僕が僕で無くなった日 (ZERO ⅧIV)
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満月が綺麗な夜の日に。
ある満月の綺麗な日、僕は僕で無くなった。
僕にはさっきまでの記憶はなく、今まで何をしていたのかも思い出せない。っと言うか今も何が起こっているのかわからず、脳内回線がはち切れそうだ···。
とりあえず分かることは、僕は血だらけ。
だけど怪我などはしていない。見たところ僕の血じゃなさそうだ···。
そして目の前で倒れている一人の少女。微かに胸が上下している事から、どうやら生きているようだ。
その少女は透き通るような白い柔肌でそれに合うように窓の割れた隙間から照らされる月明かりに照らされてキラキラと輝きを放つ金色の髪。
しかしその柔肌もキラキラと輝きを放つ金色の髪も、全て彼女の下の血溜まりで赤く、染まっている。
それでいてもまるで芸術品のような美しさを感じるのは僕だけであろうか?
色の真反対と言うのは人ぞれぞれとわ言うが、金色の髪と淡い月明かり照らされ恐ろしく煌めく紅色。
「あぁ····とても綺麗だ···」
ただその一言に尽きる。それ以外に言う事は無いだろう。
しかし、なんだろう?僕はこの少女を知っている。
知っている気がするじゃなくて、知っている。
なのにこの子の事について何も思い出せない。
僕は、僕はこの子とどうやって会ったんだ?
何時?何処で?何をして?
そうだ···。
あれは確か今と同じ満月の綺麗な夜だった。
僕は木々が生い茂る森林の中で、出会った。
余りにも綺麗で、美しくて、見とれてしまった。
この世の者とは思えない美しさで、一瞬妖精かエルフかと見間違えるほどに。
そして僕は···彼女に近付いたんだ。
それから···──────────────
ッ!な、なんだ!?あたまが····痛い。
何かがおかしい。
何だこの違和感は。
なんだ。なんなんだ。
そうだ。
僕はあの時。美しさに吸い寄せられて。
彼女を、あの時。
殺めてしまった。
そうだ。僕はなんて事を──────
そう思い出すと目の前の少女が突然恐ろしく感じた。
あの日の夜は今じゃない。
じゃぁ何故彼女は今····?
手が震える。息が苦しい。足もガクガクに震えておかしくなりそうだ。
自分でやった行いが何故そうなったのか理解が出来なかった。僕はサイコパスでもないし、日頃からストレスを溜めるような人間じゃない。
なのに何故、あの時。僕は彼女を殺して···。おかしい。
おかしい、おかしい。
何故だ。何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故。
その時僕の背後から月明かりに照らされた。
女の人の影が僕に覆いかぶさった。
「ねぇ····逃がさないよ」
何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故。
何故?
私にも分かりません。
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