「良かったらどうぞ……」

 

俺が持ってきたお菓子を食べながら話をした。やっぱり、DEMでは顕現装置の開発を行っているらしい……聞いていると人間を実験するような事ばかりだと思った。深く聞いていくと、精霊についても何かしようとしているらしい。俺がそれを知っていることも知られていた。

 

 「ああ、そういえば……修学旅行にエレンが付いて行くから仲良くしてやってくれ」

 

 「やっぱり……エレンさんが苦手な子居ると思いますよ……」

 

 「気を付けます……」

 

そうして会社を後にした……

 

 「彼も気づき始めている、か……彼は少なくともこちら側を理解しようとしている。だからあまり殺さないように……頼んだよ、エレン?」

 

 「分かっています。彼と<プリンセス>を捕獲してきます」

 

その二人の会話に士道は気づくはずもなく……

 

 「明日から修学旅行、か……何も起こらないで欲しいけど」

 

その日は直ぐに寝た。次の日の早朝、空港に集まった俺達は飛行機に乗り或美島へと到着した。

 

 「シドー……何か、誰かから見られている気がするのだ」

 

 「見られてる?……監視してるのか……また、変だったら教えてくれ」

 

そうするといきなりフラッシュが目の前を覆う。まあ、案の定エレンさんだったが。

 

 「カメラマンで来たんですか?案内の人でもいいと思いますけど……」

 

 「自分から言ったんです。カメラにしてくれと……」

 

よく分からないが確固たる決意を感じた。あの時の事を見たからカメラマンの方が向いていると俺も言っただろう。

 

 「む?知り合いか?」

 

 「ああ、俺の知り合いだよ……じゃあ、エレンさん。また……」

 

そう言って離れたのは良いが……思いっきりはぐれた。凜祢は居るのだが、十香が先に走っていたので折紙と狂三とはぐれてしまい、集合場所の資料館から離れてしまった。

 

 「凜祢?誰かから見られてる感覚とかあるか?十香が見られてるって言ってるんだが」

 

 「見られてる?……ちょっとあるかも。後、機械みたいな音がするなぁって」

 

凛祢は気づいているようだ。俺も確信が無かったので言えなかったが人ではない何かに見られている。それと人もいる感じもした。誰かが俺達に何かしようとしていることは明らかだった。

 

 「……風が強くなってきたな。早く戻らないと」

 

 「うん……ちょっと強いね。十香ちゃんも満足したと思うし……」

 

そうして十香を連れて資料館へ向かおうとした時、急に風が強くなり飛ばされたゴミ箱に当たりそうになったところを十香が庇って気絶してしまった。

 

 「お、おい!!十香!?しっかりしろ!!」

 

 「待って、士道。こっちに何か来る!!」

 

目の前に嵐が降りてきた……俺達は地面に這いつくばりながらそれを耐えると、その中心から二人の少女が現れた。拘束具とバンドで体を巻きつけている……世間的に言うと被虐快楽者と呼ばれる人だと思った。とりあえず立ち上がり近づこうとすると、風が巻き起こり近づく事が出来ない……

 

 「士道……あの子たちさ、精霊だと思うんだ。だから……」

 

 「任せろ……俺達が、助け出す」

 

 「じゃあ、行くよ?来て、<凶禍楽園>……」

 

結界が形成される……その中で自由に動けるのは俺と凜祢だけの世界になる。俺と凜祢が世界のルールだ。風が二人に纏わりつき突進し始めた。

 

 「待、てぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 

その声で、二人は動きを止める。と言うよりも動けないと言った方が正しいか。

 

 「……!?動けない!!なんで……」

 

 「驚嘆。指先すら動かせません」

 

 「よしよし、成功したみたいだな……凜祢?少し弱めていいぞ」

 

そうしてよく分からないが彼女ら……八舞耶倶矢、八舞夕弦は何度目かの現界で二人に分かれてしまった……なので、元に戻る方法として人格を一つにしなければならないので戦いで決めようと言う話になったらしい。今回で100戦目になるらしいが……俺を裁定者とした魅力対決と言う話になったのだが。

 

 「あのさ……俺、彼女居るから……選べない」

 

 「え?マジで?」

 

 「疑問。本当ですか?」

 

はい、本当です。俺の後ろに居る人がそうです。と説明した。だが、魅力対決は行う事になった。二人と気絶した一人を抱えて資料館へと向かった。まあ、皆は誰?ってなったが令音さんがどうにかしてくれた。

 

 「どういう状況だい?<ベルセルク>を連れてくるなんて……」

 

 「あー、目の前に嵐が来て……二人が居たと言うか……」

 

今さっき、起きたことを話した。しかし、この島からフラクシナスに通信が出来ないとの事。ジャミングがこの島全体に掛かっているらしい。なので、令音さんがサポートに回ると言ってきた。令音さんは相手の心をうまくつかんで二人を連れて行った。

 

 「疲れたぁ……温泉入りたいなぁ」

 

 「ホテルに温泉あるみたいだし、荷物置いたらすぐに入ったら?」

 

 「そう、だな……そうする……」

 

ホテルに入り、自分の部屋に荷物を置いて大浴場に入る。一応、ホテルに入った時から自由時間なので別に長風呂をしてもいいだろう……誰も居ない温泉で一人湯船に浸かる。段々、眠くなってきた……

 

 「ふぁぁ……」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 「士道、大丈夫かな?まだ、温泉に浸かってるのかな?」

 

 「シドーも疲れているのだろう。今日は休ませてやろうではないか!!」

 

私達は暖簾をくぐり温泉に入った。体を洗って、湯船に浸かった……だけど、何か人影が見えた。

 

 「し、士道!?って寝てる……」

 

 「む?シドーが居るのか?……寝ているのか」

 

このホテルは暖簾が時間で入れ替わる。寝てしまって暖簾が変わっていたことに気づいていなかったのだろう。

 

 「おおー!!結構広いねー」

 

 「はしゃぎすぎも良くありませんわ」

 

ぞろぞろと女子生徒が入っていく……そして、士道に気づく、が。

 

 「あれ、五河君?寝てるし……そういえば、時間で変わるんだっけ。気づかないで寝てたんだなー?寝顔可愛いじゃん」

 

 「…………」

 

 「鳶一さん?あんまり触ると起きちゃうよ……」

 

士道は起きない。ぐっすりと眠っている……でも、こんなに湯船に浸かりながら寝てたらのぼせちゃうんじゃ。

 

 「……え!?士道……寝てる。皆に囲まれてるけど」

 

 「困惑。此処は女湯では?」

 

 「士道が寝てて気づかなかったみたい……だけど、全然起きないの」

 

何でだろう……よっぽど疲れてたのかな?

 

 「……も、う、無理……」

 

そう言って士道は倒れた。寝言なのだろうが何が無理なのだろうか?

 

 「ちょっとやばいんじゃないの!?」

 

 「シドー!?大丈夫か!?」

 

 「とりあえず引き上げましょう……」

 

彼が服を着せられ、部屋に運ばれるのに時間はあまりかからなかった。彼はまだ眠っている。その日は目覚めることはなかった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 「……ん?いつの間に朝になってるんだ?俺って温泉で寝たはずじゃ」

 

 「すぅ……すぅ……」

 

 「くぅ……くぅ……」

 

俺のベットには耶倶矢と夕弦が俺の手をがっしりとホールドしている。いつの間に来ていたのだろう?隣のベットには凜祢と十香が寝ている……前のソファーには折紙と狂三が寝ていた。皆、起きない俺を見ていて寝てしまったのだろう。とりあえず、起きることにした。

 

 「起きろ……おーい……」

 

俺の腕をホールドしている二人に突く。何か段々力が強くなってきた……う、腕がもげ、るっ!!

 

 「痛い……二人とも起きてるだろ。力の掛け方がオカシイよ」

 

 「気づいてたの?あんまり力は入れてないけどさ」

 

 「賞賛。この力で分かったのはすごいです」

 

二人が起きると、周りも起き始める。俺以外を自分の部屋に帰らせて、着替える。そうすると電話が掛かってきた。相手は令音さんだった。用件はあの二人の精霊を封印する方法だった。彼女らは一つの人格を残そうとしている、要するにどちらかが死ぬと言う事だ。それを止める為には同時に封印する……同時にキスをしてくれと言う事だった。で、俺は裁定者なので、令音さんがインカムで指示を飛ばすのでデレてくれと言う事なのだが……

 

 「分かりました……で、何処でやるんです?」

 

 「今日は自由時間だから……海でやろうと思っているのだが。彼女たちの水着姿にも慣れてもらう事も兼ねている」

 

海と言う事なので、水着を持って海岸へ行く。着替えて海岸へ行くとエレンさんが砂に埋もれていた。見ないようにして奥へ進んだ。

 

 「…………」

 

海を見るとなんだか”懐かしい”気持ちになる。誰かと来て遊んだ気がする……すごい昔に。

 

 「士道!!どう、かな?」

 

 「あの時の水着か?似合ってるよ」

 

凛祢は凶禍楽園に居た時の水着を着ていた。彼女のイメージカラーのピンクはとても似合っている。

 

 「何かなぁ……考えちゃうんだよ。二人が争わなくていい方法をさ……二人を同時に封印すればいいけど、そこまでの過程が難しいなって」

 

 「でも、私を助けてくれた時の士道はとってもカッコ良かったよ?あんな風にやってみたらどうかな?」

 

話題は件の精霊、耶倶矢と夕弦姉妹の話になる。方法は、同時に封印する……だがその前の過程までどうやって持っていくか。それが難しいのだ。

 

 「あいつ等に顔でバレるか……忘れよ」

 

 「今は、考えなくていいんじゃないかな?それは士道が決めること、私が言える立場じゃないし」

 

話を後回しにして目の前のイベントに意識を向ける。よく分からないがビーチバレーになっていた。チームは俺と耶倶矢、夕弦。相手は十香と折紙、狂三だ。審判は凜祢と令音さんだ。まあ、結果的に言うと狂三がボールを全部取って折紙と十香が思いっきりスパイクしてきて全部俺に当たって死にかけてたんだけど……

 

 「いっつ……いくら灼爛殲鬼があるからって、こういうのには弱いな」

 

 「あはは……私から見ても痛そうだったしね。酷かったら私がどうにかするから言ってね?」

 

今は、トイレがある場所で休憩している。流石にあれだけのボールを受けたので休むことが出来た。いまだに鈍痛がするが……

 

 「あ、士道……ちょっといい?」

 

 「話し方はどうした?俺はそっちの方が良いけど」

 

 「え?……あれは、威厳を保つためにやってるの!」

 

話を聞いていくと、夕弦を選べと言われた。その後に来た夕弦は、耶倶矢を選べと言われた。どちらも、相手の事を思っている……だからと言って自分が犠牲になる事なんて、俺は許容できない。そして、選ばないと皆を吹き飛ばすと言ってきた。

 

 「なんでこうなったかな……何でこういつも、自己犠牲にするんだ……」

 

聞いているだけで怒りたくなる。どうやったらその考えになるんだ?

 

 「士道は覚悟は、決まった?」

 

 「ああ、やりたい事が決まったよ……俺は二人を救う。絶対に」

 

この日の夜に大体決めたい。二人には今日の夜に海に来てくれと言った。

 

 「よし……納得してもらえるかな?」

 

そうして、部屋を出ると十香が部屋の前で待っていた。

 

 「シドー……少し歩きたいのだが。いいか?」

 

 「俺も歩くつもりだったから……行こうか」

 

少し離れた海岸で、話をしながら歩いた。

 

 「シドーは、助けるのか?」

 

 「ああ、俺は二人を助ける。どっちかを選ぶなんて俺は嫌だ」

 

後ろに耶倶矢と夕弦が居た、その会話を聞いてらしく戦いになってしまった。

 

 「やめろ!!俺は、お前たちを!!……」

 

叫ぶがもう、届かない。どうしようと思っていると奥の森から機械の人形と共に見知った顔が見えた。

 

 「私の本当の顔を見せることになるとは、思いませんでしたが……私は貴方を傷つけるつもりはありません。貴方は私の友人ですから」

 

 「要するに、俺と精霊を連れていきたい……そういう事ですね?」

 

 「ええ、だから……抵抗しないでください。アイクからもそう言われていますから」

 

せめて、十香だけは逃がすことが出来るように、俺は話す。 

 

 「なら、俺は闘いますよ……貴方が最強なら、俺は貴方を越える最強になりましょう。この力を使って……!!」

 

凶禍楽園を展開。そして右手に願う……皆を守る為の力を。そして左手に召喚器を。

 

 「<鏖殺公>……ペルソナッ!!」

 

 「……!!やっぱり、貴方は面白い!!」

 

エレンさんが攻撃してくるのを鏖殺公で受け止めて、ペルソナ……メサイアで攻撃する。

 

 「ルシフェル……!!」

 

ペルソナを変えつつ、体勢を変えて攻撃する。鏖殺公で上段、下段と切り込む。

 

 「灼爛殲鬼……ヤクシニー!!」

 

武器を斧に変え、ペルソナも変える。このままだと、決着がつかない。どうすれば……

 

士道さんは……私が助けます……!!

 

 「モスマンッ!!」

 

士道さん、約束を果たすまでちゃんと生きてくださいまし

 

 「サマエルッ!!」

 

私のおにーちゃんはこんなところで諦めない……でしょ?

 

 「ヴァーチャーッ!!」

 

士道が困っているのなら手を貸す……私を助けてくれたから……

 

 「キングフロストッ!!」

 

兄様、手を貸しやがります……

 

 「ジャックランタンッ!!」

 

私達は士道君をサポートしますよ……絶対に手を貸します

 

 「ジャアクフロストッ!!」

 

シン、君はやるべきことをやるといい……

 

 「デカラビアッ!!」

 

連続でペルソナを変えながらの攻撃は思ったよりも効いている……なら!!

 

士道……私の力を、使って……

 

 「カグヤァァァッ!!」

 

最後のペルソナ、カグヤによってとどめをさせたと思う。お互いボロボロだ。

 

 「やっぱり予想以上ですね……まあ今回は諦めましょう。意外な収穫もありましたし」

 

 「なら、会社で決戦の続きですかね?それでもいいですけど」

 

 「ふふ、そうですね。そうしましょう……」

 

彼女、最強の敵。エレンは去っていった。

 

 「シドー!!すごいな!!私よりもバーン!!とかガーン!!とかやっていたな!!すごいカッコいいぞ!!」

 

 「そうか……なら、二人を止めないとな?一緒に着いてきてくれるか?」

 

 「もちろんだ……しかし、何故、鏖殺公をシドーが持っているのだ?」

 

多分、封印したからだと思われる。どんどん封印していくと他の天使が使えるようになっていくのだろうと思う。そんなことを考えながら二人が見える場所に移動した。或美島はもう、嵐に覆われていて海は荒れ、空には二人が槍とペンデュラムを使い戦っている。

 

 「どうしたらいいんだ……俺は、何が出来る?」

 

 「シドー……鏖殺公を振え。シドーの想いに答えてくれるはずだ」

 

狂三が前に言っていた気がする……天使は心を映す鏡の様な物だと。なら、俺の願いを……

 

 「<鏖殺公>!!<最後の剣>!!……メサイアッ!!」

 

鏖殺公の最大火力である最後の剣にペルソナ、メサイアの力を纏わせそれを振った。それは海、空、大地を削った。

 

 「何、今の……すごい霊力だった」

 

 「驚愕。誰がやったのでしょう?」

 

 「お前ら!!もう、やめろっ!!俺は、お前らの裁定者を!!降りたつもりは無いっ!!俺が選ぶのは、二人だ!!二人が殺し合う姿なんて見たくないんだっ!!頼む!!俺を……信じてくれっ!!」

 

二人に叫ぶ。俺の言いたいことは言えたが、彼女らに伝えられただろうか。

 

 「ねえ、夕弦?士道、信じてみる?」

 

 「……私も、士道を信じてみたいです」

 

それは一緒に生きたいという答えだった。俺はそれに答えた……だが、其処には大きな船が見えていた。隣にはフラクシナスが居たので攻撃をしていたのだろうと思う。せっかくのいい雰囲気を邪魔されたことに腹が立つ。

 

 「十香……二人を見ててくれ。ちょっと片付けてくる……」

 

ペルソナ……それをうまく使えば空を飛べる。船の前に着き、それを唱える。

 

 「邪魔すんなよ……ルシフェル、明けの明星……!!」

 

最大火力で撃ったので船は塵も残さずに消えた。少しやり過ぎたかと反省する……下に居る三人の元へ戻る。そうするとよく分からないが賞賛されまくった。その話が終わった後耶倶矢と夕弦に体を引っ張られ、森の奥へと連れていかれた。

 

 「で、どうやって私達を生かすの?」

 

 「じゃあ、二人とも、目を瞑ってくれ」

 

そうして二人同時にキスをした。二人同時という体験はもうないだろうと考えつつ、服を着せてホテルに戻った。案の定、皆から心配はされた。服はボロボロで体からは出血が見られたので騒ぎにはなったが……令音さんがどうにかしてくれるだろう。

 

 「終わった、と思って良いのかな?」

 

 「終わりましたよ……ちょっと無理しましたけど」

 

 「そうか……今日はゆっくり休むといい。明日で帰る予定だ」

 

そうして、その日は直ぐに眠りに着いた。次の日は俺の隣の席を取り合いに参加し始めた耶倶矢と夕弦。また、高校は騒がしくなりそうだなぁと思う。

 

 「また、士道ったら無理して……本当に私が居ないと駄目なんだから」

 

 「夫婦の発言だぞ……それ」

 

今は、空港のフードコートで凜祢と俺の席の隣を決めようとしている彼女らの争いを保護者のように見つめている。騒がしくなるのは良いが……いい加減仲良くしてほしいものだ。

 

 「帰ったら琴里に報告だな……」

 

 「そうだね……帰っちゃうのかぁ。また来たいな」

 

 「俺らが大学生にでもなったら来てみるか?今度は二人っきりとかで」

 

そんな会話をしながら過ごす日常は俺の幸せそのものだと思ったんだ。




クエスト Tempest をクリアしました。
刑死者コミュ ベルセルクの開放と颶風騎士<ラファエル>を入手しました。
levelが40になりました。
愚者、皇帝、隠者、正義、死神、魔術師、顧問官のコミュランクが2になりました。
女帝のコミュランクが3になりました。


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Lily Diva……

クエスト Truth が開放されました。
クリアするとコミュの開放とアイテムが入手出来ます。


修学旅行から天宮市に戻って一か月経った。その前に夏休みがあって俺は精霊たちと遊びながら宿題をし、家事をする……そんな重労働をしながら過ごしたのであまり記憶が無い。で、今何をしているのかと言うと天央祭で勝つための決起集会をしているのである。しかし、聞いているとどう聞いても軍隊のあれにしか聞こえない。そうしたら、生徒会が過労で倒れたので誰か入って欲しいとの事……まあ、やることないし俺から立候補した。その後は色々説明を受けた……かなり時間が掛かってしまったが。

 

 「天央祭って、あんなに気合入れるもんか?逆に怖いわっ……」

 

実行委員の亜依、麻衣、美衣の三人組は恐ろしいほどの執念を持っていて引いた。別に勝たなくても、楽しめればいいと思う……

 

 「ただいま……もう食べてたのか」

 

 「お帰り、士道……十香ちゃんがお腹すかせてたから」

 

今この場に居るのは、十香、四糸乃、琴里、耶倶矢、夕弦、凜祢である。恐らく、俺の分だけを取っておいて、後は皆で食べるつもりだったのだろうが十香が恐ろしい勢いで食べ進めているので直ぐになくなった……結構、量があったと思ったのだが。

 

 「士道……体調は、問題ない?」

 

 「ん?別に、問題ない。なんかあったらお前らに言うし……」

 

最近、琴里がよく体調を気にしてくる。理由として思い浮かんだのは天使を召喚したことによる体調不良だろうと思っている。それを気にさせないためにも使わないようにしないといけない。

 

 「お前も、天央祭来るか?俺、実行委員になったから居ないけど……」

 

 「多分行かないわ……今の所、四糸乃を行かせようと思っているわ。令音が居るし大丈夫だと思うけど」

 

俺達が出店するのはメイド喫茶……四糸乃には早い気がする。しかし、どうやって教諭に話を付けたのだろうか?あの三人組は。

 

 「女装?いや……無いな」

 

 「どうしたのよ、変な性癖でも目覚めた?」

 

 「俺が男なのにメイド喫茶ってどうなのかなって……」

 

今考えていたのは永久的に厨房で料理を作り続けることだ。まあ、この量を毎日作っているので特に何も思わない。それに、凜祢もいるので二人で回せると思う。

 

 「要するに居ていいのかって事?別にいいんじゃない?女装を強要させられなければ」

 

 「強要させられるのか!?流石に……無い、よな?」

 

それを無い事を祈りつつ、部屋に戻ろうとした……しかし、何となく呼ばれている気がしてベルベットルームに足を向けた。

 

 「あ、君……来てくれたんだ」

 

 「久しぶり……なのか?此処って時間の感覚がよく分からないから」

 

今日はちゃんとイゴールが居た。偶に居なくなるのはいったい何をしているのだろうか?

 

 「貴方様は奇跡を起こした……そして、また新たなる可能性の芽を掴み始めている最中でございます……あと、二つ。貴方様にはまだ、可能性が残っております」

 

 「まだ、増えるってことですか?メサイアみたいな奴が……」

 

 「左様。わたくしのお客人が使っていたペルソナを扱えるようになるでしょう……」

 

イゴールが言うには奇跡を起こした者、真実を照らし出した者、神に叛逆せし者。その三人のペルソナが使えるようになりつつあるらしい。聞いていて実感は湧かなかったが。

 

 「伝え忘れておりましたが……貴方様に別の力が目覚めています。それはとても不安定になっていると言う事だけ伝えておきます……」

 

 「別の……力?絆じゃ、無い?」

 

何だろうか……一応、頭の片隅に入れておいた。そして、本題を切り出す。

 

 「マリー……俺達バントで演奏するんだけど……何がいいと思う?」

 

 「え?それが聞きたかったの?なら、これがいいと思うよ」

 

渡されたのは『True Story』という曲だった。確か、アイドルの久慈川りせが歌っていたような……

 

 「これね……一緒に歌ったんだ。もちろん、君のよく知ってる久慈川りせとね」

 

 「アイドルと歌うって、どんな体験してるんだ……まあ、ありがとう」

 

 「私も一緒に歌ってあげようか?どうせ君のお祭りに行くつもりだったし」

 

行く?よく聞くと、ベルベットルームの住人は自由気ままに外に出ているらしい……大丈夫なのか、主?

 

 「じゃあ、言っとくな……またな。マリー」

 

マリーの参加を言っておかなければ……それと、俺はどのポジションに居ればいいのかも聞いておかないと……それを考えながら眠りに着いた。

 

 「此処が……竜胆寺女学院か。めっちゃ気まずい……」

 

 「まあまあ、気にしないの……五河君も、女装することが決まったんだし、気まずくなんて無くなるよ?」

 

今日、マリーの参加と俺の立場を聞いた所……マリーの参加は許可されたが俺は何故か女装する羽目になった……どうして。

 

 「名前変えないと駄目だね……士織ちゃんとかで良いんじゃない?」

 

そうして俺の女装した時の名前は五河士織になってしまった……気持ちを沈めながら会議室に案内され話を聞く。竜胆寺のリーダーはアイドルの誘宵美九だった。少し、おかしい所はあったが……皆を連れてこなくて正解だったと思う。しかし、俺を見る目が鋭いというか、嫌悪感を抱かれてるというか。

 

 「…………琴里……今、大丈夫か?」

 

 「どうしたの?今日は会議があるはずでしょう?」

 

 「今は休憩時間だからな……ちょっと調べて欲しいんだ。誘宵美九について……もしかしたら、精霊かもしれない」

 

調べてもらった所、誘宵美九は聞く麻薬と言われるほど人気が出ている。そしてライブは女性限定で、気に入った女性をお持ち帰りする……要するに百合っ子だと言う。だから俺の事を嫌っていたのかと理解する。

 

 「で、どんな感じだったの?」

 

 「洗脳……かな。反対意見を言うとねじ伏せられるんだ。それは違うと思います……って」

 

 「洗脳、あり得そうな話ね。今の所、確認できていない精霊が居るのよ……識別名<ディーヴァ>。もしかしたら、彼女かもしれないわね」

 

そうして、電話を切って会議に戻る。やはり彼女、誘宵美九は洗脳をしている可能性が高い……俺は何も言わないで周りを観察していた。誰も、反対意見を言わない。段々と洗脳され始めていると思った。しかし、俺には何も効果が無かった……精霊の力、霊力を持っているからであろうか。

 

 「今日はこれで終了です……皆さん、お疲れ様でしたー」

 

それで、終わったのは良いが……何故か俺が呼び止められた。よく分からないが別の部屋に通され、美九と二人っきりの状況になる。

 

 「貴方、精霊ですか?私の”声”が効かないなんて……」

 

 「精霊じゃない……ってことは言えるな。どうしてそんなに俺の事を嫌ってるんだ?」

 

 「男なんて醜いッ!!私を殺して、(ころ)して、(ころ)してッ!!私を信じてくれる人なんていないッ!!」

 

自分を信じてくれた人が裏切った。何もかも壊された。死のうと思った。その時に”神様”が来てくれて私に”声”をくれた……そう、話す彼女はとても可哀想だと思った。そう、狂三の様に。

 

 「なら、俺が信じてやる。ファンになってやる。俺が、お前を肯定してやる」

 

 「どうせ……裏切るつもりのくせに……」

 

 「なら、見せよう。俺がお前を肯定するって。天央祭で俺がお前とデートして満足させられたら、認めてくれ」

 

そうして、人を信じられない少女と全てを肯定する少年の戦いが始まる。

 

 「やるじゃない……早速デートの約束を取り付けるなんて。それにしても……似合うわね」

 

 「メイクとか作法とか狂三に教えてもらったけど……そんな似合ってるかぁ?」

 

一応、一人で出来るように教えてもらった……けど、自分の姿がこれだと信じたくない。変な方向に目覚めそうだ。

 

 「じゃあ、明日から頑張ってね?”おねーちゃん”?」

 

おねーちゃん呼びが怖いよ……そう思いつつ次の日。

 

 「設営もこれでやるのか……恥ずかしい」

 

只今、俺、五河士道は女装して五河士織になっている。もちろん女子生徒の服を着て、だ。しかし、意外と好評で、危険な発言も聞こえた気がする……あいつが男なんて信じられねぇよ、って聞こえた。襲われないように気を付けないと。

 

 「あの?オリガミさん?何故、一眼レフのカメラを持って俺を撮ってるんです?」

 

 「貴重な姿を撮影するため。女装した、士道はとてもレア。今のうちにたくさん撮っておく」

 

パシャパシャと撮られながらも設営を続ける。しかし、うちの高校が出すのはメイド喫茶。俺もメイドにならなくてはならない。俺の何かが壊れて汚れた気がする……

 

 「……美九も居るのか。ちゃんとやってるみたいだな……」

 

 「あれ?士道さん……居ない?」

 

美九が俺と話をしたがっているのかあちらから接触してきた。しかし女装した俺に気づかない。周りの人に聞いて何処に居るんですかと聞いて回っている。そして、俺の前に立ち止まる。

 

 「貴方……本当に、士道さん、ですか?」

 

 「はい、そうです……本当にすみませんでした……」

 

 「男なのに……何でこんなに可愛いんですかっ!!……体が!!勝手に!!」

 

少し動揺はしたがそう言えば百合っ子だったなと思い気にすることはなかった……抱きついてくること自体は十香で慣れているので、動くことなく宥めるような感じで場所を移動した。

 

 「急にどうしたんだ?デートは明日だろ?」

 

 「何で、私に手を差し伸べるんですか?」

 

 「何で、か。前の俺みたいだからかな?そんな思いをさせたくない」

 

たったそれだけの理由。それで納得してくれとは言えないけど心からの本心。そんな人を増やしたくないから俺はこんなことをしている。

 

 「別に信じなくたっていい。俺が好きでやってることだ……まあ、明日のライブとかうちの所に来てくれたら嬉しいけどな」

 

そうしてその日を終えたのだが……彼女が思っていたのは、それよりももっと酷いものだった。

 

 「うふふ……士道さんは私だけのもの……士道さん、士道さん、士道さん……!!私を助けてくれた、人に嫌な事なんてしませんよ……うふふ」

 

そうして天央祭当日。うちのメイド喫茶は大盛況だった……何故かって?俺が居るからである!!

 

 「士織ちゃーん!!こっちにオムライス一つ!!」

 

 「はーい!!今行きまーす!!」

 

こんな風に大盛況である。これが朝一番からずっと続いているのだ……一応、四糸乃と令音さんが来たのだが。

 

 「士道、さん?とってもきれいでかわいいですよ?」

 

こんな純粋な目で見られて死にそうになった。もう、女装はしたくないと思う理由の一つになった。

 

 「いらっしゃいませー……って美九か。来てくれて嬉しいよ」

 

 「来ちゃいました……うふふ、何がいいですかね?」

 

何となく美九の雰囲気が変わった気がする……前よりも怖くなったと言うか……目が虚ろになっている気がしてならない。

 

 「俺のお勧めのオムライス……まあ、簡単に書くけどな」

 

すらすらと美九の名前を筆記体で書く。これだけは何故か得意で俺がオムライスに名前を書くことが仕事になった。

 

 「うふふ……可愛いです。ありがとうございます……」

 

俺の手を握ってくるのだが……触り方が優しすぎる。日が進むにつれて何か美九の中で心境の変化があったことは間違いないと思うのだが、おかしくなったと言うのが正しいだろうか。

 

 「ツルツルのすべすべですねー……もっと触りたくなっちゃいます」

 

 「そ、そうか……そろそろ時間だから、次はライブでな」

 

俺はその場を後にする。一応、休憩時間にはなっていたので少し休憩をした。

 

 「士道……お疲れ様。大変だったね」

 

 「ああ、凜祢か……まあ、結構疲れたかな」

 

メイド姿の凜祢は思ったよりも映える。それを俺の脳内フォルダに永久保存しつつ、手に持っていたコーヒーを飲み切る。

 

 「……美九の事なんだけどさ……どう、思う?段々変わってきてるのは分かるんだけど、怖いんだ……」

 

 「士道の事しか見えてない……そんな風に見えたかな。自分を助けてくれたから、異常な執着心で動いてるのか、それとも他の想いなのかは分からないけど。でも、士道の気持ちをぶつければいいと思うよ」

 

想いをぶつける、か。彼女はアイドルである。なら歌で想いをぶつけれればいいだろうか?と思う。そうして、ステージへと向かった。

 

 「な、何それ……あははは!!君、ふざけてるの?……ぷぷっ……」」

 

 「ふざけてないよ……何かこうなった……」

 

 「まあ、いいか。久しぶりに歌うな……頑張ろ?」

 

そうして、会場へ向かい、歌う。配置としては俺とマリーがギター、夕弦がベース、耶倶矢がドラム、折紙がトランペット、狂三がサックス、凜祢がキーボード、十香がタンバリンという編成だ。マリーの話によると編成が全く同じになっていると言う話だ。だからあの時を思い出しながら楽しく演奏出来たと言う。まあ、俺もかなり本気を出して歌ったので引かれてないかなと心配になる。

 

 「ふぅ……楽しかった。やっぱり歌うのって楽しい……」

 

 「あああ……黒歴史が増えたぁぁ……」

 

琴里のネタにされることは確定した。もう、嫌だ。今直ぐに記憶を抹消したい。

 

 「あ!士道さん!!歌、良かったですよ。私の歌も聞いてくださいね?」

 

嵐の様に美九は去っていった。段々とおかしくなっている気がする……皆を洗脳してでも、俺と一緒に過ごしたいという信念というより執着心が見えた気がした。

 

 「あの子、もう壊れるよ。何かの衝撃で絶望する……君が止めて。君にしかできないから」

 

 「ああ、絶対に止める。マリーも帰った方が良いと思う……此処に居ると事件に巻き込まれる可能性が高くなるから、さ」

 

 「うん……ありがと、心配してくれて。君も頑張って。絶対救って……」

 

そう言ってマリーは帰っていった。そして、美九の歌が始まった。途中から彼女は精霊の力を使い始めた……急に服が変わった、霊装だと思うが……それで観客を沸かせていた。

 

 「士道さん……私は輝いてますか?貴方にふさわしいでしょうか?」

 

体が震える……俺しか見えていないのが分かった気がする。絶望から掬い上げたことで他の人が信じられなくなったといった所か。俺がどれだけ希望で、他の人がどれだけ絶望の原因か……それが分かってしまったからこんな風に精霊の力を使っているのだろう。

 

 「ねぇ士道さん。私は貴方が大好きです……貴方と一緒に居たい、私の願いはそれだけ。一緒に居ましょう?」

 

俺はステージに入り、美九と話していた。観客の目の前でこれは……恐らく皆、洗脳を受けているので何も思っていないのだろう。精霊の皆もステージに入ってこない。

 

 「それは出来ない……確かに俺は美九の事は好きだし、助けてやりたい。でも、これは違う。俺は皆が好きなんだ。だから、これは認められない」

 

 「私は、士道さんとずっと一緒に居たいんです。私は……貴方の幸せも守りたいっ!!……だけど、私はそれは出来ないっ!!」

 

矛盾した想い。一緒に居るとなったら、俺は悲しむ。皆と居るとなったら、俺が離れていく。どちらも悪い方向になってしまう想いを美九は決めかねている。

 

 「俺は、お前ら全員と一緒に居たいって言った。だけど俺は一人一人ちゃんと一緒に居る時間だって作る。だから信じてくれっ!!俺を!!お前の希望になった俺を!!」

 

 「私は貴方を……信じたいっ!!」

 

手を取ろうと思った時、アリーナに巨大な穴が開いた。其処から大量の魔術師……そこには見覚えのある顔が見えた。

 

 「エレン、さん?……確か、アプテタス?」

 

その人たちが美九以外の精霊を攫って行った。俺は動こうと思ったが動けなかった。確か、随意領域だったか……恐らくそれに阻まれて動けなかった。

 

 「十香ッ!!皆ッ!!」

 

 「ああ……ああ。わ、私のせいで、皆さんが……ああああああああああ!!」

 

 「美九っ!!駄目だ!!そっちに行っちゃ駄目なんだっ!!」

 

彼女ら魔術師が居なくなり動けるようになると俺は美九の元へ駆け出して抱きしめていた。ただ、宥めて、落ち着かせて。

 

 「ああ……ああ。わ、私……士道さんに……嫌われる……嫌、嫌ああああ!!」

 

 「嫌いになんかならない!!だから、大丈夫だっ!!」

 

かなりの時間が経っただろうか。観客は避難している為俺達だけがステージに居る。何も聞こえないステージで美九のすすり泣く声が聞こえていた。

 

 「うっ……ぐすっ……士道さん……私……」

 

 「大丈夫だ。俺は嫌いになんてならない。離れて行ったりしない……だから安心してくれ」

 

彼女が落ち着くと急に転送された……見慣れたフラクシナスの場所に琴里と令音さんが待っていた。横には四糸乃が……怯えながらも待っていた。

 

 「士道!!無事だったとは……言えないけど……彼女が誘宵美九?」

 

 「そうだ、とりあえず落ち着かせて眠ったから医務室に運んでくれないか?」

 

彼女は泣き止んだ後、俺に寄りかかって眠ってしまった。あんなことがあり、疲労とストレスで眠ってしまったのだろうと思う。

 

 「まさか、DEMが襲撃してくるとはね……私達も洗脳されてたみたいだから判断が遅れたわ……」

 

 「やっぱり機械で聞いていても洗脳効果があるのか……」

 

これからどうするか、それはもう、決まっている。DEMに乗り込む。それだけだ。

 

 「士道……何処に行く気?」

 

 「もちろん、DEM社だ。社長と話を付けてくる、それだけだ」

 

俺は転送装置に乗り、地上へ降りた。空間震警報が鳴り響く住宅街を歩き続け、DEM社へ着く。空間震警報は誤報だとは直ぐに分かった。何故なら、此処だけは入り口が空いていたから……そうしてその入り口からぞろぞろと魔術師の集団が襲い掛かってくる。

 

 「社長と話くらいっ!!させろよっ!!<鏖殺公>!!」

 

十香の天使、鏖殺公を召喚し斬りつける。十数人の魔術師を退けて受付に入るが何も機能していないので社長室があると思われる場所まで階段で行くことにした。しかし、話を盗み聞きしていると社長室には居ないとの事……精霊の監禁室。其処に皆が居る、そして俺が話したい、アイザック・ウエストコットが居る。俺はそこへと歩き始め……向かってくる魔術師を制圧していた。

 

 「此処か……開かないし、無理やり開けるか。<灼爛殲鬼>……<砲>」

 

扉を壊し、中へ入ると十香、狂三、耶倶矢、夕弦、凜祢が眠ったまま何かのコードを付けられ座っていた。その手前には、スーツを着ている件の人物が居た。

 

 「アイザック・ウエストコット……貴方は何がしたいんですか?精霊の力を使い、何をするつもりです?」

 

 「答えよう、イツカシドウ。私は、精霊になりたいのだよ……精霊を生み出し、私は精霊の絶対的な力に見惚れた。私はそれが欲しいのだよ」

 

 「それならどうしてこんな事を?貴方には作る力があるはずでしょう?」

 

体をこちらに向けてこう言い放った。

 

 「私は、霊結晶ではなく反霊結晶が欲しいのだよ。もともと精霊の核となるものが絶望し、元ある姿へ戻った時……力は最大限発揮される。私はそれが欲しいために君を此処に連れてきたのだよ」

 

そう、話した時、彼女達全員が目覚めた。そうして、俺は後ろから腹を思いっきり刺され、抉られた。

 

 「……本当は、こんなことをしたくはなかったです。貴方と再戦する約束が消えてしまったのが、私にとっての後悔でしょう……」

 

その、声を聴いて、俺は意識を閉ざした。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 「えっ?折紙?何をしようとしてるのよ」

 

 「DEM社。彼は一人でそこへ向かった。恐らく、精霊も関係しているはず……ほら」

 

其処には精霊の反応が見られた。場所は……DEM日本支社。

 

 「私は行く……彼を迎えに行く」

 

 「はぁ……分かったわよ。一応、精霊もいるみたいだし。皆!出撃準備よ!」

 

そうして、出撃をしDEM社へ着いたのだが……

 

 「何よ、これ……」

 

其処には、大量の魔術師が倒れ、ナイトメアと機械人形が戦いあっていた。

 

 「ああ、折紙さん。いらしたのですね……」

 

 「士道は何処?」

 

 「わたくしの本体が居る場所……恐らくあそこでしょうか?一人で向かわれたようですので、助けに行ってくださいまし……こちらはこちらでやっておきますので」

 

 「分かった……」

 

折紙がナイトメアと会話している……彼女は精霊に対して強い感情を抱いていたはずなのにこんなにも変わっている。心境の変化でもあったのだろうか。

 

 「折紙?私達も機械相手にやってるから……あんたは行ってきなさい。私達がどうにかするから……」

 

その時、ビルの一角が爆発し黒い光が溢れ出ていた。

 

 「くっ……本体が絶望し始めていますわ!!折紙さん!!早く行ってくださいまし!!」

 

 「了解っ!!」

 

ただ彼の事が心配だった。彼が絶望した私を救ってくれたのに死んでしまうのは嫌だから。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

暗い、ただそれだけの空間。俺は何をしていたのだろう……何か、大事な事をしていた、気がする。

 

 「…………ぁ……ぇ?」

 

声も出せず、動くことも出来ず。このまま消えるのを待つだけの運命なのだろうかと思った。

 

 「…………っ……がぁ」

 

目の前に暗い中でも光り輝いている二つのカードが降りてきた。確か……星と、死神……だったはずだ。

 

 「ぐっ……ぐぉ……!!」

 

今思っている事……ただ生きたいという本能に動かされている。そのカードを掴めと本能が言っている。

 

士道さん、貴方は、まだ、死んでは、駄目ですわ!!

 

星と死神のカードを重ね合わせ……嚙みついた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「ガァァァァァッァ!!」

 

それは獣、約束を果たすために生きるだけの本能。

 

 「タ……ナ……ト……ス……!!」

 

召喚器をこめかみに当て、撃つ。そのペルソナは、今までのペルソナではない……ナイトメア<時崎狂三>と関わったことにより精霊の力とペルソナの力が混ざり合った神。

 

 「グルルルル……ガァァァァ!!」

 

 「何ですか……これはっ!!」

 

目の前に居た人間を片っ端から攻撃する。俺に敵意を向ける者、邪魔をしようとする者それだけが対象に入れられる。

 

 「…………ガァ!!」

 

随意領域すら破壊し、生身に傷を付ける……そして、彼女の付けていたパーツの一部を破壊した。

 

 「ほう……彼は、獣となり、彼女らは反転したか。しかしこのままだと回収すら出来ない、いや、させてもらえないか」

 

 「ガァァァァ!!」

 

 「アイク!!」

 

斬りつけることはなかった。ただ壁に大穴を開けた。

 

 「やはり、私の事を心では理解しようとしている、と言うわけか。面白い……エレン、此処は撤退しよう」

 

 「私も、そう思います。流石に分が悪いです」

 

二人が去ると、何か憑き物が落ちたように意識が覚醒した。

 

 「うっ……ガァァ……あああ……」

 

痛み、身体を無理やり動かしていたので体のあちこちが割れるように痛い。周りを見ると……亀裂、穴、奥には椅子が……そこに居たのは誰だったか。黒い鎧を身に付けた少女。白い軍服を身に纏った少女。黒い拘束具を体全体に巻き付けた双子。そして、修道女の着ているような黒いものを身に纏っている少女。その五人が俺を見つめていた。

 

 「貴様は……何者だ。此処は何処だ」

 

 「俺は……五河、士道……此処は、DEM社……の区画の一つだ……つっ!!」

 

後ろに顕現しているタナトスに体を支えられる。俺はもう、立っている事すら出来なくなっている。

 

 「何故貴様は、あの女から私達を守った?」

 

 「俺のやりたいことはお前らを救う事だ……だから……やったんだ。失敗……した、けど……な」

 

意識が消えかかりそうになるのを何とか耐える。今の所、タナトスとリンクしている状態になっているので俺が倒れればタナトスも消える。

 

 「ふん、馬鹿な奴だ。己の体が傷つこうとも戦う、その意思は認めてやろう……しかし、私を絶望させたのはお前の力が足りなかったからだろう。なら、今の私と闘え」

 

 「戦う?……直ぐに終わるか?」

 

 「お前によるがな」

 

我は汝……汝は我……

汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

汝、戦車のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

何か分からないが、戦わないと認めてくれそうもない。彼女以外の周りの人は椅子に座ってこの状況を観察している。

 

 「では、始めるとしよう……<暴虐公>」

 

 「さっさと……終わらせたいっ!!」

 

剣と銃剣が音を鳴らす。しかし、それだけでは無く手に持っている<鏖殺公>でも追撃を放つ。無意識にでも、生存本能が働いているのか体から痛みを感じないで動けている。

 

 「ふっ!!……遅いぞ。もう、決着を付けるとしよう……<暴虐公>、<終焉の剣>……!!」

 

そう言うと、剣は巨大化し、それを振り下ろしてきた。

 

 「はっ……ぐっ……」

 

タナトスで受け止めているが……俺も限界が近づいている。しかし、ある事が頭に過る。

 

 「タナトスッ!!……<四の弾>!!」

 

それを俺に撃つと体の傷が消えていき何の傷もない体になった。やはり、狂三の天使が使えるようになっている。それが分かったなら……

 

 「<一の弾>ッ!!」

 

それを撃ち込み、剣を弾いて、彼女の首に剣を向けた。

 

 「ほう、やれば出来るではないか。なら、任せられそうだな……」

 

 「君は……十香とは違うの、か?」

 

 「あちらの方は十香と呼ばれているのか……なら、貴様。名前を付けろ」

 

あの時みたいに名前を付けろと言われた。しかし、思いつかないので10日を英語読みした。

 

 「天香、で、どうだ?」

 

 「ふむ、天の香……いい名ではないか人間。今日はこのくらいにしておいてやろう。お前は十分に私に力を見せたからな……」

 

 「そ……うか。はぁ……ぐっ……」

 

戦いが終わったため急に体中に痛みが走り気絶しそうになる。それを何とか耐えながら話を聞く。

 

 「少なくとも、私はお前の事を好きにはなったな……餞別だ」

 

彼女が優しいキスをした。それに続き、白い少女が、双子が、黒い修道女の女の子がキスを順番にし終えたところで俺の意識は途絶えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「ぁ……うぇ?」

 

 「目が覚めた?阿保で馬鹿なおにーちゃん?」

 

隣には琴里が座っていた。フラクシナスなのだろうが……見たことが無い場所だ。

 

 「此処は重傷者を入れる為の医務室みたいなものよ。士道は倒れてここで一週間は寝てたかしら」

 

 「ぁ……ぇ……」

 

声が出せない……掠れている。体も自由に動かすことも、何一つ出来ない。

 

 「士道は暴走して、反転状態の精霊と面と向かって話してたんだし。仕方ないわよ……ほとんど私のせいなのにね」

 

悲しそうな声で言ってくる。俺は話すことすら動くことすら出来ないので話を聞くことしかできなかった。

 

 「今は、休んで。明日から会ってもらいたい子がいっぱいいるから」

 

それを聞いて、また眠りに着いた。次の日には動けるようにはなっていたが声は出なかった。

 

 「…………」

 

 「誰に会うのかって?もちろん、精霊の皆よ」

 

とある一室、フラクシナスでも厳重にロックされている場所。住めるようにはなっているが、無機質な部屋だ。其処には、十香、四糸乃、封印されていないはずの狂三と美九、凜祢、耶倶矢、夕弦が居た。

 

 「まあ、座りなさい……皆、とりあえず士道は生きてるわ。結構ボロボロからここまで復活できたのも奇跡だけど。士道は今話せない状況だから、其処も考えてね。じゃあ、ごゆっくり」

 

そうして琴里は部屋を退出した。俺は座っている彼女らを見ながらどうしようかと悩んでいた。そうしていると凜祢が話を切り出した。

 

 「何て言えばいいんだろう……私達が士道をちゃんと見てあげられなかった。それだけが皆思ってることだよ」

 

 「…………!!」

 

 「そんなこと無い?ううん、私達は士道がどれだけ大変だったか分かったつもりだったの。それに甘えて、何もしてこなかった。それが私達に返ってきた……士道が傷つくことがその代償だよ」

 

皆は何もしてあげられなかった事に後悔している。何も出来ない無力感に包まれ、どうすればいいか分かっていないのだ。

 

 「…………?」

 

 「何で、わたくしが居るのか?ですか?……覚えていらっしゃらないと思いますけど、わたくし封印されましたの。士道さんに」

 

その言葉を聞いた時に情報が流れ込んできて頭を抱える。狂三が精霊になった理由。そして、精霊にする人物。

 

 「士道さんにも視えたでしょう?わたくしはそれを悲願としてこの人生を生きてきましたわ。しかし、この先どうすればいいのか、分からなくなっていますの」

 

 「…………!!……?」

 

 「それがどうした……皆、士道さんと一緒に居たいなら一緒に居よう……ですか。わたくしもそうしたいですわ。出来ることならですけど」

 

皆、不安を抱えて、俺を心配している。それを考えなくてもいい世界を作る、俺はその力がある……なら、答えは簡単だ。

 

 「…………!!……」

 

 「世界を自分好みに作り替える?士道さんは本気で言っていますの?」

 

 「…………?……」

 

もう一人の自分、ペルソナを使える俺ならそういう事も可能であると思う。奇跡を体現した俺なら。

 

 「私は信じるぞ……シドーは何だってやってきた。今度は私が支える番だ」

 

皆が俺を支えてくれる。その思いに答える。その時に何かが芽生えた。

 

 「…………」

 

 「うむ。どういたしましてだ!!」

 

話し終わった彼女らはぞろぞろと部屋を出ていき美九と二人っきりの状態になった。

 

 「士道さん……私は、貴方を支えたいです。今の士道さん、昔の私みたいですから」

 

そうして唇を合わせた。力が流れ込んでくる感覚が感じられた。

 

 「大好きですよ、だーりん?」

 

約束を果たすため、皆が幸せに過ごせる世界を創る為に俺は動き始めたんだ。




クエスト Truth をクリアしました。
恋愛コミュ ディーヴァの開放と破軍歌姫<ガブリエル>を入手しました。
戦車コミュ プリンセス反転体が開放されました。
条件を満たしたことにより、刻 タナトス・刻々帝が開放されました。
愚者 イザナギが使用可能になりました。
levelが50になりました。
愚者、女帝、隠者、死神、刑死者、正義、悪魔、剛毅のRankが5になりました。


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Judgement…

隠しイベント Judgement が開放されました。
普通の難易度よりも高難度です。推奨レベルは50以上です。
選択肢を間違えるとエンディングを迎えます。
クリアするとコミュの開放と???が仲間になります。


美九を封印してから数週間。一応、声を出せるようになったりとかリハビリをして退院はした……まだ無理は出来ないが。そうして、いつもの様に朝起きてカーテンを開けると、空に巨大な球体が浮かんでいた。

 

 「は?何だ……あれ……」

 

 「おにーちゃんー!!朝だよー!!」

 

 「琴里?あれ、見えるか?」

 

俺を起こしに来た琴里に空を指さすが……どうやら見えていないらしい。なので、フラクシナスに乗りその場所へ向かってみることにした。幸いにも連休中なので暫くは俺も一緒に見ることが出来る。

 

 「兄様!!もう、身体は大丈夫でいやがりますか?」

 

 「無理は出来ないけど、な」

 

そう、真那はDEM社を辞め、こちらに配属となった。DEM社の真意を見た真那は俺の手伝いをしたいと言った為、此処に居るのだ。そうして、何故、アイザック・ウエストコットとエレン・M・メイザースと知り合いなのかを聞かれた。まあ、ただ単に知り合いだっただけで真意には気づいてはいなかった。その他諸々聞かれたりなど……退院したのにまた、病院送りになるところだった。

 

 「じゃあ士道は、あの辺に巨大な球体が見えてるって言うのね?」

 

 「ああ、俺にしか見えてないと思う……」

 

どうやらあの場所から霊波が出ているらしいが皆には見えていない。まあ、色々と話が出たがあの球体は皆のストレスが原因で出来たのではないかと言う説(令音さんが言った)が濃厚になった。それを解消するためにすることはもちろん……

 

 「デートだよなぁ……ギリギリ、休みで行けるか。流石に学校休むのはな……」

 

 「良かったじゃない、私だったら学校があろうと無理やりデートさせるけど」

 

どうしてこんな悪い子になってしまったんだ。兄として悲しいよ、琴里。

 

 「今日はこれで終わり。家に戻ったら、精霊皆を集めてくじ引きでデートの順番を決めるわ」

 

 「確か、皆がやりたいデートをさせるんだよな?俺は一緒に居るだけでいいのか」

 

 「端的に言うとそういう事。でも、ちゃんと見ててあげなさいよ?稀代のプレイボーイさん?」

 

俺と言う存在を表現しようとするとこうなる……不本意であるが。そうして家に帰ると精霊全員が集合していた。

 

 「……ってとこよ。だから明日から、デートをしてもらうわ。順番はくじ引きで決めるから……此処から引いて」

 

そうして、皆が引き始める……順番は耶倶矢、美九、四糸乃、夕弦、琴里、凜祢、狂三、十香になった。それぞれ自分がやりたいデートを行う……何をやるのか楽しみだ。

 

 「じゃあ、期待してるな……お休み」

 

次の日……デート一日目。

 

 「……やっぱり、違和感だよな。あれって……」

 

俺にしか見えないから変な人と思われる。出来るだけ気にしないようにして、時間まで待つ。ふと、横を見るとこちらを見ている少女が見えた。何処かの学生なのだろうが……特徴的な金髪に目を引かれた。

 

 「士道ー!!……待った?」

 

 「いや、全然……駅前で待ち合わせって、何かデートっぽいな」

 

 「考えてさ、これがいいかなって……じゃ、行こ?」

 

耶倶矢と歩き始めた時には彼女はもう、いなくなっていた。あまり気にしないで耶倶矢とのデートに集中する。彼女はおしゃれな所に行きたかったようだが、全て違う店に変わっていたので、俺がゲームセンターに行こうと話し普通のデートを楽しんだ。

 

 「士道、楽しい?」

 

 「え?楽しいよ……でも、耶倶矢が選んだ場所には行きたかったな」

 

 「見てる奴が結構前の奴だって知らなかったんだもん!!」

 

耶倶矢が参考にしたのは天宮市の雑誌だったのだがそれは数年前の物だったので店が無いのは当たり前であった。しかし、俺の耶倶矢も普通にデートを楽しむことが出来たので、成功だとは思う。

 

 「今日は楽しかったよ……耶倶矢はどうだった?」

 

 「まあ、少し失敗はしたけど……楽しかった!!」

 

そうして、一日目のデートが終了した。寝る前に、空を見て球体を見た時、一瞬、光った気がした。多分、気のせいだと思い直ぐに寝た。

 

 「…………美九?変じゃないか?」

 

 「全然ですよー。むしろ抱きしめたいくらい可愛いです……」

 

二日目の美九のデートは女装した俺とのデートであった。見る目が少し気になるが……

 

 「うふふ……まずは、士織さんの服を選んじゃいましょうかー……」

 

 「俺、男だぞ?……別にいいけどさ」

 

暫く美九の着せ替え人形になった。ウエイトレスの服、ワンピース、ロングスカート、そしてミニスカート……その後は美九の買い物に付き合ったが、全て買い占めていた。

 

 「全部って……置く場所あるのか?」

 

 「私の家って広いですから。置くだけの専用の部屋だってありますよ?」

 

アイドルで稼いでいるだけはある。今日一日中、買い物を楽しんだ。美九が選んだ服は俺が買ったが。正直に言うとこういう時くらいしか着ないような服を選んだので普段着ることは躊躇ってしまう。

 

 「今日はとっても楽しかったです……だーりんはどうでしたか?」

 

 「楽しかったよ……女装するのはあんまりしたくないけどな」

 

 「考えておきます……最後に……思いっきり抱きしめてください……落ち着かせてほしいんです」

 

不安がまだ残っている……あの時、してしまった事を引きずっているから偶にこういう事をやって欲しいと言われたりする。だから出来るだけ要求を吞むようにしている……それぐらいしか出来ないから。

 

 「よしよし……俺は、此処に居るよ……」

 

 「だーりん……ぐすっ……」

 

その日はそれで終わった。寝るときに窓を見るとまたあの球体が光った気がした。

 

 「……神社か。懐かしいな」

 

 「はい……士道さんと初めて会った場所ですから。思い入れがあるんです……」

 

三日目……四糸乃が選んだ場所は俺と初めて会った、神社だった。まあ、予想通りだった……彼女は静かな場所を好む。それに、此処で遊びたいと言っているので昔ながらの遊びも出来るだろう……懐かしい気持ちになりつつも楽しむことにした。

 

 「じゃあ、何で遊ぶんだ?」

 

 「かくれんぼ……です」

 

暫く遊んだ後。よしのんが気になると言っておみくじを引いた。

 

 「大凶……恋愛運が無いのか。間に合ってるし、意味ないんじゃないか?」

 

 「士道君~そこは空気読もうよ~」

 

 「そっちは何が出たんだ?」

 

四糸乃とよしのんは大吉を出したと言う……確かに空気を呼んでくれと言いたくなるのも分かる。しかし、俺は大吉を出すほど幸運な人間じゃないのだ。許してくれ、よしのん。

 

 「………………」

 

ベンチに座り二人と一匹で空を見上げる……この時間が心が安らいでいる。俺が思うに四糸乃はオアシスである……疲弊した時に一緒に居るだけで癒される。段々女神に見えてきた。

 

 「また、遊ぶか?」

 

 「…………はい。遊びましょう……」

 

夕方まで遊び、最初の場所に戻った。最後はお参りをして帰った。俺が願ったのは……幸せを作れますように、と。

 

 「士道さん……今日は楽しかったですか?」

 

 「楽しかったよ。俺もあんな風に遊んだのは、何時ぶりかな……」

 

 「士道君にもあんな時期があったんだね~」

 

三日目の終わりにも球体を見ると光っている気がした。

 

 「到着。待ちましたか?士道?」

 

 「俺も今来た所だから……じゃあ、何処に行くんだ?」

 

四日目、夕弦が行くところは……何と言うのだろう。折紙が行きそうな場所に止まったりなど、危険を感じた。彼女は折紙の事をマスターと呼び、慕っている。どうして気が合ったのか分からないが、危険度が上がっている気がする。コンビを組ませてはならないのだ。

 

 「疑問。此処は……?」

 

 「画廊だよ。入ってみるか?」

 

彼女が気になっている画廊に入り、絵を見て回った。何故か興味深々で絵をじっくりと見ていた……何か気に入った物でも見つけたのだろうか?

 

 「移動。次に行きましょう」

 

そして次に行った場所は、百円ショップ。欲しいアクセサリーを買って身に付けていた、それを見せてくるときはどぎまぎして少しドキッとしてしまったのは言うまでもない。

 

 「感想。今日は楽しく過ごせました……士道は、どうでしたか?」

 

 「楽しかったよ……最後に行こうとしてたとこはちょっとびっくりしたけど」

 

何か分からずに夕弦はドリームなパークに俺を連れて行こうとしてきたが中に入ろうとした瞬間に戻ると言う……中身に気づいて戻ってきたと言った方が良いか。

 

 「謝罪。すみません……そういう場所だとは思いませんでした」

 

 「俺は別にいいけどな……夕弦が望むなら。でも、夕弦が決めたことだから俺は尊重するよ」

 

その言葉に夕弦は顔を真っ赤にしながらマンションに戻っていった。俺が言った意味に気づいたのか、それとも別の事を思ったのかは分からないが。その日も球体は輝いた気がした。

 

 「琴里……こんなので良かったのか?」

 

 「私達って家族じゃない……だったら、買い物とかもデートかな、って」

 

五日目、デートと言うより買い物をしに来た俺と琴里は今日の夕飯の材料を買いに来ていた。

 

 「今日は挽き肉が安いはず……あった。琴里?それも取ってくれないか?」

 

 「はい、これ。ついでに、ニューフレーバーも買っていい?」

 

相変わらずのチュッパチャップス好きだ。それを買い終わり、帰り道を歩いていると琴里は今まで付けていた黒いリボンからいつもの白いリボンに変えて買い物袋を持っていき走って帰ろうとしたので慌てて追いかける。昔、こんなことがあったなぁ……と思う。

 

 「ん。じゃあ作るか……」

 

 「おー!!作るのだー!!」

 

夕飯を琴里と二人で作る。今回作るのはハンバーグ、なのだが琴里は形を変えて狸にしか見えないウサギを作った。俺は関係なく大量生産をして、焼いていた。こうでもしないとうちの食いしん坊さんが足りないと言うので作らねばならない。怒られるのは俺なのだ。

 

 「おにーちゃんはいっぱい作るのだ!!頑張るのだー!!」

 

 「はぁ……あと何個だっけ。13か……」

 

無心になりながらハンバーグを作り続けた。丁度作り終わると、彼女たちがリビングに入って来たのでもうそんな時間まで作り続けていたのかと驚く。焼きたてのハンバーグをテーブルに出しては下げ、出しては、下げ……

 

 「ご馳走様だ!!シドー、今日も美味しかったぞ!!」

 

 「そ、そうか……あっ……」

 

 「おにーちゃん!?大丈夫か?」

 

長時間の調理をしていたので、疲れて膝を付いてしまった。すぐに立ち上がろうとしたが立ち上がれなかった。

 

 「マジか……足が震えて立てない。ちょっと肩を貸してくれ」

 

 「おー、ソファーまで運ぶぞー」

 

ソファーに座り休憩する。いまだに足がガタガタと震えており、手も物が掴めない位、握る力が落ちていた。

 

 「張り切りすぎたなぁ……飯、食べれるか?俺……」

 

 「私が食べさせるのだー!!いいでしょ?おにーちゃん?」

 

その後、妹に食べさせられながらその日を終えた。やはり球体は光っているような感じがした。

 

 「…………これで良いのか?凜祢?」

 

 「良いの。昨日だって立てなくなってたじゃない……それだったらお家デートの方が良いでしょ?」

 

六日目、凜祢は昨日の俺の事を心配して(もともと家でデートするつもりだったらしい)家でデートと言う事になった。まあ、彼女は家事が出来るので俺は部屋の掃除だけをしてリビングでくつろいでいた。

 

 「んーー!!ずっと、外でデートしてたからこんな風にゆっくり出来るのは違和感があるなー」

 

 「そう?士道は家にずっといるイメージがあるから……」

 

 「それは<凶禍楽園>の時だろ。確かに……最近は家に居ることが多いかもな」

 

昔話に花を咲かせながら、家で過ごした。昼食を食べ終え、ソファーに戻ると凜祢が寝ていた。あまり寝顔を見たことが無かったのでバッチリ見てしまった。そうして顔を見ていると俺も眠くなってきたのでそのまま凜祢の横で眠りに着いた。

 

 「ね…………と……」

 

 「こ……す……」

 

何か声が聞こえた。しかし、まだ眠いので近くにある抱き枕を抱き寄せる。触り心地がよくいい匂いがする。何となくキスをしてしまった。

 

 「おお……!!」

 

 「結構……やっぱり……」

 

段々、声がはっきりと聞こえてきた。流石に起きようと思い目を開けた。

 

 「あ、れ……りん、ね?」

 

 「起きたの?あからさまに俺の嫁だ!手を出すな!みたいな感じで抱きしめてたから写真撮っておいたわ……にしても、いいわね、これ……」

 

起きると携帯を持つ琴里、その周りに皆が見ていた。何で起こしてくれなかったんだと聞いた所、いい雰囲気だったから起こすのも躊躇ったという。

 

 「ん……しどう?どうしたの……え?」

 

 「すまん……寝てたらこうなった。許してくれ」

 

 「別にいいけど……人前でやるのはちょっと……」

 

その写真は俺の携帯に送られてきた。この構図はいい。なので俺の待ち受けとなった。

 

 「士道?ちゃんと休めた?私のデートは休養も含まれてるんだからね?」

 

 「おう、しっかりと休めた。良いものもゲットしたしな」

 

写真を眺めて空を見ると球体はピンク色に輝いた……やはり、あの日から光っていたようだ。そうして、俺の部屋から道路に目線を下すとあの少女が居た。しかし、車が通りすぎると彼女は消えていた。あまり考えないようにして、その日は寝た。

 

 「にゃ~……マタタビですわよ……」

 

 「…………猫カフェか……」

 

七日目、狂三とのデートは猫カフェで一日中過ごすことだった。狂三は大の猫好きではあるが皆には隠している……バレたら引かれるからだろうか……別に引かないと思うが。

 

 「どうした……寂しいのか?ほれほれ……」

 

 「あら、士道さん。人気者ですわね」

 

指でちょろちょろと誘うと猫が集まってくる……集まりすぎじゃないか?

 

 「ちょっと……待って……ぎゃー!!」

 

 「ふふふ……面白いですわ!!」

 

猫にもみくちゃにされながらも猫と戯れた……餌を与えながら俺達も食事を取ったり、一緒に寝たり、等々。楽しい時間を過ごした。

 

 「俺達、帰らないといけないのに……そんなに寂しいのか?仕方ないなぁ……ほら、ぎゅー」

 

 「こっちですわ……猫さん!!可愛いですわ!!」

 

沢山の猫と別れを言いながら、帰路に着く。そうすると狂三が意味深な事を言ってきた。

 

 「これで七人目。最後は十香さんですわね……最後ですから何かあります事よ」

 

 「覚悟をしとけって事か……そんなの、とっくに出来てるさ」

 

覚悟はとっくの昔に出来ている。奇跡を起こす時にもう決めていた事だ。

 

 「明日で、終わり……か」

 

夜、自分の部屋から球体が光るのを見ながら下を見ると、あの少女がこちらを見ていた。なので、俺は下に降りて彼女と話をしようと思った。

 

 「君は……?あの球体は君がやったのか?」

 

 「自己紹介位はいいか……私は万由里。雷霆聖堂(ケルビエル)の管理人格よ。貴方を裁定するために出来た存在」

 

 「なら、万由里は凜祢と同じ存在だって事か……」

 

我は汝……汝は我……

汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

汝、審判のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

彼女、万由里は俺の霊力が一定以上あると裁定者として現れる。そして、霊力を持つにふさわしいか監視するとの事。と言う事はこれまでのデートは見られていたと言う事に……何か恥ずかしくなってしまった。

 

 「明日、あんたにふさわしいかどうかを言うから。無視しないでね?」

 

 「了解……見られてるのって何か嫌だな」

 

八日目、最後のデートは十香と食べ歩きデートで色んなものを食いまくった。十香はまだまだいけると言っているが俺は限界なので十香が食べているのを途中から見ることに徹していた。

 

 「うっぷ……苦しい……」

 

 「シドー?大丈夫か?」

 

 「大丈夫じゃないかも……少し休もう……」

 

俺達が来ていたのは、あの時の高台。此処では色々あったな……と思い返す。十香の暴走、凜祢と一緒に帰ってくることが出来た事……後、何となく考えたいときに此処に来ると考えが纏まるので最近よくここに来ていた。

 

 「シドー……懐かしいな。あの時、私はとても嬉しかった……」

 

 「そうだな……俺が初めて救えた精霊が十香だからな……俺にとっては此処は思い入れが強いよ」

 

ただ景色を見る……それだけで時間がかなり進んだ気がした。

 

「……ん。来たか……」

 

「何が来たのだ?」

 

ベンチに座っていると周りの雰囲気が変わり、後ろを振り向くと万由里が居た……やはり、皆には見えていないようだった。

 

 「十香、ちょっと席、外すな」

 

 「む?分かったのだ」

 

そうして万由里の元へ向かう……何か騒がしい感じがしたので十香の方を見ると十香以外の精霊が集まっていた。やっぱり気になって来ていたらしい。

 

 「おめでとう……あんたは、大丈夫だって裁定されたわ」

 

 「そっか。で、万由里はこの後どうするんだ……?」

 

 「私は、霊力から生まれた存在……だから、後は消えるだけ」

 

霊力で出来ていた凜祢は俺と一緒に居ることを望み、俺がペルソナを使って奇跡を起こした。だけど、万由里はそれを望んでいるのか?

 

 「万由里は、俺達の霊力から出来ているのか?」

 

最初、あの球体を調べた時に令音さんが言っていた。あの球体は今まで封印した精霊の霊力を合体させた物だと。なら、と思ったのだ。

 

 「そうだけど?……何が言いたいの?」

 

 「万由里……俺の事好きか?」

 

その言葉に顔を赤くする……それにドキッとしてしまう俺も顔が赤くなっている気がする。

 

 「当たり前じゃない……皆の霊力から出来てるんだから士道の事好きに決まってる……本当は……消えたくないよ……」

 

 「なら、一緒に居よう。俺なら万由里を存在させることが出来る……だから、手を取ってくれ」

 

手を取ろうとした時……空が光った。

 

 「雷霆聖堂(ケルビエル)!?何で……」

 

 「これって、不味い奴じゃないか……!?」

 

そうすると上空の球体が巨大な天使と化した。その天使が雷撃をこちらに放ってきた。

 

ふん、貴様が此処で死なれると困るのだ。もう一人の私が悲しむからな

 

 「トール!!」

 

雷撃を喰らう前にペルソナを出してダメージを消した。皆は大丈夫だろうかと思い、そちらの方を見ると霊装を纏っていたので心配なさそうだった。

 

 「シドー!!大丈夫か?それと、その後ろに居る女は誰だ?」

 

 「大丈夫だ、後ろに居るのは、万由里。あの天使の持ち主なんだけど……」

 

そうするとその天使から、小さな球体が降りてきて鳥かごに変形した。鳥かごは万由里を閉じ込め、空へ上がっていった。

 

 「士道……た、す、け、て……」

 

その言葉を聞いた時には、フラクシナスに転送されていた。そして、あの天使をどうするかという話になった……俺のやることは決まっている。

 

 「封印するしかないよな?それが、俺のやることだ」

 

 「でも、彼女の好感度は分かってないのよ?」

 

 「ああ、それだったら問題ないぞ。だって……皆の霊力から出来てるんだからな」

 

そうして、万由里を救いに外に出ようとしたが……肝心な事を忘れていた。精霊は全員飛べるのだが、俺は飛べない……わけではない事を言っていなかったのだ。

 

 「士道?貴方、私に捕まる?」

 

 「大丈夫だ……じゃあ、先行ってるな。よっと……」

 

上空一万五千メートルから飛び降りる体験は無いと思っていたが、まさかあるとは……

 

 「えーーーー!?」

 

 「そういえば、シドーが飛べることを言っていなかった気がするぞ」

 

 「だから大丈夫だって言っただろ?さ、行くぞ」

 

そうして、天使に接近するが……雷撃、巨大な舵の様な物で邪魔をしてくる。それを皆に任せて……鳥かごまで向かう。

 

 「万由里……助けに来たぞ」

 

 「士道……ありがとう」

 

鳥かごを鏖殺公で破壊し、万由里を開放して後退する。皆も天使の一部を破壊してくれていたので邪魔はされなかった。

 

 「待って……雷霆聖堂(ケルビエル)が変わろうとしてる……」

 

天使は姿を変え、ドリルのような先端から光を放つと奥に会った山を破壊した。

 

 「ラハットヘレブ……」

 

 「また、撃つのか……!!」

 

 「やっぱり、こうしないと……駄目みたい」

 

そうして、万由里は俺の顔を横に向けてキスをした。そうすると霊力が収束し始めた。

 

 「十香にありったけの霊力を注ぎ込んで……そうすれば、止められるはず」

 

 「待てよ……!!これじゃあ、万由里がっ!!」

 

 「いいの……私はこうなる運命だから」

 

十香に霊力を分け与えた万由里は消えかかっていた。しかし、十香は霊装が変わり二刀流になっていた。

 

 「これなら、行けるかもな……行くぞ、<鏖殺公>……<滅殺公>」

 

時間をかけると天使は倒せず、万由里を存在させることが出来なくなる……どうすればいい?十香も見る限り苦戦している。もっと、力が欲しい。でも、あの時の様に本能に身を任せては駄目だ。

 

我は汝、汝は我……双眸見開きて、汝、今こそ発せよ!!

 

 「終わらせる……イザナギッ!!」

 

BGM Time To Make History

 

それは、日本の神話の神。日本と言う国を生み出した男神、伊邪那岐である。

 

 「え……し、士道?」

 

 「終わらせてくる……だから、まだ、生きててくれ」

 

右手にはイザナギが持っている巨大な大剣。それを持ち、十香の元へ向かう。

 

 「シドー!!危ないぞ!!」

 

天使が雷撃を放ってくるのを逆に反射してダメージを与える。そして、さらに近づき体の一部を斬った。

 

 「十香……離れてくれ。今の俺は加減が出来ない」

 

 「分かった……戻ってきてくれ、シドー……」

 

離れたのを確認した後、大剣を振り回しながら傷を付けていく……しかし、自己再生の方が早いようだ。

 

 「イザナギ……!!」

 

少し離れ、イザナギと共に天使を斬った。そうすると、真っ二つに割れ、光の粒子となって消えていった。それを確認すると、すぐさま万由里の元へ戻った。

 

 「万由里ッ!!」

 

今だ人の姿ではあるが、もう消えかかっている。

 

 「もう一度、聞くけど……俺と一緒に居たいか?」

 

 「うん……一緒に居たいっ!!」

 

我は汝…… 汝は我……

汝、ついに真実の絆を得たり。

真実の絆……それは即ち、

真実の目なり。

今こそ、汝には見ゆるべし。

審判の究極の力、サタンの

汝が内に目覚めんことを……

 

 「メサイア……!!」

 

その名を呟くと、世界は白に包まれた。気づいた時にはフラクシナスの転送されていた……

 

 「……私……生きてるの?」

 

 「おう、生きてるぜ。でも、ちょっと疲れたかな……」

 

少し壁に寄りかかり、身体を休める。琴里は、検査よ検査。と言って皆を連れて行った。俺は一人、休憩室に向かい休んでいた。

 

 「イザナギ……これで、二つ目。あと一つあるのか」

 

オルフェウスからメサイア。イザナギ、そして後一つ。そうして、あの死神。俺はやはりイレギュラーなのだろうか。

 

 「これからの事も考えないとな……後は、無理をしない程度に、か」

 

その近くに、一人の影があった。

 

 「<凶禍楽園>にシステムケルブ……消えるはずだった者達を救っているのは予想外だったが、問題は無いだろう……」

 

その影は、一人何処かへ歩いて行った。




隠しイベント Judgement をクリアしました。
審判 裁定者の開放と万由里が仲間になりました。
戦車、顧問官のコミュランクが3になりました。
愚者、魔術師、女帝、恋愛、正義、隠者、刑死者、死神のコミュランクが6になりました。
審判コミュが最大になったので、サタンが召喚可能になりました。なりました。
戦車、審判のペルソナを召喚可能になりました。


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Install……

隠しイベント Install が開放されました。
普通の難易度よりも高難度です。推奨レベルは50以上です。
選択肢を間違えると最初からやり直しになります。
クリアするとコミュの開放と???が仲間になります。


万由里の一件から数日。俺達は精密検査をされたり等々……また、忙しい毎日を過ごしていた。思っていた通り、万由里も自分のクラスに転入して来た。そして案の定、俺に視線が集まり男子の呪いの言葉が聞こえてくる羽目になる。そんな学校生活を過ごしていると、ある時フラクシナスに来てくれと琴里から呼び出された。

 

 「言われた通り、来たけど……」

 

 「遅い……まあ、万由里に学校案内してたのは分かってるからいいけど。とりあえずそこに座りなさい」

 

俺が通された部屋は機械の配線が繋がっている椅子……それが、十数個ある場所だった。嫌な予感がする……

 

 「士道、貴方にはVRでマイ・リトル・シドー2をやってもらうわ」

 

 「まさか、あの時の……!!」

 

そう、艦橋で話した時の”あの”ギャルゲーが進化したのだ。嫌だ!!やりたくない!!

 

 「やめろ……!!死にたくない!!死にたくないっ!!」

 

 「グットラック……」

 

そうして俺の意識はゲーム世界へ取り込まれた。

 

 「あ?……此処は、家?」

 

気づいたら、家のソファーで横になっていた。少し周りを見渡すと、いつもいる家とは違う……モデルルームの様な異質さがあった。

 

 「繋がってるかしら……士道?聞こえる?」

 

 「最悪の気分で目覚めたよ……で、どうすればいいんだ?」

 

 「これはギャルゲー……要するに女の子を落とせばオッケーよ」

 

やりたくないという気持ちと面倒臭いと言う気持ちがありつつも出る為に家から出て商店街へ向かった。いつも通っている道を歩いていると横から誰かとぶつかった。何だ、このギャルゲー感は。

 

 「……ああ、士道か。偶然だな」

 

 「ん?天香……はぁ!?」

 

今、思うと俺がやる前提のゲームなので攻略ヒロインは俺が封印した、または知っている精霊であると言う事になる。なので、天香が居るのは当たり前なのだ。

 

 「どうした?そんな驚いて……まさか、私の事を考えながら歩いていたのか?変態め」

 

 「確かに、天香の事を考えながら歩いてたけど……変態呼ばわりはやめて欲しい。だって俺は、お前が好きなんだからな」

 

とりあえずゲームなのでこんな風に言っておけば好感度が上がるはずである。見ると顔を赤くしながら俺に近づいて来て主に腹をぐりぐりと攻撃してきた。

 

 「そうか……なら、私とデートがしたいと言うのだな?今直ぐデートに向かうぞ」

 

 「分かった……じゃあ、何処に行く?」

 

 「ちょっとストップ。とりあえずここまでにして頂戴……ヒロインの行動は確認できたから町の様子を見て頂戴」

 

琴里からストップが入り、俺は町を見て回ることにした。俺以外の人はNPC……ノンプレイヤーキャラクターであるため、俺が話したことがある人物はそのまま再現され、話したことが無い人物は情報の通りに再現されるとの事。その説明を聞きながら住宅街を歩いていると、俺の記憶にない白い少女が立っていた。

 

 「し……う……きこ……!?そ……い……だ、め!!」

 

 「ん?琴里?令音さん?」

 

二人の声にジャミングが掛かり声が聞こえなくなった。あの白い少女に近づいて行った時、ジャミングが掛かった気がする……原因が分かったのでとりあえず接触を試みることにした。

 

 「貴方に問います。愛とは、何ですか?……愛とはどんなものなのですか?私は、それを知らない。だから、知りたい」

 

 「愛、か。説明はしずらいな……俺個人の意見だったら、その人が好きでたまらなくて……絶対に守ってやるって言う気持ちかな」

 

 「それが、貴方の愛……なのですか?」

 

愛は一人一人考えが違う。誰がどう考えているかなど分かりやしない……分かるとするならば神様か何かだろう。

 

 「俺なりの愛だな……でも、愛って人それぞれだから他の意見も聞いた方が良いと思うけど……」

 

 「五河士道と愛を形成できる人物を検索……検索完了。アクセスを許可しました」

 

アクセスを許可?と言う事は俺は此処から出られない……とか、言わないよな?

 

 「士道!!そいつから離れなさい!!」

 

とりあえず言う通り後ろに下がる、少しだけ。

 

 「で、何が起こってるんだ?」

 

 「そこに居る奴のせいで士道がゲームからログアウト出来ないのよ。そしたら、ゲームの方からメッセージで私達だけにログインを許されてこっちに助けに来たってわけ」

 

予想通りの展開だ。しかし、この子は閉じ込めようとはしてないとは思うんだが……何も分かってないと言うか、機械的と言うか。

 

 「ちょっと待て。武器を仕舞なさい……お前らは戦争を起こす気か。あいつに敵対の意志は無いと思う。あいつ、何も知らないように見えるからな……例えるなら、機械みたいって言えば分かるか?」

 

とりあえずその場は納得してもらった。今この場に居るのは……十香、折紙、四糸乃、狂三、琴里、耶倶矢、夕弦、美九、凜祢、万由里である。メンバーを見て考えると俺の周りに居る女の子を集めましたと言った所だろうか。

 

 「あー。そういえば、名前聞いてなかったよな?」

 

 「私の名前は……或守。データベースに記録がありました」

 

或守、そう名乗った彼女は急に世界をリセットすると言って何かした。気づいた時には俺と琴里は五河家に居てどうしようかと悩んでいた。

 

 「もしかすると、初めからを選んだって事?」

 

 「ってことは……或守がゲームの権限を持ってるって事か」

 

ゲーム権限を持っているならば俺達は到底勝てない。ゲームの中に閉じ込められているならゲームのルールに従わなければならないのでそのルールにのっとって行動するしかないのだ。

 

 「はい、先ほどニューゲームで開始しました。私は五河士道の近くで愛の形成を観察します」

 

しかし、ゲームだからと言って何もしないと言う訳にもいかないのでとりあえず学校へ向かう事にしたのだが……何故か全員学校に居ると言うオチだった。

 

 「琴里は飛び級で、美九は交換生で……四糸乃は俺のクラスの担任か。何か変わんないな」

 

違和感はあるが学生の本業である勉学を行った。ゲームでもやった所が出てきたり……ハイレベルの問題が出てきたり……偏りがあった。

 

 「あ……よ、ようやく……終わった……」

 

 「士道?大丈夫?」

 

 「折紙は、疲れないか?」

 

首を横に振る折紙。流石天才は違うと思った。十香はスライムの様に溶けているし、勉強できる凜祢や万由里でさえも体を伸ばしている。

 

 「はぁ……折紙って俺の隣のマンションに住んでる、設定なのか?」

 

 「そういう設定になっている。だから、夕飯を食べに行ってもいい?」

 

 「どうせ、量が多くなっても変わらん。良いぞ」

 

疲れを感じながら食材を買い、家に帰ると精霊と或守が話をしながら待っていた。それを横目に見ながら夕飯の調理を始める……あまり時間を掛けないようにしないと十香が暴走する可能性があるので手早く作る。

 

 「はいよ、親子丼。おかわりが欲しかったら言ってくれ……3分で作るから」

 

 「いただきますだ!!」

 

十香が食べ始めると他の皆も食べ始める……食べ終わって、皿を洗い、シャワーに入って寝た。流石に疲れすぎたのかベットで横になると直ぐに寝てしまった。

 

~十香の場合~

 

俺、五河士道は来禅高校で国語を持っている教師だ。最近、入ったばかりで未だに分からない事が多いが頑張っていると思う。一緒に入って来た同期の十香さんとは仲良くしている。今日は十香さんの愚痴を聞かされる会である。

 

 「もう……本当にあの子たちが……」

 

 「まあ、自分のクラスにもそういう子居ますよ……」

 

裏路地にある居酒屋で二人で飲みながら話す……十香さんはビールのジョッキを片手に話しているが俺は日本酒をちまちま飲みながら話を聞いていた。どう見ても酒豪である。

 

 「ひっく……ああ、本当にどうすれば良いと思います?士道さん?」

 

 「まあ、自分だったら話に行きますけどね……何度でも、何度でも、話に行って説得しますけど。十香さんだったら行動で示せばいいんじゃないですかね?」

 

国語の教師をしているから話すことに自信はあるが……十香さんは保険・体育の教師なのでそう言ったことは苦手だと思い、行動で示したらどうだと言ったのだ。それは思ったより効いたようだ。

 

 「そうですね。そう、してみます……」

 

 「まあ、自分から言えるのはこれくらいですから……」

 

そうしていると十香さんがじりじりとこちらに近づいて来た。一応、個室なので見られることは無いが流石にこれは……

 

 「士道さんは……好きな人、いますか?」

 

 「い、居ないですよ……十香さん?」

 

酔っぱらっているのか、それとも本当にやっているのか。それすらも分からなくなってきた……十香さんが体重をかけてきている。お酒の匂いと甘い匂いが混ざって正常な判断が出来なくなってきた。

 

 「士道、さん?私、士道さんが好きです……だから。良いですよね?」

 

 「はい、お手柔らかに……」

 

そうして服に手を掛けて……

 

純粋な十香はそんな事しない!!

 

~折紙の場合~

 

俺、五河士道。このカースト制が存在する都立来禅高校二年生だ。一応、言っておくとカーストの中でも上位に居る……何故かって?ある人に気に入られてる?から。しかし、それはとても大変である。

 

 「豚は豚らしく、ぶひぶひ言っていればいい」

 

 「ぶひっ!!ぶひぃ~」

 

そう、俺の上に居る……このカースト制で女王に君臨している鳶一折紙に気に入られて?居るのだ。要するにこき使われていると言う事だ。大体一緒に居るが、こんな風に椅子になれとか、足を舐めろだとか、酷いときは首輪を付けられたり等……

 

 「本当に醜い。救えないロリコン野郎。ロリDOHに改名したら?」

 

 「ぶひっ!!ぶひっ!!」

 

暫くこんな風に話していないと何処からか持っている鞭で体をしばかれる……とても痛い。だから逆らわないようにしている。そうしないとここでは生きられないのだ。

 

 「嗚呼、何故か苛ついて来た。豚は叩かれるのが当たり前」

 

 「ぶひっ!?」

 

 「泣け!!啼け!!鳴けっ!!喚け!!私のストレスを発散させろっ!!」

 

こんなことも偶にある。最近は頻度が多くなってきていて鞭の威力も上がってきている……俺の体は包帯塗れである。

 

 「あはは!!あはははははは!!」

 

 「ぶひっ……ぶ、ひっ……ごほっ……」

 

初めて吐血と言うものをした。目の前が真っ赤に染まり、床に血だまりができ始める。そうすると俺の頭は靴で踏みつけられ血だまりの場所で押し付けられた。段々と声が聞こえなくなってくる……

 

 「あ……やり過ぎた……こ……だ……し……!!」

 

気づいたら保健室だった……しかし、手と足を拘束されて。そして裸であった。

 

 「起きた?豚。豚が勝手に気絶するなんて生意気。だから、今から豚の大事な物を奪う。怖いでしょう?」

 

 「怖いよ!!止めてくれよ!!止めろーー!!」

 

そうして彼女の腰が下がり……

 

折紙……本当にやらないでくれよ?

 

~四糸乃の場合~

 

俺、五河士道。夢であった自営業を始めたばかりの成人男性である。何をやっているのかと言うとただの喫茶店みたいなものだ……しかし、人気なのか直ぐに常連さんが付いたので何とか維持できている。今日も常連の一人が店に入って来た。

 

 「こんにちは……」

 

 「やっほ~」

 

 「いらっしゃい。四糸乃、よしのん……」

 

学生であり、常連である四糸乃、そして左手に付けているパペット、よしのん。店を始めた日から来店してきてくれている本当の常連だ。

 

 「注文は?いつものでいいか?」

 

 「はい……お願いします」

 

彼女が頼むのは紅茶とケーキのセット。偶に、サンドイッチやパフェを食べることもあるがいつもはこれだ。

 

 「はい、どうぞ。で、今日は何処が分からないんだ?」

 

 「ちょっと待ってください……」

 

最近、勉強が分からないので教えて欲しいと言われた……まあ、俺も妹も勉強を頑張ったせいか妹は学年トップだし、俺は大学を首席で卒業した。暇だから勉強してたという理由だ。

 

 「ああ、ここな……やり方分からないとすぐ間違えるんだよな。懐かしい」

 

 「此処と、此処は分かるんですけど……此処が分からなくて……」

 

彼女……四糸乃は少し教えるだけで分かってしまう、天才少女なので教えているのかどうか怪しい。勉強をすると助言してくれるよしのんも居るので教えている意味があるのだろうかと思ったりもする。

 

 「後……これも教えてくれませんか?」

 

 「…………保健か。しかし、なんでこんなに詳しく書かれ始めたんだ?」

 

相変わらず、この日本と言う国は少子高齢化をどうにかしたいと思っているらしい……もう、無くなっていると思うのだが。

 

 「それで……あの、その……」

 

 「頑張って~よしのんも応援するから」

 

要するに、女性では分からない……男で唯一、頼れる人に聞いた方が良いと思い此処に来たのだろう。それならば答えなければならない。

 

 「あー……何となく、理解したけど……何処が分からないんだ?」

 

 「……………」

 

顔を真っ赤にしながら教科書に指を指す……思った通りの場所だった。これについてはあまり教えるのは……得意ではない。

 

 「勉強したから分かると思うけど……これがこの中に入ってだな……」

 

そこから、時間が経ち……大体を話し終わりお茶を飲んでいると急に四糸乃が抱きついて来た。

 

 「しどうさん……やっぱり、わ、分からない……ので……やってもらって、い、い、ですか……?」

 

その声を聴いて手を伸ばして……

 

俺のオアシスはそんな事しねぇ!!

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 「はっ!!夢だよな……あれ以上見たら精神が持たん。とりあえずシャワーに入って忘れよう……」

 

あの夢はすごく具体的でリアルだった。口調や性格が変わっている場合が多かったが……心当たりがないわけではなかった。このゲームはギャルゲー、要するに権限を持っている或守がやっているのだろうと思った。愛を知る為にこのような方法でやろうとしているのだろう。

 

 「何やってるんだか……精神修行とかした方が良いのかなぁ……っ!!」

 

其処には凜祢と万由里が一緒にシャワーに入っている現場だった。もちろん、脳内フォルダに強烈に焼き付いた。俺はすぐさま扉を閉めた。

 

 「し、士道?入るんだったらいいよ?」

 

 「は、はい……し、失礼……します」

 

あまり見ないようにして、さっと椅子に座る。うちのお風呂も広いわけではないが四人位は入れるスペースがある。

 

 「で、二人は何でうちのシャワーに入ってたんだ?」

 

 「マンションの方が修理中になってたから借りに来たの。まあ、士道が入ってくることを予想してなかったこっちも悪いけど」

 

あちらの方は多分、権限を使ってこういうイベントを行ったのだろう。やはり上には上が居るのだと身を持って理解した。しかし……

 

 「凜祢サン?まさか、此処でやるんですか?万由里も怖いぞ?」

 

 「一応話しておいたの。そしたらやってみたいって言ってるから……じゃ、始めよう?」

 

あまり記憶は残っていないが良い思いをしたと思う。万由里も満足そうな顔をしている。此処が風呂場で良かった。

 

 「……此処でやるのは、危険だと思うんだが……のぼせそうだ」

 

 「上がろうか。じゃあ私達先に上がって着替えるね」

 

その後は三人でソファーに座りながら抱きしめ合った。一種の愛情表現になりつつあるこれは俺の欲望なのだろうか?そう思っていると皆が集合して作戦会議となった。いつも通りに過ごし、様子を見ると言う事にはなったが……

 

 「一ついいか?名前を考えたいんだ……或守の。呼びずらいだろ?」

 

 「名前ですか?」

 

考えている時間は多かったので候補はかなりあるが……やはりここは。

 

 「鞠亜……何てどうだ?」

 

 「鞠亜……データベースに記録しました。私の名前は或守鞠亜。名前……良い物なのでしょうか?」

 

困惑はしているが喜んでいるようだ。そうして、学校へ行き放課後。また、事件は起きた。あまりにも言えない物が多すぎるので軽く言うと。狂三=保健室の先生、めっちゃ危険。耶倶矢、夕弦=マネージャー。俺を落そうとしているがあちらが落とされる。美九=部活の部長。よく分からないが俺に付きまとう、ヤンデレだった。そして……凜祢と万由里は幼馴染という何処かで見たことのあるシュチュエーションだった為楽しく過ごせた。二人以外が強烈すぎてこちらが困惑を越えて引いてるのだが。

 

 「はぁ……強烈すぎる。俺の精神が持たない……」

 

 「あんたも大変よねぇ。まあ、あたしが気にする必要はないけど」

 

我は汝……汝は我……

汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

汝、太陽のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

其処に居たのは黒い鞠亜。いや、違うAIだろう。鞠亜を善意とすれば、こいつは悪意だ。

 

 「何の用だ?俺達を閉じ込めた犯人が俺に直接的なコンタクトをするなんて不用心が過ぎるんじゃないか?」

 

 「へぇ。分かってたんだ。あたしは、或守鞠奈……あいつとは違う。せいぜい頑張って過ごしなさい」

 

鞠奈と名乗った少女は消えていった。そいつの事を皆に報告して、気を付けるようにと言っておいた。あいつがこの事件の黒幕。何がしたいかは分からないが注意することに越したことは無いだろう。

 

 「愛を知る為に今日の奴をやったんだよな?それだったら、俺達だけじゃない愛も見た方が良いんじゃないか?例えば……遊園地にでも行ってさ。明日休みだし」

 

そうして、遊園地に行くことになったのだが……大人数過ぎる。

 

 「鞠亜と俺は固定として……後は交代しながらだな。最初はどれから乗る?」

 

多数決により、ジェットコースターになったのだが……

 

 「ぎゃーーーー!!」

 

 「きゃーーーー」

 

 「うぉーーーー!!」

 

終わった後は皆死んでいる顔をしながら降りた。流石にやりたくない。途中で撮られた写真も皆、叫んでいる状態でこれを現像する気にはなれなかった。

 

 「次は、お化け屋敷?大丈夫か?」

 

 「問題ない」

 

 「だ、大丈夫……です」

 

心配だなぁ……と思いつつもお化け屋敷へと足を踏み入れた。脅かす人たちの場所が大体わかるので驚かなかったが、特に四糸乃は怯え切って俺が抱っこしながら進んでいる。折紙は俺の腰から離れず、鞠亜は俺の手を組んでいる。お化け屋敷は俺はあまり怖くなかったが、四糸乃は嫌いになったようだ。

 

 「次は、メリーゴーランド?しかも、お前ら二人かよ……回しすぎるなよ?」

 

 「大丈夫だって。回しすぎないように努力するから」

 

 「注意。気を付けて回します」

 

と、言ったが。早すぎてもう、吐きそうだ。鞠亜の方は何も感じないように目を閉じていた。

 

 「か、ぐや、ゆづ、る……も、もう……むり。と……」

 

 「ちょ!?士道?しっかりして!!士道ー!!」

 

数分の間俺は気絶していたようだ。三半規管は弱い事が分かったのでもう二度とメリーゴーランドには乗らない事にしよう。うん、そうしよう。

 

 「ごめん……士道。そんな顔しないで」

 

 「謝罪。やり過ぎました」

 

 「後で二人、俺に付き合ってくれ。ちょっと”おしおき”が必要みたいだしな」

 

俺の怒りのオーラがやばいと感じたのかそれを了承した。まあ、普通に荷物持ちにするだけなんだが。

 

 「次は、観覧車……七人乗りか。じゃあ、残りの人で乗るか」

 

隣は凜祢と万由里。反対は鞠亜、狂三、琴里、美九だ。まあ、ストッパー役の琴里と狂三が居るから美九も大人しいだろうし、景色を見ることに専念しよう。

 

 「ん……綺麗だな。VRとは思えない……すごい、綺麗だ」

 

 「何よ、お前の方が綺麗だとかいう奴の逆?いつからロマンチストになったの?」

 

 「素だよ、素。何か、色々と大きな出来事があったから、さ。俺が精霊を知って、救って。皆が居たから今がある。それが嬉しんだ」

 

荷物を八舞姉妹に任せながら帰路を歩く。この日常がずっと続けばいいのに……でも、それはずっとは続かない事を知っている。身を持って体験している。だから、前に進まなくちゃいけない。

 

 「買い物忘れてたな。買いに行くか」

 

皆がそれぞれの部屋に帰り、自らも家に帰って冷蔵庫を見ると何も入っていなかったので買いに行くことにした。晩御飯のメニューを考えながら買い物をし、帰る途中にまた、鞠奈に出会った。

 

 「もう、ちゃんとしてよね。こっちが困るんだから」

 

 「すまないねぇ」

 

彼女も根っからの悪人ではないのだろう。データの塊である事には変わりないが、彼女なりの心を持ってるのだろう。

 

 「お前も悪い奴じゃないんだな。ちゃんと優しいじゃないか」

 

 「なによ。あんたには関係ないでしょ。あたしが、五河士道みたいって言いたいの?」

 

名前が知られている。それは分かり切った事だった。

 

 「いや別に……お前も根は良い奴なんだなって。ほれ、お疲れさん」

 

余分に買っておいたジュースを投げる。投げたジュースをキャッチし、蓋を開けて飲み始める。

 

 「気が利くじゃない。今日くらいは褒めてあげるわ」

 

 「お前の目的は何時果たされる?」

 

踏み込んだ質問に彼女は……

 

 「もうすぐ分かるわ。あたしが何がしたいのか、何をしようとしているのか。明日、楽しみにしていなさい」

 

そう話した後、彼女はいつの間にか消えていた。明日、何かが起きる。それを考えながら休んだ。

 

 「それで、どうしたんだ?」

 

 「私が愛を、士道についての愛を理解するのにキスが必要なんです」

 

次の日の夜、呼び出された俺はキスをして欲しいと言われていた。恐らく、この後に何かが起きるはず。

 

 「まあ、それで分かるなら……ん」

 

キスをした。その後、鞠亜は苦しみ始めた。

 

 「そういう事か……権限が欲しかったって事か。鞠奈?」

 

 「そういう事。あたしはDEMで作られた精霊。だから邪魔するために此処に入って来たってわけ」

 

そうすると、俺は動けなくなった。これは、管理者権限によってゲームの進行などを制御できる力を使っているのだろう。

 

 「ちっ……逃げられた。とりあえずは連絡を……」

 

連絡すると他の全員は直ぐに集まった。そうすると、外の連絡も復旧し令音さんとも話すことが出来るようになったのはいいが。

 

 「このままだと落ちるってことですか?」

 

 「ああ……今、副司令とクルー達が頑張って制御しているが時間の問題だろう。これを止めるには……」

 

 「マザールームに行って鞠奈と話してこい……ってことですか」

 

彼女が逃げた先はマザールーム。情報であふれている場所。其処に彼女は逃げているらしい。

 

 「こちらもどうにかして耐える。そちらも頑張ってくれ」

 

 「はい、頑張ってきます」

 

通信を終え、今起こっている状況を皆に伝えた。

 

 「とりあえずは鞠奈の説得だな。最悪の場合、データごと消すことになると思う。それだけはしたくない選択だけど……」

 

 「そうさせないようにするのが士道でしょ?さあ、私達の戦争(デート)を始めましょう?」

 

そうしてマザールームに入ったのは良いのだが……

 

 「何でこんなに居るんだ?多すぎだろ……」

 

 「あたしは分身を作れるから。来ないで欲しいから時間稼ぎって事」

 

時間稼ぎ、か。別々になって攻撃していくしかない。そう思い、琴里に話しておく。

 

 「分かったわ……最後に、死ぬんじゃないわよ」

 

 「分かってる……皆、任せた」

 

そうして鞠亜の手を取りながら鞠奈の気配のする方へと走っていた。

 

 「鞠亜?どれくらいで着く?」

 

 「もう少しです。恐らく、あの奥でしょう」

 

其処には大きな扉があった。どう見ても開かないような大きな扉だ。

 

 「この先に鞠奈が居るのか?」

 

 「ええ、しかしこの扉は開かないようですね」

 

開かないなら、力でねじ伏せる。それだけだ。

 

 「イザナギッ!!」

 

巨大な大剣で真っ二つに斬ると隙間が空いたのでそこから入った。其処には姿を変えた鞠奈が待っていた。

 

 「いらっしゃい。でも、もう遅いわよ?何もかも手遅れなのに何がしたいの?」

 

 「お前はそこまでやっていない。手こずってるんじゃないか?」

 

図星と言わんばかりに彼女は攻撃を仕掛けてきた。そこまでするか、普通。

 

 「別に此処までしなくても良いだろ……お前は本当にこんな事したいのかよ」

 

 「そうね……自分が子供だったら誰が最初に褒めてくれると思う?」

 

 「親……じゃないか?俺の場合はよく覚えてないけどな」

 

 「そういう事よっ!!あたしは、親に褒められたいからやってるの!!」

 

攻撃は苛烈さを増し、鞠亜を守りながらだと厳しい物であった。そう、考えていると隙を付かれて拘束された。

 

 「ぐっ!!離せよっ!!」

 

 「離さないわよ。あたしは、五河士道を殺すの。貴方は何もできない」

 

そうすると鞠亜がCR-ユニット纏った姿になり、それに動揺した鞠奈の隙をついて脱出した。

 

 「それ、どうやったんだ?」

 

 「一時的に士道とのパスを繋いだので霊装を纏える状態になったと言う事でしょうか?」

 

 「ふ~ん。でも、関係ないわよっ!!」

 

コードの様な物で縛り付けて来ようとしていたので、それを後ろに下がりながら攻撃をする。

 

 「カグヤ!!」

 

光り輝く矢でコードを足止めしながら隙を伺う。流石に相手も同じようで膠着状態が続く。

 

 「メサイア!!」

 

あちこちで炎が爆発する。それでもダメージは無く、違う方法に変える。

 

アンタなら使いこなせるはずよ、士道

 

 「サタン……!!」

 

邪悪の神。それを出せば何もかもが破壊される。

 

 「爆発、しろっ!!」

 

あちこちで爆発が起きる。鞠亜の方へは当たらないような威力で広範囲で爆発を起こす。

 

 「何なのよ……何なのよっ!!」

 

煙からボロボロになった鞠奈が出てきた。満身創痍と言った感じになっている。

 

 「もう、やめようぜ。お前の役目はもう、終わってるんだ」

 

 「えっ……どういう事よ?」

 

 「鞠奈の親と話したことがあってな。その時に聞いたんだ。入ってくれればそれだけでいいって。だからもう、役目は終わったんだ」

 

何度か話を聞きに行っている俺は全てを理解することが出来た。しかしその言葉を信じない鞠奈は自身を暴走させた。

 

 「違う……チガウ、チガウチガウチガウッ!!あたしは、認められたいだけなのにっ!!」

 

彼女は消えて奥の方へと消えていった。此処からはもう行くしかないようだ。

 

 「シン?聞こえるかい?」

 

 「はい……もしかして、タイムリミットですか?」

 

 「そういう事だ。このままだとフラクシナスは天宮市に落下し、爆発するだろう。被害は計り知れない」

 

やりたくなかったがデータを消す方法へと変えるしかないようだ。

 

 「鞠亜、最後まで付き合ってくれ」

 

 「はい。何となくですが……彼女に対抗するために作られたのが私。要するに私は鞠奈の妹と言う事になるのでしょう。だから私は姉を助けたいです」

 

 「じゃあ、行くぞ……」

 

マザールームのさらに奥、何もない黒しかない場所で彼女は一人座り込んでいた。

 

 「なあ、鞠奈。こんな所に居ないで外に行こうぜ。俺なら出来るんだ」

 

 「無理よ。親に褒められないまま、あたしは消えてなくなるだけ……誰も褒めてくれなかった」

 

 「何言ってるんだ。俺はお前を褒めたはずだぞ?」

 

あの時、彼女に言った言葉がちゃんと伝わっていなかったようだ。

 

 「昨日、ジュースを渡した時のことを覚えてるか?あの時、俺は優しいんだなって褒めたはずだぞ?」

 

 「え……?」

 

 「本当の親からは褒められた事はあるのか分からないけど。俺は周りの人も褒めてくれると思う。だって、俺が褒めただろう?」

 

俺は本当の親を知らない。だけど、琴里や琴里の親。精霊の皆が。誰だって褒めてくれる。

 

 「だけどもう、無理よ。あたしは消えてなくなる……鞠亜だって。消える」

 

その時、頭の中に声が響いた。

 

―どうした……見ているだけか?我が身大事に見殺しか?このままでは本当に死ぬぞ?それとも、あれは間違っていたのか?―

 

間違ってない!!俺は俺のやりたいことをするためにやった!!

 

―よかろう……覚悟、聞き届けたり 契約だ!!―

 

青白い炎に身を包まれた俺はいわゆる”怪盗”の様だった。

 

―我は汝、汝は我……己が信じた正義の為、あまねく冒涜を省みぬ者よ!たとえ地獄に繋がれようと全てを己で見定める、強き意思の力を!―

 

 「奪えっ!!アルセーヌ!!」

 

其処からはあまり覚えていない。夢中でペルソナを使い鞠亜と鞠奈を隔離し、文字通り”奪った”。其処から起きると最初のVRを付けた椅子の場所だった。

 

 「……データは何処だ?」

 

とりあえず、何処にあるかだけ調べる。そうすると見覚えのないアプリがスマホに入っていたので確認する。アプリ名は……AIナビ?

 

 「へぇ~。君ってこんなことも出来るのね」

 

 「ええ、士道ならなんだってできます」

 

我は汝…… 汝は我……

汝、ついに真実の絆を得たり。

真実の絆……それは即ち、

真実の目なり。

今こそ、汝には見ゆるべし。

太陽の究極の力、アスラおうの

汝が内に目覚めんことを……

 

 「って事は二人とも無事でいいのか?」

 

無事を確認し、とりあえず精霊の皆を確認する。折紙はもう、帰ったみたいだが。

 

 「士道……大丈夫だった?」

 

 「ああ、凜祢か。大丈夫だよ」

 

とりあえずは無事である事を聞いた。他の精霊は船の復旧作業に勤しんでいるとの事。

 

 「はぁ……疲れたー。俺は先に帰って皆のご飯を作っておくとしますか……」

 

 「私もそうするつもりで降りようとしてたの。だから一緒に行こう?」

 

そうすると携帯が震えた。どうやら二人が話したいらしい。

 

 「なら、料理してるところ見せなさいよ。暇でしょうがないから」

 

 「そうか……何か面白そうだな……」

 

料理の話をしながら俺達は地上へと降りた。この後自らの身に何が起こるかも分からずに。




隠しイベント Install をクリアしました。
太陽コミュ AI姉妹 の開放と 或守鞠亜、鞠奈が仲間になりました。
太陽コミュが最大になったので、アスラおうが召喚可能になりました。
愚者 アルセーヌが使用可能になりました。


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lincarnation dream

これは、彼の心。心が揺らげば、世界も揺らぐ。だから……


幸せを掴みたい。未来で俺は幸せなのか?今のままじゃ俺は……

 

 「……ふぅ……」

 

起きると二人に挟まれていることが分かる。凜祢と万由里が横で寝ていた……最近はよく一緒に寝たりしているのであまり気にならないが。

 

 「起きるか……」

 

二人を起こさないようにそっとベットから出る。腕を離さないようにホールドされているが、そっと抜いて動く。着替えを済ませてリビングに降りる。

 

 「……今日は何にしようか」

 

五河家のキッチンを司っている自分は献立も自分で決めなければならない。冷蔵庫を開けると食材がぎっしりと詰まっているがこれは一日分である。精霊たちがよく食べる為、料理を作る自分からすれば苦労が増えている。

 

 「鮭で良いか」

 

フライパンにした処理済みの鮭を置いて焼く。しばらく時間が掛かる為、どうしようかと考えていると外から大きな足音が聞こえる。そうして、足音が近づいて来て扉を開けたのは……

 

 「我、降臨!!」

 

 「敗北。耶倶矢に負けましたか……」

 

やはり、八舞姉妹だったようだ。状況を見る限り朝の勝負をしようと言って耶倶矢が勝ったという事だろうか。

 

 「おはよう、二人とも。まだ朝ご飯が出来てないからくつろいでくれ。」

 

二人の返事を聞きながらフライパンへと目を移す。良い焼き色になっているので箸を使い裏返す。後は放置で良いだろう。

 

 「おにーちゃんおはよー!!」

 

八舞姉妹がどたどたと騒音を鳴らしたことで琴里や凜祢、万由里が起きたのだろう。目を擦りながら起きてくる二人を見ながら料理の盛り付けに掛かる。

 

 「ん。おはよう……朝ごはん出来るから着替えてきてくれ」

 

そうすると玄関からまた、音が聞こえた。そうすると残りの精霊たちがリビングに入ってくる。とりあえず料理をテーブルの上に置きながら他の物もテーブルに出す。これだけあれば恐らく足りるだろうと願いたい。いや、本当に。

 

 「先食べてていいぞ。まだ運ぶから」

 

料理を運び終わり、自分も食べ始める。今日は休日だが……俺の希望により、海に行くことになった。よく分からないが”懐かしい気持ち”に浸りたい、と思ってしまったのだ。

 

 「もう、準備は済ませたのか?」

 

 「準備か?もう、終わってるぞ?」

 

準備をしていないのは俺だけだったらしい。とりあえず食べ終わった皿を洗い、部屋に戻る。必要な荷物をバッグに詰めながら後は何が必要かを思い出す。海には行くのだが、あちらのホテルで1泊することになっているので着替えと水着は入れている。後は、何が必要だったか……

 

 「シドー!!まだかー!?」

 

 「ちょっと待ってくれ!!すぐ終わる!!」

 

十香の声が聞こえたので、荷物を持って部屋を出る。ついでにキッチンに置いてあったクーラーボックスを持ち、家に鍵を掛け外に出る。此処からは車だ。相変わらずのラタトスクの財力だが、何処から出ているのかはいまだ不明だ。悪い所じゃないといいが。

 

 「……大丈夫だったか?急に海に行きたいだなんて言ってさ」

 

 「別に?私としても精霊のストレスが溜まっていたからどうしようかと悩んでたしね」

 

いつの間にか黒リボンになった琴里に聞く。精霊を封印できる能力を持った俺は勉学、家事の他に精霊のご機嫌を取らねばならないので非常に多忙である。人間のやる事ではない。

 

 「ならいいんだ。ちょっと行ってみたいなぁって思ってたから、さ」

 

 「珍しいわね、士道が海に行きたいだなんて……子供の頃以来かしら」

 

確かに言われてみれば……子供の頃に行きたいと言った記憶がある。最近は精霊の事ので手が一般だったので休みたいと無意識に思ったのかもしれない。

 

 「今日は目一杯遊ぶか」

 

今日はやることを忘れて楽しもうと思った。

 

 「海だーー!!」

 

 「騒音。耶倶矢、騒ぎすぎると周りの迷惑になりますよ」

 

二人が颯爽と砂浜へ走る。何というのだろうか、双子で色々とスタイルが強調されて逆に目が向かっているというか何というか。こちらとしては向けないようにしたいのだが。

 

 「シドー!!」

 

 「十香さん?あまりはしゃがない方が良いですわよ?」

 

俺を呼ぶ声……十香と狂三だ。十香は海を楽しもうとしている為あまり周りを気にしていないが今、思いっきり視線が行った。少しイラっとして怒りを露わにしたせいで周りの人たちが少し怯えている気がした。それを追いかける形で狂三が来る。またしても視線が行った。

 

 「…………」

 

無言の威圧によって周りが後ずさる。何だろう、スゴク、イライラスル。

 

 「士道さん?ちょっと……怖いですよ?」

 

そう手を引いたのは四糸乃。手を引かれたことによって少し正気に戻った……少し、やり過ぎただろうか。やっぱり俺のオアシスは四糸乃だなぁ。

 

 「悪かった……怖がらせてごめんな?」

 

 「大丈夫……です。士道さんは……優しいですから」

 

こういう所だよ……この女神の優しさを知らない物共に教えてやりたいが、流石に近づけるようなことはしない。本当に理解してくれないかな。

 

 「あら、士道。やっぱり小さいのがお好み?私も近づかないようにしないと」

 

そう罵倒しながら近づいてくるのは琴里。いや、そういう趣味ではない。

 

 「別にそういう趣味は持ってないし、持つつもりもない」

 

 「本当に?何か怪しいわね……」

 

何故こうもそういう方向へと話を振るんだろうかこの司令官は。まあ、そういった所も可愛い妹だなと思う。

 

 「とりあえずあいつ等の所に行ってくれ。司令官が居ないと統率が取れないだろ?」

 

 「はいはい、行けばいいんでしょ行けば。四糸乃?こんなアホに構ってないで行きましょう?」

 

そうして、二人は皆の方へと歩いていく。そして、声が掛けられた。

 

 「…………?」

 

 「士道?どう、かな?」

 

振り返ると天使が居た……あながち間違った表現ではない、とは思う。彼女達、凜祢と万由里はそれぞれのトレードカラーのピンク、白と黄色の水着を身に纏いつつ上から薄い上着を羽織っている。

 

 「うん、すごく似合ってるよ。ちょっとやられちゃったな……」

 

 「やっぱり?私達に弱いもんね、士道は」

 

俺のステータスがあるとすれば耐性が大体あるが魅了に弱いといった所だろうか。特に精霊の皆さんに対してだとは思うが。

 

 「じゃあ、行こうか。海に」

 

そうして海を満喫した……

 

 「シドー!!喰らえっ!!」

 

 「ごぼっ!!ごぼぼ……」

 

 「シドー!?おい!!シドー!!」

 

溺れかけたり。

 

 「夕弦ー?何処にあるのー?」

 

 「指示。もう少し横です、其処で思いっきり叩いてください」

 

 「がっ……痛っ。俺はスイカじゃない」

 

スイカと間違われたり。

 

 「よーい……ドン!!」

 

 「我らが最速、八舞が負けることは在らず!!」

 

 「あらあら、誰が最速でしょうね?」

 

 「ちょっと……待って……早すぎるっ!!」

 

ビーチフラッグで天使を使ったり。

 

 「あの時の再戦である!!行くぞ夕弦!!」

 

 「呼応。耶倶矢!!」

 

 「取れないだろっ!!……えっ?」

 

取れないだろうと思ったらあの時の同じく顔面に当たるビーチバレーをしたり。

 

 「……ふぅ、少しはしゃぎすぎたか」

 

もう、すっかり太陽が沈み始める時間になった。この辺りで今日は終わりにしよう。

 

 「皆?戻ろうか」

 

 「うむ!!楽しかったなシドー」

 

海から戻ってホテル。大体の事を済ませ後は寝るのみとなった。しかし、思ったように寝れないので夜の海にでも行こうと思い着替えて外に出る。夏ではあるが少し肌寒い。

 

 「…………」

 

ザーー……と波の音。暫くは此処で海でも眺めようと砂浜に腰を下ろす。海行きたかったのは思いつきなのだが、何か”重要”な事があった気がする。何だったか?

 

 「パパ?」

 

ん?パパ?多分気のせいだろう……現実だとしても俺ではない。

 

 「やっぱりパパだね!!」

 

 「は?」

 

この子は俺の事をパパだと言った。幻聴ではない事は確かであり、俺に子供が居るなんて事実はない。ん?どういうことだ?

 

 「パパ?どうしたの……?具合、悪い?」

 

 「……大丈夫。君は?」

 

 「凛緒!!園神……凛緒!!」

 

我は汝……汝は我……

汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

汝、永劫のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

園神。と言う事は、俺と凛祢が結婚した場合に生まれるのが凛緒と言う事になる。しかし、どうやって出てきたんだ?

 

 「凛緒はどうして此処に居るんだ?」

 

 「それは……内緒!!」

 

子供の必殺、内緒。どうやっても聞き出せない……出直すべきだろうと思った。

 

 「そっか、明日とか会えるか?」

 

 「明日?大丈夫だよ!!パパとお買い物~♪」

 

意外と乗り気なようだ。しかし、大丈夫なのか?この子を放っておいて?

 

 「凛緒?帰れるのか?」

 

 「うん!!大丈夫だよ!!丁度いい時間だし、帰るね!!じゃあねパパ!!」

 

テンションが高い娘だなぁ、と思いつつホテルに帰って眠りに着いた。

 

 「……朝か。時間も早いな」

 

昨日、はしゃいでいて遊んだ皆は熟睡しているだろう。暫くは起きないと思うので一人で出かけることにした。昨日約束した買い物に出かけなければならないので必要な物を取りホテルを出る。

 

 「しかし、まあ……此処もすごい所だなぁ」

 

ホテルにショッピングモール、テーマパークetcetc……様々な物が集合した場所である。此処に移り住む人も多く、人気な土地だ。確か、この辺りの土地の値段は億や兆を超えると聞いたことがある。

 

 「パパ!!」

 

 「ん?凛緒?来たのか?」

 

 「じゃあ、お買い物しよう?」

 

そうして、買い物が始まった。そういっても、凛緒の行きたいといった所に付いて行っているだけで特に俺が行こうとはしていない。行きたい場所も無いので任せている。凛緒は主に雑貨などを好む。小さな可愛いものをよく見ている……年頃の女の子と言った所だろう。

 

 「パパ?これは?」

 

こうやってねだってくる凛緒は本当に子供だなぁと思う。俺が年頃の人と関わり過ぎてこういったことにあまり関わってないからだろうと思う。買い物も終わり、景色がよく見える場所へやって来た。天宮市で言ういつもの高台だ。

 

 「パパは……ずっと此処に居たい?」

 

 「……やっぱり、その質問か。俺は、前に進むよ」

 

何となく、分かっていた。でも、分かりたくなかった。前に進む……それが俺の、選択だ。

 

 「パパならそう言うと思ってたよ。だから、これ持ってね?」

 

そう言って渡されたのは、カーネションのキーホルダー。よく見ると、sidou、rinne、rioと彫られている。さながら家族の証、といった所か。

 

 「良いのか?貰っても?」

 

 「パパに持って欲しいの。パパは、絶対にあきらめないって約束して?」

 

 「……そういう事か。ああ、約束だ」

 

 「「指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーます。指きった!!」」

 

我は汝…… 汝は我……

汝、ついに真実の絆を得たり。

真実の絆……それは即ち、

真実の目なり。

今こそ、汝には見ゆるべし。

永劫の究極の力、メタトロンの

汝が内に目覚めんことを……

 

 「約束!!絶対、守ってね!!」

 

 「ああ、守るよ。凛緒がまた来るまで守ってるよ」

 

景色が白くなっていく。そろそろ時間なのだろう。

 

 「じゃあねパパ!!また、会おう!!」

 

 「ああ!!また会おう!!凛緒!!」

 

景色は白に包まれ、凛緒は光の粒子となって消えていった。そうすると意識が遠くなっていき、意識が途絶える。

 

 「……家、か」

 

起きると家だった。要するにあの出来事は夢だったと言う事になる。何となく察していたが。

 

 「……キーホルダー。夢なのか何なのか」

 

起きた時に右手に握っていたのはあの時のキーホルダー。夢で貰ったものは現実には持ってこれないはずだが、何かしたのだろう。

 

 「まあ、いいか。さて、準備しないと……」

 

キーホルダーを自宅のカギに付ける。勿忘草のキーホルダーと一緒に付けた時、一瞬だがピンク色に光った気がした。多分、それは家族が集まったという意味だろうと思った。

 

 「さあ、俺達の戦争(デート)はまだまだ続く……頑張らないとな」

 

さあ、もっと深い戦争(デート)を始めましょう?




心は揺らぐ。だからこそ、彼は前に進む。自らの運命を変える為に。そして、未来を視る為に。
永劫コミュ 園神凛緒が開放されました。
永劫コミュが最大になったので、メタトロンを召喚可能になりました。
凛緒のキーホルダーを入手しました。
効果 絶対的信念 (???)
第3章 Disaster Life が開放されました。


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第3章 Disaster Life
search and change?


これまでのコミュ

愚者 フラクシナスの船員達 Rank6

魔術師 崇宮 真那 Rank6

女教皇 本条 二亜 未開放

女帝 夜刀神 十香 Rank6

皇帝 鳶一 折紙 Rank1

法王 エリオット・ポールドウィン・ウッドマン 未開放

恋愛 誘宵 美九 Rank6

戦車 夜刀神 天香 Rank3

正義 五河 琴里 Rank6

隠者 氷芽川 四糸乃 Rank6

運命 鏡野 七罪 未開放

剛毅 エレン・M・メイザース Rank5

刑死者 八舞耶倶矢 八舞夕弦 風待 八舞 Rank6

死神 時崎 狂三 Rank6

節制 星宮 六喰 未開放

悪魔 アイザック・レイ・ペラム・ウエストコット Rank5

搭 日下部 遼子 未開放

星 分身体 時崎 狂三 Rank Max

月 アルテミシア・ベル・アシュクロフト 未開放

太陽 或守 鞠亜 或守 鞠奈 Rank Max

審判 万由里 Rank Max

永劫 園神 凜祢 園神 凜緒 Rank Max

世界 崇宮 真士 未開放

道化師 蓮 未開放

信念 五河 士道 (シャドウ) 未開放

顧問官 村雨 令音 Rank3

所持ペルソナ

審判 メサイア 

愚者 イザナギ

愚者 アルセーヌ

愚者 ジャアクフロスト

魔術師 ジャックランタン

女帝 ヤクシニー

皇帝 キングフロスト

戦車 トール

正義 ヴァーチャー

隠者 モスマン

剛毅 ヴァルキリー

死神 サマエル

悪魔 リリム

星 ルシフェル

太陽 アスラおう

審判 サタン

永劫 カグヤ

顧問官 デカラビア

刻 タナトス・刻々帝

第二章をクリアしたので、<天使召喚>が可能になりました。対象(刻々帝、颶風騎士・穿つ者、颶風騎士・縛める者、破軍歌姫、雷霆聖堂)
クエスト witch が開放されました。
クリアするとコミュの開放とアイテムが入手出来ます。


電脳世界での一件が終わり、フラクシナスの修理の手伝いをする日々を送っていた。とりあえずは今日で修理は終わりとの事で一人、商店街に買い物に出ていた。

 

 「今日は……何にしようか。最近、肉ばっか食べてたしなぁ……」

 

今の時期は10月の終盤。この商店街もハロウィンムードになっている為、あちらこちらにジャック・オ・ランタンが飾られていたりなど……しかし、カボチャが安いな。

 

 「……カボチャが安いし、コロッケにでもするか」

 

八百屋でカボチャを買い、他にも必要な材料を買って他に買い忘れが無かったか歩いて考えていると車いすに乗っている外国人に声を掛けられた。ん?なんか見たことあるような、無いような……

 

 「失礼、市民病院の場所を教えてくれないか?」

 

 「病院……ですか。それなら、商店街を真っ直ぐ行って、道路に出た所を左、三番目の信号を右に曲がってずっと行けば見えてきますよ」

 

流暢な日本語を話す金髪の男性とその車いすを押す女性。やっぱり、見たことあるような気が……

 

 「よくわからないな……すまないが、そこまで案内してくれないかい?」

 

 「ええ、分かりました……」

 

思い出した。DEMの社長室にあった写真に写っていた人だ……確か、幼馴染?だったはず。そう考えながら歩みを進めていると聞きなれた警報が鳴った。

 

 「空間震警報……病院には行けそうにありませんね」

 

 「ふむ、そのようだね。では、避難するとしよう」

 

 「ああ、避難する前にこれを……」

 

そうしてポケットから出したのは一枚のタロットカード。

 

 「これは?」

 

 「大アルカナ、法王……教皇ともいいますね。正位置は伝統、信託、年上との縁。逆位置は非常識、海千山千、頑固。まあ、縁があったら(・・・・・・)また会いましょう」

 

そうして人気のない場所に走り、転送される。また、あの人には会える気がする。

 

 「士道、仕事よ。今回の精霊はあれね」

 

と言って環境の映像を見ると魔女の格好をした女性だった。少し、違和感があったのは気のせいだろうか?

 

 「……?とりあえず、行ってくる」

 

 「気を付けて下さい。安全な精霊とは限りませんので」

 

そう話すのは俺の携帯に入っている鞠亜である。確かに危険かもしれない事は頭に入れておこう。

 

 「場所が場所だな……空間震の影響で廃園になった遊園地、か」

 

今回の場所は薄気味悪い遊園地。時刻も夕方に近づいているのでますます不気味になっていく。

 

 「そこの道を真っ直ぐ行けば会えるはずよ。後、もう少しでASTが接近してくるから早めにね」

 

そうして薄気味悪い教会の入り口に立つと、上から気配がした。

 

 「あらぁん?」

 

教会の一番上に座っていた影が降りてきた……改めて見てみるとこの女性は誰もが羨む体つき、はっきり言って理想を体現したような人……と言った方が良いだろうか。

 

 「貴方……ASTの人?」

 

 「違う……ちょっと歩いてたら迷い込んでさ。物珍しさに此処に入ってみたんだ」

 

我は汝……汝は我……

汝、新たなる絆を見出したり……

絆は即ち、まことを知る一歩なり。

汝、運命のペルソナを生み出せし時、

我ら、更なる力の祝福を与えん……

 

此処は当たり障りのない会話をしていこう。あまり警戒はされたくはないし、そしてASTの存在を知っていたことからかなりこちらに出没していることが分かった。

 

 「へぇ……士道君って言うのね」

 

普通に自己紹介をした。この精霊は、七罪というらしい。

 

 「ねえ、士道君。私の事……綺麗(・・)だと思う?」

 

違和感の正体が分かった気がした……七罪は綺麗という言葉に執着をしている。前の美九みたいな執着を感じた。ここは言った方が良いだろう。

 

 「……綺麗だと思う。だけど、七罪……何か隠してないか(・・・・・・・・)?」

 

 「っ!!……どうして、そう思うの?」

 

大当たりらしい。さて、こっからどうしようか……

 

 「七罪、君は綺麗(・・)という言葉に執着してるんじゃないか?だから、精霊になった……とかじゃないか?」

 

 「なんで……そこまで分かるの?」

 

 「そういう奴らと関わった来たから……大体わかる。だからさ、本当の姿(・・・・)を、見せてくれないか?俺は、絶対に否定しないから……」

 

やっぱりか……その事についてかなり反応した。自分の姿を変えるほどの天使……恐らくは他の人にも使える可能性も有る。此処は慎重に行くべきか。

 

 「……士道君なら……見せても、いいかな。いくわよ……?」

 

そうして、身体が白い光で包まれた。そうして段々、背が小さくなっていき光が消えた後に残ったのは少女だった。

 

 「これが……本当の姿。私は自分のみすぼらしい姿を隠したくて、あの姿になってたの」

 

 「別にさ、綺麗とか綺麗じゃないとか気にしなくていいじゃないか。今の七罪は可愛いよ」

 

……なんか思ったよりもうまく行ってる?しかし、この姿だと……特有のネガティブオーラが。

 

 「でも……他の人はどうせ、私の事なんか見てくれない……」

 

 「大丈夫だ。俺が見てやる……絶対、見捨てない。だから、俺と一緒に来てくれないか?」

 

「……少し、時間をくれない?ちゃんと自分で決めたいの」

 

そうして七罪は箒に乗って遠くに消えていった。まあ、結果は上々だろうか。此処からどうするかを考えなければならないが……とりあえずは琴里達に任せよう。

 

 「……さて、帰るか」

 

その日はそれで終わった……次に会う時は答えを聞かせてくれるときだろうか。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

自己紹介をするわね。私は、七罪。今、何をしているのかというと……

 

 「……ご飯できたぞー」

 

そう、昨日会った士道について知る為にこんなストーカーみたいな事をしている。私自身、人を信用できない人間だからあの言葉(・・・・)が本当に正しいのかを確認したかった。

 

 「…………」

 

今日は平日。恐らく、真っ当な人間である士道は学校に行くだろう……でも、なんでこんなに私と同じ精霊が居るのだろうか?この辺りもしっかりと調べておかないと。

 

 「……じゃあ、行ってくる。留守番頼んだ、四糸乃」

 

 「はい……!!がんばり、ます……!!」

 

……地味にロリコン疑惑がありそうね。私は狙われない事は確かだけど……それよりも士道の周りには女がいっぱいね。

 

 「喝々!!我は、一足先に学び舎へ向かうとしよう!!」

 

 「勝負。耶倶矢には負けません」

 

 「はい、走らない。今日ぐらいはゆっくり行こうぜ」

 

女の扱い方には慣れてるみたいね……いつもこうなのかしら?それにしても、くっ付きすぎじゃない?

 

 「……お前ら寒いからって俺に引っ付くな。まあ、別にいいけど……

 

 「んー?何て言ったのかなー?士道?」

 

 「聞こえなかったわ。もう一回言って」

 

デレてる、確実に。それにしても皆が士道の事好きみたいね。士道も皆の事が好きなのかしら?

 

 「別に良いって言ってる……恥ずかしいから言わせんな」

 

 「うんうん。正直でよろしい」

 

朝からこんな甘い雰囲気で登校するなんて……リア充爆発しろ。はっ!!違う、違う……こんなこと言ったら良くない。気持ちを切り替えて尾行を続けよう。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 「……来ちゃった。入っちゃった……!!」

 

尾行を続けるために、士道の通っている高校に入ろうとして私の天使<贋造魔女(ハニエル)>を使って姿を変えたのは良いんだけど……私って直ぐにバレるわよね。

 

 「どうしよう……確か此処って屋上あったわよね。其処から見えるかしら?」

 

とりあえず急いで向かおう。早急に。誰かに見つかると厄介事に巻き込まれる……

 

 「はぁ……はぁ……私、思ったより体力ないのね……」

 

屋上のカギをしっかりと締め、呼吸を落ち着かせる。よし、落ち着いたから士道の教室を探そう。あっ、見つけた。

 

 「……士道の隣の奴、目が……」

 

獣の目をしてるあの女、あからさまに士道の事を狙ってるわよね。士道も気にしてないみたいだし、どういう関係なのかしら?

 

 「……当てられたのかしら?」

 

よく見ると士道が黒板に答えを書いていた。勉強は出来る、と。まだまだ、情報が足りない……もっと集めよう。

 

 「今は、一時限目だから……もっと観察できるわね。頑張って観察っと」

 

そうして、次の授業を見ていた。どうやら体育の様で走っている士道が見える……それにしても、早いわね。

 

 「五河ー!……早ぇ!待って、くれよー……」

 

 「遅いぞー!」

 

……差が付きすぎだと思うんだけど。運動も出来る……っと。今の所、欠陥が無い人間に見えるわね。ますます、信用が無くなってきた……だけど信じたい。

 

 「まさか、ね。ありえない……」

 

今、考えたことを振り払う。私を陥れようなんてするはずない……あんな人だし。

 

 「まだ、見ないと……信じられる材料が足りない……」

 

そうして、暫く時間が過ぎてお昼の時間になった。あっ、鍵開けとかないと……誰か入ってくるかも。開いてなかったら不自然だし。

 

 「……誰か来る。隠れないと……」

 

屋上の扉の上に居ればバレないはず……誰だろう、屋上に来る人なんて。

 

 「いやー、疲れた。今日も難しかったな」

 

 「最近、良く当てられるよね。士道」

 

ん?士道が来た?だったらちょっと話を聞こうかしら。

 

 「シドー!!昼餉の時間だ!!」

 

 「分かった……ほい、今日の弁当。折紙も食べるか?」

 

 「食べる」

 

ふーん。皆のお弁当は士道が作ってるんだ……待って、量、おかしいわよね。あれを一人で作ってるの!?

 

 「うまいぞシドー!!」

 

 「美味。相変わらず美味しいです」

 

何でもできる……そもそも、料理が出来る時点でモテるわよね。顔も整ってるし……

 

 「ほら、早く食べないと間に合わないぞ」

 

あれ、もうそんな時間?私も慣れてきたって事かしら……

 

 「よし、じゃあ午後の授業頑張るかぁ」

 

そうして屋上の扉が閉まった音がした。ふぅ、バレなくてよかった。だけど……不安だ。

 

 「信じてもいいの、かな?」

 

この気持ちを知る為に私はもう一度、士道を観察することにした。

 

 「特に、何もなかった……」

 

放課後まで観察してみたが時に不審な点は見当たらなかった。今、士道が校門から出ようとしている所で誰かに呼び止められたようだ。誰だろう?

 

 「だーりんー!!」

 

 「どうした、美九?こっちまで来るなんて珍しいじゃないか」

 

美九ってあの、誘宵美九かしら……?アイドルとも知り合い……じゃないわね。あいつ精霊っぽいし。

 

 「じゃあ、買い物に付き合ってくれ……美九も一緒に食べるだろ?」

 

 「はーい!だーりんのご飯ご馳走になりまーす!!」

 

この様子だと毎日、士道がご飯作ってるみたいな感じよね……大変じゃないのかしら?でも、分かって来た……士道は悪い人じゃない。

 

 「……もう少し、考えよう」

 

少し考えたくて、<贋造魔女(ハニエル)>を使って森の方へ向かった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 「……今日は来なかったな。七罪」

 

 「あの精霊さん、七罪さんでしたっけ。あの子も何か抱えてそう何ですけどね……」

 

 「分からんでもない……それを請け負うのが俺、だからな」

 

考える時間が欲しいと言った七罪。彼女が精霊になった理由に関係するのだろうとは察しが付く。あれほど不信感が見え見えだとこちらも言いずらい。

 

 「ま、気長に待つのが吉か……」

 

 「そーですねー……さしあたっては早くだーりんのご飯が食べたいですー」

 

 「分かりました、お嬢様」

 

家に帰ると先に帰っていた精霊達が自分のしたい事をして時間を潰していた。

 

 「ただいまー……今から、作るから待っててくれ」

 

 「あっ、私も手伝うよ」

 

そうすると電話が掛かって来た……電話の相手は、琴里だ。

 

 「もしもし……」

 

 「士道?今からフラクシナスに来れるかしら?」

 

 「ん、分かった。今から外に出る」

 

電話を切り、自分の部屋で制服から私服に着替える。

 

 「士道?出かけるの?」

 

 「ああ、呼び出し喰らっちまった。先に作って食べててくれ」

 

 「分かった……いってらっしゃい、士道」

 

 「行ってくる、凜祢」

 

外に出て、転送される。向かうは艦橋。其処に呼び出した張本人が居る。

 

 「悪いわね、士道。相手は士道に来て欲しいみたい」

 

其処に映っているのは恐らく気絶しているであろう七罪。そしてその周りに居るのは魔術師……その中心にいる人物が俺を誘っているのだろう。

 

 「……俺をご指名みたいだからな。行ってくる」

 

 「危なくなったら無理にでも転送するから、分かったわね?」

 

 「分かってる……無理はしないよ」

 

そうして転送場所へ向かう……転送場所はとある森。鬱蒼としているこの場所は薄気味悪いが夕暮れがそれを助長している。

 

 「……で、今日はどういったご用件で?」

 

 「……アイクが新しい精霊を見て来て欲しい、と。後は好きにと言ってまして」

 

 「あの人も物好きですね……」

 

そう言って、剣を構える。その周りに居たはずの部下はいつの間にか居ない……恐らく帰還したのだろう。なら、遠慮はいらない。

 

 「俺も少しは、強くなりましたよ。今度こそ、貴方を倒して見せますっ……!!」

 

 「ええ……今度こそ貴方を倒します!!」

 

二人が走り出し、力と力がぶつかり合う。

 

 「メサイアッ!!」

 

咄嗟に召喚器を取り出しこめかみに撃つ。撃った技はアギダイン。あまり効果は無いと思われる。

 

 「ふんっ!!」

 

炎を剣で振り払ってこちらに急接近してくる……このままだと斬り刻まれる。

 

 「ランダ!!」

 

物理に対して耐性を持っているランダを召喚して反射する……それが効かない事が分かったのか後ろに下がりレールキャノンを撃ってきた。

 

 「ティターニア!!」

 

ペルソナを変え、核熱の攻撃を繰り出すが避けられる。

 

 「……ちっ!!メルキセデク!!」

 

物理攻撃を連打、しかし掠るだけであまり効果が見えなかった。

 

 「クラマテング!!」

 

風を巻き起こし、飛び回る場所を狭くする。

 

 「やりますね……でも、これならっ!!」

 

 「カーリーッ!!……ぐッ……」

 

ガードは出来たが、ダメージを負ってしまった。

 

 「ペイルライダー!!」

 

鎌と剣がぶつかる。

 

 「ネビロス!!」

 

すぐさま切り替え後ろに下がりながらエイガオンを撃つ。

 

 「こ、のっ!!」

 

 「セイリュウ!!」

 

氷を壁にして猛攻を防ぐ……だが、それも持たない。だから、秘策を使おう。

 

 「タナ……トス……ッ!!」

 

死神を使い、天使を使い、こちらから攻撃を仕掛ける。

 

 「おらっ!!」

 

天使<鏖殺公(サンダルフォン)>と<刻々帝(ザフキエル)>を使い反撃する。剣を跳ね返しながら銃弾を撃ち込んでいく。

 

 「くっ……まだっ!!」

 

 「ごっ……くっ!!」

 

血を流しながら、戦う。一歩動けば剣が、二歩動けば銃口が、それを読みながら動く。

 

 「タナトス!!<七の弾(ザイン)>!!」

 

時を止めて、随意領域(テリトリー)ごと破壊した。

 

 「あっ……はぁ……はぁ……」

 

 「今日は……俺の、勝ち、ですね……」

 

 「ええ……負けました……ですが、今度は、負けません……」

 

そうして、傷を止血しながら飛び去って行った。俺も少し無理をしすぎたかもしれない。

 

 「ふぅ……メサイア」

 

ペルソナで傷を治す……相変わらず馬鹿げた力だと思いながら、七罪の方へ向かう。特に目立った外傷は無く気絶しているだけだと思われた。

 

 「……んっ。し、どう……?」

 

 「おう、助けに来た。起きれるか?」

 

 「ごめんっ……!!なさぁいっ……!!わたしっ……!!しどうにっ……!!」

 

どうしよう……俺、何かやったかなぁ。思い当たる節が無い。とりあえず泣いている七罪を抱っこしながらフラクシナスに帰ることにした。

 

 「で……どういう状況よ。何で泣いてるの?しかもそんなにくっ付いて……」

 

 「俺も分からん……今、寝かせたけど。暫く、二人っきりにしてくれないか?話を聞く」

 

 「ええ、分かったわ。皆にも言っておくから……」

 

そう言って個室の扉から出て行った。帰ったら面倒な事になりそうだと思いながらベットに眠る七罪を見る……どう見ても虐待(・・)を受けている感じがする。精霊になる前に受けていた、辺りか。ラタトスクで調べることもできるが、限度がある……本人から聞くのはあまり得策ではない、か。

 

 「……ん……あ、れ?」

 

 「起きたか?此処は安全な場所だから大丈夫だぞ」

 

 「……うん、分かった」

 

眠い目を擦りながらこちらに向かってきたと思うと、椅子に座っていた俺に座り始めた。

 

 「はなし、聞いてくれる?」

 

 「ん?いいぞ」

 

そう言って話し始めたのは、今日一日俺の事を尾行してたと言う事。どうしても俺の事が信じられないから信用に値するかを調べていた、という。そして一人で答えを決めようとした時にDEMに襲われて助けに来てくれた俺がボロボロの状態で泣きわめいたという話だ。

 

 「……私、決めたよ。士道と一緒に居る……だから、士道の話、聞かせて」

 

 「……気分悪くなったら言えよ?俺の話って黒い物ばっかだから」

 

そう俺が話を進めると七罪は静かに俺の声に耳を傾けていた。何も顔色一つ変えずに、ただ、話を聞いていた。

 

 「……そっか。士道も、私と同じ感じなんだ。それで、自分と同じ……」

 

 「そう……今は、大切な人もいるしな。皆が願うなら世界だって変えてやる。それが俺のやるべきことだ」

 

 「ふふ……世界征服でもする気?無理だと思う」

 

ただ談笑する。時計をよく見ると8時を過ぎている……皆は夕食を済ませた頃だろうか。

 

 「……ご飯、食べるか?」

 

 「……うん、食べる」

 

そう言ったので、とりあえず部屋を出て、転送装置に乗り自宅に戻る。

 

 「あっ、お帰り士道。遅かったね」

 

 「おう、皆食べ終わったか?」

 

 「食べ終わって皆マンションに帰ったよ」

 

まあ、そんな感じだろうとは思っていた。とりあえず軽い物を作って持っていこうか。

 

 「士道……誰の分を作ってるの?」

 

 「……?琴里から聞いてないか?」

 

 「……ああ、七罪ちゃんの分?いつの間に行ってたの?」

 

さっきだよ、と答える。そう言うとまた無理して……と怒られてしまった。頭が上がらないのは何時のもことである。

 

 「すまんって……今日は緊急だったからさ。その前に十香が腹減り過ぎて暴れるだろ?だから今回は一人で行った。今度からはちゃんと言うから」

 

 「……もう。次からちゃんと言ってね?」

 

 「はい、善処します」

 

今作ったサンドイッチを籠に入れながら聞く。この深めた絆は途切れることは無い。

 

 「今日は……あっちで泊まるから帰ってこれない。明日は休みだし、デートにでも誘おうかなって思ってる」

 

 「分かった……最後に……」

 

 「……!!いきなり、キスですか……?」

 

 「心配させた罰です。じゃあ、行ってらっしゃい士道」

 

不意打ちを喰らいながらフラクシナスに戻る。俺の周りに居る精霊はこんなことをする奴らが居るんだろうか。別にいいが。

 

 「……ドチラサマ?」

 

 「……おかえり、士道。どう、かな?」

 

部屋に戻ると、俺と同じ……高校生くらいになった七罪がそこには居た。背が伸びただけで余り変わりは無い。

 

 「普通に可愛いと思う。けど、あんまり天使を使うなよ?前みたいなことになるから、気を付けてな?」

 

 「……分かった、気を付ける」

 

霊装であることには変わりないのだが、何故か他の人と思ってしまう。

 

 「じゃあ、ご飯にしようか」

 

籠からサンドイッチを出して七罪に渡す。それを七罪はむしゃむしゃと食べ始める……よほどお腹がすいていたのか直ぐに食べ終わってしまった。

 

 「……ごちそうさま。どうやったら、こんなに美味しいのが出来るの?」

 

 「家に親が帰ってこないから料理するのは必然的に俺になるから。琴里も料理は出来るけど心配だし、その時は小学生だったからな」

 

 「へぇ……士道も苦労してるのね。精霊を救うなんて命懸けなことをしながら他の事もやらないといけない……大変ね」

 

他愛も無い話をしながら時間が過ぎる……そろそろ深夜に近づいて来た。

 

 「ねぇ……今日、一緒に寝てくれる?」

 

 「そう言うと思って今日は此処で泊まる予定だったから大丈夫だ」

 

そう言ってフラクシナスに設備されている温泉に入ってから、部屋の布団に入る。

 

 「すぅ……いい匂い……」

 

 「そうか?別にそうでもないと思うけど……」

 

よく分からないうちにホールドされて動けなくなっている為、抵抗できない。七罪はもしかしたら愛に飢えているのかもしれない。

 

 「ふぁぁ……おやすみ……」

 

 「ん。おやすみ……七罪」

 

そう言って眠りに着いた……しかし、眠っているときに俺に抱きついたままだったのですごく、寝づらかった。

 

 「……むぅ……しどう……」

 

 「寝ぼけてんなぁ……起きろ……」

 

朝、起きると首に手を回されながら足で体を固定されていた。これじゃあどうしようもないので七罪を起こすことにするが起きる気配がない。

 

 「んん……むぅ……」

 

 「起きろー、可愛い七罪ちゃん」

 

 「……!!な、何!?」

 

可愛い、という単語に過剰反応する七罪。それを利用した起こし方である。

 

 「おはよう、七罪。起きるの遅かったな」

 

 「……おはよう、しどう」

 

身だしなみを整えて、部屋を出る。ついさっきデートに行こうといった所行くと言ったので朝から行くことにした。

 

 「……で、何処に行くつもりなの?」

 

 「あー……そうだな。今の時間ならモールに行くのが得策かな?」

 

そうしてショッピングモールに行くことになった。

 

 「何処から回るかぁ……」

 

 「私、服見てみたい」

 

と言う事で七罪の服を選ぶことになった……ただし、今の姿は女子高生スタイルなのでいつもの姿になった場合の服も考えておかないといけない。

 

 「……士道は、今の私といつもの私、どっちがいい?」

 

 「……そうだな、七罪が居たい姿の方で良いんじゃないか?俺はどっちも可愛いと思う」

 

 「……!!あり、がと」

 

照れながらも服を選ぶ七罪。支払いはどうにでもなるので好きに選ばせよう。

 

 「士道、選んだよ」

 

 「ん、じゃあ払うな……」

 

次に向かった場所はコスメ売り場。まあ、女装する時に大体の物は扱えるようにはしてあるしどれがどういうものかも把握済みだ。最近の習慣が雑誌でメイク道具を確認する変な癖がついてしまったのだ。いい加減無くしたい。

 

 「……士道ってこういうの分かる?」

 

 「ん?ああ、これはな……」

 

という感じで暫しのメイク談義となった……七罪自体、素材はいいしメイクすれば化けるとは思う。後で狂三に要相談だな。

 

 「なんで、分かるの?」

 

 「……知らなくても良い事だってあるんだよ」

 

気にしないで欲しい。黒歴史の再臨を阻止せねばならない。

 

 「……聞かない方が良い奴?」

 

 「二度と聞かないでくれ……俺の尊厳が無くなる」

 

そんな話をしながら、買い物を楽しんだ。時刻は昼頃だろうか……その時に、携帯が鳴った。着信は、エレンさんだ。

 

 「はい、もしもし……」

 

 「ああ、よかった……手短に話します。そちらにDEMで廃棄された人工衛星が落ちてきます……使えないゴミ共がアイクに叛逆したいようでして」

 

 「止める手立ては、あるんですか?」

 

 「一応、あるにはあるんですが……見せられない物でして。なので、そちらで対処をお願いします。こちらはアイクを避難させるので」

 

そうすると空間震警報が鳴る。恐らくDEMの方で鳴らしたのだろうがあまり意味はないはずだ……人工衛星が落ちてくるのならばシェルターにも被害が来るはず。止めなければ天宮市が地形ごとなくなるだろう。

 

 「了解しました……こっちで何とかします」

 

 「お願いします……では」

 

電話を切って、琴里に掛ける……2コールで電話に出た。

 

 「どうしたの、トラブルにでも巻き込まれた?」

 

 「落ち着いて聞いてくれ……どうやらDEMの人工衛星が落ちてくるらしい。恐らくだが、一つでも落ちたら天宮市が吹き飛ぶ」

 

 「……ええ、こっちでも確認できたわ。落ちてくるのは二つ?かしら。一つは落とせるけど……」

 

 「一つは任せてくれ……ちょっとやりたいことがあるんだ」

 

そうして電話を切る。そうすると空間震警報が鳴り始める……やはり避難はさせるようだ。

 

 「警報……?何が起こるの?」

 

 「人工衛星が落ちてくるらしい。まあ、撃ち落とすから見ててくれ」

 

 「大丈夫なの?本当に……?」

 

まあ、心配するのも分からなくもない。しかし、ちょっとやってみたいことがあるのでやってみるだけである。

 

 「助っ人も来るから大丈夫だ……電話すれば来てくれるだろ」

 

そうして外に出ながら電話を掛ける。その人は1コールで出てくれた。

 

 「……士道?大丈夫?無理してない?」

 

 「ちょっと、手伝いを頼みたい……いいか?」

 

 「うん、分かった。今行くから」

 

そうして呼んだ人は直ぐに来た……仲間を連れて。思ったよりも人数が、いや全員か。

 

 「全員来たのか?まあ、人数が多いに越したことは無いけど……」

 

 「士道ったらすぐに無理するから……」

 

 「悪いって……まあ、皆居れば行けるだろ」

 

そうして、精霊全員の力を借りながら人工衛星を落すことになった。

 

 「士道……大丈夫だよね?」

 

 「ん?ああ……俺は死なない(・・・・)からな。問題ないさ」

 

後ろで凶禍楽園(エデン)を張っている凜祢。そして俺が万が一落とせなかった場合の第二陣の攻撃役の精霊たちが準備完了している。さあ、始めよう。

 

士道なら、任せられるから。 呼応、士道に私達の力を貸します。

 

 「ヘルスエンジェル……飛ばすぞ」

 

召喚した後、天使を出す……俺が出す天使は、

 

 「颶風騎士(ラファエル)……」

 

想像するのは、弓。彼女たちが使う槍とペンデュラム。それを重ね合わせる。

 

 「天を駆ける者(エル・カナフ)……ッ!!」

 

それに合わせてマハラギダインを撃つことで炎が勢いを増し、落ちてくる人工衛星が塵となった。

 

 「……っ!!……ふっ……」

 

撃った反動が思ったよりも強く尻餅をつく。撃った手はやけどを負っていた。

 

 「士道!!大丈夫?」

 

 「……ふぅ。思ったよりも反動が、強かったな」

 

そうして空を見るとフラクシナスの主砲の先端に琴里が天使を展開して合体させた主砲を撃っていた。ああ……使ったらやばい奴だな。

 

 「……士道、なんかもう一つ来てない?」

 

そう言う万由里。よく見ると琴里が落とした後から隠れてきたようだ。

 

 「ちっ……もう一回撃つしかないか」

 

 「……士道。私にやらせて」

 

 「無理すんなよ?やばくなったら言ってくれ、助けに行く」

 

そう言って空を見上げる七罪。そうすると箒を振りかざし衛星が巨大な豚の貯金箱になった……ほぇ……これ使えばよかったなぁ。

 

 「これぐらいどうって事、無いわよっ!!」

 

更に変化させ、飴玉になった。飴の雨である。

 

 「おお……シドー、飴が降ってくるぞ!!」

 

 「うん、そうだな。飴だな」

 

ツッコミどころしかないが……突っ込めない。

 

 「……っ!!もう一個あったの!?これじゃあ、間に合わないっ!!」

 

変化させたのは外装だけだったの様で、中に機械の塊が詰まっていたようだ。このままではぶつかる。

 

 「まだ、諦めないっ!」

 

変化させようとするが、バンダースナッチが群がっていたので衛星自体を変化出来ない。

 

 「こんな所で諦めたくないのにっ!どうしてよっ!」

 

 「……ここからは、俺がやる」

 

そう言いながら衛星に向かう。仕方ない、消し飛ばそう(・・・・・・)

 

パパは世界で一番強いんだよ!だから、絶対あきらめないで!

 

 「メタトロン……メギドラオン!!」

 

跡形もなく、消え去った。しかし残骸が降ってくる……残りが。

 

 「はっ?」

 

その残りを撃ったのは白髪の見知った顔だった。

 

 「おり、がみ?」

 

何故、クラスメイトが?DEMのCRユニットを付けている?

 

 「士道……?どうしたの?」

 

 「……何でもない。気にしないでくれ」

 

そう言う七罪。周りを見ると空を見て残りの残骸が無いか確認している精霊たちが居た。

 

 「……風のうわさで聞いたんだけど、封印ってキス、なの?」

 

 「そうだけど……んむっ……!?」

 

急にキスをされた……今思うと、好感度を見てなかったがデレていたのかもしれない。

 

 「……ん。私、士道の事好き。だから……いっぱい構って?」

 

 「……はい、わかりました」

 

そうせざるを得ないと思いながらも、町を護れたこととクラスメイトの謎の行動を考えていた。




クエスト witch をクリアしました。
運命コミュ ウィッチの開放と贋造魔女<ハニエル>を入手しました。
刑死者のペルソナが召喚可能になりました。
levelが60になりました。
愚者、魔術師、女帝、恋愛、正義、隠者、刑死者、死神のRankが7になりました。
悪魔、剛毅のRankが6になりました。


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Promise with the devil

クエスト Angels and devil が開放されました。
クリアするとコミュの開放とアイテムが入手出来ます。

遅れてすいません……ネタが思いつかないもので……


七罪の一件から数日。学校へ登校すると自分の隣の席が空いていた。

 

 「……そういうこと、なのか」

 

朝のホームルームで折紙が転校することを聞いた。転校先はイギリス……DEMの本社がある国である。話を聞きに行ってみるか……

 

 「シドー……?」

 

 「……ああ、何でもない。少し、疲れてるだけだ」

 

十香に心配されつつも授業を受け、学校帰りにDEM社に寄る。其処に居たのは……まだ、変わっていない折紙が居た。

 

 「何を、しに来たの」

 

 「折紙は……やっぱり(・・・・)そっちに行ったんだな。俺個人としては行ってほしくなかったけど」

 

自分が言ったことが意外だったのか、驚いた顔をする。これは俺自身の本心である。

 

 「そう……だけど、私はもう決めた」

 

 「……アドレスは変えない。なんかあったら連絡しろ」

 

そうして、折紙は入り口に。俺は奥に歩いて行った。

 

 「……社長室、行くかぁ」

 

もはや、顔パスで社長室まで行けるようになったことに驚きつつもノックをして部屋に入る。そうして入ると一人知らない女性が居た……金髪碧眼。典型的な美少女である。

 

 「おや、君か。新しい子なんだが……アルテミシアだ」

 

 「よろしくお願いします……」

 

 「君が、五河士道?エレンと戦って勝った子だよね?よろしく」

 

雑談をしながらも折紙の事について聞く。どうやらエレンさんが勧誘したらしい……折紙が求めている情報、天使の様な精霊、そしてファントムの情報の開示。それらがあって此方に就いたという話だ。

 

 「……復讐に走る、か。何があってそんなことになったのやら」

 

 「単純な話かもしれない……私はそう、睨んでいるがね」

 

そうして話をしていると自分のポケットから音が鳴る。

 

 「ちょっとすいません……はい、もしもし」

 

 「士道!!大変なの!!」

 

 「……状況は?」

 

電話の主は凜祢。かなり慌てている様子なので落ち着いて対処すべきだと思い、状況を聞く。

 

 「鳶一さんと十香ちゃんが戦い始めたの!」

 

 「……そっちには誰が居る?」

 

 「私と万由里ちゃん、十香ちゃん、狂三さん、耶倶矢ちゃん、夕弦ちゃん、美九さんが居るよ」

 

恐らくだが、学校帰りの精霊たちを狙って攻撃を仕掛けたのだろう。琴里はフラクシナスのはず、四糸乃、七罪は一緒に居ると考えていい。こちらを見た感じだと独断だと考えていい。

 

 「分かった……今すぐ向かう」

 

電話を切り、一つ聞く。本当に指示をしていないのかという疑問だ。

 

 「折紙に、何も指示をしてはいないんですね?」

 

 「ああ、そうだとも。私はただ人材(・・)が欲しかっただけだ」

 

 「では、俺も行かないといけないので失礼します」

 

そうして部屋を出る……エレベーターを使い、一階まで降りる。部屋を出る時に何か言っていた気がするが気にしないで外に出る。

 

 「……どうするか。いや、そんなことは言ってられないか」

 

胸ポケットにいつも入れている召喚器を取り出し、こめかみに当てる。

 

 「……タナトス」

 

周りに雄叫びが響く……どうやら知らぬ間に空間震警報が鳴っていたようで人はいない。精霊の繋がりを辿りながら空中を飛ぶ。

 

 「居た……間に合うかっ?」

 

ブレードを十香に向けて振う所にタナトスを無理やり入れる。何とか間に合った。

 

 「士道……!?」

 

 「シドー!?」

 

 「何やってんだ……!復讐のために他の奴らも殺すつもりかよっ!」

 

折紙は無言で俺に剣を向ける。後ろを見るとかなりぼろぼろの狂三と美九。多少の怪我はあるがまだ戦える耶倶矢と夕弦。無傷の十香と凜祢、万由里。やはり引きながら戦った方が良いか。

 

 「ロキ!」

 

氷を出しながら引く。足止めをしつつも十香にバトンタッチ。狂三を抱えながら引き離れた所に座らせる。

 

 「……メサイア、メシアライザー」

 

安心して気絶した狂三を回復させる。そして、美九も同じように下がらせる。此処からは自分も出て折紙を無理やりにでも止めるしかない。

 

 「十香、大丈夫か?」

 

 「うむ。前より強くなったのは分かるがまだ私の方が上だ」

 

見た感じ互角の様だ。此処から自分も加わって止めよう。

 

士道になら……良いかな。私の力貸してあげる。

 

 「アリアドネ!」

 

暴風を巻き起こし吹き飛ばす。しかし、空へと逃げられるがそれは想定内。

 

 「ふっ……とべっ!!」

 

 「くっ……!」

 

アリアドネのストリングアーツ猛獣で地面に叩き落とす。そこに十香の鏖殺公の攻撃が入る。

 

 「がっ……」

 

 「灸を据えてやる!」

 

鏖殺公の腹で薙ぎ払い、見えなくなるほど吹き飛んでいった。恐らくは戻ってこないだろうと思い後ろを見る。

 

 「大丈夫かー?」

 

 「応答。問題ない……と言う訳ではありませんが」

 

 「ちょっと……キツイ、かな」

 

二人もかなり戦った為に傷が多い。今も血が流れながらも立っている状態だ。

 

 「……メシアライザー」

 

とりあえずは回復は出来たが……疲労は取れない。何処かで休ませた方が良いだろう。

 

 「あー……どうするか。凜祢?琴里に連絡は取れるか?」

 

 「……取れない。というよりも何かと戦ってるみたいで」

 

戦っている……フラクシナスと同等に戦う……空中艦?

 

 「……そういう事か。とりあえず学校の保健室に運ぶぞ」

 

 「分かった……四糸乃ちゃんと七罪ちゃんは?」

 

 「こっちで呼んでおく。二人を見てもらってる万由里の方に行くか」

 

耶倶矢と夕弦を前と後ろに抱えながら歩く。しかし、さっきから感じるこの嫌な予感は何だろうか。

 

 「…………」

 

 「むぅ……」

 

十香がお腹が減ったと言わんばかりの顔をする。何か買ってやらないといけないようだ。そんなことを考えていると強烈な殺気を感じた。

 

 「っ……!!」

 

 「シドー!!」

 

咄嗟に飛んできた光を避けた……その跡には煙が立っている。その煙の奥から天使(・・)の様な格好をした折紙が居た。

 

 「何故、精霊になっている!鳶一折紙!」

 

 「やはり、そうなの……」

 

そう言う折紙の顔は……悲しみに満ちていた。そんな顔をしているが、覚悟に満ちていた。

 

 「……十香、皆を連れて逃げろ。此処で俺が足止めする」

 

 「……分かった。任せる」

 

 「さて……此処から先は俺が通行止めするが、お前は無理やりにでも通るか?」

 

十香が行ったのを見送り、折紙を通さないように目の前に立つ。これなら俺を倒さないと通れないようになった。

 

 「どうしても……通さない?」

 

 「お前が手を汚すのを見たくない。復讐に走るお前を見たくない。お前が精霊になろうとも俺は、味方だ」

 

召喚器を取り出す……この久しい感覚を忘れていた。誰かのために、この力を使う。そう決めたあの日の事を。

 

 「ペルソナ……!」

 

光を放ってくる折紙。それを避けながら……いや、見慣れていたからか。感覚で避けることが出来る。どんなふうに戦ってきたのかを間近で見てきた俺だからこそ。

 

 「ふっ……」

 

 「燃やせっ!アステリオス!」

 

バチバチと燃える炎。折紙の霊装を燃やし、燃やし、燃やし。其処から斧で殴る。それを何度も繰り返す。

 

 「ちっ……」

 

 「ティタノマキアッ!」

 

ティタノマキアに対して折紙は瞬間移動で避ける。精霊になったことでCRユニットを付けていた時よりも機動力が上がったからなのだろうか。その瞬間移動を読みながらも攻撃を当てていく。

 

 「<絶滅天使(メタトロン)>……!」

 

何だろうか……とても嫌な予感がしたので下がりつつも様子を見る。段々と、<絶滅天使>が上へ上へと集まっていく。

 

 「砲冠(アーティリフ)……!」

<凶禍楽園> 「―――――!!」

 

自分で何を言ったのかは分からないが……恐らく、守るという事を意識したのか<凶禍楽園>を無意識に発動したようだ。

 

 「くっ……痛っ……えっ?」

 

最大火力を放った折紙はそこにはもう、居なかった……とりあえず学校へと向かおう。

 

 「…………制服、買わないとなぁ」

 

色々なところが破れ、血が滲んでいる。骨も若干ひびが入っているかもしれない。そんなことを考えながらも学校へ戻ると問答無用でベットに叩きつけられた。痛いです。

 

 「士道は絶対安静!分かった!?」

 

 「はい……すいません……」

 

そんな風に怒る凜祢。隣には狂三が寝ている。ああ、どうしてこうなったのやら。まあ、派手に戦った事は否めないが。

 

 「それにしても……精霊化が起こる、か。やっぱり、ファントム(・・・・・)の仕業なのかね」

 

 「どうだろう……話を聞く限りだと、ファントムがって事になるよね」

 

美九や琴里、あまり話したがらなかった狂三がそれについて言及している。確かに俺も何処かで(・・・・)いや、懐かしい(・・・・)と感じている自分が居る。

 

 「誰なんだろうな……案外近くに居る人とかかもしれないな」

 

 「士道、それ本当にありえそうだから止めて」

 

そんな話をしながらふと、外を眺める。ほぼ夜の時間に学校の保健室にお世話になることは無いので何か新鮮だ。

 

 「ふぅーーー」

 

 「あひっ……誰だ……?狂三?」

 

狂三の能力の一つに、分身がある……それを考えれば此処に狂三が居るのも不自然ではない。で、何をしに来たのだろうか。

 

 「士道さんにお知らせですわ。折紙さんがわたくしの十二の弾(ユッド・ベート)で過去に戻りましたの」

 

 「…………大方、察しがついた。そろそろ戻ってくるんだろ?……此処にっ!」

 

急いで<凶禍楽園>を展開し、学校が崩れるのを防ぐ。空には、喪服を着たナニカが居た。

 

 「……折紙、か。反転精霊……だったか?」

 

 「ええ、精霊は負の感情を感じすぎると反転状態になってしまいますわ。折紙さんは過去で何を感じたんでしょうね?」

 

過去で何を感じたのだろう。それほど絶望するなにかは何だろうか。思い当たるのは一つ、親の仇である精霊……それぐらいしか手がかりがない。

 

 「先に言っておきますわ。この世界は、詰み(・・)ですわ。折紙さんを殺すか、世界が壊れるか」

 

 「だから俺に話しに来たんだろ?第三の方法をさ」

 

絶望した折紙を元に戻すには、原因を排除しなければならない。なら、過去に戻った折紙と同じように俺も過去に戻ればいい。そういう話だ。

 

 「では……行きましょうか。おいでなさい、<刻々帝>」

 

狂三の下から影が伸び、自分の周りで止まる。

 

 「霊力は士道さんのを使うとして……原因排除に失敗したら、仕方ないですけどわたくしに頼るしかありませんわね」

 

 「昔の狂三か?」

 

 「ええ、会わせたくはありませんけど」

 

そう言う狂三は何か……昔の自分を彷彿とさせる。具体的には黒歴史。

 

 「まあ、あまり気にしない方針で行くよ。じゃあ、頼む」

 

 「ええ、時間旅行をお楽しみくださいませ」

 

そうして何かに引っ張られる感覚を感じながら目を閉じた。

 

 「…………っ……成功は、したか」

 

辺りを見渡す……何となく見ると恐らくだが五年前。琴里が精霊になった日……南甲町火災の年だ。

 

―士道さん、聞こえますか?―

 

 「…………ああ、聞こえてる。こっちは特に問題なしだ」

 

念話を使うのは初めてだが……恐らく、狂三の<刻々帝>の能力だと思いあまり聞かないで置く。

 

 「とりあえず、折紙を止めないといけないんだよな」

 

―ええ、そうですわね。折紙さんの反応は、この道を真っ直ぐですわね―

 

 「と、その前に……この格好だと不審だからっと」

 

贋造魔女(ハニエル)>を使い、この年代に会っているように体を変化させれば不審には思われない。

 

 「これで行くか……」

 

そうして、懐かしい道を通る。現在と余り変わりは無いが……そんなことを考えながら歩いていると上の方で何かの気配を感じた。

 

 「見つけた……ん?」

 

上に居るのは……折紙と、モザイクの様なナニカ。あれがファントム?

 

 「手を出さない方が良いか……」

 

―手を出しすぎるとそれもそれで変わってしまいますわ―

 

狂三の補足説明を聞きながら、様子を見る。空中戦を繰り広げているが……とどめの一撃を放った時に、俺は分かった気がした。

 

 「この世界には折紙は……二人(・・)居る。と言う事は」

 

それを言う前に目の前でそれは起こった。上から光が落ちてきたのだ……そして、そしてその下に居た二人が跡形もなく消えた。

 

 「そういう……ことかよ……」

 

あの時言っていた天使の様な精霊。それは自分自身だったと言う事だ。

 

 「…………!?消えた?」

 

―時間切れ、ですわね―

 

 「いや、これでやることは分かった……」

 

横から家が崩れている……不味いと思い。其処に居た折紙を咄嗟に抱え込みながら前へ飛んだ。

 

 「……っ……大丈夫か?」

 

 「貴方は……?」

 

……今思えば、最初に会った時に覚えていないのかという質問が繋がった気がする。此処で会うこと自体がこの世界の歴史となっていたのだ。

 

 「五河士道だ……」

 

 「あり、がとう……」

 

 「ああ、泣いていい。この先、悲しい事があるかもしれない。それでも君の見方は絶対に居る。それだけは覚えておいてくれ」

 

そうして折紙を安全な所へ案内し、狂三の指示に従いながらある場所へと向かった。その場所は……

 

 「此処に、居るのか?」

 

―ええ、わたくしは此処でこの町を見守っていましたの。だから確実にいますわよ―

 

今いる場所は古いビル。その屋上の扉を開け奥に進む……そうするととてつもない殺気が俺に向けられる。後ろに、居る。

 

 「あなた、何者ですの?」

 

 「……五河士道。五年後から来た。君の力を借りたい」

 

そうして話した途端。足に銃弾が撃たれた……

 

 「くっ……ふぅ……」

 

 「嘘、ですわね。もう一度聞きますわ……何者ですの?」

 

―……わたくしが話しますわ。手を繋いでくださいまし―

 

 「未来の狂三がお前と話をしたいって……」

 

 「…………分かりましたわ」

 

そうして手を繋いで話しているのだが……俺には全く何も聞こえない。手を握る力が強まったり弱まったり。何の話をしているのやら。

 

 「ええ、大体の事情は把握しましたわ。では……おいでなさい<刻々帝>」

 

 「……じゃあ、頑張って過去変えてくるよ」

 

そうして二度目の過去へと向かう。この時代でやることは、折紙の両親を生かすこと。それだけだ。

 

 「ふぅ……さて、お話をしようか」

 

此処で行ったことは未来で何かを起こす……なので、あまり変えると自分が知っている未来とは変わってしまう可能性がある。

 

 「くっ……駄目だ、駄目だ」

 

目の前で起きている事……琴里にモザイクの様な人物が何かを渡している所だった。あれが、霊結晶(セフィラ)なのだろうか。

 

 「悪い琴里……俺は行く」

 

苦しんでいる妹を無視し、その先に居るモザイクの様な人物……確か、ファントムだったか?それを追いかける。恐らく気づいているだろう。

 

 「早っ……追いかけられるか?」

 

そして、追いかけること数分。ようやく止まったと思うと急に後ろを振り向いて来た?と感じた。

 

 「……なんで、君が此処に居るのかな?」

 

優しくそして、何処か、懐かしい(・・・・)。そんな声で問われた。

 

 「俺は過去を変えに来た。それにお前が関わっているから、関わらないで欲しいだけだ」

 

 「そっか……君は、変わらないね」

 

そうして、近づいてくる。耳元で何かを囁かれた時に頭が痛んだ……

 

―30日だから……澪で良いかな?―

 

 「……み、お?」

 

 「……っ!?」

 

記憶の奥深くに在るような……自分の記憶かどうかも分からないモノ。それを無意識に呟いていた。

 

 「……じゃあ、また会おう。多分、すぐ会えるよ」

 

 「っ……凜祢?いや、万由里?違うか?」

 

一瞬、声が二人にダブって聞こえた。そして、姿も。なんだ、あいつは?恐らく、女性だろうと考える。

 

 「…………もう、居ないか。もう、やることはあれだけだ」

 

走る、走る。時間がない。あの時見た光景、それを消すために。

 

 「とりあえず……はぁ……間に合った……はぁ……」

 

息を切らしながらも、上を見る。そろそろ時間だ。

 

―士道さん……何をするつもりですの?―

 

 「……時間切れで帰れる。それを利用して折紙の両親を吹き飛ばす……加減して、な」

 

そうして、走る。スローモーションに動いて見えるが関係ない。そうして光にのまれながらも両親を吹き飛ばした間隔を得ながら意識を閉ざした。

 

 「……んっ……ん?」

 

目が覚めると、美女に囲まれていた……川端康成の本の様な感想を抱いてしまったが。何故、全員集合しているのだろう。自分の部屋に。

 

 「シドー……うふふ……ふふ」

 

 「何が何だか……ベットからも出してくれないのかよ」

 

暫くして、皆が起き始めると体を入念にチェックして抱きしめられて下に降りる。なんか、身体が火照った。

 

 「で、説明してほしいんだけど……」

 

 「はい、誠に申し訳ございません……はい」

 

狂三から事情を聴いていた精霊たちは、事実確認と安否確認をするために俺の部屋に集まっていたという。

 

 「鳶一折紙……確か、今の世界だとASTを辞めたんだったかしら?」

 

 「そして、デビルの可能性がある。そんな人ですわ」

 

聞きなれない言葉、<デビル>。誰かの識別名なのだろうが……

 

 「デビルってなんだ?」

 

 「反転した折紙さんの識別名ですわね。悪魔みたいだから……そのままですわね」

 

悪魔、天使。表と裏。そう言った感じがする。

 

 「で、今何時だ?」

 

 「昼過ぎよ……今日は日曜日だし。買い物はこっちでしておいたわ。無理してでもなんかするつもりだろうし」

 

 「はい、誠に申し訳ございません。はい……」

 

すごい謝罪会見の様な感じになっている気がする。とりあえず今度から心配させないようにしないといけないなぁと思った。

 

 「まあ、明日転校してくると思うから。明日から行動開始よ」

 

 「りょーかい。明日な……さて、晩飯の用意をして」

 

そうしてその日は心配されながらも家事をして終わった。歴史が書き換わった世界。前までいた世界とは同じとは言えない可能性があるので今度資料を見せてもらおうと思いつつ眠りにつく。

 

 「で、こうなると……」

 

次の日、登校してみると鳶一折紙が転校してきた。しかし……

 

 「……髪が、長い。そして、恋人にしたいランキング一位。かなり違う」

 

前の世界では、ショートカットで変態性にあふれていたが……普通の女の子と言った印象を受ける。

 

 「五河君、よるしくね」

 

 「……ん、よろしく」

 

挨拶を済ませ、凜祢と目を合わせて会話を試みる。こんなやつだったか、と。帰って来た返事はNO。だよなぁと思いつつ授業を受ける。

 

 「……話してみないと分からない、か。呼び出すのが手っ取り早いか?

 

そうしてノートを破り、必要な事を書いて隣に渡す。時間になったら来るだろう。多分。

 

 「何ですか、呼び出して……」

 

 「折紙……じゃなかった。鳶一さん、”精霊”って知ってるか?」

 

踏み込んだ話をすると思った通りの答えが返ってきた。しかし、昔に俺を見たから今後空間震警報が発令した時に出るなと言ってきた。しかし、俺は精霊を救わないければいけないのでその約束は無理な話だが。

 

 「ん……そうだな。今週の休みって開いてるか?ちょっと一緒に出掛けないか?」

 

 「え……はぅ……か、考えておきましゅっ!」

 

乙女思考……と言った方が良いか。顔を真っ赤にしながら逃げていった……なんか、すごい違和感。

 

 「終わった?」

 

 「すごい、違和感を感じないか?前と違うからさ」

 

 「うん、すごい分かる気がする……」

 

違和感を覚えつつもデートの約束を付けることが出来た。時間はあちらに渡した自分のメアドを通じて連絡が来た。日曜日午前11時に集合だそうだ。

 

 「……準備は怠らず。覚悟をしておくか」

 

そうして今の世界で起こった事と前の世界で起こったことを資料を見ながら確認しながら過ごした。相違点があるとすればデビルの存在が全て影響していると言う事だろうか。十香と出会った時も、四糸乃と出会った時も、狂三と出会った時もだ。大体はデビルが関わっている。反転体と出会ったことのある俺が今までと違うと思うのはコミュニケーションが取れていないという点だ。反転した十香……天香は乱暴ではあったが話をすることは出来たし、好感を持ってもらう事も出来た。しかし、デビルの場合はそれが出来ていない。行けるか?

 

 「話が出来ない、精霊か。俺に少なくとも好意……あるよな。絶対ある気しかしないけど……精霊になった後が問題だからそれより前にケリを付ける」

 

そう考えながら時間は過ぎていった。歴史改変で起こったことについては大体を把握できた。今度こそ、この歴史で折紙を救うんだ。

 

 「……早く来すぎたか?」

 

そして、デート当日。早めに待ち合わせ場所に就いた俺は携帯を見ながら時間を潰していた。携帯と言っても鞠亜、鞠奈と話しているだけだが。

 

 「いつも通りにやれ、か。それが通じるかどうかだなー」

 

メッセージでそのようなことを書かれる。それにしても相談相手が居るのは非常に助かるし、臨機応変に行動できるのでこれからも相談したいところだ。

 

 「お待たせしました……」

 

 「ん、全然待ってない。じゃあ、行こうか」

 

そんな風にしていると折紙が待ち合わせ場所に来た。はっきり言って集合時間の1時間前くらいなのだが、折紙らしいと言えばらしい。

 

 「えっと……何処に行くんですか?」

 

 「……まあ、らしいことをしようか」

 

デートらしいこと……俺にとっては戦争(デート)は普通ではなかったので色々おかしい所は在るとは思うがやってみよう。

 

 「まずは……服、かな」

 

そんなこんなで始まった折紙とのデート。服屋やファミレスなどに行ったが……なんだろう、折紙の深層心理が出ているのか、何なのかは分からないがそれらしいことが確認できた。スク水、写真を連写……見たことあるようなものが確認できた。

 

 「……過去を変える前の折紙が出ている可能性があるって事か」

 

メッセージ欄にそのような事が送られてきた。可能性としては無くはないが……その可能性があるとするならばもっとその面を表面化させなければならない。

 

 「決着を付けるなら高台か」

 

何かと縁がある高台。恐らく決着を付けるならそこだろう……話にも出ていたが折紙自身、何か違和感を覚えているらしい。その違和感を払拭するためにも。

 

 「……寒っ。秋の夜は冷えるな」

 

 「そうですね……ちょっと、寒いかな」

 

手袋でも持ってくればよかったと思いつつ、次に何をするべきか思考する。夕方の高台で行う事は……何だろうか。手でも繋いでおいた方が良いだろうか?

 

 「……っ!?」

 

自然に手を繋ぐ。とりあえずはこれでいいだろうか……

 

 「五河君、少し話を聞いてもらっていも良いですか?」

 

そうして、話し始めたのは昔の話。妙な点があるとすれば両親の話をよくする事。前の折紙では考えられない事だが、話を引き続き聞く。そうして最後に俺の話になった。あの日、助けてくれたのは俺か、と。

 

 「……そう、だな。信じられないと思うけど、それは俺だよ」

 

 「やっぱり……」

 

寄りかかっている柵が軋む。危ないと思った時にはもう、遅かった。

 

 「……っ、折紙っ!」

 

 「きゃぁぁぁぁ!」

 

手を伸ばし、身体を逆転させ俺が下になるように着地する。

 

 「がはっ……うぇ……ごほっ、ごほっ……」

 

 「五河君!大丈夫ですか!?」

 

口の中で血の味がする。骨も何本か折れているかもしれない……まあ、折紙が無事だったし大丈夫だろう。

 

 「ああ……大丈夫だ」

 

服が破れ、其処から血が流れている。その傷跡を舐めるように体が燃えた。その炎を見た時、折紙の様子が変わった。

 

 「精……霊……」

 

 「ちっ……トリガーは灼爛殲鬼(カマエル)だったか!」

 

あの時見た、反転体。流石に一人では無理だし、無茶をするなとも言われている。とりあえず連絡を取って……

 

 「くっ…………!えげつないことするなぁ!」

 

後ろにあるファンネルの様な物でビームを俺に向かって撃ってくる。当たると消し炭になりそうだ。

 

 「二人とも!連絡頼む!」

 

携帯に向かってそう言い、ポケットにある召喚器を手に取る。

 

 「焼き尽くせ!スルト!」

 

炎を撃つ。だがそれはほんの少しの時間稼ぎにしかならない。遠くで警報も聞こえる。もう少しで来るだろうか。

 

 「ティターニア!」

 

氷で動きを阻害しつつも様子を見る。相手は俺に対してターゲットを絞っている。これを利用すれば行けるか?

 

 「シドー!」

 

 「十香!下がれ!」

 

その声と同時にビームが撃たれる。とっさに違うペルソナにチェンジする。

 

 「アバドン!」

 

ぎりぎり止めることができて無効化することができた。さて、此処からどうするか。

 

 「…………暴走状態?でも違うか」

 

 「意識がない、って感じじゃないか?だから、無理やりにでもキスをする」

 

万由里の見解では、暴走状態ではないとの事。後は、突き進むだけ。

 

 「じゃあ、頼んでいいか?皆?」

 

 「任せろ!」

 

他の精霊の皆が折紙の気を引いている中、走る。走って、走って。ただ助けたいと思う女の子の方へ走る。

 

 「貴方様は特別です……いかなる困難に道を阻まれようとも。自らの力で道を切り開くことができるのです。さあ、貴方様の想いの力を。今こそ見せる時です!!」

 

イゴールさんの言葉が脳裏に蘇る。そんなことを言っていたな、と思い出し笑いしながらも叫ぶ。

 

 

「来い、伊邪那岐大神ッ!!」

 

道を切り開くために、この力を使う。

 

 「邪魔だぁぁぁぁっ!!」

 

黒い障壁を斬りつけ、こじ開け。先へ突き進む。精霊を助けたい、その一心で。

 

 「折紙ッ!!」

 

 「……………………」

 

名前を呼んでも反応がない。でも、気づいてくれると信じて先へ進む。そうじゃなかったとしても、方法を探す。

 

 「俺には!!お前が!!まだ!!必要だ!!」

 

障壁が破られ、その勢いのまま折紙の元へと身体を向かわせる。そして、唇を合わせた。

 

 「…………っ!?」

 

 「…………ん、やっと元に戻ったな」

 

服が粒子へと帰っていく。その目は、闇ではなく光に満ちていた。

 

 「…………ありがと、士道」

 

 「おう、お互い様、だろ?」

 

少し大変な日々だった気がするけど、それでも助けたいものを助けれた達成感が感じられた気がしたんだ。




クエスト Angels and devil をクリアしました。
絶滅天使<メタトロン>を入手しました。
levelが70になりました。
愚者、魔術師、女帝、恋愛、正義、隠者、刑死者、死神のRankが8になりました。
運命のRankが3になりました。


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