九尾がいく呪術廻戦 (meigetu)
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0話 幻想郷にて

幻想郷某所

 

とある一室で、一匹の化け猫と、一匹の妖狐が炬燵にくるまって暖をとっていた。

 

(あお)さま(あお)さま。(らん)さまのところに行かなくてもいいんですか?」

 

と可愛らしい化け猫だ聞いてきた。

 

「問題ないわよ(ちぇん)(らん)様からは(ちぇん)の様子を見てくるようにと言われて帰ってきたんだから。それよりも、妖術の操作は上手になったかしら?」

「はい、ちゃんと同時に式をとばすことができましたよ。」

「すごいじゃない。ご褒美に背中のしっぽでモフモフしてあげる。」

 

と、(ちぇん)を尻尾で捕まえてあげる。

 

「くしゅぐったいです。(あお)さま」

 

というのでかわいいなと思いもっと尻尾でぐちゃぐちゃしていると、玄関からおおきな音が聞こえてきた。

 

「やべ」

 

小声で言いつつ、名残惜しさを残しつつ、(ちぇん)を床に下す。

たぶん、結界の座標を計算する仕事から逃げたことに、(らん)が気づいたんだろう。

 

「どうしたのですか、(あお)さま」

「ねえ、(ちぇん)、多分もうすぐ(らん)様がここに来ると思うの。その時にね私のことが聞かれると思うからきかれたら、『(あお)さまは、ここには来ていない』と伝えてほしいの。」

「急にどうしたのですか?(あお)さま」

「ちょっと急用ができちゃってね。ごめんね(ちぇん)

 

と言って、炬燵がある部屋から出ていき、妖術を使って、近くにあった狐の置物と入れ替わるように姿を変化させた。

 

 

そこで聞き耳を立てていると、(らん)がかえって来たらしい。足音から考えるに相当おかんむりらしい。

 

「ねえ、(ちぇん)(あお)がどこに行ったのか知らない?」

 

よし、予想通り、うまいこと(ちぇん)が、(らん)を言いくるめてくれるだろう。そして、(らん)が別のところに探しに行ったらその間にまた(ちぇん)とあそぼうなどと考えていると、こんな声が聞こえてきた。

 

(あお)さまは、ここには来ていないと、(あお)さまが(らん)様に伝えてほしいと言ってました。」

「うん、そうありがとうね、(ちぇん)

「どういたしまして(らん)様。」

 

ん?ちょっと待って、そういうってことは、ばれないか?家に私がいるってことが...。

やべえ、逃げないと。

と急いで狐の置物から変化を解き逃げようとしている私の耳に激痛が走る。

 

「ミツケタ」

 

気が付くと、(らん)に耳をつかまれており、ホラー映画さながらの顔で見降ろされていた。

 

その後、(らん)に監視されながら、さぼった分の二時間分の仕事をさせられた。

 

____________________________________________________________

 

 

そんな一幕があった日の夕食時、(らん)が作った鍋を四人でつつきながら、今日起こった出来事を話していた。

すると(ゆかり)様が唐突に

 

(あお)、外の世界に興味があるかしら?」

 

と聞いてきた。

私は毎度のさぼり癖が原因で外に追い出されるのかと思ったので、私は

 

「さぼってしまいすみませんでした。」

 

と、頭を下げた。

 

「いやいやそういうことじゃないのよ」

 

と笑いながら(ゆかり)様は言った。

 

「私たちがなぜ、幻想郷を作ったのかあなたは覚えているかしら?」

「たしか...外の世界では私たち妖怪に対する恐れというものを人間が持たなくなってしまったからですか?」

 

(ゆかり)様はうなずきながら、

 

「そうね、詳しく言うと、私たち妖怪は人間の恐れなくして世界に存在することができない。それゆえに現代の科学技術が発達してしまった、外の世界では妖怪なんて存在しない、と考える人が多くなってしまった。だから、外の世界で生きていくことができなくなってしまったから、わざわざ幻想郷という場所を作ってある一定の人間を人里に入れ定期的に私たち妖怪が、妖怪に対する恐れをもらいそしてその見返りとして人里を守護するというものだね。」

 

そこで一息をつてから、(ゆかり)様は話をつづけた。

 

「そこで今回、外の世界で一つの異変を発見したの。もともと、外の世界にも、一定数は弱い呪霊はいることは知っていたのだけれど、最近これらの呪霊が力を持ち始めているの。」

 

「呪霊がですか...」

 

と、(らん)がつぶやく。

 

「そう、呪霊よ。ここからが本題なんだけど、今回は(あお)になぜ突然、呪霊が力を持つようになったのか?という調査と、あわよくば私たち妖怪に対する恐れを外の世界で確保し動きやすい環境を作るのが目的よ。」

 




八雲 (あお)
オリキャラ、八雲家から一人主人公としたかったが(ゆかり)様は忙しいし(らん)も幻想郷の管理で忙しそうだったので、登場させた。
もとから快楽主義で、(らん)の尻を追っかけていたら、いつの間にかに、八雲家に入ってた。今でもたまに伽をともにするらしい。


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1話 お狐様出発準備

こんな作品にUAが1000超えててびっくりしています
小説書き始めたばっかりの下手な作品ですが楽しんでくれると嬉しいです。


その後、(ちぇん)を除く三人で、今後の幻想郷に関する、大まかな行動指針を決めた。大まかな行動を言うと、

 

(ゆかり)様は冬の間、結界の維持のために妖力を回復するために、冬眠をする。

(らん)は、冬の間の幻想郷の管理。

私は、外の世界に出る、というものだ。

 

その中でも、私の目標は3つある。

1つ目は言わずもがな、外の世界の呪霊が強化された理由を探るというものだ。今回これを探るために外の世界に行くのであり、

最悪幻想郷内まで影響が出かねないので最優先的に探る必要がある。

 

2つ目は外の世界の人間を約200〜300人ほどさらってくるというものである。

人間という生物は、妖怪にとってとても有用な生き物であり、一部は、幻想郷内での列強達や、野良妖怪たちの食料用となる。残りは、人口が少なくなっていく人里に迷い人として住ませ一定の恐れを確保するためである。

(ゆかり)様は、こんな人間が一方的に搾取される状況を作りさらには多くの人々を巻き込んでおいて、人間と妖怪が共存する楽園などといいはるので余計にたちが悪い。

まあ、こんな環境を作らないと私達妖怪は生きていけないから仕方ないんだけどね。あとは(らん)が最後まで(ゆかり)様に従うというから最後まで付き合おうと思う。

 

3つめは、私達妖怪でも、外の世界で活動してもある程度問題ない環境を作ると言うものだ。

現代社会に生身の状態で、幻想郷内の妖怪が出れば個体差もあるが一週間ほどで、能力を低下させ、半年経てば自然消滅してしまう。それらを回避するために多くの準備が必要となってしまう。特に、定期的に人間をさらうために外に行く必要がある私達には大きな出費となってしまう。

それらをできれば抑えたいというのが、今回の目標だ。

 

そうこう考えているうちに大まかな化粧は終わった。

あとは、艶紅(つやべに)で書いて...

そこで後ろから視線を感じたので振り返る。

 

「あなた、どこに行くつもりなのよ...」

 

と、(ゆかり)様は()()()()()()な顔でこちらを見ていた。

 

「一応、吉原の方で、娼婦として働く予定でしたが...」

「娼婦で?どうやって情報収集するつもりだったの?」

「まずはじめに、吉原遊廓に行きます。」

「うん」

「その後、遣り手の婆を誑かします。」

「うん」

「そして、婆の助力をもとにして一気に花魁に駆け上がります。そして周りの男に媚びへつらって今回の情報収集をする予定でした。」

 

私が話し終えたあと、(ゆかり)様は大きなため息をついた。

なにか問題があったかしら。

私だって昔、実力で約半年程度で高級娼婦になることもできたし、第2目標の人間の捕獲だって、死んでも誰も気にしないならず者やゴロツキがいっぱいいるので、逆にやりやすいと思うんだけど...

 

「人選ミスったかしら...」

 

心外な、仕方がないので、私の完璧な計画を(ゆかり)様に伝えようとすると、

 

「吉原遊廓、潰れたわよ。」

 

と、言われ私の計画がガラガラと崩れていった。

 

その後、計画の再建を余儀なくされていることに絶望していると、(ゆかり)様は雑誌の中にある一枚の写真を見せてきた。

その写真には、ひらひらした服装を着た私好みの胸の大きい女性が載っていた。

 

「なんですか?これ」

「いわゆるアイドルと呼ばれる写真集ね。」

「アイドル?」

「あなたがわかりやすいように言い換えるのならば水茶屋の看板娘ね。」

「なるほど」

 

ペラペラと、雑誌を読みすすめていくと、一つの違和感があった。

 

白粉(おしろい)使わなくなったんですね。」

「そんなに意外だったかしら」

「平安の頃から私が幻想郷に来るまでずっと使われていたので意外です。」

 

ひとまず、化粧を落としてから、自身の妖術を用いて、様々な服を片っ端から着てみた。

いつの間にか、(らん)(ちぇん)も来ていたので一種のファッションショーになっていた。

 

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しかし多くのドレスというものや、ゴスロリという服を着てみたが、結局着物が一番似合うとみんなから言われ、着物で外の世界へおもむくこととなった。

 

 

 

 

 

 




主人公は江戸時代の中期あたりで幻想郷に移転してきて、そこから先の時代、一度も外の世界へ行ってないという設定です。


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2話 お狐様出発

2000UAありがとうございます。
ようやく呪術廻戦のキャラが出ます


「行ってきます。」

 

朝早く私は、みんなに見送くられながら、外の世界へと向かった。

 

__________________________________________________

 

結界を抜けるとそこには、冬の枯れ木の広がる山中にいた。

近くには、小さな祠がありここに妖力を通せば、幻想郷内に帰れるらしい。あたりを見渡してみると、外でも季節は冬のようで、枯れ木に周りを囲われていた。それと同時に、体のだるさを感じる。

 

「だるい...自分の存在が薄れているように感じる。」

 

私は、(ゆかり)様からもらった薬を口に放り込んだ。

 

「少しはマシになったかな、それでもあの黒い線はなんだ?」

 

山下を見てみると、小川に沿って何か黒いものがあった。

 

「ひとまず行ってみるか。」

 

妖力と呪力と容姿を一般的な人間レベルに見えるように抑制した後、山を下って行った。

 

「なるほどこれが、道路というものか。」

 

出発前に、(ゆかり)様と、(らん)に教えられたことを復習しながら、道路を見ていると背後から大きな音が聞こえてきた。

 

「敵襲か?」

 

と思い、ひとまず森の中へと身を隠す。すると、大きな鉄の馬?が、すごい勢いで道を走り去っていった。荷台の方には大きな丸太が20本近く乗っていた。見たものを脳内の辞書に照らし合わせてみると、車というものらしい。

 

「なるほど、人の世もなかなか便利になったな。」

 

と感慨に使っていた。

 

「ひとまず都に向かわなければ何も始まらん。」

 

占いを行うことで、どちら側に都があるのかを探る。その後、右側に向かって歩を進めた。

 

__________________________________________________

 

一日後

 

お狐様は、都についていた。

 

途中、お腹が空いて、周りを探って見ると、古ぼけた稲荷神社が近くにあった。軽く調べてみると、御供物の新鮮な油揚げを、発見した。

 

「うん、結構うまいな」

 

そう言いながら、供物を食べていると、鳥居の部分に陸奥国〇〇と書かれていた。今は陸奥国にいるとこがわかった。

供物の礼として、対妖怪用のお札と書置きを置いておいたが心優しき人の役に立てばいいだろう。

 

都会に入ってから気がついたことだが、とてつもなく空気が汚い。よくもまあ汚い空気で人間どもは生きているもんだ。

正直驚いている。

あとは、五重塔並みの大きさの建物が、各所にたっていることに立っていることがわかった。これは確か...ビルという建物だったか。

たった300、400年程度しかたってないのに良くもこんなに進歩できたものだ。

 

そのまま道のりに沿って進んでいくと、仙台駅という大きな文字が、大きな建物の上に立てかけられていた。建物の近くにある歩道橋の上をあるきながら、今後のことについて考える。

ひとまず情報収集が先決だ。ただでさえ、今どのように目標を達成するべきか、道筋が定まっていないうえに、外の世界の常識というものがまったくわからない。

でも誰に頼ればいいのか...

 

(ゆかり)様に頼るしかないのか?

とふと思い、頭を振る。

 

ただでさえ問題児が多い、幻想郷を管理している身の上で下手に仕事を増やさせるわけにはいかない。

そんなことを繰り返していたら最悪(らん)に嫌われてしまう。

 

「あの、どうかされましたか?」

 

と苦悩していると、唐突に声をかけられた。

振り返ってみると、黒髪でおかっぱ頭で、巨乳の女子がいた。すっごく私好みの女の子だ。

少し磨けば、絶世の美女になるだろう。

 

「すみません。初めて田舎から仙台という街に来たので、ここがどこだかわからなくて、できればこの地域について詳しく教えてほしいのですが...」

「いいですよー。話が長くなると思うので向こうの喫茶店で話しませんか?」

 

すごく、ぐいぐいくる子だな。

もしかしたら、ハニートラップというやつかもしれん。警戒だけはしておこう。

 

「お願いします。」

 

__________________________________________________

 

喫茶店内部はとても落ち着いた音楽が流れていた。

私は抹茶ラテ、話しかけてきた子は、カフェラテを頼みお互いにテーブルをはさんでお互い向き合っている状態で座った。

 

「すみません、わざわざありがとうございます。」

「いやいやいや、問題ないですよ」

 

手をワタワタとさせていてとてつもなくかわいい。

 

「ここは、陸奥国の仙台という場所で合っているか?」

「いやいや、ここは、宮城県仙台市という場所ですよ。」

 

さっそくやらかしてしまったらしい。

発言には気を付けなければ...

 

「すまない今のは冗談だ。ところで、仙台の美味しい食べ物があれば教えてほしいのだが。」

「やっぱりおすすめは牛タンですね。あとはひょうたん揚げもおいしいですよ。」

 

などと、話を始めた。

 

 

 



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3話 お狐様休憩中

UA3000ありがとうございます。

最後の部分違和感があったので直しました。



話を進めていくと、多くのことがわかった。

箇条書きにしてゆくと、

 

・私が現在滞在している場所は、宮城県仙台市という場所であること。

・現在話している、かわいい女は佐々木さんという名らしい。

・現在私が飲んでいるこの抹茶ラテという飲み物は、抹茶に、牛乳を混ぜ、砂糖を混ぜたものだということ。

・現在の通貨には円というものが用いられている。大体の価値としては、金一両あたり、現在で言う10万円らしい。噛み砕いていくと1文約25円となる。

・現在の首都は京都ではなく東京(江戸)であること。

 

などなど

 

現在にあるもののある程度のことは理解できるようにはなった。

 

「ところで、(あお)さんはどこからいらしたのですか?」

「山の中腹あたりの場所で暮らしていたよ。そのせいか、世間に疎くてね。」

 

とカラカラと笑って

 

「ところで、なぜ私に声をかけてくれたの?私からしてみたらとてもありがたいんだけど..」

「勘です。」

 

勘?と言われ頭を傾けていると

 

「私、高校でオカルト研究会に所属していて、今日、街の中にある怪異とやらを探していたんですよ。そして、街を歩いていたら、すっごい着物を着なれた美人さんがいたので、なにかあるとオカルト的な勘がピーンときたので、声をかけてみたんですよ。」

 

と話していた。

驚き、再度自分の身を調べてみる。

呪力は一般人並。

妖力もほぼゼロ。

獣耳の代わりに人間の耳があるし、後ろの9本の尻尾だって隠れている。

ここから見破るのは、最高クラスの陰陽師や呪術師でもむりだろう。

恐るべきは彼女の直感力。

と再度確認していると、声をかけられた。

 

「ところで、なにかオカルトで面白い話とか知ってませんか?」

 

これが目的だったと言わんばかりに詰め寄ってきた。

わざわざ現代のことを教えてもらった礼もあるし、この子に取り入り今際残っているかわからないが、呪術師となり、高い地位を得られれば、いい駒としても使えそうだ。直感力や容姿も捨てがたい。

ここまで考えた私は、こう話しかけた。

 

「じゃあ、呪霊というものは知っている?」

「呪霊ってなんですか!!」

 

と目をキラキラさせながら顔を近づけてきた。

私は、彼女の変なスイッチを押してしまったらしい。

この反応は、たぶん、呪霊や幽霊というものを見たことがないが、興味があるタイプだろう。

尻尾から変装用にと、(らん)から渡されたメガネを取り出しながら、一般人でも呪霊が見える呪いを付与してやる。

 

「これをかけて見て」

「わかりました!!」

 

すごい勢いで眼鏡を変えると、彼女はあたりを見渡し始めた

 

「何も対して変わらないように見えますが...」

「あそこの、肩を回しているおじさんのところを見てみて」

 

先に防音の結界を私達の周りに貼ってから、おじさんの方へと指を差す。指を向けた先には、おじさんの肩の上にエイリアンみたいなものが乗っている。

 

「ヒェ」

 

と、驚き私の腕を掴んできた。かわいい。顔をこちらに向けながら、

 

「あれはなんですか?」

「あれが呪霊と言うやつよ。人が、物事を恐れることによって生まれ、人に危害を加える存在よ。今回は結構小さいから単純に肩こりを起こしているだけみたいだけど。」

 

と、手に尻尾から取り出し座った状態で鉄扇を持って一閃する。すると、肩に乗っていた呪霊は、首を境に2つに別れそのまま消滅していった。

 

「殺しちゃって良かったんですか?」

「問題ないわよ。いわゆる蚊みたいなものだから。ほらそれより見て、」

 

と再度指をさす。そこには急に肩こりが軽くなって、違和感からか変な動きをしているおじさんがいた。

 

__________________________________________________

 

仙台駅前

 

「わざわざ、こんな時間まで色々なことを教えてくれてありがとね。」

「いえいえ、こちらこそです。呪霊について色々教えてもらいました。それにこの御札だってありがとうございます。」

 

と、対呪霊用の御札を見せてきた。基本的な効果としては貼った人が呪霊に近づいてもただの石ころと呪霊が認識する御札だ。

今回呪霊に触れたせいで、好奇心からか、心霊スポットなどに行きかねん。下手に死なれては困ると思ったから渡したものだ。

 

「できれば、今度の日曜日会えませんか?」

 

と、聞いてきた。正直こちらからその話をふろうとしていたのでとても都合がいい。

 

「いいですよ。私もまだ、世間に疎いですからぜひ教えて下さい。」

 

と、ニコッと笑う。そのときに念のため約束を反故されないために、魅了の妖術もかけてやる。プラスして、2,3度国を傾けた笑みだ。これで彼女の印象に残れば...と思ったが、彼女は顔を真っ赤にしていた。ちょっと効きすぎたのかもしれない...

と心のなかで冷や汗を流していると、

 

「それではさよならです。」

 

というと彼女は仙台駅に向かって走っていった。

 

「さようなら。」

 

と彼女が見えなくなるまで私は手を降っていた。



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4話 お狐様勤務中

更新遅れてすみません。
次話も中間試験中でちょっと遅れます
UA4500ありがとうございます


稲荷神社神殿内

 

あのあと、寝床を探して、町中をウロウロと探し回ったが、空気が汚すぎて眠れそうになかったので、一度郊外に出て、森の中で寝ようとしたが、ちょうど近くに神社があったので、現在そこで横になっている。

 

「はー、疲れた。」

 

一日ほど軽く体を動かしただけだというのに、動きが鈍くなってしまうほどだ。

 

「本当に、妖怪が生きづらい世の中になったの。」

 

と、小言を漏らしつつ、(ゆかり)様からもらった薬を3粒ほど口の中に放り込む。ある程度疲れが落ち着いてきたころ、元の形態に戻り、尻尾から3,4本ほど毛を抜いて息を吹きかけ妖術を発動させる。

すると、目の前に30〜40体ほどの、一ツ尾狐が現れた。そこで私は命令を出した。

 

「夜の間、罪人や咎人を、気絶させてからこの神社に連れてこい。決して一般人を連れてくるでないぞ。」

 

行け。と命令を出すと、キツネたちは蜘蛛の子を散らすように出ていった。

 

「全く、面倒な縛りは作るものではないの...」

 

とため息をついて、指先を爪で切り血を4,5滴血を滴らせてから妖術を再度発動する。

すると近くに2体の三ツ尾狐が現れた。

一体には、このの神社の護衛を命じ、もう一体には、一ツ尾狐たちの管理を命じると、妖力を使い切り、そのまま倒れ伏すように眠った。

 

__________________________________________________

 

目を覚ますとそこには、夜の間に捕まえてきた人間30〜40人ほどを、一ツ尾狐たちが、近くをうろついているように見れた。

一匹を、膝の上に乗せ、撫で回しながら狐たちに捕らえてきた人間の一人もってこいと命ずる。

 

「人間なぞ、久しぶりに食べるの」

 

と、私は唇を落とす。

そのまま勢いよく、生き肝を吸い出す。

 

「久しぶりに食うとうまいの。」

 

腹が満たされる感覚と、力が回復していくように感じる。

 

「目標達成まで、約一週間ほどかかるか..何か手がかりが得られればいいが...」

 

と独り言ちた。

その後、(ゆかり)様からもらった、道具を使い、捕らえた人間がスキマに取り込まれていくのを見送ったあと、

外へ出て、先日教えてもらった美味しい食べ物の店へと赴いた。

 

このような日々を、数日間続けていると、三ツ尾狐から、一ツ尾狐が2体ほど祓われた。という報告が上がってきた。

 

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呪術高専

 

一仕事を終えた七海は、呪術高専にいた。

 

ナナミンナナミンと煽ってくる、教師のくせにひましている、先輩を無視しつつ事務室へと向かう。

 

「伊地知さん、任務上がりました。」

「ああ、お疲れさまです。」

 

書類の山の中から、ひょっこりと、伊地知さんが出てきた。

 

「七海さんが受けた仕事は...これでしたね。」

 

と一枚の書類を引っ張り出し、サインをかく。

 

「お疲れさまです。と言いたいのですが、できれば、もう一仕事お願いできませんか?」

「他の呪術師の方はいらっしゃらないのですか?」

「高専の、呪術師は全て出払っていまして..」

「ほらあそこの窓に顔をへばりつけてる人はどうですか?」

「五条さんは一応特級ですから」

 

と聞き、私はため息をついた。

 

「それで、どのような仕事なんですか?」

「は、ハイ。えーとですね。」

 

と、再度書類の山の中から一枚の紙を取り出し手渡してきた。

 

「事の起こりは、三日前くらいだそうです。宮城県仙台市を中心に拉致事件が起こっているようで、毎日数十人ほど何者かにつれさられているようで、警察が捜査をしても、どれもこれもに一切の手がかりがないとか。」

 

「ここから呪霊の仕業ではないかとということですか?」

 

「ええ、他にも決定的だと言えるものが一つありまして、刑務所の中にいる人たちも一日に数十人連れ去られるようで、はじめは、集団の脱走かと思い、警備を強くしたり脱走の経路を辿ろうとしたみたいなんですよ。」

 

「しかし見つからなかったと。」

 

「はい、その上警備を固くしたのにも関わらず、その次の日も、数十人連れ去られたようです。」

 

「そこで、高専に連絡が来たと。なるほど。」

 

と七海は、メガネを手で持ち上げながら考える。

 

「それとですね、書類に書いてあると思いますが、ほぼ一致する点がありまして、すべての場所で、狐が近くにいた、そうなんですね。」

 

「狐、ですか。」

 

「あと特徴的なこととすれば、被害者がすべて、一様に懲役以上の犯罪歴を持っていると言うことぐらいですね」

 

一様に、狐が観測されたり、わざと犯罪歴を持っている人間を見分けて襲うあたり、何かがあるかもしれないそう考えて七海は、

 

「これは、いつもに比べて大仕事になるかもしれません」

 

「できれば受けてくれると嬉しいのですが」

 

私は大きなため息をついてから、

 

「受けますよ。」

 

と、その書類にサインをした。

 

その後事務室を出ると、先輩が、またナナミンナナミンと、煽ってくるのを無視しながら、家へ一先ず帰ると算段していると、

 

「七海。」

 

と声をかけられた。いつもと違う様子にどうしたのかと振り返ると、誰もいなかった。

気がつくと、天井にぶら下がっている先輩が自分の眼鏡を取りいじられていた。

どうやら天井に一瞬で身を隠したらしい。

イラッときたのでメガネを取り返して無視してそのまま立ち去ろうとすると、

 

「今回の依頼は気をつけろ。何か嫌な予感がする。」

 

と、声をかけられた。




今回出てきた縛りですが、
一般人を無闇やたらに襲ったり、食べたりできないというものです。
のちのち物語の中で出てきます。


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5話 ナナミン始動

投稿遅れてすみません

UA6500ありがとうございます


東京駅

 

私は家の近くのパン屋さんで買ってきたパンをかじりながら、昨日高専でもらった、報告書を再度確認していた。

 

狐が数匹確認されたということから、呪霊同士が手を組んでいるか、もしくは、それらを使役できるほどの大きな呪霊がいるのかどちらかである。さらには今回の人攫い事件、全てにおいて犯罪者が捕らわれている。なぜなのかと考えつつ顔を上げると、ラウンジのテレビが目に入った。

 

ラウンジのテレビには、仙台市〇〇刑務所集団脱走か?!という見出しで、大盛り上がりしていた。

 

「流石にマスコミも嗅ぎつけるのが早いですね。」

 

と、小言を漏らす。

いつもの呪霊による事件ならば、変死体など惨たらしい証拠が多々出てきて、テレビなどでは報道的な規制が敷かれるので、表には出てこなかったが、マスコミは本当に鼻が鋭いようだ。

 

「私が行くことでなんとか解決してくれるといいですけど...」

 

と、思いつつ先日、五条悟から言われたことを思い出す。

これは本格的に気をつけなければならないな。と思いつつ到着した、新幹線へと乗った。

 

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仙台市〇〇刑務所

 

入り口には、マイクやカメラを持った人々がわちゃわちゃしていた。相手をするのがめんどくさそうなので、裏口へと回ってみたが、人数的には対して変わらなかった。仕方がないので、直接入ろうとした。

 

すると、私のことを刑務所関係者だと思ったのか、どんどんと、人が集まってくる。

さらには、

「今回の脱走事件はどう思いますか?」

などなどと聞いてくる。

 

それらを無視して私は中へと入っていた。

 

__________________________________________________

 

中へ入ると、外の喧騒と真反対でとても静かだった。

1人の看守が連絡があったのか近くで待っていた。

 

「あなたは、警視庁が言っていた、高専の七海建人さんでよろしいでしょうか?」

「はい。」

 

と、事前に貰った書類を渡す。

看守は一通り確認したあと、

 

「これより看守長室に案内いたしますついてきてください。」

 

私は看守長室にノックをして中に入る。

 

「失礼します。高専より派遣されました、七海建人です。」

「君が警視庁から派遣されると言われていた人か。私は、この看守長をしている、大谷 文(おおたに あや)だ。よろしく。」

 

と握手を求めてきた。

豪胆な人だなと思いつつ、握手を仕返す。

 

「よろしくお願いします。こちら東京土産の、ひよ子です。」

「ああ、すまない。ひとまずお茶でも沸かそうか。」

 

と席へと促した。

 

「では、すみませんが、現在の状況について教えてもらえないでしょうか。」

「ああ、では三日前ほどから話そうか。その日、いつも通り、夜に巡回を担当していた奴がいたんだが、そいつが『看守長、脱走です。10人が脱走しました。』と叩き起こされたのが発端だ。その後、そいつらの部屋を調べたんだが、全くの証拠が出てこなかった。巡回もサボりはなかったし錠前のピッキング跡や、壁を登った跡などなど何も証拠がなかったんだ。」

 

「なるほど。」

「次の日は、本部からの警官が多くやってきて、刑務作業などなどの時間を削ったんだ。」

「しかし、脱走者は抑えられなかったと。」

 

看守長は、お茶をかたむけてから答えた。

 

「そうだ。昼の間は、何も起こらなく、囚人たちもおとなしくしていたのだが、夜の間に再度、10人ほど脱走者が出た。」

「その際の目撃情報などはありますか?」

「すまないな、その日はなにもなかったんだ。夜勤をしていた看守全員に聞き込みをしてみたにだがなんの情報も得られなかった。先日同様に、ピッキング跡なども何もなかったんだ。」

「では先日は何かわかったことはありましたか?」

「先日ならば、皆がわからないというので、私が直接宿直をしたんだ。寝袋を、囚人たちが収監されている部屋の廊下に位置するとこで、寝て待っていたのだが、何か気配を感じて、飛び起きたんだ。そこに近づいていくと、狐が10匹ほどいたんだ。」

 

七海は大谷が呪霊が見えたことに驚いた。

 

「その狐はどんな特徴があったんですか?」

「なんか神々しかったな。暗い中でも月明かりに照らされて金色の毛皮で覆われているようなそんな感じの狐だった。」

「その後どうされたんですか?」

「囚人の首元に噛み付いてどこかに持っていってたから、一匹に殴りかかったんだ。けれど、そのことを察知した狐たちに噛みつかれてしまった。気がついたら寝袋の中で朝になっていたんだ。」

「そうですか...」

 

七海はどのように対応するべきか考えていると唐突に看守長が立ち上がった。そして、

 

「できれば、その狐どもを追い出してくれ。頼む。」

 

と懇願された。

 

「わかりました。よろしくお願いします。」

 

とお互いに頭を下げた。

 

 

 



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6話 ナナミン戦闘

UA8000ありがとうございます


囚人室廊下 深夜

 

草木も寝る丑三つ時、七海は、廊下で息を殺しながら待機していた。

お昼頃、呪霊の足跡の痕跡を調べてみたが、廊下の途中でとぎれており、深く追うことはできなかった。足跡は、肉球の跡が残っており、報告書にあった通り狐が人をさらっていったことがわかった。

 

七海はふと気がつくと、何匹かの狐が唐突に廊下に現れた。

尻尾は一様に一本づつだが、その姿は満月の月明かりに照らされており、金または銀のように輝いていて、一種の神聖さすら感じられた。

 

その姿に見惚れていると、狐たちは、囚人たちがいる部屋の中に入ろうとしていた。食事を入れる場所から入っていった狐たちは、囚人たちの首に噛みつき、外へ持って帰ろうとしていた。

七海はそれを阻止するため、狐に斬りかかる。

 

狐は真っ二つに切られた。切られた断面から、金色の粒子が宙に舞いそこには最初から何もなかったかのように消えてしまった。

 

「実体がない、何かの使い魔だったのか?」

 

一匹が祓われたと気がついた残りの三匹が同時に襲いかかってきた。

一匹ずつ自身の右腕、左腕、右脚に噛みつこうとしているようだ。

それを、軽く身を捩ることで避ける。

 

七海は、今犬歯をを丸出しにして七海の周りで威嚇している狐たちを警戒しつつこの状況について考える。

等級的には、2〜3級程度の呪霊。等級的には簡単に祓えるはずだが、しかし三匹同士が同じ使い魔なのか、息が揃っており非常に厄介であることが分かる。さらには、これらを使役している呪霊について考えていると、

再度、同様に自身の四肢を狙って襲ってきた。

それらを軽く動くことで、右腕を狙ってきたやつの胴体を3対7の位置で切ってやる。

 

狐はギャッという声を上げ、同様に真っ二つに分かれ、金色の粒子となって消えていった。

 

他の二体は勝てないと思ったのか、私の前から逃げていった。

 

私は周りを警戒しつつ、狐が倒れた場所を調べてみる。

 

「これは、毛ですか...」

 

私は、月に照らされ金色に輝く一本の毛を見つけた。これは、人間の髪質とは全く違うことが手触りでわかる。

それを、念のために持ってきた、ジップロックの中に入れ、元の場所に戻り、再度寝ずの番へと戻ろうとすると、後ろから大きな気配を感じた。

 

後ろを急いで振り向くと、狼サイズの狐が二匹ほどいた。

尻尾は三本あり、赤い目をこちらに向けていた。

尻尾が一本しかなかった狐に比べて、圧倒的に強いという雰囲気と、まるでのまれてしまいそうな、神聖さに耐えながら、七海は二匹の前に出た。

一尾の狐同様に襲ってくると、身構えたがこちらを振り返り一鳴きしてから、廊下の奥の方に向かい歩いていった。

 

黙って見ていると、再度、こちらに振り返り右手で手招きするように手を動かしたあと、そのまま廊下の奥へと歩いていった。

 

「これは、ついてこいということですか。」

 

七海は、敵の罠という線も考えたが、三尾の狐の理性的な態度にもしかしたら、今回の事件について根本的に解決するかもしれないと思い、警戒しつつ、彼らについていった。

 

__________________________________________________

 

仙台市〇〇刑務所運動場

 

彼らについていくと、運動場が見えてきた。

 

「ここは、運動場ですか...」

 

と言いつつ、七海は考えた。

急に現れて、きた呪霊が襲ってこないというのは珍しい。基本的には、現れて、呪術師が気づかないうちに襲いかかったり、するものだが...

ということはこの二匹も使い魔か、それとも低級の呪霊か。先ほど浴びた圧から、低級の呪霊であることはほぼないだろう。ということは使い魔か。先輩にもそのような術式を持っている人もいたような..

と考えていると唐突に頭の中に声が入ってきた。

 

『ぁ...ぁ..ぁああ.あーあー。もしもーし、聞こえますかー』

『聞こえますかじゃなくて、初めましてだろ。』

『どっちでもいいでしょ、下手にカッコつけなくても』

『は?』

『は?』

 

と看守が立つ用の朝礼台の上で二匹は喧嘩を始めた。

 

七海は唐突に頭に中に話しかけられた状態に驚いていたが、このまま二匹を放り出していると収拾がつかなくなると思い声をかけた。

 

「あの少しいいですか?」

『うん、誰だあいつ。』

『ほらあれだよ、(あお)様が言っていた呪術師ってやつじゃない。』

『ああ、あれか。』

「すみません丸聞こえなのですが...」

『あ、やべ』

 

という声と共に、頭の中の声は一切聞こえなくなった。

朝礼台の上でこほんと一度咳をすると。

 

『はじめまして呪術師よ。』

『我々は三ツ尾狐、(あお)様の使い魔である。』

(あお)様はお前ら呪術師どもと対談を望んでいる。』

『しかし、(あお)様から現在の呪術師の強さを調べてこいとも言われた。』

『さあ、呪術師よ。やり合おうではないか。』

 

「今更、見繕っても残念感は拭いきれませんね。」

 

と、厳しく七海は言い放った。

 

『えー、ダメだったー』

『少しはカッコいいと思ってやってみたのに。』

 

七海はやりにくい相手だと思いつつ、

 

「なぜわざわざ校庭に?」

『あ、喋った』

『だって、他の人に被害を出すわけにはいかないでしょ縛りの件もあるしー』

『お前、それ言っちゃダメだろう。弱点を自ら晒してるもんだし。』

 

七海はその言葉が最も弱点を晒していることに呆れつつ、

 

「私で何をしたいのですか。」

『単純に強さが知りたいだけだよー。』

『この時代まで呪術師がいることに(あお)様は驚いていたしね。』

『うんうん。だからお前ら呪術師を殺す気もないよー』

『どうせ次の私がいるから、最悪祓われちゃってもいいし。』

 

次にどんな質問を投げかけようと考えていると、

 

『質問もこれくらいにして、最悪、そのあと(あお)様と会えるんだし。』

『そうだそうだ。』

『じゃあ、三二一で始めるからねー。』

 

そう言ったきり、頭の中に聞こえてきた声が消えていった。

 




次回戦闘です。


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7話 ナナミン戦闘2

UA10000 お気に入り120 超え、ありがとうございます。
稚拙な表現などまだまだ目立つところはあると思いますが楽しんでくれると幸いです。

胃腸炎で投稿遅れましたすみません。


仙台市〇〇刑務所運動場

 

七海は、321と心のなかで数えつつ、先程の狐たちのことを分析してみる。

まず初めの(あお)様という単語と、次の私がいるという言葉。ここから、この二匹は(あお)様という呪霊の使い魔であることが分かる。

しかしこの狐たちは、弱く見ても一級レベルの呪霊だと分かる。

(あお)様というのは呪霊を取り込むことによって従えているのかそれとも生み出しているのか?

などと考えていたらカウントが終わり、同時に狐たちは、七海めがけて突っ込んできた。

 

「速い...」

 

七海は、尻尾が一本しかない狐に比べ数倍早いと感じ自分でも走って追いつけない速度であることを確信した。同時に、この呪霊たちの前から逃走はほぼ不可能だとも悟った。

 

「これは下手に責めるより受けることで好機を待ったほうがいいかもしれません。」

 

と独り言を漏らす。

そして、二匹は両足めがけて、口を開けて突っ込んできていた。

二匹を回避するためバク宙をし、後ろに飛ぶことによって避ける。

二匹は避けられたことに気がついたのか、一度背後に飛び退いた。

そして再度飛びかかってくる。

七海は、片方は顔めがけて飛んできた狐をナタで受け片方は体をよじることで避ける。

 

カッ!

とナタと牙がぶつかる小気味良い音がなる。

 

このように、受ける攻防をし続け相手の情報を考察していく。

 

他の人に被害を出すわけにはいかない、縛り、弱点という、情報と、呪術師を殺す気がないという言葉そして、犯罪者のみが連れ去られる今回の事件、ここから考えるに、(あお)様とその使い魔たちは犯罪者以外基本的に危害を加えることができないとも考えられる。しかし、呪術師を殺す気がないというのは確かどうかはわからない。

 

極めつけにはこの時代に呪術師が存在するとは思っていなかったという言葉。言葉通り、平安時代からどんどんと、呪術師というものは減っていくのを七海は高専で習ったが、この言い方だとまるで、実際に見たように言っていることに、七海は(あお)様という呪霊に警戒を強めた。

 

などと考えていると

ザッという布が切り裂かれる音がした。

確かに避けていたはずだったと思った七海は音のした方に目を向ける。そこには、噛みつかずに、異様に伸びた爪で切り裂かれた4つの跡が残っていた。痛みはないので、傷はないようだが、スーツがだめになってしまった。

 

戦闘へと意識を戻しつつ、ナタを大きくふることによって噛み付いている狐を剥がす。

 

振り払われた狐は上手に地面に着地したあと、すぐに頭上から異様に伸びた爪を立てて襲いかかってきた。

 

七海は爪の7対3の部分を切り上げるようにナタを振るった。

爪はきれいに切れ地面へ転がった。

狐は切られるとは思わなかったのか、そのまま地面に突っ込んでいった。

 

七海はチャンスだと思い、地面へ突っ込んでいった狐に対して十劃呪法を用いてナタを振り下ろそうとするが、右から噛みつこうとするもう一匹の狐に阻まれてしまう。

 

そこで一区切りとばかりに距離を離した。

 

『いやー、結構強いね。』

『すぐ倒せると思ったんだけど。』

 

という声が聞こえてきた。

 

「無駄な戦闘はしたくはないのですが。」

『おっ、喋った。』

『仕方がないじゃんこっちだって仕事なんだからー。』

『そうそう、ようやく術式も使ってくれたし。祓われるかと思ったよ。』

『じゃあ次行くよー』

 

という声とともに、爪を失った一匹は空へ飛び上がり、もう一匹は直接襲いかかってきた。

 

飛び上がった狐は宙に浮いた状態で自身を中心として球状に球状の弾の弾幕をはった。

その弾は人間が走る程度のスピードであったが、強い呪力が感じられ、当たるとまずいと感じさせられた。しかしもう一匹の狐には当たっても問題なく、弾を突っ切って七海に襲いかかってきた。

 

突っ込んでくる狐を避けつつ、同時に弾を避ける。

 

狐がそのまま爪をたてて突っ込んできたので、7対3の位置でナタで受ける。そのまま爪を切り落とせると思ったが、何故か鍔競り合いをし始めた。

まさかと思い狐の爪を見てみると、爪が伸びており、7対3からずれていることがわかった。まずいと思い、狐を力で押し飛ばす。

 

このままではジリ貧だと感じた七海は狐が体制を立て直している時に斬りかかる。しかし、たやすく避けられてしまう。

その際、宙に浮いてる狐が七海を警戒して動いた。

そして再度、狐が七海の襲ってきた。先ほど通り、弾をよけたうえで、狐を避けようとするが、なぜか弾道のずれた弾が目の前にあった。

どうやら、宙にいる狐が動いた際、弾幕にずれが生まれたらしい。

 

「なに!」

 

七海は、狐のことはそっちのけにして、目の前の球を7対3の位置で切る。

と同時にザシュという切られた音がした。

 

「チッッ。」

 

どうやら、左腕が持っていかれたらしい。見てみると、爪によって二つの刻まれた跡が残っていた。

動脈を切られたのか想像以上に血が出ている。

回避に専念しつつ、ネクタイを外し左の二の腕あたりに巻き付ける。

きつく締めあげることで、止血帯の完成だ。最悪失血死でしぬことはなくなっただろうと思い、敵を見据える。

 

宙にいる狐は、動いたほうが効果があると感じたのか二発ごとに動き、直接狙ってくる狐は相も変わらず私を狙っている。

 

再度、また狐がかみつこうととびかかってきた。ナタでうけ、遠くへ払おうとするが、かみついたまま狐は離さない。

前を見ると、前左右に重なった弾幕。後ろを見てもよけた弾幕がまだ残っている回避は不可能だ。これが狙いかと七海は思ったが同時にどうしようもないと思った、七海は左腕に呪力を流し込むことにより、弾幕を直接受ける。

 

ドン

 

と激しい音が鳴り、七海は後方へ飛ばされる。同時に武器を手放してしまい、体勢を崩してしまう。

襲ってくる狐はこれを好機だと思ったのか、首にかみつこうとしている。

人間の弱点を狙おうとだけ集中しているのかお腹が無防備だ。

七海は、力を振り絞り、身体の7対3の位置で殴り上げる。

 

火事場のバカ力というのか、七海の拳には、黒く光った、稲妻のような呪力が迸った。

 

「ギャッ。」

 

と、声を上げ、一匹は全身をくの字の状態にされ、金の粒子となって消えていった。

七海は近くに転がっていたナタを拾い上げ、七海に当たった時点で止まっていた弾幕を撃っていた、狐に特攻する。

 

狐は、一匹が祓われたことにとても驚いていたが、七海が特攻してきたことに急いで弾幕を張りなおす。

 

「判断が遅い。」

 

目の前にあった弾幕を三つ同時に切り伏せ、狐の前に七海は現れた。最後の抵抗で、爪があるほうの腕で攻撃を防ごうとするが、腕を切られ、3対7の位置で身体を真っ二つに切られた。

 

「ギャッ。」

 

と、いう声とともに、断面から金の粒子があふれそのまま消えていった。

 

七海は、あっけなかったなと感じ、病院に向かうのと、(あお)様という呪霊がいることを高専へ伝えるためにひとまず、看守長室へ向かうために足を進めた。

すると、

 

「もう行ってしまうのかね。」

 

と声をかけられた。声をかけてきたほうを振り向くと、そこには、国を傾けることができるほどの美人の女性が、着物を着て、七海のことを見つめていた。




弾幕のイメージは、東方紅魔郷extraフランドールスカーレットの最初の通常弾です。気になった方はぜひ調べてみてください。

次話はお狐様目線になります。


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8話 お狐様打ち合わせ

稲荷神社神殿内

 

時はさかのぼり、稲荷神社神殿内、(あお)は、一ツ尾狐が2体ほど祓われたという情報を聞きとても驚いていた。

命からがら逃げてきた一匹の一ツ尾狐の記憶を妖術で探ってみると、ナタのようなものを布でぐるぐる巻きにした、もので術式を使い、一ツ尾狐が2体を軽く屠っている状態を見ることができた。

 

「なるほど、この世にもまだ呪術師が残っているとは思わなんだ。」

 

と独り言を漏らす。

呪術師が存在するということは、言い換えてしまえば、呪詛師も同様に存在するということだ。

私的には、人をむやみに殺められないという縛りがあるゆえに、呪術師側につきたいが、(ゆかり)様や(らん)が、何か因縁を持っているかもしれん。

たぶん、時間的に(らん)がお風呂に入っているころだから問題ないだろうと思い、(ゆかり)様からもらった機材に妖力を通しながら、念を飛ばす。

 

「もしもーし聞こえる?」

「ああ、(あお)か。久しぶりに声が聞けてうれしいぞ。」

「私もだよー。(らん)ちゃん、(らん)ちゃん、このお仕事終わったら一緒に人里にデートしに行こうよ。」

「えー...でも、私のほうも冬の間にやらなきゃいけない仕事がたくさんあるし...」

「大丈夫大丈夫。たぶんこっちの仕事が終わるのは大体春ぐらいまでかかると思うし、やるべき事を早くかたずけてその後、さぼっちゃえばいいんだし。」

「えーーー...」

 

私は、(らん)ちゃんがいま、お風呂の中で顔を真っ赤にさせながら、悩んでる姿を想像しながら一緒にいられればなーなどと少し外の世界に出たことを後悔していた。

すると、

 

(らん)をさぼりに誘うなんて感心しないわね。」

 

と、唐突に(ゆかり)様の声が聞こえてきた。

 

「ゲッ、冬眠したんじゃ...」

(ゆかり)様決してさぼろうとしたわけじゃ...」

 

と声が重なった。

 

「大丈夫よ(らん)(あお)、もう少し真面目になりなさい。」

「だって、お休みほとんどないじゃないですか。あったとしても、(らん)ちゃんと私、交互にとらせたりして一緒に遊べないじゃないですか。」

 

とぶーたれる。実際休みは一ヶ月に2回ほどしかなく、ほとんど働きづめというのが現状だ。

 

「仕方がないでしょ、幻想郷の管理はただでさえ大変なんだから。」

 

はあ。と(ゆかり)様の声が聞こえる。

 

「それよりも、わざわざ、そちらから念を飛ばしたってことは何かあったんでしょ。」

「はい、簡潔に言いますと、呪術師と私の使い魔が交戦しました。」

「呪術師ね...いまだに外の世界にも存在したのね。」

「はい、そのうえで相談なのですが、呪術師が存在するということは、呪詛師が存在するともいえるじゃないですか。」

「そうだな。」

「ですから、どちらにつけばよいのかと。念のため因縁があるかもしれないので聞いているというわけです。」

「あなたはどちらにする気だったの(あお)。」

 

(ゆかり)様がきいてきた。

 

「私は、呪術師のほうにつくつもりです。」

「理由は?」

「はい、理由は大きく二つあります。一つ目は、最重要目標が達成できるからです。呪霊が力を増しているということは、呪詛師の誰かが、そのような術式を持っていると考えられるからです。なので、それらに対抗しており、呪詛師に比べ圧倒的に大きな組織を持っている呪術師に加わったほうが探しやすいということです。二つ目としては自身の縛りの件です。二人は知っていると思いますが、私は基本的に人をむやみやたらに殺めることができません。ですから、呪詛師に入っても幻術などでごまかすことはできますが動きが面倒になるという理由です」

「なるほど。(らん)はどう思う?」

「私は、(あお)に一理あると思います。別に、呪術師、呪詛師に因縁があるわけではありませんし。」

「なるほど。私は、呪術師側についてくれるとありがたいわ。理由としては、なんやかんやで色々と関係を持っているからかしら。」

「では、呪術師側につくということでよろしいでしょうか?(ゆかり)様」

「大丈夫よ。あ、呪術師側にそういえば天元がいたはずじゃなかったけ?お土産にこれ持って行って。」

 

というなり、右側に唐突にスキマがあらわれ、そこから、大吟醸の幻想郷産の日本酒の酒樽と、天元に向けたであろう手紙が一通現れた。

 

「じゃあ、よろしくね~。そうだ、せっかくだから、現代の呪術師の強さ見ていかない。(あお)強さを調べるために何を送るつもりだったの?」

「一応、私が召喚した、三ツ尾狐を1体ほど送るつもりでしたが...」

「三ツ尾狐って、幻想郷内の小妖怪程度でしょ、それじゃ足りないわよ。せめて2体ほど送って見たら?」

「わかりました。」

「じゃあどうする、私は、2体倒し切る方に一週間食事を作る権利をかけるは。」

 

と、唐突に(ゆかり)様は、賭けを始めた。

 

「じゃあ、私は2体倒し切る方にかけます。」

 

と、(らん)ちゃんも、悪乗りする。

 

「私も、2体倒し切る方にかけます。」

「これじゃあ賭けにならないじゃない。」

「低級妖怪程度、軽くあしらう程度じゃないと呪術師やっていけないでしょう。」

「そうですよ(ゆかり)様これじゃあ賭けになりませんよ。」

 

と、私と(らん)ちゃんが言う。

 

「わかったわ、とりあえず実力を見るために、送っちゃって」

「見やすいように近くにいらけた場所があるのでそちらで戦わせますね。」

 

と言い、三ツ尾狐に校庭で戦うように指令を出し、呪術師の近くに転移させた。

 

 

 




幻想郷側書くとなんか一気に話の展開が遅くなる


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9話 お狐様観察

UA 12000ありがとうございます。



稲荷神社神殿内

 

(あお)はいまだ、神殿内で念話を続けていた。

 

「お二人がた、見えてますかー。」

「大丈夫よ、(あお)

 

という声と、

 

「不思議な空間ですね。」

 

と、昔とは様式がほとんど変わってしまっている、現代の建物に驚いている(らん)ちゃんの声が聞こえた。

 

「それにしても、現代の呪術師は、変わった着物を着ていますね。」

「あれは着物じゃないみたいだよ。なんかスーツっていう現代の晴着みたいだよ。」

「なるほど。晴着も時代とともに移り変わっていくもんですね。」

 

と、(らん)ちゃんが感心した声を挙げている。

 

「今度、(らん)と一緒に外の世界に、出かけようかしら。外の世界を知ることも大事よね...」

「私も行きたいでーす。」

「いいわよ。いつ暇になるか分からないけど、空いたら行きましょ。」

 

などと、無駄話を繰り広げていると、三ツ尾狐たちが目的の場所についたようで、呪術師と話を始めた。

と思ったら、なぜか二匹同士がけんかを始めてしまった。(ゆかり)様はあきれたこえで、

 

「あなた、使い魔もう少し教育させたら?」

 

と、言われてしまった。ぐうの音も出ない。

呪術師に声をかけられ、二匹は喧嘩をやめ、ようやく会話が始まったらしい。

話の内容を聞いていると、どんどんと自分の情報が出ていく。

 

(らん)ちゃん。どうやったら、使い魔を(らん)ちゃんの使い魔みたいにいい子に育てられるの」

 

と泣きつく。

 

「私は、自分の使い魔に特に特別な訓練を施したことはありませんよ(あお)。」

「あなた本来の性格に、使い魔が似ただけじゃないかしら」

「うすうす気づいていたことをわざわざ言わなくてもいいじゃないか。」

 

(ゆかり)様に抗議する。

 

「まあ、いいじゃない。それよりも始まるわよ。」

 

使い魔が写っている画面に目を移すと、とびかかった使い魔をナタのようなもので受けている、呪術師が写っていた。

 

「きれいに受け流していますね。」

「そうさね。狐たちの出方をうかがっているのかしら。」

「結構慎重な呪術師だね。」

 

と、話が盛り上がる。

などと、戦いの様子を眺めていると、三ツ尾狐の一匹が爪を使い、呪術師の頭上から襲い掛かった。

しかし、なぜか、呪術師が切り上げたナタによって、爪が真っ二つに切れてしまった。

 

「おかしいわね。何か術式でも使ったのかしら。」

(あお)、どんな術式かわかりますか?」

「あまりこっちで能力使いたくないんだけど。ただでさえ、妖力が少ないというのに。まあいいわ、」

 

といい、私は能力にて先ほどの呪術師が使った術式を分析する。

 

「ああ、なるほどね。」

「どんな術式だったかしら。(あお)。」

「なんでも、決めた位置に、強制的に弱点を作る術式みたいだね。今回は七対三になってる。」

「なるほどね。確かに七対三の位置で切ろうとしているわね。」

 

と、奇襲に失敗した狐にとどめを刺そうとしている呪術師を見ながら言う。

これでもうそろそろお開きかと思ったが、その時もう一匹の狐が襲い掛かることで、何とか阻止する。

 

「二匹送って、正解だったかもしれないわね。」

「本当ですね。」

 

などと、雑談も交えつつ話していると、呪術師が左腕に攻撃を受けたようだ。

 

「おっ、まさか当たるとは思ってなかった。」

「外の世界では弾幕ゲームなどというものは流行っていなかったからかしらね。初めて見て驚いたのかもしれないわね。」

「見てください。反転術式で回復せずに戦っていますよ。」

 

目を向けてみると、首に巻き付けている飾りのようなひもを、二の腕あたりに巻き付けている姿が見て取れた。

 

「これは、出血を抑えるためにやっているのかもしれませんね。」

「もしかして、反転術式使えないのかもしれないわね。私たちは想像以上に現代の呪術師のレベルを高く見すぎたのかもしれないわね。」

「このままではいけません。万が一、この呪術師を殺してしまえば、呪術師達とのコンタクトをとれなくなってしまう。ちょっと、指令をってつながらない。もしかして戦いに集中しすぎて聞こえてないとか。(ゆかり)様少し失礼し」

「ちょっとみてなさいな。」

 

(ゆかり)様から声をかけられる。

画面には、ちょうど、弾幕に当たり遠くに跳ね飛ばされている様子が目に入る。

 

「来るわよ。」

 

そう、一言(ゆかり)様が漏らすと、同時にとどめを刺そうと襲ってきた狐が目に入る。

 

ドン

 

という音ともに、黒く光る稲妻のようなものを拳にまとい無防備な狐の腹へと叩き込まれた。

 

「おお、流石呪術師だけあってしっかり人間の生への意地を魅せるじゃない」

「ほんと、(ゆかり)様、お好きですよね人間が生きあがこうとする姿。」

「これだから、(ゆかり)様性格悪いとか言われるんですよ。」

 

などと話してると、黒閃を撃ったおかげで、呪力を自由自在に操れる呪術師により、二匹の狐は討伐されてしまった。

 

「ちょうどいい、寝る前の余興になったわ。じゃあお休み。」

 

という声とともに、(ゆかり)様は念話からいなくなってしまった。

 

「私もそろそろ上がるとしよう。そちらでの任務は大変かもしれぬが、頑張れ(あお)

「ありがとね(らん)ちゃん、わざわざ心配してくれて。こっちでも頑張るから(らん)ちゃんのほうも頑張って。じゃあね。」

 

と言いながら、念話を切る。

 

「さて、仕事を片付けますか。」

 

と自分自身に一声かけてから、先ほど狐が戦った呪術師がいる方向に向け転移する。

 

「もう行ってしまうのかね。」

 

と去り行く呪術師に私は声をかけた。

 

 

 

 



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10話 七海未知との遭遇

お気に入り登録が150を超えて驚いています。
ありがとうございます。




七海は振り向くとそこには、国を傾けることができるほどの美人の女性ががいた。彼女は9つの狐の尻尾と狐のような耳を持ち、今まで七海が戦ってきたどの呪霊よりも、強い気配を感じた。彼女は特級、いやそれ以上かもしれないとも感じた。もし彼女が私を殺そうとするならば、一瞬で刈り取られるとも錯覚した。このままではまずいと感じ七海は会話を振る。

 

「あなたが、私が戦ってきた狐たちが言っていた(あお)様ですか?」

「そう、その通り。私は(あお)。八雲 (あお)よ。よろしく頼む。」

 

と手を、差し出してくる。

そのまま振り放すのも失礼だと感じ、握手をする。

 

「まずは謝罪を。あなたを試すような真似をしたこと。そして、私の使い魔をうまくまとめられなかったこと。すまなかった。」

 

と、頭を下げられた。

呪霊が頭を下げるなんて初めて見た。それも圧倒的に相手が優位な状態でだ。そのことに驚いていると、

 

「そんなに謝罪されたのが意外だったのか?」

 

と聞かれてしまった。

今まで呪霊と相対してきたが、しゃべることができる呪霊は一定数いたが、人間ましてや、呪術師に頭を下げることなど一度もなかった。

 

「すみません。何分、呪霊に頭を下げられたことなんて一度もなかったので。」

「正確には呪霊ではないのだが。まあ良い。こんな開けた場所で語り合うのもいささか不便であろう。おぬし、ちょうどよい領域か何か持っておらんか?」

 

領域?領域展開のことかと当たりを付けた七海は

 

「あいにくと、持っていませんね。」

「ならば、私の領域内で語り合わぬか。けがもしておるし、わが領域内であるならば、直すこともできるぞ。」

 

領域内で、話す。つまり、相手の術式が必中の状態でしゃべるということだ。普段の呪霊ならば、避けるべき状態であろう。

しかし、この呪霊は、普段の呪霊と比べ圧倒的に強く、そして今にでも自身の命おも奪える状態にあるのに、まったく攻撃を仕掛けてこない。ここから本当に話し合いのためだけに領域を使うのであろうと察した七海は、

 

「では、お願いします。」

 

と頼んだ。

すると、(あお)は片手を狐の形にさせ、

 

「領域展開『稲荷大〇〇』」

 

という言葉とともに、まばゆい光とともに、空間を侵食している。

七海はあまりのまぶしさに目を閉じそして目を開けると、目の前には、美しい景色が広がっていた。

 

空には満月が輝いており、目の前には参道と思わしき道がある。参道はあまたもの鳥居が建てられており、その周りには彼岸花がきれいに咲き誇っている。

奥に目をやると、本殿なのか、大きな建物がぽつんと一つ見えた。

周りには、何匹かの狐がおり、それぞれ先ほど戦った尻尾が三本の狐に比べて圧倒的に強いということを感じさせた。

とともに自身の呪力がいつも以上に早く回復していくことを七海は感じた。

 

「これは、空間の内の呪力が外に比べて、圧倒的に増えたのか?」

 

と、自信の変化と周りの様子を見てあっけにとられていると、

 

「おーい、きこえぬか。」

 

と、そちらのほうを向いてみると、一人、神社の参道の茶屋であろうところに座り、キセルをふかしながら、酒を楽しんでいる人いや呪霊がいた。

 

「何やっているんですか?」

「まあ良いではないか。生きていくうえで楽しみというものをなくすと損じゃぞ。」

 

と言いながら升に入った日本酒を勧めてくる。

 

「おっと、それよりも腕を直さないとな。」

 

と、右手でゆびをならす。すると見る見るうちに傷がふさがり、何事もなかったかのように、元に戻っていた。

 

「それで飲むか?」

 

と、日本酒がなみなみと注がれた升を手渡してくる。

 

「いいえ、まだ仕事中ですので。」

「なんだ、釣れないの。」

 

しゅんとした、顔をした後、

 

「この人に抹茶と団子を」

 

はーいと、言いながら従業員であろう狐の耳と尻尾をはやした着物を着た従業員らしき女性が奥へと消えていった。

 

「なぜ、私を攻撃しないのですか?」

「攻撃する意味もないし、攻撃できない縛りがあるからな。それよりも座り給え。立ったままでは落ち着かんであろう。」

 

と、彼女が座っている隣の席をポンポンと叩く。

私は、彼女の隣に腰を掛ける。その時、ちょうど出来上がったのであろう。奥から従業員が出てきて私の座席の上にみたらしであろう団子と、抹茶が置かれた。

 

「いただきます」

 

と一言つぶやき、時計回りに茶碗を二回回しいただく。

七海は、渋みがほぼない抹茶に驚きつつも、質問をする。

 

「縛りとは何ですか?」

「ああ、縛りとは、咎人以外むやみやたらに人を襲わんというものだ。一昔前に私にも荒れておった時期があっての、その際にとても大きなしっぺ返しを受けたものじゃ。それに懲りてこの縛りを作ったまでよ。」

 

 

「あなたはいったい何ですか?先ほど自身は呪霊ではないといっていましたが。」

「ああ、そのことか。私は妖怪だよ。若き呪術師よ。」

 

妖怪、呪霊とは何が違うのかと考えていると、キセルをふかしながらこう話を続けてきた。

 

「妖怪と呪霊の違いを知りたいのであろう。正確に言うのであれば呪霊は基本的に呪術しか使えぬ、人間の恨みや不安が形作られたのもじゃ。おぬしも呪術師であるのだから何度か戦ったことはあると思うが、基本的に残忍で冷酷で、人間の世を終わらせ、呪霊たちの世を作るなどとほざくうつけ者よ。」

 

彼女は、キセルをふかし話を止める。

 

「そして、妖怪は、いわゆる呪霊が進化した先のものじゃ。妖怪は、基本的に妖力を用いた、妖術と呪術両方使うことができる。呪霊との違いは、その名で恐れられているか否である。」

「その名とは何ですか?」

 

と七海は質問をする。

 

「ああ、言い方が悪かったな。そうさな...では、一つたとえ話をしよう。」

 

話はまだまだ続きそうだ。

 

 




評価をくれると嬉しいです。

後だしで悪いですが、(あお)は、現実世界において、妖力は常に枯渇中ですが、呪力は十分というほど足りています。


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11 話 七海未知との遭遇2

お気に入り登録が185を超えて驚いています
どうぞお楽しみください
投稿遅れてすみません。


稲荷大○○ 領域内 

 

目の前の自らを妖怪と名乗る9尾の狐の呪霊を見つつ話しを聞く。

 

「そうさな、例えば、天狗という存在をおぬしは知っておるか?」

「聞いたことはありますが。詳しくは知らないですね。」

「うーむ、こまるな、天狗というのは、山に集団で住む妖怪なのだが。まあ良い、天狗というものは先ほど話した通りもともと呪霊でもあったんじゃ。それは、古来の人間が、山というものは食料の宝庫であるとともに、向かえば死ぬかもしれぬという恐れから形作られた呪霊が始まりであった。そいつら、呪霊どもが、集まり山に食料をとりに来た人間を、われらの領地に不法侵入してきた輩だとし、殺したり、時たま人里をおそい、幼い女子(おなご)男子(おのこ)をさらい呪霊が育てるという事態が多々発生したのじゃ。」

 

私は団子を食べつつ、話を聞く。

 

「そして、そのようなことを続けてゆくと、人間どもはこれらを起こしていく呪霊たちに、名前を付けるようになるのじゃ。曰く、『天狗』と。その名は、見る見るうちに広がり、人間たちは、山に子供を連れて行ってはならぬ、天狗に連れ去られてしまうからな。と恐れ始めるのじゃ。」

 

彼女は日本酒の入った升を傾けつつ話を続ける。

 

「その時であろう、山への恐れというものという大雑把な恐れから、天狗という種への恐れへと変わったからであろう、呪霊から妖怪へと姿を変えたのである。彼らたちは、以前に比べて圧倒的な力を持つこともできたし、冷酷で残忍である性格から一変し、天狗という種の中で様々な性格を持ち多様性に富むようになったのじゃ。無論、その中でも、冷酷で残忍な性格を持つ者もおったがな。こんな感じじゃ。なんとなくわかったのであれば幸いなのじゃが。」

「なんとなくですが理解できました。」

 

といいつつ、考える。なるほど、ただでさえ、制御できない人々が持っている負の感情というものは大きいものだ。それが、一つの種族に向けられるとなるとその種族の力が増すのは自明の理だろう。

 

「その妖怪たちは今どこに?」

「先ほどから質問ばかりじゃの。まあ良い、今は外の世界にはほぼおらんぞ。おったとしても、呪霊と同じほどの力しか持たんと思うが。ほとんどは、私たちが管理する幻想郷におるぞ。」

「幻想郷?」

「そうだとも、先ほど妖怪と呪霊の話をしたであろう、その続きじゃ。妖怪は種族ごとに恐れられるようになったからこそ、力を持ったのじゃが、その逆もあり得ることで、その恐れがなくなってしまうと元の呪霊に戻ってしまうのじゃ。現在の外の世界では広く科学というものが認知しておるのじゃろ。そのせいで、妖怪を意識するものがいなくなったのじゃ。」

 

といいつつ、目の前の九尾の妖怪は、キセルの葉を詰め替えつついう。

 

「またもやたとえ話になってしまうのじゃが、もし、男子(おのこ)が妖怪に関係なく単純に森でまよい、夜になっても里に帰ることがなかったとしよう。昔の人々は提灯を持ち月明りを頼りにしつつ村中の人々が探し回るであろう。しかし2,3日たっても見つからず、どんどんと村人どもは仕事へと戻っていく。彼らにも生活があるからな。その時まことしやかに村人間で語られるのじゃ。あの子は天狗隠しにあったと。

しかしな、現在のこの世では男子(おのこ)がもし遭難したとしても皆血眼になって探すであろう。それも過剰に。たった一人の人の子だというのに、山岳救助隊なる、捜索の専門家が送られ、ヘリコプターなる空飛ぶ珍妙な道具で捜索をする。たとえ見つからなかったとしても天狗隠しというものはおらず、あくまで行方不明者としてあつかう。

そのせいでな、どんどんと人間が持つ妖怪の恐れがなくなっていったのじゃ。なので、妖怪の中でも力の弱きものは、どんどん呪霊へと身を落としていったものじゃ。」

 

彼女は、術式なのだろうか、指先に火をともしキセルに火を移す。

 

「そこで生まれたのが幻想郷よ。人間どもを、外の世界と隔絶させることにより、妖怪を認めさせ、そして同時に恐れてもらう。そのおかげで我々が生きながらえている。いわば避難所のような場所だな。」

 

そこまで聞いて七海は、ふと気がついた。

 

「もしかして、今回の事件は...」

「察しがいいの、そのとおりじゃ、幻想郷内の人間の数が足りなくなってしまっての、その頭数を揃えるためと、妖怪の食事のために有効に使わせてもらう用のものだな。」

 

ほらと、言うと彼女は空間に右手を一閃させた。すると、黒く目のような形をした模様が斑点状に存在する空間が生まれた。中を覗くと、連れ去られたであろう150人近くの人が眠られた状態で、山積みにされ放置されていた。七海は、人を人と思わない妖怪の所業に腹を立て殴ろうとするが、一瞬で思いとどまる。

ここは相手の領域内、どう足掻こうとも相手の術式があたり一瞬で殺されるであろう。

 

「もし、妖怪が呪霊に身を落としたらどうなるのですか?」

「奇妙なことを聞くの。もしそのようなことになれば、性格は先程言ったとおり残忍で冷酷となり、元々妖力を操っていただけあって普通の呪霊に比べ圧倒的に強い呪霊になるぞ。でも、妖力が使えなくなる分、普通の妖怪に比べ力は劣るがな。」

 

話はまだまだ続きそうだ。

 

 

 

 




狐様はあくまで真摯に対応することで呪術師の信頼を得ようとしています。

しかし人間とは全く違う感覚を持っているので何故かずれたことを言っています。

次回投稿は遅れるかもしれません。


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12話 七海と突然の侵入者

お久しぶりです
お気に入り登録が200を超えて喜んでいます



七海は、話を続ける。

 

「幻想郷という場所にはどれほどの妖怪が?」

「先ほどから妙なことを聞くの。私たちのような1000年単位の年を取っている大妖怪であれば、30ほどいるが、弱小妖怪などを含めるとどれほどいるか私もわからん。」

「そうですか。」

 

「あなたの正体は何ですか?」

「私は初めに言った通り、八雲 (あお)といったはずだが。」

 

と笑いながら、あっけらかんと言い放った。

 

「いえ、そうではなく、始めあなたは呪霊が妖怪になるためには恐れられる名が必要だと言っていましたよね。その時に恐れられていた名は何ですか?」

 

彼女はニッと笑ってから、

 

「九尾の狐といっても満足せんだろう。私の元の名はだ...」

 

「お疲れサマンサ」

 

という声が聞こえてきた。

その声に驚き、後ろを振り返ると、そこには目隠しを外した五条悟が立っていた。

 

「なんだおぬしの仲間か?」

「おー、すっげえべっぴんさんじゃん。」

「おお、そうか素直な子は好きじゃぞ。まあ良い、それよりも、飲まぬか?」

 

と、日本酒がぎりぎりまで入った升を差し出す。

五条は手を振りながら、

 

「あいにくと酒は苦手なもんでね。」

「それは残念。二人とも乗りが悪いの。では、そこの子に甘味でも注文してくれ。」

 

と、先ほど注文を持ってきてくれた子を指さす。

 

七海は驚きのあまりこの間、硬直しているとこのようなやり取りがあった。

 

「どうしてここに?」

 

と、あんみつやら、大福、団子などなどの甘味を注文する先輩に問いかける。

 

「まあいろいろあったんだよ。七海が依頼を受けた次の日に、伊地知さんに北海道のほうに出た推定特級クラスの呪霊を退治して来いと、高専のほうから指令が来てね。高専のほうの仕事を一通り終わらせてから、北海道のほうにいる呪霊をぱぱっと片してきたんだけど、帰りの新幹線が時間が時間でなくてね。それで、高専のほうへ帰ってきたわけ。」

「いえ、そういうことではなくて...」

「まあ、話は最後まで聞け。それで、結局空を飛んで帰ることにしたんだけど、帰り道にそういえばナナミンって、宮城のあたりで、任務していたんだっけって思い出したわけ。ちょうど帰り道の途中に少しよるだけで、いけそうだったからせっかくだから、呪霊ごっこをして、ナナミンを驚かしたら面白い反応が見れえるんじゃねと思って、向かっていったわけ。」

 

先輩は、本堂の上に輝く満月を見上げながら

 

「結局、刑務所まで行ったんだけど見つけることができなかったんだよね。もう、仕事が片付いて帰ったのかなーと思って帰ろうとしていたんだけど、校庭に呪力溜まりのようなものが生まれていてね、違和感を感じたのよ。目隠しをとったらあらびっくり、領域があったのよ。これは七海が危険だなと思い、中に入ってみたんだけど静かでドンパチやった形跡もないし何もなかったから、警戒しつつ進んでいったら、なんか、呪霊っぽい何かと話してて拍子抜けしたってわけ。それで、君だれ?」

 

と、キセルをもてあそんでいる、彼女を指さす。

 

「私か?私は、八雲 (あお)だよ。五条家の末裔よ。おぬしの名前は何というのじゃ。」

「驚いた。僕の名前を知らずに家名を当てられるなんて。どうしてだい。」

「その目を見ればわかるであろう。500いや、600だったか、の御前試合は見事であったぞ。」

 

ということを聞いた先輩は、驚きのためか、目を見開いたまま固まってしまった。確かこの妖怪は、1600年頃にあった五条家と禅院家との御前試合のことを言っているのであろう。

すると彼女は済まなそうにしつつ口を開く。

 

「っと、すまぬ。人の子は50年ほどで寿命であったな。わけもわからぬことを言ってすまぬな。」

 

と、軽く頭を下げた。

先輩も少しは回復したのか軽くうなずいている。

 

「そうなんだ。でも、八雲ってどこかの本で見たような...」

 

と、頭を働かせている。

 

「よく見ておるの。たぶん幻想郷縁起の写本であろう。たしか、著者の場所に(ゆかり)様の名が入っておったはずじゃ。」

「そうそう、倉庫の奥で埃をかぶってた本だ。たしか、稗田なんだかと、八雲 (ゆかり)だったっけ。たしか、呪霊じゃなく妖怪に対する対処方法なんかが書かれてたっけ。面白い読み物だと思って読んでいたけど、もしかしてマジな話?」

「マジな話じゃよ。実際、我は妖怪であるし。」

 

ちょうどその時、

 

「失礼します。」

 

という声とともに、お盆の上に大量の甘味を先輩のところへ置き去っていった。

先輩は、それらを食べつつ話を続ける。

 

「そういえば、(ゆかり)様と呼んでいて、八雲の性を名乗っているってことは、従者それとも家族?」

「従者じゃよ。もう一人従者がおるのじゃが、その尻を追っかけていたらいつの間にか従者になっとった。まじめすぎるのが玉に瑕じゃがな。」

「へーどんな、妖怪なの。」

「そりゃあ、いい子に決まってるじゃないか。この前なんか、....」

 

と、話し続ける。一切止まる気配はない。

先輩は、この妖怪の地雷を踏んだことに気づきなんとしてでも話を止めようとするが止まらず二人して話を聞く羽目となった。

 

__________________________________________________

 

45分後

 

「...と、いうわけだ。どうだ、もう少し聞くか?」

 

「いや、もう十分理解できたよ。」

 

先輩は、もう満足だと言わんばかりに、少し顔をしかめつつ言った。

たぶん、私も同じような顔をしてるであろうことに苦笑いしつつ情報を整理する。

 

今回話しててわかったこととしては、八雲 (ゆかり)には、二人の従者がおり、それぞれ、妖怪でいう九尾の狐である八雲 (らん)と八雲 (あお)がいること。その下には(ちぇん)という使い魔っぽいものがいること。

幻想郷という場所でも、人間は穏やかに暮らしており、文化は江戸時代レベルだということ。人里は、強大な力を持つ妖怪たちによって保護されており、ほかの妖怪たちが、人里内にいる人間に手を出すことは禁止されていること。

などなど。ほかには付き合い始めてから数百年たつというのにいまだに甘い蜜月を過ごしていることぐらいであろう。

まだまだ話を聞けば、他にもいろいろの内容が聞けそうであったが、正直色々と満足である。などと思っていたら、急に彼女は口を開いた。

 

「そういえば、天元ってまだ生きておるのか?呪術師がいるってことはまだ生き残ってそうじゃけど。」

「それを知って何をするつもりだい。」

「そこまで警戒しなくてもよいだろう、五条の末裔よ。ただ単純に挨拶しに行くだけじゃよ。(ゆかり)様からの命でもあるしな。」

「確かにいるけど、一度天元様に連絡をとってもいいかい?」

「いいとも。」

 

彼女は、右手を一閃させる。すると、扉らしきものが生まれた。

 

「そこを通れば元の場所に戻れるはずじゃ」

「それじゃ、七海よろしくね~。」

 

と、いうなり今まで手を付けていなかった甘味を食べ始めた。

私は、はぁ、とため息をつき、外へと向かった。

 

__________________________________________________

 

確か、今週の夜勤は夜蛾学長であることを思い出しつつ高専へと電話を掛けた。

 

「もしもし、七海ですけど、夜分遅くに失礼いたします。」

「ああ、いい。それで要件は何だ。」

「できれば天元様に確認をとってもらいたいことがありまして。」

「天元様に?確かお前は、任務中だったよな。」

「はい、その先で少し特異な事態に見舞われまして、至急お願いします。」

「わかった。この時間起きておるかわからんが一応確認はしてみる。それで何を聞く?」

「はい、八雲 (ゆかり)と、八雲 (あお)と八雲 (らん)いう存在を知っているか否かということです。」

「八雲 (ゆかり)と八雲 (あお)と八雲 (らん)か。あい分かった聞いてみるとする。」

 

と、保留音が聞こえてきた。

しばらく外の月を眺めつつ待っていると、

 

「もしもし、夜蛾だ。」

「どうでしたか?」

「天元様が直接変わられるそうだ。天元様からは、その名は他言無用だと言われてしまったが何か面倒事に巻き込まれてないか?」

 

はぁと、ため息を付きつつ話をする。

 

「予想ですが一年ほど付きまとわれそうです。」

「災難だな。まあ頑張れ。では天元様と変わるぞ。」

 

が、一向に声が聞こえない。

何かあったのかと周囲を見渡すが特に変化がない。では高専の方にと考えていたが、夜蛾の

 

『天元様、受話器の方向逆です。』

 

という声が聞こえてきて苦笑いをしてしまう。

 

「おお、すまなかったの。」

「いえいえ。」

「最近は便利になったなものだの。このような機材で遠くの奴とも話せるのであるからな。」

「いえいえいえ。」

「おっと、すまないな。年をとると長話になってしょうがない。では、本題に入るとしよう。ここで詳しく話すのもあれだが、私は三人を知っておる。その内の、八雲 (ゆかり)様は、いわゆる私の師でもある。」

「妖怪がですか。」

「そこまで知っておるのか!!そのとおりだ。あのお方は、もともと結界術に優れているお方での。儂が若い頃、才能があると言われ手ほどきを受けたのはいい思い出だ。」

「そうですか...」

「それで今回この三人のうちどちらがいらしたのだ。」

「それが、八雲 (あお)という妖怪でした。」

(あお)様か...そちらに五条もおるのであろう。」

「どうしてそれを。」

「夜蛾が『五条が任務からの帰りが遅い仕事を全部押し付けやがって』と、言っておったからな。まあ良い、早く高専の方に戻って、その上で話がある。戻り次第儂のいる薨星宮まで来なさい。」

「今回、私達は貧乏くじを引いたという認識でいいでしょうか。」

「言い方が悪いがそのとおりだな。八雲 (らん)様であるのならまだしも、今回来られたのが八雲 (あお)様であるのだから大外れもいいところだ。」

「八雲 (あお)様からは、面会を希望されるとのことでしたが...」

「じきに招待の手紙を送ると伝えておいてくれ。」

「了解しました。」

「それと、五条のやつに言い含めておけ、決してあのお方と争うでないぞと。」

 

でわなという声とともに電話は切れてしまった。

 

 

 




テストが近いので次回投稿は遅れます


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13話 七海対面

お気に入り登録 240超えありがとうございます!!



私は、通話を終え、先輩がいるであろう領域内へと、戻ってきた。

 

「何やってるんですか...」

 

私はあきれからか、平たい声になるのを意識しつついう。

目の前には、目隠しをされた状態で、芋虫のように縄でぐるぐる巻きにされた状態で転がされている先輩がいた。

隣の狐もその状態を楽しんでいるようで、横たわっている先輩にあんみつを餌付けしていた。

 

「こやつめ、わが領域内で領域を展開させおってからに。場所を変えなければ押しつぶされるところであったぞ。」

 

というと、先輩の無限バリアを展開していないのか何事もないように右手をすり抜けさせ、頭をぐりぐりしている。

七海はふと周りを見渡してみると、階下には赤い鳥居と彼岸花が広がっており、目の前には本堂の前にある大きな鳥居の前にいることに気が付いた。

 

「七海。深くは聞かないでくれ。でなんで君はしれっと、無限を何事もないようにとおりぬけているのかな。」

「私にも一応、効いておるぞほらこの通り。」

 

と、あんみつを運んでいた木のスプーンで先輩の無限をコツコツと叩く。

 

「じゃあなんでだい。」

「先ほどからなんでなんでじゃのう。自分の頭で考えたらどうじゃ。ヒントはおぬしら一族の術式の一部じゃよ。」

「無下限呪術?」

「それはおぬしら一族の術式であろう。答えになっとらんわ。」

「虚式?」

「大正解!!」

 

と、先ほどのことがなかったかのようにあんみつを乗せたスプーンを先輩の前にまでもっていく。

 

「一昔前、御前試合を見たといったであろう。その際におぬしらの家系の術式を見たのじゃがとても面白くてのいろいろと研究したのもだ。その際に思ついたのじゃが、普通の物質では、無限を通り抜けることは決してできない。当たり前のことであろう。」

 

先輩はうなずく。

 

「で、その時に見た虚式を見て思ったのじゃ。これならば無限を貫けるかもしれんとな。」

「どうしてだい」

「虚式というものはあくまで、存在しないものを無理やり作り出すものであろう。存在しないものを作り出すつまり、普通の物質ではないものを作り出すことができるとも、言い換えることもできるのだ。ならば無限を貫けるかもしれんと思ったのじゃ。そのうえで虚式を読み解いてみると、ただ単純に五条の術式と反転術式を合わせたものではないか。これならば行けると感じ、さっそく外を歩いていた五条に試してみたのじゃ。そしたら大正解。土手っ腹に風穴をあけることに成功したのじゃ。もちろん治療しておいたがな。」

 

先輩はうわぁって顔をしながら聞いている。

 

「治していたら、ふと思ったのじゃ、虚式の原理を使えば、つまり呪力と反転させた呪力を何かにまとわせれば、通れるんじゃねと思ったのじゃ。」

「で、また襲ったと?」

「いやいや、襲わんよ。ただ単にかまいたちのように、頬に傷つけられるのか試したわけだが、きれいにスパッと切れての。やっぱり私は間違ってなかったと感じたよ。」

「五条のやつは襲われたと感じたのか急いで反転術式を使って回復して警戒していたのが滑稽であったの」

 

と彼女はいつ取り出したのか扇子で口を隠しながらクツクツと笑った。

 

「その後、ちょくちょく襲って遊んでおったのだがな、何故か早死にしてしまった。本当に惜しいやつを失った、残念だったのう。」

「はあ。」

 

と私は苦笑いをする。

 

「そのような尊い犠牲のおかげでこの術が生まれたわけよ。」

 

といいつつ、先輩の口へとあんみつを運んで行った。

 

「そうだ、天元とはどうであったのか?」

 

と彼女はこちらを振り向いて話しかけてきた。

 

「ああ、天元様からは、じきに手紙を送るとおっしゃっていましたが。」

「そうであるか。一応念のためにこちらから手紙を書いておったから、持っていけ。あと、ここの人間をこれ以上捕らえる気はない。迷惑かけてすまんのと伝えおいてくれたまえ。」

 

と裏に『緑』と達筆で書かれた手紙を手渡してきた。

 

「では、よろしく頼むぞ現代の呪術師よ。」

 

というなり、彼女はパチンと指を鳴らした。

 

__________________________________________________

 

 

気が付くと、元の校庭らしき場所に立っていた。

近くに彼女の姿はなく、横には先輩が縄に縛られた状態で転がっており、自分の手には先ほどもらった手紙が握られていた。

 

「さてと、今日朝一の新幹線で帰りますか。」

「ナナミーン助けて。」

 

と、先輩の縄は解かれておらず転がりながら、自分の足にぶつけてきた。私はイラっとし、いつもの意趣返しができると感じたので、

 

「自分で解いたらいいんじゃないんですか?」

「いやなぜかこの縄とけないんだよ。呪術で解こうとしてもなぜか、呪力がこの縄に吸われるし。身体能力で無理やりはがそうとしても、なぜか伸びるし。」

「へえ、そうなんですね。おかわいそうに。」

 

と、言葉をかけ、無視して、そのまま宿直室へ報告して帰ろうとしていると、後ろからゴロゴロ転がってきて、追いかけてくる。

 

「うざいんで、早く解いてもらえませんか?」

 

と本音を投げかける。

 

「いや、本当に解けないんだって!!」

 

まだうそをつくのかと感じた私は、

 

「それはおかわいそうに。」

 

といい、仙台駅へと帰っていった。

途中で、タクシーに乗ったり(先輩は荷台)していたが、結局縄を解くことはなかった。

流石に本当に解けないのかと感じた私は、タクシーで先輩を下すとき流石に縄を解いた。

 

__________________________________________________

 

薨星宮

 

私と五条先輩は今、薨星宮にいた。

 

「えー、僕まで行かなきゃいけないの?」

 

とぶうたれる、先輩を横目に、1000の扉がある部屋から昇降機がある部屋を二人がかりで探し始めた。

 

 

「おお、遅かったの。」

「天元様遅くなり申し訳ございません。」

「いや、よい。結界の中で正解を見つけるのは大変であるからな。」

 

と天元様は笑いながらおっしゃった。机を境にして三人で座る

 

「で、そちらの手紙は?」

「こちら、八雲 (あお)様の手紙です。」

 

と、手渡す。

 

「ああ、すまない後で読むとしよう。」

「それで、呼ばれた理由はなんでしょうか?」

「本当に申し訳ないのだが、あの方が元の場所に戻られるまでの間、付き添いとしてちょくちょく見てほしいということと、彼女たちの情報だ。ところで、五条は、彼女たちの正体を知っているのか?」

「ああ、一応幻想郷縁起という読み物は一応読んだけど、彼女は妖怪であることや、幻想郷という場所からきたというぐらいは、知っているつもりだけど。」

「そこまで知っているのであれば十分だ。では、ひとまず幻想郷という場所から話そうと思か。」

 

天元様はお茶をすすりながら話し始めた。

 

「幻想郷という場所はな、今はほとんど存在していない妖怪たちの住処なんじゃ。」

「確か、現在では恐れが足りなくて呪霊になってしまうんでしたっけ。」

「その通りだ。それを恐れた、妖怪たちは、考えたのだ。それであるのであれば、外の世界と隔離させて人々に妖怪という存在を認めさせ、妖怪が生きていける世界を作ったっていうのが始まりじゃ。それには、わが師である八雲 (ゆかり)様が中心となって行われておっての、それで約200年ほど前、出来上がったのが、幻想郷という場所なのだよ。」

「はいはい。」

 

と、先輩が手を挙げてる。

 

「どうしたのだ五条。」

「質問なんだけど、その妖怪たちってどれくらい強いの?僕の無領空処を領域展開の強さで軽く破られたんだけど。」

「ああ、争ってしまったか。ちなみに、おぬしとは比べ物にならぬほど強いぞ。あやつらが言っている弱小妖怪といわれるものでも、現在の二級から一級呪霊クラスの強さじゃ。特に今回、対峙することとなった八雲 (あお)様は別格じゃ。本気で殺そうとしてきたら呪術師全員滅ぼすなぞ一両日かからずにできることであろう。そんな存在がゴロゴロいるのが幻想郷という場所じゃ。」

「なるほど、できるだけつつかないほうがいい場所ということか。」

 

天元様は頷きながら。

 

「その通りだ。できるだけ、穏便に幻想郷へと帰ってもらうのが一番無難であろう。」

「天元様は今回、八雲 (あお)様が来られた理由はわかりますか?」

「たぶん、人間の補充であろう。幻想郷というシステム上、妖怪の数が人間に比べて圧倒的に多くなってしまう。そのせいで、人間たちは食材をとるために、山に向かうが、妖怪に食われるなどして、徐々に人口が減っていってしまうのだ。そのせいで、人口不足になった分を補うため訪れたのだと思う。前回は確か、80年ほど前であったか、八雲 (ゆかり)様が、ここ薨星宮の、直接結界を破って入ってこられて、『幻想郷の人間が少なくなったからさらっていくわー』といって、挨拶ついでに、酒樽を一つ置いていったのだったか。」

「80年前。つまり戦後真っただ中の際にさらっていったということか。七海、担当した事件はどうだった。」

「全員咎人でありましたが、約150人ほど不思議な空間に眠らされた状態で山積みにされていましたね。」

「我々、呪術師としては、失格かもしれぬが、そやつらは尊い犠牲になってもらうしかあるまい。」

 

先輩は顎を腕に乗せながら、

 

「もしそいつらが解放できたとしたら?」

「再度別の人物を捕まえるであろう。うまく(あお)様を幻想郷へと追い返すことができたとしても、幻想郷側が切羽詰まって、文字通り百鬼夜行を街中で行われたらたまったものではない。そこまで、幻想郷というのはぎりぎりのシステムの上で成り立っておるのだ。また、最悪人間を幻想郷に送らなかった場合は言うまでもないが、」

「妖怪たちが呪霊へと変化し幻想郷のシステムが崩壊。幻想郷から外の世界へ元々妖怪であった、強力な呪霊があふれかえると。」

「その通りじゃ。七海。」

「だから、下手なことはせずに向こうの目的を早く片付けて穏便に帰っていただくのが一番だと。」

 

はぁ、と皆一様にため息をついた。

 

「そういえば、天元様は、八雲 (あお)がいらしたと報告した際外れだと言っていましたがそれはなぜですか。」

「そうさな。この案件にかかわってもらう以上話すか。このことは決して他言無用じゃぞ。八雲 (あお)様の前の名を話せばなんとなく察するであろう。あのお方の元の名は『妲己』という九尾の狐が元じゃな。」

「妲己?」

「確か、中国のほうの、九尾の狐であったっけ。日本の玉藻の前の元ネタになったやつ。」

 

と先輩が言う。

 

「その通りじゃ。七海のほうが知らんようだし少し話すかとするかの。妲己というのは紀元前11世紀つまり3000年ほど前じゃの、殷という国が現在の中国にあったのじゃ。そこの王であった紂王という男の妃となったのが彼女じゃ。そしてその国を亡ぼす原因を作ったのも彼女であるぞ。その当時は彼女も呪霊に近しい存在であったから仕方がないかもしれんが、何の罪もない市民たちを火あぶりの刑を面白おかしく変化させたものや、蟲毒の中に人間を放り込むなどいろいろとやったそうなのじゃ。」

「そんなことをしていたんですか」

「そうだとも。それもたちが悪いことに、儂に面白かった思い出として語るのであるから最もたちが悪い。最終的に殷は滅んで、市中引き回しされた後に殺された際に、懲りて咎人以外人を直接的に殺せないという縛りを作ったようじゃがな。しかし、本質的なところは何も変わっておらん。妖怪になったおかげで喜ばしいことに残虐性はほとんどなくなったようだが、楽しければ何やっても大丈夫。後始末は誰かやってくれるでしょう。といった考えのもとで行動するお方だ。」

 

「妖怪の形をした大きな子供みたいな感じかな?」

 

と、先輩が言うので吹き出してしまった。天元様も同様に、苦笑いしていらっしゃる。

 

「五条、お前の口からそのような言葉がとび出てくるとは思いもしなかったぞ」

「先輩、そんなことを言うなんてめずらしいですね。」

 

先輩にジト目でにらまれる雰囲気を感じながら天元様話し続けた。

 

「まあ良い、その反面、能力は相当なものだぞ。なんでも、術式を読み解き、数式へと置き換えることで、術式の効率や、ほかの術者が使っている術式をコピーなどなどができるものだ。争うなといったのもそこに原因があるんじゃ。」

「万が一新しい術式を読み解かれると、術式がばれてまずいってこと?」

 

と先輩は天元様に聞いている。

 

「いやそうではない。一昔前何度か、(あお)様と戦った呪術師が自殺や、狂死することが何度かあったのじゃ。調査をしてみると、単純に興味からか呪術師の術式を調べてそれを使い、ウザがらみや警戒をあおり、疑心暗鬼や、警戒心を引きたてさせるなどしてストレスからか間接的に殺したことが何度もあるのじゃ。」

「確かに、ほんとかどうかわかりませんが五条の祖先も早死してしまったと言ってましたっけ。」

「そうだ。だから下手に殺されたくないのであればあの方からの興味を向けられないというのが一番なんじゃよ」

「なるほどね...」

 

先輩は頭を悩ませながら言った。

 

「でだ、今回、おぬしたちに気を付けてもらいたいこととしては、あやつが、呪詛師側に決してつかせないようにするということだ。先ほどの性格しかり、行動しかり、から分かることだと思うが、基本的に面白そうな方向にしか動かん奴じゃ。呪詛師側のほうに面白そうなことがあるとなるとすぐそちら側につきとてつもなく面倒なことであろう。それは高専、いや呪術師全体として、何としてでも阻止したい。だから頼むぞ。」

 

と天元様に頭を下げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回も投稿遅れます

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14話 お狐様 逢引

こんにちは中秋の名月です。
しれっとお気に入り登録が370になってビビってます。
課題がひとまず落ち着いたのでできれば更新速度を上げていきたいです。


「うん...もう朝かの。」

 

私は、曇り窓越しに見える、明るい街の様子を見つつひとりごちる。

 

昨日、呪術師を、領域外へと押し出した後、帰ってきた稲荷神社の様子を寝ぼけ眼で見つめていると、唐突に念話がつながった。

 

「もしもし、(あお)起きているか。」

 

耳を傾けてみると、(らん)が念話をかけてきたようだ。

 

「もしもーし、おきてるよー。」

「ようやくつながったか。向こうに行ってから生活習慣が崩れてないか?」

「仕方がないでしょ。昨日はあの後、1時間ほど呪術師達とお話ししてきたんだから。それよりも、何かあったの?」

 

と私は聞く。

 

「まあいいか。それよりも、(ゆかり)様から、追加の命だ。」

「えー。これ以上仕事増やされるの。」

「そういうな。現状、外の世界にいるのはおぬしだけなのだから仕方あるまい。」

 

と、(らん)ちゃんが言う。

 

「まあいいや。それで、追加の命は何だい?」

「昨日、呪術師がいることは確認したであろう。その呪術師達には強さごとに、階級があるそうだな。」

「特級、一級、二級ってやつ?」

「その通りだ。その中でも特級クラスの呪術師の身元と目的を明らかにしてこい。というのが命だ。」

「ああ、でもそんなの調べてどうするの?」

 

と、私は、(らん)ちゃんへと問いかける。

 

「いや、私も、(ゆかり)様から伝えろと命令されられただけだから、詳しいことはわからないぞ。あくまで予想になるが多分、変な実験や我々妖怪に対して致命的となる実験をしていないか念のため調べているだけなのではないかと思っている。」

「いやそんな奴いるわけないじゃない。」

「一昔前に、アヘンにはまった呪術師がいなかったっけ。」

「あー、なるほど。」

 

といわれ私は思い出す。その当時の現在でいう特級クラスの呪術師がアヘンに、はまるといったことがあった。その時に感じたのであろう全能感そして、恐怖心が薄れていくことに、とあるその呪術師は天啓にうたれたのだろう。これらを、人々に多くの人々ばらまけば、人々は恐れる心や、恨みなどをなくし、全能感や、多幸感に包まれることで、最終的に呪霊が消滅するんじゃないかというものだったか。

当時は、現代のように薬物の規制はなかったし、安価で大量に手に入ったので薬が切れたときの、喪失感や虚無感などがなかったのであろう。そのおかげで、多くの妖怪たちが呪霊へと身を落としたものだ。

最終的に、薬物の過剰摂取により、その呪術師はなくなったが、多くの薬物中毒者を残すという結果を残した。

一昔前で現代に比べて恨みや恐れがあったが、妖怪たちにとってみれば大きな痛手となった。さらには、昔に比べ恨みや恐れがとても少ない、現代日本でそのようなことをされると、我々妖怪は幻想郷の外へと一歩も出られなくなるということか。

 

「確かにその通りであったな。」

 

と、私は笑いながら答えた。

 

「それで、そちらのほうで何か収穫はあったのか?」

「人間を150人ほど捕まえたということかな。」

 

と、言い、右手で妖術を行使し(らん)ちゃんが持っているスキマへと送る。

 

「届いた?」

「ああ無事に届いたぞ。というか、人間を積み上げるなと何度言えばわかるんだ?」

 

と、(らん)ちゃんに怒られてしまった。

 

「えー、いちいち整理するのが面倒だからそのまま上から放り入れてたんだけど。」

「積み上げるとほら、こんな感じで、最下層にいたやつらが圧死するから、やめてくれ。」

「えー、いいじゃん食肉用にしちゃえば。」

「そういうことではない。そのままほっておくと、腐り、周りの人間にも、害を及ぼすのだからやめてくれ。」

「仕方ないなー。わかったよー。」

 

はぁと、(らん)ちゃんは深いため息をついた。

 

「目標よりは少ないけどこれぐらいいれば十分でしょ。」

「ああ、まだ人間の数的には十分すぎるほどいる。私たちからしてみれば、贅沢な話だが、寝たまま一生を終えるという人も珍しくはないという状態だ。」

(ゆかり)様は少し人間が不足することに警戒しすぎだとかんじるからね。それに呪術師に顔覚えられちゃったし。」

「まあ、よいだろう。以上で大丈夫か?」

「いや、まだ待って、もう一つ判明したことがあるよ。」

 

と、話を区切る。

 

「何か他にも分かったことがあるのか?」

「そうそう、今回この外の世界に来た一つ目の最重要目標がなんとなくだけどてかがりはつかめてよ。」

「一つ目の最重要目標...なぜ、外の世界の呪霊が力を持ったかであったか?結局のところなんであったのだ?」

「今回、五条の末裔と会うことができたんだけど、多分そいつのせいだと思う。」

「五条、五条ああ、無下限呪術を使うところか。なに、この時代に六眼でも、持っておったのか?」

 

と、(らん)ちゃんは冗談のように言う。

 

「いや、そのまさかなんだよ。」

「え...そうなのか。」

 

(らん)ちゃんは固まってしまった。

 

(らん)ちゃん(らん)ちゃん、大丈夫?」

「ああ、すまない。」

「いうまでもないと思うけど、六眼の呪術師が生まれたことによって相対的に、呪霊も力をつけるようになったんだったんだと思う。」

「もうほぼ答えのようなものではないか。なぜその情報が手掛かりなのだ?」

 

と、(らん)ちゃんが聞いてきた。

 

「もちろん五条の末裔が、六眼を持って生まれたというのが最有力候補だけどその逆も考えられるじゃん。」

「その逆?」

「そうそう、例えば、呪詛師がとんでもない呪霊を生み出したがために、呪術師は相対的に呪術的なパワーバランスをそろえるために六眼の子を産んだという考えもある。」

「まんま、その逆ということか。」

「そうそう。」

「ちなみにその五条の末裔とやらの年齢はいくらぐらいだった?」

「あー、大体二十前半ってかんじだった。精神的に子供っぽかったし、見た目も二十前半って感じだったな。」

(ゆかり)様がお目覚めになられたら一応確認をとってみる。」

「お願いします。」

「ほかには何かあるか?」

 

私は少し悩んだ後、

 

「特には...いや、天元がいることぐらいかな。近いうちに会うことができそうだということかな。」

「わかった、こっちらもお伝えしておく。報告は以上で大丈夫か?」

「問題ないよー。それよりも外の世界でなんか買ってきてほしいものある?」

 

と、私は話を切り替えた。

 

__________________________________________________

 

「この簪いいと思ったんだけどなー」

「いや、私はもう髪を伸ばす気はないからな。」

「残念。せっかくお揃いにできると思ったのに。じゃあ、べっ甲の髪飾りだけ買っていくね。」

「やっぱり髪を伸ばそうかな...」

「じゃあ、簪にする?」

「いや、少し考えさせてくれ。」

「わかったよー。どうせまだ外の世界にいなきゃいけないからいつでも問題ないでしょ。じゃあ、切るね。じゃあね。」

「ばいばい。」

 

という声とともに、切れてしまった。

気が付くと太陽は天上でさんさんと輝いており、もうすぐお昼であると感じさせた。

 

「少ししゃべりすぎてしまったの。しかし、今日は何かあったような...」

 

と頭を悩ませる。

 

「ああ、あの直感が鋭い女子との逢引であったな。」

 

約束を思い出し、身支度をした後、仙台駅へと向かった。

 

__________________________________________________

 

仙台駅に着くと、そこには律儀に待っている、彼女がいた。確か名は佐々木であったか。

 

「おお、待たせたの。」

 

と、言うと、彼女は気が付くなり、顔を真っ赤にさせて近づいてきた。

少し魅了の妖術が強くかかりすぎている印象はあるが問題はないであろう。

 

「待ってました!!」

 

と、近寄ってきた。

 

「いや、すまんな。昨日はいろいろと忙しくてな。起きるのがいくばくか遅くなってしまった。」

「いやいや、大丈夫ですよ。」

「この後、どこに行くのかね?」

「ひとまず、カフェに入りませんか?」

 

私たちは、仙台駅の駅中にある前に来た小さなカフェへと入っていった。

 

「わざわざ来てくれてありがとうです。」

「いやいや、こちらもどうもです。」

「何か飲むか?」

 

と財布を取り出すと、彼女が前に出てきた。

 

「いや、いいですよ。前回おごってもらったし、今回は私が出しますよ。」

「大丈夫だ。おぬしは、まだ高校という場所に通っている小童であろう。それならば、こういうものは大人の私が出すものじゃ。」

「でも...」

「問題あるまい。それに、こんなにかわいい女子におごれるんだ。女冥利に尽きるもんじゃよ。」

「かわいいって...」

 

と、彼女はうつむきブツブツ何か言っている。

それをかわいいと思った私は、無意識に抱き着いて頭をなで始めた。

 

そのような二人の世界にこもっていると、不意に、

 

「すみません。注文をお願いします。」

 

と、カウンターにいる店員にジト目で見られながら言われてしまった。

 

「いや、済まぬな。何か飲むか?」

「カフェオレ...」

 

と、彼女は私の胸に顔をうずめながら言った。

 

「じゃあ儂は、ホットコーヒーというやつと、ドーナッツというものを二つくれ。」

「以上でよろしいでしょうか。」

「何か食い物を頼むか?」

「......」

「問題ないようじゃ。」

「かしこまりました。以上で...」

 

という、やり取りを終え、私たちは飲み物を持ってカウンター席へと座った。

彼女は恥ずかしさからかいまだに顔の赤みは取れていない。

 

「そこまで、恥ずかしがらなくてもよかろう。」

「恥ずかしがりますよ。よく人前であんなことできますね。」

 

と、彼女は頬を膨らませながら言ってきた。

 

「おぬしがかわいらしい反応を見せるからであろう」

 

と、彼女の頭を撫でてやる。

彼女はそっぽをむいてしまった。

 

10分後

 

彼女の機嫌も治ったようで話を始めた。

 

「それで、今日はこのあと、どうするのだ。」

「前の予定では、心霊スポットに行こうかなと考えていたんですけど、急遽別の案件がありまして。あっ、あった。これですね。」

 

彼女はカバンの中から、先週渡した対呪霊用の御札と、何故か対妖怪用の御札を机の上に出した。2つともとても新しい御札ということがわかり、というか、これ私が作った御札だ。

 

「どうしてこの御札を?」

「オカルト研究会の活動で、週一のペースで、学校周辺の神社にお供物をすると、言うことをやっていたんですよ。多分あそこは、稲荷神社だったかな。稲荷神社には油揚げでしょ、と今週もお供物を備えようとした際にみつけたんです。なにかわかりますか?」

「いや少し待て。触ってよろしいか?」

「問題ないですよ。」

 

と許可をもらい、触ってみる。軽く妖力や呪力を流してみ、確認してみるが、私が作った御札で間違いないようだ。

 

「なにかわかりましたか?」

 

彼女は目をキラキラさせつつ聞いてきた。

 

「これは...妖怪用の御札であるな。現代にあるなんて珍しい。」

「妖怪ですか?河童とか天狗とかですよね。」

「そうだ、我々が見たことがないだけで実際はいるかもしれんぞ。」

 

と少しうそをついた。

彼女は少し、考え込んでから話し始めた。

 

「これって新しい御札なんですか」

「いや分からん。それにしても、とても状態がいいの。」

「そうですね。もしかしたら、その妖怪というものがくれたのかもしれないですね。」

「神社でお供え物の代わりに置かれていたんでしょ、神様ではなくて?」

「いえ、稲荷神社て、神様の使いである、狐をねぎらうために油揚げをお供物としてささげるんでしょ。だからたぶん、狐の妖怪さんか何かが感謝で置いたんじゃないかなーて。」

 

えー。ほとんどヒントもない状態で真相までたどり着いちゃいましたよこの人...

その直観力に固まっていると、

 

「それにもう一つ証拠があるんです。」

 

と、ずいっと寄ってきた。

たぶん持ってきたであろう新聞を広げて、一面を指さす。

 

「これは、最近起きていた仙台市〇〇刑務所の事件ではないか。」

 

「そうです。ここの文章を見てください。」

 

そこに目を向けると、

 

【近くには、狐の姿が見えたという証言もあり...】

 

「その脱走した人たちってまだ見つからなくて一切手がかりがないって、調べたら出てきたんですよ。」

「そうなのか。それがどう関係してくるのだ?」

「先ほどの狐の妖怪が関係してくるんですよ。」

「狐の妖怪?」

 

と私は尋ねる。

 

「そうです。狐の妖怪にもいろいろと種類があります。例えば、日本で有名な玉藻の前やインドの玉藻の前に当たる華陽婦人などなど。それらは伝説を読む限り基本的に残忍であったと考えられます。」

「そうか。」

「ここから、(あお)さんが言っていた、伝説上の妖怪が存在するのであれば、稲荷神社の供物を食べて、残虐さゆえに、刑務所の人を襲ったのかもしれませんね」

 

すげえ、ところどころ間違っているけど、結果的にはなんやかんや当たってる。

しかし、ここで認めてしまうと、なんやかんや彼女の驚異的な直感から私が九尾の狐であるとばれてしまうのは今のところ避けておきたい。そこで私は、

 

「ではなぜ、外の一般人を襲ってないのかね?非常に残忍であるならば、外の人を襲うと思うのだが。」

「そうなんですよね。直感がピンと来たので言ってみましたがいろいろと破綻してますよね。」

 

と、苦笑いをする。

 

「ほかに、何か呪霊に関する事件や何かあるか?」

 

と話をつづけた。

 

__________________________________________________

 

「どうであったか?少しは参考になれば幸いなのだが。」

「いや、十分ためになりました。」

 

私たちは、茜色に輝く空を背に、話していた

 

「次回はいつ集まるか?」

「じゃあ、同じ場所で来週同じ時間で会いましょう。」

「あい分かった。ではな。」

「さようなら」

 

という声とともに彼女は駅のほうへと帰ってった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




佐々木先輩の直感はすごく鋭い設定です
原作でもしれっと呪霊を見たことや見えたことがないのにそれを言い当てたりしたところから、設定がきてます。


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幕間の物語 1

3っつ入ってますよー
お気に入り登録380ありがとうございます。


幕間の物語

八雲 (らん)は当たり?

 

 

「天元様、当たりといっていたほうの、八雲 (らん)とはどのようなお方なのですか?」

「そうそう、僕も気になっていたんだよね。(あお)様だったっけ。散々、(らん)との甘い話を聞かされてうんざりなんだけど。」

 

天元様は驚きのためかピクリと固まってしまった。

 

「天元様大丈夫でしょうか?」

「いやすまん。あの二人が付き合っているとは意外であったからな。性格的には真反対で相性が悪いと感じておったのだが。」

「そうかな、振り回す彼女と振り回られる彼氏みたいな感じでお似合いだと感じましたね。」

「そうそう」

 

と、天元様へ言う。すると、

 

「先に勘違いしていると思うが、八雲 (らん)とは、女であるぞ。」

 

「マジか」

「話を聞いている限り男だと思っていたのですが」

 

「そうか。まあ良いそれで、八雲 (らん)のことであっただろう。彼女は、九尾の狐であって、元々、玉藻の前と呼ばれておった、妖狐なんじゃ。」

 

「玉藻の前?確か、殺生石になって、封印されたはず。」

「そうそう違ったけ。」

 

「そのとおりだ。殺生石になってしまったが、ここで別の妖怪が介入してきたのじゃ。それが八雲 (ゆかり)様じゃよ。あのお方が封印を解いたのじゃよ。」

 

「なぜそのようなことを?」

「多分憶測上での話になるが良いか?」

「お願いします。」

 

天元様はお茶をすすりながら話を始めた。

 

「多分、幻想郷の結界の管理が目的だと考えられるのじゃ。お主らは結界術というものを行使するしたことが、ないからわからんと思うが、儂の物を隠す結界一つ貼るだけでも、それ相応の計算が必要になるのじゃ。ましてや、幻想郷は、外の世界と幻想郷を完璧に切り離す結界。つまり、この世界の中に、別の世界を作るために貼られた結界なのだ。その時の計算量なんて考えたくもなくなるようなほど膨大なのだ。その結界を維持するための、助手を雇う必要があったと私が考えておるが。」

「なるほどね。」

「では、なぜ(あお)様とは違って当たりなんですか。玉藻の前って有名だから妲己同様になにかやらかしてそうですけども。」

 

天元様は少し考えられてからこう話された。

 

「多分、伝説を読んで見ればわかると思うが、玉藻の前は、ただ単純に天皇に取り立てられ鳥羽上皇から寵愛を受けるようになった。そこからは、玉藻の前は、ただ単純に鳥羽上皇にさんざん尽くして来たのだが、鳥羽上皇自身が玉藻の前の呪力や妖力に当てられたのであろう次第に床に伏すようになったのだ。」

 

「なるほど、それで封印されたと。」

 

「その通りだ。ここから分かることとしては、ただ単純に、鳥羽上皇が呪力に弱かっただけで、玉藻の前は、妲己とは全く異なり、ただ単純に尽くしておっただけなのだ。実際、八雲 (らん)は現在でも殺生石より封印を解いた八雲 (ゆかり)様に尽くしておるし、付き合っておる、(あお)様に十分に尽くしておるであろう。」

 

「確かに、惚れ話を聞いている限り確かに尽くしていたね」

 

と、話を思い返した。

 

「それゆえに、良識も基本的にわきまえておるし、基本的に利益さえ示せば、外の世界にいる呪霊を退治してくれるであろう。さらには知的好奇心からか、唐突に変なことをしないと考えると、圧倒的に(あお)様に比べて当たりということだ。」

「なるほどね。」

「確かに。」

 

満場一致であった。

 

__________________________________________________

 

手紙について

 

「天元様、差しさわりなければこちらの手紙には何が書かれていたのかお聞きしても?」

「まっておれ、おぬしらもこの事件に巻き込まれた身じゃ。できる限り情報は渡してやるぞ。」

 

と、(あお)と書かれた封から手紙を取り出した。

 

「あやつめ、いい加減日本語で書けと何度言えば...」

 

はぁ。と大きなため息を一つついた。

 

「すまぬが、三番目の棚の二段目にある右から四番目と五番目の本をとってきてくれぬか?」

「わかりました。」

 

と言われ、七海は立ち上がり、本棚へと向かった。

 

「これは...」

 

天元様が指定された本は、漢文の辞書のようなものだった。

天元様は辞書をめくりつつ手紙を読んでいき最後まで読み終えたところで、

 

「基本的にいつ伺えばいいかという内容であったぞ。あとは、お前の結界抜けるのがめんどくさいから訪れた際、結界を緩めないと正面突破で破ってやるぞいう脅し文句だったがな。」

「本当に自分勝手なお方なんですね。」

「その通りじゃな...それに、いうことを聞かぬと本当に結界を破ってくるお方だから従うしかあるまい。」

 

と目頭を押さえつつ天元様はおっしゃった。

 

「五条、すまぬが、これからしたためる、手紙を明日のうちに○○稲荷神社まで、届けてくれぬか。」

「僕が?」

「すまぬな。この手紙には、儂が結界を緩める時刻が記載されることとなる。そのような最重要事項、普通の呪術師に運ばせるわけにはいかんであろう。」

「一応これでも特級なんだけど。」

「興味本位で、私の任務先に来たのが運の尽きです。あきらめて従ってください。」

「まじかー。」

 

珍しく、五条悟が振り回される姿を苦笑いしながら見る二人であった。

 

__________________________________________________

 

幕間 幻想郷縁起 八雲 (あお)のページ

 

著 稗田 阿求

 

九尾の数学者 八雲 (あお)

 

能力     万物を数式に置き換える程度の能力

危険度    高

人間友好度  普通 

主な活動場所 何処でも

 

前のページに書いてあるとおり、妖獣は尻尾が多いほど力が強くながければ長いほど賢いと言われる。そんな妖獣の最高峰のもう一つに位置するのが九尾の狐の八雲 (あお)である。

 

大きな尻尾を9つつけた狐で、輝かしい毛並みを持っており神々しさを醸し出している。

 

八雲 (らん)同様に、八雲 (ゆかり)に付き従っているが、(らん)とは異なり(ゆかり)の式神ではないらしい。

 

(あお)は、あくまで(らん)の近くにいたいからと言う理由で(ゆかり)に従っており、時たま仕事をサボり人里に赴くことが多々ある。元々、面食いなのか、尻軽なのか、女性のことが好きなのか、よく人里の女性を口説こうとしてくることが多々ある。

 

現に、私も口説かれたことがあり、配慮がしっかりとしておりとても魅力的な女性に見え、お茶をするところであったが、仕事をサボって来ていたのか八雲 (らん)が現れ耳を引っ張って人里の外へ連れて行ってしまった。少し残念なところがあるが魅力的な女性であることには間違いはない。

 

知能は(らん)とは別方向に高く、能力にある通り特に数式に強い。逆に、計算は苦手なようで、人間程度の計算能力しかない。しかし、新しく数式や法則を見つけ数式を立てることは得意なようで、(らん)とともに幻想郷の結界の効率化のために駆け回っているようだ。(前ページに書かれているが、(らん)は非常に計算能力が高い)

 

普段は八雲 (ゆかり)と同じ家に住み、(らん)とともに幻想郷で行動している。

 

目撃情報例

 

「九尾の妖狐二人組が仲睦まじく油揚げを一枚買っていったのが印象的だった。」...豆腐屋

 

隣りにいるのは多分、八雲 (らん)であろう。人里にいればよく見かけることのできる状況である。

 

「もともと、妖怪になんか興味なかったのに、あの人が来てくれると楽しくてついつい話しすぎて他の悩み事とかなくなっちゃうのよね。」...とある人形魔法使い

 

妖怪の中でも長寿の部類に入るので、悩み相談などはお手の物であろう。助言などを貰えればきっと役に立つであろう。

 

「たまに、本を借りに遊びに来るわ。妖怪であるのに魔法も詳しいようで、時たま魔力を抑えるための魔法陣を提案したり、魔法陣の間違いを指摘してくれたり、してとても優秀だと感じたわ。機会があれば魔法談義をしたいものわね。」...七曜の魔法使い

 

たぶん、それは、魔法陣を能力で読み解き、数式へと置き換えることによって効率的なものを計算したのであろう。たぶん魔法的な談義を持ちかけたところで魔法に関して理解は深くないと思うので、談義は成り立たないと思われる。

 

 

 




次話、少し遅れます


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15話 お狐様対面

お久しぶりです。
15話になっても、原作まだ入ってない小説というのも珍しいのではないでしょうか。(すみません早めに入らせます。)




私は、彼女との対面を終えた後、稲荷神社へと帰っていった。

 

帰ってくると、そこには五条の末裔が退屈そうに待っていた。

 

「おお久しいの、五条の末裔よ。」

「久しいといわれても、昨日会ったばっかりなんだけどね。」

「どうした、そんな不愛想な顔をして。」

 

と、聞く。

 

「何時間待ったと思ってるの君?」

「早く来すぎるのがいかんであろう。おぬしのせいじゃよ。」

 

とあおってやる。

 

「こいつ...」

「まあ良い、それより、手紙を渡したまえ。」

 

と手を出し、手紙を受け取った。

 

「なるほど。時間通りに向かうとしよう。どうもな。」

 

といい、手紙を燃やした。

 

__________________________________________________

 

二日後

 

「久しいの天元よ。」

 

私は今、天元の前にいた。

 

「お久しぶりです。(あお)様。」

「いや、その呼び方はやめてくれ。私は所詮、(ゆかり)様の使いぱしりにすぎぬからな。」

「ところで、(ゆかり)様はお元気でしょうか。」

「無論、元気じゃよ。冬の間、儂らに仕事を押し付けて、惰眠をむさぼるくらいにはな。」

 

天元は、はは、と苦笑いを返す。

 

「まあ良い、これは(ゆかり)様からの手紙と贈り物じゃ。」

 

と、右手を一閃させる。

するとそこからは、酒樽と、一通の手紙が出てきた。

天元はそれを受け取ると、手紙を開き読み始めた。

 

(ゆかり)様からは、特に直接、伝達事項とかはないようじゃ。この手紙の返信を書くようであるようなら、少し待つが。」

「では、すまぬが少し待ってくれ。」

「あい分かった。」

 

天元は手紙を書きつつ、聞いてきた。

 

「最近幻想郷の様子はどうなのだ。何か変化でもあったのか?」

「最近は、吸血鬼が引っ越してきた。」

「吸血鬼?」

「そうそう。何しろ、ヴラド三世の末裔の姉妹らしい。初めは、幻想郷を乗っ取るために、外の世界から攻め込んできたのじゃが、何とか抑え込んだというものだ。」

「なるほど。」

 

と、天元は筆を執りつついう。

 

「ほかには、弾幕ゲームというものが幻想郷で適用されたというものだな。」

「弾幕ゲーム?」

「そうそう。弾幕ゲームじゃ。先ほどの話に戻るが、何しろ、幻想郷が侵攻されるのは初めてのことでな、妖怪同士の本格的な争いまで発展したのじゃ。」

「本格的な争い?」

「そうだ。鬼の一部や花妖怪、挙句の果てには、私や、(ゆかり)様までもが参加する大戦に近い状態になったのだ。」

 

と、お茶をすする。

 

「その結果、辛勝はすることはでき、吸血鬼を幻想郷の住民として受け入れることができたのじゃが、その後の戦後処理でな。幻想郷の結界に大穴が空いておっての。」

「大穴か?大丈夫だったのか?」

「いや、大丈夫ではないが、幻想郷は複数の結界によってできているからな。そのうちのニ枚が大穴が空いたということじゃな。」

「なるほど。」

「その復旧作業が、とてつもなく大変だったのだ。詳しく話すと二週間ほど寝る暇すらなかった。」

 

はあ、とため息御つく。

 

「そこで、(ゆかり)様も感じたのであろう。このようなことが続けば、いつか、幻想郷の結界が崩れて幻想郷自体が崩壊するとお考えなされたのであろう。そこで生まれたのが、弾幕ゲームというものじゃ。」

「そうですか...」

「大まかな、ルールとしては、このような普通の厚紙に、スペルカードというものを書いて、それらを打ち合うことで、勝負を決めるというものだな。」

 

と、天元の前に、私のスペルカードの一枚を見せる。

 

「これは、『式符「狐様のお堂参り」』と書いてありますが。」

「そうだ、これは、私のスペルカードなのだが、ここに描いている絵に似たような弾幕を撃ちあって勝敗を決めるというものじゃな。」

「そうなんですか。」

「このような、ルールのおかげで、妖怪同士での戦いが起きたとしても、幻想郷の結界に被害が広がらずに済んだというわけだよ。そうだ、おぬしも作ってみてはどうか?暇つぶしにはとても面白いものだぞ?」

「こちらは、日本の呪術界を見守らなければならぬから、作る時間があるまい。」

「それは、残念。」

 

といい、お茶を傾けた。

 

「ところで、外の世界ではどうなのじゃ? 最近(ゆかり)様から、の報告で外の世界で、呪霊どもが力を増しているようじゃが。」

「あったことであるであろう。あの五条の六眼のせいじゃよ。」

「ああ、確かに。」

「あやつが、おるせいで呪霊どもが力を持ち始め、それと同時に呪術師も力を持ち始めたということだな。100年前までは、科学の進歩によってどんどん呪霊がいなくなるおかげで、仕事がなくなり200年ほどすればお役御免だと思っておったのが、最近忙しすぎてたまらん。」

「仕方あるまい。ところで、特級呪術師というのは現在何人おるのじゃ?」

 

天元はしたためている手紙を指さしながら、

 

「こちらにも書いておることだが、現在は4人おるぞ。」

「そんなにおるのか。」

「そうだ。一人目は言わずもがな、五条 悟。おぬしが、五条の末裔と呼んでいたやつだな。」

「六眼を持っとったやつか。」

「あとは、夏油傑、乙骨憂太、九十九由基だな。」

(ゆかり)様からの命であるのだが、それぞれの目標みたいなものはあるか?」

「目的?」

「そうだ。目的だ。一昔前は、恐れをなくすために薬物に手を出したり、呪術界上層部を皆殺しにするなど特級クラスの呪術師になればいろいろあるであろう。」

 

というと、天元は頭を悩ませる。

 

「済まぬな。基本的に、俗世にかかわらんようにしておっての。しかし五条のほうの目的はわかるぞ。」

「ほう。なんであるのか?」

 

と、天元に好奇心であるのか詰め寄る。

 

「たしか、呪術界上層部を何とかするというものであったか?」

 

天元はお茶を濁しつついう。

 

「ありきたりだな詰まらん奴だ。」

 

といい、興味をなくしたのか天元から離れた。

 

「所詮、皆殺しにしたところで、奴が死ぬころに首がすげ変わっているだけであろう。」

 

と、興味をなくしたのか、尻尾からキセルを取り出し火をつけた。

天元は、手紙をしたため終わったのか、手紙を差し出してきた。

 

「これを(ゆかり)様に頼みます。」

「あい分かった届けておこう。」

「ところで、これから、どこで活動するつもりなのじゃ?」

「ああ、先ほど送った稲荷神社のほうで、活動をし続けるつもりじゃ。」

「できれば、高専で、先生として働いてみぬか?」

 

といいつつ、天元は思い返す。

 

「天元様、今後、八雲 (あお)様をどのように対処されるのですか?」

「それが困りものでの。下手に自由に動かれて、やらかされても困るしの。何か良い案はあるか?」

 

と、三人で頭を悩ませる。

 

「そうだ、高専内で働かせたらいいんじゃない。」

 

と、五条が言った。

 

「監視をする一点に関してはよいと思うが、すると様々な問題が生まれると思うのだが。例えば、生徒たちへのダルがらみなどとか。」

「問題ないと思うよ。向こうさんは妖怪なのだから、この世界に長期滞在できないと思うし。」

 

「呪術界上層部の報告はどうするんですか?」

「あの妖怪は、人間へと化けることも容易だから、外様の呪術師で、呪術を学ぶ兼、生徒たちに高専では無視される呪術以外の高校の授業内容を教える役としても使える。」

 

「めんどくさがってこないということは?」

「たぶんないと思うよ。向こう側が僕たち呪術師に直接接したということは、接触しなければならない理由があったからだと思うんだよね。で、なければ、前に来られた(ゆかり)様だったっけ。手紙を出すのをめんどくさがって薨星宮に直接訪れるはずなんだよね。八雲 (ゆかり)様みたいに。だから、できるだけ呪詛師や呪術師の情報がとりやすい位置に置かせて、早く帰ってもらうのが一番じゃないかなと思うんだけど。」

 

「おぬし、もしかして(あお)様をお主の目的の駒にしようとしてるのではないか?」

「いやあ、ばれちゃった」

「やめておけ、あのお方は、おぬしに勝ることができるほど圧倒的な力を秘めておる。しかしあれは諸刃の剣じゃ。一度暴走を始めたらそうなるかわからんぞ。」

「だって、術式の効率化なんて使ってくれたら、生徒たちが力を持って上層部にいろいろとできるようになるじゃん。」

「本当にやめておけ。おぬし自身が痛い目を見ることになるぞ。しかし、教師として雇うのは、監視できると考えれば、よいかもしれぬな。」

「でしょ。」

「本当によろしいのですか?」

 

と、七海が危惧して聞いてきた。

 

「本当に嫌なのだが、どうしようもあるまい。このまま外に放置されるほうが何をされるからわからんから、せめて高専内におったほうがまだましであろう。」

 

というものだった。

 

「先生でというと?」

「文字どおりじゃよ。高専の先生も人員不足が解消される上、おぬしにとっても、(ゆかり)様の命の特級クラスの呪術師の目的を調べるという上でも役に立つと思うが?」

「確かに...もし勤めるとしていつまで勤めればよいか?」

「いつでも良いぞ。最悪、(ゆかり)様の命が達成されたのであれば、すぐにやめてもらってもよいぞ。」

「すまないが、その言葉に甘えさせてもらおう。では、私は生徒たちに何を教えればいい?」

「なんでもよいぞ。おぬしが得意な数学と、術式の関係について説いてもよし、体術や剣術、槍術などを教えてもよし。」

「あい分かった。では、そのようにしよう。」

 

私は少し考えた後天元にこう聞いた。

 

「私の立ち位置的にはどうなるのであるか?」

「一応は、呪力を制御することができる一般人で、呪術師によって助けられた。呪術師を目指そうとするがお金を稼ぐ必要があるから、一応一般教養を教えるための教員と言う設定でやるつもりじゃ。」

「手回しがよいの。ありがたい。あとは、生徒に手を出してよいのか?」

「手を出すとは?」

「文字通りじゃよ。おぬしもかわいい女子(おなご)がおったのであれば手を出すであろう?」

 

天元は言われたことを理解し

 

「いやそれは、ダメにき...」

「いやあ、それはよかったぞ。前からあこがれておったのだ。教諭と生徒の禁断の恋というやつを。どうだ、かわいい子はおるのか?」

「いやだから、ダメだと...」

「今、何人生徒がおるのじゃ?そして何人女子(おなご)がおるのじゃ?」

「いや...」

「とても楽しみであるな。」

 

天元は、話を聞かなくなった(あお)様を、あきらめさせることを、あきらめた。

 

__________________________________________________

 

 

「ありがとうな天元よ。女子(おなご)が二人しかおらんのは、仕方がないがどちらかを落とせば問題ないであろう。」

「面倒なことになりそうであるからやめてほしいのだが。」

「少しぐらいつまみ食いしても問題ないであろう。そうカッカするな。では、呪力を抑えた状態で人間に擬態して来いということでよいか?」

 

天元ははぁと、ため息をつきつつ、

 

「そうだ、それをなさねば付き合う以前の問題になってしまうからな。」

 

説得することをあきらめた。

 

「了解した。」

 

天元はこの際だし、気になったことを聞いてみた。

 

「しかし前から思っておったのだが、今回の件、しかり、八雲 (らん)しかり、なぜ女子(おなご)ばかりをねらうのか?男子(おのこ)を狙えばよいのに。」

「いや、今の奈良時代の頃ぐらいか?それぐらいの頃に女子(おなご)に告白されたことがあっての。その際に興が載って付き合い始めたのじゃよ。」

「はぁ。」

「それがとてもよくての。今までは、男子(おのこ)が儂の尻を追っかることばかりであったが、自分から追うのは初めてでの。それが楽しくなって最近は、女子(おなご)と付き合っておるのじゃよ。」

「なるほど。」

「とても良いぞ。おぬしも男子(おのこ)を狙ってみてはどうじゃ。長い生の気晴らしにはとても良いぞ。最初は女子(おなご)に近い男子(おのこ)を狙ってみては?たしか...男の娘であったか?最悪、男娼でもよいぞ。」

「いや、すまない、勘弁してくれ。」

 

天元は手を振りいう。

 

「それは残念。どうせ、時がたち飽きが来るであろう。その時の暇つぶしにはとても良いぞ。まあ良い。正月は幻想郷のほうに帰るので三学期の初めから失礼するぞ。」

 

ではな、というとはた迷惑な九尾の妖怪は帰っていった。

 

 

 




ちなみに八雲 緑の古代に生まれたということもあり貞操観念はとてつもなく緩いです。
ですから、3股4股しても特になんとも思ってないという感じです。


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16話 お狐様入学

お気に入り登録425ありがとうございます
ぜひ楽しんで行ってください。


「はい、皆さんちゅもーく。」

 

五条悟は手をたたき、一年生たちの注目を集めた。

一年生たちは、何かと?五条に向けて視線を送った。

 

「三学期始まってそうそう悪いけど、新任教師の紹介でーす。」

 

というと、一年生は口々にしゃべり始めた。

 

「真希。知ってたか?この情報?」

「いや知らねえな。噂にすら流れてこなかった。」

「憂太。お前は?」

「僕も知りませんでした。」

「しゃけ」

「まあ、いろいろあって秘匿されていたからね。それじゃあカモーン。」

 

と、五条悟が言うと教室の入り口が開いた。

そこには、教師のコスプレのような制服を身にまとった美女がいた。

一年生たちはその人ならざる美しさに、見とれているといつの間にかに教壇の上に彼女は立っていた。

 

「八雲 (あお)です。新任教師として三学期から配属されました。みんなよろしくね。」

 

とウィンクを一つした。

 

「と、いうわけで、先日の百鬼夜行の際に一般人から呪術師へとなったという設定の、八雲 (あお)さんです。」

「みんなよろしくお願いします。」

 

と彼女はお辞儀をした。

 

(あお)先生は、体術のほかに槍術や剣術に精通されている先生です。ほかにも、高専ではほぼやらない一般高校の勉強範囲なども網羅しているので気になったら聞いてみること。」

「はい、呪術師としては未熟者ですが、体術では五条先生とタメを張れるぐらい強いです。高専からは高専の生徒になったほうが良いといわれましたが、実家への仕送り費を稼ぐ必要もありましたので、頼み込んで、一応教師として呪術師について学ばせていただきます。」

 

「五条先生とですか?」

 

と、指輪を付けた生徒が聞いてきた。

 

「はいそうです。術式でしたっけ?それを使われてしまうとなぜか拳が宙で止まってしまいますが、使われなければ戦えますよ。」

「それよりもなんで、そんなコスプレみたいな服を着てるんだ?」

「そうだ。制服送らなかったっけ?」

 

と、パンダと五条先生が聞いてきた。

 

「あの真っ黒な飾り気のない服が、制服だったんですか。注文した記憶がなかったのですみません、捨ててしまいました。」

 

「では、今着ているものは?」

 

「確か...ド〇キホーテでしたっけ。そこに女子教師の服というものが売られてたんでラッキー、それかなと思い着てみて、結構似合っていたからいけると思ってきたんですけど...」

「うわぁまじか...」

 

生徒たちは五条先生並の問題児が教師になったことに頭を抱えた。

 

「それよりも、できれば自己紹介をしてくれると嬉しいのですが...」

「それは、僕から説明させてもらうね。目の前に座っているのは、呪具使いの禅院真希。」

「呪具ですか?たしか呪力を持った武器のことでしたっけ。よろしくお願いしますね。」

 

と、にっこりとほほ笑む。

 

「...よろしく。」

 

「そして、その奥に座っているのが乙骨憂太君」

「確か、特級呪術師でしたっけ。よろしくお願いしますね。」

「今は、ただの四級呪術師ですけどね。よろしくお願いします。」

 

「そしてその左、呪言師の狗巻 棘。おにぎりの具しか語彙がないから、会話頑張って。」

「よろしくお願いします。」

「こんぶ。」

 

「最後、その前パンダ。」

「パンダだよろしくたのむ。」

「よろしくお願いします。ところで、触っていいですか?」

「触っていいとは?」

「では失礼しますね。」

 

というなり、彼女はパンダ先輩に飛びついた。

 

「抱き着いて、すっごいモフモフしている。」

「しゃけ」

「こんなことになるとは...」

 

パンダのほうに視線を向けると、おなかあたりに、抱き着き、モフモフしている。

 

「あの...ちょっと。」

「どうされました?パンダさん。」

「ちょーっと、はなれてくれると嬉しいんですけど...」

「うん、ちょっと待ってね。」

 

と、彼女は言うと、パンダに目を合わせ、しばらくすると、

 

「うん、ありがとうね。」

 

というなり、パンダから離れていった。

五条先生は咳払いをしてから、

 

「以上、4人が一年生だな。」

「はい、先ほど説明された通り、体術と高専では教えられない一般高校授業範囲の内容なんかをみんなに教えます。呪術師としては、未熟者ですが、よろしくお願いしますね。」

 

彼女はニコニコしながら言った。

 

「こんなところでいいかな。ちょっとした、ハプニングがあったけど、午後からは呪術実習があるから、お昼ご飯を食べたらいつもの場所に集合。その際に班分けを説明からね〜。」

 

じゃあ、というと、五条先生と八雲先生は退室していった。

 

 

 

「楽しそうだけど。何かあったの?」

「いやなに、現代にてあのような呪骸を見ることができるとは思わなんだ。」

 

教員室に向けて八雲 (あお)と五条悟は、歩いていた。

 

「呪骸?ああ、パンダのこと?」

「そうだ。初めはかわいいと思って、近寄ってみたがあやつはとんでもないな。誰の手によって作られたのじゃ?」

「パンダでしょ。たぶん夜蛾学長だと思うけど。」

「おお、ここの学長であったのか。それは僥倖。」

 

と、どこから取り出したのか、扇子で顔を隠しつつわらう。

 

「そんなに、珍しいものなの?」

「そうだ、独自の意思を持ち、術者に頼らず、独自で呪力を賄うことができる。これができる存在を見れたのであるぞ。これを珍しいといわず何という。幻想郷のほうにも人形に意思を持たせようとするやつはおったが、何十年も研究していまだたどり着けないものであるぞ。」

「そうなんだ。」

 

五条悟ただでさえ迷惑をこうむらされている、彼女に目をつけられた、夜蛾学長を哀れに思いつつ、教員室へと足を運んだ。

 

__________________________________________________

 

「失礼します。」

 

生徒たちとの対面を終えた後、私は、学長室へむかった。

そこにはかわいい人形たちに囲まれながら、呪骸を作ってるであろう、学長がいた。

 

「おぬしの話は天元様の友であることは天元様よりうかがっているぞ。そのうえであるが、私は、教員兼生徒の八雲 (あお)ということで話を進める。それでよいか。」

「わざわざ気をかけてすまない。では、そのように。」

 

教員室で着替え用にと、五条より手渡された巫女服の裾を直しつつ、

 

「今学期より、教員兼生徒として東京都立呪術高専へと入学した八雲 (あお)です。教員として、迷惑を多々かけてしまうかもしれぬがよろしくお願いします。」

「では、生徒として聞くが、何しにこの呪術高専へ来た?」

 

何しに来たか?生徒として答えるのであれば呪術を学ぶため。いや、この場でそのようなことは聞かないであろう。ということはなぜこの呪術高専へと入ったかであろう。妖狐の私として答えるのであれば、八雲 (ゆかり)様の命を全うするためであるが、そうではないであろう。前置きに、生徒としてとついているからだ。ではなぜか、生徒の私としては...

 

「......」

 

夜蛾学長は真剣に私の目を見ている。この人は真剣に生徒のことを考えているのであろう。そのことを踏まえたうえで、今回は、一般人だった自分が、呪術師になるうえでの覚悟を私に解いているのであろう。私は生徒として夜蛾学長へ向かい真正面から言葉を放った。

 

「私は...多くのかわいい女子と付き合うために呪術を学ぶ。」

「...それが、呪術師が死と隣り合わせの仕事だとしてもしてもそれを望むかのか?」

「無論だ。逆に死と隣り合わせだからこそ、この仕事を望んだともいえる。」

 

夜蛾学長はピクリと眉を動かした後、

 

「どういうことだ?」

 

と聞いてきた。

 

「死と隣り合わせということは、我々人間にとって最も絆が深まるときともいえるであろう。呪術師同士で、背中を預け合い戦うこと、また、死にかけの人間を救う際でもどちらでも変わらんが、普段の穏やかな生活とは全く異なるほど絆が深まるものだ。特に後者は特に顕著かもしれぬ。それゆえに、そこから私が好きな女子との関係を望むのは全うであると思うが?」

 

「なるほど。入学理由としてはとてもふざけたものであるが、でも高専入学には十分だ。合格だ。」

 

と、握手を求めてきた。それに応じる。

緊張していた空気が弛緩したあと、学長は、

 

「私が聞くのはあれだが、教員としては、体術と一般の高校の内容をやるようだが、問題はないのか?」

 

と聞いてきた。

 

「無論だとも。体術に関しては、五条との呪術抜きの対戦の記録を見ればわかると思うが、問題ない。一般の高校の内容としては、前日に参考書というやつか?学術書を教科ごとに5~6冊ほど丸暗記してきた。から問題ないであろう。」

 

「まあ、大丈夫であろう。あとは教員としての業務だが、...」

 

と夜蛾学長は話し始めた。

 

__________________________________________________

 

「こんな感じだが理解したか。」

「了解した。」

 

はぁ、と夜蛾学長はため息をついた後、

 

「最後に...天元の友である八雲 (あお)として話したいのだがよいか。」

 

結構律儀な方だなと思いつつ、気分を変えるために扇子を取り出し、私は話し始めた。

 

「よいぞ、どうした。現在の呪骸師よ。」

 

目の前の呪骸師は、一気に雰囲気が変わったことにあきれからか、小さくため息をついてから、

 

「天元様から、呪術師や、呪詛師の情報を聞かれたのであればできる限り、答えてやれという命を受けた。だから、基本的にわかることであるのであればすべて答えるつもりだ。」

「すまぬな。天元に感謝を伝えておいてやってくれ。では、一つ聞きたいことがある。一年の指輪を付けた元特級の呪術師についてだ。どうして四級へ降格した?」

 

夜蛾は、すぐに乙骨憂太のことだと当たりを付けた。

 

「あいつか...あいつは、もともと特級過呪怨霊がとりついた、一般人だったのだ。しかし、その呪霊が強大すぎるゆえに特級クラスの呪術師として任命されていた。つい先日か、互いの合意のもとその怨霊を無事祓うことができたのだ。」

「なるほど...そのせいでか。いいのではないのか。もしかしてその怨霊は婚約者だったのか?」

「そうだが。どこで知った。」

「いや何。あんなまじめそうな生徒が学校に指輪をつけて登校しておるのだ。何か思い出の品かそれとも婚約の際の指輪かどちらかであろう。そこからあたりを付けたのだよ。」

 

その後、私は扇子をパチンと閉じ、

 

「そういえば、一年のほうにパンダという生徒がおったがあれはおぬしが作ったものか?」

「そうだ。」

「さすがだ。儂も、あのような傑作を現代で見ることができるとは思いもしなんだ。よもや、融合しやすい魂を三つ合わせ一つの呪骸に入れることによって互いにお互いの魂を観測させ合うことによって自立化を促すとは...」

 

呪骸師、いや夜蛾学長は、驚いた顔をした後、

 

「どこでそれを...」

「天元から聞いておらぬのかったのか。まあ良い、それはわが能力に、起因しておるのだ。それは、すべての物事を数式で読み解くことができるというものだ。先ほど教員としてあいさつした際にパンダに触れる機会があってのその際に気づいたのだよ。まあ、別にほかの呪術師に話す気はないから安心せい。」

「なるほど...」

「おぬしも知っておると思うが、呪骸の自立化というのは一種の呪骸師全体の最終目標の一つでもある。呪術全盛期の平安の世でもこれを達成したものは人間で誰一人としておらなんだ。それを現在に見ることができるとは、驚愕しその方法に感動した。どうだ、褒美をやろう。」

 

と、右手を一閃させる。

すると、夜蛾学長が座っている、目の前にスキマが現れ、ドサドサと、現代の日本では決して手に入れることができない貴重な素材が山のように積み上げられた。

 

「それらは、幻想郷内や古き時代より手に入れることができた、現在では決して手にいれることができぬ呪骸の素材たちだ。ぜひ利用して、私にまた新しいものを見せ、私を楽しませてくれ。現在の呪骸師よ。いや、夜蛾よ。」

「これは、なんですか。」

 

と、おいていった物の一つを指さす。

それは、白い骨であった。

 

「ああ、これか。これは、竜の骨じゃ。幻想郷内に転がっておっての。これだけあれば、問題ないであろう。中には、呪物に近いものもあるので気を付けて使用したほうが良いぞ。」

 

ではな。というと、スキマから保管用であろうお札が巻き付いた大きな箱を夜蛾の目の前に落とした後、大量の呪物を放置し彼女は学長室よりでてった。

 

夜蛾は、現代では手に入れることができない素材を手に入れることができた喜びと、彼女が言っていた呪物に近いものといっていた、推定特級呪物の山に、面倒ごとを引っ張ってしまったという複雑な顔をしていた。

 

 

 

 

 



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17話 お狐様戦闘

投稿遅れてすみません。



私は、学長室を後にしてから食堂へと向かった。

食堂には現役の呪術師であろう人々や、生徒たちが昼食や談笑を楽しんでいる姿を見ることができた。

 

私は食堂で、精進料理を注文した後、一年生たちが座っている、席へ手を振りながら向かった。

 

「ヤッホー。さっきぶりだね。」

 

一年生たちは、私の存在に気が付いたのか後ろを振り向いた。

 

「こんにちは。先生も昼食ですか?」

「そうだよ~。五条先生から私も午後の呪術実習に参加しないといけないらしいから、少しぐらいコミュニケーションをとっていたほうがいいかなと思ってね。となり失礼するね。」

 

と、言い、隣へと腰かけた。そこで一人、足りないことに気が付いた。

 

「あれ、禅院さんは?」

「禅院か?あいつなら、もう食べ終えて、校庭のほうで呪具の手入れをしてると思うが...」

 

と、パンダが答えてくれた。

 

「ああなるほど。一人足りないけれど改めて自己紹介を、先ほども言ったと思うけど八雲 (あお)です。できれば先生や八雲さんじゃなくて、(あお)ちゃんと呼んでくれると嬉しいよ。」

(あお)ち~ゃん。」

 

とふざけたように、パンダが呼んでくれた。

 

「はい、なんでしょうパンダ君。」

「まさか返してくるとは思わなかった。じゃあ、五条先生と引き分けたと、言ってたけどそれってマジ?」

「うん、正しいよ。私も正直、まさか私と引き分ける人がいるとは思わなかったよ。」

 

などと八雲先生は笑いながら言った。

 

「もともと何されていたんですか。(あお)ちゃん先生?」

(あお)ちゃんでいいのに。まあいいか。もともとはね。いや、何やってたと思う?」

 

とにっこりと笑いながら言う。

 

「質問を質問で返してきた。」

「体術で五条先生に勝ったんでしょ。道場の師範とかじゃね。」

「しゃけ」

「あとは警察とかじゃないですかね。ちなみに、狗巻君はパンダと同じで柔道の師範だそうです。」

「残念。不正解。もともとは、秋葉原あたりで働いているバイト戦士だったんだよ。」

「戦士って何ですか戦士って。」

「まあいいじゃん。そっちのほうがかっこいいかなと思ったからだよ。」

 

と、言うと、彼女はひとまず手を合わせてから食事を始めた。

 

「実家はどこにあるんですか?仕送りしなきゃいけいないと言ってましたが...」

「実家でしょ、東北の山奥にある小さな神社だよ。一応国から補助金みたいなものをもらってるんだけどいささか生活が苦しくてね。だから東京に出てバイトしてるってわけ。」

「なるほど。」

 

と、皆一様に納得した。

 

「おかか ツナマヨ」

「おかか ツナマヨ?」

「ああ、どうやって体術はうまくなったんですか。だそうだ。」

 

と、パンダが和訳してくれた。

彼女は苦笑いしつつ、

 

「なるほど、よく通訳できますね。体術は基本的に独学ですよ。」

「独学?」

「はい、先ほど話したと思いますが、山奥の神社に住んでいるといいましたよね。」

「そうですね。」

「そこには本当に何もなくて、道場なんて言う立派なものは何一つなかったんですね。ですから、道場というものは行ったことががないんですよね。そのうえでなぜ強くなったかというと私の術式に関係があるんですよ。それを自覚したのは、小さいころにお祭りの際に祭具に触れる機会がありまして、その時に歴代の祭祀がどのようなことをしていたのかが頭の中に流れ込んできたんですよね。」

「それって物の記憶を読み取る術式とかですか。」

 

と、指輪を付けた男の子が言ってきた。

 

「夜蛾学長や五条先生がいうぶんにはそうみたいです。話は戻りますが、その際にまだ子供だったので面白がって、いろいろな道具の記憶を見たんですよね。その際に実家の倉庫にあった、この槍を触ったというのが強くなった要因なんですよ。」

 

と、彼女は背負っていた、布に巻いた一本の長い槍を取り出した。

 

「呪具のように見えるのだけど。」

「そうみたいですね。これに触れた際に、おとぎ話のような話になりますが、これを使って戦っている、今でいう神様らしき人が頭の中に入ってきたんですよね。その際にその人は、自分が私に見られていることに気が付いたんじゃないんですかね。私に、単純な槍の手ほどきから応用までを教えられたんですよね。」

「神様?」

「実際に、神様かどうかはわかりませんけどね、それっぽい人だと思ってください。」

 

と、彼女は苦笑いする。

 

「そこから、教えられたとおりに、この槍を使っていろいろ訓練したんですよ。そしたらもともと私に槍に関する天賦の才があったのかもしれませんが、体術含め面白いほど上達したんですよ。そんな感じですかね。」

「なるほど。」

「ほかに何か聞きたいことはありますか?」

「じゃあ、気になったんだけど、なぜ高専に入学してきたんですか。」

 

と指輪を付けた男の子が聞いてきた。

 

「なぜか...大きく分けると二つあるんですよ。一つ目は言わずもがなお金ですね。正直、バイトやって稼げるのって限度があるんですよね。頑張っても年収が大体2~300万円ぐらいなんですよね。だけど、呪術師で準一級クラスになれれば、年収1000万も夢じゃないといわれてやりたいなというのが一点ですね。」

 

と、言うと皆が呆れた顔をしていた。

 

「準一級って相当大変だぞ。プラスして命の危険がどの任務にも存在するし...」

「おかか」

「重々承知の上です。そのうえで二つ目なのですが、こちらのほうが目的で入ってきたんですよ。」

 

それは何なのかとみんなでこちらを見ている。

 

「それは、女の子と付き合うことですね。」

「え?」

「マジ?」

「...」

 

と驚きの表情でこちらを見てきた。

 

「本当ですよ。今でいうLGBTのlesbianっていうやつですね。先ほどの話につながるんですけど、実家は神社だといいましたよね。」

「ああ。」

「神社だけあって、跡継ぎを残すためにお見合いというのを多々行ってきたんですよ。その際にとある一族とお見合いしたんですけどあまりピンとこなかったんですよね。今回も断ろうと思っていたんですけど、その時廊下で、その妹である人と会うことができたんですよ。その際にこの子となら結婚できると思って、その妹と付き合うためにその男性とのお見合いを受け入れたんですよ。」

「なんか流れが不穏になってきたぞ。」

 

とパンダが合いの手を入れてくれた。

 

「私、これでも美しいという自覚はありますから、妹を惚れこませるのは簡単でした。しかし、家族たちは、婚約者の妹と密会を重ねていたことに気が付いたのか、ちょうど体を重ねる日の晩に婚約破棄を言い渡されたということですね。」

「それが、どう先ほどの話につながるんですか。」

「まあ、話は最後まで聞いてください。そのせいで家から勘当するのかという話になったんですけれど、もともと一人っ子だったので勘当もできず、ひとまず東京に送ってしまって問題を先延ばししようという考えになったんでしょうかね。それ含め、私がいなくなったせいで参拝客も来なくなり生活が立ちいかなくなりそうで、かわいそうだったんで仕方がなく仕送りをしていた。それが先日までバイト戦士をしていた理由ですね。」

 

彼女は、はははと笑いながらそのように言った。

 

「でも、呪術師になったところで状況的には変わらないと思いますが...逆に忙しくなって付き合う機会がなくなってしまうと思うんですけど...」

「もちろん、そのことはわかっている。しかし、女性が女子と付き合うというのも大変なものだぞ。ほとんどの場合が普通ではあるのだが男性好きというのでそれまでの関係で止まってしまうことが多々あるからな。しかしだ、そこに命の恩人という肩書が加わったらどうであろうか?」

「ああ、なるほど。」

「こんぶ」

「たぶんパンダと狗巻君はわかったと思うが、日常生活ではありえない状況から救ってくれた救世主となり、一気に恋人関係へと持っていきやすくなるのだ。まあ、夜蛾学長からはふざけた内容だと、言われましたけどね。」

 

と、笑いながら彼女は言った。

 

「いくら すじこ こんぶ」

「すまない誰か、通訳頼む。」

「もしかして、真希さん狙ってるだそうです。」

「おお、よく気付いたな。もちろんだとも。あんなスタイルがよく、がさつだけど、面倒見がいい姉御肌の人でしょ。狙わなければ女が廃るってもんよ。プラスして、生徒と先生の禁断の恋というのにも憧れるわね。ちなみにこの話は、真希さんには黙っていてね。」

 

と、彼女は三人にウィンクを飛ばした。

三人意外に性格が当たっていることを含め、彼女はこういう人なんだと感じつつ雑談をつづけた。

 

__________________________________________________

 

 

「はーい皆さん集合。」

 

昼食を終え、いつものように目隠しをした五条先生が待っていた。

 

「今回は二つの任務があるから、二手に分けます。おk?」

 

皆が一様に頷くと、

 

「おk。じゃあ、今回は男女で分けよっか。一組目はパンダ、狗巻、乙骨で、二組目は真希、(あお)で。」

「よろしくお願いしますね。真希さん。」

 

と、にっこりとほほ笑む。

 

「ああ、よろしく。」

 

と、不愛想に返された。

 

「パンダと狗巻、わかっていると思うが、乙骨は、改めて体ならしをする必要がある。そこフォローすること。そして、真希。(あお)先生は、槍術に限っては僕の数歩先を行く人だ。しっかりとそれを見て糧にすること。(あお)は、言わなくてもいいと思うが真希から、呪霊についてよく学ぶこと。僕は乙骨のほうに行くからよろしくね。それじゃあ行ってみよう。」

 

と、言うと、待機していたのか車が二台目の前に止まった。

 

車に乗り込むと、真希さんが聞いてきた。

 

「お前、どんな術式を使うんだ?」

「術式は物の記憶を読むことができるだけなので大して戦闘で使えるものではありませんよ。」

「どうやって戦うんだ?」

「たぶんあなたと同じだと思いますが呪具で戦いますよ。」

 

と、背負ってきた一本の槍をあらわにする。

 

「戦闘経験は?」

「人間相手ではありませんね。」

「呪霊では?」

「ありますよ。実家が東北の奥深くの神社なんですけど、そこで変な化け物に襲われることが多々あって、その際にこれを振り回していましたね。」

 

と先ほどの槍を持ち上げる。

 

「ところで、真希さんは、どのような術式を使うんですか。」

「私は一般人並みの呪力しか持たないから術式なんて使えないよ。その反面ある程度のフィジカルギフテッドがあるけどな。」

「ああ、なるほど。いわゆる天与呪縛ってやつですね。武器は何を使うんですか?」

「一応、同じ槍だな薙刀というのかもしれないが。」

 

と、布にくるんである武器であろうものを軽く持ち上げる。

 

 

「そうなんですか。ぜひ機会があれば、模擬戦でもしてみましょう。」

「ああ。」

 

車は進んでいった。

 

__________________________________________________

 

 

車から降りると、目の前には、町中にある古びた工場のようなものがあった。

 

「ここですね。最近、子供たちの遊び場になっていたようで、そこから行方不明者が多数出たんですよ。推定一~ニ級程度の呪霊がいると考えられます。」

「なるほど。死体とかは上がってきたのか?」

「特にはないですね。」

「わかりました。それじゃあ行きましょう。」

 

と、いうと、(あお)と、真希は中に入っていった。

 

私は、運転手さんに見守られながら工場のほうへ二人で歩みを進めた。

ふと後ろを振り向くと球状の黒い靄のようなものに覆われそうになっていた。

 

「百鬼夜行の時も思ったのですけどこの黒い靄って何なんですか?おおわれると外に出られなくなるし、呪霊みたいなものが活発化して襲ってくるんですけど。」

「ああ、確か任務は初めてだったよな。」

「はい。」

「これは帳というものだよ。これには、外から中の呪術師たちを見えなくして呪いをあぶりだすための結界みたいなものだよ。」

「そうなんですか。あぶりだされて身の危険にさらされたと呪霊が感じたせいで呪術師達を襲ってくるから一掃するにはちょうどいいと。」

「まあ、そうだな。それよりも前を見てみろ、」

 

と、真希さんに指をさされた。そちらの方向に目を向けると、多分三級ぐらいであろう弱い呪霊たちが、4匹群れていた。

 

「いけるか?」

 

と、真希さんに言われたのでグーサインを出し呪霊めがけては駆け出した。

そこで、目の前にいた3体の呪霊めがけて人間でいう首と心臓部めがけて二閃。その後、奥の一体の心臓部めがけて一突きを放った。

 

「速い...」

 

と、真希あまりの速さに呆然としていると、

 

「どうしたんですか。おいてっちゃいますよ~。」

 

といいつつ彼女は工場の中へと入っていった。

 

 

 

工場内を進んでいくと、中には、なかには、多くの下級呪霊たちがいた。

 

「おー。いっぱいいますね。」

(あお)先生はどうしますか。」

「できれば、(あお)先生じゃなくて、(あお)ちゃんと呼んでください。どうせ同級生みたいなものですし。どうしますかといわれても、呪霊を刈った数としては真希さんのほうが多いと思うのですが。」

「ああ、あまりにも武器の扱いになれていたのでついな。」

 

と、気まずそうに頬をかいている。

 

「じゃあ、右側から片付けましょうか。」

「オッケー。じゃあ先行ってるからね。後ろよろしく。」

 

というと、右側を固めていた、低級呪霊たちをすごい勢いで倒していった。

 

 

 

片っ端から呪霊たちをかたづけつつ、屋上に出れる踊り場までたどり着いた。

 

「とてつもない量の呪霊がいましたね。都会ではこれぐらいが当たり前なんでしょうか?」

「ああ、都会というのもあれだが、都会は田舎に比べて圧倒的に呪いが集まる量がとてつもなく多くなるからな、曰くつきなどというだけでも多くの人の負の感情が集まり必然と呪霊が集まってしまうんだよ。」

「なるほどね。私が住んでいたところでは大きさ的に高級といえばいいのかな?高級呪霊たちがたまに迷い込んでいたからとても新鮮だよ。」

 

と、いいつつ、屋上への扉を開けた。

 

屋上へと上がると、屋上の屋根の上に巨大な蜘蛛のような形をした、呪霊がいた。

 

「これが今回のボスってことでいいの?」

「ああ、多分あっているぞ。」

「りょーかい。私が倒しちゃうよ。」

「ちょっまt...」

 

と、(あお)は静止の声を聞かずにその呪霊に立ち向かった。

 

その呪霊は私たちのの気配を感じ、唸り声をあげて襲い掛かってきた。

その蜘蛛は前足を挙げ私めがけて振り下ろす。

 

ドシン

という大きな音を立て、コンクリートの屋根にその前足が埋まった。

 

(あお)は難なくそれをよけ、何事もないように、屋根に軽く埋まった前足を伝っていった。

蜘蛛は登られたと気が付いたのか、前足を持ち上げ振り落とそうと、前足を振る。

 

避雷針が難なく折れる勢いで振ったが、

しかし、すでに遅かった。

 

スッと、彼女は空中へと飛び上がり、槍を構え、彼女は弓のように体を引き締める。

彼女は体が落ち始めるとと同時に、槍を蜘蛛の頭めがけて、一本の槍を投擲した。

 

ドシン。

という音とともに槍は、蜘蛛の頭を貫通させ、槍とともに勢いそのままに地面へめり込ませた。

 

グオオォォ。という絶叫に近い声を上げるがすでに致命傷を受けたせいで呪霊の体の影が薄くなっていくのを見つつ

彼女は奇術師のようにコンクリートに刺さった、槍の石突の上に着地した。

 

気が付くとそこには、致命傷を受けた蜘蛛の呪霊は、初めからそこには何もなかったように消えていた。

 




評価くれると中の人が喜びます。よろしくお願いします。


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18話 お狐様現状確認

お気に入り登録 455 ↑ ありがとうございます。



二か月後 皆の反応

 

五条悟

 

一番被害を追ってる人。ことあるごとに、八雲 (あお)が何かやらかし、始めはその問題から逃げ、夜蛾学長に仕事を押し付けていた。しかし逃げる先々で八雲 (あお)が必ず何か問題を起こし、当事者としてかかわらなければならなくなることに気が付き、最近は仕事を片付ける名目で迷惑な事象を避けている。とてつもなく苦労してる一人である。

 

「初めて、八雲 (あお)と対面したときは生徒たちの成長を促すいい駒だと思ったけど、こんなふうになるのであればそのまま放りだしとけばよかった。」

 

夜蛾学長

 

被害者第二号。八雲 (あお)が呪術的にやらかしたことを処理している。16話にてもらった素材はうまいこと活用しているが、その反面、もらった特級呪物を隠したり届け出を出したりと何かと苦労している。最近、28歳児であった、五条悟が、今まで放り出していた事務仕事をするようになり八雲 (あお)に少し感謝しているところもある。

 

「天元様の命であるのであるから仕方がないが、願わくば早く帰ってくれないだろうか。」

 

七海健人

 

上2人に比べ、そこまで関係していない人。一度だけ、任務を共にしたことはあったが、八雲 (あお)の槍の扱いのうまさに舌を巻いている。もともと、高専には任務を受けるために所属しているため教師兼生徒である彼女にそこまでかかわることはない。最近何かに見られているように感じて寒気を感じている。

 

「............」チラ(後ろを見る)ブルッ

 

家入硝子

 

楽しい飲み仲間。週末の暇な時間に八雲 (あお)の部屋に訪れ、よく飲んでいる。彼女自身は京都校にいる庵歌姫のほかに女の飲み仲間が増えて喜んでいる。八雲 (あお)は日本酒と、焼酎には詳しいがそれ以外の知識はほぼないと言っていたので、ウイスキーなどの海外のお酒を教えようと思ってる。

 

ZZZZZ(どうやら寝ているようだ。)

 

日下部篤也

 

特に、妖怪のほうの八雲 (あお)に関しての情報を全く持っていない。そのおかげで、上2人に比べて全くの被害はなく、ただの槍術や体術をこなすことができる先生だと感じており、たまに模擬戦などを行っている。

 

「術式が使われた模擬戦は行ったことがないが、槍を扱っている際の体の動きはとてもよかった。ぜひまた模擬戦をしたいものだ。」

 

禅院真希

 

一番恩恵を受けている人。もともと、フィジカルギフテッドで、ほとんどの呪具使いを圧倒していたが、それなしで圧倒してきたことに尊敬をしている。そのうえで、模擬戦にて、様々なことを教えてもらう師匠のような存在。

 

「自分の動体視力にあった体術を教えてくれる先生みたいな感じかな。」

 

パンダ

 

八雲 (あお)との話で、なるほど、同性間でのカップリングというものがあるのかと衝撃を受け、狗巻×乙骨などを考えるようになってしまった原作に比べて残念なパンダ。模擬戦にて(あお)と、組手をすることが多々ありよく転がされてぬいぐるみのようにモフられている。正直、よくモフモフされるので苦手。

 

ドシン。ガバ。もふもふもふ。

「あの...少し離れてもらえませんかね...」

 

狗巻 棘

 

八雲 (あお)によって、最近辞書のようなものが作られた。題名は『握和辞典』であり、おにぎり語を訳すのに用いられる。本人曰くイントネーションの違いを見つけるのが難しいだそうだ。

 

「しゃけ いくら おかか」

 

乙骨 憂太

 

最近なぜか、結構遠ざけられている人。もともとは、普通に接していたが、改めて特級クラスの呪術師になったあたりから遠ざけられるようになった。

 

「最近なんか遠ざけられてるような気がするんですよ。プラスして(あお)先生が近づくとなぜか刀が疼くような気がするんですよね。」

 

佐々木

 

週末に、よく八雲 (あお)に仕事ついでに、呪霊がいる場所へ連れていかれる。本人は色々なことがしれて楽しんでいる。最近は、呪霊を祓う巫女にならないかと誘われているが、自分では度胸がないから無理と断っている。

 

「なるほど。これが呪具というやつなのですね。」

 

__________________________________________________

 

「最近どうかしら?」

 

呪術高専に教師兼生徒として入学してから二ヶ月ほどたったとある日の牛三つ時、(ゆかり)様から直接、念話がかかってきた。

 

(ゆかり)様でしたか。一応順調ですが、(らん)はどうしました?」

「今、(ちぇん)を、寝かしつけているわ。たぶん、もうすぐ来ると思うんだけど...」

 

と、(ゆかり)様が言うと、

 

「ああ、遅れました。」

 

と、(らん)ちゃんの声が聞こえてきた。

 

「おっ。来た。(らん)ちゃんだ。」

「ちょうど始めるところだったからタイミングがいいわね。じゃあ始めましょうか。(あお)。ここ二ヶ月で分かったことは何かある?」

 

(ゆかり)様が聞いてきた。

 

「はい。ひとまず、天元様からの手紙から、4人の特級クラスの呪術師がいるということは覚えておられるでしょうか?」

「ああ、確か...五条悟、夏油傑、乙骨憂太、九十九由基の四人だったかしら。」

「そうです。ここ二ヶ月で、判明した彼らの術式などを説明していきます。まず初めに五条悟。彼は言わずもがな無下限呪術です。前回の報告通り、六眼を持っておりそれのおかげで、現代の呪術師のトップに立っている存在です。」

「たしか、外の世界の呪霊たちが騒ぎ出した原因の一因を作った呪術師のだったかしら。」

「そうです。」

 

と、私は頷いた。

 

「前回の報告では、彼は二十代前半ということから、外の世界の呪霊が騒ぎ出した27年前とずれるということから、呪霊が原因ではないのかという報告もあったけどそれはどうだったの。」

「すみません。私の報告違いでした。教師をやっていて調べたことですが、実際は28歳で、ちょうどその時に重なるかと...」

「なるほど。次から気をつけなさい。」

「申し訳ございません。」

「彼は、特級になって何を目指しているの?」

「多分、呪術界の上層部の壊滅が目的かと。見ている限り呪術界上層部は昔、同様に腐りきっているようで、そのことにうんざりしたことから生徒たちに力をつけさせ革命を起こすために教師をやっているのかと。」

「なるほどね。」

 

と、(ゆかり)様は頷かれた。

 

「では、次。夏油傑は、どんな呪術師だったの?」

「はい。使う術式は呪霊操術というもので、呪霊を、球状にして口の中から取り込むことによって、呪霊を支配下におく術式だそうです。彼は我々にとって危険な思想を持っており、呪術師ではない人間を抹殺することで呪術師だけの世界を作るという思想を持っていましたが、ちょうど12月24日。外の世界でいうクリスマスの時期に五条悟によって殺されたそうです。」

「なるほど。現在の特級クラスの呪術師は三人ということでいいの?」

「はい。話を聞いた限りそのようです。」

 

と、私は頷いた。

 

「次の乙骨憂太は、普通の少し気が弱い、呪術師です。東京都立呪術高専の生徒で、一度特級から四級レベルの呪術師と、階級を落とされたようですがつい先日、特級呪術師へと、返り咲いたという経緯がありますね。」

「術式は何を使っているの?」

「里香という術式を使っています。」

「里香?人の名前かしら?」

「はい、ややこしくなってしまいますが説明をすると、もともと、婚約者の怨霊がとりついた、一般人だったそうで、そこから多くの問題を起こし高専へと入ったようです。」

「怨霊か、大丈夫だったのか。」

 

と、(らん)ちゃんが心配して声をかけてきた。

 

「一応、今は大丈夫だけど、報告の続きをすると、12月24日に、それを祓うことができたと高専側は認識し一度、四級へと降格したようです。しかし私が解析してみると実際は、乙骨憂太が持っている刀に、その怨霊が憑くことによって乙骨憂太が支配する、ただの怨霊には変わりありません。そのうえで、奴は肉の肉体が欲しいのか私が近づくとたまに乗っ取ってこようとしてくるんですよ。」

「祓わないのか。」

「正直、今すぐにでも祓ってしまいたい。ついでに、乙骨憂太とやらも一緒に処理したいのだが、最後に説明する九十九由基の件があるので、できないのだ。」

「どういうことかしら?」

 

と、(ゆかり)様は聞かれた。

 

「先に、九十九由基について説明します。九十九由基は、先に言いますが有用な情報は得られませんでした。しかし、2つほどわかったことがあります。」

「それは何かしら?」

「はい、一つ目は呪術師なのですが、呪霊を祓うことをほぼせずに、何かの研究をしているようです。二つ目は、その研究内容ですが、普通の人間から、呪力をなくす方法を研究しているようです。」

「それ以外はわからなかったのかしら。」

 

と、(ゆかり)様は真剣な雰囲気で聞かれた。

 

「はい。私の使い魔を、高専内に多くはり、人間の情報を集めていましたが、秘匿されているのか、またはあまり高専のほうに来ていないのかこの二つの情報しか入ってきませんでした。」

「研究室の場所もわからなかったのか?」

「そうだね。これ以外何も情報を得られなかった。」

「それは...困るわね。」

 

と、(ゆかり)様はそう、こぼされた。それもそうだ、人間が呪力を持たなくなると、外の世界から幻想郷へと人間を輸入できなくなってしまうからだ。

 

(ゆかり)様どういたしますか?」

「どうしましょうか...ひとまず、冬眠を今とらなければ、幻想郷内の結界が弱まってしまうから4月ごろまで冬眠させてもらうけど、冬が明けたら私のほうでも、外の世界での調査を私のほうでもはじめさせてもらうわ。」

「では、私は高専内で、調査を引き続きしますね。報告があれば一か月後の念話の際にお伝えいたしますね。」

「私は、いつもどおり、幻想郷内の結界の調節をしておきます」

 

と、(らん)ちゃんが言った。

 

「まあ、ひとまず高専で調査していくうえでなにかほしい物とかある?」

「ひとまず近くにいる特級術師の怨霊を何とかしたい。怨霊を祓うことは容易だが、九十九由基を対処し終わるまでは、できれば高専に残り続け情報を仕入れたい。なにか、いい案ない?」

 

と、私は二人に聞いた。

 

「祓えれば即解決なのだがな...」

「その場合、わかっていると思うが高専の私の席がなくなる可能性が十分にある。できればそれは避けたい。」

「そうよね...そうだわ、紅魔館のほうに魔女がいなかったかしら。」

「ああ、パチュリーのことですね。」

「あの魔女に頼んで怨霊が入れる妖怪に近い肉体を持ったホムンクルスを作ってもらえばいいんじゃないかしら?」

 

と、(ゆかり)様はおっしゃられた。

 

「しかし、最近紅霧異変が起きたばかりですし、紅魔組に借りを作るのは...」

 

と、(らん)ちゃんが言う。

 

「いや、問題ないわ。ところで、(あお)、結界の調節の仕事さぼるときどこ行ってたのかしら?」

 

と、唐突に話を振ってきた。

 

「いや、さぼってませんけど」

「そういうのはいいから、どこに行ってたのかしら。」

 

これは、ごまかすのが無理そうだと感じ正直に話す。

 

「よく人里に行ってますけど、最近、紅魔館が転移してきてからはお忍びで図書館に行ってましたよ。」

「そうよね。その際に『あの紫婆の下で働いているめんどくさくて逃げてきた』なんて言ってなかったかしら。」

「すみません。本当に勘弁してください。」

 

(らん)ちゃんからジト目で見られている感覚を受けつつ私は(ゆかり)様に謝る。

 

「いいのよ。その代わり、今週末に幻想郷へと帰り、パチュリー・ノーレッジに『友達として』怨霊専用のホムンクルスを作るように頼みなさい。」

「拒否権は?」

「この段階であると思っているのかしら?」

「了解しました。」

 

と、私は否応なしに頷づかされた。

 

「あと他に必要なものはあるかしら?」

「特にはないですが、できれば九十九由基を発見し処理する際は手伝ってほしいということぐらいですかね。」

「そういえば、あなた人間を殺せない縛りがあったわね。わかったわ。その際は呼んでちょうだい」

「ありがとうございます。」

「以上でいいかしら。じゃあ、私は寝るから落ちるわね。」

 

というと、(ゆかり)様は一つあくびをしてから念話が切れた。

 

「結界の仕事をさぼって探しても見つからないと思えば紅魔館にいたのか。(あお)。」

 

どうやら、愛しの(らん)ちゃんはお冠のようであった。

 

__________________________________________________

 

「じゃあ、幻想郷は、今でも冬真っ盛りなんだ。」

「そうだ。今年はなぜか冬が長続きしていてな。」

 

と、雑談をしてた。

 

「ほかに、幻想郷側で変わったことは何かあるの?」

「あとは、(ゆかり)様がスキマで外の世界を見る機会が増えたぐらいかな。」

「外の世界を?何を見ているの最近?」

「軽く覗くことができたからわかるのだが、先日、我々三人で、呪術師の力量を測るということをしたでしょ。」

「ああ、三ッ尾狐を二体ぶつけたやつか。」

「それだ。その呪術師を、何故か(ゆかり)様はすごく気に入っているようでよく覗かれているのだ。」

「なるほどね。その呪術師も災難なものだ。」

 

と、私は苦笑いをする。

 

「そういえば前回は、どんな男だったっけ?」

(ゆかり)様の男か?たしか、100年ほど前だから、外の世界の男だったか。」

「ああ、そうそう100年前だった。たしか、その男が本当に死にかけた際に救い出し、スキマに閉じ込めてスキマ内でその男が朽ちるまで飼い殺しにするのだったか。あいも変わらず、いい趣味をしておるよな。」

(ゆかり)様をそこまで悪く言うな。まあ、これに関しては同意はするが...」

 

と、(らん)ちゃんは苦笑いをする。

 

「まあ良い点もあるではないか、普段作ることがない食事を毎日作るようになったり、洗濯の類をしてくれるようになるではないか。」

「その反動として、その男が死期が近づいた際、一日中、スキマから出てこなくなったり、亡くなった後でも、その遺体をまる一年かけて食べたり、挙句の果てには冥界へ無理やり突撃し幽々子殿に無理言って会わせてもらったりなど散々ではなかったか...」

「ああ、確かに、特に最後のあれはひどかった。我々は幻想郷を守るために結界を維持しているはずなのだが、その結界を管理者自ら破っていったのだからな。」

 

と、これから起こるであろう苦労に、二人でため息をついた。

 

 

 

 




妖怪が怨霊に弱いというのは東方地霊殿から来てます。


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19話 お狐様対談

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呪術高専呪具保管所

 

深夜の月明りが高専内を照らす中、私は呪具が保管されている、保管室へと向かった。

天元の結界に、バレないように穴をあけ、中へと忍びこむ。

 

そこで、私は、乙骨憂太の刀の前に立ち、領域を展開させる。

 

「領域展開『稲荷大○○』」

 

刀の中にいる婚約者であろう怨霊も危機を察知したのか、倉庫の中に化け物のような怪物が現界し、巨大な腕を振り上げこちらを押し潰そうと勢いよくふるってきた。

しかし、領域を展開するほうが早かった。

振り下ろした腕は宙を切り石畳の地面に勢いよくたたきつけられた。

 

パーン

 

と激しい音が鳴ったが領域内の石畳には傷一つなかった。

怨霊は、領域内に閉じ込められたと察したのか、殷を切り自らの領域を展開しようとしている。

 

しかし、化け物の周りに領域が発生することはなく、殷を切るだけとなっている。

 

「やめぬか、見苦しい。私は、あくまでお前に取引を持ち掛けに来たにすぎぬ。」

 

化け物は、領域勝負では勝てないと悟ったのか、おとなしくなった。

 

「なぜ、私をこのような場所へ?と聞きたいのであろう。当たり前であろうが。何度、童の体を乗っ取ろうとしたと思っておる。」

 

私は、化け物をにらみつつ言う。

 

「まあ、今回は許そう。次はないと思え。では、取引だ、おぬしに有用な取引であるから一度話しやすい人間形態になってくれぬか。」

 

と、言うと、一考する価値はあると思ったのか、化け物は近くの石畳に落ち着いて座った後、靄が取れてこちらをにらみつけている幼い少女の姿が現れた。

 

「新任教師が来て何か怪しいと思っていたらそういうことだったのね。」

「はて、何のことやら。」

 

と、すっとぼけると、さらに少女はにらみを強めてきた。

 

「呪術師の間では特級である私と憂太の領域を展開できない時点でもう明らかじゃない」

「そうであるな。」

 

と、からからと笑いつつ、キセルを取り出した。

 

「まあ良い。戯れは終わりじゃ。これから交渉する大まかな取引内容としてはこうだな。お前には一つ肉体をやろう。それも今の人間や呪霊には、決してかなうことができぬ妖怪の肉体だ。その代わりのちの四つの要件を飲めというものだ。」

「今ここであなたの魂を乗ってってしまえば済むとは思わないの?」

「ほう。この状態でそこまで言えるのはさすがだな。」

 

と、彼女が言うと、指を一つパチンと鳴らした。

すると、二匹の6っつの尾を付けた狐が犬歯をむき出しにし、黒い靄を纏い始めた彼女をにらみつけている。

 

「これは、現在の特級クラスに相当する狐だ。そのうえここは我が領域内。代わりならいくらでもおるし、後ろの森にも数多もおる。」

 

と、言われ、里香が奥のほうへ目をやると、赤くぎらついた目が里香を狙い定めていた。

これには、勝てないと察したのか、おとなしく女の子へと戻っていった。

 

「で、何の要件なの。」

「おお、おとなしく話を聞くようになったか。では、話そうぞ。」

 

と、彼女は召喚した六ッ尾の狐をなでつつ話す。

 

「四つの要求というのは、一つ、われら妖怪の体を二度と乗っ取らないようにすること。二つ、特級呪術師、九十九由基の殺害または、人間たちの呪力からの解放という目標の喪失をするまで我の指示に従うこと。三つ、この場で話したことは決して乙骨憂太含め他人や他の呪霊に漏らさぬこと。四つこの約束を決して破らぬこと。の四つじゃ。」

「妖怪?」

「ああ、話忘れておったな。」

 

【少女説明中】

 

「そうなのね。なんで、こんな取引を持ち掛けたの?私たちがすごく有利なように感じるのだけれど。」

 

と、少女は聞いてきた。

 

「いや何、理由としては、大きく二つある。一つ目は簡単には身の上が明かせない我の近くにいる、近くにいる邪魔である怨霊がいなくなるのではなく我が駒になるのだぞ。プラスして特級呪術師までついてくるということであるな。二つ目だが、こちらのほうが重要でな。おぬし、おぬしの婚約者である乙骨憂太は、だれに恋心を向けかけているのか近くにおればわかるであろう。」

「確か、禅院真希とかいう女だったっけ。」

「そうだ。彼女も彼、乙骨憂太同様に淡い恋心を抱いておる。それが解せなくての、我は生徒と教師の禁断の百合愛というのを目指しているのでいささか、我にとってみれば、恋敵として乙骨憂太というのはいささか邪魔なのだ。」

 

そこで少女は合点がいった。

 

「なるほど。私が憂太と本当に結ばれることで歯車が動き出すと。」

「その通りだ。乙骨憂太が婚約者であるお主と結ばれることによって、淡い恋心を抱いていた禅院真希は、強いショックを受けるであろう。そこを私が慰めることで一歩、我も進めるというわけよ。おぬしからしてもどこの馬の骨ともわからぬ輩が乙骨憂太をかっさらい、その状態を手を出せられない怨霊の立ち位置から見せつけられるというのはいささか腹に据えかねる状態であろう。そういうことじゃよ。」

「確かに...だから体を乗っ取ろうと画策したんだし...」

「そうだ。少しは乗る気になったか?」

「それが、最大の理由なんだ...」

「そうじゃよ。妖怪に数千年も生きておれば、ほとんどのことを経験し、世に飽きてしまうことが多々あり暇すぎるゆえに自殺してしまう同胞が多々いるのだ。だからこそ暇つぶしこそが生きがいでもあるのじゃぞ。」

 

と、彼女はキセルをふかしつついう。

 

「ちなみにどんな体なのか、見せてもらえる?」

「ああ、乙骨憂太が、幼いころのおぬしの写真を持っておったからそれを成長させたような姿になっておるぞ。」

 

と、彼女は右手を一閃させる。

するとスキマがひらき、一体の肉体が落ちてきた。

その肉体は、目がうつろで一糸もまとっておらず長髪で、顎にあるほくろが特徴的であった。

 

「これじゃな。これには、魂が入っておらぬただの肉の塊だ。無論、見てみればわかると思うが、心臓も、脳も生きておるぞ。」

「......」

「どうした。もう少し胸でも盛ってほしかったか?」

 

と、Bカップほどある胸を指しつついう。

 

「いや、想像以上によくできているなと思ったから...」

「作っている際にいささか興が載ってしまっての、入ってしまえばわかると思うが、ナニとは言わぬがはやすこともできるし、おぬしが憑いておった刀に変化もできるぞ。詳しくはこの本を見てくれ。」

 

と、分厚い一冊の本を手渡された。

 

「どうだ。この上で取引に応じるか?」

「わかった。そのうえで、この条件を追加してほしい。」

「なんだ?場合によっては受け入れられぬが。」

「そこまで難しくないこと。あなたは、決して、乙骨憂太と私を殺さないというものだよ。」

「ああ、その程度のことか。問題ないぞ。」

「わかった。その条件なら飲むよ。」

「おお、それはよかった。では最後の調節に入るとしよう。」

 

と、石畳の上に置かれてた肉体を抱きかかえ、近くの座椅子へと置いた。

 

「どうする胸を盛るか?」

「確か...憂太は、巨乳派だからEカップぐらいまで盛って。」

「承知。」

 

というと、彼女は指を鳴らし体に術式を刻み始めた。

 

 

 

「これでどうじゃ。ほかに変えてほしいところはあるか?」

「いや、これで十分。」

「あい分かった。では、おぬしがこの肉体に入った時点で、取引は成り立つ。」

「一つ確認なんだけど、もしもこの取り決めを破ってしまった場合はどうなるの?」

「単純なことだ、この取引があったという事実、自体がなくなるだけだ。おぬしは肉体を持っていたという事実はなくなり、私も、おぬしらを殺してはならないという縛りがなくなるだけだ。まあ、話した内容によっては乙骨憂太もろとも即殺す呪いが帰ってくるだけだが。」

 

と、彼女は笑いながら言った。

 

「もしここで取引に応じないと?」

「愚問だな。無論祓うにきまっておろう。おぬしは知ってはいかぬことまで知ってしまったのだからな。」

 

と彼女は笑うのをやめ真顔で答える。

 

「この取引に応じるしかないと。」

「その通りだ。まあ、契約内容としてはおぬしにとっては悪くないと思うがな。」

 

少女は少し悩んだ後、体へと乗り移った。

 

______________________

 

3月7日 夜

東京呪術高専男子学生寮内

 

乙骨憂太は、今日の昼にあった『パンダ、乙骨憂太合同誕生会』の内容を思い出しつつ、苦笑いをする。

事の始まりは、3月5日。一年生みんなで、食堂で昼食を食べている際に起こった。

学校の仕事がないときに、一緒に昼食を食べる八雲 (あお)先生を混ぜつつ、パンダが今日俺、誕生日なんだよね。といったのが始まりだった。

 

その際に3月7日が僕の誕生日だというと、合同誕生会をしようといい、手取りよく準備を進めていった。

その結果、八雲 (あお)先生の手作りケーキと、プレゼント交換を昼食時に行った。

 

その際、パンダは、誕生日プレゼントとして八雲 (あお)先生から、笹の葉をもらって切れていたことを思い出しつつ、僕は皆からのプレゼントを抱えて、自分の部屋へ向かっていった。

 

そこでふと違和感に気が付く。

なぜか自分の部屋に鍵がかかっていなかった。

 

「あれ...鍵かけ忘れてたっけ...」

 

と、こぼしつつ部屋の中に入っていった。

 

中にはいつも通り整理された部屋が広がっていた。

しかし、一点だけ違う点があった。

 

窓のほうに視線を向けると、部屋の中に飾っていた里香と僕の写真を見ながら月光に照らされている白いワンピースを着た彼女の姿があった。

その姿はまるで、写真の中の里香が成長したような姿で、月光に照らされて輝いている特徴的な赤い目と頬にある特徴的なほくろがそれを裏付けていた。

 

「里香......」

「お誕生日おめでとう。憂太。」

 

と、彼女はにっこりと笑う。

 

僕は、同級生からもらったプレゼントを無意識ながら落とし、顔をくしゃくしゃにしながら彼女に抱き着いた。

 

______________________

 

3月8日 

 

食堂にてパンダと狗巻二人だけで昼食を食べていた。

 

「狗巻...いろいろありすぎて俺は疲れた。」

「しゃけ」

「うん、そうだよな。まさか、乙骨のなくなったはずの婚約者が入学してくるとは思いもしなかったな...」

「しゃけ」

 

と、パンダは、最近白髪と目の熊が出てきた夜蛾のことを思い出しつつ言う。

 

「そういえば、乙骨と里香だったか、どこに行ったか知っているか?」

「おかか ツナマヨ」

 

と、食堂の奥のほうを指さした。

そこには、二人が里香が作ったであろう弁当を仲良くつつき合っていた。

 

「ああ、あそこにいたのか...」

「高菜 すじこ」

「確かに新婚さんみたいだよな...」

 

その姿を見て、パンダは砂糖を吐きそうだと思いつつ、ここに、真希がいないことに気が付く。

 

「そういえば、真希は?」

「すじこ いくら 高菜」

「まじ?早退したの?」

「しゃけ」

「まあそれもそうか。真希からしてみれば、狙っていた相手が、横取りされたように感じるもんな...」

「いくら ツナマヨ 昆布」

(あお)先生は、真希の様子を見てくるといってたぞ。」

 

と、おやつのカルパスをかみつつ言う。

 

「おかか?」

「たしかに。ちょうど真希は失恋に近い状態だから狙いに行ったんでしょ。」

「すじこ 高菜」

 

と、狗巻が、指をさしていた。

そちらを振り向くと、五条先生がいた。

 

「お疲れ様です。」

「しゃけ」

「ああ、一年諸君の二人か。ほかの生徒は?」

「乙骨はあそこで、真希は早退です。」

「真希が?ああ、あの件か。」

 

と、指をさされた方向を見て、五条先生は納得する。

 

「あれって、本物なんですか?」

「ああ、本物の折本里香ってこと?本物だよ。でもなぜ肉体を持っているかは、詳しくはわからないんだよね。」

「マジですか。それって大丈夫なんですか?」

「しゃけ」

「あくまで推測だけど、今の乙骨、刀持ってないでしょ。」

 

と、乙骨のほうに視線を向けると確かに刀は持っていなかった。

 

「確かに。」

「そうそう。だから、刀で制御していた怨霊が形態変化したんじゃないのかなと思っているんだよね。」

「なるほど。」

 

と、二人で頷いた。

 

「あっ、そうだ。今日の任務頑張ってね二人とも。」

「どういうことですか?」

「すじこ?」

「今日もともと君たちに3つ任務が割り振られて入るはずだったんだけど、乙骨君はあの調子だし、真希と、(あお)は、早退しちゃったし、で任務に避ける人員がいないってわけだね。」

「ああ、なるほどな」

 

と、いいパンダは目頭を押さえる。

 

「そういうこと。乙骨君の任務はもともと特級呪霊だから僕が行くけど、ほか二つを二人で行くことになるわけだね。」

「まじか...今日、起きたことだけでもすでにおなか一杯だっていうのに。」

「おかか...」

「幸い、明日は休みだから頑張れ。」

 

と、五条先生は親指を立てて去っていった。




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20話 お狐様帰還

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投稿おくれてすみません。



「百葉箱? 空っぽですよ何もありません。」

「マジで? ウケるね(笑)」

 

と、五条先生と通話をしていた。

 

「てか、さっきから何食べてるんですか?」

「おお、よく気が付いたね。ケーキだよケーキ、真希と、(あお)先生が作ったやつ。まだ残っているから、早くその、特級呪物、早く回収してきちゃって。」

「ここから、東京まで何時間かかると思っているんですか?」

 

と、イラつきながら言う。

 

「まあ、大体、5秒くらい?」

「それはあなただけですよ。」

 

と、いう話をしていると、電話の奥から、

 

『五条先生誰と話しているのですか?』

『ああ、(あお)先生か。いや、伏黒君が、任務で先生のケーキが食べられなくて怒こっているみたい。』

『伏黒...ああ、一年生の伏黒君ですね。大丈夫ですよ。寮の冷蔵庫の中に入れておくので帰ってきたら食べてください。』

「だってさ。よかったな伏黒。」

「いやそうではなくて...」

 

と、イラつきからか言葉を失っていると、

 

「まあ、頑張り給え。」

 

という、五条先生の一言で電話が切れてしまった。

伏黒は、怒りからか、百葉箱のふちを殴った。

 

______________________

 

三日後

 

八雲 (あお)は、佐々木に合うために仙台駅に訪れていた。

 

「あれ、いかがしたのだ?」

 

と、定刻を過ぎても一向に現れない彼女を待っていた。

10分ほど待ち、今日は急用でもあったのかと思い帰ろうとしていると、

 

「すみません遅れました。」

 

と、後ろから声をかけられた。振り返るとそこには、彼女がいた。

しかし、雰囲気が異なっている。

 

いつものほよよんとした、雰囲気ではなく、何か覚悟を決めたような顔をしていた。プラスして、半年間解けなかった魅了の妖術がはがれていた。

 

「では、まず初めに、近くのカフェに行こうか?」

「珍しいですね。いつも心霊スポットに容赦なくつれていくのに」

「いやなに、おぬし何か我に伝えたいことがあるのであろう。その顔を見ればわかる。」

 

と、言うと、彼女は顔を手で触る。

 

「まあ良い。行くぞ。」

 

と、初めて会った時にお茶したカフェへと向かった。

 

 

 

「で、どうした?」

 

私は、頼んだコーヒーを傾けつつ話を伺う。

すると彼女は深く深呼吸を一つしてから、こういった。

 

「私をあなたの巫女にしてください。」

 

ああ、そのことかと思い、内心うれしく感じた。

 

「あい分かった。しかし、今まで無理だと言っていたおぬしがなぜ目指すようになる?いや、何があった?」

「詳しく話すと長くなりますが話します。もともと、私が、杉沢第三高校のほうに通っていたことは前にお話したことがありますよね。」

「ああ、そうだったな。」

「今回、その学校で不思議なものを見つけたんですよ。たしか、呪術師であろう人は『すくな?の指』とか言ってましたけど。当時の私は、とても浅はかで、いつも(あお)さんが呪霊たちを簡単に倒しているところとかを見て私も、少し認められたいという気持ちが多々ありました。だから自分たちの部活でできるだけこの不思議な物を解析しようと思って、手を出したんですよ。」

「うむ。」

 

と、私は相槌を打つ。

 

「だけど、周りに巻き付いているお札を外して解析し始めると、突然呪霊が天井から現れたんです。」

「うん」

「その後は、私の頭の中がパニックで真っ白になって、ひとまず先に浮かんだことは、(あお)さんが言っていた『呪霊にあったらひとまず逃げろ。仲間のことは二の次だ。自分の命を優先しろ。』という言葉が浮かんで部活の一人を置いて一人で学校の外へと逃げてきたんですよ。その後は、学校に来た呪術師によって保護されましたが、部員の一人は帰らぬ人となりました。」

「うん」

「ここから、私は呪霊に立ち向かえる覚悟そして力が必要だったのでしょう。それを手に入れる機会があったというのにただ単に怖いからという理由でそれを避けていた。そのことに後悔していたのです。」

「そうか...」

「覚悟は決まりました。だから、私を巫女にしてください。」

 

と、説明された。

私は、もともとこの人間を、我が巫女として迎え入れ、幻想郷内の雑用処理係兼、愛玩動物として飼う予定だったが、人間のその覚悟が面白いと思い、あおるように、普段絶対に聞かないであろうことを聞く。

 

「本当に良いのか?呪霊と戦うことはろくな死に方をせぬぞ。」

「覚悟の上です。」

 

おお、想像どうり読み物のように面白い反応をする。

 

「私の巫女になるようであるならば人ならざる者になるやもしれん。さらには、親に普段させないような心配をさせるやもしれん。それでも良いのか?」

 

彼女は一瞬軽く迷った後、

 

「無論、覚悟の上です。」

 

と、目を合わせ答えてきた。

私は、小説で見たような光景を目の前で繰り広げられていることに私は楽しみながら、話す。

 

「あい分かった。では、今日から2~3週間ほど時間はとれぬか?」

「一応、今回の事件で3週間ほど学校が休みになるので、大丈夫ですね。」

「了解した。では、明日のいつもの時間に仙台駅前集合ということでよいか?」

「はい、よろしくお願いします。特に何か持ってくるものとかはありますか?」

「特にはないぞ。」

 

と、言い、二人は別れた。

 

 

______________________

 

 

 

「ここは...」

 

と、わたしと、佐々木は八雲家の家へと続く濃い霧の中を歩いている。

 

「ほれ、もうすぐ着くぞ。」

 

と、手を握りつつ、変化の術を解く。

すると、瞬く間に狐の耳と九本のしっぽが現れた。

その状態で、霧の中を抜けると目の前には、塀に囲まれた大きな木造建築の家が見えた。

と、同時に

 

「へ...尻尾...」

 

と、言う声が聞こえる。

 

「ほい、ついたぞ我が巫女よ。」

「へ...ここは...」

 

どうやら状況の変化に困惑しているようだ。

このまま放置しても面白そうなので、そのまま玄関を開ける。

 

「帰ったぞー」

 

と、声をかけると二人の足音が聞こえてきた。

多分、足音から(らん)ちゃんと(ちぇん)だろう。

 

「ここは、どこなんですか。あなたは誰なんですか?」

 

と、警戒したように声をかけてくる。

 

「そんなことか、ここは幻想郷。現在で忘れ去られた幻想が集う場所よ。」

 

と、話していると尻尾に抱き着かれる感覚があった。

 

「おお、(ちぇん)か。最近帰ってこられなかったからな。ただいまだ。」

「おかえりなさいです。(あお)様」

 

と、頬に顔を擦り付けられる。

本当にかわいいなと思い、頭をなでてやると尻尾をピンと立てコロコロと鳴いている。

 

「おーい、(ちぇん)。人間のお客様がいらしているのであるからやめてやれ。」

「はいです。(らん)さま。こんにちはです。人間のお客様。」

「こ、こんにちは?」

 

と、混乱からか、疑問形で返している姿に苦笑いしつつ、(らん)ちゃんに首に手を回し抱き着く。

 

(らん)ちゃん。会いたかったよー。」

「外の世界にいるときもよく念話で話したであろう、(あお)。まあ、お帰りだ。」

「え、え、どどういうことですか。」

(あお)様ずるいです。」

 

と、(ちぇん)が、(らん)ちゃんのしっぽに抱き着く。

混乱している一人と三匹でかなりカオスな状況が広がっていた。

 

 

 

 

 

「と、失礼したな。人間よ。」

 

と、(らん)ちゃんが仕切りなおす。

 

「すみません。こちらが失礼したばっかりに。」

「なに、問題ない。こちらのせいでもあるのだからな。」

「そうだよ。それじゃあ紹介するね。この子は佐々木 美緒。外の世界の人間で私の巫女予定の子だよ。」

「え、私の巫女って、どういうことですか...」

 

と、言う。すると(らん)ちゃんはあきれた顔をして、

 

「もしかとは思うが何の説明もせずにつれてきたのか。」

「いちいち説明するのもめんどくさいし、そっちの方が面白い反応が見れるかなーと思って。」

 

はぁ。

と、(らん)ちゃんはあきれたようなため息を一つついてから、家の中に招き入れ説明を始めた。

 

 

______________________

 

 

 

「と、言うわけだ。」

「な、なるほど...」

 

と、(らん)ちゃんと、佐々木ちゃんが、話している間、私は(ちぇん)と遊んでいた。

 

(ちぇん)、これお土産のチュールね。」

「ありがとうございます。(あお)様。」

 

と、猫用チュールと書かれた赤い箱を持って喜んでいる。

 

「ところで、(らん)さん、(あお)さんっていつもこんな感じなんですか...」

「ああ、外の世界ではどのような様子をしているかはわからぬが、いつもはこんな感じだ。」

「そ、そうなんですか...」

「なんだ、幻滅でもしたか?」

 

と、(らん)ちゃんは、苦笑いながら聞く。

 

「いいえ、逆に想像どうりでした。」

「そ、そうか。」

「えー、そんなに私、ぼろを出していたかな?」

「いや、単純に初めて会った時に勘なんですけどね。人ならざる雰囲気とか、ずぼらっぽい雰囲気とかがなんか感じられたんですよ。」

 

と、言われ、私と(らん)ちゃんは顔を見合わせる。

 

「ね、言ったとおりでしょ。」

「ああ、そうだな。もう一問だけ答えてくれないか?」

「ど、どうしました?」

 

と、不安そうに聞いてくる。

 

「私たち二人はいわゆる九尾といわれ外の世界で恐れられた妖怪だが、元の名前いわゆる、元の妖怪の名は何だと思う。直感でいい答えてくれ。」

「何それ面白そう。わかる?」

 

少女は、軽く悩んだ後、

 

「九尾の妖怪ですよね...もしかして、(らん)さんが、玉藻の前で、(あお)さんが、妲己ですか? まあ直感なんで当たっている自信はありませんが。」

 

と、見事に言い当てた。

(らん)ちゃんは驚きからか固まっている。

 

「あはは、さすがは見込んで連れてきただけあった。大当たりだよ。」

「これは、すごいな...」

 

と、二人で賞賛する。

 

「あ、あはは。」

 

と、なぜか苦笑いをしている少女を横に、

 

「想像以上の直感力でしょ。」

「ああ、博麗の巫女負けず劣らずのレベルだな。このような子がまだ外の世界にいたとはな...」

「じゃあ、飼っていい?」

「ああ、想定外だが、あれほどの直感の力を持っていれば(ゆかり)様もお認めになられるであろう。」

 

と、(らん)ちゃんは認めてくれた。

 

 

 

 

 

「でだ。おぬしの体には呪力や術式が一切ない。故に儂の体から術式や呪力を生成する臓器を渡さなければならいのであるが...これが最後の確認だ。」

 

と、物語のように問う。

 

「それをしないと、呪術が使えないんですか。」

「そうだ。呪術師にはその能力を生まれつき持っている奴がなることができ個人によってそれぞれの術式を使うことができるのじゃ。」

「なるほど。」

「しかしだな、生まれつき持っておらん奴は一切使うことはできぬ。基本的に後天的に発生させるものはなくての、我の臓器の一部を移植してやることでできるようになるのだ。そこでだ、」

 

と、空気を張り詰めさせる。

 

「われの臓器を移植するということは、つまり人間ではなくなり妖になるということだ。それでも良いか?」

 

と、物語の一ページのように聞く。

 

「無論です。よろしくお願いします。」

 

と、はっきりと答えた。

 

「あい分かった。では、」

 

と、指を鳴らし妖術を発動させる。

 

「施術をするのでな眠ってもらっていなければ困る。まあ起きれば変わっているであろう安心して待っておれ。」

 

といい妖術により意識が途絶えた佐々木を抱え施術を行った。

 

 

 

 

 

(あお)。お疲れ様です。」

 

と、(ゆかり)様から、労いの言葉をかけられる。

 

「いえいえ。ありがとうございます。」

「ところで、九十九由基の情報は何かあったかしら。」

「すみません。海外に現在滞在しているとしか...」

「そうですか...」

 

と、(ゆかり)様と話していると、

 

「できましたよ。」

 

と、幻想郷では海がないゆえに並ぶことがない新鮮なお造りが机に並べられる。

 

(あお)が外の世界で仕入れてきたようで、今夜はこれになりますね。」

「では、いただきましょうか。」

 

と、妖怪四人で手を合わせた。

 

 

______________________

 

 

「ところで、一人人間だったものが屋敷で寝ているようですが(あお)、あなたが連れてきました?」

 

と、夕食を食べていると(ゆかり)様に問われる。

 

「はい、一人。外の世界で捕まえました。」

「どういう子なの?」

「博麗の巫女と負けず劣らずの直観力を持つ人間でして。」

 

と、(らん)ちゃんに視線を送る。

(らん)ちゃんはそれを察し、

 

「そうだな。軽く幻想郷の説明をした際に、直感のみで私と(あお)の昔の名前を当てられてしまってな。」

「そうなの?」

 

と、(ゆかり)様が少し驚いた顔をされる。

 

「そうですね。初めて会った際もかなり勘が鋭く、人間に完ぺきに変化していたはずなのに、直感のみで人外だと見分けられましたね。」

「そうですか。」

「どうでしょうか? 育てれば、幻想郷の管理役として、役に立つ駒になると思いますが...」

 

と、(らん)ちゃんが伺いを立てる。

 

「わかったわ。ただでさえ二人いるのに結界の管理で手がいっぱいいっぱいなのよ。それだけの能力があるなら問題ないわ。教育はよろしく頼むわね。」

「了解しました。」

 

と、返事を返した。

 

「ところで、急に幻想郷に呼び戻らされた理由をうかがっても?」

 

と、私は(ゆかり)様に問う。

 

「結界に穴が開いたからそれの修復で呼び戻したの。」

「なるほど。それは6月が始まったというのにこんなに寒いのと何か関係があるのですか?」

(ゆかり)様のご友人である、幽々子(ゆゆこ)殿が、春を集めることで、冥界にある西行妖を咲かせようとしておってな、先日それを対処することができたのだが...」

「そのせいで春がようやく来て桜の花を散らしていると。」

「そういうことになるわね。」

 

と、状況を聞いて私はため息をつく。

 

「西行妖は何分咲きだったんですか?」

「...9分咲き。」

「結界は、」

「今は少しづつ直してるけど、正直先が見えない。」

「帰っていいですか。外の世界に」

「ダメだな。」

「ダメね」

 

と、二人に止められてしまった。

 

 




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