ウツシ教官「やあ愛弟子!!」 (食卓の英雄)
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ウツシ教官「やあ愛弟子!!」

ウツシ教官が面白……好きで書いた。正直あんまり出てないような気がするけど。


「待っていたよ我が愛弟子!これからレーティングゲームに向けて君に狩猟技術を授けようと思う!そろそろいい塩梅だからね、これを突破したらハンターの資格をあげようっ!準備が出来たら声をかけておくれ!」

「ウツシ教官!?先回りしていたんですか!?」

「はは、俺は教官だからね。余程のことでもないと弟子より遅れる事はないさ」

「教官…!ぃよしっ、負けられない戦いなんだ!それに加えて、ハンター資格まで関わってると来た!これで燃えない男はいねぇ!!今すぐにでもやってやりますよ!」

「おお…流石は猛き炎。やる気まんまんだね!よろしい、じゃあ今から基本的な武器の扱い方を教える!」

「おお…!とうとう狩猟武器を…!…やる気湧いてきたぁーっ!」

 

 今、ある山の中にて、二人の男が会話を交わしていた。かたや学生服に茶髪のいかにもな男子高校生と、各部に鱗や甲殻によって造られた軽鎧を身に纏う男。

 なんとも奇妙な絵面だが、この会話を聞けば専門用語には首を傾げざるを得なくも、熱心な生徒とその教官に見えることに違いない。

 

「………何でいるのかしら?」

「魔力が一切無いので転移も出来ない筈なのですが…」

「あれが、一誠さんのご師匠様…」

「全く目に追えませんでした……」

「うーん、というか途中から消えてた様な…」

 

 ここが悪魔の所有する山であるということを除けばだが。

 

 熱血師弟の弟子の方。兵藤一誠は悪魔である。

 いや、正確には悪魔に成ったと言えるだろう。

 その身に宿る神器(セイクリッド・ギア)を危険視した堕天使によって殺害されるが、偶然にも悪魔であるリアス・グレモリーを呼び寄せ、彼女の眷属悪魔として転生した、転生悪魔なのだ。

 そしてこの山にいる理由。それは恩悪魔であるリアスの婚約者。ライザー・フェニックスとの、リアスの婚約問題を賭けてのレーティングゲームへ向けての鍛錬の為。

 

 レーティングゲームといえば、悪魔とその眷属同士、駒の特性や様々な戦略を用いて戦い合う悪魔の遊戯である。各悪魔は(キング)女王(クイーン)騎士(ナイト)僧侶(ビショップ)戦車(ルーク)兵士(ポーン)という、チェスの駒と同じ役職を与えられ、それぞれで特性も違う。本来ならば、その特性を活かした戦略等が見所だが、リアス陣営の眷属の数は少ない。王、女王、騎士、戦車、兵士がそれぞれ一人きりなのだ。対するライザー陣営は全駒を埋めたフルメンバー。数だけが全てではないものの、今のリアス陣営にとってはあまりにも苦しいものであった。

 

 よって、一週間というあまりにも短い期間ではあるものの、僅かでも戦力を増強させる為、人としての生活に囚われることのない、グレモリー家の別荘に来ていたのだが……。

 

「それじゃあ改めてハンター達の武器の説明をしよう。ハンターには剣士とガンナーがあり、それぞれ特徴があってだね……」

 

 この男、人間である。ついでに言うと、グレモリー家とは何の関わりも無い人間である。補足するが、人間の中にも退魔師や魔法使い、さらには神器保持者といった、裏の世界と密接に関わる人間はいる。

 ただこの教官を名乗る男はそのいずれの才も無いのだ。魔力は悪魔の子供より低いと言われた一誠を遥かに下回り、もはや人間の赤子レベル。聖なる武器や魔剣は持っていないし、神器なんて宿してはいない。ごくごく普通の、魔力が異様に低い人間の筈なのだ。…その筈なのだが…

 

「見るんだ愛弟子!これが大剣の基本的な立ち回り!慣れてないうちはしっかりと好きを見つけて溜め斬りを使ってくれ!ほら、愛弟子はこのボーンブレイドを使うといい。いい竜骨を使っているからかなり丈夫だぞ!」

「あれ、大剣?でも教官は双剣使いって前に…」

「ああうん。確かに俺は双剣使いではあるけれど、教官だからね。全ての武器種は問題なく扱えるさ。さあ、一緒にやってみよう!」

「はい!」

 

 この様に、一誠とは師弟関係に当たる様なのだが、色々とおかしいのだ。今も身の丈よりも鉄塊を持ち、それを手足の様に自在に振るっているではないか。

 

「わあ、イッセーさんもあの様な武器を使うのですね」

「あの大剣、竜の骨で出来てるんですか…」

「あらあら、もしそうだとすれば、かなり大型の……」

「理屈のつかない力といい、一誠くんとの関係といい、彼は一体何なんだい?」

「イッセーに戦い方を覚えてもらうのには感謝しているのだけれど…ねぇ?」

 

 憂うような、疲れたような目つきで再び問題の男を見やる。男は一誠の指導と応援に夢中な様だ。と思ったら、先程の大剣技を一誠がそっくりそのまま模倣したではないか。これには剣士である木場もびっくり。

 何せ、一誠の力はお世辞にも強いとは言えず、神器『赤龍帝の籠手』によるブースト抜きでは、悪魔としてはあまりに貧弱な上、あそこまでの大剣を振るった経験は疎か、竹刀すらまともに振ったことがない。とてもあれ程の一撃を繰り出せる訳が無い。

 

「よっしゃ!見てましたか教官!今ので成功ですよね!?」

「ああ!うまいぞ愛弟子!いいハンティングエッジだった!この他にもバンバン教えていくからよく学ぶように!」

「はい!」

 

 一誠は顔を輝かせて今にも踊りだしそうで、ウツシ教官はそれはそれは我が事のように喜び褒める。その光景を見ていると、何だか警戒している自分達が途端に馬鹿らしく見えてきてしまい、成果を出した一誠に負けぬ様に、と各自訓練を開始したのであった。

 

 因みにだが、リアス率いる眷属諸君は、一誠が指南役としてウツシ教官を呼んだと思っているが、この男、呼ばれてもいないのに勝手に来ているのである。更に言えば、一誠は鍛錬をすることも場所も伝えていない。

 

……何故居るのだろうか。きっと聞いたところで無駄なのだろう。彼は教官なのだから。

 

 彼はウツシ教官。本名不詳。自称カムラの里出身。自称元ハンターの現教官。明らかな不審者であるのだが、悪い人物ではない。彼はウツシ教官で、それ以上でも、それ以下でもないのだから。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 そして待ちに待ったレーティングゲーム当日。

 試合が始まるまでの僅かな待機時間。いつもの様にオカルト部部室に集まっていたが、程よい緊張感に包まれている。特に見違えたのは、直接の指導を受けていた一誠。その気迫は一週間前とは大きく異なり、まさに猛々しい焔の如く。しかして程々に余裕もある。

 そこへ入り込む影が一つ。何を隠そう、我らがウツシ教官だ。

 

「やあ、愛弟子よ、とうとうこの日が来たね。俺から言えることは一つ。頑張ってくれ!…これだけさ」

「ウツシ教官……!!」

 

 微笑ましい師弟の1幕に皆が微笑みを浮かべる中、リアスだけは違う。

 

「あの…何でここにいるのかしら?今から結界が張られるのよ?というか本当に何処から入ったの…?どこも開いて無かったし、常に警戒してたのよ…?ねえ貴方、本当に人間かしら…?実は人外だったと言われても驚かないわよ……?」

 

 その表情が困惑に彩られ、それでも聞こえていなかったかのように無反応だ。

 

「あれ、これ私が可笑しいの?ね、ねえ、朱乃?裕斗?小猫?……アーシアも!?これって私が変なのかしら…!?何でみんな気にしていないのよ…?」

「この大事なクエストの前に、君たちに差し入れがあるんだ」

 

 そう言い、手に持っていた包みを開く。中の箱を開くと、甘い香りが部室に立ち込み、色とりどりの大きな団子が幾つも入っていた。

 

「……っ!!」

「うわ、すっげぇ美味そう。ウツシ教官、ありがとうございます!」

「これがカムラの里名物、うさ団子!カムラの里では一仕事する前にこのお団子を食べて元気をつけるんだ。ああ、懐かしい。あの2頭の龍さえ退けた愛弟子も……って話が逸れてたか。本当は自分で選んでもらいたかったんだけど、デリバリーする関係上こっちで決めさせてもらったよ。ちゃんと人数分あるから安心してね」

 

 その言葉に部室内が色めき立つ。その中でも最も変化が大きいのは塔城小猫だ。目がキラキラと輝き、これでもかと尻尾がぶんぶんと激しく暴れまわっていた。

 

「それと、ハンターになる為の試験だからね。いくつかの道具とクナイも渡しておくよ。それじゃ、俺はそろそろいくよ。死ぬことが無いとはいえ、油断だけはいけないからね!」

「はい!また後で!」

 

 「とうっ!」と言い窓から翔るウツシ教官。例の如くいつの間にか消え失せ、何処にも存在を感知出来なくなる。

 

「やっぱりおかしいわよね!?」

 

 その叫びに同意する者はいなかった。

 

 

――――…

 

 遂に始まったゲーム。亜空間で行われるそれを眺めるのは、双方の保護者。それぞれ幾人かの悪魔を連れ、ゲームの行方を見届けようとしていた。

 

「シュタッ!」

 

 そこに闖入者が一人。何もない場所から降って来たように見えるのは、流石教官だと言える。そして当然、突然現れた謎の人物に警戒しない筈もなく、周囲の悪魔が一斉に彼へと敵意をむき出しにし、各々が武器を手に取る。

 

「貴様っ、何者だ!!」

「俺はウツシ。ウツシ教官だ」

 

 そういうことじゃない。少しズレた回答に呆気にとられる悪魔一同。それをどう捉えたのか、直ぐにレーティングゲームへ目を向け、行動一つ一つに様々なリアクションを呈する彼に、堪忍袋の緒が切れたのか、一人の悪魔が斬りかからんとする。

 

「待ってくれ」

 

 そこに待ったをかけるのは現魔王の一人であるサーゼクス・ルシファー。まさか止められるとはつゆにも思っておらず、場の視線が全て集められる。

 

「彼は、リー…リアスの報告にあった、一誠くんの教官…師匠だ。どうか武器を収めて欲しい」

 

 その言葉に逆らえるはずもなく、渋々といった様子で元の位置へ戻る。

 

「始めまして。私はサーゼクス・ルシファー。君の弟子の主人、リアス・グレモリーの実の兄さ。この際どうやってここに来たかは聞かないでおくよ。…師ならば、弟子の活躍が気になるだろう?もし良ければだが、共に見守るというのはどうだろう?」

「なっ!?」

 

 その言葉にはフェニックス卿以外の悪魔達が言葉を失った。こんな何処のどいつともとれない、それこそ刺客の可能性もある得体の知れない男を他ならぬ魔王が誘うのだ。いい顔をするはずもない。

 そんな周囲の様子など、気にかけていないウツシ教官はその言葉に従い、少しだけ見えやすい位置へと移動した。

 

 未だ疑念と嫌悪感、及びに敵意を向けられる中でも涼しい顔をしているのは中々大物であるといえる。しかしこの男に注意を向けている間にも、レーティングゲームは進み続ける。今はちょうど一誠と小猫が体育館で相手方の兵士たちを倒した場面である。

 

 二人が揃って外へ駆けた時、それは起こった。

 二人を中心に起こる大爆発。一誠は小猫に庇われ無傷だが、肝心の小猫は身を守る術など無く直撃。如何に耐久に優れる戦車の駒とはいえ、不意打ちに加え実力の面でも襲撃者が勝っているのだ。

 

「撃破」

 

 襲撃者、ライザーの女王ユーベルーナは上空にて微笑む。もう一人を逃したのは残念だが、それも今の戦車よりも弱いことは一目瞭然。何やら人間の銃とやらを構えているが、悪魔にそんなものは効かない。一瞬悪魔祓いの武器かと身構えたが、今のリアスに手に入れられる物などたかが知れている。どう倒したものかと思案を巡らせ、そこではたと、戦闘不能の通告が無いことに気がついた。

 

「…けほっ」

 

 服こそ焼け焦げ、ボロボロになっているものの、本体への傷は浅い。まさかの耐久性と一撃で仕留められなかった屈辱が鬩ぎ合い、ユーベルーナの頭をかき乱す。

 

「小猫ちゃん!?色々と大丈夫か!?そ、そうだ、回復薬飲む?」

「……いえ、大丈夫です。何故かは知りませんがそこまでの傷ではありません。戦闘も行えます」

 

 体の調子を確認し、空へと拳を向ける小猫。これに動揺したのはユーベルーナだけではない。

 

「な…!?あの戦車の実力程度では今のをまともにくらって耐えきる筈が……。仮に耐えたとして戦闘が行える程は無い!」

「これも何かの術か…?」

「いや、きっと対策を施してきたのだろう。はっきりと戦う相手が分かっていたのだから、魔王の妹としてはいいと思うが」

 

 この様に、実力差を知っている者たちからすれば、瞠目する事であり、その原因をあーだこーだと言い合っている。

 

「ああ、流石ヨモギちゃんの団子だな!オテマエさんの味と伝統をきちんと引き継いでいる。素晴らしいっ!」

「…あれも君が?」

「うん?ああ、他地方の人からすると珍しいよね。実はウチの里ではクエスト前はうさ団子を食べるんだ。そうすると元気モリモリッ!狩りへの意欲がどんどん湧いてくるのさ!!」

「うーん、お互いの認識に齟齬があるような気がするなあ…」

 

 何事かと騒ぐこの場にて、普段どおりの余裕を見せるのはサーゼクス、フェニックス卿、そして最強の女王とも呼ばれるグレイフィア・ルキフグスくらいのものだ。

 そしてまたもや新たな胎動を見せるゲーム。これから先は目を離せない展開となる。

 

「フン…!私に貴様の神器は通用しな……!?」

「…驚いた。いつもより力が湧いてくる。さっきの魔剣も、砕かれたと思ったけど大丈夫そうだ。…さあ、続けようか」

 

 騎士同士の剣戟が。

 

「あああぁぁぁっっっ…………!」

「あらあら、もう気絶してしまいました。ここまで軟弱な筈は無いのですけど……。ですがまあ、これで一人撃破ですわ」

『ライザー様の“女王”リタイア』

 

 あまりに呆気なく終決を迎えた女王の空中戦が。

 

「部長!」

「一誠!?何でここに!?」

「下は木場と子猫ちゃんに任せてきました!」

「まだ赤龍帝の籠手も温存出来てます。足手まといにはなりませんよ!」

「ほう…随分と見違えたな。この一週間で余程成長したと見える。……が、勝つのは俺だ」

「ンなもんやってみなきゃ分からねぇだろうが!部長!攻撃の対処は任せました!その間に俺が削ります!」

「……分かったわ。無理だけはしないで」

「はい!」

 

 己の獲物を携え、ライザーへと向かい合う王と兵士。今ここに最終決戦の火蓋が切られようとしていた。

 

 最初は無謀な戦いに思えたそれも、始まってみれば中々どうして様になっているではないか。

 リアスの消滅の魔弾が空を舞い、炎の球をかき消し、それを補う様にしてボウガンから弾が吐き出される。弾が着弾する度にライザーの体は痙攣し、溜めの大きな技を出せず、だんだんと真綿で首を絞める様に追い詰められていくではないか。

 

「…なんと、今代の赤龍帝は才が無いと聞いていたが……誤りだったか」

「まだ神器を使っていないのか。正直、これは予想外だ」

 

 心の何処かでは一誠を侮っていた二人から、素直な称賛の言葉が投げかけられる。だが、それと同時に「しかし…」と言葉が続いた。

 

「オラオラオラァっ!……ん?もう弾切れか!?」

 

 簡単な話。実戦での扱いに慣れていないのだ。訓練では心がけていた事も、現場では崩れてしまうことも多い。サーゼクスも若い頃にそういった若手を数多く見てきたが故の心情だ。

 

 その隙を逃すはずもなく、拘束から逃れたライザーの矛先は真っ先に一誠へと向かう。原理は不明だが、どんな体制で受けようとも、必ず棒立ちになってしまうという苛立ちは到底許容できるものではなく、そのストレスと共に今打てる最大火力を解き放った。

 

「うああああァァァぁぁぁぁッッッ!!!?」

「一誠!!?」

「一誠さんッ!?」

 

 直撃した一誠の体は炎上し、火達磨状態になる。己の眷属の悲惨な光景を目にしたリアスの動きも止まってしまい、ライザーの攻撃を受けてしまう。

 

「うぐっ…一誠…!」

「フゥ…!フゥ…!あ、危なかった…!!クソッ!何て作戦を使ってくるんだ…!俺が不死鳥じゃなかったらとうの昔に死んでいたぞ…」

 

 しかしそれも終わった。ニヤニヤと余裕の笑みを取り戻し、リアスへと降伏を進める。「あの兵士をこれ以上苦しめたくなければ素直に負けを認めろ」と。思わず苦虫を噛み潰したような顔になるが、元々自分の問題なのだ。眷属を苦しませてまですることではない。大人しく負けを認めようと口を開いた時、意外なところから静止の声がかかった。

 

「わ、私は、こ「まだ諦めちゃ駄目ですよ部長!」っ!??」

 

 そこに立っていたのは誰であろう、兵藤一誠その人だ。身に纏う制服はところどころ焦げたり焼け落ちているが、その身には火傷の一つも無い。

 

「な…ど、どういう事だ!?何故俺の炎を食らっておきながら起き上がれる!?それに貴様にダメージは入っていた筈だ!火傷が無いとはどういう事だ!?」

「…何だ、歴戦だって言うからビビってたが、そんな事も知らねえのか。知ってるかライザー。炎やられはな、3回前転するとキレイサッパリ完治するんだぜ!!」

「「「いやそれはおかしい(わよね)(です)(だろ)」」」

 

 復活した一誠に悪魔たちは沸き立ち、とうとうどちらが勝つか分からないほどに白熱した戦いとなってきた。このまま不死鳥の力を駆使するライザーに軍配が上がるのか、神滅具保持者の勝利か。

 

「いくぜライザー。狩りは遊びじゃないって事を教えてやるよ!」

「ほざけ、木っ端悪魔!」

 

 二人の影が、今交わる――!

 

―――…

 

「あれも、君の仕込みなの「さあ〜、ここからだ!君の活躍を見せてくれ!あぁ、思い出すよ…。君を一流のハンターにする為訓練したあの日々をぉぅ!今こうしてその成長ぶりを目の当たりに出来てッ、俺はモーレツに感動しているぅぅぅッ!」

「がんばれ!君は強い!ここが踏ん張りどころだぞぉ、なぁ〜に、恐れることは一切ない!君が思っている以上に君は強い!強くて強くてしょうがない!君さえいれば、駒王の町は守り抜ける!」

 

 突然叫び始めたウツシ教官。この声は空間的に聞こえない筈の一誠にまで届き、一誠は更に気焔万丈してライザーを捕獲した所でレーティングゲームは終了。勝者はリアスチームである。

 

 正直謎が謎を呼ぶ訳のわからない勝敗ではあったが、勝ちは勝ち。リアスの頭が宇宙猫になった代償に得たものとして捉えるならば良い結果と言えるだろう。

 

「うん、よくやったぞ愛弟子よ!流石は猛き炎!素晴らしい戦略だった!俺が渡した道具も有効活用してくれて、もぉ、俺感激!」

「ハハハ、ちょっと常識とズレているけど、彼の場合、そっちの方が良いのかもね」

 

 さも当然のように肩を並べるこの二人に突っ込む者は居らず、和気藹々と先のレーティングゲームの感想を言い合う中、ふとサーゼクスの視線がある場所で固定され、何処かソワソワと落ち着きがなくなる。

 

「…所でウツシ教官、貴方が着けているそれは最近話題の『禍群の面』じゃないかな?しかも初回生産限定の雷狼の面。……どうやって入手したんだい?何か伝手でも…」

 

 見ていたのは腰に着けていた面。実は最近売れてきており、そのリアルな質感と独特の絵柄やモデルが様々な年齢層にヒットしたのだ。

 

「禍群の面の製作者は俺だよ。そうだ、お近づきの印…とまではいかないけど、よければ一枚好きなのをあげよう。どれも店売りじゃない面だよ」

「!いいのかい!?いやぁ…最近魔王業が忙しくて、いつも売り切れた後なんだよね。仕事の合間はグレイフィアにしっかり見張られてるから…。……そうだな、同じ赤と言うことで、この火竜の主面にするよ」

 

 こうして、フェニックス家にまつわる騒動は終わりを迎えた。

 残ったのは愛弟子の活躍を見れてホクホク顔のウツシ教官と、ハンター資格を入手しニヤついている一誠。そして妹の望まぬ結婚を回避出来たばかりか、専用の面まで貰えたサーゼクス達が最大の勝者だろう。

 

 

―――…

 

「愛弟子、今から君を正式なハンターとして承認する!」

「はい!」

「これからも驕ることなく、しっかりと精進する様に!」

「はい!」

「これからの愛弟子のハンター生活に幸運を祈るよ」

「はい!ありがとうございました!」

 

 

 きっと、彼らはいつまで経っても変わらないのだろう。世の中には数多のモンスター、未知のフィールド。新たな出合いと別れの繰り返し。さりとて、決して変わらない物もそこにはある。それはハンターとしての誇り。轟々と燃え上がり、全てを暖かく包むような大炎の如き綺羅星が―――。

 

「ねえ、だからそれは部室でやる必要はあるの?貴方は貴方でいつ勝手に入ってきたのよ?ねえ、ちょっと、聞いてるのかしら?一誠?イッセー?」

 

「「気焔、万丈!!!」」

 

『………結局、俺を使わなかったな…。べ、別に寂しいとかいう訳ではないぞ!本当だからな!』




感想、評価をじゃんじゃん下さい。乞食なのです。

正直原作未読な上にアニメも見てないので口調や展開が二次創作でしか知らない。
話の展開とかキャラとか色々教えてくれる親切な人がいたら続く。

因みに最終回は龍になったイッセーを教官が泣きながら操竜して終了


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