ガンダム nearmiss  (ヨッシー♪)
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プロローグ

昔から僕は機械が好きだった。ロボットとか飛行機とか・・・とにかく機械なら何でもそうだった。

 

 

 

そして月日が経ち平凡な学生時代を送っていた僕は18才の時に就職するか進学するかを悩み、父親しか居ない家庭だったし・・・食うに困らないのと自分の趣味も合わせて地球連邦軍士官学校へと希望した。

 

 

まあ親父も親父で元から放任主義だったから特に反対も無かったし、頭はそんなに良く無かったがどうにかギリギリで合格・・・まあ今時軍隊に入る奴も珍しかったお陰かな?と今でもそう思う・・・

 

 

 

そして2年後・・・成績は学課と実技で極端だったが機械好きと言うのが良かったのか実技の教官の評価が良かった為にどうにか僕は卒業の目処が立ってオーストラリアの端に有る田舎基地の戦闘機パイロットとして配属される事なった。

 

 

そして更に2年後の宇宙世紀0079年・・・ただの戦闘機パイロットだった僕はジオン公国独立戦争・・・後に一年戦争と呼ばれるここ地球圏に住む全人類を巻き込む大きな争いに自分の身を投じる事なった・・・

 

 

 

~~~

 

 

 

宇宙世紀0079 7月

 

 

インド洋上空

 

 

「ああもう・・・マジでしつこいって!?」

 

 

定期的なパトロールだったが敵戦闘機とニアミス、突発的な戦闘に突入してしまった。

 

 

随伴機がいたのだがはぐれたらしい・・・堕ちてなければ良いな思っている地球連邦軍のパイロットは先程からジオン側の制空戦闘機で有るドップに後ろを取られっぱなしで反撃出来ずに必死に逃げている所だ・・・

 

 

 

こちらのトリアーエズは連邦空軍の制式戦闘機だが、スピード、旋回性、火力の全てにおいて全て向こうのドップに劣っているらしく、こう後ろを取られては反撃のしようが無い・・・

 

 

「何でそんな不恰好なのに、性能良いんだよっ!」

 

 

連邦軍のパイロットはコックピットでジオン軍戦闘機ドップのデザインに悪態を吐くがこの状況が変わる訳でも無い・・・

 

 

 

(くそったれ全然振り切れないな・・・ホントにツイてない!)

 

 

連邦軍の戦闘機パイロットは、けどこんなとこで死ぬわけに行くかっ!とアフターバーナーを吹かしながら操縦桿を右に倒し急旋回を行うが、後方のドップの方が旋回性能が高いのか自機よりも内側に入り込んで来る。

 

「チッ、ロックオンされた!」

 

連邦軍のパイロットはコクピットにビーっと鳴り響くロックオンアラートに舌打ちしながら右脚のラダーペダルを踏み込み愛機で有るトリアーエズを海面へと一気にダイブ(降下)させる。

 

 

「ドップの奴ミサイル撃ちやがった・・・こなくそぉーーっ!!」

 

 

連邦軍パイロットのトリアーエズはアフターバーナーをカットしフレアをばら撒きながら機体を海面スレスレに引き起こすと、ドップから放たれた熱探知型の赤外線ミサイルはフレアに向かって突き抜けるとそのまま海へと着弾する。

 

 

「日頃の行いの良さってね!」

 

連邦軍のパイロットはフゥ!と安堵の息を吐きながらアフターバーナーを吹かし機体を上昇させると、後方のドップは引き起こすのが遅れたのか海面に機体を打ち付けながらバランスを崩しているのをパイロットは確認する。

 

 

「良し貰ったっ!」

 

 

連邦軍パイロットは今まで後ろを取られっぱなしで鬱憤が溜まっていたのかこの絶好の機会に反撃に出ようと、スロットルを最低出力にワザと失速させると機体が下を向いた瞬間再びスロットルを最大に上げる。

 

 

「コイツ・・・今度はこっちの番だからなっ!」

 

連邦軍のパイロットはそう呟きながらHUD(ヘッドアップディスプレイ)に映る海面スレスレを飛行しているドップに向けレクティルを合わせ操縦桿のトリガーを絞るとトリアーエズから放たれた20バルカン砲がドップの胴体と右翼に被弾し火を噴くとドンっ!と音を上げながら海へと叩きつけられてしまう・・・

 

 

「やったねビンゴッ!」

 

 

そう声を上げた連邦軍のパイロットはふと安心した瞬間、目の前の雲の切れ目からヘッドオンして来る新手のドップにギョッとした顔になると、マズっ・・と言いかけた瞬間には前方のドップから発砲された30ミリバルカンが機体の左の主翼と水平尾翼に直撃してしまい機体のコントロールを失い始め出す。

 

 

「ええいクソっ!?トリントンコントロール聞こえるか?こちらは基地守備戦闘機隊の第一小隊二番機のカノウ少尉だ。パトロール中に敵機と接敵し被弾した・・・エマージェンシー!エマージェンシー・・・」

 

カノウ少尉と名乗ったパイロットは必死に機体を立て直そうとするが鳴り響くロックオンアラームに無理か!と叫ぶと足元にある緊急脱出装置のレバーを引きベイルアウトする・・

 

 

「クソ!ごめんな・・・」

 

 

脱出した直後にドップにより放たれたミサイルにより爆発した愛機に敬礼しながパラシュートでヒラヒラと海面に着水すると、辺りを見回しながら、海水浴か…サメに襲われませんように…とにかく祈った。

 

 

「普段は神なんか信じちゃないけどね・・・・」

 

 

そう呟いた僕は大分日が傾いた空を見ながらハァ・・・と溜息をつくのであった。

 

 

 

 

 

 

 



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モルモット!?
ショウ=カノウ


どうにか無事に基地へと戻って来たがどうやら妙な事に・・・?



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宇宙世紀0079

 

 

人類は地上そして宇宙と別れて住んでいた・・・

 

 

地球連邦政府の圧政により苦しむスペースノイドは日々不満を募らせ、次第に反地球連邦政府運動が活発化する。

 

 

(スペースノイドの)ニュータイプへの革新を唱えたジオン=ズム=ダイクンの暗殺でサイド3の実権を握ったザビ家当主デギン=ソド=ザビが地球連邦政府に対し独立を宣言すると、彼はサイド3をジオン公国と名乗りを上げると同時に独立宣言を掲げ地球連邦政府に開戦を表明した・・・

 

 

その後ジオン公国軍は、サイド2にあったコロニー・アイランドイフッシュをハイジャックした上で、全住民をNBC兵器(大量破壊兵器)で虐殺すると言う残虐な行為を行い、そのコロニーを地球に有る連邦軍総司令本部ジャブローへ落下させるという残忍な作戦・・・ブリティッシュ作戦行う。だが・・・連邦軍の猛攻撃により落下地点がずれたアイランドイフッシュは、オーストラリアの首都シドニーに落下。オーストラリア大陸の三分の二は地図から消える事となった・・・

 

 

 

地球連邦軍も奇襲とも言える宣戦布告に遅れながらも応戦するが、ジオン軍の新兵器で有るMSと、(MS用に仕様変更された)核兵器による攻撃によって、各サイドは次々と壊滅してしまい・・・この通称1週間戦争で総人口の半分で有る約50億人が死亡したとされてる。

 

 

そこで賭けに出た地球連邦軍は、航空宇宙軍ルウム方面軍の艦隊司令で有る、エイブラハム=レビル中将(以下レビル将軍)を総司令官に任命し、サイド5|―ルウムーで(多くの戦力を投じて、これまでの反撃としての宇宙軍総出での)総力戦を行ったものの、ジオンの新兵器で有るMSによって地球連邦軍宇宙艦隊は壊滅し、レビル中将の座乗艦アナンケも撃沈・・・脱出には成功したレビル中将であったが、ジオン軍の黒い三連星と言われるエースパイロットによりランチ(脱出艇)が拿捕・・・捕虜となる。

 

 

そして開戦当初から優勢を誇っていたジオン公国に対し反抗の手段が無くなってしまった地球連邦軍は、自らの敗北を悟り(ジオン側の勧告した今次の戦闘に関する停戦要求と、そのための条約である南極)条約への締結を呑もうしていた(事実上の敗北宣言)。だが捕虜となっていたレビル将軍が奪還され自体が急転する。

 

 

「ジオンに兵無し!」

 

 

その時行われた彼の有名な演説によって反抗の意思を固めた地球連邦政府は、再び戦火へと踏み込んむこととなった。その半年後・・・オーストラリア方面軍トリントン基地に、パラパラとローターの音を轟きながら一機の救援ヘリコプターが、基地にある二つの滑走路を挟んだ所にある着陸地点へと降りると、毛布にくるまれたずぶ濡れの士官が―僕のことだ―はヘリの中から外に出た。

 

 

 

「やれやれ、どうやら帰って来れたな・・・?」

 

 

ホッとした顔でそう呟く僕の近くでジープが一台止まると、おっ生きてたのかショウ?と一人の男性士官―チャーリーだ―が声を上げながらニヤニヤしだした。うるさいぞチャーリー・・・こっちは死にかけたんだからな!とムッとしながら睨み返すと、チャーリーは、そんなに怒るなって?と答えながらククっと笑みを浮かべた。

 

 

 

「無事に生還した記念に今日は奢ってやんよ?」

 

 

「そりゃどうも・・・」

 

 

そう言いながらヘヘっと笑う軽い感じで明るい金色の頭した男は、僕の数少ない同期でチャーリー=フォン=ウィルソン少尉。そして僕はショウ=カノウと言い、士官学校からの友人で階級も同じなら、年も22才と一緒の上に同時期にここに配属されてしまい、今となっては切るに切れない腐れ縁となってしまった・・

 

 

 

 

「それで海水浴は楽しかったかよショウ?」

 

 

 

そうニヤニヤしながら首を傾げて来るチャーリーに、僕は救助が来る間ずっと見えるサメの尾びれの事を思い出すと、暫く海はいい・・・とその事かき消すように頭を振り出した。するとチャーリーが、『所で新人はどうなったんだ・・・?』と、今までとは打って変わって真面目な顔をして詰めて来る。

 

 

「正直分かんない・・・ベイルアウトした僕はすぐに救難信号を出してすぐに救助されたけど反応が無いってことは多分・・・」

 

 

「そっか・・・まあ、あんまし落ち込むなよ?それとショウ・・・司令が呼んでるぜ!生きてるんなら着替えてさっさと来いってさ?」

 

 

「了~解・・・それじゃ司令部まで頼むよ運転手さん」

 

 

そう言いながらジープの助手席に乗る僕に、チャーリーがヘイヘイと言いながら運転席に乗り込んでハンドルを握ると、あっそうだ!と何かを思いついた様に僕の方を見る。

 

 

「今日の晩飯はリン特製の魚のソテーとビールって言うのはどうだ?」

 

 

「ニンニクが効いていてすごくそそるけど魚はしばらく良いや・・・」

 

 

そう苦笑いを浮かべる僕に、チャーリーがあっそ・・・と答えながらギヤを一速に入れると、ギャギャっとホイルスピンしながら二人を乗せたジープは司令部の有るビルへと走り出すのであった。

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 



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新しい任務

「送ってくれて助かったよチャーリー?」

 

 

司令部の有るビルの前で止まったジープから降りたショウはそう言いながら少し申し訳なさそうな顔になると、気にすんなよショウ?とニッと浮かべたチャーリーから返事が返って来ると、所でショウ?とチャーリーが首を傾げて来る。

 

 

「お前に言われるがままここまで来たけど一体司令部に何の用が有るんだよ?」

 

 

「さあ・・・僕もヘリのパイロットから僕に司令部への出頭命令が出てるからとしか聞かされてないんだよね?」

 

 

そう答えたショウに何だそりゃ?とチャーリーが呆れた顔になるとホントだね?とショウもハハっと苦笑いを浮かべてしまう・・・。

 

 

 

「取り合えずどっかで時間を潰しとくからさっさと終わらせて晩飯に行こうぜ?」

 

 

「分かったって、それじゃあまた後で?」

 

 

そう手を挙げたショウにチャーリーも手をヒラヒラさせながらジープを急発進させると、取り合えず着替えるかな・・・?と独り言ちたショウは格納庫とは滅多に使わない本部ビルに有るロッカールームへ向かおうとすると今晩の当番で有る受付の女性下士官からあっカノウ少尉!と呼び止められる。

 

 

「何そんなに慌てて・・・?」

 

 

「いえ、司令官のバリサム大佐からカノウ少尉が来たら自分の所へ寄越す様に!といつになく固い口調だったので・・・」

 

 

受付の女性下士官がそんな事を言いながら苦笑いを浮かべてくるのでショウは分かった・・有難う?と答えながらロッカールームへと向かうと新人パイロットの事かな・・・とハァと溜息をつきながら頭をポリポリと掻き出す・・・。

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

濡れネズミの恰好からクリーニングしたての少しラフな通常勤務用の軍服に着替えたショウは一回深呼吸した上でここトリントン基地司令官で有るロイ=バリサム大佐のオフィスが有る立派なドアをコンコンとノックすると失礼します!と声を上げる・・・。

 

 

 

「基地守備隊戦闘機隊所属第二小隊ショウ=カノウ少尉です。ご命令の通り出頭致しました!」

 

 

 

「開いている。良いから入れ・・・!」

 

 

普段の落ち着いた様子とは打って変わり妙に機嫌の悪そうな声を出す基地司令のバリサムの様子にショウはゴクっと息を飲みながらドアをゆっくり開けると、正面に体格の良い短い顎鬚を伸ばした大佐と言う割りには意外と若い壮年の男性佐官が立派な椅子に背中を預けながら手に持った書類に集中している姿が見えるとバリサムから・・・先ずは生還おめでとうと言うべきか?と持っていた書類をデスクに置きながら首を傾げて来る。

 

 

 

「この度は自分の機体はおろか配属されたばかりの新人パイロットまでも失ってしまい申し訳有りませんでした!どんな処分でも受ける覚悟では有りますが・・・出来ればバリサム指令のご慈悲を頂ければと思っている所存です!!」

 

 

敬礼をしながらいきなり謝罪をするショウにお前は何を言ってるんだ・・・?とバリサムから呆れた顔をされるとショウはへっ?と素っとん狂な声を上げだす。

 

 

 

「まあ、確かに配属されたばかりの新人パイロットのエレメントリーダーとしては処分も検討する所だが・・・今回のケースに関しては突発的な戦闘も有り新人パイロットに運が無かった!と言う事で俺は判断する。」

 

 

元々戦闘機パイロットだった事も有り現場の事をよく理解しているのかそんな事を言って来るバリサムにホッとしたショウはそれではどんな要件でここへ?とここへ呼ばれた理由に首を傾げると、それなんだが・・・とバリサムが困った顔になる。

 

 

 

「カノウ・・・貴様は良く撃墜される割には必ず生きて帰って来るな?悪運が強いと言うか何と言か・・・」

 

 

「まあ悪運が強いんでしょう?僕自身まだまだ死にたく無いと思って操縦桿を握ってるんで・・・」

そう答えるショウにバリサムがそうか・・・と言いながらガシガシと頭を掻くと肘を付きながら組んだ指

に自分の顎を乗せながらショウの方をジロっと睨みだす・・・。

 

 

 

 

「なあカノウ・・・しばらくテストパイロットをやってみないか?」

 

 

 

「テストパイロットですか?」

 

 

 

 

バリサムの言葉に首を傾げたショウにバリサムが少し困った顔をしながらそうだ・・・と言いながら話を続ける・・・。

 

 

 

「ジャブローから運用試験用の新型機が回って来たんだが・・そこでだ!こんな田舎基地にお前に与える

様な余分な機体は無い上にお前はここトリントン基地の中でも断トツの撃墜数を誇るエースパイロットだ

し是非乗ってくれないかカノウ少尉?」

 

 

 

「いやまあ・・・確かに自分は操縦には自信が有りますがそれは戦闘機乘りと言う意味でテストパイロッ

トとなると全然話が違って来るのでは?ですのでもっと落ち着いた操縦の出来る・・・そうだウチの隊長

とかはどうですか?」

 

 

バリサムからの提案を面倒に感じたショウからあっさりと直属の上官をスケープゴートに捧げようとするがお前のその上官から推薦が有ったんだが?とバリサムがニヤっと笑みを浮かべると逆に売られたショウはやられたっ!?と内心思いながらハァ・・・と溜息をつきだす。

 

 

 

 

「尊敬するバウスネルン大尉からも推薦されているのならばこのショウ=カノウ空軍少尉は新型機運用の

テストパイロット任命を快くを受領いたします」

 

 

 

実際は嫌々だがショウはそう言いながら敬礼すると、期待している。と短く答えたバリサムが二っと笑みを浮かべるとショウの前へ先程見ていた書類の束を置き出す。

 

 

「俺もテスト機の仕様書を見たが・・・どうも今までの機体とは桁外れの性能みたいだから気を引きしめてかかってくれ」

 

 

バリサムがそう言いながら苦笑いを浮かべるとショウは机の上に置かれたファイルを手に取りながらV作戦・・・ですか?とバリサムとは別の理由で苦笑いを浮かべてしまう・・・。

 

 

 

「V作戦とは本社(ジャブロー)も妙にダサい作戦名を考えますね・・・?」

 

 

 

「おいカノウ・・・俺よりずうっーと偉いお偉いさんの考えた作戦なんだからな・・・間違っても他所で

は絶対に言うなよ!?」

 

 

少し不安そうな顔のバリサムにショウは分かってますって!とニッと笑みを浮かべると、しかし何でそん

な作戦がこんな田舎基地で・・・?と首を傾げ出す。

 

 

 

 

「さあな?まあここは辺境の田舎基地だから極秘任務には最適と思ったんだろう・・・それと上手く行っ

たら俺はひょっとすると昇進してお前達問題児から解放されるかもしれん・・・是非とも成功を祈るおカノウ?」

 

 

「それはそれは、、、このショウ=カノウは必ずや任務を成功させバリサム大佐をジャブローへと送り出し

て見せようじゃ有りませんか?」

 

 

皮肉たっぷりにそう返すショウにバリサムがため息交じりに分かったから早く行け・・・と右手をヒラヒラ振り出すとショウはそれでは失礼いたしました!と敬礼しながら部屋を出ると腕を組みだす。

 

 

 

「新型ね・・・取り合えずハンガー覗いてみるかな?」

 

 

そう呟いたショウは少しテンションを上げながら滑走路に有る格納庫に向かうのであった。

 

 

 

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新型機!?

別バージョンの表紙です。




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「おやっさーん居ますかー?」

 

 

バリサムから新たな任務を与えられたショウは指令本部ビルから真っすぐ滑走路手前に在るハンガーの中に向かってそう叫ぶと、アァ!誰だこんな時間に・・・と開けっ放しのデカい扉の奥から野太い声で返事が返って来る。

 

 

「って何だ坊主か・・・また墜とされたのかお前?」

 

 

FF-4トリアーエズのエンジンの下からサングラスを掛けた中年の整備兵が寝板を使って出て来るとそう呆れた声を出しながら整備班長の印で有る黒いラインの入った作業帽を被り出すと怪我は無いようだな・・・?と少し安心した様にここトリントン基地の整備班の責任者であるホワイト大尉が二っと笑みを浮かべて来るのでショウはおかげ様でどうにか・・・?と答えるとハハっと苦笑いを浮かべ出す。

 

 

 

「僕が生きてるのもおやっさんがイジッてくれた機体だからですね?」

 

 

「フン!おだてても何も出やしねえぞ坊主・・・所で撃墜された早々こんな所に何か用か?」

 

 

少し照れ臭そうな顔でショウに答えたホワイトが早く帰ってさっさと寝たらどうだ?と自分の作業帽の上に手を置きながら続けるとショウはちょっと気になった事が有って・・・と急に真剣な顔でホワイトの顔をジッと見ると一体どうしたんだ坊主・・・?とホワイトから不思議そうな顔されてしまう・・

 

 

 

「実はついさっきバリサム指令から試作機のテストパイロットを拝命したんですがおやっさんならん何か知ってるかな?と思って・・・?」

 

 

 

「何だ坊主がアレに乗るのか・・・バリサムの野郎からは明日までに使える様にしとけと言われたから組むのは組んだが相当なバケモンだぞコイツは?」

 

 

 

ショウからの質問にそう答えたホワイトがハンガーの奥に向かって右手の親指で指すとシートに被った既存機で有るトリアーエズやフライアローよりも一回り大型の戦闘機らしいシルエットの機体が置かれているのが見えるとショウはアレが試作機・・・と呟きながらゴクっと息を飲みだす。

 

 

 

「型式番号はFF-X7BST・・・通称コアブースターって言うらしいんだが、この機体には従来機のターボジェットエンジンでは無く小型化された核融合炉(ジェネレーター)で動く熱核ジェットエンジン積んだ機体だ・・・トリアーエズやフライアローの3倍以上の出力は有るから機体に振り回されるなよ坊主・・・?」

 

 

「それって噂に聞くMSと同じじゃ無いですか・・・そんな機体に僕が乗るなんて・・・!?」

 

 

 

試作機のテストパイロットと聞いて内心少し浮かれたショウがホワイトからの説明を聞きながら呆然と少しだけ見えるコアブースターの機首を見上げていると、ハンガーの外から粗々しいブレーキ音がキキッとなり出すと同時におーいショウ?と呑気そうに声を上げるチャーリーの姿がショウとホワイトの前に現れる。

 

 

「やけに遅いから多分ここだろって思って来たんだけど・・・何か有ったのか変な顔してよ?」

 

 

 

ショウとホワイトの雰囲気に違和感を感じたらしいチャーリーが首を少し傾げるとショウがちょっと厄介な事になってね・・・?と苦笑いを浮かべると所でどうしたのチャーリーに首を傾げ出す。

 

 

「どうしたじゃねえよ!さっきCASCADE(カスケード)に晩飯食いに行くって約束したろうが!?」

 

 

「そう言えば・・・ゴメンゴメン色々有って忘れてた!」

 

 

そう言いながらチャーリーの方へ駆け寄ったショウはそれじゃあおやっさん・・・機体の事は任せます!と叫ぶと、おうよ!と手を挙げたホワイトは隣を見ながらおいチャーリー!と怒鳴り声を上げだす。

 

「機体チェックリストが俺んとこに届いてねえぞ!!朝一で俺のデスクに無かったたら砂漠に埋めちまうから覚悟して置けっ!!!」

 

 

「あ、ヤベ・・・おやっさん明日には間違いなく必ず絶対に!?」

 

 

 

そう答えたチャーリーが焦った顔をしながら慌てて逃げる様にジープに乗り込むとショウは僕は知らないからね?と呟きながら助手席に乗り込むと呆れた様やれやれと溜息をつきだすと、何とでもなるって?といつもポジティブなチャーリーからそう返事が返って来るとジープが急発進しだす・・・

 

 

「それよりもあのデカい機体何だよ・・・呼び出された件と絡んでんのかショウ?」

 

 

基地の中を飛ばしながらチャーリーが首を少し傾げるとまあね・・・と答えたショウはハァ・・・と溜息をつきだす。

 

 

「取り合えず詳しい事はリンの店に着いたら話すよ・・・色々有り過ぎて素面じゃ話せないや?」

 

 

「ふ~ん・・・それじゃあお前の癒しで有るリンの所に急ぐぜ!」

 

 

そう叫んだチャーリーが更にアクセルを踏み込むとショウのどう言う意味だよ!?と抗議の声を無視しながら二人を乗せたジープは基地を出ると近くに有る町へと進んで行くのであった。

 

 

 

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安らぎの場所

「お、今日も賑わってるみたいだな?」

 

 

ジープから降りたチャーリーからそんな声が聞こえるとショウも店の中から聞こえて来る賑やか声にそうだね?と答えながら町の外れに有るCASCADE(カスケード)と書かれたパブの中に入ると同時に扉のカウベルがカランコロンと鳴り出すといらっしゃーい!と威勢の良い女性の声がカウンターから聞こえて来る。

 

 

「悪いリン・・・二人何だけど良いかな?」

 

 

「あらショウにチャーリーじゃない・・・えっとカウンターで良いかしら?」

 

 

二人にそう言いながら目の前の席を指差すリンと呼ばれた黒髪の美人店主が目の前に空いている席を指差すのでショウは分かったと答えながらチャーリーと共に椅子に座ると、いや~リンってホント綺麗だよなショウ?とチャーリーが揶揄う様にククっと笑みを浮かべて来る。

 

 

「五月蠅いな・・・どうせ僕なんか相手にされる訳無いって!」

 

 

「お前のそういう思い込みは良く無いと俺は思うぜ?」

 

 

そう言いながらカウンターに肘を付いたチャーリーが呆れた顔でアレ見ろよ?と歩兵部隊の連中からちょっかい受けられているリンの方に顔向けるとアイツらっ!?とそれを見たショウは慌てて立ち上がろうとするが慌てんなって!と腕を掴んだチャーリーから窘められてしまう・・・

 

 

「バカ、邪魔すんなってチャーリー!」

 

 

「バカはお前だ。お前がここに来てからズーっとリンに片思いしてるのは知ってるけど周りを良く見ろって・・・この店に来ている女っ気のない奴は全員リン狙いで牽制し合っているって事はお前も知ってるだろ?」

 

 

そう説明して来るチャーリーにショウも分かってる・・・と言いながら椅子に座り直していると、向こうのオーダー取りに行くからまた後でね?と絡んで来た歩兵部隊の連中にフフッと微笑んだリンがカウンターの中へ戻って来るとショウとチャーリーの前でもうヤダ・・・とうんざりした顔をしてくる・・・

 

 

「ねえチャーリー・・・ちょっとあいつ等の所に行ってケンカ売って来てくれない?良い感じにボコられた所でMPを呼ぶから・・・」

 

 

「おいおい・・・俺のこのハンサムな顔に傷なんか付いたらどれだけの女が泣くと思ってんだよリン!?

 

 

 

そんな子居るの?と、ここCASCADE(カスケード)の美人店主と基地内で噂されているリン=ローダンセがハーフアップに上げた綺麗な黒髪を揺らしながらクスクスと笑って来るのでショウも確かにね?と便乗する様にククっと笑いだすと、ガクっと項垂れたチャーリーから俺の扱いがヒデエ・・・と小さく呟きが聞こえて来る・・・

 

 

 

 

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「冗談だからそんなに拗ねないでよ・・・取り合えず二人共ビールで良い?」

 

 

「取り合えずそれで・・・あとリンのお任せで腹に溜まるのを適当に良いかな!」

 

 

グラスを取ろうとするリンにショウはそう声を掛けるとフフッと微笑んだリンから任せて♪と嬉しそうな顔で返事が返って来ると二人の様子を見ていたチャーリーがこいつ等自覚無いのかよ・・・と溜息をつきだす。

 

「何よチャーリー何か有ったの?溜息なんかついちゃって珍しいわね・・・」

 

 

 

「俺だって悩む事くらい有んだよ・・・って言うか何か有ったのは俺じゃ無くてコイツだぜリン?」

 

 

そう言いながら二つのビールジョッキを置いたリンにチャーリーが右手の親指で隣を差すと、どう意味・・?と首を傾げられると、ショウはお前なっ!?と言う様な顔で内心チャーリーに抗議しているとリンから言いなさい!とジロっと睨まれてしまう・・・

 

 

「いや、ちょっと・・・新しい任務に着く事になってさ!?」

 

 

 

「おいおいショウ・・・今日撃墜された事も言わなくて良いのか?」

 

 

 

ムスっとした顔をするリンにショウはアハハと笑いながら説明していると二人の様子を見ながらチャーリーから茶々を入れられると・・・その言葉を聞いたリンがちょっと大丈夫な訳っ!とオロオロとした声を上げだすのでショウからも大丈夫だって!と慌てた顔で返事が返って来る。

 

 

 

「け、怪我無いよね、どっか打ったりとか・・・?」

 

 

「う、うん・・・ずぶ濡れになった以外はどこも無いけど・・・」

 

 

ショウの身体心配そうに確認するリンにショウがそう答えると、彼女は良かったぁ・・・と安堵した表情でニコっと微笑む。

 

 

「それなら良いけど・・・心配するから余り無茶しないでよね?」

 

 

 

そう言いながら台所の方へ戻って行くリンの背中を見送った僕にチャーリーがニヤニヤしながら良いなショウは・・と肘を突いて来る・・・

 

 

「あんな美人が優しくしてくれるんだから羨ましいぜ?」

 

 

「羨ましいって!?僕とリンは別にそんな関係じゃないし・・・」

 

 

 

そう言いながらビールジョッキを煽りだすショウに何だかな・・・と思ったチャーリーは苦笑いを浮かべるショウに取り合えず乾杯・・・と自分のジョッキを掲げるのであった。

 

 

 

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大乱闘!

「それより聞いたかショウ?最近管制塔の方に新しい子が入って聞いたんだけどよ・・・凄っげえ美人らしいぜ!」

 

 

そう言いながらビールを煽るチャーリーにショウはそうなんだ?と興味無さげに首を傾げるが、たまには俺の話聞けよ!と、チャーリーからの抗議する声がショウの耳に聞こえて来ると、ショウは聞いてるって・・・と答えながらうんざりした顔になる。

 

 

「一応言って置くけどさ?士官学校の時みたいに火遊びはしないでよね・・・チャーリーの所為で何度酷い目に有った事か!?」

 

 

そう答えたショウがチャーリーをジロっと睨みだすと、そんな事も有ったな?と誤魔化すようにアハハ・・・と笑い出しながらチャーリーが、所で指令の話って何だったんだ?と急に真面目な顔になるのでショウはハァ・・・と溜息をつきだす・・・

 

 

 

「さっき見た試作機のテスパイしろってさ?しかも・・・その機体がどうも、MSと同じ出力を持った化け物らしいんだ・・・」

 

 

 

ショウはV作戦の事を大雑把に話すとチャーリーが成程な・・・?と首を傾げ出す。

 

 

 

 

「そのダサい作戦名聞いたことあるな・・・連邦もやっとMSの試作機ができて、各地に試作の量産型が配備しつつあるって、そして実戦配備しながらデータ取るって言う作戦だろ?」

 

 

「で、その一つに僕が乗るらしい・・・・」

 

 

 

そう答えながらガクっと項垂れるショウに、そりゃあ災難だなショウ?と、チャーリーがククっと笑いながらビールジョッキを傾けると、ショウはお前な・・・と呟きながらカツッと自分のジョッキを合わせ出す。

 

 

「まあ、お前なら乗りこなせるだろ・・エースパイロットさん?」

 

 

「そのエースって言葉は嫌いなんだけど・・・」

 

 

そう言って来るチャーリーにショウがジロっと睨むと、悪りい・・・とチャーリーから頭を下げられたショウはムスッとした顔でビールを一口飲んでいると、雰囲気の悪くなった空気を嗅ぎ取ったチャーリーが、えらく料理遅いなリン?と周囲を見渡していると、先程騒ぎが有ったテーブル席の方から再びリンの焦った声が聞こえて来る・・・

 

 

「おいショウ・・・リンが何か絡まれて無いか?」

 

 

「見たいだね・・・」

 

 

そう尋ねて来るチャーリーにショウが溜息交じりに答えると、助けに行かなくて良いのか?とチャーリーから首を傾げられると、向こうは陸戦部隊なんだけど・・とショウは苦笑いを浮かべ出す。

 

 

「じゃあジャンケンで決めようぜ?俺が勝ったらリンを助けに行くからよ・・・もし、お前が負けたら絶対に愛しのリンを助けに行けよショウ!」

 

 

そんな事を言って来るチャーリーの賭けにショウは内心リンの事を心配に思いながら、分かったって!と答えながらその賭けに乗りながらチャーリーとジャンケンをし始める。

 

 

 

 

~~~

 

 

 

「ちょっと・・・離しなさいって!」

 

 

 

「金なら別にちゃんと払ってやるから少し付き合えよ・・・?」

 

 

 

大分酔っているのか・・・顔を寄せて来る陸戦部隊の隊長に、止めてよ!とリンが必死に腕を伸ばしながら助けを求める様に周囲を見回すが、勘弁してくれ!?と言った顔で近くに座っていた兵隊達は相手が上官なのかサッと目を逸らしてしまうので、リンは内心憤りながらアンタ達ね・・・!と舌打ちしていると

、お・おい・・・そこ酔っ払い!?と完全にビビっているショウの姿にリンは驚いてしまう。

 

 

「えっ、ショウ!?」

 

 

そう声を上げるリンの小さい言葉を遮った陸戦部隊の男から、あぁ?と凄まれたショウがまあ落ち着いてと、前に出した両手を慌てて振っていると・・・何だテメエは!と立ち上がったリーダー格の軍曹の隙を突いたリンはコイツっ!と持っていたトレイで殴りつけながらショウの背中へと逃げ込んで来る・・・

 

 

 

「何だテメエっ・・・飛行隊のモヤシ野郎が、俺達陸戦隊に相手にケンカ売ろうってか!」

 

 

「滅相も無い!?」

 

 

 

ポキポキと拳を鳴らしながら言う軍曹にショウはハハっと苦笑いしながらリンを背中に隠して後ずさっていると、どこに逃げる気だ?と声を上げた二人の仲間が背後を囲みながらそう叫んで来る。

 

 

「ちょっとショウ!?助けに来た割りはあんまり状況が変わって無いんだけどっ?」

 

 

「自分で言うのもなんだけどさ・・・僕って喧嘩弱いんだ?」

 

 

そう告白して来るショウにリンから、そんな事は重々承知だって!?と焦った声が聞こえて来ると、お喋りはお終いかっ!?と陸戦部隊の軍曹がそう叫びながら殴りかかって来るので、こなくそ!と叫んだショウはリンを抱きかかえて咄嗟に避けると、ククっと笑みを浮かべたチャーリーから、ご苦労さん?と足を掛けられた軍曹は物凄い勢いで頭から壁に突っ込んで行くのであった・・・

 

 

 

~~~



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イエーガー=バウスネルン登場

「まったく・・・あんまり危険な事をするなよなリン!?」

 

 

 

ハァ・・・とショウは溜息をつきながら自分の背中に隠したリンを見ると、壁にぶつかったまま伸びている軍曹の方を見ながら、だって・・・と声を上げたリンが何故か急にフフッと笑みを浮かべるので、ショウから、えっと・・・どいう意味?と驚いた声が聞こえて来る。

 

 

「・・・ちょっとカッコ悪かったけど、ショウが助けに来てくれて凄く嬉しかったわ。」

 

 

「そりゃどうも・・・今度はもっとスマートにやるから期待しててよリン?。」

 

 

満面の笑顔を向けながらフフッと微笑んで来るリンにショウもそう言いながら二っと笑みを浮かべながらグッと親指を立てると、期待してるわね?と答えるリンの下へ誰かが通報したのか、MP(憲兵)が来たぞっ!と焦った声が聞こえるて来るのでショウとチャーリーがマズっ!?と慌て出すので、こっちへ!とリンがカウンターの中に二人を押し込むと同時にバタバタと武装した数人のMP(憲兵)が店の中に駆けこんで来る。

 

 

 

「全員大人しくしろ!ここで暴れている兵隊が居ると通報が有ったが?」

 

 

 

トリントン基地からやって来たMPの隊長が周囲を見渡しながらそう声を上げると、彼らです・・・と突然リンは体を震わせながら伸びている軍曹を指差すと、ちょっと待ってくれ!?と二人の部下達が慌て出す。

 

「確かに手を出したのは軍曹だけどよ?そっちも足を引っかけた奴が居ただろうが!」

 

 

「ちょっと!自分達だけが捕まるのが面白く無いからってウチのお客さんまで巻き込まないで頂戴・・・酔っぱらった軍曹が逃げようとした私を捕まえようとして勝手にもつれたんじゃない?」

 

 

フフッと強気な顔で微笑むリンは腕を組みながらそう証言すると、そっちの言い分は?と厳しい顔で腕を組みだすMPの隊長に対して、軍曹の部下達もリンの主張もそう間違ってはいない為に、えっと・・・と困った顔になるのでMPの隊長から・・・そこの酔っ払いを連行しろ!と部下達に指示が下される・・・

 

 

「我が基地の者がご迷惑をお掛け致しまして本当に申し訳ございませんでした。ミス・ローダンセ・・・」

 

 

「良いのよ?また何か有ったら宜しくね隊長さん。今度来たらサービスするね!」

 

 

 

申し訳なそうな顔で謝るMPの隊長にリンがそう声を掛けながら見送っていると、おっとと!?と言いながら190は有る長身で短くした銀色の頭をした筋肉質な男が敬礼するMPの隊長におう!と答えながらすれ違いにリンの店に駆けこんで来る。

 

 

「おいリン!?うちのバカ二人がここで暴れているって聞いたんだが・・・」

 

 

「あら、イエーガー中尉いらっしゃい・・・その二人ならここよ?」

 

 

 

そう焦った声を上げるトリントン基地守備隊に所属する戦闘機部隊第一小隊長イエーガー=バリスネン中尉にリンはクスっと笑みを浮かべると、もういいわよ。ショウ、チャーリー?と声を掛けながらカウンターの中を指差すと、お前らそんな所隠れていたのか!?とイエーガーが驚いた顔でキッチンの空いたスペースを除き込んで来るのでショウとチャーリーからギャ!?と驚いた声が響き出す・・・

 

 

「あれ・・・!?奇遇ですねイエーガーさん?」

 

 

「隊長もCASCADへ飲みに?」

 

 

そう言いながらアハハ・・・と苦笑いを浮かべるショウとチャーリーの二人に、お前らな・・・と呆れた声を上げたイエーガーが頭を抱えだすと、取り合えず座ったら?とリンからカウンター席を勧められるとサービスなのかビールジョッキが目の前に置かれる。

 

 

「暴れたには確かだけど、二人が私の事を助けた事は事実だからさ?これで目を瞑ってくれないかな・・・イエーガー中尉」

 

 

「MPの隊長も見落としるんだ。お前からそう言われちゃ・・俺からは何も言えねえよ?」

 

 

フン!と鼻を鳴らしたイエーガーがそう答えながらグビッとビールジョッキを煽るっていると、流石はトリントン基地一の伊達男ね?とフフッと微笑んだリンから褒められてしまったイエーガーは、その名で呼ぶな!と照れ臭そうにガクっと項垂れてしまうのであった。

 

 




突然ですが、後書きの部分を使ってキャラ紹介です。

因みにエブから引っ張て来た物をそのまま転用致してますので知らないキャラの名前が出て来てもスルーして下さいww


イエーガー=バウスネルン

26歳

ドイツ系

190センチ

一人称は俺

銀髪の短髪、筋肉質なマッチョ

地球連邦軍中尉⇒大尉

トリントン基地飛行隊第一小隊長⇒試験実験MS部隊カスケード隊、隊長、1号機搭乗

陸戦型ジム⇒ジム改

使用武器ビームライフル

元は戦闘機パイロットで有りショウの所属する小隊の隊長であった。

MS転換訓練を受けるとそのままカスケード隊の隊長となるが主に指揮はアメリアが取っている。

腕も良く沈着冷静で判断も良く視野を広い。

力も有り体も大きいが小さい物を好む。


メカニック担当のソフィーに懐かれており、良くロリコンと言われる。


イエーガー自体はどう思っているかは周りにはバレバレなのだが・・・ソフィーは分かっていない。


戦闘スタイルはショウやチャーリーが突っ込む傾向に有るので後ろに付くことが多いが接近戦も出来る。


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ドッグファイト!

 

翌朝・・・格納庫にへと向かって歩いていくショウによっ!と後からバシっとチャーリーが肩を叩いて来ると。はよ・・と答えたショウは眠たそうな顔で欠伸をしだす・・・

 

 

 

「おっす!・・・って相変わらずお前って朝が弱いよな?」

 

 

「チャーリーはいつも元気良くて羨ましいよまったく・・・」

 

 

テンションの低いショウはチャーリーをジロっと睨みながら言うと、ヤレヤレ?とチャーリーがオーバーアクションに大きく両手を上げだす。

 

 

「そんなに気張るなって・・・たかが試作機だろ?お前の腕なら絶対に乗りこなせる。俺様が保証してやっても良いぜ!」

 

 

「チャーリーに保証されても説得力無いな・・・まあ、多少は気がほぐれたよ?」

 

 

ショウがそうフォローして来るチャーリーに二っと笑みを浮かべながら二人並んで格納庫に入ると、おい坊主!とホワイト大尉・・・おやっさんの声がどこからか聞こえて来るのでショウは一体どこに居るんだろう?と首を傾げていると、ここだ!と暖気中のコアブースターのコクピットからヒョコっとホワイトが顔を出して来る。

 

 

「コイツの操縦系は坊主の好みに合わせているから安心して乗って来いよ!」

 

 

 

「有難うございます、おやっさん!」

 

 

グッと親指を立てたサングラスを掛けた強面の整備班茶にショウも二っと笑みを浮かべながらお礼を言うと、それじゃあまた後で!と声を上げたショウはホワイトの仕上げたこの試作機の運用試験・・・FF-X7-Bst、コアブースターのテストパイロットとして乗り込むため、パイロットスーツへと着替えに更衣室へと

駆け込みだす。

 

 

~~~

 

 

 

 

「良いか坊主!前に乗っていたトリアーエズと思わず慎重にスロットルを開けろよ?」

 

 

 

コアブースターのコクピットの中に納まったショウにホワイトが少し不安そうな顔でそう注意して来ると、分かってますって?と答えたショウがニッと笑みを浮かべるとホワイトに向かって閉めますよ?と言いながら親指をグッと立てると同時にキャノピーを閉じ出すと同時にホワイト大尉や他の整備兵達に見送られながら滑走路へとタキシングを始めだす・・・。

 

 

 

「こちらFF-X7BSTコアブースターのショウ=カノウ少尉です。システムオールグリーン、トリントンコントロールに離陸許可を求めます。」

 

 

「こちらトリントンコントロール離陸許可します。以後貴機のコールサインはCBP1と任命しますので注意して下さい。」

 

 

綺麗な声で指示を出す女性オペレーターにショウが、誰だろこの子・・・?と内心妙に気になりながら了解ろ答えながらメインエンジンの出力を上げていると、ホント良い声してるよな・・?と聞きなれた声にビックリしたショウのキャノピー越しにチャーリーのFF-4トリアーエズが横に並んで来るのが見えて来る・・・

 

「なっ・・・おい、トリントンコントロール、もう一機来たがこれは何だ?」

 

 

「コアブースターの随伴機と聞かせれており、コールサインはCBP2です。」

 

 

 

淡々と答えて来る女性オペレーターにショウが随伴機・・・?と答えていると、調子はどうだショウ?と相変わらず調子の良いチャーリーのククっと笑う声がヘルメットに聞こえて来るので、ショウは隣を見ながら、何でお前が?と言いながら苦笑いを浮かべだすと、チャーリーから決まってんだろ?と呆れた声が返って来る。

 

 

 

「お前の無茶な機動に付いて行けるのはこの基地でも俺様くらいだからな・・・どんだけ凄いかは知らねえが、その新型でしっかり飛べよなショウ!」

 

 

 

チャーリーがそう言いながらキャノピーの向こうでグッと親指を立てると、まったく・・・とショウも溜息をつきながら同じくチャーリーにサインを送ると、発進準備OK!とショウはコントロールタワーに向かって通信を繋ぐと、了解です。と淡々とはしているが綺麗な女性管制官からの返事が返って来る。

 

 

「こちらトリントンコントロール、CBP1、CBP2、滑走路前方オールグリーン・・・発進どうぞ!」

 

 

女性オペレーターからアプローチの許可が下りたショウは一気スロットルを目一杯開け、アフターバーナーを吹かしながらコアブースターを一気に加速させると、ある程度速度が乗った所で操縦桿を引きながら機体をズ上空へとズームアップさせる・・・

 

 

「さすがは新型の試作機・・・凄い上昇力だなっ!?」

 

 

 

コクピットの中でそう楽しそうな声を上げるショウに、おいおいちょっと待てよ!?とほぼ同じタイミングで離陸したにも関わらずチャーリー機が少し遅れながら背後にピタッと付いて来る。

 

 

「クソ!デカい癖に何て上昇力するんだよ!?」

 

 

「ヘヘん、旧式のトリアーエズじゃ付いて来れないって?」

 

 

「なっ!言ったなショウ・・・俺がロックオンしたらリンの店で奢りだからなっ!!」

 

 

ショウの言葉ににチャーリーは頭に来たのかスロットルを最大に上げてトリアーエズのアフターバーナーを吹かしながら急に追撃態勢に入って来るので、後悔するなよ?と答えたショウは内心、この勝負勝ったね!と思いながら推力の有利さ活かしコアブースターを更に上昇させるので、ついて行けるかよ!と匙を投げた後方のチャーリー機が追撃を諦めて機体を捻り降下し始める。

 

 

「相変わらず見極めが早いなチャーリの奴は!」

 

 

こっちの方が足が速いと確認したと思い離脱するチャーリー機にショウはわざとアフターバーナーをカットしエアブレーキと併用でワザと失速状態に持ち込むと、操縦桿を右に倒しながら左脚のラダーペダルの踵部を蹴り上げ機体をヒラっと下方に向け捻り込みだすと目の前に無防備なチャーリーのトリアーエズが見えて来る・・・

 

 

「貰ったぁ!」

 

 

ショウはHUDに映るチャーリーのトリアーエズをロックオンしようとするがチャーリー機もそれに気づくと、このままじゃ不味い!?と慌ててアフターバーナーを吹かし離脱を図るがそうは問屋が許さない・・・

 

 

「逃がすか・・・!」

 

 

そう声を上げたショウはHUDに映るチャーリーのトリアーエズを捉えようとすが、チャーリーもやられてたまるか!と降下した速度を生かしそのままループ・ザ・ループを決めながら背後へと回り込んで来る。

 

 

「今度はこっちの番だぜショウっ!!」

 

 

ショウのコアブースターを完全に捉えたチャーリーがロックオンする瞬間にショウはこなくそっ!と声を上げながらサイドコンソールのスイッチを上げながら機体各部に装着されたスラスターで強引に機体の向きを変え余りあるエンジンパワーで上空へと離脱して行くのでチャーリーからおいおい・・・と呆れた声がコクピットに聞こえて出す・・・

 

 

 

「いくら何でもその機体は詐欺だぞショウ?」

 

 

「僕もちょっと驚いてる・・・大型機の癖に操縦性も中々良いよコイツ!?」

 

 

 

これ以上の追撃は無理と諦めたのかチャーリーのトリアーエズが横に並びながら通信そうを繋げると、ショウもこのコアブースターが気に入ったのか機体をロールさせながら答えているとピーッ!通信アラームが聞こえ出す。

 

 

「CBP1、CBP2おふざけはそれくらいにしてテストスケジュールに戻りなさいっ!」

 

 

ショウとチャーリーのコクピットに先程の女性オペレーターのピリっとした声が響くと二人は慌てながら了解!と答えると指示通り高度を取りつつ作戦区域へと向うのであった。

 

 

 

 

~~~

 

 




チャーリー=フォン=ウィルソン

イギリス系

アースノイド

22歳

180センチ

金髪で少し長め

地球連邦軍少尉⇒中尉

トリントン基地飛行隊3小隊⇒試験実験MS部隊カスケード隊3号機搭乗

陸戦型ジム⇒ジム改

使用武器 100ミリマシンガン


ショウとは士官学校からの同期で有り仲も良い。

女たらしのイメージが有り、実際余り深い付き合いはして来なかったがアメリアに惹かれ真剣に付き合うようになる。


戦闘スタイルは一撃離脱、奇襲等トリッキーな動きで翻弄するタイプ。主に前衛でショウがフォローで後ろに付く。


良くアメリアをからかい絞められている。


イギリスの貧乏貴族の3男で継ぐ物も無く軍人をやっている。


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アメリア=アン=ウォーカー登場

「まったくもう!何なんですかあの二人は!?」

 

 

ヘッドセットを肩に降ろしながらそう声を上げた小柄な赤毛の下士官はムスっとしながら隣の上官でマリア曹長を見ると、あら知らないの?と答えながら首を傾げながらフフッと微笑んで来る。

 

 

「あの二人はここトリントンで1、2を争うエースパイロットよアメリア?」

 

 

「へえ・・・ここに配属されてまだ一月ほどなので知りませんでした。確かに良い動きをしていたので納得ですね・・・」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

つい最近ジャブロー基地から異動した来たアメリア=アン=ウォーカー軍曹は管制タワーから離れて行く二機を見ながらそう頷くと、基地の上空でいきなり空中戦をかました二機の綺麗な機動に自分自身も見惚れてしまい最後まで止めるのを忘れてしまった程である・・・

 

 

「あのバカ野郎共め・・・試作機の試運転だって言うのにいきなり戦闘機動しやがって!戻ってきたらとっちめてやるからな!?」

 

 

背後から聞こえて来た怒声にアメリアは慌てて振り向くと、いつの間にかここ管制タワーに上がって来た整備班のホワイト大尉が腕を組みながら背後に立っている。

 

 

「ホワイト大尉ここはハンガーの中じゃないのであまり大きな声出さないで下さい?」

 

 

「あん?あぁ・・・悪い悪い。・・・しかしバリサムお前もちょっとパイロットの血が騒いんだじゃ無いのか?」

 

 

そんな事を言って来る二人にアメリアは指令も居たんですね!?と内心驚いていると、まあそうじゃ無いと言えば嘘になりますが・・・と答えた基地指令のバリサムがククっと苦笑いを浮かべる。

 

 

 

「しかしカノウの奴・・・あんな大型機で捻り込みをかますとは流石疾風仕込みの弟子ですねホワイト大尉?」

 

 

ショウとチャーリーの空戦を見ていたバリサムが隣の整備班長で有るそうホワイトの方を見ながら首を少し傾げると、サングラスをクイっと上げたホワイトからヘヘっと笑みが浮かび出す。

 

 

「ショウもチャーリーも教官時代の弟子だからな・・・あれくらいの機動はどんな機体でも朝飯前だぜ?」

 

 

「それは良いんですがウォルフ中佐・・・いや今は大尉ですが、素行の方までまで真似をして欲しく無かったですね」

 

 

 

そう言いながらハァ・・とため息をつくバリサムにホワイトがそうだな?と答えながら談笑していると、あのマリア曹長・・・?とアメリアは首を傾げながら管制官のリーダーを務めているシングルマザーで五歳ほど年上の上官に首を傾げ出す。

 

 

「さっきからずっと気になってたんですけど・・・基地指令と整備班長ってどんな関係なんです?」

 

 

「ああ・・・、あの二人って元々先輩後輩の間柄みたいでね?基地指令のバリサム大佐の方が後輩なのよ。」

 

 

そう答えながらマリアが面白いでしょ?とクスっと笑って来るので、そうなんですね?と答えアメリアは素行が悪かったんですかね・・・?と内心自分の事と思い被せながら、ハハ・・・と乾いた笑みを浮かべている間に自分の席に設置されているレーダーの液晶画面からピーっとアラーム音が鳴り響き出す。

 

 

「盛り上がっている所申し訳無いんですがバリサム指令にホワイト大尉・・・CBP1、2共に作戦予定空域に到達しました。」

 

 

「やっとか・・・俺にもヘッドセット貸してくれないか嬢ちゃん?」

 

 

 

そう言いながら横に立つホワイトにアメリアがどうぞ?と予備のヘッドセットを手渡してると、配属早々騒がしくてすまんな?と基地指令バリサムから申し訳無さそうな顔で謝られてしまう。

 

 

「いえいえとんでも無いですバリサム指令っ!?」

 

 

「そうか?一応・・・君のジャブロー時代の経歴を見て、何でこんな田舎基地に来たのか少々不可解な所が有るが・・・もし何か有るのなら私にすぐに相談してくれよ?」

 

 

バリサムが優し気な顔でそう言いながら二っと笑みを浮かべるのでアメリアは(こんな)事が気軽に相談出来る訳ないですしね?と内心困った顔しながらアハハ・・・と曖昧な笑顔をバリサムに向けるのであった。

 

 

 

 

~~~

 

 




アメリア=アン=ウォーカー


サイド1出身

スペースノイド

20歳

155センチ

一人称は私

少尉⇒軍曹⇒曹長⇒准尉

ジャブロー連邦軍特務隊⇒トリントン基地管制オペレーター⇒試験実験部隊MS部隊カスケード隊オペレーター兼予備パイロット⇒MSパイロット

赤毛のセミロングでMSに搭乗時では普段は後ろで束ねている。


ホバートラック⇒陸戦型ジム⇒ジムスナイパーⅡ

使用武器 戦況に応じて色々ロングレンジライフルでの狙撃も出来る。

背は低く顔立ちは可愛い、トリントン基地の美人ランキングの上位に入る。

見た目は大人しそうだがかなり素手での近接格闘なら基地のトップである。

元はジャブロー基地特務隊所属のエリート隊員だったがスペースノイドと言うことも有り上司や同僚から嫌がらせを受ける。その後も襲われそうになるが逆に全員病院送りする。

しかし、その内の一人が運悪く高官の息子で軍事裁判で降格処分で田舎のトリントン基地の左遷となりショウやチャーリーにイエーガーとリンに暖かい雰囲気を持つ仲間と出会う事なる。

特務崩れのエリートだが指示は割と大雑把でその時のノリと勢いでどうにかしてしまう事も多いが・・・その辺りは小隊長のイエーガーのフォローも有ってかバランスの良い部隊に仕上がってる?


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襲撃!?

「そろそろ訓練空域だな・・・準備は良いかチャーリー!」

 

 

「おうよ!バッチシだぜショウ?」

 

 

ショウのコアブースターの左後方に付いたチャーリーのトリアーエズがそう答えながら翼を振ると了解と答えたショウは先程の女性管制官とレーザー通信を繋ぎだす。

 

 

 

「こちらCBP1だ。トリントンコントロールへ作戦空域へと到達・・・これより予定通りミッションに移行する。」

 

 

「こちらトリントンコントロール、CBP1、2へミッション移行を了承します。」

 

 

ショウは綺麗な声を出す女子オペレーター・・・アメリアに、了解!と小さく返事を返すと、すかさずチャーリーから機体同士のプライベート無線が入ってくる。

 

 

「なあショウ・・・今の声って最近ここに配属されたって言う可愛い女の女性オペレーターじゃねぇか?」

 

 

「確かに聞きなれない声だけど、キビキビしてていい声してるね?」

 

 

 

そう答えるショウに絶対に可愛いぜ!と妙に自信が有るのかチャーリーがククっと笑って来るとその彼女から突然通信が入って来る。

 

 

「CBP1、2へ・・・この後の指示は整備班長のホワイト大尉に委譲しますので宜しくお願いします。」

 

 

「ちぇ、おやっさんかよ!・・・つまんねえっ!!」

 

 

 

チャーリーが面白く無さそうにそう呟くとコクピットに俺で悪かったなぁっ!とホワイトの怒声がショウの方にも鳴り響いて来る。

 

 

 

「チャーリーとは後でゆっくりと話し合うとしてだ・・おい坊主っテメエッ!組んだばっかしのエンジンにいきなり無茶入れるたぁ・・どういうつもりだぁ!!

 

 

「いや、だっておやっさん・・チャーリーがいきなり仕掛けて来るから仕方なくてですね!?」

 

 

 

明らかに堅気に見言えない風貌とドスの効いた声にショウが委縮しながら答えていると、五月蠅え!と怒鳴り声がホワイとから返って来る。

 

 

 

「つべこべ言ってねえでさっさと戻って来い!さもないと砂漠に埋めちまうぞ!?」

 

 

 

「分かりましたって・・・って戻るんですかおやっさん!?」

 

 

そんな物騒な事を言って来るホワイトに慌てたショウが首を傾げると隣に付いたチャーリー機とお互い首を傾げ合う・・・

 

 

「当たり前だ・・・今日は慣らしだっつのにお前らがいきなり空中戦しちまうもんだから中止だ中止?一回下ろしてエンジンの再チェックを行うぞ!」

 

 

ホワイトの声にショウとチャーリーはえぇ!?と同時に声を上げる。

 

 

 

「ここまで来たのに基地に戻るんですかおやっさん!?」

 

 

 

「そうですよ!、せめて一回もう一回模擬戦とか・・・?」

 

 

 

ショウもチャーリーも不完全燃焼なのかお互い揃って嘆願すると、ホワイトの怒鳴り声が二人のコクピットにダメだ!と入って来る。

 

 

「ダメだ!ただでさえ熱核エンジンなんていうノウハウの無いのを積んでんだ・・・これ以上の負荷は掛けたくないのを分かれって!?」

 

 

「・・・分かりましたって、おやっさんもこう言ってるし取り合えず基地に戻るよ?」

 

 

ホワイトからの通信にそう答えたショウはスティックと右のラダーペダルを踏み込みながら基地の方へと機首を向けると、わーったって・・・と少し納得のいかない顔でチャーリーのトリアーエズが横に並びながらキャノピー越しに親指を立てて来ると、CB1、2聞こえますか!?と管制官のアメリアから焦った声が聞こえて来る・・・

 

 

「こちらトリントンコントロール!レーダーコンタクト・・・敵影確認しました。CBP1、2ブレイク、ブレイクっ!!」

 

 

アメリアの焦った叫び声と同時にショウはロックオン警報が鳴り響いたコクピットの中で咄嗟に操縦桿を左下に倒し左脚のラダーペダルを蹴り込むと正面から放たれた熱赤外線式のミサイルが機体をスレスレに通り抜けて行くと至近距離で爆散する

 

 

 

「クッ・・・敵機か!?一体どうなってんだよ!」

 

 

 

「カノウ少尉上です!ウィルソン少尉がドップの後ろに付いてますよ!?」

 

 

そうフォローして来るアメリアにチッ!と舌打ちしたショウはキャノピーの中から上を見ると性能差も有る中で必死にドップに食らいているチャーリー機を見つけると待ってろチャーリー!と声を上げながらコアブースターを上昇させる。

 

 

「所でさっきから気になってたけど君の名前は・・・?」

 

 

 

「私はアメリア=アン=ウォーカー軍曹と言います。って・・・そんな事は良いから集中しなさい!」

 

 

 

そう叱って来る下士官にショウは了解!と慌てて返事を返しているとドップを捉えたのかチャーリーからFOX2、FOX2!と緊張した声がショウのコックピットに入って来る。

 

 

「ちょっと待ってウィルソン中尉・・・後ろにもう一機居ますよ!?」

 

 

 

雲に隠れていた敵機が突然レーダに映ると同時にアメリアがそう声を上げると、おい冗談だろ!?とチャーリーから焦った声が聞こえて来たショウはこなくそ!と声を上げながら割り込もうとする。

 

 

~~~

 

 

 

「CBP1、2へ!回避行動に専念しつつ離脱を・・・」

 

 

 

アメリアはショウとチャーリーにそう指示を出しつつ振り返ると、何か有ったのか!?と異変を感じて近づいて来た指令のバリサムとホワイト大尉が驚いた顔を見せて来る。

 

 

「現在、訓練空域に敵機を確認・・・現在RBP1と2が迎撃中!指令緊急出撃(スクランブル)の許可をお願いします!」

 

 

 

「何だと!?許可する。すぐにアラーム待機の連中を出すんだ!!」

 

 

そう声を上げるバリサムにアメリアの隣に座っていたマリア曹長から了解!と声が上がると同時に基地内に警報が鳴り響き出す。

 

 

『タワーよりアラート要員へ、訓練中の試作機体がジオン機からの奇襲を受けている・・・直ちに迎撃に出よ!繰り返す・・・』

 

 

マリアからの声にショウとチャーリーが所属する飛行中隊長兼第一小隊長で在るイエーガー=バウスネル中尉もパイロットスーツに着替えていると、何やってんだイエーガー?とたまたま通り掛かった同期でも有り第二小隊長のジャック=アルヴィン中尉が驚いた顔で首を傾げ出す。

 

 

 

「俺の部下がピンチなんだ・・・ジオンの奴等なんかに絶対にやらせるかよ!」

 

 

「ホントお前って顔に似合わず熱いよな・・・?」

 

 

そう軽口を叩きながら二っと笑みを浮かべるジャックにイエーガーが五月蠅えな・・・と答えると、待ってろよショウにチャーリー・・・と内心不安を感じつつ呆れた顔をするジャックと共に格納庫へと向かうのであった。

 

 

 

~~~




順番が狂いましたがコイツが主人公です。



【挿絵表示】




ショウ=カノウ

アジア系

アースノイド

22歳

身長175センチ

一人称 僕

黒髪、黒目

地球連邦軍少尉⇒中尉

トリントン基地飛行中隊1小隊所属⇒独立試験実験MS小隊カスケード隊

トリアーエズ⇒コアブースター⇒陸戦型ジム⇒ジム改

使用武器 色々 バズーカーとロングレンジライフルが多い。ザブでマシンガンを腰にマウントしている。

トリントン基地ではエース、真面目だが、少し扱いにくい所が有る。(イエーガー談)

元は戦闘機パイロットだがMS の転換訓練を受けMS パイロットとなる。


同期にウィルソン=フォン=チャーリーが居る。

トリントン基地の近くに有る町のパブのオーナーのリンが恋人。

戦闘スタイルは臨機応変、前衛後衛もOK。悪く言えば器用貧乏である。
素手での格闘は苦手だが射撃だけは得意。


たまにブラックな一面を見せる事が有り、アメリアを困らせることもしばしば・・
チャーリーと仲が良くリンの店で二人でよく飲んでいる。


小隊は違うがコンビネーションは悪くなく共同でMSの撃墜をしている。


料理が上手く何故かリンの店をたまに手伝っている。

店に有る焼酎や日本酒はショウの好みで置いてるが入手先は不明である。


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馬鹿な男達


【挿絵表示】



小さく書かれたショウ、チャーリー、イエーガーです♪


「第二小隊1番機のジャックからトリントンコントロールへいつでも出れるぞマリア?」

 

 

そう通信を繋げた第二小隊長ジャック=アルヴィン中尉が搭乗するフライアローが僚機共に滑走路の離陸位置でエンジン出力上げ始めると管制官のリーダーで有るマリアの心配そうな顔がモニターに

映り出す。

 

 

「何だよそんな顔して・・・ちゃんとショウ達を基地まで帰還させてやるから心配すんなよ?」

 

 

「何調子に乗ってんの・・・アンタも無事に帰って来ないと承知しないんだからね!」

 

 

 

そう叱りつけて来るマリアにわーってるって!?とジャックから慌てて返事が返って来るのでマリアは宜しい!と言いながらレーダースクリーンを確認すると再び自分のヘッドセットを掴みだす。

 

 

「進路はクリア・・・離陸を許可します!」

 

 

「よっしゃぁ行くぜ!!」

 

 

マリアからの声にそう答えたジャックが僚機と共にアフターバーナーを吹かしながら離陸すると同時にハイレートクライムを行い一気に上空へとズームアップしてして行くのでその姿を見送ったマリアは全然人の話を聞いて無いわね・・・あのバカ!と呆れた声を上げてしまう・・・

 

 

「いやいや!?あれって低速からじゃ結構難易度の高いハイレートクライムですよね・・・生で見たの初めてです!」

 

 

「あら詳しいのねアメリアって?ここの連中って暇さえあれば訓練中に曲芸飛行するようなバカばっかりだから腕はそこそこ良いんじゃないかしらね。」

 

 

そうしながらフフッと微笑むマリアに、良いんですかそれ・・・?とアメリアが苦笑いを浮かべていると、マリア曹長!?と基地指令のバリサムと整備班長ホワイトから焦った声が聞こえて来るのでマリアはハッとした顔でなんでしょう!?と慌てて背後を振り向く。

 

 

 

「迎撃機の訓練空域到達までどれだけ掛かりそうだ?」

 

 

「たった今迎撃が上がりましたので・・・恐らく最短で約五分は掛かるかと思います。」

 

 

この基地からショウ達の居る訓練空域まで距離から計算したマリアからの報告にバリサムが間に合えば良いが・・・と難しそうな顔で顎を擦っていると、間に合って・・・と願う様に両手を握るマリアのヘッドセットにおい聞こえるかマリア!と突然馴染みの声が聞こえると同時に隣のアメリアからアレを見て下さい!?と指を差すと、いつの間にか滑走路に一機のFF-4トリアーエズが待機しているのが見えて来る・・・

 

 

「こちら第一小隊長イエーガー=バウスネルン中尉だ、トリントンコントロールへ離陸許可を求める。」

 

 

「バカ!何やってんのよイエーガー!?アンタはアラート待機じゃないでしょうが!!」

 

 

イエーガー機のモニターにそう怒鳴り声を上げて来るマリアの引き攣った顔が映り出すと五月蠅ぇ!!とイエーガーも怒鳴り返しながらエンジン出力上げ始めるのであぁもう!とその様子を確認したマリアは頭を抱えだす。

 

 

「一応中隊長代理だから知ってると思うけどこれは完全な軍機違反よ・・・バリサム指令も見てるんだね!」

 

 

「そんな事は重々承知だ!それにだ・・・俺の部下がピンチだっていうのにこれ以上ジオン奴等に好き勝手やらせてたまるかよ!」

 

 

普段は冷静沈着が売りなイエーガーで有るが先日も新人パイロットを失くた事も有り昔馴染のマリアはこうなったらダメね・・・と内心諦めながらハァ・・・と溜息をつきだす。

 

 

「・・・バウスネルン中尉がああ言ってますが如何しますか指令?」

 

 

「やれやれ・・・帰ったらイエーガーの奴に始末書を出せと言って置け!」

 

 

後ろをチラッと見ながら首を傾げるマリアにバリサムがガシガシと頭を掻きながら出撃許可を出すのでマリアは流石指令太っ腹!と声を上げながらニコっと微笑むと、ポンと自分お腹をポンと叩くバリサムから苦笑いされてしまう。

 

 

「聞こえてたわねイエーガー?バリサム指令からも出撃許可が出たわ!」

 

 

「こちらイエーガー離陸許可を感謝する・・・戻ったらリンの店で一杯奢ってやるよ?」

 

 

イエーガーからの提案に久々に良いわね?とマリアは嬉しそうにフフッと微笑むと、それじゃあ息子は預けとくからね?と言いながら通信を切るとイエーガーのトリアーエズがアフターバーナーを吹かしながら滑走路を加速して行く・・・

 

 

「イエーガー、テイクオフ!」

 

 

そう声を上げたイエーガーのFF-4トリアーエズがズームアップしながら上空へ消えて行くと、頼むわよ・・・と呟いたマリアはこの後の定期便は近隣の基地に回して!と隣のアメリアに指示を出すと、何をする気だマリア曹長?とバリサムから不思議そうな顔で尋ねられる。

 

 

「ひょっとすると損傷機が出る可能性も有りますので滑走路をなるべく空けて置きたいので許可を頂けませんか?」

 

 

「そうか・・・そういう事ならウォーカー軍曹よりも俺からの方が話が通りやすいから近隣の基地には連絡して置こう」

 

 

 

そう言いながら戻って行くバリサムにマリアは少し驚きながらも流石指令♪と小さく声を上げているとアメリアから着陸予定の輸送機への誘導が終わりました。と報告が上がって来る。

 

 

「良し・・・ここからが本場よアメリア!」

 

 

「二機のフォローは私がするのでマリア曹長は迎撃機の誘導をお願いしますね?」

 

 

 

そう声を上げるマリアにアメリアは任せて下さい!と気合い入れるとヘッドセットを掴みながらショウ達に通信を繋ぎだす。

 

 

 

 

~~~




リン=ローダンセ

26歳

168センチ

民間人

スレンダーだがプロ―ポーションも良くトリントン基地のマドンナ的存在で髪は黒のロングで店に出ているときはハーフアップに上げている。

有る事がきっかけでオーストラリア方面軍地球連邦軍トリントン基地の戦闘機パイロットのショウ=カノウの事が気になってしまう。

両親は開戦直後のコロニー落下に巻き込まれる・・身寄りも無いがショウ達と出会いそれなりに楽しくやっている。

ショウにプロポーズされるが生きて帰ってくることを条件に保留中で有る・・・

気が強くショウとの口喧嘩も日常茶飯事で有るが親友であるチャーリーとアメリア曰くいつもの事と・・・生暖かい目で見られている。


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どんでん返し!?

 

 

「トリントンコントールから、CBP1、2へ状況はどうですか?」

 

 

 

「こちらCB2、おかげ様で何とか生きてるぜっ!」

 

 

 

相変わらず淡々とした声で通信を繋いで来たアメリアにチャーリーもヘヘっと笑いながらそう答えはいるが内心背後にへばりついて来るドップに対してしつこいんだよ!悪態を吐きながら自機を右へ左へと激しく機体をロールさせながら回避行動を取っているとアメリアからホッとした感じの声で良かったです・・・と返事が返って来るのでチャーリーはドッグファイト中ながらもドキっとしてしまう・・・

 

 

 

「何・・・俺の事を心配してくれた訳?」

 

 

 

「当たり前じゃないですか!CBP1、2を助ける為に増援が上がってるんです・・・絶対に撃墜されちゃダメですよ!?」

 

 

そう注意しながらジロっと睨んで来るアメリアの顔でチラつきながらモニターに表示されるとコイツマジで可愛いな・・・と思いながらチャーリーは良し!と気合い入れると、後何分で粘れば良い?とモニターの向こうのアメリアに尋ねだす。

 

 

 

「増援到着まで約五分・・・それまでに私の指示で敵機の撃墜をするか自力で逃げ切るかの二択となりますがどっちが良いですか?」

 

 

「おいおいマジかよ・・・この可愛い管制官さんがドップ二機相手に試作機とポンコツのトリアーエズでどうにかしろって言ってるけどどうするよショウ?」

 

 

 

とんでもない二択を迫るアメリアにチャーリーが嘆くように指示を求めると、チャーリー機を追尾しているドップを牽制する様に背後を取りながらショウはそうだな・・・と苦しそうな顔でモニターに映るアメリアをチラっと見る。

 

 

「勝算がどれくらいあるのかだけ聞いて良い?」

 

 

「100・・・と言いたい所ですが貴方達のデータが無いので50%という所でしょうか・・・」

 

 

そう言いながらムゥ・・・?と困った顔を見せるアメリアにショウはそう言う時は百パーって言えよな・・・と内心苦笑いを浮かべるとチャーリー決めたぞ!と親友でも有る僚機に向かってショウが声を上げだす・・・

 

 

「彼女に命を預ける良いなチャーリー?」

 

 

 

「了解!頼むぜアメリア!!」

 

 

 

そう二っと笑みを浮かべて来る二人にアメリアは満面の笑みを浮かべると、任せて下さい!と気合い入れながら自分のヘッドセットを掴みだすとCBP1、2!と矢継ぎ早に指示を出し始める。

 

 

 

「取り合えずCBP2の背後にくっ付いているハエ(ドップ)をどうにかしたいのでCBP1はその試作機の推力を生かして強引に割り込んで、その隙にCBP2は一旦離脱して先程CBP1が追っ払ったもう一機のドップの位置を探して下さい・・・コッチのレーダーには映らないので雲の中で警戒している筈です!」

 

 

 

「おいおい簡単に言うなって・・・けどそう無茶なのは大好物なんだよね?」

 

 

アメリアの指示にショウはニッと笑みを浮かべながらガンッ!とスロットルを開けると操縦桿を左に倒しながら同時に左脚のラダーペダルを踏み込むと前方のドップを追い越してバレルロールをかます(・・・)とドップのパイロットも泡喰ったのかバランスを崩しだす・・・

 

 

「今だチャーリー!」

 

 

「おうよ!!」

 

 

ショウの声にタイミング良く答えたチャーリーがトリアーエズを上空へと離脱させるとピーっと今度ショウのコアブースターのコクピットにロックオンアラームが鳴り響き出す。

 

 

「この機体速いけど旋回性能はそこまで高く無いって知らないだろうっ!?」

 

 

思ったよりも鈍いロールにショウは焦った声を出しながらアメリアに向かって抗議の声を上げるとアメリアから頑張って下さい?と相変わらず淡々した返事が返って来るので、こなくそっ!?と声を上げたショウはドップから放たれたミサイルをフレアを飛ばしながらとコアブースターの各所に装備されたスラスターで強引に機体の向きを変えながら回避する・・・

 

 

「どうだ見たかこの野郎!!」

 

 

そう声を上げたショウはコアブースターの姿勢を立て直しながら恐らくギョッとしているパイロットが操縦しているドップの背後に付くと、FCSの項目から装備(されている筈の)空対空ミサイルを選択するがネガティブとディスプレイに表示される。

 

 

「ちょ、ちょっと・・・まさかコイツ非武装って訳じゃっ!?」

 

 

そう焦ったっ声を上げるショウにアメリアから悪い知らせです・・・と通信が入ると申し訳なさそうな顔で頭を掻くホワイトの顔がモニターに映り出す・・・

 

 

「お前さんには言って無かったが・・・慣らしだったからその機体にはミサイルはおろか30ミリの弾丸さえも込めてねえぞ坊主?」

 

 

「えぇ!?それじゃあコイツって丸腰じゃないですか!」

 

 

ショウは焦った声を上げながらどうしたら・・・と内心慌てていると、ホワイトからビームキャノンだけは使える筈だ!と叫ぶホワイトに了解・・・と答えながらFCSの項目から後部のビームキャノンを選択するとジリジリと必中距離までドップを追い込みだす・・・




ホワイト

階級 大尉

170センチ

白髪が混じってきた65歳

トリントン基地整備班、班長



連邦軍でもトップクラスの職人整備兵である。

彼の手にかかった機体は嘘の様に見違えるほど良くなると言う逸話が有る。

しかし彼自身がかなりの偏屈で有り気に入った人物でないとダメと言う条件が有り、腕は良いがあっちこっち飛ばされている。

ウォルフとは気が合い古い知り合いだ。

田舎基地のトリントン基地に飛ばされてからはあまり元気が無かったがショウがめげずに機体の注文を出しているうちに気に入ってしまい坊主と呼ぶようになった。

カスケード隊のメカニック、ソフィー=ホワイトは孫である。

何故かイエーガーは酔ったソフィーを送る度スパナを投げられる。

そのスパナは今はショウに預けられている。


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ショウの底力!

「ここだ・・・貰ったぞドップの野郎めっ!!」

 

 

コアブースターのコクピットの中で叫んだショウはHUDに映るジオン地上軍の戦闘機であるドップをロックオンし操縦桿に有るトリガーを絞ると、コアブースターの後部ユニット装備された戦艦クラスの威力を持つとマニュアルにも書かれたいたビームキャノン砲から放たれたビームがドップの向かう方向と明後日の方に飛んで行くのがショウのディスプレイにも綺麗に映り出さすと、ちょっと何やってるんですか!?とアメリアから抗議の声が通信で入って来る。

 

 

「五月蠅いな!ビームキャノンの射線軸がズレてんだよコッチは!?」

 

 

「ちょっ!?そんな機体でまともに戦える訳有りません!CBP1はすぐに離脱を・・・」

 

 

ショウはそう言い掛けるアメリアにチャーリーを見捨てろって言うのか!と怒声を上げると、試作機を敵に渡すつもりですか?とアメリアが淡々とした声を尋ねて来るので、ショウはそんな訳無いだろ・・・と答えながらコクピットのサイドコンソールに有るキーボードを叩きながら先程の感触を頼りに射線軸調整を行っていると、ショウ危ない!?と高度を上げたチャーリーから焦った声が聞こえると同時に急降下して来たもう一機のドップが30ミリバルカン砲をばら撒いて来る。

 

 

「邪魔するなってコイツ!?」

 

 

高度を下げるしか逃げ場の無いショウは操縦桿を左上に倒しながら左脚のラダーペダルも蹴るとドップからの攻撃を避ける為にコアブースターを左へとダイブさせると先程まで背後を取っていたドップがシメシメ・・・と言わんばかりに高度を取って行くので、そっちに一機行くぞチャーリー!と今度はショウが焦った声を上げだす・・・

 

 

「分かってぜショウ・・・舐めんなよコイツ!!」

 

 

そう答えながらチャーリーのトリアーエズがドップに対抗するかの様に急降下して来るので、あのバカ!?と声を上げたショウはコアブースターのアフターバーナーを吹かしながら急上昇を掛けると急にコクピットの中へビーっとなるアラーム音とメインモニターに警告文が表示され出す・・・

 

 

「メインエンジンの温度が異常・・・このままだとオーバーヒートだって!?」

 

 

そう声を上げたショウは慌てて機体のテレメトリーを確認すると右エンジンの油圧が急激に下がっているのを確認すると、基地の方でも状況を把握しているのか整備班長のホワイトから言わんこっちゃねえ!とショウのヘルメットに怒声が聞こえて来る。

 

 

「このまま飛んでたら機体ごと吹っ飛びかねんぞ!一旦離脱しろ坊主!?」

 

 

「嫌ですよ?このままチャーリーを見捨てる訳には行きませんからね?」

 

 

ホワイトからの焦った声を無視したショウがニット笑みを浮かべながらチャーリー機の方へと向かうドップへ更に距離を詰めると、今度こそ・・・と呟いたショウはHUD内に捉えたドップに向かってビームキャノンの照準を合わせると食らえ!と声を上げながらトリガーを引くとコアブースターから放たれたビームはドップの右翼を掠るだけに終わってしまう・・・

 

 

 

「まだ甘いっ・・・!?」

 

 

そう焦った声を上げるショウにイヤッホウッ!!と叫んだチャーリーのFF-4トリアーエズが降下しながらふらついて速度を落とているドップ向かって20ミリバルカン砲を正面当てながら撃墜すると、今度はフォックス2!!と言いながらショウの背後に張り付こうとしていたドップに向かって残った赤外線

ミサイルを全弾放つが・・・ドップの方も分が悪いと思ったのかフレアを焚きながら離脱した行く。

 

 

 

「チッ逃げられたか・・・!」

 

 

「見たいだね・・・けど良くこんな状況でしのぎ切ったよ?」

 

 

そう言いながら二っと笑みを浮かべるショウに確かに♪と隣に並んだトリアーエズのキャノピー越しチャーリーがグッと親指立ててくると同時に警告アラームが鳴ると、ようやく到着ですね?苦笑いを浮かべたアメリアから通信が入って来る。

 

 

 

「こちら第2小隊長のジャックだ・・・折角来てやったのにもう終わったのかよショウにチャーリー!?」

 

 

「すみませんジャック隊長?美味しい所は俺が頂きましたよ!」

 

 

 

少し残念そうな声を上げるジャックにチャーリーがニヤっとしながらそう答えていると、あまり調子に乗るなよチャーリー!と前方から勢い良く飛んで来たイエーガーのトリアーエズがチャーリー機をスレスレにすれ違いながら旋回すると、危ないじゃないですかイエーガー隊長!とチャーリーから抗議する声が上がり出す。

 

 

「普段無茶ばっかやってるお前が言うな・・・しかし慌てて飛んで来たのに二人共無事みたいだな?」

 

 

「まあ何とかです・・・コイツの性能のお陰で何とかっ!?」

 

 

イエーガーにそう答えていたショウはボッ!と後方から聞こえる音に驚くと同時にコアブースターのコントールを失いだすと何だ一体!?と慌てた声を上げるショウに、落ち着けショウ!と声を上げたイエーガーのトリアーエズが追随して来る・・・

 

 

「どうやら一番エンジンが音を上げたみたいだな・・・1番をカットして2番エンジンの出力を上げて機体を立て直すんだショウ!」

 

 

「了解ですイエーガーさん・・・こなくそっ!!」

 

 

ショウはイエーガーの指示通り片肺ながら左足のラダーペダルを踏み込み地表スレスレで機体を立てながら、どうにか生きてるな・・・と呆然とした顔で呟いていると、流石だなショウ?とニッと笑みを浮かべたイエーガーのトリアーエズがローリングしながら左に並んで来る。

 

 

「ハハハ・・・そうでしょ?」

 

 

「良し、今度はそのまま着陸だ。くれぐれも気を抜くなよショウ!」

 

 

そう言いながら離脱して行くイエーガーにショウはマジで!?と声を上げるといつの間にかトリントン基地が目の前に見えてきている・・・

 

 




バリサム

50代

180センチ

地球連邦軍大佐

髪は灰色で体格が良い

トリントンの基地指令、ウォルフ大尉とホワイト大尉とは旧知の仲である。元はウォルフの部下で有ったが降格処分も有りバリサムが出世し今に至りバリサムも元戦闘機パイロットと言う裏設定も有る。

連邦軍特有の官僚タイプの指揮官と違い戦闘機パイロットからここまで出世して来たバリサムは叩き上げの実戦指揮官でショウ達現場のパイロットからも信頼も厚いが・・・普段の緩さの所為かジャブローからの評価は低い様である。


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生還

 

 

「トリントンコントールへ聞こえるか?こちらは基地守備隊戦闘機中隊第一小隊長のイエーガー=バウスネルン中尉だ。試作機のエンジンが不調により緊急着陸を行うので対応の方を頼む!」

 

 

敵機二機の内一機を撃墜し残りのドップを追い払ったとショウ達から報告が有って管制室内につい先程まで歓声が上がっている中・・・緊張気味の声でイエーガーからそう報告が上がって来るのでアメリアは再び混乱が訪れる室内にハァ・・・と溜息をつきだす。

 

 

「アプローチ前だって言うのにとんだトラブルメーカーですね・・・」

 

 

「ちょっとアメリア!ぼやいて無いでショウのCBP1の誘導を頼むわよ!?」

 

 

そう注意するマリアが後ろを振り返ると司令官のバリサムに向かって救助隊の要請を出しますね!と声を上げるのでアメリアはその姿を横目にヘッドセットを掴みながらショウのコアブースターへと通信を繋ぎだす。

 

 

「こちらトリントンコントロール、アメリアです。CBP1そちらの調子はどうですか?」

 

 

「順調・・・って言いたい所だけど、片肺の上に2番の方も油圧が上がらなくてこれ以上高度が上がらないんだよね・・・」

 

 

 

そう言いながら苦笑いを浮かべるショウの顔が映るモニターにアメリアは内心最悪じゃないですか・・・と思いながらチッと舌打ちすると、そのままじゃ着陸は無理では?と遠回しにベイルアウトする事を提案するが、絶対にイヤだね!とムッとした顔でショウから返事が返って来る。

 

 

「ここまで来たんだ・・・コイツと一緒に絶対帰投する!」

 

 

「分かりましたよ・・・そこまで言うんなら付き合って上げますが、途中で落っこちても恨みっこ無しですよカノウ少尉?」

 

 

平凡な顔の割りに気合いの入った頑固そうな事を言って来るショウにアメリアもどこか気に入ったのか二っと笑みを浮かべながらフラフラと降りて来るコアブースターに向かって指示を飛ばし始めるとショウから了解!と返事が返って来る。

 

 

 

「CBP1はそのまま第一滑走路へ向かって・・・ちょっと!もっと機首を上げないと墜落しますよ!?」

 

 

「分かってるって!?踏ん張れってコイツ・・・こなくそぉ!!」

 

 

 

アメリアからの焦った声にショウはフラップを全開し揚力を得ながら操縦桿を引いて強引に機首を上げながらタッチダウンに成功すると、今度は角度を付け過ぎた為にメインエンジンを尻餅を着いた為に大きく火花を上げながら滑走路の中で減速しだすとその様子を見ていたタワー内からワァーっ♪と歓声が上がり出す中・・・ホワイトが一人ジロっと睨みを上げだす・・・

 

 

「あの野郎やりやがったなっ!?」

 

 

 

ショウのコアブースターの着陸にホワイトがそう怒声を上げる中、まあまあ!?と宥めだすマリアがチラッと見て来るのでアメリアはコホンと咳払いしながらショウのコアブースターへ通信を繋ぎだす。

 

 

 

 

「こちらトリントンコントロールのアメリアです。CBP1へナイスタッチダウンでした。」

 

 

 

「有難う・・・けど僕達が生き残れたのは君のお陰だよウォーカー軍曹?」

 

 

 

そう言いながら二っと笑みを浮かべて来るショウに照れ顔を少し赤くしたアメリアもどうも・・・と照れ臭そうな顔で答えていると、俺にもご褒美の言葉をくれよ?と声を上げたチャーリーのトリアーエズが管制タワーの目の前をスレスレを飛んで行くので驚いたアメリアはちょっとウィルソン少尉!と抗議の声を上げだすとマリアからもあのバカ達ったら・・・と呆れた声が聞こえて来る。

 

 

「ちょっと・・・ショウも無事に降りたんだから、イエーガーとチャーリーにジャックの第二小隊はいつまでも上空待機して無いで降りて来たら?」

 

 

「別に俺達はショウの心配なんか・・・なぁジャック?」

 

 

マリアにそう答えながらイエーガーが同意を求めると隊は違えど心配していたらしいジャックからそうだっ!焦った声が聞こえて来るので何を言ってんだか・・・?とマリアがクスクスと笑い出す。

 

 

「ホントです。けど・・・仲間想いで凄く素敵な所です。この基地と皆さんは・・・」

 

 

「そう言って貰えると嬉しいわアメリア?なんならシフト上がりに私が良く行きつけのパブに行ってみない?」

 

 

ニコっと微笑んだマリアからの提案に別に良いですけど・・・?とアメリアも首を傾げながら了承するとマリアがヘッドセットを掴みながら今の聞いたわね野郎共!と声を上げると同時に俺も行くぜ!とノリノリの声を上げるチャーリーを始めにこの通信を聞いている全員から次々と参加表明が聞こえて来るのでアメリアはちょっとマリア曹長!?と抗議の声を上げだす。

 

 

「あの・・・二人じゃ無いんですか?」

 

 

「女だけと絡まれやすいし・・・飲むんなら人数が多い方が楽しいわよ?」

 

 

そう言いながら二っと笑みを浮かべて来るマリアにそれもそうですね・・・と内心納得したアメリアは淡々とした顔で分かりました。と答えながらも勤務が終わるのを待ち遠しく思うのであった。

 




ジャック

178センチ


地球連邦軍中尉

トリントン基地飛行中隊第2小隊長⇒MS守備隊第2小隊長

搭乗機体トリアーエズ⇒RGM-79ジム


イエーガー、タンクとジャックでトリントン基地小隊長トリオで有る。

一番マジメでツッコミ役のイエーガー、軽いキャラのタンク、口の悪いジャックで構成せれている。


イエーガーと同じく飛行中隊の2小隊長であった。

トリントン基地にMSが配備された後少し後に機種転換訓練を受けた。

元々試験部隊のカスケード隊所属だがイエーガー達が遠征している間にリンスが再編し守備隊の2小隊長となる。


口は悪いがトリアーエズでドップやら07グフとやり合うなど腕は確か。


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対面

 

 朝から始まった新型機の試作機での最悪なテスト飛行に引き続き・・・バリサムへの報告と整備班長で有るホワイトのお説教で結局丸一日潰れてしまったショウは司令部の有るビルの前に止めたジープのハンドル手を乗せながらハア・・・と溜息をついていると大丈夫かショウ?と助手席に座るチャーリーから苦笑いを浮かべながら首を傾げて来る。

 

 

「大丈夫だって・・・それにしてもマリアの奴遅いな?五時に管制タワーの下に迎えに来いって言った癖に!」

 

 

「化粧でも直してんだろ・・・どうせ今更誰も見ないって言うのによ?」

 

 

そう言いながらククっと笑いだすチャーリーにショウは、おい・・・とバックミラーに映る明るく茶色の長い髪を左肩まで流した女性がムスっとした顔のまま近づいて来ると・・・それってどう言う事かしらチャーリー・・・?と助手席から覗き込んで来たマリアが全く笑って無い目でフフッと微笑んで来るとチャーリーからうわっ!?と驚いた声が上がり出す・・・

 

 

「ちょ、ビックリさせるなよなマリアっ!?」

 

 

「人の悪口を言って置きながら良くそんな事言えるわねチャーリー!」

 

 

 

チャーリーにそう抗議の声を上げながらマリアがジープの後部座席に乗り込むとショウは振り返りながら久しぶりだね?と声を掛けるとマリアも二っと笑みを浮かべる。

 

 

 

「ホントね。息子の事も有るし・・・こうして二人とちゃんと話すのいつ振りかしらね?」

 

 

 

そう言いながらマリアが思案顔になると、子供は元気か・・・?と少し気まずそうにチャーリーから尋ねられたマリアは苦笑いを浮かべながらショウとチャーリーの肩をポンと叩き出す・・・

 

 

「ウチの旦那の事はいい加減忘れなって・・・別にアンタ達の所為じゃ無いんだからさ?」

 

 

 

「そうは言っても、ライナスは僕らの同期で友人だったしさ・・・そう簡単には忘れられないって?」

 

 

そう声を上げるショウにチャーリーもその通りだぜ?と言う様にコクっと頷くとマリアがハァ・・・と溜息をつきだす。

 

 

「ホントアンタ達ってバカだね・・・そう思ってくれるのは嬉しいけど仇討とか言って無茶するのは絶対に止めてよね二人とも!」

 

 

そう呆れた声を出すマリアに振り返ったショウとチャーリーも分かってる・・・と答えているとマリアの背後から、すみません遅れましたっ!?と赤髪の女性下士官が駆け寄って来るのでマリアが大丈夫アメリア!?と心配そうに声を掛けるのでアメリアと呼ばれた下士官は息を切らしながらアハハ・・・と苦笑いを浮かべ出す。

 

 

「いや・・・ミリィとの引き継ぎにちょっと手間取ってしまって?」

 

 

「相変わらずねミリィは・・・ホントのんびり屋なんだから!」

 

 

 

アメリアからの説明にそう声を上げたマリアがまったくもう・・・と呆れた顔で腰に手を当て出すと、、ひょっとして彼らが・・・?と尋ねて来るアメリアにショウとチャーリーは顔を見合せながら二っ笑みを浮かべるとアメリアへサッと自分達の右手を差し出す。

 

 

「僕はCBP1のショウ=カノウ少尉です。」

 

 

 

「俺はCBP2のチャーリー=フォン=ウィルソン少尉だ。」

 

 

 

少しカッコつけながら自己紹介をするショウとチャーリーにアメリアも最初は少し驚いたが、すぐにクスっと微笑むと宜しくお願いします。と答えながら二人の手を握り返すと自分も自己紹介しだす。

 

 

 

「先程は失礼致しました・・・私は先日ジャブロー基地より編入して来たアメリア=アン=ウォーカー軍曹と言います。今後とも宜しくお願い致しますね少尉?」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

そう言いながら敬礼して来るアメリアにこの二人にそんな固い挨拶良いって?とニッと笑みを浮かべたマリアがそう声を上げながら一緒にジープの後部座席を引っ張って来るのでアメリアからしかし・・・と困った顔で首を傾げられてしまう・・・

 

 

「マリアの言う通り気にしないでよ。基地の皆もショウとチャーリーって呼ばれるから気軽にそう呼んでいいからさウォーカー軍曹?」

 

 

アメリアとアリアにそう答えたショウが助手席の相棒に向かって、なっチャーリー?と首を傾げるとチャーリーからもおうよ!と返事が返って来るのでアメリアも観念したのか分かりました・・・と言いながら恥ずかしそうな顔を見せて来る。

 

 

「それでは改めて・・・宜しくです。ショウにチャーリー♪」

 

 

そう言いながらフフッと微笑んで来る綺麗な赤髪を揺らすアメリアにたショウとチャーリーはヘヘっと笑みを浮かべていると、何ニヤケてんのよ!とニヤニヤするマリアから席を蹴られると、それじゃあ行くか!と声を上げるチャーリーの声で了解!と叫んだショウはジープのエンジンを掛けるとキュキュっとタイヤを慣らしながらCASCADEへと向かうのであった・・・

 

 

 

 

 

「基地の外とはいえ、ちょっと飛ばし過ぎでは!?」

 

 

 

「大丈夫よアメリアってば心配症ね・・・この辺りは町外れだから通報が無い限りMPも滅多に来ないわよ?」

 

 

そう注意するアメリアに沈着冷静で真面目な上官だと思っていたマリアからそんな言葉が聞こえたアメリアはえぇ!?と驚いた声を上げだすと助手席のチャーリーがそろそろ着くぜ?と振り向いて来るのでアメリアは左右を見渡しだす・・・

 

 

「明らかに町外れの歓楽街って感じですね・・・基地の近くにこんな場所が有るとは驚きです!?」

 

 

「もうちょっと行ったら男共が好きそうな所も有るわよ・・・ねえチャーリー?」

 

 

 

そう驚くアメリアにマリアがニヤニヤしながら話を振ると、何で俺に聞くんだよマリア!?とチャーリーから抗議の声が上がり出すとショウもククっと笑いながらお目当ての店が見えて来ると着いたよ!と言いながらジープをCASCADEの前で停車させだす。




う~ん、これ以上のキャラクター紹介はネタバレになるので今回は無しです。後書きのネタも何か考えないとな・・・?以上作者からのぼやきでした。


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リンとマリア

 

 

 

「ここが皆さんの馴染みのお店ですか?」

 

 

 

ジープから降りたアメリアがカスケードと描かれた古ぼけた看板を見ながらそう声を上げると二っと笑みを浮かべたショウからそうだよ?と返事が返って来る。

 

 

 

「ここはCASCADE(カスケード)って言うパブで僕とチャーリーの行きつけの店なんだ。」

 

 

「そんで、ショウの大好きなリンが居る店でも有るよな?」

 

 

 

同じくジープから降りたチャーリーがニヤニヤしながら屋根越しにショウに向かって首を傾げると、五月蠅いな!とショウは顔を真っ赤にしながらチャーリーに向かって叫び返すと、まだ付き合って無かったのね・・・と呆れた顔をするマリアと共にアメリアも店の中に入って行くと、カランコロンと鳴るカウベルの音に威勢の良い女性の声がいらっしゃーい!と店の奥から聞こえて来るとすぐに黒髪をハーフアップにした綺麗な女性がショウ達を出迎えてくれる。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「お待たせショウとチャーリーに・・・ってやだマリアじゃない!どうしたのよ急に!?」

 

 

 

慌てた顔でそう声を上げて来るリンにマリアが久しぶりねリン?とフフッと微笑んで来る。

 

 

 

「元気なのマリア?最近めっきり顔を見せなくなったから心配してたんだからね!」

 

 

 

「ゴメンゴメン・・・息子の事も有るし中々来れなくてね。今日は最近同じチームになった子がここに来たいって言うから紹介ついでに羽目を外しに来たって訳♪」

 

 

二っと笑みを浮かべながらそう答えるマリアに、息子さんはどうしたの?と少し呆れた顔のリンから尋ねられるとマリアは同期の子に預けて来たわよ?満面の笑顔を浮かべる。

 

 

「さーってショウとチャーリーの奢りだし久しぶりに飲むわよ!」

 

 

「あらそうなの?だからと言って帰れなくなるまで飲んだらダメだからねマリア!」

 

 

そう言いながらビシっと指をさして注意して来るリンに分かってるって!?とマリアがタジタジとなった顔になると同時にショウ達から聞いてねぇ!?とツッコミが入り出すので、マリアは今言ったじゃない?と不思議そうな顔で首を傾げる。

 

 

「とまあ支払いの事は二人に任せるとして。今日はこの子を紹介したくてここに連れて来たのよ・・・ほら出てらっしゃいアメリア?」

 

 

マリアがそう言いながら背後に立っていたアメリアを前へと促すとリンからうわっ!?と驚いた顔をされるのでアメリアは何か顔に付いてるんでしょか・・・?と思いながら自分の顔をペタぺタと触り出すがそれは間違いらしくリンがすっごい綺麗な子ね・・・?とフフッと微笑んで来る。

 

 

 

「私はリン、リン=ローダンセよ。名前を聞いても良いかしら?」

 

 

 

そう言いながら満面の笑顔で自分の名前を教えてくれるリンにアメリアもあっ!っと思いながら慌てた顔すみません自己紹介が遅れてしまって!?と声を上げながらビシっと姿勢を正しながら敬礼しだす。

 

 

 

「先日、本社《ジャブロー》よりここトリントン基地へ基地オペレーターとして配属されました。アメリア=アン=ウォーカー軍曹です!今後ともよろしくお願いいたしますローダンセさん。」

 

 

 

「そんなに緊張しなくて良いって?出来れば私の事は気軽にリンって呼んでねアメリアちゃん?」

 

 

 

 

リンは初対面のアメリアに緊張させない為にそう言いながらフレンドリーに接しながら首を少し傾げるとアメリアもの方も余り人見知りしないタイプらしく、分かりましたリンさん♪とニコっと微笑んで来る。

 

 

「マリアの後輩にしては素直で良い子ね。こんな悪い先輩に感化されちゃダメだからねアメリアちゃん?」

 

 

「ちょっとどう意味よリン!?アンタこそアメリアに手を出しちゃダメだからね?」

 

 

 

そう言いながらアメリアの肩に手を回したマリアがニヤニヤしだすとアメリアとリンからえっ!?と驚いた声が上がり出す中ショウとチャーリーからもヘッ!?と素っとん狂な声が聞こえて来る。

 

 

「ちょっとどう意味よマリア!?」

 

 

 

「どう意味も何もアンタって気に入った子が出来ると男でも女でもすぐに名前で呼び出すじゃん?そこに居るショウに然りアメリアに然り・・・??」

 

 

 

少し怒声混じりのリンの声にマリアがショウとアメリアを交互に見ながらニッと笑みを浮かべていると、

リンさんってそう《・・》なんですか!?と驚いたアメリアはそう声を上げながら少し身体をのけ反り出すとリン方違うってっ!?と焦った叫び声が店内に響き出す・・・

 

 

 

「何て事を言うのよマリア!?私はノンケでも無いしちゃんと好きな人が居るんだからね!!」

 

 

「ふ~ん・・・それで好きな人って誰なの?」

 

 

マリアからの一声に今まで同じく騒々しかったトリントン基地の隊員達が一瞬静かになる中、それは・・・とリンはつい黒髪の少尉とバチっと目が合ってしまうとすぐにハッとなり周囲を見渡すと周囲からの目線に顔がボッと赤くなってしまう。

 

 

「ちょっと何見てんのよ!!」

 

 

そう叫んだリンがキッと睨みつける様に店内を見渡すので、ヤベっと隊員達も慌てて会話に戻る中、あ~あもうちょっとだったのに?と楽しそうなマリアの声が聞こえて来ると、いい加減しなさいよねっ!!堪忍袋の緒が切れたのかマリアを りつけるリンの声が再び店内に響き渡るので有った・・・

 




マリア=トパレス

25歳 


女性


基地管制官



アメリア達、基地オペレーターのリーダーで有り頼れる姉御肌の女性で有るが夫は戦闘機パイロットだったが戦死しておりシングルマザーとして一人息子を育てている。

勤務中は至極真面目で冷静だがプライベートではその反面茶目っ気たっぷりで、基地近くのパブをしているリンが良く揶揄われてはいるが年も近く中の良い友人同士で有る。


因みに夫で有ったライナスはショウとチャーリーの同期で友人同士で有った。




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楽しいひと時

「それで何飲むの・・・?」

 

 

不機嫌そうな顔でリンからカウンター席を案内されたショウ達は苦笑いを浮かべながら有り難うと言い席に座ろうとすると、アンタは向こう!とリンがマリアを一番端の席を指差す。

 

 

 

「ええっ?久しぶりに会った親友だっていうのにリンてばヒドいじゃない!?」

 

 

「誰が親友よまったく・・・これ以上変な事言ったらマジで店から追い出すからねマリア!」

 

 

そう言いながらジロっと睨んで来るリンにハイハイ分かったって・・・とマリアが席を立ると、じゃあここはショウね?と真ん中の席をショウに譲りながらニコっと微笑んで来るので、リンはさっきの事もあってか、ちょっとマリア!?と驚いた声をだしてしまう・・・

 

 

「ゴメンねショウ・・・何かマリアがはしゃいじゃって?」

 

 

「いや全然?僕もあんな楽しそうなマリアの顔を見たの久しぶりだし・・・何だか嬉しいかも」

 

 

そう言いながら二っと笑みを浮かべるショウだが少し切なそうな顔にリンもショウの心情を思ってか、そうだね・・・と答えていると、注文良いかリン?と隣同士でアメリアと一緒にメニューを見ていたチャーリーから陽気な声が聞こえて来るので、しみじみとしていたショウとリンはおっといけない・・・と頭を振りながらチャーリー達の方を見る。

 

 

「俺はビールで、アメリアもビールで良いのか?」

 

 

「ハイ!後、チャーリーがここの料理は何でも美味しいと言うのでお任せしてもいいですかリンさん?」

 

 

チャーリーとアメリアからの注文にリンが任せてよ♪とグッと親指を立てているとマリアからじゃあ私はウィスキーのロックで・・・と注文が入るので、リンは却下!と言いながらマリアをジロっと睨みだす。

 

 

「何でっ!?」

 

 

 

「バカね・・・空きっ腹にいきなりそんな度数の高いのダメに決まってるじゃない・って言うか子供を迎えに行くんだから今日はビールで我慢しなさい!」

 

 

そう叱って来るリンにマリアも仕方無さそうに分かったわよ・・・と渋々了承すると、リンも飲めば?とショウが二っと笑みを浮かべて来る。

 

 

「えっ・・・でも?」

 

 

「どうせ僕とチャーリーが奢るんだし、マリアもリンが付き合えば納得すると思うんだけど・・・」

 

 

 

 

そう言いながらショウがチラっとマリアの方を見ると、良いわねそれ?!と嬉しそうな顔でマリアから

も返事が返って来るのでリンは仕方ないわねぇ・・・と少し嫌そうに答えながらもフフッと微笑みを浮かべる。

 

 

「それじゃあ先にこれでも食べて少し待っててよ!すぐに全員分のビールを持って来るからね?」

 

 

 

リンがそう言いながらサラダが入ったボウルをショウ達の目の前にドンと置くとので、おっ!と嬉しそうな声を上げるショウに、これは何て言う料理ですか!?とキョトンとしたアメリアから尋ねられるとショウはニッと笑みを浮かべながらこれはね?と答えると、ボウルの中に入ったリン特製のドレッシングが掛かったキャベツとツナのサラダを小皿に分けてアメリアの前に置き出す。

 

 

 

「これは塩もみキャベツって言って僕の故郷で酒のおつまみとして良く出るんだ。」

 

 

 

「塩もみキャベツ・・・聞きなれない料理ですね?」

 

 

 

ショウにそう答えながらムゥ?と首を傾げたアメリアが少し不安そうに一口食べると同時に、んんっ!?と驚いた声を上げ出すので、そんなに口に合わなかったか!?とチャーリーから焦った声が上がり出す。

 

 

「いえ、その逆ですよ!!何ですかこれは・・・塩辛くってなんだか止まらないです!?」

 

 

アメリアがチャーリーにそう答えながら塩もみキャベツをひたすら食べ続けていると、また一人ハマったみたいね?とビールを運んで来たリンからクスクスと笑われてしまう。

 

 

 

「ショウから作ってくれって言われた時は、正直どうかな・・・って思ってたけど、これってビールに最高に合うわよアメリアちゃん?」

 

 

「ホントですかリンさん!?」

 

 

 

そう言いながら目を輝かしだすアメリアに意外そうな顔でリンは結構お酒好きなんだ・・・?と内心驚きながら思っていると、それじゃあ全員グラスは行き渡ったなぁ!!とチャーリーが乾杯の音頭を取り始める。

 

 

「それじゃあ新しい仲間で有るアメリアの歓迎に皆行くぜぇ・・・カンパァァァイ!!!」

 

 

 

自分のビールジョッキを頭上高く上げながらそう声を張り上げてくるチャーリーにショウ達も乾杯!と互いのジョッキをカチっと当てる中、アメリアは少し恥ずかしそうな顔をしながらちょっとチャーリー!?と抗議の声を上げだす。

 

 

「何だよアメリア?なんか不味かったか・・・」

 

 

 

「違いますよ!?正直凄く嬉しかったですけど・・・そんなに大きな声で私の名前を叫ばないで下さいって!」

 

 

そう言いながらジトっと上目遣い睨んで来るアメリアにうっ!?と声を上げたチャーリーが何かにつき抜かれた様に内心驚いていると、ほらアメリアちゃんも乾杯しよう?とリンが全員を集めてジョッキを

傾けて来る。

 

 

「わ、分かりました!ほら、チャーリーもボーットして無いで混ざって下さいよ?」

 

 

「お、おう・・・悪りぃ」

 

 

リンに言われてジョッキを持ったアメリアに急かされたチャーリーも慌ててその輪の中に入ると今度は何故かマリアが温度を取り始める。

 

 

 

「それじゃあ今度はリンとショウの幸せを願ってカンパーイ♪」

 

 

 

ビールジョッキ片手にマリアが突然そんな事を言って来るので、ちょっとマリア何言ってのよぉぉ!?とリンが慌ててツッコんでいると、ショウからもブッとビールが吹き出されるのでアメリアは楽しそうにその様子を見ながらクスクスと笑いながらビールを口に含むので有った。

 

 

 

 

 

~~~




ネタが無いので次回予告です。


CASCADEに忍び寄る黒い影・・・そしてアメリアの正体とは!?


次回「正義の味方アメリアーン!」をお楽しみください。





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アメリアの秘密

 

 

 

 乾杯から一時間程経ち全員それなり酔いが回り始めた頃、プハーと親父臭い声を上げながらビールジョッキを置くアメリアに、ちょっとアメリアちゃんたら・・・とマリアに付き合っていたリンが呆れた声を上げだす。

 

 

 

「そんなに飲んで平気なの?随分とペースが早いみたいだけど・・・」

 

 

「そうですか?正直全然酔っては無いんですが。」

 

 

 

そんな事を言って来るアメリアの前には既に空いたグラスが3つも並んでおり、この子強いわね・・・と思ったリンは顔色を変えずケロっとしているアメリアの様子に内心驚いていると、その隣のチャーリーからニヤニヤした顔でメニューを見せてくると、どんどん飲もうぜ!と下心丸見えの声が聞こえて来る。

 

 

「ちょっとチャーリー・・・ウチの子に手ぇ出したらタダじゃ置かないわよ!」

 

 

「分かってるってマリア!?俺はただアメリアのジョッキが空いたからだな・・・」

 

 

そう言いながら怒鳴って来るマリアにチャーリーがあたふたしながら答えていると、大丈夫ですよマリア曹長?とアメリアはクスっと微笑む。

 

 

「これくらいじゃ基本酔いませんし、もし酔ったとして私に何かしようなら・・・その時は手加減が出来な思うので覚悟して置いた方が良いですよチャーリー?」

 

 

「えっ・・・それってそんなに激しいって事か!?」

 

 

 

驚きながらもどこか嬉しそうな顔をするチャーりーにアメリアはどこか違和感を感じながらも、ま・まあそうですね?と答えていると、アメリアって結構肉食系なんだ・・・と意外そうな顔するマリアがリンの方を見ると、多分意味が違うんじゃない・・・?とリンから首を傾げられる・・・

 

 

 

「所でさアメリアって本社《ジャブロー》から来たって言ってたけど、前はどんな部隊に居たのか教えてよ?」

 

 

リン達との会話が途切れた所、興味本位でショウがビールジョッキ片手に尋ねると、アメリアは少し困った顔をしながらえっとそれはですね・・・と言いながら苦笑いを浮かべ出す。

 

 

 

「ジャブロー基地の事は機密扱いなんであまり詳しく話せないんですよ・・・ね?」

 

 

 

そう言いながらアハハ・・・と曖昧な笑みを浮かべたアメリアがリンが持って来てくれた新しいジョッキに口を付けていると、そっかぁ・・・と答えたショウは残念そうな顔で頭の後ろで手を組みだす。

 

 

 

「しかし今日のアメリアの指示にはビックリしたな・・・あんな状況だって言うのに落ち着いてるって言うか妙に場慣れしてる感じだったし、ひょっとして前はどこかの実戦部隊に居たりして?」

 

 

 

「えっ!?そ・そんな事有る訳ないじゃないですか!?」

 

 

 

そう言いながら少し焦った顔で両手を振り出すアメリアにリンからも何言ってるのよショウ?とクスクスと笑われながら肩を叩かれるとショウもそりゃそうだよね?と一緒になってククっと笑い始める。

 

 

 

「けど・・・前に居た部隊よりもここの皆さん達の方が居る方が不思議と落ち着きますし・・・正直な所こんなに笑ったの私久しぶりですよ?」

 

 

突然アメリアがフフッと微笑みながらサラっととんでもない事をカミングアウトすると、それって前の部隊で何か有ったって事?と急に真顔になったマリアから尋ねられるとアメリアは内心しまった・・・と思いながら困った顔になる。

 

 

 

「何か有ったか?と言えば有ったんですが、すみませんマリア曹長でも機密なので話せません・・・」

 

 

 

「ふ~んそうなんだ・・・まあアメリアが話せないんなら何が有ったかは深く聞かないけどさ、私が今の上官なんだから困った事が有ったらすぐに相談しなさいよね?」

 

 

 

アメリアにそう答えながらこれは上官命令だから!とマリアがニッと笑みを浮かべるとアメリアも了解です!と敬礼しながらフフッと笑っているとリンからわあ凄い・・・と驚いた声が聞こえて来る。

 

 

 

「ちょっとリン・・・凄いってどう言う意味?」

 

 

「いやあのマリアがちゃんと上官やってるなって私ちょっと感動しちゃった・・・」

 

 

そう言いながら自分の瞼を手で押さえるリンにマリアがアンタねぇ!?と怒り出すと、苦笑いを浮かべたアメリアからまあまあ・・・と仲裁が入ると、それにしてもイエーガーさん遅いな!?とショウも話題を変える様にマリアとリンの方を交互に見ながらアハハ・・・と笑い出す。

 

 

 

「ああ、イエーガーのバカなら今頃バリサム指令に始末書出してるんじゃかしら・・・」

 

 

 

「あら珍しい・・あの真面目そうなイエーガー中尉がそんなの出すなんて何かあったの?」

 

 

 

そう尋ねて来るリンにマリアがそれがね・・・?とビールジョッキを傾けながら答えていると、ドカっ!と大きな音が出しながらドアが開くとガランガランガランっとカウベルが激しく店内に鳴り響きだす・・・

 

 

 

「イエーガーにしては乱暴な入店の仕方ね?」

 

 

「ちょっとマリア・・・そんな冗談言ってる場合じゃ無いと思うんだけど!?」

 

 

 

呑気にそんな事を言って来るマリアにリンも呆れた顔をしながらそう答えていると、妙な雰囲気に店内に居た兵隊達もシン・・・と静かになる中、お礼参りに来たぜぇ!と声を張り上げながら見覚えの有る軍曹を先頭に5~6人の陸戦部隊の隊員がズカズカとカスケードの店内へと入って来るのでショウとチャーリ^-からあっ!と驚いた声が上がり出す。

 

 

 

 

「コイツ昨日の酔っ払いじゃないかショウ?」

 

 

 

「ホントだ!?昨日の今日で懲りない奴等だね・・・」

 

 

そう呆れた声を上げるチャーリーとショウに件の軍曹が見つけたぞっ!!と叫ぶと血相を変えてチャーリーの胸倉を掴んで来るので、何すんだよ!とチャーリーも軍曹の胸倉を掴み返す・・・

 

 

 

「五月蠅ぇ!!よくも俺らだけに罪をなすりつけやがったな・・・お陰で三か月の減俸を食らったんだぞコッチは!?」

 

 

 

「良く言うぜ・・・お前らがリンにちょかい出したのが悪いんだろうがよバカが!正直言って自業自得だぜ?」

 

 

 

 

ヘヘっと笑いながらそう答えたチャーリーが軍曹を煽るり出すと、軍曹も昨日の一件でかなり頭に来ているのかテメェ!!と叫ぶと同時に何かがプチっと何かがキレたらしく渾身の右ストレートがチャーリーの頬にヒットするとチャーリーはグハっと声を上げながら背後に有るカウンター席のテーブルによろめきながら手をつくと運悪くアメリアのジョッキに当たってしまい倒れてしまう・・・

 

 

 

「あぁっ私のビールがあぁぁぁ・・・!!」

 

 

 

そう叫んだアメリアの悲痛な声にチャーリーが顎を擦りながらもあっ悪りぃ!?と謝っていると、軍曹はアメリアの容姿に気が付くと急にヘヘへ・・下卑た笑みを浮かべ出す・・・

 



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決着

「何だぁ・・・戦闘機乗りのモヤシ野郎の癖に良い女達を連れてるじゃねえか?」

 

 

そう言いながアメリアの肩を掴む軍曹に何やってのよアンタ!とマリアが怒声を上げると特に表情を変えずに大丈夫ですから・・・と答えたアメリアは・・・どうするべきか考えている様子を伺っているリンとマリアを交互に見ながら二っと笑みを浮かべると、そのまま強引に手を引かれ背後の仲間達へと投げられてしまう・・・

 

 

「コイツっ!!」

 

 

 

そう叫びながら掴み掛かろうとするショウにアメリアがダメです!と言いながらジッと目で制していると背後の陸戦部隊の隊員からヘヘヘっ・・・とニヤつく声が聞こえて来る。

 

 

「やけに聞き分け良いじゃねえかよ。大人しそうな顔して乱暴にされるのが好きッてか・・・?」

 

 

「おいおいマジかよ!?けど顔は良いけど身体がちょっとなぁ?もう少しボリュームが有った方が良くねぇか!」

 

 

アメリアを羽交い絞めにしている隊員に別の隊員が冗談交じりにヒヒヒ!と笑っているとその会話を聞いていたチャーリーがチッ!と舌打ちするとこいつ等・・・と流石に我慢が出来なくなり二人の陸戦部隊の隊員に殴りかかろうとする。

 

 

「オラァ!!テメェらアメリアを放せってんだよ!!」

 

 

「ああっ!?オモチャに乗って戦ってる奴が俺達相手にケンカで勝てると思ってんのかよコイツ!!」

 

 

そう怒鳴って来る陸戦部隊の隊員にパイロットとしては並以上の腕が有ると自負しているチャーリー自身も勝てる訳無いと思いながら拳をギュッと握り出すと、チャーリー!?と目の前のアメリアから焦った声が聞こえると同時に先程殴ってきた軍曹がその腕を力任せに掴んで来る。

 

 

「お姫様を守るにしちゃあ・・・ひ弱過ぎるぜ騎士《ナイト》さんよ?」

 

 

 

「五月蠅えんだよ・・・アメリアに手ぇ出したら絶対に許さねえからな手前ぇ!!」

 

 

 

そう言いながらジタバタとするチャーりーにイラついた軍曹がお前こそ五月蠅えんだよっ・・・とチャーリーに向かって殴りかかろうとした瞬間にドン!と大きな音が聞こえるとグウ・・・と先程までアメリアの腕を拘束していた部下が呻き声を上げているのが見える・・・

 

 

「その辺りで止めてくれませんかね・・・?」

 

 

 

「なっ!?お前何をした・・・」

 

 

 

そう不機嫌そうな声を上げるアメリアに驚いた顔をする軍曹と唖然としたチャーリーもアメリアの足元に転がっている陸戦部隊の隊員にギョッとなっていると、アメリアはクスっと笑みを浮かべながらちょっと寝て貰いましたけど?と首を傾げだす。

 

 

 

「クソ!よくも仲間をやりやがったなぁ!!」

 

 

アメリアを羽交い絞めにしていた隊員をやられ呆然としていた隊員がそう叫びながら突然アメリアに飛び掛かって来るとアメリアは動きが大雑把なんですよっ!と返しながらその右手を掴むとそのまま背後に回り込みながらギリギリと腕を捻り出す・・・

 

 

 

「私も気にしていると言うのにさっきは良くも貧乳扱いしてくれましたね・・・?」

 

 

 

「ギャっ!?痛い痛いって・・・謝るから勘弁してくれよ!!」

 

 

 

そう言いながら肩を押さえているアメリアの手を陸戦部隊の隊員がタップして来るのでアメリアは情けない奴ですね・・と言いながらチッ!と舌打ちしていると、今度はリーダー格の軍曹が背後からアメリアの首に腕を回しながら締め付け来る・・・

 

 

 

「オラァ!荒っぽいのが好きなんだろ・・・?」

 

 

 

「クッ・・・そ・そうですねぇ?但し荒っぽい目に合うのはソッチですよっ!!」

 

 

 

そう叫んだアメリアは床を蹴りながら背後の軍曹の鼻に向かって後頭部でヘッドバッドを食らわすと軍曹からグハっ!?と呻き声が聞こえ離れて行くのでその様子を見ていたマリアからうわっ痛そう・・・と苦笑い気味の顔でそう声が上がりだす。

 

 

 

「・・・まだやりますか?」

 

 

 

そう言いながらフゥと息を吐いたアメリアが首を少し傾げると、先程のヘッドバッドで鼻血を出した軍曹からこの野郎・・・と恨み声が聞こえて来るのでハァ・・・と今度は溜息をつきだす。

 

 

 

「良いでしょう・・・そっちがギブアップするまでトコトン相手をして上げますよ私は?」

 

 

 

「女だからって手加減してやりゃあ調子に乗りやがって・・・覚悟しろよテメエ!!」

 

 

 

そう怒鳴り上げながら掴みかかって来る軍曹の右手を掴んだアメリアは小さい身体を活かしフッとその懐に入るとそのまま一気に背中に背負い込みながら床へと叩きつけてしまうと動かなくなった軍曹にやりすぎましたかね・・・?と苦笑いを浮かべ出す。

 

 

 

「それで・・・残った皆さんはどうするんですか?」

 

 

アメリアは先程締め上げ完全に戦意喪失している隊員とここカスケードへ誰も入って来ない様にしている見張り役の二人の隊員を交互に見ながら首を傾げてると、おい開けろっ!何が有った!?とイエーガーの焦った声が扉の外から聞こえて来るので見張り役の陸戦部隊の隊員達がビクつき出す・・・

 

 

「分かった・・・今後一切この店は勿論の事、アンタたちにも絶対に関わらない様に軍曹へ言って置くから勘弁してくれよ!?」

 

 

「良いでしょう。ですがもし今度この店に姿を現したりしたら今度は両手両足全部叩き折ってやりますからね・・・?」

 

 

そう答えながらジロっと睨みだすアメリアにヒイっ!?と悲鳴を上げた陸戦部隊の隊員達が慌てた様子でぶくぶくと泡を吹いて完全に伸びている軍曹を肩に担いで店から出て行くと・・・突然開いた扉と入れ替わる様に店の中へ入って来たイエーガーから何が有ったんだ!?と驚いた声が聞こえ出すとアメリアはアハハ・・・苦笑いを浮かべるので有った。

 

 

 

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一目惚れ!?

「しかし驚いたわ・・・アメリアちゃんって凄く強いのね?」

 

 

そう驚いた声を上げるリンに先程の出来事を見て無いイエーガーがにわかに信じられないと言った顔でそうなのか?と首を傾げながらカウンター席に座ると、ビールジョッキ片手のマリアからもアンタも見たでしょう陸戦部隊の連中の事・・・?と首を傾げられる。

 

 

「確かに見たが・・・あんな華奢な身体でか?」

 

 

「そうなのよ!一方的にやられて行くあいつ等を見てた私自身も少し楽しくなって・・・マジで!?と思いながらも少しテンション上がったわ・・・」

 

 

 

そう言いながら苦笑いを浮かべるマリアにイエーガーもマジでか!?とじ反応をしながらビールを口に含んでいると、コッチの会話が聞こえていたのか目が合ったアメリアから困った様子でアハハ・・と愛想笑いが浮かび上がる・・・

 

 

 

「ま、まあ・・・変な奴等も居なくなりましたし私の事は気にせずにパーッとやりましょうよ!ねっ?パーッと!!」

 

 

 

先程の一件を誤魔化すようにアメリアが急に仕切り出すと、それもそうだな・・・?とイエーガーも取り合えず納得した所で改めて全員で乾杯していると、チャーリーが二人にしか聞こえない小さい声で、なあショウ・・・?とショウの脇腹を肘で突いて来る。

 

 

「んっ?何だよチャーリー・・・」

 

 

「俺・・・アメリアに惚れた。」

 

 

ショウは突然そんな事を言って来るチャーリーにマジでっ!?と驚いた声を上げるとチャーリーから静かにしろって!!と怒られしまう・・・

 

 

「おっと悪い・・・って言うかアメリアのどこに惚れたんだよ?」

 

 

 

「どこって・・・強さと可愛さのギャップ萌えって奴にか・・・?」

 

 

 

そう言いながらチャーリーがニヤニヤしながら首を傾げて来るのでショウは呆れた顔であっそ・・・と答えながらビールを一口飲みだすとチャーリーからもっとリアクションくれよ!?と肩を揺すられる。

 

 

「零れるから止めろって・・・それで僕にどうしろっていうんだよチャーリー?」

 

 

「流石に付き合いが長いだけ有って察しが良いじゃねえか?」

 

 

ショウはそう言いながら肩に手を回して来るチャーリーにハァ・・・と溜息をつきだすと、チャーリーもそれを了承したと見なしたのかヘヘっとニヤつきだす。

 

 

「まあ、ショウはそんなに深く考えず俺の良い所を言ってくれた良いって?」

 

 

「チャーリーの良い所って言われてもな・・・いつも見たいにナンパした方が早いんじゃない?」

 

 

テーブルに肘を付きながらそう提案して来るショウに今回はそう言うのじゃねえんだよ!とチャーリーが

真面目な顔して言って来るのでショウは普段とは違う様子のチャーリーに内心驚きながら仕方ないな・・・と答える。

 

 

 

「分かったよ。応援はするけど・・・いつもみたいにすぐに手を出してアメリアを怒らせたりしたらチャーリーもさっきの奴等みたいになるって事だけは肝に銘じててよ・・・?」

 

 

「わ・わーってるって・・・!?」

 

 

 

ショウは少し自信無さげな顔のチャーリーからの返事に少し不安を覚える・・・と言うのもチャーリーとは士官学校からの付き合いだが当時からとにかく女癖が悪くショウ自身もチャーリーの女性関係のトラブルに巻き込まれたのは一度や二度では無かったな・・・と思い返していると、ねえどうしたのショウ?と思案顔のまま固まっていたショウに不思議そうな様子でリンから首を傾げられてしまう。

 

 

 

「えっ!?いやちょっと・・・この困難なミッションをどうこなそうかと考えててさ・・・?」

 

 

 

「それって今の任務の事?忙しいのは分かるけど・・・食事の時くらいは忘れた方が良いわよ。」

 

 

 

そう言いながら空いたジョッキと入れ替える様にお代わりを置くリンにショウは気が利くね!と答えながら二っと笑みを浮かべていると、チャーリーってアメリアちゃんの事狙ってるの?とさっきの会話を聞かれていたのかカウンターの向こうから身を乗り出し来たリンから耳元で尋ねられる。

 

 

「う、うん・・・いつにも無く本気っぽいみたいなんだよね?」

 

 

「ふ~ん・・・そう言う事なら私も手助けしても良いけど、あの軽くて女ったらしのチャーリーが本気になるとか意外ね・・・」

 

 

 

ここカスケードで女性隊員にちょっかいを出すチャーリーのナンパ行為に迷惑をしていたリンが苦笑いを浮かべながら首を傾げるショウにそう答えていると、早速アメリアと談笑していたチャーリーからおいショウ!?と声を掛けたショウはリンと顔を見合せながら二っと笑みを浮かべると二人の会話に混ざり出す。

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

「けどさ、さっきのアメリアはマジで強かったぜ。まるで特殊部隊並の強さだったけど趣味で格闘技でもやってのか?」

 

 

「えっ!?ま・まあ・・身体を動かす事は嫌いじゃないですけどね?」

 

 

 

そう尋ねて来るチャーリーにアメリアがアハハ・・・と苦笑いしながら曖昧に答えてると、どんな運動が好きなんだ・・・?と耳元で囁かれたアメリアはチャーリーの言葉にへっ!?素っとん狂な声を上げながら顔をボッと赤くしていまうとお前なぁ!?と突然叫んだショウからチャーリーの頭を叩かれてしまう・・・

 

 

 

「何すんだよショウっ!?」

 

 

「それはコッチの台詞だって!言ってる傍から何やってんだよお前は?!」

 

 

「何ってあんなに強いんだからどんなトレーニングしてるか気になって聞いてただけだろうが!」

 

 

 

そう怒声を上げるチャーリーに、言い方が紛らわしいんだよお前は!とショウが怒り返していると、何だそう言う事か・・・と納得したアメリアは少し火照った頬を冷ます様にビールを飲み干しているとタイミング良くお代わりを置かれたリンから騒がしくてゴメンね?とアハハ・・・苦笑いを浮かべながら謝られてしまう・・・

 

 

 

「そんな事は有りませんよ?むしろ二人のやり取りを見ていると凄く楽しいです。」

 

 

そう言いながらアメリアがクスっと微笑みながら、どう言う意味だよっ!?と驚いた声を上げだすチャーリーを見るので、へえ・・・とその様子に目ざとく気付いてしまったリンは少し驚くとアメリアちゃんって彼氏とか居るの?とニヤニヤしながら尋ねだす。

 

 

「彼氏・・・ですか?悲しい事にこのガサツな性格の所為か一度も出来た事が有りませんけど・・・どうしたんです急にそんな事聞いて来て?」

 

 

「えっ意外ね・・・アメリアちゃんくらいの美人だったら言い寄って来る男なんて腐る程居たでしょうに!」

 

 

そう驚くリンにまあ・・・居ましたけどね?と答えたアメリアが急に声のトーンを落とすと、どうしたんだアイツ・・・?と言い合いしながらも二人の会話を聞いていたショウとチャーリーは目を合わせると取り合えず話を聞こうと自分達の椅子に座りだす。

 

 

 

~~~

 



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告白

「自分でも言うのもなんですが士官学校時代は結構モテましたし友達も多かったです・・・ただそれは最初の内だけで数か月もしたら今でも親友で有る一人を除いて皆離れて行ってしまいました。」

 

 

アメリアはそう言いながら実はボッチなんですよ?と自嘲気味にクスっと笑うと、何でまた?と尋ねた現在の上官で有るマリアが内心不思議に思いながら、特別素行に問題の無さそうなんだけど・・・と思いながら首を傾げると、ショウ達もそれに倣ってアメリアの方を見る。

 

 

 

「それはですね・・・私の生まれが宇宙『そら』だからなですよ?」

 

 

そう言いながら天井を指差すアメリアにショウ達がえっ・それって・・・!?と言った顔を上げると、そうです。とアメリアは少し困ったような顔でコクっと頷く。

 

 

 

「皆さんの思っている通りで、私は現在行われている戦争の発端でも有る嫌われ者のスペースノイドなんですよ・・・?」

 

 

「へえ・・・ホントにイヤだわ・・」

 

 

 

アメリアは飾る事も無くスパッとそう言い捨てて来るマリアにやっぱりそうすよね・・・と内心落ち込んでいると、生まれだけで差別するなんて本当に最低ね!とマリアが苦虫を噛み潰した様な顔で睨んで来るのでアメリアからマリア曹長!?と素っとん狂な声が響き渡る。

 

 

 

「いや、私はあのジオンと同じスペースノイドの生まれで、今までも・・・」

 

 

「だから最低だって言ってんのよ・・・それって要はイジメじゃない?私ってそういうコソコソした嫌がらせってマジで大っ嫌い!!」

 

 

そう言いながら怒声を上げるマリアに、マリア曹長・・・とアメリアが驚いた顔で呟くと、マリアの言う通りだぜ・・・と低い声を出したチャーリーからも怒り心頭と言った顔で言って来るのでアメリアはキョトンとしながら全員を見渡しだす・・・

 

 

「本当に不思議な方々ですね・・・もし私がジオンのスパイとかだったらどうするんです?」

 

 

「あん?そん時は俺が強引にでもお前を口説いて惚れさせた上で懐柔してやるから覚悟しとけ!」

 

 

 

冗談ぽくも聞こえるが、真面目な顔でそう睨んで来るチャーリーに対し内心ドキっとしたアメリアが、絶対に口説かれませんしっ!?と少しドギマギしながら答えていると、そんな事させないわよ!とマリアからも抗議の声が聞こえて来る。

 

 

「アンタみたいな節操無しに口説かれるアメリアじゃ無いんだからね!」

 

 

「う・うるせえぞマリア!?お前はアメリアの母親かよ!!」

 

 

マリアに対し少し狼狽えながらチャーリーがそうツッコんでいると、そうなんですか・・・?とアメリアはムゥと頬を膨らませながらジトっと目で睨みだす。

 

 

「そうよアメリア?こいつはトリントン基地でも有名な女ったらしのチャーリーって有名で沢山の女性隊員達が被害に有って来たんだから有って来たんだから!」

 

 

「ちょっと待てってマリア!?確かにそんな時期も有ったけど今は・・・」

 

 

そう言い掛けるチャーリーに今は何ですか・・・?とアメリアが全く目の笑って無い顔でニコっと微笑んで来るのでチャーリーからおいショウ・・・と助け船を要求されるのでショウはククっと笑いだす。

 

 

「まあ、確かにチャーリーってチャラチャラして軽そうに見えるけど・・・一度コレって決めたら絶対に諦めない奴だよ?」

 

 

「成程・・・と言う事は数ある女性と遊んで来たチャーリーが今度は私を狙って来たと言う事で良いんですか?」

 

 

 

ビールジョッキを片手に尋ねるアメリアにそれは語弊が有るぜ・・・と言いながらチャーリーは苦笑いを浮かべると、ショウが頑張れチャーリーと心の中で応援し始める。

 

 

 

「男だったら興味の有る女性が居たら声を掛けたくなるだろう?」

 

 

 

チャーリーの開き直った様な言い訳にアメリアが少し腑に落ちない顔でまあ・・・そうですが?と答える中、隣で会話を聞いてたショウはテーブルに突いていた肘をズルっと滑らせながら自ら墓穴掘ってるし!?と内心ツッコみながらハァ・・・と溜息をつきだす。

 

 

 

「あの・・・結局の所チャーリーは私の事をどうしたいんですか?」

 

 

 

そう言いながら首を傾げるアメリアにチャーリーが色々したいけど?とニヤつきだすとショウはおい!と注意する様にコホンと咳払いすると、アメリアからへえ・・・?と低い声が返って来る。

 

 

「いや、違うぜアメリア!?その・・・色々って言うのはお前の事が気になってるから知りたいって言う意味で・・・?」

 

 

 

「ふ~ん気になるですか・・・私もそうですよ?」

 

 

 

そう答えながら少し意地悪くニコっと笑みを浮かるアメリアに、えっマジ!?と驚いた顔のチャーリーが声を上げると同時にショウもマジで!?と内心驚いた声を上げていると、なんて顔してるんですか?と言ったアメリアからクスクスと笑われてしまう。

 

 

 

 

「まあ・・・さっき私を助けようとしてくれた所だけは格好良かったですよチャーリー?」

 

 

 

「だけって・・・もうちょっと褒めろよな!」

 

 

そう声を上げたチャーリーがガクっと項垂れているのを見たショウは二人の様子を見ながら中々良い感じじゃない?とリンに小さく声を掛けると、あっゴメン・・・とハッとした顔でリンから返事が返って来る。

 

 

「珍しいね・・・リンがボーッとしてるなんてさ?」

 

 

「う、うんちょっとね・・・」

 

 

少し驚いた様子で聞いて来るショウに少し歯切れの悪い言い方をリンはそう答えると、アメリアちゃんがスペースノイドか・・・と内心呟きながらハァと溜息をつくので有った。




どれだけの方が楽しみにしているか分かりませんが、更新が滞ってしまい申し訳ありませんでした。元々この作品はエブリスタで書いていたのですが・・・どうせハーメルンに載せるのならと前半部分を思い切ってかなり書き直しています。

それに加えてエブリスタの方で別作品を書いているのでかなり亀進行となっていますので、早く続きを書けと思っている数少ない読者の皆さんには申し訳有りませんがこのペースでお付き合い頂ければと思います。


                              ヨッシー♪


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二人の気持ち
疑惑


「それではご馳走様でしたリンさん。」

 

 

リンの作った料理を楽しんだアメリアがそう言いながらニコっと笑みを浮かべて来ると、うん、またね?と答えたリンもフフッと笑い返しながら、所でホントに良いのアメリアちゃん?と完全に酔っぱらってしまいアメリアの肩に担がれているチャーリーを見ながら首を傾げ出す・・・

 

 

「らいじょうーぶだぜぇ~?」

 

 

「うん、これは完全にダメね・・・」

 

 

完全に呂律が回って無い様子のチャーリーにリンは呆れた顔でそう答えると、ハハハ・・・とアメリアの苦笑いが聞こえて来る。

 

 

 

「すみません・・・ちょっと私のお酒に付き合わせ過ぎちゃったみたいですね?」

 

 

 

「そんなに気にする事必要は無いわよ・・・どうせそのバカがアメリアを酔わそうとして自爆しただけだろうしね。」

 

 

大分まばらとなった店内の中でカウンター席に座ったマリアからそんな呆れた声が聞こえて来ると、間違い無いな?とショウとチャーリーの隊長で有るイエーガー=バウスネルン中尉もククッとアメリアの方を見ながらククっと笑いだす。

 

 

「そんなに信用が無いんですねチャーリーは・・・何か送って行くのが不安になって来ました。」

 

 

「まあ・・・もしそのバカが何かした時は腕の一本や二本折っても構わんからな?」

 

 

 

そう物騒な事を言いながら俺が許可すると続けるイエーガーに私も擁護して上げるからね?アメリアの上官で有るマリアまでも面白そうな顔でニヤつき出すのでアメリアから二人して何を言ってるんですか・・・?と溜息交じりの声が返って来る。

 

 

「取り合えず手間賃としてここの支払いはしといてやるからそのバカの事を頼むぞ?」

 

 

「えっ・・・それは悪いですよバウスネルン中尉!?」

 

 

「悪いと思っているのが俺の方だぞウォーカー軍曹、本当なら俺がチャーリーを連れて帰るべき何だが・・・俺も隣で寝ているソイツの相棒の面倒を見ないといけなくなったからな。」

 

 

イエーガーがそう説明しながら二っと笑みを浮かべると、チャーリー同様にカウンターに突っ伏して寝ている黒髪の青年で親指で指すので、アメリアはその更に隣から上官の言う事は絶対だからね?と冗談っぽく言って来るマリアの声を聞きながら、渋々了解・・・と返事をするので有った。

 

 

 

~~~

 

 

 

 

「それではバウスネルン中尉にマリア曹長、私はこの辺りで失礼致しますね?」

 

 

 

 

 

そう言いながら敬礼をするアメリアに二っと笑みを浮かべたイエーガーとマリアからまた明日?と言う様に手が上がると、じゃあねアメリアちゃん?とリンが肩にチャーリー担いだアメリアを見送る為にカウンターの中から出て来る。

 

 

 

「ハイ、また寄らせて頂きますねリンさん♪」

 

 

 

そう言いながら満面の笑顔を向けて来るアメリアに、う、うん・・・と答えたリンはぞの顔をジッと見つめながら固まっていると、アメリアからどうかしたんですか?と不思議そうな顔をされてしまう・・・

 

 

「あ、ゴメンゴメン・・・ちょっとボーッとしちゃってね!?」

 

 

 

「大丈夫ですか?疲れているんなら早めに休んで下さいよ!」

 

 

 

 

そう心配して来るアメリアに対しリンが平気だから!と急に声を上げるので、リンさん?とアメリアから驚いた声が上がると同時に内心しまった・・・と後悔したリンは笑みを必死に笑みを作り出す。

 

 

 

「アハハ・・・ゴメンねアメリアちゃん?どうも今日の私は本当に疲れているみたいだね。」

 

 

「どうもそうみたいですね?顔も何だか強張っている様に見えますし・・・今日は早く店を閉めた方が良いと思います。」

 

 

 

そう指摘して来るアメリアの妙な鋭さにリンがそうするわ・・・と答えると、それではリンさんおやすみなさい♪と一度満面の笑みを浮かべるアメリアにおやすみ・・・と鳥足のチャーリーを肩に担いだアメリアを見送りながらリンは手を振るとハァ・・・と盛大に溜息をつきだす。

 

 

「上手く笑えてなかったかな・・・」

 

 

 

そう言いながら店の中に戻ったリンが自己嫌悪に陥っていると、アメリアが何かしたの?とマリアから少し驚いた様子で尋ねられる。

 

 

 

「いいえ・・・どっちかと言うと何かしたのは私ね?」

 

 

「何それ?アンタがそんな顔すんの珍しいわね・・・」

 

 

 

「・・・私だってそう言う気分になる事も有るの!」

 

 

 

そう言いながら残っていたビールを一気に煽りだすリンにそう言う風に飲むのも珍しいな?とイエーガーも不思議そうな顔でツッコんでいると、リンから五月蠅いわよ!と機嫌の悪そうな声が返って来る。

 

 

 

「しかし変ね?いつもより飲んで無かったのにショウがこんなに酔いつぶれちゃうなんて・・・」

 

 

「今日は大変だったからなコイツ・・・?」

 

 

リンはもう一杯ビールを継ぎながら・・・危険な任務なの?と首を傾げながら煙草に火を点けようとしているイエーガーに聞くと、何だ知っているのか・・・?とイエーガーが少し驚いた顔になる。

 

 

「今、コイツ・・・新型の試作機のテスパイをやっててな?今日もちょっと危なかったんだよ」

 

 

「そうそう!アメリアの咄嗟の指示が無かったら今頃ここに居なかったわね・・・」

 

 

リンはマリアからの衝撃的な発言にえっそうなの・・・!?と焦った声を上げると、そっかぁ・・・と目の前で気持ち良さそうに寝ているショウの黒髪を優し気に撫でながらアメリアの事を思うと再び溜息をついてしまう・・・

 

 

 

「おいおい・・・酔ってるのかリン?」

 

 

「え、何でイエーガー中尉・・・?」

 

 

急に呆れた声を上げるイエーガーにリンがキョトンした顔で首を傾げだすと、その手その手・・・とマリアから指摘されるとリンはハッとしながらショウの頭から慌て手を上げだす。

 

 

「いや・・・そのね、ショウの頭にゴミが付いていたから?」

 

 

「そうね。分かったから変に誤魔化さなくても良いって・・・」

 

 

生暖かい目でそうツッコんで来るマリアに恥かしそうな顔でリンがうぅ~と唸っていると、イエーガーから変と言えば・・・?と煙草を咥えながら首を傾げられる。

 

 

 

「なあマリア・・・さっき言っていたアメリアの話なんだが、アイツって士官学校に居たんだよな・・・

 

何で階級が軍曹なのか知っているか?」

 

 

 

「いやそれがさ・・・私も配属されるって聞いた時にアメリアの履歴を確認したんだけど、ジャブローに居たって事しか記録されて無くてね・・・どこの部隊からの転属とか一切不明なのよ・・・?」

 

 

 

そう言いながら腕を組みだすマリアにイエーガーが何だそりゃ・・・?と首を傾げだすと、アメリアちゃんって不思議な子ね・・・と呟いたリンは仲良くなれるかな・・・?と内心不安になりながら注いだばかりのビールを口に含みだす・・・。

 

 

~~~

 




ハイ、ヨッシー♪です。


ハーメルンに引っ越しして来てから約二か月程経ちましたが、亀更新ながらも意外と読まれている様子に僕もほっこりしている所です。


因みにガンダム作品の癖に今の所MSの陰も出て来ねえじゃん!と思っている人も居るかもしれませんが、出て来るのはまだまだ先なのでもうしばらくお持ちください(笑)


                              ヨッシー♪


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リンの気持ち

それなりの時間と言う事も有り店内の客もまばらになると、リンはじゃあまたね?と店から出て行く客を見送ると、まだ良いの?と店に掛かっている時計を見ながらイエーガーと談笑しながら飲んでいるマリアに首を傾げると、あっ!と自分の腕時計見たマリアが慌てて帰り支度をし始める。

 

 

「もうこんな時間なんだ・・・悪いけどそろそろ帰るわねリン!」

 

 

「うん、早くママが帰って上げないと息子ちゃんが拗ねちゃうからね?」

 

 

そう揶揄う様にフフッと笑ったリンが首を少し傾げると、五月蠅いわね・・・と答えたマリアからも二っと笑みが浮かび上がる。

 

 

「久々だったけどリンと飲めて本当に楽しかった。また時間を作って寄るわね?」

 

 

「ええ、いつでも良いから前みたいに気軽に寄ってよねマリア?」

 

 

 

そう言いながら立ち上がったマリアをリンが見送る為にドアに手を掛けようとすると、慌ててウィスキーの入ったロックグラスを飲み干したイエーガーからちょっと待てマリア!と呼び止める声が聞こえ出す。

 

 

「何よそんなに慌てちゃって?」

 

 

「いや、外は暗いし俺が宿舎まで送って行く・・・」

 

 

そう言いながら立ち上がるイエーガーにマリアが別に良いって!?と遠慮する様に両手をヒラヒラと振り出すが、ダメだ。と声を上げたイエーガーも問答無用と言った顔で食い下がって来る。

 

 

「ちょっとリン・・・送り狼なんていらないってアンタからも言ってよ!」

 

 

「誰がお前何か襲うか!?流石の俺にだって好みって言うのが有るんだからな・・・」

 

 

 

基本的に紳士な事を知っているイエーガーに対し何も心配をして無いリンはまあまあ二人共・・・と宥めていると、それはそうとショウの事をどうすんよ?とマリアから尋ねられるとイエーガーがそうだった・・・と言いながら困った顔になる。

 

 

「ショウの事なら私が面倒見るから大丈夫。流石に閉店までには起きると思うしね・・?」

 

 

 

イエーガーに答えながら首を傾げるリンにふ~ん・・・?と何故かマリアがニヤニヤとして来るのでリンは何よその顔!?と少し慌て出す・・・

 

 

 

「いや別に・・・まあ、アンタがそう言うんなら任すわ?」

 

 

 

「ちょっ・・・違うからね!?」

 

 

 

リンはそう意味有り気な事言いながら店から出て行こうとするマリアに抗議の声を上げると、どう言う意味だ・・・?とイエーガーがキョトンとした顔で首を傾げて来る。

 

 

 

「イエーガー中尉には関係無いって!?良いからマリアの事を頼むわね!!」

 

 

 

「分かった分かった!?それと・・・ショウが起きたら明日は非番だって伝えて置いてくれないかリン、テスト機の修理に明日一杯は掛かるってな?」

 

 

 

顔を真っ赤にしながら背中を押して来るリンにショウへの伝言を頼んだイエーガーがcascade(カスケード)の扉から押し出されると、腰に手を射置いたリンからマリアを頼むわね!と何故か不機嫌そうな声が聞こえて来る。

 

 

「あ、ああ・・・じゃあショウにはゆっくり休む様に伝えてくれ?」

 

 

「うん、分かった。」

 

 

そう短く答えるリンに不思議そうな顔でイエーガーがそれじゃあ行くか?とマリアの方を見ると、また今度話を聞くね♪と妙に上機嫌なマリアにイエーガーから酔ってるのか?心配されると、早くソイツを連れて帰って!とリンはシッシ!と犬を追い払う様に手を振り出す・・・

 

 

~~~

 

 

 

「まったく・・・そんなつもりじゃないって言うのにマリアの奴ったら!」

 

 

イエーガーとマリアの二人を見送ったリンはそう独り言ちながら溜息をついていると、今日も美味しかったよリン!と最後の団体客がタイミング良く立ち上がる。

 

 

「今日はこれでお終いかな・・・」

 

 

先程の団体客を見送ったリンは店の扉に掛けていた札をclose(閉店)に変えると、どうしよう・・・

と呟きながらいよいよと二人きりとなった店内に緊張してしまう・・・

 

 

「起こした方が良いのかな・・・けど、店を閉めてたら起きるかも知れないし・・・」

 

 

 

一人でブツブツと右往左往していたリンが取り合えず寝かせて置こうと考えを纏めて店の後片付けを行ったのだが、それから数十分後店を完全に占めたリンは全然起きないし・・・と思っていた以上に深い眠りについている様子のショウにハァ・・・と溜息をつきだす。

 

 

「こうなったら仕方ないか・・・明日は非番って言ってたし一日くらいなら外泊しても良いよね?」

 

 

そう自分に言い聞かせるようにリンがショウの右手を掴みながら肩に担ぐと、う~ん・・・とショウから寝言が聞こえて来る。

 

 

「起きたのショウ!少しだけ歩けない?」

 

 

「う、うん・・・分かったリン・・・」

 

 

 

寝ぼけながらもそう答えるショウにリンがじゃあ行くわよ?と声を掛けながらゆっくりと螺旋

状の階段に足を掛けながら自分の部屋と滅多に使う事の無い客室が有る二階へと上がるとリンは再び土どうしよう・・・と困り出す。

 

 

「自分の部屋にはベッドが一つしか無いし・・・ましてや客室なんてここ一年は入ってないから多分埃まみれの筈・・」

 

 

そこに寝かすには流石に申し訳無いと考えたリンが仕方なく自分の部屋へショウを運ぶと、もうちょっと頑張って?と再び眠さで動き鈍くなり出すショウをどうにか自分のベッドに寝かせる事に成功したのだが・・・そのままもつれてショウの胸に飛び込む姿勢となったリンはうわっ!?と変な声を上げながら顔を真っ赤にしてしまう・・・

 

 

「うぅ・・・これじゃあマリアの思った通りのシチュエーションじゃない・・・」

 

 

まるで下心が有って自分の部屋に連れ込んでしまった様な状況にリンはハァ・・・と溜息をつきながらベッドの上に寝ているショウのお腹に跨ると、ショウが悪いんだからね?と小さく呟くとそのまま抱きつくようにその頬へチュッと口づけるので有った。




こんばんはヨッシーです♪

更新が遅れて申し訳ありません・・・最近妙に残業が多く、エブリスタの連載で手一杯の状況が続いてます。

もう少しページが進めば修正も減ると思うのでコンスタンスに掲載が出来ると思うので暫くお付き合いください!     


                          ヨッシー♪


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遅く起きた朝は・・・

「知らない天井だ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

目を覚ますと同時に違和感を感じたショウはそう呟きながら自分重い頭を擦ると、ここはどこだろう・・・?と周囲を見渡しだす。

 

 

 

 

 

「確か昨日リンの店で皆と飲んでた筈なんだけど・・・その後どうしたんだっけ・・・?」

 

 

 

 

 

酒の抜けきって無い頭でショウがそう必死に考えながら右手で頭を掻こうとした瞬間やたら重たい事に気付きギョッとした顔になる・・・

 

 

 

 

 

「隣で誰か寝てる!?しかも僕の腕の上で・・・」

 

 

 

 

 

頭の上まで深くすっぽりと布団を被った人物にショウがそう焦った声を上げるとうん・・・もう少し寝かせてよ・・・と艶っぽい女性の声と共に柔らかい物体の感触が自分の身体に感じ出すと、その声ってひょっとして・・・と思いながらショウは少しだけ見える綺麗な黒髪が覗く布団をドキドキしながら捲り出すとショウの身体を抱き枕の様にしてスヤスヤと寝息を立てているリンの姿を見つけてしまう・・・

 

 

 

 

 

 

 

「嘘だろ・・・何でリンが同じベッドに・・・?ひょっとしてまさか僕ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

そう声を上げたショウが恐る恐る自分の下半身を見ると、良かったパンツは履いてるなと思いながら安堵していると、五月蠅いわねさっきから・・・と流石に起きたのか眠たそうに目を擦るリンから抗議する声が聞こえて来る。

 

 

 

 

 

「えっと・・・おはよリ、リン・・・?」

 

 

 

 

 

「おはよショウ・・・って何でショウが私のベッドに居るの!?」

 

 

 

 

 

そう驚いた声を上げながら跳び起きるリンにショウも僕も何が何やら・・・?と答えながら困ったかを見せると、あっ・・・そうだったわ!と昨日の事を思い出したリンが申し訳無さそうな顔でポンと手を置き出す・・・

 

 

 

 

 

「ゴメンゴメン・・・昨日酔いつぶれたショウを取り合えずここまで運んだけどね。この寒さじゃ床だと凍えそうだから一つしかしない私のベッドで一緒に寝たんだけど・・・」

 

 

 

 

 

「そ、そうなんだ・・・けど良かったよ?僕が変な気を起こしてリンを襲ったりして無くてさ?」

 

 

 

 

 

そう答えながらアハハ・・・と苦笑いを浮かべるショウにそうだね・・・とリンも少しバツの悪そうなになると、えっ!こんな時間!?とショウが自分の腕時計を見ながら慌てた声を上げだす。

 

 

 

 

 

 

 

「不味い・・・既に大遅刻じゃないかよ!?」

 

 

 

 

 

「ああショウ・・・それなら大丈夫よ?イエーガー中尉が昨日帰る前に試作機のエンジンがダメだから身体を休めとけ!って言ってたし・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう説明するリンに、って事は今日は非番か・・・?と呟いたショウがそのままポスっとベッドに身を任せると、そうみたいだね?とニコっと微笑んだリンも同じように寝ころぶと何故か身体をくっつけて来る・・・

 

 

 

 

 

 

 

「あのさリン・・・起きたんならそろそろ離れて貰えると助かるんだけど・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

「今更別に良いじゃない?朝からこんなに冷え込んでるんだし・・・このままもうちょっと寝かせてよ?ショウににくっ付いてるとなんか暖かいし・・・」

 

 

 

 

 

そう言いながらリンが再びスヤスヤと寝息を立てだすのでショウはハァ・・と溜息をつきだす。

 

 

 

 

 

 

 

「これじゃあ生殺しだって・・・」

 

 

 

 

 

そう独り言ちたショウが自分の胸に擦りつける様に眠りこくリンの綺麗な黒髪を撫でながらその欲望との戦い事となるのは必然で、僕も寝てしまおう・・・とショウも目を瞑り出すとやはり疲れていたのか次第に睡魔に襲われてしまうのであった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえショウもうお昼前よ?そろそろ起きなさいって!」

 

 

 

 

 

 

 

そう近くで叫んで来るリンの声にショウは何だか久々に良く寝た気がするな・・・と思いながら目を覚ますと、トントンと何やら切る音が聞こえが目を開けると、台所に立っていたリンがこちらを振りむくとニコっと微笑む。

 

 

 

 

 

「あっショウ起きた?」

 

 

 

 

 

「う、うん・・・改めておはようリン・・・」

 

 

 

 

 

いつの間のか先に起きたらしいリンの少しラフな私服姿にショウが内心ドギマギしながらそう答えていると、おはようショウ♪と満面の笑みを浮かべたリンが隣に有るローテーブルに目玉焼きとカリカリのベーコンとコンソメスープを乗せて来る。

 

 

 

 

 

 

 

「シャワーは後で良いショウ?あんまり気持ち良さそうに寝てたから先に朝ご飯作っちゃった・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「う、うん・・・って言うか、こんなちゃんとした朝ごはん食べるの久しぶりなんだけど!?」

 

 

 

 

 

 

 

そうテンション上げるショウにリンが良かった・・・と誰にも聞こえない様にホッとしながらローテーブルに向かって座り出すと、アジア系らしく胡坐を組みながら手を合わせたショウからうわぁ美味しそう!?と驚いた声が上がり出す・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフッ・・・お代わりは有るから沢山食べてね?」

 

 

 

 

 

 

 

「有難うリン!それじゃあ頂きます。」

 

 

 

 

 

 

 

そう微笑んで来るリンにショウは普段通っているPX売店に並んでいるサンドウィッチやおにぎりとは比べ物にならない程のローテーブルに並ぶおかずの数々にご飯を口に運ぶのが止まらなくなってしまう。




ハイ、ヨッシーです。

先日、閃光のハサウェイを見て来ましたが皆さんはどうでしたでしょうか?大分前のUCの辺りからMSの戦闘シーンには驚いていた僕ですが、流石は最新作の劇場版でした。


余りここで書くとネタバレしそうなので控えますが・・・僕としては型落ちとしてジェガンがちょっとだけ出て来た事が少し嬉しかったです♪



追伸


因みに作品に関しては特に書く事も無いので更新を待って居る方は楽しみながらニヤニヤして頂けると嬉しいです。



                             ヨッシー♪


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束の間休日 その1

リンの作った朝ご飯をペロリと食べ終えたショウはごちそう様!と満面の笑みを浮かべながら手を合わせると、お粗末様でした♪とリンもその顔を見ながらクスクスと楽しそうに笑いだす。

 

 

 

 

 

「所でさショウ?今日は休みなんでしょう・・・ちょっと買い出し付き合ってくれないかな・・・」

 

 

 

「いいよ別に?急な休みで予定何か無いし・・・」

 

 

 

そう答えながら首を傾げるショウにじゃあ決まりね!と妙に上機嫌となった顔のリンがガタっと立ち上がるのでう、うん・・・と面喰いながらも答えたショウは内心良し・・・!とガッツポーズを取る。

 

 

 

「けど僕なんかで良いの・・・リンが頼めば基地に居る暇な奴等がいくらでも手伝いに来ると思うけど?」

 

 

 

「ホントショウって鈍感よね・・・」

 

 

 

そう言いながらテーブルに肘を付いたリンが呆れた顔になるとショウはへっ・・・?と素っとん狂な上げる。

 

 

 

「今何言ったのリン?」

 

 

 

「何も言って無い・・・取り合えずシャワー浴びてきたら?私は出る準備をしておくから!」

 

 

 

そう言いながら急に機嫌を悪くするリンにショウが良く分かんないな女って・・・?首を傾げながらシャワーを借りる為に浴室へと向かい出すとリンからタオルとかは適当に使ってね?と声が聞こえる中ショウはハッとしてしまう・・・

 

 

 

「さっきまでリンも使ってたんだよね・・・?」

 

 

 

 

 

そう独り言ちながらショウは頭に浮かんだ妄想を打ち消す様に冷たいシャワーを浴びて頭を冷やすのであった・・・

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

「フゥサッパリした・・・所でリンはどこだろう?」

 

 

 

リンに言われた通り浴室に有ったタオルで頭を拭きながら部屋に戻ったショウはキョロキョロしながらリンの姿を探すと下の方でキュルキュル・・・と聞こえる音にガレージかな?と思い一階の店舗へ降りると、アレ・・・おかしいな!?と焦る声を上げるリンの声が聞こえて来る。

 

 

 

「どうかしたのリン?」

 

 

 

「あ、ショウ・・・実はウチに有るトラックのエンジンが掛からなくて困ってるのよ・・・」

 

 

 

 

 

そう言いながら困った様に腕を組むリンにちょっと見て良い?と尋ねたショウが運転席に乗り込むと、任せたわ・・・とリンから溜息交じりの声が返って来る。

 

 

 

「それじゃあ掛けるね?」

 

 

 

そう声を上げたショウがキーを捻るとキュルキュルとセルが回るだけの音しかしないで回れって・・・と思いながらアクセルペダルを何度か踏み込むとエンジンがブルン!と音を立てながら掛かり出す。

 

 

 

 

 

「凄い掛かったわ!」

 

 

 

「いや・・・掛かるには掛かったけど、これで買い出しは無理だよリン?」

 

 

 

 

 

そう言いながらショウがアクセルを戻すたびにガタつくエンジンを切ると、そうなの・・・?とリンから急に落胆する声が聞こえて来る。

 

 

 

 

 

「リン・・これ最後にメンテしたのはいつ?」

 

 

 

 

 

「ゴメン・・・私の両親がここに残していたのを使ってたから・・・もう駄目かな?」

 

 

 

 

 

「ダメじゃ無いけど・・・流石に僕じゃこの場での修理は無理だね・・・」

 

 

 

 

 

リンにそう答えながら明らかに数年は開けた様子の無いエンジンルームを見たショウがお手上げのポーズを取ると腰に手を当てたリンから困ったな・・・と言う声が聞こえて来る。

 

 

 

 

 

「トラックが無いと買い出しに行けない無いし・・・このままじゃ店も開けられないじゃない!」

 

 

 

「それはトリントン基地の士気に関わる大問題だね・・・?」

 

 

 

 

 

ショウは仕方ないな・・・と自分自身に向かって頷くと、腕を組んだまま不安そうなリンにゴメンと言いながら両手を合わせる。

 

 

 

 

 

「ゴメンリン、ちょっと時間くれない?コイツの修理と代車を用意するから・・・」

 

 

 

「それは良いけどこの近くに車の修理工場有ったかしら?」

 

 

 

 

 

そう言いながら首を傾げるリンにショウは取って置きな所が有るんだ?とリンに向かってニッと親指を立てると、へえ・・・そうなんだ?と答えたリンが不思議そうな顔になる。

 

 

 

「それじゃあ、ちょっとこのトラック借りるね?」

 

 

 

「う、うん・・・取り合えず店の掃除でもして待ってるからショウに任せるわ。」

 

 

 

自分ではどうしようも出来ない為にリンがそう言いながら手をヒラヒラさせると、じゃあまた後でね?とニッと笑みを浮かべたショウはトラックのエンジンを掛けながらアクセルを吹かすと、ジャジャっと砂埃り起こす様にクラッチを繋いで急発進させるとリンからゴホッゴホッと咳き込む様にむせだす・・・

 

 

 

 

 

「まったくもう・・・掃除するって言ったのに何で散らかすかなっ!?」

 

 

 

 

 

そう抗議の声を上げたリンは腰に手を置きながらハァ・・・と溜息をつくと砂だらけになった店の玄関口を掃こうと店の中に箒と塵取りを取りに入るので有った。

 

 

 

 

 

 

 

~~~




はい・・・取り合えずその1と言う事でこんな感じなのが暫く続きますので暫くお付き合いくださいませ♪


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束の間休日その2

 

リンのトラックを修理する為にショウはその当てが居る所へ行くためにトリントン基地のゲートの前で停車すると待機所の小屋からあれ・・・少尉じゃないですか?と警備担当の上等兵が不思議そうな顔で出て来る。

 

「どうしたんですかいそのポンコツは?」

 

「いやちょっと訳ありでね。取り合えず中に入りたいんだけど良いかな・・」

 

そう困った顔をするショウにハァと答えながら上等兵がゲート開けてくれるとショウは有難うとお礼を言いながらエンストしたトラックのエンジンを再始動させると目的地で有るハンガーへと向かい出す。

 

 

「おやっさ~ん居る!」

 

 

自分のテスト機でコアブースターの修理を行っている筈のハンガーの前でトラックを停車させたショウがそう叫ぶと、何だ五月蠅ぇな・・・とそのコアブースターの機体下部から相変わらず不機嫌な声が返って来るので慌てたショウはすみません・・・と取り合えず謝ってしまう・・・

 

「別に怒ってねえよ・・・って何だぁ坊主!?またえらくビンテージな車に乗ってんな・・・?」

 

「ま、まあ・・・僕のじゃ無くてリンの所に有ったトラック何ですが、どうも調子が悪くて診て貰えないかと思って・・・」

 

そう頭を下げるショウに親父さんの使っていた奴か・・・とホワイトが腕を組みだすとショウはへっ?と素っとん狂な声を上げながら顔を上げだす。

 

 

「良し分かった。こんな古いのは俺しか見れんからな・・・ちょっと時間が掛かるから俺の使ってろ?」

 

そう自分のクルマのキーを投げて来るホワイトに向かってコアブースターのコクピットの中でキーボードを繋ぎながらOSの再調整を行ってた眼鏡姿の男性整備兵から苦情の声が聞こえて来る。

 

「明朝には仕上げろって指令から言われたっすよね!?」

 

「五月蠅ぇぞシゲッ!!良いからソッチが終わったらエンジンの方を代われってんだ!?」

 

そう理不尽な怒られた方をされたシゲことシバ=シゲオ曹長がへえへえ・・・と答えながら手をヒラヒラさせるとフン!と鼻を鳴らしたホワイトがリンのトラックのボンネットを開けてエンジンに状態を調べ始めるとショウはあの・・・と不安気に首を傾げる。

 

「そんなに心配すんや坊主・・・ああ見えても奴の腕の腕は俺が保証するから・・・ってコイツはヒデえな・・・?」

 

「整備云々は心配してませんが、余り無茶なセッティングにしない様シゲさんに良く言って置いて下さいね?前に酷い目に有ったんで・・・」

 

そう頭を掻きながら困った顔するショウに分かった分かったとホワイトが掛けていたサングラスの位置を直しながらククっと笑いだす。

 

 

「ちゃんと見といてやるから・・・それとコイツは今日一杯は掛かるからまた明日にでも取り来い。」

 

「あ、はい・・・有難うございますおやっさん。それじゃトラックをお借りしますね?」

 

 

そうペコっと頭を下げるショウに気を付けろよ!とホワイトが注意する様に二っと笑みを浮かべると、ホントにあの少尉の事気に入ってますね・・・?とシゲと呼ばれた整備兵がホワイトのトラックの有る方へと走って行くショウを見ながら首を傾げて来る。

 

「そうか・・・?まあ、俺のイジッた機体に文句つけずに乗りこなしてんだからな・・・気に入らない筈が無いだろう?」

 

「そうなんすかね?俺っちも似た様なセッティングなんだけどカノウちゃんにはどうも不評なんだよな・・・」

 

そうボヤキながらスパナで肩を叩くシゲにこういういい加減な所だろうな・・・と思ったホワイトがハァ・・・と溜息をつきながら作業を再開すると、何で俺の顔を見ながら溜息なんかつくんすかぁおやっさん?とシゲの不思議そうな声がハンガー内に空しく響くので有った・・・

 

 

 

~~~

 

 

基地からリンの店へ戻る途中ショウはアクセルを踏み込みながらへえコイツは良いや♪と上機嫌な声を上げるとギヤを上げながら更にトラックを加速させる。

 

 

「流石はおやっさんのトラックだな・・・結構パワー出てるしアクセルのツキ(・・)が凄いや・・・」

 

そうしていたショウが町の中に入り段々と速度落とし始めると、そう言えば女の人と二人っきりで出かけるのって随分久しぶりだよなぁ・・・と思いながら緊張し始めているとその相手が居るCASCADEと看板が掛かったパブが見えて来る・・・

 

「しかもあのリンと二人っきりとか大丈夫かな僕・・・?」

 

そう独り言ちながら小さく溜息をついたショウは右足と左足を器用に使いヒール&トゥで減速をしながら小さなパブの前に停車すると、ボボボっと重低音鳴らすクルマの排気音に何事なのっ!?とリンが慌てて店から飛び出て来る。

 

 

「ゴメンリン、お待たせ!」

 

 

「いやお待たせって・・・それは良いんだけどさ?またえらく喧しいクルマで帰って来たわね・・・」

 

 

そう呆れた顔でリンがホワイトから借りたトラックを物珍しい顔で観察していると、おやっさんから借りて来たんだ?と運転席から顔出すショウはどこか嬉しそうな顔で二っと笑みを浮かべ出す。

 

 

 

 

「おやっさんって、まさか・・・ホワイトさんに修理出したの!?」

 

 

「そうだよ?そう言えばおやっさんがリンの親父さんがって言ってたけど・・・」

 

 

そう首を傾げるショウにそう・・と急に暗い顔したリンが俯くとショウはあれ・・・どうかしたのリン!?と慌て出す。

 

「あ、ゴメンゴメン・・・取り合えず行こっか?もうお昼前だし急がないとね!」

 

「う、うん・・・じゃあ行くよリン?シートベルト着けてね・・・」

 

そう同時にアクセルを煽りつつクラッチをパッと離したショウがトラックの後輪が砂煙を上げながらトラックを急発進させると、キャア!?とシートベルトを付けたばかりの助手席のリンから悲鳴が上がりながらもう!と抗議の声が上がり出す。

 

「今何か言ったリン?」

 

「言ったわよバカ!折角掃除したしたのにまた砂だらけにして・・・!!」

 

そうムゥっと頬膨らませて来るリンに帰ったら掃除するって・・・とショウが苦笑いを浮かべると、絶対だからね!とリンから返事が返って来ると、そのままドアに肘を付いて外を見だす彼女にショウは失敗したな・・・と思いながらトラックを走らせる。

 




まだまだ続きます。そろそろ戦闘シーンを書きたいのですがまだまだです・・・それどころかMSが出て来るのも大分先なので、早く続きを書けよ!と思う方も居るかと思いますが少々お待ちくださいませ。


                                ヨッシー☆


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束の間休日 その3


【挿絵表示】


昔バージョンのリンです。


 「所でさリン・・・どこに向かって走れば良いのか聞いて無いんだけど?」

 

 

 

 

 

トラックを走らせ始めてから約10分・・・そう首を傾げるショウに、そう言えば言って無かったっけ・・・とずっと無言のまま窓の窓の外を見ていたリンが思案顔のままコッチを見て来ると、ショウは心配な顔で大丈夫とチラッとリンの横顔を見る。

 

 

 

 

 

「ゴメンゴメン・・・ちょっと考え事してたらボーッとしちゃったみたい・・・取り合えずこのまま海岸線に出て中立地帯にある市場の有る町へ行ってくれるかしら?」

 

 

 

「うん分かった。・・・って中立地帯だって!?」

 

 

 

そう驚くショウにそれがどうかしたの?とリンがキョトンとした顔で首を傾げると、いやいや僕の服装見てよ・・・と困った顔を浮かべたショウは連邦軍正式の軍服とその上から羽織ったフライトジャッケット着た姿をリンに右手の親指を差しながら見せると、ああ・・・そう言う事ね。とリンから苦笑いされる。

 

 

 

「私も数回しか見た事無いけど・・・もしジオン兵と出会ったら面倒そうね?」

 

 

 

「面倒どころか相当ヤバいって・・・」

 

 

 

不安な事を言って来るリンに頼むから居ないでくれよ・・・と内心祈ったショウは右腰のホルスターに収まっているUSPの存在を確認しながらそう答えていると、何か無いかしら・・・とリンがシートの後ろをゴソゴソと探り始める。

 

 

 

「あっ・・・これなんかどう?ホワイト大尉のジャンバーみたいだけど・・・」

 

 

 

リンがそう広げて来るジャンバーの背中の真ん中には大きくドクロマークのロゴとその下部には表現の出来ない下品な言葉が堂々と縫われており、これは流石に・・・とショウは苦笑いを浮かべる。

 

 

 

「そうかな・・・着たら意外に似合うんじゃない?」

 

 

 

「いや・・・何か別の意味で悪目立ちしそうなんだけどそれ!?」

 

 

 

クスクスと笑いながら着せようとするリンに嫌がりながらそうツッコんだショウはトラックを海岸線に出る道へとハンドルを切ると左手に見える巨大な海にリンが再び無言になってしまう・・・

 

 

 

「リンって海が好きなの?さっきからずっと見てるけど・・」」

 

 

 

「好きか嫌いかって言われたら嫌いかな・・・特にここのはね・・・?」

 

 

 

そうコッチを見ないまま意味有り気な事を言うリンにここのってどう言う事?とチラッと見たショウが首を少し傾げると・・・所でショウの両親って健在なの?とリンから見当違いの返事が返って来るのでショウはへっ?と素っとん狂な声を上げながらそうだな・・・と思案顔になる。

 

 

 

「母親は小さい頃に出て行ったし・・・親父の方も今年の頭にジオンの降下作戦の時に撒き込まれたとかで死亡通知書だけが届いたよ・・・」

 

 

 

「そっか生まれはニホンって聞いたけど・・・今じゃ完全にジオンの支配下だし、それじゃあお父さんに会いたくても会えないね・・・」

 

 

 

そう悲しそうな顔をするリンにまあ・・・好き勝手やってた人だし・・・とショウは本人主義だった親父の事を心配してくれる彼女に申し訳無くなると、所でリンの両親は・・・?と首を傾げる・・・

 

 

 

「さっきもおやっさんがリンの親父さんの事言ってたし・・・どこか別の場所に居るの?」

 

 

 

「いいえ・・・私のパパやママはあの場所に居たんだあの時・・・」

 

 

 

リンがそう海岸線の中心・・・コロニーの破片が落ちた爆心地で有る元シドニーの市街地を指差すとえっ!?と驚いたショウは慌ててブレーキを踏み込むとそれより出来たクレーターギリギリの所でトラックを停車させる。

 

 

 

「嘘だろリン・・・それって・・・!」

 

 

 

「うん。あの時たまたまシドニーに居たんだ二人共・・・その時コロニーが落ちてそのまま・・・ね?」

 

 

 

そう泣きそうな顔をするリンにゴ、ゴメン・・・とショウが狼狽えながら謝るとリンもハッとしたのか私こそこんな暗い話なんかして・・・と困った顔でアハハ・・・と笑みを浮かべて来る。

 

 

 

「まさかそんな事が有ったとは思わなくて・・・本当にゴメン・・・」

 

 

 

「そんなに謝らなくて良いって・・・」

 

 

 

そう強がる様子を見せて来るリンに片思いと言う下心も有ったショウはええいままよ!と勢いに任せてリンの

 

細い身体をギュッと抱きしめるとちょっ!?とリンから驚く声を上げられながらもそのまま優しく背中へと手を回されてしまう・・・

 

 

 

「ひょっとして慰めてるつもり・・・?」

 

 

 

「う、うん・・・一応・・・」

 

 

 

嫌がる素振りも見せないリンの態度に内心では心臓バクバクのショウもそう答えるのが精一杯でリンがそれに気づいたのかクスっと微笑むと、調子に乗り過ぎよ!と少し顔を離したリンからオデコをパチッとでで弾かれたショウは痛っと涙目になる。

 

 

 

「ちょっと何すんだよリン・・・」

 

 

 

「彼氏でも無いのに勝手に抱きしめた罰よ!さあ、何してんの早く行かないと良いのが無くなっちゃうから急いでよねショウ?」

 

 

 

先程までの甘い雰囲気が無かった事の様リンがそう急かして来ると、何だかな・・・と

 

どこかやるせない気持ちになったショウはハイハイ・・・と答えながらトラックのアクセルを踏み込み再び目的地で有る中立地帯に有る町へと向かい出すので有った。

 

 

 

 




はい、ヨッシーです。正直自分でもこの流れが長いと言うのは分かってはいるんですが元々1000文字程度で区切って書いていた作品を再編集しているのでこれ以上繋げると長すぎるよな・・・と個人的に思います。一応現在2000文字前後で試行錯誤しながら書いてますがもっと長くても良いのでしょうか・・・その辺読まれている方からご意見頂ければと思います♪



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熱帯夜その1

少し不安だった中立地帯での買い出しも杞憂に終わり、ショウはホワイトから借りたピックアップトラックの荷台に荷物を載せていると、ゴメンね遅くなっちゃって・・・とリンが申し訳なそうな顔で更に段ボールを手渡して来る。

 

 

「良いって・・・どうせやる事無かったし、それにしても沢山仕入れたねリン?」

 

「たまにしか来れないから来れる時に買っとかないといけないからね・・・まあ店の保管庫とかに入れて保存にさえ気を付ければそこそこ持つから今度行くのはまた数瞬間後ね。」

 

 

そう思案顔を浮かべるリンの目線の先には酒に食材、その他諸々が入詰まったかなりの段ボールが山の様に積まれていてショウはこりゃあ明日から楽しみだね?と二っと笑みを浮かべる。

 

「そうそう!ショウが好きな生魚も安く手に入ったから早速今晩作って上げるわね?」

 

そう言いながら積まれた段ボールの隅に置かれた発泡スチロールの箱をリンが指刺すと、マジで!?とやはりニホンの血が流れているのかショウは小躍りしたくなるのを抑えながらありがとうリン!と満面の笑顔でその手をギュッと握り出す・・・

 

 

「う、うん・・・分かったからショウ・・手が・・・?」

 

「あ・・・ゴメン、リン!?嬉しくてつい・・・!」

 

そう慌てながら手を放すショウにいや別に嫌じゃ無いんだけど・・・と顔を赤くボソボソとリンが呟くとショウはえっ?と首を傾げる。

 

「何でも無い!・・・良いから早く帰ろう!お腹も空いたし・・・」

 

「う、うん・・・それじゃあちょっと飛ばすよ?」

 

そう言いながら助手席を乗り込むリンにショウも慌ててトラックのエンジンを掛けると、自己嫌悪に陥ったショウは何か気まずいな・・・と道中の一件と今の事を思い返しながら行きと同様海を見ながら無言のリンとCASCADEの有る町へと到着する。

 

 

 

「ねえリン・・・これ全部ホントに入るの!?」

 

 

「入口は狭いけど・・・奥は意外と広いから大丈夫だって?」

 

 

店へと到着した途端いつも様にテキパキと指示を出すリンに、内心良かったと思いながらショウは少し安堵しながら早速荷台から数個の段ボールを抱えると、先を歩くリンに付いて行きながら店の食材保存庫が有る奥まで足を進める。

 

「これだけ広いなら全部が入りそうだね?」

 

「うん。一応常温で保存できる様にしてるし、奥には父の趣味で小さいながらもワインセラーも有るのよ。」

 

自慢げにフフッと笑みを浮かべて来るリンにショウはへえ・・・と驚いた声を上げる。

 

「ワインはあんまり飲んだ事無いけど・・・今度頼んでいようかな。」

 

「まあ、ウチの店でもそんな上品なお酒飲む人居ないしね?」

 

そう答えながらクスクスと笑い出すリンにショウも確かに?とククっと笑いだしながら外に出てその作業を繰り返すと、リンが荷台の上から最後の段ボールを手渡してくれる。

 

「これが最後みたいね。置き終わったら休憩しようっか?」

 

「オッケー・・・僕もお腹も空いたしさっさと終わらせますかね!」

 

そう言いながらショウが乱雑に置かれた段ボールの上に積み重ねると急にグラグラと揺れ出すので、ショウ危ないっ!?と叫んだリンからの背後からのタックルにショウはグフっ!?と苦しそうな声を上げながら保管庫の床を転がると何故かリンが自分に馬乗りになりながら見下ろしてる。

 

「えっと・・結構大胆何だねリンって?」

 

「ち、違っ!?私はショウを助けようとしただけで!!」

 

そう答えながら顔を真っ赤にするリンにショウはゴメン・・・と腕を伸ばしながらリンの頭をそっと撫でる。

 

「ねえショウ・・・私ずっと言いたかった事が有るんだけど聞いて貰って良い?」

 

頭を撫でる手を自分のと重ねながら首を傾げるリンにうん・・・とショウも答える。

 

「僕もずっと・・・リンに言いたかった事が有るんだ。」

 

「ホントに・・・?じゃあショウから聞かせて・・・」

 

そう目を潤わせながらジッと見つめて来るリンにゴクっと息を飲んだショウはあのねリン!と覚悟した様に彼女の肩を掴みながら起き上がると真剣な顔を見せる。

 

「僕・・・初めて会った時からリンの事がずっと気になってて・・・好きなんだ!」

 

「そっか・・・ショウっていつも私を助けてくれるし、凄く優しいからそうだよな・・・って気づいてた。」

 

 

そう言いながら苦笑いを浮かべて来るリンにコレはダメな奴だ・・・と数少ないながらも感じた事が有る予感にショウがガクっとテンション落としだすと、でもね!と急に顔を近づけて来るリンにショウはちょっとリン!?と狼狽える。

 

 

「どうせ店に来る人と同じだな奴だって思っててもショウっていつも優しいから・・・ワザと気付かない振りしてたけど私もショウの事が好き!」

 

 

そう声を上げながらキスして来るリンに嘘っ・・・!?とショウが内心驚きながら右往左往する両手でやっとの事その抱きしめると、ショウも何か言ってよ・・・?少し恥ずかしいのか照れ隠しの様にリンがハハっ・・・と笑って来る。

 

 

「えっと・・リンの勘違いなんかじゃ無くてさ、僕はリンの事が好き・・・ずっと前から大好き!」

 

 

 

「やっと言ってくれたねショウ・・・私もショウの事ずっと前から大好きだよ?」

「リン・・・」

 

 

そう言いながら顔を赤くするリンにこれはヤバいな・・・と思ったショウは理性に負けつつ彼女が汚れても良いよう着ていたスエットの裾から胸の膨らみへと手を伸ばしながらリンの頭に手を回しキスする。

 

 

「んっ・・・ちょ、ちょっとショウ・・・ここじゃダメよ。」

 

 

「じゃあリンの部屋なら良い?」

 

 

そう言いながら二っと笑みを浮かべたショウが俗にいうお姫様抱っこをすると、手で顔を隠すリンからもうヤダ・・・と顔を真っ赤にしながら抗議の声が聞こえて来るがショウはすぐ着くから・・・?と素知らぬ顔で二階へと上がり出す。

 

 

「リン大好き・・・」

 

「バカ・・・私だって好きよショウ?」

 

ベッドに押し倒しながらもそう悪態をつき微笑んで来るリンに僕の方が好きだって・・・とショウは少しムッとすると、今日は寝かせないから!と流石に限界だったのか強引にキスを再開するので有った。

 

 

 

~~~

 




皆様お久しぶりです。暫く更新出来ずホントに申し訳有りません
でした・・・、ちょっとお盆の間で出したエブリスタの方の作品のトラブルとコロナワクチンと色々な諸事のお陰でちょっと止まってましたが今日よりまた数日置きに更新を再開致しますのでこのガンダムnearmissを読まれている皆様へ楽しんで頂けるよう頑張ります。



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熱帯夜その2

「ちょっとショウ!起きなさいって・・・遅刻するわよ?」

 

「んっ、ん・・・リン?」

 

自分の身体を揺らしながら聞こえて来る声にショウがぼんやりとした頭で目を擦りながら開けると、やっと起きたわね。と腰に手を当てながらフフッと優し気に微笑んでいるリンの姿が見えたのでリンおはよ・・・とショウはキャッ!?と驚く彼女の手を引っ張りながらペッドサイドへと座らせる。

 

「そ、その・・・身体大丈夫?昨日大分アレだったし・・・?」

 

「う、うん・・・平気だよ!?」

 

昨晩遅くまで続いてしまった情事を思い出したのかリンがそう答えながら顔を真っ赤にすると、自分の体を起き上がらせたショウは良かった・・・と言いながらその細い腰を引き寄せながらリンのこめかみに軽くキスするとそのまま背後から抱きしめる。

 

「ちょっと・・・ダメだったらショウ・・・」

 

「マジで信じられないや・・・リンとこんな風に朝を迎えるなんてさ?」

 

そう言いながら肩口で二っと笑みを浮かべるショウに私だって・・・とリンも答えながらどちらと言う訳でも無く唇を重ねていると、ピーっとキッチンからお湯の沸いたポットの音が聞こえて来る。

 

「ん・・・朝ご飯作の準備するからシャワー浴びて来て。」

 

そう言いながらも艶っぽい目をするリンに分かったよ・・・とショウは渋々ながらリンを解放すると、ちょっとヤバいなコレ・・・と昨晩脱ぎ散らかした服を拾いながらバスルームへと向かう。

 

 

 

 

「あっ・・・何か凄く良い匂いがするね?」

 

シャワーを浴び終えたショウが再びダイニングへと戻ると、まあね?と満面の笑顔を浮かべるエプロン姿のリンがヒョコっとキッチンから顔を出す。

 

「今日飛ぶって聞いてたから簡単にスープとパンにしたんだけど?」

 

「あ、うん!それくらいの方が助かるよリン。」

 

リンの気遣いに嬉しく思いながらショウがテーブルに着くと、ホカホカと湯気を立てている香ばしい匂いさせるコーンスープとパンを乗せたトレーをテーブルへ置いたリンも対面の席に座ると、こりゃ美味そうだね!?とショウはテンション高めに手を合わせ出す。

 

「うん。トウモロコシを沢山貰ったから久々に作ってみたんだ。口に合うかは分からないけど、どうぞ召し上がれ?」

 

「リンが作ったんだから絶対に美味しいって?それじゃあ遠慮なく頂きます!」

 

そう言いながらガツガツとスープとパンを食べ始めるショウに何それ?とリンもクスクスと笑いながらスープを口へと運ぶと、「「美味しい!」」とついショウと声が被ってしまうのでショウとリンはお互い顔を見合せながらアハハ!と笑い出してしまう。

 

「うわぁ・・・すっごく甘くて濃厚!パンにも良く合うしさすがリンだね?料理上手!」

 

「フフッ、ありがとうショウ。こんなので良かったらいつでも作るわよ。そ、その私達恋人なんだし?」

 

そう答えながら恥ずかしそうにコッチを見るリンにショウがブッ!?と飲んでいたコーンスープを盛大に噴き出すと、咳き込むショウにちょ、ちょっとショウ大丈夫と!?とリンから慌てて背中を擦られる。

 

「い、いや大丈夫、ちょっとビックリしただけだから・・・そっかそうだよね恋人なんだよね僕達って?」

 

「ちょっと!あれだけお互い好きって盛り上がって置いておいて・・・この場に及んで今更一夜の間違いとか言ったら流石の私も怒るわよ!」

 

そう言いながら少し困った様にポリポリと頭を掻き始めるショウにムスっとした顔でリンが詰め寄るので、いやそうじゃ無くてさ・・・と答えたショウは今度は真剣な顔でリンを見る。

 

 

「リンも知っている通り僕は連邦軍の戦闘機パイロットなんだ。確かに昨日は勢いで告白しちゃったしリンも僕の事が好きって事が分かって凄く嬉しかった・・・けど、僕の職業柄いつ死んでもおかしく無いと言うか・・・出来ればリンには悲しい顔をさせたく無いんだ?」

 

ショウが少し俯きながらそう答えると、何それ!?とリンから腰に手を当てながら溜息をつかれるのでショウはえっ・・・と驚いてしまう。

 

「私は年上だし、今までずっと我慢してた気持ちをやっと伝えたって言うのに・・・いきなり別れ話とかふざてんじゃ無いわよ!」

 

そうドンっとテーブルを叩きながら怒声を上げて来るリンにでも今ならまだ・・・と煮えくらないショウにリンは五月蠅い!と首根っこを掴み上げる。

 

「良いショウ・・・そんなの簡単な話よ?どんないかなる状況でも生きて私の所にアンタは戻ってくれば良いの!」

 

そう言いながらニコッと微笑みながら言動と行動がかみ合って無いリンにわ、分かった・・・と半ば怯えながらショウがコクコクと頷くと、フフッと微笑んだリンは宜しい♪と満足そうな顔でショウを解放する。

 

「じゃあ改めましてショウ=カノウに聞きます。私と恋人として付き合ってもらえますか?」

 

「は、はい、僕は愛するリン=ローダンセの為に何が有っても絶対に死なないと誓います。」

 

そう緊張気味に答えるショウに絶対だからね・・・?とリンが優し気な顔でフフッと笑って来るので、分かったって・・・ショウは苦笑いを浮かべる。

 

「約束だからね・・・破ったら承知しないんだから!」

 

リンがそう言いムスっと頬を膨らませると、絶対にリンは悲しませないよ?と答えたショウは彼女の身体を優しく抱きしめるので有った。

 




エブリスタよりもショウとリンの馴れ初めを甘々に書いたのですがどうでしょう?
次話から再び戦闘描写多めになるのでお楽しみください。




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熱帯夜その3

急に出来た休日にリンと濃厚な日を過ごしたショウはじゃあ言って来るね?と言いながら昨日借りたホワイトのトラックのエンジンを掛けると、ねえショウ?とリンが運転席のショウを見るように肘を付きながら覗き込んで来る。

 

「今日もウチに来る?」

 

「今日の訓練次第だけど・・・リンのトラックを入れ替えないと行けないからココには来るよ。」

 

そう言いながら二っと笑みを浮かべるショウにじゃあ待ってる・・・と少し寂しそうな顔をするリンから頬にキスされたショウは絶対行く・・・とそのキスに返す様にリンの唇を味わっていると、遅刻するって・・・と顔を真っ赤にしたリンから抗議する声が聞こえて来る。

 

「ゴメンゴメン・・・じゃあなるべく早く行くから!」

 

「ウン・・・美味しい夕飯作って待ってるからね?」

 

そう言いながらクスっと微笑むリンに普段とは違いショウは朝からテンション高めに分かったと答えながらトラックを飛ばすとトリントン基地のゲートが見えて来る。

 

「朝帰りですかい少尉?」

 

そう言いながら苦笑いを浮かべる警備兵に自分の身分証明を出したショウがゴメン!と見逃してくれた軍曹に手を合わせながらゲートをくぐると、あれはチャーリーか?と官舎近くを歩く金髪を見つけるとショウはパッパーとクラクションを鳴らす。

 

「ようショウじゃねえか・・・お前昨日一日どこに居たんだ?」

 

 

「いやその・・・昨日はリンとずっとね・・・」

 

 

ショウがそうしどろもどろしながら答えると、マジかよ!?とチャーリーから驚いた声が上がりながらトラックの助手席へと乗り込んで来る。

 

 

「そっかそっか・・・いや~やっと結ばれたんだなお前達は!?」

 

「五月蠅いな・・・そう言うチャーリーはアメリアとどうなったんだよ?」

 

そう言いながらバシバシと肩を叩いて来るチャーリーにショウが首を傾げながらトラックを再び発進させ出すと、チャーリーからいやそれがな・・・?と腕を組まれる。

 

 

「いや・・・昨日俺も気づいたら自分の部屋のベッドでぶっ倒れててよ?あの後アメリアと何を話したのか全く覚えて無えんだよな・・・」

 

そう言いながら考え込むチャーリーにショウはまさか!?と思い慌ててチャーリーの方を見る。

 

 

「一応聞くけどアメリアに手|()出した訳じゃないよね?」

 

 

「出すかよ・・・さすがの俺でもあれだけ飲んでたら勃たないつうの!」

 

 

そうこう言いながらお互いの目的地で有る格納庫の前に到着した二人がトラックから降りると、ようショウ?と挨拶をしてくれた同僚のパイロットがチャーリーの顔を見ると突然チッ・・・と舌打ちすのでショウはへっ?と驚きながらチャーリーの方を見る。

 

「何あれ・・・また何かやったのチャーリー!?」

 

「いや、俺も分かんねえけど・・・昨日から妙に俺に対するヘイトが凄んだよな?」

 

そう言いながら首を傾げだすチャーリーにふーん・・・とショウも不思議そう格納庫中に入ると、おっ坊主!とコアブースターの最終チェックをするホワイト大尉がニヤニヤしながら手を上げて来る。

 

「その様子だと上手く行った様だな?」

 

「えっと・・・お陰様でリンとはそんな感じで・・・おやっさんにはホント感謝してます。」

 

そう言いながらキーを投げるショウにじゃあ今日はその恩を返せよ?と修理が終わったのかリンのトラックのキーを投げ返されたショウは今晩リンの店で・・・?と二っと笑みを浮かべながらパイロットスーツへ気着替えようとハンガーの中へチャーリーと共に進むと、待ち構えていた様に小隊長で有るイエーガー=バウスネルン中尉から腕を組まれる。

 

「ようチャーリー・・・俺も今日になって聞いたんだが?あの後飲んだ日の朝方にお前の部屋からウォーカー軍曹が出てきたって言うのは本当なのか?」

 

「えっアメリアが・・・?いや俺には何の事だかさっぱり・・・!?」

 

そう答えながら驚くチャーリーにイエーガーから良く聞け・・・と溜息をつかれる。

 

「非番だったから知らんだろが・・・お前昨日今日でこのトリントン基地内じゃ女たらしのチャーリーって名で有名だぞ?」

 

「ちょ、何なんすかその不名誉な名前はっ!?」

 

苦笑いを浮かべるイエーガーからの説明にチャーリーが目を見開きながら異議を求めていると、それに関しては私が説明します・・・と格納庫の扉の外から関係者の一人で有る赤毛の下士官が覗き込んで来るのが見えるのでチャーリーからアメリア!?と驚いた声が上がり出す。

 

「どうしたんだよ急に?」

 

「いえ、その・・・どうも私がチャーリーの部屋から出たのを誰かに見られたらしくちょっと弁解にしに伺いました。」

 

アメリアがそう言いながらおずおずと格納庫内に入って来ると、間近で見たコアブースターに興味深々な顔をしながらショウとチャーリーの前に立つ。

 

「な、なあアメリア俺は決してお前に手を出して無いよな!?」

 

「それは勿論です。それどころかチャーリーは自分の部屋を教えるのが限界で・・・どうにかベッドに寝させることに成功したんですが私もそこで力尽きてベッドを借りてしまったんです」

 

そう答えながら申し訳無い顔になるアメリアにチャーリーはへっ?と素っ頓狂な声を上げる。

 

「こんな可愛い子が隣で寝てたのに俺って奴は・・・」

 

「いやいや、もし私に手を出してたら今頃病院のベッドの中ですよ?」

 

チャーリーに答えながらアメリアがクスっと微笑むと、これは手強いなチャーリーの奴とショウは親友を見ながら苦笑いを浮かべるので有った。

 



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悪夢

 私は要領が良かったのか小さい時から何でも出来た。大きくなって友達に追いつかれそうになっても努力して勉強も運動も頑張った・・・そしてハイスクールを優秀な成績で卒業した私に当時何故か連邦軍からスカウトが掛かった。

 

「アメリア=アン=ウォーカーさんだね?工業科での君の実績は勿論だが体力面でも申し分無い・・・どうだい士官候補生として歓迎するから軍に入隊するのは?」

 

そう甘く囁いて来る連邦軍の徴兵官に私は当時サイド1でパン屋を営んでいる両親に喜んでその事を伝えた所・・・軍に入るとは本気か!?と怒鳴られてしまったが、自分の実績を汲んでくれた事と学費も免除と言う事も有り渋々ながら許してくれた。

 

 

「あ、アンタが新しく入る子ね?私はケイ=キタムラよ。」

 

 

私がスペースノイドと言う事も有り少し遅れて地球に降りたルームメイトの子は真面目を自負している様な眼鏡を掛けた子だったが、明瞭でハキハキした綺麗な優しい子で士官学校を卒業するまでずっとコンビ組んでいた。

 

 

「ねえアメリア・・・昨日一個上の先輩に告られてたでしょ?」

 

 

成人し放課後のバーでそう尋ねて来る親友に私が興味無いな・・・と答えていると、たまたまナンパして来たしつこい奴らを二人で退治した事も有る。

 

 

「良し!それでは卒業訓練を兼ねた模擬戦を行うぞ?」

 

 

そう言って来る教官の傍に並ぶ特務部隊の隊長が並ぶと、今日は気合い入れるわよ?と隣からケイが肘を突いて来る。

 

「しょ・・・!?勝者はアメリア=アン=ウォーカー!」

 

仰天しながら自分の腕を掴む教官に驚いていると、こんな事・・・!?と驚きながらジロっと睨んで来る特務の隊長が睨んで来る。

 

「ウソッ!?アメリア特務隊に内示が決まったんだ!えっ私?私は何でか知らないけど情報部から来ないかって言われてる・・・」

 

そう浮かない顔をする親友に私はケイなら大丈夫と言った。

 

「ウォーカー少尉ついて来ているな!」

 

最近噂に上がる様になったジオン共和国軍のスパイの拠点が有るらしく酒場に飛び込んだ私は隊長に続き中に入ると、武器を構えた男性の事は勿論の事店の中にいた民間人も撃ってしまったが・・・特務では日常茶飯事なのか何もお咎めが無かった。

 

「ホントにウォーカー少尉は優秀ですね・・・ただ残念なのはスペースノイドだと言う事です。」

 

私をこのクソみたいな部隊に引き入れた私の上官はどうやら俗に言う地球至上主義らしくスペース・ノイドで有る私を嫌っている。

 

「お、おい・・・今サイド1コロニーのアイランドイフッシュが地球に墜ちたらしいぞ!」

 

南米ジャブローの地下基地に有る食堂でいつもの様に味のしない昼食をこなしていた私はそう騒ぎ立てる様々の部隊の隊員達の声にえっ・・・と驚いた声を上げると、多忙の余りに毎月の様に手紙を送ってくれた両親の居たコロニーも全滅したと聞き静かに涙を流した・・・

 

「へへっ・・・ウォーカー?お前もジオンのスパイじゃ無いのか?」

 

ジオンによるコロニー降下作戦により更に居場所を失くした私にそう言いながら隊長で有るリンスと同じく地球至上主義を掲げる同僚たちがニヤニヤしていると、なぁ脱げよ?と一人の男性士官が胸倉を掴んで来るので私は必死にもがいた。

 

「暴れるなって・・・俺の父親が連邦軍の高官だって知ってるだろ?それにこれから起きることは隊長も黙認なんだから・・・諦めろよスペースノイド?」

 

ここまで必死に頑張って来たのに今まで溜まっていた物が爆発した私はその同僚に頭突きをかました後の事は良く覚えて無い・・・しかし今でも記憶に残るのは軍事裁判が行われた法廷で私に不利な証言証言をしたニヤつく上官の事だけである・・・

 

 

~~~

 

 

「うわぁっ!?」

 

 

久しぶり見た夢で起きたフラッシュバックにそう焦った声を上げながら慌てて飛び起きたアメリアはここは一体・・・?と自分の部屋では無い場所に首を傾げだすと、もう飲めねえって・・・と隣で寝ているチャーリーからの寝言かにああそうだ・・・と手をポンと叩き出す。

 

「酔っぱらったチャーリーを部屋まで運んだ後私も力尽きたんでしたっけ・・・?」

 

飲み過ぎた所為か二日酔い気味の頭を抱えたアメリアが先程見た夢を思い返しながら久しぶりに嫌な夢見たな・・・と独り言るとアメリアはサラサラと金髪のチャーリーの頭を優し気に撫で始める。

 

「ちょっと頼りないナイトだけど・・・今度は信用しても良いですか・・・チャーリー?」

 

フフッと微笑みながらそう呟くアメリアに、んーアメリア・・・?とチャーリーから急に手を引かれたアメリアはウニャっ!?と素っ頓狂な声を上げながらベッドの中に引っ張り込まれるとそのままチャーリーの胸の中へと抱きしめられてしまう・・・

 

「ちょっと・・・起きてるんですかチャーリー!?」

 

顔を真っ赤にしながらそう抗議の声を上げたアメリアがチャーリーの拘束から逃れようとジタバタするが聞こえて来るのはスヤスヤと聞こえて来る寝息だけで有る。

 

「これじゃあ帰れないじゃないですか・・・まったくもう!」

 

取り合ず朝になったらまた考えようと思ったアメリアが取り合えずもう一度眠ろうと目を瞑ったその早朝・・・あれ自由に動けますね?とそのままガバっと起きたアメリアは隣を見ると寝相が悪いのかベッドの端で寝ているチャーリーの姿を見つけクスクスと笑い出す。

 

「良く寝てますね・・・じゃあ私は帰りますよ?」

 

完全に寝入っているチャーリーに呟いたアメリアが起こさない様にと静かにベッドを降りると、またね?と笑みを浮かべながらチャーリーの部屋を出た・・・のだがその時の事を誰かに見られたらしくアメリアはその日のシフトが上がると共に上官で有るマリア=トパレス曹長から呼び出しを食らう事となった。




更新遅れてすみません!

エブリスタの方を見ている方は違和感を感じているかもしれませんが、今回はページ数のシェイプアップのつもりで先にアメリアに過去を書いてます。

その分原作との隙間を埋めて行くように書こうと思っているのでオリジナルで有るガンダムnearmissとは違うこの作品を楽しんで頂きたいと思っています♪

                               ヨッシー 


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再スタート

 

 気を利かせてくれたのか少人数で使うミーティングルームの中に入った途端にマリアが、あのねアメリア・・・?と真面目な顔で心配して来ると、アメリアは何でしょう?と不思議そうに首を傾げだす。

 

「えっと本題に入る前にちょっと聞こうと思ったんだけど、アンタが今朝チャーリーの部屋から出て来たって基地内で噂になってるけどホントなの?」

 

「えっそうなんですか!?気を付けたつもりだったのに・・・」

 

「気を付けたつもりって・・・あれだけ私もチャーリーには気を付けろって言ったじゃない!?」

 

そう言いながら頭を抱えだすマリアにムアメリアはどう意味ですか?とムゥと首を傾げだす。

 

「どう意味も何もチャーリーの部屋から朝方出て来たって事は寝たって事でしょう!?」

 

「え、ええ・・・確かに酔ったチャーリーに抱きしめられてしまい仕方なく一緒に寝てしまいましたね・・・」

 

そう答えたアメリアが昨晩の事を思い返しながら少し照れ臭そうな顔をすると、シタんじゃ無いの?とアメリアの言葉に何か違和感を感じたのかマリアから首を傾げられると、そんな関係じゃ有りませんっ!とマリアの本意に気付いたのかアメリアは顔をボッと赤くしながらジロっと上官で有るマリアを睨みつける。

 

「そうだったら良いんだけど・・・酔ってる男の部屋に一人で行くなんて何か間違いが有っても言い訳出来ないんだから気を付けなさいアメリア!」

 

「了解ですマリア曹長・・・所で本題の前にと先程言われましたが、このお説教の他にまだ何かるのですか?」

 

不思議そうな顔で尋ねて来るアメリアにそうそう忘れてたわ!とアメリアとチャーリーの事が気になり過ぎていたらしいマリアが手をポンと叩きながら少し困った顔になる。

 

「実は先日行った試作機のテスト中に起きた敵機に対するアメリアの見事なサポートに感心したのか知らないけど、今奴等が行っているコアブースタープランとか言う専任のオペレーターにしたいとバリサム司令が言って来てるのよ?」

 

「バリサム指令が・・・それにショウとチャーリーの専属って!?」

 

そう驚いた声を上げるアメリアに大抜擢ね?とマリアからクスっと微笑まれたアメリアはハァ・・・と溜息をつきながら正気なんですか・・・とマリアに呆れた顔を見せる。

 

「私はまだここでは新任のオペレーターなんですよ。そんな重要なプロジェクトに参加するには荷が重いです!」

 

「私もそう言ったんだけどね・・・整備班のホワイト大尉からもアンタの肝っ玉にショウとチャーリーのストッパー役に丁度良いと太鼓判押されてるからね・・・諦めなさいアメリア?」

 

アメリアが説明しながらそう苦笑いを浮かべて来るマリアに分かりました・・・と渋々命令を拝命すると、じゃあ明日からあのバカ二人の事を頼むわね?と少し困った様に笑うマリアにビシビシと指示を出して見せますよ?とアメリアも二っと笑みを浮かべながら敬礼するので有った。

 

 

 

~~~

 

 

「よおショウ、チャーリー調子はどうだ?」

 

同僚のパイロット達からの挨拶しながら更衣室の中から出たショウとチャーリーはパイロットスーツと耐Gスーツで身を包み愛用のヘルメットを持ちながらハンガーへと降りると、急げ急げ!チンタラしてるとオーストラリアの砂漠に埋めちまうぞテメぇら!!と整備班長ホワイト大尉の怒声に苦笑いしながらお互いの機体へと向かいだす。

 

「それじゃあ今日も頼むよチャーリー?」

 

「任せろって相棒お前のケツは俺が守ってやるよ!」

 

ショウが隣の随伴機で有るFF-4トリアーエズに乗り込もうとするチャーリーとそう言い合いながらお互いグッと親指を立てながら自身もFF-X7BSTコアブースターのコクピットへと収まると、機体の方はバッチシだからねショウちゃん?と整備主任のシゲが二っと笑みを浮かべながらハッチまで登って来る。

 

「一応おやっさんの指示通りにスロットルは相当絞ったから・・・前みたいにドカンと加速しないから失速にきをつけてよね?」

 

「うん、分かったよ。シゲさんありがとう!」

 

シゲにお礼を言いながらハッチ閉めるよ?と声を掛けると、グッドラック!と言いながら梯子を下りるシゲを確認したショウはハーネスのチェックと機体のシステムチェックを行い出す。

 

「良し・・・こちらCBP1システムオールグリーンだ。」

 

「トリントンコントール了解です。CBP1・2共に滑走路への侵入を許可します。」

 

先日に引き続きアメリアから指示にショウはどこか安心しながらハンガーから出したコアブースターを滑走路へとタキシングさせるとチャーリーのトリアーエズも横に並び出す。



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危ないチーム!?

「なあ前から君の声は綺麗だなって思ってたんだ俺は・・・」

 

「えぇ~少尉の事は先輩達からは遊び人だから気をつけろって言わるんですけどぉ?」

 

「そんなの噂だって!?俺がどれだけ紳士って言う事を教える為に今度飲みにでも行かないか?」

 

そんな無線が聞こえて来る隣に座って居る後輩の管制官とチャーリーとの会話にアメリアはちょっとミリィ・・・?とジロっと睨みだす。

 

「どうしよっかなぁ・・・ってなんですか先輩?」

 

「何ですかじゃ無いですよ!発進前のパイロットと何バカな事話してるんですか!?」

 

「だってぇ~向こうが誘って来たんですよぉ?」

 

ここトリントン基地のオペレーターとしては任期が長いが年下で階級も一個低いミリィ=タニグチ伍長があざとく首を傾げると、もう良いです!とアメリアは手元に有るスイッチを切り変える。

 

「じゃあさ今夜辺りとかどう・・・」

 

「すみませんが話はそこまでですCBP2!・・・さっさと任務に戻りなさいっ!」

 

イラつくようにそう怒声を上げたアメリアに対しチャーリーは元より隣のミリィもヒッ!?と悲鳴を上げてしまうので、ミリィは関係有りませんから?とアメリアが手を振りながらジェスチャーすると、ホントに貴方って人は!とプライベート回線を使ってヘッドセットの向こうに居るチャーリーへと怒り出す。

 

「私の事が気になるとか言いながら気軽に別の女性を誘って・・・私に喧嘩でも売ってるんですか!」

 

「ちょ、ちょっと待て待て!?お前こそ昨日素っ気ない態度であしった癖に・・・まさか俺にやきもちでも焼いたのかよ?」

 

そう言いながらヘヘっと笑いだすチャーリーに誰がアンタなんかに!?とヘッドセットを掴んだアメリアが顔を真っ赤にしながら抗議の声を上げていると、ねえ先輩~?とミリィから肩を叩かれる・・・

 

「何ですかミリィ!」

 

「痴話喧嘩はシフトが終わってからにしてくれないかなアメリア・・後ろでバリサム指令も睨んでるからさ?」

 

苦笑いを浮かべながらそう耳元で囁くマリアにギョッとしたアメリアは慌ててCBP2準備は良いですか!?指示を飛ばし始める。

 

「コッチはいつでも良いぜ?」

 

「了解です。CBP1も良いですね?」

 

通常回線に切り替えたアメリアからの声にオッケーと答えたショウは何話してたの?と二人に尋ねると、他の女に声を掛けるなってよ?とチャーリーがニヤニヤしながらそんな事を言って来るのでそれホントとつい聞き返してしまう。

 

「自分の都合の良い様に解釈しないで下さいチャーリー!?それとショウもチャーリーに感化されずに与えられた任務を真面目にこなす様に頼みますよ!」

 

まるで上官の様な物言いに違和感を感じたショウとチャーリーがコクピット越しに顔を見合わせていると、あっそうそう!と何故か妙に楽しそうな彼女の上官で有るマリアの声が割り込んで来る。

 

「今日からアンタ達が携わっているコアブースタープランの専属オペレーターにアメリアを置く事にしたから命令違反すると後が怖いわよ?」

 

「そう言う事なのでCBP1・2へ今日も頑張って行きしょうか?」

 

そう言いながらニコっと微笑んで来るアメリアにマジかよ・・・と呟いたショウは隣のチャーリーが手を肩まで上げながらお手上げのポーズを取って来るのを見ながら了解と答えながらハァ・・・と溜息をつきだす。

 

「こちらCBP1了解だ・・CBP2も良いな?」

 

 

「CBP2了解した。エスコート頼むぜアメリア!」

 

ショウとチャーリーの返事を聞いたアメリアがこちらこそお願いしますね。と真面目な顔になると、ショウとチャーリーもコアブースターとトリアーエズのエンジン出力を徐々に上げながら滑走路を加速して行く・・・

 

「こちらトリントンコントロール周辺空域に異常無し、CBP1、2へ幸運を」

 

「サンキュー、トリントンコントール!CBP1離陸する!」

 

「CBP2も行くぜっ!」

 

アメリアからの言葉にショウとチャーリーの二機が綺麗に揃って離陸すると、ドンっ!と急にアフターバーナーを吹かしながらハイレートクライムをかましながら急上昇を行う二機にアメリアはCBP1、2!と怒り出す。

 

「緊急出撃《スクランブル》じゃ無いんですから、試作機にそんな無茶しないで下さいよ!・・・後でホワイト大尉に怒られても知りませんからね?」

 

「無茶させた方がすぐに欠陥が分かった良いと僕は思うけどな・・・」

 

「無茶するのはショウの勝手ですが、その機体にどれだけの人員とお金がかかってると思ってるんですか?良いから予定通りの飛行ルートに戻りなさい!」

 

アメリアからの溜息息交じりの言葉にショウは分かりましたよ?と答えながらチャーリーのトリアーエズと共にコアブースターの高度を下げながら作戦空域の有る方へと下げながら機首を向けるので有った。

 

 

 

 



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敵襲

 

「って言うか先輩って試作機の専属オペレーターになったって聞きましたけどぉ・・・なんだか大変そうですねぇ?」

 

「ホントですよ・・・聞けばあの二人ってこの基地でも有名な問題児って言うじゃ無いですか?」

 

「確かにそうですけど腕は確かですよぉ。ここトリントン基地の撃墜数だけで見るとカノウ、ウィルソン両少尉がワンツーで・・・その次に僅差で彼らの上官で有るバウスネルン中尉ですからねぇ・・・」

 

そう説明しながら首を少し傾げ出すミリィに腕だけ良くても困るんですよ・・・と答えたアメリアが苦笑いを浮かべていると、管制官のリーダーで有るマリア=トパレス曹長からちょっと私語が多いわよ?と叱咤される。

 

「それとミリィにはアメリアがこんな状況だから今日は一人で定期便のエスコートを頼むわね?」

 

「えぇ~私だけでやるんですかぁ!?」

 

「元々アンタが先任なんだからアメリアに甘えないの!」

 

そう指示を出して来るマリアに分かりましたよぉ!とミリィが不貞腐れた声を上げると、頼みますねミリィ?とアメリアも彼女を宥める様にクスっと微笑むのでマリアから私もフォローするから?と二っと笑みが浮かび上がる。

 

「アメリアもこの前みたいなヤバい状況になったらすぐ報告する事。私が間に入って対応するからね?」

 

「あんな状況になる事なんか早々無いと思いますが・・・もしもの時は頼みます。」

 

そう答えながらヘッドセットを付けたアメリアがCBP1、2聞こえますか?とショウ達に通信を繋ぎだすと、何も無ければ良いけど・・・とマリアは妙な無騒ぎを感じながら自分の席に座ると上面に設置された大型のレーダーサイトに映る作戦空域へと向かう二つの光点に向かって絶対に帰って来なさいよ二人共・・・と小さく呟きながら腕を組みだす。

 

 

~~~

 

 

 

「CBP1、2そろそろ作戦空域です。今回はコアブースターのビームキャノンを使っての対地攻撃のテストを行いますので、いつもみたいにふざけてると怪我しますから気をつけて下さいよショウ!」

 

「分かってるってアメリア・・・」

 

アメリアからの指示にそう答えたショウがコアブースターのスロットルを一気に絞ると行くぞ!と声を上げながら左脚のラダーペダルを蹴っ飛ばし右前へとスティックを倒しながらショウはコアブースターを目標へと攻撃を仕掛ける為に急降下を仕掛ける。

 

「目標はコロニー残骸に隠した的ですが・・・本当に見えてるんですかCBP1?」

 

「そんなのとっくにロックしてるって・・・貰ったっ!!」

 

オペレーターで有るアメリアからのフォローを借りずにショウが操縦桿のトリガーを絞るとコアブースターから放たれた二門のビームが的を貫きその直後にドンっ!と土煙が空に向かって高く上がり出す・・・

 

「ビンゴ・・・そっちでも確認したろアメリア?」

 

「え、ええ勿論です。まさか修正も無しに一発で当てるとは正直驚きましたね・・・」

 

ショウはこういうの得意なんだ?と言いながらモニターに映っている呆気に取られた顔のアメリアに向かってニヤニヤとしていると、俺もビックりしたぜ!?と上空で警戒していたチャーリーからも通信が入って来る。

 

「あんなダイブしながら的に当てるなんて流石はエースのショウだな?」

 

「エースって言うなって!それに動いない的に当てるのなんて簡単じゃないか!?」

 

チャーリーに対しショウがそう言いながら急に怒り出すと、ちょっと二人共・・・とアメリアはああだこうだと言い合いを始める二人に対しストップを掛けようとした瞬間にレーダーを表示させているモニターから警告音がピーっと鳴り響き出す・・・

 

「レーダーサイトに未確認機を複数機確認です!」

 

「コッチでも確認してるけど・・・定期便のミデアじゃないのミリィ!?」

 

そう焦った声を上げて来るマリアに半分正解ですねぇ・・・とヘッドセットを外したミリィから困った顔をしながら返事が返って来る。

 

「IFF《敵味方識別信号》の確認を確認した所・・・3機の内1機は友軍機のミデアで残り2機はジオン軍機ですよぉマリア曹長?]

 

「ちょっと・・・それって定期便が襲われてるって事じゃない!?」

 

マリアがバンっ!と自分のデスクに手をつきながらそう驚き叫び出すと何か有ったのかねマリア?とどうにも騒がしい3人の所へとトリントン基地司令官で有るバリサム大佐が不安そうな顔でコーヒカップを片手に尋ねて来る。

 

「そ、それが・・・ジオン機に追われて来たのか定期便のミデアが訓練空域に進入して来たんですよ!?」

 

「定期便のミデアだと!?・・・機長が誰かすぐに調べろ!」

 

そう言いながら急に慌て出すバリサムにマリアがどうしたのかしら・・・と普段は温厚な指令を見ながら了解と答えると、出ましたよぉ?と普段はのんびり屋だがこういう情報系には強いミリィからすぐにパイロットの情報がモニターへと表示される。

 

「IFFと照合した結果・・・機体番号からアレクサンダー=ウォルフ大尉となってますがぁ?」

 

「ブッ!ウォルフ大尉の機だとっー!?」

 

そう叫びながらコーヒーを拭き出すバリサムにちょっと指令!とマリアが抗議の声を上げると、いやスマン・・・と平静を取り戻したバリサムはコホンと咳払いするので有った。

 

 




ウォルフ

ドイツ系

60代

180センチ


背も高いが全体的に大柄である。

幅も有るが太ってるわけでは無い。

地球連邦軍少佐⇒大尉

地球連邦軍トリントン基地輸送隊⇒カスケード隊専属のミデアパイロット

一人称はワシ


搭乗機体 ミデア、ホバートラック




ワハハハと豪快に笑うのが特徴。

通称疾風ウォルフ、現役時代は空軍では有名な戦闘機パイロットでスピードキングと言わるほどの高速機動が得意である。ウォルフ自体は後数年で退役なのだが未だにその名は残り各地の散らばる教え子が語ってる模様で有る。


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物事は言い様

「警報を鳴らせ。アラーム待機班にスクランブル(緊急発進)を急がせるんだマリア曹長!」

 

「もうやってます。ミリィは当該空域に他の友軍機が入らない様に警告、アメリアはあの二人へすぐに空域から離脱する様に伝えて!」

 

 

バリサムにそう答えながらもそう矢継ぎ早に指示を出して来るマリアに了解!と答えながらミリィとアメリアが各々ヘッドセットで指示を飛ばしていると、おいおい友軍機を見殺しにする気かよ!?とCBP2のチャーリーから驚いた声が返って来る。

 

「既にスクランブルが掛かっており迎撃機が向かいます。二人はすぐに離脱を・・・」

 

「バカか!ドップ相手をしているミデアに間に合う訳ねえだろうが!?」

 

「私だってそんな事くらい分かってますって!」

 

アメリアが焦るチャーリーに向かってそうイラついた声を上げると、悪りぃアメリア・・・とアメリアの心情に気付いたのかチャーリーから申し訳無そうな声が返って来る。

 

「いいえチャーリーは悪く有りません。悪いのはこんな情けない指示しか出せないオペレーターの私ですね・・・」

 

そう言いながら苦笑いを浮かべるアメリアの顔がショウのコクピットに映ると、じゃあこんなのはどう?とショウはニヤりと悪戯っぽく笑みを浮かべる。

 

「ちょっとショウ・・・一体何する気ですか?」

 

「僕とチャーリーがあえて離脱する方向を間違える(・・・・)からアメリアはショウ達が!?とか言って時間を稼いで欲しいんだ。それにこの位置なら僕らの方がミデアの救出に一番近いしね?」

 

 

「俺もショウに乗ったぜ。お前はどうするアメリア?」

 

そう言いながらヘヘっと笑って来るチャーリーに分かりましたよ!と腹を括ったアメリアはハァ・・・と溜息をつくと、とんでもない人達とチームを組む事になりましたね?と言いながらクスっと微笑むと、ショウとチャーリーからも二っと笑みが浮かびながらグッと親指を立て来る。

 

「じゃあ行きますよ・・・ああもうあのバカ二人!?」

 

そう声を上げるアメリアに合わせてショウとチャーリーの二機が作戦通りに別方向に離脱して行くと、どうしたウォーカー軍曹!?とバリサムが慌てて近寄って来る。

 

「CBP1・2共に離脱する方向を間違えた模様です。」

 

「そんな事有る訳無いだろう!?早く呼び止めて基地に帰る様に言うんだ!」

 

「了解です。しかし応答が無いですね・・・恐らくミノフスキー濃度が高いのかと思いますが?」

 

そう答えたアメリアがわざとらしくバリサムに向かって首を傾げていると、マリアからスクランブル機上がります。と声が聞こえたバリサムは間に合えよ・・・と焦る様に頭を掻き始める。

 

「ねえアメリア・・・ワザと二人を援護に向かわせたでしょう?」

 

バリサムの隙を突いてそう聞いて来るマリアに何の事だか私にはさっぱりですね。とアメリアが不思議そうな顔で答えると、ウソおっしゃい!とマリアから怒られてしまう・・・

 

「私もフォローして上げるって言ったばっかりじゃないの!始末書なら私も付き合って上げるからアンタは二人のフォローをして上げさいな?」

 

「マリア曹長・・・恩に着ます。」

 

アメリアはそう言いながら二っと笑みを浮かべて来る頼もしい上官にお礼を言うと、CBP1・2!と即座に通信を繋ぎ始める。

 

 

「おいショウ、お前ってホントバカだな・・・」

 

 

「うるさいぞチャーリー、お前だけには言われたくない!」

 

 

呆れた顔でそう言うチャーリーにショウがそう返すとチャーリーからハアと盛大に溜息をつきだす声がおクピットに聞こえて来る・・・

 

 

「やれやれまた始末書か・・・」

 

 

「始末書だけで済めば良いけどね・・・っておいチャーリー二時の方向見えるか!?」

 

 

そう叫んで来るショウにコッチでも確認したぜ?とチャーリーも空にチカっと光る物体を視認していると、聞こえますかCBP1・2!とアメリアからもタイミング良く通信が入って来る。

 

「ミデアを見つけたぜアメリア!ドップが二機へばりついてやがる・・・」

 

「了解です。こちらからも迎撃機が上がりましたが・・・戦闘空域に到着するのに5分は掛かりますのでここは我々だけで暴れようじゃないですか二人共?」

 

「それは良い考えだねアメリア・・・それじゃあ一丁行くよチャーリー!」

 

アメリアにそう答えたショウがコアブースターのアフターバーナーを吹かし上昇しだすと、チャーリーもそう来なくっちゃな?とヘヘっと笑いながら愛機で有るトリアーエズをショウの機に追随させながら高度を上げて行くので有った・・・

 

 

 



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疾風

「本当にしつこいのう・・・こんな輸送機相手に必死になり過ぎだぞい!」

 

人員や装備等を各基地へと運ぶ輸送部隊に所属するこのミデアの機長で有るアレクサンダー=ウォルフ大尉は先程から執拗に追いかけて来るドップに対しそう呟きながらチッと舌打つ。

 

「そろそろ仕留めに来る頃かのう・・・フルスロットル少尉じゃ!」

 

「既にもうエンジンの出力全開ですよ大尉!?このまま負荷掛け続けたら焼き付いてしますって!」

 

悲痛な声を上げる隣の副操縦士で有る少尉にウォルフはええい!と叫びながらスロットル一気にミニマムにまで落とすと同時に操縦桿を左に倒し左脚のラダーペダルも踏み込みながら輸送機で有る鈍重なミデアバレルロールを行うと、嘘だろっ!?と驚いた様子で攻撃を仕掛けて来たドップが攻撃をする事も無く前方へと通り抜けていく・・・

 

 

「良しこのまま地上スレスレまで急降下(フルダイブ)してドップを振り切るぞい!」

 

そう声を上げるウォルフにちょっと大尉!?と慌て出す副操縦士で有る少尉の声を無視したウォルフはスロットルを全開にしながら操縦桿を奥へと倒すとミデアを墜落させる様に地面へと近づかせる。

 

「た、大尉!このままじゃ地面にぃぃぃぃ!?」

 

「落ち着かんか・・・こういうのは慌てた方が負けじゃぞ?」

 

ウォルフはそうお茶らけた声で操縦桿を目一杯引きミデアを引きおこすと、機体の底がほんの一瞬擦ったのかゴゴっと言う音共に振動が伝わって来る・・・

 

「このままあそこの渓谷に逃げ込むぞい!」

 

「冗談でしょう!?あんな狭い所にですかっ!」

 

低空飛行のまま操縦するウォルフに隣の少尉が顔を引き攣らせながら叫ぶと、ウォルフは舌噛むから黙ってろ!と言いながら悲鳴を上げる少尉を無視しながらミデアと同程度の幅を持つ渓谷へと飛び込んで行く・・・

 

「ワハハハッ!、ここなら奴等も追ってこれまいっ?」

 

「大尉が戦闘機乗りなのは知ってますが、あんまり無茶な機動は勘弁して下さいよ!?」

 

豪快に笑いながら言うウォルフに少尉が気分悪そうに真っ青な顔で叫んでいいると、直上からドップが二機!と上空監視をしていた上部銃座から慌てた声が二人に向かって届き出す。

 

「チッ・・・いい加減しつこすぎるぞい!?近くの友軍基地へ間違い無く救援要請(メーデー)を出しているな少尉!」

 

「勿論です。ただ到着まで五分は掛かると・・・」

 

そんな絶望的な声を上げて来る副操縦士の少尉にここまでじゃな・・・と諦めた様にウォルフが呟くと同時に後席の通信士から友軍機です!と歓喜の声を上げて来る。

 

「な、何じゃと!?一体どこの基地から・・・」

 

「識別信号(IFF)を確認しました。トリントン基地の機体です!?」

 

通信士の声にウォルフがトリントン基地じゃと?と驚きながら顔を上げると、ドップの方もミデアに接近して来る機影に気付いたのか慌てて機首を上げ高度を上げて行く・・・

 

「こちらトリントン基地飛行隊所属ショウ=カノウ少尉です。援護に来ました。」

 

「同じくチャーリー=フォン=ウィルソン!騎兵隊のお出ましだぜぇ!」

 

ウォルフは聞き覚えの有る名前と声と名前にニッと笑みを浮かべると後方の通信士に自分のヘッドセットに回線を合わせる様サインを出す。

 

 

「こちらミデア輸送隊のアレクサンダー=ウォルフ大尉じゃ!良い所に来たぞいショウ、チャーリー!」

 

「え、ウォルフ教官!?」

 

「おいおいマジかよ・・・こりゃあますます下手出来ねえじゃ無いかよショウ!」

 

ショウとチャーリーはお互い士官学校時代の教官の声に驚きながらキャノピー越し困ったかを浮かべてい居ると、ドップが回り込んで来てます!とアメリアから先程一旦離脱したドップの位置を通信で伝えて来ると、にショウとチャーリーは了解と答えながらアフターバーナーを吹かしながらコアブースターとトリアーエズを迎撃コースへと乗せ始める。

 

「ドップはコッチで片付けますので、大尉はそのまま高度を低く保ちながら私の誘導のまま空域を離脱して下さい!」

 

「了解した。スマンが頼んだぞい二人共・・・?」

 

そう聞こえて来る二人の声に向かってショウがまた後で!と声を上げながら懲りずにミデアを執拗に狙おうとするドップに向けて牽制でビームキャノンを撃つと、チッ!と舌打つように二機のドップが上空へと離脱して行くのが見える。

 

「おいショウ!俺が追うからお前が仕留めろよ良いな?」

 

そう言いながらドップのケツを追い掛けるチャーリーのトリアーエズに向かって冗談だろっ!?と慌てながらショウもコクピットの後ろから狙撃用のゴーグルを引っ張り出す・・・

 

「さてと・・・1発カマ(・・)してやりますかね?」

 

ショウはディスプレイの項目からFCS(火器管制)の中からビームキャノンを選択するとHUD|(ヘッドアップディスプレイ)に現れた照準用レクティルに映る豆粒程度の敵機に向かってショウは操縦桿に有るトリガーを捻る。

 

「ちゃんと食いつけよ・・・イケぇ!」

 

ショウのコアブースターから放たれた二つの高出力ビームはドップとドップの間を掠りながら通り抜けた様で、ショウはその威力に脅威を感じたのか一機がコッチへと真っすぐ向かって来るのを確認する。

 

「良し良いぞ・・・っと!?」

 

ドップの方はかなり泡喰っているのか、ショウはヘッドオン(真正面)の状態で熱探知ミサイルの有効射程距離ギリギリでロックオンされてしまいコクピットに警告アラームがピーッと鳴り響く。

 

「そんなの当たるかってぇ!!」

 

ショウは操縦桿を右下に倒し右脚のラダーペダルを踏み込むと、こなくそっ!とバレルロールしながら二機のドップが放ったミサイルを躱すと、今度はこちらの番だと言わんばかりに機首部の30ミリバルカン砲とブースター部に搭載されている4門の25ミリ機関砲とビームキャノン2門を一斉射する。

 

「当たれぇーーっ!!」

 

ショウは狙いもそこそこにトリガーを引いたのだが・・・すれ違いざまに1機のドップが黒煙を吐きながら抜けて行くのが見えると、ショウは振り返りながらそのすぐ着後にボボっと火を上げながら爆発する機影を確認するので有った・・・

 

 

 

 




バリサム

50代

180センチ

地球連邦軍大佐

髪は灰色で体格が良い

トリントンの基地指令、ウォルフ大尉とホワイト大尉とは旧知の仲である。元はウォルフの部下で有ったが降格処分も有りバリサムが出世し今に至りバリサムも元戦闘機パイロットと言う裏設定も有る。

連邦軍特有の官僚タイプの指揮官と違い戦闘機パイロットからここまで出世して来たバリサムは叩き上げの実戦指揮官でショウ達現場のパイロットからも信頼も厚いが・・・普段の緩さの所為かジャブローからの評価は低い様である。


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本領発揮

『おいチャーリーこっちは一機ヤったぞ!』

 

 

そう聞こえて来るショウからの通信にナイスキル!と返しチャーリーは|HUD《ヘッドアップディスプレイに映るドップの|ケツ『後部》付けると、ピーっと鳴り響くロックオンアラームにチャーリーがフォックス2!と声を上げながらスティックの発射ボタンを押すと乗機であるFF-4トリアーエズの翼下から熱探知型の短距離ミサイルが発射される。

 

 

「貰ったぜぇっ!」

 

 

完全に後ろを取った位置取りからの攻撃にチャーリーが自身満々の声を上げるが、フレアをまき散ららしながらローリングするドップの急減速にシザースだとっ!?とチャーリは外したミサイルを華麗に回避した敵機を思わず追い越してしまうと、何をやってんだよ!とショウから呆れた声がコクピットに響き渡る。

 

 

「うるせえな・・・俺だって驚いてんだよ!?」

 

 

『取り合えず僕が追いつくまで耐えろよチャーリー!』

 

 

 

そう叫んだショウが一旦通信を切るとわーってるよ!と声を上げたチャーリーは待ってましたと言う様に鳴り響く形勢逆転したドップからのロックオンアラームにチッ!と舌打ちしながら機体を左へとダイブさせると先程居た位置にドップからの30ミリバルカン砲がばら撒かれる・・・

 

「こいつはヤベェヤベェ・・・」

 

トリアーエズのコクピットの中でそう軽口を叩いたチャーリーがアフターバーナーを吹かしながらドップから距離を取ろうとするが、低高度の旋回性能には定評が有るドップがからの攻撃で左エンジンに煽り弾えを食らってしまう。

 

「二番エンジンに被弾したっ!?」

 

そう焦った声を上げるチャーリーが黒煙を吐き出す機体のコントールをどうにか取っていると、チャーリー!?とアメリアの慌てた通信が聞こえて来る。

 

「悪りぃなアメリア・・・ちょっとヤバいかも・・・?」

 

 

『何バカな事を言ってるんですかチャーリー・・・絶対に還って来ると約束した筈ですよっ!!』

 

 

そう怒鳴りながらも泣きそうな顔をしたアメリアにチャーリーがモニターに映る彼女にお前・・・!?と驚いていると、そのまま動くなよチャーリーっ!と相棒で有るショウの声がコクピットに響き渡る・・・

 

「貰ったぁ・・・いっけェ!!」

 

追いついて来たショウがそう叫びながらチャーリー機にへばり付いたいたドップをコアブースターのビームキャノンで仕留めると、ビンゴ!と叫ぶ声が聞こえだす・・・

 

『おいチャーリー無事か?無理なら早くベイルアウト(緊急脱出)しろ!?』

 

「いや、お前のおかげで俺自身も怪我は無いし機体もどうにか飛べるから心配するなって?」

 

エアブレーキを掛けながら横に付くショウのコアブースターにチャーリーがそう言いながらヘヘっと笑みを浮かべながらキャノピー越しに親指を立てていると、帰ったらお説教です!とムスっとしたアメリアからの通信にショウとチャーリーは顔を見合せ出す。

 

「やれやれ・・・じゃあ基地に戻ろうか?」

 

 

「今から起きる事を考えるとあんまり帰りたく無ぇけどな・・・」

 

 

 

ショウのコアブースターが翼を振りながらトリントン基地へと旋回して行くと、チャーリーのトリアーエズも渋々と言った感じで付いて行く・・・

 

 

~~~

 

 

「レーダーから敵機のIFFをロスト!CBP1とCBP2が撃破した模様です。」

 

 

「こちらも離脱したミデアから当基地への着陸許可を求められてますぅ!」

 

 

そう揃って報告を上げて来るアメリアとミリィの二人にそう良かった・・・と二人の上官で有るマリアから安堵する声と同時にヒャッホーと歓声がタワー内に響き出すと、ホントに無事で良かったです・・・とアメリアも内心ホッとしながらクスっと微笑む。

 

「まったく・・・俺はアイツ等に帰還させろと命令した筈だぞマリア曹長!」

 

 

「確かにそうですが、通信妨害を受けていたとアメリアからも報告を受けてますし・・・二人が独断で動いた結果では有りませんかバリサム指令?」

 

フフッと笑いながらワザとらしく首を傾げて来るマリアにまあ・・・今回はそういう事にして置くとバリサムが少し納得の行かない顔で戻って行くのでマリアは良かったわね?とアメリアの肩にポンと手を置きながら耳元で小さく呟く。

 

「今回は見逃してくれるみたいよバリサム指令?」

 

「ホントですか!?こちらトリントンコントロールよりCBP1、CBP2へ今回はお咎め無しらしいので安心して戻って来て大丈夫ですよ!」

 

マリアからの言葉に喜んだアメリアは早速ヘッドセットを付け直しながらショウ達に通信を繋ぐと、まだ安心できねぇな・・・と珍しく気弱なチャーリーの声が返って来る・・・

 

 



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チャーリーの意地とアメリアの疑惑

『基地までもう少しって所まで来たんだが・・・エンジンの油圧が下がってきて保つがどうか怪しくなって来やがったぜ』

 

「大丈夫なんですかチャーリー!?ちょっと機体の状況はどうなんですかショウ!」

 

『こちらCBP1・・・隣から見てもどうにかバランスを保っている感じでこのままだと着陸は難しいと思う。』

 

隣を飛ぶショウのコアブースターからの報告に冗談じゃねぇ!!とチャーリーが怒鳴り返しだす。

 

『俺は絶対にコイツと帰るぞ!ショウの時だってソイツのテスト飛行の時片肺で着陸しただろ。』

 

『僕の時も確かに片肺だったけどチャーリーのトリアーエズはエンジン両方の油圧が下がって来てるんだろう?さっさと機体を捨ててベイルアウトしろって!』

 

そう押し問答を繰り返す二人にイラっとしたアメリアはゴチャゴチャと五月蠅いですねぇ・・・と呟くと、その迫力有る低い声にショウとチャーリーもビクっとする中マリアもちょっとアメリア!?と少し後ずさってしまう・・・

 

「分かりました。そこまで言うんなら着陸させてあげますが・・・もし失敗何かしたりしたらチャーリーの墓碑銘にバカ野郎と刻みますが良いですね?」

 

『お、おう・・・絶対にタッチダウンを決めてやるぜ!』

 

アメリアの条件を呑んだらしいチャーリーのトリアーエズが止めろって!と叫ぶショウを無視してギヤをダウンさせフラフラと着陸体勢に入ると、ミリィ!!とマリアが慌ててその隣の管制官に向かって叫び出す。

 

「今から降りて来る機は全て上空待機にさせて!それと滑走路上に居る機は急いでタキシングさせて逃がししなさい!」

 

「もうやってますってぇ!念の為にレスキュー隊も要請済みですぅ!?」

 

そう報告しながらヘッドセットをずらすミリィに来ましたっ!とショウのコアブースターとエンジンから黒煙を上げるチャーリートリアーエズを視認したアメリアが指差すと、タイミングを合わせた様に滑走路へと消火用の車両が数台飛び出して行く。

 

「トリントンコントールよりCBP1へ滑走路が塞がると厄介なので先に着陸をしてそのままタキシングしてハンガーへ向かいなさい!」

 

『CBP1了解、じゃあチャーリー先に降りて待ってるからな!』

 

『CBP2了解、無事に降りたら冷たいビールを頼むぜショウ?』

 

こんな時でもしっかりと冗談を言って来るチャーリにショウは返答代わりにコアブースターの翼を左右に一度振りながら着陸体勢に入る。

 

 

『CBP1よりトリントンコントールへこれよりファイナルアプローチ(着陸体勢)に入る。』

 

「トリントンコントロールからCBP1へそのまま第一滑走路へ着陸して下さい。」

 

アメリアからの指示に声にショウのコアブースターが何事も無くキュキュとギヤの音を鳴らしながら無事にタッチダウンを決めると、さてここから勝負ですよチャーリー・・・とアメリアは心配そうにフラフラしながら滑走路へと向かって来るチャーリーのトリアーエズへと通信を繋ぎだす。

 

「トリントンコントロールからCBP2へこちらの滑走路はオールグリーンです。いつでも降りて来なさいチャーリー!」

 

「こちらCBP2、分ーってるから少し黙ってろってアメリア・・・!?」

 

 

流石に余裕が無いのかチャーリーの焦った声にホントにバカですね!とアメリアが苛立つと、左に流れ過ぎてます!位置の調整と高度も低いですパワーアップ!と指示を出し始めるのでホント可愛くねえな・・・とチャーリーは気合いを入れ直す様に操縦桿を握り出す。

 

『うるせえなアメリア・・・コッチも必死にやってるってんだよ!』

 

『ならしっかり操縦しなさい。それとも死にたいんですか?』

 

そう淡々と言って来るアメリアにそんな訳無えだろ!?と叫び返したチャーリーは左脚のラダーペダルを蹴っ飛ばしながら操縦桿を引きフルフラップ機体の揚力を最大限に活用しながらギリギリで滑走路に届くと機体角度からバチバチとエンジンから火花を散らしながらタッチダウンを決めて来る・・・

 

『どうだ見たかアメリアっ!?』

 

「CBP2の着陸を確認しました・・・パイロットは無事です。」

 

ホッとしながらチャーリーの安否を報告するアメリアにやったぁ!!とマリアとミリィが彼女の両肩から飛びつくと管制タワーの全員からもイヤッホウ!と再び歓声が上がり出す。

 

「ちょっと苦しいですって二人共!?」

 

「そんな事言って・・・一番うれしいのはアメリアでしょ?」

 

アメリアはフフッと微笑んで来るマリアに何の事ですか?と惚けていると、取り合えずアイツ等を出迎えに行ったらどうだ?とバリサムから指示が出される。

 

「良いんですか指令・・・」

 

「いや良いも何も君はあの問題児コンビの専属オペレーターだがウォーカー軍曹?」

 

そう二っと笑みを浮かべて来るバリサムに感謝します!とガタっと席を立ったアメリアが管制タワーから飛び出して行くと、お優しいですね?とクスクスと笑い出すマリアにたま(・・)にはな・・・?

と照れ臭そうに自分の席で頭を掻くバリサムから返事が返って来る。

 

 

「指令も良い所が有りますねぇマリア曹長?」

 

「そうね・・・所でミリィ?ちょっと私の頼み事を聞いてくれないかな・・・」

 

そんな真面目な顔をするマリアにどんな事ですかぁ・・・?とミリィから不安そうな顔で首を傾げられたマリアは少し困った顔になる。

 

「アメリアの事を調べて欲しいのよ・・・ミリィなら得意でしょうそう言うの?」

 

「先輩の事をですかぁ・・・何でまたぁ?」

 

そう不思議そうな顔をして来るミリィに今度お昼奢るからお願い!と手を合わせながらマリアが頼み込むと、事情は分かりませんけどC定食にデザートなら良いですよぉ♪と条件の提案するミリィからニコっと笑みが浮かぶのでマリアは好きなの頼んで良いから・・・と答えながらハァと溜息をつきだす・・・

 

「やったぁ♪それじゃあ今晩にでも基地のホストコンピューターに忍び込んで来ますのでしばしお待ちくださいねぇ?」

 

その間延びした声とのんびりした雰囲気で男性隊員からも人気の彼女なのだが・・・実は基地内でも一番の情報通でハッキングの天才だと言う事は彼女と契約を結んでいるごく一部のみの隊員による共有の秘密である。

 

「いつも言ってるけど絶対に尻尾は残さないようにね?」

 

「分かってますよマリア曹長ぉ。」

 

満面の笑みを浮かべるミリィに頼むわよとマリアが念を押すと、マリアはホント・・・何者かしらねあの子って?と以前感じた階級の矛盾と新任ながらも妙に場慣れした指示の出し方に違和感を感じるので有った。



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後輩とその1

 


 

 

 コアブースターのコクピットからガガっ!と滑走路で火花を散らしながらも無事に着陸したチャーリーのトリアーエズを見ながらショウは無茶して・・・と呆れた声を上げながらもホッとした顔を浮かべていると、久しぶりじゃのうショウ!と士官学校時代の元教官で現役時時代は疾風ウォルフと恐れられたファイターパイロットがキャノピーの下から声を掛けて来る。

 

 

「こちらこそお久しぶりですウォルフ少佐・・・今は輸送部隊に居るとは知りませんでした。」

 

 

「まあな・・・ただちょっと上と揉めた所為で今じゃ大尉になったんじゃよ?」

 

 

そう言いながらも盛大にワーハッハッハッ!笑いだすウォルフにそうなんですか!?とショウが驚いていると、汗だくのチャーリーからあーマジで死ぬかと思った・・・と滑走路まで迎えに行ったらしい小隊長のイエーガーが運転するジープから死に掛けた癖にお茶らけた声が聞こえて来る。

 

「ナイス・ランディングだったね相棒?」

 

ショウは嬉しそうな顔でジープから降りて来たチャーリーの右手に向かってパン!とタッチすると、まあな・・・とチャーリーから苦笑いが浮かび上がる。

 

「しかし教え子で有るお前達に助けられるとはな・・・どうじゃこの際この疾風の名をどちらか引き継がんか?」

 

「え・・・いや、そのチャーリーどうだ?」

 

「いや俺はその・・・ショウの方がスコア上じゃねえか?」

 

んっ?と笑みを浮かべて来るウォルフからの提案にショウとチャーリーがそう言い合いながら困った顔を浮かべてると、キュキュッと激しいブレーキ音と共にハンガーの中にジープが飛び込んで来るので一体何じゃっ!?とウォルフから驚いた声が上がり出す。

 

「あれ・・・アメリア?」

 

チャーリーはジープから降りて来た赤髪の下士官に少し驚きながら首を傾げると、ちょっとチャーリー!と近寄りながらバチっと頬を叩いて来るアメリアにギョッとしながら痛てえな・・・とその頬を擦り出す・・・

 

「それは生きている証拠です・・・本当に心配したんですよ私!」

 

そう声を上げながらも少し泣きそうな顔でキッと睨んで来るアメリアに向かってわ、悪りぃ・・・とチャーリーが困った顔で頭を掻き出すと、これで女ったらしの名も卒業だな?とイエーガーから楽しそうな顔でククっと笑われるのでチャーリーは少し黙っててくれませんかね!?と抗議の声を上げながらアメリアの顔をジッと見つめだす・・・

 

「心配かけて済まなかった・・・ホントにゴメンなアメリア?」

 

そう謝りつつもどこか嬉しそうに二っと笑みを浮かべて来るチャーリーに対しドキっとしたアメリアがそう言えばなんでこんな事を!?と内心ハッとしながらチャーリーの頬を叩いた事に驚くと慌てて頭を下げだす。

 

「私こそ急に叩いてしまい申し訳有りませんでした・・・」

 

「バカ・・・謝んなってアメリア?お前の指示を無視して着陸しようとした俺が悪いんだし・・・」

 

そう言いながら気落ちしだす二人が気まずそうな顔になると、まあまあ?とショウは二人の肩に手を回しながら二っと笑みを浮かべる。

 

「折角同じチームになったんだから仲良くしようよ?」

 

「そうだな・・・それじゃあ親睦を深める為に飲みに繰り出すか!」

 

ショウからのフォローにチャーリーがそう言いながらアメリアを見ると、またですか!?と呆れた顔で答えながらもクスクスと笑い出す赤毛の専属オペレーターに向かってショウとチャーリーはククっと

笑い出す。

 

「それじゃいつも通りCASCADE (リンの店)に行くからシフト上がりに迎え行くよ?」

 

「ハイハイ分かりましたよ・・・今日は六時上がりなのでそれくらいに管制タワー下で待ち合わせましょう。」

 

少し強引に誘って来るショウに溜息交じりに答えたアメリアがそう提案すると、じゃあ俺も行けたら行くな?と言いながら手を振りながらジープに乗って帰って行くイエーガーにショウ達も一旦解散する。

 

 

~~~

 

 

その日の夕方・・・アメリアがシフト交代の隊員へ引き継ぎの準備をしながら、まだかな?と何度も自分の腕時計を見ていると、何か用事が有るんですか先輩?と後輩で有るミリイから首を傾げられたアメリアはちょっとね・・・?と困る事でも無いのだが苦笑いを浮かべてしまう・・・

 

 

「さっきからそわそわと時間ばっか気にしてるしぃ・・・ひょっとしてウィルソン少尉とデートとかじゃ無いんですかぁ?」

 

 

「違いますってぇ!?それに何でそこでチャーリーが出て来るんですか!」

 

 

アメリアはそう言いながら、んっ?とキョトンした顔で首を傾げだすミリィに向かって慌てて両手を振りながら否定すると、ちょっと皆で飲みに行くだけです!と顔を真っ赤にする。

 

 

「それなら良いですけどぉ・・・ウィルソン少尉ってチャラいけど顔は良いので独身の女性隊員から結構人気が有るから気を付けた方が良いですよぉ?」

 

「そうなんですか・・・」

 

そう心配してくれる後輩にアメリアは少し胸がざわつきながらそう答えると、そうだミリィ?と纏め終わった報告書を閉じると共に首を傾げだす。

 



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帰還祝いその1

 

「もし良かったらミリイも来ませんか?ショウの彼女さんがやってるパブで飲むんですが・・・バウスネルン中尉とかも来ますよ?」

 

そう言いながらニコっと微笑むアメリアに何かに驚いたのかえっ!と声を上げたミリイがそれってジャック中尉も来ますかぁ・・・?と首を傾げだすので、アメリアはう~んと思案顔になる。

 

「ちょっと分かりませんが・・・何だったらショウ達に聞いてみますよ?」

 

「ホントですかぁ?」

 

そう驚いた後輩が急に後でメイク直さないとぉ・・・とコンパクトを急に出すので色恋沙汰の疎いアメリアはどうしたんだろうミリィ?と首を傾げながら『今日アルヴィン中尉来ますか?』と基地内しか使えない通信アプリでチャーリーへとメッセージを送ると、『聞いてみるな?』とすぐに返事が返って来る。

 

「来るかは分かりませんが・・・一応聞いてくれるそうですよミリィ?」

 

お互い簡素な文面だが何か良いな・・・と思ったアメリアはクスっと笑いながら首を傾げると、ヤッタぁ♪とミリィから嬉しそうな声が上がり出す。

 

 

「ヤバい~何を着て行ったら良いですかねぇ先輩?」

 

「そのままの方が浮かなくて思いますよミリィ。」

 

アメリアは何故か妙に気合いが入っている後輩にそう忠告しながら席を立つと、じゃあ先に行ってますね?と管制室を出る。

 

「了解ですぅ。引継ぎは任せて下さい先輩~♪」

 

 

といつもの勤務よりも張り切った声を出す後輩にアメリアはいつもあれなら良いのにな・・・と思いながら通路を歩いていると、急にドンと足元に何かが当たり出す・・・

 

「こんな所に一体何が・・・ってうわぁゴメンなさい!?怪我は無いですかボク?」

 

 

何故か足元に居た2~3才程と見える男の子を抱きかかえたアメリアが慌て出すと、らーじょぶと元気な声でニコっと笑って来る小さな男の子にホッとしたアメリアはクスっと微笑む。

 

「私はアメリアと言います。ひょっとして迷子ですか・・・?」

 

首を傾げながら尋ねるアメリアにん~?と自分でも良く分かっていないらしく自分の腕の中でキョトンとしている男の子に少し困った顔をしていると、アメリアそのまま捕まえて置いて!?と聞き覚えのある焦った声が聞こえて来るので、あれ?と振り向いたアメリアは慌てて走って来る自分とミリイの上官でマリア曹長に驚いてしまう。

 

 

「あのマリア曹長・・・この子は一体?」

 

 

「んっ?私の子よ。誰に似たのかヤンチャですぐにどっかに行っちゃうのよ!」

 

 

アメリアから逃げ出した自分の子を受け取ったマリアがそう苦笑いを浮かべながら、ほら挨拶しなさいライナス?と自分の子に向かって首を少し傾げると、あえりあ!と声を上げたライナスからキャハハと笑わられるとアメリアはもう私の名前を覚えたんですね。とニコっと微笑みながらその頭を撫でる。

 

「賢いお子さんですねマリア曹長・・・旦那さんは別の基地に居るんですか?」

 

「えっと・・・ショウやチャーリーと同期だったんだけどジオン機に撃墜されちゃってね。もう居ないんだ・・・?」

 

そうアハハ・・・苦笑いしながら困った顔となるマリアにえっ!?と驚いたアメリアは申し訳有りません私知らなくて・・・と慌てて頭を下げると、もう何でもない様な顔をするマリアからいや良いのよ!?とこちらからも慌てて両手をヒラヒラと振られる。

 

「確かにライナス・・・私の旦那が撃墜されたショウとチャーリーから聞いた時はショック以前に相当ムカついたわ・・・年下の癖にこの私に好き好き言っておきながら籍まで入れた上でまだ当時お腹に居たこの子を見ずに逝ちゃってさ!だから私は空の上から見ている筈のあのバカが羨ましく思うくらいこの子を愛そうと思って育ててるのよ♪」

 

「成程・・・だから旦那さんの名前をそのまま付けたんですか?」

 

天国に居る旦那さんへの当てつけかな?と思ったアメリアの言葉にその方がアイツも悔しがるでしょう?とマリアが楽しそうな顔でクスクスと笑い出すので、アメリアは結構この人性格悪いですね・・・とオンオフでの違いに内心戸惑いながらアハハ・・・と困った顔で苦笑いを浮かべる。

 

「あっゴメンねアメリア・・・何か愚痴ったみたいで?」

 

「いえ!?私で良ければいつでも聞きます。」

 

少し申し訳無い顔をするマリアにニコっと微笑んだアメリアがそう返していると、ママァ・・とマリアの腕の中で眠たそうなライナスの声が聞こえて来るのでマリアはお眠の時間みたいね・・・?と優し気な顔でその頭を撫でる。

 

「それじゃ私は部屋に戻るわね?アメリアは今からリンの所に行くみたいだけど・・・飲み過ぎちゃダメよ!」

 

「ハイハイ分かってますって・・・それではおやすみなさい。」

 

そう注意して来るマリア達を見送ったアメリアに、あっそうだ・・・と何かを言い忘れたのか完全に寝入った息子を抱きながらマリアが振り返って来るのでアメリアはんっ?と首を傾げだす・・・

 

「今日見ててちょっと気になったんだけど・・・パイロットなんか好きになったらダメよ?」

 

そう言うだけ言って帰ろうする上官に向かって、何ですかそれっ!?と抗議の声を上げたアメリアは顔を真っ赤にすると、じゃあまたね~?と言って手を振って食うそのマリアの背中を見送るので有った。

 





ミリィ=タニグチ伍長

年齢は20歳、トリントン基地管制タワーで勤務する管制官でのんびりとした口調が特徴でその可愛らしい容姿も有り基地内ではかなり人気の有る女性下士官で有る。

しかしその容姿とほんわかした雰囲気の裏ではハッカーとしての類まれなる腕前を発揮しちょいちょいと小遣い稼ぎをしている模様・・・

因みに4個上の姉が同じく地球連邦軍に所属している。




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帰還祝いその2

管制塔から出たアメリアはマリア曹長ったらもう・・・!と不機嫌そうな顔で待ち合わせ場所である格納庫まで辿り着き中を覗くとドップからの攻撃によりエンジンをやられたチャーリーのトリアーエズの前で腕を組みながら話している二人組を見つける・・・

 

 

「シゲさん、コイツどれくらいで治るんだ・・・?」

 

 

「そうだねぇ被弾した左エンジンはオシャカだし・・それに加えて右も無茶させたから一回オーバーホールかな?もう乗り換えるのをおススメするよ・・俺から言わせてもらえばもう限界だよこの機体はさ?」

 

 

シゲが腕を組みながらチャーリーのトリアーエズの現状を伝えるとチャーリーは、そっか・・・と言いながらガクっと項垂れるとポンと背中を叩かれる。

 

 

「何落ち込んでるんですかチャーリー?」

 

 

「アメリアか?いやちょっとな・・・」

 

 

そう苦笑いを浮かべるチャーリーに向かってアメリアはふ~んと言いながらチャーリーの機体に近づき被弾したエンジン部をそっと撫でる・・・

 

「チャーリーを守ってくれてありがとうです・・・」

 

アメリアがそう呟くとすぐにチャーリーから不思議そうな顔で叫ぶ声が聞こえて来る。

 

「おいアメリア何してんだ?」

 

「いえ何でも・・・それよりショウはどこですか?」

 

そう誤魔化すように首を傾げたアメリアが周囲を見ながらキョロキョロしていると、ショウなら今日の訓練の報告書を纏めてるぜ?とチャーリーからハンガー奥の待機部屋を指差される。

 

「分かりました。ちょっとショウにも挨拶して来ますね?」

 

「おう、俺もすぐリンの店に行ける様に準備しとくぜ!」

 

 

そう返して来るチャーリにお願いしますね?と答えたアメリアは今日の報告書ですか・・・?と内心その内容に興味を持ちながら扉を開けると、う~ん・・・と唸りながらデスクトップの前で独り言ちるショウの姿を見つけニヤニヤとしながらその背後へと近づく・・・

 

 

「コイツって高火力だしエンジン出力が高いのは申し分無いんだけど・・旋回性能が無さ過ぎてドッグファイトには向かないんだよな・・・」

 

大体纏め終わった報告書を保存し改めてコアブースターの基本データをノートPCで開いた報ショウがそう独り言ちたながら頭の後ろで腕を組んでいると、その割には結構乗りこなしてるじゃないですか?と突然背後から聞こえて来るアメリアの声にうわっ!?と驚いたショウは慌てて後ろを振り向くと、フムフム成程・・・とコアブースターのデータを見ているアメリアの姿が有る。

 

 

「ちょっ、バカ見るなってアメリア!一応これは機密扱いのデータなんだぞっ!?」

 

 

「もう見ちゃいました。しかし・・・あの機体ってV作戦とか言う試作機の運用試験と同じ教育学習型のOSが搭載されてるんですね?」

 

 

そう首を傾げながら尋ねて来るアメリアに向かって少し違和感を感じたショウがやけに詳しいんだね・・・と少し不審そうに聞くと、いやジャブローでも噂になってて!?と急に慌て出すアメリアにショウからそうなんだ・・・?と何やら疑う目をされたアメリアはそれはそうと!と慌てて話題を変え出す。

 

「さっきマリア曹長と会ったんですがショウとチャーリーは旦那さんと同じ部隊と聞きましたが・・・?」

 

「マリアが自分から話したのか!?アメリアに言うくらいだからアイツも大分吹っ切れたみたいだな・・・」

 

そう聞いたショウはホッとした顔をしながらもやはり仲間を守り切れなかった事も有り少し負い目が有るのかすぐに険しい顔を浮かべると、怖いですよ顔?とアメリアからクスっと笑われる。

 

「悪いアメリア。しかしマリアの奴は凄いな・・・僕はまだ吹っ切れて無いのにさ?」

 

「それが普通だと思いますよ・・・」

 

そう一瞬暗い顔を見せて来るアメリアにショウがえっ!?と驚いた声を上げると、いえ何でも有りません!と急にハッとした顔を見せて来るアメリアにショウはう、うんそれなら良いけど・・・?と答えながら首を少し傾げだす・・・

 

「おっとそう言えば、チャーリーを待たせてますし・・・そろそろリンさんの店に行きませんか?」

 

 

「そう言えばリンの所で帰還祝いするんだった・・・」

 

 

そう言いながら自分の腕時計を見る彼女に姿にヤバい遅刻するって!?と慌てたショウは取り合えず何か隠し事をしている様な感じがする彼女の事を一旦頭の片隅に置くと、慌てて機材を仕舞ってアメリアと共にカスケードへと向かうので有った。

 

 

~~~

 

 

「あっ!やっと来たわねショウ!」

 

 

あれからすぐにチャーリーが運転するジープで自分の恋人が経営するパブCASCADEへとやって来たショウはカランコロンと鳴るカウベルと同時に少しムッとして来るリンに向かってただいま・・・と声を掛けると、すぐにコロっと最愛の恋人からおかえりショウ♪と満面の笑顔が浮かび上がる。

 

「今日も忙しそうだね?」

 

「お陰さまでね♪」

 

その顔にホッとしながらショウがリンと談笑しながらいつもと同じようにカウンター席に座ると、取り合えずビール下さい♪とすかさず酒を注文するアメリアに相変わらず色気無えな・・・と呆れたかおsるチャーリーからツッコミが入るので有った。

 



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後輩とその2

「それで今日のテストはどうだったの皆?」

 

リンが三人の前にお酒と料理を置きながら聞くと、まあ上々だったかな?と答えたショウは二っと満足そうな顔を浮かべるが、一体どの口は言ってるんですか?とアメリアに取ってはそうでもないらしくビールジョッキ片手に抗議する声が上がり出す。

 

「この二人ったら私の指示を無視してジオン機に襲われている輸送機の援護へと勝手に行くし・・・」

 

「ちょっと待てよアメリア!お俺達の提案に乗ったのはお前じゃねえかよ!?」

 

 

リンが作ったシチューに入っているジャガイモを乗せたスプーンで指を差して来る行儀の悪いチャーリーにその辺は臨機応変って言うんです。と答えたアメリアからフィっと顔逸らされると、あらあら?とリンは随分と仲良くなった様に見える二人にクスクスと笑い出す。

 

「何だかチャーリーとアメリアちゃんの距離感がやけに近くなった様な気がするんだけどショウ♪」

 

「ああ、多分今日の一件じゃないかな?被弾したチャーリーがギリギリで基地に辿り着いたんだけど、その時アメリアがさ・・・」

 

 

カウンターの向こうか身を乗り出しながら聞いて来ようとするリンにショウが着陸後に起きた二人の出来事を話さそうとしたに瞬間にショウ!?と顔を真っ赤にしたアメリアから口を抑えられると、あっ!と聞き損ねたリンはまた後で聞こっと思いながらフフッと微笑む。

 

「所で遅いわねイエーガー中尉・・・ショウ達の帰還祝いって聞いたけどまだ誰か来るの?」

 

「えっと、後はジャック中尉と・・・アメリアも後輩を誘ってるんだよな?」

 

そう聞いて来るショウにはい。と答えたアメリアがカランコロンと鳴るカウベルに丁度着たみたいです。と閉まったドアの前でキョロキョロとしているピンク色のボブカットをした後輩を見つけると、ミリィこちですよ?と呼ぶ声にあっ居た居たぁ♪と声を上げながらミリィが歩いて来る。

 

「遅かったですねミリィ・・・マリア曹長の引継ぎになにか不備でも有ったのですか?」

 

「いえ、ただメイクを直してたら遅れちゃってぇ・・・所でジャック中尉はまだ来て無いんですかぁ!」

 

そう言いながら周囲を見渡しだす肉食系のミリィにまだ来てませんが・・・と答えたアメリアが苦笑いを浮かべていると、君がタニグチ伍長なんだ?とチャーリーから尋ねられたミリィは階級章を見ながらあっはい!と答える。

 

「俺はチャーリー=フォン=ウィルソン少尉で隣のコイツはショウ=カノウショウって言うんだけど・・・」

 

 

「あぁ!お二人の事は以前から知ってましたが・・・直接お話するのは初めてですねぇ?」

 

 

「確かに直接会う会うのは初めてだけどさ・・・やっぱり声と同じで顔も相当可愛いな?」

 

これはチャーリーの病気らしくムッとしたアメリアはえっとぉ・・・と少し困った顔する後輩を守る為にドスっと容赦なく鳩尾に肘打ちを叩き込むと、チャーリーからグフっとうめき声が上がり出す・・・

 

「あの・・・先輩?ウィルソン少尉は大丈夫なんですかぁ」

 

「あのバカは無視して良いです。」

 

椅子から転げ落ちながら悶絶しているチャーリーを心配そう見ているミリィに向かってフン!と機嫌悪そうにアメリアがそう吐き捨てながら自分の隣へ座る様に促すと、まあいつもこんな感じだから気にしないでね?と言って来るリンにミリィはそうなんですねぇ・・・と答えながらアハハと苦笑いを浮かべる。

 

 

「因みに私はそこに居るショウの恋人で、ここカスケードの美人店主のリン=ローダンセって言うんだけど・・・」

 

「あっ自己紹介が遅れましたぁ!自分はウォーカー軍曹の後輩でミリィ=タニグチ伍長ですぅ♪」

 

 

そうニコっと微笑むミリィが宜しくお願いしますねぇ?首を傾げると、宜しくミリィちゃん?と答えたリンから何を飲むと尋ねられたミリィは急に名前で呼ばれて少し驚きながらもではビールでぇ♪と答えながらアメリアの隣にちょこんと座り出す。

 

「ふ~ん・・・こんなお店が有ったなんて知らなかったですぅ?」

 

「私もショウとチャーリーの紹介されて知ったんですが・・・これほど心地よいお店は初めてですね。」

 

「そうですかぁ・・・」

 

まだ知り合って一月半程だが・・・いつも気難しいそうな顔をしている先輩の緩んだ顔にそう答えたミリィはこの人ホント可愛いなぁ・・・と思いながら上官で有るマリアから受けた仕事にハァ・・・と内心溜息をつきだす・・・

 

「どうしたのミリィちゃん?溜息なんかついて・・・」

 

 

「いえ、何だか色々と面倒臭いなってぇ・・・と世知辛い世の中に心の中で愚痴っていただけですぅ。」

 

 

リンはそう言いながら渡したビールをチビチビと飲みだすミリィにそうなんだね・・・?と良く分からないまま首を傾げるので有った。



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後輩とその3

「そう言えばぁ、お二人と直接お話するのは初めてですねぇ?」

 

アメリアの隣に並んで座って居るショウとチャーリーに向かってミリィから話しかけられた二人はそうだっけ?と言った顔で首を傾げていると、それに結構カッコいいですぅ♪とミリィがニコっと微笑んで来る。

 

 

「えっ!?おい聞いたかよショウ!あの子俺達の事を見てカッコイイって言ったぜ?」

 

「うんそうだね・・・。って言うか隣を見た方が良いよチャーりーは・・・」

 

そう忠告を兼ねたショウからの呟きにチャーリーがへっ?と不思議そうに隣を見ると、ムゥ・・・と明らかに機嫌悪そうな顔で睨んでいるアメリアの顔が映り込んで来る・・・

 

「そうですかそうですか・・・そんなにカッコいいと言われたいのなら私が何度でも呼んで上げますがチャーリー?」

 

「ちょっと待てって!何でそんなに怒ってるんだよお前は!?」

 

ニコニコと全く目が笑って無い顔をして来るアメリアに困惑気味のチャーリーがそう焦っていると、あっ因みに冗談ですよぉ?とミリィからクスクスと笑われてしまうのでこの場に居る三人と少し離れて料理してながら聞き耳を立てていたリンからえっ!と驚いた声が上がり出す。

 

「顔はまあ正直良いですけどぉ・・・基地では女ったらしと言う名で有名ですしねぇ?それならまだそちらの相棒でいらっしゃるカノウ少尉の方が良いですねぇ?」

 

「えっ!?僕・・・?」

 

「ダ、ダメだからねショウは私のだからミリィちゃん!」

 

そう慌てた声を上げながら牽制しだすリンにちょっとリンっ!?とショウから驚いた声が上がると、そんなの知ってますよぉ?と二人を揶揄ったらしいミリィは二人を見ながらニヤニヤとなる。

 

「へぇ~リンさんって結構独占欲強いんですねぇ?」

 

「そ、そんな事無いわよ!?」

 

年下のミリィによって完全に主導権を取られたリンがタジタジになっていると、おいアメリア・・・と隣のチャーリーから肘で突かれたアメリアはビールを煽りながら何ですか?と言った顔で隣を見る。

 

「お前の後輩だろ・・・ショウとリンが困ってるぜ?」

 

「そんな事私に言われても困りますって・・・」

 

正直アメリアもプライベートでミリィと会ったのが今日が初めてでその間延びした口調と同じく普段からのんびり屋のミリィがこんなにも絡んでくると思って無かったアメリアが内心頭を抱える思いで有る中チャーリーを挟んでその隣ショウからピコンっと携帯端末の音が鳴り出す。

 

 

「あっ、ジャック中尉からだ。イエーガーさんと合流してここに来るそうだよ?」

 

「えっホントですかぁ!?ちょっとメイクを直してきますぅ!!」

 

そう声を声を上げながら化粧室へと駆けこんで行くミリィの背中を見送ったショウがどうしたんだ急に!?と驚き出すと、どうもジャック中尉がお目当てらしいですね?とリンから新しいジョッキを受け取ったアメリアから呆れた顔で返事が返って来る・・・

 

 

「あら何言ってるのよアメリアちゃん!トリントン基地に居るパイロットの中から選ぶんならジャックって結構モテるのよ?」

 

「へえそうなんですか・・・声と名前は良く聞くんですがまだ会った事が無いんですよね。」

 

そう苦笑いを浮かべるアメリアにまあ俺の方が顔は良いけどな!とチャーリーが何故か張り合っていると、スマン遅くなった!と言いながらカランコロンとドアのカウベルが鳴り響き長身のイエーガーを先頭にもう三人程カスケードの店内へと入って来る。

 

~~~

 

 

「イエーガー中尉いらっしゃい♪って言うかジャックは随分と久々じゃないかしら?」

 

「だなリン・・・最近ちょっとサボリ気味の小隊の所為で正直言って忙しくて忙しくて俺も困ってるんだよ。なっイエーガー?」

 

イエーガーとは同期でのトリントン基地では第二小隊長で有るジャック=アルビン中尉がそう揶揄う様に肩を組みだすのでイエーガーは何も言い返せずにうっ・・・と言葉に詰まり出す・・・

 

 

「分かった分かった・・・今日は俺が奢るから好きなだけ飲みやがれクソッタレめ!」

 

 

「マジで!?よっしゃ今日はイエーガーの奢りらしいからトコトン飲めよ手前えら!」

 

 

そう声を上げるジャックに部下で有る隊員達が了解!と敬礼しながら次々とリンに向かって注文しだすと、悪い人では無いようですね・・・とアメリアはジャックの様子を見ていると、んっ?目が合ったそのジャックから首を傾げながら声を掛けられる・・・

 

「えっと・・・初めましてだよな?」

 

 

「一応そうですね。管制タワーで声だけでのやり取りはしていますが・・・」

 

 

そう苦笑いを浮かべて来るアメリアの声に聞き覚えが有るのかジャックからえっ!?と驚かれる。

 

 

「そっかお前がアメリアか・・・ミリィからも面倒見の良い先輩が来たって聞いてたけど?アイツの事を頼むな?」

 

「あっハイ!?こちらこそ宜しくお願いしますジャック中尉!」

 

そう答えながらアメリアがジャックと握手していると、化粧を直したミリィからあっ先輩!?と睨まれる。

 

「先輩はウィルソン中尉狙いなんだからダメですよぉ!?」

 

「ちょっとミリィ・・・私とチャーリーはそんな関係じゃ有りませんって!」

 

先日上がった噂の事を言っているのかアメリアがミリィに向かってそう抗議する声を上げると同時に、ヴィーヴィーヴィーと不意に聞こえて来る基地からサイレン音に店内に居る関係者達がリンの店で有るカスケードから慌てて飛び出して行く・・・

 

~~~

 

 

 



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 初めての対MS戦闘
初めての対MS戦闘その1


「えっ!?何コレ・・・何の音なの?」

 

「・・・空襲警報ですね。敵機が基地近くまで接近しているのかと・・・」

 

「って事はここが戦場になるのアメリアちゃん!」

 

「大丈夫ですよリンさん。そんな事は私達がさせませんから・・・取り合えずショウはリンさんと住民の皆さんを連れて地下のシェルターへ!」

 

冷静な顔でそう指示を飛ばして来るアメリアにショウが分かった。と答えながらリンの手を引いて酒蔵庫を兼ねたシェルターへとたまたま店に来ていた住民共々押し込むと、ねえショウ・・・と心配そうな顔で袖を引っ張られる。

 

「ショウも飛ぶんだよね・・・」

 

「まあね。ちゃん帰って来るから心配しないでよリン?」

 

「絶対だよ!約束破ったら承知しないんだから・・・」

 

「んっ、分かってるって、じゃあ行って来る。」

 

リンと軽く唇を合わせたショウが駆けて行くとその背中に向かってリンはショウだけじゃ無く皆も無事に・・・と祈り様に手をギュッと握るので有った。

 

 

~~~

 

「ゴメン遅くなって・・・」

 

「いえ、リンさん達は平気でしたか?」

 

「アメリアのおかげで今の所は落ち着いてるね。」

 

「そっか・・・それでこれからどうするかプランを聞いても?」

 

「そんなの有る訳無いじゃないですか・・・あれは一般人を混乱させない為のフェイクで今から作戦を考えるですよ!」

 

アメリアから聞こえて来る抗議する言葉にマジかコイツっ!?と彼女の冷静さに騙されたショウが呆れた顔で周囲を見渡すとイエーガーとジャックが店内に居ない事に気付く。

 

「隊長達は?」

 

「二人共真っ先に基地に戻りましたよぉ?おかげで全然ジャック中尉と話せなかったですぅ・・・」

 

「それはご愁傷様・・・取り合えず僕らも基地に戻ろうよ!ここに居ても仕方無いし・・・」

 

残念そうな顔でガクっと項垂れるミリィにそう声を掛けながらショウがチャーリーとアメリアを見ると、そうですね。と思案顔をしていたアメリアから顔が上がり出す。

 

 

「そうと決まれば急いで戻りましょう。何だか嫌な予感がします・・・」

 

そう言うが早く店を出たアメリアを先頭に四人でジープに乗り込むと、よっしゃ飛ばすぜ!と声を上げるチャーリーがアクセルを踏み込むと、ギャギャギャ!と砂埃を上げながらトリントン基地へと急行する。

 

 

「見てよ!もうスクランブル(緊急発進)が掛かってる。」

 

その道中でジープの荷台からショウが滑走路を飛び立とうとするFF-4トリアーエズの編隊を指差すと、ありゃあアラート待機中の第三小隊だな!と叫び返したチャーリーは見えて来た基地ゲートに合わせて減速しだす。

 

「何スピードを緩めてるんですかチャーリー?緊急事態何ですよ!」

 

「お前バカか!?強引にゲート何か突破したら警備兵に撃たれちまうだろうがっ!!」

 

「時間が勿体ないです。良いから突っ込みなさいっ!!」

 

チャーリーは助手席からそんな声を上げながらゴーゴーっ!!と指示して来るアメリアに向かってどうなっても知らねえからなぁ!!と叫びながらギヤをシフトダウンさせると、おいおいっ!?待て待て!!と声を上げながら停止を求めている警備兵を無視してゲートをぶち壊して基地内への侵入に成功する・・・

 

「バッカヤロウっ!!」

 

「顔はみたからなウィルソンっ!!」

 

 

そう叫んで来る警備兵二人をバックミラーで確認したチャーリーは俺の事バレてんじゃん・・・と苦笑いを浮かべる。

 

 

「まあ幸い犠牲は一人だけで済みましたし・・・後は私達三人で挽回しましょう!」

 

「「了解」」

 

「ちょっと待て!俺って捨て駒なのかよ!?」

 

何事も無かったかの様に纏めてくるアメリア達三人にチャーリーが異議有り!と答えている中・・・トリントン基地司令部では基地指令で有るバリサム大佐の焦った声が響き渡っていた・・

 

「ホントに敵機で間違い無いんだなマリア曹長!?」

 

「IFF《敵味確認信号》は勿論の事、連邦軍の共用チャンネルから国際チャンネルまでありとあらゆるアプローチを掛けましたが有りませんって!」

 

「チッ!こんな端に有る田舎基地にまで進攻して来るとはジオン共め・・・迎撃機はどうなっている!」

 

バリサムからの声に応えたマリアがキーボードを叩きながら頭上の大型モニターに既に上がっている第三小隊計九機を表示させると、バリサムはムゥ・・・右手で顎を擦りながらムゥ・・・と唸り出す。

 

「第三小隊接敵までおよそ30秒です。更に一分後に第二小隊が上がるとの事です指令!」

 

「ジャックの奴早いな・・・良しマリア!たった三機程度の爆撃機でこのトリントン基地を陥落出来ると思っていた連中に対しに鉄槌を下せっ!」

 

「イエッサー!第三小隊エンゲージ、敵航空部隊へ先制攻撃を開始せよ。」

 

バリサムの指示に従いオペレーターのマリアが攻撃許可を出すと、了解!と返して来た第三小隊長の声と同時に九機の戦闘機がミサイルを発射するのがレーダーにも映るがそれが即座に迎撃され第三小隊の機影も次々とレーダーから消えて行く・・・

 

「お、おい・・・何が起きている!」

 

「冗談でしょう・・・トリントンコントールより第三小隊っ!?」

 

バリサムの声にマリアが慌ててキーボード叩きながら飛行第三小隊長へと通信繋ぎだす。

 

 

「トリントンコントロールより第三小隊へ状況は!」

 

「こちら第三小隊・・・敵機は爆撃機にあらずモビルスー・・・」

 

「応答せよ!応答せよ・・・バリサム指令第三小隊全機のシグナルロストです・・・」

 

モニターを見ながらザーと聞こえて来るノイズ音にマリアが顔を伏せると、最後に第三小隊長から報告が有りました。と言って来るのでバリサムは悲痛な顔のままな今度はなんだ・・・と尋ねる。

 

「敵機は爆撃機では無くモビルスーツが居るとの事です・・・」

 

「なっ!?本当かそれは!」

 

更に追い打ち求めて来るマリアからの報告にバリサムがこれほどの不幸が有って良い物かと打ちひしがれていると、遅れましたっ!!とアメリアとミリィがまるで遅れて登場するヒーローの如く飛び込んで来るので有った。

 

 

~~~

 

 



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初めての対MS戦闘その2

「では後ほど・・・!」

 

そう言いながらアメリアがミリィ共に手を振りなが司令部が有るビルにと勢い良く走って行くと、取り合えずどうする?と言いながらアクセルを煽りだすチャーリーにショウはニヤっと笑みを浮かべる。

 

「取り合えずおやっさんの所に行くぞ!」

 

「だな・・・所でショウ?」

 

「何だよチャーリー・・・」

 

「アメリアって何者だと思う?」

 

「さあね・・・取り合えずこの厄介ごとが済んだら聞いて見たら?」

 

さっきの指示も有りアメリアの事が気になるのかチャーリーからの言葉にショウが首を傾げているとそうだな・・・と答えながらチャーリーが運転するジープがフルブレーキさせながらハンガー内で停車すると、何だぁ一体!?と整備班のホワイト大尉から驚いた声が上がり出す。

 

 

 

「おやっさん、僕のコアブースターの出撃準備・・・って、ホワイト大尉とウォルフ大尉!?」

 

 

ショウがハンガーの中に入った瞬間目に入ったのは、取っ組み合うホワイトとウォルフで・・・何やら言い合っているのが見える・・・

 

 

「緊急事態なんじゃろうが!?・・・予備機でも良いから!?ワシが飛ぶと言うのに!!」

 

 

「んなものここにはねぇ!それにもう何年も戦闘機に乗ってねえ奴に乗らせる訳ねぇだろうが、このバカ野郎!!」

 

 

ショウはああもう!と言いながら大人気なく言い争っている二人を強引に引きはがすと、呆れた顔で二人を見る。

 

 

「こんな時に何やってるんですか二人共・・・!」

 

 

「いや、ホワイトの奴の頭が固くての・・?」

 

 

「ああ!?舐めんなんなよウォルフッ!昔のお前さんならともかく、今の図体に収まる耐Gスーツなんか有りゃしねぇんだよ・・・一昨日来やがれってんだ!!」

 

 

ショウはウォルフ大尉が基地の危機に飛びたいと言うのも分からなくも無いが・・・おやっさんの言う事も正論で有り、横に随分と広がってしまったウォルフ大尉に入る耐Gスーツは存在しないし、そもそもこのトリントン基地には予備機が無いのも事実で有る。

 

 

「ウォルフ大尉!代わりに僕らが飛びますから大尉は大人しくしててくださいよ?」

 

 

「ムゥ・・・ショウがそこまで言うのなら仕方無いのう・・・」

 

 

現役パイロットで有るショウの言葉にウォルフがそう言いショウの目をジッと見ると、所でお前達!?

とウォルフを止めてくれた事に感謝しつつも整備班のホワイト大尉から焦った声が響き出す・・・

 

 

「おい坊主・・・出るのは良いがバリサムの奴の許可は出てるのか?」

 

「出てませんよ?って言うか四の五の言っている場合ですか・・・」

 

そうジロっと睨んで来るショウにうっ・・・とホワイトがたじろぐ・・・

 

 

「分かった。坊主のコアブースターはともかくだ・・・お前ぇは一体何に乗るつもりなんだチャーリー?」

 

 

「何ってそりゃあ・・・あっ!?」

 

 

チャーリーはシートを被されている愛機であるトリアーエズに唖然とすると、ホワイトは仕方無ぇな・・・と頭を掻きながら整備主任で有るシゲの名を叫ぶ。

 

 

「おい、シゲ・・・このコアブースターと奥のセイバーフィッシュに燃料と弾薬を込めやがれっ!」

 

 

「ちょちょっと・・・おやっさん本気ですか!?この2機は試作機ですし・・・しかもセイバーフィッシュの方はジャブローから入って来たばっかの新品ホヤホヤですぜぇ!?」

 

 

「うるせえっ!んな事は俺も分かってるから、さっさと兵隊集めて出撃準備始めろっ・・・もたもたしてる奴から砂漠に埋めちまうぞっ!!」

 

 

 

ホワイトの怒鳴り声にシゲはハ、ハイッ!と敬礼しながらセイバーフィッシュの方へ駆けて行くと、チャーリーがあの・・・と困った顔をしながらホワイトに首を傾げる。

 

 

「おいチャーリー!俺が上手い事バリサムの奴に言っといてやるからさっさとコクピットに入って初期設定を行えっ!!」

 

 

「分かりましたっ!恩に着ますおやっさん・・・」

 

 

そう怒鳴って来るホワイトにチャーリーが敬礼しながらセイバーフィッシュの方へ向かうと、ホワイトは被っていた帽子のツバを掴みながらヤレヤレとニッと笑みを浮かべる。

 

 

「お前さんも甘いと言うか、浪花節って奴かのうホワイト?」

 

 

「う、うるせえな!」

 

 

ニヤっと笑みを浮かべるウォルフにホワイトは照れたのか被ってた帽子を深く被り直しながらそう呟く。

 

 

 

~~~

 

 

 

「状況はどうなってるんです!」

 

ショウとチャーリーが出撃準備に取り掛かっている中・・・ミリィと共に司令部を兼ねている管制塔へ駆け込んだアメリアの声に上官であるマリアから左右に首を振らるとアメリアはチッ・・・と舌打ちする。

 

「誰か私に防衛ラインの展開を状態を!」

 

「じゃあ私がしますねぇ先輩・・・」

 

そう声を上げるアメリアにミリィがマリアの隣でキーボードを叩き出すので、ちょっと二人共!?と直属の上管でマリアは慌て出す。

 

 

「成程・・・モビルスーツ相手ではこの基地の戦力では太刀打ちできませんね。」

 

「えっ・・・アメリア!?」

 

 

ミリィから敵部隊の戦力をモニターで確認したアメリアが困った様に腕を組むと、では何か奇策でも有るのかね?と基地指令のバリサム大佐からジロっと睨まれる。

 

 

「無い事も有りませんが・・・その為には空と地上における全ての指揮権を私に預けて頂ける事が条件です。」

 

「バカを言えウォーカー軍曹・・・そんな事を許可出来ると?」

 

そう言いながら手を振るバリサムに向かってミリィがそうでしょうかぁ・・・?何やら企んだ様にクスっと微笑んで来る。

 

 



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初めての対MS戦闘・・・初めてのその4

『情報を制する者は世界を制す・・・これは例え自分が弱くても強くなれるおまじないだからねミリィ・・・』

 

4つ上の姉から小さい時に教えて貰った言葉を何度も反芻し覚えた技術を駆使したミリィはジッとアメリアを見つめながらその経歴を説明する。

 

「アメリア=アン=ウォーカー元少尉・・・UC0077年オランダに有る士官学校を首席で合格し、その後は異例にも特殊任務部隊に拝礼され様々な任務で優秀な活躍を残すと有りますし・・・MSに対する訓練も受けているとの事ですがその辺りどうなんですかぁ先輩・・・?」

 

「何でその事を・・・!?」

 

 

ミリィの説明にアメリアが目を見開きながら驚いていると、マリアからちょっとミリィ!と怒声が上がり出す。

 

 

「調べろとは言ったけどバラせとは言って無いわよ!」

 

 

「そんな事言ってる場合ですかぁ?ここは先輩の素性を知らせた方が手ッ取り場合ですよぉマリア曹長?」

 

そんな事を言って来るミリィに困った顔したマリアがうっ・・・と返す言葉に詰まっていると、ミリィの言う通りです。とアメリアは苦笑いしながら司令部に居る全員を見渡す・・・

 

「彼女の言う通り私は元特務でMSに対する訓練も受けてはいます。それでどうしますバリサム指令?」

 

 

こうなったら開き直るしかないと思ったアメリアがジッと基地指令のバリサムを睨んでいると、そのバリサムから勝算はどれくらい有る?と尋ねられたアメリアはそうですね・・・と腕を組みだす。

 

 

「もし私の要求が全て通れば負けはしませんが?」

 

 

「どうせハナから負け戦だしな・・・宜しい君の指揮権を条件を呑むとする。」

 

 

「バリサム指令有難うございます。因みですが・・・では早速彼らの出撃許可をお願い出来ませんか

?」

 

 

そうニコっと微笑むアメリアの声に何だ一体・・・?とバリサムが滑走路の方を見ると、第一小隊のイエーガーのFF-4トリアーエズにショウのFF-7bstコアブースター、チャーリーのFF-3セイバーフィッシュに続き第二小隊のジャック率いる戦闘機部隊も滑走路も滑走路上でタキシングを行っている。

 

 

「いつの間に・・・これも君の差し金かねウォーカー軍曹?」

 

「いえバリサム指令、そう言う訳では有りませんが・・・この基地を元よりすぐ傍に有る町を守る為にも承認をお願いします。」

 

 

そんなワザとらしい事を言って来るアメリアに向かってバリサムがガシガシと頭を掻いていると、整備班のホワイト大尉から入電ですが!?と補佐官から声を掛けられたバリサムは繋げ・・・と答えながら頭を抱えだす・・・

 

「もう良い・・・どう転んでもこのトリントン基地の戦力ではMS相手には太刀打ち出来ん。こうなったら俺が全ての責任を取るからウォーカー軍曹・・・君に託すぞ」

 

 

どうせ一枚噛んでいるんだろうと思ったバリサムがジロっとアメリアを見ると、了解しました。と答え実戦指揮官と言う大義名分を得たアメリアはフフッと微笑みながらヘッドセットを装着するので有った。

 

 

~~~

 

 

「アメリアの奴まだかよ・・・」

 

 

「落ち着けってチャーリー・・・多分アメリアにも考えが有るんだと思うしさ?」

 

 

このまま出ても軍機違反になります!と言うアメリアの注意の下ショウがチャーリーを窘めていると、ほう・・・お前もこの短い間で自分と成長したみたいだな。と自分が所属する第一小隊長のイエーガー=バウスネルン中尉から驚いた様にニヤニヤと笑われるとショウはどう言う意味ですか!と抗議の声を上げる。

 

 

「俺が言った通りだ。今までのお前ならすぐにでも飛び出そうとしただろう?」

 

 

「そんな事は・・・無いとは言い切れませんね・・・」

 

 

ショウの性格を承知しているイエーガーからの言葉にそう答えながらショウがそう答えているとピーと鳴る通信アラームと同時にアメリアから各飛行隊へ!と通信が入り出す。

 

 

『CB1CB2及び第一第二小隊へ通達です。これより各機はトリントン基地指令バリサム大佐の一任により私アメリア=アン=ウォーカーが指揮を執ります。』

 

 

そんなアメリアから指示に第一第二小隊の面々からへっ!?と驚く声が上がる中・・・いち早く反応したのがアメリアの事を気にしているチャーリーだった。

 

 

「俺は良いぜ?アメリアの指示なら間違いねぇしな!」

 

 

「僕もチャーリーの意見に賛成・・・アメリアと指令のやり取りは全員聞いてたしね?」

 

そんな事を言って来るショウに第一小隊長と第二小隊のイエーガーとジャックからもククっと笑われたアメリアはちょっとミリィ!とそんな事が出来る後輩に向かって叱り出す。

 

 

「勝手に通信回線を弄らないで下さい!」

 

 

「あれぇ?おかしいなぁ・・・いつの間にズレたんだろうぉ?」

 

 

そうワザとらしく首を傾げるミリィに向かってアメリアがまったくもう!と声を上げていると、全機上げるわよ!と叫んで来るマリアにアメリアは慌てながらお願いします!と答るので有った。

 



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初めての対MS戦闘その4

ザワザワと騒がしく混乱の真っただ中に有る管制タワーの中で基地指令で有るロイ=バリサム大佐は目の前で戦闘指揮を執っている赤髪の下士官の後ろ姿を見ながら腕を組んでいた。

 

 

(優秀だとは思っていたが・・・まさか特務から来てたとは、それに何故彼女は降格したんだ・・・?)

 

 

新任のオペレーターが回って来ただけと思っていたバリサムが、後でもう一度その辺りの書類を確認しようと考えていると、バリサム指令!と駆け寄って来る管制官の纏め役で有るマリア曹長から声が掛かる。

 

 

「基地近くの街の住民避難ですがやはり間に合いそうに有りません・・・」

 

「だろうな・・・しかしスマンなマリア?雑用等させてしまって・・・」

 

「いえ、そんな事は有りません。どっちにしろ今私があそこに居ても役に立ちそうに無いので・・・」

 

 

そう苦笑いを浮かべるマリアの先には綿密な打ち合わせをしているアメリアと素早いタッチでキーボードを叩ているミリィの姿が有る。

 

(アメリアはともかくミリィも普段からあれくらいキビキビ動いてくれたら良いのにね・・・)

 

内心ではそう愚痴りながらも仲間に入れない事にマリアは少し自分の役立たずに対し悔しく感じてしまうので有った。

 

 

「とにかく、私は住民避難の為に地上部隊との中継役に専念しますので二人の事を頼みます。」

 

「分かった。慣れんかもしれんがそっちの事も重要だからな・・・あまり気負うなよマリア?」

 

マリアはフォローしてくれているのか、二っと笑みを浮かべて来るバリサムにキョトンとしながらもクスっと返事の代わり微笑む。

 

 

 

~~~

 

 

 

「各機へこれよりブリーフィングを行いますので良く耳をかっぽじって聞く様にお願いします。」

 

口調こそ普段通りだがいつもよりピリっとした声出すアメリアからの通信に敵機へと迎撃に上がったショウ達はコクピットの中で緊張感に包まれる。

 

「知っての通りだとは思いますが、敵機はMS・・・所謂ジオンが開発した人型兵器で爆撃機が運びながら我がトリントン基地へと迫りつつ有ります。機数は三機、更に護衛にドップが一個小隊程ついている模様です。」

 

 

「そりゃあまた大層なゲストだな・・・それで俺達はどんな風にエスコートしたら良い?」

 

 

そう割って入るジャックの冗談にアメリアを除く全員からククっと笑い声が聞こえだす。

 

 

「そうですね・・・取り合えず、皆さんにはゲストの団体さんをダンスに上手く誘いながらも下手くそに踊って貰いましょうか?」

 

 

「んっ、どう言う事だアメリア?」

 

 

ジャックのジョークに乗っかったらしいアメリアの言い回しにイエーガーが首を首を傾げると、要はこうです。とアメリアは続ける。

 

 

「最初に一撃を加えたらすぐに離脱して下さい。絶対に交戦をしたらダメですからね!」

 

「おいちょっと待て!逃げるのか!?・・・ジオンの奴等は基地を狙ってるんだぞ?」

 

「ええ、知って居ます。・・・ですが、はっきり言ってMS相手では戦っても負けますよ。」

 

 

そう断言するアメリアになっ!?とイエーガーが言葉を失うと、じゃあ指揮官様は何か良い手でも有るのかよ!と若干ムッとしたジャックから抗議の声が上がると、勿論です。とアメリアは意地の悪い顔を浮かべる。

 

 

~~~

 

 

 

「これで空は良いとして今度は地上ですね・・・地上部隊とのホットライン形成はどうですかミリィ?」

 

 

「基地守備隊とは指揮系統が別ですからねぇ・・・っと、今繋がりますぅ!」

 

 

ショウ達に自分の描いた作戦内容を伝えたアメリアから尋ねられたミリィが通信回線の解析を終えエンターキーを叩くと、イエーガーやジャックと同年代に見える銀髪を長く伸ばしたどこかチャラ臭い男性が

メインモニターに映り出す。

 

「基地守備隊機甲部隊の指揮官をしているタンク=ビンセント中尉です。私をお呼びとの事ですが・・・こんな時に一体どんな用でしょう?」

 

 

クセの強い物言いをするタンクと画面越しに向かい合ったアメリアは嫌いなタイプですね・・・と内心苦笑いを浮かべる。

 

 

「お初にお見えになります中尉殿。私はアメリア=アン=ウォーカー軍曹と言い、今起きている迎撃任務の作戦指揮官を務めさせて貰っていますので、以後お見知りおきを・・・」

 

「へえ・・・アンタが噂のかわい子ちゃんか?何で君みたいな綺麗な子が作戦指揮を執ってんのかは後で聞くとしてだ、俺に何の用なんだいアメリアちゃん?」

 

 

自分を小バカにしているのか軽々しく名前を呼んで来るタンクにアメリアからイラっとする様に舌打ちが聞こえると、先輩・・・とその様子を心配するミリィから顔を見上げてしまうので、ハッとしたアメリアはコホンと咳払いしながらニコっと微笑む。

 

「いえ、ちょっと中尉にお願い事が有るんですが聞いてくれますか?」

 

 

「デートのお誘いなら俺はいつも受け付けてるが・・・」

 

 

「成程・・・でしたら、お互い生き残る事が出来たらそのお約束を果たします。」

 

 

アメリアがそう答えながら微笑んだまま首を少し傾げると、思案顔を浮かべたタンクからふ~ん・・・と返事が返ると何か考える様に顎を擦り出す・・・

 

 

「そんな事を言って来るとはこの厄介な状況をどうにか出来ると言う事で宜しいのかな・・・ウォーカー軍曹?」

 

「ええ、ビンセント中尉・・・その打開策には中尉の部隊が必要なのです。」

 

 

 

アメリアは真剣な眼となったタンクを更に押すと、すぐに分かった・・・と頭をガシガシと掻くタンクから返答が返って来る。

 

 

「そこまで自信が有るんならお前に賭けてみようじゃないかウォーカー軍曹・・・俺にここまで言わせたんだから絶対に着地と住民を守ると約束しろよ?」

 

 

「それは勿論です・・・ですが、勝てる保証は無いのでその辺りは勘弁してくれると助かります。」

 

 

そう困った様に苦笑いを浮かべるアメリアにどう意味だ・・?とタンクが不思議そうな顔を浮かべてると、もうすぐ戦闘空域に入りますよぉ!と声を飛ばして来るミリィにアメリアはそれではまた後で・・・と一旦通信を切るので有った。

 



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初めての対MS戦闘その5

「さあて面白くなってきましたね・・・迎撃機とジオン機との接敵まではミリィ?」

 

「約120秒後ですぅ!」

 

「了解です。各機へ再度通達です。先程も言いましたが絶対に敵MSとは戦わない様にお願いしますよ!」

 

ミリィからの報告にアメリアがショウ達へ指示の徹底をしていると、いやいや笑ってるし!?とミリィはクスっと微笑んでいる彼女の横顔を見ながら内心驚く・・・

 

(しかもこんな状況なのに何だか楽しんでる様な気がしますねぇ・・・?)

 

中央に有る戦術ディスプレイを見ながらニヤつくアメリアに対し、そう感じたミリィが不思議そうに首を傾げていると、ピーっ!と自分のデスクに通信アラームが鳴り響き出す。

 

「先輩!第1小隊のバウスネルン機から敵機視認との事ですぅ!!」

 

「その様ですね・・・もう一度ビンセント中尉と繋いで下さいミリィ?作戦を第二段階へと進めます。」

 

 

~~~

 

 

「12時に敵機、アメリアの言っていた通り絶対に空戦はするなよ・・・特にショウとチャーリーは絶対にだ!」

 

「分かってますって・・・一撃加えた後は離脱する。心得てますって・・・なぁチャーりー?」

 

「おうよ!俺達が約束破った事を有りますかイエーガー隊長?」

 

「ああ、山ほどにな・・・第二小隊も心の準備は良いか?」

 

問題児で有るショウとチャーリーの言葉にイエーガーが不安を感じながら隣を飛ぶ同期で有り第二小隊長のジャック=アルヴィン中尉が搭乗するフライアローを見る。

 

「コッチもオッケーだ。ドップの相手はコッチで引き受けるぜイエーガー!」

 

そう言いながらジャックがコクピットの中から親指を立てるのを見たイエーガーも頼む・・・と答え同じくジャックに向けてサインを送っていると、その右後ろで編隊を組んでいたチャーリーのコクピットにピーっと通信アラームが聞こえだす・・・

 

「アメリアからのプライベート回線・・・?」

 

会敵前に一体何だ?と思ったチャーリーが首を傾げながら繋ぐと、あっ・・・チャーリーとアメリアから少し戸惑った声を聞こえて来る。

 

 

「んっ?戦闘前だって言うのに何だよアメリア・・・」

 

 

「い、いえっ!?その・・・ちゃんと無事に帰ってきてくださいね・・・?」

 

 

そう少し心配そうな声を上げるアメリアにチャーリーは顔を赤くしながら、えっ!と驚いた声をだす。

 

 

「ふ~ん・・・何だ俺の事心配してくれてる訳なんだアメリアは?」

 

「うっうるさいですね!私は別に心配何かしてませんし、ただ全員無事に帰って来て欲しいだけですよ!!」

 

「じゃあ何で俺にだけ通信を繋ぐんだよ?」

 

「うにゃ!?」

 

チャーリーからの冷静な返しにアメリアから妙な声が上がると、コイツってホント変な奴だな?と思いながらチャーリーはコクピットの中でククっとつい笑ってしまう。

 

 

「仕方ねえな・・・ちゃんと無事に帰って来てやるからその時は一杯奢れよ?」

 

「むう・・・約束ですよ。」

 

 

プライベート回線の為分からないが、チャーリーは不機嫌なアメリアが時折見せる唇を尖らせる顔を想像しながら了解した。とニヤニヤしながら答えていると、アメリアからあっ・・・と焦った声が聞こえて来る。

 

「すみませんチャーリー・・・これで時間切れみたいです。ご武運を・・・」

 

「ああ、じゃあまたなアメリア?」

 

そう答えるチャーリーのアメリアから通信を切られるとチャーリーはハァ・・・溜息をつく。

 

「あんな可愛い事を言われたら絶対に死なれねえじゃねえかよ・・・」

 

チャーリーがそう独り言ちていると、ピーっと再び通信アラームが鳴り響くので有った・・・

 

 

~~~

 

 

 

「ミサイルの有効射程距離圏内に敵機を捉えたぞ!各機エンゲージ・・・ありったけばら撒いて一気に奴さん達の後背へと突き抜けるぞ!!」

 

 

そう指示を飛ばすイエーガーのトリアーエズを先頭にショウのコアブースターとチャーリーのセイバーフィッシュがアフターバーナーを吹かしながら機体を加速させると、敵機もコッチに気付いたのか護衛機で有るドップが前へと出て来る。

 

 

「敵機よりロックオン反応!」

 

「それはお互い様だ・・・全機一斉射!フレアを焚きまくれ!!」

 

ジオンが実用化に成功したと言われるミノフスキー粒子の所為で無線誘導兵器類は無力化され赤外線誘導ミサイルを放とうしたイエーガーはHUD(ヘッドアップディスプレイ)に映るドップへとスティックのボタンを押す。

 

「フォックス2!」

 

そう叫んだイエーガーの声と同時にトリントン基地所属機からも同様にミサイルが放たれると、対航となったドップ三機からミサイルランチャーが撃たれる・・・

 

「当たるかよ・・・フォックス3っ!!」

 

フレアを機体後部から射出させたイエーガーが20ミリバルカン砲を牽制でドップに向かって撃ちながらショウとチャーリーと共に突破すると、しまった!?と護衛を務めていたドップの隊長が慌てる。

 

 

「ぜっ全機反転しろ!?MSを乗せたドダイでは逃げ切れ・・・」

 

そう指示を言い終える前に後方からタイミングを合わせて来たジャックがその隊長機を撃ち落とすと、なっちゃねえな・・・?とジャックはフライアローのコクピットの中で嘲け笑う・・・

 

「各機へ!まんまとケツを見せた間抜けな奴等を食い尽くせっ!」

 

そう叫ぶジャックの声に第二小隊の二機が隊長機を失い逃げまどうドップを追い掛ける出すので有った。

 

 

~~~

 



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初めての対MS戦闘その6

「第二小隊が敵機との交戦に入ったのを確認しましたぁ!良い感じに敵MS部隊との引き離しに成功してますよぉ先輩!?」

 

ミリィからの報告に戦況ディスプレイを見ていたアメリアもニヤリと笑みを浮かべる。

 

「私が思っていたよりも敵護衛機の練度が低いようですね。第一小隊はどうですミリィ?」

 

「接敵まで後10秒程・・・カウント行きますよぉ先輩・・・スリートゥーワン!」

 

「各機へレッツ・ダンス!」

 

そう声を上げたアメリアがヘッドセットの向こうへと指示を飛ばすとイエーガー率いる第一小隊の動きが変わり出す。

 

 

~~~

 

 

「アメリアからの合図が来たぞ!俺にしっかり付いて来いショウにチャーリー!」

 

「誰に言ってるんですか。それくらい余裕ですよ?」

 

「そうそうショウの言う通りだぜイエーガー隊長?」

 

イエーガーはそう生意気な事を言って来る部下二人に向かって抜かしやがれ!と声を上げると、目の前に見える爆撃機に乗った一つ目・・・MS06FザクⅡに向かってHUDの照準を合わせる・・・

 

「乗って来いよ・・・フォックス3!!」

 

そう叫んだイエーガーがスティックのトリガーを引きながら乗機で有るトリアーエズから20ミリバルカン砲を撃つが、当然の如くMSの装甲に対しては歯が立たない上に向こうには更に大口径の武器が有る・・・そのまま何事も無い様にサブフライトシステムで有るドダイに乗ったままザクⅡは主兵装で有る120ミリマシガンを連射する。

 

「舐めんな一つ目野郎めっ!!」

 

トリアーエズのコクピットの中でイエーガーがそう叫びながら機体をバレルロールさせ必死に回避すると、さらにその上空からそのザクに向かって突っ込んで来る機体が有る。

 

「イーッヤッホウ!!騎兵隊の到着だぜぇ・・・くたばれ一つ目め!」

 

ブースターパックを装着したチャーリーのセイバーフィッシュがミサイルランチャーを発射しながら急降下すると、その攻撃により先行していたザクⅡの頭部とドダイのコクピット付近を吹き飛ばしてしまい徐々にコントロールを失いだす。

 

 

「捉えた・・・」

 

そう様子をシートの後ろから引き出した狙撃用ゴーグルで見ていたショウがザクⅡに向けてコアブースターに装備されているビームキャノンを発射すると見事に胸部に命中しドダイと共に爆散してするとショウは満足そうに二っと笑みを浮かべる。

 

「ビンゴ・・・!」

 

 

コアブースターのビームキャノンによる狙撃に成功したョウがそう声を上げイエーガーとチャーリーと合流する為に高度を下げようとしていたそんな中・・・残った二機のザクの指揮官は憤怒していた。

 

 

「たかが戦闘機相手にやられたというのか!?脱出の確認は!」

 

「出来てません・・・恐らく乗機共々・・・」

 

そう苦々しく答えて来る部下からの報告にその指揮官はそのまま離脱しようとするイエーガー達をモニター越しにキッと睨みつける。

 

「おのれ連邦の豚共め・・・伍長の無念を晴らす為にも生きては帰さぬぞ!!」

 

怒り狂う指揮官に部下も同じ気持ちなのか上部ミニターから無言でコクっと頷くと、第一小隊を追う様にドダイに乗ったザクⅡ二機が追い掛けて来る・・・

 

 

~~~

 

 

「奴っこさん達はどうやら俺達の作戦に乗ってくれた様だな・・・?」

 

トリアーエズのコクピットから背後を見たイエーガーが二っと笑みを浮かべると、ここからが大変なんですよ・・・とショウから抗議する声が通信で入って来る。

 

 

「本当に上手く行くんですかねこの作戦は・・・正直言って地上部隊と連携が上手く行くとは思えないんですが?」

 

 

「俺だってそう思うが・・・ここまで上手く行っているのはアメリアのおかげと思うべきだぞショウ」

 

 

そう窘めるイエーガーに向かって確かに・・・と思案顔を浮かべるショウがモニターに映ると、まあその気持ちも分からなくも無いがな・・・とイエーガーも内心不安に思う。

 

 

「何にせよだ。俺達は背後から危機迫って来る奴さん達と上手くダンスせんとならん・・・俺も含めだが上手く踊って舞台の中央まで誘い込めよ!」

 

 

「分かってますってイエーガーさん。ただその相手が出来れば屈強な男じゃ無ければもう少しやる気が出るんですが・・・」

 

「違いねぇなショウ?だったら追って来るのをリンと思って我慢したらどうだ。」

 

そう提案して来るチャーリーにそいつは良い!とイエーガーからもククっと笑われたショウは思える訳無いでしょう・・・と不機嫌な顔でチャーリーとイエーガーをモニター越しにジロっと睨む。

 

「バカやって無いで行きますよ!」

 

そう声を上げたショウのコアブースターが編隊を崩し高度を下げだすと、おい待ってってショウ!と声を上げるチャーリーのセイバーフィッシュとイエーガーもククっと笑いながらトリアーエズもその後を追い掛けるので有った。



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初めての対MS戦闘初めてのその7

そのショウ達の動きを戦術ディスプレイで見ていたアメリアはフフッと満足気に微笑んでいた。

 

 

「先輩、第一小隊が高度を下げ戦闘空域から離脱を開始しましたぁ!」

 

「どうやら上手く(逃げている)様ですね。地上の機甲部隊の展開状況はどうですかミリィ?」

 

ヘッドセットをずらしながら報告を上げて来るミリィにアメリアが腕を組みながら尋ねると、モニターに出すますねぇ?とミリィから新たにアップデートされた情報が戦術ディスプレイに表示される。

 

 

「クセの強い方でしたが・・・素早い部隊配置ですね。」

 

「タンク=ヴィンセント中尉は基地でも女癖が悪いという悪評も有りますしねぇ?けど指揮官としては優秀な人ですよぉ!」

 

「そうなんですか・・・」

 

自分の事を調べ上げた事と言いこの情報通の後輩に答えたアメリアは思案顔になる。

 

(ミリィって一体何者なんですかね・・・普段の業務よりも活き活きとしてますし?)

 

そう思いながらアメリアがムゥ?と首を傾げていると、先輩~!!と間延びしたミリィから呼ばれる。

 

「ヴィンセント中尉から通信ですぅ!」

 

「分かりました。繋いで下さいミリィ・・・」

 

 

~~~

 

「どうにか間に合ったようだな・・・」

 

コロニーの残骸が散らばる砂漠地帯へと身を隠したトリントン基地機甲部隊指揮官で有るタンクは61式戦車の砲塔から顔を出したまま上空を見上げ苦笑いを浮かべた。

 

 

「最初に聞いた時は頭のネジが数本飛んでいると思ったが・・・」

 

 

そう呟くタンクは小一時間前の事を思い返す・・

 

 

「おい正気かウォーカー軍曹!基地と町の防衛をせずに進軍し敵部隊を待ち受けるとは・・・」

 

 

「はい、どうせMS相手には10数輌程度61式じゃ歯が立ちませんし・・・」

 

 

そう困った様に苦笑いを浮かべるアメリアに役立たずと言われた気がしたタンクは内心コイツ・・・と腸が煮えかえる様な目でアメリアをジロっと睨んだ・・・

 

「・・・そこまで仰るので有ればさぞかし素晴らしい妙案が有るので?」

 

「まあ負けない程度の作戦なら有りますね。ただこれには空と地上での綿密な連携が必要となります・・・どうですヴィンセント中尉、私に賭けてみませんか?」

 

そうニヤっと笑みを浮かべたアメリアの言葉にゴクっと息を飲んだタンクは何故か急に高揚感に駆られククク!と笑い出す。

 

 

「良いでしょう・・・私も軍人の端くれです。貴女の作戦を聞いた上で町の住民を守れるのであれば賭けてましょうよ!」

 

 

「分かりました。私の作戦はこうです・・・」

 

 

そうしてアメリアの説明を聞いたタンクは今現在も若干半信半疑ながらも自身の部隊を率い指定されたポントで待機していた。

 

 

「まさかタンクやジャックの野郎たちと共闘する日が来るとはな・・・」

 

 

空部隊と地上部隊は基本的に犬猿の仲で有る。それを纏め上げたアメリアの指揮能力に驚きながらタンクがそう独り言ちていると、隊長!と隣の61式戦車の砲塔で双眼鏡を覗いていた副隊長から声が上がる。

 

「上空に光源を確認・・・恐らく戦闘機かと」

 

「マジで来やがった・・・全車両には俺からの指示が有るまで絶対に撃つなと伝えろ!」

 

そう言いながらガンナー席に入り込むタンクに副隊長からヘッドセットに了解!と返事が返ったタンクは照準器を覗き込みながらペロっと舌なめずりする。

 

 

~~~

 

 

「ショウ、チャーリー!アメリアが指定した高度まで来たぞ・・・分かってるな!」

 

「分かってますって!!」

 

「マジで頼むぜ・・・」

 

 

そう不安がる三人の機体が地表スレスレまで到達した瞬間・・・

 

 

「時は満ちました。・・・全機ロックンロールっ!!」

 

 

そう声を上げたアメリアからの声に目の前の三機が急上昇すると、何をバカな事をと・・・その背後を付けていたドダイに乗ったザクⅡの隊長はコクピットの中でククっと嘲笑う。

 

 

「航空機と違いMSは自由自在にどこでも撃てるだぞ?」

 

そうニヤついたザクⅡの隊長機が部下と共に120ミリマシンガンを構え的となった第一小隊の機体を仕留めようとするが、それはアメリアの指示で有効射程距離まで近づいてくれたタンク達61式戦車隊にも同じで有った。

 

「全車両一斉射ーっ!!間抜けなジオンの野郎共に撃ちまくれっ!」

 

 

そう指示を飛ばすタンクが一番ファイヤ!と二門搭載された155ミリ滑空砲で僚機のザクⅡの胸部を撃ち抜くと、しょっ少尉殿!と声を上げながら機体ごと爆散した部下にザクⅡの隊長はおのれぇ!!と自分の乗ったドダイが撃ち落とされながらも離脱に成功する。

 

 

「せめて部下達の無念をお前達でえ!!」」

 

そうコクピットで叫ぶザクⅡの隊長が真下に見えるタンクの61式戦車隊に向け半ば自棄になりながら120マシンガンを連射する。

 

「あの野郎・・・全車両へ対空防御しながら全速で後退しろ!?」

 

「遅い!!戦車程度でこのMSを相手にどうこうは出来まい?」

 

ここにきて優位に立ったザクⅡの指揮官にタンクが焦り出すと、タンク中尉!と頭上から一機の大型戦闘機が急降下して来る。

 

 

 

~~~

 



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初めての対MS戦闘その8

一機だけ無傷のザクが真下の61式戦車隊へと攻撃仕掛けるのを確認したショウはメインエンジンをワザとカットしスラスターで強引に姿勢制御させながら急降下させ反転すると、どうしたショウ!?と小隊長のイエーガーから通信が入る。

 

 

「敵MSがまだ一機生きて居ます!このままじゃ戦車隊がっ!!」」

 

「タンクの奴撃ち漏らしたのかっ!?」

 

「僕が突入するのでイエーガーさんとチャーリーは支援を頼みますよつ!」

 

 

そう叫んだショウがイエーガーの許可を聞かずにコアブースターとそのまま急降下させると、あのバカっ!?と悪態つくイエーガーの声を聞きながらショウはザクと交戦中の機甲部隊へと通信を繋ぐ。

 

 

「地上の機甲部隊へ、今から対地支援を行う。全速で後退されたし!」

 

地上に降りつつ有るザクの持つ120ミリマシンガンでの攻撃に大分混乱しているのか通信回線がノイズ混じりで酷い・・・

 

 

(返答無しか・・・こりゃあ精密な射撃が要求されるって事だね・・・?)

 

そう思いながら溜息をついたショウがコクピッショウは直上からそのザクⅡの頭部へとコアブースターのビームキャノンの照準を合わせた・・・

 

「貰ったぁっ!!」

 

 

そう叫んだショウとザクⅡの方もロックオンされたのに気づいたのか上空へと120ミリマシンガンを撃って来る。

 

 

 

「戦闘機だとっ!?舐めるな連邦めがぁ!!」

 

 

ロックオンアラームが鳴るザクのコクピットから叫んだパイロットが急降下するショウのコアブースターへと120ミリマシンガンを撃ち込むが、バレルロールによる巧みな操縦技術により全弾回避されてしまう・・・

 

 

「あっ・・・当たらないだとっ!?」

 

 

「こなくそぉぉっーー!!」

 

 

その銃撃をバレルロールで回避に成功したショウは操縦桿のトリガーを絞りコアブースターに装備されたビームキャノンを発射する・・・

 

「クッ・・・ジーク・ジオンっ!!」

 

誰にも聞かれずそう叫んだザクのパイロットが乗機ともに爆散すると、地表スレスレで機体を彦起こしたショウはフゥ・・・と息を吐いた。

 

「どうにか間に合ったな・・・」

 

そう独り言ちるショウにピーと通信アラームが鳴り出す。

 

こちら

「機甲部隊指揮官のタンク=ビンセント中尉だ。対地支援を感謝すると共に部下を守ってくれた事に感謝するショウ・・・降りたらリンの店で是非奢らせてくれないか?」

 

 

「有難うございますタンク中尉・・・ですが今回の作戦が成功したのは参加した全員の力です。飲むんなら()で飲みましょう」

 

それが今回の戦いで散って行った戦友も含めていると感じたタンクはそうだな・・・と答えながら丁度上空を跳び越すショウのコアブースターに向かって感謝を込めて敬礼したので有った。

 

 

~~~

 

 

「てっ・・・敵MS部隊の反応消失っ!護衛の戦闘機も全機撃破ですぅ!?」

 

そう報告を上げるミリィの慌てた声にトリントン基地の司令部から一瞬時止まった様に静まり返ると

すぐに、ワアァーっ!?と歓声が上がり出す。

 

「こいつは驚いたなウォーカー軍曹・・・まさか本当にジオンのMSを撃破するとは!?」

 

そう言いながら目を見開く基地指令で有るバリサムと同じ思いなのか上官で有るマリアも驚いた顔でコクコクと頷くので作戦指揮官で有るアメリアはアハハ・・・と苦笑いを浮かべる。

 

「負けない様にと考えた作戦ですが・・・どうも皆の頑張りがドンピシャにハマった様ですね?」

 

 

「先輩っその皆さんがどうやら戻って来たようですよぉ!」

 

 

そう声を上げるミリィが指差す向こうに滑走路へと降りてこようとする第一、第二小隊の機体が明るくなる空の向こうに見えて来る・・・

 

「仕方無いわね・・私が管制を引き継ぐから二人は出迎えに行きなさいな。」

 

「えっ!?良いんですかマリア曹長?」

 

「マリアさん有難うございますぅ!」

 

マリアの提案にそう声を上げたアメリアとミリィの二人が勢い良く指令室から飛び出して行くと、

後輩思いで何よりだな?とニヤつくバリサムにマリアはフフッと少し照れ臭そうにヘッドセットを装着する。

 

 

~~~

 

 

「なあショウ?滑走路の周辺に妙に人が居ねぇか・・・」

 

 

マリアの指示で着陸コースへと乗ったチャーリーセイバーフィッシュからの通信に確かに・・・とショウもそう答えながらコアブースターの高度を落とし出す・・・

 

「CBP1・2へ私からプレゼントが有るから着陸失敗なんて許さないわよ!

 

「そんなヘマする訳無いだろう・・・って言うかアメリアは?」

 

先程まで聞こえていたアメリアの声では無く急にマリアに代わった事にショウが違和感を感じていると、降りたら分かるわよ?答えて来る彼女の言葉にショウはチャーリーに引き続き滑走路へと着陸した。

 

 

「やれやれ・・・どうにか帰ってこれたな・・・」

 

そう言いながらショウがキャノピー前方で誘導棒を振るマーシャルに気付きそのままゆっくりと機体を進めながら駐機場に収まったコアブースターのキャノピーを上げてフゥと言いながらヘルメットを脱ぐと、ショウっ!?と叫んで来るリンの声にショウはギョッとする。

 

 

「何でリンがここに・・・!?」

 

 

コアブースターから降りたショウがそのまま自分の胸に飛び込んで来る愛おしい恋人に向かって驚いた声を上げると、リンから上目遣いでエヘヘ・・・と微笑まれる。

 

 

「私も詳しくは分からないけど・・・バリサムさんやマリアの指示で町の皆を基地の中に入れてくれたんだ。」

 

「そっか・・・二人には改めてお礼をしないとな?」

 

 

そう答えたショウがリンをギュッと抱きしめていると、チャーリーっ!!とその隣ではアメリアの泣きそうな声が響いていた。

 

 

「ようアメリア・・・ってっ!?」

 

そう驚くチャーリーにアメリアもリンと同様に抱き付くとチャーリーは困った様に頭をポリポリと掻き出す。

 

 

「あの・・・アメリアさん?」

 

「心配したんですよ・・・」

 

「悪かったって・・・」

 

 

そう泣きじゃくるアメリアの頭をチャーリーが撫でていると、先輩良いなぁ・・・とミリィは横目で見つつお目当ての機体が降りて来るのを待って居た。

 

 

「あっ、やっと来たぁ・・・!」

 

そう声を上げたミリィの向こうでジャックのフライアローが着陸した。

 

 

こうして、ここトリントン基地で発生したジオン公国軍との対MS戦は連邦軍の勝利に終わったが・・・この事に対し新たな展開が起こるとはこの場に居る全員にもまだ分からぬ事で有る。

 

 

~~~~~

 

 



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ミデアの人その1

先日のジオン軍によるMS部隊との交戦から一週間程が経ち、基地内も大分落ち着いた来た。ショウもコア・ブースターの運用テストの項目を全て終えた事も有り今度は新たに配備されたセイバーフィッシュのサポート要員として携わる事となった。

 

 

 

「調子はどうだチャーリー?」

 

 

 

「おう!上々だぜショウ・・・それじゃあ行って来るぜ!!」

 

 

 

そう尋ねるショウに気合い充分と言った顔でチャーリーがグッと親指を立てキャノピーを下げると、今度はその隣で機体をアイドリングさせているコア・ブースターのコクピットをショウは見上げる。

 

 

 

「あんまり無茶させないで下さいよイエーガーさん。」

 

 

 

「誰に言ってるんだ?お前よりも丁寧に扱ってやるから心配するなって!」

 

 

 

そう答えるイエーガーに間違いねえな?と整備班のホワイト大尉からククっと笑われたショウは少しムッとした顔になる。

 

 

 

「あんまり変なクセ付けないで下さいよ!その機体が学習したデータはどこかに制式採用予定のコア・ブースターに採用されるそうですからね。」

 

 

 

「分かっている。それじゃあ機体も暖まって来たしそろそろ行くぞチャーリー?」

 

 

 

 

 

試作機のコアブースターに乗れて嬉しいのか普段より少しテンションの高いイエーガーがニッと微笑むと、低いエンジンを轟かせながら了解!とチャーリーのセイバーフィッシュと共格納庫を出てタキシングを始める。

 

 

 

 

 

「知ってるとは思うけど今回はセイバーフィッシュのブースターパックの高高度テストだから、無茶な機動は禁止だからねチャーリー!」

 

 

 

 

 

「ショウ分かってるって、てかさテストも何も一回実戦で試してんだけどよ?」

 

 

 

 

 

ヘヘっと笑いながら言うチャーリーにヘッドセットを付けたショウはまあ・・・確かにと先日のジオンMS部隊との戦いを思い出しながら苦笑いを浮かべる。

 

 

 

 

 

「心配するなショウ?その時は俺が随伴機としてちゃんと抑え込んでやるからな。」

 

 

 

「おっと、イエーガー隊長、旧式のトリアーエズから急に最新鋭機に乗ったばかりの癖にそんな事言って良いんですか?」

 

 

 

「言ってくれるじゃねえか・・・チャーリー!絶対にお前のケツにへばり付いてやるからなっ!!」

 

 

 

チャーリーに煽られその闘志に火が点いたイエーガーがそう答えると、これは模擬戦じゃないって!?

 

!?とヘッドセットに向かってショウは焦った声で叫んだ。

 

 

 

 

 

「ご歓談中申し訳無いけど、CBP1及びCBP2へ離陸許可です。そのまま第一滑走路へ進んで下さい。

 

 

 

そう割り込んで来た管制官のマリアの声に分かった分かった・・・と言いながらチャーリーのセイバーフィッシュとイエーガーのコアブースターが指定された滑走路へと向かうとエンジンの出力を上げ始める。

 

 

 

 

 

「CBP2、チャーリー出るぜ!」

 

 

 

「同じくCBP1、イエーガーテイクオフ!」

 

 

 

そう答えた二人がアフターバーナーを吹かしながら機体を加速させ一気に角度を付け急上昇させるのでショウはまったくもう!と呆れた声を上げる。

 

 

 

「テスト機にハイレート・クライムとか勘弁して欲しいんだけど・・・」

 

 

 

 

 

「何を言ってるんです?ショウも同じ事やってたじゃないですか。」

 

 

 

 

 

背後から聞こえて来る淡々としたツッコミにショウが振り向くと、ニコっと微笑む赤髪の下士官の姿が有った。

 

 

 

「何だアメリアか、サボリか?」

 

 

 

「ショウ達と一緒にしないで下さいよ!マリア曹長と交代となったので休憩がてらここに来ただけですっ!!」

 

 

 

ムウと唇を尖らせながら抗議して来るアメリアにそれは残念だったね?とショウは高度を上げて行くチャーリーのセイバーフィッシュを親指で指す。

 

 

 

「あ~もう飛んじゃったんですねチャーリーは・・・」

 

 

 

「まあね。けど30分くらいで降りて来るから待ってれば?」

 

 

 

「そうします。後これは皆さんで飲んで下さいね。」

 

 

 

そう答えたアメリアが差し入れで基地のPXで買って来たドリンク等を袋から広げながら見せると、マジで!?と整備班の連中がわんさかとしながら集まって来る。

 

 

 

 

 

「しかし坊主の言う通りチャーリーが居なくて惜しかったな嬢ちゃん?」

 

 

 

 

 

「うっ・・・ちょ、ちょっと待って下さいホワイトさん!?私は別にチャーリーに会いに来た訳じゃ無いですよ?」

 

 

 

アメリアからのお土産を手にするホワイトにアメリアが顔を真っ赤にしながら焦った声を上げると、何を言ってんだ?とホワイトを始めたとした整備班全員からニヤニヤと意味ありげにアメリアは笑われてしまう・・・

 

 

 

 

 

「そ、そう言えば今日のコアブースターに乗っているのは誰なんですか?」

 

 

 

これはマズイと話を逸らす為にアメリアが尋ねるとショウはイエーガーさんだよ?と答える。

 

 

 

 

 

「愛機のトリアーエズがオーバーホールに入ったから非番にも関わらず僕の代わりに乗りたいって言うからさ・・・」

 

 

 

「成程、イエーガー程の腕ならばあのジャジャ馬も乗りこなせるでしょうね。」

 

 

 

ショウにそう答えながらアメリアがクスっと微笑んでいると、ゴオォォ・・・と轟音を上げながら数機のミデアが降りて来るのでアメリアはあれ・・・?と首を傾げる。

 

 

 

「おかしいですね・・・今日のフライトプランにはこの時間に定期便が着陸するとは聞いてませんでしたが?」

 

 

 

「何かの機体トラブルとかじゃないの。」

 

 

 

そう答えるショウにう~んとアメリアも腕を組んでいると、そのミデアから一番近いこのハンガーへとジープが一直線にやって来た。

 

 

 

「私はジャブロー基地所属ミデア輸送部隊マチルダ隊の指揮官をしているマチルダ=アジャン中尉だ。申し訳無いがここトリントン基地のバリサム大佐へとお取次ぎを願えないか?」

 

 

 

 

 

ジープから降りながらそう声を上げる赤毛の女性士官に何だって言うんだ!?とこの場では一番上の上級士官で有るホワイトから焦った声が上がると、落ち着いて下さい。と答えたアメリアはその女性に前に立つ・・・

 

 

 

「ようこそトリントン基地へ、今確認を取りますので少しお待ち下さい中尉?」

 

 

 

「ああ頼む。」

 

 

 

そう答えるマチルダにクスっと微笑んだアメリアだが内心では焦っていた・・・

 

 

 

(マチルダ=アジャンって確かレビル将軍の懐刀ですよね!?何でそんな人がこんな所に・・・)

 

 

 

そう考えながらアメリアは混乱しているショウからヘッドセットを奪い獲る。

 

 

 

 

 

~~~



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ミデアの人その2

あれから暫くして基地指令のバリサムの執務室へとと通されたマチルダは目の前でう~むと唸りながら顎を擦るバリサムへとお気に召しませんか・・・と怪訝そうな顔で尋ねた。

 

「まあな・・・しかしこの命令書に書かれているのはホントかねマチルダ=アジャン中尉・・・?」

 

「ハイ勿論です。そこに書かれている通り、ここトリントン基地にジョン=コーウェン准将を責任者としMSの運用テストを兼ね備えた実戦部隊を設立します。」

 

 

そう淡々と答えるマチルダに一応確認したバリサムだったがバサっと自分のデスクに投げた書類には地球連邦軍総司令官で有るヨハン=エイブラハム=レビル将軍のサインも有りバリサムはハァ・・・溜息をつきだす。

 

「コーウェンの奴は正気なのか?こんな田舎基地にそんな部隊を設立するとは・・・」

 

「その事に関しては先日この基地で起きた対MS戦闘が要因と聞いてますが?」

 

そう首を傾げるマチルダにマジでか・・・とバリサムが頭を抱えていると、この部屋をコンコンとノックする音が聞こえて来る・・・

 

 

~~~

 

 

「クッソ・・・痛ってなぁ・・・」

 

「バカかお前は・・・あんな機動すりゃあ身体のどこか痛めるに決まってるだろうが!」

 

チャーリー向かってそう叱り出すイエーガーに向かって静かにして下さい!と窘めたアメリアはバリサムの部屋の前で着崩した軍服の襟を正しだす。

 

「何でこのメンツで呼ばれたのか分かりませんが粗相の無い様にして下さいね。」

 

「そうだな・・・ショウとチャーリーも良いな!」

 

そう指示を出すイエーガーに向かってショウとチャーリーも了解!と答えながら身だしなみを整える。

 

「それじゃあ行きますよ・・・」

 

そう声を上げたアメリアが緊張しながらドアをノックすると、良いぞ入れとバリサムから返事が返って来るのでアメリアはゴクっと息を飲みながら部屋の中へと入った。

 

 

「イエーガー=バウスネルン中尉以下3名参りました!」

 

 

イエーガーの声に少し遅れてアメリア達三人が敬礼すると、取り合えず座り給えとバリサムが自分のデスクの前に有るソファーを進めて来るのでアメリアはどうも・・・と答えながらイエーガー達と共に腰を落ち着かせた。

 

 

「それで・・・何故私達を呼びつけたのかお聞きしても?」

 

そういきなり口火を切るアメリアに驚いたのは対面に座るマチルダで有った。

 

「ふ~ん成程ね・・・報告書通り好戦的な性格のようねウォーカー元少尉は?」

 

そう言いながらクスっと微笑むマチルダにえっ!?と三人から驚かれたアメリアは内心チッ・・舌打ちする。

 

 

「おっと・・・怒らせるつもりは無いのよ。むしろ私は同じ女性としてウォーカー軍曹がした事は間違っていないと思ってるわ!」

 

「・・・その気持ちは有り難いです。ですがまだ私は仲間に明かしていませんのでこれ以上の事はご内密にお願いします・・・」

 

そう俯き出すアメリアにゴメンなさい・・・と謝ったマチルダが申し訳無そうな顔を浮かべるので、ここからは俺が話そう・・・と困った顔した基地指令のバリサムからフォローが入る。

 

「唐突なのだが・・・実は本店(・・)から新たな部隊の設立をするという命令書がここトリントン基地に届いた。これは先日我が基地で起きたMSによる強襲を防いだ事が要因で有り、主な関係者で有る君達を呼んだ訳だ。」

 

 

「・・・状況は理解しましたが、新たな部隊とは一体・・・?」

 

 

ここで三人よりも階級の高いイエーガーが尋ねると、それがな・・・と言い難そうに薄くなった頭をガシガシと掻き出すバリサムに代わって私から説明します。とマチルダが立ち上がる。

 

 

「ここトリントン基地にMSの試験運用を主とした実戦部隊を設立します。」

 

 

そう言いながらニコっと微笑むマチルダに数秒遅れてアメリアはちょっと待って下さいよ!?と慌て出す・・・

 

 

「正気ですかっ!?こんな田舎基地にそんな部隊を設立って!ノウハウも何も無いんですよ!!」

 

 

「あら、それなら()特務隊の貴女が持っている居るでしょうウォーカー軍曹・・・確かMSのシュミレータ訓練でも上位と聞いてますが?」

 

 

そうワザとらしく聞いて来るマチルダに私の事を完全に調べきってますね・・・?と思ったアメリアはハァ・・・と溜息をついた。

 

「それで・・・私に何をしろと?」

 

「話しが早くて助かるわ・・・貴女には先程バリサムが説明した。ジョン=コーウェン准将が進めている連邦軍が開発したMSを用いた戦闘教義(ドクトリン)を用いた試験部隊の指揮ととなって欲しいのよ。」

 

そう説明したマチルダがニヤっと笑みを浮かべると冗談でしょう・・?とアメリアは苦笑いを浮かべる。

 

「私が軍事裁判で降格処分となった事を知って置きながらそんな事言うなんてコーウェン准将とは相当イカ(・・)れた人物の様ですね。」

 

「言い方は様々ですが、考え方は独創的な方だと思ってるわよウォーカー軍曹?」

 

そう挑発的にクスっと微笑むマチルダにアメリアはムゥ・・・と不満そうにジロっと彼女を睨みだす。

 

 

「良いでしょう。その命令には従いますが、勿論人事と装備に関しては私に一任して貰えるんですよね?」

 

 

「ええ、この基地で部隊を作るので人事に関してはウォーカー軍曹に任せます。それと装備に関しては私達のミデアが運んで来たのが既に用意して有ります。」

 

 

そうニコっと微笑むマチルダとアメリアのやり取りに基地指令のバリサムに第一小隊を率いるイエーガー達三人もヒヤヒヤしているとコンコンとノックする音が聞こ得るので有った。

 

 

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ミデアの人その3

「マチルダ中尉、ミデアから荷が降りたのでご報告に上がりましたっ♪」

 

そう言いながらニコっと微笑む女性下士官がドアの外から敬礼する。

 

「ご苦労ホワイト伍長、それでは皆さん早速見に行こうとしましょうか・・・我が軍の秘密兵器を見にへと?」

+-

「秘密兵器とはまた大層な言い回しをしますね。」

 

アメリアからの突っかかる物言いに対しマチルダが困った顔様に苦笑いをするが、アメリアには取っては急に現れた厄介者で有り実際に困っているのはアメリア自身だ。

 

(いきなり来て無茶難題を押し付けるとは・・・そのジョン=コーウェン准将とやらの顔に一発ぶち込んでやりたい気分ですね。)

 

そう思ったアメリアが盛大にハァ・・・と溜息をつくと、それでは行きましょうか?とタイミングを見計らったマチルダの声に全員が頷きバリサム執務室から出ると、彼女が秘密兵器と揶揄していた物が置かれていると言う滑走路脇のハンガーまでホワイト伍長の案内でアメリア達はやって来たので有った。

 

 

~~~

 

 

「想像はしていましたが、まさか新型のMSを用意するとは上は本気なんですね・・・」

 

 

「勿論です。形式名称RGM-79「G」先行試作陸戦型ジムと言います、詳しくはこの機体のメインエンジニアとなる彼女から話を・・・それではホワイト伍長お願いね?」

 

「ハイっ♪」

 

マチルダからの紹介にホワイト伍長と呼ばれた女性下士官がその背後からピョコっと前に出ると、初めましてっ♪と敬礼するのでアメリア達も少し戸惑いながら宜しくお願いします・・・と答えた。

 

「それでは早速この機体の説明と言う事なんですが、その名の通りこの子は連邦軍が現在量産化を検討しようと(‥‥)しているMSの先行型でこの子達はそのMSに対しての実戦でのフィードバックが目的なんですっ。」

 

「成程ね。だから試作実験部隊か・・」

 

「どう意味だよショウ?」

 

ショウがホワイト伍長からの説明に腕を組むとそんな事を聞いて来る相棒に呆れた顔になった・・・

 

「ちゃんと話聞いてたのかよ・・・要は、僕らはこの試作機でジオンのMSと実戦を行い戦いの経験値をを積んで来いって事!」

 

「それってひょっとして俺達がアレに乗って戦うのかよ!?」

 

「僕達にも見せるって事は・・・そう言う意味ですよねマチルダ中尉!」

 

そう不機嫌そうな声を上げるショウにご明察よカノウ少尉?と答えたマチルダは意味有り気にクスっと微笑む・・・

 

「まあ実際には、ウォーカー軍曹が先程言った通り彼女がどう決めるかだけどね。」

 

「そんなの決まっています。この私が巻き込まれた以上は一蓮托生です。勿論ショウ達も私の仲間になって貰いますからこれからは指揮官として宜しくお願いしますね?」

 

 

マチルダの言葉に答えたアメリアがそう言いながらショウ達に向かってニコっと微笑むと、アメリアが指揮官ってマジかよ!?とチャーリーからとてつもなく嫌そうな声が上がり出す。

 

「こんなに可愛いくて優しい私が指揮官だと言うのに何が不満がなんですか!」

 

 

「いやいや俺達は戦闘機パイロットなんだぜ!?いきなりMSのパイロットなんか無茶過ぎだろ!」

 

 

「大丈夫です。この私が優しく(・・・)教えて上げますから?」

 

 

「・・・・」

 

 

フフッと意味有り気な笑みを浮かべて来るアメリアに絶対に嘘だなと内心思ったチャーリーは今後の事に恐怖を覚えるので有った。

 

 

~~~

 

「所でさっきちょっと気になったんだが、そこのホワイト伍長がメインエンジニアって事は・・・?」

 

そう言いながらイエーガーが手を挙げると、そう言う事ですよっ♪とホワイト伍長からエヘヘっと笑みが浮かび上がった。

 

「改めましてっ!今日付けでここトリントン基地へと配属されましたソフィー=ホワイト伍長ですっ♪皆さん試験実験部隊のMSの整備を担当する事となりますのでこれからよろしくお願いしますっ!」

 

 

「「「「ええっ!?」」」」

 

 

訊ねたイエーガーを含めた4人から驚いた声が盛大に響き渡ると、その様子を見ていたマチルダからフフッと笑われながらフォローが入る。

 

「こんなに若いし頼り無さそうに見えるかも知れないけど、こう見えてホワイト伍長はジャブローでMS整備のスペシャリストとして研修を受けていてその腕前も相当な物と評価を受けてるわ」

 

「こんな小っちゃいのがですか・・・」

 

確かに長身のイエーガーと比べると彼女が小さいのは当たり前だが、女性の平均身長よりも更に低く小柄なアメリアよりもソフィーの背は低かった・・・

 

「小っちゃくなんか無いですっ!」

 

イエーガーの言葉が禁句だったのか急にソフィーが大きな声を上げると、さっきからうるせえぞっ!と怒鳴ったここトリントン基地整備班の班長で有るホワイト大尉がハンガーの顔を出して来る。

 

 

「ホワイト大尉すみません!ちょっと色々有りまして・・・」

 

 

「まったく頼むぜ嬢ちゃん・・・本店(・・)の連中がMSを置く場所を貸してくれと頼んで来たもんだから一応は了承したが、作業の邪魔すんなら今後は外で作業して貰うからな!」

 

 

頭を下げるアメリアに一通り文句言ったホワイトが帽子を直しながら再びハンガーの中に戻ろうとすると、相変わらず怒りっぽいなお爺ちゃんはっ!と腰に手をついたソフィーからムスっとした顔が浮かぶので、それを聞いた4人は再びえぇっ!?と素っ頓狂な声を上げると・・・彼女ソフィー=ホワイト伍長の5人で新しくチームを組む事になったので有った。

 



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その名はカスケード隊!その1

 あれから数日が経った・・・。

 

新部隊設立の為に必要な物資と人材を運んで来たマチルダ=アジャン中尉もまさかの実戦データが取れたテスト機で有るFFーX7BSTコアブースターを引きとり再びジャブローへと帰路へと立った。

 

そんな中・・・ハンガー(格納庫)の奥に有るガラウタ置き場を詰め所として与えられた試験実験部隊の指揮官をする嵌めになったアメリア=アン=ウォーカー軍曹はウニャぁーっと妙な声を上げながらデスクに突っ伏していた。

 

「大分お疲れの様ですねぇ先輩?」

 

「当たり前です私はただの軍曹ですよ軍曹っ!なのに何でこんな事に・・・」

 

「まあ元少尉で特務出身の軍曹ですけどねぇ?」

 

「・・・・」

 

無言で答えるアメリアの前にコーヒを置きながら痛い所を突いて来る彼女はミリィ=タニグチ伍長と言い先日まで一緒に管制タワーで管制官をしていた後輩で有る。

 

彼女は前回のジオン軍強襲の時に見せた情報分析能力(ハッキング)や少し癖も有るがそこを気に入ったアメリアがマリアと交渉し自分の補佐として引っ張て来たのである。

 

 

「軍事裁判有罪となり降格して、やっと面倒臭い奴等から解放されたと思っていたのに・・・何でこうなったんでしょうね。」

 

「それは何だかんだ言って上も先輩の能力を買っているからじゃ無いですかぁ?」

 

「その上の一部の方々から私がスペースノイド言うだけでジオンの仲間と言うレッテルを張られたんですが・・・」

 

首を傾げるミリィに答えたがアメリアが苦笑いを浮かべていると、コンコンと詰め所の扉がノックされこの試験実験部隊隊長(・・)のイエーガー=バウスネルン中尉が入って来る。

 

 

「アメリア、頼まれていた俺が精査した転属願を持って来たぞ?」

 

2メーター近い身長と筋肉質な身体から脳筋かと思われがちイエーガーだが・・・実は性格は細かく几帳面で有りこういった書類仕事は得意な事も有り、任せたアメリアはありがとうございます。と答えながら書類を受け取った。

 

 

「思っていたより多いですね・・・もうちょっと絞れなかったんですか?」

 

「無茶いうな。これでも悩みに悩んで半分を切ったんだからな!」

 

そう難しい顔をするイエーガーにアメリアはムゥ・・・と唸りながら腕を組みだす。それは何故かと言うとここトリントン基地に配備される予定のMSの数は全部で9機で有り三個小隊一個中隊なのである・・・

 

「仕方有りません・・・志願者の皆さんには悪いですが、テストと言う名のふるいに掛けて希望者の人数を減らすしか有りませんね。」

 

そう答えながら意地悪い笑みを浮かべるアメリアにどんな方法でやるんだ・・・?とイエーガーが怪訝そうな顔で首を少し傾げる。

 

「その辺は考えて置きます。それよりも機種転換の方はどうです?私のスコアくらいもう抜きましたか??」

 

「こんな短期間で出来るかよ!?って言うかマニュアル片手にシュミレーターって鬼畜過ぎるだろう!」

 

「だって仕方無いじゃ無いですか?本来なら私が教えるべき何でしょうが・・・見ての通り書類処理が多くて?」

 

そう言いながら自分のデスクにアメリアがイエーガーの持って来た試験部隊の志願者リストを広げると、さっきまで億劫そうにコーヒー飲んでたのになぁ・・・と補佐官のミリィからボソっと呟かれる。

 

「おいアメリア・・・?」

 

「ハイハイ分かりましたよ・・・それじゃあちょっと指導に行くとしましょう。」

 

ジロっと睨んで来るイエーガーにそう答えたアメリアはミリィに如何なる手段を使い更にイエーガーのリストを絞る様に指示すると、金蔵音が鳴り響くハンガー内へと二人揃って出たので有った。

 

 

~~~

 

 

「MSのジェネレータには幾重のもプロクテトが掛けられてるって言うのはこの前も話したと思うんだけど・・・それは核融合炉の安全面からで実際にはリミッターさえ解除すれば更なる出力向上が望めますねっ。」

 

「けどもしジェネレータが暴走したら大変な事にになるんじゃ?」

 

「その限界点を見極めるのが私達エンジニアの仕事ですっ♪」

 

地球連邦軍本部の有るジャブローでMSに対する専門的な知識を学んだソフィー=ホワイト伍長による講義にトリントン基地整備班主任のシバ=シゲオ曹長からいやぁー流石おやっさんのお孫さん!!と太鼓判を押す様にパンと手を叩いて来る。

 

 

「こうなったらもうおやっさんは引退っすね?」

 

「おいシゲ手前ぇ・・・勝手に俺をロートル扱いすんじゃねえぞ!」

 

そうニヤつくシゲにホワイトが噛みつく様に睨むと、アワワ・・・と怯えているソフィーに近寄ったアメリアがイエーガーを連れながら相変わらず賑やかですね・・・?と呆れた顔でその肩に手を置いた。

 

「ホワイト大尉?若いシゲさんに遅れを取り苛立つのは分かりますが・・・貴方がこの基地の整備班の柱なので、ソフィーを筆頭にシゲさんと仲良くやって下さいよ?」

 

「まったく・・・嬢ちゃんに言われちゃ仕方ねえな・・・」

 

二回り以上は年下に窘められたホワイトが困った様な顔でフッと苦笑いを浮かべた。

 

 

「所でショウ達を探してるんですがどこに居るか知りませんか?」

 

 

「それなら上だ。」

 

 

そう言いながら指さすホワイトにアメリアは成程・・・と答えながらハンガーにそびえ立つ陸ジムを見上げた。

 



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その名はカスケード隊!その2

「3日以内に自分のスコアを追い越せとか素人相手無茶言い過ぎだろアメリアの奴っ!?」

 

その期限が切れた場合は元特務で有るアメリアとのCQC(近接格闘)と言う罰ゲームが待って居る為にショウは必死な顔でメインモニターに映るMSー06FザクⅡとシュミレーター戦闘を行っていた。

 

 

「クッ・・・そこだぁ!」

 

 

サイドスティックを操作しながらショウが陸ジムに装備している180ミリキャノンの照準をザクⅡに合わせてトリガーを引くと、ドンッ!!と鈍い音と共にザクⅡの胸部に直撃した。

 

「ビンゴッ!これで今までのスコアを更新したっ・・ってぇ!?」

 

倒れたザクのその背後から更に現れたもう一機に慌てたショウは照準は適当に牽制でサイドスティックに有るトリガーを引くと、ビーッ!と鳴り響く警告音と同時に目の前に居たザクⅡの右肩が吹き飛んだ・・・

・・・

 

「ラッキー・・・でも無いってねぇ。こんな時に弾切れなんてツイてないなんだけど!!」

 

 

モニター脇に表示されたAMMOEMPTY(弾薬不足)にショウは180ミリを捨てると、間に合えよ・・・?と思いながら腰のアタッチメントに有る100ミリマシンガンを引き抜く・・・

 

 

「貰ったぁ!!」

 

 

そう叫んだショウの陸ジムがヒートホークを振り降ろそうとしたザクⅡをバラララッ!と100マシンガンを連射し蜂の巣にする。

 

 

「これで最後か・・・?」

 

 

期限で有る3日目にしてやっとの事でスコアを達成したショウがそう安堵しながら息を吐いていると、ビーっと鳴る警告音に今度なんだよっ!?とショウは驚きながら急接近して来る敵機へと100ミリマシンガンを構えた。

 

「クッソォ・・・速いっ!?」

 

 

見た事が無いシルエットの敵MSにショウの陸ジムが撃った100ミリマシンガンが素早い機動により全て外れると、不味い!?と思ったショウは懐へと踏み込んで来るスカートを思わせる下半身を持つ敵MSと肉薄した・・・

 

「こなくそっ!!」

 

そう叫んだショウが陸ジムの脚部に有るサーベルラックからビームサーベルを引き抜くとスカート付きの敵MSもザクが持つヒートホークでは無く刃が長いヒートサーベルで斬り込んで来る。

 

 

「大振りなんだよぉ!!」

 

そう叫んだショウがフットペダルを踏み込みながら陸ジムのバーニアを吹かし、上段から振り降ろそうとするスカート付きからの一撃をそのまま一気に躱しショウはでやぁぁぁ!!と声を上げながら左腰に構えたビームサーベルを一閃・・・居合い抜く様に胴体と下半身を斬り捨てながら駆け抜けたので有った。

 

 

「どうだこの野郎・・・僕の勝ちだからな!」

 

 

ハァハァと息を荒くしながらそう声を上げるショウの目の前にミッションコンプリートとモニター表示されると、プシュ―と開いた陸ジムの上部ハッチからお見事でしたね?とアメリアが覗き込んで来る。

 

 

「私は最後のスカート付きにやられちゃいましたんですけど・・・ショウって何か武道みたいなのをしてたんですか?何か妙にビームサーベルの使い方が上手かったですが・・・」

 

「小さい頃に剣道をしてたからね・・・胴抜きは得意なんだ。」

 

「そう言えばショウってアジア系ですもんね。確かサムライ・・・って言うですっけ?」

 

「侍とはちょっと違うけど・・・まあそんな感じだよ。」

 

アメリアにそう答えながらショウが苦笑いを浮かべていると、よっしゃ!ノルマクリアだぜ!!とチャーリーからもガッツポーズが上がり出すのでショウはまったく・・・と呟きながらアメリアを見る。

 

「アメリアのスコア達成に僕ら3人が達成したみたいだしちょっと息抜きしない?」

 

 

「そうですね。あれ以来リンさんとも顔を合わせてませんし・・・」

 

そう言いながら顔を俯かせるアメリアにショウは数日前の事を思い返す。

 

 

~~~

 

 

「ねえアメリアちゃん!どういうことなのそれっ!?」

 

 

そう怒声を上げるリンにその日アメリアは困った顔で自分が降格処分を受けた説明を続けていた・・・

 

 

「リンさん・・・怒ってくれる事は嬉しいんですがこれはもう決まった事なので覆さないんです。」

 

 

「でも・・・っ!アメリアちゃんは悪くないじゃない?自分の身を守るための正当防衛だよ!」

 

そう怒り出すリンにアメリアはホント変わった人ですね・・・と笑みを浮かべながら当時の事を思い返すと、元上官からの嫉妬に絡んだスペースノイドへの差別に加え高官を父に持つ部下から受けた強姦紛いの事実を説明したのだが、リンからは納得のいかない声が続く・・・

 

「だからって!アメリアちゃんだけ処分されるのはおかしいじゃない!?」

 

「まあ・・・それが軍隊ってもんです。しかし・・そのおかげと言うのは変ですが、ここに飛ばせれて皆と出会えたのは私に取って幸運だと思っていますよ?」

 

そうニコっと笑って来るアメリアに驚いたリンはショウ達と顔を見合わせた。

 

 

 

「それじゃあアメリアちゃん・・・改めて乾杯しよっか?」

 

 

「改めてですか・・・別に良いですが何に対してです。」

 

 

そう首を傾げるアメリアにリンは少し照れ臭そうに顔を赤くしたので有った・・・

 

 

 

~~~

 

 



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その名はカスケード隊!その3

「リンさんがあの日・・・あんなに私に起こった事に怒ってくれた事が凄く嬉しかったです。あの後大丈夫でしたかショウ?」

 

勤務も終わりいつものルーティンでリンの店を向かうジープの中でその時の事をアメリアが思い返していると、まあね・・・と運転するショウからチラッと苦笑いが見えた。

 

「解散して店を閉めた後もアメリアを襲ったって言う奴等に対して大分怒ってたよ・・・お陰で僕もそれに付き合ってあれから大分飲まされたんだよね・・・?」

 

「それは申し訳ありませんでしたショウ!?」

 

アメリアがそう困った様に答えると、そう言えば・・・とショウは話を変える様にバックミラー越しにアメリアを見た。

 

「さっきのシュミレーター戦闘の最後に出て来たスカート付きの動きの速いMS()って何?」

 

「あっ俺も気になったぜ?あんなジオンMSが居るのかアメリア??」

 

ショウに同調にしながらチャーリーも助手席から振り向いて来ると、さあ・・・?とアメリアから首を傾げながら両手が挙がった。

 

「私もヒトツメ・・・ザク以降のジオン製MSの事は詳しく無いんですよね?最新のシュミレーターに出て来ると言う事はそんな敵MSが存在すると言う事しれません。今後の事も考え適応出来るようにして置いて下さいね二人共?」

 

そう指示を飛ばしながらニっと笑みを浮かべるアメリアにイエスマム!とショウとチャーリーから返事が返ると、もう着きますよぉ!と指を差すミリィの声にショウ達は背後に付いて来るイエーガーとソフィーのジープと共に目的地で有るショウの恋人が店をするリンのCASCADE(カスケード)が見えて来た。

 

 

~~~

 

 

「皆いらっしゃい♪いつもカウンターで良いかしら?」

 

カランコロンと鳴るドアベルの音と共にこの店CASCADEの女性店主のリン=ローダンセが出迎えるとショウ達をいつものカウンター席へと案内した。

 

 

「リンさん、ありがとうです♪」

 

 

「フフっゆっくりして行ってね?」

 

 

ハイっ!と頷くアメリアにリンが微笑むと彼女はアメリアの隣に座っていたショウに向かってニコっと微笑む。

 

 

「じゃあ私は料理の方やるからショウはドリンクお願いね?」

 

 

「はいはい・・・ではご注文をどうぞ?」

 

 

そう渋々と言った感じでリンからエプロンを渡さたショウがカウンターに立つと目の前の仲間達全員からニヤニヤと揶揄う様な目線を感じる。

 

 

「クククっ・・・なあショウお前そのままリンに雇ってもらってたらどうだ?」

 

「確かに?イエーガーさんの言う通りじゃねショウ!」

 

「リンさんと二人でお店やるのも素敵だと思いますよ?」

 

そう好き勝手言って来るイエーガー、チャーリー、アメリアの三人にショウはムスッと不機嫌そうな顔で

取り合えず最初はビールで良いね!と言いながら三人の注文を聞かずにビールを注ぎだす。

 

「あっウェイターさん~私とソフィーは甘めのカクテルをお願いしますねぇ?」

 

「ハイハイ分かったって!」

 

それに加えミリィもニヤニヤしながら注文して来るのでコイツら・・・とショウは内心イラっとなる。

 

「はいお待たせー!って・・・どうしたのよショウそんな顔して?」

 

「別に何にも・・・」

 

何故かムスッとした顔するショウに不思議そうな顔をしたリンがカウンター席に料理を置くと、何ですかこれっ!?と新たに仲間へと加わったソフィー=ホワイト伍長が首を傾げた。

 

「揚げた魚の天ぷらよソフィーちゃん。取り合えず食べてみて、絶対に美味しいから!」

 

「その前に乾杯だって・・・ほらリンの分も?」

 

そう言いながらショウがタイミング良く全員分のドリンクを置くと、ショウ有難う・・・とリンはニコっと微笑んだ。

 

「じゃあ何に乾杯しようか・・・」

 

「この前と同じで良いんじゃないですか?私はあの時の聞いたリンさんの声に正直心が痺れたんですよね・・・」

 

ジッと見つめながらリクエストして来るアメリアに仕方無いわねぇ・・・とリンが溜息をつくと自分のジョッキを上げながら全員を見た。

 

「この偶然の出会いと皆との永遠の友情に・・・乾杯っ!」

 

「「「「「カンパーイ」」」」」

 

乾杯の音頭を取るリンに合わせてショウ達も声を上げながら各々ジョッキを当てると早速リンの作った料理を食べ始めた。

 

「うわっ何ですかこれは!?表面はサクサクながらも中は魚の身から出る肉汁がじわっと沁み込んで来ますね?」

 

「アメリアの言う通りだぜ・・・おいショウ!米くれ米っ!!」

 

「あっ私も欲しいです!」

 

この店に通い出してからかすっかりアジア圏内の料理の味に慣れてしまったのかリンはハイハイと答えながらクスクスと笑い出す。

 

「良いですねこの天ぷらって料理は?ビールに良く合います。」

 

「だろ?醤油じゃなくて塩で食べるともっと美味しいから試して見てよ?」

 

「塩だけですか・・・確かに!塩辛いのが更に良いですね!?」

 

ショウから言われた通り塩に付けた天ぷらにアメリアが太鼓判を押すと、お待たせ?とリンから置かれたご飯にアメリア達は天ぷらをおかずにガツガツと夕飯を楽しむので有った。

 



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その名はカスケード隊!その4

「いやあ~美味しかったです。この料理はってリンさんが考えたんですか?」

 

出された料理を綺麗に食べ終えたアメリアが満面の笑顔で尋ねると、違うわよ?とリンはクスっと微笑む

 

「これはショウの考案・・・って言うか母国の料理よ。ねっ?」

 

「ショウがリンさんに教えたって事ですか?って事は料理出来るんですね・・・」

 

 

リンの言葉に驚きながらアメリアが何故か不機嫌そうにムウ・・・と口を尖らせるのでショウは一体何だよ・・・!?と首を傾げた。

 

 

「まあ小さい時に母さんが居なくなったからさ・・・その代わりに僕を育ててくれた親父の事を思い出しながら僕が必然的に料理を覚えただけだよ。」

 

「そうなんですか・・・因みにお父様は今?」

 

「アジア方面に親父の居たニホンが有るんだ・・・因みに今はジオンの占領下だよ。」

 

「それって・・・」

 

少し困った顔をするショウに何か察したアメリアが自分の発言に失敗しましたね・・・と内心悔やんでいると、でもね!とリンからフォローする様に慌ててショウの肩に手を置いた。

 

「ショウがアドバイスをくれたから、この前仕入れた痛みかけた魚の処理が出来たのよ?」

 

「ちょっとリンさん!?それって腐りかけた料理を客に出したって事じゃ無いですか!」

 

「火に通せば大丈夫だって?しかも揚げてるし・・」

 

抗議するアメリアにワザとらしくリンからキョトンされると、何だよそれ・・・とショウがククっと笑いだす。

 

「良し、辛気臭いのは止めてもう一度乾杯するぞ!」

 

その顔を見たイエーガーがタイミング良くジョッキを上げると同時に、そうですよっ♪と少し酔ったのか頬をピンク色に染めながら同調するソフィーにイエーガーはドキっとしながら照れ臭そうにするショウをワザと見ながら乾杯の音頭を取ったので有った・・・

 

 

 

「所で先輩・・・部隊編成の進捗ってどうなんですかぁ?」

 

 

あまりお酒に強く無いのかミリィがカクテルを半分残したままこの出来上がった状況で尋ねて来るとアメリアは彼女を補佐に選んだ事を本当に良かったと感じた。

 

 

(ミリィを見ていると何だかケイの事を思い出しますね・・・)

 

 

そう思いながらアメリアが士官学校時代に出来たしっかり者の親友の事を思い返していると、先輩?と呼んで来るミリィの声にハッとしたアメリアはすみませんと答えながらコホンと咳払いした。

 

 

「今の所イエーガーに絞って貰った志願者は24名、しかしマチルダ中尉から与えられた私達の装備はMSが9機で3個小隊1個中隊規模です。」

 

「だけどぉ、その内の6機は通常のMSで残り3機が変わってるんですよねぇ?」

 

 

「その通りです。まあ・・・その3機の人員は既に決まってますけどね。」

 

 

首を傾げるミリィにクスっと微笑んだアメリアの中では既に人選は決まっている。彼女が率いる試験実験MS部隊にはRGM-79「G」陸戦型ジムが3機でこれが第一小隊、そして第二小隊にまだ機体は無いがRGM-79ジムでこれは陸ジムとは別の生産ラインで作られる制式量産機で有る。そして件の第三小隊だが・・・これが曲者で有った・・・

 

「RXー75ガンタンク・・・こんな戦車もどきに好き好んで乗る奴なんか決まってますよねぇ?」

 

「そこなんですよミリィ・・・しかも相手はタンク中尉です。私の言う事聞くかどうか不安ですね・・・」

 

「先輩なら大丈夫ですってぇ?所で・・・第二小隊の隊長は誰なんですかぁ!!」

 

アメリアを慰めたミリィが急に真剣な眼でジッと見つめて来るとアメリアはハァ・・・呆れた顔になる。

 

「ミリィの念願通りジャックですよ・・・まあ基地内の実力から見ても当たり前の事ですがね?」

 

 

「フフフ・・・同じ部隊になったのだからこれで基地のお姉さま方の誰にも邪魔されずジャック中尉を誘惑出来ますねぇ・・・」

 

「あの・・・お願いですから私を巻き込まないで下さいねミリィ・・・」

 

相変わらず肉食系の後輩にアメリアが苦笑いを浮かべていると、所でよ?と隣のチャーリーから声を掛けられた。

 

 

「せっかく俺達で部隊を作るんだから何か名前を作ったらどうだ?」

 

 

「それは良いですね!試験実験部隊じゃ味気ないですし・・・」

 

チャーリーの提案にアメリアがムゥ・・・と思案顔をしながら唸り出すと、ねえリン?とショウは自分の恋人に何かヒントが有るかも知れないかと尋ねた。

 

「リンはこのCASCADEって言う店の名前をどう決めたの?」

 

 

「えっ決めたのは父と母だけど・・・確かこの地域で良く出るビールから取ったとか?」

 

思案顔でそう答えるリンにカスケードか・・・とショウは空いたビール瓶を見ながらウンと頷いた。

 

「ねえアメリア・・・僕らの部隊名はカスケード隊って言うのはどうかな?このオーストラリア大陸で出会いリンのお父さん達が作った店で出会った僕らが組むんだ。」

 

 

「それは良いですね!さっきしたリンさんの挨拶にも有りましたけど・・・何か縁を感じた素敵な部隊名じゃないですか!?」

 

 

「じゃあ決まりだね。悪いけど店の名前を借りるよリン?」

 

 

興奮するアメリアにそう答えながらショウが二っと笑みを浮かべると、別に良いけどさ・・・と呆れるリンの了承の下・・・試験実験MS部隊カスケード隊がこの晩に結成されたので有った。

 

 

~~~

 

 



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機種転換訓練

そしてその数日後、オーストラリア方面軍トリントン基地に創設された試験実験MS部隊・・・カスケード隊として14名がアメリアの下した過酷な訓練をクリアし整然と並び座って居た。

 

「えーこれまで私が与えた訓練に血反吐した皆さんはお疲れさまでした。これで合格とし機種転換訓練は終了とします。」

 

そう言いながら軍曹ながらもニコっと微笑むアメリアにイヤッホオウ!!と自分よりも階級が上の筈の男性士官達から大喝采が上がり出す・・・

 

「何ですかこの隊員達の喜び様は・・・?」

 

「恐らくですけどぉ・・・恐らく先輩の訓練から解放された所為じゃ無いですかぁ?」

 

 

そうツッコんで来るミリィにアメリアはムゥ??と首を捻りながらこの数日間の事を思い返した・・・

 

 

~~~

 

 

「それでは今日はランニングと行きましょうか?」

 

「おいちょっと待てアメリア・・・本気でこんな物を(・・・)着て走るのか!?」

 

そう異議を唱えるのはイエーガーで教官役のアメリアは歩兵部隊と同じ装備をさせた機種転換訓練に志願した候補生隊に向かって首を傾げた。

 

「勿論です。MSに乗るんならそれなりのGに耐える為にも基礎体力は必須ですよ?」

 

「いやそれは分かるが・・・俺達のほとんどは戦闘機パイロットだぞ。今更こんな訓練は必要無いんじゃないか・・・」

 

「それはそうですがイエーガー、それ以外の隊員も参加しているのでここは公平を保つ為に頑張って下さい?」

 

 

そう答えながらニコっと微笑むアメリアに渋々と言った顔で了承したイエーガー達が士官学校で行ったフル装備の上にライフルを持ったまま基地の滑走路の周りを走ったり・・・

 

 

「じゃあ今日はCQC(近接格闘訓練)です。」

 

 

「って事は訓練だからどこを触っても良いんだな?」

 

 

そうニヤついたチャーリーが瞬殺されアメリアに投げ飛ばされたり・・・

 

 

そしてある日は射撃訓練を行ったアメリアがそう言いながら腰のホルスターからハンドガンを引き抜きながらパンパンと的に向かって発砲した。

 

 

「MSの火器は私達人間と同様に狙って撃つものですが・・・ミノフスキー粒子の台頭によりロックオンの精度も従来より甘くなってます。」

 

 

そう言いながら撃った全弾をターゲットの頭に命中させたアメリアが特務時代から使っている愛銃のロック17Lをホルスターに収めると、おおっ~!とその瞬間を見ていた全員から歓声が上がった。

 

 

「生身でもMSでも所詮は兵隊で被弾すれば致命的です・・・なら一撃必中を目指すべきだと私は思いますので皆さん頑張って下さいね。」

 

 

「まあ確かに・・・アメリアの言う通りかもね?」

 

 

その考えに頷いたショウが得意な射撃でアメリアを驚かせたりと、当初は30名近く居た志願者の他にもアメリアから見て個性的で目を引く人材を引き抜き精査した結果このメンバーでトリントン基地試験実験部隊カスケード隊が結成されたので有った。

 

 

「では、早速ですが・・・各小隊長とポジションを発表します。」

 

そう声を上げるアメリアにカスケード隊の全員から緊張しているのかビシっと姿勢を正した。

 

 

「先ずは第一小隊ですが、一番機イエーガー、二番機ショウ、三番機チャーリー、そして指揮は(バックアップ)は私アメリアです。」

 

そう言ったアメリアの言葉にショウ達から良し!とホッとした声が上がるとアメリアは更に続けた。

 

「そして第二小隊の一番機にはジャック=アルヴィン中尉と二番機三番機はレオン少尉とユウヤ曹長でバックアップにはミリィ=タニグチ伍長が担当します。」

 

「やったねぇ♪」

 

嬉しそうな声を上げるミリィにアメリアがまだ途中ですよ!と窘めていると、それで俺達はどうなんだい?と担当する機体の所為も有り一番多くの隊員を引き連れて来たタンク=ヴィンセント中尉からニヤニヤと笑みが浮かんだ

 

「各小隊長には事前に伝えてますが、タンク中尉の第三小隊は機体はあくまでも支援がメインですので私の指示に基づいて動いて下さいね!」

 

 

「ハイハイ、分かってるって・・・これから宜しくなアメリア?」

 

 

そういいながら二っと何を考えているのか分からない得体の知れないタンクにアメリアは苦笑いを浮かべながらアハハ・・・手を握ったので有った。

 

 

~~~

 

 

そしてその日の晩アメリア達は新たにジャックとタンクを加え結成したカスケード隊のメンバーでショウの恋人が店をしている部隊名で有るCASCADEにお邪魔していた。

 

 

「はいお待たせ!豚丼が出来たわよ皆?」

 

 

そう言いながらリンが焼いた豚肉と野菜を絡めたどんぶりを全員に出すと、何だコレっ!?とこの店に初めて来たタンクから驚いた声が上がった・・・

 

「こんなに美人で美味い店が基地の近くに有るなんて・・・ズルいぞ二人共!」

 

そう抗議するタンクに俺も初めてだって・・・とジャックが異議をを唱えながらイエーガーを見た。

 

「元々ここはショウ達の馴染みだ・・・それにリンはショウの恋人だぞ?」

 

 

「嘘だろっ!?あんな美人が何でショウと・・・」

 

 

意外な事実を知ったジャックが驚くとムゥ・・・とその様子を見ていたミリィからジロっと睨まれた。

 

 

「ここにも可愛い子がますけどぉ!」

 

「どこにだ?俺には見えないが・・・」

 

 

そう煽るミリィにジャックもその好意を知っているのか誤魔化す様に苦笑いを浮かべると、その恋が実ると良いね?とショウらら受け取ったミリィはビールをゴクゴクと一気に飲みほしたので有った・・・

 

 

~~~

 

 



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機種転換訓練その2

そして更に数日が経った。

 

 

ショウ達が受けて来た2週間以上に及ぶ機種転換訓練も大詰めとなり今ではMSを使った実機での訓練が多く実弾を使った射撃訓練やアメリアの特務時代の知識と経験を生かしたフォーメションの訓練等々・・・毎日朝から晩までみっちりとアメリアにしごかれている。

 

「ショウどうしたんです?しっかり付いて来なさいっ!」

 

 

アメリアはそう言いながらフットペダルを踏み込むと同時に、バーニアを吹かした乗機で有るRGM-79「G」陸戦型ジムが瓦礫と化したコロニーの外壁に沿って上昇すると、背後から少し遅れて同じ陸ジム(・・・)に乗ったショウが追って来る。

 

 

「クソっ、今日こそは負けないからなアメリア!」

 

ショウもアメリア機をロックオンしようとフットペダルを床まで踏み込み機体を更に加速させるが、前方のアメリア機がそうはさせまいとコロニーの外壁を出した右脚で蹴りながら急に機体を方向転換させるので、ウソだろ!?とショウはコクピットの中でギョッとする!

 

 

「貰いましたよショウォ!!」

 

 

そう声を上げながらアメリアが空中でバーニアを吹かし陸ジムを急降下させて来るのでショウはメインモニターに映るアメリアが操る陸ジムに向かって右手のサイドスティックに有るトリガーを引いた。

 

「こなくそっ!!」

 

 

ショウのヤケクソ気味に撃たれた100ミリマシンガンの銃弾をアメリアが咄嗟に踏み込んだフットペダルより機体をロールさせると、嘘だろっ!?声を上げたショウの撃ったペイント弾は全弾外れてしまい今度はアメリアの番で有る・・・

 

「これでお終いです!」」

 

 

そう叫んだアメリアの陸ジムが訓練用のロッドでショウの機体の頭部を当てようとした瞬間に舐めんなぁ!!とショウも負けじにロッドを引き抜きながら受け止めた。

 

「流石は元戦闘機パイロットですね・・・良い反応してます。」

 

「そっちこそ・・・!!」

 

日に日に手強くなっているショウに対しアメリアが賛辞を贈るとそう答えたショウはチッ・・・舌打ちしながらロッドを構えた。

 

((次で仕留めるて見せるっ!!))

 

 

教官で有るアメリアと負けず嫌いのショウとのプライドを掛けたこの戦いは意外にも次の一手で決まったので有る・・・

 

「デヤァァ!!!」

 

「このぉぉぉ!!!」

 

 

そう叫び合う二人に二機の陸ジムが互いにロッドを振るうとアメリア機が上段から振るった鋭い斬撃をサッと避けながらショウはアメリア機の胸を突いた。

 

 

「カノウ機の勝利!」

 

「オオっ!!」

 

 

そう声を上げる審判役のイエーガーと共に観戦していた第二、第三小隊の面々から歓声が上がるで、どうもどうも・・・と言いながらコクピットハッチに装備されたウィンチで降りて来たショウはムスッとしたアメリアと相対する。

 

 

「お疲れさん。」

 

「お疲れです・・・」

 

「睨んでる理由を聞いても良い?」

 

 

そう言いながら首を傾げるショウにアメリアはだって!と悔しそうな顔でショウを見た。

 

 

 

~~~

 

 

「まだ実機での訓練を始めてからちょっとしか経って無いのショウに私は負けたんですよ?」

 

 

ムゥ・・と唇を尖らせるアメリアにショウはまぐれだって!!と宥めながら二人で待機所まで戻ると、二人の模擬戦を観戦していた仲間達が指揮車輌で有るホバートラックの上やガンタンクのキャタピラ部に腰掛けてお疲れさん~と手を振りながら声を掛けて来る。

 

 

「何を呑気に見物してるんですかっ・・・次はイエーガーとチャーリーの番です!ハリーハリー急ぎなさい!!」

 

「わ、分かったって!?ったく負けたからって八つ当たりすんなよな・・・」

 

「・・・何か言いましたかチャーリー?」

 

 

そう焦った声を上げるチャーリーにアメリアがツッコむとタンクからククっと笑われ。た

 

 

「ったくチャーリーの野郎、女の尻に敷かれやがって情けなぇな・・・?」

 

 

タンクがなあ?と自分の部下で有る隊員たちにそう言いながらククっと笑い出すと、一人の隊員があっ・・・!と背後を指差すのでタンクは後ろを振り向きながらゲッ!と顔を引き攣らせる・・・

 

 

「ほう・・・ガンタンク隊は随分と暇そうですね?」

 

 

腕を組んだまま睨むアメリアにタンクはイヤイヤと慌てて両手を振り出しながらガンタンクを指差す。

 

「いやコイツじゃ模擬戦に加われ無ぇしさ?それに固定された的相手の射撃訓練も飽きたしよ・・・」

 

 

「成程・・・要は張り合いが無いという事ですね?良いでしょう・・・じゃあ少しゲームをしましょうか?ショウ180ミリキャノンは持って来てますね!」

 

 

アメリアの急な言葉ににショウはへっ!?と素っ頓狂な声を上げつつも持って来てるけど・・・?と、答えるとアメリアはニッと笑みを浮かべる。

 

 

「じゃあショウは陸ジムに搭乗して180ミリキャノンを装備、勿論実弾ですよ?タンク達ガンタンク隊も同じく搭乗して下さい。」

 

 

「ちょ、ちょっとアメリア!?僕は今さっきお前との模擬戦終わったばっかなんだけど・・・」

 

 

「まあちょっとした余興です。」

 

 

アメリアがヘッドセットを付けながら首を傾げるとショウは了解・・・と答えながら陸戦型ガンダムとよばれるRX79「G」と共通で有るバックパックに装備したウェポンコンテナから180ミリキャノンを組みながら構えた。

 

 

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機種転換訓練その3

「ルールは簡単です。お互いマニュアル(・・・・・)で正面に見える的を先に撃ち抜いた方が勝ちですよ?」

 

そう説明しながらアメリアが設置された的までショウの陸ジムとタンクのガンタンクを誘導すると二人から緊張しているのかゴクリと息を飲む音が聞こえた。

 

 

「それで先行はどっちにします?」

 

 

そう言いながらニヤリと笑うアメリアの背後では既にチャーリーが元締めとなり賭けが行われていた・・・

 

 

「ほらほらどっちだ?この基地の飛行隊で《撃墜王|エース》と呼ばれるショウと戦車隊では猛者と言われるタンク中尉・・・さあどっちに賭けるんだよ?」

 

 

「ショウとタンクか・・・そりゃあどう見てもタンク有利だろ?」

 

「まあジャック中尉の言う通りですが・・・勝負っていうのは気まぐれですからね。」

 

 

そう答えながら賭けを締め切ったチャーリーが二ヤっとアメリアへと笑みを浮かべた。

 

 

「今の所8対2でタンク中尉の有利だぜ?」

 

「分かりました!・・・って事で私もショウに賭けてるので絶対に勝って下さい。もしも負けたら分かってますね・・・」

 

「詐欺だ!理不尽過ぎるって!?」

 

いくら掛けたかは分からないが、ショウはジロっと睨んで来るアメリアに抗議しながら陸ジムの180ミリキャノンを構えた。

 

 

「先に撃っても良いですかタンク中尉?」

 

 

「あ、ああ・・・良いぞショウ!?」

 

 

向こうも緊張しているのかタンクの慌てた声にショウも深呼吸していると、もう一度説明しますね?とアメリアの顔がディスプレイに映った。

 

 

『それでは改めてルールの確認ですが、ショウの陸ジムとタンク達のガンタンクの二機がマニュアルで交互に撃ち合い三発での合計得点で勝負が決まります。』

 

 

そう説明したアメリアがソフィーを運転手をするホバートラックのガンナー席から顔を出すと、ではショウからお願いします。と声を上げるアメリアにショウはコクピットのシート裏から精密射撃用のゴーグルを引っ張った・・・

 

 

「これを外すとアメリアとのCQC(近接格闘訓練)が待ってるからな・・・絶対に当ててやるぞ!」

 

コクピットの中で気合いを入れたショウがサイドスティックを細かく操作しながら陸ジムが装備している180ミリキャノンの照準を的のど真ん中に合わせると、ここだっ!とショウは声を上げた。

 

「ビンゴっ!」

 

そう続けながら的を撃ち抜いたショウが自分自身で驚きながらも銃身を上げると、どうせまぐれだ!と言いながら悪態をつく砲手のタンクに操舵手のレティ曹長から何を言ってるんですか?と呆れた声が溜息と共に帰って来た。

 

「そんなのは当ててから言って下さいよ隊長?」

 

「うるせえぇ!ホント可愛くないなお前って!」

 

「隊長以外にはちゃんと愛想よくしてます。」

 

そう淡々と答えて来る生意気な部下にチッと舌打ちタンクはショウと同じく精密射撃用のゴーグルを覗き込みガンタンクの両肩に装備された120ミリキャノン砲の照準を的に合わせた・・・

 

「一番ファイヤーッ!」

 

そう叫んだタンクのガンタンクから発射された砲弾はドン!と随分と的外れな場所で着弾音が鳴り響いたので有った・・・

 

「嘘だろ・・・この距離を俺が外すとか!?」

 

「オートでのロックオン照準に慣れすぎなんですよタンクは!」

 

驚いた声を上げるタンクにまったく・・・と腕を組みながらアメリアが叱咤した。

 

「第三小隊は支援任務が主なんですから・・・これはもっと訓練が必要の様ですね?」

 

そう続けたアメリアから今日は居残り特訓です。と命令が下ると、まだ勝負はついて無いぞ!?とタンクはモニター越しにアメリアに抗議するが、何を言ってるんですか?と彼女からクスっと意地悪そうな笑みが浮かんだ。

 

「機甲部隊を纏めていた癖に初弾をあんなに大きく外すとは言語道断です。」

 

「61式なら当ててた!まだ俺はコイツに慣れてねえ・・・」

 

「それは戦闘機パイロットだったショウも同じです。」

 

そう淡々と答えて来るアメリアにタンクがぐうの音も出ない程に言い負かされていると、せんぱーい!とホバートラックから顔を出したミリィから呼ばれたので有った。

 

「どうかしたんですかミリィ?」

 

取り合えずマニュアルでの射撃訓練をタンク達に命じたアメリアが彼女に近づくと、マリア曹長から緊急の入電ですぅ!と敬礼しながら報告するミリィの言葉にアメリアは何でしょうね・・・と首を傾げながらホバートラックの中に入るとオペレーター席に座りながら付けていたヘッドセットをその回線へと繋げた。

 

 

「こちら試作実験MS部隊カスケード隊のアメリア=アン=ウォーカー軍曹です。トリントンコントロールどうぞ?」

 

 

『アメリア!?良かった・・・今居るのはA31地点で間違い無いわね!』

 

 

「そうですが・・・何か有ったのですかマリア曹長?」

 

 

自分達の居場所を確認してきたマリアにアメリアはどこか違和感を感じた・・・

 

 

『近くを飛んでいたウチの偵察機が近くに有る補給基地に向かうジオンのMS部隊をみつけたらしいのよ・・・』

 

「ホントですか!?その基地と連絡は・・・」

 

『それが取れないの・・・悪いけど一番近いのがアメリア達だし、バリサム指令も頼む!って横で手を合わせてるから、ちょっと無理言って悪いけど様子を見て来てくれないかしら?』

 

「まあ偵察くらいなら良いですが・・・」

 

『有難う助かるわ・・・バリサム指令からも今晩は奢ってやるから、だってよ?』

 

そんな事言いながらマリアの通信から誰がそんな事を!?と叫ぶバリサムの声を聞きながらアメリアが了解と通信を切ると、さてと・・・お仕事しますかね?と言いながらカスケード隊の面々に命令を伝える為にホバートラックから出たので有った。

 

 

 




ホント・・・亀更新でゴメンなさい。もうちょいでエブリスタの方の短編が終わるので、もう少し早く書ける筈・・・?


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強行偵察!?

「先程、トリントン基地司令部から近くの友軍補給基地へ所属不明が接近中との報告が有り、状況確認の為に我がカスケード隊へ強行偵察を命じられました。」

 

 

 

急に開かれたブリーフィングでアメリアからそう説明を受けたカスケード隊の面々はざわざわと騒めき出す。

 

 

 

 

 

「おいアメリア・・・まさか強行偵察って事は実戦も有り得るって事なのか?」

 

 

 

「その可能性は充分に有り得ると思います。」

 

 

 

「マジかよ・・・」

 

 

 

不安な顔を浮かべるイエーガーからの質問に答えたアメリアは隊員達の前に立つとニヤっと楽しそうに笑みを浮かべた。

 

 

 

「ホントこんなに早く訓練の成果が試せるとは皆さんは良かったですね?」

 

 

 

 

 

「「「「「全然良くねえよ!」」」」」」

 

 

 

カスケード隊総員からのツッコミの五月蠅さに耳を塞いだアメリアがちょっと良いですか!とジロっと全員を睨みだした。

 

 

 

「我々は試験実験部隊なんですよ?こんな時に経験値を積まないでどうするんです・・・」

 

 

 

「「「「「?!」」」」」

 

 

 

ビクつく隊員達を叱りつけたアメリアは小隊長で有るイエーガーとジャックの両名に向け更に続ける。

 

 

 

「分かったらMSを空挺装備に換装する。ハリー!ハリー!」

 

 

 

 

 

「「りょ、了解!?」」

 

 

 

と答えた二人が互いの部下を纏めて慌てて準備をしようと思った所・・・ちょっと待てよ?と思ったイエーガーとジャックは揃ってアメリアの方を振りかった。

 

 

 

「おいアメリア・・・今、空挺装備って言ったか?」

 

 

 

「ええ、どうせだから空挺訓練も一緒にしようかと思いまして?」

 

 

 

「思いまして?じゃねえよ!?そんな装備どこに有んだよ!!」

 

 

 

そう詰めかかって来る二人にアメリアが落ち着いて下さいって!と二人を宥めていると、ゴォォォ・・・と轟音が頭上から聞こえて来た・・・

 

 

 

「どうやら来たようですね。装備はあの中に詰まれてますよ二人共?」

 

 

 

そう答えながらニヤっと指を差したアメリアの目の先には降りて来る二機のミデアの姿が有った・・・

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「なあアメリア!なんで俺達第三小隊だけここで待機何だよ!!」

 

 

 

「借りれるミデアがこれしか無かったんですよ・・・それに一応偵察任務なのでガンタンクが必要になるとは思いませんし・・・」

 

 

 

「威力・・偵察だろうが!火力なら俺達の方が有るし、ジャックの第二小隊と・・・」

 

 

 

「くどいですね・・・良いからタンクはその下手くそな射撃がもう少しマトモになる様に訓練でもして置いて下さい!」

 

 

 

アメリアからの下手くそと言う強烈な言葉のパンチを食らったタンクがダウンした様に膝から崩れると、早く出してください。とミデアに乗り込んだアメリアは操縦を担当するウォルフガング=アレクサンダー老大尉を見た。

 

 

 

「了解了解・・・しかし嬢ちゃんもキツイのう?」

 

 

 

「あれくらい言ってやらないとプライドの高い奴は言う事を聞かないんです。」

 

 

 

そう答えながらアメリアがコクピット後部に有る座席に腰を落ち着かせると、ハァと困った様に溜息をつく彼女にウォルフはそうじゃのう・・・と苦笑いを浮かべた。

 

 

 

「それじゃあ離陸するぞい!二番機も良いのう?」

 

 

 

『オール・グリーン・・・と言いたい所ですがMS何か積んだ事無いのでちょっと・・・』

 

 

 

「そんなのワシも同じじゃ・・・行くぞい!!」

 

 

 

そう声を上げたウォルフがフルスロットルでミデアを加速させると、重いのう!といつもより長い滑走距離に舌打ちする・・・元々ミデアはVTOL垂直離陸が出来る機体では流石に荷物MSが重すぎて失速する可能性が有る為に通常での離陸を行っている。

 

 

 

 

 

「すみませんウォルフ大尉・・・無理を言ってしまって・・・」

 

 

 

 

 

「なあに・・・嬢ちゃんが謝る事じゃ無い。それにワシはショウ達に借りが有るからのう?これくらいの輸送任務はやらせてもらうさのう?」

 

 

 

 

 

少しすまなそうな顔をするアメリアに答えたウォルフがワーハッハッハッ!と豪快に笑いだすのでアメリアも釣られてクスクスとつい笑ってしまう。

 

 

 

「そう言えば・・・チャーリーから聞きましたけどウォルフ大尉って皆の教官をしていたって本当ですか?」

 

 

 

「そうじゃ。今乗せているイエーガーやジャックは勿論の事、あの基地に居る大体の戦闘機乗りはワシが教官をしていた頃の教え子じゃな・・・」

 

 

 

それ以上は話そうとしない寂しそうなウォルフの声に何かを察したアメリアは内心しまった・・・と話題のチョイスに失敗した事に気付くと、そうですか・・・と取り合えず答えた。

 

 

 

(そうですよね・・・マリア曹長の戦死した旦那さんもウォルフ大尉の教え子筈なので絶対に辛い筈です・・・)

 

 

 

そう考えながらアメリアが沈痛の想いで頭を抱えていると、作戦空域に入ります。と副操縦士で有る少尉から声が上がった・・・

 

 

 

「良し、このまま高度を維持し旋回するぞい?」

 

 

 

「了解です大尉。二番機にも我が機に続く様に伝えます・・・っておいどうした!」

 

 

 

「何じゃ一体・・・何か有ったのかの?」

 

 

 

「いえ・・・それが妙にノイズが酷くて?」

 

 

 

 

 

そう報告を上げて来る副操縦士に対しノイズじゃと?とやり取るする二人に違和感を感じたアメリアはレーダー通信士の席へと近づいた。

 

 

 

「あの・・・ちょっと教えて欲しんですけど、現在のレーダーの解析度と基地への通信状況はどうなってますか?」

 

 

 

「それが・・・実は不明瞭で基地にもさっきから通信が繋がらないんだ。」

 

 

 

アメリアに答えた通信士が不安そうに答えると、これはヤバそうですね・・・と腕を組みだした。

 

 



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強行偵察その2

「ウォルフ大尉?すぐに出ますので、我々が降下した後はすぐにこの空域を離脱し基地への救援要請をお願いします!」

 

 

 

そう言いながらコクピットから出て行くアメリアにウォルフが、おっおい!?と慌てて声を掛けるが既に遅く、アメリアはミデア下部と繋がっているMSコンテナへと駆け降りていた。

 

 

 

 

 

「あっアメリアちゃ~ん!ホントにコイツを使うのかい・・・俺っちはお勧めしないよぉ・・・?」

 

 

 

 

 

そう声を掛けて来たのはトリントン基地整備班主任のシバ=シゲオ曹長で有る。

 

 

 

 

 

「どうせいつかは運用試験しないといけないんですから一石二鳥って奴です。それよりもセットの方は間違い無いんですよねシゲさん?」

 

 

 

 

 

「そりゃあマニュアル通りには組んだけどさ・・・このジェットパックのテストまだやってないしぶっつけ本番になるからね!」

 

 

 

「その時はその時ですって?」

 

 

 

呆れた顔で腕を組むシゲにそう答えたアメリアはありがとうございました!とお礼を言いながら敬礼するとソフィーとミリィが待機していたホバートラックへと向かった。

 

 

 

「先輩おかえりなさいですぅ。」

 

 

 

「もう着いたんですかっ?」

 

 

 

車内へと入ったアメリアにミリィとソフィーが出迎えると、ええまあ・・・と曖昧に答えたアメリアはヘッドセットを付けながらオペレーター席に座った。

 

 

 

「先輩何か有ったんですかぁ?」

 

 

 

「いえ、どうも通信状況が悪いそうで基地と連絡が取れないそうなんですよ。」

 

 

 

「あぁ、そうれなら私も確認しました・・・どうも今から向かう補給基地周辺のミノフスキ濃度が妙に高いんですよねぇ・・・??」

 

 

 

そんな事を報告して来るミリィの手際の良さにアメリアは感心すると同時に不安を感じた・・・

 

 

 

(そんなの敵が居るって証明している様なもんじゃないですか・・・)

 

 

 

「ホント・・・嫌な予感で一杯です。」

 

 

 

そう独り言ちたアメリアは既に機体の中で待機しているカスケード隊のパイロット達へと通信を繋ぐ為にキーボードを叩き通信回線を開いた。

 

 

 

「アメリアよりカスケード隊各機へ作戦空域へと到着、これより空挺での降下作戦を行う。各自マニュアルはしっかり読んでますね?」

 

 

 

「こちらイエーガーだ。一通り読んだが・・・本気で空挺降下するのか?」

 

 

 

「勿論です。それに当初は訓練のつもりでしたがどうも雲行きが怪しくなってきたんですよね・・・」

 

 

 

そんな妙な事を言って来るアメリアにどいう事だ?と訝し気にイエーガーは首を傾げた・・・

 

 

 

「トリントン基地と連絡が取れないくらいミノフスキー粒子の濃度が高いんです。ちょっとヤバそうですよイエーガー・・・?」

 

 

 

「考え過ぎだろう・・・しかしアメリアの言う通り警戒を厳にしていくぞショウ、チャーリー!」

 

 

 

「イエーガーさん了解です。」

 

 

 

「了~解イエーガー隊長!」

 

 

 

 

 

そう気合い入れるイエーガーの声にショウとチャーリーからも各々返事が返って来るのをアメリアも自分のヘッドセットで聞いていると、なあちょっと良いか?と第二小隊のジャック=アルヴィン中尉から少し不満そうな声で尋ねられる。

 

 

 

「俺達の機体はいつ来るんだよ!」

 

 

 

「それは上の都合って奴です。代わりに陸ジムが送られて来ただけでもジャブローのマチルダ中尉に感謝してください?」

 

 

 

「わーってるよ!」

 

 

 

アメリアの説明にジャックから少し不貞腐れ様に返事が返って来ると、アハハ・・・とその内情を知っているアメリアは苦笑いを浮かべると、マチルダからジャック達の陸ジムを受け取った時に聞いたがどうやら量産機のベースとなる予定の試作機の到着が遅れているらしい・・・

 

 

 

(多分ウチに回って来るのは当分先でしょうね・・・)

 

 

 

そう思うアメリア率いるカスケード隊第二小隊には型式番号RGM-79ジムの配備は無くなり代わりに先行量産型の陸戦型ジムが三機導入される事となった。

 

 

 

 

 

 

 

「さてご歓談中の所悪いがそろそろ降下地点に到着するぞい嬢ちゃん!」

 

 

 

「了解です。ウォルフ大尉、皆さんも聞きましたね?」

 

 

 

ヘッドセットに聞こえてきたウォルフからの声にアメリアがカスケード隊各機に尋ねると、イエス・マム!と元気の良い返事返って来るとアメリアはフフッと微笑んだ。

 

 

 

「良い返事です。それではこの場よりこの指揮車両のコールサインをウィスキー・ドッグと呼称します。そしてイエーガーの第一小隊はCSD1から始まり、そしてジャックの第二小隊からCSD6となりますので各自コールサインを覚えて下さいね?」

 

 

 

「CSD1イエーガー了解だ。」

 

 

 

「CSD6ジャック了解!」

 

 

 

 

 

第一第二小隊長からの返事と同時にタイミング良くMSコンテナの後部ハッチが開き出すと、再び機長のウォルフから通信が入る。

 

 

 

「それじゃあ射出準備は良いかの?」

 

 

 

「いつでもどうぞ!」

 

 

 

「行くぞい!」

 

 

 

そう声を上げたウォルフが操縦席脇に有る射出レバーを引くとハッチ上部に有るシグナルがレッドからグリーンに変わった・・・

 

 

 

「カスケード隊出撃です!」

 

 

 

アメリアの号令と共に一番機のイエーガー機が射出されると二番機のショウそしてチャーリーとウォルフのミデアから降下して行くと今度はアメリア達が乗るホバートラックの番で有った・・・

 

 

 

「あのぉ・・・先輩?」

 

 

 

「何ですミリィ・・」

 

 

 

「ほんと~に大丈夫ですよねぇ・・・」

 

 

 

「私に聞かれても・・・ねえソフィー?」

 

 

 

「えっとですねっ・・・たしか成功率は80%って聞いてますよっ?」

 

 

 

「「・・・・・」」

 

 

 

何とも言えない微妙な成功率を知ったアメリアとミリィが無言になると同時にホバートラックも射出された。

 

 

 

「高度2000・・・1500・・・1000・・・このパラシュートとブースターは本当に点火するんですよねぇ!?」

 

 

 

「それよりも脱出用のパラシュートって積んでましたっけ・・・?」

 

 

 

「怖い事言わないでくださいよぉ先輩!?」

 

 

 

「こんなに早く実戦データが取れるなんてラッキーだなっ♪」

 

 

 

慌てるミリィとアメリアとは反対に落ち着いた様子のソフィーを乗せたホバートラックは台座付けられたブースターが点火し開いたパラシュートと共に六機の陸ジムと共に無事に着地したので有った。



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強行偵察その4

 

「一体どうなってるんですか・・・間違い無く今の攻撃は補給基地の方からでしたよね?」

 

「はい先輩。真正面の12時の方向から砲撃で間違い有りませんねぇ・・・」

 

通信回線を繋ごうとしながらも器用にキーボードを叩いたミリィからの報告にアメリアは更にムウ・・・と唸りながら深刻な顔になる。

 

「まさかとは思いますが補給基地が既に占領されているんじゃないでしょうね・・・!?」

 

 

状況証拠でしか無いが実際に攻撃を受けた事からもそう考えたアメリアがそこに行きつくと問題が一つ浮かび上がる。それは補給基地に居る筈の友軍部隊の存在だ・・・

 

(このまま攻撃を仕掛けるのは危険ですね・・・味方にも被害が有り兼ねませんし)

 

そう思案顔を浮かべるアメリアにアメリアさんっ!とソフィーから声が掛かった。

 

 

「取り合えずホバーをコロニーの残骸に隠しましたけどっ?」

 

 

「ありがとうですソフィー・・・それで状況の方はどうですかね。」

 

ソフィーからの報告にそう答えたアメリアは20ミリバルカン砲が備えられてる銃座から顔を出すと双眼鏡で覗きながら補給基地の方を見た。

 

 

「今の所は音沙汰無し・・・ですか。」

 

そう呟きながらアメリアが困った顔になると、おいアメリア!とチャーリーの焦った声がヘッドセットに聞こえてくるのでアメリアは何です?と散開しながらもコッチと同様に周囲に点在しているコロニーの残骸に隠れているMS隊を見渡した・・・

 

「何を躊躇してるのか知らねえけどよ・・・敵がいるんならさっさと倒しに行こうぜ?」

 

「焦るなってチャーリー?アメリアも考えが有るんだろうからさ・・・」

 

100ミリマシンガンを構えながらソワソワとするチャーリーの陸ジムをショウが窘めながら抑えているのを見ていたアメリアは良いコンビですね。とクスっと微笑んでいると、先輩ちょっと!と下からミリィの慌てた声が聞こえて来た。

 

「どうかしたんですかミリィ?そんなに慌てて・・・」

 

「良いからコレを聞いて下さいってぇ!?」

 

そう言いながらミリィがキーボードを叩くとアメリアの付けたヘッドセットに驚くような内容の会話が聞こえて来た・・・

 

『何で撃ったんだ!?向こうは友軍機だぞ!』

 

『五月蠅えなぁ・・・ここに来たって事は俺達の事を嗅ぎつけたって事だろう?だったら撃つしかねえな・・・だろっ基地司令官さんよぉ?』

 

『だがしかし・・・この事がバレたら私は!?』

 

『大丈夫だ!コイツ等は俺達が片付けるからお前さんはこの基地の防衛力じゃジオンのMS相手は出来なかったとか適当に行ってれば良いんだよ?』

 

『分かった・・・今の所正面のトリントン基地の奴等以外の基地からは出撃したと言う通信は上がっていないからすぐに片付けてくれよ!』

 

『へいへい・・・その代わりに弾薬と食料を頼むぜ?ここを俺達の前線基地とする代わりに契約したんだからな・・・』

 

『クッ・・・・』

 

 

そこで音声が途切れるとアメリアは嘘でしょ!?と声を上げながらミリィを見た。

 

「これって明らかに物資の横領に加えて敵への情報提供・・・どうやってこんなヤバい会話を拾ったんですか!」

 

「ああ、それは通信が難しそうだったから直接あの基地のホストコンピューターに忍び込んで通信回線の音声をコピーしたんですよぉ?」

 

「・・・・・」

 

確かにこれでジオンと癒着している補給基地へと攻撃する免罪符を得たアメリアだがその方法に無言で苦笑いを浮かべた。

 

「一応聞きますが・・・足跡とかは残してませんね?」

 

「その辺りは大丈夫ですよ先輩?私のハッキングは姉譲りなんでぇ♪」

 

「それはまたロクでも無い事を教えるお姉さんですね・・・」

 

そう答えながらニコっと満面の笑顔を向けて来るミリィにアメリアが呆れた顔になると、それじゃあ私も仕事しましょうかね?とアメリアもキーボードを叩き出す。

 

「アクティブ・ソナーを展開・・・各機へとリンクを開始します。」

 

そう言いながらアメリアがヘッドセットを抑えると同時にホバートラックの左右からセンサーを兼ねたアンカーが地面へと突き刺さる。これは周囲数キロ圏内の音を拾い索敵するには優れもの物ですぐにアメリアの耳に妙な音が聞こえて来た・・・

 

「音紋センサーにMSの起動音を確認・・・数は2・・3いや6機確認ですっ!」

 

「そんなに居るのか・・・ってクソっ!!」

 

アメリアからの報告にちょっと顔を出したイエーガーの陸ジムが先程シールドを吹き飛ばされた中距離支援機からの砲撃に驚くと、ちょっとイエーガーさんっ!とカスケード隊のマスコット・・もとい専属メカニックで有るソフィー=ホワイト伍長から抗議する声が上がった。

 

「それ以上その子を傷付けたら怒りますからねっ!」

 

「お前なっ!?その前に乗っている奴の事を心配しやがれ!!」

 

そう答えながらイエーガーから異議が上がると、真面目にして下さいよ!とアメリアが怒声を上げながらも指示を飛ばす。

 

 

「ウィスキードッグからCSD各機へ発砲を許可します。場合によっては撃破も構いません!」

 

「CSD2了解・・・エンゲージ(交戦開始)!」

 

そう答えたショウは物陰に隠れながらシートの裏から精密射撃用のスコープを引き出したので有った・・・

 



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強行偵察その3

「高度1000、800、700・・・ブースター点火!」

 

 

 

秒刻みでメインモニターに表示される高度計を読み上げたショウはフットペダルを踏み込むと、背中のバックパックに装着して有るジェットパックを点火させながら速度を落とし到達高度に達すると整備班のシゲからの説明の通り自動でパラシュートが開いた・・・

 

 

 

 

 

「絶対に戦闘機で空を飛ぶ方が怖くないってコレは・・・」

 

 

 

 

 

一応はMSと言う装甲の中にいるとは言え自由落下しながらの降下に相当冷えたショウが苦笑いしながら自機を地面に着地させると、同感だぜ・・・と僚機で有るチャーリーの陸ジムもすぐ傍に降りて来た。

 

 

 

 

 

『CSD1より各機へ、全機生きてるな?』

 

 

 

安堵する暇も無く第一小隊長で有るイエーガーからの通信アラームがピピッと聞こえて来るとショウはチャーリーと共にハァ・・・と溜息をついた。

 

 

 

 

 

「CSD2無事着地に成功です。」

 

 

 

「CSD3も同じく・・・って言うかなんでMSを使ってこんな事しないといけないんです?」

 

 

 

ショウと同様に相当怖かったらしいチャーリーからの抗議にショウも乗っかる様にそうですよ!と続けた。

 

 

 

「大体今までの訓練もそうですけど、高高度からの空挺降下とか僕達は特殊部隊の訓練を受けている訳じゃ無いんですよ!」

 

 

 

「バカよせショウ・・・俺もそうは思うが、俺達のボスが誰なのか忘れたのか・・・?」

 

 

 

そう言いながらイエーガーの陸ジムが肩を掴みながら接触回線で注意して来るが少し遅かった。自分達より少し遅れて降りて来たホバートラック・・・ウィスキードッグが近づいて来たので有る・・・

 

 

 

 

 

「成程・・・三人は私の訓練メニューにそれほど不満が有った様ですね。」

 

 

 

そう言いながらホバートラックの銃座から顔を出したアメリアがムゥ・・と不機嫌そうな顔をみせると、

 

 

 

「い、いや・・・僕はちょっとキツイかなーって?なあチャーリー!?」

 

 

 

「ちょっ俺に振るなよなショウ!俺はお前の指導に充分満足してるからな?」

 

 

 

ショウに答えながらもチャーリーが器用に陸ジムが両手をヒラヒラと振りだすと、その通りだぞ!?と小隊長のイエーガーからもフォローが入る。

 

 

 

「アメリアの訓練のお陰で俺達はこんな短期間で機種転換訓練を終えたんだからな?!」

 

 

 

「ふ~ん・・・まあ取り合えずそう言う事にしときますか・・・?」

 

 

 

イエーガーの一言で一応は納得したのかアメリアでは有るがすぐに二っと意地悪そうな笑みを浮かべて来る。

 

 

 

 

 

「まあ何にせよ指揮官で有る私に逆らった罰です。第一小隊は補給基地まで先行する様に!」

 

 

 

「イエス・マム・・・仕方ない行くぞCSD2、CSD3!」

 

 

 

階級では圧倒的にイエーガーの方が上なのだが機種転換訓練からコッチ・・・教官をしてたアメリアに頭が上がらなくなったショウ達第一小隊は前衛を勤めつつ補給基地へと向かう事となった・・・

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし視界が悪りいな・・・基地まで後どれくらいなんだよアメリア?」

 

 

 

アローフォーメションを取りつつ前進する一番先頭のチャーリー機から通信が入るとアメリアは現在起きてる砂嵐もそうだが、未だに復旧しないレーダーにチッ・・・と舌打ちしながら補給基地へと通信回線を開こうと悪戦苦闘している後輩を見た。

 

 

 

「ミリィそっちはどうですか?」

 

 

 

「ダメですぅ・・・ミノフスキー濃度もそうなんですがぁ・・・どうもこの補給基地を中心に通信妨害されてる様なんですよぉ?」

 

 

 

「ジャミングフィールドが形成されてるって訳ですね・・・」

 

 

 

そう説明しながらカタカタとキーボードを叩くミリィに益々嫌な予感がしたアメリアはヘッドセットを掴みながら先行する第一小隊に向かって止まってください!と前進を止めるよう指示を出した。

 

 

 

「どうしたんだアメリア?」

 

 

 

急な停止命令に先頭を歩いていたイエーガーがコクピットの中で首を傾げるとショウとチャーリーの陸ジムも続いてその場で足を止めた。

 

 

 

「何か有ったのか?」

 

 

 

「さあね・・・」

 

 

 

チャーリーにそう答えたショウが段々と晴れて行く砂嵐の向こうに見えた基地らしき構造物を確認すると何かがキラっと赤く光った・・・

 

 

 

「12時の方向から熱源反応ですぅ!!?」

 

 

 

それと同時にミリィからの焦った声にアメリアは慌ててヘッドセット掴みながら指示を飛ばす。

 

 

 

「全機警戒を厳にして下さい。敵からの攻撃が予想されます!」

 

 

 

「了解し・・・ウオっ!!?」

 

 

 

そう言うが早くイエーガーの陸ジムがドンっ!と言う音と共に背中から吹き飛ぶと、なっ・・・!?とモニター越しにその様子を見たショウは焦った顔でイエーガーさんっ!?と叫んだ・・・

 

 

 

 

 

「痛つつ・・・そんな泣きそうな声をだすなショウ・・・アメリアのお陰で俺はどうにか生きてる。」

 

 

 

アメリアの咄嗟の指示が功を奏したのかイエーガー機に当たった攻撃は前に出した左腕に装備した小型シールドに直撃したらしくすぐにイエーガーの陸ジムは立ち上がったのだった。

 

 

 

 

 

「先手を取られましたね・・・全機散開!ソフィーはホバーを全速で後退、ミリィはもう少し補給基地との通信を試みてください。」

 

 

 

 

 

アメリアからの指示に全員からイエス・マム!と返事が返って来るとアメリアはムゥ・・・と妙な状況に腕を組みながら首を傾げるので有った。



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強行偵察その4

「こんな状況MSでの初実戦とかホントにツイて無いんだけど・・・」

 

 

 

ショウがコクピットの中でそう呟きながら陸ジムに構えた180ミリキャノンの照準をスコープ越しに合わせていると・・・友軍で有る補給基地の中で似た様な装備を構えた敵機と目が合ってしまった。

 

 

 

「CSD2よりウィスキードッグへ、敵機を確認したが本当に撃って良いんだな?」

 

 

 

「ウィスキードッグからCSD2へ、当基地はジオン前線基地と化してます。責任は私が取りますので遠慮なく撃ちなさい!」

 

 

 

「了解・・・ってうわっ!?」

 

 

 

アメリアと通信を交わしている間に前方のMS-06J陸戦用ザクⅡからマゼラトップ砲を撃たれたショウは驚くと、コイツッ!と自機のシールドをバイポッド代わりにしてモニター越しに敵機を睨んだ・・・

 

 

 

「有効射程距離外だ。ロックオンが出来ない・・・」

 

 

 

「それは向こうも同じ条件です。それにショウがあの敵機をどうにかしてくれないと我々は身動きが取れないんですよね・・・」

 

 

 

「頼むからプレッシャーが掛かるような事言わないでくんない!?」

 

 

 

若干脅迫気味にそんな事を言って来るアメリアにショウはそう答えながらFCS火器管制からシ照準をマニュアルに切り変えると、ブンとモノアイを赤く光らすザクⅡを最大望遠にしたゴーグルに捉えるとトリガーを絞り陸ジムが両手で構えている180ミリキャノンを発射した。

 

 

 

「初弾修正・・・右にコンマ3度ですぅ!」

 

 

 

優れたハッキング能力と言い素早い計算と言いこういうのが得意なのかミリィ=タニグチ伍長から間延びした報告にアメリアは聞こえてますね?とザクⅡの左を僅かに逸れ背後の倉庫へと外したショウへと通信を繋いだ。

 

 

 

「了解・・・今度は絶対に当ててやる・・・」

 

 

 

「その意気で・・・CSD2っ!次が来ますっ!?」

 

 

 

ミリィからの修正の通り180ミリキャノンの照準を合わせ集中していたショウにアメリアから焦った声が聞こえると、ザクⅡから放たれたマゼラトップ砲の砲弾がショウの陸ジムを大きく外し逆にアメリア達が隠れているコロニーの残骸へと着弾するとホバートラックの天井にガラガラと破片が落ちて来た。

 

 

 

「まったく適当に撃って来て・・・次で絶対仕留めなさいショウ!」

 

 

 

キャアァ!!とミリィから悲鳴が上がる中でアメリアがそう声を張り上げながら指示を出すと、了解・・・と答えたショウは右手のサイドスティックに有るトリガーを再び絞ると陸ジムの持った180ミリキャノンが火を噴いた・・・

 

 

 

 

 

「連邦にMSが有るなんて聞いて無いが・・・しかし何にせよ撃墜すれば昇進も間違いないってな!」

 

 

 

地球連邦軍の補給基地内にも関わらず意気揚々とザクⅡのコクピットの中でそう声を高々と上げたジオン兵はヘヘヘ・・・と舌なめずりしながらマゼラトップ砲を再びショウの陸ジムに向けようとした所でピーっと鳴るアラーム音にギョッとする・・・

 

 

 

「直撃弾だと!?回避は出来なっ・・・」

 

 

 

ザクのパイロットがそう言い終える前にショウの撃った180ミリキャノンがザクⅡJ型の胸部上から頭部ごと吹き飛ばすと、ビンゴ!とその様子を確認したショウは二っと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「こちらCSD2敵機の撃破を確認した!」

 

 

 

「こちらでも敵スナイパーの排除を確認、さあさあ皆さん今度はコッチの番ですよ?存分に訓練の成果を見せてやりなさい!」

 

 

 

ショウからの報告にアメリアがカスケード隊各機へと号令を上げると、おうよ!と今までの鬱憤を晴らす様にジャック=アルヴィン中尉が率いる第二小隊が隠れていた岩陰から飛び出して行くと、俺に付いて来い!とジャックは二人の部下で有るユウヤ准尉とレオン曹長に向かって叫んだ。

 

 

 

「相変わらずだな・・・」

 

 

 

「イエーガー中尉に対抗してんだろ?」

 

 

 

「まあ第一小隊だけに良い恰好させたく無いしね・・・」

 

 

 

先行するジャックの陸ジムに追随しながらユウヤとレオンが共に武器を構えると三人のコクピットにピーっとロックオン反応が入った・・・

 

 

 

 

 

 

 

「先輩っ!補給基地から敵MS部隊が出てきましたぁ!CSD4からもエンゲージを確認ですぅ!?」

 

 

 

「おやおや・・・こうもあからさまにジオンのMSが出て来るとは、向こうも後がない様ですね・・・」

 

 

 

焦った顔をするミリィにそう答えたアメリアはヘッドセットを掴みCSD4ジャックへと通信を繋いだ。

 

 

 

 

 

「ウィスキードッグより第二小隊へ、絶対に単機ではフォーメーションを崩さずに連携を意識して下さい。」

 

 

 

 

 

「そんなのお前から耳にタコが出来るくらい聞いたっつーの・・・CSD5CSD6へ、アローフォーメションだ。正面のザクをヤるぞ!!」

 

 

 

アメリアにそう答えたジャックが部下達に指示を飛ばしながらバーニアを吹かすと、了解!と答えたユウヤとレオンの二人がその後に続いて行く。

 

 

 

 

 

「食らいやがれ!!」

 

 

 

そう叫んだジャックの陸ジムが牽制で試作型ビームライフルを撃つと、ビーム兵器だとっ!?と驚いたザクのパイロットが慌てて背後へとジャンプしながら回避すると・・・それは悪手ですね?とロックオンしたユウヤの陸ジムから撃たれたロケットランチャーがザクⅡの下半身へと直撃した。

 

 

 

「じゃあな・・・」

 

 

 

そして落下したザクⅡの胴体へとレオンの陸ジムがビームサーベルを突き刺すとアメリアはこの第二小隊の連携の取れた動きに良し!と満足そうに頷いたので有った。



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強行偵察その5

しかしミリィ、中々良い連携を取るじゃないですか第二小隊は?」

 

「そんなの当たり前ですよぉ?元々ジャック中尉が率いていた飛行中隊第二小隊はトリントン基地の中でも一番と言われる程に連携が上手い小隊だったんですからねぇ!」

 

先程まで、ジャック中尉やるぅ♪と目をキラキラとさせていたミリィに尋ねたアメリアが成程ですね。と納得すると、因みにイエーガー達はどんな評価なんだろうか?と思ったアメリアは試しに聞いてみた。

 

「えっとですねぇ。バウスネルン中尉は優秀なんですがぁ・・・カノウ少尉とウィルソン少尉がちょっとぉ・・・?」

 

「・・・まあ、コアブースターのオペレーターをしていた時から薄々感じてましたが、どうやらあのコンビはやはり問題が有るみたいですね・・・。」

 

そう答えながらハァ・・・と溜息をつくアメリアにミリィからアハハ・・・と苦笑いが浮かんだ。

 

「まああの二人の撃墜スコアだけを見たら優秀なんですがぁ・・・何せ命令違反の常習犯ですからねぇ。バウスネルン中尉も良く纏めてると思いますよぉ・・・?」

 

ミリィから見た二人の印象と分析を聞いたアメリアが、イエーガーも苦労してる様ですね・・・と呟くと、何を言ってるんですかぁ先輩?とミリィから首を傾げられたアメリアはどう意味ですか?と更に尋ね返す。

 

「いやだからぁ。今度からその苦労は先輩も背負うって事ですよぉ?!」

 

「あっ言われて見ればそうですね!?それはちゃんと躾けて置かないと・・・」

 

腕を組みながら若干気になる発言をするアメリアにミリィが敢えてスルーしていると、ピーっと通信アラームが二人のヘッドセットに聞こえて来た。

 

「ウィスキードッグ聞こえるか?こちらCSD1だ。それで俺達はどうしたら良い?特に指示が無いのならこのまま第二小隊の援護にでも回るか・・・」

 

イエーガーからの催促にアメリアはモニターに表示された基地周辺に展開している敵機の位置にむう・・・と唸りながら思案顔となる。

 

「・・・ミリィ増援はまだですか?」

 

「まだ何もぉ・・・」

 

そう答えながらヘッドセットを掴みながら首を横を振るミリィに向かって仕方有りませんね・・・と呟いたアメリアは覚悟決めてカスケード隊各機に向かって通信を繋いだ。

 

「ウィスキードッグから全CSDユニットへ、これより我が隊は強行偵察から敵機の殲滅へと移行します。第一小隊は速やかに前進を開始し補給基地の右に展開している敵部隊を排除しなさい!」

 

アメリアからの指示にイエーガーは慌てた・・・先程の第二小隊の強襲はショウが敵スナイパーを撃破したで成功したので有って、向こうも敵機が居ると分かって迎撃に出て来るとなっては話が違って来る・・・

 

 

「勘弁しろよアメリア・・・いきなりの実戦でハードルが高すぎやしないか!?」

 

「イエーガーなら大丈夫ですよ?健闘を祈りますね。」

 

そう言いながら通信を切るアメリアに頭を抱えたイエーガーはお前なぁ・・・と言いつつもハァ・・・と深呼吸し落ち着きを取り戻した。

 

「CSD1から各機へ、聞いてたとは思うが女王様は安全な道を所望しているらしい・・・」

 

「CSD2了解。要は敵機を全部撃破したら良いんですよね?」

 

「そうそうショウの言う通りですよイエーガー隊長!」

 

そう答えながら飛び出して行くショウとチャーリー機にイエーガーからちょっと待て!?と慌てる声が聞こえると、どれから行くショウ?と聞いて来るチャーリーにそうだな・・・と答えたショウはウィスキードッグからリンクされた敵機の位置情報を確認しながらチャーリーの陸ジムへと送った。

 

「先頭の奴をやろうか・・・僕が出鼻を挫くからチャーリーはそのまま後ろの奴等を?」

 

「りょーかい・・・頼むぜショウ!」

 

ショウからの提案に軽く了承したチャーリーが陸ジムの100ミリマシンガンを連射しながらMSー06J陸戦用ザクⅡ三機で編成された一個小隊に突っ込んで行くとショウもその援護の為に180ミリキャノンを腰だめに構えた・・・

 

「コイツ正気かよ!?」

 

そう叫んだザクⅡのパイロットが120ミりマシンガンを撃ち始めると、ヘヘっ・・・とニヤついたチャーリーはフットペダルを踏み込みし左右へとフェイントしながら陸ジムのバーニアを吹かした。

 

「そんな腕で当たるかってっ!!」

 

そんな声を上げつつチャーリーの陸ジムが驚いたザクⅡの脇すり抜けると、コイツっ!?と叫んだジオンのパイロットがチャーリー機へと照準を合わせた。

 

「貰ったぞ連邦め!!」

 

そう呟きながらチャーリーの陸ジムを捉えたザクⅡのパイロットだったがその行動が迂闊すぎたのか、ビンゴ!と声を上げたショウの陸ジムが撃った180ミリキャノンによって背中から撃ち抜かれてしまったので有った。

 



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強行偵察その6

「ぐッ・・・軍曹ーーーっ!」

 

このザクの小隊を率いている少尉が突然ドンッ!と目の前で爆散してしまった部下の機体に驚いた声を上げると、軍曹がっ!?と同時に横に居た上等兵の機体からも焦った声が聞こえてしまった少尉は落ち着け・・・と自分を窘める。

 

「小隊長・・・軍曹が軍曹が・・・早く助けに行かないとっ!!」

 

「落ち着くんだ・・・目の前の事実を直視しろ上等兵。軍曹は死んだんだ・・・」

 

まるで自分にも言い聞かせるかの様に答える小隊長で有る少尉に上等兵からウゥっ・・・と泣く声が自分のコクピットに聞こえて来た少尉は泣きたいのは俺の方だ・・・と内心焦りつつ頭を抱えた。

 

(まさかな・・・連邦にもMSが配備されつつ有るとは聞いていたが、ここまで動きが良いとは聞いてないぞクソッタレめ・・・これでは藪蛇じゃ無いか!?)

 

どうやらカスケード隊の事を随分と侮っていたらしい少尉は上等兵のザクを下がらせつつも悪化しつつ有るこの状況を作ってしまった左方へと展開している別動隊へと通信を繋いだのだったが・・・

 

「こちらドラゴンだ!タイガーへ状況が芳しくない。一旦基地まで後退するぞ。」

 

「タイガーからドラゴンへ!!こちらの連邦の抵抗が激しく後退が難しい・・・支援を頼む!」

 

向こうもジャック達の第二小隊からの攻撃に大分手こずっているのかそんな事を言って来るタイガー隊の指揮官に向かって少尉はふざけるな!と怒鳴ったので有る。

 

「大体お前達が先走って戦端を開いた所為でこんな事になったんだぞ!自分のケツくらい自分で吹くのが筋だろうが!!」

 

「何だと!?テメエだって自分の手柄欲しさにノコノコと出て来た癖に大きな口を叩いてんじゃねえ!!」

 

 

そんな醜い言い争いをタイガー隊の指揮官としていた少尉のザクにピーっと敵機接近のアラームがコクピットに鳴り出すと、もう来たかっ!?と基地へと逃げそびれた少尉はモニター正面に見えつつ有るチャーリーの陸ジムに向かって120ミリマシンガンを構えた。

 

「こうなったら迎撃するぞ上等兵!」

 

「イ、イエッサー!」

 

そう気合い入れる指揮官に対し新兵で有る上等兵は慌てながら答えた。

 

それもその筈で地球降下作戦で降りて来た彼らは一定以上の戦果または何らかの手柄を立て昇進するかでしか故郷で有る宇宙にへと帰れないので有る・・・因みに例外が有るとすれば怪我などにより戦線復帰の目処が立たない事が条件だがそれは運で有るとしか言いようが無かった・・・

 

 

 

「軍曹には悪いが上等兵・・・ここで連邦のMSを撃破でもしたら大手柄だ。ひょっとしたら宇宙(そら)に戻れるかもしれんぞ?」

 

「本当ですか小隊長殿!?」

 

「あぁ・・・これでこの劣悪な環境から逃げ出せるってものだ。気を引き締めて掛かれよ!」

 

「了解っ!絶対に故郷へ・・・宇宙(そら)へと戻ってやるっ!!」

 

小隊長で有る少尉からの言葉に上等兵もその甘い誘惑に釣られてしまい気合いを入れながら120ミリマシンガンの照準を接近しつつ有る機体に合わせると、ヘヘっそう来なくっちゃなぁ・・!!とチャーリーは陸ジムのバーニアを吹かしつつ脚部にサーベルラックからビームサーベルを引き抜いた・・・

 

「何だコイツはっ!?死ぬ気かってぇっーーー!!」

 

そう叫びながら上等兵が左手のシールドを前に出しながら突っ込んで来るチャーリーの陸ジムに向かってザクⅡの120ミリマシンガンをガガガッ!!と連射すると、今だショウ!と叫んだチャーリーの陸ジムが地面を蹴り強引に左へと機体を逸らすと、その空いた射線によって後方で180ミリキャノンを構えていたショウの陸ジムは上等兵のザクを捉えた・・・

 

 

「先ずは武装を排除っ・・・!」

 

メインモニターに映るザクに向かって呟いたショウがトリガー引くと、ドンと響く銃声と同時に上等兵のザクⅡの右腕部を120ミリマシンガンごとドンっ!と弾き飛ばしたので有る。

 

「CSD2ビンゴっ!ケツは僕が持ってやるからドンドン突っ込め!!」

 

「オーライ頼むぜ相棒!!」

 

ショウの言葉を信じたチャーリーはそのまま回り込む様に陸ジムを上等兵の操るザクⅡへ肉薄させると止めを刺す為にビームサーベルを上段から振り降ろした・・・

 

「貰ったあぁぁーーーっ!!」

 

「コイツっ!舐めるなよ連邦めぇーーーっ!!」

 

意地でも死んでたまるかと言った咄嗟の抜刀でヒートホークで受け止めて来た上等兵のザクに対しビームサーベルとの鍔迫り合いでチャーリーはバチバチと火花を散らすメインモニターを睨みながらニヤっと笑みを浮かべると、上等じゃねえかよテメェっ!!と声を上げた。

 

「チッ・・・敵機と近すぎて撃てないや・・・!」

 

チャーリーを援護しようとしたショウもこの状況に180ミリキャノンを撃つのを躊躇っていると、ピーっと鳴る接近アラームに別の敵機・・・?とショウはメインカメラをその方向に向けるともう一機のザクが接近しようとしていたので有る・・・

 

「三時だチャーリー!敵機っ!!」

 

ショウからの警告に何だとっ!?と慌てて叫んだチャーリーの陸ジムが右を向くとこの部隊の小隊長で有る少尉のザクが既にヒートホークを構えていた。

 

「貰ったぞ連邦の新型ーーーっ!!」

 

「冗談じゃねぇ!オッラアァァーーーッ!!」

 

そう叫んだチャーリーが鍔迫り合いのまま右から迫って来た少尉のザクを乱暴に蹴っ飛ばすと、なぁっ!?と驚いた少尉は機体ごと後方へと吹き飛んでしまう・・・

 

 

「へえ・・・アメリアのCQC訓練も無駄じゃ無かったみたいだねチャーリー?」

 

「だな・・・咄嗟だったけどなんとか上手く行って良かったぜ・・・」

 

そんな物騒な事を言い合う二人に目の前で指揮官を吹き飛ばされてしまった上等兵は戦意を失ってしまった・・・

 

(連邦のMSは化け物か・・・絶対に無理だろこんな奴等に勝つなんて・・・)

 

確かに性能に後発機で有る陸ジムの方がスペック的に上なのは間違い無いがこの上等兵はまだ知らなかった・・・この事出来事が機体性能では無くアメリア=アン=ウォーカーと言う鬼畜指揮官のしごきによって生まれたと言う事に、、、

 



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強行偵察その7

「先輩っ!?第一、第ニ小隊共に敵部隊を順調に追い込んでる模様ですぅ!」

 

とホバートラック内で情報分析を任せているミリィからの報告に順調ねえ・・・とアメリアはリンクしているカスケード隊各機から送られて来た上部モニターに映る戦術マップに苦笑いを浮かべた。

 

「確かに第二小隊に関しては私の指示通り動いている様ですが、第一小隊は如何なもんですかねね・・・?」」

 

「何だかんだ上手くやってるんじゃ無いですかショウとチャーリーはぁ・・・まあスタンドプレイみたいなもんですけどぉ・・・」

 

そう答えながら苦笑いを浮かべるミリィにハァ・・・と溜息をついたアメリアは腕を組みながら思案顔となった。このカスケード隊を率いる事となってアメリアが全員に叩き込んだ戦法は敵機に対し常に多数での対応とその連携で有る。

 

(ショウとチャーリーには後でお仕置きを考えて置かないといけませんね。)

 

そう思いながらアメリアが二人に与える罰と言う名の訓練メニューを考えていると、それとせんぱ~い?とミリィからヘッドセッドを掴みながら首を傾げられた。

 

「その二人が撃破した内の一機からオープンチャンネルで降伏すると言って来てますがどうしますかぁ?」

 

「えっ降伏って・・・まだ戦闘中ですよ!?諦めるの早く無いですか?」

 

「いや・・・何だかCSD2と3に妙に怯えた様子で、すぐに連行してくれと喚いてますがぁ・・・」

 

そう怪訝そうに報告して来るミリィに何をやったんだかあの二人は・・・と頭を抱えたアメリアがCSD1聞こえます?とヘッドセットを掴みながら第一小隊の小隊長で有るイエーガー=バウスネルン中尉へ通信を繋ぐと、聞こえているがウィスキードック・・・?とこの状況にも関わらずわざとらしい声がイエーガーから返って来た・・・

 

「どうもあの二人が突出しすぎている様ですが・・・イエーガー?」

 

「現在その対処為に急行中だ。お咎めは後で聞くから一旦切るぞアメリア!」

 

「あっちょっと・・・もうイエーガーったら!!」

 

一方的にイエーガーから通信を切られてしまったアメリアがまったくもう!と腕を組みながらムゥと頬を膨らませていると、ホバートラックの操舵手をしているメカニックのソフィー=ホワイト伍長から大変ですねアメリアさんはっ?と楽しそうに笑われてしまう。

 

「笑いごとじゃ有りませんよソフィー!ホントに彼らを纏めるのは大変なんですからね?!」

 

「アハハハ・・・ご愁傷様ですっ。」

 

そう答えながら苦笑いを浮かべるソフィーに向かってハァ・・・と溜息をつきながらアメリアは今後の作戦行動の意味合いも含めて各機の損傷度は?と尋ねた。

 

「えっとっ・・・・強いて言えばバウスネルン中尉の陸ジムが一番ダメージの蓄積度が高いですねっ・・・先程の攻撃で左腕部のアクチュエータに負荷が掛かっていますっ。」

 

ホバーの操縦席にも設置されているキーボードを叩きながらソフィーがダメージデータを色分けで表示した物を上部モニターに表示させるとアメリアはムゥ・・・と再び思案顔となる。

 

「ザクが撃った砲撃を直接シールドでを受けてますしね・・・因みに作戦の継続には支障有りませんか?」

 

「いやいや何を言ってるんですかっ!あの子の装甲はルナ・チタニウム製ですよっ?超硬スチール合金のザクとは違うんですザクとはッ!」

 

「えっ?あ、ハイ・・・!?」

 

アメリアがそう力説する祖父譲りの技術屋で有るソフィーの指摘に対しタジタジとなりながら答えていると、それを横目に見ていたミリィから変な子だなぁ・・・と自分の事を棚に上げながらモニターに目を向けると基地方向からピーっと妙な反応を拾ったので有る・・・

 

「あれぇ先輩・・・何だか補給基地から熱源を多数確認しましたよぉ・・・?」

 

「今何と言いましたミリィ・・・」

 

「だからぁ・・・後方の友軍基地から増援が現れたんですよぉ!現在後退しようとする敵MS部隊を支援しようと展開中~!!」

 

「音紋センサー展開・・・って!ちょっと・・・マジで連邦軍の車両じゃ無いですか!?」

 

ミリィからの報告にアメリア自身も慌てて自分の席でホバートラックのアクティブソナーで確認すると出て来たのは友軍(・・)で有る連邦軍の主力戦車61式の駆動音で有るとアメリアは判断した。

 

「あの補給基地の司令官は本気何ですかぁ・・・これじゃあ自分で罪を認めている様なもんですよぉ?」

 

「まあ・・・その証拠を残さない様に我々を消す為に出て来たんでしょう。」

 

「成程ぉ~因みに負けませよねぇ先輩・・・?」

 

そう答えながら不安そうにミリィが首を傾げると、そうですね・・・と呟いたアメリアは戦術マップを見ながら腕を組んだ・・・

 

(MSさえどうにかすれば大人しく降伏すると思ってましたが・・・補給基地の指揮官はどうやら相当強気の様ですね・・・いくら戦車と言えども数が揃うと厄介過ぎです・・・)

 

 

 

そう考えるアメリアのこの補給基地の司令官の印象は間違っていない上に敢えて加えるなら粗野で横暴だった。

 

「全車へ目標は友軍のMSだ良いな・・・」

 

 

「本当に良いんですか指令・・・これは明らかな反逆行為になります。」

 

 

「ここまで来て何を?どうせバレたら全員銃殺だ・・・だったら何も残らない様に撃ちまれーーーっ!!」

 

もう後がないのか切羽詰まった様に叫ぶ指令官に基地オペレーターも前面に展開する戦車隊へと交戦許可を出しながらチッ・・・と舌打ちしながら内心クソ野郎と思っているとピーっとレーダーから何か反応を示した・・・

 

「レーダーにコンタクト!?友軍機が急接近中です。」

 

「何だと!?一体どこの部隊だ・・・すぐに引き返させるんだ!」

 

そう叫ぶオペレーターに基地指令が焦った声を上げると・・・、ワーハッハッハッ!とその急接近中のミデアの操縦席で疾風ウォルフことウォルフガング=アレクサンダー大尉は高笑いを浮かべた・・・

 



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強行偵察その8

「ウォルフ大尉、無茶ですって!止めましょうよこんな無茶な事っ!?」

 

 

「ええい黙らんかい少尉!彼奴らが気張っとるんじゃ・・・ならワシ達だって命を張って物資(・・)を届けるのが仕事じゃろうが!!」

 

止めようとする副機長の少尉に向かって怒鳴りつけたウォルフが低空でミデアをカスケード隊と敵部隊のど真ん中を通るコースで侵入させると、長年の付き合いからか・・・あぁもうっ!!と腹を括ったのか隣の少尉から高度計を読む声が聞こえ始めた・・・

 

「200・・・150・・・100・・・50フィート・・・流石にこれ以上は危険ですよ大尉!?」

 

「分かっとるわい!さあて・・・お前さん達の出番じゃせいぜい気張ってくるじゃな?」

 

そう答えながらヘッドセットを掴んだウォルフが二っと笑みを浮かべるとミデアが積んでるMSコンテナのハッチ開閉スイッチを叩いた。

 

 

 

「あれはウォルフ大尉のミデア・・・一体何で!?」

 

この事は連邦軍側・・・アメリア達のホバートラックにもレーダーで確認されており、上部銃座から顔を覗かせたアメリアは双眼鏡を片手に超低空飛行で突っ込んで来るミデアに驚いた声を上げると後部のハッチが開いたので有る・・・

 

「ちょっとウォルフ大尉!?一体なにをする気ですか!」

 

「おお、嬢ちゃんか?ワシからのちょっとした贈り物じゃい・・・上手く使うと良いぞ?」

 

「へっ!?」

 

妙な事言って来るウォルフにアメリアが素っ頓狂な声を上げていると見ていたウォルフのミデアからカスケード隊へと配備された第三小隊のRXー75ガンタンクが三機程射出・・・正確に言うと落とされたので有る。

 

 

「本気で言ってるのかよオッサン!?降ろすんならせめて着陸してからにしろって!!」

 

「そんな悠長に降りていたらお前さん達ごと蜂の巣になるのがオチじゃよ?良いからサッサッと降りんか!」

 

そう言いながら機首を上げたウォルフが機体のロックまで外すとタンク=ディゴット中尉率いるガンタンク隊は半ば無理やり最前線へと放り込まれてしまった・・・

 

「クソったれめ!頼むぞレティっ!!」

 

「やってますってぇ!?」

 

ウォルフへと悪態を吐くタンクに向かって操縦士で有るレティ曹長が慌てながらもフットペダルを踏み込みながらガンタンクをドリフトさせながら横滑りを制御させ着地に成功すると、タンクの教育が良かったのか二番機三番機その様子を倣いつつ高い練度を発揮しながら後に続いたので有った。

 

 

「何で第三小隊がここに・・・?」

 

離脱して行くミデアを見ながらアメリアが不思議そうに呟いていると、ぜんぱ~い!とミリィの呼ぶ声が下から聞こえて来た。

 

「これで戦力比は五分以上ですが・・・どうしますぅ?」

 

そう言いながらニヤつきだすミリィにアメリアも意地悪そうにクスっと微笑んだ・・・

 

「良く分かりませんがここはウォルフ大尉の支援に感謝しますよミリィ!CSDユニット全機に総攻撃を指示・・・畳み掛けますよ!」

 

「了解ですぅ!こちらウィスキードック・・・カスケード隊全機へ、出て来た敵機は残らず排除せよ。」

 

そんな好戦的な指示を飛ばして来るアメリア達に一番最初に動いたのは留守番を申し付けられていた第三小隊の指揮官で有るタンクだ。

 

「各機良いな!一斉射したら即時に離脱しろよ・・・欲張ってもいい事は無いからな?」

 

そう指示を飛ばすタンクに部下達も了解!と答えると、良し良し・・・とタンクは呟いた。

 

 

「おいレティ絶対に敵機には向かうなよ?」

 

 

「そんなの分かってても自殺行為はゴメンですってぇーーー!?」

 

 

そんな焦った声を上げるタンクの一番機で有るガンタンクの操縦士で有るレティがガンタンクを全速で前進させると、コアブロックをオミットされた事に胴体が旋回可能となったガンタンクを右に旋回させたタンクは迫りつつ61式戦車をロックオンした・・・

 

 

「食らいやがれぇーーーーっ!」

 

 

そう叫ぶタンクの声と同時にジオンへと協力していた補給基地の戦車隊が120ミリ低反動砲と両腕部のガンランチャーの餌食になると、この状況に補給基地の司令官は驚愕した・・・

 

 

「全滅だと・・・我が基地の部隊がか!?」

 

「はい・・・協力していたジオンのMS部隊もろとも生き残った部隊は既に投降した模様です。」

 

そう答えながらオペレーターの男性士官がお手上げのポーズを取ると、ふざけるな!!とこの補給基地の司令官は大声上げながら腰から銃を抜くと男性士官へと突きつけた。

 

「今すぐあの部隊の指揮官へ通信を繋げろ・・・!」

 

「いや、もう諦めた方が良いんじゃないかな・・・って自分は思うんですが?」

 

「五月蠅いっ!良いから繋ぐんだ・・・」

 

そんな切羽詰まった様子の指令官に男性士官がオープンチャンネルで通信を繋ぐと、彼の言う通りですね?と答えたアメリアはカスケード隊全機で補給基地の周囲を囲むと銃を構えながら司令部へと単独で乗り込んだ・・・

 

「銃を捨て投降しなさい・・・貴方にはスパイ容疑と横領罪で逮捕します!」

 

つい古巣で有る特務隊のノリでアメリアがグロック17Lを司令官へと向けながら申告すると、ヒイ!?と焦った声を上げる彼の声にアメリアはおっと・・と思いながら銃を下げたの有った。

 

 

 

「なあアメリア・・・ホントに良かったのか?無断で戦闘した上に勝手に保補給基地まで制圧しちまってよ?」

 

ウォルフ大尉の救援によりトリントン基地と近くの基地からの増援で大分落ち着いて来た中でアメリアがチャーリーから尋ねらると、さあ・・・?とアメリアはホバートラックに寄り掛かりながら首を傾げた。

 

「一応上には、作戦上仕方無かった!って言う事で報告書を作りますよ。とにかく後の事は後詰めの部隊に任せて基地に帰りましょう・・・正直疲れました。」

 

そんな声を上げたアメリアが肩を揉みながらホバートラックへ乗ろうとすると、一応ヤバそうな音声は消してますよぉ?とミリィがヒョコっと顔を出して来たのでアメリアはハァ・・・と頭を抱えながら溜息をついた。

 

「まったく・・・個性豊か過ぎて今後が不安で一杯な部隊ですね・・・」

 

 

そう独り言ちたアメリアは後日イエーガーと共に勝手に戦端を開いた事に対し基地指令のバリサムから命令違反の厳重注意を受けたが、捕らえた捕虜からの証言によりカスケード隊は特別処分が下される事無く部隊としての初実戦を終えた。

 

 

 

 



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チャーリーの一日

エブリスタで書いていたのを再編集してますのでちょっと変な所も有りますがご了承ください。

【挿絵表示】



「よっしゃ久々のオフだ!」

 

 

 

そう叫んだチャーリーだったが・・・正直に言って彼にはする事は無かった。

 

 

 

「最近は訓練と言う名のアメリアがやるCQC近接格闘訓練で心も体もボロボロだからな・・・ちょっとナンパでもして誰かに癒されるか・・・?」

 

 

 

せっかくの休日を楽しもうとチャーリーがそんな事を考えながらニヤニャしながらトレーニングルームの前を通り過ぎると、んっ!?と何かに気付いたチャーリーはすぐに引き返すとギョッとしながら中を覗き込んだ・・・

 

 

 

「イ、イエーガー隊長っ!こんな所で何をしてるんですか・・・!?」

 

 

 

「おっ、チャーリーじゃないか?お前もトレーニングか・・・」

 

 

 

「トレーニングか・・・じゃ無いですよ!ドクターストップ掛かってるんでしょう・・・無理するなって!!」

 

 

 

先日行った作戦の後日に分かったのだが・・・実はザクのマゼラトップ砲の直撃をシールドで受けて吹っ飛ばされた際にイエーガーはアバラにヒビが入っていた事が判明したので有る。

 

 

 

「もう三日も立つんだぞ・・・痛みも無いしもう直ったって!」

 

 

 

「そんなすぐにくっ付く訳ないでしょう・・・アメリアに報告されたく無ければすぐに止めて下さいね?」

 

 

 

「分かったって!ったく・・・身体を鍛えると言う俺の唯一の趣味を邪魔しやがって・・・」

 

 

 

「そんな汗臭い事が趣味なんて・・・」

 

 

 

「何だとっ!もう一回行って見ろチャーリー!!」

 

 

 

ボソっと呟いたのが聞こえたのかイエーガーが掴み掛かる様な勢いで指を差して来ると、違いますって!?と慌てて両手を振ったチャーリーにイエーガーはフン!と鼻を鳴らしロッカールームへと入った。

 

 

 

「そう言えばお前の相棒はどうした。一緒じゃないのか?」

 

 

 

「ショウは年上美人の彼女と買い出しデートだそうですよ・・・」

 

 

 

「ああ・・・リンとか。お前も誰か誘って出かけたらどうだ?」

 

 

 

軍服へと着替え終わったがイエーガーはそんな提案をしながら出て来ると、何でオフなのにっ?とチャーリーが不思議そうなジェスチャーでイエーガーを見た。

 

 

 

「俺は良いんだよ!それよりもお前だ・・そろそろ女っタラシのチャーリーとか言う悪名を捨ててショウみたいに真剣な愛に目覚めたらどうだ?」

 

 

 

「俺がショウみたいに真剣に・・・?勘弁して下さいイエーガー隊長・・・こんな俺がマジで恋愛なんて・・・」

 

 

 

「そんな事を言う割りにはアメリアの事を気にしてたじゃないか?」

 

 

 

そう答えながらニヤつくイエーガーにチャーリーはえっとそれは・・・と困り出す。

 

 

 

「単純にアイツは可愛いし・・・ちょっとヤレたらラッキー?みたいな・・・」

 

 

 

「それはホントか?それが冗談じゃ無かったら俺はお前をぶん殴らないといけなくなるが・・・」

 

 

 

そんな物騒な事を言ったイエーガーがジロっと睨みを利かせると、いや冗談だ・・・とチャーリーから慌てて両手を振られたイエーガーはそれで?と首を傾げた。

 

 

 

「実はかなり意識してる。ホントマジで・・・」

 

 

 

「ほお・・・基地の内外関係無くあれだけ遊び回っていたチャーリー=フォン=ウィルソン少尉様がついに真剣な恋に目覚めたと!?・・・・これは明日のトップニュース間違いないな?」

 

 

 

「マジで止めてくれよイエーガー隊長・・・そんなのバラされたら俺は愛した達の全員から刺されちまうって?」

 

 

 

「どうせ一晩限りの付き合いのクセに何を言ってやがる・・・」

 

 

 

呆れた顔をするイエーガーにチャーリーが痛い所を突くな・・・と苦笑いを浮かべると、どうせ暇だろう?と誘って来るイエーガーにチャーリーはえっ・・・?と首を傾げるので有った。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「あのイエーガー隊長・・・朝飯に行くんなら食堂はアッチですよ?」

 

 

 

「ああ知っている。良いからちょっと付き合えチャーリー・・・」

 

 

 

そう言いながら基地のレクリエーション施設出たイエーガーに連れられて辿り着いたのはハンガーで有りチャーリー達カスケード隊のMSが置いて有る場所でも有る。

 

 

 

「まさか俺に陸ジムの扱い方のおさらいでも?」

 

 

 

「まあな・・・詳しくは彼女にでも聞いてくれ?おいアメリア!!」

 

 

 

「えっ!おいイエーガー隊長まさか俺をここに誘ったのは・・・!?」

 

 

 

そんな狼狽える声を上げだすチャーリーに向かってイエーガーがニヤニヤと意地悪そうな笑みを浮かべると、イエーガー!?と驚いた声を上げた彼女から陸ジムのコクピットハッチに装備されたワイヤーで降りて来たアメリアはチャーリーの姿を見ると二度ビックリした。

 

 

 

「ちょっとイエーガー・・・チャーリーまで連れて来て?昨日も言いましたがドクターの許可が出ない限り私はMSのパイロットには復帰させませんよ!」

 

 

 

「その件じゃない・・・そうじゃ無くてコイツが話しをしたいって言うから連れて来たんだ。」

 

 

 

「チャーリーが・・・?」

 

 

 

急に出て来た名前にアメリアから不審そうな顔を向けられたイエーガーにチャーリーは肩を掴みながら背後を向いた・・・

 

 

 

「絶対に無理だって!」

 

 

 

「最初から諦めるなよチャーリー!?とにかく食事くらい誘って見ろって!!」

 

 

 

「わ、分かった・・・アンタを信じて見る。」

 

 

 

情けない話し合いを終えた二人にアメリアからあの・・・?首を傾げられたチャーリーはコホンと咳払いをした。

 

 

 

「なあ・・・俺と朝飯・・・はもう遅いから昼飯を食いに出かけねえか・・・アメリア?」

 

 

 

「私と・・・二人で・・・ですか?」

 

 

 

コクっと頷くイエーガーを見ながら尋ねるチャーリーが勇気を振り絞り、ああ・・・と答えると、ソフィー?とアメリアは上で作業をしているカスケード隊のメインメカニックで有る彼女へと叫んだ・・・

 

 

 

「ちょっと半端な時間ですが休憩にしましょうか?」

 

 

 

「分かりましたアメリアさんっ♪」

 

 

 

そんな陽気な声を上げるソフィーが一番機で有るイエーガーの陸ジムのコクピットから手を振って来ると、今は何をしてるんだ?と気になったイエーガーが尋ねた。

 

 

 

「ちょっとソフィーに頼んでフットペダルの調整を・・・しかし良くあんなに固いペダルを踏めますね?」

 

 

 

「俺は固いのが好みなんだよ!」

 

 

 

「あれは筋トレですって・・・それじゃ行きましょうかチャーリー?」

 

 

 

突然そんな事を言って来るアメリアにチャーリーからヘッ・・・?と素っ頓狂な声が上がるとアメリアはクスっと微笑んだ・・・

 

 

 

「私とお昼に行くんでしょう?取り合えず私服に着替えて来ますからそうですね・・・30分後にここで待ち合わせましょう?」

 

 

 

 

 

「お、おう・・・分かった。」

 

 

 

 

 

「では後程・・・」

 

 

 

 

 

そう答えながら過ぎ去っていくアメリアに答えたチャーリーはバクバクと跳び跳ねる心臓を手で押さえると、ヤベェ・・・足が無ぇ!?とハンガーの中に向かって入って行った・・・

 

 



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チャーリーの一日2

あれから小一時間程経ち、チャーリーがある人から借りた車の中で遅えなアメリアの奴・・・とボヤキながら頭の後ろで手を組んでいると、お待たせしましたっ!?と聞こえて来る彼女の声にホントに・・・と運転席から見たチャーリーは思わず声を失ってしまった・・・

 

「・・・、一応聞くけどアメリアだよな?」

 

 

「当たり前じゃ無いですか!久しぶりにプライベートで外出するので士官学校時代に友人から選んで貰ったのを引っ張り出して来たんですが・・・どこか変ですか・・・?」

 

 

そう言いながらアメリアが恥ずかしそうにすると、いや全然・・・と呟いたチャーリーは彼女の綺麗な赤い髪に映える膝丈の青いワンピースに白いカーディガンを羽織ったアメリアらしい似合った彼女の可愛い姿に目を釘付けにされたので有る・・・

 

(やっべぇ・・・マジで可愛いんだけどっ!?)

 

心の中でそんな驚いた声を上げたチャーリーがアメリアに自分の動揺を気づかれない様にと内心ドキドキしながら、じゃあ行こうか?とスマートに助手席のドアを開けるとアメリアからありがとうございます。と返事が返りニコっと満面の笑みが浮かぶとチャーリーは頭を抱えだす・・・

 

「俺の理性持つかな・・・」

 

そう言いながら頭を左右に振り出すチャーリーに彼女から何をしてるんですか?と首を傾げると、今行くって!?と慌て出すチャーリーにアメリアもアハハ・・・とシートベルトを付けながら苦笑いを浮かべた。

 

 

(ついチャーリーに誘われて軽く返事をしたのは良いですが・・・これはデートって奴ですよね!?)

 

 

そんな事を想ったアメリアも内心ドキドキしながらどうしよう・・・と考えるといつもそんな時に思いつくのは士官学校時代の親友の言葉で有る。

 

『良いアメリア・・・男って言うのは食事を誘おうとすると大体が身体の要求をして来るから絶対に簡単に許しちゃダメだからね?』

 

『だけどホントに好きならどうするんです?』

 

『その時は段階を置いてちゃんとアンタが絶対に良いと覚悟したヤリなさい。』

 

『分かりましたけど・・・何でか聞いても?』

 

その時の事を思い返したアメリアはハァ・・・と溜め息をついた・・・

 

 

(確かケイの恋人ってクズ男が多かったんでしたね・・・)

 

 

自分に男性経験が無いと知ってるからこそアメリアはそんな事を教えてくれた今は遠くの部署で活躍しているで有ろう親友に向かって感謝の気持ちを持ってニコっと微笑んだ。

 

「・・・なあアメリア。そろそろ出して良いか?」

 

そんな事を考えているとも思わずにチャーリーが遠くを見ているアメリアに向かって声を掛けると、

 

えっ!?と驚いたアメリアはどうぞ?と答えながらも同時に聞こえて来る低いマフラー音に興味持つ。

 

「所でチャーリー・・・このトラックは誰のですか?」

 

「おやっさんに借りたんだんだ・・・足が無いからちょっと無理言ってな」

 

「車なら基地でジープでも借りれば良いのに・・・」

 

「それじゃあランチデートっぽく無くねぇだろ・・・?」

 

そんな風に答えたチャーリが悪戯っぽく二っと笑みを浮かべるとアメリアもまあ・・・確かにですね。と呆れた顔をする彼女じゃあ行くか?と声を上げたチャーリーはギヤを一速に叩き込むとトラックの後輪をホイルスピンさせながら急発進させた・・・

 

 

「ちょっとチャーリー!?ホワイト大尉から叱られても知りませんからね!」

 

「向こうが俺とお前の為に好きに使えって言ったんだせ?」

 

基地から出て落下したコロニーの所為で荒れた海岸線を気持ちよく流すチャーリーにまったくもう・・・と呟いたアメリアが窓から見える落下地点()を見ていると、なあ・・・?とチャーリーはハンドルをそのままに声を掛けた。

 

「何です・・・?」

 

「確かアメリアはスペースノイドで・・・その所為も有って特務の連中と揉めたんだよな。」

 

「そうですよ。」

 

「それでどこのサイドだ?両親とかは・・・」

 

そう聞きながらチャーリーは自分の会話のチョイスにボーッと海を差すアメリアにすぐに後悔する事となる・・・

 

「私の故郷サイド1アイランドイフッシュで・・・両親はあそこです。」

 

「悪りぃ・・・俺知らなくてさ・・・」

 

慌ててブレーキを踏みトラックを止めたチャーリーが申し訳ない顔をするとアメリアは慌てて両手を振り出す。

 

「誰にも言ってませんから当然ですって!?」

 

「でもよ・・・」

 

「良いんですよチャーリー・・・何の因果かこの土地へと配属されましたが、これは私をチャーリー達を出会わせようとする両親の悪戯じゃ中と私は思ってるんです。」

 

そう答えながらクスっと微笑むアメリアにチャーリーも頭をガシガシと掻きながら困った顔になる。

 

「俺じゃ無くて・・・?」

 

「うにゃっ!?」

 

出会った時から冗談交じりに口説かれてはいる彼女だがこんなに真剣な顔で聞かれたのはアメリアも初めてで有る・・・

 

「チャーリー・・・ちょっと!?」

 

「アメリア・・・」

 

そんな熱っぽい顔で覆いかぶさって来るチャーリーに先程の親友の言葉を思い返したアメリアは若干混乱しながら覚悟を決めた・・・

 

(私が好きと思った相手なら良いんでよね・・・)

 

そう思いながら覆いかぶさって来るチャーリーにアメリアもその背中に手を回すと、おわっ!?とチャーリーは慌てて離れた。

 

「チャーリー・・・?」

 

「悪りぃ・・・ちょっと暴走したぜ・・・」

 

そんな事を言うチャーリーが焦った様に汗を拭うと、ムゥ・・・と不満そうな顔をするアメリアと正気となったチャーリーは目的地で有る中立地帯の町へと着いた。



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チャーリーの一日その3

 

「どこに連れて来られたと思えば・・・まさか中立地帯の町とは驚きですね。」

 

「基地でランチ食うよりはマシだろ?」

 

そんな事を言いながら二っと笑みを浮かべるチャーリーにまあ確かにですね。と答えたアメリアはどこからどう見ても優雅なメインストリートとは言い難い雑多としては有るが陽気な屋台街に好印象を抱いた。

 

「ここには良く来るんですか?」

 

「いいや・・・今日が初めてだ。ついでに言うと昼間っから女とマトモに出歩くのも初めてかもな・・・?」

 

「ホントにチャーリーが付き合った女性とは穢れた関係だけの様ですね・・・」

 

「まあ・・・良く言われる。」

 

そんな事を言いながら苦笑いを浮かべるチャーリーにアメリアからハァ・・・と溜息をつかれた。

 

「って事は今日が私とチャーリーの初デートですね。」

 

「へっ・・・!?ま、まあ・・・そうだな。」

 

「じゃあ今日を楽しまないと損ですよチャーリー?」

 

戸惑ってる様子のチャーリーに向かってアメリアがそう答えると、おお焦ってますね・・・?と思ったアメリアは揶揄う様にクスっと微笑みながらギュッとチャーリーの腕へと自分のも絡ませた。

 

「お、おいアメリア!?」

 

「デート何だから別に良いじゃ無いですか。それよりも早く屋台を見に行きましょうよ?私のお腹がペコペコです!」

 

「わーったから引っ張るなって・・・」

 

若干面倒臭そうな声を出しながらもちゃんと付いて来るチャーリーにアメリアもフフッと微笑んでいるが実は内心ではかなり焦っていた・・・

 

(デートってこんな感じで良いんですかね?正直・・・勝手が分から過ぎて特務に居た時のどんな作戦よりも緊張してますね・・・)

 

そんな事を思いながらアメリアは背中に嫌な汗をかきながら士官学校時代の親友から聞いたデートの時の話を思い返した・・・

 

 

『男って大体最初のデートの時は自分で支払おうとするんだけど・・・悪いと思って割り勘とか言っちゃダメよ?』

 

 

『何でですかミユキ?』

 

 

『そんな事言ったらずっと割り勘になるからよ!』

 

 

過去にどんな恋愛をしていたかまでは聞かなかったが・・・アメリアはその時は妙に力説して来る親友に

そうなんだ・・・と苦笑いを浮かべたので有った・・・

 

 

「チャーリーはどうなんでしょうかね・・・?」

 

「何がだ?」

 

自分でも思わず呟いてしまった言葉にチャーリーが反応すると、しまった・・・と思ったアメリアは苦笑いを浮かべながら取り合えず目に付いた屋台を指差した。

 

「アレなんかどうかなーって?」

 

「何だありゃ・・・タコヤキって書いて有るが・・・」

 

聞いた事も無い食べ物を売っている屋台にチャーリーから怪訝そうな顔が浮かぶと、へいらっしゃい!と陽気な声を上げるアジア人の若い男性に良い印象を覚えたアメリアは渋るチャーリーを引っ張り取り合えずどんな物か見て見る事にした。

 

「一体何のお店でしょう・・・」

 

「いやお前が見つけたんじゃねえか・・・一応は食い物を売ってる様だな。」

 

スペースノイドのアメリアとヨーロッパ系のチャーリーが物珍しそうに見ていると、一個食べてみるかい?とその屋台の兄さんから二っと笑みが浮かんだ。

 

「じゃあ・・・一個だけ?」

 

そう言いながら顔を見合せたアメリアとチャーリーは焼きたての丸い物体をつまようじに刺さった渡されると、ゴクッと・・・二人揃って息を飲んだ・・・

 

「じゃあ行きますよチャーリー・・・」

 

「おうよ・・・!」

 

まるで敵陣へ突っ込む前かの様に言葉を交わす二人が勢い良く口の中に含むとすぐに絶叫が聞こえたので有る。

 

「ハフハフっーーー!?」

 

「熱っちーなんだこりゃ!?」

 

涙目でそんな事を訴えて来る二人に屋台の兄さんからアーハッハッ!と楽しそうな笑い声が上がった。

 

「どうだいお二人さん?これはたこ焼きと言ってアジアに有るニホンって呼ばれていた国でお祭りの時に良く出る食べ物なんだが・・・美味しいだろう?」

 

「ああニホンね・・・知り合いが一人居るから後で聞いてみるよ!」

 

チッ・・とニヤニヤとする屋台の兄さんに向かって舌打ちしたチャーリーだったが、4つくれ!と叫ぶ彼にアメリアはクスクスと笑い出すので有った。

 

「知り合いってショウの事でしょう?」

 

「まあな・・アイツには苦労を掛けてるし?たまにはな・・・」

 

毎度ありー!と手を振って来る屋台の兄さんに向かって照れ臭そうにするチャーリーに代わってアメリアが手を振っていると、じゃあ次に行きましょうか?ニコニコするアメリアは再度チャーリーと腕を組みながら屋台を物色し始めた。

 

「まだ買うのかよ・・・」

 

「それだけじゃ足りませんって・・・あっ!今度は焼きそばって書いてますね・・・何だかソースの香ばしい匂いが空腹状態の私のお腹を刺激して来ますね!」

 

「ったく・・・」

 

普段は見せないそんな無邪気な彼女の姿にチャーリーもククっと笑いだした。

 

 

「なあ待てよアメリア・・その隣に有るお好み焼きも気にならないか?」

 

「良いですね!指揮官命令ですよチャーリー全部買っちゃいましょう!!」

 

「イエス・マム!」

 

笑い飛ばしながらアメリアもそんなバカげた指示を出すとチャーリーと二人は屋台通りの先に有る広場で少し一息つくと、オープンテラスとは言い難い簡単に置かれた椅子とテーブルの上に屋台で買った戦利品を並べ出した。



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チャーリーの一日その4

「こんなもんですかね・・・よしチャーリーを乾杯しましょうか?」

 

「それは良い提案だ。因みに何に乾杯する?」

 

そう言いながら手渡した缶ビールを受け取ったチャーリーから二っと笑みが浮かぶと、そうですね・・・と腕を組んだアメリアはムゥ~と唸り出した。

 

「あっ・・・ならこれ何かどうですか?今日二人で過ごす素敵なランチに!」

 

「あっ、ああ・・・まあ天気も良いしな・・・それじゃあ素敵なランチに?」

 

彼女の二人で過ごす言った言葉にチャーリーが内心少し慌てながら缶を出すと、アメリアもカンパーイ!と無邪気な笑顔でチャーリーとカンっと音を立てながらゴクゴクと一気に飲み始めた。

 

「プハーッ、、昼間っから飲むビールは最高ですね?」

 

「どこのおっさんだよ!」

 

「良いから早くチャーリーも飲んだらどうです。まあまあ冷えてて美味しいですよ?」

 

呆れた顔でツッコむ声を上げるチャーリーにフフッと笑った酒豪な彼女が早々に一本を空けきると、タコヤキタコヤキ♪とアメリアは楽しそうに容器を開けだした。

 

「うん!少し冷めちゃいましたけど、結構美味しいです♪」

 

「だな。しかし何でここにはニホンの屋台料理ばかり有るんだろうな・・・」

 

「さあ・・・?まあ美味しいから良いじゃないですか」

 

たこ焼きを頬張りながらそう言ったアメリアの満足そうな顔にそうだな・・・と答えたチャーリーがフッと笑うと、アメリアはそれにですね・・・と少し恥ずかしそうにしながら言葉を続けた・・・

 

「私はこんなランチ好きですよ?ちゃんと食事代を割り勘にされませんでしたし・・・」

 

「あん?そりゃあ奢るに決まってんだろ!?誘ったのは俺だし・・・」

 

「そんなもんなんですか?」

 

「そんなもんだろう・・・さっきから何変な事を言ってんだお前??」

 

まるで変な奴を見る様な顔でチャーリーがビールを飲むと、アハハ・・・とアメリアは苦笑いを浮かべながら有る決意をする。

 

(もう今後一切ケイのアドバイスは絶対にあてにしないと私は決めました。)

 

そんな事を思いながらアメリアが3本目の缶ビールを開けようとすると、あっ?とチャーリーから指を差された。

 

「それが最後の一本だぞ!さっき買う時に2本ずつって言ったじゃねえか・・・」

 

「おっと、そうでしたね。ちょっと考え事をしてたので・・・じゃあまだ飲んで無いのでコレを?」

 

「おお・・・ってどこに行くんだ一体??」

 

急に自分のバッグを持ち立ち上がろうとするアメリアにチャーリーが慌てると、

 

「もう何本か買って来るんですよ。それにチャーリーもまだ飲むでしょう?」

 

「ああなんだ・・・じゃあ俺が・・・」

 

「あっ!ダメですよチャーリー?」

 

財布からお金を出そうとするチャーリーにアメリアが制止する様に右手を出すとフフッと微笑んだ。

 

「私は誰であろうと(・・・・)イーブンで有りたいと思ってますので今回は私が出しますね?」

 

「ああ・・・分かった。」

 

有無を言わせない様な彼女の言葉にチャーリーも渋々と言った顔で財布をポケットに仕舞うと、それじゃあ行ってきますね?と歩き出すアメリアにチャーリーはなあ?と声を掛けた。

 

「凄く良い提案なんだけどよ・・・俺が買った分だけのビールなんか買われたら帰れなくなるぜ?」

 

「・・・それなら余った分はショウ達のお土産にでもしたらどうです!」

 

チャーリーからの指摘にアメリアが恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせると、そりゃあ良い!とチャーリーは両手で指を差しながらニヤついた。

 

「とにかくっ!行ってきますから大人しく待ってて下さい!!」

 

ジロと睨んだアメリアからそんな声が上がると同時にビシっと指を差されたチャーリーはククっと笑いながら彼女の後ろ姿を見送ると、ビックリしたぜ・・・とすぐにホッとするので有った・・・

 

「急にバッグなんか持って立つから帰ると思って焦ったじゃねえかよ・・・まったく俺らしくねえ・・・」

 

そう独り言ちたチャーリーは出会った時よりも更に膨れつつ有る彼女への想いにどうしたものか・・・と葛藤しながら残ったビールを一気に煽るので有った・・・

 

 

~~~

 

 

(まったくチャーリーの奴!私を揶揄うなんて良い度胸してますね!!)

 

再び出店の有るメインストリートへと戻ったアメリアがムゥと唇を尖らせながら歩いていると、まあしかし・・・とアメリアはそのチャーリーを思い出すとすぐにクスっと小さく笑いだした。

 

(まさかそのチャーリーと久々のオフを二人で過ごすなんて昔の私やケイが見たらきっと驚きますね?)

 

そんな事を考えながらアメリアがついさっきチャーリーと一緒に買った屋台を見つけようとキョロキョロ

しだした・・・

 

「確かこの辺だった筈ですが・・・」

 

「ああっ!!今何て言ったぁ・・・」

 

「へっ!?」

 

喧噪の中で不意に聞こえた怒鳴り声に変な声を上げたアメリアは目の前で起きている事態にギョッとした・・・ライフルを担いだジオン兵二人と屋台の老婆が言い合っていたので有る。



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チャーリーの一日その5

(向こうはライフルを持ったのが二人・・・って言うか何で武器担いで中立地帯の街にいるんですか!バカなんですか!?)

 

内心チッと舌打ちしながら悪態を吐いたアメリアは腕を組みながら思案顔を浮かべた・・・

 

「さて・・・連邦軍の私としてはこのまま様子見するのが正解なんでしょうが・・・」

 

出来上がった野次馬の中でアメリアがそう独り言ちていると、屋台の老婆から何か言われたのか、俺達から金を取んのかぁババァ!!とジオン兵達がヒートアップすると、この酔っ払い共め!と老婆も負けず怒鳴り返した・・・

 

「もう一度だけ言ってやるから良くお聞きっ?ここに書いて有る金額も読めない様な奴に売るもんは無いよ!!」

 

「チッ・・・このババァ言わせておけば!?どうせこの戦争は俺達ジオンが勝つんだっ!今の内に俺達に媚びを売っていた方が良いと思うぜ・・・」

 

「ハっ!連邦もジオンも無くなっちまえば良い・・・わたしゃどっちも嫌いだからねぇ?」

 

フッと呆れた顔で老婆がジオン兵の顔を杖で指すと、喧嘩売ってのかババァーーーっ!!とバカにされたリーダー格のジオン兵はライフルを振りながら店先の果物を地面へと叩き落とすとそのまま銃身を突きつけた・・・

 

(ちょっとお婆さんやり過ぎですって・・・って言うか確かに何の役にも立って無いかも知れませんが私たちも必死に戦ってるんですよ!?)

 

アメリアが老婆からの言葉に若干心を痛めねがら三人のやり取りをハラハラしながら見ていると、何すんだいっ!と老婆が再び怒鳴り出すので、ああ?とライフルを向けようとするジオン兵の行動にマズイ!?と思ったアメリアは肩に掛けていたバッグの中に手を入れるとサーッと顔が青くなる・・・

 

(しまった!出かける前に慌ててカバンの中身入れ替えて・・・銃もナイフもテーブルの上に置いたままじゃないですかぁ!?)

 

「ほら・・・どうするよ婆さん?役に立たない連邦の連中にでも助けを呼んでみたらどうだ!」

 

「そりゃいい!ほら呼んでみろよ?俺達ジオンがいつでも相手してやるってよ!」

 

ククっと笑いながら煽るリーダー格のジオン兵に乗っかり部下の方も調子に乗ってライフルを向けるので、ひっ!?と老婆は勿論の事、周囲に居た住民達からも悲鳴が上がる中、チッ・・・と舌打ちしたアメリアは履いていたミュールを脱ぎ捨てながらこの混乱の中を駆け出した・・・

 

「ああもうっ!!」

 

「なっ!なんだぁっ!?」

 

左右にフェイントを掛けながら突っ込ん来るアメリアに気付いたジオン兵だが、酔って狙いが定まらないのか銃身をふらつかせると、フっ!!と声を上げたアメリアは一気に間合いを詰めると小柄な体を活かししゃがみ込みなが掌底でライフル打ち上げた。

 

「デヤァァァーーーっ!」

 

「ガアっ・・・!?」

 

 

そのまま身体をクルっと捻り目の前のジオン兵の側頭部に鋭い回し蹴りを決めたアメリアは、えへ・・・ピンクだ・・・と言いながら気を失うジオン兵にハッとしながらワンピースの裾を押さえた・・・

 

「良くも見ましたねっ!!!」

 

顔を真っ赤にしたアメリアが止めと言わんばかりにダウンしたジオン兵の下半身を思いっきり潰すように踏みつけると、なんて残忍な・・・と一人残ったリーダー格のジオン兵から抗議の声が上がったので有る。

 

「お・・・お前それでも人間かよ!?」

 

「民間人に向かって銃を向けた奴が何をいってるんですかっ!!」

 

彼女の容赦ない攻撃にビクつくジオン兵に今度はアメリアが呆れた顔で異議を申し立てると、あんまり舐めてんじゃねーぞっ!!と怒声を上げながら飛び掛かって来るリーダー格のジオン兵にやれやれ・・・と呟いたアメリアは首を横に振った。

 

「正直言って子供のケンカじゃないんですよね・・・?」

 

 

殴り掛かって来たジオン兵の拳を難なく弾いたアメリアはギョッとするジオン兵の腕をすぐに掴み取ると素早く背中から背負いながら、せやあぁぁーーっ!と勢い良く地面へと叩きつけた。

 

「グハぁっ!?」

 

苦しそうな声を上げ動かなくなったジオン兵に向かって安堵したアメリアはフゥ・・・と息を吐いた。

 

「せっかくのオフが台無しですね・・・」

 

そう独り言ちたアメリアの背後から危ないよっ!?と叫ぶ老婆の声に振り向いたアメリアはハッとしながら身構えた・・・ある意味再起不能にさせたジオン兵が殺気だった目でハンドガンを抜いていたからだ・・・

 

 

 

 

「アメリアの奴・・・遅っせえな・・・一体どこまで買いに行ったんだよ?」

 

そしてそんなアメリアのピンチにチャーリーも帰りの遅い彼女を心配して屋台通りまで来てみると、前方に出来た人だかりにチャーリーは何だありゃ・・・?と首を傾げた。

 

(まさかアメリアが何かしたんじゃねえよな・・・)

 

知り合ってからというものトラブルメーカーとしての彼女の才能を散々見てきている事も有り、ちょっとゴメンよ?と言いながらチャーリーが集まった住民達を掻き分けると嫌な予感が的中してしまう・・・

 

「冗談だろ・・・クソったれめ・・・」

 

小さく悪態を吐いたチャーリーが到着したのはアメリアが一人目倒した所だった。そして二人目が飛び掛かろうした時にチャーリーは腰に差していたUSPを抜こうとするがそれは杞憂に終わった・・・速攻でアメリアが自分よりも大柄なジオン兵を投げ倒してしまったので有る。

 

(アメリア強ぇぇぇ!?流石元特務だぜ・・・)

 

改めてアメリアの強さを再確認したチャーリーが彼女を出迎えに行こうと前に出ようとした瞬間に危ないよ!と老婆が叫ぶので身構えたチャーリーはアメリアの背後で銃を抜いているジオン兵を見つけると、マジかよっ!?と声を上げながら腰から引き抜いたUSPの銃身をスライドさせるとアメリアの背後に居るジオン兵へと銃を構えた・・・

 

(クッ俺の腕じゃ・・・だけどこのままじゃアメリアがあぶねえ・・・!!)

 

 

「アメリアしゃがめぇーーーっ!!」

 

 

「えっチャーリー!?」

 

 

チャーリーの叫んだ声にアメリアとジオン兵もなっ!?と言った顔で驚き固まってしまうと、貰ったぁ!!と叫んだチャーリーはUSPのトリガーを引くと、パンっ!と乾いた音と同時にジオン兵の肩が撃ち抜かれたので有る。

 

「ギャアァァ・・・」

 

「オラ!これ以上動くなよ・・・これ以上こんな所でドンパチしたくねえからな・・・」

 

肩を押さえ悲鳴を上げるジオン兵の傍に有った銃を駆け寄ったチャーリーが遠くに蹴とばすと、今撃ったのチャーリーですか?と呆然としたアメリアから声を掛けられた。



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チャーリーの一日その6

「ま、まあな!マジで当たるとは思わなかったけど・・・」

 

「えっ最後の方が良く聞こえませんでしたが・・・?」

 

そう聞きながら顔を近づけるアメリアに向かって何でもねえよ!?と慌て出したチャーリーはそれよりもだ!とジロっと睨みだした。

 

「バカかお前は!いくら元特務だからって丸腰で突っ込むか普通!?」

 

 

「ムゥ!バカとは何ですかバカとは!!大体チャーリーが居なくたってアレくらい避けられましたーー!!」

 

 

「はあ!?人が助けてやったって言うのに・・ったく!」

 

 

悪態を吐くアメリアにチャーリーも呆れた声を出しながらそのまま彼女の頭を優しく抱きしめると、うにゃ!?とアメリアから変な声が出た。

 

「ちょっとチャーリー・・・苦しいんですが!?」

 

「五月蠅ぇな・・・心配させたんだから少しだけでいいからこのままでいさせろよ・・・」

 

少し怒っているのか・・・そんな低い声を耳元で囁かれたアメリアが顔を真っ赤にしながらも不思議そうに肩を撃たれたジオン兵に違和感を覚えた・・・

 

(真正面から撃った筈なのにジオン兵の肩は背後から撃たれてます・・・一体誰が?)

 

そう思うアメリア達から少し離れた場所でホッとした顔をしながら護身用に持っていたM38リボルバーを路地裏で懐に仕舞う黒髪の青年が有った・・・

 

「やれやれ・・・間一髪じゃないかよ。チャーリーとアメリアの奴・・・」

 

「どうしたのショウ?なんだか通りが騒がしいみたいだけど・・・」

 

買い出しを終えたリンが覗こうとするのをショウは何でも無いって!?と慌てて両手を振り出す。

 

「それよりもさ!?今日欲しいって言ってた食材は手に入ったの??」

 

「あっ、そうそう聞いてよショウ!?何だか知らないけどタコが沢山揚がったとかで一杯買っちゃったのよ!」

 

「じゃあしばらくはタコ料理だね。揚げても焼いても良いし・・・刺身も・・」

 

「良いわねそれ!早速帰って教えてよ?」

 

そう言いながら引っ張っていくリンに上手く誤魔化す事に成功したショウは一足先にCASCADEに戻るので有った・・・

 

 

 

~~~

 

 

 

「助かったよアンタ達・・・コイツ等は私達で町の外に放りだして置くからね?」

 

「アハハ・・・お任せします。」

 

暴れたジオン兵二人組を縛り上げた老婆達にアメリアが苦笑いを浮かべながら退散しようとすると、ちょっと待ちな!とその老婆から声が上がった・・

 

「お前さん達は連邦軍じゃないのかい?」

 

「えっと・・・」

 

そんな事を言う老婆に困った顔を浮かべたアメリアがチャーリーと顔を見合わせると、俺達は正義の味方だよ?とチャーリーはニヤっと笑った。

 

「そ、そうです!私達は通りすがりの正義の味方ですから!」

 

「そうかい・・・まあ、また何か有ったら顔を出しな?悪い様にしないからね。」

 

そう言いながら二っと意味有り気に笑う老婆にアメリアもアハハ・・・苦笑いを浮かべながら手を振りこの中立地帯の町から出たので有った・・・

 

 

「なあ・・・さっきのどう意味だアメリア?」

 

トラックのエンジンを掛けながら首を傾げるチャーリーにアメリアは何がですか?とわざとらしく答えながら窓から外を見た。

 

「さっきの婆さんから妙な事言われてたろ?」

 

「ああ・・・多分ですが、今回の一件で私達の事を信じてくれたのか・・・情報を売ってくれると言ったんですよ。」

 

「へえ・・・たまには人助けするのも良いもんだな?」

 

 

そう言いながらギヤを入れてトラックを発進させるチャーリーがヘヘっと笑うと、確かに・・・と思いながら行きとは違い海外線に目をやっていたアメリアは何だか楽しそうにクスっと微笑む。

 

「なあ・・・所で足はどうしたんだ?」

 

「足・・・?」

 

チャーリーに尋ねられたアメリアが自分の足下を見ると擦り切れたストッキングだけで履いていたミュールが無くなっていた・・・

 

「そう言えば・・・走った時に脱ぎ捨てままです!?」

 

「ほら・・・これだろ?」

 

地面に落ちていたサンダルをちゃっかり回収していたチャーリーがアメリアの膝に置くと、有難うチャーリー!とアメリアは満面の笑みを浮かべた・・・

 

「一つしかない外出用だったので本当に助かりました♪」

 

「今度は俺がもっと良いの買ってやるから・・・」

 

「へっ?そんな事言うと本気にしちゃいますよ私?」

 

いつもの冗談かと思いアメリアがクスっと微笑むと、俺は本気だからな!と真面目な顔をするチャーりーにアメリアはえっ・・・と声を上げながら顔をボッとリンゴの様に赤くする。

 

「またまた・・・それよりも今度はこれに行きましょうよ!?」

 

「限定スイーツ特集・・・?」

 

自分の気持ちを誤魔化すようにバッグから出した情報誌をチャーリーに見せたのだったが・・・

 

「じゃあまた連れってってやるよ?楽しみにしとけよなアメリア!」

 

「えっ・・・!?

 

満面の笑顔を向けながらそんな事を言って来るチャーリーに面喰ったアメリアは内心ドキっとした・・・

 

 

「ホントにホントですか・・・・嘘ついたら射撃練習の的にしますよ!」

 

「マジだって・・・って言うか何だよその物騒な罰は・・・」

 

そう答えながらチャーリーが苦笑いを浮かべると、次の休みが楽しみになりました♪とアメリアから満足そうな答えを得たチャーリーはヘヘっと笑った。

 

「取り合えず帰ったらリンのCASCADEにでも行くかな・・・」

 

「良いですねそれ!結局全然飲めてませんし?」

 

「お前の所為でな?」

 

「チャーリーの援護が遅かった所為です。

 

相変わらず生意気な彼女の返事に可愛くねえー!と言いながらもヘヘっと笑ったチャーリーは基地が有る町へとトラックを走らせた。



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チャーリーの一日チャーリーのその7

 

 中立地帯に有る町で起きた騒動をどうにか繰り抜け、自分達が所属するトリントン基地近くに有る町に到着した二人は行きつけのパブへとトラックを乗り付けた。

 

 

「やっと着いたぜ・・・早くビールが飲みてぇ~!」

 

「私もです・・・さっきの戦闘で喉が渇いちゃいました。」

 

そう言いながらチャーリーとアメリアが同僚で有るショウの恋人が営んでおり部隊名の元となったCASCADEの中に入ろうとするが入り口には閉店と書かれた札が掛かっていたので有った・・・

 

「あ、そっか・・・そう言えば今日は買い出しに行くって言ってたなショウの奴・・・」

 

「へえ・・・買い出しにですか・・・?それなら仕方ありませんね。」

 

 

チャーリーからの説明に何かが引っ掛かるアメリアでは有ったが、今日は出直して基地の食堂に有る自販機で売っている合成アルコールで妥協しようと提案していると、あれ・・・どうしたの二人共?とカロンコロンと鳴るカウベルの店の中からリンが顔を出した。

 

「どうも外が騒がしいと思ったら・・・飲みに来たの?」

 

 

「すみませんリンさん・・・定休日と知らなくて・・・」

 

 

そう言いながら申し訳無そうな顔をするアメリアにクスっと笑ったリンが良いわよ?と中へ招き入れようとするので、ショウと一緒だろ?と折角のオフを邪魔したくないと思ったチャーリーは遠慮がちに手を横に振ったのだが・・・

 

 

「良いから入って来いよ二人共!僕とリンだけじゃ食べきらないくらいの量が有るんだ・・・」

 

「なんだそりゃ?まあ・・・二人がそう言うんなら言葉に甘えるかアメリア?」

 

よく訳の分からない事を言って来るショウにそう答えたチャーリーはアメリアに首を傾げると、そうしますか?とフフッと微笑むアメリアの背中をリンもさあ入って入って!と押して来る。

 

「なんだこりゃ・・・またタコか・・・これ?」

 

「うん・・・リンが大量に仕入れたからちょっと試しに色々作ったらこんな事になってさ・・・二人も手伝ってくんないかな・・・」

 

「別に良いけどよ・・・因みに俺とアメリアからもお前達に土産が有るから受け取ってくれないか?」

 

そう言いながらチャーリーがアメリアと共に苦笑いを浮かべながら出店で買った焼きそばやたこ焼きを渡すと、げっ・・・とあからさまにショウとリンから嫌な顔をされてしまった。

 

「なんで増やすんだよ!?」

 

「おいショウ!買ってきてやったって言うのに何だよその返事は・・・良いからさっさと食おうぜ?コイツの所為でほとんど食べて無いし飲んで無いしで全然満足してねえんだよ俺は!?」

 

「私はちょっと人助けをしただけです。」

 

チャーリーの言葉が聞き捨てならないのかアメリアから異議有り!と手が挙がりながらそんな声が上がると、はいはい・・・とリンから手を叩かれた。

 

「飲み物を取って来るからケンカは店を出てからやって頂戴!」

 

「じゃあビールで頼むなリン!」

 

「私もお願いします。」

 

「まったくもう・・・調子がいいんだから二人共!因みに今日は店の奢りだから好きなだけ飲んでいいからね。」

 

カウンターに並ぶまあまあな数の料理を片付ける代価としてなのかリンの提案にチャーリーとアメリアがやったね!とタダ酒に有りつける事に嬉しくハイタッチしてると、随分と楽しそうなデートだったみたいだね?とショウからニヤニヤと意味ありげに笑みが浮かんだのでアメリアはムゥ・・・と思案顔を浮かべた・・・

 

「あの時チャーリーが正面から撃ったのにジオンの肩に当たった銃弾は背後から撃たれた物でした・・・ショウですね撃ったのは?」

 

「さあ・・・何の事やら・・・?」

 

「ついでにもう一つ・・・私は元特務で同時に聞こえた二発の銃声を聞き逃す程間抜けでは有りませんよショウ・・・助けてくれてありがとうございました。」

 

アメリアからの淡々とした説明に言い逃れが出来なくなったショウが参ったな・・・と困った顔で頭をガシガシと掻いていると、じゃあ俺は何を撃ったんだ・・・?とチャーリーは首を傾げた。

 

 

「お前が撃ったのは僕の上に有った看板だよ・・・この下手くそ!」

 

 

「チャーリーは銃を撃つのは止した方が良いみたいですね・・・正直言ってバックアップには不向きです。」

 

 

二人から散々な言葉を浴びされたチャーリーがヒデエ!?お前達マジで酷いからなそれっ!と抗議の声を上げるのだが、ですが・・・とアメリアから嬉しそうに首を少し傾げられた・・・

 

「私を助けてくれた事は事実です。割と恰好良かったですよチャーリー?」

 

「そ、そっか・・・じゃあ良いけど・・・」

 

「って事で明日からはマンツーマンで射撃の特訓をしますね?今後あのような事態になった時に困りますで・・・」

 

「ハハハ・・・」

 

 

アメリアからの提案に対し二人っきりで何かするなら他の事が良いんだけどな・・・と考えたチャーリー

が誤魔化す様に苦笑いを浮かべていると、何だ開いてるじゃないか?と声を上げるイエーガーの声と同時にカウベルがカランコロンと鳴るのでドアの方を見たチャーリーはアレ?と不思議そうな声を上げた。

 

 

「珍しいっすね・・・イエーガー隊長が女連れなんて・・・?」

 

「ホントだ・・・ただ一緒に居るのはソフィーだけどね。」

 

チャーリーが驚くのも無理は無い・・・寡黙で硬派なイエーガーが基地の女性と二人になるなんて聞いたことが無い。そんなイエーガーにショウがツッコむと、五月蠅えな・・・と明らかに不機嫌そうな声がイエーガーから聞こえたので有る。

 

「お前とアメリアがコイツを押し付けたから俺は散々な目に有ったんだからな・・・」

 

「散々とはヒドイじゃないですかっ!?アメリアさん達がランチに行くから私にもどうだ?って誘って来たのはイエーガーさんですっ!」

 

「だからと言って食堂に有った米を全部食べる奴が有るか!お前のおかげであそこのおばちゃんから怒られたじゃ無いか!!」

 

そう説明するイエーガーに向かって面目無いですっ・・・とソフィーからエヘヘ・・・と苦笑いが浮かぶと、じゃあコレも食べてよ?と奥からチャーリー達のビールを持って来たリンにカウンター席に並んだタコ料理の数々に目を輝かせたソフィーから良いんですかっ?と満面の笑顔が浮かんだ・・・

 

「こんなチビなのにどこに入るんだ・・・コイツは?」

 

そんな呆れた声を出しながらもククっと楽しそうに笑うイエーガーにへえ・・・と驚いたチャーリーがククっと笑いだすので、どうかしたんですかチャーリー?と隣のアメリアからキョトンと首を傾げられたチャーリーは何でもねえよ・・・と答えながらビールを一口飲んだ・・・

 

 

(こりゃあ暫く楽しめそうだぜ・・・あの二人は?)

 

 

そう思いながら悪そうな顔をするチャーリーにアメリアがムゥ?と不思議そうな顔を浮かべながらビールを飲むので有った。

 

 

因みにだが、チャーリーとアメリアは中立地帯で起きたジオン兵との戦闘行為が指令のバリサムにしっかりとバレてしまい、そのとばっちりでショウを含めた三人で仲良く始末書を書く羽目となったのは後日談で有る・・・



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招かざらぬ人達
敵MS調査その1


 

宇宙世紀0079年 10月

 

ジオン地上方面軍司令官で有るザビ家三男ガルマ=ザビ大佐が北米大陸に有るキャルフォルニアベースにて戦死したと言う噂は多くの連邦軍将兵が驚愕し瞬く間に広がったのだが・・・この噂にはもう一つ逸話が有り、そのガルマ率いる大部隊を打ち破ったのは一隻の白い揚陸艦と一個小隊程度の戦力しか持たない小さな部隊だったと言うので有る。

 

しかし、そんな眉唾ものの強さを持つ部隊の存在は噂の域を出ないが・・・実際に連邦軍とジオン軍のミリタリーバランスは前者に傾きつつ、アメリア達カスケード隊の活動地域で有るここオーストラリア大陸でもジオン軍に対する反抗の狼煙が立ちつつ有った・・・

 

 

 

「あ~あホントにツイてない・・・これで野営するの何日目だっけチャーリー・・・?」

 

「そろそろ5日くらいじゃねぇか・・・」

 

そう言いながらジムの上部コクピットハッチにショウとチャーリーが足を投げ出していると、CSD2に3!と更に横に並んだアメリアの陸ジム(CSD1)から叱咤する声が上がった。

 

「いくら第二小隊と待機任務を引き継いだからと言って少しダラケ過ぎですよ二人共・・・まったく!

「ハイハイ・・・わーってるって・・・」

 

そう言いながらもどこか気合い入らないチャーリーがコクピットハッチを閉じると、先に戻って昼飯の準備をしとくから?とショウの陸ジムもベースキャンプに戻り出した。

 

(士気の低下が著しいです。まあ・・・こんな状況じゃ無理も有りませんけどね・・・?)

 

二人の機体を見送ったアメリアがそう思いながら苦笑いを浮かべると、20キロ程離れた放棄された廃墟都市に向けて陸ジムのメインカメラをズームさせた・・・

 

「実際に来て欲しくは有りませんが、早く来てくれないと私の心が折れそうですね・・・」

 

 

矛盾を感じる事を独り言ちながらハァ・・・と溜息をついたアメリアは二人の後を追い掛けながら一週間前に与えられた非常に危険な任務の事を思い返すので有った・・・

 

 

 

 

~~~

 

 

その日、アメリアは基地指令のロイ=バリサムから呼び出されイエーガーと共に彼のオフィスを訊ねていた。

 

 

「えっ!?カスケード隊に敵新型MSの調査依頼とは・・・何でまた私達に?」

 

「上からの指示だ。」

 

驚くアメリアにバリサムが淡々と簡潔に答ると、むぅ?と不思議そうに首を傾げたアメリアは隣のイエーガーと顔を見合せた・・・

 

「一応ウチはその名の通りMSの運用データを取る実験部隊で有って、そんな危険な作戦は管轄外だと思うのですが?」

 

「その運用を含めた実戦データの収集の為に各基地を飛びまわっている奴が何を言っている・・・良いからコレを読め!」

 

 

そんな呆れた顔をしたバリサムが数枚の書類を自分のデスクに置くとイエーガーと共にその内容に目を通したアメリアは揶揄を込めたのかスカート付きと書かれたセンスの無い敵新型MSのコードネームに困った顔となった。

 

「情報部には私の友人も居るのですが・・・もう少し良いネーミングは無かったのですか?」

 

「俺に聞かれてもな・・・ってそんな事はどうでも良いんだよ!?」

 

そう答えながらバシッと自分のデスクを叩いたバリサムからスペックを見ろ!スペックを!!と騒ぎ立てるので、ちょっと待って下さいよ・・・と数枚捲ったアメリアがそのまま固まるると、嘘だろ・・・と覗き込んだイエーガーもギョッとした顔で情報部からの報告書を読み上げた。

 

 

「MSによるホバー走行を実現させた機動性の高い機体で更には装甲も厚く手持ち武器の火力も有る重MSとは、また・・・まるでデコレーションケーキみたいなパッケージングですな・・・」

 

「バリサム指令、イエーガーの言う通りです。そんなMSが本当に存在するのですか?」

 

試験実験部隊の隊長と実質的指揮官で有るオペーレーターの二人から不審そうな目を向けられた基地指令のバリサムは残念ながらな・・・と答えると引き出しから取ったケースから煙草を口に咥え火を着けだした・・・

 

「ふざけたネーミングでは有るがこれは情報部も絡んでいて、先日お前達が捕虜にしたジオン兵から取った聴取で裏も取れている非常にヤバい案件だからな?」

 

妙に緊張感の有る声で吸い終わった煙草を灰皿へと押し付けるバリサムにアメリアは事の重大さにゲッ!?と内心関わり合いたくないと思いながら顔を引き攣らせた。

 

「因みにだがウォーカー・・・これは本社(・・)の情報部経由でオーストラリア方面軍本部から回って来たお前達ご指名の仕事だから拒否権は無いぞ?」

 

「えっ!何でですか・・・しかも情報部経由って!?」

 

「・・・因みにこれは噂だがなウォーカー・・・お前の経歴を知ってかは知らんが、先日の補給基地の強引な作戦の所為で随分と向こうには目立ってる様だぞ・・・」

 

「それって・・・内務調査が入るってことですか・・・?」

 

そう答えながら自分の背中を椅子に預けるバリサムに焦った顔をしたアメリアが尋ねると、さあな?とバリサムは両手を上げた。

 

「先方からは一度お前に話を聞きたいとオファーが有っただけだからな・・・だがしかし、一応は暫く大人しくして置け?妙な揚げ足を取られたら敵わんからな・・・」

 

「いや・・・バリサム指令・・・それでは作戦内容に矛盾を感じるですが!?」

 

「良いからお前は大人しくしてろ・・・おいイエーガー!!」

 

基地指令では無く後輩パイロットとして呼ぶバリサムにイエーガーがはい・・・?と不思議そうな顔で答えると、頼むぞ・・・!と念押しながら睨んで来る元先輩パイロットにお目付け役を押し付けられたイエーガーはマジかよ・・・と思いながら苦笑いを浮かべた・・・

 

「良し・・・ならばこれで私からの話は終わりだ二人共・・・今日と明日は準備期間としゆっくりした後明後から出発する様に・・・以上解散だ。」

 

そう言いながらバリサムが二人を追っ払う様に手を振ると、ちょっとバリサム指令っ!?とやはり納得が行かないのか抗議の声を上げようとするアメリアの肩を掴んだイエーガーはでは失礼します!と敬礼しながら彼のオフィスを出たので有った・・・

 



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敵MS調査その2

 

「それにしても友軍部隊の被害が随分とヒドイな・・・それほどまでにこのジオンの新型やらとは凄いのか?」

 

設営されたベースキャンプにて情報部からの資料を見ていたイエーガーが焚き火の向こうに居るアメリアを見ると、ええ・・・と胸の前で手を組んだアメリアは深く溜息をつき出した・・・

 

「我々にこの任務が与えられる前にも何度か調査隊が送られたそうなんですが・・・」

 

「全員未帰還ってか・・・嫌な任務だな。」

 

そう言いながらファイルを閉じるイエーガーに頷いたアメリアもまったくです・・・と答えていると夕飯出来たよー!と今日の炊事担当のショウが声を上げるとすぐに待ってましたと待機任務に出たジャックの第二小隊以外の全員がベースキャンプ内に有るテーブルへと集まった。

 

 

「おいショウ!今日の晩飯は何だ?」

 

「今日はリンのCASCADE仕込みのスープでーす。ちょっとだけですがベーコンも入って・・・あっちょっと落ち着いて!?全員分は有るはずだから・・・」

 

そんな焦った声を上げるショウを無視した隊員達が一斉に鍋に押しかけると、こんな最前線ですが・・・とスープを小皿を持ったまま元特務のアメリアは何だ?と言った顔のイエーガーを見た。

 

「こんなに美味しい料理が食べられるのなら長期の遠征も苦になりませんね?」

 

「まあな・・・但しそれはリンが俺達の為に用意してくれた食料が尽きるまでの話で、もし軍用のレーションなんか出したらどんな事になるやら・・・」

 

「そんな事になれば暴動が起きかねませんね・・・」

 

イエーガーの言葉に苦笑いを浮かべたアメリアはすぐに対策を立てないといけませんね・・・と思案顔を浮かべるのだが・・・取り合えずは!と、目の前に有る美味しそうなショウの作ったスープを堪能する事にしたので有った。

 

 

 

~~~

 

 

 

「やっぱりベッドじゃ無いとよく眠れないな・・・それにリンの声もかれこれ一週間近く聞いて無いし・・・」

 

 

次の日の早朝・・・この作戦での長い遠征で恋人と会えない事に愚痴を独り言ちたショウはふわぁ・・・と欠伸しながら大きく腕を伸ばしながら歩いていると、カチャカチャと自分の機体の上から妙な声が聞こえて来たので誰か居るのか・・・?と陸ジムを少し警戒しながら見上げていると、あれショウさんっ?とソフィーがコクピットからヒョコっと顔を出して来た。

 

「何だソフィーか・・・!?おはようさん。」

 

 

「おはようございますっ♪早いですねショウさんっ?」

 

 

「そっちこそ。因みに僕は今から朝飯の準備だよ。」

 

 

そう答えたショウは別に立候補した訳では無いのだがカスケード隊の専属シェフとなりつつ有り完全に部隊内の胃袋を掴んでしまっておりソフィーもその中の一人で有る。

 

「エヘヘ、ショウさんの作るご飯って美味しいから大好きですっ♪」

 

「そう言ってくれると僕も嬉しいよ。今日の分は内緒で少し多めにしとくねソフィー?」

 

下から二っと笑みを浮かべるショウにやったねっ♪とソフィーが嬉しそうにガッツポーズを取ると、所でン何をさっきからしてるの?とショウはこんな朝っぱらから作業をしている彼女に向かって不思議そうに首を傾げる。

 

 

「いえ、ちょっとでもショウさん達の負担を軽減出来ないかと、今までの戦闘データを見て各パイロットの癖に合わせて機体のセットアップとそれに合わせてOSを書き換えてたんですよっ?」

 

「うん・・・これならソフィーのイジッたコイツなら例の新型機にも楽勝だね。」

 

ソフィーからの説明にへえ?と驚いたショウが頷くと、・・・気休め程度ですけどねっ?といつになくソフィーは自信無さげに首を少し傾げた・・・

 

 

「私もイエーガーさん達から情報部が得たスカート付きの機体データを見ましたが・・・正直言ってスペック的には陸ジムは完全に負けてますっ・・・」

 

そんなにかよ!?と思ったショウもアメリアからスカート付きとか言うふざけたコードネームを持つ新型機の事は聞いていたが・・・ですがっ・・・と答えるソフィーの真剣な顔に面喰ったショウは彼女の言葉を待った・・・

 

「そんな機体に負ける程この子達をヤワ(・・)に仕上げてませんよ私はっ・・・ちょっとピーキなセッティングに変更しましたがショウさん達カスケード隊の皆さんなら乗りこなせる筈ですっ!」

 

「何をしたかは怖いから敢えて聞かないけど・・・君の為にも絶対に負けないと誓う。」

 

「ヘヘッ・・・それならショウさん。もう一つカスケード隊のメカニックっとして誓って欲しいですっ・・・絶対に無事で皆と共に戻って来て下さいねっ?」

 

 

そう不安そうな顔をするソフィーにうん・・・とショウがこればっかりは保証が出来ないな・・・と苦笑いをながら頷くと、ソフィーも自分が無理な事を言っている事が分かっているのか・・・誤魔化すようにエヘヘ・・・と笑い出した。

 

 

「じゃあ朝ご飯を楽しみにしてますねっ?」

 

「うん。じゃあまた後で・・・」

 

そうしてニコっと笑みを浮かべるソフィーと別れたショウは手を挙げながらも彼女との誓いを破らない様にとバシと眠気覚ましも加えて自分の頬を気合い入れる為にバシッと叩いた。

 



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敵MS調査その3

 

 その日の夕刻、手の空いていた隊員達と共に夕飯の準備をしていると、これで良し・・・とショウは出来上がった味噌汁の出来に満足そうに笑みを浮かべた。

 

「味噌汁なんて久しぶりですよカノウ少尉っ!!」

 

その中の一人で第二小隊の三番機パイロットのユウヤ=シンジョウ准尉が鼻息を荒くし尋ねると、そうだろ!?とショウも興奮気味に答える。

 

「この前の非番の時にたまたま中立地帯の町で見つけたんだよ?」

 

「へえ・・・僕も今度行って見ようと思います。」

 

同じアジア人で年も近いユウヤとショウは仲も良く、取り合えず武器は携帯して行けよ?とショウからの謎のアドバイスにユウヤがはい・・・?と不思議そうにしていると、全員居ますねっ?!と若干焦った様子のアメリアが補佐のミリィを連れて夕飯前のキャンプへと現れたので有る・・・

 

「おいアメリア!何か有ったのか?」

 

「ええ・・・夕飯前で悪いんですが、これよりブリーフィングを始めます。」

 

カスケード隊の中隊長と第一小隊長を兼任しているイエーガー=バウスネルン中尉が実際に隊の指揮を執っているアメリア=アン=ウォーカー軍曹からの指示に全員敬礼!と号令を上げると同時にカスケード隊全員が起立しアメリアの顔を見た。

 

 

「では、これより状況の説明を始めます。お願いしますねミリィ?」

 

「はいは~い。」

 

彼女の癖で有るミリィ=タニグチ伍長の間延びした返事を聞いたアメリアは既に常設されている簡易的なプロジェクターにこのベースキャンプと監視対象で有る廃墟都市を中心としたマップを表示させた。

 

「今より50分程前に例の重MSらしきジオン軍の新型MSが友軍の前線基地が襲ったとオーストラリア方面軍本部から通信が入りました。ここから見ても距離は約60キロとかなり近いので補給の為に戻って来る可能性が有ります。」

 

アメリアの声に合わせて繋いだノートPCでミリィからプロジェクターに線を結ばれると、因みに被害は・・・?と手を挙げながら尋ねたショウに大丈夫ですよぉ?と答えたミリィがあざとくクスっと微笑んだ・・・

 

「近隣の基地には先輩の名前で防衛に徹するように注意喚起を促して置きましたから被害の方は軽微とことですぅ。」

 

「いつの間にそんな事をっ!?」

 

何も聞いて無かったのか・・・ミリィの報告にアメリアから驚いた声が上がると、それなら良かった。とショウはホッとした。

 

「全然良く有りませんってショウ・・・!ただでさえ目立つ行動を控える様にとバリサム指令からキツく言われてるんですよ私は?」

 

「まあまあ、お前のその名前のおかげで被害が少なかったんだから良いじゃ無い?」

 

恐らくこれは各基地へと教導訓練をしていた時の賜物だな?と感じたショウが苦笑いを浮かべると、まったくもう・・・!とアメリアからも声が上がると同時にムゥと不機嫌そうな顔が浮かんだ。

 

「それはそうとしてだが・・・接敵までどれくらいだミリィ?」

 

「えっとぉ・・・向こう迂回すると考えてぇ、、到着予定時刻は30分後ですねぇ?」

 

「そうか・・・って!?30分後だぁーーー!!」

 

話を変えようと聞いた第二小隊長のジャック=アルヴィン中尉だったがミリィからの言葉に嘘だろ!?と驚くと慌てて第三小隊長のタンク=ビンセント中尉を見た。

 

「取り合えず俺の隊が先行するから支援は頼むぞタンク!!」

 

「任せとけ。それよりもせっかく良いのを見つけたんだ・・・無茶はするなよ?」

 

そう言いながらニヤつくタンクにうるせえな・・・とジャックが照れ臭そうに顔を赤くすると、どう言う意味だ?と二人の話を聞いていたイエーガーから不思議そうに首が傾げられた。

 

「ジャックの奴ミリィと付き合いだしたんだとよ・・・」

 

「ほう・・・それは知らなかったな。お前もそろそろ身を固めたらどうだタンク?」

 

「お前に言われたくはないね!」

 

トリントン基地に所属する一部の隊員からは三バカトリオと呼ばれている三人だが・・・それは何だかんだ言いながらも仲の良い彼らに対する愛称で有り決して蔑称では無い事は近くで話を聞いていたショウとユウヤも周知している事実で有る。

 

 

「せめてスープだけでも飲んで下さいねジャック隊長?」

 

「おっ、ありがとうなショウ?お前の作る食事だけがこの遠征中の楽しみなんだよ・・・」

 

しみじみとした顔で答えるジャックにアハハ・・・と苦笑いを浮かべたショウが味噌汁と先に握っていたおにぎりを手渡すと、コイツは良いな?とジャックから少し驚かれた。

 

「これならコクピットの中でも食べられると思ったので・・・」

 

「確かにな。ユウヤも適当な所で抜けろよ?」

 

そう言いながらジャックが自分の機体へと駆けて行くと、僕も行きますね!?と慌て出すユウヤにショウもああ・・・と頷いた・・・

 

「僕も合流するから後でなユウヤ・・・?」

 

「ハイ。それではまた後で!」

 

そう答えたユウヤが敬礼しながら隊長のジャックを追うと、絶対にだからな・・・とその背中に向かって呟いたショウの言葉は慌ただしく聞こえる喧噪によって消えたので有った。



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敵MS調査その34

 

「第一小隊CSD1より第二小隊と第三小隊へお客さんの出迎え準備は出来てますね!」

 

「こちらCSD4位置に着いた。」

 

「CSD7、こっちもいつでも良いぞ?」

 

 

以前の出撃で負傷しそのイエーガーの代わりに陸ジムに搭乗したアメリアの声に廃墟都市の外側に待機している第二小隊長のジャックと廃墟都市から少し離れたベースキャンプの近くで後方支援として待機する第三小隊のタンクから返事が返って来ると、ウィスキードッグそっちはどうですか?アメリアとタンク達第三小隊と同じ位置で待機しているミリィのホバートラックへと通信を繋いだ。

 

「それなんですが、襲撃された基地から飛んだ偵察機が北からこちらへと向かっているMS2個小隊を補足した模様ですよぉ先輩?」

 

「それは朗報じゃ無いですか!?ようやくこの長い遠征から解放されそうです・・・」

 

「まあ・・・無事に任務を果たしたら・・・ですけどねぇ?」

 

アメリアはそんな事を言いながらモニターの向こうで苦笑いを彼女に向かって確かに・・・と自分も苦笑いで返すと、聞いてましたね?とカスケード隊の全ユニットに対し先程も行った作戦説明の確認の為にもう一度訪ねた。

 

 

「先程ミリィも言っていましたが、街の北側から侵入する敵MS部隊に対して第二小隊は挨拶するだけにして街の中心部へと追い込んで下さいねジャック?」

 

 

「分かってるってアメリア。その後は街の中心部に潜んでいた第一小隊と俺達第二小隊で包囲殲滅するって事で良いな?」

 

 

そう答えながら首を貸しげるジャックにアメリアもその通りです。と頷くと、俺達の出番は有るのか?

と若干不服そうな顔で後方支援の第三小隊のタンクからムスっとした顔がモニターに映った。

 

「どんな任務でも作戦通りに行くとは限りませんよタンク?必要な時はすぐに助けを呼びますが・・・そんなに前線に出たいんなら私達が代わりますよ?」

 

「おっと・・・そいつは止めとこう。コイツの足じゃスカートを履いたお嬢ちゃん(・・・・・)には追いつけそうに無いからな?」

 

 

情報部からも回っているMSー09ドムのスカート付きと言うコードネームを揶揄したのかククっと笑うタンクに隊員達もそれは間違い無い!とその冗談に大きく笑いだすと、緊張がほぐれたに隊の皆に対し内心タンクに感謝しながら同じ様に笑っているミリィとイエーガーにアメリアはプライベート通信を繋いだ。

 

「今回は私が現場の指揮を執る事になるのでイエーガーはミリィのサポートを頼みますね?」

 

「おう、任せとけって?お前よりも出来るって所を見せてやるからなアメリア!」

 

そう答えながら二っと意地悪そうに笑みを浮かべるイエーガーにミリィからもその通りですよぉ先輩?と自満々の顔で笑みを浮かべて来た。

 

「私がカスケード隊の正式なオペレーターになった今・・もうMSのパイロットとなった先輩の時代は終わったんですよぉ!!」

 

「いや・・・あくまで俺が復帰するまでの代わりだからなミリィ!?」

 

アメリアはニヤつくミリィとそれにツッコむイエーガーを見ながらハァ・・・と溜息をつくとホバーの操縦を兼任している整備兵のソフィーび再びプライベート回線を繋いだ・・・

 

「ソフィー・・・危なくなったらホバーだけでも脱出して下さい。」

 

 

「えっとっ・・・そうならない様に私も頑張りますねっ!?」

 

 

ソフィーもアメリア達の会話を聞いていたのか苦笑いを浮かべたので有った。

 

 

~~~

 

 

 

「ウィスキードッグよりカスケード隊各機へぇ!アクティブソナーに感有り・・・敵MS部隊がやって来ましたよぉ!?」

 

この廃墟都市周辺に撒いたセンサーとリンクしているミリィのモニターに反応が有ると、即座に位置は!?と街の外を警戒しているジャックの第二小隊から通信が入った・・・

 

「予想通り、北側の幹線道路だよぉジャック!!」

 

 

「ウィスキードッグ了解した。ユウヤとレオンも良いな?一旦奴っこさん達を出迎えてから撃てよ・・・!」

 

 

そう答えたジャックが廃墟都市の玄関口でも有る崩れかけた廃ビルに部下達と陸ジム潜ませながら確認すると、了解・・・と二人から緊張気味に返事が返って来る。

 

「敵機の目標ポイント到達まで約30秒ぉ・・!!」

 

「良っしゃあ!CSD5と6もエンゲージ!ジオンの奴等に向かって撃ちまくりやがれーーー!!」

 

 

ミリィからの通信と同時にジャック達の第二小隊が通り抜けた最新鋭のMS09ドムとMS07グフに加えてお馴染みのMS06ザクの混成部隊の背後を取りつつ左右から武器を構えた。

 

 

「なっ!?連邦軍の奇襲で・・・」

 

 

そう言いながらジャックの陸ジムが撃ったビームライフルにより最後尾のザクが撃ち抜かれると、ほらほら・・・さっさと行けよ?レオンが100ミリマシンガンで牽制すると後方支援を担当するユウヤは冷静にそのザクを支援しようとするもう一機のを捉えた・・・

 

「逃げれば良いのに・・・」

 

普段は優しそうな顔だが・・・そう吐き捨てたレオンの陸ジムが構えたロケットランチャーで容赦なく仕留めると、嵌められた事にクソっ!?と言わんばかりにドムとグフが街の中心部へと逃げて行った。



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敵MS調査その5

「ウィスキードッグからCSD1へ!CSD4(ジャック)達を抜けたスカート付きは予定通りそっちへと向かってますよぉ!?」

 

「ウィスキードッグ了解です。CSD1から2と3も聞こえてましたね?」

 

アメリアはオペレーターのミリィからの状況報告に一旦通信を切ると、チャンネルを変えながら僚機のショウとチャーリー機に通信を繋いだ。

 

「状況は確認した。所でよ・・・乗ってるパイロットって男なのかそれとも女か気にならねえかショウ?」

 

「確かにね・・・あんな恥ずかしい機体に乗ってるんだからアメリアみたいな女性だと思うよ。」

 

「そいつは困るぜ・・・ほら俺ってどんな女にも優しくするって言うのが信条だからよ?」

 

 

こんな状況にも関わらず二人がバカ話に花を咲かせていると、何を真剣に話し合ってるんですかっ!?とアメリアから怒声が上がった・・・

 

「あっ、だけど一番はお前だから心配するなよアメリア!」

 

「はいはい・・・そう言うのは後でゆっくり聞きますから今は仕事をちゃんとして下さい。」

 

チャーリーのいつもの冗談なのか頭を抱えながらアメリアが答えると、アメリアが冷てぇ!?と聞こえて来るチャーリーの声を無視したアメリアはCSD2何か?とアメリア達とは別の位置に待機しているショウから聞こえて来る笑い声にムゥと唇を尖らせた。

 

「ハハッ・・・いや、相変わらず仲が良いなと思ってさ?」

 

「そうですか?いつも通りだと思いますが・・・」

 

「そっかな・・・」

 

「そうですって!」

 

妙にしつこいショウにアメリアが少しきつく答えると、確かに最近チャーリーの様子が変ですね・・・?と内心アメリアも不思議に思う事が多々有ったのだ。

 

(一緒に出掛けてからというもの・・・何だかずっと一緒に居るような気がしますね?)

 

そう思ったアメリアは、まあ別に嫌では有りませんが・・・とどちらか言うと嬉しいと感じるこの妙な感情に戸惑いながらもコクピットの中でフフッと微笑んでいると、ピー!と鳴る接近アラームに現実へと引き戻された。

 

「アクティブソナーに反応有り・・・近いですよ!」

 

元々敵機を都市の中へと誘い込んだ時の為にと仕込んでいたアクティブソナーの反応にミリィのホバートラックと位置情報をリンクしている各CSDユニットへとその情報が伝わった・・・

 

 

 

「こちらCSD2敵機を視認した。ウィスキードッグ攻撃許可を!」

 

街の中央に有る半壊した市庁舎の屋上でショウの陸ジムが接近するMS-09ドム・・・通称スカート付きを捉えると、そのまま待機を!とミリィからの指示にショウは急いでくれよ・・・と答えながらシートの後ろから狙撃用のゴーグルを引っ張ると180ミリキャノンの照準を先頭のドムへとその狙いを定めた。

 

「現在CSD1とCSD3が敵MS部隊の背後へと回り込んでますぅ!!」

 

「分かってるって!だけどこれ以上接近されたら射角が取れないぞ!?」

 

幸か不幸か真正面にターゲットを捉えてしまったショウは高い位置に狙撃ポイントを取っている為に真っすぐ接近されると狙いにくい上にその位置がバレるリスクが高いのだ・・・

 

「こちらCSD1です。2と共にポイントに到着しましたよウィスキードッグ!」

 

 

「ウィスキードッグ了解ですぅ!CSD2へ発砲を許可ぁ!!・・・」

 

 

敵MS部隊の背後を取ったらしいアメリアの声とミリィからの指示が聞こえたショウはメインモニター映るドムのモノアイと一瞬目が合いながらもこなくそーーーっ!?と声を上げサイドスティックのトリガーを絞った。

 

だがショウの陸ジムが撃った180ミリキャノンは正面のドムでは無くその背後に居たMSー06Jに直撃すると、その狙撃をホバーによる高機動の恩恵で避けたドムは右手に装備した360ミリジャイアントバズを構えるとショウの居る市庁舎へと数発撃ったので有る。

 

 

「こちらCSD2!?ターゲットの撃破に失敗した!現在敵機から攻撃を受け交戦中だっ!」

 

「CSD1と2も敵部隊と交戦中ですぅ!第二小隊も援護に向かっているので頑張って下さい。」

 

ショウ少尉なら大丈夫ですよねぇ?とそう淡々と言いながら通信を切るミリィに冗談だろっ!?と叫んだショウはドムから撃たれたバズの所為でグラグラと崩れ出す市庁舎ビルにクソったれ!と悪態を吐きながらフットペダルを踏み込んだ。

 

そのままバーニアを吹かし後方へと離脱しようとショウの陸ジムに向かってドムが更に追い打ちでジャイアントバズを撃って来るとショウも牽制で180ミリキャノンを数発連射した・・・

 

「こなくそぉーーー!!」

 

まあ咄嗟に撃ち狙いもそこそこでは当たる筈も無く、互いに外した事で無事に着地したショウはこのまま戦うのはマズイと思い180ミリキャノンを地面に捨てると腰のマウントから100ミリマシンガンを引き抜いた。

 

「まったく・・・あんな化け物と僕一人だけで戦うのはちょっとキツイって!?」

 

そう独り言ちながらショウがハァ・・・と溜息をついていると、ピーっと鳴るMSの反応にギョッとしたショウはなっ!と驚きながらジャイアントバズを向けて来るドムに咄嗟にフットペダルを踏み込む。

 

「しつこいんだよコイツっ!?」

 

そう叫んだショウは何故か執拗に追って来るドムをどうにかする為にも陸ジムを走らせながら100ミリマシンガンを撃ち込んだので有った・・・



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MS調査その6

「一体どうなってるんですか!ウィスキードッグっ!?」

 

 

 

ミリィの指示で敵部隊の背後に回り込んだは良いが、アメリアは突然起きた敵機の爆発によって混乱し生き残った数機の敵MSと撃ちあいになりビル陰に釘付けにされてしまった。

 

 

 

「恐らくスカート付きを狙ったCSD2の攻撃が後続機に当たった模様・・・そのままCSD2から交戦中との交信が入ってますが・・・支援どうしますぅ?」

 

 

 

「そんなのコッチが聞きたい所なんですけどっ!?」

 

 

 

そんな事を言いサブモニターの向こうから困った顔するミリィに向かってアメリアは抗議すると、コイツっ!と陸ジムのビームライフルで崩れた建物の陰から120ミリマシンガンで応戦して来るザクⅡに向かって撃ち返した。

 

 

 

「ねえチャーリー!私達だけでこの数を突破出来ると思いますか・・・!!」

 

 

 

 

 

「無理に決まってんだろ!?・・・でもやるって言うんだろアメリアは?」

 

 

 

道を挟んだ隣のビル陰に居るチャーリーの陸ジムからそんな溜息交じりの通信が返って来ると、良く分かってるじゃ無いですか?と答えながらアメリアはいつもの様に余裕の表れを示すようにクスっと微笑んだ。

 

 

 

「そう言うからには妙案でも有るんだろうな・・・」

 

 

 

「それは勿論。ウチの十八番で行きますよ?」

 

 

 

「ようは出たとこ勝負って事な・・・マジで勘弁して欲しいぜ。」

 

 

 

チャーリーもすぐにショウの援護に向かいたいのは山々なのだが、同じ思いなのか強引な手段を取ろうとするアメリアにチャーリーはガクっと項垂れつつFCS火器管制から背後のバックパックからウェポンコンテナを降ろすとミサイルランチャーを取り出した。

 

 

 

「ウィスキードッグへこれより敵MS部隊へ突っ込みますので視界不良によるサポートをお願いします。」

 

 

 

「ヘッ!?本気ですか先輩っ!!」

 

 

 

「時間が有りません。急いで下さい!」

 

 

 

ショウの事が心配なのか少し怒った声を出すアメリアに分かりましたってぇ!?とミリィも焦りながらキーボードを叩き出した。

 

 

 

「音紋センサーアクティブソナー展開・・・敵機の位置を確認っ!リアルタイムで誘導しますぅ・・・!」

 

 

 

更に精度を上げる為にミリィがホバートラックから地面に伝わる振動を探知するセンサーを突き刺すと、それでは準備は良いですか?とアメリアは陸ジム脚部に有るサーベルラックからビームサーベルの柄を掴むと、いつでも良いぜ・・・?と緊張気味の顔でチャーリーも陸ジムのミサイルランチャーを構えた。

 

 

 

「それではスリーカウントで行くのでウィスキードッグがカウントして下さい?」

 

 

 

「了解ですぅ・・・それじゃあ行きますよぉ!3・2・1・GO--っ!!」

 

 

 

ミリィのカウントダウンの終わりと同時にチャーリーの陸ジムが顔を出しウォォっ!と叫びながらミサイルランチャーを6発全弾撃ち尽くすと、ドドンっ!!と着弾が起きると同時にアメリアはフットペダルを踏み込み陸ジムのバーニアを吹かし敵MS部隊へと一気に距離を詰めた・・・

 

 

 

 

 

「クッソォ連邦の奴等め!こっちも反撃に・・・」

 

 

 

そのままガガっ・・・と突然小隊長から通信が切れてしまったのでその僚機で有った少尉は慌てて隣を見た。

 

 

 

「どうかしたのですか中尉・・・・っ!?」

 

 

 

チャーリーの陸ジムからの攻撃で視界が悪く少尉は段々と見えて来たその小隊長機のザクの姿に驚愕した。

 

 

 

「連邦だとォーーーっ!!?」

 

 

 

そう叫びながら120ミリマシンガンを撃ち出す少尉にアメリアはビームサーベルで突き刺したまま小隊長機のザクを盾にするとその陰から味方ごと撃って来るザクをビームライフルで仕留めた。

 

 

 

「おやおや、フレンドリーファイアは良く無いですね?こちらCSD1二機撃破。」

 

 

 

 

 

「CSD3了解・・・ってアメリア伏せろーーっ!!」

 

 

 

 

 

ハッとしたアメリアがチャーリーの叫び声通り機体を中腰に落とすと、脇から飛び出して来たザクⅡに向かってチャーリーは陸ジムの100ミリマシンガンを放った。

 

 

 

「この野郎っ!!」

 

 

 

ヒートホークを振り上げようとしていたザクⅡがガガガっとチャーリーによって蜂の巣にされると、フゥ・・・とアメリアはコクピットの中で安堵した。

 

 

 

「ありがとうございますチャーリー・・・おかげで命拾いしました。」

 

 

 

「ったく・・・お前はいっつも無茶しすぎなんだよ・・・!」

 

 

 

「えっ・・・えーとゴメンない・・・?」

 

 

 

そうお礼を言ったものの、先日の中立都市の時と同じ様に真剣なトーンで怒り出すチャーリーにアメリアが困惑していると、頼むから・・・とチャーリーから不安そうな顔がサブモニターに映った。

 

 

 

「お前に何か有ったらって思うと・・・だからこれ以上心配させんなって・・・!」

 

 

 

 

 

「へっ・・・何ですそれ?何だか私の事が好きって言ってる様に聞こえるんですが・・・」

 

 

 

 

 

そう答えながらもアメリアはあれ・・?と過去の記憶を辿り寄せた。

 

 

 

 

 

(いや元々チャーリーは私の事を・・・いやいやあの時はただのナンパだった筈です!?)

 

 

 

初めて出会った時の事をリフレインしながらアメリアが真っ赤にしながら顔を左右に振っていると、その通りだけど・・・?と同じく照れ臭そうに言って来るチャーリーにアメリアはウニャ!?と妙な声を上げながら顔をボッと赤くした。

 

 

 

「なあ・・・こんな場所で悪いけどよ。お前の返事はどうなんだ・・・?」

 

 

 

「そっそんなの急に言われたって心の準備がっ!?」

 

 

 

そう答えながらアメリアの本心は決まってる。

 

 

 

(二度も命を救ってくれたし、そんなのイエスに決まってるじゃ無いですか・・・)

 

 

 

そう思いながらも素直じゃないアメリアが答えを引き延ばそうとしていると、あの先輩~?と苦笑いを浮かべたミリィから通信が入って来た・・・

 

 

 

「正直言い難いんですけどぉ・・・お二人の会話が隊内に駄々洩れなんですがぁ?」

 

 

 

「えっ・・・嘘ですよね?全部・・・!?」

 

 

 

「はい・・・全部ですぅ。」

 

 

 

そう淡々と答えるミリィにアメリアからウニャ~!!?と素っとん狂な声が上がると、取り合えずそんなおもしろ・・・楽しそうな事は作戦終了後にしましょうよぉ?と提案するミリィに全然言い換えてませんよ!とアメリアはハァ・・・と溜息をつき出した。

 

 

 

「良いから残った敵機の情報を転送して下さい・・・」

 

 

 

まさかの戦場で起きたこの告白劇に、ミリィ達には邪魔されたくないと思ったアメリアはこの作戦が無事に終わったら自分の気持ちを素直に伝えようと決めたので有った。



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敵MS調査その7

 

「こんな時にアメリアに告白するとか何考えてんだよチャーリーの奴!?」

 

 

ショウはムードの欠片も無い戦場でのロマンスを無線で聞きながら呆れていると、後方から追い掛けて来るドムから度々聞こえて来るロックオンアラームに向かって舌打ちした。

 

 

「チッ・・・良い加減しつこいんだよぉっ!!」

 

 

ドムのロックオンから逃げ切る為に陸ジムのバーニアを吹かしたショウがビルの物陰に隠れながら後方のドムに向かって100ミリマシンガンを撃つと、ヒューンとドムもホバー移動で攻撃を回避しながら対面のビルの物陰へと隠れた・・・

 

「残弾数がマズイな・・・次の一連射と残りマガジン1って割と詰んでないかコレ・・・?」

 

AMMOEMPTY(弾薬不足)と残酷な事を表示するメインモニターにハァ・・・と溜息をついたショウは手元のコンソールを操作しこの廃墟都市のマップを表示した。

 

(イザって時にウェポンコンテナは隠して有るけど・・・あんな機動性を持つ奴から陸ジムで振り切るとか無理ゲーだしな・・・?)

 

その場所までMSなら一分も掛からないが、装備の換装時間を懸念したショウがどうしようか・・・?

?と考えていると、CSD2聞こえますぅ?とこんな切羽詰まった状況でも間延びしたミリィから通信に聞こえてるよ!とショウは若干イラついた声で答えた。

 

「そんなに怒らなくても良いじゃ無いですかぁ・・・現在CSD2の救援にCSD1と3が向かっており到着予定時刻は120秒程ですう!」

 

「CSD2からウィスキードッグへ、こちらの弾薬が乏しい!もっと急かす様に言ってくれないか!?」

 

「そんな事言われても・・・ってぇ、イエーガー隊長ぉ!?」

 

急に慌て出すミリィの声に、んっ?と首を傾げるショウにおいショウ聞こえてるな?といつもながらハスキーなカスケード隊の中隊長兼自分達の小隊長で有るイエーガー=バウスネルン中尉の声にショウはギョッとしながらがら聞こえてますが・・・?と苦笑いを浮かべた。

 

「コッチはこっちでちゃんと支援してやるからショウ・・お前は自分の仕事をしやがれ良いな!」

 

「・・・信じて良いんですねイエーガーさん?」

 

「舐めんじゃねえぞ・・・問題児のお前とチャーリーを見て来た俺が何を考えてるか分からない訳無いだろうが!」

 

ホバートラックのモニターを見ながら怒声を上げるイエーガーに了解です。と何だかんだ言いながらもイエーガーの事を信頼しているショウから通信が返って来ると、おいミリィ?とイエーガーが二人のやり取りに呆けている女性オペレーターにと声を掛けるとほえっ?と変な声が返って来た。

 

「そこで待機している第三小隊に仕事だと伝えろ。今からショウの援護の為に支援砲撃をするぞ!」

 

「それってショウ少尉の居るポイントにガンタンク隊で支援砲撃するって事ですよねぇ!?」

 

イエーガーからの指示にミリィが慌て出すと、それがどうした?とイエーガーは不思議そうな顔で首を傾げる。

 

「タンクはプロだ。絶対にショウに当てるなんてヘマはしない。」

 

「しかし訓練データでは1キロ圏内の命中率は65%・・・CSD2が居るのに支援砲撃を行うのは危険すぎますぅ!!」

 

 

アメリアから補佐としてこのカスケード隊に配属されたミリィだが彼女が一番欲しがったのはミリィの長けている情報処理でこれには隊内の全員が納得している。

 

「それは誘導しでの話だろ?ぞれならミリィ・・・お前が俺に指示を出せ!」

 

「えぇ!?タンク中尉まで・・・」

 

急にタンクが通信に割り込んで来ると、僕もミリィを信じてるからさ?とショウからも自分を信じると言って来るのでミリィはどうなっても知りませんよぉ!?と声を上げながらヘッドセットを掴みアクティブソナーの感度を上げた・・・

 

 

「ウィスキードッグよりCSD2へ準備オッケーですぅ!!」

 

 

「CSD2了解・・・さあて乗って来いよスカート付き・・・?」

 

 

緊張気味のミリィに答えたショウも腹を括くりながら時間を作る為に一度だけ牽制射を行い最後のマガジンと入れ替えるとミリィがスリーカウントを数えた。

 

「CSD2!ゴーゴーゴー!!」

 

「こなくそーーーっ!!」

 

ミリィの声に反応したショウがフットペダルを踏み込み陸ジムのバーニアを吹かすと、タンク中尉!とミリィはヘッドセットを掴みながらドムの動き出す音を拾った。

 

「ウィスキードッグからCSD7へスカート付きはCSD2を追ってポイントD03から06を移動中ですぅ!」

 

「CSD7了解した。第三小隊各機へショウの事は気にせず撃ち方始めぇ!!」

 

 

ミリィからの指示に小隊長機で有るタンクとレティが搭乗するCSD7では無くCSD8と9がピンポイント砲撃が行われると、良いんですか隊長・・?と操舵担当のレティからこの命令違反にジロっと睨まれたタンクは良いんだよ!とスコープを覗き込みながらニヤついた。

 

「マジで撃って来やがったっ!?」

 

第三小隊のタンクが率いるガンタンク隊の砲撃を避けつつビルの上を跳んだショウの陸ジムが更に牽制でドムの居た場所に100ミリマシンガンを撃ちきると、見つけた!!とウェポンコンテナを隠して置いた場所にと到着した。



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敵MS調査その8

 

「CSD2が補給ポイントに到着し現在装備の換装中ですぅ!」

 

 

都市部と言う入り組んだ地形での作戦の為に予め隠して置いたウェポンコンテナが功を奏したのかイエーガーが安堵する様にふう・・・と息を吐くと、安心するのはまだ早いですっ!とカスケード隊のメカニックで有るソフィー=ホワイト伍長はモニターに映る第三小隊から放たれた砲撃を軽々と避けるドムの移動速度に違和感を感じた・・・

 

「ちょっとミリィ・・・おかしいってっ!?情報部のデータよりスカート付きの動きが速いよっ!!」

 

 

「ちょっ!?冗談きついってソフィー!!」

 

 

その機体データから砲撃ポイントを指定したミリィがソフィーからの指摘でドムが通過した速度を改めて音紋センサー(アクティブソナー)で確認すると明らかな誤差が判明した。

 

「嘘でしょこんなの当たる訳無いってぇ!?」

 

焦った声を上げたミリィが誤った砲撃データを修正する為に素早くキーボードを叩き出すと、適当な情報をやがって!とイラついたイエーガーはヘッドセットを掴みながらショウ達を追撃中のアメリア達に通信を繋いだ。

 

「CSD1へこちらウィスキードッグだ!まだ突破出来ないのか!!」

 

オペレーターで有るミリィと入れ替わりハスキーなイエーガーの声が自分のヘッドセット突然聞こ得て来ると、えっイエーガー!?とアメリアから驚いた声が上がった。

 

「情報部のバカ共の所為で忙しいミリィの代わりに今から俺が指揮を執る。それで現在の状況はCSD1?」

 

「何だか良く分かりませんが、現在CSD3(チャーリー)と共にCSD2(ショウ)の援護に向かっていたんですが・・・現在は先程逃がした敵MS2機と交戦中です。」

 

 

アメリア機からの芳しくない報告にチッと舌打ちしたイエーガーは更に通信チャンネルをタンク率いる第三小隊にも繋いだ。

 

「おいタンク聞こえてるな・・」

 

「ああ・・まあな。それで俺にどうして欲しんだイエーガー?」

 

長年の付き合いからかイエーガーが何を言うか分かっていた様にタンクがニヤニヤしながら聞くとイエーガーもフッ・・・と鼻で笑った。

 

「先ずCSD8と9にアメリア達と交戦中の敵MSへの砲撃支援をして欲しい・・・」

 

「ちょっとイエーガー!ショウを見捨てる気ですか!?」

 

「イエーガーさんの事を見損ないましたっ!!」

 

すかさずヘッドセットと直から聞こえるアメリアとソフィーの抗議にちょっと待て!とイエーガーがストップを掛けると、よく聞けよ・・・?と続けるイエーガーにこの通信を聞いている全員がごくっと息を飲んだ・・・

 

 

「どっちにしてもスカート付きの足が止まらないんならアメリア達の方をクリアにして援護に向かわせた方が得策だ・・・それにショウだってすぐにやられる様なタマじゃ無いってお前達も知ってるだろう?」

 

 

「要はショウの悪運に賭けるって事ですねイエーガー?」

 

 

ショウの腕をよっぽど信じてるのか・・・イエーガーの強気な指示にアメリアも呆れながら頷くと、俺はどうするんだ?とCSD7のタンクから首を傾げられたイエーガーがこんな状況にも関わらずニヤっと意地悪そうな笑みを浮かべた。

 

「ミリィがスカート付きの速度解析を行っているからお前の出番はまだだぞ?」

 

「待て待てイエーガー・・・ひょっとして俺にスカート付きを仕留めろってか!?」

 

「ああ、お前なら出来るだろタンク?」

 

慌て出すタンクに向かってイエーガーがさも当然のことの様に首を少し傾げると、コイツ・・・!?と声を上げたタンクはモニター越しに煽って来たイエーガーを睨んだので有った。

 

「おい!ガンタンクを前に出せレティ・・・絶対に当ててやる!!」

 

「はいはい・・」

 

イエーガーに対するライバル心から操舵手のレティはいきり立つタンクに対し渋々ガンタンクを前進させた・・・

 

(まあ・・・何だかんだ言ってウチの隊長ってバカに出来ないんだよね・・・?)

 

 

そう思ったレティの声と同時にイエーガーから砲撃開始っ!と指示が上がると、ドンっ!と後方の左右に付いていたCSD8と9のガンタンクからアメリア達の支援の為に砲撃が始まった。

 

 

「行きますよCSD3!」

 

「おうよ!」

 

膠着しビルの物陰に隠れていたアメリアがチャーリー機と共に第三小隊からの支援砲撃に感謝しながら飛び出すと、援護しろアメリア!と叫んだチャーリーの陸ジムが100ミリマシンガンを連射しながら距離を詰めるとオラァ!!と今回から運用試験として装備されたツインビームスピアを振りかぶった・・・

 

「舐めるな連邦めえぇぇーーーっ!!」

 

背後に着弾する砲撃に後退も出来なくなったジオン兵が接近して来るチャーリーの陸ジムに対しMSー06Jザクの持つ120ミリマシンガンを連射を連射した。

 

そして、ガガガッ!と鳴るザクが持つ120ミリマシンガンを吹かしたバーニアで左右に避けたチャーリーの陸ジムが懐に踏み込んだザクを一刀両断すると、これでお終いですね?とアメリアもビームライフルで最後の一機を撃ち抜いた・・・



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敵MS調査その9

 

CSD1(アメリア)が敵機を撃破をし、CSD3《チャーリー》と共にドムの追撃を再開したか・・・まだ機体データの修正は掛かるのかミリィ!?

 

「もう少しですぅ!!」

 

モニターを見ながら焦るイエーガーの声に素早いキータッチで情報部の間違っていたドムの機体データを修正していたミリィはそう答えると同時にカタカタと叩いたキーボードのエンターを素早く弾くとすぐにヘッドセットを掴んだ。

 

CSD7(タンク」)へ、スカート付きの機体データ修正を完了しまししたぁ!ポイントE06から05への支援砲撃を!!」

 

「CSD7了解・・・!」

 

ミリィからの指示にタンクはそう返事を返しながら乗機で有るRX-75ガンタンクの両肩部に装備された120ミリ低反動砲をリンクしたホバートラックのマップデータを元に照準を合わせトリガーを絞った。

 

「1番2番ファイヤーーーっ!」

 

「当たれぇーーーっ!!」

 

発射を伝えるタンクに操縦担当のレティも仲間の危機にと一緒に叫びながらモニターで弾着の確認を始める・・・

 

「弾着まで約10秒・・・・321・・・ナウ!」

 

「当たったのか・・・?」

 

「いえ・・・こちらのモニター上には奴の反応がまだ残ってます!」

 

「何だと・・・!?おいウィスキードッグ!どうなってるんだ状況は!!」

 

レティ―からの報告ここからではドムの撃破が直接確認出来ないタンクが苛立ちながら指揮車両で有るホバートラックに通信を繋ぐと、コッチも確認中なんですよぉ!!と焦った様子のミリィから返事が返って来たので有る。

 

「絶対に直撃した筈なんですってぇ!だけどまだ機体の反応が残ってるって・・・一体!?」

 

「何だか分からんが・・・とにかく|CSD2は無事なのか?」」

 

「はい・・・今の砲撃で若干通信が悪く返事は有りませんが、機体反応は有り無事なのは確認してますぅ・・・」

 

「分かった・・・とにかく俺達は待機しておく、何か有ったらすぐに言えよ?」

 

コクピットで首を傾げたタンクに了解ですぅ・・・とミリィが不安そうな声で通信を切ると、大丈夫ですかねショウの奴・・・?と心配そうにするレティに向かってタンクもさあな・・・と腕を組みながらショウの身を案じたので有った・・・

 

 

~~~

 

 

「おいおい冗談だろ・・・アレ(・・)を避けるのかよアイツは・・!?」

 

タンクからの攻撃を察知したまではまだ良いが・・・あのドムは咄嗟に直撃弾で有ったガンタンクの砲撃をジャイアントバズを近くの廃ビルに撃ち込み直撃を避けると同時に更に撃ち込まれた砲撃もそのホバー移動による機動性を生かして機体をヒラリと回転させながら見事に逃げ切ったので有った・・・

 

そして、その機動性の高瀬にコクピットで驚愕していたショウがその様子を少し離れたビルの物陰から一部始終見ていると・・・コッチの視線に気づいたのか、メインモニターに映るドムのモノアイがブンと光り目が合ってしまったショウは慌てて先程装備したロケットランチャーを撃った。

 

「こちらCSD2!ウィスキードッグへ増援はまだかっ!?」

 

当てようと思った訳では無く時間を稼ぐ為に撃ったショウの陸ジムの攻撃は照準も適当だった事も有って勿論外れ・・・そのままフッとペダルを踏み込みバーニアを吹かしたショウは救援を求めるが先程からザーっとノイズ混じりでミリィは勿論アメリア達からも返事が無い・・・

 

「チッ!こなくそーーーっ!!」

 

さっき補給した事も有りショウの陸ジムは追って来ながらジャイアントバズを撃って来るドムに左右に持ったロケットランチャーと100ミリマシンガンで応戦すると、流石に火力の差かドムが慌ててすぐ傍の角に身を隠すのを見てショウも陸ジムを地面に着地させながら対面のビルへと身を隠した。

 

 

(今は良いけど・・・このままじゃ埒が明かないな・・)

 

 

そう考えながらショウが何か良い手は無いかと思案していると・・・ピッーと突然通信アラームが鳴り出した。

 

 

「CSD1!ショウ!!聞こえますか!?」

 

「アメリアか・・・?今どこだ!?」

 

そう返事を返すショウにやっと追いつきましたよ・・・とアメリアからの安堵する声にショウもホッとする。

 

「すぐ近くです・・・ポイントE06付近・・・」

 

そう言いかけたアメリアの声と同時にビーっと響くドムからのロックオンアラートにショウはクソったれ!!と叫びながら接近して来るドムに舌打ちした・・・

 

「チッ!何する気だコイツっ!!?」

 

迂闊にも距離を詰めて来るドムに対しショウが若干戸惑いつつ陸ジムの100ミリマシンガンで牽制するがあまりに速いドムの間合いの詰め方にあっという間に懐に入られたショウはメインモニターに映るドムのヒートサーベルにゾクッと悪寒を感じた・・・

 

(ごめんリン・・・僕死ぬかも・・・)

 

 

そう思い自分の恋人に分かれた告げたショウはドムの斬撃を避けきれないと目を瞑ると、やらせるかよーーーっ!!と聞こえる相棒で有るチャーリーの声にハッとしたショウがチャーリーの陸ジムから撃たれた100ミリマシンガンでの援護でドムが慌てて離脱するのを確認するとその方向に今度はアメリア機が突っ込んで来た。

 

「デヤァッーーーー!!!」

 

ビームサーベルを逆手に勢い良く斬りかかって来るアメリアの陸ジムに面喰ったのかドムは驚いた様子ながらも何故か機体正面をこちらを向けて来るのでアメリアはムゥっ?と首を傾げた刹那・・・突如ドムの胸がピカっと光りメインモニターがホワイトアウトとなる。

 

「モニターが焼き付いたっ!?」

 

アメリアがそんな焦った声を出しながらもこのままじゃヤバいですっ!と本能的に身を守ったのか咄嗟に出した左手のシールドに強い衝撃を受けながら機体ごと地面へと叩きつけられた・・・



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敵MS調査その10

 

「アメリアァーーーーっ!!!」

 

 

「チャーリー大丈夫ですって!?私はまだちゃんと生きてます・・・」

 

 

死んだのかと思いチャーリーからの悲痛な声にアメリアが強烈な衝撃によって頭を振りながら答えていると、先輩怪我はっ!?と随分と心配を掛けたのかコールサインも忘れ焦ったミリィの通信にアメリアは顔を赤くしながら少し困ったをする。

 

「身体は何とも無いですが機体にダメージが・・・メインカメラと左腕が使用不可です!?」

 

モニター脇に表示攫ている機体の負荷を表すインジケーターに陸ジムの頭部と左腕部が肩から真っ赤になっているのを確認したアメリアにとにかく無事で良かったですよぉ・・・とミリィからホッと安堵した声が返って来るがアメリアは全然良く有りませんよ!?と怒鳴り出す。

 

「メインカメラがやられて外の様子が分かりません!そっちで復旧は出来ないんですかソフィー!!」

 

「無茶言わないで下さいよアメリアさんっ!?恐らくその子はスカート付きから低出力のビーム攻撃を受けた様でメインカメラを交換しないと無理ですっ!!」

 

まだジオン軍は連邦軍に比べてビーム兵器の開発に遅れていると聞いていたソフィーがそうアメリアに怒鳴り返しながらその周囲のミノフスキー粒子を確認していると、第二小隊はまだかっ!!とイエーガーからチッ!と舌打ちが上がる。

 

「CCD4急いでぇ!?」

 

「後60秒だっ!!」

 

自分の焦った声にジャックがアメリアを救おうと必死に追いかけているのをモニターで確認していたミリィーもハラハラしてると、こちらCSD2!!とショウから通信が入って来る。

 

 

「僕がカバーするんでアメリア機の回収をお願いします・・・」

 

「ダメだ!中隊長として部下をこれ以上危機にさらす訳には出来ん・・・」

 

「ですがアメリアは僕の支援に来たんですよ!それを見捨てろと言うんですか?」

 

「・・・それは分かっている。だがもうすぐ第二小隊が到着から待つんだショウ!」

 

航空隊に居た時もそうだが・・・いつも命令違反をするのは決まってこの二人で有りイエーガーは頭をかかえ出す・・・

 

 

「すみませんイエーガーさん・・・相棒の為にもこれ以上は待てません!」

 

「戻ったら始末書でも何でも書くんでっ!!」

 

そう言いながらアメリア機を救おうとドムを挟み撃ちをする様に突出するショウとチャーリーの陸ジムがモニター表示されるとミリィはあの・・・?首を少し傾げた。

 

「良いからアイツ等の好きにやらせろ!!」

 

「了解ですぅ♪」

 

そう言いながら頭をガシガシと掻き出すイエーガーに二っと笑みを浮かべたミリィが指示を飛ばしだすと、何だ一体・・・?と今まで膠着していたドムのパイロットはいつまで経って助けに来ないアメリアの陸ジムに首を傾げていた・・・

 

 

(コイツを囮にして離脱してやろうと思ったが・・・流石に連邦軍も賢い様だな・・・)

 

 

友軍機の反応が消えた事を知ったドムのパイロットが冷静に判断しながら残り少ないジャイアントバズをアメリアの陸ジムに向けていると・・・

 

 

「アメリアーーーっ!!」

 

 

そう叫ぶショウの陸ジムにドムのパイロットはククっと笑った・・・

 

 

「迂闊なんだよ連邦めぇーーーっ!!」

 

 

「舐めんなあーーーっ!」

 

アメリア機を守ろうと咄嗟にに飛んだショウの陸ジムがドムの撃ったジャイアントバズを地上でロールさせながら避けると、オラァ!!と叫んだチャーリーの陸ジムがツインビームスピアでドムの背中を切り裂いた・・・

 

 

「いい加減くたばりやがれぇ!!」

 

 

そう叫ぶチャーリー機にクソっと叫んだドムのパイロットは最後にアメリアの陸ジムだけでも!とジャイアントバズを向けたので有ったが・・・

 

「舐めんなじゃ無いですっ!!」

 

と叫んだアメリアが陸ジムの上部ハッチを吹き飛ばしながら逆手に持ったビームサーベルでドムのジャイアントバズを斬り上げると、でやぁぁーっ!!と声を上げたショウの陸ジムが横薙ぎに一閃・・・ドムの胴体をビームサーベルで叩き斬ると・・・風通しの良くなったコクピットで安堵したアメリアはフゥ・・・と息吐きながらウィスキードッグへと通信を繋いだ。

 

「CSD1よりウィスキードッグへ・・・敵新型MSの撃破を確認しました。」

 

 

「ウィスキードックから各CSDユニットへ全ての目標の沈黙を確認・・・我々の勝利ですよぉ先輩!!」

 

 

そんな嬉しそうな声を上げたミリィからガッツポーズが上がったのは良いが・・・

 

(あれでは情報部も敵MSの情報は得られないでしょうね・・・)

 

完全に撃破してしまったドムの残骸に苦笑いを浮かべたアメリア達カスケード隊がトリントン基地に戻ったのはそれから更に数日後のことで有った・・・

 

 

 



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因縁その1

 

「やれやれ・・・しかし今回はひどい目に逢いました。」

 

「ホントですっ!特にアメリアさんが搭乗していた陸ジムの損傷はかなり酷く修理には少し時間が掛かりますからねっ!!」

 

「うにゃっ!?」

 

ウォルフのミデアから運び出される陸ジムを横目にメカニックのソフィーから叱られていたアメリアが変な声を上げていると、俺の機体が・・・と本来の正規パイロットで有るイエーガーの落ち込む姿にハハハ・・・とアメリアは苦笑いを浮かべた。

 

ドムとの戦いで頭部のメインカメラはひび割れ左腕に関してはジャイアントバズの直撃でシールドごと肘が吹き飛んでいる姿に実際良く生きていたな・・・とアメリア以外のカスケード隊全員は彼女の運の強さに強さに驚きつつハンガーへと運ばれて行く陸ジムを見送っていた。

 

「んっ何だアレ・・・どこの部隊だ?」

 

チャーリーがそんな中で指を差して来るのでショウも知らないな・・・と通常のミデアのとは違って濃いダーク系の塗装に赤い蜘蛛の部隊を掲げている機体に首を捻った。

 

「二人共行きますよ!」

 

「ああ今行くよ・・・」

 

報告の事も有り本部へと向かう為、アメリアがホバートラックの上部ハッチから急かして来るのでショウとチャーリーはあのミデアが気になりつつも慌てて乗り込むので有った・・・

 

 

~~~

 

 

「それでは私とイエーガーで指令の所に作戦の報告に行きますので、取り合えずここで一旦解散します。」

 

「そして今晩は全員の生還を祝してリンのCASCADEで宴会を執り行うつもりだから来れる奴は来いよ?」

 

 

アメリアの指示に次いでイエーガーからの提案に全員からワアッ!!と歓声が上がると、頼むぞショウ?と二っと笑みを浮かべるイエーガーにコレは大変だな・・・?とショウは急な展開に苦笑いを浮かべた。

 

「因みに今日は俺の機体を壊した罰でアメリアの奢りだから存分に飲めよお前らーーっ!!」

 

「はいっ!!?ちょっとそんな話は聞いてませんよイエーガーっ!!」

 

「それでは解散だ。」

 

アメリアの抗議の声を無視したイエーガーの号令によりショウを始めカスケード隊全員からニヤニヤしながら了解っ!と敬礼されると、嘘ですよね・・・とガクっと項垂れるアメリアをイエーガーが本部ビルの上階に有る指令の執務室へと引きづって行くのを見ていた第二小隊長で有るジャックは苦笑いを浮かべる。

 

「えっと・・・今晩の予定は決まったとしてだ。取り合えず昼飯でも食いに食堂にでも行くか?」

 

「そうですねぇ・・・」

 

残ったメンバーの中ではイエーガーとアメリアの次に慕われているジャックの提案に今回の作戦ではアメリアの代わりにメインオペレーターとして活躍したミリィも呆れた顔で続いて歩き出すとチャーリーは首を傾げながらニヤニヤと隣を歩くショウを見る。

 

「リンに会うのが久しぶりだからっていきなり襲うんじゃねえぞ?」

 

「五月蠅いなっ!?お前こそアメリアにあんな事言ったんだから大切にしてやれよチャーリー?」

 

この手の話で珍しく揚げ足を取ったショウに、わっ・・・分かってるつぅーのっ!?とチャーリー顔を真っ赤にするのを見たショウがククっと楽しそうに笑っていると・・・食堂の有る向こうから歩いて来る女性士官に気が付いた・・・

 

「あの子誰だろう・・・知ってるチャーリー?」

 

「いいや・・・って言うかあんな綺麗な子を俺が知らなかったら変じゃね?」

 

「うん。確かにそうだけど・・・そんな事アメリアの前では絶対言わない様にね・・・」

 

トリントン基地でもプレイボーイを自称する女癖の悪いチャーリーにも分からない眼鏡を掛けた清楚系の女性士官が黒く長い髪を靡かせながら颯爽とこちらの横を通り抜けようとすると、ショウ達の声が聞こえていたのか・・・確かに綺麗な子だな・・・と呟くジャックにムッ!と嫉妬したらしいミリィが彼の尻をギュッとつねっていると、ああちょっと良いかな・・・えっと少尉?とこの基地でチャーリーと一・二を争うこちらもプレイボーイと噂高い第三小隊長で有るタンクは何でしょう中尉・・・?と首を傾げる女性士官の前に立った。

 

「俺はカスケード隊第三小隊長のタンク=ビンセントだ。見た所・・・新任と見えるが、良かったら私が基地内を案内して上げようか?」

 

「へぇ・・・貴方達が・・・?」

 

タンクの自己紹介にキョトンとした彼女が全員を見渡すのを見て何か違和感を感じたショウはんっ・・・?と首を少し傾げていると、オイタ(・・・)はそこまでですよ隊長?とタンクの部下で有るレティがタンクの腕を捻り上げた。

 

「イテテテっ!?おい放せレティ!!俺は上官だぞ!!!」

 

「五月蠅いですよ!ゴメンね少尉さん。この人はアンタみたいな綺麗な子を見ると欲情する病気なのよ?」

 

「ちょっと待てっ!?俺はただ基地内を案内しようと・・・ギャアァァ!!」

 

まだそんな事を言うタンクにレティが更に曲げてはいけない方向に腕を向けていると、もう良いですから!?と慌てて両手を振り出した黒髪の女性少尉は腕に巻いた時計の時間にいけないっ!と声をあげた。

 

「申し訳有りません!すみませんがちょっと急いでますので、また()程!!」

 

そう言いながら彼女が腕に持った書類やファイルを両手に抱いてバタバタと駆け出して行くと、結局何だったんだ・・・?と呟くショウにしまったぁーーーっ!?とやっとレティからの拘束に解放されたタンクから悲痛な声が上がった・・・

 

「一体どうしたんですか・・・?」

 

「あんな綺麗な子の名前も連絡先も聞き忘れるとはこの俺一生の不覚・・・」

 

「一生後悔してたらどうです。」

 

そうレティが冷たくツッコむの見たショウ達カスケード隊の面々はハァ・・・と溜息をつくと、ガクっと項垂れるタンクを一人残し食堂へと向かうので有った。

 

 

 



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因縁その2

 

 

「あーあ・・・これで今月の私のお給料が吹っ飛びましたじゃなですか!?」

 

「何言ってんだ。こんなご時世に何に使うんなら、人から喜ばれる様に使われた方が世のため人の為だろうが?」

 

「その民間人を守る為に私のグロックのマガジンを買おうとしてたんですけどね・・・」

 

「MSの存在が物を言う世界にハンドガンじゃ何も出来んんと俺は思うがな・・・?」

 

そう言いながら首を傾げるイエーガーにアメリアも分かってますよ・・・と答えながらチーンと鳴るエレベーターの音に軍服の襟を止めながらイエーガーの後に続いて降りた。

 

「カスケード隊のバウスネルとウォーカーです。先日の敵新型機の報告に上がりましたのですが・・・」

 

ここトリントン基地指令で有るバリサムの執務室のまでコンコンとノックするイエーガーにちょっと待て・・・!と妙に慌て出すロイ=バリサム大佐の声にアメリアはイエーガーと首を傾げ合う。

 

「都合が悪いのならまた明日にしますが・・・」

 

「そうだな・・・後日こちらからまた報告を聞こうと思うので、悪いがまた今度にしてくれ・・・」

 

そう説明しながら部屋にも入れようとしないバリサムの様子にはあ・・・?と答えたアメリア達が一旦戻ろうかと元来た道を振り返ろうとした瞬間、まあちょっと待て・・・?と尋ねる女性の声と同時その扉が開いた。

 

「ちょっとお茶をしていかないか二人共?」

 

「ヘッ!?」

 

そう言いながらバリサムの部屋から突然声を掛けて来るスーツ姿の女性に慌てたアメリアは困惑気味に変な声を上げたので有った・・・

 

 

~~~

 

 

「まあゆっくりしろ。と言ってもここは私のオフィスじゃないがな?」

 

「はあ・・・?」

 

基地指令のバリサムよりも力が有るのか・・・アメリアは我が物顔でソファーへと促すスーツ姿の女性に違和感を覚えながらイエーガーと共に対面に座った。

 

 

「あの・・・バリサム指令?これは一体・・・!?」

 

「いや・・・話せば長くなるんだが・・・」

 

そう困惑するバリサムに私から説明しよう?とニコっとするスーツ姿の女性と隣に座って居た女性士官が一緒に立ち上がりながら先ずはと自己紹介を始めた。

 

 

「私はジャブロー本部から来た情報部のアリス=ミラー少佐だ。」

 

「そして、私も同じくジャブロー本部所属MS教導部隊(アグレッサー)の一つでブラックウィドウ隊の隊長をしてるヒルデガード=ウィンチェスカ大尉よ。気軽にヒルダって呼んでね?」

 

 

堅物ばかりのジャブローから来た割りには意外とフランクな二人に対し、少し驚きです。と内心少し驚いたアメリアもイエーガーと共に自分の所属と名前を答えた。

 

「試験実験MS部隊カスケード隊のアメリア=アン=ウォーカー軍曹です。」

 

「同じく部隊の中隊長をしておりますイエーガー=バウスネルン中尉で有ります。」

 

そう言った所でイエーガーからそれでどんなご用件でしょうか・・・?と伺う様に声が上がると、おっとそうだったな?とミラー少佐がニヤニヤとアメリアを見る。

 

「君達もバリサム指令から聞いたと思うが・・・先日の作戦行動中にウォーカー軍曹が独断で敵と繋がってるらしく補給基地へ攻撃指示を出した事についての内務調査へと来たんだ。」

 

「やっぱりですか・・・ですがあの件に関しては、はっきりと逮捕者も出て白黒が付いたはずでは?」

 

上官として庇うイエーガーの強気な言葉に言う時は言いますね・・・?とアメリアが内心感動していると、まあその通りだな?とあっさりと折れるミラーにヘッ!?とアメリアとイエーガーから素っ頓狂な声が上がったので有る。

 

 

「それは対面的な事案で有って・・・実際にはもっと面倒な事でここに私は来ている。」

 

 

「面倒な事・・・とは一体なんですミラー少佐・・・?」

 

てっきり自分を査問しに来たと思っていたアメリアがミラーからの説明に困惑していると、すみません!遅れました・・・と急にノックしながら聞こえて来た女性の声にビクっしたアメリアはえっ!?と驚く声を上げる。

 

 

「おい、どうかしたのかアメリア・・・」

 

 

「いえ・・・ちょっと知り合いの声に似ていたので・・・」

 

 

「知り合いだと・・・?」

 

 

そう言いながら首を傾げるイエーガーの向こうで遅刻だぞ!とミラーが入って来た自分の部下らしい女性士官を叱り出すとアメリアはバチっとその子と目が合った・・・

 

(嘘でしょ・・・なんであの子がここに居るんですっ!?)

 

自分の感が当たってしまいギョッとするアメリアに先程ショウ達とニアミスした眼鏡を掛けた少尉が綺麗な黒髪を流しながらビシっと敬礼をした。

 

「自分は情報部所属のケイ=キタムラ少尉です。今回の作戦ではミラー少佐の補佐として頑張りますので宜しくお願い致します。」

 

アジア人特有なのかアメリアはそう言いながら深々と頭を下げる彼女にちょっとケイっ!?と詰めよった。

 

「何でここにっ!?っていうか作戦ってなんなんですかケイ!!」

 

「立場を弁えなさい軍曹・・・上官ですよ私は?」

 

「クッ・・・分かりましたよ!」

 

そう冷たい視線を送って来る親友(・・)にイラつきながらアメリアが離れると、それでは作戦の説明

をしようか?と重たくなった空気を変える様に教導隊のヒルダ中尉からパンっと手を叩かれたので有った。



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因縁その3

アメリアが士官学校時代の友人で有る情報部所属のケイ=キタムラと衝撃的な再開を果たしている丁度頃・・・昼食を食べ終えたショウ達は時間を潰しにハンガーへと向かっていた。

 

 

 

「しっかしその小さい身体の癖に良く食べるなソフィーは・・・?」

 

 

 

「本当ですねぇ・・・一体どこに栄養が言ってるのか不思議ですぅ・・・」

 

 

 

歩きながら驚くショウと羨ましそうに見て来るミリィのジーっと見て来る視線にソフィーはちょっとっ!?と低い身長に比例して大きな胸を恥ずかしそうに手で隠した。

 

 

 

「ミリィったら、まったくもうっ・・・!」

 

 

 

「ゴメンゴメン~って言うかぁ・・・ハンガーに行って何をするのお?」

 

 

 

「腹ごなしにあの子達陸ジムの修理箇所の部品出しと今回の戦闘データの抽出をしようと思ってっ」

 

 

 

「ホントにMSが好きなんだねぇソフィーはぁ?」

 

 

 

ミリィが折角の半日休暇だと言うのに仕事をすると言うソフィーのMSに対する愛を感じながら少し呆れていると、まあどうせ暇だし良いんじゃない?とショウはククっと笑いだした。

 

 

 

「まあショウが行くんなら俺も行くけどよ・・・お二人はどうするんで?」

 

 

 

そう言いながらチャーリーが頭だけ振り返すと、そうだな・・・とジャックとタンクの両隊長は思案顔を浮かべる。

 

 

 

「まあ、行きたい奴だけで良いんじゃ無いか?」

 

 

 

「だな。って事で第三小隊はここで解散してまた晩にリンのCASCADEに集合だ。今日はアメリアの奢りらしいから遅れんなよ。良いな!」

 

 

 

「第二小隊もだぞ。」

 

 

 

 

 

ジャックとタンク両隊長の指示に了解!と敬礼した隊員達が自分の部屋に戻ったり別行動を取ったりする中で結局第二小隊のユウヤとレオンに第三小隊のレティが残りショウ達と行動を共にする事となった。

 

 

 

 

 

「お前もどっか行くと思ってたのに意外だな・・・?」

 

 

 

「今回の遠征じゃ全然役に立たなかったからな・・・せめて整備の手伝いでもしようと思ってな。」

 

 

 

ドムを仕留めきらなかった事を悔やんでいるらしいタンクにそんな事有りませんってぇ!?とオペレーターのミリィがムゥと悔しそうな顔をしながら話に割り込んで来た。

 

 

 

「アレは私のミスです。今度は絶対に当てる様に誘導しますから期待してて下さいよタンク隊長ぉ!!」

 

 

 

「へいへい・・・今度は宜しく頼むわ?」

 

 

 

「何ですかぁそのヤル気の無い返事はぁ!!」

 

 

 

「五月蠅ぇ奴だな・・・お前の嫁をどうにかしろよジャック!」

 

 

 

そう言いながら自分の耳を塞ぎだすタンクにそれは今関係無いでしょう!?と顔を赤くしたミリィが怒り出すのでまあまあ・・・とジャックから苦笑いが浮かび出す・・・

 

 

 

(まあ・・・アレはスカート付きのパイロットの練度が高かった所為だけどね・・・)

 

 

 

背後で繰り広げられる3人の様子に内心そうツッコんでいるショウに賑やかですっ♪とソフィーもニコニコとしていると目的地で有るハンガーが見えて来たのだが・・・ソフィーはアレっ?と何か違和感を感じ首を傾げたので有る。

 

 

 

「何でウチのMSが外に出されてるんだろうっ・・・?」

 

 

 

「ホントだ・・・」

 

 

 

アメリアがぶっ壊したCSD1を始めに第三小隊のガンタンクの三番機で有るCSD9までズラッとハンガーの外に並ぶ様を見てショウも不思議そうにしていると、おい見ろよショウ!!とハンガーの中を指差して来るチャーリー達にショウとソフィーも一緒に中を覗くとハンガー内にはぎっしりと詰められたMSで一杯で有ったのだ・・・

 

 

 

「何だこの数は・・・全部ジムか!?」

 

 

 

「えっええ・・・確かにそうなんですけどっ!手前の三機だけ凄いですよショウさんっ!!」

 

 

 

そう興奮しながら指を差すソフィーにショウからヘッ?と変な声が上がると、どれだどれだ?とチャーリー達も集まって来た。

 

 

 

「一番手前が軽量化され出力強化されたRGMー79Lジムライトアーマーで次が中距離支援機のRGCー80ジムキャノン・・・そして最後がこれらの機体の母体で有るRGMー79ジムなんですがっ・・・私の知っている機体と少し形状が違うんですよねっ・・・?」

 

 

 

「へえ・・・良く気付いたな嬢ちゃん?」

 

 

 

 

 

そう説明しながらん~っ?と腕を組むソフィーにパチパチと手を叩きながら見慣れない隊員が三人程近寄って来ると、アンタ達誰・・・?とショウが警戒する様にジッと睨むとおいおい・・・とリーダーっぽい男性士官から苦笑いが浮かんだ。

 

 

 

「そんな顔すんなって・・・俺達は教導アグレッサー部隊だ。」

 

 

 

「えっ・・・何で教導隊がここに!?」

 

 

 

「俺が知るかよ・・・それよりも嬢ちゃん。アンタが言った通り俺のジムはどこぞのニュータイプ部隊とか言われるMSパイロットが使っているガンダムとか言うMSをフィードバックして強化している指揮官用だ。どうだ凄いだろ?」

 

 

 

「あのガンダムのですかっ!?」

 

 

 

20代後半か人懐こい笑顔をする教導隊のリーダーにソフィーが懐くのでショウもすぐに警戒を解くと、ショウ=カノウです。と自分の右手を差し出した。

 

 

 

「おう知ってるぞ。表に並べてある陸ジムのパイロットだな・・・俺は教導隊ブラック=ウィドウの小隊長でイワン=アレンスキー少尉だ。そしてこの不愛想なのが2番機のリー=フェイ少尉でコッチの真面目そうなのが3番機のジャン=ノベル准尉だ!」

 

 

 

「誰が不愛想だこのバカが・・・」

 

 

 

「アハハ・・・宜しくお願いしますね。」

 

 

 

 

 

向こうもコッチに負けず劣らず個性的らしくショウが苦笑いを浮かべていると、あのぉ・・・?と何か違和感を感じたのかミリィから首が傾げられた。

 

 

 

「何で私達がカスケード隊・・・・・だって知ってるんですかぁ・・・?」

 

 

 

「ああ・・・多分その事はウチのボスがソッチの指揮官と話している頃だと思うがな・・・」

 

 

 

そう言いながらイワンが意味ありげにニヤっと笑みを浮かべるのでそれは一体~?とミリィはショウ達と

 

一緒に不思議そうに顔を首を傾げ合うので有った。

 

 



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因縁その4

 

 

「それで・・・本社(ジャブロー)でも特殊な部署で有る情報部と教導隊が一体何用でこんな所までにまで来たのかお聞きしても・・・?」

 

 

あまりに妙な組み合わせとしか思えない二人組・・・ミラーとウィンチェスカの二人にイエーガーが不審そうに尋ねだすと、確かにとその隣でアメリアは何で教導隊が居るんでしょう・・・?と内心不思議そうに思いながら首を少し傾げながら二人の返事を待っていたのだが、実はな・・・?と予想外にバリサムが話を切り出した。

 

 

 

「本社からお達しでな・・・この基地に新たなMS部隊が新設される事となって、教導隊はその教練の為に来たんだが・・・」

 

「ちょっと待って下さい。先任の私達が居るのにも関わらず部隊の増設とは・・・しかもエリート部隊の教導隊まで付いて来るなんて私達にも納得のいく説明をしていただけるんでしょうねバリサム指令!」

 

自分が言い終える前そう捲し立てて来るアメリアに向かっておいウォーカー・・・と困った顔を浮かべたバリサムはコホンと咳払いしながらイエーガーを見て彼女を諫める様に目で指示を出すので有った・・・

 

「ちょっと放しなさいイエーガー!」

 

「良いから大人しく話を聞けって・・・」

 

立ち上がったアメリアの肩を掴み座らせたイエーガーから続きをお願いします・・・とこちらも内心面白く無いのかジッと睨まれたバリサムはハァ・・・と溜息をつくと、デスクに置いていたパイプに火を着けながらそんな顔をするな・・・と自分自身も面白くない顔を全員に向けた。

 

「大体がだ・・・私は部隊の増設はともかくとして、この突拍子も無い命令を出して来た奴が気にくわんのだよ・・・」

 

「一体誰なんですバリサム指令・・・そんな妙な事を言う高官と言うのは?」

 

普段は温厚なバリサムの様子に顔を見合せたアメリアとイエーガーが不思議そうに首を傾げていると、ちょっとモニターをお借りします。と今まで隅で待機していたケイ=キタムラ少尉がバリサムの同意を得て彼の執務室のプロジェクターと繋げたタブレットを操作すると、瘦せ型の顔をした連邦軍の佐官と数名の隊員達が映るの

を見たアメリアは何でこいつ等がっ!?と驚きを隠せずに声を上げたので有る・・・

 

「おいアメリア・・・?」

 

「ソイツの名前はジャミトフ=ハイマン大佐・・・特殊任務部隊、通称特務の総督で地球至上主義のクソ野郎ですね・・・他の連中は知らない顔も居ますが特務の隊員です。」

 

「ああっ!?ちょっと待てよ・・・それってひょっとしてこいつ等がこのトリントン基地に配属されるって言うんじゃないでしょうね!!」

 

険しい顔をするアメリアの過去を知ってか慌てたイエーガーがパイプ片手に苦笑いを浮かべているバリサムを見ると、何を言っているんだ・・・と今まで黙っていたミラーからニヤっと笑みが浮かぶ。

 

「フフッ・・・もう奴等はここに配属されているんだよ中尉?ケイ・・・ターゲットの顔を出せ。」

 

「・・・了解しました。」

 

「んっ・・・?」

 

アメリアは上官からの指示でタブレットを操作するケイの戸惑った顔を見て違和感を感じているとすぐにその意味が分かった・・・

 

「ウォーカー軍曹・・・コイツの事は良く知っているな?」

 

「ええ・・・まあ・・・」

 

曖昧に答えたアメリアだがそんな事は当たり前で有る・・・このモニターに映し出された男・・・デイヴィッド=リンス中佐は特務時代に冤罪で自分を陥れた張本人なのだから・・・

 

「それで彼がどうかしたんですか・・・?」

 

「ああ・・・それなんだが・・・奴は新設されるMS部隊の中隊長となる。」

 

「へえ・・・って!?何でリンスがっ!!!」

 

嫌いと言え思わず元上官をアメリアが呼び捨てにしてしまうと、コイツは良い!と面白そうにクククっと笑いだすミラーに部下で有るケイから少佐!と窘められた。

 

「いや・・・さっきのジャミトフ大佐に対するクソ野郎宣言と言い、お前とは気が合いそうだなウォーカー軍曹・・・?」

 

「はあ・・・そうなんですかね・・・」

 

「ああ、私は・・・と言うより情報部は君も知っての通り機密性の高い任務で良く対立するから特務とは犬猿の仲なんだよ。」

 

そう説明しながら何かを思い出したのかミラーが懐から取った煙草に火を着けだすと、それは納得ですね・・・?とアメリアも当時の事を思い返しながら苦笑いを浮かべた。

 

「ところでミラー少佐・・・何故リンスがここへ?奴は特務の部隊長だった筈では・・・」

 

「ああそうだ。確かにそうなんだが・・・知ってるか?ここ最近設立して各地で展開している試験部隊の存在を・・・」

 

「ええ、知ってるも・・・その草案者で有るジョン=コーウェン准将の推薦が有って私達のカスケード隊が結成されたので・・・ってまさか!?」

 

「そう・・・そのまさかだ。ジャミトフ大佐は派閥も違う上に上官で有るコーウェン准将がこれ以上|幅を利かせるのが気にくわないって訳だ。」

 

そこまで説明し終えたミラーが吸い終わった煙草を灰皿に押し付けると、でも何故ここへ?とイエーガーはピンポイントでトリントン基地を何故狙うのか不思議に思った。

 

「まるで誰かを狙っている様に感じるですが・・・?」

 

「そうだな・・・まあ同じレビル派で有るバリサム大佐の失脚も考えられるが・・・」

 

「いや待ってくれ少佐・・・私はどこの派閥にも参加した覚えは無いぞ!?」

 

「覚えは無くともこうして目を付けられたんです・・・諦めた方が良いですよ指令?」

 

そう答えながらげんなりとするバリサムにクスっとミラーが微笑んでいると、決まっています。とケイが真剣な顔でアメリアを見た。

 

「恐らく奴はアメ・・・ウォーカー軍曹を狙って来たんです。」

 

「何だと・・・!?」

 

急に変な事を言って来るケイにイエーガーから驚く声が上がると、ちょっと待って下さい!とアメリアがストップを掛けた。

 

「今アメリアって言いかけましたよね?」

 

「ちょっと・・・今は真面目な所だからさ・・」

 

昔みたいに呼ぼうとしたケイに嬉しそうな顔をしたアメリアが首を少し傾げると、相変わらず緊張感の無い彼女にハァ・・・とケイは溜息をつくので有った・・・

 



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因縁その5

そして・・・アメリアとイエーガーが教導隊の隊長で有るウィンチェスカ中尉と何やら思惑が有るらしい情報部のミラー少佐と話し合っている頃・・・ショウ達カスケード隊はMSハンガーで出会ったその教導隊のMSパイロットで有るイワン=アレンスキー少尉をリーダーとするブラックウィドウ隊に何故か気に入られていた・・・

 

「成程な・・・姉御から話は聞いていたが、お前達カスケード隊って結構修羅場をくぐってんだな・・・」

 

 

「そうでしょう凄いでしょう~♪私達カスケード隊はあの噂のスカート付きまで倒したんですよぉ?」

 

 

興味津々と言った顔で聞いて来るイワンにミリィがドヤ顔で今までのカスケード隊の戦績を説明すると、そいつはすげえな!?とイワンから驚き出しながらも急にチッと面白く無さそうに舌打ちされるとショウはどうかしたのかよ・・・?とその様子に首を傾げた。

 

 

「おっと悪りい・・・姉御から命令された今回の任務がどうも嫌でな・・・」

 

「ふ~ん・・・それよか、さっきから良く聞くけど・・・その姉御って誰の事だよイワン・・・?」

 

「ウチの指揮官だよ。美人で頭も切れるがどうも頑固な人でね・・・」

 

「それはウチのアメリアと良く似てるよ。なあチャーリー?」

 

はあ・・・と困った顔をするイワンに同調する様にショウがチャーリーに同意を求めるのだが・・・アイツのはただの思い付きじゃね?と身も蓋もない答えに思わず納得しそうになったショウはアハハハ・・・と苦笑いを浮かべた。

 

「ふ~ん・・・ウチも個性的な部隊って良く言われるけど・・・ショウ達のカスケード隊も中々見みたいだな・・・?」

 

「何だよイワン・・・顔が怖いんだけど・・・?」

 

「そうか?そうだとしたらお前達に俺が更に興味を持ったって事だなショウ・・・」

 

そう答えながらニヤっと笑みを浮かべて来るイワンに何だよそれ・・?とショウが首を傾げていると、何だいアンタ達は・・・!と叫ぶ第三小隊のレティ曹長の怒鳴り声にショウは何だよ一体!?と慌てながらブラックウィドウ隊のジャンから話を聞いていた筈の彼女達の方を見た。

 

~~~

 

 

「こんなキャノン付きの支援機なんぞ要らないって言ったんだよ!」

 

「しかし三機一体(スリーマンセル)を基本とした連邦軍のNS戦闘教義の中でも支援機の存在は・・・」

 

「うるせえんだよぉ!このクソガキがっ・・・」

 

そう叫んだ隊員達がジャンを蹴っ飛ばすと、良くもやったねぇ!!とレティが怒り出すのでタンクは待て待て・・・?と慌ててその肩を掴んだ。

 

「先に手を出すと厄介だぞこいつ等・・・」

 

見た事も無い隊員達とその胸に有るワッペンに違和感を感じたタンクが一旦止めると、おいおい来ねえかよオッサン?と煽って来る若い隊員にタンクはカチンと来た・・・

 

「ちょっと隊長・・・私にやるな言いながらまさかキレて無いですよね!?」

 

「許せレティ・・・俺はまだ20代だぞ!!」

 

そう叫びながら殴り掛かるタンクにハァ・・・と溜息をついたレティはそう来なくっちゃね!と笑みを浮かべながら伸びたジャンを静かに床へと置くとタンクになくり掛かろうとした隊員の胸倉をつかんだ・・・

 

「この男女がっーーー!?」

 

「ハハっ!威勢が良いねぇ・・・寝言は寝て良いなぁ!!」

 

そう叫んだレティがオラァ!!とその隊員を勢い良く背負い投げるのを見てタンクはさっすがレティ!と余裕綽々の様子で対峙していた隊員の腕を捻った。

 

「この辺にして置いてやるから・・・ソイツの言う通り帰って寝たらどうだ?」

 

「ギャアーーーっ!」

 

普段はふざけて居ながらもイザと言う時は出来る自分の隊長にいつもこうなら良いのに・・・とレティが少し呆れていると、、、おいお前ら・・!と逆上した隊員の一人が気絶していたジャンの頬にナイフを突きつけていた・・・

 

「あの・・・そんな事したら懲罰房どころじゃ・・・?」

 

「うるせえ!!俺達は特務隊だ・・・てめえらみたいな一般兵とは違うんだよっ!?」

 

目を覚ましたジャンの声に反応してレティが特務隊と名乗った隊員の隙をすかさず、そいつは知らなかったねぇ!!とその隊員の顔面に思いっきり右ストレートを撃ち込んだ所でレティ姉さん!?とショウ達が追いついて来た・・・

 

 

「一体何が・・・?」

 

「いや・・・何だか特務・・?って奴等がジャンにイチャモンつけて来たからさ・・・」

 

そう答えながらカスケード隊でもアメリアの次に格闘術が強く基地内でも武闘派で有るレティ曹長が足元に転がる隊員達に向かってポリポリと頭を掻いていると、あの・・・とその彼女から助けて貰ったジャンから尊敬の眼差しを向けられた。

 

「とてもお強いんですね!?凄く素敵でした!」

 

「えっ?えっと・・・まあいつも鍛えてるしね・・・?」

 

「そうなんですね!じゃあ僕もここに居る間だけトレーニングをお願いしても・・・?」

 

「いや・・別に良いけど・・・」

 

明らかに年下だが・・・人懐っこい笑顔でジャンに押しきられたレティが困った顔で了承すると、コイツにもようやく春が来たか・・・とタンクからククっと楽しそうに笑い声が上がり出すので、これはこれは・・・と彼らの親玉らしい少佐の階級章を付けた男がショウ達カスケード隊の前に出て来たので有った・・・

 



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因縁その6

「誰だいアンタは・・・こいつ等を含めて、この基地で見た事無い顔だが?」

 

 

「これは申し遅れました。自分はジャブロー特殊任務部隊からここトリントン基地MS部隊の中隊長として着任しましたデイヴィッド=リンス少佐と言います。今後ともお見知りおきを・・・?」

 

 

そう説明しながらニヤっとリンスが笑みを浮かべると、特務ね・・・?とタンクはさっきレティがノックアウトした隊員も同じ事を言っていた事を思い出した。

 

「何で特務のアンタ方がこんな田舎基地に、しかも先任で有る俺達に挨拶も無しに中隊長に就任とは・・・納得の行く説明はして貰えるんでリンス少佐?」

 

「ハハっ・・・これはまた妙な事を言いますね・・・えっと?」

 

「カスケード隊第三小隊長のタンク=ヴィンセント中尉だ。」

 

「成程・・・ヴィンセント中尉?貴方が納得するもしないもこれはジャブロー本部からのちゃんとした命令書によって決まった人事なのですよ。たかが現場指揮官程度が何を言うのやら・・・」

 

ハァ・・・とタンクに向かって溜めいき交じりにリンスはそれにしても・・・?と倒れ込んだ部下達の不甲斐なさにイラっとしたのか、情けないですね!と自分の近く居た隊員の一人を蹴っ飛ばしたので有る・・・

 

 

「こんな一般兵相手にやられるとはそれでも本当にスペースノイド共を狩る精鋭の一人なのですか?」

 

「申し訳有りませんでした・・・リンス隊長・・・」

 

腹を蹴られゴホゴホと咳き込む隊員に向かって呆れるリンスに何やってんだよお前っ!?とタンクから驚いた声が上がると、その辺にしとけよテメエ・・・と怒りに満ちた顔のチャーリーを先頭に正義感の強いショウやジャックが部下に暴行を加えるリンスに向かって立ちふさがった。

 

「アメリアからは聞いたけど・・・特務って言うのはホントにクソ野郎の掃きだめみたいですね・・・?」

 

「ああ・・・おかげで俺も久しぶりにキレた様だぜ!!」

 

以前聞いたアメリアの昔話からコイツ・・・リンスが元凶か?と感じたショウとジャックが両手を構えると、おやおや・・・?とリンスは困った様に首を傾げた。

 

「相変わらず彼ウォーカーはあの容姿で男を誑かしている様ですね・・・だからスペースノイドと言うのはずる賢い・・・」

 

「うるせえな!シャンプー少佐さんよ・・・あんなに初心っぽい奴がそんな器用な事が出来るかってつーの!!」

 

自称トリントン基地のイチの男前で別名・・・女ったらしのチャーリーとも呼ばれてる金髪の少尉から出た真剣な顔にショウ達も何か言おうと思ったのだが・・・先程のチャーリーから出たリンスの呼び方にププッ・・・と必死になって笑いをこらえていた。

 

「ほう・・・そんなにあのスペースノイドの事を知っているのなら貴方も何だか怪しいですねぇーーー!!」」

 

「チッ!!特務の隊長とか言ってる癖に沸点低すぎだろコイツっーーー!?」

 

チャーリーにとってはちょっと揶揄ったつもりだったのだが、自分の名前をワザと言い間違えた事にキレたリンスがチャーリーに向かって殴り掛かると、何すんだテメエ!!と叫ぶジャックに続いてショウも後から湧いて来た特務隊の隊員達にレティと共に突っ込んで行くのでタンクはまったく・・・と頭を抱えだした。

 

「どいつもこいつもアメリアの事で血が上ってやがる・・・おいお前ら!!今すぐ本部に行ってイエーガーとアメリアを呼んで来い!」

 

「了解ですぅ!!?」

 

「アワワ・・・取り合えずジープを持って来ますね私っ!?」

 

カスケード隊対元特務隊との大乱闘に怯えていたミリィとソフィーがタンクの指示で慌ててハンガーから飛び出して行くと、この様子を伺っていたリー=フェイは小隊長のイワンにどっちに付くんだ?と首を傾げた。

 

「決まってんだろうが!俺達もカスケード隊に加勢するぞ・・・!!」

 

「まあ・・・分かってはいたがな?」

 

そう答えながら突っ込んで行くイワンに淡々と答えたリー=フェイがそれに続くと、レティさんの為なら!とジャンも気合い入れて二人の先輩と共に教導部隊ブラックウィドウ隊もカスケード隊の加勢に向かったので有った・・・

 

 

 

~~~

 

 

 

「このリンスと言う男は情報部でも以前から目を付けていた人物なんです・・・主な理由としては作戦時における過剰防衛と思える殺人にジオン派と思われる民間人の虐殺・・・更にはスペースノイドに対する異様な差別が設けられます。」

 

正にそんな出来事が実際に起きている中・・・そう説明する情報部のケイにアメリアから手が挙がった。

 

「それで?情報部は私達に何をして欲しいんです。」

 

「私が望むのはデイヴィッド=リンス少佐の逮捕よ・・・」

 

そう答えながらケイがムスっとした顔を向けて来ると、はあ・・?と何でと不思議そうな顔するアメリアに彼女の上官で有るミラーが分からないか?と楽しそうに部下で有るケイを見た。

 

「コイツはどうしても親友の事を助けたいと自分の進退を賭けてまで君の冤罪を晴らす為に動いたんだぞ。」

 

「ちょっとミラー少佐っーーー!?」

 

ケイが自分の内部事情を簡単にばらす上官に向かって抗議の声を上げていると、本当ですかケイっ!?とアメリアは驚きながらもすぐにニコっと微笑んだ。

 

「別にアンタの為じゃ無いんだからね!?」

 

「はいはい、分かってますよ?ケイが自分の為になるから動いてくれたんですよね。」

 

「そうよ。だから私に感謝する事ね?」

 

「ありがとうケイ・・・大好きですよ♪」

 

相変わらずツンとデレが激しいケイにアメリアがニコっと微笑むと、アンタ変ったわね・・・?とケイは首を傾げた。

 

「そうですか・・・?」

 

「うん・・・私が知ってるアメリアは愛想笑いばっかりだったら今の方が良いわよ。」

 

そう答えながら不思議そうするるケイにそうですか・・・?とアメリアが自分の顔をグニャグニャ触り出すと、失礼しますぅ~!?とノックする音と聞こえて来るミリィの声にアメリアとイエーガーは顔を見合わせた・・・

 



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因縁その7

「ったくどうなってやがるっ!?何でウチとそのリンスとか言う元特務の少佐の部隊がハンガーで取っ組み合い何かやってるんだ?」

 

 

 

「そんなの知りませんってぇ!そもそも最初に絡んで来たのは向こうなんですよぉ!?」

 

 

 

ジープの後部座席から叫んで来るイエーガーにジープをハンガーへと急がせているミリィから抗議の声が上がった。

 

 

 

「分かったからもっと飛ばせミリィーーー!!」

 

 

 

「了解ですぅーー!」

 

 

 

「アワワッーーー!!?」

 

 

 

仲間達のピンチに更にジープが加速しソフィーから悲鳴が上がる中、リンスの奴・・・とイエーガーの隣でアメリアは小さく呟いた・・・

 

 

 

「おいアメリア・・・絶対に短気な真似をするんじゃないぞ!良いな・・・?」

 

 

 

 

 

「すみませんイエーガー・・・状況によっては約束できないかもしれませんよ。」

 

 

 

バリサムの執務室に慌てて飛び込んで来たミリィとソフィーから聞いた乱闘騒ぎに宿敵とも言えるリンスが絡んでいる事を知ったアメリアはまったく目の笑って無い顔でニコっと笑みを浮かべた・・・

 

 

 

 

 

「アメリア・・・お前・・・!?」

 

 

 

 

 

「ハンガーにこのまま突っ込みますよぉ!!!」

 

 

 

 

 

何かしでかしそうな雰囲気を醸し出すアメリアをイエーガーが止めようとしたが・・・タイミングが良いのか悪いのかそう叫んだミリィの運転するジープがスライドしながら勢い良くハンガーの中へと到着したので有った。

 

 

 

「私はリンスを探します・・・」

 

 

 

「おい待てアメリアっ!!」

 

 

 

そのまま後部座席から飛び出して行く彼女を追い掛けようとすると、テメエらも仲間か!!とリンスの

 

特務隊に阻止されたイエーガーは背後に居るミリィとソフィーを守ろうとイラっとしながら両手で構えた・・・

 

 

 

「特務か何だか知らねえが・・・そこを退きやがれぇーーーっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「オラオラーー!たかが整備兵が逆らうんじゃねえよ・・・」

 

 

 

「おっと?コイツは妙な事を言いやがる・・・大して動かしても無い癖に大きな事言うんじゃねえ!!」

 

 

 

この乱闘騒ぎに不満を持ったホワイト大尉率いる整備班も反旗を翻したのが・・・その特務の隊員達に胸倉を掴まれたホワイトはピンチに陥っていた・・・

 

 

 

「おやっさーん!?」

 

 

 

「騒ぐんじゃねえ・・・このジジイを殺すぞ?」

 

 

 

整備班の主任で有るシゲの悲痛な声に特務の隊員がニヤニヤしながら自分達の強さを見せつけていると、それは困りますねっ!!と死角から攻め込んだアメリアはゲシッ!と後頭部に向かって回し蹴りを繰り出すと大丈夫ですか?と声を掛けホワイトを救出した。

 

 

 

「俺は平気だが・・・カスケード隊の連中が・・・!」

 

 

 

そう叫びながら指を差すホワイトの先でリンス率いる特務隊からボコボコにされている仲間の姿を見たアメリアはリンスーーーっ!!と叫び駆け出した・・・

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「威勢が良かったのは最初だけだったみたいですね・・・?」

 

 

 

 

 

アメリアから鍛えられたとは言え現役の特務隊と戦ったカスケード隊でかろうじて立って居るのは第三小隊長のタンクと女だてらに武闘派と名乗るレティ・・・そしてアメリアを侮辱され根性だけで立って居るチャーリーだけで有る。

 

 

 

「ゴメン・・・チャーリー・・・」

 

 

 

「後は任せるぜ・・・タンク・・・」

 

 

 

 

 

ショウは勿論の事ジャック率いる第二小隊のユウヤとレオンまで倒れたカスケード隊にタンクはチッ・・・と舌打ちした・・・

 

 

 

「どうやら俺達の負けの様だな・・・」

 

 

 

この状況から見て勝ち目が無い事にタンクが悔しそうに呟くと、ちょっと待てよ・・・?と既に限界の癖にチャーリーはニヤつきながらリンスを指差した。

 

 

 

「聞いてるぜ・・・お前はアメリアに負けたってな?ひょっとしてその仕返し来たってか・・・」

 

 

 

「馬鹿野郎!それ以上ソイツを煽るな・・・!?」

 

 

 

 

 

そう焦った声を上げるタンクの心配を他所にチャーリーが首を傾げると、誰が負けただっ!!と叫んだリンスはその首を掴みながら壁に叩きつけると死ね・・・と腰から引き抜いた銃をチャーリーの頭に突きつけ付けると・・・止した方が良いですよ?とアメリアからもゴリっと銃を突き付けらたので有った。

 

 

 

 

 

「その声はウォーカーか・・・何故撃たない?」

 

 

 

「貴方の事は殺したいくらい憎んでますが・・・私の上官から止められてますので・・・」

 

 

 

 

 

「ほう・・・では、その甘さが命取りとなると知るが良い!!」

 

 

 

そう叫びながら振り返るリンスに向かって焦ったアメリアが自分の愛銃で有るグロック17Lを撃とうした瞬間にアメリアーーー!!?とケイが止めると、この乱闘騒ぎのを止めようとミラーはそこまでだ!と

 

スーツの下から引き抜いたUSPを上に向かってパンパンと威嚇の為に撃った・・

 

 

 

「私は情報部のミラー少佐だ・・・全員武器を置け!」

 

 

 

「これはミラー少佐・・・何故ここに?」

 

 

 

「リンス・・・お前の邪魔をしたくてな・・・」

 

 

 

そう言い合いながらバチバチと火花を飛ばしだすミラーとリンスにそこまでー!!と教導隊のキスティス中尉から手が挙がった。

 

 

 



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因縁その8

「全員武装を解除!この場は私・・・ジャブロー直轄教導部隊ブラックウィドウの隊長で有るヒルデガード=ウィンスカが一旦預からせて貰います。」

 

 

 

「ちょっと待ちたまえ・・・たかが教導隊の隊長如きの命令に私が・・・ここトリントン基地のMS部隊の中隊長で有る自分が従うと!?」

 

 

 

まるで何を言っているのか分からないと言った顔で両手を上げて来るリンスにヒルダは呆れた顔でハァ・・・と深く溜息をついた・・・

 

 

 

「少佐こそ何か勘違いをしているようですが・・・今回、私達ブラックウィドウ隊に課された任務は貴方方元特務隊の評価試験なんですよよね・・?」

 

 

 

そう説明しながら意味ありげにヒルダがクスっと微笑むとリンスからどう言う事だ中尉!!と焦った声が上がると同時にまだ分からないのか?とミラーは呆れた顔でリンスを見た。

 

 

 

「実績も有る先任の部隊が居るんだ。入れ替えるんならそれ相応の訓練くらい有るに決まってるだろう・・・」

 

 

 

「ムッ・・・だが、しかし我々はジャミトフ大佐がジャブローの上層部に取った指示でここトリントン基地への着任が決まっている筈だ!!」

 

 

 

ミラーからの説明に納得がいかないのかリンスが怒声を上げるのを見たヒルダはああそう?と答えながら一枚の命令書を見せた。

 

 

 

「ちょっと前後したみたいで少佐達には悪いけど・・・こっちもコーウェン准将の指示で動いてるのよね?」

 

 

 

「それはそうだろう?貴様たち教導隊やこいつ等試験部隊は奴の直轄だからな・・・」

 

 

 

「違います。ここの署名を見て下さい・・・」

 

 

 

 

 

そう答えながら命令書の一番下を指差す承認者の名前にリンスは驚愕した・・・

 

 

 

「ヨハン=エイブラハム=レビル・・・大将だとォ・・・!?」

 

 

 

「そうです。貴方達のボスで有るジャミトフ大佐がどの様な高官達から許可を取ったのかは知りませんが・・・この方よりも上って事は有りませんよねリンス少佐?」

 

 

 

そう答えながら首を傾げる彼女にクッ・・・とリンスは悔しそうな顔で情報部のアリス=ミラーを見た。

 

 

 

「流石は情報部の蛇女だな・・・こんな手を用意して来るとは・・・」

 

 

 

「おいおい勘違いするなよリンス・・・?私はたまたま別件でこの内務調査に来ただけだからな?」

 

 

 

「まあ今回はそういう事にして置くがな・・・」

 

 

 

「ああ・・・私も貴様達がここの隊員に行った暴行に関しては見なかった事にしてやる。今回だけはな・・・」

 

 

 

 

 

そう答えながらミラーが銃をスーツの下に直していると、覚えてろ・・・と吐き捨てながら元特務の隊員達を引き連れてリンスから捨て台詞が聞こえたミラーは負け犬の遠吠えだな・・・?とククっと笑いながら煙草が入ったケースを取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「それにしてもウォーカー・・・私が居る前で銃を抜くとは良い度胸だな?」

 

 

 

「申し訳有りませんでした・・・私の大切な人を傷つけようとしたリンスにどうしても我慢できず・・・」

 

 

 

そう説明しながら顔を俯かせるアメリアにまあ良いがな?と煙草に火を着けだすミラーにアメリアからヘッ!?と素っとん狂な声が上がる。

 

 

 

「どう言う事ですか!私は上官に対し銃を抜いたんですよ?」

 

 

 

「その本人が見なかった事にすると言ったんだぞ・・・私としては仕事が減って助かる。」

 

 

 

アメリアは意外と適当なのか、そんな事を言いだすミラーにはあ・・・?と首を傾げていると、それにだ・・・と答えたミラーはニヤっと笑みを浮かべながらアメリアを含めたカスケード隊の全員を見た。

 

 

 

 

 

「これは私からの貸しだからなウォーカー・・・この意味が分かるな?」

 

 

 

「分かりたくは有りませんが・・・私も今回だけ・・・・は協力します。」

 

 

 

「ああ、今回はな?それでは後の事はウィンスカ中尉とケイに任せるぞ。」

 

 

 

 

 

少し不満そうに答えるアメリアにククっと楽しそうに笑ったミラーがハンガーから出て行くと、了解です。と答えたヒルダはケイと共にリー=フェイを除いて傷だらけのイワンとジャンを連れて自分達ブラックウィドウ隊が護衛して来たミデアの中身を紹介した・・・

 

 

 

「今回の騒動で困ってるかもってマチルダ・・・・から特別に手配された補給パーツを沢山持って来たんだけど・・・?」

 

 

 

「あの・・・ひょっとして中尉はマチルダ中尉の・・・?」

 

 

 

「ええ、彼女は同期よ。因みにさっきの命令書も彼女に頼んで偽造して貰った偽物なんだけどね?」

 

 

 

急に出て来た補給部隊の女性士官の名前にピンと来たアメリアにヒルダからとんでも無い真実を聞いてしまったアメリアは冗談ですよね!?と驚くが・・・それがマジなんだよね?と答えたヒルダは困った顔を浮かべた・・・

 

 

 

「今の連邦軍は泥沼化したジオンとの戦争を早期に終わらそうと行動している和平派のレビル将軍と徹底的にスペースノイドの集まりで有るジオンを潰そうとしている地球至上主義の高官で二分化してるのよ・・・」

 

 

 

「だから・・・私達にこれ以上リンス達みたいな連中にいい様な顔をさせない為に協力しろと言う事ですね?

 

 

 

 

 

そう答えながらアメリアがムスっとすると、まあそう言う事ね・・・と答えるヒルダに向かって特務隊にボコボコされたチャーリーからそんなの決まってんだろ?とニヤっと笑みが浮かんだ。

 

 

 

 

 

「アメリアの事と言い俺達カスケード隊の事と言い・・・ここまで馬鹿にされたんだ。絶対に許さねえかな・・・」

 

 

 

「僕も同意見かな・・・殴られた分くらいは返してやらないと!

 

 

 

そんな事を言いながら怖い顔をするチャーリーとショウに加えてカスケード隊の現中隊長で有るイエーガーからは倍返しだな・・・と低い声が上がった。

 

 

 

 

 

「ってことだから、お願いねアメリア?」

 

 

 

ヒルダも無茶を言っているのか分かってるのかワザとらしく自分の名を呼びながらお願いして来る彼女にアメリアはハァ・・・と溜息をついた。

 

 

 

 

 

「ハイハイ・・・分かりましたよ!」

 

 

 

 

 

 

 

そう答えたアメリアはミデアの奥に潜む人型の新型MSを見ながら困った様に頭を掻き始めたので有った・・・



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因縁その9

地球連邦軍オーストラリア方面軍に所属するトリントン基地。

 

そこから少し離れた町の外れにCASCADEと言うパブが有り、そこの女性店主で有るリン=ローダンセは遠征任務で暫く会えなかった恋人のショウとこの店の名を与えたカスケード隊の仲間達とで久しぶりに会えると楽しみにしていたのだが・・・何故か誰も現れないこの状況にリンは不安を感じながら店のドアのカウベルが鳴るのを待っていた・・・

 

 

「皆遅いな・・・もう約束の時間をとっくに過ぎてるのに・・・」

 

そう独り言ちながらリンが誰も居ない店のカウンターの上で頬杖をついていると、カランコロンと鳴るカウベルの音にバッと顔を上げたリンは遅いじゃないショ・・・と言い掛けた瞬間に目を見開いたので有った。

 

「どうしたのよその顔はっ!?」

 

「いや・・ちょっとね・・・」

 

「何がちょっとよ!しかも良く見たらみんなも痣だらけじゃないの!?」

 

一体何が起きたのかと困惑気味のリンが驚く声が上げると、ホントに色々と有ったんだよ・・・とアメリアに肩を担がれた格好のチャーリーの声にそのアメリアからも困った様に苦笑いが浮かんだ・・・

 

「取り合えずリンさん。皆の治療をしたいのですが・・・?」

 

「分かってるわよ・・・それはそうと、後でちゃんと事情を聞かせてもらうからね!」

 

チャーリーとアメリアの様子からまたカスケード隊が何らかのトラブルに巻き込まれている事を感じ取ったリンは呆れた顔をしながら二階にと救急箱を取りに駆け上がったので有った。

 

 

~~~

 

 

「痛ててっ・・・もうちょっと優しくしろよミリィ!?」

 

「何を言ってるんですかぁ・・・ケンカ弱い癖に特務なんかと戦うからですよぉ!」

 

ジャックの治療をしていたミリィが呆れた顔でバシっ!と湿布を頬に張ると、涙目のジャックからギャア!?と悲鳴が上がった。

 

「もうちょっと優しくしてやれば良いのにミリィの奴・・・」

 

「ショウも同じじゃないの!!」

 

「痛ってぇ!!?」

 

同情するショウに向かってリンが怒った様子でショウの頬に貼っている湿布を指で弾いてると、すまない・・・ここがCASCADEで合っているか?と聞こえて来る女性の声がカウベルと同時に聞こえて来ると、チャーリーの治療をしていたアメリアは即座に立ち上がり出迎えた。

 

「お待ちしてました。ミラー少佐にウィンスカ中尉・・・」

 

「いや、こちらこそ遅れて悪いな・・さっきの事でバリサム司令と話していて少し遅れてしまった様だ。」

 

「いえ、こちらもまだ始まっても無いので丁度良かったですよ?」

 

「そうか・・・しかし本当にここで良かったのか?まだ基地の方が・・・」

 

込み入った話をするにはいささか不安を感じた様子のミラーにアメリアは大丈夫ですよ?と説明しながらクスっと微笑んだ。

 

「リンスが居る基地よりも私達のセーフハウスで有るここCASCADEの方が安心出来ますので・・・ですよねリンさん?」

 

「ウチはただのパブでセーフハウスじゃ無いけどね・・・」

 

ショウやアメリアから事情を聞いているリンがハァ・・・と溜息を付きながらカウンターの中に入った。

 

「元々貸し切りにしてたから誰も来ないわよ・・・店の看板も閉店にして置いたわ」

 

「助かる店主。今日の支払いは情報部で持つ・・・」

 

「ホントですかっ!?」

 

リンの厚意にお礼を言おうとしたミラーにアメリアが食い気味に驚くと、何だ一体・・・?とミラーは驚いた。

 

「あっ・・・ちょっとコッチの事情です。」

 

「それなら良いが・・・」

 

何故か妙に嬉しそうな顔をするアメリアにカスケード隊からブーイングは起こりだすとミラーは不審そうな顔をしながら教導隊のウィンスカ中尉と共にリンの案内で奥のテーブル席にと案内された。

 

 

~~~

 

 

「さて・・・さっきも少し話したと思うが、貴官達のカスケード隊には教導隊の立ち合いの下でリンスが率いる元特務隊と一戦交えて(・・・・・)欲しいんだ。」

 

「あの・・・その言い方だとまるで実戦形式の様に聞こえるのですが・・・」

 

模擬戦での優劣で決めると聞いていたイエーガーの疑問にククっと笑ったミラーは懐から煙草を取り出した・・・

 

「なあウォーカー・・・お前に聞きたいんだが、あのリンスの奴がここまでコケにされてマトモに模擬戦を行うと思うか?」

 

「いえ・・・恐らく何らかの難癖をつけて実弾での演習に持ち込んで来ると思います。」

 

以前にも経験が有るのかアメリアから確信を持って答えると、マジかよ・・・と声を上げたイエーガーやジャックと言った小隊長達が顔を見合せながら驚き出すと、なあ・・・ちょっと良いか?とその中で一番落ち着てい居る様子のタンクから手が挙がった・・・

 

「俺もアイツらの事は気に入らないが・・・アンタ達に協力するメリットを感じないだが?」

 

「おいタンク・・・止せ!」

 

そう注意してくるジャックに手で制したミラーはメリットね・・・と呟きながら煙草の紫煙をCASCADEの天井へと吐き出した。

 

「確約は出来ないが・・・ウォーカーの仲間と言う事はコイツの罪状は知ってるな。」

 

「大体なら聞いてますが・・・まさかアメリアの事を帳消しにでも出来ると・・・?」

 

「それはお前達の働き次第だ・・・」

 

そう言いながらミラーが煙草を灰皿へと押し付けると、じゃあ決まりだな?と二っと笑みを浮かべたタンクはイエーガーとジャックを見た・・・

 

「さーて・・・シャンプーとか言う奴をぶっ飛ばすぞお前ら!」

 

「いや・・・リンスな?」

 

いきなり名前を間違えるタンクにジャックからツッコミが入ると、ホントに大丈夫か・・・?

?と不安そうにするミラーにトリントン基地の三バカ小隊長トリオと揶揄されているそのリーダーで有るイエーガー=バウスネルン中尉は勿論です。と内心不安を感じながらコクっと頷いた・・・

 

 

~~~



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厄介な奴等1

「えっ・・・本気かよ姐御!?特務の連中と事を一戦交えるって・・・」

 

「姐御じゃ無くて隊長!まあ・・・事によってはね。ねえもう一杯くれない?」

 

部下で有るイワン=アレンスキー少尉に先程の作戦内容を教えたヒルダが一気に飲んだウィスキーのロックを頼むとリンから不安そうな顔が浮かんだ。

 

「あの・・・ゴメンなさい。それって・・・ショウが危険って事なの・・・?」

 

「ひょっとして貴女・・・」

 

軍人を恋人持つ身としてリンもショウの仕事に関してなるべく立ち入らない様にしていたのだが・・・彼女の気持ちに気付いてしまったヒルダはしまったな・・・と思いながら内心の自分の迂闊さにチッと舌打ちする。

 

「もう彼とは長いの・・・?」

 

「友人としてはね。付き合いだしたのは割と最近だから・・・」

 

そう答えながらニコっと微笑むリンにそっか・・・と呟いたヒルダは受け取ったグラスをギュッと握りながらねえ・・・と小さく呟いた・・・

 

「軍人なんて止めた方が良いわよ・・・絶対に後悔するから」

 

「・・・どうしてか聞いても良い?」

 

「残された方が辛いからよ・・・」

 

「そっか・・・ゴメンね。変な事聞いて・・・?」

 

そんな何ともない顔をするリンにキョトンとしたヒルダからすぐにアハハハっ!と突然笑い声が上がるのでリンはイワンと驚きながら顔を見合せた。

 

「おい大丈夫か姐御・・・?」

 

「ああ、ゴメンゴメン・・・彼女がちょっと意外過ぎてビックリしただけよ?」

 

「はあ!?」

 

妙な事を言って来るヒルダにイワンから素っとん狂な声が上がると、どう言う意味?とリンは首を傾げた。

 

「想いが強いって言ってるのよ・・・えーと?」

 

 

「リン=ローダンセよ。それって私が重たいって事・・・?」

 

「違うわよ・・・良くそこまで信じられるなって呆れただけ!」

 

そう言いながら苦笑いを浮かべて来るヒルダに当たり前じゃない?と答えながらショウと交わした絶対に帰って来る。と言った約束を胸にリンは満面の笑みを浮かべたので有った。

 

 

~~~

 

 

「ねえ・・・向こうで仲間達と飲まなくて良いの・・・」

 

「こんな辛気臭い私が居たら酒が不味くなります。」

 

「私なら良い訳・・・」

 

「はい・・・ケイは私の唯一信用できる親友ですからね・・・?」

 

そう困った様にケイは首を傾げて来るアメリアに向かってハァ・・・と盛大に溜息を付きながらカウンターに置かれたビールジョッキをゴクゴクと一気に飲み干した・・・

 

「フウ・・・」

 

「ちょっと大丈夫ですか!?そんなに一気に空けて・・・」

 

「五月蠅い!素面じゃ話せないのよ・・・」

 

「はいっ!?」

 

空きっ腹にビールが効いたのか顔を赤くしながら顔を寄せて来るケイにたじろいだアメリアから変な声が上がった。

 

「それなら何でっ!?すぐに私に相談してくれなったのよアメリアは・・・!!」

 

「すみません・・・ケイを巻き込みたく無かったんです・・・」

 

そう説明しながら謝るアメリアに向かっていつもそう!とケイは泣きそうな顔でジッと睨みだす・・・

 

「何でも自分で抱え込んで全然周りを頼ろうとしないし・・・そう言う所大っ嫌い!!」

 

「えっ・・ケイっ!?」

 

士官学校時代も何度かケンカした事は有るが、ここまで激昂しポロポロと涙を流しだす泣き出すケイの様子にアメリアは正直言って困ってしまった・・・

 

(えっとえっとっ!?こういう時は何て言ったら良いんですか!!)

 

いつも強気な姿を見せていた彼女にアメリアが内心困惑していると、そうそう・・・俺も困ってるんだよな?と言って来るチャーリーにアメリアからギョッとした顔が上がるとコイツは・・・?とケイは明らかに軽薄そうな男性士官に嫌悪感を見せた。

 

「おっと・・・昼に一度顔を合わせた筈だぜ?確か・・・ケイ=キタムラ少尉だろ。」

 

「ああ・・・そう言えば居た気がします。」

 

そう淡々と答えて来るケイに、こっちが素か・・・と思ったチャーリーは最初に見た愛想の良い彼女とのギャップに苦笑いを浮かべながらアメリアを見た。

 

「やっぱお前の方が分かりやすくて良いよな・・・」

 

「ちょっとチャーリー!私の事をバカにしてるんですかっ!?」

 

「違えよ・・・単純に可愛いって言ってんだよ?」

 

「うにゃっーー!?」

 

先日の作戦行動中にも聞いた告白宣言を再び聞いたアメリアから変な声が上がると、この子とは本気なのよね?とケイは低い声を出しながら首を傾げた・・・

 

「おうよ!俺はアメリアと添い遂げると決めてるからな?」

 

「ふ~ん・・・あのアメリアがね・・・」

 

未だ顔を真っ赤にしている親友の姿に仕方ない・・・と納得したケイは真剣な顔でチャーリーに向かって指を差した。

 

「もし・・・アメリアをまた裏切るような事をしたら私が殺すからね?」

 

「おっおう・・・そうならない様に気を付けるぜ・・・」

 

まるで自分の代わりアメリアを守れと言わんばかり脅してくるケイの物騒な警告にチャーリーから苦笑いが浮かぶので有った。

 



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厄介な奴等2

 

「なんか基地で大騒ぎになってるけど・・・またアンタ達が問題を起こしたんだって?」

 

 

「ちょっと!?まるで私達の事を問題児の集まりみたいに言うのは止めてくれませんかマリア曹長!!?」

 

 

「そうですよぉ!!」

 

さっそくカスケード隊と新設された基地守備隊との騒ぎを嗅ぎつけて来たのか、少し遅れてやって来た元上官の楽しそうな顔にアメリアとミリィか抗議の声を上げると、間違った事は言って無いけどね?とマリアはクスクスと笑みを浮かべながらビールジョッキを傾ける。

 

「それはそうとアメリア・・・例の元上官と模擬戦を行うって聞いたけど本当に大丈夫なの?」

 

「それは模擬戦の事でしょうか・・・それともリンス中佐の事ですか?」

 

「どっちもよ。・・・ちょっと小耳に挟んだけどアンタ銃を抜いたんだって?」

 

「良く知ってますね?・・・ですが撃ってはいませんよ。」

 

一応は情報部のミラーがその場で箝口令を敷いたのだがどこからか漏れたらしい情報通のマリアにアメリアが少し驚きながら答えていると、止めたのは私だけどね。と何処かムスっとした顔をするミラーの部下で有るケイの声がその隣から聞こえて来た。

 

「あら可愛い子ね。さっきから気にはなってたけど・・・アメリアの知り合いかしら?」

 

「ハイ!私の親友で情報部のケイ=キタムラ少尉です。」

 

「ちょっ!?いつから私とアンタが親友になったのよ!」

 

「またまたケイってば・・・いつも私がそう言うと照れるんですよ?」

 

「照れてなんか無いってぇ!!?」

 

そんな怒声をアメリアに上げたケイが顔を真っ赤にして立ち上がるとマリアは仲良しみたいね?と答えながらアハハ!と笑い出した。

 

「自己紹介が遅れましたが私はアメリアの元上官でマリア=トパレス曹長です。そっか・・・少尉が『ケイ』・・・良く彼女から話を聞いてますよ?」

 

「ええッ!?一体何て・・・」

 

「えっとそうですね・・・冷静沈着でいつもツンケンしている様で凄く面倒見の良い子だとか・・・?」

 

「ウニャ!?」

 

頬に自分の手を当てながら思案顔を浮かべるマリアの言葉に今度は妙な声を上げたアメリアが顔を真っ赤にとなった。

 

「そうそう・・・そう言えば何でも士官学校の時にバーで飲んでいた時にしつこく絡んで来たナンパ野郎を撃退してくれとか?」

 

「それは違いますよ!?酔ったこの子って力の加減が分からなくなるから逆にウチの男子生を守る為に制圧しただけです!」

 

「えっ?そうでしたっけ・・・」

 

「そうよ!初めて飲むのにテキーラをショットで何杯も頼むから大変だったのよあの時は・・・」

 

そう説明しながら頭を抱えだすケイに向かってアハハ・・・とアメリアから苦笑いが浮かぶと、それは興味深い話だなケイ?とマリアから聞いた部下の昔話にアリス=ミラー少佐はクスっと笑みを浮かべながら空いたグラスをカウンターの向こうで待機していたリンへと渡した。

 

 

「ウィスキーをダブルで頼む。それで・・・トパレス曹長と言ったか、貴官は割と情報通の様だが・・・実際にリンスの奴は基地内でどんな評判なんだ?」

 

「そうですね・・・私が勤務するのは管制塔なので入って来る情報も限られますが、その情報を本当に伝えても良いのでしょうか?」

 

どこか不審そうな顔をするマリアがチラっとアメリアを見ると、中々に優秀な様だな曹長は?と答えたミラーはスーツの下から煙草を取り出すとフフッと笑みを浮かべながら口に咥えた。

 

「情報には価値が有るし、そう簡単に喋りたくは無いと言う事で良いかな曹長?」

 

「まあそう言うところです。そこで私からの要求ですが・・・本当に少佐はアメリア・・・いえこの基地の味方でいらっしゃいますか?」

 

このマリアから発言になっ・・・?と部下で有るケイは勿論アメリアやショウと言ったカスケード隊の面々からおいおい・・・とどよめきが上がった・・・

 

「ふむ・・どうやら曹長はこの私が信用するに値しないと思ってるらしいな?」

 

「そうは思いませんが・・・今回の件が片付いた後の保証が欲しいのです。」

 

ジッと真剣な顔をするマリアに成程な・・・と答えたミラーは火を着けた煙草の紫煙をフウ・・・と吐き出しながら腕を組んだ。

 

「良いだろう。今後のバックアップは我が情報で受け持つとしよう・・・」

 

「ありがとうございます。」

 

「何・・・どうせここには連絡員を置く予定だったからな。」

 

「えっ・・・」

 

そんな事を言うミラーに向かってマリアがここまで踊路らされた事に驚いていると、それじゃあ聞かせて貰おうか?とミラーは煙草を指に挟みながらニヤニヤとしだした。

 

「ハァ・・・よく性格が悪いって言われませんか少佐って?」

 

「聞きなれてしまって今じゃ誉め言葉と思ってるくらいだな。」

 

悔しく思ったマリアの皮肉も通じないのか何ともない様子でミラーが吸い終わった煙草を灰皿へと押し付けていると、ちょっとマリアってば・・・と少し困った顔でリンからウィスキーのお代わりを受け取ったミラーはクイっと一口飲んだので有った。

 



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厄介な奴等3

「ショウお疲れ様。ゴメンね・・・結局最後まで手伝わせちゃって?」

 

 

 

そう言いながら遅くなった晩御飯の準備をするリンに別に良いって?と答えたショウが漂って来る美味しそうな匂いにグ~とお腹を鳴らせた。

 

 

 

「凄いお腹の音ね・・・もう出来るから待っててね?」

 

 

 

「うん・・・出来れば急いで欲しいかも・・・」

 

 

 

そう答えながらCASCADEの二階に有るリンの部屋でショウがテーブルに突っ伏していると、出来たわよ?と言ったリンは白ご飯とお味噌汁に塩焼きにした焼き魚を目の前に置いた。

 

 

 

「作って置いてなんだけど・・・ホントにこれで良かったの?」

 

 

 

「これが良いんだって!!それじゃあ頂きまーーっす♪」

 

 

 

1週間の遠征中で一応リンから自分好みの食料を貰ってはいたが・・・やっぱりのこの味だよな・・・と完全に彼女の作る料理に自分の胃袋を掴まれているショウはすぐにお茶碗を空にしてしまった。

 

 

 

「リンお代わり!!」

 

 

 

「はいはい・・・私の分は残しておいてよね?」

 

 

 

ご飯をよそいながら少し呆れたリンもその向かいに座って食事を始めると、うん美味し!と自分で自分を褒めた。

 

 

 

 

 

「所でショウ・・・アメリアちゃんの事だけど、本当に大丈夫なの・・・?」

 

 

 

大体食べ終わり、リンとのたわいもない話をしていたショウは急に切り込んで来る彼女の質問に飲もうとしていた味噌汁を拭き出しそうになった・・・

 

 

 

「大丈夫って何が・・・?」

 

 

 

「何がって・・・ショウ達とアメリアちゃんはリンスとか言う元特務とか言う連中と戦うんでしょ!」

 

 

 

「ああ・・・そっちね。」

 

 

 

「そっちってどっちの事よ!!?」

 

 

 

そう声を上げながらガタっとテーブルを叩きながらリンが立ち上がるとショウはまあまあ・・・ちょっとは落ち着いてよ!?と慌てて両手を振り出した。

 

 

 

「元特務か何だか知らないけど・・・MSでの模擬戦なら絶対に負けないよ。奴等には借りも有るしね・・・」

 

 

 

「まったくもう!それでショウがもう一つ心配してる事って・・・?」

 

 

 

トリントン基地に配属された元特務隊にボコられた事を言っているのか自分の傷跡を指差すショウにリンが呆れながら首を傾げると、いや・・・ちょっと変じゃなかったあの二人?と言って来るショウにどう言う事?とリンは食後のお茶を飲みながら不思議そうに首を捻ったので有る。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

「あの・・・チャーリー・・・?」

 

 

 

「なんだ?」

 

 

 

「いえ、何でも有りません。」

 

 

 

基地までの帰りしな・・・チャーリーはそう言いながら俯き出すアメリアにそれなら良いけどよ・・・?と答えながら再び歩き出すと段々と宿舎が見えて来た。

 

 

 

「じゃあ、ここで解散とするか。また明日なアメリア・・・?」

 

 

 

「ちょっと待って下さいっ!!」

 

 

 

自分の部屋へと戻ろうとするチャーリーに向かって顔を真っ赤にしたアメリアが呼び止めるとチャーリーの耳に突然とんでもない事が聞こえて来たので有る・・・

 

 

 

「私の部屋でコーヒーでもどうですか・・・!」

 

 

 

「えっ・・・ええっ!!?」

 

 

 

まるで誘っているかの様に言って来るアメリアの声に驚き固まってしまったチャーリーは・・・じゃあ行きますよ!とこちらの有無も聞かずに引っ張って行く彼女の成すがまま彼女の部屋へと押し込まれたので有った。

 

 

 

「すみません。客人用の椅子が無いのでベッドにでも腰かけて置いて下さい・・・」

 

 

 

そう言いながら台所へと向かうアメリアを見たチャーリーがマジかよ・・・と内心ドキドキしながらアメリアのベッドに腰かけると彼女の付けている微かな香水の匂いがチャーリーの理性を刺激しだす・・・

 

 

 

(マズイ・・・このままじゃアメリアに手をだしちまいそうだぜ・・・)

 

 

 

ケイに言われた手前も有るが・・・アメリアの事を大切に思っているチャーリーは彼女からの返事が無い限りは絶対に手を出さないと心から決めていたのだが・・・

 

 

 

「すみません・・・良く考えたらウチにコーヒーは有りませんでした。」

 

 

 

そう言いながら軍服の胸元を大分緩くしたアメリアが冷蔵庫から取って来た缶ビールを渡しながら隣に座ると、飲まないんですか・・・?とジッと見つめて来る彼女にええいクソ!!と声を上げたチャーリーはそのままベッドにと押し倒した・・・

 

 

 

「俺は我慢してたんだぞ・・・煽ったのはお前だからな!」

 

 

 

「問題有りません・・・私もチャーリーとこうなりたいと思ってましたから・・・」

 

 

 

「チッ・・・そんな顔しやがって・・・絶対に加減なんかしてやらねえからな!!」

 

 

 

そう答えながらクスっと微笑むアメリアに向かって深めたキスを送るチャーリーにんんっ!?と驚く声上げたアメリアは苦しくなりハァハァ・・・息をしながらジロっと睨んだ。

 

 

 

「相変わらず慣れてますね・・・」

 

 

 

「バーカ・・・ただヤル女にこんなキスするかよ。」

 

 

 

「本当に良いんですか?私って結構面倒臭いですよ・・・」

 

 

 

「それを承知で好きって言ってんだよ!」

 

 

 

そんな声を上げるチャーリーの真剣な顔にドキっとしたアメリアから私も好きに決まってるじゃないですか・・・と声が上がるとチャーリーはやっと聞けた彼女からの返事に安堵しながらそのままギュッと抱き合しめた・・・

 

 

 

「やっと俺のになったぜ・・・」

 

 

 

「何を言ってるんです・・・私は私のものですよ。心まで欲しいんなら愛想を尽かされない様に頑張ってくださいチャーリー・・・?」

 

 

 

そう答えながら背中へと手を回すアメリアに向かって苦笑いを浮かべたチャーリーはとことん愛してやるよ・・・と答えながら再びアメリアと深い口づけを交わしたので有った。



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厄介な奴等 その4

「あのぉミラー少佐・・・何故私達を指名したのかお聞きしてもぉ?」

 

 

 

翌日ホバートラックのオペレータ席でミリィが首を傾げると、んっ?とこの辺りの地図データをタブレットで確認していた情報部のミラーから顔が上がった。

 

 

 

「ウォーカー達は今動けないからな・・・それに貴官はオペレータとして優秀だと彼女から聞いているぞミリィ=タニグチ伍長」

 

 

 

「はあ・・・どうも・・・」

 

 

 

そう素っ気ない態度を取るミリィに対しミラーからフフッ・・・と笑みが浮かぶと、今日はジャックとゆっくりするつもりだったのになぁ・・・とミリィがボソッと呟くと何か言ったか伍長・・・?とミラーはジロっと睨みながら諸事情で不在にソフィーに代わってホバーの操舵手を務めている部下で有るケイ=キタムラ少尉に向かって叫んだ。

 

 

 

「おっと・・・そこを右だケイ!」

 

 

 

「はいはい・・・」

 

 

 

上官からの命令に渋々と言った様子でケイがホバートラックのハンドルを目一杯切ると、あの・・・ミラー少佐?と尋ねて来るケイに向かってミラーは何だ?と首を傾げた。

 

 

 

「ホントに良いんですか・・・勝手にトリントン基地のMS部隊を動かして?」

 

 

 

「そんなに心配するなケイ・・・基地指令のバリサム大佐からもオフレコで許可は取って有る。」

 

 

 

そう答えながらニヤリとするミラーに分かりましたよ!と答えたケイがホバートラックを更に前進させると、妙に近いな・・・?とミリィ達が搭乗するホバートラックを守る様に周囲に展開していた第二小隊長で有るジャックの陸ジムから妙な声が聞こえた。

 

 

 

「何が近いのぉジャック?」

 

 

 

「訓練地域だ・・・俺達が良く使うコロニーの残骸のすぐ傍だぞ。」

 

 

 

ジャックからの報告に、本当だねぇ・・・?と声を上げたミリィはケイにホバーを停車させる様に言うとすぐに音紋ソナーを地面へと突き刺す・・・

 

 

 

「音紋及び各ソナーの展開を開始しますよぉ・・・!!」

 

 

 

そう言いながらヘッドセットを掴んだミリィが周囲の音を拾おうと耳を澄ますのだが・・・

 

 

 

「何も反応が有りませんねぇ・・・?」

 

 

 

「フム・・・トパレス曹長からの情報ではこの辺りを哨戒していたリンスの部隊と通信が途切れると言っていたが・・・」

 

 

 

そう言いながら腕を組みだすミラーにまあ確かに・・・とミリィはこの周囲に展開するミノフスキ粒子の濃度を見せた。

 

 

 

 

 

「これだけ高いと基地との通信はおろかレーダーの方も微妙ですぅ・・・」

 

 

 

「ふむ・・・これ以上の探索は止めておいた方が良さそうだな。」

 

 

 

ミリィからの報告と長年の情報部としての勘が働いたミラーが撤収命令を出すと、ホントに良いんですか?と操舵席のケイから振り返りながら首を傾げられた。

 

 

 

「借り物の部隊に何か有るとマズイしな・・・それにこれ以上藪を突くと蛇が出そうじゃないかケイ?」

 

 

 

「確かにそうですね・・・」

 

 

 

ミラーの言葉にケイ自身も妙な雰囲気を感じるこの場所に違和感を感じていると、ちょっと良いか?とホバートラックの周囲を守っていたジャックの陸ジムから通信が入った。

 

 

 

「コイツの試射は良いのか?」

 

 

 

「おっとそう言えばぁ・・・もう少しでソフィーに怒られるとこでしたよぉ!?」

 

 

 

ヒルダ達ブラックウィドウ隊がジャブローから運んで来た大量の運用試験用武器の一つで普段カスケードの陸ジムが使っている100ミリマシンガンよりも長尺のライフルを掲げるジャックにミリィは慌てながら助かりましたぁ・・・とお礼を言った。

 

 

 

「それじゃあ・・・的はっと・・・」

 

 

 

「適当にそこら辺に有るコロニーの残骸で良いんじゃないですかぁ?」

 

 

 

ジャックは割と適当なミリィの提案にまあ良いっか・・・と呟くと次期主力機用と謳われているライフルを陸ジムの両手で構えるとメインモニターに適当な的をロックオンをさせた。

 

 

 

「じゃあ撃つぞ!!」

 

 

 

そう声を上げたジャックがサイドスティックのトリガーを絞るとダラララッ!!とフルオートで発射された90ミリの弾丸がコロニーの外壁に着弾した。

 

 

 

「集弾性は良好みたいですねぇ・・・撃った感じはどうですかぁジャック?」

 

 

 

「中々良いな・・・ジムライフルって言ったかコレ・・・」

 

 

 

「ハイ。口径は下がったけど貫通力が上がった事により威力が向上しているらしいですよぉ?」

 

 

 

ミリィからの説明に成程な・・・とジャックの陸ジムが好感触と言った様子でライフルを下ろすと、ちょっと待ってぇ!!?とミリィの焦った声にジャックは慌ててライフルを再び構えた・・・

 

 

 

「おいどうしたウィスキードッグ・・・?」

 

 

 

「今微かにですがぁ・・・陸ジムでは無いMSの駆動音が聞こえた様なぁ・・・??」

 

 

 

「本当かよ!?・・・おいCSD5にCSD6!ウィスキードッグを中心にデルタフォーメションだ!!」

 

 

 

驚くCSD4ジャックからの指示にユウヤとレオンの陸ジムもミリィ達が搭乗するウィスキードッグを護衛する様に配置に付いた。

 

 

 

「どうだ伍長・・・反応は?」

 

 

 

「・・・完全にロストですぅ。私の気のせいだったのかなぁ・・・?」

 

 

 

そう言いながらヘッドセットを外すミリィからの報告に少しだけホッとしたミラーはふう・・・と息を吐いた。

 

 

 

「何にせよすぐにこの場から離脱するぞケイ!」

 

 

 

「了解です。」

 

 

 

ミラーからの指示でケイの操縦するウィスキードッグとジャック達カスケード隊第二小隊が全速でこの場から離脱して行くと、ブン・・・とその姿を見ていた赤い目が複数光ったので有った。



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厄介な奴等5

 

 

 

 

 

「また随分と沢山の試験用の部品を持って来ましたねっ!?」

 

 

 

 

 

まるで山の様に積み重なっているコンテナの数に驚いたソフィーが手に持ったタブレットに表示されているチェックリストを確認していると・・・その中でも別段に際立つ代物の前で固まっている銀髪の大男にソフィーは声を掛けた。

 

 

 

「さっきからボーッとしたままですよイエーガーさんっ?」

 

 

 

「あっ、ああ・・・ちょっと驚いてな。」

 

 

 

イエーガーがそんな声を上げるのも無理は無い・・・ソフィー達の目の前にはRXシリーズの陸戦型で有る。型式RX-79「G」陸戦型ジムが佇んでた・・・

 

 

 

「まさか俺がガンダムタイプに乗る事になるとはな・・・」

 

 

 

「アジア方面軍に与えるウチの一機をマチルダ少尉が回してくれた様ですよっ?」

 

 

 

そう答えたソフィーが陸ジムで慣れた様にコクピットハッチのウィンチで上に上がると早速初期設定を始めた。

 

 

 

「早速やってますね・・・」

 

 

 

どこか眠たそうなアメリアの登場にニヤニヤとイエーガーは腕を肩に回した。

 

 

 

「その様子だとチャーリーと上手く行った様だな?」

 

 

 

「・・・セクハラで訴えますよ。」

 

 

 

顔を真っ赤にしながらジロっと睨んで来るアメリアに冗談だって?と答えたイエーガーはいつも一緒のコンビが居ない事に首を傾げた。

 

 

 

「ところでショウとチャーリーはどうしたんだ?」

 

 

 

「なんか・・・二人で話したいとか言ってシュミレータ室に行きました。」

 

 

 

そんな声を上げたアメリアがまったく・・・と呟いていると開いている一つのコンテナが目についた。

 

 

 

「ねえソフィー・・・この装備は?」

 

 

 

「えっとっ・・・確か近接特化に開発された武器となってますけどっ・・・」

 

 

 

「ふ~ん・・・ハンドガンにナイフとは私好みの装備ですね・・・」

 

 

 

陸戦型ガンダムの上から聞こえて来るソフィーの声に思案顔を浮かべたアメリアは腕を組みながらイエーガーのお古となった予備機の陸ジムを見た。

 

 

 

「ソフィーにお願いが有ります・・・それが終わったらこの装備を予備機にセットして貰って良いですか?」

 

 

 

「えっ本気ですかっ!?」

 

 

 

 

 

明らかに対MS戦闘には向かない装備にソフィーから驚く声が上ると、それと機体のセットアップにも注文が有りますので・・・?とメカニック担当の彼女にクスっとアメリアはニヤついたので有った。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ったく!今日はやけに調子良いなチャーリーの奴!!?」

 

 

 

 

 

シュミレーター室のポッドの中・・・そんな慌てた声を上げたショウは直前で飛んだチャーリーの陸ジムからの銃撃に左腕のシールドで受けていると、まだまだだぜっ!!と叫んだチャーリーが更に振り上げたツインビームスピアで追撃して来ると・・・

 

 

 

「舐めんな!!」

 

 

 

第一小隊では後方支援担当をしているショウで有るが・・・その鋭いチャーリー機の鋭い斬撃に接近戦にも隊内で定評が有るショウは陸ジムの脚部に有るサーベルラッチから引き抜いたビームサーベルで斬り上げたので有る。

 

 

 

「今度はコッチの番だっ!!」」

 

 

 

そう叫んだショウがそのままビームサーベルを腰に構えながら・・・デヤアぁぁ!!と得意な居合い斬りでチャーリーの陸ジムの胴体を泣き分けれにしようと横に一閃に払った・・・

 

 

 

「貰ったぞチャーリーっ!!」

 

 

 

「まだまだあぁぁぁっーーー!!?」

 

 

 

そう叫んだチャーリーの陸ジムがその斬撃を避けつつ深く踏みこみながらツインビームスピアを突き出した・・・

 

 

「おい嘘だろ・・・!?」

 

 

胸部を尽きぬかれメインモニターに表示された撃墜表示に驚いたショウはクソ・・・っと悔しそうな顔でシュミレーターポッドのハッチを開くと、目の前に立ちながら、よお・・・?とニヤつくチャーリーに向かってチッ・・・と舌打ちした。

 

 

 

「約束通り今日は奢りだからなショウ♪」

 

 

 

「分かってるって・・・次は負けないからなチャーリー?」

 

 

 

リンの店での奢りを賭けシュミレーターの勝敗でどちらが勝つか賭けていた二人で有ったが・・・チャーリーの勝利で奢るはめとなったショウはハァ・・・と溜息をつきながら相棒の顔を見ながら首を傾げた。

 

 

 

「それはそうと・・・相談って何だよ?」

 

 

 

元々それが理由で呼び出されたショウが尋ねると、いや・・それがな・・?としどろもどろとする相棒の姿にショウは更に首を傾げた・・・

 

 

 

「実は俺・・・アメリアと付き合う事になったからお前に教えたくてな・・」

 

 

 

「それって・・・マジな奴?」

 

 

 

「大マジだ・・・」

 

 

 

そう答えながら真剣な顔をするチャーリーに驚いたショウは良かったな!!と満面の笑顔を向けながら親友を祝福したので有った。

 

 

 

「そうか・・・あの遊び人のチャーリーがアメリアとね・・・浮気なんかしたらヤバいんじゃない?」

 

 

 

「それはもう・・・昨日もベッドの中で物騒な脅迫を聞いたばかりだぜ・・・」

 

 

 

冗談を言ったつもりだったが・・・チャーリーの引き攣った顔にショウがそうなんだ・・・と苦笑いを浮かべていると、シュミレーター室の扉が開くと同時にショウにチャーリー?と聞いて来るアメリアの声にチャーリーがビクっとなった・・・

 

 

 

「どっどうかしたかアメリア・・・!?」

 

 

 

「いっいえ・・・明日の模擬戦の事でミーティングをしたくて呼びに来た来ただけです・・・」

 

 

 

そう答えながら顔を真っ赤にする二人にショウはやれやれ・・・と頭を掻いた。

 

 

 

 

 

「二人共意識しすぎじゃない?」

 

 

 

 

 

苦笑いを浮かべるショウの声に更にボッ!と顔を真っ赤にしたチャーリーとアメリアはそんな事無い!!と誰にでも分かる嘘を吐いたので有った。



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厄介な奴等6

リンス率いる特務隊との模擬戦を控えたその日の早朝、フワァァ・・・と欠伸したカスケード隊の中隊長で有るイエーガー=バウスネルン中尉は眠たそうな顔でハンガーに入ると新しく自分の愛機となった陸戦型ガンダムを見上げた。

 

 

 

「相棒・・・今日は頼むぞ。」

 

 

 

そうニヤっと笑みを浮かべたイエーガーがバシっと陸戦型ガンダムの脚部を叩きながらコントロールパネルを操作するとコクピットハッチから乗降用のワイヤーがウイィィ・・・と音を立てて降りて来た。

 

 

 

「この時間ならちょっとくらい動かしてもバレんだろう・・・」

 

 

 

イエーガーは配備された新型機に少しでも慣れようと早起きして来たのだが・・・

 

 

 

「スウスウ・・・」

 

 

 

「何でこんな所で寝てんだコイツは・・・!?」

 

 

 

作業終えて安心してしまったのか・・・そのままコクピットの中で寝息を立てているメカニックのソフィー=ホワイトの姿にイエーガーから呆れた声が上った・・・

 

 

 

(どうせまた徹夜でもしたんだろうな・・・このバカは・・・?)

 

 

 

自分の担当する機体の事をこの子と呼ぶ程に愛着を持つ機械オタクの彼女にイエーガーが風邪ひかない様にと自分が着ていたフライトジャケットを掛けると・・・そのまま優しくソフィーの頭をそっと撫でた。

 

 

 

「こう静かだと・・・可愛いよなこいつも・・・?」

 

 

 

そう独り言ちたイエーガーは二っと笑みを浮かべながらソフィーの寝顔を眺めていると・・

 

 

 

「んん・・・まだ食べれますって・・・」

 

 

 

「まったく・・・どんな夢見てんだコイツは?」

 

 

 

妙な声を上げるソフィーを覗き込む様にイエーガーが楽しそうにククっと笑いだすと、そこですねっ!と寝ぼけたソフィーによって抱き付かれたイエーガーはちょっと待てっ!?と言いながらも童顔なクセにその豊満な胸へと顔を埋めたので有った・・・

 

 

 

(むぐ!!息が出来ないっ!?)

 

 

 

予想以上に威力の高い質量兵器を自分の顔面で感じていたイエーガーが窒息寸前で発見されたのはそれからすぐの事だった。

 

 

 

「まったく・・・!こんな事で二階級特進なんてふざけた事は絶対に許しませんからね!!?」

 

 

 

「ホントだぜ・・・」

 

 

 

イエーガーと同じで早めにハンガーに来たアメリアとチャーリーが情けない理由で救出したイエーガーに向かって盛大に溜息を吐いた。

 

 

 

「スマン・・・今後は気を付ける。」

 

 

 

「いや私のミス・・・ですからっ・・・」

 

 

 

あんなアクシデントが有った所為か妙に意識しながら顔を真っ赤にする二人にまあ良いですけど・・・とアメリアが答えていると、それにしてもラッキースケベ過ぎるだろ・・・とチャーリーからボソっと聞こえて来たアメリアは無言で腰のホルスターに有る銃に手を掛けた・・・

 

 

 

「確かにソフィーと違って私の胸じゃ物足りませんよね・・・」

 

 

 

「そうそう・・・って違う!?てかっ落ち着けって!!」

 

 

 

「悪かったですね。私の胸に谷間が無くて・・・」

 

 

 

「俺が悪かったから銃を下せってアメリアーーー!!?」

 

 

 

必死な顔で土下座して来るチャーリーに向かって今日の所は許して置きます・・・とアメリアがハンドガンのセフティを掛けながらホルスターに仕舞うと、とんでも無い奴に惚れたもんだぜ・・・と苦笑いを浮かべたチャーリーはアメリアと付き合う事になった事に内心少しだけ後悔した。

 

 

 

「それはそうと、イエーガーさんはどうしてこんなに朝早くからここに?」

 

 

 

「ちょっと新型機に慣れたくてな・・・」

 

 

 

「って事は私達と一緒って事ですね。」

 

 

 

そう答えるアメリアがフフッと意味ありげに微笑むので何だそりゃ・・?とイエーガーから不思議そうに首を傾げて来た・・・

 

 

 

 

 

「ソフィー・・・例の件と全機の準備は出来てますか?」

 

 

 

「はい・・・カスケード隊全機のアップデートは完了済みですっ。それと予備機の方もアメリアさんの言う通り仕上げて置きましたっ!」

 

 

 

そう答えながらフワァ・・・と眠たそうに欠伸するソフィーに向かってお疲れ様でした。と答えたアメリアは相変わらず状況が呑み込めない顔をしているイエーガーを見ながらニヤっと笑みを浮かべた。

 

 

 

「少しの間ソフィーの事をお願いしますね?」

 

 

 

「いや、それは構わないが・・・一体何をする気だお前は!?」

 

 

 

「ちょっとした保険ですよ。まあ・・・使うに越した事は無いんですがね。」

 

 

 

「良く分からんが・・・あまり無茶な事はするなよ?」

 

 

 

この数か月でアメリアの突拍子も無い考え方に大分慣れたのか少し窘めたイエーガーが眠たそうにするソフィーを連れてハンガーから出ると、じゃあ準備を始めますよ!と声を上げたアメリアはハンガーの奥に佇む予備機で有る陸ジムを見てニヤっと腰に手を当てたので有った。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「ったく!!何て機体に仕上たんだソフィーの奴!!」

 

 

 

 

 

今日の午後にから有るリンスの部隊との模擬戦様にとソフィーがチューニングした陸ジムに搭乗したショウから機体のピーキーさに苦情が入ると、少し離れた位置で様子を伺っているホバートラックの中で、随分と苦戦してるようですね・・・?とカスケード隊の指揮官で有るアメリアは不安そうに首を傾げた。

 

 

 

「カスケード隊の皆なら大丈夫ですよアメリアさんっ♪」

 

 

 

「・・・そうだと良いんですが・・・」

 

 

 

自分がイジった機体を自慢する様に大きな胸を張って来るソフィーに若干苛立ちながらアメリアが答えた・・・

 

 

 

「機体のレスポンスが前と違い過ぎるけど・・・これはこれで!!」

 

 

 

 

 

そう声を上げたショウの陸ジムが機体の慣らし相手で有るブラックウィドウ隊のイワン機を視認すると・・・

 

 

 

 

 

「さあて・・・お手並を拝見と行くぜショウ!!」

 

 

 

 

 

そうニヤついたイワンのRGMー79指揮官型ジムがペイント弾を詰めたブルパップマシンガンを一連射して来るとショウもこなくそっ!?と100ミリマシンガンで応戦を始めた。

 

 

 

 

 

「へえ・・あのイワンが熱くなるのは珍しいわね・・・?」

 

 

 

ビームサーベルを引き抜きながら肉薄するイワンの様子を見たブラックウィドウ隊の指揮官で有るヒルダから驚く声が上ると、まあウチのエースなので?と答えたアメリアはヘッドセットを掴んだ。

 

 

 

「ウィスキードッグからCSD2へ!一旦後退しCSD3と合流して下さい?」

 

 

 

「CSD2了解。悪いなイワン!」

 

 

 

アメリアからの指示にショウの陸ジムが100ミリマシンガンで牽制しながら離脱を図ろうとすると、逃げる気か!と叫んだイワンのジムがバーニアを吹かしながらコロニーの残骸後を沿うショウの陸ジムを追い出した・・・

 

 

 

「おいおい・・同じ連邦製のMSだっていうのにおかしくねえか!?」

 

 

 

徐々にと引き離すショウの陸ジムの推進力の高さにイワンから驚く声が上ると、バーニアの出力はビンビンに上げてますよっ?とソフィーは自慢げな顔で腕を組んだ・・・

 

 

 

 

 

「クッ・・・貰ったぁ!!」

 

 

 

 

 

イエーガー達と合流するのについて来てもらっては困ると思ったショウが陸ジムのバーニアを一旦カットしながら機体を捻り込むと追って来たイワンのジムに向かって100ミリマシンガンを一連射しながらそのまま降下した。

 

 

 

 

 

「BW01被弾っ!CSD2によって撃墜判定ですぅ!!?」

 

 

 

ミリィからの慌てた報告にウソでしょ!?と声を上げたヒルダは改めてカスケード隊の強さに驚いた。

 

 

 

「ウチがこれじゃ・・・リンス少佐達が可哀そうになるわねアメリア?」

 

 

 

「何を言ってるんですか・・・こっちもチャーリーがそっちのリー=フェイ少尉にやられてるんですが・・・」

 

 

 

「でも・・・フラッグを取られたのはコッチよ?」

 

 

 

 

 

そう言いながらヒルダはフラッグ役のガンタンクを守っていたジャンのジムキャノンを見ると、ここまでだな!と声を上げたイエーガーの陸戦型ガンダムによって100ミリマシンガンを突き付けてられた。

 

 

 

 

 



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厄介な奴等7

「僕の所為で負けちゃいましたね・・・」

 

 

 

フラッグで有るガンタンクを防衛していたブラックウィドウ隊のジャン准尉が歩きながらガクっと項垂れると、本当だぜ!と頭の後ろで手を組みながらムスっとするイワンに向かってアンタも撃墜されたでしょうが!とブラックウィドウ隊の指揮官で有るヒルデガード=ウィンチェスカ中尉がその頭を思いっきり小突いた。

 

 

 

「痛ってぇなあーーー!?何すんだよ姐御っ!!」

 

 

 

「五月蠅い!!ジャンがヤられたのは小隊長のアンタが熱くなりすぎて撃墜された所為だって分かってんのイワンっ!!?」

 

 

 

「ちょっ、ちょっと待てよ姐御!?あんなに機体の性能差が無ければ・・・」

 

 

 

「それをどうにかするのが私達教導隊でしょうが!!アンタこの仕事を舐めてんの!!!」

 

 

 

更に言い訳しようとするイワンにカチンと来たのかヒルダの怒号が訓練区域に仮設されたテント内に響き渡ると、何だか悪い事をした気がするな・・・?とそのフラッグを獲ったイエーガーから苦笑いが浮かんだ。

 

 

 

「それは違うと私は思うね・・・あの時のジャン准尉はフラッグにこだわらずイエーガー中尉の迎撃を行うべきでは?」

 

 

 

実際にフラッグ役をしていたガンタンクに搭乗していた操舵手のレティの辛辣な評価にううっ・・・とジャンから落ちこむ声が聞こえて来ると、まあまあ!?と彼女の上官で砲撃手で有るタンク=ビンセント中尉はブラックウィドウ隊の三番機で有るジャンを励ますようにその肩を叩いたので有った。

 

 

 

 

 

「レティの言う事も分かるが、あの状況では迎撃と護衛の判断は例え教導隊と言えども難しいのではヒルダ中尉?」

 

 

 

「そうね。だけど・・・どっち付かずのまま行動するのは一番ダメだからねジャン!」

 

 

 

そう窘める様にヒルダがニコっと人差し指を立てると、分かりました!とジャンから力強い返事が上がるのでレティはジロっと自分の上官を睨んだ。

 

 

 

「少し甘やかしすぎでは・・・?」

 

 

 

「お前が厳しすぎるんだよ・・・」

 

 

 

そうボソッと呟くレティ曹長から抗議にタンクが苦笑いを浮かべていると、お昼が出来たよ!と軍服の上にエプロンを着けたショウとその手伝いをしていたブラックウィドウ隊の二番機で有るリー=フェイ少尉がヒョコっと顔を出したので有った。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「おおっ!昨日も思ったけどお前ってマジで料理の才能有るなショウ!!?」

 

 

 

「そんな事は無いって!?」

 

 

 

ガツガツと勢い良くパンとスープを食すイワンの満足そうな顔に慌てて両手を振ったショウがリー=フェイが大分手伝ってくれたんだ?と無骨でまさに何らかの達人とも言える貫禄を見せるを一つに編んだ黒い長髪がトレードマークで有る寡黙な少尉を哨戒した。

 

 

 

 

 

「ショウもそうだけどよ・・・お前ら二人共軍人よりもコッチの方が向いてるんじゃねえか・・・」

 

 

 

 

 

「うむ・・・それも悪くない。だが、先ずは戦争が終わらないと話が進まんと思わないかイワン?」

 

 

 

 

 

イワンからの冗談にリー=フェイから真面目な顔で首を傾げるのを見てショウがハハっ・・・と苦笑いを浮かべていると、あのぉ~?とミリィから申し訳無さそうな顔で首を傾げられた。

 

 

 

「本当に良いですかぁ!?私達だけ頂いちゃってぇ・・・」

 

 

 

「残ると勿体無いしね。好きなだけ食べてよ?」

 

 

 

そんな声を上げるミリィ達のトレイの上には午後から始まる模擬戦に参加するパイロットとは違ってホカホカと食欲をそそる良い匂いがするショウとリー=フェイが作ったカレーライスが乗ってた。

 

 

 

「それでは遠慮なくぅ・・・」

 

 

 

今日の為にとリンから持たされた野菜やハーブに元々料理が好きなのかリー=フェイの協力によって完成したカレーを口へと運んだミリィはんんっ!?と目を丸くした。

 

 

 

「口に入れた瞬間は甘いのに後から来るこのピリ辛さが絶妙ですねぇ!?」

 

 

 

「ホント・・・これは美味しいわね!?」

 

 

 

大絶賛するミリィと同じくリー=フェイの上官で有るヒルダからも驚く声が上ると、口に合って良かった・・・とホッとするリー=フェイにやったな?とショウは二っと笑みを浮かべると二人でパン!と手を叩き合った。

 

 

 

 

 

~~~

 

 



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厄介な奴等8

「しっかしマジで強いなリー=フェイは・・・」

 

 

 

「お前も筋は悪くない。後は恐れずにもっと前に出ろ・・・その方がこの手の武器は相手にとって脅威になるからな?」

 

 

 

午前中の模擬戦でリー=フェイのジム・ライトアーマーとの一騎打ちで負けたチャーリーが昼飯を食いながら二人で反省点を話し合っていると、頑張ってますねチャーリー・・・と小さく呟いたアメリアは嬉しそうにクスっと微笑んだ。

 

 

 

「ふ~ん・・・ホントに好きなんだ・・・?」

 

 

 

「ちょ!?急に何なんですかケイ!!?」

 

 

 

背後から声を掛けて来たケイにアメリアがビックリしながら振り返ると、いや何でも・・・?とニヤつきながらケイはその隣に座りながらショウとリー=フェイが作ったカレーを口へと運んだ。

 

 

 

「ところで・・・何でスープなの?」

 

 

 

「私もMSで出る可能性が有るからですよ!」

 

 

 

ワザとなのかニヤつきながら首を傾げて来るケイに向かってアメリアが悔しそうな顔を向けた。

 

 

 

(今日の晩御飯はリンさんの店で絶対にカレーを食べてやります・・・)

 

 

 

ショウが作る物より絶対に美味しいリンのカレーを想像しながら心の中で誓っていたアメリアに向かって来たみたいよ?とケイからスプーンで指差されたアメリアはベースキャンプに近づいて来るリンス率いる基地守備隊のジム隊を視認した。

 

 

 

「お客さん達も揃って来たようですね・・・」

 

 

 

「お出迎えの準備の方は?」

 

 

 

「昨日の内に何とか!?」

 

 

 

「後は向こうの出方次第って事ね・・・」

 

 

 

士官学校時代さながらのテンポの良さに少し嬉しくなったアメリアはそうですね。とクスっと楽しそうに微笑んだ。

 

 

 

「それじゃあちょっとミラー少佐に言って来るからこれ宜しくね?」

 

 

 

「あっ!もうケイったら・・・」

 

 

 

ケイの食べ終えたトレイを押し付けられたアメリアはまったくもう・・・と独り言ちながら近づいて来たリンス率いる基地守備隊のMSを見上げた・・・

 

 

 

(RGMー79 ジムか・・・ソフィー曰く陸ジムに比べて汎用性に振った機体と聞いてますがリンス達の実力と合わせてどの程度の物か今から楽しみですね?)

 

 

 

ソフィーが仕上げた機体とショウ達の実力を知っているアメリアがそう考えながらクスっと笑みを浮かべていると・・・

 

 

 

「随分と余裕そうじゃないですかウォーカー?」

 

 

 

そう言いながらコクピットから降りて来る元上官に対し先日の一件も有りアメリアは大人しく下げた。

 

 

 

「これはこれは・・・リンス少佐。」

 

 

 

「なんだ・・・模擬戦に勝てないと見て私に媚びを売りに来たのかウォーカー?」

 

 

 

そう答えながらニヤつき出すリンスに対しアメリアからはあ・・・!?と驚く声が上った。

 

 

 

「いや・・・仰っている事の意味が分かりませんが・・・」

 

 

 

「だってそうで有ろう。そもそも我々アースノイドで構成されたエリートで有る特務隊がお前みたいな下賤なスペースノイドの居る部隊に負ける筈が無い!」

 

 

 

相変わらず地球至上主義が絶対なリンスの演説にイラっとしたアメリアは腰に有るグロック17Lを抜くのを必死に我慢した・・・

 

 

 

「私はともかく・・・私が鍛え上げたカスケード隊を舐めていると痛い目に逢いますよリンス少佐?」

 

 

 

「ほ、ほう・・・そこまで自信が有るのならこちらも容赦しないからなウォーカーーーーっ!!」

 

 

 

そう怒鳴り上げながら部下達と立ち去って行くリンスに向かって相変わらず短気な人ですね・・・と煽り耐性の低さにアメリアが苦笑いを浮かべていると、まったくだな・・・とミラーの声が背後から聞こえたのでアメリアは慌てて振り返った。

 

 

 

「ミラー少佐にケイ・・・」

 

 

 

「おいウォーカー・・・後始末は私とケイで請け負ってやるから好きな様に暴れて来い?」

 

 

 

そう言いながら煙草をくわえだすミラーと親指を立てて来るケイに了解です!とアメリアは敬礼した。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、我が教導隊主導による模擬訓練を行います。双方とも危険行為の無い模範的行動をお願いいたしますね?」

 

 

 

ジャブロー本部所属ブラックウィドウ隊の指揮官で今回の審判で有るヒルデガード=ウィンチェスカ中尉の言葉にカスケード隊の隊長で有るイエーガー=バウスネルン中尉が搭乗するRX-79「G」陸戦型ガンダムとトリントン基地守備隊の隊長で有るリンス=デイヴィッド少佐のRGM-79ジムが握手したので有った・・・

 

 

 

「ガンダムタイプと来たか・・・お前に乗りこなせるのか中尉・・・」

 

 

 

「ええ・・・そちらこそ慣れないMSにお気をつけ下さいシャンプー少佐殿?」

 

 

 

「私はリンスだーーーっ!!」

 

 

 

イエーガーに揶揄われたリンスのジムが掴み掛かろうとすると、こう言う時の為に待機していたブラックウィドウ隊のイワンのジムが二人の間へと割って入った。

 

 

 

 

 

「まあまあ?ここは落ち着いて・・・」

 

 

 

「貴様はウィンチェスカの・・・!?」

 

 

 

そう驚くリンスのジムがイワン機を振りほどくと、余りいい気になるなよ・・・?睨んだリンスが部下達と共にスタート地点に向かおうとした所でそのリンスからそう言えば・・・?とアメリア達は声を掛けられた・・・

 

 

 

「ミラー少佐も共に?」

 

 

 

「ああ、お前が負ける所を特等席を見させてもらうかと思ってな・・・?」

 

 

 

そう答えながらニヤニヤとカスケード隊のホバートラックへと入るミラーの姿にあの女狐め!!と声を荒たリンスはコクピットの中でぐぬぬ・・・とイラつく声を上げた。

 

 

 

「おい、こうなったら全員始末する様に別働隊に伝えろ!」

 

 

 

「ハッ・・・」

 

 

 

控えていた自分の部下に指示を出したリンスはククっと楽しそうに笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「我が主に逆らうとどうなるかその身で知ると良い・・」

 

 

 

 

 

そう呟くリンスで有ったが・・・こうなる事を気づいていたアメリア達の反撃を知る由も無い無い彼は既にカスケード隊の手の内に有る事まだ知らないので有った・・・

 

 

 

 

 

 



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厄介な奴等9

「ダガーリーダーから各機へ、気を引き締めて掛かれよ・・・?」

 

 

 

模擬戦と言う名の教導隊主導の評価試験が開始されれると基地守備隊の第一小隊長で有るディヴィッド=リンス少佐は後に続く元特務隊でまとめられた部下達に注意を促した。

 

 

 

「珍しいですね・・少佐がそんなに緊張してるとは・・・?」

 

 

 

「当たり前だ・・・何しろあのウォーカーが鍛えた部隊だからな。」

 

 

 

スペースノイドと言う点を除けばそれなりにアメリアを評価しているのかリンスが自分の副官で有るダガー1に対しそう答えていると、心配しすぎじゃないすかー?と彼女が居なくなってから特務隊に入隊した隊員からリンスのコクピットにニヤついた声で通信が入る。

 

 

 

「特務の先輩から聞きましたかけど誰でも寝る相当なビッチって聞いてますよ?」

 

 

 

「マジかよ!?さっき見たけど結構可愛かったぜ・・・」

 

 

 

「くう~俺もヤリてえ!!」

 

 

 

そんな下品な会話を始めるダガー3率いる第二小隊に黙らんか!とリンスは怒鳴り声を上げた・・・

 

 

 

「へ・・・隊長・・・?」

 

 

 

「良いか?さっきも言ったが・・・アイツの事を甘く見ると痛い目に合うぞ。」

 

 

 

それは自分に対しても有るのか・・・真剣な顔で忠告して来るリンスに対し第二小隊長で有るダガー3はキョトンとしながら了解と答えた。

 

 

 

(ったく・・・スペースノイドなんかにビビり過ぎだろ・・・?)

 

 

 

妙に慎重なリンスに向かってダガー3がコクピットの中で誰にっも聞こえない様にチッと舌打ちするとメインモニターに反応が有った・・・

 

 

 

「センサーに感有り!MSの反応です!?」

 

 

 

「カスケード隊か!」

 

 

 

ダガー3の声にリンス率いる基地守備隊のRGMー79ジムが90ミリブルパップマシンガンを全機構えると、ちょっと待って下さい・・・と副官のダガー1からストップが掛かった。

 

 

 

「センサーには一機しか反応が有りません・・・誘ってるのでは?」

 

 

 

「それもあり得るな・・・」

 

 

 

副官の冷静な提案にリンスが思案顔を浮かべていると、ドドドッ!!とカスケード隊のRGMー79「G」陸戦型ジムが100ミリマシンガンを撃って来るのでクソ!と声を上げたダガー3は部下達と共に機体をビル陰に隠しながら撃ち返した。

 

 

 

「リンス隊長!迎撃に出ます!!」

 

 

 

「少し落ち着けダガー3!ここで出ると向こうの思うツボだぞ!?」

 

 

 

「コッチの方が腕は上です!たった一機・・・すぐに倒せば問題無いですってえ!!」

 

 

 

リンスの指示を無視したダガー3が部下二機を引き連れ前方の陸戦型ジムに向かって先行しだすと、止せ!これは罠だ・・・と叫ぶリンスに支援に向かいますか?とあくまで冷静な副官で有るダガー1は淡々としながら首を傾げた。

 

 

 

「不要だ・・・私達はこの場で待機し第二小隊の報告を待つとする。」

 

 

 

「了解しました。ダガー3の戦果に期待と言う所ですね。」

 

 

 

「まあ、そう言う所だ・・・」

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「ったく・・・たかが一般兵ごときに特務隊がビビッてられるかっつーの!」

 

 

 

「そうですよ。大体なんすかね実験部隊って?俺達実戦部隊の事を舐めてますよね!」

 

 

 

イライラしながら半壊したビル群を突き進む隊長のダガー3に向かって追随しているダガー4がカスケード隊のことを馬鹿をする様にククっと笑いだすと、ホントホント!と一番最後尾につくダガー5からもニヤニヤと相槌が返って来た・・・

 

 

 

「っていうかそろそろ隊長が特務のトップに立っても良いんじゃ無いです?」

 

 

 

「おっそれ良いな・・・どうも最近のリンス少佐は日和ってる感じだしここは隊長が!!」

 

 

 

「止せって・・・だけどまあ・・・ここで俺が活躍してお前達が後押ししてくれたらワンチャン有るかもな?」

 

 

 

そう煽って来る部下達にダガー3もまんざらじゃ無いのか悪そうな笑みを浮かべていると・・・

 

 

 

 

 

「その時は自分達をそっき・・・」

 

 

 

そう言いながらダガー5からの通信がノイズとなって途切れるのでダガー3とダガー4のジムは慌てて背後を振り返った。

 

 

 

「え・・・」

 

 

 

「ダガー5・・・?」

 

 

 

頭部を撃たれ撃墜判定となったダガー5のジムが崩れ落ちるのを見ながら二人が驚き固まると、おっかしいな・・・?と角待ちしていたカスケード隊の二番機で有るレオン少尉は陸ジムのコクピットの中で首をかしげた・・・

 

 

 

「たった三機しか居ませんよジャック隊長?」

 

 

 

「お前が一機倒したから残り二機な・・・」

 

 

 

そう言いながらもう反対の角から出て来たカスケード隊第二小隊長で有るジャック=アルヴィン中尉の陸ジムがダガー3とダガー4に向かってジムライフルを構えた。

 

 

 

「ホントはここで基地守備隊を仕留めるつもりだったんだが・・・アメリアの言っていた様にお前さん達の隊長は慎重が過ぎる様だな?」

 

 

 

そう言いながらモニター越しにニヤつき出すジャックに向かってダガー3からちょっと待てと?と焦った声が上った・・・

 

 

 

「まさか俺達を餌にしたって事か・・・?」

 

 

 

「まあ、そういうことみたいだな。」

 

 

 

そんな声を上げるダガー3に向かってジャックとレオンの陸ジムの向こうから更に今まで陽動を担当していた3番機のユウヤの陸ジムが逃げ場を無くす様に100ミリマシガンを構えたので有った。

 

 

 

 

 

~~~



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厄介な奴等10

そして、その頃・・・自軍陣地内でジャック率いるカスケード隊第二小隊と特務隊員で構成された基地守備隊との戦いにアメリアはハァ・・・と溜息をついていた。

 

 

 

「まさかあんな幼稚な陽動に特務が引っ掛かるとは・・・ウチの事を舐め過ぎてますね。」

 

 

 

「ホントですぅ。これで6対3・・・こっちが負ける要素が有りませんね先輩♪」

 

 

 

ルール上指揮車の誘導無しにも関わらずに一機の損失も無く見事第一陣を撃破したジャックの指揮に恋人のミリィも嬉しそうな顔を浮かべた。

 

 

 

「それでも特務だろう・・・あれでは体たらくが過ぎやしないか?」

 

 

 

『それはカスケード隊の練度と特務隊が違い過ぎる結果と思いますよミラー少佐。』

 

 

 

少し不満そうなミラーに審判役として配置して有る教導隊ブラックウィドウ隊の隊長で有るヒルデガード=ウィンチェスカ中尉の通信が入って来た。

 

 

 

『そもそも分かりきっていた結果ですし・・・ここから本番かと・・・』

 

 

 

「だな・・・。その時は頼むぞウィンチェスカ中尉。」

 

 

 

リンス率いる特務で構成された基地守備隊の不穏な動きにヒルダとミラーが神経を尖らせていると、第一小隊が敵陣地に到達ですぅ!!?とミリィから報告が上がった。

 

 

 

「さあて・・・どう動きますかリンス・・・?」

 

 

 

模擬戦での勝利にチェックメイト寸前で有るアメリアはモニター越しに見えるリンスの部隊に向かって不敵そうにクスっと微笑んだので有った。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「CSD1イエーガーからCSD2、3へ・・・状況を報告しろ。」

 

 

 

「こちらCSD2ショウ・・・各センサーに反応無しです。」

 

 

 

「CSD3チャーリーも同じく・・・」

 

 

 

 

 

廃ビルの間に囲まれた幹線道路をアローフォーメションで組んだイエーガーのRXー79「G」陸戦型ガンダムを先頭にショウとチャーリーのRGM-79「G」陸戦型ジムがその背後に付きながら進んでいると、妙に静かですね・・・?と二番機のショウは敵陣地に入ったにも拘わらず何も気配が無い事に緊張を覚えた・・・

 

 

 

「俺達にビビッて隠れたんじゃね?」

 

 

 

「バカヤロウ!既に数的に有利なのは確かだが敵を甘く見ると死ぬっていつも言ってるだろうがチャーリー!!」

 

 

 

そう叱咤するイエーガーの怒声に調子に乗ったチャーリーからわーってますよ・・・と少し反省した様子の声が返って来ると、やれやれ・・・と苦笑いを浮かべたショウはメインモニターの左端にフラッグ役で有る第三小隊のガンタンクを視認した。

 

 

 

「CSD2から各機へ10時の方向にフラッグを確認しました。」

 

 

 

元は公園だったのか開けた場所に待機したガンタンクにイエーガーはショウの報告を聞きながら左右を見渡した・・・

 

 

 

「何か反応は有るか・・・?」

 

 

 

「いいえ・・・ですが、罠で有る事は間違いかと思いますね・・・」

 

 

 

「俺も同感だ。」

 

 

 

あまりにもあからさまなシチュエーションに小隊長のイエーガーが戸惑っていると、じゃあ俺が行きますよ!とチャーリーの陸ジムが前に出た。

 

 

 

「もしもの時の援護は頼んだぜ・・・?」

 

 

 

「待てよ!お前が行くんなら僕が・・・」

 

 

 

そう言いながらショウの陸ジムがチャーリー機の肩を掴みだすと、良し分かった。とイエーガーの陸戦型ガンダムは二機の前に立った。

 

 

 

「俺がこの隊の小隊長だ。絶対にフラッグを獲って来てやる・・・」

 

 

 

「「流石イエーガーさんっ!!」」

 

 

 

どこか二人に乗せられた気がしないでもないイエーガーがお・・・おう?と少し納得しがたい顔で陸戦型ガンダムをフラッグで有るガンタンクへと前進させた・・・

 

 

 

(意外に誰も居ないんじゃないか・・・これ?)

 

 

 

基地守備隊の先行部隊が全滅してからのリンスの動向が不明な事も有り向こうもコッチの裏どりに気付いてないと思ったイエーガーはワンチャン行けるぞ!とガンタンクに触れようとしたした瞬間・・・ビーッツとロックオンアラームがコクピットに鳴り響き出した。

 

 

 

「やっぱりか!?一体どこから・・・」

 

 

 

「イエーガーさん!!右に回避してっ!!?」

 

 

 

後方支援が得意で視野の広いショウの焦った声に敵機の位置が分からないイエーガーが慌てて回避行動を取ると、バラララっ!!とイエーガーの陸戦型ガンダムが居た位置に無数のペイント弾が着弾した・・・

 

 

 

「今のを避けますか・・?」

 

 

 

「こっちには優秀なマークスマンがいるからな・・・」

 

 

 

ようやく姿を現したリンス率いる基地守備隊にヘヘっとイエーガーが笑うとチッと舌打ちリンスは時間を稼ぎなさい!と命じると副官のRGM-79ジムがマシンガンを構えイエーガー機へと迫って来た。

 

 

 

「させるかってえぇーーー!!」

 

 

 

「クッ!」

 

 

 

そう叫んだショウの牽制射撃によって副官のジムが怯むと、何をしている!と僚機をみたが既に遅くチャーリーの陸ジムによって制圧されていたので有った。

 

 

 

「思ってたより弱えな・・・特務って?」

 

 

 

隙をついて飛び込んだチャーリーが模擬戦用に出力調整されたツインビームスピアを倒れたジムに突きつけながらニヤつくと、たった一機となったリンスから悔しそうな顔でぐぬぬ・・・と声が上ると・・・

 

 

 

「ドンっドンっドンっ!!」

 

 

 

「何だ・・・信号弾か・・・?」

 

 

 

急に上がる三発の青色の信号弾にイエーガー率いるカスケードの面々が呆気に取られていると、準備が出来た様ですね・・・と呟いたリンスはペイントが入っていたマガジンを捨てながらニヤっと笑みを浮かべた。

 

 

 

「これからが本番ですよカスケード隊・・・?」

 

 

 

 

 

そう言いながらリンスが実弾が入ったマガジンを90ミリブルパップマシンガンに差し込むと、全機散開しろっ!!?と叫んだイエーガー達は慌ててビルの陰に隠れたので有った・・・

 

 

 

 

 

~~~



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厄介な奴等11

「ねえ!今の見たアメリア!!?」

 

 

「ええ・・・今の信号弾でしたね。」

 

 

こちら側の陣地での動きがまったく無い為にと暇つぶしにとホバートラックの銃座に上がっていた情報部のケイ=キタムラ少尉とカスケード隊の指揮官で有るアメリア=アン=ウォーカー軍曹は慌てて下に降りるとミリィ!と自分の補佐を任せているミリィ=キタムラ伍長に現在の状況を報告させた。

 

 

「たった今CSD1(イエーガー)からリンス少佐の基地守備隊と交戦中(エンゲージ)との通信が入りましたよぉ先輩っ!!?」

 

 

そう答えながらミリィがヘッドセットを押さえながら振り返って来ると、向こうも本気みたいですね・・・とアメリアは形振り構わず攻撃を仕掛けて来るリンス達に対しハァ・・・と溜息をついた・・・

 

「一番マズイのは向こうのフラッグとして待機させているCSD7(タンクとレティ)ですね・・・まだ離脱は出来て無いんですよね!?」

 

「そんなの無理ですよぉ!!?基地守備隊のど真ん中で第一小隊も近づけない模様ですぅ!」

 

そんな焦った顔をするミリィの報告にアメリアがチッ!と舌打ちしていると・・・ピーっと通信アラームが鳴るとその相手はヒルダ率いる教導部隊ブラックウィドウ隊の三番機で有るジャン=ノベル准尉からだった。

 

『お話を聞かせて頂きましたが・・・要は向こうに居るレティ曹長達を離脱させたら良いんですよね?』

 

「えっ?ええ・・・そうですけど」

 

『じゃあ僕の機体にそちらのデータをリンクさせて下さい・・・早く!』

 

「そんな事を言われても先ずは隊長のヒルダ中尉を通して貰わないと・・・」

 

そう急かして来るジャンに対しアメリアが困った顔を浮かべていると、話は聞いていたわよ?と彼の上官で有るヒルデガード=キスティス中尉の声がアメリアのヘッドセットに聞こえて来た。

 

「ジャンの腕は私も保証するから是非手伝わせて頂戴アメリア!」

 

「ヒルダ中尉がそう言うのなら・・・ミリィ?」

 

「もうやってますってぇ・・・ノベル准尉の機体とウィスキードッグをリンク!CSD8とCSD9をその指揮下に置きますよぉ!!」

 

そう声を上げたミリィはアクティブソナーで的確な基地守備隊の位置を把握すると、了解!と答えたジャンのRGCー80ジムキャノンが240ミリキャノン砲を肩に降ろしながら彼女の指示を待った・・・

 

「ポイントは130、241・・・全機一斉射ぁぁーーーっ!!」

 

そう叫ぶミリィの声と同時にジャンのジムキャノンの砲撃がCSD8とCSD9のガンタンクと同時に発射されるとリンス達の基地守備隊のMS部隊を襲ったので有る。

 

 

~~~

 

 

「なっ何だっ!?」

 

 

「方向からしてカスケード隊からの攻撃ですリンス大佐!」

 

 

ジャン達からの砲撃でリンス達の基地守備隊が慌て出すのを見たタンクはコクピットの中でククっと楽しそうに笑った。

 

 

「どうやらアメリア達のうだな・・・ズラかるぞレティ?」

 

「了解です。舌を噛まない様に気を付けて下さいよ隊長っ!」

 

そう叫んだレティがガンっとフットペダルを踏む込みガンタンクを急発進させると、隊長あれを!?とリンスの部下が乗るRGM-79ジムから90ミリブルパップマシンガンを向けられたレティはチッ!舌打ちしながらフットペダルを踏み込むとガンタンクを右にスライドさせながら強引に狭いビルの合間へと機体を入り込ませた・・・

 

「ダガーリーダーからダガー1へ、奴等は人質して使う。絶対に逃がすな!」

 

「了解。行くぞダガー2!」

 

「了解!先行します。」

 

リンスからの指示に副官で有るダガー2が部下で有るダガー3に続いてタンク達が入っていった狭いビルの谷間に侵入すると、しつこい奴は嫌われるぜ!とタンクは背後から追って来る基地守備隊のジムに向かって悪態をつきながら足元の操舵手で有るレティを見た。

 

「逃げ切れるかレティ?」

 

「ええ勿論・・・と言いたい所ですがコイツの足じゃすぐに追いつかれますね。」

 

「じゃあ・・・やるしか無いか。」

 

最悪な状況ながらもニヤっと不敵な笑みを浮かべたタンクはコアファイターの搭載をオミットされ旋回が可能となったガンタンクの胴体を背後へと回すと肩部に搭載された120ミリ低反動砲の銃身をゆっくりと背後から迫って来る基地守備隊のジムへと向けたので有る。

 

 

「なっ・・・ダガー1敵機が!!?」

 

そう叫ぶダガー2の機体がドンっ!と鳴る轟音と共に脚部を撃ち抜かれそのまま前に崩れると、一体何が!?と驚く副官のダガー1のジムが警戒する様に左手のシールドを構えるのだが、もう一丁!!と叫んだタンクの放ったガンタンクからの砲撃にシールドを吹き飛ばされたダガー1はそのまま背中から地面へと叩きつけられた・・・

 

「クソっ!逃がすかーーーっ!!」

 

「当たるかよバーカ!!」

 

たった一機のガンタンクにしてやられたダガー1からの銃撃にヘヘっと笑い返したタンクは良くやったなレティ?と操舵手で有る優秀な部下を褒めた。

 

「隊長の腕が有ったからですよ。そろそろ抜けます!」

 

そう叫んだレティがガンタンクをビルに合間からを突き抜けると、ビーっとなるロックオン反応にもう回り込まれたのか!?と焦ったタンクは周囲を見渡した・・・

 

「タンクか!?驚かせるな・・・!!」

 

「それはコッチの台詞だっつの・・・」

 

目の前に見えたイエーガーの陸戦型ガンダムが100ミリマシンガンを下すと運良く第一小隊と合流出来たタンクとレティは緊張が抜け安堵したのか揃ってハァ・・・と息を吐いたので有った。

 

 



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厄介な奴等12

「CSD1より第一小隊各機へ数はコッチの方が上だ。一気に畳み掛けるぞ!!」

 

タンク達のガンタンク(CSD7)の確保に成功したイエーガーはリンス達基地守備隊への今までの鬱憤を晴らすように陸戦型ガンダムの100ミリマシンガンを連射すると、了解!と答えたCSD2(ショウ)CSD3(チャーリー)の陸戦型ジムも半包囲する様に牽制射撃を始めた。

 

「クッ・・・コイツ!!」

 

チャーリー機を回り込ませまいとリンスの副官で有るダガー1のジムが90ミリブルパップマシンガンを撃ち始めるのを見てチャーリーはチッと舌打ちしながらビル陰へと機体を隠す。

 

「向こうも結構ヤルじゃねえかよ・・・」

 

100ミリマシンガンのマガジンを交換をしながら楽しくなって来やがったぜ・・・とニヤつくチャーリーがフットペダルを踏み込みバーニアを吹かせながら陸ジムをビル陰から飛び出させると、速いっ!?とカスケード隊の迷メカニックで有るソフィー=ホワイト伍長によりチューンアップされた陸ジムの機動性の高さにダガー1はFCS(火器管制)によるロックオンが追いつかない・・・

 

「何で当たらないんだっ!!?」

 

「何てセットアップしやがるんだよソフィーの奴っ!?」

 

チャーリーはチャーリーでかなりピーキーにチューニングされた機体のGにビリビリと耐えながら腰のアタッチメントからツインビームスピアを取り出すと左右にステップしながらダガー1のジムへと一気に間合いを詰めた。

 

「貰ったあぁぁぁーーーっ!!」

 

「あまり調子に乗るなよ!」

 

そう叫んだチャーリーの陸ジムによる斬撃をダガー1のジムが咄嗟に引き抜いたビームサーベルで凌ぐと、良い反応するぜ・・・と苦笑いを浮かたたチャーリーはバチバチと目の前のメインモニターでスパークしながら鍔迫り合いをしているリンスの副官へと賛辞を贈った・・・

 

「何をしているダガー1っ!!」

 

「なっ!!?」

 

急に鳴り出したロックオンアラームと同時にダダダッ!と銃撃を受けたチャーリーが慌ててフットペダルを踏み込み陸ジムを後退させると、流石は特務の隊長と言った所か・・・イエーガーと対峙していた筈のディヴィッド=リンス中佐のジムが現れた。

 

「流石に分が悪くなり過ぎました。一旦離脱し別動隊と合流しますよダガー1!」

 

「・・・了解しました。」

 

チャーリーとの戦いを水を差されて少し不満そうな副官で有るダガー1のジムがリンスと共にバーニアを吹かし離脱して行くと、おいちょっと待てよっ!!とその二機を追いかけようとするチャーリーの下へイエーガーの陸戦型ガンダムとショウの陸ジムが追いついて来た・・・

 

「チャーリー無事か!?スマン・・・リンスの野郎に上手く抜かれちまった・・・」

 

「そんなのは後で聞きますって!それよりも奴等が向かった方角は俺らの本陣・・・ウィスキードッグが待機してる方です!!」

 

 

イエーガーの謝罪を後回しにしながらもアメリアの下へ急ごうとするチャーリーの陸ジムの肩をショウの陸ジムが掴んだので有る。

 

 

「アメリアが心配なのは分かるけどさ・・・少し落ち着けって?」

 

「・・・悪りぃ。ちょっと頭に血が上っちまったみたいだな・・・」

 

同期で相棒でも有るショウの声に少し落ち着いたのかチャーリーの様子に二っと笑みを浮かべたイエーガーはそろそろ良いか?と首を少し傾げた。

 

「いつでも。」

 

「どこでも!」

 

「それじゃあ俺達の姫君を救いに行くとするか・・・俺に付いて来いよお前ら!」

 

そう叫んだイエーガーの陸戦型ガンダムがバーニアを吹かし飛ぶとショウとチャーリーの陸ジムもそれに続きリンス達を追撃する為にアメリア達ウィスキードッグの下へと急くので有った・・・

 

 

~~~

 

 

「先輩っ!ジャック達も基地守備隊の第二小隊と交戦に入った模様ですぅ!?」

 

「練度はコッチが上でも戦術面では向こうの方が上みたいですね・・・」

 

ヘッドセットを押さえながら振り返って来るミリィに基地守備隊・・・もとい元特務隊が行う展開の早さにアメリアがチッと舌打ちしていると、おいウォーカー?とウィスキードッグの中で呑気そうに煙草をふかしている情報部のアリス=ミラー少佐から声を掛けられた。

 

「こういう時は焦った方が負けだぞ?」

 

「ご忠告は有り難いんですがこの中は禁煙何ですけど!!?」

 

イラッとしたアメリアの声に分かった分かった・・・と懐から携帯灰皿を取り出したミラーが煙草の火を消していると、ビーっと明らかに嫌なアラームがミリィのオペレーター席から聞こえだした・・・

 

「今度は何ですか!?」

 

「三時の方向からIFF《識別信号》に反応が無いMSが急接近中・・・数は一個小隊規模ですぅ!!?」

 

そんな焦った声を出すミリィに冗談でしょう!?と驚いたアメリアは慌てて仲間で有る教導隊のヒルダに救援を求めたのだが・・・

 

『悪いけどコッチにも敵が来てるのよ!片付け次第駆けつけるからソッチでどうにか凌いで頂戴!!》

 

向こうも大分ぜっぱ詰まっているのか焦った声でヒルダから通信を切られたアメリアはあぁもう!と声を上げると傍で待機しているフラッグ役のCSD8とイザと言う時の後方支援で置いて来たCSD9のガンタンクに砲撃支援を指示したので有る。

 

「MS隊の援護が無い為に貴方達の力量に私達の命運が掛かっていますよ。各自任意で砲撃開始!」

 

 

アメリアからの言葉によるプレッシャーにこいつは外せねえ・・・と気合い入れ直したCSD8と9のガンナーはいつもより慎重に照準をつけると・・・スコープに映った機体にギョッとした・・・

 

「こちらCSD8!06だ・・・現在接近中の敵機はジオン機だぞ!?」

 

ザクだぞ叫ぶCSD8のガンナーの言葉に何でザクがここに!?と驚いたアメリアがミリィを見ると音紋も照合したらしくコクっと頷けられた。

 

「やれやれ・・・向こうも本気で潰したい様だな・・・?」

 

そう呟いたミラーは苦笑いを浮かべながら火の点いてない煙草を咥えたので有った・・・



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厄介な奴等13

「ファングリーダーから各機へ再度確認するぞ。目標はカスケード隊の指揮車両だ。他には目をくれず確実に仕留めろ良いな!」

 

 

 

「「イエッサー!!」」

 

 

 

二機の僚機からの無駄のない返事に宜しい。とリンスの命令で構成された鹵獲機のMS-06J陸戦型ザク三機を率いるファングリーダーはターゲットで有るアメリアとミラーが乗るホバートラックを視認した・・・

 

 

 

「悪く思うなよ・・・これも命令だからな。」

 

 

 

そう呟きながらファングリーダーがザクの120ミリマシンガンをウィスキードッグに向けてロックすると同時に自分のコクピットにもロックオンアラームがビーっとと鳴り響き出したので有る。

 

 

 

「何だ一体!!?」

 

 

 

「隊長!カスケード隊のガンタンクです。我々の方に向かって突っ込んで来ますっ!?」

 

 

 

ファング1からの報告に何だと!と驚くファングリーダーのザクが120ミリマシンガンをウィスキードッグから慌てて急接近して来るCSD8に向けたがそれは少し遅かった・・・

 

 

 

「貰ったぁ!!」

 

 

 

そう叫んだCSD8はガンタンクが誇る120ミリ低反動砲を撃つとドンっ!!と鳴る咆哮と共にファング1のザクの脚部を撃ち抜いた・・・

 

 

 

「今だ離脱しろウィスキードッグ!!」

 

 

 

ウィスキードッグのピンチに駆け付けて来たCSD8が更に特務隊のザク2機を相手にカバーに入るとアメリアはアメリアはギュッと拳を握りながら叫んだ。

 

 

 

「こんなバカげた戦闘で二階級特進何て有りませんからね!」

 

 

 

「分かってるって!俺達も適当な所で逃げるからサッサっと行け!!」

 

 

 

「クッ・・・ソフィー!全速で後退・・・例のポイントまで急いで下さい。」

 

 

 

「りょっ了解っ!全員しっかり掴まっててくださいねっ!?」

 

 

 

ガンランチャ―を撃ちながら前進するガンタンクとすれ違う様にウィスキードッグの操舵手担当のソフィーが巧みな操作でバックスピンさせながら離脱を図ろうとすると、逃がすかよ!!と叫ぶファングリーダーのザクに向かってCSD8のガンタンクが体当たりをかましたので有る・・・

 

 

 

「こんのーーっ!!」

 

 

 

「タンクの癖に生意気なんだよ!」

 

 

 

そう叫んだCSD8のガンタンクに向かってファングリーダーのザクが腰から抜いたヒートホークを振り上げるとキャタピタラを焼き切りCSD8は操縦不能となりそのままビルへと突っ込んでしまった。

 

 

 

「CSD8!!?」

 

 

 

「生きてる・・・がスマン。これ以上は動けそうに無いな・・・?」

 

 

 

「まったくもう・・・後で回収しますからそこで大人しくして置きなさい!」

 

 

 

CSD8の安否にホッとしながらも窮地を脱していないアメリアは更に追撃を続けるザク二機に向かってチッと舌打ちを向けた。

 

 

 

「なあウォーカー・・・奴等の目的は私とお前・・・どっちだと思う?」

 

 

 

「唐突ですね・・・そんなのリンスに嫌われている時点でどっちともに決まってるじゃないですか。」

 

 

 

「だよな・・・ホント人気者は辛いなウォーカー?」

 

 

 

火の点いてない煙草を咥えながらミラーがニヤっと笑みを浮かべていると、冗談を言ってる場合ですか!?と彼女の部下でアメリアの同期でも有るケイ=キタムラ少尉はホバートラックの上部銃座に着いた。

 

 

 

「ちょっとケイ!?20ミリなんかじゃMSの装甲は撃ち抜けませんよ!」

 

 

 

「そんな事は知ってるって・・・だけどこのまま何もしないまま死ぬ訳には行かないのよ!!」

 

 

 

そう答えたケイがウィスキードッグに装備された対空用20ミリバルカン砲のコッキングレバーを引くと目の前に迫るザクⅡJ型に向かってトリガーを引いたのだが、ダラララッ!と鳴る景気良い掃射音と比例して全てザクの装甲に銃弾が弾き返されたケイからチッ!と悔しそうな顔が浮かんだ・・・

 

 

 

「ねえ応援はまだなの!このままじゃ追いつかれるわよ!?」

 

 

 

護衛も無いホバートラック一両相手に余裕なのか慎重なのか・・・真っすぐ距離を詰めて来る特務隊のザク二機に恐怖を感じたケイが再度20ミリバルカン砲を撃とうとした瞬間に私に考えが有りますっ!とカスケード隊でMSの専門的な知識を持つソフィー=ホワイト伍長から声が上った。

 

 

 

「いくらMSと言ってもその全てに装甲を張る事は不可能ですっ!」

 

 

 

「勿体ぶって無いで早くしてくんない!!?」

 

 

 

そんな焦った声を上げて来るケイにおっとそうでしたっ!と答えながらエヘヘと笑ったソフィーがザクの持っている120ミリマシンガンとドラムマガジンの隙間を狙う様に指示を出すとケイは首を傾げながら20ミリバルカン砲のトリガーを引いた・・・

 

 

 

 

 

「一か八かだけど・・・当たれえぇーーーー!!」

 

 

 

 

 

そう叫んだケイの20ミリバルカン砲がソフィーの指示通り命中すると追って来たファングリーダーのザクが持っていた120ミリマシンガンのドラムマガジンを強制的に飛ばしたので有る。

 

 

 

「さっすがケイ!?相変わらず良い腕してますね?」

 

 

 

「ま・・・まあね。」

 

 

 

ホバートラックの中から聞こえて来るアメリアの褒める声にケイが苦笑いを浮かべながら答えていると、コイツっ!!とファングリーダーのザクにサポートとして背後についていたファング2のザクが飛び出して来た・・・

 

 

 

「ケイ!!?」

 

 

 

「無茶言わないでよ!!」

 

 

 

慌てた声を上げるアメリアにケイが咄嗟にバルカン砲を構えると・・・

 

 

 

「そうはさせるかよ!!」

 

 

 

とそう声を上げながらチャーリーの陸戦型ジムが横から飛び出すとファング2から撃たれた120ミリマシンガンを左手のシールドで受け止めたのであった・・



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厄介な奴等14

 

「ここは俺に任せて離脱しろウィスキードッグ!!」

 

 そう叫んだチャーリーの陸ジムがアメリア達の乗るホバートラックを守ろうとザクから発砲された120ミリマシンガンを左手の小型シールドで受け止めながら割り込むと、チャーリー!?とアメリアは焦った声を上げた。

 

「出しますよアメリアさんっ!!?」

 

「クッ・・・すぐに援護に向かいますからね!!」

 

急かす様に言って来るソフィーの声にアメリアもそう言い残しホバートラックを前進させると、やれやれ・・・とチャーリーは目の前のザク2機を相手にコクピットの中で苦笑いを浮かべた。

 

「取り合えず助けに間に合ったのは良いけどよ・・・少し恨むぜイエーガー隊長にショウ・・・?」

 

思っていた以上に状況が悪いチャーリーはこの数分前に上官で有るイエーガーと相棒のショウから言われた事を思い返した・・・

 

~~~

 

「何でザクが居るんだ!!?」

 

「僕が知るかよっ!!」

 

リンス達を追撃していた第一小隊の前に突然現れたMS-06JザクⅡの一個小隊に泡喰ったショウとチャーリーが応戦していると、おいヤバいぞ!!?と焦った声の小隊長のイエーガーから二人の下に通信が入って来た。

 

「ウィスキードッグが別動隊に襲われているらしく応援を求めている・・・」

 

「こんな時に冗談だろ・・・クソっ!!」

 

恋人で有るアメリアの事が心配なのか焦り出すチャーリーに大丈夫だって・・・とショウが声を掛けると、仕方無いな・・・とイエーガーは二っとモニター越しのチャーリーに向かって笑みを見せた。

 

「ここは俺とショウで何とかするからお前はウィスキードッグの援護に迎え!」

 

「いや、でもっ・・・」

 

「良いから早く行けって・・・アメリアの事が心配なんだろ?」

 

戸惑いを見せるチャーリーにショウの陸ジムからもグッと親指を立てられたチャーリーは悪りい!!と声を上げるとフットペダルを踏み込み陸ジムのバーニアを吹かすとその名の通りアメリアの下へと飛んでやって来たので有った。

 

 

~~~

 

 

「アメリアさん着きましたよっ!!」

 

そう叫んだソフィーがウィスキードッグを急ブレーキを掛け停車させると、何よこれっ!?とそのまま銃座に着いていたケイは偽装され隠されていたMSが有るのに驚く声を上げた。

 

「念のために用意していた予備機です。ソフィー手伝って下さい!」

 

「ハイっ行きますよーっ!!」

 

そう言いながら二人がシートを引っ張ると、予備機となったRGM-79「G」陸線型ジムの姿が現れるとアメリアは脚部のパネルを操作し乗降用ウィンチを使いコクピットの中へと乗り込んだ・・・

 

「OS起動・・・FCS異常なし、IFFの照合を確認。立ち上がるので離れて下さい!」

 

外部スピーカーから聞こえるアメリアの陸ジムの声に距離を取ったソフィーはインカムを押えながらアメリアさんっ!と叫んだ。

 

「注文通り機体からのジェネレーターの出力はバーニアと各部アクチュエーターに全振りしてますからオーバーヒートだけには気を付けて下さいよっ!?」

 

 

「分かってます。それじゃあ行きますよーーーっ!!」

 

そう言った傍から機動性重視にチューニングされたアメリアの陸ジムがバーニアを吹かしチャーリーの下へとジャンプすると、もうアメリアさんっ!!とソフィーからプンプンと言った顔で両手が上がったので有った・・・

 

 

「ミリィ聞こえますね。これより私のコールサインはCSDリーダーとしますので、各小隊に通達をお願いします。」

 

 

「それは良いですけどぉソフィーが怒ってますよ?」

 

「後で謝って置きます・・・それよりもミリィ?ここから先の指揮は貴女に任せますね。」

 

「えぇっ!?何で私がぁ~!!?」

 

急に振られたカスケード隊の全体指揮と言う大役にミリィから驚く声が上ると、何を言ってるんですか・・・とアメリアはモニターの向こうに映る彼女に呆れた顔を向けた。

 

 

「今から戦闘に入ると言うのに私からの細かい指示は無理に決まってるでしょう。」

 

「それは分かりますけどぉ・・・」

 

「大丈夫です。ミリィなら出来ますよ?何て言ったって私が育てた自慢の後輩ですからね!」

 

そう答えながらクスっとアメリアが微笑むと、分かりましたぁ!!と気合いを入れ出すおだてに弱い後輩の姿にアメリアはホントに大丈夫ですかね・・・と若干不安を感じながらチャーリー機の援護に急いだ。

 

 

~~~

 

 

「これでお終いだ!!」

 

馬乗りになったザクⅡのヒートホークをビームサーベルでどうにか受け止めているチャーリーの陸ジムにもう一機のザクⅡが120ミリマシンガンを構えた・・・

 

「悪く思うなよ・・・これも命令だからな。」

 

「冗談じゃねぇ!退きやがれクソッタレ!!?」

 

今までに無いピンチにチャーリーが焦っていると、チャーリー!!と聞こえて来るアメリアの通信と共に自分の陸ジムの上に乗っていたザクⅡの頭部が吹き飛んだので有る。

 

「何だ一体っ!?」

 

「良いから退けってんだよ!!」

 

急に視界を奪われ泡喰ったザクⅡを自分の機体から剥がしたチャーリーは同じく驚いているもう一機の

ザクに向かって100ミリマシンガンを向けた。

 

「これでも食らいやがれ!!」

 

「チッ!増援か!?」

 

右肩のショルダーシールドで難を逃れたザクのパイロットはチャーリー機からの射撃を受けながら新たに現れたアメリアの陸線型ジムに舌打ちした・・・

 

「生きてますねチャーリー!」

 

「ヘヘッ・・・当たり前だろ。助かったぜアメリア・・・」

 

窮地を脱し安堵した声を出すチャーリーにアメリアもホッとすると、さて・・・形勢逆転ですね?と呟きながら運用試験用の装備で有るハンドガンを右手にヒートナイフを左手に構えたアメリアの陸ジムがジリジリと間合いを詰めると予想外の展開に二機のザクが後ずさりを始めたので有る。

 

 



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厄介な奴等15

「どうするファング1っ!?」

 

 

 

「どうするも何もヤルしかないだろう!!」

 

 

 

アメリア機の登場で五分となった戦況に両機で有るファング2からの焦った声に後が無いファング1が120ミリマシンガンを撃ち始めると、この野郎っ!!?と往生際の悪い特務隊の二機に向かって廃ビルに隠れながらチャーリー機が100ミリマシンガンで応戦した。

 

 

 

「チャーリー!スリーカウントで突っ込みますので援護を頼みます。」

 

 

 

自分の背後につきながらハンドガンの残弾数を確認するアメリア機の様子に無理をするなよ・・・とチャーリーが心配そうな顔をモニター越しに向けると、誰に言ってるんですか?と呆れた顔をしたアメリアはクスっと微笑むと3・2・1!とカウントしながらフットペダルを蹴っ飛ばしたので有る!

 

 

 

「オラアァァァーーっ!!」

 

 

 

「出て来たぞファング2!撃て撃てっ!!」

 

 

 

「速すぎてFCS火器管制が追いつかないっ!!?」

 

 

 

アメリアのタイミングに合わせたチャーリーの陸ジムから援護射撃に泡喰った特務隊ザクの二機は機動性に全振りしたアメリア機の動きに付いて来られず120ミリマシンガンを全て外すと、隙有りです!と声を上げたアメリアはビルの横壁を蹴りながら陸ジムのバーニアを吹かした。

 

 

 

「デヤァァァーーーっ!!」

 

 

 

そう叫んだアメリアが陸ジムを着地させながら間合い詰めるとザクの装備していた120ミリマシンガンに向かってヒートナイフで斬り上げると、なっ!!?と驚いたファング1は武装が無くなり固まってしまった・・・

 

 

 

「ファング2!!?」

 

 

 

「おいおい止せって・・・ここまでにしようぜ?」

 

 

 

そう言いながら100ミリマシンガンを構えるチャーリーの陸ジムにファング2のザクも120ミリマシンガンを下ろすと、降参する・・・と言って来るファング1にアメリアはやれやれ・・・安堵した様にフゥと息を吐いた。

 

 

 

「CSDリーダーよりウィスキードッグへ現状の終了を確認です。これより合流しますね?」

 

 

 

「ウィスキードッグ了解・・・って!?ちょっと待って下さい先輩~~!」

 

 

 

そんな焦った声を上げて来るミリイにアメリアがチャーリーと首を傾げていると・・・

 

 

 

「おやおや・・・情けないですね人達ですね?」

 

 

 

そんな声を上げながらリンスのジムがファング1と2のザクに向かって90ミリブルパップマシンガンを撃ち始めると、リンス隊長!?と驚く二機に何やってんだ手前え!!と叫ぶチャーリーと共にアメリアは陸ジムの小型シールドで彼らを庇ったので有る。

 

 

 

 

 

「リンス!!一体何を!?」

 

 

 

「こうなったら証拠隠滅の為に消えて貰うしか無いでしょう・・・?」

 

 

 

自分の保身の為に部下に向かって武器を構えるリンスに向かってふざけるなあぁぁぁ!!!とキレたアメリアが両手に持ったヒートナイフを持ち一気に間合いを詰めると、死ねウォーカー!!と叫んだリンスはバックパックから引き抜いたビームサーベルを振り降ろした。

 

 

 

「向こうの方が早いっ・・・!!」

 

 

 

土壇場での大ピンチにアメリアが驚くと、右に飛べええ!!と叫ぶショウの声に慌ててフットペダルを踏み込んだアメリアにショウはリンスのジムが振り上げたビームサーベルを180ミリキャノンで撃ち抜いたので有る・・・

 

 

 

「何だとっ!?」

 

 

 

「ギリギリで間に有ったみたいだな!」

 

 

 

驚くリンスと相対してショウから安堵する声が上ると、用意して良かったですっ・・・とソフィーがホッとするとアメリアがこれでお終いですね?とハンドガンを突きつけると、追いついて来たイエーガーの陸戦型ガンダムとチャーリーに陸ジムによって抵抗が出来なくなったリンスはチッ・・・と舌打ちしながらコクピットから出て来た・・・

 

 

 

「これでお終いね・・・?」

 

 

 

「何がですケイ・・・!?」

 

 

 

「いや・・・リンスとの確執がよ!!」

 

 

 

そう言いながら腰に手を当てるケイにそう言えばそうですね!と答えたアメリアはクスっと微笑んだ。

 

 

 

「だけど・・・皆と仲間になれたお陰かリンスの事は全然怖く無かったよケイ!」

 

 

 

「それなら良かったわ・・・」

 

 

 

ニコっと微笑むケイにアメリアが手を振っているカスケード隊に駆けて行くと、じゃあ行くぞ!と特務隊の面々を連行する上官のアリス=ミラー少佐にケイもその後に続くと・・・

 

 

 

「せめて貴様だけでも・・・ウォーカーあぁぁぁっ!!」

 

 

 

そう叫んだリンスが最後のあがきでMPから抜き取った銃を構えると、アメリアーーーっ!!と焦ったチャーリーが彼女を庇う様に抱きしめるとパン!と乾いた音にこの場に居た全員から緊張した顔が浮かんだ。

 

 

 

「冗談ですよね・・・ねえ返事をして下さいよチャーリー!!」

 

 

 

「すぐにソイツを取り押さえるんだっ!!」

 

 

 

「アメリア・・・アメリア・・・無事だよねっ!?」

 

 

 

そんな焦った声を上げるミラーとケイにうん・・・と答えたアメリアがその場で固まっているとチャーリーからヘヘっとと困った様に笑みが浮かんだ・・・

 

 

 

「ヘヘッ・・・どうやら生きてる様だぜ!?」

 

 

 

そう答えながらポリポリと頭を掻き出すチャーリー向かってこのバカ!!!とアメリアが泣きそうな顔で抱きつくと、じゃあ一体誰が・・・?と銃を仕舞うミラーに向かってすみません・・・と自機の傍で銃を降ろしたショウから手が挙がった。

 

 

 

「二人を守ろうと咄嗟に発砲したんですが・・・」

 

 

 

「ぎゃあ!!?痛い痛い・・・早く治療を!!」

 

 

 

「五月蠅い。大人しく着いて来い!」

 

 

 

肩を撃たれ暴れるリンスをケイがMPと共に連行するとミラーはクスと微笑んだ。

 

 

 

「良い腕をしてるな・・・カノウ少尉。」

 

 

 

「そうでも有りませんよ・・・?」

 

 

 

そう答えた得ながらポリポリと頭を掻き出すショウにそうか・・・と答えたミラーが二っと笑みを浮かべながらリンス達特務隊を捕まえたMPのトラックへと乗り込むと、ようやく終わったな・・・?呟いたショウはカスケード隊の仲間達と今回の騒動が終結したのを見届けたので有った・・・

 

 

 



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カスケード隊、旅にでる。
離れる二人・・・その1


 

 リンスが率いる特務隊の騒動から三日が過ぎた・・・。試験部隊とは言え、特別な任務が無ければ基本的にパトロール任務に回せれたカスケード隊の一行はシフトが終わるといつもの様にリンの店CASCADEへと集まっていた。

 

 

「それで・・・そのリンスって言う人はどうなるの?」

 

カウンターの向こうで首を傾げる店主のリンに向かってそうですね・・・と情報部でミラーの部下で有るケイ=キタムラ少尉はビールが入ったジョッキを傾けながら思案顔を浮かべた。

 

「今回の件でウチの上司が尋問し特務の闇を晴らすと思うので・・・恐らく降格処分になるんじゃ無いですか?」

 

「そっか・・・これでアメリアちゃんの心配事が無くなるって事ね!」

 

アメリアの事が大好きなのかアメリアはそんな事を言って来るリンにアハハ・・・と苦笑いを浮かべた。

 

「そうですね・・・今回の件で流石に特務も手出しが出来ないんじゃ・・・」

 

「何言ってんのよアメリア・・・相手はあのジャミトフ=ハイマンよ?明日にでもミラー少佐は呑気に構えていると足を救われると言ってジャブロー本部に戻るんだからね。」

 

「へえ・・・そうなんですか。出発前に挨拶でも・・・って!?じゃあなんでケイはこんな所で呑気の酒を飲んでるんです!!」

 

ふと気づいたアメリアの驚いた声にあれ・・・言って無かったけ?とニヤっと意地悪そうな顔をしたケイはカスケード隊の面々に向かって敬礼した。

 

「暫くの間ですが、情報部の連絡員としてここトリントン基地に配属されました。ケイ=キタムラ少尉です・・・宜しくお願いします!」

 

そんな彼女の改まった自己紹介に本当なのケイっ!?と驚いたアメリアが抱きつくと、ちょっと訳ありでね?とケイはチラッとリンを見た・・・

 

(まさかとは思うけど・・・復讐に燃えたリンスから彼女を守る護衛としてにここに残る事になるとはね・・・)

 

「あの・・・何か私の顔に付いてるかなケイちゃん?」

 

自分の視線に気づいたのか不思議そうにリンが見て来ると、いえ・・・何でも!と答えたケイはですが・・・?と一つだけ注文をした。

 

「ケイちゃんと呼ばれるのはちょっと・・・」

 

「良いじゃ無いですか!私もアメリアちゃんって呼ばれてるのでお揃いですね♪」

 

「そうよ可愛いじゃないケイちゃんって呼び方?」

 

リンからもニコニコと首を横に振られたケイが顔を真っ赤にしながら分かりましたよ・・・と了承すると、それはそうと・・・と彼女から真面目な顔がアメリアに向かって送られた。

 

「まだ・・・正式じゃ無いけどアメリアあんた・・・今回の件で少尉に戻るからね。」

 

「へっ・・・!?」

 

そう言いながら残ったビールを飲み干そうとするケイに変な声を上げたアメリアは隣のチャーリーは勿論ショウやイエーガーと言ったカスケード隊のメンバーと一緒にえーっ!?と驚くので有った・・・

 

 

 

~~~

 

 

「アメリア=アン=ウォーカー軍曹・・・前へ」

 

それから更に数日後、基地指令で有るバリサム大佐の執務室へと呼び出されたアメリアはハッ!と声を上げると彼の隣に立つ秘書官(・・・)となったケイからフフッと微笑みながらケースがデスクの上に置かれた。

 

 

「今回の事件で君が過去に起こした暴力事件は情報部のアリス=ミラー少佐の捜査によりリンスが指揮し特務隊で行なわれたウォーカー軍曹への暴力事件と変わった。その為に君の罪状は無くなった・・・今日からは再び少尉として職務に励む様に!」

 

「有難うございます。」

 

そう答えながら敬礼したアメリアが階級章が入ったケースを受け取った所でフッとバリサムは顔を緩ませた・・・

 

 

「本当に頑張ったなウォーカー・・・」

 

 

「バリサム大佐・・・こちらこそご尽力有難うございます。」

 

そう答えたアメリアが再度敬礼すると、俺は何もしとらん・・・と照れたバリサムからクルっと窓の外を見られたアメリアはアハハ・・・と困った様に笑いながら部屋の隅で待機している金髪の少尉に首を傾げた。

 

 

「所で・・・何でヒルダ中尉が残ってるんでしょうか?」

 

アメリア自身良く分からないが、命令で何故かここに残る事になったケイと違ってミラーでさえジャブローに戻った今アメリアは・・・教導隊の指揮官で有るヒルダの存在に不思議そうに首を傾げたので有る。

 

「それなんだけどね・・・実は今回の件で特務隊を打ち負かした事に私達のボスがアナタ達カスケード隊を非常に興味を持った様なのよ・・・」

 

そう困った顔をするヒルダにそれってひょっとして・・・と驚いたアメリアは同席していた中隊長のイエーガーと顔を見合せた。

 

「ええ・・・我々教導隊及び試験MS部隊の指揮官で有るジョン=コーウェン准将は正式に自分の部下に迎え入れたいらしいわ・・・」

 

 

「って事は私達も教導隊になるんですか!?」

 

 

「それは分からないけど・・・どっちにしてもそれはジャブローに着いてからの話ね?」

 

 

そう説明しながらクスっと微笑んで来るヒルダにアレ・・・っと違和感を覚えた。

 

 

「ひょっとして私達って異動になるんですかぁ!!?」

 

 

「うん、そうよ。追って辞令は出ると思うけどね。」

 

 

そう有無を言わさないヒルダからの笑みにアメリアはイエーガーと共に了解しました・・・と答えたので有った・・・

 



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離れる二人・・・その2

 

 その日の午後アメリアの後輩でカスケード隊のオペレーター補佐をしているミリィ=タニグチ伍長は戻って来た彼女の階級章を嬉しそうに付け替えていると、むう・・・とずっと唸っている彼女に一体どうかしたんですかぁ!とムスっとした顔を向けた。

 

「せっかく先輩が少尉に返り咲いたって言うのに~!!」

 

「ありがとうですミリィ・・・それとケイから聞きましたがリンスとの通信を細かく録音してくれて助かった。とミラー少佐経由でお礼を言われましたよ?」

 

「先輩の為にと思って徹夜して報告書を付きの証拠として提出したんですよぉ・・・もっと褒めて下さい!」

 

そう言いながら自分の頭を撫でろと出して来るミリィに向かってクスっと笑ったアメリアがはいはい・・・と甘えっ子な彼女を膝に乗せていると・・・

 

「おい全員集まれ・・・!」

 

いつも以上に難しい顔をするイエーガーの声に一体何だ・・・?と特務隊も居なくなり広くなったハンガーの中央にカスケード隊と整備班の面々が集まったので有る・・・

 

「何だよイエーガー?」

 

「ひょっとしてリンス達の件でボーナスでも出るのか!」

 

そんな声を上げるジャックとタンクの小隊長コンビにいやそれがな・・・といつもならツッコミが入るイエーガーの口籠る様子に二人は真面目な顔を向けた。

 

「おい・・・指令の所でなんて言われんだよ!」

 

「らしくねえぞイエーガー・・・」

 

「・・・実は転属の辞令が出てます。」

 

言い難そうなイエーガーの代わりに立ったアメリアの声にこの場に居る全員がざわつきだした・・・

 

 

「転属ってどこだ・・・!?」

 

「まさか最前線じゃ・・・」

 

「ここに家族も居るんだぞ・・・」

 

「五月蠅いっ!静かにしなさい!!」

 

特に聞こえる整備班からの慌てる声に怒声を上げたアメリアがふう・・・と自分を落ち着かせる様に息を吐くと、スマンな・・・と謝ったイエーガーは落ち着きを取り戻した隊員達にこれからの事を説明した。

 

 

「今言った様に転属とはなるが・・・ここをカラッポにする訳にはいかんから取り合えず先行して俺の第一小隊がジャブローに向かう事になる。」

 

「って事は・・・俺達も後で合流するのか?」

 

そう首を傾げ合うジャックとタンクにそれはまだ分からんな・・・?と自分達を迎え入れようとするコーウェン准将の真意が分からないイエーガーは苦笑いを浮かべた。

 

「それで・・・途中で戦闘も有るかもしれないので整備班からも一人欲しんだが・・・誰か希望者は居ないか?」

 

「そうは言われてもね・・・俺っちたちもそんなヤバい橋は渡りたく無い・・・」

 

「ハイッ!ハイハイッ私が希望しますっ♪」

 

整備班の主任をしているシバ=シゲオ曹長の声を食い気味にソフィーから手を上げると、あの・・・おやっさん?と恐る恐るシゲが整備班の班長で彼女の祖父でも有るホワイト技術大尉を見た。

 

「ダメかなっ・・・お爺ちゃん?」

 

「お前がそこまでして付いて行きたいんなら仕方ねえ・・・ソフィーの事はくれぐれ(・・・・)も頼むぞイエーガー?」

 

ポリポリと頭を掻きながらジロっと睨んで来るホワイトに了解で有りますっ!とイエーガーから咄嗟に敬礼が上がると、どうしたんだろう二人共っ・・・?とソフィーはキョトンとしながら首を傾げたので有った。

 

 

~~~

 

 

「えっ・・・転属!?ホントなのそれ・・・」

 

 

いつもの様に飲みに来たカスケード隊の面々にリンから驚く顔が浮かぶと・・・

 

 

「私達も困った事に覆す事が出来ない真実何ですよね・・・」

 

 

と答えたアメリアが命令ですので・・・とぼかしながら答えると、ホントなのねショウ?とリンは隣でカウンターを手伝う黒髪の青年士官を泣きそうな顔で見た。

 

「うん・・・アメリアの言う通りだよ。だけど・・・平気だって?これまでもアメリアの指揮で生き残って来たんだからさ!」

 

「そうですよ!私が保証します・・・命に代えてもショウをリンさんの下に帰しますから?」

 

「いや・・・それは流石に重たいかな・・・」

 

何か嫌な想像をしたのか目を瞑ったリンが慌てて頭を振り出すと・・・じゃあ指輪でも贈れよ?と言って来るチャーリーからの突拍子も無い声にヘッ!?と焦ったショウは顔を赤くするリンと顔を見合わせた・・・

 

「急に何を言い出すんだよ!」

 

「いや・・・もうどうするか決まってるんならさっさとしとけよ婚約をさ?」

 

そう答えながらチャーリーがニヤつくとそれならお前達もだろっ!!と言い返すショウに思わずボッと顔を赤くしたチャーリーとアメリアからウニャ!!?と変な声が上り反撃を食らった二人がショウと睨み合うと・・・分かったわよ!と開き直ったのかリンは顔を赤くしたままビシっとショウとチャーリーに向かって指を差した。

 

 

「こうなったら・・・私とアメリアちゃんの絶対に気に入る婚約指輪が見つかるまで付き合って貰うからねっ!!」

 

「「分かった!!」」

 

そんな乗り気な二人に私もですかっ!?と巻き込まれてしまったアメリアの驚く声がCASCADEに響き渡ると、こいつら大丈夫か・・・?と他のメンバーは浮足立つショウ達を見ながら不安そうな顔を浮かべたので有った・・・



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離れる二人・・・その3

 

 アメリア達も帰り、しまったな・・・。とリンは閉店となったCASCADEの二階に有る自分の部屋で頭を抱えていた・・・

 

「アレって私がショウに逆ポロポーズした様なもんよね・・・」

 

チャーリーに乗せられたでつい指輪が欲しいと言ってしまったリンがベッドの上で悶々としていると・・・店の方は片付いたよ?と代わりに店を閉めてくれたショウの声がガチャっと開くドアの音と共に聞こえて来た。

 

「ありがとう・・・ショウ」

 

「ねえリン・・・やっぱり指輪を見に行くの止めよっか?」

 

そんなリンの顔を見たショウがそう呟くとえっ・・・とリンから不安そうな顔が浮かんだ。

 

「えっ・・・急にどうしたの!?」

 

「いや・・・さっきからずっと変な顔してるしさ・・・」

 

「そんな事無いって!!だけど・・・ちょっと急ぎ過ぎかなってちょっと思ってる。」

 

ショウの事は好きだがそこまで先の事を考えて無かったリンが少し戸惑いを見せるとショウからそっか・・・と少し残念そうな顔が浮かんだ。

 

「でも・・・リンと離れる前に指輪くらいは贈りたいかな?」

 

「ショウ・・・」

 

もうこうして二人で過ごす時間が少ない事に寂しさを感じたリンはギュッと抱き付くとショウの背中に手を回した・・・

 

「それじゃ・・・一番高いの選ぶね・・?」

 

「あんまり高いのは困るな・・・」

 

そう見つめ合った二人はどちらからとも無くキスをした。

 

「ショウが選んでくれるの楽しみ・・・」

 

ベッドへと押し倒されたリンが嬉しそうに笑みを浮かべると頑張って選ぶね・・・?と少し困った顔を浮かべたショウによって段々と深くなる口づけを受けながら二人の甘い夜は更けてったので有った。

 

 

~~~

 

 

「天気が良くてホントに良かったですね?」

 

「へへっ絶好のデート日和りだぜ!」

 

海岸線を飛ばすジープの運転席と助手席からアメリアとチャーリーのそんな陽気な声を聞きながらショウはリンと共に後部の荷台の上で苦笑いを浮かべた。

 

「朝っぱらから拉致られたと思ったら・・・まさか昨日の今日で行くことになるとはね・・・」

 

「こういうのは善は急げって言いますからね?リンさんの気が変る前に行こうとチャーリーと決めたんです。」

 

「そうそう。ひょっとしたらショウがリンに捨てられる可能性も有るからな?」

 

「まさかそんな事無い・・・よね!?」

 

アメリアとチャーリーの二人からの冗談にショウがギョッとすると、ハァ・・・と溜息をついたリンは無いわよ。と呆れた顔をショウに向けると、所でちょっと良い?と首を傾げた。

 

「今日って仕事じゃないの・・・三人共」

 

「イエーガー達もこの事を知ってますからね。哨戒任務って事で許可を貰ってますよ?」

 

ニコっと笑顔でそう説明するアメリアにそうなんだ・・・と答えたリンが今度来たら奢ってあげないと・ね。と無理を聞いてくれたイエーガーに対しお礼を考えていると目的地で有る中立地帯の町が見えて来たので有った。

 

 

~~~

 

 

「所で指輪なんかどこで売ってるんだ・・・?」

 

「えっ・・・知ってて来たんじゃ無いのかよチャーリー!?」

 

ジープを降りた途端キョロキョロとするチャーリーに呆れた顔でショウがツッコみを入れると、取り合えず先を進みましょうか?と苦笑いを浮かべるアメリアにリンもそうね・・・とその後に続いた。

 

「ここなら有ると思ったんだけどな・・・」

 

「まあ最悪・・・リンの店の買い出しが出来るから良いけどね。」

 

出店が並ぶメインストリートを見ながらぼやくチャーリーにハァ・・・とショウが溜息をついていると、ちょっとチャーリー!と慌てるアメリアから服を引っ張られたチャーリーは何だよ・・・?と首を傾げた。

 

「あのお婆さんを覚えてますか?」

 

「あれって・・・前に来た時にジオン兵と揉めてた婆さんじゃ無いか!?」

 

以前、非番の日にここへ来て一騒動起こしたチャーリーから苦笑いが浮ぶと、ちょっと挨拶して来ますね?とアメリアは情報収集の為に老婆の店へと向かった・・・

 

「安いよ安いよ!ほら買った買った!!」

 

「一つ下さいな?」

 

「はいよ。・・・ってアンタはあの時の連邦兵!!?」

 

「お久ぶりです。」

 

ギョッとする老婆にクスっと微笑んだアメリアはシーっと自分の口に人差し指を当てた。

 

 

 

~~~

 

 

「ふ~ん・・・婚約者に贈る指輪をさね・・・?」

 

「はい。この町のどこかにそう言ったお店が有るのなら教えて頂きたいんですが・・・」

 

アメリアから事情を聞いたが腕を組みながら不安そうにしているショウとリンを見ると・・・仕方ないね。とアメリアとチャーリーに向かって二っと笑みを浮かべた。

 

「お前さん達には借りも有るしのう・・・ワシの紹介でここの闇市を尋ねると良いぞ?」

 

「えっ・・・闇市なんか有るんですか・・・!?」

 

「当たり前じゃ・・・ここは何でも集まる中立地帯じゃからな。金さえ払えば何でも手に入るんじゃよ?」

 

そう説明した老婆からヒッヒッヒッと怪しげな笑い声を聞いたアメリアはどうしますか・・・?

?と苦笑いを浮かべ三人を見た。

 

「ここまで来たんだから行くっきゃねえだろ?」

 

「僕もチャーリーに賛成だね。」

 

「二人が行くんなら・・・私も着いて行くけど」

 

「じゃあ決まりですね。」

 

三人の同意を得たアメリアが頷くと老婆は健闘を祈るぞ・・・と路地裏に入って行く四人の背中を見送ったので有った。



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離れる二人・・・その4

「ちょっとねえ・・・ホントにこんな所に有るの・・・!?」

 

 

 

老婆の言った通り路地裏を進むショウ達にリンから不安な顔が浮かぶと、もう少し進んで見ましょう・・・と先頭歩くアメリアも少し緊張気味に答えた。

 

 

 

「おい止まれ・・・ここから先は関係者以外立ち入り禁止だ。」

 

 

 

もう少し進んだ所で開けた広場に出たショウ達は明らかに堅気では無い雰囲気の二人組にゴクッと息を飲む見ながら先程の老婆から貰ったこの場所の鍵らしいマッチ箱を見せたので有る。

 

 

 

「果物屋の婆さんから貰ったんだが・・・?」

 

 

 

「婆さんの紹介か・・・良し通って良いぞ。」

 

 

 

老婆から渡されたマッチ箱を確認した男の一人が奥へと親指を指すとショウ達は広場に一面に広がる様々な武器や弾薬に貴金属と言った一般的に売りにくい商品を取り扱っている闇市へと恐る恐る足を踏み入れた・・・

 

 

 

「連邦やジオンの武器まで置いてますね・・・」

 

 

 

「これじゃあトリントン基地の武器庫も顔負けだな?」

 

 

 

多様多種な銃器が並ぶその品揃えにチャーリーからヒューッと口笛が鳴ると、ここじゃない?とショウは老婆から渡されたメモを見ながらその店の看板を見た。

 

 

 

「フェアリー・・・ね?」

 

 

 

闇市と名乗る場所からは程遠いファンシーな店名に苦笑いを浮かべたショウが店の中を覗くと丁度気付いた店主らしい女性からお客さんかい・・・?と出て来た瞬間何故か急に腰から抜いたデザートイーグルを突きつけて来た・・・

 

 

 

「テメエら軍人だな・・・どうやってここに入って来やがった!」

 

 

 

「ッツ・・・!?」

 

 

 

アメリアもそれに反応し慌ててバックに手を入れた所でチャーリーがその手を押さえながら間に割って入った来たので有る。

 

 

 

「まあまあ落ち着こうぜ・・・?」

 

 

 

「・・・どうやらガサ入れじゃ無さそうだな。」

 

 

 

二っと笑みを浮かべるチャーリーに敵意が無い事を知った女店主が銃を腰に戻すとショウはフゥ・・・と安堵しながら老婆のマッチ箱を見せたので有った。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「婆さんの紹介ならそう先に言えよな・・・」

 

 

 

 

 

「いきなり銃を突き付けて来たのはそっちじゃ無いですか!」

 

 

 

 

 

誤解が解けたのか悪りいな?と謝って来るこの店の女性店主のニノにアメリアが怒っていると、ショウはフェアリーの店内に飾られている銃の種類にこれは凄いね・・・!?と驚く声を上げた。

 

 

 

「AKにステア・・・それにFALまで有るし・・・」

 

 

 

「へえ・・・詳しいねアンタ。じゃあコイツ何かどうだい?」

 

 

 

ニヤニヤと楽しそうなニノが出して来たハンドガンにギョッとしたショウはその銃とニノの顔を二度見した・・・

 

 

 

「これってCZ75だよね・・・しかもファーストモデルっ!?」

 

 

 

「この辺りの銃が好きそうだなって思ったんだけど・・・どうやら大当たりみたいだな?」

 

 

 

ニノの言う通りマニアックな銃が好きなショウからずっと欲しかったんだよ!と興奮する声が上るのを見てそこまで指輪を求めて無いリンはクスっと微笑んだ。

 

 

 

「そんなに欲しいんなら私の指輪じゃ無くてその銃にしたら?」

 

 

 

「えっ・・・いや!今日はリンの指輪を買いに来たんだからね!!」

 

 

 

そう答えながら首を横を振るショウに良く言ったぜ相模・・・とチャーリーから二っと笑みが浮かぶと、ねえ・・・チャーリー?とアメリアが綺麗な赤髪を振りながら首を傾げて来た・・・

 

 

 

「私は指輪じゃ無くても良いですよ?」

 

 

 

「じゃあ何が欲しんだよ・・・」

 

 

 

「ここに有るグロック39でどうです?」

 

 

 

そう答えながらアメリアが愛用するグロックの小型拳銃を指差すとチャーリーから即座に却下・・・と返って来た。

 

 

 

 

 

「もうちょっと色気の有る物を選べねえのかよ!!?」

 

 

 

「ええ・・・こんなに小っちゃくて可愛いのに・・・」

 

 

 

そう答えながらムゥ・・・と唸ったアメリアはじゃあこれならどうです?とグロックの予備マガジンを見ると、その瞬間にドドドッ!!!と鳴り響くマシンガンの銃撃にこの場に居る全員から悲鳴が上がった・・・

 

 

 

「ッツ・・・これってザクの120ミリっ!?」

 

 

 

聞き覚えの有る音に反応したアメリアの声にショウ達が顔を見合わせると・・・大変だーっ!!?と見張りをしていた男達が焦りながら叫び出した。

 

 

 

「ジオンの連中がMSごと乗り込んで来やがったっ!!」

 

 

 

「ちょっと待てっ!ここは中立地帯って知ってて来たのか!?」

 

 

 

ここの中心的なリーダーなのか慌て出すニノに中立地帯の住民達が集まり出すとアメリアは腕を組みながらハァ・・・と溜息をついた・・・

 

 

 

 

 

「どうやら最悪なタイミングでここに来たみたいですね・・・?」

 

 

 

そう呟いたアメリアにショウもそうだね・・・と答えると不安そうするリンの肩を抱いたので有った。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

そんなピンチなショウ達と打って変わり、トリントン基地の食堂でランチを取っていた第三小隊CSD7の操舵手を担当しているレティ曹長は目の前でニコニコとしている教導訓練で来ているブラックウィドウ隊のジャン=ノベル准尉に向かって不思議そうに首を傾げていた・・・

 

 

 

「なあ・・・あの時のお礼がランチの奢りで良いのか?」

 

 

 

「ハイ♪レティさんに奢られるなんて僕は嬉しくてあまりの幸せに死にそうです。」

 

 

 

「死なれたら困るんだけど・・・」

 

 

 

子犬の様に懐かれ過ぎて困惑するレティの様子を少し離れた席でククっと楽しそうタンクが見ていると、変わった組み合わせね・・・?と急に現れたマリアにギョッとしたタンクは何だよ・・・答えながら冷めたコーヒーを啜った・・・

 

 

 

「部下の幸せくらいそっとしておいたら?」

 

 

 

「バーカ・・・男っ気の無いアイツの為に俺は見守ってんだよ。」

 

 

 

「ただ面白がってるだけのくせに・・・」

 

 

 

そう答えながらフン!と鼻を鳴らすタンクに向かってマリアが呆れた様子で離れようとすると・・・あっそうだ?と何かを思い出したのか急に手をポンと叩き出した。

 

 

 

「ついさっきだけど・・・ウチの偵察機が近くに有る中立地帯の町近くでジオンのMSを見かけたらしいからスクランブルが掛かるかもよ?」

 

 

 

「それってショウ達が居る場所じゃねえか!!」

 

 

 

そう答え慌てて立ち上がるタンクにどう言う事よ!?とマリアが叫ぶと・・・その様子に気付いたレティとジャンは不思議そうに顔を見合わせたので有った・・・



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離れる二人・・・その5

「良しっ・・・こんなもんかなっ?」

 

 

 

カスケード隊、第二小隊長機のジャック=アルヴィン機の調整を終えたソフィーがコクピットからウィンチで降りると、悪いなソフィー?とその本人と部隊オペレーターのミリィが飲み物を持って駆け寄って来た・・・

 

 

 

「疲れたでしょぉ。これ飲んでねぇ?」

 

 

 

「ありがとっミリィ♪」

 

 

 

ミリィからの差し入れにお礼を言ったソフィーは自分の愛機で有るRGM-79「G」陸戦型ジムを満足そうに見ているジャックに向かってエヘヘっと笑った。

 

 

 

「ジャック中尉の注文通り機体へのフィードバックを大幅に変更したんでかなりピーキーにしちゃいましたけど本当に良かったんですかっ?」

 

 

 

「ああ助かる。最近どうも機体の動きが鈍く感じていたからな・・・」

 

 

 

「それなら良いですけどっ、OSの書き換えに合わせてスティックの感度とかアクチュエーターへの出力も大分変ってるんで調整が必要な時はまた言って下さいねっ?」

 

 

 

「ああ・・・お前達が居る間にな・・・」

 

 

 

そう答えながらジャックから急に寂しそうな顔が浮かぶのを見たソフィーは困った様にアハハ・・・と笑い出した。

 

 

 

「そんなの別に気にしなくても良いんですよっ?私がここに居るのも残りわずかですから逆にこの機会にドンドン言って来て欲しいですっ♪」

 

 

 

MSの事なら何でもどんと来いと自称する程の腕前を持つソフィーの声を聞いていたミリィからハァ・・・と深い溜息が聞こえると・・・

 

 

 

「どうしたのよそんな溜息をついて・・・」

 

 

 

「あっケイさんっ・・・サボリですかっ??」

 

 

 

司令官付き秘書官で元情報部のケイ=キタムラ少尉の登場にソフィーからそう首を傾げられたケイは違うわよっ!?と怒りだしたので有った・・・

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「良い?私はちゃんと仕事を終えて来たんだからね!」

 

 

 

「成程っ・・・それだけアメリアさんに会いたいって事かっ・・・?」

 

 

 

そう呟くソフィーに何でそうなるのよっ!!と顔を真っ赤にしたケイがソフィーの頭をぐりぐりと押さえだすと、痛いっ!!痛いですっーーー!!?と悲鳴を上げるソフィーの声を聞きながらケイはそれでどうしたの?と目の前で困惑しているミリィに首を傾げた。

 

 

 

「実は・・・先輩と離れるのが寂しいんですぅ・・・」

 

 

 

「ちょっとミリィっ!?その前に私を解放する様にっ・・・」

 

 

 

「そっか・・・アメリアの事を随分と慕ってるみたいだしねミリィは・・?」

 

 

 

「私の事は無視ですかっ!!?」

 

 

 

涙目を見せるソフィーからの抗議を一切無視したケイの言葉にミリィからハイ・・・とコクっと頷かれた・・・

 

 

 

「こんな私を必要だと言ってくれた先輩にまだ私は恩返しが出来て無いんですぅ・・・だからここに居る間に一人前になった所を見せたいんですよねぇ・・・」

 

 

 

「ふ~ん・・・そうなんだ。」

 

 

 

 

 

(って言うか・・・特務隊の時にアメリアから指揮権を預けられた時点で相当信用されてると思うんだけどな・・・?)

 

 

 

 

 

そう答えながら更にもう一度溜息をつくミリィに答えたケイはアメリアが大好き過ぎるミリィにに苦笑いを浮かべたのだ。

 

 

 

「アンタって本当にアメリアの事が好きなのね・・・?」

 

 

 

「エヘヘ・・・私の中で一番大好きな人ですぅ♪」

 

 

 

「残念でしたねケイさんっ・・・ミリィにアメリアさんを・・・だから痛い!痛いんですって!!?」

 

 

 

嬉しそうなミリィの言葉にそっか・・・と答えたケイによって再び頭をぐりぐりとされたソフィーから悲鳴が上がると同時にキュキュっとタイヤを鳴らしながらタンク達が乗ったジープがハンガーの中に飛び込んで来ると大変だぞっ!!と珍しく焦り出すタンクの声にハンガー内に居たソフィー達はざわつき出した・・・

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「うわ・・・ヒトツメザクが二機にツノツキ《グフ》が一機の一個MS小隊に加え陸戦部隊が一個中隊ですか・・・いくら何でもこの戦力で太刀打ちするのは死ぬようなもんですね?」

 

 

 

 

 

双眼鏡を覗きながら索敵をするアメリアの言葉にホントにツイて無い・・・とショウからぼやき声が上った・・・

 

 

 

 

 

「それでどうするんだ・・・一応奴等の要求通り食糧や弾薬の準備はさせてるけどよ・・・?」

 

 

 

 

 

「向こうがその要求を呑んで大人しく立ち去れば良いんですが・・・最悪な事態も想定して置くべきです。」

 

 

 

 

 

アメリアがそう心配するのも、つい先日ニューヤークで北米方面軍司令官で有るガルマ=ザビ大佐がホワイト=ベース隊によって戦死したのが原因か徐々にジオン側の戦線が後退しているとケイから聞いていた

 

からで有る。

 

 

 

「それって・・・この町が戦闘に巻き込まれるって事か!?」

 

 

 

「まだ分かりませんが・・・くれぐれも彼らを刺激しない様にして下さい。」

 

 

 

慌て出すニノを宥めたアメリアはやれやれ・・・と困りながらショウとチャーリーにボソッと耳打ちした・・・

 

 

 

 

 

「恐らく奴等は敗走中の部隊の様です・・・このままじゃこの町が火の海になるのも時間の問題ですよ?」

 

 

 

「じゃあ基地に連絡したらどうだ?」

 

 

 

「連絡するにしてもジープまでどうやって行くんだよ・・・」

 

 

 

無線機が積んで有るジープまでの困難な道のりにショウから異議が上がると、まあ・・・無い事は無いがな?とニノから少し困った様に苦笑いが浮んだ・・・

 

 

 

 

 

~~~

 

 



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離れる二人・・・その6

 

 

「おい・・・今何と言ったバウスネルン?」

 

 

「ですから。中立地帯の町への威力偵察に出たカノウ少尉以下三名と連絡が取れなくなったのでカスケード隊の出撃許可を頂きたいのです!」

 

威力偵察とは全くのでまかせを言いながらズイっと顔を寄せて来るイエーガーの言葉に中立地帯の町ね・・・とトリントン基地指令ロイ=バリサム大佐はパイプに火を着けながら不審そうな顔でカスケード隊の中隊長で有るイエーガーバウスネルン中尉を見た。

 

「MSの試験部隊で有るお前達が何で威力偵察に・・・そもそも何故中立地帯なのか簡潔に説明しろバウスネルン・・・?」

 

「えっと・・・それはその・・・ちょっと色々と!?」

 

流石に勢いだけでは無理だったらしく淡々と聞いて来るバリサムにイエーガー困っていると・・・ここから私から説明します。と元情報部で現在はバリサムの秘書官を務めているケイ=キタムラ少尉が前に出たので有る。

 

「ここ最近ジオン軍が戦域を縮小して敗走を始めているのは指令も知っている事かと・・・」

 

「勿論だ。例のニューヤークでホワイトベース隊とか言う部隊がザビ家の三男を打ち取った影響だとか・・・?」

 

「ええ・・・その所為か各地でジオン兵による略奪が起きていると情報部の方に話しが入っており、イエーガー中尉に頼んであの町に慣れているカノウ少尉達にちょっと偵察を頼んだらこんな事になったのです。」

 

そうスラスラと嘘をつくケイの隣でマジかコイツっ!?とイエーガーが背中に冷汗をかいていると・・・

 

「本当かバウスネルン中尉・・・?」

 

「そりゃあ勿論です!ケイ少尉に頼まれたんですがショウ達も不運ですよね!?」

 

明らかに疑っているバリサムの顔にイエーガーは隣から話を合わせて下さい!と睨んで来るケイの圧を感じながらそう答えたので有った・・・

 

「そうか・・・だがカスケード隊を動かすとなると基地の防衛がな・・・」

 

「でしたらバリサム指令・・・その間は私達が基地の守備に着きますわよ?」

 

部屋の隅で話を聞いていた教導隊ブラックウィドウ隊のヒルデガード=ウィンチェスカ中尉がイエーガー達にウィンクするとバリサムは頭を抱えながらもう分かった・・・と答えた。

 

「カスケード隊に中立地帯への出撃許可を出す・・・が場所が場所だ。戦闘行為はなるべく控える様に!」

 

「ありがとうございますバリサム指令・・・それでは!」

 

今すぐにでも駆け付けたいケイがイエーガー共にバリサムの部屋を出ようとするとちょっと待ってくれない?とヒルダが呼び止めたので有る。

 

「ミラー少佐から優秀って聞いてたけど・・・結構大胆ねキタムラ少尉は?」

 

「私って猫かぶりなんです。それじゃあ!」

 

そう言いながら駆け出すケイが手を振ると・・・成程ね。と二人の背中を見送ったヒルダは楽しそうにクスクスと微笑んだので有った。

 

 

~~~

 

 

「一応ここが通信室だな・・・」

 

そう言うニノからドアを開かれたショウ達が中に入ると部屋の中には充実した通信設備が有りアメリアからこれなら・・・!?と声が上ると同時にムゥ・・・と急に不満そうな声が上った・・・

 

「この通信設備はジオン製ですね・・・ちょっと使い勝手が良く分からないんですが?」

 

「俺を見ても分かる訳無いって!?拾ったのを適当に使ってるだけだからな!」

 

こんな感じで今までヤバい取引をしていたらしい彼女達にそうなんですか・・・とアメリアが苦笑いを浮かべるとリンさん・・・?とショウの婚約者でこの騒動に巻き込まれた彼女にアメリアは申し訳無さそうに頭を下げた。

 

 

「ここが一番安全そうなので居てくれませんか・・・?」

 

 

「ちょっと待ってアメリアちゃん・・・何で締めようとするの!?」

 

 

そう慌て出すリンにゴメンなさい。とアメリアがドアをロックすると・・・ちょっとアメリアちゃん!?とドアを叩き出すリンの声を無視したアメリアはホントに良いのか・・?と首を傾げるニノに向かってコクっと頷いた。

 

「民間人のリンさんを巻き込む訳には行きません!」

 

「他にも沢山居るんだが・・・それでどうするんだ?」

 

ここまで来て完全主導権を取られたアメリアの声にニノが首を傾げるとそうですね・・・と呟いたアメリアは武器を豊富に揃えている闇市を見ていると再びドン!とザクからの銃声が響き上がった・・・



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離れる二人・・その7

「なあソフィー・・・陸戦型ガンダムのメインカメラはこれ以上倍率上がらないのか?」

 

 

ビームライフルを構える陸戦型ガンダムのコクピットからそんな不満を言いだすイエーガーにコレが限界ですよっ・・・と答えたメカニック担当のソフィーから困った顔が浮かんだ。

 

 

「狙撃用に作られてませんしっ・・・いくら陸ジムよりも高性能とは言ってもメインカメラの性能は一緒なのですからねっ?」

 

 

「それは分かるが・・・俺の腕でCSD2(ショウ)の真似は無茶過ぎるぞ!」

 

 

後方支援を担当をしているショウとは違い精密な射撃が苦手なイエーガーから抗議の声が上ると、それは俺も同じだっつの!と通信が入って来たジャックの第二小隊が指定されたポイントに辿り着いたらしい。

 

 

「こちらCSD6・・・狙撃ポイントに着きました。」

 

 

「こっちも狙撃ポイントに着いたぞイエーガー!」

 

 

「お前が撃つ訳じゃない癖に威張るなジャック!!?」

 

 

そんな怒声を上げるイエーガーの言う通り第二小隊でビームライフルを構えるのはショウと同じく後方支援役を担当しているユウヤ准尉の陸戦型ジムで有る・・・

 

(ビームライフルは初めてだからな・・・せめて試射くらいさせて欲しかったな。)

 

そう思いながらユウヤが苦笑いを浮かべながら狙撃用のスコープをシートの後ろから引っ張るとメインモニター建物ばかりが映った。

 

「CSD6からウィスキードッグ・・・こちらからは敵のMSが視認出来ないが?」

 

「こちらウィスキードッグですぅ・・・コッチもアクティブソナーの範囲を越えてるので誘導が難しいですよぉ!」

 

ジオンのザクに発見されない位置に展開していたカスケード指揮車からミリィのそんな焦った声が聞こえて来ると・・・いざとイザっと時にイエーガーの二番機として待機していた以前アメリアが使用した陸ジムが起動し始めたので有った。

 

「ちょっとケイさんっ!何をやってるんですか!?」

 

「要は向こうで敵機の場所を中継したら良いんでしょう・・・!!」

 

そう答えたケイが陸ジムを起すとバーニアを吹かし中立地帯の町へと飛んで行くと・・・スッゲェなアイツ!?とまるでアメリアばりに無茶苦茶なケイの姿に三つ目のポイントで待機している第三小隊の名物コンビで有るタンク中尉とレティ曹長から呆れた声が上った・・・

 

「最初見た時は清楚な黒髪美人だったけど・・・コイツ良いや!」

 

そんな楽しそうな声を上げる上官にレティはまた始まった・・・と頭を抱えた。

 

「私が言うのも何ですが・・・ちゃんとした付き合いって有るんですか?」

 

「んっ?そうだな・・・因みにどこまで行ったら付き合った事になるんだ。」

 

そんな事言いだすダメな上官にもう良いです・・・と答えたレティはハァ・・溜息をつきながら次の指示を待つので有った・・・

 

 

~~~

 

 

「なあ隊長さんよぉ・・・さっさとこいつ等を殺してトンズラこいた方が良いんじゃね?」

 

足元で自分達ジオンの陸戦部隊と撃ち合っている中立地帯の自警団を見ながらザクがマシンガンを向けると何を言ってる伍長!とこの部隊を纏めている少尉のザクが慌ててそれを止めた。

 

「我らは略奪する為にここに来たのでは無いんだぞ!」

 

「MSでここに入った時点で・・下で起こってるのが現実だぜ?」

 

ヘヘっと笑った伍長がそう言いながら120ミリマシンガンをぶっ放すと丁度その下に居たショウ達に瓦礫の山が振って来た・・・

 

「マズイっ!?」

 

「早く逃げなきゃ!!」

 

「クッソ・・・ホントにツイて無い!!」

 

そんな声を上げる三人と一緒に付いて来たニノが慌てて駆け出すと・・・アメリアーーーっ!!と叫んだ陸ジムが上から振って来るとその瓦礫の山を背中で受け止めたケイはメインモニターに映る三人を見て安堵した様にハァ・・・と息を吐いた。

 

「何でケイが陸ジムに乗ってるんです!?」

 

「話は後!早くこの場から逃げて!!」

 

そんな焦った声を上げるケイが機体を起すと突然現れた連邦軍のMSにアメリア達を襲おうとしていた二機のザクが慌ててマシンガンを向けて来た・・・

 

「連邦軍だとっ!?」

 

「中立地帯には干渉しないじゃなかったんのか隊長さんよっ!!」

 

そんな声を上げながら120ミリマシンガンをぶっ放して来るザクからの銃撃にうわぁっ!?と三人が近くに有るビルの屋内に入ったの確認したケイは陸ジムの左手に有るショートシールドで受けながら後退すると角のビルで身を隠しながらアクティブソナーを展開すると続けてFCS(火器管制システム)を起ち上げる。

 

「武器武器武器!!・・・って何でこの機体にはハンドガンとヒートナイフしか無いのよ!?」

 

 

アメリアの好みで特務隊との模擬戦使用のままで有る近接特化の陸ジムに乗ってしまったケイはまったくもう!と半ばヤケクソでハンドガンとヒートナイフを両手に構えるとやるしか無いわね・・・と呟くと一気にフットペダルを踏み込んだ・・・

 

 

「たった一機だ・・・気を抜くなよ伍長!」

 

「分かってますって?どうもあのパイロットは女みたいだし・・・生け捕りにしてヘヘっ・・・」

 

「いい加減にしろ伍長!!」

 

何を考えているのかニヤつく伍長を窘めていた少尉がハァ・・・溜息をついているとピーっと鳴る接近警報に気付いていた時にはバーニアを吹かしたケイの陸ジムが伍長のザクにハンドガンを突きつけていた。

 

 

「えっ・・・嘘だろ。こんな所で俺が!!?」

 

メインモニターに映る銃口に伍長が慌て出すとドン!と言う発砲音と同時にその乗機が倒れると・・・なっ!?と驚き何が起きたのか理解出来ないのか少尉のザクがジリジリと下がり出す・・・

 

「コッ・・・コイツーーーっ!!?」

 

突然部下を失った恐怖からか120ミリマシンガンを撃ちまくって来るザクから身を隠したケイは勘弁してよね・・・チッと舌打ちした。

 

(勢いに任せて一機は倒したけどもう一機は難しいわね・・・)

 

 

後は増援が来る事を祈ったケイが牽制でハンドガンを撃っていると・・・

 

 

『こちらはリンです!カスケード隊の皆さん聞こえませんか!!?敵機は三機・・・陸戦部隊も沢山居てショウ達が・・・お願いです聞こえていたら返事を!!』

 

 

そんな必死なリンからの通信が聞こえて来たケイはまだもう一機居るの!?と慌て出した・・・

 

 

 




zくぁく・






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離れる二人・・・その8

外部との連絡をとる為にとアメリアの指示でリンは使った事も無い通信機器の前で四苦八苦しながらチャンネルを合わせていると初めてノイズでは無いクリアの受信帯に繋がったので有った・・・

 

(お願い繋がって・・・!)

 

 

アメリアから聞いていたカスケード隊との通信チャンネルに合っている事を確認したリンが祈る様に目を瞑っていると・・・

 

『こちらウィスキードッグ・・・その声はリンさんですよぇ!?』

 

「ミリィちゃんっ!?良かった・・・さっきの私の声が聞こえたんだね?」

 

カスケード隊のオペレーター担当で有るミリィ=タニグチ伍長の声が自分のヘッドセットに聞こえて来るとリンはハァ・・・と安堵した様に息を吐いた。

 

『ハイ!それよりもMSが三機居ると言うのは本当ですかぁ?』

 

「ええ・・・だから早く救援に来て欲しいのよ!」

 

『安心して下さい。もうすぐ傍で待機はしてるのでぇ・・・ってやっと来たぁ!!』

 

通信状況が悪いのか・・・ケイの陸ジムから送られて来たアクティブソナーの情報がミリィのモニターにアップデートされると、何?どうかしたの!?とリンは焦った声を上げた。

 

『大丈夫です。とにかくコッチで絶対に救出しますからリンさんはその場から動かずジッと待っていてくださいねぇ!』

 

「分かったわ・・・ミリィちゃん達も無理はしないでね!」

 

『了解ですぅ。それでまた後程・・・』

 

そう答えながらプチっとミリィから通信を切られたリンは愛する恋人と仲間達の無事を祈る様にギュッと手を組んだ・・・

 

 

~~~

 

 

「ケイが来たって事はカスケード隊も近くに居るって事ですよね・・・じゃあもうジープに向かう必要性が無くなった訳ですが・・・」

 

元々はカスケード隊と連絡を取りたいが為の強行軍だったのがまさかのリンがそれを成し遂げた為にアメリアは思案顔を浮かべた。

 

 

「町の住民はどうなってるんですかニノ?」

 

「一応非難はさせてるが・・・一部の住民がジオンの連中から中央広場に捕らえられてるみたいなんだ・・・」

 

不安そうな顔をする彼女から話を聞いたアメリアはじゃあ決まりですね。と携帯しているグロック17Lのマガジンを抜くと装弾数を確認した。

 

「おいおい・・・まさか俺達だけで救出に行くつもりじゃねえだろうなアメリア!?」

 

「そのまさかですよ。このまま放って置くわけには行きませんしね?」

 

そうニコっと笑みを浮かべるアメリアにああもう・・・お前って本当に!とチャーリーが頭を抱えた。

 

「僕もアメリアに付き合うよ。ニノにはリンへの婚約指輪を作ってもらわなきゃだし・・・」

 

「ショウまで・・・わーったよ!俺も行くぜ!!」

 

 

そう言いながら二っと笑みを浮かべるショウにチャーリーも呆れた顔をしたが二人の決意に頷いたので有る。

 

「お前らってホントに馬鹿だな・・・任務でも無いのにこんな町の為に・・・」

 

「私達は正義の味方ですからね・・・だから任務なんて関係無いんです。」

 

「やっぱり馬鹿だな・・・だけど私は好きだね。」

 

こんな軍人も居るんだと再認識したニノからククっと楽しそうな笑い声が浮ぶとじゃあ行きますか!とアメリアを先頭にショウ達は住民達が捕らわれている中央広場へ向かった・・・

 

 

~~~

 

「伝令ーーっ!連邦のMSがこの町に侵入しザクが一機撃破された模様です!?」

 

「そんな事はもう知っておる・・・」

 

慌てて駆けこんで来た部下に一喝したこの部隊の隊長は遠くに見えるケイの陸ジムと交戦中のザクを見てクッ・・・と顔を曇らせた・・・

 

「それよりも食糧の補給状況はどうなっている!」

 

「この町のレジスタンスの抵抗によって余り捗っておらず・・・現在は予定の半分以下と言った状況で有ります!」

 

部下からの報告に大体一週間分か・・・これでは合流地点までギリギリだな。と隊長が呟いていると・・・

 

「この人で無しが・・・地獄に落ちるといいよ!!」

 

捕らわれている住民の中からそんな老婆の怒声が上がったので有る。

 

「婆さんの言う通りだ・・・出ていけジオン!!」

 

「そうだ!そうだ!!」

 

補給と言っているがこれは明らかな略奪行為で有るジオンの所業に住民から抗議の上がり出すと、五月蠅い黙れ!?と動揺しだしたジオン兵達がライフルを構えだした・・・

 

 

「止せ!絶対に民間人への発砲は控えろ!?」

 

「コイツーー!!」

 

止めに入ろうとした隊長の頭部に住民が投げた石が当たると・・・

 

 

「貴様ーーーっ!!?」

 

と激高した兵士の一人がライフルのトリガーを引こうとした瞬間・・・パンっ!と乾いた音が響いた。

 

 

「へっ・・・生きてる?」

 

撃たれたと思った男性が恐る恐る顔を上げると何故か目の前には肩を撃たれたジオン兵がもがき苦しんでいた・・・

 

 

「連邦軍だ。全員動くな・・・!」

 

 

そう言いながら護身用のM37リボルバーを構えたショウが出て来ると・・・ああもう!と頭を抱えたアメリアとチャーリーにニノ達も仕方なく唖然としているジオン兵に向けてそれぞれ武器を構えたので有る。

 

 

「何で撃ったんですかショウ・・・?」

 

「人命救助なんだから仕方無いだろう・・・」

 

「それでこっからのプランは勿論有るんだろうな・・・」

 

「私は無い方に賭けるぞ。」

 

 

ショウ達の登場に一時は混乱していたジオン兵だったが冷静になった途端一斉にライフルを構えるとダダダっ!!と撃ちまくって来た。

 

「ホントにツイて無い!!?」

 

「ほら私の勝ちだな!!」

 

火力と人数に圧倒的差が有るショウが一目散に撤退指示を出すとデザートイーグルで援護するニノに言ってる場合ですかっ!?と焦った声が上ると・・・あそこだーーっ!!と叫ぶチャーリーの声に全員が木造りの建物の中に飛び込んだ・・・

 

「取り合えずヘイトがコッチに向いただけでも良しとしましょうかね・・・」

 

「それまでに救援が来ればいいけど・・・」

 

連邦軍と名乗った上に仲間を撃たれた所為も有りジリジリと包囲しながら距離を詰めて来るジオンの陸戦部隊にショウは苦笑いを浮かべた。



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離れる二人の距離・・・その9

 

ジオン兵と銃撃戦を行なっているアメリア達をモニター越しに確認したケイは正面のザクと対峙しながらヘッドセットを掴んだ。

 

 

「ケイからウィスキードッグへアメリア達がヤバいわ!支援出来ないの!!?」

 

『現在CSD4(ジャック〉とCSD5《レオン)が急行中ですぅ!そちらで対処は出来ませんかぁ!!』

 

「出来たらこんな通信してないわよっ!!?」

 

「伍長の仇だあぁぁっ!」

 

そう叫びながらヒートホークを振り上げるザクにケイの陸ジムがチッと舌打ちしながら両手に持ったヒートナイフで受け止めていると・・・聞こえるかケイ少尉!と自分のヘッドセットにCSD6(ユウヤ)の声が入って来た。

 

『僕が援護するからそのまま動くな・・・そこだ!』

 

シートの背後に有る精密射撃のスコープで狙いを定めたユウヤがサイドスティックのトリガーを絞るとケイの目の前でザクの頭部がビームによって撃ち抜かれた・・・

 

「こんな至近距離で援護なんて・・・!!?」

 

慌てたケイがそのままザクと距離を取ると・・・誤差下に0.2!と叫ぶユウヤにイエーガーもスコープを覗くが・・・ちょっと待て!?と焦った声が返って来たので有る。

 

『三機目だ!何故気付かなかったミリィ!!?』

 

『こんなにドンパチ音が響いてたら分かりませんってぇ・・・ケイさん三時の方向に新手ですぅ!!』

 

チッと舌打ちしたミリィからの指示に冗談っ!!?と焦ったケイは左右に挟まれたザクにハンドガンとヒートナイフを構えた・・・

 

「支援はまだなの!!?」

 

『俺が時間を稼ぐから離脱しろケイ少尉っ!!』

 

「だけどこのままじゃアメリア達が・・・」

 

イエーガーの陸戦型ガンダムが撃ったビーライフルによって二機のザクが慌てて後退しだすと、くっ!!悔しそうな声を上げたケイは一旦バーニアを吹かし二機のザクから距離を取った。

 

『コイツはヤバそうだな・・・おいレティ出せ!!』

 

『イエッサー・・・ガンタンク前進します。』

 

そう指示を出すタンクに操舵手のレティ曹長がフットペダルを目一杯踏み込んだ。

 

 

『CSD7からウィスキードッグへ!敵機の座標を送れ!』

 

『えっ?ウィスキードッグ了解ですぅ!』

 

すこし困惑しながらミリィのウィスキードッグとリンクしていた二人のガンタンクは彼女から送られて来たマップデータからタイミング良く中立地帯の町の中央に有るメインストリートでケイの陸ジムを仕留めようと追っている二機のザクを確認した。

 

 

~~~

 

 

「なっ・・・!?」

 

突然現れたタンクとレティ―のガンタンクに驚いた頭部を失った少尉のザクが慌てて120ミリマシンガンを構えたのだが・・・レティの操縦によって右にスライドしたガンタンクは既に120ミリ低反動砲を降ろし発射体制が整っていた・・・

 

「一番ファイヤー!!」

 

そう叫んだタンクがトリガーを引くと同時に少尉のザクは下半身が吹き飛びそのまま前のめりに崩れたので有った。

 

 

「少尉殿ーーっ!!コイツ・・・タンクもどきが良くも!!」

 

「全速で後退!!」

 

「分かってますよ!!?」

 

もう一機のザクが120ミリマシンガンを構えるの見てタンクとレティが慌ててガンタンクを後退させると、そうはさせるかよーーー!!と声を上げながらジャックの陸ジムがジムライフルを撃ちながら上から振って来た・・・

 

「これ以上の抵抗は止すんだな!」

 

「分かった・・・分かったから・・・!?」

 

先程の攻撃で被弾しジャックの陸ジムの前で頓挫したザクからパイロットが腕を上げて出て来ると、コッチも降参したみたいです。と先程タンクが大破させたザクにレオンから通信が返って来ると、後はアメリア達だけっ!!と叫んだケイは陸ジムのバーニアを吹かし戦闘中のショウ達の下へ飛んだので有った。

 

~~~

 

 

「どんだけ居るんだよこいつ等!!?」

 

ダダダッ!!とアサルトライフルを撃ちまくって来るジオン兵に対しM37リボルバーに最後の5発を込めるショウはチッと舌打ちした。

 

「ここは我慢比べですよショウ!」

 

そう答えながらアメリアがグロック17Lをドン!ドン!と撃ち始めると隣でUSPのマガジンを交換するチャーリーから嘆く様に叫んで来た。

 

「これじゃあジリ貧だぜ!?」

 

「もうすぐ助けが来る筈です・・・」

 

まだ諦めて無いのかチャーリーは真剣な顔をするアメリアにわーったよ!と返すと迫り来るジオン兵達に撃ち返した。

 

「もう弾が無いっ!?誰か38口径の弾丸を!!」

 

「しゃーねえな・・・コイツを使えショウ!」

 

そう言いながらニノから投げ渡された銃にショウは本当に良いのか!?と驚いた・・・

 

「良いから早く援護しろって!!」

 

「分かった・・・それじゃ遠慮なく!」

 

デザートイーグルを撃つ彼女の隣でCZ75を構えたショウはドンドンドン!と銃声を響かせると正面に居たジオン兵の肩を撃ち抜き沈黙させたので有る。

 

「相変わらずショウの銃の腕は凄いですね・・・!?」

 

速射で4~5人のジオンを倒したショウに驚くアメリアの隣でヒュー!とチャーリーから口笛を吹いていると・・・

 

 

「ジタバタするな!こちらは連邦軍だ。そちらのMSも全て撃破した・・・直ちに武装を解除し投降せよ!

 

外部スピーカーでそう警告しながら振って来るケイの陸ジムの姿にやっと騎兵隊が来ました様ですね・・・と呟いたアメリアはホントだね。と安堵するショウと共に銃を構えながら建物から出た。

 

 

「聞いての通りです。捕虜に対する処遇は約束しましょう。」

 

「分かった・・・投降しよう。」

 

MSを失った上にケイの陸ジムからハンドガンを向けられたジオン指揮官もこれ以上は無理だと判断すると部下の全員に武装解除をさせると、今回起きた中立地帯での突発的な戦闘はカスケード隊の鎮圧と言う事でどうにか収まったので有った・・・

 

 

 

 

 



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離れる二人・・・その10

 

 

 (何とか無事終わってホント良かったわ・・・)

 

戦闘も終わりそう思いながらケイ=キタムラ少尉がは膝を突かせた陸ジムのコクピットからワイヤーを使って降りていると、お疲れ様でしたっ♪とカスケード隊でメカニック担当を担当しているソフィー=ホワイト伍長が下から声を労いの声を掛けて来た。

 

「本当に疲れたわよ・・・って言うか何のよ!この飛んでもなく扱い難い機体は・・・!?」

 

「アメリアさん用のセットアップですからねっ?だけどアレだけ乗りこなせるって事はやっぱり・・・仲良しって事ですねっ♪」

 

アメリアとの事を言ってるのかソフィーからニコっと楽しそうな笑みが浮かぶと、別に仲が良い訳じゃ・・・とやはりどこかツンデレな所が有るケイが困った顔で手を振ったのだが・・・

 

 

「ケイーーーっ!!」

 

 

「何とか無事終わってホント良かったわ・・・)

 

戦闘も終わりそう思いながらケイ=キタムラ少尉がは膝を突かせた陸ジムのコクピットからワイヤーを使って降りていると、お疲れ様でしたっ♪とカスケード隊でメカニック担当を担当しているソフィー=ホワイト伍長が下から声を労いの声を掛けて来た。

 

「本当に疲れたわよ・・・って言うか何のよ!この飛んでもなく扱い難い機体は・・・!?」

 

「アメリアさん用のセットアップですからねっ?だけどアレだけ乗りこなせるって事はやっぱり・・・仲良しって事ですねっ♪」

 

アメリアとの事を言ってるのかソフィーからニコっと楽しそうな笑みが浮かぶと、別に仲が良い訳じゃ・・・とやはりどこかツンデレな所が有るケイが困った顔で手を振ったのだが・・・

 

 

「ケイーーーっ!!」

 

 

「えっアメリア・・・って、ちょっと!!?」

 

 

走って来たアメリアからそのままギュッと抱きつかれたケイは倒れそうになるのを必死耐えながら受け止めると、危ないじゃない!と注意されたアメリアからは全く謝るつもりが無いのかゴメンゴメン!と嬉しそうな顔が浮かんだので有った。

 

「そんな事よりも何でケイがケスケード隊と行動を共にしてるんです?しかもMSまで乗ってるし・・・」

 

「MSのパイロットが足らないって言うからちょっと手伝っただけよ。」

 

不思議そうに首を傾げるアメリアにフン!とケイが面白く無さそうに腕を組むと・・・

 

「いや・・・バリサム指令への裏工作から作戦の立案まで全部ケイ少尉が立てたましたよねぇ?」

 

「ちょっと!?何でばらすのよっ!!」

 

ホバートラックを背もたれにしながらニヤニヤとするオペレーターのミリィ=タニグチ伍長にケイが慌てながらツッコむとアメリアはそうだったんですね・・・と内心思うと再びケイに抱き着いた・・・

 

「ケイって私が困った時には絶対助けてくれますね・・・本当に大好きですよ。」

 

 

「私は嫌いよ!アンタと一緒に居ると絶対にトラブルに巻き込まれるんだからね!!?」

 

 

そう嫌そうするケイにまたまたー♪とじゃれ合うアメリア達を見ながら彼女と同じ様にどうにか生き延びたショウとチャーリーが楽しそうに笑っていると・・・ハッハッ!と息を切らしながら綺麗な黒髪を靡かせた女性が二人の目に映り込んだ。

 

「リン・・・!?」

 

そのまま自分の胸に飛び込んで来たリンを受け止めるとショウはポロポロと涙を流している彼女の姿にギョッとした・・・

 

「一体どうしたんだよ・・・僕なら何ともないって?」

 

「だって・・・ショウに何か有ったらって考えたらずっと不安になって・・・それでショウの顔をみたらつい・・・」

 

心配かけてゴメンなリン・・・とショウが安心した所為か涙が止まらなくなったリンの頭を撫でていると・・・ちょっと良いか二人とも?と今回の戦闘で色々と手助けしてくれたここ中立地帯自警団を纏めているニノから声を掛けられたので有る。

 

 

「今回の件は本当に助かったよ。お礼とは言っちゃなんだが指輪の方は格安で用意してやるからな。」

 

「本当に!?良いのかニノ・・・?」

 

「無理しなくても良いのよ・・・」

 

「良いんだよ。お前さん達のお陰で少し建物が壊れたのと怪我人が出たくらいで済んだからな・・・それとコイツは私からの婚約祝いだ。」

 

困った顔をする二人にニカッと笑った彼女はショウに先程貸したハンドガンを目の前に出したのだ・・・

 

「これって・・・」

 

「良いから受け取れって?どうせこんなマニアックな銃なんか置いといても売れないからな。」

 

「・・・ありがとう。大切にするよ。」

 

「ヘヘっ・・・本当ならもっと気の利いた贈り物をするんだろうが私は見ての通りだからな・・・その代わり指輪の方はバッチシやっとくから楽しみにしてろよ!」

 

そう言いながらニノが手を振りながら町の中に帰って行くと頼んだぞ!と手を振り返すショウと一緒に手を振っていたリンからはあ・・・と内心困った様に溜息をついていた事を知らないショウはニコニコとしながらその手をギュッと握ったので有った・・・



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離れる二人・・・その11

 中立地帯の町で起こったジオンによる襲撃事件から一週間が過ぎた。

 

無断外出していた三人を守る為にケイのでまかせで威力偵察をしていたとなったショウ達では有ったが・・・やはり基地指令のバリサムにはそれとなく分かっていたらしく恩情と言った形で一週間の基地から外出禁止と言う処分が言い渡されたので有る。

 

そんな常連の三人が来ない夕方・・・CASCADEのカウンターに座って居た基地管制官のマリア=トパレス曹長は目の前で溜息をつく友人のリンを見ながら飲み干したビールジョッキを置いたのだ。

 

 

「ねえ・・・その辛気臭いの止めてくんない?」

 

「別に良いじゃない私の店なんだから・・・」

 

そう答えながらお代わりのジョッキを置くリンにまったくもう・・・とマリアは呆れた顔を浮かべた。

 

「ショウに会えないのは分かるけどさ・・・本来なら無断外出なんかしたら営巣入りなのよ?」

 

「その事はマリアから聞いてバリサムさんにも感謝してるけどそうじゃないの・・・」

 

「一体どうしたのよ・・・相談なら乗るわよ?」

 

 

困った顔を浮べるリンにマリアが首を傾げると・・・じゃあ聞いてくれる?とリンはこれまでの経緯を思い切って話し始めた・・・

 

 

「へえ・・・ショウが指輪をね・・・良いじゃない早く結婚したら?」

 

「ちょっと・・・他人事みたいに!」

 

「実際に他人事だしね。」

 

そうアハハ!と笑い出すマリアに相談する相手を間違えたかな・・・とムスっとしたリンが腕を組みだすと・・・だけどね。とマリアは急に真面目な顔を向けた。

 

「これは前にアメリアにも言ったけど・・・イザって言う時の事を考えるとちゃんとショウとは籍を入れていた方が良いわよ?」

 

「マリアの前で言うのは何だけど・・・ショウが戦死する前提で話すの止めてくんないかな!?」

 

「バカね・・・いつ死ぬか分かんないパイロットと一緒になるつもりが有るんならちゃんと考えて置かないとダメよ!」

 

ショウやチャーリーと同期で有る戦闘機パイロットだった自分の旦那を亡くした彼女だから言えるのだろう・・・分かってるつもりでは有るけど。とリンは顔を俯かせた・・・

 

「良い?ウチの旦那も絶対に死なないからって言った癖に死んだのよ。ショウの事が好きなんだだったら迷ってないで結婚しなさい。最悪の場合は自分と子供が暮らせるくらいは軍が保証してくれるからね。」

 

「だからそう言う前提で話すの止めてよマリア!!?」

 

悩みごとを話して少しは気が晴れたのかリンからの怒声に冗談だって?とマリアがフフッと微笑んでいると・・・カランコロンと鳴るカウベルと同時にドアが開くとイエーガーを先頭にジャックとタンクと言ったカスケード隊の小隊長トリオが現れた。

 

 

「三人共いらっしゃい♪マリアの隣で良い?」

 

 

そう言いながら案内するリンの向こうでマリアが手を振り出すと珍しいな・・・?と驚いたイエーガー達はマリアを挟む様に両隣の席に座った。

 

「それにしても奴等が居ないとこの店も静かだな・・・」

 

「確かにね・・・さっきもリンからショウが居ないって愚痴を聞かされてたんだ?」

 

「ちょっ!違う・・・もうマリアったら!!」

 

 

嘘では無いが真実でも無いマリアからの冗談にリンが困った顔をしていると・・・所でよ?とジャックが話を切り替えた。

 

 

「リンとショウの事もだけど・・・イエーガー達の送別会をしねえか?」

 

「そういや・・・そろそろ本社に向かわないといけねえんだよな。」

 

 

MS試験部隊を統括しているジョン=コーウェン准将から辞令で地球連邦軍の本部が有るジャブローに向かう事になっているイエーガー率いる第一小隊にジャックとタンクが思案顔を浮かべた。

 

「どうせならパーッとここで纏めてやらねえか・・・お前達の婚約発表と送別会をよ?」

 

「ちょっとまって・・・まだ私っ!?」

 

タンクからの提案にまだ迷っているリンが慌てて両手を振り出すと・・・それ良いわね!と推して来るマリアにリンはジロっと睨んだ。

 

「ちょっとマリアっ!?」

 

「諦めなって・・・皆がアンタ達の事を祝おうとしてるんだからね?」

 

 

そう言いながらもニヤニヤとこの状況を楽しんでいる様子の彼女にリンはハァ・・・と今日何度目かの為良いをついたので有った・・・・

 



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離れる二人・・・その12

「えっ・・・私達の送別会を今日リンさんの店でするんですか!?」

 

「うん。今日の19時にやるから遅れないでよね。」

 

そう淡々と言いながらケイがA定食のお味噌汁を啜ると・・・また突然ですね?とアメリアは向かいのケイを見ながらB定食の生姜焼きを口に運んだ。

 

 

「タンクとジャック中尉の主催らしくてね。私も昨日タンクから聞いたのよ?」」

 

 

「へえ、レティ曹長からも二人が良い感じとは聞いてましたが・・・上手く行ってる様で良かったですね。」

 

 

そんな嬉しそうな顔を浮べるアメリアにそんなんじゃないからね!?と慌てたケイがお箸で指を差されたアメリアは違うんですか?と首を傾げながら白米の入ったお椀を取った。

 

「違うわよ!って言うか・・・急にアプローチを掛けられて逆に困ってるんだけど・・・」

 

「本当にイヤなら士官学校の時にナンパしてきた男子生徒みたいに投げ飛ばしたらどうです?」

 

「別にイヤって訳じゃないんだけどね・・・って言うか投げ飛ばしたのは酔ったアンタが先におっぱじめたからじゃない!!」

 

困った顔をされたケイからツッコまれたアメリアはそうでしたっけ・・・?と誤魔化す様にクスクスと微笑んだ。

 

(でも嫌いじゃ無いんならこれは時間の問題ですね・・・ケイってば年上好きですし♪)

 

そう思いながらニヤニヤと笑みを浮かべるアメリアを見たケイから・・・何よその顔は!と睨まれたアメリアは何でも有りませんって!?と慌てて両手を振り出した・・・

 

「まあ良いけどね・・・所でちょっと小耳に挟んだんだけど、アンタ達カスケード隊が向かうマドラス基地方面で何だか動きが有るみたいよ?」

 

「動きとはまた嫌な予感で一杯ですね・・・」

 

お互い食べ終わり食後のお茶を飲みながらアメリアが尋ねるとまあね・・・と情報部との連絡役でも有るケイからジオン地上軍最大と言われるオデッサ鉱山基地の話を聞かされたアメリアは飲んでいたお茶を拭き出そうになったのだ。

 

 

「オデッサって・・・私達が経由するインドに有るマドラスに有る基地からちょっと北に有る所ですよね!?」

 

 

「うん。この反抗作戦の指揮官はレビル将軍って話だからコーウェン准将の実験部隊管轄下で有るカスケード隊には関係ないとは思うけど・・・一応ね。」

 

そう心配そうな顔を向けて来るケイに助かります・・・とアメリアは苦笑いを浮かべた・・・

 

「また何か情報が入ったら伝えるわね?」

 

そう言いながら席を立つケイにお願いします。と頭を下げたアメリアはじゃとケイがと手振るのを見送るとまた面倒臭い事になりそうですね・・・と深い溜息をついたので有った。

 

 

~~~

 

 

「は~い・・・オーライオーライ・・・ストップですっ!!」

 

 

カスケード隊がジャブローへと向かう日が迫っている中・・・彼らの乗機で有るRGMー79「G」陸戦型ジムのメンテを終わらせミデアへの積み込み作業を終えたソフィーはその場でへにゃっとへたり込んだ・・・

 

「やっと終わったぁ・・・」

 

ソフィーちゃんお疲れさん、後は俺っちがやっとくから夕方まで休んでて良いからさ?」

 

今晩CASCADEで行われる送別会の事も踏まえているのか整備主任のシゲ曹長の言葉に甘えたソフィーはありがとうございますっ♪とお礼を言いながら立ち上がると早速食堂へと歩き出した。

 

「確か今日の日替わり定食はA定の塩魚とB定の生姜焼きだった筈っ・・・どっちにするか悩むなぁ?」

 

そう思案顔を浮かべながら独り言ちるソフィーがハンガーを出ようとした瞬間に誰かとぶつかると・・・

すみませんっ!?と慌てて頭を上げだすソフィーにソフィーじゃないか?とカスケード隊の中隊長で有るイエーガー=バスネルン中尉から驚く声が上った。

 

「おっ丁度良かった。ソフィーが今から昼飯なんで・・・いつもみたいに頼みますね中尉?」

 

 

そう言いながら奥に有る予備機の陸ジムへ向かう整備班のシバ=シゲオ曹長を待て待て!?とイエーガーは慌てて引き止めたので有る。

 

 

「何で俺がコイツの食事をいつも面倒を見ないといけないんだっ!!?」

 

 

「だってほら・・・?」

 

 

そんな呆れた顔を向けて来たシゲはイエーガーの袖を引っ張っているソフィーを見ると苦笑いを浮かべた・・・

 

 

「おやっさんも心配してる様ですし・・・色々と頼みますよイエーガー中尉・・・?」

 

 

「ちょっと待て・・・色々ってどう意味だ!?」

 

 

「それはご自分で察して下さいよ・・・」

 

そう言いながら手をヒラヒラとさせながらシゲが立ち去ると・・・面倒見の良いイエーガーは早くご飯に行きましょうよっ?と言って来るソフィーに頭を抱えた。

 

 

「分かったから今日は程々に頼むぞ・・・?」

 

 

「ハイ!お代わりは三回にしておきます♪」

 

 

そしていつも何だかんだ言いながら奢ってくれるイエーガーに甘えてソフィーがエヘヘと笑っていると・・・

 

 

『程々にしてやれよ・・・?』

 

 

そう言いながら基地の外にパトロールへと出て行く第二小隊長のジャックからククっと二人を揶揄う様に笑われたのだ。

 

 

「うるせえな・・・お前こそ俺達の送別会までには帰って来いよ!」

 

『はいはい・・・そっちこそ俺達が戻るまでに酒と料理を残しといてくれよな?』

 

そう怒鳴るイエーガーにジャックの陸ジムが手をヒラヒラと振りながらレオンとユウヤを連れてハンガーから出て行ったので有った。

 



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離れる二人の距離・・・その13

 そんなドタバタとしたトリントン基地から少し離れた砂漠のど真ん中でとある三人が怪しげな取引らを行っていた・・・

 

 

「これが依頼されたブツだ・・・間違い無いな?」

 

「ああ・・・確かに受け取った。」

 

綺麗な顔立ちだが多数のピアスと腕に彫られたタトゥーを持つ女性との取引が成立したのか黒髪の青年は相棒で有る金髪へコッチに車を回す様に手で合図した・・・

 

「流石に言うだけ有って上質だな・・・ニノ?」

 

「誰に言ってんだよ・・・それに今回はお礼も兼ねてるから相当気合いを入れてカットしたんだぜ?」

 

 

そうニヤニヤと満足気な顔でニノはショウとチャーリーがリンとアメリアへと渡す指輪を見せて来た。

 

「リンの誕生石がルビーでアメリアが翡翠石で良かったんだよな?」

 

「ありがとよニノ・・・これならアイツも喜ぶぜ!」

 

そんな声を上げるチャーリーにサンキュー!とショウも満面の笑みを浮かべると、じゃあ出しな?と喜ぶ二人の余韻を消し去る様にニノが右手を出した。

 

「お前ってホントに金に五月蠅いな・・・」

 

「何言ってんだい・・・こちとら商売でやってんだよ!」

 

「それは分かるけどよ・・・ちょっと高すぎやしねえかニノ!?」

 

指輪を買う為にとあっと言う間に溜めていた貯金の半分が消えたショウとチャーリーから不満そうな声が上ると・・・仕方ねえな。とニノは腕を組んだ。

 

「その代わりと言っちゃなんだけどさ・・・最近この辺りで物資不足のジオン兵が暴れ回ってるらしいんだ。」

 

中立地帯の町を纏めるニノからの情報に驚いたショウとチャーリーは顔を見合わせた・・・

 

「それって・・・この前ニノ達を襲った中立地帯の奴等とは別のって事か?」

 

「ああ・・・それなんだけどよ。どうも・・・西側の町も被害に有ってるらしいんだ。」

 

そう顔を曇らせるニノに事情を察知したショウとチャーリーは顔を強張らせた。

 

「聞いては居たけど・・・ジオンの奴等め・・・」

 

「勝手な理由で攻め込んで置きながら略奪とか有り得ないだろっ!!」

 

そう憤慨する二人落ち着けって?とニノが宥めていると・・・ピーピーと鳴るジープの無線機に気が付いた。

 

 

「基地からじゃないのか?」

 

首を傾げるニノに一体なんだ・・・?と不審気にチャーリーがマイクを取ると、大変ですっ!?とアメリアの焦った声が聞こえて来たのだ。

 

「おいおい一体どうしたんだよアメリア・・・?」

 

『今しがた基地へと第二小隊のミリィから救援を求める通信が入ったと管制塔のマリア曹長からコッチにコールが入ったんです!』

 

「救援って事は第二小隊が攻撃を受けてるって言うのかよ!!」

 

『詳細は不明です・・・こちらからの呼びかけにミリィが一切応じないんですよ!!?』

 

そんなアメリアからの切羽詰まった説明に冗談だろっ!?と声を上げるチャーリーに出すぞチャーリー!!とショウがジープのエンジンを掛けるとチャーリーはすぐに戻るぜ!とアメリアとの通信を切ると助手席へとのりこんだ。

 

「何だかトラブルみたいだけど・・・無茶はすんじゃ無いよ!」

 

「ああ、それと今晩はリンの店でパーティーをするからお前も絶対に来いよニノ?」

 

「分かったよ。最高の酒を持って来てやるからな。」

 

そう言いながらグッドラックと親指を立てるニノに見送られながらショウはアクセルを吹かすとジープを急加速させながらトリントン基地へと戻って行った・・・

 

~~~

 

 

「推進剤の補充急げーーーっ!!それとブルパップマシンガンの予備マガジンはどうなってやがる!!」

 

「現在準備中ですってぇおやっさん!?」

 

「チンタラしてる奴はここオーストラリア大陸の砂漠にち埋めちまうぞ・・・さっさと起動準備を始めやがれ!!」

 

まるで戦場の様にハンガーの中をバタバタと走り回るホワイト大尉率いる整備班の姿をアメリアはイエーガーと共に苦笑いを浮かべながら眺めいていた。

 

「まさかここでリンス達が置いて行ったジムが役に立つとは皮肉ですね・・・」

 

「俺達の機体は既にウォルフ大尉のミデアに積み込みらしいからな・・・?」

 

因縁の有る元上官の機体に頼る事となり複雑そうな顔を浮べるアメリアに対しそう答えたイエーガーも困った様にガシガシと頭を掻き始めた。

 

 

「せめて予備機の陸ジムでもと思ったんですけどっ・・・先日の戦闘でまだメンテが終わって無くてっ・・・」

 

「そんな顔をしない下さいよ・・・ミリィと通信が出来ない以上は私も陸ジムに乗れませんからね・・・?」

 

そんな申し訳なさそうな顔をするソフィーにアメリアがフォローを入れていると・・・悪りぃ!!と叫ぶチャーリーがショウの運転するジープでハンガーの中に飛び込んで来た・・・

 

 

「それで状況は!!?」

 

キュキュ!とタイヤを鳴らしながら急停車したジープから飛び降りたチャーリーはショウと共にアメリアとイエーガー達へと駆け寄った。

 

 

「あまり芳しく無いです・・・通信途絶する前にミリィと交信したマリア曹長からの報告によると墜落するミデアを見た。と言う報告を最後に一切返事が返って来ないそうです・・・」

 

 

「マジかよ・・・」

 

後輩で有るミリィの事が心配なアメリアの浮かない顔にチャーリーも暗いを顔を浮べていると・・・所でさ?とショウは大忙しでリンス達が使っていたRGM-79・・・量産型ジムの整備をしているホワイト達整備班に首を傾げたので有った。

 

「ひょっとしてリンス達が使っていたジムで出撃とか言わないよなアメリア?」

 

「そのまさかです。まあ・・・操縦系のレイアウトは陸ジムと同じと聞いてますから問題は無い筈ですよ?」

 

「いやそれは知ってるけど・・・何かヤダな。」

 

「俺もだぜ・・・」

 

気分的な問題なのか・・・ショウとチャーリーがとてつもなく嫌そうな顔を浮べると、良いから準備しやがれ!と二人を小突いたイエーガーも内心嫌なのか溜息をついた。

 

「それで・・・目的地まではどうやっていくんだアメリア?」

 

「それに関してはブラックウィドウ隊のミデアを借りれないかウォルフ大尉がヒルダ中尉と交渉中です。」

 

 

それを聞いてイエーガーはまた空挺作戦か・・・と苦笑いを浮かべたので有った。

 

 

 

~~~

 



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離れる二人の距離その14

『こちらトリントンコントロール・・・ブラック・ウィドウへA滑走路への侵入を許可します。』

 

「ブラック・ウィドウ了解・・・タキシングを開始するぞい。」

 

管制タワーのマリアからの指示に黒く塗装されたミデアの操縦桿を握るアレクサンダー=ウォルフ大尉は滑走路の手前で機体を止めると次の指示を待ちながら離陸前に行う最後のシステムチェックをし始めた。

 

「しかし・・・しっくりこんなぁ・・・」

 

「借り物の機体なんですから無茶は厳禁ですよ大尉?」

 

隣から聞こえて来る心配そうな副操縦士で有る少尉の声に分かっておる!とウォルフが答えていると離陸準備良いですかブラックウィドウ?と管制官のマリアから通信が入った。

 

「こちらブラックウィドウ・・・全てオールグリーンじゃぞ!」

 

『了解ですブラックウィドウ・・・それとミリィ達の事を頼みます・・・』

 

「それは嬢ちゃん達に言うんじゃなマリア・・・ワシの役目はこ奴等を無事に運ぶのが仕事だからのう?」

 

そう言いながらウォルフからワーハッハッハッと大笑いされたマリアはそれもそうですね。とクスっと微笑んだ。

 

『それではアメリア達にさっきの伝言をお願いします。』

 

「分かった・・・それじゃあそろそろ出るぞいっ!!」

 

マリアからの言付けを預かったウォルフがスロットルを全開にすると、ブラックウィドウへ離陸を許可します。と聞こえて来たマリアからの通信にウォルフはブレーキを解除すると滑走路を加速し始めた・・・

 

 

「V1、V2・・・テイク・オフ!!」

 

「行っくぞい!」

 

計器の数値を読み上げる副機長の声に応じてウォルフが操縦桿を引くと・・・どうか全員無事に帰って来てね?と離陸して行ったカスケード隊を乗せた黒いミデアを見送ったマリアは祈る様に両手をギュッと握ったので有った。

 

 

~~~

 

 

「さてと・・・それじゃブリーフィングと行きますかね。」

 

 

ウォルフが操縦するミデアが水平飛行に移った所で始まったブリーフィングにアメリアは早速苦笑いを浮かべた。

 

「ジャック達の第二小隊との通信が途絶えたのはここです。その直前に墜落したミデアを見つけた。とミリイからの通信が入ってから既に一時間以上経ってます・・・」

 

 

「その言い方じゃジャック達が全滅した様に聞こえるぞアメリア・・・?」

 

 

そんな抗議の声を上げるイエーガーにですが・・・と答えたアメリアは顔を伏せた。

 

 

「ミリィと連絡がつかない以上・・・最悪の事態を想定していた方が絶対に良いと私は思います。」

 

 

「それはそうだが・・・」

 

 

軍人として死と隣合わせと言うのは重々承知で有るイエーガーからムスっとした顔が浮かぶと、なあ・・・もうちょっと前向きに考えねえか?とチャーリーから手が挙がった。

 

 

「ミリィのホバーと連絡がつかないのも何かのトラブルかも知れねえだろ。」

 

「僕もチャーリーの意見に賛成だね・・・生きている前提の方がモチベーションも高いし」

 

合わせて意見を述べて来るショウにそれはちょっと違うんじゃね・・・?とチャーリーがツッコみだすと・・・バシッとアメリアから自分の頬を叩く音がブリーフィングルームに響いたのだ・・・

 

「すみません・・・そうですよね。ジャック達の事をちょっとネガティブに考え過ぎてたようです。」

 

「そりゃあ良かったぜ・・・それでどうするよ指揮官様?」

 

 

そう言いながらチャーリーが揶揄う様にククっと笑っていると・・・そろそろ当該空域に入るぞい!と聞こえて来たウォルフからの機内放送にハッとしたアメリアはすぐに指示を飛ばし始めた。

 

 

「今回の作戦は第二小隊の救援がメインです!もしジオン機と遭遇した場合はくれぐれも戦闘を行わずに離脱に専念する様に・・・良いですね?」

 

 

「「「イエス・マム!!!」」」

 

アメリアの言葉にショウ達三人がMSデッキへと駆け込んで行くのを見送りながらアメリアも無事で居て居て下さいね・・・とミリイを心配しながらその後を追った。

 

 

 

~~~

 

 

 

「チッ・・・かなりミノフスキー粒子が濃い様ですね。」

 

 

「これじゃあ基地との通信は無理の様じゃな・・・」

 

 

隣の副機長から聞こえるボヤキ声にウォルフがノイズしか聞こえないヘッドセットの通信チャンネルを変えようとした瞬間・・・ピピピっ!とロックオンアラームが鳴り響き出した。

 

 

「大尉っ!!?」

 

 

「任せろいっ!!」

 

 

焦る声を上げる副機長に向かってそう叫んだウォルフは目一杯右足のフットラダーを踏み込むと操縦桿を思いっきり右に捻りミデアを急旋回させると、ちょっとウォルフ大尉!?とMSコンテナのアメリアから抗議の通信が入って来た。

 

 

「悪いがちょっと口を閉じてた方が良いぞい・・・」

 

 

『敵機の攻撃なら早く射出して下さい!』

 

 

「こんな状況で出来る訳無かろう!?」

 

 

無茶を言うアメリアを叱咤したウォルフの操縦するミデアはチャフ発射!と叫ぶ副操縦士によって発射された金属板によってロックオンが外れると至近距離で地上から撃たれたと思われる弾頭が炸裂したので有る・・・

 

「レーダー!一体どこから撃って来たんじゃ!?」

 

「ミノフスキ粒子の濃度が高い為曖昧ですが・・・恐らくカスケード隊第二小隊と通信が途絶したポイントの近くです!」

 

レーダー官からの報告にコイツは厄介じゃのう・・・と呟いたウォルフは同じ思いなのかコクっと頷く副機長を見た。

 

 

「悪いが・・・一旦離脱するぞい?」

 

 

『何故ですか!?』

 

 

「このまま降ろすのはリスクが高すぎるんじゃ・・・どうか分かってくれんかのう嬢ちゃん?」

 

 

補給部隊として積み荷を無事に運ぶ事を信条にしているウォルフの事を知っているアメリアは分かりました・・・と頭を抱えながら答えた。

 

『ならば・・・少し離れたこのポイントで降ろしてくれませんか?』

 

「了解した。無理を言ってスマンが・・・頼むぞい!」

 

 

そう言いながらミデアを旋回させたウォルフが指定のポイントでハッチを開いた・・・

 

「それでは皆さん・・・準備は?」

 

ウィーンと開くハッチを見ながらウィスキードッグに搭乗するアメリアが首を傾げた。

 

 

「いつでも!」

 

「どこでも!!」

 

「行くぞっ!!!」

 

そんな声を上げるショウ達三人が搭乗したRGM-79量産型ジムはウォルフの操縦するブラックウィドウから射出されるとオーストラリア大陸に広がる白い砂漠へと降下して行ったので有った。

 



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離れる二人距離その15

 

 そしてそんな一方・・・音信不通となっていたジャック率いるカスケード隊第二小隊は少し小高い丘に不時着したミデアを中心に下から様子を伺っているジオンのMS部隊と睨み合っていた・・・

 

CSD4(ジャック)から各機へ残弾数を報告しろ!」

 

『こちらCSD5(レオン)、マシンガンの残弾は今のと合わせて残りマガジン2つ!』

 

CSD6(ユウヤ)はバズの残弾3に100ミリマシンガンのマガジン一個のみですね・・・』

 

ヘッドセットから聞こえて来る部下からの報告にジャックはチッと舌打ちした。

 

「俺も残りはこれを入れて残りのマガジンは二つだけだ・・・」

 

FCSで確認したジャックがこれからどうするか思案顔を浮かべ出すと、あのジャック隊長・・・?と二番機のレオン機から不安そうな声が聞こえて来た・・・

 

「こんな状況で本当に基地からの援軍は来るんですかねぇ・・・」

 

「分からん・・・だがその為にミリィが頑張ってるんだから俺達の使命はあのミデアを守るだけだ!」

 

こんな絶望的な状況にも関わらず諦めないジャックの声に多少は士気が上がったのかレオンから了解!と力強い返事が返って来ると、頼むぞミリィ!とジャックの陸ジムは奮闘している彼女が居るミデアの方を少しだけ見るとすぐに正面に展開する敵MS部隊にジムライフルを構えたので有った。

 

 

~~~

 

「どうです・・・直りそうですか・・・?」

 

「メインは生きてるから多分・・・落ちた衝撃で基盤のどれかが死んだだけだと思うですけどねぇ・・・」

 

墜落した時した怪我をしたのか・・・ミリィは頭に包帯を巻いた不安そうな大尉にそう答えながら潜り込んでいたミデアの操縦席から出て来るとすぐにコクピットの横に有ったボックスの蓋を開けた。

 

「えっとぉ・・・これかなぁ・・・?」

 

「お若いのにお詳しいんですね・・・!?」

 

自分よりも随分と若い伍長・・・しかも女性で有るミリィの手際の良さに機長の大尉が驚いていると、姉の影響なんですよねぇ・・・とミリイは苦笑いを浮かべた。

 

 

「それよりも・・・ウチの部隊が持つかが問題ですねぇ・・・?」

 

「大丈夫です。こうしてあなた達の部隊が我々を助けに来てくれたんです・・・絶対に神は私達を見捨てない筈です。」

 

そういう宗教を信じてらしい真剣な顔をする機長にミリィはだと良いんですがぁ・・・と苦笑いを浮かべながらつい一時間前の事を思い返した。

 

 

~~~

 

 

定期パトロールの為にトリントン基地から出撃した第二小隊はスケジュール通りルートの索敵をしながらぐるっと基地に戻る予定だったのだが・・・その途中でミリィが操縦するウィスキードッグⅡにピピッと反応が入ったのだ。

 

 

「ウィスキードッグⅡから第二小隊全機へセンサーに感有り・・・」

 

そう言いながら停車する彼女のホバートラックにジャック達の陸ジムも立ち止まると、おいミリィ!と先頭のジャックの陸ジムが上空を飛ぶミデアを確認した・・・

 

 

「アレじゃ無いのかミリィ?」

 

「いや・・・これはMSの熱源ですぅ!!」

 

ミリィがそう叫んだと同時に上空を飛んでいたミデアが下から攻撃を受けたので有る。

 

「なっ!!?」

 

「こちらウィスキードッグⅡ!トリントン基地へ至急・・・友軍機の墜落を確認ですぅ!?救援部隊の要請をっ!!」

 

 

『え・・・リィ!?ノイズが酷・・・上手く聞き取れないわ・・・もう一度・・・』

 

恐らくマリアらしいノイズ混じり声がミリィのヘッドセット聞こえて来ると冗談っ!?と焦った彼女は運転席のキーボードを咄嗟に叩いた。

 

 

「ミノフスキー粒子が戦闘濃度にまで上がってるぅ!!?」

 

「マジかよ・・・それじゃあ基地と連絡が取れないってか!」

 

「ううん・・・一応マリア曹長にはコッチのピンチは伝わったと思うよぉ?」

 

そう言いながらミリィが首を傾げると、それを信じるしかねえな・・・とモニター越しでジャックは困った様に頭を掻き出した・・・

 

「CSD4から各機へこれより墜落したミデアの捜索に向かう。恐らく敵機との戦闘も有るから気を引き締めろよ!」

 

「了解・・・CSD5はそんなジャック隊長の正義感の強い所が好きですよ?」

 

「CSD6も同じくです。」

 

そう答えながらニヤニヤと笑って来るレオンとユウヤに向かってジャックからうるせえ!と怒鳴り声が上ると・・・ジャックっ!!と叫んだミリィのセンサーに突如ピーっと反応が出るとヒートホークを構えたザクが現れたのだ。

 

 

「チッ・・・!!」

 

「隊長伏せてぇーーー!!」

 

そう声を上げるレオンのジムが撃ったバズがうおっ!?と驚くジャックの陸ジムの頭をスレスレに通り抜けるとヒートホークを振り降ろそうとしたザクの頭部を吹き飛ばした・・・

 

「危ねえだろユウヤっ!?」

 

「助けてあげたんだから文句言わないで下さいよ!!」

 

「喧嘩は後!さっきの通信を傍受されたのか敵機の反応がどんどんコッチに集まって来てるよぉ!」

 

アクティブソナーで周囲の索敵を終えたミリィが二人を窘めながら離脱しようとした瞬間にピーっと鳴るMSの接近アラームと同時にホバートラックの操縦席からバチっ!と火花が上がったのだ・・・

 

「ミリィーーー!!」

 

突如現れた青いMS・・・MS07グフが放ったヒートロッドの高電流により動きを止めたウィスキードッグⅡにジャックが焦って叫ぶ中・・・一体何が!?と全くエンジンが掛からなくなり無線も使えなくなったミリィはホバーを諦めると上部銃座からグフと対峙しているジャックの陸ジムに向かってジャックぅーーー!!と叫んだ。

 

『ミリィ!?良かった・・・怪我はないんだよな』

 

「無いけどホバーは無理っぽい!!」

 

外部スピーカーでそう答えて来るジャックにミリィが大きく手を振ると、ここは自分が!とグフにむかって牽制射撃をする二番機のレオンの陸ジムと入れ替わりながらジャックは陸ジムの左手をホバートラックへと向けた。

 

「しっかり掴まれよミリィ!」

 

「うんっ!!」

 

ジャックの言う通りミリィが陸ジムの指にしがみ付くのを確認したジャックはフットペダルを踏み込んだ・・・

 

「全機離脱するぞ!!一斉射ーーー!!!」

 

バーニアを吹かすジャックと同時にレオンとユウヤの陸ジムがマシンガンとバズーカーを撃つと、流石に一機じゃ無理と判断したらしいグフも離脱して行くのを確認すとジャック達は不時着したミデアとどうにか合流を果たした・・・

 

だが・・・その時の墜落で乗組員は無事だったがミデアの通信機が破損していので

学生時代に電気工学を専攻していたミリィが修理に志願したのだ。

 

(これさえ直れば先輩達・・・第一小隊とも通信が繋がる筈!)

 

無茶な指示ばかりだが仲間想いのアメリアの筈・・・絶対に救援に向かっていると信じていたミリィは焼けた基盤の交換を急いだので有った・・・

 

 

 

 

 

 

 



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離れる二人の距離その16

 

 「そろそろ通信が途絶えた位置だな・・・」

 

ミリィが祈った様に実際に近くに降下したカスケード隊第一小隊はイエーガーの量産型ジムを先頭にアローフォーメションを組みながら第二小隊をロストしたポイントと進んでいた。

 

「この辺りはミノフスキ粒子が高すぎてレーダーがほとんど役に立ちませんね・・・」

 

「って事はそれが原因でミリィと連絡がつかないとかっ?」

 

 

メカニック兼ホバーの操縦担当でも有るミリィからそんな声が上ると、まあ・・・それも有るでしょうね。と最悪の事態を想定しながらアメリアが靄かかったレーダーからサーマルサンサーにモニターを切り替えていると・・・こちらCSD1!とイエーガーから緊張する声がヘッドセットに聞こえて来た。

 

「どうかしたんですかイエーガー・・・?」

 

「アメリアさんっ!!アレ見て下さいっ!?」

 

そう言いながら急ブレーキを踏むソフィーに一体何が・・・と彼女が指差す操縦席の窓の向こうにこのウィスキードッグと同型の指揮車両が見えたので有る。

 

「・・・イエーガー、第二小隊は・・・?」

 

「安心しろ・・・ウチのMSの残骸は無いぞ。有るのは乗り捨てられたミリィのホバートラックに撃破されたザクが一機だ・・・」

 

イエーガーからの報告に二人がホッとすると・・・ちょっと見て来ますね!と外に出たアメリアはミリィのウィスキードッグⅡを中心に周囲を警戒しているイエーガー達のジムに手を振りながら中へと入ると車内を見渡した・・・

 

(血痕の跡も無し・・・どうやら怪我はして無いようですね・・・)

 

まだ確信では無いが可愛い後輩の安否を確認したアメリアがホッとしながら操縦席のキーを捻るがウンともスンとも言わないので有る。

 

「エンジンどころかメインコンピューターまで死んでる・・・だから全然通信が繋がらなかったんですね。」

 

 

音信不通となった原因は分かったが行方不明となった第二小隊にアメリアはムゥ・・・と唸りながら上部銃座に上がると撃破されたザクの残骸を調べているショウとチャーリーに声を掛けた。

 

 

「何か分かりましたかー?」

 

「そんな事言われてもな・・・」

 

「コックピットから上が吹き飛んでるからどうしようも無いぜ・・・」

 

苦笑いを浮かべながらそう答え来る二人にアメリアは腕を組んだ・・・

 

 

「残されたホバーに撃破されたザク・・・そして消えた第二小隊・・・これはミステリーですね?」

 

「そしてその真相はっ・・・」

 

「ただの戦闘後だからに決まってるまってるだろうが!!」

 

そう怒鳴りながら馬鹿野郎っ!とツッコんで来るイエーガーにちょっとした冗談じゃないですか?と答えたアメリアは一緒に乗ってくれたソフィーにねえ?と一緒に首を傾げた。

 

「そんなに怒るとソフィーに嫌われちゃいますよイエーガー?」

 

「えっとっ・・・私も怖いイエーガーさんは嫌いですっ!」

 

『ちょっと待てっ!?俺は別に怒った訳じゃ・・・』

 

わざとらしくプイっと顔を逸らすソフィーにモニター越しのイエーガーがあたふたするのを見ながら本当に仲が好いですね・・・と思いながらアメリアはキーボードを叩きウィスキードッグの左右から振動を感知するクロ―を突き立てた・・・

 

「アクティブソナーを展開!第二小隊の救援を最優先とする為に全機散開して下さい!」

 

「CSD1了解した。じゃあまたあとでなソフィー・・・」

 

急に真面目な声で指示を飛ばして来るアメリアの声にソフィーと話していたイエーガーも隊長として真剣な顔に戻すと、気をつけて下さいねっ・・・?と不安そうな顔をする彼女に頷いたイエーガーはお前ら行くぞ!とショウとチャーリーのジムと共にバーニアを吹かすと少し距離を取った所で三機が別々の方向に散るとアメリアはヘッドセットを耳に押し当てながら・・・ねえソフィー?と興味本位で聞いてみた。

 

 

「前々から気になっていたのですが・・・ひょっとしてイエーガーの事が好きなんですか?」

 

 

「好きですよっ?イエーガーさんって何だかんだ言いながらご飯奢ってくれるしっ♪」

 

 

そう答えながらニコニコと満面の笑顔を浮かべて来るソフィーにそうなんですね・・・と苦笑いを浮かべたアメリアはまだまだ遠い恋模様の二人の様子にアハハと笑ったので有った・・

 

 

~~~

 

 

「えーっくしょい!何だ風邪か・・・?」

 

急に鼻がムズっとしたイエーガーが鼻を擦っているとメインモニターにピーっと反応が現れた。

 

「CSD1からウィスキードッグへ・・・どうやらお目当てのミデアを発見した様だ。」

 

『データをリンク・・・すぐにCSD2(ショウ)CSD3(チャーリー)を増援に向かわせます。』

 

 

そう聞こえきたアメリアの声にイエーガーのジムは小高い丘の上に見えるミデアの周囲を確認しようと近くの茂みに入った瞬間コツンと・・・嫌な衝撃が左から感じたのだ。

 

「なんだ一体・・・?」

 

そう言いながらゴクッと息を飲んだイエーガーはジムのメインカメラを左に向けるとまさに

そのミデアを襲おうとしているジオンのMS部隊と一緒になったので有る・・・

 

「冗談じゃねえ!?」

 

物資調達の為に自分達が振り巻いたミノフスキー粒子の高さが災いを招いたのか突然現れたイエーガーのジムがブルパップマシンガンをばら撒きながらバーニアを吹かすと・・・何故ここに連邦の機体が!?と驚いたグフのパイロットもイエーガーからの銃撃をシールドで防ぎながら部下達と一旦間合いを取った。

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 

 

 



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離れる距離・・・その17

 『CSD1(イエーガー)からウィスキードッグ(アメリア)へ敵機とニアミスした!至急支援を頼む。』

 

 

突然聞こえて来たイエーガーからの焦った声にギョッとしたアメリアはヘッドセットに手を当てながら了解!と答えるとイエーガー機の位置データから一番近いCSD3(チャーリー)へと通信を繋いだ。

 

「こちらウィスキードッグ!CSD1が接敵した模様・・・CSD3は今から送るポイントへと急行して下さい!」

 

『CSD3了解した。ここからだと二分以内に到着すると隊長に伝えてくれウィスキードッグ!!』

 

アメリアのウィスキードッグとデータをリンクさせたチャーリーのRGM-79ジムがバーニアを吹かしイエーガーの救援に向かうと、CSDも了解した!と一番遠いショウからも通信が入ったアメリアは頼みます。と答えながら二人への通信を切るとホバーの操縦席からコッチを見て来るソフィーにアメリアはクスっと微笑んだ。

 

「という訳なんでソフィー・・・そんなに心配そうな顔をしないでください。」

 

「別にイエーガーさんの事なんか心配してなんかっ!?」

 

そんな事を言いながらソフィーからアワワっ!?と泡喰った様子で両手を振り出すと、別にイエーガーとは言ってませんが?と答えたアメリアが首を傾げると・・・

 

「へっ!?」

 

「へっ、じゃなくて・・・本当に無自覚ですねソフィーって?」

 

そんなソフィーに呆れた顔をしたアメリアがキーボードを叩き出すと、どう意味ですかっ!?と聞いて来るソフィーを無視したアメリアは操縦席に座るソフィーのモニターにイエーガー機の位置をポイントして送ったのだ。

 

「恐らくその近くに不時着したミデアとミリィ達が居る筈です。」

 

「アメリアさんってば意地悪だ・・・」

 

そう淡々と答えるアメリアにソフィーからムゥ・・・と唸られたアメリアは仕方無いですね。と腕を組んだ。

 

 

「今感じている気持ちのままイエーガーと会ったら・・・何となく自分の気持ちが分かるんじゃないですかね?」

 

 

「なんだか良く分かんないけどっ・・・イエーガーさんと会ったら分かるんですねっ♪」

 

 

全てを教えると野暮だと思ったアメリアが少しぼかしながら説明するとそう答えたソフィーはそれを実行する為にホバートラックのエンジンを始動させるとアクティブソナーを収納しながらアクセルを踏み込んだので有る。

 

 

「ウニャっ!?」

 

 

「おっとっ・・・ちょっと揺れるのでしっかりシートベルトを付けてくださいアメリアさんっ?」

 

 

「ちょっと所じゃないですってソフィ~~~!!」

 

 

そんな声を上げるアメリアを乗せたソフィーが操縦するウィスキードッグは急行するチャーリーとショウと共に苦戦中のイエーガーの下へと向かったので有った。

 

 

 

 

~~~

 

 

「くそったれ・・・せめて陸ジムならどうにか出来るのに!!」

 

ジャブローへの出発の為に積み込みが終わったCASCADE隊が持つ陸戦型ガンダムや陸戦型ジムでも無く先日の特務隊の一件で宙ぶらりんになっていた所謂量産型ジム・・・型式番号RGM-79ジムに乗る嵌めとなったイエーガーはメインモニターに映る三機のMSに向かって悪態を吐いた。

 

(汎用性は高いと聞いてたが・・・ソフィーのピーキーなセッティングに慣れた所為か全然嚙み合わないな・・・)

 

そう思いながら防戦一方のイエーガー機にグフを隊長機とするザク二機は意外にも焦っていた・・・

 

「何だアイツ!?コッチの攻撃を器用に避けやがる・・・」

 

「どうしますか隊長!!」

 

「どうするも何もここまで来たらヤルしかねえだろうが!!」

 

補給物資の枯渇が原因でミデアを襲ったジオンのMS部隊がグフの指示で個々に襲って来るの見たイエーガーがチッ!と舌打ちしながら離脱の方法を考えていると、ピーっと反応するモニターに友軍機のIFF(識別信号)を確認したイエーガーはやっと来たか!とコクピットで叫ぶとフットペダルを踏み込み迎撃に出たのだ・・・

 

 

「食らいやがれーーーっ!!」

 

ジムの頭部に装備された60ミリバルカン砲で牽制したイエーガーのジムが一番先頭にいたMSー07Bへと突っ込んで行くと、コイツっ!?と泡喰ったグフのパイロットに僚機のザクも近すぎて援護が出来す固まっていると・・・イイッヤッホウ!!と雄叫びを上げながら連邦軍のジムが上から振って来たので有る。

 

 

「連邦のっ!!?」

 

「騎兵隊の到着ってね!!」

 

そう驚くザクが向けて来る120ミリマシンガンをチャーリーのジムが振ったツインビームスピアで腕ごと切り裂くと、テメエぇぇぇ!!と叫んだもう一機のザクがヒートホークを振り上げるの見たチャーリーはチッ!!と舌打ちしながらその攻撃を咄嗟に左手のシールドで受け止めたのだ・・・

 

「死ねぇ!!」

 

「そうはいくかよっ!!」

 

ザクによって地面へと押し倒されたチャーリーのジムがジリジリとシールドを溶かすヒートホークに焦っていると、ピーっとロックオンアラームが鳴り響くと同時に後方支援を担当しているショウからそのまま動くな!と通信が入った・・・

 

 

「これで五機目・・・俺もエースに!!」

 

そう叫んだ彼の乗った乗機はチャーリーのジムをスレスレにショウが撃った180ミリキャノンによって上半身ごと吹き飛ぶと・・・生きてるか相棒?と狙撃用のゴーグルをシートの背後に直したショウからの通信が入ると、まあな・・・とチャーリーは苦笑いを浮かべので有った・・・

 

 

 

 



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離れる距離その18

イエーガーはCSD2(ショウ)CSD3(チャーリー)が二機のザクを撃破したのを確認するとジリジリと後ずさろうとする隊長機らしいMSー07グフに向かってジムの右手に有る90ミリブルパップマシンガンを構えた。

 

「もうこれ以上の戦闘は無駄だ・・・条約に沿って捕虜としての身柄は約束するから大人しく投降しろ!」

 

「ほう・・・スペースノイドで有る私に劣るアースノイドに下れと・・・?」

 

オープンチャンネルでそう投降を呼び掛かるイエーガーだったがグフのパイロットにはそれが不服だったのか左腕に装備されて有ったシールドからヒート剣を引き抜くと・・・おい止せ!とイエーガーのジムは足下に転がっている最初にチャーリーが倒したザクを見た。

 

「勿論・・・お前の部下もだ。だから・・・落ち着け?」

 

「部下か・・・そう言うのなら考えても良いが・・・」

 

そう答えるグフのパイロットに安堵したイエーガーだったが・・・こんな奴いるかよバーカ!と叫ぶグフのパイロットが完全に戦意を失っているザクにヒート剣を振るのを見るとテメエっ!!?と慌てたイエーガーは咄嗟にバックパックからビームサーベルを引き抜くとそのザクを助けようとバーニアを吹かした・・・

 

「ホント・・・連邦ってのは正義感を持った奴が多いぜぇ!!」

 

そう叫ぶグフのパイロットが機体の右腕から鞭の様なロッドを伸ばすと・・・イエーガさん避けてっ!!?とヘッドセットに聞こえて来る焦ったソフィーの声に、この野郎っーーー!!と叫んだイエーガーのジムが地面を蹴るとそのまま右足のフットペダルを踏み込んだイエーガーはまるで戦闘機の様にそのままバレルロールをかましたので有る。

 

 

「「ウソっ!!?」」

 

「マジかっ!?」

 

 

ようやく追いついて来たアメリアとソフィーが乗るウィスキードッグとヒートロッドを放ったグフのパイロットから驚く声が上ると、イエーガーさん聞こえますかっ?とソフィーはホバートラックを近づけながらライブラリーでイエーガー機と戦っているジオン機の特徴を伝えた・・・

 

「その機体はMSー07グフと言って格闘戦だとジムじゃ分が悪いですっ!更にさっき食らいそうになった電撃兵器を食らうとシステムがダウンするんで気をつけて下さいっ!!」

 

 

「もっと早く言えって!!?」

 

 

ソフィーからの説明にこれで納得がいったイエーガーはそうソフィーにツッコミながら90ミリ

ブルパップマシンガンをバラまきながら連射するとグフもバックステップしながら一旦距離を取った。

 

「今のを避けるとは中々やるじゃねえか・・・?」

 

「ただの偶然だ・・・それじゃあそろそろ決着をつけるぞ!」

 

仕切り直すと言う様にイエーガーのジムのビームサーベルを構えると、いやいや・・・とグフのパイロットは不時着したミデアに向かって左手のフィンガーマシンガンを向けたので有る。

 

 

~~~

 

 

「良しっ・・・これでっ!」

 

基盤の交換と焼き切れた配線の修理を終えミリィがミデアのメインスイッチを回すと通信設備は元よりメインエンジンの稼働まで出来た事も有りギョッとした大尉は本当に嬉しそうな顔でミリィの手をギュと握ったのだ。

 

 

「これで故郷で私の帰りを待っている嫁と子供に会える事が出来ます・・・」

 

「ちょっとぉ・・・私は自分の役目を果たしただけですよぉ!?」

 

 

まるで自分の事を女神の様に言って来る機長で有る大尉にミリィが苦笑いを浮かべていると・・・ちょっと待てよ!?と叫んで来る他のクルー達にミリィもミデアの正面に映る光景に冗談っ!?と叫びながら驚愕する大尉と共に取り合えずしゃがみこんだ・・・

 

 

「外はどうなってるんですか!?」

 

「とにかく落ち着いてぇ・・・今から私が仲間に連絡を取って見ますぅ・・・」

 

ミデアのコクピットへとフィンガーランチャーの銃口を向けているグフに緊張しながらミリィは通信席の下から恐る恐るカスケード隊のチャンネルへと回線を合わせた。

 

「ミリィからカスケード隊へ・・・誰か聞こえてますかぁ?」

 

『・・・こちらウィスキードッグ!感度良好ですよミリィ♪』

 

ミノフスキ粒子の濃度も有り若干ノイズ混じりだが・・・ミリィは聞こえて来たアメリアの声にホッとしたのか先輩っ!?と泣きそうな声を上げた・・・

 

 

「もう会えないかと思いましたぁ~!!?」

 

『何を言ってるんですか・・・良く頑張りましたねミリィ?』

 

そう褒めて来るアメリアにエヘヘと笑みを浮かべたミリィは所でぇ先輩?とすぐに困った顔を浮かべたので有った。

 

 

「敵機が私達の方に銃口を向けてるのか説明して欲しんですけどぉ・・・?」

 

 

『その件に関してはコッチで対処中です。ミリィはソッチで出来る事をお願いしますね!』

 

 

「了解ですぅ・・・」

 

 

いつも的確に指示を飛ばして来るアメリアに矛盾を感じたミリィは何か考えが有ると感じたのか機長ぉ!とミデアのデッキクルー全員に向かって指示を飛ばし始めたので有った。

 

 

~~~

 

 

「分かった・・・お前が離脱するまで絶対に攻撃を加えないと約束する。」

 

 

そう言いながらマシンガンを捨てるイエーガーのジムにホントにチョロいな連邦は!!と煽り出すグフに180ミリキャノンを確実に当てる位置居たCSD2から苛つく様に射撃許可を!と通信が入って来た。

 

「保護対象で有るミデアがまだ近いんです・・・もう少し待ちなさい!」

 

 

「おいおい・・・いくら温厚なイエーガーさんでもそろそろキレるぜ?」

 

 

そんな心配をするチャーリーの予想通りキレたイエーガーのジムがグフへと跳び掛かると、今ですミリィ!とヘッドセットを掴んだアメリアは逆噴射しながらグフが放つフィンガーバルカンを避ける様にミデアが逆噴射するとグフから撃たれた全弾が全て外れたので有った。

 



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離れる距離その19

 

 「何だとっ!?」

 

 

 

ミデアを仕留め損なったグフのパイロットから驚愕する顔が浮かぶと、アメリアは残念でしたね?とまるでグフのパイロットの顔が見えている様に悪戯っぽくニヤニヤと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「大方ミデアを撃破しそのどさくさに紛れて離脱しようと考えていたようですが・・・そうはいきませんよ!」

 

 

 

 

 

「チッ・・・だがもう一度あの輸送機ごと人質に取れれば!!?」」

 

 

 

 

 

切羽つまったグフのパイロットがフットペダルを踏み込みバーニアを吹かそうとした瞬間・・・させるかよ!!とミリイが乗ったミデアを守ろうとジャック率いる第二小隊の陸ジムの三機は立ち塞がった・・・

 

 

 

 

 

「CSD4ジャックから各機!!絶対にミデアをやらせるな!!!」

 

 

 

「CDD5ユウヤ了解です。」

 

 

 

「こちらCSD6レオン・・・愛しの姫君を守る為に尽力いたそうじゃ有りませんか隊長?」

 

 

 

そんな揶揄って来るレオンの陸ジムが先陣を切り100ミリマシンガンを撃ち始めると、うるせえぞレオン!!と怒鳴り返したジャックは陸ジムの脚部に有るサーベルラックを展開すると流石に分が悪いと背後へとジャンプするグフへビームサーベルを引き抜いた。

 

 

 

「貰ったぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

そう叫んだジャックの陸ジムがバーニアを吹かし下から追撃を掛けるとあまり舐めるなよ連邦っ!!と声を上げたグフのパイロットから左腕に装備される5連装75ミリフィンガーバルカンを撃とうとした瞬間・・・CSD2ナウっ!!と指示を飛ばすアメリアの声と同時にショウが撃った180ミリキャノンによりその腕が突然爆散したので有る・・・

 

 

 

「なっ・・・!?」

 

 

 

そんな驚く声を上げるグフに向かってジャックの陸ジムがビームサーベルを振り降ろすと、ふざけんな!!とここはベテランパイロットの意地をみせたグフのパイロットがその斬撃をヒートサーベルで受け止めるとジャック機のビームサーベルを斬り上げた。

 

 

 

 

 

「これでも食らいやがれっーーー!」

 

 

 

「しまっ・・・」

 

 

 

そのままグフの放ったヒートロッドが自機のがら空きとなった胴体に直撃すると、ジャックの居るコクピット内部が流れて来た高電流によってバチっとスパークすると同時にシステムが全てダウンしたのだ・・・

 

 

 

「機体が動かねぇ!!?」

 

 

 

「さっきの威勢の良さはどうしたぁ・・・オラァ!!」

 

 

 

まるでサンドバックの様に動けなくなったジャックの陸ジムをグフが容赦なく蹴り飛ばすと、ジャックーーーっ!!とミデアのコクピットからその様子を見ていたミリィから悲痛な声が上ると慌ててヘッドセットを掴んだ。

 

 

 

「ミリィからCSD5、CSD6へ!!ジャッ・・・CSD4の確保を急いで下さいっ!?」

 

 

 

 

 

そう叫ぶミリィから指示に了解!と答えたレオンとユウヤの陸ジムが動けなくなったジャック機の救援に向かおうとしたのだったが・・・おいおい動くんじゃねえぞ?とそのコクピットへヒートサーベルを突きつけているグフからオープンチャンネルで通信が入って来たので有る。

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「とことん卑劣な手が好きみたいですね・・・ジャックの方はどうですソフィー?」

 

 

 

アメリア達が指揮車として使っているウィスキードッグにも聞こえて来たゲスな脅迫にチッと舌打ちしたアメリアはカスケード隊のメカニック兼ドライバーも務めているソフィー=ホワイト伍長に先程のグフの攻撃によりダウンしたジャック機の状態を訊ねた。

 

 

 

「う~んっ・・・機体の方は絶望的ですねっ」

 

 

 

グフのヒートロッドによって完全に電装系がやられた事でソフィーから復帰が無理と判断が下されると、それでパイロットは・・・?と恐る恐る聞くアメリアに大丈夫ですっ♪とソフィーはエヘヘと微笑んだ。

 

 

 

「ジャック中尉の生体反応は確認したので生きてますよっ?」

 

 

 

「それは良かったです・・・しかしどうやってジャックを救出したら良いのやら・・・」

 

 

 

ジャックの安否を確認したのは良いが・・・まだ窮地に立たされているアメリアは頭を抱えながら自分の配下で有る第一小隊の面々に通信を繋いだ。

 

 

 

 

 

「ウィスキードッグから各機へ現在の状況を伝えて下さい。」

 

 

 

『こちらCSD1イエーガーだ。奴の近くには居るがジャックの位置が近すぎて手出しが出来ない・・・』

 

 

 

『CSD3も同じくだ・・・奴の裏に回り込んでいるがちょっと厳しいぜ?』

 

 

 

そんな二機からの厳しそうな返答にそうですよね・・・とアメリアがこの困難な状況に困っていると、ピーっと鳴る通信アラームにミリィから?と驚いたアメリアは回線を繋ぐと彼女からの大胆な作戦案にど肝をぬかれた。

 

 

 

 

 

「そのミデアを囮にって・・・本気ですかミリィ!?」

 

 

 

『ハイっ!方法はコッチでどうにかしますから・・・お願いします先輩っ!!』

 

 

 

ジャックを助けたい気持ちで一杯なのか必死な後輩に、ですが・・・とアメリアが渋ってると・・・すみません。とミデアの機長が通信に割り込んで来たので有る。

 

 

 

「彼女のお陰で救われた命です。その私達を救いに来た皆さん・・・カスケード隊を助ける恩返しをしたいのですがダメですか?」

 

 

 

「ダメではありませんが・・・」

 

 

 

これではまるで本末転倒とも言えるミデアの機長からの申し出に折れたアメリアはハァ・・・と呆れた様に溜息をついた・・・

 

 

 

「私も良く無茶な作戦立てると言われますが・・・ミリィも大概みたいですね。」

 

 

 

「それは先輩の影響だと思いますよぉ?」

 

 

 

そう答えながら首を傾げるミリィに痛い所を突かれました!?とアメリアがクスっと笑みを浮かべながら通信を切ると、聞こえてましたねCSD2?と聞こえて来た指揮官からの声にショウはホントにツイて無い・・・と呟きながらその時に備え180ミリキャノンを再度構えた・・・



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離れる距離・・・その20

「すみませんでした!私の我がままに付き合わせてしまってぇ・・・」

 

ガバっと勢い良く頭を下げるミリィにこのミデアの機長で有る大尉から僕も一緒だからね?とニコっと笑みが浮かぶとミリィは不思議そうにえっ・・・と首を傾げた。

 

「あのジムのパイロットは君の大切な人なんだろう?」

 

「はい・・・そうですけどぉ・・・」

 

「だったら同じだよ。僕にも大切な家族が居るからね・・・」

 

そう答えながらミデアの再チェックを行う大尉にありがとうございます!と今度はお礼のつもりで頭を下げるミリィに何度も良いから・・・と苦笑いを浮かべた機長はコクピット上部に有るモニターを見ると唸り出した・・・

 

「何か問題でもぉ・・・」

 

 

「う~ん・・・さっきの逆噴射で機体に大分無理をさせてしまったからね。もうコイツも終わりかな・・・」

 

ミリィが切なそうに答える機長に不安にモニターに表示されたミデアのダメージ蓄積値を見ると、その全てがほぼレッドコンディション・・・要は廃棄処分が決定した様な物で有る。

 

「重ね重ね・・・本当に申し訳有りませんですぅ・・・」

 

「いやいやっ!?撃墜されたのは僕の責任だからね・・・それにコイツにはもうひと踏ん張りして貰わないとな・・・タニグチ伍長?」

 

「機長ぉ・・・」

 

 

そんな前向きな機長に心を打たれたミリィと同じ気持ちなのか搭乗員達からもコクっと頷くとミリィはクスっと笑みを浮かべた。

 

 

「それではぁ・・・このミデアが浮ばれる様にあのグフへの仕返しと行きましょうかぁ?」

 

「ああ、そうだな・・・最後の仕事だ。頼むぞ相棒・・・」

 

そう答えながらコクピットのコンソールを愛らしく触る機長を横目にミリィが通信席に座ると、エンジン始動!と声を上げる機長に1番から4番点火!!と副機長が答えるとミデアからキュイーン・・・と最後のエンジン点火となる唸り音が聞こえて来た・・・

 

「コッチの準備は良いぞタニグチ伍長!」

 

まるで離陸する時の様にフットペダルを踏み込みながらスロットルを全開へとする機長に了解ですぅ!と答えたミリィは頼みますよ先輩・・・とヘッドセットを掴みながらこちらと同様に対応に追われているアメリアのゴーサインを待つので有った。

 

 

 

~~~

 

 

 

「チッ・・・この量産ジムの倍率ってこれ以上は上がらないのかソフィー?」

 

「あくまでも量産型ですからねっ。」

 

普段使っている陸戦型ジムと違い汎用性と量産性に重きを置いたRGMー79ジムに対しショウから苦情が上がるとソフィーは苦笑いを浮かべた。

 

 

「と言うかっ・・・ショウさんの腕ならノーマルタイプのジムでも大丈夫なんじゃ?」

 

「おいソフィー・・・こんな任務に慣れてない機体で臨む僕の気持ちを分かってくんない!?」

 

そんな心臓バクバク状態のショウに成程っ!とソフィーが手をポンと叩いていると、準備はできてますねCSD2?と割り込んで来るカスケード隊の指揮官で有るアメリアにショウはまあ大体ね・・・と苦笑いを浮かべた。

 

「なら良いです。ジャックが人質に取られている以上・・・この作戦はタイミングが非常にシビアとなりますので、全員の生還はショウの腕次第となるので気を引き締めて下さいね?」

 

 

「異議有り!もっと他に良い作戦は・・・」

 

 

「有りませんよ。」

 

 

そう間髪入れずに淡々とアメリアから答えられたショウは本当にツイて無い・・・と頭を抱えた。

 

 

「ショウには悪いですが・・・ジャックの救出を考えるとミリィからの提案を含めこれが最適とイエーガーとも話し合った結果です。」

 

 

「分かった・・・絶対に当ててやる。」

 

 

覚悟を決めたショウが精密射撃用のゴーグルを覗き込むと、助かります。と答えるアメリアにショウかtら注文が入った。

 

「ジャック中尉の事を頼むぞ・・・アメリア?」

 

「当たり前じゃ無いですか・・・その後の事は任せて下さい。」

 

後輩で有るミリィの事も有るのか・・・確実なフォローを約束するアメリアに分かった・・・と答えたショウが敢えてロックオン(・・・・・)をせずにマニュアルで標的で有るグフに狙いを点けた。

 

 

「お前を信じるからなアメリア・・・」

 

 

それはお互い様ですよ?と答えたアメリアは今ですミリィ!とヘッドセットを掴んだので有った。

 

 

~~~

 

 

「クッソ・・・動けよ!!」

 

 

グフが放ったヒートロッドにより電装系が完全にオシャカとなったジャックが陸ジムのコクピットで足掻いてる中・・・グフのパイロットはこれからの算段を考えていた。

 

「オーストラリア戦線も終わりだな・・・コイツを人質にどうにか離脱しないと・・・」

 

 

そう思案顔を浮べるグフのパイロットはピーっ!と鳴るコクピットに突然聞こえて来る敵機の警告音に慌てて迎撃態勢を取ったのだが・・・

 

 

「イッケぇぇ!!!」

 

 

そう叫ぶミリィの指揮の下突っ込んで来たミデアによって弾けとんだので有る・・・

 

「ふざけんなっ!?」

 

まさかの事態にグフのパイロットも慌ててフットペダルを踏み込み地面への落下を避けたので有ったが、・・・ずっとその様子を見ていたショウのジムがトリガーを引くと・・・そのグフはショウの放った180ミリキャノンによって下半身を撃ち抜かれたので有った。

 



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離れる距離・・・その21

「ビンゴ・・・どうだ見たかアメリア!」

 

無事に狙撃を終えたショウからまるでガッツポーズを取りながらそんな声が上ると、ナイスショットでした。と答えたアメリアはハァ・・・と安堵するとヘッドセット掴みながらミリィ達のミデアに通信を繋いだ。

 

「こちらウィスキードッグ・・・生きてますかミリィ?」

 

グフを弾き飛ばしたまでは良かったが・・・減速しきれずに岩壁へと突っ込んだミデアから何とかぁ・・・とミリイから返事が返って来た。

 

「まったく・・・流石の私でもこんな無茶はしませんよミリィ!」

 

「そんな事よりもジャックはぁ・・・?」

 

そう窘めるアメリアにアハハ・・・とミリイが笑ながら誤魔化そうとすると、ちゃんと生きてますよ?と答えたアメリアはホバートラックの銃座に上がるとジャックの陸ジムをゆっくりと寝かせようとするイエーガーとチャーリーのジムの姿を見ながらクスっと微笑んだ。

 

 

~~~

 

 

「まったくどうなってんだ・・・」

 

 

グフのヒートロッドを食らった所為で陸ジムのOSが完全にダウンしてしまったジャックが外との通信も出来ずに困っていると・・・聞こえますかジャック中尉っ?と聞きなれた舌足らずな声にジャックはソフィーか!?と叫んだ。

 

「ハイっ!今から上部ハッチをパージするので頭を下げていてくださいねっ?」

 

 

「分かった。頼む・・」

 

 

ソフィーの言う通り頭を下げたジャックが合図を送ると陸ジムのコクピット脇に有るコンソールを操作したソフィーによって上部ハッチが弾け飛んだので有る。

 

「やっと出られたぜ・・・」

 

「ジャックーーーっ!!」

 

長い間何も出来ずにコクピットの中から地面に降りた瞬間ミリィから抱き付かれたジャックは受け身も取れずにそのまま背中から地面に転がった・・・

 

「良かったぁ・・・どこも怪我してない!?」

 

「あっああ・・・心配かけたみたいだな。」

 

ポロポロと涙を流すミリィの頭をジャックが落ち着かせる様に撫でていると・・・ミリィに感謝しなさいね?とクスクスとアメリアが笑みを浮かべてきた。

 

 

「その子はジャックを助けようと自ら危険を冒してまで助けたんですよ?」

 

「みたいだな・・・」

 

その時の状況は分からないが・・・完全にスクラップとなったミデアの状態にジャックは苦笑いを浮かべながら可愛い恋人を覗き込んだ。

 

 

「俺が生きてるのはお前のおかげだミリィ・・・何かお礼をしないとな?」

 

 

「じゃあ・・・私にも先輩達みたいに指輪をプレゼントするって言うのはどうですかぁ・・・」

 

 

急にとんでもない事を言いだすミリィにハァ!?とジャックが驚き出すと・・・逆プロポーズだな。とボソっと呟くイエーガーにこの場に居る全員からおおっ!と歓声が沸くと祝福の拍手も同時に上がった・・・

 

「ちょっと待てっ!?俺の意見は無いのか!!」

 

「ちょっとジャック・・・私の可愛い後輩からプロポーズを断る気ですか・・・?」

 

「そんな事は無いが・・・」

 

「じゃあ決まりです。」

 

そう有無を言わせないアメリアにパワハラじゃねえか!?とジャックが抗議の声を上げると嫌なのぉ・・・?と腕を組んで来るミリィに腹をくくったジャックはわーったよ!!と叫ぶと・・・後にショウとチャーリーが頼んだ中立地帯の町に有るニノの経営するフェアリーで指輪を買う事となるので有る・・・

 

 

「それでは予定外ですが・・・ミリィとジャックの事も含め万事解決って事で基地に戻りますよ!」

 

そんなアメリアの声におおっ!と答えたカスケード隊は送別会の準備をしているリンの事も有って足早に帰投の準備を始めた。

 

 

 

~~~

 

 

「ねえ・・・皆無事かなケイちゃん・・・?」

 

 

既に出来上がった料理を見ながらカウンターで頬杖をつくリンに大丈夫ですと答えたケイは何も確証がないままコクっと頷いた・・・

 

「ケイの言う通りよ・・・この時間まで何も連絡が無いって事は無事だって!」

 

「二人がそう言うなら・・・そうなんだろうね。」

 

そうフォローするマリアにリンがホッとすると・・・実際どうなんです?とケイはこそっと耳打ちした。

 

 

「ゴメン・・・ミノフスキー粒子の濃度が高くてアメリア達の第一小隊とも連絡が取れて無いのよ・・・」

 

「チッ・・・勝手に死んだりしたら怒るわよアメリア!」

 

そう興奮するケイをマリアが宥めていると・・・カランコロンと鳴るカウベルに三人は慌ててCASCADEの入り口を見た・・・

 

 

「何だ・・・タンクか」

 

 

「期待して損したわ・・・」

 

 

そんな声を上げるケイとマリアに驚くなよ!と下がったタンクから見事墜落したミデアの乗員を救ったカスケード隊の面々が撃墜されたミデアの乗組員と共に現れたので有る。

 

 

「本当に良いのかい!?」

 

「どうせ暫くは動けないんだから一緒に祝って下さいよぉ?」

 

 

そう驚くミデアの機長と乗組員にミリィが首を傾げると・・・ショウとリン、チャーリーとアメリアの婚約を含めたカスケード隊の送別会が始まったので有った・・・

 

 

~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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離れる距離その22

「良っし・・・メンツも揃った所で始めるぞカンパ―イ!!」

 

今回は基地の防衛任務も有りミデア救出作戦に参加出来なかったタンクの音頭で皆がジョッキを掲げると同じく乾杯!!と歓声が上がると早速マリアは今回の作戦で一番ピンチで有ったと言うジャックとミリイをジロっと睨みだした。

 

「もう・・・今回ばかりはホントにヒヤっとしたわよ二人共!」

 

ビールジョッキを置きながら叱って来るマリアにアハハ・・・とジャックとミリイが苦笑いを浮かべると私もですよ!とアメリアもムゥっと唇を尖らせた。

 

「ミリィは私の後を継いでこの部隊のオペレーターとなるんですからあんな無茶を今後はしたらダメですよ

 

 

「アメリア・・・アンタのどの口が言ってんのよ!?」

 

そうツッコんで来るケイにそうそう・・・とマリアも呆れた顔を見せると、どう意味ですか!?と驚くアメリアにそっかぁ・・・とミリイは寂しそうな顔を浮かべる・・・

 

「本当に居なくなっちゃうんですねぇ・・・」

 

「そんな顔をしないで下さいってミリィ・・・ちゃんと手紙を書きますから?」

 

明日にはインド方面軍の主要基地で有るマドラスへと飛び立つアメリアに約束ですからねぇ・・・とミリイから泣きそうな顔で左腕をギュッと抱きつかれたアメリアは約束しますって・・・と答えながらその頭を撫でたので有った。

 

 

~~~

 

 

「ビールのお代わり2つ!!」

 

「もう注いでるから持って行って頂戴!」

 

自分達カスケード隊第一小隊の送別会だとだと言うのにいつも通りリンと共にCASCADEの台所に立ったショウはいつも以上に心地よさを感じていた・・・

 

(またこうしてリンと一緒にここに立てるのかな・・・)

 

明日からしばらく会えなくなる愛おしい恋人の顔をショウが不安そうに見ていると・・・ちょっとショウ!と腰に手を当てたリンがムスっとした顔を向けて来た。

 

「新しい料理が出来たから早く運んでよね!」

 

「ゴメン・・・ちょっと考え事しててさ!?」

 

そう言いながら謝るショウにまったくもう!とリンが腕を組むのを見たマリアはビールジョッキを片手にねえ二人共・・・?と少し酔ったのかニヤニヤしながら首を傾げた。

 

「噂で聞いたんだけど・・・今日の送別会ってちょっとしたサプライズが有るんだよね?」

 

 

「いや・・・私は初耳だけど・・・ショウは何か聞いてる?」

 

 

突然振られたマリアからキラーパスを返す様にリンから尋ねられたショウはえっと・・・と困った様に頭を掻きだした。

 

 

「おいマリア・・・」

 

「良いじゃない・・・早く渡しちゃいなさいって?」

 

 

そう答えながらマリアが楽しそうにクスクスと笑い出すと、ハァ・・・と腹をくくったショウは集中する視線を感じなながらリンの手を引いて店の中央で膝まづいた・・・

 

「えっとショウ・・・?」

 

 

「もう分かってると思うけど・・・僕と結婚して欲しい。」

 

 

そんな真剣な眼差しを向けて来るショウにウン・・・と顔を赤く染めたリンからコクっと頷くと同時に司

会進行役のタンクがまるで自分がプロポーズを承諾された様によっしゃーーー!!と叫ぶとケイは少し不満そうにねえ!とジトっと睨んだ。

 

「何だよケイ・・・そんな顔をして!?」

 

「別に・・・」

 

何故か急に機嫌を損ねるケイにタンクが不思議そう首を傾げていると・・・ねえリン?と膝まづいていたショウは今回の作戦前にニノから受け取っていた指輪が入ったケースを開けてた・・・

 

 

「これって・・・この前の?」

 

 

「うん・・・今日の為に頼んで置いたんだ。」

 

 

中立地帯に有るフェアリーと名乗るニノと呼ばれる勝気な女性店主によってショウがカッティングされた自分の誕生石で有るサファイヤの指輪を嵌められると・・・綺麗ね。と呟いたリンは満足したのかすぐに外したので有った。

 

「じゃあ返すね?」

 

「え・・・リン!?」

 

そう言いながら固まるショウにちょっとリンっ!?とマリアから驚く様に声が上ると、ちょっと待って!とリンは周囲を見渡しながら頭を下げた・・・

 

 

「ゴメンなさい・・・皆が私とショウの幸せを願っているのは分かってるけど、この指輪はまだ受け取りたく無いの!」

 

 

そんな声を上がるリンに頭を抱えたマリアは理由を聞いても良いかしら・・・?と首を傾げると理由は簡単よ?とリンからクスっと笑みが浮かんだ。

 

「もし私がこの指輪を受け取ったとして・・・ショウがピンチになった時どうする?」

 

「それは・・・非常に答えにくいな。」

 

リンの意地悪な質問にショウが困った様に頭を掻き出すと・・・そういう事よ。と答えたリンは恋人で有るショウを指差した。

 

 

「一緒になるのは良いけど・・・その指輪を渡したければもう一度私の前で膝をつく事ね?」

 

「ハイハイ・・・分かりましたよ。」

 

要は・・・最初に交わした約束の通り生きて帰って来いと言って来るリンの言葉にショウも頷くと・・・そろそろ良い時間ね・・・と二人の様子にマリアが声を上がるとCASCADEでの送別会は一旦お開きとなったので有った・・・

 

 

 

 



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離れる距離その23

何だかモヤモヤします・・・」

 

 

リンの店での送別会も終わり自室へと戻ったアメリアはシャワーで濡れた髪を拭きながら自分のベッドに座ると・・・隣で缶ビールを飲んでいるチャーリーも確かにな・・・と答えながら目の前のローテーブルに置いた・・・

 

「でもよ。リンの言う事も一理有るぜ・・・俺が同じ立場だったらお前には絶対に生きて帰って来いって言うと思うぜ。」

 

「受け取った指輪を返しながらですか?」

 

「そう言われると辛いなショウの奴・・・」

 

「だからモヤモヤすると言ったんです・・・」

 

どっちの立場でも切ないですね・・・と思ったアメリアは置かれたチャーリーの缶ビールを飲もうとしたら・・・顔を赤くしたチャーリーからその手を掴まれたので有る。

 

「お前は受け取ってくれるか・・・コレ?」

 

今日の作戦前にショウと共にニノから受け取った婚約指輪が入ったケース見せたチャーリーは真剣な顔をしながら唖然としながらベッドに腰かけているアメリアの足下に膝まづいた・・・

 

「流石にショウみたいに皆の前で言うのは恥ずくてな・・・」

 

そう答えながらガシガシと頭を掻き出すチャーリーにまだちょっと困惑気味のアメリアは開けてみても良いですか!?と少し慌てながらそのケースを開くと目を見開いた・・・

 

「これって・・・私の誕生石じゃないですか!?」

 

「ああ・・・ニノに無理を言って仕入れて貰ったんだから要らないとか言うなよ・・・?」

 

そう言いながらも若干不安そうな顔をするチャーリーにムゥ・・・と唇を尖らせたアメリアはすぐに自分の左手を突き出した。

 

「付けて下さい!」

 

「おっおう・・・」

 

何故かジッと睨んで来るアメリアの薬指に若干ビビりながらチャーリーが彼女の誕生石で有る薄い緑色をした翡翠を乗せた指輪を嵌めるとアメリアからエヘヘ・・・と嬉しそうに満面の笑みが浮かべた・・・

 

「大好きですよチャーリー・・・」

 

そう呟くと同時に抱き着いたアメリアが押し倒すとおわっ!?とチャーリーから驚く声が上った。

 

「んっ・・・」

 

そのまま口づけするアメリアにこのままじゃ男が廃ると本能を発揮したチャーリーが軽い彼女の身体をひっくり返す様に下にするとニヤっと笑みを浮かべた。

 

「煽ったからには覚悟しろよ?」

 

「えっと・・・出来たら手加減を・・・」

 

そう言いながら不味そうな顔をするアメリアはククっと意地悪く笑ったチャーリーによって一晩中愛され続けたので有った。

 

 

~~~

 

 

「ねえ・・・まだ怒ってるの?」

 

 

そして時は同じにしてCASCADEの二階に有るリンの私室で不貞腐れているショウにリンは困った顔を浮べていた・・・

 

 

「さっきも言ったけど・・・私はショウと一緒になるのは全然良いんだよ?」

 

「じゃあ・・・何でこの指輪を受け取ってくれないのさ!」

 

自分の説明に納得して無いショウがわざわざ自分の為にと誕生石で有るルビーを綺麗にカッティングした指輪を見たリンは今はダメ・・・と罪悪感を感じながらもショウを見た。

 

「その代わり・・・ショウの認識票をくれない?」

 

「僕のドッグタグを・・・別に良いけど。」

 

これは兵士が戦死した時の確認代わりなのだが・・・ショウ達みたいな戦闘機乗りやMSのパイロットとなると回収は難しい事も有る事から何も考えず渡して来るショウとは裏腹にドッグタグは大切なものだと思っているリンは大切にするわね。と大事にそう受け取ったので有る。

 

「それじゃあ・・・私の首に着けてくれない?」

 

「えっ・・・僕のドッグタグをか・・・?」

 

「うん。これをショウだと思って大事にするね・・・」

 

そう言いながらフフッと微笑んで来るリンに向かってショウがはいはい・・・と答えながら自分のドッグタグを着けると結構重たいんだね!?とリンから驚く声が上った。

 

 

「じゃあ今度はショウ・・・指輪を貸して?」

 

「えっ・・・一体何を・・・」

 

困惑するショウから受け取り拒否した指輪をケースごと受け取ったリンはその指輪にチェーンを通すと屈んで?とショウに向かって首を傾げた。

 

「これで良い・・・?」

 

「うん・・・これでお揃いだね♪」

 

何故か満足げなリンにちょっと待って!?とショウからツッコまれたリンはどうしたの?と首を傾げた。

 

「このやり取りって一体・・・」

 

「私の自己満足ね。お互いに自分の大切なものを持っていると緊張感が湧くでしょう?」

 

そう答えながら真剣な顔をしたリンはジロっとショウを睨んだ・・・

 

「絶対に死なずに私の下に戻って来なさい。これは命令ですからねショウ=カノウ少尉・・・?」

 

 

「イエス・マム。絶対に生きて戻る事を約束します・・・」

 

 

そう言い合いながらお互いプっと吹き出し笑い合うとそのままベッドに倒れ込むとリンは優し気な顔をするショウに髪を撫でられた。

 

 

「私はこれをショウと思って大事にするからショウはその指輪を私だと思って大事にしてね・・・」

 

「ああ・・・肌身離さずにずっと着けて置くから今度渡す時は覚悟しろよリン・・・?」

 

 

自分の耳元で甘く囁くショウにドキっとしたリンはウン・・・と答えるとそのまま目を閉じたので有った。

 

 

 

~~~




表紙は絵師さんの思い込みで描かれたアメリアです。(本来は赤髪)


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離れる距離その24

「あれ・・・もう朝!?」

 

ピピピっと鳴り出す目覚まし時計のアラーム音に目を覚ましたリンはまだ眠い目を擦りながら隣を見るとハッとして慌てて起きると。

 

「ショウっ!」

 

「ど、どうしたリン!?」

 

台所からショウがフライパンを片手に出て来ると良かったっ・・・とリンはホッと胸を撫で下ろした・・・

 

「いや隣に居ないから・・・黙って基地に向かったかと思ってちょっと慌てちゃった。」

 

「先に目が覚めたから朝飯を作ってたんだよ!」

 

変な誤解をされた事でショウからムスっとする顔が浮かぶとゴメンって。とその頬にキスしたリンは床に落ちていたシャツを取り合えず羽織ると私も手伝うからね?と言いながらシャワーを浴びに浴室へと向かおうと思ったのだったのだが・・・

 

「動けない・・・」

 

昨晩の行為が祟ったのかリンがそのまま床にうずくまると苦笑いを浮かべたショウから何かゴメン・・・と謝られたので有った。

 

 

「ねえ私が送るって!」

 

「良いから・・・それにまだ辛いんだろ?」

 

結局の所ショウに朝ご飯の仕度から何もかも任せてしまったリンはまあ・・・そうだけどと答えながらお大人しく助手席へと乗り込んだ。

 

「まあ帰る頃にはまだマシになってるんじゃない?」

 

「誰の所為だと思ってんのよ・・・」

 

そう答えながらリンがジトっと睨んで来るとショウからそれじゃあ出すよ!と誤魔化しながらトラックを発進させた・・・

 

「何かこうしてると初めて二人で出かけた時の事を想いだすね・・・」

 

「初めてって・・・リンの買い出しに付き合った時の事?」

 

海岸線を流しながら答えるショウに向かってうん・・・と小さく答えたリンはコロニーの落下によってシドニー湾と名付けられた海を助手席から眺めた。

 

「また二人でこの風景を見れるのかな・・・」

 

「生きて帰って来いって言ったのリンだった筈だけど」

 

「だけど・・・」

 

そう言い掛けたと同時に急にキイ!と停まるトラックにどうしたの!?とリンが横を振り向いた瞬間には口を塞がれていた・・・

 

「んっ・・・」

 

「その先は聞きたくない。絶対に戻って来るからその時は約束だからねリン・・・」

 

顔を離しながら自分に贈る筈の指輪をネックレスにしたショウから真剣な顔を見せられたリンは分かった・・・と頬を染めながらコクっと頷いた。そしてこの止まった場所は偶然なのか以前ショウに自分の身の上話をした所でこのシドニー湾に眠る両親にも見られてたかな・・・とリンは内心気恥ずしくなったので有った。

 

 

 

~~~

 

 

「もう着いちゃった・・・じゃあ気をつけてね。」

 

「ああ・・・届くのは遅くなると思うけど絶対に手紙書くから!」

 

うん待ってる・・・と到着した基地のゲート前で助手席から降りたリンがショウと運転を代わり帰ろうとしていると、少尉!といつもの警備兵が手を振って来たのだ。

 

「基地指令から許可を貰ってるのでリンさんと一緒にどうぞ!」

 

そう説明しながらゲートを開け始める軍曹にええっ!?と驚いたショウはリンと顔を見合わせるとその指示に従い基地内へとリンのトラックを進めたので有る。

 

 

「民間人なのに本当に良いのかしら・・・」

 

「まあ良いんじゃない。バリサム大佐の許可らしいしさ?」

 

どこか不安そうなリンに向かって二っと笑ったショウは良い所有るじゃないか・・・と改めてバリサムの懐の深さを再認識すると内心感謝しながら仲間達が待つハンガーへとトラックを飛ばした・・・

 

 

「やけに遅いですね・・・」

 

そう呟きながら腕時計を見るアメリアに頭の後ろで頭を組んだチャーリーからククっと揶揄う様に笑い声が浮んだ。

 

「誰かさんみたいに激しかったんじゃね?」

 

「それ以上喋ると殺しますよ・・・」

 

そう答えながらジロっと睨んだアメリアが腰のホルスターに手を掛けるとそれを見たチャーリーから分かった!分かったから落ち着けって!?と焦る声が上がった。

 

「何が激しかったんですかねっ?」

 

「・・・俺に聞くな。」

 

そんな二人を遠目に見ていた首を傾げるソフィーにイエーガーが目を逸らしているとキュキュっとタイヤを鳴らしながらショウの運転するリンのトラックがハンガーの中へと滑り込んで来たので有る。

 

「ゴメン遅れちゃって・・・」

 

「えっと・・・私からもゴメンなさい。」

 

何故かショウと一緒にリンも降りて来るとアレ?とアメリア達は不思議そうに顔を見渡した。

 

「良くリンさんと一緒に基地の中まで入って来れましたね。」

 

「多分だけど僕達の見送りにバリサム大佐が融通を利かしてくれたんだと思う。」

 

そう話すショウ達の後ろからそれはちょっと違うわよ?と元情報部で基地指令付きの補佐官をしているケイ=キタムラ少尉の声がハンガーの入り口から響いた・・・

 

「私がバリサム大佐に無理言って入れて上げたんだから感謝しなさい!」

 

ツカツカと歩きながら指を指して来るケイにあ、ありがとう!?と戸惑った顔するショウからお礼を受け取ると次にケイはキョトンとしているリンを見た。

 

「彼女の事・・・アンタの居ない間は私が守って上げるから安心して行って来なさい。」

 

「それってどういう・・・」

 

そう言い掛けるリンに分かった・・・とその役目を知っているショウがケイにコクっと頷いていると時間が来たのかそろそろ行きますよ!とアメリアの声がハンガー内に響き渡った・・・

 

「本当にこれで暫く会えないんだね・・・」

 

「うん・・・」

 

滑走路へと向かうトラックの荷台でショウとリンが名残惜しそうに身を寄せ合っているとチャーリーの運転するリンのトラックは暖気中のミデアの横へと静かに停まった。

 

「悪いなチャーリー・・・」

 

「良いって事よ。それよりも・・・挨拶はもう良いのか?」

 

そう言いながらニヤっと笑ってくる相棒にショウは泣きそうな顔をするリンをギュッと抱きしめた・・・

 

「またね・・・ショウ」

 

「ああまたな・・・リン」

 

最後にショウが別れのキスを額にするとリンは支える様に肩を抱くチャーリーと共にミデアの中へと入って行くショウをケイと共に見送ったので有った。

 



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離れる距離・・・その25話

「いよいよ出発だな・・・」

 

「・・・寂しくなりますね。」

 

一生懸命手を振って見送るリンとケイの姿に少し泣きそうになったアメリアは泣きそうになるのを我慢すると一緒にミデアに搭乗したチャーリーに先に行ってて下さいとミデアの操縦席の方を見た。

 

「ちょっとウォルフ大尉達に挨拶をしてきます。」

 

「じゃあ俺は落ち込んでるショウを励まして来るかな・・・」

 

ククっと冗談交じりにチャーリーから手をヒラヒラと振られたアメリアはお願いします。と返事を返しながらコクピットの中に入ると、何じゃどうした?と機長で有るウォルフ大尉から驚かれたので有る。

 

「いえ・・・自分達の為に遠いジャブロー(本社)までの輸送任務を与えられた皆さんに少し挨拶をしておこうかと思いまして・・・」

 

「そんなのはいらんって!?ワシら輸送隊は積み込まれた荷物を確実に目的地までに運ぶ簿が仕事じゃ・・・だから嬢ちゃん達は荷物らしくゆっくり待っとれば良いんじゃよ。」

 

そう説明するウォルフにクルー達もそうそうと同意する様に頷かれたアメリアがしかし・・・と納得がいかない様にムウと腕を組むとでしたらこれならどうです・・・?と副機長から何か思いついたのかニヤリとした顔でアメリアを見たので有った。

 

 

~~~

 

「そろそろ時間ね・・・」

 

管制タワーで時計を見たマリアはミデア031便の離陸時間を確認すると少し緊張しながらヘッドセットのチャンネルを合わせた・・・

 

「こちらトリントンコントロールからミデア031便へ離陸準備はどうですか・・・?」

 

『ワシの酒が残っとる以外は全てオールグリーンじゃよマリア!』

 

いつもの冗談なのか・・・いや実際冗談なのか聞くのが怖いマリアはそれでは第一滑走路に向かって下さい。とスルーしながらミデア031便のタキシングを許可した。

 

『031便了解したぞい。』

 

そう答えたウォルフがゆっくりとスロットルを開けながらミデアを滑走路まで侵入させると一旦止まり離陸前の最終チェックを副操縦士と一緒に確認する様にリスト読み始めた・・・

 

『主翼及び尾翼の動作異常無し』

 

『エンジン出力も安定・・・いつでも飛べるぞい!』

 

「こちらも031便からのIFF受信を確認・・・離陸を許可します。」

 

全ての離陸シークエンスを終えたミデア031便がマリアの声と同時にエンジン出力を上げ始めると、こちら031便です。と不意に聞こえて来たアメリアの声にギョッとしたマリアはアメリアっ!?と思わず立ち上がってしまった。

 

「どうやってこの回線に割り込んで来たのよ!?」

 

『いや・・・何か急にウォルフ大尉達から通信士をやってくれって言われてしまって・・・』

 

困惑するアメリアにまったくもう・・・とウォルフ達のおせっかいにマリアが溜息交じりに答えるとマリア曹長?とアメリアからも不思議そうな声が聞こえて来た。

 

「何でもないわよ。それよりも何か聞きたい事があるんじゃない?」

 

『おっとそうでした。中継地点で有るマドラス基地までの天候データを頂けませんか?』

 

そう淡々と話すアメリアに今送るわね?と平静装ったマリアだったが内心では今から前線へ向かおうとする可愛い後輩に泣きそうなのを我慢していた・・・

 

 

(こうやってアメリアと交信するのも最後かもしれないのね・・・)

 

 

僅か数か月程の付き合いだったが・・・マリアは奇抜な発想に行動力と上官泣かせのアメリアに向かって一言呟いたので有った。

 

「絶対に私達の下に帰って来なさい。これは命令だからねアメリア!」

 

『命令って・・・今じゃ私の方が上官なんですが・・・!?』

 

相変わらず強引なマリアに苦笑いを浮かべたアメリアが頷きながらやれやれ・・・と呟き出すと同時にメインエンジンが臨界を迎えたのかミデア031便は滑走路を徐々に加速し始めた。

 

~~~

 

 

「V1、VR・・・V2!」

 

「良し行くぞい!!」

 

計器を読む副操縦士の声と同時にウォルフが操縦桿を引くとカスケード隊のMSを積んだミデア031便が離陸に成功すると続いてヒルダ率いるブラックウィドウ隊のミデアも飛び立った・・・

 

 

『トリントンコントロールから031便及びブラックウィドウ隊へさっきも送ったけど今の所は天候も安定してるから到着時間は約15時間後って所ね・・・長旅になるけど気をつけてなさいね!』

 

 

「ありがとうですマリア曹長・・・落ち着いたら手紙を書きますね?」

 

自分の事が心配なのか離陸してからもそんな声を掛けてくるマリアにアハハ・・とアメリアが苦笑いを浮かべているとピーっとレーダーから警告音が鳴り響いたので有る。

 

「基地を出たばかりじゃぞ!?」

 

「落ち着いて下さいウォルフ大尉・・・!」

 

焦るウォルフに近づいていた機体のIFF(敵味方信号)を確認したアメリアはトリントン基地所属機のフライアローとトリアーエズを確認しホッとすると更に自分のヘッドセットに聞こえて来たぜんぱ~い♪とミリイの間延びした声にギョッとした・・・

 

 

「ミリィの声が聞こえるって事はあのフライアローはひょっとして・・・」

 

まるでミデアを護衛するかのように先頭を飛ぶ機体を見たアメリアが驚いていると・・・ご名答!と答えたカスケード隊第二小隊長のジャック=アルヴィン中尉からフライアローの翼を振りながらヘヘっと笑みが上がった。

 

『制空権を出るまでは俺達が守ってやるぜ?』

 

『そういう事なので安心してて下さいねぇ♪』

 

そんな声をを上げる二人に出撃許可が下りて無かったのかちょっと二人共!!とマリアからの怒声を聞きながらアメリアが乗るミデアは無事に制空権を抜けるとそのままインドに有るマドラス基地に到着したので有った・・・

 



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オデッサ作戦
マドラス基地強襲・・・その1


トリントン基地から飛び立ってから約半日過ぎた午後13時・・・

 

「こちらトリントン基地所属輸送隊第031便からマドラスコントロールへ着陸許可を求めます。」

 

基地では元々アメリアは管制官として働いていた事も有り、本来の通信士が休憩に入ったタイミングでジャブローへの中継地点で有るインド方面軍マドラス基地が見えて来たのだ・・・

 

『マドラスコントロールから031便へ、風も無く全てオールグリーンです。第一滑走路へアプローチ願を・・・?』」

 

「031便了解です。ウォルフ大尉聞こえてますね?」

 

マドラス基地管制からの誘導にアメリアが確認すると、聞こえとる。と返したウォルフは管制塔の指示通りに高度を落とすと愛機のミデアを鮮やかに着陸させたので有った。

 

 

「内陸部にしてはあまり被害が無いようですね・・・?」

 

意外と綺麗な基地の様子に驚くアメリアに機長のウォルフからそりゃそうじゃ。とククっと笑われた。

 

「ここらは連邦の勢力圏でも後方に有る上に海に面しているから攻めにくい構造になとるんじゃよ嬢ちゃん?」

 

「へえ・・・だから水中用のMSが配備されてるんですね。」

 

ミデアのコクピットから見えるブルーを基調とした水中装備を施したジム系に向かって思案顔を浮べるとアメリアは所でウォルフ大尉・・・?と真剣な顔を向けた。

 

「何じゃい急に・・・」

 

「お腹空いたんで何か買って来ても良いですか?」

 

ここまで飲み物以外何も口にしてなかったアメリアから空腹の限界なのかキューっとお腹が鳴ると・・・ガクっと項垂れたウォルフからやれやれ・・・と呆れた声が上った。

 

「まったく・・・じゃあワシらの分も適当に頼んで良いかのう?燃料の補給に小一時間は掛かるのでな」

 

「了解です。挨拶ついでにここの基地飯を買って来ますね♪」

 

 

カスケード隊の指揮官としての役目も有るアメリアが敬礼するとウォルフは気をつけてな?と優し気な顔で彼女を見送るとそんなに似てるんですか・・・?と副機長が意味深な顔で尋ねて来た。

 

「いいや・・姿も性格もワシの孫娘には全然似て無いが・・・丁度年があれ位なんだじゃよ・・・」

 

「確か第一次降下作戦の時にでしたよね・・・」

 

そう顔を暗くする副機長にああ・・・と答えたウォルフはだからこそと誓った事が有る・・・

 

「ワシはこの任務・・・絶対に嬢ちゃん達を無事にジャブローへ届ける。お前らには悪いが最後まで付き合って貰うぞい。」

 

「我々031便のクルーは貴方のお陰でこれまでのピンチを潜り抜けて来たのですよ?最後までお供しますよ疾風ウォルフ・・・?」

 

ハァ・・・と呆れた顔をする副機長に他のコクピットクルー達もグッと親指を立てるとウォルフはお前ら・・・と泣きそうな顔を隠すようにコクピットに座り直すと気合い入れて機体の再チェックに取り掛かった。

 

~~~

 

 

「あ~首が痛ぇ・・・」

 

「同じく・・・」

 

アメリアと同様に交代で対空警戒の為に上部銃座についていたショウとチャーリーが首を回しながらミデアからマドラス基地の滑走路へと足を着けると・・・

 

「あれっ!?もう配備されてるんだっーー!」

 

そう驚くカスケード隊の腕は良いが機体のセットに少し難が有る()メカニックで有るソフィー=ホワイトからあまりの興奮にぴょんぴょんと跳ねだすとショウは港の方へ眼を凝らすとジムらしい機体が警備しているのが見える。

 

「型式番号RAG-79 アクア・ジム・・・水中用に再設計された機体ですっ♪」

 

「ジャブローでMSの整備カリキュラムを完了した事は有るわね・・・?」

 

そんな声を上げるソフィーに隣の滑走路に着陸した合流した教導隊のヒルダ中尉が流石ね?と彼女を褒めめたのだ。

 

「あわわ・・・そんな事はっ!?」

 

そんな彼女からと照れたのか顔を赤くしたソフィーが困っていると・・・ミデアの後部デッキからカスケード隊のホバートラックが出て来たので有る。

 

「どうかしたんですか?」

 

「それはコッチの話よ・・・一体どこに行く気?」

 

操舵席から顔を覗かせるアメリアにヒルダが首を傾げるとアメリアは決まってるじゃ無いですか?と更に首を傾げた。

 

「お昼ご飯を買いに行くついでにこのマドラス基地の指令に挨拶をしておこうかと・・・」

 

「いや・・・先に基地指令に挨拶するのが先だからね?」

 

元々そのつもりで合流したヒルダからツッコまれたアメリアはアハハ・・・と苦笑いを浮かべながらお腹から聞こえる空腹の音を我慢しながら了解です・・・と答えたので有った



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マドラス基地強襲・・・その2

 「それじゃ・・・基地指令への挨拶には私とアメリアにイエーガー中尉で良いかしら?」

 

結局ソフィーが操舵手となったホバートラックの中で教導隊ブラックウィドウの隊長で有るヒルデガード=ウィンチェスカ中尉からそう提案されたカスケード隊の指揮オペレーターで有るアメリアと現場指揮官で有る小隊長のイエーガーは了解と答えた。

 

 

「皆さんもうすぐ着きますよっー?」

 

ホバートラックの前面窓から見えて来た本部ビルの姿にソフィーから声が上ると同時にすぐ後ろをジープで追走していたショウとチャーリーからもオオっ・・・と驚く声が上った・・・

 

「流石はマドラス基地だな・・・俺達が居たトリントンとは大違いだぜ!?」

 

「まあ・・・オーストラリア方面軍でも一番端に有る田舎基地だしね。」

 

そう話しながら二人は先頭のホバートラックが本部ビルの奥へと入って行くとその後に続き停車した。

 

「じゃあ私達はマドラス基地の指令へ挨拶に向かうので三人は昼食の手配を頼みますね。」

 

「ウチの分まで悪いわね・・・」

 

ここから別行動となるショウとチャーリーにソフィーの三人に自分達とウォルフ達ミデアのクルーに加えヒルダが率いるブラックウィドウ隊全員の弁当のテイクアウトを任され急遽結成された兵站部隊の隊長で有るショウは任された!とグッと親指を立てたので有る。

 

「イエーガーさんの分は私が見繕って置きますねっ♪」

 

「おっおう・・・頼むから常識の範囲内でいいからな?」

 

その小さな身体に何故そこまで入るのかいつも不思議になっているイエーガーがエヘヘっ♪と満面の笑みを浮かべて来るソフィーに不安がっていると・・・

 

「行くぞソフィー!」

 

「はーいっ!じゃあまた後でっ♪」

 

ショウにそう呼ばれソフィーが駆けて行くのを見送ったイエーガーはやれやれ・・・と困った様に頭をポリポリと掻いた。

 

「相変わらず懐かれてますね・・・?」

 

「五月蝿え・・・サッサっと行くぞ。」

 

ニヤニヤとするアメリアの隣でイエーガーからぶっきらぼうに返事が返るとその二人の背後を歩くヒルダはクスっと微笑んだ。

 

(本当に個性的な部隊ね・・・これならジャブローまで飽きなくて済みそうだわ。」

 

 

そう楽しそうに思ったヒルダだったが基地指令の執務室に案内された彼女はすぐにそれを断たれたので有った・・

 

 

 

~~~

 

 

「どういう事かもう一度詳しくお聞かせ下さい基地指令っ!?」

 

 

珍しく焦った声を上げるヒルダに対しこのマドラス基地の指令官で有るフィッシャー准将は落ち着いてジャブローから送られて来た命令書を再度読み上げた。

 

 

「ジャブローに向かう教導部隊ブラックウィドウ隊及び試験実験部隊カスケード隊へ通達。ブラックウィドウ隊は直ちにジャブローに向かいカスケード隊は別命有るまで待機せよ。との事だ・・・これで良いかな中尉?」

 

 

「納得行きません!私達はカスケード隊をジャブローまで連れて行くように命令を受けていたんですよ!?」

 

 

そう睨みながらヒルダがツカツカと迫るとちょっと待て待てっ!?とその勢いに負けたフィッシャー准将から両手を振られたので有る。

 

「気持ちは分かるがこれは本社の決定だ。私じゃどうしようも出来んぞ!?」

 

「でしたら私が直接抗議しますのでレーザー通信の使用許可をお願いします!!」

 

そうデスクに手を置くヒルダの勢いに負けたフィッシャーはわ・・・分かった。すぐに手配しよう・・・と頷いたので有った。

 

 

「では私の方も情報を集めたいと思うのでまた後程伺います!」

 

 

「ああでは・・・」

 

 

まるで嵐の様に過ぎ去ったヒルダがフィッシャーの執務室から退出すると二人残されたアメリアとイエーガーはアハハ・・・と困った様に苦笑い浮かべた・・・

 

「いつもはもっとクールな人なんですが・・・」

 

「だろうね。命令書にも似たような事が書いて有るよ・・・ウォーカー少尉?」

 

そう溜息をつくフィッシャーから自分の名前が出て来た事でその命令書がロクでも無い所から回って来た事を察したアメリアはどこからです?と首を傾げた。

 

「情報部のアリス=ミラー少佐からだ。それと今後の作戦の為に試作の武器も受け取っているから有効に使ってくれと伝言も受けている。」

 

「成程・・・今後の作戦の為・・・ですね。」

 

なんとなく彼女からの指令を解読したアメリアはありがとうございました。と基地指令のフィッシャーに向かって頭を下げた。

 

「そうか・・・何の密命を受けているのかは知らんが一つだけ情報を与えよう。」

 

「あら・・・返す様なこちらには情報は有りませんが?」

 

 

ワザとらしくキョトンとするアメリアにフィッシャーからククっと楽し気に笑い声が上った・・・

 

「貴官との縁が結べただけで充分だと思うが・・・」

 

「そうですね・・・でしたら私の個人的なアドレスを渡しますのでここへお願いしますね?」

 

実際はミリィが掛けた何重のもプロクテトが掛かったホバートラックへの通信アドレスを教えたアメリアがそれでは・・・とフィッシャーの執務室から出ると・・・おいアメリア!と一緒に退室したイエーガーからジロっと睨まれたので有る。

 

 

「さっきのやり取りは何なんだ・・・一体何が起きようとしている?」

 

「そんなの私が聞きたいですって・・・」

そう答えたアメリアはただ一つだけ分かった事が有ります・・・と真剣な顔をイエーガーに向けたので有った。



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マドラス基地強襲・・・その3

 そんなピリピリとしたアメリア達の状況を知る由も無い兵站部隊はショウが運転するジープで主要設備が揃っている基地の中央に有るレクリエーションを目的とした施設へと向かっていた。

 

「やっぱりトリントンとは規模が違うな・・・」

 

助手席でそう独り言ちるチャーリーにちょっと見て下さいっ!!と荷台に座って居るソフィーから興奮気味の声が上がったので有る。

 

「何だよ一体!?」

 

ハンガーへと牽引される大型の戦闘機に思わず目を引かれたショウは慌ててブレーキを踏んだので有る。

 

「ブースター付きの新型・・・」

 

一時的にテストパイロットとして乗っていたFF-X7 BSTコアブースターよりも一回り大型の機体にショウが驚いていると・・・すみませ~ん!!とその機体の関係者らしい男性が焦りながら駆け寄って来た。

 

「こ・・ここは立ち入り禁止なんです・・・」

 

「それはすみませんでした。何しろ今日この基地に来たばかりで・・・」

 

ぜえぜえ・・・と息を切らす白衣を着るぽっちゃりした男性士官に謝ったショウがジープを出そうとギヤを入れたと同時にあのっ!とソフィーから手が挙がった・・・

 

「アレってRX-78Eじゃ無いですかっ?」

 

「何でGTーFOURの型式番号を・・・」

 

そう首を傾げるソフィーに対し男性士官が驚きのあまり目を見開いたまま固まるとソフィーはエヘヘっ♪と笑みを浮かべたのだ。

 

「ジャブローで研修を受けてた時に試作データを見た事が有ったんですけどっ・・・もう実機が完成してたんですねっ?」

 

「まあどうにか形にはなった。・・・って所が正直本音ですがね。」

 

成程と言った顔でソフィーに苦笑いを浮かべたその男性士官はそう言えば!?と慌てて敬礼しながら自己紹介を始めた・・・

 

「申し遅れましたね。自分はオーガスタ基地所属ソウタロウ=タカナシ技術大尉で有ります。」

 

「技術大尉って事はショウさん達よりも上官じゃ!!?」

 

そんな声を上げながらアワワっ!?と慌て出すソフィーに少尉で有るショウとチャーリーも焦りながら敬礼したのだが何故かタカナシからいやいや!?と恐縮する様に謝れたので有る。

 

「技術大尉とは言っても実戦部隊の皆さん対しては何の権限も有りませんからね・・・」

 

「そんなもんなんですかっ・・・?」

 

 

ガクっと項垂れるソフィーに向かってそんなもんですよ?とフフッと微笑んだタカナシが良ければ・・・少し話して行きませんか?と先程のガンダムGT-FOURが運び込まれたハンガーを見るとショウとチャーリーは顔を見合わせた・・・

 

「すみません・・・我々にも任務が有るので」

 

「そうですか・・・それなら仕方が有りませんね。」

 

どこか興味を引いたのかショウ達から断られたタカナシが残念そうな顔を浮べると・・・

 

「ちょっとだけっ!10分で良いから覗かせて下さいよっ・・・」

 

「本当に好きだよなソフィーって・・・」

 

MSに限らず機械なら何でも好きなメカキチのソフィーから懇願されたショウも最初は断ったのだが最終的に折れると後でアメリアから怒られるな・・・と苦笑いを浮かべるチャーリーと共にウキウキするソフィーに続きハンガーの中へとお邪魔する事になったショウはこの行動がアメリアとイエーガーを救う事になるとはまだ思っても見なかったので有った。

 

 

~~~

 

 

そして時は同じく・・・基地指令のフィッシャー准将との話を終えたアメリアが本部ビルの前でポツンと立ちながら待ちぼうけしていると・・・

 

「それでな俺は言ってやったんだよ・・・ジオンにビビり過ぎじゃないっすか?ってよ!」

 

「まあ戦車兵上がりだからなライス少尉は・・・ギャハハ!」

 

ここのMSパイロットなのか上官に対する軽口が耳に入ったアメリアはそれだけでこの基地の練度が低い事が伺えた・・・

 

(戦車兵上がりだからこそジオンのMSの脅威を知っている筈です。それなのにこいつ等は・・・)

 

もし自分の部下だったら血反吐吐かせてでも躾けてやるのに・・・と思っていたアメリアの姿に気付いたのかそのパイロットとの一人からヒュー♪と口笛が吹かれた。

 

「ねえねえ!!どこの所属かな・・・見た事無いんだけど?」

 

黙っていれば可愛いと良く言われるアメリアの容姿に騙されたのかナンパされたアメリアがムゥ・・・と思案顔を浮かべていると・・・どうかしたの?とジャブローへと確認を取っていたヒルダも更に合流すると二人のMSパイロットからニヤニヤ・・・とイヤらしい顔が浮かんだ・・・

 

 

「うわっこっちのお姉さんも超綺麗じゃねーの・・・」

 

 

「俺はさっきの子よりも好みだぜ・・・」

 

 

そう呟く二人とアメリアの様子にこんな時に・・・と頭を抱えたヒルダからハァ・・・と溜息がつかれるとアメリアは下がっていて下さい・・・と彼女を守る様に前に出た。

 

「おい・・・この基地を守ってる俺達に刃向うってぇ?」

 

小柄な女だと思い押さえつけようと思ったMSパイロットの軍曹だったが・・・その手を掴み懐へと踏み込んだアメリアはそのままデヤッ!と背負い投げると呆然としているもう一人のパイロットにも更に続け回し蹴りを食らわせたので有った・・・

 

 

「すみませんが・・・自分の身は自分で守るって恋人に言ってるんですよね。」

 

更にトドメと言わんばかりにアメリアがクスっと微笑むの見てヒルダは流石は元特務ね・・・とアメリアの強さを改めて確認していると・・・

 

『緊急緊急ーっ!所属不明機の当基地接近を確認・・・基地守備隊は迎撃に当たれ!!・・・続ける現在当基地に・・・』

 

ヴィーヴィーと鳴る警報と同時に聞こえて来る本部ビルからの指示にギョッとしたアメリアはチッ・・・舌打ちしながら二人のパイロットの胸倉を掴んだ。

 

 

「言いたい事は山ほど有りますが・・・今は自分の職務を果たしなさい!」

 

「わっ・・・分かりかりましたーっ!!」

 

ジロっと睨んで来るアメリアに恐怖を覚えたのか二人のMSパイロットが焦った顔でぴゅーっと飛ぶように駆け出すのを見たヒルダは苦笑いを浮かべた。

 

「個人的には助かったけど・・・今のはパワハラよアメリア?」

 

「その前にセクハラだと思うのでこれは正当防衛では!?」

 

そんな抗議の声を上げるアメリアに分かってるわよ・・・とヒルダがお礼を含めた意味でフフッと微笑んでいると・・・遅れてスマン!?と用を足していたイエーガーの登場に二人はハァ・・・と溜息をついた・・・

 

「「来るのが遅い!!」」

 

 

~~~

 

 



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マドラス基地強襲・・・その4

そしてほぼ同時刻・・・食料調達の任務を与えられていたショウ達兵站部隊はその道中に知り合ったオーガスタ研所属のタカナシ技術大尉からの招待と同隊のソフィーからの強い希望によって試作機の見学に付き合っていた・・・

 

「なあソフィー・・・さっきRXナンバーの型式を言ってたけどこれもガンダムって奴なのか?」

 

何だかんだ言いながらショウとチャーリーも興味が有るのかMSでは無い大型戦闘機のGT-FOURに

首を傾げるのを見たソフィーはクスっと笑みを浮かべた。

 

「この機体は可変機なんですよっ♪」

 

「可変・・・って変形するのかコイツは!?」

 

まさに男のロマンと言った顔で目をキラキラとさせる二人を視ながらあの・・・?と思案顔を浮かべたソフィーは隣のタカナシを見たので有る。

 

「因みに完成度ってどれくらいなんですっ・・・?」

 

「そうですね現状としては約70%・・・取り合えず跳ぶし変形は出来るんですがそこからの運用方法に難が有ると担当者からは聞いてますね。」

 

 

そう苦笑いを浮かべるタカナシに向かってソフィーからアレっ・・・?と違和感を覚えた・・・

 

「GT-FOURの担当は|カタナシ《・・・・』大尉じゃ無いんですか!?」

 

「私は現在ここに向かっている上官の代わりですよ?それと私の名はタカナシなのですが・・・」

 

「えっカタナシじゃっ?」

 

「いえ・・・もう良いです。」

 

アジア人の発音を表現するのが難しいソフィーに理解を求めるのを諦めたタカナシはちょっとこちらへ・・・と三人を更にハンガーの奥へと案内を始めた。

 

「さっきも言った通りGT-FOURの担当は他に居まして・・・私が現在開発中なのはコイツです。」

 

そう紹介するタカナシがトレーラーに載った長尺のライフルを見せるとショウ達はギョッとした・・・

 

「ワタクシのプロジェクトチームが製作中の後方支援特化型MSに装備する予定の高射程、高出力タイプのスナイパーライフルで我々はロングレンジライフルと名付けました。」

 

「コイツはまた凄いな・・・」

 

カスケード隊の中でもアメリアに次いで銃火器マニアのショウから再び興奮する声が上ったのだが、ですが・・・とタカナシが困った様にポリポリと頭を掻き出すのでソフィーとショウ達は顔を見合わせながら首を捻った。

 

「確かに上層部からの度重なる要求に応えそのスペックに辿りついた武器は出来たのですが・・・肝心の機体の方がジェネレーターの出力問題も有ってまだまだ完成には程遠いんですよ。」

 

まさに本末転倒と言うべきかソフィーが機体よりも先に武器を完成させてしまったタカナシへと不思議そうな顔を浮べたのだ。

 

「それじゃあ・・・何でその武器をここへ持って来たんですかっ?」

 

「ええ、それは運用試験の為にジャブローに向かってると言う実験部隊へ引き渡す為なんですよ。」

 

そう説明するタカナシにそれってひょっとしてっ・・・?と首を傾げだすソフィーの頭上から突然ヴィーッ!ヴィーッ!!と何かの警告音が鳴りびき出した・・・

 

「何ですかこれは・・・!?」

 

当たり前だがオロオロとする実戦経験のないタカナシに向かってシッと指を立てたショウは恐らくすぐに入って来るだろう基地からの指示に耳を澄まし始めた・・・

 

『司令部から緊急、緊急ー!当基地沖合からミサイルらしき物体の発射を確認・・・総員、速やかに退避を急げ・・・繰り返すーーーー』

 

案の定聞こえて来た最悪の事態を知らせるスピーカーの音声と同時にズズン・・・と近くに弾着したのかチッと舌打ちしたショウは全員伏せろーっ!!とすぐ傍に居たソフィーの背中を押しながら倒れ込む様にコンクリートの床へと寝そべったので有る。

 

「全員無事か・・・?」

 

パラパラと落ちて来る天井からのコンクリートの破片を頭から払いながら起き上がったショウはじゅぶんの右手がムニっと何やら柔らかい物を掴んでいる事に気付いた・・・

 

「えっとショウさんっ・・・」

 

「悪いソフィーっーーー!?」

 

不可抗力とは言え慌てて退きながら謝るショウに別に良いですけどっ・・・と助けたくれた事と胸を触られた事に対し怒るべきかお礼を言うべきか困ったソフィーは顔を真っ赤にしながら取り合えず俯いたので有った。

 

 

「それでラッキースケベのショウ・・・これからどうする?」

 

「変な名を付けるなって!・・・取り合えずウォルフ大尉のミデアに戻ろう。僕らも防衛に回らないと不味そうだし・・・」

 

ショウからの提案にそれが妥当だな。と相棒で有るチャーリーからの承諾も得たショウはマドラス基地防衛の為にとハンガーの外に止めているジープへと急ごうとしたのだが・・・ちょっと待って下さい!とオーガスタ研のタカナシ技術大尉から焦った声が聞こえて来たので有る。

 

「それではGTーFOURはどうなるのです!?」

 

「放って置くしかないんじゃないかな・・・」

 

タカナシには悪いがどうしようも無いと言った顔でそう答えるショウに合わせてアンタも早く逃げた方が良いぜ?とチャーリーからも申し訳無さそうな顔が浮かぶと・・・あのっ・・・?とソフィーから手が挙がった。

 

「あの試作機の完成度は70%と言ってましたが・・・それは運用的な問題で実用には問題無いんですよねっ?」

 

「ええ・・・先程も言いましたが機体としては完成してますけど・・・ひょっとして飛ばす気ですか!?」

 

 

ギョッとするタカナシにそのまさかですっ♪と答えたソフィーはエヘへと笑いながら頭を抱えているショウとチャーリーに向かって指示を飛ばした。

 

「私がGT-FOURの最終チェックをしてる間に二人は耐Gスーツへと着替えて来て下さいっ!」

 

「はいはい・・・こうなったら乗るしか無いぞチャーリー・・・?」

 

メカに対する愛情は誰よりも深いソフィーのスイッチが入った事にショウが諦めた様に溜息をつくと、まあ・・・ソフィーのおっぱいを揉んだしな?と揶揄うチャーリーにアレは事故だって!?と抗議したショウはタカナシと共にGT-FOURのコクピットで機体のチェックを行っているソフィーを横目にハンガーの奥に有る更衣室へと駆け出したので有った。

 

 

 

~~~

 



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マドラス基地強襲・・・その5

「ハリーハリー!もっと急いで下さいイエーガー!!」

「無茶言うなアメリア!道が悪すぎてこれ以上はスピードが上れん!?」

先程受けた対地ミサイルによる一次攻撃により荒れた基地内をイエーガーはアメリアから急かされながら右に左にとハンドルを切りながらウォルフのミデアへと急行していた。

「まったく何て言うタイミングなのかしらね・・・良いアメリア?この襲撃に応じて敵MSが強襲を掛けて来る可能性が高いわ。ウチとカスケード隊で迎撃に出るわよ!」

「了解です。結局お昼も食べて無いと言うのに・・・この恨みは許しませんよジオンの奴等め!」

食い物の恨みは恐ろしいとは良く言うが、まさに今のアメリアが良い例でブラックウィドウ隊の指揮官で有るヒルダ=キスティス中尉はそんな彼女に指示を出しながらハハ・・・と苦笑いを浮かべながら滑走路脇に駐機している二機のミデアを指差した。

「二時の方向にミデア!近くに止めて頂戴イエーガー!!」

ヒルダからの指示に分かった!と答えたイエーガーがホバートラックを急停車させると、同時に飛び出しながらヒルダがまた後で!と黒く塗装されたブラックウィドウ隊のミデアに駆け出すのを見て手を振り消したアメリアはコッチも急ぎますよ!とイエーガーに頷くと隣に駐機しているウォルフのミデアの後部ハッチへと飛び込んだので有る。

「ウォルフ大尉聞こえますか?現在の状況を襲えて下さい。」

ヘッドセットを付けながらミデアのコクピットへと通信を繋ぐアメリアに無事みたいじゃの嬢ちゃん!?
!?と機長のウォルフから安堵したかのようにホッとした声が返って来た。

「取り合えずはワシらが空腹な以外は被害無しじゃな?』

「って事はやはりショウ達は・・・」」

兵站部隊として別行動を取っていたショウ達の未帰還にアメリアから不安そうな顔を浮べていると・・・何て顔してやがる!と小隊長のイエーガーがその頭を軽く小突いた。

「あの悪運の強いショウが一緒なんだ・・・チャーリーは勿論ソフィーも絶対に無事の筈だ。」

「そうですよね・・・すみませんイエーガー、ちょっと弱気になってしまった様です。」

自分もソフィーの事が心配にも関わらず叱って来るイエーガーに謝ったアメリアはパチっと気合い入れ直す様に頬を叩くと、恋人で有るチャーリーの陸ジムを見上げながら陸戦型ガンダムに乗り込もうとするイエーガーに向かって叫んだ。

「私も三番機で援護します!」

「分かった・・・但し無茶はするなよ。後でチャーリーから叱られるのは嫌だからな・・・」

イエーガーなりの冗談なのかククっと笑いながら先に起動するRX-79「G」陸戦型ガンダムに向かって元々三人の機種転換訓練で教官をしているアメリアはそれはコッチの台詞です!と抗議しながら陸ジムのOSを起ち上げ始めた・・・

「システムの起動を確認、パーソナルコード認識、IFFが基地内とリンク・・・FCSの安全装置を解除・・・システムオールグリーン!」

機体の最終チェックを終えたアメリアが陸ジムを起すと、無茶はするで無いぞ!と忠告してくるウォルフからの心配そうな通信に分かってます!と答えたミデアの後部ハッチから出ると待機していたイエーガー機と合流した。

「それでどうする・・・今日はショウもチャーリーも居ないが?」

どっちが指揮を執るのかと言っているイエーガーにそうですね・・・と普段ならホバートラックで後方から指示を飛ばしているアメリアが思案顔を浮べていると、待たせたわね!と少し遅れて出撃して来たヒルダが率いるブラックウィドウ隊にアメリアはそうです!と手をポンと叩いたのだ。

「アメリアからBWリーダーへ我々カスケード隊は貴隊の指揮下となりますので指示をお願いします。」

「えっ・・・ソッチが良いなら構わないけど、それじゃあブラックウィドウ隊及びカスケード隊はマドラス基地の防衛に当たるわよ!」

少し困惑気味のヒルダからの指示にこれなら良いでしょう?と指揮権の統一にアメリアがクスっと微笑むと、後で一杯奢らないとな・・・と結果的に責任を押し付ける事になったイエーガーは苦笑いを浮かべたので有った・・・

~~~


「沿岸警備隊より報告!沖合へと敵潜水艦の迎撃に向かった先行のフィッシュアイ隊が全滅したとの事です!」

「・・・後発のアクアジム隊もかなり苦戦している模様!?すでに損害率が基地守備隊の3割を超えています!!」

次から次へと聞こえて来る司令部から悲痛な声に基地指令のフィッシャー准将はこれほどまでも・・・とジオン機との性能差に苦虫を潰した様な顔を浮べていると、傍にいた女性管制官からえっ!?と変な声が上るのを聞こえたフィッシャーはどうしたんだね・・・?と溜息交じりに尋ねた。


「それが・・・補給の為に立ち寄った教導隊から支援の申し出が入りましたが如何しましょうか!?」

「教導隊・・・確かキスティス中尉だったか、本当に助かる・・・」

MS隊の練度も低く猫の手も借りたい今の状況にフィッシャーがすぐにその支援を了承すると、また通信っ!?と驚く女性管制官に今度は何だね!?とフィッシャーは首を傾げた・・・


「えっと・・・現在当基地で運用試験中のオーガスタ研から試作機を空中退避させたいからと離陸の許可申請が入ったんですが・・・」

「例のRXシリーズの機体か・・・ここで失うとコッチに責任が飛びかねんし・・・ここは丁重に送り出した方が良いか・・・って事で頼む。」

そう答えながらハァ・・・?苦笑いを浮かべた女性管制官がヘッドセットを掴みながらタカナシ達が借りているハンガーへと通信を繋ぐと、キーーーン!と暖気運転を始めているガンダムGT-FOURの傍で最終チェックをしているソフィーへと離陸許可を受け取ったタカナシが慌てて走って来た・・・

「ハァハァ・・・離陸許可はオッケーです・・・」

「分かりましたっ♪それじゃあ二人共グッドラックですっ!」

そう答えながら親指を立てたソフィーが離れるのを確認したショウとチャーリーは同じくグッドラック・・・と言いながら複座式のキャノピーを閉じると、こうなったら仕方が無い・・・と言った顔で急遽搭乗する事となったガンダムGT-FOURのスロットルを少しだけ上げると滑走路へとタキシングを始めたので有った。




「ハリーハリー!もっと急いで下さいイエーガー!!」

 

「無茶言うなアメリア!道が悪すぎてこれ以上はスピードが上れん!?」

 

先程受けた対地ミサイルによる一次攻撃により荒れた基地内をイエーガーはアメリアから急かされながら右に左にとハンドルを切りながらウォルフのミデアへと急行していた。

 

「まったく何て言うタイミングなのかしらね・・・良いアメリア?この襲撃に応じて敵MSが強襲を掛けて来る可能性が高いわ。ウチとカスケード隊で迎撃に出るわよ!」

 

「了解です。結局お昼も食べて無いと言うのに・・・この恨みは許しませんよジオンの奴等め!」

 

食い物の恨みは恐ろしいとは良く言うが、まさに今のアメリアが良い例でブラックウィドウ隊の指揮官で有るヒルダ=キスティス中尉はそんな彼女に指示を出しながらハハ・・・と苦笑いを浮かべながら滑走路脇に駐機している二機のミデアを指差した。

 

「二時の方向にミデア!近くに止めて頂戴イエーガー!!」

 

ヒルダからの指示に分かった!と答えたイエーガーがホバートラックを急停車させると、同時に飛び出しながらヒルダがまた後で!と黒く塗装されたブラックウィドウ隊のミデアに駆け出すのを見て手を振り消したアメリアはコッチも急ぎますよ!とイエーガーに頷くと隣に駐機しているウォルフのミデアの後部ハッチへと飛び込んだので有る。

 

「ウォルフ大尉聞こえますか?現在の状況を襲えて下さい。」

 

ヘッドセットを付けながらミデアのコクピットへと通信を繋ぐアメリアに無事みたいじゃの嬢ちゃん!?

!?と機長のウォルフから安堵したかのようにホッとした声が返って来た。

 

「取り合えずはワシらが空腹な以外は被害無しじゃな?』

 

「って事はやはりショウ達は・・・」」

 

兵站部隊として別行動を取っていたショウ達の未帰還にアメリアから不安そうな顔を浮べていると・・・何て顔してやがる!と小隊長のイエーガーがその頭を軽く小突いた。

 

「あの悪運の強いショウが一緒なんだ・・・チャーリーは勿論ソフィーも絶対に無事の筈だ。」

 

「そうですよね・・・すみませんイエーガー、ちょっと弱気になってしまった様です。」

 

自分もソフィーの事が心配にも関わらず叱って来るイエーガーに謝ったアメリアはパチっと気合い入れ直す様に頬を叩くと、恋人で有るチャーリーの陸ジムを見上げながら陸戦型ガンダムに乗り込もうとするイエーガーに向かって叫んだ。

 

「私も三番機で援護します!」

 

「分かった・・・但し無茶はするなよ。後でチャーリーから叱られるのは嫌だからな・・・」

 

イエーガーなりの冗談なのかククっと笑いながら先に起動するRX-79「G」陸戦型ガンダムに向かって元々三人の機種転換訓練で教官をしているアメリアはそれはコッチの台詞です!と抗議しながら陸ジムのOSを起ち上げ始めた・・・

 

「システムの起動を確認、パーソナルコード認識、IFFが基地内とリンク・・・FCSの安全装置を解除・・・システムオールグリーン!」

 

機体の最終チェックを終えたアメリアが陸ジムを起すと、無茶はするで無いぞ!と忠告してくるウォルフからの心配そうな通信に分かってます!と答えたミデアの後部ハッチから出ると待機していたイエーガー機と合流した。

 

「それでどうする・・・今日はショウもチャーリーも居ないが?」

 

どっちが指揮を執るのかと言っているイエーガーにそうですね・・・と普段ならホバートラックで後方から指示を飛ばしているアメリアが思案顔を浮べていると、待たせたわね!と少し遅れて出撃して来たヒルダが率いるブラックウィドウ隊にアメリアはそうです!と手をポンと叩いたのだ。

 

「アメリアからBWリーダーへ我々カスケード隊は貴隊の指揮下となりますので指示をお願いします。」

 

「えっ・・・ソッチが良いなら構わないけど、それじゃあブラックウィドウ隊及びカスケード隊はマドラス基地の防衛に当たるわよ!」

 

少し困惑気味のヒルダからの指示にこれなら良いでしょう?と指揮権の統一にアメリアがクスっと微笑むと、後で一杯奢らないとな・・・と結果的に責任を押し付ける事になったイエーガーは苦笑いを浮かべたので有った・・・

 

~~~

 

 

「沿岸警備隊より報告!沖合へと敵潜水艦の迎撃に向かった先行のフィッシュアイ隊が全滅したとの事です!」

 

「・・・後発のアクアジム隊もかなり苦戦している模様!?すでに損害率が基地守備隊の3割を超えています!!」

 

次から次へと聞こえて来る司令部から悲痛な声に基地指令のフィッシャー准将はこれほどまでも・・・とジオン機との性能差に苦虫を潰した様な顔を浮べていると、傍にいた女性管制官からえっ!?と変な声が上るのを聞こえたフィッシャーはどうしたんだね・・・?と溜息交じりに尋ねた。

 

 

「それが・・・補給の為に立ち寄った教導隊から支援の申し出が入りましたが如何しましょうか!?」

 

「教導隊・・・確かキスティス中尉だったか、本当に助かる・・・」

 

MS隊の練度も低く猫の手も借りたい今の状況にフィッシャーがすぐにその支援を了承すると、また通信っ!?と驚く女性管制官に今度は何だね!?とフィッシャーは首を傾げた・・・

 

 

「えっと・・・現在当基地で運用試験中のオーガスタ研から試作機を空中退避させたいからと離陸の許可申請が入ったんですが・・・」

 

「例のRXシリーズの機体か・・・ここで失うとコッチに責任が飛びかねんし・・・ここは丁重に送り出した方が良いか・・・って事で頼む。」

 

そう答えながらハァ・・・?苦笑いを浮かべた女性管制官がヘッドセットを掴みながらタカナシ達が借りているハンガーへと通信を繋ぐと、キーーーン!と暖気運転を始めているガンダムGT-FOURの傍で最終チェックをしているソフィーへと離陸許可を受け取ったタカナシが慌てて走って来た・・・

 

「ハァハァ・・・離陸許可はオッケーです・・・」

 

「分かりましたっ♪それじゃあ二人共グッドラックですっ!」

 

そう答えながら親指を立てたソフィーが離れるのを確認したショウとチャーリーは同じくグッドラック・・・と言いながら複座式のキャノピーを閉じると、こうなったら仕方が無い・・・と言った顔で急遽搭乗する事となったガンダムGT-FOURのスロットルを少しだけ上げると滑走路へとタキシングを始めたので有った。

 

 



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マドラス基地強襲・・・その6

「複座でしかも後席か・・・なあチャーリーちゃんとマニュアルは読んだんだろうな?」

 

「大体な・・・まあなんとかなるって!」

 

相棒の性格上サラッと見ただけだなコイツ・・・と前席で操縦担当のチャーリーからピースサインを

見せられたショウは頭を抱えながら自分のジャンケンの弱さを悔やんでいると、ピーっと管制タワーから二人の乗るガンダムGT-FOURへ通信が入った。

 

『マドラスコントロールからタキシング中の試作機へ、先の攻撃でA滑走路が使用不可の為にB滑走路へへの侵入を許可します。』

 

「こちら・・・そう言えばコールサインはどうするチャーリー?」

 

ソフィーの思い付きから突然この機体に乗る事となった為にふと思ったショウが前席の相棒に尋ねると、そうだな・・・と思案顔を浮かべたチャーリーからこれはどうだ?と悪戯っぽくニヤリと笑みが浮かんだので有る。

 

 

~~~

 

 

「あれ・・・おかしいわね?」

 

今さっきまで試作の誘導していた女性管制官の様子に何か有ったのか!?と気が付いた基地指令のフィッシャーが慌てて近づくと、急に返事が返って来なくなったんですよね・・・と首を傾げる女性管制官にまさか機体トラブルか・・・?とRX計画絡みの機体と言う事も有って不安な顔をフィッシャーが浮べていると・・・通信繋がりました!と女性管制官からパッと顔が上がった。

 

 

「試作機のコールサインはCBP1・・・マドラスコントロール了解。こちらの指示が有るまで滑走路前で待機せよ!・・・一体何だったんでしょうね?」

 

「分からんが・・・基地守備隊の方が余り芳しくない。さっさと上げて上空で待機させるんだ・・・」

 

本社(・・)の厄介事には関わり合いたくないって事ですか?」

 

「当たり前だ・・・派閥なんてものに私は興味はないからな・・・」

 

そう答え、手をヒラヒラと振りながら自分の席に戻ろうとするフィッシャーに女性管制官はハハっ・・・と苦笑いを浮かべながら、まあ確かにね・・・と思うと滑走路前で離陸前の最終チェックをしているショウとチャーリーが乗るガンダムGT-FOURへ通信を繋いだ。

 

 

~~~

 

「エルロン、エレベータ、ラダー、フラップ・・・全ての可動翼の動作チェック良し・・・エンジン種出力もアイドリングのまま安定しているぜショウ!」

 

 

「了解・・・FCS(火器管制)のロック解除、自機のIFF(敵味方信号)と基地とのデータリンク確認した・・・システムオールグリーン!」

 

 

久々に行った離陸前のルーティンが済み一息ついたショウになあ・・・?チャーリーから苦笑いが浮んだ・・・

 

「本当のソフィーの作戦通りやるのか・・・」

 

「既に実弾(・・)まで積んだんだから今更怖気づくなよ・・・それに援護に向かうんなら派手な方がお前も好きだろ?」

 

そう答えながらククっと笑うショウに、まあそうだけどよ・・・とチャーリーから困った顔が浮かぶと同時に、聞こえますかCBP1?とピーと鳴る通信アラームと一緒にマドラス基地の女性管制官からの声が聞こえたショウは感度良好と答えた。

 

 

『宜しいCBP1、これより離陸を許可します。』

 

「ありが・・・」

 

「サンキュー、マドラスコントロール!その可愛い声が素敵だぜ!!」

 

今まで交信していた後席のショウを遮る様に軟派な声を上げたチャーリーがスロットルを全開に上げると、おいチャーリー!!と後席のショウから抗議の声が上った・・・

 

「アメリアの事を心配してたんじゃ無いのかよ!?」

 

「ああっ?あんなのただの挨拶だって・・・そんな事よりもさっさと速度を読めって!」

 

「アメリアにバレて殺されても知らないからな・・・!!」

 

アメリアとくっ付いて大分落ち着いたと思っていた軟派癖にショウは呆れながらディスプレイに映る離陸速度を読み上げると、同じく管制塔でチャーリーから突然ナンパ染みた声を掛けられた女性管制官も呆れた顔をしながら滑走路加速して行く試作機に首を傾げていた・・・

 

 

~~~

 

 

(あんな能天気なパイロットも居るのね・・・?)

 

 

聞いた声の無い二人組のパイロットにジャブローも人手不足らしいと感じた女性管制官は腕を伸ばしながら、まあこのまま大人しくしてくれれば・・・と呟いたのだが・・・大変です!と叫ぶレーダー官の声に慌てて立ち上がった基地指令のフィッシャー准将からどうした!?と焦った声が上ったので有る・・・

 

 

「沖合の敵潜水艦からミサイルの発射を確認・・・!方位から見て目標はここ・・・司令部です!?」

 

「くっ・・・基地内に通達!戦闘員には対空防御を密にと、絶対に司令部をやらせるなよ!!」

 

レーダー官から第二波の攻撃を受けたフィッシャーの指示により司令部の動きが騒がしくなると同時にハッとした女性管制官も慌ててヘッドセット掴み離陸中のCBP1へ通信を繋いだ。

 

 

「今の通信聞こえてたわね!急いで離陸を中止して安全な場所まで退避を・・・」

 

『悪いが離陸速度をv1を超えた・・・このまま飛ぶぞ!』

 

もう減速しても止まれない速度に達したと言うショウに対し、ならばそのまま上空に逃げて下さい!と言葉濁さずはっきりと言って来る女性管制官の言葉にククっと笑ったチャーリーはヤーだね!とまるで子供みたいに反抗すると操縦桿を目一杯引いた・・・

 

 

「何あれ・・・機体が急に空に向かって急上昇した・・・!?」

 

 

「あれはハイレート・クライムだ・・・まさかあの難易度の高い技を試作機でするとは相当肝が据わった奴か・・・何も考えて無いバカだな。」

 

 

キョトンする女性管制官の隣で呟いたフィッシャーは非常時にも関わらずその綺麗な機動に思わず感心したので有ので有ったが・・・勿論それは後者だった事はすぐに思い知る事になる・・・



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マドラス基地強襲・・・その7

「チッ・・・ソイツをやるならやるって言えよなチャーリーっ!!」

 

 

 

 

 

テイクオフ直後の加速から一気に機体をほぼ垂直にズームアップさせるハイレート・クライムを予告も無しに行うもんだからショウは急激な機体の引き起こしから来る強烈なGに顔を歪ませながら前席のチャーリーへと抗議の声を上げた。

 

 

 

「悪りい悪りい・・・それにしてもコイツの上昇力凄えな!もう1000フィート近くまで高度が上がったぜ!?」

 

 

 

「ったく・・・ソフィーが言うにはコアブースターの1.4倍の出力が有るらしいからもっと丁寧に扱えよな・・・!」

 

 

 

興奮気味のチャーリーに向かってショウが呆れた顔をしながら注意すると、ピーっと警告音を鳴らすレーダーにお出でなすった様だな・・・と呟いたショウはマドラス基地とリンクさせた情報をパイロットのチャーリーへと送った。

 

 

 

「取り合えず先に基地への攻撃を防ぐ・・・このままの位置で上昇を続けろチャーリー!」

 

 

 

「了解ーーっ任せろって・・・!!」

 

 

 

そう指示を飛ばすショウにHUDに映る敵潜水艦から発射された対地ミサイルへとチャーリーがGT-FOURを更に上昇させると、良し見えたぞ・・・とシートの後部から引き出した精密射撃のゴーグルでロックしたショウは右手のサイドスティックに有るトリガーに指を掛けた・・・

 

 

 

「CBP1・・・フォックス3!」

 

 

 

戦闘機と言いながらも対空ミサイルを装備していないこの機体だが・・・機首に4門胴体に2門の30ミリバルカンに機体上部にはコアブースターにも実装された二基のビームキャノンと固定兵装は充実しているのだが急な離陸の事も有りメカニックのソフィーが見落としたのかショウとチャーリーが乗るガンダムGT-FOURからばら撒かれた大量の銃弾と大出力ビームは進攻する対地ミサイルとはまるで明後日の遥か彼方に飛んで行ったので有る。

 

 

 

「おいショウっ!!?」

 

 

 

「なっ・・・射線軸がコンマ3はズレてるぞコイツ!?」

 

 

 

すぐにFCSを確認するショウにどうするよ!とチャーリーから焦る声が聞こえると、やるっきゃないだろ!と叫んだショウはさっきの射撃データから自分の勘と経験で射線軸を調整すると更に照準をマニュアルに切り替えた・・・

 

 

 

(基地にはソフィーは勿論・・・アメリアやイエーガーさん達カスケード隊の仲間が居るんだ。今度こそ絶対に当ててやる・・・!)

 

 

 

「チッ・・・これ以上はミサイルと近すぎる。ラストアタックだからなショウ!!」

 

 

 

そう焦るチャーリーの声に上等だ・・・!とさっきと同様にゴーグルを覗き込んだショウは今度はロックオンせずにサイドスティックと連動させた6門のバルカン砲とビームキャノンを操作するとこちらの少し上を飛ぶ対地ミサイルを捉えた。

 

 

 

「CBP1・・・フォックススリーーーーっ!!」

 

 

 

そう叫んだショウがトリガーを絞ると同時に発射された6門の30ミリ弾と2門の高出力ビームは先程と違い機体に対し真っすぐ飛ぶと高度を落とし炸裂しそうな対地ミサイルを全て叩き落としたので有った・・・

 

 

 

「よっしゃーーービンゴ!!」

 

 

 

「流石ショウだぜ!?凄えぜホントによ!!」

 

 

 

あまりの嬉しさにガッツポーズを取るショウに向かってそう叫んだチャーリーが手だけ後席に見せるとショウはだろっ?と珍しくドヤ顔をしながらその手を叩いた。

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 

 

「し・・・指令?こちらに向かっていたミサイルが全て撃破された模様です・・・!?」

 

 

 

何が起きたのか分からないと言った顔で報告して来るレーダー官の様子にフィッシャーはずっと見ていた上空から目線を下すと分かっている・・・と答えながら溜息をついた。

 

 

 

 

 

「ハァ・・・一体何者なんだ?ジャブローのクソ真面目なパイロットがあんな無茶な事するか普通!?」

 

 

 

「そんな事言われましても・・・」

 

 

 

近くに居た所為か急に頭を抱えだすフィッシャーに女性管制官が苦笑いを浮かべていると、緊急です!?とまた新たな問題が起きたのか焦った声を出す部下に向かって今度は何だ・・・?と少し疲れた顔をしたフィッシャーは目を覆った・・・

 

 

 

「ハッ!港に展開中の防衛部隊からなのですが・・・どうも敵MSの上陸阻止に失敗したらしく救援を求めています。」

 

 

 

「チッ・・・やはり付け焼刃のMS隊では無理か・・・先程支援を申し出てくれた教導隊に向かう様に要請を頼む。」

 

 

 

ここは練度の高いブラックウィドウ隊とカスケード隊に望みをかけるしかないな・・・と思ったフィッシャーがそう指示を飛ばすと同時にピーっと自分のヘッドセットに通信が入った女性管制官からギョッとする顔が浮かんだのだ。

 

 

 

「あの指令・・・?」

 

 

 

「・・・聞きたくない。」

 

 

 

「CBP1から自分も港への援護に向かうと言ってますが・・・」

 

 

 

それを無視して説明する女性管制官が首を傾げると、もう好きにしてくれ・・・と答えるフィッシャーの疲れた様子に了解しました。と答えた女性管制官は同情しながらも何かしそうなCBP1の働きに期待するように一言一句間違い無く伝えたので有った。

 

 

 

 

 

「おいチャーリー聞いたか・・・好きにしろってよ!?」

 

 

 

「何か知らねえが話が分かるじゃねえか・・・それじゃあ行くぜショウ!!」

 

 

 

まさかの命令無視を許す許可に驚くショウに向かって叫んだチャーリーによってイヤッホオォー!!とダイブしたGT-FOURは機体を反転させながら敵機と交戦中らしいヒルダが率いる教導隊のブラックウィドウ隊と自分達が所属するカスケード隊の救援へと急行した。



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マドラス基地強襲・・・その8

 

「ラムダ1からラムダ2、3へ・・・司令部から先行したフィシュアイ隊は既に全滅したとの模様だ。・気を引き締めて掛かれ!」

 

マドラス基地守備隊機械化混成部隊の一つで有るMS部隊ラムダ小隊はRAGー79アクアジム三機で沿岸部に有る港の増援へと向かっていたのだが、司令部からの幸先悪い通達に戦車兵上がりのライス少尉はすぐ後ろに追随する二機のアクアジムへと注意を促したのだ・・・

 

「わーってますよ。」

 

「相変わらず慎重と言うか・・・ちょっとビビり過ぎてはいませんか?」

 

こんな感じで軽口を叩くのは先程アメリアとヒルダをナンパし返り討ちに有った軍曹二人組で有る。そしてそんな二人の上官で有るライスはまったくこいつ等と来たら・・・といつもの様に内心思いながらハァ・・・と深く溜息をついた。

 

「良いか二人共・・・これは演習じゃ無く実戦だって事を本当に分かってるのか?」

 

「はいはい甘く見ていると早死にするんでしょう・・・分かってますって?」

 

ライスからのいつもの小言にラムダ2のアクアジムからうんざりした様に両手が少し上がると、それにですよ?とその隣のラムダ3からも同調すると同時にククっと笑い声が上ったのだ。

 

「噂じゃジオンよりも優秀なMS持つ連邦が巻き返しを始めたって聞きますし・・・これは手柄を立てるチャンスなんじゃ?」

 

「確かにここで敵機の一機や二機でも倒せば出世間違い無しだなっおい!?」

 

長引く戦争に戦線が停滞しアジア大陸の中でも比較的端に位置するのも相まって、ここマドラス基地にMS隊と言われる物が出来て早一か月・・・まだ一度もMSで実戦をした事も無いのにも関わらずハイテンションな二人を無視したライスは不安を感じながら目的地で有る港へと辿り着いた・・・

 

「おい何だよコレは・・・」

 

「確か俺達よりも先にベータの連中が先行してた筈・・・」

 

一方的に攻撃を受けたのか・・・二人が原型を留めていない程に破壊されたベータ隊のアクアジムの無惨な姿に呆然とすると、コイツはマズイな・・・と元戦車兵の勘が早くここから逃げろと警笛を鳴らすのが聞こえたライスはチッと舌打ちすると機体を驚いたまま固まっているラムダ2と3の方へ向けた。

 

「これよりラムダ隊は一旦この場から離脱し基地司令部との交信が出来る位置まで後退する。」

 

「ちょっと待てよ隊長!?こいつ等をこんな目に遭わせた奴をそのままにして逃げる気かよ!!」

 

ベータ隊の仇を討ちたいのか興奮するラムダ2がライスのラムダ1に詰め寄ると、おい止せって・・・と相棒よりも少し冷静なのかラムダ3が止める様にその肩を掴んだのだ・・・

 

「良く見ろって・・・ベータだけじゃ無く沿岸警備をしていた61式まで全滅してんだ。ここは隊長の言う通り下がって増援を待った方がよく無いか?」

 

「チッ・・・分かったよ。」

 

ラムダ2も完全には納得してない様だがラムダ3の説得に応じたのかライスのアクアジムから離れると、それでは行くぞ!とライスのアクアジムは元来た道を戻り始めた。

 

(周囲のミノフスキ粒子が戦闘濃度まで上がっている・・・ベータの連中からの救援要請が届かなかったのは恐らくこの所為だな・・・)

 

ここで警戒すると見えない敵機を余計に刺激すると思い足早に港から離れようと考えたライスだったのだが・・・

 

 

「おいおい獲物が逃げんじゃねえよ・・・?」

 

 

ザバっと海から港へと上がって来たジオン機らしいMSが前方に立ち塞がるのを見たライスはやはり見逃してはくれないか・・・と苦笑いを浮かべながら背後のラムダ2とラムダ3へ叫んだ。

 

 

「ブレイク!俺がコイツの相手をする。お前らは司令部へ救援を頼むぞ!!」

 

そう指示を出したライスのアクアジムが駆け出すと同時に腰からビームピックを引き抜くのを見たラムダ3はその意図を感じると・・・ちょっと待てよ!?と怒る様に叫ぶラムダ2の腕を引っ張ったのだ・・・

 

「あの人は自分を囮にして俺達を逃がそうとしてんだよ!分かんねえのか!?」

 

「ああ!分かってるからムカついてんだよ・・・カッコつけやがってあの野郎!」

 

そんな相棒の様子にラムダ3の軍曹は、ったくよ・・・と困った様な声を上げると自機に持たせてるミサイルランチャーを構えた。

 

「一回だけだからな・・・一回援護したら離脱する。良いな?」

 

「そう来なくっちゃな・・・3カウントで撃つぞ!」

 

そうククっと笑いながら答えるラムダ2も自機のアクアジムが持つミサイルランチャーを構えると悪戦苦闘しているラムダ1を援護しようとジオンの水陸両用MS MSMー07ズゴッグへと狙いを定めたので有る。

 

 

「コイツっ!!」

 

「いい加減しつこいんだよっ!!?」

 

一応はジムの直系機とは言え水中用の居地仕様で有るアクアジムで戦う必死なライスに向かってイラっとした対MS戦も想定したズゴッグのパイロットはアクアジムが振るビームピックを掻い潜りながら引いていた右手を一気に振りに抜いたのだ・・・

 

「しまったっ!?」

 

ズゴッグの固定兵装アイアンネイルによる鋼鉄の爪によってアクアジムの右腕を肩ごと打ちぬかれたライスがギョッとするとアクアはジムはそのまま背中から吹き飛んでしまう。

 

「これでお終いだ・・・」

 

「クッ・・・」

 

トドメを刺そうとズゴッグの右手の爪からビームが発射しようとした瞬間・・・ドンっ!とライスの目の前で爆炎がズゴッグを襲ったので有った。

 

 

「今ですよ隊長!?」

 

「早く離脱しろって!!」

 

そう言いながら更に撃って来る二人に目を見開いたライスはあのバカ共!と怒りながらもこの窮地を救ってくれた事にククっと笑みを浮かべた・・・

 

「そこまでされちゃあ・・・意地でも逃げてやらなきゃなっ!!」

 

そう叫んだライスがフットペダルを踏み込むと二人の撃ったミサイルによりダメージを負ったのか怯んでいるズゴッグに向かってバーニアを吹かしたアクアジムを起しながら体当たりをかましたのだ。

 

「ウォっ!!?」

 

水中用と言う事も有り緊急時のみしか使用出来ない奥の手を使ったライスのアクアジムがバーニアを使っての特攻に泡喰ったズゴッグのパイロットは更に思わぬダメージを負ってしまった。

 

「メインカメラが・・・」

 

「推進剤持てよ!」

 

その隙に離脱しようと思ったライスのアクアジムがラムダ2達と合流しようとした瞬間・・・この野郎!!と精度の劣るサブカメラを使ってのズゴッグからのビーム攻撃にラムダ1の右足が撃ち抜かれたので有った・・・

 

 

「チッ・・・お前らはさっさと離脱しろ!!」

 

そう起き上がりながら怒鳴ったライスに了解・・・と答えたラムダ3がクッ・・・と悔しそうな声を上げるラムダ2と共に離脱をするのを見送ったライスはズン・・・ズン・・・と地面を揺らしながらゆっくりと歩いて来るジオン機にククっと苦笑いを浮かべた。

 

「こんな機体にコケにされて随分と怒ってる様だな・・・?」

 

そんなライスの予想が当たっていたのか・・・忌々しい奴め!と行動不能となったアクアジムに向かってズゴッグが確実に仕留めようとコクピットに向けて右手を押し当てて来るのを見てライスが諦めた様に目を閉じた・・・

 

(もし神が居るのならこのピンチを救ってくれるんだろうな・・・)

 

 

正直ライスは冗談でそう思ったのだが・・・気まぐれ天使が近くに居たのか、ドカンっ!!と轟音を立てながら突っ込んで来るRGMー79「G」陸戦型ジムの姿に目を見開いたので有った。

 

 



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マドラス基地強襲・・・その9

「何をボーッとしてるんですかぁ!!?」

 

そう怒鳴ったアメリアの陸ジムがライスのアクアジムを左腕のシールドごとタックルし強引に吹き飛ばすと・・・ビシュ!と発射されたズゴッグの腕部ビーム砲を間一髪避けたアメリアはアクアジムと一緒に地面へと倒れ込むとメインモニターに映るズゴッグをロックオンした。

 

「何だコイツはっ!!?」

 

「貰ったぁーーー!!」

 

そんな声を上げるズゴッグのパイロットからの悲痛な顔など見る事も無くアメリアは機体を横滑りさせながらトリガーを引くと・・・ドドドドッ!!と低い銃声と同時に発射された100ミリマシンガンによって右腕を前に出していたズゴッグはそのままガクっと前のめりに崩れ落ちたので有った・・・

 

「やれやれ・・・どうにかギリギリでしたね・・・」

 

機体を起しながらアメリアがコクピットでそう独り言ちると、こちらラムダ1・・・聞こえるか?と行動不能らしく足元で倒れ込んだままのアクアジムからピーっと通信アラームが入って来た。

 

「こちら試験実験部隊カスケード隊のアメリア=アン=ウォーカー少尉です。お怪我は有りませんか?」

 

「こちらはマドラス基地所属ラムダ小隊のライス少尉だ。荒っぽい救援に感謝するよウォーカー少尉?」

 

ククっと冗談交じり笑いながら答えるライスの様子に及びません。とアメリアもクスっと笑い返している

と・・・ライス少尉ーーーっ!?と聞こえて来る声にその声は!?と驚いたアメリアの陸ジムは心配で戻って来たラムダ2とラムダ3に向けて指を向けたのだ。

 

「私の部下だが・・・知ってるのか?」

 

そんなアメリアの様子にライスも違和感を感じたのか首を傾げると、ええまあ・・・と苦笑いを浮べ曖昧に答えるアメリアの声に向こうも気付いたのか・・・さっきの暴力女ぁ!!?と軍曹達のアクアジムが先程植え付けられた恐怖の所為か後ずさりするのを見て、彼女と何が有ったんだ・・・・?とアクアジムのコクピットから出て来るとライスは誰が暴力女ですかぁーーー!?と怒鳴り返すアメリア機を見ると首を傾げたので有った。

 

 

~~~

 

 

「とにかくここは危険ですので、ここは私に任せてライス少尉達は離脱を!」

 

 

「この基地を守る兵士としては悔しいが・・・ここは君に任せた方が良いみたいだな。」

 

 

自機を失った事とアメリアとは明らかに自分達とは練度の差が有り過ぎる為に逆に邪魔だと判断したライスが潔くアメリアの指示に従いラムダ2のアクアジムの手に乗ると、所で少尉!と叫ぶライスにアメリアはモニター越しに何ですか?と答えた。

 

「これが終わったら盛大に飲もう!勿論我々の奢りでな?」

 

 

「それは楽しみですね。ウチの隊は皆が酒好きですので・・・」

 

そう言い掛けたアメリアがピーっと鳴るIFFの反応にチッ!と舌打ちすると陸ジムをその方向に100ミリマシンガンを構えた・・・

 

「敵機の反応・・・急いで下さい!!」

 

そう外部スピーカーで叫ぶアメリア機に分かった・・・とライスが手でラムダ2に合図するとラムダ3共にゆっくりと後退を始めた。

 

「おい赤髪・・・死ぬんじゃねえぞ!?」

 

「お前には借りが有るんだからなっ!!」

 

案外良い奴らしいですね・・・と自分を応援して来るナンパ野郎の二人にライス少尉の事を頼みますね?とアメリアはクスっと微笑んだ。

 

「うっかり落っことしたりなんかしたら後で私の鉄拳制裁が下りますからね!」

 

「「そんなドジするかよっ!?」」

 

二人揃ってツッコんくる声にはいはい・・・それでは後程。と通信を切ったアメリアは気持ちを切り替えようと自分の頬をバシっと叩いた・・・

 

「タダ酒を頂く為にもあの三人を守らないといけませんね・・・」

 

「えっ・・・ここは隊長が制圧した筈・・・ギャっ!?」

 

そう独り言ちたアメリアの陸ジムが無警戒のままザバっっと海から上がって来たジオンの水陸両用MSに向けて100マシンガンを連射すると・・・どう言う事だ?とMSM-04アッガイのパイロットは先に上がった僚機から聞こえる悲鳴と爆散する機体に驚愕したのだ・・・

 

「シャーク02から各機へシャーク03がやられた!?一斉に飛び出して片付けるぞ!!」

 

「シャーク04了解」

 

「シャーク05了解」

 

アメリア機を警戒しての行動か・・・残ったアッガイ三機がバーニアを吹かしながら飛び出して来るのをメインモニターで確認したアメリアからちょっ!?と焦った声が上った。

 

「同時に三機とか捌ききれる訳っ!!?」

 

「隊長とシャーク03の仇だーーーっ!!」

 

バラララッ!!!とアメリア機が撃つ100ミリマシンガンを掻い潜りながらシャーク02のアッガイが右腕のアイアンネイルをアメリアが居るコクピットへと振り抜こうとした瞬間・・・ビシュ!とその背後からアッガイの背中がビームによって撃ち抜かれたので有る。

 

「へっ・・・?」

 

「CSD1からアメリアへ・・・ヒヤヒヤさせんじゃねえぞ!!?」

 

そう怒声を上げる後方から駆け付けたイエーガー機のビームライフルによって間一髪危機を逃れたアメリアだったが・・・

 

「貴様ぁーーー!!」

 

「良くもシャーク02を!」

 

更に追撃して来るアッガイ二機にチッ!!と舌打ちしたアメリアは腰からビームサーベルを引き抜きながらイエーガー援護を!と叫んだが、流石に近すぎるぞ!?と敵機とアメリア機の距離にイエーガーに緊張が走ると・・・

 

 

「だったら俺達がやるぜぇ!イッヤホぉぉぉーーー!!!」

 

 

そんな声を上げるチャーリーの雄叫びと共にキイイン!!と急降下して来た機体にハァ!!?とイエーガーが素っ頓狂な声が上ると同時にショウがロックした!とアッガイを捉えたショウがトリガーを絞ると・・・GT-FOURの機体上部から発射されたビームキャノンが一機のアッガイの胸部を貫いたのだ。

 



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マドラス基地強襲・・・その10

「ビンゴッ!!どうだ見たかチャーリー!?」

 

間一髪の所でアメリアの危機を救ったショウから興奮気味にガッツポーズが上がると同時に機体を引き起こしたチャーリーは下を見ながら健在なアメリアの陸ジムにホッとしながら後席を見た。

 

「愛してるぜショウ?」

 

「それはアメリアに言ってやれよバーカ!」

 

チャーリーからの冗談交じりの礼にショウがククっと笑っていると、下でも決着がついたのかアメリアの陸ジムが残った最後のアッガイに向かってビームサーベルを突き刺していた・・・

 

「何だか良く分かりませんが・・・・とにかく助かりました!」

 

フゥッと安堵した様に息を吐いたアメリアが上空を飛ぶショウとチャーリーが乗る戦闘機に向かってグッと親指を立てていると・・・バシュ!!と海面から突然飛び上って来た機体にピーっと反応が有ったアメリアは咄嗟に機体を振り向かせたのだがそのままガシっと両腕を掴む様に拘束されたので有る。

 

「よくも仲間を・・・!!」

 

「クッ・・・何て馬鹿力なんですかコイツっ!?」

 

ギリギリと自機を抑え込む大型のMS・・・MSMゴッグの怪力にアメリアからチッと舌打ちが上がると同時にゴッグの腹部に装備されている腹部メガ粒子砲が充填を始めたのだ・・・

 

「チッ・・・ビームライフルの威力じゃ貫通してアメリアにも・・・」

 

アメリア機の危機に対処をしかねたイエーガーがが装備しているビームライフルでの攻撃を断念すると・・・イエーガーさんっ!!と聞こえて来たソフィーの声と同時に猛スピードでヒュイーン!と高い音を上げ突っ込んで来るホバートラックに向かってソフィーかっ!?と叫んだイエーガーは足元に急停車したウィスキードッグへと驚く声を上げた。

 

「足を狙って下さいっ!!」

 

「分かった!?」

 

到着早々ソフィーからの指示にこれしかない!と彼女に賭けたイエーガーが慎重に狙いを点けながらサイドスティックのトリガーを絞ると・・・ビシュ!と発射されたイエーガー機が撃ったビームライフルにより右脚部を撃ち抜かれたゴッグはバランスを崩すと焦ったのか撃つのを躊躇ったのだ・・・

 

「今ですショウさんっ!変形をっ!?」

 

再度降下して来るガンダムGT-FOURを見てそう叫ぶソフィーに向かって了解!と答えたショウがフライングモードで有る戦闘機形態からMSへと変形させると、何だぁ!?と驚いたゴッグのパイロットはガンダムGT-FOURの本来の姿に驚いたのかアメリアの陸ジムから手を放したのだ。

 

「オラァァーーー!!」

 

それを見たチャーリーがチャンスだぜ!とフットペダルを踏み込みながらゴッグに向かってバーニアを吹かすと・・・ドガッ!と鳴る鈍い音と同時にガンダムGT-FOURから勢いよくタックルされたゴッグはそのまま港のドッグへと突っ込んだ・・・

 

「クッ!せめてお前だけでもーーーー!?」

 

ピーピーと鳴り響く機体ダメージの警告音にゴッグのパイロットがメインモニターに映る立ち上がろうするGT-FOURに向けメガ粒子砲を撃とうとした瞬間・・・そうはさせるかよ!と叫んだイエーガーの陸戦型ガンダムのビームライフルによって胸部を撃ち抜かれたゴッグはパイロット共々沈黙したので有った・・・

 

 

~~~

 

 

「皆さん無事ですかーっ!?」

 

 

戦闘が終了した事を確認したソフィーがホバートラックから降りて来るのを見ると、まあ何とかな・・・と答えたイエーガーが彼女の近くで陸ジムの膝を着かせると上部ハッチを開いた・・・

 

「それにしてもあの機体は何だ・・・戦闘機からMSに変形したが・・・?」

 

「RX計画の試作機でショウさん達に無理言って乗って貰ったんです・・・ですが予想よりも出来上がってましたねっ♪」

 

そうコクコクと満足そうにソフィーにそうなんだな・・・とイエーガーが困った様に苦笑いを浮べていると、ソフィー!?と叫びながら走って来たアメリアにソフィーはギュッと抱きつかれた。

 

「もう・・・心配したじゃないじゃですか!?」

 

「すみませんっ・・・ちょっと色々有っちゃってっ?」

 

そう焦った声を上げるアメリアにアハハ・・・と笑ったソフィーがガンダムGT-FOURを指差すと、所であの機体は何ですか・・・?と説明の為にアメリアは一緒に付いて来たショウとチャーリーを見た。

 

「聞いて驚けアメリア!」

 

「可変機構付きの新型でブースター付きの化け物だぜ!」

 

そんな二人からの声にムゥ・・・と思案顔を浮かべたアメリアはそれは凄いですが・・・と今度はソフィーを見たのだ・・・

 

「因みにですがMS形態のまま一度地上に降りた場合・・・戦闘機への変形はどうするんです?」

 

「それは無理ですねっ?そもそも空中での変形しか想定してない機体ですし・・・もし地上で戦闘機形態に戻ったとしても離陸できる速度と場所が必要となりまねぇ・・・?」

 

良く考えて見れば当たり前な事にショウとチャーリーが目を見開くと・・・ただの欠陥機ですね。と結論を下すアメリアの背後でショウとチャーリーは被っていたヘルメットを地面へと叩きつけた。

 

「何だよ!使えない機体だな・・・」

 

「おいアメリア!早く降りて俺と代われ!!」

 

ソフィーの説明を聞いて早々にあの有名なガンダムに乗ったにも関わらず見限ったのか・・・そんな二人にイヤに決まってるじゃないですか!?と抗議したアメリアは元々の乗機で有るホバートラックに乗り込むと見慣れない人物が居る事に気付いた・・・

 

「この人は誰ですソフィー?」

 

「オーガスタ研のソーさんですっ♪私達に新しい装備を届けに来たそうですよっ?」

 

エヘヘと笑うソフィーからの大雑把な自己紹介にこれはどうも・・・とアメリアは首を傾げたので有った・・・

 

 

 

 

 

 

 



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マドラス基地強襲・・・その11

「えっ・・・ウチへ試作武器の運用試験で?」

 

 

あれからソフィーを通じてソウタロウ=タカナシ技術大尉の事情を知ったアメリアは移動するホバートラックの中で驚いたので有った。

 

 

「はい。上層部からの新型機の要求スペックが高すぎて先に試作のライフルが完成して困って居たら・・・実験部隊の責任者で有るジョン=コーウェン准将から是非にとオファーが有ったんです。」

 

 

「確かに・・・しかし実験部隊に試作武器を回して来る所を見るとコーウェン准将は優しそうに見えてクセが有るみたいですね?」

 

そう答えながら命令書を確認したアメリアがタカナシにムゥ・・・と思案顔を浮べているとウォルフさんのミデアですっ!とホバートラックの操縦をしていたソフィーから声が上ると・・・皆聞こえるわね!とアメリアは先程の先頭での補給と装備を変更をする為に指示を出し始めた。

 

 

 

~~~

 

 

『ショウはそこで試作機を降りて陸ジムで私達と共にオーガスタ研のハンガーへ新しい武器を取りに向きますよ?』

 

 

「こんな事になるならハナから陸ジムで出れば良かった・・・」

 

 

アメリアの指示でショウはガンダムGT-FOURから愛機で有るRGM-79「G」陸戦型ジムを機動させながらハァ・・・と溜息をつくと、だから言ったんですよ!とオーガスタ研のタカナシから抗議の声が上ったのだ。

 

 

「あれは運用試験中の試作機だって言うのにソフィーさんが皆さんの援護に急ぐって言うから・・・」

 

 

「ちょっと待って下さいっ!?」

 

 

「まさかとは思うがお前・・・、まさかその機体が変形する所が見たかったとか言うは言わないよな・・・?」

 

そんな呆れた顔をするイエーガーに図星だったのかソフィーからアハハ・・・と苦笑いが浮ぶとやっぱりか・・・とイエーガーがメカが大好きな彼女に頭を抱えながらガクっと項垂れた・・・

 

「まっまあ・・・実戦データは取れたましたし・・ね?」

 

「タカナシ大尉がそう言うんなら・・・」

 

タカナシの声にムゥ・・・とアメリアは思案顔を浮かべた。

 

(オーガスタ研と聞いていたから頭でっかちと思ってましたが・・・)

 

 

そう考えながらムウ・・・と唸るアメリアのヘッドセットにピーっと通信アラームが鳴るとモニターに先行していたブラックウィドウ隊の表示が上がったのだ・・・

 

 

『聞こえるアメリア?正面ゲートに新手が現れたわ・・・ちょっと苦戦してるから急いで合流して頂戴!』

 

 

「カスケード隊了解しました。すぐに急行します!」

 

珍しく焦った声を上げる教導隊のヒルダにそう答えたアメリアは聞こえましたね!とカスケード隊の各機へ叫んだ。

 

「これよりブラックウィドウ隊の支援の為、CSD1(イエーガー)CSD3(チャーリー)を連れて先行!CSD2(ショウ)はさっき言った通り私達と試作武器を受領をして合流・・・良いですね?」

 

 

「ちょっと待ってくださいウォーカー少尉!?」

 

 

そんなアメリアの指示にタカナシが慌て出すとアメリアはどうしたんです?と首を傾げた。

 

 

「まさかいきなり実戦で使用する気ですか!?」

 

「問題点は早めに出た方が良くないですか?それにウチのメカニックは優秀なので何とかすると思います。」

 

よほどソフィーを信用しているのか・・・そうですか。とアメリアの言葉にそう答えたタカナシはやれやれ・・・と頭を掻きだした。

 

「それでは急ぎましょう・・・そちらの機体とセットアップをしないといけませんので!」

 

「分かりました。聞いての通りですイエーガー!後の事は頼みますよ?」

 

ヘッドセット越しにそう叫ぶアメリアに任された!と陸戦型ガンダムの外部スピーカーで答えたイエーガーがチャーリーの陸ジムと共にヒルダの下へ救援へと向かうとアメリアは残ったショウの

陸ジムと一緒にホバートラックでオーガスタ研の借りているハンガーへ武器を取りに移動を開始した。

 

 

 

~~~

 

 

「当たれえええ!」

 

 

「ヒイイイ・・・止めろ来るな来るな!?」

 

 

「な・・・・何なんだこのMS・・・」

 

「ジオンのMSよりジムの方が性能が良いって言うのは嘘かよ!!」

 

そんな部下達の恐怖染みた声に基地守備隊の隊長はチッと舌打ちした。

 

 

「クソ・・速すぎる!?なんだあのMSは・・・」

 

 

次々と友軍機を撃破する黒いスカート付きに90ミリブルパップマシンガンを撃ちながら突っ込んだそのジムがビームサーベルを引き抜いたと同時ににいつの間にか後ろに回りこまれていたので有る・・・

 

「なっ!?」

 

咄嗟に振り向いた小隊長機のジムがシールドで受け止めながらドムの放ったバズで吹っ飛ぶと・・・まだ生きている部下達はそのドムの動きにヒッ!?と怯えだした。

 

 

「おいおい・・・その辺にしろって?」

 

「まだ彼らは未熟・・・代わりに我らが相手をしよう。」

 

 

そう言いながら地守備隊の前に出たイワンの指揮官型ジムとリー=フェイのジムライトアーマーからオープンチャンネルで尋ねられるとドムのパイロットはそれに応じたのか一旦距離を取った。

 

 




現在エブリスタにて更新を再開したので少し公開の頻度が落ちます。

また違った感じで書いてますので気になった方はエブリスタで読んで頂けると嬉しいです。


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