私、魔女さんに拾われました。 (バスタオル)
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第1章 1節 魔女さん編
第1話 魔女さんと私


私の名前はリール。

ある魔女さんの家で暮らしています。

ですが、元々この家に住んでた訳ではありません。

魔女さんが言うには私は森で寝てたらしい。

心配になった魔女さんは私を保護してくれました。

その時魔女さんは私を優しくだっこしました。

私からすれば大人はみんな同じだと思ってたけど、魔女さんだけ違った。

普通の人とは全然違う…なんだろう…雰囲気?

その時の私はとにかく生きるためならと考えてたので魔女さんの提案を受け入れました。

それからの魔女さんは私を温かく迎え入れ、今に至ります。

あ、ちなみにこのリールって名前も魔女さんが付けてくれました。

名前の意味は分からないけど少し気に入ってます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「リール!起きなさーい!朝ですよー!」

 

あ、魔女さんが呼んでますね。そろそろ行かないと。

 

???「リール!起きてるのー?」

 

バタバタバタ!

ギィィィィィ…バタン!

 

 

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ドタドタドタ!

私は走って魔女さんのいるところに行った。

 

リール「おはようございます!」

魔女さん「おはようリール。さ、顔洗ってらっしゃい。朝ごはんできてますよ」

リール「はい!」

 

私は洗面所に行った。

ジャー!バシャバシャ!

私は顔を洗った。

 

リール「ふぅ…さっぱりした。さて…」

 

顔を洗った私は魔女さんがいる部屋に向かった。

 

 

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リール「洗ってきました!」

魔女さん「じゃあ食べましょうか」

リール「はい!」

 

私は自分の椅子に座る。

 

リール「いただきます!」

魔女さん「はい。どうぞ」

 

そして私は出された朝食を食べた。

 

リール「ふぅ…ご馳走様でした」

魔女さん「はい。お粗末様」

 

カチャカチャ

私はお皿を片付けた。

コトッ

私はお皿を洗うためにお皿を置いた。

キュッ…ジャー!

私は蛇口を捻り、水を出してお皿を洗った。

ジャー!キュッ…

お皿を洗い終わった私は水を止め、手についた水を拭いた。

 

リール「魔女さん!今からお掃除してきますね」

魔女さん「はい。分かりました」

 

トコトコトコ

私はお掃除をするために外に出た。

 

 

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ブチッ!ブチッ!

私は今、庭の草むしりをしています。

この家の庭は草が多く、昨日も草むしりしたのにまた生えてきてます。

魔女さんが言うには魔力?があるからだそうです。

何言ってるか分からないけど、とにかく生えているので掃除します。

ブチッ!ブチッ!

…ほんとに多いです。

疲れます…。

 

リール「ふぅ…よしっ次は…」

 

草むしりが終わると今度は掃き掃除になります。

サッ…サッ…

先程取った草とその辺の落ち葉とかも一緒に掃除します。

サッ…サッ…

掃除する量は多いけど、その分綺麗になった時はとても気持ちがいいです。

なので私は多くてもやります。

サッ…サッ…

ある程度集まったらこれを袋に詰めてあとは捨てるだけです。

ガサガサ…

私は集めた落ち葉とかを袋に詰めて、袋の口を閉めた。

 

リール「よいしょっと…」

 

私はその袋を持って家の後ろに向かった。

 

 

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リール「よっこいしょっ」

 

ドサッ…

私は袋を置いた。

 

リール「えーっと…これかな」

 

私は家の壁についてる何かに手を触れた。

すると、袋の下に綺麗な円のようなものが出てきた。

魔女さんに聞くと、これは魔法陣というものらしいです。

魔女さんが作ったそうです。

ボッ!

すると、その袋が急に燃え始めた。

どうやら物を燃やすものらしいです。

目の前に火があるのに不思議なことに人がこれに触れても燃えないそうです。

魔女さんが燃やさないようにしたそうです。

便利で安全でいいと思っています。

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

すると、さっきまであった袋が無くなってました。

これで朝の掃除は終わりです。

ザッザッザッ…

私は玄関の方へ行きました。

 

 

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玄関についた私はさっきまで自分が掃除したところを見た。さっきとは見違えるほどに綺麗になっていて気持ちが良かったです。でも、明日にはまた草が生えているので、また掃除しないといけません。毎日これの繰り返しですね。

 

リール「よしっ!今日も完璧!」

 

私は気持ちが良いまま家に入りました。

 

リール「お掃除してきましたー!」

魔女さん「あらリール。お疲れ様。ありがとう」

リール「いえいえ!」

魔女さん「はいこれ」

 

コトッ

魔女さんは私に飲み物を出してくれた。

 

リール「ありがとうございます!」

 

私はそれを飲む。

 

リール「っはぁ!」

 

私はそれを一気に飲み干した。

とても美味しかった。

 

リール「じゃあ私は部屋に行きます!」

魔女さん「分かりました。また用があったら呼びますね」

リール「はい!」

 

トコトコトコ

私はそのまま自室へ戻りました。

 

 

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ギィィィィィ…バタン

朝のお掃除が終わったら少し休んで勉強します。勉強はもちろん魔法についてです。魔女さん曰く、「魔法は覚えてて損は無いです。きっとあなたの助けになりますよ」だそうです。なので私は頑張って勉強しています。

 

リール「…さて、勉強しようかな」

 

少し休んだ私は勉強を始めます。

 

リール「えーっと…魔法の基本は空気中のマナを操ることです」

 

この世界には「マナ」と呼ばれる魔法の素となるものがあるそうです。

魔女さんはこれがあることで魔法が使えるそうです。

 

リール「えーっと…両掌を向かい合わせて目を閉じて集中する…」

 

私は魔女さんに貰った本に書かれている事をやってみた。

でも、何も変わらなかった。

 

リール「うーん…なんでだろ…」

 

パラパラパラ…

私は本をめくる。この本には色々なことが書いてあった。火や水、氷とか色々な魔法について書かれてあった。他にも魔法の基礎や応用、魔法の段階などが書かれていて初心者の人にも優しい本だった。

 

リール「うーん…」

 

私は本の通りにやってもできなかったので魔女さんに聞くことにした。

 

 

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リール「魔女さん魔女さん」

魔女さん「はい。何ですか?」

リール「これなんですが…」

 

そう言って私はさっきのページを開いた。

 

リール「この本の通りにやってもこうならないんですが、どうやったらいいんですか?」

魔女さん「マナを集める方法ですね。それなら…」

 

私は魔女さんにその方法を教わった。

 

魔女さん「と、こうすればいいですよ」

リール「ありがとうございます!」

魔女さん「リール」

リール「はい。何ですか?」

魔女さん「マナもあなたと同じで意志を持って生きています。私のように魔法を使う人たちはマナの力を分けてもらって魔法を使っています。なので、魔法を使うにはマナとの信頼関係が必要なのです。まずは実際にマナと触れ合ってみましょうか」

リール「はい!」

 

すると魔女さんは掌を上に向けた。

少ししたら緑色の光りが集まってきた。

 

リール「綺麗…」

魔女さん「これがマナです。普通なら見えないんですが、集めることで大きくなり、次第に目に見えるようになります」

リール「そうなんですね」

魔女さん「マナはこの空気中に存在します。今もあなたの周りにいますよ」

リール「そうなんですか?」

魔女さん「はい。いますよ」

リール「でも全然見えません」

魔女さん「マナは小さいので見えませんよ」

リール「あ、そうでした…」

魔女さん「さ、リール。触ってみますか?」

リール「!」

 

私が魔女さんと話している間にマナは大きくなり、ボール程の大きさになっていた。

 

リール「え、えっと…どうすれば…」

魔女さん「掌を上に向けてください」

リール「はい」

 

私は言われるがまま掌を上に向けた。

 

魔女さん「リールはそのままいてください」

 

すると魔女さんは集めたマナを私の掌に乗せた。

 

魔女さん「さ、どうですか?」

リール「魔女さん…これってどうすれば…」

魔女さん「あ、1度触れたら大丈夫なので、触ってみてください」

 

そう言われた私は右手でマナを触ってみた。

フワフワ…フワフワ…

マナはとてもフワフワしていて触り心地が良かった。

 

リール「すごいフワフワしてますね」

魔女さん「マナは普段空気中にいるのでとても軽いんですよ。それにマナは魔力を持つ人に引き寄せられる性質を持つので、掌を上に向けるだけで集まってくるんです」

リール「へぇ!」

魔女さん「リールも魔法が使えるようになったらこのくらい簡単にできますよ」

リール「分かりました!あ、魔女さん」

魔女さん「はい。何でしょうか」

リール「これはどうすればいいんですか?」

魔女さん「あ、掌を下に向けてください」

 

そう言われたので私は掌を下に向けた。

すると…

フワフワ…フワフワ…

集まったマナは私の手から離れて消えていった。

 

リール「あ、消えた」

魔女さん「魔力は掌から出ているんですよ。他にも目とか体から出てくる人もいます」

リール「へぇ!そうなんですね!」

魔女さん「私の場合、掌から出てくるので掌を上に向ければ集まってきます。人によっては掌を上に向けなくてもマナが寄ってくることがあります」

リール「何故掌を下に向けたらマナが消えちゃうんですか?」

魔女さん「空気中といっても地面に近いくらいの低い所にはいないんですよ。マナはとても軽いので常に人の頭よりも高いところにいます。なので掌を上に向けると寄ってきて、掌を下に向けると離れちゃうんです」

リール「手の甲からは魔力は出ないんですか?」

魔女さん「はい。出ませんよ。魔法は人に掌を見せて使います。手の甲を見せて魔法を使う人はいません。もし手の甲を見せて魔法を使ってしまったら自分に魔法を使うことになるので危ないんです」

リール「へぇ!そうなんですね!」

魔女さん「なのでリールも気をつけてくださいね」

リール「はい!」

 

こうして私は不思議な魔女さんに色々教えてもらいながら魔法を勉強しました。




〜物語メモ〜

ここでは物語で出てきた情報を書きます。
書くのは新しい情報だけです。



リール
この物語の主人公。
魔女さんに拾われて一緒に暮らしている。
今は魔法の勉強中。



魔女さん
リールを保護した人物。
魔法の扱いに長けている女性。


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第2話 魔女さんと私の適性魔法

私の名前はリール。

ある魔女さんと一緒に暮らしています。

今日は私の魔法の適性を見るということで外にいます。

いつも一人で勉強してたので魔女さんから直々に魔法を教えてもらうのは初めてです。

今まで魔女さんに教わったのはマナを集める方法だけで実践できる魔法は1度も習っていません。

なのでちょっと楽しみです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔女さん「さぁリール。ここでやってみましょうか」

 

私たちは広い高原に来ています。

 

リール「はい!」

 

そこは辺りに家や人は無く、魔法を使うには最適の場所だった。

 

魔女さん「ちょっと待ってくださいね」

 

すると魔女さんはブツブツと何か言ってから手を上にあげた。

 

魔女さん「結界」

 

パキパキパキ…

すると魔女さんの手に出てきた小さな玉が急激に大きくなり、次第に私たちの周りを覆った。

 

リール「魔女さん。これは?」

魔女さん「これは結界と言って敵から自分や他人を守るために使われる魔法です」

リール「え、でも周りには誰もいませんよ?」

魔女さん「使い方としては確かに人を守るための魔法ですが、今回は私たちが魔法を使うので被害を大きくしないようにするために使っています。この中なら魔法を使っても外界には被害は出ません。もちろん結界を解除すれば全て元通りになりますよ」

リール「へぇ!」

魔女さん「では、早速始めていきましょうか」

リール「はい!」

 

そして、私の魔法の勉強が始まった。

 

 

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魔女さん「じゃあまずは氷の魔法を使ってみましょうか」

リール「はい!」

魔女さん「氷の魔法は属性魔法の中で最も簡単な魔法です。なので私たちのように魔法を使う人たちの中で氷の魔法を使う人はたくさんいます。なのでまずは氷の魔法を習得していきましょう」

リール「はい!」

魔女さん「じゃあまず最初に、魔法を使うには何が必要だったか覚えていますか?」

リール「マナです!」

魔女さん「そう!正解です!ではマナを集めるにはどうすればいいですか?」

リール「えっと…こうやって掌を上に向けて…」

 

私は以前魔女さんから習った方法でマナを集めた。

すると、私の掌に魔女さんほどでは無いけどマナが集まってきた。

 

リール「こ、こうやります!」

魔女さん「はい。上出来ですね。じゃあ次は氷の魔法の事を話しましょうか」

リール「はい!」

魔女さん「あ、マナは手放しても大丈夫ですよ」

リール「あ、はい」

 

私はマナを手放すため、掌を下に向けた。

すると、マナはすぐに私の掌から離れていった。

 

魔女さん「さて、氷の魔法ですが、この魔法は他の属性魔法と違ってその場にあるものから作り出すことで魔法が成り立ちます」

リール「その場にあるもの?」

魔女さん「はい。例えば火の魔法ではマナを集めてからマナを火に変えて魔法として使います。ですが氷の魔法はマナを使わずに空気中の水を使います」

リール「空気中の…水?」

魔女さん「はい。氷の魔法だけマナを使わないんです。なのでマナを集めることができなくても氷の魔法を使う人はたくさんいます。だから氷の魔法を使う人が多いんですよ」

リール「でも空気中には水なんてありませんよ?」

魔女さん「いいえありますよ。ただ微量ですから私たちはそれを感じることが出来ないんですよ。私も感じられません」

リール「え…魔女さんでも?」

魔女さん「はい」

リール「うーん…それを使って氷…」

魔女さん「やり方は簡単ですよ。まずこうやって手を前に出してください」

リール「はい」

 

私は魔女さんの言う通りに手を前に出した。

 

魔女さん「この時掌は自分の方に向けちゃダメですよ」

リール「自分に魔法が返ってくるんですよね!」

魔女さん「その通りです」

リール「やった!」

魔女さん「さ、次に進みましょうか」

リール「はい!」

魔女さん「手を出したらこの掌の中心に意識を向けてください」

リール「意識を…」

 

私は言われた通りに意識を掌の中心に向けた。

 

魔女さん「あとは自分の手が凍るようなイメージを持ってください」

リール「手…手が凍るイメージ…」

 

私は自分の手が凍ってカチカチになるイメージを持った。

 

リール「!」

 

すると、私の手が急に冷たくなった。

 

魔女さん「リール。もう目を開けてもいいですよ」

リール「!」

 

私が目を開けると掌に氷ができていた。

 

魔女さん「これが氷の魔法です。マナを使わないので簡単にできますよ」

リール「で…できた…」

魔女さん「初めてなのにできたのはすごいですよリール。良かったです」

リール「魔女さん…」

魔女さん「はい。何でしょうか」

リール「この次はどうすれば…」

魔女さん「あ、じゃあ1番簡単なものを教えましょうか」

リール「はい!」

魔女さん「やることは単純です。掌にできた氷を勢いよく地面に叩きつけてください」

リール「え!?叩きつける!?」

魔女さん「はい。投げつけてもいいんですが、それだと危ないので掌についた氷を地面に押し付けてください」

リール「わ、分かりました…」

 

私は言われた通りに氷を地面に勢いよく押し付けた。

パキパキパキパキ!

するとその氷は辺りに広がって周囲を凍らせた。

 

リール「わ、わわわ!」

魔女さん「成功ですね。素晴らしいです」

リール「魔女さん…これは…」

魔女さん「氷の魔法は主に相手の動きを止めたり、周囲を凍らせたりする魔法です。やり方は多彩で簡単なものから難しいものまであります。なので今回は簡単なものを教えました」

リール「な、なるほど…でも魔女さん」

魔女さん「はい。何でしょうか」

リール「足…凍っちゃって動けません…」

魔女さん「え?あ…あらあら…」

 

私は初めて魔法を使ったのでまだ制御ができてませんでした。

そのため辺りだけでなく、自分の足まで凍らせてしまいました。

 

魔女さん「あらあら…ふふふ。まぁ初めてなのでこういう事もありますよ。ちょっと待ってくださいね」

 

それを見た魔女さんは私の足に向かって掌を向けた。

その後何かブツブツと言った。

すると魔女さんの手に火が出てきた。

 

魔女さん「リール。動いちゃダメですよ」

リール「え…えっと魔女さん…もしかして…私を…」

魔女さん「大丈夫ですよ。リールを燃やしたりなんかしません」

リール「あ、良かったです…」

魔女さん「さ、いきますよ」

 

ボッ!

すると魔女さんの手から離れた火は私の足元に落ちた。

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

その火は私の足についた氷を溶かしていった。

しばらくそのままでいると次第に足についた氷が全部溶けて動けるようになった。

 

リール「はぁ…良かったぁ…」

魔女さん「足が凍っちゃったけど無事に魔法を使うことが出来ましたね」

リール「はい…」

魔女さん「どうしましたか?」

リール「いえ…魔女さんがいなかったら私どうなってたんだろって思いました」

魔女さん「…リールは私と同じですね」

リール「私が魔女さんと?」

魔女さん「はい。私も初めて氷の魔法を習った時はリールのようになりましたよ。ただリールと違って私は氷漬けになりましたが…」

リール「こ…氷漬け…」

魔女さん「はい。リールはまだ魔力が小さいので足が凍ったくらいで済みましたが、私は魔力が大きかったので氷漬けになっちゃったんです。近くにお師匠様がいなかったら私はずっと氷漬けでしたよ」

リール「そ、その後は…」

魔女さん「その後はお師匠様が火の魔法を使って私を出してくれましたよ」

リール「ほっ…良かったです…」

魔女さん「まぁそういう事で最初は誰でも上手くいかないので落ち込む必要は無いですよ」

リール「はい。分かりました」

魔女さん「じゃあ一通り魔法を使ってみましょうか」

リール「はい!」

 

それから私は魔女さんに他の属性魔法を教わりました。

 

 

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1つ目:火属性魔法

 

魔女さん「じゃあまず最初に火の魔法を使ってみましょうか」

リール「はい!」

魔女さん「あ、その前に。属性魔法は火、水、氷、風、雷、土、光、闇、無の九つあります」

リール「無?無ってなんですか?」

魔女さん「無属性魔法の事ですよ。誰にでも等しく効果がある魔法です」

リール「どういうものが無属性魔法なんですか?」

魔女さん「そうですね…例えば回復魔法ですね。回復は誰にでも等しく効果があるので分類としては無属性魔法に含まれます」

リール「なるほど!」

魔女さん「他には味方を強くする魔法も無属性魔法ですね」

リール「味方を強くする?」

魔女さん「そうです。例えば防御力を上げる魔法を使えばその人の防御力が上がるので、やられる確率は下がります」

リール「あ、確かに」

魔女さん「攻撃力を上げれば魔法の強さが上がるので大きなダメージが期待できます」

リール「ふむふむ」

魔女さん「他にも自分の魔力を誰かに分け与えることもできますよ」

リール「おぉ!」

魔女さん「まぁ、どの魔法が使えるのかは適正があるのでそれを知っていくのが今回の授業ですね」

リール「適正が無かったらどうなるんですか?」

魔女さん「そうですね。適正が無かったら適正がある人と比べて魔法が弱くなったり、その魔法自体が使えなかったりしますね」

リール「魔女さんはどの魔法が使えますか?」

魔女さん「私ですか?私は全ての魔法を使うことができますよ」

リール「え!!魔女さん全部使えるんですか!?」

魔女さん「はい。使えますよ」

リール「おぉ…」

魔女さん「でも適正は人それぞれです。使えない魔法があっても落ち込んじゃダメですよ」

リール「はい!」

魔女さん「じゃあ始めましょうか」

リール「はい!」

魔女さん「火の魔法は物を燃やしたりさっきみたいに氷を溶かしたりできます。魔力の強さで火の効果が上がるので、その人の魔力の量も見ることができます」

リール「おぉ!」

魔女さん「やり方は簡単です。さっきのように掌を前に出してから掌の中心に意識を向けて、あとは火をイメージすれば…」

 

ボッ!

 

リール「!」

 

すると、魔女さんの手に火が出てきた。

 

魔女さん「と、こんな感じに火を出すことができますよ」

リール「おぉ!」

魔女さん「あとはこれを飛ばすだけです」

リール「どうやって飛ばすんですか?」

魔女さん「投げるのもひとつの手段としてありますが、投げるとどこに飛ぶか分からないので今回はマナを使って飛ばしますね」

リール「はい!」

魔女さん「マナを使えば思い通りの場所へ飛ばすことができます。やり方としては、まずマナを集めます」

リール「ふむふむ…」

魔女さん「集まったマナにどこに飛ばすかを指示します」

リール「ふむふむ…」

魔女さん「あとは魔力を送ればマナが飛ばしてくれます。こんな風に…」

 

ドン!ヒュゥゥゥゥ!ドーン!

魔女さんの手にあった火が一直線に飛んで結界に当たった。

 

魔女さん「こうすれば安全に正確に飛ばせますよ」

リール「おぉ!」

魔女さん「リールもやってみますか?」

リール「はい!」

 

私はさっき魔女さんがやったようにやってみた。

 

魔女さん「あとはマナを集めて…」

リール「ぐぬぬ…」

 

私はなんとかマナを集めた。

 

魔女さん「あとは頭の中でマナに指示して魔力を送るだけです」

 

私は言われた通りにやってみた。

ポスッ…シュゥゥゥゥゥゥゥ…シュポッ…

 

リール「え…」

 

するとその火は消えてしまった。

 

魔女さん「あら、ということはリールは火属性の魔法に適性が無いってことですね」

リール「ぐぬぬ…」

魔女さん「じゃあ次いってみましょうか」

リール「やります!」

 

 

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2つ目:水属性魔法

 

魔女さん「水属性魔法は火属性魔法の効果を消したり、自ら水を作り出すことで水に強い体を得ることができます。やり方は火属性魔法と同じです。手を出してイメージしてください」

リール「…」

 

私はさっきと同じようにやってみた。

すると、手が濡れたような感触があった。

 

魔女さん「じゃああとはマナを集めて…」

 

パチッ!

 

リール「!」

 

私がマナを集めようとした時、私の掌にあった水が弾けて無くなった。

 

魔女さん「あら、水属性の魔法にも適性が無いようですね」

リール「うぅ…」

魔女さん「落ち込まないでリール。この世界の人は何かしらの適性を持っています。適性を持ってない人はこの世には存在しませんよ」

リール「…はい」

 

 

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3つ目:風属性魔法

 

魔女さん「じゃあ今度は風属性魔法を使ってみましょうか」

リール「はい…」

魔女さん「風属性魔法は風を操ることで空を飛ぶことができますよ。他にも強い風で一部の属性魔法を弾くことができます。やり方は同じなのでやってみてください」

リール「分かりました」

 

私はさっきと同じようにやってみた。

ヒュゥゥゥゥ…

すると風が吹き、私の掌に集まってきた。

 

魔女さん「じゃあマナを集めてみましょうか」

リール「はい…」

 

私はなんとかマナを集めた。

 

リール (ほっ…できた…)

魔女さん「あとはそれを飛ばしてみましょうか」

リール「はい!」

 

ヒュゥ…

 

リール「!」

 

すると、私の掌から風が消えた。

 

リール「え…」

魔女さん「うーん…風属性も適性じゃないですね」

リール「魔女さん…私…本当に適性があるんでしょうか…」

魔女さん「属性魔法はあと2つありますよ。なのであと2回やってみましょう」

リール「…はい」

 

 

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4つ目:雷属性魔法

 

魔女さん「じゃあ次は雷属性魔法です。雷属性魔法は属性魔法の中で最も弾道速度が速い魔法です。相手が結界を展開していなければ必ずと言ってもいいほど魔法を当てることができます。ですがこれは静電気みたいにピリピリするので気をつけてくださいね」

リール「はい」

 

私はさっきと同じようにやってみた。

ピリピリ…

すると手がピリピリし始めた。

 

リール「どうでしょうか」

魔女さん「いいですよ。あとはマナを集めてみましょう」

リール「はい」

 

私はマナを集めた。

ジジジ…ジジジ…

すると、さっきよりも痺れが強くなった。

 

魔女さん「上手くいってますね。じゃあそれを飛ばしてみましょう」

リール「はい!」

 

ジジジ…バリバリバリ!

 

リール「!?」

 

するとその雷がいきなり暴れだした。

 

魔女さん「!!」

リール「あわわわわ!」

魔女さん「はぁっ!」

 

ジジジ…シュゥゥゥゥゥゥゥ…

魔女さんが何かした途端、雷が消えて無くなった。

 

魔女さん「リール。大丈夫ですか?」

リール「は、はい…」

魔女さん「うーん…雷属性魔法にも適性が無いみたいですね」

リール「うぅ…」

魔女さん「大丈夫です。まだあとひとつありますよ」

リール「はい…」

 

 

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5つ目:土属性魔法

 

魔女さん「最後に土属性魔法ですね。土属性魔法は地面を味方につけることができます。魔法を使って相手の魔法を防ぐことができるので、結界が使えなくても大丈夫なんですよ」

リール「なるほど…」

魔女さん「じゃあやってみましょうか」

リール「はい」

 

私はいつもの通り同じようにやって見た。

すると、自分の手に土がつくような感触があった。

 

魔女さん「いいですね。じゃあマナを集めてみましょう」

リール「…」

 

私はマナを集めてみた。

 

魔女さん「いいですね。じゃあ飛ばしてみましょうか」

リール「ふんっ!」

 

私はマナを使って飛ばしてみた。

でも…

ガラガラガラ…

 

リール「!」

魔女さん「!!」

 

私の掌にあった土が崩れて落ちてしまった。

 

リール「え…」

 

私は今まで5つの属性魔法を使ってみた。

でも、全て使えなかった。

魔女さんは絶対どれかの魔法に適性があるって言ってた。

私って…魔法が使えないのかな。

リールがそんな事を思っている中、魔女さんはあることを考えていた。

 

魔女さん (火、水、風、雷、土…全て使えなかった…これってまさか…いや…こんな事って…)

 

魔女さんは何を思ったのか、リールに話しかけた。

 

魔女さん「リール」

リール「はい。何ですか?」

魔女さん「ひとつ…試してもいいですか?」

リール「何をですか?」

魔女さん「さっき属性魔法は九つあるって言ったの覚えてますか?」

リール「はい。覚えてます」

魔女さん「実はさっきの5つは基本属性魔法に分類される魔法なんです。氷と無属性魔法は誰でも使えるので無しにして残りの2つ…光と闇の属性魔法があります」

リール「…」

魔女さん「これは特殊属性魔法と言われていて使う人はごく僅か…稀にいるかいないかくらいなんです」

リール「…」

魔女さん「それで、光もしくは闇属性魔法を使う人にはある共通点があるんです。それは…"5つの基本属性魔法が使えない"という事なんです」

リール「!!」

魔女さん「リールは5つの基本属性魔法が使えませんでした。光、闇属性魔法を使う人と同じなんです」

リール「それって…」

魔女さん「はい。もしかしたらリールの適性は光か闇属性魔法なのではないかと思います」

リール「!」

魔女さん「私も身近で光、闇属性魔法の特徴を持つ人を見るのは久しぶりです。やってみませんか?」

リール「やります!」

魔女さん「じゃあ早速やりましょう!」

リール「はい!」

 

私は急にやる気が出てきた。

 

リール (光か闇…特殊な属性魔法…ふふっ…どっちかな♪)

 

 

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6つ目:光属性魔法

 

魔女さん「光属性魔法は特殊属性魔法に分類されます。特徴としては先程言ったように基本属性魔法が使えません。それに加え、同じ特殊属性魔法である闇属性魔法も使えません。なので、使えるのは光属性魔法だけなんです」

リール「無属性魔法と氷属性魔法は使えますか?」

魔女さん「あ、それは問題ないです。無属性魔法と氷属性魔法は基本属性魔法には含まれないので光属性魔法や闇属性魔法に適正がある人でも使えますよ」

リール「ほっ…良かったです…」

魔女さん「光属性魔法は闇属性魔法を払い除ける効果を持ちます。おまけに闇属性魔法を除いた全ての属性魔法に対して耐性を持ちます」

リール「おぉ!」

魔女さん「これは相手の魔法を軽減できる効果なんですが、これは無属性魔法にも適応されます」

リール「どういう事ですか?」

魔女さん「さっきの回復魔法の話で言うと、他の人は全回復する位の回復量でも光属性魔法に適正を持つ人はその半分くらいしか回復しないんですよ」

リール「?」

魔女さん「もっと分かりやすく言うと、体力が100ある人が2人います。その内1人は光属性魔法に適正がある人です。この2人の体力が0で100まで回復させるとします」

リール「ふむふむ」

魔女さん「その内1人は当然100まで回復しますが、光属性魔法に適正がある人は50までしか回復しません。このように光属性魔法に適正がある人はあらゆる効果が半減してしまうデメリットがあります」

リール「な、なるほど…」

魔女さん「なので光属性魔法に適正がある人を100まで回復させるには200回復させるくらいの回復量が無いとダメってことです」

リール「でも他の火や水の魔法に対してもダメージは半分になるんですよね?」

魔女さん「はい。そうなりますよ」

リール「おぉ…」

魔女さん「やってみますか?」

リール「やります!」

魔女さん「なら先程と同じように掌を前に出して光を集めるイメージをしてください」

リール「はい!」

 

私は他の魔法同様掌を前に出してイメージしてみた。

 

魔女さん「リール。目を開けてみて」

 

リール「!!」

 

すると、私の掌に黄色い光の玉があった。

 

リール「すごい!出た!」

魔女さん「まだですよ。ちゃんと飛ばせないと」

リール「あ、そうだった…」

 

私はマナを集めた。

そして、マナに光の玉を飛ばすよう指示した。

すると…

ビュン!ドーン!

掌にあった光の玉が凄まじい速さで飛び、結界の壁に当たった。

 

リール「魔女さん!できました!飛びました!」

魔女さん「おめでとうリール!やりましたね」

リール「やったぁぁぁぁぁ!」

魔女さん「光属性魔法に適性があったようですね。良かったです」

リール「魔女さん!私!光属性魔法に適正があるんですよね!?」

魔女さん「はい。ありますよ」

リール「やったぁぁぁぁぁ!」

魔女さん「ふふっ…嬉しいのね」

リール「あ、そうだ魔女さん」

魔女さん「なんですか?」

リール「光属性魔法に適性がある人は他の魔法は使えないんですよね?」

魔女さん「はい。使えないですね」

リール「じゃあどうすれば?」

魔女さん「光属性や闇属性魔法に適正を持つ人はその属性を極限まで高めることができるので結果的にはそれでいいんですよ」

リール「じゃあ闇属性魔法に適性がある人はどうなるんですか?」

魔女さん「闇属性魔法に適性がある人は魔法の威力や効果を跳ね上げる特性を持ちます」

リール「光属性魔法とは逆ってことですか?」

魔女さん「そうですね。光属性魔法に適正がある人は魔法によるダメージを半減できますが、回復量も半減してしまいます」

魔女さん「逆に闇属性魔法は回復量が他の属性魔法よりも倍になりますが、受けるダメージも倍になります」

リール「へぇ!」

魔女さん「一長一短ですね。おまけにこの2つの特殊属性魔法は他の属性に対して等しくダメージを与えます」

リール「等しく?」

魔女さん「はい。例えば、火属性魔法に適正のある人がいます」

リール「はい」

魔女さん「そして、水属性、風属性、光属性魔法に適性のある人がいます」

リール「はい」

魔女さん「当然相手が火属性なので水属性が有効になります。その逆で風属性は不利な属性になります」

リール「はい」

魔女さん「火属性魔法に適正がある人にダメージを与えた時、水属性魔法ダメージを100だとすれば風属性魔法ダメージは50になります。約半分ですね」

リール「はい」

魔女さん「ここで光属性魔法ダメージを与えるとダメージは75になります」

リール「ふむふむ」

魔女さん「このように光属性魔法は不利属性がない代わりにダメージは全て等しくなります。なので、火属性に対しては水属性の方が強いですが、風属性よりかは強いです」

リール「なるほど!」

魔女さん「そしてその逆も同じです」

リール「逆?」

魔女さん「はい。光属性魔法に適性がある人には闇属性魔法しか有効打はありません。他の属性魔法は半減するので」

リール「あーなるほど」

魔女さん「闇属性も同じで光属性魔法しか有効打がありません。他の属性は少し減ります」

リール「え、でも闇属性魔法に適性がある人はダメージが倍になるって…」

魔女さん「そうです。100の威力の魔法を光属性、闇属性魔法に適正がある人に与えればその効果は半減されて50になります」

リール「ふむふむ」

魔女さん「ですが、50になるのは光属性魔法に適性がある人だけで、闇属性魔法に適性がある人は75くらいのダメージになるんです」

リール「あ、光属性と闇属性魔法に適性がある人を比べて闇属性魔法に適性がある人の方が倍のダメージを受けますよってことですか?」

魔女さん「そうですそういう事です」

リール「なるほど!」

魔女さん「でも闇属性魔法に適性がある人の魔法は全てダメージが倍になってるので気をつけてくださいね」

リール「はい!」

魔女さん「さて、リールの適性魔法が分かったところで帰りましょうか」

リール「はい!」

 

そして私と魔女さんは家に帰ることにしました。




〜物語メモ〜


属性魔法
この世界には火、水、氷、風、雷、土、光、闇、無の九つの属性魔法が存在します。
この内、氷属性と無属性は誰でも使うことができます。
残りの7つの属性に関しては適性を持つ人にしか扱うことができません。
そのため、ひとつひとつ魔法を試してどの魔法に適性があるのかを知らなければなりません。
属性魔法は「基本属性魔法」と「特殊属性魔法」に分けられます。
基本属性魔法は火、水、風、雷、土属性魔法の5つ。
特殊属性魔法は光、闇属性魔法の2つ。
基本属性魔法に適性がある人は自分の適性魔法を使うことができるが、その属性の弱点属性の魔法は使うことができません。
おまけにそれ以外の属性魔法は弱くなります。

例)火属性魔法に適性がある人
→火属性魔法を使うことができる
→水属性魔法を使うことができない
→他の基本属性魔法(風、雷、土)はそれぞれ適性を持つ人と比べると威力や効果が弱くなる

↑このようになります

以下に各属性魔法の特徴を挙げます。


火属性魔法
物を燃やしたり、氷属性の魔法を無力化することができる。
ただし、水属性魔法に対して弱くなる。
その代わり、太陽が出ていれば火属性魔法の効果が上がる。
風属性魔法に対して高い効果を発揮できる。

火属性魔法に適性がある人
使える属性魔法→火
使えない属性魔法→水
弱くなる属性魔法→風、雷、土

水属性魔法
自ら水を作り出すことで水に強い体を得ることができる。
おまけに火属性魔法の効果を打ち消すことができる。
加えて、水を操ることで思い通りのことができる。
ただし、雷属性魔法には弱くなる。
火属性魔法に対して高い効果を発揮できる。

水属性魔法に適性がある人
使える属性魔法→水
使えない属性魔法→雷
弱くなる属性魔法→火、風、土

風属性魔法
風を操ることで空を飛ぶことができる。
強い風属性魔法であれば一部の属性魔法を弾くことができる。
ただし、火属性魔法に弱い。
土属性魔法に対して高い効果を発揮できる。

風属性魔法に適性がある人
使える属性魔法→風
使えない属性魔法→火
弱くなる属性魔法→水、雷、土

雷属性魔法
5つの基本属性魔法の中で最も弾道速度が速い魔法。
雷属性魔法を見てから結界を展開すると遅い。
水属性魔法に対して高い効果を発揮できる。
ただし、土属性魔法に対して弱くなる。

雷属性魔法に適性がある人
使える属性魔法→雷
使えない属性魔法→土
弱くなる属性魔法→火、水、風

土属性魔法
地面全てを味方につけることができる。
結界が使えなくても敵の攻撃を防ぐことができる。
ただし、風属性魔法に対して弱くなる。
雷属性魔法に対して高い効果を発揮できる。

土属性魔法に適性がある人
使える属性魔法→土
使えない属性魔法→風
弱くなる属性魔法→火、水、雷

光属性魔法
特殊属性魔法に分類される属性魔法。
上記の5つの属性魔法が使えなくなる。
ただし、全ての属性魔法ダメージや効果を半減する効果を持つ。
闇属性魔法に対して高い効果を発揮できる。

光属性魔法に適性がある人
使える属性魔法→光
使えない属性魔法→火、水、風、雷、土、闇

闇属性魔法
特殊属性魔法に分類される属性魔法。
5つの基本属性魔法が使えなくなる。
属性魔法の威力や効果を跳ね上げる効果を持つ。
ただし、受けるダメージも増える。
光属性魔法に対して高い効果を発揮できる。

闇属性魔法に適性がある人
使える属性魔法→闇
使えない属性魔法→火、水、風、雷、土、光


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第3話 魔女さんとおつかい

私の名前はリール。

ある魔女さんと一緒に暮らしています。

先日、魔法の適性を調べた結果、私は光属性魔法に適性があるそうです。

何やら属性ダメージを半減させるそうです。

強そうですね。

でもその代わりに回復も半減するらしいです。

悲しいですね。

おまけに基本属性魔法が使えないそうです。

なので私は頑張って光属性魔法を極めようと思います。

今日は魔女さんがある物を受け取りに行って欲しいという事でおつかいに行くことになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔女さん「リール!どこにいるんですか?リール!」

 

朝、掃除を終えて勉強していた私を呼ぶ声が聞こえた。

 

魔女さん「いないのですかー?リール!」

リール「はーい!ここにいますよー!」

 

私は聞こえるように返事をした。

ガチャ…

すると、部屋の扉が開いた。

 

魔女さん「ここにいましたか。実はリールに頼みたいことがあるのです」

リール「頼みたいこと…ですか?」

魔女さん「はい。実はおつかいに行ってきて欲しいのです」

リール「おつかい?」

魔女さん「はい。実は知り合いにあなたの箒と杖を依頼していたんです」

リール「杖!?」

魔女さん「はい。杖があれば正確に魔法を使うことができるのです。箒は移動手段ですね」

リール「行きます!行きます!」

魔女さん「ありがとうリール。私はある人の依頼で少し家を空けます。すぐに戻ってきますが、予約の時間が重なって箒と杖を取りに行けなくなったんです」

リール「あ、だから私に」

魔女さん「はい。そうなんです。ほんとは私が行くべきですが、依頼人の様態が良くないらしいので…」

リール「病気…ですか?」

魔女さん「はい。毒を含んだらしくてそれを治すよう言われているんです」

リール「分かりました!行ってきます!」

魔女さん「お願いします。リール」

リール「はい!」

魔女さん「あ、リール!」

リール「はい。何ですか?」

魔女さん「杖と箒の店は行けばわかるけど"メリー"って人に聞けば2つ揃えてくれますよ」

リール「メリーさんですね!分かりました!行ってきます!」

魔女さん「はい。行ってらっしゃい」

 

タッタッタッ

ガチャ!

ギィィィィィ…バタン!

そしてリールは杖と箒を取りに行った。

 

魔女さん「さて…私もそろそろ…」

 

ガチャ…

ギィィィィィ…バタン

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

リール (ふんふんふふふん!ふんふんふふふん!箒!杖!ふふふん!)

 

私はとても気分が良かった。箒と杖、この2つは魔法を使う上で欠かせないものだと思っていたからだ。本には杖を使う人が多かった。でも私は杖を持っていなかった。魔女さんに聞こうと思ったけどなんか気が引けたからやめた。でも!今日は自分の杖が貰える!しかも箒付き!ワクワクが止まらない!早く箒に乗ってみたい!私はそう思いながら街へ出かけた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…スペルビア

 

魔女さんの家から結構な距離を歩くと大きな町があった。私はここがどこなのか分からないけど、魔女さんのメモにはこの街だという印があった。とりあえず聞き込みをしながらメリーさんって人を探してみる。

 

リール「あ、あの…」

町人「はい。なんですか?」

リール「ここにメリーさんって人いませんか?」

町人「メリー?知らないな」

リール「そうですか。ありがとうございます」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

リール「あの…すみません」

町人2「はい。どうしましたか?」

リール「メリーさんってどこにいるか知りませんか?」

町人2「あ、メリーさんならこの先を行って2つ目の角を右に曲がって真っ直ぐ進むと"メリー魔法店"って名前のお店がありますよ。メリーさんはそこの店主をしてますよ」

リール「ありがとうございます!」

町人2「はーい」

 

運が良かった。まさか2人目でメリーさんの手がかりが見つかるとは!私は言われた通り、2つ目の角を右に曲がって"メリー魔法店"という名前のお店へ向かった。

 

 

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場所…メリー魔法店

 

リール「こ…ここかな…」

 

私は店の看板を見る。確かにメリー魔法店って書いてある。恐らくここで間違いないと思う。とりあえず入ってみよう。

ギィィィィィ…カランカラン!

私が店のドアを開けると鈴が鳴った。

 

リール「!」

 

私はその音に驚いた。

 

リール「あ、なんだ…鈴か…」

メリー「はーい。いらっしゃいませ〜」

 

その音に反応したのか、奥から人が現れた。

 

メリー「何かお探しですか?」

リール「あ、あの…」

メリー「?」

リール「こ、ここに…メリーさんって人…いませんか?」

メリー「あ、メリーは私のことですよ」

リール「!」

 

なんと、奥から出てきた人が魔女さんの言っていたメリーさんって人だった。

 

リール「あ、あの!」

メリー「?」

リール「ま、魔女さんに言われて杖と箒を取りに来ました!」

メリー「!」

 

メリーさんはその言葉に少し驚いていた。その後、私を見て近づいてきた。

 

メリー「あ、じゃああなたがリールさん?」

リール「!」

 

メリーさんはまだ名乗ってもいない私の名前を知っていた。

 

リール「え、あ、はい」

メリー「待ってましたよ!ささ!こちらへどうぞ〜」

リール「え、あの…」

 

私はメリーさんに手を取られて店の奥へ行った。

 

メリー「ちょっとここで待っててね」

リール「あ、はい」

 

スタスタスタ

するとメリーさんはさらに奥の部屋へ向かった。

 

リール「うわぁ…いっぱいある…」

 

私が案内された部屋にはたくさんの魔法道具があった。本でしか見た事なかったから知ってるものは少ないけど、これから知っていくって考えるとちょっとワクワクする。私は部屋中を見て回る。すると、この部屋には数だけでなく、種類もたくさんあった。杖や箒はもちろん他には何かの粉?だったり丸い水晶だったり本だったりととにかく凄い量と種類だった。

 

メリー「リールさん。こちらがあなたの箒と杖ですよ」

 

私が部屋を見て回っているとメリーさんが箒と杖を持ってきた。

 

リール「うわ…箒って案外大きいんですね」

メリー「はい。人を乗せるので少し大きい設計になっているんですよ」

リール「へぇ…」

メリー「そしてこれが杖ですね」

リール「!」

 

メリーさんが長方形の箱から取り出したのは私のものと思われる杖だった。

 

メリー「さ、どうぞ」

リール「え、あ、はい」

 

私は本物の杖を初めて見たため、少し手が震えていた。

 

メリー「…緊張されてますか?」

リール「へ!?わ、分かりますか!?」

メリー「はい。手が震えてますよ」

リール「あ…」

 

私は息を吹きかけてなんとか震えを止めた。

 

メリー「さ、どうぞ」

リール「はい」

 

私はメリーさんから杖を受け取った。

 

リール「!」

 

すると、周囲にいたマナが一斉に杖の先に集まってきた。

 

メリー「!!」

リール「わわわ!」

 

マナはどんどん集まり、どんどん膨張していった。やがて、マナの膨張が止まった。

 

リール「ひ、ひえぇ…びっくりしたぁ…」

メリー「え、あなた…」

リール「?」

 

メリーさんは驚いた表情を浮かべていた。

 

メリー「す…凄い!凄いよリールさん!」

リール「へ?」

メリー「私も久しぶりに見ましたよ!こんなに一気にマナが集まるなんて!」

リール「え…えっと…」

メリー「流石あの人の弟子ですね!凄いです!」

リール「え、あの…全然分からないんですが…」

メリー「あ、勝手に盛り上がっちゃってごめんなさい。興奮しちゃいました…」

リール「は、はぁ…」

メリー「実は杖って持つだけで周囲に魔力を分散させるんですよ。なので近くにいるマナはすぐに引き寄せられるんですよ。集める量は魔力の大きさに比例します。リールさんの魔力は結構大きいので集まるマナも比例して多くなるんですよ」

リール「へ、へぇ…」

メリー「ちなみにリールさんは適性魔法は何ですか?」

リール「えっと…魔女さんが言うには光属性魔法に適性があるそうです」

メリー「あーなるほど!どうりで魔力が大きかったんですね!」

リール「そ、そうなんですか?」

メリー「はい!闇属性と光属性魔法に適性がある人は基本属性魔法に適性を持つ人よりも大きな魔力を所持してないとなれないんですよ!」

リール「大きな魔力を所持してないとなれない?どういう事ですか?」

メリー「基本属性魔法と特殊属性魔法はその人の持つ魔力の大きさによって適性が変わるんですよ。普通の魔力の大きさであれば基本属性魔法のうちの1つからで、さらに大きい魔力を持っていれば光属性魔法に適性があるとされています」

リール「闇属性はどうなんですか?」

メリー「闇属性は九つの属性の中で最も魔力が必要な魔法です。なので、光属性魔法よりも大きな魔力を所持していないと適性になれないんですよ」

リール「へぇ!」

メリー「あ、でも光属性魔法に適性がある人は普通の人よりも大きな魔力を持ってるので十分ですよ」

リール「なるほど!あ、メリーさん」

メリー「はい。何ですか?」

リール「この杖の先についたマナはどうすればいいですか?」

メリー「あ、それなら杖から手を離せばマナは離れますよ」

リール「あ、じゃあこの杖はその箱に…」

メリー「あ、はい。分かりました」

 

そして私はメリーさんに杖を渡した。するとさっきまで杖の先についていたマナたちが一斉に離れていった。

 

リール「あ、あれ…メリーさん。マナたちが」

メリー「あ、ひとつ言い忘れてました。杖って持ち主が使わないと本来の力を発揮できません。この杖はリールさんの杖なのでリールさんが持てばすごい力を発揮できます。ですが、この杖の持ち主でない私がこの杖を持つとこの杖の効果は得られないので魔力がない状態と変わらないんですよ。だからマナが離れたんです」

リール「へぇ!」

メリー「なので誰かに取られてもその人は魔法を使えないのでざまぁみろですね」

リール「あはは…そうですね」

 

ガチャ…

すると突然、部屋のドアが開いた。

 

魔女さん「メリー。リールがここに…」

リール「魔女さん!」

メリー「あ、来てるよ。そこに」

魔女さん「あ、良かったです。さ、帰りましょうかリール」

リール「はい!」

 

杖と箒を見せてもらった私はそれらを受け取った。

 

リール「メリーさん!今日はありがとうございました!」

メリー「いえいえ!またいつでも来てくださいね!」

リール「はい!」

魔女さん「それじゃあまたよろしくね。メリー」

メリー「うん!任せて!」

魔女さん「さ、行きましょうかリール」

リール「はい!」

 

そして私は魔女さんと家に帰るのだった。




〜物語メモ〜


スペルビア
魔法が発達している街。
リールと魔女さんはスペルビアから少し遠いところに住んでいる。
ここには魔法学校があり、この街に生まれた子は大体この学校に通っている。



メリー魔法店
スペルビアにある魔法店。
魔法関係の道具は全て揃っており、この店に行けば大体のものは揃う。
店主のメリーは魔法道具の扱いに長けており、今まで修理や生産を1人でこなしていた。



属性魔法の適正
属性魔法はその人が持つ魔力の大きさで適正が変わる。
基本属性魔法に必要な魔力は一般人でも持ってるくらいの大きさなので案外基本属性魔法の適正を持つ人が多い。
光属性魔法は基本属性魔法よりも大きな魔力を必要とし、闇属性魔法はさらに大きな魔力を必要とする。



各属性魔法に必要な魔力の大きさランキング
1位.闇属性魔法 (大きな魔力が必要)
2位.光属性魔法
3位.土属性魔法
4位.雷属性魔法
5位.風属性魔法
6位.水属性魔法
7位.火属性魔法
8位.無属性魔法
9位.氷属性魔法 (魔力が必要ない)


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第4話 魔女さんと杖と箒の練習

私の名前はリール。

ある魔女さんと一緒に暮らしています。

今日は頂いた箒に乗る練習ということで外にいます。

場所は適性魔法を確かめたあの場所です。

箒に乗るなんて魔法使いっぽくてワクワクしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔女さん「さぁリール。今から箒に乗る練習をしますよ」

リール「はい!」

魔女さん「箒に乗る前にひとつ注意点があります」

リール「?」

魔女さん「箒はマナの力を借りて浮かせるだけです。その人本人が浮かせるわけではありません。なので、マナの供給を怠れば当然箒から落ちますので、箒に乗る時は集中してくださいね」

リール「はい!」

魔女さん「じゃあリール。杖は持っていますか?」

リール「はい!持ってきてます!」

 

私はメリーさんから頂いた杖を取り出した。

すると、周囲にいたマナたちが集まってきた。

 

リール「わわわ!」

魔女さん「マナの量はいいですね。じゃあ乗るコツを教えますね」

リール「はい!」

魔女さん「まず箒を水平に持ってください」

リール「こ、こうですか?」

 

私は魔女さんに言われた通りに箒を持った。

 

魔女さん「さて、あとは杖の先についたマナを箒に近づけてください」

リール「はい」

 

私は杖の先についているマナを箒に近づけた。

すると、杖の先についていたマナが箒に移った。

 

リール「おぉ」

魔女さん「箒も杖と同じで触れることで魔力が周囲に散らばります。なので近くのマナはその箒にくっつくんですよ」

リール「へぇ!」

魔女さん「あとは簡単です。杖を戻して箒に乗るだけです」

リール「え、杖を戻すんですか?」

魔女さん「はい。杖を持っていると箒を支えているマナが杖にくっついちゃう可能性があるんです。そうなると箒の支えが無くなるので落っこちちゃうんですよ」

リール「あー!なるほど!」

魔女さん「さ、杖を戻して箒に乗ってみましょう」

リール「はい!」

 

私は杖を戻して箒に乗った。

 

リール「乗りました!」

魔女さん「初めてなのに上手ですねリール」

リール「えへへ…」

魔女さん「さ、あとは箒に触れて思い通りのことをしてみましょう」

リール「はい!…え?思い通りの?」

魔女さん「はい。箒を握ることでリールの考えがマナに伝わるようになっています。なので飛びたい時は頭の中で飛べと思えばそれでいいです。どこかに行きたい時は目的地を思い浮かべるとそこへ行くことができますよ」

リール「その目的地に行く道中の操作はどうすれば…」

魔女さん「それは曲がりたい方向へ体を倒せば曲がれますよ。左に曲がりたい時は左へ、右に曲がりたい時は右へ。もっと高い所へ行きたいなら箒の先端を持ち上げれば上昇しますし箒の先端を下げれば下降することもできますよ」

リール「へぇ!」

魔女さん「やってみますか?」

リール「はい!」

 

私はとりあえず周囲をグルグル飛び回るよう思い浮かべた。

フワフワ…

 

リール「!」

 

箒が私の思ったルートを飛び始めた。

 

リール「おぉ!凄い!」

魔女さん (…よく飛べてるようですね)

リール「あっははは!凄いすごい!気持ちいい!」

 

私は魔女さんの周りをずっと飛び続けた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

しばらく飛んだ私は魔女さんの所へ降りた。

スタッ…

 

リール「魔女さん!私飛べました!」

魔女さん「リールは覚えが早くて凄いですね」

リール「いやぁ…えへへ…」

魔女さん「しばらくは箒の操作に慣れるようにしましょうか」

リール「はい!」

魔女さん「さて、あとは…」

 

すると魔女さんは何か紙を取りだした。

 

リール「魔女さん。これは?」

魔女さん「リールが習うべきことを書いているんです。さっき箒に乗れるようになったのであとは…」

 

その紙にはびっしりと文字が書いてあった。

魔女さんは箒について書かれたところに印を書いた。

 

魔女さん「あとは杖を使っての魔法だけですね」

リール「杖を使っての魔法…ですか」

魔女さん「はい。杖を持つといつもより使われる魔力が多くなります。そうなると当然強い魔法を使うことができるんですが、勝手を知らないと大きな事故に繋がります」

リール「…」ゴクリ

魔女さん「魔法は使う魔力の量で強さや種類が変わります。それをより使いやすくするために杖が作られました」

リール「おぉ…」

魔女さん「なので手で魔力を使うよりも強い魔法が使えるようになります」

リール「ふむふむ」

魔女さん「杖と手では使われる魔力が全然違います。なので手で使ってた魔力のまま杖を使うと魔法がいつもより大きくなります。これが事故に繋がるんです」

リール「なるほど…」

魔女さん「なので杖を持って魔法を使う時はいつもより小さい魔力で魔法を使ってください」

リール「はい!」

魔女さん「では早速始めていきましょうか」

リール「はい!」

魔女さん「ではまずは杖を出してください」

 

私は懐から杖を取り出した。

 

魔女さん「じゃあ始めていきますね。まずは周囲を明るく照らす魔法を使ってみましょう。やり方は簡単です。杖を持ってマナに命令しながら振るだけです」

リール「え、それだけなんですか?」

魔女さん「はい。それだけです」

リール「ちなみに魔力はどれくらい必要なんでしょうか」

魔女さん「杖の先にくっついてる分でも十分な程ですよ」

リール「分かりました!」

 

私は杖を体の前に出した。

 

リール (周囲を明るく…)

 

ヒュッ!

私はそう思いながら杖を振った。

シュゥゥゥゥゥ!

すると、杖の先が光り輝いた。

 

リール「おぉ!明るい!」

魔女さん「上出来ですね。これは暗い時に使う魔法なのでこんな明るい時には使わないようにしてくださいね」

リール「はい!」

魔女さん「じゃあ次いきましょう」

リール「あ、あの魔女さん!」

魔女さん「はい。何ですか?」

リール「魔法を解くにはどうすれば?」

魔女さん「あー魔力の遮断をすれば魔法は止まりますよ。やり方は簡単。魔力を止めればいいんです」

リール「ど、どうやって…ですか?」

魔女さん「杖を振れば魔法は解かれますよ」

リール「杖を振る?」

 

私はとりあえず杖を振ってみた。

すると杖の先にあった光が消えていった。

 

リール「おぉ…」

魔女さん「さ、次にいきましょうか」

リール「はい!」

 

こうして少しの時間、魔女さんに魔法を教わりながら杖の使い方に慣れていくことになった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

魔女さん「じゃあ次は魔法を飛ばしてみましょう。私たちは自分の魔法を相手に飛ばすことで攻撃することができます」

リール「魔法攻撃ですね!」

魔女さん「そうです。魔法を相手に当てることで自分の身を守ることもできますよ。やってみましょう」

リール「はい!」

魔女さん「じゃあまずは杖の先を前に向けてください」

リール「はい!」

 

私は杖の先を前に向けた。

 

魔女さん「あとは…」

 

ヒュッ

魔女さんは私の隣に立って同じように杖を構えた。

 

魔女さん「見ててくださいねリール」

リール「はい!」

魔女さん「魔法で攻撃する時もイメージが大事です。人の考えてる技をマナが模して魔法となるのです。なので、例えば…」

 

ヒュッ…ぽわ〜ん

魔女さんが杖を振ると杖の先に光の玉が出てきた。

 

魔女さん「今私は杖の先にあるこれを思い浮かべました。なのでこうして杖の先に同じものが出てきました。この様に人の考えてるものがそっくりそのまま現れます。リールもやってみますか?」

リール「は、はい!」

 

私は魔女さんがやったようにやってみた。

 

リール (魔女さんと同じもの…同じもの…)

 

ぽわ〜ん

すると、杖の先に魔女さんと同じ光の玉が出てきた。

 

リール「できた!やった!」

魔女さん「素晴らしいですよリール」

リール「えへへ…」

魔女さん「ではこれを飛ばしてみましょうか」

リール「はい!」

魔女さん「見ててくださいね。魔法を飛ばす時はこうやって…」

 

魔女さんは杖を構えてから下から上へ杖を振った。

すると、杖の先にあった光の玉が前方へ飛んでいった。

 

魔女さん「魔法の撃つ姿勢はなんでもいいです。さっき私がやったのはそれっぽく見せるためなのです。魔法の撃ち方は手でやった時と同じです。マナに命令して魔力を与えれば魔法を飛ばせますよ」

リール「分かりました!」

 

私は魔女さんの言われた通りにやってみた。

 

リール (まずは前に飛ばす…)

 

シュッ!ドーーン!

すると、杖の先についていた光の玉が一直線に飛んでいった。

 

リール「あ、できた…」

魔女さん「魔力のコントロールもできてますね。さすがですよリール」

リール「あ、ありがとうございます!」

魔女さん「ここまでできたら大丈夫そうですね」

リール「えへへ…」

魔女さん「ではリール。今日習ったので箒に乗って帰りましょうか」

リール「はい!…あ、魔女さん」

魔女さん「なんですか?」

リール「魔女さんは箒に乗らなくてもいいんですか?」

魔女さん「私は風属性の魔法を使って飛ぶので大丈夫ですよ」

リール「あ、そうなんですね…では…」

 

私は魔女さんに習ったように箒に乗ってみた。

 

リール「うわっとと…」

 

少しバランスを崩したけど何とか乗れた。

 

魔女さん「バランスは慣れればいいですが、それまでの行為がちゃんとできてるので上出来ですよ」

リール「ありがとうございます!」

魔女さん「さて、じゃあ帰りましょうか」

リール「はい!」

 

そして私と魔女さんは空を飛んで一緒に帰ったのだった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

その夜…

 

リール (明るく照らす…)

 

ぽわ〜ん

私は今日習った辺りを明るく照らす魔法を使っていた。

 

リール「うわぁ…綺麗…」

 

その光は決して眩しくなく、優しい光を放っていた。

 

魔女さん「!」

 

魔女さんは外が明るいのに気づいた。

魔女さんが窓から外を見るとリールが魔法を使って明るくしていた。

 

魔女さん「ふふっ…あの子ったら…ちゃんとできてて偉いですよ。リール」

 

そして魔女さんは部屋へ戻った。

 

リール「次は魔法を撃つ練習!」

 

私は杖を前に向けた。

 

リール (あの玉を思い出して…)

 

シュゥゥゥゥゥ…

すると、あの時の玉が出現した。

 

リール「あ、できた…あとはこれを…」

 

私は杖の先を空に向けて魔法を撃った。

その魔法は空高く飛び、少ししてから消えた。

 

リール (できた…魔女さんがいなくてもできた…)

 

私はこの時、達成感を感じた。

 

リール (これからもっとたくさんの魔法が使えたらいいなぁ…)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…魔女さんの部屋

 

ギィィィィィ…

部屋のドアが開いた。

 

魔女さん「…」

 

魔女さんは机の中からある手紙を取り出した。

パサパサ…

魔女さんはその手紙を開封し、内容を読んだ。

 

魔女さん「…」

 

魔女さんは物憂げな表情を浮かべた。

 

魔女さん「…短い時間でしたね。もっと一緒にいれたらいいのですが…あんな所に行かせたくないですね」

 

パサ…

魔女さんはその手紙を置いた。

 

魔女さん「…リールはどう思うのでしょうか。私といたいって思ってくれるでしょうか…それともこの手紙に書いてあることを承諾するのでしょうか…」

 

魔女さんは窓の外を見た。

 

リール「はぁっ!」

 

リールは魔法を撃つ練習をしていた。

 

魔女さん「…」

 

それを見た魔女さんは先程よりも暗い表情になった。

 

魔女さん「…離れたくないですね。会ってまだ日が浅いです。できればもう少し一緒に暮らしたいですね」

リール「はぁっ!やぁっ!」

 

リールはどんどん魔法を撃っていた。

 

魔女さん「…誰にも取られたくないですね。…でも、あの子のことを考えたらやはりこれを承諾するしかないのでしょうか…」

 

魔女さんは再度手紙を読んだ。

 

魔女さん「一体誰が見ていたのでしょうか。あの子を拾ったことはメリー以外誰にも言ってないはずですが…」

 

カサカサ…スッ…

魔女さんはその手紙を戻し、机の中に入れた。

 

魔女さん「リール…私はあなたの味方です。何かあったら私を頼ってくださいね」

魔女さん「…ね、リール」




〜物語メモ〜



魔法を使う上で重要になる物。
杖を持てば手で魔法を撃つよりも簡単に魔法をコントロールできる。
少量の魔力で多彩な魔法を撃つことができる。
魔法の質はこれを持つ持たないで雲泥の差。




移動手段に使われるもの。
風属性魔法に適正がある人は魔法を使って空を飛べるが、その他の属性魔法に適正を持つ人は箒がないと空を飛ぶことができない。



魔法
魔法は自分の思った通りのものが反映される。
そのため、想像力がとても重要。
物を浮かせたり物を作ったり…使い方は様々。
属性魔法では自分の思った魔法に各属性が付与される形になる。
なので、同じ魔法でも各属性によって効果が変わってくる。


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第5話 魔女さんと手紙

私の名前はリール。

ある魔女さんと一緒に暮らしています。

昨日は魔女さんに箒や杖の使い方を学びました。

自分にとってはいい体験だったと思います。

そして今日は魔女さんの顔色が少し悪いように見えました。

何かあったのかな?

私を呼び出した魔女さんは悲しい顔でその訳を話し始めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔女さん「リール。今日は大事なお話があります」

リール「大事なお話ですか?」

魔女さん「はい。あなたの今後に関わる大事なお話です」

リール「…」

 

私は魔女さんの真剣な顔を見てとても大事な話だと悟った。

 

魔女さん「とりあえずそこに座ってください」

リール「はい」

 

私は魔女さんの向かいの椅子に座った。

 

リール「あの…魔女さん」

魔女さん「リール」

リール「はい」

魔女さん「あなたはこの先色々な魔法を学びたいと思っていますか?」

リール「はい。もちろんです」

魔女さん「その魔法はどのように使うつもりですか?」

リール「えっと…まぁ自分の生活を便利にしたり…ですかね」

魔女さん「そうですか」

リール「?」

魔女さん「その魔法を人を殺めたり傷つけたり…そのように使う予定は無いんですね?」

リール「え…そんな事には使いませんよ…」

魔女さん「…」

 

スーッ…

魔女さんは二つ折りにされた紙を出した。

 

リール「魔女さん…これは?」

魔女さん「…ある学校の入学希望の手紙です」

リール「入学希望の手紙?」

魔女さん「はい」

リール「見てもいいですか?」

魔女さん「いいですよ」

 

カサカサ…

私はその手紙を読んだ。

 

リール「エレナ学院 入学希望届?」

魔女さん「はい。そうです」

リール「魔女さん。エレナ学院って何ですか?」

魔女さん「数々の魔法使いを育成している学校です」

リール「ふむふむ…」

魔女さん「そこへ行けばここで習うよりも遥かに多くの魔法を学ぶことができます」

リール「おぉ…」

魔女さん「その学校は寮生活なのでここからの通いではなくなります」

リール「え?そうなんですか?」

魔女さん「はい。学校と寮が一緒になっている建物なので常にあちらにいることになります」

リール「それって…魔女さんとは離ればなれってことですか?」

魔女さん「…はい。そういう事になります」

リール「え…」

 

私は魔女さんと一緒に暮らせないことをここで知った。

 

魔女さん「色んな魔法を学びたいリールのことを考えたらこの学校に入学するべきなんですが、私はリールと離れるのは少し気が引けます」

リール「…」

魔女さん「リールはこの学校に入学したいと思いますか?」

リール「わ…私は…」

 

私はここで迷った。確かに私は色々な魔法を学びたいと言った。この学校に行けばそれが叶う。でも、私を保護してくれた上に魔法も教えてくれた魔女さんと離ればなれになるのは嫌だった。私自身、魔女さんと一緒に暮らしたいと思ってる。もっと魔女さんから色々学びたいと思ってる。でもそれだと限界がある。魔女さんは私をこの学校に通わせることで私の願いを叶えようとしている。でも魔女さん自身も私と同じで離れるのは嫌って言ってた。魔女さんとの生活を取るか、自分の願いを取るか。答えはもう…決まっていた。

 

リール「…嫌です」

魔女さん「!」

リール「魔女さんと離れるのは嫌です」

魔女さん「リール…」

リール「確かに私は色々な魔法を学びたいと言いました。ですが、全ての魔法を学びたいとは言っていません」

魔女さん「!」

リール「私は少しの魔法が使えたらそれでいいです。さっきも言いました。私は魔法が使えたら自分の生活を便利にしたいと。人を傷つけたりするために魔法を学んでいる訳では無いです」

魔女さん「…」

リール「それに、色々な魔法というのは魔女さんが教える魔法で十分だと思っています」

魔女さん「!」

リール「学校に行ってまで…魔女さんと離れてまで魔法を学びたいとは思いません」

魔女さん「…リール」

リール「私はまだまだ魔女さんに魔法を教わりたいです。なのでこの学校には行きません」

魔女さん「リール…ありがとう」

リール「え、あ、はい」

魔女さん「じゃあこれは無しという事にしますね」

リール「はい!」

 

魔女さんはその手紙を手に取った。

 

魔女さん「じゃあこれはもう必要ないので燃やしましょうか」

 

ボッ!

すると、魔女さんはその手紙を燃やし始めた。

 

チリチリ…チリチリ…

その手紙は完全に焼失した。

 

魔女さん「さて、これで綺麗に無くなりましたね」

リール「あ、あはは…」

魔女さん「あ、ひとつ言い忘れてたことがあります」

リール「なんですか?」

魔女さん「リールはこれから外には出ないでくださいね」

リール「…え?外出禁止って事ですか?」

魔女さん「はい」

リール「な…何故ですか?私…何かしましたか?」

魔女さん「いいえ。そういうことではないんです」

リール「え、じゃあ…」

魔女さん「…外出禁止にするのは、私と同じ目に遭ってほしくないからです」

リール「魔女さんと…同じ目に?」

魔女さん「はい」

リール「それは…どういう事でしょうか」

魔女さん「リール。覚えておいてください」

リール「は、はい…」

魔女さん「あの人たちは危険です。自分の国を発展させるために魔法使いを輩出しています。そのためには手段を選びません。常に自分たちの最善の策を取ります」

リール「え、でも、その国が発展するのはいい事なのではないでしょうか?」

魔女さん「ここで言う発展というのは他の国を蹴落とすという意味です」

リール「け、蹴落とす…」

魔女さん「はい。そして蹴落とすというのは…戦争ということです」

リール「え…」

魔女さん「つまりその国は自分たちの国を発展させて他の国を滅ぼすつもりでいるのです」

リール「で、でも…」

魔女さん「その国が悪いわけではないのです。問題はその国のお偉いさんです。その人たちは自分たちが上であることを維持するために他を落とすことを選ぶ人たちです」

リール「でもそれってその人たち自身は低いままって事ですよね?」

魔女さん「そうです。ただ地位が高いだけの無能です」

リール「ま、魔女さんって結構言うんですね」

魔女さん「当然ですよ。あの人には恨みしかありませんから」

リール「…」

 

その時の魔女さんの顔は酷く怒っている様子だった。あんな顔の魔女さんを見たのは初めてだった。魔女さんの身に一体何があったのだろうか。それを聞きたかったけど、聞ける雰囲気じゃなかったから聞くのをやめた。

 

魔女さん「…リール」

リール「はい」

魔女さん「…私があなたに外出禁止を言ったのは…」

リール「!」

魔女さん「…攫われる可能性があるからです」

リール「さ、攫われる!?」

魔女さん「はい」

リール「え…何でですか…」

魔女さん「…先程言いましたが、その国のお偉いさんは自分たちの国が発展すればいいと思っています。その過程は考えません。つまりその人を攫ってまで自分たちの国を強くしようとしています」

リール「え…」

魔女さん「あの手紙が来たって事は私たちの場所が特定されているということです」

リール「じゃあ…」

魔女さん「はい。リールが外に出たらその人たちに攫われる可能性があります」

リール「ひぇっ…」

魔女さん「私はリールを守るために外出禁止と言いました」

リール「わ、分かりました」

魔女さん「…ごめんなさいね。折角魔法を教えられると思っていたのですが…」

リール「い、いいですよ!勉強は家の中でも出来ますし!」

魔女さん「…そうですか」

リール「…」

 

その時の魔女さんの顔は酷く暗い様子だった。

 

魔女さん「…リール」

リール「は、はい」

魔女さん「明日、私はある場所に行かないといけません」

リール「え…」

魔女さん「1日家を空けることになります」

リール「え…」

魔女さん「リール。明日は絶対に外に出ないでください。家の中にいてください」

リール「は、はい…」

魔女さん「外の掃除はしなくてもいいです。この周囲に結界を展開しておきます。何かあったらこれを…」

リール「?」

 

すると魔女さんはポケットからあるものを出した。

 

リール「こ、これは…」

魔女さん「危険を知らせるためのものです。何かあったらそれにマナを近づけてください。あとはマナが勝手にやってくれます」

リール「マナを近づけたらどうなるんですか?」

魔女さん「マナがそれに反応して私のところに危険を知らせてくれます。危険を察知したら私は直ちにリールの所へ向かいます」

リール「だ…大丈夫でしょうか…」

魔女さん「分かりません。ですが昨日、メリーにこの事を伝えました。なので明日はメリーが来てくれます。何かあったらメリーを頼ってください。最終手段としてそれを使ってください」

リール「わ、分かりました…」

 

そして私は魔女さんから白い結晶の様なものを受け取った。

 

魔女さん「それは首から下げることができますよ」

リール「え」

魔女さん「私が着けてあげますね」

 

すると魔女さんは私の首に白い結晶を着けてくれた。

 

魔女さん「あら、結構似合いますね」

リール「え、そうですか?」

魔女さん「はい。お似合いですよ」

リール「えへへ…ありがとうございます」

魔女さん「それではリール。明日、1日だけお願いしますね」

リール「はい。分かりました」

 

そしてその日は大事をとって1日家の中で過ごすことにした。




〜物語メモ〜


エレナ学院
魔法の町 スペルビアにある大きな学校。
そこでは色々な魔法を学ぶことができ、数多くの魔法使いを育成している。
スペルビアに生まれた子供たちは大体この学校に通っている。


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第6話 魔女さんとレヴィ学院長

私の名前はリール。

ある魔女さんと一緒に暮らしています。

何やらエレナ学院から手紙が来たそうで、魔女さんはその手紙の事を良く思ってませんでした。

何やら緊迫とした様子…何か思い出とかあるのかな…

魔女さんに言われた通り、今日一日は家で過ごそうと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…エレナ学院 学院長室

 

???「レヴィ学院長」

レヴィ「ん、何かな」

???「先日お送りしたお手紙の件ですが」

レヴィ「あーあの手紙ね。どうだった?」

???「その手紙は…焼失しました」

レヴィ「!」

 

レヴィは驚きの表情を浮かべた。

 

レヴィ「消失した?消えたの?」

???「あ、そうではなく燃やされたのです」

レヴィ「燃やされた?あの手紙が?」

???「はい。今は跡形も無いです」

レヴィ「ふーん…なるほどね」

???「如何いたしますか?」

レヴィ「うーん…あの人の事だからねぇ…怒らせるとこの国が消えかねん」

???「き、消える…ですがこの国には学院長や魔法使い、他にもこの学院の生徒がいます。流石に消えるというのは」

レヴィ「いいや。簡単に消えるよ」

???「!」

レヴィ「ねぇラーフ。君はこのお話を知ってるかな? "狂った魔女がある国を滅ぼした" お話」

ラーフ「!?」

レヴィ「…その反応じゃあこのお話は知らなさそうだね」

ラーフ「はい…不勉強ですみません」

レヴィ「いや、いいんだ。これは今の人たちには聞かされてないお話だよ」

ラーフ「と、言いますと…」

レヴィ「…このお話はね、"無かったことにされた" んだよ」

ラーフ「な、無かったことに…?」

レヴィ「そうだよ」

ラーフ「なぜ…無かったことに?」

レヴィ「そりゃあ…あの魔女に滅ぼされた国はね………」

ラーフ「!?」

 

ラーフはそれを聞いて驚いていた。

 

レヴィ「まぁ驚くのも無理はないよ」

ラーフ「そんな…」

レヴィ「だからあの魔女には誰も手を出せない。手を出せば自分が消えてしまうからだ」

ラーフ「そうなんですか…あの魔女にそんな過去が…」

レヴィ「だからラーフ。あの魔女には変なことしちゃダメだよ。何されるか分からないからね」

ラーフ「はい…ですが」

レヴィ「?」

ラーフ「レヴィ学院長はあの魔女が保護しているあの子が欲しいと言ってたじゃないですか。こんな軽く手放してもいいんですか?」

レヴィ「うん。いいよ」

ラーフ「!?」

レヴィ「正直言うとあの子をうちの学院に通わせられたら最高だろうね。あの子、すごい魔女になるよ。あの魔女とあの子が魔法の適性を見ているところを偶然見かけてね。その時あの子は光の属性魔法を使っていたんだ」

ラーフ「!?」

レヴィ「光の属性魔法に適性がある人は少ない。今この世にいる魔法使いや魔女を全員集めても数えられるほどだろうね」

ラーフ「そうですか」

レヴィ「うん。あの子はその数えられるほどの中の1人だ。私はあの子に色々魔法を教えてあげたいと思った。あの子がなぜ魔法を使えるのかは分からないけど"同じ光属性魔法に適性を持つ人"としてあの子の成長を見てみたいんだ」

ラーフ「なるほど…そうでしたか」

レヴィ「でもあの手紙を燃やされたということはこの学院には入らないということと同意義」

ラーフ「…」

レヴィ「惜しいなぁ…あの子はきっといい魔女になれると思ってたんだけどなぁ…」

ラーフ「レヴィ学院長…」

レヴィ「…」

ラーフ「わ、私があの子をここへ連れてきたらどうなさいますか?」

レヴィ「え?」

ラーフ「レヴィ学院長はあの子をこの学院に入れたい。私は学院長の願いを叶えてあげたい。なら、私があの子を連れてきます」

レヴィ「何言って…」

ラーフ「私があの子を連れてくれば私の願いは叶いますし学院長の願いも叶うかもしれません。なので私が」

レヴィ「ダメ」

ラーフ「な、何故ですか…」

レヴィ「…さっきも言ったけどあの魔女を本気で怒らせたらこの国は消えちゃうよ」

ラーフ「!」

レヴィ「あの人はね、昔は優しい人だったよ。一緒に暮らしてたから分かる。でもある時、その優しさはどこかへ消えてしまった」

ラーフ「…」

レヴィ「あの日…あの魔女がある国に攫われたあの日…あの魔女は昔のあの人じゃなくなった」

ラーフ「さ…攫われた…」

レヴィ「…あの日から実に2年。あの魔女は私たちのところに帰ってきた」

ラーフ「!」

レヴィ「その時の私はとても喜んでいた。2年前に突然消えた姉に似た存在のあの魔女にまた会えたからだ。でも…師匠とあの魔女は違った」

ラーフ「…」

レヴィ「あの魔女の顔は泣いていた。その顔を見て私も泣いたよ。私はその時、寂しかったんだろう。やっと会えたから泣いてるんだろうって思ったよ。でも…実際には違っていた」

ラーフ「…」

レヴィ「あの時何故泣いていたのか…その理由は次の師匠の言葉で悟った」

ラーフ「次の…言葉…」

レヴィ「その時師匠はあの魔女に向かってこう言った」

レヴィ「 "何人殺した?" と」

ラーフ「!?」

レヴィ「私は何言ってるのかさっぱりだったけど今になってその言葉の重みが分かったよ」

ラーフ「…」

レヴィ「あの時あの魔女が泣いていたのは、会えて嬉しかった…とか、寂しかった…とかではなかった。あの魔女が泣いていたのは人を殺したからだとそれからしばらくして分かった」

ラーフ「…」

レヴィ「あの時の師匠の顔も覚えてる。すごく怒っていた。見たことないほどに怒っていた」

ラーフ「…」

レヴィ「あの魔女が帰ってきてから翌日、私はある記事を見た」

ラーフ「ある記事…」

レヴィ「うん。その記事は "狂った魔女がある国を滅ぼした" という内容だった」

ラーフ「!!」

レヴィ「それを見た当時の私はその記事に載っている写真にあの魔女が写っているのを見つけた」

ラーフ「…」

レヴィ「その事を師匠やあの魔女に伝えに行ったんだけど、そこにはもう…あの魔女の姿はなかった」

ラーフ「!」

レヴィ「外には師匠がいたけど師匠は何も口を聞いてくれなかった」

ラーフ「…」

レヴィ「それからあの魔女の部屋に入った私は机の上にあったある手紙を見つけた。私に宛てた手紙だった」

ラーフ「手紙…」

レヴィ「その手紙は "あなたの元を離れるのを許してください" という内容だった」

ラーフ「…」

レヴィ「私はその手紙を読んで全てを知った。何故あの魔女が攫われ、国がひとつ滅び、私の前から姿を消したのか」

ラーフ「…」

レヴィ「そして、あの事件を起こしたあの魔女は当時の記事を読んだ人からこう呼ばれた」

レヴィ「 "狂気の魔女" …とね」

ラーフ「!?」

レヴィ「流石にこの名前は君でも知ってるかな」

ラーフ「狂気の魔女って…実在したんですか…」

レヴィ「あぁ。実在の人物さ」

ラーフ「なんと…」

レヴィ「…あれからあの魔女の姿を見ることはなかった。もう会えないと思っていた。でも、最近その姿を見かけた。嬉しくなった私はあの魔女に手紙を送った。けど燃やされちゃった…」

ラーフ「…」

レヴィ「長く会えなかったあの魔女に会えた。それだけでもう十分」

ラーフ「…そうですか」

レヴィ「だからラーフ。あの魔女には何もしないで。またあの日を思い出させるかもしれない。そうなったら最後。今度は何するか分からないからね」

ラーフ「わ…分かりました…」

レヴィ「…あの魔女の家に行きます」

ラーフ「え!?」

レヴィ「行くのは私だけです。ラーフはここにいてください」

ラーフ「で、ですが…あの狂気の魔女のところに」

レヴィ「ラーフ」

ラーフ「は、はい…」

レヴィ「あの人をその名で呼ばないでください。あの人は私の姉であり、憧れであり、尊敬する人です。そのような人を狂気と呼ばれるのは悲しいです」

ラーフ「は、はい…すみませんでした」

レヴィ「ラーフはこの話を聞いたから今後はその名は伏せておいてください」

ラーフ「あの…レヴィ学院長」

レヴィ「なんですか?」

ラーフ「私は今後二度と言いませんが、この話を聞く前にその名を口にした人はいたと思います。そして今後も誰かがその名を口にすると思います。そうなったらどうしますか?」

レヴィ「…我慢しますよ」

ラーフ「!」

レヴィ「この話は元々無かったことにされたお話です。ラーフも知らない程でしたから。この話を知っている人はもう少ないです。知らない人はその名の重さを知らないのでその名を口にします。なので仕方ないのです。ここで私が何かすればそれこそ問題になります。なのでそうなってしまったら我慢します」

ラーフ「そう…ですか…」

レヴィ「大丈夫ですよ。この話を知ってる人がその名を出さないだけで私は気持ちが軽くなります。今はそれだけでいいです」

ラーフ「…分かりました」

レヴィ「…明日、私はあの魔女の家に行きます。ラーフはここにいてください。私がいない間、この学院を頼みますよ」

ラーフ「はい。お任せ下さい」

 

コツコツコツ

レヴィは学院長室を出た。

 

ラーフ「…レヴィ学院長…今までそんなお辛い人生を…ここは私がしっかりしてレヴィ学院長の支えにならなければ!」

 

そしてラーフも学院長室を出た。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

ー翌日ー

 

場所…魔女さんの家

 

魔女さん「それではリール。今日一日は家で過ごしてくださいね」

リール「はい!」

 

コンコン

家のドアがノックされた。

 

メリー「来たわよ〜」

魔女さん「あ、メリーが来たようね」

 

ガチャ

魔女さんは家のドアを開けた。

 

魔女さん「来てくれてありがとうメリー」

メリー「いいよいいよ。今日一日リールちゃんといたらいいんだよね?」

魔女さん「えぇ。それでいいわ。あと来客の接待もお願いしたいの。いいかしら」

メリー「任せて」

魔女さん「ありがとう。それじゃあお願いね」

メリー「えぇ」

魔女さん「リール。明日戻ってくるわね」

リール「はい!分かりました!」

魔女さん「何かあったらメリーに聞いてみて」

リール「はい!」

魔女さん「それじゃあメリー。お願いね」

メリー「分かったわ。いってらっしゃい」

魔女さん「えぇ」

 

そして魔女さんはどこかへ出かけてしまった。

 

メリー「じゃあリールちゃん!今日は私に任せてね!」

リール「は、はい。よろしくお願いします」

メリー「じゃあまずは朝ごはんね!私料理得意だから期待しててね!」

リール「は、はい!」

メリー「あとは魔法の勉強で分からないことがあったら聞いてね!」

リール「は、はい!」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

魔女さん (リール。少しの間離れるけどごめんね。この事態に収集をつけるにはあの人の力が必要なの…私がやったらまた…)

 

魔女さんは家の方へ振り返った。

 

魔女さん (あなたは絶対に失いたくないの。もう二度と…私の前から大事な人が消えちゃうのは嫌なの。だから少しだけ…少しだけ我慢してね…リール)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院

 

レヴィ「じゃあ行ってくるよ」

ラーフ「はい。行ってらっしゃいませ」

 

コツコツコツ

レヴィは魔女さんの家に向かって歩き出した。

 

ラーフ「レヴィ学院長!」

レヴィ「はい。何ですか?」

ラーフ「あの…ほんとに私はお供しなくてもよろしいのですか?何かあったら」

レヴィ「大丈夫ですよ」

ラーフ「!」

レヴィ「私は1人で大丈夫です。なのでラーフはこの学校を頼みますね」

ラーフ「…はい」

レヴィ「それでは行ってきますね」

ラーフ「はい…」

 

コツコツコツ

レヴィはまた歩き始めた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…魔女さんの家

 

メリー「どうリールちゃん!美味しい?」

リール「お、美味しい…」

メリー「よかったぁー!あ、食べたらお皿はここに置いておいてね」

リール「はい」

メリー「じゃあ私はあれを…」

リール「?」

 

するとメリーさんは袋から何か取りだした。

 

リール「メリーさん。それは何ですか?」

メリー「あーこれはマナを集めて入れておくビンだよ」

リール「ビン?」

メリー「そうそう。マナって魔力のあるところに集まるのは知ってるかな?」

リール「はい」

メリー「でも魔力が無くなるとマナは離れちゃって魔法が使えなくなっちゃう…それを解決するのがこれ!このビンがあればマナをストックすることができて尚且つ魔法も使うことができる!」

リール「え…」

メリー「どう?リールちゃん!」

リール「あの…」

メリー「?」

リール「もし魔力が無くなったとして…マナを持っていても結局魔法は使えないのではないのでしょうか…」

メリー「…あ!!」

リール「なのでマナをビンから取り出しても離れちゃうんじゃ…」

メリー「うわぁぁぁぁぁん!そうだったぁぁぁぁぁ!」

リール「!」

 

リールはメリーが突然大きな声を出したため驚いた。

 

メリー「私はなんて馬鹿なことを!馬鹿なことを!」

メリー「いや…ならここで魔力をストックするようなものを作れば…」

リール (メ、メリーさん…凄いなぁ…)

メリー「ありがとうリールちゃん!これでまた新しいものが作れそうだよ!」

リール「い、いえ…」

 

コンコン

すると突然ドアがノックされた。

 

リール「!」

メリー「リールちゃん。ちょっとここに隠れてて」

リール「は、はい」

 

そう言われて私はソファの陰に隠れた。

ガチャ

メリーさんがドアを開けた。

 

メリー「はい。どちら様ですか?」

レヴィ「おや、ここはあの魔女の家ではないのですか?」

メリー「!」

リール「!」

 

魔女さんの家に来たのは男の人だった。

 

レヴィ「おかしいですね。あなたはメリー魔法店の…」

メリー「はい。私がメリーです」

レヴィ「何故あなたがここに?」

メリー「ここは私の友人の家で今は留守を頼まれています」

レヴィ「おや、ということはあの魔女さんは今はいないのですか?」

メリー「はい。いません」

レヴィ「どこへ行ったかは?」

メリー「聞かされていません」

レヴィ「そうですか…困りましたね」

メリー「?」

レヴィ「ところでメリーさん」

メリー「何でしょうか」

レヴィ「ここにある女の子がいませんか?」

メリー「!」

リール「!」

レヴィ「光属性魔法に適性がある子が」

リール (私の事だ…)

メリー「すみません。そんな子は知りません」

レヴィ「そうですか…この家に入っていくのを見かけたのですが、見間違いだったのでしょうか」

メリー「分かりません」

レヴィ「もしかしてあの魔女さんと一緒にどこかへ出かけたのですか?」

メリー「分かりません」

レヴィ「うーん…困りましたね…」

メリー「あの、仮にその子がいたとしてどうするおつもりですか?」

レヴィ「あの子を是非私の学院に通わせたいのです」

リール「!」

メリー「それは何故ですか?」

レヴィ「光属性魔法に適性がある人はとても少ないです。なのでその少ない人材をより良い魔法使いに育て上げたいのです。今日はそのお話のために来ました」

メリー「そうですか。でもあの魔女さんはいません。明日には戻ると言っていたので明日にお願いできませんか?」

レヴィ「そうですか。分かりました」

レヴィ「では、そこにいるあなたはどうですか?」

リール「!」

メリー「!」

 

リールは突然言われて驚いた。

 

レヴィ「この扉を開けてからずっとそのソファの向こうから私と同じ魔力を感じていました。あの魔女さんと一緒にいた子と同じ魔力ですね。まさか…あなたがその子供ですか?」

リール (どうしよう…出るべきかな…でも、メリーさんが…)

メリー「あの…」

レヴィ「?」

メリー「誰に言ったんですか?ここには私1人しかいませんが」

レヴィ「1人?ここには2人いませんか?」

メリー「!」

レヴィ「1人はあなた。もう1人は…感じたことのない気配」

リール (!)

レヴィ「しかも私と同じ魔力…いえ、それ以上ですね」

 

レヴィはそのソファをじっと見た。

 

レヴィ「そこにいるのではないですか?出てきてください」

リール「…」

 

そう言われて私はソファから顔を出した。

 

リール「あ、あの…」

レヴィ「やっぱり…いたんじゃないですか」

メリー「リールちゃん…」

リール「何か…御用でしょうか」

レヴィ「お話があります。とりあえず家に…」

 

そう言いながらレヴィは家の中に入ろうとした。

バッ!

 

レヴィ「!」

 

リールは魔女さんから貰った結晶を握ってレヴィに見せた。

 

レヴィ「何ですか?それは」

リール「これは魔女さんから貰ったものです…これを使えば魔女さんが飛んで来てくれます…私に何かあったら使うようにと言われました」

レヴィ「なんと…」

リール「それ以上近づいたらこれを使います…」

レヴィ「…分かりました」

リール「!」

レヴィ「では今日はこれで帰ります」

リール「!」

レヴィ「明日、またここに来ます。その時はお話させてください。あなたの魔女さんとも」

リール「え、あの…」

レヴィ「それでは…」

 

レヴィはそのまま魔女さんの家を出た。

 

メリー「リールちゃん…大丈夫?」

リール「は、はい…大丈夫です…」

リール「あの…メリーさん」

メリー「何?」

リール「あの人は…誰ですか?」

メリー「…あの人は、スペルビアにあるエレナ学院の学院長だよ」

リール「そう…ですか…」

 

私はこの時、すごく怖く感じた。

その日は学院長以外の来客はなかったけど、とても疲れた1日だった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院

 

ラーフ「お帰りなさいませ。レヴィ学院長」

レヴィ「ラーフ」

ラーフ「はい。何でしょうか」

レヴィ「明日、また魔女さんの家に行きます」

ラーフ「!」

レヴィ「今日はどこかへ出かけてるそうです」

ラーフ「そうですか。分かりました」

レヴィ「あと…」

ラーフ「?」

レヴィ「今後は私一人で魔女さんの家に行きます」

ラーフ「?」

ラーフ「それは存じていますが」

レヴィ「…今日、護衛の人がついてきてましたね」

ラーフ「!」

レヴィ「光属性魔法を使う人は共通して周囲の探知能力を持っています。私はあの時、周囲から人の気配を感じ取りました」

ラーフ「!」

レヴィ「ラーフ。あなたが行かせたんですよね?」

ラーフ「…はい」

レヴィ「何故ですか?大丈夫と言ったじゃありませんか」

ラーフ「ですが、やはり心配になります…せめて護衛の人たちを」

レヴィ「大丈夫です」

ラーフ「…」

レヴィ「明日は私一人で行きます。護衛の人も必要ありません」

ラーフ「…分かりました」

レヴィ (…あの時、あの子は怯えていた。私に向けた怯えではなかった。恐らく周囲の人間の気配を感じたのだろう。ずっと目がキョロキョロと動いていた。周囲を警戒していたのだろう…。怖かっただろうな…。次は私一人で…そうすればいくらか心を開いてくれるだろうか…)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…???

 

???「…久しぶりですね」

魔女さん「はい。お久しぶりです」

???「何十年ぶりでしょうか。君の姿を見るのは」

魔女さん「…そうですね」

???「それで、私に会いに来たのは何か理由があったからですよね?」

魔女さん「…はい」

???「話してみなさい。弟子の話を聞くのも私の役目ですから」

魔女さん「はい。実は…エレナ学院から入学希望届という手紙を受け取りました」

???「!?」




〜物語メモ〜


レヴィ学院長
エレナ学院の学院長。
魔女さんを姉と慕っている人物。
魔女さんとリールが外で魔法を使っているのを目撃した。
一人称は私。



ラーフ
レヴィ学院長の補佐をしている人物。
レヴィ学院長がいない間の学院の管理を任されている人物。
レヴィ学院長からの信頼は厚い。
一人称は私。


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第7話 魔女さんと過去

私の名前はリール。

ある魔女さんと一緒に暮らしています。

手紙の一件から何故かエレナ学院の学院長さんが家に来ました。

魔女さんの事を知ってる様子でした。

メリーさんの事も知ってるようでした。

明日また来るそうです。

でも、できればあんなに大勢で来て欲しくないなと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔女さん「実は、エレナ学院から入学希望届という手紙を受け取りました」

???「!?」

 

その人はとても驚いていた。

 

魔女さん「驚くのも無理はないです」

???「…なぜ今になって」

魔女さん「ひとつ…お話があります。少し前に会ったある女の子とのお話です」

 

 

ー回想ー

 

ザッザッザッ

私は私情のため、ある場所に出かけていました。内容は言えませんが、危険なものではありません。私があの子に会ったのは、その用事が終わって帰宅している時でした。

 

魔女さん「ふぅ…これでようやく新しい材料が手に入りますね」

 

ザッザッザッ

私は暗い森の中を歩いていました。

 

魔女さん「!」

 

すると、ある木の下で横たわっている女の子がいました。私はその女の子に駆け寄り、意識があるかを確認しました。

 

魔女さん「ねぇあなた…こんな所で何してるの?」

???「…」

 

その女の子は気を失っているのか、返事がありませんでした。

 

魔女さん「返事がない…気を失ってるのかしら…」

 

暗い森の危険さは十分承知しているので私はその女の子を保護し、家に向かいました。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…魔女さんの家

 

ガチャ…

私は一人暮らしのため、家の扉を開けてくれる人は存在せず、私は女の子を抱えながら扉を開け、家に入りました。

 

魔女さん「えっと…ソファは…」

 

私は家に着いたと同時にその女の子をソファに寝かせました。

 

???「…」

 

その女の子は気を失ってるのか未だに起きない。

 

魔女さん「なんであの森の中に…」

 

私はその疑問を抱えつつ疲れていたため、そのまま眠ってしまった。そしてその翌日、私は陽の光が目に当たり、目を覚ましました。

 

魔女さん「あれ…私…眠ってしまったのかしら…」

 

昨日の記憶がぼんやりと頭の中に残っている。

 

魔女さん「あ…あの子…」

 

私は昨日の女の子を思い出し、ソファに目をやりました。その女の子はまだ起きていませんでした。

 

魔女さん「まだ…気を失ってるのでしょうか」

 

そして私はある魔法を使ってその女の子の生命反応を確認しました。すると、ただスリープ状態になっているだけで外傷などはなく、健康だった。

 

魔女さん (一体この子に…何があったのでしょうか…)

 

私がそう考えていると女の子から声がしました。

 

???「ん…んん…」

魔女さん「!」

 

私は耳がいいので聞き間違いだとは思いませんでした。

 

???「ん…」

 

私はその女の子の近くに行き、起きるのを待ちました。すると、その女の子はすぐに起きました。

 

???「あ…あ…」

 

その女の子は起きて早々声を発しました。言葉ではなく単語でしたが、ハッキリと声を出しました。

 

魔女さん「ねぇあなた…大丈夫?」

???「?」

 

私が話しかけると私の存在に気づいたのかその女の子は私の方を見ました。

 

???「えっと…あなた…は…」

魔女さん「私はこの家に住んでいる人です。あなたが森で倒れていたので連れてきました」

???「森…そうですか…」

 

その女の子は自分の身に起こったことを覚えておらず、私の家を物珍しく見渡しました。

 

???「ここは…」

魔女さん「私の家ですよ」

???「そうですか…あなたは?」

魔女さん「!」

 

その女の子はさっきと同じ質問をしました。

 

魔女さん「私はこの家に住んでいる人ですよ」

???「…そうですか。それで、ここは…」

 

その子はまた同じ質問をしました。

 

魔女さん (記憶の定着ができていない…何かのショックを受けたのでしょうか…)

 

コツン

私はその子の頭に自分のおでこを当てた。

 

???「!」

 

その子は少し驚いていた。

それを見て私はその子の頭の状況を読み取った。

 

魔女さん「…」

 

ですが、何も異常はありませんでした。頭に損傷があるわけでも何かの魔法を受けたわけでもありませんでした。記憶の定着ができていない原因は分かりませんでしたが、とりあえずこの子の名前を聞きました。

 

魔女さん「ねぇあなた…名前は?」

???「…知らない」

 

当然の答えでした。

 

魔女さん「じゃあ私があなたに名前をつけてもいいですか?」

???「…うん」

魔女さん「そうですねぇ…じゃあリールで」

リール「リー…ル…」

魔女さん「そうです。リールです」

リール「…」

 

その女の子は小さく頷きました。

 

魔女さん「リール。あなたを歓迎します。あなたは私の弟子です」

リール「?」

 

そして私はその女の子にリールと名付け、その子と一緒に暮らしました。

 

ー回想終了ー

 

 

魔女さん「…と、言うことです」

???「なるほど。それから今に至るまで時が流れて、今は言葉も話せる子になったんですね」

魔女さん「はい」

???「微笑ましい限りです。是非一度会ってみたいものですね」

魔女さん「いつか来てくださればその時に…」

???「分かりました。いつかあなたの家に行きましょう」

魔女さん「はい」

???「それで、そのエレナ学院には入学するのですか?」

魔女さん「…決めかねています」

???「…無理もないですね」

魔女さん「はい。あの子のことを思えば入学させるべきでしょうが、私はあの子に私と同じようになって欲しくないのです。ですが、私が教えるのにも限界があります。あそこへ通えばリールはもっと魔法を学ぶことができます」

???「…そうですね。かつて最高峰と言われたエレナ学院ですもの。入学させられればその子はもっと先へ進めると思います。ですが…」

魔女さん「…はい」

???「…あなたの事もありますね」

魔女さん「…」

???「…私があなたの話を聞く限り、あなたにとってその子はとても大事な子なんですね」

魔女さん「はい」

???「…故にあなたのようになって欲しくない…と」

魔女さん「…はい」

???「…私もそう思いますよ」

魔女さん「!」

???「私もあなたに教えていた時代にはあなたと同じことを考えていましたよ。あなたとレヴィをあの学院に入学させるかどうか…悩んだ結果、私はあなたたち2人を入学させず、私の手で育てました」

魔女さん「!」

???「私はその選択をした後悔はありませんでした。私がその選択をしたおかげであなたたちとの時間を取る事ができました。私は満足でした」

 

するとその人の顔は一瞬にして暗くなった。

 

???「…ですが、その選択をしたせいであなたを失う結果になりました」

魔女さん「…」

???「本来あの町に生まれた子供はあの学校に通うのが決まりです。もちろんあなたとレヴィはあの町の子供じゃないので通う意味はありません。ですが、あの時の学院長が言うには私たちが住んでいたあの場所はその国の領土となっていたそうです。ですから、あなたたちもあの町の子供としてカウントされ、その決まりを破ったとされた私の元からあなたが連れ去られることとなりました」

魔女さん「…」

???「私はあなたを失ったショックで悲しくなりましたよ。私の大事なあなたを連れ去ったあの学校を粉微塵に破壊しようかとも思いました。ですが、そうするとあなたとレヴィに何らかの制限がつくと思ったのでやめました。それから2年、ある事件とともにあなたが私たちの元に帰ってきた」

魔女さん「…」

???「それが、"狂った魔女がある国を滅ぼした" という事件だった」

魔女さん「…」

???「私はもう…その悲しみを繰り返してほしくないです。あなたの言った通り、その子はあなたのようになって欲しくないですし、あなたは私のようになって欲しくない」

魔女さん「分かりました。でしたら…」

???「ですが…その願いも届かないものですね」

 

その人は私の発言を遮ってまで言葉を放った。

 

魔女さん「どういう…事でしょうか…」

???「…悪い知らせです。最近、ある噂を耳にするようになりました」

魔女さん「…噂」

???「はい。それは、"ある国と共に滅びた魔女が蘇った" というものです」

魔女さん「!」

???「あなたならよく知っているでしょう?」

魔女さん「…私が…殺した人…」

???「…そうです。その人がどこかの国で蘇ったと…そういう噂を耳にしました。ですが、あくまで噂です。詳細はよく分かりません」

魔女さん「あの人…」

???「そうなるとあなたのところに行くのは必然です。あなたがあの子を守りたいのであればエレナ学院に通わせることをオススメします」

魔女さん「…リール」

 

私はここで迷った。かつて私が殺した魔女が蘇った。その魔女は恐らく私のところに来るでしょう。そうなるとリールが危険な目に遭います。ですが、あそこに通わせれば私と同じようになってしまう。リールの危険を回避するために学院に通わせ、私と同じ道を歩ませるか、それとも危険を承知で私と一緒に暮らし、あの魔女と敵対するか。私は…選択できなかった。

 

魔女さん「…お師匠様」

???「なんですか?」

魔女さん「…あの子に…決めさせてもよろしいでしょうか」

???「…いいんじゃないでしょうか?」

魔女さん「!」

???「今のあなたには迷いが見えます。あの子の意見を聞いて決めるのもいいと思いますよ」

魔女さん「分かり…ました」

 

そして私は家に帰ってこの事をリールに話そうと思った。

 

魔女さん「あ、そろそろ時間ですね」

???「あ、そうですか。短かったですね」

魔女さん「ですね。それでは私はこれで」

???「待ってください」

魔女さん「?」

???「あなたは…その子をどうしたいのですか?」

魔女さん「…あの子には…元気に育って欲しいと思っています」

 

コツコツコツ

そして私はお師匠様の元を離れました。

 

???「…悲しい思い出ですね。あなたの隠せない罪…拭いきれない血…取り返せない過去。あなたはもう…十分辛い人生を送りましたよ」

???「…リーナ」

 

その後、お師匠様の元を離れた私は家に帰りました。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…魔女さんの家

 

ガチャ

家の扉が開いた。

 

魔女さん「ただいま帰りましたよ。リール」

リール「おかえりなさい!」

 

ギュッ…

リールは魔女さんに抱きついた。

 

メリー「おかえり」

魔女さん「ありがとうメリー。今日一日」

メリー「いやぁ構わないよ。リールちゃんのおかげでまた新しい魔法道具が完成しそうだし」

魔女さん「そうなんですか?」

メリー「そうよ。リールちゃんの助言がなかったらまた失敗するところだったよ」

魔女さん「そう。リール。良かったですね」

リール「はい!」

魔女さん「今日はどうでしたか?」

メリー「…今日はエレナ学院の学院長が来たよ」

魔女さん「!」

メリー「明日また来るって言ってたよ。今度はあなたとリールちゃんと一緒に話がしたいそうだよ」

魔女さん「…思ったより行動が早いですね」

メリー「そうかな。でも手紙が届いた日から結構経ったよ」

魔女さん「…そうですね。分かりました。明日は用事は無いので私が迎えます」

メリー「分かった」

魔女さん「あ、そうだ。お夕飯作りますけど食べますか?」

メリー「いやいいよ。頭に残ってるうちに完成させたいしね」

魔女さん「そうですか。分かりました」

メリー「それじゃあね」

魔女さん「はい。それではまた」

メリー「リールちゃん!今日はありがと!リールちゃんのおかげで新しい魔法道具が作れるよ!」

リール「いいえ…そんな…」

メリー「完成したら持ってくるね!」

リール「は、はい!」

メリー「じゃあね」

 

ガチャ…バタン

そしてメリーは家に帰っていった。

 

魔女さん「それじゃあお夕飯作りましょうか。リール」

リール「はい!」

 

そして私はお夕飯を食べ、いつものように過ごし就寝した。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

ー翌日ー

 

場所…エレナ学院

 

レヴィ「それじゃあ行ってくるね」

ラーフ「はい。行ってらっしゃいませ」

レヴィ「今日は私一人で行くから。ラーフは学院の管理お願いね」

ラーフ「はい。お任せ下さい」

 

コツコツコツ

レヴィは魔女さんの家に向かった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…魔女さんの家

 

魔女さん (エレナ学院長…何しに来るのでしょうか)

リール「おはようございます…」

魔女さん「あらリール。おはようございます」

リール「魔女さん…今日は…」

魔女さん「えぇ。大丈夫ですよ。私がいますので」

 

ギュッ…

 

魔女さん「!」

 

するといきなりリールが抱きついてきた。

 

魔女さん「リール?」

リール「魔女さん…今日一日だけ…魔女さんの隣にいてもいいですか?」

魔女さん「!」

 

リールの手は震えていた。

 

魔女さん「…」

 

スッ…

私はリールの手に自分の手を乗せた。

 

リール「!」

魔女さん「えぇ。構いませんよ」

リール「…良かったです」

 

すると…

コンコン

 

リール「!」

 

ドアがノックされたと同時にリールはビクッと震えた。

 

魔女さん (…何かあったのでしょうか)

魔女さん「…リール」

リール「はい」

魔女さん「私の後ろにいてくださいね」

リール「…はい」

 

そして私とリールはドアへ向かった。

ガチャ…

私がドアを開けると、そこには見覚えのある顔があった。

 

レヴィ「…魔女さん…ですね」

魔女さん「…」

 

魔女さんはその人の顔を見ていた。

 

魔女さん「…レヴィなのね」

レヴィ「…はい」

魔女さん「…何の用ですか」

レヴィ「実は、話したいことがあります」

魔女さん「…入って」

レヴィ「お邪魔します」

 

コツコツコツ

そしてレヴィは魔女さんの家に入った。

 

魔女さん「…それで、話って何?」

レヴィ「その子を学院に通わせたい…という話です」

魔女さん「…」

リール「!」

 

魔女さんは目の前の男の人を睨んでいた。

 

魔女さん「…何故ですか?」

レヴィ「この子は才ある魔法使いです。これから色々な魔法を学べば更によい魔法使いになれると思っているからです」

魔女さん「それはあなたの主観的意見であってそうなるとは限りません」

レヴィ「ですがこのまま才ある子を手放すと大きな損失になりますよ」

魔女さん「損失とはなんですか?」

レヴィ「…国を維持するための力です」

魔女さん「この子は物じゃありません。人を物のように扱うなら通わせません」

レヴィ「いいえ違います!」

魔女さん「違わないでしょう。さっきあなたが言ったじゃないですか」

レヴィ「…ひとつ、話があります」

魔女さん「…なんですか」

レヴィ「最近、ある噂を耳にしました」

魔女さん「!」

レヴィ「かつて存在した魔女がある国で蘇ったと」

魔女さん「…何故あなたがそれを」

レヴィ「私はこれでも学院長です。重要な情報は全て聞きます」

魔女さん「…ということは復活したのは本当なんですね?」

レヴィ「…恐らく。だからこの子を私の学院で保護しようと思っています」

魔女さん「…その話、お師匠様からも聞かされました」

レヴィ「!」

魔女さん「お師匠様は学院に通わせるべきだと言いました。この子の安全を考えればですが」

レヴィ「じゃあ」

魔女さん「ですが、それだと私と同じ目に遭います。私はあの悲劇を繰り返したくないです」

レヴィ「大丈夫です。今は私が学院長となって動いています。姉さんのようにはさせません」

魔女さん「…あなたがエレナ学院の学院長…ですか」

レヴィ「…はい」

魔女さん「リール」

リール「なんですか?」

魔女さん「リールはどうしたい?ここで魔法を学びたい?それとも学院に通って魔法を学びたい?」

リール「えっと…私は…」

 

リールは少し考えた。

 

リール「私は…魔女さんに…魔法を教わりたいです…」

魔女さん「…だそうです」

レヴィ「そうですか…それは残念です」

魔女「どうしますか?」

レヴィ「…ここは大人しくそれに従います。ですが、ひとつ言ってもいいですか?」

魔女さん「…何でしょうか」

レヴィ「私はあなた方の味方です。なのでいつでも頼ってください。お願いします」

魔女さん「…分かりました」

レヴィ「…それでは、私はこれで失礼します」

魔女さん「はい」

 

コツコツコツ

ガチャ…バタン

レヴィはその場をあとにした。

 

魔女さん「…リール」

リール「はい」

魔女さん「あなたは私が守ります。何かあったらそれを使ってくださいね」

リール「…はい」




〜物語メモ〜


??? (魔女さんのお師匠様)
彼女は魔女さんとレヴィ学院長のお師匠様。
魔法は現在の魔女さんよりも遥かに上で魔女さんはお師匠様のことを慕っている。
魔女さんとレヴィ学院長の過去を知る人物で今はひっそりと暮らしている。


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第8話 魔女さんと別れと決断

ここでちょっとお知らせです。

今話で「私、魔女さんに拾われました。ー魔女さん編ー」が完結します。

でも、この物語が終わる訳ではありません。

新しい章になるだけです。

これからも「私、魔女さんに拾われました。」は投稿していきますので、読んでいただけたら幸いです。

お知らせは以上です。


私の名前はリール。

ある魔女さんと一緒に暮らしています。

昨日はエレナ学院の学院長さんが家に来ました。

私をエレナ学院に入学させるというお話でした。

魔女さんは入学させるのを反対していました。

学院長さんは何も言わずにそれに従ってくれました。

それよりも気がかりなのは噂のこと。

学院長さんが言ってた噂って何だろう…

今日は魔女さんにその事について聞こうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リール「あの…魔女さん」

魔女さん「はい。何ですか?」

リール「ひとつ…聞いてもいいですか?」

魔女さん「はい。いいですよ」

リール「…昨日学院長さんが言ってた噂って…何ですか?」

魔女さん「!」

 

魔女さんはその事を聞かれて私の方を見た。

 

魔女さん「…気になりますか?」

リール「!」

 

魔女さんは一瞬だけ顔を曇らせた。

 

リール「…はい」

 

私がそう言うと魔女さんは話し始めました。

 

魔女さん「…ある魔女のお話です。昔、ある町に存在した魔女がある人物によってこの世を去りました。その魔女は当時の魔女や魔法使いの中でトップレベルの実力を持っていました。彼女はその力で敵国を焼き払い、他国を寄せつけないほどの強国に育て上げました」

リール「…」ゴクリ

魔女さん「その人は表では人に優しい頼られる人でした」

リール「表…」

魔女さん「はい。彼女は表向きは民を想う人でしたが、裏では他国を滅ぼし、自国を発展させようとする人でした」

リール「…」

魔女さん「リール」

リール「はい」

魔女さん「昨日の学院長さんが言った言葉を覚えていますか?」

リール「…?」

魔女さん「国を維持するための力」

リール「!」

魔女さん「そうです。当時強かったあの魔女と同じことを言っているのです」

リール「た、確かに…」

魔女さん「私はリールを物のように扱って欲しくないと思い、入学を拒否しました」

リール「そうですか…」

魔女さん「ですがリール。これから先、もしかするとあの学校に通ってもらうことになるかもしれません」

リール「!」

魔女さん「さっきまで話したその魔女には私も関わっています」

リール「え、魔女さんも…」

魔女さん「はい」

リール「なぜ…」

魔女さん「…それは言えません。ですが、これだけは言えます。その魔女は必ず私のところに来ます」

リール「!」

魔女さん「彼女は恐らく、当時関わった人たちを殺すつもりでしょう」

リール「え…殺すって…」

魔女さん「はい。彼女は遥か昔にこの世を去りました。ですが、最近どこかの国で蘇ったそうです」

リール「え…」

魔女さん「人の蘇生は重罪です。それに伴う代償も大きいでしょう。恐らく、その魔女を蘇らせた人は亡くなったでしょう」

リール「え…そうなんですか…」

魔女さん「はい。人の蘇生はこの世の理に反しますから。肉体を失うのは必然です」

リール「そんな…」

魔女さん「この世に蘇ったその魔女がいつここに来るか分かりません。なのでリール」

リール「はい」

魔女さん「…これからは属性魔法をここで習い、その他の魔法はエレナ学院で習ってください」

リール「え…なんでですか…」

魔女さん「…私は、リールが光属性魔法を覚えたらこの場を去ります」

リール「え…」

魔女さん「…」

リール「な…なんでですか…そんな…」

魔女さん「…分かってください。あなたを守るためです。関わりを持たないあなたが怪我をするところは見たくないです。もしあなたが怪我をしたらまた私は…」

リール「…」

魔女さん「…いえ、なんでもありません。とにかく、これからは光属性魔法に力を入れていきます」

 

ギュッ…

 

魔女さん「!」

 

リールは魔女さんに抱きついていた。

 

リール「…嫌です」

魔女さん「!」

リール「魔女さんと離れるのは…嫌です」

魔女さん「…」

リール「魔女さんは私のたった1人の家族です…そんな人を私は…」

魔女さん「リール」

リール「…」

魔女さん「…ありがとう。でも大丈夫。あなたが大きく育つまで見届けますから。あなたを残してなんか逝きませんから」

リール「…」

 

リールは魔女さんに抱きついたまま涙を流していた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

それから色々あった。光属性魔法は特殊属性魔法に属されているため、並の魔法とは少し違う。扱いも難しく、慣れるのにもやっとだった。でも、魔女さんはずっと私に魔法を教えてくれた。自分の知識を私に継がせるかのように。

 

それから約1年が経過した。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

魔女さん「リール。随分大きくなりましたね」

リール「そうですか?」

魔女さん「はい。私の鼻くらいにまで大きくなりましたよ」

リール「えへへ〜」

魔女さん「さて、光属性魔法はこれで全部習いましたね」

リール「そうですね」

魔女さん「…どうしましたか?」

リール「…いえ、覚えてますよね。魔女さん。去年ここで言った言葉」

魔女さん「…」

リール「ねぇ魔女さん」

魔女さん「?」

リール「あなたは本当に…ここを離れるのですか?」

魔女さん「…はい」

リール「具体的にどれくらいですか?」

魔女さん「…あの魔女をどうにかするまでです。いつまでかかるかは分かりません」

リール「…そう…ですか…」

魔女さん「リール」

リール「?」

魔女さん「あなたなら大丈夫ですよ。私がいますから」

リール「…はい」

 

ガチャ…

突然家のドアが開いた。

 

メリー「やぁリールちゃん!久しぶり!」

リール「メリーさん」

メリー「大きくなったね!」

リール「ありがとうございます」

魔女さん「メリー。あれは持ってきた?」

メリー「大丈夫。持ってきたよ」

リール「持ってきたって何をですか?」

メリー「ん?入学届だよ」

リール「入学届?」

魔女さん「そうです。あなたはこれからエレナ学院に通ってもらいます。ここの管理はメリーに任せますので大丈夫ですよ」

リール「…そう…でしたね。忘れてました」

魔女さん「…」

リール「魔女さんと一緒に暮らせないとなると寂しくなりますね」

メリー「…」

魔女さん「リール。あなたは今いくつ?」

リール「えっと…17です」

魔女さん「なら大丈夫ですね。リールはもう大人の女性です」

リール「…」

魔女さん「あなたはもう、何者にも負けない強い女性です。私が保証します」

リール「ありがとうございます」

魔女さん「私とまた一緒に暮らしたいならもっと魔法を学んで強くなってください。そしてまた、私の前に現れてください」

リール「…はい」

魔女さん「じゃあメリー。あとはお願いね。レヴィには言ってあるから」

メリー「分かったわ」

魔女さん「リール。出発は明日です。今日は一日ずっといましょうね」

リール「…はい」

 

そして私は、その日ずっと魔女さんと一緒に時間を過ごしました。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

ー翌日ー

 

魔女さん「おはよう。リール」

リール「…おはようございます。魔女さん」

魔女さん「…寂しいですか?」

リール「…はい」

魔女さん「リール。私は少し離れるだけです。あなたと一生会えない訳ではありませんよ」

リール「…ですが」

魔女さん「あなたは何者にも負けない強い女性です。大丈夫ですよ」

リール「…はい」

 

ガチャ…

家のドアが開いた。

 

メリー「やぁ、2人とも」

リール「メリーさん…」

メリー「リールちゃん。これからはエレナ学院にある寮で生活することになるけど大丈夫?」

リール「…」

 

リールは何も言わなかった。

 

魔女さん「…」

メリー「…大丈夫じゃないみたいだね」

リール「…」コクッ

 

リールは小さく頷いた。

 

リール「魔女さんと離れたくないです」

魔女さん「リール…」

メリー「…私もそう思う」

リール「!」

メリー「でも友人の頼みだからね。聞き入れるしかなかったよ」

リール「…」

メリー「リールちゃん。2人で魔女さんを見送ろ?」

リール「…」

 

リールの目に涙が溢れていた。

 

リール「私は…私は…」

 

リールは震えていた。

ギュッ…

 

リール「!」

 

魔女さんはリールを抱きしめた。

 

魔女さん「私もリールと離れたくないです。できるならこれからも一緒に時間を過ごしたいです。でもごめんなさい。あなたを守るためなんです」

リール「…知ってます。なのでもう…わがままは言いません…」

魔女さん「リール…」

リール「魔女さん」

魔女さん「何ですか?」

リール「最後に…強く抱きしめてください。魔女さんを忘れないように強く…」

魔女さん「…」

 

ギュゥゥゥゥゥ…

魔女さんはギュッと強く抱きしめた。

 

魔女さん「リール。強く…強く生きてください。生きていればいつかは会えます。なので、次に会う時までに私よりもすごい魔女になっててくださいね」

リール「…はい」

魔女さん「リール」

リール「…はい」

魔女さん「私はあなたの事を愛していますよ」

リール「…私も、魔女さんを愛してますよ…」

 

しばらく抱き合った後、リールは準備をし始めた。

 

メリー「…いいのかい?あんな悲しくなるようなこと言って」

魔女さん「いいんです。リールは強い子ですから」

メリー「…せめてあの子があなたよりもすごい魔女になるまで見届けてあげてほしいけど」

魔女さん「…それは、次に会う時です。弟子の成長が見られないのは心苦しいですが、ここで我慢しないとリールが怪我をします。そうなったら私は…あの時みたいに…」

メリー「…」

魔女さん「ごめんなさいね。こんな話」

メリー「いいよ。あんたの過去を知ってる人はそう多くない。真実を知る人は少ない方がいいよ」

魔女さん「…そう」

リール「メリーさん。準備できました」

メリー「そっか。じゃあ2人で魔女さんを見送ろっか」

リール「はい」

 

3人は外に出た。

 

魔女さん「それではメリー。この家の管理をお願いしますね」

メリー「任せて」

魔女さん「リール」

リール「はい」

魔女さん「…元気でね。私よりもすごい魔女になってみんなを助けてあげて」

リール「…はい」

魔女さん「…それでは行きますね」

メリー「行ってらっしゃい」

リール「…」

魔女さん「…」

 

魔女さんはリールからのいってらっしゃいを待ったが、リールは何も言わなかった。

 

ヒュッ…ヒュッ…ポンッ!

魔女さんは杖を振り、箒を出した。

 

魔女さん「よいしょっと」

 

魔女さんは箒に乗った。

 

リール「魔女さん!」

魔女さん「!」

 

タッタッタッ!

リールは魔女さんの所まで走った。

 

スッ…

それを見た魔女さんは箒から降りた。

 

ギュッ!

リールは魔女さんに抱きついた。

 

リール「魔女さん…私をここまで育ててくれて…ありがとうございました」

魔女さん「リール…私の方こそ。ありがとうございました。弟子の成長が見られないのは残念ですが、あなたが成長した姿を見てみたいです。次に私に会うまでに私よりもすごい魔女になってくださいね。約束です」

リール「はい…約束です…」

 

リールと魔女さんは小指を絡ませた。

 

魔女さん「…さ、それでは行きますね」

リール「はい…行ってらっしゃい…」

 

その後、箒に乗った魔女さんはどこか遠くへ飛んでいった。

 

メリー「…行っちゃったね。リールちゃん」

リール「…はい」

メリー「リールちゃんは魔女さんに言われた通り、すごい魔女さんにならないとね」

リール「…はい。私、次に魔女さんに会うまでに魔女さんよりもすごい魔女さんになります。魔女さんに負けないくらいの魔女さんになります」

メリー「その意気だよ。リールちゃん」

リール (魔女さん。私、頑張ります。魔女さんに習ったこと…忘れません!私はいつか…魔女さんに負けないくらいの魔女さんになります!応援しててくださいね。魔女さん)

メリー「…さ、行こっか」

リール「はい!」

 

こうして私は、魔女さんとの別れを告げ、スペルビアにあるエレナ学院に転入生として入学することとなりました。




〜物語メモ〜

これにて
「私、魔女さんに拾われました。ー魔女さん編ー」
が終了しました。

次回は
「私、魔女さんに拾われました。ーエレナ学院編ー」
になります。

この物語はいくつか章を作るつもりですので、良かったら最後まで読んでいただけると幸いです。
ではまた次回まで。


リールの年齢
リールと魔女さんが初めて会った時のリールの年齢は16。
それから1年が経って17となりました。
なので魔女さんとリールは1年と半年一緒に暮らしました。


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第1章 2節 エレナ学院編
第9話 リールとエレナ学院


私の名前はリール。

ある魔女さんと一緒に暮らしていました。

魔女さんは今、家にいません。

ある人物が蘇ったと…それだけ言って魔女さんは遠くへ行きました。

1人になった私はこれからエレナ学院に通うことになります。

私の知らない魔法を学べるのは嬉しいのですが…

…嬉しいはずなのですが…何故でしょうか…

寂しさだけが…込み上げてきます。

嬉しさよりも何かがポッカリと無くなった喪失感の方が大きいです。

でも私は魔女さんと約束しました。

魔女さんよりもすごい魔女さんになると。

これからいつまで魔女さんと離れ離れになるのかは知りませんが、次会う時までにすごい魔女さんになって魔女さんを驚かせようと思っています。

…だから今は我慢します。

…次に会えるその時まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…エレナ学院 (学院長室)

 

レヴィ「やぁ、リールさん」

リール「…」

 

私は今、エレナ学院の学院長室にいます。

 

レヴィ「事情は全部聞いたよ」

リール「…そうですか」

レヴィ「辛いだろうけど、頑張って魔法を覚えて魔女さんをビックリさせてみない?」

リール「…」

レヴィ「…君ならできるよ。リールさん」

リール「…そうですか」

ラーフ「…」

レヴィ「…不安ですか?」

リール「…いえ、不安ではないです」

レヴィ「じゃあどうしてそんな顔を?」

リール「…なんでもないです。私の教室はどこですか?」

レヴィ「…もう少し休んでもいいんですよ?」

リール「…いえ、魔女さんとの約束があるので」

レヴィ「…そっか。ラーフ」

ラーフ「はい」

レヴィ「リールさんを教室に案内してください」

ラーフ「…分かりました」

 

ラーフとリールは学院長室を出た。

 

レヴィ「…よっぽど尊敬できる人だったんですね。あの魔女さんは」

メリー「…えぇ。そうでしょうね」

レヴィ「…メリーさん」

メリー「はい」

レヴィ「あの家は…どうするおつもりですか?」

メリー「…私が管理します。親友の頼み事なので」

レヴィ「その頼み事…私も引き受けてもいいですか?」

メリー「どういう事ですか?」

レヴィ「私はあの人と同じ時を過ごしました。あの人が残したあの子を守るのが、弟としての責務だと思っています。そして、あの人が残したもうひとつのあの子の居場所…あの家を守るのも私の責務だと思っています。メリーさん」

メリー「…」

レヴィ「私にも…あの家を守らせてください」

メリー「!」

レヴィ「私は…あの魔女さんが残したものを失いたくない。何がなんでも残したいと思っています。なので」

メリー「あの…何故そこまでするんですか?」

レヴィ「…世間の魔女さんの評価は全くと言っていいほど良くありません。あの魔女さんの本当の姿を知るのはあなたを含め、ごく少数でしょう。私もその少数のうちの一人です。あの人の残したものを悪い評価とともに失うのは気が引けます。私は、あの魔女さんの力になりたいです。お願いしますメリーさん。私にもあの家を守らせてください」

 

レヴィ学院長はメリーに頭を下げた。

 

メリー「頭をあげてください学院長さん」

レヴィ「…」

メリー「あなたの気持ちは十分伝わりました」

レヴィ「では…」

メリー「はい。私が魔女さんから頼まれたこと…手伝ってください」

レヴィ「喜んで!」

メリー「ただし、条件があります」

レヴィ「な、何でしょうか」

メリー「私は家の中の管理をします。なのであなたは家の外…つまり、外敵からあの家を守ってください。あの家に一切の傷がつかないよう結界を展開してください」

レヴィ「分かりました。私の持つ知識の中で最も防御力の高い結界を展開します」

メリー「ありがとうございます」

 

スッ…

メリーは立ち上がった。

 

メリー「…それでは私は魔女さんとの約束を果たします」

レヴィ「分かりました。私も仕事が終わり次第あの家に行って結界を展開します」

メリー「分かりました。それでは…」

 

そしてメリーも学院長室を出た。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院 (廊下)

 

ラーフ「リール様。あなたは今回、転入ということですので2学年の教室になります」

リール「2学年…それはどういったものを学ぶクラスですか」

ラーフ「この学校では1学年で魔法の基礎を、2学年ではその実技を、3学年では遠征を行います。今は学年が変わって数日ですのでまだ2学年の人たちは魔法の実技をしていません。実技をする前の講習をしているくらいですね」

リール「そうですか」

ラーフ「なのでリール様でも追いつけると思いますよ」

リール「…」

 

そしてリールとラーフは教室に着いた。

 

ラーフ「ここがリール様の教室になります。ちょっと待っててくださいね」

 

そう言うとラーフはその扉をノックした。

コンコンコン

すると、中から人が出てきた。

 

担任「あ、ラーフ先生。どうされましたか?」

ラーフ「先日話した子が今日から転入することになりました。まだ始まってすぐなので大丈夫だとは思いますが、どうでしょうか?」

担任「あー大丈夫ですよ!今はちょろっと話した程度なので!あ、じゃあみんなに言ってきましょうか?」

ラーフ「はい。お願いします」

 

するとその人は部屋に戻った。

 

リール「あの…あの人は…」

ラーフ「あの人はジーヴル先生です。あなたの担任の先生ですよ」

リール「ジーヴル…先生」

ラーフ「あの人は魔法の実技を担当している先生なので、分からないことはあの人に聞いてみてくださいね」

リール「…分かりました」

 

ガラッ

すると、扉が開いた。

 

ジーヴル先生「さ、えっと…」

リール「リールです」

ジーヴル先生「じゃあリールさん。みんなが待っていますよ。どうぞ」

リール「…」

 

リールはここでラーフを見た。

 

ラーフ「…大丈夫ですよ。あなたならできますよ」

リール「…」

 

私は不安に思いながらその教室に足を踏み入れた。

 

ラーフ (頑張ってくださいね。リール様)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…教室

 

教室に入った私は教卓の前まで歩く。

 

男子「うわっ…めっちゃ可愛いじゃん」

女子「綺麗な髪〜」

女子「可愛い…」

男子「おいあいつめっちゃ可愛いな!」

男子「おうよ。女子最高」

女子「ちょっとそこ!何言ってるの!」

男子「おっとと…つい心の声が漏れちまった」

ジーヴル先生「よぉしみんなー!この子がさっき言った転入してきた子だ。名前はリールさんだ。みんな仲良くしてくれよ!」

男子「いい名前だな!」

男子「顔可愛い上に名前も可愛いのかよ!」

男子「俺あの子狙おっかな」

男子「バッカてめぇ!俺のもんだ!」

女子「あなたたちうるさいわよ!」

男子「全く委員長のやつ…」

女子「でもあの子ほんとに可愛いよね〜」

女子「だよね〜」

女子「髪もサラサラしてるし〜」

ジーヴル先生「じゃあリールさん。なにか一言ありますか?」

リール「えっと…リールです。よろしくお願いします」

男子たち「うおおおおおおおお!」

男子「先生!席は!席はどこにしますか!なんなら俺の隣にでも」

ジーヴル先生「いや、席はあっち。周りは男子より女子の方がいいだろ?」

男子「えー!」

男子「先生!そりゃねぇよ!」

ジーヴル先生「やかましい!お前らの近くに置いたらどうなるか分かったもんじゃねぇよ!」

男子「先生!俺なんもしねぇよ!」

ジーヴル先生「とにかく!リールさんはあっちの女の子が多い方の席に座ってもらう!いいな?」

男子「ぶー!先生のケチー!」

ジーヴル先生「さ、リールさん。あちらの席があなたの席ですよ」

リール「は、はい…分かりました」

 

リールは指定された席に行った。

 

スッ…

リールはその席に座った。

 

女子「あ、あの…」

リール「!」

女子「よ、よろしく…お願いします…」

リール「はい。よろしくお願いしますね」

女子「…///」

 

私の隣の子はいかにも物静かな子でした。

女の私を相手にしてもこの感じ…恐らくそうなんだろうと、その時思いました。

 

リール「あの…お名前教えて頂けませんか?」

女子「えっと…アンナと言います…」

リール「アンナさんですね。これからよろしくお願いしますね」

アンナ「はい…」

ジーヴル先生「さて、リールさんが入ってきたところで授業再開するぞー」

男子「えー!」

ジーヴル先生「はいそこ!嫌とか思わない!まだ始まったばかりだぞー?」

男子「うぇー…」

 

そして、授業が始まった。

 

リール「あ、教科書…」

アンナ「あ、あの…これ使って…」

 

するとアンナが教科書を見せてくれた。

 

リール「あ、ありがとう」

アンナ「い、いえ…」

 

それから私はアンナに教科書を見せてもらいながら授業を受けました。

 

ジーヴル先生「じゃあみんなに質問な。基本属性魔法と特殊属性魔法の中でマナを必要としない属性魔法はなんだー?」

リール (あ、これ…魔女さんから習ったやつだ…)

アンナ「えーっと…えーっと…」

リール「!」

 

私は、隣で悩んでいるアンナに気がついた。

 

アンナ「えーっと…なんだっけー…」

ジーヴル先生「分かるやついるかー?」

 

誰も手を挙げなかった。

 

ジーヴル先生「うーんじゃあ…アンナ!」

アンナ「は、はい!」

リール (なんと運が悪い…こんな時に限って当ててくるんですね)

ジーヴル先生「マナを必要としない属性は?」

アンナ「えーっと…えーっと…」

男子「なんだ?答えないのか?」ヒソヒソ

リール「!」

 

私は端っこでヒソヒソと話している男子の声を聞いた。

 

男子「仕方ねぇよな。あいつ頭悪いし」ヒソヒソ

男子「結局ギリギリで1学年突破したしな」ヒソヒソ

リール「…」

 

私はその時、魔女さんの言葉を思い出した。

 

魔女さん (私よりもすごい魔女になってみんなを助けてあげて)

リール「…」

 

それを思い出したと同時に私の口が勝手に動いた。

 

リール「アンナ。アンナ」ヒソヒソ

アンナ「?」

リール「氷属性魔法ですよ」ヒソヒソ

アンナ (こ、氷属性魔法…)

ジーヴル先生「どうだ?分かるか?」

アンナ「あ、え、えっと…氷属性魔法…です…」

ジーヴル先生「正解だ!」

男子「!?」

ジーヴル先生「そう!氷属性魔法だけ例外だ!氷属性魔法は空気中の水分を使って…」

 

スッ…

アンナはホッとしたのかゆっくり座った。

 

リール「やりましたねアンナ」ヒソヒソ

アンナ「ありがとうリールちゃん…」ヒソヒソ

リール「リールでいいですよ」ヒソヒソ

アンナ「ありがとう…リール…」ヒソヒソ

リール「どういたしまして」ヒソヒソ

ジーヴル先生「だからみんなは氷属性魔法だけ一律して使うことができるんだ!」

男子「先生〜」

ジーヴル先生「ん?なんだ?」

男子「氷属性魔法以外はどうなるんですか?」

ジーヴル先生「その他の属性魔法は各属性魔法に適性がある人しか使うことができないんだ。この世界には基本属性魔法、特殊属性魔法、無属性魔法の3つが存在する。この内無属性魔法と基本属性魔法の氷属性魔法は誰にでも使える魔法だ。その他は人によって使える魔法が違うから注意な」

男子「それってどうやって適性って分かるんですか?」

ジーヴル先生「それは次の講義で全員分の適性魔法を見ようと思っている。これからはみんなの持つ適性魔法によって違う授業内容になるからな。2学年の最初のイベントは各々の適性魔法の見極めだ」

男子「よっしゃー!やっと魔法使いらしいことができるぜ!」

男子「この時を待ってた!」

男子「俺火属性魔法がいい!」

男子「俺は雷だ!」

女子「はぁ…全く男子は…」

リール「ねぇアンナ」

アンナ「な、なに?」

リール「この学院の人たちって自分の適性魔法を知るのはこの学年からなんですか?」

アンナ「うん。そうだよ。1学年は魔法の基礎を学ぶから実技が入る2学年の最初にみんなの適性魔法を調べるんだよ」

リール「へぇーそうなんですね」

アンナ「楽しみだね」

リール「そうですね。ちなみにアンナはどの属性魔法がいいんですか?」

アンナ「えっと私は…水…かな…」

リール「いいですね」

アンナ「リールは?」

リール「私ですか?私は…うーん…何でもいいかなぁ…」

 

私はここで自分の適性魔法を伏せておくことにした。

 

アンナ「そっかぁ…楽しみだね」

リール「えぇ。そうね」

ジーヴル先生「お前ら想像を膨らますのはいいけど自分の想像通りの属性魔法が使えるとは限らないからな」

男子「分かってるぜ先生!期待してるぜ!」

 

すると、学院内でチャイムらしき音が鳴った。

 

ジーヴル先生「お、もう時間か。じゃあ次回は適性魔法を見るからな。一応ここで待っててくれ」

生徒「はーい!」

ジーヴル先生「それじゃあ解散!」

 

そしてその日の授業は終了した。

 

アンナ「ね、ねぇリールちゃん…」

リール「ん?」

アンナ「あの…一緒に寮に…」

男子「なーなーリールちゃん!」

 

アンナが何か言ったみたいだけど、男子のせいで全く聞こえなかった。

 

男子「これからどこか行かね?俺いいとこ知ってるんだよねー!」

男子「な、お前ずるいぞ!俺が連れてくんだ!」

男子「なにをー!」

女子「あなたたち!リールさんが困ってるでしょ!やめなさい!」

男子「な、委員長!」

 

男子たちを一声で止めたその人は身長が私よりも少し高く、目が鋭かった。

 

女子「あなたたちは早く帰って勉強しなさい!」

男子「ちっ…リールちゃん!またいつか一緒に行こうね!」

男子「その時は俺が連れてくよ!」

男子「バッカ俺が連れてくんだよ!」

男子「何を!」

女子「早く帰りなさい!」

男子「うぉー!委員長が怒ったー!」

 

すると男子たちは教室を出ていった。

 

女子「はぁ…全く。…大丈夫ですか?リールさん」

リール「え、えっと…はい…」

女子「私はこのクラスの委員長 スカーレットと言います。以後、お見知り置きを」

リール「は、はい…」

スカーレット「それでは…」

 

すると、スカーレットと言う名の委員長さんが教室を出ました。

 

リール「…あ」

 

私はここでアンナの存在に気づきました。

 

リール「あ、アンナ…大丈夫ですか?」

アンナ「は、はい…」

 

アンナは男子たちに押されて尻もちを着いていた。

 

アンナ「いたた…」

リール「立てますか?」

アンナ「はい…大丈夫です…」

 

アンナはゆっくりではあるが立ち上がった。

 

アンナ「あ、あの…リール…」

リール「?」

アンナ「一緒に寮に行きませんか?」

リール「あ、いいですよ」

アンナ「やった!じゃあ行こ!」

 

アンナは私の手を引いて寮に連れてってくれました。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…寮 (アンナの部屋)

 

アンナ「さ、どうぞ」

リール「お、お邪魔します…」

 

そこには綺麗に整頓されていた空間があった。

 

リール「綺麗ですね」

アンナ「え!そうですか?」

リール「はい。綺麗に整頓されています」

アンナ「そ、そうですか…嬉しいです…」

リール「!」

 

私はここでアンナの部屋に2つベッドがあることに気づいた。

 

リール「ねぇアンナ」

アンナ「はい。何ですか?」

リール「ここベッドが2つありますが、この寮は2人でひとつの空間なんですか?」

アンナ「あ、そうなの!でも私は1人でこの部屋を使ってるんです!」

リール「他にいないんですか?」

アンナ「はい!このクラスは奇数なので1人余るんです!」

リール「…」

アンナ「でもリールが入ってきたので偶数です!」

リール「そう…ですか…」

 

コンコンコン

突然、部屋のドアがノックされた。

 

アンナ「だ、誰だろ…」

 

アンナはドアを開けに行った。

 

ガチャ…

ドアを開けるとそこにはラーフさんがいた。

 

アンナ「あ、ラーフ先生」

ラーフ「こんばんはアンナさん。実はあなたにお話したいことが…ってリールさん」

リール「あ、はい」

ラーフ「丁度いいです。アンナさん」

アンナ「はい」

ラーフ「これからあなたのルームメイトはリールさんになります。この部屋はお二人でお使いください」

アンナ「え…」

リール「え…」

アンナ「ええええええ!」

リール「ええええええ!」

 

なんとアンナのルームメイトは私だった。

悪い気はしなかったので私はその話を承諾し、アンナはとても喜んでいた。

 

ラーフ「荷物は部屋に置いてあるので」

リール「あ、分かりました。ありがとうございます」

ラーフ「それではまた…」

 

ガチャ…

ラーフはドアを閉めてその場をあとにした。

 

アンナ「…」

リール「…」

アンナ「ま、まさかリールが私のルームメイトなんて…」

リール「あはは…驚きましたよ…」

アンナ「こ、これからよろしくお願いします!」

リール「私の方こそ、よろしくお願いしますね」

 

エレナ学院1日目 まさかの隣の子が私のルームメイトだった。

気弱なのか声も小さく打たれ弱いけど私はそんな彼女が少し好きなのでこのお話は快諾できた。

これから色々あると思うけどいい学院生活を送れそうです。

 

リール (魔女さん…私…頑張りますから)




〜物語メモ〜


ジーヴル先生
2学年担当の先生。
主に実技の授業を担当している。
生徒からは人気の先生だ。



アンナ
リールの隣の席の女の子。
1学年の時の成績は一番下でギリギリ1学年を突破できたほど。
気弱で声も小さく、他人と慣れるのに時間がかかる。
だが、リールだけは早くに打ち解けることができた。



スカーレット
リールのクラスの委員長。
目が鋭いため睨んでいるとよく言われる。
実際は睨んでないので誤解を与えることが多い。


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第10話 リールと適性魔法検査

私の名前はリール。

エレナ学院に通っています。

昨日、この学院に転入しました。

ここは個性的な人たちが多く、退屈しなさそうでした。

そして、私の隣の席でありルームメイトであるアンナが私の最初のお友達です。

1学年の頃は成績が良くなかったらしいのですが、いい子だと思っています。

あと、今日は適性魔法の検査があるそうです。

私は自分の適性魔法を知っていますが、一応知らないふりをしようと思っています。

あとは、みんながどんな適性魔法を持っているのか楽しみです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…教室

 

ジーヴル先生「よーし今日は適性魔法を調べるぞー」

男子「っしゃあ!」

男子「早くやろうぜ先生!」

ジーヴル先生「まぁ待て男子諸君。色々気持ちが先走るのは分かるがちゃんと話を聞いてからだ」

男子「ブー!」

ジーヴル先生「それでだ。今から適性魔法検査をするにあたって注意事項がある。それは、魔法を人に向けないことだ」

男子「魔法を人に向けない?」

ジーヴル先生「そうだ。これから実際検査する時は魔法が出る。その魔法は無害ではない。実害のあるものだ。だから人に当たれば当然怪我をする。だから魔法の検査は一人ずつ行う」

アンナ「こ、怖いね…」

リール「大丈夫ですよ。アンナ」

アンナ「…うん」

ジーヴル先生「もし人にぶつけた場合、この学校では罰則扱いになるから注意な。分かったか?」

男子「分かったぜ先生!」

男子「早くやろうぜ!」

ジーヴル先生「お前らほんとに分かってんのか…」

男子「大丈夫だぜ!」

ジーヴル先生「はぁ…じゃあ学籍番号順にな」

男子「しゃおあらぁ!」

ジーヴル先生「やかましいぞ〜」

アンナ「わ、私…魔法使えるかな…」

リール「大丈夫ですよアンナ。魔法はこの世界では必ず1つ持ってるものですよ」

アンナ「そうなの?」

リール「はい」

アンナ「よく知ってるねリール」

リール「え!?…えーっと…誰かがそう言ってたので…」

アンナ「そうなんだ」

ジーヴル先生「じゃあ最初はアンナさん。さぁ、前に来てくれ」

アンナ「は、はい!」

 

呼ばれたアンナは立ち上がった。

 

男子「アンナは無理だろ」ヒソヒソ

男子「あいつ鈍臭いからな」ヒソヒソ

男子「おまけに学力もない。終わってんじゃん」ヒソヒソ

リール「…」

 

リールはその声をずっと聞いていた。

 

リール (アンナ…あなたなら大丈夫ですよ)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

ジーヴル先生「さ、これを持って」

アンナ「これは…」

ジーヴル先生「適性魔法を見るためのものだよ」

 

アンナはジーヴル先生からある結晶を受け取った。

 

リール (あ、あれは魔女さんも使ってた…)

 

そう。その結晶は魔女さんがリールの適性魔法を見るために使ってたものと同じものだった。

 

ジーヴル先生「これを使って火を出してみて」

アンナ「え!?火!?」

ジーヴル先生「あ、ほんとに出せって訳じゃないぞ?イメージをしてって事だよ」

アンナ「あ、なんだ…よかった…」

ジーヴル先生「さ、やってごらん」

アンナ「…」

 

アンナは火を出すイメージを持った。

すると周囲のマナがその結晶に集まり、やがて火となった。

 

アンナ「わ、わわわ…」

ジーヴル先生「じゃあそれを撃ってみて」

アンナ「撃つ?」

ジーヴル先生「それを飛ばしてみて。イメージで」

アンナ「は、はい…」

 

アンナは言われた通りにやってみた。

すると…

 

ポンッ!

結晶についていた火の玉が前方に飛んだ。

 

ジーヴル先生「ふむ…」

 

シュッ…

だがその火の玉は消えてしまった。

 

アンナ「あ…」

ジーヴル先生「あら、適性じゃなかったみたいだね」

アンナ「は、はい…」

ジーヴル先生「あ、気を落とさなくてもいいぞ。適性魔法によっては使えない魔法が存在するからな」

アンナ「はい…」

男子「なんだあれ。あれが魔法か?」

男子「弱すぎ」

男子「頭悪いと魔法も弱くなるんだな」

男子「傑作だな」

リール「…」

ジーヴル先生「おーいそこにいる男子。魔法に適性があるのは人それぞれだぞ。物によっては使えない魔法があったり弱くなる魔法も存在する。お前らも一緒だぞ?」

アンナ「…///」

ジーヴル先生「さぁアンナさん。次はこれだ」

アンナ「はい」

 

ジーヴル先生はアンナに青色の結晶を渡した。

 

ジーヴル先生「やり方は簡単だ。さっきは火をイメージしたけど今度は水をイメージしてみてくれ」

アンナ「は、はい…」

 

アンナは言われた通りにやってみた。

すると、その結晶の先に水玉が出てきた。

 

ジーヴル先生「じゃあそれを撃ってみてくれ」

アンナ「は、はい…」

 

アンナはさっきやったようにやってみた。

すると…

 

シュッ!ヒュゥゥゥゥゥゥ…ドン!

その水玉は勢いよく飛んで壁に設置された結界に当たった。

 

アンナ「ひぇぇぇぇ…」

ジーヴル先生「うん。いい魔法だ。じゃああとはその結晶にマナを集めてみてくれ」

アンナ「はい…」

 

アンナはその結晶にマナを集めてみた。

周囲のマナはそれに反応して集まった。

 

アンナ「これでいいでしょうか」

ジーヴル先生「あぁ。あとは…」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

すると、その結晶が光り始めた。

 

ジーヴル先生「おぉ!アンナさん!君の適性魔法は水だ!」

アンナ「え…私が…水…」

男子「はぁ?あいつ魔法使えてんじゃねぇか」

男子「あんなやつがか?」

リール (良かったですね。アンナ)

ジーヴル先生「えっと水属性なら…これだな」

 

ジーヴル先生は黄色の結晶を渡した。

 

アンナ「これは…」

ジーヴル先生「それは雷属性魔法の結晶だ。水属性魔法に適性がある人は雷属性魔法が使えないんだ。もしこれで雷属性が使えなかったらアンナは水属性魔法に適性があるということになる。さ、やってみて」

アンナ「は、はい…」

 

アンナは雷属性魔法の結晶を持ってマナを集めてみた。

だが…マナは集まらなかった。

 

アンナ「あれ…マナが集まらない…」

ジーヴル先生「よしっ。アンナさんの適性魔法は水属性魔法だな。良かったねアンナさん!」

アンナ「は、はい!」

ジーヴル先生「とまぁこんな感じで適性魔法を見ていくぞ!みんなはどんな属性魔法に適性があるかな?先生楽しみだぞ!」

男子「しゃおらぁ!」

男子「俺は全属性だ!」

ジーヴル先生「全属性は有り得ないぞー」

リール (え、ありえない?でも魔女さんは全属性の魔法が使えるって…)

アンナ「やったよリール!」

リール「え、アンナ」

アンナ「私水属性魔法だって!」

リール「あ、あぁ。良かったですねアンナ」

アンナ「うん!」

ジーヴル先生「じゃあ順番に来てくれー」

男子「おー!」

 

それから学籍番号順に適性魔法検査が行われた。

適正魔法は色々あった。

火、水、雷などこの教室の人たちは色々な属性魔法に適性があった。

でも…光属性魔法に適性がある人はいなかった。

そんなこんなで最後に私の番になった。

私の番になるまで何回かの授業間があって何時間もかかった。

やっとこの時かと…その時思った。

 

ジーヴル先生「さ、リールさん。君が最後だよ」

リール「はい」

 

リールは前に出た。

 

ジーヴル先生「さ、最初は火属性魔法だ」

リール「はい」

ジーヴル先生「じゃあ火をイメージして…」

 

プシュ…

リールは先生が言う前に魔法を使っていた。

そして、当然ながら火属性魔法は使えなかった。

 

ジーヴル先生「あ、ダメだったみたいだね」

男子「なんだ。あいつも魔法が使えないのか?」ヒソヒソ

男子「転入生とか言ってたからな」ヒソヒソ

男子「調子乗ってるからこうなるんだよな」ヒソヒソ

リール「…」

 

リールはその声を全部聞いていた。

 

ジーヴル先生「えーっと…火属性魔法が使えないとなると…風属性魔法の…」

リール「先生」

ジーヴル先生「ん?なんだ?」

リール「風属性魔法は結構です」

男子「!」

ジーヴル先生「なんでだ?」

リール「見ててください」

 

そう言ってリールは光属性魔法の結晶を取った。

 

ジーヴル先生「あ、待って。その結晶は光属性魔法の結晶であって雷属性魔法の結晶じゃ…」

 

キィン!ドゴォォォォォォン!

 

男子「!?」

ジーヴル先生「!?」

女子「!?」

 

ピキピキ…パリン!

リールはその結晶を持って光属性魔法を使った。

すると結界は粉々に壊れてしまった。

 

リール「はい。どうぞ」

ジーヴル先生「え…え?ひ、光属性魔法…な、なんで」

リール「あ、言い忘れてました。私、光属性魔法に適性があるんです。なので他の魔法は使えません。決して魔法が使えない訳じゃないんです」

ジーヴル先生「お、おう…」

男子「な…なんだあいつ…」ヒソヒソ

男子「光属性魔法だと!?」ヒソヒソ

男子「何かの間違いに決まってる!」ヒソヒソ

リール「あとそこの人たち」

男子「!」

リール「人を貶すのは程々にした方がいいですよ?私のように力を隠してる人もいるので」

男子「っ…」

 

そう言うとリールは自分の席に戻った。

 

リール「はぁ…全く」

アンナ「リール凄い!光属性魔法に適性があるなんて!」

リール「え、えぇ…まぁ…」

アンナ「正直水属性魔法がいいなって思ってたけど光属性魔法でもいい!」

リール「は、はぁ…」

アンナ「光属性魔法について色々教えてね!リール!」

リール「は、はい…分かりました…」

ジーヴル先生「さぁて全員終わったな。最後のリールさんのは驚いたがみんな色々な属性魔法を持ってて先生面白かったぞ」

男子「先生どうよ!俺の火属性魔法は!」

ジーヴル先生「はいはい。それはまた実技の授業で見せてくれ」

男子「分かった!俺の炎で先生を燃やしてやるぜ!」

ジーヴル先生「はっははは!できるもんならやってみな!」

 

すると、5度目のチャイムが鳴った。

今日は適性魔法を見る検査だけで授業はありませんでした。

授業は明日から。

頑張っていい魔女さんを目指そうと思います。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

レヴィ「流石あの魔女さんのお弟子さんですね」

ラーフ「学院長」

レヴィ「はい」

ラーフ「私も初めて拝見しましたが、あの魔法の威力は凄まじいものです。あれはこの学院を壊しかねな…」

レヴィ「ラーフ」

ラーフ「は、はい…」

レヴィ「大丈夫です。私がなんとかしますので」

ラーフ「…はい」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

魔法の適性検査が終わったリールはクラスの女の子たちに囲まれていた。

 

女子「凄いねリールちゃん!光属性魔法に適性があるなんて!」

女子「そうそう!」

女子「私初めて見た!光属性魔法!」

リール「は、はぁ…」

女子「リールちゃんってここに来る前ってどこの学校に通ってたの!?」

女子「あ、私もそれ気になってたの!」

リール「い、いえ…学校には通ってないです」

女子「え!?じゃあどうやって光属性魔法を!?」

リール「私のお師匠様に教わりました」

女子「お師匠様?名前はなんて言うの?」

リール「えーっと名前は…」

 

リールはここで疑問に思った。

 

リール (あれ…魔女さんの名前って…なんなんだろう…)

 

リールは今まで魔女さんの事を「魔女さん」としか呼ばなかった。

リールは今まで魔女さんの名前を一度たりとも聞いたことがなかった。

 

リール (メリーさんも魔女さんって呼んでた…魔女さんって…)

女子「リールちゃん?」

リール「へ?何ですか?」

女子「だからお師匠様の名前って何?」

リール「え、えーっと…」

スカーレット「あなたたち。もう授業は終わったわよ。早く帰りなさい」

女子「えー」

女子「もっとリールちゃんのお話聞きたいのに…」

スカーレット「なら明日聞きなさい。明日なら時間あるでしょ?」

女子「うーん…分かった…」

女子「じゃあリールちゃん!明日またお話聞かせてね!」

リール「あ、はい」

女子「それじゃあね!」

 

するとリールを囲んでいた女子たちが帰っていった。

 

リール「…ふぅ」

スカーレット「大人気ね。リールさん」

リール「えぇ…まぁ…」

スカーレット「まぁみんな光属性魔法に適性がある人を見慣れてないのよ。許してあげて」

リール「いや、まぁ…さっきの空間はその…悪くなかったなぁって思ってます…」

スカーレット「そう」

リール「あ、ねぇスカーレットさん」

スカーレット「…スカーレットでいいわよ。同じクラスなんだし」

リール「じゃあスカーレット。あなたは光属性魔法に適性がある人は見慣れてるの?」

スカーレット「見慣れてるって言うか一度見たことあるのよ。光属性魔法を使ってる人を」

リール「誰!?」

スカーレット「…分からないわ」

リール「え?」

スカーレット「顔は分からなかった。もちろん名前も。分かってるのはその人が光属性魔法を使ったことだけ。他のことは分からなかった」

リール「そうなんだ…」

スカーレット「でもその人のおかげで私は魔女を目指すようになった。あの時の私にとってその人はまさに光だったの。だから今度は私が誰かの光になろうって決めたの」

リール「いいね。その考え。ちなみにスカーレットの属性魔法は?」

スカーレット「私?私は雷よ」

リール「雷かぁ〜じゃあスカーレットはその雷で人を助けてあげてね」

スカーレット「えぇ!もちろんよ!あの人みたいになってみせるわ!」

リール「応援してるよ。スカーレット」

スカーレット「あなたもね!リールさん!」

リール「えぇ。任せて」

アンナ「あ、あのー…」

リール「?」

スカーレット「?」

 

声がした方を見るとアンナが机の角から顔を出していた。

 

スカーレット「あらアンナさん。どうしたんですか?」

アンナ「いえその…私もお二人のようになりたいな…って…」

スカーレット「なりましょう!」

アンナ「!」

スカーレット「私たち3人で力を合わせていい魔女になりましょう!」

アンナ「は、はい!」

スカーレット「リールさんも!」

リール「うん。分かったよ。任せて」

 

こうして適正魔法を知れたアンナとスカーレットはリールと3人でいい魔女を目指すよう誓ったのだった。




〜物語メモ〜


アンナの適性魔法
アンナの適性魔法は水属性魔法。
アンナの希望通りの属性魔法でアンナは喜んでいた。

スカーレットの適性魔法
スカーレットの適性魔法は雷属性魔法。
本人は光属性魔法を希望してたが、見事に外れてしまった。
一度は落ち込んだスカーレットだが、リールが光属性魔法を見せたことでリールにあの時の魔女さんと似ている部分を見つけ、雷属性魔法であの時助けてくれた魔女さんのようになろうと決めたのだった。

学院での適性検査
学院では火、水、風、雷、土、光、闇の順で検査する。
各属性魔法を使っていき、多少でも使えるなら次の属性魔法へと移る。
もし、より魔法として使えていたり、使えない魔法が出てきた場合、その属性魔法に対する属性魔法を使ってその人の属性魔法を特定する。
アンナの場合、水属性魔法を使うことが出来ていたため、水属性魔法に対する雷属性魔法を使わせた。
その結果、アンナは雷属性魔法を使えなかったため、アンナの適性魔法は水属性魔法となった。
スカーレットに関しては雷属性魔法を使うことが出来ていたため、雷属性魔法に対する土属性魔法を使わせた。
その結果、スカーレットは土属性魔法を使えなかったため、スカーレットの適性魔法は雷属性魔法となった。


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第11話 リールと箒

ここでちょっとお知らせです。

最近、リアルが忙しく、投稿頻度も落ちています。

リアルが落ち着けば戻ると思いますが、それまでは投稿頻度は少ないままになります。

頑張ったら週一くらいです。

はい。お知らせは以上です。






私の名前はリール。

エレナ学院に通っています。

昨日適性魔法を見てもらい、知ってましたが光属性魔法に適性がありました。

光属性魔法に適性がある人は少ないらしく、物珍しい目で見られました。

スカーレットは昔、光属性魔法を見たと言ってましたが、その魔法を使ったのが誰なのかが分からなかったそうです。

見つかるといいですね。

さて、今日は実技の前の講義だそうです。

先生が言うには魔法は危ないから事前学習が大事だそうです。

魔女さんに教わった私からすれば必要なのか分かりませんが、一応聞くことにします。

そういえば魔女さんは今頃何してるんだろ…

早く戻ってきて欲しいな…

もっと魔女さんと一緒にいたいな…

もっと魔法を教わりたいな…

もっと魔女さんのそばにいたいな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…教室

 

ジーヴル先生「と、言うわけで始めるぞー」

男子「えー…」

ジーヴル先生「なんだ?嫌なのか?なら実技はできないな」

男子「えー!」

ジーヴル先生「魔法を使いたいならちゃんと聞けよ?聞かないとほんとに魔法は使えないからな」

男子「ぶー」

ジーヴル先生「さ、始めるぞ。まずは魔法使い、魔女になる際に必要になるものだ。必要なものは主に2つ。杖と箒だ」

男子「きたぁ!」

男子「早くしてくれ先生!」

ジーヴル先生「分かった分かった。じゃあまず箒からだ。箒は移動手段に使われる。これに乗ることが出来ればもちろん歩かなくても移動できるから移動時間を短縮することができるぞ」

男子「おぉ!」

ジーヴル先生「種類は一種類だけだ。皆同じ箒を持つことになる」

男子「先生も同じ?」

ジーヴル先生「あぁ。先生もみんなの先輩もみんな同じ箒だ。だが、その人自身が使う魔法によって少し変わってくる。元は同じだが、魔法によって箒はどんなものにでも変えることができる」

男子「食べ物とか?」

ジーヴル先生「いや、物理的に変える訳じゃなくてだな…つまりはその箒の性質だ」

男子「性質?性格みたいなもの?」

ジーヴル先生「それで通じるならそれでいいよ。例えば雷属性魔法に適性がある人の箒は他の箒よりも速く飛行することが出来る。他にも水属性魔法に適性がある人の箒は水中でも水の抵抗を受けずに飛ぶことが出来る。本来箒は水に浸かれば機動性が大幅に下がるが、水属性魔法に適性がある人が乗ればその影響を受けなくなる。このように、持つ属性魔法によって性質が変わるのが箒の面白いところだ」

男子「先生ー!」

ジーヴル先生「ん?なんだ?」

男子「他の属性も全部教えてくれよー!」

ジーヴル先生「他の属性?性質のことか?」

男子「そうそう!」

ジーヴル先生「分かった。まずは火属性だ」

男子「いぇあ!」

ジーヴル先生「火属性魔法に適性がある人の箒は他の火から身を守ることができる。他の火と言うのは例えば火事とかだ。自分の持つ火以外の火は全て遮断される。そのため、火属性魔法に適性がある人の箒は燃やそうとしても意味が無いんだ。他の属性魔法の箒は燃えちゃうけど。他にも飛行時に火を使うことで速く飛ぶことが出来る」

男子「おぉ!」

ジーヴル先生「次は水属性魔法だ。さっき言ったから軽めに説明するぞ。水属性魔法に適性がある人の箒は水の抵抗を受けなくなる。その代わり、水の中を飛行しても空を飛行しても速度は変わらない。一定の速度でしか飛ぶことができないんだ。でも、他の箒とは違って本来水に浸かることで腐敗するものが腐敗しなくなる。長所があれば短所もある。箒とはそういうものだ」

男子「なるほどな」

ジーヴル先生「次は風属性魔法だ。風属性魔法に適性がある人の箒は風の抵抗を受けなくなる。そのため、嵐の中飛んでも全く影響を受けずに飛行ができる。おまけに風を操ることで飛行速度を上げることができる。ただ、一つ難点なのが、風属性魔法に適性がある人の箒は飛行中、全く風の影響を受けないが、それは自分の周りに風の層を作ることで無理やり風を押しのけているからなんだ。これは自分以外のものに影響する。例えば木に向かって飛行した時、その人が木に接触する前に風の層が木に接触するため、その風の層が木を跳ね除けてしまい、木は倒れてしまう。これが人間相手なら、その人は切り傷を負うことになる」

男子「ひぇー…」

ジーヴル先生「まぁ、人との距離を置いて飛行すれば何も問題は無いんだけどね」

男子「おぉ…」

ジーヴル先生「さ、次は雷属性魔法だ。雷属性魔法もさっき言ったから軽めに説明するぞ。雷属性魔法に適性がある人の箒は雷を纏うことができ、それによって飛行速度を格段に上げることができる。これはどの属性魔法よりも速く、短い距離ならすぐに目的地につけるだろう。ただし、例外はあるがな。他にも飛行中に周囲から電気を集めることで、半永久的に飛行が可能だ」

男子「おぉ!」

ジーヴル先生「ただし、雷属性魔法にも難点がある。それは、その箒自体に雷や電気が纏う形になってるから飛行後も電気を纏ってて触るとピリッと静電気が発生した時みたいな感覚が起こる。雷属性魔法に適性がある人が触れれば問題ないが、他の属性魔法に適性がある人が触れるとそうなってしまう。しかも飛行中に纏った電気の量が多いと飛行後に纏う電気の量も多くなって下手したら触った人が感電死する可能性がある」

男子「ひえぇ…」

ジーヴル先生「だから雷属性魔法に適性がある人の箒には絶縁体のものが巻かれていることが多いんだ」

男子「先生〜」

ジーヴル先生「ん?」

男子「俺の知り合いに雷属性魔法に適性がある人がいるんですが、その人の箒に黒い何かが巻かれてたんですが、それが絶縁体のものですか?」

ジーヴル先生「そう。正解。色はあとで選べるけど、その子はきっと黒を選んだんだろうね」

男子「なるほど。ありがとうございます」

ジーヴル先生「はいよ。じゃあ最後に土属性魔法だ。土属性魔法に適性がある人の箒は地中を走っている地脈を感じ取ることができる。これを感じることで目的地までの道のりを示してくれたり、不祥事にはその地脈が自分を助けてくれる。まさに大地と一心同体みたいな感じだな」

男子「他の能力ってないんですか?」

ジーヴル先生「土属性魔法は5つの属性魔法の中でもシンプルさに特化した属性魔法だからね。その効果もシンプルなものが多い。故にごちゃごちゃとした効果がある訳でもなく、箒にもそれが表れる。効果は一つだけ。地脈を感じることができる。これだけだ。ただし、その地脈をどうするのかは本人次第。シンプル故に汎用性が1番高いのが特徴だな」

男子「どんなことができるんですか?」

ジーヴル先生「んー先生の知り合いにも土属性魔法に適性がある人がいて、その人は地脈を纏うことで防御力などのステータスを上昇させてたな。地脈は土属性魔法に適性がある人にしか見えないし反応もしない。故に土属性魔法に適性がある人だけが地脈を操ることができる。その地脈をどうするかは本人次第。纏えば地脈の効果でステータスの上昇が確認される。他にも大地を操ったり下手したら地震も起こせるよ」

男子「えぇ!?地震!?」

ジーヴル先生「そう。地震。地脈を操るんだから当然だよ」

男子「土属性魔法ってすげぇな…」

男子「確かに…大地全てを味方につけてる感じだよね…」

男子「そうそう…」

ジーヴル先生「ま、その代わり、飛行速度は他の属性魔法よりも遅くなるんだけどね。大地を操るが故に飛行に関しては一歩劣る。ここが土属性魔法の面白いところだな」

男子「良かった。ここで飛行速度も他の属性と同じならほんとにチートだったかもな」

男子「確かに。地震起こせるし飛べるしで…」

ジーヴル先生「さて、これまで各属性の箒について話したけど、これは先生が今まで会ってきた人たちがそうしていたってだけで、自分の箒をどうするかは君たち次第だよ。自分に合った世界に一つだけの箒を君たちで作り上げてくれ」

男子「っしゃあ!」

ジーヴル先生「さて、次に杖についてなんだが…」

 

キーンコーンカーンコーン

ここで、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

 

ジーヴル先生「おっと…じゃあ一旦ここで終わろうかな。次は杖について話すからな」

生徒「はーい!」

ジーヴル先生「じゃあ各自休憩を取ってくれ」

 

トコトコトコ

スーッ…スーッ…

ジーヴル先生は部屋を出た。

 

アンナ「ねぇリール」

リール「ん?」

アンナ「リールって確か、光属性魔法だったよね?」

リール「え、はい。そうですよ」

アンナ「さっき先生が土属性魔法のところで最後って言ってたけど光属性魔法に適性がある人の箒ってどんなものなのかな」

リール「あぁそういうことですか。光属性魔法に適性がある人の箒って雷属性魔法に適性がある人よりも速い速度で飛ぶことができるんですよ」

アンナ「へぇ!」

リール「それに、耐久性にも優れていて中々壊れないそうですよ」

アンナ「へぇ!なんで知ってるの?」

リール「え、なんでって…そりゃあ私、自分の箒持ってるので…」

アンナ「え!?リールって自分の箒持ってるの!?」

リール「え、はい。え?みんなは持ってないんですか?」

アンナ「持ってないよ?箒もこの学年から持つことになるんだよ」

リール「へぇ…」

リール (意外。箒すら持ってないなんて…魔女さんのところで魔法を教わってた時は結構早めに箒に乗る練習してたんだけどなぁ…)

アンナ「もしかしてリールって杖も持ってたりするの?」

リール「はい。ありますよ」

 

ガサゴソ…

リールは服の下に刺してある杖を取り出した。

 

リール「はい。これです」

 

コトッ

リールは自分の杖を机に置いた。

 

アンナ「へぇ!これが杖なんだ!見てもいい?」

リール「はい。どうぞ」

 

アンナはリールの杖を手に取ってじっくり見た。

 

アンナ「綺麗な形…」

リール「これは魔女さ…私のお師匠様が私にくれた杖なんです。魔法の制御に必須なものだそうですよ」

アンナ「へぇ!」

リール「ちなみに箒も今ここにありますが見ますか?」

アンナ「見たい!」

リール「分かりました」

 

スッ…

リールは席を立ち、アンナの前に出た。

 

リール「見ててくださいね」

 

そう言ってリールは手を前に出した。

 

リール「…」

 

シュゥゥゥゥゥ…ポンッ!

リールは周囲のマナを集め、箒を出現させた。

 

アンナ「おぉ!」

リール「とまぁ、こんな感じですね」

アンナ「すごい!リールって箒も出せるんだ!」

リール「はい。普段は邪魔になったりするのでマナを使って保管してるんです」

アンナ「へぇ!私にも後で教えて!」

リール「いいですよ」

アンナ「やったぁ!」

リール「ふふっ」

スカーレット「あら、これは誰の箒なの?」

アンナ「あ、スカーレットさん」

スカーレット「スカーレットでいいわよ?」

アンナ「じゃ、じゃあ…スカーレット…」

スカーレット「…なんかむず痒いわね…」

アンナ「ま、まだ慣れてないから…」

スカーレット「そ、そうね…。ところで、何してるの?」

アンナ「あ!リールが杖を持ってるって言うから見せてもらってたの!あと箒も!」

スカーレット「杖と箒?」

アンナ「ほら!これがリールの杖だよ!」

スカーレット「触ってもいいの?」

リール「いいですよ」

スカーレット「…」

 

スカーレットは恐る恐るリールの杖を手に取った。

 

スカーレット「あ、意外…杖って触っても何も起こらないんだ…」

リール「なんで?」

スカーレット「さっき先生が雷属性魔法に適性がある人の箒は触ると危険だって言ってたでしょ?だから杖もそうなんじゃないかって思って…」

リール「大丈夫ですよ。それに私、光属性魔法に適性があるから」

スカーレット「あ、そうだったわね。…それにしても」

 

スカーレットはリールの杖を見た。

 

スカーレット「綺麗ね…杖ってこんなに形が整ってるのね」

リール「らしいよ」

スカーレット「…これはここに来る前に買ったの?」

リール「ううん。これはお師匠様が私にくれた杖なんです。なのでどこで買ったのか、そもそも売ってたものなのか分からないんです」

スカーレット「凄いね。リールのお師匠さんって…こんな綺麗な形の杖があるなんて…」

リール「?」

リール「みんな同じような杖じゃないんですか?」

スカーレット「持つ属性と人によって形は千差万別。私も本で見たことあるわ。でも…この形の杖は初めて。見たことない…」

リール「そうなんですか?」

スカーレット「えぇ…私はこの世界にある全ての杖を記した本を持ってるの。そこには杖の形と使用者の名前が刻まれていて私はいつもそれを読んでた。だから分かるわ。この杖は初めて見る形の杖だって…」

リール「ほぉ…」

アンナ「リールって凄いね…光属性魔法に適性があって初めて見る杖を持ってておまけに箒も持ってるなんて…」

スカーレット「あ、そうよ。箒も見せてもらえないかしら?」

リール「えぇ。構いませんよ」

 

スタスタスタ

スカーレットは箒をじっくり見た。

 

スカーレット「この箒もすごい…全てが均一になってる…」

リール「均一?どういう事?」

スカーレット「杖と箒って人の手で作られるの。だからその杖や箒の形状が多少ズレてたりするの。でもそれはじっくり見ないと分からないし分かるくらいにズレていたら作り直すの。でもこの箒は凄いわ…真っ直ぐに伸びてるし損傷もない…おまけに乗りやすく設計されてる…」

アンナ「スカーレット…は箒にも詳しいの?」

スカーレット「えぇ…私のお父さんが箒を作る仕事をしてるの。だからある程度分かるわ。それに、箒に関する本も持ってるし」

アンナ「す、すごい…」

スカーレット「この箒ほんとすごいわね。何一つズレていない。新品同様の箒…ねぇリール。この箒っていつから使ってるの?」

リール「えっと…お師匠様から貰った時からだから…1年と半年くらい…かな」

スカーレット「1年半使ってて全く衰えが感じられないなんて…こんなことあるのね…」

リール「どういうこと?」

スカーレット「箒って定期的に検査しないとダメなの。壊れてたりするところがあるかもしれないからね。壊れていたら直して壊れてなければそのまま使う。そうすることで安全に飛行ができるの。見たところ定期検査も受けてないみたいね?」

リール「え、うん。初めて聞いた…」

スカーレット「1年半も使ってて定期検査も受けてないのにこの綺麗さ…ほんとに凄いわねこの箒…」

リール「て、照れますね…」

スカーレット「リールのお師匠さんってどんな人?」

リール「え、うーん…実はよく分からないんです」

スカーレット「え?よく分からない?」

リール「はい」

スカーレット「ずっと一緒にいても?」

リール「はい。分かってるのはお師匠様は全属性の魔法を使うことくらいで…」

スカーレット「全属性!?」

アンナ「え!?リールのお師匠様って全属性の魔法を使えるの!?」

リール「…?」

 

リールは2人が驚いた表情を浮かべてるのを見て疑問に思った。

 

リール「え、どうしたの?」

スカーレット「どうしたのって…聞いてリール…普通は全属性の魔法を使うことってできないのよ?」

リール「え?そうなの?」

スカーレット「えぇ。使えるのは適性がある属性魔法のみ。ましてや全属性なんて…」

アンナ「私も初めて…全属性の魔法を使える人がいるなんて…」

リール (おかしいですね…魔女さんは使えるのに…)

スカーレット「リール…あなた…」

リール「?」

スカーレット「一体何者?箒が全く劣化してないしおまけに均一に作られている…全くズレもない…それにこの杖も…全てが均一に作られている…形も初めて見た…」

リール「何者って言われても…」

スカーレット「これ…お父さんが見たら驚くわ。こっちの杖も叔父さんに見せたら驚くと思う…」

アンナ「叔父さんって?」

スカーレット「あ、私のお父さんの弟さんが杖を作る仕事をしてるの。時々仕事を見に行くことがあるの」

アンナ「スカーレットも十分すごい気が…」

 

キーンコーンカーンコーン

3人で話しているとチャイムが鳴った。

 

アンナ「あ、チャイムが鳴ったね。授業が始まっちゃう」

スカーレット「あ、そ、そうね。ね、リール」

リール「はい」

スカーレット「今日授業が終わったら家に来て!お父さんに見てもらいたい!」

リール「え、ま、まぁ…いいですけど…」

スカーレット「やった…あと色々話も聞かせて!リールのお師匠さんの事も!」

リール「え、えぇ…ってあれ?ここに通ってる間って家に帰れるの?」

スカーレット「え、うん。帰れるよ?」

リール「じゃあなんでみんな寮で生活してるの?」

スカーレット「あーそれは家から通うと時間がかかるからよ。この学校って結界で守られてるから簡単には入れないの。だから一度ここを出ると次に入ってくる時少し厄介になるの。でも、大丈夫。魔法陣を使えばすぐ家に着くし簡単に学校に入ることもできるわ」

リール「そうなんだ」

ジーヴル先生「よぉしみんな席につけ〜授業始めるぞ〜」

スカーレット「こ、この事は内緒にしておいて。アンナもいい?」

アンナ「分かった」

スカーレット「それじゃあまたあとでね」

 

スタスタスタ

スカーレットは自分の席に戻った。

 

リールも自分の杖と箒を戻し、席に着いた。




〜物語メモ〜



箒は一種類しかないが、その人の持つ属性魔法や性格で箒は色々変化する。
主な変化は各属性に準じたものでその属性魔法の利点を採用している。
火属性魔法なら火に強くなり、水属性魔法なら水に強くなる。
このように箒によって様々な形に変わる。
形と言っても変わるのはその箒の性質のみ。


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第12話 リールとスカーレットの父と叔父さん

私の名前はリール。

エレナ学院に通っています。

前回は私の持つ杖と箒を友達のアンナとスカーレットに見せました。

2人ともこの箒と杖を褒めていました。

私からすると普通の物だと思ったんですが、2人から見れば違うそうです。

今日は学校が終わったら3人でスカーレットのお父さんのところに行くつもりです。

スカーレットが私の箒と杖をお父さんに見せたいそうです。

そして、スカーレットの家に行った私はある写真を目にします。

見慣れた人物の写真。

私は写真に写るその人についてスカーレットのお父さんに聞こうと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジーヴル先生「さて、次は杖についてだ。これは魔法使いや魔女になる上で1番必要になるものだ」

 

ジーヴル先生は懐から自分の杖を出した。

 

ジーヴル先生「これが先生の杖だ」

男子「おぉ!」

ジーヴル先生「今までみんなはまともに魔法を使ったことないだろう?使ったとしても手でやったと思う。でも、これからは自分の杖を持って魔法を使っていきましょう」

男子「先生。杖って貰えるんですか?」

ジーヴル先生「あーそれに関しては自分で買ったんじゃないか?2学年になる前に」

男子「あ、あの予約してたやつ?」

ジーヴル先生「あーそうそう」

男子「あれっていつ届くんですか?」

ジーヴル先生「それは分からないな。でも届き次第こちらに運ばれるそうだ」

男子「早く魔法使いてぇー」

男子「だよな!」

ジーヴル先生「あ、それに関してひとつ話があるぞ」

男子「?」

ジーヴル先生「この学校では、実技以外の魔法の使用は禁止されているからな」

男子「え!?」

女子「え!?」

男子「なんでですか!」

女子「折角魔法が使えると思ってたのに…」

ジーヴル先生「一応理由はある。みんなはこの学校に結界が展開されているのは知ってるだろ?」

男子「あーあの綺麗なやつね」

ジーヴル先生「あぁ。だが、あれは最近まで無かったものなんだ」

女子「無かったもの?」

ジーヴル先生「そうだ。この学校の学校長さんが最近結界を展開されてな。何故かは仰らなかったが解決するまで続くそうだ。それに伴って普段は魔法が使えていたが、今では禁止となった」

女子「魔法を使うと何かあるんですか?」

ジーヴル先生「分からない。だが、あの方がお決めになったことだからな。みんなも注意してくれ。この学校にいる間…いや、この結界が解除されるまでは学校内で魔法を使わないでくれ。実技の時は使っても構わないからな」

生徒「はーい」

リール (…恐らく魔女さんが言ってたこと…()()()()()()()…その人に気づかれないようにする為なんだ…)

ジーヴル先生「さて、杖について続きを話すぞ。杖っていうのはな…」

 

その後、授業はいつも通り進行した。

リールは結界を展開している理由についてずっと引っかかっていた。

そして、魔女さんとその蘇った人がどういう関係なのかを今日ずっと考えていた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

スカーレット「リール…リール!ねぇ!リール!」

リール「!」

 

私はスカーレットに名前を呼ばれていることに気づいた。

 

リール「え…なんですか…」

スカーレット「何って…もう授業は終わったわよ?」

リール「え、授業って…」

 

私は周りを見渡した。

この教室にいたのは私とスカーレットとアンナの3人だけだった。

 

リール「あれ、みんなは?」

スカーレット「みんなはとっくに帰ったわよ。どうしたのよ。何回も呼んだのに全然返事しないなんて」

リール「…」

アンナ「リール?」

リール「へ…」

アンナ「大丈夫?」

リール「え、うん」

スカーレット「じゃあこの後どうする?」

リール「え、この後って?」

スカーレット「何言ってるのよ。私の家に行くって言ってたじゃない」

リール「あ、あの話…」

スカーレット「あなた…ほんとに大丈夫?」

リール「え、はい」

アンナ「疲れたの?」

リール「え、ううん。なんでもないよ」

スカーレット「明日は休みだから今日私の家に泊まっていきなさい。お父さんには私から言っておくから」

リール「え、大丈夫なの?」

スカーレット「えぇ。大丈夫よ」

アンナ「色々と準備しないと」

スカーレット「そうね。準備が出来たら私の部屋に来て。その時に家に行きましょう」

リール「わ、分かった」

スカーレット「じゃ、なるべく早くね」

 

スタスタスタ

スカーレットはそのまま教室を出た。

 

アンナ「リール…大丈夫?」

リール「え、うん。大丈夫だよ。さ、私たちも準備しないと」

アンナ「そうだね!じゃあ行こ!」

 

そして私とアンナは部屋に戻って泊まる準備をした。

幸い明日は休みだそうでじっくり休息を取ろうと思いました。

そして、準備を終えた私とアンナはスカーレットの部屋に来ていた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…スカーレットの部屋

 

コンコン

私は部屋のドアをノックする。

 

スカーレット「いいわよ。入って」

 

そう言われたので私たちは部屋に入っていった。

 

スカーレット「良かったわ。帰る準備は出来てるわよ」

リール「結構綺麗ですね」

スカーレット「当たり前じゃない!」

 

スカーレットは褒められて嬉しかったのか、笑顔になった。

でも実際に部屋はきれかった。

 

スカーレット「さ、ここよ」

 

私たちはその部屋のさらに奥に入っていった。

 

リール「おぉ…」

アンナ「!」

 

そこには緑色の魔法陣が展開されていた。

 

スカーレット「これが転移魔法。通称テレポーテーションね」

アンナ「初めて見た…」

リール (魔女さんのと少し違う…)

スカーレット「リール?」

リール「ねぇスカーレット」

スカーレット「何?」

リール「これって何故緑色なんですか?」

スカーレット「え、何故?」

リール「はい。私も同じものを少し前に見ました。でも、それとこれは少し違って見えます。色も当然違いますしこの魔法陣に書かれている文字も…」

アンナ「?」

スカーレット「何故って言われても…これが基本よ?」

リール「え?」

スカーレット「これが本来使われる転移魔法よ。色もこれ。書かれている文字もこれよ」

リール「そうなの?」

スカーレット「そうよ」

アンナ「うん…私も教科書で見たよ。これが基本の転移魔法だって書いてあったよ」

リール (…?)

 

私はここでまたひとつ違いを見た。

魔女さんの使う魔法とみんなが使う魔法…

そしてさらに魔女さんへの疑問が増えた。

 

スカーレット「さ、そんなことより行きましょ。ここに立って」

 

私はスカーレットに言われた通りに立った。

 

スカーレット「さ、行くわよ」

 

コンコン

スカーレットは足のつま先を使ってコンコンと音を立てた。

 

シュゥゥゥゥゥ…

 

リール「!」

アンナ「!」

 

すると、私たちの周囲に緑色の小さな光が漂い、私たちに付着した。

 

リール「?」

 

するとその瞬間、場所が変わった。

さっきまでスカーレットの部屋にいたはずなのに一瞬で辺りの風景が変わった。

周囲には木造の壁。

目の前にはドアがある。

 

スカーレット「さ、ここは地下室だから上に行くわよ」

 

私とアンナはスカーレットに案内されて地下室から出た。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…スカーレット家の廊下

 

アンナ「わ…すごい…」

 

地下室から出た私たちはスカーレットの家が結構お金持ちだとこの時悟った。

 

リール「す、すごいね…スカーレット」

スカーレット「そう?」

リール「うん…廊下がこんなに広いなんて…」

スカーレット「私はこれが普通だと思ってたわよ。あなたもそうでしょ?」

リール「?」

スカーレット「魔法。私たちからすればあなたはすごいけど、あなたからすれば普通だと思ってたんじゃない?」

リール「あ、確かに」

スカーレット「それと同じよ」

リール「…なるほど」

スカーレット「さ、お父さんの部屋はこっちよ。ついてきて」

リール「うん」

スカーレット「あ、その前に…」

リール「?」

 

スカーレットは立ち止まって手を叩いた。

スッ!

 

リール「!?」

アンナ「!?」

 

すると、上から人が降ってきた。

 

???「…お呼びでしょうか」

スカーレット「私とこの2人の荷物を私の部屋に運んでもらってもいいかしら。ちょっとお父さんにお話があるの」

???「…かしこまりました」

 

スッ!スッ!

 

リール「!」

アンナ「!」

 

さらに上から2人降りてきた。

 

???「…それではお荷物を」

リール「あ、はい」

アンナ「よろしくお願いします」

???「…それではお気をつけて」

 

スッ…

するとその3人は姿を消した。

 

リール「スカーレット…さっきの人は?」

スカーレット「私の付き人。まぁボディガードみたいなものよ」

リール「女性がボディガード?」

スカーレット「あら、女性のボディガードって珍しくないわよ?」

リール「へ、へぇ…」

スカーレット「さ、行きましょう。お父さんにあなたとアンナの事を紹介したいの!」

 

スタスタスタ

そして私とアンナとスカーレットはスカーレットのお父さんがいる部屋に向かったのだった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…スカーレット父の部屋

 

コンコン

スカーレットはノックする。

 

???「はい」

スカーレット「お父さん。私よ」

???「スカーレットかい?入っていいよ」

 

ガチャ…

スカーレットはドアを開けて入った。

 

???「やぁスカーレット」

スカーレット「ただいま」

???「今日はどうしたんだい?」

スカーレット「今日は私の友達を…って叔父さん!?」

???「やぁスカーレットちゃん。久しぶりだね」

スカーレット「ちょうど良かった!叔父さんにも見てもらいたいの!」

???「見てもらいたい?」

スカーレット「リール!アンナ!入って!」

 

私たちはスカーレットに呼ばれたので部屋に入った。

 

リール「お、お邪魔します…」

アンナ「お邪魔します」

???「やぁ。君たちは?」

リール「私はリールと言います」

アンナ「わ、私はア、アンナと言います」

スカーレット「私の友達なの!」

???「そうかいそうかい。じゃあ私たちも自己紹介を」

 

ガタッ

スカーレットの父と叔父さんは立ち上がった。

 

ジン「私はジン。スカーレットの父です。この国でみなさんが使う箒を作っています」

リール「あ、よろしくお願いします」

アンナ「よろしくお願いします」

ジン「そしてこっちが私の弟の…」

マーク「マークと言います。私は杖を作っています」

スカーレット「今日はお父さんと叔父さんにある物を見てもらいたいの!」

ジン「ある物ってなんだい?」

スカーレット「リール!箒を出して!」

リール「あ、うん」

 

シュゥゥゥゥゥ…ポンッ!

リールは箒を出した。

 

ジン「箒だね」

スカーレット「そう!この箒すごいの!お父さん見て!叔父さんも!」

 

ジンとマークはリールのところに行った。

 

ジン「…見てもいいかい?」

リール「あ、はい。いいですよ」

 

ジンはリールから箒を受け取った。

 

ジン「…」

 

ジンはあらゆる方向から箒を見た。

 

ジン「…綺麗だ」

スカーレット「でしょ!すごい綺麗でしょ!」

ジン「あぁ。これはすごい。真っ直ぐに伸びている。おまけに損傷がない。魔力も通っているし魔力の漏洩も無い。これは私でも作るのが難しいね」

スカーレット「やっぱりすごいよね!」

ジン「あぁ。恐らくこの先もこんな綺麗な箒を見ることは無いだろう…えっとリールさん…でしたっけ」

リール「はい」

ジン「ここまで綺麗に作られた箒はこの箒を除いてこの世界にはひとつとして存在しない。記念に写真を撮ってもいいかな?」

リール「あ、はい。構いませんよ」

ジン「ありがとうございます」

 

するとジンは引き出しからカメラを取りだし、箒を色んな方向から撮った。

 

スカーレット「あ、そうだ!今度は叔父さん!」

マーク「え、なんだい?」

スカーレット「リール!次は杖を!」

リール「あ、分かりました」

 

スッ…

リールは杖を取り出した。

 

リール「はい」

マーク「おぉ…」

スカーレット「この杖もすごいの!叔父さんに貰ったあの本に書かれてなかった杖なの!私も初めて見た!」

マーク「…ちょっと見せてもらってもいいかい?」

リール「はい」

 

マークはリールから杖を受け取った。

 

マーク「!」

 

マークはリールの杖に触れた瞬間、何かを感じた。

 

マーク「この杖…凄まじい魔力を持っている」

スカーレット「魔力?」

マーク「そう。杖って本来は魔力を持たないんだ。持ち主の魔力を外界に放出するのが杖の役目だからね。でもこの杖は違う…触ってすぐ分かった。この杖は魔力を所持している…それもとてつもない魔力を…」

スカーレット「そうなの?」

マーク「あぁ。これはすごい。さっきの箒にも驚いたけどこの杖もすごい…ここまで綺麗に魔力を所持して尚この形を保っているなんて…」

スカーレット「え、どういう事なの?」

マーク「杖は魔力を所持できないんだ。所持するとちょっとの弾みで杖が壊れるからね。でもこの杖はここまで凄まじい魔力を持ってても壊れてない。ヒビも見られない。そしてこの均一な形…シンプルな形だがそれがこの杖が壊れない理由なのかもしれない」

リール「…?」

アンナ「…?」

マーク「あ、や、すまないね。杖を作ってるとこういう時色々言葉が出ちゃうんだ」

リール「あ、いえ、大丈夫ですよ」

マーク「リールさん。ひとつ聞きたいことがあります」

リール「はい。なんですか?」

マーク「…この杖はどこで誰が作ったものですか?」

リール「え」

マーク「私を含め、杖を作ってる人はこのような杖を見るのは初めてだと思います。実際、このような杖は存在しませんから。なので、私の知らない杖職人の方がいるのであれば、私はその人に作り方を学びたいと…そう思います」

リール「え…っと…」

ジン「私も同じだよ」

リール「!」

ジン「このような箒は全然見ない。私もこの箒を作った人を知りたい。そして、その作り方を学びたい」

リール「え…っと…その…」

ジン「?」

マーク「?」

リール「実はそれ…ある人から貰ったものなんです…」

ジン「あ、そうなんですか」

マーク「ということはその人に聞けば分かるのでは」

スカーレット「その杖と箒はリールのお師匠さんがリールに渡したそうなの」

ジン「お師匠さん?」

マーク「魔法のかい?」

スカーレット「そう。リールってすごいの!私たちは学校で勉強してるけどリールは今まで学校に行かずにエレナ学院に転入してきたの!しかも魔法の事を知っていてリールの適性魔法もすごかったの!」

マーク「適性魔法…」

ジン「差し支えなければ教えて貰えませんか?」

リール「えっと…光属性魔法…です」

ジン「!?」

マーク「!?」

 

2人は驚いていた。

 

スカーレット「ね!すごいでしょ!」

ジン「これは驚いた…」

マーク「あぁ…この世界に光属性魔法に適性がある人がまだ存在していたなんて…」

リール「え、それってどういう…」

マーク「ジン。確か君の部屋に…あ、あれだよ」

ジン「?」

 

マークはある物を指さした。

 

ジン「あ、あれね」

 

ジンはそれを取りに行った。

 

ジン「はい。リールさん」

 

リールはそれを受け取った。

 

リール「これは…写真?」

ジン「そうです。私とマークとその仲間の集合写真です」

リール「何故これを?」

ジン「その写真の真ん中からひとつ左にいる女の人…分かるかな?」

リール「はい。分かります」

ジン「その人がこの世界で最後の光属性魔法の適性を持つ人だったんだ」

リール「!」

マーク「懐かしいな」

ジン「あぁ」

リール「え…光属性魔法って存在しなかったんですか?」

ジン「あぁ。君が光属性魔法の適性を持つまではね」

リール (え…でも魔女さんは全属性って…)

マーク「その人はね、光属性魔法とは相反する人柄の持ち主でね。いつも一人でいようとしてたんだ。その集合写真も無理を言って一緒に写ってもらったんだ」

ジン「でもその人はある時にはみんなを守るように立ち回った」

リール「ある時?」

ジン「はい。今は存在してないけど、私たちが学生だった頃にこの世界に突然ドレインと呼ばれる魔物が出現した」

リール「ドレイン…」

ジン「ドレインは人の命を吸い取り我がものとする魔物でね。私たちは己が命を吸い取られないようにするために魔法を行使しました。ですが、日が経つにつれてドレインは数を増やし、我々は数を減らしていった」

リール「…」

ジン「それが何日も続き、私たちは全滅寸前まで追い込まれた。数多くの同胞を失い、数多くの人の命が奪われた。生き残ったのはその写真に写っている12人だけ。それ以外の私たちの同胞は全員亡くなった。亡骸も残さずにね」

リール「全世界の人たちが亡くなったんですか?」

ジン「他の国は分からない。でも、この国で生き残ったのはこの12人だけ。あとは壊れた建物や何かが燃えた匂いだけが残った」

リール「そう…ですか…」

マーク「…なぜ私たちの同胞が亡くなったのか。それはそのドレインの性質に問題があったからなんだ」

リール「問題?」

マーク「ドレインに有効な手段はひとつだけ。何か分かるかい?」

リール「…分かりません」

マーク「…光属性魔法なんだ」

リール「!」

マーク「真ん中のひとつ左にいるその人は光属性魔法を使うことができた。だから生き残ることができた。私たちはその人に守ってもらったから生き残った。守ってもらえなかった人たちは無惨に散っていった」

ジン「まぁ一人で国中の人間を守れというのは難しい話なんだ。それに、光属性魔法を使えたのは当時その人だけだった」

リール「!」

ジン「だからいくら国中の人を守っても誰もドレインに対して有効な手段が無いから守っても意味が無い。ただドレインの攻撃を受けるだけだといつまで経っても終わらないと考えた。そこでその人は守る人を限局して自分が前線で戦うことを決断した。その結果、そこに写っている12人を残して他の人たちを失うことになった」

マーク「…」

リール「そう…ですか…」

ジン「だから君をあの時のあの人と重ねてしまった。でもこれだけは言える。君は…あの時のあの人そっくりだ」

リール「そうなんですか?」

ジン「あぁ」

マーク「その目元や声、あとはその目の色。あの人と全く同じだ」

ジン「…君ならいい魔女さんになれると思うよ」

マーク「私もそう思います」

リール「ありがとうございます」

ジン「スカーレット。この人たちは今日ここに泊まるんだよね?」

スカーレット「え、うん。そうだよ」

ジン「リールさん」

リール「はい」

リール「あなたにもうひとつだけお話があります。マークともこの話はしています。なので次はリールさんと2人だけでお話したいのです。夕食を終え、お風呂に入ったらまたここに来てください。そのお話と当時その人が持っていた()()()をお渡しします。これから先、きっとあなたのお力になりますよ」

リール「はい。分かりました」

ジン「さ、みんな今日はスカーレットのお部屋で睡眠をとってくださいね。ベッドに関しては3人で川の字で寝られるほどに大きなベッドをご用意していますので」

スカーレット「ありがとうお父さん」

リール「ありがとうございます」

アンナ「ありがとうございます」

ジン「さ、リールさん。箒、ありがとうございました」

マーク「あ、私も杖、ありがとうございました」

リール「はい。お役に立てたなら光栄です」

ジン「さ、恐らく荷物は部屋にあるのでみなさんは自由に過ごしてくださいね」

スカーレット「分かったわ」

アンナ「はい」

 

そして3人はジンの部屋を出ようとした。

だが、リールだけ動かなかった。

 

ジン「リールさん?」

リール「あの…」

ジン「?」

リール「今晩、私からもお話があります。これは、マークさんにも聞いて欲しいお話です」

マーク「私にもかい?」

リール「はい。私をここまで育ててくれたお師匠様…いえ、魔女さんのお話です」

マーク「分かりました」

ジン「是非ともお聞かせください。ですが、今は休息をとってください。お話はその後で」

リール「はい」

 

そしてスカーレット、アンナ、リールはジンの部屋を出た。

 

ジン「…世は巡り…か」

マーク「あぁ。こんな事もあるもんだね」

ジン「久しく会った気分になったよ」

マーク「奇遇だね。俺もだよ」

ジン「…あの人は今頃、何をしているのだろうか」

マーク「…昔と変わらず、元気でいるだろうか」

ジン「この願いが叶うなら…」

マーク「…また会ってみたいものだ」

ジン (リノ…)

マーク (リノ…)




〜物語メモ〜


ジン (スカーレットの父)
ジンは箒を作る仕事をしている。
彼の作る箒は性能が良く、親しまれている。
今は一人娘にスカーレットがいて、奥さんもいる。
かつて存在した最後の光属性魔法の適正を持つ人と接点を持っている。



マーク (スカーレットの父の弟)
マークは杖を作る仕事をしている。
杖の事なら彼に聞けば大抵解決する。
一応彼にも家内や子供はいる。
そして、ジンと同じく最後の光属性魔法の適正を持つ人と接点があった。


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第13話 リールと刻運命の粉

私の名前はリール。

今スカーレットの家にお邪魔しています。

スカーレットのお父さんや叔父さんに箒と杖を見せるとお二人はすごい褒めてくれました。

そして何やらスカーレットのお父さんからお話があるそうです。

私も魔女さんの事でお話したいことがあるのでマークさんにもお話を聞いてもらおうと思っています。

そして、今日は初めてのお泊まりなので少し楽しみです!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私とスカーレットとアンナはスカーレットの部屋にいます。

スカーレットの部屋はとても広く、ベッドもとても広いです。

スカーレットのお父さんが言うには3人で川の字で寝られるほどだそうです。

お金持ちってすごいなぁ…

 

スカーレット「さ、荷物はここに置いて今は…6時ね。ということはもうそろそろ夕食ね」

アンナ「す、すごいね…リール」

リール「だ、だね…」

スカーレット「どうしたのよ2人とも」

アンナ「いや、あの…こんな広いお部屋…まだ慣れてなくて…」

スカーレット「じゃあ私の部屋で慣れるといいわ。怖かったら一緒に寝てあげるから」

アンナ「よ、よろしくお願いします…」

 

そうして話していると…

 

???「お嬢様」

リール「!?」

 

リールの真横に荷物を持っていった人が現れた。

 

スカーレット「何?」

???「お食事の用意ができたそうですよ」

スカーレット「そう。分かったわ。ありがとう」

???「…では」

 

シュッ…

その人は一瞬にして姿を消した。

 

リール「はぁ…びっくりしたぁ…」

スカーレット「仕方ないわ。私も最初は慣れなかったわ。でもやっぱ慣れてくるものね」

アンナ「さっきの人ってボディガードって言ってたけど…」

スカーレット「まぁ私の監視役ってところよ。何かあったらすぐに駆けつけてくれる頼りになる人たちよ」

アンナ (す、すごいなぁ…スカーレットは…)

スカーレット「さ、行きましょ!案内するわ!」

 

私とスカーレットとアンナはリビングに向かった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…リビング

 

スカーレット「ここでいつも食べてるの。席は3人並んで食べるわね」

リール「こ、ここも広い…」

アンナ「すごいねリール」

リール「えぇ…そうですね…」

???「さ、御三方の席はこちらに」

 

するとまたしても現れた。

相変わらず神出鬼没だなと思いました。

私たちが席に着くと色んな人がこの部屋に入ってきた。

どうやら一緒に食べるらしいです。

なので量もすごいです。

食べられるかなぁ…

 

???「それではどうぞ」

全員「頂きます」

 

みんなが目の前の料理を食べ始めた。

なので私も頂くことにしました。

 

リール「あ、美味しい…」

スカーレット「でしょ?」

アンナ「ほんと…初めて食べた」

スカーレット「ここのシェフは腕がいいからね。信用してもいいわよ」

 

食事の時間は進む。

その間、色々な話が飛び交う。

近況報告や魔法、杖や箒など…あ、あと昔話も

聞いてて面白く、私は興味が湧きました。

 

???「そういえばジン」

ジン「なんだい?」

???「君の箒はどうだい?何か新しいものはできそうか?」

ジン「そうだなぁ…今のところはまだかな」

???「そうかそうか!だがまぁ、ジンの作る箒は質がいいからなぁ…俺も愛用させてもらってるよ!」

ジン「嬉しいこと言ってくれるね」

???「あら、私もよ?あの箒全然壊れないの!作ってる人が良いからかねぇ?」

ジン「お褒めの言葉、ありがとうございます」

???「そういえはマークさん。あなたの杖もどうですか?」

マーク「そうですね。私は最近ある杖を見かけましてね。それがまたすごい杖でして」

リール「!」

リール (私の杖だ)

???「ほう。どういったものですか?」

マーク「あれは夢なので分かりませんが、唯一分かったことと言えば触っただけで他と全然違うということですね」

???「違う?それはどういうところがですか?」

マーク「私が夢で見たその杖は先の闇を照らす明るい杖。それは何者にも染まらない白い光だった。その杖を触った時、その杖には魔力が込められていた。本来持つはずの無い魔力をその杖は持っていた。私は今、その杖を作ろうと考えています」

???「神秘的な話ね」

???「でも夢なんだろ?」

???「夢があっていいですね!」

???「だから夢の話だと言ってるのに…」

???「あ、そうでしたね」

マーク「でも今の私には作るのは不可能ですね」

???「ほぉ…君でもか」

マーク「えぇ。あの杖はすごいです。私が一生かけても作れないでしょうね」

???「そんなに…」

マーク「えぇ。でもまぁ、夢ができて良かったです。これでより一層精進できますね」

???「研究熱心ですね」

マーク「いえ、それ程でも」

???「君ら2人はいつもお互いを高めあってるからな。良い兄弟だ」

ジン「ありがとうございます」

???「そういえば昔…」

スカーレット「いつもこんな感じなんだ。みんなが集まると決まって近況報告だったり昔話だったりで」

リール「いいですね。私は静かな食事よりこのように会話がある食事の方が好きですよ」

アンナ「わ、私も」

スカーレット「そう。気に障らなくて良かったわ」

 

その後、食事は続いた。

私たちはお腹がいっぱいになって大満足!

ご飯の後は少し時間を置いてからお風呂になるらしいです。

スカーレット曰く、浴場も広いんだとか…

この家は広いところが多くて迷いそうです。

でも、たくさんの人が家に入れるなら、私もそんな家に住みたいなと…そう思いました。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…浴場

 

スカーレット「さ、入りましょ」

リール「は、はい…」

 

私たちは今、浴場にいます。

そこは、私が想像してたよりも遥かに広いです。

 

リール「うわぁ…すごい…」

スカーレット「さ、髪や体はここで洗うわよ」

 

私たちは湯に浸かる前に体を綺麗にした。

ザバァン

私たちは湯に浸かった。

 

リール「っはぁ…」

 

温度はちょうど良かったです。

熱すぎず、ぬる過ぎず。

 

アンナ「あぁ…気持ちいい…」

 

アンナも気に入ったようです。

 

スカーレット「お風呂に上がったら私の部屋で映画見ましょうか。勿論3人で」

リール「あ、でも私は」

スカーレット「分かってるわよ。だから3人集まったら見るの。明日は休みだから今日はゆっくりできるわよ」

リール「うん!」

アンナ「映画?スカーレットの部屋にテレビってあったっけ?」

スカーレット「勿論あるわよ!私の部屋はもうひとつあるの!」

アンナ「ひえぇ…」

リール「つくづくあなたの家の事情が目に浮かびます…それに…その体も…」

スカーレット「?」

 

スカーレットは2人と比べてスタイルが良かった。

胸は大きく、お腹は細く、足もスラーっとしてる。

私は…

リールは自分の胸を触った。

 

リール (うっ…発育の暴力…)

 

リールはスタイルのいいスカーレットを羨ましがった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

数分後…

 

アンナ「気持ちよかったねリール」

リール「え、あ、はい」

アンナ「どうかしたの?」

リール「え、いや…なんでもないです…」

 

リールはアンナの体を見た。

アンナはスカーレットと比べてスタイルがいい訳じゃないが、リールよりかは胸があった。

 

リール「くっ…」

 

リールは自分より胸の大きな2人を妬ましい目で見た。

 

リール (いつか胸を小さくする魔法を作ってみせます…)

 

そう心の中で思ったリールだった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…ジンの部屋

 

あれから少し時間が経った。

私はジンさんの部屋に来ています。

 

ジン「じゃあ話そうかな」

リール「はい」

ジン「これは私の友人の話です。彼女は私と同い年の女性で唯一光属性魔法に適性を持っていた人物です。彼女は一人でいることが多く、私たちが言わないと一緒に行動しませんでした。これに関してはあの時お話しましたね」

リール「はい」

ジン「私たちは仲間との楽しい時間を過ごしていました。ですが、その時間が続くことはありませんでした」

リール「…」

ジン「突如として現れたドレインという生き物。あいつらによって私たちは生きる希望を失いました。彼らはより魔力を持つ者に吸い寄せられる性質を持ち、数多くの魔法使いや魔女がそいつらに食われてしまった…もちろんその人たちだけでなく、国中の人たちも全て」

リール「…」

ジン「被害の大きさを考え、私の友人はあることを決断しました。それは…」

ジン「"刻を戻して無かったことにしよう"」

ジン「と、いうことでした」

リール「と、刻を…戻す…」

ジン「はい。刻を戻し、過去を変えることはこの世界の理に反します。ですが、彼女にとってそれよりも失った人の方が大事だったのでしょう。彼女は迷いなくその力に手を伸ばしました」

リール「じゃあ…時間が…」

ジン「…はい。私たちの記憶はそのままで周りの時間だけが元に戻りました」

リール「そんな事…」

ジン「光属性魔法なら可能です」

リール「!」

ジン「光属性魔法は神からの恩寵なのです。対する闇属性魔法は悪魔からの恩寵…互いに効果を持つこの2つはそれ以降、特殊属性魔法として分類されました」

リール「でもなぜ…刻を戻せるんですか…」

ジン「…力を与えた神の中に時間を司る神がいたからです」

リール「時間を…司る…」

ジン「はい。その神の力を得ることで時間を戻したり飛ばしたりできます。あの時彼女がやった刻を戻す魔法…あれを使うことができます」

リール「使うとどうなるのですか…」

ジン「先程言いましたが、使用者以外の時間だけが変わります。私たちは何も変化しません。そして、戻した時間は二度と元には戻せません。飛ばした時間も同様です」

リール「でもなぜそのお話を…」

ジン「…あなたが光属性魔法を使う人だからです」

リール「!」

ジン「あの人と同じ光属性魔法…同じ過ちを繰り返さないために私はあなたにこのお話をしました」

リール「そうですか…え、過ち?」

ジン「…」

リール「過ち…ってなんですか…」

ジン「…時間を戻した彼女を待っていたのは…」

ジン「"生きても死んでもない時間"です」

リール「生きても死んでもない時間…不老不死という事ですか?」

ジン「いえ、 不老不死ではないです。ですが死んでいません。そして、生きてもいません」

リール「え…どういう…」

ジン「混乱するのも無理はありません。今の私たちでも分からないのですから」

リール「そ、そうですか…」

ジン「それである物をあなたに…」

 

ジンは引き出しからある物を取り出した。

 

ジン「…これです」

マーク「…」

 

コトッ

ジンは取り出したものを机に置いた。

 

リール「これは…粉?」

ジン「はい。刻運命(ときさだめ)(こな)です」

リール「刻…運命?」

ジン「…これは私の友人が時間を戻す際に使ったものです。これに魔力を込め、刻運命を発動することで時間を戻したり飛ばしたりできます」

リール「でも…何故これを私に…」

ジン「…この粉は光属性魔法にしか反応しないからです」

リール「でも…」

ジン「…彼女がこれを残す時、ある言葉も一緒に残しました」

リール「…?」

ジン「"私と同じ光属性魔法を使う人にこれを渡して。そして、私が成し得なかったことを私の代わりにやってほしい"と」

リール「成し得なかったこと…」

ジン「それに関しては分かりません。彼女はそう言葉を残してこの世から隔絶されました」

リール「…」

ジン「でもあなたならこれを正しく使い、彼女が成し得なかったことをやり遂げるはずです」

リール「…これって使い道はそれだけですか?」

ジン「…分からないのです。それを作り出し、使ったのは彼女だけ。それを知るのは彼女だけなのです。光属性魔法に適性がない私たちにはどうすることも…」

リール「…これ、手に取っても良いですか?」

ジン「あ、あぁ。どうぞ」

 

リールは刻運命の粉を手に取った。

ピッ

 

リール「!」

 

リールがそれを手に取った瞬間、頭の中にある映像が流れた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

???「こうするしかない。これ以上の被害は看過できない」

リール (被害?看過?…ここは一体…)

???「みんな聞いて」

ジン「なんだい?」

マーク「何か策でも思いついた!?」

???「…いいえ。有力な策は思いつきません」

マーク「そんな…」

???「しかし、この状況を打破できる策はあります」

マーク「お!じゃあ教えてくれ!」

???「…無かったことにしましょう」

マーク「…え?」

???「…」

ジン「どういう事?」

???「…そのままの意味。今起きてるこれを無かったことにしましょう」

???「でもそんなこと無理くね?」

???「そうだよ。もうたくさんの人が死んだ。仲間もみんな。それを無かったことにするって」

???「…できます」

???「じゃあ教えて。何するつもりなの」

???「…」

 

コトッ

???は刻運命の粉を机に置いた。

 

???「何?これ」

???「粉?」

???「…そう。これは刻運命の粉」

ジン「刻運命?」

???「そう。私が作ったもの。これを使えば時間を容易に操ることが出来る」

???「時間を!?」

マーク「まさか…それを使って時間を巻き戻すんじゃ…」

???「…そう。その通り」

???「待て!時間を戻しても起こる事象は変わらない!ただこれが起こる前まで時間を戻しても結局俺たちの仲間は死ぬことになる!」

???「…だから無かったことにするのよ」

???「何…言ってんだよ…」

???「分からない?無かったことにするのよ。これは元から起こらなかったという事にするのよ」

???「分からない。ちゃんと教えて」

???「この世界を書き換えるの。ドレインはいなかった。みんな仲良く暮らしていた。誰一人死ぬことなんてなかったって」

???「それって…どうなるの」

???「もちろんドレインは消えるよ。()()()()()()()

ジン「…含みのある言い方だね」

???「うん。そういう風に言ったから」

マーク「ドレインはどうなるんだ。この世界から消えたドレインは…」

???「さぁ、分からない。どこの世界に現れるのか。もしくは二度と現れないのか」

???「それは勝手すぎないか?」

???「…?」

???「この世界に現れたドレインを別の世界のやつに擦り付けるってことだろ?そんなの…身勝手だと思わないのか?」

???「…じゃあ聞くね。あなたは今までドレインに対して有効な攻撃ができなかった。できるのは私だけ。あなたはどうしたの?」

???「…!」

???「ドレインの始末を全て私に擦り付けてなかった?」

???「っ…」

???「あなたが先にやったのになぜ私が色々と言われないとダメなの?しかも自分のことを棚に上げて。ねぇ?なんで?」

???「…」

???「身勝手?言葉は選んだ方がいいよ。私しかドレインを倒せないの。私一人だけが。でも私一人だと限界があるの。現にここにいる12人以外の人間はみんな死んじゃった。分かる?私一人だと限界があるの。あなた私が限界なの知ってた?私は顔にも出さなかったけどしんどかったの。でもあなたはそんな私を働かせてたよね?ドレインを倒させてたよね?ねぇ?」

???「くっ…」

ジン「待って」

???「うるさい。ジンは黙ってて。他のみんなも。今私はこの人と話してるの。次会話を邪魔したら…どうなるんだろうね」

ジン「…」

???「で、どうなの。あなたは気づいてたの?」

???「…」

 

その人は何も言えなかった。

 

???「何も言えないよね。当然だよね。あなたは特に私に色々命令してたもんね。ねぇ、人って面白いの。今まで便利だったものが動かなくなると急にしおらしくなるの。腫れ物を扱うように優しくなるの。何故かわかる?」

???「…」

???「答えは簡単。動いてる時はその大事さを知らないの。失ってからいかに自分が今の状況で生きていたのかを痛感するの。自分が今の生活をできているのは私が動けていたからなの。でもこんな感じに私が急に動かなくなった。ドレインに対して唯一有効な攻撃ができる私が」

???「…」

???「そうなると焦るよね。当然だよね。あなたはドレインに対して全く効果のない攻撃しかできないからね。私がいなかったらあなたは今頃死んでるよ?ねぇ分かる?理解できる?今あなたが生きてるのは私のおかげだよ?そんな私に身勝手だろって…あなた何様なの?何も出来ないのに上から目線で言葉を発するのはやめてくれない?私の気持ちひとつであなたの生死は決まるの。分かる?」

???「…」

???「で、何か言うことないの?」

???「…すまない」

???「…随分乾いた謝罪だね。生かしてもらってる自覚を持った方がいいよ」

???「…すみませんでした」

???「分かればいいの」

???「…」

ジン「話は済んだかい?」

???「えぇ。もういいわ。それで、私の意見に賛成な人…いる?」

 

???がそう言うとみんなが手を挙げた。

 

???「そ。良かった。これでみんなが仲良く生きていけるよ」

マーク「ねぇ、待って…」

???「何?」

マーク「君は…君はどうなるの…」

???「私?…そうだね。離れたところから君たちを見ていることにしようかな」

マーク「!?」

???「待って!それってまさか…」

???「うん。まぁ、当然だよね」

???「やだ!絶対やだ!」

???「何言ってるの?君も賛成したよね?今更変えるの?」

???「だって…あなたも一緒に…」

???「いいの。私は元々ひとりが良かったし」

???「でも…」

???「もう決まったことだよ。私の意見を通して。これ以上ここの誰かがドレインに殺されるのを見ると今度こそ私は暴れると思う。ドレインだけじゃなくこの世界を破壊すると思う」

???「!!」

???「…私はこの世界の核を知っている。その核を叩けばこの世界が壊れることも知っている。でもあなたたちはそれを知らない。あなたたちの中で誰か一人でも死んだら私は核を叩きに行くの。死ぬ時はみんな一緒。生きるなら私を置いてみんなで生きて」

???「…」

ジン「…分かった。君の意見を通そう」

???「ジン!」

ジン「…彼女は色々な決断をして今この場に立っている。実際、私たちは彼女がいないと何も出来なかった。彼女のおかげで私たちが生きていけた。でも彼女は私たちと生きていく中で苦しんでいた。彼女が自分なりに楽になれるという提案をしているのなら。彼女のおかげで生きていけた私たちがその意見を受け入れてあげるのが筋じゃないかな」

マーク「…」

???「…いいよ。私もそう思うから」

???「…ありがとう。2人とも」

???「…分かった…私も…」

???「ありがとう」

マーク「なぁ…」

???「何?」

マーク「その意見…受け入れるけどその代わり、ひとつだけ頼めないかな」

???「…何を?」

マーク「…君が生きていた証を…僕たちに残してくれないかな」

???「生きていた…証…」

マーク「うん」

???「…常に一人でいた私。あなたたちとあまり関わらなかった私に何を残せと。私の生きた証を…あなたたちに残してどうするの?」

マーク「あなたへの感謝を忘れないようにしたい」

???「!」

マーク「今まで一人でいたあなたを意味のある人生にした僕たちを…そしてこれから先、あなたの意味のある行動を伝えていきたい。だからお願い。あなたのことを忘れたくないんだ」

???「…何もしてない私をあなたたちの心に残せるなら…それもまたいいですね」

 

???は首から下げた結晶を12個に分けた。

 

???「…みなさん。これを」

 

みんなはそれを受け取った。

 

???「それを持っていてください。何かあったら私が助けます。これでいいですか?マーク」

マーク「…あぁ。ありがとう」

???「あ、それともうひとつ…皆さんに伝えたいことがあります」

ジン「ん?なんだい?」

???「…もし、私の娘があなたたちを訪れたら…色々助けてあげてください。私の一人娘を…」

ジン「…あぁ。分かったよ」

???「ありがとう…ちなみに私の娘の名前は…」

 

ジジジ…

 

リール (!?)

 

突然、リールの周りに黒い煙が出てきた。

 

リール (な、なにこれ…)

 

コォォォォォォ…

その黒い煙はリールを包み込んだ。

 

リール (な、やめて!離して!)

 

シュゥゥゥゥゥ…

 

リール (やめて!離して!やめ…)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

ジン「リールさん!リールさん!リールさん!」

リール「…」

 

リールはいつの間にか眠っていた。

 

リール「あれ…私…」

ジン「良かった。急に倒れたから心配したよ」

リール「え、倒れたって…」

マーク「何があったの?」

リール「わ、分かりません…」

ジン「…じゃあ今日はこの辺で終わりましょうか」

リール「え…」

ジン「リールさんもお疲れのようですし。リールさんのお話は明日聞かせてください」

リール「あ、はい…」

 

リールは立ち上がってドアに向かった。

 

リール「それでは…」

ジン「はい。お休みなさい」

 

パタン

リールはドアを閉め、スカーレットの部屋に向かった。

 

マーク「…やっぱりあの子だったんだね」

ジン「あぁ。まさかこんなに早く見つかるなんてね」

マーク「今頃リノは喜んでるかな」

ジン「さぁ、どうだろうね」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…スカーレットの部屋

 

ガチャ…

リールはドアを開けて入った。

 

スカーレット「あ、話終わったの?」

リール「え、あ、はい。終わりましたよ」

アンナ「…どうしたの?リール」

リール「ううん。なんでもないですよ」

スカーレット「じゃあ気分を変えて映画でも見ましょうか」

リール「うん。そうだね」

 

その後、スカーレットとアンナとリールは映画を見てから一緒に寝たのだった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…???

 

ジン「ねぇリノ。やっと君の娘さんに会えたよ。あれからすごい時間が経ったね」

???「…」

マーク「君が残したあの子を君が僕たちを守ってくれたように僕たちにも守らせて」

???「…」

ジン「…それじゃあねリノ」

マーク「ずっと僕たちを見守ってて」

???「…」




〜物語メモ〜


刻運命の粉
魔力を込めて使う粉。
魔道具の中で唯一マナを使わない物で、使えば時間を戻したり飛ばしたりできる。
過去に一度だけ、最後の光属性魔法の人が使用した。


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第14話 リールと魔法の練習

私の名前はリール。

今スカーレットの家にいます。

昨日はスカーレットのお父さんに刻運命の粉というものを渡されました。

曰く光属性魔法に反応するものらしいです。

綺麗な粉なので首から下げていようと思います。

さて、今回は魔法の練習をしようとスカーレットが言ってきてくれました。

魔法を習って以来の初めての戦闘実習になるのでワクワクです。

上手くできるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー翌日ー

 

ジン「やぁリールさん。おはようございます」

リール「あ、おはようございます」

ジン「気分はどうだい?」

リール「あ、大丈夫ですよ」

ジン「そっか。それは良かった。ところで、君の話なんだが」

リール「?」

 

リールは首を傾げた。

 

ジン「あれ?忘れたんですか?リールさん私たちにお話があるって言ってませんでした?」

リール「あ、そうですあります!今日の夜でもいいですか?」

ジン「あぁ。マークにもそう言っておこう」

リール「ありがとうございます」

スカーレット「リール!」

リール「?」

スカーレット「あなたここにいたのね」

アンナ「おはようリール」

 

スカーレットとアンナが来た。

 

リール「2人ともおはようございます」

スカーレット「何話してたの?」

ジン「今晩お話することについてだよ」

スカーレット「あれ?もう話は終わったんじゃないの?」

リール「あ、私の話がまだ終わってないんです」

スカーレット「あ、なるほどね」

アンナ「大事な話?」

リール「そうですね。大事な話ですね」

ジン「さ、お話はまた後で。朝食ができてるから昨日の部屋に行ってくださいね」

スカーレット「分かったわ。お父さん」

 

スカーレットとアンナ、リールは昨日夕食を食べた部屋に向かった。

 

ジン「…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

朝食もみんなそろって食べる。

当然、量も多く、リールは食べられるか心配だった。

でも、ご飯が美味しかったのか、すぐに手が伸びた。

それを見たスカーレットも負けじと朝食を食べた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

リール「うっ…お腹いっぱい…」

スカーレット「あんなに食べるからよ。全く」

アンナ「すごい食べてたねリール」

リール「美味しいのが悪いんです」

スカーレット「どんな言い訳よ…」

アンナ「あ、そうだ。この後どうする?」

スカーレット「あ、じゃあ魔法の練習しない?」

アンナ「え、魔法って使っても良かったっけ?」

スカーレット「学校ではダメなのよ。ここなら地下室があるからそこで魔法も使えるわよ」

アンナ「地下室って私たちがここに来たあの部屋?」

スカーレット「あ、また違う部屋よ。お父さんや叔父さんも使ってた部屋なの」

アンナ「へぇー!」

スカーレット「さ、行くわよリール」

リール「う、うん…」

 

スカーレットとアンナ、リールは地下室に向かった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…地下室

 

スカーレット「さ、ここがさっき言った部屋よ」

リール「おぉ…」

 

その部屋は周囲が白い壁に覆われていて部屋の中心には何やら緑色の玉が浮いていた。

 

リール「スカーレット。これはなんですか?」

スカーレット「あーこれは魔玉(まぎょく)といってそれを使って各属性魔法の練習をするの。見てて」

 

ピッ…ピピピ…

スカーレットがそれに触れた時、その玉は光り出した。

 

ピピピ…ピピ…

設定が終わったのか、スカーレットがこっちに来た。

 

スカーレット「2人ともそこから動いちゃダメよ」

リール「?」

アンナ「?」

魔玉「それでは、魔法の練習を開始します」

リール「おぉ」

アンナ「喋った…」

魔玉「雷属性魔法が確認されました。敵を配置します」

 

シュゥゥゥゥゥ…

すると、地面から二体の敵が現れた。

現れたのは、水属性魔法と土属性魔法の人形だった。

 

リール「す、すごい…」

スカーレット「私の適性魔法は雷属性魔法だから雷属性魔法が有効な水属性魔法の敵と雷属性魔法の弱点である土属性魔法の敵を召喚したの。倒すのは水属性魔法の敵だけ。土属性魔法の敵は水属性魔法の敵を守りながら私に攻撃してくるの」

アンナ「あ、それで魔法の練習をするんだ」

スカーレット「そう。お父さんから使い方は聞いてるからいつでも使えるの」

リール「す、すごいですね…スカーレット」

スカーレット「ふふっ…でも見てて。私はもっとすごいから」

魔玉「戦闘を開始します」

 

魔玉がそう言うと魔玉自身は消え、取り残された水属性魔法と土属性魔法の敵が杖を構えた。

 

スカーレット「さ、これで戦闘開始よ」

ドール(水)「…」

ドール(土)「…」

 

相手は様子をうかがっていた。

 

スカーレット「こういう時は私から攻撃してもいいし、相手が攻撃した時はその隙をつくの」

 

両者、相手の行動を待っていた。

 

スカーレット (あっちは全然動かない…なら…)

スカーレット「はぁっ!」

 

ジジジ…バリバリバリ!

スカーレットは雷属性魔法を使用した。

 

スカーレット「落雷(ダリサダ)!」

 

ゴロゴロゴロ…ジジジ…

スカーレットは魔法で雷を発生させた。

 

ドール(土)「…地脈(オッドレイ)

 

ゴゴゴ…

それを見たドール(土)はドール(水)を守るため、地脈を使って防御を図った。

 

スカーレット「はぁっ!」

 

ドゴォォォォン!

スカーレットが発生させた雷はドール(水)に向けて放たれた。

 

バキ…バキバキ…

土の防御壁にヒビが入った。

 

アンナ「やった!ヒビが入った!」

 

シュゥゥゥゥゥ…

だが、スカーレットの落雷ではせいぜいヒビを入れるくらいがやっとだった。

 

ガコン!

ドール(土)は防御壁を解いた。

 

ドール(土)「…大岩石(ロック・オック)

 

ドール(土)は先程の防御壁の欠片を使って攻撃した。

 

スカーレット「!」

 

ドゴン!ドゴン!ドゴン!

スカーレットはそれに気づき、ドール(土)の攻撃を回避した。

 

スカーレット (流石土属性魔法ね…私の魔法が通らないのも無理はないわね)

アンナ「スカーレット!」

スカーレット「!」

 

スカーレットは考え事をしていて前方を見ていなかった。

アンナが声をかけたがスカーレットの反応が遅れたため、スカーレットは前方から飛んでくる岩石を避けられなかった。

そのままスカーレットは相手の魔法に被弾した。

 

スカーレット「くっ…」

アンナ「スカーレット…大丈夫?」

スカーレット「大丈夫よ」

ドール(土)「…大地裂(グランド・ブレス)

 

ドゴォォォォン!

 

スカーレット「!?」

 

ドール(土)が魔法を唱えた瞬間、スカーレットの足場以外全て破壊されてしまった。

 

スカーレット (な…身動きが…)

ドール(水)「…水遅縛(デリス)

 

ヒュッ…パシッパシッ!

 

スカーレット「!?」

 

スカーレットが困惑している隙にドール(水)がスカーレットを拘束した。

 

スカーレット (な…しまっ…)

ドール(土)「…赫石(レドオク)

 

ゴゴゴゴゴ…

スカーレットの頭上が赤く光った。

そして数秒後、赤い隕石がスカーレット目掛けて降ってきた。

 

スカーレット (な!?)

 

スカーレットはなんとか拘束を解こうとした。

 

リール「スカーレット!」

アンナ「スカーレット!」

 

リールとアンナがスカーレットを呼ぶ。

 

スカーレット (こんなんじゃ…リールにいいとこ見せられない!)

 

スカーレットは雷属性魔法をドール(水)が作った拘束に向けて放った。

 

スカーレット「放電(マギダラ)!」

 

ジジジ…バリバリバリ!

スカーレットが放った雷属性魔法はドール(水)が作った拘束を伝ってドール(水)の元へ向かった。

バリバリバリバリバリ!

 

ドール(水)「アァァァァァ!」

 

スカーレットが放った雷属性魔法が見事ドール(水)に当たった。

 

シュゥゥゥゥゥ…

するとドール(水)は形を崩して消えた。

 

スカーレット「はぁ…はぁ…」

ドール(土)「…」

 

すると、先程降ってきていた赤い隕石も同時に消え、ドール(土)は動かなくなった。

 

魔玉「クリアを確認。部屋を戻します」

 

シュゥゥゥゥゥ…

すると、先程壊れた床や壁が一瞬にして直った。

 

魔玉「見事クリアです。お疲れ様でした」

スカーレット「…ふぅ」

 

スカーレットはリールたちの元へ向かった。

 

スカーレット「…とまぁ…こんな感じね」

リール「スカーレット…あなた…ほんとすごいですね…」

スカーレット「と、当然よ…」

アンナ「でも…あんな魔法見たことないよ…」

スカーレット「これはお父さんたちが昔使ってた物なの。だからその当時使われた魔法があの魔玉に保存されてるの」

リール「あ、だから知らない魔法ばっかりだったんですね」

スカーレット「そ、その通り」

リール「でもちょっとレベル高すぎないですか?」

スカーレット「私たちは初めてだからね。仕方ないわ」

リール「そうですね」

スカーレット「じゃあ次はアンナ。やってみる?」

アンナ「え!?わ、私も!?」

スカーレット「そりゃあね。練習だから。これができればみんなと差をつけることができるよ」

アンナ「!」

 

アンナはその言葉に反応した。

 

アンナ「…やるよ。やってみる」

スカーレット「よしっ!じゃあ来て。やり方説明するから」

アンナ「うん!」

リール (…すごい。一瞬で目の色が変わった)

 

スカーレットはアンナに設定の仕方を教えた。

すると、魔玉が話し始めた。

 

魔玉「水属性魔法が確認されました。敵を配置します」

 

シュゥゥゥゥゥ…

すると、さっきと同じように二体の敵が現れた。

現れたのは、火属性魔法と雷属性魔法の人形だった。

 

スカーレット「アンナ!アンナが倒すのは火属性魔法の敵だけよ!雷属性魔法を避けつつ火属性魔法の敵を倒して!」

アンナ「わ、分かった!」

魔玉「戦闘を開始します」

 

すると、火属性魔法と雷属性魔法の人形が杖を構え、魔玉は消えてしまった。

 

アンナ (先手必勝!)

 

タッタッタッ!

アンナは敵の周囲を走り始めた。

人形たちもそれに伴って配置と向きを変える。

 

アンナ「はぁっ!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!

アンナは水の弾を作り出し、それを敵に向けた。

 

ドール(雷)「…雷玉(サンダラ)

 

ドンドンドン!

アンナの魔法とドール(雷)の魔法がぶつかり合う。

 

アンナ「…なら」

 

ザッ!

アンナは走るのをやめ、手のひらを人形に向けた。

 

アンナ「水波動(ウォーター・ルーン)!」

 

ドォォォォォン!

アンナは手のひらから水の波動を放った。

 

ドール(雷)「…磁力(マグネット)

 

ビリビリビリ!

ドール(雷)は強力な磁場を生み出した。

 

アンナ「!」

 

すると、アンナの放った魔法がそれに吸い寄せられた。

 

スカーレット「なるほど…ああいう雷属性魔法もあるのね。勉強になるわ」

アンナ「くっ…なら…」

 

アンナは手のひらを上に向けた。

 

アンナ「(レイン)!」

ドール(雷)「…」

 

すると、この部屋の戦闘エリアに水属性魔法が降り注いだ。

 

ドール(雷)「…?」

 

ドール(雷)は何をしているのか全く分からずにいた。

だが、すぐにそれに気づいた。

 

ポタポタ…ポタポタ…

シュゥゥゥゥゥ…

 

ドール(雷)「!!」

 

ドール(雷)がドール(火)を見た時、ドール(火)は雨の影響でダメージを負っていた。

ドール(雷)はそれに気が付かなかった。

 

ドール(雷)「…雷砲(サンダー・キャノン)

 

ドール(雷)はアンナの放った魔法を防ぐ手段が無いため、一か八かの勝負に出た。

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴ…

ドール(雷)の魔法が徐々に膨れ上がっていく。

 

アンナ (来た)

 

アンナはそれを待ってたかのように次の魔法を使った。

 

アンナ「爆ぜる雫(ドロ・ノヴァ)!」

ドール(火)「!」

ドール(雷)「!」

 

すると突然雨が止んだ。

ドール(雷)は好機だと思い、攻撃しようとした。

 

…だが

 

パァァァァァン!

後方で大きな音が鳴った。

 

ドール(雷)「!」

 

ドール(雷)はその音に気づいて振り返った。

だが、もう遅かった。

そこには深手を負ったドール(火)が倒れていた。

 

ドール(雷)「!」

 

この部屋の壁には人形と挑戦者の体力が表示されている。

ドール(火)の体力は0になっていた。

ドール(雷)はそのまま動かなくなった。

 

魔玉「クリアを確認。部屋を戻します」

 

シュゥゥゥゥゥ…

すると先程と同じように部屋が戻った。

 

魔玉「見事クリアです。お疲れ様でした」

アンナ「ひえぇぇ…か、勝ったぁ…」

スカーレット「やったじゃないアンナ。いい試合を見せてもらったわ」

アンナ「い、いやぁ…それ程でも…」

リール「凄いですよアンナ!」

アンナ「リール…」

スカーレット「さ、最後はリールね」

リール「分かりました!」

アンナ「頑張ってねリール!」

リール「はい!」

 

最後はリールの番。

スカーレットはリールにやり方を説明した。

そして、設定が終わった。

 

魔玉「光属性魔法を確認。敵を配置します」

 

シュッ!

出てきたのはドール(闇)だった。

 

リール「!」

スカーレット「!」

アンナ「!」

 

三人は驚いた。

配置された敵はたった一体。

他の2人は二体配置されたのにリールの時だけ一体だった。

 

魔玉「戦闘を開始します」

 

そして戦闘は開始された。

 

スカーレット「リール!とにかくそいつをやっつけて!」

リール「わ、分かりました」

 

リールとドール(闇)は杖を構えた。

 

ドール(闇)「…暗闇(ダーク)

 

すると、辺りが真っ暗になった。

 

リール (な…何も見えない…)

スカーレット「リール!負けないで!」

リール (声は聞こえる…でも…姿が…)

 

ドゴォン!

 

リール「!?」

 

リールは突然来た攻撃に対処できなかった。

 

リール (な、何…今の…)

 

シュゥゥゥゥゥ…ドゴォン!

 

リール 「ぐっ…」

 

リールはまた被弾した。

 

リール (相手の位置が把握できない…しかも向こうはこっちが見えてる…どうすれば…)

 

ドゴォンドゴォン!

 

リール「がっ…」

 

リールは次々に被弾する。

普通の魔法なら問題ないが、光属性魔法に唯一有効な闇属性魔法を受けているため、ダメージも相当なもの。

リールの体力はどんどん削られていく。

 

リール (こ、このままじゃ…)

 

ドゴォン!

 

リール「がっ…」

 

リールの体力が半分を切った。

 

リール (このままじゃ…)

 

リールは咄嗟に杖を向け、魔法を使った。

 

リール「閃光(フラッシュ)!」

 

シュゥゥゥゥゥ!

すると一瞬にして真っ暗な状態が解除された。

それと同時にドール(闇)は突然の光に目を眩ませた。

 

リール「今度は私の番です!」

 

リールは再度杖を構えた。

 

魔女さん (光属性魔法の最大の利点はその速さ。魔法を放てばすぐに効果が出ますよ)

リール (光属性魔法の最大の利点は…速さ…誰にも目視できないなら魔法も使えないはず!)

リール「光速(オーバースピード)!」

 

すると、黄色い光がリールを包み込んだ。

 

リール (これなら!)

 

ビュン!ビュン!ビュン!

リールは戦闘エリアを物凄い速さで駆け巡る。

 

スカーレット「す、すごい…」

アンナ「全然見えない…」

リール「はぁっ!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!

リールはアンナがさっきやってたように走りながら魔法を放った。

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

ドール(闇)は先程のリールの魔法の影響で動けないでいた。

そのため、リールの魔法を全て受けてしまった。

 

ドール(闇)「…」

 

ドール(闇)はその攻撃で目が覚めた。

 

リール「はぁっ!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!

リールはさっきと同じ魔法を使った。

 

ドール(闇)「…闇渦(ブラックホール)

 

ドール(闇)が魔法を使った。

すると、戦闘エリアの中心に渦ができた。

 

スカーレット「なにあの魔法…」

アンナ「初めて見た…」

リール「…」

 

リールはその魔法を見て更に攻撃を重ねた。

 

リール「はぁっ!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!

ギュォォォォォォ!

 

リール「!」

 

だが、その魔法はドール(闇)に当たらず吸い寄せられた。

 

リール (…なら)

 

リールはドール(闇)の背後に周り、杖を構えた。

 

リール 「光玉(ライダラ)!」

 

キィン…ドゴォォォォン!

リールの魔法はドール(闇)に直撃した。

 

リール「…ふぅ」

アンナ「やったよリール!」

スカーレット「すごいわねほんと…」

リール (良かった…なんとか勝て…)

 

ドゴォォォォン!

リールが一息ついた途端、リールは闇属性魔法に被弾した。

 

リール「ぐっ…」

スカーレット「リール!」

アンナ「リール!」

 

リールは起き上がり、壁に表示されている体力を見た。

 

リール「!」

 

ドール(闇)の体力はまだ尽きていなかった。

リールは体勢を立て直そうと立ち上がった。

だが、そこにはドール(闇)はいなかった。

 

ドール(闇)「…久しぶりに見た。光属性魔法」

リール「!」

 

キィン…ドゴォォォォン!

ドール(闇)はリールの背後至近距離から闇属性魔法を放った。

その威力はとても強く、半分近くあったリールの体力は0になった。

 

リール「がっ…」

 

ドサッ…

リールは体力が0になり、その場に倒れた。

 

スカーレット「リール!」

アンナ「リール!」

 

2人はリールの所に駆け寄った。

 

スカーレット「リール!しっかりして!リール!」

リール「…あれ、スカーレット…」

スカーレット「よかった…意識はあるみたいね」

リール「あれ…私…負けたんですか…」

スカーレット「…そうね。負けちゃったわね」

リール「…そうですか」

 

リールはこの時ある事を考えていた。

 

ドール(闇) (…久しぶりに見た。光属性魔法)

 

リールはその言葉が少し引っかかっていた。

 

リール (久しぶりに見た…あれは一体…)

アンナ「リール!大丈夫!?」

リール「だ、大丈夫ですよ…」

アンナ「よかった…ほんとに…」

 

シュゥゥゥゥゥ…

ドール(闇)が消えていった。

 

魔玉「クリアの確認ができませんでした。部屋を戻します」

 

シュゥゥゥゥゥ…

すると、部屋は元に戻った。

 

魔玉「クリアの確認がありませんでした。もう一度挑戦しますか?」

スカーレット「どうする?リール」

リール「えっと…今回は負けでいいです…」

スカーレット「分かったわ。再戦はなし」

魔玉「再挑戦の拒否を確認。お疲れ様でした。これにて設定した3グループ全てが終了しました。魔力瓶で魔力の補給を忘れずにお願いします」

 

ガシャン!

すると、魔力瓶×3がスカーレットとリール、アンナに与えられた。

 

アンナ「これは?」

スカーレット「これは魔力瓶って言って消費した魔力を回復させるものよ。設定したグループ全てが終わると魔玉がこれを渡してくれるの。体力の回復もできるから絶対飲んでおいてね」

アンナ「わ、分かった」

スカーレット「ほらリールも。飲める?」

リール「はい…飲めます…」

 

ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…

リールたちは魔力瓶を飲んだ。

すると、リールたちの魔力と体力が一瞬で回復した。

 

リール「わ、すごい…あんなに傷があったのに…」

スカーレット「ね、すごいでしょ」

アンナ「あ、ほんとだ…無くなった魔力も元に戻ってる…」

スカーレット「ここはいつでも使えるから気になったら使ってみて。やり方は教えた通りだから」

リール「ありがとうスカーレット」

スカーレット「べ、別にお礼なんていいわよ」

アンナ「ありがとう。スカーレット」

スカーレット「だからお礼なんて…」

 

その後リールたちはその地下室を出た。

リールはずっとあの言葉に引っかかっていた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

???「…ほんと、久しぶりね」




〜物語メモ〜


魔法
この世界の魔法は様々。
これといって決まった魔法は無いため、自分で魔法を作って名付けることも出来る。
今回、魔玉が配置したドールたちの魔法はかつてドレインから生き残った12人の魔法使いや魔女たちが使用していた魔法の一部。



ここからは今話で出てきた魔法を紹介します。(長いです)


雷属性魔法:落雷(ダリサダ)
スカーレットが使った魔法。
頭上に雷雲を発生させ、雷を落とす魔法。
これは教科書にも書いてある程度の魔法だが、この魔法の発生を阻止するには発動者に攻撃する他はない。



土属性魔法:地脈(オッドレイ)
ドール(土)が使った魔法。
土属性魔法に適正がある人は戦闘開始時に必ず使う魔法。
この魔法を使うことで地脈を操ることができ、地震などを起こすことができる。



土属性魔法:大岩石(ロック・オック)
ドール(土)が使った魔法。
周囲の岩石もしくは魔法で作り出した岩石を操り、相手に飛ばす魔法。
これは使った魔力に応じて飛ばす岩石の数が増える。
威力の増減は無い。



土属性魔法:大地裂(グランド・ブレス)
ドール(土)が使った魔法。
周囲の地面を割り、足場を減らす魔法。
これは唯一大地を味方につけることができる土属性魔法に適正がある人にしか使えない。
ただし、空を飛ぶ相手には効果がない。



水属性魔法:水遅縛(デリス)
ドール(水)が使った魔法。
相手を拘束する魔法。
ただし、自分と相手を固定するため、自分の足元も水で繋がっている。
今回スカーレットが勝ったのはスカーレットが放電する事でドール(水)の足元まで雷属性魔法が届いたから。



土属性魔法:赫石(レドオク)
ドール(土)が使った魔法。
頭上から岩石を落とす魔法。
その岩石は赫く光り、風属性魔法以外を受け付けなくなる。



雷属性魔法:放電(マギダラ)
スカーレットが使った魔法。
自分の体から雷を発生させ、周囲に雷を放散させる魔法。
範囲は普通くらいだが、今回は水を伝ったため、有効打となった。



雷属性魔法:雷玉(サンダラ)
ドール(雷)が使った魔法。
雷の玉を作り出し、それを相手にぶつける魔法。
玉全てが雷属性魔法で覆われているため、相殺するにはそれ以上の威力で押し切らなければならない。



水属性魔法:水波動(ウォーター・ルーン)
アンナが使った魔法。
手のひらから相手に向かって放水する魔法。
一直線に飛ぶため避けるのは容易。
当たればダメージとともに、後方へ押し出される。



雷属性魔法:磁力(マグネット)
ドール(雷)が使った魔法。
使用すれば対象を引き寄せることができる。
この力はとても強いため、ほとんどのものはこれに吸い寄せられる。



水属性魔法:雨(レイン)
アンナが使った魔法。
周囲に雨を降らせる魔法。
ただし、普通の雨とは違って降ってくるものは全て水属性魔法。
なので、火属性魔法に適正がある人は雨を受けるとダメージを負うことになる。



雷属性魔法:雷砲(サンダー・キャノン)
ドール(雷)が使った魔法。
雷を溜めて相手に放つレーザー型の魔法。
放てば凄まじい威力となるが、今回はアンナの爆ぜる雫(ドロ・ノヴァ)で放つ前に負けとなった。



水属性魔法:爆ぜる雫(ドロ・ノヴァ)
アンナが使った魔法。
水を集めて破裂させる魔法。
本来は水を集めるところから始まるが、今回は先に雨(レイン)を発動していたため、その過程を飛ばして使用できた。



闇属性魔法:暗闇(ダーク)
ドール(闇)が使った魔法。
使えば周囲を真っ暗な状態にすることができる。
もちろん使用者は相手の場所が分かる。



光属性魔法:閃光(フラッシュ)
リールが使った魔法。
使えば相手の目を眩ませることができる。
一定時間動きを止める魔法だが、闇属性魔法に適正がある人に対しては効果が絶大。
これは魔女さんと魔法の練習をしている時に魔女さんから教わったもの。



光属性魔法:光速(オーバースピード)
リールが使った魔法。
使えば自分のスピードを格段に上昇させることができる。



闇属性魔法:闇渦(ブラックホール)
ドール(闇)が使った魔法。
使えば自分を中心に大きな渦が展開される。
展開されてる間、あらゆる魔法は使用者に届く前にブラックホールによって吸い取られる。



光属性魔法:光玉(ライダラ)
リールが使った魔法。
光を玉として放つ魔法。
これも魔女さんから教わった魔法のひとつ。


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第15話 リールと小さな紙

私の名前はリール。

今スカーレットの家にいます。

先程魔法の練習として実戦をしてみましたが、見事に負けました。

アンナもスカーレットも凄く、魔法も初めて見るものばかりでした。

今回は私だけ負けましたが、次は絶対勝とうと思います。

…それとひとつ気になったことがあります。

あの時の言葉。

「久しぶりに見た。光属性魔法」

あの言葉は一体どういう意味なんでしょうか。

今はその事で頭がいっぱいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法の練習をしたリールたちはその後、3人で一緒に過ごした。

スカーレットの家には書物がたくさんある部屋が存在する。

そこには基本属性魔法や特殊属性魔法、氷属性魔法や無属性魔法について色々書かれてあった。

3人はその部屋で書物を漁っていた。

 

スカーレット「ここは色々な本が保管されてる部屋よ」

リール「おぉ…」

アンナ「すごいね…」

スカーレット「お父さんや叔父さんが集めたものもあれば私のお母さんや叔母さんが集めたものも保管されてるの。ここには全属性の魔法についての本があるから自分の属性魔法の本を見てみるのもいいわよ」

リール「どこにあるんですか?」

スカーレット「こっちよ」

 

スカーレットはリールとアンナを目的の書物の場所へ案内した。

 

スカーレット「ここね。火属性…水属性…これはアンナのね」

アンナ「あ、ありがとう」

スカーレット「氷属性…風属性…雷属性…これは私ね。あとは土属性…光属性…あ、これがリールのね」

リール「あ、ありがとうございます」

 

3人は自分の属性魔法の本を読み始めた。

 

アンナ「わ、すごい…私の知らないことがたくさん載ってる…」

スカーレット「私が地下室で使った魔法はここに載ってる魔法なの」

リール「あ、そうだったんですね」

スカーレット「えぇ。杖を持った時にちゃんと使えるように勉強してたの」

リール「なるほど。それはいい考えですね」

スカーレット「そういえばアンナも魔法を使ってたけど、アンナもこのような本を読んだことが?」

アンナ「あ、いえ…その…」

スカーレット「?」

リール「?」

アンナ「あれは…小さい頃から私が…その…」

スカーレット「小さい頃から?」

アンナ「…ちょっと…こんな魔法を使ってみたいなって思って…その…考えてたものなんです…」

リール「アンナが小さい頃から温めてたものだったんですね」

アンナ「えっと…うん…」

スカーレット「なるほどそうだったのね」

アンナ「は、恥ずかしい…」

リール「恥ずかしがることないですよ。この世界には決まった魔法がないと私のお師匠様も言っていたので。お師匠様も自分で考えた魔法を使ってましたし」

アンナ「え!そうなの?」

リール「はい。使ってましたよ。なので恥ずかしがることないですよ」

アンナ「そ、そっか…リールのお師匠様も…なんだか嬉しいな…」

スカーレット「そういえばリール」

リール「なんですか?」

スカーレット「リールのお師匠様って全属性の魔法を使ってたって言ってたよね」

リール「あ、はい」

スカーレット「実際どうだった?強かったの?」

リール「えっと…戦ったことないので…」

スカーレット「あ、そっか…」

リール「あ、でもエレナ学院の学院長さんは魔女さんの事知ってるようでしたよ」

スカーレット「え!そうなの?」

リール「はい。魔女さんって言ってましたよ」

スカーレット「…え?」

リール「え?」

スカーレット「えっと…名前は?」

リール「あ、そういえば…」

 

エレナ学院長であるレヴィも魔女さんのことは「魔女さん」と呼んでいた。

1番関わりがありそうなあの人でさえ魔女さんの名前は告げなかった。

リールはそのことに対して疑問があった。

何故魔女さんの名前を言わなかったのか。

リールの疑問がまたひとつ増えた。

 

スカーレット「…リール?リール?」

リール「へ?」

スカーレット「どうしたのよ」

リール「あ、えーっと…考え事してました」

スカーレット「あ、そうなのね」

リール「はい」

アンナ「ねぇスカーレット」

スカーレット「何?」

アンナ「この本に書かれている魔法って誰が使っていた魔法なの?」

スカーレット「あーえっと…お父さんと叔父さんを含めた12人の魔法使いのうちの一人よ」

アンナ「えっと…誰?」

スカーレット「名前はお父さんに聞かないと分からないわ」

アンナ「そっか…」

リール「!」

 

光属性魔法の本を呼んでいたリールはあるものを目にした。

それは、あるページに挟まれてあった小さな紙だった。

 

リール「ねぇスカーレット。この小さい紙はなんですか?」

スカーレット「え?紙?」

 

スカーレットはリールが見せてきた紙を見た。

 

スカーレット「あ、この紙ね。実は私も分からないの」

リール「え、分からないんですか?」

スカーレット「えぇ。一応お父さんたちにも聞いたんだけど誰も分からなかったの」

リール「そうですか…」

 

その紙にはある文字が書かれてあった。

その文字は現代の文字ではなく、どこか不思議な形の文字だった。

当然スカーレットやリールたちが読める訳でもなかった。

 

リール (魔女さんなら…何か分かったのかな…)

 

リールがそう思っていると、その小さな紙に書かれた文字が形を変えていった。

 

リール (!)

 

リールはその一部始終をずっと見ていた。

文字はどんどん形を変えていき、やがてリールでも読める文字になった。

 

私はリノ。

あなたと同じ光属性魔法に適性を持つ人です。

この文字が読めるあなたにだけある事を伝えます。

 

リール (リノ?ある事?なんの話でしょうか…)

 

現在この世界にはドレインという他者を取り込み強くなる魔物が存在します。

今は表に出てきていませんが、ある場所に私が保管しています。

そこは、辺り一面暗い "深淵" と呼ばれる場所です。

あなたが光属性魔法に適性があるのならその場所に出向き、ドレインを全て浄化してください。

 

リール(浄化?深淵?ドレイン?)

 

それはかつて私が成し得なかったこと。

光属性魔法は唯一ドレインに対抗できる魔法です。

私はその力を使ってドレインを退けましたが、私一人ではどうにもなりませんでした。

そこで私はある事を考えました。

それは、私自身を使ってドレインを封印することです。

ですが、先程記述したように私一人では限界があります。

なので、これを読んでるあなたにお願いがあります。

私一人ではドレインの進行は止められません。

あなたがドレインを浄化して下さい。

光属性魔法に適性があるあなただけが頼りです。

お願いします。

 

ここで文字は変化を止めた。

この間、紙に書かれた文字は絶えず変化していた。

少ない文字でここまでの文字を残すようにしたのだ。

 

リール (ど、どういう事でしょうか…)

 

リールはずっと紙を見ていた。

 

スカーレット「リール?」

アンナ「リール?」

リール「え、何ですか?」

スカーレット「どうしたのよ。そんなに固まっちゃって」

リール「え、あ、これです」

 

リールはスカーレットとアンナに小さな紙を見せた。

 

スカーレット「あーさっきのやつね」

アンナ「何?これ」

スカーレット「なんかの文字なんだろうけど分からないの」

リール「?」

 

リールはここで疑問に思った。

さっきリールはこの文字を読めていた。

最初は読めなかったが、形を変えることでその内容を知ることが出来た。

リールでも読める文字なのにスカーレットたちには読めなかった。

 

リール「え、この文字読めないんですか?」

アンナ「えーっと…うん。分からないね」

リール「!」

 

リールがその紙に視線を落とすと、紙に書かれた文字は最初に見た不思議な形の文字に戻っていた。

 

リール「あれ…戻ってる…」

アンナ「…?」

スカーレット「なんて書かれてあったの?」

リール「えっと…なんだっけ…」

アンナ「忘れたの?」

リール「え、あ、はい…」

スカーレット「そう。ならいいわ」

 

ほんとはリールは覚えていた。

だが、2人に話す前にジンやマークに話そうと思ったため、知らないふりをした。

 

リール「ねぇスカーレット」

スカーレット「何?」

リール「この紙…ちょっと貰ってもいい?」

スカーレット「えぇいいわよ。どうせ読めないし」

リール「ありがとう」

 

リールはその紙をそっとポケットに入れた。

 

スカーレット「さ、そろそろ出ましょうか」

アンナ「そうだね」

スカーレット「リール!リール!」

リール「え、あ、はい」

スカーレット「本貸して」

リール「あ、はい」

 

リールは光属性魔法の本をスカーレットに渡した。

 

アンナ「どうしたの?リール。ずっと上の空だよ?」

リール「えっと…ちょっと色々と知りたいことがありまして…その事を考えてました」

アンナ「そうなんだ。リールは勉強熱心だね」

リール「あはは…そうですね…」

スカーレット「さ、出るわよ2人とも」

アンナ「はーい」

リール「あ、はい」

 

3人はその部屋から出た。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

数時間後…

 

あれから数時間が経って夜となった。

今日はジンさんとマークさんに魔女さんについてお話します。

なので私はジンさんの部屋に来ています。

 

ジン「それで、話とは何でしょうか」

リール「…私のお師匠様…えっと…ある魔女さんの事でお話があるんです」

ジン「ある魔女の話…」

リール「はい。私はここに来る前にある魔女さんのところに住んでいました。ここから少し離れた場所に家があり、私はその魔女さんのおかげで生きることができました」

ジン「ほう。それは良かったですね」

リール「はい。そこで、ジンさんとマークさんは私の魔女さんについてなにかご存知ないですか?」

ジン「え?その魔女さんについて?」

リール「はい」

マーク「えーっとリールさん」

リール「はい」

マーク「もうちょっと情報ないかな?流石に情報量が少なすぎますね」

リール「あ、えっと…魔女さんは全属性の魔法を使うことができます」

ジン「え!?」

マーク「全属性!?」

リール「…はい」

ジン「マーク。君は今まで全属性の魔法を使うことができる人を見た?」

マーク「え、いや…1人も…」

リール「え…そうなんですか?」

ジン「え、えぇ。本来全属性の魔法を使うことってできないんですよ」

リール「え、でも魔女さんが…」

マーク「その魔女さんは今どこに?」

リール「それが…用事ができたらしくてどこかに行ってます。その間、私はエレナ学院に通うことになりました」

マーク「そうですか…」

ジン「残念ですね」

リール「はい…できれば一緒にいたかったのですが…」

マーク「あ、そういえばリールさんが持ってる杖や箒は確か…その魔女さんから貰ったものですよね?」

リール「あ、はい。そうです」

マーク「全属性の魔法を使えてあの綺麗な杖と箒を所持している人…」

ジン「そんな人は見た事がないので探すとなれば難しいですね」

マーク「でも逆に言えばこの特徴を持つ人はその人だけだから逆に見つけやすいかも」

ジン「…確かに」

マーク「リールさん」

リール「はい」

マーク「君の家に行くことはできますか?」

リール「あーえっと…できるかどうかはメリーさんに聞いてください」

ジン「メリーさんってあの魔法店の?」

リール「あ、そうです」

マーク「分かりました。聞いてみようジン」

ジン「そうだね。聞いてみようか」

マーク「あぁ」

ジン「それでリールさん」

リール「あ、はい」

ジン「他にお話はありますか?」

リール「あ、じゃあ1つ。いや、2つ…3つ…」

ジン「あはは…話せる分だけでいいですよ」

リール「あ、じゃあ…ジンさんとマークさんってドレインと呼ばれる魔物から生き残ったんですよね?」

ジン「はい。そうですね」

マーク「他にも仲間はいたけどね」

リール「そうそれです」

ジン「?」

マーク「?」

リール「他の人について教えてください。…特にリノという人に」

ジン「!」

マーク「!」

リール「…」

ジン「…どうして…その名前を…」

リール「…これです」

 

リールはポケットに入れた小さな紙を取り出した。

 

マーク「これは?」

ジン「これは…スカーレットが私に見せに来た…」

リール「そうです。その紙です」

ジン「でもどうしてこの紙を」

リール「これは今日のお昼にスカーレットたちと一緒に本が沢山ある部屋に行った時に見つけました」

ジン「あーあの部屋ですね」

リール「はい。光属性魔法の本の中にそれが挟まってました」

ジン「…」

マーク「ジン。なんだいこれは」

ジン「…実は私にも分からないんだ」

マーク「え?」

ジン「この文字はこの世界にある文字じゃない。だから読めないんだ」

マーク「な、なるほど…」

リール「私はリノ。あなたと同じ光属性魔法に適性がある人です」

ジン「!」

マーク「!」

 

リールはその紙に書かれていた文を読んだ。

 

ジン「リールさん…これ…読めるんですか?」

リール「…はい」

ジン「なんと…」

リール「そこに書いてあるリノとは誰のことですか?教えてください」

マーク「…ジン」

ジン「…分かりました。この紙は返しておきますね」

リール「はい」

ジン「…リールさん。あなたにだけお見せします」

リール「見せる?」

 

シュゥゥゥゥゥ…

すると突然リールは白い光に包まれた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…???

 

リール「!!」

 

リールはある場所にいた。

そこは光がなく、薄暗い場所だった。

 

ジン「リールさん。こっちです」

 

リールはジンとマークにある場所に連れていかれた。

やがてある場所に着いた。

そこはある一室になっていて中には何も無いように見えたが、しっかりみると部屋の中心に何かあった。

 

リール「!!」

 

リールはそれを見た時、驚いた。

 

リール「ジンさん…これって…」

???「…」

ジン「…これが、君が言っていたリノという人物だよ」

リール「!!」

 

リールの目の前にいたその人は鎖に繋がれていた。

力なくぐったりしているその人は女性で、どこかリールに似ている部分があった。

 

マーク「彼女はドレインから私たちを守るために動いてくれた。だが、その途中でドレインに取り込まれてしまい、本来の彼女がこの世から消えてしまった」

リール「え…消えたって…」

マーク「ここにある彼女は彼女ではない。正確に言えば彼女を取り込んだドレインだ。彼女を取り込んだドレインは彼女の力を使い、私たちを襲った。だから私たちは二度と暴れないよう鎖で繋ぐことにした」

リール (え…でも…リノって人は今…)

ジン「…彼女が生きていたら私たちは離別することはなかったんだろうな…」

リール「ど、どういう事ですか…」

ジン「彼女を取り込んだドレインを倒すのは容易ではなかった。私たちではドレインに有効な攻撃ができなかったからです。途方に暮れていた私たちを救ったのは、名も告げなかったある魔女…」

リール「!」

ジン「彼女がいなかったら私たちは死んでいただろうね」

リール「その魔女って…」

マーク「その魔女さんとリノを取り込んだドレインが戦った。両者凄まじい力を発揮し、互いを傷つけた。だが、それに留まることはなく、被害は国全体に広がった。一日…いや、一夜にしてこの国は全焼した」

リール「!」

ジン「あれから数年。私たちは力を使ってこの国を建て直した。その際、この国に残ったのは私とマークの2人だけ。残りの9人はどこかへ行ってしまった」

リール「なぜ…離れたんですか…」

ジン「…リノという抑止力を失くした私たちはドレインに対して恐怖を覚えました。他の人たちはその恐怖からこの国を出たのでしょう」

マーク「私たちは残されたリノの身体を保管するためにこの国に残りました」

リール「そう…ですか…」

ジン「さ、この続きは私の部屋でしましょう」

 

3人はその部屋をあとにした。

 

???「…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…ジンの部屋

 

ジン「あれから数年、私たちは1度も仲間にあったことがありません」

マーク「今どこで何をしているのか、生きているのか…それとも死んでいるのか…それすらも分からない」

ジン「またいつか会いたい。あの悲劇を生き残った仲間を今一度、この目で見たいな」

マーク「…あぁ。だな」

リール「…」

ジン「さ、暗い話は終わりにしようか。リールさん。他になにかお話はありますか?」

リール「あ、いえ、大丈夫です」

ジン「そうですか。分かりました。なにか聞きたいことがあったらいつでも聞きに来てくださいね。待ってますから」

リール「はい」

 

そしてリールはその部屋を出た。

 

マーク「…リノ…か」

ジン「どうしたんだい?マーク」

マーク「いや、なんでもないよ」

ジン「…そうかい」

 

その後リールはスカーレットたちのところに行き、2日目の休みを終えたのだった。




〜物語メモ〜


リノ
かつてドレインと戦った女性。
光属性魔法に適正を持ち、ドレインから仲間を救った人物。
だが、彼女はドレインに取り込まれ、その生涯を終えた。


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第16話 リールと無属性魔法

私の名前はリール。

昨日までスカーレットの家にいて今は学校にある自室にいます。

スカーレットの家に行くことで、私は様々なことを知れたと思います。

光属性魔法に関すること、ドレインのこと…そして、リノという人の存在。

私はスカーレットに頼んである小さな紙を貰いました。

その紙は最初全く読めなかったけど見ていると文字が変化して私でも読めるようになりました。

でもスカーレットやアンナは読めませんでした。

…もしかすると、私だけしか読めないのでしょうか。

少し気になりました。

さて、今日は先生が無属性魔法について教えてくれるそうです。

無属性魔法は魔女さんにも教わらなかったのでちょっと楽しみです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…教室

 

ジーヴル先生「さて、今日は無属性魔法について話をするぞ〜」

生徒「はーい」

ジーヴル先生「無属性魔法は読んで字のごとく何ものにも属さない魔法の事だ。分かりやすくいえば回復魔法。これは基本属性魔法や特殊属性魔法には属さない魔法だ。他にも移動魔法や強化魔法も無属性魔法に含まれるぞ」

男子「先生〜」

ジーヴル先生「ん?なんだ?」

男子「それってみんな使えるんですよね?」

ジーヴル先生「ん?まぁ、習えば使えると思うぞ」

男子「やったぜ」

ジーヴル先生「まぁ今回は回復魔法だけ覚えてもらう。他の魔法はまた今度だ」

男子「えー…」

ジーヴル先生「おーいそこ。文句言うなよ〜」

男子「ぶー…」

ジーヴル先生「と言っても回復魔法は体力の回復、あとは魔力の回復の2つがある。その中でも持続的に回復するものと一気に回復させる魔法がある。何使うかはみんな次第だけど、これを覚えておくといざとなった時に便利だぞ」

アンナ「リールは無属性魔法って使えるの?」

リール「いえ、無属性魔法だけは教わらなかったので」

アンナ「あ、そうなんだ」

リール「なので少し楽しみです」

アンナ「だね!」

ジーヴル先生「まずは体力の持続回復だ。これは回復力はそこまで無いが、半永久的に体力が回復する魔法だ。これを使えばいちいち回復魔法をかけずに済むようになる」

男子「でも回復力は弱いんですよね?」

ジーヴル先生「あぁ。確かに弱いが、1度かければそれ以降はかけなくてもいいくらいだ」

男子「ふーん」

ジーヴル先生「次は普通の体力回復魔法だ。これは発動者の魔力の強さによって回復量が変わる。魔力が強ければ回復量も多くなり、逆に魔力が弱ければ回復量も少なくなる。普通の回復魔法と持続的に回復する魔法の違いはここだ。普通の回復魔法は魔力に影響される。だが、持続的に回復する魔法は魔力に影響されない。つまり、魔力が強かろうが弱かろうが回復量は変わらないんだ」

男子「へぇ〜」

ジーヴル先生「だから魔力が強い人は普通の回復魔法を使って、魔力が弱い人は持続的な回復魔法を使うようになっている」

男子「あーなるほどなぁ」

ジーヴル先生「これが体力の回復魔法だ。次に魔力の回復魔法だ」

アンナ「リールは回復魔法どっち使う?」

リール「そうですね。私は普通の回復魔法ですかね」

アンナ「だよね。リールは魔力が強いからやっぱりそっちの方がいいよね」

リール「はい。ですね」

ジーヴル先生「魔力の回復は体力の回復とは違って自分の魔力を誰かに分け与えるという魔法だ。使えば当然使用者の魔力は減り、受けた人は魔力が上昇する。これに関しては1種類しかない。おまけに魔力の影響も受けないんだ」

女子「ということは分け与える魔力の量は自分で決められるんですか?」

ジーヴル先生「そうだ。分け与える量は魔力による変動ではなく、使用者のさじ加減だな」

女子「分かりました」

ジーヴル先生「このように、無属性魔法の回復魔法は色々なところで応用されている。それに、回復魔法はある属性魔法に適性がある人が使うと更に効果を上げることが出来るぞ」

男子「なんの属性魔法ですか?」

ジーヴル先生「水属性魔法だ」

男子「えー?水属性魔法?」

アンナ「!」

ジーヴル先生「そうだ。水属性魔法は本来、相手に癒しの力を与える属性魔法なんだ。その属性に適性を持つ人が回復魔法を使えば、さらに効果を跳ね上げることができる」

男子「先生ー!風属性魔法はー?」

ジーヴル先生「風属性魔法は残念ながら効果は等倍だ」

男子「えー…」

ジーヴル先生「お、まだ時間があるな。じゃあ今度は移動魔法についてだ。これは俗に言うワープと呼ばれる魔法だ」

リール「ワープってスカーレットが使ってた魔法ですよね」

アンナ「あ、そうそう。その魔法だよ」

ジーヴル先生「ワープとは、移動手段の中で最も目的地に着くのが速い魔法なんだ。なんせ一瞬でその場に着くんだからな」

男子「先生!それはどの属性魔法がいいんですか?」

ジーヴル先生「あーこれに関しては属性による効果は期待できないぞ」

男子「えー…」

ジーヴル先生「いや誰でも使えばワープできるし、ワープの効果を上げるって言っても何を上げるんだ?」

男子「確かに…」

ジーヴル先生「だからどの属性も効果は等倍だ」

男子「ぶー…」

ジーヴル先生「無属性魔法はどの属性にも属さない魔法だから汎用性が高い。物体浮遊魔法もそのひとつだ。このようにみんなそれぞれ持つ属性魔法と氷属性魔法、無属性魔法を使ってこれから生きていくことになる。その過程で魔法の改良、最適化をすることで更に魔法の幅が広がるぞ」

男子「おー!」

ジーヴル先生「さ、授業はここまでだな。時間的にもいいくらいだし終わるか」

男子「よっしゃー!」

ジーヴル先生「こらそこ。喜ぶんじゃないぞ」

男子「すんませーん」

ジーヴル先生「さ、授業は終わりだ。解散!」

 

そしてみんな順々に教室を出た。

 

アンナ「どうだった?リール」

リール「興味深い話ばっかりでしたよ。もっと知りたいとも思いましたし」

アンナ「おぉ…すごいねリール。勉強熱心だね」

リール「い、いえ…それほどでも…」

 

2人で話していると教室のドアが開いた。

 

ラーフ「失礼します」

アンナ「!」

リール「!」

 

入ってきたのはレヴィ学院長のそばにいる人だった。

 

ラーフ「こちらにリールさんはいらっしゃいますか?」

リール「あ、はい。ここにいます」

ラーフ「…レヴィ学院長がお呼びです。学院長室においでください」

リール「あ、はい。分かりました」

 

リールはラーフのところに行き、学院長室に向かった。

 

スカーレット「ねぇアンナ」

アンナ「何?」

スカーレット「何かあったの?」

アンナ「え、うーん…分からない…」

スカーレット「…そう」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…学院長室

 

コンコンコン

ラーフはドアをノックした。

 

ラーフ「学院長。ラーフです」

レヴィ「あ、入ってもいいよ」

ラーフ「…失礼します」

 

ギィィィィィィ…

ラーフはドアを開けて入っていった。

リールもそれについて行った。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

レヴィ「やぁリールさん。入学ぶりですね」

リール「はい。お久しぶりです学院長」

レヴィ「あ、ここでは私のことは学院長じゃなくても大丈夫ですよ」

リール「…?」

リール「じゃあどのように呼べばいいのでしょうか?」

レヴィ「んー…気兼ねなくレヴィでいいよ」

リール「分かりました。じゃあレヴィさんで」

レヴィ「それでいいよ」

リール「それで、何か御用ですか?」

レヴィ「…何時間か前にメリーさんが私にある報告をしてきました」

リール「報告?」

レヴィ「はい。ある男性2人が魔女さんの家に行きたいと…そう言われたそうです」

リール「!」

レヴィ「…あの家を守っている私からすれば、私とメリーさん以外の人物があの家に近づくのはあまり良い気はしないのです。そこで、あなたに相談があります」

リール「…」

レヴィ「…あなたならどうしますか?」

リール「!」

レヴィ「私は正直断るつもりです。メリーさんは判断ができないために私に知らせてくれました。ですが、私とメリーさんもあの家の者ではないので私とメリーさんには決定権がありません。そこで、魔女さんがいない今、あなたがあの家の所有権 兼 決定権を所持しています。なので、最後にあなたの判断を仰ぎたいのです」

リール「…」

レヴィ「…どうされますか?」

リール「えっと…その男性2人って…」

レヴィ「箒専門店のジンさんと杖専門店のマークさんです」

リール「!」

 

リールの予想は的中した。

 

レヴィ「…面識があるのですか?」

リール「…はい。一度会ったことがあります」

レヴィ「…そうですか。それで、どうしますか?」

リール「えっと…ジンさんとマークさんは何故あの家に行きたいのかという理由は仰られましたか?」

レヴィ「私は聞いてないね。恐らくメリーさんも」

リール「…そうですか」

レヴィ「…」

リール「じゃあ目的を開示していただいてからメリーさんもしくはレヴィさんが監視している状況であるなら大丈夫です」

レヴィ「目的の開示と監視があればいいんですね?」

リール「はい。その目的が分かれば私に伝えて欲しいです。私が良いと思ったらレヴィさんかメリーさんが監視役としてジンさんとマークさんと一緒にいてくれるなら大丈夫です」

レヴィ「…分かりました。ではそのようにメリーさんに言っておきます。後日メリーさんのところに伺うとお二人が言っていたのでその時に伝えるように言っておきますね」

リール「はい」

レヴィ「あ、それと」

リール「?」

レヴィ「目的が分かり次第あなたに伝えます。後日また呼び出しますのでその時にまたこの部屋に来てください」

リール「はい。分かりました」

レヴィ「ラーフ」

ラーフ「はい」

レヴィ「リールさんを部屋まで送ってあげて」

ラーフ「…分かりました」

リール「…失礼します」

レヴィ「はい」

 

ギィィィィィィ…バタン

リールとラーフは部屋を出た。

 

レヴィ「…目的の開示と監視ね。分かりました。…ですが、そう簡単には近づけさせませんよ」

レヴィ「…轟雷(ごうらい)の使徒 サルメア。巌土(がんど)の使徒 ファラン」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…リールとアンナの部屋

 

ラーフ「それではリールさん。私はこれで」

リール「あ、はい。ありがとうございます」

ラーフ「後日また伺いますのでその時は」

リール「はい。分かりました。それでは」

ラーフ「はい」

 

ギィィィィィィ…バタン

リールは部屋の扉を閉めた。

 

ラーフ「…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

アンナ「あ、リール!」

リール「アンナ。帰ってたの?」

アンナ「うん。でもどうしたの?」

リール「あー…ちょっとね」

アンナ「?」

 

リールは一応この件については伏せることにした。

 

リール「また後日呼び出されるみたいだからまたその時も一緒に帰れないかもしれないけどいい?」

アンナ「うん!いいよ!」

リール「ありがとう。アンナ」




〜物語メモ〜


魔女さんの家
現在、家の主である魔女さんは用事のため家を空けている。
そのため、現在の家の主はリールとなっている。
だが、リールはエレナ学院にいるため、その間はメリーさんとレヴィ学院長が家の管理をしている。


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第17話 リールと模擬試合(スカーレット編)

私の名前はリール。

今はエレナ学院にいます。

前回は無属性魔法について勉強しました。

ある程度の魔法は魔女さんに教わってるので聞いたことのある魔法ばっかりでしたが、興味深かったです。

私は光属性魔法に適性があるので回復はちょっと難しいですが、頑張って練習します!

さて、今日は何やら面白いイベントが始まるそうです。

先生の顔が笑顔なのできっと面白いんだろうなと思っています!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日…

 

ジーヴル先生「よぉーしみんなー!席につけー!」

 

ジーヴル先生は大きな箱を持ってきた。

 

男子「先生〜その大きな箱は何ですか?」

ジーヴル先生「今から説明するからちょっと待ってくれ〜い」

男子「はいよ〜」

リール (友達かな?)

 

ジーヴル先生は大きな箱を1つと小さな箱を1つ教卓の上に置いた。

 

ジーヴル先生「じゃあ説明するぞ〜。これはな、みんなが2学年になってから注文していた杖だ。これから実技の授業が入ってくるからその時に使うためにな」

男子「キタァァァァァ!」

ジーヴル先生「おーいそこー。うるさいぞー」

男子「先生!早く配ってくれよ!」

ジーヴル先生「あーダメだ」

男子「え!?なんで!?」

ジーヴル先生「杖はその人に合わせて作られているからだ。属性魔法が違う人の杖を使っても魔法は発動しないからな。ここは慎重にならないといけない」

男子「えー…」

ジーヴル先生「今から名前呼ぶから呼ばれたら来てくれ。出席番号関係ないから呼ばれるまでは来るなよ」

全員「はーい」

 

するとジーヴル先生は一人一人生徒の名前を呼んでいった。

その間、スカーレットやアンナも呼ばれ、全員が杖を持つことになった。

当然、リールの名前は呼ばれなかった。

 

ジーヴル先生「よしっ。これで全員分だな」

男子「え?」

ジーヴル先生「え?」

女子「先生ー!リールさんの杖は無いんですか?」

ジーヴル先生「え?無いも何もリールさんは杖持ってますよね?」

リール「!」

女子「え?どういう事?」

女子「最初から持ってたってこと?」

女子「そういえば適性魔法を見る時も手つきが慣れていたような…」

ジーヴル先生「学院長からは杖の注文はいらないと聞いていたので発注しなかったんですが、リールさんは杖持ってませんか?」

リール「あ、いえ。持ってます」

 

そう言ってリールは杖を取り出した。

 

女子「わ、ほんとだ…」

男子「自分の杖?」

リール「はい。そうです」

女子「綺麗な形だね」

リール「ありがとうございます」

ジーヴル先生「よしっ。リールさんも杖を持っている事だし、みんなにはもう1つ話がある」

 

ジーヴル先生は黒板に文字を書き始めた。

 

リール (模…擬…試…合…模擬試合!?)

 

そう。

ジーヴル先生が書いたのは模擬試合という文字だった。

 

ジーヴル先生「さて、もう1つの話…それは、模擬試合についてだ」

男子「模擬試合!?」

男子「戦えるのか!?」

ジーヴル先生「そう。杖を持った生徒の最初のイベント。それが模擬試合だ」

女子「それって魔法の試合なんですか?」

ジーヴル先生「そうだ。各々の適性魔法を使って相手と対戦するというものだ」

アンナ「ねぇリール」ヒソヒソ

リール「なんですか?」ヒソヒソ

アンナ「なんか、スカーレットの家でやった気がするんだけど」ヒソヒソ

リール「奇遇ですね。私もそう思ってました」ヒソヒソ

スカーレット「…」

ジーヴル先生「今から細かい説明するからしっかり聞いとけよ」

全員「はーい」

 

するとジーヴル先生は模擬試合の詳細を説明し始めた。

 

 

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詳細を聞いて分かったこと

 

1.使う魔法は自分の適正魔法のみ

(氷属性魔法、無属性魔法の使用は禁止)

2.勝敗は相手の降参あるいは戦闘不能のみ

3.試合形式は 1VS1

4.属性魔法の有利、不利は関係ない

(戦う相手や属性魔法はランダム)

5.生徒同士での戦闘

6.不正は魔法以外の攻撃、適正魔法以外の魔法攻撃のみ

 

 

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リール (意外にルールが多いですね)

ジーヴル先生「とまぁ詳細はここまでだ。なにか質問あるやつはいるか?」

女子「先生。それはいつ始まりますか?」

ジーヴル先生「1週間後だ。その間、宿題や授業は全て杖の慣れの時間になる」

男子「じゃあ授業は無いわけだ!」

ジーヴル先生「そうだな」

男子「しゃあ!」

ジーヴル先生「あ、それともう1つ。この模擬試合で仮に負けたとしても成績が落ちるとかは無いから安心してくれ。この模擬試合は魔法と杖の慣れのために行うものだからな」

男子「勝ったぜ!」

ジーヴル先生「傷を負っても先生方が回復させてくれるからみんなは思う存分戦ってくれ」

女子「先生。場所はどこでやるんですか?」

ジーヴル先生「場所はあそこだ。第1魔法戦闘室だ」

女子「それってこの校舎の隣にあるあれですか?」

ジーヴル先生「そう。そこが第1魔法戦闘室だ。だがまぁ、模擬試合を始める前に一旦ここに来てもらうからそこから先生がみんなを連れていくよ」

女子「分かりました」

ジーヴル先生「他に質問あるやついるかー?」

 

誰も手を挙げなかった。

 

ジーヴル先生「よしっ。じゃあこれで終わりな。各々しっかり魔法と杖の練習をしておくこと。分かったか?」

全員「はーい!」

ジーヴル先生「じゃあ解散!」

男子「よぉーし!早速練習行くぞ!」

男子「任せろ!けちょんけちょんにしてやるぜ!」

男子「俺も行くぜ!」

ジーヴル先生「おーい!魔法は校舎内では使うなよー!禁止だからなー!使うなら第1魔法戦闘室に行けよー!」

男子「分かったぜ先生!」

男子「行くぞお前ら!目的地は第1魔法戦闘室だ!」

男子「ラジャー!」

男子「ラジャー!」

 

タッタッタッタッタッ!

元気のいい男子たちはそのまま第1魔法戦闘室に向かった。

 

リール (この際練習するのもありですね)

アンナ「あの、リール…」

リール「どうしましたか?」

アンナ「一緒に練習しない?」

リール「構いませんよ」

スカーレット「私も参加するわ」

リール「あ、スカーレット」

スカーレット「ようやく振り切って来れたわ」

リール「振り切る?」

スカーレット「そう。みんな私と練習したがってたけど私はリールたちとがいいの。だから振り切ってきたの」

リール「そっか…ありがとう」

スカーレット「いいわよ。それよりも私たちも早く練習しましょ!」

アンナ「はい!よろしくお願いします!」

 

それからリールたちも練習をし始めた。

 

 

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リール (光の使い方…そのまま一直線に飛ばすのもありですね。弾道速度はどの属性魔法よりも速い。そこを活かさないと…)

アンナ「ねぇ2人とも」

スカーレット「何?」

リール「何ですか?」

アンナ「水って触ると濡れるよね?」

スカーレット「そ、そうね」

リール「まぁ、当然ですよね」

アンナ「でも掴むことってできるかな」

スカーレット「掴むこと…ね」

アンナ「うん」

リール「少しは掴めるかと思いますが、全部は無理ですね」

アンナ「だよね!良かった!」

リール「何かするの?」

アンナ「えっと…うん」

リール「どんな事をするんですか?」

アンナ「えっと…内緒!」

スカーレット「教えてくれないの?」

アンナ「うん!その時のお楽しみ!」

リール「分かりました。楽しみにしておきますね」

 

 

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それからリールたちは1週間、自分の属性魔法について勉強、実技、思考を繰り返した。

 

 

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そして模擬試合当日…

 

ジーヴル先生「よぉしみんな。ちゃんと練習してきたか?」

男子「バッチリだぜ先生!」

男子「早くやろうぜ!」

ジーヴル先生「まぁ待て。先走る気持ちは分かるが準備があるからな」

男子「準備?」

ジーヴル先生「そう。魔力が外に漏れないように結界を展開しているところだ。もう少ししたら行くぞ」

男子「先生!」

ジーヴル先生「ん?なんだ?」

男子「対戦相手はいつ分かるんですか?」

ジーヴル先生「あーじゃあ今やっとくか。どうせ待たなきゃだし」

男子「しゃあ!誰でもかかってこいや!」

アンナ「ねぇリール」

リール「なんですか?」

アンナ「頑張ろうね」

リール「…はい」

 

そして対戦相手が順々に発表された。

リールは7戦目、アンナは5戦目、スカーレットは2戦目だった。

 

アンナ「良かった…リールやスカーレットが相手じゃなかった」

リール「3人の中ではスカーレットが1番早いですね」

アンナ「その次は私で最後はリールだね」

リール「ですね」

ジーヴル先生「さて、発表も終わったことだし行こうか」

男子「しゃあ!行くぜ!」

 

 

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対戦相手

 

2戦目 スカーレットVSサラン(男)

 

5戦目 アンナVSエル(女)

 

7戦目 リールVSオード(男)

 

 

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場所…第1魔法戦闘室

 

ジーヴル先生「さぁて、1戦目と2戦目の人はここに残ってくれ。残りの人はこの上に観客席があるからそこに行くように。座る場所はどこでもいいぞ」

男子「よし!俺は1番見えるところに座るぜ!」

男子「何!?俺が座るぜ!」

ジーヴル先生 (相変わらず元気だな。あいつらは)

リール「スカーレット!」

スカーレット「!」

リール「…頑張って!」

スカーレット「…任せて」

 

リールとアンナも観客席に向かった。

 

スカーレット (こんな所で負けてられないわ。いつかあなたと対等に戦えるくらいに強くなるの。見ててリール、アンナ。勝ってみせるから)

ジーヴル先生「さ、1戦目と2戦目のメンバーはそれぞれこっちとあっちに扉があるからそこで待機していてくれ。どちらの扉に待機するかはここに書いてあるから見るように」

 

スカーレットはそこに書かれている内容を見た。

 

スカーレット (…私は右ね)

 

 

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戦闘準備が整い、1戦目が開始された。

1戦目の様子は2戦目の人たち含め、全員見ることができるようになっている。

1戦目の組み合わせは土属性魔法と火属性魔法だった。

両者1歩も引かず、各々の属性魔法を相手にぶつけた。

地脈を操る土属性魔法と炎を操る火属性魔法では、地脈によるバフがある土属性魔法の方が少し強かった。

火属性魔法の人が弱いと言うより、土属性魔法を使ってる人が地脈のバフを使いこなせていたため、この勝負は土属性魔法の人の勝利だった。

そして、スカーレットの順番が来た。

 

ジーヴル先生「さて、第2戦目。2人とも舞台に上がってきて」

 

ギィィィィィィ…

扉が開き、スカーレットとその対戦相手が舞台に上がった。

 

リール「スカーレット!頑張って!」

アンナ「スカーレットなら行けるよ!」

スカーレット「…」

サラン「…」

 

スカーレットの対戦相手はサランという男子生徒だった。

彼は物静かで割と知的な人物だった。

 

スカーレット「…」

サラン「まさか君と戦うことになるなんてね。委員長」

スカーレット「!」

サラン「手加減はなしだよ。僕はここで負けたくないからね」

スカーレット「…私だってこんな所であなたに負けたくないわ」

サラン「…さて、やろうか」

ジーヴル先生「戦闘開始!」

 

ジーヴル先生が開始の合図を出した。

 

スカーレット「放電(マギダラ)!」

 

ジジジ…バリバリバリ!

スカーレットは電気を纏った。

 

サラン「雷…か…」

スカーレット「そうよ。さ、あなたも魔法を使ってみたらどう?」

サラン「…そうさせてもらうよ」

 

サランは魔法を使った。

 

スカーレット「!」

サラン「…」

 

サランが使う魔法は水属性魔法だった。

 

スカーレット「あなた…水属性魔法の適性者なのね」

サラン「そうだよ」

リール「雷属性魔法のスカーレットに対し、あの人は水属性魔法…相性的にはスカーレットが上だけど…」

アンナ「私と同じ属性魔法なんだ…あの人…」

スカーレット「手加減はなし…そう言ったわよね?忘れてないわよね?」

サラン「大丈夫。忘れてないよ」

スカーレット「じゃあ…さっさと終わらせましょうか」

サラン「…できるものなら」

 

ドゴォン!

スカーレットは雷で作った玉を飛ばした。

 

サラン「はっ!」

 

サランも負けじと水で作った玉を飛ばす。

 

スカーレット「その程度の魔法で…」

 

ビュン!ビュン!ビュン!

スカーレットは高速で攻撃を回避した。

 

スカーレット「私に当てられるとでも?」

 

ゴロゴロゴロ…

 

サラン「!」

 

スカーレットは舞台を黒い雲で覆った。

その黒い雲は雷を纏っていた。

 

サラン「まさか…」

スカーレット「踊雷針(サンダー・カーニバル)!」

 

ゴロゴロゴロ…ピカッ!ドゴォォォォン!

スカーレットが唱えた魔法が発動し、舞台全体を攻撃した。

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥ……

辺りに煙が立ち込める。

 

スカーレット「…!!」

サラン「…」

リール「!」

アンナ「!」

 

サランは無傷だった。

 

スカーレット「な、なぜ…」

サラン「…電気が水を伝うのは誰でも知っていること。じゃあなぜ水属性魔法が雷属性魔法に弱いとされているのか。理由はそこにある。だから僕は考えた。どうやって不利属性を克服しようかと」

スカーレット「…」

サラン「そこで考えた。魔法を使ってる時は杖から魔力が送られているため、常に杖から水が出ている。故に電気が体を伝い、ダメージを負う。なら、杖から切り離せばいいと…そう考えたんだ」

スカーレット「!!」

 

スカーレットはサランの頭上に板状に形作られた水を見た。

そして、その板状の水から1本水が伸びていることもわかった。

 

サラン「…こうすることで頭上からの攻撃を防ぎ、雷属性魔法であるならその電気を外へ流すことができる。無傷で済むんだ」

スカーレット「くっ…」

サラン「僕は不利属性のことを考えた。君は僕の適性魔法が水だと知ってから勝ちを確信したでしょ」

スカーレット「!!」

サラン「そこが僕の勝ち筋。現にほら、足元見てないから気づいてないでしょ?」

スカーレット「!!」

 

スカーレットの足には水の塊がくっついていた。

 

スカーレット「何よこれ」

 

スカーレットは足を動かそうとするが、全く動かなかった。

 

サラン「水ってね。軽く見られがちだけど、集まれば凄まじい力と重さを得ることができる。だから君の足は動かない」

スカーレット「くっ…」

 

スカーレットはサランに杖を向けた。

 

スカーレット「雷玉(サンダラ)!」

 

ドンドンドン!

スカーレットは雷玉を飛ばした。

 

サラン「無駄だよ。さっきの話聞いてた?」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥ…

サランは水の壁と電気を逃がすための通路を作った。

 

ジジジ!

スカーレットの雷はその通路を通ったため、サランに直撃しなかった。

 

スカーレット「くっ…」

サラン「どう?勝ち目…ある?」

スカーレット「…」

 

スカーレットは考えを巡らせていた。

 

リール「スカーレット!」

スカーレット「!」

サラン「?」

リール「負けないで!勝って!」

スカーレット「リール…」

サラン「リールさんですか…あの人の魔法も凄いですよね。光属性魔法だなんて。興味深い」

スカーレット「当たり前じゃない。リールは凄いのよ。私よりも遥かにね!」

 

スカーレットはサランに杖を向けた。

 

スカーレット「雷砲(サンダー・キャノン)!」

 

ジジジ…ドゴォォォォン!

スカーレットの杖から雷のレーザーが放たれた。

 

サラン「な…」

 

サランは間一髪でその攻撃を避けた。

 

スタッ…ジジジ…

 

サラン「?」

 

サランは足元に違和感があったため、足元を見た。

 

サラン「!?」

スカーレット「…かかったわね。地雷(コーディ)!」

 

ジジジ…バリバリバリ!

足元にあったそれは勢いよく弾け、周囲に雷を放散した。

 

サラン「ぐあっ…がああああああ!」

 

サランはその攻撃をまともに受けてしまった。

 

ピチョン!

するとスカーレットの足元にあった水の塊が消えた。

 

スカーレット「ふぅ…これでやっと動けるようになったわ」

サラン「ぐっ…やるね」

スカーレット「生憎、私たちは先に戦闘を経験してるのよ。あれに比べたらマシだわ」

サラン「だったら!」

 

サランは杖を上に向けた。

 

サラン「落つる刃(アメノミハシラ)!」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ!

 

スカーレット「!?」

 

すると、天井から水の刃が降り注いだ。

 

スカーレット「くっ!」

 

スカーレットは杖を構えた。

だが、雷属性魔法には防御系の魔法は存在しなかった。

 

スカーレット「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ドン!ドン!ドン!

スカーレットは雷玉を撃って水の刃と相殺させた。

だが、雷玉を撃つ度に魔力を消費しているスカーレットに対し、アメノミハシラの魔力分しか消費していないサランだと圧倒的にサランの方が有利だった。

 

スカーレット「ぐっ…はぁぁぁぁぁぁ!」

 

スカーレットの魔力が無くなりかけていた。

 

サラン「まだまだ続くよ。さぁ、どうする?」

 

スカーレットは考えていた。

雷玉だと一発ずつ撃つ上に一発分の魔力がどんどん消費されていく。

ここで一気に周囲を攻撃できる魔法を考えたが、この攻撃を掻い潜って別の魔法を撃つのはリスクがあった。

そしてアメノミハシラは攻撃をやめない。

 

スカーレット「こうなったら…」

サラン「お、何かするのかい?」

スカーレット「雷砲(サンダー・キャノン)!」

 

キィン!ドゴォォォォン!

スカーレットは落つる刃(アメノミハシラ)ではなく、サランに攻撃した。

 

サラン「な!」

 

ドゴォォォォン!

サランはその魔法に被弾した。

それと同時に落つる刃(アメノミハシラ)は解除された。

 

スカーレット「ふぅ…ようやく収まったわね」

サラン「…やるね委員長」

スカーレット「それはどうも」

 

シュッシュッシュッ…

 

スカーレット「!」

 

サランの足元に渦が5つ出現した。

 

サラン「さぁ…出ておいで水龍(ルーディン)

 

ドバァン!

その渦から水で作られた龍が5体出てきた。

 

サラン「はぁっ!」

 

サランはそれを操り、スカーレットにぶつけた。

 

スカーレット「ぐあっ…がっ…」

 

スカーレットはそれに被弾する。

 

スカーレット「ぐっ…」

 

スカーレットの体力は限界だった。

 

スカーレット「はぁ…はぁ…」

サラン「まだまだ!」

 

サランは更に攻撃を重ねた。

 

スカーレット「ぐっ…」

リール「スカーレット!」

アンナ「スカーレット!」

 

スカーレットはよろめいていた。

スカーレットの体力は0になりかけだった。

 

スカーレット (このままじゃ…負ける…このままじゃ…リールに勝てない…)

スカーレット「くっ!」

 

スカーレットは体勢を立て直した。

 

スカーレット「…」

 

スカーレットはサランをじっと見つめる。

 

サラン「…もう最後かい?」

スカーレット (最後の一撃…これにかける!)

 

 

ー回想ー

 

スカーレット「お父さん」

ジン「なんだいスカーレット」

スカーレット「お父さんも雷属性魔法に適性があったよね」

ジン「うん。あるよ」

スカーレット「ならお父さんのとっておきの魔法を教えて」

ジン「お父さんのとっておき?」

スカーレット「うん。来週魔法の模擬試合があるの。私はまだまだだから負けるかもしれない。だから教えてお父さん。負けそうになった時、それを覆すことが出来るとっておきの魔法を」

ジン「…いいよ。でも、ちゃんと使いこなせる?使いこなせなかったら自分にダメージが来るけど」

スカーレット「それでも使いこなせたら逆転できるのね?」

ジン「あぁ。確実にできるよ」

スカーレット「分かったわ。練習するから教えてお父さん」

ジン「…あぁ」

 

ー回想終了ー

 

 

スカーレット (お父さん。お父さんのとっておきの魔法…ここで使わせてもらうね)

 

ジジジ…

スカーレットの周囲に磁場が発生した。

 

サラン「!」

 

サランは異変に気づいた。

 

バリバリバリバリバリ!

スカーレットの体に再度電気が走った。

 

フワフワ…フワフワ…

するとスカーレットは宙に浮き始めた。

 

サラン「な…浮いた!?」

リール「凄いスカーレット!」

アンナ「初めて見た…」

スカーレット「…」

 

スッ…

スカーレットは第1魔法戦闘室の天井の中央まで浮き、杖を上に向けた。

 

ジジジ…ゴロゴロゴロ…

すると、スカーレットの杖に雷が集まり始めた。

 

サラン「!!」

 

サランは危機感を覚え、5体の水龍を集めた。

 

サラン「はぁっ!」

 

サランは集めた水龍たちをスカーレットに向けて飛ばした。

 

スカーレット「…」

 

スッ…

スカーレットは杖を下に向けて魔法を放った。

 

スカーレット「…インドラの矢(サディエライト・アーツ)

 

キィン!ドォォォォォン!

すると、スカーレットの杖に集まった雷が舞台に向かって真っ逆さまに落ちていった。

その速度は速く、水龍(ルーディン)たちがそれを止めようとしたが、スカーレットが唱えた魔法は水龍たちの体を貫通した。

そしてスカーレットが唱えた魔法は舞台に落ち、瞬く間に周囲に影響を及ぼした。

…スカーレットを含め。

 

ドゴォォォォン!

 

サラン「がぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

その魔法は円状に広がり、サランは大ダメージを受けた。

 

ジジジ…バリバリバリ!

 

スカーレット「うっ…くっ…」

 

スカーレットもまた、自傷ダメージを負ってしまった。

 

スカーレット「…」

 

スカーレットは魔力を消費し切ってしまい、おまけに体力も0となった。

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ!

力を失ったスカーレットはそのまま舞台に落ちていった。

 

リール「スカーレット!」

アンナ「スカーレット!」

ジーヴル先生「!!」

 

スカーレットはピクリとも動かず、そのまま重力に従い、落ちていった。

観客席にいる生徒やジーヴル先生ではスカーレットを受け止めるには間に合わない。

みんなが何かしらの行動を起こした次の瞬間…

 

???「…全く…無茶をしますね。委員長」

 

ザバァァァン!

突然舞台中央から水が噴き出し、スカーレットを包み込んだ。

 

ポヨンポヨン…

スカーレットを包んだ水はスカーレットの落下の衝撃を吸収し、地面に落ちた。

 

サラン「…ふぅ」

 

サランが最後の力を振り絞ってスカーレットを助けたのだった。

 

パチン!

するとスカーレットを包んでいた水が破裂し、スカーレットは舞台に横になった。

 

リール「スカーレット!」

 

リールとアンナがスカーレットのところに向かった。

 

リール「スカーレット!スカーレット!」

 

スカーレットは少しだけ目を開けた。

 

リール「良かった…気がついた…」

スカーレット「…リール」

ジーヴル先生「この試合、サランの勝利!」

男子「うぉぉぉぉ!」

女子「凄かったね今の試合!」

女子「だよね!不利属性に勝ったサランくんも凄いけど最後の委員長の攻撃も凄かったよね!」

女子「だよね!」

スカーレット「…負けちゃった」

リール「スカーレット…」

スカーレット「もう少し…頑張ったら良かったなぁ…」

リール「十分ですよ。よく頑張りました」

スカーレット「…」

サラン「委員長」

リール「!」

スカーレット「!」

アンナ「!」

 

サランが立ち上がってスカーレットのところに来ていた。

 

スカーレット「…何?」

サラン「…やっぱり委員長はすごいよ。いい試合だった」

スカーレット「…そう。ありがとう…」

 

こうしてスカーレットVSサランの試合はサランの勝利で終わった。




〜物語メモ〜


第1魔法戦闘室
これは校舎の隣にある建物の名前で、俗に言う体育館みたいなところ。
魔法の戦闘は基本ここで行われる。
少し前まで校舎でも魔法の使用は許可されていたが、最近になって魔法の使用が禁止された。

模擬試合
2学年最初のイベント。
互いの属性魔法を使って試合をする。
勝ち負けによる成績の昇降は無い。

サラン
スカーレットの対戦相手の男子。
いつも物静かでやかましい男子とは正反対の人物。
授業は真面目に聞くほど。
今回スカーレットが相手だと知ってから模擬試合が始まるまでに雷属性魔法に対する対策をずっと考え、実践していた。


新しく出てきた魔法

水属性魔法:落つる刃(アメノミハシラ)
サランが使った魔法。
使えば頭上から水の刃が降ってくる広範囲魔法。
魔力の消費はアメノミハシラ発動分のみのため、魔力の消費が少ない。
おまけに任意で解除するまで延々と続く。

水属性魔法:水龍(ルーディン)
サランが使った魔法。
足元に5つの渦を出現させ、そこから水で作った龍を出し、相手にぶつける魔法。
ただの水ではなく、龍の形をしているため、攻撃範囲が少し広い。
おまけに操作が可能。

雷属性魔法:踊雷針 (サンダー・カーニバル)
スカーレットが使った魔法。
雷雲を作り、地面に向かって雷を落とす魔法。
地面に落ちた雷は地面を跳ね、周囲に走る。
これもアメノミハシラ同様、魔力の消費はサンダー・カーニバル発動分のみ。

雷属性魔法:地雷 (コーディ)
スカーレットが使った魔法。
本来サンダー・カーニバルは地面を跳ねた後に跡形もなく消えてしまうが、地雷を使うことでその場に留まり、相手がそれを踏むまで存在し続けることができる。
踏めば雷が周囲に放散し、近くに地雷があれば更に連鎖して雷を放散する。

雷属性魔法:インドラの矢(サディエライト・アーツ)
スカーレットが使った魔法。
この魔法は元々スカーレットのお父さんであるジンが作った魔法。
空を飛び、雷を集めたあと、その雷を地面に落とす魔法。
地面に落ちた雷は瞬く間に周囲に広がり、範囲内にいる人は大ダメージを受ける。
破壊力は抜群だが、失敗すれば自分への大ダメージとなる。
ジンはこの魔法の制御に1ヶ月近くかかった。


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第18話 リールと模擬試合(アンナ編)

ここでちょっとお知らせです。


最近、投稿できてませんでしたが、理由としては実習があったからです。

ネット環境がない場所での実習でしたので、投稿まで時間がかかりました。

今は実習は終わっていますが、それでもまだ忙しいので投稿頻度は少ないです。


お知らせは以上です。


私の名前はリール。

今エレナ学院の隣にある第1魔法戦闘室にいます。

私たちは模擬試合という2学年になった人たちの最初のイベントらしいそれに参加しています。

1VS1で行うものらしく、互いに魔法をぶつけて勝敗を決めるそうです。

前回はスカーレットが出場しました。

結果は敗北でしたが、それでもスカーレットはよく頑張ったなと思っています。

次はアンナの番です。

アンナは一週間前に何やら策を練っていたらしく、今回はそれが見れたらいいなと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サランとスカーレットの試合が終わった。

試合はサランの勝利となり、3戦目が開始された。

3戦目は火属性VS土属性。

両者作った魔法や覚えた魔法を惜しげも無く使った。

試合時間は少し長かったが、勝負は着いた。

決め手は火属性魔法の使用による熱だった。

土属性魔法を使って自身を土で覆い、ダメージを無効化したが、火属性の熱は防ぐことができず、熱に耐えられなくなった。

集中力が切れた時、土属性魔法が効果を失い、そのまま火属性魔法を受けてしまった。

そして、3戦目は火属性魔法の勝利となった。

続いて4戦目。

4戦目は風属性魔法と雷属性魔法だった。

この試合も少し時間が長く、互いが互いの魔法を受けて共倒れという結果となった。

そして続くは5戦目。

アンナVSエル(女)の試合が始まろうとしていた。

 

リール「アンナ!」

アンナ「!」

リール「…頑張って!」

アンナ「…うん!見てて!」

 

アンナはステージに上がった。

 

エル「…」

アンナ「…」

ジーヴル先生「両者杖を構えて!」

 

アンナとエルは杖を構えた。

 

ジーヴル先生「始め!」

 

ジーヴル先生の合図が出た。

 

エル「…あなた」

アンナ「…なんですか」

エル「…あなたも水属性魔法なのね」

アンナ「…はい」

エル「ならここで負ける訳にはいかないわ」

アンナ「わ、私だって…バカにされるのはもう嫌…だからここで勝ってみんなを驚かせるの」

エル「…そう。できるといいわね」

 

話し終えるとエルは魔法を使った。

 

エル「水玉(ウォダラ)!」

 

ビュン!

すると丸い形の水が一直線にアンナに飛んできた。

 

アンナ「!」

 

アンナはそれを避け、エルに杖を向けた。

 

アンナ「水波動(ウォーター・ルーン)!」

 

ドバァァァァァ!

アンナは水属性のレーザーを放った。

 

エル「はっ!」

 

エルもその魔法を避け、次の魔法を使った。

 

エル「水柱(エルメス)!」

 

ドバァン!ドバァン!ドバァン!

魔法を唱えた途端、地面からいくつかの水の柱が形成された。

 

アンナ「!!」

 

アンナはいきなり出てきたものに驚いていた。

 

エル「ぼーっとしてたらやられるわよ!」

 

ドン!ドン!ドン!

 

アンナ「ぐっ…」

 

アンナはエルの魔法を受けた。

 

エル「まだまだ!」

 

エルは続けて魔法を放つ。

 

エル「棘水(ディナ)!」

 

するとエルの周りに水で形成された棘が展開された。

 

エル「伝水(ノル)!」

 

するとエルの周りに展開された棘が舞台全体に広がった。

 

アンナ「痛っ!」

 

アンナはその棘のダメージを負ってしまった。

 

アンナ「これは…」

エル「水で作った棘よ。痛いでしょ?」

アンナ「…っ」

 

アンナは杖を構えて魔法を使った。

 

アンナ「(レイン)!」

 

すると舞台全体に雨が降り注いだ。

 

エル「なによ…これ…」

 

エルはアンナの放った魔法をよく分かっていなかった。

 

アンナ「これで…大丈夫…」

 

ビュン!

 

エル「!?」

 

そこにいたアンナは一瞬にして消えた。

エルはアンナを完全に見失った。

 

エル「ど、どこにいるのよ…」

 

アンナはこの時もずっと舞台を走り回っている。

エルにはそれが見えていなかった。

 

エル「このままじゃ埒が明かない…」

アンナ (そろそろ…)

 

アンナは水柱(エルメス)を避け、エルに近づいた。

 

アンナ「爆ぜる雫(ドロ・ノヴァ)!」

エル「!?」

 

ドゴォォン!

エルは突然聞こえたアンナの声に驚いた。

それと同時にエルはアンナの魔法に被弾した。

 

アンナ「…」

 

アンナはエルが被弾している隙にその場から離脱した。

 

エル「…や、やるじゃない…あなた…」

アンナ「!!」

 

アンナは被弾して尚そこに立っているエルに驚いていた。

 

エル「かけといてよかったわ…かけてなかったらやられてたわね」

アンナ「な…なんで…」

エル「水避け(ミズノハゴロモ)。私が考えた魔法。相手の魔法を受け流すの。この試合が始まってすぐに使ったわ」

アンナ「でもそんな素振りは…」

エル「当たり前よ。見せたらバレるじゃない」

アンナ「そんな…」

 

爆ぜる雫(ドロ・ノヴァ)はアンナが考えた魔法の中で唯一相手にダメージを与えることが出来る魔法。

その魔法が効かないとなるとアンナには攻撃手段が無かった。

 

エル「さ、次はこっちの番ね」

アンナ「!」

 

エルは杖を下に向けた。

 

エル「棘水・突(ディナ・リーン)!」

 

ヒュッヒュッヒュッ!

グサッ!

 

アンナ「!?」

 

エルが魔法を使った途端、地面に展開されていた棘水(ディナ)が突然アンナに向かって伸びてきた。

アンナはそれに対応できず、そのまま被弾した。

 

エル「どう?棘水(ディナ)はただ設置するだけじゃないの。相手に当てることもできるのよ」

アンナ「…っ」

リール (アンナ…)

 

リールはアンナを見守る。

 

アンナ「(レイン)!」

 

アンナは魔法を使った。

 

エル「…またそれね。悪いけど対処法は思いついてるの」

 

アンナは雨の効果で身体能力が上がった。

アンナはそのままさっきと同じように舞台を駆け回った。

 

だが…

 

グイッ!

 

アンナ「!?」

 

舞台を駆け回っているアンナの足を誰かが掴んだ。

アンナは足元を確認した。

 

アンナ「こ、これって…」

 

アンナの足元には何やらドロドロとしたものがある。

 

エル「あら、気づいた?」

アンナ「!」

エル「そう。それは私が考えた魔法。名付けて水取り(トラップ)。水属性魔法の適性者にしか効果は無いけど、今なら効果抜群よね」

 

アンナはドロドロとしたものから足を剥がそうとした。

だがあまりにも強く、足を剥がすことができなかった。

 

エル「ダメよ。それは水属性魔法を使う人専用のトラップなの。その人の魔力が全て吸い取られるまで離さないわよ」

アンナ「…っ!」

 

するとアンナの魔力が吸われ始めた。

 

エル「さ、あなたはいつになったら抜けられるのかしら?」

アンナ「くっ…」

エル「ちなみにこの魔法を他の人に試したら、その人は魔力を全て吸い取られたわ」

 

アンナは必死に脱出しようとした。

 

エル「あ、ちなみになんだけど、ひとついいこと教えてあげる」

アンナ「?」

エル「あなたが魔力を吸い取られてる間、私はじっとしてないから」

アンナ「!!」

 

するとエルは杖を構えた。

 

エル「じゃ、頑張って耐えてね」

 

エルは魔法を使った。

 

エル「機関水(マシンガン・ウォーター)

 

ババババババババ!

するとエルの杖から無数の水玉が放たれた。

 

ドドドドドドドド!

 

アンナ「がっ…ぐっ…」

 

アンナはそれに被弾する。

 

ババババババババ!

エルはお構い無しに魔法を放ち続ける。

 

エル「さ、早くしないと負けちゃうよ?」

 

現在アンナは水取り(トラップ)によって魔力を吸い取られ、エルの機関水(マシンガン・ウォーター)によって体力を削られている。

 

リール「アンナ!」

アンナ (あ…リール…)

 

リールは必死にアンナに言葉をかける。

だが、その声はアンナに届いていなかった。

 

アンナ (リール…なんて言ってるんだろ…全然聞こえない…)

エル「あっはははは!さぁ!早く負けなさい!」

アンナ (どうしよう…どんどん意識が…)

 

アンナは魔力を吸い取られてる影響でどんどん意識が落ちていく。

 

アンナ (このままじゃ…負けちゃう…でも、何も出来ない…どうすれば…)

エル「さぁ!これで最後よ!」

 

エルは魔法を使った。

 

エル「波動砲(ウォーター・バーン)!」

 

するとエルは杖をアンナに向けて魔法を放った。

 

アンナ (ごめんねリール…負けちゃった…)

??? (アンナ…アンナ…)

アンナ (!!)

 

どこからか声がする。

今まで何度も聞いた、ある人の声。

 

??? (大丈夫。あなたなら知ってるはずよ。教えたじゃない)

アンナ「!!」

 

意識が薄れゆく中、アンナはある事を思い出した。

 

??? (そう、それ。私が教えたとっておきの魔法。相手に触れさせないチートギリギリの魔法。あなたなら大丈夫。だから使って。きっと今のあなたの役に立つわ)

アンナ (…お母さん…)

 

アンナは杖を構えた。

 

アンナ「…(ルーメス)

 

ドゴォォォォォン!

エルの放った波動砲(ウォーター・バーン)が直撃した。

 

エル「やったぁ!これで私の勝ちね!」

 

エルは勝利を確信した。

身動き取れず、魔力も吸われ、体力も奪われた相手に大ダメージを与える魔法を放ったからだ。

 

エル「さぁて、あの子はどうなってるかしら?」

 

エルはアンナを見た。

だが、そこにアンナはいなかった。

 

エル「?」

 

不思議に思ったエルは壁に設置されている掲示板を見た。

 

エル「!!」

 

すると、アンナの体力が波動砲(ウォーター・バーン)を放った時と全く変わっていなかった。

エルは寒気がした。

 

アンナ「流石お母さん…この魔法…ほんとに凄い…」

エル「!!」

 

アンナの声はエルの背後から聞こえた。

エルはすぐに離れた。

 

アンナ「あぁ…可哀想…」

エル「あ、あなた!ど、どうやって抜け出したのよ!この魔法は誰も抜け出せない魔法だったのよ!なのに!」

アンナ「…知らないよ。でも…」

エル「!!」

 

アンナの目は水色に光っていた。

 

アンナ「もう二度と…あなたの魔法は受け付けない。もう二度と…被弾しない」

 

エルはアンナの変貌っぷりに驚いていた。

 

エル「あなた…」

アンナ「さぁ…負ける覚悟はできた?」

 

アンナはエルに圧をかける。

 

エル「私があなたに負けるわけないでしょ!」

 

エルは魔法を使った。

 

エル「水玉(ウォダラ)!」

 

ドォン!

エルの放った水玉(ウォダラ)は一段と速く飛んだ。

 

…だが

 

スゥゥ…ドゴォン!

水玉はアンナの体を貫通して壁に当たった。

 

エル「え…なんで…」

アンナ「言ったでしょ…もう二度と…あなたの魔法は受け付けないって」

エル「!!」

 

エルは恐怖のあまり魔法を立て続けに放った。

 

エル「波動砲(ウォーター・バーン)機関水(マシンガン・ウォーター)!」

 

ババババババババ!

キィン!ドゴォォォォォン!

エルの魔法は全てアンナに向けて放たれた。

 

スゥゥ…スゥゥ…ドゴォン!ドゴォン!

だが、その魔法は全てアンナに当たらなかった。

 

エル「なんで!なんで!なんで!」

 

エルは魔法を続ける。

だが、エルの魔法はアンナに一度も当てられなかった。

 

そして…

 

エル「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

エルの魔法が途切れた。

 

エル「な…なんで…っ!」

 

エルの魔力が底をついていたのだった。

 

エル「なんで!なんで!なんで!」

 

エルは何度も魔法を放とうとしたが、魔力が尽きているため、魔法が使えなかった。

 

アンナ「…分かった?」

エル「!!」ビクッ!

 

エルはアンナの声に体を震わせた。

 

アンナ「あなたの魔法は私に届かないの。こんなに魔法を使ったら魔力が尽きるのも分かるでしょ?」

エル「あ、あんた…全然喋らない陰キャのくせに!」

アンナ「それは過去の私。今の私と一緒にしないで。私は変わったの」

エル「あ、あんたみたいなやつ全然怖くないから!全然!」

アンナ「そう…なら…」

エル「!!」ビクッ!

 

アンナは杖を構えた。

エルはそれに対して体を震わせた。

 

アンナ「…もう終わらせましょ」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!

 

エル「!!」

 

アンナが魔力を込めた途端、物凄い水が杖に集まった。

 

エル「ちょ!あんた!そんな魔法放ってどうするのよ!」

アンナ「…」

エル「…っ!いい加減にしなさいよ!魔力が切れたの分からないの!?」

アンナ「…」

 

アンナはじっとエルを見つめる。

 

エル「くっ…私があんたなんかに負けるはずがないわ!」

アンナ「…」

エル「こんなの無意味!その魔法を撃つだけ無駄!だから今すぐやめなさい!」

アンナ「…」

 

アンナはエルに杖を向けた。

 

エル「聞いてるの!?やめなさいって!」

アンナ「爆ぜる(ドロ)…」

エル「ひっ…」ビクッ!

 

アンナが魔法を唱えた瞬間、エルはビクついた。

 

アンナ「(ノヴァ)

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!ビュン!

するとアンナの杖から爆ぜる雫(ドロ・ノヴァ)が放たれた。

 

エル「だからやめなさいってぇぇぇぇぇぇ!」

 

ドゴォォォォォン!

その爆発は今まで見た中で最も大きな爆発だった。

 

エル「がっ…あ…」

 

まともに魔法を受けたエルの体力は魔力と共に0となった。

 

バタン!

エルはそのまま倒れた。

 

ジーヴル先生「決着!勝者!アンナ!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

アンナは(ルーメス)を解いた。

 

アンナ「…ふぅ」

男子「うぉぉぉぉぉぉ!」

アンナ「!?」ビクッ!

 

アンナは突然聞こえた大きな声に驚いた。

 

男子「やるなぁ!アンナのやつ!」

男子「ほんとだぜ!前までは落ちこぼれだったのによ!」

男子「さっきの魔法はなんだ!?初めて見たぞ!」

男子「しかも水なのに火属性魔法っぽいことになってたし!」

男子「それな!爆発してたしな!」

男子「てかあいつの魔法が全然効いてなかったけどなんだあれ!?」

男子「全部当たってるはずなのに全部壁に当たってたよな!?」

男子「しかも避けた様子もなかったし!」

男子「すげぇよアンナ!」

男子「やるなぁ!」

アンナ「あ、えっと…」

リール「アンナ!」

アンナ「リール!」

 

ギュッ!

リールはアンナを抱きしめた。

 

リール「凄いよアンナ!あんな魔法初めて見た!」

アンナ「えへへ…ありがとうリール」

リール「驚いちゃった!あの子の魔法が全然当たってなかったから!」

アンナ「あ、あの魔法はお母さんから教わったんだ。お母さんのとっておきの魔法なの」

リール「へぇ!あとで聞かせて!」

アンナ「うん!次はリールだね!頑張って!」

リール「うん!見てて!」

 

模擬試合 第5戦 アンナVSエル

勝者 アンナ




〜物語メモ〜

新しく出てきた魔法

水属性魔法:水玉(ウォダラ)
エルが使った魔法。
水で作った玉を相手にぶつける魔法。

水属性魔法:水柱(エルメス)
エルが使った魔法。
地面から水の柱を作り出し、相手の視界を狭める。
同時に攻撃手段として使うことも可能。

水属性魔法:棘水(ディナ)
エルが使った魔法。
周囲に水で作った棘を配置することができる。
スカーレットの魔法で言うところの地雷と同じ原理。

水属性魔法:伝水(ノル)
エルが使った魔法。
棘水と一緒に使うことで棘水の範囲を広げることができる。

水属性魔法:水避け(ミズノハゴロモ)
エルが使った魔法。
使えば相手の攻撃を受け流すことが出来る魔法。
ただし、水属性魔法にしか効果がない。

水属性魔法:棘水・突(ディナ・リーン)
エルが使った魔法。
棘水から派生する魔法で地面に設置した棘水を伸ばすことで相手にダメージを与える魔法。
当たれば体に刺さるため、痛みを伴う。

水属性魔法:水取り(トラップ)
エルが使った魔法。
水属性魔法の適正者の身動きを取れないようにする魔法。
この魔法も水属性魔法の適性者にしか効果がない。

水属性魔法:機関水(マシンガン・ウォーター)
エルが使った魔法。
使えば杖の先端から無数の水弾が放たれる。
弾数が多く、弾道速度も速いため、避けるのは難しい。

水属性魔法:波動砲(ウォーター・バーン)
エルが使った魔法。
アンナが使う水波動 (ウォーター・ルーン)と同じ水属性のレーザー型の魔法。
使えば一直線に飛んでいく。

水属性魔法:霞(ルーメス)
アンナが使った魔法。
使えば相手の攻撃を一切受け付けなくなる。
元々アンナの母が考案した魔法で今回はその魔法とアンナの考えを織り交ぜて作られた混合型の魔法。
アンナの母はこの魔法を考案した際、「チートね」と声を漏らした。


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第19話 リールと模擬試合(リール編)

ここでちょっとお知らせです。

過去に投稿したお話の中で、魔法を使うシーンがあったんですが、その魔法の名前を変更しました。
全部できてるかは分かりませんが、分かり次第、順々に直していくつもりです。

お知らせは以上です。


私の名前はリール。

今、第1魔法戦闘室にいます。

ここでは魔法を使った試合を行っています。

今まで見てきた試合はどれも見応えがありました。

初めて見る魔法がたくさんあってワクワクしています。

これまでスカーレットとアンナの試合が終わりました。

今度は私の番です。

スカーレットは負けちゃったけどアンナは勝ったので、このまま私も勝ちたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンナの試合が終わって次々と試合が進行していった。

勝ち負けの試合もあったが、引き分けもあった。

そして第7戦目。

リールの番となった。

相手はオードという男子生徒だ。

彼は火属性魔法に適性があるため、主に火属性魔法を使うことになる。

さて、試合結果はどうなるのか。

 

ジーヴル先生「さぁ、次の試合だ!オードとリール!舞台に出てきてくれ!」

 

そしてオードとリールは舞台に上がった。

 

男子「オード!やっちまえ!」

男子「お前の魔法なら勝てるぞ!」

オード「…」

リール「…」

 

2人ともじっと相手を見ている。

 

オード (いや…勝てないだろ…リールさんは確か光属性魔法…闇属性魔法なら勝てるが果たして…)

アンナ「リール!」

スカーレット「リール!」

リール「!」

アンナ「頑張って!」

スカーレット「負けないで!」

リール「…」

 

リールはアンナとスカーレットの方を見続けていた。

 

オード「リールさん」

リール「!」

オード「…負けませんから」

リール「…はい。分かりました」

オード (うぉぉぉぉ!言っちまった言っちまったぁぁぁ!やべぇ!ガチで殺されるぞ俺!父さん母さん今までありがとう!)

男子「オード!負けるなよ!」

オード「…」

ジーヴル先生「試合開始!」

 

先生が合図をするとオードとリールは杖を構えた。

 

オード「火玉(ファイダラ)!」

 

オードは火玉(ファイダラ)をリールに向けて飛ばした。

 

リール「!」

 

リールはそれを見てなんとか回避した。

 

リール (早速飛ばしてくるんですね…)

オード「これならどうだ!」

 

オードは杖を上に向け、杖先から火玉(ファイダラ)を複数飛ばした。

 

リール「?」

 

リールは上に打ち上がった火玉(ファイダラ)を見ていた。

 

リール (な、何してるんでしょうか…)

オード「降りてきな!」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ!

すると嫌な音を立てて先程の火玉(ファイダラ)が落ちてきた。

 

リール「な!」

 

リールはすぐさま魔法に移った。

 

リール「光速(オーバー・スピード)!」

 

シュゥゥゥ…

リールは黄色い光に包まれた。

 

リール (これで…)

 

ビュンビュンビュン!

リールは魔法を使って身体能力を上げ、火玉(ファイダラ)を避けた。

 

オード「な…速い…」

リール「これで…」

 

リールは杖先をオードに向けた。

 

リール「閃光(フラッシュ)!」

 

シュゥゥゥ!

 

オード「!?」

 

リールは魔法を使って目眩しを行った。

 

オード「ま、眩しっ!」

 

オードは閃光(フラッシュ)の影響を受けてしまった。

 

リール「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

ビュンビュンビュン!

リールは光玉(ライダラ)を飛ばした。

ドカンドカンドカン!

 

オード「ぐあっ…」

 

オードは目眩しと光玉(ライダラ)を受けた。

 

リール (まだまだ…)

 

ビュンビュンビュン!

リールは更に光玉(ライダラ)を飛ばす。

 

オード「くっ…」

 

オードは杖を下に向けた。

 

オード「炎流(ファイアロード)!」

 

ゴォォォォォォォ!

オードが魔法を唱えると、杖先から炎が出てきて炎が天井に向かって噴き出し、光玉(ライダラ)の軌道を変えた。

 

リール「!?」

 

ドゴォンドゴォンドゴォン!

天井に当たった光玉(ライダラ)は爆発した。

 

リール (ずっと目を閉じているのに…凄いですね…)

 

現在オードは閃光(フラッシュ)の影響で目を閉じながら戦っている。

 

リール (ですが…こんなところでは手を抜きませんよ)

 

リールは杖を構えた。

 

リール (私が編み出した魔法…受けてみてください)

 

リールが魔力を高めると周囲に存在するマナが近寄ってきた。

 

オード (!)

 

オードはマナの流れを感じ取った。

 

オード (マナが1ヶ所に集まっている…そこにいるのか…リールさん)

リール (さて…そろそろいきましょうか)

 

マナを集め終えたリールは魔法を放つ準備をした。

 

オード「火だるま(フレイム)!」

リール「!」

 

リールが魔法を放つ前にオードが魔法を使った。

オードの体は火に包まれ、次の瞬間、オードはマナが集まった方向へ一直線に突進した。

 

ボボボッ…ドォォォォォン!

 

リール「!?」

 

その速度は凄まじく、リールは反応できなかった。

 

リール (しまっ…)

 

ドゴォォォォォン!

リールは火だるま(フレイム)に被弾した。

 

スタッ!

オードは綺麗に着地した。

 

オード「あー…やっと目が見えるようになった…」

 

オードは閃光(フラッシュ)による影響から開放された。

リールが火だるま(フレイム)に被弾してからその場に煙が立ち込める。

 

リール「けほっ…けほっ…」

 

リールは煙が立ちこめる中、立ち上がって戻ってきた。

 

オード (さすが…あれを受けて立ってられるなんてな…あれ結構強い魔法だったんだけどなぁ…)

 

ザッザッザッ…

リールは元の位置に戻った。

 

リール「驚きましたよ」

オード「!」

リール「まさか目を閉じたまま突進してくるなんて…」

オード「…」

リール「でも…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥ!

リールの魔力が上昇した。

 

オード「!?」

 

オードは魔力の膨れ具合に驚いていた。

 

オード (なんだ…この魔力…)

リール「私の方が…強かったみたいですね」

オード「!!」

 

オードはリールの背後にあるマナの集合体を目にした。

 

オード (あれはマズイ!)

 

オードはすぐさま次の魔法に取りかかった。

 

オード「核爆発(デューリ)!」

 

キィィィィィィィン…ドゴォォォォォン!

するとリールの足元が急に爆発した。

辺りに煙が立ち込める。

 

オード 「…」

 

オードはその煙をじっと見ていた。

 

リール「…先程言いましたが、聞こえませんでしたか?」

オード「!?」

 

リールはオードの魔法を受けてなおその場に立っていた。

 

リール「私の適性魔法は光属性魔法。光属性魔法には特殊な効果があります。それは…各属性魔法の半減です」

オード「!」

リール「なのでいくら私に属性魔法を放っても全て半分のダメージとなります。さっきから被弾しましたが、それでもまだピンピンしています」

オード「くっ…」

 

オードはリールを睨んでいた。

 

リール (睨んでる…こわっ…)

オード「なら…まだまだやるぜ!」

 

オードは杖を構えた。

 

オード「火玉(ファイダラ)!」

 

ビュンビュンビュン!

オードは火玉(ファイダラ)を多数放った。

 

リール (半減するって言ったのに…)

 

ドゴォンドゴォンドゴォン!

リールは火玉(ファイダラ)に被弾した。

 

オード (…これでもだめか)

 

リールは魔法を受けても倒れる様子がなかった。

 

リール「…もう終わりですか?」

オード「!」

 

リールは攻守交代と言わんばかりにそう言った。

 

リール「もし終わりならこの私が…」

オード「まだまだぁ!」

 

オードは続けて火玉(ファイダラ)を放った。

 

ドゴォンドゴォンドゴォン!

リールは咄嗟の事だったため、被弾してしまった。

 

リール「…」

 

だが、リールはその場に立っていた。

 

オード (…くっ…正直勝てる気しねぇよ…)

リール「…もう終わりですか?」

オード「!」

リール「…もう少しあるかと思ったんですが…」

オード「くっ…」

リール「さて、じゃあ次は私の番ですね」

オード「な!」

 

リールはそう言いながら背後にあるマナの集合体を杖に集めた。

 

リール「この魔法は初めて使いますね。魔女さんに教わったこの魔法。受け取ってください」

 

リールは杖を上に向けた。

 

リール「天の光(リレミト)!」

 

シュゥゥゥ…

すると舞台全体に天の光(リレミト)が展開された。

 

オード「?」

 

オードはリールが放った魔法をじっと見ていた。

 

オード (何かしたのか?)

 

オードはその魔法の効果を知らないため、ただただじっと見ているだけだった。

 

???「…見つけた。そこにいたのね」

リール「よそ見してたら危ないですよ!」

 

リールが杖を構えた。

 

リール「天の鎖(エルキドゥ)!」

 

ジャラララララガシャン!

 

オード「!?」

 

リールが魔法を放った途端、地面に魔法陣が展開され、出てきた鎖がオードを拘束した。

 

オード「くそっ…何だこの鎖は…」

リール「これは相手を拘束する魔法です。光属性魔法の適性者は一律して移動速度が普通の人の比じゃありません。ですがその中でも自身のスピードについていけない人がいたそうです。この魔法はそれを解消するためのものらしいです」

オード「この魔法を使ったところで自分の速度を制御したことにはならないだろう」

リール「ふふっ…正解です」

オード「!」

リール「ただ敵を拘束するだけで自分の速度をコントロールできましたかと言われて 「はい」と答える人はいませんよ」

オード「なら」

リール「ですが…」

オード「…」

リール「拘束してしまえば自分は動かなくてもいいと…そのような考えからこの魔法は生まれたそうですよ」

オード「…さっきからその話し方…この魔法…君の考えた魔法じゃないんだね」

リール「はい。ある書物から学んだ魔法です」

オード「…書物…ね」

リール「まぁ私の場合はこんな魔法使わなくても自分の速度をコントロールできてるので」

オード「…」

リール「…さて、そろそろ終わりにしますか?それとももう少し続けますか?」

オード「…」

リール「…」

オード「…敗者に選ぶ権利はないだろ」

リール「…正解です」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥ…

するとリールの体が光り始めた。

 

リール「じゃあ…ここで終わりにしましょうか」

 

リールはオードに杖を向けた。

 

リール「私と当たったのは運が悪かったですね」

オード「…だな」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥ!

リールの杖に光が集まってきた。

 

リール「…」

オード「…」

男子「オード!」

オード「!」

男子「負けんじゃねぇ!お前ならいける!勝てるぞ!」

男子「そうだ!お前ならやれる!そんな鎖引きちぎってしまえ!」

オード (無茶言うなよ…)

男子「お前はこんな負け方悔しくないのか!俺は絶対悔しいぞ!」

オード (んな事言ってもどうすればええねん)

リール「…何もしないんですか?」

オード「…あぁ。勝ち目が無い」

リール「…潔いですね」

オード「…負け戦に勝ちの道筋を作れない自分の恥だ」

リール「…そうですか」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥ!

光はさらに大きくなる。

 

リール「では…」

男子「オード!」

オード「…」

 

ガコン!

 

リール「!!」

オード「?」

男子「!」

スカーレット「!」

アンナ「!」

 

妙な音とともに天井に穴が空いた。

 

リール「な…なに…」

オード「…おい。やらないのか…」

 

オードは何が起こったのかよく分かっていなかった。

 

???「…ごきげんよう」

リール「!」

 

すると空いた天井の穴から一人の女性が降りてきた。

 

オード「な…なんだ…この気配…」

 

オードは鎖に繋がれながらも気配を感じた。

 

リール「…」

 

リールや他の生徒たちは何も言わずにただじっとその女性を見ていた。

 

スタッ

その女性は舞台に降り立った。

 

???「…」

 

その女性は辺りを見渡す。

 

リール (何この人…すごい魔力…魔女さん…あるいはそれ以上…)

???「あら…少し目立ちすぎましたか?」

リール「…」

???「まぁいいでしょう。ようやく特定できたんですから。このまま持ち帰らせていただきますね」

 

クルッ…コツコツコツ

その人は振り向いてリールの方へ歩き出した。

 

ザッ…

そしてリールの目の前で止まった。

 

リール「!」

???「…あなた、ある人の魔力にそっくりですね」

リール (ある人の魔力…もしかして…魔女さん…)

???「久しぶりですね。あの時感じた魔力とは少し違いますが、それでも一致率は93%。最初に感じた時はあの人かな?って思いましたよ」

リール「…あなたは誰ですか」

???「あ、そっか。私とあなたは初めてお会いしますね。分かりました。私の名前は」

???「…エレナと申します」

リール「エレ…ナ…」

ジーヴル先生「エ、エレナ…だと…」

男子「先生!エレナって誰のことですか?」

ジーヴル先生「…」

男子「先生!」

 

ジーヴル先生はエレナと名乗る女性を睨んでいた。

そう。恨みを持っているかのように。

 

エレナ「さて、私は名乗りました。あなたのお名前はなんて言うんですか?」

リール「わ、私は…リー…」

エレナ (ふふっ…)

ジーヴル先生「待て!答えるな!」

リール「!!」

 

リールが答えようとした時、ジーヴル先生が大声で止めた。

リールはそれに驚いて言葉を止めた。

 

エレナ「…」

リール「せ、先生…」

ジーヴル先生「絶対に答えるな!今すぐそこから逃げろ!早く!」

リール「で、でも…逃げろって言われても…」

ジーヴル先生「どこでもいいから!とにかくここを離れてくれ!」

リール「は、はい!」

 

リールはオードにかけた天の鎖(エルキドゥ)を解いてそこから走って逃げた。

 

男子「せ、先生…」

ジーヴル先生「ここにいる全員に警告!この人に自分の名前を明かすな!明かしたら最後、こっちに戻って来れなくなると思え!いいな!」

 

ジーヴル先生は大声で警告した。

 

ジーヴル先生「出席番号3番!舞台から降りてその人から離れろ!早く!」

オード「は、はい!」

 

オードは舞台から降りてその場をあとにした。

 

ジーヴル先生「残りの生徒も非常用の扉から脱出!今すぐ教室に向かえ!」

男子「せ、先生…」

ジーヴル先生「早く!」

男子「おいみんな!行くぞ!」

女子「先生!」

ジーヴル先生「早く行け!」

女子「…はい!」

 

そして残りの生徒も移動し始めた。

 

ジーヴル先生 (なぜ…この人が…今ここに…)

 

ジーヴル先生は生徒の声も聞かないほどに焦っていた。

 

エレナ「…何のつもりですか?」

ジーヴル先生「何のつもりって…ただ逃がしただけだよ」

エレナ「…なぜ?」

ジーヴル先生「お前…自分が過去に何したか覚えてないのか…」

エレナ「…」

 

エレナはずっとジーヴル先生を見ていた。

 

ジーヴル先生「ここでみんなを死なせるわけにはいかない。先生として、ここを守る」

エレナ「…御大層ですね」

 

ビュン!

 

ジーヴル先生「!!」

 

エレナはその場から移動し、第1魔法戦闘室から出ようとした生徒に向かった。

 

エレナ「さっきの子を持って帰れたら良かったんですが、もう誰でもいいです。1人でも持って帰れたらそれでいいです」

 

ビュン!

 

アンナ「え…」

 

エレナはアンナの目の前に現れた。

 

エレナ「あなた…面白い魔力を持ってますね。ぜひ私に…」

ジーヴル先生「(プレス)!」

 

ブォォン!

ジーヴル先生がエレナに向かって魔法を使った。

 

ギギギ…ギギギギギ…

エレナはその圧に押し潰されようとしていた。

 

ジーヴル先生「早く逃げろ!」

アンナ「は、はい!」

スカーレット「アンナ!早く!」

アンナ「はい!」

エレナ「そう。あなた…アンナって言うのね」

アンナ「!」ドクン

 

アンナは突然心臓が握り潰されるような感覚に襲われた。

 

アンナ「ぐっ…あぁ…」

スカーレット「アンナ!」

 

スカーレットはアンナに声をかける。

 

スカーレット「アンナ!どうしたのよ!アンナ!」

ジーヴル先生「名前を言うな!」

スカーレット「!!」

 

スカーレットはこの時、自分がアンナの名前を呼んでいることに気づいた。

 

スカーレット「しまっ…」

ジーヴル先生「早く行け!ここは先生が止めるから!」

スカーレット「は、はい!…立てる?」

アンナ「…うん。立てる…」

スカーレット「ごめん…私のせいで…」

アンナ「大…丈夫…」

 

スカーレットとアンナはゆっくりではあるが、その場から離れた。

 

エレナ「…可哀想に」

ジーヴル先生「お前…」

 

ギギギギギ!

ジーヴル先生はさらに圧を強くした。

 

エレナ「…」

ジーヴル先生「もう二度と…生徒に触れさせない!」

エレナ「…守れなかったね。生徒を」

ジーヴル先生「くっ…」

 

ギギギギギ!

ジーヴル先生はさらに圧を強くした。

 

エレナ「いいの?そんなに魔力を使って」

ジーヴル先生「お前には関係ない!」

エレナ「関係ありますよ。魔力が無くなったら誰がさっきの人たちを守るんですか?」

エレナ「ジーヴル先生…」

 

ズシャッ!

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…教室

 

男子「はぁ…はぁ…」

男子「やっと教室に…ついた…」

女子「みんないる!?大丈夫!?」

女子「スカーレットとアンナがいない!」

女子「リールさんも!」

男子「オードもだ!」

女子「オードとリールさんは別で逃げてるから大丈夫。でも、アンナと委員長が…」

 

みんなが教室にずっといると…

 

ガラッ!

教室の扉が開いた。

 

スカーレット「みんな…アンナをお願い…」

女子「委員長!」

男子「委員長!」

 

するとみんなはアンナとスカーレットのところに集まった。

 

女子「委員長!アンナはどうしたの!?」

スカーレット「…私のせいでさっきの人に名前を知られちゃった…」

全員「!?」

 

その場の全員が声を出さなかった。

 

スカーレット「私は今からさっきの人をやっつけてくる…アンナがこんなに苦しんでるのは自分のせい…その落とし前はつけないと…」

男子「でも!先生はここにいろって!」

スカーレット「それでも!」

ラーフ「おや、みなさん。どうかされましたか?」

男子「!!」

女子「!!」

 

するとそこにレヴィ学院長と一緒にいるラーフがいた。

 

ラーフ「随分とお疲れですね。魔法の実技でしたか?」

女子「先生!」

ラーフ「はい。何ですか?」

女子「あの…第1魔法戦闘室に変な人がいます!」

ラーフ「変な人?」

女子「はい!」

男子「突然天井に穴が空いてそこから女性が降りてきたんですよ!」

ラーフ「人…天井…穴…?」

女子「はい!」

ラーフ「その人の名前か特徴は知っていますか?」

女子「ジーヴル先生がその人に名前を明かすなって言ってました!」

ラーフ「名前を明かすな…って…まさか…いや…しかし…」

 

ラーフは嫌な予感がした。

 

男子「その女性はエレナって名前の人でした!」

ラーフ「エ…エレナ!?」

 

ラーフの嫌な予感が的中した。

 

ラーフ「な、なぜ…あの人が…ここに…」

女子「先生!エレナって誰のことですか!」

ラーフ「…」

女子「先生!」

ラーフ「…彼女は…」

ラーフ「ここ、エレナ学院の最初の学院長だった人です。そして、この国を破壊の道へ導いた人でもあります」

女子「え…」

男子「え…」




〜物語メモ〜

登場した魔法

火属性魔法:火玉(ファイダラ)
オードが使った魔法。
火の玉を作り出し、それを相手に放つ魔法。

火属性魔法:炎流(ファイアロード)
オードが使った魔法。
炎を操り、敵の飛び道具の軌道を変える魔法。
水と土属性魔法の軌道を変えることはできないが、それ以外の魔法の軌道を変えることができる。

火属性魔法:火だるま(フレイム)
オードが使った魔法。
自身を炎で包み、相手に突進する魔法。
魔法の部分は炎を纏うところだけで、突進するのは物理攻撃となる。

火属性魔法:核爆発(デューリ)
オードが使った魔法。
相手の足元に魔法陣を展開し、爆発を起こす魔法。
だだの爆発とは桁違いのダメージとなる。
ただし、リールは光属性魔法の適性者のため、ダメージが半減する。

光属性魔法:天の光(リレミト)
リールが使った魔法。
使えば辺りに光が差し込む。
これは自覚症状が無いまま徐々に相手の体力を削る魔法。
使うには大量の魔力とマナが必要になる。

光属性魔法:天の鎖(エルキドゥ)
リールが使った魔法。
使えば相手の周囲に魔法陣が展開され、相手を拘束する魔法。
攻撃力ははいが、相手を拘束するため、魔法を当てやすくなる。

土属性魔法:圧(プレス)
ジーヴル先生が使った魔法。
地面に磁場を発生させて相手を圧空間に閉じ込める魔法。
魔力の量によって圧の強さが変化する。


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第20話 リールと魔女さんの行方

私の名前はリール。

今は第1魔法戦闘室から離れたところにいます。

突如現れた女性から逃げろとジーヴル先生に言われたからです。

まだ学校の敷地内にいますが、結局どこに行ったらいいのか分かりません。

みんなはどうなったんだろうと…今は心配です。

あ、ちなみになんですが、私の対戦相手だったオード君は私の隣にいます。

逃げていたところに鉢合わせたので2人で身を隠すことにしました。

いつまでこのままいないといけないのか…不安で仕方ありません。

アンナとスカーレット…2人はどうなったのでしょうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィン!ドゴォォォォォン!

 

ジーヴル先生「ぐっ…」

エレナ「…まだ立つんですか。案外タフなんですね?ジーヴル先生?」

ジーヴル先生「へっ…それだけが取り柄なんでね…」

エレナ「…確かあなたには魔法の戦闘に関することを教えるよう私が命じましたね。今もされてるんですか?」

ジーヴル先生「えぇ…お陰様で」

エレナ「そうですか。それは良かったです」

ジーヴル先生「…なぜ…今になって戻ってきたんですか…元学院長…」

エレナ「…元学院長とは言い方がなってませんね?」

ジーヴル先生「…」

エレナ「…実は、ある人からある情報を入手したのです」

ジーヴル先生「ある人…」

エレナ「はい。私と同じ属性魔法の適性者である…リーナという人物です」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院 校庭

 

リール「まだ…誰もいない…」

オード「どうするんだリール。このままだと」

リール「大丈夫です。光属性魔法に適性がある人は周囲の人間を察知する能力があります」

オード「さ、察知…」

リール「はい。私は誰かがここを通ればその人が誰なのかが分かります」

オード「すげぇ…」

リール「…私もこの能力があることは知りませんでしたよ」

オード「え…」

リール「…学院長さんに教えていただいたのです。こういう特殊な能力があるよって」

オード「そういえばリールは突然この学院に転入してきたよな。しかも2学年に」

リール「はい」

オード「この学院は歳に関係なく魔法の勉強をしている。だからクラスに歳の離れた人がいるのは珍しくない」

リール「…」

オード「転入してきた人はリール以外にもたくさんいる。その人たちは一律して1学年からだ。でもリールだけ違った」

リール「…」

オード「…それは何故?」

リール「……そうですね。私がここに来たのはある人が家を空けているからです」

オード「ある人?」

リール「はい。私はここに来る前はある人の家に住まわせてもらっていました。その人は私がその家に住まわせてもらってる間、私に魔法を教えてくれました。私のお師匠様なんです」

オード「リールの…お師匠様…」

リール「はい。その人はとても知的で優しくて私を最後まで見てくれていました。……ですが、その人はある事情で家を空けることになったのです」

オード「それで…ここに?」

リール「…はい。私が元いた家にいると危険だと言われたので、ここの学院長さんが私をこの学院に転入させました」

オード「…」

リール「何故2学年からなのかは知りません。ですが、魔女さんは学院長さんに私を守るよう頼んでいたそうなんです」

オード「なに…誰かに追われてるの?」

リール「分かりません。ですが、魔女さんは危険だと…それだけ言って家を空けました。その後私はこの学院に転入しました」

オード「その魔女さんって人がリールのお師匠様?」

リール「はい。そうです」

オード「名前は?」

リール「…分かりません」

オード「…え?」

リール「…私はその人と1年半一緒に暮らしました…ですが、魔女さんの名前を知る機会はありませんでした」

オード「一度も?」

リール「はい。一度も」

オード「…すごいな…」

リール「…」

オード「リールが光属性魔法なのはなにか理由があるのか?」

リール「…分かりません」

オード「…そうか」

レヴィ「光属性魔法というのは相反する闇属性魔法の抑止力として働くのですよ」

オード&リール「!?」

 

オードとリールの2人で話しているところにいきなりレヴィ学院長が現れた。

 

オード「が、学院長…」

リール「闇属性魔法の抑止力って…どういう事ですか?」

レヴィ「リールさん。あなたの適性魔法である光属性魔法…この属性魔法の特性は知ってますか?」

リール「えっと…他の属性魔法の威力を半減させる…」

レヴィ「そうですね。ですが厳密には半減させるのではなく相手が放った魔法の半分の威力しか受けないだけなんです」

オード「…?」

レヴィ「相手が10の威力で放った魔法は光属性魔法の適性者には5の威力しか伝わらないんです」

オード「残りの5の威力はどこにいくんですか?」

レヴィ「どこにもいきませんよ」

オード「?」

レヴィ「実際には10の威力は受けていますが、()()()()5の威力しか伝わらないだけです」

オード「じゃあ10の威力を与えるにはこちらが20の威力でぶつけないとダメということですか?」

レヴィ「そういうことです」

オード「だからあの時全然倒れなかったのか…」

リール「あ、あはは…」

レヴィ「ではその反対…闇属性魔法の特性は知ってますか?」

リール「えっと…他の属性魔法を倍の威力で受けてしまう…ということでしょうか」

レヴィ「正解です。では、光属性魔法に有効な属性魔法は何ですか?」

リール「や、闇属性魔法でしょうか」

レヴィ「正解です。では闇属性魔法に有効な属性魔法は何ですか?」

リール「ひ、光属性魔法…」

レヴィ「正解です。このように、光属性魔法と闇属性魔法は互いに有効であるが故に互いを抑制する力として働きます」

オード「え、光属性魔法って闇属性魔法しか意味ないんですか?」

レヴィ「はい。そうです」

オード「じゃ、じゃあ…この模擬試合って…最初からリールの優勝になるんじゃ…」

レヴィ「あ、有効とは言いましたけど全く受けないわけではないんですよ」

オード「でも倒すには2倍の威力で魔法を使わないといけないんですよね?」

レヴィ「はい」

オード「でもそんな威力の魔法を放つほど魔力がある訳じゃないし…」

レヴィ「そうですね。学生の間はそこまで大きな魔法を放つほどの魔力を持っていません」

オード「ということは俺たちがリールに勝つことって…」

レヴィ「はい。ほぼ不可能ですね」

オード「な…」ドヨ〜ン

 

オードはそれを聞いて落ち込んだ。

 

レヴィ「さて、話を戻しましょうか」

リール「あ、はい」

レヴィ「光属性魔法と闇属性魔法は互いに抑止力として働きます。そしてリールさんはその内の光属性魔法に適性がありました」

リール「はい」

レヴィ「ですが本来、光属性魔法は闇属性魔法がいないと成り立たない魔法なんですよ」

リール「え?」

レヴィ「光属性魔法が存在できるのは闇属性魔法が存在しているからです。その逆も然り」

リール「ど、どういう事でしょうか」

レヴィ「…光属性魔法の適性者の数だけ闇属性魔法の適性者がいるということです」

リール「でも…今まで闇属性魔法を使った人なんて…あ!」

レヴィ「…分かりましたか?」

リール「ま…魔女さん…魔女さんは…全属性の魔法を使うことが出来る…」

レヴィ「…正解です」

リール「…」

レヴィ「あの方はあなたの持つ光属性魔法の相反する力を持つ闇属性魔法を使うことができます」

リール「そう…だったんだ…」

レヴィ「ちなみにひとついいことを教えてあげます」

リール「?」

レヴィ「その人の適性魔法を決めるのはあなたの体ではなく、それを実行する上で近くにいる人に有効な属性魔法が適性として選ばれます」

オード「じゃあ光属性魔法に適性があるリールの近くには闇属性魔法を使う人がいたってことですか?」

レヴィ「はい。それが魔女さんですね」

リール「な…なるほど…」

レヴィ「さて、私はそろそろ行きましょうか」

リール「あ、あの!」

レヴィ「はい」

リール「魔女さんは…魔女さんは今…何処にいるんですか?」

レヴィ「………さぁ、どこにいるんでしょうね」

 

スタスタスタ

レヴィ学院長はその場を去った。

 

オード「リール?」

リール「魔女さん…」

 

リールの目から涙が出ていた。

 

オード「…」

 

ギュッ…

オードはリールの手を握った。

 

オード「俺がいてやるから、泣きたきゃ泣け」

リール「うぅ…」

 

リールは少しの間、そこで泣いた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…第1魔法戦闘室

 

エレナ「さてジーヴル先生?もう限界なんじゃないですか?」

ジーヴル先生「はぁ…はぁ…」

 

ジーヴル先生はずっと魔法を使っていたため、魔力が尽きかけていた。

 

エレナ「…あなたは持久力だけ無いんですから無理しない方がいいですよ?」

ジーヴル先生「だが…あなたをここから逃がせば生徒たちに被害が出る…」

エレナ「…そもそもの話、なぜ私があの子たちに攻撃すると思ったんですか?」

ジーヴル先生「…あなたは…過去に何百人もの人間を殺しました…今回も同じようなことになるかもしれないと…そう踏んだだけです」

エレナ「面白いですね」

ジーヴル先生「はぁ…はぁ…」

エレナ「じゃあ………そうしましょうか」

ジーヴル先生「!!」

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴゴ…

 

ジーヴル先生「な…」

 

エレナは膨大な魔力を使った。

 

エレナ「ではまずは、あなたを倒すところから始めましょうか」

ジーヴル先生「そんなこと…」

ラーフ「全てを凍てつかせる冷気(コキュートス)!」

 

キィン!ガキン!ガキン!ガキン!

突然地面から氷が出現した。

 

ジーヴル先生「!?」

エレナ「…」

ラーフ「ジーヴル先生!大丈夫ですか!?」

ジーヴル先生「ラ、ラーフ先生…どうしてここに…」

ラーフ「生徒からの助けを聞いて来ました」

ジーヴル先生 (あの子たち…)

エレナ「あら、新しい人がいますね」

ラーフ (あの人がエレナ…エレナ学院創設者…)

エレナ「私はエレナといいます。以後、お見知り置きを」

ラーフ「…」

エレナ「あら、あなたは名乗らないのですか?」

ラーフ「…」

 

ラーフは一向に口を開こうとしなかった。

 

エレナ「…失礼な人ですね?ジーヴル先生」

ジーヴル先生「へっ…当たり前でしょ…」

エレナ「挨拶が出来ない人が当たり前だなんて…この学校も落ちぶれましたね?先生」

ラーフ「ジーヴル先生。ここは私が…」

ジーヴル先生「大丈夫です…先生は生徒たちを守ってください」

ラーフ「ですが…」

ジーヴル先生「大丈夫です」

ラーフ「…分かりました。ですが、ここで何もしないで帰るつもりはありません」

ジーヴル先生「え…」

 

ザッ…

ラーフはエレナを見た。

 

ラーフ「…せめて、ここにいる人を倒してからにしますね」

ジーヴル先生「ま、待って!」

ラーフ「氷塊(アイスブロック)!」

 

ガキン!ガキン!ガキン!

ラーフは次々と氷塊(アイスブロック)を出現させ、エレナに向けて放った。

 

エレナ「氷属性魔法ですか。意外ですね」

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴゴ…

エレナは魔力を使った。

 

エレナ「爆淵(バルザ)

 

キィン!ドゴォォン!

すると、ラーフが放った氷塊(アイスブロック)が粉々に砕けた。

 

ラーフ「な…」

エレナ「ここの先生は適性魔法について教えないんですか?例えば……相手に対する有効な属性魔法とか」

ジーヴル先生「ラーフ先生!あの人は闇属性魔法を使います!なので氷属性魔法よりも光属性魔法の方が…」

エレナ「遅いですよ」

 

パチン

エレナは指を鳴らした。

 

ブゥン!

すると、ジーヴル先生とラーフの足元に魔法陣が展開された。

 

ジーヴル先生「な…」

ラーフ「なんだこれは…」

エレナ「さようなら」

 

エレナは魔法を使った。

 

エレナ「奈落(アヴァドン)

 

ギュォォォォォォ!

 

ジーヴル先生「な!?」

ラーフ「なに!?」

 

するとジーヴル先生とラーフはその魔法陣に吸い込まれていった。

 

ヒュゥゥゥゥゥ…

辺りには何も残らなかった。

 

エレナ「さ、2人片付いたので探しに行きましょうか。"最後の光属性魔法の適性者"を」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…???

 

???「久しぶりに出てきたね。何年ぶりだろうか」

???「なぜあいつが出てきた…消えたはずだろう?」

???「そうですね。消えたはずでした」

???「どうして…」

???「だが消したのはあいつだ」

???「あいつ…あぁ…あの人のことですか」

???「そう。あの時あの女を消したあいつ」

???「あの時なんて呼ばれてましたっけ?」

???「狂気の魔女だね」

???「あーそうそう!そんな感じだったね」

???「てかそもそも今の状況マズくないか?」

???「あぁ。非常にマズイ」

???「計画が台無しになる…」

???「何十年もかかってようやく遂行できるくらいにまでいったんだ。ここで計画破綻は絶対ゴメンだぜ」

???「あぁ。分かっている。だからこれからは慎重にならないといけない。みんな、各自やることやって気づかれないようにしよう」

???「だな」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院 校庭

 

リール「ねぇオード君」

オード「な、なんだよ…」

リール「そろそろ手…離して?」

オード「あ、わりぃ!」

 

オードは慌てて手を離した。

 

リール「…」

オード「…なんか気になることでもあんのか?」

リール「…うん。魔女さんのこと」

オード「お前のお師匠様だったな」

リール「うん…魔女さん…今どこにいるんだろって…」

オード「学院長も知らなそうだったな」

リール「うん…魔女さん…」

オード「…」

 

オードはどういう言葉をかけようか考えていた。

 

オード「なぁリール」

リール「?」

オード「…俺がそばにいてやっからよ…その…なんかあったら言えよ」

リール「え、どうしたの…急に」

オード「…人が落ち込んでるのを見るのは苦手なんだ。笑って欲しい」

リール「!」

オード「…」

リール「…うん。また何かあったら言うね」

オード「あぁ」

リール「あ、そうだ。誰か来てないか見張らないと!」

エレナ「おや?」

リール&オード「!!」

 

突然背後から声が聞こえた。

 

エレナ「こんなところにいたなんてね?」

 

そこにいたのはエレナだった。

 

リール「あ、あなたは…」

 

ザッ!

 

リール「!」

 

オードがリールの前に立った。

 

エレナ「あなた…なに?」

オード「リール!今すぐここから離れろ!」

リール「え…」

オード「早く!」

リール「えっと…ごめん!」

 

タッタッタッ!

リールはオードに言われた通りその場から逃げた。

 

オード「…」

エレナ「あら?正義のヒーローかしら?」

オード「…いいや、違うね」

エレナ「?」

オード「正義の魔法使いさ!」

 

オードは杖を構えた。

 

オード「覚悟しな!俺が倒してやらぁ!」

エレナ「…勇敢ね〜」

オード「火玉(ファイダラ)ー!」

 

エレナ「…ふふっ」

 

キィン!ドゴォォン!

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院 廊下

 

レヴィ「ラーフ!ラーフ!どこにいるんですか?ラーフ!ラーフ!」

 

レヴィ学院長はラーフを探していた。

 

女子「レヴィ学院長!」

レヴィ「!」

 

レヴィ学院長はある生徒に呼ばれた。

 

レヴィ「はい。なんですか?」

女子「あの…この子を治してくれませんか!」

レヴィ「!!」

 

その生徒が指さしたのはアンナだった。

 

レヴィ「こ、これって…」

女子「この子が体調を悪くしてから少し時間が経って変な模様が出てきたんです!」

 

アンナの顔には妙な黒い線があった。

 

レヴィ「この模様…まさか…」

 

レヴィ学院長はひとつの仮説を立てて生徒に質問した。

 

レヴィ「この子は誰かに攻撃されたのかい?」

女子「委員長が言うには攻撃されたそうなんです!」

レヴィ「誰に攻撃されたんだい?」

女子「変な女の人です!」

レヴィ「変な女の人?」

女子「はい!エレナという名前の人です!」

レヴィ「!?」

 

レヴィ学院長はエレナという名前に反応した。

 

男子「実は少し前にラーフ先生にも同じ話をしたんです!そしたらラーフ先生は第1魔法戦闘室に向かいました!」

レヴィ「ラーフ…」

女子「レヴィ学院長!この子を治してください!」

レヴィ「あ、あぁ。任せて」

 

ポワァン…

レヴィ学院長の手から黄色い光りが落ちてアンナの体の中に入った。

 

スゥ…

すると、アンナの顔にあった妙な黒い線は消えていった。

 

レヴィ「さ、これで大丈夫だよ」

女子「ありがとうございます!」

レヴィ「それで、委員長はいるかい?」

女子「実は委員長もエレナという人を倒すと言って部屋を出ました!」

レヴィ「な…」

 

レヴィ学院長は嫌な予感がした。

 

レヴィ「みなさんはこの教室から出ないでください!私が何とかします!」

生徒たち「はい!」

レヴィ「じゃあ私は行きますね!」

リール「先生ー!」

レヴィ「!」

 

声のした方を見ると、リールが廊下を走っていた。

 

女子「リールちゃんだ!」

女子「リールちゃーん!」

男子「リール!」

 

タッタッタッ!ザザッ!

リールはレヴィ学院長の前で止まった。

 

リール「先生!助けてください!」

レヴィ「何があったんですか!」

リール「オード君がある女性から私を逃がそうと盾になってくれたんですが私たちじゃどうにもならないとジーヴル先生が言っていたので先生に言いに来ました!」

レヴィ「分かりました。今すぐ行きます。リールさんはこの教室に残ってください。では」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

レヴィ学院長は空を飛んだ。

 

リール「オード君…」

女子「リールちゃん!アンナちゃんが!」

リール「!」

 

リールはアンナのところに行った。

 

リール「アンナ!アンナ!しっかりして!アンナ!」

アンナ「…」

 

アンナは返事をしなかった。

 

リール「なんで…アンナが…」

女子「委員長があの人の前でアンナの名前を言っちゃったらしいの…」

リール「!!」

女子「だからアンナはこんな状態に…」

男子「さっきまでは顔に黒い線があったけど、レヴィ学院長に取ってもらったんだ」

リール「アンナ…」

 

リールはこの時、あることに気づいた。

 

リール「そ、そういえばスカーレットは!?スカーレットはどこ!?」

女子「…委員長もこの部屋を出たよ…あの人を倒しに行くって言って」

リール「!!」

 

ダッ!

 

女子「リールちゃん!」

 

リールはすぐに教室を出てスカーレットを探しに行った。




〜物語メモ〜


登場した魔法

氷属性魔法:全てを凍てつかせる冷気(コキュートス)
ラーフが使った魔法。
周囲を一瞬で凍らせる魔法。
耐性がない人は一瞬で身動きが取れなくなる。
おまけに体温も一瞬で下がるので活動性が下がる。

氷属性魔法:氷塊(アイスブロック)
ラーフが使った魔法。
使えば頭上から氷塊が落ちてくる。

?属性魔法:爆淵(バルザ)
エレナが使った魔法。
対象物を爆破させる魔法。
発動から攻撃までの時間が短いため、魔法を聞いてから避けるのは困難。

?属性魔法:奈落(アヴァドン)
エレナが使った魔法。
魔法陣の上にいる人を魔法陣内に引きずり込む魔法。
引きずり込まれると脱出は困難となる。
ちなみにこの魔法は相手の攻撃魔法も引きずり込むことができる。


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第21話 リールと誰かの記憶

私の名前はリール。

今スカーレットを探しています。

オード君が私の身代わりになってくれたおかげで私はレヴィ学院長に事を知らせることが出来ました。

レヴィ学院長はすぐに飛んで向かってくれました。

私はその時、アンナの異変を知り、アンナの安否を確認したあとスカーレットを探しに行くことになりました。

ですがスカーレットは全然見つかりません。

今箒に乗って探しているので早く見つかると思ってたんですが…

その他にオード君も心配です。

今レヴィ学院長が向かってくれているので大丈夫だとは思いますが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エレナ「…さて、まだやりますか?正義の魔法使いさん?」

オード「ぐっ…」

 

オードはエレナと戦闘していたが、一方的にやられていた。

 

オード (こいつ…魔力が強い…しかも魔法の威力も…)

エレナ「あなた」

オード「!」

エレナ「…この程度の魔力で私と戦うことを選ぶなんてね」

オード「へっ…女の子が怖がってたんだ…守るのが男の仕事だろ…」

エレナ「…私も女ですよ?なのにあなたは手を上げるんですか?」

オード「怖がらせてたのはお前だろ…」

エレナ「…そうですね。ですが、私も女ですよ?」

オード「…」

エレナ「それにあなた、ジーヴル先生から逃げろと言われていませんでしたか?大丈夫なんですか?私と対峙して」

オード「守るためだ…仕方ないだろ」

エレナ「ふぅーん。でも守るあなたがこのザマじゃねぇ?」

オード「くっ…」

エレナ「あ、ちなみになんですが、私はあなたを倒したあとこの学校を破壊しますのでそのつもりで」

オード「!!」

エレナ「あなたが守ると決めたあの子を生かしたいなら私を倒してみなさい」

オード「…言われずとも」

 

ヒュッ!

オードは杖を構えた。

 

エレナ「さ、やりましょうか。あなたがボロボロになる様を見せてくださいね」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院 廊下

 

タッタッタッ

私は走っていた。アンナを苦しめたのは私。この落とし前はちゃんとつけないと…

 

キィン!ドゴォォン!

 

スカーレット「!!」

 

近くで大きな音が鳴った。

 

スカーレット「あそこね」

 

タッタッタッ

 

私は音が鳴った方へ走った。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院 校庭

 

キィン!ドゴォォン!

 

スカーレット「!!」

 

私がそこに着くと、ある男子生徒と私が探していた人が戦っていた。

 

スカーレット「見つけた」

 

タッタッタッ

私はその女性のところに向かった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院 校庭

 

キィン!ドゴォォン!

 

オード「ぐぁっ…」

 

ドサッ…

オードは傷を負い、その場に倒れた。

 

オード「ぐっ…いてぇ…」

 

ザッザッザッ

 

オード「!」

 

エレナはオードの目の前に立った。

 

エレナ「あらあら。無様ねぇ」

オード「…」

エレナ「このままだと私がこの学校を破壊しちゃいますよ?いいんですか?」

オード「ぐっ…」

 

オードはゆっくり立ち上がった。

 

オード「はぁ…はぁ…」

エレナ「はい。よくできました。じゃあさようなら」

 

ブゥン!ドシーン!

 

オード「がああああああ!」

 

オードが立ち上がった瞬間、凄まじい圧力がオードを襲った。

疲れきっていたオードは抗うことができずにそのまま地面に叩きつけられた。

 

エレナ「あらあら。可哀想に」

 

ジジジ…バリバリバリ!

エレナは魔力を使った。

 

エレナ「さ、今すぐ楽にしてあげるわね。正義の魔法使いさん」

 

ゴゴゴゴゴゴゴ!

エレナの魔力はどんどん膨れ上がる。

 

エレナ「さような…」

スカーレット「雷玉(サンダラ)!」

 

ドン!ドン!ドン!

エレナが魔法を使おうとした時、スカーレットの魔法が命中した。

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

するとエレナの魔法が解除された。

 

エレナ「…?」

 

エレナは辺りを見渡す。

 

スカーレット「やっと見つけたわ…」

エレナ「!」

 

するとエレナの背後にスカーレットが立っていた。

 

スカーレット「よくもアンナを…」

エレナ「アンナ…あぁ、あの子の事ね」

スカーレット「私があなたを倒してやる…」

エレナ「…あなた、この人が見えないの?」

 

エレナはオードを指さした。

 

スカーレット「!!」

 

スカーレットはその時、オードが傷だらけで倒れているのを視認した。

 

エレナ「あなた、この人と同じ目に遭いたいの?」

スカーレット「…あなた」

エレナ「…?」

スカーレット「私のクラスメイトに…」

エレナ「…」

スカーレット「何やってるのよ!」

 

ジジジ…バリバリバリ!

スカーレットの体に電気が走る。

 

エレナ「…さっきの魔法といいその纏ってるものといい…あなたは雷属性魔法に適性があるのですね」

スカーレット「そんなの関係ないわ!今すぐあなたを倒してやる!」

エレナ「…できるものならどうぞ。ちなみに、私はあんな泥人形とは訳が違うわよ」

スカーレット「泥人形って何よ!」

エレナ「あら、ジンに教わらなかったのですか?私が作った自律戦闘型魔法泥人形のこと」

スカーレット「…」

エレナ「確かあの人の名前はジン・スカーレットじゃありませんでしたか?」

スカーレット (お父さんの名前だ…)

エレナ「あなたがスカーレットと呼ばれていたのであの人の娘さんなのかなと思ったのですが」

スカーレット「…」

エレナ「…知りませんか?」

スカーレット「…知らないわよ」

エレナ「そうですか。ならどうでもいいです。あなたも痛い目を見たいなら戦ってあげますよ」

スカーレット「痛い目見るのはあなたの方よ!」

 

スッ

スカーレットは杖を構えた。

 

スカーレット「放電(マギダラ)!」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院 廊下

 

リール「スカーレット…どこにいるんでしょうか…」

 

リールは箒に乗ってずっと学院中を飛び回っていた。

 

リール「!!」

 

すると、1学年の教室に着いた。

 

リール「…」

 

リールは屈んで教室の中を覗いた。

すると何人か教室にいた。

 

リール「スカーレットはいない…ですね」

 

リールはスカーレットがいないことを確認すると立ち上がって箒に乗った。

 

女子「あの…」

リール「!!」

 

するとリールの背後から1学年の女子生徒が声をかけてきた。

 

女子「何か御用ですか?」

 

その子はとても静かそうな子だった。

 

リール「あ、いえ、なんでもありませんよ」

女子「そうですか。分かりました」

リール「それでは…」

 

リールが移動しようとした時…

 

女子「あ、あの!」

リール「!」

 

リールは突然止められたので驚いた。

 

リール「はい。なんですか?」

 

リールは振り返ってそう聞き返した。

 

女子「あの…先輩…ですよね…」

リール「あーえっと…学年的にはそうですが、厳密にはあなたと変わりありませんよ」

女子「え、それってどういう…」

リール「すみません!私急いでいるので!」

 

リールはその場をあとにした。

 

女子「学年的にはそうだけど、厳密には私と変わりない…どういう事なんだろ…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院 廊下

 

リール「ふぅ…さて、スカーレットを探さないと…」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

リールは箒の移動速度を上げた。

 

リール (スカーレット…スカーレット…)

 

リールはスカーレットを見落とさないようしっかり確認した。

 

リール「どこにもいない…どこ行ったんだろ…」

 

しばらく飛んでいると前から人影が見えた。

 

リール (あ!見つけた!)

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

リールは一目散にその人影に向かった。

 

 

リール「やっと見つけましたよスカーレッ…ト…」

エレナ「あら?」

リール「!!」

 

そこにいたのは第1魔法戦闘室にいた女性だった。

 

エレナ「あら、あなたあの時の」

リール「なんで…ここに…」

エレナ「さぁ?なんででしょうね?」

リール「あの子は…オード君は…」

エレナ「あぁ。あの男の子はオードって言うのね」

リール「!!」

 

リールはついオードの名前を言ってしまった。

 

エレナ「あの子なら今怪我してますよ」

リール「!!」

エレナ「正義の魔法使いだって言ってあなたを逃がすために奮戦してましたよ」

リール「そんな…じゃあ…」

エレナ「はい。あなたの思っている通りですよ」

リール「!」

 

リールは嫌な予感がした。

 

エレナ「あ、そうそう。そういえばあの場に来たのはあの男の子だけじゃないのよ」

リール「!」

エレナ「雷属性魔法を使う…」

リール (え…それって…)

エレナ「女の子も来てたんですよ」

リール「!!」

 

リールは一瞬でスカーレットだと悟った。

 

エレナ「あの子もオードという男の子と一緒に寝てますよ。ボロボロになってね」

リール「…」

 

リールはスカーレットとオードがやられたことを確信した。

 

エレナ「さて、本来の目的を果たしましょうか」

 

コツコツコツ

エレナはリールに近づく。

 

リール「近づかないでください!」

エレナ「!」

リール「私の友人を傷つけて…許さない」

エレナ「…先に手を出したのはそちらですよ。返り討ちにあうのは仕方ないことです」

リール「私が…」

エレナ「?」

リール「私が…やっつけてやる!」

 

リールは箒から降りて杖を出した。

 

エレナ「…全く、ここの生徒は血の気が多いですね。みんな私を倒す倒すって…怖いですね」

リール「…」

エレナ「そんなにいいなら私があなたを立てなくしてあげます」

 

エレナは手を出した。

 

リール (あの人…杖を使わない…杖を使わなかったら魔法の制御ができないはず…)

エレナ「無名(ディエン)。それが私の持つ特別な力ですよ」

リール「ディ…ディエン…」

エレナ「簡単な話ですよ。名を持たない者。それが私です」

リール「…でも、名乗りました」

エレナ「…ということは私が誰なのか…あなたは知っているんですか?」

リール「…エレナ」

エレナ「!」

 

エレナは名を当てられて驚いていた。

 

エレナ「これは驚きました。私とあなたは今日が初対面のはず…なのに…ねぇ?」

リール「…」

エレナ「あなた…あの人にそっくりですね。かつて私と対極の位置にいたあの人。今は存在してるか分かりませんが」

リール (あの人…)

エレナ「さ、話は終わりです。消えてください」

 

バッ!

エレナはリールに掌を向けた。

 

エレナ「魔弾(ブラック・ベルト)

 

バンバンバン!

すると掌から多数の弾型の魔法が放たれた。

 

リール「光速(オーバー・スピード)!」

 

ビュンビュンビュン!

リールはエレナの攻撃を避ける。

 

エレナ「!!」

 

エレナはリールの魔法を見て驚いていた。

 

エレナ「まさか、こんな早く見つかるなんてね。なんて幸運なのかしら」

 

ビュンビュンビュン!

リールはエレナの魔法を避け続ける。

 

リール (なんとか隙をついて…)

 

リールはエレナの隙を伺っていた。

 

リール (ここだ!)

 

ビュン!

リールは一瞬にしてエレナの懐に入った。

 

リール「閃光(フラッシュ)!」

 

シュゥゥゥゥゥゥ!

すると瞬く間に魔法が発動した。

 

エレナ「!?」

 

エレナは突然の光に目を眩ませた。

 

エレナ「この魔法…やっぱり…」

リール「天の鎖(エルキドゥ)!」

 

キリキリキリ…ガシャン!

リールはエレナを拘束した。

 

エレナ (この魔法…あの時受けた魔法に似ている…)

リール「光玉(ライダラ)!」

 

ドン!ドン!ドン!

リールは拘束されたエレナを攻撃する。

 

エレナ (ダメージが大きい…やっぱりこの子が光属性魔法の適性者なのね)

リール「はあああああ!」

 

リールは続けて攻撃する。

 

エレナ (なら、持ち帰るならこの子ね)

 

ガシャン!ガシャン!ガシャン!…バキッ!

 

リール「!?」

 

エレナは天の鎖(エルキドゥ)を引きちぎった。

 

エレナ「さ、邪魔な拘束も解けたし、あなたを回収するだけね」

リール「私を回収って…どういう…」

エレナ「そのままの意味よ。私の目的は光属性魔法の適性者を回収すること」

リール「でもオード君とスカーレットを傷つけた!」

エレナ「傷つけたのは私だけど本来何もしてこなかったら手を出すこともしなかったわ」

リール「…」

エレナ「怪我したのはそっちのせいよ」

リール「なら…私が…スカーレットの仇をとる!」

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴゴ!

 

リール (あの本に乗ってた魔法…一度も試したことないけどやってみるしかない!)

 

シュゥゥゥゥゥゥ!

リールに光が集まる。

 

エレナ (この魔法…まさか!)

リール「光爆(エレノア)!!」

 

キィン!バゴォォン!

リールが魔法を使った瞬間、エレナの周囲が爆発した。

 

エレナ「くっ…やっぱりあの魔法ね…」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

エレナの体から煙が出ていた。

 

エレナ「二度と見ることないって思ってたけど…まさかこんなところで見ることになるなんてね…」

リール「はぁ…はぁ…」

 

リールの魔力は大幅に削られた。

 

リール (こんなんじゃ…いつまで経っても終わらない…)

エレナ「…あなた」

リール「!」

エレナ「まさか…いや…しかし…」

 

リールはよく分かっていなかった。

 

リール (まさか…今が好機じゃ…)

 

ヒュッ!

リールは杖を構えた。

 

リール「光玉(ライダラ)!!」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

リールの魔法がエレナに向かって一直線に飛ぶ。

 

エレナ「…まぁいいわ。回収すれば私の勝ちだもの」

 

ギュォォォォォォ!

 

リール「!?」

 

突然リールの魔法が魔法陣に吸い寄せられた。

 

リール「な…なんで…」

エレナ「私の属性魔法は闇」

リール「!!」

エレナ「あなたと対峙する力なのよ」

リール「や…闇…」

 

 

ー回想ー

 

レヴィ「光属性魔法の適性者の数だけ闇属性魔法の適性者が存在するということです」

 

ー回想終了ー

 

 

リール (こんなところに闇属性魔法の適性者…)

エレナ「私の目的のために光属性魔法が必要なのですよ」

リール「目的…」

エレナ「そう!私の目的はあの憎い…憎い…憎いあの人たちを倒すこと!1人は消え、1人は死んだ!あと1人…あの人だけ倒せない…私の力だけじゃあの人を倒すことができない!そこで考えたの。光属性魔法を得ることで完全な禍異者(マガイモノ)になればあの人を葬ることができるの!私の願いが叶うの!そして最近、この学校に光属性魔法を使う人がいると聞いたの。私はその時、封印していた鎖を引きちぎりこの場に現れた。…光属性魔法の適性者を回収するためにね」

リール「…」

エレナ「どう?私の計画に賛同する気は…」

リール「嫌です!」

エレナ「…」

リール「話を聞いてる限り私は全く関係ないじゃないですか!」

エレナ「…え?」

リール「その憎い人たちも3人のうち2人は倒して残り1人倒せないなんて…そんなの自分の力不足じゃないですか!」

エレナ「…」ピクッ

 

エレナはある言葉に反応した。

 

リール「あなたの計画に賛同?そんなのするわけないじゃないですか!やりたいなら自分の力でやって下さい!私の友達に手を出さないでください!」

エレナ「…」

 

リールはハッキリと言った。

 

エレナ「…そう。分かったわ」

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴゴ…

 

リール「!」

エレナ「あなた…ほんとにあの人そっくりねぇ。ほんと…娘かと思うくらいに…」

リール「あの人って誰のことですか!」

エレナ「…あら、あなた…最愛の人の事も忘れたんですか?」

リール「最愛の…人…」

 

リールはこの時、魔女さんを思い浮かべた。

 

エレナ「そう。あなたそっくりの最愛の人…分からない?」

リール「…」

 

リールは答えなかった。

 

エレナ「可哀想ねぇ。"母親"の顔すら知らないなんてねぇ」

リール「!!」

 

すると突然、リールの頭の中に誰かの記憶が流れ込んだ。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

ー回想ー

 

???「ごめんね…レナ…あなたを巻き込みたくないの…」

リール (え…なにこれ…知らない人…)

???「ごめんね…あなたを捨てる私を許して…」

リール (捨てる…?誰を…?)

???「ごめんね…ほんとにごめんね…」

リール (この人…ずっと謝ってる…)

???「おーい!早く行くぞー!」

 

遠くから男性が呼びかける。

 

???「分かりました。すぐ行きます」

リール (誰だろ…あの人…見覚えが…ある…)

??? (レナ…強く生きて…優しい誰かに…拾ってもらってね…)

 

タッタッタッ

???はその場をあとにした。

 

リール (誰なんだろ…あの人…)

 

 

ー回想ー

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

レヴィ「…ル!リー…リール!リール!」

リール「…」

 

リールはゆっくりと目を覚ました。

 

レヴィ「リール!しっかりして!」

リール「あれ…学院長…」

レヴィ「良かった…目が覚めて」

リール「あ…あれ…私…」

 

リールは廊下で眠っていた。

 

リール「あれ…ここ…は…」

レヴィ「廊下ですよ。リールさんずっと倒れてたんですが、覚えてますか?」

リール「倒れた…え…なんで…」

レヴィ「…」

 

レヴィ学院長は黙ったままだった。

 

レヴィ「リールさん。あなた…あの人と何を話したんですか」

リール「え…何を話したって…」

 

リールは必死に思い出す。だが、何も思い出せない。

 

リール「すみません…分かりません…」

レヴィ「あぁ…やっぱり…」

リール「学院長は…何故ここに…」

レヴィ「あの人がリールさんに攻撃していたので止めたんですよ」

リール「あの人…え…誰のことですか…」

レヴィ「…」

 

レヴィ学院長は何も言わなかった。

 

レヴィ「リールさん」

リール「…?」

レヴィ「アンナさんとスカーレットさん、オード君は無事ですよ」

リール「…あ、はい。そうですか…」

レヴィ (反応が薄い…まぁさっきまで眠っていたので仕方ないといえば仕方ありませんが…)

リール「学院長…」

レヴィ「はい。なんですか?」

リール「ここ…どうしたんですか?」

 

リールは廊下を指さした。廊下は所々壊れていたり、天井も一部破壊されていた。

 

レヴィ「…私とあの人が戦った跡ですよ」

リール「あの人…」

レヴィ「はい。凄まじい力でしたよ。周囲への被害は尋常じゃありませんでした」

リール「あの人っていう人は…どうなったんですか…」

レヴィ「…追い出しましたよ。もう大丈夫です」

リール「あ、そうなんですね」

レヴィ「さ、リールさんも傷が深いですから保健室で休みましょうか」

リール「あ、自分で行きますね」

レヴィ「大丈夫ですか?」

リール「はい。大丈夫です。それでは」

 

するとリールは箒を出して保健室まで飛んでいった。

 

レヴィ「…」

 

レヴィ学院長はリールの背中を見ていた。

 

レヴィ (良かった…あの子は大丈夫そうだ。でもあの子は…もう…)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

ー数分前ー

 

エレナ「可哀想ねぇ。"母親"の顔すら知らないなんてねぇ」

リール「!!」

 

リールは異変に気づいた。

 

リール「ぐっ…がぁぁ…」

 

リールは苦しんでいた。

 

エレナ「あらあら…言っちゃった…」

リール「ぐっ…」

エレナ「()()()()()()()()()の事を思い出させちゃったかしら?」

リール「あぁぁ…がっ…」

エレナ「でもいいわぁ…この感じ…なんかゾクゾクするわねぇ…」

レヴィ「天光の槍(ホーリー・ランス)!」

 

キィン!ドゴォォン!ドゴォォン!ドゴォォン!

レヴィの魔法はエレナに当たらなかった。

 

エレナ「…あら?また誰か来たのかしら?」

レヴィ「私の生徒に何しているんですか。あなた」

エレナ「…?」

 

レヴィ学院長は怒っていた。

 

エレナ「あなた…誰?」

レヴィ「…教えません」

エレナ「名乗らない人もいるのねぇ」

レヴィ「当然ですよ」

エレナ「あら、その言葉…ある人と同じ言葉ねぇ」

レヴィ「…」

エレナ「確か、ラーフ先生だったかしら?」

レヴィ「!!」

エレナ「あの人意外だったわねぇ。氷属性魔法の適性者だなんて」

レヴィ「なるほど。ラーフはあなたがやったんですか」

エレナ「えぇそうよ。邪魔になったからね」

レヴィ「そうですか。なら…」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…

レヴィ学院長に光が集まってきた。

 

レヴィ「私にとってあなたは邪魔者なので…今すぐ始末しますね」

エレナ「あらそう。でも残念。私はもう帰るの」

レヴィ「!!」

エレナ「目的は果たせなそうだしね」

レヴィ「目的…」

エレナ「えぇそうよ。この子を回収するっていう目的」

レヴィ「!!」

エレナ「でも無理なのよ」

レヴィ「…」

エレナ「あ、ちなみにあなたが来たからじゃないわ。あなた程度なら捻り潰せるくらいだし」

レヴィ「…」

エレナ「…もっと別の理由」

レヴィ「…」

エレナ「これを持たせたのはあなたかしら?」

レヴィ「…これって言われても分からないですね」

エレナ「…刻運命(ときさだめ)(こな)ですよ」

レヴィ「え…と…刻運命の粉…って…」

エレナ「これがあるせいでこの子に触れられない。だから回収できない」

レヴィ「…」

エレナ「正直これが無かったら私の勝ちなのに…あと一歩だったのに…惜しいわねぇ…さて」

レヴィ「!」

エレナ「ここで戦いますか?それとも私を逃がしますか?」

レヴィ「な…何言って」

エレナ「私を逃がせばあなたとその子、そしてこの学院全てに何もしないで帰ってあげる。でももし戦うと言うならばそれらを破壊してまで本気であなたを殺します」

レヴィ「…」

エレナ「さ、どうしますか?」

レヴィ「…」

 

レヴィ学院長は考えた。

 

レヴィ「…帰ってください」

エレナ「…賢明な判断ですよ学院長さん。それでは」

 

ヒュッ!

エレナはその場から姿を消した。

 

レヴィ「エレナ元学院長…なぜあの人が…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…平原

 

エレナ「あーあ…せっかくあそこまで行けたのに…最後の最後であんなものが見つかるなんてね…」

 

エレナは空を見上げた。

 

エレナ「正直、刻運命の粉が無かったら私の計画は成功だったのに…」

 

エレナは自分の手を見た。

 

エレナ「リノ。あなたのせいですか。あの刻運命の粉…あなたが作った物でしょう?まさかまだ存在していたなんてね。驚きだわ。さて、この先どうしましょうか。またあれを復活させてあの子を回収しましょうか」

 

エレナはどこかへ歩き始めた。

 

エレナ「刻運命の粉…あれを身につけているとその人との時間がズレてしまい、その人に触れることができなくなるもの。光属性魔法に反応し、効果を発揮する。実際にはその人は目の前にいるけど、刻運命の粉がある限り私があの子に触れることはできない。なら…別の方法で刻運命の粉を破壊してあの子を回収しましょうか…そうですねぇ…ドレインを使うのもありですね…ふふふっ…楽しみだわ…」




〜物語メモ〜

自律戦闘型魔法泥人形
これはスカーレットの家にある泥人形のことで、以前スカーレットとアンナ、リールが魔法の練習に使ったもの。

登場した魔法

闇属性魔法:魔弾(ブラック・ベルト)
エレナが使った魔法。
他の属性でいう雷玉や水玉、光玉みたいなもの。
魔法で作った弾を飛ばす。

光属性魔法:光爆(エレノア)
リールが使った魔法。
使えば対象者を中心に爆発を起こす魔法。
当然爆発するので周囲への被害も出る。

天光の槍(ホーリー・ランス)
レヴィ学院長が使った魔法。
光で槍を作り、相手に飛ばす魔法。
槍の数は使う魔力によって異なる。


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第22話 リールとラミエ先生

私の名前はリール。

エレナ学院に通っています。

先日、エレナという名前の女性が学院に来ました。

彼女はすごい魔力を持ってる人で、魔法の威力も凄まじかったと聞きます。

それにスカーレットとオード君が大怪我をしたと…そう聞きました。

アンナも重症だそうです。

私の友達がみんな怪我をしました。

対する私はただ寝ていただけ…

あの人は私を回収すると言っていました。

つまりスカーレットやアンナ、オード君が怪我をしたのは私がここにいたから…

私…ここにいなければよかった…ここにいなかったら3人は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…保健室

 

リール「…」

 

私は今、保健室にいます。スカーレットとアンナ、オード君が怪我をしたと聞いたからです。何もできない私はただただ見守るだけ…保健室の先生は安静にしていたらすぐに起きると言っていました。…今は回復を待つばかりです。回復魔法が使えたらどれほど良かったでしょうか…回復魔法を使えない自分が情けないです…悔しいです…もっと魔女さんに教わればよかったと…今になって悔やまれます…

 

リール (…みんな)

 

ガラッ

すると、保健室の扉が開いた。

 

???「あら、まだいたの?私が見ておくのに」

 

保健室に入ってきたこの人はラミエ先生。保健室の先生で回復魔法に特化した魔女さんです。ラミエ先生は回復魔法を知り尽くしているので、ラミエ先生に治せない病気や怪我は無いそうです。

 

リール「…はい」

ラミエ先生「…」

 

ラミエ先生はリールの顔を見た。

 

ラミエ先生「…やっぱり気になるの?」

リール「…はい」

ラミエ先生「私がいるから大丈夫よ。私がいればどんな病もイチコロよ」

リール「…」

ラミエ先生「そういえばあなた。回復魔法は習ってる?」

リール「!」

ラミエ先生「回復魔法ってね、覚えてないとこの先必ず損するの。ここの生徒は回復魔法よりも属性魔法の方に力を入れるから一向に回復魔法を勉強しない。だから怪我をした時に真っ先に保健室(ここ)に来るのよ」

リール「…そうですか」

ラミエ先生「あなたはどう?習った?」

リール「…習ってません」

ラミエ先生「…そう。分かったわ」

 

スッ…スタスタスタ

ラミエ先生はその場から離れようとした。

 

リール「…でも、習おうとは思ってます」

ラミエ先生「!!」

 

ラミエ先生の足が止まった。

 

リール「…先生。私の属性魔法は光属性魔法なんです」

ラミエ先生「!」

 

ラミエ先生はリールを見た。

 

リール「それで、光属性魔法の適性者は魔法を受けるダメージが半分になります。なのでわざわざ回復魔法を覚えてなくても大丈夫なんです…」

ラミエ先生「…なるほどね。だからあなたはそれを持っているのね」

リール「…?」

 

私はラミエ先生が何を言っているのか分からなかった。

 

ラミエ先生「首から下げてるそれのことだよ」

リール「!」

 

私は刻運命(ときさだめ)の粉の事を言っているのに気づいた。

 

リール「これ…ですか?」

ラミエ先生「そうそう」

リール「これって…なにか効果でもあるんですか?」

ラミエ先生「えぇ。あるわ」

リール「どんな効果なんですか?」

ラミエ先生「そうね。一言で言うなら…()()ね」

リール「隔…絶…」

ラミエ先生「そう。私もそれ見たことあるわ。ある人から見せてもらったからね」

リール「あ、そうなんですか」

ラミエ先生「えぇ。それで刻運命(ときさだめ)の粉なんだけど、その粉は持ち主を守り、他者を寄せ付けないようにするものなの」

リール「他者を寄せ付けないように?え、でもスカーレットのお父さんは時間を巻き戻すって…」

ラミエ先生「えぇ。間違いではないわ」

リール「?」

ラミエ先生「さっき言ったわ。隔絶って。つまり、この世界から切り離された状態にあるということ」

リール「具体的には…」

ラミエ先生「本来、刻運命(ときさだめ)の粉は光属性魔法にしか反応しない。なぜならその粉自体が光属性魔法だからなの」

リール「これが…光属性魔法…」

ラミエ先生「そう。その粉は持ち主が光属性魔法の適性者だった場合にその力を引き出すことができる。今のあなたもその状態にあるわ」

リール「え?」

ラミエ先生「リールさん。その粉は絶対に身につけてて。あなたは実感がないと思うけど、今相当な力を出してるわ」

リール「え、そうなんですか?」

ラミエ先生「えぇ。強すぎる力ね…」

リール「わ…分かりました。ずっと身につけてます…」

ラミエ先生「ところで、ジンは何か言ってたかい?」

リール「ジンさんですか?そうですねぇ…特に何も…」

ラミエ先生「そう。分かったわ」

 

スタスタスタ…ギィィィィィ…バタン

ラミエ先生は保健室を出た。

 

リール「アンナ…スカーレット…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院 廊下

 

コツコツコツ

ラミエ先生は廊下を歩いていた。

 

ラミエ先生 (まさかこんな所であの粉を見るなんて…ジンに何かあったのかしら?)

 

コツコツコツ

ラミエ先生は歩を進める。

 

レヴィ「おや、ラミエ先生」

ラミエ先生「!」

 

すると前方からレヴィ学院長が姿を現した。

 

レヴィ「どうかされましたか?」

ラミエ先生「そうね。少し気になる子がいたわ。不思議な子」

レヴィ「…リールさんの事ですか?」

ラミエ先生「!」

 

ラミエ先生は一発で当てられたため、驚いた。

 

ラミエ先生「…そうね。よく分かったわね」

レヴィ「いやぁ…私自身リールさんは特別な人だと思っていますので」

ラミエ先生「そう」

 

ほんの少しの間、二人の間に沈黙が訪れた。

 

ラミエ先生「ねぇ」

レヴィ「はい」

ラミエ先生「…あの子に持たせてるあの粉…あれあなたが渡したの?」

レヴィ「…それについては私も聞きたいところです」

ラミエ先生「ということはあなたじゃないのね?」

レヴィ「はい」

ラミエ先生「じゃあ一体誰が…」

レヴィ「さぁ…誰なんでしょうか」

ラミエ先生「…私があの子と話した時、あの子の口からジンの名前が出てきた」

レヴィ「!!」

ラミエ先生「私はジンが渡したんじゃないかって思ってる。あなたはどう?」

レヴィ「…可能性はありますね」

ラミエ先生「それともうひとつ」

レヴィ「?」

ラミエ先生「私がいない間、一体何があったの?」

レヴィ「!」

ラミエ先生「学校中に亀裂や破損が見られるわ。誰か攻撃でもしたの?」

レヴィ「…エレナ学院初代学院長…エレナ元学院長がこの学校に来ました」

ラミエ先生「!?」

レヴィ「彼女はラーフとジーヴル先生を奪い、この学校を去りました」

ラミエ先生「なぜ…エレナ学院長が…」

レヴィ「ラミエ先生。"元" 学院長ですよ」

ラミエ先生「そ、そうね…」

レヴィ「彼女の目的はリールさんを回収することだそうです」

ラミエ先生「あ、あの子を?」

レヴィ「はい」

ラミエ先生「でもなぜ…」

レヴィ「それは分かりません。しかし、リールさんは今、あの粉を持っています。故に回収することができなかったそうです」

ラミエ先生「隔絶…」

レヴィ「…はい。そういう事です」

ラミエ先生「そう。だから今保健室に3人ほどいるのね」

レヴィ「恐らく」

ラミエ先生「でもなぜ?あなた結界を展開してなかったのかしら?」

レヴィ「いえ、展開していました。ですが、私の結界を貫通する程の魔力が使われたため、外界に魔力が漏れ出し、エレナ元学院長が来ました」

ラミエ先生「あなたの魔力を上回るほどの魔力…それ相当な魔力じゃない?」

レヴィ「はい。さっきまでその原因を調査していたところ、第1魔法戦闘室であるものを感じ取りました」

ラミエ先生「あるもの?」

レヴィ「はい。あそこから魔女さんの魔力を感じ取りました」

ラミエ先生「魔女さんって?エレナ元学院長のこと?」

レヴィ「…"狂気の魔女"の事です」

ラミエ先生「!?」

 

ラミエ先生は驚いた。

 

ラミエ先生「狂気の魔女って…え…まだ存在していたの?」

レヴィ「…いえ、実際にいたわけではなく、魔力を感じ取ったってだけです」

ラミエ先生「あ、そ、そうね。でも驚いた…まさかその人の名前を聞くことになるなんて…」

レヴィ「…」

ラミエ先生「ねぇ…その人が関わってる…なんて事ないわよね?」

レヴィ「…分かりません」

ラミエ先生「…そう。心配になってきたわね…」

レヴィ「…今は結界も再展開しています。しばらくは大丈夫かと」

ラミエ先生「1学年と3学年の生徒は?」

レヴィ「彼らは大丈夫です。階層が違うので。それに、エレナ元学院長は戦闘時に結界を展開していましたので、上の階や下の階には被害はありません。被害があるのはこの階層だけです」

ラミエ先生「…そう」

レヴィ「リールさんは今保健室に?」

ラミエ先生「えぇ。いると思うわ」

レヴィ「そうですか。では私はこれで」

ラミエ先生「えぇ。分かったわ」

 

スタスタスタ

コツコツコツ

レヴィ学院長とラミエ先生はそれぞれの方向へ歩き出した。

 

ラミエ先生「リーナ…あなた…今度は何する気よ…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…保健室

 

ガラッ

突然保健室の扉が開いた。

 

レヴィ「リールさんはいますか?」

リール「!」

 

入ってきたのはレヴィ学院長だった。

 

リール「あ、はい。ここにいます」

 

スタスタスタ

レヴィ学院長はリールのところに向かった。

 

レヴィ「リールさん。ひとつ、聞きたいことがあるのですが、よろしいですか?」

リール「はい。いいですよ」

レヴィ「実は先程までなぜエレナ元学院長がこの学校に来たのか…その原因を調査していました」

リール「はい」

レヴィ「その結果、私の結界を貫通する程の魔力が使われたことが分かりました」

リール「…」

レヴィ「私は自分で言うのもなんですが、魔力は大きい方だと思います」

リール「…」

レヴィ「ですが、その時だけ私の結界は意味をなさず、魔力が漏れてしまいました」

リール「…」

レヴィ「この学校で私の魔力を上回るのはこの保健室の先生であるラミエ先生くらいです。その他の人は私に及ぶことはないです。ですがあの時…そんな私の魔力を遥に上回った魔力が使われたことが分かりました」

リール「…」

レヴィ「ラミエ先生かと思われましたが、その時ラミエ先生はある場所にいたのでその可能性はゼロに等しいです。では誰がやったのか」

リール「…」

レヴィ「ここの生徒の中でズバ抜けて大きな魔力を持ち、この学校では誰も持っていない属性魔法を使うことができる人。私はその時…ある人が真っ先に思い浮かびました」

リール「…」

レヴィ「リールさん。あなたですか?」

リール「…」

 

リールは少し考えて発言した。

 

リール「…はい。恐らく私だと思います」

レヴィ「…やっぱりそうでしたか」

リール「私の魔法って…そんなに強いものなんですか?」

レヴィ「いえ。私からすればそこまで危険なものではないです。なので結界を貫通することはないと思います。ですがその時は貫通した。リールさんの使った魔法の中に強い魔力を放つ魔法がありませんでしたか?」

リール「私の使った魔法…確か…」

 

リールはあの時の戦闘で使った魔法をなんとか思い出した。

 

リール「光玉(ライダラ)閃光(フラッシュ)光速(オーバースピード)天の光(リレミト)天の鎖(エルキドゥ)…」

レヴィ (天の光(リレミト)!?)

リール「あとは…」

レヴィ「ちょっと待ってください!」

リール「?」

レヴィ「リールさん今…天の光(リレミト)って…」

リール「はい。言いました」

レヴィ「!!」

 

レヴィ学院長は驚きを隠せなかった。

 

リール「な、何かマズイことでも…」

レヴィ「あ、いえ…天の光(リレミト)は魔女さんが使っていた強力な魔法なので…」

リール「あ、はい。魔女さんに教わりました」

レヴィ (やっぱり…)

リール「この魔法のせいでしょうか…」

レヴィ「えっと、調査していた時に大きな魔力を感じ取ったんですが、その時にあの魔女さんの魔力も感知しました」

リール「!!」

レヴィ「てっきり魔女さんがやったのかと思ってたんですが、魔女さんはある場所にいるため、それも無いだろうと…思っていました」

リール「…」

レヴィ「リールさん。その魔法は魔女さんに教わったんですよね?」

リール「あ、はい。魔女さんに教わりました」

レヴィ「あ、だから魔女さんの魔力も感じられたのか…」

リール「恐らく…」

レヴィ「分かりました。これで解決しました」

リール「そうですか。それは良かったです」

レヴィ「ですがリールさん」

リール「はい」

レヴィ「今回の原因は私の結界を貫通したことにあります。結界は従来のものより遥かに強固に展開しました。ですが、今回みたいなことになる可能性は無きにしも非ずです。ですので、今後一切、第1魔法戦闘室以外の場所での魔法の使用は禁止します」

リール「え…」

レヴィ「私の力不足もありますが、あなたの魔力が私の魔力を上回ってしまった…この結果だけでも十分脅威となります。なので今後一切、あなたが魔法を使うことを禁止します。いいですか?」

リール「それ…破ってしまったら…どうなるんでしょうか…」

レヴィ「…残念ながら、退学処分となります」

リール「…そ、そうですか…」

レヴィ「すみません。私の力不足でこうなってしまって…」

リール「いいんです。私が調子に乗ったのが悪いんです」

レヴィ「…それでは私は行きますね」

リール「…はい」

 

スタスタスタ…ガラッ…

レヴィ学院長は保健室を出た。

 

リール (どうして…こんな目に…)




〜物語メモ〜

ラミエ先生
エレナ学院の保健室の先生。
回復魔法に特化した人で彼女にかかれば怪我や病気は全て治せる。
最近ある場所に出かけていたため、エレナ学院で起こったことを知らない。
ちなみに、回復魔法に特化した人だが、属性魔法が使えないわけではない。
ラミエ先生は風属性魔法の適性者。
かつて風属性魔法を極めようとしたが、ある事がキッカケで回復魔法の道を歩むこととなった。
そのおかげで今はエレナ学院の保健室の先生となっている。
ちなみに、魔力はレヴィ学院長より上。
回復魔法に特化してるが故に持つ魔力も大きい。


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第23話 リールとラミエ先生の過去

ここでちょっとお知らせです。
いつもより行間を狭くしています。
お知らせは以上です。


私の名前はリール。

今保健室にいます。

少し前にエレナという名前の魔女さんが来ました。

今はいませんが、そのせいで私の友達が怪我をしました。

私は何も出来ずにここにいます。

ただそこにいるだけ。

そんな私のところにレヴィ学院長が来ました。

レヴィ学院長は原因を調査してくれてたそうです。

その結果、エレナという人が来たのは私の使った魔法が原因だと分かりました。

その魔力の強さにレヴィ学院長は危険を察知して私に魔法の使用を禁止させました。

魔法使いなのに魔法が使えないなんて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…保健室

 

リール「…」

 

私は今、アンナとスカーレットが起きるのを待っています。もう2日くらい経ちます。オード君も全然起きません。私はずっと後悔しています。こうなった原因は私にあると…そう思っています。

 

リール「…みなさん…ごめんなさい…私のせいで…」

 

ガラッ!

私がそう言葉を零すと誰かが保健室に入ってきた。

 

女子「あ、リールちゃん!こんなところにいたんだ!」

男子「お、ほんとだ!」

リール「…どうされましたか?」

女子「アンナと委員長の様子を見に来たの。で、どう?2人は」

リール「…まだ起きませんよ」

女子「そっか…早く良くなるといいね」

リール「…はい」

男子「オードのやつ…早く起きろよなー。みんな心配してっぞ」

リール「3人は私が見てますのでお二方は教室に戻っても大丈夫ですよ」

女子「そっか。じゃあお願いねリールちゃん」

リール「はい」

 

ガラッ…

するとその人たちは保健室を出た。

 

リール「…」

 

リールは3人を見た。

 

リール (…早く…良くなってください…)

 

それから数時間が経った。

リールはすっかり眠ってしまった。

 

リール「…」

アンナ「ん…」

 

アンナの声が保健室内で響いた。

 

アンナ「…」

 

スッ…

アンナは目を覚ますと、体を起こした。

 

アンナ「あれ…私なんでここに…」

 

アンナは周囲を見渡した。

 

アンナ「!!」

 

するとアンナの傍らにリールの姿があった。

リールは3人を見ているうちに眠くなってそのまま寝てしまったのだった。

 

アンナ (リール…)

 

アンナは近くの台に小さな掛け布団があるのを見つけ、リールに被せた。

 

アンナ「…」

 

ナデナデ…

アンナはリールの頭を撫でた。

 

アンナ (ごめんねリール…心配かけちゃった…)

リール「ん…」

アンナ「!」

 

アンナが頭を撫でると、リールが目を覚ました。

 

リール「…!」

 

リールはアンナが目を覚ましたことに気づいた。

 

リール「アンナ!」

 

ギュッ!

リールはアンナに抱きついた。

 

リール「良かった…本当に…良かった…」

アンナ「リール…」

 

リールの体は震えていた。

 

アンナ「…」

 

ギュッ…

アンナは優しくリールを抱きしめた。

 

アンナ「心配かけてごめんね。リール」

リール「ううん。大丈夫…でも良かった…本当に…」

 

しばらくリールとアンナはそのままの姿勢でいた。リールが泣き止むと、リールはアンナに事の経緯を話した。アンナはその話をただじっと聞いていた。

 

リール「と、いうことがあったんです」

アンナ「そうなんだ…じゃあリールはもう魔法を使っちゃダメなんだね」

リール「ダメって訳じゃないんです。ただ、魔法を使えるのは第1魔法戦闘室だけなんです。ここでは禁止になりました」

アンナ「嫌だなぁ…リールの魔法が見れなくなるの…」

リール「アンナ…」

アンナ「そういえばスカーレットは?」

リール「そこでまだ眠っていますよ」

 

リールはスカーレットを指さした。

 

アンナ「あ、ほんとだね。あれ?もう一人いる…」

リール「あの人はオード君。私と戦った人ですよ」

アンナ「あ、リールの相手だった人?」

リール「そうですあの人です。オード君は私のために必死に戦ってくれたんです。大怪我をしたのでアンナとスカーレットと同じようにここに運ばれたそうなんです」

アンナ「そうなんだ…」

スカーレット「ん…」

リール「!」

アンナ「!」

 

するとスカーレットも目を覚ました。

 

リール「スカーレット!」

スカーレット「え…なに…」

リール「スカーレットー!」

 

ギュッ!

リールはスカーレットに飛び込んだ。

 

スカーレット「うぐっ…もう…一体何よ…」

リール「良かったぁ!スカーレットも目を覚ましたー!」

スカーレット「あぁもう…静かにしてよ…」

リール「あ、ごめん…」

 

スカーレットは体を起こすと、当たりを見渡した。

 

スカーレット「あ、そっか…私…」

 

スカーレットは隣で寝ているオードを見た。

 

スカーレット「…あなたもやられたのね」

リール「スカーレット…大丈夫?」

スカーレット「大丈夫よ。何ともないわ」

リール「良かったぁ…」

スカーレット「あらアンナ。あなたもう起きたのね」

アンナ「うん。スカーレットが起きる少し前にね」

スカーレット「そう。それは良かったわ。ところで、傷の方は大丈夫?」

アンナ「うん。全然痛くないよ」

スカーレット「そう。それは良かったわ」

 

ガチャ…

すると保健室の扉が開いた。

 

ラミエ先生「お、2人も起きてるのね」

リール「先生!」

アンナ「あ、保健室の…」

ラミエ先生「そう。ここの部屋を担当しているラミエよ」

スカーレット「すみません先生。ベッド3つも使っちゃって…」

ラミエ先生「いいのよ。あなたたち以外に傷ついた人は何人もいたけど、あなたたちのように眠るほど傷が深い人はいなかったわ」

スカーレット「そうですか」

ラミエ先生「…起きてないのはその子だけ?」

リール「はい。そうです」

ラミエ先生「そう。分かったわ。あとは私が見ておくからあなたたちは部屋に戻ってもいいわよ」

アンナ「え」

スカーレット「私たちもいいんですか?」

ラミエ先生「えぇ。大丈夫よ。傷もとっくに癒えてるし魔力も戻ってるはずよ」

スカーレット「ありがとうございます」

リール「…私、まだここにいます」

ラミエ先生「?」

アンナ「え、リール?」

リール「…オード君が身を呈して私を守ってくれました。せめてオード君が起きるまで私はここにいます」

アンナ「リール…」

スカーレット「じゃあ私たちは先に戻っててもいい?」

リール「はい。いいですよ」

スカーレット「アンナ。準備しましょ」

アンナ「え、あ、うん」

 

スカーレットとアンナは服を着替えた。

 

スカーレット「じゃあリール。オード君が起きたらちゃんと帰ってきなさいよ」

リール「はい。ありがとうスカーレット」

スカーレット「さ、行きましょアンナ」

アンナ「うん…」

 

ガチャ…

スカーレットとアンナは保健室を出た。

 

リール「…」

ラミエ先生「…あなた、あの人そっくりね」

リール「あの人?って誰ですか?」

ラミエ先生「私の友人よ。今のあなたを見てると昔のあの人を思い出したわ」

リール「そうですか」

ラミエ先生「…私ってね、元々風属性魔法の適性者だったのよ」

リール「!」

ラミエ先生「でも今は普通の人より魔力が弱いから魔法を使っても大したダメージは無いわ」

リール「そうなんですね」

ラミエ先生「…私はね、その友人のために風属性魔法を捨てて回復魔法の道を歩み始めたのよ」

リール「何かあったんですか?」

ラミエ先生「…少し、昔話をしましょうか」

 

するとラミエ先生はリールを近くのソファに座らせ、自分の過去を話し始めた。

 

ラミエ先生「…これは何十年か前の話。ある魔女がひとつの町を滅ぼした事件の事よ」

リール「!」

ラミエ先生「その人は突然この学校に現れた。親もいなさそうで、学校ではずっと独りだった。私は最初、その人に対しての印象は怖い事くらいだったわ。でも日が経つにつれてその人が人前では見せない姿や顔を見る機会が何度かあったの。私はその姿を見るうちにその人のことが気になり始めたの」

リール「怖かったんじゃないんですか?」

ラミエ先生「いいえ。その人が怖く見えたのはその人が私たちに対して警戒していたからだとあとから知ったの。それを聞いてから私はその人と一緒に過ごすことになったわ」

リール「どんな人だったんですか?」

ラミエ先生「慈愛の心に満ちた優しい人。誰かの助けを聞けば率先して動いて感謝され、その度に信頼を得る…そんな人だったわ」

リール「いい人ですね」

ラミエ先生「えぇ。でも時々やり過ぎだと感じることもあったわ」

リール「やりすぎる事?」

ラミエ先生「あの人は人の頼み事を断ることはなかった。だからどんな無理難題を吹っかけられても物怖じしなかった。でも、それがかえって危険だった」

リール「…」

ラミエ先生「あの人はある時、ある頼み事を引き受けたわ。それは、今では存在しない"ある粉"を取ってきて欲しいというものだったの」

リール「!!」

ラミエ先生「私は依頼にあったあの粉がどれほど貴重なものかを知っていたからあの人に行かないよう言ったわ。でも聞かなかった。あの人は心が無いようだった。淡々とその依頼を受け、目的地に足を運んだ」

リール「それで…どうなったんですか…」

ラミエ先生「…依頼は達成されたわ」

リール「!」

ラミエ先生「あの人は依頼にあった粉をちゃんと取ってきた。依頼者はとても喜んでいたわ」

リール「ほっ…それは良かったです」

ラミエ先生「でも、あの人の体はボロボロだったわ」

リール「!」

ラミエ先生「体の至る所に切った跡があったわ。服も体も汚れて…雨でも降ってたからなのか、服は少し湿っていたわ」

リール「…」

ラミエ先生「あの人は依頼を達成した時、足元がふらついていた。立ってる時は常に足が震えていて歩き始めると足の震えと息切れが起きていた」

リール「…」

ラミエ先生「私はあの人のあの姿を見て驚いたわ。あんなにボロボロになったのを見て私は風属性魔法を捨てて回復魔法に専念したわ」

リール「そう…だったんですね」

ラミエ先生「でも回復魔法を勉強し始めながら傷を治していたから傷が治るまで時間がかかったわ。おまけに手遅れだったものはそのまま傷跡として今も体に刻まれているわ」

リール「…」

ラミエ先生「私はこんなボロボロになってまで依頼を受けていたあの人が可哀想で仕方なかった。依頼者は依頼のものが手に入ればそれでいいけど、あの人はその度に体に傷を作ってきた…」

リール「…」

ラミエ先生「大切な自分の体を犠牲にして人の役に立とうとした。その姿が今のあなたと同じように見えた」

リール「先生…」

ラミエ先生「何?」

リール「その人は…今も生きていますか?」

ラミエ先生「!!」

 

リールは泣いていた。

 

ラミエ先生「え、どうしたの?涙なんか流しちゃって」

リール「…私もラミエ先生と同じ気持ちです。可哀想で…」

ラミエ先生「…そう。でも安心して。今も生きてるわよ」

リール「ほんとですか?」

ラミエ先生「えぇ。大丈夫よ」

リール「そうですか…それは良かったです」

ラミエ先生「…」

リール「あの…先生」

ラミエ先生「何?」

リール「その人の名前はなんて言うんですか?」

ラミエ先生「その人の名前?」

リール「はい」

ラミエ先生「…リーナ」

リール「リーナ…」

ラミエ先生「そう。リーナ。それがその人の名前よ」

リール「リーナ…私の名前に似てますね」

ラミエ先生「確かにそうね」

リール「…私もその人のようになりたいなぁ」

ラミエ先生「…」

 

ラミエ先生は何も言わなかった。

 

ラミエ先生「でもねリール」

リール「?」

ラミエ先生「そんな優しかった私の友人は今では別人になってるわ」

リール「別人?」

ラミエ先生「…えぇ。あの優しかったリーナはある事がきっかけで変わり果ててしまったわ」

リール「ど、どんな事が…」

ラミエ先生「…エレナ元学院長」

リール「!」

 

リールはその名に覚えがあった。

 

ラミエ先生「あの人がリーナにある事をしたせいでリーナは本当に心を失ってしまったわ」

リール「本当に…失った?」

ラミエ先生「…リーナが学校に来た時も心を失ってたわ。でも私と一緒にいることでだんだんと自分のことや感情を表に出すようになったの」

リール「…」

ラミエ先生「普通の人と話せるくらいになった時に当時の学院長だったエレナって人がリーナにある事をしたの」

リール「何をしたんですか?」

ラミエ先生「…魔玉解剖」

リール「魔玉…解剖…」

ラミエ先生「えぇ。私たち魔法を使う人たちには一律して心臓に魔玉が存在しているの。私たちはそこから送られる魔力を使ってマナを集めて魔法を使うの」

リール「へぇ…そうなんですね」

ラミエ先生「…リーナの魔玉ってね、他の人とは全然違ってたの」

リール「!」

ラミエ先生「あの人はね、闇属性魔法に適性を持つ人だったの」

リール「!!」

ラミエ先生「当時、闇属性魔法と光属性魔法って希少だったの。稀に現れるくらいにね。…故にその人が持つ魔玉も貴重なものだったわ」

リール「…」

ラミエ先生「闇属性魔法ってね光属性魔法よりも希少な属性魔法なの。だから物珍しかった。リーナは依頼を受けてる時に起こったことを話してくれたわ。こんなことが起きたよ。あんなのがあったよって…楽しそうに話していた…でも、それは表の話だけ。その裏で起こったことは一度も話さなかった」

リール「…」

ラミエ先生「私はある人に聞いただけだから信憑性はあまり無いかもしれないけど…それでも信じたわ」

リール「ど、どういう…」

ラミエ先生「…リーナは…出かける度に誰かに襲われていた」

リール「!!」

ラミエ先生「まぁ…闇属性魔法ってとても希少だからね。それを狙う人もその分多かったらしいの」

リール「…」

ラミエ先生「でもリーナはその人たちに捕まらないよう必死に戦ったそうよ。魔法を使って追い払ったり、倒したり…そんな事があったのに私ですらその話を聞かされなかった」

リール「…」

ラミエ先生「それから何日、何ヶ月、何年…同じようなことが続いたある日…エレナ元学院長はリーナを呼び出した」

リール「…」

ラミエ先生「その内容はさっき話した魔玉解剖の事。リーナはその依頼を受け、エレナ元学院長の指導のもと、他の人たちが魔玉を取り出そうと色々やったそうよ」

リール「…」

ラミエ先生「それからしばらくして…リーナの魔玉が取り出されたそうよ」

リール「え…」

ラミエ先生「でも、その時事件が起きた」

リール「!」

ラミエ先生「学校中の警報が一斉に鳴り始めたわ」

リール「…」

ラミエ先生「当時の私たちは何が起こったのか分からなかったわ。放送も流れず、ただ警報が鳴り響いているだけ…そんな時、ある場所から爆発音が聞こえた」

リール「爆発音…」

ラミエ先生「…えぇ。私たちは爆発音のしたところに行ったわ。そこで分かったの。爆発音が鳴ったのは学院長室…エレナ元学院長の部屋だったの」

リール「!!」

ラミエ先生「他の人たちはただ焼けた部屋しか見ていなかった。でも私は違った。私はリーナの事が心配だった。学院長室に向かったリーナは教室に戻ってこなかったの」

リール「!!」

ラミエ先生「するとまたある場所で爆発音が鳴った。今度は外。みんながその音に反応して外に出ると、学院の3割くらいが消し飛んでいたの」

リール「え…」

ラミエ先生「私も驚いたわ。それをしたのはリーナだったの」

リール「!」

ラミエ先生「私はリーナに攻撃をやめるよう言ったけどリーナは聞かなかった。リーナは何も聞かず、何も言わず、黙々と学院を破壊していったの」

リール「そんな事が…」

ラミエ先生「まぁそれで収まれば良かったんだけどね」

リール「まだ何か…」

ラミエ先生「…学院を破壊し終えたリーナは今度はこの街を破壊し始めたの」

リール「!!」

ラミエ先生「最初は私たちに攻撃が当たらないよう魔法を使ってたけど、途中から問答無用で誰彼構わず攻撃したの」

リール「!!」

ラミエ先生「お陰で私の同期は全員死んじゃったわ」

リール「…」

ラミエ先生「当時の先生たちも友達も全員…リーナに殺されたわ」

リール「憎まなかったんですか?」

ラミエ先生「憎まなかったわ。リーナは街を破壊したけど私だけは守ってくれた」

リール「!!」

ラミエ先生「リーナは心を失ったけど、その心の中には私という存在がまだ残っていた。だからリーナは私に結界を張って守ってくれたの」

リール「なぜ…分かるんですか?」

ラミエ先生「…リーナがそう言ってくれたからよ」

リール「!」

ラミエ先生「この街を破壊したリーナは私に言ったわ。あなただけでも生きてって」

リール「!」

ラミエ先生「その後リーナは力を使い果たして倒れたわ。私は守ってくれたこの命をこの人の為に使おうとその時決めたわ。だから倒れたリーナの傷を治したの」

リール「…」

ラミエ先生「傷が治ったリーナはあとで何故こんなことをしたのか話してくれたわ。それを聞いて怒るに怒れなかった…リーナが今まで受けてきたことを考えたらね」

リール「そう…だったんですね…」

ラミエ先生「だからあなたは私の友達のように誰かを守ったりするのはいいけど、やり過ぎには注意しなさい」

リール「…はい」

オード「…ん」

リール「!」

 

するとオードが目を覚ました。

 

ラミエ先生「あら、起きたみたいね」

オード「いてて…」

リール「オード君!」

 

リールはオードのベッドまで走った。

 

リール「オード君大丈夫!?」

オード「あぁリールか…大丈夫…そっちは?」

リール「オード君のお陰で何ともないですよ。守ってくれてありがとうございました」

オード「い、いや…べ、別に…いい…」

ラミエ先生 (…やっぱりあなたにそっくりね。誰かのために自分を犠牲にするその心…昔のあなたを見ている気分よ。ねぇ…リーナ)

オード「あれ、他のやつは?」

リール「スカーレットとアンナなら先に起きて教室に戻りました!」

オード「リールは?」

リール「オード君が起きるまで待ってたんです」

オード「!!」

 

オードは顔を赤くした。

 

オード「…そうか」

ラミエ先生「さ、起きたなら着替えて教室に戻りなさい」

オード「あ、先生」

ラミエ先生「もう動いても大丈夫よ」

オード「そうですか。分かりました」

リール「着替えはあっちにあるから着替えたら教室に帰りましょう!」

オード「…あぁ。分かった」

 

オードは服を着替えに行った。

 

オード「よしっ…着替え終えたぞ」

リール「じゃあ一緒に教室に行きましょ!」

オード「お、おう…」

リール「ラミエ先生、お世話になりました」

オード「お世話になりました」

ラミエ先生「いいのよ。またいつでも来なさい」

リール「はい!」

 

ガチャ…

そしてリールとオードは保健室を出た。

 

ラミエ先生 (…ごめんなさいリーナ…あなたの事…伝えられなかったわ…)




〜物語メモ〜

魔玉
魔法を使う人たちには魔玉という魔力の元となるものが存在する。
これがある事で魔法を使うことが出来る。
なので当然身体から取り出せば魔法は使えなくなる。

魔玉解剖
エレナ元学院長が行った魔玉を取り出す術式。
これを行うことで魔玉を取り出すことが出来る。
しかし、取り出すことで拒絶反応が出るので、成功率は低い。
おまけに無理に取り出そうとすると魔玉自体が暴走し、無差別に魔法が放たれる。


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第24話 リールとエレナとサフェ

私の名前はリール。

今オード君と一緒に教室に戻っているところです。

さっきラミエ先生の友達のリーナさんのお話を聞きました。

その時のラミエ先生は何だか寂しそうな顔をしていました。

その友達のことが好きだったんだと思います。

でも今も元気でいるそうですので良かったです。

落ち着いたら一度リーナさんに会ってみたいですね。

私によく似た人だそうです。

今度ラミエ先生にお願いしてみようと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…???

 

???「で?尻尾巻いて逃げてきたのか?」

エレナ「…」

???「あぁ…なんと弱々しい」

エレナ「…」

???「それでもあの学院の元学院長か?」

エレナ「…」

???「何か言ったらどうだ。エレナ・エミュレット」

エレナ「…」

 

エレナは何も言わなかった。

 

???「沈黙とは…」

???「恥を知れ」

???「私ならもっと上手くできるなぁ」

エレナ「…」

???「ったく。面倒なことになった」

???「元々お前が立案した計画だろうが。それもあろうことかお前が最初にミスするとはな」

エレナ「…」

???「ただ回収するだけなのにねぇ?」

???「…はぁ」

 

ここで口を閉じていたエレナが口を開いた。

 

エレナ「で、ですが…」

???「あ?何か言ったか?」

エレナ「っ…」

 

だがエレナはその人の圧に負けてしまった。それでもエレナは頑張って言葉を出した。

 

エレナ「ですが!私は氷と土の適性者を回収しました!」

???「…」

 

バチバチバチ!

 

エレナ「!?」

 

エレナが言葉を出すと急に電気が走った。エレナはその電気をまともに受けてしまった。

 

エレナ「ぅっ…」

???「で?だからなんだ?それで元を取れたとでも思っているのか?」

エレナ「…」

???「むしろ損失だよねぇ」

???「あぁ」

???「何を誇らしげに物を言っている。ただ氷と土を回収しただけで光の適性者を逃した元を取れたとでも?」

エレナ「…」

???「この子…使えないねぇ」

 

ジジジ…バリバリバリ!

 

エレナ「!!」

 

すると、そのうちの一人がエレナに向かって魔法を放とうとした。

 

???「…よせ」

???「はーい」

 

すると魔法は解かれた。

 

???「チャンスは一度だ」

エレナ「!!」

???「二度もやらん」

エレナ「…」

???「これ以上の損失は看過できん」

???「だよね」

???「舐めたことしやがって」

???「…」

???「さ、次は誰が行くの?」

???「俺が行く。こいつの損失は俺が拭ってやる」

???「ほぉ…お前がそんな事言うとは…珍しいな」

???「いや、ただ見ておきたいだけだ」

???「それ言わなかったらいいのに…」

???「なんか言ったか?あ?」

???「何?」

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴ…

2人は睨み合う。すると、周囲にマナが集まり始めた。

 

???「…よせ。2人とも」

???「…」

???「…」

???「ここで喧嘩しても仕方ないだろう」

???「…チッ」

???「行くなら早く行け」

???「…あぁ。分かった」

 

スタスタスタ

???は部屋を出た。

 

???「いいの?あいつに行かせて」

???「正直誰が行ってもいい。あいつが行きたいと言ったから行かせただけ」

???「ふぅん。じゃあこの子どうする?」

エレナ「…」

???「何もしない」

???「え?」

エレナ「!」

???「最後のチャンスだ。このチャンスを逃したらどうなるか…」

エレナ「…」

???「分かったな。エレナ・エミュレット」

エレナ「…はい」

 

エレナはその部屋から出て自分の部屋に戻った。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナの部屋

 

エレナ「…」

 

ドサッ

エレナはベッドに倒れ込んだ。

 

エレナ「…はぁ」

???「元気ないね。何かあった?」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

突然聞こえた声とともにある人物が現れた。

 

エレナ「…サフェ」

サフェ「ん?」

 

彼の名はサフェ。エレナと一緒にいる人物であり、エレナの話し相手でもある。

 

エレナ「私…また失敗しちゃった…」

サフェ「…」

エレナ「私…いつになったら成長するんだろ…」

サフェ「…」

 

ポンッ…ナデナデ

 

エレナ「!!」

 

サフェはエレナの頭を撫でた。

 

サフェ「…よく頑張りました」

エレナ「ぅっ…」

 

エレナの目から涙が出てきた。

 

サフェ「エレナはよく頑張ってるよ。ただあの人たちの求めているものが高すぎるだけだよ」

エレナ「でもそれじゃあ…私がそのレベルに達してないってことになるじゃない…」

サフェ「ううん。そうじゃない。あの人たちはあの人たちのレベルで物を言ってるだけ。エレナの事を見ずにね。だからどっちかって言うとあっちがこっちのレベルに合わせてないだけだよ」

エレナ「でも…」

サフェ「それに僕はエレナがこれ以上成長するのは嫌だな」

エレナ「…なんで?」

サフェ「今のエレナの方が良いから」

エレナ「…好きって言ってくれないのね…」

サフェ「…それは言えないよ」

エレナ「…」

サフェ「もう大丈夫?もっと愚痴聞くよ?」

エレナ「…いい」

サフェ「…そっか」

エレナ「でも…もう少しこのままでいさせて…」

サフェ「…うん。分かった」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院

 

リール「ありがとうオード君。オード君のお陰で先生に伝えられました」

オード「いや、いい」

リール「でもそのせいでオード君が…」

オード「気にすんなって。女の子が傷つく方が俺は嫌だしな」

リール「…そうですか」

 

2人は教室に着いた。

 

オード「…2日ぶりかな」

リール「ですね」

 

2人は扉を開け、教室に入った。

 

男子「お!オード!」

女子「リールちゃん!」

 

2人が教室に入るとみんなが一斉に走ってきた。

 

男子「よぉオード!元気そうだな!」

オード「あ、あぁ…まぁな」

男子「リールさんも元気か?」

リール「はい。元気ですよ」

女子「あと2人だけだったの!でも良かったぁ!」

女子「ほんとリールちゃんがいないと寂しいからね!」

リール「あ、あはは…」

男子「よっしオード!こっち来い!色々話をするぞ!」

オード「お、おいおい…」

 

オードは男子生徒に連れていかれた。

 

女子「リールちゃんも行こ!」

リール「あ、あの…」

女子「どうしたの?」

リール「アンナとスカーレットは…」

スカーレット「私ならここよ。リール」

リール「!」

 

するとリールの目の前にスカーレットとアンナが立っていた。

 

スカーレット「オード君…元気になったのね」

リール「スカーレットー!」

 

ギュッ!

リールはスカーレットに抱きついた。

 

スカーレット「ちょ…やめなさいって!」

リール「スカーレット!」

スカーレット「分かったから離れなさいって!」

女子「あっははは!」

アンナ「リール…大丈夫?」

リール「アンナー!」

 

ギュッ!

リールはアンナに抱きついた。

 

アンナ「ひぇぇぇぇぇ…」

リール「アンナも良かったぁ治って!」

アンナ「あ、うん。ありがとう」

男子「で?どうよオード」

オード「ん?」

男子「リールと一緒にいたんだろ?どうだったよ」

オード「…うん。まぁ…ね」

男子「おいおい教えてくれよー!」

オード「うるせー!」

男子「どうだったんだよー!」

オード「こんなとこで言えるかー!」

リール「あはは…みんな自由ですね…」

スカーレット「あ、リール」

リール「はい。何ですか?」

スカーレット「アンナから聞いたの。リールもう魔法使えないのよね?」

リール「あ、使えないってわけじゃなく…」

女子「え!?リールちゃん魔法使えなくなったの!?」

リール「え…っと…」

女子「なんで!?なんで!?」

リール「ちょ…」

男子「リールの魔法強いのにか!?」

女子「魔力が無くなったの?」

リール「えーっと…」

 

リールはレヴィ学院長が言ったことをそのまま話した。

 

リール「使えない訳じゃないんです。ただ魔法が使えるのが第1魔法戦闘室に限定されただけなんです」

女子「ここでは使えないの?」

リール「はい。使えません」

男子「それ、レヴィ学院長が言ったのか?」

リール「はい」

男子「なんだよそれ…」

女子「だよね。今回みたいに誰かが学院に入ってきたら私たちだけじゃ何にもできないよ…」

男子「そういう時こそリールの魔法が必要なのにな!」

女子「そうよ!そうよ!」

リール「みなさん…」

 

ガチャ…

すると教室の扉が開いた。

 

レヴィ「みなさん。全員いますか?」

 

入ってきたのはレヴィ学院長だった。

 

男子「学院長!」

レヴィ「はい。なんですか?」

男子「リールが魔法を使うのを制限したと聞きました!なぜそんな事をするんですか!」

レヴィ「…リールさんの魔力は相当強いものです。私の結界を貫通するほどです。そのような人がポンポンと魔法を放つと敵に見つかってしまうからです」

男子「敵って誰ですか!」

レヴィ「…敵は…敵ですよ。恐ろしいこの街を軽く消し飛ばせるほどの力を持った人たちです」

男子「え…」

女子「この街を軽く消し飛ばせるほど…」

女子「でも!そんな時こそリールちゃんの魔法が必要だと思います!」

レヴィ「…」

男子「そうなった時どうするおつもりですか!」

レヴィ「…そうならない為にリールさんの魔法を制限しました」

男子「あ…」

レヴィ「私は今、エレナという人物が壊した部分を直しているところです。あの人は私を軽く捻り潰せる程の力を持っています。みなさんはそういう人が来られると困ると思います。なので私はあの人たちから身を守るためにリールさんの魔法を制限しました。リールさんの魔法は私が展開している結界を貫通します。リールさんの魔力が外界に漏れたらこの場所はすぐに特定されるでしょう。そうなるとあなたたちに残された道は死しかないのです」

男子「!」

レヴィ「私がこの学院に就いたからにはあなた方を守るのが責務となります。なので多少のルールは守っていただかないと」

男子「…」

女子「…」

リール「…分かってますよ」

女子「!!」

男子「!!」

リール「私自身も思っていました。私の魔法のせいでみんなが巻き込まれるくらいなら魔法なんて必要ないと。なのでそれでも構いませんよ」

レヴィ「…分かりました」

スカーレット「レヴィ学院長」

レヴィ「はい」

スカーレット「それ以外に何か用があるのではないでしょうか」

レヴィ「はい。あります。私がここに来たのはある事を伝えるためです」

男子「ある事…」

レヴィ「はい。このクラスの担任であるジーヴル先生はエレナという人に連れていかれました」

女子「!!」

男子「!!」

レヴィ「私の側近であるラーフも同じです」

スカーレット「じゃあこれからの授業は…」

レヴィ「別の先生にお願いしています」

スカーレット「そうですか」

レヴィ「属性別授業に関しては各先生方が授業をしてくださいます。ジーヴル先生の属性魔法の授業だけ他の先生に任せてあります」

スカーレット「そうですか」

レヴィ「みなさん。ひとつ忠告しておきます。エレナという人物がこの学院に来たことであの人の仲間がこちらに来る可能性があります。そうなっては困るのでみなさんにはより一層属性魔法に力を入れて欲しいのです」

男子「…」

レヴィ「私たち教員はあなた方を守り、敵を追い出すことに集中しますが、それでも全員守りきれる訳では無いです。なので2学年の皆さんは自分たちの身は自分たちで守って欲しいのです」

男子「俺たちだけ自分で守るってことですか!?」

レヴィ「あ、いえ。そういう訳では無いです。もちろん私たちがあなた方を守りますが、守りきれない部分がありますので、そこを自分で守って欲しいのです」

男子「あ、そういうことですか」

レヴィ「はい。こちらとも教員が何人か怪我をしています。なので授業は1週間後になりますので、みなさんはこれから1週間休学となります」

女子「え!?」

レヴィ「その間、ご自宅に帰っていただいても構いませんが、くれぐれもご注意下さい。ご自宅に帰る生徒に関しては私たちの防御を受けることができませんので最初からご自身で守っていただくことになります」

女子「な、なるほど…」

レヴィ「以上になります。それでは1週間後、またこの教室に来てください」

 

ガチャ…

レヴィ学院長は教室を出た。

 

女子「この1週間何しようか」

女子「そうね…何もやることが…」

男子「遊ぼうぜ!」

女子「でも外に出たら先生方に守って貰えない…」

男子「確かにそれもある…」

スカーレット「リール」

リール「はい。何ですか?」

スカーレット「今日はもう休みましょうか」

リール「…」

スカーレット「お互い疲れてるからね」

リール「そうですね。そうしましょう。アンナ」

アンナ「何?」

リール「部屋に戻りましょう」

アンナ「うん」

リール「それでは皆さん。私たちは先に部屋に戻りますね」

 

ガチャ…

リール、アンナ、スカーレットは教室を出て自室に戻った。その後、残りの生徒たちも自室に戻っていったのだった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院近くの上空

 

???「ほう。なるほどな。上手いこと隠してやがる」

???「エレナのやつ…よくこれを見つけたな」

???「魔力を感じ取ったって言ってたな」

???「なるほど…だから特定できたのか」

???「恐らくな…」

???「はぁ…」

???「で、やるのか」

???「あぁ。あの野郎がしくじったからな。俺たちで尻拭いだ」

???「なんで」

???「元より光の適性者を持ち帰らなければならない。それを奴はしなかった」

???「いや、できなかったかもしれんな」

???「だが俺たちで回収すれば俺たちはまたひとつ上がることができる」

???「それはいい話だ」

???「ここであの光の適性者を回収してこの街も破壊だ」

???「おう」




〜物語メモ〜

エレナ・エミュレット
エレナ元学院長のフルネーム。

サフェ
エレナと一緒に行動している人。
エレナの話し相手であり、良きパートナーでもある。
エレナが泣いてたりするとすぐに行動に移す。
大体膝枕で慰めている。


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第25話 リールとマッサージ

私の名前はリール。

今は自室にいます。

昨日、レヴィ学院長が1週間の休学を言いに来ました。

そのため、私たちは1週間授業を受けず、休日を過ごすこととなりました。

理由としては、教員の方々が怪我をされたのとレヴィ学院長が学校の修復に力を使うからだそうです。

休日と言っても教員の方々は学院にいるので質問は出来るそうです。

でもせっかくの休日なので、ゆっくりしようと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…リールとアンナの部屋

 

リール「…はぁ」

アンナ「どうしたの?リール。ため息なんかついちゃって」

リール「いえ…なんだか疲れが溜まっているようです」

アンナ「そ、そうなんだ…」

リール「疲れを取る方法はありませんか?」

アンナ「疲れを取る方法…あ!」

リール「?」

アンナ「私知ってるよ!」

リール「どんなものですか?」

アンナ「やってあげるからリールはそのままうつ伏せで寝てて!」

リール「あ、はい。分かりました」

 

リールはそのまま寝ていた。するとアンナが近づいてきた。

 

さすさす…

 

リール「!!」

 

するとアンナはリールの体に触れ、マッサージをし始めた。

 

リール「え、アンナ?」

アンナ「これ、マッサージって言うの。体の筋肉をほぐすことで緊張が解けてリラックスできるんだよ。ちょうどリール疲れが溜まってるって言ってたからほぐしてあげる」

リール「え、あの、アンナ」

 

モミモミ…モミモミ…

アンナは一生懸命マッサージをした。

 

リール (あ…気持ちいい…)

 

アンナの施術はリールにとってとても気持ちいいものだった。

 

リール「んっ…あっ…」

 

リールは思わず声を漏らした。

 

リール (わ、私…変な声を…!)

アンナ「んっしょ!んっしょ!」

リール「んんっ!んっ…んっ…」

 

リールは声を出すのを我慢した。

 

アンナ「どう?リール。気持ちいい?」

リール「んっ…気持ち…あっ…いいよ…」

アンナ「そっか!良かったぁ!」

 

アンナは嬉しくなって更にマッサージを進めた。

 

アンナ「じゃあ次は足をやるね!」

リール「う、うん…」

リール (ダメ…意識を保たないと…声が出る…)

アンナ「靴下脱がすけど良い?」

リール「は、はい…いいですよ…」

 

アンナはリールの靴下を脱がした。

 

アンナ (あ、肌が白い…しかも綺麗…)

 

さすさす…

アンナはリールの綺麗な足に釘付けだった。

 

リール (アンナ…その触り方…)

アンナ (いいなぁ…綺麗な足…)

 

さすさす…

アンナは更に足に触れてみる。

 

リール (!!)ビクッ!

 

リールは体を震わせた。

 

リール「ア、アンナ!」

アンナ「え、どうしたの?」

 

アンナは急に名前を呼ばれて驚いた。

 

リール「その…マッサージ…お願いします…」

アンナ「!!」

 

この時アンナは正気に戻った。

 

アンナ「あ!ごめん!リールの足綺麗だったから…その…」

リール「あ、ありがとう…ございます…」

アンナ「じゃ、じゃあ続けるね!」

リール「はい…お願いします…」

 

モミモミ…モミモミ…

アンナはリールの足をマッサージし始めた。

 

アンナ「んっしょ!んっしょ!」

リール (あ、よかった…足ならまだ声は出なそう…)

アンナ「ねぇリール」

リール「なんですか?」

アンナ「その…痛くない?」

リール「だ、大丈夫ですよ」

アンナ「そっか。分かった!」

 

モミモミ…モミモミ…

アンナは更にマッサージを進める。

 

リール (あぁ…アンナってマッサージ上手ですね…気持ちいい…眠くなってきました…)

 

ウトウト…ウトウト…

リールは眠そうになっていた。

 

アンナ「リール?」

リール「は、はい!」

 

リールはアンナの呼びかけに過剰に反応した。

 

アンナ「その…大丈夫?」

リール「だ、大丈夫ですよ!」

アンナ「…そう?」

リール「は、はい!」

アンナ「じゃあ続けるね」

リール「お願いします」

 

モミモミ…モミモミ…

アンナは続きをし始めた。

 

リール (あぁ…いい…ずっとマッサージしてて欲しい…)

アンナ (やっぱりリールの足綺麗だなぁ…なにか秘密があるのかな…)

 

モミモミ…モミモミ…

 

リール「んっんんっ…」

 

モミモミ…モミモミ…

 

リール「あ…あっ…」

 

モミモミ…モミモミ…

 

リール「ん〜〜〜〜〜〜…」

 

モミモミ…モミモミ…

 

アンナ「じゃあ次は腕をやるよ。いい?」

リール「っはぁ…はぁ…はぁ…」

アンナ「リール?」

リール「は、はい…なんですか?」

アンナ「次は腕だけどいい?」

リール「は、はい…」

アンナ「じゃあ仰向けで寝てもらえる?」

リール「わ、分かりました…」

 

リールはうつ伏せから仰向けに体位変換した。

 

リール「お、お願いします」

アンナ「うん。任せて」

 

アンナは腕をマッサージし始めた。

 

リール (やっぱり…こっちも気持ちいい…)

アンナ (リールの腕…細いなぁ…)

 

すりすり…すりすり…

アンナはリールの腕をさすり始めた。

 

リール (?)

アンナ「…」

 

アンナは黙々とマッサージをしている。

 

リール (アンナ…真剣だなぁ…)

アンナ「…」

リール (アンナはやっぱり真面目な子なんですね)

 

モミモミ…モミモミ…

 

リール「んっ…」

アンナ「じゃあ反対側の腕やるね」

リール「うん…」

 

アンナは反対側の腕をマッサージし始めた。

 

アンナ「ねぇリール」

リール「はい。なんですか?」

アンナ「リールはどう思う?エレナって人のこと」

リール「あの人のことですか…」

アンナ「うん」

リール「…正直よく分かりません」

アンナ「…」

リール「…あの人はどうやら私の事を回収するつもりだったようです」

アンナ「か、回収…」

リール「でも回収されませんでした」

アンナ「…」

リール「なぜ回収されなかったのかは分かりませんでしたが、今私がここにいるのはレヴィ学院長が守ってくれたからだと思っています」

アンナ「…良かった」

リール「…うん」

アンナ「リールがいないと私、何も出来ないから…」

リール「…アンナなら大丈夫ですよ」

アンナ「!」

リール「アンナは強い子です。私が保証します」

アンナ「ふふっ…ありがとうリール」

リール「…はい」

アンナ「さ、終わったよリール!どう?ほぐれた?」

リール「んっ」

 

リールは体を伸ばしてみた。

 

リール「あ、ほんとですね。確かに体の緊張がほぐれてます。それに少し軽くなったような…」

アンナ「良かった!じゃあ成功だね!」

リール「はい。そうですね」

 

リールは自分の手を見た。

 

リール (不思議…ほんとに緊張が和らぎました…)

アンナ「リール?」

リール「え、はい。何ですか?」

アンナ「今日はどうしたの?ずっと何か考え事してるみたい…」

リール「あーまぁ…そうですね」

アンナ「悩み事?」

リール「うーん…まぁ…そうですね」

アンナ「…話せないこと?」

リール「いえ、そういう訳では…」

アンナ「聞かせて。リール」

リール「え」

アンナ「お母さんが言ってたの。人の悩みは聞いてあげてって」

リール「…そうですか」

アンナ「だから聞かせてリール」

リール「…魔女さんのことです」

アンナ「あ、リールのお師匠様なんだよね」

リール「はい」

アンナ「お師匠様が何かあったの?」

リール「…魔女さんの行方が分からないんです」

アンナ「え…」

リール「出かけたのは最近ですが、それでもいくつか気になる発言があったんです」

アンナ「発言…」

リール「はい。エレナという人が言ってた"最愛の人"と"母親"。レヴィ学院長の"さぁ…どこに行ったんでしょうね"という言葉です」

アンナ「…」

リール「あれから魔女さんからの連絡はありません。なので…無事かどうかも分かりません」

アンナ「大丈夫だよリール!」

リール「…アンナ」

アンナ「リールのお師匠様は強いんでしょ?リールをここまで育ててくれたリールのお師匠様は今も生きてる!私が保証するから!」

リール「アンナ…」

アンナ「それに…リールに何かあったら私が何とかするから…ね?」

リール「…心強いです。ありがとう…アンナ」

アンナ「うん!」

リール (…魔女さん)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…???

 

エレナ「…」

サフェ「じゃあ始めるよ。エレナ」

エレナ「えぇ。お願い」

ジーヴル先生「おい!ここはどこだ!」

エレナ「教えません」

ジーヴル先生「なに!?」

エレナ「教えません。そう言いました」

ジーヴル先生「ならなぜ俺たちを捕まえた!」

エレナ「…私の計画のためです」

ジーヴル先生「計画だと?」

エレナ「はい。計画です」

ジーヴル先生「その計画がどんな物かは知らんが俺たちを捕まえてどうするつもりだ!」

エレナ「…確かめるだけです」

ジーヴル先生「確かめるだと?何をだ!」

エレナ「…結晶です」

ジーヴル先生「結晶だと?」

エレナ「はい。それが私の計画に必要なものです」

ジーヴル先生「結晶ってなんだ!?俺は知らんぞ!」

エレナ「それは私も知りません。なので確認させてもらいますね」

ジーヴル先生「なに!?」

エレナ「サフェ。始めましょう」

サフェ「はい」

 

エレナとサフェは魔法陣を展開した。

 

エレナ「解析(レジスト)

サフェ「透視(コーデル)

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

エレナとサフェはジーヴル先生の体を解析し始めた。

 

ジーヴル先生「クソッ!何してる!やめろ!」

 

ジーヴル先生が言った時にはもう手遅れだった。

 

エレナ「…残念ね」

サフェ「…そうだね」

 

エレナとサフェは解析し終えた。

 

ジーヴル先生「残念って何がだ!」

エレナ「あなたは結晶を持っていなかった」

ジーヴル先生「持ってないだと?」

エレナ「はい。あなたもハズレですね」

ジーヴル先生「あなたも…だと?」

エレナ「はい。あなたの前にもう一人…ある人の体も見させてもらいました」

ジーヴル先生「まさか…ラーフ先生…」

エレナ「正解です。彼もまた、あなたと同じで結晶を持っていませんでした」

ジーヴル先生「…俺たちをどうするつもりだ…このまま殺すのか」

エレナ「いえ、そのまま学院に帰っていただきます」

ジーヴル先生「なんだと?」

エレナ「私が必要なのは結晶だけです。その人の体や結晶を持ってない人には興味無いの」

ジーヴル先生「…その発言…後悔するぞ」

エレナ「別にあなた方が何人いようとも私には関係ありませんので」

ジーヴル先生「…」

エレナ「サフェ。この人とさっきの人を学院に転送して」

サフェ「分かりました」

 

サフェは魔法陣を展開した。

 

サフェ「さ、ここにいてください。離れると学院に戻れなくなるのでじっとしていてください」

 

サフェはラーフも連れてきた。

 

ラーフ「ジーヴル先生!」

ジーヴル先生「ラーフ先生!ご無事でしたか!」

ラーフ「えぇ。ですが…」

エレナ「お話は帰ってからしてください。サフェ。お願い」

サフェ「はい」

 

サフェは2人を魔法陣の上に連れて行き、魔法を唱えた。

 

サフェ「再転送(リポート)

 

シュッ…シュッ…

ラーフとジーヴル先生はエレナ学院に転送された。

 

サフェ「…今回もダメだったね」

エレナ「えぇ。そうね。一体何処にいるのかしら。あの人の結晶を持っている12人の人物は」




〜物語メモ〜

マッサージ
リールはマッサージというものを知らない。
そのため、マッサージを実際に受けて驚いていた。

無属性魔法:解析(レジスト)
エレナが使った魔法。
魔法の残り香と特殊な魔法の本質を見破る魔法。
その他にも暗号を解くのにも使われることがある。

無属性魔法:透視(コーデル)
サフェが使った魔法。
物体の遮断を無視して相手を見る魔法。
使うことであらゆる物体による遮断を無視して物の本質を見ることができる。
解析(レジスト)との違いとして、解析(レジスト)は魔法そのものを見て、透視(コーデル)は物体そのものを見る魔法。

無属性魔法:再転送(リポート)
サフェが使った魔法。
人や物を送り返す時に使われる魔法。
魔法の本質だけ見たら転送(テレポーテーション)とあまり変わらない。
違う点としては、転送(テレポーテーション)は人や物を送るもしくは返す時に使われる。
再転送(リポート)は送り返す時のみに限定される。
つまり、転送(テレポーテーション)を使わないと再転送(リポート)を行うことができない。
再転送(リポート)は送り返す時のみに使う魔法なので、何か物を送る時ではなく、送ったものを返す時にしか効果を発揮しない。
能力だけで見たら転送(テレポーテーション)の劣化版だが、メリットとしては転送(テレポーテーション)とは違って魔力を消費しないという点。


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第26話 リールと甘いもの巡り

私の名前はリール。

今部屋でアンナとスカーレットの3人で話し合いをしています。

今日は3人で甘いものを食べに行こうということでどこに行くかを話しています。

私は甘いものを食べないので味の想像がつきません。

2人がオススメするものを食べに行くので期待できます。

早く食べてみたいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…リールとアンナの部屋

 

アンナ「こことか美味しいよ」

リール「ここはどんなものがあるんですか?」

アンナ「パフェって言って…えーっと…」

リール「?」

アンナ「なんかすごい食べ物なの!」

リール「なんかすごい食べ物なんだ…」ゴクリ

スカーレット「私はこことかオススメよ」

リール「ここは?」

スカーレット「ケーキっていう甘い食べ物があるの。オススメできるわ」

リール「どんな感じですか?」

スカーレット「それは食べてからのお楽しみよ」

リール「むむむ…」

アンナ「じゃあそことここに行こ!私も食べたい!」

スカーレット「そうね。2つ食べましょ」

リール「じゃあ案内お願いしてもいいですか?」

スカーレット「任せなさい」

アンナ「じゃあ行こ!」

リール「はい!」

 

リールとスカーレット、アンナは学校を出て甘いものを食べに行った。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…ケーキ屋

 

リール「おぉ…」

スカーレット「ここが私がオススメする店よ」

リール「ここにケーキという食べ物があるんですね!?」

スカーレット「あるわよ」

リール「じゃあ行きましょう!早く食べてみたいです!」

 

3人は店に入った。

 

店員「いらっしゃいませ」

リール「おぉ…いっぱいありますね…」

スカーレット「好きな物注文しなさい」

リール「好きな物って…でも私食べたことないですし…」

アンナ「私、ショートケーキが好き」

リール「ショートケーキ?」

アンナ「ほら、右にある白いケーキだよ」

 

リールはショートケーキを探した。

 

リール「あ!これですか?」

アンナ「そうそう!それそれ!」

リール「へぇ、綺麗な白色ですね!この赤いのはイチゴですか?」

アンナ「そう!」

リール「確かに美味しそうですね…」

スカーレット「私はチョコケーキかしら」

リール「チョコ?」

スカーレット「これよ」

 

リールはスカーレットが指さしたところを見た。

 

リール「この茶色のケーキですか?」

スカーレット「そうよ」

リール「うっ…どちらも美味しそうですね…」

スカーレット「なら2つずつ注文しましょ」

リール「え!?いいんですか!?」

スカーレット「任せなさい。お金はあるから」

リール「ありがとうございます!スカーレット!」

スカーレット「い、いいわよ…別に」

 

スカーレットはショートケーキとチョコケーキを2つずつ注文し、近くの机で食べることにした。

 

リール「おぉ…これがケーキという食べ物ですか…」

 

リールはケーキに目を奪われていた。

 

アンナ「早く食べよ!」

スカーレット「そうね。頂きます」

アンナ「頂きます」

 

スカーレットとアンナはケーキを食べ始めた。

 

リール「わ、私も…頂きます」

 

リールもケーキを食べ始めた。

 

リール「んー!ん!ん!ん!」

 

リールは美味しそうにケーキを食べる。

 

リール「スカーレット!これ美味しいですね!」

スカーレット「当たり前よ。私がオススメするケーキなんだから」

リール「こんな美味しいもの初めてですね!」

スカーレット「そう。それは良かったわね」

 

チョコケーキを食べ終えたリールはショートケーキを食べ始めた。

 

アンナ「は、早いね…リール…」

リール「アンナ!アンナ!」

アンナ「何?」

リール「これも美味しいですね!」

アンナ「良かった…美味しくなかったらどうしようかと思ったよ…」

リール「2人ともこんな美味しいもの食べたことあるなんて羨ましいですね!」

スカーレット「また3人で食べに来ましょ」

リール「はい!」

 

その後3人はケーキを完食した。

 

リール「さぁ!次行きましょ!」

 

リールたちは次にパフェのお店に向かった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…パフェ専門店

 

リール「おぉ!ここも綺麗ですね!」

アンナ「でしょ!私のオススメのお店なの!」

スカーレット「いい雰囲気のお店ね」

アンナ「うん!」

 

3人はパフェを注文しに行った。

 

店員「いらっしゃいませ」

リール「アンナのオススメはありますか?」

アンナ「私はこれとこれかな」

リール「じゃあ私はこっち食べますね」

アンナ「え?」

リール「え?」

アンナ「2つ食べないの?」

リール「え?でもお金が…」

アンナ「私が出すよ?だから大丈夫」

リール「ほんとに…いいんですか?」

アンナ「うん!」

リール「じゃあお言葉に甘えて2ついただきますね」

アンナ「うん!」

 

3人は2つずつ注文した。

 

リール「おぉ…綺麗なお菓子ですね」

アンナ「食べてみて!美味しいから!」

リール「はい!頂きます」

スカーレット「私も頂くわね」

アンナ「うん!」

 

リールとスカーレットはそれぞれ1つ目を食べた。

 

リール「やっぱり美味しいですね!」

スカーレット「ほんと…これを知らなかったのが悔やまれるわ…」

アンナ「えへへ…」

 

1つ目を食べ終えた2人は2つ目を食べ始めた。

 

リール「あぁぁぁぁぁ…美味しい〜〜〜」

アンナ「でしょ!私のオススメのパフェなの!」

リール「アンナはよく来るんですか?」

アンナ「ううん。今は来てないよ。昔は来てたんだけどねぇ」

リール「そうですか」

 

その後3人は話をしながらパフェを楽しんだ。

 

リール「…ふぅ。ご馳走様でした」

アンナ「ご馳走様でした」

スカーレット「ご馳走様でした」

リール「さて、少し休みましょうか」

アンナ「だね」

スカーレット「流石にもう何も食べられないわよ…」

リール「休んだら次どこに行きますか?」

アンナ「私、服見に行きたいな」

スカーレット「あ、私も見に行きたかったわ」

リール「じゃあ休んだら服を見に行きましょう!」

アンナ「うん!」

 

3人は数分休んだ後、近くの服屋に寄った。

 

???「…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…服屋

 

カランカラン…カランカラン…

 

リール「わぁ…色々ありますね…」

 

リールは店の品揃えに驚いていた。

 

アンナ「綺麗〜」

スカーレット「これならいい服が見つかりそうね」

 

スタスタスタ

スカーレットとアンナは店の奥に入っていった。

 

リール「さぁて私も…」

 

カランカラン…カランカラン…

リールも服を見に行こうと歩き出した時、誰かが店に入ってきた。

 

リール「?」

オード「な、なんだ…リールか」

リール「あれ?オード君?」

 

店に入ってきたのはオードだった。

 

リール「オード君も服見に来たんですか?」

オード「あーまぁ…そんなとこだ。リールもか?」

リール「はい!今アンナとスカーレットの3人で見に来てるんです!」

オード「2人は?」

リール「お店の奥ですよ!あっちの方です」

 

そう言ってリールはアンナとスカーレットが向かった先に指さした。

 

オード「そ、そうか…」

リール「じゃあ私も見てきますのでこれで」

オード「あ!待ってくれリール!」

リール「?」

 

リールは突然名前を呼ばれて立ち止まった。

 

リール「どうかしましたか?」

オード「あ、いや…その…」

リール「…?」

オード「い…一緒に…見て回らないか?」

 

オードは言葉を詰まらせながらも最後まで言った。

 

リール「服を…ですか?」

オード「お、おう…ど、どうだ…」

 

リールは少しだけ間を空けて答えた。

 

リール「はい。構いませんよ」

オード「!」

リール「私もこのお店に入ること自体初めてなので色々と教えていただけると助かります」

オード「お、おう!任せとけ!」

 

そしてオードとリールは2人で服を見て回った。

 

オード「おーい。これリールに似合わねぇか?」

 

オードが服を持ってきた。

 

リール「いいと思いますよ」

オード「そうか!じゃあこっちは?」

リール「う〜ん…私ってオード君から見てどんなイメージですか?」

オード「イメージ?」

リール「はい。イメージがあればそれの通りに服が選べると思うのですが」

オード「イメージ…イメージかぁ…そうだなぁ…」

リール「…」

オード「やっぱり1番は優しさかな」

リール「優しさ…ですか」

オード「あぁ。魔法の模擬戦闘で一度しか関わったことのない俺を最後まで看てくれたのはリールだからな。俺の中ではやっぱり優しさが1番だな」

リール「な、なるほど…」

オード「やっぱりリールにはこっちがいいな。どう?」

リール「そうですねぇ…オード君がいいと思ったのならいいと思いますよ」

オード「そうか!ちょっと待ってな!」

リール「?」

 

オードは服を持ってその場をあとにした。

 

リール (何かあるのでしょうか…見に行きたいですが待てと言われたので離れるわけにもいきません。待ちましょうか)

 

オードは少しして紙袋を持って戻ってきた。

 

オード「すまねぇ。待たせた」

リール「何か買ったんですか?」

オード「あぁ。ほら」

 

ガサッ…

オードは持ってた袋をリールに渡した。

 

リール「え、私にですか?」

オード「あぁ。さっき選んだ服だ。受け取ってくれ」

リール「え、でもお金…」

オード「あ、それは気にすんな。これくらい大丈夫だ」

リール「でも…」

オード「じゃあこれを受け取ってくれ。お代の代わりだ」

 

ガサッ…

オードは紙袋を渡した。

 

リール「は、はぁ…分かりました」

 

ガサッ…

リールはオードから紙袋を受け取った。

 

リール「あ!じゃあこうしましょう!」

オード「?」

リール「今から私がオード君の服を選びます!これでおあいこです!」

オード「リールが…俺の服を?」

リール「はい!」

オード (ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!)

 

オードは心の中で発狂した。

 

リール「どうですか?」

オード「じゃ、じゃあお願いするぜ…」

リール「?」

 

オードは息を切らしていた。

 

リール「大丈夫ですか?」

オード「だ、大丈夫だ!」

リール「じゃあ一緒に見て回りましょう!」

 

ギュッ!

リールはオードの手を取って歩いた。

 

オード (リールが…リールが俺の手を取って歩いて…)

 

オードは叫びそうになった。

 

リール「オード君!こんな服はどうでしょうか?」

オード「もう…最高…」

リール「オード君?」

オード「!」

 

オードは今の時間を噛み締めていたが、我に返った。

 

オード「な、なんだ?」

リール「こんな服はどうですか?」

 

リールは服をオードに見せた。

 

オード (あ、そうだ)

 

オードはある事を思いついた。

 

オード「リールから見て俺はどんなイメージだ?」

リール「!」

 

オードはさっきリールがした質問をそのまま言った。

 

リール「そうですね。勇敢でカッコイイ人だと思いますよ」

オード「かっ…」

リール「だからオード君はこういう服が似合うと思うんですよね。着てみてください!」

オード「カッ…カッコイイ…」

リール「オード君?」

オード「お、おう!どうした?」

リール「ちょっとこの服着てみてください」

オード「服だな!任せろ!」

 

ピシャン!

オードは服を着替えに行った。

 

???「…」

???「…」

 

その様子を見ていたオードの友人2人…

 

???「なぁ…オードのやつ…上手いこといってるみたいだな」

???「おうよ。ほんとは服をプレゼントするだけだったのにな。いつの間にかあの子が選んだ服を試着してるぜ」

???「一緒に来た甲斐があったな」

???「ほんとだぜ」

 

ピシャン!

オードは勢いよく出てきた。

 

オード「ど、どうだリール!」

リール「あ、いいですね!」

オード「ほんとか!?」

リール「はい!」

オード「そ、そうか…照れるな…」

リール「じゃあそれとオード君の好きな服を選びましょうか」

オード「え、でもそれだとお金が…」

リール「"あ、それは気にすんな。これくらい大丈夫だ"」

オード「!!」

 

リールはさっきオードが言った言葉をそのまま伝えた。

 

リール「…さっきオード君はそう言いましたよ。なので気にしないでください」

オード「リ、リール…」

 

オードは言葉に甘えてもうひとつ自分の好きな服を選んだ。

 

リール「オード君が選んだ服は私が選んだ服によく似ていますね」

オード「そ、そうか?」

リール「でも良かったです」

オード「なんでだ?」

リール「もし全く別の種類の服を選んでいたらそっちの方が好きなのかなって思っちゃいましたし」

オード「あ、そうか」

リール「なので良かったです」

オード「…あぁ。俺も良かった」

リール「?」

リール「何故です?」

オード「…リールと好みが似てて嬉しい…」

リール「ふふっ…そうですね」

 

リールとオードは服を会計しに行った。

 

アンナ「あ!スカーレット!スカーレット!」

スカーレット「何?」

アンナ「あれ見て!あれ!」

スカーレット「ん?どうしたのよ」

アンナ「リールが男の人と一緒にいる!」

スカーレット「え!?」

 

スカーレットはアンナが指さした方を見た。

 

スカーレット「ほ…ほんとね…」

アンナ「あの人見たことある!」

スカーレット「あの人は確か…リールと戦ったオードって名前の男子ね」

アンナ「あの二人ってあんなに仲良かったのかな?」

スカーレット「ど、どうなのかしら…気になるわね…」

アンナ「あとでリールに聞いてみよ!」

スカーレット「そ、そうね…」

 

アンナとスカーレットはリールたちを見ていた。

 

リール「そういえばオード君」

オード「ん?なんだ?」

リール「傷の方は痛みますか?」

オード「いいや。もう大丈夫だ」

リール「そうですか…それは良かったです」

オード「リールが看病してくれたからな…」ボソッ

リール「え?」

オード「いや、なんでもない」

リール「あ!そうです!」

オード「ん?」

リール「オード君はパフェとケーキを知っていますか?」

オード「パフェとケーキ?知ってるぞ」

リール「あ、そうなんですね」

オード「ん?どうした?」

リール「実は私、今日までパフェやケーキがどんなものか知らなかったんです」

オード「食べたことなかったのか?」

リール「はい。一度も」

オード「そうか。で、食べたのか?パフェとケーキ」

リール「はい!」

オード「美味かったか?」

リール「はい!とても美味しかったです!」

オード「それは良かった」

リール「はい!」

オード「…それでさリール」

リール「はい。何ですか?」

オード「こ、今度…2人で何か食べに行かないか?」

リール「…え?」

オード「い、いや…まだリールが知らないこの国の食べ物があるんじゃないかって思ってな…これを機に教えようと思ったんだ。どうだ?」

リール「そうですね。まだまだ知らないことがあるかもしれませんね。ではまた今度、時間がある時にお願いしますね」

オード「おう!任せとけ!」

オード (しゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!)

 

オードは心の中で発狂した。

 

店員「次の方どうぞ〜」

リール「あ、呼ばれましたよ。行きましょう」

オード「リールとデート…リールとデート…リールとデート…」ボソッ

リール「オード君?」

オード「え?あ、なんだ?」

リール「呼ばれたので行きましょう!」

オード「お、おう!」

 

リールとオードは会計を済ませた。その様子を見ていたオードの友人2人は…

 

???「おい…オードのあの顔見たか?」

???「お、おう…すっげぇ顔してたな…」

???「でもまぁ、リールが何も言わなかったってことは気づいてないってことだよな?」

???「恐らくな…」

???「よしっ。俺たちは先に外に出てようか」

???「そうだな。見つかったらあれだしな」

 

2人は店を出た。

 

リール「今日はありがとうございました。オード君」

オード「お、おう…リールも…帰り道には気をつけろよ…」

リール「お気遣いどうもありがとうございます」

オード「それじゃあな…」

リール「はい!また学校で!」

 

フラフラ…フラフラ…

オードの足はフラフラだった。

 

リール「…?」

 

リールはその様子をずっと見ていた。すると後ろから2人の声がした。

 

アンナ「リール!」

リール「あ!アンナにスカーレット!どうしたんですか?」

スカーレット「リール…あなたオードと仲良かったの?」

リール「え、特に気にしてはいませんでしたが、そう見えましたか?」

アンナ「うん!すっごい仲良しに見えたよ!」

リール「そ、そうですか。な、なんだか照れますね…」

 

その頃オードとその友人2人は…

 

オード「リールと…デート…」

???「おいおいしっかりしてくれよ…」

???「足フラフラじゃねぇか…そんなに嬉しかったのかよ…」

オード「い、いや…そりゃあな…」

???「全く…こんな昼間っから熱いもの見せやがって…」

???「ほんとだぜ。最初は服をプレゼントするんだー!とか言ってたのにいつの間にか服をプレゼントされてるんだもんな」

 

ガサッ…

オードはリールと買った服が入った紙袋をしっかり持った。

 

オード「これ…ずっと大事にするわ」

???「え?」

???「え?」

オード「リールから貰った初めてのプレゼントだ。誰にも汚させないし誰にも渡さない」

???「…あぁ。そうしな」

???「ちゃんと服着てやれよ」

オード「あぁ。当たり前だ」

 

オードは2人に支えられながら帰った。




〜物語メモ〜

甘いもの
リールは甘い食べ物を知らない。
リールが知ってる食べ物は魔女さんと食べたものだけ。
そのため、今いる国の食べ物はリールにとっては初めてのものばかり。

お店
リールが行ったことあるお店は買い出しの時に行ったお店とメリーの魔法店のみ。
飲食店や服屋などには行ったことがない。
なので、この国にある娯楽施設などは一度も利用したことがない。


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第27話 リールと赤雷

私の名前はリール。

今アンナとスカーレットの3人で外にいます。

これからアンナとスカーレットにこの街を案内してもらおうと思っています。

私はエレナ学院にいながらこの街のことはあまり知りません。

1人で出かけられるくらいにはなりたいものです。

なので今日はずっと外にいると思います。

ですがひとつ気がかりなことが…

さっきから私の後ろから視線を感じるんです。

私は光属性魔法の適性者なので周囲の探知能力には長けています。

今のところ悪い人はいませんがどうなるでしょうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…スペルビア王国 街中

 

アンナ「ねぇリール」

リール「何ですか?」

アンナ「リールって箒に乗れるよね?」

リール「はい。乗れますよ」

アンナ「じゃあ乗り方教えて!」

リール「箒の乗り方ですか?」

アンナ「うん!」

スカーレット「あ、私もお願いしたいわ」

リール「え、2人はまだ箒に乗ったことが無いんですか?」

アンナ「うん」

スカーレット「まぁ、箒の授業の前に変な人が来たからね」

リール「あーなるほど…」

アンナ「お願いリール!乗り方教えて!」

リール「いいですよ。2人にはこの街を案内してもらってるので」

アンナ「ありがとう!」

スカーレット「私もこれを機に箒に乗れるようにしないと…」

リール「じゃあ広い場所に行きましょうか」

アンナ「あ!ならこの近くに公園があるよ!」

スカーレット「そうね。あそこなら広いから邪魔にならないわ」

リール「じゃあそこに行きましょうか」

アンナ「うん!」

 

3人は公園に向かった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…公園

 

アンナ「ほら!着いたよ!」

リール「おぉ…」

 

その公園はリールが思っていたよりも広かった。

 

リール「こんなに広い空間があるなんて…」

スカーレット「ここはこの街唯一の広い場所なの。だからこんなに広いの」

リール「へぇそうなんですね」

アンナ「じゃあ始めよ!」

スカーレット「そうね」

リール「その前に2人は疲れてませんか?」

スカーレット「え?」

アンナ「疲れてないよ!」

スカーレット「私も大丈夫よ」

リール「ならやりましょう!」

 

リールとアンナとスカーレットは公園の隅っこに移動した。

 

リール「じゃあまず箒を出してみましょう。やり方は前に教えた通りですよ」

アンナ「…来て」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

アンナがそう言うと箒が現れた。

 

スカーレット「来なさい」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

スカーレットもアンナと同じように言うと箒が現れた。

 

リール「上出来ですね!じゃあ箒に乗ってください」

 

アンナとスカーレットは箒に腰掛けた。

 

リール「今2人の周りにはマナがたくさんいます。それを箒に纏わせることで箒を飛ばすことができます」

アンナ「纏わす?どうすれば…」

リール「自分の箒に魔力を送ってください。そうすれば周囲にいるマナがくっつきますので」

 

アンナとスカーレットは言われるがまま魔力を送った。

シュゥゥゥゥゥゥ!

 

アンナ「!!」

スカーレット「!!」

 

すると周囲のマナが一斉に箒にくっついた。

 

アンナ「わ、わわわ!」

スカーレット「す、すごいわね…」

リール「あとはマナに飛ぶよう命令するだけですよ。やってみてください」

アンナ (マナに命令する…飛んで…とか?)

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…

アンナの箒が浮き始めた。

 

アンナ「え、わ、わわわ!」

 

アンナは突然浮き始めた箒に驚いていた。

 

スカーレット (なるほど…あぁなるのね。なら私も…飛べ。…とかでいいのかしら)

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…

スカーレットの箒も浮き始めた。

 

スカーレット「わっとと…なるほど…」

リール「2人とも上手ですよ!」

アンナ「リールもおいでよ!一緒に飛ぼ!」

リール「はい!」

 

リールは手を出した。

 

リール (…来てください)

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…ポンッ!

リールは箒を取り出した。

 

リール (飛べ…)

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ!

リールの箒も宙に浮いた。

 

アンナ「すごいリール!手際いいね!」

リール「まぁ、慣れてますから」

スカーレット「この後はどうするの?」

リール「そうですねぇ、どこか目的地があるならそこに行くよう命令するか、自分で操作しますね」

アンナ「私自由に飛んでみたい!」

スカーレット「私も」

リール「でしたら一緒に飛んでみましょう」

アンナ「どうやるの?」

リール「簡単ですよ。進行方向に箒を傾けるだけです」

アンナ「へぇ!」

 

3人は前に箒を傾けた。

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ

すると箒は前に進んだ。

 

アンナ「すごいすごい!」

スカーレット「えぇ…これはいいわね…」

リール「曲がりたい時は体を倒してください。止まりたい時は箒の先端を持ち上げてくださいね」

アンナ「うん!」

 

3人は箒に乗って色々な所へ飛んだ。

 

オード「な、なるほど…あんな感じになるのか…」

 

その様子を見ていたオード。

 

???「なぁオード…」

オード「ん?」

???「今日も今日とてリールの観察か?」

オード「観察じゃねぇよ!危険が無いよう見守ってるだけだ!」

???「あーはいはい」

オード「てかノーラもしっかり見張ってろよ」

ノーラ「分かってるって…」

???「今日も最後までいるのか?」

オード「当たり前だろ?いつ危険な目に遭うか分かったもんじゃない」

???「まぁ、分からんでもないが…」

ノーラ「まぁディア。ここで俺たちが颯爽と現れてあの3人を守ることができたらカッコイイと思わないか?」

ディア「あー…まぁ、そうだな」

オード「そういうことだ。行くぞ!」

ノーラ「おう!」

 

オードたちはリールたちの後を追う。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…広場

 

アンナ「あ!ここで降りよ!」

リール「はい!」

 

3人は広場に降りた。

 

リール「あれ、ここさっきの場所と似てますね」

スカーレット「えぇ。ここはさっきの公園を小さくした感じよ」

リール「へぇ、そうなんですね」

アンナ「ちょっと一休みしよ!」

 

リール、アンナ、スカーレットは少し休むことにした。

 

リール「どうですか?アンナ、スカーレット」

アンナ&スカーレット「?」

リール「箒に乗った感想は」

アンナ「楽しかった!」

スカーレット「そうね。いい体験だったと思うわ」

アンナ「これで箒の実技は簡単になったよ!」

リール「ですね」

 

その様子を見ていた3つの影…

 

オード「…」

ディア「箒って便利だなオード」

オード「あぁ…無理に走らなくても良さそうだ…」

ノーラ「俺たちはまだ箒に乗る練習してないからなぁ…」

オード「いつかリールに乗り方聞くぞ」

ディア「え?俺たちでやるんじゃないのか?」

オード「俺たちだけだと一向に乗れる気がせんからな。誰かに聞くのが手っ取り早いだろ?」

ノーラ「ごもっとも」

ディア「…だな」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…広場上空

 

???「さて、準備はできたか?ゴーラ」

ゴーラ「当たり前だ。そっちもいけるか?マーモ」

マーモ「あぁ。いけるぜ」

ゴーラ「じゃあ…始めるか…」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…ゴゴゴゴゴゴゴ!

ゴーラは魔力を溜めた。

 

ゴーラ「万雷よ…この地に降誕しろ…」

 

ゴゴゴゴゴゴゴ!

ゴーラの魔力が更に増加した。

 

ゴーラ「赤雷(ダイナラ)

 

ピカッ!ドゴォォォォォン!

溜めた魔力が雷となり地面に落ちた。

 

ドゴォォォォォン!

 

リール「!!」

アンナ「!!」

スカーレット「!!」

オード「!!」

ディア「!!」

ノーラ「!!」

 

激しい轟音とともに雷が落ちた。

 

リール「な、何があったんでしょうか…」

アンナ「びっくりしたぁ…」

スカーレット「…」

 

スカーレットは雷が落ちた場所を見た。

 

スカーレット (まさか…これって…)

オード「ぐぁぁ…耳が痛てぇ…」

ディア「いきなりなんだよ…」

ノーラ「こんな天気のいい日に雷だと…」

スカーレット「!」

 

スカーレットは魔力を感じ取った。

 

スカーレット「リール!」

リール「はい!」

スカーレット「これ…雷属性魔法よ!」

リール「え…魔法…」

スカーレット「この感じ…魔力も相当なものだと思うわ…」

リール「じゃあ誰が…」

スカーレット「…」

 

スカーレットは周囲を見渡した。

 

スカーレット (魔法を放った形跡が無い…誰がこんなことを…)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…広場上空

 

ゴーラ「はっ。この程度で騒ぐのかよ」

マーモ「そりゃ騒ぐだろ…今の魔法、ゴーラ自作の魔法だろ?」

ゴーラ「それがどうした」

マーモ「お前の作る魔法はどれも攻撃力が高すぎるんだよ。俺たちでも当たったら致命傷だ」

ゴーラ「そうか」

マーモ「まぁ、そうでなくても驚くだろ普通」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…広場

 

スカーレットは未だに魔力の発信源を特定できない。

 

リール「スカーレット!どこにいるか分かりませんか?」

スカーレット「…分からないわ」

リール「!」

スカーレット「雷属性魔法って特定の電磁を感じることが出来るの。でもそれが感じ取れない…どこから魔法を使ったのかもさっぱり分からない」

リール「じゃあ…」

スカーレット「…せめてあと一回攻撃が来れば分かると思うわ」

アンナ「スカーレット!リール!上を見て!」

 

リールとスカーレットは上を見た。

 

リール「あれは…」

スカーレット「…」

 

そこには2人の人物が見下ろしていた。

 

アンナ「もしかしたらあの人たちかも…」

リール「あの人たち…箒に乗ってないのに空を飛んでます…」

スカーレット「…只者じゃないわね」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…広場上空

 

ゴーラ「お、ようやく気づいたらしいな」

マーモ「あぁ。そうらしいな」

ゴーラ「降りるか」

マーモ「いいのか?近くにもう3人いるけど」

ゴーラ「6人程度なら造作もないわ。まとめて蹴散らしてやる。それで、光属性魔法の適性者はあいつでいいんだな?」

マーモ「あぁ。こいつが反応してるからな」

ゴーラ「なら行くぞ」

マーモ「はいよ」

 

ゴーラとマーモは地上に降りた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…広場

 

アンナ「2人…こっちは3人…」

リール「アンナ!」

アンナ「!」

リール「戦っちゃダメです!先生のところに戻りましょう!」

スカーレット「リール」

リール「何?」

スカーレット「…逃げられないわよ」

リール「え…何で…」

スカーレット「…2人のうちどちらかが雷属性魔法の適性者よ…逃げても追いつかれるわ」

リール「じゃあ…」

スカーレット「ここで戦うしかないわ」

リール「でもここで戦ったら先生の防御が得られない…」

アンナ「うん…でも…」

スカーレット「やるしかない」

リール「で、でも…私…魔法が…」

 

現在リールはレヴィ学院長から魔法の使用を禁止されている。もしこれを破ればリールは退学処分となってしまうため、リールは躊躇っていた。

 

リール「でも…私…」

スカーレット「…降りてきたわ」

 

ゴーラとマーモが降りてきた。

 

ゴーラ「ふん。なんだこの程度でビビってるのか」

マーモ「3人か…」

ゴーラ「いや、6人だ」

リール「!」

 

リールは光属性魔法の特性を発動した。周囲に4人ほど人がいる。

 

リール (まさか…この人たちを攻撃する気じゃ…)

ゴーラ「まずはその後ろにいるやつからだ」

 

ピシッ…ジジジ…

ゴーラは雷を溜め始めた。

 

リール「!」

ゴーラ「まずは一人」

 

バリバリバリ!ビューン!ビリビリビリ!

ゴーラの雷はリールの後ろにいる人に向かって一直線に飛んだ。

 

リール (マズイ!光速(オーバー・スピード)!)

 

ピュン!

リールは光速で移動した。

 

スタッ!

その人の前に着いたリールは急いで結界を展開した。

 

リール「はぁっ!」

 

パキパキパキ…キィィィィン!

リールの結界は攻撃が当たる寸前のところで展開された。

 

ゴーラ「…ほう。さすがに速いな」

マーモ「あぁ。そうだな」

 

ギリギリギリ…

リールはゴーラの雷と対峙している。

 

リール「はぁ…はぁ…はぁ…」

???「あ、あの…」

リール「逃げてください!」

???「は、はい!」

 

タッタッタッ

???は逃げた。

 

ゴーラ「…逃がしたか」

マーモ「まぁいいだろ。あんなやつ」

ゴーラ「そうだな」

リール (このままだと誰かが怪我をします。それを防ぐためには…)

 

ギギギ…ギギギギギ…

結界が軋み始めた。

 

リール (結界が…お願い…耐えて…)

 

ギリギリギリ…パリィィン!

 

リール「!!」

 

リールの結界は完全に破壊された。だがそれと同時にゴーラの雷も消えていた。

 

リール「や、やった…」

ゴーラ「ふん。止められたか」

マーモ「やるな。あいつ」

 

ジリッ…スタスタスタ

リールは一歩ずつゴーラとマーモのところに近づいた。

 

スッ…

リールは杖を取り出した。

 

リール「アンナ。スカーレット」

アンナ「?」

スカーレット「?」

リール「…私たちが戦うしかないのかもしれません」




〜物語メモ〜

初登場人物

ディア
オードの友達。
火属性魔法の適性者。
いつもオードとノーラの3人で一緒にいる。
結構仲良し。

ノーラ
オードの友達。
水属性魔法の適性者。
いつもオードとディアの3人で一緒にいる。
いつもオードの無茶ぶりに振り回されている。

ゴーラ
雷を落とした張本人。
マーモと一緒に行動することが多い。

マーモ
ゴーラと一緒に行動する人物。
突発的に行動するゴーラと相反してしっかり物事を見定めてから行動するタイプ。
ゴーラとは昔から一緒に過ごしてきたため、一番仲がいい。


登場した魔法

赤雷(ダイナラ)
ゴーラが放った魔法。
ゴーラ自作の魔法で雷ではあるが色は赤。
マーモが名付けた。
地面に落ちれば指定の範囲に雷が広がる魔法。
今回はただ落としただけで周囲には広がらなかった。


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第28話 リールと魔女さんの魔法

私の名前はリール。

私は今、アンナとスカーレットの3人で外にいます。

さっきまで箒に乗ってて休憩のためにある広場に降りました。

すると少し時間が経って、急に赤い雷が落ちてきました。

スカーレットが言うには雷属性魔法なんだそうです。

周囲を探しましたが誰もおらず、アンナが空にいた2人の人物を指しました。

そのうち1人が赤い雷を落としたそうです。

私が感じた中では魔女さんの魔力が1番強かったんですが、この赤い雷も相当な魔力でした。

危険だと感じた私は杖を手に取り、あの人たちと戦う決断をしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リール「…私たちが戦うしかないのかもしれません」

アンナ&スカーレット「…」

 

アンナとスカーレットは目を合わせ、リールの意見に賛成することにした。

 

アンナ「うん。そうかもね」

スカーレット「私たちが止めないともっと酷くなるわね」

 

スッ…

アンナとスカーレットも杖を取り出した。

 

ゴーラ「お?殺る気になったか?」

マーモ「そのようだな」

ゴーラ「じゃあ回収するか。あいつを」

マーモ「足引っ張るなよゴーラ」

ゴーラ「へっ…マーモこそ」

リール「…」

 

リールたちは相手の様子を見ている。

 

ゴーラ「…何もしてこないぞ」

マーモ「様子を見てるんだろうね」

ゴーラ「そうか。ならこっちからやってやる」

 

ジジジ…バリバリバリ!

ゴーラは雷を集めた。

 

ゴーラ「雷槌(メディエス)!」

 

ピカッ!ドゴォォォン!

雷は一直線に飛んだ。

 

リール「来るよ!」

アンナ「ここは任せて」

 

ジリッ…

アンナが一歩前に出た。

 

スカーレット「待ってアンナ!水属性じゃ雷属性には…」

アンナ「大丈夫」

スカーレット「!」

 

スカーレットは以前のアンナには無かったものを感じた。

 

スカーレット「アンナ…」

 

ビリビリビリビリ!

雷は一直線に飛んでくる。

 

アンナ (スカーレットに勝ったあの人…あの人は雷属性魔法のスカーレットに水属性で勝った。私はあの時、水の使い方を学んだ。もうこれ以上迷惑かけられない)

 

ビリビリビリ!

雷が迫ってくる。

 

スカーレット「アンナ!」

アンナ (…ここ!)

アンナ「流水(メロア)!」

 

ザバァァァァン!

アンナは水属性魔法で道を作った。

 

ドゴォォォン!ビリビリビリ!

雷はその水に当たり、一瞬にして周囲に広がった。

 

アンナ「ぐっ…」

 

アンナはダメージを受けた。

 

スカーレット「アンナ!」

アンナ (でもこれで…)

 

ビリビリビリ!ビューン!

雷はアンナが作った水の道を伝ってマーモのところに飛んだ。

 

マーモ「な!」

 

ビューン!ドゴォォォン!

 

マーモ「ぐぁぁぁぁぁぁ!」

 

マーモはまともに攻撃を受けてしまった。

 

ゴーラ「マーモ!」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…ビリビリ…ビリビリ…

マーモは身体中に電気を帯びてしまった。

 

マーモ「ぐぁっ…体が…」

 

マーモの体はまともに動かなかった。

 

スカーレット「凄いわアンナ!」

アンナ「えへへ…」

リール「すごいですよアンナ!」

アンナ (よかった…リールに褒めてもらえた…)

ゴーラ (チッ…あいつ…水属性魔法なのに雷属性魔法を弾いただと…)

 

ゴーラはアンナを見た。

 

ゴーラ (だが、弾いたあいつももう限界だろ。次の一発で終わらせてやる)

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴ…

ゴーラは周囲に電気を放散させた。

 

ゴーラ (これなら避けれねぇだろ)

 

ビリビリビリ…フワフワ…フワフワ…

ゴーラが雷を放散させると、周囲の瓦礫や岩石が浮き始めた。

 

ゴーラ「これでどうだ!」

 

ビュン!

ゴーラは浮かせた瓦礫や岩石をアンナに向けて飛ばした。

 

スカーレット「アンナ!」

アンナ「!」

 

アンナはそれに気づかなかった。気づいた時にはもう岩石は目の前にあった。

 

リール「光爆(エレノア)ー!」

 

キィン!バゴォォォォン!パラパラパラパラ…

リールが光属性魔法でその岩石や瓦礫を粉砕した。

 

アンナ「あ…ありがとう…リール」

リール「どういたしまして!」

ゴーラ「チッ…光属性魔法か…マーモ!まだ治らねぇのか!」

マーモ「もう…少し…」

 

マーモの体はまだ麻痺していた。

 

ゴーラ「チッ…」

スカーレット「雷砲(サンダー・キャノン)!」

 

ジジジ…ドゴォォォン!

スカーレットはマーモに向かって雷属性魔法を放った。

 

マーモ「な…」

 

ドゴォォォン!

スカーレットの攻撃は命中した。

 

リール「すごい!すごいですよスカーレット!」

スカーレット「当たり前よ」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

煙が晴れた。

 

スカーレット「!」

リール「!」

アンナ「!」

 

スカーレットの攻撃は命中していた。だが、命中していたのはマーモではなくゴーラだった。

 

ゴーラ「…いい雷だ」

スカーレット「そんな…」

ゴーラ「お前、雷属性魔法か」

スカーレット「…」

ゴーラ「なら、お前にいいものをくれてやる」

 

ジジジジジジジジジ

ゴーラは力を込めた。

 

ゴーラ「雷属性魔法にはな…こういう使い方もあるんだ」

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴ!

 

ゴーラ「雷撃(ゴラ・モーア)!」

 

ギュォォォォォ!ドゴォォォン!

ゴーラは雷で作った気弾をスカーレットに向けて放った。

 

スカーレット「な…」

リール「スカーレット!」

スカーレット「インドラの矢(サディエライト・アーツ)!」

 

キィン!バゴォォォォン!

両者の魔法がぶつかる。

 

スカーレット「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

ギュォォォォォ!

 

スカーレット「!」

 

スカーレットは途中で異変に気づいた。

 

スカーレット「ま…魔力が…」

ゴーラ「はっ…ようやく気づいたか」

 

ゴーラが放った雷撃(ゴラ・モーア)はスカーレットのインドラの矢(サディエライト・アーツ)の魔力を吸収していた。

 

ギュォォォォォ!

スカーレットの魔力はどんどん吸収されていく。

 

スカーレット「このままじゃ…」

 

ドゴォォォン!

両者の魔法が力に耐えきれず消滅した。

 

スカーレット「はぁ…はぁ…よかっ…」

 

ビューン!

 

スカーレット「!?」

 

だがゴーラの雷撃(ゴラ・モーア)は消滅していなかった。

 

スカーレット「しまっ…」

リール「スカーレット!」

 

バゴォォォォン!

ゴーラの魔法はスカーレットに命中した。

 

スカーレット「…」

 

ドサッ…

スカーレットは力なくその場に倒れた。

 

リール「スカーレット!」

スカーレット「…」

 

スカーレットはピクリとも動かなかった。

 

リール「スカー…レット…」

 

ビリビリ…ビリビリ…

スカーレットの体には雷が走っていた。

 

ゴーラ「はっはっはっ!」

リール「!」

ゴーラ「バカなやつだ。あれに攻撃するとはな」

リール「…」

ゴーラ「あれは相手の魔力を吸収して攻撃力を上げる魔法だ。雷属性魔法を吸収すればさらに強くなる。この女が雷属性魔法だと分かったからこの魔法が使えた。それを知らなかったこいつはまんまと罠にかかったんだ」

リール「スカーレット…」

ゴーラ「さ、ここで展開しようか。俺の領域を」

 

ヒュッ

ゴーラは杖を高く上げた。

 

ゴーラ「雷の領域(ホライゾン)

 

ジジジ…バリバリバリ!

周囲に雷属性魔法の領域が展開された。

 

アンナ「な…なに…これ…」

ゴーラ「これは俺を強くするための領域。この領域内にいる水属性魔法は持続ダメージを負っていずれ死に至る」

アンナ「え…」

 

ビリビリビリビリ!

アンナがそれを聞いた瞬間、アンナの体に電気が流れた。

 

アンナ「あぁぁぁぁぁぁぁ!」

リール「アンナ!」

アンナ「あぁぁぁぁぁぁぁ!」

ゴーラ「さぁて、お前は何秒持つだろうなぁ」

リール「くっ…」

オード「ちょっと待てーーーい!」

 

ザザッ!

すると近くの物陰からオードとディア、ノーラが姿を現した。

 

オード「今すぐこの領域を閉じろ!クソジジイ!」

ゴーラ「…やっと出てきたのか。さっきからそこで隠れてた腰抜け共が」

リール「オード君!?」

ディア「やるぞオード!」

オード「当たり前だ!女の子を守るのが男の仕事だ!」

ゴーラ「…はぁ?何言ってんだよ」

オード「炎流(ファイアロード)!」

 

ゴォォォォォォォ!

オードの杖から炎が出てきた。

 

ディア「炎化(バーン)!」

 

ゴォォォォォォォ!

ディアの杖から炎が出てきてディアを包み、そのままディアは突進した。

 

ノーラ「渦潮(ロウェナ)!」

 

ザバァァァァン!

ノーラは渦潮を展開した。

 

ゴーラ「火属性が2人と水属性が1人。水属性はどうせ死ぬから残りの2人をどうにかするか」

 

ドゴォォォン!

3人の魔法は直撃した。

 

オード「…どうだ」

ノーラ「…」

 

スタッ

突進していたディアが戻ってきた。

 

オード「どうだディア。手応えはあったか?」

ディア「いや…なかった…」

オード「なに…」

ゴーラ「今この領域がある限り、そこの水属性のやつは時間経過で死ぬ。その前の水属性の女はもう倒れてる。見ておけよ。じきにお前もあぁなる」

ノーラ「…」

ゴーラ「さ、死ぬ覚悟はできたか?ガキが」

オード「へっ…おっさんこそ。俺たちに殺される覚悟はできたか?」

ゴーラ「はっ…ほざけ」

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴ…

ゴーラは魔力を溜めた。

 

マーモ「すまないゴーラ。今治った」

ゴーラ「そうか。今からこいつらを潰す。お前も手伝えモーア」

モーア「あぁ。任せな」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ!

モーアの周りに風が発生した。

 

モーア「ゴーラ。相手の属性魔法は」

ゴーラ「1人は水属性魔法だ。残りの2人は火属性魔法だ」

モーア「…俺の弱点属性が2人もいるのか…」

ゴーラ「心配すんな。弱い」

モーア「そうか。ならやってみよう」

 

ビリビリビリ!

ヒュゥゥゥゥゥゥ!

ゴーラとマーモは魔力を溜めている。

 

ディア「いくぞオード!ノーラ!」

オード「おう!」

ノーラ「せめて一撃だけでも」

 

オードたちも魔力を溜めた。

 

オード「核爆発(デューリ)!」

ディア「火柱(メルサガ)!」

ノーラ「水ノ舞(アモール)!」

 

ゴーラ「赤雷(ダイナラ)

マーモ「風ノ陣(ヴィドア)

 

キィン!バゴォォォォン!

5人の魔法は互いに直撃し、爆発した。

 

オード「…ふぅ」

マーモ「斬り風(ザンバ)!」

オード「な!」

 

ズシャシャシャシャ!

オード、ディア、ノーラはマーモの魔法を受けてしまった。

 

オード「ぐぁぁぁぁ!」

ディア「ぐぁっ…」

ノーラ「これは…」

 

3人はマーモの魔法で体の至る所に斬り傷がついた。

 

マーモ「…油断したね」

オード「こいつ…」

ディア「オード…大丈夫か…」

ノーラ「あの人…風属性魔法…だからディアとオードならまだなんとかなる…」

オード「あぁ。いくぞディア」

ディア「あぁ…やるか」

ノーラ (俺はもう…限界だ…)

 

ドサッ…

ノーラはその場に倒れた。

 

オード「ノーラ!」

ゴーラ「ようやく死んだか。さっきの女よりかは長かったな」

マーモ「…だな」

オード「くそぉぉぉぉぉ!」

 

オードは魔法を使った。

 

オード「これでどうだぁぁぁぁぁ!」

マーモ「…遅い」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ!ズシャシャシャシャ!

 

オード「がぁぁぁぁぁぁ!」

ディア「な…ぐっ…」

 

オードとディアはマーモの魔法を受けてしまった。

 

リール「オード君!」

オード「はぁ…はぁ…」

ゴーラ「まだ立つか」

マーモ「しぶといねぇ」

オード「当たり前…だろうが…女の子が困ってるんだ…盾になるのが男の役目…」

ゴーラ「そうか。ならその盾を壊さないとな」

マーモ「あぁ。そうだな」

オード「はぁ…はぁ…」

マーモ「次で潰してあげる」

 

ヒュォォォォォォ!

マーモは風を集めた。

 

マーモ「風玉(ブレイズ)!」

 

バババババババババ!

マーモは玉型の風属性魔法をオードに向けて放った。

 

ドドドドドドドドド!

 

オード「ぐぁっ…ぐっ…がっ…」

 

オードはリールの前に立ってリールを守った。

 

リール「オード君!」

オード「ぐっ…がっ…」

 

オードは何発も魔法を受けているが、倒れることはなかった。

 

マーモ「いいねぇ。何発まで耐えられるかな」

 

バババババババババ!

マーモは続けて魔法を放つ。

 

ドドドドドドドドド!

オードは負けじと魔法を受ける。

 

リール「オード君…オード君!」

オード「…」

 

ついにはオードは喋らなくなった。

 

バババババ…シュゥゥゥゥゥゥ…

マーモは魔法を止めた。

 

オード「…」

 

オードはリールを守りきった。

 

ゴーラ「はっ。まだ立ってやがる」

オード「…」

マーモ「いや、立ってるけどもう意識は無いよ」

リール「!」

マーモ「ちょっとの風ですぐ倒れるよ」

ゴーラ「ほう。ならやってみろ」

マーモ「あぁ」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…

マーモはオードに弱い風を当てた。

 

ドサッ…

するとオードは力なく倒れた。

 

リール「オ…オード…君…」

オード「…」

 

オードは目を開けなかった。

 

リール「オード君…みんな…」

 

今この場で意識を持っているのはリールだけ。アンナ、スカーレット、オード、ディア、ノーラは意識を失っている。

 

リール「くっ…ぅぅぅぅぅぅ…」

ゴーラ「はっ、ほんとに倒れやがった」

マーモ「な、言っただろ?」

リール「…」

マーモ「さ、あとは光属性魔法の適性者を回収するだけだよ」

ゴーラ「はっ、こんな簡単な仕事をエレナのやつは失敗したのか?笑わせるぜ」

マーモ「全くもってその通りだよ」

 

スタスタスタ

ゴーラはリールに近づいた。

 

リール「…」

 

スッ…

リールは立ち上がってゴーラに杖を向け、目を閉じた。

 

ゴーラ「お?来るか?」

リール (魔女さん…力を…貸してください…)

 

ヒュォォォォォォ…

 

ゴーラ「!!」

 

一瞬にして空気が変わった。

 

ゴーラ (なんだ…空気が変わった…)

リール「…」

 

リールは杖を向けたまま止まっている。

 

ゴーラ (…はったりか)

リール (魔女さん…お願いします…私に…私にあの人たちをやっつけるだけの力を…貸してください…)

魔女さん (任せて…リール)

リール (!!)

 

リールは魔女さんの声が聞こえたような気がした。

 

ゴーラ「…誰だお前」

マーモ「!!」

リール「!!」

 

リールが目を開けると目の前に見覚えのある人が立っていた。

 

魔女さん「…」

リール「魔女…さん…」

魔女さん「…」

 

そう。目の前にはリールの師匠である魔女さんが立っていた。

 

ゴーラ「誰だてめぇ」

魔女さん「…」

マーモ「ゴーラ。あの人…相当な魔力を持ってるよ」

ゴーラ「そんなん見りゃ分かるわ」

マーモ (なんなんだこの魔力…今まで感じたことがない…)

魔女さん「…」

リール「魔女…さん…」

ゴーラ「チッ…こんなところで知らねぇやつに作戦の邪魔をされてたまるか」

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴ!

ゴーラは雷を集めた。

 

ゴーラ「赤雷(ダイナラ)!」

 

キィン!ドゴォォォン!

雷は一直線に魔女さんのところへ飛んだ。

 

リール「魔女さん!危ない!」

魔女さん「…」

 

キィン!バゴォォォォン!

ゴーラの雷は直進していたはずだが魔女さんの目の前で急激に方向を変え、近くの建物に当たった。

 

ゴーラ「な…」

マーモ「!?」

リール「…え」

魔女さん「…」

 

魔女さんはその場から一歩も動いていなかった。

 

ゴーラ「チッ…女のくせに…」

魔女さん「…」

 

スッ…

魔女さんはゴーラに指を向けた。

 

ゴーラ「…?」

 

スゥゥゥゥ…

魔女さんはそのまま指を下に向けた。

 

ゴーラ「…あ?なにかした…」

 

バゴォォォォン!

 

ゴーラ「!?」

マーモ「!?」

 

魔女さんが指を下に向けた瞬間、ゴーラは地面に叩きつけられた。

 

リール「え…」

 

グググググ…

ゴーラは叩きつけられたまま動けないでいた。

 

ゴーラ「こ…んの…なに…しやがっ…」

魔女さん「…」

マーモ「この!ゴーラを離せ!」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ!

マーモは風を集めた。

 

マーモ「風玉(ブレイズ)!」

 

バババババババババ!

マーモは玉型の風属性魔法を放った。

 

魔女さん「…」

 

ツンツン

魔女さんはマーモに指を向け、2回ほど空気をつついた。

 

ドゴォン!ドゴォン!

 

リール「!!」

 

すると、マーモの体に2つの打撃跡ができた。

 

マーモ「ぐぉっ…」

 

ドサッ…

マーモはその強さに耐えきれず、その場に倒れた。

 

魔女さん「…」

マーモ「なんだ…この力…」

リール「魔女…さん…」

ゴーラ「こ…の…いい加減に…しろ…俺たちが…たった1人に…」

魔女さん「…」

 

ツンツンツンツン

魔女さんはゴーラに指を向け、4回ほど空気をつついた。

 

ドゴォンドゴォンドゴォンドゴォン!

 

ゴーラ「がぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

すると先程と同じようにゴーラに4つ打撃跡ができた。

 

ゴーラ「ぐぁぁぁ…」

魔女さん「…」

 

スッ…

魔女さんはマーモに指を向けた。

 

マーモ「ひっ…」

 

マーモは怯えた。

 

魔女さん「…」

 

魔女さんはマーモに指を向けたまま止まった。

 

マーモ「風玉(ブレイズ)!」

 

バババババババババ!

マーモはその隙をついて魔法を放った。

 

魔女さん「…全属性の暴走(エレメント・ノディア)

 

バゴォォォォン!バゴォォォォン!バゴォォォォン!

バゴォォォォン!バゴォォォォン!バゴォォォォン!

バゴォォォォン!バゴォォォォン!バゴォォォォン!

 

マーモ「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

魔女さんが魔法を放った瞬間、マーモを中心に大爆発が起こった。その数は実に9回。火、水、氷、風、雷、土、光、闇、無の9つの属性魔法がマーモを襲う。

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

やがて煙は晴れた。

 

リール「!!」

魔女さん「…」

 

だがもうそこにはマーモはいなかった。

 

リール「い…いなくなってる…」

ゴーラ「マァァァァァモォォォォォォ!」

 

ゴーラは叫んだが、マーモからの返事が返ってくることはなかった。

 

ゴーラ「てめぇ…やりやがったな…」

魔女さん「…」

 

ゴーラは魔女さんに杖を向けた。

 

ゴーラ「死なば諸共…大雷獄(アヴァリヴィア)!」

 

ジジジ…ドゴォォォン!

ゴーラは魔女さんに向けて魔法を放った。

 

魔女さん「…全属性の弾丸(エレメント・ラプソディ)

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

すると、ゴーラを中心にマナが集まり始めた。

 

ゴーラ「な…なんだこいつは!」

魔女さん「…」

ゴーラ「おい!やめろ!今すぐやめろ!」

魔女さん「…」

ゴーラ「おい!聞いてんのか!お…」

 

バババ!バババ!バババ!

ピュン!ピュン!ピュン!

ドカッ!ドカッ!ドカッ!

ズシャッ!ズシャッ!ズシャッ!

ビュン!ビュン!ビュン!

ガンッ!ガンッ!ガンッ!

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

バゴォン!バゴォン!バゴォン!

ズシャッ!ドゴォン!バゴォン!

 

ゴーラが叫んでいる途中で火、水、氷、風、雷、土、光、闇、無属性魔法の一斉攻撃が始まった。

 

ゴーラ「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

魔女さん「…」

 

その光景は凄まじく、ゴーラだけでなく周りの建物にも被害が出た。

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

やがてその攻撃は止んだ。

 

魔女さん「…」

リール「…」

 

リールはこの時、魔女さんの強さを知った。

 

リール (魔女さん…こ…こんなに強いなんて…)

魔女さん「…」

ゴーラ「ぐぁっ…ぐっ…」

リール「!!」

 

ゴーラはなんとか生き残っていた。

 

ゴーラ「このっ…ゴフッ…ボコスカ…攻撃しやがって…」

 

ゴーラは吐血しながら喋った。

 

リール「まだ…やっつけられないなんて…」

魔女さん「…」

ゴーラ「俺はまだ…負けてない…」

リール「!」

 

リールは自分の手にある杖に気づいた。

 

リール「なら…私が!」

 

ザッ…

リールは一歩前進した。

 

バッ!

だが、魔女さんがそれを止めた。

 

リール「魔女…さん…?」

魔女さん「…」

 

魔女さんはじっとゴーラを見ている。

 

ゴーラ「ゴフッ…くっ…せめて…マーモが…いれば…ゴフッ…」

 

ゴーラの吐血は酷くなっていた。

 

ゴーラ「これは…アラミスの回復が…必要だ…」

 

ゴーラはゆっくり立ち上がった。

 

ゴーラ「てめぇ…覚悟しておけよ…はぁ…はぁ…いつか…殺してやる…」

 

ビューン!

ゴーラはその場から逃げた。

 

リール「魔女さん…」

魔女さん「…」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

 

リール「!!」

 

リールは魔女さんの体が消えかかっているのに気づいた。

 

リール「魔女さん!体が!」

魔女さん「…」

 

魔女さんは動かなかった。

 

リール「魔女さん!今すぐ魔力を…ちょっと待ってください!」

 

ガサゴソ…ガサゴソ…

リールはバッグの中に入っている魔力の素を取り出そうとした。

 

スッ…

 

リール「!」

 

リールの手に魔女さんの手が触れた。

 

魔女さん「…」

リール「…魔女…さん…?」

魔女さん「リール」

リール「!!」

魔女さん「…あなたなら大丈夫ですよ」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

その言葉を告げた瞬間、魔女さんの体は消えてしまった。

 

リール「ま…魔女さん…え…魔女さん!…魔女さん!」

 

リールは何度も魔女さんを呼んだ。

でも、魔女さんが返事を返してくれることは無かった。




〜物語メモ〜

初登場魔法

雷属性魔法:雷槌(メディエス)
ゴーラが使った魔法。
雷で作った槌を磁力を使って飛ばす魔法。
普通の雷よりかは速度は落ちるが、当たれば大ダメージ。

水属性魔法:流水(メロア)
アンナが使った魔法。
水を使って道を作ることで弱点である雷属性魔法を受け流すことが出来る魔法。
ただし不完全なため、アンナ自身もダメージを受ける。

雷属性魔法:雷撃(ゴラ・モーア)
ゴーラが使った魔法。
相手の魔力を吸収する玉型の魔法。
魔法同士がぶつかっても雷撃(ゴラ・モーア)が相手の魔法を吸収するため、相手の魔法が貫通してしまう。
おまけに魔力を吸収すれば強くなる。

雷属性魔法:雷の領域(ホライゾン)
ゴーラが使った魔法。
周囲を雷で覆い、自信を強化する+水属性魔法の適正者にダメージを与える魔法。
これは発動者が解除するか、発動者が倒れるまで続く。

火属性魔法:炎化(バーン)
ディアが使った魔法。
自信を炎で包み、相手に突進する魔法。
突進は物理攻撃だが、炎を纏うまでが魔法攻撃となる。

水属性魔法:渦潮(ロウェナ)
ノーラが使った魔法。
渦潮を発生させ、相手にぶつける魔法。
相手に当たるまでに瓦礫などがあれば一緒に巻き込んで攻撃する。

火属性魔法:火柱(メルサガ)
ディアが使った魔法。
火属性レーザー型の魔法。
相手に向かって火を放つ魔法。

水属性魔法:水ノ舞(アモール)
ノーラが使った魔法。
螺旋状に飛ぶ水を放つ魔法。

風属性魔法:風ノ陣(ヴィドア)
マーモが使った魔法。
風を集めて一気に放つ魔法。
風の威力は凄まじく、建物は一瞬で吹き飛ぶくらい。

風属性魔法:斬り風(ザンバ)
マーモが使った魔法。
風属性斬裂型の魔法。
放てば風だけでなく、斬撃もついてくる。
当たれば斬撃ダメージを負う。

風属性魔法:風玉(ブレイズ)
マーモが使った魔法。
風属性玉型の魔法。
放てば玉型の風が相手に向かって飛ぶ。

雷属性魔法:大雷獄(アヴァリヴィア)
ゴーラが使った魔法。
自身の魔力を大幅に消費して放つ魔法。
ゴーラが使う魔法の中でトップの威力を誇る。

全属性魔法:全属性の暴走(エレメント・ノディア)
魔女さんが使った魔法。
火、水、氷、風、雷、土、光、闇、無の9つの属性魔法を暴走させ、大爆発を起こさせる魔法。
魔女さん自身の魔力が高いため、まともに受けると基本、跡形も残らない。
そのため、この魔法を受けたマーモは跡形もなく消えていた。

全属性魔法:全属性の弾丸(エレメント・ラプソディ)
魔女さんが使った魔法。
火、水、氷、風、雷、土、光、闇、無の9つの属性魔法を使って攻撃する魔法。
その際マナを集めることで照準を合わせることができ、放てば当たるまで追いかけ続ける。
魔女さんの魔力が高いため、一発の威力が半端じゃない。
それが9つの属性で何発も放たれるため、ダメージは相当なもの。


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第29話 リールと戦闘後

私の名前はリール。

今外にいます。

さっき変な人たちが攻撃してきてアンナとスカーレット、オード君、ディア君、ノーラ君が大きな怪我をしました。

5人は今意識を失って倒れています。

私は気を失っていませんが、大きな喪失感に襲われています。

あの時見えた魔女さんの姿、あの時聞こえた魔女さんの声、あの時見た魔女さんの魔法…全てが私の前から消えてしまいました。

私を大事に育ててくれた魔女さんを私は守れませんでした。

私は…自分の力不足を悔やんでいます。

私にもっと力があればアンナたちも守って魔女さんを救えたかもしれないのに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…エレナの部屋

 

魔女さん「…よかった」

エレナ「何が良かったのですか」

魔女さん「…」

エレナ「まさか幻影を作るなんて。やっぱり私を倒しただけありますね」

魔女さん「…」

エレナ「あなたですか?あの子に刻運命(ときさだめ)(こな)を持たせたのは」

魔女さん「…知らないわ」

エレナ「…嘘はつかないほうがいいですよ」

魔女さん「…嘘じゃないわ」

エレナ「まぁ、どちらにせよあと8つ集めるだけですね」

魔女さん「…何をよ」

エレナ「魔力の素ですよ。あなた、持ってるんでしょ?魔核と呼ばれるものを」

魔女さん「…知らないわよ」

エレナ「…まぁ、知らなくてもいいです。こちらで勝手に調べますので」

 

スッ

エレナは立ち上がった。

 

魔女さん「…どこ行くのよ」

エレナ「どこって…少し風に当たりに行くだけです」

魔女さん「あらそう」

エレナ「…変なことは考えない方がいいですよ。あなたはあの時私に負けた。ここから逃げ出そうとすればどうなるか…聡明なあなたなら分かりますよね」

魔女さん「…」

エレナ「それでは…」

 

エレナは部屋から出た。

 

魔女さん (リール…私は大丈夫ですよ。ですが今はあなたの所に分身を送るだけで精一杯です。なんとかしてリールの所に行きたいのですが、今この場を離れると少し厄介なことになります。なのでリール。あなたなら大丈夫です。私がいなくてもあなたには頼もしいお友達がいます。みんなで支え合って下さい。私は大丈夫ですから)

 

 

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場所…広場

 

リール「魔女さん…魔女さぁぁぁぁん!」

 

リールは何度も何度も魔女さんを呼んだ。声が枯れるくらいに。しばらくすると大勢の人たちがリールの声に反応し、リールたちの所にやってきた。全員普通の服装ではなかった。何かの組織かというくらいに独特な服装だった。

 

リール「うっ…うぅっ…」

???「…な」

???「…なんという」

???「これは…」

???「リーダー!この町での怪我人の報告は無いそうです!」

???「…怪我人ならいる…見てみなさい」

???「!?」

 

???はリールたちを見た。

アンナ、スカーレット、オード、ディア、ノーラが大怪我を負って倒れている。リールは軽傷ではあるが怪我人でないとは言えない。

 

???「え…これって…」

???「今すぐ救護を!回復魔法が使える人はこの人たちの怪我を優先に行動しろ!他のメンバーは周囲を散策してこの人たちの他に怪我をしている人がいないか探せ!」

???「はい!」

 

すると何人かが周囲に飛び散った。

 

???「…」

 

???は泣いているリールの所まで歩いた。

 

???「…お嬢さん。大丈夫かい」

リール「うっ…ひぐっ…」

???「…あとは私たちに任せなさい。この人たちは私たちが責任持って治療します」

リール「うぅっ…魔女さん…」

???「?」

 

???はリールが何か言葉を発したのに気づいた。

 

???「お嬢さん。さっき何て言いましたか?」

リール「魔女さんが…魔女さんがぁ…」

???「魔女さん?それはお嬢さんの知り合いかい?」

リール「魔女さんは…私のお師匠様なんです…ひぐっ…魔女さんは…私を守って…それで…」

???「…」

 

???はリールの泣いてる顔を見て慰めようと考えた。

 

???「…お嬢さん。魔女さんはその後どうなったんだい?」

リール「うぅっ…魔女さんは…」

???「うん。魔女さんは?」

リール「魔女さんは…き…消えちゃったんです…」

???「…消えた?」

リール「…はい…消えちゃったんです…ひぐっ…」

???「消えた…」

 

???とリールが話していると後ろから一人の男が走ってきた。

 

???「リーダー!」

???「…なんだ」

???「怪我人を運び終えました!今すぐ回復魔法をかけます!」

???「…あぁ。任せる」

???「はい!」

 

タッタッタッ

するとその人はリールと???から離れていった。

 

???「…お嬢さん。今私の仲間がこの周辺に逃げ遅れている人がいないか探しているところです。もし良かったら、その魔女さんの特徴を教えて頂けませんか。私が全力で探してき…」

リール「もういないんです!」

???「!!」

 

リールは大声でそう言った。???は突然の大声に驚いていた。

 

???「…」

リール「…もう…いないんです…」

 

少しの間、静寂が訪れた。

 

???「…」

リール「もう…ここにはいないんです…もう…」

???「…」

 

???は何と言葉をかけたらいいのか分からなかった。

 

???「…分かりました。これは私たちの責任です。もう少し私たちが早く到着していればあなたが悲しまずに済んだというのに…本当に…申し訳ありませんでした」

リール「…」

 

???は深く土下座をした。リールはその姿を見ずにずっと涙を流している。

 

???「…私たちは周辺で被害に遭った人がいないか探します。あなたはどうされますか」

リール「…1人にさせてください」

???「…分かりました。私の仲間にもそう伝えておきます。本当に…申し訳ありませんでした」

 

スタスタスタ

???は再度謝罪の言葉を述べ、その場を立ち去った。

 

リール「うっ…魔女…さん…うぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

リールは泣きじゃくった。

 

 

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その様子を見ていたひとつの影。

 

???「…やってくれましたね。リールさん。あれほど使わないよう言ったのに。…もうあなたを守ることはできません。あなたにはこの学院を出てってもらいます」

 

 

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その頃、???の人たちがアンナたちの回復に力を注いでいた。

 

???「トトさん!こちらの女の子の回復はもうすぐ終わります!」

トト「分かった!こっちの男の子ももう少しで終わる!」

???「トトさん!こちらの男の子は回復が難しいです!」

トト「分かった!もし手が空いてる人がいたらリグを手伝ってやってくれ!」

???「僕も手伝います!」

???「トトさん!こちらの女性ももう少しかかります!ですが1人でできる範囲です!」

トト「ならその人は君に任せる!何としてでもその子を回復させてやってくれ!」

???「はい!」

???「トトさん!こちらの男の子の回復終わりました!」

トト「分かった!ならリグの回復を手伝ってやってくれ!」

???「はい!」

???「トトさん!こちらの男の子は神経がやられています!」

トト「分かった!棚の上から3つ目の左から3番目の薬品と回復魔法を併用して回復してやってくれ!」

???「はい!」

トト「誰か調合に詳しい人はエリンの調合に手を貸してやってくれ!」

???「私がやります!」

トト「頼む!」

???「はい!」

 

トトという人物が中心となって回復を進めていた。彼はエレナ学院に勤めているラミエ先生の元弟子で、ラミエ先生と同じくある事情で回復魔法の道へと進んだ人物。

 

???「トトさん!こちらの女の子の回復終わりました!」

トト「分かった!リグかエリンの手伝いを頼む!」

???「はい!」

???「トトさん!こちらも女性の治療終わりました!」

トト「分かった!ソノもリグかエリンの手伝いを頼む!」

ソノ「はい!」

トト「よしっ!これでこの男の子も回復できた!あとはその男の子だけだ!」

???「はい!」

 

現時点でアンナ、スカーレット、ディア、ノーラの治療が終わった。あとはオードだけ。

 

トト「な…すごい傷だ…薬品はどうだ!調合終わりそうか!」

ソノ「はい!もう少し!」

エリン「トトさん!もうすぐ終わりますので回復魔法の循環をお願いします!」

トト「分かった!キク!僕と一緒に回復魔法の循環を手伝ってくれ!」

キク「はい!」

 

そうこうしていると薬品が完成した。

 

ソノ「トトさん!できました!」

トト「分かった!こっちに持ってきてくれ!キク!やるぞ!」

キク「はい!」

エリン「それでは…いきます!」

 

シュゥゥゥゥゥゥ!

エリンとソノ、キクの3人で調合した薬品がオードの体に染み渡った。

 

トト「今だ!キク!」

キク「はい!」

 

トトとキクは回復魔法を使って薬品の循環を促した。するとその薬品は瞬く間にオードの体内を駆け巡り、回復を早めた。

 

トト「よしっ!みんなでこの子を回復させるぞ!手を貸してくれ!」

全員「はい!」

 

シュゥゥゥゥゥゥ!

薬品の循環を確認すると、その場にいた全員でオードを回復させた。

 

トト「よしっ!回復が終わった!あとは私がやっておく!みんなご苦労さん!」

???「ふぅ…よかった…」

ソノ「無事に全員回復できてよかったです…」

リグ「みんな手伝ってくれてありがとな」

エリン「いえいえ!助け合うのが私たちですよ!」

キク「そうです!特に私たちは!」

???「だな」

???「今回は治療に時間がかかりましたね」

???「確かに」

ソノ「普通の魔法の傷ならすぐに治るんですが…」

エリン「トトさん…どう思いますか…」

トト「う〜ん…これほどまで深い傷を与えるには相当な魔力が必要になる…普段なら魔法の傷はそこまで深くならない…でもこうなってしまっては…」

???「まさか…"天使"がやったんじゃ…」

全員「!!」

 

その場の全員が凍りついた。

 

トト「…確かに…天使なら不可能ではない…」

???「でも…天使ってあの狂気の魔女が倒したはずじゃ…」

ソノ「生き返ったのかも…」

エリン「可能性は無くないですね…もう数十年も前の話ですから…」

リグ「ということは…また…起こるのか…あれが…」

トト「百穢夜行(ひゃくあいやこう)か…」

???「…」

トト「…上層部にこの事を伝えた方がいいかもしれないね」

リグ「トトさん!お願いします!」

トト「あぁ。言っておこう。さ、この子たちは私が大切に保管するからみんなはエギルの所に行ってて」

全員「はい!」

 

スタスタスタ

トトを残して他のメンバーはエギルという人物の所に向かった。

 

トト「…百穢夜行(ひゃくあいやこう)。二度と起こらないと思っていたけど…本当に起こるのか…また…あれが…」

 

 

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場所…???

 

ゴーラ「くっ…あの野郎…次はただじゃおかねぇ…縛り上げて死ぬまで魔法をくれてやる…」

 

パチッ!

急に明かりがついた。

 

ゴーラ「!!」

 

ゴーラが周囲を見渡すと、ゴーラを囲うように5人ほど人が立っていた。

 

ゴーラ「チッ…なんだよ」

???「なんだよとは失礼だね?ゴーラ」

ゴーラ「…うるせぇ」

???「口の利き方がなってないぞ。ゴミクズが」

ゴーラ「!」

???「…あれほど啖呵切っておいてこのザマかゴーラ」

ゴーラ「…」

???「やはり私が思った通りですね。あなたは負けると思っていましたよ」

ゴーラ「あ?」

???「相手は光属性魔法に適正がある子です。雷属性魔法程度のあなたじゃ敵うはずがないんです」

ゴーラ「なんだと…」

 

ガシッ!

???はゴーラの髪を掴んだ。

 

ゴーラ「痛ぇ!離せてめぇ!」

???「…お前…女を相手に負けたとか恥ずかしくないのか?」

ゴーラ「くっ…」

???「それにマーモはどうした。さっきから姿が見えないが?」

ゴーラ「チッ…マーモは消えた」

???「…消えただと?」

ゴーラ「…知らねぇやつが来てマーモが殺された」

???「へぇ、マーモが殺られるなんてね」

???「これは驚きだ」

???「…それで?お前は尻尾巻いて逃げてきたのか?ゴーラ」

ゴーラ「…」

???「で?誰だったんだ?知らねぇやつって」

ゴーラ「知らねぇやつって言っただろ」

???「じゃあ属性魔法は何だったんだ?」

ゴーラ「…知らねぇ」

???「え?戦ったんだよね?ゴーラ」

ゴーラ「…初めて見た魔法だ。属性魔法なのかも分からん」

???「どうでもいいわ。今のお前はただのゴミクズだ。デカい態度だった割には拍子抜けだったな」

ゴーラ「…」

???「…失敗は二度までだ。エレナにもそう伝えたはずだ」

ゴーラ「くっ…」

???「次は無い。分かったな」

ゴーラ「くっ…」

???「返事をしろ」

ゴーラ「…あぁ」

???「あらら…これでゴーラもエレナと同じになっちゃったね」

???「これからはゴミクズって呼ばないとな」

???「おーいゴミクズ!もう見たくねぇからさっさと立ち去れ!」

ゴーラ「くっ…」

 

スタ…スタ…スタ…

ゴーラはゆっくりではあるがその場を立ち去った。

 

???「…全く。ゴーラもか」

???「でもどうする?もう5人しかいないよ?」

???「でも相手は1人だろ」

???「1人ではあるが、力は1人じゃない」

???「光属性魔法ってのはつくづくチートだと思うぜ」

???「失礼ですね」

???「あ、君の事じゃないから」

???「知ってますよ」

???「おいマモン」

マモン「ん?」

???「お前、地脈を使って隕石落とせないか?」

マモン「地脈を使って?」

???「あぁ」

マモン「まぁ…できなくはないけど…」

???「じゃあやってくれ。落とす場所はゴーラが行った場所だ」

マモン「でもまず地脈を引っ張ってくるところから始まるから時間かかるぞ?」

???「構わん」

マモン「分かった。じゃあやるわ」

???「あぁ」

???「ねぇマギ。どうするの?今の人数じゃエレナとゴーラを入れても7人だよ?あと2人足りないよ」

マギ「…そうだな。あと2人どうするか。風属性魔法と無属性魔法。この2つの属性で強大な魔力を持つやつを見つけないとな」

???「無属性魔法…グラムがいれば解決してたんですが…」

マギ「あいつはもう仲間と思うな。あんな裏切り者。見つけたら殺せ」

???「…はい」

マギ「レット。あの町を凍らせることはできるか?」

レット「…あぁ。できる」

???「どうするの?」

マギ「凍らせるのはマモンが隕石を引っ張ってきてからだ。逃げられないようにして一掃する」

???「なるほど!」

レット「…じゃあ次は俺とマモンが行くのか」

マギ「あぁ。そういう事になる」

???「頑張ってくださいレット」

レット「あぁ。分かった」

マギ「サリエラとラビはここに残れ」

サリエラ「何故でしょうか」

ラビ「何かあるの?」

マギ「サリエラの火属性魔法はあとで役に立つ。ラビの水属性魔法は次の手に取っておく」

ラビ「分かった!」

サリエラ「はい。分かりました」

 

 

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その頃ゴーラは

 

ゴーラ「チッ…マギの野郎…マモンもだ…俺をゴミクズ呼ばわりしやがって…俺だってマーモがいれば勝てたわ。あんな女に負けることも無かったわ」

 

ゴーラは文句を零しながら歩いていた。

 

エレナ「あらゴーラ。随分な姿ですね」

ゴーラ「!」

 

ゴーラの目の前にエレナが立っていた。

 

ゴーラ「…何の用だ」

エレナ「いえ、これといって用はありませんよ。ただ通りかかっただけです」

ゴーラ「…笑いたきゃ笑えよ。お前と同じで失敗してゴミクズ呼ばわりされたこの負け犬の俺を」

 

ゴーラは柄にもなく悲しそうな顔を浮かべた。エレナはそれを見逃さなかった。

 

エレナ「…笑いませんよ」

ゴーラ「…」

エレナ「私はあの人たちと違って人の心を持っています。あの人たちと一緒にしないでください」

ゴーラ「…」

エレナ「私があの人と同じように見えるならあなたは一生誰にも寄り添えませんよ」

 

コツコツコツ

エレナはその場を立ち去った。

 

ゴーラ「…チッ。どいつもこいつも」

 

 

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その頃リールは

 

リール「…」

 

リールはずっとその場に座っていた。魔女さんが消えていったその場所に。魔女さんが戻ってくる訳でもなく、魔女さんの声が聞ける訳でもないのに。

 

エギル「…お嬢さん。気は済みましたか?」

リール「…」

エギル「…ここで倒れていた人たちは無事全員回復が終わったそうです。周囲に逃げ遅れた人もいませんでした。あとはあなただけです」

リール「…」

エギル「…」

 

リールは何も言わなかった。

 

エギル「…あなたが想う魔女さんという方…少し聞かせてくれませんか?」

リール「…」

 

リールは無言だった。

 

エギル (…よっぽど大事な人だったんだね。ここまで言葉を発さなくなるなんて)

リール「…魔女さんは」

エギル「!」

 

リールは突然口を開いた。

 

リール「…魔女さんは…私の命の恩人であり、私のお師匠様です。魔女さんは私をここまで育ててくれました。優しい魔女さん。さっきも変な人たちから私を守ってくれました」

エギル「変な人…」

リール「その人たちはアンナたちを傷つけたあと、私を回収すると言っていました」

エギル「回収…?」

リール「私、前にもある人から回収すると言われました」

エギル「ある人…」

リール「…エレナという人物です」

エギル「!?」

 

エギルはその名を聞いて驚いた。

 

エギル「エレナ…ほんとにそう言ったのかい?」

リール「…嘘ついてどうするんですか」

エギル「…」

リール「実は私、光属性魔法に適正があります」

エギル「!」

リール「私、この世界の属性魔法について知らないことが多すぎます。何故みんな私を回収すると言うのでしょうか。もしその回収が私ではなく光属性魔法であるなら、私はもう魔法なんかいらないです」

エギル「…何故お嬢さんを回収するのか…それについては私にも分かりません。ですが、あなたからは特別な"何か"を感じます。何かは分かりませんが他の人には無いあなただけにあるもの。私は少しだけそう感じました」

リール「…そうですか」

 

ザッザッザッ

リールとエギルの後ろから誰かが来た。

 

エギル「あ、あなたは…ご連絡どうもありがとうございました。怪我をされた方は全員回復が完了しているようです」

???「…そうですか。分かりました」

 

ザッザッザッ

???はリールの前に立った。

 

エギル「…?」

???「リールさん。顔を上げてください」

リール「…!」

 

リールが顔を上げるとそこにはレヴィ学院長が立っていた。

 

リール「レヴィ…学院長…」

レヴィ「リールさん。あなたにお伝えしたいことがあります」




〜物語メモ〜

新登場人物

エギル
リールに話しかけた人物。
組織のリーダー。
土属性魔法の適正者。

トト
救護班のリーダー。
アンナたちを回復させた人たちに指示を出していた人物。
ラミエ先生の元弟子で今は独立してエギルと共に行動している。
ラミエ先生と同じで回復魔法の適正者。

リグ
トトが率いる救護班のメンバー。
水属性魔法の適正者。
回復魔法はトトから学んだ。
トトの右腕的な存在。

エリン
トトが率いる救護班のメンバー。
氷属性魔法の適正者。
薬品についてよく知る人物である為にトトから依頼され、救護班に入った。

ソノ
トトが率いる救護班のメンバー。
風属性魔法の適正者。
エリン程ではないが、ソノも薬品の調合について知識がある。
ソノもエリンと一緒にトトに依頼され、救護班に入った。

キク
トトが率いる救護班のメンバー。
水属性魔法の適正者。
水属性魔法である為に、薬品の循環を任されることが多い。
薬品は体内に入れば効果が出るが、キクが循環を行うことで通常よりも早く回復が進む。

マモン
土属性魔法の適正者。
マギの仲間でゴーラにゴミクズと呼んだ人物。

マギ
?属性魔法の適正者。
ゴーラ、マーモ、エレナ、マモン、レット、サリエラ、ラビをまとめている人物。

レット
氷属性魔法の適正者。
口数が少なく、必要最低限の会話しかしない。

サリエラ
火属性魔法の適正者。
仲間にも敬語で話す人物。

ラビ
水属性魔法の適正者。
少し明るめな人物。

グラム
?属性魔法の適正者。
情報が少ない謎の人物。


新情報

魔女さん
リールの所に現れたのは魔女さん本人ではなく、魔女さんの分身体。
力は魔女さんの半分くらい。
それでもマーモを消すくらいの力を持つので、魔女さん本人が戦うと更に被害が大きかった。

ゴーラ
雷属性魔法の適正者。
マーモと2人でいることで真価を発揮する人物。
しかしマーモは魔女さんによって殺されてしまったため、本来の力の半分しか使えなくなっている。

マーモ
風属性魔法の適正者。
ゴーラと2人でいることで真価を発揮する人物。
しかし魔女さんの魔法をまともに受けてしまい、この世から姿を消した。

百穢夜行(ひゃくあいやこう)
過去に起こった大災害。
この事件で生き残ったのはたった12人のみ。


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第30話 リールと十二使徒

ここでちょっとお知らせです。

前回のアンケートの結果、行間を狭くすることに決定しました。

お知らせは以上です。


私の名前はリール。

今外にいます。

何やら知らない人たちがアンナたちを連れてっちゃいました。

回復が〜とか無事だ〜とか言ってましたが、何も頭に入ってきませんでした。

そんな時、私の目の前にレヴィ学院長がいました。

レヴィ学院長は鋭い目付きで私を見ました。

私、何かしたのかなって思いました。

そんな事を考えているとレヴィ学院長が私に伝えたいことがあるらしいです。

レヴィ学院長の目付きからして良くない予感がしました。

レヴィ学院長はずっと私の目を見ています。

辺りの空気もなにやらピリピリしてきました。

私は初めてレヴィ学院長に対して恐怖感を抱きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…広場

 

???「リールさん。顔を上げてください」

リール「…!」

 

リールが顔を上げるとそこにはレヴィ学院長が立っていた。

 

リール「レヴィ…学院長…」

レヴィ「リールさん。あなたにお伝えしたいことがあります」

リール「私に…伝いたいこと」

レヴィ「…」

エギル「…学院長さん。私、席を外しますね」

レヴィ「…はい。お願いします」

 

スタスタスタ

エギルはその場をあとにした。

 

リール「あ、あの…なにか…」

レヴィ「私、前にリールさんにひとつ禁止させたことがありましたよね?」

リール「は、はい…」

レヴィ「…何か覚えていますか?」

リール「えっと…第1魔法戦闘室以外で…魔法は使わないこと」

レヴィ「…そうです」

リール「…」

レヴィ「なぜ…破ったんですか」

リール「そ、その…」

レヴィ「これを破ったらどうなるか…言ったはずです」

リール「…」

レヴィ「あなたの魔力は強すぎるんです。それこそ私の結界を貫通するほどです」

リール「…すみません」

レヴィ「謝ってももう遅いです」

リール「…」

レヴィ「…現在、ある場所である生き物が見つかりました」

リール「ある…生き物…」

レヴィ「はい。ドレインと呼ばれる生き物です」

リール「!!」

 

リールはドレインと言う名前に覚えがあった。

 

リール (ドレイン…あの紙に書いてた…)

レヴィ「あれは数年前に出現した他者を取り込む生き物です。それが今、ある場所で見つかっているんです」

リール「…」

レヴィ「…以前、学院にエレナという人物が来たの、覚えていますか」

リール「…はい」

レヴィ「あの人は昔、あの学院の学院長をされていた方です。ですがある時、あの人が起こした事件をきっかけにあの人は学院を去りました。…いえ、学院から消えました」

リール「消え…た…」

レヴィ「はい。エレナという人は天使と契約を結び、この世界に調停としてドレインを解き放ちました」

リール「…」

レヴィ「それにより人々は殺され、残ったのは12人のみ。ですがその時、あなたのお師匠様であり、私の姉弟子である魔女さんがエレナという人と戦い、魔女さんはエレナという人を消してしまったんです」

リール「…」

 

リールはレヴィ学院長の話し方に違和感を覚えていた。

 

レヴィ「そして魔女さんは他にもドレインたちを消し去り、ある場所に幽閉しました」

リール「幽閉…」

レヴィ「…"深淵"。そう呼ばれる場所に」

リール「!!」

 

リールはスカーレットの家で見つけた小さな手紙を思い出した。その手紙にも深淵、ドレインという文字があった。

 

レヴィ「世間では他にもドレインを倒したという人がいたそうですが、魔女さんが全て消したそうなんです」

リール「…」

レヴィ「…エレナという人が来た時からもっと警戒しておくべきでした」

リール「警戒…」

レヴィ「…リールさん。あなたの魔法で天使たちが目を覚ましたのです」

リール「て…天使…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナの部屋

 

エレナ「さて、全て話してください。狂気の魔女さん」

魔女さん「…」

エレナ「…黙っていては話が前に進みませんよ」

魔女さん「…何を聞きたいんですか」

エレナ「そうですねぇ、魔核を持っている12人の人物が誰なのかを教えてください」

魔女さん「知りません」

エレナ「…答えてください」

魔女さん「知りません」

エレナ「なぜ知らないんですか。あなたもそのうちの一人でしょう?」

魔女さん「いいえ。私はあの場にいませんでした」

エレナ「…」

魔女さん「大体、私がドレインを消したんです。何があったかは知りませんが、その魔核の存在も私は知りません」

エレナ「…」

 

エレナはじっと魔女さんを見つめた。

 

エレナ「…なら質問を変えます。リノはどこですか」

魔女さん「!」

 

魔女さんはリノという名前に反応した。

 

エレナ「…教えてください。リノはどこにいるんですか」

魔女さん「…私が知りたいです」

エレナ「これも知らないんですか」

魔女さん「私だって探しています。知ってるなら私が聞きたいくらいです」

エレナ「…なるほど。進展なしですか」

魔女さん「…」

エレナ「…私がやろうとしている計画をお話しましょうか」

魔女さん「!」

エレナ「…私がなぜ魔核を集めているのか。知りたくないですか?」

魔女さん「…そうですね。もし知ることが出来ればリールに危害が出ないようにできそうですから」

エレナ「…リノを取り戻すためです」

魔女さん「!」

エレナ「あなたはなぜ私たちが存在していると思いますか?」

魔女さん「…」

エレナ「この世界を壊すため?人を殺すため?マナを枯渇させるため?……全て違います。私たちがこの世界に存在しているのは、この世界を悪くしているひとつの存在を消し去るためです」

魔女さん「存在…」

エレナ「そう。それが俗に"深淵"と呼ばれるものです」

魔女さん「深…淵…」

エレナ「私たちの事をあなた方は勝手に天使と呼んでいますが、実際には違います。私たちは人の手が作り出したホムンクルス…そう呼ばれる人種です。いえ、人ではありませんね。人形ですね」

魔女さん「…」

エレナ「アレがいつまでもこの世界に残っているといつになってもドレインは完全には消えません。なので私はこっそりと魔核を持つ人物を集めているのです」

魔女さん「なぜ…集めるんですか」

エレナ「…リノ。あの人が死ぬ時に12個に分けたものがあります」

魔女さん「!」

エレナ「それが魔核。それを12個揃えればリノは蘇る。だから私はそれを集める」

魔女さん「集めてリノを復活させたとして、その後どうするんです」

エレナ「…深淵の持つ属性は闇属性。対局の存在である光属性でしか攻撃が通りません。だからリノが必要なのです」

魔女さん「…最初にリノの居場所を聞いたのはなぜ」

エレナ「あなたが何か知ってるか聞いてみただけです。有力な情報があればよかったんですが」

魔女さん「…」

エレナ「さて、私はもう行きますね」

魔女さん「どこに行くんです」

エレナ「どこって…魔核を持っている人を探しに行くんですよ」

魔女さん「!」

エレナ「あなたが知らないなら虱潰しに見ていくしかないので。それでは」

 

ガチャ…バタン

エレナは部屋を出た。

 

魔女さん (ごめんなさいリール。ここを出るのはもう少しかかりそうです…)

 

 

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場所…トトの患者保管室

 

トト「うん。全員見事に回復しているね」

 

トトはアンナたちを回復させたあと、特殊な容器の中に保存した。

 

トト「その中にある液体は君たちの体を活性化させるものだからね。もう少しだから」

 

その容器の中には入れた人の細胞を活性化させる特殊な液体が入っている。これを取り込むことで細胞が活性化され、回復が早くなるということ。

 

トト「さて、私はそろそろ」

リグ「トトさん」

 

患者保管室にリグが入ってきた。

 

トト「お、リグ。どうしたんだい?」

リグ「どうですか?回復の方は」

トト「うん。順調だよ」

リグ「それは良かったです」

 

リグの顔は少し険しかった。

 

トト「…それで?どうしたんだい?」

リグ「!」

トト「ほんとはそんな事話に来たんじゃないんでしょ?」

リグ「…えぇ。そうですね」

トト「話してみて」

リグ「…トトさん」

トト「はい」

リグ「トトさんはこの人たちと一緒にいた女の子を見ましたか?」

トト「はい。見ましたよ。あの場で1人だけ意識がありましたから」

リグ「…あの子の持つ属性…知っていますか?」

トト「う〜ん…雷属性の跡があったので雷属性魔法だと思っていたんですが、違いますか?」

リグ「あの子…実は光属性魔法なんです」

トト「!!」

リグ「この子たちは知りませんが、あの子は紛れもなく光属性魔法でした」

トト「…光属性魔法…これで何人目だったかな」

リグ「4人目ですね」

トト「4人…か…」

リグ「光属性魔法が4人いるとなると…」

トト「相反する闇属性魔法も同じく4人存在することになるね」

リグ「一部の人たちは狂気の魔女が今もまだ生きてるんじゃないかと囁かれています」

トト「まぁ、いるだろうね」

リグ「やっぱり…いるんですか」

トト「百穢夜行…数多のドレインが出現してこの街の人間を取り込んだ大災害…」

リグ「まさか…百穢夜行も狂気の魔女が」

トト「あ、それはまた別の人がやった事ですよ」

リグ「あ、なんだ…そうなんですね」

トト「ただ…またアレが起こるとなると今度は全員死ぬ可能性もありますよ」

リグ「!」

トト「百穢夜行を起こしたのはエレナというこの街のエレナ学院の初代学院長だった人です」

リグ「え!エレナが…」

トト「はい。何故百穢夜行を起こしたのか…それは彼女本人しか知りません。ですが、アレが起こるとなると私たちもタダじゃ済みませんね」

リグ「でも…それを防ぐ手はもう…」

トト「ありますよ」

リグ「!」

トト「百穢夜行を防ぐ手段は昔からひとつだけなんですよ」

リグ「それは…」

トト「…光属性魔法をぶつけるという方法です」

リグ「光属性魔法…」

トト「ですが過去に一度、本来なら光属性魔法で百穢夜行を防ぐもしくは収束させるものがたった一度だけイレギュラーな事が起こったのです」

リグ「イレギュラー…」

トト「そう。それが狂気の魔女の事件ですよ」

リグ「え…」

トト「リグはまだ知らないから言っておくね」

リグ「…」

トト「狂気の魔女の属性は闇。あの人は闇属性魔法の適性者なんですよ」

リグ「!!」

トト「本来なら光属性魔法でしか効果がない百穢夜行も彼女の闇属性魔法の手によって収束しました。非常にイレギュラーな事が起こったのです」

リグ「でも…今は狂気の魔女は…」

トト「そうですね。どこにいるかはさっぱりです。ですが、必ずどこかにいますよ。でなきゃ光属性魔法は誕生しませんから」

リグ「…光属性魔法は闇属性魔法が存在する場合のみ誕生する」

トト「そうです。ですが、闇属性魔法1人につき光属性魔法1人なので、リグが言った光属性魔法の子がいるということはどこかで闇属性魔法の適性者が誕生したということ」

リグ「…この先どうなりますかね」

トト「さぁ…どうなるんでしょうね」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…???

 

???「なるほど、そういう事だったんですね」

ジン「えぇ。とてつもない魔力でした」

マーク「私はジンと話し合い、天使が蘇ったのではないかと踏んでいます」

???「まさか…」

???「天使が蘇るのはさすがに…」

???「いや、可能性はある」

ジン「なので今この場にいるみなさんに天使を討伐する依頼を出したいのです」

マーク「天使に敵うのは私たち使徒のみですので」

???「だが…しかし…」

???「やってみましょうよアース」

アース「…」

???「確かに…だが負ける可能性も考えないと」

アース「ジン。マーク。2人は何の天使を見たのだ」

ジン「雷の天使 ゴーラ」

マーク「風の天使 マーモ」

ジン「この2人です」

アース「風と雷…」

???「で、その後どうなったの?」

ジン「…」

マーク「…」

 

ジンとマークは黙った。

 

アース「…ジン?マーク?」

ジン「…その後は…」

マーク「…」

ジン「…狂気の魔女が現れ、風の天使 マーモを消滅させました」

???「!?」

 

その場にいる人全員が戦慄した。

 

アース「きょ…狂気の魔女…」

???「あの人が来たの!?」

ジン「はい」

???「なんてこと…こんな事って…」

???「また…殺されるのか…俺たちの仲間が…」

???「フレア!私たちは強くなったよ!」

フレア「お前も知ってるだろヒュー。あの人の強さを…」

ヒュー「でも…」

アース「まぁ、確かにあの人はとてつもない魔力を持っている。それこそ僕たち使徒を1人で壊滅させられるほどに」

???「…」

アース「ジン。マーク。その天使による被害者は」

ジン「私の娘とその友達がゴーラと戦って負傷しました」

アース「!?」

???「天使と戦ったの!?」

ジン「はい」

???「あの天使相手に…」

ジン「ですが、今私の友人のトトっていう人から全員無事だと報告が入りました。なのでご心配なく」

???「でもジンの娘って今…学生なんじゃ…」

ジン「はい」

アース「学生なのに天使と戦って無事とは…」

ジン「あ、それは一緒にいたリールさんとあとから来た狂気の魔女が追い払ったからです」

アース「リール…あぁ、前に話していた子か」

ヒュー「確か光属性魔法の適性者なんだよね」

???「光属性魔法か…」

???「…」

アース「ジン。マーク。それ以外の被害は」

ジン「無しです」

アース「…そうか」

???「なぁアース。これはそろそろ俺たちも動かねぇとマズいと思うぞ」

アース「そうだね。ここまで被害が出てる。しかも天使や狂気の魔女も確認された。いつ百穢夜行が起こってもおかしくない」

アース「ウレイ!ナヴィア王国に狂気の魔女と天使が確認されたことと百穢夜行の危険を知らせてくれ!」

ウレイ「はい。分かりました」

アース「セレナ!モルドレッド王国に今すぐ結界を強化するよう伝えて!もちろん狂気の魔女の事とかも伝えて」

セレナ「…はい」

アース「ヒューは天空殿に行って各王国の状態と通達をお願い!」

ヒュー「分かった!」

アース「ジンとマークは引き続きスペルビア王国の護衛を頼む!」

ジン「はい」

マーク「任せな」

アース「フレアは大獄門に行って火属性魔法の力を強化しておいて!」

フレア「あぁ」

アース「メロは冥界に行って水属性魔法の強化をお願い!」

メロ「はい」

アース「モールはサージェル王国に戻って地脈の管理をお願い!」

モール「あぁ。分かった」

アース「キファはブエルタ王国に戻ってこの事を伝えて!」

キファ「あぁ」

アース「ミィは大気圏に出て太陽の熱の力を吸収していつでも戦える準備をして!」

ミィ「うん」

アース「みんな!これから起こる百穢夜行に向けてしっかり準備して!」

全員「はい!」

アース「その間で天使たちを見つけたら直ちに倒すこと!難しそうなら仲間を呼んで多人数で戦って!」

全員「はい!」

アース「では解散!」

 

すると使徒と呼ばれる人たちがそれぞれの国や場所に帰っていった。

 

アース「…まさか狂気の魔女が来るなんて」

ジン「アース」

アース「あ、ジン。何?」

ジン「…リールさんの事なんだけど」

アース「どうしたの?」

ジン「…今スペルビア王国にいるんだけど、もうすぐ国を出ることになりそうだよ」

アース「え、どういう事…」

ジン「エレナ学院の学院長がリールさんを学院から追い出してしまったんだ」

アース「え!?」

マーク「魔法を使うのを禁止されていたリールさんは今回、天使が来たこのタイミングで魔法を使ってしまったんだ」

アース「そんな…」

マーク「レヴィ学院長は真面目な顔でリールさんに退学処分を言い渡したそうだ」

アース「そんな…あの子が一人になったら…ジン!マーク!今すぐ他のメンバーにこの事を伝えて!もし自分たちの国にリールさんが出向いたら保護するようにと!」

ジン「うん」

マーク「分かった」

 

スタスタスタ

ジンとマークもその場をあとにした。

 

アース「…リノ。すみません…あなたが託した最後の希望を…粗末に扱ってしまいました…すみません」

 

アースは空を見た。

 

アース「あの子は絶対に殺させません。僕が命にかえても守りきります。なので最後まで見ていてください。リノ」




〜物語メモ〜

※今回は多いです。

新情報

深淵
深淵とは、百穢夜行という大災害で出現したドレインたちを幽閉している場所の名前。ドレインを幽閉していることもあってこの世界を傾かせている存在。

天使
マギ、ラビ、レット、マーモ、ゴーラ、エレナ、サリエラ、マモンたちの事を指す。遥か昔に存在した巨大な魔力を持つ人たちのこと。ただ魔力の存在が大きかったため、長い間封印されていたが、エレナだけはこの世界に残っており、他のメンバーはエレナの魔力によって目覚めた。天使という呼び名はジンたちがそう呼んでいるのが浸透しただけで、エレナたちは自分たちのことをホムンクルスと呼んでいる。

使徒
アース、ウレイ、セレナ、ヒュー、ジン、マーク、フレア、メロ、モール、キファ、ミィたちの事を指す。数年前に起こった大災害、百穢夜行で生存した12人。今は1人欠けているが、いつか12人になる事を願っている。何人かは自国を築いている。

光属性魔法と闇属性魔法
光属性魔法と闇属性魔法は2つとも他の属性魔法とは違い、存在が極端に少ない。理由としては光属性魔法は闇属性魔法が存在しないと誕生しないから。その逆も然り。そのため、光属性魔法の人数=闇属性魔法の人数になってしまう。それでも昔よりかは2〜4人増えている。

百穢夜行
百穢夜行はドレインが大量発生した大災害。ドレインは闇属性魔法で固められているため、効果があるのは光属性魔法のみ。だが、過去に一度、そんな常識を破って闇属性魔法で百穢夜行を壊滅させた人物が存在する。それがのちに狂気の魔女と呼ばれている人物だった。

ナヴィア王国
ウレイが統治している国。この国は非常に綺麗な水が特徴的。
というのもウレイ自身が水属性魔法の適性者であるため、そういう風になった。この国では水が他の国とは違って特殊なものになっており、野菜や穀物、魚介類が美味しい国とも言われている。この国の食材はどれも新鮮なものばかりで、他の国からも人気。

モルドレッド王国
セレナが統治している国。全てが極寒に包まれており、普通の服装だとまず凍え死んでしまうほど。おまけに寒さを感じてから王国までは相当な距離があるため、事前の準備が必須。これは統治しているセレナが氷属性魔法の適性者であるため、このようになってしまった。当然寒さが激しいため、野菜などは特定のものしか作ることができない。そのため、ウレイが統治しているナヴィア王国から取り寄せることが多い。

天空殿
ヒューが住んでいる所。天空殿は雲の上に存在し、ヒューはそこから各国を見ている。天空殿に行けるのは風属性魔法の適性者のみで、天空殿に住んでいる人は全員風属性魔法。ヒューも風属性魔法の適性者であるため、天空殿に住むことができる。天空殿では魔力が満ちており、魔力の枯渇は起こらない。枯渇する前に勝手に回復する。

スペルビア王国
ジンとマークが住んでいる国。エレナ学院が存在する国で、リールも住んでいる街でもある。ここはメリーが作り上げた物が沢山街中にある。どれも便利なものばかりでメリー魔法店はそれなりに儲かっている。毎年エレナ学院に入学する生徒でいっぱいになる。

大獄門
フレアがいる所。俗に言う地獄と呼ばれる場所。その中でも大獄門は地獄にある神殿の前にある門の事でフレアはそこの門番を任されている。フレアは火属性魔法の適正者ということもあって地獄の熱に耐えられる体を持っている。ちなみに、大獄門は火属性魔法の適性者しか通すことはなく、火属性魔法の適正者以外は焼け死んでしまうという。

冥界
メロが統治している場所。そこは死の水と呼ばれるウレイのナヴィア王国とは全く異なる水が存在する場所。冥界は国と言うより場所の名前でその中にメロが住んでいる屋敷が存在する。通るには死の水を渡る必要があり、死の水に触れるとそのまま死へと誘われる。その場合は大獄門ではなく冥界へと引きずられる。メロの屋敷に行くには死の水を渡らないといけないが、水属性魔法の適正者は触れても死ぬことが無い上、水面を歩くことが出来るため、非常に楽。
ただし、他の属性魔法は触れると死に至り、おまけに溺れるようになっている。そのため、水属性魔法の適性者以外はボートを漕いでメロの屋敷に行くしか方法はない。ちなみに、箒を使って飛ぶことも出来なくなっている。これはメロが水属性魔法の適性者だということもあり、水属性魔法だけを歓迎している場所でもある。

サージェル王国
モールが統治している国。この国は地脈が有名な国で地脈によって成り立っている国でもある。この国は唯一地脈を生活に活かしている国で、それによって生活に便利さが生まれる。この国はどの属性魔法も入ることができるが、地脈の恩恵が得られるのは土属性魔法の適性者のみとなっている。これはモールが土属性魔法の適性者だから。

ブエルタ王国
キファが統治している国。そこは他の国よりも標高が高いところに存在しており、常に風が吹いている不思議な国。風の強さは日によって変わるが、風属性魔法の適性者には普段と何も変わらないくらい。他の属性魔法だと箒に乗っていたら飛ばされるくらいの風力と風速を持っている。なのでブエルタ王国に行くには風属性魔法の適性者がいないといけない。風属性魔法の適性者が一人いれば十分だが、一人もいない場合はブエルタ王国に辿り着くことは難しい。ただし、行けない訳では無い。

大気圏
主にミィが拠点としている場所。ミィは天空殿よりも高い位置にいるため、本来なら会うことは無い。ミィが大気圏を拠点としている理由は、ミィの動力源が太陽だから。加えてミィは太陽が動いているのと同じように動いているため、基本その場にいない。常にこの世界をグルグル回っている。これが本来なら会うことは無い理由。


新登場人物

アース
十二使徒のうちの1人。
火属性魔法の適性者。
百穢夜行で生き残った12人のうちの1人で、みんなの先導役。
大体アースの命令で他のメンバーが動いている。

ウレイ
十二使徒のうちの1人。
水属性魔法の適性者。
ナヴィア王国の統治者で、ウレイがいる事でナヴィア王国は潤っている。
ナヴィア王国の周りには水が囲われており、この水もウレイが作り出したもの。

セレナ
十二使徒のうちの1人。
氷属性魔法の適性者。
モルドレッド王国の統治者で全てを凍てつかせる力を持つ。
モルドレッド王国が極寒の地とされているのはセレナの氷属性魔法が原因。

ヒュー
十二使徒のうちの1人。
風属性魔法の適性者。
天空殿に住んでいる人で、天空殿の中では位が高い方。
ただの風属性魔法ではなく、色々とアレンジを加えている。

ジン
十二使徒のうちの1人。
雷属性魔法の適性者。
スカーレットの父親でスペルビア王国で箒を作っている。
マークとは兄弟。

マーク
十二使徒のうちの1人。
土属性魔法の適性者。
ジンと同じくスペルビア王国に住んでおり、主に杖を作る仕事をしている。
マークの作った杖は結構人気。

フレア
十二使徒のうちの1人。
火属性魔法の適性者。
大獄門と呼ばれている場所で門番をやっている。
根は真面目なので、仕事はしっかりとこなす。
ただ火属性魔法でありながらフレアの魔法は全てマグマとなっている。
これは大獄門にいることが原因で変異した。

メロ
十二使徒のうちの1人。
水属性魔法の適性者。
普段は冥界と呼ばれる場所におり、滅多に外には出ない。
ただし、十二使徒たちの会合などにはしっかりと出席する。
屋敷の周囲は死の水に囲われており、水属性魔法の適性者以外は注意しなければならない。
同じ水属性魔法の適性者であるウレイと違うのは、メロの出す水には魔法であれ触れてはならないということ。
触れると命を吸い取られてしまう。
例えるならウレイは生の水。メロは死の水。

モール
十二使徒のうちの1人。
土属性魔法の適性者。
サージェル王国の統治者で、地脈を使うのに長けている。
性格は優しい。

キファ
十二使徒のうちの1人。
風属性魔法の適性者。
ブエルタ王国の統治者で十二使徒と国民と風属性魔法の適性者以外の人物をあまり信用していない。
ブエルタ王国が他の国と比べて標高の高い場所にあるのはそのため。
ブエルタ王国に行くために風属性魔法の適性者が必要なのもそのため。

ミィ
十二使徒のうちの1人。
火属性魔法の適性者。
普段は大気圏にいるため、普通に生活していたらまず会うことは無い。
ミィの動力源は太陽のため、昼は魔力が強く、夜は魔力が弱い。
魔力の強弱を無くすためにミィは常に太陽と同じように動いている。


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第31話 リールとエレナ

ここでちょっとお知らせです。

2月には実習があるため、投稿が極端に減ります。
もしかしたら2月中は1回だけの投稿になるかもしれません。
もしくは2月中は投稿が無いかもしれません。
ご了承ください。

お知らせは以上です。


私の名前はリール。

今レヴィ学院長と話をしています。

私はレヴィ学院長との約束を破ってしまいました。

レヴィ学院長は約束を破った私を学院から追い出すそうです。

私は魔女さんと約束しました。

「魔女さんよりも凄い魔女さんになる」と。

なのに約束を破ってしまいました。

これから私はどうなるのでしょうか。

このまま誰かの家にお邪魔することになるのでしょうか。

…魔女さん。私を…助けてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レヴィ「…リールさん。あなたの魔法で天使たちが目を覚ましたのです」

リール「て…天使…」

レヴィ「はい。天使です」

リール「天使って…なんですか…誰のことですか」

レヴィ「かつて存在した各属性魔法の頂点に立つ存在ですよ」

リール「!」

レヴィ「彼らの魔力は凄まじいものです。私たちでは太刀打ちできません」

リール (え…でも魔女さんは…)

レヴィ「あの人たちが動いているという情報を得ました。あなたが魔法を使ったあの日に」

リール「!」

レヴィ「それから数日が経って現在、先程天使の存在をキャッチしました」

リール「…」

レヴィ「ここにいたのは雷と風の天使ですね」

リール「…はい。雷属性魔法と風属性魔法を使う人でした」

レヴィ「…なるほど。このままでは生徒たちが危ないです」

リール「!」

レヴィ「あの人たちはやると決めたら必ずやります。故にあの人たちが殺すと思えば簡単に人を殺すでしょう」

リール「そんな…私のせいで…」

レヴィ「リールさん」

リール「は…はい…」

レヴィ「…私の結界ではあなたの魔力は防ぎ切れません。ですが、私の最大の防御力を誇る結界があの家に展開されています」

リール「!!」

レヴィ「そこに身を隠してください。あそこなら気配も消えます」

リール「えっと…あの…」

レヴィ「?」

リール「アンナたちは…どうなるんでしょうか…」

レヴィ「全員無事なので目覚め次第考えます」

リール「…分かりました」

レヴィ「では、あなたにはしばらくの休学を」

リール「あの」

 

リールはレヴィ学院長の言葉を遮って話した。

 

レヴィ「…なんですか?」

リール「私がこの場にいなかったら…アンナたちは…傷つかずに済みましたか…」

レヴィ「!」

リール「私のせいで…こうなったんでしょうか…」

レヴィ「…いえ、私の結界が弱いせいですよ」

リール「!」

レヴィ「私はこれまでたくさん勉強してきました。その中で最大の防御力を誇る結界も書物に記載されていました。私はそれを習得し、使えるようになりました」

リール「…」

レヴィ「ですが今回はその次に防御力が高い結界を施しました。それでも攻撃魔法は簡単に弾くほどの結界です。ですが、それですらあなたの魔力を抑えられませんでした。これは異常事態です」

リール「…すみません」

レヴィ「なのであなたは結界を展開しているあの家に隠れていてください。その間にできることをします」

リール「…分かりました。それでアンナたちが傷つかずに済むなら…私は家に戻ります」

レヴィ「…すみません。私の力不足で」

リール「いいえ、元はと言えば私の魔力が高いせいです。私の責任です。それでは…」

 

スッ…スタスタスタ

リールはレヴィ学院長に頭を下げ、その場をあとにした。

 

レヴィ「…」

 

レヴィ学院長はその背中を見ることしかできなかった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

それから数日が経過した。

その間、特に何も起こらなかったが、リールは自分の中から何かが消えたような感じがした。

リールはあの後荷物をまとめ、元の家に戻った。

メリーさんはその家にはおらず、リールが帰ってきた時には家は前のままだった。

リールはその懐かしさに身を置きながら、アンナたちの回復を願った。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院 (学院長室)

 

メリー「ふざけないでください!」

 

バン!

机を叩く音が辺りに響く。

 

レヴィ「…」

メリー「リールちゃんがこの学校を出たですって?」

レヴィ「…えぇ。出ましたよ」

メリー「なんでこの学校を出るんですか!あなた学院長なんでしょ!魔女さんと約束したんでしょ!リールちゃんを守るって!なのになんでその約束を放棄してるのよ!」

レヴィ「…みなさんのためです」

メリー「みなさんって何!誰のことを言ってるのよ!」

レヴィ「この学校の生徒たちです」

メリー「この学校の生徒になんでリールちゃんは含まれてないの!!」

 

バン!

メリーは机を叩いた。

 

レヴィ「…」

メリー「あなた!あんなにリールちゃんをこの学校に入学させたいって言ってたのに不都合があったらこの学校を追い出すのね!最低よ!」

レヴィ「…」

メリー「あなたに任せた私が愚かよ!あの家に展開している結界もリールちゃんを陥れようとしてるんでしょ!」

レヴィ「いや、そんな事はしてな」

メリー「信用できないわ!」

 

メリーはレヴィ学院長の言葉を遮った。

 

メリー「ふざけないで!魔女さんとの約束は何だったのよ!いい加減にして!それでも学院長なのあなた!」

レヴィ「…」

メリー「…もういい。もういいわ。あなたには失望しました。あの家にある結界も今すぐ解除してください。もう必要ありません。あなたは金輪際リールちゃんと接触しないでください」

 

トコトコトコ…ガチャ!バタン!

メリーは怒りながら学院長室を出た。

 

レヴィ「…」

 

レヴィ学院長はその背中を見ることしかできなかった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…魔女さんの家

 

リール (あれから数日…アンナたちはどうなったでしょうか…)

 

リールは机の上に置いてあるものを見た。

それは魔女さんに初めて見せた魔法で作った花だった。

 

リール (この花…魔女さんに見せたやつ…懐かしいですね)

 

リールはその花を手に取った。

 

リール (魔女さん…私はどうすればいいのでしょうか…みなさんを守るために魔法を使ったのに追い出されてしまいました…私の行いは…罪と呼べるものなのでしょうか…)

 

ガチャ!

ドアが勢いよく開いた。

 

メリー「リールちゃん!いる!?」

 

入ってきたのはメリーさんだった。

メリーさんは走ってきたのか息を切らしていた。

 

リール「メリー…さん…」

メリー「リールちゃん!」

 

タッタッタッ!

メリーは家に入るとすぐにリールを見つけ、リールの所まで走った。

 

メリー「リールちゃん!」

 

ギュッ!

メリーはリールを抱きしめた。

 

リール「メリー…さん…」

メリー「ごめんね!ごめんね!私があの人に任せたのが悪かったの!ごめんね…リールちゃん…」

リール「メリーさん…大丈夫ですよ」

メリー「…え…?」

リール「私がここにいるとアンナたちは怪我をせずに済みます。ここにいれば誰も巻き込まずに済みます。これでいいとは思いませんか?」

メリー「!!」

 

リールの目は乾いているのか、光が無かった。

 

メリー「違うわ!リールちゃんがいたからアンナちゃんたちは無事なの!」

リール「アンナたちは…無事なんですか?」

メリー「うん!リールちゃんがいたからアンナちゃんたちはみんな無事よ!リールちゃんのお陰よ!」

リール「…そっかぁ…よかった…無事だったんだ…」

 

リールの力はどんどん抜けていった。

 

メリー「リールちゃん!?」

 

メリーはリールの異変に気づいた。

 

メリー「リールちゃん!もしかしてご飯食べてないの!?」

 

リールの腕は前よりも少し細くなっていた。

 

メリー「リールちゃん!」

リール「…」

 

リールは少しずつ目を閉じていった。

 

メリー「待って!リールちゃん!リールちゃん!」

 

メリーは何度もリールを呼んだ。

だが、リールが返事を返すことは無かった。

 

メリー「リール…ちゃん…」

 

メリーはリールが完全に目を閉じると、脱力し始めた。

 

メリー「…くっ…こんなことなら…回復魔法を勉強していれば…」

メリー「!」

 

メリーはある人を思い浮かべた。

それは、かつて風属性魔法の適性者だったが、ある事をきっかけに回復魔法の道へと進んだ人物だ。

 

メリー「あの人に…あの人に連絡しないと!」

 

メリーはリールをベッドに寝かせた。

 

メリー「リールちゃん…待ってて…少しだけ家を空けるわ!」

 

タッタッタッ!

メリーはある場所に向かった。

その間もリールが目を開けることは無かった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院 (保健室)

 

ラミエ先生「…」

 

ラミエ先生は考え事をしていた。

 

ラミエ先生 (まさか天使たちが…ねぇ…ここに来た2人のうち1人は消滅したらしいけど…まさかね…)

 

ラミエ先生は嫌な予感がしていた。

 

ラミエ先生 (天使を倒すには古代兵器並みの威力を持つ魔力をぶつけないといけない。でも今のこの世界にそれほどまでに強い魔力を持つ人物は1人か2人…いや、3人くらいかな。そのうち1人はかつて狂気の魔女と呼ばれて恐れられていた人物。あとは狂気の魔女のお師匠様。そして…リール。この3人だけ。天使を倒せる人物は今のところ3人だけ)

 

トコトコトコ

ラミエ先生は保健室内を歩き始めた。

 

ラミエ先生 (でもあの場にいたのはリールだけ。でもリールは今の段階では魔力を解放する術を知らない。狂気の魔女のお師匠様は身を隠している。…となるとやはり…狂気の魔女。あの人しかいない。あの人が天使を1人消し炭にした)

 

トコトコトコ

ラミエ先生は窓の外を見た。

 

ラミエ先生 (…どこにいるのよリーナ。帰ってきてちょうだい。この世界は動き始めているわ。…誰かが止めないと…誰かが止めないとあの人が喰われるわ。リーナ。お願いだから戻ってきて…)

 

ガチャ!

突然保健室の扉が開いた。

 

ラミエ先生「…?」

メリー「はぁ…はぁ…ラミエ…いる…?」

 

保健室に入ってきたのはメリーだった。

 

ラミエ先生「メリー?どうしたのよ」

メリー「!!」

 

タッタッタッ!

メリーはラミエ先生の声を聞いて一目散に走った。

 

ガシッ!

メリーはこれでもかというくらいに強くラミエ先生の腕を掴んだ。

 

メリー「ラミエ!助けて!リールちゃんが!リールちゃんが!」

ラミエ先生「どうしたのよメリー。ちゃんと伝えて」

メリー「リールちゃんが何日もご飯食べてないの!この学校を追い出されてから1度もご飯食べてないの!何日前に追い出されたのかは分からないけど私があの家に行くまで何も食べてなかったの!」

ラミエ先生「落ち着いて。リールの状態は?」

メリー「眠っちゃってるの!ゆっくりと目を閉じて脱力してたの!お願いラミエ!リールちゃんを助けて!」

ラミエ先生「…」

 

トコトコトコ

ラミエ先生は少し考える仕草をして保健室にある棚に手を伸ばした。

 

ラミエ先生「メリー」

メリー「何!」

ラミエ先生「あなた、何か買ってきて貰えない?リールのために」

メリー「いいわ!何でも買ってくるわ!魔道具でも家でも箒でも!」

ラミエ先生「いえ、買ってくるものは食べ物だけでいいわ」

メリー「何がいいの!」

ラミエ先生「何でもいいわ。病人が食べやすいものを買ってきて」

メリー「じゃあ料理して食べやすくするってのはどう!?」

ラミエ先生「それでもいいわ。とにかく何でもいいわ。肉でも野菜でも飲み物でも。あの子の体に何か栄養を入れないとリールは目を覚まさないわ」

メリー「分かったわ!今すぐ行くからラミエも家に向かって!」

ラミエ先生「…任せて。あなたもお願いね」

メリー「分かったわ!買ったらそのままあの家に向かうから!」

ラミエ先生「分かったわ」

 

タッタッタッ…ガチャ!バタン!

メリーは走って保健室を出た。

 

ラミエ先生 (リール…)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…魔女さんの家

 

リール (…どれくらい経ったのかな。全然体が動かない…目は開けられるけど…)

 

リールはメリーが出ていった後に目を覚ましていた。

 

リール (メリーさん…あれ、いないのかな…)

 

リールはゆっくり体を起こして周囲を見渡した。

 

リール (…私の部屋だ)

 

リールは今いる所が自分の部屋だと認識する。

 

リール (ゆっくりだけど…体は動かせる…)

 

リールはベッドから起きて歩き始めた。

 

リール (メリー…さん…)

 

トンッ…

 

リール「!?」

 

バタッ!

リールは段差につまずいて転んだ。

 

リール (…痛い…痛い…)

 

リールは痛みに耐えていた。

 

リール (なんで…こんなに…)

 

ガチャ…

突然家の扉が開いた。

 

リール (あ…誰か来た…行かないと…)

 

リールはゆっくりではあるが、立ち上がって玄関に向かった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…魔女さんの家 (玄関)

 

リール (誰が来たのかな…)

 

リールは重い足取りで玄関に向かう。

 

ガチャ…

リールはゆっくりと玄関を開けた。

 

リール (…あれ、誰もいない)

 

リールが玄関に来た頃には誰もその場にいなかった。

 

リール (…間違いだったのかな…でも…ドアが開く音聞こえたし…)

 

ギィィィ…バタン…

リールはゆっくりと玄関を閉めた。

 

トコトコトコ…

リールはゆっくりとソファに向かう。

 

ストン

ソファについたリールは力なくその場に座った。

 

ぐぅぅぅ…

リールのお腹が鳴った。

 

リール (お腹…空いた…)

???「あら、随分と魔力が弱いわね。あなた」

リール「…?」

 

リールは声のした方を見た。

そこにはある人物が立っていた。

 

???「そんな姿を見たらあの人が悲しむわよ」

リール「あなたは…」

 

そこにいたのはエレナだった。

 

エレナ「あの時ぶりね。光属性魔法の適性者さん」

リール「…お久しぶりです」

エレナ「…?」

 

エレナはリールの異変に気づいた。

 

エレナ「あなた、体調が良くないの?」

リール「…いえ、体調は…いいと思います…でも…お腹が…」

 

ぐぅぅぅぅ…

リールのお腹が鳴った。

 

エレナ「…何か思い詰めてるようね。私が何か作るからその後に何があったか教えてちょうだい」

リール「…はい」

エレナ「キッチン借りるわね」

リール「…はい」

 

トコトコトコ

エレナはリールのために料理を作った。

 

エレナ「はい。できたわよ。こっちに来られる?」

リール「…すみません…難しいです」

エレナ「ならそのまま座ってなさい。私が食べさせるわ」

 

トコトコトコ

エレナはできた料理を持ってリールのところに向かった。

 

エレナ「さ、食べて。これは魔女や魔法使いのための料理なの。普通の人間には美味しくないものだけど、私たちには美味しく感じるわ。魔力を回復させるためのものよ。はい」

 

エレナが作ったのは今まで見たこと無かったスープのようなものだった。

エレナはスプーンを手に取り、スープをすくってリールの口に持っていった。

 

エレナ「大丈夫よ。毒なんて入れてないわ」

リール「…いただきます」

 

スゥゥゥ…ゴクン…

リールはそのスープを口に含んだ。

 

リール「…凄いですねこれ。体が少しずつ暖かくなってきました」

エレナ「ね、言ったでしょ。体が暖かくなってるってことは魔力が戻ってきている証拠よ。さ、食べて」

 

スゥゥゥ…ゴクン…

リールはそのスープを残さず口に含んだ。

 

エレナ「どう?少しは良くなった?」

リール「!!」

 

リールは自分の体に異変が起こっているのに気づいた。

 

リール「凄い…力が入ります!魔力も元に戻ってます!元気になりました!」

エレナ「そう。それは良かったわ」

リール「ありがとうございます!んんん!元気なのって気持ちいいですね!」

エレナ「…」

 

エレナは喜んでいるリールを見ていた。

 

エレナ (…リノ。あなたの娘さんはとても可愛いですね。言葉も綺麗で魔力も強い。あなたに似てますね)

リール「いっちにっ!さっんしっ!」

 

リールは体操をしていた。

 

エレナ (…こういうところもあなたそっくりですね)

リール「あの!」

エレナ「…?」

リール「助けていただいてありがとうございます!」

エレナ「…いいわよ。別に」

リール「でも凄いですねあの料理!私も教わりたいです!」

エレナ「またいつか教えてあげるわ」

リール「やったぁ!」

 

リールはとても喜んでいた。

 

エレナ「さて、本題に入らせてもらうわよ。光属性魔法の適性者さん」

リール「え?本題?」

 

リールは聞く姿勢に入った。

 

エレナ「あなた、何でここにいるのよ」

リール「!!」

エレナ「私がここに来るってあの魔女に言われてるんじゃないの?あの学院にいたほうがあなたは安全よ。なのになぜ」

リール「あ、私…学院長から休学を言い渡されてまして…この家に隠れるよう言われたんですよ」

エレナ「…」

リール「私のせいでアンナたちが怪我をしちゃいまして…私が離れて暮らせばもう傷つかずに済むんじゃないかって思いましてそれで…」

エレナ「…ここに来たわけね」

リール「…はい」

エレナ「…アンナ…あの子たちね」

リール「…」

エレナ「…どうだった?ゴーラとマーモは」

リール「ゴーラ?マーモ?」

エレナ「え、知らないの?」

リール「は、はい…」

エレナ「あなたがいた街を襲撃した2人の男よ。覚えてない?」

リール「あ、あの雷属性魔法を使う人と風属性魔法を使う人のことですか?」

エレナ「そう。その2人よ。どうだった?強かった?」

リール「はい。強かったです。私たちじゃ歯が立ちませんでした」

エレナ「…そう。でもそのうちの一人は死んだわ」

リール「!!」

エレナ「風属性魔法を使う方ね」

リール「やっぱり…消えてたのは本当だったんですね」

エレナ「えぇ。狂気の魔女…いえ、リーナがマーモを殺したのよ」

リール「!!」

エレナ「凄まじい魔力だったわ。半分程度の力なのにマーモを消し去るなんてね」

リール「魔女さんは…」

エレナ「…?」

リール「魔女さんは…今どこにいるんですか?」

エレナ「…」

リール「知ってるなら会わせて下さい」

エレナ「…知ってるわ。でも会わせてあげられない」

リール「なぜですか…」

エレナ「…私にも目的があるの。その目的が達成されるまでは会わせてあげられない」

リール「目的って…なんですか」

エレナ「…魔核を集める。それが私の目的よ」

リール「ま…魔核…?」




〜物語メモ〜

は、今回は新しい情報は無いので次回ですね。


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第32話 リールとリノの置き手紙

ここでちょっとお知らせです。

現在、「器の欠片 (ロスト・メイン)」というお話を投稿しています。
良ければ読んでみてください。

お知らせは以上です。


私の名前はリール。

今魔女さんの家にいます。

先日レヴィ学院長に休学と言われまして、元いた家に隠れることとなりました。

あとでメリーさんが家に来てすぐに出て行っちゃいました。

その後に私がベッドで寝ていると突然玄関が開いたので様子を見に行くと、そこにはかつて学院を襲ったエレナという人がいました。

ですがその人は私を襲うことはなく、何故か私のために料理を作ってくれました。

しかもその料理はとても美味しく、全然元気じゃなかったはずなのに食べ終わるとすごく元気が出ました。

とても不思議でした。

そしてエレナという人は魔女さんの居場所も知っているそうですが、何故か教えてくれませんでした。

何やら目的があるようです。

その目的が達成できるまで会わせてくれないそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エレナ「…私にも目的があるの。その目的が達成されるまでは会わせてあげられない」

リール「目的って…なんですか」

エレナ「…魔核を集める。それが私の目的よ」

リール「ま…魔核…?」

エレナ「そう。この世界に存在する12人の魔女、魔法使いが所持している物よ。ある人の動力源でもある」

リール「ど、動力源…」

エレナ「私はそれを探しているの」

リール「でも探してどうするんですか」

エレナ「…ある人を取り戻したいのよ。私の大事な人」

リール「お父さんかお母さんですか?」

エレナ「いいえ。私の友人」

リール「取り戻すってどこかに捕まってるんですか?」

エレナ「そうね。捕まってるって言うとそうなるしそうでないとも言える。曖昧よ」

リール「そ、そうですか…」

エレナ「今まで色々な人を試したわ。でも全然ダメ。1人も魔核を持ってなかった」

リール「そうですか」

エレナ「でもこれである程度誰が持っているのかは把握出来たわ。あとは回収しに行くだけね」

リール「良かったですね。目的が達成できそうで」

エレナ「でもね、1人だけ絶対回収できない人がいるの」

リール「誰なんですか?」

エレナ「…それは言えないわ」

リール「?」

エレナ「言ったらダメよ。それ以降気にしちゃうからね。でも私は友人のために回収しなくちゃならない。もう時間もないわ」

リール「時間…とは?」

エレナ「…あなた、光属性魔法の適性者よね?」

リール「はい」

エレナ「ならリノの置き手紙を読めるんじゃないかしら」

リール「リノの置き手紙?」

エレナ「あら、知らないの?」

リール「はい。知らないです」

エレナ「あの人が言うには何かの書物に挟んであって、光属性魔法の適性者にしか文字が読めないそうよ」

リール「!!」

 

リールはこの時、スカーレットの家にあった書物から小さな紙が出てきたのを思い出した。

 

リール「それって…もしかして…」

エレナ「…? 何か知ってるの?」

リール「あ、いえ…ですが私の知ってるものがその人の置き手紙なのかが気になります」

エレナ「どんなもの?」

 

カサッ…

リールは小さな紙を出した。

エレナはそのふたつ折りにされた紙を開いた。

 

エレナ「!?」

 

エレナは見てわかるくらいに驚いた顔をしていた。

 

エレナ「こ、これよ!この手紙よ!これがリノの置き手紙よ!」

リール「あ、そうなんですか」

エレナ「あなたここに書いてある文字読める!?」

リール「え、あ、はい。読めます」

エレナ「!!」

 

エレナは大きく目を見開いた。

 

エレナ「ちょ、読んでみて!読んで聞かせて!」

リール「あ、はい」

 

リールはエレナから紙を受け取った。

 

リール「えーっと…。私はリノ。あなたと同じ光属性魔法に適性を持つ者です。この文字が読めるあなたにだけある事を伝えます。現在この世界にはドレインという他者を取り込み強くなる魔物が存在します。今は表に出てきていませんが、ある場所に私が保管しています。そこは、辺り一面暗い "深淵" と呼ばれる場所です。あなたが光属性魔法に適性があるのならその場所に出向き、ドレインを全て浄化してください。それはかつて私が成し得なかったこと。光属性魔法は唯一ドレインに対抗できる魔法です。私はその力を使ってドレインを退けましたが、私一人ではどうにもなりませんでした。そこで私はある事を考えました。それは、私自身を使ってドレインを封印することです。ですが、先程記述したように私一人では限界があります。なので、これを読んでるあなたにお願いがあります。私一人ではドレインの進行は止められません。あなたがドレインを浄化して下さい。光属性魔法に適性があるあなただけが頼りです。お願いします。…ですね」

エレナ「…!?」

 

リールはその手紙に書かれた内容を全て話した。

 

エレナ「ほんとに…読めるのね…」

リール「はい。何の事かはさっぱりですが…」

エレナ「…分かったわ。ドレインがここに到達するまでまだ時間はある。それまでに魔核を12個集めてリノを取り戻せば…」

リール「あの…」

エレナ「?」

リール「その…魔核というものを集めれば、あなたの友人さんは取り戻せるんですか?」

エレナ「えぇ。取り戻せるわ」

リール「じゃあ…」

エレナ「あの人の持つ光属性魔法はね、この世界に存在するドレインという生き物を倒すことが出来るの。さっき言ってたよね」

リール「はい」

エレナ「この世界はね、実は平和じゃないの」

リール「!」

エレナ「今もリノはドレインと戦ってる。リノがドレインを外に出さないようにしている。でも限界はある。だから私がリノの助けになるの」

リール「そうですか」

エレナ「さて、その手紙の内容聞けたし魔核の場所もある程度把握出来た。あとは自分の行動だけね」

リール「が、頑張ってくださいね」

エレナ「あ、教えてくれたお礼に私も教えないとね」

リール「?」

エレナ「私の仲間に土属性魔法の適性者がいるんだけど、その人があの町に隕石落とそうとしてるわよ」

リール「!?」

エレナ「加えて私の仲間の氷属性魔法の適性者が町を氷漬けにするつもよ」

リール「な…なんで…」

エレナ「さぁ?あの人の考えはよく分からないわ」

リール「え、でもなんであなたが仲間の事を教えるんですか?それって裏切りになるんじゃ…」

エレナ「まぁ、最初から仲間でもなんでもないしね。というか死んでくれた方がいいのよ。あいつらは」

リール「…」

エレナ「さて、これからの行動は伝えたわ。どうするかはあなた次第ね」

リール「あの…」

エレナ「?」

リール「助けて…もらえないんでしょうか…」

エレナ「!」

リール「助けてもらえたら嬉しいんですが…」

エレナ「…あのね、私は仮にも敵なのよ。学院だって壊して回ったし。そんな人に助けを求めてどうするのよ」

リール「でも…」

エレナ「…自分の力でどうにかなる気がしない…そう考えてるのね」

リール「…はい」

エレナ「まぁあの2人は強いわ。でも大丈夫よ。あなたがいるんだから」

リール「!」

エレナ「あなたがいればここの人たちは死なないわよ」

リール「いえ、傷つきます」

エレナ「!!」

リール「私が懸念しているのは死ぬことではなく、誰かが傷つくことです」

エレナ「…そう。でもできないわ」

リール「…」

エレナ「私にも立場があるわ。今の立場を無くせばリノを助けられる確率も下がる。だからできない相談よ」

リール「そう…ですか…」

エレナ「…気にしないで。あなたならできるわ」

リール「…」

 

ガチャ!

リールとエレナが話しているとメリーとラミエ先生が入ってきた。

 

メリー「リールちゃん!大丈夫!?」

リール「メリーさん!」

メリー「良かった…元気そ…う…」

ラミエ先生「!」

 

メリーとラミエ先生はエレナの存在に気づいた。

 

メリー「あなた!何でここに!」

エレナ「…さぁね。何でかしら」

メリー「リールちゃんをどうするつもり!」

エレナ「どうもしないわよ。ただお邪魔しに来ただけよ」

メリー「嘘つかないで!」

エレナ「現に今から帰るつもりだったのよ」

メリー「じゃあ帰って!」

エレナ「それじゃあね。光属性魔法の適性者さん」

 

コツコツコツ

エレナは魔女さんの家を出た。

 

メリー「リールちゃん!何もされなかった!?大丈夫!?」

リール「はい。大丈夫ですよ」

メリー「あー良かった!リールちゃんいきなり目を閉じるから死んじゃったかと思ったよ!」

リール「あはは…」

ラミエ先生「!」

 

ラミエ先生はキッチンに置いてあるスープを見つけた。

 

ラミエ先生「…」

 

チョン…ペロッ…

ラミエ先生はそのスープに指を入れて舐めた。

 

ラミエ先生「!?」

ラミエ先生 (こ、これって…どうしてこんなものが…)

 

ラミエ先生はリールを見た。

 

ラミエ先生 (メリーの話ではリールは倒れているはず…でもあんなに元気になってる…まさか本当に…)

 

ラミエ先生はエレナを思い出した。

 

ラミエ先生 (まさか…あの人が作ったの…?これ…)

 

ラミエ先生はリールのところに向かった。

 

ラミエ先生「リール」

リール「あ、はい。何ですか?」

ラミエ先生「あなた…あのスープを飲んだの?」

リール「はい。飲みました」

ラミエ先生「!」

リール「えっと…何かありましたか?」

ラミエ先生「あのスープ…作ったのは誰?」

リール「エレナさんです」

ラミエ先生「!?」

 

ラミエ先生の予想は的中した。

 

ラミエ先生 (どういうこと…エレナは敵じゃないの?)

リール「あの…ラミエ先生?」

 

ラミエ先生は急に考え事をし始めた。

 

ラミエ先生 (でも敵であるリールにあんなもの飲ませる?普通。味方なら分かるけど…敵じゃん…)

リール「えっと…ラミエ先生?」

ラミエ先生 (まさか…敵はエレナじゃなくて他にいる…。エレナ以外の誰かが何かしようとしてるの?)

リール「ラミエ先生!」

ラミエ先生「え、何?」

リール「急にどうしたんですか」

ラミエ先生「あ、いえ、なんでもないわ。とにかく元気そうで良かったわ。食べ物とか買ってきたからしっかり食べなさい」

リール「はい!」

 

ラミエ先生はキッチンに戻って再度スープを見た。

 

ラミエ先生 (…回復魔法が含まれた食べ物…これを作れるのが私以外にいるなんて…エレナ…一体何者なのよ…)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…草原

 

エレナ「…上手く作れて良かったわ。初めてだったけど効果は絶大ね」

 

スタスタスタ

エレナは歩を進める。

 

エレナ「しかし、リノの置き手紙を聞けるなんて、なんて幸運なのかしら。おまけに魔核の場所もある程度予想はついた。さて、回収しに行きましょうか。待っててリノ。もう少し…もう少しだけ待ってて」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院 (学院長室)

 

アンナ「え!?リールがこの学校を出たんですか!?」

レヴィ「はい。出ましたよ」

 

現在、学院長室ではアンナたちがレヴィ学院長と話をしていた。

 

アンナ「なんで学校を出るんですか!」

レヴィ「…」

 

レヴィ学院長は何も言わなかった。

 

スカーレット「学院長。何故リールは学校を出ることになったのでしょうか。理由を教えてください」

レヴィ「…この学院の生徒を守るためですよ」

オード「生徒を守るため…ですか」

レヴィ「はい。リールさんの魔力はとてつもなく強いです。私の結界では抑えきれません」

スカーレット「だからって…」

レヴィ「リールさんの魔力を嗅ぎつけてドレインが出現するかもしれません。なので私の中で1番防御力のある結界を展開しているあの家に隠れてもらってます」

スカーレット「あの家ってなんですか」

レヴィ「おや、あなた方はリールさんのご友人ですので知ってるものかと」

スカーレット「教えてください。リールはどこにいるんですか」

レヴィ「…教えられません」

アンナ「何でですか!」

レヴィ「残念ながら、立場上生徒を守るのが私の仕事です。ですのであなた方はこの学院から出ないようお願いします」

オード「あの。学院長」

レヴィ「ん?何?」

オード「リールはここの生徒じゃないんでしょうか」

レヴィ「!」

オード「なぜリールだけ生徒に含まれないのか、甚だ疑問ですね」

レヴィ「…」

スカーレット「…アンナ」

アンナ「何?スカーレット」

スカーレット「…リールを探しましょう」

アンナ「!」

スカーレット「元よりリールがいないとこの学院は更に酷くなります。今までほぼ無事でいたのはリールがいたからです。リールがいなかったら今頃全員死んでるでしょう」

レヴィ「…」

スカーレット「学院長。私たちはリールを探します。授業もしばらく止まってるのでいいですよね?」

レヴィ「…どうぞお好きに。ただし、この学院から出るとなると私たちの加護は受けられませんので、そのつもりで」

スカーレット「大丈夫です。私たちは生徒ですが、リールに教えてもらったものがあります。それを使って探します」

レヴィ「…あいつらが来たらどうするつもり?」

スカーレット「あいつらとは誰のことでしょうか」

レヴィ「君たちを攻撃した人たちですよ」

スカーレット「…」

レヴィ「君たちは6人もいて1人も倒せなかったんですよ。ましてや6人中5人は瀕死状態。今は回復して動けますが、次また来たらあなた方で身を守ることはできますか?」

スカーレット「6人中5人…残りの1人はリールですよ。リールがいたから大丈夫なんですよ私たち。ここでもしリールがいなかったら全滅でしたよ。経緯はどうあれリールが生きていた。あの人たちが撤退したという事実は変えられません」

レヴィ「では、リールさんを見つけるまでにあいつらが現れたらどうするおつもりで?」

スカーレット「知りませんよそんなこと」

レヴィ「!」

スカーレット「来る前に見つけます。私たちの友達ですので」

 

スタスタスタ…ガチャ…バタン

スカーレットたちは学院長室を出た。

 

レヴィ「…ふぅ」

ラーフ「学院長。いいんですか?」

レヴィ「やぁラーフ。君こそもう大丈夫かい?」

ラーフ「はい。もう動けます」

レヴィ「そうか。それは良かった」

ラーフ「…レヴィ学院長」

レヴィ「あぁ。分かっている。でもこうするしかなくなった。本来ならこの学院で匿うのがいいけど、明らかに被害が大きくなっている。エレナ元学院長も現れた。ドレインもね」

ラーフ「…」

レヴィ「そうなると流石に庇い切れないよ」

ラーフ「ですが…あの子たちが言っていたようにリールさんがいることであの子たちは死なずに済んでいます。最初のエレナ元学院長の襲撃でもリールさんは生き残っていました。その次の天使たちでも怪我なく生き延びた」

レヴィ「…」

ラーフ「リールさんはすごい幸運の持ち主ですよ。手放すのは私も賛成できません」

レヴィ「…あぁ。分かっている。僕が懸念しているのは天使たちの行動。ドレインは弱いからここの生徒たちでも倒せるよ」

ラーフ「なら…」

レヴィ「だけど、そうもいかない」

ラーフ「…」

レヴィ「ドレインはこの世界の人間を喰らう魔物。あれにやられたら人として生きられなくなる。その上ドレインは強くなり、やがて手に負えなくなる。そうなると少し面倒なことになる」

ラーフ「なにが…」

レヴィ「君は、あの天使たちを倒す方法を知ってるかい?」

ラーフ「天使たち…それは魔法を…」

レヴィ「でもね、並の魔法じゃ歯が立たない。天使たちの魔力は恐ろしく高い。だからそれに対抗できるだけの魔力が必要になる」

ラーフ「ではそうすれば…」

レヴィ「でもね、仮に天使たち以上の魔力をぶつけたとしても一発じゃ倒れないんだよ。天使たち以上の魔力を何発もぶつけないといけないの。そんな魔力を持つ人がこの世に何人いると思う?」

ラーフ「わ、分かりません」

レヴィ「3人だよ。たった3人」

ラーフ「さ、3人…」

レヴィ「1人は私のお師匠様。魔女さんのお師匠様でもある」

ラーフ「学院長の…お師匠様…」

レヴィ「そして2人目。2人目は魔女さんだよ」

ラーフ「え、あの人が…」

レヴィ「そう。あの人が。現に風の天使を殺ったのは魔女さんの分身体ですから」

ラーフ「分身体!?」

レヴィ「そう。魔女さんは自分の分身を作ることが出来る」

ラーフ「なんと…」

レヴィ「ラーフ。覚えておいて。分身体ってね、その人の半分の力で生成される。つまり、その分身体は魔女さんの半分程度の力しかないの」

ラーフ「半分程度…ですか」

レヴィ「そう。半分だけ。それなのに風の天使を殺った」

ラーフ「!!」

レヴィ「何が言いたいか分かる?ラーフ」

ラーフ「まさか…その魔女さんの半分程度の魔力が…あの天使たち以上の魔力だと…そう言いたいんですか?」

レヴィ「…そう。そういう事」

ラーフ「!?」

レヴィ「僕、最初に魔女さんが手紙を燃やしたと聞いてラーフに言ったこと覚えてる?」

ラーフ「言葉…」

レヴィ「あの魔女さんを怒らせたらこの国が消えかねないと…そう言いました」

ラーフ「あ、確かに言いました」

レヴィ「魔女さんは半分程度の力で天使を殺せます。なのに本体となったらその2倍です。この国なんて余裕で破壊できます」

ラーフ「そんな…」

レヴィ「過去に起きた事件。狂気の魔女と呼ばれたあの人はその時この国を破壊して回った。故にこの国は一瞬で崩壊し、今は復興が終わっていますが、それでも跡は残っています」

ラーフ「…」

レヴィ「もし今の魔女さんを本気で怒らせたら私だって体の保証はできません。一瞬で破壊されて蒸発するでしょう」

ラーフ「そんな…学院長でさえも…」

レヴィ「はい。あの人は言わば危険人物…ですがそれは魔力に限った話です。あの人は怒りさえしなければ優しい人です。ですが当時は自身の怒りのままに動いたためにこの国は一度滅びました」

ラーフ「…」

レヴィ「今回私がリールさんをあの家に戻したのはリールさんを死なせないためです」

ラーフ「!」

レヴィ「リールさんが死んだとなると、それを聞いた魔女さんはどうなると思いますか?」

ラーフ「お…怒ります…」

レヴィ「そう。怒ったらどうなるのか。その怒りの矛先はどこへ向くのか。簡単な話です。怒りの矛先は私とこの国とリールを殺した本人に向けられます」

ラーフ「そんな!でも学院長は殺してない!」

レヴィ「いえ、私は魔女さんにリールさんを守ると約束しました。魔女さんからすればその約束を破られたとなります。怒るのも当然です」

ラーフ「…」

レヴィ「リールさんは何としてでも守らなければなりません。私があの家に戻したのはあの家に結界を展開しているからです。あの結界はそうそう突破されません。リールさんの魔力も抑えられます」

ラーフ「そう…ですか…」

レヴィ「ラーフ。あなたにも1つお仕事があります」

ラーフ「な…なんでしょうか…」

レヴィ「リールさんを守るのを手伝ってください」

ラーフ「!」

レヴィ「魔女さんを怒らせたら冗談抜きで全員死にます。挙句今どこにいるのかも分かりません。離れたところから攻撃されたら私たちに打つ手はありません。何としてでもリールさんを守らなければなりません」

ラーフ「わ、分かりました」

 

スタスタスタ…ガチャ…バタン

ラーフは学院長室を出た。

 

レヴィ「…」

 

レヴィ学院長は窓の外を見ていた。

 

レヴィ (リールさん。もう少しの辛抱です。もう少しだけそこで待っていてください)




〜物語メモ〜

魔核
この世界に存在する12個の魔力の素。
これは昔、リノと関係があった人のみ所有しているもの。
エレナはその魔核を集めてリノを取り戻そうとしている。

リノの置き手紙
リノの置き手紙とは、リールがスカーレットの家に行った時に光属性魔法の書物に挟まれていた小さな手紙のこと。
その置き手紙は光属性魔法の適性者にしか読めず、スカーレットの父であるジンやスカーレットの叔父であるマークは読めずに諦めていた。
エレナも光属性魔法の適性者ではないため読めなかったが、リノの置き手紙の存在は知っていた。
今回エレナはリールが光属性魔法の適性者だと知っていたため、リノの置き手紙を読ませた。

エレナが作ったスープ
エレナがリールのために作ったスープは普通のスープとは見た目は変わらないが、飲めば魔力等を回復させることができる。
普通の人間には美味しくないが、魔法使いや魔女が飲めば、たちまち元気になる。
だがこの料理を作ることが出来るのは、回復魔法を使える人の中でもラミエ先生を含めて一握り程度。
ラミエ先生はこのスープについてよく知っているため、敵であるエレナが作ったことに驚いていた。

分身体
魔女さんが使っていた魔法の一種。
自分と全くそっくりなもう1人を作り出す魔法。
ただ、自身の半分の魔力を使って生成されるもので、強さはその人の半分程度。
作る本人が弱ければ分身体も弱くなる。
魔女さんの場合は、その半分程度の強さしかない分身体にも関わらず、マーモを余裕で消していた。


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第33話 リールと魔女さんの家

私の名前はリール。

今魔女さんの家にいます。

先程メリーさんとラミエ先生が家に来ました。

その時、入れ替わるようにエレナさんが家を出ました。

エレナさんは敵であるにも関わらず、何故か私に仲間を売りました。

しかもそれはあの町に隕石を落とすというのと町が氷漬けにされるというものでした。

私は不思議に思うのと同時にこの事を伝えようと思っていたんですが、今家を出てもいいのか不安でした。

なのでここは一旦家にいることにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…スペルビアの町

 

スカーレット「こんな事ならリールの家聞いとくんだったわね」

アンナ「だね…」

 

スカーレット、アンナ、オード、ディア、ノーラは箒に乗ってリールの家を探していた。

 

オード「おーい委員長!」

スカーレット「?」

オード「こっちには無かったぞ」

ディア「てかそもそもリールの家知ってるやついなかったぞ?」

スカーレット「あぁやっぱり…」

ノーラ「そっちも見つからなかったのか?」

アンナ「はい。見つからないんです」

オード「う〜ん…」

スカーレット「…出ましょう」

ディア「出る?」

ノーラ「…何が?」

スカーレット「この町を出ましょう」

アンナ「…え!?」

オード「この町を出るってお前…」

ディア「出たところで場所が分かんねぇんだぞ…」

ノーラ「途方に暮れるの間違いなしだな」

スカーレット「でも!こうでもしないとリールが見つからないじゃない!この町にはリールの家を知ってる人はいない!リールもどこから来たのか分からないし!だったらそれ覚悟で外に出てもいいと思う!」

ディア「だが…しかし…」

オード「…あぁ。行こう」

ノーラ「オード!」

オード「俺はリールを守るって約束した。リールがどこにいようとも俺はそこへ行く。いなくなったら見つかるまで探し続ける。俺はそう決めた」

ノーラ「オード…」

アンナ「私も行く」

ノーラ「!」

アンナ「私もリールのお友達だから。今まで助けてもらった分を返したい」

ディア「ノーラ」

ノーラ「?」

ディア「…俺たちも行こう」

ノーラ「!」

ディア「俺はこいつらを支持したくなった。ノーラはどうだ?」

ノーラ「…まぁ、同じだが…」

ディア「なら一緒に行こうぜ」

ノーラ「…はぁ、仕方ない。俺も行こう」

スカーレット「よしっ!じゃあ行くわよ!」

全員「おー!」

 

そしてスカーレットたちはスペルビアの町を離れることになった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…魔女さんの家

 

リール「あの…メリーさん」

メリー「何?」

リール「もう…大丈夫ですよ」

メリー「ダーメ!リールちゃんは寝てないと!」

 

リールは今ベッドに押さえつけられていた。

 

リール「で、でも!私もう元気ですので!」

メリー「ダメ!元気なのは気持ちだけかもしれないの!体は悲鳴上げてるかもしれないよ!」

リール「あの…ほんとに大丈夫ですって!」

メリー「ダーメ!」

ラミエ先生「はぁ…全く…静かにしてほしいわね…」

 

ラミエ先生は料理をしていた。

 

リール「大丈夫ですって!ラミエ先生!」

ラミエ先生「…はぁ」

メリー「もう!安静にしてないとダメだよ!」

リール「ラミエ先生!」

メリー (こうなったら…)

リール「ラミエ先…」

 

ハムッ!

 

リール「!?」

 

突然メリーがリールの唇にキスをした。

 

リール「んー!んー!」

メリー「…」

 

メリーは少しの間キスをした。

 

リール「んー!んー!」

メリー「っぷはぁっ!」

リール「ぷはっ!」

メリー「はぁ…はぁ…」

リール「はぁ…はぁ…」

 

2人はずっと呼吸を止めていたため、少し疲れていた。

 

リール「あの…なんで…」

メリー「…リールちゃんが静かにしないからだよ」

リール「!」

メリー「リールちゃんは安静にすること…いい?」

リール「は、はい…」

 

リールは大人しく寝ることにした。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…平原

 

スカーレット「うーん…それらしい家なんて無いわね」

アンナ「だね…」

ディア「てかリールってこの町の出身じゃないのか?」

オード「違う。別のところから来たんだってよ」

ノーラ「へぇ。それは初耳」

ディア「で、どこから?」

スカーレット「それが分かってたらこんなことになってないでしょ?」

ディア「まぁ…そうだよな…」

アンナ「もっと遠くなのかも!」

ノーラ「でもこれ以上遠くなるとリスクあるんじゃないか?」

アンナ「でも…」

オード「…なら俺が行こう」

ディア「え?」

オード「あ、遠くには行かない。でも高く飛べばある程度見渡せると思う」

スカーレット「なるほど。いい考えね」

オード「ちょっと行ってくる」

 

ヒュゥゥゥゥゥ

オードは空高く飛んだ。

 

ディア「…なぁ」

スカーレット「なに?」

ディア「学院長の事…どう思う?」

スカーレット「どうって?」

ディア「…正直言うと俺はリールには休息を取ってもらってもいいと思ってる。だが、この町も最近安全じゃなくなってると思う」

スカーレット「…それで?」

ディア「…なんとか説得できないか?学院長を」

アンナ「説得?」

ディア「そう。なんとかリールをここに残すことができないかってこと」

ノーラ「でもリールは家に帰ってるだけだろ?」

ディア「いや、家じゃなくて寮に戻ってきて欲しいんだ」

ノーラ「なんで?」

ディア「…みんなでいたほうが楽しいだろ」

アンナ「!」

スカーレット「!」

ノーラ「まぁ、確かにそうだな」

ディア「それに、リールがいないと2人が心配してる。そうだろ?」

スカーレット「そうね。すごく心配だわ」

アンナ「うん。心配」

 

ヒュゥゥゥゥゥ

空高く飛んでたオードが帰ってきた。

 

オード「よっと」

スカーレット「どうだった?」

オード「ダメだ。ここら周辺に家は無い」

アンナ「そっか…」

ディア「もう少し遠くを探してみるか?」

ノーラ「あぁ。そうしよう」

オード「そういえば委員長はリールから何か聞いてないのか?」

スカーレット「何も聞いてないわ。アンナは?」

アンナ「私も何も…」

ディア「うーん…これは難しそうだなぁ…」

ノーラ「え?ちょ、あれ!」

 

ノーラは平原を歩いている2つの影を指した。

 

スカーレット「んー…あれって…」

アンナ「ラミエ先生じゃない?あの保健室の」

オード「あ、確かに」

ディア「なんでこんな所に…」

ノーラ「てか急に現れたよな。さっきまでそこにいなかったのに」

スカーレット (…もしかして)

 

ビュン!

スカーレットはラミエ先生とメリーがいるところに向かった。

 

アンナ「スカーレット!」

 

 

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数分前

場所…魔女さんの家

 

ラミエ先生「で、キスしたと」

メリー「はい。しましたよ」

ラミエ先生「あなたねぇ…あの人がこんなこと聞いたらどうなると思ってるのよ」

メリー「いいの!」

ラミエ先生「全く…リールが変なことに目覚めなきゃいいけど…」

メリー「ふふん!」

ラミエ先生「リール!ここにご飯置いとくから温めて食べて!」

リール「はーい」

ラミエ先生「他の材料は保存してあるからね!」

リール「はーい」

ラミエ先生「私たちは家を出るけど何かあったらまた言いに来てよ!」

リール「はーい」

 

リールは自分の寝室から返事をした。

 

ラミエ先生「じゃあね」

リール「はーい!ありがとうございまーす!」

ラミエ先生「さ、行くわよメリー」

メリー「リールちゃーん!また来るわねー!」

リール「はーい!」

ラミエ先生「さ、行くわよ」

メリー「うん」

 

ガチャ

ラミエ先生とメリーは魔女さんの家を出た。

 

 

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現在

場所…平原

 

メリー「ふん♪ふん♪ふふん♪」

ラミエ先生「随分ご機嫌ね。メリー」

メリー「だってリールちゃん元気だったんだもん!嬉しいよ!」

ラミエ先生「まぁ私のところに来た時は死にそうな顔してたしね」

メリー「だってリールちゃんが倒れたんだし…」

ラミエ先生「良かったわね。元気になって」

メリー「うん!」

スカーレット「先生ー!」

ラミエ先生「!」

メリー「?」

 

突然声が聞こえたのでラミエ先生とメリーは足を止め、周囲を見渡した。

 

スカーレット「先生!」

 

スタッ!

スカーレットは箒から降りた。

 

ラミエ先生「あら、あなたは」

スカーレット「先生!」

ラミエ先生「な、なによ」

スカーレット「先生はリールの家を知ってますか!?」

ラミエ先生「リール?」

スカーレット「はい!」

ラミエ先生「知ってるけどどうしたのよ」

スカーレット「どこにありますか!?」

ラミエ先生「どこって…」

メリー「あなたはなんでリールちゃんの家を探しているの?」

スカーレット「あ、あなたはメリー魔法店の…」

メリー「はい。店長のメリーです」

スカーレット「あ、えっと…リールを探しているんです」

ラミエ先生「探している?何かあったの?」

スカーレット「あ、何かあったわけじゃないんですが、やっぱり戻ってきて欲しいなって思って…」

ラミエ先生「じゃあリールを説得しに来たわけ?」

スカーレット「あ、いえ…」

オード「リールが心配だったからです」

 

スタッ!

オードも箒から降りた。

 

オード「先生。リールの家を知ってますか?」

ラミエ先生「あなたまで…」

オード「俺たちだけじゃないです」

 

オードはこっちに向かってきているアンナ、ディア、ノーラを指さした。

 

ラミエ先生「あの子たちも…」

オード「先生。教えてください。リールの家はどこですか」

ラミエ先生「…」

スカーレット「先生!」

ラミエ先生「…そこにあるわよ」

オード「え?」

 

ラミエ先生は後方を指さした。

 

オード「え?何も無いけど…」

スカーレット「?」

メリー「あ、あの家には結界が展開されているので見えませんよ」

オード「え?見えない…」

ラミエ先生「当然よ。私たちにだって見えてないんだから」

スカーレット「え、見えてないんですか?」

ラミエ先生「えぇ」

オード「じゃあどうして…」

ラミエ先生「魔力を辿っているのよ。あなたたち、何か感じない?」

 

スカーレットたちは魔力を感じ取ろうと集中した。

でも誰も感じ取ることが出来なかった。

 

スカーレット「わ、分からない…」

オード「あぁ…ディア分かるか?」

ディア「いや、なにも」

ノーラ「俺も何も分からん」

アンナ「私も…」

メリー「あはは…」

ラミエ先生「じゃああなたたちには見つけるのは無理だわ」

スカーレット「え…」

ラミエ先生「だってそこに家があるのに見えないんでしょ?だったら探すなんて不可能よ」

アンナ「そんな…」

オード「見えるようになる方法はないんですか?」

ラミエ先生「あるわ」

オード「どうすれば!?」

ラミエ先生「…玄関に触りなさい。触れることができれば大丈夫よ」

オード「よっしゃ!行くぞ!」

スカーレット「あ、待って!」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

オードたちは箒に乗って空を飛んだ。

 

スカーレット「あ、あの…」

ラミエ先生「何?」

スカーレット「あの…手伝ってもらえませんか?」

ラミエ先生「…はぁ」

メリー「いいじゃない。こうしてお友達が来てくれてるならリールちゃんも喜ぶわ」

ラミエ先生「…仕方ないわね。ついてきて」

スカーレット「はい!」

 

スカーレットもリールの家に向かった。




〜物語メモ〜

魔女さんの家
魔女さんの家はレヴィ学院長の結界によって守られているため、視認することができなくなっている。
おまけに結界が割れるまで攻撃されても家に被害はない。
メリーに結界を解除するよう言われたが、レヴィ学院長は結界を解除しなかった。


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第34話 リールとオード

私の名前はリール。

今自分の部屋のベッドにいます。

先程メリーさんに寝かしつけられました。

私自身もう何ともないのにメリーさんは心配性ですね。

ですが、それはそれで大事にされてるなと思っています。

でもどうしましょうか…このまま寝ているわけにもいきませんし…

…そういえば学校はどうなってるんでしょうか。

私がいない間、何か変わったことでもありましたかね。

…早く学校に戻りたいものですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…魔女さんの家 玄関前

 

ラミエ先生「ここよ」

オード「…へ?」

 

ラミエ先生たちは魔女さんの家の前にいた。

 

ラミエ先生「だからここよ」

ディア「え、でも何も無い…」

ラミエ先生「さっき言ったじゃない。見えないって」

アンナ「え、じゃあ家に入ることは…」

ラミエ先生「それはできるわ。安心して」

アンナ「ほっ…」

スカーレット「じゃあ早く入りましょう!」

ラミエ先生「…はいはい」

 

ガチャ…ギィィィィィィィ…

ラミエ先生はドアノブに手をかけ、魔女さんの家に入った。

 

オード「え!?消えたぞ!?」

ノーラ「え、なんで?」

メリー「あの人はドアノブに触ることができたから入れるのよ。それで、こっちから見たらその人は消えたようになっている。でも実際私の目にはただドアを開けて入っていく様子が見えてるわ。私もドアノブに触ったからね」

スカーレット「じゃあ私たちもドアノブに触れば!」

メリー「あ、難しいですよ」

スカーレット「え?」

メリー「私がドアノブに触るので、1人ずつそこに手を置いてください。ではいきますよ」

 

スッ…

メリーは魔女さんの家のドアノブに触れた。

 

メリー「さ、1人ずつここに手を置いて。ここにドアノブがあるから」

スカーレット「じゃ、じゃあ私から!」

 

最初はスカーレットが触る。

 

メリー「ここね」

スカーレット「はい!」

 

スッ…

スカーレットはメリーと同じところに手を置いた。

 

スカーレット「!」

 

スカーレットは何かの感触を感じた。

 

オード「どうした委員長」

アンナ「スカーレット?」

スカーレット「…確かにここにある。ここにドアノブがある!」

メリー「じゃあその状態で上を見上げてみて」

スカーレット「!?」

 

スカーレットの目には、さっきまでそこに無かったはずの家が見えていた。

 

スカーレット「え…なにこれ…」

メリー「これがリールちゃんの家よ」

スカーレット「す…すごい…見えてる!」

オード「つ、次は俺だ!」

アンナ「わ、私も!」

メリー「はいはい」

 

こうしてオードたちも同じようにドアノブに触れた。

 

オード「すげぇ!見える!」

アンナ「わ…ほんとにここにあったんだ…」

ディア「不思議なもんだな」

ノーラ「確かに…」

ラミエ先生「あなたたち、まだ見えてないの?」

メリー「あ、もう大丈夫よ」

ラミエ先生「そ、じゃあ入りなさい」

スカーレットたち「お邪魔します!」

 

スカーレットたちは魔女さんの家に入った。

 

 

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場所…魔女さんの家 リビング

 

スカーレット「こ…ここがリールの…」

アンナ「元々住んでた家…」

オード「なんだ…この空気…」

ディア「あ、オードも何か感じるか?」

オード「あぁ」

ノーラ「俺も感じる。何だか自分の魔力が上がった気分だ」

メリー「そりゃあここは魔女さんの家だからね。外や他の場所よりもマナの純度が高いのよ」

オード「魔女さん?確かリールのお師匠様の…」

メリー「そうよ。あの人の家だからね」

スカーレット「確かリールのお師匠様はすごい人だと言ってたわね…」

アンナ「あ、そうそう!確か箒とか杖とかも他のと全然違ってたよね!」

メリー「!」

スカーレット「あれは確かに一級品よ…あんなの初めて見たわ」

ラミエ先生「リール!部屋にいるんでしょ?降りてきなさい!」

アンナ「え!?リール!?」

スカーレット「リールがここにいるの!?」

ラミエ先生「いるわよ。でなきゃあなたたちをここに連れてくることはなかったわ」

スカーレット「リール!早く降りてきて!」

アンナ「リール!」

 

 

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場所…リールの部屋

 

ラミエ先生「リール!部屋にいるんでしょ?降りてきなさい!」

リール (あれ…ラミエ先生の声…忘れ物なのかな…)

スカーレット「リール!早く起きてきて!」

リール (あれ…スカーレットの声だ…)

アンナ「リール!」

リール (あれ…今度はアンナの…)

 

ガバッ!

リールはその声に反応して飛び起きた。

 

リール「スカーレット…アンナ…」

 

タッタッタッ!

リールはベッドから飛び起きて部屋を出た。

 

 

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場所…魔女さんの家 リビング

 

ドタドタドタ!

階段から音が聞こえてきた。

 

ラミエ先生「…来たみたいね」

リール「スカーレット!アンナ!」

スカーレット「リール!」

アンナ「リール!」

 

リールはスカーレットとアンナを見るやいなや2人のところまで走った。

 

リール「スカーレット!アンナ!」

 

ギュッ!

リールはスカーレットとアンナに飛びついた。

 

リール「スカーレット…アンナ…」

スカーレット「良かったわ。あなたが元気で」

アンナ「良かった…ほんとに良かった…」

ラミエ先生「…あなたたちはいいの?」

 

ラミエ先生はオードたちを見ながらそう言った。

 

オード「えっと…」

ディア「俺たちはいいです…」

ラミエ先生「何でよ」

ノーラ「今は委員長とアンナの方がいいと思ったからです」

メリー「とかなんとか言ってぇ。ほんとは君たちも抱きつきたいけど恥ずかしいか相手が女性だから躊躇してるんでしょ?」

オード「!」

ディア「!」

ノーラ「!」

 

3人は図星だった。

 

メリー「あ〜やっぱり〜」

ラミエ先生「全く…そんなんじゃ好きな女の子が誰かに取られちゃうわよ」

オード「うっ…」

ディア「ごもっとも…」

ノーラ「はい…」

メリー「でも仕方ないね。男の子だもん」

オード「そこまで分かってるなら掘り下げないで欲しかったです…」

メリー「あっははは!ごめんね!」

リール「うぅ…スカーレット…アンナ…」

アンナ「あはは…リール泣いちゃってる」

スカーレット「ほんと子どもね…全く」

ラミエ先生「…さて」

スカーレット「!」

ラミエ先生「リール」

リール「…はい。何ですか?」

 

リールは涙を流しながら答えた。

 

ラミエ先生「今からご飯作るわ」

リール「…え?」

ラミエ先生「せっかくここまで来たんだから一緒にご飯食べましょ」

オード「え…いいんですか?先生」

ラミエ先生「いいわよ別に。ただし、変なことはしないように」

オード「しませんよ…」

リール「スカーレットとアンナと一緒にご飯食べてもいいんですか?」

ラミエ先生「いいわよ」

リール「やったぁ!」

 

リールは一瞬で笑顔になった。

 

ラミエ先生「さ、支度しましょうか。メリー」

メリー「何?」

ラミエ先生「手伝って」

メリー「任せて。あ、男子諸君はそのまま座っててね」

オード「は、はい」

ディア「はい」

ノーラ「はい」

リール「スカーレット!アンナ!やった!一緒にご飯食べられますよ!」

スカーレット「はいはい。分かったから」

アンナ「やったねリール!」

オード「…」

 

オードは喜んでいるリールの顔を見た。

 

ディア「オード?どうしたよ」

オード「…何がだ」

ノーラ「ほんとだぜ、お前…顔がニヤけてるぞ?」

 

オードはリールの笑顔を見てニヤけていた。

どうやら抑えてた感情が少し漏れたらしい。

 

オード「な…いや…なんでもない…」

 

オードは恥ずかしさのあまり顔を隠した。

 

ディア「にしてもよかったなオード」ヒソヒソ

オード「え?」ヒソヒソ

ノーラ「リールと同じ屋根の下で寝ることになるんだぜ?」ヒソヒソ

オード「!!」

ディア「ちゃんと体洗っとけよ?」ヒソヒソ

ノーラ「匂いを全部落とすくらいにな」ヒソヒソ

オード「う、うるせぇ!」ヒソヒソ

 

その後、ラミエ先生とメリーが作った夕食をみんなで囲んで食べることにした。

 

 

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場所…魔女さんの家 玄関前

 

オード「…」

 

オードは外に出て夜空を見上げていた。

夜空には沢山の星が輝いていており、綺麗だった。

風も少し吹いており、涼しい風がオードの頬を撫でる。

 

オード「…涼しいな。今日は」

リール「オード君?」

オード「!」

 

リールが家から出てきた。

 

オード「リール…部屋に戻らないと2人が心配するぞ」

リール「大丈夫ですよ。ちゃんと言ってきましたから」

オード「…そうか」

リール「…」

 

2人はしばらく空を見上げていた。

 

リール「…あの…オード君」

オード「…なんだ?」

リール「…怪我の方は大丈夫ですか?」

オード「大丈夫だ。みんな治ってる」

リール「そうですか。それは良かったです」

オード「…」

 

2人の間に数分間沈黙が訪れた。

 

オード「…なぁリール」

リール「何ですか?」

オード「…ここが…この家がお前の育った家か?」

リール「はい。私の大事なお師匠様のお家ですよ」

オード「…そうか」

リール「…」

 

またまた数分の沈黙が訪れた。

 

リール「あの…オード君」

オード「なんだ?」

リール「…スカーレットとアンナから聞きました。オード君、私の家を探すために必死になって箒で空を飛んでたそうですね」

オード「!!」

リール「…私、その話を聞いて心が温かくなりました」

オード「…///」

リール「私のためにここまで必死になってくれるのは、魔女さんやスカーレット、アンナ以外にはオード君だけですよ」

オード「そ、そうか…」

リール「…ありがとうございます」

オード「いや、いい。男として当然だ」

リール「ふふっ…オード君は強い人ですね」

オード「強い?」

リール「はい。あの時からずっと思ってましたよ。私とオード君が初めて戦ったあの日から」

オード「あぁ、あの…何だっけ?クラスの連中同士の魔法の戦いの…」

リール「そう。あの日からです」

オード「そ、そうか…それは嬉しいことだな」

リール「あの日、オード君は私を逃がそうとあの人の前に立ってくれました。私を守るように」

オード「…」

リール「その他にも先日ここに来たあの怖い人たちに会った時もオード君は戦ってくれました。理由はなんであれ、人のために率先して動けるオード君は強い男の子ですよ」

オード「…そうか」

リール「私は、そんな強いあなたと友達になれてとても嬉しいですよ」

オード (友達…か…)

 

オードはその言葉に少し引っかかった。

 

オード「…俺は」

リール「?」

オード「リールは…優しい女性だと思ってる」

リール「!」

オード「委員長やアンナのために必死になったり、俺が怪我をした時だって俺が目を覚ますまでずっとそばにいてくれた。今回の件だってみんなの怪我が治ったことを知ってから泣いてただろ」

リール「そ、そうですね…お恥ずかしいところをお見せしてしまいました…」

オード「いや、その涙は優しさの涙だ」

リール「!!」

オード「人を心配し、人を思いやり、人を喜び、人を悲しむ。これは全てリールの優しさから来る行動だ」

リール「…」

オード「俺は、そんな優しいリールの友達になれてとても嬉しいと思ってる」

リール「あ、えと…その…」

オード「?」

リール「嬉しいですね…こうやって直接褒めてくれるのは…少し照れます」

オード「いや、まぁ…」

リール「ありがとうございますオード君。元気出ました」

オード「そ、そうか…」

リール「はい。あなたの言葉が心に響きました。あなたのおかげでまたひとつ、心が温まりましたよ」

オード「そうか。それは良かった」

リール「…」

 

ギュッ…

 

オード「!?」

リール「…どうですか?私の手、暖かいですか?」

 

リールはオードの手を優しく握った。

 

オード「お、おいリール…これは…」

リール「どうですか?」

 

リールはオードの顔を見て質問した。

 

オード「いや、その…」

リール「…」

 

リールはじっとオードの顔を見る。

 

オード「あ…暖かい…です…」

リール「ふふっ…それは良かったです」

 

スタスタスタ

リールはオードの手を離し、玄関に向かった。

 

リール「さ、オード君。ずっと外にいると風邪引きますよ。一緒に家の中で暖まりましょう」

オード「…」

 

オードはリールが握った手を見ていた。

 

リール「オード君?」

オード「え、な、なんだ」

リール「早くお家に入りましょう。風邪引きますよ」

オード「そ、そうだな…風邪…引くかもしれないからな」

リール「はい!」

 

オードとリールは2人で家に戻った。




〜物語メモ〜

オード、ディア、ノーラはリールが部屋から降りてきた時、実はスカーレットとアンナの様にワイワイしたかったが、じっと我慢していた。
理由は、相手がリールだったからなのとラミエ先生とメリーがいたから。
もしラミエ先生とメリーがいなかったら、スカーレットとアンナと一緒にワイワイしていた。
でもラミエ先生とメリーがいたお陰で変なことせずに済んだ。
その点に関しては2人がいて良かったと思っている。


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第35話 リールと無属性魔法の魔導書

ここでちょっとお知らせです。

2月14日から私情であまり投稿できなくなりますので、ご了承ください。

お知らせは以上です。


私の名前はリール。

昨日、スカーレットたちが家に遊びに来てくれました。

みんな怪我も治って元気そうでとても嬉しかったです!

数日ぶりに会ったみんなの顔は何故か新鮮味を帯びていました。

その後はみんなとお話したり、一緒にご飯食べたりしました。

ラミエ先生やメリーさんも一緒にご飯食べて昨日はとても賑やかな晩御飯となりました。

今日はスカーレットたちが私のことを聞きたいそうなんですけど、自分のことを話すのはちょっと恥ずかしいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…リビング

 

アンナ「ねぇリール」

リール「はい。何ですか?」

アンナ「あの…その…」

リール「?」

アンナ「リ…リールの…」

リール「私の何ですか?」

アンナ「あの…リールの部屋…とか生活を…知りたいなって…」

オード「!!」

リール「私の生活…ですか?」

アンナ「うん…」

リール「えっと…何故でしょうか」

アンナ「その…リールって学校に来てから色々凄かったから…その…」

リール「?」

アンナ「どんな部屋でどんな勉強してたのかなって…その…気になって…」

リール「あーなるほど。私の今までの生活が知りたいんですね」

アンナ「うん…あと勉強も…」

リール「いいですよ。お話しましょうか」

オード「!!」

 

オードはその話を聞いていた。

 

リール「そうですねぇ…まず何から話しましょうか」

アンナ「あ、じゃあリールの部屋が見たい…かな」

リール「私の部屋ですか?」

アンナ「うん…」

リール「いいですよ。じゃあ私の部屋行きましょうか」

アンナ「うん!」

スカーレット「あ、じゃあ私も行こうかしら。私も気になるし」

リール「どうぞ!」

 

リール、アンナ、スカーレットはリールの部屋に向かった。

 

オード「リール!」

リール「…? はい。何ですか?」

 

リールは足を止めてオードの方に振り返った。

 

オード「その…」

リール「?」

オード「俺も…行ってもいいか…リールの部屋…」

メリー (お、大胆)

リール「いいですよ」

オード「!!」

リール「オード君も気になると思うので、来ていただいても構いませんよ」

オード (しゃあああああああ!)

 

オードは心の中で叫んだ。

 

ディア (おいおい…)

ノーラ (あからさまに喜んだな…こいつ…)

オード「よしっ!ディア!ノーラ!お前らも行くぞ!」

ディア「え?」

ノーラ「なんで俺たちも…」

オード「俺一人は流石にちょっとな…だから…」

ディア「…はぁ、分かったよ」

ノーラ「ったく…ヘタレなやつ…」

オード「すまねぇ…」

リール「ではみなさんで行きましょうか」

アンナ「うん!」

 

スタスタスタ

6人はリールの部屋に向かった。

 

メリー「…ねぇラミエ」

ラミエ先生「何?」

メリー「ふふっ…」

ラミエ先生「…何よ気持ち悪いわね…」

メリー「いやぁ…青春だな〜って思って」

ラミエ先生「はぁ…あなたって人は…」

メリー「ふふふ…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…リールの部屋

 

ガチャ…

リールは部屋のドアを開けた。

 

リール「さ、ここが私の部屋ですよ」

アンナ、オード「おおおおお!」

スカーレット「綺麗な部屋ね」

ディア、ノーラ (ここがリールの部屋…)ゴクリ

リール「これが私の机でこれが私のベッドです」

 

リールは先に机とベッドを紹介した。

 

リール「私がここに住んでた時は魔女さんから頂いた魔導書をこの机に広げて勉強していました。ちょうどここに私がその時メモしたノートがあるんですが誰か見ますか?」

アンナ、オード「見る!」

 

アンナとオードが真っ先に手を挙げた。

 

リール「はい。どうぞ」

 

リールはアンナとオードに1冊ずつノートを渡した。

 

リール「そしてこの机の横に窓があります。ここから綺麗な景色が見えますし、昼なら陽の光が、夜なら月明かりが差し込むので私のお気に入りなんです」

スカーレット「この環境…いいわね」

リール「ですよね!ですよね!」

 

リールは共感してくれて嬉しそうだった。

 

リール「あ、それで今この窓は閉まってるんですが、開けると鳥が入ってきて良い保養になりますね」

スカーレット「なるほど…」

リール「そしてベッドのこちら側には本棚があります。今私はこの家に住んでいますので、学校に持っていった分と今までここで勉強していた分の書物が入っています」

スカーレット「す、すごい…こんなにたくさん…」

 

リールの本棚は四段構造になっており、そのうち一段が学校の教科書でもう一段がリールがこれまで勉強してきたノートが置かれている。そしてそれ以外の二段は全て魔女さんの家で勉強するために魔女さんから貰った魔導書である。

 

リール「一段目が学校の教科書とかで、二段目が私のノートで、残りの段は全て魔女さんから頂いた魔導書になります」

スカーレット「ちょっと見せてもらってもいいかしら」

リール「はい。構いませんよ。スカーレットは雷属性魔法に適性があるのでこの書物をどうぞ」

 

スカーレットはリールから雷属性魔法の魔導書を受け取った。

 

スカーレット「ねぇリール」

リール「はい。何ですか?」

スカーレット「この魔導書…少し黄色くなってるのは何でかしら」

 

スカーレットがリールから受け取った魔導書は少し黄色がかっていた。

スカーレットはこの色の魔導書は見たことがないため、管理不足かと思っていた。

 

リール「あ、それは各属性魔法で色が入ってるんですよ」

スカーレット「各属性で…色?」

リール「はい。普通の魔導書だと見分けが難しいので、一目見てこの属性だと分かるように作られているんです」

スカーレット「え、でもこんな色の魔導書見たことないわよ…」

リール「元々魔女さんの魔導書でしたから、魔女さんが手を加えたのかもしれませんね」

スカーレット「あーなるほどね」

 

パラパラ…

スカーレットはリールから受け取った魔導書を読み始めた。

 

リール「ディア君とノーラ君も読んでみますか?」

ディア「え?」

ノーラ「俺たちも?」

リール「はい」

ディア、ノーラ「…」

 

ディアとノーラは互いの顔を見て結論を出した。

 

ディア「…じゃあ頼む」

ノーラ「俺も見たい…かな」

リール「分かりました。お二人はどの属性魔法ですか?」

ディア「俺は火属性魔法だ」

リール「えーっと火属性魔法は…あ!これですね」

 

リールは少し赤みがかった魔導書を取り出した。

 

リール「はい。これが火属性魔法の魔導書になります」

ディア「おぉ…」

 

ディアはリールから魔導書を受け取った。

 

ノーラ「あ、この魔導書も少し赤くなってる。これもさっき言ってたやつ?」

リール「はい。火属性魔法の魔導書は少し赤みがかってるんです」

ノーラ「なるほど…これは分かりやすい…」

リール「ノーラ君の属性魔法は何ですか?」

ノーラ「あ、俺は水属性魔法だ」

リール「分かりました。水属性魔法はこれですね」

 

ノーラはリールから魔導書を受け取った。

 

ノーラ「お、この魔導書は青みがかってる」

リール「ですね」

ノーラ「読んでもいいか?」

リール「はい。どうぞ」

 

パラパラ…

ディアとノーラは受け取った魔導書を読み始めた。

 

リール (あ、本棚整理しないと)

 

リールは本を取り出して空きができたスペースに本を詰めた。

 

リール (これでよし)

スカーレット「ねぇリール」

リール「はい。何ですか?」

スカーレット「この魔法なんだけど…」

 

スカーレットが魔導書を持って指さした。

 

スカーレット「この魔法って誰でも使えるの?」

 

スカーレットが見せてきた魔法は体に電気を纏わせて特定の場所を高速移動する魔法だった。

 

リール「雷属性魔法に適性がある人なら使えますよ」

スカーレット「そ、そうなのね…」

リール「ですが、この魔法は慣れるまで少し時間がかかりますよ。移動するスピードに自分が慣れないといけませんから要練習ですね」

スカーレット「なるほどね。ありがとう」

リール「はい」

アンナ「リールリール!」

リール「はい。何ですか?」

アンナ「これ!これ!」

 

アンナはリールのメモしたノートを見せてきた。

 

アンナ「この水属性魔法のメモってリールが書いたんだよね!?」

リール「はい。そうですよ」

アンナ「凄い字が綺麗だし、考察も的を射てる…私このノートを見て初めて水属性魔法の欠点とかその対処法分かったかも!」

リール「そうですか。力になれて良かったです」

アンナ「あれ…でもリールって光属性魔法の適性だよね?」

リール「はい。そうですよ」

アンナ「でもここに書かれてるものって全部現実味がある気がする…」

リール「現実味?」

オード「あ、俺もそう思う」

アンナ「オード君も?」

オード「あぁ。こんなに細かく魔法の事や弱点とか対処法とかを記せるなんてな…この火属性魔法のやつだってそうだ。俺でも知らないことを具体的に書いてある…これってどういう…」

アンナ「リールって火とか水の魔法って使えないはずだよね?」

リール「はい。使えませんよ」

アンナ「じゃあなんで…」

リール「まぁ、魔女さんは全属性魔法に適性がありますから」

アンナ「…あ!」

 

アンナはここで察した。

 

リール「なので魔女さんが最初から全部魔法を見せてくれたんです。各属性魔法の弱点やその対処法とかも一緒に」

アンナ「なるほど!すごい!」

オード「す…すげぇな…リールのお師匠さんって…」

リール「私の自慢のお師匠様ですよ」

スカーレット「確かにこれなら頭に残るわ…」

アンナ「スカーレット?」

スカーレット「この魔導書…一度見ただけなのにすごく頭に入るの…この魔導書の知識が私の中に吸い込まれていく感じよ…」

 

スカーレットは魔導書を抱いて身体を震わせながらそう言った。

 

ディア「オード…」

オード「ん?」

ディア「俺たちも委員長の意見に同感だ…」

オード「え!?ちょ、え!?どうしたお前ら!」

 

ディアとノーラはスカーレットと同じように魔導書を抱いて体を震わせていた。

 

ディア「この魔導書すげぇよ…バカな俺でもすげぇ頭に入る…もうこれ無しじゃ生きてけねぇよ…」

ノーラ「俺もだオード…俺もこの魔導書見て頭が掻き回されてるぜ…」

オード「ちょ、え!?大丈夫かお前ら!」

リール「すごいですよねその魔導書。私も同じように魔導書を見ただけで頭に入ってきたんですよ。あの時は驚きましたね」

オード (リールも!?)

リール「私はこの魔導書を見て今まで勉強してきましたので、ある程度の知識はありますよ」

スカーレット「なるほど…」

リール「でも分かるのはその魔導書に書かれていることだけですので、それ以外のことはよく分かりません」

アンナ「でもこのノートほんとに凄い…私もこれくらいになれたら…」

リール「アンナならなれますよ。きっと」

アンナ「そ、そうかな…」

スカーレット「ねぇリール」

リール「はい。なんですか?」

スカーレット「この一番下の段にある魔導書って何?」

リール「あ、これ全部無属性魔法の魔導書なんですよ」

スカーレット「え!?これ全部!?」

リール「はい。全部です」

 

リールの本棚は1番上に教科書等が置いており、二段目にリールのノート、三段目に各属性魔法の魔導書、そして一番下(四段目)に無属性魔法の魔導書が置かれている。

それぞれ教科書が9冊、リールのノートが12冊、各属性魔法の魔導書が8冊、無属性魔法の魔導書が9冊が置かれている。

 

スカーレット「え、無属性魔法の魔導書ってこんなにあるの…」

リール「はい。無属性魔法は属性魔法に属さない全ての魔法のことですのでこれくらいになりますよ」

スカーレット「属性魔法に属さない全ての魔法?」

リール「はい。例えばこれは…」

 

リールは一番左の魔導書を手に取った。

その魔導書は各属性魔法の魔導書と同じように少し色が着いていた。

今回リールが手に取った魔導書は薄めの緑色の魔導書だった。

 

リール「この薄い緑色の魔導書は回復魔法の魔導書になります」

スカーレット「回復魔法!?」

リール「はい。この魔導書には全ての回復魔法が記載されています」

スカーレット「す、すごいわね…」

リール「他にもありますよ。例えばこの魔導書は…」

 

リールは回復魔法の魔導書を戻し、次にその隣の薄い銀色の魔導書を手に取った。

 

リール「ほら、この魔導書は少し銀色が入ってるんですよ」

スカーレット「確かに…」

アンナ「どんな魔法なの?」

リール「これはテレポーテーションという移動系の魔法が記載されてる魔導書になります」

スカーレット「い、移動系の魔導書…初めて見た…」

リール「これを読んで勉強すれば箒に乗らなくても魔法さえ使えば一瞬で目的の場所に行くことができますよ」

オード「便利だな」

リール「はい!」

ディア「ほ、他には!他にはどんな魔導書があるんだ!?」

リール「そうですね…例えばこれは…」

 

リールは移動魔法の魔導書を戻し、その隣の薄い紫色の魔導書を手に取った。

 

リール「この魔導書は少し紫色になってますよね。これは毒に関する魔法が記載されてる魔導書なんですよ」

アンナ「毒!?」

リール「はい。毒はどの属性魔法にも属していないので無属性魔法という扱いになります」

オード「初めて聞いたぞ…毒属性魔法なんて…」

ノーラ「俺もだ…」

リール「この魔法は杖が必要ない魔法で唱えたら即座に効果が現れる魔法なんですよ」

アンナ「でも毒は怖い…」

リール「大丈夫ですよアンナ。この魔導書には毒だけでなく、色んな解毒薬の情報も載っていますよ」

アンナ「薬?」

リール「はい」

スカーレット「それは回復魔法の魔導書に無いの?」

リール「あ、回復魔法の魔導書は回復魔法魔法だけで、こちらは実際の薬草とかを調合するための魔導書になります」

オード「あ、じゃあ魔力が切れてもその魔導書の知識があればその場で薬草を作れるって訳だな」

リール「そうですオード君!そういう事です!」

オード「…」

 

オードは勝ち誇ったかのように右腕を掲げ、天を仰いだ。

 

リール「そして次はこれですね」

 

リールは毒属性魔法の魔導書を戻してその隣の深い青色の魔導書を取り出した。

 

リール「これさっきノーラ君に渡した魔導書よりも濃い青色になってますよね」

ノーラ「あ、確かに」

リール「この魔導書はデバフ…つまり、相手の耐性を下げる魔法になります」

オード「相手の耐性?」

リール「はい。本来各属性魔法に適性がある人って決まった属性魔法の効果を薄める特性を持っています。例えばオード君は火属性魔法なので風属性魔法の効果を薄める特性があります。ですが、このデバフの魔導書に書かれている魔法を使うことで、風属性魔法に対する耐性を下げて普段通りのダメージで攻撃できるようにするということです」

オード「なるほど」

スカーレット「便利な魔法ね」

リール「はい!」

アンナ「その隣にある黄色の魔導書って何?」

リール「これですか?これは…」

 

リールはデバフ魔法の魔導書を戻して、その隣にある薄い黄色の魔導書を取り出した。

 

リール「これはさっきの耐性を下げる魔法とは逆の効果を持つバフという魔法が書かれた魔導書になります」

アンナ「バフ?」

リール「はい。この魔導書には自分の魔法に対する耐性を上げる魔法が書かれています。これを使えばアンナなら雷属性魔法を受けてもダメージを抑えられます」

アンナ「へぇ!」

リール「他にもさっきの魔導書にもあるんですが、こっちの魔導書には自身の魔法攻撃力を上昇させたり、箒の飛ぶ速度とかも上昇させる魔法が書かれています。さっきの魔導書には相手の魔法攻撃力を下げる魔法や箒の飛ぶ速度を遅くする魔法が書かれています」

オード「じゃあその魔導書の内容を覚えてたら無敵じゃん!」

リール「そうそう!だからオード君の魔法があまり私に効果がなかったんですよ」

オード「うっ…頭が…」

リール「そして6冊目。これは…」

 

リールはバフ魔法の魔導書を戻し、その隣にある魔導書を手に取った。

 

リール「これは、少し本にヒビが入ってるのが見えますか?」

 

みんなはリールが指さした所を見た。

 

アンナ「確かに…」

スカーレット「ヒビが入ってるわね…」

ディア「壊れてるのか?」

リール「いいえ、違いますよ。これもその魔法の象徴となるものなんですよ」

ノーラ「なんの魔法なんだ?」

リール「これは、あらゆるものを破壊する魔法になります」

ディア「あらゆるものを破壊!?」

リール「はい。破壊します」

 

その場のリール以外の全員が驚いていた。

 

アンナ「え…破壊…」

スカーレット「す…すごい魔法ね…」

リール「はい!この魔導書には物体や実体のないものを破壊する魔法が書かれています。なので、瓶を割ったり、地面を割ったりできますよ!」

オード「す、すげぇな…」

ノーラ「お…おっかねぇ…」

リール「そして次はこれです!」

 

リールは破壊魔法の魔導書を戻し、その隣にある魔導書を手に取った。

 

リール「ほら見てください!この魔導書、全体的に見たら虹色に見えませんか?」

 

リールが手にした魔導書は少し虹色がかかった魔導書だった。

 

リール「この魔導書には幻視…つまり、幻覚を見せる魔法が書かれています」

スカーレット「幻覚…」

リール「はい!」

オード「じゃあこれを使えば相手は幻覚を見てこっちは攻撃し放題になるって訳だな」

リール「そうです!他にも自身の考えている風景を相手に見せて相手の考えてることや行動を制限できます!」

スカーレット「す、すごいわね…」

アンナ「うん…無属性魔法って弱いと思ってたけど…」

ノーラ「こうして聞くと1番強く感じるな…」

ディア「同感だ」

リール「そしてこの隣にある魔導書は…」

 

リールは幻覚魔法の魔導書を戻し、その隣の魔導書を手に取った。

その魔導書は薄いピンク色が入っていた。

 

リール「この魔導書はピンク色が見えると思うんですが、これが相手を支配する魔法が書かれた魔導書になります」

アンナ「相手を支配?」

リール「はい。相手を思い通りに動かすことが出来る魔法です」

オード (リールを…思い通りに…)

 

オードはよからぬ事を考えていた。

 

リール「この魔導書を読めば相手の行動を自分で指示できます!その名の通り、相手を支配しますので!」

アンナ「す、すごい…」

スカーレット「相手を支配ってことは自分を攻撃させることもできるの?」

リール「できますよ」

スカーレット「なるほど…それはすごいわね…」

リール「はい!そしてこれが最後の魔導書ですね」

 

リールは支配魔法の魔導書を戻し、最後の魔導書を取り出した。

 

ジャラッ…

その魔導書は鎖で縛られていた。

 

リール「これが最後の魔導書になりますね」

アンナ「え、鎖で縛られてる…」

オード「分かった!それは相手を縛る魔法だな!それを使えばどんな相手でも拘束できて行動を制限できる魔法だろ!」

リール「違いますよ」

オード「…」ズゥン…

 

オードは答えを外して落ち込んだ。

 

リール「この魔導書には次元を歪ませる魔法が書かれています」

アンナ「次元を歪ませる?」

リール「はい」

スカーレット「初めて聞いたわその魔法…どういった魔法なのかしら」

リール「これは、さっきも言ったように次元を歪ませることができる魔法が書かれた魔導書で、ここに書かれている魔法を使うことで相手の魔法の軌道を逸らせて自分に当たらないようにできます」

アンナ「へぇ!」

スカーレット「それって光属性魔法とか雷属性魔法みたいに速い魔法でも当たらないようにできるの?」

リール「はい。できますよ。空中を飛んで来る魔法全ての次元を歪ませることができます。ただし、空中を飛ばずに直接相手に効果がある魔法は防ぐことができません」

スカーレット「なるほどね…」

リール「ただしただし!」

スカーレット (ただしただし…?)

リール「直接相手に効果がある魔法は防げないと言いましたが!別の方法で防ぐことが可能です!その魔法がこの魔導書に書かれています!」

アンナ「へぇ!」

リール「その魔法を使えば自分の体を幻影状態にしてどんな魔法でも全て透過させることができます!」

オード「透過?」

リール「つまり、どんな魔法も効かなくなるってことです!オード君が言ってた無敵の魔法ですね!」

オード「すげええええええ!」

スカーレット「いやほんとにすごいわね…」

アンナ「確かに…無属性魔法ってこんなにすごいんだ…」

ノーラ「それ以外に無属性魔法って存在するのか?」

リール「一応物体浮遊の魔法とかはありますが、それは教科書とかに全部書かれていますよ。この魔導書にはあくまで実戦で使う魔法のみ書かれています」

ディア「いや、にしてもすげぇな…」

オード「ほんとだぜ…これさえ使えるようになれば俺たち無敵の魔法使いになれるぞ…」

全員「…」ゴクリ…

 

全員生唾を飲んだ。

 

全員「リール!」

リール「は、はい!何ですか!」

 

リールは突然みんなが言い寄ってきて驚いた。

 

スカーレット、アンナ「私たちに魔法教えて!」

オード、ディア、ノーラ「俺たちに魔法教えてくれ!」

リール「え、あ、えと…その…」

 

リールはみんなに迫られて心臓の鼓動が速くなっていた。

 

リール「は、はい…私でよければ…」

全員「いよっしゃあああああ!」

リール「はぁ…はぁ…」

 

リールは初めてのことでドキドキしていた。

 

リール (あぁぁ…びっくりしました…)

 

そしてみんなはリールに魔法を教えてもらうことになった。




〜物語メモ〜

リールの本棚にある無属性魔法の魔導書
リールの本棚には、魔女さんから貰った魔導書が置かれている。
その中で無属性魔法は全部で9つ置いてある。

無属性魔法
回復魔法の魔導書(色は薄い緑色)
あらゆる傷を治す魔法が書かれている魔導書で、魔法の強さによって治せる傷が変わってくる。
当然レベルの高い回復魔法を習得すれば、あらゆる傷を治すことが可能で、レベルが低くてもある程度の傷を癒すことができる。
回復魔法の魔導書を書いたのはラミエ先生。

移動魔法の魔導書(色は銀色)
目的地まで一瞬に移動ができる魔法が書かれている魔導書。
箒がない時に使うことで容易に移動が可能。
その上、箒よりも移動が速く魔力の消費も少ないため、覚えているだけで色々と節約できる。
それでもこの世界の人の移動手段が箒なのは、スカーレットたちと同じように無属性魔法=弱いという概念があり、誰も覚えようとしなかったから。

毒属性魔法の魔導書(色は薄い紫色)
あらゆる毒に関する魔法が書かれている魔導書。
弱いものから強力なものまで全て記載されており、毒の解除方法も一緒に載っている非常に便利な魔導書。
これは属性魔法に分類されてないにも関わらず、名前に属性魔法とついている異例な魔法。
ただし、毒属性魔法は自分以外の人に効果があるため、敵味方関係なしに効果が現れる。

減弱魔法の魔導書(色は濃い青色)
相手の魔法攻撃力を下げたり飛行速度を遅くするなど、相手にとって不都合な効果を与える魔法が書かれている魔導書。
他にも各属性魔法に対する耐性を下げる魔法も記載されており、これと併用することで効率よく相手にダメージを与えられる。
使うことによる代償も無いため、非常に強力な魔法。
これも無属性魔法=弱いという概念があり、誰も手をつけなかったため、存在が薄い魔法。

増強魔法の魔導書(色は薄い黄色)
自身の魔法攻撃力を上げたり飛行速度を速くするなど、自分にとって好都合な効果を与える魔法が書かれている魔導書。
他にも各属性魔法に対する耐性を上げる魔法も記載されており、これと併用することでダメージを軽減することができる。
使うことによる代償も無いため、非常に強力な魔法。
これも無属性魔法=弱いという概念があり、誰も手をつけなかったため、存在が薄い魔法。

破壊魔法の魔導書(色は無いが、ヒビが入っている)
あらゆるものを破壊する魔法が書かれている魔導書。
この魔導書には、物体だけでなく、実体のないものを破壊する魔法も記載されており、どんなものでも簡単に破壊できるようになる。
これは、相手の結界や自身にかかっているデバフ効果も破壊することができ、実質ほぼデバフ効果は意味を成さなくなる。
魔力を込める強さで破壊できる物が変わるのと、相手に直接破壊の効果を与えることができるのが特徴。

幻覚魔法の魔導書(色は虹色)
相手に幻覚を見せることで錯乱や行動制限をかける魔法が書かれている魔導書。
これは毒属性魔法とは違って任意の相手に与えることが可能で、この魔導書を読まないと解除の仕方や対処法も分からない。
一度発動すれば自身で解除するか、相手が解除しない限り効果は続く。
戦闘が終わったとしても解除されるまで幻覚魔法は続く。

支配魔法の魔導書(色はピンク色)
相手を支配し、自分の思い通りの行動をさせることができる魔法が書かれている魔導書。
対処法を知らない限り絶対受けてしまう魔法で、効果は自身で解除するか、相手が魔法を解除するまで続く。
代償は無く、自身を攻撃させるように指示すれば、相手はその指示に従って自身を攻撃し始める。

次元魔法の魔導書(色は無いが、鎖で縛られている)
あらゆる魔法の軌道を逸らせることができる魔法が書かれている魔導書。
相手の魔法攻撃を任意の方向に逸らせることで、ダメージを無効化する。
ただし、相手の魔法を消す訳では無いため、逸れた魔法はどこかに当たる。
おまけに、飛ぶ魔法以外の魔法(例えば毒属性魔法など)は軌道を逸らすことができないが、自身を幻影状態(実体がない状態)にすることで、魔法の効果を回避することができる。
ただし、実体のないものでも破壊することができる破壊魔法に関しては、この幻影状態を破壊することができるため、いくら次元魔法でも破壊魔法だけは防ぐことができない。


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第36話 リールとブエルタ王国の侵入者

私の名前はリール。

今魔女さんの家にいます。

アンナたちが私の部屋や生活を見たいということで、まず私の部屋を紹介しました。

みんなはその時、私の部屋の本棚にある魔導書やノートを見つけてそれを読んでいました。

その中で私が無属性魔法について説明するとみんなの目が一瞬で輝いて私に無属性魔法を教えてと言ってきました。

私自身あそこまで迫られたことがないので驚きと流れで「はい」と答えてしまいました。

でもみんなと同じ魔法を勉強するなんて初めてなのでちょっと楽しみです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…リールの部屋

 

リール「じゃ、じゃあ次はこちらに行きましょう」

 

リールたちはリールの部屋を出て隣の部屋に向かった。隣の部屋に着くとリールは部屋のドアを開けて部屋に入った。

 

リール「こちらは私の箒や杖、他にも色々な魔道具を置いている部屋になります」

 

スカーレット「おおおお!」

アンナ「おおおお!」

オード「おおおお!」

 

スカーレット、アンナ、オードは物珍しい目でその部屋を見た。

 

オード「すげぇ!」

アンナ「ほんと…色々ある…」

スカーレット「これ…全部本物だわ…」

リール「そりゃあ偽物なんて置きませんよ…」

アンナ「ねぇリール」

リール「はい。何ですか?」

アンナ「これ何?」

 

アンナは机の上に置いてあるドーム状の置物を指さした。

 

リール「あ、これは天気を見るためのものですよ」

アンナ「天気?」

リール「はい。私がここで魔法の勉強をしてた時に使っていたものです。場所を設定すると、今日、明日、明後日の天気が見れます。私はこれを使って外で魔法を使うか、家の中で魔法を使うかを決めていました」

アンナ「すごい…」

オード「なぁリール!これなんだ?」

 

オードは棒状の物を指さした。

 

リール「あ、これはですね。よっと…これは床に刺すことで…」

 

コンッ!

リールはその棒状のものを部屋の床に突き刺した。

 

ブゥン…ピピピ…

突然、その棒から音が出た。

 

オード「うおっ…なんだ?」

リール「これは言わば辺りを照らすものになります」

 

ピカッ!

するとその棒状のものから凄まじい光が出てきた。

 

オード「うわっ!眩しい!」

リール「まぁ仕方ないです。今これは太陽の光を受けて光っているんです。なので本来よりも強い光を放っているんです」

スカーレット「てことは光の量で調整できるってわけ?」

リール「正解です。これは本来夜に使うものなんですが、その時に月明かりを拾って周囲を照らすんです」

スカーレット「なるほど…」

リール「まぁ時々月が見えなくなる時があるので、そうなるとこの棒も光を失います。その時は私の光属性魔法の出番ですね」

スカーレット「面白い魔道具ね」

リール「はい!」

アンナ「じゃあリール!これ何!?」

 

アンナは棚に置いてある計測器を持ってきた。

 

リール「これは自分の魔力を計測するためのものですよ」

アンナ「魔力が分かるの!?」

リール「はい。魔力が分かれば勝てる戦いか負ける戦いかを見極めることができますよ」

アンナ「やりたい!」

リール「分かりました。ちょっと貸してください」

アンナ「はい」

 

アンナはリールに計測器を渡した。

リールは手際よくその計測器をつけた。

 

リール「はい。これで完了です。あとはこちらに魔力を送れば計測できますよ」

アンナ「魔力を送ればいいの?それだけ?」

リール「はい。ただし全力でやってください。中途半端な魔力だと後々自分が困ることになりますよ」

アンナ「分かった!」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

アンナは魔力を溜め始めた。

 

リール「…もう大丈夫ですか?」

アンナ「うん…これくらいが限界…」

リール「ではあとはこれにその魔力を送ってください」

アンナ「…うん」

 

ヒュゥゥゥゥ…

アンナは計測器に自分の魔力を送った。

 

ピピピ!ピピピピピピピピピ!

すると計測器が突然音を鳴らして計測し始めた。

 

リール「これでアンナの魔力が分かりますよ」

 

ピピピ!ピピピ!ピピピ!

計測器が計測した結果を見せてきた。

 

リール「アンナの魔力は245ですね」

アンナ「245…?」

リール「はい。こちらがアンナの魔力になります」

アンナ「245って高いの?」

リール「うーん…参考にはならないと思いますが、魔女さんがこれを使った時はエラーを起こして壊れちゃったんですよ」

アンナ「え!?」

リール「多分魔女さんの魔力が強すぎたんだと思います」

アンナ「す、すごい…」

スカーレット「リールの魔力は?」

リール「魔女さんが壊しちゃって計測できなかったんですよ」

スカーレット「あらそう…」

オード「ならみんなでやろうぜ。これなら大体どれくらいの強さか分かるだろうしな」

スカーレット「そうね。私も実際の魔力を知りたかったのよ」

リール「あ、先に言っておきます」

スカーレット「何?」

リール「この計測器は1000までが限界ですので、それ以上いくと壊れちゃいます。ですが手は抜かないでくださいね」

スカーレット「当たり前よ。さ、やりましょう」

 

こうしてスカーレット、オード、ディア、ノーラの魔力計測が始まった。

 

リール「あ、スカーレットの魔力は332ですね」

スカーレット「332?」

リール「ですね」

スカーレット「うーん…」

アンナ「すごいスカーレット!私よりも高い!」

スカーレット「そ、そうね…」

オード「リール!俺は!?俺は!?」

リール「えーっとオード君は…」

 

リールは計測器を見た。

 

リール「あ、オード君は318ですね」

オード「え!?委員長よりも低い!?」

スカーレット「あらそうなの?」

リール「ですね」

オード「くそったれえええええええ!負けたあああ!」

スカーレット「あらあら…まぁまぁ…ふふふ…」

オード「笑うなぁ!」

ディア「リール。俺たちはどうだ?」

リール「えーっと…ディア君は327ですね」

オード「え!?ディアも俺より高いのか!?」

ディア「ふっふっふっ…俺の勝ちだなオード」

オード「がああああああ!」

ノーラ「リール。俺のはどうだ」

リール「あ、えーっと…わ!すごい!ノーラ君の魔力387ですよ!」

オード「なに!?」

ディア「3…387…」

ノーラ「え、じゃあ1番高いのか?俺」

リール「はい!1番高いですよ!」

ノーラ「しゃああああああああ!」

 

ノーラはガッツポーズを取って大いに喜んだ。

 

オード「があああああ!負けたあああああ!」

ノーラ「あっははははは!俺が1位だあああ!」

ディア「ふざけるなあああああ!」

スカーレット「や…やかましいわね…この人たち…」

アンナ「あはは…」

オード「リール!もう1回だ!もう1回やらせてくれ!」

リール「は、はい…どうぞ…」

 

オードはもう一度魔力を計測した。

 

オード「ど…どうだ…リール…はぁ…はぁ…」

 

オードは目一杯魔力を込めた。

 

リール「えーっと…わ!すごい!オード君さっきよりも高くなってますよ!」

オード「ほんとか!?どれくらいだ!!」

リール「322ですね」

オード「え…322…」

ディア「てことはさっきのと比べて4しか上がってないわけだな」

オード「な…」

ノーラ「まぁ気にすんなってオード。これから頑張れば俺を追い越すくらいできるっての」

オード「うるせえええええ!」

 

オードたちは取っ組み合いをし始めた。

 

リール「あはは…」

アンナ「そういえばリールの魔力は?」

リール「え…私の魔力ですか?」

アンナ「うん」

スカーレット「確かに…気になるわね」

リール「うーん…やってみましょうか」

アンナ「やってみて!」

 

リールは計測器に魔力を込めた。

 

ディア「ん?何やってるんだ?」

スカーレット「リールの魔力を見てるのよ」

ディア「リールの?」

スカーレット「そうよ」

ディア「おーいオード!」

オード「あ?なんだよ」

ディア「リールが自分の魔力を計測してるらしいぜ」

オード「なに!?」

ディア「お前も一緒に見ようぜ」

オード「見る!」

 

オードとノーラもリールの魔力を見ようとした。

 

ピピピ!ピピピ!ピピピ!

計測器がリールの魔力を計測し終えた。

 

リール「ふぅ…」

アンナ「結果は?」

リール「えーっと…」

 

オードたちは聞き耳を立てた。

 

リール「エ…エラー…です」

スカーレット「…え?エラー?」

リール「は、はい…」

 

計測器は数字ではなくErという文字だけが表示されていた。

 

オード「え、じゃあ…」

ノーラ「魔力が…1000よりも高い…」

ディア「ってことか?」

リール「そ…そうなりますね…」

アンナ「すごいリール!魔力が1000もあるなんて!!」

リール「え…えーっと…」

オード「すげぇ…」

ノーラ「じゃあリールが1番高いな!」

リール「そ、そうですね…」

ディア「あれ?オード?」

オード「な、なんだよ」

ディア「こんなに差があるんじゃ足でまといになりそうだな」

オード「うるせぇ!俺はこの中で1番になってやるからな!」

ノーラ「いや…リールより上は難しいんじゃないか?」

オード「やってやる!」

リール「頑張って下さい!オード君!」

オード「!!」

 

オードは突然胸が熱くなった。

 

オード (絶対…勝ってみせる!)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…家の裏

 

リール「さて、こちらがいつもゴミを捨てる場所になります」

 

リールが指さしたのは家の壁だった。

 

スカーレット「え?ただの壁よ?」

アンナ「うん。私もそう見える」

リール「あ、普段は見えないんです。でもここにゴミ袋を置くと魔法が作動して燃やしてくれるんです」

スカーレット「へぇ…すごいわね…」

リール「見てみますか?」

スカーレット「え、見せてくれるの?」

リール「はい。大丈夫ですよ」

スカーレット「じゃあ見せてもらえる?」

オード「俺も見たい!火属性魔法なんだろ?なら俺は絶対見るべきだと思うから!」

リール「はい!ではゴミ袋を持ってきますね」

 

そう言ってリールは家からゴミ袋を持ってきた。

 

リール「では見ててくださいね」

 

ガサッ…

リールはゴミ袋をそこに置いた。

 

リール「ここに置くと魔法が作動して…」

 

ボボッ!

突然火属性魔法が発動してゴミ袋が燃え始めた。

 

アンナ「わ!わわ!燃えた!」

スカーレット「す、すごい…」

オード「ちょ、リール!これ家燃えないか!?大丈夫か!?」

 

ゴミ袋を燃やす火はとても大きく、人間1人分の大きさに相当する。

 

リール「あ、大丈夫ですよ。これはゴミ袋以外は燃やさないので」

オード「ゴミ袋以外は燃やさない?」

リール「はい。見ててくださいね」

 

ゴゥン!

リールが火に手を入れた。

 

オード「お、おい!リール!」

アンナ「手…手が…」

リール「大丈夫ですよ」

 

リールは平気だった。

 

リール「みなさんも触ってみますか?」

アンナ「え?」

 

みんなは少し不安だったが、あまりにもリールが平気そうだったので触ってみることにした。

 

オード「うおっ…ほんとだ…」

スカーレット「全然熱くない…」

ノーラ「すげぇな…全然燃えない…」

ディア「これめっちゃ便利じゃねぇか。これ使えば周りの草とかも燃えないわけだろ?」

スカーレット「しかも燃えるのはゴミ袋だけ」

アンナ「べ、便利…」

リール「私もそう思いますよ。何度も使わせてもらったので」

オード「他にもこういう便利な物ってあるのか?」

リール「そうですねぇ…風属性魔法の人がいればここの草も簡単に掃除できるんですが…」

ノーラ「風属性魔法はここにはいないな…」

リール「あ!じゃあ無属性魔法の浮遊魔法が使えたら動かなくても物を取り寄せたりできますよ!」

ディア「それは誰でもできそうだな」

リール「うーん…他には…」

 

リールは色々と考えたが何も思いつかなかった。

 

オード「ま、まぁ色々ありそうなのは分かった」

リール「あ、でも魔法が無くてもここの生活には不自由してませんよ」

スカーレット「確かに。魔導書あるしマナの純度が高いし魔法を使った便利なものもあるし」

リール「はい!」

アンナ「私…ここに住みたいなぁ…」

スカーレット「あ、私もそう思ってた」

ノーラ「確かに。俺もそれに賛成だわ」

ディア「え?ノーラどうした」

ノーラ「何がだ?」

ディア「いや、ノーラがそんなこと言うなんて」

ノーラ「お前…俺をなんだと思ってるんだよ」

リール「さ、家に戻りましょ!私の生活とかは大体喋りましたので!」

スカーレット「そうね。入りましょうか」

 

スタスタスタ

みんな魔女さんの家に入った。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…ブエルタ王国

 

???「キファ様ー!」

キファ「ん?何?」

 

バン!

部屋の扉が勢いよく開いた。

 

???「キファ様!緊急事態です!」

キファ「何があった」

???「ブエルタ王国の門が下界の人間によって突破されました!」

キファ「何!?」

???「現在私たちが応戦していますがとても歯が立ちません!」

キファ「この国に入れるということはそいつも風属性魔法の適性者か!下界の人間って誰のことだ!」

???「それは…」

 

バゴォォォォォン!

突然キファの部屋の壁が破壊された。

 

キファ「な…なんだ…」

 

キファは壁を破壊した人物を見ていた。

 

エレナ「あらあら…随分脆いのねこの建物は。1発で壊れちゃったわ」

キファ「な…お前は…」

 

そこにいたのはエレナだった。

 

エレナ「ごきげんよう。狂風の使徒 レギン」

キファ「…なぜ俺の名前を」

エレナ「あら、使徒の名前くらい覚えてるわよ?」

キファ (くっ…よりによってこの人か…)

???「キファ様…」

キファ「国民に通達!今すぐ魔風の谷に集合!負傷者を優先に連れていけ!私はここでこの人を食い止める!」

???「ですがキファ様!相手はあのエレナですよ!!キファ様も一緒に…」

キファ「俺が止めねぇと国民が死ぬ!俺が食い止めるから早く行け!」

???「…分かりました。必ず来てください!」

 

タッタッタッ

???は部屋を出た。

 

エレナ「あら、勇敢なのね。あなた」

キファ「国民は財産だ。下界の人間には穢させはしない」

エレナ「あらあら…下界の人間だなんて。私、その程度の人間ではないですよ?」

キファ「…何しに来た」

エレナ「魔核。あなたなら分かりますよね?」

キファ「!!」

 

キファは魔核という言葉を聞いて驚いていた。

 

エレナ「実は魔核が必要になったんですよ」

キファ「…なぜ魔核を知っている。あれは俺たち十二使徒しか知らないはず…」

エレナ「さぁ?何故でしょうね?」

キファ「くっ…」

エレナ「さ、魔核を渡してください。渡せば何もしませんから」

キファ「…信用できんな」

エレナ「何故です?」

キファ「…生憎、俺はこの国の人間と十二使徒しか信用しないからな」

エレナ「はぁ…目的は魔核の回収だけですので、あなたの国にはこれっぽっちも興味無いんですよ」

キファ「はっ…よく言いやがる。俺の兵を怪我させておいて」

エレナ「あの人たちが攻撃してきたからです。あの人たちが攻撃しなかったら私も攻撃しませんでした」

キファ「結果論だろ」

エレナ「いえ、元々そのつもりでしたよ。ですが攻撃された以上こちらが攻撃しないと負けちゃうので仕方なく攻撃しました。正当防衛ですね」

キファ「…」

エレナ「さぁ、魔核を渡してください。これだけです」

キファ「…渡すかよ」

エレナ「…」

キファ「これは俺たちがリノから受け取った大事なものだ。誰にも渡さん」

エレナ「はぁ…早く渡してください」

キファ「断る」

エレナ「…では、力づくで頂きますよ」

キファ「できるもんならやってみな」

エレナ「…そうですか」

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴゴゴ!

エレナは魔力を上昇させた。

 

ビュォォォォォォ!

するとエレナを中心に風が発生した。

 

キファ (くっ…なんという力…)

エレナ「…さて、負ける覚悟はできましたか?狂風の使徒 レギン」

キファ「はっ…お前こそ。俺に負ける覚悟はできたか?」

エレナ「ふふっ…面白いこと言いますね。これからボコボコにされて負けを認めるのはあなたの方ですよ」




〜物語メモ〜

魔力
魔力は純粋にその人の魔法の強さを表す。つまり数値が高ければ高いほど魔法の威力が高い。
1位.リール…Er
2位.ノーラ…387
3位.スカーレット…332
4位.ディア…327
5位.オード…322
6位.アンナ…245

キファ
十二使徒のうちの1人。
風属性魔法の適性者。
ブエルタ王国の統治者で十二使徒と国民と風属性魔法の適性者以外の人物をあまり信用していない。
ブエルタ王国が他の国と比べて標高の高い場所にあるのはそのため。
ブエルタ王国に行くために風属性魔法の適性者が必要なのもそのため。

ブエルタ王国
キファが統治している国。そこは他の国よりも標高が高いところに存在しており、常に風が吹いている不思議な国。風の強さは日によって変わるが、風属性魔法の適性者には普段と何も変わらないくらい。他の属性魔法だと箒に乗っていたら飛ばされるくらいの風力と風速を持っている。なのでブエルタ王国に行くには風属性魔法の適性者がいないといけない。風属性魔法の適性者が一人いれば十分だが、一人もいない場合はブエルタ王国に辿り着くことは難しい。ただし行けない訳では無い。


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第37話 リールと魔女さんの名前

私の名前はリール。

今魔女さんの家にいます。

先程までみんなで魔力を計測していました。

みんな魔力が高くて驚きました。

ですが私の魔力はエラーが出て正確な数値が分かりませんでした…。

魔女さんが昔、魔力を計測した時はエラーが出ただけじゃなく、計測器も壊れてしまいました…。

私はエラーが出ただけで壊れることは無かったんですが、壊れるくらいになるということはそれくらい魔女さんの魔力が強かったのではないかと思いました。

考えれば考えるほど魔女さんの存在が遠くなって分からなくなりました。

…いつか魔女さんから直接お話を聞きたいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…ブエルタ王国 キファの部屋

 

キィン!バゴォォォォォン!

エレナはキファに向かって魔法を放ち、キファはその衝撃で腕から血を流した。

 

キファ「くっ…」

エレナ「あらあら…そんなに逃げなくてもいいじゃないですか」

 

ブゥン…バババババババババ!

エレナは魔弾(ブラック・ベルト)を放った。

 

キファ「クソッ!」

 

ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!

キファは風属性魔法を使って魔弾(ブラック・ベルト)を避ける。

 

エレナ「いい動きですね」

キファ (チッ…涼しい顔しやがって…)

エレナ「では…これはいかがですか?」

 

ブゥン!

キファの足元に魔法陣が展開された。

 

キファ「な…」

エレナ「禍玉(ヴィド・ダラ)

 

ジジジジジジジジジジ!

魔法陣から紫色の雷が放たれた。

 

キファ「があああああああ!」

 

キファはまともに攻撃を受けてしまった。

 

エレナ「ふふふふふ…」

キファ「がぁっ…はぁ…はぁ…」

エレナ「まだまだいきますよ」

 

ブゥンブゥンブゥン!

エレナは多数の魔法陣を展開した。

 

エレナ「この程度で殺られちゃうと十二使徒の名折れですよ」

 

キィンキィンキィン!

魔法陣が光り出した。

 

エレナ「闇への誘い(ダーク・ネフェル)

 

ビュンビュンビュン!

魔法陣から無数の手がキファに向かって伸びた。

 

キファ「クソッ!」

 

ビュン!

キファは風属性魔法を使ってその場から離れた。

 

ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!

 

キファ「な…」

 

しかしその手はキファの両腕両足を掴み、キファの動きを封じた。

 

キファ「クソッ!離せ!」

エレナ「…せっかく捕まえたのに離すわけないじゃないですか」

 

ブゥン…ジジジジジジジジジジ!

 

キファ「な…」

 

魔法陣から出てきた手が1ヶ所にマナを集め始めた。

 

キファ「何をする気だ!」

エレナ「何って…殺す気ですよ」

キファ「くっ…」

 

ジジジジジジジジジジ!

集まったマナが闇属性魔法へと変換され、攻撃態勢に入った。

 

エレナ「これはもう甘んじて受けるしかありませんよ。狂風の使徒 レギン」

キファ「くっ…俺を…」

エレナ「…?」

キファ「俺をその名で呼ぶなああああああああ!」

 

ズシャシャシャシャシャシャ!

キファは風属性魔法で両腕両足を掴んでいた手を切り刻んだ。

 

エレナ「おっと…これは意外ですね」

キファ「はああああああああ!」

 

ビュォォォォォォ!ズシャッ!ズシャッ!ズシャッ!

キファは風属性魔法で攻撃態勢に入っていた手を切り刻んだ。

 

ジジジ…シュゥゥゥゥゥゥゥ…

するとマナが弾け、魔法も消え去った。

 

エレナ「あらら…やられちゃいましたか…」

キファ「死ねえええええええ!」

 

ビュォォォォォォ!

キファは風属性魔法を放った。

 

エレナ「はぁ…私は闇属性魔法なので…」

 

ヒュッ!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

エレナは爆発を起こした。

 

キファ「くっ…」

エレナ「この程度…造作もないんですよ」

キファ「なら…衝撃風(インパクト・ブレイズ)!」

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

キファの放った魔法は上から下へ衝撃波を放ち相手にダメージを与える魔法。

 

キィン!キィン!キィン!

しかし、エレナは自分に結界を展開しており、キファの魔法が通じなかった。

 

キファ「クソッ!」

エレナ「無駄です。あなた程度の魔力じゃ私の結界を突破することなんて不可能ですよ」

キファ「だったらこれはどうだ…」

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴゴゴ!

キファは魔法を中断して魔力を上げた。

 

エレナ「…」

キファ「吹っ飛べ…下界の人間…」

 

ビュォォォォォォ!

キファの周りに風が出現した。

 

エレナ「あら、本気で戦って下さるんですか?」

キファ「本気だと?舐めたこと言うな」

エレナ「…?」

キファ「死ぬ気で殺るんじゃあああああ!」

 

キィン!バゴォォォォォン!

キファは自分の杖先から木属性の波動砲を放った。

 

キファ「はあああああああああ!」

 

パキパキ…パリン!

エレナの結界が一部砕けた。

 

エレナ「あら…私の結界にヒビが」

キファ「消えて無くなれええええええええええ!」

 

パキパキパキパキ…パリン!

ついにエレナの結界が突破された。しかし、それと同時にキファの魔法も解けてしまった。

 

エレナ「ふふっ…いいですね。私の結界を突破するなんて」

キファ「チッ…はぁ…はぁ…」

エレナ「では、再展開しましょう」

 

パキパキパキ…ガシャン!

エレナは結界を再展開した。

 

キファ「な…」

エレナ「だから言ったじゃないですか。あなたはボコボコにされて負けを認める…と」

キファ (チッ…ここまでか…)

エレナ「まさか、もう終わりとか言いませんよね?もっとやりましょうよ」

 

ギュオオオオオオ!

エレナの掌に渦ができた。

 

キファ「!!」

エレナ「そんなつまらない人間だったんですか?十二使徒とは」

 

キィィィィィィィィィィ…

その渦は闇属性魔法を放つ準備をしていた。

 

キファ「まだ…まだだ…」

エレナ「…」

キファ「まだ…負けてない…」

エレナ「その意気ですよ。では、死んでください」

 

キィン!バゴォォォォォン!

その渦は闇属性魔法を放ち、キファの部屋の壁を貫通した。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…魔風の谷

 

国民「こんな所にいても大丈夫なんじゃろうか…」

国民「でもキファ様がここに集合って命令したらしい…」

国民「変な人がここに現れて何人もの兵士が一方的にやられたって聞いたよ」

国民「なんと…」

国民「今はキファ様を信じて待つしかないかもしれん…」

国民「でもなんで魔風の谷に集まるように言ったんだろ…」

国民「魔風の谷は下界に繋がる緊急脱出用の場所なんだ。ここから飛び降りたらすぐ地上に降り立つことができる。キファ様は俺たちを逃がすのを前提でここに集めたんだと思う」

国民「なるほど…納得じゃ」

国民「しかしいつまでここにいなきゃいけないんだ。もうかれこれ1時間だぞ」

国民「それほど強敵なのかもな…」

 

バゴォォォォォン!

 

国民たち「!?」

 

凄まじい爆発音とともに、1本の紫色の光が空を駆けた。

 

国民「なんじゃ…今の音は…」

国民「さっきの光もそうだ…あの光は闇属性魔法特有の色だ」

国民「何!?じゃあ相手は闇属性魔法の適性者か!」

国民「あぁ。俺も一度見たことある…闇属性魔法の攻撃魔法の色は紫。さっき飛んできた光と同じ色だ」

国民「そんな…」

国民「仮にほんとに闇属性魔法なら…」

国民「…勝ち目があるかどうか…」

国民「キファ様を信じろ!あの人はこの国1番の実力者だ!簡単には負けん!」

国民「そ、そうだな!キファ様は強いからな!」

国民「キファ様ぁぁぁぁ!勝ってくだされぇぇぇぇ!」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…キファの部屋

 

エレナ「…さて、受けてみた感想はありますか?」

キファ「がっ…ごふっ…」

 

キファはさっきの攻撃をまともに受けてしまった。

 

エレナ「あらあら…随分お辛いでしょうね」

キファ「はぁ…はぁ…はぁ…」

エレナ「さぁ、魔核を渡してください。渡していただけたらこれ以上戦いません」

キファ「…俺が…その口車に…乗るとでも思ってんのか…」

エレナ「思いませんよ」

キファ「へっ…分かってるじゃねぇか…」

エレナ「ですからこうやって脅しているんですよ。早くしてください」

キファ「はぁ…はぁ…脅すにしては優しいな」

エレナ「…もっとキツイ方がいいですか?」

キファ「いいや…それで十分…」

エレナ「さぁ、早く渡してください」

キファ「…断る」

エレナ「…」

キファ「俺は渡さないと言った…お前はなんて言った…渡してくださいと…願ったのか…?」

エレナ「…」

キファ「違うだろ…お前は力づくで取ると言った…なら…ここで願っても仕方ねぇだろ…」

エレナ「…正解ですね」

キファ「だから俺は戦った…」

エレナ「そうですね」

キファ「…さて…続き…やろうや」

エレナ「…」

 

スッ…

キファはゆっくり立ち上がった。

 

エレナ「あら、命乞いですか」

キファ「命乞いだ?…舐めたこと言うなよ…」

エレナ「…」

キファ「これから死ぬやつに命乞いなんてするかよ!」

 

ビュォォォォォォォ!

キファを中心に強い風が展開された。

 

エレナ「…あらあら…素晴らしい魔力ですね。流石、一国を担ってるだけありますよ」

キファ「ほざけ…ぶち殺すぞ…」

エレナ「勝手にどうぞ。あなたこそ、それを撃つのは構いませんが、私に殺されることも視野に入れて下さいね」

キファ「入れねぇよそんなもん。俺はお前を殺すことしか頭にねぇからなぁ!」

エレナ「…随分怖い人ですね」

 

ビュォォォォォォォ!

キファは集めた風を球体に収めた。

 

キファ「これで最後だ…これでてめぇをぶっ飛ばす…」

エレナ「…そうですか。では私も攻撃準備に入りましょうか」

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴゴゴ!

エレナは急速に魔力を溜め始めた。

 

キファ「へっ…今更遅い…俺の方が早いな」

エレナ「早さなんてどうでもいいです。結局は立ってた方の勝ちですので」

キファ「…いくぞ!」

 

ビュォォォォォォォ!

キファは溜めた魔力を風の球体に送った。すると球体は光り出し、魔力を得たことを伝えた。

 

キファ「周囲を薙ぐ破裂の風(エレギナ・レヴン)

 

ドゴォォォォォォン!

キファはその球体をエレナに向けて放った。その際に周りの物を巻き込み、更に大きな球体となった。

 

エレナ「…」

 

バゴォォォォォォン!

エレナはそこから1歩も動くことはなかった。キファが放った球体はまっすぐエレナに向かって飛び、当たった瞬間凄まじい爆発とともに溜めた風を周囲に放出した。

 

キファ「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

キファは魔力を使い果たした。最後の魔法がキファの出せる最大魔力であり、奥の手だった。そのせいか周囲の家具や壁、城の3割がこの魔法によって吹き飛んだ。そして、目の前にエレナはいなかった。

 

キファ「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

キファは周囲を見渡し、エレナがいないことを確認した。

 

キファ「はぁ…はぁ…手間取らせやがって…」

 

キファはその場をあとにし、部下たちにエレナがいなくなったことを伝えに行こうとした。

 

キファ「みんな…ちゃんといるかな…」

 

キファは部下と国民の事が心配で一目散に向かおうとした。

 

エレナ「ちゃんと避難してますよ。あなたの好きな国民は」

キファ「!!」

 

キファはその声に反応し、後ろを振り返った。

 

エレナ「…あの程度ですか?」

キファ「な…」

 

エレナは全くの無傷だった。これといって外傷は見られず、おまけに結界すら破壊されていなかった。

 

キファ「な…あれが通用しない…だと…」

エレナ「…はぁ。あなたそれでも十二使徒ですか」

キファ「なんだと…」

エレナ「…正直ガッカリです。今まであなた方に見つからないよう隠れて生活してましたが、ここまで弱いなら隠れる必要なんてありませんでしたね」

キファ「…」

エレナ「……さて」

 

ジジジ…バリバリバリ!

 

キファ「!?」

 

エレナはさっきまで溜めていた魔力を再展開し、再び溜め始めた。

 

エレナ「これはさっきのと同じものです。あなたの魔法がぶつかる前に一旦保存しておきました」

キファ「な…」

エレナ「さて、ここで最後の警告です。魔核を渡せばこれを消します。ですが渡さなければあなたを消します。どちらがいいですか?」

キファ「っ…!!」

 

キファは迷った。魔核を渡せば自分は死なずに済む。しかし魔核はリノからもらった大事なものだから渡したくなかった。かといって戦おうと思っていても魔力が尽きている今は負けは必然。自分の命を取るか、リノからもらった魔核を取るか。キファは最後まで悩んで答えを出した。

 

エレナ「…さぁ。どちらがいいですか?」

キファ「…決まってるだろ…魔核は渡さねぇ」

エレナ「…」

キファ「これはリノからもらった大事なものだ。他の誰にも渡さねぇ」

エレナ「…そうですか」

 

キファは魔核を渡さない選択をした。自分の命より大事なものを取ったのだった。

 

エレナ「なら、あなたを消します。さようなら」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!

エレナの魔力は膨れ上がっていた。

 

キファ「!!」

 

その魔力はキファが今まで感じた中で2番目くらいに強かった。

 

キファ (この魔力…リノくらい…いや、もしくはそれ以上…)

エレナ「さようなら。狂風の使徒 レギン」

 

キィン!

エレナが溜めた魔力が光りを放った。

 

キファ (…みんなすまねぇ。先に逝って待ってるぞ。リノ…お前の大事なもんを最後まで守れなかった…すまねぇ…)

エレナ「死に誘いし宵闇の魔法(フォルメア・メル)

 

ギィン!バゴォォォォォォン!

エレナは容赦なく魔法を放った。キファは抵抗することなくまともにその魔法を受けた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…魔風の谷

 

バゴォォォォォォン!

凄まじい爆音が城から遥か遠くの魔風の谷まで届いた。

 

国民「な、なんだ今の音は!」

国民「ただの爆発か!?」

国民「キファ様が侵入者を倒した音だろ!」

国民「だが我々風属性魔法の使い手には爆発させる魔法を使う人物はいないはず…」

国民「え…じゃあ…」

国民「違う!キファ様がやられるもんか!あの人はこの国で1番強いお方だぞ!」

国民「そうだ!キファ様は負けてない!きっと激しい戦闘だからそういう音が響いてきただけだ!」

 

国民たちはキファが負けてないと信じていた。しかし一人の男が自分の持っている杖を見て悟った。

 

???「…」

 

その人はエレナが来る前にキファに現状を伝えに来た人物だった。その人の杖は根元にクリスタルが埋め込まれており、キファの状態を知らせるものだった。彼は兵団のトップであり、キファの側近でもあった。そのためキファに何かあった時に真っ先に行動できるよう杖も特殊なものを使っていた。

 

???「…キファ様…」

 

その人の杖は常に光っており、何か異常なことが起こると色が変化する仕組みになっていた。過去に何度か色が変化することはあったが、今回は違った。

色が消えていたのだった。

その人の杖はまるで息を引き取ったかのように光を失い、全く機能していなかった。

 

???「そ…そんな…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…キファの部屋

 

エレナ「…全く。手間を取らせますね」

 

エレナの周囲は何も無かった。先程の爆発でキファの周囲は何もかも破壊され、城も完全に破壊されていた。

 

エレナ「…さて、回収しましょうか」

 

スタスタスタ

そんな中エレナはキファのいる場所が分かるのか、迷わずにそこに向かった。

 

ザッザッザッ…

エレナは立ち止まった。目の前には倒れたキファがいる。キファは全身血だらけで目も閉じており、体も動いていなかった。

 

エレナ「…では、約束通り魔核を頂きますね」

 

スッ…ドスッ!

エレナはキファの胸に自身の手を突き刺し、キファの体から魔核を取り出した。

 

エレナ「…風属性魔法の魔核。間違いないですね。ではさようなら」

 

スタスタスタ

エレナはその場を後にした。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…魔風の谷

 

国民「キファ様なら大丈夫だ!あのお方なら絶対倒してくれる!」

国民「そうだ!俺たちとは比べ物にならないくらい強いお方だ!そう易々とは負けん!」

国民「あの方は頼れるお方だ…ワシらをしっかり見てくださる…」

国民「キファ様は強い!だから負けない!」

 

国民はキファが勝つと信じながら言葉を発していた。しかしそんな中、ひとつの影が姿を現した。

 

エレナ「あの人は死にましたよ」

 

その一言で魔風の谷は一瞬で静寂に包まれた。さっきまで国民の声でいっぱいだったそこはその一言で静まり返り、そこにいた国民は一斉にエレナを見た。

 

国民「な…なんだお前…誰だ!」

エレナ「私はエレナと言います。そして、あの人を殺した張本人です」

国民「!?」

 

そこにいた国民は驚いていた。いきなり現れたその人がいきなりキファを殺したと言ったからだ。

 

国民「な…キファ様が…死んだ…」

エレナ「はい。私が殺しました」

国民「ふざけるな!誰だお前!」

エレナ「名前はさっき言いました。2度も言わせないでください」

国民「お前ごときがキファ様に敵うわけがない!嘘をつくな!」

エレナ「嘘ではありませんよ。そんなに信じられないなら今すぐ戻ってみてください。そこに真実がありますよ」

 

スタスタスタ!

すると国民は我先にとキファの城まで走った。

 

エレナ「…」

???「お前…」

エレナ「!」

 

国民がキファの城へと向かう中、1人だけその場に留まっていた。

 

エレナ「…なんでしょうか」

???「お前が…キファ様を…」

エレナ「はい。私が殺しました」

???「っ!!」

 

スッ!

その人は杖を取り出した。

 

エレナ「…何をする気ですか?」

???「お前を殺してやる…キファ様の仇…」

エレナ「やめた方がいいですよ。あなたもあの人と同じ目に遭います」

???「刺し違えてでもお前を殺してやる!」

エレナ「…はぁ。あの人ですら勝てなかったのにあなたが私に勝てるとでも?」

???「知るかそんなこと!」

エレナ「…あの場所に戻った方が賢明ですよ」

???「お前に指図される筋合いはない!」

エレナ「なら、私が送り届けてあげます」

???「ふざけるな!お前を殺してや」

 

フッ…

 

エレナ「…」

 

一瞬にしてその人は姿を消した。さっきまで目の前にいたはずだが、瞬きの瞬間、その人はそこにはいなかった。

 

エレナ「…さて、次行きましょうか」

 

スタスタスタ

エレナはその場を立ち去った。

 

 

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場所…魔女さんの家

 

ラミエ先生「じゃあリール。私たちはここを出るわ」

リール「はい!分かりました!ありがとうございました!」

メリー「リールちゃん!何かあったらすぐ連絡して!私が助けに行くから!」

リール「はい!」

ラミエ先生「さ、行くわよメリー」

メリー「うん!」

 

ガチャ…バタン

ラミエ先生とメリーはそれぞれ仕事があるため、魔女さんの家を出た。

 

リール「さて、みなさんはどうしますか?」

アンナ「私はここにいたい」

スカーレット「私も」

オード「俺もだ」

ディア「じゃあ俺も」

ノーラ「俺も」

リール「ではこれからどうしますか?」

アンナ「リールから無属性魔法を教わりたい!」

リール「え?無属性魔法ですか?」

スカーレット「そうね。私もそうしようかしら」

オード「俺たちもだ!」

リール「そうですねぇ…」

 

コンコン

突然家のドアがノックされた。

 

リール「ん、誰でしょうか」

 

スタスタスタ

リールは玄関に向かった。

 

ガチャ

リールは玄関を開けた。

 

リール「はい。どなたですか?」

???「あら、初めて見る顔ですね」

リール「!!」

 

ノックをしたのは不思議な女性だった。その人は右目が赤、左目がグレーのオッドアイだった。

 

???「ここはリーナの家ではないのでしょうか」

リール (リーナ?誰のことでしょうか…)

???「おかしいですね。前はここに住んでたはずですが…」

リール「あ、あの…」

???「?」

リール「あなたは…どなたでしょうか」

???「あ、そうですね。あなたと私は初対面でしたね。紹介が遅れてしまい申し訳ありません」

リール (すごい言葉が綺麗な人…)

グラム「私の名前はグラムと言います。以前ここに住んでいた者です」

リール「え!ここに住んでた方ですか!?」

グラム「はい。昔の話ですが」

リール「あ、あの…すみません!私はリールと言います!今この家に住んでいます!」

グラム「え、リール?」

リール「はい!リールと言います!」

グラム「そうですか。あなたがリールさんなんですね」

リール「?」

グラム「リーナから話は聞いています。お会いできて光栄です」

リール「えっと…」

グラム「?」

リール「私の事…ご存知なんですか?」

グラム「はい。リーナから聞いています」

リール「あ、えっと…と、とりあえずお話を聞かせてください!」

グラム「はい。構いませんよ」

 

ガチャ…バタン

グラムは家に入った。

 

リール「こ、こちらへどうぞ!」

 

スタスタスタ

グラムはリールに案内されてリビングに置いてあるソファまで案内した。

 

リール「おかけください!」

グラム「はい。失礼します」

 

グラムはソファに座った。

 

リール「紅茶をお出ししますので少しお待ちください!」

 

スタスタスタ

リールは紅茶を淹れに行った。その間グラムは家の中を見渡した。

 

グラム「…変わりませんね。この家は」

オード「あの…」

グラム「?」

オード「あなたはリールのお知り合いですか?」

グラム「…あなた方はあの子の友達ですか?」

オード「はい。みんなリールの友達です」

グラム「そうですか。お友達もたくさんいて喜ばしい限りです」

オード「それで…あなたは…」

グラム「あ、私はグラムといいます。この家に住んでいた者です」

スカーレット「この家に…住んでいた…」

グラム「はい。昔の話ですが」

オード「リール以外にこの家に住んでた人がいたんだ…」

グラム「あ、今は別の場所に住んでいますよ」

アンナ「あの…」

グラム「はい」

アンナ「何かご用があって来られたんですか?」

グラム「はい。そうです」

リール「紅茶が入りました。こちらをどうぞ」

 

コトッ

リールはグラムという名の女性に紅茶を出した。

 

グラム「あら、ありがとうございます」

 

カチャ…ゴクッ…ゴクッ…

グラムは紅茶を手に取り、口に含んだ。

 

グラム「…あの時から変わらないお味。美味しいですね」

リール「ありがとうございます!」

 

カチャ…

グラムは手に取った紅茶を置いた。

 

グラム「リールさん」

リール「はい!」

グラム「あなたの事はリーナから聞いています。今はエレナ学院に通われているんですよね?」

リール「あ、はい。ですが今はこの家にいます」

グラム「不思議ですね。あの学院は寮生活のはず」

リール「はい…今は休学してるんです」

グラム「休学…何故ですか?」

リール「…学院長との約束を破ってしまったからです」

グラム「約束?」

リール「はい」

グラム「どのような約束ですか?」

リール「学校以外では魔法を使わないこと…です」

グラム「はぁ…あの子ったら…」

リール「学院長ともお知り合いなんですか?」

グラム「はい」

リール「そうなんですね」

グラム「あの子、今はどうですか?」

リール「えっと…どうなんでしょう…よく分かりません」

グラム「そうですか。分かりました。あ、あとひとついいですか?」

リール「はい。何でしょうか」

グラム「あなた、先程から魔女さんと呼んでいますが、あの人の名前を知らないんですか?」

リール「え、はい。知りません」

グラム「はぁ…全くあの人は…」

リール「えっと…あなたは魔女さんのお名前をご存知なんですか?」

グラム「はい」

リール「えっと…お名前は…」

グラム「リーナといいます」

リール「リーナ…それが魔女さんの名前…」

グラム「はい」

リール「あの、つかぬ事をお聞きしますが、あなたはこの家に住んでいたり、魔女さんや学院長とも面識があったりと、何か関係がおありですか?」

グラム「はい」

リール「どういった関係が…」

グラム「…あの子たちは」

リール 「…」

グラム「リーナとレヴィは…"私の弟子"です」

リール「……………」

 

リールは一瞬、その言葉の意味が分からなかった。でもすぐに理解し、言葉を発した。

 

リール「えええええええええええええ!?」




〜物語メモ〜

禍玉(ヴィド・ダラ)
エレナが使った魔法。
魔法陣を展開し、雷を放つ魔法。
闇属性魔法の適性者でありながら雷属性魔法を使っている異例な魔法。

闇への誘い(ダーク・ネフェル)
エレナが使った魔法。
魔法陣を展開し、無数の手を召喚する魔法。
召喚された手は真っ先に相手を拘束する。

衝撃風(インパクト・ブレイズ)
キファが使った魔法。
風の塊を上から下に衝撃波として放つ魔法。

周囲を薙ぐ破裂の風(エレギナ・レヴン)
キファが使った魔法。
風の塊を作り、相手に向かって放つ魔法。
放てば相手に当たるまで追尾する。
その際に周囲の物や壁を薙ぎ倒して追尾する。

死に誘いし宵闇の魔法(フォルメア・メル)
エレナが使った魔法。
闇属性魔法で固めた魔力を相手の近くで爆発させる魔法。
威力が高く、光属性魔法の適性者以外は致命傷を負う。

グラム
右目が赤、左目がグレーのオッドアイの持ち主。
昔、魔女さんの家に住んでいた人物で魔女さんとレヴィ学院長のお師匠様。

リーナ
魔女さんの名前。


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第38話 リールと狂気の魔女の正体

ここでちょっとお知らせです。

2月14日から投稿が遅くなるとしていましたが、いつも通りできそうですので、いつも通り投稿していきます。しかし、忙しい時は投稿出来ませんので、ご了承ください。

お知らせは以上です。


私の名前はリール。

今、魔女さんの家にいます。

先程、グラムという名前の女性が家に来ました。

どうやら前にこの家に住んでいたらしく、魔女さんや学院長のこともよく知っているそうです。

聞くところによると魔女さんの名前はリーナというらしく、魔女さんと学院長はグラムさんのお弟子さんだそうです。

色々聞きたいことはありますが、とりあえず落ち着こうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…アースの部屋

 

???「アース様!お伝えしたいことがあります!」

アース「なんだ」

???「先刻、キファ様が統治していたブエルタ王国が何者かによって大打撃を受けました!」

アース「なんだと!」

???「加えてキファ様も重傷で現在集中治療を行っているそうです!」

アース「なんだと…一体誰が…」

 

ピピピ!ピピピ!ピピピ!

突然アースの通信端末が音を鳴らした。

 

ピッ!

アースはボタンを押して対応した。

 

アース「私だ」

ジン「俺だアース!ジンだ!」

アース「ジンか。どうした」

ジン「キファがやられた!」

アース「!」

ジン「相手はエレナだ!」

アース「何!?エレナだと!?」

ジン「今さっきブエルタ王国の使者がここに来たんだ!その時にエレナという人に攻撃されて兵士数名とキファが怪我をしたと!そのうちキファは重傷で現在集中治療をして残りの兵士は動ける状態だそうだ!」

アース「くっ…あの女め…」

ジン「アースどうする!相手はエレナだ!並の魔力じゃキファのようになる!」

アース「しかし、私たちがなんとかしないと民たちが…」

ジン「アース!俺はマークと一緒に戦う!」

アース「!!」

ジン「マークもその気だ!何かあったら俺たち2人でエレナと戦う!負けてもいい!刺し違えてでも勝ってやる!」

アース「待てジン!ここで2人が犠牲になったらさらに酷くなる!ここはレヴィ学院長に頼むしかない!」

ジン「あの人には言ってある!だが協力は薄い!俺たちでどうにかするしかない!」

アース「くっ…」

 

アースたちはキファがやられた情報をキャッチした。しかし、相手がエレナということもあって迂闊には手を出せなかった。

 

アース「…どうすればいいんだ…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…魔女さんの家

 

グラム「リーナとレヴィは…"私の弟子"です」

リール「えええええええええ!」

 

リールはとても驚いたのか、家の外まで響くくらいの大声を出した。

 

グラム「?」

リール「え…え!?えええええ!?」

 

リールは何を喋ろうか迷っていた。

 

アンナ「リール!落ち着いて!落ち着いて!」

 

トントントン

アンナはリールの背中を軽く叩く。

 

リール「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

リールは少しずつ落ち着いてきた。

 

グラム「…大丈夫ですか?」

リール「は、はい…大丈夫…です…」

グラム「そこまで驚かれるとは思っていませんでした」

リール「あ、いえ…まさか魔女さんと学院長のお師匠様だなんて…」

グラム「意外ですか?」

リール「いえいえ!ただ驚いただけですよ!」

グラム「そうですか」

リール「あ、あの!」

グラム「はい。何でしょうか」

リール「魔女さんのことをもっと色々教えてください!」

グラム「リーナの事ですか?」

リール「はい!魔女さんの過去のことが知りたいです!」

グラム「そうですねぇ…あの子は飛び抜けて頭が良かったと思いますよ」

リール「へぇ!」

グラム「勉強できますし、魔法も1度見たらある程度再現できますし」

リール「す、すごい…魔女さん」

スカーレット「リールのお師匠様って相当強いのよね…」

アンナ「うん…聞いただけだけどリールよりも強いってリールが言ってた…」

スカーレット「そのリールのお師匠様のお師匠様がここにいるってことは…」

アンナ「この人はさらに強い…」

オード「す…すげぇな…リールのやつ…」

ディア「人間関係がえげつねぇ…」

ノーラ「もうこの人たちでどうにかできそうなくらいだ…」

リール「他には!他にはありませんか!!」

グラム「そうですねぇ。リーナはレヴィの事を常に気にかけていましたね」

リール「何故ですか?」

グラム「リーナとレヴィは血の繋がりはありませんが、姉と弟で姉弟弟子だったんですよ」

リール「姉弟弟子?」

グラム「はい。リーナは姉。レヴィは弟という立場でした。リーナは弟であるレヴィに何も起こらないよう常に見守っていました」

リール「やっぱり優しい人だったんですね」

グラム「はい。レヴィはそんな姉であるリーナの事が大好きでしたよ」

リール「おぉ!」

グラム「それまではそんな幸せな毎日が続きましたが、ある時それは無くなってしまいました」

リール「!」

グラム「…この先は辛い過去の話になりますが、構いませんか?」

リール「辛い過去の話?」

グラム「はい。今まで話していてあなたも知るべきだと考えていました。今からあなたが知るべき話をしようと思っています。聞きますか?」

リール「聞きます!聞かせてください!」

 

グラムは紅茶を飲み干して話し始めた。

 

グラム「"狂気の魔女" についての話です」

スカーレット「!!」

リール「狂気の…魔女…」

グラム「はい。ある時、一国を全て破壊した魔女が存在しました。彼女は生まれ持った強大な力を使い、その国をたった1人で破壊しました」

リール「国を…たった1人で…」

グラム「はい。元はただの魔法使いでした。その人には弟がいて、常に気にかけていました」

リール「…」

グラム「ですがある時、ある学院の学院長が彼女を学校に引き入れようとしました。ですがその人たちはそれを拒否しました。当時のその学院の噂を知っていたからです」

リール「噂?」

グラム「はい。それは、魔法使いや魔女を兵器として使うという噂です」

リール「魔法使いや魔女を…」

アンナ「兵器…」

グラム「そうです。今の時代にはその面影はありません。昔は戦争が絶えない時代でしたので、国を守るための兵器が必要でした。しかし、その国には兵器と呼べる鉄や火薬などはありませんでした。そこで当時の学院長が考えた策として、自身が学ばせている生徒たちを兵器化するということでした」

アンナ「兵器って…その人たちは機械にされたんですか?」

グラム「いえ、そういう訳ではありません。しかし、その人たちは国を守る、もしくは国を落とすために魔法を学ばされることになりました」

リール「そんな…」

グラム「ですが、当時の生徒たちの出来は悪く、とても戦争に勝てるほどではありませんでした」

リール「!」

グラム「そこで当時の学院長はある情報をキャッチしたのです。それが、町外れにある家に住んでいる魔女の話です」

リール「魔女…?」

グラム「はい。その情報を聞きつけた当時の学院長は数名の生徒を編成し、彼女の家に押しかけました。その人たちは最初、学院に通うことを否定しました。しかしながらその人たちは力が及ばず、そのまま彼女を学院に無理やり引き入れてしまったのです」

リール「そんな…」

アンナ「可哀想…」

グラム「…それから2年。1度も帰ってくることがなかった彼女は、ついに家に帰ってきました」

リール「ほっ…それはよかったです…」

グラム「しかし、その背景には燃え盛るひとつの国がありました」

リール「!」

グラム「その燃え盛る国を背に帰ってきた彼女の目には光がなく、ただただ本能のままに行動したことを告げていました」

リール「じゃあ…その人が国を破壊した人…」

グラム「そうです。その人がその国を破壊し、傷ついたまま帰ってきたのです」

リール「…」

グラム「そして帰ってきた彼女を見た彼女の弟は嬉しさのあまり彼女に抱きつきました。当然です。無理やり離ればなれにされて2年、1度も会えなかったんですから」

リール「…」

グラム「そして帰ってきた彼女はただいまと言う前にこう告げました。『人を殺した』と」

リール「!!」

グラム「目に光がなかった彼女でしたが、それでも自身が犯した罪を認識していました」

リール「…」

グラム「それからというもの、彼女は身を隠すためにその家を離れることとなり、今も尚、この世界に存在しています。そして、この事件を聞いた当時の人たちは彼女のことを "狂気の魔女" とそう名付けました」

スカーレット「そ…そんな話が…私もその話はお父さんに聞きましたが、それでも表の話だけ…こんな深いところまでは聞いたことがないわ…」

オード「あの、その魔女は結局どうなったんですか」

グラム「何年か経つと人は当時のことを忘れていきました。それを機に彼女は元々暮らしていた家に戻りました」

オード「おぉ、それはよかった…」

グラム「そしてもうひとつ。リールさん」

リール「はい」

グラム「当時狂気の魔女と呼ばれたその人が…あなたのお師匠様。つまり、リーナです」

リール「!!」

スカーレット「え…」

アンナ「嘘…」

オード「な…」

ディア「嘘だろ…」

ノーラ「なんだと…」

 

みんなその発言に驚いていた。

 

グラム「そして、当時リーナを学院に引き入れた人こそ、エレナ学院 元学院長であるエレナという人物です」

リール「え…」

 

その場にいたみんなは言葉が出なかった。

 

ノーラ「じゃ、じゃあつまり…エレナって人がリールのお師匠様を学院に入れて兵器として使おうとしていた…そういう事ですか?」

グラム「はい。そういう事です。ですが、結果的にリーナがその国を破壊してしまったので、その国が戦争に参加することはありませんでした」

スカーレット「その国っていうのは…今私たちが暮らしている国…ですか」

グラム「はい」

アンナ「じゃあさっきの話に出てきた弟は…」

グラム「現エレナ学院 学院長のレヴィです」

リール「…あの」

グラム「はい」

リール「いくつか質問が…あります」

グラム「何でしょうか」

リール「エレナさんは…私を回収すると言いました。それは…私を兵器として使うためですか…」

グラム「…分かりません」

リール「…」

グラム「それはご本人しか分からないことです」

リール「では…あなたはリノという人物をご存知ですか」

グラム「!」

リール「私はエレナさんからリノという人物を呼ぶために魔核を集めていると聞きましたが、私はリノという人物を知りません。教えて頂けませんか。リノという人物は…誰でしょうか」

グラム「…この世界には裏の世界が存在します」

スカーレット「裏の世界…」

グラム「はい。そこは辺り一面暗く、誰も認識できない場所だそうです」

リール「…」

グラム「私たちはその場所を "深淵" と呼んでいます」

リール「!!」

 

リールは深淵という言葉に聞き覚えがあった。

 

リール (あの小さな手紙にもあった…)

グラム「そこにはかつて地上にも存在した人を喰らう生物… "ドレイン" がいます」

リール「!」

グラム「加えて、そのドレインたちが二度と地上に出ないよう足止めをしている人物がいます。…それがリノと呼ばれる人物です」

ノーラ「なんでドレインはその深淵って場所にいるんですか?」

グラム「あの生物は元々この世界には存在していませんでした。しかし、ある時にそれは現れ、人を喰い、強くなり、手に負えなくなりました。そこでリノと呼ばれる人物が、己が体を依代として全てのドレインを深淵に封印しました」

リール「あの…」

グラム「はい」

リール「あなたはこれを見たことがありますか」

 

カサッ…

リールはリノの置き手紙を出した。

 

グラム「…これは」

リール「エレナさんが言うにはリノの置き手紙だそうです」

グラム「!!」

 

グラムは驚いていた。

 

グラム「…なぜ、あなたがこれを」

リール「…スカーレットの家にある書物から頂きました」

グラム「なるほど…では見つけたんですね」

リール「…ここにはリノという人物が書き残した手紙が書かれてあります。エレナさんは読むことができませんが、私は読めます」

グラム「では、あなたは…」

リール「はい。私は光属性魔法の適性者です」

グラム「な…なんと…」

リール「そしてこの手紙には深淵とこれからドレインが解き放たれると書かれています」

グラム「な…」

スカーレット「え!?」

アンナ「リール!ほんとなの!?」

リール「本当です。エレナさんはリノという人物を呼ぶために魔核を集めています。リノならどうにかできると…そう言っていました」

グラム「あの人…」

リール「あなたは深淵とリノという人物について他になにか知りませんか?」

グラム「…そうですね。私が知っているのはここまでです」

リール「…」

グラム「もし詳しく聞きたいのでしたら、エレナかリーナに聞くことをオススメします。2人は1番リノに近しい人物でしたから」

リール「そうですか…」

グラム「ですが、エレナの場所はここからだと遠いです。おまけにあなた方がいけば確実に死にます」

リール「え、場所が分かるんですか?」

グラム「はい」

リール「あの人は今どこにいるんですか!教えてください!」

グラム「…死者の集う場所 "冥界" です」

リール「め…冥界…」

グラム「はい。あそこは危険です。水属性魔法の適性者以外は全員死にます」

アンナ「わ、私…水属性魔法の適性者です!」

ノーラ「俺もだ!」

グラム「そうですか。ですがマナの圧に耐えられませんよ」

アンナ「え…」

グラム「冥界ということもあって外界からは隔絶されています。そこへ行ったはいいものの、帰って来れなくなりますよ」

アンナ「そんな…」

グラム「それならリーナの方が早いです」

リール「なら魔女さんはどこにいるんですか!!」

グラム「リーナならエレナの部屋にいます。拘束されてますね」

リール「拘束…」

グラム「あ、ひとつ忘れていました」

リール「?」

グラム「あなた、先程魔核を集めてるって言ってましたよね?」

リール「はい」

グラム「魔核はリノが12個に分けて当時生き残った人たちに渡しています。繋がりがあるなら、何か知ってるかもしれませんよ」

リール「そ、そうですか…」

グラム「…さて、私はそろそろ行きますね」

リール「え…」

グラム「あなたに会えて良かったです。リールさん」

リール「待ってください!」

グラム「はい。何ですか?」

リール「た…助けては…貰えないんでしょうか」

グラム「…私にはその資格がありません。ご自身の力で頑張ってください」

リール「そう…ですか…」

グラム「あ、あとひとつ」

リール「?」

グラム「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

リール「どういう事ですか?」

グラム「リノが言っていた言葉です。あなたが光属性魔法の適性者ならいつかこの言葉が役に立つでしょう」

リール「そ、そうですが…」

グラム「…!!」

 

グラムは一瞬だけ視界が揺らいだ。

 

グラム (何…今の感じ…この子から?)

 

グラムはじっとリールを見た。

 

リール「?」

グラム (いえ、そんな事は…)

リール「あの…どうされましたか?」

グラム「あ、いえ…なんでもありません。それでは行きますね。紅茶、美味しかったです」

 

スタスタスタ…ガチャ…バタン

グラムはその場をあとにした。

 

リール「?」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

グラム (まさか…今まで見つけられなかったのに今更ここで…。もし本当ならあの子は…今のあの子はあの子じゃない。時間と次元、時空が全て隔絶されていた。まさか…本当に…刻運命の粉を…)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…深淵

 

???「…」

 

そこは深淵。地上とは全く異なる地形で構成された世界。この世界にはドレインしか存在せず、ドレインは他のドレインを取り込み強くなっていた。しかし、そんなドレインしかいない世界に1人の女性がいた。その人は深淵が誕生してからずっとそこに()()

 

???「…」

 

その人はドレインに体を侵食されて尚、生きている。人の記憶と自我を持っている。

 

???「…近い」

 

ここにはその人とドレインしかいない。過去にここに来たのはたった1人だけ。それでもその人は深淵のマナの圧に耐えきれないためにすぐに去った。あれから何年か経ったが、その間誰も来ることはなかった。

 

???「…早く来て。レナ」

 

その人は待ち続けている。光属性魔法の適性者か。自分の娘か。この世界を大きく変える存在か。




〜物語メモ〜

狂気の魔女
狂気の魔女の正体は昔の魔女さん。現在の魔女さんよりかは弱かったが、それでも一国を滅ぼすことができるほどの力を持っていた。

魔女さんとレヴィ学院長の関係
魔女さんとレヴィ学院長は昔、グラムの弟子だった。先に魔女さんが弟子となり、後からレヴィ学院長が弟子となった。年齢的にも魔女さんの方が上のため、魔女さんが姉、レヴィ学院長が弟という立場であった。


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第39話 リールとエレナの秘密

私の名前はリール。

今魔女さんの家にいます。

先程、グラムさんから魔女さんや学院長について色々と聞きました。

過去に起こったこと、魔女さんの別称、リノという人物の存在。

全てではありませんが、ある程度のことは聞けました。

魔女さんはエレナさんの部屋で拘束されているそうです。

助けに行きたいんですが、場所が分からないのでどうすればいいか…

今はまだ早すぎるのかもしれません。

もう少し力をつけてから魔女さんを探しに行こうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…???

 

マギ「…」

ラビ「ねぇマギ」

マギ「…なんだ」

ラビ「エレナがブエルタ王国を壊滅させたって」

マギ「なんだと」

ラビ「さっきメノちゃんが教えてくれたの。ブエルタ王国が壊滅したって」

マギ「あの女…一体何やってるんだ」

ラビ「私も分からない。どうする?殺す?」

マギ「…いや、やめておこう」

ラビ「どうして?」

マギ「そいつが本体かどうか分からん。もし分身ならやるだけ無駄だ。何もできずに本体に気づかれてしまう」

ラビ「…確かに厄介だね」

マギ「…あぁ」

ラビ「もういっその事エレナと絶縁しない?」

マギ「…」

ラビ「もういいじゃん。私たちの計画に賛同しないじゃん。殺した方がいいよ」

サリエラ「ダメですよ。ラビ」

ラビ「?」

 

スタスタスタ

サリエラが部屋に入ってきた。

 

ラビ「サリエラ…」

サリエラ「あの人を殺すことはできませんよ」

ラビ「なんで?結界でも展開してるの?」

サリエラ「…あの人には心臓がないので殺しても意味が無いんですよ」

ラビ「え!?心臓無いの!?」

サリエラ「はい。ありませんよ」

ラビ「え!?でも生きてるじゃん!」

サリエラ「まぁ、厳密には心臓が定まってないということです」

ラビ「?????」

 

ラビは言葉の意味を理解していなかった。

 

サリエラ「つまりですね、心臓がある体が本体なんですが、常に同じ場所に存在している訳では無いので、探すのに苦労します。加えて、エレナの分身と本体はリンクされた状態にあるので分身が殺されたらすぐに本体に気づかれます」

ラビ「気づかれると何かあるの?」

サリエラ「はい。エレナは闇属性魔法の適性者なのは知ってますよね?」

ラビ「うん」

サリエラ「エレナは自分を闇に喰わせて分身を作っています。なので分身を殺してしまうとその闇に吸収されてエレナの糧となってしまうのです」

ラビ「ひえっ…」

サリエラ「なので無闇にエレナを攻撃するのは良くないんですよ」

ラビ「ムムム…」

サリエラ「あの人が消されてないのはその危険があるからです。自分が闇に喰われるリスクを背負ってまでエレナを殺したくはないでしょう」

ラビ「まぁそうだけどさぁ…」

サリエラ「大丈夫です。奥の手はありますので」

ラビ「え!?なになに?」

サリエラ「教えません」

ラビ「え〜…」

サリエラ「ですが、今は好きにさせておくのが吉です。あの人が本気を出せば私たちは勝つことはできません。下手に刺激して殺されるのはごめんですよ」

マギ「…だな。今は好きにさせておこう」

ラビ「う〜ん…」

サリエラ「そういえばマギ。マーモの枠は決まりましたか?」

マギ「いや、決まってない。マーモ程の魔力を持つやつがいないからな」

ラビ「私も知らないなぁ…」

サリエラ「…まだ難しそうですね」

マギ「…あぁ」

サリエラ「では、私はこれで」

 

スタスタスタ

サリエラは部屋を出た。

 

マギ「…」

ラビ「じゃ、私も行くね」

マギ「あぁ」

ラビ「じゃね〜」

 

スタスタスタ

ラビも部屋を出た。

 

マギ「…そろそろか」

 

ピッ…

マギは目の前の機械を操作した。

 

マギ「聞こえるかマモン。聞こえたら返事をしろ」

マモン「聞こえるぜ。どうした」

マギ「進捗状況は」

マモン「もういけるぜ。あとは座標を決めて落とすだけだ」

マギ「そうか。あの町の連中を全て殺せ。一人も生かすなよ」

マモン「あぁ。分かった」

マギ「レット。準備は」

レット「大丈夫だ」

マギ「よしっ。作戦開始だ」

マモン「了解」

レット「了解」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…スペルビア王国が見える高台

 

レット「…さぁてと。始めますか」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…スペルビア王国上空

 

マモン「ここでいいんだな。んじゃ、落とすか」

 

パチン!

マモンは指を鳴らした。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…スペルビア王国が見える高台

 

レット「はぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

 

ヒュォォォォォォォォォ…

レットは魔力を高めた。

 

レット「大地よ 凍てつけ」

 

パキパキパキ…

レットの周囲の気温が急激に下がった。

 

レット「極寒の地(アブソリュート・フレー)

 

ビュォォォォォォォォォ!

スペルビア王国に向かって一直線に氷属性のレーザーが放たれた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…スペルビア王国上空

 

マモン「!」

 

レットが放った魔法がスペルビア王国に向けて放たれた。

 

マモン「よしっ。来たな」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

それを確認したマモンは魔力を高めた。

 

マモン「隕石(プロメテウス)

 

ゴォォォォォォォォォ!

マモンはスペルビア王国に向けて隕石を落とした。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…スペルビア王国

 

ドォォォン!パキパキパキパキパキ!

レットの魔法がスペルビア王国の土地に当たった瞬間、瞬く間に氷が国全体に広がり、外にいる人、家の中にいる人を拘束した。

 

国民「うわっ!なんだこれは!」

国民「氷だ!」

国民「あ、足が…」

国民「誰か!火属性魔法の適性者はいないか!」

国民「ねぇ!あれ見て!」

国民たち「!!!」

 

国民たちが空を見上げると、マモンが落とした隕石が迫っていた。

 

国民「なんだこれは!」

国民「まさか…私たちを拘束して…あれで…」

国民「ふざけるな!!俺たちが何したって言うんだ!」

国民「いきなりだぞ!誰だ!誰の仕業だ!」

 

ゴォォォォォォォォォ!

隕石は無慈悲にもスペルビア王国に近づいている。

 

国民「なんで…こんなことに…」

国民「これじゃあ何も出来ない!」

国民「どうすれば…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…アースの部屋

 

ピピピ!ピピピ!ピピピ!

突然アースの部屋の発信機が音を鳴らした。

 

アース「私だ」

ジン「アース!俺だ!ジンだ!」

アース「ジンか。どうした」

ジン「スペルビア王国が一瞬にして氷漬けにされた!全員身動きが取れない!」

アース「なんだと!」

ジン「マークも動けない!誰か助けてくれ!」

アース「分かった!今すぐ仲間を向かわせる!少しだけ待ってくれ!」

ジン「頼む!」

 

ガチャ!

アースは発信機を置いた。

 

アース「誰か!誰かいないか!」

側近「はい」

アース「今すぐ十二使徒たちをスペルビア王国に向かわせろ!スペルビア王国が攻撃を受けている!急げ!」

側近「かしこまりました!」

 

タッタッタッ!

側近は走って事を伝えに向かった。

 

アース「クソッ…なぜこんな時に…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…魔女さんの家

 

アンナ「リール!」

リール「?」

アンナ「外来て!早く!急いで!」

 

タッタッタッ!

リールたちは外に出た。

 

リール「どうしたのアンナ!」

アンナ「あれ見て!」

 

リール「!?」

スカーレット「!?」

オード「!?」

ディア「!?」

ノーラ「!?」

 

リールたちが見たのは氷漬けにされたスペルビア王国と空から降ってくる隕石だった。

 

リール「何…あれ…」

スカーレット「お父さん…お父さん!」

 

ヒュッ!ビュン!

スカーレットは箒を出して一目散にスペルビア王国に向かった。

 

リール「…私たちも行きましょう」

 

リールたちも各々自分の箒を出してスカーレットを追いかけた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院

 

リール「!」

 

リールはある人物を見かけた。

 

リール「アンナ!」

アンナ「何?」

リール「先に行ってください!私は後で行きます!」

アンナ「どこ行くの!」

リール「あの人がいます!私はその人と話してから行きます!」

アンナ「う、うん!分かった!」

オード「待て」

リール「…オード君」

オード「…俺も行く」

ディア「オード!」

オード「リールを1人にできない。俺も行く。ディアとノーラはアンナと一緒に先に行け」

ディア「…分かった」

ノーラ「後で来いよ」

オード「…あぁ」

 

ビュン!

アンナとディア、ノーラはスカーレットの後を追った。

 

リール「オード君。行きましょう」

オード「…あぁ」

 

ビュン!

リールとオードはある人物を追いかけた。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院(校庭)

 

???「…厄介なことしてくれたわね。レット」

 

パキッ…パキッ…

???は凍った校庭を歩く。

 

???「…こんな事して。一体何するつもりよ」

 

???は空を見上げた。

 

???「…マモンね。あの子もあんなの落としてどうするつもりよ」

リール「待ってください!」

???「?」

 

突然リールの声が聞こえた。

 

???「…聞き覚えのある声」

 

???が振り返るとそこにはリールとオードがいた。

 

オード「な…お…お前は…」

???「…ごきげんよう。久しぶりね」

リール「…なぜあなたがここにいるんですか!エレナさん!」

エレナ「…」

 

そこにいたのはエレナだった。

 

エレナ「…なぜって。あんなのがあったら私の邪魔になると思ったのよ」

リール「…またあなたですか」

エレナ「…」

リール「なぜこの街の人を傷つけるんですか!もう今度ばかりは許しません!」

エレナ「…あなた 1つ勘違いしてない?」

リール「…何がですか」

エレナ「あれ、私がやってるんじゃないわよ」

リール「じゃあ誰がやってるんですか!」

エレナ「マモンとレットよ」

リール「マモン…レット…」

エレナ「氷属性魔法の適性者と土属性魔法の適性者。私の仲間がやってることよ」

リール「!」

エレナ「私はそれを止めに来たの。邪魔だから」

リール「…どうするつもりですか」

エレナ「どうするって…破壊するのよ。あれを」

 

エレナは隕石を指さしながら言った。

 

リール「あれを…壊せるんですか」

エレナ「えぇ。壊せるわよ」

リール「なら!」

エレナ「でも、あなたがいるなら平気ね」

リール「どういう…ことですか」

エレナ「そのままの意味よ。あなたがいればあれを回避できる。もしくは破壊できる」

リール「な…」

エレナ「あなた 強い力を持ってるわね。しかもかなり強大」

リール「…」

エレナ「あの子が言ってたことはホントのことのようね」

リール「あの人って…誰ですか」

???「私のことですよ。リールさん」

 

その声を聞いた瞬間、リールとオードは振り返った。そして、目の前の光景にゾッとした。

 

エレナ「あの時以来ですね。リールさん」

リール「…え」

 

振り返るとそこにはエレナがいた。さっきまで目の前にいた人と全く同じ。

 

リール「え…え」

 

リールは前と後ろを何度も見た。そして確信した。エレナが2人いる。

 

リール「なんで…あなたが…2人…」

オード「くっ…あの化け物が2人」

エレナ「化け物とは失礼ね」

エレナ「私 そこまで悪いことしてないんですが」

 

見た目は全く同じだが、話し方が若干違う。

 

リール「なんなんですか…あなたは…」

エレナ「忘れましたか?あの時スープを作ったじゃありませんか」

リール「…スープ…あっ!」

 

リールは家に帰った時にエレナが家に来たことを思い出した。

 

リール「え…あの時の…」

エレナ「はい。若干口調が変わっていますが、あの時の私です」

リール「え…あの食べたら一瞬で回復した不思議なスープを…」

エレナ「はい。作りましたよ」

リール「え…え?」

エレナ「全く…そんなの作ってたの?」

エレナ「はい。この子が倒れかけていたので」

エレナ「はぁ…」

 

同じエレナが話しているから誰が誰なのか分からなくなる。話し方で見分けがつくが、それ以外だと本当に分からない。

 

エレナ「それで、何しに来たの」

エレナ「あれからしっかりと生活できているか見に来たんですよ」

エレナ「で、見てどうよ」

エレナ「はい。しっかりと生活できているようですね。ボーイフレンドもいるようですし」

オード「ボ…ボーイフレンド」ボソッ

リール「ボーイフレンドじゃありません!友達です!クラスメートです!」

エレナ「あ、そうだったんですね。それは失礼しました」

オード「なんか…調子狂うなぁ…」

エレナ「あ、そうだ」

エレナ「何ですか?」

エレナ「マモンとレットが攻撃してる。あなた 何かやったの?」

エレナ「え?そうなんですか?おかしいですね。何もするなと言ってあるはずですが」

エレナ「…命令が行き届いてなかったんじゃないの?」

エレナ「…残念ですが、そのようですね」

エレナ「…ひとつ言っておくわ」

エレナ「はい」

エレナ「…マーモが死んだわよ」

エレナ「!!」

エレナ「ゴーラがそう言ってたわ。狂気の魔女に殺されたって」

エレナ「あの人が生きてるんですか!?」

エレナ「…生きてる」

エレナ「よかったぁ…生きてて嬉しいです」

リール「!!」

 

リールはエレナの顔を見た。その顔は喜びに満ちた顔。今まで会ってきたエレナとは全く違う顔だった。

 

リール「あの…聞いてもいいですか?」

エレナ「ん?なに」

エレナ「なんでもどうぞ」

リール「あなた方は…同一人物ですか…それとも、赤の他人ですか?」

エレナ「私たちが同一人物か…」

エレナ「それとも他人か…ね」

エレナ「答えは簡単ですよ。リールさん」

エレナ「私らは意識を分断した1個体に過ぎないのよ」

エレナ「あ、でも私が本体ですよ」

 

目の前にいる2人のエレナは1人は分身、1人は本体だと明かした。

 

エレナ「この子は私の意識を3つに分けた内のひとつです。あと一人いますが、今どこにいるかは分かりません」

エレナ「どうせどこかにふらっと行ってんでしょ」

エレナ「だといいのですが…」

 

言葉が綺麗な方が本体、言葉がきつい方は分身だということが分かった。

 

リール「じゃあ元々は1人だったと言うことですか?」

エレナ「正解です」

エレナ「私らはこいつから生まれたのよ」

リール「あと一人ってことは、3人いるということですか?」

エレナ「はい。私を含めて3人います。意識を分断しているので、記憶を共有したり、感覚をリンクさせたりすることは不可能です」

リール「では…」

エレナ「なので私はリールさんに会ったことありますが、この子は初対面のはずです」

エレナ「まぁ、初対面ね」

エレナ「あなたが言ってた『またあなたですか』というのは恐らくあと一人の私のことだと思いますよ」

リール「え…」

エレナ「だから先程 話が合わなかったんだと思います」

リール「じゃあ…学院を襲ったのは…」

エレナ「え?誰か襲ったの?」

エレナ「それは恐らく、あと一人の私ですね」

エレナ「全く…」

リール「そんな…じゃあ最初から…」

エレナ「というのも、私はずっとこの街で生活していましたから」

リール「え?」

エレナ「私はドレインについて研究してたわ」

リール「え!?」

エレナ「あと一人の私は一体何しているんでしょうか」

リール「ええええ!?」

 

リールは驚きの連続だった。

 

リール「じゃあ…私の邪魔になるっていうのは…」

エレナ「あーそれね。あれが落ちてくると地面に穴が空いてそこからドレインが出てくるのよ」

リール「え!?」

エレナ「だから研究の邪魔になるの。今モルモットを置いてるからそれが壊されたらこの街は最後よ」

リール「え!?」

エレナ「はぁ…マモンとレット。2人にはあとでキツく言っておかないとダメですね」

エレナ「そうね。これ以上この世界に干渉するのもよくないわ」

リール「え…あの…」

エレナ「?」

リール「私 グラムって方から魔女さんの昔の話を聞きました。エレナって人が学院に連れ去ってこの街は破壊されたって」

エレナ「…」

リール「それは、あなた方の事ですか?」

エレナ「…はい。私のことですね」

リール「!!」

エレナ「私は元々1個体でしたが、私の中には3つの意識がありました。1つは私。もう1つはこの子。そして最後の1つがこの場にいないもう1人の私。私が昔あの学院の学院長になったのは魔法を発展させて暮らしを良くしようという考えがあったからです。ですが、日に日に強くなる自分とは違う意識が表に出てくることがありました」

リール「それが…」

エレナ「私は意識が3つもある上に、自分以外の意識が表に出ると、その間の記憶はありません。なので、知らないうちに事が進んでいることがあります」

リール「じゃあ…」

エレナ「はい。あなたの言う魔女さんをあの学院に引き入れたのは、3つ目の私の意識でしょう。そして、それが引き金となってこの街が滅びました」

リール「嘘…」

エレナ「…あの事件のあと、私は意識と体を3つに分裂させました。1つは暮らしを良くするための魔法を研究する意識。もう1つはこの世に存在するドレインと呼ばれる異質な存在を研究する意識。そして最後に、誰も持ち得ない強大な魔法で禍異者(マガイモノ)になるという意識」

リール「え…禍異者(マガイモノ)って…」

エレナ「禍異者(マガイモノ)とは、この世に存在するドレインと呼ばれる異質な存在を束ねている存在。いわばドレインの王のような存在ですね」

リール「嘘…」

オード「ちょっと待て」

エレナ「はい。何ですか?」

オード「意識を3つに分裂ってことは、少なからず1個体だったあんたの心にはそういう存在になるって考えがあったってことだよな」

エレナ「…」

オード「それが意識として働き、本能のままに動いている。そういう事だよな」

エレナ「あなた、頭の回転が速いですね」

エレナ「まぁ、そういう事よ。私だって元々この子が持ってたドレインについてもっと研究したいって考えから生まれたのよ。その考えが意識となって、今ここに存在している。さっきのやつもこの子が元々持ってた考えから生まれたもの。だから少なからずこの子にもそんな考えがあったってことよ」

オード「やっぱり…」

リール「じゃあ分身であるあなたに攻撃したら本体のエレナさんはどうなりますか?」

エレナ「あ、私には攻撃しない方がいいわよ」

リール「な…何故でしょうか」

エレナ「私、こう見えて "ドレイン" だから」

リール「え!?」




〜物語メモ〜

極寒の地(アブソリュート・フレー)
レットが使った魔法。
氷属性のレーザーを地面に向けて放ち、周囲を凍らせる魔法。レットの魔力が強ければ強いほど早く限界域まで凍らせることができる。その際地面に足がついていたら体が凍って動けなくなるが、ジャンプしたり箒に乗ってたりすることで、体が凍るのを防ぐことができる。

隕石(プロメテウス)
マモンが使った魔法。
マモンの土属性魔法の力を使って地脈を引っ張ることで成立する魔法。威力は申し分ないが、地脈を宇宙まで引っ張らないといけないため、攻撃まで時間がかかる。おまけに通常であれば地脈を引っ張れる距離は限られているが、マモンに限り、無限に伸ばすことができる。この魔法は過去に1度も使われなかったマモン専用の魔法。

エレナの秘密
エレナは元々普通の人間だった。他の人間と同じように生き、同じように勉学に励んだ。しかし、その途中でドレインや禍異者(マガイモノ)について知ったことで、エレナはそれについて深く知りたいと考えた。最初は普通だったが、日が経つにつれてその考えが意識としてエレナの中で誕生し、その意識が時々本体の意識と入れ替わることがあった。入れ替わっている間、本体のエレナにはその時の記憶が無いため、エレナの本体が知らないところで色々と事が進んでいることがある。
昔、魔女さんをエレナ学院に引き入れた際もエレナの意識が入れ替わっており、本体のエレナは当時のことを知らず、エレナは魔女さんは最初からエレナ学院の学生だとしか考えていなかった。しかし、実際はエレナの禍異者(マガイモノ)になりたいという意識が魔女さんという強大な存在を感知し、自分の中に取り込もうとしたため、魔女さんはそれに対する拒絶反応からエレナ学院やスペルビア王国の街を破壊した。


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第40話 リールとエレナの恐怖

私の名前はリール。

今エレナ学院の校庭にいます。

今目の前にエレナさんが2人います。

もうこの時点で驚きです。

なのに意識が3つだとかあと一人の私だとか言うもんですから話が混在してきました…

しかもエレナさんがドレインだって言いました。

学校を襲った人が3人もいてしかもドレインだなんて考えられないです…

ですが、何やら私たちに敵意は無いようです。

それに関しては安心しています。

あのレベルの人が敵になっちゃったら私はもう助からないでしょう。

このまま事が運べばいいんですが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エレナ「私、こう見えて "ドレイン" だから」

リール「え!?」

 

リールは突然の告白に驚いた。

 

リール「え…エレナさんが…あの…ドレイン…」

エレナ「えぇ。そうよ。だから攻撃しない方がいいわよ」

リール「攻撃したら…どうなるんですか」

エレナ「あなたに感染してあなたもドレインになるわよ」

リール「ひえっ…」

エレナ「なのであまりこの子には攻撃しないでくださいね」

リール「は、はい…」

エレナ「さて、早くあれ破壊しようかしら」

エレナ「そうですね。それに、あとでマモンとレットにはキツく言っておかないといけませんから」

 

パキッ…パキッ…

2人のエレナが並んで立った。

 

エレナ「あれ、どうやって破壊しますか?」

エレナ「そうね。派手にバーンっと爆破しない?」

エレナ「それだと周りに被害が出ませんか?」

エレナ「あ、そうね。私もモルモットを壊されるのは嫌だし」

エレナ「う〜ん…困りましたねぇ」

エレナ「というかこのレットがやったこの氷。邪魔だからどうにかしない?足元悪いと魔法に影響するし」

エレナ「そうですね。焼き払いましょうか」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…

途端に2人の周りにマナが集まってきた。

 

リール「え」

オード「あの2人…何かやったのか?」

エレナ「…」

エレナ「…」

 

ボボボッ…ボボッ…

集まったマナが紫色の炎を纏った。

 

リール「え、火?」

オード「あの人って闇じゃなかったのか?」

リール「え、そのはずですが…」

エレナ「さて、始めましょうか」

エレナ「焼き払ってください」

 

バゴォォォォォォォォォン!

炎を纏ったマナが一瞬で周囲の氷を溶かした。

 

エレナ「…」

エレナ「…」

リール「…え?」

オード「な…なんだよあれ…あれが魔法か?」

 

2人のエレナは顔色変えずに立っている。その間、炎を纏ったマナはスペルビア王国全土を駆け巡っていた。

 

オード「なぁリール」

リール「は、はい…」

オード「今の…なんだ…」

リール「えっと…火属性魔法…でしょうか…」

オード「え、俺の知ってる火属性魔法じゃねぇ…知らない魔法だ…」

リール「…え」

エレナ「ふぅ。このくらいかしら」

エレナ「随分力が弱くなってますね。レット」

エレナ「そうね。寝てる間に弱くなったのかしら」

エレナ「はぁ…サボってたんですね。修行を」

エレナ「…かもね」

 

2人のエレナは空を見た。

 

エレナ「あとはあれだけね」

エレナ「そうですね。どうしましょうか」

エレナ「あ、そうだ。ねぇあなた」

リール「は、はい!」

 

エレナはリールに質問した。

 

エレナ「あなた 守りの魔法は使える?」

リール「ま、守りの魔法?」

エレナ「そうよ。結界みたいなものよ」

リール「あ、えっと…使えますがその…」

エレナ「大きな結界が使えない感じですか?」

リール「は、はい…」

エレナ「じゃああなたは?」

 

エレナは次にオードに質問した。

 

オード「いや、俺も結界は…」

エレナ「う〜ん…」

エレナ「あ、じゃあ私が結界を展開しましょうか?」

エレナ「そうねぇ。じゃあ私があれを破壊しようかしら」

エレナ「爆破するなら派手にお願いしますね」

エレナ「あんたそんなキャラだった?」

エレナ「え?」

エレナ「まぁいいわ。それじゃあ始めましょうか」

エレナ「はい。あ、お2人は私のところに来てください」

リール「は、はい」

 

リールとオードはエレナの近くに寄った。

 

エレナ「では、始めますね」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…

エレナの周りにマナが集まった。

 

エレナ「守りなさい」

 

ガシャン!ガシャン!ガシャン!

突然結界が展開された。その結界はスペルビア王国全てを覆えるくらい大きな結界だった。

 

リール「わ…すごい…」

オード「なんだこれ…でけぇ…」

エレナ「さて、始めましょうか」

エレナ「派手にお願いしますね。結界の方は大丈夫ですので」

エレナ「もし壊せなかったらあれだから魔法の準備してて」

エレナ「任せてください」

エレナ「それじゃ、いくわよ」

 

ヒュォォォォォォォ!

エレナの周りに紫色の光が出てきた。

 

エレナ「え、まさかその魔法って…」

エレナ「そりゃあんな大きいものを壊すんだからこれくらいしないとね」

エレナ「え!?」

エレナ「さ、いくわよ〜!」

エレナ「2人とも!伏せて下さい!」

リール「え?」

オード「え?」

エレナ「無に帰す炎(ディミア・レヴ・フレア)!」

 

バゴォォォォォォォォォン!

突然隕石が大爆発を起こした。

 

リール「えええええええええええ!?」

オード「えええええええええええ!?」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

大爆発によって隕石は粉々になったが、その欠片がスペルビア王国に落ちてきた。

 

エレナ「あらら…やっちゃったわ」

エレナ「もう…だから言ったじゃないですか。被害が出ませんか?って」

エレナ「あはは…でも準備してくれてるんでしょ?」

エレナ「…はぁ。2人とも もう大丈夫ですよ。あとは私がやりますので」

リール「え?」

オード「それは…どういう…」

エレナ「…」

 

バッ!

エレナは大きく手を広げた。

 

エレナ「魔弾(ブラック・ベルト)

 

ブゥン…ババババババババババババババ!

エレナの後方に魔法陣が展開され、そこから紫色の弾が何発も発射された。

 

ドカン!ドカン!バゴン!バゴン!

エレナは1発も外さずに魔弾を当てた。

 

パラパラ…パラパラ…

落ちてきた欠片が粉々に砕けた。

 

エレナ「…ふぅ。これで十分ですね」

リール「す、すごい…」

オード「あんな大きな隕石をたった2つの魔法で…」

エレナ「これが私たちの力よ」

 

リールはこの時改めてエレナの怖さを知った。これほどまでに強い人がこの世に3人も存在していると考えるとさらにゾッとした。

 

リール (この人たちは…手を出しちゃダメな人たちです…)

 

リールは震えが止まらなかった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

数分前

 

場所…スペルビア王国が見える高台

 

レット「…!!」

 

レットは異変に気づいた。

 

レット「な…なんだ…俺の氷が…溶けた」

 

レットはその様子を見ていた。

 

レット「何故だ!誰がやった!誰が俺の氷を!」

 

レットはスペルビア王国を見渡した。

 

レット「クソッ…誰だ…誰がこんなことを…な!?」

 

レットはこの時、エレナ学院の校庭にいる人物を目にした。

 

レット「な…なぜあいつが…エレナ…てめぇ…」

 

レットは氷を再展開しようとした。

 

レット「あいつ…俺の氷を…」

 

ドクン!

レットは突然体が動かなくなった。

 

レット (な…なんだ…体が…)

 

レットは焦っていた。

 

レット (!?)

 

レットはエレナ学院の校庭を見た。そこにはレットを睨んでいるエレナの姿があった。

 

レット (まさか…この距離で俺の位置が…)

 

バゴォォォォォォォォォン!

突然隕石が大爆発を起こした。

 

レット (!!)

 

レットが動けないでいるとマモンが落とした隕石が粉々になった。

 

レット (な…なんだと…)

 

ブゥン…

レットは突然体が動くようになった。

 

レット「うぉっ…動けるようになった。なんだよさっきの…」

 

レットは自分の腕を掴んだ。

 

レット「なんだよあいつ…エレナのくせに…」

 

レットは恐怖で震えていた。

 

レット「…チッ!」

 

ヒュッ…

レットはその場から立ち去った。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…スペルビア王国上空

 

マモン「ふっ…これで終わりだな。流石にこれを壊せるやつはあいつ以外に…」

 

バゴォォォォォォォォォン!

 

マモン「!?」

 

響くような大きい音とともに隕石が粉々に砕けた。

 

マモン「な!嘘だろ!?俺が持ってきた隕石だぞ!?誰が壊した!」

 

マモンは目を凝らした。

 

マモン「…チッ。見えねぇ。仕方ない。降りて確認してやる。誰だよ俺の隕石を壊したやつは」

 

ビュン!

マモンは地上に降りることにした。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院 校庭

 

エレナ「ん?」

エレナ「!」

 

2人のエレナは異様な気配を感じた。

 

エレナ「この気配…分かる?」

エレナ「そうですね。この気配はマモンだと思いますよ」

エレナ「…はぁ」

エレナ「リールさん。男の子さん」

リール「は、はい」

エレナ「私の後ろに来てください」

リール「何かあるんですか?」

エレナ「私の仲間がここに来ます。さっき隕石を落とした人が」

リール「え!?さっきのを落とした人が来るんですか!?」

エレナ「はい。ですが安心してください。私は強いので負けませんよ」

リール「は、はぁ…」

エレナ「…来るわ」

 

ドゴォォォォォン!

エレナがそう言った途端、何かが地面に落ちてきた。

 

エレナ「…」

エレナ「2人とも。絶対私から離れないでくださいね。私はここから動きませんから」

リール「は、はい!」

オード「分かりました!」

マモン「チッ…誰だよ。俺の隕石を破壊したやつは」

 

煙が晴れてきた。

 

マモン「!?」

 

マモンは目の前の光景に目を見開いた。

 

マモン「な…なんで…お前が…」

エレナ「…随分なことしてくれたわね。マモン」

エレナ「こんなことが許されると思っているんですか?マモン」

マモン「なんでお前が2人もいるんだよ!エレナ!」

エレナ「関係ないでしょ」

マモン「な…」

エレナ「言ったところでどうせ死にますので」

マモン「くっ…」

エレナ「私たちの前に現れたんだから死にたいって事よね」

マモン (チッ…なんでこんな時にこいつが…しかも2人もいるじゃねぇか…)

エレナ「さぁマモン」

マモン「!!」

エレナ「死ぬ覚悟はできましたか?」

 

2人のエレナは殺気を放っていた。

 

マモン (…すげぇ殺気…こりゃあ殺されても無理ないな。すまねぇ…マギ)

エレナ「じゃ、死んで」

 

ゴウン…ゴウン…ゴウン…

エレナは地中から闇を発生させた。

 

マモン「な…お前!」

エレナ「喋らないでください」

 

ガシャン!

エレナはマモンの手足と口を封じた。

 

エレナ「鼻は覆ってませんので呼吸はできますよ」

マモン「っ!!」

 

マモンは必死にもがいていた。

 

エレナ「あらあら。随分と滑稽ね。マモン」

エレナ「私の大事な街を破壊しようとしてたんですもの。殺されても文句はありませんよね?マモン」

マモン (クソッ!ふざけるな!レット!来い!今すぐこいつらを叩け!レット!)

 

しかし、レットからの返事はなかった。それもそのはず。レットはエレナに睨まれてあの場から逃げ出していたのだから。

 

マモン (レット!おい!レット!)

エレナ「あら、今更命乞い?」

マモン「!」

エレナ「みっともないですよ。マモン」

 

マモンは逃げようと必死になった。

 

エレナ「ねぇ、口の封印を解いて。最後に言い残すことがあるかもしれないわ」

エレナ「そうですね。解除しましょうか」

マモン「!」

 

パキン!

エレナはマモンの口の封印を解いた。

 

エレナ「さぁ、最後に言い残すことは?」

マモン「ふふっ…ははははは!」

エレナ「?」

リール「!」

オード「!」

 

マモンは突然笑いだした。

 

マモン「これが死か!なんと心苦しい!こんな心残りがあるまま死ぬとは!俺も落ちたものだ!しかもこの女に殺されるなんてなぁ!」

エレナ「…」

マモン「こうなるんだったら最初からお前を殺しておけば良かった!あの時!お前が死にそうになってたあの時だ!情けで生かしたマギは大バカ野郎だ!俺はあの時殺せと言った!だがマギはそうしなかった!」

エレナ「…」

マモン「こうなる予感はしてた!お前はこの世界で禁忌に触れたうちの1人!あと2人いるがそいつらも同じだ!お前らはもうこの世には存在しちゃならねぇんだ!ここで殺さねぇと後々面倒だ!」

エレナ「…セリフが長いですよ。端的に言ってください」

マモン「はっはははは!つまりだな!お前が俺の口の封印を解いたのが間違いだったんだ!」

 

ドゴン!ビュン!

突然地面が割れ、地脈が姿を現した。

 

エレナ「?」

マモン「さぁ斬れ!このよく分からねぇ封印を解け!」

 

パキン!パキン!パキン!

地脈はマモンの命令に従って封印を解いた。

 

エレナ「しまった!」

マモン「じゃあな忌み子!俺は先に戻ってるぜ!はーっははははははは!」

 

ビュン!

封印を解いたマモンは一目散に地脈を使って逃げた。

 

エレナ「あちゃ〜…」

エレナ「逃げられちゃいましたね」

エレナ「まぁこれでこの街には手を出さないでしょ」

エレナ「少なからず私たちがこの街にいることが分かったら手を出さないと思いますよ」

エレナ「2人とも。大丈夫?」

リール「え…あ…」

オード「お…」

エレナ「?」

 

リールとオードは言葉を出せなかった。

 

エレナ「あ、あれ解除したっけ」

エレナ「あ!忘れてました!」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…

エレナはあるものを解除した。

 

リール「ケホッ…ケホッ…」

オード「がっ…はぁっ…はぁっ…」

エレナ「ごめんなさい2人とも!つい魔法を…」

リール「大…丈夫…です…」

オード「はぁ…死ぬかと思った…」

エレナ「でも死んでないのはすごいわね」

エレナ「確かにそうですね」

エレナ「普通なら死んでもおかしくないのに2人とも生きてた」

エレナ「不思議ですね。水属性魔法なのに」

スカーレット「リール!!」

ディア「オード!」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

スカーレットとアンナ、ディア、ノーラが箒に乗って校庭に来た。

 

スカーレット「2人とも大丈…」

アンナ「!!」

ディア「な…なんでお前が!」

ノーラ「しかも2人も…」

 

4人はエレナの存在に気づいた。

 

エレナ「? 私たちの事かしら」

エレナ「そのようですね」

スカーレット「あなた…またリールを傷つけに来たの…」

エレナ「え?」

アンナ「もう許さない…今度は私がリールを…」

リール「待ってくださいみなさん…」

スカーレット「リール!」

リール「はぁ…はぁ…この人たちは…悪くありません…」

スカーレット「どういう事よ…」

オード「そうだ…この2人は街を守ったんだ…何もするな…」

ディア「オード…どういう事だよ」

エレナ「…ねぇ」

エレナ「何ですか?」

エレナ「この子たち 私たちを守ろうとしてるのかしら」

エレナ「…そのようですね」

エレナ「…」

エレナ「私たちはもう行きましょうか」

エレナ「…そうね。これでマモンとレットは追い払えたわけだし」

エレナ「それではリールさん男の子さん。お元気で」

 

スタスタスタ

2人のエレナはその場から去ろうとした。

 

リール「待ってください!」

エレナ「!」

エレナ「!」

 

リールは2人のエレナを引き止めた。

 

リール「あなた方は一体…」

エレナ「私たち?」

エレナ「…う〜ん難しい質問ですね」

リール「…」

エレナ「私たちは自分の利益で動いているの。その過程で不利益になることは全て排除するの」

エレナ「なので誰が味方で誰が敵なのかは定まっていません。ただのお姉さん的なポジションですね」

リール「でも…あの人たちと何か繋がりがあるんですよね…あなたは一体…何者なんですか」

エレナ「…マモンは元々私から生まれた分身体の1人なんですよ」

リール「!」

エレナ「今回来てたレットもそうです。もちろんこの子も私の分身です」

オード「え、分身ってそんなに多く作れるものなのか?」

エレナ「普通なら無理です。体が形を保てなくなります」

リール「え…じゃあ…」

エレナ「…さっきマモンが言った "忌み子" という言葉を覚えていますか?」

リール「忌み子…」

エレナ「はい。私がそう呼ばれるようになったのは禁忌を犯したあの日から」

リール「禁忌?」

エレナ「はい。禁忌とは、この世で触れてはならないものを指します。そしてその禁忌の1つに "分裂" というものがあります。私はその禁忌に触れてしまい、忌み子と呼ばれるようになりました」

リール「どういった禁忌ですか…」

エレナ「…代償なしに分身体を増やすことができます」

リール「!」

エレナ「通常、分身体というのは自身の半分の力を使って作り出すので、1人で1つの分身しか作れないんですよ。ですが私の場合、その半分という代償を受けずにいくつもの分身体を作ることができるんです」

リール「それは…魔力が半分になるという代償も…」

エレナ「はい。受けずに行使できます」

リール「!!」

オード「でももうあんたの分身体はそこにいるのとあと1人いるんじゃないのか!」

エレナ「はい。確かにこの子とあと1人 分身体がいますが、他にも分身体がいるんですよ」

オード「な…」

エレナ「私は今もそうなんですが、闇属性魔法の適性者です。なので()()()()()()()()()は私と同じ 闇属性魔法を使うことができます。しかしながら、それ以外にも私の分身体はいます。彼らは私が集めた魔素を使って作られた分身体です」

リール「それって…」

エレナ「火属性の魔素を纏った私の分身体の名前はサリエラ。水属性の魔素を纏った分身体の名前はラビ。氷属性の魔素を纏った分身体の名前はレット。風属性の魔素を纏った分身体の名前はマーモ。雷属性の魔素を纏った分身体の名前はゴーラ。土属性の魔素を纏った分身体の名前はマモン。光属性の魔素を纏った分身体の名前はマギです。先程リールさんと男の子さんが会った人物は 土属性の魔素を纏った私の分身体なんですよ」

リール「え!?」

エレナ「私が負けないと言ったのは相手が私の分身体だったからです。分身に負けるほど本体は落ちぶれていませんよ」

オード「でもなんであんたの分身体が攻撃してきたんだよ」

エレナ「さぁ、何故でしょうね」

オード「なに…」

エレナ「私は攻撃するなと言ってあったんですが、何故か命令を無視していますね」

オード「そんな無責任な!」

エレナ「なのでこれから私はあの人たちがいる場所に向かいます。行ってあの人たちをボコボコにして来ますので」

リール「ちょっと待ってください!」

エレナ「はい」

リール「勝手で申し訳ないんですが、このままここにいてくれませんか!」

エレナ「!」

リール「私はあなたのようなすごい魔女さんがいてくれた方が安心します!私の目標になる人だと思います!なのでここに残ってください!」

エレナ「…どうする?残る?」

エレナ「…そうですねぇ。分かりました。残りますよ」

リール「え!」

エレナ「まぁどうせ攻撃することないと思うから私も残っていいと思うわ」

エレナ「じゃあ残りましょうか」

リール「え…いいんですか?私の勝手なお願いで…」

エレナ「はい。構いませんよ」

リール「や…やった…」

エレナ「さて、話は終わりましたか?」

リール「あ、えっと…」

エレナ「そろそろ私たちが消えないとみなさんが怒りますので」

リール「?」

 

するとエレナ学院の校庭にスペルビア王国の国民たちがぞろぞろと集まってきた。

 

国民「あいつだ!あいつがやったんだ!」

国民「よくも俺たちを!」

国民「殺せ!あの魔女を殺せ!」

 

ドタドタドタ!

国民たちは一斉に走ってきた。

 

リール「え…なんで…」

エレナ「どうやら私たちがやったと勘違いされてるようですね」

リール「え…」

エレナ「さ、私たちはここを離れましょうか」

エレナ「そうですね。このままだと殺されかねませんので」

リール「え、でも…誤解を解けば…」

エレナ「それは難しいですよ」

リール「な、何故でしょうか」

エレナ「私のことを犯人だと思っている人に私は善人ですと言ったところで何も変わらないからです。やるだけ無駄ですよ」

リール「そんな…」

エレナ「では私たちはこれで。また会える日を楽しみにしていますよ。リールさん」

 

ヒュォォォォォォォ…

2人のエレナはその場から姿を消した。

 

リール「そんな…エレナさん…」

国民「お前ら!大丈夫か!怪我はないか!」

スカーレット「大丈夫です!私たちは何もされていません!」

国民「兄ちゃんたちも大丈夫か!?」

オード「はい。大丈夫です」

国民「おーい!みんな無事だとよー!」

ノーラ「なんなんだ…この人たち…」

国民「よしっ。とりあえずあの魔女を追い払えた!やったな兄ちゃんたち!」

ディア「え…どういう事だ」

国民「あの魔女のせいで私たちは凍らされたんだ!それをあなたたちが追い払ってくれた!ありがとう!」

リール「え…」

国民「いやーほんと!ありがとう!」

アンナ「え…私たち…なにも…」

 

フッ…

突然目の前に人が現れた。

 

リール「!!」

レヴィ「…」

 

目の前に現れたのは レヴィ学院長だった。

 

レヴィ「…リールさん」

リール「…はい」

レヴィ「あなたを学院に復帰させます」

リール「!」

レヴィ「事の経緯は全部見ていました。その上で判断します。あなたはこの学院にいなければならない人です」

リール「…」

レヴィ「学院を追い出すマネをしてすまなかった。これからは全力で君を守ろう」

アンナ「やったねリール!」

リール「え…」

スカーレット「これでまた一緒に生活できるわね!」

リール「え…」

 

この時リールは不思議に思っていた。

 

リール (あんなに私を追い出そうとしてたのに今度は学院に復帰させるなんて…何かあるのでしょうか)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…スペルビア王国が見える高台

 

グラム「…レットがいた形跡がありますね。ここで何やってたんでしょうか」

 

グラムはエレナ学院の校庭にいるリールたちを見た。

 

グラム「…レヴィ。あなたの判断は軽率です。あの子を追い出すなんて何考えてるんですか。リーナに言われたんじゃないんですか?リールを守ってって。それを放棄することは私が許しませんよ。己が責任はしっかり果たさないと。ここで投げ出すならあなたを破門にしますよ。レヴィ」

 

グラムはそう言うとその場から立ち去った。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…エレナ学院(校庭)

 

リール「!」

 

リールは不思議な気配を感じ、ある場所を見つめた。

 

リール (今…あそこに…)

アンナ「リール!」

 

ギュッ!

アンナがリールに抱きついた。

 

リール「わ!ア、アンナ…」

アンナ「やったねリール!これでみんな一緒だよ!」

リール「あ、はい!そうですね!」

オード「リール!」

リール「あ、オード君」

オード「こ、これからも…よろしくな」

リール「はい!よろしくお願いします!」

オード「…///」

 

オードは顔を赤くした。




〜物語メモ〜

無に帰す炎(ディミア・レヴ・フレア)
エレナが使った魔法。
対象物を爆破して粉々に粉砕する魔法で、対象物をロックオンするため回避は不可能。エレナは他にも魔法を覚えているが、今回この魔法を使ったのは対象物が大きいということと、もう1人のエレナが派手にお願いしますと言ったから。

エレナの分身体
エレナの分身体の数は実に9人。
マギ、ラビ、サリエラ、マモン、レット、ゴーラ、マーモ、エレナ、エレナの9人。

禁忌
この世界には禁忌と呼ばれる術が3つ存在する。
エレナはそのうちの1つである "分裂" という禁忌に触れた。
そのため、分身体を代償無しに作り出すことができる。
加えて、普通なら分身体は自身の力の半分が上限だが、エレナの分身体はエレナ本人と同等の力を持つ。
そのため、エレナ並の魔法使いや魔女が本人含めて10人存在していることになる。
しかし、マーモは魔女さんに倒されたため、現在は残り9人。


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第41話 リールと魔力瓶

私の名前はリール。

今学院長室にいます。

隕石が落ちてきたあの日から何日か経ちました。

私はレヴィ学院長に呼ばれたので、今学院長室にいます。

何やらお話があるようです。

あ、ここ何日かで魔女さんの家から私物を寮に移しました。

魔女さんの家に戻ったのにすぐここに戻ってくることになるとは思いもしませんでしたよ…

それで今回は何故かメリーさんとラミエ先生とラーフ先生とレヴィ学院長が学院長室にいます。

ピリピリとした嫌な空気の中、私は変な汗をかきながらお話を聞くことになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…エレナ学院 学院長室

 

メリー「…で、今更リールちゃんを戻すってどういうことです?学院長」

レヴィ「…それについては今から話します」

メリー「まさか、今回の件でリールちゃんが必要になったから自分勝手に戻したんじゃないですよね?」

レヴィ「…ちゃんと理由はあります」

メリー「納得のいかない理由だったらビンタしますから」

ラミエ先生「メリー…」

レヴィ「……先日、私の知人からある話を聞きました。それは、エレナがブエルタ王国を襲ったという話でした」

ラミエ先生「ブエルタ王国が?あそこは風属性魔法の適性者しか入れないはず…闇属性魔法の適性者であるエレナがなぜ…」

レヴィ「それに関しては分かりません。しかし、ブエルタ王国の王 キファが重傷で治療を受けているそうです」

ラーフ「なんと…」

レヴィ「この事から、エレナは十二使徒たちを襲うくらいの活動量となった事が分かります」

メリー「…それで?」

レヴィ「…リールさんもいずれ彼女に狙われるだろうと考え、私たちの監視の下、厳重な警戒態勢で臨もうと考えたわけです」

メリー「…今更ね。レヴィ学院長」

レヴィ「…」

メリー「最初からリールちゃんを追い出さなければこうはならなかったでしょ。少しは考えたらどうです?今回はリールちゃんじゃないかもしれないけど、それでもリールちゃんのお陰で助かった命は数多くあります。あなたはそれくらい大きな存在を手放したんですよ。分かります?」

レヴィ「…えぇ。重々承知しています」

メリー「これに懲りたら二度とリールちゃんを追い出さないで」

レヴィ「…はい」

ラミエ先生「それで?他の十二使徒は大丈夫なの?」

レヴィ「はい。今のところは」

ラミエ先生「そう。分かったわ」

レヴィ「…リールさん」

リール「は、はい!」

レヴィ「…今回のことはすまなかった。私のせいであなたを危険な目に遭わせてしまった。反省している」

リール「あ、えっと…大丈夫ですよ。私は今もこうピンピンしてますので」

レヴィ「…すまない」

メリー「ほんと、いい迷惑よね」

ラミエ先生「メリー やめなさい」

メリー「嫌よ。リールちゃん死にかけてたもん。これくらい言っても足りないくらいよ」

ラミエ先生「はぁ…」

リール「メリーさん。私は大丈夫ですよ。何ともないですから」

メリー「ダメだよ!そんなこと言ってたらいつ体を壊すか分からないよ!?」

リール「大丈夫ですよ」

メリー「むぅ…」

リール「学院長。先程言いましたが、私はもう大丈夫です。ですのでお気になさらず」

レヴィ「…すまない」

ラミエ先生「さ、これで終わりね。仕事に戻るわ」

メリー「私もそうする」

ラーフ「リールさんは自室にお戻りください。もしご予定がありましたらそちらの方へ」

リール「はい。では、失礼します」

 

ラミエ先生、メリー、リールは部屋を出た。

 

レヴィ「…」

ラーフ「…レヴィ学院長」

レヴィ「ラーフ」

ラーフ「…はい」

レヴィ「…私はなんと愚かな事をしてしまったのでしょう。あれだけ守ると言って魔女さんの家を訪れたにも関わらずそれを放棄してしまいました」

ラーフ「…」

レヴィ「これでは学院長失格ですね」

ラーフ「…」

レヴィ「すみませんリールさん。私のせいで…」

ラーフ「…」

 

ラーフは何も言わず、ただ聞くだけだった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…アースの部屋

 

側近「アース様!!緊急事態です!!」

アース「どうした!」

側近「先程 メロ様が統治されている冥界から連絡がありました!」

アース「冥界から?どういう連絡だ」

側近「現在冥界はエレナによって壊滅状態にあるという連絡です!」

アース「な…なんだと…」

側近「加えて 先程スペルビア王国のジン様とマーク様から無事だと報告がありました」

アース「よかった…とりあえずジンとマークは無事なんだな」

側近「ですがここでひとつ不可解なことが…」

アース「不可解なこと?それはなんだ」

側近「…あの時、アース様のご命令通り、他の十二使徒の方々をスペルビア王国に向かわせましたが、十二使徒の方々が着く頃には事件が解決されていたんです」

アース「何?」

側近「というのも、向かっている途中で突然スペルビア王国の上空で大爆発が起こったということです」

アース「爆発だと?氷漬けにされたんじゃないのか!!」

側近「はい。後に聞いたところによると、何者かがスペルビア王国全土を氷漬けにして隕石で破壊しようとしていたそうなんです」

アース「な…」

側近「しかし、大爆発によって隕石は防がれ、氷も全て溶けたということです」

アース「そうか…とにかくジンたちが無事ならよかった」

側近「…アース様」

アース「なんだ」

側近「…スペルビア王国で起こったこの一連の事件はある人物によって解決されました」

アース「ほう。誰だ」

側近「それが…」

アース「?」

 

アースの側近は口に出そうとしなかった。

 

アース「…どうした。誰が解決したんだ」

側近「…えっと…解決したのは…」

 

側近は1度深呼吸して答えた。

 

側近「…現在 警戒対象に指定されている…エレナ…です」

アース「…なに…エレナだと…」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…リールとアンナの部屋

 

リール「ふぅ…やっと帰ってこれました…」

 

リールが学院長室から帰ってきた。

 

アンナ「あ、リール。どうだった?」

リール「なんか…学院長に謝罪されました…」

アンナ「へぇ」

リール「他にもラミエ先生やメリーさん、ラーフ先生までも学院長室に来てましたよ」

アンナ「け、結構いたんだね…」

リール「はい。しかも空気がピリピリしててずっと緊張してましたよ…」

アンナ「あはは…お疲れ様」

リール「はい…」

アンナ「あ、そうだ」

リール「?」

アンナ「これ、食べる?」

 

アンナはクッキーを出した。

 

リール「これは?」

アンナ「クッキーっていう名前のお菓子だよ」

リール「クッキー…」

 

パクッ

リールは手に取って食べた。

 

リール「あ、美味しい…」

アンナ「ほんと?よかったぁ…」

リール「これ、アンナが?」

アンナ「うん。元々リールのために作った物なの。家に戻っちゃったから少しでも元気を取り戻して欲しいって思って…」

リール「…ありがとうございます。アンナ」

アンナ「…うん!」

リール「もっと食べてもいいですか?」

アンナ「うん!どうぞ!」

 

その後、リールはアンナの作ったクッキーを食べながらアンナと話をしたのだった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

場所…冥界

 

メロ「ケホッ…ケホッ…」

エレナ「あらあら…あなたも滑稽ね」

メロ「なんで…あなたが…」

エレナ「何でって 魔核を集めるためよ」

メロ「な…何故それを…」

エレナ「さぁ?それは教えないわ」

メロ「…あれは私たち十二使徒のもの…あなたには渡さない…」

エレナ「あらそう。確かブエルタ王国の…」

メロ「!」

エレナ「あ、そうそう。キファだったかしら?そっちの名前は覚えてないわ。狂風の使徒 レギンね。あの人も同じことを言ってたわ」

メロ「なぜ…その名前も…」

エレナ「あの人にも同じことを言ったけど、私 十二使徒の名前 全員知ってるわよ?」

メロ「!!」

エレナ「あなたの名前は 冥水の使徒 モドノル。豊水の使徒 ウロウを生の水とするならあなたは死の水といったところかしら?」

メロ「…」

エレナ「さぁモドノル。あなたの魔核を渡しなさい。渡せばこのまま何もせずに帰るわ」

メロ「…嫌」

エレナ「…」

メロ「渡さない…あれは…リノからもらった大事なもの…」

エレナ「…レギンも同じことを言ってたわね。大事なものだって。でもね、渡さないとあなたが死ぬわよ」

メロ「構わない…それで魔核が守れるなら…」

エレナ「…そう」

 

ギギギギギギギギ!

エレナはメロを睨んだ。その瞬間、メロは全身を押し潰されたような感覚に襲われた。

 

メロ「がぁぁ…うっ…ぁぁぁ…」

エレナ「…」

 

エレナは攻撃をやめようとしなかった。

 

メロ「うぅぅ…がっ…」

エレナ「さ、渡しなさい。今度はこんなんじゃないわよ」

メロ「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

メロは体力を大幅に削られた。

 

エレナ「さぁ。早く」

メロ「はぁ…はぁ…わ…渡さ…ない…絶…対に…」

エレナ「…そう。なら手段はひとつね」

 

ボウン…

エレナは紫色の玉を出現させた。

 

メロ「はぁ…はぁ…」

エレナ「じゃ、さようなら。冥水の使徒 モドノル」

 

ギュォォォォ…

その玉はメロの体に吸い込まれるようにして入った。

 

メロ「はぁ…はぁ…一体…なに…っ!!」

 

ドクン!

メロは突然心臓を握られた感覚に襲われた。

 

メロ「がっ…ごっ…」

 

メロは痛みにもがいていた。

 

エレナ「あなたが選んだ道よ。渡せば死なずに済んだのに」

メロ「がっ…ア…アース…ごめん…」

エレナ「!」

メロ「リノ…ごめんね…守れな…かっ…た…」

 

ブシャッ!

メロは口から吐血した。

 

メロ「がっ…」

 

ドサッ…

その後メロは力なくその場に倒れた。

 

エレナ「…はぁ。だから言ったのに。渡せば死なずに済んだのにね」

 

スタスタスタ

エレナはメロの所まで歩いた。

 

エレナ「恨むなら自分の選択を恨みなさい。あなたが選んだ結果よ」

 

スッ…ドスッ!

エレナはメロの心臓部分に手を突き刺した。

 

エレナ「…あったわ」

 

エレナはそのまま手を戻した。エレナの手には魔核が握られていた。

 

エレナ「…これで水属性の魔核をもらったわ。水属性の魔核はあとひとつ。全属性全部合わせて残りの10個ね」

 

スタスタスタ

エレナは魔核を持ってその場を後にした。

 

 

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場所…リールとアンナの部屋

 

コンコン

突然ドアがノックされた。

 

リール「はーい」

 

ガチャ

リールはドアを開けた。

 

リール「はい。どなたですか?」

スカーレット「私よ。リール」

リール「あれ?スカーレット?どうしたんですか?」

スカーレット「実はあなたに渡したいものがあるの」

リール「渡したいもの?」

スカーレット「えぇ。入ってもいいかしら?」

リール「あ、どうぞどうぞ」

 

スカーレットはリールとアンナの部屋に入った。

 

リール「それで、渡したいものって?」

スカーレット「…これよ」

 

コトッ…

スカーレットはあるものを机の上に置いた。

 

リール「…これは?」

 

それは、小さな瓶のようなものだった。

 

スカーレット「これは魔力瓶。自分の魔力をこの瓶に詰めておくことで、戦闘中に魔力切れになってもこれを使って戦うことができるのよ」

リール「へぇ…すごいですね…」

スカーレット「私たちは魔力切れにこそならなかったけど、これから先 エレナという人物と戦うことになるかもしれないわ」

アンナ「え!?」

スカーレット「そうなったら長期戦になるのは必須。ならなくても莫大な魔力を消費することになるわ。だからその時のために今からこれに魔力を詰めておくの」

リール「これ、詰めた後は…」

スカーレット「詰めたら開けるまで魔力が漏れてくることはないわ。使う時は瓶の蓋を開けるの」

リール「あれ…これって…」

 

リールはこの瓶に見覚えがあった。

 

リール「なにか見覚えが…」

スカーレット「え?そうなの?」

リール「はい…確か…メリーさんが作っていたような…」

スカーレット「あ、そうよ。これメリー魔法店の店主からお父さんが受け取って私たちにくれたのよ」

リール「あ!やっぱり!」

 

リールは過去に魔女さんが家を空ける時があった。その際にはメリーが家に来て色々としてくれていたが、その中でメリーはある物を制作することを検討していた。それが、この魔力瓶である。最初はマナを入れておく用の瓶だったが、その時リールが「マナを持っていても魔力がなかったら結局魔法が使えないのでは?」という発言からマナを入れておく瓶から魔力を入れておく瓶にシフトしていた。そしてメリーはそれを完成させていた。

(題名 魔女さんとレヴィ学院長 より)

 

リール「だから見覚えがあったんですね!」

スカーレット「あ、あとこんな事も言ってたらしいわよ」

リール「?」

スカーレット「リールちゃんのお陰でまた新しい魔道具ができたわ。感謝しかないわねって」

リール「メリーさん…」

 

リールは嬉しくなった。

 

スカーレット「さ、早速始めましょう。使い方は簡単よ。蓋を開けて魔力を送るだけ。すると魔力はしばらく停滞するから、その間に蓋をする。どう?簡単でしょ?」

リール「スカーレットはもうしたんですか?」

スカーレット「してるわ。これよ」

 

コトッ…

スカーレットは自分の魔力瓶を机の上に置いた。

 

リール「え、こうなるんですか?」

 

スカーレットの瓶はリールとアンナの瓶とは少し違っていた。瓶の形状は同じだが、色が少し違っていた。

 

スカーレット「そうよ。私の場合は雷属性魔法だから魔力を送ったら少し黄色く光るのよ」

 

スカーレットの魔力瓶は瓶の中心が電気を帯びており、常に電気が発生していた。その事もあってスカーレットの瓶は少し黄色く光っていた。

 

スカーレット「リールの場合は光属性魔法だから私の瓶よりも薄い黄色かまた違った色になるのかもね。アンナは水属性魔法だから青色か薄い青色かな」

アンナ「へぇ!」

リール「アンナ!早速やってみましょう!」

アンナ「うん!」

 

リールとアンナは魔力瓶の蓋を開けた。

 

スカーレット「そうそう。それで自分の魔力をその瓶に注ぐの」

リール「…」

アンナ「…」

 

リールとアンナは集中して自分の魔力を瓶に移した。するとアンナの瓶は青色に光り、リールの瓶は白く光った。

 

リール「わ!すごい!」

アンナ「綺麗…」

スカーレット「2人とも上出来ね。これで魔力瓶の完成よ」

リール「綺麗な色ですね」

アンナ「うん!」

スカーレット「あ、早く閉めないと魔力が漏れちゃうわよ?」

リール「あ!そうでした!」

 

リールとアンナは慌てて蓋を閉めた。

 

リール「ふぅ…これでよし!ですね!」

アンナ「これって持ってた方がいいのかな」

スカーレット「そうね。持ってたら便利だからそうしておく方がいいわよ」

アンナ「分かった」

リール「ありがとうございます。スカーレット」

スカーレット「いいわよ別に。でも、今後これが必要になるかもしれないからね。何かあったら使いなさいよ」

リール「はい!」

アンナ「ねぇスカーレット」

スカーレット「何?」

アンナ「これって魔力を使ったらまた入れられるの?」

スカーレット「えぇ。何度でも使えるわよ」

リール「へぇ!便利ですね!」

スカーレット「そうよ。便利だからなくしちゃダメよ」

アンナ「うん!」

リール「あ、そうだスカーレット」

スカーレット「何?」

リール「オード君たち知りませんか?」

スカーレット「あの3人?知らないわね」

リール「そうですか…」

スカーレット「何か用事?」

リール「はい。探したんですが、見つからなくて…」

スカーレット「3人だけ?」

リール「あ、いえ、ここにいるスカーレットとアンナも同じです」

アンナ「え?」

スカーレット「私たちも?」

リール「はい」

スカーレット「え、なにか用事があったかしら…」

アンナ「私も…ちょっと分からないかな…」

リール「え?2人とも忘れたんですか?あの時約束したじゃないですか。無属性魔法を教えますって」

スカーレット「!」

アンナ「あ!そう言えば…」

リール「だからオード君たちを探していたんですが…」

スカーレット「分かったわ。私が見つけて伝えておくわ」

リール「ありがとうございます。スカーレット」

スカーレット「いいわよ。じゃ、私はそろそろ行くね」

リール「はい。お気をつけて」

アンナ「また来て!スカーレット!」

スカーレット「えぇ。また来るわ」

 

スカーレットはリールとアンナの部屋を出た。

 

リール「それにしてもこれ綺麗ですね」

アンナ「確かに!リールのは…白?かな」

リール「恐らく白…かと」

アンナ「純白の色だね!」

リール「純白…あ、なるほど…」

アンナ「リールらしい色だよ!」

リール「そ、そうですか?照れますね。でもそういうアンナもアンナらしい色ですよ」

アンナ「え!?そう!?」

リール「はい。澄み渡る青い色ですよ」

アンナ「えへへ…嬉しいなぁ…」

 

こうしてリールとアンナはスカーレットからもらった魔力瓶を常に持つことになったのだった。




〜物語メモ〜

使徒名
十二使徒たちは本名のみならず、使徒名という二つ名を持っている。
今回登場した名前は3つ。
狂風の使徒 レギン、冥水の使徒 モドノル、豊水の使徒 ウロウ。
それぞれ
狂風の使徒 レギン→キファ(ブエルタ王国 国王)
冥水の使徒 モドノル→メロ(冥界の最高責任者)
豊水の使徒 ウロウ→ウレイ(ナヴィア王国 王女)
他の十二使徒のメンバーもそれぞれ使徒名を持っており、彼らの使徒名を知っている人物は数少ない。

魔力瓶
メリーが作った魔力を保管するための瓶。最初はマナを保管するために作ったが、魔力が切れるとマナが使えなくなるというリールの指摘があり、マナを保管する瓶から魔力を保管する瓶に変更して作った。
これがあれば魔力が切れても瓶の中にある魔力を使って魔法を使用することができる。
しかし、使えるのは瓶に入っている魔力分だけで、それ以上は使えない。加えて、瓶も小さいので入ってる魔力の量もそこまで多くない。


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第42話 リールと無属性魔法の練習

私の名前はリール。

今エレナ学院の自室にいます。

前までは魔女さんの家にいたんですが、レヴィ学院長が復学を認めてくださったので、こちらに移ることになりました。

正直もう少し魔女さんの家で暮らしたかったんですが、アンナやスカーレットはこっちの寮にいるので、こっちを選びました。

あれから数日が経過して休日となりました。

今日はみんなと約束した無属性魔法の練習をすることになりました。

そのため引っ越しの際に魔女さんの家から魔女さんが使ってた無属性魔法の魔導書を新たに持ってくることにしました。

1人よりもみんなと勉強する方がとても楽しいので今日は良い一日になりそうです!

さて、私はこれから無属性魔法の練習がありますのでこれで失礼しますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…エレナ学院 校庭

 

リール「さて!早速始めましょう!」

オード「おー!」

アンナ「おー!」

リール「まず無属性魔法なんですが、簡単なものから始めていこうと思っていますが、それで大丈夫ですか?」

オード「あぁ。俺はそれでいいな」

リール「誰か先にこれをやりたいって思ってる方はいませんか?」

スカーレット「大丈夫よ。結局全部習うんだから」

リール「分かりました。では始めていきましょう!」

 

リールたちは各々準備をし始めた。

 

リール「はい!では無属性魔法の練習を始めます!無属性魔法は手元にあるもので9つありますので、一定時間ずつやっていきましょう!」

オード「しゃあ!いくぜ!」

リール「順番としては1番目は回復魔法になります。2番目は移動魔法、3番目は増強魔法、4番目は減弱魔法、5番目は毒属性魔法、6番目は幻覚魔法、7番目は支配魔法、8番目は破壊魔法、そして最後は次元魔法という形で始めていきますね!」

全員「おー!」

 

まず最初にリールは回復魔法の魔導書を手に取った。

 

リール「ではまずは回復魔法から。少し前にラミエ先生が回復魔法を覚えてない生徒が多い。だからみんな保健室に来るのよと仰ってました。これを覚えることができれば、怪我した時にもその場で回復できます!」

スカーレット「便利ね」

リール「はい!」

オード「なぁリール。それって難しいのか?」

リール「大丈夫です!無属性魔法は誰でも使える魔法です。やり方を覚えたら簡単ですよ!」

オード「よしっ!分かった!」

リール「まずやり方なんですが、回復魔法にもマナが必要になってきます。なので、マナを動かすための魔力がないと当然回復魔法は使えません。そして、回復魔法には体力の回復、魔力の回復、状態異常の回復の3つが存在します。それぞれやり方が違いますが、各々一種類ずつしかないので簡単に覚えられますよ!」

オード「よしっ!早速始めよう!」

リール「はい!では私のマネをしてください!」

 

そう言ってリールは魔法を唱える姿勢を取った。他のみんなもリールと同じ姿勢になった。

 

リール「この状態になったらあとは手をかざすだけです!この場合、回復させる相手に手を向けることで発動します!今この状態だと相手が定まってないので発動しませんが、魔法の名前だけ唱えてみましょう!」

 

リールはオードに向けて回復魔法を使った。

 

リール「…体力回復(ヒール)

 

シュゥゥゥゥゥ…

するとオードの周りに緑色の光がいくつか出現し、オードの周りを飛び回ったあと、オードの体に入っていった。

 

オード「…?」

 

しかし、オードには何も変化がなかった。

 

オード「あれ?何も起こらないぞ?」

リール「オード君は怪我とかしてないので何も変化が起こらないんですよ」

オード「あ、なるほどな」

リール「こんな感じに緑色の光が出れば成功です」

スカーレット「なるほどね。分かりやすい」

アンナ「私もやりたい!」

ディア「俺も!」

ノーラ「俺もやろう」

オード「いやいや!俺が先だ!」

リール「みなさん落ち着いて…1人ずつやっていきましょう」

スカーレット「でもリール。実際に怪我が治るか見ないと分からないんじゃないかしら」

リール「あ、それに関しては問題ありませんよ」

スカーレット「どうするの?」

リール「私がわざとダメージを負いますので、その度にみなさんが回復魔法を使ってください」

アンナ「え…大丈夫なの?」

リール「はい!大丈…」

オード「待て待て待てぇい!」

リール「!!」

オード「女性に怪我なんざ任せられねぇよ!!俺がやる!さぁ!みんな俺を傷つけてくれ!!」

ディア「おいオード…」

オード「ん?なんだ?」

ノーラ「それだとただのドMだぞ…」

オード「なに!?俺はただリールに怪我させたくないと思ってだな!」

リール「ふふっ。ありがとうございますオード君。ですが、そこまで大きい怪我ではありませんよ。ちょっとした擦り傷程度で済みますので」

オード「ダメだ!女の体は大事なんだ!だから俺がやる!俺が怪我してみんなが俺を回復させてくれ!」

ディア「はいはい…分かったから…」

ノーラ「ほんと…こういう時はすぐ動くんだから…」

リール「いいんですか?オード君。4人いるので4回怪我することになりますよ?」

オード「大丈夫だ!ドンと来い!」

リール「そ、そうですか…では、始めますね」

オード「おう!」

リール「みなさんはここに。オード君はこちらへ」

 

オードはリールの隣に立った。

 

オード (俺がリールの隣に…くぅぅ…幸せだぁ…)

リール「では始めますね」

 

ビリビリビリ!

突然オードの体に電気が走ってオードはダメージを負った。

 

オード「おぎょおおおおおお!」

 

突然のことに反応できず、オードはモロにダメージを受けた。

 

リール「だ、大丈夫ですか!?オード君!」

オード「だ…大丈夫…だ…」

リール「スカーレット…少し強すぎたかもしれませんね…」

スカーレット「まぁいいじゃない。これで分かりやすくなったわよ」

リール「そ…そうでしょうか…」

 

先程の魔法はスカーレットがやったものだった。

 

スカーレット「さ、始めましょう」

リール「わ、分かりました…オード君…大丈夫ですか?」

オード「大丈夫だ…さぁ…やってくれ…」

リール「分かりました。ではアンナ。やってみてください」

アンナ「や、やってみる」

 

アンナはオードに手を向けた。

 

アンナ「体力回復(ヒール)

 

シュゥゥゥゥゥ…

オードの周りに先程と同じように緑色の光が出現してオードの体に入っていった。すると先程負った傷が徐々に回復していき、やがて傷が消えてなくなった。

 

オード「お…すげぇ…痛みも傷も無くなった…」

リール「成功ですね!アンナ!」

アンナ「ほんと!?やったぁ!」

リール「さ、この調子でみんなやっていきましょう!」

 

その後、スカーレット、ディア、ノーラ、オードも順調に回復魔法を使うことができた。

 

リール「みんなすごいですね!これで自分で怪我を治すことができますよ!」

オード「っしゃあ!」

リール「次は魔力の回復になります!これはみなさん先程魔力を使ったので丁度いいですね!」

オード「よしっ!そうと決まれば早速!」

リール「はい!魔力の回復は先程と同じように手をかざして魔力回復(ヒーラマ)と唱えるだけです!」

オード「俺が!俺が先にやる!」

リール「どうぞ!」

オード「よっしゃ!いくぞディア!魔力回復(ヒーラマ)!」

 

シュゥゥゥゥゥ…

するとディアの周りに紫色の光が現れ、その光はディアの体の中に入っていった。

 

リール「ディア君どうですか?」

ディア「お、すげぇ…魔力が戻ってる…」

リール「でしたら成功ですね!」

オード「しゃああああああ!ふぉおおおおおおおお!」

ノーラ「テンション高いなぁ…オードのやつ…」

スカーレット「褒められて嬉しかったのね…」

アンナ「あはは…」

リール「では順番にみんなもやっていきましょう!」

 

その後、ディア、ノーラ、スカーレット、アンナの4人も順調に魔法を使うことができた。

 

リール「みなさん上出来ですね!最後は状態異常の回復ですよ!」

オード「状態異常ってあれだろ?毒とか」

リール「あ、そうです!それらを治す魔法です!」

オード「ということは毒属性魔法の対処法になるわけだ」

リール「正解です!」

オード「キィエエエエエエエエ!」

ディア「なぁノーラ」

ノーラ「なんだ?」

ディア「今日のオード…なんか変だな…」

ノーラ「あ、あぁ…そうだな…」

ディア「キィエエって…気持ち悪ぃよ…」

ノーラ「同感だ…」

リール「これもさっきと同じように手をかざして状態回復(ヒーラル)と唱えるだけです!」

オード「俺がやる!」

リール「ではどうぞ!私が状態異常にかかりますので治してくださいね」

オード「え…リールを…俺が?」

リール「はい」

オード「え、ほんとにいいのか?」

リール「はい。構いませんよ」

オード「わ、分かった…やってみる…」

リール「ではいきますね」

 

シュゥゥゥゥゥ…

そう言うとリールは自分に毒属性魔法をかけた。

 

リール「うっ…さすがに毒属性魔法はキツイですね…ではオード君…お願いします…」

オード「分かった!今すぐ治してやる!状態回復(ヒーラル)!」

 

シュゥゥゥゥゥ…

するとリールの周りに黄色い光が出現し、リールの体に入っていった。

 

リール「っはぁ…はぁ…成功ですね…オード君」

オード「リール!」

 

タッタッタッ!

オードはリールの状態が悪いことに気付いて駆け寄った。

 

オード「大丈夫かリール!」

リール「はい…大丈夫ですよ…オード君が治してくれましたから…」

オード「リール…」

 

ズキッ…

オードは弱ったリールを見て心が痛くなった。

 

オード「…リール」

リール「はい…何ですか?」

オード「…ここからは俺がやる」

リール「え?」

オード「これ以上リールが苦しむのを見るのは嫌だ」

リール「そ…そうですか…」

オード「リール。俺に状態異常の魔法をかけてくれ」

リール「え?でも…それだとオード君が…」

オード「俺なら大丈夫だ…やってくれ」

リール「えっと…はい…分かりました…」

 

シュゥゥゥゥゥ…

リールはオードに毒属性魔法をかけた。

 

オード「ごほっ…これは…やべぇ…」

リール「オード君!」

オード「大丈夫だ…ディア!ノーラ!次はお前らだ!俺の毒を治してみろ!」

ディア「ったく…なんであぁも体を張れるんだろうな。オードのやつ」

ノーラ「…まぁ、好きなやつが傷つくとあぁなるもんだろ。男は」

ディア「…そうか」

オード「ディア!ノーラ!早く!」

ディア「へいへい…」

 

その後、ディア、ノーラに続いてスカーレットとアンナもオードにかかった状態異常を治した。

 

オード「ごぉぉぉ…状態異常って思ってたよりキツイな…」

リール「オード君大丈夫ですか?休みますか?」

オード「いいや、もっと色々教えてくれリール」

リール「え…でも…」

オード「俺の事はいい。それよりも俺はリールから色々教わりたいんだ」

リール「えっと…わ、分かりました。辛くなったら言ってくださいね」

オード「おう」

リール「ではみなさん!次は移動魔法をやってみましょう!」

ディア「お!きた!」

ノーラ「これさえ覚えれば箒がなくても移動できるな!」

リール「はい!とても便利ですので覚えておいて損は無いですよ!」

スカーレット「ねぇリール」

リール「はい。何ですか?」

スカーレット「その魔法ってリールが最初に私の家に来た時に私が使った魔法と同じもの?」

リール「全く同じって訳ではありませんが、似たようなものです」

スカーレット「なるほど。分かったわ」

リール「はい。では始めていきましょう!やり方は簡単です!杖を持って瞬間移動(テレポート)と唱えるだけです!」

ディア「案外簡単なんだな」

リール「はい!無属性魔法は属性魔法ではないので、杖があればあとは魔法を唱えるだけです」

ノーラ「じゃあ瞬間移動(テレポート)って唱え…」

 

ヒュッ…

突然ノーラが姿を消した。

 

オード「…え?」

リール「あ…移動魔法が発動しちゃったみたいですね…」

スカーレット「え、あんな簡単に発動するものなの?」

リール「は、はい…先程ノーラ君は杖を持っていましたので勝手に瞬間移動(テレポート)が発動したんだと思います」

ディア「え、戻って来れるのか?」

リール「ノーラ君がどこに行ったのかは分かりませんが、ノーラ君がこの場所を思い浮かべてもう一度魔法を使えば戻って来ることは可能です」

ディア「なるほど…それは便利だな」

 

ヒュッ…

するとノーラが戻ってきた。

 

ノーラ「うおっ…戻れた…」

オード「え、ノーラ…お前大丈夫か?」

ノーラ「お、おう…知らない場所に飛ばされたけど何とか戻ってこれたぜ…」

オード「おいおい…驚かすなよ…」

ノーラ「いやいやすまねぇ。まさかあんな簡単に発動するとは思ってなかったんだ」

リール「でも魔法としては成功ですよ。あとは移動先の場所を思い浮かべて使うことができたら大成功ですね」

ノーラ「なるほどな。これは便利だ」

リール「ではみなさんもやってみましょう!魔法を使う前にどこに移動するのかをしっかり頭に入れた上で使ってくださいね」

 

その後、スカーレット、アンナ、ディア、オードは移動魔法を使ってその場から移動して戻ってくることに成功した。

 

リール「みなさんお上手ですよ!順調に魔法を習得できてますね!」

スカーレット「しかし簡単なのね…無属性魔法って…」

リール「はい!とても簡単なんですよ!これを使うことができれば他の方よりも一歩先に行くことができますよ!」

アンナ「よかった…無属性魔法を習えて…」

スカーレット「そうね。リールには感謝しかないわ」

リール「いや…その…恥ずかしいですよ…そんなこと言われたら…」

オード「!!」

 

オードはリールの照れた顔を見た。

 

オード (か…可愛えぇ…)

 

その後リールたちは増強魔法、減弱魔法、毒属性魔法、幻覚魔法、支配魔法と順調に進んでいったが破壊魔法で少し苦戦していた。

 

オード「あれ…全然できない…何故だ」

 

破壊魔法では目の前に瓶を置いてそれを壊すという方法で習得しようとしていた。

 

オード「リール!ちょっといいか?」

リール「はい。何ですか?」

オード「何故か瓶が割れないんだ。どうしたらいい?」

リール「そうですねぇ。1回見せていただけませんか?」

オード「お、おう」

 

オードは杖を構えて魔法を使った。

 

オード「粉砕(ダクト)

 

カタカタカタ…

オードはさっきと同じように魔法を使ったが、瓶がカタカタと音を鳴らして揺れるだけで割れることはなかった。

 

リール「あらら…おかしいですね…」

オード「うーん…魔力が弱すぎるのか?」

リール「そうかもしれませんね。1度魔力を多めに込めて魔法を使ってみましょうか」

オード「おう」

 

オードはさっきと同じように杖を構えた。

 

オード「…粉砕(ダクト)

 

カタカタカタ…

さっきよりも魔力を多めに込めたが、瓶にヒビ1つ入れることもできなかった。

 

オード「な…なんでだ…なんで…」

リール「落ち着いてくださいオード君。私と一緒にやってみましょう」

 

スッ…

リールはオードの手に自分の手を重ねた。

 

オード「!?!?!?」

 

オードは突然頭に電気が流れたように感じた。

 

オード (リ…リールの…手が…)

リール「オード君。心を落ち着かせてくださいね」

オード「お、おう…」

リール「…」

オード (無理だろおおおおお!リールの手が!リールの手が俺の手にいいいいいいいい!手がああああああ!あああああああ柔らけぇ!スベスベしてる!なんだこの感触は!程よい温もりとこの包容!!全てにおいて完璧じゃねぇかあああああああ!)

 

オードは心の中で発狂した。

 

リール「ではいきますよ。オード君」

オード「お、おう…」

 

オードはなんとか平然を保つことができた。

 

リール「私の動きに合わせてくださいね」

オード「おう…」

 

ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!

オードはこの間も心臓の鼓動が速くなっていた。

 

リール「…」

 

リールがゆっくりとオードの手を動かし、オードもそれに合わせる。

 

リール「…ではオード君。魔法をどうぞ。今度は私が合わせます」

オード「わ、分かった…」

 

オードは心を落ち着かせて魔法を唱えた。

 

オード「…粉砕(ディァクト)

 

オードは緊張のあまり魔法を間違えて唱えてしまった。

 

カタカタカタ…コトン…

当然、瓶は割れることなく横に倒れただけだった。

 

リール「あらら…惜しいですね…」

オード「はぁ…はぁ…はぁ…」

リール「オード君?どうしましたか?疲れましたか?」

オード「いや…その…幸せで…」

リール「え?」

オード「いや!何でもない!こ、この魔法は!もしかしたら俺に合ってないのかもしれねぇな!はははははは!」

リール「そ、そうですか…力不足ですみません」

オード「!!」

 

オードは自分の発言を後悔した。さっきの言葉でリールが自分を責めて落ち込んでしまったと気付いたからだ。

 

オード「リール…」

リール「でも大丈夫ですよオード君。私がこの魔法をもっと簡単に習得できるようになる方法を探してみますから。勉強不足ですみません」

オード「…」

 

ズキッ…

オードは少し心が痛んでいた。

 

オード「…リール」

リール「はい。何ですか?」

オード「すまな…」

ディア「おいオード!!」

オード「?」

リール「?」

 

突然名前を呼ばれたオードはその声が聞こえた方向に目をやった。そこにはいくつか並べられた瓶を余裕で割っているディアの姿があった。

 

ディア「どうだオード!!すげぇだろ!」

 

パリン!パリン!パリン!パリン!

ディアは設置している瓶をどんどん割っていった。

 

ディア「この魔法爽快だぜ!!唱えるだけでなんでも割れちまう!!気持ちいいぜええええ!!」

オード「おいおい…ディアのやつ…」

リール「あはは…凄いですね…ディア君は」

オード「…」

 

オードはその言葉にズキッときた。

 

リール「そういえばオード君。さっき何を言おうとしたんですか?」

オード「え?」

リール「ほら、さっき何か言ってたじゃないですか。ディア君の声で聞こえませんでしたが…」

オード「あ、あ〜…いや、何でもない」

リール「え?」

オード「何でもねぇよ。大丈夫だ」

リール「いいんですか?」

オード「あぁ。ディアを見て少し元気が出てきた」

リール「…そうですか。やっぱりオード君は元気なオード君がいいですね」

オード「!」

リール「みんなを引っ張ってくれるオード君は頼りになりますから」

オード「!!!!!」

 

ドクドクドクドクドク!

オードは急に鼓動が激しくなった。

 

オード (おいおいおいおい!リールが俺を!リールが俺を頼りにしてるって!?何だこれは!!心臓が飛び出そうじゃねぇか!!)

リール「破壊魔法はダメでも次元魔法なら上手くいくかもしれませんよ!さ、やりましょうオード君!」

オード「お、おぅふ!」

 

オードは変な声が出た。ちなみに、今回破壊魔法を使うことができたのはノーラ、スカーレット、ディアの3人だけ。オードとアンナは破壊魔法を使うことができなかった。

 

リール「さて、最後は次元魔法ですね!これは相手の魔法の軌道を逸らせて自分に当てないようにする魔法ですね!やり方はいつも通りで杖を構えて軌道変換(パラティガ)と唱えるだけです!」

スカーレット「これで最後ね。これも習得して制覇よ!」

ノーラ「委員長。俺の方が魔力が高いってこと忘れんなよ?」

スカーレット「あらあら、そんなこと言ってできなかった時が一番恥ずかしいわよ?」

ノーラ「へっ!俺は魔力が高いからな!絶対できるぜ!」

スカーレット「私の方が強いわよ!」

ノーラ「じゃあ勝負だ委員長!」

スカーレット「望むところよ!!」

リール「な、なんか…知らない間に競争みたいなことになってますね…」

アンナ「うん。ちょっと前からね」

リール「あはは…」

スカーレット「さぁリール!!どうやるの!教えてちょうだい!」

リール「えっと…私の魔法を受け流してみましょうか」

スカーレット「それでいいわ!見てなさい!私の華麗な魔法を!!」

ノーラ「上等だぜ!」

リール「あ、もし受け流せなかった場合は私が事前に結界を展開しておきますので大丈夫ですよ」

スカーレット「分かったわ!やりましょ!」

リール「はい!」

 

最初はスカーレットがやる事になった。

 

リール「ではスカーレットはそこに」

スカーレット「分かったわ」

リール「…結界」

 

ガシャン!

リールはスカーレットに結界を展開した。

 

リール「ではいきますよスカーレット!」

スカーレット「ドンと来なさい!」

リール「はぁっ!光玉(ライダラ)!」

 

ビュン!

リールは光玉(ライダラ)を飛ばした。

 

スカーレット「これくらい…」

 

スカーレットは杖を光玉(ライダラ)に向けた。

 

スカーレット「軌道変換(パラティガ)!!」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

スカーレットは魔法を唱えたが、光玉(ライダラ)の軌道は逸れず、スカーレットに向かって一直線に飛んでいった。

 

スカーレット「そんな…」

 

ドォン!シュゥゥゥゥゥ…

リールの光玉(ライダラ)はリールの結界に当たって消失した。

 

スカーレット「そ…そんな…」

ノーラ「おいおいおい!最初がそんなんで大丈夫か?委員長さんよぉ?」

スカーレット「う、うるさいわね!!」

ノーラ「次は俺だ。そこで見てな。委員長」

スカーレット「くっ…あんたも失敗しなさい!」

ノーラ「しませ〜ん」

スカーレット「くぅぅぅぅぅ…」

 

次はノーラの番になった。

 

ノーラ「さぁ来いリール!」

リール「いきますよ!光玉(ライダラ)!!」

 

ビュン!

リールは先程と同じように光玉(ライダラ)を放った。

 

ノーラ「いくぜ!!軌道変換(パラティガ)!!」

 

ビリリ…ギュオン!

ノーラが魔法を唱えると、リールの光玉(ライダラ)は急激に方向を変えて空へ飛んでいった。

 

スカーレット「え…そんな…」

ノーラ「しゃああああああああああ!見たか委員長!!俺の勝ちだあああああああああ!」

スカーレット「うるさあああああい!こんなの無効よ!!嘘よ!信じないわ!」

ノーラ「ふぉおおおおおおおおお!」

スカーレット「くぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 

何やらノーラは勝ったらしく、スカーレットは悔しそうにしていた。

 

リール「す…すごい…ノーラ君…」

オード「…」

 

オードは次元魔法を使ったノーラを見ていた。

 

オード (…俺だって)

 

その後、ディアとアンナとオードも次元魔法を使ってみたが、スカーレットと同じく次元魔法が発動しなかった。結果、次元魔法を使えたのはノーラだけだった。

 

ノーラ「ふふん♪さぁ委員長?何か言うことは?」

スカーレット「うるさい!うるさい!うるさぁぁぁい!」

ノーラ「あ〜気持ちいい〜♪」

スカーレット「ふん!次こそは私が勝つわよ!覚えてなさい!」

ノーラ「気持ちいい〜♪」

スカーレット「もぉぉぉぉぉ!」

 

これにて無属性魔法を全て終えることができた。最後まで習得できたのはノーラだけ。スカーレットとディアは破壊魔法まで。オードとアンナは支配魔法まで習得できた。これはリールの予想を大幅に越した結果だった。




〜物語メモ〜

体力回復(ヒール)
指定した人の体力を回復させる魔法。回復するのは体力や傷だけで、魔力や状態異常は回復しない。

魔力回復(ヒーラマ)
指定した人の魔力を回復させる魔法。回復するのは魔力だけで、体力や傷、状態異常は回復しない。

状態回復(ヒーラル)
指定した人の状態異常を回復させる魔法。回復するのは状態異常だけで、体力や傷、魔力は回復しない。

瞬間移動(テレポート)
頭の中で移動先を思い浮かべて魔法を唱えることで、瞬時にその場所に移動できる。もちろん戻ってくることも可能。

粉砕(ダクト)
対象物を破壊する魔法。何でも破壊できるが、今回は置いた瓶を割るだけだった。

軌道変換(パラティガ)
相手の魔法の軌道を逸らせて自分に当たらないようにする魔法。使用できればあらゆる魔法を弾くことができ、無傷で済ますことができる。


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第43話 リールとオードの風邪

私の名前はリール。

今エレナ学院にいます。

昨日みんなで無属性魔法の練習をしました!

みんな上手に無属性魔法が使えてたのでとても安心しました!

ですが今日はオード君を見ませんね。

いつもならディア君とノーラ君と一緒にいるはずなんですが…

何かあったんでしょうか。

ディア君とノーラ君に聞いてみようと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…教室

 

ディア「え?オード?」

リール「はい。今日は1度も見ていません」

ノーラ「あいつなら風邪で寝込んでるぜ」

リール「え!?風邪引いてるんですか!?」

ディア「あぁ。何でも急激な体調の変化が原因らしい」

リール「え…」

ノーラ「でも保健室に行くほどじゃないらしいから部屋で寝てるよ」

リール「あの…それって…」

ディア「ん?」

リール「それって…昨日の無属性魔法の練習が原因…ではないでしょうか」

ディア「…」

ノーラ「…いや、オードはあの日の晩に氷食ってたからそれが原因なのかもよ」

リール「…そうですか」

ディア「…」

ノーラ「じゃあ俺たちはそろそろ行くわ。2人も気をつけな」

アンナ「うん」

リール「…はい」

 

スタスタスタ

ディアとノーラはその場をあとにした。

 

リール「…」

 

リールは責任を感じていた。男の子とはいえ、あんなにも魔法の実験体になっていると体調を崩してもおかしくないと。自分がオードに任せっきりだったから起こったことだと。

 

リール「…アンナ」

アンナ「何?」

リール「…今日は1人で帰ってもらってもいいですか?」

アンナ「え?うん。いいけど…もしかしてリール…」

リール「…はい」

アンナ「…分かった。気をつけてね」

リール「…はい」

 

スタスタスタ

アンナは教室をあとにした。

 

リール (…オード君)

 

タッタッタッ!

リールは走ってある場所に向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…保健室

 

ガラッ!

リールは勢いよく扉を開けた。

 

ラミエ先生「?」

リール「先生!!」

ラミエ先生「どうしたのよ」

リール「風邪薬となにか消化にいいものはありませんか!」

ラミエ先生「風邪薬ならあるけど消化にいいものはないわ」

リール「では風邪薬を!!」

ラミエ先生「誰か風邪引いたの?」

リール「はい…オード君が…」

ラミエ先生「そう。分かったわ。少し待ってて」

 

そう言ってラミエ先生は棚から薬を出してきた。

 

ラミエ先生「これが風邪薬よ」

リール「ありがとうございます!」

ラミエ先生「食べ物ならお粥とか作ってあげなさい」

リール「はい!」

 

タッタッタッ!

リールは走ってオードの部屋に向かった。

 

ラミエ先生「…はぁ…青春ね〜」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…オードの部屋の前

 

リール (オード君の部屋…事前に聞いててよかったです…聞いてなかったら二度手間になってました…)

 

コンコン

リールはオードの部屋の扉をノックした。

 

ガチャ…

少ししてゆっくりと扉が開いた。

 

オード「誰…」

 

中から弱々しいオードが出てきた。

 

リール「オード君…大丈夫ですか…」

オード「…」

 

オードは少しだけ目を開けて前を見た。

 

オード「!」

 

目の前にはリールが立っていた。手には何やら袋がある。

 

オード「リー…ル…」

リール「はい。リールです。オード君が風邪で寝込んでいるとお聞きしたので看病しに来ました」

オード「…え?」

 

オードは聞き違いだと思っていた。

 

オード「え…もっかい言って…」

リール「看病しに来ましたので中に入れてもらえませんか?」

オード「…あ、どうぞ」

 

オードは頭が痛いため考えるのをやめた。

 

ガチャ…

リールとオードは部屋に入った。

 

オード「靴はそこに置いてて…台所はあそこ…で、ここが…」

 

オードは何も考えずに部屋を紹介している。

 

オード「分かった…?」

リール「はい!お任せ下さい!オード君はベッドでお休みになられてください!今すぐ料理しますね!」

オード「…うん」

 

ヨレヨレ…ヨレヨレ…

オードはふらつきながらもベッドに向かった。

 

オード (そういえばディアのやつ…どこ行ったんだよ…病人の俺を置いておくとか)

リール「ではオード君。台所少しお借りしますね」

オード「あぁ…」

 

トントントン

リールは料理をし始めた。

 

オード (リールが俺の部屋で料理…俺の部屋で…料理…)

 

オードは料理をしているリールを見て思った。

 

オード (なんか…新婚さんみたいだな…)

 

そう思うとオードは恥ずかしさのあまり布団で顔を隠した。それからしばらくしてリールは料理を終えた。

 

リール「オード君。お皿はこれを使わせて頂いてもよろしいですか?」

オード「え、あ、あぁ」

 

カチャカチャ

リールは手際よく料理を済ませた。

 

リール「はいオード君!お料理ができましたよ!こちらに座れますか?」

オード「あ、あぁ…」

 

オードはゆっくり起き上がろうとした。

 

オード「うっ…!」

 

ズキン!

オードは急に頭痛がして再び寝転がってしまった。

 

リール「オード君!!」

 

リールはオードに近寄った。

 

オード「いってぇ…」

リール「オード君大丈夫ですか!?」

オード「あぁ…痛てぇけど…大丈夫だ…」

リール「…私が起こしてあげます」

オード「え!?」

リール「任せてください!」

オード「ちょ、待って!」

 

リールはオードの言葉に耳を貸さず、オードの体をゆっくりと起こした。

 

リール「オード君どこか痛いところはありませんか?」

オード「いや…その…」

リール「?」

オード「いや、どこも痛くない」

リール「ホッ…それはよかったです。ご飯食べられますか?」

オード「!」

 

目の前にはお粥と切ったリンゴがあった。

 

オード「これ…リールが?」

リール「はい。ラミエ先生が風邪にはお粥がいいと仰っていたので。リンゴは私の好きな食べ物ですので」

オード「…そうか」

リール「食べられますか?もし食べられなかったら私が食べさせますが…」

オード「…え?」

リール「え、なにか…」

オード「あ、いや…なんでもない。じゃ、じゃあ食べられなかったらお願いするわ」

リール「はい!」

 

オードはリールに体を触られてから妙に緊張していた。

 

オード「…いただきます」

リール「はい。お召し上がりください」

 

パクッ…パクッ…

オードはゆっくりではあるが、しっかりご飯を食べた。

 

リール「熱くないですか?」

オード「あぁ。熱くない。むしろ美味い」

リール「え!?ほんとですか!?」

オード「あぁ…美味い…」

リール「あ、ありがとうございます…」

 

リールは照れた。

 

オード「そういえばリール」

リール「はい。何でしょうか」

オード「さっきリンゴが好きって言ってたけど何で好きなんだ?」

リール「あ、私が以前魔女さんの家に住んでいた時に風邪を引いたことがありまして、その時に魔女さんがリンゴを食べさせてくれたんです。それがとても美味しくて…だから好きになりました」

オード「なるほど。そういうことか」

リール「はい。オード君はリンゴは好きですか?」

オード「そうだなぁ…嫌いではないが果物とか甘いものには疎いんだ。今まで肉とかしか食べてこなかったから」

リール「え、じゃあお粥じゃ足りないんじゃ…」

オード「いや、今は食欲がないからこの方がいい。むしろ今結構満足感がある」

リール「そうですか。それは良かったです。あ、さっき果物とか甘いものには疎いって言ってましたよね?」

オード「あぁ」

リール「では今度私と一緒に果物か甘いものを食べに行きませんか?」

オード「…え?」

 

カランカラン!

オードは思わずスプーンを落とした。

 

リール「あ、大丈夫ですか!?」

オード「あ、あぁ…いや、大丈夫…大丈夫だ…」

リール「どうかされましたか?」

オード「あ、いや…な、なんでもない…」

リール「?」

オード (え、ちょっと待てよ…これって…デートってやつか?マジ?俺がリールとデートできるのか?いいのか?ほんとに…)

リール「オード君?」

オード「!!」

 

オードが気づいた時にはリールの顔が目の前にあった。

 

リール「大丈夫ですか?」

オード「だ、大丈夫だ…問題ない」

 

その後、オードはお粥を食べきった。

 

オード「…ふぅ、ご馳走様でした」

リール「はい。お粗末様でした」

オード「これ…リンゴ…食べてもいいか?」

リール「はい!私はお皿を洗ってきますね」

オード「あぁ。すまない」

リール「いえいえ!オード君のお陰でみんなが無属性魔法を使えるようになったんです!感謝しかありませんよ!」

オード「…そうか」

 

シャクッ…シャクッ…

オードはリンゴを食べた。

 

オード「…うん。美味い…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

それから数分が経過した。リンゴは2つだけ食べて残りは冷蔵庫に入れておくことにした。

 

リール「体調はどうですか?オード君」

オード「あぁ。だいぶ良くなった。リールのお陰だな」

リール「そんな!私はただお粥を作っただけですよ!」

オード「いや、俺にはそれで十分だった。ありがとうリール」

リール「!」

 

リールはとても嬉しくなった。

 

リール「…そう言っていただけて光栄です」

オード「俺は少し横になるけどリールはどうするんだ?」

リール「あ、でしたら少しお待ちください」

オード「?」

 

リールはオードの布団をどけた。

 

リール「ではオード君。私が手伝いますのでベッドに横になりましょう」

オード「え!?いいっていいって!大丈夫だって!」

リール「いえ、ご飯の前には頭痛があったそうですので私が手伝います」

オード「いや、もう頭痛は治ってるって」

リール「ダメです。一人でやろうとすると負担になりますよ。私に任せてください」

オード「そ、そうか…な、ならお願いする…」

リール「はい!」

 

こうしてリールはオードをベッドに寝かせて布団をかけた。

 

リール「他に何かして欲しいことはありますか?」

オード「いや、もう大丈夫だよ。ありがとう」

リール「はい。あ、では飲み物を持ってきますね」

 

スタスタスタ

リールは飲み物を取りに行った。

 

オード (…幸せだ)

 

オードは心の中でそう思った。

 

リール「風邪の時は水分が抜けやすいと聞きましたので、こまめな水分補給は大事ですよ」

オード「あ、ありがとう」

リール「あ、あと」

オード「?」

 

ギシッ…

リールはオードの上に跨った。

 

オード「ちょ、リール!な、何して…」

リール「じっとしててください」

 

そう言うとリールはオードの頬に手を添えてオードの額に自分の額を当てた。

 

オード「!!」

リール「…」

 

ドクドクドクドクドクドクドク!

オードの心臓の鼓動が速くなった。

 

オード「っ…」

 

オードは恥ずかしくて目を瞑っていた。

 

リール「…大丈夫なようですね」

オード「!」

 

そう言うとリールは額をどけた。

 

リール「熱は少し下がっているようですよ。良くなっている証拠です」

オード「そ、そうか…」

リール「もし何かありましたら私の方に。あと飲み物はこの机の上に置いておきますね。リンゴは冷蔵庫に入れてありますので食べてくださいね」

オード「お、おう…」

リール「明日、元気なオード君を見れることを楽しみにしていますよ」

オード「!!」

リール「それでは私はこれで帰りますが、他に何かして欲しいことはありますか?」

オード「あ、あぁ…いや、大丈夫…かな…」

リール「そうですか。分かりました。ではまた明日」

オード「あ、あぁ…また明日」

 

スタスタスタ…ガチャ…バタン

リールはオードの部屋を出た。

 

オード「…」

 

オードは余韻に浸っていた。

 

オード (リールのおでこが俺のおでこに…。てかリール…めちゃめちゃいい匂いだった…てか今までで1番近かったんじゃないか?記録更新できたんじゃないか?しかもリールの手料理とリールが持ってきた飲み物、リールが好きだと言って切ってくれたリンゴ…全部リールがやってくれた。…しかも俺の体に触れてた…やっべぇ…ドキドキしてたのバレてねぇかな…バレてなきゃいいけど…)

 

その後、部屋に戻ってきたディアは冷蔵庫からリールが切ったリンゴを1つ取って食べたせいでオードに怒られた。




〜物語メモ〜

リール
リールは魔女さんの家にいた頃から料理をしていたのである程度のものは作れる。
魔女さんの家にいる頃に、風邪を引いた時は魔女さんがリンゴを切って食べさせてくれたため、リールはリンゴが大好き。


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第44話 リールとオードの看病

私の名前はリ…ゲホッ…ゲホッ…すみません。私の名前はリール。

今自室にいます…。

今日は何故か熱が出てしまい、部屋で寝込んでいます…。

昨日オード君の看病をしたから風邪が移ったのでしょうか…。

今は体が熱く、頭も痛いので今日は学校を休むことにしました…。

ゲホッ…ゲホッ…。

アンナはいつも通りに学校に行ってもらってます…風邪を移すのは良くないですので…。

私は大丈夫です…いざとなったら魔法を使っ…ゲホッ…ゲホッ…。

あぁ…今日は喉も痛いです…。話そうとしても思うように声が出ません…。

夕方になったらアンナたちは授業が終わって帰ってきますので、今日はアンナにご飯を作ってもらうことにします…。

早く治してオード君と甘いものを食べに行きたいですね。

ゲホッ…ゲホッ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…教室

 

オード「なぁアンナ」

アンナ「何?」

オード「リールはどうした。今日見てないが」

アンナ「リールなら風邪引いちゃって今は寝込んでるよ」

オード「え!?風邪!?」

アンナ「うん。今日の朝に頭が痛いって言ってたよ。そしたら案の定風邪引いてた」

オード「な…」

ディア「そうか。ならリールにお大事にって言っておいてくれ」

アンナ「うん。言っとく」

スカーレット「しかしリールも風邪を引くのね」

ノーラ「あぁ。びっくりだ。リールは常に元気なイメージがあったからな」

オード「…」

 

オードは一人考え込んでいた。

 

オード (もしかして…俺の看病したから…)

アンナ「でもリールは大丈夫って言ってたから大丈夫なんだと思うよ」

ノーラ「そうか」

アンナ「うん」

オード (俺の…俺のせいで…リールが…)

 

ー回想ー

 

リール「明日、元気なオード君を見れることを楽しみにしていますよ」

 

ー回想終了ー

 

オード (…リール)

ディア「んじゃあ俺たちは席に戻るか。そろそろ先生来るだろうし」

オード「…」

 

タッタッタッ!ガラッ!

オードは走って教室を出た。

 

ディア「オード!!」

ノーラ「どうしたんだオードのやつ…」

ディア「いや…分からん…」

アンナ (…まさか)

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールとアンナの部屋

 

リール「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

リールは自分のベッドに横になっていた。

 

リール (はぁ…はぁ…思ってたよりもキツいですね…)

 

リールは頭が痛く、薬を飲んでから寝込んでいた。

 

リール (薬がいつ効くのか分かりませんが、今は寝てましょうか…)

 

ドンドンドン!

リールが横になっていると、突然扉を叩く音が聞こえた。

 

リール (だ…誰なんでしょうか…)

 

リールはゆっくりと立ち上がって扉まで歩いた。

 

ガチャ…

リールはゆっくりと扉を開けた。

 

リール「え…なんで…」

オード「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

目の前にいたのは袋を持ったオードだった。

 

リール「オード君…学校があるんじゃ…」

オード「リールが風邪で寝込んでんのに呑気に授業なんざ受けられねぇよ。今度は俺が看病するから任せてくれねぇか?」

リール「え…そんな…私のために…」

オード「…リールには色々とやってもらったからな。今日はそれを返すために来た」

リール「そう…ですか…」

オード「アンナが今日リールが風邪って言ってたからリールの大好きなリンゴとかあとは飲み物とかも持ってきた。だから俺に任せてくれ」

リール「そう…だったんですね…。では…お言葉に甘えて…」

 

ストン…

リールは立つことが難しくなって座り込んでしまった。

 

オード「リール!」

 

オードはすぐにリールの額に手を当てた。

 

オード「すげぇ熱だ…リール。今からベッドまで運ぶけどいいか?」

リール「…」コクッ

 

リールは何も言わずにただ頷いた。

 

オード「…よしっ。優しくするからな」

 

スッ…

オードはリールができるだけリラックスできるよう優しく抱き上げ、走らずゆっくりと歩いてベッドまで運んだ。そのお陰か、リールには無駄な振動が伝わらず、リールの頭痛も少し軽減した。

 

オード「よしっ。少し待ってなリール。今から何か作ってやるからな」

リール「…はい」

 

リールはかろうじて声を出せた。声は小さかったが、オードはその返事を聞き逃すことは無かった。

 

オード「なぁリール。今暖かいもの食べられるか?」

リール「…少し…難しいです…」

オード「分かった。ならリンゴを切ってくるから待ってな」

リール「…はい」

 

オードはいつもより声を小さくして話していた。その理由は相手が風邪で寝込んでおり、普段の声で話すと頭痛が酷くなるのではないかと考えたからだ。

 

トントントン

オードは包丁を使ってリンゴを切った。

 

オード (待ってなリール。俺が治してやるからな)

 

そう思いながらオードはリンゴを切っていった。

 

オード「よしリール。リンゴ切ったから食べな」

 

オードはお皿を持ってきた。

 

リール「あ、ありがとうございます…」

オード「あ、ちょっと待ってくれ。今起こすから」

 

コトッ

オードはお皿を置いてリールの体をゆっくりと起こした。

 

リール「何から何まで…すみません」

オード「リールだって同じことしてくれたじゃねぇか」

リール「…そうでしたね」

オード「さ、リンゴ切ったから食べな」

リール「!」

 

オードが持ってきたお皿にはすり潰したリンゴが乗っていた。

 

リール「オード君…これって…」

オード「リールは口が小さいから固形物は良くないんじゃないかって思ってな。できるだけ食べやすいようにすり潰したんだ」

リール「ありがとう…ございます」

オード「もし食べられなかったら残しな。あとで保存しておくから」

リール「…はい」

 

リールはお皿を持ってリンゴを食べ始めた。その間オードは自分の体を使ってリールの体をずっと支えていた。

 

リール「…ふぅ、ありがとうございますオード君。少し元気が出てきました」

オード「そうか。それはよかった」

 

コトッ…

リールはお皿を机に置いた。

 

リール「オード君…」

オード「なんだ?」

リール「その…今日はありがとうございます」

オード「…いいってことよ。リールだって俺が風邪で寝込んでた時に看病してくれただろ?だから今回は俺がリールを看病するんだ。でも流石にアンナが帰ってきたら二人の時間を過ごして欲しいから俺は帰るけど」

リール「…そうですか。でもありがとうございます。丁度ご飯どうしようかなって思ってたところでしたので」

オード「…そうか」

リール「…あの…オード君」

オード「ん?」

リール「…昨日の件です。あの甘いものを食べに行く話です」

オード「あぁ、あれか」

リール「その…いつにしますか?」

オード「!!」

リール「今日はその…学校があったり私が風邪を引いたりで何も出来ませんが、休みの日とかはどうでしょうか」

オード「そうだな。休日は基本暇だからそうしよう」

リール「分かりました。では今週の休みに行きましょうか」

オード「あぁ」

リール「楽しゲホッ…ゲホッ…」

オード「リール!」

リール「だ、大丈夫です…」

オード「そうか。でも喉が痛いならこれ飲みな」

リール「これって…」

オード「ここに来る前にラミエ先生のところに行ったんだ。喉が痛い時の飲み物をくれって。そしたらそれを渡されたんだ」

リール「え、私が喉を痛めてる事をどうして…」

オード「俺には姉がいるんだ。姉も風邪を引くと喉が痛いって騒ぐから反射的に貰ってきたんだ」

リール「…そうですか。ありがとうございます」

オード「ちょっと待ってな」

 

キュッ…キュッ…

オードは蓋を開けた。

 

オード「飲めるか?」

リール「はい。飲めます」

 

ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…

リールはゆっくりと飲んだ。

 

リール「…はぁ…はぁ…はぁ…」

オード「…もう寝るか?」

リール「…いえ…もう少しこのままで…」

オード「分かった」

 

現在リールはオードにもたれかかった状態にある。そしてオードはリールが倒れないよう後ろから支えている。

 

オード「…このままでいいのか?」

リール「はい…こうやって支えてもらえると安心します」

オード「…そうか」

リール「…もしオード君が私に背中を向けて座っていたら私はもっと辛かったでしょうね。ですが、今は私の後ろからオード君が支えているので、私は安心して体を預けることができます」

オード「…分かった。じゃあしばらくこのままで」

リール「…はい」

オード (え?ホントにいいの?これ俺得じゃん。これリールの体触ってるけど大丈夫だよな?通報とかされないよな?)

リール「あの…オード君…」

オード「ん?なんだ?」

リール「…休日は…何食べますか?」

オード「!」

 

リールはオードとの休日を考えていた。

 

オード「う〜ん…甘いものは分からないからリールのオススメが食べたいな」

リール「そうですか…分かりました。でしたら私のオススメする食べ物をあとでピックアップしておきますね…」

オード「あぁ。でも元気になってからな」

リール「はい…」

 

リールの体が倒れ始めた。

 

オード「リール。眠いのか?」

リール「…はい。少し」

オード「じゃあベッドで寝ないとな」

リール「…分かりました」

オード「俺が運ぶからリールはそのまま座ってな」

リール「はい」

 

スッ…

オードはリールをゆっくり持ち上げてベッドまで運んだ。

 

オード「よしっ。気分悪くないか?リール」

リール「はい…大丈夫です」

オード「そうか。ならおやすみ。アンナが帰ってくるまでここにいるから何かあったら呼んでくれ」

リール「はい。ありがとうございます…オード君」

オード「…あぁ」

 

それから数分が経ってリールは寝始めた。

 

オード「…さて、色々やっておこうかな」

 

そう言ってオードはお皿などを片付け始めた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

それから数時間が経過して夕方になった。

 

オード「…そろそろ授業が終わって帰ってくる時間か」

 

オードはリールの様子を見た。

 

オード「…大丈夫そうだな」

 

そう言ってオードは座り直した。

 

オード「…」

 

オードはリールとの休日デートの事を考えていた。

 

オード (リールは女の子。だからそこまで食べられないはず…ここは男として女の食べる量には注意しないといけない。俺が言うと無理して食べさせる可能性があるからな)

 

オードは色々と考えていた。

 

オード (あとはこれをこうして…こう…)

 

ガチャ

突然部屋の扉が開いた。

 

オード (…誰か来たな)

 

スッ…

オードは音を立てずにその場から離れた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールとアンナの部屋の扉

 

アンナ「ふぅ、これくらいあればいいかな」

オード「なんだ、アンナか」

アンナ「あれ、オード君…」

オード「あ、待ってくれ。今リールが寝てるから静かに頼む」

アンナ「あ、うん。でもなんで?」

オード「…リールが風邪を引いたのは俺の看病してたからじゃないかって思ってな。だから俺が看病しに来た」

アンナ「そっか。ありがとうオード君」

オード「いや、いい。とりあえずアンナが帰ってくるまでこの部屋にいるってリールに伝えてあったからな。今はアンナが帰ってきてるから俺はここで帰ることにする」

アンナ「うん。分かった。ありがとうね」

オード「あぁ。俺は自分の荷物取ってくるわ。その後にすぐ帰る」

アンナ「うん。分かった」

 

スタスタスタ

オードは自分の荷物を取りに向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールのベッドの近く

 

オード「よしっ。これで十分だな」

 

オードが帰ろうとした時、リールの声が聞こえた。

 

リール「オード君…」

オード「?」

 

オードはその声を聞いて振り向いたが、そこには寝ているリールしかいなかった。

 

オード「…気のせいか?」

 

スタスタスタ

オードはそのまま歩いてリールとアンナの部屋を出た。

 

リール「…オード君」




〜物語メモ〜

オードの姉
オードには2つ年が上の姉がいる。オードによく似て活発な女性。ただし、オードほど魔法が使えるわけではない。その代わりにオードよりも身体能力が高い。


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第45話 リールとオードのデート

私の名前はリール。

今スペルビア王国の噴水のある広場にいます。

今日はオード君と甘いものを食べに行く日なので、楽しみで仕方ありません!

今日は色々と甘いものを食べて回る予定ですが、オード君は気に入ってくれるでしょうか。

気に入ってくれたら嬉しいですね。

それと今日は先日オード君に看病してもらったお礼もしたいので、何かプレゼントを買おうと思っています。

私的には身につけられるものがいいと思っています。

その人に忘れられないように形として残るものがいいですね。

食べ物だと食べると無くなっちゃうのであまり好きではありませんね。

ネックレスとか時計とかブレスレットでもいいかと個人的に思います。

私を忘れないようなものであればいいと思っています。

もし渡すことができたらオード君には私の贈り物だと忘れないように身につけて欲しいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…噴水のある広場

 

リール「オード君!!」

オード「おーっすリール!」

 

タッタッタッ!

オードが噴水の前まで走ってきた。

 

オード「すまねぇリール…少し遅れてしまった…」

リール「構いませんよ。それよりも怪我はしてませんか?」

オード「大丈夫!」

リール「それは良かったです!あ!オード君!その服!!」

 

リールはオードの服を見て驚いていた。

 

リール「その服って私がオード君にあげた服では!?」

オード「あ、そうそう!よく分かったな」

リール「当然ですよ!」

オード「まぁ、せっかくリールが選んでくれた服だからな…この日に着たいって思ってたんだ」

リール「嬉しいです!ありがとうございます!」

オード「お、おう…」

リール「ではオード君!早速行きましょう!」

オード「おう!!」

 

スタスタスタ

リールとオードは2人で甘いものを食べに行った。

 

ディア「…なぁノーラ。どう思うよ」

ノーラ「まぁ、いいんじゃない?これで進歩すれば」

ディア「あいつすげぇぜ?ノーラは部屋違うから知らないと思うけど、あいつ昨日から浮かれすぎててな…料理は失敗するわ机の足に小指ぶつけるわ服どれがいいかって午後から鏡の前に立ってるわで…」

ノーラ「お前も大変だな。ディア」

ディア「ホントだぜ…午後からずっとあいつに付きっきりだったし…」

ノーラ「でもまぁ結局はリールが買った服になったのか」

ディア「らしい。やっぱり初デートは相手から貰った服がいいって言ってな」

ノーラ「俺は良い選択だと思うけどなぁ…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…パフェ専門店

 

オード「あれ、ここは」

リール「ここはパフェという甘い食べ物が食べられるお店です!メニューもパフェしかないんですが、大丈夫ですか?」

オード「あぁ、大丈夫だ」

リール「では行きましょう!」

 

リールとオードはお店に入っていった。

 

ディア「ノーラ。俺たちも入るぞ」

ノーラ「え!?見つかるだろ…」

ディア「遠くの席に座れば問題ない。いくぞ」

ノーラ「お、おう…」

 

ディアとノーラもお店に入った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

店員「ご注文はお決まりでしょうか?」

リール「私はこのイチゴの乗ったパフェをお願いします」

店員「かしこまりました」

リール「オード君はどれにしますか?」

オード「う〜ん…よく分からないからリールと同じもので」

リール「分かりました。では先程のパフェを2つお願いします」

店員「かしこまりました。少々お待ちください」

 

スタスタスタ

店員はその場をあとにした。

 

リール「楽しみですね!オード君!」

オード「お、おう…」

 

リールとオードはパフェが来る間、2人で話をした。

 

店員「ご注文はお決まりでしょうか?」

ディア「俺はこのパフェで」

ノーラ「俺はこっちで」

店員「かしこまりました。少々お待ち下さい」

 

スタスタスタ

店員はその場をあとにした。

 

ディア「いいなぁ、オードのやつ」

ノーラ「ん?」

ディア「リールと仲良くできて」

ノーラ「俺たちも十分仲がいいだろ」

ディア「違うって!お付き合いしてるってことだよ!」

ノーラ「え?リールとオードって付き合ってるのか?」

ディア「え、デートってことは付き合ってるって事じゃないのか?」

ノーラ「え、知らんけど」

ディア「ま、まぁ仮に付き合ってなくてもあぁやって女の子と休日に出かけるのって何か憧れね?」

ノーラ「え、う〜ん…そうかな…」

ディア「じゃあノーラは休日も1人で過ごす派?」

ノーラ「まぁ、遊びに誘われなかったらそうなるな」

ディア「えぇ…つまらなくない?」

ノーラ「1人だと気が楽でいいよ」

ディア「そうかぁ…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ディアとノーラが話している間にリールとオードのパフェが出来上がっており、2人はすでにパフェを楽しんでいた。

 

リール「美味しいですね!オード君!」

オード「あぁ…うめぇ…こんな美味いもんがあるとは思わなかったぜ」

リール「私もスカーレットたちに案内されるまで知らなかったんですよ!」

オード「え?そうなのか?」

リール「はい!初めて食べた時からこの味の虜になりまして…」

オード「そうか。でもこれなら俺も虜になる」

リール「ほんとですか!?嬉しいですね!」

オード「お、おう…」

 

その後、リールとオードは綺麗にパフェを完食した。

 

リール「ふぅ…美味しかったですね…」

オード「あぁ。また来たいな」

リール「ぜひ!その時も一緒に来ましょう!」

オード「おう!」

リール「ではそろそろお会計に行きましょう!」

オード「そうだな」

 

スタスタスタ

リールとオードはお会計をしに行った。

 

ディア「なぁノーラ」

ノーラ「ん?」

ディア「これ…めちゃくちゃうめぇな」

ノーラ「そりゃあね、パフェだから」

ディア「え?ノーラは食べたことあるのか?」

ノーラ「あるよ。昔にね」

ディア「マジかよ…リッチだな」

ノーラ「え?」

 

その後ノーラとディアもパフェを完食してお会計を済ませた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…アクセサリー専門店

 

次にリールとオードはアクセサリーのお店に入った。

 

オード「なぁリール。ここは?」

リール「ここはアクセサリーを売っているお店です」

オード「アクセサリー?なんかあるのか?」

リール「はい。先日、オード君に看病していただいたのでそのお礼をと」

オード「え!?いいっていいって!お礼はいいって!」

リール「いえ、お礼はしっかりとしないといけませんよ。魔女さんにもそう教わりましたから」

オード「でもそんな高価なものじゃなくても…」

リール「確かに物の価値は値段ではありません。ですが、私はオード君に私のプレゼントしたものを身につけて欲しいのです。オード君が今日着てくれたその服もそうです」

オード「!!」

リール「私の贈り物だと分かるものであればいいんです」

オード「それなら尚更安いものでもいいんじゃ…」

リール「いえ、そういうわけにもいかないんですよ」

オード「?」

リール「あなたに合うものを選びたい。と、私は考えています」

オード「!」

リール「オード君は情熱的でありながら温かな包容を持ち合わせています。そんなオード君に合ったアクセサリーを贈りたいんです」

オード「リール…」

リール「なのでここに来ました。そしてもう選んであります」

オード「え?」

リール「あの、すみません」

店員「はい」

リール「先日予約していた物を受け取りに来ました」

店員「お名前を伺ってもよろしいですか?」

リール「リールです」

店員「かしこまりました。少々お待ち下さい」

 

スタスタスタ

そう言うと店員は店の奥に入っていった。

 

オード「リール…選んだって…」

リール「私があなたに合いそうなものを事前に選んで予約しました」

オード「俺に合った…」

リール「はい。まぁその中には私が個人的につけて欲しいという願望もありますが」

オード「?」

店員「リール様。こちらが予約されたものになります」

 

すると店員は小さな箱を持ってきた。

 

オード「これは?」

リール「…開けてもいいですか?」

店員「はい。構いませんよ」

 

カパッ

リールはその箱を開けた。

 

オード「!!」

 

その中には小さな指輪が入っていた。

 

オード「これって…」

リール「はい。指輪です」

オード「嘘…」

リール「ホントですよ。偽物ではありません」

オード「ひえぇぇぇ…」

リール「私が思うあなたという人物像は情熱と仁愛です。なので、この指輪に着いている宝石も私が選びました」

オード「宝石?この赤いやつのことか?」

リール「はい」

 

リールが予約した指輪には赤い宝石が埋め込まれていた。

 

リール「すみません店員さん。この宝石のご説明をお願いできますか?」

店員「はい。分かりました。こちらはルビーと呼ばれる赤い宝石になります。このルビーには石言葉と言ってこの宝石に込められた想いがあります。それが先程リール様が仰られていた『情熱』と『仁愛』です。指輪に埋め込む形ですので本来のものより少し小さめですが、その分綺麗なものを使わせていただきました」

オード「え、いいのか?こんな高価なもの…」

リール「いいんです。私があなたに贈りたいと思ったので」

オード「そ、そっか…」

リール「お会計は先に済ませていますので、これをあなたに」

 

そう言ってリールは指輪の入った箱をオードに渡した。

 

オード「リール…」

 

オードは受け取った箱を見て泣きそうになった。

 

オード「ありがとう…リール…」

リール「はい。どういたしまして」

オード「じゃあさ、俺も1つプレゼントしてもいいか?」

リール「え、いいんですか?」

オード「あぁ。元はと言えば先にリールが俺の看病してくれたからな。俺もお礼がしたい」

リール「そうですか。ではお言葉に甘えて」

オード「すみません店員さん。今から予約出来ますか?」

店員「はい。構いませんよ」

オード「俺も指輪を予約します」

店員「でしたらこちらを」

 

そうしてオードは一通り話を聞いた。

 

オード「じゃあこれで」

店員「かしこまりました」

オード「時間はどれくらいかかりますか?」

店員「今は予約がないので今日の夜辺りに」

オード「分かりました。では今日の夜に取りに来ます」

店員「はい。分かりました」

オード「ではお願いします」

 

スタスタスタ

リールとオードはお店を出た。

 

リール「えと…オード君…」

オード「ん?」

リール「だ、大丈夫なんでしょうか…」

オード「リールも同じことやっただろ?だから大丈夫」

リール「そ、そうですか」

オード「リールには受け取って欲しいな」

リール「…では、お言葉に甘えて」

オード「よしっ!次のお店行こう!次は何を食べさせてくれるんだ?」

リール「あ!そうですね!次は…」

 

ディア「おいおい…なんで2人はアクセサリー店から出てくんだよ…」

ノーラ「贈り物とかじゃねぇの?家族とか」

ディア「あーなるほどな」

ノーラ「そういえばリールのお師匠様って今家を空けてるんだよな」

ディア「あ、だから帰ってきた時のために」

ノーラ「多分な」

ディア「流石リールだな」

ノーラ「あぁ。確かに」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…ケーキ専門店

 

リールとオードはアクセサリーのお店を出てから次に向かったのはケーキの専門店だった。

 

オード「これは?」

リール「ケーキという食べ物ですよ。こちらも美味しいですので食べてみませんか?」

オード「おう。行ってみよう」

 

カランカラン

リールとオードはお店に入っていった。

 

ディア「すげぇな2人とも。さっきパフェ食べたばっかりだぜ?」

ノーラ「甘いものは何とかって言うだろ?それじゃね?」

ディア「なるほど。納得」

 

それから数分してリールとオードは店から出てきた。

 

ディア「お、出てきた」

ノーラ「結構早かったな」

ディア「確かに」

 

リール「ケーキも美味しかったですね」

オード「あぁ。あんなに美味い食べ物だとは思わなかった」

リール「これでまたひとつ体験できましたね」

オード「あぁ。リールのお陰だな」

リール「いえいえ!そんな…」

オード「ここもまた来ような。リール」

リール「…はい!」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…公園

 

リールとオードは次のお店に行く前に公園で休憩することにした。

 

リール「あ、あそこの椅子に座りましょう」

オード「おう」

 

リールとオードは近くの椅子に座った。公園では小さい子供たちが遊んでいる。

 

リール「楽しそうですね。オード君」

オード「あぁ。確かな」

リール「オード君は誰か想い人はいませんか?」

オード「…え?」

 

リールが突然オードに質問した。

 

オード「きゅ、急だな…」

リール「はい。私はずっと魔女さんと暮らしていました。なので男の子を見るのはこの学校に来て初めてだったんですよ」

オード「あぁ、なるほどな」

リール「そしてスカーレットやアンナが好きな人のお話をするので、私もみなさんのそう言ったお話に興味があるんです。なのでオード君はそう言ったお話はありませんか?」

オード「お、俺?」

リール「はい」

オード「俺かぁ…」

 

オードは言いあぐねていた。ここでいると言えば問い詰められる。だがいないと言えば会話が終わってしまう。オードが取った選択は…

 

オード「…まぁ、いるな」

 

いると言った。

 

リール「え!?どの方ですか!?聞かせてください!」

 

オードが予想した通りリールが問い詰めてきた。

 

オード「う〜ん…名前は言えないけど、その人は俺にとっての太陽かな」

リール「太陽…ですか。照らしてくれたという意味でしょうか」

オード「そう。俺の人生に光をくれた人かな」

リール「へぇ!そのお方とはご連絡とかはされてますか?」

オード「あぁ。時々な」

リール「へぇ!結ばれるといいですね!」

オード「あぁ」

 

オードはなんとか平然を保った。

 

オード (あっぶねぇ!バレるかと思ったぁぁぁぁぁ!幸いなことにリールが別の誰かと思ってくれてる…何とか難は逃れそうだ)

リール「…私も誰かと結ばれるのでしょうか」

オード「!」

 

オードが心の中で喜んでいると、ふとリールがそう呟いた。

 

リール「私は誰かを好きになったことがありません。男の人とあまり会わなかったので」

オード「あ、そっか」

リール「…どなたか私のことを好いてくれる方はいませんかね」

オード「…」

 

オードはこの時ある事を考えていた。

 

オード (俺が好きって言ったらリールはどんな反応するんだ?)

リール「…オード君はその方とはどのようにお会いしましたか?」

オード「え?」

リール「参考にさせてください」

オード「え、えっとなぁ…その人と会ったのはこの学校なんだ。だから何かきっかけがあって会った訳じゃないんだ」

リール「あ、そうなんですね」

オード「あぁ。だからリールもこの学校でリールのことを好きになる人がいるかもしれないな」

リール「そ、そうなんでしょうか…」

オード「あぁ。リールは可愛くて頭も良くて面倒見がいいからな。必ずいるぞ。リールの事が好きな人が」

リール「そ、そうですかね…」

オード「あぁ。俺が保証する」

リール「ふふっ…ありがとうございますオード君。参考にさせていただきますね」

オード「おう」

リール「…さて、そろそろ行きましょうか」

オード「おう。分かった」

 

スタスタスタ

リールとオードはその後、色々と歩き回った。その間何もトラブルはなく、平和に過ごせていた。そして、夜になった。

 

リール「…今日は色々と見て回れましたね。オード君」

オード「あぁ。とてもいい1日だった」

リール「私も。とても良い1日でしたよ」

オード「あ、そうそう」

リール「?」

オード「最後に寄るところがあるから一緒に来てくれないか?」

リール「寄るところ?」

オード「あぁ」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…アクセサリー専門店

 

リール「あ、ここって」

オード「今日言ってたでしょ?俺もリールに贈り物がしたいって」

リール「あ、だから」

オード「そう。今日はこれを受け取って最後かな」

リール「…そうですね」

オード「じゃあ入ろう」

リール「はい」

 

スタスタスタ

リールとオードはお店に入っていった。

 

店員「いらっしゃいませ」

オード「すみません。予約したものを受け取りに来ました」

店員「はい。出来上がってますよ。少々お待ち下さい」

 

スタスタスタ

店員はお店の奥に入っていった。

 

リール「オード君。一体何を予約したんですか?」

オード「ま、見てのお楽しみかな」

リール「?」

 

少しして店員が出てきた。 

 

店員「こちらが予約されたものになります」

リール「!」

 

店員が持ってきたのはリールが予約したものと同じくらいの大きさの箱だった。

 

リール「オード君…これって…」

オード「…開けてもいいですか?」

店員「はい。どうぞ」

 

カパッ

オードはその箱を開けた。

 

リール「!」

 

その箱には指輪が入っていた。

 

リール「これ…私の時と同じ…」

オード「あぁ。俺がリールに似合うと思って予約したんだ」

リール「この宝石は…」

オード「店員さん。この宝石の説明をお願いできますか」

店員「はい。分かりました。こちらはトリフェーンと呼ばれる宝石になります。このトリフェーンは『寛大』や『優しさ』の意味を持つ宝石と言われています」

リール「優しさ…寛大…」

オード「俺が店員さんに初めて聞いた時にリールにピッタリだと思ったんだ。俺が思うリールの人物像は優しさと調和。リールのような温かな人に助けられた人は数多い。だからリールにはそれを象徴とするものを身につけて欲しかったんだ」

リール「オード君…」

オード「…受け取ってくれるか?」

 

オードはリールにその箱を渡した。

 

リール「もちろん…受け取りますよ…」

 

リールはその箱を受け取った。

 

リール「ありがとうございます…オード君…」

オード「…どういたしまして」

 

リールは貰った指輪の箱を大事に手で包んだ。

 

店員「お二方はお付き合いなされてるんですか?」

オード「え!?」

リール「あ、いえ…そういうわけでは…」

店員「あ、そうでしたか。それは失礼しました。ですが指輪はつける指の場所によって意味が異なってきますので、お気をつけくださいね」

オード「え?そうなんですか?」

店員「はい。もしご興味がおありでしたらこちらを持ち帰っていただいても構いませんよ」

 

そう言って店員は指輪をつける場所の意味が書かれた紙を取り出した。

 

リール「わ、本当ですね。色々あります」

オード「あ、じゃあ俺も持ち帰るのでもう1枚お願いできますか?」

店員「はい。かしこまりました。でしたらお二方の指輪の箱を出していただいても構いませんか?」

リール「あ、はい」

 

そう言って店員は紙を小さく折って2人の指輪の箱に綺麗に挟めた。

 

店員「はい。これで大丈夫ですよ」

リール「ありがとうございます」

オード「ありがとうございます」

店員「いえいえこちらこそ。それではお気をつけて」

 

スタスタスタ

オードとリールは自分の指輪の入った箱を持って店を出た。

 

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その帰り道

 

リール「ありがとうございますオード君。こんないい物をプレゼントしていただいて」

オード「いや、リールもありがとうな。これは俺にピッタリの物だ」

リール「喜んでいただけて嬉しいです」

オード「早速明日からつけるわ」

リール「あ、私も明日からつけさせていただきますね」

オード「あっははは!お揃いだな!」

リール「ですね!」

 

2人は何事もなく仲良く学校まで帰ったのだった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…ディアとオードの部屋

 

オード「ただいまぁ!」

ディア「お?おかえり」

 

ディアは先に部屋に戻ってきていた。

 

ディア「どうだったよ」

オード「めちゃめちゃいい1日だったぜ」

ディア「そうか。それはよかった」

オード「あ、そうそう。これ見てくれよ」

ディア「?」

 

オードはディアにリールから貰った指輪を見せた。

 

ディア「これは…指輪?」

オード「あぁ。リールが看病してくれたお礼に俺に合う宝石を選んで指輪としてプレゼントしてくれたんだ」

ディア「…え!?」

オード「綺麗だろ?ルビーって言う宝石らしい」

ディア「確かに綺麗だ…」

オード「それにこのルビーって宝石には言葉があるらしいんだ」

ディア「言葉?」

オード「あぁ」

ディア「どんな?」

オード「『情熱』と『仁愛』らしいぞ」

ディア「情熱か…確かにオードにピッタリだな」

オード「だろ?」

ディア「オードは何かプレゼントしたのか?」

オード「したよ」

ディア「どんな?」

オード「指輪」

ディア「…指輪!?」

オード「あぁ。お揃いの方がいいなって思ってな」

ディア「ど、どんな?」

オード「トリフェーンって宝石だ」

ディア「トリフェーン?」

オード「あぁ。『優しさ』と『寛大』という意味を持つ宝石なんだ」

ディア「優しさと寛大か。リールにピッタリだな」

オード「だろ?しかも色が光属性魔法に近い色だったからな。話を聞いて真っ先にこれを選んだぜ」

ディア「やるな…オード…」

オード「だろ?」

ディア「…で、つけるのか?その指輪」

オード「あぁ。明日からつけるつもりだ」

ディア「そうか」

オード「リールも明日からつけるらしいから明日からお揃いになるぜ」

ディア「そうかそうか。それは良かったな」

オード「あぁ」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールとアンナの部屋

 

リール「ただいま戻りました」

アンナ「あ!おかえり!どうだった?」

リール「とても楽しい時間を過ごせましたよ」

アンナ「そっかぁ!よかった!」

リール「それにプレゼントも頂きましたので」

アンナ「プレゼント?」

リール「はい。これです」

 

カパッ

リールは指輪の入った箱を開けた。

 

アンナ「え!?指輪!?」

リール「はい」

アンナ「え!?何で!?」

リール「オード君が看病してくれたお礼だと言ってました」

アンナ「すごい…指輪をプレゼントするなんて…」

リール「この指輪は明日からつけようと思っています」

アンナ「そっか!でもよかったねリール!」

リール「はい!」

 

こうして2人は翌日から指輪をつけて生活するようになった。




〜物語メモ〜

は、今回は新しい情報がないので次回ですね。


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第46話 リールと最後の学院生活

ここでちょっとお知らせです。

番外編として書いていたキャラ紹介をこの物語が終わった段階で再度投稿することにしました。

お知らせは以上です。


私の名前はリール。

今自分の部屋にいます。

昨日オード君と一緒に甘いものを食べに行きました。

オード君も気に入っていただけたようで嬉しい限りです。

それにオード君が指輪をプレゼントしてくれました。

トリフェーンという名前の宝石がついた指輪で、寛大と優しさを象徴とした宝石らしいです。

オード君から見て私は優しさに溢れているのでしょうか?

そうだととても嬉しいですね。

今日はオード君から頂いた指輪をつけて過ごします。

何やらつける指によって意味が変わるそうなんですが、どういった意味があるのでしょうか。

少し興味があるので見てみようと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…リールとアンナの部屋

 

リール「えっと…あ、すごい。右手と左手だけでも意味が違ってくるんですね」

 

リールは昨日店員さんから貰った指輪をはめる場所の意味が書かれた紙を見ていた。

 

リール「右手の親指は…指導者の指?誰かを指導するんでしょうか…」

アンナ「あ、右手の親指は誰かを導く指だってお母さんが言ってたよ」

リール「誰かを導く…ですか」

アンナ「うん。リーダーみたいな感じかな?」

リール「あ、なるほど。では人差し指は…集中力?」

アンナ「そのままだね。集中力を高めるための指かな?」

リール「ふむふむ。では中指は…邪気から身を守る…ですか」

アンナ「邪気って言っても今はそんなものないと思うよ」

リール「ですね。では次は薬指ですね。薬指は…リラックスだそうですよ」

アンナ「いいね。緊張した時は薬指につけるのが良さそうだね」

リール「ですね。では最後は小指。小指は…自分の魅力が上がるそうですよ」

アンナ「魅力かぁ…リールの魅力が更に上がっちゃったらもっと注目されそうだね」

リール「あ、それはちょっと嫌ですね…」

アンナ「え?何で?」

リール「大勢の人に見られるのは少し恥ずかしいので」

アンナ「あ、なるほど…」

リール「次は左手ですね」

アンナ「左手って薬指が有名だよね」

リール「え?そうなんですか?」

アンナ「うん。結婚してる人ってほとんど左手の薬指につけてるんだよ」

リール「へぇ…薬指ですか。あ、左手の薬指は愛を深めるだそうですよ」

アンナ「あ、やっぱり」

リール「なるほど…愛ですか…」

アンナ「まぁそこはリールが誰かと結婚したらつけるといいよ」

リール「ですね。では左手の親指は…」

 

リールはその後、全部の指の意味を確認した。

 

リール「へぇ、はめる場所によって色々と意味があるんですね。不思議です」

アンナ「だね。どう?リール。どこにつけるか決めた?」

リール「そうですねぇ…やっぱり私は…」

 

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場所…オードとディアの部屋

 

ディア「…で、何やってんだよオード」

オード「ん?」

 

オードはリールからもらった指輪をつけてポーズを取っていた。

 

ディア「朝から何やってんだよ…」

オード「何ってポーズ取ってんだよ。見て分からね?」

ディア「いや、それは分かるけどなぁ…」

オード「どうよディア。リールからもらった指輪。綺麗だろ?」

 

そう言ってオードは指輪を見せてきた。

 

ディア「あーはいはい。綺麗だっての」

オード「だろ?リールのセンスいいと思う。俺にピッタリだ」

ディア「そうか。それは良かったな」

オード「ふふん♪ふん♪ふふん♪」

 

オードは上機嫌だった。

 

ディア「てか朝飯どうするよ」

オード「いつも通りでよくね?」

ディア「だな。用意するわ」

オード「ありがとうよ」

 

ディアは朝食を用意し始めた。

 

オード「はぁ…綺麗…この赤い色。俺の火属性魔法にピッタリだ…」

ディア (オードのやつ…また浮かれて机の足に小指ぶつけなきゃいいけど…)

 

数分後、ディアは朝食を作り終えた。

 

ディア「できたぞー」

オード「おーう」

 

所定の位置についたオードとディアは一緒に朝食を食べ始めた。

 

ディア「なぁオード」

オード「ん?」

ディア「その指輪 汚さないようにしろよ」

オード「あぁ。当たり前だ」

ディア「何かあったら拭いたりしろよ」

オード「おうよ」

 

数分後、2人は朝食を終えて授業の準備をし始めた。

 

ディア「オード?まだか?」

 

先に準備を終わらせたのはディアだった。

 

オード「もう行く」

 

すぐにオードも準備を終えた。

 

ディア「よしっ。いくぞ」

オード「参るぞ」

 

2人は教室に向かった。

 

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場所…教室

 

ガラッ!

ディアとオードは教室についた。

 

アンナ「あ、オード君とディア君だ」

リール「あ、ほんとですね」

オード「おーっすリール」

 

オードとディアは真っ先にリールのところに行った。

 

リール「おはようございます。オード君 ディア君」

オード「おはようリール」

ディア「おはよう」

オード「どう?リール。この指輪」

リール「あ!付けてくれてるんですね!私も付けてますよ!ほら!」

 

リールは昨日もらった指輪を見せた。

 

オード「あれ?リールはそこにつけたの?」

 

リールが付けたのは右手の薬指。

 

オード「俺は左手の薬指だぜ」

 

ディア「え?」

リール「え?」

アンナ「え?」

 

3人は固まった。

 

ディア「え、てかお前左手の薬指につけたのか?」

オード「あぁ。ほら」

 

オードは指輪を見せた。確かに左手の薬指に指輪がはめられていた。

 

ディア「ガチかよ…」

オード「ん?何かあるのか?」

ディア「オード…左手の薬指は結婚指輪とかをつける場所だぞ」

オード「え!?」

ディア「お前らまだ結婚してねぇだろ…」

オード「た、確かに…あ、じゃあ俺もリールと同じところにつける」

 

そう言ってオードは右手の薬指にはめ直した。

 

オード「どうだ?」

リール「お似合いですよ。オード君」

オード「やっぱり?」

リール「はい。オード君に似合った色ですよ」

オード「そうか…なんか…照れるな…」

ディア「おっとそろそろ先生が来るぞ」

オード「え?もう?」

ディア「あぁ。もうそろそろだ」

オード「そっか…じゃあリール。また後で」

リール「はい。また後で」

 

スタスタスタ

オードとディアは自分の席に着いた。その後予定通りに先生が来てその日の授業が始まった。

 

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時刻 PM13:03

 

場所…エレナ学院 校庭

 

現在リールたちは外で魔法の実技をしていた。

 

先生「じゃあ今から魔法を使ってもらう。これはいつか来る戦いの時のためのものだ。しっかりやらないと危険だぞ」

生徒「はい!」

先生「じゃあそれぞれ属性魔法のブースを作ってるからそこへ行ってくれ」

 

校庭には7つほどブースがあり、各属性魔法で分けられていた。リールたちは自分の適性魔法のブースに向かった。

 

リール「まぁ…そうなりますよね…」

 

リールは1人だけ光属性魔法のブースにいた。それもそのはず、光属性魔法に適性があるのはリールだけ。なので必然的にリールが1人になる。

 

リール「少し寂しいですが、ここは目一杯魔法を使ってみましょうか。1人ですから平気ですよね」

 

そう言ってリールは杖を取りだした。

 

リール「光玉(ライダラ)

 

ビュンビュンビュン!

リールは光の玉を飛ばした。

 

リール「うんうん。今回も順調に魔法が使えそうです」

 

その後リールは思う存分魔法の練習をした。

 

それから数分後…

 

先生「リールさん」

リール「あ、はい」

 

先生が光属性魔法のブースに来た。

 

先生「あれ、光属性魔法はリールさん1人だけですか?」

リール「はい。このクラスでは私1人です。他の学年は知りませんが」

先生「う〜ん…他の学年にも光属性魔法の適性者はいないですね…」

リール「じゃあ本格的に私だけってことですか?」

先生「そうですね。教員にも光属性魔法の適性者は…あ、レヴィ学院長は光属性魔法の適性者ですね」

リール「あ、確かに。となると2人だけですね」

先生「そうですね。…私たちは他の属性魔法に適性があるので光属性魔法について教えることはできないんですよね…力不足を感じます…」

リール「そんな!適性魔法は人それぞれですよ!」

先生「…リールさんは光属性魔法に合った性格をしてますね」

リール「え?」

先生「その性格でみなさんを導いてくださいね」

リール「は、はい!」

 

スタスタスタ

先生はその場を後にした。

 

リール「あ!先生!」

先生「はい。何でしょうか」

 

リールはその場を離れる先生を引き止めた。

 

リール「あの、授業の最初に戦いのためと仰ってましたが、戦いとは何でしょうか」

先生「…」

 

先生は突然真面目な顔になった。

 

リール「先生…?」

先生「…リールさん。驚かずに聞いてください」

リール「は、はい…」

先生「…最近この近くでドレインが出現したと報告が入りました」

リール「!!」

先生「出現したドレインは近くにいた魔法使いたちによって倒されましたが、それに関してはあまり脅威ではありません。ドレインが出現したという事実が脅威なのです」

リール「…」

先生「私たちはその報告を受けて教員で話し合った結果、授業に実技を入れることにしたんです。丁度みなさんが今やってるようなものです」

リール「なるほど…」

先生「…リールさん。あなただけに言っておきます」

リール「?」

先生「あなたの魔力と知性を見越して言伝をとレヴィ学院長からお言葉がありました」

リール「言伝…」

先生「はい。『…深淵の封印が弱くなっています。ドレインはすぐにでもこの地上に湧いて出てくるでしょう。そうなると私たちは終わりです。ドレインには光属性魔法しか効きません。他の属性魔法では意味がありません。私とリールさんがみなを救うために動かなければなりません。ですので今のうちに魔法の技術を向上させてください』…とのことでした」

リール (…やはりドレインが…)

先生「…」

リール「…先生」

先生「はい」

リール「…ドレインの推定出現時間はいつですか」

先生「…残念ながらそれはちょっと断言できないですね」

リール「…そうですか…分かりました」

先生「…頑張ってくださいね。私たちも何かあった時は全力を尽くしますので」

リール「…はい」

先生「それでは」

リール「はい」

 

スタスタスタ

先生はその場を後にした。

 

リール (…ドレインの封印)

 

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その後リールたちは授業を終え、帰る時間になった。

 

場所…教室

 

アンナ「リール?」

リール「は、はい!何でしょうか?」

アンナ「大丈夫?」

リール「え、何のことでしょうか」

アンナ「だってリール…今日ずっと上の空だったし…」

リール「あ、それは…」

 

リールは実技の授業が終わってからずっとドレインの事を考えていた。

 

リール (アンナに話すべきでしょうか…今後起こり得る事だと考えれば話すべきでしょうけど今話せば怖がらせてしまうのではないでしょうか…)

アンナ「リール?」

リール「!」

アンナ「また上の空だよ…大丈夫?風邪引いた?」

リール「あ、いえ!大丈夫です!さ、帰りましょう!」

アンナ「あ、うん…」

 

スタスタスタ

アンナとリールは自室に戻ることにした。

 

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場所…学院長室

 

レヴィ「…ラーフ」

ラーフ「はい」

レヴィ「…そろそろ来そうですよ」

ラーフ「え!?このタイミングですか!!」

レヴィ「…はい」

ラーフ「ど、どこに…」

レヴィ「場所は分かりません。ですが、深淵を封印していた器の魔力が尽きかけています。いえ、もう尽きているのかもしれません」

ラーフ「そんな…では生徒たちを!」

レヴィ「無駄です。生徒たちをこの場から避難させたところでドレインは至る所に現れます。それにここの生徒たちはまだ魔法を上手に使えません。今この状況で私たちの監視下から離れてしまうと殺されるリスクが跳ね上がります。ですのでこの場で私たち教員が生徒たちを守らねばなりません」

ラーフ「確かにそうですが…」

レヴィ「…こうなってしまった以上覚悟を決めなければなりません。ドレインは強敵です。有効打は光属性魔法だけです。他の基本属性魔法では太刀打ちできません。ですので私とリールさん以外の人たちは守りに徹さねばなりません」

ラーフ「…そうですね」

レヴィ「ですがドレインは無尽蔵に現れます。ドレインを攻撃出来る人は僅かに2人だけ。それでも魔力が無尽蔵にある訳ではありません。魔力は有限です。それを駆使しながらどうやってドレインに立ち向かうのか。そこが大事になります」

ラーフ「だからレヴィ学院長は魔法の実技を…」

レヴィ「はい。生徒たちに自分の身は自分で守れるくらいになってもらわないといけません。私とリールさんは他の人を守れるほど魔力を持っている訳ではありませんので」

ラーフ「そうですね…」

 

ギィッ…

レヴィは椅子から立ち上がって外を見た。

 

レヴィ「…あれから何年が経ったでしょうか。たった1人でドレインの進行を止めていたあの人が今では魔力も微かにしか感じられません。よくここまで持ち堪えてくれました」

ラーフ「…リノさんですか」

レヴィ「!」

 

レヴィはラーフがリノの名前を出したことに驚いていた。

 

レヴィ「ラーフ…その名前…」

ラーフ「…歴史書を拝見しました。リノと呼ばれる最後の光属性魔法の適性者が己が身を依代としてドレインを封印したと」

レヴィ「…そうですね。あの人は偉大な人でした。今この世界があるのはあの人のお陰です」

ラーフ「…」

レヴィ「…ですが今はあの人の魔力も…」

ラーフ「…レヴィ学院長」

レヴィ「ラーフ」

ラーフ「…はい」

レヴィ「…あの人との約束を果たすため、リールさんを死なせるわけにはいきません。何があってもリールさんだけは守り抜いてください」

ラーフ「レヴィ学院長はどうなされるおつもりですか」

レヴィ「…私はドレインがこの場に現れる前に魔女さんを取り返してきます」

ラーフ「ということは場所が!」

レヴィ「はい。ようやく場所の特定ができました」

ラーフ「一体どこに…」

レヴィ「…九人の魔法使いもどき(メギド・オートマタ)のいる魔外(まがい)と呼ばれる場所です」

 

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場所…リールとアンナの部屋

 

アンナ「リール…?」

 

リールは部屋の窓に向かって祈るようにして手を合わせていた。

 

リール (…魔女さん。私…みなさんを守るほどの力を持っているのでしょうか。みなさんを怪我させずに守りきれることができるのでしょうか。…教えてください…魔女さん…私は…)

 

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場所…魔外 (エレナの部屋)

 

魔女さん「…そろそろね」

 

現在魔女さんはエレナの部屋で監禁状態に遭っていた。

 

魔女さん「…リール。もう少しです。もう少ししたら帰れます。なのでもう少しだけ…もう少しだけ待っていてください」

 

リール (教えてください…魔女さん…)

 

魔女さん「!!」

 

突然魔女さんの頭にリールの声が聞こえてきた。

 

魔女さん「これ…リールの…」

 

リール (私は…大切な人を守ることができるでしょうか)

 

魔女さん「!」

 

リール (魔女さん。私はこの学院に入ってからある男の子と仲良くできる機会がたくさんありました)

 

魔女さん「!!」

 

リール (その人はとても情熱的で何でも積極的に行動する方です。私はその人に憧れがあります。それと同時に大切な人だとも思っています)

 

魔女さん「…リール」

 

リール (その人は私に何かあればすぐに心配してくれますし、私の魔法の練習にも付き合ってくれます。私はそんなあの人のことをよく思っています。…魔女さん…私にはそんな大切な人を守るだけの力がありますか)

 

魔女さん「…リール」

 

魔女さんはリールの想いを受け取っていた。

 

魔女さん「あなたならできますよ」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールとアンナの部屋

 

リール「…」

 

リールは一通り魔女さんに向けて言葉を綴った。

 

アンナ「…リール?」

リール「あ、はい。何ですか?」

アンナ「あ、ううん。全然返事しないからどうしたのかなって…」

リール「あ、ごめんなさい。実はさっき魔女さんに相談してたんですよ」

アンナ「相談?」

リール「はい」

アンナ「何の相談?」

リール「それはちょっと言えませんね…」

アンナ「そっか。でも大丈夫だよ。リールの悩み事はいつか解決できると思うから」

リール「…そうだと良いですね」

アンナ「うん!あ、そうそうご飯食べる?もういい時間だと思うけど」

リール「そうですね。いい時間ですしお夕飯作りましょうか」

アンナ「うん!」

 

スタスタスタ

アンナとリールは台所に向かった。

 

魔女さん (…リール)

 

リール「!!」

 

リールは突然魔女さんの声が聞こえた気がした。

 

リール「魔女…さん…?」

 

魔女さん (あなたならできますよ)

 

リール「!!」

 

リールは立ち止まって窓の方を見た。しかしそこには誰もいなかった。

 

リール (…魔女さん)

アンナ「リール?どうしたの?」

リール「え?」

アンナ「早く作って食べよ!」

リール「え、あ、はい!そうですね!」

 

スタスタスタ

リールは台所に向かった。

 

リール (魔女さん…私、頑張ってみます!)

 

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場所…エレナの部屋

 

リール (魔女さん…私、頑張ってみます!)

 

魔女さん「ふふっ…頑張ってくださいね。リール」

 

 




〜物語メモ〜

これにて
「私、魔女さんに拾われました。ーエレナ学院編ー」
が終了しました。

次回は
「私、魔女さんに拾われました。ードレイン侵攻編ー」
になります。

物語はまだまだ続きますので、引き続き読んでいただければと思います。

それではまた次回まで。


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第1章 3節 ドレイン侵攻編
第47話 エレナとドレイン


私の名前はリール。

今自室にいます。

もう少しで学校が始まる時間になるので準備している最中です。

アンナもいます。

アンナは準備がいいのでもう終わっているそうです。

私もすぐ終わるので今日も2人で登校しようと思っています。

そう言えば先生からドレインが出現したと聞きました。

リノの置き手紙にはドレインを封印していると書かれていましたが、そのドレインが出てきたのでしょうか。

どちらにせよドレインは人を食べると聞いていますので出会った時はやっつけてみます!

ですが私1人でできるのでしょうか…不安で仕方ありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…学校の廊下

 

アンナ「今日もあるのかな?魔法の実技」

リール「多分あると思いますよ」

アンナ「急に授業に追加されたよね」

リール「…そうですね」

アンナ「…?」

 

リールは下を向いた。

 

アンナ「リール?」

リール「え、はい。どうしましたか?」

アンナ「あ、ううん。なんでもない。あ!今日は右手の中指につけてるんだね!指輪!」

リール「あ、あぁそうですね。邪気を払うっていう意味合いがあるのでお守り代わりにと」

アンナ「そうなんだ。お守り効くといいね!」

リール「はい!」

 

2人は教室に向かった。

 

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場所…教室

 

先生「じゃあ今から外で魔法の実技だぞ。遅れるなよ」

生徒「はーい!」

 

先生は教室を出た。

 

アンナ「やっぱりあったね。実技」

リール「ですね。今日も頑張りましょう!」

アンナ「うん!」

 

2人は校庭に向かった。

 

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場所…エレナ学院 校庭

 

今日も魔法の実技が始まった。いつものように7つほどのブースがあり、みんなはそれぞれ自分の適性魔法のブースに行って魔法の練習をした。

 

リール (どうすれば効率よく魔力を消費せずに魔法が使えるのでしょうか)

 

リールは一人考え込んでいた。

 

先生「どうしましたか?リールさん」

リール「あ、先生。どうすれば効率よく魔力を消費せずに魔法が使えますか?」

先生「魔力を消費せずに効率よく魔法を使う…ですか」

リール「はい」

先生「流石に消費せずに魔法を使うのは難しいかと…」

リール「あ、やっぱりそうですよね…」

先生「はい。この世界に存在するマナはあなたの魔力に反応して魔法に変換してくれますので魔力なしに魔法を使うとなると氷属性魔法か無属性魔法しか…」

リール「そうですよね…」

先生「はい。すみません」

リール「いえいえ!大丈夫です!」

先生「…あ、そうそうリールさん。学院長が」

 

バゴォン!

突然大きな音が鳴り響いた。

 

先生「な、一体どこから…」

生徒「先生!学校から煙が!」

先生「!!」

 

みんなが学校の方を見ると学校の1階から煙が出ていた。

 

先生「な!」

 

周りの生徒たちもどよめき始めた。

 

先生「みんなはここから動かないこと!先生は学校の方を見て来るから!」

生徒「はい!」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

先生は箒に乗って学校の方へ向かった。

 

リール「一体何が…」

スカーレット「リール!」

リール「あ、スカーレット…」

 

タッタッタッ

雷属性魔法のブースにいたスカーレットがリールの所まで走ってきた。

 

スカーレット「リール…これって…」

リール「…多分普通じゃないかと…」

アンナ「リール!スカーレット!」

 

アンナもリールの所まで走ってきた。

 

アンナ「一旦みんなを集めた方がいいと思うんだけどどう?」

リール「確かにそうですね。みなさんを集めましょう!」

スカーレット「なら私に任せて」

リール「スカーレット?」

 

そう言ってスカーレットは1歩前に出た。

 

スカーレット「拡声(チェッカー)

 

ピリピリ!

突然頭に電気が走った。

 

リール「!!」

アンナ「え、今の…何?」

スカーレット「全員、リールのところに集まって!バラバラになってると危ないから!」

 

スカーレットの言葉が直接頭に入ってきた。

 

リール「スカーレット…この魔法って…」

スカーレット「少し考えてたの。自分の声が遠くまで聞こえたら便利じゃないかなって。だから作ってみたの。拡声魔法」

リール「す、すごい…」

 

すると他の生徒たちがリールの所まで走ってきた。

 

リール「わ、ホントに来た…」

スカーレット「ふふん♪私はやればできるのよ!」

アンナ「すごいよスカーレット!」

スカーレット「ふふん♪」

 

他の生徒たちが走ってくる中、1人だけ恐ろしく速い速度で走ってくる人がいた。そう。オードである。

 

オード「リールが俺を呼んでる!待ってろよリール!」

 

ダダダダダダダダダ!

何故かオードだけ足が速かった。

 

ディア「ちょ…オードのやつ…」

ノーラ「リールのことになるといつもこうだよな…」

ディア「ほんと…勘弁してくれよ…」

 

少しして生徒たちが全員リールの近くに集まった。

 

スカーレット「これで全員ね」

リール「みなさん!今先生が学校の様子を見に行ってくれてます!ですので先生が帰ってくるまで私たちはこの場にいないといけません!今異変が起きてるのは学校ですがここが安全だというわけではありません!ですので先生がこの場に戻ってくるまで私たちは私たち自身で身を守らなければなりません!」

オード「おうけい。リールは俺が守るから安心しな」

リール「みなさんはそれぞれ使える魔法で身を守ってください!なるべくこの場から離れずに!」

 

リールがそう言うと他の生徒たちはその意見に賛成したと同時に各々杖を構えた。

 

リール「スカーレット、アンナ。2人も頑張ってくださいね!」

スカーレット「分かったわ」

アンナ「ねぇリール」

リール「はい。何でしょうか」

アンナ「一体何が起きたの?」

リール「…昨日先生からある事を聞きました」

アンナ「ある事?」

リール「はい」

アンナ「どんな事?」

 

リールは少し考える素振りを見せてから言った。

 

リール「…ドレインが出現したという情報です」

アンナ「え…」

リール「…だから私たちも危険な目に遭うのではないかと考えたんです」

スカーレット「でももしホントにドレインだったら…」

リール「…有効打は光属性魔法だけですね。ですので他の皆さんはなるべくドレインにやられないように身を守って欲しいのです。私はドレインを倒しますので」

スカーレット「…そういうことね。分かったわ。私たちがなんとかするわ」

リール「…頼みますね。スカーレット」

スカーレット「…えぇ」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…エレナ学院 廊下

 

エレナ学院内では突如現れたドレインたちによって混乱状態にあった。

 

生徒「先生!」

先生「みんな下がれ!」

 

ドタドタドタ!

学院内の生徒たちはドレインたちと対峙していたが、先生から下がるよう言われたため、その場から離れることにした。

 

ドレイン「ホォォォォォォォ…」

先生「っ…」

 

ドレインの数は3体。体の大きいドレインが1体と人間サイズのドレインが2体いた。

 

ドレイン「オォォォォォォ!」

先生「はぁっ!」

 

ドゴォン!

先生はドレインに対して魔法を使った。

 

ドレイン「キキキキキキキキキ!」

先生「何!?」

 

ドォン!

先生はドレインの攻撃を受けて壁に吹っ飛ばされた。

 

生徒「先生!!」

先生「逃げろ!」

生徒「っ…」

 

タッタッタッ!

生徒はその場から離れた。

 

ドレイン「カカカカカカ!」

先生「っ…」

 

先生は杖を構えた。

 

先生「はぁっ!」

 

バゴォン!

先生はドレインに魔法を放った。ドレインは少し仰け反ったくらいでダメージはなかった。

 

先生「くっ…」

 

ドレイン「カカカカカカ」

ドレイン「ホォォォォォォォ…」

ドレイン「キキキキキキキキキ!」

 

先生は先程受けたダメージと残りの魔力で死を悟った。

 

先生 (これは…ダメかな…)

 

ドレイン「カカカカカカカ!」

 

ズォォォォォォォ!

ドレインは先生の魔力を吸い始めた。

 

先生「があああああああああ!」

 

先生は痛みに苦しむ。

 

ドレイン「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」

ドレイン「カカカカカカカ!」

 

先生「ぐっ…」

 

先生は痛みをこらえて杖を構えた。

 

先生「死ねええええええええ!」

 

バゴォン!

先生は最後の魔力を使ってドレインたちに攻撃した。

 

先生「!?」

 

しかし、ドレインたちには何の効果もなかった。

 

ドレイン「ホォォォォォォォ…」

先生「っ…」

ドレイン「ガガガガガガガガガ!」

 

バゴォン!

ドレインたちが先生を攻撃しようとした時、横から魔法が飛んできた。

 

先生「!!」

ラーフ「大丈夫ですか!!」

先生「ラ、ラーフ先生…」

 

そこにいたのはラーフだった。

 

ラーフ (レヴィ学院長から任されたこの任…必ずやり遂げてみせます!!)

 

ドレイン「カカカカカカカ!」

ドレイン「オォォォォォォ!」

 

ドタドタドタ!

ドレインたちは一斉にラーフに襲いかかった。

 

ラーフ「はぁっ!」

 

パキパキパキ…ガキン!!

ラーフは得意な氷属性魔法でドレインたちを氷漬けにした。

 

ラーフ「…」

 

タッタッタッ!

ラーフは先生の所に駆け寄った。

 

ラーフ「魔力はありますか!」

先生「すみませんラーフ先生…少ししか…」

ラーフ「…分かりました。この角を右に曲がってまっすぐ行ったところに生徒たちが集合しています。そこまで歩けますか?」

先生「はい…大丈夫です…」

ラーフ「ではお願いします。私はこいつらを外へ出します」

先生「はい…」

 

スッ…スタスタスタ…

先生はゆっくりではあるが、1歩ずつ歩いて集合場所に向かった。

 

ラーフ「…」

 

ラーフはドレインたちを見た。

 

ラーフ「…覚悟してください。レヴィ学院長がいない今、私がこの学院を守ってみせます」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…エレナ学院 校庭

 

オード「リール!こっちは大丈夫だ!だからリールは順番に倒してくれ!」

リール「はい!」

 

現在リールたちはドレインと対峙していた。その数10体以上。大きさもバラバラで統一性がないため、魔力を込める量が度々変わる。

先生が学校に向かってすぐにドレインたちが校庭に現れた。その時リールたちはやられないように自分たちで身を守り続けた。

 

女生徒「いやあああああ!」

リール「!!」

女生徒「やめ…」

 

ズォォォォォォ!

 

リール「!!」

 

ドレインは女生徒の1人を吸収した。

 

オード「な…」

 

吸収された女生徒はその場からいなくなった。

 

リール「あ…あ…」

ドレイン「ガアアアアアアアアアアア!」

 

リールがよそ見している間にドレインがリールを攻撃しようとした。

 

アンナ「リール!」

スカーレット「雷砲(サンダー・キャノン)!」

 

バゴォォォン!

スカーレットはすかさずドレインに攻撃した。

 

シュゥゥゥゥゥ…

ドレインは少し仰け反ったが、ダメージはなかった。

 

ドレイン「カカカカカカカ…」

アンナ「リール!」

リール「私の…私のせいで…」

ドレイン「カカカカカカカ!」

アンナ「リール!!」

 

キィン!バゴォォォォォォォン!

突然ドレインが炎に包まれた。

 

アンナ「!!」

オード「リール!!大丈夫か!!」

 

先程の魔法はオードが放った魔法だった。

 

ドレイン「カカカカカカカ!」

 

しかしドレインは何ともなかった。

 

オード「チッ!」

ドレイン「オォォォォォォ!」

スカーレット「リール!!」

 

ドレインは一目散にリールの所へ走った。

 

リール「私の…せいで…」

ドレイン「オォォォォォォ!」

 

ドタドタドタ!

ドレインはお構い無しに走ってくる。

 

スカーレット「リール!!」

アンナ「リール!!」

 

オード「クソッ…間に合わねぇ!」

 

ドレイン「!?」

 

ズサァァァァ!

ドレインは突然動きを止めた。

 

スカーレット「!」

アンナ「!」

 

ドレイン「オ…オォォォォォォ…」

 

そしてドレインはそのままゆっくりと後退りした。

 

アンナ「な…なんで…」

スカーレット「ドレインが…離れていく…」

リール「私の…私のせいで…」

ドレイン「オォォォォォォ…」

 

ドレインは一定の距離を保っている。

 

スカーレット「ど、どうして…ドレインが…距離を…」

アンナ「あ、あれ!!」

スカーレット「!!」

 

アンナはリールの右手を指さしてそう言った。リールの右手につけている指輪が光っていた。

 

オード「あ!あれは俺があげた指輪だ!」

ドレイン「オォォォォォォ…」

 

ドレインはその光に対して酷く警戒していた。

 

ドレイン「カカカカカカカ!」

女生徒「いや!やめて!離して!」

男生徒「離せクソ!汚ぇ手で触るな!!」

リール「!!」

 

リールが落ち込んでいる時もドレインたちは次々と生徒たちを吸収していく。

 

女生徒「いやああああああ!」

女生徒「やめて!!殺さないで!!」

男生徒「このっ!クソったれ!!」

女生徒「離して!!嫌っ!!」

男生徒「ふざけんな!!これでも…」

男生徒「クソッ…これ以上は…」

 

ズォォォォォォォ!

ドレインたちは1人ずつ生徒たちを吸収していく。

 

スカーレット「みんな!!」

 

タッタッタッ!

スカーレットはみんなを守るために1人でドレインに立ち向かった。

 

リール「…私が…私がもっとしっかりしていれば…こんな…こんな!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

突然リールの指輪が光を発した。

 

ドレイン「!!」

スカーレット「!!」

アンナ「!!」

 

リール「私の大切な人たちを…殺さないでください!!」

 

バゴォォォォォォォン!

その光は音と共にリールを中心に周囲に広がった。

 

ドレイン「ゴォォォォォォォォ…」

ドレイン「カカ…カカカカカカ…」

ドレイン「ホォォォォォォォ…」

 

ジュワァァァァァァ…

その光を受けたドレインたちは蒸発するように消えていった。

 

アンナ「すごい!すごいよリール!!」

リール「…私の」

ドレイン「!?」

リール「私の大切な…大切な…」

ドレイン「カカカカカカカ!」

リール「…私の大切な人たちを…返してください!!」

 

ギュォォォォォォォ!

リールは杖を構えて光を集めた。

 

リール「天光の矢(アマテラス)!!」

 

キィン!バババババババババババ!

リールが杖を上に向けると、その光は少し浮き上がってから光の矢を周囲に放ち始めた。

 

グサッ!グサッ!グサッ!

その光の矢はドレインたちに命中した。

 

ドレイン「オォォォォォォ…」

 

光の矢に当たったドレインたちはその場で蒸発するように消えていった。

 

リール「はあああああああああ!」

 

バババババババババババ!

光の矢はドレインたちが完全に消えるまで攻撃をやめなかった。

 

それからしばらく攻撃が続いて最後の1体まで倒しきった。

 

リール「はぁ…はぁ…はぁ…」

アンナ「リール!!」

 

タッタッタッ!

アンナはリールに走り寄った。

 

アンナ「リール!しっかりして!リール!」

 

リールはふらふらだった。体も揺れ動いており、とても意識が正常だとは思えなかった。

 

スカーレット「アンナ!」

アンナ「スカーレットどうしよう!リールが!」

リール「…」

 

リールは変わらずふらふらしていた。

 

スカーレット「…魔力欠乏症ね」

アンナ「魔力欠乏症って…」

スカーレット「急激な魔力消費はその人に大きな負担をかけるの。酸素が無くなるのと同じよ。今のリールはさっきの魔法で急激に魔力を使っちゃったのね。だからこんな状態になってるの」

アンナ「治す方法は無いの!?」

スカーレット「あるわ。魔力を分け与えればいいの」

アンナ「魔力を…分ける…。私がやる!やり方教えて!」

スカーレット「ダメよ!」

アンナ「な…なんで…ダメなの…」

スカーレット「今魔力を失うのは危険よ。しかも私たちはさっきまでドレインと戦ってたのよ。もう残りの魔力も少ないわ。せめて魔力を消費してない人がいれば…」

アンナ「なんで…こんな目に…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…エレナ学院が見える高台

 

マギ「ほう。これは良い。何故最初から思いつかなかったのだろうか」

ラビ「確かにね!こうすればもっと早くに殺せたのに!」

サリエラ「しかしあれの封印を解くのはそう簡単なことではありませんでしたよ」

マギ「確かにな。流石は "最後の光属性魔法の適性者" だ。だがこうなってはもうあんなやつもゴミ同然だ」

ラビ「ふふっ…だね!」

マギ「どうだこの景色!素晴らしいとは思わないか?」

 

マギは後ろを振り返ってそう言った。

 

マギ「…なぁ? "魔女さん" よぉ」

魔女さん「…」




〜物語メモ〜

拡声(チェッカー)
スカーレットが使った魔法。
対象者の頭の中に電気を送って自分の声を届ける魔法。
範囲は結構広く、スカーレットが届けたいと思った相手に届くようになっている。

天光の矢(アマテラス)
リールが使った魔法。
杖を構えて光を集め、杖の先に光の玉を作り出した後に多数の光の矢を放つ魔法。
光の矢は集めた光の量が多ければ多いほど数が増え、威力も増す。
この矢は光の玉から分離して自動的に矢の形に変わって敵に飛ぶようになっている。


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第48話 エレナとドレインの襲撃

私はアンナです。

今エレナ学院の校庭にいます。

先程人を食べると言われていたドレインがこの場所に現れました。

みんな自分を守るために各々魔法を使って戦ってましたが、私たちはただの生徒で戦闘経験もそこまでないのでドレインにやられる一方でした。

でもそこはリールが魔法を使ってドレインをやっつけてくれましたが、その代わりにリールが魔力欠乏症という病気にかかってしまいました…。

スカーレットが言うには魔力を急激に使ってしまうと起こるそうで、誰かの魔力を分け与えれば症状が治るそうです。

私はリールに魔力を分けようとしましたが、スカーレットが今魔力を失うのは良くないということで、魔力を分け与えるのはやめました。

今私たちは外にいますが、学校の方はどうなってるんでしょうか。

ドレインももっと出てくる可能性があります。

…もう二度と来てほしくありませんが、もし来るならリールの目が覚めてから来て欲しいです。

私も微力ながらリールのサポートをしたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…エレナ学院 廊下

 

バゴォォォォォォォン!

辺りに大きな音が鳴り響く。

 

ラーフ「くっ…」

 

ドレイン「ホォォォォォォォ…」

ドレイン「カカカカカカカ!」

ドレイン「ゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…」

 

ラーフ (このままだと私の魔力が底をついてしまいますね…)

ドレイン「ガアアアアアアアアア!」

ラーフ「!」

 

ドレインがラーフに攻撃しようとしていた。

 

ラーフ「くっ…」

 

ドゴォン!

ラーフは間一髪のところで攻撃を回避した。

 

ラーフ「氷柱(エルサルカ)

 

ガキン!

ラーフは氷属性魔法でドレインを氷漬けにした。

 

ラーフ「…ふぅ」

ドレイン「カカカカカカカ!」

ラーフ「!!」

 

しかしもう一体のドレインは凍っていなかった。

 

ラーフ「しまっ…」

 

ドゴォン!

ラーフはまともに攻撃を受けてしまった。

 

ラーフ「ごほっ…」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…ドゴォン!

ラーフはそのまま壁に激突した。

 

ラーフ「ぐっ…ゴホッ…ゴホッ…」

 

ラーフは吐血した。

 

ドレイン「カカカカカカカ」

ラーフ「!」

 

ドレインはラーフの目の前にいた。

 

ラーフ (あぁ…これは…ダメですね…)

ドレイン「カカカカカカカ!」

 

ドゴォン!

ドレインはラーフを攻撃した。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…エレナ学院 中庭

 

生徒「先生大丈夫かな…」

生徒「大丈夫だよ!私たちだってある程度魔法が使えるんだから何かあった時は戦お!」

生徒「うん…」

 

クロウ先生「みんな聞いてくれ!」

 

突然先生が声を上げた。

 

クロウ先生「今この学院には3体のドレインがいる!ドレインは光属性魔法しか効果がない!!他の属性魔法だと身を守るくらいしかできない!だからみんなにはドレインを倒すのではなくドレインから身を守るために魔法を使って欲しい!」

 

生徒「え、どういう事…ドレインって光属性魔法しか効かないの?」ヒソヒソ

生徒「…みたいだね」ヒソヒソ

生徒「でも光属性魔法の適性者って1人も…」ヒソヒソ

生徒「いや、1人だけいるよ。確か2年生だったかな」ヒソヒソ

生徒「え!?光属性魔法の適性者っているの!?」ヒソヒソ

生徒「いるよ。それに学院長も光属性魔法だったはず…」ヒソヒソ

生徒「ホントにいるんだ…」ヒソヒソ

 

クロウ先生「今ラーフ先生がドレインと交戦している!私たち教員も戦闘に参加する!!一部の教員はここに残るが、もし何かあったら自分の身は自分で守れ!いいな!!」

 

生徒たち「はい!!」

 

みんながドレインと戦うことを示した矢先、嫌な叫び声が響いた。

 

ドレイン「ホォォォォォォォ!」

 

そう。ラーフと戦っていたドレインだった。

 

生徒「ドレインだ!!」

生徒「きゃあああああああ!」

 

生徒たちは一気に叫び声やどよめきの声を上げた。

 

クロウ先生「教員は戦闘態勢!!生徒たちはいつでも魔法が使えるように杖と箒の準備!!」

 

ドレイン「ホォォォォォォォ!!」

 

ドタドタドタ!

ドレインは一直線に生徒たちの方へ走った。

 

クロウ先生「はああああああ!」

 

ゴォォォォォォォォ!

クロウ先生は火属性魔法を放った。

 

クロウ先生「これでもくらえ!!」

 

ドゴォン!

クロウ先生の魔法はしっかりとドレインに命中した。

 

ラヴァ先生「私たちもお手伝いします!」

 

ドゴォン!ドゴォン!バゴォン!バゴォン!

他の先生方は氷や雷、土、水といった他の基本属性魔法を使い、ドレインを攻撃し始めた。

 

ドレイン「ホォォォォォォォ!!」

 

しかしドレインには全く効果がなかった。

 

クロウ先生「くっ…」

ドレイン「ホォォォォォォォ!」

 

ドタドタドタ!

ドレインは構わず先生方の方へ走った。

 

クロウ先生「はぁっ!」

ラヴァ先生「これでもくらえ!!」

ツェイン先生「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

先生方はドレインに向かって更に攻撃を重ねる。

 

ドレイン「ホォォォォォォォ…」

 

ドレインには全く効果がないが、ドレインを後退りさせることに成功した。

 

クロウ先生「よしっ…このままいけば生徒たちに近づけさせずに戦える…」

ラヴァ先生「ですが魔力が尽きてしまいます!」

ツェイン先生「そうなったら最後。生徒たちには危害は加えさせない!!」

ラヴァ先生「そうですね!私も頑張ります!」

クロウ先生「よしっ!このままドレインを近づけさせな…」

 

ドレイン「カカカカカカカ!」

 

ガシッ!ズォォォォォォォ!

先生たちが目の前のドレインに気を取られている隙に横から別のドレインがクロウ先生の体を掴んで先生ごと魔力を吸収した。

 

生徒「きゃああああああ!」

 

生徒たちが吸収されたクロウ先生を見て更に恐怖した。

 

コクエ先生「な!」

ラヴァ先生「2体目!?」

ツェイン先生「クソッ!このままじゃ…」

 

ドレイン「ホォォォォォォォ!!」

 

ドタドタドタ!

横から出てきたドレインに気を取られている隙に目の前のドレインが襲いかかってきた。

 

ラヴァ先生「前から来ます!!」

コクエ先生「!?」

 

しかし気づいた時にはもう遅かった。ドレインは目の前にいてまさにコクエ先生を掴もうとしていた瞬間だった。

 

ガシッ!

反応が遅れた先生はそのままドレインに掴まれてしまった。

 

コクエ先生「痛っ!離しなさい!!」

ドレイン「ホォォォォォォォ!」

 

ズォォォォォォォ!

ドレインはコクエ先生を吸収し始めた。

 

コクエ先生「やめて!!離して!!離し…」

 

やがてコクエ先生はドレインに吸収されてしまった。

 

ツェイン先生「な…」

ラヴァ先生「そんな…」

 

生徒「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ツェイン先生「!!」

ドレイン「カカカカカカカ!」

 

ガシッ!ズォォォォォォォ!

ドレインは近くにいた生徒たちを吸収し始めた。

 

生徒「やめて!離して!!死にたくない!」

ドレイン「カカカカカカカ!」

 

ズォォォォォォォ!

ドレインは構わず生徒たちを吸収していった。

 

ツェイン先生「クソッ!生徒たちには危害は加えさせん!!」

ホークス先生「ツェイン先生!!後ろ!!」

ツェイン先生「な…」

 

先生が振り返るとドレインが目の前で拳を振りかぶっていた。

 

ツェイン先生「しまっ…」

 

ドゴォン!

ツェイン先生はまともにドレインに殴られてしまった。

 

ツェイン先生「ぐっ…」

ドレイン「ホォォォォォォォ…」

ツェイン先生「!」

ドレイン「ホホホホホホホホ」

 

ガシッ!

ドレインはツェイン先生を掴んだ。

 

ツェイン先生「しまっ…」

 

ズォォォォォォォ!

ドレインはツェイン先生を吸収し始めた。

 

ツェイン先生「があああああああ…」

 

やがてツェイン先生の叫び声も聞こえなくなった。

 

ラヴァ先生「そんな…ツェイン先生…」

 

ドサッ…

ラヴァ先生は力なくその場に座り込んだ。

 

ドシン…ドシン…ドシン…

ツェイン先生を吸収したドレインはラヴァ先生に近づいていた。そしてラヴァ先生の目の前に立った。

 

ドレイン「ホォォォォォォォ…」

ラヴァ先生「あは…あはは…」

ホークス先生「ラヴァ先生!!」

 

ビュォォォォォォ!

ホークス先生は風属性魔法を使ってドレインを退けようとした。だがドレインはビクともしなかった。

 

ホークス先生「な…なぜ…」

 

ガシッ!

すると後ろにいたドレインがホークス先生を掴んだ。

 

ホークス先生「しまっ…」

 

ズォォォォォォォ!

そしてドレインはホークス先生を吸収し始めた。

 

ホークス先生「があああああああああ!」

 

ドレイン「ホォォォォォォォ…」

 

ガシッ!

ドレインはラヴァ先生を掴んだ。

 

ラヴァ先生「あはは…もう…ダメですね…」

 

ズォォォォォォォ!

ドレインはラヴァ先生を吸収し始めた。

 

ラヴァ先生「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

やがてホークス先生とラヴァ先生もドレインに吸収されて残るは数名の生徒だけだった。

 

生徒「やめて!近寄らないで!!」

生徒「クソッ!なんで俺たちがこんな目に…」

生徒「はぁっ!」

 

ビュン!ドカン!

生徒の1人が攻撃した。

 

ドレイン「…ホォォォォォォォ」

 

しかしドレインには効果がなかった。

 

生徒「効いてない…」

生徒「こんなの…どうやって戦えって…」

生徒「先生でも負けたのに私たちだけじゃ…」

生徒「もう…無理だ…」

 

ドレイン「カカカカカカカ!」

ドレイン「ホォォォォォォォ!」

 

2体のドレインが残りの生徒たちに襲いかかった。

 

生徒たち「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ズォォォォォォォ!

ドレインたちは残りの次々に生徒たちを吸収した。最後に1人だけその場から逃げ出したが、虚しくドレインに捕まって吸収されてしまい学院内にいた教員と生徒たちは全滅してしまった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…アースの部屋

 

付き人「アース様!!ご報告があります!!」

 

タッタッタッ!バンッ!

付き人が走ってアースの部屋に入ってきた。

 

アース「どうした。何があった」

付き人「先程スペルビア王国のエレナ学院が3体のドレインによって教員全員と生徒9割が殺されました!」

アース「何!?」

付き人「現在残っているのは生徒だけでエレナ学院の校庭にいる人たちで最後です!!」

アース「何だと!?ドレインがこの世界に現れたのか!!」

付き人「はい!つい先程出現しました!!」

アース「クソッ!とうとうこの日が…」

付き人「アース様!!」

アース「今すぐ十二使徒をスペルビア王国に集めろ!!何としてでもドレインを討滅しろ!!」

付き人「はい!かしこまりました!!」

 

タッタッタッ!

付き人はアースの部屋をあとにした。

 

アース「クソッ!なんでこのタイミングで…」

 

アースは部屋の外を見た。

 

アース「…リノ。君に一体何が…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スカーレット家

 

ジリリリリリリリ!

家の電話が鳴り響く。

 

ジン「はい。ジンです」

付き人「ジン様!アース様の付き人です!」

ジン「はい。どうされましたか」

付き人「現在エレナ学院にドレインが3体出現しています!」

ジン「何!?」

マーク「…?」

付き人「ドレインの出現によって教員全員と生徒9割が殺されました!」

ジン「な…」

付き人「ですので今すぐエレナ学院に行ってください!お願いします!」

ジン「分かりました!今すぐ行きます!!」

 

ガチャッ…

ジンは電話を切った。

 

マーク「どうしたジン。何かあったのか?」

ジン「マーク。今すぐエレナ学院に行くぞ」

マーク「何かあったのか?」

ジン「エレナ学院にドレインが3体出現した」

マーク「え!?」

ジン「教員は全滅。生徒は9割が殺されたらしい」

マーク「な…」

ジン「だから今すぐエレナ学院に行かなきゃならない。行けるか?マーク」

マーク「あ、当たり前だろ!行くぞ!」

ジン「よしっ」

 

タッタッタッ!

ジンとマークは準備をしてエレナ学院に向かった。

 

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場所…エレナ学院 校庭

 

アンナ「どうスカーレット。リールは大丈夫そう?」

リール「…」

スカーレット「…ダメね。全然魔力が戻らないわ」

アンナ「そんな…」

オード「リール!!」

 

オードが駆け寄ってきた。

 

オード「リールどうした!!しっかりしろ!」

スカーレット「リールは今魔力欠乏症なのよ。だから少し安静にさせてあげて」

オード「魔力欠乏症ってなんだよ」

スカーレット「急激に魔力を失うと起こる症状よ。魔力が戻るまでずっとこの状態よ」

オード「な…」

 

オードがその事を聞いて固まっているとある生徒が声を上げた。

 

生徒「ドレインだあああああああ!」

 

スカーレット「!!」

アンナ「!!」

オード「!!」

 

3人が声のした方を見ると3体のドレインがこちらに向かっていた。

 

スカーレット「な…こんな時に…」

アンナ「どうにかして守れないかな」

オード「とりあえずみんなをここに集めよう」

スカーレット「なんでよ」

オード「みんなの結界を足し合わせれば良い防御力になるだろ」

スカーレット「あ、なるほどね」

 

するとオードは1歩前に出て大きな声で言った。

 

オード「全員!!今すぐここに集まれ!!ここで結界を展開してリールを守るぞ!!」

 

そう言い終わると他の生徒たちがリールの所へ箒に乗って飛んできた。

 

オード「よしっ!みんなで力を合わせて結界を作るぞ!」

生徒たち「分かった!!」

オード「いくぞ!!はぁぁぁぁぁ!」

生徒たち「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

パキパキパキパキ…ガシャン!

みんなの結界が徐々に足し合わさり大きく強固な結界ができた。

 

オード「よしっ…これくらいなら」

 

リールのクラスメイトも残り十数名となった。他の人たちはドレインに吸収されてしまい、残ったのはリールたちくらいとなった。

 

オード「なぁスカーレット。リールはこのまま治らないって可能性はあるのか?」

スカーレット「…リールの魔法がどれくらい魔力を消費するのか知らないからなんとも言えないわ」

オード「治す方法は他にないのか?」

スカーレット「…あるにはあるわ」

オード「なんだ?言ってみろ」

スカーレット「…リールに魔力を分け与えるのよ」

オード「魔力を分け与える?」

スカーレット「えぇ。そうすることで一時的にリールを元に戻せるわ」

オード「なら俺の魔力を使え!」

スカーレット「は!?」

オード「俺なら大丈夫だ!だから俺の魔力を!」

スカーレット「あんた何言っ…」

 

ドンドンドン!

ドレインたちが結界を叩き始めた。

 

オード「早くしろ!ドレインが目の前にいるんだ!」

スカーレット「でも…」

オード「早く!!」

スカーレット「…分かったわよ」

オード「よしっ」

 

早速オードとスカーレットは魔力を分け与える準備をした。

 

オード「それで、これでいいんだな」

スカーレット「えぇ。そのままリールの手に」

 

ギュッ…

オードは優しくリールの手を握った。

 

スカーレット「あとは魔力を送るだけよ」

オード「よしっ」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…

オードはゆっくりとリールに魔力を送った。

 

オード「リール…目覚めてくれ…」

リール「…あっ…か…」

 

突然リールが言葉を発した。

 

オード「リール!!」

リール「…あれ…オード…君…」

オード「よっしゃ!目覚めた!」

リール「スカーレットも…」

スカーレット「もう少し待ってリール」

リール「うん…」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…

オードはリールに魔力を送り終えた。

 

オード「よしっ…これで…いいんだな…」

スカーレット「えぇ。大丈夫よ」

オード「よかった…」

 

ドサッ…

オードはその場に倒れた。

 

リール「!!」

 

すると変わるようにしてリールが起き上がった。

 

リール「オード君!!」

 

リールは真っ先にオードの心配をした。

 

リール「スカーレット!オード君が!」

スカーレット「オードは今魔力欠乏症っていう症状にかかってるわ。しばらくそのまま動かないわ」

リール「そんな…オード君…」

オード「…」

スカーレット「オードの看病お願い出来る?」

ディア「任せろ」

ノーラ「俺たちが引き受けた」

スカーレット「…お願いね」

 

ドンドンドン!

ドレインたちが更に結界を攻撃する。

 

リール「な!ドレインが!」

スカーレット「あと3体いたのよ」

リール「では私が!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥ!

リールは光を集めた。

 

リール「光玉(ライダラ)!!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!

リールは3発の光玉を出した。

 

ドカン!ドカン!ドカン!

その魔法は見事全て命中した。

 

ドレイン「オォォォォォォ…」

ドレイン「カカカカカカカ…

ドレイン「オォォォォォォ…」

 

ジュワァァァァァ…

するとドレインたちが跡形もなく消えていった。

 

リール「よしっ!これで終わりですね!」

スカーレット「…そうね」

リール「…スカーレット?」

 

スカーレットは下を向いていた。

 

スカーレット「リール」

リール「は、はい…」

スカーレット「…学校の方…見に行きましょう」

リール「学校?」

スカーレット「えぇ。もしかしたら…学校内はもう…」

リール「!!」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…エレナ学院が見える高台

 

マギ「おっと。最後の3体もやられたか」

ラビ「でも結構魔力集まったんじゃない?」

マギ「あぁ。上出来だ」

サリエラ「でしたら今回は」

マギ「そうだな。これ以上この場にいたら十二使徒のやつらが俺たちを見つける可能性がある。帰るぞ。ラビ サリエラ」

 

ラビ「うん」

サリエラ「はい」

 

スタスタスタ

マギは振り返ってその場をあとにした。

 

魔女さん「…」

 

魔女さんはエレナ学院の校庭をずっと見ていた。

 

魔女さん「…」

マギ「どうした。帰るぞ。狂気の魔女」

魔女さん「…」

 

スタスタスタ

魔女さんもその場をあとにした。




〜物語メモ〜

クロウ先生
火属性魔法を使う先生。

ラヴァ先生
水属性魔法を使う先生。

ツェイン先生
雷属性魔法を使う先生。

コクエ先生
土属性魔法を使う先生。

ホークス先生
風属性魔法を使う先生。

ドレイン
ドレインは光属性魔法に対する耐性が恐ろしく低いが、他の基本属性魔法には恐ろしく高い耐性を誇る。そのためドレインには光属性魔法しか効かない。


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第49話 エレナと静かな学院

私の名前はリール。

今スカーレットと一緒に学校の方へ向かっています。

先程までドレインと戦ってたんですが、スカーレットが学校の方を見に行こうと提案してくれたのでその意見に賛成することにしました。

出現したドレインの数はとても多く、私たちのクラスメイトはほとんどがドレインに吸収されてしまいました。

ドレインの襲撃があった際に先生が学校の方へ行きましたが未だに戻ってきません。

何も無いといいんですが、やっぱり不安になります。

みなさんご無事でありますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…エレナ学院 玄関

 

スカーレット「な…」

リール「そ…そんな…」

 

スカーレットとリールは校庭から箒で玄関まで飛んできた。普段なら学生でいっぱいだった玄関には誰一人としておらず、残っているのは玄関から少し先に進んだところにある赤い人の血。

 

スカーレット「…リール」

リール「は、はい…」

スカーレット「…行ってみるわよ」

リール「…はい」

 

スタスタスタ

2人は中を見て回ることにした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…廊下

 

2人は廊下に出た。

 

リール「…ここも」

スカーレット「…誰もいないわね」

 

廊下にも人はおらず、静けさだけが残っていた。2人はとりあえず廊下を歩いてみることにした。

 

リール「ねぇスカーレット…」

スカーレット「なに?」

リール「…さっきの赤い液体って…」

スカーレット「…」

リール「もしかして…血…だったりしませんか…」

スカーレット「……私もそう思うわ」

 

スカーレットは歩を止めた。

 

スカーレット「リール」

リール「は、はい…」

スカーレット「私たちは外でドレインたちと戦ってたけど…もしかしたら学校の中にもドレインがいてみんなが…」

リール「…やっぱりそうですよね…」

スカーレット「うん。でなきゃここまで静かにならないわ。普段ならもっと騒がしいのに」

リール「…」

 

???「リー…ル…さん…」

 

リール「!!」

 

リールはどこからか自分の名前が聞こえた気がした。

 

スカーレット「…リール?」

リール「スカーレット…今何か聞こえませんでしたか?」

スカーレット「え、何も聞こえてないけど…」

リール「…」

 

リールは耳に手を当ててみた。

 

???「リール…さん…」

 

リール「!!」

 

その声はとても小さなものだったが、リールは聞き逃さなかった。

 

リール「やっぱり聞こえます」

スカーレット「え?どこから?」

リール「…こっちです」

 

スタスタスタ

リールは声のした方へ歩いていった。

 

スカーレット「ちょちょっと待って」

 

スタスタスタ

スカーレットはリールについて行った。

 

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場所…廊下

 

リールたちが少し歩いていると、廊下の壁に寄りかかっている人がいた。

 

リール「スカーレット!あそこです!」

 

タッタッタッ!

リールはその人のところに向かった。

 

スカーレット「リール!」

 

タッタッタッ!

スカーレットはリールの後を追う。

 

リール「大丈夫ですか!」

 

リールはその人に駆け寄ると意識があるかの確認をした。

 

???「リール…さん…」

 

リール「!!」

 

リールはその人の顔をよく見た。その人はエレナ学院の教員であり、レヴィ学院長の側近の人だった。

 

リール「ラ…ラーフ先生」

ラーフ「…」

 

そう。その人はレヴィ学院長の側近であるラーフだった。

 

リール「ラーフ先生!!」

スカーレット「リール!」

リール「スカーレット!ラーフ先生が!」

スカーレット「!!」

 

スカーレットはラーフの存在を視認した。ラーフの意識はまだあるが、出血が酷いため意識が朦朧としていた。

 

リール「ラーフ先生!」

ラーフ「リール…さん…」

リール「はい!」

ラーフ「ドレインが3体現れました…今はどうなっているのか分かりませんが…ここは危険です。今すぐこの場を離れてください…」

リール「え…」

ラーフ「レヴィ…学院長は…今…ここにはいません…」

リール「…」

ラーフ「魔女さんを…助けに行きました…」

リール「魔女さんを…」

ラーフ「はい…。ですので…この場を離れて…ください…。ドレインが…」

リール「ドレインならやっつけました。外にいたドレインや学校から出てきたドレインも全部」

ラーフ「!」

リール「だから大丈夫です」

ラーフ「そう…ですか…。それは…よかったです…」

 

するとラーフの目はゆっくりと閉じていった。

 

リール「ラーフ先生!」

ラーフ「…」

 

ラーフは完全に目を閉じた。

 

リール「ラーフ先生…」

スカーレット「…」

リール「…スカーレット」

スカーレット「なに?」

リール「…ラミエ先生を探しましょう」

スカーレット「!」

リール「ラミエ先生にラーフ先生を診てもらいましょう」

スカーレット「…分かったわ」

 

ボンッ!

リールとスカーレットは自分の箒を取り出した。

 

リール「では行きましょう」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

リールとスカーレットは保健室に向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…保健室

 

スタッ!

リールとスカーレットは保健室の前に着いた。

 

リール「よしっ」

 

コンコンコン

リールは保健室の扉をノックした。

 

リール「ラミエ先生いますか!」

 

しかし返事はなかった。

 

リール「…失礼します!」

 

ガラッ!

リールは保健室に入った。

 

リール「!」

 

保健室の中は至って普通だがラミエ先生がいなかった。加えていつも戸棚にある薬や本もなくなっていた。

 

リール「ラミエ…先生…」

 

リールはひとつずつベッドを確認したが、やはりラミエ先生はいなかった。

 

スカーレット「…ダメね」

リール「そんな…先生…」

 

リールはその場に座り込んでしまった。

 

リール「どうすればいいんでしょうか…」

スカーレット「…」

 

リールが考えているとある人が保健室に入ってきた。

 

ジン「スカーレット!!リールさん!!」

 

スカーレット「!!」

リール「!!」

 

入ってきたのはジンとマークだった。

 

スカーレット「お父さん!?それに叔父さんまで」

ジン「2人とも無事か!?」

スカーレット「大丈夫よ」

マーク「リールさんも無事みたいだね」

リール「はい…」

ジン「さっきエレナ学院にドレインが現れたって連絡があってな…急いでここに来たんだ」

マーク「1階から全部見てきてこの部屋だけ開いてたから見たら2人がいたってことだね」

スカーレット「そ、そうだったんだ…」

ジン「外にいた人たちは父さんたちの仲間が保護してくれてる。あとは君たちだけだよ」

リール「スカーレットのお父様!!」

ジン「!!」

 

リールは勢いよく立ち上がって振り返った。

 

リール「そこにラーフ先生が倒れています!ラーフ先生も保護していただけませんか!!」

ジン「な…あの人もか!」

マーク「僕が見つけてくるよ。兄さんは二人と一緒にいて」

ジン「あ、あぁ」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

マークは箒に乗ってラーフを探しに行った。

 

ジン「よしっ。とりあえず2人は一緒に来てもらうけどいい?」

スカーレット「分かったわ」

リール「あの…」

ジン「?」

リール「ここの生徒さんや先生方は…」

ジン「…」

 

ジンは急に黙った。

 

スカーレット「…お父さん?」

ジン「…私の受けた報告は教員が全滅したのと生徒が9割殺されてしまってという内容だった」

 

スカーレット「!?」

リール「!?」

 

ジン「だから今のこの学院には君たち以外に誰もいないはずだよ」

スカーレット「嘘…」

リール「そ…そんな…」

 

2人は驚いて言葉が出なかった。

 

ジン「…とりあえず君たち生き残っている人たちを保護するために父さんたちはここに来たんだ」

リール「教員が…全滅…じゃあ…先生は…」

 

リールが実技の先生の事を考えているとマークが戻ってきた。

 

マーク「ラーフ君を見つけたよ。今は意識がないけど今後の状態では目覚めるかもしれないよ」

ジン「よしっ。とりあえず2人とも。父さんたちと一緒に来てもらうけどいい?」

スカーレット「私はいいわよ。リールは?」

リール「…よろしく…お願いします…」

ジン「よしっ。とりあえずここは危ないからある場所に向かうよ」

スカーレット「えぇ」

 

ジン、マーク、スカーレット、リールの4人は自分の箒を使ってエレナ学院から離れることにした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…エレナの部屋

 

エレナ「…で、どうするの?あなた」

レヴィ「はぁ…はぁ…」

 

現在レヴィはエレナと対峙していた。

 

エレナ「あなた程度じゃ私には勝てないわ。今すぐ引き返しなさい。引き返すなら命までは取らないわよ」

レヴィ「そういうわけにも…いかないんです…魔女さんを取り返すまでは…」

エレナ「…そう。なら満足して死になさい。あなたは相手の力を見誤ったのよ」

 

ジジジ…バリバリバリバリ!

エレナは魔法を使った。

 

レヴィ「はぁ…はぁ…」

エレナ「…!?」

 

エレナはある魔力を感じ取った。

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

それと同時にエレナは誰かの攻撃を受けた。

 

レヴィ「!!」

 

放たれた魔法はレヴィには一発も当たらなかった。

 

レヴィ「この魔力…まさか…」

 

コツ…コツ…コツ…

誰かの足音が聞こえる。ゆっくりと聞こえるその足音はどこか余裕さを感じ取ることができる。

 

エレナ「…まさかあなたが帰ってたとはね…リーナ!!」

魔女さん「…」

レヴィ「や…やっぱり…」

 

そこに立っていたのは魔女さんだった。

 

エレナ「で、これはどういうつもりよ。私を攻撃してただで済むと思ってるの」

魔女さん「…」

レヴィ「魔女さん…」

 

クイッ!

魔女さんは指を動かした。

 

フワッ…ドシン!

するとレヴィの体が浮き上がり、レヴィは壁に打ち付けられた。

 

レヴィ「がっ…」

 

レヴィの受けたダメージは少なかったが、満身創痍の今の状況では小さなダメージも大きなダメージもさほど変わらなかった。

 

レヴィ「魔女…さん…」

 

レヴィは力なくその場に倒れてしまった。

 

エレナ「…」

魔女さん「…」

 

エレナと魔女さんは互いを見つめているだけだった。

 

エレナ「…どういうつもり…あなた」

魔女さん「…どういうつもり…ですか。そんなの見たら分かりませんか?」

エレナ「…私を殺す気?」

魔女さん「そうですね。あなたには過去に色々とされたので今ここで復讐というのも悪くありませんね」

エレナ「!!」

 

エレナは身構えた。

 

魔女さん「しかし今ここで戦えばあなたは確実に死にますよ。それでもいいんですか?」

エレナ「…何が望みよ」

魔女さん「望みなんてありませんよ。強いて言うなら私とリールの生活を脅かさないでほしい…ってところですね」

エレナ「…あなた…今まで演技してたの」

魔女さん「?」

エレナ「私にわざと捕まったフリをして…しかもマギたちの洗脳にもかかったフリをして私の部屋から出たのね」

魔女さん「そうですね。ようやくまともに動くことができてよかったと思っています」

エレナ「…」

 

エレナは魔女さんを警戒した。

 

魔女さん「安心してください。あなたが私に何もしない限り、私はあなたに何もしませんよ」

エレナ「…あなたの目的は…何…」

魔女さん「目的ですか。そうですね。今はあなたの本体とお話がしたいというのと、ここを完全に破壊するという目的がありますね」

エレナ「!!」

魔女さん「私にかかればここは一瞬で地図から消えるでしょう」

エレナ「あなた…本気…」

魔女さん「はい。本気ですが」

エレナ「…」

 

エレナは魔女さんの気迫に怖気づいていた。

 

魔女さん「ですが先ほど言いましたように、あなたが私に何もしないなら私はあなたに何もしませんよ。ただし、私の目的の邪魔をするならあなたを粉微塵にします」

エレナ「!!」

 

エレナは魔女さんの言葉に恐怖を覚えた。

 

魔女さん「さて、どうしますか。あなたは私の邪魔をしますか?」

 

魔女さんはエレナを威圧した。

 

エレナ「…」

 

エレナは自分のプライドを捨てて降参するか、プライドを守るために戦うかを考えていた。しかし今のこの状況では魔女さんに確実に負けると判断したエレナはこう判断した。

 

エレナ「…私にも目的があるの。今はその目的を果たしたいからあなたに構ってる暇はないわ。その男もあなたの好きにすればいいわ」

 

スタスタスタ

エレナは後ろを振り返ってその場をあとにした。

 

魔女さん「…」

 

魔女さんはその場をあとにするエレナを見ていた。

 

魔女さん「あなた」

エレナ「!!」

 

魔女さんはエレナを引き止めた。

 

エレナ「…何」

 

エレナは内心震えながら何とか返事を返した。

 

魔女さん「あなた…魔核を集めてどうするつもりですか」

エレナ「…」

魔女さん「あれはリノがあの人たちに渡した大切なものです。あなたはそれを集めてどうするつもりですか」

エレナ「…」

 

エレナは震えながら振り返って答えた。

 

エレナ「…自分の願いのためよ」

 

スタスタスタ

そう言い残してエレナはその場をあとにした。

 

魔女さん「…願い…ですか」

 

スタスタスタ

魔女さんはレヴィ学院長のところに行った。

 

魔女さん「レヴィ。何故あなたがここにいるのですか。あなたの魔力ではエレナは倒せませんよ」

レヴィ「…」

魔女さん「あなたにはリールを守るよう言ってあったはずです。今は私のことは気にせずに本来のあなたの仕事をこなしてください」

 

ブゥン…

魔女さんは魔法陣を展開した。

 

魔女さん「今度こそ頼みましたよ。レヴィ」

 

ヒュッ…

するとレヴィ学院長はその場から姿を消した。

 

魔女さん「…リール。もう少しだけ。もう少しだけ待っていてくださいね。必ずあなたの所に戻りますので」

 

そうして魔女さんもその場をあとにした。




〜物語メモ〜

は、今回は新しい情報がないので次回ですね。


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第50話 エレナとリールの両親

私の名前はリール。

今 スカーレットのお父さんに連れられてある場所にいます。

少し前にドレインが出てきて何体かやっつけたんですがまだ油断できません。

…それに学院の人たちがそのドレインにやっつけられたのが悔しいです。

私がやっつけられた訳じゃありませんがとても悔しい気持ちになります。

それにラーフさんも大怪我を負っていてその悲惨さは目に余ります…。

私は回復魔法など色々と魔女さんから学びましたがそれを活かせなくては意味がありません。

私は何のために魔法を勉強してきたのでしょうか。

人を傷つけるためでしょうか。人を殺めるためでしょうか。人を脅すためでしょうか。

私はただ生活を良くしたいと思っていただけです…それがこんな結果になるなんて…。

私は魔法を学ぶべきなのでしょうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…アースの家

 

ジン「ここだな」

マーク「だね」

 

ギィィィィ…

ある部屋に着いた私たちは大きな扉を開けてその部屋に入りました。

 

アース「…やぁ、ジン マーク」

リール「!!」

 

そこには大勢の人がいました。9人くらいでしょうか。男性や女性、体の大きな人や小さな人と様々です。

 

アース「ほう…君がリールさんですね」

リール「は、はい!」

アース「こちらへ。ジンとマークはいつもの席に座ってね」

ジン「あぁ」

マーク「うん」

 

スタスタスタ

ジンとマークは自分の席に座った。リールはどこに座ればいいのか分からなかったためずっと立ったままだった。

 

アース「あ、リールさんはこちらへ」

リール「は、はい」

 

リールは指定された席に座った。

 

アース「さて、今から会議を始めるとしよう。議題は今回のエレナ学院に現れたドレインについてだ」

ウレイ「その前にひとついいですか?アース」

アース「何?ウレイ」

ウレイ「メロから連絡がこないんですが」

アース「…メロはキファと一緒でエレナに殺られたよ」

ウレイ「!?」

アース「少し前にその連絡が来た。今は治療を受けているらしい」

ウレイ「…そう…ですか」

アース「他に何かある人はいる?」

 

誰も何も言わなかった。

 

アース「…では会議を。まずドレインが現れたのは少し前。数は14体だそうだ。これはリールさんが倒したということでいいですか?」

リール「は、はい!」

アース「確かエレナ学院にはレヴィ学院長がいたはずですが」

リール「あ、ラーフさんがレヴィ学院長は今はいないと仰ってました」

アース「そうですか。彼もまたあなたと同じ光属性魔法の適性者でしたが…」

セレナ「何か事情があったんですかね」

アース「だと思う」

ヒュー「でもドレインに会ったのに生き残ったのは十数人だよね。すごいね。私たちと同じ」

モール「だな」

アース「問題は何故このタイミングで現れたのか…だね」

ジン「何の前触れもなかったな」

マーク「僕たちもアースの付き人から連絡が来なかったら分からなかったよ」

アース「う〜ん…フレア 大獄門の様子は?」

フレア「…ここに来る前 死者が大勢大獄門に来た。多分死んだ生徒と教師だろう」

リール「…」

アース「そうか。ミィは何も異変がなかった?」

ミィ「うん。大丈夫」

アース「これはマズイ…何の情報もないとは…」

フレア「リノは大丈夫なのか。ジン」

ジン「あぁ。ちゃんと保管してある」

フレア「…そうか」

アース「リールさん」

リール「は、はい」

アース「リールさんは今回以外でドレインを退治したことは」

リール「な…無いです…」

アース「う〜ん…」

リール「私は前まで魔女さんの家で暮らしていましたので何かあったら魔女さんが…」

アース「その魔女さんは今どこに」

リール「分かりません。ですが用事が終わったら帰ってくると…そう聞いてます」

アース「…そうですか」

付き人「アース様!」

 

ギィィィィ…

部屋の扉が突然開いた。

 

アース「どうしたの」

付き人「アース様を名指しで尋ねて来られた方がいます!」

アース「誰?」

付き人「名前はエレナと言うそうです!」

 

アース「な…」

ウレイ「まさか…」

セレナ「まさかあの人が…」

ヒュー「何であの人が来るのよ!」

ジン「…」

マーク「…」

フレア「…あいつか。殺しに来たのか」

モール「エレナか…」

ミィ「死ぬのかな…私たち…」

 

十二使徒たちは各々驚きの表情を見せた。

 

リール「エレナ…さん…」

 

付き人「どうしますか?」

アース「…ここで拒んでもどのみち来るでしょう。通してください」

付き人「はい」

フレア「いいのか。アース」

アース「うん。もし戦う意思があるなら有無を言わさずこの場に乗り込んでくると思うよ。でも今回は名指しで尋ねてきた。…もしかしたら何か話したいことでもあるんじゃないかな」

フレア「…そうか」

付き人「通します!」

 

コツコツコツ

大きな扉から一人の女性が入ってきた。

 

リール「エレナさん…」

エレナ「…」

 

エレナは無表情で部屋に入ってきた。その顔は怒ってもなく笑ってもないとても怖い表情だった。

 

アース「…何の用ですか。こんな所にあなたが来るなんて。あなたは私たちがどういう存在か知ってますよね」

エレナ「…今回のドレインの件です」

アース「!」

エレナ「突如現れたドレインについてあなた方にお話をしに来ました」

ウレイ「何故あなたがドレインについて話しに来たんですか」

セレナ「そうです。あの時この世界に解き放ったドレインはあなたが原因でしたよね。今回もあなたがやった事ですよね」

エレナ「…いいえ。今回は私は関与していません」

フレア「…信用出来ないな」

ミィ「私も」

エレナ「…」

アース「とまぁ私たちは君に対して良い印象はないわけです。当然ですよね。あの時あなたが解き放ったドレインのせいで私たちは数多くの同胞を失いました。そんなあなたを快く受け入れるなんてことは私たちにはできませんね」

エレナ「…そうですか」

 

ピクッ

エレナは指を動かした。

 

ビュォォォォォォ!パキパキパキ!

すると突然エレナが氷漬けにされた。

 

リール「!!」

セレナ「…」

 

エレナを氷漬けにしたのはセレナだった。セレナは氷属性魔法の適性者でエレナが指を動かしたことに警戒して魔法を使ったのだった。

 

リール「エレナさん!!」

 

タッタッタッ!

リールはエレナに駆け寄った。

 

アース「!」

 

十二使徒たちは全員驚いていた。

 

リール「エレナさん!エレナさん!しっかりしてください!!」

 

ドンドンドン!

リールは氷漬けにされたエレナを助けるために氷を叩いた。

 

アース「リールさん」

リール「!」

アース「下がってください」

リール「な、何故でしょうか…」

アース「彼女はとても危険な存在です。私たちの同胞を死に追いやった張本人です」

リール「で、ですが…」

フレア「離れろ。死にたくないならな」

リール「…」

 

リールはフレアの言葉に怖気付いた。

 

リール「で、でも…エレナさんは3人いて当時はこのエレナさんとは別のエレナさんがやった事でこのエレナさんは何も関係がないんです!なのでこれを解いてください!!エレナさんの話を聞いてください!!」

ジン「リールさん…」

フレア「意味が分からん。下がれ。燃やすぞ」

リール「…嫌です!」

フレア「…」

リール「エレナさんは私の命の恩人です!そんな人を私は見捨てません!!」

フレア「…そうか」

 

ガタッ…

フレアは立ち上がってリールに近づいた。

 

フレア「なら、エレナと一緒に燃やしてやるよ」

 

ボボッ!

するとフレアの手に炎が現れた。

 

リール「!」

フレア「構わないな?アース」

アース「…」

フレア「こいつは俺たちの仲間を殺した。なら、殺されても文句はないな」

リール「私は何もしてません!!」

フレア「エレナを庇ってるんなら同罪だ。俺が大獄門まで送ってやるよ」

 

ボボボッ!!

炎は勢いを増した。

 

リール「!」

フレア「…やっぱり話すのは不可能だ。さようならだ。2人共々」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!

突然リールのポケットが光り始めた。

 

リール「!?」

フレア「なんだ。この光は」

 

ボボッ…ジュワァァァァァァ…

するとフレアの炎が消えてしまった。

 

フレア「な…俺の炎が…」

アース (フレアの炎が消えた…なぜ…地獄の業火だぞ…)

リール「これは…」

 

リールはポケットから光るそれを取り出した。

 

リール「!!」

 

それは過去に魔女さんから貰ったある結晶だった。その結晶はレヴィ学院長が魔女さんの家に訪問する際に魔女さんがリールに持たせたものだった。危険を察知すると魔女さんが飛んできてくれると言っていたあの結晶。

 

リール「魔女さん…」

 

ドシン!!

突然フレアが地面に叩きつけられた。

 

フレア「ごっ…」

アース「!?」

 

その場の十二使徒たちが驚いた。何せ突然フレアが地面に叩きつけられたのだから。

 

リール「あ、あの…えっと…」

 

グググググ!

フレアは更に地面に押し付けられる。

 

フレア「ごっ…この…」

アース「リールさん!!」

リール「あ、いえ…その…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

すると途端にフレアが解放された。

 

フレア「がっ…ゴホッ…ゴホッ…ゴホッ…」

 

フレアはゆっくりと立ち上がった。

 

フレア「はぁ…はぁ…はぁ…」

アース「フレア」

フレア「…なんだよ」

アース「…下がって」

フレア「!」

アース「…リールさん。それは」

リール「こ、これは…魔女さんから貰ったものです…危ない目に遭ったら助けてくれるって…」

アース (やっぱり…)

フレア「魔女さんだと…」

アース「フレア。これ以上やるとフレアが死んじゃうかもしれない。だから下がって」

フレア「…分かった」

 

スタスタスタ

フレアは席に座った。

 

エレナ「ありがとうございます。リールさん」

リール「!!」

 

リールがその声に反応すると氷漬けにされたエレナが動けるようになっていた。

 

リール「え、エレナさん…どうして」

エレナ「私にはこの程度の魔法は通じませんよ。大丈夫です」

リール「え、あ…」

エレナ「あなた方にお話があります」

アース「…何でしょうか」

エレナ「…現在ドレインは深淵から這い上がって来ています。これではもう少しすればここはドレインで溢れるでしょう」

アース「な…」

エレナ「ドレインには光属性魔法しか効きません。あなた方 基本属性魔法ではドレインを倒すどころかダメージすらありませんよ」

アース「…」

エレナ「そこでひとつ提案があります」

アース「…なんですか」

エレナ「ドレインがここに来るまであと少しですが、その少しの時間で光属性魔法の適性者を見つけるのは不可能です。この世界に存在する光属性魔法の適性者は闇属性魔法の適性者の数と同じです。現在確認できてるのはリノとレヴィとリールさんの3人だけ。この内まともに動けるのはリールさんだけです」

ウレイ「レヴィもいるでしょ」

エレナ「ダメです。レヴィは今動けませんよ。それに、光属性魔法はあらゆる効果を半減させる特性を持つので回復まで時間がかかります。そうなるとリールさんしか頼れないんですよ」

アース「…何が言いたいんですか」

エレナ「…ドレインがこの場に現れる僅かな時間…その時間を私との時間にしてほしいと提案しに来ました」

アース「…つまり、あなたがリールさんを保護すると…そういう訳ですか」

エレナ「えぇ。そうです。リールさんは強いですが次に来るドレインは数が多すぎます。となるとリールさん自身をレベルアップさせないといけません。なので今から私がリールさんのお世話をします」

アース「…それで」

エレナ「あなた方はドレインを足止めするくらいしかできません。ドレインを倒せるのは現在リールさんだけ。となるとリールさんには倒す術を得てもらう必要があります」

アース「…どう?ジン マーク」

ジン「?」

マーク「?」

アース「…任せてもいいと思う?」

ジン「…」

マーク「僕はいいと思うよ」

ジン「!?」

マーク「悔しいけど僕たちじゃドレインには勝てないからね。リールさんを頼らざるを得ない」

ジン「…まぁ、確かに」

アース「…分かった。じゃあエレナさん。リールさんをお願いします」

エレナ「えぇ」

アース「あと…」

エレナ「?」

アース「先程の仲間の失態…お許しください」

エレナ「…私とリールさんの生活を脅かさないなら別にいいです。それでは」

 

スタスタスタ

エレナはリールの手を引いてその場をあとにした。

 

ミィ「…いいのアース。行かせて」

アース「…マークも言ってたけど僕たちには何も出来ないのが現状だよ。あの時もリノがいなかったら私たちは全員殺されていた。…また光属性魔法の人たちに頼らないといけないとなると心が苦しい限りです」

ミィ「…」

アース「とりあえずみんなは各々の国に対して警告を。これから来るドレインの侵攻に対応するために準備を」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…アースの家の前

 

リール「あの…エレナさん」

 

エレナはピタッと足を止めた。

 

エレナ「…リールさん」

リール「は、はい…」

エレナ「…リーナからの伝言です」

リール「リーナ…さん?」

エレナ「はい。『ドレインは光属性魔法に弱いわ。だからリールがみんなを守ってあげて』とのことです」

リール「えっと…リーナさんって…」

エレナ「…あなたが言う『魔女さん』と呼ばれる人物の名前ですよ」

リール「!!」

エレナ「彼女が『魔女さん』として名前を隠しているのは過去の出来事を隠すためです。この名前を知っているのはごく少数。あなたも知っておくべきですよ」

リール「…」

エレナ「さて、今からあなたには私と共にある場所に来てもらいます」

リール「ど…どこでしょうか…」

エレナ「…光属性魔法の適性者たちがいる墓地ですよ」

リール「!!」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…エレナの部屋

 

魔女さん「…さて、そろそろ動きましょうか。ようやくあの忌まわしい建物を破壊できますね」

 

コツコツコツ

魔女さんはエレナの部屋をあとにした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…とある墓地

 

リール「こ…ここが…」

エレナ「…そう。ここが光属性魔法の人たちがいる墓地です」

 

そこはただの墓地だが光属性魔法に適性があるリールにはある物が見えていた。

 

リール (な…何でしょう…この浮いている丸いものは…)

エレナ「さ、行きましょう」

リール「あ、あの…ど、どうして私をここに…」

エレナ「…あなたならやってくれると信じているからです」

リール「!!」

エレナ「ここは過去に存在した光属性魔法の適性者たちが眠りについている場所です。光属性魔法の適性者は後にも先にも闇属性魔法の適性者と同じ人数存在していました。ですが戦争がきっかけで光属性魔法と闇属性魔法は対立し、互いを傷つけ合ってきました」

リール「…」

エレナ「…彼らは闇属性魔法からこの世界を守るために奮闘し、光属性魔法を受け継ぐ努力をしてきました」

リール「…」

 

スタスタスタ

エレナは話しながら歩を進め、ある墓の前で足を止めた。

 

エレナ「…こちらを」

リール「…」

 

スタスタスタ

リールもその場所へ向かう。

 

エレナ「…そこを」

リール「?」

 

エレナがある場所を指さした。リールが見た先にあったのは2つ並んだお墓。

 

リール「エレナさん…このお墓は…」

エレナ「…あなたの "お父さん" と "お母さん" です」

リール「!?」

 

そこにあったのはリールのお父さんとお母さんのお墓。この2つのお墓は他のお墓とは違って周囲に浮いている丸いものがより集まっていた。

 

エレナ「この2人はこの闇属性魔法と光属性魔法の対立において最も活躍されました。2人は共に魔力が高く他の光属性魔法の適性者と比べて明らかに戦闘力が違ってました」

リール「…」

エレナ「しかしそんな彼らでも魔力の枯渇は起きます。これは私たち魔女や魔法使いには必ず起こり得ることです。ただ私たちと彼らの違いはこの場にドレインがいるかどうかなんですよ」

リール「…」

エレナ「…そして彼らは魔力の枯渇が起きた所をドレインに吸収され命を絶ちました」

リール「そんな…」

エレナ「ただその中でもあなたの母親は己が体を依代としてドレインを全て深淵という場所に封印しました。…いや、幽閉と言うべきでしょうか」

リール「…」

エレナ「この世界で光属性魔法の適性者を亡くすことはそのまま死を意味します。現にドレインに立ち向かえるのは光属性魔法だけ。ドレインが溢れてきたらこの世界は終わりです」

リール「だから…私が…」

エレナ「…そうです。まだ小さいあなたですが頼れるのはあなただけ。他の誰でもない光属性魔法に適性があるあなただけなんです」

リール「…私の…お母さんと…お父さんは…」

エレナ「…」

 

ザッ…ザッ…ザッ…

リールはゆっくりと両親のお墓に近づく。

 

リール「お母…さん…お父…さん…」

 

リールの目から涙が落ちた。

 

リール「おがあざん…」

 

リールの目からさらに涙が落ちる。

 

エレナ「…」

リール「私は…なにも…」

エレナ「…」

 

エレナはリールの泣いている姿を見て目を逸らした。

 

リール「…エレナさん…」

エレナ「…何?」

リール「…お母さんは…もう…戻ってこないんでしょうか…」

エレナ「…」

リール「私…お母さんの顔を見た事がありません…どうして魔女さんの家にいたのかも…」

エレナ「…」

リール「私は…私は…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

突然 リールの胸辺りが光った。

 

エレナ「!」

リール「!!」

 

その光は徐々に強くなり、やがて何事も無かったかのように消えた。

 

エレナ (なに…今の…)

リール「…まさか」

 

リールは首から下げていたある物を取り出した。

 

リール「!!」

 

そう。刻運命の粉が光っていた。

 

リール「これ…」

エレナ (刻運命の粉…どうして…)

 

??? (…出ていけ)

 

リール「!」

エレナ「!」

 

突然知らない声が聞こえた。

 

??? (出ていけ!!)

 

その声はとても強く、2人は驚いていた。

 

??? (忌まわしい闇属性魔法!この場から立ち去れぇ!)

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

突然 刻運命の粉が光り始めた。

 

リール「わっ!」

 

その光はやがてリールを包み込んだ。

 

エレナ「一体…何が…」

 

???「立ち去れ!!」

 

ドゴォン!

突然 エレナが攻撃された。

 

エレナ「ぐっ…」

 

エレナは攻撃を受けて少し吹っ飛ばされた。

 

エレナ「これは一体…」

 

エレナが周囲を見渡すとそこにはリールが立っていた。

 

エレナ「リール…さん…」

リール「…立ち去れ。あなたがこの場に立つ資格はない。ドレインを解き放ち人を殺めたあなたにこの場所に立ち入る資格はない!!立ち去れ!!」

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

エレナはまたしても攻撃を受けた。

 

エレナ「ぐっ…何この攻撃…全然見えない…」

 

ザッ…ザッ…ザッ…

リールはゆっくりと歩を進める。

 

リール「去れ!去れ!去れ!」

 

ドゴォン!

エレナはまた攻撃を受けた。

 

エレナ「どうして…一体何故…」

 

エレナはすぐに墓地の敷地内を出た。

 

リール「…二度とこの場に来るな。忌まわしい闇属性魔法の適性者よ」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

するとリールの刻運命の粉が光を失った。

 

リール「…」

 

ドサッ…

リールは疲れたのかその場で倒れてしまった。

 

エレナ「何…今の…リールさんの声じゃなかった…。いや、リールさんの声だけど話してる相手がリールさんじゃなかった…。まさか…乗っ取られていた…」

リール「…」

 

リールはピクリとも動かなかった。

 

エレナ「…もうここに来るのはやめておきましょう。これだとリールさんにも被害が出る…」

 

スタスタスタ

エレナはリールに近寄った。

 

エレナ「すみませんリールさん…私のせいで…」

 

エレナはリールを抱えてその場をあとにした。

 

エレナ「…思っていたよりも強い念でしたね…すみませんリールさん。あなたにこんなことをさせてしまって…」

 

そしてエレナはある場所までリールを運んだのだった。




〜物語メモ〜

今回は新しい情報がないので次回ですね。


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第51話 エレナと白い空間

私の名前はエレナです。

今リールさんをある場所まで運んだところです。

お墓での出来事は予想出来てませんでした。

あれは恐らく過去に亡くなられた光属性魔法の適性者たちの念でしょう。

それがリールさんに作用してリールさんの口から言葉を発していたのでしょう。

…こうなるとは思いませんでした。

私はリールさんに自分の両親について知っていただけたらと思ってましたが、やはり過去に犯した私の罪は拭えないほどですね。

あの念は恐ろしく強いものでした。

今はリールさんは眠っていますが、今後どうなるかは分かりません。

…私の独断でこのような事になってしまったのは私の失態ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…アースの家

 

スカーレット「え!?リールがエレナって人とどこかに行ったの!?」

ジン「あぁ。ほんの少し前にな」

スカーレット「なんで…なんでなのお父さん!!」

アンナ「リール…」

ジン「エレナが言うにはこの後のドレインに備えてだそうだ」

スカーレット「そんな…リール…」

アンナ「あ、あの…」

ジン「?」

アンナ「リールがどこに行ったかは…」

ジン「すまない。場所は分からないんだ。だからリールさんが帰ってくまで私たちは会えない」

アンナ「そんな…」

スカーレット「なんで…なんでリールだけ…」

 

タッタッタッ!

スカーレットはその場をあとにした。

 

アンナ「スカーレット!!」

 

タッタッタッ!

アンナはスカーレットの後を追った。

 

ジン「…すまない。スカーレット」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…アースの家 とある一室

 

バンッ!

スカーレットは勢いよく扉を開けた。

 

オード「うおっ…どうしたよ委員長…」

スカーレット「リールがいなくなったの!!エレナって人に連れ去られたわ!」

オード「何!?」

 

オードとディア、ノーラは一斉に立ち上がった。

 

スカーレット「場所は分からないわ…でもこの世界のどこかにいるはず!!」

オード「魔女さんの家じゃないか?」

スカーレット「その可能性も考えたけど違うかもしれないわ」

ノーラ「てかここどこだよ。少なくともスペルビア王国ではないだろ」

スカーレット「えぇ。お父さんの仲間の家だそうよ。スペルビア王国から離れてるわ」

ディア「じゃああの家に行くことすら難しいと」

アンナ「リール…」

オード「…くっ」

スカーレット「ねぇオード君」

オード「?」

スカーレット「…私たちで探しに行きましょう」

オード「!!」

アンナ「スカーレット…」

スカーレット「私たちはリールがいないと何も出来ないわ。それなのに無断でリールを連れ去るなんて…」

オード「…俺もその意見に賛成だ」

スカーレット「じゃあオード君も手伝っ…」

 

ジン「ダメだ。スカーレット」

 

スカーレット「!!」

 

スカーレットの後ろにジンがいた。

 

オード「…誰」

スカーレット「…私のお父さん…」

ジン「…行かせないよ」

スカーレット「なんで!リールは私たちの友達よ!連れ去られたなら助けに行くのが友達でしょ!」

ジン「ダメだ。相手はエレナだ。君たちはエレナに勝ったことある?」

スカーレット「!」

 

みんなはエレナが学院に侵入した時のことを思い出した。

 

スカーレット「…で…でも…」

ジン「私たちは不本意ながらもエレナの意見に賛成した。あの人ならやってくれるんじゃないかって」

スカーレット「でも…」

ジン「…心配なのは分かる。私たちも心配だ。だが現状私たちではどうにもならないのも事実。ならここはあの人に任せるしかない」

スカーレット「…リール…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…???

 

エレナ「…」

 

ドサッ…

エレナはリールをある場所まで運んだ。

 

エレナ「…これでいいんですよね。…ねぇ、ラミエ」

ラミエ先生「…えぇ。これでいいわ」

 

そこにいたのはエレナ学院の保健室の先生であるラミエ先生だった。

 

エレナ「…私は勧めないわよ」

ラミエ先生「仕方ないわ。あの人の命令だから」

エレナ「…」

ラミエ先生「…もしあなたもこの子に思い入れがあるなら今すぐ記憶を消してあげるわ。どうする?」

エレナ「…」

 

エレナは少しだけ考えて答えを出した。

 

エレナ「…遠慮しておきます」

ラミエ先生「…そう。じゃあ始めるわね」

エレナ「…」

ラミエ先生「あなたが得た時間を私にちょうだい」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

ラミエ先生はリールの胸に手を当てて魔法を使った。

 

ラミエ先生「…さぁ」

 

バチッ!!

 

ラミエ先生「!?」

エレナ「!!」

 

突然ラミエ先生の手が払い除けられた。

 

ラミエ先生「…何…今の」

エレナ「…私も同じ目に遭ったわ」

ラミエ先生「!」

エレナ「…今のリールさんには何もしない方がいいと思いますよ」

ラミエ先生「くっ…あと少しなのに…」

 

スタスタスタ

ラミエ先生はその場をあとにした。

 

エレナ「…」

リール「…」

エレナ「…ごめんなさい。リールさん」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…白い空間

 

リール (…あれ、ここは)

 

???「お目覚めですか?」

???「起きましたか?」

 

リール「!!」

 

リールの目の前に2人の人物がいた。男性と女性1人ずつだが顔が瓜二つ。服装も全く同じだった。

 

リール「あ…あなたは…」

 

ルル「僕はルル」

ララ「私はララ」

 

リール「…」

 

ルルとララと呼ばれる2人は同時に名前を明かした。息ピッタリだった。

 

ルル「それであなたは?」

ララ「あなたの名前は?」

 

リール「え…えっと…リールです」

 

ルル「リール」

ララ「リール」

 

ルル「聞いたことある名前」

ララ「誰かから聞いた名前」

 

ルル「不思議。あの人そっくり」

ララ「私たちの友人にそっくり」

 

ルル「でも名前は違う」

ララ「声と顔は似てる」

 

ルル「あの人の娘かな」

ララ「あの人の子供ね」

 

ルル「よろしくね。リール」

ララ「よろしくね。リール」

 

リール「は、はい…」

 

ルルとララは淡々と会話し始めた。不思議な話し方だなとリールは思った。ルルという人物が言葉を発してからすぐにララという人物が言葉を重ねる。今までこのような話し方をした人はいなかった。リールにとって初めて見る人たちだった。

 

ルル「リール」

ララ「リール」

 

リール「は、はい…」

 

ルル「僕たちについてきて」

ララ「いい所に案内するわ」

 

クルッ…スタスタスタ

ルルとララは同時に方向を変えて歩き始めた。

 

リール「あ、待ってください!」

 

タッタッタッ!

リールはルルとララについて行くことにした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…白い空間 階段

 

リール「あ、あの…」

 

ルル「何?」

ララ「何?」

 

リール「えっと…その話し方…疲れませんか?」

 

ルル「疲れないよ」

ララ「慣れてるわ」

 

リール「ど…どうしてその話し方なんですか?」

 

ルル「なんでだろうね」

ララ「どうしてでしょう」

 

ルル「僕はルルでもありララでもある」

ララ「私はララでもありルルでもある」

 

リール「?」

 

リールは頭が混乱してきた。

 

ルル「つまり僕たちは」

ララ「姿は違えど同じ存在」

 

リール「えっと…」

 

ルル「君にはいないの?」

ララ「あなたと同じ存在」

 

リール「い…いませんよ…」

 

ルル「残念」

ララ「不服」

 

ルル「僕たちと同じだと思ってたよ」

ララ「私たちと同じだと思ってたわ」

 

リール「えっと…すみません」

 

ルル「謝る必要は無いよ」

ララ「あなたに非はない」

 

リール「…」

 

ルル「さ、もうすぐ着くよ」

ララ「あなたに会いたい人」

 

リール「?」

 

リールとルル、ララは長い階段を上がると少し広い空間に出た。

 

リール「…こ、ここは?」

 

ルル「あそこ」

ララ「あの人」

 

リール「!!」

 

そこに立っていたのは魔女さんだった。

 

リール「ま…魔女さん!!」

 

タッタッタッ!

リールは魔女さんに向かって走った。

 

ルル「魔女さん」

ララ「リーナ」

 

ルル「姿は同じだけど名前が違う」

ララ「私たちは姿と名前が違う」

 

ルル「でも似た者同士」

ララ「でも似た者同士」

 

スタスタスタ

ルルとララも魔女さんの所へ向かった。

 

リール「魔女さん!」

 

ギュッ!

リールは魔女さんに抱きついた。

 

リール「魔女さん!!」

魔女さん「…」

リール「やっと会えた!お帰りなさい!」

魔女さん「…リール」

リール「はい!何でしょうか!」

魔女さん「…よく聞いて」

リール「?」

 

魔女さんは真剣な顔で話していた。

 

魔女さん「…私の友人が危険な目に遭っています」

リール「!」

魔女さん「私は今から深淵に行きます。そうなるともう二度と会えないかもしれません」

リール「え…」

魔女さん「だから最後にこれだけ聞いて。お願い」

リール「…」

 

リールは魔女さんの言葉に驚きを隠せなかった。

 

魔女さん「…あなたは」

 

魔女さんはリールにあることを話した。

 

リール「!!」

魔女さん「…リノに頼まれたんです。伝えておくようにと」

リール「え…でも…私は…」

魔女さん「…ルル ララ」

 

ルル「何?」

ララ「何?」

 

魔女さん「…リールをお願いしますね」

 

ルル「いいよ」

ララ「任せて」

 

魔女さん「…」

 

スタスタスタ

魔女さんはその場から去ろうとした。

 

リール「魔女さん!!」

魔女さん「!」

 

だがリールがそれを引き止めた。

 

リール「…なんで…今…その事を…」

魔女さん「…友人の頼みだからです」

 

スタスタスタ

魔女さんはその場から姿を消した。

 

リール「魔女…さん…」

 

ルル「…」

ララ「…」

 

ルルとララは何も言わずにその場に立っていた。

 

リール「…ルルさん…ララさん」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

リール「…私は…どうすれば…」

 

ルル「それは君の自由だよ」

ララ「全てはあなたの判断」

 

リール「…」

 

ルル「ねぇリール。君は知ってるかい」

ララ「ドレインという生き物について」

 

リール「ドレイン…」

 

ルル「うん。ドレイン」

ララ「異形な生き物」

 

ルル「ドレインは元々は人間だよ」

ララ「自然に生まれた訳では無い」

 

リール「!」

 

ルル「ではどうして生まれるのか」

ララ「どうして増え続けるのか」

 

ルル「答えは簡単」

ララ「至極単純」

 

ルル「深淵があるからだよ」

ララ「必要ない世界のせい」

 

リール「深…淵…」

 

ルル「あれはある一人の女性が生み出した世界」

ララ「過去にもこの世には無かった異質な空間」

 

ルル「突如として現れた穢れた世界」

ララ「浄化の光しか通さない裏世界」

 

ルル「光属性魔法しか効かない理由」

ララ「他属性では歯が立たない理由」

 

ルル「君が深淵に対しての有効打を持っている」

ララ「あなたがこの世界を救う鍵となっている」

 

ルル「君はどうしたい?」

ララ「あなたはどうする?」

 

リール「わ…私は…」

 

ルル「もし君がアレを倒すなら」

ララ「諸悪の根源を絶つのなら」

 

ルル「僕たちを使いなさい」

ララ「私たちを使いなさい」

 

ルルとララは淡々と言葉を並べる。

 

リール「え…ルルさんとララさんを…使う?」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

リール「でも使うって…」

 

ルル「あなたはまだ光属性魔法を知らない」

ララ「光属性魔法の本当の力を知らない」

 

リール「本当の…力…」

 

ルル「僕はずっと君と共にある」

ララ「私はずっとあなたと一緒」

 

ルル「僕たちは」

ララ「私たちは」

 

ルル「光属性魔法の始祖である」

ララ「光属性魔法の始祖である」

 

リール「…?」

 

ルル「故に君の前に立っている」

ララ「あなたの目に映っている」

 

ルル「あなたは世界を導く存在」

ララ「あなたは世界を律する調停者」

 

ルル「取るべき行動はただ一つ」

ララ「諸悪の根源を絶つのです」

 

リール「わ…私が…」

 

ルル「…僕たちはずっとここにいます」

ララ「この空間から1歩も動きません」

 

ルル「助けが必要なら呼びなさい」

ララ「始祖たる私たちを呼びなさい」

 

リール「ちょちょっと待ってください!」

 

ルル「?」

ララ「?」

 

リールは2人の話を止めた。

 

リール「えっと…話が入ってこないんですが…」

 

ルル「これは失態」

ララ「これは失敗」

 

ルル「すみません。淡々と話しました」

ララ「すみません。配慮不足です」

 

リール「えっと…私から質問いいですか」

 

ルル「どうぞ」

ララ「どうぞ」

 

リール「私が今いるここはどこですか」

 

ルル「ここは僕たちの空間」

ララ「ここは私たちの空間」

 

ルル「実体を拒絶し精神の世界とした」

ララ「つまるところあなたの精神世界」

 

リール「精神…世界…?」

 

ルル「あなたの心の中です」

ララ「あなたの心の中です」

 

リール「じゃあ…私のこの体は…」

 

ルル「僕たちが投影した結果です」

ララ「私たちが見せている虚像」

 

リール「そ、そうですか…」

 

ルル「他に何か質問はある?」

ララ「聞きたいことはない?」

 

リール「あ、では先程の魔女さんは…」

 

ルル「あれは実体」

ララ「異例な事態」

 

リール「え!?じゃあ…本物…」

 

ルル「そう」

ララ「そう」

 

ルル「ここはあなたの精神世界」

ララ「誰も立ち入れない世界」

 

ルル「でも実体として存在していた」

ララ「これは異質 異常 異例な事態」

 

ルル「あなたの精神世界に入れるほどの実力者」

ララ「侮るなかれ。彼女は世界を滅ぼす力を持つ」

 

リール「す…すごい…魔女さん」

 

ルル「彼女は強い」

ララ「誰も勝てない」

 

リール「あ、あの!」

 

ルル「?」

ララ「?」

 

リールは二人の会話を遮った。

 

リール「い、今この世界では一体何が…」

 

ルル「今この世界は汚染されている」

ララ「深淵の封印が解かれつつある」

 

リール「深淵の封印って…」

 

ルル「あなたが持っている手紙の主」

ララ「大事に持っているその手紙」

 

リール「!」

 

ガサゴソ…

リールはポケットからリノの置き手紙を出した。

 

リール「これ…ですか」

 

ルル「そう。それ」

ララ「それのこと」

 

リール「これが一体…」

 

ルル「その手紙の主が深淵の封印の鍵」

ララ「その人が深淵を封印し続けてる」

 

リール (やっぱり…)

 

ルル「今この人を支えている柱が壊れている」

ララ「その数2本。全部で12本存在している」

 

リール「え…」

 

ルル「2本壊れただけでこの始末」

ララ「全部壊れたらどうなるかな」

 

リール「!」

 

ルル「その柱を壊している人がいる」

ララ「ご丁寧に1本ずつ壊している」

 

ルル「叩くならその人」

ララ「ドレインではない」

 

リール「その人って…」

 

ルル「その人はかつてある街を破壊した元凶を作った人」

ララ「その正体はこの世界で同じ姿で3人存在している」

 

リール「まさか…」

 

ルル「名前はエレナ」

ララ「名前はエレナ」

 

リール「!!」

 

ルル「あなたをあの12人から遠ざけたあの人」

ララ「あなたを1人にするために連れ去った人」

 

リール「そんな…エレナさん…」

 

ルル「…」

ララ「…」

 

リール「…ルルさんララさん」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

リール「…私は今どこにいるんでしょうか」

 

ルル「君がいるのはある建物のある一室」

ララ「そこには回復魔法に長けた人がいる」

 

リール「!」

 

ルル「その近くにはエレナ」

ララ「危険人物がいる」

 

リール「…」

 

ルル「…」

ララ「…」

 

リール「ルルさんララさん」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

リール「…私がドレインを全部やっつけるって言ったらどうしますか?」

 

ルル「支持します」

ララ「支援します」

 

リール「…それがこの世界を滅ぼすきっかけになってもですか」

 

ルル「はい。そのつもりです」

ララ「はい。そのつもりです」

 

リール「…」

 

ルル「僕たちは光属性魔法の始祖」

ララ「私たちは光属性魔法の始祖」

 

ルル「後にも先にもそれは変わりません」

ララ「後にも先にもそれは変わりません」

 

リール「…」

 

ルル「…しかし」

ララ「…しかし」

 

リール「!!」

 

ルル「あなたが人を救うと言うのなら」

ララ「あなたが人を守ると言うのなら」

 

ルル「僕はあなたの願いを叶えます」

ララ「私はあなたの願いを叶えます」

 

リール「ルルさん…ララさん…」

 

パリン!パキパキ…パリン!

突然白い空間の壁が割れ始めた。

 

グラグラグラグラ…

それと同時に地面が揺れ始めた。

 

リール「な…一体何が起こったんですか!」

 

ルル「あなたの世界に入り込もうとする人がいます」

ララ「あなたの世界を覗き見ようとする人がいます」

 

パリン!

空間がどんどん崩れていく。

 

リール「ルルさん!ララさん!」

 

ルル「安心してください」

ララ「心配しないでください」

 

ルル「僕たちはいつでも会えますよ」

ララ「私たちはいつでも会えますよ」

 

リール「ルルさん!ララさん!」

 

パリン!

やがてリールの視界が崩れていった。

 

ルル「また会いましょうリールさん」

ララ「また会いましょうリールさん」

 

リール「!!」

 

ルル「あなたの時間が尽きるまで」

ララ「あなたの想いが尽きるまで」

 

ルル「僕たちはずっと一緒ですよ」

ララ「私たちはずっと一緒ですよ」

 

リール「ルルさん!ララさん!」

 

パリン!ドゴォン!

リールの足場が崩れた。リールは足を取られてそのまま落ちていった。

 

リール「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…とある建物のとある一室

 

ラミエ先生「!!」

エレナ「!!」

 

寝ているはずのリールがゆっくりと目を開けた。

 

リール「…ここは」

エレナ「リールさん!!」

 

ギュッ!

エレナはリールに抱きついた。

 

エレナ「良かったです…もう起きないかと思いましたよ…」

リール「エレナさん…」

ラミエ先生「…体調はどう?」

リール「ラミエ先生!!」

ラミエ先生「…学校が大変だって聞いたよ。ごめんね。こういう時に限って学校にいないから」

リール「そ…そうですか…」

 

エレナはリールから手を離した。

 

エレナ「でもリールさん本当に何ともありませんか?」

リール「は、はい…何とも…」

エレナ「痛みとかは?」

リール「無いです」

エレナ「お腹空いてない?」

リール「空いてな…」

 

グゥゥゥゥ…

リールのお腹が鳴った。

 

リール「…」

 

リールは恥ずかしくて言葉が出なかった。

 

エレナ「お腹…空いてるみたいですね」

リール「は、はい…」

エレナ「今からご飯しますね。少し待っててください」

リール「は、はい…」

 

スタスタスタ

エレナはその場をあとにした。

 

リール「…あの、ラミエ先生」

ラミエ先生「何?」

リール「…ここは」

ラミエ先生「…ここは私の友人の家よ」

リール「友人の…家…魔女さんの家ですか?」

ラミエ先生「違うわ。また別の人の家よ」

リール「あ、そうですか…」

ラミエ先生「…ねぇリール」

リール「はい」

ラミエ先生「…生きてて良かったわ」

リール「…はい」




〜物語メモ〜

ルル
リールの精神世界に存在する人。ララと2人で白い空間に存在しており、いつも2人で過ごしている。自分たちを「光属性魔法の始祖」と名乗っている。

ララ
リールの精神世界に存在する人。ルルと2人で白い空間に存在しており、いつも2人で過ごしている。自分たちを「光属性魔法の始祖」と名乗っている。


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第52話 エレナと禁忌の存在

ここでちょっとお知らせです。

本編のキャラクターである「ルル」と「ララ」は最初にルルが話してから続けてララが話している形になっています。
しかし2人が同じセリフを話す時は同時に話しているということになっています。
加えてララの語尾が変わるのは先に話すルルの語尾に合わせているからです。

お知らせは以上です。


私の名前はリール。

今ラミエ先生とエレナさんと3人である家にいます。

ラミエ先生が言うにはラミエ先生のお友達の方の家だそうです。

そこは魔女さんの家とは違って不思議な雰囲気を感じます。

まるでこの家以外に何も無いような…そんな感じがします。

私はジンさんと一緒にある人の家にお邪魔させていただいて会議というものに出席しました。

途中でエレナさんが入ってきてハチャメチャとしましたが、エレナさんがあの場から私をある場所へ連れていきました。

そこは私のお母さんとお父さんのお墓でした。

お墓に文字が書かれていましたがあれが私のお母さんとお父さんの名前なのでしょうか。

それから少しして私は突然明るい光に包まれました。

ただ包まれるなら良いんですが、その際に「やっと会えた」と誰かの声が聞こえた気がしました。

それからの記憶はありませんが、気がついたら白い空間にいました。

そこには顔が瓜二つの男性と女性がいました。

お名前はルルさんとララさんと言うそうです。

お2人は息が合ったようにお話をするので私は戸惑ってしまいました。

お2人は私をある場所へ案内してくれました。

するとそこには魔女さんがいて私は嬉しくて泣きそうになりました。

ですが魔女さんは「私は深淵に行きます」と言いました。

私はその時少なからず「まだ会えないのかな」と思ってしまいました。

魔女さんと一緒に暮らしていたあの日はいつ戻ってくるのでしょうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…???

 

マギ「がっ…ゴホッ…ゴホッ…」

ラビ「マギ…大丈夫…」

マギ「くっ…あの野郎…」

サリエラ「相手の力を見誤ってました…まさかあれ程の力を隠していたなんて…」

マギ「このままだと俺たちは消えてしまう…」

ラビ「やだよ…私…死にたくないよ…」

マギ「くっ…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…エレナの部屋

 

エレナ「…あら、随分暴れたようね。あの人」

 

スタスタスタ

エレナは自分の部屋に帰ってきていた。しかしエレナの部屋はことごとく破壊されており、とても部屋と言えるほどではなかった。

 

エレナ「…まさか」

 

スタスタスタ

エレナはある場所に向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…???

 

エレナ「!!」

 

エレナはある場所に着いた。そこには男性が1人と女性が2人倒れていた。

 

エレナ「…マギ…ラビ…サリエラ…」

 

そこに倒れていたのはマギとラビ、サリエラの3人だった。

 

エレナ「一体ここで何が…」

 

スタスタスタ

エレナは周囲を歩き回った。

 

エレナ (…微かに魔力が残ってる。…しかもこの魔力は…あの人の)

マギ「ぐっ…誰だ…」

 

エレナが部屋を歩き回っているとマギが起きてきた。

 

エレナ「…随分派手にやられたわね。マギ」

マギ「くっ…黙れ…弱者が…」

エレナ「あら、私 あなたよりも強いわよ?」

マギ「はっ…寝言は寝てから言え…」

エレナ「今まで弱い演技するのも辛かったしもうやめたの。今の私はあなたの何倍も強いわよ」

マギ「くっ…」

エレナ「さて、あの人はどこ?」

マギ「あの人って…誰だ…」

エレナ「誰ってリーナのことよ」

マギ「!!」

 

マギは驚いた。だがすぐに顔を戻した。

 

マギ「…知ってどうする」

エレナ「どうするって言うわけないでしょ」

マギ「…」

エレナ「あなた 自分の立場分かってる?」

マギ「…黙れ」

エレナ「…まぁいいわ。ラビもサリエラもやられてるっぽいしあとは私とグラムだけね」

マギ「…」

エレナ「今まで野放しにしてたけどもう限界ね」

マギ「…どうするつもりだ」

エレナ「決まってるじゃない。あなたたちを元に戻すのよ」

マギ「!?」

 

マギはその言葉に反応した。

 

エレナ「当たり前でしょ。もうこれ以上はごめんよ」

マギ「…そう易々と戻されてたまるか…」

エレナ「…」

 

マギはゆっくり立ち上がった。

 

マギ「っ…」

 

そして杖をエレナに向けた。

 

エレナ「…何するつもり」

マギ「…決まってんだろ…お前を殺して俺のものにしてやる…」

エレナ「はぁ…あのねマギ。ひとつ言っておいてあげるわ」

マギ「っ…」

 

エレナはマギを睨んで言葉を綴った。

 

エレナ「 "親に勝てる子供はいないのよ" マギ」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…ラミエ先生の友人の家

 

リール「あの…ラミエ先生」

ラミエ先生「何?」

リール「ラミエ先生はrrrr…」

ラミエ先生「?」

 

リールは突然言葉を失ったかのように話し始めた。しかしそれをラミエ先生が聞き取れるはずもなかった。

 

ラミエ先生「え?もう1回お願い」

リール「ですからrrrrrr…あれ?」

 

リールも異変に気づいた。

 

リール「あれ…どうして…」

ラミエ先生「何か言いたいことでもあるの?」

リール「えっと…あるんですが言葉が上手く…」

ラミエ先生「もう1回言ってみて」

リール「rrrrrrr…」

 

リールは何度も話そうとしたが何故か話せなかった。

 

リール「あ、あれ…どうして…」

ラミエ先生「何が言いたいの?」

リール「rrrrrrとrrrrrr…あれ?」

ラミエ先生「熱でもあるのかしら」

 

スッ…

ラミエ先生はリールの額に手を触れた。しかし特に熱もなく体に異常もみられなかった。

 

ラミエ先生「熱…ではないわね」

リール「ど…どうして…」

 

リールは「ルル」と「ララ」と言いたかったが何故かそう言えなかった。

 

ラミエ先生「…もし何か話したいことがあったらあとでお願いしてもいい?」

リール「え、何かあるんですか?」

ラミエ先生「ちょっとやることがあるの。ごめんね」

リール「あ、はい」

 

スタスタスタ

ラミエ先生はその場をあとにした。

 

リール (…どうしてルルさんとララさんの名前が出てこないのでしょうか…)

エレナ「リールさん?」

リール「!」

エレナ「どうされましたか?」

 

目の前にはエレナがいた。エレナはリールが下を向いているのに気づいて心配になったようだった。

 

リール「あ、あの…」

エレナ「?」

リール「エレナさんはララさんとルルさんをご存知ですか?」

エレナ「ルルさんとララさん?」

リール「!!」

 

リールは普通にルルとララと言えていた。

 

リール「あれ…私…言えてる…」

エレナ「どうかしたんですか?」

リール「あ、いえ…」

エレナ「それでルルさんとララさんですが、私にはそのような名前の知り合いはいません。すみません」

リール「あ、いえ…大丈夫です…」

エレナ「…何か悩み事があるのでしたら何でも話してくださいね」

リール「はい…」

 

スタスタスタ

エレナはその場をあとにした。

 

リール (どうしてエレナさんにはルルさんとララさんの事が言えたのでしょうか…)

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

リールはその日は何事もなく、夜になって夕食を食べてから少しして寝る時間になった。

 

リール「ではラミエ先生 エレナさんおやすみなさい」

エレナ「はい。おやすみなさいリールさん」

ラミエ先生「しっかり休んで明日元気なあなたを見せてちょうだい」

リール「はい」

 

スタスタスタ

リールは自分の部屋に向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…ラミエ先生の友人の家 リールの部屋

 

スタスタスタ…ボフッ…

リールは自分のベッドに座った。

 

リール (今日のあれは何だったのでしょうか…)

 

リールはラミエ先生にルルとララのことを話せなかった時のことを思い出す。

 

リール (…もしまたルルさんとララさんに会う機会があれば聞いてみましょうか)

 

スッ…

リールはそのままベッドに横になって寝始めた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…白い空間

 

リール「!!」

 

リールは見覚えのある白い空間に立っていた。

 

リール「あれ…ここは…」

 

ルル「やぁリール」

ララ「はぁいリール」

 

リール「!」

 

リールが後ろを振り返るとそこにはルルとララがいた。

 

リール「ルルさん…ララさん…」

 

ルル「昨日ぶりだね」

ララ「1日ぶりね」

 

リール「えっと…はい…」

 

ルル「今日はどうしたの?」

ララ「御用は何かしら?」

 

リール「…え?」

 

リールはその言葉に少し違和感があった。

 

リール「え…何も用事は…」

 

ルル「あれ?ないの?」

ララ「あら、ないのね」

 

ルル「君がここに来たのに」

ララ「あなたが現れたのに」

 

リール「?」

 

ルル「でもここにいるってことは」

ララ「でもここにいるってことは」

 

ルル「君は何か用事があるんじゃないかな?」

ララ「あなたは何か用事があるんじゃない?」

 

リール「う〜ん…」

 

リールは少し考えてみた。そして寝る直前のことを思い出す。

 

リール「あ!そうですそうです!聞きたいことがあったんです!」

 

ルル「何かな?」

ララ「何かな?」

 

リール「あの…ラミエ先生にルルさんとララさんのことを話そうと思っていたんですが、中々お2人の名前が口に出なくて…エレナさんにはしっかり話せたんですがラミエ先生だけは…どうしてでしょうか」

 

ルル「うん。当然だね」

ララ「うん。当たり前ね」

 

リール「え、何故ですか?」

 

ルル「あの人には聞き取れないからだよ」

ララ「あの人には言葉が通じないからよ」

 

リール「え、聞き取れない?通じない?どういう事でしょうか」

 

ルル「そのままの意味」

ララ「言葉通りの意味」

 

リール「?」

 

ルル「あの人には僕の名前は」

ララ「あの人には私の名前は」

 

ルル「違った音に聞こえるんだよ」

ララ「雑音にしか聞こえないのよ」

 

リール「え?どうしてでしょうか」

 

ルル「答えは簡単」

ララ「単純明快」

 

ルル「君とあの人は全く違う次元にいるから」

ララ「あなたとあの人は隔絶されているから」

 

リール「!!」

 

ルル「厳密には君だけがこの世界にいない」

ララ「あなただけ違う次元に存在している」

 

リール「私…だけ…」

 

ルル「そう」

ララ「そう」

 

ルル「だから違う次元の人とは会話ができない」

ララ「だからあの人にはあなたの声が届かない」

 

リール「え、でも今まで普通に話せてましたよ…」

 

ルル「うん。君の会話は問題ないよ」

ララ「私たちのことではないからね」

 

リール「?」

 

ルル「君は僕たちが別れる前に言ったこと覚えてる?」

ララ「この世界が崩れ始めた時に私たちが言った言葉」

 

リール「言葉?」

 

ルル「うん」

ララ「うん」

 

リール「えっと…何でしょうか…」

 

ルル「僕たちはずっと一緒ですよ」

ララ「私たちはずっと一緒ですよ」

 

ルル「そう言ったよ」

ララ「そう言ったわ」

 

リール「あ、思い出しました」

 

ルル「つまり、君と僕たちは」

ララ「つまり、あなたと私たちは」

 

ルル「同じ次元に存在している」

ララ「同じ次元に存在している」

 

ルル「だけどあの人は僕たちの次元にはいない」

ララ「でもあの人は私たちとは違う次元にいる」

 

ルル「だから僕たちの話をしても通じないんだ」

ララ「だから私たちの話はあの人には伝わらない」

 

リール「えっと…つまり私はラミエ先生と同じ次元にいるから私の会話はできるけどルルさんとララさんはラミエ先生とは違う次元にいるから話が通じないと…そういう事でしょうか」

 

ルル「その通り」

ララ「その通り」

 

ルル「淡々と話したのに理解してるのすごいね」

ララ「驚いた。あの情報量をまとめられるなんて」

 

リール「あはは…」

 

ルル「でも実際には君とあの人は違う次元にいる」

ララ「本当はあなたもあの人とは違う次元にいる」

 

ルル「それでも会話が成立するのは」

ララ「それでも会話が成立するのは」

 

ルル「会話の内容が僕たちのことじゃないから」

ララ「話題が私たちに関することじゃないから」

 

リール「!」

 

ルル「もしこの先君が友達と再会できたなら」

ララ「もしあなたが元の場所に帰れたなら」

 

ルル「話してみるといいよ。僕たちのことを」

ララ「話してみるといいよ。私たちのことを」

 

ルル「きっと相手には言葉が通じないから」

ララ「きっとあなたの言葉は届かないから」

 

リール「!」

 

ルル「さて、怖い話をしてごめんね」

ララ「暗い話をしてごめんなさいね」

 

ルル「君は根が優しいからこういう話は苦手でしょ」

ララ「あなたは心が温かいからこの話は苦手でしょ」

 

リール「そ、そうですね…」

 

ルル「では楽しい話をしましょう」

ララ「じゃあ別の話をしましょう」

 

リール「楽しい話?」

 

ルル「そう。楽しい話」

ララ「そう。あなたの話」

 

リール「あ、じゃあその前にお聞きしてもいいですか?」

 

ルル「何?」

ララ「何?」

 

リール「お2人はどういった方なのでしょうか」

 

ルル「?」

ララ「?」

 

リール「前に会った時から不思議に思っていました。今まで会ったことがなかったのに今になって私と対面しています。そしてお2人は光属性魔法の始祖と仰っていました。私は魔女さんにもあなた方のお話は聞きませんでしたが魔女さんは知っているようでした」

 

ルル「…」

ララ「…」

 

リール「お2人は一体何者なのでしょうか」

 

リールが質問を終えるとルルとララは真剣な顔になった。

 

ルル「…リール」

ララ「…リール」

 

リール「…はい」

 

ルル「それを聞くのは "禁忌" だよ」

ララ「それを聞くのは "禁忌" なのよ」

 

リール「禁…忌…」

 

ルル「そう。禁忌」

ララ「えぇ。禁忌」

 

リール「禁忌…エレナさんも同じことを言ってました」

 

ルル「…」

ララ「…」

 

リール「エレナさんはご自身を "忌み子" と言ってました。禁忌に触れたことでその日からそう呼ばれたそうです。…お聞きしますルルさんララさん」

 

ルル「…」

ララ「…」

 

リール「禁忌とは何でしょうか。この世界に存在する3つの禁忌とは何でしょうか」

 

ルル「…君は好奇心旺盛だね」

ララ「…あなたは聞きたがりね」

 

リール「あ、いえ…その…」

 

ルル「いいよ。教えてあげる」

ララ「いいわ。話してあげる」

 

リール「!!」

 

ルル「この世界に存在する3つの禁忌について」

ララ「この世界に現存する3つの禁忌について」

 

クルッ

ルルとララは180°方向を変えた。

 

ルル「リールさん。こちらへ」

ララ「ついてきて。私たちに」

 

スタスタスタ

ルルとララはある場所まで歩き始めた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…白い空間 少し広い場所

 

ルル「ではリールさん。禁忌についてお話します」

ララ「じゃあそろそろ禁忌について話してあげる」

 

リール「…」

 

コンコン…

ルルとララがつま先を2回上げ下げして音を鳴らした。

 

ブゥン…ジジジ…ジジ…

するとリールの横に大きなスクリーンが映し出された。それと同時に白かったこの空間が一瞬で真っ暗となった。

 

リール「あの…ルルさん…ララさん…」

 

ルル「リールさん」

ララ「リールさん」

 

リール「は、はい…」

 

ルル「この世界には触れてはならないものがあります」

ララ「この世界には知らない方がいいものもあります」

 

ブゥン…

スクリーンが映像を切り替えた。

 

リール「!」

 

その映像にはエレナさんによく似た人と魔女さんによく似た人、そして知らない女性が1人の合計3人の女性が映し出された。

 

リール「これって…エレナさんと魔女さん…それに…知らない人」

 

ルル「この人たちが禁忌に触れた人たちです」

ララ「この人たちは忌み子と呼ばれています」

 

リール「!」

 

ブゥン…

スクリーンがまた映像を切り替えた。今度は3人の女性がある物を囲んでいる映像だった。

 

リール「これは…」

 

ルル「この人たちが囲っているものが禁忌の素です」

ララ「あの小さな結晶が禁忌の素となっているもの」

 

ルル「この人たちはどこからか禁忌の存在を知りました」

ララ「この人たちは禁忌の情報を集めて探していました」

 

ルル「あの小さな結晶は触れたものを分解させます」

ララ「あの小さな結晶は触れたものを異形にさせます」

 

ルル「エレナが忌み子と呼ばれている理由」

ララ「エレナが忌み子と呼ばれている原因」

 

ルル「これは人が触れるべきものではありません」

ララ「これは私たち属性魔法の始祖のものです」

 

ルル「あれに触れること自体が禁忌なのです」

ララ「探して見つけるのもまた禁忌なのです」

 

ルル「でもこの人たちはそれに触れてしまった」

ララ「でもこの人たちは探して見つけてしまった」

 

リール「…」

 

ブゥン…

するとまたスクリーンが映像を切り替えた。次の映像はその結晶が割れて何やら黒い靄のようなものがこの世界を覆い尽くしている映像だった。

 

リール「これは…」

 

ルル「 "黒い霧" 僕たちはそう呼んでいる」

ララ「 "黒い霧" 私たちはそう呼んでいる」

 

ルル「これが今も尚この世界を覆い尽くしている」

ララ「変わらずこの世界を黒く覆い尽くしている」

 

ルル「でも誰もその存在に気づいていない」

ララ「でも誰もその事を気にかけていない」

 

リール「…」

 

ブゥン…

またスクリーンが映像を切り替えた。今度は多数のドレインがある国を攻撃している様子だった。

 

リール「!!」

 

ルル「あれはドレイン」

ララ「諸悪の根源」

 

ルル「禁忌に触れた代償」

ララ「悪事を働いた罰」

 

ルル「ドレインが出現したことで人口激減」

ララ「ドレインが出現したことで世界滅亡」

 

ブゥン…

またスクリーンが映像を切り替えた。今度は3人の女性が手を取り合っており、協力してドレインに立ち向かっていた。

 

リール「これは…」

 

ルル「あの人たちは自分たちで解決しようとした」

ララ「あの人たちは自分たちで罪を償おうとした」

 

ブゥン…

スクリーンが映像を切り替えた。今度は空を覆い尽くすほどの大きなドレインが人々を襲っているところだった。

 

ルル「でもダメだった」

ララ「解決しなかった」

 

ルル「異常な数のドレインを相手に人間は数人」

ララ「圧倒的な数を前に戦意喪失した人は多数」

 

ルル「戦力の差から死を悟った人たちが取った行動」

ララ「最終手段 最後の切り札を使うことになった」

 

ルル「それが俗に "依代" と呼ばれているもの」

ララ「己が体を使ってドレインを封印すること」

 

リール「依代…」

 

ブゥン…

スクリーンが映像を切り替えた。今度は3人の女性のうちの1人が大きなドレインに立ち向かっている様子だった。

 

ルル「その切り札を使うために1人の女性が名乗り出た」

ララ「当時 "最後の光属性魔法" と呼ばれていた女性」

 

リール「!!」

 

リールはその言葉に聞き覚えがあった。エレナが言っていた言葉だった。

 

ルル「名前はリノ」

ララ「名前はリノ」

 

ルル「彼女は唯一光属性魔法の適性者だった」

ララ「彼女はこの世界では最高戦力だった」

 

ルル「だから "依代" に名乗り出た」

ララ「自分の罪を払拭するかのように」

 

リール「…」

 

ブゥン…

スクリーンが映像を切り替えた。今度は全てのドレインが浄化されて世界が平和になっている様子だった。

 

ルル「依代となった女性はドレインと共に姿を消した」

ララ「依代となった女性は跡形もなく消え去った」

 

ルル「世界からドレインが消滅して世界は平和になった」

ララ「諸悪の根源が絶たれたことで世界は平和になった」

 

ルル「しかし残った人はたったの14人」

ララ「でも生き残ったのはたったの14人」

 

ブゥン…

スクリーンが映像を切り替えた。今度はその日から時代が流れ、今のスペルビア王国になっていく様子だった。

 

ルル「この出来事はあるひとつの国で起こった」

ララ「魔法が発達したある国で起こった出来事」

 

ブゥン…

スクリーンは映像を切り替えた。今度は真っ黒な映像だった。

 

リール「?」

 

ルル「あれから時は経ちました」

ララ「あれから色々と変わりました」

 

ルル「しかし、ひとつだけ変わらないものがあった」

ララ「当時から何も変わらずにそこに存在している」

 

ブゥン…

スクリーンが映像を切り替えた。今度は1人の女性が大きなドレインに取り込まれている様子だった。

 

リール「!!」

 

ルル「そう。禁忌に触れた3人の女性のうちの1人」

ララ「彼女だけ当時のままの姿で存在している」

 

ルル「彼女は魔法で自分の時間を止めている」

ララ「時間を止めてドレインを封印している」

 

ルル「そのお陰でこの世界にドレインが現れない」

ララ「そのお陰で何十年もドレインが出現しない」

 

ルル「しかし、最近になってその封印が弱くなっている」

ララ「時間を止めてまでドレインを封印したけど無意味」

 

ルル「この世界が良くない方向に向かっている」

ララ「原因は柱を壊しているあの人物」

 

リール「!」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

スクリーンが消えていき、やがて暗い空間が白い空間に戻っていった。

 

ルル「これが禁忌に触れた人の末路」

ララ「罪を犯した人たちの末路」

 

ルル「世界が傾いている理由」

ララ「異変が起こっている理由」

 

リール「…」

 

リールは一通り話を聞いた。

 

ルル「何か質問があれば聞きますよ」

ララ「なんでも言ってちょうだい」

 

リール「え…えっと…あの黒い靄は世界中に広がったんですよね?」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

リール「では何故スペルビア王国だけこのような被害が出たのでしょうか」

 

ルル「禁忌に触れた人がそこにいたからです」

ララ「禁忌に触れた人がそこにいたからです」

 

リール「!」

 

ルル「もしあの場所でなく別の場所にいたら」

ララ「もし3人が各々別の場所にいたら」

 

ルル「その場所もドレインによって壊滅していました」

ララ「その場所もドレインによって壊滅していました」

 

リール「!」

 

ルル「この程度の被害で収まったことはむしろ幸運」

ララ「そのお陰で被害は大きくならずに済んだ」

 

リール「な、なるほど…ではもうひとつ…あの禁忌に触れた人たちの名前は…」

 

ルル「1人はエレナ、1人はリーナ、1人はリノ」

ララ「1人はエレナ、1人はリーナ、1人はリノ」

 

リール「エレナ…リーナ…リノ…」

 

ルル「はい。当時の名前はそうでした」

ララ「しかし今は1人だけ名前が変わっています」

 

リール「それって…」

 

ルル「あなたが魔女さんと呼ぶ存在」

ララ「私たちがリーナと呼ぶ存在」

 

リール「!?」

 

リールは驚いていた。

 

リール「魔女さんが…禁忌に…」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

リール「あ、あの…3つの禁忌とは…」

 

ルル「 "分裂" "無敵" "開闢" 」

ララ「 "分裂" "無敵" "開闢" 」

 

リール「分裂…無敵…開闢…」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

リール「じゃ、じゃあ…禁忌に触れたらどうなりますか」

 

ルル「その禁忌を死ぬまで背負うことになります」

ララ「罪を償うまで一生死ぬ事が許されません」

 

リール「死ねない罪…」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

リール「あの…エレナさんの禁忌は "分裂" と言ってました…。では他の2つは…」

 

ルル「リーナは "無敵" リノは "開闢" 」

ララ「リーナは "無敵" リノは "開闢" 」

 

リール「魔女さんが…無敵…」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

リール「で、では…その3つの禁忌によって罪の償い方は違うのでしょうか」

 

ルル「同じです」

ララ「同じです」

 

リール「では…どのような…」

 

ルル「 "禁忌に触れたあの3人が死ぬ事" です」

ララ「 "禁忌に触れたあの3人が死ぬ事" です」

 

リール「え…でも死ねないんじゃ…」

 

ルル「はい。死ねません」

ララ「はい。死ねません」

 

リール「じゃあ…」

 

ルル「だから一生罪を背負うことになるのです」

ララ「死ぬ事で償われる罪ですが死ぬ事が許されません」

 

ルル「故にその3人は一生生き続けることになります」

ララ「老いることも死ぬことも無い不老不死として」

 

リール「そんな…」

 

パキンッ!

白い空間の中で妙な音が響いた。

 

リール「今の音は…」

 

ルル「…誰かがあなたの世界に入り込もうとしています」

ララ「…誰かがあなたを取り込もうとしています」

 

リール「え!?」

 

ルル「リールさん。今日はここまでです」

ララ「また会いに来てください」

 

リール「そんな!まだ話したいことがいっぱいあるんです!」

 

ルル「でしたらまた次の機会に」

ララ「私たちはここにいますので」

 

ドゴォン!ドゴォン!

一段と大きな音が聞こえた。

 

???「アァァァァァァァァァ!!」

リール「!?」

 

すると大きな音と共に穴が空いた場所から2本の腕と大きな顔が出てきた。出てきたそれの体はドレインのようにとても黒かったが、見た目がリールにそっくりだった。

 

リール「え…何…この人…私…」

 

ルル「リールさん」

ララ「リールさん」

 

リール「!!」

 

ルル「さようなら」

ララ「さようなら」

 

パチン!

ルルとララが指を鳴らした。

 

ヒュッ…

すると一瞬でリールの姿が消えてしまった。

 

???「アアアアアアアアアアアア!」

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

出てきたそいつは暴れ回っている。

 

ルル「…この場所もダメだね。ララ」

ララ「…えぇ。また場所を移しましょうか」

 

クルッ…スタスタスタ

ルルとララは歩きながらその場をあとにした。




〜物語メモ〜

禁忌の種類
この世界には3つの禁忌が存在する。
1つは分裂、1つは無敵、1つは開闢。
エレナが分裂の禁忌に、魔女さん(リーナ)が無敵の禁忌に、リノが開闢の禁忌に触れてしまった。この3人の罪は死ぬ事で償われるが、罪を償うまで死ぬことが許されない。
死ねば償えるが償うまで死ねないというループに入っているため、この3人は実質不老不死となっている。
ただし、傷を負うことは普通にある。


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第53話 エレナと変わり果てたスペルビア王国

ここでちょっとお知らせです。

来週から私情で投稿が遅くなると思われます。
具体的には7月の終わりまで投稿が遅くなると思われます。
時間があれば投稿します。

お知らせは以上です。


私の名前はリール。

今ラミエ先生のお友達の家にいます。

少し前にルルさんとララさんから禁忌というものについて色々とお話を聞きました。

どうやら禁忌は3つあるらしく、それぞれ分裂と無敵と開闢だそうです。

加えてその禁忌に触れた人の中に魔女さんの名前がありました。

私はその時、ショックを受けました。

私は魔女さんの事が大好きですし、とても頼りになる人だとも思っています。

故に禁忌に触れていることに驚きを隠せませんでした。

その後少し話すとあの白い空間に全身が黒い大きな人が出てきました。

その人は顔が私にそっくりでした。

何も分からなかった私ですが、その時ルルさんとララさんが私を逃がしてくれました。

その後どうなったかは分かりませんが、ルルさんとララさんがご無事である事を願っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…リールの部屋

 

リール「!!」

 

ガバッ!

リールは飛び起きた。

 

リール「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

リールは酷く呼吸が荒かった。

 

リール「今のは…」

 

スッ…スタスタスタ

リールはベッドから降りてカーテンを開けた。

 

リール「!」

 

外は明るかった。恐らく朝なのだろう。

 

リール「朝…ですか…」

 

リールはとりあえず部屋を出ることにした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リビング

 

リール「ラミエ先生。エレナさん。おはようございます」

ラミエ先生「おはようリール」

エレナ「おはようございますリールさん」

 

スタスタスタ

リールは自分の席に座った。

 

エレナ「はい。朝ごはんですよ。食べられますか?」

リール「あ、はい。食べられます」

 

リールは朝食を食べ始めた。

 

ラミエ先生「ねぇリール」

リール「?」

 

リールが少し朝ごはんを食べた後にラミエ先生が話を切り出した。

 

ラミエ先生「あなた、昨日はどうしたの?」

リール「…え?」

エレナ「あ!そうですよ!リールさん昨日どうされたんですか!?」

リール「え、え?」

 

リールは何を言っているのか分からなかった。

 

リール「えっと…どういう…」

ラミエ先生「どうって…あなた昨日暴れてたのよ?部屋の中を」

リール「!?」

エレナ「そうですよ。部屋中暴れ回って物を壊して…」

リール「え…でもさっきは何とも…」

ラミエ先生「私とエレナで直したのよ」

リール「え…え…」

 

リールは少し混乱していた。

 

リール「私が…暴れてた…」

ラミエ先生「そうよ。でも魔法は使ってなかったわ」

エレナ「そうそう。物を投げたり叩いたりって…」

リール「え…」

 

カランカラン…

リールはフォークを落とした。

 

リール「私が…え…」

 

リールは昨日あったことを思い出す。だが思い出せるのはルルとララに会ったことだけ。それ以外は何も思い出せなかった。

 

リール「でも…昨日は…」

 

ラミエ先生「…」

エレナ「…」

 

ラミエ先生「ねぇリール」

リール「は、はい…」

ラミエ先生「もしかして…あなた…」

リール「?」

ラミエ先生「と…」

エレナ「ラミエ!」

 

ラミエ先生「!!」

リール「!!」

 

エレナが大声で言葉を遮った。

 

ラミエ先生「エレナ…」

エレナ「それは言わないお約束です。言ったらあなたはこの世にいられませんよ」

ラミエ先生「そ、そうね…ごめんなさい」

リール「えっと…エレナさん…」

エレナ「リールさん。今のは聞かなかったことにしてください」

リール「は、はい…」

 

リールはさっきのエレナの顔に恐怖を覚えた。その後リールはご飯を食べ終えて部屋に戻った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールの部屋

 

リール「エレナさん…何故あんなに声を荒らげて…」

 

リールは窓の外を見た。

 

リール「!?」

 

リールは窓の外の景色を見て唖然とした。

 

リール「え…これは一体…」

 

リールが窓際に行って外を見た。だがそこには今朝見た景色とは全然違った景色が広がっていた。

 

リール「な…何でしょうこれは…」

 

窓の外は全てが灰色に包まれていた。日差しも見えず、草や海も何も見えないただただ灰色の景色がそこにあった。

 

リール「こ…ここは一体…」

 

タッタッタッ!

リールは部屋を出てリビングに向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リビング

 

リール「ラミエ先生!エレナさん!」

 

リールは走ってリビングに入ってきた。

 

ラミエ先生「どうしたのよ」

エレナ「何かありましたか?」

リール「そ、外が…」

ラミエ先生「外?」

リール「外が…景色が見えなくて…全部灰色に…」

 

ラミエ先生「!」

エレナ「!」

 

2人は同時に驚いた表情を見せた。

 

リール「ラミエ先生!この家はラミエ先生のお友達の家なんですよね…?」

ラミエ先生「え、えぇ。そうよ」

リール「でも…ここは不思議な感じがします…」

ラミエ先生「まさか…エレナ!」

エレナ「!!」

 

ラミエ先生がエレナの方を見るとすでにエレナは行動していた。どうやら外の景色を見ていたらしい。

 

エレナ「そんな…どうして…」

ラミエ先生「エレナ!」

エレナ「ダメです…もうこの世界は…」

ラミエ先生「な…」

 

エレナとラミエ先生は混乱していた。

 

エレナ「こんなはずじゃ…」

リール「ラミエ先生!エレナさん!ここは一体どこなんですか!!」

 

ラミエ先生「!」

エレナ「!」

 

リールは大きな声でそう言った。ラミエ先生とエレナはその声に驚いていた。

 

リール「話してください!ここは一体どこなんですか!」

ラミエ先生「…もうこんなんじゃ隠せないわ」

エレナ「…」

ラミエ先生「リール。よく聞いて」

リール「…」

ラミエ先生「ここは現世と深淵を繋ぐ境界線よ」

リール「!!」

ラミエ先生「私の友人の家なんかじゃないわ」

リール「え…そんな…」

エレナ「…」

ラミエ先生「黙っててごめんなさいね。でもこれも作戦なのよ」

リール「さ…作戦って…」

ラミエ先生「あなたをこの場に連れて来ることでドレインたちを討滅させないようにするのよ」

リール「!?」

ラミエ先生「今気づいてももう遅いわ。現世はドレインでいっぱいよ。人もたくさん死んでるわ」

リール「そ…そんな…」

 

リールはその場に座り込んだ。

 

リール「そんな…私がこうやって生活してる時もスカーレットやアンナは…」

エレナ「…」

リール「ラミエ先生…」

ラミエ先生「…何」

リール「…今すぐ帰ります。帰ってスカーレットとアンナを助けに行きます」

ラミエ先生「…ダメよ」

リール「何故ですか!!」

ラミエ先生「…それが私たちの作戦だからよ」

リール「!!」

ラミエ先生「あなたを生かさないとあの人が私を殺すのよ。だからあなたをこの世界に引き込んだ。エレナを使ってね」

リール「そんな…エレナさん…」

エレナ「…」

 

エレナは顔を背けていた。

 

リール「そんな…スカーレット…アンナ…」

 

リールは頭を抱えた。

 

リール「私のせいでみんなが…スペルビアの国の人たちが…」

エレナ「…」

ラミエ先生「…」

リール「…帰してください」

ラミエ先生「!」

リール「私を帰してください!!」

 

リールは大声でそう言った。

 

ラミエ先生「…ダメよ」

リール「!!」

ラミエ先生「あなたはこの場所から出られない。私たち無しでは出たところでこの境界線を彷徨うだけよ」

リール「そんな…」

 

リールは焦り始めた。

 

リール「そんな…スカーレット…アンナ…」

 

リールは心の中でスカーレットとアンナに何度も謝った。そして決心した。

 

リール「…私は帰ります。スカーレットとアンナを助けに行きます」

ラミエ先生「…そう」

 

ガタッ…

ラミエ先生は椅子から立ち上がった。

 

リール「…」

ラミエ先生「…なら私たちを殺していきなさい」

リール「!?」

 

ラミエ先生は突然変なことを言い始めた。

 

ラミエ先生「私たちを殺せたらここから出てみんなを助けに行きなさい」

リール「ラミエ先生…」

 

ラミエ先生は杖を取りだした。

 

ラミエ先生「さぁ、いくわよ」

リール「…」

 

スッ…

リールはゆっくりと杖を取りだした。

 

ラミエ先生「…リノの杖ね」

リール「!!」

ラミエ先生「…懐かしいわ」

リール「…」

 

両者睨み合う。

 

リール (どうすれば…ラミエ先生は回復魔法のスペシャリスト…私の攻撃なんか無かったことにできます…ではどうすれば…)

 

ルル「僕たちが相手をするよ」

ララ「私たちが相手になるわ」

 

リール「!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!

 

ラミエ先生「な、何!」

 

突然白い光が現れ、その中からルルとララが姿を現した。

 

ルル「やぁリール」

ララ「はぁいリール」

 

リール「ルルさん!?ララさん!?」

エレナ「!?」

ラミエ先生 (何…この気配…今まで感じたことない気配…)

 

ルル「君がこの場にいてくれてよかったよ。リール」

ララ「お陰であなたを見つけるのが簡単だったわ」

 

リール「見つける…」

 

ルル「さぁラミエ。僕たちが相手になるよ」

ララ「さぁラミエ。私たちが相手になるわ」

 

ラミエ先生 (この人たち…どうして私の名前を…)

エレナ「ラミエ」

ラミエ先生「!」

エレナ「…あの人たちは只者じゃないですよ」

ラミエ先生「どういう事よ」

エレナ「…光属性魔法の始祖。あの人たちは私たちの比じゃないくらいの魔力を持ってますよ」

ラミエ先生「なに…」

 

ルル「さ、こんな趣味の悪い場所から出してあげる」

ララ「あなたにこんな場所はお似合いじゃないわ」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!

ルルとララの体が光に包まれた。

 

ルル「さようならリール」

ララ「また会いましょうね」

 

リール「え、ルルさんララさん!」

 

シュッ!

リールはその場から姿を消した。

 

エレナ「!」

ラミエ先生「あなたたち…一体何者…」

 

ルル「僕はルル」

ララ「私はララ」

 

ルル「この世界に蔓延るドレインたちを」

ララ「この世界に存在する異質な空間を」

 

ルル「討滅する者」

ララ「破壊する者」

 

ルル「そして」

ララ「そして」

 

ルルとララはラミエ先生に指を指した。

 

ルル「君を消し炭にする者でもある」

ララ「あなたを粉微塵にする者でもあるわ」

 

ラミエ先生「!!」

 

ルル「覚悟してねラミエ」

ララ「覚悟してねラミエ」

 

ルル「君のこの先の人生は」

ララ「あなたのこれからは」

 

ルル「きっと暗いものになるだろうね」

ララ「きっと歪なものになるでしょうね」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国を見渡せる高台

 

シュッ!

リールはルルとララによってあの家から転送された。

 

リール「え…これは…」

 

しかし、リールの目に飛び込んできたのはドレインで溢れかえっていたスペルビア王国だった。

 

リール「どうして…ドレインが…」

 

リールが唖然としていると後ろからドレインが近づいてきていた。

 

ドレイン「オォォォォォォォォ!」

リール「!!」

 

ドシン!

ドレインはリールに攻撃した。だがリールは箒に乗って攻撃を回避した。

 

リール「光玉(ライダラ)!」

 

ビュン!ドカン!

リールの魔法がドレインに命中した。

 

ドレイン「オォォォォォォォォ…」

 

ドレインはそのまま姿を消した。

 

リール「一体何が…スカーレット…アンナ…」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ!

リールは2人のことが心配になって一目散にスペルビア王国に向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国

 

リール「そんな…」

 

スペルビア王国は荒れ果てていた。建物は崩れ、所々が燃えたりしていた。

 

リール「スカーレット…アンナ…」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ!

リールは箒に乗ってスペルビア王国を見て回った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国にある広場

 

広場に着いたリールは近くの段差に腰掛けた。

 

リール「人が一人もいない…どうして…こんな事に…」

???「リール!!」

リール「!!」

 

リールが色々と考えていると誰かの声がした。

 

オード「探したぞリール!」

リール「オ…オード君…」

オード「どこも怪我してないか!?大丈夫か!?」

リール「オード君…これは一体…」

オード「話はあとだ!今は建物の中に隠れるぞ!ついてきてくれ!」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ!

オードとリールは箒に乗ってある場所まで移動した。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国 地下

 

リール「オード君…ここは…」

オード「俺もスカーレットに教えてもらうまで分からなかった。この国の地下らしい」

リール「地下?」

オード「あぁ。何かあった時にこの国の人たちが逃げ込めるようにと作られたらしい」

リール「そ、そうですか」

オード「来てくれ。みんなが待ってる」

リール「みんな?」

 

スタスタスタ

リールとオードはある場所まで歩を進めた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国 地下 開けた場所

 

リール「わ…すごい広い」

オード「だろ?ここは全国民が入れるらしいからな。その分広いんだ」

リール「そうなんですね」

オード「おーい!委員長!!リールを見つけたぜー!」

スカーレット「!?」

 

そこには生き残った人たちに食べ物を配っているスカーレットの姿があった。

 

スカーレット「リール!!」

 

タッタッタッ!ギュッ!

スカーレットはリールに抱きついた。

 

スカーレット「よかった…よかったわリール…」

リール「スカーレット…」

スカーレット「もう一生見つからないかと思ったわ…」

リール「え?」

アンナ「リール」

リール「!」

 

そこにはアンナとディア、ノーラの姿があった。

 

リール「アンナ…それにディア君とノーラ君まで…」

ディア「帰ってきてくれてよかった」

ノーラ「だね」

アンナ「みんなリールのこと心配してたんだよ」

リール「その…ごめんなさい…」

オード「リール。これからリールにこの国で起こったことを話す。それを聞いて今後どうするかはリールの勝手だが、俺たちはリールの選択を否定しない。自分がするべきだと思ったことをしてくれ」

リール「それは…どういう…」




〜物語メモ〜

今回は新しい情報がないので次回です。


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第54話 エレナとリールの怒り

私の名前はリール。

今スペルビア王国の地下にいます。

先程までラミエ先生とエレナさんと一緒にいたんですが、ルルさんとララさんが私をあの家から逃がしてくれました。

ですがスペルビア王国に着いたら国中の建物が崩れてて炎が上がっている家もありました。

そんな中私は箒に乗って国中を飛び回りましたが、人が1人もいませんでした。

しばらくするとオード君が来てくれたのでこの地下に案内してもらいました。

そこはとても広く、国中の人たちが入れるくらいだそうです。

そこにはスカーレットやアンナ、ディア君やノーラ君もいました。

みんな怪我していたのに他の人たちのために食料を配っており、スカーレットに関しては私を見るとすぐに抱きついてくれました。

そんな中オード君が私にこの国で起こったことを話してくれるそうです。

オード君の顔はとても真剣でいつもとは違う雰囲気を感じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…スペルビア王国 地下

 

オード「リール。これからリールにこの国で起こったことを話す。それを聞いて今後どうするかはリールの勝手だが、俺たちはリールの選択を否定しない。自分がするべきだと思ったことをしてくれ」

リール「それは…どういう…」

オード「みんな。話してもいいな?」

 

スカーレット「私はいいわよ」

アンナ「私も」

ディア「俺もいいと思う」

ノーラ「あぁ」

 

みんなはオードの意見に賛成した。

 

リール「オード君…」

オード「リール。こっちに来てくれ。ここだと話しずらい」

リール「は、はい…」

 

スタスタスタ

6人は場所を変えた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国 地下にある岩陰

 

オード「じゃあ話すぞ」

リール「はい」

オード「俺たちはな、1ヵ月前にリールがいなくなってからずっとスペルビア王国を探し回っていたんだ。あの日だ。スカーレットの父親がリールをある人の家に連れて行ったあの日。学校にドレインが出てきた日だ」

リール「あ、あの時…」

オード「そうだ。俺たちはリールを探しに行ったが見つからなかった。これでも2、3週間は探し回ったよ。でも見つからなかった。どこに行ってもリールの痕跡すら無かったんだ」

リール「…」

オード「俺たちはあの後この国に帰ることを許されてな。それから探し回ったよ。だが何の手がかりもなかった。そこでだ。俺たちはリールが庇ったあのエレナってやつ。あいつを探すことにした。でも見つからなかった。俺たちは途方に暮れていたんだ」

リール「そう…ですか…」

オード「俺たちがリールを探しているとある事件が起こった」

リール「!!」

オード「ここスペルビア王国にドレインが出現したんだ」

リール「!?」

オード「突然だった。エレナ学院から大量に湧き出てきてスペルビア王国はほぼ壊滅状態になった」

リール「…」

オード「もちろん俺たちはドレインに抵抗するため魔法を使った。だがあいつらには俺たちの魔法は効かなかった。それどころかどんどん数が増えてきて俺たちは苦戦を強いられた」

リール「…」

オード「その戦いは一日中続いた。夜明けまでな。だが陽光が射してからドレインたちは先を争うかのようにその場から逃げ出した。俺たちは何とか生き残ったが街はボロボロで住むところも食料も無かった。そんな時スカーレットの父親がこの場所にみんなを集めるように指示した。生き残ったやつは今この場所にいる人で全員だ。ドレインに殺されたやつは何人もいる。何人かは知らん。だが大半は殺られたと思う」

リール「そんな…」

オード「それから1ヵ月。俺たちはドレインが活動する夜から夜明けまでの時間でドレインたちを迎撃することにした。俺たちがやられたら本当の意味でこの国は終わりだからな」

リール「…」

オード「それから何日か経った時にある女がここを訪ねてきた。名前はエレナ。リールをあの場から連れ去ったやつだ」

リール「!」

オード「するとその女はリールを出せと言ってきた。だがあの時にはリールはいなかったから俺たちはいないと伝えた。そしたらあの女はリールが来たら教えてくれ。教えてくれたら何もしないと言った」

リール「…」

オード「その女はそれからすぐに消えたが俺たちは戦っても勝てないことくらい分かってるから余計に怖かったんだ」

リール「そうですか…」

オード「それから数日後、俺は外の見回りをしているところでリールを見つけた」

リール「!!」

オード「俺はあの女にリールがいることが知られると不都合が生じると思ったからこの場に連れてきた」

リール「なるほど…分かりました」

オード「俺たちはリールをあいつに引き渡したくない。何されるか分かったもんじゃないからな」

リール「エレナさんはなんと言っていましたか?」

アンナ「リールを渡して欲しいっていうのと渡さないとここにいる人たちをみんな殺しちゃうって…」

リール「…」

オード「目的は分からんが俺たちはリールを手離したくない」

リール「でも私が行かないとここにいるみなさんはエレナさんに殺されるんですよね」

オード「…あぁ」

リール「でしたら答えは決まってますよ」

スカーレット「リール…」

リール「私は行きます。エレナさんの所に」

オード「…やっぱりか」

リール「はい。私が行かないとここの人たちが酷い目に遭わされるのなら私が犠牲になってみなさんが安全に暮らせる方がいいと思うんですよ」

スカーレット「リール…」

リール「許してくださいスカーレット。事の発端は私にあるかもしれません。でしたら私が行くべきです」

ノーラ「それはリールの考えであって俺たちの考えではない」

リール「…どういう事でしょうか」

ノーラ「リールは自分が犠牲になればいいと考えているが、それはあくまでリール自身の考えだ。俺たちはさっきオードも言ってたけどリールを手離したくないと考えている。2つの意見があるにも関わらず自分の意見だけを通すのはよくないんじゃないか?」

リール「ではノーラ君はどうすればいいと考えてますか?」

ノーラ「っ…」

リール「私は犠牲と言いましたが身を削って行くわけではありません。交渉しに行くだけです。何も初めから戦うなんて思ってませんよ」

ノーラ「…そうか」

リール「そういう事です。ですので私は行きます。みなさんはここにいてください」

 

ガシッ!

リールは腕を掴まれた。

 

オード「…それでも俺たちはリールが大事なんだ」

リール「!!」

 

オードは真っ直ぐリールの顔を見た。

 

オード「今の俺たちがあるのはリールのお陰。俺たちはいつかリールに恩返しをしたいと思っている。だから恩返しさせてくれないか?」

リール「具体的に恩返しとはなんでしょうか」

オード「リールが望むものを贈る」

リール「…」

オード「俺たちができるのはこれくら…」

リール「でしたら私を行かせてください」

オード「!!」

 

リールはオードの言葉を遮って答えた。

 

リール「オード君は言いました。私の選択は否定しないと。私はエレナさんのところに行くと言いましたがオード君はそれを否定しています。これは一体どういう事でしょうか」

オード「いや、否定してるわけじゃ…」

リール「でしたら私を行かせてください」

オード「…」

アンナ「リール…」

リール「お願いです」

オード「…」

 

スッ…

オードはリールの腕を離した。

 

オード「…分かった。リールの好きにしてくれ。だがな、無理だけはしないでくれ。お願いだ」

リール「…はい」

 

スタスタスタ

リールはその場をあとにした。

 

ディア「…いいのか。オード」

オード「…男なら見守るのも仕事だ。あぁやって自分で決めたんだから邪魔する権利は俺たちにはない。…それに、リールなら何とかしてくれると思う」

ディア「…そうか」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国 広場

 

リール「…」

 

あの後リールは広場に向かった。そこはスペルビア王国にある広場の中で最も広い広場だった。

 

リール「…っ」

 

リールはある気配を感じた。それは今までで何度も感じた異様な気配。

 

エレナ「あら、起きてるじゃない」

リール「…エレナさん」

エレナ「あら、覚えててくれたのね。あなた」

リール「…私をどうするつもりですか」

エレナ「どうするって…利用させてもらうのよ」

リール「…私を何に利用するつもりですか」

エレナ「もちろん深淵への鍵になってもらうのよ」

リール「鍵ですか」

エレナ「そうよ。あそこに入るには特定の条件が必要なのよ」

リール「その条件ってなんですか」

エレナ「 "あの人の血族であること" よ」

リール「…」

 

エレナは後ろを振り返って話を続けた。

 

エレナ「あの人の血族は少し特殊なのよ。それこそこの世界に数少ない光属性魔法を適性に持つ人たちばかり。でも今はその血も途絶えてあなたが最後の光属性魔法の適性者となった」

リール「…」

エレナ「私は光属性魔法の適性者じゃないからあの場所には入れない。だからあなたを探していたのよ」

リール「…ルルさんとララさんが言ってました。深淵という場所は "柱" というもので守られているそうです。ですので私はそこには行けません」

エレナ「あなた…ルルとララって…」

リール「はい。ルルさんとララさんです」

エレナ「あなた…何故その名前を…」

リール「言いません」

エレナ「ま、まぁいいわ…今あの人たちの気配は無いわけだしどうせ脅しなんでしょ」

リール「…ほんとにそう思いますか」

エレナ「!」

 

リールは真っ直ぐエレナの目を見ていた。その時のリールの黒目は光属性魔法のように少し薄い黄色になっていた。

 

エレナ「あなた…その目…」

リール「オード君から色々と聞きました。あなたは私を必要としているそうですね。そして私を出さなかったらあの人たちを殺すと…そう言ってたそうですね」

エレナ「そうね。あなたがいれば何も問題はないのよ」

リール「…ふざけないでください。命はそんな軽いものではありませんよ」

エレナ「!!」

 

リールの周りに光属性魔法のオーラが漂っていた。

 

リール「あなたの目的はなんですか。私を深淵に連れて行くとしてその後はどうするつもりですか」

エレナ「そんなのあなたなら分かってるでしょ。私の本体に会ったのなら」

リール「…」

 

リールはエレナ本人とその分身と会った日のことを思い出す。

 

リール「…ドレインを使ってこの世界をどうするつもりですか」

エレナ「そんなの簡単よ。ドレインってね、闇属性魔法に反応するのよ。私は闇属性魔法だからそのドレインを使ってこの世界の人たちを吸収するのよ」

リール「吸収してその後はどうするつもりですか」

エレナ「簡単よ。禍異者(マガイモノ)になるのよ」

リール「…」

エレナ「禍異者(マガイモノ)は言わばドレインの王。私はこの世界のトップに立つために禍異者(マガイモノ)になるのよ」

リール「…そうですか。そのために私を利用すると…私が応じなければみなさんを殺すと…そういう事ですか」

エレナ「そうよ。当たり前じゃない」

リール「…何が当たり前ですか」

エレナ「?」

リール「何が当たり前ですか!!」

 

バゴォォォォォォン!

リールの周りを漂っていた光属性魔法のオーラが一瞬にして膨張した。

 

エレナ「!!」

リール「いい加減にしてください!人の命を何だと思ってるんですか!この世界の人たちはあなたのように不老不死ではないんです!命を軽んじる発言はやめてください!」

 

リールは大声で言った。

 

エレナ「これは…」

 

リールの周りに漂っている光属性魔法のオーラがリールの体から溢れていた。

 

リール「これ以上私の大事な人たちに何かしたら私が許しませんよ…」

 

リールは酷く怒っていた。

 

エレナ「…それで、私をどうするわけ」

リール「このまま帰らないのなら私があなたをやっつけます」

エレナ「…」

 

エレナは少し考えていた。

 

エレナ (本気でやれば勝てるでしょうね。でも相手は刻運命の粉を持ってる。しかも今のあの子の力は計り知れない…前にあった時と段違いに強くなってる…何故…)

リール「さぁ…どうしますか…」

エレナ「…分かったわ。一旦帰らせてもらうわ。でも、いつかあなたを利用させていただきます」

 

シュッ…

エレナはその場から立ち去った。

 

リール「…」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…

リールの体から溢れていたオーラが消えていった。

 

リール「…みなさんのところに戻りましょうか」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…

リールは箒に乗って地下に戻った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…現世と深淵の境界線

 

ラミエ先生「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

ルル「…」

ララ「…」

 

ラミエ先生は大怪我を負っていた。

 

ラミエ先生「こんなに…強いなんてね…」

 

ルル「違うよ。君が弱いだけ」

ララ「違うわ。あなたが弱いのよ」

 

ラミエ先生「っ…」

エレナ「ラミエ。あなたじゃ勝てませんよ」

ラミエ先生「うるさい。ここまで来て諦められるわけないでしょ…」

エレナ「でも相手は始祖です。私でも勝てませんよ」

 

ルル「ラミエ…今はそんな名前なんだ」

ララ「ラミエ…前とは違う名前なのね」

 

ルル「前の名前は確か…」

ララ「アラミス…だったわね」

 

ラミエ先生「…」

 

ルル「回復魔法のスペシャリスト」

ララ「風属性魔法を捨てた魔女」

 

ルル「僕たちには勝てないよ」

ララ「私たちには勝てないわ」

 

ラミエ先生「…」

 

ラミエ先生は万事休すの状態だった。

 

エレナ「ラミエ!」

ラミエ先生「…ならこうするしかないわね」

 

ルル「何をするの?」

ララ「何かするの?」

 

ラミエ先生「私はね…負けそうになったら他の手を使って勝つ道を選ぶのよ」

 

パチン!

ラミエ先生は指を鳴らした。

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ!

するとエレナの足元に魔法陣が展開された。

 

エレナ「まさか…ラミエ!!」

ラミエ先生「私の名前はアラミス。回復魔法に特化した魔女よ」

エレナ「ラミエ!!」

 

シュッ!

ラミエ先生はエレナをこの家から逃がした。

 

ルル「…健気だね」

ララ「いい判断ね」

 

ラミエ先生「はぁ…はぁ…当たり前でしょ…私は…アラミスなのよ」

 

ルル「そう。じゃあ満足して死んでね」

ララ「そう。じゃあ悔いのないよう死んでね」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…深淵

 

魔女さん「…」

 

瘴気に満ちた穢れた世界。そこに立つひとつの影。

 

魔女さん「…久しぶりですね。リノ」

リノ「…」

 

魔女さんは目の前の人間に話しかけた。その人は上半身は人間だが下半身は大きなドレインに侵食されていた。

 

魔女さん「…依代。自分の体を使ってドレインを封印する術。今は存在しない太古の呪術」

 

魔女さんはその人の顔を見た。その人の顔は僅かながら人の部分が見えるが、大部分がそのドレインに侵食されていた。

 

魔女さん「ねぇリノ。私の弟子にあなたと同じ光属性魔法の子がいます。あなたと同じように元気で言葉遣いも綺麗で他人を想いやる優しい子ですよ」

リノ「…」

魔女さん「本当にあなたにそっくりです。まるで前のあなたのようです」

リノ「…」

魔女さん「…ねぇリノ。この戦いが終わったら3人でお話しませんか?リノと私とリールの3人で。きっとあなたも気に入りますよ」

リノ「…」

魔女さん「…リノ。もう少しだけ待っていただけませんか?今私とリールがあなたのために動いています。もう少しだけ時間をください。もう少しであなたを侵食しているその禍異者(マガイモノ)を倒すことができます。…ですのでもう少しだけ」

リノ「…」

 

魔女さんはずっと話しているが、その人からの返事は一言も返ってこなかった。




〜物語メモ〜

今回は新しい情報がないので次回ですね。


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第55話 エレナとレナの衝突

ここでちょっとお知らせです。

投稿が遅くなると言いましたが、もしかすると毎週土日のどちらかに投稿できるかもしれません。
できたらいいのですが、できない場合もありますのでご了承ください。

お知らせは以上です。


私の名前はリール。

今スペルビア王国の地下にいます。

先程エレナさんに会ってきました。

私を利用して禍異者というものになるそうでした。

それがどんなものかはよく分かりませんが、私の大事なお友達を傷つけると思ったので強くお断りしました。

エレナさんは帰りましたがまた来る可能性があります。

そうなったら今度は私も戦うつもりでいます。

これ以上この国の人たちがドレインに食べられちゃうのは見たくありません。

…私を良くしてくれたクラスメイトの方々もドレインに殺されました。

もう二度と人を失わせません。

これ以上広がらないように頑張りたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…スペルビア王国 地下

 

リール「…」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…

リールが箒に乗って戻ってきた。

 

オード「リール!」

 

タッタッタッ!

みんなが走ってきた。

 

オード「大丈夫かリール!」

リール「はい。何もありませんよ」

アンナ「リール?」

リール「はい。何でしょうか」

アンナ「な…何かあったの?」

リール「…どういう事でしょうか」

アンナ「その…怖いよ…?リール」

リール「…」

オード「何かあったのか?」

リール「…エレナさんは帰りました。ですがまた来る可能性があります」

オード「!」

リール「もし来るようでしたら今度は戦うつもりでいます」

ノーラ「…そうか」

リール「みなさん。もう少しだけこの生活を続けられますか?」

 

アンナ「私は大丈夫だよ」

ディア「俺もだ」

スカーレット「私も大丈夫よ」

オード「俺もだ」

ノーラ「俺も大丈夫だ」

 

リール「…分かりました」

 

スタスタスタ

リールは歩き出した。

 

オード「どこ行くんだ?」

リール「…分かりません」

オード「分からないって…」

リール「分かりませんが、ここにいる人たちがドレインに殺されるのは見たくありません。ですので私はここを離れます」

アンナ「え!?」

ノーラ「待てリール。リールがここから離れても変わらないぞ」

リール「…何故でしょうか」

ノーラ「確かにエレナの目的はリールだがドレインの目的は人を吸収することだ。ドレインに対する有効な手段を持っているのはリールだけ。そのリールがこの場から離れたら余計に死者が増えるぞ」

リール「…」

ディア「リール。一旦休もう。これじゃあリールの体が持たねぇ」

リール「…大丈夫ですよ」

 

クルッ

リールは後ろを振り返ってみんなの顔を見た。

 

リール「私はこの世界の核を知っています。そこを攻撃すればこの世界を破壊することができることも知ってます」

 

アンナ「!」

オード「!」

スカーレット「!」

ディア「!」

ノーラ「!」

 

リールの目が薄い黄色になっていた。

 

アンナ「リール…その目…」

レナ「私の名前はリールではありません。私の名前はレナ。この世界に光をもたらす光属性魔法の選定者です」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…現世と深淵の狭間

 

ルル「ねぇララ」

ララ「分かってるわ」

 

ルル「…とうとう出てきたね」

ララ「えぇ。ようやく出てきたわ」

 

ルル「最後の光属性魔法の適性者」

ララ「最後の光属性魔法の適性者」

 

ラミエ先生「はぁ…はぁ…あなたたち…」

 

ルル「アラミス。君はもうここで退場した方がいい」

ララ「アラミス。あなたの出番はもう無いわよ」

 

ラミエ先生「まだあるわ…私が最後の…」

 

ルル「これ以上この世界を壊されるのは」

ララ「これ以上この世界を壊されるのは」

 

ルル「流石に我慢できないよ」

ララ「流石に見過ごせないわ」

 

ラミエ先生「…」

 

ルル「君はもうここで終わるべきだ」

ララ「あなたはもう休みなさい」

 

ラミエ先生「くっ…」

 

ルル「もう少しだよアラミス」

ララ「もう少しよアラミス」

 

ルル「もうすぐこの世界で選定が行われる」

ララ「必要不必要を分断する光の選定者」

 

ルル「名前をレナ」

ララ「名前をレナ」

 

ルル「彼女が今この世界に姿を現した」

ララ「あの人がこの世界に出現した」

 

ルル「これから行われるのは浄化」

ララ「これから行われるのは決別」

 

ルル「この世界で有害となる者」

ララ「この世界で無害となる者」

 

ルル「害ある者は浄化され」

ララ「害なき者は決別となる」

 

ルル「誰一人として助からない最後の審判」

ララ「バッドエンドな光の選定」

 

ルル「範囲はこの世界全域」

ララ「この狭間も対象となる」

 

ルル「僕たちも選定される」

ララ「私たちも選定される」

 

ルル「生きるは地獄」

ララ「死もまた地獄」

 

ルル「誰一人として助からない身勝手な選定」

ララ「誰一人として望む結末にはならない」

 

ルル「どのみち短い命」

ララ「私たちに捧げるのも悪くないわよ」

 

ラミエ先生「何で…あなたたちなんかに…」

 

ルル「死にたいのかな」

ララ「生きたいのかな」

 

ルル「君はどちらを選ぶ?」

ララ「生?それとも死?」

 

ラミエ先生「私は…」

 

ルル「どっち?」

ララ「どっち?」

 

ラミエ先生「私は…最後まであの人に仕えるのを選ぶわ」

 

ルル「そう。分かった」

ララ「あらそうなのね」

 

ルル「じゃあ死んでね」

ララ「じゃあまた会いましょ」

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴゴゴ!

ルルとララは魔力を溜めた。

 

ラミエ先生「!」

 

ルル「どのみちみんな死ぬんだよ」

ララ「選定者を止めない限り死から逃れられない」

 

ルル「僕たちは最後まで君を生かそうか考えてたけど」

ララ「もう無理ね」

 

バリバリバリバリ!

ルルとララの魔法がより大きくなった。

 

ルル「さようならアラミス」

ララ「さようならアラミス」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国が見える高台

 

エレナ「痛た…ラミエ…こんな所に飛ばして…」

 

エレナは立ち上がった。

 

エレナ「…え、何…これ…」

 

エレナは悲惨なスペルビア王国を見て驚いていた。

 

エレナ「一体何が…起こったんですか…」

 

エレナはただただ見ることしかできなかった。

 

エレナ「まさか…」

 

ビュン!

エレナはある場所に向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国 地下

 

アンナ「レナ…レナって…」

オード「誰だよお前…俺たちはお前を知らねぇ!一体誰なんだお前!!」

レナ「理解できませんでしたか?ではもう一度言います。私の名前はレナ。この世界で選定者として生を受けた最後の光属性魔法の適性者です」

ノーラ「さっきまでリールだったのに一瞬で気配が変わった…」

ディア「あぁ。しかも知らない気配だ」

スカーレット「リールをどこにやったの!教えなさい!」

レナ「言葉がなってませんよ。あなた」

スカーレット「!!」

レナ「私はただの選定者。必要不必要を分断する者です」

アンナ「分断って…」

レナ「必要な者はこの世界に残っていただきます。不必要な者はこのまま消えていただきます」

オード「はぁ!?」

レナ「選定者とは本来この世界に干渉しない存在なのです。ですがある条件下では干渉することができるのです」

ノーラ「一体どんな…」

レナ「…この世界にドレインが出現した時です」

 

スカーレット「!」

アンナ「!」

オード「!」

ノーラ「!」

ディア「!」

 

みんな驚いていた。

 

レナ「先日この世界にドレインの存在をキャッチしました。数も多かったために殺された人も多かったと思います。ですのでここで1度選定を行います。不必要な存在を抹消するために」

アンナ「でもそんなことしたら!」

レナ「何かいけないことでも?」

アンナ「!」

レナ「この世界からドレインが消えたら何か問題があるのですか?むしろ解決すると思うのですが」

アンナ「…」

レナ「…では、選定を行な…」

 

エレナ「待ちなさい!!」

 

バゴォォォォォォン!

突然レナが爆発した。

 

スカーレット「!」

アンナ「!」

オード「!」

ノーラ「!」

ディア「!」

 

5人は突然の出来事に頭が追いつかなかった。

 

エレナ「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

突然現れたのはエレナだった。

 

エレナ「あなた…一体どこから…」

オード「お前は!」

ノーラ「また殺しに来たのか!」

 

オードたちは殺気立った。

 

エレナ「違います!私はあなた方が出会ったエレナではありません!私はエレナ本体です!」

オード「な…本体…だと…」

エレナ「それよりも何故あの人がここにいるんですか!」

オード「な…なんだよあの人って…」

エレナ「…選定者レナ。この世界を分断するために生まれた者…」

ディア「分断…」

エレナ「あれはとても危険な者です。関わると落とされますよ」

アンナ「お…落とす…」

 

ガラガラ…

瓦礫の中からレナが出てきた。

 

レナ「…痛いですね。誰ですか」

エレナ「…あなたこそ。何故ここにいるんですか」

レナ「これはこれは。ドレインを解き放った人ですね?」

エレナ「…」

レナ「あなたのせいで天界は大騒ぎでしたよ。あの世界を収拾つけるためにある人間に人柱となっていただきましたから」

エレナ「!!」

レナ「あなたなら分かるはずです。今も深淵の奥深くに存在している依代。あなたが解き放たなければあんな事にはならなかった」

エレナ「…」

レナ「…あなたも不必要な者です。今すぐこの世界から消えてなくな…」

エレナ「ふざけないでください!!」

レナ「…」

エレナ「私の大事なリールさんになんて事してるんですかあなたは」

レナ「リール。そこの人たちもそう呼んでましたね。一体誰のことでしょうか」

エレナ「…私の友人の娘よ。大事な大事な人ですよ!!」

レナ「…そうですか。ですが私には関係ありませんので」

エレナ「!」

レナ「この体はいいですね。光属性魔法の適性者であって私の体に順応しています」

エレナ「あなた…」

レナ「どうしましたか?」

エレナ「…今すぐにあなたを倒します」

レナ「そうですか」

エレナ「あなたを倒してリールさんを取り戻します」

 

スッ…

エレナはレナに手を向けた。

 

エレナ (待っててくださいリールさん。今すぐ助けます)

レナ「…かかってきてください。返り討ちにしてあげますよ」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…現世と深淵の狭間

 

ルル「…ねぇララ」

ララ「何?ルル」

 

ルル「…僕たちも行こうか」

ララ「どこに?」

 

ルル「リールさんの気配が無くなってる」

ララ「…でも代わりにレナの気配がある」

 

ルル「そう。だから僕たちが止めに行かないと」

ララ「そうね。行きましょうか」

 

ヒュッ…

ルルとララはその場から姿を消した。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国 地下

 

レナ「…」

エレナ「…」

 

両者睨み合う。

 

オード「この2人…すげぇ気配だ…」

ノーラ「あぁ…俺たちじゃ歯が立たねぇ…」

 

レナ「…」

エレナ「…」

 

パキッ…

突然どこからか音がした。

 

レナ「っ!」

エレナ「っ!」

 

バゴォォォォォォン!

音が鳴ったと同時に2人が攻撃し始めた。

 

ババババババババババ!!

2人は高速で飛ぶ弾型の魔法を放った。

 

エレナ「はぁぁぁぁぁぁ!」

レナ「…」

 

エレナは必死で魔法を使っているが、レナの方は全く顔色が変わっていなかった。

 

アンナ「なに…これ…」

 

ビュォォォォォ!

2人の魔法がぶつかる際に周囲に衝撃波が広がる。

 

スカーレット「段違いだわ…私たちとは比べ物にならないくらい…」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!

2人の魔法は互角だった。

 

レナ「素晴らしいですね。こんなに魔力が高いなんて」

エレナ「あなた!今すぐその子から離れなさい!!」

 

バゴォォォォォォン!

エレナはレナを爆発させた。

 

ビュン!

そして瞬時にレナの目の前まで飛び込んだ。

 

エレナ「はぁっ!」

 

バゴォォォォォォン!

エレナは更に攻撃を重ねた。

 

ズサッ…

エレナは少し距離を取った。

 

エレナ「…」

 

エレナたちはさっきまでレナがいた場所を見ている。

 

レナ「…いいですね。すごい魔力です」

エレナ「!」

 

スタスタスタ

煙の中を悠々と歩いてきたレナ。傷は負っておらず、余裕そうな表情だった。

 

レナ「ですが、その程度では私には届きませんよ」

 

ゴウン…シュゥゥゥゥゥゥ!

レナは光を集めた。

 

レナ「ここで長期戦になると私の目的が達せられません。ここであなたを退場させます」

 

ゴウン…ゴウン…ゴウン…

レナの集めた光が更に大きくなる。

 

レナ「さようなら」

 

ビュン!

レナは集めた光をエレナたちに向けて放った。

 

エレナ (マズイ!!このままではあの子たちが!!)

 

バッ!!

エレナは身を呈してスカーレットたちを守ろうとした。

 

エレナ (…ごめんなさいリノ…あなたの大事な娘を守りきれませんでした)

 

バゴォォォォォォン!

エレナはまともにその魔法を受けてしまった。その爆発は今までで1番大きく、助かる見込みはなかった。

 

パラパラ…パラパラ…

周囲を吹き飛ばしたレナの魔法は凄まじい魔力を帯びていた。故にエレナの気配が全くしなかった。

 

アンナ「ね…ねぇスカーレット…」

スカーレット「何…」

アンナ「さっきの人の気配…全く感じられない…」

スカーレット「!!」

オード「俺もだ…全く感じられない…」

ノーラ「これ…次は俺たちなんじゃないか?」

ディア「…マジかよ…」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…

煙が晴れてきた。

 

レナ「…」

スカーレット「!!」

アンナ「!!」

オード「!!」

ノーラ「!!」

ディア「!!」

 

5人は驚いていた。

 

エレナ「っ…!!」

 

???「間一髪だったね」

???「ギリギリだったわ」

 

エレナの目の前には2つの影があった。

 

ルル「これで貸しひとつだよ」

ララ「恩を仇で返さないでね」

 

そこにいたのはルルとララだった。

 

エレナ「あ…あなた…」

 

ルル「久しぶりだね」

ララ「えぇ。そうね」

 

レナ「…あなたたちは」

 

ルル「君を最後に見たのは生まれた時だったね」

ララ「あなたを最後に見たのは赤ん坊の頃ね」

 

ルル「立派に成長して何よりだ」

ララ「お婆さんも喜んでるでしょうね」

 

レナ「何故…あなたたちが…」

 

ルル「もちろん君を助けるため」

ララ「もちろん約束を果たすため」

 

ルル「僕たちはリノとあなたを守る約束したから」

ララ「私たちはリノと強い約束を結んだから」

 

レナ「それで何故その人を助けるんですか」

 

ルル「…君はこの世界の人じゃないね」

ララ「あなたはこの世界の誰でもない」

 

レナ「!!」

 

ルル「隔絶されてる。そのポケットに入ってるもの」

ララ「隔絶されてる。あなたの持ち物の中にあるわ」

 

ルル「名前を刻運命の粉」

ララ「名前を刻運命の粉」

 

ルル「この世界の時間と時空、次元からの隔絶」

ララ「リノがあなたに持たせた大事な形見」

 

ルル「故に今の君はそんな姿じゃない」

ララ「だからあなたの本当の姿は他にある」

 

レナ「…」

 

ルル「散れ。次元と共に」

ララ「散れ。時間と共に」

 

バリィィィン!!

 

レナ「!!」

 

リールの体から光が解き放たれた。

 

ビュォォォォォ!

その光は瞬く間にリールの体から出ていき、リールも元の姿に戻った。

 

リール「…」

 

ドサッ…

リールはその場に倒れた。

 

アンナ「リール!!」

 

タッタッタッ!

アンナたちはリールに駆け寄る。

 

エレナ「あなたたち…どうして…」

 

ルル「さて、どうしてでしょう」

ララ「さて、どうしてかしらね」

 

ルル「君は知ってるかい?あの子の本名」

ララ「あなた知ってる?あの子の本当の名前」

 

エレナ「リールさんの…名前…」

 

ルル「そう。名前はレナ」

ララ「そう。名前はレナ」

 

エレナ「!?」

 

ルル「でもさっきのはあの子自身じゃない」

ララ「でもさっきのはあの子本人じゃない」

 

ルル「あの子を素として作られた単なるコピーだよ」

ララ「あの子を素として作られた単なるコピーよ」

 

ルル「本人はまた別にいる」

ララ「あの子の母親がそれを知っている」

 

エレナ「リノが…」

 

ルル「エレナ。君にお願いごとがある」

ララ「エレナ。あなたに頼み事がある」

 

エレナ「頼み…」

 

ルル「あの子を深淵に連れて行きなさい」

ララ「あの子を深淵に連れて行ってあげて」

 

エレナ「!!」

 

ルル「リールさんの母親はそこにいる」

ララ「リールさんの母親はそこにいる」

 

ルル「昔から変わらずそこにいる」

ララ「一切の変化なし」

 

ルル「昔のリノを知ってるあなたなら分かるはず」

ララ「昔から知ってるあなたなら分かるはずよ」

 

エレナ「どうして…あなたたちは一体何者…」

 

ルル「…この先の未来を見れば分かるよ」

ララ「…この先の未来を見れば分かるわ」

 

ルル「かつて禍異者を倒した2人の魔法使い」

ララ「その人は火と光を操る2人の魔法使い」

 

ルル「この先の未来で誕生する魔法使いだよ」

ララ「この先の未来で誕生する魔法使いです」

 

エレナ「未来…」

 

ルル「…僕たちはこれでさよならです」

ララ「…私たちはこれでさよならです」

 

エレナ「!!」

 

ルル「リールさんによろしく言っておいてください」

ララ「リールさんによろしく言っておいてください」

 

ルル「それではまた」

ララ「それではまた」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

ルルとララはその場から姿を消した。

 

エレナ「ルル…ララ…」

 

エレナはアンナたちを見た。アンナたちはリールを回復させていた。

 

エレナ「…」

 

エレナは考えた。さっきルルとララが深淵に連れて行くよう言ってきた。だが深淵の禍々しさをエレナは十分に理解していた。故にそこへ連れていくことに抵抗があった。

 

エレナ「…リールさん」

 

しかし今後こうなっては取り返しがつかなくなる。そう考えたエレナが出した答えは…。

 

エレナ「…リノ。あなたに会いに行きます」




〜物語メモ〜

レナ
リールの中にいた最後の光属性魔法の適性者。高い魔力を持っており、エレナですら敵わないレベル。今回ルルとララが割って入ってくれたお陰で事は収まった。



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第56話 エレナとリールの本名

私の名前はエレナ。

今スペルビア王国の地下にいます。

先程レナと呼ばれる人と対峙しました。

彼女はとても強く、私ではどうにもなりませんでした。

途中で割って入ってきたルルとララが止めなければ私は死んでいたでしょう。

…さて、私はルルとララに言われた通り、リールさんを深淵に連れて行こうと思います。

ですがあそこはとても危険です。

常に瘴気が漂っていますので普通の人間は少しいるだけで死に至ります。

ですがある人だけはその場に留まることができます。

それが光属性魔法の適性者です。

あそこは極度に濃い瘴気があるのでそれを祓うことができる光属性魔法しか存在できないのです。

…実際、今の深淵にはリノしかいません。

私は一度あの場所に行きましたがそれでも数分だけでした。

私ですらそこに存在することは許されないのです。

…そんな所にリールさんを連れていくのはとても危険です。

今のリールさんがリールさんじゃなくなるかもしれないのです。

ですがルルとララが連れて行くように言ってきたので仕方なく連れて行きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…スペルビア王国 地下

 

アンナ「あの…」

エレナ「何ですか?」

アンナ「リールのことでお話があります」

エレナ「…何でしょうか」

 

現在リールは意識が戻らず倒れている。傷は無いが体への負荷が大きく、回復が遅くなるとエレナは予想している。今はスカーレットたちがリールを見ており、アンナはその間にエレナから色々と聞こうとしていた。

 

アンナ「…リールの目の色が変わりました」

エレナ「…」

アンナ「リールの目は黒なんですが、先程は薄い黄色でした。…あれは一体何なんでしょうか」

エレナ「…そうですよね。あなたは知らなくて当然です」

アンナ「…」

 

エレナは1拍置いてから話し始めた。

 

エレナ「…リールさんの名前であるリールは実は本当の名前ではないんですよ」

アンナ「…え?」

エレナ「あの子の本当の名前はレナ。リノの娘で少し前までリーナが代わりに育てていたんです」

アンナ「え…え?」

エレナ「リノはあの子の母親です。今深淵という場所にいます」

アンナ「!」

エレナ「そしてリーナはリールさんのお師匠様なんです」

アンナ「あ、リールが言ってる魔女さんという人ですか?」

エレナ「そうです。あなた方の言う魔女さんがリーナという名前なのです」

アンナ「へぇ…リールのお師匠様にも名前があったんですね…」

エレナ「はい。今まで名前を明かさなかったのは当時の事件を伏せておくためなのです。あの時の事件はとても大きなものでしたから」

アンナ「そ…そうなんですね…」

エレナ「はい。で、あの子の目が薄い黄色になっていたのはまさに本当のあの子が顔を出したからなのです」

アンナ「本当の…リール?」

エレナ「はい」

アンナ「ということは今のリールは偽物…なんですか?」

エレナ「あ、今のリールさんは本物ですよ。ですがあのリールさんはリーナが育てたリールさんであってリノが育てたリールさんとはまた別の人なのです」

アンナ「???」

 

アンナはちょっと混乱した。

 

エレナ「つまりですね、リールさんの目が薄い黄色になっていたのはリノが育てたリールさんが顔を出したって感じです」

アンナ「そのリノさんが育てたリールは偽物ですか?」

エレナ「いえ、本物です」

アンナ「???」

エレナ「分かりやすく言えばあの子は表と裏の2つの顔があるという事なのです」

アンナ「あ、そういうことでしたか」

エレナ「はい。あの子の目が薄い黄色になっている時はあなた方が知っているリールさんとは別の人です。魔力も桁違いです。私と渡り合えるくらいですから」

アンナ「すごい…リール…」

エレナ「…リールさんが起きたら私はリールさんを深淵に連れて行きます」

アンナ「!!」

エレナ「でないとこの事件は解決しないそうですので」

アンナ「わ、私たちも!」

エレナ「あ、あなた方はお留守番です」

アンナ「え…どうしてですか!」

エレナ「あそこは普通の人間が行けば死にます。あなた方では瘴気に呑まれて生きては帰れませんよ」

アンナ「!!」

エレナ「…私でも死にます。ですがリールさんならその場に留まることができます」

アンナ「!」

エレナ「…あの子ならこの事件を解決することができます」

アンナ「あの…事件とは…」

エレナ「…今この世界はドレインの影響を受けています。まだその影響は小さいですが、それでも死人が出ました。…これからドレインはもっと多くなります。そうなるとこの世界から人が消えてもおかしくありません」

アンナ「!!」

エレナ「それを解決するためにリールさんが必要なのです」

アンナ「…」

エレナ「…みなさんも覚悟しておいてください。この先の未来で起こるドレインとの戦争…あなた方もただじゃ済みませんよ」

アンナ「…」

 

アンナは少し怖くなった。

 

エレナ「…リールさんが目覚めるまで事は進まないので大丈夫ですよ」

 

スタスタスタ

エレナはその場をあとにした。

 

アンナ「…リール…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国 地上

 

エレナ「…」

 

スタスタスタ

エレナは周辺を歩いていた。

 

エレナ (…刻運命の粉がある限りあの子にこの運命を背負ってもらうしかないです。辛いでしょうが仕方のないことです)

 

スタスタスタ

エレナは歩を進める。

 

エレナ (…私が禁忌に触れようなんて言い出さなかったらこんなことにはなりませんでした。全て私の責任です)

 

ザッ…

エレナは足を止めた。

 

エレナ (…リノ、リーナ。…今こそこの呪いから解き放たれる時です。私たちでリールさんを…)

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…深淵

 

魔女さん「…」

 

魔女さんは目の前の物体を見ていた。

 

リノ「…」

魔女さん「ねぇリノ。私たち…いつ死ねるのでしょうか。あの時…禁忌に触れたあの日。私たちは特殊な能力を得る代わりに死ねない呪いにかかってしまいました。死ねばこの呪いは解かれますが死ぬことが許されません。…なんと矛盾なことでしょう。これでは私たちは一生この罪を背負うしかありませんよ」

リノ「…」

 

だがその人は返事を返さなかった。

 

魔女さん「…またあなたの声が聞きたいです。リノ」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国 地下

 

しばらく時間が経ってリールが起きてきた。

 

リール「…」

アンナ「リール!」

 

タッタッタッ!

アンナがそれに気づいて走ってきた。

 

リール「…アンナ」

アンナ「大丈夫!?リール!」

リール「はい…大丈夫です…」

オード「リール!!」

 

タッタッタッ!

オードも気づいて走ってきた。

 

オード「リール大丈夫か!?」

リール「…はい…大丈夫ですよ」

オード「そうか…良かった…」

リール「あの…私は…」

オード「さっきエレナと戦ってたんだ。覚えてないか?」

リール「え…すみません…アンナたちと話しているところまでしか…」

アンナ (目の色が変わった時から…)

オード「そうか…でも良かった」

リール「…アンナ」

アンナ「何?」

リール「…お水ください」

アンナ「水?」

リール「はい…」

アンナ「待ってね」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

アンナは水属性魔法で水を生成しコップに入れた。

 

アンナ「はい。どうぞ」

リール「ありがとうございます」

 

ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…

リールはゆっくりとその水を飲んだ。

 

リール「…ふぅ」

 

リールは一息ついた。

 

リール「アンナ…」

アンナ「何?」

リール「…もう少し…休んでもいいですか…」

アンナ「いいよいいよ。しっかり体を休めてね」

リール「…すみません…何故か体が重くって…」

オード「さっきすげぇ魔法使ってたからか」

アンナ「そっか…リールにとっては大きな負担だったんだね…」

リール「すみませんアンナ…」

 

パタッ…

リールはアンナに寄りかかった。

 

アンナ「…おやすみなさい。リール」

 

リールはもう少しだけ休んだ。

 

オード (…いいなぁ)

 

そんなことを思うオードだった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…深淵の入り口

 

エレナ「…みんな集まるなんて何年ぶりかしら?」

 

エレナ「…」

エレナ「…」

 

現在深淵の入り口に3人のエレナが集まっていた。

 

エレナ「あなたですか。深淵の柱を壊しているのは」

エレナ「当たり前じゃない」

エレナ「今すぐやめて。ドレインが出てくるから」

エレナ「…嫌ね」

エレナ「…何故ですか」

エレナ「…私の目的は禍異者になること。この目的が達成されるまで壊し続けるわ」

エレナ「はっ…いい迷惑だわ」

エレナ「私がこの目的を持っているってことは少なからず本体であるあなたがそう思ってたってことでしょ?」

エレナ「…」

エレナ「なんで今になって止めようとするわけ?」

エレナ「…この世界にドレインは必要ありません。この世界はあの子たち人間のものです」

エレナ「で?だから何?それでドレインをあそこに封印し続けるってわけ?冗談じゃないわ」

エレナ「…」

エレナ「というか破壊しないとリノだって戻ってこないわ」

エレナ「!」

エレナ「あそこに封印されてるリノにまとわりついてるのが現ドレインの王。つまり禍異者ね。それを私が吸収してあげるって言ってるのよ。分かる?」

エレナ「…それでどうするつもりですか」

エレナ「それでお終いよ。私が禍異者になるの」

エレナ「…それだけで終わるとは到底思えないのですが?」

エレナ「そう?」

エレナ「てか待って。ドレインは闇属性魔法に反応するけどあなたに反応するとは限らないわ」

エレナ「さぁね。それはやってみなくちゃ分からないわ」

エレナ「…」

エレナ「とにかくこれ以上壊すのはやめてください。この世界に影響します」

エレナ「だったらリールを連れて来ることね」

エレナ「!」

エレナ「私が柱を壊しているのは深淵の扉を開ける鍵がないからよ。その鍵さえあれば壊さないで済むわ」

エレナ「あなた…」

エレナ「…リールさんはまだ眠っています。起きたら深淵に行くようあの子の友達に言ってありますので」

エレナ「そう。なら早くする事ね。私の気は短いから」

エレナ「…分かりました」

 

スタスタスタ

エレナはその場をあとにした。

 

エレナ「さて、私の目的まであと少し。これが達成されれば…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…深淵の入り口から少し離れたところ

 

エレナ「良かったの?野放しにして」

エレナ「構いません。どのみち殺られるのはあの人です」

エレナ「自分の分身なのに?」

エレナ「…」

エレナ「…寂しくならない?」

エレナ「…ならないと言えば嘘になります」

エレナ「!」

エレナ「ですがもうどうにもなりません。それにこの事件の大元の原因は私の発言にあります。私が動かないと…」

エレナ「…」

 

ポンッ…なでなで…

エレナ(分身)がエレナ(本体)の頭を撫でた。

 

エレナ「!」

エレナ「…無理しないでね」

エレナ「!」

エレナ「何かあったら私を頼って。私はドレインに詳しいから何か力になれると思うわ」

エレナ「…分かりました。では何かあったらお力添えを」

エレナ「えぇ。任せて」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

エレナは魔法陣を展開した。

 

エレナ「では帰りましょう」

エレナ「えぇ。そうね」

 

2人のエレナは魔法陣の上に立って瞬時にその場から離れた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国 地上

 

シュッ…シュッ…

2人のエレナは深淵の入り口から戻ってきた。

 

エレナ「ではまた」

エレナ「えぇ。ちゃんと休みなさいよ。あなたも」

エレナ「…はい」

 

スタスタスタ

2人のエレナはそれぞれの場所に向かった。

 

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場所…スペルビア王国 地下

 

スタスタスタ

エレナが戻ってきた。

 

アンナ「あ、エレナさん…」

エレナ「リールはまだ起きませんか?」

アンナ「いえ、一度起きました。でも少しお水を飲んでまた寝ちゃいました。先程のエレナさんとの戦いが効いたのかと…」

エレナ「そうですか」

 

スタスタスタ…スッ…

エレナは腰を下ろした。

 

エレナ「…」

アンナ「…エレナさん」

エレナ「はい。何でしょうか」

アンナ「…リールをどうするつもりですか」

エレナ「!」

アンナ「私としてはリールを無理させたくありません。休ませてあげたいです」

エレナ「…そうね。私もそうさせてあげたいけどそうなるとここの人たちが死んじゃう可能性があるわ」

アンナ「…」

エレナ「でも私としてはそれを理由にリールさんを酷使したくありません」

アンナ「!」

エレナ「できることなら私が解決したいです。ですがやはり事はそう上手くいきません。リールさんの力がないとどうにもできません」

アンナ「…リール…」

 

アンナはリールの頭を撫でた。

 

エレナ「…」

スカーレット「アンナ」

アンナ「あ、スカーレット」

スカーレット「あなたはもう休みなさい。今度は私が見るわ」

アンナ「ありがとうスカーレット。でももう少しだけ私が見てもいい?」

スカーレット「ま、まぁアンナがいいならあとで私を呼んでね」

アンナ「うん。ありがとう」

 

スタスタスタ

スカーレットはその場をあとにした。

 

エレナ「…」

アンナ「エレナさん」

エレナ「何でしょうか」

アンナ「リールを…よろしくお願いします」

エレナ「!!」

 

エレナがアンナの方を見るとアンナは真剣な顔をしてエレナを見ていた。

 

アンナ「リールは私たちのために色々と手を尽くしてくれました。私たちはそろそろリールから卒業して一人でできるようにならなければなりません。私たちがいつまで経ってもリールを頼っているとリールは心配します。…ですのでどうかリールをお願いします」

エレナ「…」

 

エレナは遮ることなく全て聞いた。

 

エレナ「…いいんですか。それで」

アンナ「…はい」

エレナ「…分かりました。ではリールさんが起き次第出発します」

アンナ「…お願いします」

 

そうしてエレナたちは各々睡眠を取って朝を迎えた。




〜物語メモ〜

リールの本名
リールの本名はレナ。深淵に幽閉されているリノを母親に持ち、魔力の高さは母親譲り。エレナと渡り合えるくらいだが、本人がその魔力に耐えられるほどの強さではないため、体に大きな負担がかかる。


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第57話 エレナと深淵へ向かう2人

私の名前はエレナです。

今スペルビア王国の地下にいます。

先程リールさんのお友達からリールさんをお願いするよう頼まれました。

私としては好都合な頼み事でしたが、何故か胸の内で引っかかります。

私は迷っているのでしょうか。

私はどうするべきなのでしょうか。

今までこういったことは経験したことがないのでどうすればいいか分かりません。

リノもリーナも別の場所にいるので連絡取れませんし、私の分身も個々の意志を持って動いているので私の考えを送ることができません。

そんな私はリールさんを深淵に連れていくことしかできません。

何が起こるかは分かりませんが、ドレインの被害が少ない今しかチャンスはありません。

これ以上時間を延ばすと本当にみなさんの命が無くなります。

下手をすればこの世界の人々全員がドレインに喰われるでしょう。

…それだけは絶対にダメです。

人を守ると約束した以上それを阻止するのが私の役目。

この先何があってもこの作戦を最優先に動こうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…スペルビア王国 地下

 

翌日

 

リール「んっ…」

 

リールは目を開けてゆっくり体を起こした。

 

リール「あれ…私…」

エレナ「起きましたか。リールさん」

リール「?」

 

リールが声のした方を見るとそこにはエレナが座っていた。

 

エレナ「気分はどうですか?体は大丈夫ですか?」

リール「…エレナさん」

エレナ「…あなたのご友人からあなたをお願いしますと言われました」

リール「!」

エレナ「ですのでこの先私はあなたを最優先に考えて行動します」

リール「えっと…それは…」

エレナ「…リールさん」

リール「は、はい…」

エレナ「…あなたのご友人にはあなたが起き次第出発しますと伝えてあります」

リール「!!」

エレナ「あなたが起きた以上私たちは深淵に向かわなければなりません」

リール「え…」

エレナ「…すぐ出発します。身支度を」

リール「ちょ、ちょっと待ってください」

エレナ「…何でしょうか」

リール「えっと…ここを出たら私はどうなるのでしょうか」

エレナ「…深淵に向かいます」

リール「えっと…その深淵に向かってどうするのでしょうか」

エレナ「…その先のことは分かりません。いくら私でも未来を見る力は持ち合わせていませんので」

リール「えっと…そう…ですか」

エレナ「…身支度をお願いします。終わり次第外に出てきてください。待っていますので」

リール「……はい」

 

スタスタスタ

エレナはその場をあとにした。

 

リール「…」

 

リールはアンナたちを見た。

 

リール (アンナ…スカーレット…オード君…ディア君…ノーラ君…)

 

スッ…なでなで…

リールはアンナの頭を撫でた。

 

アンナ「んっ…ん…」

 

アンナは少しだけ反応を見せた。

 

リール「…このまま何も言わずに別れるなんて嫌です。せめて何か残せるものがあれば…」

 

リールは周囲を見渡した。

 

リール「…あれにしましょう」

 

スッ…カリカリカリ…

リールは白い紙を見つけるとそこに文字を綴った。

 

リール「…よしっ。これで」

 

スッ…

リールはその手紙を机に置いて立ち上がった。

 

リール「…さようなら。アンナ、スカーレット、ディア君、ノーラ君」

 

リールはアンナたちの方を見て言った。そして最後にリールはオードの方を見た。

 

リール「…さようなら。オード君」

 

スタスタスタ

リールは身支度を済ませて外へ出た。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国 地上

 

スタスタスタ

身支度を済ませたリールが外に出てきた。

 

エレナ「…準備はいいですか?リールさん」

リール「…はい」

エレナ「…では行きましょうか。深淵に」

リール「…はい」

 

スタスタスタ

リールは地面に展開されている魔法陣の上に立った。

 

エレナ「…ではいきますよ」

リール「…はい」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

魔法陣が光を発し、その光でエレナとリールを包み込んだ。

 

エレナ「…」

リール「…」

 

シュッ…シュッ…

そして2人を深淵の入口まで送り届けた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…深淵 入口付近

 

エレナ「…あら、ようやく来たのかしら」

 

シュッ!シュッ!

突然地面に魔法陣が展開され、エレナとリールが姿を現した。

 

エレナ「…」

リール「あ、エレナさん」

エレナ「久しぶりねリール。学校で会ったきりかしら?」

リール「あ、はい。そうですね」

 

エレナ(分身)はエレナ(本体)に視線を向けた。

 

エレナ「…ちゃんと連れてきたようね?」

エレナ「…はい」

リール「?」

エレナ「さぁリール。ここからは私がついて行くわ」

リール「え、どういう事でしょうか」

エレナ「リール…ここからは私の分身である彼女が深淵まで案内してくれるそうです」

リール「え?」

エレナ「私の役目はここまでです。リールさん。ご武運を」

リール「え、ちょっと待ってくださいエレナさん!私は…」

エレナ「…すみません」

リール「!」

 

リールはエレナの真剣な顔を見て言葉を止めた。

 

リール「…」

エレナ「…準備はいい?」

エレナ「…約束して」

エレナ「…何?」

エレナ「…リールさんを絶対に守ってください。何があってもリールさんだけは」

エレナ「!」

 

エレナ(分身)はエレナ(本体)の目から涙が出ていることに気づいた。

 

エレナ「…」

エレナ「…お願いです」

エレナ「…分かったわよ。任せなさい」

エレナ「…お願いしますね」

エレナ「えぇ」

リール「あの…エレナさん…」

エレナ「はい。何でしょうか」

リール「エレナさんは来ないのでしょうか」

エレナ「はい。私が行っても5分しか体が持ちませんので」

リール「え、5分?」

エレナ「はい。深淵はここから入って1番深い場所にあるのです。距離も相当ありますので5分じゃたどり着けませんよ」

リール「えっと…距離はどれくらいでしょうか」

エレナ「正確な距離は分かりません。ですが、歩いて2、3日くらいですね」

リール「え!?2、3日!?」

エレナ「はい」

リール「え、2、3日もご飯が食べられないということでしょうか」

エレナ「あ、それは彼女が持ってるから大丈夫ですよ」

リール「2、3日ということは私はこの場所で寝ることになるのでしょうか」

エレナ「はい。ですがそれも問題ありませんよ。全て彼女がしてくれますので」

リール「え、あ、そうなんですね」

エレナ「はい。ですのでそこは心配ありませんよ」

リール「そ、そうですか…」

エレナ「…もういいかしら?」

エレナ「はい。もう大丈夫ですよ」

エレナ「そう。じゃあついてきて」

 

スタスタスタ

エレナ(分身)は深淵の入口の目の前まで歩いた。

 

リール「…エレナさん」

エレナ「…リールさん」

リール「は、はい」

エレナ「…お気をつけて」

リール「…はい」

 

スタスタスタ

リールも深淵の入口の目の前まで歩いた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…深淵 入口

 

エレナ「…」

 

スタスタスタ

リールも入口に着いた。

 

リール「お待たせしました」

エレナ「…ここからは全くの別世界。今までの常識が全く通用しないわ。中にはドレインもいる。必要なら戦闘もあるわ。あの子から守るよう言われてるけど私は1人しかいないからもしかしたら守りきれないかもしれない。そうなったら自分で自分の身を守ってもらうことになるけどいい?」

リール「…はい」

エレナ「…じゃあ、行くわよ」

リール「…はい」

 

スタスタスタ

エレナが深淵に入っていった。

 

リール (…アンナ、スカーレット、オード君、ディア君、ノーラ君…行ってきます)

 

スタスタスタ

リールもエレナの後を追って深淵に入った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国 地下

 

アンナ「スカーレット!スカーレット!!起きて!!」

 

ユサユサ!ユサユサ!

アンナは少し強めにスカーレットの体を揺すった。

 

スカーレット「な、何…アンナ…」

アンナ「これ!リールの手紙!!」

スカーレット「!」

 

スカーレットはアンナから手紙を受け取った。

 

スカーレット「アンナ、スカーレット、オード君、ディア君、ノーラ君へ…」

アンナ「これ…リールの字だよね…」

スカーレット「…見てみましょう」

 

カサカサ…パサッ…

スカーレットは手紙を開いた。

 

ーアンナ スカーレット オード君 ディア君 ノーラ君へー

突然ですが、みなさんがこの手紙を見つけて読んでいる頃には私はここにはいません。アンナは聞いていると思いますが、エレナさんから私が起きたら深淵に出発するということですので、私は深淵に行きます。深淵はすごく怖いところだそうです。エレナさんですら少ししか深淵にいられないそうです。そういう所に私は行きます。少し怖いですが、みなさんがこの先幸せに暮らせると考えたらへっちゃらです。みなさんはお留守番をお願いします。深淵は本当に怖いところです。みなさんが倒れたら私は悲しくなります。元気なみなさんを見たいのでどうか深淵には来ないでください。私の後を追わないでください。…少し辛い言い方ですが、こうでもしないとみなさんは私についてくると思います。私は必ず帰ってきます。この事件を解決してみなさんとこの先一緒に生きていきます。私一人では死にません。必ず帰ってきます。…ですのでみなさんは私が帰ってくるのを待っていてください。

最後に、私はみなさんのことが大好きですよ。

ーリールよりー

 

パサッ…

スカーレットは手紙を読み終えた。

 

アンナ「…リール…」

スカーレット「…何よ…この手紙…」

アンナ「スカーレット?」

スカーレット「何よこの手紙!!」

 

スカーレットは大声で言った。

 

ノーラ「どうした委員長」

ディア「何かあったのか?」

アンナ「ディア君…ノーラ君…」

ノーラ「ん?何だそれは」

 

ノーラは手紙の存在に気づいた。

 

ノーラ「…見てもいいか?」

アンナ「あ、うん…」

ノーラ「…」

 

ノーラとディアは手紙を読み始めた。ノーラとディアは手紙を読み進めていくにつれて顔が険しくなっていった。

 

ノーラ「え…リール…」

ディア「どういう事だ…リールが…」

ノーラ「いや、確かに起きてから1度もリールを見てなかった」

ディア「まさか…そんな…」

 

やがてノーラとディアは手紙を読み終えた。

 

ノーラ「…そうか、委員長がこうなってるのは手紙を読んだからか」

ディア「…」

スカーレット「何でよ…何でよリール…今までずっと一緒だったのに…何でよ…」

アンナ「…」

オード「なんだ。みんなして集まって」

ノーラ「オード…」

オード「ん?なんだそれは」

ノーラ「これは…その…」

オード「ん?」

ディア「オード。これはリールからの手紙だ」

オード「リールからの?」

ディア「あぁ」

オード「俺の分は?」

ディア「これひとつでみんなの分だ」

オード「ふーん。読ませてくれ」

ノーラ「…あぁ」

 

カサッ…

オードはリールの手紙を読んだ。

 

オード「…え」

 

オードはその手紙を読んでノーラとディアと同じように顔が険しくなった。

 

オード「え、おい…これはどういうことだよ…リールが…深淵って…」

ノーラ「…行ったみたいだ。俺たちが寝ている間にな」

ディア「多分誰も見てないだろうな。この反応じゃ」

オード「え、いや、え?リールが1人で行ったのか?深淵ってところに…」

ディア「…そうらしいな」

オード「え、でも…」

 

オードは再度手紙を読んだ。

 

オード「アンナ…お前この事知ってたのか?」

アンナ「…」

オード「なぁアンナ…答えてくれ…知ってたのか?」

アンナ「…知ってたよ」

オード「!」

アンナ「エレナさんは私たちが何を言おうともリールさんを連れていくつもりだったよ。だから私は言ったの。リールをお願いしますって」

オード「!!」

アンナ「私たちはリールを頼りすぎた。これからはリールなしでもやっていかなくちゃならなくなる。…だからお願いしたの」

オード「は…は?え、じゃあ何だ…お前はリールを手放したのか?」

アンナ「違うよ!リールから卒業しないと私たちは一生成長しないの!だからリールをお願いしたの!」

オード「は?いやだから…俺たちの成長のためにリールを1人で深淵に行かせたのか?」

アンナ「…」

オード「え、何でだよ…アンナ。お前は深淵がどんな所か知ってるだろ…それなのに…お前は俺たちの成長のためにリールを行かせたのか?そうなのか?」

アンナ「…」

 

アンナは何も言わなかった。

 

オード「…何とか言えよアンナ…俺たちに内緒で話を進めてたのか?なぁ?」

アンナ「でも…こうでもしないと私たちは死んじゃうんだよ…死んじゃったら何も…」

オード「ふざけんな!!」

 

オードが大声で怒った。

 

オード「何が俺たちの成長のためだ!!俺たちの成長のために友達を失うつもりか!!」

アンナ「!!」

オード「何でそこでリールと一緒に成長する選択肢が出てこねぇんだよ!!今までリールが俺たちにしてきたことはとても大きなことだろ!!俺たちはリールのお陰でここまで強くなった!!知らない魔法も教わった!!リールの事も知れた!!なのに!それなのにただの成長のために今まで助けてくれた人を捨てるのか!!なぁ!アンナ!!」

アンナ「違うよ!!リールは私たちと離れるのが心配だったんだよ!!だからリールがいなくても私たちはちゃんとやっていけるよって伝えたかったの!!何もリールを犠牲に強くなりたいなんて思ってなかった!!」

オード「だが結果的にリールは深淵に向かっただろ!!そこでリールが死んだらどうする!!責任取れるのか!!」

アンナ「それは…」

オード「そもそも何で俺たちに話さなかった!!俺たちに話してたら違う結果になってたんじゃねぇのか!!」

アンナ「…」

オード「もっと俺たちを頼れよ!!俺たちは友達だろ!!今までリールと一緒に勉強してきた仲だろ!!」

アンナ「…でも」

オード「でもじゃねぇ!!1人で決めて最悪な結果になったらどうするんだ!!責任はお前だけになるんだぞ!!だったら最初から俺たちにも話して責任を五等分したらいいだろ!!俺たちは今までそうやってきただろ!!1度でも俺たちの誰かが1人を見捨てたことがあったか!?」

アンナ「!!」

オード「ねぇだろ!!今までずっとそうしてきた!!なのに何でこんな大事な選択をお前一人で決めてんだ!!俺たちにも話を聞かせろよ!!友達だろうが!!」

アンナ「…」

 

オードの言葉がアンナの胸を刺す。

 

オード「…俺たちはそんな頼りないか?なぁ?アンナ」

アンナ「ち、違うよ…でも…」

オード「頼りなくないなら何故俺たちを頼らなかった。リールがそうしろとでも言ったのか?」

アンナ「…言ってない」

オード「…そうだろうな。リールならみんなで決めようって言ってくれると思う。リールはみんなが大好きだからな」

アンナ「!!」

オード「…俺は見捨てないからな。今まで俺たちのそばにいてくれたリールを俺は助けたい。力になりたい。できるなら一生そばにいたい。これから先何があっても俺はリールと共に生きたい」

アンナ「オード君…」

ノーラ「オード…」

オード「…」

エレナ「流石リールさんのお友達ですね」

 

オード「!!」

ディア「!!」

ノーラ「!!」

アンナ「!!」

スカーレット「!!」

 

そこにいたのはエレナだった。

 

エレナ「あの子のためにここまで言ってくれるなんてリールさんは幸せ者ですね」

オード「あんた…リールは…」

エレナ「…向かいましたよ。深淵に」

ノーラ「1人でか?」

エレナ「いえ、私の分身と向かってます。彼女なら深淵の瘴気に耐えられますので」

オード「なぁあんた」

エレナ「はい」

オード「…俺もその深淵ってところに連れてってくれ」

ノーラ「オード…」

オード「お願いだ。リールは俺たちのために色々と尽くしてくれた。俺は感謝しきれないくらいにリールから色々ともらった。…だからリールの手助けがしたい。お願いだ。俺を深淵に連れてってくれ」

エレナ「…」

 

オードは深々と頭を下げた。

 

エレナ「…残念ですが、そのお願いは叶えられません」

オード「…何でだよ…なぁ…何でだよ!!」

エレナ「…先程も言いましたが深淵には瘴気が漂っています。普通の人間が行けばたちまちその瘴気に侵されるでしょう。私ですらあそこへは長くいられません。もって5分です」

オード「な…」

エレナ「なので仮にあなたを連れていったとして、私がどうこうできるわけではないので意味ないですよ」

オード「それでも俺は!!」

エレナ「分かってます。あなたの気持ちはよく分かります。私だって助けられるものなら助けてあげたいです。ですが私ではどうにもできないんです。できるとすればリールさん自身。あの子しかこの現実を変えられません。私たちはただそれを見守るだけです」

オード「…っ」

 

オードは拳を握った。

 

オード「クソッ!!」

 

ドンッ!

オードは机を叩いた。

 

エレナ「…みなさん。少しお話してもいいですか?」

ノーラ「お話?」

エレナ「はい。私たちはリールさんについて行くことができません。たどり着く頃には死んでいますので。ですが、ついていけなくてもリールさんの手助けはできます」

オード「な、何だ!教えろ!!今すぐに!!」

エレナ「…あなた方の魔力を底上げします」

ノーラ「俺たちの魔力を…」

ディア「底上げ?」

エレナ「はい」

ノーラ「そうして一体何が…」

エレナ「…深淵は魔力の保有量が少ないほど瘴気に侵されやすいのです。なのでみなさんの魔力を底上げして少しの時間だけでも深淵に滞在できればあなた方はリールさんのお手伝いをすることができます」

オード「何!?」

エレナ「みなさん。リールさんのお手伝いをしたいなら私のお話に乗ってくれませんか?乗ってくれるのでしたら私は全力であなた方をサポートします」

 

エレナが一通り話終えると真っ先に返答した者がいた。

 

オード「教えてくれ!!俺はリールを助けたい!!だから教えてくれ!!」

 

そう。オードだった。

 

ノーラ「俺もだ」

ディア「俺も助けたい」

アンナ「私も…」

スカーレット「私だって…」

 

他の4人もオードの意見に賛成だった。

 

エレナ「…分かりました。ではこれから深淵に入るための準備をします。リールさんが深淵に着くのは2、3日後。それまでにみなさんの魔力を底上げします」

オード「おう!!」

 

こうしてエレナたちは深淵に入るために魔力の底上げを図るのだった。




〜物語メモ〜

これにて
「私、魔女さんに拾われました。ードレイン侵攻編ー」
が終了しました。

次回から
「私、魔女さんに拾われました。ー深淵編ー」
になります。

もう少しお話は続きますのでぜひ最後まで読んでいただければと思います。
物語の投稿ペースは遅いですが、それでも良い方は次回以降も引き続き読んで頂けたらと思います。
それではまた次回まで。


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第1章 4節 深淵編
第58話 レナと深淵 第一層 碧天の間


私の名前はリール。

今深淵に向かっています。

先程エレナさんと別れを告げてこの世界に入りました。

ここは見渡す限り何もありません。

あるとすれば建物や階段、あとは地面くらいですね。

まぁ地面は当たり前ですが。

中は比較的明るいので足場を見るには困りませんが、とても不思議です。

何が不思議なのかと言うと、この世界には建物や今歩いている階段など、まるでそこに人が住んでたかのような跡があります。

ここにはドレインと呼ばれる生き物がいるそうですが、そのドレインたちは私たちが会った中ではそのような知性があるようには感じませんでした。

まるで人を見たら何も考えずに襲い掛かるくらいかと…。

でもこういう建物や階段があるとドレインと言うよりも人間が住んでいたんじゃないかと思います。

…とにかく、ここは何だか異様な雰囲気が漂っています。

すごく気分が悪くなりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…深淵に続く道

 

スタスタスタ

エレナとリールは深淵に向かうために階段を降りていた。

 

リール (…すごく異質な雰囲気ですね…寒気がします)

エレナ「…」

 

エレナとリールは何も言わずに淡々と階段を降りていく。

 

リール (これ…この壁って…石…もしくは岩でしょうか)

 

リールは階段の先にある建物を見つけた。

 

リール (あれは…家?何故このようなところに家が…)

 

スタスタスタ

2人は階段を降りきった。

 

スタスタスタ…ザッ…

エレナが足を止めた。

 

リール「!」

 

リールは急に足を止めたエレナに驚いた。

 

リール「エレナさん?」

エレナ「…リール」

リール「はい」

エレナ「…杖は持ってる?」

リール「は、はい。持ってます」

エレナ「…構えて」

リール「え」

エレナ「…ドレインが来る」

 

ドォン!

 

リール「!!」

 

大きな音と共に階段の先にあった家からドレインが3体出てきた。

 

ドレイン「カカカカカカカカ!」

ドレイン「ホォォォォォォォ!」

ドレイン「オォォォォォォォ!」

 

リール「わっ!」

エレナ「ほら来たわよ!」

 

リールは杖を構えた。

 

ドレイン「オォォォォォォォ!」

エレナ「はぁぁぁぁっ!!」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!

エレナはドレインに攻撃し始めた。

 

ドレイン「カカカカカカカカ!」

リール「ラ、光玉(ライダラ)!!」

 

ビュン!ビュン!ドォン!ドォン!

リールもドレインたちに攻撃し始めた。

 

ドレイン「カカカカカカカカ…」

ドレイン「ホォォォォォォォ…」

 

ジュワァァァァァァ…

リールの攻撃を受けた2体のドレインの体が溶けて無くなった。

 

ドレイン「オォォォォォォォ!」

 

ドシン!ドシン!ドシン!

ドレインはエレナに攻撃した。しかしエレナはその攻撃を回避した。

 

エレナ「そんなものなのね」

 

ギィン!バゴォォォォォォン!

エレナがドレインを指さすと突然ドレインが爆発した。

 

パラパラパラパラ…

すると爆発したドレインの欠片が周囲に飛び散った。

 

リール「やった!」

エレナ「…まだよ」

リール「え…」

 

ヒュッ…ヒュッ…ヒュッ…

バラバラに飛び散ったドレインの欠片がまたひとつに合体した。

 

ドレイン「オォォォォォォォ…」

 

やられたはずのドレインが復活した。

 

リール「そんな…」

エレナ「これがドレインに対して光属性魔法しか効果がない理由よ」

リール「え…」

エレナ「ドレインの体は禍々しい闇で作られてるの。その闇は何でも取り込んでしまうのよ。ダメージも属性も全てね」

リール「じゃあ…」

エレナ「…残念だけどこの世界では私はお荷物よ」

リール「そんな…」

エレナ「でもあなたならできる。ドレインには光属性魔法しか効果がないからね」

リール「私…だけ…」

エレナ「えぇ。私はただの案内人。あなたを深淵まで案内するだけなのよ」

リール「…」

ドレイン「オォォォォォォォ!!」

リール「!」

 

ドタドタドタドタ!!

ドレインが走ってきた。

 

リール「ひっ…」

エレナ「大丈夫よ。あなたならできる」

リール「…」

 

リールは深呼吸をした。

 

スッ…

そしてゆっくりと杖を構えた。

 

リール「…光玉(ライダラ)

 

ビュン!ドォン!

リールの魔法はドレインに命中した。

 

ドレイン「オォォォォォォォ…」

 

ジュワァァァァァァ…

ドレインの体は溶けて無くなった。

 

リール「…」

エレナ「やっぱりやればできるじゃない。流石リノの娘ね」

リール「…はい」

エレナ「さ、行きましょ。深淵まで長いわよ」

 

スタスタスタ

リールとエレナは歩を進めた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…深淵 第一層

 

エレナ「ここが第一層 碧天の間よ。ここは4つの層の中で1番地上に近いから地上と似た空気を吸うことができるわ」

リール「!」

 

リールは普通に呼吸をしてみた。すると本当に地上と変わらない位の空気だった。

 

リール「ほんとですね。地上と全然変わりません」

エレナ「えぇ。しかもここだけ地上にある花とか草もあるわ。周りを見てみたら分かるわよ」

リール「!」

 

リールは周囲を見渡した。すると周囲には地上で見たような花や草や木が所々にあった。地上と比べて少ないが、それでもこの禍々しい世界で花などが咲いていることに驚きだった。

 

リール「ほんとですね…お花や木や草が…」

エレナ「でもここだけよ。これより下はこんな風景じゃないわ」

リール「これより下?」

エレナ「ここは4つの層に分けられてるのよ。第一層はここ。名前を碧天の間って言うの。ここは地上に1番近いから戻るならここで戻った方がいいわ」

リール「…」

エレナ「次は第二層。第二層はこの下にあるの。名前は天臨の間。そこはここと違って薄暗くて瘴気が漂ってるわ。あの子が言ってたのがそれ。瘴気は人の体を蝕むからね」

リール「そ…そうなんですね…」

エレナ「次は第三層。第三層はさらに下よ。名前は臨界の間。第二層よりも瘴気が濃くなっている場所よ。動植物は存在しないから接敵することはないけど自分の体との勝負よ」

リール「ひぇぇ…」

エレナ「そして最後。一番下にある第四層。名前を深淵。そこには1人の少女とそれを取り込んでいる一体の怪物がいるわ」

リール (深淵…)

エレナ「その一人の少女があなたの母親。そしてあなたの母親を取り込んでいる怪物が禍異者よ」

リール「私の…お母さん…」

エレナ「そうよ。あなたの母親。昔からずっとそこにいる。何年もね」

リール「…」

エレナ「…さ、行きましょ。先に進まないとお話が進まないわ」

リール「…はい」

 

スタスタスタ

エレナとリールは先に進むことにした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…深淵 第一層 碧天の間 中間地点

 

ザッザッザッ…

2人は歩を進めていた。

 

エレナ「…」

リール「…」

 

しかし二人の間に会話はなく、淡々と歩いている。

 

リール「…」

エレナ「…止まって」

リール「!」

 

エレナ突然そう言った。

 

リール「ど、どうかされましたか?」

エレナ「…ドレインが来る」

リール「え!」

エレナ「しかもさっきとは比にならないくらいの数よ」

リール「そんな…」

エレナ「リール。あなたはドレインを倒すことに集中して。私はドレインを遠ざけるように攻撃するから。私が遠ざけたらドレインを攻撃して。良い?」

リール「は、はい!」

 

ドゴォォォォォン!

大きな音が周囲に鳴り響く。

 

エレナ「…来たわ」

リール「…」

 

ドレイン「オォォォォォォォ!」

ドレイン「カカカカカカカカ!」

 

地面に穴が開き、そこから複数体のドレインが出現した。

 

ドレイン「オォォォォォォォ!!」

 

ドタドタドタドタ!!

ドレインたちはエレナとリールを見ると真っ先に襲いかかってきた。

 

エレナ「いくわよ!!」

リール「はい!」

 

ジジジ…ゴゴゴゴゴゴゴ!!

エレナは足元に魔法陣を展開した。

 

エレナ「銀爆(オズロット)!!」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

エレナはドレインたちに爆発する魔法を放った。

 

ドレイン「オォォォォォォォ!」

ドレイン「カカカカカカカカ!」

ドレイン「ギヒヒヒヒヒヒヒ!」

 

しかしドレインたちには効果はなく、爆発を受けたドレインだけ少し仰け反っていただけだった。

 

エレナ「…やっぱり」

 

ドレイン「オォォォォォォォ!!」

 

ドタドタドタドタ!!

ドレインたちは再度走り出す。

 

エレナ「リール!攻撃して!」

リール「はい!」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

リールは光を集めた。

 

リール「これで…光玉(ライダラ)!!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

リールは弾型の光属性魔法を放った。

 

ドレイン「ンギッ!」

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

リールの魔法はドレインたちに命中した。

 

ドレイン「カカカカカカカカ…」

ドレイン「オォォォォォォォ…」

ドレイン「キキキキキキキキ…」

 

ジュワァァァァ…

すると当たったドレインたちの体が溶けて無くなった。

 

ドレイン「ギヒヒヒヒヒヒヒ!!」

 

ドタドタドタドタ!

しかしまた次のドレインが襲いかかってくる。

 

エレナ「魔弾(ブラック・ベルト)!」

 

ババババババババ!

エレナも弾型の魔法を放つ。

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

エレナの魔法は1発も外すことなく全て命中した。

 

エレナ「…」

リール「…」

 

ドレイン「ヴァハハハハハハハ!」

 

ドタドタドタドタ!!

しかし当然ながらドレインたちには効果がなかった。

 

エレナ「くっ…仕方ないわね…こうなったら…」

 

ゴゴゴゴゴゴゴ…

エレナは魔力を上昇させた。

 

エレナ「リール。少し下がってて」

リール「は、はい…」

 

ジリッ…

リールは少し後ろに下がった。

 

ゴゴゴゴゴゴゴ!!

エレナの魔力がさらに上昇する。

 

エレナ「これで…無に帰す炎(ディミア・レヴ・フレア)!!」

 

ギィン!バゴォォォォォォン!!

エレナは自分の中で最も強い爆発魔法を放った。

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

その爆発は1度だけでなく何度も爆発した。

 

ドレイン「オォォォォォォォ!!」

ドレイン「オォォォォォォォ!!」

 

ドレインたちは激しく吹っ飛ばされた。

 

リール「な…」

 

リールはその光景をずっと見ていた。ドレインは大きいものから小さいものまでいるが、そんなものは関係なく全てのドレインが吹き飛ばされてしまった。加えて爆発したところは地面が抉れ、所々が燃えていた。

 

エレナ「…ここまでしないと後退させられないなんてね…ここのドレインは一味違うわね」

 

ガコン!ガラガラガラ…

吹っ飛ばされたドレインたちが起き上がってきた。

 

ドレイン「ガァァァァァァァァァ!!」

 

ドレインたちは怒り狂った。

 

エレナ「…しかもまだ死なないのね」

リール「!!」

 

リールは異変に気づいた。

 

リール「エレナさん!あれ!」

エレナ「!」

 

2人が見た先にはドレインたちがお互いの体を合体させて1つの個体となろうとしていた所だった。

 

エレナ「合体する気!?ドレインにはそんな知性はないはずだけど…」

リール「エレナさん!どうしますか!!」

エレナ「…リール!!今すぐ攻撃して!」

リール「は、はい!!」

 

ジリッ…

リールは杖を構えた。

 

リール「はぁぁぁぁぁぁっ!」

 

シュゥゥゥゥゥゥ!!

リールの杖先に光が集まってきた。

 

リール「光爆(エレノア)!!」

 

バゴォォォォォォン!

リールの魔法がドレインに命中した。

 

ドレイン「アァァァァァァァ!!」

ドレイン「オォォォォォォォ!!」

ドレイン「ガァァァァァァァ!!」

 

ジュワァァァァァ!!

リールの魔法は大きくなったドレインの左腕を破壊することが出来た。しかしまだ体は消えきれていなかった。

 

エレナ「くっ…ダメね…」

リール「そんな…」

 

ドレイン「オォォォォォォォ!!」

 

やがてドレインたちは合体し終えて完全に1つの大きなドレインとなった。

 

エレナ「くっ…まだ第一層なのに…」

リール「っ…」

 

ドレイン「オォォォォォォォ!!」

 

ドレインは拳を握って攻撃する体勢を取った。

 

エレナ「!!」

リール「!!」

 

ドレイン「アァァァァァァァァ!」

 

ブゥン!!

ドレインはエレナとリールに拳を振りかざした。

 

エレナ「リール!!」

リール「!!」

 

ドゴォォォォォン!

ドレインの攻撃は相当なものだった。たった一撃なのにも関わらず、周囲の地面が割れ、地響きを起こした。

 

ドレイン「カカカカカカカカ!!」

 

ドレインは歓喜の声を上げた。手応えがあったからだ。ドレインはその拳をどけた。

 

リール「っ…!!」

 

エレナとリールは結界で守られていた。リールはかろうじて少し頭を怪我しただけだったがエレナは何故か大怪我を負っていた。

 

リール「エレナさん!!」

エレナ「…」

 

エレナは全身血だらけで目も開けなかった。

 

リール「エレナさん!!エレナさん!!」

 

ドレイン「カカカカカカカカ!!」

 

ドレインたちは笑っていた。エレナの血だらけの姿を見て嘲笑うかのように。

 

リール「エレナ…さん…」

エレナ「…」

 

ドレイン「ンギヒヒヒヒヒヒヒヒ!!」

 

ドレインはまた拳を握って攻撃する体勢を取った。

 

リール「っ…」

 

ドレイン「アヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 

ブォン!!

ドレインは再度拳を振りかざした。その間リールは全く動かなかった。しかしその時、リールの目の色が変わっていた。

 

リール「消失(メギド)…」

 

パァァァァァァン!

 

ドレイン「!?!?!?」

 

リールがそう唱えると、その瞬間ドレインの右腕が消えてなくなった。ドレインは何が起こったのか全く分からなかった。

 

ドレイン「ガガ…」

 

ジリッ…

ドレインは一歩後退した。

 

リール「…」

 

スッ…

リールはエレナを地面に寝かせるとゆっくりと立ち上がった。

 

リール「…」

 

そしてドレインの方を見た。その目は普段の目の色ではなかった。薄い黄色の目の色。少し前に見せたもう1人のリール。そう。今のリールはリールではなかった。別の人物 レナになっていたのだった。

 

ドレイン「!!」

 

レナ「 "消失(メギド)" 」

 

ゴポッ!!

突然ドレインの左足が無くなった。

 

ドレイン「ンギィッ!!」

 

ドレインは突然無くなった左足に驚いていた。

 

ドレイン「ガガ…ガガガガガガガガ!!」

 

ドタドタドタドタ!!

ドレインはその場から逃げ出した。

 

レナ「どこ行くの?」

 

スッ…

レナは体の前で指を交えた。

 

レナ「もっと…遊びましょう?」

 

ギュッ…

レナは自分の指を絡めた後に手を握った。

 

ジャラララララララララ!!ガシャン!!

すると突然地面から鎖が出てきた。その鎖はリールの天の鎖(エルキドゥ)と同じものだが、それよりも鎖の数が多かった。

 

ドレイン「ガァァァァァァ!」

 

ジュワァァァァァ…

ドレインの体が焼け始めた。

 

レナ「辛いよね。苦しいよね。あなたたち深淵の穢はこの鎖に触れると体が焼けちゃうんだよね。知ってるよ。全部知ってる。あなたたちの弱点とか行動基準とか色々とね。だから()()()に教えたの。私のとっておきの魔法。名前を天の鎖(エルキドゥ)。あなたたちドレインを拘束して浄化する魔法よ」

 

ドレイン「ガァァァァァァァァァ!!」

 

ドレインは苦しみに悶えていた。

 

レナ「逃がさないよ。私だってもう少し眠ってたかったけどあの子が起こしたの。あの人を守ってほしいって言って私を呼んだの。…まぁもしかしたらあの子は呼んだつもりはないだろうけど私がそれに反応した。…人間は他人を守りたいって感情になるからね。私はその意思に答えた。いや、準じた…かな」

 

ジュワァァァァァ…

その間も鎖はドレインの体を焼いていた。

 

ドレイン「ガァァァァァァァァァ!!」

 

レナ「さ、もう楽にしてあげる。ここでこの子たちを死なせる訳にはいかないの。ましてやこの子は私そのもの。あなたごときに殺されたらたまったものじゃないわ」

 

スッ…

レナはドレインに掌を向けた。

 

レナ「私のとっておきの魔法よ。受け取りなさい」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

レナの手に光が集まってきた。

 

ドレイン「ガァァァァァァ!!」

 

レナ「…浄化(バーナム)

 

シュゥゥゥゥゥゥ!!

するとその光がドレインを包み込んだ。

 

ドレイン「ガァァァァァァァァァ!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…バゴォォォォォォン!

その光がドレインを包み込むと小さくなってやがて消えていった。

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…

静寂が訪れる。

 

レナ「…さて、私の役目は一旦終わりかな。そろそろ戻らないと」

 

スタッ!

レナはエレナの前に降り立った。

 

レナ「…」

 

レナはエレナの顔を見た。

 

レナ「…約束したんでしょ。この子を守るって。…だったらちゃんと約束守った方がいいよ。まだ第一層だよ。これから第二層と第三層と来て第四層まであるんだから。こんなところで倒れてちゃいつまで経ってもたどり着かないよ。私のお母さんのところに」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

レナはエレナの傷を癒した。

 

レナ「…頑張りなさい」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

リールの目の色が戻った。

 

リール「…あ、あれ…私…一体…」

 

リールは目の前で倒れているエレナの姿を見つけた。

 

リール「エレナさん!!」

 

リールは倒れたエレナを見つけた。しかしエレナには傷ひとつなかった。

 

リール「あれ…エレナさん…傷が…」

 

リールは立ち上がって周囲を見渡した。

 

リール「!!」

 

そこにはさっきまでなかった小さな穴がいくつもあった。

 

リール「何でしょうか…この穴は…」

 

リールは考えてみたが、答えが出なかった。

 

リール「…今はエレナさんが起きるまで待機…でしょうか。このまま進んでも危険でしょうし」

 

ヒュッ…ガシャン!

リールは杖を振って光属性魔法の結界を展開した。

 

リール「せめてこうすれば…」

 

こうしてリールはエレナが起きるまでエレナのそばを離れなかった。




〜物語メモ〜

深淵までの道
深淵までの道のりはかなり遠いため歩いて2、3日ほどかかる。箒を使えばマナが吸収されるため、移動手段は歩きのみ。

深淵までの4つの層
深淵にたどり着くためには4つの層を突破しなければならない。
第一層…碧天(へきてん)の間
第一層は地上に最も近いため、地上に咲く花や草や木があるのが特徴。他の層と違って空気も良く、人がギリギリ住めるくらいの環境。

第二層…天臨(てんりん)の間
第二層は瘴気という人を蝕む煙のようなものが漂っている。エレナですらここから先は5分しか体が持たない。

第三層…臨界(りんかい)の間
第三層は第二層よりも瘴気が濃くなり、加えて動植物は一切存在しない。これはドレインも同じで、ドレインは第二層までしか存在しない。

第四層…深淵(しんえん)
第四層は最下層に存在する空間のこと。そこにはリールの母親であるリノとリノを取り込んでいる禍異者が存在している。第三層と同じくそれ以外のドレインや動植物は存在しない。

初登場した魔法
銀爆(オズロット)
エレナが使った魔法。対象物を爆発させる魔法で他の爆発魔法とは違ってその対象者の内部から爆発させる魔法。

消失(メギド)
レナが使った魔法。相手の指定した部位を消し去る魔法。指定する部位に制限はないが、今回ひとつの部位ずつ消していたのは単にレナが遊んでいただけ。

浄化(バーナム)
レナが使った魔法。白い浄化の光で相手を包んで縮小してから完全に消し去る魔法。闇属性魔法にしか効果はないが、その塊であるドレインには効果的。


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第59話 レナと第三層の門番 冥邪神メイビス

私の名前はリール。

今深淵 第一層 碧天の間にいます。

先程大きなドレインと戦っていました。

その戦いでエレナさんが大怪我を負ってしまいました。

傷はないのですが、目を開けないのでしばらくここで待機することにしました。

周囲は結界を展開しているので大丈夫かと思いますが、やはりさっきのようなドレインが出てくるとなると不安です。

早くエレナさんが起きてくれればいいのですが…

それにアンナやスカーレットの事も気になります。

みんなは今どうしているのか、怪我はしてないか、ご飯はしっかり食べているのか…とても心配になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…深淵 第一層 碧天の間(中間地点)

 

リール「…」

 

リールはエレナが起きるまでその場で待機していた。エレナは今も眠ったままで一向に起きる気配がない。

 

リール「…少し周りを見てきましょうか」

 

ザッザッザッ…

リールは周囲の安全確認のためにその場を動いた。

 

リール「…」

 

リールは周囲を見渡す。

 

リール「…異変はありませんね。ドレインもいなさそうですし」

 

ザッザッザッ…

リールは元いた場所に戻った。戻ってきたリールはしばらく座り込んである事を考えていた。

 

リール (リノ…私のお母さんの名前…)

 

リールは少し引っかかっていた。

 

リール (私の年齢は17歳。魔女さんと暮らしたのは1年半。だから16歳の頃に魔女さんに拾ってもらいました…。でも昔に見たある人の記憶…確かあの時は知らない女性が私に向かって謝っていました。何度も何度も。そしてその時その人は私のことをレナと呼んでいました…ここで少し引っかかります。魔女さんは私を森で拾ったと言っていました。私もそこからの記憶しかありません。ですが昔、私の頭に流れ込んできたある人の記憶。そこでは私視点の映像で誰かが私をレナと呼んでいました…。その時の記憶から魔女さんに拾われた間の記憶は…一体どこに…)

 

エレナ「ぅっ…」

 

エレナが目を覚ました。

 

リール「エレナさん!!」

 

ギュッ!

リールはエレナを抱きしめた。

 

リール「よかったです…目覚めて良かったです…」

エレナ「…私は一体…」

 

エレナは周囲を見渡す。

 

エレナ「…ねぇ…あのドレインは?」

リール「あ、えっと…私にも…分かりません」

エレナ「え?」

リール「気づいたらドレインはいなくなってて地面にいくつか穴が空いていました」

エレナ「え…何それ…一体どういう事よ…」

 

エレナは周囲を見渡した。確かに所々に小さな穴が空いていた。

 

エレナ (これは…一体…)

リール「エレナさん」

エレナ「な、何?」

リール「私たちはこの後どうすれば…」

エレナ「そ、そうね…とりあえずもう少しだけ休憩してから進みましょう」

リール「はい!」

 

そうしてエレナとリールは少しの間だけその場で休んだ。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…第四層 深淵

 

魔女さん「…リノ。あなたの娘なのに酷いんじゃないですか?」

 

リノ「…」

 

魔女さん「…まぁ、やったのはあなたじゃないでしょうね。あなたにくっついているその怪物。それがあなたを操ってドレインを動かしてるんですよね?」

 

リノ「…」

 

魔女さん「…もう少しの辛抱ですよリノ。もう少しであなたの娘が来ますよ」

 

リノ「…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…第一層 碧天の間(中間地点)

 

エレナ「さて、そろそろ行きましょうか」

リール「はい!」

 

しばらく休んだエレナとリールは先に進むことにした。

 

スタスタスタ

エレナとリールは歩を進める。

 

エレナ「ねぇあなた」

リール「は、はい」

エレナ「…あなた、時々変にならない?」

リール「変…とはどういう…」

エレナ「いえ、いいわ」

リール「?」

 

エレナとリールがしばらく歩くと1つの大きな魔法陣が床に展開されている場所に着いた。

 

リール「エレナさん…ここは…」

エレナ「ここが次の層に行くための場所よ。ここまでが第一層。ここからが第二層よ」

リール「ここから…」

エレナ「…準備はいい?」

リール「…はい」

エレナ「…じゃ、行くわよ」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

エレナとリールが魔法陣の上に立つと、即座に魔法陣が起動して2人を別の場所へ転送した。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…第二層 天臨の間

 

エレナとリールは天臨の間に着いた。そこは薄暗く、先程の碧天の間と比べて空気も悪かった。

 

リール「エレナさん…何だか変な臭いが…」

エレナ「これが瘴気よ」

リール「!」

エレナ「瘴気は人にとって有害なものよ。吸えばたちまち体が蝕まれるわ」

リール「え…じゃあ…」

エレナ「私とあなたは大丈夫よ。何も問題ないわ。あるとすればこの厄介な臭いね」

リール「え、なぜ私たちは大丈夫なのでしょうか」

エレナ「そりゃああなたは光属性魔法の適性者だからね。この瘴気に対する抗体を既に持ってるじゃない」

リール「でも…エレナさんは…」

エレナ「あ、私はドレインだから問題ないのよ」

リール「!!」

 

リールは驚いた。

 

エレナ「あら、そんなに驚くこと?もう1人の分身に聞かなかった?私たちはドレインだってこと」

リール「!!」

 

リールはエレナが2人現れた時のことを思い出す。確かにあの時、分身のエレナは自分をドレインだと言っていた。だがその人だけだと思っていたリールは驚いていた。

 

リール「確かに…あのエレナさんもドレインだと…」

エレナ「そうよ。本体は人間だけど私とあの子は分身体よ。しかも人間じゃなくてドレイン。見た目は人間だけどね」

リール「ひぇぇ…」

エレナ「さ、先に進みましょ。ここからはドレインは極端に少なくなってるから」

リール「はい」

 

スタスタスタ

エレナとリールは歩を進めた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…第二層 天臨の間(中間地点)

 

しばらく歩いたエレナとリールは中間地点にたどり着いた。

 

リール「本当にドレインがいませんね」

エレナ「えぇ。この瘴気はドレインにとっても有害なのよ」

リール「え、じゃあエレナさんも…」

エレナ「私は大丈夫よ。私の体って便利でね、この瘴気を吸って酸素を作ってるのよ」

リール「!!」

エレナ「だから呼吸に困ることもないのよ。気になるのはこの臭いだけ。ほんと嫌。この臭い」

 

周囲に漂う瘴気の臭いは例えるなら生ゴミのような臭い。普通の人間ならすぐに鼻をつまむくらい。臭いも強く、おまけに体を蝕むので第二層以降に人間が入ることは無い。ガスマスクのようなものはこの世界にはないため、対処法がない。

 

エレナ「…さ、行きましょ。あと半分だから」

リール「は、はい」

 

スタスタスタ

エレナとリールは歩を進めた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…第二層 天臨の間(最終地点)

 

エレナ「もうすぐよ」

リール「はい」

 

スタスタスタ

エレナとリールは休憩することなく歩き続けた。そのせいかすぐに第二層の最終地点に着いた。

 

???「異質な気配が2つ」

 

エレナ「!」

リール「!」

 

どこからともなく声が聞こえた。その声は太く、男性のものだと分かる。

 

???「この世界を壊す存在か。それともこの世界に光を灯す存在か」

 

エレナ「…」

リール「…」

 

エレナとリールはその声の方を見る。そこには1人の男性がいた。その男性は魔法陣の前に立っており、それはまるでエレナとリールが来ることを知っていて立ち塞がっているようだった。

 

メイビス「私の名前はメイビス。第三層 臨界の間へ通じる扉を守護している者だ」

リール「メイビス?」

エレナ「彼は第三層の門番をしているの。名前は冥邪神 メイビス。この世界のまとめ役よ」

メイビス「…どういうつもりですか。エレナ」

エレナ「…」

メイビス「あなた一人なら問題ありませんが、まさか光属性魔法の適性者を連れてくるとは」

エレナ「仕方ないでしょ。この世界が消えたら私たちは生きられない」

メイビス「…」

エレナ「私はあなたと戦う気は無いわ。この子もね」

メイビス「…そうですか。いいでしょう。通します。その代わり」

 

メイビスはリールを指さした。

 

メイビス「あなたはダメです。光属性魔法の適性者」

リール「!!」

エレナ「…メイビス。話聞いてた?」

メイビス「はい。聞いた上での判断です」

エレナ「だったら…」

メイビス「私は第三層 臨界の間を守護する者。第三層に何かあれば私の責任になります」

エレナ「…」

メイビス「ですのであなたはお通しできません」

リール「…」

エレナ「メイビス…」

メイビス「ところでエレナ。第二層の扉を守護しているイコイはどうしましたか」

エレナ「…いなかったわ」

メイビス「はぁ…あの子は…」

エレナ「だから私たちはここまで来れたの。でも今はあなたのせいで第三層に行けない。通してメイビス」

メイビス「ダメです」

エレナ「メイビス…」

メイビス「ダメです。答えは変わりません」

エレナ「…」

リール「あ、あの…」

メイビス「はい。どうしましたか」

リール「なぜ…私は通してもらえないのでしょうか」

メイビス「…気づかなかったんですか?」

リール「え?」

メイビス「あなたが通ってきた道を見てください」

 

リール「!!」

 

リールが後ろを振り返るとリールの歩いたところだけが白くなっていた。

 

リール「こ、これは…」

メイビス「この世界は全て闇属性魔法でできています。そのため光属性魔法の適性者であるあなたがここに来ると浄化作用が働いてこの世界が徐々に崩れていくのです」

 

パラパラ…パラパラ…

するとリールが歩いてきた地面が割れ、欠片が宙に浮き始めた。

 

リール「!」

メイビス「これがあなたを通さない理由。あなたを通せば私の管轄である第三層も崩れかねません。どうかお引き取りを」

エレナ「…」

 

パラパラ…パラパラ…

欠片が徐々に増えてきた。

 

メイビス「むしろここまで来て今まで気づかなかったのが不思議です」

リール「…」

エレナ「…メイビス。通して。私たちには時間が無いわ」

メイビス「何の時間でしょうか。この世界の滞在時間でしょうか?」

エレナ「違うわ。現世が耐えられるまでの時間よ」

メイビス「…何かあったのですか?」

エレナ「現世があなたたちドレインによって崩れてきているの。私たちはその元凶である禍異者を倒すためにここに来たの。だから通して」

メイビス「…おかしいですね。ドレインはここを通って外へ出ます。ここを通らずして外に出るのは不可能なのです。そして、ここ最近はドレインの姿を見ておりません。…あなたを除いて」

エレナ「でも外に出てきてた。あの禍異者が直接送り込んできたのよ」

メイビス「…その話…信ずる証拠は」

エレナ「でなきゃ私がこの子を連れてここに来るわけないでしょ。それにこの子は人間よ。長いことこの世界にいたんじゃ体が疲れてくるわ。だから早く事を済ませたいのよ」

メイビス「…そうですか。分かりました」

エレナ「じゃあ通し…」

メイビス「お引き取り下さい」

 

リール「!」

エレナ「!」

 

メイビスはエレナの言葉を遮って答えた。

 

メイビス「やはりあなたはこの世界を壊す存在でしたか。私にそんな偽りを信じろと?」

エレナ「偽りなんかじゃないわ!」

メイビス「現に証拠がない。信じることができない」

リール「…」

メイビス「お引き取りを。これ以上ここにいるのなら…」

 

スッ…

メイビスは杖を取りだした。

 

メイビス「私があなた方を倒しま…」

 

ゴポッ!!

 

メイビス「!?」

エレナ「!!」

リール「…」

 

カランカランカラン…

突然メイビスの腕が消えた。その時、手に持っていたメイビスの杖が地面に落ちた。

 

メイビス「こ…これは…」

エレナ「!!」

 

エレナはリールの異様な気配に気づいた。

 

レナ「…下がりなさい。メイビス」

メイビス「!!」

 

メイビスは聞き覚えのある声を聞いた。

 

メイビス「この声…まさか…」

レナ「下がりなさい」

メイビス「!」

 

メイビスはリールの方を見た。リールの目は薄い黄色になっており、リールとはまた違った気配を放っていた。

 

メイビス「あなたは…レナ様…」

レナ「…」

 

レナはメイビスの目をじっと見ていた。

 

メイビス「な…何故あなたが…ここに…」

レナ「下がりなさい。四度目はないわ」

メイビス「何故あなたがここに!!」

 

ゴポッ!!

 

メイビス「!?!?」

エレナ「!」

レナ「…」

 

メイビスの体が一部吹き飛んだ。

 

レナ「…四度目はないって言わなかったかしら」

メイビス「っ…」

 

ジリッ…

メイビスは一歩後退りした。

 

エレナ (な…何よこれ…この気配…)

 

エレナもまた、レナの気配にビビっていた。

 

レナ「…」

メイビス「…しかし、あなたがここを通れば…」

レナ「メイビス」

メイビス「!!」

レナ「…消すわよ」

メイビス「っ…」

レナ「嫌なら下がりなさい」

メイビス「っ…」

 

スタスタスタ

メイビスは魔法陣の前から退いた。

 

レナ「…さ、早く行きましょうか。正直待ちくたびれたの。いつ来るかいつ来るかってずっと待ってたのよ?」

エレナ「…」

レナ「あと1つ。この第三層さえ突破できればあとはあなたたちの目的の場所 深淵よ」

エレナ「!!」

レナ「…早く来なさい」

 

フッ…

するとリールの目の色が戻った。

 

リール「っ…あれ…私は一体…」

エレナ「!!」

 

リールの気配が戻った。先程の恐ろしい気配はもうどこにもなかった。

 

エレナ「…」

メイビス「…」

 

エレナとメイビスは何も言わなかった。それと同時にリールに逆らうとどうなるのかを悟った。

 

エレナ (これは…あいつに逆らったら最後ね。今は幸いリールでしょうけど何の拍子でアレに変わるか分からないわ。用心しましょう)

メイビス (こ…こいつ一体…何故あの方がここに…今は気配はないがそれでも…)

リール「あの…エレナさん」

エレナ「!」

リール「つ、次行きましょう。ここに魔法陣がありますので」

エレナ「え、えぇ…」

 

スタスタスタ

エレナは魔法陣のところまで歩いた。

 

エレナ「…じゃあ先通らせてもらうわね」

メイビス「…あぁ。好きにしてくれ」

 

ヒュッ…ヒュッ…

エレナとリールは魔法陣によって第三層まで転送された。

 

メイビス「…これはあの子たちにも報告しないと」




〜物語メモ〜

冥邪神メイビス
第三層 臨界の間に通ずる魔法陣を守護している者。この深淵には3人の守護者がおり、メイビスはその1人。メイビスは3人のまとめ役で自由奔放なイコイの後始末をよくさせられている。レナの事をよく知っており、リールがレナになった瞬間、一気に表情を変えた。

3人の守護者
深淵には各層に通ずる魔法陣を守護している者がいる。その数3人。
1人目…天邪神イコイ(女)
第二層 天臨の間に通ずる魔法陣を守護している者。活動範囲は第一層 碧天の間のみ。だが自由奔放なため、メイビスのように魔法陣の前に立って守護していることは少なく、常にどこかに行っている。

2人目…冥邪神メイビス(男)
第三層 臨界の間に通ずる魔法陣を守護している者。活動範囲は第二層 天臨の間のみ。責任感が強く、与えられた命令を遂行するまで気を抜かない性格。イコイの後始末をすることが多く、メイビスはイコイの身勝手な行動に悩んでいる。

3人目…???
第四層 深淵に通ずる魔法陣を守護している者。


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第60話 レナと第三層 臨界の間

私の名前はリール。

今第三層 臨界の間にいます。

先程からエレナさんの顔が険しく、何かに怯えているようでした。

それに不思議なことに、私とエレナさんがある人と話していると、急に意識が飛んで知らない間にある人が道を譲ってくれていました。

その間の記憶は全くないんですが、何故か少し体が重く感じます。

魔力を使ったからでしょうか。

でも私はここに来てドレイン以外に魔法は使ってませんし…。

さて、これから第三層 臨界の間を進んでから最後の第四層 深淵へと向かいます。

スカーレットやアンナが心配ですが、今の私にできることはこれくらいですので、精一杯やろうと思います。

…何も無いといいのですが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…第三層 臨界の間 転送地

 

シュッ…シュッ…

エレナとリールは第二層の転送地から第三層へと送られてきた。

 

エレナ「…」

リール「!!」

 

リールがまず最初に見たのは目に見えるほどに濃い瘴気だった。

 

リール「エレナさん…これ…」

エレナ「第三層の瘴気は第二層とは比べ物にならないわ。第二層の時よりも更に辛くなるでしょうけど、頑張って」

リール「は、はい…」

 

エレナとリールは先に進むことにした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…第三層 臨界の間 最深部 転送地

 

???「…来ましたか。よくぞこの階層まで」

 

???は真っ直ぐ前を見た。

 

???「…何やら別の気配もここに来ているようですね」

 

???は両手を握った。

 

???「…お待ちしておりますよ。光の子、闇の姫」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…第三層 臨界の間 最上部

 

エレナ「相変わらず辛気臭いところね。もっと明るかったらいいのに」

リール「そうですね」

 

スタスタスタ

エレナとリールは歩を進める。

 

エレナ「…」

リール「…」

 

それから2人は何事もなく中間地点まで来た。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…第三層 臨界の間 中間地点

 

エレナ「はぁ…ドレインはいないわ景色も変わらないわで何だか眠くなってきたわね」

リール「そうですね。でも私はドレインと戦わなくて嬉しいですよ」

エレナ「何でよ」

リール「傷つけずに済みますから」

エレナ「…」

 

2人が歩いているとエレナがある気配に気づいた。

 

エレナ「リール」

リール「はい」

エレナ「…止まって」

リール「え…」

 

エレナとリールはその場に止まった。

 

エレナ「…」

リール「エレナさん?」

エレナ「…リール」

リール「は、はい…」

エレナ「…来るわ」

リール「…え?来る?」

 

???「おやおや?なぁんでこんな所にいるのかなぁ?」

 

リール「!!」

 

リールが声のした方を見ると、そこには1人の女性がいた。その女性は空を飛んでおり、何やら嫌な気配を放っていた。

 

???「エレナ?」

エレナ「…」

リール (エレナさん?何か関係が…)

エレナ「…久しぶりに見たわね。イコイ」

 

その女性の名前はイコイと言うらしい。

 

リール (イコイ…あっ、確か第二層の転送地を守っているって言ってた人…)

イコイ「そりゃあね。私ってじっとしてられない性格だからね。見ないのも無理はないよ」

エレナ「…それで、何か用?」

イコイ「用ってそりゃあ私の許可無く第二層に入ってたしなんなら今第三層まで来てる。私許可した覚えはないけどなぁ?」

エレナ「それはあなたがいなかったのが悪いわ。私たちは悪くない」

イコイ「いや?私がいない隙を狙ったって考えられるよ?」

エレナ「私たちはそんな面倒くさいことはしないわよ。用はこれで終わり?私たちは先に進まないといけないの。それじゃあね」

 

スタスタスタ

エレナとリールはイコイを無視して歩き始めた。

 

イコイ「…フフッ…粉砕(ダクト)

 

バゴォォォォォォン!

 

エレナ「!」

リール「!?」

 

イコイが魔法を使った瞬間、地面が2つに割れた。

 

リール「わわっ!」

 

リールはバランスを崩した。

 

エレナ「リール!」

 

パシッ!

エレナはリールの手を引いて何とか脱出した。

 

リール「うわぁ…すごい…」

エレナ「全く…イコイのやつ…」

リール「え、あれあの人の魔法なんですか?」

 

ヒュゥゥゥゥ…スタッ!

エレナはリールを抱えて地面に着地した。

 

イコイ「さすがエレナだね。私の魔法をよく知ってる」

エレナ「当たり前でしょ。あんたの魔法は厄介なのよ」

イコイ「フフッ…」

リール「あの、エレナさん」

エレナ「ん?」

リール「あの方の魔法は…」

エレナ「…破壊魔法よ。無属性魔法の一種」

リール「破壊魔法!?」

 

リールは無属性魔法のことをよく知っていた。もちろん破壊魔法のことも。

 

エレナ「あいつは物や結界を破壊することができるから基本防御は意味無いわ」

リール「っ…」

 

リールは身構えた。

 

イコイ「あ、身構えなくてもいいよ。戦うつもりないし」

リール「!」

エレナ「…じゃあ何で攻撃してきたのよ」

イコイ「え、攻撃してないよ。ただ地面を割っただけだよ」

エレナ「…それでリールが怪我をするところだったわ」

イコイ「あらそう。でも関係ないから」

 

エレナ「…」

リール「…」

 

エレナとイコイは睨み合う。

 

リール「エレナさん…」

エレナ「…何もしないならここを通して」

イコイ「嫌」

エレナ「…何でよ」

イコイ「…その子 嫌な気がする」

リール「!」

エレナ「この子なら問題ないわ。あなたが問題よ」

イコイ「…ふ〜ん」

 

パキッ!

突然地面から音がした。

 

エレナ「…攻撃する気?」

イコイ「いや、あなたを始末するつもりよ」

エレナ「!」

 

バキバキバキ!!

突然地面が割れた。

 

リール「!!」

エレナ「はぁっ!」

 

バゴォォォォォォン!

エレナは魔法でイコイを遠ざけた。

 

イコイ「おっとと…」

エレナ「行くわよリール!」

リール「え!」

 

ビュュュュュュン!

エレナはリールの手を掴むと空を飛んで逃げた。

 

リール「え、エレナさん!」

エレナ「っ…」

 

エレナは後ろを振り返らずに飛んだ。

 

イコイ「あらららら…」

 

イコイはその場に取り残されてしまった。

 

イコイ「まさか攻撃してくるなんて…」

 

ゴゴゴゴゴゴ…

イコイは魔力を上昇させた。

 

イコイ「そんな悪い子には…お仕置だよ!!」

 

ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!

イコイが地面に触れると突然地面が隆起し始め、エレナたちを追いかけた。

 

イコイ「さて、どれくらい持つかな。この世界で」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…第三層 最下層付近

 

エレナは無我夢中で空を飛んでいた。

 

リール「エレナさん…」

エレナ「っ…」

 

ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!

突然後方から音がした。

 

リール「!!」

 

リールがその音に反応して後ろを振り返ると隆起した地面が後を追って来ていた。

 

リール「エレナさん!後ろ!」

エレナ「!!」

 

リールの声に反応したエレナは後方を見て驚いていた。

 

ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!

地面は容赦なく追いかけてくる。

 

エレナ「くっ…イコイのやつ…」

リール「これもあの人の…」

 

ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!

地面は速度を落とさずに追いかけてくる。

 

ビュュュュュュン…

するとエレナの飛ぶ速度が低下した。

 

リール「!」

エレナ「な…もう…」

 

ヒュゥゥゥゥ…

するとエレナとリールは地面に落ち始めた。

 

リール「わっ!わわっ!エレナさん!!」

エレナ「くっ…」

 

エレナは空を飛ぶために魔力を使っていたが、それが悪い方向へ働き、エレナの魔力が全て深淵に吸い取られていた。

 

エレナ「リール…ごめん…もう限界…」

 

ヒュゥゥゥゥ!

徐々に地面に近づいていく。

 

リール「エレナさん!」

 

リールはエレナの手を強く握った。

 

リール「はぁっ!」

 

バゴォォォォォォン!

リールは魔法を使ってその反動で空を飛んだ。

 

ビュュュュュュン!

するとリールとエレナの飛ぶ速度が上昇した。

 

リール「これで…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

しかし、リールの魔力もすでに限界が来ていた。

 

リール「な!」

 

ヒュゥゥゥゥ!!

リールとエレナはそのまま落下し始めた。

 

リール「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ズサァァァァァァァァ!!

エレナとリールはそのまま地面に転がり落ちた。

 

リール「うっ…」

エレナ「ごめん…リール…」

リール「エレナさん…」

 

ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!

イコイの魔法が追いついてきた。

 

エレナ「あぁ…これはダメね…」

リール「そんな…」

 

イコイ「みぃつけたぁ…」

 

イコイがエレナとリールを見て微笑んだ。

 

イコイ「なぁんで逃げるのかなぁ?」

 

ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!

イコイの魔法が迫り来る。

 

イコイ「捕まぁえたぁ!」

 

キィィィィイィィン!!

 

リール「!!」

エレナ「!!」

イコイ「!?」

 

イコイの魔法がエレナとリールに当たる直前で何やら結界のようなものが展開された。イコイの魔法はその結界によって完全に消失した。

 

イコイ「な…私の魔法が…」

 

コツ…コツ…コツ…

 

リール「!」

エレナ「…」

 

その時何者かの足音がした。リールたちはその音に反応した。

 

???「…」

 

そこにいたのは1人の女性だった。その女性はイコイやメイビスのような禍々しい気配を放っておらず、むしろ浄化の気配を放っていた。

 

イコイ「…メア」

メア「…」

 

リール「メア?」

エレナ「…」

 

その女性の名前はメア。白い服を着ており、何故か目を閉じていた。その人の持つ杖はその人の身長と同じくらいの長さで今までで1番長かった。

 

イコイ「…何するのよ。邪魔する気?」

メア「…お迎えに上がりました。光の子 闇の姫」

リール「!」

エレナ「!」

イコイ「ちょっとメア!話聞いてる?」

メア「お静かに」

イコイ「っ…」

 

コツ…コツ…コツ…

メアはゆっくりとリールに近づいた。

 

メア「…初めまして。私はメア。ここ第三層と第四層を繋ぐ扉を守っている者です」

リール「っ…」

メア「先程までの仲間の無礼…深くお詫び申し上げます」

 

スッ…

 

リール「!」

エレナ「!」

イコイ「!?」

 

するとメアは土下座をして深く頭を下げた。

 

リール「あ、あの…えっと…」

メア「主様より申しつかっております」

リール「主…様…?」

メア「はい。あなたのお母上 リノ様のことです」

リール「!」

エレナ「え…」

イコイ「ちょっとメア!!いい加減にして!!」

メア「イコイ。お静かに」

イコイ「っ…」

メア「長い間、あなたのお帰りをお待ちしておりました」

リール「え…それって…どういう…」

メア「リノ様がお待ちです。こちらへ…」

 

そう言ってメアは立ち上がり、第三層の最深部にある転送地を指した。

 

リール「あ、あの…」

メア「はい」

リール「あなたは…一体…」

メア「私は第三層と第四層を繋ぐ扉を守っている者です」

リール「な…何故私を待っていたんですか…」

メア「…何故でしょうね。さぁ、私が道案内をします。こちらへ…」

 

コツ…コツ…コツ…

そう言ってメアは歩き始めた。

 

リール「あの…エレナさん…」

エレナ「…行きましょう。あの人に逆らったら終わりよ」

リール「え…」

 

こうしてリールとエレナはメアについて行くことにした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…第三層 最深部 転送地

 

メア「こちらが第四層 深淵に繋がる転送地になります」

リール「っ…」

メア「…行かれないのですか?」

リール「あの…あなたは…」

メア「?」

リール「あなたは私たちを…攻撃しないのですか?」

メア「…その言い方だとイコイやメイビスがあなた方を攻撃したとお受けしますが、間違いありませんか?」

リール「…さっきの人は私たちを攻撃してきました」

メア「イコイですね。分かりました。あとでキツく注意しておきます」

リール「は、はぁ…」

メア「ほかになにかありませんか?」

リール「あ、い、いえ…」

メア「ではどうぞ。第四層 深淵に」

エレナ「…行きましょうリール」

リール「!」

エレナ「私たちの目的は深淵に行くこと。だとしたら今のこの状況は好機よ。早くしないとまたイコイが来るわ」

リール「…分かりました」

 

スタスタスタ

エレナとリールは転送地の上に乗った。

 

メア「…では、行ってらっしゃいませ」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

するとエレナとリールは第四層 深淵に転送された。

 

メア「…ご武運を」

 

スタッ!

イコイが転送地に降り立った。

 

イコイ「…どういうつもり メア」

メア「どういうつもり…とは」

イコイ「とぼけないで。これは裏切り行為よ」

メア「…おかしいですね。私は主様の命令に従っただけですよ」

イコイ「敵を殺さずに転送させた」

メア「…もしそれが裏切り行為と言うのでしたら、あなたは敵を殺すことができず、挙句の果てに逃げられましたね」

イコイ「!」

メア「それにあなたは守護者としての責務すら全うできていません。私は主様の命令を受けてあの方々を通しました。…でもあなたはどうですか?事前に情報を得てもなお敵を逃がしたとなると厳罰じゃ済まないかもしれませんよ」

イコイ「っ…」

メア「…言葉と身の程を弁えなさいイコイ。私に歯向かうのはその後の人生を棒に振るのと同じですよ」

イコイ「…」

メア「…持ち場に戻ってください。ここは私の管轄です」

イコイ「…後悔するよ。メア」

メア「後悔は結果の後ですよ。結果もないこの状況で後悔なんてありません」

イコイ「…」

 

ヒュゥゥゥゥ…

イコイはその場をあとにした。

 

メア「…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…第四層 深淵

 

ついにエレナとリールは深淵にたどり着いた。

 

リール「!!」

 

そこはさっきとは打って変わって少し明るい場所だった。

 

エレナ「…ここが最下層よ」

リール「結構明るいんですね」

エレナ「えぇ。深淵って言うから暗いって思ってたかもしれないけど実際はこんな感じよ。第三層が1番暗いまであるわ」

リール「そ、そうなんですね」

エレナ「さ、行きましょ。目的の場所はもうすぐそこよ」

リール「はい」

 

スタスタスタ

エレナとリールは歩を進めた。エレナとリールは先程メアに魔力を回復させてもらっているため、今は全快の状態だった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…第四層 深淵 祭壇

 

リール「!」

 

エレナとリールは少し広い場所に着いた。

 

リール「エレナさん…ここは…」

エレナ「ここは祭壇。正真正銘最下層にある所。そして、あなたのお母さんがいる所でもある」

リール「!!」

 

ザッ…ザッ…ザッ…

誰かの足音が聞こえる。

 

リール「エレナさん…」

エレナ「…」

 

ザッ…ザッ…ザッ…

やがてその足音の正体が分かった。

 

リール「!!」

エレナ「…」

 

魔女さん「…」

 

その足音の正体は魔女さんのものだった。

 

リール「魔女さん!!」

 

タッタッタッ!

リールは一目散に魔女さんの所に走った。

 

リール「魔女さぁぁぁぁぁん!」

 

ギュッ!!

リールは勢いよく魔女さんを抱きしめた。

 

リール「魔女さん!魔女さん!魔女さん!」

 

リールは何度も魔女さんの名前を呼んだ。そして今までで1番強く抱きしめた。

 

リール「よかった…やっと会えました…魔女さん…」

魔女さん「…」

 

リールの目から涙が落ちた。リールは嬉しさと寂しさから思わず泣いてしまった。

 

リール「うっ…ひぐっ…魔女さん…」

魔女さん「…」

 

エレナ「…」

 

その様子を見ていたエレナ。

 

エレナ (何あれ。まるで人形じゃない。何も反応しないし目が虚ろだし…何も感情が無いみたい)

 

リール「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

リールはとうとう大声で泣き始めた。

 

魔女さん「…」

 

リールはしばらく泣き続けた。その間、魔女さんはリールのそばから離れなかった。抱き締め返したりしなかったが、リールが満足するまで1歩も動かなかった。

 

数分後…

 

エレナ「リール」

リール「うっ…ひぐっ…」

エレナ「嬉しいのは分かるけど今の目的を忘れないでね」

リール「…はい」

 

エレナ「…」

魔女さん「…」

 

エレナと魔女さんは互いを睨み合った。

 

エレナ「…邪魔しないで」

魔女さん「…」

 

魔女さんは何も言わなかったが小さく頷いた。

 

エレナ「…リール行きましょ」

リール「魔女さんも一緒に行ってもいいですか?」

エレナ「え?」

リール「ようやく会えたので…離れたくないです…」

エレナ「…はぁ、分かったわよ」

リール「よかった…」

エレナ「行くわよ」

 

スタスタスタ

エレナ、リール、魔女さんはある場所に向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…第四層 深淵 祭壇奥

 

リール「あ、あの…エレナさん…」

エレナ「何?」

リール「私たちは今どこに向かっているのでしょうか」

エレナ「祭壇奥よ。そこにあなたの母親がいる」

リール「!!」

 

リールはその言葉に反応した。

 

リール (私の…お母さん…)

 

リールはどんな人なのかが気になって仕方がなかった。

 

エレナ「…着いたわよ」

リール「!?」

 

エレナが案内した場所は少しの足場があるだけの空間だった。その空間が最も嫌な気配を放っていた。

 

リール「あの…私のお母さんは…」

エレナ「…あれよ」

リール「え…」

 

リールはエレナが指さした方を見た。するとそこには巨大な黒い何かが多数の鎖や結界によって封印されていた。

 

リール「こ…これは…」

エレナ「これが禍異者。つまり、ドレインの王様ね」

リール「禍異者…ドレインの…王…」

エレナ「あなたの母親はこの黒いやつの額にいるわ」

リール「!!」

 

リールはすぐに気づいた。その大きな黒い何かの額に人間のようなものがあった。その人はその大きな黒い何かによって取り込まれており、とても話せるような状態ではなかった。

 

リール「これが…私の…お母さん…」

エレナ「そう。あれがあなたの母親よ」

リール「そんな…でも…」

エレナ「あなたの母親も元はあなたと同じ人間よ。でも禁忌に触れた償いでこうなっている。…禍異者に体を取り込まれてね」

リール「そんな…」

魔女さん「…」

リール「…エレナさん」

エレナ「ん?」

リール「私は…どうすれば…」

エレナ「…あれを殺すのよ」

リール「!?」

エレナ「あれがいる限りこの世界は救われないわ。諸悪の根源を絶たない限りね」

リール「っ…」

魔女さん「…」

リール「…私に…お母さんを殺せと…そういうことですか」

エレナ「…そうよ」

リール「っ…」

 

リールはズキッと心にきた。

 

リール「…嫌です」

エレナ「…はぁ!?」

リール「嫌です!!」

エレナ「な、何でよ!あなた そのためにここに来たんでしょ!?」

リール「そうですけど…」

エレナ「なら早く殺らないと!」

リール「でもお母さんは殺せないです!!」

エレナ「な…」

リール「私のたった1人のお母さんを私が殺すなんて…嫌ですよ…」

エレナ (マズイ…あれを殺せるのはこの子だけ…ここでこの子が殺さないとなると…)

リール「私は殺しません。絶対に…」

エレナ (くっ…予定が狂ったわ…)

 

ガシャン!!ガシャン!!ガシャン!!

突然大きな音が響いた。

 

禍異者「アァァァァァァァァァ!!」

リール「!」

エレナ「!!」

 

リールたちが音の方を見ると、禍異者が鎖を引きちぎろうとしていた。

 

禍異者「キオッタァァァァァァァ!!マチワビタゾォォォォォォ!!ヨコセェェェェェェ!!トキサダメノコナヲヨコセェェェェェェ!!」

 

ガシャン!!ガシャン!!ガシャン!!ガシャン!!

禍異者は結界の中で暴れていた。

 

禍異者「カハハハハハハハハハハハ!!!」

 

禍異者は笑いながら鎖をちぎろうとしていた。

 

禍異者「カハハハハハ!!モウスコシダァァァァァ!!」

 

ガシャン!!ガシャン!!ガシャン!!ガシャン!!

その鎖は今にもちぎれそうになっていた。

 

リール「あっ…あ…」

エレナ「リール!!」

魔女さん「…」

エレナ「早く!!」

リール「っ!!」

 

リールは杖を取り出して魔法を使おうとした。

 

禍異者「カァァァァァァァァァァ!!」

 

バリン!バリン!バリン!ドゴン!

すると結界内の鎖がちぎれ、結界も砕けてしまった。

 

禍異者「アァァァァカカカカカカカカカカ!!」

 

リール「!!」

エレナ「!!」

魔女さん「…」

 

禍異者「カハハハハハハハハハ!!」

 

とうとう禍異者が結界の中から出てきてしまった。

 

禍異者「オォ…カミヨ…ワタシニチカラヲ…チカラヲ!!」

 

ビリビリビリビリビリビリ!!

すると禍異者の周囲に妙な気配が多数出現した。

 

エレナ「ドレインよ!」

リール「!」

 

そう。その正体はドレインだった。出てきたドレインは大きいものから小さいものまで様々で数も多かった。

 

禍異者「ヨコセェェェェェェ!!トキサダメノコナァァァァァァ!!」

 

リール「お母…さん…」

 

スッ…

 

リール「!」

 

エレナがリールの肩に触れた。

 

リール「エレナさん…」

エレナ「…殺るわよ」

リール「!」

 

エレナの顔がいつにもなく真剣だった。

 

エレナ「…容赦しないこと。ここで手を抜けば外の人たちが死ぬわ。…覚悟を決めなさい。…母親を助けたいならね」

リール「っ…」

 

リールは杖を握りしめた。

 

リール「…はい」

エレナ「さぁ、殺るわよ!」

 

こうしてエレナとリールは禍異者とドレインを倒すことにした。




〜物語メモ〜

輪邪神 メア
第三層と第四層を繋ぐ扉を守っている者。基本中立的な立場で争いを好まない。ただただ命令されたことをこなすような人。

これにて
「私、魔女さんに拾われました。 ー深淵編ー 」
が終了しました。

次回は
「私、魔女さんに拾われました。 ー決戦編ー 」
になります。

最後まで読んで頂けたら幸いです。


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第1章 5節 決戦編
第61話 リノと禍異者


私の名前はリール。

今深淵にいます。

ここでは朝、昼、夜の概念が無いので今がいつなのか、朝なのか昼なのか夜なのかも分かりません。

でも不思議とお腹も空いてなく、眠くもありませんでした。

…さて、そういったお話はまた後で。

今は目の前にいる怪物を倒します。

私たちは深淵にある祭壇にたどり着きました。

しかしそこには黒い大きなもの "禍異者" がいました。

エレナさんが言うにはその黒い大きなものの額に私のお母さんがいるのだそうです。

確認したところ、確かにその黒い大きな何かの額に人らしきものがいました。

その人は女性でどこか私に似ているものがありました。

…あれが私のお母さんなのでしょうか。

…だってその人にはいくつもの管?の様なものが突き刺さっててしかも口は塞がれてて目も何やら触手みたいなものに覆われていました。

あれを人と見れるかは分かりませんが、少なからずエレナさんが私のお母さんと言っている以上、信じるしかありません。

…私はこれからエレナさんと一緒にその黒い大きな何かを倒します。

どうやって倒すかは知りませんが、とりあえず頑張ってみます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…深淵

 

禍異者「アーッハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

禍異者は高笑いをしていた。

 

エレナ「嫌な声ね。こんなやつに取り込まれてるなんて考えたくもないわ」

リール「…」

 

エレナさんは愚痴をこぼす。

 

禍異者「カカカカカカカカカカ!!」

 

ギュォォォォォォォ!!

 

エレナ「!」

リール「!」

 

すると禍異者は口を大きく開いて魔力を溜め始めた。

 

エレナ「マズイ!リール!!ここから離れるわよ!!」

リール「え、あ、はい!!」

 

タッタッタッ!!

エレナとリールはその場から離れた。だがその時も箒は使わず、走って逃げた。

 

禍異者「カカカカカカカ!!ッガァ!!」

 

バゴォォォォォォン!

すると禍異者はドス黒いブレスを放った。そのブレスは祭壇に当たり、祭壇を完全に破壊した。

 

リール「ひぇぇ…」

 

リールとエレナは祭壇の前の広場に避難していた。

 

リール「こ、こんな攻撃もしてくるんですね…」

エレナ「チッ…私も初めてよ。あんなに威力の高いものだとは思わなかったわ」

 

禍異者「カカカカカカカ!!」

 

ドシン!!ドシン!!

禍異者はリールとエレナの所へ向かう。

 

エレナ「リール!私が攻撃して引き付けるからあなたは強い魔法を放って!!」

リール「は、はい!!」

 

ダッ!!

エレナは禍異者から見て右側に走った。

 

エレナ「はぁっ!!魔弾(ブラック・ベルト)!」

 

バババババババババババ!!

エレナは闇属性の弾型の魔法を放った。

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

エレナの魔法は見事命中した。

 

禍異者「カカカカカカカ!!」

 

攻撃を受けた禍異者はすぐにエレナに狙いを定めた。

 

禍異者「ガガガガガガガガガ!!」

 

ドシン!!

禍異者はエレナに向かって腕を振り下ろした。しかしエレナは間一髪でその攻撃を避けた。

 

エレナ「くっ…」

 

禍異者「ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!」

 

ギュォォォォォォォ…バゴォン!

禍異者は先程と同じように口を開けて魔力を溜めて放った。

 

エレナ「軌道変換(パラティガ)!!」

 

キィン!!ドゴォォォォォン!!

すると禍異者が放った魔力が全く別の方向へ軌道が逸れて壁に激突した。

 

禍異者「!?」

 

禍異者は何が起こったのか分からなかった。

 

エレナ「…何が起きたのか分からない顔してるわね。それは当然。この魔法はあなたが取り込まれてから生まれた魔法なのよ。…つまり」

 

ギュォォォォォォォ!!

エレナは魔力を溜め始めた。

 

エレナ「これに関しては私の方が優位なのよ!!」

 

ビュン!バゴォォォォォォン!

エレナは溜めた魔力を放ち、禍異者に当てることが出来た。

 

禍異者「ガァァァァァァァァァ!!」

 

禍異者はその攻撃を受けて少しだけ仰け反ったがすぐに立て直した。

 

禍異者「カカカカカカカ!!」

 

ブォン!!

禍異者は腕を振り下ろした。

 

エレナ「無に帰す炎(ディミア・レヴ・フレア)!!」

リール「光爆(エレノア)!!」

 

バゴォォォォォォン!

エレナとリールが魔法を唱えると禍異者の腕が吹き飛んだ。

 

禍異者「アガァァァァァァァァァァ!!」

 

ドシン!!ドシン!!

禍異者は痛みに悶えていた。

 

エレナ「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

 

しかしエレナの方は魔力の消耗で疲れきっていた。

 

エレナ (ダメね…やっぱりここでは魔力の制限が…)

 

禍異者「イタイ…イタイ…イタァァァァァイ!!」

 

ブゥゥゥゥゥン…

禍異者の背中が光り出した。

 

エレナ「!!」

 

禍異者「アァァァァァァァァァァァ!!」

 

バゴォォォォォォン!

禍異者が叫び声をあげると同時に禍異者の背中から無数のレーザーが放たれた。

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

禍異者の背中から放たれた魔法は周囲の壁などに当たった。

 

エレナ「なっ…」

リール「わっ!」

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

すると砕けた壁の一部が岩石となってリールとエレナの所へ降り注いだ。

 

リール「わわわっ!」

 

リールはなんとか逃げ切った。

 

エレナ「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

 

エレナは疲れきっており、足が遅かった。

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

すると2つの岩石がエレナに向かって落ちてきた。

 

リール「エレナさんっ!!」

エレナ「!!」

 

ドゴォン!ドゴォン!

するとその2つの岩石はエレナの所へ落ちてしまった。

 

リール「エレナさぁぁぁぁぁぁん!!」

 

タッタッタッ!!

リールはすぐにエレナの所へ向かった。

 

ザザッ!!

リールはすぐにエレナのところに着いた。

 

リール「エレナさん!!エレナさ…」

 

リールは息を飲んだ。

 

エレナ「…」

リール「エ…エレナ…さん…?」

 

エレナはその2つの岩石に押しつぶされていた。胸から上と右手は無事だがそれ以外は全て岩石の下敷きになっていた。

 

リール「エレナさん!!」

エレナ「リ…リール…」

リール「エレナさん!今すぐこれをどけますので少しお待ちください!!」

エレナ「待って…」

 

そう言ってリールは立ち上がって岩石をどかそうとした。

 

リール「ぐっ…うぅぅぅ…」

 

リールは力一杯押した。だが岩石はビクともしなかった。

 

エレナ「リ…リール…」

リール「うぅぅぅぅぅぅぅ!!どいてくださぁぁぁぁい!!」

 

リールはずっと岩石を押し続けた。しかし岩石はビクともしなかった。

 

禍異者「ギギギギギギギギギギ!!」

 

ドシン!!ドシン!!

禍異者が近づいてきた。

 

リール「っ!!」

 

リールがそれに気づくとさらに力を込めて岩石を押した。

 

リール「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

エレナ「待って…リール…」

 

エレナは必死に声を出したが、リールには届かなかった。

 

エレナ「待って…お願い…リール…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールの精神世界

 

リール「!!」

 

リールは知らない世界にいた。そこは辺り一面真っ白で何も無かった。

 

リール「こ…ここは…」

???「…呼んでるよ」

リール「!!」

 

リールは声のした方を見た。そこにはリールと瓜二つの人物がいた。

 

リール「あ、あなたは…」

???「…さぁね」

リール「え…」

???「それよりも、あなたを呼んでいる人がいるよ。あなたの足元にいる人。その人の声を聞いてあげたら?」

リール「足元?」

 

リールは足元を見た。しかしそこには誰もいなかった。

 

リール「えっと…何も見当たらないのですが…」

???「ここにはいないよ。外の世界にいる。戻ったらあなたの足元にいる人の言葉を聞いて。何か話したそうだよ。その人は」

リール「え…それは一体…どういう…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

すると突然視界が揺らいだ。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…深淵 祭壇前の広場

 

リール「っ!!」

 

リールはまた深淵の景色に戻った。

 

リール「あ、あれ…私は…」

エレナ「リール…」

リール「!!」

 

エレナが足元から声をかけていた。

 

???「ほら、足元から呼んでるよ」

 

リール「!!」

 

リールはさっきの人の言葉を思い出した。そうしてリールは岩石を押すのをやめてエレナの口元に自分の耳を近づけた。

 

リール「はい!何でしょうか!」

エレナ「はぁっ…はぁっ…リール…」

リール「はい!」

エレナ「あなただけでも…今すぐここから離れなさい…」

リール「!!」

エレナ「あれは私には敵わない…でもリールなら勝てる…」

リール「っ…」

エレナ「でもこの状況じゃリールも負けちゃう…っだから…はぁっ…はぁっ…誰かを呼びに行って…ひとまずここから離れて…お願い…」

 

エレナはなんとか声を振り絞った。

 

リール「エレナさん…」

エレナ「お願い…誰よりもあなたの命の方が大事なの…あなたがあいつに取り込まれたら完全に終わりよ…だからお願い…逃げて…」

 

エレナの力が弱くなってきた。

 

リール「エレナさん!!」

エレナ「…」

 

スッ…

エレナの目が完全に閉じてしまった。

 

リール「エレナさん…エレナさん!!」

 

リールは何とかしてエレナを起こそうとした。

 

禍異者「ヴァハハハハハハハハ!!」

リール「!!」

 

そうこうしているうちに禍異者が真後ろに立っていた。

 

禍異者「イキオッタァァァァァァ!!シニオッタァァァァァァ!!アッハハハハハハハハハ!!」

リール「っ…」

禍異者「コレデワタシハ…ワタシハァァァァァァァ!!」

リール「…」

禍異者「カカカカカカカ!!」

 

禍異者はエレナが倒れたことに喜んでいた。

 

禍異者「イタダキマァァァァァス!!」

 

ガポッ!

禍異者が大きな口を開いた。

 

レナ「…汚いわよ。あなた」

 

バゴォォォォォォン!

突然禍異者の口が大爆発した。

 

禍異者「ガァァァァァァァァァァ!!」

 

ドシィィィィィン!!

禍異者は後ろに大きく仰け反った。

 

レナ「…うるさいわね。静かにできないの?」

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

 

リールの目の色が薄い黄色に変わっていた。それを見た禍異者は奇声を発した。その声はとても大きく、周囲にも大きく響いた。

 

エレナ「…」

レナ「…ちゃんと来れたじゃない。上出来よ」

 

ザッ…ザッ…ザッ…

レナは数歩前進した。

 

禍異者「ガァァァァァァァァァ!!」

 

ギュォォォォォォォ!!

禍異者が魔力を溜め始めた。

 

レナ「その程度なのね」

 

キィン!バゴォォォォォォン!

 

禍異者「!?」

 

突然禍異者の口が大爆発した。

 

禍異者「カァァァァァァァァ!!」

 

禍異者はまた奇声を発した。

 

レナ「うるさいわねあなた。しかも汚い。早く離れて。私のお母さんがあなたのせいで汚れてしまうわ」

禍異者「ガッ…ガガガッ…」

 

禍異者の口は2回も大爆発してとうとう口が閉じなくなってしまった。

 

レナ「滑稽な姿。見たくないわね」

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

 

禍異者は咆哮した。

 

レナ「だから言ってるじゃない。うるさいって」

 

バゴォォォォォォン!

 

禍異者「!?」

 

突然禍異者の足が全て吹き飛んだ。

 

ドシィィィィィン!!

足を失った禍異者はバランスを崩して倒れた。

 

禍異者「ガァァァァァァ!!」

レナ「…」

 

レナは禍異者を見下していた。

 

レナ「あなたは弱い。弱いのよ。長年お母さんに魔力を吸い取られていたからね。もう残りも少ないでしょ」

禍異者「ガッ…」

レナ「もう眠りなさい。二度と起きてこないで」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

突然3つの気配が深淵に現れた。

 

メイビス「な…これは…」

イコイ「ねぇ見て見て!!あの人すごい魔力だよ!!」

メア「…あなたは」

 

レナ「…」

 

現れたのは各層の扉を守護しているメイビス、イコイ、メアの3人だった。

 

メア「なぜあなたが…」

レナ「…離れなさい。死にたくないなら」

メア「っ…」

イコイ「ちょっとうちのメアに失礼でしょ!」

メア「やめてイコイ。下がりましょ」

イコイ「でも!!」

メア「イコイ!!」

イコイ「っ!!…分かったよ」

 

ジリッ…

メア、イコイ、メイビスの3人がその場から下がろうとした時

 

禍異者「キオッタァァァァァァ!!ワタシノエサァァァァァァァ!!」

 

ガパッ!!

禍異者はその3人の気配を感知するとすぐさま行動を起こした。

 

メア「なっ!」

メイビス「マジか!!」

イコイ「え!?なにあれ!?」

禍異者「ガァァァァァァ!!」

 

ドゴォン!!

禍異者は地面ごと3人を飲み込んだ。

 

レナ「…愚かな」

 

ドクン!!

禍異者は3人の力を得ることができた。

 

禍異者「グゥゥゥ…ガァァァァァァァ!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

3人の力を吸収した禍異者はたちまち無くなった腕や足が元に戻り、今まで負ったダメージ分の体力が回復し、万全な状態となった。

 

レナ「…はぁ、厄介ね」

禍異者「アッハハハハハハハハハ!!コノチカラ!!ワタシニフサワシイ!!」

 

禍異者はレナを見た。

 

禍異者「アタラシイワタシノチカラ…ソノミデアジワウガイイ!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!

禍異者は魔力を貯め始めた。

 

レナ「…早急に片付ける必要があるようね」

 

ヒュッ!

レナはリールの杖を持った。

 

レナ「…これでどうにかなればいいけど」

禍異者「キエテナクナレェェェェェェェ!!」

 

バゴォォォォォォン!

禍異者は溜めた魔力を解き放った。

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

レナの周囲に光の粒が現れた。

 

レナ「…これが私のとっておきの魔法」

 

ビリビリビリビリ!!

禍異者が放った魔力が寸前のところまで来ていた。

 

レナ「闇を灯す天光(アマテラス)!!」

 

バゴォォォォォォン!

レナはレーザー型の魔法を放った。

 

ドゴォォォォォォォォン!!

禍異者の魔法とレナの魔法がぶつかった。その衝撃は凄まじく、周囲の岩や壁にまで衝撃が届いた。

 

ピシッ…

すると壁にヒビが入った。

 

禍異者「ガァァァァァァァァァァ!!」

レナ「はぁっ!」

 

バゴォォォォォォン!

2人の魔法はぶつかった後に大きな爆発となった。

 

禍異者「カカカッ…」

 

ビュン!

 

禍異者「!?」

 

爆発によって消えたと思っていたレナの魔法は全く衰えることなく禍異者の方へ飛んだ。

 

禍異者「ガァァァァァァ!」

 

バゴォォォォォォン!

レナの魔法は禍異者に見事命中した。

 

禍異者「オゴォッ!」

 

禍異者は大きく仰け反った。

 

レナ「…この程度…ね」

 

スッ…

レナは禍異者に杖を向けた。

 

レナ「…さようなら」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

すると杖の先に魔力が集まり始めた。

 

レナ「…これで最後ね」

 

ギュォォォォォォォ!!

集まった魔力はやがて1つの光の玉となった。

 

レナ「…天光玉(ミアリス)

 

ビュン!

レナは光の玉を作り出し、それを禍異者に放った。

 

禍異者「グゥゥゥ…ガァァァァァァァァァ!!」

 

バリバリバリバリ!!ドゴォォォォォォォォン!!

禍異者は口からレーザーのようなものを放った。

 

ヒュゥゥゥゥゥ…ドゴォォォォォォォォン!!

レナの魔法と禍異者のレーザーがぶつかった。

 

レナ「…」

禍異者「ガァァァァァァァァァァァ!!」

 

バチバチバチバチ!!

2つの魔法は衝撃の影響で周囲に拡散された。

 

レナ「…しつこいわね。あんまりしつこいと…」

 

ヒュッ…

レナは杖を禍異者に向けた。

 

レナ「相手に嫌われるわよ!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

レナは魔力を溜め始めた。

 

レナ「移動魔法(テレポート)

 

シュッ!

レナは一瞬にしてその場から消えた。

 

禍異者「ガァァァァァァァァァ!!」

 

シュッ!

 

禍異者「!?」

 

レナは突然禍異者の目の前に現れた。

 

レナ「天光玉(ミアリス)

 

ドゴォォォォォォォォン!!

レナは至近距離で魔法を放った。

 

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

 

ドシィィィィィン!!

禍異者は大ダメージを受けて倒れた。

 

レナ「…」

 

レナは宙に浮いたまま動かなかった。

 

禍異者「ガガッ…ガガガッ…」

 

禍異者はまだやられていなかった。

 

レナ「…ほんとしつこい」

 

禍異者「ガッ…ガガッ…」

 

ベキベキッ!!

突然禍異者の体が変わり始めた。

 

禍異者「ガァァァァァァ!!」

 

ドゴォォォォォォォォン!!

禍異者は煙に包まれて見えなくなった。

 

レナ (…姿が変わるのかしら)

禍異者「…」

 

やがて煙が晴れてきた。

 

レナ (…そろそろ時間ね。ごめんね)

 

シュッ!

レナは広場に戻った。

 

レナ「ごめんね。もう少し戦いたかったけどダメみたい。せめてあの人とあなたの体力と魔力を回復させておくから」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…

レナは魔力を溜めた。

 

レナ「体力回復(ヒール)魔力回復(ヒーラマ)!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

レナが魔法を使った瞬間、エレナとリールの体力と魔力が全回復した。

 

レナ「…じゃあ、頑張ってね」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

リールの目が普段の色に戻った。

 

リール「…あれ…私は…」

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

リール「!?」

 

リールは突然の咆哮に驚いた。

 

リール「い…一体何が…」

エレナ「うっ…痛た…」

 

エレナが起き上がってきた。エレナの上に乗っていた岩石はあらかじめレナがどかしていた。

 

リール「エレナさん!!」

 

タッタッタッ!

リールはすぐにエレナの所へ向かった。

 

リール「エレナさん!」

エレナ「リール…あなた…」

 

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

 

エレナ「!!」

リール「!!」

 

禍異者が咆哮した。2人が突然の咆哮に驚いていると、目の前を何かが飛んだ。

 

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

 

エレナ「嘘…でしょ…」

リール「そんな…」

 

バサッ!バサッ!

目の前にいたのは禍異者だった。禍異者は翼を生やして飛んでいた。

 

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

エレナ「まさか飛ぶとはね…」

リール「これじゃあ…」

エレナ「一体どうして…」

リール「エレナさん…」

エレナ「…リール」

リール「はい…」

エレナ「…箒に乗って戦うわよ」

リール「!!」

エレナ「もちろん箒を使えば魔力を吸い取られちゃうけどあれだと私たちが一方的に不利よ。だったら魔力を吸い取られてでも同じ土俵で戦うべきだわ」

リール「は、はい!」

エレナ「さ、箒を出して。戦うわよ」

リール「はい!」

 

シュッ!シュッ!

リールとエレナは箒を取り出した。

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

すると深淵はすぐさま魔力を吸い取り始めた。

 

エレナ「くっ…」

リール「エレナさん!」

エレナ「…行くわよリール…第2ラウンドよ!!」

 

トンッ…ヒュゥゥゥゥゥ!

エレナとリールは箒に乗って空を飛んだ。




〜物語メモ〜

禍異者
リールの母 リノを取り込んでいるドレインの王。今まで動かなかったこともあってレナに遅れを取ったが、リールとエレナ相手には十分に戦えていた。主な攻撃は腕を使った物理攻撃と口から吐き出すブレスやレーザー型の魔法。

闇を灯す天光(アマテラス)
レナが使った魔法。レーザー型の魔法でリールが使った光属性魔法の中で最も強い。

天光玉(ミアリス)
レナが使った魔法。リールの使う光玉(ライダラ)の何倍もの威力を誇る魔法で同程度の威力の魔法が当たるまで爆発しない。逆に同程度のものが当たれば即大爆発を起こす。

移動魔法(テレポート)
無属性魔法の一種。移動に特化した魔法で特定の位置に瞬時に移動出来る。

体力回復(ヒール)
無属性魔法の一種。体力を回復させる魔法。回復量はその人の魔力に左右される。

魔力回復(ヒーラマ)
無属性魔法の一種。魔力を回復させる魔法。回復量はその人の魔力に左右される。


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第62話 リノとエレナの最後の魔法

私の名前はリール。

今深淵にいます。

私とエレナさんは禍異者と対峙しています。

禍異者はすごい魔力を持っていてどの攻撃も威力が高いです。

エレナさんは禍異者の攻撃で怪我をして動けなくなっていたんですが、不思議なことにその時から私の記憶が無いんです。

私が気づいた時には禍異者は大声を上げて空を飛んでいたんです。

一体なぜそうなっていたのか記憶が無い時に何かあったのかと色々と気になることがあります。

ですが今は禍異者をやっつけるために箒に乗って戦うつもりです。

箒に乗っていると魔力が吸い取られるそうなんですが、地上で戦うよりも良いとエレナさんが言っていました。

何やら第2形態みたいな感じになってますが、スカーレットやアンナのいる世界にドレインを出現させないようにするために頑張ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エレナ「…行くわよリール…第2ラウンドよ!!」

 

トンッ…ヒュゥゥゥゥゥ!

エレナとリールは箒に乗って空を飛んだ。

 

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

 

ブゥゥゥゥゥゥン…

禍異者が咆哮すると背中の突起が紫色に光った。

 

エレナ「リール!攻撃が来るわ!回避して!」

リール「はい!」

 

ドゴォォォォォォォォン!!

すると禍異者の背中から無数のレーザーが放たれた。

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

そのレーザーは壁に当たったり床に当たったりと縦横無尽に暴れ回る。

 

リール「わっわわっ!」

 

リールは必死で逃げていた。

 

エレナ「あいつ…」

 

エレナもリールと同じように回避するのに全力を注いでいた。

 

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

禍異者が口を開けて魔力を溜め始めた。

 

エレナ「リール!大きいのが来るわよ!!」

リール「!?」

 

バゴォォォォォォン!

エレナがそう言った瞬間に禍異者の口からレーザーが放たれた。リールは何とかその攻撃を回避することができた。

 

リール「ひぇぇ…」

エレナ「っ!」

 

ビュン!

エレナは禍異者に近づいた。

 

エレナ「魔弾(ブラック・ベルト)!!」

 

バババババババババババ!!

エレナは魔法を放ち始めた。

 

リール「わ、私も!」

 

リールも攻撃に参加することにした。

 

リール「はぁっ!光玉(ライダラ)!!」

 

バァン!バァン!バァン!バァン!

リールはエレナほど連射できないが、それでもなるべく速く撃った。

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

エレナとリールの魔法はしっかりと禍異者に当たった。

 

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

 

ビュン!

禍異者は一瞬にしてその場から消えた。

 

リール「えっ!」

エレナ「リール!!後ろ!!」

リール「!?」

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

 

ドシン!!

リールの後ろに回り込んでいた禍異者は自分の腕を振り下ろした。

 

リール「ぐぁっ…」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!!

その攻撃はリールに命中し、リールは吹き飛ばされてしまった。

 

エレナ「リール!!」

 

ビュン!

 

エレナ「!?」

 

エレナがリールの事を気にしている時に禍異者がエレナに接近した。

 

エレナ「しまっ…」

 

ドゴォン!

エレナはそのまま何も出来ずに禍異者の攻撃を受けてしまった。

 

ヒュゥゥゥゥゥ!!ドゴォン!!

エレナもリールと同じように攻撃を受けてしまい、地面に叩きつけられた。

 

リール「ぅっ…ぐっ…」

エレナ「この…」

 

2人はなんとか立ち上がった。

 

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

 

禍異者は咆哮した。

 

エレナ (このままじゃ負ける…今度こそは…)

リール (どうにかしないと…この状況を打破できる何かが…)

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

 

すると禍異者の背中の突起が紫色に光った。

 

エレナ「っ! あれは…」

 

エレナはそれを視認することができた。

 

エレナ「リール!今すぐここから離れるわよ!」

リール「え、あ、はい!」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

エレナとリールは箒に乗ってその場から離れた。

 

禍異者「ガァァァァァァァァァ!!」

 

バゴォォォォォォン!

禍異者は口に魔力を溜めてレーザーとして解き放った。

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

すると地面が崩れ落ちてしまった。

 

リール「ひぇぇ…」

エレナ「全く…魔力だけ見たら一級品ね」

禍異者「グルルルルルル…」

 

エレナとリールは禍異者と睨み合う。

 

エレナ「魔弾(ブラック・ベルト)!!」

 

バババババババババババ!!

すると最初に動いたのはエレナだった。エレナは先程とは比べ物にないくらいに沢山の弾型の魔法を放った。

 

禍異者「ガァァァァァァァァァ!!」

 

キィン!!キィン!!キィン!!キィン!!

だがその魔法は全く届かなかった。

 

エレナ「な…」

リール「え、あれって…結界?」

禍異者「グルルルルルル…」

 

禍異者は結界を展開してエレナの魔法を防いだ。

 

エレナ「全く…ほんとに厄介。しかもあれ光属性魔法しか通さないやつでしょ。私じゃどうにもならないじゃない」

リール「では私が…」

禍異者「ガァァァァァァ!!」

リール「!!」

 

ギュォォォォォォォ!!

禍異者は魔力を溜め始めた。

 

エレナ「…リール。よく聞いて」

リール「はい!」

エレナ「今まで攻撃してきて分かったけどあいつの攻撃は全部攻撃までにラグが生じているわ」

リール「ラ、ラグ?」

エレナ「つまりね、攻撃するまで時間がかかるからその間は完全に無防備なのよ。だからそれを狙えば…」

リール「分かりました!やってみます!」

エレナ「…できるわね」

リール「はい!やってみます!」

 

スッ!

リールは杖を構えた。

 

エレナ「私が引きつけるわ。あなたは魔力を溜めなさい」

リール「はい!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

リールは魔力を溜め始めた。

 

エレナ「さぁ、しばらく私と遊びなさい」

 

ビュン!

エレナは箒に乗って禍異者の背後に回った。

 

エレナ「魔弾(ブラック・ベルト)!」

 

バババババババババババ!!

エレナはたくさんの魔法を放った。

 

キン!キン!キン!キン!

だが禍異者が展開した結界によって攻撃は弾かれてしまった。

 

エレナ「っ…やっぱり打つ手無しね…」

禍異者「ガァァァァァァァァァァァ!!」

 

禍異者はエレナの方を振り返った。

 

エレナ「リール!!今よ!!」

リール「はい!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

リールの魔力が膨張した。

 

リール「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

リールは禍異者に杖を向けた。

 

リール「光玉(ライダラ)!!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

リールは普段よりもたくさんの魔法を放った。

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

リールの魔法は禍異者の結界に見事命中した。

 

ピシッ…パキッ…パキッ…

禍異者の結界にヒビが入った。

 

リール「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バリィン!!

とうとう禍異者の結界が完全に破壊された。

 

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

 

禍異者は結界が割れた衝撃でダメージを負った。

 

リール「やった!!」

禍異者「ガァァァァァァァァァァァ!!」

 

ギュォォォォォォォ!!

 

リール「!?」

 

リールが喜んでいると禍異者がリールの方を振り返り、魔力を溜め始めた。

 

エレナ「リール!!」

リール「!!」

禍異者「ガァッ!!」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

禍異者は溜めた魔力を放とうとしたが横から攻撃を受けてしまった。

 

バゴォォォォォォン!

すると禍異者の魔力が爆発した。

 

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

 

禍異者の魔力が爆発したことで禍異者は口に大きなダメージを負った。

 

禍異者「ガッ…ガガッ…」

 

禍異者は口を大きく開けたまま閉じなかった。

 

リール「エレナさん…」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…スタッ!

箒に乗っていたエレナが降りてきた。

 

エレナ「大丈夫!?リール!」

リール「はい!大丈夫です!」

エレナ「攻撃が間に合って良かったわ…」

リール「ありがとうございます!」

 

禍異者「ガァァァァァァァァァァァ!!」

 

禍異者は大きな声を上げた。

 

リール「っ!」

エレナ「…あれはもうダメね」

リール「ダメ…とは」

エレナ「口が閉じなくなってるから魔力が分散してるわ。あれだといくら魔力を溜めても威力の低い魔法になるわ」

リール「へ、へぇ…」

 

禍異者「ガァァァァァァァァァァァ!!」

 

ドシン!!ドシン!!

禍異者は大きすぎるダメージに悶えていた。まだ飛行できるくらいの体力はあるが、飛ぶだけで精一杯なくらいだった。そのため、近くの壁に何度も激突していた。

 

エレナ「…空を飛ぶのもやっとなくらいね」

リール「は…はい…そうですね…」

 

ドサッ…

リールは膝を着いた。

 

エレナ「リール!」

リール「エレナさん…魔力が…」

エレナ「!!」

 

リールはエレナと同じように箒に乗っていたため、魔力の消費が激しかった。もちろんエレナも箒に乗っていたが、エレナの魔力の保有量はリールより少し多いため、まだ大丈夫だった。

 

エレナ (明らかに進行が早い…何故…)

 

エレナは魔力の消費の激しさに疑問を抱いていた。

 

エレナ (いくらなんでも早すぎる。リールの魔力は私と同じくらい…だけど…)

リール「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

 

リールはどんどん体力を奪われていた。

 

エレナ「リール。大丈夫?」

リール「すみませんエレナさん…少し…頭がボーッとします…」

エレナ「!!」

 

エレナはこの時、ある事を思い出した。

 

エレナ (…まさか…)

 

エレナは最初にここに来た時も同じような症状に侵されていた。頭に酸素が回らず、意識が薄れていくような感覚。今のリールにも同じような事が起きていた。

 

エレナ (なんとかしないと…でもここじゃ酸素が…)

 

禍異者「ガァァァァァァァァァァァ!!」

 

エレナ「!?」

 

すると禍異者が口から魔力を放とうとした。

 

エレナ「まさかあれを撃つ気?でもあいつの魔力は分散して…」

禍異者「ガァァァァァァ!」

 

確かに禍異者の魔力は分散しているが、何故か少しずつ魔力が膨張をし始めた。

 

エレナ (おかしい…何故…)

リール「エ…レナ…さ…」

エレナ「!」

 

リールの目が段々と閉じてきた。

 

エレナ「リール!!」

リール「ご…め…」

 

そうして完全にリールの目が閉じてしまった。

 

エレナ「リール!!リール!!」

 

エレナは何度も名前を呼んだ。だがリールの目が開くことはなかった。

 

エレナ「リール…」

禍異者「ガァァァァァァァァァァァ!!」

 

ギュォォォォォォォ!!

禍異者は無慈悲にも魔力を溜めていた。

 

エレナ「…こうなったら」

 

ジリッ…

エレナはゆっくりと立ち上がった。

 

エレナ「…リール。私こそ謝らなければならないわ」

 

クルッ…

エレナは禍異者の方を振り向いた。

 

エレナ「あなたをお母さんに会わせてあげると言っておきながらその約束を果たせなかった。…これは私のせい」

 

スタスタスタ

エレナは禍異者の方へ歩き始めた。

 

エレナ「…あなたを生かすのが私の役目。あなたをお母さんに会わせるのが私との約束。…だから」

 

ザッ…

エレナは立ち止まった。

 

ブゥン…ブゥン…ブゥン…ブゥン…

するとエレナの周囲に魔法陣が複数展開された。

 

エレナ「…私の最後の魔法。あなたに全部あげる。これまで私が研究してきた正真正銘最後の魔法」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

エレナの周囲に展開された複数の魔法陣が共鳴し始めた。

 

エレナ「…ラストオーダー」

 

キィン!!キィン!!キィン!!キィン!!

すると周囲の魔法陣が光り出した。

 

エレナ「極大魔力消滅魔法(マギ・オートマタ・ソル・ディメンション)

 

ビリビリビリビリ!!

周囲の魔法陣が各属性魔法の色に変色し、魔力を溜め始めた。

 

エレナ「…リノ、リーナ、あなたたち…ごめんね。私の勝手でこんな魔法使っちゃって。…でもこれしかないわ。こいつを葬るくらいしないとこの戦いは終わらないわ」

 

エレナの頭にはリノや魔女さん、エレナの本体ともう1人の分身が浮かんでいた。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

魔力の膨張が最終域まで達した。

 

エレナ「…最後まで身勝手な私でごめんなさいね」

 

禍異者「ガァァァァァァァァァァァ!!」

 

バゴォォォォォォン!

禍異者は溜めた魔力を放った。

 

エレナ「…チェックメイト」

 

ビリビリ!!バゴォォォォォォン!

エレナも溜めた魔力を放った。

 

ビリビリビリビリビリビリ!!

両者の魔力がぶつかり合う。

 

エレナ「…リール。あとは任せるわね」

 

キィン!!ドゴォォォォォォォォン!!

両者の魔力がぶつかり合い、大爆発を起こした。

 

エレナ「っ…」

 

ドサッ…

エレナはその場に倒れてしまった。

 

禍異者「ギャアアアアアアアアアア!!」

 

禍異者はエレナの魔力を相殺したかに思えたが、実際にはエレナの魔力の方が上回っており、禍異者はエレナの魔力を受けてしまった。そのせいで禍異者は体の大半を失い、顔も半分削れていた。

 

ドシン!!ドシン!!

禍異者はあまりに大きすぎるダメージに戸惑っており、壁に何度も激突していた。

 

禍異者「キャアアアアアアアア!!」

 

ズォッ!!

すると禍異者の体が崩れ始めた。

 

禍異者「アァァァァァァァァァァ!!」

 

禍異者は失っていく体をどうにかしようと奮闘した。だが無慈悲にも体の消失は抑えられなかった。

 

禍異者「アァァァァァァァァァァ!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

すると禍異者の体は完全に消失した。

 

リール「っ!!」

 

その時丁度リールは目を覚ました。

 

リール「あれ…私…」

 

リールは周囲を見渡した。

 

リール「!!」

 

リールは倒れているエレナを見つけた。

 

リール「エレナさん!!」

 

タッタッタッ!!

リールはエレナの方へ走った。

 

リール「エレナさん!!エレナさん!!」

 

エレナの所へ着いたリールはエレナを起こそうとした。しかしエレナは一向に起きなかった。

 

リール「どうして…エレナさん…」

エレナ「…」

 

エレナは全く顔の表情を変えなかった。

 

リール「エレナさん…」

 

コツ…コツ…コツ…コツ…

 

リール「!」

 

リールは誰かの足音を聞いた。

 

リール「…魔女さん」

魔女さん「…」

 

その足音の正体は魔女さんだった。魔女さんは悲しそうな表情を浮かべていた。

 

リール「魔女さん…エレナさんが…エレナさんが…」

魔女さん「…」

リール「ど…どうすればいいですか…どうすればエレナさんを元に戻せますか」

魔女さん「…」

リール「答えてください魔女さん…」

魔女さん「…」

リール「答えてください!!」

 

リールは大声で言った。

 

魔女さん「…」

 

だが魔女さんは何も言わなかった。

 

リール「なんで…何も言わないんですか…魔女さん…」

魔女さん「…」

リール「どうしてですか!!」

 

リールはまた大声で言った。

 

魔女さん「…」

 

しかし魔女さんは更に無言を貫いた。

 

リール「ぐっ…うぅぅぅ…」

 

リールは涙を流した。

 

魔女さん「!」

リール「ごめん…なさい…私がもっとしっかりしていれば…」

魔女さん「…」

リール「ごめんなさい…エレナさん…」

 

ポンッ…

突然リールの頭に何かの感触があった。

 

リール「…っ?」

魔女さん「…」

 

それは魔女さんがリールの頭を撫でていたのだった。

 

リール「魔女…さん…?」

魔女さん「…リール」

リール「はい…」

魔女さん「…まだ魔力はありますよ」

リール「!!」

魔女さん「ただ消費が激しすぎて意識が薄くなっているだけです。魔力を注げば元に戻りますが、それだとこの人が成し遂げたかったことを遮ってしまいます」

リール「え…それは…どういう…」

魔女さん「その人の手を見てください」

 

そう言って魔女さんはエレナの手を指さした。

 

リール「!」

 

そこには光を帯びた小さな粒がエレナの手の中に握られていた。

 

魔女さん「これは魔粒子。魔力を極限まで小さくしたものです。普段は更に小さいのでほぼ目に見えないんですが、それが目に映る上にここまで大きいものです。あなたのために残していたと思いますよ」

リール「私の…ために…」

魔女さん「この人はあなたに託すためにそうしたと思いますよ。…受け取ってあげてください」

リール「…」

 

リールは魔粒子に触れてみた。

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…ポンッ!

すると魔粒子が弾けた。更に小さな魔粒子に分裂し、リールの体に入っていった。

 

リール「え…これは…」

 

その瞬間リールの頭にたくさんの知識や情景が映し出された。

 

リール「風景…魔法…魔導書まで…」

 

その映像は少しして途切れた。

 

リール「あれ…見れなくなった」

魔女さん「…シンクロしたようですね」

リール「シンクロ…?」

魔女さん「先程の魔法をあなたも使えるようになりましたよ。リール」

リール「先程の魔法…?」

魔女さん「はい。あの魔法であれば国を同時に4つ消し飛ばせると思いますよ」

リール「え!4つ…」

魔女さん「…でも今回はそのお陰で禍異者は葬られましたよ。今は大獄炎にいるのではないでしょうか」

リール「大獄炎…」

魔女さん「…さてリール。あとはドレインを全て潰すだ…」

 

???「あらぁ、どこ行く気ですか?リーナ」

 

魔女さん「っ!!」

リール「!?」

 

魔女さんとリールは突然現れた膨大すぎる魔力に驚きを隠せなかった。

 

???「折角何度も来てくれるのにしてくれることと言えばお話を聞くだけ。それだとつまらないですよ。今度は私と遊びませんか?リーナ」

 

魔女さん「…」

 

魔女さんは突然現れた女性を見て震えていた。

 

リール (魔女さんが震えてる…それにあの隣の人は誰でしょうか)

???「フフフッ…」

 

その人は不敵な笑みを浮かべていた。

 

魔女さん「リール」

リール「はい」

魔女さん「…下がって」

リール「え…」

魔女さん「早く」

リール「は、はい…」

 

スタスタスタ

リールは少し場所を離れた。

 

???「久しぶりですね。こうやって顔を合わせるのは」

魔女さん「…久しぶりじゃないですよ。あれからずっと顔を合わせてますよ。あなたは分からないかと思いますが」

???「あ、そうでしたね。ですがあなたが見ていたのは本来の私ではないでしょう?」

魔女さん「…」

???「禍異者に取り込まれた私。異形な私ですよ」

魔女さん「…そうですね」

???「でも今は本物の私ですよ。嘘偽りのない純粋な私。あの時のリノですよ」

魔女さん「…」

リール「え…リノ…」

 

その女性の名前はリノ。リールの母親で禍異者によって取り込まれていた人物。過去には最後の光属性魔法の適性者とまで言われていた。

 

リノ「…フフッ。ねぇリーナ。久しぶりに対決してみませんか?」

魔女さん「対決…」

リノ「そうです。前にもやりましたよね?エレナと3人で魔法の対決。あれやってみませんか?いつも通りどんな魔法を使ってもいいので」

魔女さん「…残念ね。エレナはここにはいないですよ」

リノ「あれ、ではあそこで寝ているのは?」

魔女さん「あれは彼女の分身ですよ」

リノ「分身…ということは私たちはまだ禁忌の軛から逃れられていないと…」

魔女さん「…そうですよ」

リノ「…そうですか。でもいいです。今ここにリーナがいるのでしたら2人でやりましょう。昔みたいに」

魔女さん「…」

リノ「あとそれと1つ気になってるんですが。その女の子は誰ですか?」

魔女さん「!」

 

リノはリールを指さして聞いた。

 

リノ「私と同じ気配を感じますね」

 

魔女さんはこの時少し怒りが出てきていた。

 

魔女さん「…あなた、分からないんですか」

リノ「?」

魔女さん「…あなたがお腹を痛めて産んだ子なんですよ。母親であるあなたがその言葉を口にしますか」

リノ「あ、私の娘なんですね。どうりで似ているわけです」

魔女さん「…あなた、本当にリノですか」

リノ「はい。そうですが」

魔女さん「…次元魔法」

リノ「?」

魔女さん「あなたが使える次元魔法は第何次元魔法ですか」

リノ「次元魔法?」

魔女さん「…」

リノ「よく分からないですが、第1次元魔法なのでは?」

魔女さん「…」

 

魔女さんはその答えに確信を持った。

 

魔女さん「…あなた、リノではないですね。誰ですか」

リノ「?」

魔女さん「リノの使う次元魔法は第1次元魔法ではありませんよ」

リノ「!」

魔女さん「…これでようやくリノじゃないと分かりました。…まだ生きてますね。禍異者が」

リノ「…フフッ…こんな形で本人か偽物かを確認するなんて、嫌な人」

 

ゴウン…シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

リノは突然黒い瘴気に包まれた。

 

???「これだと私が完全に不利じゃないですか」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…

やがて黒い瘴気が晴れた。

 

禍異者「…でも、この人の友人故に分かる質問でしたね。狂気の魔女 リーナさん」

リール「!」

 

その人は姿を現した。さっきの人とあまり見た目は変わらないが、角が生えたり体にいくつかの紋章が刻まれていた。

 

禍異者「…さて、私の外殻が全て消えちゃいましたので、ここからは私本人が戦いましょうか」

魔女さん「…」

禍異者「杖を構えてください。今から殺し合いを始めますよ」




〜物語メモ〜

極大魔力消滅魔法
(マギ・オートマタ・ソル・ディメンション)
エレナが使った魔法。エレナの中にある最大魔力を全て魔法に変換して解き放つ。威力はエレナの魔法の中で最も強く、放てば国を4つ同時に消し飛ばすことができる。この魔法は全属性魔法を使って行われるため、光属性魔法以外を吸収するドレインや禍異者にも大ダメージを与えることができる。今回は光属性魔法のみのダメージとなったが、それでも禍異者を消し去ることができる程の威力を持つ。

魔粒子
魔力を極限まで小さくしたもの。こうすることで自身の魔力を誰かに分け与えることができる。その際にその人が経験した魔法や見た情景、読んだ魔導書など、その人に関わる記憶も全て引き継がれる。そのため、魔法の使い方やメリット、デメリットなどは全て頭に入っている状態になる。普段は小さすぎて見えないくらいだが、エレナはリールに持たせる分全てを分け与えるため、目に見える上に魔粒子の大きさも通常よりも何倍もの大きさになっていた。


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第63話 リノと破壊される柱

私の名前はリール。

今深淵にいます。

あの大きな禍異者は私が知らない間に消えていました。

何が起こっていたのかは分かりませんが、これでスカーレットやアンナのいる世界にドレインが現れることはなくなったと思います。

それから魔女さんが私のところに来てくれました。

魔女さんは何も言いませんでしたが、ずっと私の方を見ていました。

すると魔女さんが急にエレナさんの手に何かあると仰ったので私がエレナさんの手を見ると小さな光の粒がありました。

魔女さん曰く、魔粒子?というものだそうです。

私がその魔粒子を手に取るとエレナさんの過去の記憶や魔法、魔導書…そして禁忌について知ることができました。

魔女さんはエレナさんが使っていた魔法を使えるようになっていると仰ってましたが、本当なのでしょうか…。

私があのエレナさんのような魔法を使えるのでしょうか。

不安でしかありません。

それから少し話しているととてつもなく大きな気配がそこに現れました。

そこには女性が1人だけでしたが、私とは比べ物にならないくらいの魔力を持っていました。

何やら魔女さんと面識があるらしく、魔女さんはその人と何か話していました。

あまり話の内容は分からなかったんですが、何やら戦う雰囲気になっています。

もし何かあったら私も加勢できるように準備しておこうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔女さん「っ…」

禍異者「…いきますよ」

 

バッ!

禍異者は魔女さんに掌を見せた。

 

禍異者「あなたなら何をするのか分かるはずですよ」

 

グッ!

すると禍異者は拳を握った。

 

ブゥン!ブゥン!ブゥン!

すると魔女さんの周囲に目に見えない丸い空間が出現した。

 

魔女さん「…」

 

魔女さんは周囲を警戒していた。しかし魔女さんには周囲の丸い空間は見えていなかった。

 

禍異者「 "圧" 」

 

ドシン!!

すると魔女さんの周囲にあった丸い空間が一斉に魔女さんを押し潰した。

 

魔女さん「がっ…」

 

魔女さんは突然の攻撃に驚いて反応が遅れた。魔女さんは何も出来ないまま周囲の丸い空間に押し潰されていた。

 

魔女さん「こ…のっ…」

 

魔女さんは何とか脱出しようとしたが、目に見えないためどうすればいいか分からなかった。

 

禍異者「あら、あなたはこの人の友人なんですよね?だったらこの魔法も知ってるはず。…なのに何故今驚いているのでしょうか」

魔女さん「あっ…がっ…」

 

魔女さんは周囲の圧力が強すぎて言葉が出なかった。

 

禍異者「…まぁいいです。この程度のことも知らなかったなんて思いもよりませんでしたが、それだと好都合ですね。これから使う魔法も全て知らなさそうですし」

 

スッ…

禍異者は不思議な手の形を作った。

 

魔女さん「!?」

 

魔女さんはその手の形に見覚えがあった。禍異者が作った手は薬指と親指をくっつけたものだった。両手ともに同じで右手は指先が上を向き、左手は指先が下を向いていた。

 

魔女さん「マズイ…」

 

魔女さんはその手の形に見覚えがあったからか、一瞬で危機感に襲われた。

 

魔女さん「今すぐここから出ないと…なんとかして…」

 

魔女さんは必死に脱出しようとした。しかし形を持たない空間のため、対処のしようがなかった。

 

禍異者「ではいきますよ」

 

ブゥン…

すると禍異者の手の前に魔力が溜まり始めた。

 

禍異者「最近知ったんですよ。この人の魔法について。どれもとてもすごい魔法ですよ。それを知ってから誰かに使ってみたいと思っていたんですよ。でも生憎体の自由がきかなかったから魔法が使えなかったんですよね」

 

キィン!!

魔力が溜まり終えた。

 

禍異者「さ、いきますよ。特大の魔法を受けてください」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

魔力が急激に膨張した。

 

禍異者「光が導く最良の一手(サーフェス・ロミオ・カタラルト)

 

ドォォォォォォォォォォン!

するとその魔力が大きな気弾となって魔女さんの方へ飛んだ。

 

魔女さん「!!」

 

その間魔女さんは必死に脱出しようとしたが、魔女さんが気づいた時には禍異者の魔法が目の前にあった。

 

バゴォォォォォォン!!

その瞬間、とてつもない爆発と音が周囲に響いた。

 

ビュォォォォォォォォ!!

それと同時に爆風が周囲に広がった。

 

リール「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

リールはその爆風で吹き飛ばされてしまった。

 

ズサァァァァァァァ!!

リールは結構距離を離されてしまった。

 

リール「す…すごい…なんですかあの魔法は…」

 

禍異者「…」

 

禍異者は魔女さんの方を見ていた。

 

禍異者「…やはりあなたはすごいですね」

魔女さん「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

 

魔女さんは先程の魔法を受けてなお立っていた。

 

禍異者「あの魔法、この人の中で2番目に強い魔法なんですが、それでも耐えますか」

魔女さん「舐めないでください…これでも私は…リノの友人ですよ…」

禍異者「…そんなの知りませんよ。結局あなたがこの場に立っているとなると最大魔力をぶつけるくらいしないと死なないってことですよね」

魔女さん「はぁっ…はぁっ…いきなり魔力を大きく削る魔法を使うあたりあなたは私たちのことをよく知らないと思いますよ」

禍異者「…何を言っているのですか?」

 

スッ…

魔女さんはゆっくり立ち上がり、人差し指を禍異者に向けた。

 

禍異者「?」

魔女さん「私たちはここから動かなくてもある程度ダメージを与えることができるんですよ」

 

ツンツン…ツンツン…

魔女さんはその人差し指を4回突き出した。

 

ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!

 

禍異者「!?」

 

すると突然禍異者の腹に4発の打撃が入った。

 

禍異者「がっ…」

 

ドサッ…

禍異者は突然来た攻撃に驚いていた。しかもその攻撃が思いのほか強く、禍異者は膝を着いてしまった。

 

禍異者「はぁ…はぁ…何…今の…」

魔女さん「私はこれでも魔法の扱いには長けているんですよ。全属性のね」

禍異者「ぜ…全属性…」

魔女さん「全属性の魔法を使えるのはこの世界では私だけ。あなたですら不可能のはずですよ」

禍異者「っ…」

 

そう。魔女さんは全属性魔法に適性があった。故に使用する魔法も全て全属性魔法由来のもので各々の属性魔法を使い分けることはしない。ただし、一番得意な闇属性魔法だけは個別の属性魔法として使うことはある。

 

魔女さん「そして今の魔法は無属性魔法。私が使う次元魔法の1つ」

禍異者「次元…魔法…」

魔女さん「そう。この世界に存在する無属性魔法のうち、次元魔法と呼ばれるものだけ11種類も存在します。そのうち私は第1次元魔法を使います。あらゆるものに "点" を与え、あらゆるものに "線" を引く。これが私の次元魔法です。先程の打撃は私があなたに "点" を与えたために起こった現象です」

禍異者「そう…あなたってほんとつくづくチートだと思いますよ」

魔女さん「…昔から言われてますよ」

禍異者「…あなたも私と同じで最初から高威力の魔法を使うんですね。これだとどちらの体が持つか分かりませんよ」

魔女さん「…私はただ友人を救いたいだけです。そのためなら私はこの身を削りますよ」

禍異者「…人間特有の感情ですね」

魔女さん「…」

禍異者「虫唾が走ります。汚い。反吐が出ます。そういった感情があるから人間は前へ進むことが出来ない。誰かのために不完全な自分が助けになろうとするとかえって事態を悪化させる。だったら完全な自分になってから助けた方がいいですよね」

 

魔女さんは静かに話を聞いた。そして答えた。

 

魔女さん「…だからあなた方ドレインは一向に人間に勝てないんですよ」

禍異者「何…」

魔女さん「人はあなた方と違って誰にでも手を差し伸べることができます。ですがあなた方はどうでしょうか。自分が成長することを優先し、他者を蹴落とし、見捨てているのではないですか?」

禍異者「…」

魔女さん「だから今もあなたは "独り" なんですよ」

禍異者「!!」

魔女さん「いい加減気づいた方がいいですよ。成長しきったあなたが辿った末路。最終地点はただの孤独ですよ」

禍異者「うるさい!!」

魔女さん「うるさくありません。本当のことでしょう?」

禍異者「うるさい!うるさい!うるさい!!」

 

バリバリバリバリバリ!!

周囲に電気が走った。

 

リール「!?」

 

リールは突然のことに驚いていた。

 

魔女さん「…」

禍異者「だったら見せてあげましょう…。成長しきった私の末路。いや、私の得た魔力を!!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

突然地面が揺れ始めた。

 

禍異者「私を甘く見たあなたのせいよ。死んで自分を後悔しなさい」

 

ジジジ…バリバリバリバリ!!

禍異者の周囲に電気が走った。

 

魔女さん「…だからダメなんですよ。あなたが私たちに勝てない理由は "あなたが得た知識だけを頼りに動いているから" ですよ。自分を強くしたいなら先人から学びなさい。でないとあなたは一生自分の知識に囚われてしまいますよ」

 

禍異者「あなたに指図される覚えはありません!!」

 

ジャララララララ!!ガシャン!!

 

禍異者「!?」

 

突然どこからともなく鎖が出現し、禍異者を拘束した。

 

禍異者「な…何これ…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

するとその鎖は禍異者の魔力を吸収し始めた。

 

禍異者「がっ…何…」

魔女さん「それは天の鎖(エルキドゥ)。ドレインを拘束するために開発された魔法です」

禍異者「な…」

魔女さん「あなたを封印していた柱がようやく起動したようですね。助かりました」

禍異者「この…私を…」

魔女さん「この魔法は一定魔力を感知することで発動する仕組みになっています。あなたが先程増幅させた魔力に反応して魔法が起動したんですよね」

禍異者「くっ…」

魔女さん「もうあなたは身動きが取れないはずです」

禍異者「この私の……この私の邪魔をするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ドゴォォォォォォォォン!!

禍異者は周囲に魔力を拡散させた。

 

リール「わっ!!」

 

リールはその魔力によって少し後退させられた。

 

バリバリバリバリ!!

禍異者の魔力はさらに拡散する。

 

禍異者「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ギリギリギリギリ…

禍異者は鎖を引きちぎろうとした。

 

魔女さん「…」

禍異者「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

地面が激しく揺れ始めた。

 

リール「わわっ!」

 

ドシン!

リールは尻もちをついた。

 

禍異者「邪魔ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ギュォォォォォォォ!!

禍異者は拡散させた魔力を一気に圧縮させた。

 

禍異者「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

バゴォォォォォォン!

禍異者は圧縮させた魔力を解き放った。その魔力は深淵全体に響き、更に地面を揺るがす。

 

リール「な…何ですかこの魔力…」

 

リールは異次元な魔力に驚いていた。

 

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場所…深淵 祭壇

 

バゴォォォォォォン!

禍異者の魔力は祭壇にも響いてきた。

 

バキッ!バキバキッ!

祭壇には10本の柱があった。それは禍異者を封印するためのものだが、エレナが2つ破壊したせいで元々12本だったものが10本となっていた。そして、その柱にヒビが入ってしまった。

 

バキバキバキッ!!

柱にはどんどんヒビが入っていく。

 

バキッ!!

すると10本の柱がついに折れてしまった。同じ衝撃を同じタイミングで受けてしまったため、全て一気に破壊されてしまった。

 

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場所…アースの部屋

 

アース「…リールさん。あなたなら…きっと…」

 

アースは窓の外を見ていた。

 

ドクンッ!!

 

アース「!!」

 

すると突然アースの体に異変が生じた。

 

アース「な…なんだ…いま…」

 

ブシャッ!!

すると突然アースの胸元から血が溢れ出した。

 

アース「がっ…」

 

ドサッ!!

アースはその衝撃で地面に倒れ込んだ。

 

アース「な…なぜ…突然…」

 

アースは薄れゆく意識の中、ある事を考えた。

 

アース「ま…まさか…柱が…」

 

そうしてアースは意識を失った。

 

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場所…ナヴィア王国

 

執事「ウレイ様。例の水質問題についてなのですが」

ウレイ「はい」

執事「ウレイ様の魔法のおかげで水質は徐々に戻りつつあります」

ウレイ「そうですか。それは良かったです」

執事「これもウレイ様のおかげです。ありがとうございます」

ウレイ「いいえ。王女としてこれくらいの事はあたりま」

 

ドクンッ!!

 

ウレイ「!?」

 

突然ウレイの体に異変が生じた。

 

執事「ウレイ様?」

ウレイ「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

 

ウレイは肩で息をし始めた。

 

執事「ウレイ様?どうなされま」

 

ブシャッ!!

突然ウレイの胸元から血が溢れ出した。

 

ウレイ「ごふっ…」

 

ウレイは口からも血を吐いた。

 

ドサッ!

そしてウレイはその場に倒れ込んだ。

 

執事「ウレイ様!?ウレイ様!!」

 

執事がウレイに駆け寄る。

 

執事「ウレイ様!!しっかりしてください!!ウレイ様!!」

 

しかしウレイは目を開けなかった。

 

執事「誰か!!誰かいませんか!!ウレイ様が!ウレイ様がお倒れになられました!!誰か来てください!!」

 

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場所…モルドレッド王国

 

セレナ「…」

 

セレナは部屋で黙々と書類を仕上げていた。

 

セレナ (これが終わったらベッドで横になる。これが終わったらベッドで横になる。これが終わったらベッドで横になる…)

 

セレナはそう考えながら淡々と書類を片付けていた。

 

セレナ「はぁぁぁぁっ!!終わったぁぁぁぁぁぁ!!」

 

セレナは終わったと同時に立ち上がってベッドに向かった。

 

セレナ「はぁぁっ…やっぱりこの仕事は疲れる…」

 

ドクンッ!!

 

セレナ「…!」

 

セレナはなにか異変に気づいた。

 

セレナ「何…今の…」

 

ブシャッ!!

突然セレナの胸元から血が溢れ出した。

 

セレナ「かはっ…」

 

セレナは突然の事で驚いていた。

 

セレナ「なんで…血が…」

 

セレナは何が起こったのか分からなかった。

 

セレナ「この量…マズイ…誰かに連絡しないと…」

 

コツ…コツ…コツ…

セレナはゆっくりと自分の机に向かった。

 

セレナ「もう少し…もう…少…し…」

 

バタッ!

セレナはあと少しのところで倒れてしまった。

 

セレナ (お願い…誰か…来て…)

 

セレナはそのまま意識を失ってしまった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国

 

ジン「マーク」

マーク「何?」

ジン「…このままだとまたドレインが来るかもしれん。だから杖と箒をある分だけ作らないか?」

マーク「!」

ジン「自分の身を守るため。誰かを助けるためにな」

マーク「…あぁ。分かった。作ろう」

ジン「よしっ…さっそく作り始め」

 

ドクンッ!!

 

ジン「!」

マーク「!」

 

ジンとマークは何か異変に気づいた。

 

ジン「…マーク。今の…」

マーク「あぁ。感じたよ。…なんだろう…今のは」

ジン「わからない…何か嫌な予感がしてき」

 

ブシャッ!!

 

ジン「!?」

マーク「!?」

 

すると突然ジンとマークの胸元から血が溢れ出した。

 

ジン「ごっ…」

マーク「ぐふっ…」

 

ドサッ!!

ジンとマークは膝を着いた。

 

ジン「これは…」

マーク「なんで…心臓が…」

ジン「…ダメだ…ここにはスカーレットたちはいない…何とか…何とかしないと…」

マーク「ジン…私はもう…ダメだ…」

 

バタッ…

マークはその場に倒れてしまった。

 

ジン「マーク…クソッ…ここまで…か…」

 

バタッ…

ジンもその場に倒れてしまった。

 

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場所…天空殿

 

ヒュー「なぁアルレルト。この場所にももうひとつ作らないか?」

アルレルト「作るって何を」

ヒュー「何ってそりゃあ抜け道だよ」

アルレルト「抜け道?」

ヒュー「そう。何かあった時に別の場所に逃げたり誰かにすばやく連絡できるようになったら良くない?」

アルレルト「まぁそれはそうだが…」

ヒュー「な!作ってくれよ!なぁなぁ!!」

アルレルト「はぁ…分かったよ。じゃあ一応伝えてみるよ」

ヒュー「サンキュー!」

アルレルト「はぁ全く…お前のワガママには困ったもんだぜ。少しくらいは遠慮ってものを…」

 

ドサッ…

突然ヒューがその場に倒れ込んだ。

 

アルレルト「…ヒュー?」

ヒュー「…」

アルレルト「お、おいヒュー?何してんだ?床は汚いんだから寝転ぶな…よ…」

 

アルレルトは冗談かと思っていたが、ヒューから血が流れていることに気づいた。

 

アルレルト「ヒュー!!おい!誰か来てくれ!!ヒューが!!ヒューが!!」

 

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場所…大獄門

 

フレイ「…」

アデス「なぁフレイ。少しは休んだらどうだ?22時間も立ってたらしんどいだろ?」

フレイ「…問題ない」

アデス「フレイはそうかもしれないだろうけど心配だぜ」

フレイ「…気にするな」

アデス「…そう?まぁ何かあったら言いな。俺が代わりに仕事してやっからよ」

フレイ「…そんな日はいつになっても来ないか」

 

ドクンッ!!

 

フレイ「!」

 

フレイは何か異変に気づいた。

 

フレイ (なんだ…今のは…心臓が握りつぶされるような感覚だな…)

アデス「フレイ?」

フレイ「…なんでもな」

 

ブシャッ!!

 

フレイ「!」

アデス「!?」

 

突然フレイの胸元から血が溢れ出した。

 

フレイ「がっ…」

アデス「フレイ!」

 

ドサッ!!

フレイはその場に倒れ込んだ。

 

フレイ「なんだ…これは…」

アデス「フレイ!」

 

アデスはすぐに駆け寄った。

 

アデス「フレイ!しっかりしろ!!」

フレイ「…大丈夫だ。…まだ意識はある…」

アデス「な、なんで急に…」

フレイ「分からねぇ…だが…マズイ…」

アデス「フレイ!」

フレイ「すまねぇ…アデス…仕事…頼む…」

 

フレイは目を閉じてしまった。

 

アデス「フレイ!フレイ!!」

 

アデスは叫んだ。しかしフレイが目を覚ますことは無かった。

 

アデス「クソッ…ふざけやがって…」

 

ピピッ!

アデスは総括者に通信した。

 

アデス「こちら大獄門!!フレイが胸から出血して意識不明!!至急援護を頼む!!」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…サージェル王国

 

モール「…大地の力よ…私たちの国をお守りください…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

モールは大地の力を使って国を結界で覆った。

 

モール「…ふぅ」

付き人「モール様。お疲れ様です」

モール「あぁ。ありがとう」

付き人「この後のご予定はございませんのでゆっくりとお休みください」

モール「ではそうさせてもらうよ。あ、あと…」

付き人「分かってますよ。お蕎麦が食べたいんですよね」

モール「…頼む」

付き人「はい。伝えておきますね」

モール「あぁ」

 

スタスタスタ

モールは部屋に戻った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…サージェル王国 モールの部屋

 

ドサッ…

モールはベッドに腰掛けた。

 

モール「…ふぅ」

 

モールは一息つくと自分の机に移動した。

 

モール「…」

 

カタッ…

そして机の上に置いてあった写真立てを手に取った。

 

モール「…」

 

その写真にはモールを含めた5人の人たちが映っていた。

 

モール「…懐かしい。またみんなでご飯を食べたいものです」

 

カタッ…

モールはその写真立てを置いた。

 

モール「…」

 

ドクンッ!!

 

モール「!」

 

モールは異変に気づいた。

 

モール「なんだ…今の感覚…初めて感じ」

 

ブシャッ!!

 

モール「!?」

 

突然モールの胸元から血が溢れ出した。

 

モール「な…なんで…血が…ごふっ!」

 

モールは口からも血を吐いた。

 

モール「ぐっ…なんで…なんでだ…」

 

モールは立ち上がって誰かに連絡を取ろうとした。

 

ガタッ!バタッ!!

だが机に体が引っかかってしまい、そのまま床に倒れてしまった。

 

モール「ぐっ…」

 

モールは痛みに悶えていた。

 

モール「クソッ…このままじゃ…意識が…」

 

モールはそのまま意識を失ってしまった。

 

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場所…大気圏

 

ドクンッ!!

 

ミィ「!」

 

ミィは異変に気づいた。

 

ミィ「何?今の」

 

ブシャッ!!

 

ミィ「かっ…」

 

突然ミィの胸元から血が溢れ出した。

 

ミィ「なんで…血が…」

 

ミィは突然の事で驚いていた。

 

ミィ「こんなこと今まで無かった…一体何が…」

 

ミィの意識が段々と薄れてきた。

 

ミィ「あ…何だか…眠く…なってきた…」

 

フワッ…

ミィはそのまま眠ってしまった。

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ!!

するとミィの体が重力に引っ張られて地面に落ちていった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…深淵

 

禍異者「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

バキンッ!!バキンッ!!バキンッ!!

禍異者は鎖を引きちぎった。

 

禍異者「はぁ、これで邪魔なものは消えましたね」

魔女さん「っ…」

 

禍異者は魔女さんを睨んだ。

 

禍異者「…これで全力で戦えます。覚悟してくださいね」

魔女さん「くっ…」




〜物語メモ〜

光が導く最良の一手
(サーフェス・ロミオ・カタラルト)
禍異者が使った魔法。元々リノが使っていた魔法だが、禍異者はリノを取り込んでいるため、リノの魔法も使うことが出来る。この魔法は特定の手の形を作ることで大きな魔力を消費して魔法を放つことができる。魔力の消費は激しいが、その分威力は高い。

第1次元魔法
魔女さんが使う次元魔法。次元魔法は11種類存在し、リールたちが使っていた軌道変換(パラティガ)もその1つ。魔女さんの次元魔法は軌道変換(パラティガ)の他に相手に "点" を与えるのと相手に "線" を引くことができる第1次元魔法。
最初に第1次元魔法を見せたのは「第28話 リールと魔女さんの魔法」でその時はゴーラとマーモに使っていたが、今回は禍異者に使った。
第1次元魔法の効果は相手に "点" を与えることと相手に "線" を引くこと。
相手に "点" を与える方は相手に向かって指を突き出すことで打撃を与えることが出来る魔法。実際は打撃と言うよりか魔力を固めたものをぶつけているだけだがその威力が魔法特有のものでは無いことから打撃を与えているということになっている。
相手に "線" を引く方は対象物に指を向けて指を上下左右に動かすことで相手を強制的にその方向へ動かす魔法。他の魔法による妨害は一切受け付けず、一方的に魔法の効果を押し付けることが出来る。かつてゴーラがこの魔法を受けたが、ゴーラですら何も出来なかった。


深淵に封印されていた禍異者は12本の柱によって動きを封じられていた。しかしエレナがそのうちの2本を破壊したことで封印の力が弱まり、禍異者がその封印を破ってしまった。しかしこの柱は一定量の魔力を感知すると魔法が発動する仕組みになっており、禍異者の魔法に反応した柱が天の鎖(エルキドゥ)を使って禍異者を拘束した。
しかしその後に禍異者が魔力を解き放ったことでその柱が全て破壊されてしまい、禍異者を封印していた力が完全に無くなってしまった。

ウレイの執事
ナヴィア王国の王女 ウレイの身の回りの世話をする者。国の運営やウレイの健康管理を担っており、何かあるとすぐに駆けつけるようになっている。しかし、今回はウレイの胸元から出血するという異例な事態が起こってしまい、執事も慌てふためいていた。

アルレルト
天空殿に住む十二使徒 ヒューの友人。物作りのエキスパートでヒューとはずっと一緒にいる。大抵ヒューのワガママで物を作っているが、作った物は全て1級品で長持ちもする。物を作るとなると大体アルレルトに任せておけば良いという風潮がある。

アデス
大獄門にいるフレイの仕事仲間。フレイと比べてフレンドリーでよく話をする。仕事は真面目にするしフレイの事も心配したりしているが、いかんせん仕事中のお話が多いせいでチャラいという印象を持たれている。だが本人は至って真面目な性格でただお話好きなだけ。

モールの付き人
モールの仕事や生活をサポートする人。モールの事をなんでも知っており、モールはこの付き人の事を有能な人と評価している。実際モールは蕎麦が好きで、何度も聞いているうちに蕎麦が食べたいタイミングが分かってしまい、モールが全て言わなくても伝わるようになった。


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第64話 リノと魔女さんの戦い

私の名前はリール。

今深淵にいます。

現在魔女さんが禍異者と対峙しています。

魔女さんの魔法はとても強いものばかりですが、禍異者の魔法も魔女さんくらい強いものでした。

魔女さんは何やら次元魔法を使ったらしく、前にも見たことありましたが、詳しく聞くことは出来ませんでした。

ですがここで魔女さんが第1次元魔法と仰っていました。

私の使う次元魔法とは少し違っていましたが、同じ次元魔法だと魔女さんは仰っていました。

多分私の知らない魔法なんだと思います。

それ以外には特に特別なことをした訳ではありませんが、とにかく私じゃどうにもならないことが分かります。

…私は大人しくここで見ておくことにします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

禍異者「さぁ戦いましょう。全身全霊。最大魔力。渾身の魔法を以てあなたを退けてみせます」

魔女さん「…っ…。私はそこまで甘くありませんよ。これでも私はある町を完全に破壊した……狂気の魔女なんですから」

 

ジリッ…

2人は戦闘態勢に入った。

 

禍異者「はぁっ!!」

魔女さん「はっ!」

 

そして2人は同時に動いた。

 

ドン!ドン!ドン!ドン!

2人の魔法はぶつかりあった。

 

禍異者「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ドォォォォォォン!

禍異者はレーザーを複数放った。

 

魔女さん「はぁぁぁっ!!」

 

ドォォォォォォン!

魔女さんも負けじとレーザーを放つ。

 

バリバリバリバリバリバリ!!

2人の魔法が相殺した。

 

禍異者「…」

魔女さん「っ…」

 

2人は一向に退こうとしなかった。

 

バゴォォォォォォン!

やがて2人の魔法が圧に耐えきれず爆発を起こした。

 

禍異者「はっ!」

 

ギュォォォォォォ…ドゴォン!

禍異者は弾型の魔法を放った。

 

魔女さん「!!」

 

ドゴォォォォォン!

魔女さんはその魔法に被弾してしまった。

 

魔女さん「くっ…」

禍異者「今、魔法に当たりましたね。やはり私の方が強い。あなたはここで退場するべきですよ」

 

ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!

禍異者は周囲に魔法陣を複数展開した。

 

禍異者「さぁ、楽しい宴会ですよ!!」

 

ジジジジジジジジジ…

魔法陣が魔力を溜め始めた。

 

魔女さん「!」

 

魔女さんはその魔法に見覚えがあった。

 

魔女さん (あの魔法…まさか!あの魔法だとしたらここにいたらマズイ!!)

 

ビュン!!

魔女さんは危険を察知してその場から退避した。

 

禍異者 (気づかれましたか…ですがいいでしょう。この魔法はその程度の回避では逃げられないことを教えてあげますよ)

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

魔法陣たちが魔女さんに狙いを定めた。

 

禍異者「さぁ受けてください。あなたの大好きな魔法ですよ」

 

スッ…

禍異者は手を上に挙げた。

 

禍異者「光闇の軛(ウートア・モール)!」

 

バッ!

そして魔女さんに向かって手を下ろした。

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

すると周囲の魔法陣が一斉に魔法を放ち始めた。

 

魔女さん「くっ…」

 

魔女さんは必死に逃げ惑う。だが禍異者の放った魔法は無尽蔵に続けて攻撃を重ねてくる。

 

魔女さん「このままではいつになっても攻撃を通すことができな…」

 

ドゴォン!

 

魔女さん「ぐぁっ…」

 

魔女さんは魔法に被弾してしまった。

 

魔女さん「こ…の…」

 

ビュン!ビュン!ビュン!

魔女さんはダメージを負いながらもなんとか魔法を回避した。

 

禍異者「ふむ。中々ですね。ですが、いつまでそうしていられますか?」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!

魔法陣が更に魔法を放った。

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

その魔法は魔女さんの周辺に落ちた。

 

魔女さん「このっ!」

 

ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!

魔女さんはその攻撃を回避した。

 

禍異者「流石です。ではこれなんかはどうでしょ…」

魔女さん「全属性の波動(エレメント・アーツ)!!」

 

ドゴォォォォォン!!

魔女さんは全属性のレーザー型魔法を放った。

 

禍異者「なっ!」

 

バゴォォォォォォン!

禍異者は突然の魔法に対処出来ず、全属性の攻撃を受けてしまった。

 

魔女さん「よしっ…これで…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

禍異者は想像以上のダメージを受けてしまい、回復に専念していた。

 

禍異者「あの魔法…なんという力を持っているんですか…。この私が回復に専念するなんて何年ぶりでしょうか…」

魔女さん (全然攻撃が来ない…まさか!)

 

魔女さんは攻撃が来ないことに違和感があったが、禍異者の魔力が上昇していることに気づいた。

 

魔女さん (あの人…回復しているんじゃ!)

 

ビュン!

魔女さんは急いで禍異者のところへ飛んだ。

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

禍異者はまだ回復に専念していた。

 

禍異者「もう少し…もう少しで…」

魔女さん「全属性の気弾(エレメント・バレット)!」

 

ババババババババババババ!!

魔女さんは全属性の弾型の魔法を放った。

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

その魔法は全弾禍異者に命中した。

 

禍異者「くっ…このままじゃ…回復が間に合わない!」

 

禍異者は回復中全く身動きができないため、魔女さんからすればいい(まと)になっていた。

 

魔女さん「まだ落ちてない!」

 

バッ!

魔女さんは掌を禍異者に向けた。

 

魔女さん「全属性の爆発(エレメント・ノヴァ)!」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

魔女さんは全属性の爆発魔法を放った。

 

禍異者「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

禍異者は大ダメージを負ってしまい、回復が途切れてしまった。

 

禍異者「こ…っの…」

 

ジジ…ビリビリビリ…

禍異者はダメージ受けたせいで魔力が分散していた。

 

禍異者「なんで…あんなに魔法が強いんですか…私の回復が一瞬で無かったことにされました…」

魔女さん「ふぅ…なんとか回復は止められましたね…」

 

魔女さんは禍異者と同じ目線になるよう宙に浮いた。

 

禍異者「あなた…一体何者なんですか…」

魔女さん「あら…リノに取り憑いていながらそんな事も分からないんですか」

禍異者「っ…」

魔女さん「ですがあれは好機でした。リノは回復するときは他の魔法は一切使いません。ましてやその場から動くこともありません。ですが、動かない分、回復力は高いです」

禍異者「っ…」

魔女さん「そこがリノの弱点です。リノは魔力や回復力は誰よりも高いですが、所詮その場から動かないただの的なんですよ。私のように高魔力で高威力の魔法を放つ人からすればこれ以上ない反撃の隙なんですよ。それを知らずに回復に専念していたあなたの大誤算ですよ」

禍異者 (くっ…こんなの知りませんでしたよ…回復中全く動かない人がいるなんて…)

魔女さん「それで私の魔法を受けたあなたは回復よりもダメージが上回ってしまい、今は回復出来てないのではありませんか?」

禍異者「!」

魔女さん「…やはりそうでしたか。どうしますか?このまま死んで朽ち果てますか。それとも…」

禍異者「私は死にませんよ。私は不死身。あなたと違って私には死傷であっても死ぬことはない!!」

魔女さん「…あら、奇遇ですね。私も死ねない呪いにかかっているんですよ」

禍異者「!?」

魔女さん「良かったですね。これでお互い思う存分魔法をぶつけられますね」

禍異者「なっ…」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

魔女さんは魔力を上昇させた。

 

魔女さん「私はこれでもグラムの弟子でリールのお師匠様をやってます。並の魔法使いや魔女と一緒にしないでください。私がその気になれば一瞬でここら一帯を破壊することだってできます」

禍異者「っ…」

 

禍異者は額に汗を流した。

 

魔女さん「あら、不死身でも焦る気持ちはあるんですね」

禍異者「!」

魔女さん「それは生存本能でしょうか?」

禍異者「っ…」

魔女さん「…まぁ、どちらでも構いません。私はリノからあなたを引き離せばそれでいいのですから」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!

魔女さんは右手の掌に魔力を集中させた。

 

魔女さん「…私の持つ属性は全て。どの魔法も全属性を使ったものになりますが、これを生き抜いた人は過去に2人。グラムとリノだけですよ」

禍異者「それが何」

魔女さん「あ、忘れてました。確かもう1人だけいましたね。風属性魔法を使う人。名前は忘れましたが」

禍異者「だからそれが何なんですか」

魔女さん「いえ、あなたにその人たちのような耐性があるのか聞いてみただけですよ」

禍異者「…」

魔女さん「…抵抗しないんですか?」

禍異者「…どうせ無理でしょ」

魔女さん「…そうですね。無理だと思いますよ」

禍異者「…」

魔女さん「では、さような…」

禍異者「天の鎖(エルキドゥ)!」

 

ジャラララララララ!ガシャン!

禍異者が天の鎖を発動した。すると途端に魔女さんが拘束された。

 

魔女さん「…はぁ」

 

バキンッ!!

 

禍異者「!?」

 

魔女さんはただのため息だけで天の鎖を破壊した。

 

禍異者「な…一体何を…」

魔女さん「…リノから教わってて正解でしたね」

禍異者「!!」

 

禍異者が魔女さんの声に反応して魔女さんの方を見ると、魔女さんの頭上には大きな魔力の塊が浮いていた。

 

魔女さん「あらゆるものを拘束する鎖。名前を天の鎖(エルキドゥ)。実体のあるものないもの全てを拘束することが出来る魔法。一見強そうに聞こえますが、この魔法にはたったひとつだけ弱点があるんですよ」

禍異者「な…」

魔女さん「まぁ、教えませんが」

禍異者「なにっ…」

魔女さん「さぁ、ダメージを受ける時間ですよ」

禍異者「!?」

 

魔女さんの頭上にある魔力の塊がさっきとは違って周囲に各属性の色をした線が飛び交っていた。

 

魔女さん「全属性の審判(エレメント・ジャッジメント)

 

ゴォォォォォォォォ!!

魔女さんが禍異者に指を向けると全属性の審判(エレメント・ジャッジメント)が禍異者に向かって飛んだ。

 

禍異者「なっ!」

 

禍異者はその異様な気配を放つ魔法に危機感を覚えた。

 

禍異者「くっ…。完全魔法反射壁(オート・マジック・バリア)!!」

 

キィィィィン!!

禍異者は大きな結界を作り上げた。

 

魔女さん「…はぁ、その選択は間違いですよ」

 

スッ…

魔女さんは禍異者に指を向けた。

 

魔女さん「…解離(ミツヤヒデ)

 

ドクンッ!!

 

禍異者「!?」

 

禍異者は異変に気づいた。

 

禍異者 (な…なに…これ…目の前が…徐々に…真っ暗に…)

 

すると禍異者の目が閉じ始め、体も前後左右に揺れ始めた。

 

ゴォォォォォォォォ!!

その間、全属性の審判(エレメント・ジャッジメント)は徐々に禍異者に近づいていた。

 

パリンッ!!

すると禍異者が使った完全魔法反射壁(オート・マジック・バリア)が解除された。

 

ゴォォォォォォォォ!!

全属性の審判(エレメント・ジャッジメント)が目前まで迫っていた。

 

キィン!

魔女さんは衝撃に備えて結界を展開した。

 

するとその瞬間…

 

バゴォォォォォォォォォォォォン!!

凄まじい爆音と衝撃波、そして莫大な魔力が周囲に拡散された。

 

ビュォォォォォォォォォォ!!

その衝撃で周囲に爆風が発生し、瓦礫などが宙へ飛ばされた。

 

キィン!キィン!キィン!キィン!

いくつかの瓦礫が魔女さんの方へ飛んできたが、魔女さんは先に展開していた結界によって無傷で済んだ。

 

…しばらくその状態が続くと、やがて静かな空間に戻った。

 

魔女さん「…」

 

魔女さんは禍異者の気配を探る。

 

魔女さん「…まさか、まだ生きているんですか。流石ですね」

禍異者「はぁ…はぁ…はぁ…あっ…がっ…」

 

煙が晴れた。するとそこには全身血だらけで力なく地面に倒れていた禍異者の姿があった。

 

魔女さん「…しぶといですね」

禍異者「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

 

禍異者は魔女さんの魔法によるダメージで今は呼吸するのがやっとのくらいだった。手足は動かず、目すら動いていなかった。本当に呼吸にしか力を注いでいないようだった。

 

魔女さん「…あれが私の最高傑作なのですが、これを防いだのはグラムだけですよ。流石のリノもこの魔法には太刀打ちできなかった。それをあなたは防ぐことはできなくても生き残ることはできた。これは非常に素晴らしいことですよ」

禍異者「ヒュー…ヒュー…ヒュー…」

 

禍異者の呼吸が小さくなり始めた。

 

魔女さん「…いえ、あなたはもう限界そうですね。少しですが私の魔法を受けて生き残ったのは本当にすごいことですよ。グラム以外ではあなただけですから」

禍異者「ヒュー…ヒュー…ヒュー…」

 

禍異者は返事をすることもなくただただ呼吸だけしていた。

 

魔女さん「…トドメです。二度と私の友人に危害を加えないでください」

 

ジジジ…バリバリバリバリ!!

魔女さんは魔法を発動した。

 

魔女さん「あなたは危険な存在です。故に最後の一撃も渾身の魔法でさせていただきます」

 

ギュォォォォォォ!!

魔女さんは闇属性魔法を発動した。

 

魔女さん「私の元々の魔法は闇属性魔法。リノの光属性魔法とは対極の存在。私が全属性魔法を使えるようになったのは後から。後天的に生まれたものになります。だからあなたに対して大ダメージを与えることができたんですよ。リノの姿であるあなたに」

禍異者「ヒュー…ヒュー…ヒュー…」

 

禍異者は何も言わなかった。

 

魔女さん「…さようなら」

 

クイッ

魔女さんは指を動かして魔法を放った。

 

バリバリバリバリ!!

その魔法は紫色の電気を帯びていた。

 

禍異者「ヒュー…ヒュー…ヒュー…」

 

禍異者は動くことができなかった。

 

魔女さん「…ごめんなさい。リノ」

 

ドゴォォォォォォォォン!!

魔女さんの魔法が禍異者に当たった瞬間、大爆発を起こした。威力は全属性の審判(エレメント・ジャッジメント)と比べて大幅に劣るが、瀕死状態の禍異者には十分すぎるくらいの威力だった。




〜物語メモ〜

光闇の軛(ウートア・モール)
禍異者が使った魔法。周囲に複数の魔法陣を展開してから魔法陣自身に魔力を溜めさせ、溜めた魔力をレーザーとして放出する魔法。
放ったあとのレーザーの軌道は魔法陣によって違っており、中には真っ直ぐにしか進まないものや敵を追尾するもの、敵の退路に先回りするものなど様々。
それ故に軌道が読めず、被弾することが多い。加えて威力も高い。

全属性の波動(エレメント・アーツ)
魔女さんが使った魔法。全属性のレーザー型の魔法。全属性なので9つ魔法陣が展開され、それぞれの属性ダメージを与えることができる。光闇の軛(ウートア・モール)とは違って一直線にしか飛ばないが、威力が相当高い。おまけに魔法の速度も尋常じゃないくらい速い。

全属性の気弾(エレメント・バレット)
魔女さんが使った魔法。全属性の弾型の魔法で、弾の数も多く、高頻度に攻撃してくるため、基本的に逃げるよりも結界などで身を防いだ方が良い。
ただし、全属性の気弾(エレメント・バレット)自体の攻撃力は相当高く、並の結界では1、2発くらいしか防げない。防御を選択するならそれなりの防御力を持つ結界でないとただ魔力を消費して弱い結界を展開しただけになってしまう。

全属性の爆発(エレメント・ノヴァ)
魔女さんが使った魔法。全属性の爆発型魔法。ただの爆発にそれぞれの属性を付与した簡単な魔法。威力は全属性の暴走(エレメント・ノディア)よりも低く、数も9発程度なので9発耐え抜けばノーダメージで済ませることができる。唯一全属性の暴走(エレメント・ノディア)と違う点があるとすれば、魔女さんの消費する魔力には依存せず、全て固定ダメージとなっているということ。

全属性の審判(エレメント・ジャッジメント)
魔女さんが使った魔法。魔女さんが使える魔法の中で最も威力が高い魔法。全属性を混ぜて1つの塊にすることで魔法の威力を底上げすることができる。この全属性魔法には無属性魔法も含まれており、あらゆる結界も貫通する効果を持つ。全属性の審判(エレメント・ジャッジメント)が当たる直前に禍異者の結界が解けてしまったのはこの魔法が原因の1つ。

完全魔法反射壁(オート・マジック・バリア)
禍異者が使った魔法。無属性魔法を除いた全ての属性の魔法を全て反射する結界。強度は凄まじいが、この結界が展開している間、防御魔法(バフ)をかけ続けることで更に強度を上げることができる。ただし、その場から移動はできない。

解離(ミツヤヒデ)
魔女さんが使った魔法。相手の意識を断ち切ることで昏睡状態に陥らせる魔法。対象は1人だけだが、魔女さんが指定する形になるので、どこにいてもその効果を受けてしまう。禍異者はこの魔法を受けたせいで目が徐々に閉じ始め、意識が朦朧とし、完全魔法反射壁(オート・マジック・バリア)も解除されてしまった。今回、完全魔法反射壁(オート・マジック・バリア)を解除させたのは全属性の審判(エレメント・ジャッジメント)と解離(ミツヤヒデ)の2つ。


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第65話 リノと魔女さんの決断

私の名前はリール。

今深淵にいます。

先程まで魔女さんと禍異者が戦っていました。

どちらとも魔力が凄まじく、周囲に落ちていた岩石や周囲の壁が衝撃で崩れたりしました。

私はただ見ていただけですが、それでも2人の強さが身に染みて分かります。

私は今までドレインを出させないようにと思って戦っていましたが、それがこれほどまでに辛いものだとは思いませんでした。

…私は光属性魔法の適性者で、ドレインに対して有効な魔法を使うことができます。

今までのドレインも私の魔法1発でやっつけてきました。

なので今回は1発ではありませんが、何回か攻撃すればいいだろうと勝手に思っていました。

ですが…今までの魔女さんの魔法を見て分かります。

…私じゃ何も出来ないと。

ここは魔女さんに全て任せた方が良いのでしょうか、それとも私も加勢した方が良いのでしょうか。

もし加勢した方がいいならせめて足でまといにならないようにしようと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

魔女さんが魔法を放ってから少しの間、静寂が訪れた。

 

魔女さん「…」

 

魔女さんは依然としてその場から動かない。ずっと禍異者がいた場所を見つめている。

 

リール「魔女…さん…」

 

リールはずっと遠くから魔女さんを見ていた。

 

魔女さん「っ…」

禍異者「あっ…がっ…ぐっ…」

 

突然禍異者の声が聞こえたかと思うと、先程まで呼吸しかできていなかった禍異者が腕を動かしていた。

 

魔女さん (…これでもダメですか。全く…何故こうも魔力が尽きないんですか。この人は)

禍異者「かっ…カカカ…あっ…がっ…」

 

禍異者は今はまだ腕を動かしているだけだった。それもゆっくりと。

 

魔女さん (…トドメを刺しきれなかった。いや、これ以上ない魔力で倒したはず…じゃあ何でリノから離れないの…このドレイン…)

禍異者「あっ…がっ…がぁぁぁぁぁ…」

 

禍異者は言葉を発さず、ただ声だけを出していた。

 

リール「魔女さーん!」

 

タッタッタッ!

リールが魔女さんのところまで走ってきた。

 

リール「魔女さん!」

魔女さん「…」

リール「ま、魔女さん?」

魔女さん「…リール」

リール「は、はい…」

魔女さん「…まだ倒してないですよ」

リール「!」

魔女さん「今はまだそこで寝ているだけ。私は渾身の一撃で倒したはず。でもまだ生きています」

リール「そんな…」

魔女さん「…リール」

リール「は、はい…」

魔女さん「…あなたがやってください」

リール「え…」

 

魔女さんは突然リールにそう言った。当然リールは驚いた。

 

リール「え…ですが、私の魔力では倒しきれないのでは…」

魔女さん「…そうですね。私の魔力ですら倒せなかったとなると、リールの魔法でも無理でしょうね」

リール「やっぱり…」

魔女さん「ですが、光属性魔法は違います」

リール「!」

魔女さん「光属性魔法はいくら使用者の魔力が弱くてもドレインには有効打を与えることができます。私の魔法は闇属性魔法ですから効果は薄いです」

リール「え…魔女さんの魔法は全属性なのでは…」

魔女さん「元々私の魔法は闇属性魔法です。私が全属性の魔法を使うことができたのはあの時からです。つまり、後天的にそうなったのです」

リール「え…」

魔女さん「私も光属性魔法を使うことはできますが、純粋な光属性魔法のあなたと比べたら遥かに弱いです。ですからここはあなたに任せます。このドレインに最後の一撃を」

リール「…」

 

リールは禍異者を見た。禍異者は未だに腕を少しずつ動かしている状況で体を起こすのは少し難しそうだった。

 

リール (この人は禍異者…ですが本当は私のお母さん。…私は私の手でお母さんを殺さなければならないのでしょうか…)

 

リールは少し考え事をしていた。

 

魔女さん「…リール」

リール「!」

 

リールは魔女さんの声で我に返り、杖を取りだした。

 

リール「…」

 

ザッザッザッ…

そして1歩ずつ禍異者に近づいた。やがて禍異者の目の前に立つと禍異者に杖を向けた。

 

リール「…」

禍異者「あっがっ…」

 

リールは杖を向けて固まった。

 

魔女さん「リール」

リール「…できません」

魔女さん「!?」

 

スッ…

リールは杖を下ろした。

 

魔女さん「…何故ですか。リール」

リール「…私は…お母さんを殺せません」

魔女さん「お母さんを殺せとは言ってません。ドレインを倒してと言っているのです」

リール「ですがドレインを倒すとそれに取り憑かれている私のお母さんも一緒に死んじゃうのではないでしょうか」

魔女さん「…」

リール「どうですか。魔女さん」

魔女さん「…」

 

魔女さんは何も言わなかった。

 

リール「…お答えできないということはやっぱり…」

魔女さん「…」

リール「…でしたら私は殺しませ…」

 

シュルシュル…グッ!!

 

リール「!!」

魔女さん「!!」

 

突然禍異者から触手が伸びてきてリールの体に巻き付いた。

 

リール「かはっ…」

 

その締め付けが強く、リールは苦しんでいた。

 

禍異者「ワ…ワタ…ワタシ…ノ…ムスメェェェェ!」

 

ギュゥゥゥゥゥゥゥゥ…

禍異者は更にリールを強く拘束した。

 

リール「ぐぁっ…」

魔女さん「リール!」

 

バッ!

魔女さんは禍異者に掌を向けた。

 

魔女さん「全属性の弾丸(エレメント・ラプソディ)!」

 

ババババババババババババ!!

魔女さんは全属性の弾型の魔法を放った。

 

ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

魔女さんの魔法は全弾禍異者に的中した。

 

禍異者「アァァァァァァァ!!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!

禍異者は触手で掴んだリールを振り回し始めた。

 

リール「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

リールは高速で振り回されて恐怖を感じていた。

 

魔女さん「リール!!」

 

ビュン!

魔女さんは一目散にリールのところへ飛んだ。

 

禍異者「ワタシノムスメニチカヅクナァァァァァァ!!」

 

ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!

禍異者は周囲に魔法陣を展開して魔法を放った。

 

魔女さん「なっ!!」

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

魔女さんは突然のことに反応できなかった。

 

ヒュゥゥゥ…ドォン!

魔女さんはそのまま撃ち落とされてしまった。

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

魔女さんは少しダメージを負った。

 

魔女さん「ぐっ…なんでっ…魔法が…使えるんですか…」

禍異者「アァァァァァァァ!!」

 

ドゴォォォォォォォォン!!

禍異者は落ちた魔女さんに追撃のレーザーを放った。

 

魔女さん「なっ!」

 

ビュン!ドゴォォォォォォォォン!!

魔女さんは間一髪のところで魔法を避けた。魔法が当たったところは地面がえぐれていた。

 

魔女さん「これほどまでの魔力…一体どこから…さっきまで動けなかったのに…」

 

魔女さんはさっきまで死にかけだった禍異者が打って変わってピンピンしている様子に疑問を抱いていた。

 

魔女さん「一体…なぜ…あっ…まさか!!」

 

魔女さんは何か思いついた。

 

魔女さん「…まさかあれが」

 

魔女さんはリールを拘束している触手に目をつけた。

 

魔女さん (もし私の考えが合っているのなら…あの触手がリールの魔力を吸っている。そしてそれを使って魔法を使用した…)

 

魔女さんは策を考えていた。

 

魔女さん (もしそうなら早くリールから引き剥がさないと…でも一体どうすれば…)

 

現在の魔女さんには物を斬るような魔法はなかった。最初は燃やそうかと思っていたが、リールへの被害は最小限にしてあげたいと考えたため、燃やす作戦は捨てた。

 

魔女さん (あれをリールから引き剥がすには…)

 

魔女さんは周囲を見渡した。しかし、何か物を斬れそうなものは何も無かった。

 

魔女さん (くっ…このままじゃリールが…)

 

ビュン!ドカン!

魔女さんが色々と考えていると禍異者が攻撃してきた。

 

禍異者「アァァァァァァァ!!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

禍異者は更に魔法を重ねる。

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

その魔法は魔女さんを追尾し、爆発した。

 

魔女さん「くっ…この触手…邪魔ですね!!」

 

ゴォォォォォォォォ!!

魔女さんは伸びてきた触手だけを燃やした。

 

禍異者「アァァァァァァァ!!」

 

ゴォォォォォォォォ!!

燃やされた触手は暴れ回っていた。

 

ボボッ!

すると周囲の触手にまで炎が移ってしまった。

 

魔女さん「なっ!しまった!!」

 

やがてリールを掴んでいる触手にまで炎が移り、炎がリールの真下まで迫っていた。

 

魔女さん「くっ!」

 

ビュン!

魔女さんは真っ先にリールの方へ飛んだ。

 

魔女さん「リール!!」

リール「ま…魔女…さん」

 

ガシッ!

魔女さんはリールの手を掴んだ。

 

リール「あっ…魔女さん…」

魔女さん「リール!逃げますよ!」

 

スッ

魔女さんは掌を禍異者の触手に向けた。

 

魔女さん「全属性の弾丸(エレメント・ラプソディ)!」

 

バババババババババババババ!!

魔女さんは魔法を使って何とか引き剥がそうとした。

 

ドドドドドドドドドドドドド!!

魔女さんの魔法は全弾命中した。

 

スルッ…

すると触手が力なく解け、リールを解放することができた。

 

リール「あ、ありがとうございます…魔女さん…」

 

ヒュゥゥゥ…スタッ!

魔女さんは地面に着地した。

 

スッ…

魔女さんはリールを寝かせた。

 

リール「…魔女さん?」

魔女さん「…リール」

リール「はい…」

魔女さん「…少しここで待ってて」

リール「え…」

魔女さん「…アレにトドメを刺してきます」

リール「え、待ってください魔女さ…」

 

ビュン!

魔女さんはリールの言葉を聞かずにその場をあとにした。

 

リール「ま…魔女さん…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…禍異者が寝ている場所

 

魔女さん「…」

 

ヒュゥゥゥ…スタッ!

魔女さんは地面に着地した。

 

魔女さん「…」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ…

魔女さんが見た方には燃えた触手と禍異者がいた。

 

魔女さん「…」

 

スタスタスタ…

魔女さんは禍異者に近づいた。

 

魔女さん「…所詮あなたではリノを制御することはできないんですよ」

 

スッ…

魔女さんは禍異者に掌を向けた。

 

魔女さん「全属性の火炎(エレメント・バーバラ)

 

ゴォォォォォォォォ!!

魔女さんは禍異者を燃やし始めた。

 

禍異者「アァァァァァァァ!!」

魔女さん「…」

 

禍異者は火だるまになっていた。

 

禍異者「アァァァァァァァ!!」

 

禍異者は炎を消すためにゴロゴロと地面を転がった。

 

魔女さん「…早く消えてください。私の大事な友人なんですよ」

 

スッ…

魔女さんは禍異者に指を向けた。

 

禍異者「アァァ…ガァァァァァァ!!」

魔女さん「…」

 

スゥゥゥゥ…

そしてそのまま指を下に向けた。

 

ドシン!!

その瞬間、禍異者の動きが封じられた。

 

禍異者「ガァッ!」

 

禍異者は突然動けなくなって驚いていた。

 

禍異者「ガァァァァァ!!」

魔女さん「…」

 

禍異者は声だけ出していた。

 

魔女さん「早く出てきてください。でないとあなたは…このまま焼死しますよ」

禍異者「ガァァァァァッ!!」

 

ビュン!

禍異者が叫んだ瞬間、何かがリノの体から出てきた。

 

魔女さん「…やっと出てきましたか」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

魔女さんはリノにかかった炎を消した。

 

ヒュォォォォォォ…

リノから出てきたソレは紫色の煙を出していた。

 

禍異者「…」

魔女さん「…あなたは自分の意思はあれど声を持たないために誰かの体に寄生しなければならない。今回はリノ。あの時あなた方ドレインを潰すためにリノが犠牲になった。…でも、これで終わり。核であるあなたを破壊すれば全て元通り。この世界は平和となる」

 

スッ…

魔女さんは禍異者の核に掌を向けた。

 

魔女さん「だからもう…これで最後にして。これ以上私たちに関わらないで」

禍異者「…」

 

パキパキ…パリン!!

突然禍異者の核が砕け散った。

 

魔女さん「!!」

 

ヒュォォォォォォ!!

そして砕けた核から更に紫色の煙が出てきた。

 

魔女さん「マズイ!!」

 

ヒュォォォォォォ…

その煙はまたリノに取り憑いてしまった。

 

禍異者「…ふふふ。大正解」

 

ヒュゥゥゥ…

リノに取り憑いた禍異者は宙に浮いた。

 

禍異者「私はあの球体であるために声が出ない。だから誰かの体に入る必要がある。…それがこの人だった訳ですよ」

魔女さん「…出てきなさい。壊してあげます」

禍異者「…ですが、私は失敗しましたよ」

魔女さん「…」

禍異者「私が戦えばさっきと同じようにあなたに負ける。ならどうすればいいか。答えは簡単です」

魔女さん「…」

禍異者「戦うのが私ではなく "この人自身 " であればよいと」

魔女さん「!?」

禍異者「さぁ、存分に戦いなさい。あなたが大事と言っていた友人との死闘ですよ!!」

 

ギュォォォォォォ…

するとリノの周囲に紫色の煙が出現し、再びリノの体に戻っていった。

 

リノ「…ふぅ」

魔女さん「!!」

 

魔女さんは目の前の気配に気づいた。

 

魔女さん (この気配…リノのもの…)

リノ「…リーナ」

魔女さん「!」

リノ「…私と…殺し合いましょう」

魔女さん「っ…」




〜物語メモ〜

全属性の火炎(エレメント・バーバラ)
魔女さんが使った魔法。全属性を炎を変換して放つ魔法。属性は全て火属性となるが、各属性の力をそのまま炎に変換しているため、各属性で与えるダメージはバラバラ。


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第66話 リノと魔女さんの衝突

私の名前はリール。

今深淵にいます。

私は今、地面に寝込んでいます。

魔女さんが寝かせてくれました。

その後魔女さんは禍異者をやっつけに行くと言ってすぐに飛びました。

私は魔女さんを止めることができず、そのままになりました。

…今は何とか魔力を回復させているところです。

私も魔力を回復させたら向かうつもりです。

それまで魔女さんは大丈夫でしょうか。

魔女さんはずっと戦っています。

いくら魔力が多い人でもあれだけ戦ってたら流石に魔力が少なくなります。

ですので早く回復して早く加勢しに行きたいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リノ「…リーナ」

魔女さん「!」

リノ「…私と…殺し合いましょう」

魔女さん「っ…」

 

ヒュォォォォォォ…

目の前にいるのはかつての魔女さんの友人 リノだった。リノは悲しげな表情を浮かべ、魔女さんに話をした。

 

魔女さん「…私が戦いたいのはあなたじゃない。あなたに取り憑いている禍異者です」

リノ「禍異者…?それは一体何?」

魔女さん「!」

 

魔女さんは不思議だった。たった今リノの体に入ったにもかかわらずリノがそれを知らなかった。

 

リノ「ねぇリーナ。禍異者って何?」

魔女さん「何って…あなたに取り憑いてい…」

 

ピュン!!

魔女さんが話をしていると突然攻撃が飛んできた。

 

魔女さん「!!」

 

魔女さんは避けられなかった。だがダメージはなかった。

 

魔女さん「な…」

リノ「…分かってるよ。全部分かってる。あなたが言いたいこと、あなたが考えてること、あなたがやりたいこと。全て分かる」

 

リノは突然変なことを言い始めた。

 

リノ「何でも分かるの。リーナが今から何をしようとしているのか全部分かる。私を殺したいんでしょう?私を押さえつけたいんでしょう?私を亡き者にしたいんでしょう?」

魔女さん「違う!!私はあなたを助けたいの!」

リノ「嘘つかないでよ」

 

ヒュォォォォォォ…

一気に空気が変わった。

 

リノ「私の耳に聞こえてくるの。殺してやる殺してやるってね。それもあなたの声で」

魔女さん「!」

リノ「あぁ…私って必要ないんだなって思う。折角今までこの世界を守るために力を使ってきたのに…もう…必要なくなった…」

魔女さん「…あなたは必要よ。まだやることがあるわ」

リノ「あらそう。でももういいのよ。私はもうこの世界にうんざりしてたから」

 

スッ…

リノは掌を上に向けた。

 

リノ「ねぇリーナ」

魔女さん「…」

リノ「…私を殺さないとこの世界…滅んじゃうよ」

 

ゴゥン…

するとリノの掌に透明な丸い空間ができた。

 

魔女さん「!!」

リノ「ねぇ…リーナ。早く殺さないと…ねぇ、早く」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

すると掌の透明な丸い空間が徐々に大きくなってきた。

 

リノ「そう言えば少し前に私にどの次元魔法を使ってるのかって聞いてたよね」

魔女さん「!」

リノ「教えてあげる。その答えは…」

 

リノは掌の空間を徐々に大きくしていった。

 

リノ「第三次元魔法。空間を作り出す次元魔法よ」

魔女さん「!!」

 

魔女さんはその答えで確信した。

 

魔女さん「…あなた、本当にリノなのね」

リノ「うん。そうだよ。どうするリーナ。私を殺す?それとも…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!

リノの掌にある透明な丸い空間が更に大きくなった。

 

リノ「私と一緒に生きてこの世界を壊す?」

魔女さん「!!」

 

ジジジ…バリバリバリ!!

その透明な空間に徐々に色が現れ始めた。

 

リノ「あなたも知ってるでしょ?私の次元魔法。この透明な空間に色がついて弾けた瞬間、また新たにこの場に空間が形成される。空間に空間を上書きするから前にあった空間はその場で消滅。そして、新たに作られたこの空間こそがこの場に存在する」

魔女さん「…」

リノ「…私がドレインを封印する時も使った」

魔女さん「!」

リノ「…あの時はあれしかなかった。だから私は咄嗟に次元魔法を発動してこの深淵という世界を作った。だからあなた方の世界に影響した」

魔女さん「…」

リノ「あまり気にならなかった?あなたなら分かったと思うんだけど…」

魔女さん「…何の話ですか」

リノ「…あなたの杖と他人の杖を見比べたことはある?」

魔女さん「…ないわ」

リノ「…そう。分かった。あなたと他人の違いはね、次元の歪みがあるかどうかなの」

魔女さん「歪み?」

リノ「そう。歪み。あなたはちゃんとした世界にいるけど他の人は違う。他の人はね、自分たちでは分からないけど、私から見たら極度に歪んだ世界に存在している。だから杖とか箒とかも全て歪んだものになっている。見たことない?」

魔女さん「…ないわね」

リノ「…あらそう。あまり外界と接触しなかったのね。リーナは」

 

バチバチバチバチ!!

すると透明な丸い空間が完全に色に染った。

 

リノ「…さぁ、見ててリーナ。新しい空間の誕生ですよ!!」

 

バチバチバチバチ!!

するとその空間が宙を浮き、今にも弾けそうになっていた。

 

魔女さん「くっ…」

 

魔女さんはその空間を破壊しようとした。

 

リノ「無理ですよリーナ。これは無属性魔法でどの属性魔法も弱点にはならない。つまり、壊せないんですよ」

魔女さん「っ…」

 

魔女さんは手詰まりだった。

 

リノ「今度はどんな空間でしょうか。みんなが楽しく暮らせる空間でしょうか。それとも…人が人を殺し合う殺伐とした空間でしょうか!」

 

ブクブクブクブク!!

その空間がグニャグニャと形を変え始めた。

 

リノ「さぁ!生まれてきてください!新たなる空間!」

 

ブチャッ!!

すると突然その空間が消えた。

 

魔女さん「!?」

リノ「…え、私の…空間は?」

 

リノは少し驚いていた。

 

リノ「え、なんで…なんで生まれないの…?」

魔女さん「!!」

 

魔女さんはある人の気配を感じた。

 

魔女さん (この気配…まさか…)

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…???

 

グラム「あらあら、簡単に弾けましたか。随分脆い空間でしたね」

 

リノの空間を破壊したのは魔女さんのお師匠様であるグラムだった。

 

グラム「 "オリジナル" である私の前でその魔法が通用するとでも思っているんですか?ねぇ、禍異者さん」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…魔女さんとリノがいる場所

 

魔女さん (やっぱり…お師匠様…)

リノ「なんで!なんで私の!!」

魔女さん「リノ」

リノ「!」

 

魔女さんはリノに優しく声をかけた。

 

魔女さん「…もう、やめましょ。この世界を壊されるのは私も困るわ。あなたとの思い出があるこの世界を」

リノ「!」

魔女さん「だからお願い。やめて」

リノ「…」

 

リノは下を向いた。そして、拳を握って言葉を放った。

 

リノ「…誰も感謝してくれないこの世界が!!私は大っ嫌いです!!」

 

バゴォォォォォォン!!

リノは突然魔力を上昇させた。

 

魔女さん「!?」

リノ「あぁ…痛い…痛い…痛い!」

 

ヒュォォォォォォ!

リノの周囲に空間が形成された。

 

魔女さん「!?」

リノ「助けて…」

魔女さん「!」

 

魔女さんはリノの声が聞こえた気がした。

 

魔女さん「リノ?」

リノ「ねぇ…リーナ。私を…助けて…本当はこんなことしたくない…壊したくない…お願い助けて…私を…」

 

ジジジ…バリバリバリバリバリ!!

魔女さんはその声を聞いて途端に魔力が上昇した。

 

魔女さん「…やっと声が聞けた。あなたの声が…リノ」

リノ「リーナ…」

 

ザッザッザッ…

魔女さんはリノに近づいた。

 

魔女さん「待っててリノ。今すぐあなたに取り憑いているそいつを…引き剥がしてあげるから」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

バゴォォォォォォン!!

周囲に爆音が響き渡る。

 

魔女さん「全属性の弾丸(エレメント・ラプソディ)!」

 

ドドドドドドドドドドドド!!

魔女さんは多数の魔法の弾丸を撃ちまくる。

 

リノ「あっははは!!」

 

リノはその攻撃を避ける。

 

魔女さん「全属性の暴走(エレメント・ノディア)!」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

魔女さんは更に魔法を重ねる。

 

リノ「効かないよリーナ!!ちゃんと当ててみて!」

 

ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!

リノは華麗に魔法を避けていく。

 

魔女さん「全属性の水流(エレメント・ウォーリア)!」

 

ザバァァァァン!!

魔女さんは水を使ってリノを捉えた。

 

魔女さん「全属性の凍結(エレメント・コキュートス)!」

 

パキパキパキ…ガキン!!

魔女さんは水で捉えたリノを氷漬けにした。

 

リノ「!!」

魔女さん「…」

 

魔女さんはその後様子を見た。

 

ピシッ!

突然氷にヒビが入った。

 

魔女さん「…やっぱりダメですか。この程度の魔力では」

 

ピシッ!パキッ!パキッ!パキッ!

どんどんヒビが増えてくる。

 

魔女さん「全属性の(エレメント)…」

 

ドゴォン!ガラン!ガラン!ガラン!

崩れた氷が地面に落ちた。

 

リノ「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

魔女さん「轟雷(トール)!!」

 

バリバリバリバリバリバリ!!

魔女さんはリノが氷から出てきたと同時に魔法を使った。

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

魔女さんの雷は全部リノに命中した。

 

魔女さん「っ!!」

 

だが、実際には当たっているように見えていた。

 

リノ「…ふふっ。ダメだよリーナ。私の次元魔法は第三。空間を作り出す魔法だよ。あなたの魔法が私に飛んできても私に当たる直前に空間を展開することが出来ればあなたの魔法は私の作った空間を飛び回る。つまり、私には当たらない」

魔女さん「…」

リノ「いくよリーナ。私の力 見せてあげる!」

 

バッ!

リノは両腕を横に広げた。

 

リノ「刻運命の粉(オート・エヴァ・リリアメント)!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

するとリノの胸元が光った。

 

魔女さん「あれは…まさか…」

 

リノの胸元で光っていたのはリールが持っている刻運命の粉と全く同じものだった。

 

リノ「私が作った刻運命の粉よ。私の思うがままの願いが叶う」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!

刻運命の粉が強く光った。

 

リノ「さぁ!私に癒しを!」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥゥ!

すると、リノの周囲に緑色の光の筋が現れ、リノの傷を癒した。

 

リノ「っはぁ…これでまた戦える…」

魔女さん「嘘でしょ…」

 

魔女さんは絶句した。せっかく体力を削ったのに全て無かったことにされた。

 

リノ「ねぇリーナ。私がなんでドレインの器になったか知ってる?」

魔女さん「…知らないですよ」

リノ「それはね…」

 

リノは魔女さんの目を見て言った。

 

リノ「私が無尽蔵の魔力を持っているからよ」

魔女さん「!?」

リノ「光弾(ライト・バレット)!」

 

ババババババババババババ!

リノは突然攻撃してきた。

 

魔女さん「はぁっ!!」

 

キィン!!

魔女さんは咄嗟に闇属性の結界を作った。

 

ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!

魔女さんは結界によって守られた。

 

魔女さん「っ…」

 

ピシッ!

しかし、いくら魔女さんの結界であっても無尽蔵な魔力を持っているリノの魔法を防ぎきることはできなかった。

 

魔女さん「この…ままじゃ…」

 

ピシッ!パリンッ!!

すると突然魔女さんの結界が砕けた。

 

魔女さん「!?」

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

魔女さんはリノの魔法を全て受けてしまった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールが寝ている場所

 

リール「っ…」

 

さっきまで寝ていたリールが突然目を覚ました。

 

リール「あれ…私…何を…」

 

リールは何とか思い出そうとした。

 

リール「あ…魔女さん…魔女さん…」

 

リールは思い出したのか、立ち上がって魔女さんの所へ向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リノと魔女さんがいる場所

 

リール「!!」

 

リールがリノと魔女さんがいるところに着いた。だが、そこにはある光景が広がっていた。

 

リール「え…魔女…さん…」

魔女さん「…」

 

そこには血だらけの魔女さんと魔女さんの周囲には血痕があった。

 

リノ「…あら?あなたも魔女かしら?」

リール「!」

 

リールは初めてリノと目を合わせた。

 

リノ「まだいたなんてね。あなたも私と戦う?」

リール「魔女…さん…」

 

ザッ…ザッ…ザッ…

リールは一歩ずつ魔女さんに近づいた。

 

リノ「…」

 

リノはその間何もしなかった。

 

リール「魔女…さん…」

 

スッ…

リールは魔女さんの背中に触れた。

 

リール「魔女…さん…あの…魔女…さん…」

 

ユサユサ…ユサユサ…

リールは魔女さんの体を揺すった。だが魔女さんが返事をすることはなかった。

 

リノ「大丈夫よ?私たちは死なない。死ねない呪いにかかってるの。だからまだ死んでない。私たちはいくらでも殺し合いができるのよ」

リール「!!」

 

リールはプチッと何かが切れる感じがした。

 

リール「…だからなんですか」

リノ「ん?」

リール「死ねない呪い?そんなの知りませんよ。死ねないから何ですか?死ねないから相手を痛ぶると…それが許されるとでも?」

リノ「あなた 何言ってるの?」

リール「理解しなくてもいいですよ。生も死もないあなたに何がわかるんですか」

リノ「…」

リール「…私…本当に怒りました」

 

ジリッ…

リールは杖を構えた。

 

リール「…覚悟してください。命を粗末にするあなたをやっつけます」

リノ「…何言ってるのよ。あなたも同じじゃない。私を殺そうとしてる。あなたも命を粗末にしてるんじゃない?」

リール「…あなたと違って無闇に命を奪いませんよ。あなたと違って…ね」

 

ピュン!!ドゴォン!!

リノはリールに向かって魔法を放った。だが不思議なことにリールの体に当たったはずのリノの魔法がリールの体を貫通した。

 

リノ「!?」

リール「…」

 

リールはずっとリノを見ている。

 

リノ「あなた…何故…私の魔法が…」

リール「…知りませんよ。今から立てなくなるあなたに教えたところで何も変わりません」

リノ「っ!」

 

リノはリールの背後にいる気配に気づいた。

 

リノ (この気配…まさか…)

リール「覚悟してください。私は今からあなたを…」

 

ヒュッ!

リールはリノに杖を向けた。

 

リール「やっつけます」




〜物語メモ〜

第三次元魔法
11ある次元魔法のうちの3つ目の次元魔法。空間を自在に作り出すことができる。その空間は小さいものから大きいものまで様々。作られた空間がこの世に具現化すると、前に存在していた空間は消え、代わりに作り出された空間がその場に残る。その空間は魔法の軌道を変えることができる上、空間の中に魔法を閉じ込めることも出来る。かつてリノが生み出したこの深淵も元々なかった空間で、リノがドレインを封印するために個人的に作り出したもの。

全属性の水流(エレメント・ウォーリア)
全属性を全て水に変換して相手を押し流す魔法。全属性を水に変換するだけで、本質は各々の属性となっている。しかし、水属性魔法の要素を多く取り込むことで水属性と同じような効果を得ることができる。魔女さんは瞬時に全属性を水属性魔法に切り替えてリノを押し流した。

全属性の凍結(エレメント・コキュートス)
全属性を全て氷に変換して相手を凍らせる魔法。全属性の水流(エレメント・ウォーリア)と同様、全属性に氷属性魔法を多く取り入れることで氷属性としての効果を発揮する。今回はリノを拘束するために使われた。

全属性の轟雷(エレメント・トール)
全属性を全て雷に変換して相手を攻撃する魔法。全属性の水流(エレメント・ウォーリア)と同様、全属性に雷属性魔法を多く取り入れることで雷属性としての効果を発揮する。今回はリノが氷を破ったタイミングに合わせて放たれた。

刻運命の粉(オート・エヴァ・リリアメント)
リノが持つ刻運命の粉を使った魔法。自分の願いを叶えることができ、時には起こった事象を無かったことにすることができる。リノが持つ刻運命の粉が無くならない限りずっと効果は続き、リノが願えば無敵の防御を手に入れることも可能。

光弾(ライト・バレット)
リノが使った魔法。リノは元々光属性魔法の適性者で、この魔法はリノが一番最初に生み出した魔法。故にリノはこの魔法をよく理解している上、使いこなせるため、かなりの強敵となる。おまけに弾道速度が速い。


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第67話 リノとリールの戦い

私の名前はリール。

今深淵にいます。

…私は今酷く怒っています。

目の前に立っている命を粗末に扱うこの人に対して怒っています。

人であれ、動物であれ、命は1人1つ。

亡くなればそこで終わり、たとえ蘇ったとしても以前の記憶はない。

記憶が無いままこの世界に誕生する。

…まるで、初めてこの世界に生まれたかのように。

私は今までドレインをやっつけてきました。

命の点で見れば私も命を奪っていることには変わりません。

それは否定できませんが、命が続くからという理由で人を痛ぶるのは違うと思います。

強い人は弱い人を守るべきです。

弱い人は強い人に守られながら強くなるべきです。

弱かった人は強くなれば他の弱い人を守るべきです。

そういう風になればいいと思っています。

ただ強い人が弱い人を力あるまま攻撃するのは良くないです。

…そんな怖い世界はもう嫌です。

助け合いができるそんな世界に生まれたかったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リール「…」

リノ「…」

 

両者睨み合う。

 

リノ「っ…」

 

ピュン!ドゴォン!

リノは魔法を放った。だがリールは無傷だった。

 

リール「…」

リノ (何故この人には魔法が効かないの…今までそんなことは無かった…何故…何故…)

リール「…光玉(ライダラ)

 

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

リールは光属性の弾型の魔法を放った。

 

リノ「!」

 

キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!

リノは咄嗟に結界を展開して自分を守った。

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

リールは絶え間なく魔法を放ち続ける。

 

リノ (この子…いつまで魔法を撃ち続けるの…このままだと魔力切れを起こすわよ…)

 

キィン!キィン!キィン!キィン!キィン!

リノは結界を展開し続けた。

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

リールも負けじと魔法を放ち続ける。

 

リール「…光爆(エレノア)

 

バゴォォォォォォン!!

リールは突然魔法を変えた。

 

バリィィィィン!!

するとリノの結界が粉々に砕けた。

 

リノ「!?」

リール「天の鎖(エルキドゥ)

 

ジャララララララ!ガシャン!!

リールはすかさずリノを拘束した。

 

リノ「な…この魔法は…天の鎖(エルキドゥ)…」

リール「…」

リノ「!!」

 

リノがリールの方を見るとリールが何やら魔力を溜めていた。

 

リノ (何…あの子の魔力…相当膨れ上がっているわ…)

リール「エレナさん。あなたの魔法…使わせていただきます」

 

ブゥン…ブゥン…ブゥン…ブゥン…

するとリールの周囲に結界が複数展開された。

 

リール (頭の中に流れてくる…エレナさんの魔法の全てが…)

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

すると周囲の結界たちが共鳴し始めた。

 

リール「…ラストオーダー」

 

キィン!!キィン!!キィン!!キィン!!

すると周囲の魔法陣が光り出した。

 

リール「極大魔力消滅魔法(マギ・オートマタ・ソル・ディメンション)

 

ビリビリビリビリビリビリ!!

すると周囲の魔法陣が各属性魔法の色になった。

 

リール「…チェックメイト」

 

キィン!バゴォォォォォォン!!

そしてリールは魔法を放った。

 

リノ (くっ…離れない!何故あの子が天の鎖(エルキドゥ)を使えるのよ!このままじゃ…)

 

リノがリールの方を見ると、目の前にはリールが放った魔法があった。

 

リノ「!?」

 

バゴォォォォォォン!!

リールの魔法は見事リノに命中した。

 

リール「…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

辺りに煙が立ち込める。

 

バキィン!!バキィン!!バキィン!!

突然何かが引きちぎられるような音が聞こえた。

 

リノ「…よくもやってくれたわね。あなた」

 

スタスタスタ

その正体はリノが天の鎖(エルキドゥ)を破壊した音だった。

 

リノ「…あなたがあの魔法を使うなんて思ってなかったわ」

リール「…」

リノ「でももうその魔法は使えない。たった1度の魔法」

リール「…別にいいです」

リノ「…」

リール「私には他にも使える魔法があるので」

リノ「…そ。まぁ別にいいでしょう。…あと」

 

ビュン!

リノは一瞬にしてリールの目の前に立った。

 

リノ「あなたに魔法が当たらない理由が分かったわ」

 

ヒュッ!ブチッ!

リノは素早くリールの胸元に手を入れて何かを取りだした。

 

リノ「…やっぱりね」

 

リノの手には刻運命の粉が握られていた。

 

リール「!」

リノ「あなたが魔法を使う時に少し見えたのよ。この片鱗が」

リール「…」

 

ヒュッ!

リノはその場から離れた。

 

リノ「これであなたに攻撃が当たるわね」

リール「…」

 

リールは内心焦っていた。

 

リノ「ちなみにあなた。この効果は知ってる?」

リール「…」

リノ「これはね、物体を透過する効果を持つ刻運命の粉なの」

リール「!」

リノ「あらゆる魔法を受け付けなくなるような効果よ。光属性魔法に反応すれば瞬時にその効果がもたらされる。最初は分からなかったけど今ではもう脅威ではない」

 

スッ…

リノはリールに指を向けた。

 

リノ「あなたの負けよ。魔女さん」

リール「…」

リノ「降参する?それとも…死ぬ?」

リール「…まだ負けてない」

リノ「?」

リール「まだ負けてないです!!」

 

スッ!

リールはリノに杖を向けた。

 

リール「天の光(リレミト)!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!

するとリノの頭上に光が降り注いだ。

 

リノ「…天の光(リレミト)。私が考案した相手を浄化する魔法ね。でも残念。この魔法は同属性には効果がないのよ」

リール「!?」

 

ビュン!

リノは一瞬でその場から消えた。

 

リノ「光弾(ライト・バレット)

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

リールは魔法に被弾した。

 

リール「がっ…」

リノ「まだよ。光の槍(ホーリー・ランス)

 

ビュン!バゴォォォォォォン!!

リノは光で槍を生成してリールに向けて放った。

 

リール「ぅっ…」

 

リールはまた魔法に被弾してしまった。

 

ドサッ…

リールは力なくその場に倒れてしまった。

 

リノ「え?まさかもう終わり?まだ2つしか魔法使ってないんだけど…」

リール「ゲホッ…ゲホッ…」

 

リールは大ダメージを負っていた。

 

リノ「まさかね。あんなに余裕そうな表情だったのに。こんなものとはね。ただ刻運命の粉が強すぎただけね」

リール「まだ…です…」

リノ「…」

リール「まだ…戦え…ます…」

 

ザッ…

リールはゆっくり立ち上がった。

 

リノ「…そんなフラフラな状態で何ができるのよ」

リール「私は…みんなを守る…って…約束しましたから」

リノ「…あらそう。残念ね。その約束は果たせなそうよ」

 

スッ…

リノはリールに掌を向けた。

 

リノ「…威光(バラノア)

 

ドゴォォォォォォォン!!

リノが魔法を使った瞬間、リールの足元が爆発した。

 

リール「ああああああああああああ!!」

 

リールは大ダメージを受けた。

 

リール「あっ…が…」

 

ドサッ…

リールはその場に倒れてしまった。

 

リノ「…」

 

リノは倒れたリールを見ていた。

 

リノ「…」

 

ザッ…ザッ…ザッ…

リノはリールの所まで歩いた。

 

ザッ…

リノはリールの近くまで来て足を止めた。

 

リノ「…あなた。まだ生きてるのね」

リール「ぅっ…ぁっ…」

 

リールは小さな声で唸っていた。

 

リノ「…流石はこの宿主の娘ね。魔力は1級品かしら?」

 

スッ…

リールはゆっくりと顔を動かした。

 

リール「まだ…負けて…ない…」

リノ「いえ、あなたは負けたのよ」

リール「まだ…です…」

 

ジリッ…

リールはゆっくりと腕と足を動かした。

 

リノ「…しつこいわね。あなた」

リール「!!」

 

その時リールは右手の薬指につけていた指輪が目に入った。

 

リール (オード…君…)

 

ジリッ…

リールはゆっくりと体を起こして地面に座った。

 

リール (スカーレット…アンナ…)

 

ギュッ…

リールは指輪を優しく握った。

 

リール「まだ…負けてないです…まだ…」

リノ「…」

 

スッ…

リールは何を思ったか、指輪を右手の薬指から中指に付け替えた。

 

リール (確か…右手の中指は…)

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!!

するとリールの指輪が光り出した。

 

リノ「な!」

 

バゴォォォォォォン!!

するとその瞬間、リノは強い衝撃波によって吹き飛ばされてしまった。

 

ズサァァァァァァァ!!

リノは何とか体勢を立て直した。

 

リノ「な…何…今の…」

リール「…やっぱり…。右手の中指は邪気から身を守る…だった…」

 

リールは指輪から手を離した。

 

リール (でも…こうしたところで私はもう…動けない…)

 

リールはぐったりとした。

 

リノ (…今のは何なの。初めて見た。しかもあんなのあの子の魔力じゃない…)

リール「…」

 

リールは動かなかった。

 

リノ「…ハッタリかしら」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

リノは掌に魔力を集めた。

 

リノ「…これで」

 

ビュン!

リノは溜めた魔力をリールに向けて投げつけた。

 

バゴォォォォォォン!!

リノの魔力はリールに当たったのか、爆発した。

 

リノ「…」

 

リノはじっとリールの方を見続ける。

 

リール「…」

 

やがて煙が晴れ、ぐったりしているリールが映った。

 

リノ (…ダメージを受けてない…あの魔力を防いだってこと?)

 

リール「…」

 

キィン!!バゴォォォォォォン!!

するとその瞬間、リールは全く動いてないにも関わらず、勝手にレーザーが放たれた。

 

リノ「!?」

 

バゴォォォォォォン!!

リノは何とかそのレーザーを避けることができた。

 

リノ「な…何よ…今の…」

 

リノはリールを見続けた。しかしリールには何も変化が無かった。

 

リノ「まさか…いやでも…今のあの子じゃそんなことは…」

 

リノは1つの仮説を立てた。

 

リノ「…やってみるしかない」

 

ジジジ…バリバリバリバリ!

リノは再度魔力を溜めた。

 

リノ「…これで」

 

ビュン!バゴォォォォォォン!!

リノは再度溜めた魔力を投げつけた。

 

ヒュゥゥゥゥゥゥゥ…バゴォォォォォォン!!

すると溜めた魔力がさっきと同じように爆発した。

 

リノ「…」

 

辺りに煙が立ち込める。

 

ビュン!バゴォォォォォォン!!

その時、煙の中から光属性魔法が放たれた。

 

リノ (やっぱり!)

 

ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!

リノは何とか光属性魔法を全て避けきった。

 

ザッ…

リノは魔法を避けたあと、地面に着地して考えた。

 

リノ (…やっぱり。あれは反射(リフレクター)ね。相手の魔法を受けた後にそれと同等の威力を持つ魔法を返す技。しかも魔法を受ければ受けるほど自身の体力が回復する優れもの。…こんなの…あの人以外に見たことない…)

リール「…」

 

リールは未だに動かない。

 

リノ「…だとすれば何もしないのが得策か…あるいは自分諸共…」

 

リノは色々と突破法を考えていたが、最終的にある考えにたどり着いた。

 

リノ (…やっぱりあれを破壊するにはあの人だけを殺さないとね)

 

リノはある作戦に出た。

 

リノ (これは自分の体力も削ってしまうけど相手には大ダメージを与えられる…もしかしたらそれであの魔法を突破できるかも…)

 

バリバリバリバリ!

リノの周囲に電気が走った。

 

リノ「うっ!!」

 

リノはダメージを受けた。

 

リノ (くっ…痛い…けど…このくらいなら…耐えられる!!)

 

バリバリバリバリバリバリ!

リノは更に魔力を上昇させた。

 

リノ「これで…鬼箱(パンドラ)!!」

 

ビュォォォォォォォォォォ!!

リノが魔法を放った瞬間、黒い煙のようなものがリールを包み込んだ。

 

リール (あれ…何これ…煙…)

 

ドクン!!

突然リールに異変が生じた。

 

リール「ゴフッ!!」

 

突然リールが吐血した。

 

リール (これ…何で…)

 

リールは胸が締め付けられるような感覚に襲われた。

 

リール (これは…声が…出ない…)

 

リールは痛みに悶えていた。

 

リール (スカーレット…アンナ…ごめん…)

 

バリィィィィン!!

すると突然リールの周囲に展開されていた反射(リフレクター)が破壊された。

 

リノ (…壊れたわね。なら…)

 

ジジジ…バリバリバリバリ!

リノは魔力を溜め始めた。

 

リノ「まだ煙があって見えないけど大体あの中心にいるわね」

 

まだリールの周囲には黒い煙のようなものが立ち込めていた。

 

リノ「死になさい」

 

バゴォォォォォォン!!

リノは溜めた魔力を放った。

 

ビュン!バゴォォォォォォン!!

リノの魔力はリールに直撃した。

 

ヒュゥゥゥゥゥゥゥ…

黒い煙のようなものが晴れてきた。

 

リノ「…」

 

ザッ…

リノはリールの目の前に降り立った。

 

リール「…」

 

リールは血だらけで倒れていた。

 

リノ「…あなた。大分タフね。こんなに魔法を使ったのは久しぶりよ。…でも、敵であるあなたの魔力が欲しくなったわ」

 

スッ…

リノはリールに手を伸ばした。

 

リノ「その魔法。いただくわね」

 

リノの手がリールに触れる瞬間だった。

 

???「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

一際大きな声が深淵に広がった。

 

リノ「?」

 

リノが声のした方を見ると、目の前には炎があった。

 

リノ「!?」

 

バゴォォォォォォン!!

リノはその炎に被弾した。

 

ズサァァァァァァ…

リノは何とか体勢を立て直した。辺りに煙が立ち込める。

 

リノ「…」

???「お前…俺の大事な人に何しやがる…」

 

やがて煙が晴れてきた。

 

リノ「…あなたは」

 

オード「俺の名前はオード!俺はリールの…友達だ!」




〜物語メモ〜

リールが持っていた刻運命の粉
リールが持っていた刻運命の粉は物体を透過する効果を持っている。そのため、リールには魔法の一切が効かない。しかし発動するには光属性魔法を使う必要があり、使わなければその効果も得られない。

威光(バラノア)
リノが使った魔法。使えば相手が爆発する魔法。威力は光属性魔法に由来するため、込める魔力によって威力の増減がある。

反射(リフレクター)
あらゆる魔法を全て受け切り、受けた魔法と同等の威力を持つ魔法で反撃する魔法。受けた魔法は全て回復になり、任意で解除することが可能。しかし、相手が攻撃しなければ反射(リフレクター)を発動していても意味が無い。

鬼箱(パンドラ)
リノが使った魔法。自分に傷をつけることで相手にも同じ傷を与えることが出来る魔法。つまり諸刃の剣。自分がより大きなダメージを受ければその分相手も大ダメージを受ける。


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第68話 リノとオードたちの戦い

俺の名前はオード。

今よく分からねぇところにいる。

なんか周りが岩みたいなもんで囲われてる。

しかもなんか暗ぇし。

というかそんな事より俺は目の前のやつに怒ってる。

俺の大事なリールを痛めつけてた。

俺は今まで何度か怒ったことはあるが今回が1番怒りが湧いてくる。

ここまで本気で怒ったことはないだろうな。

今にも暴れてしまいたいくらいに怒ってる。

とにかくなんだろうな、今すぐにでもこいつを倒すか、なるべくリールから距離を離したい。

リールが怪我をしないくらい離れた場所まで飛ばしてそこでボコボコにしてやる。

俺の大事なリールを痛めつけたんだからそれくらいはいいだろ。

とにかく俺はこいつを倒す。

もしくは距離を離してボコボコにしてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リノ「…あら、援軍かしら」

オード「…」

 

オードは酷く怒っていた。

 

リノ「随分カッコイイ援軍ね。正義感にでも燃えてるのかしら」

リール「オード…君…」

オード「!」

 

オードの横でリールが倒れていた。

 

オード「リール!!」

 

オードはすぐにリールに話しかけた。

 

オード「リール大丈夫か!」

リール「ごめんなさい…オード君…私…何も…守れなかった…」

オード「リール…」

リール「ごめんなさい…本当に…ごめんなさぃ…」

 

するとリールは泣き始めた。

 

オード「リール…」

 

オードはリールの頭を撫でた。

 

オード「…大丈夫だリール。あとは俺に任せてくれ」

リール「…え…でも…」

オード「大丈夫だ」

 

スッ…スタスタスタ

オードはすぐにリノの方を見た。

 

オード「…おい。お前」

リノ「?」

 

スッ…

オードはリノに杖を向けた。

 

オード「…俺は今からお前をぶっ倒す。文句はねぇよな。俺の大事なリールを傷つけたんだからな」

リノ「一体何なんでしょうか。急に現れたかと思ったら私を倒すだなんて」

オード「あ?意味分からねぇのか?」

リノ「…」

オード「分からねぇなら教えてやるよ。お前をぶっ倒した後でな!!」

 

ゴォォォォォォォォ!!

するとオードは火属性魔法を発動した。

 

リノ「…暑いですね。これは火属性魔法ですか」

オード「死ねぇ!!」

 

ドゴォン!!

オードは大きな火の玉を放った。

 

リノ「…この程度の魔法」

 

スッ…

リノは火の玉に掌を向けた。

 

リノ「軌道変換(パラティガ)

 

キィン!!バゴォォォォォォン!!

リノが魔法を唱えた瞬間、オードの火の玉が急激に方向を変えて爆発した。

 

オード「な…」

リノ「…」

 

オードはその光景に見覚えがあった。

 

オード「今の…まさか…」

リノ「…」

 

オードはリノの方を見た。

 

オード「リールから教わった…次元魔法…」

リノ「…そう。その通りよ。これは第10次元魔法。あらゆる魔法の軌道をねじ曲げる力。これがある限りあなたの魔法は私には届かない」

オード「くっ…」

リノ「さて、では次はこちらから」

 

ブゥン!!

するとリノは掌で光の玉を作り出した。

 

オード「!!」

リノ「あなたと同じことをします。これであなたと私の力の差が分かるでしょう」

 

ドゴォン!!

するとリノはオードに向けて光の玉を放った。

 

オード「…ふんっ。その魔法が使えるのは何もお前だけじゃないんだぞ」

リノ「?」

オード「軌道変換(パラティガ)!!」

 

キィン!!バゴォォォォォォン!!

オードが魔法を唱えた瞬間、リノの光の玉が急激に方向を変えて爆発した。

 

リノ「!!」

 

リノはその光景を見て驚いていた。

 

オード「へっ。どうだすげぇだろ」

リノ「…」

 

そしてリノはすぐに表情を戻した。

 

オード「俺にかかればこのくらい造作もない!!」

 

ゴォォォォォォォォ!!

オードは再度火の玉を作った。

 

オード「まだまだぁ!!」

 

ボボボボボボボボボボ!!

オードはさっきと違って火の玉を複数展開した。

 

オード「いけぇ!!」

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

オードは作った火の玉をリノに向けて放った。

 

リノ「…だったらこれはどうかしら」

 

パチンッ!!

リノは指を鳴らした。

 

ジュワッ…

するとオードの火の玉が一瞬で消失した。

 

オード「なっ…」

リノ「…ふふっ」

 

リノは不敵な笑みを浮かべた。

 

リノ「これはできなさそうね?あなた」

オード (なんだ今のは…俺の魔法が一瞬で消えたぞ…)

リノ「じゃあ…さようなら」

 

ビュン!

リノはオードの背後に回った。

 

ギュォォォォォォ!!

そして魔力を込めた。

 

オード「なっ…消え…」

 

バゴォォォォォォン!!

リノは容赦なくオードに攻撃した。

 

ヒュゥゥゥゥゥゥゥ…ズサァァァァァァァァ!!

オードは大きくぶっ飛ばされてしまった。

 

オード「があああああああああ!!」

 

オードは背中が焼けるように痛かった。

 

オード「あああっ!がぁっ!!」

 

オードは痛みに悶えていた。

 

リノ「ふふっ…残念ねあなた。私にはもうあなたの魔法は届かないわよ」

オード「ぐぁぁっ…がっ…」

リノ「ふふっ…面白いわねあなた。もっと聞かせなさい。私にその痛みに苦しむ声を!!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

リノは魔力を込めた。

 

リノ「今度は大きな声で聞かせてちょうだい!!」

???「そんなことはさせないわよ!!」

リノ「?」

 

ドゴォン!!ドゴォン!!ドゴォン!!ドゴォン!!

誰かの声が響いた瞬間、リノとその周囲に雷が落ちた。

 

リノ「くっ…」

 

ビュン!

リノはその場から離れた。

 

スタッ!

その人は地面に着地した。

 

オード「お前…委員長…なんで…」

スカーレット「…全く。1人で先に突っ走るからこうなるのよ。私が雷属性魔法を使えなかったらあなた死んでたわよ」

オード「すまねぇ…」

 

オードを助けたのはスカーレットだった。

 

リノ「あら、また新しい人が来たわね」

スカーレット「…何よあれ…魔力が半端ないわ…」

オード「委員長…あいつの魔法に気をつけろ」

スカーレット「え?何?」

オード「あいつの魔法に気をつけろよ…威力が半端ねぇ…しかも俺たちと同じ次元魔法を使ってくる…」

スカーレット「次元魔法?それってリールに教えてもらったやつ?」

オード「そうだ…だから気をつけろよ…」

スカーレット「…分かったわ。ここは一旦私が引き受けるわ。あなたはそこで寝ていなさい。もうすぐ他の子達も来るわ」

オード「…すまねぇ」

 

ザッザッザッ…

スカーレットはリノに向かって歩き始めた。

 

リノ「あら、今度はあなたの番かしら?」

スカーレット「そうよ。今度の相手は私よ」

リノ「ふふっ…さっきの男の子みたいにすぐに倒れないでね。面白くなくなるから」

スカーレット「あなたこそ。すぐには倒れないでよ。私が楽しめなくなるから」

リノ「ふふっ…言ってくれるじゃない」

スカーレット「正直、あなたに負けるつもりなんて毛頭ないのよ。私はあなたを倒してリールと一緒に帰る」

リノ「あらそう。ならあなたもここで散りなさい。私にはあの子が必要なの。あの子の魔力を使って強いドレインを作って地上をドレインで埋め尽くすためにね」

スカーレット「そんなこと…させない!!」

 

バリバリバリバリ!!

スカーレットは杖の先から雷を放出した。

 

リノ「…ふむ」

 

ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!

リノは余裕の表情でスカーレットの魔法を避けていく。

 

スカーレット「な…私の魔法が…」

リノ「あなたの魔法は全てお見通しよ」

スカーレット「何っ…」

 

ブゥン…

リノの目の色が変化した。

 

リノ「第3の目(サードアイ)。全てを見通す力を持つ目。これがあればあなたの動きなんて全て筒抜けよ」

スカーレット「くっ…」

リノ「さて、あなたはどれくらい耐えられるかな」

 

ビュン!

リノは一瞬でスカーレットの背後に立った。

 

スカーレット (な…消え…)

リノ「王手」

 

ヒュッ!

リノはスカーレットを指さしてから指を下に向けた。

 

バゴォン!!

するとスカーレットが一瞬にして地面に叩きつけられた。

 

スカーレット「がっ…」

リノ「あら、あなたもそこまで強くないのね」

スカーレット「ぐっ…」

オード「委員長…」

リノ「魔法が効かない私にこれ以上のことができる?あなた」

スカーレット「くっ…」

リノ「さようなら。さっきの魔法を耐えられるくらいに強くなって欲しいわ」

 

ジジジ…バリバリバリバリ!!

リノは魔力を溜め始めた。

 

リノ「私は弱い人にはそれなりの魔法で攻撃するのよ。弱い人が二度と復活できないくらいに強い魔法をね」

スカーレット「!?」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

リノの魔力が更に膨れ上がった。

 

オード「くそっ…委員長…」

スカーレット「私がこのまま…やられるわけ…ないでしょ!!」

 

ヒュッ!

スカーレットはリノに杖を向けた。

 

リノ「あら、動けるのね」

スカーレット「雷霆(ラゴタート)!!」

 

ビリッ!!バゴォォォォォォン!!

スカーレットの杖の先から無数の雷が放たれた。

 

ドゴォン!!ドゴォン!!ドゴォン!!ドゴォン!!

リノはスカーレットの魔法に被弾した。

 

オード「よしっ!通った!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

辺りに煙が立ち込める。

 

スカーレット「っ…」

リノ「…痛いじゃない」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥゥ…

煙が晴れてきた。

 

リノ「…」

 

リノは無傷だった。

 

スカーレット「これでも…ダメなの…」

リノ「言ったはずよ。私には魔法は通らないって」

スカーレット「っ…」

 

バリバリバリバリ!!

 

スカーレット「!?」

 

リノの溜めた魔力が更に膨れ上がっていた。

 

リノ「でもおかげでここまで魔力が溜まったわ。ありがとう」

スカーレット「くっ…」

リノ「さ、満足して死になさい」

オード「委員長ーー!!」

 

???「火炎砲(ファイアブースト)!!」

???「水流砲(ウォータブースト)!!」

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

突然火と水の玉が放たれた。

 

リノ「…?」

 

しかしリノは無傷だった。

 

???「これじゃダメだ!」

???「クソッ…だったらこのまま炎を纏って突撃してやる!」

???「ちょ、待て!」

 

???「煉獄火焔(ヘル・ファイア)!!」

 

ゴォォォォォォォォ!!ビュン!

すると???は炎を纏ってリノに向かって突撃した。

 

???「死ねぇ!!」

 

バゴォォォォォォン!!

???が直撃した瞬間、凄まじい爆発が起きた。

 

スカーレット「キャッ!!」

 

スカーレットはその爆発によって大きく吹っ飛ばされた。

 

???「委員長!」

 

ザバァン!!

スカーレットは突然現れた水によって受け止められた。

 

スカーレット「がっ…ゴボッ…」

 

しかし水の中のため、息ができない。

 

ザバァン…

すると水が委員長を地面まで運んで突然消えた。

 

スカーレット「ゲホッ…ゲホッ…ゲホッ…」

???「大丈夫か委員長!」

スカーレット「あ、あなた…なんで…リールは…」

???「リールならアンナに任せた。俺たちは委員長たちに加勢しに来た」

オード「ノーラ…お前…」

ノーラ「オード。1人で突っ走るなよ。もう少しで俺たちここに来れなくなってたんだからな」

オード「す、すまねぇ…」

 

???「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

突然???の声が響いた。

 

ノーラ「どうしたディア!!何があった!!」

リノ「ディア…そう。この子の名前はディアと言うのね」

ノーラ「!!」

 

リノはディアを拘束していた。

 

リノ「あなたすごいわ。魔法が効かない私に物理攻撃をするなんて。おかげで少しダメージを負っちゃったわ」

ディア「ゲホッ…」

リノ「でも所詮その程度。私がちょっと力を込めればこうなるのよ」

ノーラ「ディア!!」

 

タッタッタッ!

ノーラはディアの所へ向かった。

 

オード「待てノーラ!!あいつには魔法が!」

ノーラ「ディアを離せぇ!!!」

 

ノーラはリノに杖を向けた。

 

リノ「離せって…あなたたちが近づいてきたんでしょ?ちょっと都合が良すぎないかしら?」

 

パチンッ!!

リノは指を鳴らした。

 

ドゴォン!!

するとノーラが地面に叩きつけられた。

 

スカーレット「!」

リノ「さて、少し静かにしててね。今この子を殺すから」

ノーラ「ま…待て…」

リノ「待たない。さようなら」

 

バゴォン!!

リノはディアを爆発させた。

 

スカーレット「!!」

オード「!!」

ノーラ「!!」

 

ドサッ…

爆発を受けたディアはそのまま力なく地面に倒れてしまった。

 

ノーラ「ディア!!」

ディア「…」

 

ディアは返事をしなかった。

 

ノーラ「あ…あぁ…ディア…」

ディア「…」

 

ディアはビクともしなかった。

 

リノ「…」

ノーラ「てめぇ…ディアを…ディアを!!」

 

ギギギギギギ…

ノーラは何とか起き上がろうとした。

 

オード「待てノーラ…今は…」

ノーラ「がああああああああ!!」

 

ノーラは立ち上がった。しかし立ってるので精一杯でそれ以上動くことはできなかった。

 

リノ「あら、すごいわあなた。私の魔法に抗うことができるなんてね」

ノーラ「ぐっ…」

 

ノーラは徐々に体勢が崩れてきた。

 

リノ「さて、また地面に伏せてなさい。あなたに頭を上げる資格はありませんよ」

 

クイッ…

リノは自分の指を地面に向けた。

 

バゴォン!!

するとノーラはさらに強い力で地面に叩きつけられた。

 

ノーラ「がっ…」

 

そしてノーラはそれ以上抵抗することはなかった。

 

オード「ノーラ…」

スカーレット「くっ…」

リノ「…さて、あとはあの子ですか」

オード「!」

リノ「あまりあなたたちに時間はかけてられません。私にもやることがあるので」

 

スタスタスタ…ガシッ!

 

リノ「?」

 

リノが足元を見ると、オードがリノの足を掴んでいた。

 

リノ「…なんですか、あなたは」

オード「はぁっ…はぁっ…行かせない…絶対に…」

リノ「…邪魔ですよ。死にたいんですか」

オード「死ぬつもりは…ない…俺は…お前を…ぶっ倒す…」

リノ「…寝言は寝てから言ってください。あなたでは私を倒すことなんて不可能なんですよ」

オード「決めつけんな…俺はやると言ったら…やる男だ…」

リノ「そうですか。目障りなので死んでください」

 

ジジジ…バリバリバリバリ!!

リノは魔力を込めた。

 

リール「!」

 

遠くで見ていたリールがそれに気づいた。

 

リール「ダメ…オード君…離れて…」

アンナ「リール!大丈夫!?」

リール「待って…オード君…」

 

ギュォォォォォォ…バゴォン!!

リノは溜めた魔力をオードにぶつけた。

 

リール「!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

辺りに煙が立ち込めていたが、やがて煙は晴れた。

 

リール「あ…あぁ…」

オード「…」

 

リールが見たのは力なく倒れているオードの姿だった。

 

リール「あぁ…オード君…」

 

オードの指はピクリとも動かなかった。

 

リノ「…手を離していればこうはならなかったはずですよ」

リール「オード…君…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

突然強い光が周囲を照らした。

 

アンナ「!?」

リノ「!」

リール「…」

 

その正体はリールだった。リールは黄色い光に包まれていた。

 

リノ「何でしょうあれは。初めて見ましたね」

リール「…」

 

リールの目は黄色に光っていた。

 

アンナ「リール…?」

リール「…」

 

リールは無言のままただただリノを見つめているだけだった。




〜物語メモ〜

軌道変換(パラティガ)
全部で11個ある次元魔法のうちのひとつ。
第10次元魔法であらゆる魔法の軌道をねじ曲げる力を持つ。
使えば魔法の軌道を自由に変えられるが、物理的な攻撃には効果がない。

第3の目(サードアイ)
あらゆるものを見通す力を持つ目。全ての行動を先に知ることが出来る。

雷霆(ラゴタート)
スカーレットが使った魔法。杖の先から無造作に雷が放たれる魔法。雷の軌道は読みにくく、当たれば大ダメージ。

火炎砲(ファイアブースト)
ディアが使った魔法。大きな火の玉を何発も放つ魔法。威力は少し高いが、一度に使える弾数は決まっている。

水流砲(ウォータブースト)
ノーラが使った魔法。ディアの魔法の水属性版。

煉獄火焔(ヘル・ファイア)
ディアが使った魔法。全身に炎を纏って相手に突進する魔法。炎の威力が高く、当たれば即座に爆発し、周囲にも影響を与える。


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第69話 リノとレナ

わ、私の名前はアンナと言います…。

今、暗い場所にいます。

エレナさんは深淵と仰っていましたが、私たちは初めて見るので本当にここが深淵なのかはよく分かりません。

私たちは少し前にここに着きました。

私はディア君とノーラ君に頼まれてリールのところに来ました。

でもその時にオード君がやられてしまって…。

するとリールが何も言わずに立ち上がったんです。

しかも黄色い光を発していました。

普段のリールとは全然違うので私は少し怖かったです。

でも何を話しても何も返してくれません…。

本気で怒っているのかなって思いました。

…でも、私はリールを止めたくありません。

これは保身のためではなく、私もオード君が目の前でやられて凄く怒っているからです。

それはリールも同じです。

…なのでリールには存分に暴れて欲しいと…思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュォォォォォォォォォォ!

リールの周囲に光の粒が出現した。

 

リール「…」

リノ「…あなた、その魔力…」

アンナ「リ、リール…」

リール「…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールの心の中

 

リール「…」

???「あら、また私の力を欲しているの?あなた」

リール「…はい」

 

リールは???の方を見た。

 

???「…あなた、私を見るのは初めてね」

リール「…」

 

リールは頷いた。

 

レナ「では自己紹介から。私の名前はレナ。あなたのもうひとつの存在。そして、あなたが戦っていたリノという人物の娘よ」

リール「!?」

 

リールは驚いていた。

 

レナ「…何も驚く必要は無いわ。私これでも2度か3度はあなたの体で戦ってるから」

リール「私の…体で…」

レナ「そう。厳密には私が勝手に出てきて暴れただけなんだけどね」

リール「なんで…」

レナ「…私とあなたが全く同じ存在だからよ」

リール「…?」

レナ「あなたが思ったことは私も思っている。あなたがしたいと思っていることは私もしたいと思っている。あなたが殺したいと思っているときは私も同じように思っている。私とあなたは同じ存在。あなたが何をしようとしているのかも全て分かる。でも、あなたがすれば不都合なこともある。それを私が代わりにやっているの」

リール「私の…代わり…」

レナ「そう。あなたの代わり」

リール「な…なんで…そんなことを…」

レナ「…さぁね。分からないわ」

リール「…」

レナ「さて、自己紹介は終わったことだし…」

 

ヒュッ

レナはリールの背後に立った。

 

レナ「これからどうする?」

リール「!?」

 

リールは背後から声が聞こえて驚いていた。

 

レナ「私があの人を殺そうか?それとも、あなたが殺る?」

リール「え…」

レナ「あの人を殺さない限り地上は消えて無くなるわよ?ドレインによって」

リール「!」

レナ「しかもあの人、あなたの魔力を使ってドレインを生み出そうとしてるから」

リール「!?」

レナ「さぁ、どうする?あなたが殺る?それとも…」

リール「ちょ、ちょっと待ってください」

レナ「?」

リール「あなた…あの人の娘だって…娘が親を殺してもいいんですか…」

レナ「親?」

リール「は、はい…」

レナ「…あなたは、あれが親に見えるの?」

リール「え…でも、さっき娘って…」

レナ「うん。言った。でもあなたはあれが親に見えているの?」

 

リールは答えに戸惑ったが、何とか言った。

 

リール「え…えっと…見えて…ないです」

レナ「うん。私も見えていない。あの人は親じゃない。親の見た目をしたドレインよ。私の親…いや、あなたの親はもっと善良よ。あんなことしないわ」

リール「え…じゃあ…」

レナ「……今からあいつの中にいるドレインを倒すの。その過程で親を傷つけることは変わりないけどあとで回復させれば問題ないわ」

リール「え…」

レナ「さ、答えて。どっちが殺る?あなた?それとも私?」

リール「え…えっと…それは…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…深淵

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

突然魔力が膨れ始めた。

 

リノ「こ、この魔力…」

???「…ふふっ…」

アンナ「リ、リール…」

???「久しぶりねぇ。外に出たのは」

リノ「あなた…まさか…」

???「…久しぶり。()()()()

リノ「やっぱり…あなたは…レナ」

レナ「正解。よく分かったね」

リノ「そりゃ分かるわよ。私はあなたの母親よ?」

レナ「…そ、分かった。じゃあお母さん」

リノ「?」

レナ「正解したから今すぐ殺してあげる」

リノ「!!」

 

パチンッ!!

レナは手を叩いた。

 

ゴゥン!!

リノの体に突然異変が生じた。

 

リノ「がっ…何…これ…」

 

リノは突然体を締め付けられるような感覚に襲われた。

 

レナ「…やっぱりね」

リノ「!」

レナ「あなたはお母さんじゃない。お母さんの体を借りたただのドレインよ」

リノ「!?」

レナ「その顔とその声で話されると無性にイライラするわ。不愉快だから消えてくれない?」

リノ「レナ…あなた…母親を…」

レナ「…さっきも言ったけどあなたは母親じゃない。ドレインよ」

リノ「っ…」

レナ「この技は光属性魔法には効果がないのよ。でもあなたには効果がある。おかしな話よね。私のお母さんは光属性魔法よ。普通ならこの効果は受けない。でも違った。それが何よりの証拠よ」

リノ「でも…それでドレインって決めつけるのは…」

レナ「十分な証拠よ。現にこの技は…」

 

レナはリノを指さした。

 

レナ「あなたを炙り出すための技だもの」

リノ「!」

レナ「さ、出てきなさい。今からあなたをボコボコにしてあげるから」

リノ「くっ…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ー回想ー

 

場所…リールの心の中

 

リール「え…えっと…それは…」

レナ「…」

リール「っ…お願いします」

レナ「…」

リール「私の友達を…私の大事な人を…私のお母さんを…助けてください」

レナ「…ふふっ。いい答えね」

リール「っ…」

レナ「でもひとつ言っておくわ」

リール「?」

レナ「私が外にいられるのは10分だけ。それ以上はいられない」

リール「え…」

レナ「私はあなたであなたは私なの。この世界に同じ人は1人だけ。2人も存在できないの」

リール「え、でもそれが10分だけと何の関係が…」

レナ「…」

リール「あ、あの…」

レナ「…今のこの世界には私がもう既に存在しているの」

リール「…え?」

 

レナは後ろを振り返って歩き始めた。

 

レナ「そのままの意味よ。私と全く同じ存在が既にこの世界にいるの。だから10分だけ。それが限界」

リール「え、でも…あなたは私なのでは…」

レナ「…そう。あなたは私。そして、私はあなた」

リール「…」

レナ「でも、道を外した私がそこにいる。あなたも1度会ったことがあるわ」

リール「え…私が会ったことある人…」

レナ「…グラム。それが名前」

リール「グラム…」

 

リールは過去に学校を追い出され、魔女さんの家で住んでいたことがあった。その時、ある女性が魔女さんの家に尋ねてきた。彼女はその家を懐かしいと言っていた。リールはその人のことを思い出していた。

 

リール「え…まさか…あの人…」

レナ「…そう。あの人」

リール「道を外したって…」

レナ「…うん」

リール「じゃあ…」

レナ「…ごめんね。これだけは言えない。すでに君も罪を犯しているから」

リール「え…私が…」

レナ「うん。だからごめんね。言えないの」

リール「私が…どういう罪を…」

レナ「…それは未来で分かる。愚かな私と同じ道を辿っているあなたならね」

リール「えっ…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!

突然レナが光り出した。

 

リール「わっ!」

レナ「…10分よ。10分経ったら自動的に意識があなたに戻るわ。私はあなたに力を貸すだけ。それだけよ」

リール「待って!!」

レナ「…頑張りなさい。私」

 

ー回想ー

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…深淵

 

リノ「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ビュォォォォォォォォォォ!!

リノが大きな声を上げた瞬間、リノの体の中から黒い瘴気が出てきた。

 

レナ「出てきたわね」

 

ドレイン「アァァァァァァァァァァァァ!!」

 

ドレインは苦しんでいた。

 

ドレイン「マタ…オマエカァァァァァァ!!」

レナ「そう。また私よ」

ドレイン「フザケルナァァァァァァ!!ワタシハ!!ワタシハァァァ!」

レナ「…いい加減にしなさい。あなたのせいで時間軸が大きくズレてしまってるのよ。こんな所まで来て」

ドレイン「ワタシハオマエナンカニ…コロサレナイ!!」

レナ「…そう。でももう十分でしょ。あなたのせいで私はお母さんを失ってしまった。あなたのせいでよ」

ドレイン「ウルサイ!!オマエガワタシニハムカウカラダ!!」

レナ「…」

 

ジリッ…

レナはドレインに近づいた。

 

ドレイン「クルナァァァァァァ!!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

ドレインは自分の体を分裂させてレナを攻撃した。

 

レナ「邪魔よ」

 

バチッ!

レナは指を動かした。すると分裂していたドレインが一瞬にして消えた。

 

ドレイン「ガァァァァァァァ!!」

 

ドレインは痛みを悶えていた。

 

レナ「あなたは罪を犯しすぎた。もうこれ以上野放しにはできない」

ドレイン「ダマレダマレダマレェェェェ!!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

突然魔力がドレインに集まり始めた。

 

アンナ「!!」

ドレイン「コノママオマエモロトモ!!」

レナ「…」

ドレイン「ハカイシテヤル!!」

 

バリバリバリバリ!!

ドレインに雷が纏い始めた。

 

ドレイン「ガァァァァァァァ!!」

レナ「あなたはもう、終わりなのよ」

 

ドスッ!!

レナはドレインの胸にあるものを突き立てた。

 

ドレイン「コ…コレハ…」

レナ「聖遺物(ロンギヌス)よ。あなたたちドレインを浄化させるために開発されたもの。これはあなたを中から破壊するわ。もう抗えない。死と向き合いなさい」

ドレイン「グッ…ワタシハシナナイ…ワタシハァ…」

 

ボロッ…

ドレインの体が崩れ始めた。

 

ドサッ…

ドレインは力なくその場に倒れた。

 

ドレイン「ワタシハ…ワタシハ…」

レナ「…知ってるよ。あなたの事も。何故ドレインがこの世に存在しているのかも。全ては私のせい。私があんなことしなければこうはならなかった」

ドレイン「ワタシハァ…」

 

ジュワァァァァァァァァ…

そしてドレインはその場から跡形もなく消えていった。

 

レナ「…」

アンナ「…」

 

レナはそれを無言で見ていた。

 

レナ「…あなたには色々な罪を着せてしまった。…全ては私の責任。せめてあなたが地獄に落ちないようにしてあげるから。あなたは安らかに眠りなさい」

 

カランカラン!

レナは聖遺物(ロンギヌス)をドレインが倒れた場所に落とした。

 

レナ「…実はね、これはあなたに付いている罪を祓うものなの。あなたを浄化するものって言ってごめんなさいね。そうでなきゃあなたはあなたでいられなくなる。自分を見失った誰かも分からない存在になってしまう。…それが嫌だった。あなたはあなたのまま眠ってください。最後に私の手で眠ってもらえて嬉しいわ。…アンナ」

アンナ「!!」

 

アンナは自分の名前が呼ばれて驚いていた。

 

アンナ「え…今のって…私の名前…」

レナ「…」

アンナ「え…あの…私は」

 

ドクンッ!!

 

レナ「!?」

 

レナの体に突然異変が生じた。

 

レナ (な…何…まさか…時間切れ!?)

アンナ「あ、あの!大丈夫ですか!」

レナ (まだ時間はある…何で…)

 

???「そこまでにしてもらえる?」

 

突然人の声が聞こえた。それはレナなら聞き覚えのある声だった。

 

レナ「あなた…まさか…」

???「…ふふっ」

レナ「…なんでここにいるのよ。グラム!!」

 

声の主はグラムだった。

 

グラム「あら、私なら分かるんじゃない?」

レナ「っ…」

アンナ「え、えっと…あなたは…」

グラム「私はグラム。目の前に立っているこの人そのものよ」

アンナ「えっ…えっ?」

 

アンナは混乱していた。

 

レナ (マズイ…時間がない…このままだとこの人を残したままあの子に変わってしまう…)

グラム「あなた、もう時間がないのでしょう?」

レナ「!!」

グラム「一刻も早く私を消したいんじゃないの?」

レナ「っ!」

グラム「でも残念。私はあなた。あなたは私。自分を殺せないことくらい知ってますよね?」

レナ「くっ…」

グラム「私はあなたと同じ存在です。故に私を殺すことは不可能。ではあなたの取るべき行動は分かりますよね」

レナ「っ…」

グラム「その答えは…あなた自身がこの時代から消えることですよ」

 

パチンッ!!

グラムは指を鳴らした。

 

ドクンッ!!

レナはさっきと同じ感覚に襲われた。

 

レナ「がっ…」

アンナ「リール!!」

 

ドサッ…

レナは膝をついた。

 

アンナ「リール!しっかりして!!」

レナ「はぁっ…はぁっ…ねぇ、あなた…」

アンナ「!」

レナ「頼みがあるの…聞いて」

アンナ「た…頼みって…」

レナ「私には時間が無い…もうすぐあの子と変わる…」

アンナ「あの子って…?」

レナ「私があの子に変わったら伝えて」

アンナ「な、何を…」

レナ「…"背負わせてごめん"って」

アンナ「えっ…背負うって…どういう…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

するとレナの体から光の粒が出現した。

 

アンナ「わわっ!!」

グラム「ふふっ…時間切れのようですね」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

体から出てきた光の粒はそのまま消えてなくなってしまった。

 

リール「あ、あれ…私は…」

アンナ「リール!!」

 

ギュッ!

アンナはリールを抱きしめた。

 

アンナ「良かった…リール…」

リール「アンナ…」

グラム「お目覚めですか。リールさん」

リール「!!」

 

リールはグラムがいることに気づいた。

 

リール「あ、あなたは…」

グラム「少し前にお会いしましたね。お久しぶりです」

リール「っ…」

 

リールはレナからグラムの事を聞いていたため、少し警戒していた。

 

グラム「…?どうされました?」

リール「…あの」

グラム「はい」

リール「…あなたは…何者ですか」

グラム「!」

リール「レナという人物からあなたの事を聞きました。あなたはレナと同じ存在だと。あなたがいるから存在できないと…あなたは一体何者なんですか」

グラム「…」

 

その話をすると一瞬にしてグラムの表情が曇った。

 

グラム「…その話…レナから聞いたと…」

リール「…はい」

グラム「…そうですか。あの人もよく喋りますね。こんな子にまで話すなんて」

リール「っ…」

グラム「だったら仕方ありません。リノの意識がない今、代わりとなるのはあなただけです」

リール「!」

 

スッ…

グラムはリールに手を差し伸べた。

 

グラム「あなた、私と一緒にこの世界を破壊しませんか?」




〜物語メモ〜

聖遺物(ロンギヌス)
レナが持っていた物。小さな槍状のもので、相手に突き刺すことで罪を祓うことができる。ただし、祓った罪はその人から消える代わりに刺した人がその人の罪を請け負うことになる。


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第70話 リノとグラムの魔法

私の名前はリール。

今深淵にいます。

私はレナという女の子から色々とお話を聞きました。

あの子は私に「もう罪を犯している」と言っていました。

でも私はそんな事は身に覚えはないんです。

今まで真面目に生きてきましたし、ルールを破ったりもしませんでした。

なのにそんな私が罪を犯したって…一体どんな罪を犯してしまったのでしょうか。

気になって仕方ありません。

ですが、もうその話を聞くことはできないそうです。

まだ10分も経っていないのに、何故か急に私に意識が戻ったんですよ。

しかも目の前にいるグラムさんはレナさんの意識がないと仰っていましたが、私にはそれを確認する術がありません。

…もっと勉強しておくべきでした。

私は属性魔法ばっかりに目を向けてしまっていました。

なのでこういう時に何も出来ないんですよね…。

…さて、お話はここまでです。

今、グラムさんから世界を破壊しないかと提案を受けています。

…答えは簡単ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グラム「あなた、私と一緒にこの世界を破壊しませんか?」

リール「!?」

アンナ「!!」

 

グラムさんは急にそんな提案をしてきた。

 

リール「え、世界を…破壊…」

グラム「そうです」

リール「…破壊したとして、私になんのメリットがあるのですか」

グラム「…」

 

グラムは少し黙ってから口を開いた。

 

グラム「…私はこの世界の裏を知っています。この世界の裏にはあなた方が使う魔力の元素があります」

リール「魔力の…元素…」

グラム「そう。それは持つ人の魔力を極限まで上昇させるものなんです。それがあれば弱い魔法も国を破壊できるくらいにまで上昇します」

リール「えっ…」

グラム「ですが今はそれがありません。いえ、正しくは『封印されて見つけ出せない』といったところです」

リール「…」

グラム「それがあれば私はある方を生き返らせることができるのです」

リール「生き返らせる…」

グラム「そう。その方は私にとって大事な方です。今は残念ながら亡くなっていますが…。私はあの方を生き返らせてまた昔みたいに時間を共にしたいです」

リール (この人が言ってる大事な人って…まさか…)

グラム「さぁ、あなたのお力を」

 

グラムはリールに手を差し伸べた。

 

リール「…ひとつ…お聞きします」

グラム「…何でしょうか」

リール「あなたが仰っていた大事な人って…魔女さんの事ですか」

グラム「…」

 

グラムは少し黙った。だが、少ししてから口を開いた。

 

グラム「…はい。その通りです」

リール「!」

 

リールは予想通りの答えで少し驚いていた。

 

リール「…魔女さんに何かあったのですか」

グラム「…」

リール「魔女さんは強いお方です。今は倒れていますが、私の代わりにドレインを弱らせてくれました。…そんな方が亡くなった?一体何があったのですか」

グラム「…」

 

グラムは差し伸べていた手を引っ込めた。

 

グラム「…殺したんですよ。私が」

リール「!?」

 

リールは突然の言葉に驚いた。

 

グラム「ですが、あぁするしかなかった。他に手はありませんでしたよ」

リール「え…魔女さんを…殺した…」

グラム「はい。殺しました」

リール「っ…」

 

リールはレナが言っていた言葉を思い出した。

 

リール「…あなたは…」

グラム「?」

リール「あなたは…道を外れたあの人…」

グラム「!」

 

グラムはある言葉に反応した。

 

リール「私はあの人…あの人は私…」

グラム「…」

リール「…お答えします」

グラム「…」

リール「あなたのお誘いには乗れません。すみません」

 

リールは頭を下げた。

 

グラム「…何故ですか。あの力を手に入れることが出来れば私たちは強くなれる。誰一人死なせずに済みます。それなのに何故」

リール「…私はみんなのために力をつけたいです」

グラム「でしたら」

リール「しかし」

 

リールはグラムが話している途中で遮った。

 

リール「…自分だけが強くなるためのものなら必要ありません」

 

ヒュッ!ドカン!ドカン!ドカン!

リールは杖をグラムに向けて魔法を放った。

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…

煙が徐々に晴れてきた。

 

グラム「…何するんですか。あなたは」

 

しかしグラムは無傷だった。

 

グラム「…少し痛かったですが、あなたが私に力を貸すというのなら先程の無礼を見なかったことにします。さぁ、私にお力を」

リール「…嫌です」

グラム「…」

リール「私はあなたに従いません」

グラム「…そうですか。なら仕方ありません」

 

グラムは少し怒っていた。

 

グラム「…すみませんがここからは一切手を抜きません。私はあなたを屈服させてあなたの魔力を使わせて頂きます」

 

スッ…

グラムはリールに指を向けた。

 

グラム「空印(ソル)

 

スーッ…

グラムはそのまま指を地面の方に向けた。

 

リール「私だって手を抜きません!あなたの野望は全て私が排除して…」

 

ドゴォン!!

すると突然リールが地面に叩きつけられた。

 

リール「がっ…!!」

アンナ「リール!!」

グラム「…」

 

グググググ…

リールは見えない力によって地面に押し付けられていた。

 

リール「何…これ…」

グラム「あら、あなたは見たことあると思ってましたよ」

リール「こ、こんな力…」

グラム「これは第1次元魔法。相手に『点』と『線』を与える魔法です。魔女さんが使っている次元魔法ですよ」

リール「!!」

 

リールはその言葉に驚いた。

 

リール「これ…が…魔女さん…の…」

グラム「そう。これが魔女さんの次元魔法。そしてこれが…」

 

スッ…

グラムは手を上に向けた。

 

グラム「潰箱(カンデラ)

 

ブゥン…

すると透明な板状のものが出現した。

 

グラム「相手を圧縮する魔法。第2次元魔法です」

 

スッ…

グラムは上に向けた手を下におろした。

 

ブゥン…ギギギギギ…

透明な板状のものはリールの上から覆い被さるように近づいた。そして、下にいたリールを押し潰し始めた。

 

リール「ぐっ…がぁっ…」

 

リールはあまりの強さに声が出なかった。

 

グラム「ひとつ言い忘れていました。私は魔女さんやエレナさんと違って全ての次元魔法を使うことができるんですよ」

リール「なっ…」

 

ギギギギギ…

透明な板状のものが更にリールを押し潰す。

 

リール「あっ…がっ…」

 

リールはだんだん呼吸ができなくなってきていた。

 

リール (このままじゃ…私…)

アンナ「リール!!」

リール「!」

 

リールが声のした方を見ると、アンナが走って近づいてきていた。

 

リール「待ってアンナ…来ちゃダメ…」

アンナ「私のリールから離れて!!」

 

ザバァン!!

アンナは杖を使って大量の水を作り出した。

 

アンナ「はぁっ!!」

 

ザバァン!!

そしてアンナはその大量の水を操作してグラムを押し流した。

 

グラム「なっ!」

 

ザバァン!!

グラムは少し遠いところまで押し流されてしまった。

 

ピシッ…パリンッ!!

すると次元魔法の効果が切れてしまった。

 

グラム「なっ…この力…アンナ…あなたこの時はこんなに力が強かったのですか…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

アンナ「リール!!」

 

タッタッタッ!

アンナはその隙を見てリールに駆け寄った。

 

アンナ「リール!!大丈夫!?」

リール「アンナ…」

アンナ「あ、良かった…声は聞こえる…」

リール「アンナ…今すぐここから離れて…」

アンナ「えっ…なんで…」

リール「あの人は危険です…ですので今すぐに…ここから…」

アンナ「でも!リールを置いてなんて!!」

リール「お願いです…私よりも…オード君たちを…」

アンナ「!!」

 

アンナはオードたちが倒れている方を見た。オードやディア、ノーラ、スカーレットはみんな倒れたままになっている。

 

アンナ「みんな…」

リール「アンナ…」

アンナ「何…?」

リール「エレナさんは…いますか?」

アンナ「!」

リール「エレナさんに…みなさんを回復させるよう…言ってきてください…」

アンナ「でも…リールは…」

リール「私はあとで…だからお願いです…」

アンナ「リール…」

リール「お願いです…アンナ…」

アンナ「っ…」

 

アンナは少し考えて答えを出した。

 

アンナ「…分かった。言ってくるよ。終わったらすぐリールを回復させるから…それまでは耐えて」

リール「…はい。任せてください」

アンナ「っ…」

 

スッ…タッタッタッ!!

アンナはその場から離れた。

 

リール「頼みますよ…アンナ…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

グラム「おや?」

 

グラムはリールとアンナの様子を伺っていた。するとアンナが急に立ち上がり、どこかへ走って行った。

 

グラム「あら、あの子と2人ならまだ希望はあったものを」

 

スタスタスタ

グラムは歩き始めた。

 

グラム「一人になるということは死にたいということですか?『私』」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ザッザッザッ…

グラムはリールが倒れている場所に着いた。

 

グラム「あなた、死にたいのですか?」

リール「はぁっ…はぁっ…別に…死にたくないですよ…」

グラム「…ならあの子を一人にしたのは良くない選択ですよ。あの子と2人ならまだ私に勝つ希望はありましたよ」

リール「はぁっ…はぁっ…別にいいんです」

グラム「…」

リール「あなたの相手は私です…」

 

ジリッ…

リールはゆっくり起き上がった。

 

リール「あなたを倒すのはこの私です…」

 

ジリッ…

リールはゆっくり立ち上がった。

 

リール「あなたという脅威からみなさんを守るのが…私です!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

リールの体から大量の黄色の光の粒が出てきた。

 

グラム「…懐かしいですね」

リール「っ…」

 

リールはグラムを睨んだ。

 

リール「私は…」

 

スッ…

リールはグラムに杖を向けた。

 

リール「私は…あなたをやっつけます!!」

グラム「…そう」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ!!

グラムの体から大量の白い光の粒が出てきた。

 

グラム「だったら私は…あなたの力を奪うまでです」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ドゴォン!!ドゴォン!!ドゴォン!!ドゴォン!!

周囲に爆音が響き渡る。

 

リール「はぁっ!!」

 

シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!

リールは光の玉を作り出した。

 

リール「光玉(ライダラ)!!」

 

ビュン!!ビュン!!ビュン!!ビュン!!

リールは光玉(ライダラ)を飛ばした。

 

グラム「その程度…軌道変換(パラティガ)!」

 

キィン!キィン!キィン!キィン!

グラムは第7次元魔法を使って光玉(ライダラ)の軌道を変えて被弾を避けた。

 

リール「まだいきます!!」

 

スッ!

リールは杖を上に向けた。

 

リール「天の鎖(エルキドゥ)!!」

 

ジャラララララララ!

すると空中に魔法陣が展開され、その中から鎖が多数召喚された。

 

ガシャン!!ガシャン!!ガシャン!!

するとその鎖はグラムを捉えて拘束した。

 

グラム「なっ!しまった!」

リール「これで!」

 

スッ!

リールはグラムに杖を向けた。

 

リール「光爆(エレノア)!!」

 

キィン!バゴォォォォォン!!

リールの爆発はいつもより少し強めのものだった。

 

リール「やった!」

 

リールは喜んだが、すぐに次の行動に移った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

パラパラパラパラ…

光爆(エレノア)を受けたグラムは少し考えていた。

 

グラム (…流石は私ですね。よく出来た魔法の連携…今の私にはできない芸当ですね)

 

ビリビリ…

グラムの周囲の大気が少し震えた。

 

グラム「ですが、この程度では私を止めることなんてできませんよ」

 

ビリビリ…バキン!!バキン!!

グラムは特殊な力で天の鎖(エルキドゥ)を破壊した。

 

グラム「…」

 

グラムはリールのいる方を見た。

 

グラム「…では、次は私から行きましょうか」

 

ビュン!!

グラムはその場から一瞬で移動した。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

リール「よしっ…次の作戦は…」

グラム「では、次は私からですね?」

リール「!?」

 

リールは突然目の前に現れたグラムに驚いた。

 

グラム「いきますよ。覚悟してください」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

すると大気が振動し始めた。

 

リール「なっ…何…」

 

リールにとって初めて見る魔法のため、リールは何をしたらいいのか分からなかった。

 

グラム「これも次元魔法。第11次元魔法。相手に揺らぎを与える魔法です」

リール「揺らぎ…」

グラム「そう。相手に揺らぎを与えることで平衡感覚を狂わせるんです」

リール「!?」

 

リールは逃げる体勢を取った。

 

グラム「もう遅いです。虚式世界(アイオニア)

 

ブゥゥゥゥゥン…

グラムはリールに揺らぎを与えた。

 

リール「なっ…」

 

するとリールの視界が急に揺らぎ始めた。

 

リール「何…これ…視界が…」

 

リールは視界が揺らいだまま飛べずに落下してしまった。

 

グラム「ふふふっ…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…ドゴォン!!

リールはそのまま地面に激突してしまった。

 

リール「がっ…」

 

リールは大ダメージを受けた。

 

リール「ぐっ…い…痛い…」

 

リールの体は所々激痛が走っていた。

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…スタッ…

グラムはゆっくり綺麗に着地した。

 

リール「ぅっ…痛い…痛い…」

 

リールは痛みに悶絶していた。

 

グラム「ふふっ…でしょうね。あの高さから落ちたんだから普通は死んでるところですよ」

リール「うっ…ぐっ…」

グラム「さて、私は一切手を抜かないと言いました」

 

ギュォォォォォォォ!!

グラムはある魔法を発動した。

 

グラム「なのでこのままあなたの様子を観察するほど優しくありません」

 

ボワン!

するとグラムの掌に透明な空間が作り出された。

 

グラム「開闢(マトン)。これは第3次元魔法。新たな空間を作り出す魔法。新しい空間が出来れば元々あった空間は一瞬にして消滅する」

リール「!!」

グラム「これであなたの体を空間ごと消し炭にします」

 

ボワン!!

透明な空間が少し大きくなった。

 

リール「そんなとこしたら…私の体は…」

グラム「えぇ。元には戻りませんよ」

リール「だったら…私の力も…元には戻りませんよね…」

グラム「…」

リール「それはあなたにとって最悪のシナリオなのでは…ないでしょうか…」

グラム「…」

 

ブクブクブク…パチン!!

グラムは透明な空間を破壊した。

 

グラム「…だったら私に力を貸してくれますか?」

リール「っ…」

 

グラムは少しだけ待った。だがリールから返答が来ることはなかった。

 

グラム「…そうですか。ならあの子にしましょう」

リール「?」

グラム「さっきあの子の水属性魔法を受けて分かりました」

リール (アンナのこと…)

グラム「あの子にも少なからずあなたと同じものがあります。まだまだ未熟ですが、成長すれば次第に強い力となるでしょう」

リール (まさか…)

グラム「あなたがダメならあの子にしますね」

リール「ま…待って…」

グラム「…」

リール「あの子には…手を出さないで…」

グラム「…無理ですね」

リール「!」

グラム「あなたが承諾しない以上、あの子を使うしかないのです」

リール「そんな…」

グラム「では、探しに行きましょうか」

 

ザッザッザッ…

グラムは歩き始めた。

 

リール「待ってください!!」

グラム「!」

 

グラムは足を止めた。

 

グラム「…何ですか。承諾しないならあなたに用はありませんよ」

 

ジリッ…

リールはゆっくり立ち上がった。

 

リール「まだ…負けてません…」

 

カタカタカタ…

リールは震える腕でグラムに杖を向けた。

 

グラム「…」

リール「まだ…私は戦えます…」

 

グラムはリールの方を振り向いた。

 

グラム「そう。じゃあ次で最後ね」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

グラムは魔力を増幅させた。

 

カタカタカタ…

リールの腕はまだ震えていた。

 

リール (ダメ…まだ視界が揺らぐ…)

 

リールはまだ第11次元魔法の影響を受けていた。

 

グラム「フラフラのあなたに耐えられるかしら?」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

グラムの魔力が更に増幅した。

 

グラム「第8次元魔法…」

 

グラムはリールに掌を向けた。

 

グラム「真空(オーラル)

 

ブゥン!!

するとリールの体が一瞬だけ硬直した。

 

リール「かっ…」

 

ドサッ…

リールはそのまま力なく地面に倒れた。

 

リール「ぁっ…っ…」

 

リールは何故か声が出せなかった。

 

グラム「これは第8次元魔法。相手を真空状態にする魔法。この魔法を受ければ相手の体内から一瞬で酸素が消えてなくなる」

リール「っ…っ…」

グラム「あなた知ってる?体の中にある筋肉って動かすためには酸素が必要なの。でも今のあなたの体には酸素はもう残ってない。つまり、もう二度と体を動かすことができないの」

リール「っ…っ…」

 

リールの目から涙が出てきた。

 

グラム「私が解除するか、私に一定の攻撃を与えることができればこの魔法は解除されるけどあなたにもうその余力は残ってない。つまり、あなたの敗北です」

リール「っ…」

 

リールの目から更に涙がこぼれ落ちてきた。

 

グラム「さて、次は止めませんよ。これであなたを消滅させます」

 

ブゥン…

グラムはまた透明な空間を作り出した。

 

グラム「さようなら。もう1人の私。来世ではもっとマシな人間になってくださいね」

リール「っ…っ…」

 

リールは涙を流すだけで何も出来なかった。




〜物語メモ〜

第1次元魔法《 空印(ソル) 》
魔女さんが使っている次元魔法。
相手に『点』と『線』を与える力を持つ。
点は相手に指を向けて空間をつつくことで、相手に空気の塊を飛ばすことができる。
線は相手に指を向けて上下左右に指を向けることで相手を思いのままの方向へ動かすことができる。

第2次元魔法《 潰箱(カンデラ) 》
グラムが使っている次元魔法。
相手を圧縮する力を持つ。
第2次元魔法は最大4枚の透明な板状のものを出現させて相手を押し潰す。
今回はリールが地面に押し付けられている状況だったため、1枚で済んだが基本は4枚出現させる。
この透明な板状のものは目に見えないが触れることはできる。
圧縮する際、その人の周囲はその透明な板状のものによって囲われるため、酸素も徐々に少なくなっていく。

第3次元魔法《 開闢(マトン) 》
リールの母親であるリノが使っていた次元魔法。
空間を作り出す力を持つ。
何も無いところから新たに空間を作り出し、それを現世に具現化することができる。
新たに作られた空間が具現化すれば、前に存在していた空間は一瞬で消滅する。
これは空間だけだが、その消滅する空間の中に人がいれば、その人も一緒に消滅する。
リールの母親であるリノはこの次元魔法を使ってこの世界に深淵という空間を作り出した。

第8次元魔法《 真空(オーラル) 》
グラムが使っている次元魔法。
相手を真空状態にする力を持つ。
相手を真空状態にするだけでなく、体内の酸素を一瞬で消したりすることも可能。
この魔法を受ければたちまち力が抜け、呼吸も出来なくなるため、かなり危険。
グラムが解除するか、一定の攻撃を与えることでこの魔法を解除することができる。

第11次元魔法《 虚式世界(アイオニア) 》
グラムが使っている次元魔法。
相手に揺らぎを与える力を持つ。
これは人だけでなく、大気にも揺らぎを与えることができる。
人に揺らぎを与えることで平衡感覚を狂わせ、大気に揺らぎを与えることで相手との距離を錯覚させることができる。


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第71話 リノと救世主

私の名前はリール。

今深淵にいます。

現在、グラムさんと戦っています。

グラムさんは道を外れた私だとレナさんから聞きました。

なので私自身と戦っていることになるのですが、どうにも勝てそうにありません。

加えて私であるはずなのに1度も光属性魔法を見ていません。

これは一体どういう事なのでしょうか。

本当にグラムさんは私なのでしょうか。

それとも私じゃない別の誰かなのでしょうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…深淵 戦地から離れた場所

 

エレナ「ねぇ、これを見て」

エレナ「何ですか?」

 

エレナ(本体)とエレナ(分身)もオードたちと一緒に深淵に来ていた。

 

ザッザッザッ…

エレナは指定された場所を見た。

 

エレナ「!!」

エレナ「…少し前に違和感があったのよ。何かが無くなるような感じがね」

エレナ「…私も感じました。…まさか、これだったとは…」

 

2人のエレナの前にあったのはリールをここへ連れてきた3人目のエレナだった。

 

エレナ「…まさか私の分身がやられるなんて…」

エレナ「本来私たちは本体であるあなたの半分の魔力で生成される。故に本体の半分の力でしか戦えない。でもあなたは違う。分裂の禁忌を持つあなたは本体と同等の力で分身を作ることが出来る。でもそれがやられてるってことは…」

エレナ「…私では勝てないということですね」

エレナ「…えぇ。そうね」

エレナ「私を倒すほどの魔力…一体誰が…」

 

アンナ「エレナさーん!」

 

アンナがエレナを見つけて走ってきた。

 

エレナ「あら、アンナさん。どうされましたか?」

アンナ「今リールがある人と戦ってるんですがそれよりもオード君たちが重傷で早く回復させて欲しいんです!!」

エレナ「なっ…あの子たちがやられたの…」

エレナ「何故でしょうか。私たちの力を分けているというのに…」

エレナ「まさか…それほどまでに敵が強いのか…」

エレナ「…行ってみましょう」

アンナ「はい!」

 

ビュン!

アンナとエレナたちはオードたちの所へ向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールがいるところ

 

リール「っ…っ…」

 

リールの体は限界だった。

 

グラム「さて、遺言を聞きたいところですが、生憎声は聞こえないので無言で死んでください」

リール「っ…」

 

リールはただ涙を流すしかできなかった。

 

グラム「さような…」

???「光の十字(グララマンダ)!!」

 

キィィィィィィィィン!!

誰かの声が聞こえた瞬間、十字の光が出現した。

 

バゴォォォォォォォン!!

グラムはその攻撃を防御できなかった。

 

グラム「っ!?」

 

ズサァァァァァァァァ!!

グラムは吹っ飛ばされたが何とか体勢を整えた。

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

グラムの体から煙が出ていた。

 

グラム「これは…」

???「やぁ、リールさん。お久しぶりです。見ない間に随分と姿が変わりましたね」

グラム「…あなたは」

 

その声の主はエレナ学院のレヴィ学院長だった。

 

レヴィ「さて、これ以上好き勝手にはさせられませんね」

グラム「あなたが…どうすると?」

レヴィ「私が学院長に就任したのはね、あなたを探すためなんですよ。グラムさん」

グラム「…」

レヴィ「これまで起こったドレインの事件の数々…これ全てあなたの仕業ですよね」

リール「!?」

グラム「…」

レヴィ「ドレインについて調査していくと次第に分かってきたんですよ。あなたの目的もね」

グラム「…知ってどうすると?死ねば同じですよ」

レヴィ「死にませんよ。私はあなたを "元の時代に戻す" ためにここに来たのですから」

グラム「…」

リール「え…戻す…?」

レヴィ「私は相当手強いですよ。これでも魔女さんの2番弟子ですから」

グラム「…あなたは必要ありませんね。せっかくあの子を殺せたのに…邪魔をしないでください」

レヴィ「でしたら、いくらでも邪魔をしてあげますよ。グラムさん」

グラム「…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

周囲に爆音が響き渡る。

 

レヴィ「はぁっ!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

レヴィ学院長は光の玉を飛ばした。

 

グラム「こんなもの…!」

 

ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!

グラムはその攻撃を避けた。

 

グラム「潰箱(カンデラ)!」

 

ブゥゥゥゥゥゥゥゥン…

レヴィの周囲に透明な板状のものが現れた。

 

グラム「はぁっ!!」

レヴィ「神速(スザク)!」

 

ビュン!ドゴォォォォォォン!!

レヴィは四方を囲んでいた透明な板状のものから間一髪で脱出できた。

 

レヴィ「光の檻(ゲート・オフ)!」

 

ガシャン!!

グラムは光属性魔法の檻の中に閉じ込められた。

 

ヒュッ!

レヴィはすぐさま移動した。

 

グラム「これは…」

レヴィ「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

レヴィは魔力を溜めた。

 

グラム「くっ…!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

グラムは魔法を放った。

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

しかしその魔法は光の檻から出られなかった。

 

グラム「!?」

レヴィ「浄化の光(サテライト・ミリアム)!!」

 

ドォォォォォォォォォン!!

レヴィは特大のレーザーを放った。

 

グラム「なっ!」

 

バゴォォォォォォォン!!

グラムはまともに魔法を受けてしまった。

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

レヴィの手は焼け焦げたかのように煙が出ていた。

 

レヴィ「熱っ…やっぱりこの魔法は…」

 

ガシャン!!ガシャン!!

 

レヴィ「!!」

 

何やら柵を壊すような音が聞こえた。

 

ガシャン!!ガシャン!!ガシャン!!

音はさらに増幅する。

 

ガシャン!!ガシャン!!ガシャン!!ガシャン!!

加えて速度も速くなってきた。

 

ガシャン!!ガシャン!!ガシャン!!バキン!!

すると突然音が変わった。

 

カラン!カラン!カラン!カラン!

 

レヴィ「なっ…」

 

レヴィが地面を見ると、そこには光の檻(ゲート・オフ)の欠片が落ちていた。

 

レヴィ「まさか…あの檻を突破したのか…」

グラム「そうですよ」

レヴィ「!?」

 

グラムの声は真後ろから聞こえた。

 

レヴィ「くっ…!」

 

ドゴォォォォォォン!!

レヴィがその声に反応して振り向こうとした瞬間、グラムの手がレヴィのお腹に当たっており、その衝撃でレヴィは地面に叩きつけられた。

 

グラム「…」

 

パラパラパラパラ…

レヴィは何とか立ち上がった。

 

レヴィ「ただ手が触れただけなのにこの力…相当危険ですねこれは」

グラム「…」

 

グラムはレヴィを睨んでいた。

 

レヴィ「それにこの気迫…今まで魔女さん以外では感じなかった…凄まじい緊張感ですね」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…オードたちが倒れている場所

 

アンナ「スカーレット!みんな!」

 

タッタッタッ!

アンナとエレナたちはオードたちの所に着いた。

 

エレナ「みんな…酷い有様ね」

エレナ「はい。ここに来る前にある程度の魔力を向上させましたがそれでもダメでしたか…」

アンナ「あの!みんなは治りますよね!?大丈夫ですよね!?」

エレナ「はい。大丈夫です。私たち2人で何とかしてみせます」

エレナ「分かったわ。やりましょう」

 

ポワァァァァァ…

2人のエレナはお互いに手を合わせて自分の魔力をオードたちに分け与えた。

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

するとオードたちの体が少しだけ光った。

 

エレナ「…これで大丈夫ね」

エレナ「はい。恐らくこれで目覚めるかと…」

アンナ「っ…」

 

アンナは手を合わせてみんなが目覚めるのを願った。

 

オード「っ…ん…」

アンナ「!」

 

一番最初に目覚めたのはオードだった。

 

アンナ「オード君!」

オード「え…なんだ…」

 

オードは体を起こした。

 

オード「なんだ…アンナじゃねぇか…どうしたよ…」

アンナ「よかった…オード君だけでも目覚めて…」

オード「俺だけ?」

 

そう言ってオードは周囲を見渡した。するとオードの隣にはディアやノーラ、スカーレットが眠っていた。

 

オード「なぁあんた。こいつらは起きねぇのか」

エレナ「いえ、あなたが一番最初に起きただけで他の方も起きてきますよ」

オード「…そうか」

エレナ「ねぇあなた」

オード「?」

エレナ「相手は誰だったの。あなたたちはここに来る前に色々と準備をしてきたわ。それでも負けるなんて」

オード「…分からねぇ。分からねぇけどすげぇ強かった。俺たちじゃどうにもできねぇよ」

エレナ「…そう」

エレナ「これは本格的にマズイですね」

エレナ「何とかして止めないとね」

 

ドォォォォォォォォォン!!

突然大きな音が響いてきた。

 

オード「なんだ…この音は…」

エレナ「…誰かが戦ってるみたいね」

エレナ「そうですね。誰なのでしょうか…」

 

アンナ「!!」

 

アンナは突然視界がぼやけた。

 

アンナ (あれ…なんで…目が…)

 

アンナは目を擦った。

 

アンナ「!?」

 

するとアンナの目は変化していた。先程まで見えなかった遠くのものが視認できるようになっていた。

 

アンナ「えっ…あれって…」

 

アンナは戦っている人を見た。

 

アンナ「あの人は…学院長…?」

エレナ「学院長?」

エレナ「あぁ…魔女さんの弟弟子だったあの子ですね」

オード「それがどうしたんだ?」

アンナ「あっ…戦ってるのが学院長なの」

エレナ「え?あの人が?」

アンナ「はい…」

エレナ「一体何故でしょうか…」

エレナ「分からないわね…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…レヴィ学院長がいる場所

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

 

レヴィ「ぐぁっ…」

 

レヴィ学院長はグラムの攻撃を受けてしまった。

 

グラム「潰箱(カンデラ)

 

グググ…ドシィン!!

グラムはすかさずレヴィ学院長を取り押さえた。

 

レヴィ「ぐっ…」

グラム「ふぅ…手こずらせますね」

レヴィ「こ…の…」

 

レヴィ学院長は何とか脱出しようとした。

 

グラム「無駄ですよ。力のないあなたがこの魔法から脱出するなんて」

レヴィ「私にだって…できますよ…このくらい!!」

 

ジジジ!!

レヴィ学院長は光属性魔法で槍を生成した。

 

レヴィ「行けぇ!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

すると5本の槍が一斉にグラムの方へ飛んだ。

 

グラム「くっ…」

 

ヒュッ!

グラムは魔法を解除して逃げ回った。

 

レヴィ「やはり…」

 

レヴィは何かに気づいた。

 

レヴィ「あなたは次元魔法を使えるようですが、それも不完全ですね」

 

ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!

グラムは5本の槍から逃げ回る。

 

レヴィ「あなた…次元魔法を解除するだけでも魔力を消費してますよね。それが仇となっている。何度も次元魔法を使ったあなたは次第に魔力を消費し、やがて次元魔法が発動しないくらいにまで落ちている。それが盲点ですね」

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

グラムは5本の槍に被弾してしまった。

 

ドシン!!

グラムはそのまま落下した。

 

レヴィ「はぁっ…はぁっ…はぁっ…かく言う私も槍の操作に魔力を消費してたので…もう限界ですね」

 

ドサッ…

レヴィは地面に膝を着いた。

 

レヴィ「はぁっ…すまない…ここまでのようです…」

グラム「全く。あなたも時間稼ぎですか」

 

グラムがレヴィの目の前に立っていた。

 

レヴィ「…これでも…無傷ですか」

グラム「いえ、正直危なかったですよ。魔法を発動しなければ私もやられてました」

レヴィ「…あと一歩…及ばず…か…」

 

ジジジ…バリバリバリバリビリ!!

グラムは魔力を溜め始めた。

 

グラム「よく頑張りました。私の最高の一撃で葬り去ってあげます」

レヴィ (…ここまで…ですね…)

 

リール「レヴィ…学院長!!」

 

レヴィ「!」

 

レヴィは声のした方を見た。するとそこには地面に倒れているリールが体を起こしてレヴィ学院長を見ていた。

 

リール「っ…」

レヴィ (リールさん…すみません。私はもう動けません。約束を守れず…すみません。魔女さん…あなたとの約束も破ってしまい…申し訳ありません)

グラム「さようなら」

 

レヴィ (すみませんみなさん…あとは…頼みま…)

 

バゴォォォォォォォン!!

グラムは溜めた魔力をレヴィに放った。

 

リール「っ!!」

 

バリバリバリバリバリ!!

グラムが放った魔法はしばらくその場に留まり、やがて消え去った。

 

グラム「…全く。こんな人に魔力を使うのは気が引けますね」

リール「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

グラム「?」

 

タッタッタッ!

リールが体を起こしてグラムに向かって走っていた。

 

グラム「おや、次はあなたですか」

リール「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!

リールは杖を使わず拳を振った。しかしグラムには1度も当たらなかった。

 

リール「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ビュン!パシッ!!

 

リール「!?」

グラム「…」

 

リールは何度も攻撃したが、グラムがそれを止めてしまった。

 

リール「くっ…離してください!!」

グラム「…嫌です」

リール「あなただけは!あなただけは!」

グラム「…」

 

パシッ!

グラムはリールの手を払い除けた。

 

リール「!」

グラム「さようなら」

 

ギュォォォォォ…バゴォン!

グラムはすぐに魔力を溜めてリールに放った。

 

リール「うぐっ…」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…ズサァァァァァ!!

リールは大きく吹っ飛ばされてしまった。

 

リール「ぅっ…ぁぅっ…」

 

リールは痛みに悶えていた。

 

リール「ぅっ…」

 

ジリッ…

リールはそれでも地面を這ってグラムに近づいた。

 

リール「私は…みんなを…みんなを…」

グラム「…」

リール「うぐっ…」

 

リールは怪我したところを押さえていた。

 

リール「この…くらい…」

 

ジリッ…

リールはまた地面を這ってグラムに近づいた。

 

リール「私が何とかしなければ…私が…」

オード「待てリール!」

リール「?」

 

スタッ…

リールの前にオードが降り立った。

 

リール「オード…君…」

オード「リール。あとは俺に任してくれ」

リール「えっ…」

オード「俺がリールの代わりにやってやる。みんなを守ってやる」

リール「オード…君…」

 

ポタッ…ポタッ…

リールの目から涙が流れてきた。

 

リール「オード君…ごめんなざい…私…頑張ったけど…守れなかった…」

オード「!」

リール「スカーレットもディア君もノーラ君もみんな怪我しちゃった…うぐっ…ひぐっ…レヴィ学院長も守れませんでした…みんな…私のせいで…ごめんなざい…オード君ごめんなざいぃ…」

 

リールはその場で顔を伏せて大泣きし始めた。

 

オード「っ…」

 

オードはその言葉を聞いて心が締め付けられた。

 

リール「あぁっ…あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

リールは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

 

オード「…」

 

スッ…

その言葉を聞いたオードはリールに手を差し伸べた。

 

ポンポンッ…ナデナデ…

そしてリールの頭を撫でた。

 

リール「?」

 

リールは泣きながら顔を上げた。

 

オード「リール」

リール「ひぐっ…うぐっ…」

オード「リールはよく頑張ったよ。1人でずっと戦ってたんだからな」

リール「!」

オード「俺たちがここに来るまでずっと戦ってたし俺たちが来ても戦ってた。それだけ戦ってて頑張ってないって言うやつはいねぇよ」

リール「オード…君…」

オード「俺はなリール。リールが1人で抱え込まないか心配してたんだ」

リール「!」

オード「リールはみんなのために色々勉強してくれてた。今回のこともそうだ。みんなを守るためにあの人と一緒にここに来た。リールは人のことばっかりで自分のことを見てなかった」

リール「っ!」

オード「俺はそんなリールが心配だ。いつか壊れるんじゃないかって心配してた。…だからさリール」

 

スッ…ナデナデ…

オードはまたリールの頭を撫でた。

 

オード「頼りないかもしれないけど俺がいるんだ。俺だけじゃない。ディアやノーラ、スカーレットやアンナもいる。みんなリールの友達なんだからな。友達が助けを求めてたらみんな助けてくれるさ」

リール「オード…君…」

オード「だからさ…んしょ」

 

オードはリールを起こして座らせた。

 

オード「時々でもいいから俺たちにも弱音を吐いてくれ」

リール「!」

オード「俺はリールの助けを聞きたい。リールの力になりたい。リールが俺たちを助けてくれたように俺もリールを助けたい。…だから頼ってくれ。俺を…いや、俺たちを」

リール「オード君…」

オード「なっ?」

 

リールは涙を拭いて答えた。

 

リール「うんっ…助けてください…オード君…」

オード「…よしっ。分かった。任せてくれ」

 

オードはリールの後方を見て声を出した。

 

オード「アンナ!リールのこと頼むぜ!」

アンナ「うん!」

 

スタッ

アンナがリールの後ろに降り立った。

 

リール「アンナ…」

アンナ「私も同じだよリール。もっと私たちを頼って。もっとみんなで助け合お?」

リール「アンナ…はい。分かりました」

オード「アンナ。俺はあいつをぶっ倒す。その間、ディアたちをよろしく頼む」

アンナ「うん。任せて」

オード「リール。アンナとエレナさんが傷を治してくれる。俺が戦ってる間、ちゃんと怪我を治してもらいな」

リール「はい…」

オード「それじゃあ…」

リール「オード君!」

オード「?」

リール「手を…」

 

リールは手を差し伸べた。

 

オード「!」

 

オードもリールに手を差し伸べた。

 

ギュッ…

リールは優しくオードの手を握った。

 

リール「必ず私もあなたを助けに行きます。…それまで頑張ってください。私の大切な人」

オード「!!」

 

スッ…

リールはオードから手を離した。

 

リール「ではアンナ。お願いします」

アンナ「うん」

 

ザバァン!

アンナは水を使ってリールを包み込んだ。

 

ヒュッ!

アンナはそのまま空へ飛び立ち、リールを2人のエレナがいる場所へと向かった。

 

オード「…」

 

その頃オードは手を握った体勢のまま固まっていた。

 

オード (お、俺が…リールの…大切な人…)

 

ドクンッ!

オードは胸の底から力が溢れてくる感じがした。

 

オード (何だこの感じ…力が溢れてくる…)

グラム「誰かと思えばあなたですか。もう死んだかと思ってましたよ」

 

グラムがすぐ後ろまで迫っていた。

 

スッ…

オードはゆっくりと立ち上がった。

 

グラム「さて、またやられに来た…」

オード「…」

グラム「!?」

 

オードはゆっくりとグラムに振り返った。

 

グラム「あなた…その目…」

 

オードの目は右目が赤色、左目が黄色のオッドアイとなっていた。

 

オード「…」

グラム「…なぜあなたが…何故あなたがその力を…」

オード「…」

 

スッ…

オードはグラムに指を向けた。

 

グラム「っ!!」

 

バゴォォォォォォォン!!

オードが指を向けた瞬間、グラムは大きく吹っ飛ばされてしまった。

 

オード「…」

 

ドゴォォォォォォン!!

グラムは壁に激突した。

 

グラム「ぐはっ…」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥ…ドシン!!

そしてそのまま落下した。

 

グラム「この力…何で…あの子が…」

 

ジリッ…

グラムは何とか立ち上がった。

 

グラム「こんなこと…あってはなりません…私ですら届かなかったあの境地に…何故あの子が…」

オード「…」

 

オードの体が少しずつ変化していった。額に目の紋章が現れ、オードの後ろには大きな鏡が現れた。服装も全く違うものとなっており、しかもオードとは全く違う気配を放っていた。

 

グラム「!」

オード「天に仇なす穢れた者よ。我が天上の業火に焼かれ、その身を滅ぼせ」

 

ジリッ…

グラムはゆっくりと立ち上がった。

 

グラム「あなた…その力…」

オード「天上の裁きだ。罪と罰を受け入れ、浄化され、新たな存在となれ」

 

スッ…

オードはグラムを指さした。

 

オード「現時刻を以て、穢れた者の断罪を開始する」




〜物語メモ〜

光の十字(グララマンダ)
レヴィ学院長が使った魔法。発動すれば任意の場所に十字の閃光を放つことができる。当たれば爆発する。

神速 (スザク)
レヴィ学院長が使った魔法。効果は一瞬だけだが、その一瞬だけでも超スピードになり、目にも止まらぬ速さで移動することができる。

光の檻(ゲート・オフ)
レヴィ学院長が使った魔法。光属性魔法で檻を作り閉じ込める。檻は光属性魔法のため、実体はないが、グラムはその実体を無効化して檻を破壊した。

浄化の光(サテライト・ミリアム)
レヴィ学院長が使った魔法。光属性魔法を集めて一気に解き放つ魔法。レーザーとなって放たれた光属性魔法は一直線にしか飛ばないが、威力は相当高い。


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第72話 リノとカグツチ

私の名前はリール。

今深淵にいます。

現在私はエレナさんたちとアンナの治癒魔法を受けています。

オード君がちゃんと治してくれと仰っていたので、私はしっかり回復させて頂いたらまたオード君のところに向かいます。

それに…私はオード君のことを大切な人と言ってしまいました。

思わず口が滑ってしまいました…。

オード君聞いてしまったでしょうか…もしそうなら…少し恥ずかしいです。

…でも、もし叶うなら…私は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オード「現時刻を以て、穢れた者の断罪を開始する」

グラム「!」

 

ビュン!!

オードは一瞬でその場から消えた。

 

グラム「なっ…どこ行った…一瞬で気配が…」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

グラムがオードの気配を探していると、後方から攻撃が飛んできた。

 

グラム「ああああああああっ!!」

 

グラムはその攻撃に反応できず、全弾被弾してしまった。

 

ドサッ!

グラムはあまりの攻撃力の高さに膝をついてしまった。

 

グラム「くっ…この力…」

オード「…」

 

オードはグラムより少し高い位置からグラムを見ていた。

 

グラム「この私でさえたどり着けなかった境地に…何故…あの子が…」

オード「…」

 

スッ…

オードは手を挙げた。するとオードの後ろにあった鏡がオードの頭上に移動した。

 

グラム「!」

オード「大地に射す日輪の光(ルースレス・サン・ヴィネア)

 

キィン!バゴォォォォォォン!!

するとその鏡の中心が光り、その直後に超高出力のレーザーが放たれた。

 

グラム「マズイ!!」

 

ヒュッ!バゴォォォォォォン!!

グラムは危険を察知してその場から立ち去った。するとレーザーが着弾したところは地面がえぐれ、ドロドロに溶けていた。

 

グラム「なっ…何よこの威力…今まで見たことが…」

 

ジュワァァァァァァ…

すると聞き慣れない音がグラムの足元から聞こえた。

 

グラム「何…この音…まさか!」

 

グラムは慌てて自分の足を見た。するとグラムの足は足首から先が溶けてドロドロになっていた。

 

グラム「なっ!?私の足が!!」

 

ジュワァァァァァァ…

グラムは痛みを感じていなかった。だが実際に足は溶けており、グラムが足を動かすと地面に落ちてしまった。

 

グラム「なっ…足…私の足が…」

 

グラムは突然恐怖感に襲われた。

 

オード「…」

グラム「!!」

 

グラムはオードがこちらを見ているのに気づいた。そのオードの目は相手を威圧するかのようだった。

 

グラム「っ…」

オード「…」

 

スッ…

オードはまた手を挙げた。

 

グラム「!!」

 

ビュン!!

それを見た瞬間グラムは一目散にその場から離れた。

 

オード「…」

 

だがオードは挙げた手を下ろさずにそのまま固まっていた。

 

グラム「くっ…あの子…なんて力を持ってるのよ…」

 

グラムはなくなった自分の足を見た。

 

グラム「くっ…魔力の漏洩が…」

 

グラムは無くなった足から徐々に魔力が漏洩していたため、一旦地面に降りることにした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

スタッ…

グラムは地面に降り立った。

 

オード「天光を受けし大地の天への賜物(アヴィシュレード・バララーク)

 

シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!

するとその瞬間、地面に大量の魔法陣が展開された。

 

グラム「!?」

 

シュワァァァ…ボコボコボコボコ!

魔法陣が展開された途端、魔法陣が熱を帯び、グラムの足を燃やし始めた。

 

グラム「ぐああああああああああっ!!」

 

グラムは足元から伝わる熱と痛みに悶えていた。

 

グラム「ああああああああっ!」

 

ドサッ!

するとグラムはあまりの痛さに地面に左手をついてしまった。

 

ジュワァァァァァァ…

 

グラム「!?」

 

すると今度は手までも燃え始めた。

 

グラム「ぐっあああああああ!!」

 

ビュン!!

グラムはその場から飛び立ち、空中へ逃げた。

 

グラム「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

 

グラムの左手は既に溶けてなくなっていた。

 

グラム「うっ…ぐっ…」

 

さっき足首が溶けてなくなった時は痛みを感じなかったが、手が燃えた時は凄まじい痛みを感じていた。

 

グラム「こ…の…」

 

グラムは必死で痛みに耐えていた。

 

オード「…」

 

スッ…

オードはグラムに指を向けた。

 

ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!

すると魔法陣が即座に展開された。

 

グラム「なっ…まさか…」

 

ババババババババババババ!!

すると魔法陣が多数の弾幕を撃ち始めた。

 

グラム「くっ…」

 

グラムはその場にとどまった。

 

グラム「こうなったら次元魔法で…」

 

スッ!

グラムは弾幕に掌を向けた。

 

グラム「軌道変換(パラティガ)!!」

 

ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!

するとオードの弾幕が急激に方向を変え、周囲の壁や床に着弾した。

 

グラム「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!

グラムはオードが全弾撃ち終わるまで魔法を展開していた。

 

グラム「あっ…ぐっ…」

 

グラムは左手の痛みに悶えていた。

 

ブゥゥゥゥン…

するとグラムが展開していた軌道変換(パラティガ)の効果が薄れてきた。

 

グラム「しまっ…」

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

グラムがそれに気づいた瞬間、オードの弾幕がグラムに着弾した。

 

グラム「うぐっ…」

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

しかしオードはしばらく弾幕を撃ち続けた。

 

グラム「あっ…ぐっ…がっ…」

 

パリンッ!!

グラムの軌道変換(パラティガ)は完全に消失した。

 

グラム「これっ…は…もう…耐えられ…」

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

オードはずっと撃ち続けている。

 

グラム「ぐぁっ…」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

グラムは意識が薄れていき、そのまま落下し始めた。

 

オード「…」

 

ジジジ…ブゥゥゥゥン…

オードの魔法陣は攻撃を止め、グラムの様子を見ていた。

 

ドシィィィィィィン!!

グラムはそのまま地面に真っ逆さまに落ちた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

パラパラ…

グラムはまだなんとか意識を保っていた。

 

グラム (あれ…私…手…動かせない…)

 

ピクピク…ピクピク…

グラムは手を動かしてみた。だが動くのは指だけ。しかもその指もほんの少し動くだけ。

 

グラム (あぁ…なんだか…眠く…)

 

スタッ!

オードはグラムが倒れている場所まで降りてきた。

 

オード「…」

 

オードは倒れているグラムを見ていた。

 

グラム「あ…あなた…」

オード「…」

 

グラムはなんとか声に出してみた。

 

グラム「どう…し…て…」

 

グラムの目はゆっくりと閉じていった。

 

オード「…」

 

その様子をオードはずっと見ていた。

 

オード「…まだ終わらぬ。罪あるケガレは浄化せねばならぬ。この世に存在する唯一の汚点。同じ時間軸に存在している一個体。あらぬバグによってこの時間軸に参上した。本来であれば時を遡るのは禁忌。だがこの世界がそれを許した。支柱のないこの幼き世界。一度ゼロに戻し、再構築をせねばならぬ」

 

ジジジ…バリバリバリバリ!!

オードがグラムに手を向けると、オードの掌から気弾が生成された。

 

オード「一度許せば禁忌が跋扈する。禁忌やケガレは徹底的に消し去らねばならない」

 

ブゥゥゥゥン…

気弾が少し大きくなった。

 

オード「…人の子よ。先の未来で育まれた生命よ。そなたの身勝手でこの世界は現時点で終焉を迎える。喜べ。ゼロに戻した後は再度構築し、ケガレのない浄化された世界に作り変えてやろう」

 

ジジジ…ビリビリビリビリ!

気弾が限界まで魔力を吸い取り、高濃度の魔力の塊となった。

 

オード「では、この一撃を以て決別としよう。さらば人の子。さらば幼きこの世k…」

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

オードが魔力を放とうとした時、背後から攻撃が飛んできた。

 

オード「…誰だ。天地創造の邪魔をする愚者は」

 

???「はぁ…はぁ…やめて…ください…」

 

そこに立っていたのはリールだった。

 

リール「私の…私のオード君を…返してください…」

オード「…人の子よ。そなたの魔力は底尽きる。私に攻撃するのは魔力の無駄だ」

リール「私は…私は…」

 

スッ…プルプル…プルプル…

リールはなんとか杖をオードに向けることができた。

 

リール「私は…友達を助けるためなら…いくらでも無駄なこと…できます…」

オード「…理解できん。他者を救うために己が魔力を消費するとは。まさに愚か。愚者そのものではないか」

リール「それが…人間って…いうものですよ」

オード「…言葉を話せ。私にはそなたの言葉は通じn…」

 

ドシンッ!ギギギギギギギギ…

突然オードに下向きの圧力がかかった。

 

オード「なんだ…この力は…」

 

オードは突然の重さに驚いていた。

 

グラム「はぁっ…はぁっ…」

 

オードの動きを止めたのはグラムだった。

 

グラム「やっと回復したわ…これであなたはおしまいよ!」

 

ギギギギギギギギギ!!

グラムは更に圧を加えた。

 

オード「ぐっ…」

 

ドシン!

オードはあまりの重さに膝を着いた。

 

リール「オード君!!」

グラム「これでも私は無属性魔法の使い手…。属性魔法は捨てたけどその分新たな強さを手に入れることができた…。それをここで出し惜しみなく使ってあげる。そしてあなたを倒してあの子を頂くわ」

 

スッ…

グラムはオードに掌を向けた。

 

グラム「…第9次元魔法 絶対零度(アブソリュート・ゼロ)

 

ビュォォォォォォ!!!パキパキパキパキ!

グラムが魔法を唱えると即座に魔法陣が展開され、オードを瞬時に凍らせた。

 

オード「っ!?」

リール「オード君!!」

グラム「…」

 

グラムはじっとオードを見ていた。

 

パキッ!

ほんの少しすると妙な音が聞こえてきた。

 

パキッ!パキパキッ!

その音は徐々に大きくなってくる。

 

パキパキパキッ!!

ここまでくると流石のリールでも音に気づいた。

 

パキンッ!!

すると氷の一部が欠けた。

 

リール「!!」

グラム「…」

 

ピシッ!

氷の一部が欠けると更に大きなヒビが入った。

 

グラム (…ダメですか)

 

パキパキパキッ…バリンッ!!!

大きなヒビが入った瞬間、氷が砕け散った。

 

ガラガラガラガラ…

砕けた氷が周囲に転がった。

 

オード「…」

 

氷から出てきたオードはグラムを睨んでいた。

 

グラム (…これは)

 

オード「…まだ分からぬか。"忌み子"よ」

リール「!!」

グラム「…」

 

リールは忌み子という言葉に聞き覚えがあった。

 

オード「…息子の声を忘れたか。見損なった」

リール (息子って…)

グラム「…」

 

オードの姿がだんだん変化していった。筋肉が膨張し、全体的に引き締まってきた。おまけに目元には赤い線が現れた。

 

リール「オード…君?」

 

ボボッ…

最後にオードの頭に火が灯った。

 

カグツチ「…俺の名前はカグツチ。火属性魔法の魔法使いを父に持ち、光属性魔法の魔女を母に持つ。罪人を裁く最後の一手。断罪せし地獄の閻魔。それが俺だ」

 

もうこの時点でオードの面影はなくなっていた。

 

リール「オード…君…」

カグツチ「…母は相変わらずだな」

リール「!」

カグツチ「一人で抱え込もうとする。父も俺も弟、妹たちも心配してる。母は頑張りすぎだ。もっと他人を頼れ」

リール「えっ…えっと…」

グラム「…まさかあなたが来るとはね…カグツチ」

カグツチ「黙れ。母の姿を借りた悪よ。いくら罪人であっても取り憑いたやつが強者なら偽物であるお前も母と同等の力を行使できる」

 

スッ…

カグツチは手を上に挙げた。

 

カグツチ「お前のせいで過去であるこの世界が破滅の道を辿っている。お前が消え、俺が元に戻せば全て解決。だから消えろ。その姿も二度と見たくない」

 

バッ!

カグツチは挙げた手を下ろした。

 

グラム「…?」

 

しかしなんの変化も見られなかった。

 

リール「…?」

 

リールも周囲を見渡す。しかし変わったところはひとつもなかった。

 

リール「えっ…今の何?」

グラム「…ハッタリかしら?」

カグツチ「…」

 

ボコッ…ボコッ…ボコボコッ…

どこからともなく妙な音が聞こえてきた。

 

リール (あれっ…この音…)

 

リールはこの音に聞き覚えがあった。

 

ボコボコボコボコッ!!

すると地面が赤く光り始めた。

 

ジュワァァァァァァ…

その瞬間、何かが焼けるような音が聞こえた。

 

グラム「うっぐっがああああああ!!」

 

グラムが声を上げ、リールがそれに気づいた時にはグラムの体が燃えていた。

 

グラム「ああああっ!!がああああ!!」

 

グラムは焼け付くような痛みに耐えていた。

 

グラム「あああああああああっ!!!」

リール「オード君!!やめてください!!」

カグツチ「…」

リール「オード君!!」

カグツチ「…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

カグツチは魔法を解いた。

 

リール「オード…君…」

カグツチ「…何故止める」

リール「えっ…」

カグツチ「何故止める。こいつは母の姿を奪った極悪人。あの時…母が禁忌に触れなければこうはならなかった。それを始末するのが今の俺の役目。何故止める」

リール「だって…その…」

カグツチ「…」

リール「その…」

カグツチ「…」

 

カグツチはじっとリールを見ていた。

 

リール「っ…」

カグツチ「…お前はここに何しに来た」

リール「!」

カグツチ「こいつを倒すためだろ。地上がケガレに攻撃されないようにするためだろ。元凶を前にして殺しの手を止めるのか」

リール「その…」

カグツチ「…覚悟がないなら下がれ。弟と妹でも守ってろ」

リール (弟?妹?)

 

スタスタスタ

カグツチはグラムに近づいた。

 

グラム「ぁっ…ぁっ…」

 

グラムはぐったりしていた。

 

カグツチ「…これで満足か?」

グラム「っ…」

カグツチ「ここまで散々好き勝手して。俺がこの時間軸に辿り着くまで長い時間を要した。お前のせいで狂ってる。この世界の有り様が」

グラム「わ…たしは…」

カグツチ「…」

グラム「あなたの…母…」

カグツチ「…」

グラム「紛れもない…あなたの…母…」

カグツチ「…俺の母はお前のように強くない」

グラム「っ…」

カグツチ「…あとはお前を始末すれば最後だ」

 

スッ…ゴォォォォォォォォォ!!

カグツチは掌を上に向け、火の玉を作り出した。

 

グラム「…」

 

グラムはその様子を静かに見ていた。

 

カグツチ「…お前の死に場所だ」

グラム「…そう…分かった…わ…」

 

グラムはゆっくりと目を閉じた。

 

カグツチ「…」

 

クイッ…

カグツチはその火の玉をグラムに向けて動かした。

 

ゴォォォォォォォォォ…

その火の玉は徐々にグラムに近づいていく。

 

カグツチ「…」

グラム「…」

 

火の玉がグラムのすぐ目の前まで迫った時…

 

リール「やめてって言ってるじゃないですか!!」

 

バゴォォォォォォォォン!!

リールが声を上げたと同時にカグツチの火の玉が遠くに飛ばされ、爆発した。

 

カグツチ「!!」

グラム「…?」

リール「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

カグツチ (…全く。なぜ邪魔をする。気絶させるか)

 

ビュン!

カグツチは一瞬でリールの背後に回った。

 

カグツチ (これで!)

 

ググッ!!

 

カグツチ「!?」

 

すると突然カグツチの体が止まった。

 

リール「!?」

 

その時リールは後ろにカグツチがいることに気づいた。

 

カグツチ (何故だ…何故動かん…)

オード (おい。お前)

カグツチ (!?)

 

カグツチの耳にオードの声が入ってきた。

 

カグツチ (お前…この体の…)

オード (俺の大事な人に何しようとしてんだ)

カグツチ「クッ…」

 

カグツチはなんとか体を動かそうとした。だが一向に動かせない。

 

カグツチ (この俺が…)

オード (お前は邪魔だ。俺の中から消えろ)

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

するとカグツチの体が消え始めた。

 

カグツチ (なっ!!何だこれはっ!!)

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

カグツチの体がどんどん消えていく。

 

カグツチ (クソッ!止まらない!おい!やめろ!!やめろぉぉぉぉ!!)

オード (やめない。俺の大事な人を傷つけようとするやつは大嫌いだ)

カグツチ (なっ…ちょっと待てっ!!)

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

とうとうカグツチの顔だけになった。

 

カグツチ (待てぇぇぇぇぇぇ!!)

 

やがてカグツチの顔も全て消えてしまった。

 

オード「…」

 

オードはゆっくりと目を開けた。

 

オード「…戻ってこれたのか」

リール「オ…オード…君?」

オード「ん?」

リール「あ、あの…大丈夫…ですか?」

オード「あ、あぁ!大丈夫だ!」

リール「ほっ…よかった…本物のオード君ですね…」

オード「…すまないリール」

リール「?」

オード「リールの事を助けようとした時にさっきのやつが話しかけてきたんだ。俺を使え。俺を使えばこいつの命を守ってやるってな。だからあいつに任せたんだ。でも結果はリールに危害を加えようとした。だから強制的にあいつを消した」

リール「えっ…オード君ってそんな事できるんですか?」

オード「まぁ、な?これもリールが無属性魔法を教えてくれたからだよ」

リール「えっ…私そんな無属性魔法を教えましたか?」

オード「…第5次元魔法 無限世界(インフィニティ)と第7次元魔法 運命の時(アロアダイト)だよ。11個あるうちの5番目と7番目の次元魔法だよ」

リール「えっ…オード君…次元魔法が使えたんですか?」

オード「ま、まぁな…」

リール「す、すごい…オード君すごいよ…」

オード「て、照れるな…でも俺だけじゃないぜ?ディアやノーラ、委員長やアンナも全員全ての次元魔法を使える」

リール「ぇっ…みんなすごい…」

オード「だから深淵(ここ)に来た。リールを助けるためにな」

リール「み…みんな…」

 

リールは何滴か涙を流した。

 

オード「…遅くなってごめんな。リール」

 

ギュッ…

オードは優しくリールを抱きしめた。

 

オード「…あとは俺たちでやろうか?リール」

リール「い、いいえ。私がやります…オード君はお手伝いを…」

オード「…あぁ。分かった。辛かったら任せてくれよ」

リール「…はい」

 

オードはリールを離した。

 

オード「さ、まずはあの人だ」

 

そう言ってオードはグラムを指さした。

 

リール「…はい」




〜物語メモ〜

カグツチ
オードの体を借りてグラムと戦った人物。火属性魔法の魔法使い。火属性魔法の魔法使いを父に持ち、光属性魔法の魔女を母に持つ。さらに弟と妹がいる。

大地に射す日輪の光(ルースレス・サン・ヴィネア)
カグツチが使った魔法。カグツチの背後に鏡が出現し、その鏡が高出力のレーザーを放つ。このレーザーは火属性魔法由来のものだが、水属性魔法の人以外には効果がある。無属性魔法の軌道変換(パラティガ)も無効化することができる。

天光を受けし大地の天への賜物(アヴィシュレード・バララーク)
カグツチが使った魔法。地面に大量の魔法陣を展開し、何かがその魔法陣に触れると瞬時に魔法陣が熱を帯び、触れたものを燃やす魔法。基本誰かに向けて放つものではなく、罠として使う。これも火属性魔法由来のもの。

第9次元魔法 絶対零度(アブソリュート・ゼロ)
グラムが使った次元魔法。相手を凍結させる魔法。氷属性魔法っぽいが無属性魔法由来のもの。全部で11個ある次元魔法の中で唯一第9次元魔法だけ2つ存在する。絶対零度(アブソリュート・ゼロ)はそのうちのひとつ。もう片方の魔法も合わせて第9次元魔法となっている。

第5次元魔法 無限世界(インフィニティ)
オードが使った次元魔法。相手を一時停止させることができる。オードはこの魔法を使うことでカグツチの動きを止める事ができた。

第7次元魔法 運命の時(アロアダイト)
オードが使った次元魔法。対象の時間を自由に動かすことができる。オードはこの魔法を使うことでカグツチを元の時間軸に帰すことができた。


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第73話 リノと消える2つの命

私の名前はリール。

今深淵にいます。

先程オード君が知らない人になってグラムさんと戦っていました。

オード君が出す魔法はどれも見たことがなくて驚きました。

しかもどの魔法も私より強かったです。

…でも何か違うなと思いました。

私がオード君の戦いを見ていて思いました。

私は一体何がしたいんだろう…と。

私は当然ドレインを外に出したくないと思っています。

必要なら戦います。

…でも、相手は私自身…レナさんは私と言っていました。

レナさんは私と同じ存在なので必然的にグラムさんも私と同じ存在ということになります。

…私は一体どうすればいいのでしょうか。

どうするのが正解なのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リール「…」

 

ザッザッザッ…

リールとオードはグラムのところに向かった。

 

リール「…」

オード「…」

グラム「…殺さないのですか」

リール「!」

 

グラムはゆっくりと目を開けた。

 

グラム「私はあなた…あなたは私…あなたの本体がそう教えたのではないですか」

リール「…」

グラム「私はこの先の未来…あなたの体から誕生します。あなたと全く同じ存在として」

リール「知ってます」

グラム「なら、今ここで私を始末しておくべきですよ。私は回復したらまたこの世界を攻撃します。…私の悲願のため」

リール「…私…少し考えてました」

グラム「!」

リール「何故あなたがここにいるのか、何故私とあなたが戦わなければならないのか、何故この世界にはドレインが存在するのか…など」

グラム「っ…」

リール「私は知りたいです。何故あなたがこの時代に来て暴れたのか」

グラム「……」

 

グラムは天井を見た。

 

グラム「…それは…この先のあなたがよく知っていますよ」

リール「!」

グラム「…私もあなたと同じくらいの時、そう言われました」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

グラムの回想

 

リール「私は知りたいです。何故あなたがこの時代に来て暴れたのか」

グラム「…それは…この先のあなたがよく知ってますよ」

リール「!」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

グラム「…あの時あの人がなんであんなことを言ったのかが少し分かりました。…私も当時はあなたと同じ "リール" という名前でしたから」

リール「!!」

グラム「ですが、今は本体と別々で行動しています。遥か先の未来で私の本体は生きていることでしょう」

リール「何故あなたはこの時代に来たのですか。なぜ本当の名前を隠しながら生きて、私の前に現れたのですか」

グラム「…過去と未来は回帰する」

リール「!」

グラム「過去で起こったことはこの先の未来でも同じことが起こる。あなたもいずれ分かりますよ。何故私がこうしたのかを "何故このような選択を取ったのか" を」

リール「…」

グラム「…大丈夫ですよ。あなたはこの先温かい未来が待っています。…禁忌に触れるまでは…」

リール「禁忌…」

グラム「…いえ、もう手遅れですね」

リール「!」

グラム「あなたはすでに禁忌に触れている」

リール「なっ…」

オード「おい!嘘ついてんじゃねぇよ!!」

グラム「…嘘ではないですよ。現にあなたはエレナさんの魔力を得ているはずです」

リール「!」

グラム「…あの人もやり手ですね。あなたに禁忌を付与して倒れるなんて…」

リール「そんな…私が…」

グラム「…あなたの持つ分裂の禁忌は発動まで長い時間を要します。…発動するまでの年月を…せいぜい…楽しんでくださいね…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

グラムの足が消え始めた。

 

リール「えっ…待って!まだ話したいことが!!」

グラム「…あなたは大丈夫ですよ。何だかんだであなたは強い人ですから」

リール「そんなっ…待って!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

グラムの足が消え、今度は胴体が消え始めた。

 

グラム「…身勝手な私でごめんなさい。でも…待ってますよ。この先の未来であなたの元から誕生することを…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

ついに胴体まで消えてしまった。

 

リール「ああっ…待って!待ってください!」

グラム「さような…」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥゥ…

グラムは別れの言葉を言い切る前にその場から消え去ってしまった。

 

リール「えっ…そ…そんなっ…」

 

リールは動揺していた。

 

リール「ま…待って…まだ話したいことがあるのに…」

オード「…」

リール「オ…オード君…グラムさんが…グラムさんが…」

オード「っ…」

 

オードはとてもリールの顔を見れるような気分ではなかった。

 

リール「オード君!!…ねぇ…オード君…」

オード「っ…。リール…」

リール「…?」

オード「…もう…帰るぞ…」

リール「!」

オード「…少なくとも元凶は倒せた。…俺たちの勝ちだ」

リール「っ…」

 

ポタッ…ポタッ…

リールの目から涙が落ちた。

 

リール「なんでっ…こんな事に…なんで…」

 

リールは少しの間泣いた。オードはリールの傍で泣き止むのを待った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…エレナ(分身)が寝ている場所

 

エレナ(本体)「…終わりましたね」

エレナ(分身)「あぁ。終わったらしいな」

エレナ(本体)「あなたも…私たちの言うことを聞いてくれてありがとうございます」

エレナ(分身)「あんたのおかげでリールを連れてくることができた。…感謝する」

エレナ(分身)「…」

 

エレナの分身(リールを深淵に連れてきたエレナ)は未だに目を開けていない。

 

ディア「ん…」

 

ディアがゆっくりと目を開けた。

 

ディア「…あれ、ここは」

エレナ(本体)「起きましたか。ディア君」

ディア「あれ、エレナさん…ここは…」

エレナ(本体)「あなたがドレインと戦ってた場所から少し離れた所です。あなたたちを回復させるために一旦ここに集めました」

ディア「あなたたち…?」

 

ディアは周囲を見渡した。すると隣でノーラとスカーレットが眠っていた。

 

ディア「あっ!ノーラ。それに委員長まで…」

エレナ(本体)「2人はもう少しで起きると思いますよ」

ディア「そうですか」

 

ジリッ…

ディアはゆっくり立ち上がった。

 

ディア「…エレナさん」

 

ディアは立ち上がって周囲を見渡したあとにエレナを呼んだ。

 

エレナ(本体)「はい。何でしょうか」

ディア「…ドレインはどうなりましたか」

エレナ(本体)「!」

ディア「オードのやつは()()()()()()()()?」

エレナ(本体)「…」

エレナ(分身)「…」

 

2人のエレナは顔を見合わせて答えた。

 

エレナ(本体)「…はい。やり遂げましたよ」

ディア「……そうですか。それはよかったです」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リール&オード

 

リール「ぅっ…ひぐっ…」

 

リールはまだ泣いていた。

 

オード「…」

 

オードはそんなリールを抱きしめていた。

 

オード (…リール。今まで色々あったからなぁ…全部一気に起こったから耐えられなくなったんだな)

 

なでなで…なでなで…

オードはリールの頭を撫でた。

 

オード「リール」

リール「…?」

オード「…帰ったらリンゴ切ってやるからな」

リール「!!」

 

オードは恥ずかしそうにそう言った。

 

リール「リンゴ…ふふっ…リンゴかぁ…」

 

リールは顔と体を起こしてオードに密着するように抱きついた。そしてリールの唇がオードの頬に触れた。

 

オード「!?!?!?」

 

オードは何が起こったのか分からない顔をしていた。

 

リール「ふふっ…楽しみにしていますね。オード君」

 

そしてリールは再びオードを強く抱き締めた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

それから数分が経った。オードとリールはエレナやディアたちがいる所へ戻った。

 

ディアはオードの顔を見た途端、笑顔で出迎えた。

 

その後、スカーレットやノーラも起きてみんなで談笑していた。

 

…しかし、そんな中、1人だけ目覚めない者がいた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

アンナ「はぁ…よかったぁ…リールが無事で…」

オード「おいアンナ。俺も無事だったんだからな」

アンナ「分かってるよそれくらい。でも私はオード君よりもリールの方が大事だし」

オード「ひでぇ…」

ディア「まぁいいじゃねぇかオード。お前には俺たちがいるだろ?」

オード「そりゃそうだが…」

ノーラ「ここは素直になれよオード」

オード「はいはい…」

リール「あっそうだ。アンナ ちょっと離してくれませんか?」

アンナ「えっ…なんで…」

リール「エレナさんと話があるんです。お願いします」

アンナ「えっ…うん…」

 

アンナはリールから手を離した。

 

オード「あ〜あ。リールに嫌われてやんの」

アンナ「なっ!違うよ!エレナさんと話がしたいだけって言ってた!」

オード「あ〜あ。可哀想に…」

スカーレット「よしなさいオード君。みっともない」

オード「なんだよ委員長。あいつだって俺にひでぇ言い方したぜ?」

スカーレット「アンナもそうだけどあなたもよ。あなたはせめてしっかりしなさい」

オード「へいへい…」

アンナ「あれっ…私は?」

スカーレット「アンナは今のままでいなさい」

アンナ「??」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…2人のエレナがいる場所

 

ザッザッザッ…

リールは2人のエレナが座っているところまで歩いてきた。

 

リール「あの、エレナさん」

エレナ(本体)「はい。何でしょうか?」

リール「!!」

 

エレナ(本体)が振り返るとリールはエレナたちの背後にあった人影に視線が向いた。

 

リール「えっ…魔女さん…」

 

そう。倒れていたのは魔女さんだった。その隣にはリールと一緒に深淵に入ったエレナ(分身)が横たわっていた。

 

エレナ(本体)「リーナはまだ目覚めませんよ」

リール「えっ…」

エレナ(分身)「損傷と消費が桁違いだからな。その分回復も遅いし目覚めるのも遅い」

リール「えっ…目覚め…ますよね…」

エレナ(本体)「はい。それは問題ありませんよ」

リール「ほっ…良かった…」

エレナ(分身)「…なぁ…あんた」

リール「はい!」

エレナ(分身)「…あいつを倒してくれてありがとうな」

リール「!」

エレナ(分身)「あいつは私たちが長年探してきた元凶。やつを葬ることが私たちの目的だった」

リール「!」

エレナ(分身)「リノを奪われてから数年が経過して原因があいつだと分かった。それからこの世界を探し回ったが一向に見つからず、諦めて次現れるときを待っていた」

リール「そうだったんですね…」

エレナ(分身)「あぁ。だが今回はやつを倒せた。私たちの代わりに倒してくれてありがとうな」

リール「…はい」

 

リールは魔女さんに目をやり、再びエレナたちに視線を向けた。

 

リール「…私たちはいつ地上へ帰ることになってますか?」

エレナ(本体)「…できればリーナが目覚めてからですが、しばらく目を覚まさないかと思うのでもう少しですね」

リール「そ、そうですか…」

 

リールは少し残念そうにした。

 

エレナ(本体)「早く目覚めてくれればいいんですが…何せ魔力が…」

リール「足りないんですか?」

エレナ(本体)「はい。今の私たちではリーナを目覚めさせるほどの魔力を持ち合わせておりません。故にリーナは自己回復で魔力の回復を行わなければなりません」

リール「えっ…」

エレナ(分身)「まぁせいぜいあと半日ってところだな」

エレナ(本体)「えぇ。私もそれくらいかと思います」

リール「そんな…」

 

リールが落胆しているとエレナ(分身)がとある提案をした。

 

エレナ(分身)「なぁ」

エレナ(本体)「はい」

エレナ(分身)「私たちの禁忌…分裂はもうリールに移ってるんだよな?」

エレナ(本体)「えっと…はい。同じ禁忌の気配がしますし…恐らくこの子が…」

 

そう言ってエレナ(本体)は横たわっているエレナ(分身)に目を向けた。

 

エレナ(分身)「…やっぱりそうなんだな。こいつが私たちの魔力の一部をリールに渡したんだな」

エレナ(本体)「…」

エレナ(分身)「なら話は早い」

 

スッ…

そう言うとエレナ(分身)は立ち上がってリールを見た。

 

リール「?」

エレナ(分身)「…私を使え」

エレナ(本体)「!?」

リール「!!」

エレナ(分身)「私がこの世界に存在する理由は元凶であるあいつの討伐。それが達成された今、私がこの世界に残る理由はない。加えて、リールの師匠である魔女さんを復活させられるなら死ぬ前にみんなの役に立ちたい」

エレナ(本体)「え、でもあなた…」

エレナ(分身)「いや、もういいよ。お願いだ。早くしてくれ。死ぬ時間が長ければ別れがその分辛くなる」

リール「ちょ、ちょっと待ってください…死ぬってどういう事ですか…」

エレナ(本体)「…彼女は自分の魔力をリーナに全て譲渡するつもりです」

リール「!?」

エレナ(本体)「私たち魔女や魔法使いにとって魔力は命と同じです。なので魔力を譲渡するということはそのまま死を意味するということです」

リール「えっ…」

エレナ(分身)「…それを言わなければすんなりと別れられたのに。余計なことを」

エレナ(本体)「でも…」

エレナ(分身)「早くしてくれ。さっきも言っただろ。死ぬ時間が長ければ別れが辛くなるって」

エレナ(本体)「でも…」

エレナ(分身)「あぁもう!!じれったいなぁ!!」

 

スッ…ドスッ!!

エレナ(分身)は自分の杖を胸に突き刺した。

 

エレナ(分身)「ぐっ…」

エレナ(本体)「!!」

リール「!?」

 

ポタッ…ポタッ…

エレナ(分身)の胸から杖を伝って血が流れてきた。

 

エレナ(本体)「ちょ!あなた何やってるんですか!!」

エレナ(分身)「はぁっ…はぁっ…何って…お前が早くしねぇからだろ…」

エレナ(本体)「だからって…」

エレナ(分身)「うるせぇ…最後くらい…ありがとうって…見送ってくれよ…」

エレナ(本体)「!!」

エレナ(分身)「なぁ…あんた…」

リール「!」

エレナ(分身)「こいつの事…頼んだぞ」

 

エレナ(分身)はそう言ってエレナ(本体)を指さした。

 

エレナ(分身)「こいつ…私がいねぇとしっかりしねぇからな…私が消えちまったら代わりがいねぇ…だが、私の目の前にはお前がいる…お前なら任せられる…頼む…こいつの事…よろしくやってくれ…」

リール「エレナさん…」

 

リールは少し考えたが、すぐに答えを出した。

 

リール「…はい!分かりました!」

エレナ(分身)「…へっ…お前よりいい返事じゃねぇか…なぁ…本体よ…」

エレナ(本体)「っ…」

エレナ(分身)「じゃ…別れだ。あいつらにも言っておいてくれ…」

リール「…はい」

エレナ(分身)「っ…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

エレナ(分身)は自分の血を魔力に変換して自分の体ごと魔女さんに譲渡した。

 

エレナ(本体)「なんで…あなたは…いつもそうなんですか…」

リール「!」

エレナ(本体)「私が一人だと何も出来ないの知ってるでしょう…」

リール「…」

エレナ(本体)「ほんと…意地悪な人ですね…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

エレナ(分身)の全ての魔力が魔女さんに譲渡された。

 

魔女さん「っ…」

 

魔女さんはゆっくりと目を開いた。

 

魔女さん「あれ…ここは…」

リール「魔女さん!」

 

ギュッ!

リールは魔女さんに抱きついた。

 

魔女さん「リー…ル…?」

リール「はい!リールです魔女さん!」

 

ギュッ!

リールはさらに強く抱きしめた。

 

魔女さん「ぅっ…リール…痛いです…」

リール「あっ!すみません!」

 

リールはすぐに手を離した。

 

魔女さん「っ…」

 

魔女さんはゆっくりと体を起こした。

 

魔女さん「あれ…エレナ…」

エレナ「…お帰り。リーナ」

 

その後魔女さんは少しずつ体を動かせるようになった。これを機に地上に戻ることを決断したエレナはリールたちと一緒に地上に戻ることにした。




〜物語メモ〜

新情報がないので次回です。


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第74話 リノと変貌したスペルビア

私の名前はリール。

今深淵にいます。

やっと魔女さんとちゃんと顔を合わせることができました!!

あの時からずっとずっとずっと…ずぅぅぅぅぅっとこの時を待ちわびていました!!

今は嬉しさしかありません!!

今すぐにでも家に帰って明日から前までの生活に戻りたいです!!

もっと魔女さんから色々と教わってこの世界のために色々していきたいと思っています!!

そうとなれば今すぐにでもここを出なければ!!

今私たちは深淵にいるのでここを出るにはあの3つの階層を突破しなければなりません!!

さぁ!善は急げです!

早く帰ってみなさんでお休みしましょう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…深淵

 

魔女さん「エレナ、ここから出る方法はありますか?」

エレナ「えっと…あるにはありますが…」

魔女さん「…?何か問題でも?」

エレナ「えぇ…ここから出口までは1日か2日かかりますよ」

魔女さん「え!?そんなに!?」

エレナ「私と私の分身はそれくらい時間がかかりましたよ」

魔女さん「嘘…」

エレナ「今すぐ帰ればなんとかみなさん助かります」

魔女さん「これ以上ここにいたらみなさんの体が…」

エレナ「そう。この瘴気に侵されますね」

魔女さん「…」

 

魔女さんとエレナは帰る方法を考え始めた。

 

リール「あの…魔女さん」

魔女さん「はい。何でしょうか」

リール「魔女さんはどのようにしてこちらに来られたんですか?」

魔女さん「!」

リール「私たちは地上の入口から来ました」

アンナ「私もだよね」

オード「あぁ確かに」

魔女さん「あっ!!」

 

突然魔女さんが大声を出した。

 

リール「ど、どうされましたか?」

魔女さん「この手がありました!!」

 

スッ

魔女さんは服の中から杖を取りだした。

 

リール「それは…魔女さんの杖…でしょうか」

魔女さん「正解ですリール」

リール「えっと…それでどうするおつもりですか?」

魔女さん「今から第6次元魔法を使います!」

リール「第6次元魔法?えっ…魔女さんは第1次元魔法だけなのでは…」

魔女さん「まぁ、攻撃として使ってるのは第1次元魔法だけですよ。他にも使えます」

リール「あ、そうだったんですね」

エレナ「第6次元魔法って…あっ!」

魔女さん「そう。第6次元魔法…それは!瞬間移動!」

リール「瞬間移動?」

オード「そうか!それでここにいるやつら全員を外に瞬間移動すれば!」

リール「私たちの体は侵食されずに済みます」

魔女さん「そうです。では早速帰りましょうか」

エレナ「分かったわ。みんな来て」

 

するとスカーレットやアンナ、ディア、ノーラが集まってきた。

 

エレナ「これでいいですか?リーナ」

魔女さん「はい。いいですよ」

 

スッ…

魔女さんは杖を構えた。

 

魔女さん「そこに在る者(テルラポート)

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!

するとみんなの周囲に青い光が出現した。

 

リール「わっ!すごい…」

アンナ「青色だ…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

その青い光は強くなり、やがてみんなその眩しさに目を瞑った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビアが見える高台

 

シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!

魔女さんたちは深淵から高台まで瞬間移動した。

 

魔女さん「なっ…これは一体…」

 

瞬間移動を終えたみんなはまだ目を瞑っていた。しかし、魔女さんだけは目を開けており、現状を見ていた。

 

魔女さん「みなさん!目を開けてください!!」

リール「えっ…どうされました…か…」

アンナ「えっ…」

オード「なんだこれ…」

ディア「おいおい嘘だろ…」

ノーラ「えっ…なんで…」

スカーレット「ま…町が…」

 

瞬間移動を終えたみんなは目を開けた。そして見た。

 

エレナ「燃えてる…」

 

そう。スペルビアが炎に包まれていた。そして、スペルビアの中央に一際大きな影が見える。

 

魔女さん「一体何が…なぜ町が…」

???「おーい!!」

 

みんなが燃えている町を見ていると、一人の男性が話しかけてきた。

 

男「お前たち!ここで何してる!!早く避難しろ!!今は一人でも生き残るのが先月だ!!早く行け!!ここは俺たちでどうにかするから!!」

 

魔女さん「避難…」

リール「あの!一体何が起こったんですか!」

男「はぁ!?見てわからねぇのか!!町が燃えてんだよ!!もう何人もあいつに殺られた!!誰もあいつには敵わねぇ!!だから俺たちは逃げる選択をした!!お前たちも逃げろ!ここは俺たちが食い止めるから!!早く!」

エレナ「ちょっと待ってください!燃えてるって何でこの町が燃えてるんですか!!」

男「!!…お前たちは…」

 

男はエレナとスカーレット、アンナ、オード、ディア、ノーラを見て驚いていた。

 

男「お前たちが戻ってきたってことはやったんだな!?あいつを倒したんだな!?」

リール「えっ…?」

オード「そうだ!俺たちが倒した!だからおっさん!今何が起きてこうなったのか教えてくれ!俺たちは今さっき帰ってきたばかりなんだ!」

男「そうか…倒したんだな…よしっ!分かった!」

 

そう言って男は話し始めた。

 

男「お前たちが深淵?とやらに向かって少しした時の話だ。俺たちはお前たちを見送ったあと、いつもの所に隠れていたんだ。何も起こらねぇようにな。だがな、それから少ししてある異変が起こったんだ」

リール「異変…」

男「あぁ…突然大きな雄叫びが聞こえたんだ」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

数時間前

 

???「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

男「俺たちはその雄叫びを聞いて即座に外に出た。そしたら奴がいた」

アンナ「奴…?」

男「あぁ。奴はでけぇ体でな。人間をそのまま大きくした感じだ。そいつがいきなり現れて周囲を見渡した後に突然この町を攻撃し始めたんだ」

 

???「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

ブゥン…ブゥン…ブゥン…ブゥン…ブゥン…

???は魔法陣を展開した。

 

???「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

キィィィィィィィィ…バゴォォォォォン!

すると魔法陣から魔法のレーザーや気弾が放たれた。

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

???の魔法を受けた建物は一瞬にして蒸発した。

 

男「なんだあいつは!?」

女「見たことない…何あれ…」

男「おい!みんな下に入れ!!ここにいたら被弾す…」

 

ブゥン…

男の背後に魔法陣が展開された。

 

男「おい!!後ろだ!!」

男「えっ…」

 

バゴォォォォォン!

その男は魔法陣から放たれたレーザーによって体の大部分を失い、その場で即死した。

 

女「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

男「くそっ!なんだあいつ!下に入るぞ!」

女「あっ…あぁっ…」

男「早く!」

 

男は女を引き連れて地下に潜った。

 

???「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

ブゥンブゥンブゥンブゥンブゥンブゥンブゥン…

すると???はさらに多くの魔法陣を展開した。

 

???「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

ブゥゥゥゥゥゥン…

すると魔法陣が魔力を溜め始めた。

 

???「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

すると魔法陣が魔法を放ち始めた。

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

魔法に被弾した建物が次々に崩れ始めてきた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…地下

 

ドゴォォォォォン!!

その振動は地下まで届いていた。

 

男「なっ…外の振動がここまで…」

女「このままじゃ危険だわ!今すぐこの町を出ましょう!!」

男「だが今外に出れば全員死ぬぞ!!」

女「でも!」

男「…ここから出れば全員死ぬぞ」

町の人たち「!!」

男「俺は外にいるやつが殺されたところをさっき見た。奴は外にいる人に魔法陣を展開して粉々にしてた。魔法でな。容赦もない」

女「でもここにいたらみんな瓦礫に潰されてしまう!」

男「だが外に出れば即死だ。命を粗末にしたくないならこのまま機を待つかそれとも…」

老人「誰か場所を転移する魔法は覚えとらんか?」

男「場所の転移?」

老人「あぁ。テレポート。誰か使えんか?」

男「ここは誰も…」

女「私も使えない…」

老人「あぁ…なら…もう…」

 

???「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

???は更に攻撃を重ねる。

 

老人「あぁ…怒っておる…神が…」

男「チッ…どうすりゃいいんだよ…」

 

バゴォォォォォン!

とうとう地下の天井が破壊された。

 

男「!?」

女「!?」

老人「っ…」

 

ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!

即座にその地下に魔法陣が展開された。

 

男「しまった!みんな!逃げ…」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

その魔法陣が魔法を放ち始めた。

 

男「うわあああああ!」

女「きゃあああああ!」

老人「ここで…」

 

その地下にいた人たちは魔法陣によって皆殺しにされた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビアが見える高台

 

男「俺たちは一番スペルビアの外に近い場所の地下にいたんだ。町中に魔法陣が展開されているとはいえ、俺たちのいた場所だけは魔法陣の監視下になかった。それを知ったのはあいつが攻撃し始めてから少し経った時だ。今はこの町の壁に穴を開けている。少しずつ町の人を外に出てもうあと少しだけになる」

オード「大半は逃がせたんだな!?」

男「…あぁ。撃ち落とされた場所以外はな」

オード「そうか」

リール「あの、あの大きなのは何なのでしょうか」

魔女さん「…」

男「分からん!だが俺たちの仲間があいつに殺された!俺たちはあいつを殺す!だがまずは町の人たちを逃がすのが先決だ!」

リール「ですがこのまま行けば…」

男「あぁ。俺たちは殺される」

アンナ「そんな…」

オード「俺たちが囮になってやるよ」

男「何!?」

オード「あいつの目を引きつければお前らが楽に出られるだろ。その任、俺たちに任せろや」

男「いや、あいつは本当に強いぞ…」

オード「大丈夫だ。なんてったって俺たちは最強の魔法使いと魔女だからな!」

 

オードはそう言いながら決めポーズをした。

 

男「本当に…いいのか…」

オード「あぁ。任せろ」

男「…分かった。頼む。町の人たちが出るまででいい」

オード「へっ、町の人たちが出たら相手を本気でぶち殺してやるぜ!」

男「俺は今からみんなにその事を伝える。みなさんはあいつの相手を頼む!」

 

タッタッタッ!

男はその場をあとにした。

 

オード「…リール」

リール「は、はい」

オード「…まだ何とかなる」

リール「!」

 

オードはリールに手を伸ばした。

 

オード「最後に…俺と一緒にこの町を救ってくれ」

リール「オード君…」

オード「俺は…リールと一緒にこの町を守りたい」

リール「っ…」

オード「どうだ。リール」

リール「っ!」

 

リールは手を伸ばした。

 

リール「はい!私もオード君と一緒にこの町を守りたいです!!」

 

ノーラ「ふっ…」

ディア「お熱いことで」

スカーレット「ふふふっ…」

アンナ「私も頑張る…」

 

エレナ「ねぇリーナ」

魔女さん「何でしょうか」

エレナ「いい人が見つかってよかったね。リール」

魔女さん「…」

 

魔女さんはリールとオードを見た。

 

魔女さん「…えぇ。このまま続いてくれるといいですね」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア上空

 

オード「行くぜ!ディア!ノーラ!」

 

ディア「おう!」

ノーラ「おう!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!

オード、ディア、ノーラは箒を使ってスペルビア上空を飛び回っていた。

 

オード「いくぜ!!」

 

ブゥン!ブゥン!ブゥン!

オードは魔法陣を展開した。

 

オード「火柱(オーバン)!!」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!

魔法陣から炎の柱が放たれた。

 

???「アァァァァァァァァァァ!!!」

 

???はオードの魔法に被弾した。

 

オード「っしゃあ!!」

 

???「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!

???は魔法陣を展開した。

 

???「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

???は多数のレーザーを放った。

 

オード「よっ!ほっ!はっ!」

 

オードたちはその攻撃を避けていく。

 

オード「まだまだぁ!!」

 

ブゥン!ブゥン!ブゥン!

オードは魔法陣を展開した。

 

オード「火玉(ファイダラ)!!」

 

バババババババババババババ!!

オードは炎の弾型の魔法陣を放った。

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

オードの魔法は???に全弾命中した。

 

???「アァァァァァァァァァァ!!!」

 

ディア「っしゃ!俺も行くぜ!」

 

スッ!

ディアは杖を取りだした。

 

ディア「火だるま(フレイム)!!」

 

ゴォォォォォォォォォ!

するとディアの体が炎に包まれた。

 

ディア「行くぜ!!」

 

ビュン!!

ディアはそのまま???の胸元に向かって突進した。

 

ディア「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

バゴォォォォォン!

ディアの魔法は見事に???の胸元に命中した。

 

???「アァァァァァァァァァァ!!!」

 

???はようやく仰け反った。しかし、倒れるほどではなかった。

 

ディア「チッ…オード!」

オード「何だ!」

ディア「あいつ!相当硬ぇぞ!!」

ノーラ「なら俺が!」

 

ブゥン!ブゥン!ブゥン!

ノーラは魔法陣を展開した。

 

ノーラ「水玉(ウォダラ)!!」

 

ピュン!ピュン!ピュン!ピュン!ピュン!

ノーラは水の弾型の魔法を放った。

 

ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!

その魔法は???に全弾命中した。

 

???「アァァァァァァァァァァ!!」

 

ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!

ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!

???は自分の周りに魔法陣を展開した。

 

???「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

すると突然その魔法陣からレーザーが放たれた。

 

オード「マズイ!!」

 

ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!

オードとディア、ノーラは散開した。

 

オード「はっ!やっ!ほっ!」

 

オードはなんとか回避できるくらいだった。

 

???「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

???は更にレーザーを放つ。

 

ディア「チッ…なんだあいつ!」

ノーラ「ディア!!前だ!!」

ディア「なっ!!」

 

ディアは後ろから追ってくるレーザーに気を取られており、前を見ていなかった。

 

ディア「しまっ…」

 

バゴォォォォォン!

ディアは前から来たレーザーに被弾してしまった。

 

オード「ディアァァァァァ!!!」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…

ディアはそのまま落下していった。

 

オード「くそっ!」

ノーラ「オード!」

オード「何だ!!」

ノーラ「リールはまだ準備できてねぇのか!!」

オード「知らん!準備ができてたら連絡が来る!」

ノーラ「早くしてくれ!リール!!」

 

???「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!

???は更に魔法陣を追加した。

 

ノーラ「まだ出せるのか!?」

 

???「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

バババババババババババババ!!

すると今度の魔法陣は弾型の魔法を放ち始めた。

 

ノーラ「くそっ!弾幕か!!」

 

ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!

ノーラはできる限り最小限で回避した。

 

ノーラ「よしっ!これなら」

 

バゴォン!

すると狙いを定めていた魔法陣がノーラに向けてレーザーを放った。

 

ノーラ「なっ!しまっ!」

 

バゴォォォォォン!

ノーラも???の魔法に被弾してしまった。

 

オード「ノーラァァァァァァァァァ!!!」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!

???の攻撃はまだ続く。

 

オード「くそっ!」

 

ビュン!!

オードは箒の速度を上げた。

 

オード「このままじゃ何もできねぇ!」

 

プシュゥゥゥゥゥゥ!

すると突然青い光が空高く打ち上げられた。

 

オード「!!」

 

オードはそれを見た。

 

オード「…全員脱出できたんだな!!よしっ!!」

 

青い光を見たオードは???の方を見た。

 

オード「これで最後だぜ!!」

 

ゴォォォォォォォォォ!!!!

オードは一際大きな炎の玉を作り出した。

 

オード「大炎玉(ヘル・ファイア)!!!」

 

バゴォォォォォン!

オードは大きな火の玉を???に向けて放った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビアが見える高台

 

エレナ「ディア君とノーラ君がやられました!」

リール「っ!ディア君…ノーラ君…」

アンナ「リール!どう!?今の感じ!」

リール「…まだ足りません!もっとお願いします!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!

アンナたちはリールに魔力を注いでいた。

 

魔女さん「リール!この魔法は危険です!魔力の消費が大きいし、一度放てば次に放つまで時間がかかります!もし失敗すれば…」

リール「失敗しません!!」

魔女さん「!!」

リール「私は…一発で仕留めます!」

魔女さん「リール…」

リール「私はオード君とこの町を守ると約束しました!だからこの一撃にかけてあの大きなやつの心臓を貫きます!」

魔女さん「リール…」

リール「っ…」

 

エレナ「オード君がやられました!!」

 

リール「!!」

エレナ「3人とも魔力が無くなりかけています!!」

リール「えっ!」

エレナ「恐らく箒を使用しながら魔法を使っていたからでしょう…いつもより消費が早いです!」

リール「オード君…」

 

リールが少しグラついた。

 

魔女さん「!」

 

スッ!

魔女さんはすかさずリールに手を差し伸べた。

 

リール「!」

魔女さん「リール」

リール「は、はい…」

魔女さん「私はあなたを信じています。オード君、ディア君、ノーラ君もあなたを信じて囮になってくれました。大丈夫です。あなたならできます。あなたに何かあったら私が守ります」

リール「魔女さん…」

アンナ「リール!私も!」

リール「アンナ…」

アンナ「私も!リールを信じてるから!!」

スカーレット「私もよリール!」

リール「スカーレット…」

スカーレット「あんなやつ!大きくて動きも遅いわ!一発ぶちかましてやりなさい!!」

リール「2人とも…。っ!分かりました!やります!」

 

スッ

リールは両手の掌を???に向けた。

 

リール「もう大丈夫です。アンナ、スカーレット」

 

スッ…

アンナとスカーレットはリールに魔力を注ぐのを止めた。

 

リール「…この一撃で仕留めます!」

 

ジジジ…バリバリバリバリバリ!!

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

リールの周囲に黄色い光が集まり始めた。

 

リール (オード君…ディア君…ノーラ君…あとは私にお任せ下さい!)

 

ギュォォォォォォォォ!!

集まり始めた光は大きな玉になっていった。

 

リール「いきます!!」

魔女さん「みんな!こっちに集まってください!衝撃に備えます!」

 

アンナ、スカーレット、エレナは魔女さんの所に集まった。

 

魔女さん「結界(ブルース)!!」

 

ガシャン!!

魔女さんは全員が覆えるくらいの結界を展開した。

 

魔女さん「いいですよリール!」

リール「はい!」

 

ギュォォォォォォォォ!!

集めた光の玉が更に膨張した。

 

リール「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ギュォォォォォォォォ!!

集めた光が膨張を止めた。

 

リール「その天光はやがて大地に降り注ぐ(マーベラス・インディラ・アルマトラン)!!!」

 

キィン!バゴォォォォォォォォォン!!!

リールが集めた光は???の胸に向かって真っ直ぐ放たれた。




〜物語メモ〜

第6次元魔法 そこに在る者(テルラポート)
魔女さんが使った次元魔法。
ある場所からある場所まで一瞬で移動することができる。この魔法は他の転移魔法と違って次元が歪んでいてもその干渉を受けない性質を持つ。
そのため、外界から隔離された深淵からスペルビアの見える高台まで移動することができた。これが普通の転移魔法なら、深淵→第3層→第2層→第1層→地上→スペルビアの見える高台と5回も魔法を使う羽目になっていた。

火柱(オーバン)
オードが使った魔法。
魔法陣から炎の柱を放つ魔法。
今回は???を攻撃するために使用した。

大炎玉(ヘル・ファイア)
オードが使った魔法。
いつもより大きな火の玉を形成し、放つ魔法。
魔力を消費していたオードにとってこの魔法が最良の一手だった。

結界(ブルース)
魔女さんが使った魔法。
魔女さんの中で2番目に硬い結界。
消費魔力も少なく、割れてもすぐに展開できる優れもの。
しかし、この魔法は魔女さんにしか使えない。

その天光はやがて大地に降り注ぐ(マーベラス・インディラ・アルマトラン)
リールが最後に使った魔法。
他者の魔力をひとつに統合して放つ魔法で、今回はアンナとスカーレットの魔力を使ってこの魔法を使用した。


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第75話 リノと大きな黒い人

私の名前はリール。

今スペルビアという町を一望できる高台にいます。

私たちは先程深淵から帰ってきました。

魔女さんやエレナさんもみんな戻ってきました。

ですが、いざ帰ってくると、スペルビアの町が炎の海になっていました。

しかも町の中央には大きな黒い人間のような形をしたものがいました。

恐らくあの大きな人がこの町を燃やしたんだと思います。

私はオード君とこの町を救う約束をしました。

なので私は最後にあの大きな人をやっつけたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…スペルビアが見える高台

 

リール「その天光はやがて大地に降り注ぐ(マーベラス・インディラ・アルマトラン)!!!」

 

キィン!バゴォォォォォォォォォン!!!

リールが集めた光は???の胸に向かってレーザーのように真っすぐ放たれた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア

 

ズドォォォォォォォォォン!!!

リールが放った魔法は見事その大きな黒い人の心臓部に命中した。

 

???「アアアアアアアアアアアアアア!!」

 

ドゴォォォォォォン!!

???はリールの攻撃で体制を崩して倒れた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビアが見える高台

 

リール「やっ…やった…当たった…」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…パキパキッ…パリン!

すると魔女さんの結界が破壊されてしまった。

 

魔女さん「くっ…私の結界が破壊されるなんて…なんて恐ろしい魔法なの…」

 

アンナ「す…すごい…」

 

リール「!」

 

だが、先程倒れた大きな黒い人が起き上がってきた。

 

リール「魔女さん!あいつが起き上がってきました!」

 

魔女さん「っ!」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア

 

???「ウゥゥゥゥゥ…アァァァァァ…」

 

大きな黒い人は体を起こすと先程攻撃が飛んできた方を見た。

 

???「ウルルルルルル…ガガガッ…」

 

その大きな黒い人はリールたちがいる高台に向きを変えた。

 

???「カッ…カカカカカカカカカカカカカ!!」

 

ブゥゥゥゥゥゥゥゥン…

すると大きな黒い人は口を大きく開け、魔力を溜め始めた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビアが見える高台

 

魔女さん「リール!!」

 

リール「はい!」

 

魔女さん「下がって!!攻撃が来る!!」

 

リール「っ!」

 

バゴォォォォン!!

するとその瞬間、眩い光とともに光線が放たれた。

 

リール「!?」

 

魔女さん「リール!!」

 

キィン!バゴォォォォン!!

大きな黒い人が放った光線は凄まじく、高台を一瞬で蒸発させてしまった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア

 

???「フルルルルルルルル…」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

大きな黒い人の口から煙が出ていた。

 

???「カカカカカカカカカカカカカ…」

 

大きな黒い人は光線を放つとまた口を閉じた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビアの近くにある泉

 

リール「魔女さん!魔女さん!!」

 

魔女さん「…」

 

リール「魔女さん!起きてください!魔女さん!」

 

ジュワァァァァァァァァ…

アンナが水属性魔法で魔女さんに水をかけていた。

 

リール「魔女さん!!」

 

魔女さんは先程の光線からリールたちを結界で守った。だがその結界は強固な分、入れる人に限りがある。

入れるのは4人だけ。しかし、あの場にいたのはリール、魔女さん、エレナ、スカーレット、アンナの5人。

魔女さんは自分の身を犠牲にしてリールたちを無傷で済ませることに成功した。

しかし魔女さんは先程の光線に当てられ、体の大部分は火傷を負い、意識を失っていた。

今はアンナが水をかけて冷やしている。

 

リール「ああっ…魔女さん!魔女さん!」

 

リールは必死に呼びかけていた。だが魔女さんは一向に返事をせず、ただ時間だけが過ぎていた。

 

リール「魔女さん…魔女さん…」

 

スカーレット「リール…」

 

リール「スカーレット…どうしよう…魔女さんが…魔女さんが私たちのために…犠牲に…」

 

ギュッ…

リールはスカーレットの服を少し掴んだ。

 

スカーレット「リール!」

 

ガシッ!

スカーレットはリールの肩を強く掴んだ。

 

リール「!」

 

スカーレット「何勝手に死なせてるのよ!!」

 

リール「!!」

 

スカーレット「まだ死んでないわ!勝手に殺さないで!」

 

リール「ス…スカーレット…」

 

スカーレット「この人!あんたのお師匠様でしょ!」

 

リール「!」

 

スカーレット「あんたを今まで大切に育ててくれた恩人でしょ!!何勝手に死んだことにしてんのよ!!ふざけるな!!私は諦めない!!オードやディアやノーラだってそうよ!!あんたを信用してあいつを引き付けてくれた!!これ以上ないチャンスを身をもって作ってくれたのよ!!それをあんたは何!?たった一発攻撃を受けただけでもう終わりなの!?もう諦めるの!?」

 

リール「!」

 

スカーレット「今ここで諦めたらあんたを信用して託してくれたあの3人とエレナさんたちの思いはどうなるのよ!!踏みにじることになるわよ!!」

 

リール「!!」

 

スカーレット「あんたが今やるべきことはあいつを倒すこと!この町を救うことよ!他のことは私たちに任せなさい!!仲間でしょうが!!」

 

リール「!!!」

 

アンナ「リール!私も一緒!」

 

リール「!」

 

アンナ「私だって今までリールに色々教えてもらった恩がある!それを今返したらダメなの!?」

 

リール「アンナ…」

 

アンナ「リールが私たちの学校に来てくれたおかげで私はこんなに強くなった!こんなに魔法が上手くなった!テストも良い点取れた!頼もしい友達もできた!全部リールのおかげだよ!だからリール!ここは私たちに任せて!リールはあいつを倒すことに集中して!」

 

リール「アンナ…」

 

エレナ「リールさん。私も同意見です」

 

リール「エレナさん…」

 

エレナ「私…いや、私の分身たちもあなたを託して逝きました。他にもあらゆる犠牲があったでしょう。でも、ここでそれを捨てれば今まであなたのために繋げてくれた道を閉ざすことになります」

 

リール「っ…」

 

エレナ「リールさん。お願いします。リーナのことは私たちに任せて、あなたはあの黒いやつを」

 

リール「…分かり…ました」

 

エレナ「…ありがとう」

 

リール「…」

 

スッ…

リールは魔女さんの顔に触れた。

 

リール「…魔女さん。行ってきます」

 

魔女さん「…」

 

リール「魔女さんの一番弟子である私がこの町を救ってみせます。…見ててください。魔女さん」

 

スッ!ポンッ!

リールは立ち上がって箒を出した。

 

リール「…こうして君と戦えるのもこれが最後かもしれませんね。…そういえば、君に最初に会ったのはメリーさんのお店でしたね」

 

リールは箒に話しかけた。

 

リール「あれからずっと君と一緒でした。どこへ行く時も何をしようともずっと。君に会えたおかげで私の魔女になる生活はとてもよいものとなりました。ですが、それもここまでかもしれません。私は…決死の覚悟であの人に挑みます。この町を救うため、みなさんを救うため…そして、私を信頼してくれた私の大事な友達や私の大切な人のために!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥ!

すると箒が光り出した。

 

リール「だから最後に…私に力を貸してください!」

 

シュゥゥゥゥゥゥ!ビュン!!

するとリールの箒が勝手に動きだし、リールを乗せて空高く飛んだ。

 

スカーレット「なっ…勝手に…」

 

アンナ「すごい…やっぱりリールの箒はすごい!」

 

エレナ「…」

 

エレナは無言でリールを見ていた。

 

エレナ (リノ…あなたが使ってた箒…リールさんはちゃんと乗りこなしているようですよ)

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア

 

リール「光玉(ライダラ)!!」

 

ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!

リールは大きな黒い人に向けて魔法を放った。

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

リールの魔法は全弾命中した。

 

???「アアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

リール「光玉(ライダラ)光玉(ライダラ)光玉(ライダラ)!」

 

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!ドゴォン!

リールは絶え間なく攻撃を続けた。しかし、大きな黒い人には全くダメージがないように見えた。

 

???「カカカカカカカカカカカカカ!!」

 

キィィィィィィィィ…

大きな黒い人が口を開けて魔力を溜め始めた。

 

???「ガガガガッ!ガァッ!!」

 

バゴォォォォン!!

すると先程と同じ光線が放たれた。

 

リール「ふんっ!」

 

ビュン!

リールは間一髪のところで回避することができた。

 

リール「よしっ!見ても避けられる!このまま相手の攻撃を避け続けて…」

 

バゴォォォォン!!

すると遠くから大きな音が響いてきた。

 

リール「!」

 

リールがそちらを振り向くと、スペルビア近くの草原の一部が蒸発して燃えていた。

 

リール「なっ…」

 

???「フシュゥゥゥゥゥゥ…カカカッ…」

 

大きな黒い人は口を閉じた。

 

リール (このままあの攻撃を避け続けたら他のところに被害が出る…でも避けないと魔女さんと同じ目に…どうすれば…)

 

???「キャアアアアアアアアアアアア!!」

 

ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!

大きな黒い人が声を上げると、周囲に魔法陣が展開された。

 

リール「!」

 

???「アアアアアアアアアアアア!!」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

そしてその魔法陣から弾幕が多数放たれた。

 

リール「えっ!

 

カタカタ…ビュン!

すると箒が勝手に動きだし、弾幕の隙間を抜けて大きな黒い人の近くに来ることができた。

 

リール「わっ…すごい!」

 

???「キャアアアアアアアアアアアア!!」

 

リール「天の鎖(エルキドゥ)!!」

 

ジャラララララララ!ガシャン!!

リールは大きな黒い人を鎖で拘束した。

 

???「アアアアアアアアアアアアアア!!」

 

ガシャン!!ガシャン!!ガシャン!!

大きな黒い人は鎖を振りほどこうとした。

 

リール「このまま続けて…光爆(エレノア)!!」

 

バゴォン!

リールは大きな黒い人に追撃をした。

 

???「アアアアアアアアアアアアアア!!」

 

ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!

すると大きな黒い人の周囲に魔法陣が展開された。

 

???「アアアアアアアアアアアアアア!」

 

バババババババババババ!

すると大きな黒い人は自分に向けて弾幕を撃ち始めた。

 

リール「なっ!」

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

大きな黒い人はその弾幕をガードする素振りも見せず、ただただ攻撃を受けていた。

 

リール「一体何を…」

 

バキン!

すると鎖の根元から変な音がした。

 

リール「!」

 

リールが音のした方を見ると、鎖が一本破壊されていた。

 

リール「まさか!あの弾幕でこの鎖を破壊しようとしてるんですか!?」

 

???「アアアアアア!!」

 

リール「くっ…そんなことさせません!!」

 

ビュン!

リールは急いで魔法陣があるところに向かった。

 

リール「これを破壊すれば!」

 

大きな黒い人が展開した魔法陣はリールの何倍もの大きなだった。それもそのはず、大きな黒い人自身が町を覆うほどの大きい体をしているのだから、魔法陣も大きくて当然である。

 

リール「はぁぁぁぁぁぁっ!」

 

シュゥゥゥゥゥゥ!

リールは魔力を溜め始めた。

 

リール「はぁぁぁぁぁっ!極大魔力消滅魔法(マギ・オートマタ・ソル・ディメンション)!!」

 

キィン!バゴォォォォン!!

リールはエレナから分けてもらった魔法を使って魔法陣の破壊を試みた。

 

ピシッ…パリン!パリン!パリン!

すると、4枚のうち、3枚の魔法陣が消滅した。

 

リール「はぁ…はぁ…っ…まだ…あと1枚…」

 

リールはあと1枚の魔法陣を破壊しようとしたが、さっきの魔法で魔力のほとんどを使ってしまった。

 

リール「ダメ…これじゃあ…まだ…」

 

バキン!バキン!バキン!

すると全ての鎖が壊れてしまった。

 

リール「しまった!魔力が!」

 

リールは鎖で拘束してる間、壊れないように魔力を注ぎ続けていたが、さっきの魔法で保持する魔力を失い、鎖が破壊されてしまった。

 

???「アアアアアアアアアアアアアア!!」

 

キィィィィィィィィ…

すると大きな黒い人が口を開けて魔力を溜め始めた。

 

リール「まさか!またあれを撃つ気なの!?」

 

???「キャアアアアアアアアアアアア!!」

 

キィン!バゴォォォォン!!

すると今度は早いタイミングで光線が放たれた。

 

リール「マズイ!」

 

ビュン!

リールはその光線を避けることができた。

 

リール「ふぅ…とりあえず当たらなくてよかっ…あっ!後ろの!」

 

リールは避けて安心したが、さっき草原が焼かれたのを思い出して後ろを振り返った。

 

リール「ああっ!ああっ…ああああああ!!」

 

リールが見たのは魔女さんの家が燃えている光景だった。魔女さんの家は普段、見えないように隠されているが、物体として触れることはできる。しかし、その状態を維持する今の魔女さんが瀕死の状態にあるため、家も普通に見えている状態だった。

そして、さっきの攻撃で魔女さんの家が燃えてしまったのだった。

 

リール「あああああっ!!魔女さんと私の大切な家があああああああ!!!」

 

???「ウゥゥゥゥゥアアアアアア!!」

 

キィィィィィィィィ…

大きな黒い人は再度魔力を溜め始めた。

 

リール「よ…よくも…」

 

リールは今まで見せたことない怒りの表情を見せた。

 

リール「よくも…やりましたね…」

 

グググッ…

リールは杖を強く握った。

 

リール「私はもう…あなたを…絶対に許しません!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥ!

リールは魔力を溜め始めた。

 

リール「私の大切なものを!!これ以上壊すなああああああああ!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥ!!

すると突然魔法陣が展開され、その中から誰かが出てきた。

 

ルル「やっと見つけたよお母さん」

ララ「やっと見つけたよお母さん」

 

出てきたのはルルとララだった。2人は以前、リールと異質な空間で話したことがあり、リールはその特異な話し方を覚えていた。

 

リール「あ、あなたたちは…」

 

ルル「この一連の騒動の元凶」

ララ「異変を起こした張本人」

 

ルル「過去にドレインを幽閉した恐るべき魔女」

ララ「禁忌に触れても己が体を依代とした魔女」

 

ルル「体は朽ち果て、それは地上に残された」

ララ「暗き地にあったのはそれを模した偽物」

 

ルル「グラムという枷から解き放たれた獣」

ララ「軛より逃れしかつて存在した忌み子」

 

ルル「今こそこの場で葬り去る」

ララ「己が過ちを憂いて苦しめ」

 

???「アアアアアアアアアアアアアア!!」

 

バゴォォォォン!!

すると大きな黒い人はまた光線を放った。

 

リール「2人とも避けて!」

 

ルル「純血に混じった異質なモノ」

ララ「光を消し去った異毒なモノ」

 

ルル「光によって浄化されるがいい」

ララ「光によって浄化されるがいい」

 

キィン!ドォォォォォォォン!!

するとルルとララの掌から白い光がレーザーとなって放たれた。

 

バゴォォォォン!!

両者の攻撃がぶつかり合い、周囲にマナが飛び散った。

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

するお大きな黒い人の攻撃が止んだ。

 

???「カッ…カカカカカカカカカカカカカ…」

 

ルル「不浄に包まれた光の血族よ」

ララ「不浄に苛まれし光の血族よ」

 

ルル「その禁忌で得た不死の力を」

ララ「その禁忌で得た開闢の力を」

 

ルル「永遠の時の中に幽閉させてもらう」

ララ「不死の力と共に幽閉させてもらう」

 

シュゥゥゥゥゥゥ!

すると大きな黒い人の足元に白い大きな魔法陣が展開された。

 

???「アアアッ…アアアアアア!」

 

大きな黒い人はその場から動こうとしたが、全く身動きが取れなかった。

 

ルル「禁忌の力はこの世界には不必要」

ララ「異質な強い力はこの先必要ない」

 

ルル「この世界が生んだ最大にして最凶」

ララ「この世界に育まれた最恐最悪の力」

 

ルル「理の外にある無条件の力」

ララ「人が持つには過ぎた代物」

 

ルル「この世界に存在する権限を剥奪し」

ララ「この世界に存在する権利を剥奪し」

 

ルル「現時刻を以て消滅させる」

ララ「現時刻を以て消滅させる」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…バゴォォォォン!!

すると魔法陣から白い光が大きな黒い人を覆うように出てきた。

 

???「アアアッ!アアアアアア!!」

 

大きな黒い人は苦しそうにもがいていた。

 

ルル「もう休まれよ。光の母」

ララ「お休みなさい。光の母」

 

???「アアアアアアアアアアアア!!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥ!ビュン!

すると、白い光が球体となって、やがて空高く飛んで行ったのだった。

 

リール「…?」

 

リールは目を閉じて何が起こったのか分からなかった。でも分かることがあるとすれば、大きな黒い人の見た目は何も変わっておらず、そのおぞましい気配を放っていた。

 

リール「えっ…何が起きたの…」

 

ルル「お母さん」

ララ「お母さん」

 

リール「!」

 

ルルとララがリールに向かって話しかけた。

 

リール「えっ…お母さん?」

 

ルル「お兄ちゃんに会ったよね」

ララ「お兄ちゃんに会ったよね」

 

リール「えっ…お兄ちゃん…?」

 

ルル「お兄ちゃんから聞いたよ」

ララ「お兄ちゃんから聞いたよ」

 

ルル「お母さん。今も昔も変わらないって」

ララ「お母さん。今も昔も変わらないって」

 

リール「えっ…えっ…?」

 

ルル「それにお父さんも強いって言ってた」

ララ「それにお父さんも強いって言ってた」

 

リール「お父さん…?」

 

ルル「うん。身動きが取れなかったらしいよ」

ララ「うん。身動きが取れなかったらしいよ」

 

リール「えっ…何のこと?」

 

ルル「あれ?会ったことないのかな」

ララ「え?会ったって聞いたけど?」

 

リール「えっ…誰のことだろ…」

 

ルル「お母さん。お兄ちゃんの名前覚えてる?」

ララ「お母さん。お兄ちゃんの名前覚えてる?」

 

リール「えっ名前?…私一人っ子だよ?」

 

ルル「あ、何か勘違いしてるね」

ララ「だから話が合わないのね」

 

リール「?」

 

ルル「ねぇお母さん聞いて」

ララ「お兄ちゃんの名前は」

 

ルル「カグツチっていうんだよ」

ララ「カグツチっていうんだよ」

 

リール「!!」

 

リールはこの時、深淵でグラムを圧倒したオードの姿を思い出していた。

その時のオードは普段のオードとは違っていて、リールは違和感を感じていた。

しかもカグツチは弟と妹を守ってろとも言っていた。

 

リール「えっ…まさか…あの火属性魔法を使う…」

 

ルル「そう!お兄ちゃんは火属性魔法!」

ララ「正解!お兄ちゃんは火属性魔法!」

 

リール「嘘っ…」

 

ルル「でもお兄ちゃんはもう来れないよ」

ララ「でもお兄ちゃんはもう来れないよ」

 

リール「えっ…何かあったの?」

 

ルル「お父さんが次元魔法を使ったんだ」

ララ「お父さんが次元魔法を使ったんだ」

 

リール「次元…魔法…」

 

ルル「うん。だからお兄ちゃんはここには来れない」

ララ「うん。だからお兄ちゃんはここには来れない」

 

ルル「でも僕たちは次元魔法を受けてない」

ララ「でも私たちは次元魔法を受けてない」

 

ルル「だからまたここに来た」

ララ「だからまたここに来た」

 

リール「えっ…あっ…えっ…?」

 

3人で話していると、大きな黒い人が動き始めた。

 

???「アアアアアアアアアアアア!!!」

 

リール「!!」

 

ルル「?」

ララ「?」

 

リール「また動き出した!」

 

ルル「うん。でももう終わりだね」

ララ「うん。でももう終わりだよ」

 

リール「えっ…何でですか?」

 

ルル「禁忌を消したから」

ララ「禁忌を剥奪したよ」

 

リール「禁忌…?」

 

ルル「ねぇお母さん。あれの正体って知ってる?」

ララ「ねぇお母さん。あれの正体って知ってる?」

 

リール「えっ…2人は知ってるんですか?」

 

ルル「うん。あれはね…」

ララ「うん。あれはね…」

 

ルル「お母さんのお母さんだよ」

ララ「お母さんのお母さんだよ」

 

ルル「名前はリノ」

ララ「名前はリノ」

 

リール「!?」

 

リノ。それはリールの母親の名前だった。かつて魔女さんとエレナさんと交友があり、同じくして禁忌に触れたうちの一人。

 

リール「嘘っ…あれが…私のお母さん…」

 

ルル「そうだよ」

ララ「そうだよ」

 

リール「嘘っ…私…自分のお母さんを…殺そうとしてたの…」

 

ルル「うーん。まぁ、半分正解」

ララ「うーん。まぁ、半分不正解」

 

リール「えっ…」

 

ルル「あれは確かに見た目が同じ。でも中身が違う」

ララ「中身は昔、ドレインによってこの世を去った」

 

ルル「今対面してるのはもう存在しない人」

ララ「所謂死人。この世に生のない骸の人」

 

ルル「あれを倒さないとこの世界は戻らない」

ララ「この世界はあれのせいで元に戻らない」

 

ルル「だから倒してお母さん」

ララ「だから倒してお母さん」

 

リール「えっ…でも…」

 

リールは迷っていた。あれが自分の母親だと知ると、無闇に手が出せない。今までは知らなかったから攻撃していたものを、今ではその手すら出ない。

 

リール「くっ…」

 

ルル「僕たちは倒さない決まりがある」

ララ「私たちは倒さない決まりがある」

 

ルル「だからお母さんがやって」

ララ「だからお母さんがやって」

 

リール「なんで…」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

するとルルとララの体が消えかかっていた。

 

リール「!!」

 

ルル「もう時間だから」

ララ「もう時間切れね」

 

リール「待ってください2人とも!私はどうすれば!」

 

ルル「それもう答えは決まってるよね」

ララ「迷いが人殺しなら問題ないよね」

 

リール「!」

 

ルル「救ってあげて。お母さん」

ララ「あの人…まだ苦しんでる」

 

リール「!」

 

ルル「お母さんがやらないと救われないよ。あの人」

ララ「だからね、お母さんがあの人を救ってあげて」

 

リール「待って!」

 

ルル「最後にこれあげるね」

ララ「私たちのとっておき」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…ポンッ!

すると小さなナイフを渡された。

 

リール「これは…」

 

ルル「頭に突き刺して」

ララ「頭を狙うんだよ」

 

ルル「あの人を引きずり出したいならそれしかない」

ララ「大丈夫。死なないから。ただ殻を破るだけよ」

 

リール「殻って…」

 

ルル「じゃあね。頑張ってねお母さん」

ララ「じゃあね。頑張ってねお母さん」

 

シュゥゥゥゥゥゥ…

そしてルルとララの姿が消えた。

 

リール「2人とも…」

 

???「アアアアアアアアアアアアアア!!」

 

リール「!」

 

ルルとララが消えたことで大きな黒い人を拘束していた魔法が解けた。

 

リール「これを頭に…」

 

カチャ…

リールはナイフを握った。

 

リール「…私にできるのでしょうか」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア近くの泉

 

アンナ「エレナさん!魔女さんの傷が癒えました!」

 

エレナ「…えぇ」

 

アンナ「…? どうされましたか?」

 

エレナ「…ねぇ2人とも」

 

スカーレット「はい」

アンナ「はい」

 

エレナ「…あの3人を助けてきます」

 

アンナ「あの3人って…」

 

スカーレット「オード君、ディア君、ノーラ君ですね」

 

エレナ「はい。今3人はあの黒いやつの標的にされてません。助け出すのは今です」

 

アンナ「ですが今スペルビアは…」

 

スカーレット「確かに…今のスペルビアは火の海…今助けに行ったら…」

 

エレナ「私だって一人でできますよ。私」

 

アンナ「!」

 

エレナが独り言を呟いた。

 

エレナ「…見ててくださいリーナ、リノ。…きっと救ってみせます」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…ビュン!

エレナは箒に乗ってスペルビアに入っていった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア

 

リノ「アアアアアアアアアアアアアア!!」

 

キィン!バゴォォォォン!!

大きな黒い人はまた光線を放った。

 

リール「くっ!」

 

ビュン!

リールはその攻撃を回避した。

 

リール (これを頭に…)

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

リールは箒に乗って大きな黒い人の様子を伺っていた。

 

リノ「キャアアアアアアアアアアアア!!」

 

リール「今っ!!」

 

ビュン!

リールは大きな黒い人が大きく口を開いた瞬間を狙って突っ込んだ。

 

リール「はぁぁぁぁぁっ!」

 

リノ「アアアアアアアアアアアアアア!!」

 

キィィィィィィィィ!

リノの口には魔力が集まっていた。

 

リノ「キャアアアアアアアアアアアア!!」

 

バゴォォォォン!!

すると大きな黒い人は光線を放った。

 

リール「はぁぁぁぁぁっ!」

 

ビュン!スタッ!

リールはその光線を回避して大きな黒い人の頭上で箒から降りた。

 

リール「これでっ!!」

 

グサッ!!

リールはその瞬間、手に持っていたナイフを大きな黒い人の額に突き刺した。




〜物語メモ〜

魔女さんの結界
魔女さんが使う結界は非常に強固で、並の魔法では傷を付けることは不可能。魔女さんの結界を突破するにはそれ相応の魔力が必要。しかし、それも相当な魔力で、過去に魔女さんの結界を破ったのは魔女さんのお師匠様であるグラムだけ。

魔女さんの結界の弱点
魔女さんの結界は非常に強固であるが、それ故に結界は物凄く小さい。魔女さんは基本一人で行動するため、その点に関しては全く困っていないが、誰かを守るために使うとなると、非常に厄介になる。魔女さんの結界は小さいため、その結界内に入ることができるのは魔女さんを含めた4人まで。それ以上は入ることができない。

大きな黒い人が放つ光線
大きな黒い人が放つ光線は魔力の塊になっており、それをレーザーとして射出している。体が大きいため、その分射出できる魔力も大きく、結界で防ぐのはほぼ不可能。しかし、魔女さんの結界は非常に強固なため、リールたちを無傷で済ますことができた。しかし、結界内の人数制限によって魔女さんはその光線を全身に受けてしまい、大火傷を負った。

ルルとララとカグツチの関係
ルルとララは双子の兄妹。ルルが兄でララが妹。そんな2人には兄がいる。名前はカグツチ。かつて深淵でオードの体を借りてグラムを瀕死まで追いやった張本人。しかし、本人はオードの次元魔法によって元の時代に強制的に帰された。


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第76話 リノと過去の出来事

私の名前はリール。

今辺り一面真っ白な空間にいます。

そこには私しかおらず、他には何もありません。

…いや、本当のことを言うとまだ一人います。

私と同じ髪色、目の色、魔力。

あらゆる点で私と合致している女性。

その人が私の目の前に立っています。

しかしその人は何故か俯いており、一向に私の顔を見ようとはしません。

でも私はすぐに分かった。

この人は私のお母さん。

みなさんがリノと呼ぶ人物。

魔女さんとエレナさんと同じくして禁忌に触れた人物。

本来ならここで倒すべきでしょうが、何故か手が動きません。

殺すべきではない…そう感じています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…謎の白い空間

 

リール「…」

 

リールは白い空間に立っていた。さっき大きな黒い人の頭に攻撃した。しかしその瞬間、白い光に包まれて気づいたらこの場所にいた。不思議な空間だった。

 

???「…」

 

リールの目の前にとある女性が立っていた。彼女は下を向いており、顔を見ることができなかった。

 

リール「…あなたは」

 

???「…」

 

リールは話しかけたが、その人は答えない。

 

リール「…まさかあなたが…リノ…いや、私のお母さんですか」

 

???「!」

 

するとその人は初めて顔を上げた。リールと同じ髪色、同じ目の色、同じ魔力。ほぼ全てリールと同じだった。

 

リール「…なぜ…こんな事をしているんですか」

 

リノ「…」

 

しかしその人は答えようとしない。

 

リール「なぜあんな事をしたんですか!!」

 

リールは大きな声で言った。

 

リノ「…」

 

リノは一旦顔を下に向けてまた顔を上げた。

 

リノ「…私は…この世界に存在してはならない。私が存在するだけでこの世界に災厄を起こしてしまう」

 

リール「!」

 

リノ「…あの時…禁忌に触れたあの時…私たちはその力を行使してしまった。愚かだった。あの力を知っていたのに使ってしまった。その代償がこれ。私は異形な力を手に入れ、この世界に降誕した」

 

リール「開闢…」

 

リノ「…そう。新たな世界を作ることができる力。この私には過ぎた力だった」

 

リール「なんで…禁忌に触れたの」

 

リノ「…私がいた時代は魔女や魔法使いは戦争の道具でした。普通の人間から見れば魔法は異質な力。それを恐れた普通の人間たちは私たちを殺そうと計画していた」

 

リール「!」

 

リノ「私たちの国は魔女や魔法使いしかいなかった。普通の人間は誰一人いない。この国は普通の人間たちが襲うには十分な的だった」

 

リール「でも…」

 

リノ「…私たちは戦った。外から攻めてくる普通の人間が私たちを滅ぼそうとやって来たから。しかし、魔法を持つ私たちは外の人間たちの兵器に敵わないことが多々見られた。鉄の塊でできた動く物。遠距離から放たれ、地面に着地すれば爆発する物。鉄でできた武器や鎧。私たちの国では一切手に入らないもので作られているものもあった。私たちはその力で滅ぼされかけた」

 

リール「…」

 

リノ「…それを見かねた私たちはそれよりも前に手に入れた禁忌の力で人間を滅ぼした。私たちに歯向かう人間たちを次々に殺して回った」

 

リール「待って。それじゃあ禁忌に触れた理由になってない」

 

リノ「…」

 

リール「私が聞きたいのは禁忌に触れた理由。何もその時代の背景を聞きたいわけじゃない」

 

リノ「…」

 

リール「答えて。なんで禁忌に触れたの」

 

リノ「…あなたを守るためよ。レナ」

 

リール「!」

 

リノ「私は昔から体が弱かった。あなたが私の体に宿った時、私の体は限界だった。お医者様からは流産とまで言われた。でも、友人だったリーナからある話を聞いた」

 

リール「話…」

 

リノ「…この世界に無限に力を持つことができるものがあるらしいって」

 

リール「それが…」

 

リノ「…そう。それがこの世界で言われている禁忌と呼ばれているもの。私はあなたを産みたい一心でリーナとエレナの3人でその禁忌に触れた。リーナは無敵、エレナは分裂、私は開闢の力を得た」

 

リール「私を…産むため…」

 

リノ「…でも代償が大きかった。過ぎた力を持った私たちは死ねない呪いを受けることになった。禁忌に触れた罪を償うために」

 

リール「でも!過ぎた力だったとしてもこの世界を守るために使えば問題なかったじゃん!」

 

リノ「…それができていれば今頃私はあなたと一緒に暮らしていたでしょうね」

 

リール「!」

 

リノ「…禁忌は意識を持っています。かつて存在した魔女と魔法使いのものです。この世界ができ、この世界を統率するために生まれた者。私たちが触れるまではその人たちがこの世界を守ってきた。でも、私たちが触れたことによってこの世界を守る役目を私たちが背負うことになった。そして…死ねない呪いにかかった」

 

リール「それなのになんで…この街を…」

 

リノ「…私の開闢の禁忌を持っていた人がこの国に恨みを持っていたんでしょうね。今は私の制御下にありません。全てその禁忌が動かしています」

 

リール「でも禁忌は浄化したって…ルルとララが…」

 

リノ「死ねない呪いにかかっているんです。浄化なんてできませんよ。やるなら過去に遡って直接叩かないと」

 

リール「…」

 

リノ「…レナ」

 

リール「!」

 

リノ「私は愚か者です。己が身を守るためにあなたを捨てた。私とあの人の間に生まれた強大な力を持つあなた。あなたの力は本当にこの世界を壊しかねない。ひとつ間違えれば私たちの持つ禁忌の力ですら凌駕するほどです」

 

リール「!?」

 

リノ「あなたは持って生まれてしまった。この世界を存続させる力とこの世界を破壊する力。この双方の力を混ぜてあなたという存在が形成された」

 

リール「っ…」

 

リノ「レナ。あなたが何故魔法に才を持つのかは気にならなかったのですか」

 

リール「…気にならない。私は努力でここまで来たと思ってた」

 

リノ「…半分正解で半分不正解」

 

リール「…」

 

リノ「半分はあなたの努力。でも半分は禁忌の力。あなたはすでに禁忌に触れてしまっている。そして今は分裂の禁忌の欠片も持っている」

 

リール「!」

 

リノ「まだ他の2つの禁忌は持ってない…いや、正確にはあとひとつ。無敵の禁忌。これだけまだない。他の分裂と開闢は既に持っている」

 

リール「…私は禁忌の力を持っていてもこの世界の役に立つことに使う」

 

リノ「…そう。そうしてくれると助かるわ」

 

リール「…あの」

 

リノ「?」

 

リール「…この戦い…終わらせることはできないのかな」

 

リノ「…」

 

リール「私はこの先、みんなと平和に暮らしたい。戦争なんていらない。私は…この手で幸せになりたい」

 

リノ「…幸せ…抽象的なものですね」

 

リール「!」

 

リノ「私にも幸せはありましたよ。あの人と出会ってからずっと幸せでした。でも…その幸せも続かなかった」

 

リール「…」

 

リノ「私は…あの人から殺されかけました」

 

リール「!?」

 

リノ「当然です。禁忌に近い力を持つ赤子を宿していたんです。産めばどんな災厄が訪れるか分かったものじゃありません」

 

リール「それで…」

 

リノ「…私は彼を殺しました」

 

リール「!?」

 

リノ「…それからの生活はかなり荒れ果てていました。あなたを産んでからも」

 

リール「…」

 

リノ「限界が来た私は家を出るのと同時にあなたを森へ置いて逃げた。その頃にはあなたに強大な力があることも知ってたし、自分の身を隠すには囮が必要だった」

 

リール「それで…」

 

リノ「…あなたはリーナに拾われた」

 

リール「!!」

 

リノ「あの時代ではリーナは狂気の魔女と呼ばれていたわ。この国を破壊した張本人。それがあなたを見つけ、保護し、育てた。そして、魔法も教えていた」

 

リール「魔女さん…」

 

リノ「…私の意思はここにあります。今外で暴れているのは私が持つ禁忌の者。彼の意思です」

 

リール「…」

 

リノ「もしこの国を救いたいなら私を殺すのではなく、あなたが彼を取り込み、制御する必要があります」

 

リール「!!」

 

リノ「私は何十年も禁忌に縛られていたからもう魔力はありません。彼を制御できません。ですがあなたは違います。強大な力を持つあなたなら彼を淘汰できます」

 

リール「…」

 

リノ「…私はあなたに向けて手紙を書きました」

 

リール「!」

 

リノ「深淵で待っているという手紙を」

 

リール「…」

 

リールはスカーレットの家に行った時にとある手紙を見つけた。それは光属性魔法に適正がある人物に向けて書かれたものだった。リールは光属性魔法に適正があるため、その手紙を読むことができた。

 

リノ「あなたが光属性魔法に適正があることも知ってましたよ。だからリーナがあなたを見つけることができたのです。光属性魔法と闇属性魔法は互いに相手を引き寄せる力を持ちますから。リーナが拾うのはほぼ必然でしたよ」

 

リール「…」

 

リノ「私は子であるあなたに禁忌を背負わせたくありません。しかし、彼を制御しなければこの戦いは終わりません。彼はこの世界を破壊し続けるでしょう」

 

リール「…彼とは誰のことですか」

 

リノ「…あなたの父親であり、私が愛したただ一人の男性」

 

リール「!?」

 

リノ「名前をレギンス。かつて闇属性魔法を使っていた現在禁忌とされている魔法使いです」

 

リール「禁忌…」

 

リノ「…彼は私を恨んでいるでしょう。彼ではなく子であるあなたを選んだから」

 

リール「そんな…じゃあ…今この世界を壊しているのは私のお父さんで…今目の前にいるのはお母さん…」

 

リノ「…」

 

リール「そんな…私のお母さんはこんなんじゃない…お父さんなんて知らない…」

 

リノ「!」

 

リノはリールの頭上から降りてきている黒い何かに気づいた。

 

リノ「レナ!上!」

 

リール「私は…私は一体…何者なの…」

 

???「お前はこの世界の禁忌だ」

 

リール「!!」

 

リールは突然聞こえた声に反応した。

 

???「お前はこの世界を壊す兵器だ」

 

リール「兵器…」

 

???「お前はただ壊すだけの人形。お前はこの世界を深い闇に引きずり込むだけの存在。この世界を無きものにする者だ」

 

リール「私は…この世界を…破壊する…?」

 

リノ「やめなさいレギンス!!あなたの娘でしょう!?」

 

レギンス「…黙れ」

 

ヒュォォォォォォォォ…

レギンスは特異な気配を放った。

 

リノ「っ…」

 

レギンス「俺ではなく災厄を取ったお前が口を挟む時ではない」

 

リノ「あなたが子を殺そうとしたからでしょ!!いい加減にして!!」

 

レギンス「…うるさいやつだ。丁度いい。親子喧嘩でもするといい」

 

リノ「!!」

 

リール「…」

 

リールは黒いオーラを身に纏っていた。

 

リノ「レナ…」

 

リール「…」

 

レギンス「さぁ、殺し合いでもしてみなよ。これが俺よりもこいつを取ったお前の選択だ。お前が必死に守ってきた愛の結晶とやらだ」

 

リノ「っ…」

 

レギンス「後悔するなよ。お前が取ったんだ。お前が責任持てよ」

 

リール「…」

 

リールはリノに掌を向けた。

 

リノ「待ちなさいレナ!あなた!それでもいいの!?そんな禁忌に操られてもいいの!?」

 

リール「…」

 

リノ「レナ!聞こえないの!?レナ!!」

 

レギンス「聞こえねぇよ。こいつが今まで受けたものを全てこの身の外へ出している。声が届けばすぐに治るだろうよ」

 

リール「…」

 

リノ「レナ!返事をして!レナ!」

 

リール「…」

 

ジジジ…バリバリバリバリ!!

リールは魔力をこめ始めた。

 

リノ「っ!?」

 

レギンス「ハッハッハッ!いいザマだ!見てみろよ!こいつがお前が必死こいて守ってきたものだぜ?そんな奴に殺されるたぁいいなぁ!」

 

リノ「レギンス…」

 

レギンス「じゃあな!俺を取らなかったお前が悪い!」

 

リール「…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

するとリールの魔力が全て消えた。

 

リノ「!」

レギンス「!?」

 

リール「…私は…仲良くしたい」

 

リノ「っ!」

レギンス「!!」

 

リール「私は…みんなと一緒に…いたい…」

 

スゥ…

すると段々と黒いオーラが消えていった。

 

リール「ねぇお父さん」

 

レギンス「!」

 

リール「こんな事…やめて…?」

 

レギンス「!?」

 

リール「私…こんなお父さんとお母さんを見たくないよ」

 

レギンス「っ…」

 

リール「私…ずっと魔女さんといたから家族を知らない。もし、この先お父さんとお母さんと一緒に暮らせるなら私はこのままお父さんとお母さんと一緒にそっちにいくよ」

 

リノ「っ!?」

レギンス「っ!?」

 

リール「お願い…喧嘩はやめて…私が原因なら私はここで死ぬよ。そうすればお父さんとお母さんはまた仲直りして一緒に暮らすんだよね…」

 

リノ「レナ…」

 

レギンス「お前…何言って…」

 

リール「お願い…もう人を殺すのは嫌なの。誰かが死ぬのも嫌なの。お父さんとお母さんが仲良くしてくれたらこの騒動は丸く収まるんだよ…お願い…もう殺さないで…もうやめて…」

 

リノ「レナ…」

 

レギンス「っ…」

 

リール「…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

するとリールの体が光り始めた。

 

リール「…」

リノ「!」

レギンス「!」

 

リール「もう…時間みたい…」

 

リノ「!」

 

リール「お父さん…お母さん…お願い…仲直り…して…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

リールはその場から姿を消した。

 

リノ「…レナ…」

レギンス「…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国

 

リール「っ…」

 

リールは大きな黒い人の中から出てきた。

 

リール「!」

 

リールは周囲を見渡した。辺りは一面炎に包まれており、とても人が助かってそうな雰囲気ではなかった。

 

リール「くっ…」

 

リールは目の前にいる大きな黒い人を見た。そいつはずっと動かず、その場にとどまっていた。

 

リール「これで…終わるといいのですが…」

 

パキッ!パキパキッ!!

すると何かが割れるような音が聞こえた。

 

リール「!!」

 

リールはその音の場所をすぐに突き止めた。

 

パキッ!!パキッ!!パキパキッ!!

それは、リールの目の前にいる大きな黒い人の額からだった。

 

パリン!

すると段々と黒いものが剥がれ落ち、やがて全身崩れると、中から2人の人物が姿を現した。

 

リール「!!」

 

リノ「…」

レギンス「…」

 

その正体はリノとレギンスだった。

 

リール「お父さん…お母さん…」

 

リノ「レナ…ごめんね…」

レギンス「すまなかった。俺たちのせいで…」

 

リール「よかった…仲直り…したんだね…」

 

リノ「…えぇ」

レギンス「…あぁ」

 

リノ「今までごめんねレナ。これからはずっと一緒よ」

 

レギンス「もうこんな事はしない。人に迷惑がかかるからな」

 

リール「よかった…よかったぁ…」

 

レギンス「…なぁリノ」

 

リノ「何?」

 

レギンス「ここを直そう。元の状態に」

 

リノ「…えぇ」

 

パンッ!

レギンスとリノは両手を合わせてから掌を前方に向けた。

 

リノ「地寂占星!!」

レギンス「地寂占星!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

するとリノとレギンスの体から光が出てきてスペルビア王国全てを覆った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国近くの湖

 

エレナ「!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

エレナの頭上を白い光が通り過ぎた。

 

エレナ (何…今の魔法…尋常じゃない…)

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…深淵

 

イコイ「始まったよ。メイビス、メア」

 

メイビス「あぁ。そのようだな」

 

メア「…」

 

メイビス「メア。行くぞ」

 

メア「えぇ。では、禁忌を始末しに参りましょうか」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

リノとレギンスが放った光が全て消えた。それと同時にスペルビア王国は元の状態に戻り、大きな黒いものは消え去っていた。

 

リノ「…」

レギンス「…」

 

リール「も…戻った…戻ったよ…」

 

リールは元に戻ったスペルビア王国を見て泣きそうになった。

 

リール「よかった…よかったぁ…」

 

フワッ…

リールは緊張の糸が切れたのか、そのまま真っ逆さまに落ちていった。

 

リノ「レナ!!」

 

ガシッ!

だがレギンスがレナを受け止めた。

 

リノ「あなた…」

 

レギンス「…よくやった。そして本当にすまなかった。レナ」

 

リノとレギンスはリールを抱えたままエレナたちがいる所に移動した。

その後、リノとレギンスの手によって魔女さんが意識を取り戻し、魔女さんが傷だらけのリールを回復させた。




〜物語メモ〜

地寂占星
リノとレギンスが使った魔法。自分の力を代償に起こった事象を全て書き換えることができる魔法。次元魔法によく似ているが、本質的には少し違うため、扱いが難しい。


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第77話 リノと3人の邪神たち

私の名前はリール。

今エレナさんたちのところにいます。

やっと戦いが収束してスペルビア王国が元に戻りました。

お父さんとお母さんも仲直りしたのでもうこのまま進んでくれると凄く嬉しいです。

お母さんは友達であるエレナさんと魔女さんと出会えてとても嬉しそうです。

お父さんはスカーレットたちと何かお話をしているそうです。

戦いが終わったあとの天気は晴れです!

私の心も晴れました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…スペルビア王国近くの湖

 

リノ「エレナ!」

 

エレナ「…リノ…?」

 

リノ「エレナー!」

 

ギュッ!

リノはエレナを見つけるとすぐに抱きついた。

 

リノ「久しぶりエレナ!」

 

エレナ「えっ…ちょっ…リノ…」

 

ザッザッザッ…

そのあとにレギンスも来た。

 

レギンス「…」

 

エレナ「あなたは…リノの…」

 

レギンス「…リノの夫のレギンスです。この度は申し訳ありませんでした」

 

エレナ「あなた…もういいの?」

 

レギンス「…あぁ。もういい。今更遅い」

 

エレナ「…リノ」

 

リノ「?」

 

エレナ「…最後の仕事よ」

 

リノ「…え?」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

魔女さんサイド

 

魔女さん「リール…大丈夫…?」

 

リール「あっ…魔女さん…」

 

スカーレット「リール!」

 

スカーレットが駆け寄ってきた。

 

アンナ「起きたの!?」

 

アンナも続いて駆け寄る。

 

ノーラ「オード。リールが起きたってよ」

 

ディア「俺たちも行ってやろうぜ」

 

オード「…あぁ」

 

スタスタスタ

3人もリールのところに向かった。

 

スカーレット「リール!」

 

ギュッ!

スカーレットはリールを抱きしめた。

 

リール「スカーレット…」

 

アンナ「…おかえり。リール」

 

リール「アンナ…」

 

ノーラ「よぅリール」

 

リール「!」

 

ディア「起きても大丈夫そうか?」

 

リール「はい…大丈夫です」

 

オード「…」

 

ディア「ほら、オードも」ヒソヒソ

 

オード「っ…」

 

オードは少し間を置いていた。

 

リール「…オード君」

 

オード「!」

 

リール「…ありがとうございます」

 

オード「!」

 

リール「あなたのおかげで私はこの戦いに勝つことができました…」

 

リールはスカーレットの手から離れ、オードに手招きをした。

 

オード「?」

 

オードはリールの目の前に座った。

 

リール「…」

 

その瞬間、オードの唇に柔らかい感触があった。

 

オード「!?」

 

スカーレット「!」

アンナ「!」

ノーラ「!?」

ディア「!?」

魔女さん (あら大胆)

 

リール「…あなたとなら私はこれ以上ない力を出せると思います。オード君はどうですか?」

 

オード「お、ぉぉおおお俺もっ!俺もっ!」

 

オードは突然のことにパニックになっていた。

 

ノーラ「マジかよオード…」ヒソヒソ

ディア「やっと春か?」ヒソヒソ

 

リール「オード君。私はあなたと同じ時間を過ごしたいと思います。オード君はどうですか?」

 

オード「お、俺も…リールと…」

 

リール「良かった。落ち着いたら一緒に色々なところに行きましょうね」

 

オード「はいっ!!」

 

魔女さん (あらあら…)

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国 上空

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

突然空に異空間の扉が開かれ、中から3人の人物が姿を現した。

 

イコイ「ふぅん。ここが」

 

メイビス「人が作り出した世界と」

 

メア「…」

 

現れたのは、深淵へ続く扉を守っていた守護者たちだった。

それぞれ天邪神イコイ、冥邪神メイビス、輪邪神メア。

 

イコイ「さぁて、禁忌はどこかな〜?」

 

イコイは周囲を見渡した。

 

メア「…」

 

しかしメアは一瞬で場所を見抜いた。

 

メイビス「気配が混在している。とても調和が取れているとは思えんな」

 

イコイ「仕方ないよ。元々私たちの力だし。人が制御できるものじゃないよ」

 

メイビス「…そうだな。メアはどうだ?見つけたか?」

 

メア「…見つけたよ」

 

メイビス「ならそこへ向かおうか」

 

ヒュッ…

イコイ、メイビス、メアはその場所へ向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国近くの湖

 

リノ「…ねぇエレナ」

 

エレナ「何?」

 

リノ「私たち…これからどうなるのかな」

 

エレナ「!」

 

リノ「町は私とレギンスで戻したけど壊したことには変わりないから…」

 

エレナ「…」

 

レギンス「…受け入れるしかない。出て行こう。リノ」

 

リノ「…」

 

魔女さん「その必要は無いですよ」

 

エレナ「リーナ…」

 

リノ「リーナ!?」

 

レギンス (…こいつが)

 

魔女さん「私が使っていた家が近くにあります。そこなら住んでもいいですよ」

 

レギンス「だがそれだとお前の住む場所がなくなるだろ」

 

魔女さん「えっ?一緒に住みますよ?」

 

レギンス「…?」

 

魔女さん「私とリールとリノとあなたの4人で」

 

レギンス「…は?4人?」

 

リノ「えっ…いいの?リーナ」

 

魔女さん「いいわよ。リールもあなたたちと一緒に暮らしたいって言ってたし」

 

リノ「ほんと…ごめんねリーナ。でもありがとう…」

 

魔女さん「…リールの前では泣かないでよ」

 

リノ「…うん」

 

イコイ「おやおや?こんなところに禁忌が3つも揃ってるね〜?」

 

魔女さん「!」

リノ「!」

レギンス「!」

エレナ「!?」

 

4人が声のした方を見ると、イコイ、メイビス、メアの3人が立っていた。

 

イコイ「探す手間が省けたよ?忌み子たち」

 

魔女さん「っ!」

リノ「っ!」

エレナ「っ!」

 

メイビス「我々は深淵の扉を守護する者だ。それと同時に裁定者でもある」

 

エレナ「裁定者…」

 

メイビス「過去に禁忌に触れ、その力を行使した3人の愚者をこの場で消してやろうと思って来た」

 

リノ「なんで…こんなところに…」

 

メイビス「あぁ、深淵と同時に我々を使役した偽物の魔力か」

 

イコイ「こんなところにいたんだ。私たちに仕事を丸投げして」

 

メイビス「お前は役目を果たしてないぞイコイ」

 

イコイ「え〜?やってるよ〜?」

 

エレナ「…それで、何しに来たの。まさか私たちを消しに来たわけ」

 

メイビス「当たらずとも遠からず。我々はこの世界にとって不必要なものを排除しに来た」

 

エレナ「で、その不必要なものってなに」

 

メイビス「人の手に堕ちた禁忌の力だ」

 

イコイ「あれは元々私たちのだからね?返してもらわないと」

 

エレナ「返したら何もしない?」

 

メイビス「しない。我々の目的は禁忌の奪還もしくは排除だ。そのどちらでもいいが、どちらも叶わなかった場合は禁忌の依代も全てこの世界から消滅させる」

 

エレナ「なっ…」

リノ「そんなの無理でしょ!」

魔女さん「なぜ消滅という話になるのですか」

 

メア「禁忌、こと私たちの力はこの世界には負荷が大きすぎます。少し前にあった莫大な禁忌の力。あれが発動したため、深淵でもかなり崩壊が進んでいます。我々は門番であるため、あの世界から出てきませんが、禁忌の力が暴走したことでこの世界に彼のマガイモノが誕生し、我々もこの世界に身を置くことができるのです」

 

魔女さん「それが消滅とのなんの関係があるのですか」

 

メア「…深淵が崩壊すれば次はこの世界ですよ」

 

エレナ「!?」

リノ「!?」

魔女さん「!?」

 

メア「今はまだ崩壊の進行は深淵に留まっています。ですがそれも時間の問題です。やがて深淵が蝕まれ、あとはこの世界が残るだけです。崩壊を止めなければあなた方が生きる術はありません。我々はこの世界を捨て、また別の世界に向かいます」

 

エレナ「なんと自分勝手な」

 

リノ「私たちを救うという選択はないと」

 

イコイ「人の力を勝手に奪っておいてよく言うよ」

 

魔女さん「…」

 

メア「私たちがあの世界から出られなかったのは禁忌の力を持っていなかったからです。ですが、今この場に全ての禁忌が揃っています。今すぐその力を私たちに返してくれるなら何もしません。崩壊の現象も止めます。ですが、返さないのであれば消滅して私たちはこの世界から消えます」

 

リール「あ、あの…」

 

メア「なんでしょうか」

 

リール「禁忌の力を返すとどうなるのですか」

 

メア「少なくとも禁忌を持っていた者は今まで受けた分のダメージを負うことになります」

 

リール「!?」

 

メア「当然です。今まで死ななかったのは禁忌の力で肩代わりさせていたからです。ですがそれが無くなるんです」

 

リール「っ…」

 

リノ「それで、禁忌は誰が持っているんですか」

 

メア「…リールさん。あなたですよね。全ての禁忌を持っているのは」

 

リール「!?」

魔女さん「!?」

エレナ「!?」

リノ「!?」

 

メア「…いえ、正確には無敵の禁忌以外を所持していますね。あとひとつは…あなたですか。リーナさん」

 

魔女さん「っ…」

 

リノ「ちょっと待って!リールを死なせるわけにはいかないわ!私がリールから引き継いであなたたちに返すわ!」

 

メア「…そんな時間は無いです。それにあなたに移すと言っても方法がありませんよ」

 

リノ「っ…」

 

メア「…リールさん。禁忌の力を返していただけますか?」

 

リール「えっ…」

 

メア「あなたが持つ分裂と開闢の力はイコイとメイビスのものです。そしてリーナ。あなたの持つ無敵の力は私のものです。返してください。返さなければ…」

 

リノ「リール!私に譲りなさい!あなたが死ぬ必要は無いのよ!」

 

リール「…お母さん。大丈夫だから」

 

リノ「リール…」

 

リール「…禁忌の力、お返しします」

 

メア「…感謝致します。イコイ、メイビス」

 

イコイ「は〜い」

メイビス「…あぁ」

 

イコイとメイビスはリールの前に立った。

 

リール「っ…」

 

リールは少し震えていた。

 

イコイ「じゃ、返してもらうね?」

 

ドスッ!

イコイはリールの胸に手を突っ込んだ。

 

イコイ「ん〜…あ、あった」

 

スッ…

イコイはリールの体から水色の宝玉を取り出した。

 

イコイ「確かに返してもらったよ。分裂の禁忌」

 

メイビス「…では次は俺だ」

 

スッ…

メイビスはイコイと同じように胸に手を突っ込んだ。

 

メイビス「…これか」

 

スッ…

メイビスはリールの体から緑色の宝玉を取り出した。

 

メイビス「…開闢の力…しかと受け取った」

 

リール「うっ…ぐっ…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!

リールの体から煙がでてきた。

 

魔女さん「リール!」

 

メア「大丈夫です。彼女は死にはしないと思いますよ」

 

魔女さん「何…」

 

メア「…彼女は最近禁忌の力を手にしたようですね。禁忌の力を得てからあまりダメージを受けていない。つまり、致死量ではないですね」

 

リール「うっ…くっ…ぁがっ…」

 

ビリビリ!バリバリバリバリバリ!!

リールは禁忌の力を手放したことで今までのダメージを受けた。

 

リール「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

リールは地面にのたうち回った。

 

魔女さん「リール!!」

リノ「リール!」

 

オード「!!」

 

メア「…イコイ、メイビス。禁忌の力を使って崩壊を止めます。まだこの世界には被害が出ていないようですから今すぐにでも…」

 

パキッ…パキパキパキッ!!

するとメアたちの周囲の地面がガラスが割れたようにひび割れていった。

 

メア「!?」

 

イコイ「メア!崩壊現象が!」

 

メア「くっ…」

 

メア「リーナ。今すぐ禁忌の力をお返しください。このままでは崩壊します」

 

魔女さん「っ…」

 

エレナ「リーナ!早く!」

 

魔女さん「…いいわよ」

 

魔女さんはすぐに決断した。

 

メア「…では」

 

ドスッ!

メアは急いで魔女さんから紫色の宝玉を取り出した。

 

メア「…無敵の禁忌。受け取りました」

 

魔女さん「あがっ…うぐぁぁぁぁぁぁ…」

 

魔女さんもリールと同様、今までのダメージを受けた。だが、リールの違う点があるとすればそのダメージ量。魔女さんは長い間禁忌の力を手にしており、その間受けたダメージもとてつもないものになっていた。

 

エレナ「リーナ!」

 

メア「イコイ、メイビス。始めますよ」

 

メアたちは禁忌の力を取り込んだ。

 

メア「では私たちはこの崩壊現象を止めます。あなた方はその場から動かないでください」

 

シュッ!

メア、イコイ、メイビスは空高く飛んだ。

 

メア「では、いきます」

 

イコイ「うん!」

メイビス「あぁ」

 

スッ…

3人は手を合わせた。

 

メア「鎮まり給え。鎮まり給え」

イコイ「眠り給え。眠り給え」

メイビス「還り給え。還り給え」

 

メア「世界を壊す悪しき力よ」

イコイ「世界を分断する悪しき力よ」

メイビス「世界を覆う悪しき力よ」

 

メア「禁忌の力を以て祓い給え」

イコイ「禁忌の力を以て祓い給え」

メイビス「禁忌の力を以て祓い給え」

 

ゴゥン!シュゥゥゥゥゥゥゥ!

すると3人の体が光り、即座に崩壊現象が始まっている部分にその光が照射された。

 

パキパキパキパキ…パリン…

崩壊現象が止まった。

 

メア「…あとは修復のみ」

 

イコイ「止めるのは簡単なんだけどねぇ…」

 

メイビス「修復に手を焼く」

 

スッ!

メアたちは地上に降り立った。

 

メア「無事崩壊現象は止められました。あとは修復するのみです」

 

オード「ちょっと待てよ!」

 

ドン!ドン!ドン!

オードが大きな足音を立ててメアたちのところまで歩いた。

 

オード「リールが全然治らねぇじゃねぇか!」

 

メア「あの子は死なないですよ」

 

オード「死ぬ死なねぇの問題じゃねぇよ!リールを元に戻せ!」

 

メア「…戻せとは。禁忌の力を渡せということですか」

 

オード「違ぇよ!リールを治せって言ってんだよ!リールは俺の大事なやつなんだ!こんな苦しんでる姿なんざ見たくねぇよ!」

 

メア「…なるほど」

 

イコイ「おやおや?そういうこと」

 

メイビス「…もっと頼み方があっただろうに」

 

メア「…いいでしょう」

 

オード「!」

 

メア「私たちはあと修復するだけです。修復が済めば私たちは眠りにつきます。その前にリールさんとリーナさんを治しましょうか」

 

オード「お、おう…頼むぜ」

 

オードは案外あっさり引き受けてくれてたので拍子抜けだった。オードは戦って勝ったら治せという条件を出すつもりでいた。

 

メア「イコイ、メイビス。2人はここにいて」

 

イコイ「はーい」

メイビス「あぁ」

 

スタスタスタ

メアはリールとリーナがいるところに向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

リール「うがぁっ…がぁぁぁっ…」

 

リーナ「うっ…くっ…ぐっ…」

 

リールとリーナは苦しそうにしていた。

 

メア「2人はそれほど大きなダメージを受けてないのですね」

 

オード「どういうことだ」

 

メア「もしその人にとって大きなダメージとなっていた場合、こんなうずくまったような反応はありません。もっとのたうち回りますよ」

 

オード「い、いいから早く!」

 

メア「…では」

 

スッ

メアは右手を前に出した。

 

メア「天使の恩寵(マギラ・ポート・ディンデル)

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!

するとリールとリーナが緑色の光に包まれた。

 

リール「はぁ…はぁ…はぁ…」

リーナ「っはぁ…はぁ…はぁ…」

 

2人は急に大人しくなった。

 

メア「…これで大丈夫です。あとは安静にしていれば起きてきますよ」

 

スッ…スタスタスタ

メアはイコイとメイビスの方を振り向いて歩き始めた。

 

オード「待て!」

 

メア「…なんですか」

 

オード「…ありがとう。助かった」

 

メア「…いえ、最低限のことですから」

 

スタスタスタ

メアはそのまま歩き始めた。

 

リール「オード…君…オード君…」

 

リールは眠りながらオードの名前を呼び続けた。

 

オード「…」

 

ギュッ…

オードは優しくリールの手を握った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

メア「イコイ、メイビス。修復したら長い眠りにつきますよ」

 

イコイ「うん。最後の大仕事だね」

 

メイビス「特に深淵だ。全階層の浄化しないとな」

 

メア「…では、行きましょうか」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

メア、イコイ、メイビスは深淵に戻った。そしてそれ以降、メアたちの姿は見られなかった。




〜物語メモ〜

レギンス
リノの夫。リールの実の父親。光属性魔法の適正者でリノが持っていた開闢の禁忌の先代者。

邪神と禁忌の力
イコイ、メイビス、メアはそれぞれ分裂、開闢、無敵の禁忌の力を持っている。これらは元々3人のものだが、ある時代の人たちによってその力を奪われてしまい、それ以降深淵でしか存在できなくなった。禁忌の力を持っていればどこでも生きていける。

分裂の禁忌…天邪神 イコイ
開闢の禁忌…冥邪神 メイビス
無敵の禁忌…輪邪神 メア

天使の恩寵(マギラ・ポート・ディンデル)
メアが使った最上級の回復魔法。あらゆる傷や状態異常を全て回復させる力を持つ。使えるのは所持者であるメアのみ。いくら魔女さんでもこの魔法は使えない。


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最終話 私、魔女さんに拾われました。

崩壊現象が止まってから約2ヶ月の月日が経った。その間、邪神たちが襲ってくることはなく、世界は平和に包まれていた。

 

オード「ディア!そっち頼む!」

 

ディア「おう!任せろ!」

 

ガラッ…ドンッ!

オード、ディア、ノーラはスペルビア王国の復興を手伝っていた。

 

ノーラ「てかマジで疲れる…」

 

オード「しゃあねぇだろ!生きるためだ!」

 

ディア「はぁ…いつになったらまともな生活が送れるんだよ」

 

現在スペルビア王国は生き残った人たちとオードたちで建物の修復等を行っている。他国とも連携し、必要な物資も送ってもらい何とか少しずつ元に戻りつつある。

 

だが、邪神たちが去ってからすぐにある訃報が舞い込んできた。それは十二使徒たちの死だった。彼らは深淵にいた禍異者を封印する柱として機能していた。だが、禍異者との戦いで柱が全て破壊され、それに連動して十二使徒たちの命もその時に潰えた。

 

葬儀はナヴィア王国、モルドレッド王国、天空殿、スペルビア王国、大獄門、冥界、サージェル王国、ブエルタ王国の8つの国の上層部が集まって行われた。そしてその中にはスカーレットも含まれていた。彼女の父であるジンも十二使徒の一人。叔父であるマークと共にこの世を去った。

 

亡き十二使徒(11人)

アース(業火の使徒 デメル)

ウレイ(豊水の使徒 ウロウ)

セレナ(死氷の使徒 コキトス)

ヒュー(壊風の使徒 ヴィナン)

ジン(轟雷の使徒 サルメア)

マーク(巌土の使徒 ファラン)

フレア(焦土の使徒 アバド)

メロ(冥水の使徒 モドノル)

モール(封土の使徒 アラン)

キファ(狂風の使徒 レギン)

ミィ(焼火の使徒 アステル)

 

唯一生き残ったのはリノ(暁光の使徒 マナエル)ただ一人。

 

葬儀が行われたのは十二使徒結成の約束の場所。スペルビア王国から南西に34km離れた場所にある小さな神殿。名前はルーディ神殿。十二使徒たちが禍異者を封じ込めるために力を集めた神聖な神殿。あらゆる邪気を寄せ付けない結界を展開している。

 

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ー2ヶ月前ー

 

場所…ルーディ神殿

 

スカーレット「…」

 

スカーレットは亡くなった父であるジンのために葬儀に出席していた。

 

アルレルト「あなたはもしやジンさんの娘さんですか?」

 

スカーレット「!」

 

スカーレットは声のした方を見た。そこにはいかにも優しそうな雰囲気を漂わせている青年がいた。

 

スカーレット「…あなたは」

 

アルレルト「申し遅れました。僕はアルレルト。亡きヒューの友人です」

 

スカーレット「ヒュー。…ということはあなたは…天空殿の…」

 

アルレルト「はい。お初にお目にかかりますスカーレットさん」

 

スカーレット「…」

 

アルレルト「生前はヒューがあなたのお父上であるジンさんにお世話になったと伺っております。ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません」

 

スカーレット「…いいのよ…もう…父はいないんだから」

 

アルレルト「…」

 

アデス「…なぁフレイ。お前がいなくなってから大獄門が忙しくなっちまったよ。閻魔も惜しい人を亡くしたってさ。…どうだフレイ…そっちの世界は楽しいか?こっちの世界よりも綺麗か?…大獄門よりも平和か?…聞かせてくれよ…なぁ、フレイ」

 

アースの付き人「…アース様…今までお疲れ様でした。お国のことなら私たちにお任せ下さい。必ずやあなたが掲げた手を取り合う国を目指してみせます。…どうか見守っていてください」

 

ウレイの執事「ウレイお嬢様。…私は寂しいですよ。こんな別れ方なんて…。あなたのお陰で私たちは今まで生きられました。それが亡き今…私たちはどうすればいいでしょうか。…私は…どうすればいいでしょうか」

 

モールの付き人「モール様。お役目を果たせたのですね。ご立派です。私はいつまでもあなたを思い続けますよ。私のこの命が潰えるまで。その日が来るまでずっと…ずっと…」

 

セレナの母「セレナ。あなたは最後まで仲間を思い続けました。あなたが懸念していた暁光の使徒は今も健在です。あなたが思い描いた結末になっているかしら。…私はあなたの母でいれたことを誇りに思います。…あなたはどうですか。こんな私の娘として生まれてきて…どうでしたか」

 

キファの父親「なぁキファ。お前、まだやりたいことたくさんあるって言ってなかったか?もうそれは済んだのか?全部終わらせたのか?…中途半端なまま逝ってないだろうな。…もし中途半端なら、俺が引き継いでやる。…息子が残してくれた大事な国を…俺は守り続けよう」

 

メロの付き人「メロ様。お役目…お疲れ様でした。冥界は死者の魂で溢れかえっていますよ。あなたに裁かれた魂があなたの死を嘆いています。…もちろん…私たちも…」

 

スカーレット「…お父さん…マーク叔父さん…今までありがとう。私に色々教えてくれてありがとう。私は…あなた方のおかげでここまで大きくなりました。…でも私はあなた方に何も返せてない。恩返しができてない…。…もし、聞かせてくれるなら、私はどうすればいいでしょうか…」

 

みんな亡くなった使徒たちに向けて言葉を送っていた。それから時間が経過し、葬儀は終わった。

 

スカーレットの付き人「スカーレット様」

 

スカーレット「…」

 

スカーレットの付き人「お帰りの準備が済みました。いつでもお屋敷に戻ることができます」

 

スカーレット「…」

 

スカーレットは自分の手を見た。

 

スカーレットの付き人「…スカーレット様?」

 

スカーレット「…お父さん…私…これからも頑張るから…ちゃんと見守っててね」

 

そう言うと、スカーレットは空を見た。空は青く、雲ひとつない晴天だった。

 

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場所…魔女さんの家 リールの部屋

 

リール「…」

 

リールは2ヶ月前のあの日から一度も目を覚ましていない。それは魔女さんも同じで、2人は禁忌の力を手放してから今まで受けたダメージをその身に受けてしまった。メアが回復を施したが、目覚めるには至らず、2ヶ月も経過した。

 

リノ「…」

 

リールが寝ているその傍らには母であるリノが椅子に座っていた。リノはあの事件以来、魔女さんの家に2人を運び、今まで看病をしていた。リールの父であるレギンスはリノと話し合い、魔女さんの家で一緒に暮らすことにした。

 

ギィッ…

レギンスが部屋に入ってきた。

 

レギンス「…起きないか」

 

リノ「…えぇ。2人ともね」

 

レギンス「…何か食べるか?」

 

リノ「…いらない」

 

レギンス「…でももう身が持たないだろ?」

 

リノ「いいのよ。私はリールを見てるから」

 

レギンス「…分かった。何かあったら言ってくれ」

 

リノ「…えぇ」

 

レギンスは部屋を出た。

 

リノ「…」

 

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場所…魔女さんの家 リビング

 

レギンス「…」

 

レギンスは自分に何ができるのかを考えていた。娘が眠りから醒めず、妻はそれに付きっきり。友人も起きず、憔悴しているだろう。自分にできることは何か、必死に考えていた。

 

ガチャ…

すると扉が開いた。

 

レギンス「?」

 

スカーレット「失礼します」

 

レギンス「おや、君は確か…」

 

スカーレット「スカーレットといいます。リールの友人です」

 

レギンス「…そうか。君がリールの…」

 

スカーレット「リールはまだ起きませんか?」

 

レギンス「…あぁ…起きない」

 

スカーレット「そうですか…あれからどれくらい経ったでしょうか」

 

レギンス「…分からない」

 

スカーレット「…見に行ってもいいですか?」

 

レギンス「あぁ。リノもいるから2人で話でもしてきてくれ」

 

スカーレット「…はい」

 

スタスタスタ

スカーレットはリールの部屋に向かった。

 

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場所…リールの部屋

 

コンコンコン…

リールの部屋がノックされた。

 

スカーレット「…入りますよ」

 

ギィッ…

スカーレットはリールの部屋に入った。

 

リノ「あら、スカーレットさんじゃない。どうしたの?」

 

スカーレット「…」

 

スカーレットはリノの顔を見て言葉が出なかった。

 

髪はボサボサで目の下にはクマができている。おまけに食べてないのか、以前よりも痩せているように見える。

 

スカーレット「…リールに会いに来ました」

 

リノ「そう…でもごめんね。リールはまだ起きないの」

 

スカーレット「…そうですか」

 

リノ「スペルビア王国はどう?復興は進んでる?」

 

スカーレット「はい。順調です」

 

リノ「そう…それは良かったわ」

 

スカーレット「…」

 

リノ「…ねぇ、スカーレットさん」

 

スカーレット「!」

 

リノ「…リールの事…ありがとうね」

 

スカーレット「?」

 

リノ「私はリールがどういう人生を歩んできたかは分からないけど、あなたや他の友達を見る限り、リールはとても幸せだったんだなって思ったの」

 

スカーレット「…」

 

リノ「自分にとって大切な人も見つけてたみたいだし、もう心配することはないかな」

 

スカーレット「…そうですね。私たちはリールに何度も助けられました。学校が襲撃されたり、みんなの為に深淵という所まで行ったり、スペルビア王国を守るためにあの大きな黒いやつに立ち向かった。リールは私たちにとって希望の光でしたよ。これ以上ない輝きを放つ太陽そのものでした」

 

リノ「…」

 

スカーレット「…でも今はその輝きすら見えない。私たちを導いてくれたリールはここにはいない。あるのはただただリールの形をしたものだけ」

 

リノ「…そうね。私も同じ気持ち。今目の前にあるのはリールだけどリールじゃない感じがする」

 

スカーレット「…」

 

リノ「…以前の…あなたたちと一緒にいた頃のリールに戻ってくれたら私はとても嬉しいわ」

 

スカーレット「…そうですね」

 

リノ「…ねぇ、スカーレットさん」

 

スカーレット「?」

 

リノ「…また顔を見せてあげて。今度はリールのボーイフレンドも一緒にね」

 

スカーレット「…はい。すぐにでも」

 

リノ「…」

 

スカーレット「…では、私はこれで…」

 

リノ「…えぇ。またね」

 

スカーレット「はい」

 

ギィッ…

スカーレットはリールの部屋を出た。

 

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場所…魔女さんの家 リビング

 

スタスタスタ

スカーレットはリールの部屋から出てきた。

 

レギンス「もう…いいのかい?」

 

スカーレット「はい」

 

レギンス「…いつか元気なリールを見せられたらなって思うよ」

 

スカーレット「…そうですね。いつかは」

 

ギィッ…

スカーレットは魔女さんの家を出た。

 

レギンス「…」

 

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それから更に1ヶ月が過ぎた。スペルビア王国の復興もあと半分という所まできていた。スカーレットはその間、一度も魔女さんの家に出向くことはなかった。

 

ー夜ー

 

場所…スカーレットの部屋

 

スカーレット「…」

 

スカーレットはみんなの集合写真を見ていた。そこにはリール、アンナ、オード、ディア、ノーラが映っていた。いつか撮った写真だろう。いつ撮ったかは覚えてないが、今は唯一みんなの顔を一度に見れるものとなった。

 

スカーレット「…リール…ねぇ、リール…何で目を覚まさないの?もうあれから3ヶ月も月日が経ったわ。…もうそろそろ…私たちにも笑顔を見せてくれないかな。オード君も心配してるよ」

 

パァァァァァァァァァッ!!

すると窓の外が突然明るくなった。

 

スカーレット「!?」

 

スカーレットは窓の外を見た。すると、空から何か2つの光が落ちてきていた。

 

スカーレット「何…あれ…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

そしてその光はやがて、魔女さんの家に落ちた。

 

バンッ!

するとスカーレットの部屋に誰かが入ってきた。

 

オード「委員長!外に何か光が!」

 

入ってきたのはオードだった。

 

スカーレット「分かってるわ。あれは一体…」

 

オード「早く見に行くぞ!敵だったらマズイ!」

 

スカーレット「…行きましょう。落ちたのはリールがいる家よ」

 

オード「よしっ!行くぞお前ら!」

 

ディア「おう!」

ノーラ「うん!」

 

タッタッタッタッタッ!

スカーレット、オード、ディア、ノーラはすぐに魔女さんの家に向かった。

 

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場所…魔女さんの家

 

バンッ!

スカーレットは勢いよく扉を開けて家に入った。

 

スカーレット「リール!」

 

レギンス「お、君たちはリールの…今日は遅めだね」

 

スカーレット「あの!今ここに光が!」

 

レギンス「え?」

 

スカーレット「光が落ちて…その…」

 

オード「おじさん!空から2つの光がここに落ちたんだ!リールに変わりがないか見せてくれ!」

 

レギンス「あ、あぁ、それはいいが」

 

オード「行くぞ委員長!」

 

スカーレット「あ、うん」

 

タッタッタッタッタッ!

オードたちはすぐにリールの部屋に向かった。

 

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場所…リールの部屋

 

バンッ!

オードは勢いよく扉を開けた。

 

アンナ「!?」

 

すると中にはアンナがいた。

 

スカーレット「ア、アンナ…」

 

アンナ「どうしたの…みんな…」

 

オード「アンナ!今ここに光が落ちてこなかったか!?」

 

アンナ「え?落ちてきてないよ?」

 

ノーラ「今外から光がこの家に落ちたんだ。だから俺たちはリールを心配して来た!」

 

アンナ「え、でもリールには何も…」

 

オード「そういえばおばさんはどこだ?」

 

アンナ「今部屋で寝てもらってるよ。ずっと看病してたからね」

 

オード「そうか…」

 

スカーレット「アンナはどうもない?」

 

アンナ「え、うん。大丈夫だよ?」

 

オード「じゃああの時の光は何なんだ…」

 

ディア「分からん…少なくとも被害がないなら…」

 

???「やっと見つけたよ。星の片割れ」

???「やっと会えたね。星の片割れ」

 

スカーレット「!」

オード「!」

ディア「!」

ノーラ「!」

アンナ「!」

 

突然知らない声が聞こえた。

 

???「ずっと待ってたよ」

???「ずっと待ってたよ」

 

スカーレット「何…この声…」

 

ディア「声が重なって聞こえるぞ」

 

ノーラ「…」

 

???「思ってたより時間がかかっちゃった」

???「想定時間を大幅に遅らせちゃった」

 

オード「誰だお前!どこから話してる!」

 

???「今はまだ会えない。形がない」

???「でもいつか会える。2人で」

 

スカーレット「不思議な声…なんなの…」

 

???「もう目覚めるよ」

???「もう目覚めるよ」

 

オード「!」

 

???「隣で寝てるこの人も」

???「横で寝てる女性もね」

 

スカーレット「それって…」

 

???「いつか会いに来てよ。僕たちを見つけて」

???「いつか会いに来てね。私たちを見つけて」

 

スゥゥゥゥゥゥ…

すると小さな光がリールと魔女さんの体に入った。

 

リール「んっ…んんっ…」

 

するとリールが目を覚ました。

 

リール「ん…あれ…私の…部屋…」

 

アンナ「リール!」

 

スカーレット「!?」

オード「!?」

ディア「!?」

ノーラ「!?」

 

リールは目を開けてアンナを見た。

 

リール「あ…アンナ…ここって…私の部屋?」

 

アンナ「リール!」

 

ギュッ!

アンナはリールに抱きついた。

 

リール「うっ…アンナ…痛い…」

 

アンナ「よかった!目覚めた!よかった!」

 

リール「アンナ…」

 

スカーレット「…」

 

スカーレットはアンナの後ろに立った。

 

リール「あ…スカーレット…」

 

スカーレット「…全く…いつまで寝てるのよ寝坊助」

 

リール「あはは…ごめんね、どれくらい寝てたのかな」

 

スカーレット「ざっと3ヶ月よ。全く…こんなに遅く起きる人なんてそうそういないわよ」

 

リール「そっか…3ヶ月…すごく長い間…寝てたんだね…」

 

ディア「ノーラ。おばさんとおじさんを呼んできてくれ」

 

ノーラ「あぁ」

 

スタスタスタ

ノーラはレギンスとリノを呼びに行った。

 

魔女さん「っ…」

 

魔女さんも目を覚ました。

 

魔女さん「あれ…ここは…」

 

魔女さんは辺りを見渡した。すると、リールが起きていた。

 

魔女さん (よかった…目が覚めたんだね…リール…)

 

バンッ!

すると勢いよく扉が開いた。

 

リノ「リール!!」

 

タッタッタッタッタッ!ギュッ!!

リノは強くリールを抱きしめた。

 

リール「けふっ…お母…さん…」

 

リノ「よかった…よかったぁ…リール…」

 

リール「お母さん…痛い…」

 

レギンス「…目覚めたかい?リーナ」

 

魔女さん「…レギンスね。えぇ、目覚めたわ。リールも一緒みたいね」

 

レギンス「あぁ…2人ともよかった」

 

魔女さん「…あなたは行かなくてもいいの?」

 

レギンス「…あぁ。今はあの子たちに任せよう。今まで色々としてきたからね。こういう時は邪魔しないもんだよ」

 

魔女さん「…そう」

 

レギンス「だから僕は君の目覚めを喜ぶよ。…おはようリーナ」

 

魔女さん「…えぇ。おはよう…レギンス」

 

こうして目を覚ました2人は翌日から体を動かすためにリノやレギンスたちに頼んでマナを体の中に取り込む訓練をした。魔女さんはすぐに習得したが、リールが上手くいかず、少し手こずったがリールも最終的にはマナを取り込むことができた。

 

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ー9年後ー

 

それから9年の歳月が経った。リールも25歳となった。目覚めてからは色々とあった。スペルビア王国ではエレナ学院が再開することになり、その学院長にリールが選ばれた。それにオードはリールと、アンナはノーラと、スカーレットはディアと結ばれることとなった。学生時代から一緒だったこの6人がそれぞれパートナーとして新しい人生を歩んでいる。

 

リールはオードと一緒に魔女さんの家で暮らすことになった。そして、オードとリールとの間に一人の子供を授かった。男の子だ。まだ属性は分からないが、きっとオードかリールのどちらかの属性となるだろう。

 

産まれてくる子供の名前はオードが決めた。

 

名前はカグツチ。

 

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場所…スペルビア王国 大通り

 

オード「なぁリール」

 

リール「何?オード君」

 

オード「そういえば俺たちってここらへんで指輪買わなかったか?」

 

リール「うん。覚えてるよ。綺麗な指輪だったね」

 

オード「あの時は心臓バクバクだったぜ」

 

リール「ふふっ…でも嬉しかったよ。今でもつけてるくらいだし」

 

キラッ!

リールは自分の左手薬指に付けている指輪をオードに見せた。

 

オード「お、俺も…」

 

キラッ!

オードも左手薬指に付けている指輪を見せた。

 

リール「オード君からもらったこの指輪…いつも持ってたの。あなたがくれた大事な指輪…私はこれのおかげで生きる気力がでてきたの」

 

オード「う、嬉しいな…」

 

ノーラ「お、オードじゃん」

 

オード「!」

 

オードが声のした方を見ると、ノーラとアンナが手を繋いで歩いていた。

 

ノーラ「こんなところで奇遇だな」

 

オード「ノーラか」

 

アンナ「久しぶりだねリール」

 

リール「うん。久しぶり。アンナ」

 

オード「デートか?ノーラ」

 

ノーラ「あぁ。ラブラブだよ」

 

リール「よかったねアンナ」

 

アンナ「う…うん…」

 

アンナは少し照れた。

 

ノーラ「リールの赤ちゃんも大きくなったな」

 

リール「うん。毎日幸せなの」

 

ノーラ「そうか。それはよかった」

 

オード「ノーラ。お前もだぞ」

 

ノーラ「え?」

 

オード「子供を身篭ってるならあんまり無理させるなよ?」

 

アンナ「!」

 

ノーラ「あぁ。何かあったら俺が守るつもりだ」

 

アンナ「ノーラ君…」

 

オード「よしっ、じゃあノーラ。俺たちはこの辺で」

 

ノーラ「おう。気をつけろよな」

 

オード「ったりめぇよ!」

 

アンナ「リールも気をつけてね」

 

リール「アンナこそ。元気な赤ちゃん産んでね」

 

アンナ「うん!」

 

スタスタスタ

ノーラとアンナはその場をあとにした。

 

オード「さて、俺たちも行くか」

 

リール「うん!」

 

オードとリールは手を繋いでその場をあとにした。

 

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場所…エレナ学院 学院長室

 

それから数日後、リールは学院長の仕事が残っていて、夜遅くまで仕事をしていた。カグツチはオードが見てくれているのでリールは安心して仕事をしている。

 

リール「あとはこれとこれ…うーん…これは明日でもできそう。こっちはもう終わってるから明日以降に話が進みそう」

 

コンコンコン

すると学院長室の扉がノックされた。

 

リール「はい。どうぞ」

 

ギィッ…

学院長室の扉が開いた。

 

スカーレット「どう?仕事は捗ってる?」

 

入ってきたのはスカーレットだった。

 

リール「スカーレット。どうしたの?」

 

スカーレット「ううん。どうもしないよ。ただリールの顔を見たかっただけ」

 

リール「あ、そうなのね…」

 

リールは少し照れた。

 

スカーレット「あ、これ…」

 

スカーレットはリールの机の上にある写真立てを見た。その写真にはリール、スカーレット、オード、ディア、ノーラ、魔女さん、リノ、レギンスの8人の姿があった。

 

スカーレット「…懐かしいね。確かこの1番右にいる人がリールのお師匠様だったよね」

 

リール「…はい。魔女さんです」

 

スカーレット「…今、どこにいるんだろうね」

 

リール「…分かりません。今度ばかりは私にも知らされていません」

 

スカーレット「…寂しい?」

 

リール「寂しいですけど、今はオード君とカグツチがいるから」

 

スカーレット「…そう。分かったわ。さ、あなたは早く仕事を終わらせなさい。それでもってあんたの愛しの旦那さんと子供に顔を見せてやんなさい」

 

リール「うん。ありがとうスカーレット」

 

スカーレット「えぇ。じゃあまたね」

 

リール「うん」

 

ギィッ…バタン

スカーレットは学院長室を出た。

 

リール「…」

 

リールは窓の外を見た。空は星でいっぱいだった。

 

リール「…魔女さん…」

 

魔女さんは現在、この国を出て旅をしている。どこにいるかはリールには分からない。リノとレギンスはその時魔女さんと一緒に家を出た。3人はこれまで起きた災害がこの先出ないように調査すると言っていた。今どこで何をしているのか…また無茶をしていないか。リールはそれだけが心配です。

 

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場所…帰り道

 

リールはそれから早く仕事を済ませて家に帰っていた。空は変わらず星が輝いていた。

 

リール「綺麗…」

 

リールがそう言いながら歩いていると、異様な気配を感じた。

 

リール「…なんだろ。この気配…」

 

スタスタスタ

リールはその気配に向かって歩き始めた。

 

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場所…とある森

 

スタスタスタ

リールはその気配を辿ってある場所に着いた。そこは大きな木が一本だけ立っており、その周囲は草原だけの異様な空間だった。

 

リール「!」

 

そしてリールはその異様な気配の正体を知った。

 

???「…」

???「…」

 

小さな子供が2人、木を背にして座っていた。

 

リール「なんで…子供がここに…」

 

スッ…

リールはその子供の目線に合うように屈んだ。

 

???「…」

???「…」

 

一人は男の子、一人は女の子だった。2人は同じ目、同じ髪色をしており、どうやら双子のように見える。

 

リール「ねぇ、あなたたち、お家は?」

 

???「…ないよ」

???「…ないよ」

 

リール「!」

 

リールはこの時、不思議な感覚に襲われた。2つの声が同時に聞こえるこの感覚。リールは昔、同じような経験をしたことがある。

 

リール「そう。お家がないのね。じゃあ…」

 

スッ…

リールは2人に手を差し伸べた。

 

リール「私の家に来ない?」

 

???「!」

???「!」

 

リール「ここの近くなの。ずっとここにいるのは危険だよ」

 

???「…あなた、誰」

???「…あなた、誰」

 

リール「!」

 

???「何で僕たちが見えるの」

???「何で私たちが見えるの」

 

リール「…」

 

???「ねぇ、あなたは何者?」

???「ねぇ、あなたは何者?」

 

リール「…私はリール。光属性魔法を使う魔女です」

 

???「…魔女さん」

???「…魔女さん」

 

リール「!」

 

リールはその言葉に聞き馴染みがあった。

 

???「僕たちを助けてくれるの?」

???「私たちを助けてくれるの?」

 

リール「うん。助ける。大丈夫。悪いことはしないよ」

 

???「僕たちを傷つけたりしない?」

???「私たちを傷つけたりしない?」

 

リール「うん。しない。そんなことしたくない」

 

よく見たら2人の腕や足、体にはいくつか傷が入っていた。

 

リール (きっと誰かに傷つけられたんだ)

 

???「…分かった。信用する」

???「…分かった。信用する」

 

スッ…

2人の子供はリールの手を握った。

 

???「…約束。僕たちを傷つけないで」

???「…約束。私たちを傷つけないで」

 

リール「うん。約束。あなたたちを傷つけない」

 

ギュッ…

リールは2人を抱き寄せた。

 

リール「今から私はあなたたちの母親です。何かあったら私を頼ってください」

 

???「…うん。お母さん」

???「…うん。お母さん」

 

そうしてリールはかつて魔女さんがしたようにとある子供を拾った。リールは2人をルルとララと名付けた。

 

リール (魔女さんへ。私、魔女さんに拾われました。それからは毎日幸せな日々ばかりでした。月日が経ち、今こうして私が魔女となり、あなたと同じ立場となってこの2人の子供たちに向き合います。…かつてあなたが私にしてくれたように)




〜物語メモ〜

これにて「私、魔女さんに拾われました。」のお話が終了しました。
ここまで読んでくださった方、駄文でしたがありがとうございました。
次回は番外編として、今まで出てきたキャラクターの紹介を軽く書いたものを投稿します。
次回も目を通していただければ幸いです。
他にも色々と物語を書いているので、よければそちらもご覧下さい。

それでは、長くなりましたがありがとうございました。
また他の物語でもよろしくお願いします。


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番外編 キャラクター紹介

こちらでは、今まで登場した主要キャラの紹介になります。

物語ではないので、ご注意ください。


名前:リール(本名:レナ)

 

年齢:25歳(物語序盤は16歳)

 

適正:光属性魔法

 

魔力値:90,774(学生時代は70,058)

 

使える魔法

光玉(ライダラ) (光属性)

閃光(フラッシュ) (光属性)

光速(オーバースピード) (光属性)

天の光(リレミト) (光属性)

天の鎖(エルキドゥ) (光属性)

光爆(エレノア) (光属性)

体力回復(ヒール) (無属性)

魔力回復(ヒーラマ) (無属性)

状態回復(ヒーラル) (無属性)

瞬間移動(テレポート) (無属性)

粉砕(ダクト) (無属性)

・第10次元魔法 軌道変換(パラティガ)

消失(メギド) (光属性)

浄化(バーナム) (光属性)

闇を灯す天光(アマテラス) (光属性)

天光玉(ミアリス) (光属性)

その天光はやがて大地に降り注ぐ(マーベラス・インディラ・アルマトラン) (光属性)

 

説明

リールはこの物語の主人公。とある森で魔女さんに拾われて魔女として育てられた。ある日エレナ学院から入学の書類を受け取り、エレナ学院に入学することになるが、そこでドレインや先代の光属性魔法の適正者(リールの母)の置き手紙など、この世界に存在する禍異者の存在を知り、その進行を阻止するべく深淵へと向かう。

 

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名前:魔女さん(本名:リーナ)

 

年齢:41歳

 

適正:全属性魔法(学生時代は闇属性魔法)

 

魔力値:169,697(学生時代は94,881)

 

使える魔法

全属性の暴走(エレメント・ノディア) (全属性)

全属性の弾丸(エレメント・ラプソディ) (全属性)

全属性の波動(エレメント・アーツ) (全属性)

全属性の気弾(エレメント・バレット) (全属性)

全属性の爆発(エレメント・ノヴァ) (全属性)

全属性の審判(エレメント・ジャッジメント) (全属性)

全属性の火炎(エレメント・バーバラ) (火属性)

全属性の水流(エレメント・ウォーリア) (水属性)

全属性の凍結(エレメント・コキュートス) (氷属性)

全属性の轟雷(エレメント・トール) (雷属性)

解離(ミツヤヒデ) (無属性)

・第1次元魔法 空印(ソル)

・第6次元魔法 そこに在る者(テルラポート)

結界(ブルース) (無属性)

 

説明

リールの師匠であり、エレナやリノの友人。かつてスペルビア王国を壊滅状態まで追い込み、狂気の魔女とまで言われた。昔は闇属性魔法の適正者だったが、ある日を境に全属性魔法を使えるようになっていた。本人もなぜ使えるようになったのかは分からないが、便利だから今も使っている。

 

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名前:エレナ

 

年齢:41歳

 

適正:闇属性魔法

 

魔力値:138,996(学生時代は80,347)

 

使える魔法

爆淵(バルザ)(無属性)

奈落(アヴァドン)(無属性)

魔弾(ブラック・ベルト)(闇属性)

禍玉(ヴィド・ダラ)(闇属性)

闇への誘い(ダーク・ネフェル)(闇属性)

死に誘いし宵闇の魔法(フォルメア・メル)(闇属性)

銀爆(オズロット)(無属性)

極大魔力消滅魔法(マギ・オートマタ・ソル・ディメンション)(無属性)

 

説明

エレナ学院初代学院長。歳は魔女さんやリノと同じ。当時は学生だったが、何故かエレナの名前を学校の名前として使われ、その時に学院長となった。当時エレナは成績が良く、魔法も十分に扱えていたため、他の教員も納得していた。エレナ学院という名前になってからはエレナは学生と学院長をなんとか両立させていた。

 

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名前:グラム(未来のリール)

 

年齢:38歳

 

適正:光属性魔法と無属性魔法

 

魔力値:169,987

 

使える魔法

・第1次元魔法 空印(ソル)

・第2次元魔法 潰箱(カンデラ)

・第3次元魔法 開闢(マトン)

・第4次元魔法 刻運命の粉(ミスティルレイン)

・第5次元魔法 無限世界(インフィニティ)

・第6次元魔法 そこに在る者(テルラポート)

・第7次元魔法 運命の時(アロアダイト)

・第8次元魔法 真空(オーラル)

・第9次元魔法 絶対零度(アブソリュート・ゼロ)

・第10次元魔法 軌道変換(パラティガ)

・第11次元魔法 虚式世界(アイオニア)

 

説明

グラムは魔女さんのお師匠様。しかしそれは仮の姿で本当は未来のリール本人。未来で起こる事件がきっかけで過去へと時を遡ってきた。しかし、遡ってきた過去が魔女さんの子供時代というかなり昔の時代だった。グラムはそこから元の時代に帰ることができなかったため、名前をリールからグラムに変えて別人として生きていくことにした。ちなみに、グラムは全ての次元魔法(第1次元魔法〜第11次元魔法)を使うことができる。この次元魔法はかつて魔女さんから教わったもの。

 

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名前:リノ(リールの母親)

 

年齢:41歳

 

適正:光属性魔法

 

魔力値:128,124(学生時代は67,243)

 

使える魔法

光玉(ライダラ) (光属性)

光が導く最良の一手(サーフェス・ロミオ・カタラルト) (光属性)

光闇の軛(ウートア・モール) (光属性)

光弾(ライト・バレット) (光属性)

威光(バラノア) (光属性)

鬼箱(パンドラ) (無属性)

・第3次元魔法 開闢(マトン)

地寂占星(ちじゃくせんせい) (無属性)

 

説明

リールの実の母親。かつて起こったドレインとの戦いで力を失い、深淵に封印された人物。禍異者としてリールたちと対峙したが、その強さはリールを軽く凌駕するほど。リールの母親なだけあってリールよりも強く、全ての魔法が高威力なのが特徴。

 

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名前:レギンス(リールの父親)

 

年齢:41歳

 

適正:光属性魔法

 

魔力値:117,991(学生時代は68,733)

 

使える魔法

地寂占星(ちじゃくせんせい) (無属性)

 

説明

リールの実の父親。学生時代にリノ(リールの母親)に一目惚れし、猛アタックの末に結ばれることになった。学生時代は真面目に勉強していたためか、リノよりも魔力値が高かった。しかし、その後の成長が小さく、最終的にリノに魔力値を追い越された。

 

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名前:スカーレット

 

年齢:25歳

 

適正:雷属性魔法

 

魔力値:6,998(学生時代は332)

 

使える魔法

雷玉(サンダラ) (雷属性)

落雷(ダリサダ) (雷属性)

放電(マギダラ) (雷属性)

雷砲(サンダー・キャノン) (雷属性)

踊雷針(サンダー・カーニバル) (雷属性)

地雷(コーディ) (雷属性)

拡声(チェッカー)(無属性)

インドラの矢(サディエライト・アーツ) (雷属性)

体力回復(ヒール) (無属性)

魔力回復(ヒーラマ) (無属性)

状態回復(ヒーラル) (無属性)

瞬間移動(テレポート) (無属性)

粉砕(ダクト) (無属性)

雷霆(ラゴタート) (雷属性)

 

説明

リールの友達。委員長をしていて真面目な性格。箒屋の父と杖屋の叔父を持つ。誰よりも正しくあろうとする考えを持っており、よく言えば責任感が強い、悪く言えば融通が利かない。基本的に曲がったことが大嫌い。また勉学に関しては正直なくらい貪欲。自分の知らないことは何でも知ろうとする。スカーレットは様々な賞を獲得しているが、あまり自分からは言わず、気づいてくれた人にはこれでもかというくらいに話す。

 

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名前:アンナ

 

年齢:25歳

 

適正:水属性魔法

 

魔力値:4,908(学生時代は245)

 

使える魔法

水波動(ウォーター・ルーン)(水属性)

(レイン)(水属性)

爆ぜる雫(ドロ・ノヴァ)(水属性)

(ルーメス)(水属性)

流水(メロア)(水属性)

 

説明

リールの友達であり、学生時代はルームメイトだった。気が弱く、いつも声が小さかったが、リールと出会い、次第に魔法にも自信がつくようになって言葉もハキハキと言えるようになった。魔法を使うのが苦手だったが、リールと練習を重ねることでどんどん成長し、学生時代と比べて魔力値も高くなった。

 

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名前:オード

 

年齢25歳

 

適正:火属性魔法

 

魔力値:5,127(学生時代は322)

 

使える魔法

火玉(ファイダラ) (火属性)

炎流(ファイアロード) (火属性)

火だるま(フレイム) (火属性)

核爆発(デューリ) (火属性)

・第5次元魔法 無限世界(インフィニティ)

・第7次元魔法 運命の時(アロアダイト)

火柱(オーバン) (火属性)

大炎玉(ヘル・ファイア) (火属性)

 

 

説明

オードは学生時代にリールと魔法の試合をした人物。授業の中で行われた試合だったが、リールには手も足も出ず、負けそうになったが、エレナが侵入したことで一旦試合は中断することになった。その後はリールを守るために1人でエレナに立ち向かったり、リールを守るために大きな黒い影を攻撃したりした。オードはリールのことを好きになってから、行動の理由にリールが入っている。

 

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名前:ディア

 

年齢:25歳

 

適正:火属性魔法

 

魔力値:5,569(学生時代は327)

 

使える魔法

炎化(バーン) (火属性)

火柱(メルサガ)(火属性)

火炎砲(ファイアブースト)(火属性)

煉獄火焔(ヘル・ファイア)(火属性)

 

説明

ディアはオードとノーラの友達。いつも3人で一緒にいるほどの仲。魔法なのに自分に火属性を纏わせて突進するのが好き。こう見えても結構、恋バナが好きだったりする。また、オードがリールのことを気になっていると知った時はなるべくオードとリールが一緒になるよう色々と考えていた。

 

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名前:ノーラ

 

年齢:25歳

 

適正:水属性魔法

 

魔力値:6,377(学生時代は387)

 

使える魔法

渦潮(ロウェナ)(水属性)

水流砲(ウォータブースト)(水属性)

 

説明

オードとディアの友達。クールでいつも少し後ろから物事を見ている。オードたちに何かあった時はいつも頼りになる人物。水の扱いに長けており、アンナもノーラの水属性魔法はすごいと評価しているほど。ただ、あまりに頼られすぎて物事の後始末を任されることもしばしば。

 

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名前:レヴィ学院長

 

年齢:40歳

 

適正:光属性魔法

 

魔力値:67,713

 

使える魔法

天光の槍(ホーリー・ランス)

 

説明

エレナ学院の元学院長。光属性魔法の適正者で魔女さんの弟弟子。魔女さんと魔力値に差があるが、これでも魔力値は高め。しかし学院がエレナの襲撃に遭った際に光属性魔法を駆使して追い払うことができた。性格は温厚で聡明。昔からグラムの魔法を見てきているが、未だにその魔法を使うことができない。

 

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名前:ラミエ先生

 

年齢:39歳

 

適正:無属性魔法(回復魔法特化)

 

魔力値:89,661

 

説明

エレナ学院の保健の先生。無属性魔法の回復魔法に特化した魔女。あらゆる怪我や病気を治すことができる。レヴィ学院長よりも魔力値が高いが、本人はあまり気にしていない。ラミエ先生は現在回復魔法しか使えないが、昔は風属性魔法を使っていた。とある理由で風属性魔法を捨て、無属性魔法の回復魔法に専念するようになった。

 

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名前:アース(業火の使徒 デメル)

 

年齢:44歳

 

適正:火属性魔法

 

魔力値:50,332

 

説明

禍異者を封印している十二使徒の一人。他の十二使徒たちを束ねる人物。火属性魔法を得意とし、魔力値も十二使徒の中ではトップレベル。真面目な性格で仕事もきっちりこなす。しかし頑固なところがあり、誰かの失敗や急な予定変更があっても立てた予定を貫こうとする。アースの付き人はそこまできっちりしてないのでアースの正確さには少し息苦しさを感じている。

 

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名前:ウレイ(豊水の使徒 ウロウ)

 

年齢:39歳

 

適正:水属性魔法

 

魔力値:48,111

 

説明

禍異者を封印している十二使徒の一人。水属性魔法を得意とし、ナヴィア王国の統治者。あらゆる生物に水を注ぐことで命を与えることができ、特に植物の扱いに長けている。ナヴィア王国はウレイの水と植物で溢れかえっている。また、ウレイの水でできた植物はとても貴重で薬草などの調合に適しているため、他の国々からその植物を買いに来る人がいる。

 

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名前:セレナ(死氷の使徒 コキトス)

 

年齢:37歳

 

適正:氷属性魔法

 

魔力値:48,247

 

説明

禍異者を封印している十二使徒の一人。氷属性魔法を得意とし、モルドレッド王国統治者。あらゆる生物の命を奪うことができる。ウレイとは真反対の力を持つが、無闇に命を奪ったりしてない。必要な時だけ魔法を使い、それ以外では一切魔法を使わない。セレナの魔法は発動すると一瞬で周囲の気温が下がり、セレナの足元はすぐに凍りつく。アイスクリームのような冷凍が必要なものはちょっとの魔力で完結する。

 

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名前:ヒュー(壊風の使徒 ヴィナン)

 

年齢:39歳

 

適正:風属性魔法

 

魔力値:49,889

 

説明

禍異者を封印している十二使徒の一人。風属性魔法を得意とし、天空殿に住んでいる。使徒名にもある通り、あらゆるものを破壊するほどの風を起こすことができる。しかし、セレナ同様、無闇に使うと人に迷惑がかかるので使用を控えている。過去に氷属性魔法を使ってみた時は自分まで凍ってしまい、それ以降氷属性魔法を使わなくなった。ヒューの風属性魔法は本人ですら制御できていない。

 

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名前:ジン(轟雷の使徒 サルメア)

 

年齢:40歳

 

適正:雷属性魔法

 

魔力値:50,031

 

説明

禍異者を封印している十二使徒の一人。雷属性魔法を得意とし、スペルビア王国で箒の専門店を開いている。スカーレットの実の父親。ジンが作る箒は中々の上物で多くの貴族たちがジンの店を訪れている。リールが持っている箒を見た時はただならぬ気配を感じていた。リールの箒を見てからジンの目標はリールが持っている箒を作ることになっている。

 

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名前:マーク(巌土の使徒 ファラン)

 

年齢:39歳

 

適正:土属性魔法

 

魔力値:49,963

 

説明

禍異者を封印している十二使徒の一人。土属性魔法を得意とし、スペルビア王国で杖の専門店を開いている。ジンの弟。リールが持っていた杖を見て明らかに異質なものと見抜き、リールの杖に恐怖と興味があった。普通の杖はマナを介して魔法を使うが、リールの杖はすでに杖に内包されている力を行使している。マークは色んな杖を記した書物を持っているが、唯一リールが持っている杖は記されていなかった。

 

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名前:フレア(焦土の使徒 アバド)

 

年齢:39歳

 

適正:火属性魔法

 

魔力値:50,461

 

説明

禍異者を封印している十二使徒の一人。火属性魔法を得意とし、大獄門という地獄に繋がる扉の門番をしている人物。フレアの火属性魔法は他の人の火属性魔法とは違い、ただの火ではなく、全てマグマとなっている。これは大獄門で仕事をしているときに特殊変異したから。

 

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名前:メロ(冥水の使徒 モドノル)

 

年齢:43歳

 

適正:水属性魔法

 

魔力値:51,776

 

説明

禍異者を封印している十二使徒の一人。水属性魔法を得意とし、冥界に住んでいる人物。あらゆる生き物を死に追いやる水を持つ。冥界は地下深くに存在するため、冥界に住んでいる人は外の人との繋がりがあまりない。そんな中、アースが冥界に訪れた時にメロと出会ったことでアースはメロを十二使徒に加入させることに決めた。

 

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名前:モール(封土の使徒 アラン)

 

年齢:46歳

 

適正:土属性魔法

 

魔力値:53,112

 

説明

禍異者を封印している十二使徒の一人。土属性魔法を得意とし、サージェル王国を統治している人物。普段は温厚で蕎麦が大好き。地脈を操るだけでなく、地脈の強さも感知することができる。常に地脈のことを考えていたせいか地脈と仲がいい。モールがいることで地脈が暴れることはなく、サージェル王国は平和そのものだった。しかし今はモールがいなくなったため、地脈は生き場を失っている。

 

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名前:キファ(狂風の使徒 レギン)

 

年齢:39歳

 

適正:風属性魔法

 

魔力値:49,997

 

説明

禍異者を封印している十二使徒の一人。風属性魔法を得意とし、ブエルタ王国を統治している人物。基本的に国民と十二使徒、風属性魔法を扱う人以外は信用していない。過去にジンに色々と教わっていたためか、ジンに対しては常に尊敬している様子。いつも考える時は国民第一で不都合があればそれを取り除こうとする。親にはやることがあると常々言っており、親もそれを承知の上、「やるなら最後までやれ」と後押ししている。しかし、今回の件で命を落とし、やることを成せずに終わってしまった。

 

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名前:ミィ(焼火の使徒 アステル)

 

年齢:33歳

 

適正:火属性魔法

 

魔力値:47,553

 

説明

禍異者を封印している十二使徒の一人。火属性魔法を得意とし、大気圏という人が住むのは不可能と言われている場所で生活している。ミィの動力源は太陽の光であるが、消費が激しいため、常に太陽の光を浴び続けなければならない。これまでミィを見たことあるのは十二使徒くらいで一般人はまずお目にかかれない。それでもミィの方は世界中の人々を見て回っているので、一般人がミィのことを見れば幸せになるとの噂もある。

 

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名前:天邪神 イコイ

 

年齢:1,086歳

 

適正:雷属性魔法と無属性魔法

 

禁忌:分裂

 

魔力値:236,807

 

説明

深淵へと続く扉の門番をしている人物。普段から刺激を欲しており、退屈な門番の仕事を投げ出してどこかフラフラと遊びに行っている。メイビスに見つかった時はお叱りを受けるが、本人は全く気にしていない。また、イコイは普段の不真面目さとは裏腹に実力はかなりのもの。邪神の中では一番魔力値が低いが、それでもあらゆるものを破壊する力を持つ。魔女さんでさえ苦戦するレベル。それにイコイは分裂の禁忌を持っているため、イコイと同程度の強さの分身を出して戦うことができる。

 

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名前:冥邪神 メイビス

 

年齢:1,086歳

 

適正:闇属性魔法と無属性魔法

 

禁忌:開闢

 

魔力値:271,296

 

説明

深淵へと続く扉の門番をしている人物。イコイとは違ってすごく真面目で規律を重んじる人物。普段のイコイの行動が許せず、遊んでいるところを見るといつも叱っている。面倒見がいいが、イコイからすればただ怒ってくる人にしか見えない。ちなみにメイビスはイコイとメアの2人ともっと仲良くなりたいと考えており、イコイとメア、メイビスの3人で楽しくお話ができたらなと考えている。

 

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名前:輪邪神 メア

 

年齢:1,086歳

 

適正:光属性魔法と無属性魔法

 

禁忌:無敵

 

魔力値:318,917

 

使える魔法

天使の恩寵(マギラ・ポート・ディンデル)

 

説明

深淵へと続く扉の門番をしている人物。邪神の中で一番魔力値が高く、一番不思議な気配を放っている人物。普段から落ち着いた感じで話しており、それがより一層不思議さを醸し出している。戦闘のセンスもピカイチでイコイを簡単にねじ伏せられるほど。この世界の人たちが束になっても勝つ未来は見えない。しかし本人はあまり力を使うことはなく、むしろ使えばこの世界を壊しかねないと考えている。まだまだ謎多き人物。

 

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魔力値ランキング

1位.輪邪神 メア (318,917)

 

2位.冥邪神 メイビス (271,296)

 

3位.天邪神 イコイ (236,807)

 

4位.グラム (169,987)

 

5位.魔女さん (169,697)

 

6位.エレナ (138,996)

 

7位.リノ (128,124)

 

8位.レギンス (117,991)

 

9位.リール (90,774)

 

10位.ラミエ先生 (89,661)

 

11位.レヴィ学院長 (67,713)

 

12位.モール(封土の使徒 アラン) (53,112)

 

13位.メロ(冥水の使徒 モドノル) (51,776)

 

14位.フレア(焦土の使徒 アバド) (50,461)

 

15位.アース(業火の使徒 デメル) (50,332)

 

16位.ジン(轟雷の使徒 サルメア) (50,031)

 

17位.キファ(狂風の使徒 レギン) (49,997)

 

18位.マーク(巌土の使徒 ファラン) (49,963)

 

19位.ヒュー(壊風の使徒 ヴィナン) (49,889)

 

20位.セレナ(死氷の使徒 コキトス) (48,247)

 

21位.ウレイ(豊水の使徒 ウロウ) (48,111)

 

22位.ミィ(焼火の使徒 アステル) (47,553)

 

23位.スカーレット(6,998)

 

24位.ノーラ(6,377)

 

25位.ディア(5,569)

 

26位.オード(5,127)

 

27位.アンナ(4,908)

 

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魔力値について

魔力値はこの世界ではその人の魔力に相当する。魔力値が高ければ高いほどその人の魔法が強くなる。平均的な魔力値は5,000前後。生まれが良ければ10,000くらいになる。スカーレットやオードたちが平均的な魔力に対してリールが桁外れな魔力を持っているのは元々リールの両親が魔力の高い人たちだったから。

魔力値が低い人の攻撃は魔力値が高い人からすれば、かすり傷程度。また、差があればあるほど魔法の効果は薄くなり、10,000以上差がある場合は魔法が全く効かなくなる。

魔力値は後から上げることができるため、怠けていたらいつまでたっても魔力値が低いままとなる。

無属性魔法の中でも特に異例な次元魔法は魔力値によって第1次元魔法〜第11次元魔法のどれかを使うことができる。グラムや魔女さんは全ての次元魔法を使うことができるが、エレナは一部の次元魔法しか使えない。




〜物語メモ〜

これにて「私、魔女さんに拾われました。」の第1章が終わりました。
次は第2章になります。
長らくお付き合い頂きありがとうございました。

他にも作品を投稿していますので、よければそちらも駄文ではありますが読んでいただけたらと思います。

それでは、ありがとうございました。m(*_ _)m


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第2章 1節 双子の魔法使い編
第1話 双子の魔法使い ルルとララ


ここはスペルビア王国近くの平原。そこには一軒の家があった。

 

その家はかつて狂気の魔女と呼ばれた魔女とその弟子が住んでいた。

 

ある時、このスペルビア王国が危機に晒された時、その魔女たちが厄災を止め、スペルビア王国を守ったのだそう。

 

それからというもの。狂気の魔女はその家をあとにし、今住んでいるのはその弟子。

 

名前はリール。

 

彼女は狂気の魔女が住んでいた家を継ぎ、新しい家族と共に平和に暮らしている。

 

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場所…魔女さんの家

 

???「お母さん。行ってきます」

???「お母さん。行ってきます」

 

行ってきますの声とともに家を出たのはこの家に住む双子の魔法使い。名前はルルとララ。2人はずっと一緒におり、人と会話する時も同時に話すくらいに息ピッタリ。

 

リール「行ってらっしゃい。ルル、ララ」

 

ルルとララを見送っているのは2人の母親。名前はリール。この世界では数少ない光属性魔法の適正者。

 

ルル「うん!」

ララ「うん!」

 

ルルとララはスペルビア王国にあるエレナ学院という学校に通っている。まだ魔法使いとして未熟ではあるが、学院長である母を超えるため、日々魔法の練習をしているのだそう。

 

???「君も行くのかい?リール」

 

ルルとララを見送ったリールの後ろには男の人がいた。名前はオード。火属性魔法の適正者でいつもリールを気にかけている。

 

リール「はい!行きますよ!」

 

リールは学院に行く準備をし始めた。

リールはエレナ学院の学院長を務めており、日々生徒たちの安全を守っている。

 

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場所…エレナ学院 教室

 

ルルとララは教室に入ると真っ先に席に着く。ちなみに2人はいつも一緒に座る。クラスのみんなも最初は不思議に思っていたが、もう慣れたのかみんな何も言わなくなった。

 

???「おはようございます。ルル、ララ」

 

ルル「おはようリュノ」

ララ「おはようリュノ」

 

ルルとララに話しかけてきたのは緑の長い髪色に赤い眼鏡をかけた女性。名前はリュノ。彼女は風属性魔法に適正があり、髪色にピッタリで覚えやすい。

 

リュノ「相変わらず2人は仲良しですね」

 

ルル「うん。生まれた時から仲良しだよ」

ララ「うん。生まれた時から仲良しだよ」

 

リュノ「そ、それはすごいですね」

 

リュノはこの学院に入学してからルルとララの初めての友達。彼女は言葉が丁寧で他人を気遣う優しさを持っているのでルルとララは良い友達を持ったと思っている。

 

リュノ「そういえばルル、ララ」

 

ルル「何?」

ララ「何?」

 

リュノ「今日の魔法の実技の自信はどう?」

 

ルル「自信あるよ」

ララ「バッチリよ」

 

リュノ「2人の魔法はすごいからまた色々教えてね」

 

ルル「うん!いいよ!」

ララ「うん!いいよ!」

 

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場所…校庭

 

ルルとララ、リュノはエレナ学院の校庭にいた。今日は魔法の実技訓練。内容は魔法で作られた人形に魔法を使ってポイントを稼ぐ。魔力が強ければポイントが多くなり、逆に弱いとポイントが低くなる。ちなみに、この実技に使われる人形はリールが作ったもの。

 

先生「では、今から順番に実技を行ってもらいます。この実技は成績に響きますので、みんな本気で挑むように。攻撃魔法以外でもポイントを稼ぐことはできます。みなさんの得意な魔法でやってみてください」

 

生徒たち「はーい」

 

先生「では、始めます」

 

そう言って先生は人形を準備した。その人形は銀色の装甲を持った見た目から硬そうな人形だった。みんな順番にその人形に魔法をぶつける。ある人は攻撃魔法を、ある人は強化魔法を、ある人は弱化魔法を。使われた魔法は様々だった。

 

先生「では次。リュノ」

 

リュノ「はい!」

 

リュノは人形の前に立った。リュノはいつにもなく真面目な目付きで人形と対面する。

 

リュノ「…」

 

先生「いつでもいいぞ」

 

リュノ「はい!」

 

スッ…

そう言ってリュノは杖を取りだした。この世界の杖は約30cmほどのもので魔法使いになるためには必須のものとなっている。

 

リュノ「狂風(ブレイズ)!」

 

ビュォォォォォ!ズシャシャシャシャ!

リュノが魔法を使うと暴風とともに緑色の斬撃が人形を襲った。

 

ドシン!!

魔法を受けた人形はリュノの魔法で後ろに倒れた。

 

リュノ「…」

 

先生「…」

 

ガコン…ガコン…ガコン…

魔法を受けた人形は歪な音を鳴らしながら立ち上がった。

 

先生「…なるほど。次。ルル、ララ」

 

リュノ「っ…」

 

スタスタスタ

リュノは後ろに下がった。

 

ルル「…」

ララ「…」

 

スタスタスタ

ルルとララはリュノとすれ違った。

 

リュノ「っ…」

 

リュノは何やら不満げな様子だった。彼女はこの実技の為にずっと練習してきたのに思ってた結果ではなかったからだ。

 

ルル「リュノ」

ララ「リュノ」

 

リュノ「!」

 

ルルとララは振り返ってリュノの方を見た。リュノはその場に止まってルルとララの方を見た。

 

ルル「すごいよリュノは」

ララ「すごいねリュノは」

 

リュノ「!」

 

ルル「あれほどの魔力はそうそういない」

ララ「あれほどの魔力はここにはいない」

 

リュノ「…どういうこと」

 

ルル「…僕たちを見てて」

ララ「…私たちを見てて」

 

リュノ「えっ?」

 

ルル「見てれば分かるよ」

ララ「見てれば分かるよ」

 

スタスタスタスタスタスタスタ

ルルとララは人形の前に立った。

 

先生「いつでもいいぞ」

 

ルル「…いくよララ」

ララ「…いくよルル」

 

スッ…

ルルとララは人形を指さした。

 

ルル「空印(ソル)

ララ「空印(ソル)

 

ドゴォン!!

すると急に人形に凹みができて、人形が地面に叩きつけられた。

 

リュノ「!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥ…

人形の凹みから少し煙が出ていた。

 

ガコン…ガコン…ガコン…

魔法を受けた人形は歪な音を鳴らしながら立ち上がった。

 

リュノ (また立ち上がった…)

 

ルル「ね、見たでしょ」

ララ「ね、見たでしょ」

 

リュノ「!」

 

ルルとララはリュノの方を見て人形を指さした。

 

ルル「この人形は魔力を吸収する」

ララ「この人形は魔法を分析する」

 

ルル「だから効いてないように見える」

ララ「だから効果が無いように見える」

 

リュノ「!」

 

ルル「リュノの魔力は高いよ」

ララ「リュノの魔法は強いよ」

 

リュノ「ルル…ララ…」

 

ルル「自信を持って」

ララ「自信を持って」

 

リュノ「あ、ありがとう…」

 

先生「よし、次」

 

それから魔法の実技は進んでいき、全員終えることができた。

 

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先生「では、これにて魔法の実技を終了します。結果は後日壁に貼り出すので確認するように」

 

生徒たち「はーい」

 

先生「では解散!」

 

こうして魔法の実技は終わった。ルルとララは思ってた通りの実力が発揮できたが、リュノは少し不満げな様子だった。

 

リュノ「…」

 

スタスタスタ

リュノは一人で教室に戻った。

 

ルル「…」

ララ「…」

 

ルルとララはリュノの後ろ姿をずっと見ていた。

 

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実技が終わるとお昼休みとなり、午後の授業が始まったが、リュノは実技の結果を引きずっているのか、ずっと落ち込んでいる様子だった。

 

ルルとララはそんなリュノのことを心配しながら授業を受けていた。

 

そしてその日の授業が全て終わった。

 

ルル「リュノ」

ララ「リュノ」

 

リュノ「…?」

 

ルルとララは授業が終わるとリュノの席に行った。

 

リュノ「…何」

 

ルル「何か食べに行かない?」

ララ「何か食べに行かない?」

 

リュノ「…いい。今は何もいらない」

 

ルル「…」

ララ「…」

 

リュノはルルとララが気を遣っていると感じた。

 

ルル「リュノ。好きな物食べに行こう」

ララ「リュノ。好きな物食べに行こう」

 

リュノ「…いいよ。ルルとララで行ってきたら?」

 

ギュッ!

するとルルとララはリュノの手を握った。

 

リュノ「!!」

 

ルル「行くよ。リュノ」

ララ「行くよ。リュノ」

 

リュノ「えっ、ちょっと」

 

ガタッ!スタスタスタスタ…

ルルとララはリュノの手を引っ張って教室を出た。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…チェルノカフェ

 

ここはスペルビア王国にあるカフェ。ここ以外にいくつかカフェはあるが、ルルとララはこのお店の雰囲気と味が好きなのでよくここに来る。

 

ルル「さ、ここだよ」

ララ「さ、ここだよ」

 

リュノ「ここって…チェルノカフェ?」

 

チリンチリン!

ルルとララはリュノの手を引っ張ってお店に入った。

 

???「いらっしゃいませ〜」

 

お店に入ると茶色の髪色に短髪の若い従業員が出迎えてくれた。

 

???「あ!ルルさんララさん!また来てくれたんですね!」

 

ルル「はい。また来ました」

ララ「はい。また来ました」

 

ルルとララはこの店の常連。頻繁に来るのでお店の人に名前と顔を覚えられた。

 

???「お連れさんはお友達ですか?」

 

ルル「そうです。リュノです」

ララ「そうです。リュノです」

 

リュノ「あ、えっと…」

 

チェルノ「初めまして!私はこのチェルノカフェを経営しています!チェルノといいます!よろしくお願いします!」

 

チェルノはハキハキと自己紹介をした。

 

リュノ (自分の名前のお店ってこと…)

 

リュノが考え事をしていると、ルルとララが話を続けた。

 

ルル「すみません。この子、人見知りなので」

ララ「すみません。この子、人見知りなので」

 

チェルノ「あ!失礼しました!では3名様ですね」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

チェルノ「いつもの席にしますか?」

 

ルル「えっと、窓際で」

ララ「えっと、窓際で」

 

チェルノ「ではこちらへどうぞ!」

 

スタスタスタスタ

チェルノは席に案内した。ルルとララはリュノの手を引っ張ってついて行った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…チェルノカフェ 窓際の席

 

ルルとララは窓際の席に案内された。そこは人通りがよく見える場所で日当たりもいい。

 

チェルノ「ご注文がお決まり次第お呼びください。では、失礼しますね」

 

スタスタスタスタ

チェルノはその場をあとにした。

 

ルル「リュノ。選んで」

ララ「リュノ。選んで」

 

パサッ…

ルルとララはメニュー表を見せた。ルルとララはもう決まっているそうなので、リュノはメニュー表を見てみる。

 

リュノ「何これ…色々ある…全然分からないですね…」

 

ルル「パンケーキとかいいよ」

ララ「パンケーキとかいいよ」

 

リュノ「パンケーキ?そんなのないですよ?」

 

リュノは別のページを開いていた。ルルとララはパンケーキが表示されているページを開いて指さした。

 

ルル「僕のおすすめはこれ」

ララ「私のおすすめはこれ」

 

ルルとララが指さしたのは普通のパンケーキに生クリームや果物がついてくるもの。

 

ルル「生クリームがおいしい。パンケーキも」

ララ「生クリームがおいしい。パンケーキも」

 

リュノ「パンケーキ…」

 

リュノはそれ以外のパンケーキも見た。どれも美味しそうで全部食べてみたい気持ちになった。

 

リュノ「これ、色々あるのね。全部食べてみたいですね」

 

ルル「全部?食べてみる?」

ララ「全部?食べてみる?」

 

リュノ「え?」

 

ルルとララは真顔でそう言った。リュノは自分が言った言葉を思い出して少し赤くなった。

 

リュノ「あ、えっと…やっぱりこれにする」

 

リュノが指さしたのはルルとララが選んだものだった。

 

ルル「分かった。それにしよう」

ララ「分かった。それにしよう」

 

ルルとララは近くのスタッフを呼んで注文した。リュノはルルとララがおすすめしたパンケーキを注文した。ルルとララも同じものを注文した。

 

ルル「ねぇリュノ」

ララ「ねぇリュノ」

 

リュノ「?」

 

ルル「リュノはこの後どうするの?」

ララ「リュノはこの後どうするの?」

 

リュノ「どうするって…特に予定はないですけど…」

 

ルル「ならちょっと一緒に来てくれない?」

ララ「ならちょっと一緒に来てくれない?」

 

リュノ「え?どこに?」

 

ルル「お母さんのところ」

ララ「お母さんのところ」

 

リュノ「お母さん…?」

 

店員「失礼します。ご注文のパンケーキになります」

 

店員がパンケーキを持って来た。

 

コトッ…コトッ…コトッ…

店員がパンケーキを置いた。

 

リュノ「ありがとうございます」

 

ルル「今は食べましょうか」

ララ「今は食べましょうか」

 

リュノ「そうですね」

 

ルルとララ、リュノは注文したパンケーキを楽しんだ。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

3人は注文したパンケーキを食べ終えて少し休憩をしていた。

 

ルル「ねぇリュノ」

ララ「ねぇリュノ」

 

リュノ「何ですか?」

 

ルル「またいつかここに来ない?」

ララ「またいつかここに来ない?」

 

リュノ「!」

 

ルル「僕、ララ以外でここに来るのは初めて」

ララ「私、ルル以外でここに来るのは初めて」

 

リュノ「は、はぁ」

 

ルル「他にもリュノと行きたいところある」

ララ「他にもリュノと行きたいところある」

 

ルル「もっともっと。だからお願い」

ララ「もっともっと。だからお願い」

 

リュノ「えっと…わ、分かりました…」

 

ルル「やった。約束だよ」

ララ「やった。約束だよ」

 

リュノ「分かりました」

 

ルル「じゃあ行こっか。お母さんのところに」

ララ「じゃあ行こっか。お母さんのところに」

 

リュノ「そ、そうですね…」

 

スタスタスタスタ

ルルとララ、リュノはルルとララのお母さんのところに向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールの家(元魔女さんの家)

 

ルル「ここが僕たちの家だよ」

ララ「ここが私たちの家だよ」

 

ルルとララの家はごく普通の家だった。これといってお屋敷みたいな豪華な家ではない。しかし、他の人の家とは違って家の周りがマナで満たされているため、マナを必要とする魔法使いたちの体が少し軽くなる。

 

リュノ (初めて見た…ルルとララの家)

 

ルル「お母さん。もう帰ってると思う」

ララ「お母さん。もう帰ってると思う」

 

リュノ「えっ?」

 

ルル「さ、行こ」

ララ「さ、行こ」

 

スタスタスタスタ

ルルとララはリュノの手を握って家に入った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ルル「ただいま」

ララ「ただいま」

 

オード「おかえり。ルル、ララ」

 

ルル「ただいま。お父さん」

ララ「ただいま。お父さん」

 

オード「おや、そちらは?」

 

ルル「リュノっていうの。僕の友達」

ララ「リュノっていうの。私の友達」

 

リュノ「あ、えと…初めまして…リュノと言います…よろしくお願いします」

 

オード「俺はオード。ルルとララの父親だ。よろしくな。リュノさん」

 

リュノ「は、はい!」

 

ルル「お父さん。お母さんは?」

ララ「お父さん。お母さんは?」

 

オード「お母さんなら自室だよ。何か魔法を調べてるらしいけど」

 

ルル「ありがとうお父さん。行こ。リュノ」

ララ「ありがとうお父さん。行こ。リュノ」

 

リュノ「あ、うん」

 

スタスタスタスタ

ルルとララ、リュノはリールの部屋に向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールの部屋

 

コンコンコン

ルルとララはリールの部屋の扉をノックした。

 

リール「どうぞ」

 

ギィィィィィィィ…

ルルとララは部屋の扉を開けた。

 

リール「あら、ルルとララ。おかえりなさい」

 

ルル「ただいま。お母さん」

ララ「ただいま。お母さん」

 

リール「そちらは?ルルとララの友達?」

 

ルル「そう。リュノっていうの」

ララ「そう。リュノっていうの」

 

リュノ「リュノです!よろしくお願いします!」

 

リール「リュノさん。ルルとララと仲良くしてくれてありがとうございます」

 

リュノ「い、いえ…そんな…」

 

ルル「ねぇお母さん」

ララ「ねぇお母さん」

 

リール「何ですか?」

 

ルル「実技練習で使う人形はお母さんが作ったの?」

ララ「実技練習で使う人形はお母さんが作ったの?」

 

リール「実技練習で使う人形…あぁ、魔力と魔法を分析する人形のことですね。そうです。私が作りました」

 

リュノ「!?」

 

リュノはあの人形の製作者がルルとララの母親であることに驚いていた。

 

ルル「今日実技をしたけど人形の反応がよくなかった」

ララ「今日実技をしたけど人形の反応がよくなかった」

 

ルル「だから魔力が少ないんじゃないかって思っちゃう」

ララ「だから魔力が少ないんじゃないかって思っちゃう」

 

リール「あーあれは私が魔力と魔法を分析するために作った人形なのよ。魔法をぶつけて魔力の高さを見ることができるし、適正魔法も知ることができる。でもあれは私でもそんなに大きな反応は無いですよ」

 

リュノ「えっ…」

 

リール「あれは周りに対魔法防護結界を展開しているので人形に当たる前に魔法が消失してしまいます。なので当たっているように見えても実際には当たってない。だから人形の反応が悪いように見える」

 

ルル「どうやって魔力の強さを見れるの?」

ララ「どうやって魔力の強さを見れるの?」

 

リール「それはその時の先生が知ってるはずですよ。また聞いてみてください」

 

ルル「分かった」

ララ「分かった」

 

リール「ルル、ララ。どうしてあの人形のこと聞くの?」

 

ルル「リュノが魔力が低いんじゃないかって心配してた」

ララ「リュノが魔力が低いんじゃないかって心配してた」

 

リュノ「!!」

 

ルル「お母さん。リュノの魔力はどう?」

ララ「お母さん。リュノの魔力はどう?」

 

リュノ「ちょ、ちょっとルル、ララ」

 

リール「ふーん…」

 

リールはリュノの魔力を見てみた。リュノの周りには微弱なマナが流れていた。

 

リュノ「あ、あの…えっと…」

 

リール「ルルとララほどではないけどあなたの魔力も高いと思いますよ」

 

リュノ「!」

 

ルル「でしょ?」

ララ「でしょ?」

 

リール「まぁあの人形は私でもあまり大きな反応がないから私も少し焦ることがありますよ。気を落とさないでください」

 

リュノ「は、はい…」

 

リュノは少し気が楽になった。

 

リール「もし数値として聞きたいなら言いますが…どうしますか?」

 

リュノ「あ、いえ…別にいいです」

 

リール「そうですか?別に悪い数値では無いですが」

 

リュノ「えっと…それよりも聞きたいことが…」

 

リール「何ですか?」

 

リュノ「その…ルルとララが使った魔法についてなのですが…」

 

リール「ルルとララが使った魔法?」

 

ルル「!!」

ララ「!!」

 

リュノ「初めて聞いた魔法…あれは一体何でしょうか…」

 

リール「えぇっと…名前はわかる?」

 

リュノ「えっと…確か空印(ソル)って…」

 

リール「えっ…空印(ソル)?」

 

リュノ「はい…」

 

ルル「っ…」

ララ「っ…」

 

ルルとララはそっぽを向いた。

 

リール「ルル?ララ?」

 

ルル「…」

ララ「…」

 

リール「はぁ…2人とも。次元魔法は使っちゃダメって言ったでしょ?」

 

ルル「うっ…」

ララ「うっ…」

 

リール「次元魔法は他の魔法とは違うの。ちょっとの力でもとてつもない効果を発揮する。魔法の制御が難しいからまだダメって言ったよね?」

 

ルル「だって…」

ララ「だって…」

 

リール「だってじゃない。何かあったらどうするの?」

 

ルル「…」

ララ「…」

 

ルルとララは不貞腐れたような表情を見せた。

 

リール「…はぁ、全く2人は…次元魔法は教科書に書かれてないからできるだけみんなの前で使っちゃダメ。分かった?」

 

ルル「…分かった」

ララ「…分かった」

 

リール「ごめんなさいリュノさん。あなたは何も無い?」

 

リュノ「えっ、あ、はい」

 

リール「はぁ…何ともなくてよかったです。2人とも。今後は気をつけてね」

 

ルル「…はーい」

ララ「…はーい」

 

リール「あとリュノさん」

 

リュノ「はい!」

 

リール「心配しなくてもあなたの魔力は高いですよ」

 

リュノ「!」

 

リール「今はまだその実感がないだけ。いつかあなたの実力が垣間見える時が来ますよ。その時まであなたは自分を磨き続けてください。自己研鑽こそが自分を強くする最大の道のりですから」

 

リュノ「はい!」

 

リール「ふふっ…さ、他になにか用はある?」

 

ルル「お母さん」

ララ「お母さん」

 

リール「何?」

 

ルル「お父さんが魔法を調べてるって言ってた」

ララ「お父さんが魔法を調べてるって言ってた」

 

ルル「それってどんな魔法?」

ララ「それってどんな魔法?」

 

リール「うーん…それはまだ言えないわ」

 

ルル「えー…」

ララ「えー…」

 

リール「いつか分かりますよ。それまで待っててください」

 

ルル「分かった…」

ララ「分かった…」

 

リール「他には?」

 

ルル「もうない」

ララ「もうない」

 

リール「そう。リュノさんはお家の方は大丈夫ですか?」

 

リュノ「あ、はい。多分大丈夫かと…」

 

リール「もうこんな時間ですからお夕飯一緒にどうですか?」

 

リュノ「あ、え、いいんですか?」

 

リール「はい。いいですよ。今日はカグツチも帰ってきますので」

 

リュノ (カグツチ…?)

 

ルル「カグツチ兄さん帰ってくるの?」

ララ「カグツチ兄さん帰ってくるの?」

 

リール「はい。帰ってきますよ」

 

ルル「やった!」

ララ「やった!」

 

リュノ「あの…カグツチさん…とは」

 

リール「ルルとララのお兄さんです。今は大獄門というところで働いています」

 

リュノ「だ…大獄門…!?」

 

大獄門とは、この世界の地獄にある扉のこと。地獄判決とされた死者の魂を迎える場所となっており、そこは灼熱のように熱い場所。火属性魔法に適正がある人しかこの場所にいられず、カグツチは主に大獄門の門番をしている。

 

リール「はい。カグツチはそこの門番をしています」

 

リュノ「だ…大獄門って…あの…地獄の…」

 

リール「そうです。地獄にある大獄門です」

 

リュノは意外な職場で驚いていた。

 

リール「初めて聞く人は凄く驚きますよ。あなたと同じです。でもカグツチは旦那と同じで優しい子ですので大丈夫ですよ」

 

リュノ「は、はぁ…」

 

リール「さて、そろそろいい時間なのでご飯を作ります。ルルとララはリュノさんと一緒にテレビでも見ててください」

 

ルル「はーい」

ララ「はーい」

 

リール「リュノさんは楽にしててくださいね」

 

リュノ「は、はい!」

 

スタスタスタスタ

リールは部屋を出てキッチンへ向かった。

 

ルル「じゃあ行こっかリュノ」

ララ「じゃあ行こっかリュノ」

 

リュノ「う、うん…」

 

スタスタスタスタ

ルルとララ、リュノはリビングに向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールの家 リビング

 

リール「オードさん。卵取ってくれませんか?」

 

オード「はいよ!」

 

オードは卵を取ってリールに渡した。

 

リール「ありがとうございます」

 

オード「あ、そっちに包丁ない?」

 

リール「ありますよ」

 

リールはオードに包丁を渡した。

 

オード「ありがとう!」

 

リュノ「…」

 

リュノはオードとリールが2人で料理している光景を見ていた。

 

リュノ「…ねぇルル、ララ」

 

ルル「何?」

ララ「何?」

 

リュノ「ルルとララの両親は2人でご飯作るの?」

 

ルル「うん」

ララ「うん」

 

リュノ「へぇ、私の家はお母さんが作ってるの」

 

ルル「そうなんだ」

ララ「そうなんだ」

 

リュノ「2人で作ってるなんて初めて見た」

 

ルル「え、そう?珍しいかな」

ララ「え、そう?珍しいかな」

 

リュノ「うーん…どうなんだろ…」

 

ガチャ

そんな話をしていると家の玄関が開いた。

 

カグツチ「…ただいま」

 

リール「あら、おかえりカグツチ」

 

オード「おかえりカグツチ。ご飯もうちょっとでできるぞ」

 

カグツチ「あぁ」

 

帰ってきたのはカグツチだった。彼はオードと同じ赤い目をしている。

 

スタスタスタスタ

カグツチはリビングにあるソファに向かった。

 

ボフッ…

カグツチはソファに座った。

 

ルル「あ!カグツチ兄さんおかえり!」

ララ「あ!カグツチ兄さんおかえり!」

 

カグツチ「あぁ、ただいま…ん?」

 

カグツチはリュノがいることに気づいた。

 

カグツチ「君は?」

 

リュノ「あ、えっと…リュノといいます!ルルとララの友達です!よろしくお願いします!」

 

カグツチ「友達か。よろしくね」

 

リュノ「は、はい!」

 

ルル「ねぇカグツチ兄さん。お仕事どうだった?」

ララ「ねぇカグツチ兄さん。お仕事とうだった?」

 

カグツチ「いつも通り。普通だ」

 

ルル「そっか!怪我がなくて良かったね!」

ララ「そっか!怪我がなくて良かったね!」

 

カグツチ「…あぁ」

 

そう言ってカグツチはソファにもたれかかってゆっくり目を閉じた。

 

リュノ「…」

 

リュノはカグツチのことをじっと見ていた。ルルとララは普通の人に見えてるけど、リュノからすればカグツチからは何か異質なものを感じる。

 

カグツチ「…」

 

カグツチは視線を感じてゆっくり目を開けた。その時にリュノと目が合った。

 

リュノ「!」

 

リュノは急いで視線を逸らした。それを見たカグツチはソファから体を起こしてリュノを見た。

 

カグツチ「…君」

 

リュノ「は、はい!」

 

カグツチはじっとリュノの胸元を見た。

 

リュノ「!」

 

それに気づいたリュノは自分の手で胸元を隠した。

 

カグツチ「…何か…思い悩んでいること…あるでしょ」

 

リュノ「!!」

 

カグツチ「俺は人の心の色が見える。君の色は青色。それもただの青色じゃない。半分が水色になっている。心が凍っている証拠だ」

 

リュノ「…」

 

リュノには心当たりがあった。リュノは今、魔法の実技について思い悩んでいる。あれだけ努力したのに全く手応えがなかった。リュノは自分の結果に不安があった。

 

リュノ「私…今日の実技で自分の力を十分に発揮できませんでした。座学も実技も他の人よりたくさん努力しました。でも…」

 

カグツチ「…魔法は努力と発想力で無限大に広がるんだ」

 

リュノ「!」

 

カグツチ「君は真面目そうだ。努力は怠らないだろう。でも魔法は努力と発想力が必要なんだ。努力は魔力を上げるとか、より強い、より多い魔法を覚えるとか。そういったものが努力だ。そして発想力。発想力は魔法をどのように扱うかというものだ」

 

リュノ「努力と発想力…」

 

カグツチ「君たちは教科書でしか魔法を習わない。ルルとララは教科書を読む前から父さんと母さんに魔法を教わっている。だから教科書に書かれていない魔法も使える。君はまだ教科書の中にある魔法しか知らない。だから教科書以上のことができない。教科書に書かれていることに縛られている。それだと平均的な魔法しか使えない」

 

リュノ「そんな…」

 

カグツチ「君は十分に努力した。あとは発想力を身につける必要がある。同じ魔法でも使い方を覚えると何倍もの効果を発揮する。それを知ることができれば君はさらに上を目指せる」

 

リュノ「さらに上…私が…」

 

カグツチ「あぁ。誰か頼れる人に魔法の使い方を教えてもらいな」

 

リュノ「えっと…どういう人が…いいのでしょうか」

 

カグツチ「できるなら風属性魔法に適正がある人だな」

 

リュノ「風属性魔法に適正がある人…」

 

リュノは少し考えた。でもそんな人は思い当たらなかった。

 

リュノ「えっと…すみません…そんな人…いません」

 

カグツチ「…そうか」

 

リュノ「あの…カグツチさんが…教えてくれませんか?」

 

カグツチ「…俺がか」

 

リュノ「はい…あの…どうでしょうか」

 

カグツチ「…俺は火属性魔法に適正がある。風属性魔法とは違う」

 

リュノ「そ…そうですか…」

 

リュノは少し落ち込んだ顔をした。それを見たカグツチは少し考えた。

 

カグツチ「…だが、基礎的なことは教えられる」

 

リュノ「!!」

 

カグツチ「それでもいいか」

 

リュノ「はい!」

 

リュノが返事をするとカグツチは少し微笑んだ。するとそんな時、リールとオードがご飯を持ってきた。

 

リール「みんな、ご飯よ」

 

ルル「やった!」

ララ「やった!」

 

リール「今日はお客さんもいるから少し多めね」

 

リュノ「す、すごい…」

 

リールとオードが作った料理はすごく豪華だった。

 

リール「さ、どうぞ」

 

ルル「いただきます!」

ララ「いただきます!」

 

ルルとララ、リュノたちは豪華な食事と楽しい会話でその時間をめいっぱい楽しんだ。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールの家の外

 

カグツチ「…」

 

カグツチはご飯を食べたあと、外に出て星を眺めていた。

 

ザッザッザッザッ…

すると横から足音が聞こえた。

 

リュノ「あの…」

 

カグツチ「…なんだ」

 

外に出てきたのはリュノだった。

 

カグツチ「外は寒いぞ。風邪を引くかもしれないから中に入れ」

 

リュノ「…教えてください」

 

カグツチ「…何をだ」

 

リュノ「あなたのこと」

 

カグツチ「…」

 

カグツチは何も言わなかった。

 

リュノ「あなたに魔法を教えていただく前にあなたのことについて知りたいのです。教えてください」

 

カグツチ「…別に。ルルとララの兄だ」

 

リュノ「…そうですか」

 

ボボッ…

するとカグツチは掌に炎を出した。

 

ポワァァァァァァ…

するとその炎を中心に周囲に熱気が拡散された。

 

リュノ「…暖かい」

 

カグツチ「俺は火属性魔法に適正があるから元より体温は高い。でも君は違うだろ。だから暖かくした」

 

リュノ「…ありがとうございます」

 

スッ…

リュノはカグツチの横に座った。

 

カグツチ「…ルルとララは…学校ではどうだ。みんなと仲良くしてるか」

 

リュノ「はい。仲良くしてますよ」

 

カグツチ「…俺はいつも大獄門にいるからここに帰ってくる機会は少ない。だから弟と妹に何かあるんじゃないかっていつも心配する」

 

リュノ「…優しいんですね」

 

カグツチ「…さぁな」

 

リュノ「…カグツチさん」

 

カグツチ「…何だ」

 

リュノ「ご指導ご鞭撻のほど…よろしくお願いします」

 

リュノは正座をして頭を下げた。

 

カグツチ「…あぁ」

 

カグツチは少し返事をした。

 

リュノ「では…私はもう帰ります」

 

カグツチ「家は近いのか」

 

リュノ「はい。ここから少ししたところにあります」

 

カグツチ「そうか。また来てやってくれ。ルルとララが喜ぶ」

 

リュノ「はい!」

 

スタスタスタスタ

そうしてリュノは自分の家に帰った。

 

カグツチ「…よかったな。ルル、ララ。良い友達を持ったな」




〜物語メモ〜

これは第1章の続編になります。第1章で出てきた人たちも出てくる予定です。ここでは前回に引き続き、新しい情報などを書いていきます。

ルルとララ
この物語の主人公。ルルとララはリールが付けた名前。2人はどこで何をしようともいつも一緒。2人は話す時も同じタイミングで、何かする時も2人同時にする。息ピッタリすぎて2人ではなく元々1人なんじゃないかと思われている。

リール
ルルとララの母親。希少な光属性魔法の適正者。光属性魔法だけでなく無属性魔法や次元魔法まで幅広く魔法を使うことができる。かつて崩壊しかけたスペルビア王国を救ったことがあり、その事もあって現在はエレナ学院の学院長を務めている。

オード
ルルとララの父親。火属性魔法の適正者。かつてリールと一緒に崩壊しかけたスペルビア王国を救った人のうちの1人。スペルビア王国を襲った異変後に2人は結ばれ、現在はリールの師匠である魔女さんの家で一緒に暮らしている。学生時代と比べて格段に魔力が上がっている。

カグツチ
ルルとララの兄。火属性魔法の適正者。大獄門という地獄の扉を管理している。あまり感情を表に出さず、淡々と言葉を並べるような人物。人から見れば物静かで何考えてるか分からない仏頂面のような人だが、人をよく見て手を差し伸べる優しさを持つ。また、人の心の色を見ることができる特別な目を持っており、これは母親であるリールによく似ている。

リュノ
ルルとララのクラスメイトであり友達。風属性魔法の適正者。真面目で努力家。曲がったことが嫌いな人物。真面目すぎて思い詰めることがあるが、それを他人に悟られないようにしている。しかし、カグツチに心の色を見られてしまい、思い詰めていることがバレてしまった。

チェルノ
ルルとララがよく行くチェルノカフェを営んでいる人物。茶色の髪色に短髪の若い女性。いつも元気いっぱいで明るい人物。

狂風(ブレイズ)
リュノが使った魔法。風と共に斬撃が繰り出される魔法。

空印(ソル)
ルルとララが使った魔法。次元魔法に分類されており、教科書には書かれていない特殊な魔法。

大獄門
地獄にある大扉のこと。死者の魂が通る扉だが、たまにそれ以外の者が入ることがある。カグツチはその大獄門の門番をしており、死者の魂以外を通さない役目を負っている。大獄門は地獄にあるので火属性魔法に適正がある人しかこの仕事に就けない。


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第2話 スカーレット魔法道具店

場所…エレナ学院 教室

 

ルル「ふぅ」

ララ「ふぅ」

 

ルルとララは勉強して少し疲れていた。

 

リュノ「ルル、ララ」

 

ルル「?」

ララ「?」

 

リュノ「今日一緒に杖を見に行きませんか?」

 

ルル「杖?」

ララ「杖?」

 

リュノ「はい」

 

ルル「どうして?壊れたの?」

ララ「どうして?壊れたの?」

 

リュノ「はい…魔法の練習をしてたらヒビが入ってそのまま…」

 

ルル「うん。いいよ。見に行こう」

ララ「うん。いいよ。見に行こう」

 

リュノ「やった!じゃあ今から行きませんか!」

 

ルル「今から…片付けるから少し待ってね」

ララ「今から…片付けるから少し待ってね」

 

リュノ「はい!」

 

ガタガタ…ガタガタ…

ルルとララは帰る準備をした。

 

ルル「うん。できたよ」

ララ「はい。できたよ」

 

リュノ「じゃあ行きましょう!」

 

ルルとララ、リュノは学校を出た。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…エレナ学院 校門前

 

リュノ「じゃあ行きましょうか」

 

ルル「うん」

ララ「うん」

 

ポンッ!ポンッ!ポンッ!

リュノたちは箒を出した。この世界の移動方法は箒か徒歩。箒の方が便利なので徒歩で移動する人は少ない。箒を使用する時はマナを吸収・放出することで飛行することができるので、マナがない場所では箒は使えない。

 

ヒュゥゥゥゥゥゥゥ!

リュノたちは箒のお店に向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スカーレット魔法道具店

 

リュノ「よっと」

 

ルル「よっ」

ララ「はっ」

 

スタッ!

リュノたちはとあるお店に着地した。そのお店は魔法使いや魔女に必要な道具である箒と杖を専門的に販売しているお店。スペルビア王国の人は大体このお店で箒と杖を買う。

 

リュノ「よしっ。行きましょう」

 

スタスタスタスタ

3人はお店の中に入った。

 

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場所…スカーレット魔法道具店 店内

 

このお店の店内は様々な杖や箒が飾られている。どれも綺麗で均一に作られている。

 

リュノ「はぁ…ここは雰囲気がすごく好きです」

 

ルル (こんなお店あるんだ)

ララ (こんなお店あるんだ)

 

???「あら、いらっしゃい」

 

リュノ「!」

ルル「!」

ララ「!」

 

3人が声のした方を見ると、そこにはいかにも真面目そうな見た目の女性がいた。名前はスカーレット。彼女はルルとララの母親であるリールの友人。

 

リュノ「すみません。杖を買いに来たのですが」

 

スカーレット「杖ですね。ではこちらに」

 

スタスタスタスタ

スカーレットは店の奥の方へ歩いた。ルルとララ、リュノはその後をついていく。

 

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スカーレット「さて、杖を購入するのよね」

 

リュノ「はい」

 

スカーレット「そちらの2人は買う?」

 

ルル「買わないです」

ララ「買わないです」

 

スカーレット「付き添いなのね。じゃあ杖を選びましょうか」

 

リュノ「はい!」

 

スカーレット「まずはあなたの適正魔法を教えてちょうだい」

 

リュノ「風属性魔法です」

 

スカーレット「風ね。風属性魔法は基本的に杖を中心に螺旋を描くように風が発生すると考えた方がいいわ。だから風属性魔法にピッタリの杖は形が均一でバランスのとれたものね」

 

リュノ「な、なるほど…」

 

スカーレット「これとかどうかしら」

 

コトッ

スカーレットは杖が入った長方形の箱をリュノの前に置いた。

 

カパッ

スカーレットが蓋を開けるとごく普通の見た目の杖だった。長さは約28cm。綺麗に管理されていた杖だった。

 

スカーレット「これは風属性魔法を扱うために作った杖になります。風属性魔法なら上手く適合しますが、それ以外の属性魔法には適合しないので失敗することがあります」

 

リュノ「へぇ…」

 

スカーレット「持ってみてください。あなたが風属性魔法ならあなたの周囲に風が発生します」

 

リュノ「え、いいんですか?」

 

スカーレット「はい」

 

リュノ「…」

 

スッ…

リュノはその杖を手に取った。

 

ヒュゥゥゥゥゥゥゥ…

リュノが杖を手にするとどこからともなく風が吹き付けた。

 

ルル「!」

ララ「!」

 

スカーレット「風属性魔法の適正者が持つとこのように風が発生します。他の適正者ではこうはなりません」

 

リュノ「な、なるほど…」

 

ルル「これってずっと風が吹いてるの?」

ララ「これってずっと風が吹いてるの?」

 

スカーレット「はい。この杖はマナの放出に特化した杖です。なのであなたの魔力に反応したマナが魔法となって常に魔法を放ち続けます」

 

ルル「へぇ」

ララ「へぇ」

 

リュノ「それって私の魔力が枯渇したりしませんか?」

 

スカーレット「しません。あくまでマナだけなので。私たちの魔力が減るのはマナを魔力に変換した時だけ。マナだけを使う場合は魔力の消費はありません」

 

リュノ「なるほど」

 

スカーレット「しかし、この風はあなたの魔力に反応して変化します。魔力が強ければ嵐のような風が吹きますし、魔力が弱ければそよ風のような優しい風になります」

 

リュノ「結構便利ですね。でもずっと風が吹いているとなると…」

 

スカーレット「風が吹くのは杖を持っている時だけです」

 

リュノ「うーん…他にはありませんか?」

 

スカーレット「そうですね。でしたらこの杖と真逆の特性を持つ杖ならどうですか?」

 

リュノ「真逆?」

 

スカーレット「はい。マナを取り込む方に特化した杖です。持ってきますね」

 

スタスタスタスタ

スカーレットは店の奥に行った。

 

ルル「ねぇリュノ。その杖どう?」

ララ「ねぇリュノ。その杖どう?」

 

リュノ「うーん…いいと思いますけど杖を持ったらずっと風が吹いてるっていうのはちょっと…」

 

ルル「そっかぁ」

ララ「そっかぁ」

 

スタスタスタスタ

スカーレットが2つの箱を持って戻ってきた。

 

コトッコトッ

スカーレットはカウンターに箱を置いて蓋を開けた。

 

スカーレット「この杖は2本で1つの杖として機能するんです」

 

リュノ「えっ?」

 

その杖は見た目が全く同じ。長さもさっきの杖の半分くらいになっている。

 

スカーレット「この杖は1本でも十分強いのですが、2本使うことでさらに強くなれます」

 

リュノ「え、1人で2本使うって事ですか?」

 

スカーレット「いえ、他の風属性魔法の人と一緒に使います」

 

リュノ「ということは誰かけを見つけないとダメ…と…」

 

スカーレット「はい。この杖は双子のように一緒に使うことで真価を発揮するんです」

 

リュノ「それならルルとララが持つ方がいいのでは…」

 

ルル「僕は使えないよ」

ララ「私は使えないよ」

 

リュノ「えっ?」

 

ルル「風属性魔法に適正がないからね」

ララ「風属性魔法に適正がないからね」

 

リュノ「あ…そっか…」

 

スカーレット「う〜ん…この杖も少し難しそうですね。この杖は2本で本領発揮するので」

 

リュノ「そうですね…」

 

スカーレット「あ、もうひとつあるので持ってきましょうか」

 

リュノ「お願いします」

 

スタスタスタスタ

スカーレットは店の奥に杖を取りに行った。

 

ルル「ねぇリュノ」

ララ「ねぇリュノ」

 

リュノ「?」

 

ルル「どんな杖がほしいの?」

ララ「どんな杖がほしいの?」

 

リュノ「…守りが強い杖ですね」

 

ルル「守りが強い?」

ララ「守りが強い?」

 

リュノ「はい。前持ってたのはマナを魔力に変換する杖なんです。でも防御魔法がちょっと弱くて…だから今度は防御に特化した魔法が得意な杖をと…」

 

スカーレット「なら丁度良かったです。最後の杖は攻撃はちょっと弱いけど防御魔法なら得意な杖よ」

 

コトッ…パカッ…

スカーレットは杖が入った箱を置いて蓋を開けた。

 

スカーレット「どうぞ」

 

リュノ「は、はい」

 

スッ…

リュノはその杖を手に取った。

 

ボンッ!!

するとその杖は急に巨大化した。最初は25cmくらいの少し小さな杖だったのが、今ではリュノの身長とほぼ同じくらいの長さになった。

 

リュノ「わっわわ!」

 

ドシン!

リュノはビックリして尻もちをついた。

 

ルル「だ、大丈夫?リュノ」

ララ「だ、大丈夫?リュノ」

 

リュノ「いったたた…大丈夫です…」

 

リュノは杖を持ちながら立ち上がった。

 

リュノ「ビックリしたぁ…」

 

スカーレット「あ、あなた…」

 

リュノ「?」

 

スカーレット「もしかして…魔力が…」

 

ルル「?」

ララ「?」

 

スカーレットは少し顔が青ざめていた。ルルとララ、リュノはなんの事かさっぱり分からなかった。

 

リュノ「あ、あの…」

 

スカーレット「!」

 

リュノ「私…何か…」

 

スカーレット「い、いえ…えっと…この杖…ここに置いてもらってもいいですか?」

 

リュノ「は、はい」

 

コトッ

リュノはカウンターの上に杖を置いた。

 

スッ…

スカーレットは杖に触れてみた。

 

スカーレット「…あなた、この杖は買いますか?それとも他のものにしますか?」

 

リュノ「えっ?」

 

スカーレット「この杖には何も問題はありません。この杖は魔力で杖の大きさが変化するのです。魔力が強ければ大きくなるし、弱ければ小さくなる。ここまで大きくなるということは相当な魔力なんだと思います」

 

リュノ「え、あ、その…」

 

スカーレット「…どうしますか?」

 

リュノ「えっと…その杖をお願いします」

 

スカーレット「…分かりました。では値段はこの通りで、杖はこのまま持ち帰ってください」

 

リュノ「は、はい!」

 

リュノはその杖を購入することに決めた。お金は十分にあったのでそのまま一括で払った。

 

リュノ「えっと…ありがとうございます」

 

スカーレット「はい。またお越しください」

 

スタスタスタスタ

ルルとララ、リュノはスカーレットのお店を出た。

 

スカーレット「…」

 

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場所…スペルビア王国 大通り

 

ルル「しかしすごいねリュノ」

ララ「しかしすごいねリュノ」

 

リュノ「?」

 

ルル「さっき言ってたでしょ?魔力で変わるって」

ララ「さっき言ってたでしょ?魔力で変わるって」

 

リュノ「あ、杖のことですか」

 

ルル「そう。兄さんの言ってた通りだね」

ララ「そう。兄さんの言ってた通りだね」

 

リュノ「兄さん…カグツチさんの事ですか?」

 

ルル「そう。魔力が強いって言ってたでしょ?」

ララ「そう。魔力が強いって言ってたでしょ?」

 

リュノ「あ、確かに…」

 

ルル「これで証明されたね。リュノは強い」

ララ「これで証明されたね。リュノは強い」

 

リュノ「そ…そっか…私…」

 

リュノは少し嬉しくなった。

 

リュノ「ありがとうございます。ルル、ララ。2人のおかげで自信がつきました」

 

ルル「ううん。全部リュノの実力だよ」

ララ「ううん。全部リュノの実力だよ」

 

リュノ「ルル、ララ」

 

ルル「?」

ララ「?」

 

リュノ「今日はこのまま帰って魔法を試してみます」

 

ルル「うん!じゃあ今日はこのまま帰ろう!」

ララ「うん!じゃあ今日はこのまま帰ろう!」

 

リュノ「はい!今日はありがとうございました!また明日!」

 

ルル「うん!また明日!」

ララ「うん!また明日!」

 

ポンッ!ヒュゥゥゥゥゥゥゥ!

ルルとララは箒を出してそのまま飛んで帰った。

 

ギュッ…

リュノは杖を強く握った。

 

リュノ「…これで…」

 

ポンッ!ヒュゥゥゥゥゥゥゥ!

リュノも箒を出して家に帰ったのだった。

 

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場所…リールの家

 

ー夜ー

 

ルル「それでようやくいい杖が見つかったよ」

ララ「それでようやくいい杖が見つかったの」

 

リール「へぇ、まさかスカーレットのお店に行ってたなんてね。お母さん驚いたわ」

 

ルル「なんで?」

ララ「なんで?」

 

リール「スカーレットは私の友人なのよ。頭が良くて魔力も高かったわ」

 

ルル「へぇ」

ララ「へぇ」

 

リール「久しぶりに顔を出してみましょうか。何かお土産でも」

 

ルル「ねぇお母さん」

ララ「ねぇお母さん」

 

リール「何ですか?」

 

ルル「リュノが持ってる杖って特別なの?」

ララ「リュノが持ってる杖って特別なの?」

 

リール「…そうね。魔力で大きさが変わる杖はそうそうないわね」

 

ルル「やったじゃんリュノ」

ララ「やったじゃんリュノ」

 

リール「ただ、強い杖はその分気をつけなければならないわ」

 

ルル「なんで?」

ララ「なんで?」

 

リール「魔力が高くても制御できなかったら暴走するわ。過ぎた力はやがて自分を締め付けることになる。魔力の制御は完璧でなければならない」

 

ルル「へぇ、でもリュノならできるよ」

ララ「へぇ、でもリュノならできるよ」

 

リール「…えぇ。まぁ、何かあったら私たちを呼んでちょうだい。何とかするからね」

 

ルル「はーい」

ララ「はーい」

 

リール「さ、そろそろご飯にしましょうか」

 

ルル「うん!」

ララ「うん!」

 

スタスタスタスタ

ルルとララはソファに向かった。

 

スカーレット (リール)

 

すると突然、スカーレットの声が聞こえた。

 

リール (あ、電信ですか。久しぶりですね)

 

スカーレット (リール。今日私のお店に不思議な子が来たの)

 

リール (知ってますよ。ルルとララが言ってました。リュノって子ですよね)

 

スカーレット (そう。その子、私が作った魔力で大きさが変わる杖を買ったの)

 

リール (そうらしいですね)

 

スカーレット (でもそれがその子と同じくらいの大きさに変わったの。本来そこまで大きくならないんだけど…)

 

リール (想像以上の魔力だったって事ですか?)

 

スカーレット (そう。危険なレベルかもしれない。何かあったらすぐに私を呼んで。あの杖には制御回路を含めてあるけどそれを発動させないといけないから)

 

リール (はい。その時はお願いしますね)

 

スカーレット (伝えたかったのはこれだけよ)

 

リール (はい。あ、スカーレット)

 

スカーレット (ん?何?)

 

リール (またいつか皆さんで会いませんか?アンナとディア君とノーラ君も)

 

スカーレット (…えぇ。旦那にもそう言っておくわ)

 

リール (はい。お願いします)

 

スカーレット (じゃあ切るね)

 

リール (はい。また)

 

スカーレット (えぇ、じゃあね)

 

プツッ

するとスカーレットの声が聞こえなくなった。

 

リール (…そこまで強いのでしょうか。あの子の魔力は)

 

リールはちょっと考え事をしながら夜ご飯を作った。




〜物語メモ〜

スカーレット魔法道具店
リールの友人であるスカーレットが営んでいるお店。杖や箒など、魔法使いや魔女たちが必要とする魔法道具を売っている。店に置いている杖や箒は全てスカーレットが作ったもの。杖や箒の作り方は父や叔父から教わった。

スカーレット
リールの友人。雷属性魔法の適正者。かつてリールと一緒にスペルビア王国を救った人物。魔力が高く、頭も良い。


この世界の杖は物にもよるが、大体は約30cmくらいのもの。それより大きかったり小さかったりする。杖にはちょっとした特性みたいなものがあるが、ほぼ気にしていない。

電信
この世界の通信手段。マナに声を与えて相手に聞かせる魔法。マナがある場所でのみ使えることができる。しかしマナは人の目には見えないので、何も無いところから突然声が聞こえたりする。人によっては恐怖レベル。


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第3話 それぞれの魔法の練習

場所…大獄門

 

アレン「なぁカグツチ」

 

カグツチ「?」

 

カグツチに声をかけたのは同じ火属性魔法の適正者で、カグツチの仕事仲間のアレンだった。

 

カグツチ「なんだアレン。何か用か」

 

アレン「カグツチさぁ、最近女の子と一緒にいるだろ」

 

カグツチ「?」

 

アレン「しかもその子結構可愛いじゃん」

 

カグツチ「…何の話だ」

 

アレン「おいおい知らないふりはねぇだろ?見たんだ俺は。カグツチがどっかの平原で女の子と魔法を使ってたのを」

 

カグツチ (あぁ、あの子のことか)

 

カグツチはその女の子がリュノのことだと気づいた。

 

カグツチ「あの子は俺が魔法を教えてるんだ。伸び悩んでるらしくてな。魔法の使い方を教えてる」

 

アレン「俺にも合わせてくれよ!紹介してくれ!」

 

カグツチ「断る。お前は小さい子が趣味なのか」

 

アレン「違う!綺麗な子がタイプだ!趣味じゃねぇ!」

 

カグツチ「なら自分で言ってみたらどうだ」

 

アレン「それだと不審者だろ!」

 

カグツチ「だろうよ。俺もそう思ってたところだ」

 

アレン「だからカグツチ!俺に紹介してくれ!」

 

カグツチ「…すまないな。俺もあの子のことはよく知らない」

 

アレン「はぁ!?」

 

カグツチ「俺の弟と妹ならよく知ってる。2人に聞く方がいいだろう」

 

アレン「カグツチ…お前に兄弟なんていたか?聞いたことないぞ?」

 

カグツチ「……言わなくてもいいと思ってたからな」

 

アレン「何っ!?俺とお前は友達だろ!?教えてくれてもいいじゃねぇか!」

 

カグツチ「全く…そんなに知りたいなら次の休みにでも来たらいいだろ。ちょうどその日はその子と魔法の練習をする日だ」

 

アレン「おぉ!行く!」

 

カグツチ「いらん事するなよ。彼女がどんな子か俺もよく知らないからな」

 

アレン「おう!やったぜ!仕事のやる気出てきた!」

 

タッタッタッタッ!

アレンは持ち場に戻った。

 

カグツチ「…全く…これだから相手が見つからんのだろうな」

 

カグツチはそのまま仕事を続けたのだった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールの家近くの平原

 

アレン「なぁカグツチ!あの子来ないのか?」

 

カグツチ「来るよ。約束の日だからな」

 

カグツチとアレンはリュノととある場所で待ち合わせをしていた。

 

カグツチ「…ほら、来たぞ」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…

すると箒に乗ったリュノが降りてきた。

 

リュノ「カグツチさん。今日もよろしくお願いします」

 

カグツチ「あぁ」

 

アレン「あ!この子が!」

 

ギュッ!

アレンはリュノの手を握った。

 

リュノ「!」

 

リュノは突然のことに驚いていた。

 

アレン「君がカグツチと会っている子か!」

 

リュノ「えっと…あなたは…」

 

アレン「俺はアレン!カグツチの仕事仲間だ!よろしくな!」

 

リュノ「えっと…その…」

 

カグツチ「アレン。その子が怯えてるだろ。離れろ」

 

アレン「おっとそれは悪い」

 

パッ

アレンはすぐに手を離した。

 

カグツチ「すまない。アレンは俺の仕事仲間だ。君の魔法の練習を見たいと言ってな。すまないがよろしく頼む」

 

リュノ「は、はい。分かりました」

 

カグツチ「アレン。何もするなよ」

 

アレン「おう!」

 

カグツチとリュノは魔法の練習を始めた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ビュォォォォォォォォ!!

リュノは大きな竜巻を発生させた。

 

アレン「おぉ、すごい」

 

カグツチ「…」

 

カグツチはその竜巻を見ていた。

 

ビュォォォォォォォォ!!

リュノの竜巻はとても大きく、周囲に強い風を発生させた。

 

カグツチ「…」

 

ビュォッ…

すると少しだけリュノの竜巻が揺らいだ。カグツチはその一瞬を見逃さなかった。

 

カグツチ「ダメだ。マナが分散している」

 

ビュォォォォォォォォ…

すると竜巻がすぐに消え去った。

 

リュノ「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

 

リュノは少し疲れていた。

 

カグツチ「…」

 

スタスタスタスタ

カグツチはリュノのところに向かった。

 

リュノ「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

 

リュノは額に汗をかいていた。

 

カグツチ「最初の方は上手くできてる。でも時間が経つと段々とマナが分散している」

 

リュノ「はい…すみません…」

 

カグツチ「風属性魔法は一見大きく見えるが、マナは風の中心にしかない。周りの風はただの飾りだ。しかし中心にあるマナが揺らいでしまうと、外側の風も揺らいでしまう。だから中心のブレを無くせばもっと長時間安定して魔法を持続させることができる」

 

リュノ「は、はい…」

 

カグツチ「…少し休憩するか」

 

リュノ「はい…」

 

リュノはその場に座り込んだ。

 

カグツチ「…」

 

スッ…

カグツチはリュノの横に座った。

 

アレン (多分魔力は申し分ないんだろうな。でも強すぎるが故に制御ができていない。一瞬だけ見えた風の揺らぎ…まだ制御しきれていないんだろうな)

 

アレンもカグツチ同様、風の揺らぎを見逃していなかった。

 

カグツチ「なぁリュノ」

 

リュノ「はい」

 

カグツチ「その杖…スカーレット魔法道具店の杖だろ」

 

リュノ「!」

 

カグツチ「見たことある。自分の魔力によって杖の大きさが変化するやつだ。俺も触れたことがある」

 

リュノ「ど、どうでしたか」

 

カグツチ「俺も君くらいの大きさになった。でも母が買うのを拒否した。強い力はやがて制御が効かなくなる。買うなら魔力と魔法の制御ができてからにしなさいとな」

 

リュノ「な、なるほど…」

 

カグツチ「前の杖なら上手く制御できてたはずだ。今の杖だとやはり勝手が違うから少しブレている。それが上手くできれば君はもっと強い魔法使いになれるだろう」

 

リュノ「あ、ありがとうございます!」

 

アレン「ねぇねぇリュノちゃん」

 

リュノ「!」

 

アレンがリュノの前に座った。

 

アレン「風属性魔法を操るなら、同じ方向に一定の魔力を注ぎ続けなきゃダメだよ」

 

リュノ「一定の魔力を?」

 

アレン「そう。君が起こした竜巻…あれはすごいと思った。でも少し魔力が強く現れる部分があった。それのせいでさっきカグツチから聞いたと思うけど、揺らぎが生じた。風属性魔法は同じ方向に一定の魔力を注ぎ続けて初めて制御したことになるから次はそれを意識してみて」

 

リュノ「は、はい!ありがとうございます!」

 

カグツチ「よく知ってるな。アレン」

 

アレン「あぁ。俺の知人が風属性魔法の適正者でな、よくそいつの話を聞いたもんだ」

 

カグツチ「なるほど、だからか」

 

リュノ「その方のお名前はなんて言うんですか?」

 

アレン「ミューズってんだ。女だから気が合うんじゃねぇかな」

 

リュノ「ミューズさん…」

 

カグツチ「いい機会だ。俺が教えられない時はその人に教えてもらうといい」

 

リュノ「えっ…いいんですか?」

 

アレン「まぁあいつは世話好きだからな。教えたがりだし引き受けてくれるだろうよ」

 

カグツチ「よかったなリュノ」

 

リュノ「はい!」

 

アレン「じゃあカグツチ。俺はミューズのところに行ってくる。俺が来るまで待っててくれよ」

 

カグツチ「あぁ」

 

アレン「じゃあな!リュノちゃん!」

 

リュノ「はい!」

 

ゴォォォォォォォ!ビュン!

アレンは炎を纏って空を飛んだ。

 

リュノ「えっ…アレンさん…箒使ってない…」

 

カグツチ「あぁ。俺たち火属性魔法の適正者は火の力で空を飛ぶ。箒に乗ると燃えるからな」

 

リュノ「な、なるほど…」

 

カグツチ「逆に風属性魔法は箒に乗れば風を味方に付けられるから速く飛ぶことができる」

 

リュノ「それも制御が必要…ですか」

 

カグツチ「まぁな。特に方向転換の時にはな」

 

リュノ「が、頑張ります!」

 

カグツチ「その意気だ」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…天空殿

 

ここは風属性魔法の適正者しか住むことができない場所。他の属性魔法の適正者は天空殿が纏っている風のせいで入ることができないようになっている。しかし風属性魔法の適正者と一緒にいれば入ることができる。

 

アレン「はぁ…毎度の事ながらめんどい場所だ」

 

案内役「アレン様。こちらになります」

 

アレン「あぁ」

 

スタスタスタスタ

アレンはこの天空殿のことをよく知っているので、いつも案内役を頼んでいる。アレンはそのまま案内役とともに天空殿まで向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…天空殿 ミューズの部屋

 

天空殿に入ればあとは案内人は必要ない。風を纏っているのは天空殿の外側だけで、中に入れば何も問題は無い。

 

アレン「さて、ここだな」

 

アレンはミューズの部屋の前に着いた。

 

アレン「相変わらずでっけぇ扉だな」

 

ゴンッ!ゴンッ!

アレンは扉をノックした。

 

ギィィィィィィィィ…

すると扉が勝手に開いた。

 

アレン「…」

 

スタスタスタスタ

アレンはそのままミューズの部屋に入った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ミューズ「…あなたでしたか。アレン」

 

アレン「あぁ。俺だ」

 

ミューズ「珍しいですね。あなたが天空殿に来るのは」

 

部屋に入ると大きな机にある書類にサインしている女性がいた。彼女は緑色の髪をしており、丸い眼鏡を付けている。いかにも知的に見える人物だった。

 

アレン「ちょっと頼みたいことがあってな」

 

ミューズ「ふむ。私に頼み事とは…」

 

アレン「ちょっと俺の仲間がある女の子に魔法を教えてるんだ。その女の子は風属性魔法の適正者なんだが、俺の仲間は火属性魔法の適正者でな、教えてるのはほんの基礎的なことだけなんだ。だからお前に風属性魔法を教えてやって欲しいんだ。その子に」

 

ミューズ「ふむ。風属性魔法の魔法使いですか」

 

コトッ

ミューズはサインを終えるとペンを置いた。

 

ミューズ「いいですよ」

 

アレン「ほんとか!?」

 

ミューズ「はい。風属性魔法は私の得意分野です。なんでも教えられます」

 

アレン「やったぜ!サンキューな!ミューズ!」

 

ミューズ「…いえ、教えるのは好きなので」

 

アレン「それじゃ!俺はそれだけ言いに来たかったんだ!」

 

ミューズ「そうですか。それでわざわざ」

 

アレン「頼りにしてるぜミューズ!」

 

ミューズ「…えぇ、任せてください」

 

スタスタスタスタ

アレンはミューズの部屋を出た。

 

ミューズ「…」

 

スッ…

ミューズは椅子から立ち上がって窓の外を見た。

 

ミューズ「…あの人が私に言ってくるってことは相当なんでしょうね」

 

ミューズは空を見た。今日は晴れていた。

 

ミューズ「…久しぶりに腕を振るいましょうか。…あ、いつにするのでしょうか。日にちを聞くの忘れてました」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…リールの家近くの平原

 

アレン「おーいカグツチー!」

 

カグツチ「ん?帰ってきたみたいだな」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…スタッ!

アレンはカグツチの前に着地した。

 

カグツチ「で、どうだった」

 

アレン「いいってよ!」

 

リュノ「!」

 

カグツチ「そうか。じゃあ俺が教えることはなさそうだな」

 

リュノ「え?」

 

カグツチ「こいつがここを離れたあと、俺とその人が教えるよりもその人から教わった方がいいだろうって思ってな」

 

リュノ「あ…そういうことですか…」

 

カグツチ「だから今後はその人に教えてもらいな」

 

リュノ「…はい」

 

リュノは少し悲しげな表情を見せた。

 

カグツチ「さて、今日はどうするか…休むか?」

 

リュノ「いえ!もう少しだけお願いします!」

 

カグツチ「そうか。分かった。ところでアレン」

 

アレン「ん?」

 

カグツチ「その人との練習はいつなんだ?」

 

アレン「…あ」

 

カグツチ「?」

 

アレン「日にちのこと言うの忘れてた」

 

カグツチ「…」

 

アレン「…すまん…また行ってくるわ」

 

カグツチ「おう」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

アレンはまた天空殿に向かった。

 

カグツチ「…さて、こっちは練習するか」

 

リュノ「はい!」

 

カグツチとリュノはまた練習を始めた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

その夜

 

カグツチ「今日はここまでだ」

 

リュノ「ふぅ…」

 

ドサッ…

リュノは地面に座り込んだ。

 

カグツチ「よく頑張ったな。明日は学校だろう?家まで送ろう」

 

リュノ「ありがとうございます。でも1人で帰れますので大丈夫です」

 

カグツチ「そうか。なら気をつけな。夜道は危険だ」

 

リュノ「はい!ありがとうございます!」

 

カグツチ「あと…」

 

リュノ「?」

 

カグツチ「次回からはミューズとやらに教わるんだ。俺から教えることはこれまでだ」

 

リュノ「そ、そうですか…」

 

アレン「ミューズなら大丈夫!あいつは頭いいから教え方も上手だ!リュノちゃんならすぐにものにできるよ!」

 

リュノ「は、はい…」

 

カグツチ「…さ、帰りな。気をつけて」

 

リュノ「はい!」

 

ザッ…フッ…

リュノは立ち上がって箒を取り出した。

 

リュノ「ではカグツチさんアレンさん!今日はありがとうございました!」

 

カグツチ「あぁ」

 

アレン「じゃあね!リュノちゃん!また会おうね!」

 

リュノ「はい!」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

リュノはそのまま家に帰っていった。

 

カグツチ「…」

 

アレン「なぁカグツチ」

 

カグツチ「ん?」

 

アレン「リュノちゃん。とってもいい子だな」

 

カグツチ「…あぁ」

 

アレン「俺、あの子狙おうかな」

 

カグツチ「やめとけ。お前が大獄門に収監されるぞ」

 

アレン「あはは…手は出さないよ。あの子はまだ若すぎる」

 

カグツチ「お前は老けすぎだ」

 

アレン「何っ!?まだギリギリ20代だぞ!?」

 

カグツチ「歳が離れすぎてる」

 

アレン「お前…愛に歳の差は関係ねぇだろ…」

 

カグツチ「歳相応の考えを持て。あの子にも好きな人くらいはいるだろう」

 

アレン「う〜ん…」

 

カグツチ「さ、お前も帰りな」

 

アレン「あぁ、そうさせてもらおうかな」

 

パッ!

アレンは箒を取り出した。

 

アレン「じゃあカグツチ!また明日仕事場で!」

 

カグツチ「あぁ。また明日な」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

カグツチも箒に乗って家に帰った。

 

カグツチ「…さて、俺も帰るか」

 

スタスタスタスタ

カグツチは歩いて家に帰ることにした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…エレナ学院 校庭

 

ルル「はぁっ!」

ララ「はぁっ!」

 

ドゴォン!

ルルとララは学校で人形を使った魔法訓練をしていた。

 

ルル「空印(ソル)!」

ララ「空印(ソル)!」

 

バゴォン!

ルルとララは人形を地面にめり込ませた。

 

ルル「潰箱(カンデラ)!」

ララ「潰箱(カンデラ)!」

 

ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!

人形を囲うように透明な板状のものが出現した。

 

ガコッ!ギリギリギリギリ…

板状のものが人形を完全に包囲すると音を立てながらさらに圧迫していく。

 

べキッ!ギギギ…ギリギリギリギリ…

すると人形の腕や足がへし折れ、さらに胴体まで徐々に潰れていった。

 

ルル「はぁっ!」

ララ「はぁっ!」

 

グシャッ!

ルルとララが魔力を込めると人形が一瞬で潰れた。

 

ブゥン…

人形が小さく潰れると透明な板状のものが消失した。

 

ルル「よしっ、次」

ララ「よしっ、次」

 

ブゥン!ブゥン!ブゥン!ブゥン!

魔法陣が人形を次々と召喚した。

 

ルル「空印(ソル)!」

ララ「空印(ソル)!」

 

バゴォン!バゴォン!バゴォン!バゴォン!

召喚された人形たちはルルとララの魔法でまた地面にめり込んだ。

 

ルル「絶対零度(アブソリュート・ゼロ)!」

ララ「絶対零度(アブソリュート・ゼロ)!」

 

ビュォォォォォォォォ!!パキパキパキパキ!

ルルとララは人形たちを氷漬けにした。

 

ルル「潰箱(カンデラ)!」

ララ「潰箱(カンデラ)!」

 

バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!

ルルとララは氷漬けにした人形を圧縮して潰した。

 

ルル「…ふぅ」

ララ「…ふぅ」

 

ルル「やっぱり次元魔法は疲れるなぁ」

ララ「やっぱり次元魔法は疲れるねぇ」

 

ザッザッザッザッ…

ルルとララのところに一人の人物が現れた。

 

リール「全く…なんであなたたちは言うこと聞かないの?」

 

ルル「!」

ララ「!」

 

現れたのは2人の母親であるリールだった。

 

リール「次元魔法は使っちゃダメっていつも言ってるでしょう?」

 

ルル「お母さん」

ララ「お母さん」

 

リール「次元魔法は強力なの。あなたたちが制御できてるのは第1次元魔法だけ。残りの魔法はまだ不完全。それなのに使ったら」

 

ルル「次元が歪むかもしれないでしょ?」

ララ「次元が歪むかもしれないでしょ?」

 

リール「…はぁ、分かってるなら使うのを控えなさい」

 

ルル「でも使わないと慣れないよ」

ララ「でも使わないと慣れないよ」

 

リール「私がいるところで使いなさい。私がいない時に何かあったらどうするの」

 

ルル「はーい」

ララ「はーい」

 

リール「本当に分かったのかしら…」

 

ルル「そういえば何でここにお母さんがいるの?」

ララ「そういえば何でここにお母さんがいるの?」

 

リール「仕事が終わったから一緒に帰るために来たの」

 

ルル「そっか」

ララ「そっか」

 

リール「全く…一体いくつ壊したのよ。私の人形を」

 

ルル「分かんない」

ララ「分かんない」

 

リール「まぁ、直すことくらい簡単ですけど」

 

スッ…

リールは破壊された人形に掌を向けた。

 

リール「運命の時(アロアダイト)

 

パァァァァァァァァァ…

リールの魔法で人形たちが光に包まれた。

 

ガシャン!ガシャン!ガシャン!ガシャン!

すると飛び散った人形の欠片が集まってきて壊された人形が元に戻っていった。

 

ルル「やっぱりお母さんの魔法は凄いなぁ」

ララ「やっぱりお母さんの魔法は凄いなぁ」

 

ガシャン!

リールは全ての人形を元に戻した。

 

リール「さて、あとは片付けだけね」

 

ルル「僕がやる!」

ララ「私がやる!」

 

リール「ダメ。私がやります」

 

ルル「ぶー」

ララ「ぶー」

 

スッ…

リールは直した人形に掌を向けた。

 

リール「そこに在る者(テルラポート)

 

シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!

リールは人形たちを元の場所に戻した。

 

リール「さて、帰りましょうか。ルル、ララ」

 

ルル「はーい」

ララ「はーい」

 

ルルとララ、リールは一緒に家に帰ることにした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…???

 

メア「…またひとつ…尊き命が失われました」

 

イコイ「え?早くない?」

 

メイビス「また穢れの話か」

 

メア「やはり代償…この世界が生んだ穢れはまだ消えてはいなかった」

 

イコイ「どうする?私たちで消し炭にする?」

 

メア「…私たちの力はこの世界には負担が大きすぎる。私たちが動けばこの世界の命は燃え尽きるでしょう」

 

イコイ「じゃあどうするの?」

 

メア「…」

 

メイビス「メア」

 

メア「…私たちではどうにもなりません。この世界の行く末は彼らに任せるとしましょう」

 

イコイ「彼ら?」

 

メア「…リールさん」

 

イコイ「リール?」

 

メイビス「そういえばいたな。そんな名前のやつが」

 

メア「かつて2つも禁忌の力を手にした人物」

 

イコイ「えっ?そうだったの?」

 

メア「彼女ならこの異変も解決してくれるでしょう。力及ばない私たちの代わりに…」




〜物語メモ〜

アレン
カグツチの仕事仲間。女好きだがちゃんと人のことを見ている不思議な人物。今回はリュノのために最適な人物を紹介した。

ミューズ
アレンの友達。風属性魔法の適正者。風属性魔法の適正者しか住めないとされる天空殿に住んでいる。真面目で頭が良く、世話好きで教えたがりの性格。彼女は風属性魔法を熟知している。

空印(ソル)
ルルとララが使った魔法。11ある次元魔法のうちの1つで第1次元魔法に分類される。相手に点と線を与える力を持つ。点は相手に空気の塊をぶつけ、線は相手を思いのまま動かすことができる。

潰箱(カンデラ)
ルルとララが使った魔法。11ある次元魔法のうちの1つで第2次元魔法に分類される。相手を圧縮する力を持つ。対象物を透明な板状のもので包囲し、相手を押し潰す。透明な板状のものは目に見えないが、触れることはできる。

絶対零度(アブソリュート・ゼロ)
ルルとララが使った魔法。11ある次元魔法のうちの1つで第9次元魔法に分類される。相手を凍結させる力を持つ。氷属性魔法っぽいが、この凍結は無属性魔法由来のもの。故に火属性魔法で溶かすことはできない。凍ったものは破壊しないといけない。

運命の時(アロアダイト)
リールが使った魔法。11ある次元魔法のうちの1つで第7次元魔法に分類される。対象の時間を自由に動かす力を持つ。この魔法で物体を元に戻したり、人を幼くしたり、老いを与えたりすることができる。もちろん寿命を短くすることもできる。

そこに在る者(テルラポート)
リールが使った魔法。11ある次元魔法のうちの1つで第6次元魔法に分類される。特定の場所に一瞬で移動できる力を持つ。普通の移動魔法と違い、次元が歪んでいてもその干渉を受けない性質を持つ。結界で隔離されていたとしてもこの魔法を使うことで結界内に侵入することができる。


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第2章 2節 魔法都市 フレスベルグ編
第4話 魔法都市 フレスベルグ


リール「ルル、ララ。準備できてるの?」

 

ルル「できてるよ」

ララ「できてるよ」

 

ルルとララは何やら荷物をまとめていた。

 

オード「お、どこか行くのか?」

 

リール「今日からルルとララは実習なんですよ」

 

オード「実習?あ、どこかの国にいる魔法使いに色々と教えてもらうやつだっけ?」

 

リール「そうです。ルルとララは最高学年なので明日から実習です」

 

オード「そうか。寂しくなるな」

 

ルル「心配しないで」

ララ「心配しないで」

 

オード「心配はしてないよ。ルルとララは強いから」

 

ルル「まぁね」

ララ「まぁね」

 

リール「何かあったらちゃんとママに報告してね」

 

ルル「うん」

ララ「うん」

 

リール「あと実習先では次元魔法は使わないこと。ルルとララは光属性魔法が使えるんだからそっちを使いなさい」

 

ルル「うん」

ララ「うん」

 

リール「できないことはちゃんと相談すること。無理にやって間違いを起こすと一生引きずることになるからね」

 

ルル「うん」

ララ「うん」

 

リール「あと、自分たちじゃ解決できないことがあったらちゃんと頼ること。ママでもパパでも実習先の人でもいいから」

 

ルル「うん」

ララ「うん」

 

リール「あとは…」

 

オード「リール…心配しすぎだよ…」

 

リール「ルルとララはまだ魔法の扱いが上手くないんです。何かあっては遅いんですよ」

 

オード「あ、はい…」

 

ルル「そんなに心配しなくてもいいよ」

ララ「そんなに心配しなくてもいいよ」

 

ルル「ちゃんとやるから。成績に響くし」

ララ「ちゃんとやるから。成績に響くし」

 

リール「……そう。でも本当に何かあったらちゃんと言いなさい。分かった?」

 

ルル「うん」

ララ「うん」

 

リール「あと、2人の実習が上手くいくようにお守り渡しとくね」

 

スッ…

そう言ってリールは黄色に光る宝石を埋め込んだネックレスを渡した。

 

ルル「お守り?」

ララ「お守り?」

 

リール「あなたたちがちゃんとこの家に帰ってこれるように魔法をかけてます。これはずっと着けてて。実習が終わるまで」

 

ルル「分かった」

ララ「分かった」

 

リール「さ、行ってきなさい」

 

ルル「うん。行ってきます」

ララ「うん。行ってきます」

 

リール「体には気をつけてね」

 

ルル「うん。父さんも行ってくるね」

ララ「うん。父さんも行ってくるね」

 

オード「あぁ。行っておいで。しっかりな」

 

ルル「うん」

ララ「うん」

 

ガチャ

ルルとララは家の玄関を出た。

 

オード「…そういえばリール」

 

リール「はい」

 

オード「2人はどこの国に実習に行くんだ?」

 

リール「あれ、2人から聞いてませんでした?」

 

オード「え、うん」

 

リール「2人は魔法都市 フレスベルグというところに行きますよ」

 

オード「フレスベルグ?」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…エレナ学院

 

先生「では、これより3年生の実習を始める。場所はそれぞれ伝えてある。魔法陣も展開済みだ。向こうへ行ったら指導者が待ってくれている。あとはその方々に従うように」

 

生徒たち「はーい」

 

先生「では、今から名前を呼ぶから呼ばれたら来るように」

 

生徒たち「はーい」

 

それから先生たちはそれぞれ生徒たちの名前を呼んでいった。呼ばれた生徒たちは先生に誘導されてそれぞれの魔法陣によって転送された。そしてルルとララは最後の方で呼ばれた。

 

先生「ルル、ララ」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

スタスタスタスタ

ルルとララは荷物を持って先生の前に出た。

 

先生「2人は同じところだな」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

先生「魔法都市 フレスベルグか。あそこは強い魔法使いが多い。学べることも多いだろう。しっかりな」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

先生「…フレスベルグに行く魔法陣はあれだ」

 

そう言って先生は右に指をさした。そこには緑色の魔法陣が展開されていた。

 

先生「フレスベルグに行くのはルルとララだけだ。心細いだろうが、頑張れよ」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

スタスタスタスタ

ルルとララは荷物を持って魔法陣の上に立った。

 

先生「…いくぞ」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!

ルルとララは光に包まれ、2人は魔法都市 フレスベルグへ転送された。

 

先生「…頑張れよ。2人とも」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…魔法都市 フレスベルグ

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!

ルルとララは魔法都市 フレスベルグに到着した。

 

ルル「おぉ!」

ララ「おぉ!」

 

ルルとララの前に広がるのはスペルビア王国では見ないような大きな建物と空を飛ぶ魔法使いたちだった。ルルとララはスペルビア王国以外を見たことがないため、とてもワクワクしていた。

 

ルル「ララ見て。絨毯が空飛んでる」

ララ「ルル見て。マナが見えてるよ」

 

ここ魔法都市 フレスベルグでは、箒の他に絨毯や杖に乗ってる人もいれば箒に乗らずに空を飛んでいる人もいる。おまけにただの荷物ですら宙に浮いている。

 

ルル「ほんとだ。マナが見える」

ララ「普通なら見えないけどね」

 

しかもこの国は他国と比べてマナの量と密度が高く、本来は見えないマナを視認することができる。マナは緑色の小さな玉として具現化している。

 

ルル「そういえば指導者は?」

ララ「そういえばいないね?」

 

ルルとララは周期を見渡した。しかしそれらしき人は見当たらなかった。

 

ルル「さて、どうしようか」

ララ「さて、どうしようか」

 

ルルとララはとりあえず近くの休憩所で待つことにした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ルルとララが休憩所で待ち始めてから少し時間が経った。その間、指導者は全く姿を現さなかった。

 

ルル「ここのマナはすごいね。人懐っこい」

ララ「手を出さなくてもくっついてくるね」

 

ルル「というか遅くない?指導者」

ララ「ほんと、通知してたのかな」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

すると空から箒に乗って休憩所に向かう人がいた。

 

ルル「…ねぇララ」

ララ「…ねぇルル」

 

ルル「…誰かこっちに来るね」

ララ「…誰かこっちに来るね」

 

???「わわわわわわわっ!!」

 

ドゴォン!

するとルルとララの目の前に何かが落ちてきた。

 

ルル「!!」

ララ「!!」

 

???「いったたた…」

 

パラパラパラパラ…

煙の中から誰かの姿が見えた。

 

???「あちゃー…また直さないとなぁ…」

 

煙が少しずつ晴れてくるとその人の姿を視認することができた。

 

ルル「!」

ララ「!」

 

その人は緑の髪色に丸いメガネをかけている。髪色はリュノにそっくり。そしてその人の近くには箒が落ちていた。背はルルとララよりも少し高め。

 

???「あっ!驚かせてしまってすみません!お怪我はありませんか!?」

 

その人がルルとララに気づくとすぐに声をかけてきた。ルルとララは突然声をかけられて驚いた。

 

ルル「あ、えっと…大丈夫です…」

ララ「あ、えっと…大丈夫です…」

 

???「すみません…いつものことなので…またここも直さないと…」

 

ポワァァァァァァァ…

するとその人は魔法で壊れたところを直した。

 

???「よしっ。これで大丈夫」

 

その人は壊れたところを綺麗に直した。

 

???「あのーすみません。ひとつ聞いてもいいですか?」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

???「こちらに双子の魔法使いの方が来ませんでしたか?今日から実習だと聞いてまして…」

 

ルル「…」

ララ「…」

 

ルルとララは今の惨事を見てこの先のことが不安になった。

 

???「そういえばあなたたちそっくりですね。もしかしてあなたたちが…」

 

ルル「…はい。それ僕たちのことです」

ララ「…はい。それ私たちのことです」

 

???「……えっ!?嘘っ!!じゃあ私…これから魔法を教える子の前であんな失態を…」

 

その人は頭を抱えた。

 

???「なんてことを…やっちゃった…」

 

ルル「あの…とりあえずどうすれば…」

ララ「あの…とりあえずどうすれば…」

 

???「あ、すみません!まずは自己紹介から!」

 

その人はメガネを直しながら自分の名前を言った。

 

ミラ「私はミラ・ユグリスと言います!よろしくお願いします!」

 

ルル「あ、ルルです。よろしくお願いします」

ララ「あ、ララです。よろしくお願いします」

 

ミラ「ルルさんとララさんですね!よろしくお願いします!」

 

ミラは深く頭を下げた。

 

ミラ「ところでお聞きしたいことが…」

 

ルル「?」

ララ「?」

 

ミラ「おふたりはいつも同じタイミングで話してると思うのですが、双子ってそういうものなのですか?」

 

ミラはルルとララが同時に言葉を発していることに疑問を持っていた。

 

ルル「いえ、そういうわけではないです」

ララ「いえ、そういうわけではないです」

 

ルルとララはきっぱりと否定した。

 

ルル「僕たちだからです」

ララ「私たちだからです」

 

ミラ「へ、へぇ…不思議ですね」

 

ミラは不思議そうにルルとララの顔を見る。

 

ミラ「…さて、お互いに自己紹介も終わったことなので…行きましょう!」

 

ルル「どこへですか?」

ララ「どこへですか?」

 

ミラ「ルルさんララさんが泊まる家です。…というか私の家なのですが」

 

ルル「分かりました」

ララ「分かりました」

 

ミラ「では箒を出して…」

 

ポンッ!

ミラは箒を取り出した。

 

ミラ「2人は箒で空飛ぶのかな?」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

ポンッ!ポンッ!

ルルとララは箒を取り出した。

 

ミラ「よしっ。じゃあ…」

 

スカッ…スカッ…

ミラは取り出した箒を手に取ろうとした。だがさっきまでそこにあった箒がなくなっていた。

 

ミラ「あれ!?箒は!?私の箒は!?」

 

ミラは必死に箒を探す。

 

ルル「あの、ミラさん」

ララ「あの、ミラさん」

 

ミラ「な、なんですか?」

 

ルル「あれ…」

ララ「あれ…」

 

ルルとララは空を指さした。

 

ミラ「?」

 

ミラはルルとララが指さした方を見た。そこには勝手に空を飛んでいるミラの箒があった。

 

ミラ「えっ!?私の箒!?」

 

ボワッ…

ミラは箒を取りに行くために自分の体にマナを纏った。

 

ルル「!」

ララ「!」

 

ヒュッ!

マナを纏ったミラはそのまま空を飛んだ。

 

ルル「えっ…」

ララ「えっ…」

 

ルルとララは箒を持ってないのに空を飛んでいるミラに驚いていた。

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

ミラは箒まで一気に飛んだ。

 

ミラ「い〜…よっと!」

 

スカッ…

ミラが手を伸ばして箒を取ろうとしたが、寸前のところで箒が勝手に動いてしまった。

 

ミラ「あっ!!」

 

ヒュゥゥゥゥゥ!

ミラはすぐに方向転換してまた箒に近づいた。

 

カタカタカタカタ…ヒュッ!

ミラが方向転換すると箒はミラから逃げるように飛んでいった。

 

ミラ「あっ!ちょっ!!」

 

ビュン!

ミラは飛ぶ速度を上げて箒に接近した。

 

ミラ「んっ…ちょっと!」

 

パシッ!!

ミラは頑張って手を伸ばした。そのおかげでミラは箒を手にすることができた。

 

ミラ「やった!」

 

ヒュッ!

ミラはすぐに箒に乗った。そして箒にマナを纏わせることに成功した。

 

フワフワ…フワフワ…

マナを纏うことで暴れていた箒が落ち着いた。

 

ミラ「はぁ…よかったぁ…」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…

ミラはそのままゆっくりとルルとララの所へ戻った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ミラ「ごめんねルルさんララさん…」

 

ルル「いえ…」

ララ「いえ…」

 

ミラ「では改めて行きましょうか。私の家に」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

ヒュゥゥゥゥゥ…

ミラ、ルル、ララは箒に乗ってミラのお家に向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…ミラの家

 

ルルとララはミラの家に着いた。ミラの家は大きな御屋敷でミラがお嬢様じゃないかと疑うほどだった。しかしミラの見た目からはそんな風に見えない。

 

ルル「大きい」

ララ「大きい」

 

ルルとララはこれほどまでに大きな家を見るのは初めてだった。

 

ミラ「ここが今私が使っているお家です。これからはルルさんララさんの家にもなりますよ」

 

ルル「おぉ…」

ララ「おぉ…」

 

ミラ「ではみなさんにあなたたちのことを紹介しますので入りましょう」

 

スタスタスタスタ

ミラ、ルル、ララは御屋敷の中に入っていった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…ミラの家 玄関

 

ガチャ…ギィィィィィィィィ…

ミラは大きな扉を開けた。すると中は見た目通りの広い空間が広がっていた。真正面には2階に上がるための大きな階段があり、左右にはいくつも扉がある。恐らく廊下や別の部屋に繋がっているのだろう。

 

???「お帰りなさいませ。お嬢様」

 

ミラが玄関を開けて中に入ると目の前に女性がいた。その人は黒い服に身を包み、髪は長く、綺麗に整えられていた。

 

ミラ「ただいまオルコット。今日は新しい子を紹介するね」

 

オルコット「はい。承知しております。して、集合時間には間に合いましたか?」

 

ミラ「ぅっ…」

 

ミラは言葉が詰まった。それを見たオルコットは察した。

 

オルコット「…間に合わなかったんですね」

 

ミラ「だって!だってだって!…途中で箒が暴走しちゃって…」

 

オルコット「だからあれほどメンテナンスをして下さいと…」

 

ミラ「ぅっ…」

 

ルル「…」

ララ「…」

 

ルルとララはその様子を見ていた。するとオルコットがルルとララの方を見た。

 

オルコット「あなた方が新しくここに住まわれるルル様とララ様ですね」

 

ルル「さ、様…?」

ララ「さ、様…?」

 

オルコット「私の名前はオルコットと言います。ミラお嬢様の付き人です。よろしくお願いします」

 

ルル「あ、よろしくお願いします」

ララ「あ、よろしくお願いします」

 

ミラ「ねぇオルコット」

 

オルコット「はい」

 

ミラ「この子たちのお部屋ってできてる?」

 

オルコット「はい。すでに部屋は準備しております。ルル様、ララ様は同じ部屋の方がいいですか?」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

オルコット「承知しました。お部屋の方は準備してありますのでご案内します」

 

ルル「あ、お願いします」

ララ「あ、お願いします」

 

ミラ「じゃあお願いねオルコット。私ちょっと工房に行くから」

 

オルコット「はい。お任せ下さい」

 

ミラ「じゃあねルルさんララさん。また夜に!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!

ミラは魔法陣を使って工房まで移動した。

 

オルコット「…では行きましょうか。お部屋はこちらです」

 

スタスタスタスタ

オルコットはルルとララを部屋に案内した。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…ルルとララの部屋

 

ガチャ…

オルコットはとある一室の扉を開けた。

 

オルコット「こちらがルル様とララ様のお部屋になります」

 

ルル「おぉ…」

ララ「おぉ…」

 

ルルとララの部屋はとても綺麗で豪華だった。ベッドに机、ベランダなどがある。

 

ルル「これ…僕たちの部屋…」

ララ「これ…私たちの部屋…」

 

オルコット「はい。特にルールはありません。ご自由にお使いください」

 

ルル「あ、ありがとうございます」

ララ「あ、ありがとうございます」

 

オルコット「荷解きが済んだら夕食までお休みください。夕食時にはお呼びしますので」

 

ルル「はい」

ララ「はい」

 

オルコット「では私はこれで」

 

スタスタスタスタ

オルコットはその場をあとにした。

 

ルル「…じゃあ入ろっかララ」

ララ「…じゃあ入ろっかルル」

 

スタスタスタスタ

ルルとララは部屋に入った。その後2人は荷解きを済ませ、夕食までゆっくり休むことにした。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ルルとララが荷解きを済ませて何時間か経った。

 

コンコンコン…

突然部屋の扉がノックされた。

 

オルコット「ルル様、ララ様。お夕食の準備ができました」

 

ルル「…」

ララ「…」

 

ルルとララは眠っていた。

 

オルコット「…ルル様?ララ様?」

 

オルコットは何度か名前を呼んだが、全く反応がなかった。

 

オルコット「…失礼します」

 

ガチャ…

オルコットは静かに扉を開けて入った。

 

オルコット「…」

 

オルコットは部屋の中を見渡しながらルルとララを探した。

 

ルル「…」

ララ「…」

 

ルルとララはベッドの上で眠っていた。

 

オルコット「…眠っているだけでしたか。何かあったのかと思いましたよ」

 

ユサユサ…ユサユサ…

オルコットはルルとララの体を揺すった。

 

オルコット「ルル様、ララ様。お夕食の準備ができました」

 

ルル「ん〜…」

ララ「ん〜…」

 

オルコット「ルル様、ララ様。お夕食の準備ができました。食堂の方へご案内しますので、起きていただけますか?」

 

それを聞いたルルとララはパッと目が覚めた。

 

ルル「あ、オルコットさん…」

ララ「あ、オルコットさん…」

 

オルコット「お夕食のお時間ですよ」

 

ルル「あ、すみません!寝てました!」

ララ「あ、すみません!寝てました!」

 

オルコット「いえ、大丈夫です。食堂の方へご案内いたします」

 

ルル「お願いします!」

ララ「お願いします!」

 

スタスタスタスタ

オルコット、ルル、ララは食堂へ向かった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…食堂

 

ルルとララは大きな扉の前に着いた。

 

オルコット「ここが食堂です。朝、昼、晩はこちらでお食事をお願いします」

 

ルル「はい!」

ララ「はい!」

 

オルコット「では…」

 

ギィィィィィィィィ…

オルコットは扉を開けた。すると中には大きな机とたくさんの椅子が並べてあった。

 

ルル「えぇ…」

ララ「えぇ…」

 

ルルとララはあまりの光景に言葉が出なかった。

 

ミラ「あ!ルルさんララさん!」

 

ルルとララが声のした方を見るとミラが1番手前の席に座ってご飯を食べていた。

 

オルコット「ルル様とララ様はミラお嬢様の前の席になります」

 

ルル「あ、はい。分かりました」

ララ「あ、はい。分かりました」

 

スタスタスタスタ

ルルとララは席に着いた。

 

オルコット「ではルル様、ララ様。私は外にいますので何かあればお申し付けください」

 

ルル「わ、分かりました」

ララ「わ、分かりました」

 

オルコット「では、失礼します」

 

スタスタスタスタ

オルコットはその場をあとにした。

 

ミラ「よしっ!じゃあルルさんララさん!一緒に食べましょう!」

 

ルル「は、はい」

ララ「は、はい」

 

ルルとララはミラと一緒に夕食を楽しんだ。ルルとララにとって初めて食べるものがたくさんあったのでその時はミラかオルコットに頼んで食べ方を教わった。




〜物語メモ〜

魔法都市 フレスベルグ
この世界で最も魔法が発展している国。名前に都市とあるが、見た目は他の国と大して変わらない。フレスベルグはこの世界で最もマナの量が多い場所にあり、その事もあって本来は目にすることができないマナを視認することができる。また、この国の国民は全員魔法を使うことができる。攻撃魔法や補助魔法、日常魔法など、種類も最多である。ちなみにこの国には年に一回ほど魔法に関する試験が行われており、他国からわざわざ来るほどのもの。この試験に合格すれば実力ある魔法使いと証明する勲章が与えられる。

ミラ
魔法都市 フレスベルグでのルルとララの指導者。
本名はミラ・ユグリス。
ちょっと抜けてる人。
オルコットという付き人もいる。

オルコット
ミラの付き人。
何でも完璧にこなす人。
真面目な性格で曲がったことが大嫌い。
勝負なら正々堂々と行う派。


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