フロンティアへの幾星霜(短編集) (Z-LAEGA)
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辻斬・狂想曲:オンライン
とあるゲーム評価サイト
辻斬・
20XW年、1X月XX日サービス開始
評価件数:2,967
総合評価
星5:1,379
星4:140
星3:12
星2:560
星1:876
レビュー
最高に楽しい
投稿者「リーブエイジ575」
☆☆☆☆☆
公式サイトを読めばわかる通り、非常に和気藹々とした楽しいゲーム。「できること」が多いので、知り合いと遊んだりするととても楽しい。非常にオススメである。
(このレビューは1,782件の賛成を受けました)
(このレビューは741件の反対を受けました)
最高
投稿者「in 10」
☆☆☆☆☆
高い民度と自由度による「オンラインゲームとしての楽しさ」も素晴らしいが、何より雰囲気がいい。マップの作り込みが素晴らしく、道を歩いているだけで「ここは江戸時代末期の日本なんだ」という確信が湧いてくる素晴らしいゲーム
(このレビューは1,231件の賛成を受けました)
(このレビューは452件の反対を受けました)
独特な操作感
投稿者「斬霧」
☆☆☆☆☆
魔法やパッシブスキルが一切存在しない、という硬派な調整が、独特なゲーム性を生み出している。オリジナルのエンジンの少しばかり癖のある挙動、「直感システム」などの斬新なシステム、戦略的要所がうまくばらけたオープンワールドのマップなどの要素が複合し、独特で、素晴らしく楽しいゲーム体験を与えてくれる。
(このレビューは1,867件の賛成を受けました)
(このレビューは380件の反対を受けました)
惜しいゲームだがおすすめ
投稿者「固李矢」
☆☆☆☆
非常に高い民度による「平和なゲーム体験」は本当に素晴らしいのだが、少しだけ残念な点がある。それはPvP専用コンテンツが不足していることだ。とはいえPvPを平和なゲームで敢えて欲しがるなんてごくごく少数派がすることであり、「PvPいらないでしょ」と思う方は実質星5つの評価と思ってほしい。
(このレビューは1,078件の賛成を受けました)
(このレビューは782件の反対を受けました)
ぶっちゃけシャンフロより好き
投稿者「紙頃死」
☆☆☆☆
「仮想現実」としてはシャンフロに及ばないが、真摯でまじめな運営、高い民度、高いゲーム性とMMOとしては最高の部類だと思う。自由度もシャンフロほどではないが「理解できる」程度の高さを保っており、それでいて「二次元じゃなくてVRじゃないとできない」システムも多々搭載されているなど調整が上手だなぁとつくづく感心する。
しかし(さっき「グラは置いといて」という話をした直後にこういうのは若干ダブスタ気味ではあるが)もう少し「仮想現実」として頑張れると思うので、今後に期待して星4。
(このレビューは1,378件の賛成を受けました)
(このレビューは627件の反対を受けました)
レイドボス強すぎ
投稿者「吉良霊屋」
☆☆
バランス調整ミスってるだろ、早くナーフしろ
(このレビューは1,578件の賛成を受けました)
(このレビューは320件の反対を受けました)
クソゲー
投稿者「ヴィラシアン」
☆
嘘つきやがって!!!!!!!クソども!!!!!!!!クソ!!!!!!!!
(このレビューは840件の賛成を受けました)
(このレビューは2,459件の反対を受けました)
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天は世界すら包んで
辻斬・
JGEで発表されたスパルタンメタルがある程度の―――それは、おそらく予想以上の物だったのだろう―――評判を集め、消費者たちの期待が国内外を問わず高まっていた。ロワイヤル社は今こそが好機と踏んだのだろう………第二の蟲毒が、大衆に入り口を晒したのである。
■
「天誅ッ!!!」
「甘いなぁ!!跳躍大回転型天誅返しィ!!!」
□
しかし流石は混沌製造機の異名を取るロワイヤル社だ………単にサーバーを分けるのでなく、当然のように
■
「ぐあっ……!?お前、僕の平行移動式投擲天誅を読んでッ……!?!?」
「せいぜい上手い辞世の句を読むんだなァ!!!」
□
しかもGGCで使ってたあの超絶翻訳機………「
■
「異国の地…っ!踏むことすらも……許されず………っ!」
「オォウ二人まとめて漁夫の利天誅じゃァーーッ!」
「何ィ!?」
□
このゲームのサーバー間移動は
「天誅ァーッッ!!」
俺がさっきから背後で繰り広げられていた内輪揉めへの参加表明を奇声に乗せつつ振りかざした刀に、日光がぎらりと反射した。
◆
二人である。
「海外サーバーに足を運んであわよくば天誅文化を植え付けたい」だの「始めて間もない初心者が日本に比べても大量にいるだろうから軒並み天誅してスコア稼ぎたい」だの「火薬庫を今のうちに占拠して既得権益を得たい」だの船上の様々な欲望は、移動中の海上で僅か1/10ほどに減少していた。セーブポイントは船上にはないので、欲望の持ち主たる彼らは今頃日本サーバーに戻っていることだろう、天がやれって言ったから仕方ない……しかも―――
「へっへっへ…なかなかいい刀持ってんじゃねーかオイ!!!ああ悪くない、悪くないぞ……!!!」
欲望を斬り捨てて得た報酬はこんなにも
「くっ……!殺り損なったかっ……!」
こいつ何気に20人総勢バトルロワイヤルで生き残ってるからね、幕末適正が結構上がってきてる証左だよ……まぁその「生き残ってる」って事実は今から「生き残ってた」に変わるんだがなァ!
「オラァ天
俺が京極に向けてついさっき誰かが落っことした刀を振り上げた、その時だった。
『直感』システム―――――幕末の主要システムの一つだ。攻撃を受けているという事実があれば、それを神経のどこかで
「……お前ッ」
僅かな思考。時間が止まったかのように何もかもが静かに動作を停止している。愕然とする俺と京極、そして刀を床から生やしたまま何のアクションも見せてこない床下にいるであろう何某。
その静寂は、
「
見覚えのない顔の男が言った。恐らく二つ名持ちでもない無名のプレイヤーだろう。
「あわよくばハイエナしたうえで国外サーバーに乗り込もうかと思ったんだが―――――なかなかそうもいかないか………なるべく直感に引っかからないよう注意したんだがね」
「知らないのか?直感システムは『殺意』と『威力』の両方を推し量る――――いくら瞬殺を狙っても、殺意がむき出しじゃあ意味がない」
時間稼ぎとして豆知識を披露しつつ俺は考える。どうする……?密航者が一人だけってことは考えづらい、1匹いたら100匹いると思えなんて言われる某生物がいるが、この教訓は密航者にも言えることだ………セキュリティの甘さに付け入るのが一人だけなわけがない。
「ちょ、え」
そんなことを考えている間に、俺より密航者氏の近くにいた京極が刺されて死んだ。哀れ、生命という物は儚い……どんなに積み重ねが長くとも、瓦解はいつも一瞬だ。
まぁそれはともかく相手の狙いが見えてきそうだ……曲がりなりにも二つ名持ちの俺を率先して殺さないのは何故だ?いや京極も二つ名持ってるんだっけ?いやほとんど浸透してないはず、やはり
「殺気ッ!!」
またしても床から生えてきた刀を俺はジャンプして躱し……
「おいおいお仲間か?でも甘いな―――奇襲ってのは一方的にダメージを与える手札じゃないんだぜぇ!!?」
刀はまだ抜かれていない――――つまり床下には密航者その2が
「肉盾貫通型奇襲式天誅
狙うは刀が生える床板のすぐ近く、
「肉壁貫通型逆奇襲式天誅・応用!」
人体への貫通の手応え、咄嗟にUIを確認すればスコアが加算されている――――反撃キルに成功したということだ。俺は成功の喜びを噛み締める暇もなく密航者一号の方に向き直す……妙だな、俺をキルできる絶好の機会だというのに移動していない……
「おいおい、お仲間が作った隙をみすみす逃すとはどういうことだ?」
「お、仲間……?」
え、これひょっとして密航者1号と2号に全く繋がりがない系?マジかよ……
「知らない、密航者は俺一人の、はず……」
オイオイオイマジで??ということは………
「天誅ゥーーー!!!!!!!」
「ぐぺ」
動揺する密航者1号が地面からまたまた生えてきた刀に貫かれて死んだ。マズい、この船にはいったい何人の密航者が潜んでいる………????俺が考えを巡らせているとまたまたまた刀が生えてきたので咄嗟にバックステップで回避する、最早床下に密航者が潜みすぎてもぐら叩きの様相を呈してきた。セキュリティが甘すぎないかこの船!?
「このっ……!!」」
この船は剣山と化しつつある。床下の奴らと俺とでもぐら叩きに興じている間に床下でも殺し合いが起こっているらしく、出てきたと思ったら引っ込んでいく刀が多く見受けられる……俯瞰して見ればさながら生物である。刃が自動で生え変わるとかどんなハイテク剣山だよォ!?
「垂直投擲型奇襲式天誅ァ!!!!!」
誰かがブチ空けた穴から
「俺も仲間に入れてくれよオイ!!!」
床板に突っ込む!!!ついさっき刀を投げてきた誰かを二等分にしつつ床下を行軍だ、こうなったらとことんやってやるぜぇ……
床下は密航者ズの刀が空けたであろう所々の穴から漏れ出す日光とやっぱり密航者ズの物であろう血液で彩られていた。幕末はシャンフロみたくグラフィックが全年齢で同じなタイプではなく、ユーザーの年齢に応じてゴア表現の有無がフィルターによって決定づけられるタイプだから16歳以上だとダイレクトに血みどろが描画される。まぁこんなゲームをゴア表現が適用されないほど幼い人間が遊んでいるとは思えないんだが……そこだッ踏み込み型抜刀天誅!!!!!!よし11キル目、対処が甘いんだよ対処が。
「それにしても」
……何か
「
「甘いな……
俺の二つ名を知ってッ……!こいつ……
「おいアンタよ~~~~やっぱなるべく生き残りたくね?生き残りたいんだったらとりあえず結託するのがいいと思うのね、俺はそう思うよ……組まない?」
俺に手を差し出された知らない人は答えた。
「いやでもアンタ祭囃子じゃん?イベント荒らしの祭囃子じゃん?レア刀をため込んでるって評判の祭囃子じゃん?ここでアンタをキルした方が俺的には得なわけね、しかもアンタの敵4人じゃん?俺がアンタについてもダブルスコアなわけよ、でも俺があっちに付いたら」
「話が長いんだよ天誅!!!!!!!!」
俺は知らない人が協力する気もないくせに無駄に長い話を延々と続けていることに腹が立ったので知らない人の首を撥ねた。やったあ12キル、でももうすぐキルされそうだ……マズい、このままでは俺の海外サーバー生活の夢が消えてしまう……
4人組は俺が茶番を演じている間に仲間を増やして8人組になっていた。いや8人組って、薄々感づいてたけどこれ公式に船に乗り込んだ奴より密航者の方が多いよな????
「マジでどうなってんだこの船のセキュリ、ティ……ん?」
俺は何か引っかかるものを覚えた。8人組の一人が発砲してきたので弾を斬りつつ考える。奴らの中にAGIに偏って振っている者は幸いにもいないようでまだこちらに辿り着くまで少し時間がある。また発砲された。ひらりと躱したら背後で俺を狙っていた知らない人に当たった。南無三―――ってこれよく見たらギリギリ息があるなハイエナ天誅ゥ!!!!!!やりぃ13キルだぜ。
「…………」
俺は混沌渦巻く戦場の中、もぐら叩きの影響で穴だらけになった床板を見上げる。床板の先には果てしなく広い天があって、俺たちに「
「あっ」
「ひょっとして」と「いやまさか……」、二つの思考が脳を巡り、前者がより「正しさ」を手持ちの材料から導きやすかった。
じりじりと距離を詰めてくる8人組――――あ、仲間割れが起きて6人になった――――6人組。先頭にいる強そうな知らない人が言う。
「悪いが祭囃子、あんたは海外サーバーへの出張の上で一番の障害なんだ――――なぜだか知らんがランカー連中はこの船に乗っていないからな。俺は天誅汚染されていない比較的平和な状態であるうちに鍋の蓋を全部回収して全身に装備するという目的を達成しなければならないんだよ」
いや無理だと思うよ、あれ角度によってはまったく意味を成さないもん。
それはそれとして対する俺は答える……ついさっき辿り着いた、このゲームの真実で。
「空を見ろ」
俺は指を天に向けた。
周りでドンパチやっていたプレイヤーの半数が空を見上げ、もう半数がその隙を突いて天誅した後に空を見上げる……結構な人数が返り討ちにあっているようだが。
「この船に俺たちが乗り込んだ3時間前から、
俺はインベントリに隠し持っていた団子の串を背後に投擲して上を見上げている誰かを天誅しつつ続ける。
「3時間も航海したんだ、多少は
俺は上に向いた指を下ろして、言った。
「『船で海外サーバーに行ける』というのはだ――――――
船内が静寂に包まれた。
ついさっきまで隣の奴を天誅していた奴も、天誅されそうになっていた奴も、6、あっ3まで減ってる、3人組も、みんな黙っていた。
俺は止めとばかりに言い放った。あとついでにその辺に刺さってた刀をさっき蓋鎧の夢について語っていた人に投げつける。動揺故か防御はなかった。15キルだ。
静寂を己の声で、破る。
「きっと、運営はこれを
俺の声に続いて、数多の慟哭が、そしてそれをかき消すほどに多くの斬撃音と「天誅!!!」の声が静寂を乱す。
俺たちの戦いは、始まったばかりだ。
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命すら掛けて
轟音がどこかから聞こえた。
俺が知らない誰かへ海よりも深い無限の慈悲の心をさらけ出していると、近くにプレイヤーが2、3人寄ってきた。俺は幕末においてイベントが開催されるたびに現れて報酬を掻っ攫っていくというプレイスタイルの関係上経験値を沢山落とすレアエネミーみたいな扱いを受けているから、レア刀を求めてプレイヤーが寄って来るのは当然のことなのだが、俺は今回こいつらに襲われないための秘策を用意してある。
「トトカルチョ天誅、やろうぜ」
俺の口から飛び出た
「え、あ」
「ほらまず刺客役を名乗り出る奴は!?!?いないのかよオラァ!!!!!」
相手が明確な反応を示す前に距離を詰める……ピザ留学式交渉術の一つだ。ピザ留学の本質は会話をコンマ単位で調整するタイミングゲーなんだが、こういう風に強引に話を進めないとクリアできないレベルで面倒なフラグが大量に存在するためこの交渉術はラブ・クロック攻略必須技能七十六手の1つに数えられている。
「え、じゃあ俺が――――」
「そこだ天誅!!!!!!!!俺がやらせてもらおう」
1人のプレイヤーが手を挙げたと思ったらいつの間にか後ろに回ってた知らない人に天誅されて役目を奪われた。トトカルチョ天誅における刺客役は押さえておけば共謀による悪徳を得放題な
「で、どこに賭ける?ホームチームは京極」
「いやそれなんだけどさぁ」
知らないプレイヤーが異議を申し立てる構えを見せた……オゥ何だコラァ?俺は場合によっては相手の胴体を1秒足らずで両断できることを誇示するべく刀をチラ見せした。
「前から思ってたんだけどトトカルチョ天誅って呼び名おかしくね?だって実態として0と1と2にしか掛けられないじゃん、自由度が低すぎるだろ」
「いやそんなこと言ってもスポーツ振興くじのルールが元ネタだしなぁ、スポーツ振興くじって要はトトカルチョの簡易版みたいな奴じゃん?」
「じゃあスポーツ振興くじ天誅に名前変えろよ、せめてtoto天誅とかさ」
めんどくさいことになってきた。俺は正直決まったことをいちいち変えるのが億劫だったので異議を申し立てた奴を処分した方がいい気がしてきていたのだが、そこでもう一人のプレイヤーが手を挙げて――――
「あー名前についてなんだけどさ、俺も変えた方がいいと思うんだよね~~いやでも、いやでもね?スポーツ振興くじ天誅でもtoto天誅でもなくさ、こう、ブックメーカー天誅とかどうよ?」
また別の異議を唱えた、俺は頭を抱えた。どこからともなく降ってきた矢がさっき刺客役に選抜されたプレイヤーを貫き殺してドロップアイテムをあたりにぶちまけた。
俺が全員殺して別のメンバーを募った方が早そうだなぁとインベントリを埋めつつ思い始めていると、またまた別のプレイヤーが手を挙げて、言った。
「いやさぁ~~~~~~~敢えて?敢えてブックメーカー天誅なの?いやだって確かに賭けではあるよ?賭けではあるけど別に倍率表示システムとかないじゃんね、それはもうアレよ?別の物じゃん、別の」
どうやらこいつはこじれにこじれた話をうまく軌道修正してくれるつもりらしい、俺は喜んだ。渡りに船という奴だ。
「そういうわけで俺は別の呼び名を提案するよ、プール賭博天誅」
船だと思っていたものが自走式時限爆弾だった気分だ。
轟音がどこかから聞こえた。
◆
あのあとデュラハンがトレインしてきたSHO-GUNに参加者全員が殺されたので俺はリスポーン地点にいる。NPCに喧嘩売るのはいいけどトレインして被害を拡大させるのやめろよ……俺は溜息をつきながらさっきから何となく気配を感じていた障子に向かって刀を突き刺した。
「ぐぇ」
という声が聞こえ、スコアが入る―――あれ、この声って京極……?ひょっとしてリスキル天誅を狙ってたのか?まったくリスキル天誅
「ぐぁ」
という声と共に再びスコアが入ったところで唐突にトトカルチョへの欲求の再燃を覚え、障子を開けて町へと歩き出した。
◆
建ち並ぶ和風建造物に囲まれた道を歩けばいかにもトトカルチョ天誅に参加したそうなツラが12345……ふふふ、俺は今回のトトカルチョ天誅の成功を確信した。前回の反省を踏まえてスピーディに進行していこう。異議を申し立てる時間を与えてはならない。
「はいトトカルチョ天誅やるぞ参加者は!?!?54321はい締め切りそれじゃあ刺客役を―――」
ここまで俺がまくし立てたところで参加表明をしたプレイヤーのうち一人が俺に斬りかかってきたので軽く
「―――よしお前だけだな!?よしじゃあ決定だもう談合は済ませてんだろうな????作戦タ―――」
さっきから無差別を疑うほどに四方八方から聞こえてきていた轟音がかなり至近距離で発生したことによって、またしても俺の言葉は遮られた。何事かと偉大なる天を見上げれば、明らかにこちら……というかこちらの
「―――作戦タイムは無しだぞオイそこォ!!!!!!爆撃で説明が中断された隙に作戦立ててやがったろオォイ!?!??!?!?!まぁいいやえーっとさっき京ティメット見たしホームチームはあいつでいいだろよォし張った張ったァ!!!!!!!!!第一勝負は京極対知らない人だ!!!!京極の勝ち・知らない人の勝ち・その他の3つだからな!!!!!!!」
知らない人が「京極40!」と言い、知らない人が「知らない人60!」と言い、知らない人が「その他1!」と言い、知らない人が「知らない人72!」と言い、そこでなぜか乱入してきた唯一剣がこの行に出てきた知らない人を全員殺して「その他173」と言った。お前人の
「天がやれって言ったんだから仕方ないよね」
唯一剣は言った。俺は全くもってその通りだと思ったのでそのまま参加者を募る作業に戻り、2分ほどしたころには約10名の参加者―――今一人天誅されて約9名になった――――が揃っていた。オッズとしては知らない人>引き分け>>>>京極くらいの比率だが果たしてどうなるだろう?
「よーしそれじゃあいよいよスタートだ、行け!」
「わかった」
俺はこれから起こる事への期待で胸を躍らせつつ、刺客役の知らない人に京極の襲撃を開始する旨を伝えた。襲撃役の人は頷き、怪しげな動作で抜刀し、日光に刀を当ててギラリと反射光を生み出し、走る体制に移り、ちょうどそこに現れたたまたま
「……………………………………………………………あー、トトカルチョ天誅第一勝負――――結果は、『その他』だ」
俺は言った。参加者たちの間に騒めきが走る。対戦前にどちらかの参加者が死んだ場合トトカルチョ天誅はスポーツ振興くじで言う「その他(0)」として結果処理されるのである。俺は懐から配当金を取り出して参加者たちに配り始める。レイドボスさんはそうこうしている間にも彼の付近に次のターゲットを見つけて愛用の錆光の参加した刀身―――それは、まるで膨大な量の血液を吸い取った結果のように思えた―――をゆっくりと、しかし力強く振りかざし―――刹那の先には全身を両断された幾つもの死体が残っていた。怖すぎる。早く配当金を配りきって解散したい。クソッ、巡回時間を読み損ねるとは俺としたことが……!!!
「マズいっ……!早く配って解さッ……ぁあ゛!?」
その時だ、気付けば俺の腹から刃が生えていた。振り返ると知らない人が微笑んで、手に握った柄をさらに俺の身体に押し込もうとしてくる。俺はもう助からないことを悟って辞世の句を読んだ。
「なぜ斬った……!!!!配当金が、欲しいんじゃ……」
「祭囃子―――あんたが金を配るのを待つより、全部掻っ攫った方が早いし高効率だと思ったんでね」
おっしゃる通りで……俺は崩れ落ちてデスポーンした。
最後に血濡れの視界に映っていたのは、こちらを睨みつけるレイドボスさんだった。
◆
リスポーンした俺は、即座にトトカルチョ天誅をリベンジせんと障子を開けようとした。何度でもリベンジし、絶対に京極に刺客を送り込んで見せる―――そう心に誓っていたのだが、
「なッ…………!!!!」
「おいおい祭囃子……普段のあんたならこの程度のリスキル天誅返し返し返し返し、簡単に避けられたと思うぜ―――焦っているのか?」
「が、は」
障子の向こうから声がして、もう1本刀が生えてきて。
「ぐぁあ!?!?」
「まぁ関係ないがね……俺には
「だん、ごう……???!?」
お前は、まさか。
「勘づいたか―――まぁ冥途の土産に教えておいてやろう、俺は
やっぱり、そうか。
「まぁこれも自業自得だ…………せいぜい大人しくリスキルされてくれよ」
そして俺の
しかし、ゲームは終わらない―――まだ、始まったばかりなのだ。
轟音がどこかから聞こえた。
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「幕末」天誅クロスレビュー大会!!!!!果たして最強の天誅はどれだ!?!??!?
「天誅クロスレビュー」
【企画内容】
【参加者】
・レビュアーA―――「祭囃子」サンラク
・レビュアーB―――その辺にいた知らない人
・レビュアーC―――その辺にいた知らない人
・レビュアーD―――その辺にいた知らない人
【第一天誅】【知らない人→知らない人】
レビュアーA(6/10):典型的な刺突強襲型天誅。非常に洗練されているが驚きも少ない。
レビュアーB(7/10):知らない人には是非、刺突強襲型天誅の応用性について研究してみてほしい。きっと今まで見つかっていないような新しい天誅を生み出してくれるだろう。
レビュアーC(6/10):円形能動式天誅あたりと組み合わせることで一気に化けそう。今後が楽しみだ。
レビュアーD(0/10):俺の方が上手い。
合計点:19/40
【第二天誅】【知らない人→知らない人×3】
レビュアーA(7/10):「3人」を相手することに特化した動き。「複数人」ではなく「3人」というのが重要だ。
レビュアーB(6/10):上空奇襲式天誅と抜刀天誅を組み合わせている。上空なのに敢えて「抜刀」というのがキモだ。
レビュアーC(8/10):美しい。「3人」を相手にすることに関しては、ランカーたちにも匹敵するだろう。
レビュアーD(0/10):俺の方が上手い。
合計点:21/40
【第三天誅】【知らない人→知らない人】
レビュアーA(9/10):素晴らしい。速攻式土下座ドライブ型急速変形空中抜刀系殺害後即再変形式天誅の神髄を見た気分。速攻式土下座ドライブという形態を最大限に生かしている。
レビュアーB(2/10):うわキモッ
レビュアーC(3/10):うわキモッ
レビュアーD(0/10):俺の方が上手い。
合計点:14/40
【第四天誅】【レビュアーA→レビュアーD】
レビュアーA(10/10):さっきから俺の方が俺の方がうるせーーーーんだよテメーーーッ!!!!!!!!ッッァァァ!?!?!??
レビュアーB(7/10):普通の抜刀型奇襲式天誅だが、ちょっとスカッとしたので加点。
レビュアーC(8/10):流石祭囃子、という感じ。奇襲式天誅の何たるかをよくわかっている。
レビュアーD(0/0):お願いだ……せめて刀はっ……質屋へとォ……[死亡する]
合計点:25/30
【第五天誅】【「
レビュアーA(8/10):咄嗟に導火線を斬らなければ危なかった。
レビュアーB(8/10):花火の威力はやはりナーフするべきだと思う。
レビュアーC(9/10):着火タイミングが完璧すぎる。
レビュアーD(4/10):「祭囃子」に代わりにレビュアーやらない?とか誘われたので来たらいきなり爆撃されてキレそう。
合計点:29/40
【第六天誅】【「あるてぃめっと」京極→知らない刺客役】
レビュアーA(9/10):ハハハハハ!!!!!!トトカルチョ天誅で勝つのはいつも胴元だってことをお前らは全然わかっていない!!!!!!!!
レビュアーB(2/10):金返せ。
レビュアーC(1/10):ふざけんな。
レビュアーD(0/10):は?
合計点:12/40
【第七天誅】【「あるてぃめっと」京極→知らない人×2】
レビュアーA(7/10):流れるような天誅組み込み式移動。幕末度10%くらいだったころの京極を思えば随分上達したなぁと感慨深い。
レビュアーB(6/10):レビュアーAに同意。ところで京極がだんだんこちらに近づいてきている気がする。
レビュアーC(7/10):天誅組み込み式移動を使いこなせていないときに起こりがちな「天誅に気を取られて減速」が全く無く、ほとんど最大速度で目的地に向かっている。
レビュアーD(6/10):これをやられる側はたまったもんじゃないだろう。当事者が言うんだから間違いない。
合計点:26/40
【第八天誅】【レビュアーA→知らない人】
レビュアーA(10/10):俺が臨戦形態を取った隙に
レビュアーB(6/10):まぁ典型的な漁夫の利型奇襲式天誅返しという感じ。
レビュアーC(7/10):やはり奇襲にも警戒を配っていた。念の為襲わないでおいてよかった。
レビュアーD(5/10):自分がした天誅に自分で10点入れるのをやめろ。あと京極が本格的に近づいてきてる。
合計点:28/40
【第九天誅】【「レイドボス」ユラ→「あるてぃめっと」京極】
レビュアーA(10/10):あっ。
レビュアーB(10/10):あっ。
レビュアーC(10/10):あっ。
レビュアーD(10/10):あっ。
合計点:40/40
【第十天誅】【「レイドボス」ユラ→レビュアーA・B・C・D・その他知らない人×70くらい】
レビュアーA(0/0):どうか許して!!!このと[土下座しようとする][能動的反動制御型火縄銃天誅されて死亡する]
レビュアーB(0/0):クソがぁぁぁぁぁっ[逃亡する]、ぁ……[疑似縮地式一閃型抜刀天誅されて死亡する]
レビュアーC(0/0):えっ[振り抜き派生型直線貫通式投擲天誅されて死亡する]
レビュアーD(0/0):ちょ[抜刀し応戦を試みる][光学残像式虚像囮型背斬天誅されて死亡する]
合計点:0/0
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レイドボス殺人事件
【〈Gigabyte Japan〉、20XZ+1年12月4日の記事より引用】
自称和風オープンワールド協力剣闘ゲーム『辻斬・狂想曲:オンライン』にて、奇妙なバグが報告されている。内容は、先月の23日に開かれた『激闘!勤労感謝の日』イベントの報酬アイテムである『
◆
雨粒が俺を擦り抜けていった。
VRゲームで
視界から、血液を洗い流すことも無く。
「……ッ!?」
京極の驚愕が聞こえる。それは本当に心の底からのそれで、攻撃がフェアカスに2ミリほど掠っただけで作ろう!最高級デラックスパフェ材料入手ツアー~介護イベントを添えて~の火蓋が切られた時の俺に勝るとも劣らないレベルだった―――当然だろう、彼女の目の前では。
◆
「「漁夫の利天誅ァ!!!」」
「身代わり天誅・
「「ゲェ~~~ッ!!??」」
京極に襲い掛かった双つの刃による単つの死線は、俺が京極を間から引き抜いたことで
「おい京極、とりあえず行くぞ!!」
「……ッ」
何やら狼狽している様子の
「行くぞ、ほら京極!!」
「……」
急かす。俺だって別に余裕がある訳じゃないからな……そこッ!華麗に土下座ドライブ・ジャンピングアサシンモードに変形、回避して掴んで投擲、1キル……イヤよく見たら2キルだ。団子状態になっている……9時からダイレクトアタック、
「京極!!行くぞ!!」
「……ああ、わかった、よ!」
そういうことになった。
◆
幕末度が60%を超えると、人間は視覚に頼ることをやめる。視覚は眼を潰されるだけで機能しなくなるし、使い勝手がいいとは言い切れないからな……完全に使わなくなるって訳じゃないがな。視覚の代わりに使うものと言えば
さて、幕末覚の有効射程はかなり広い……しかも全方位に探知してくる。そうなると安易に障害物に隠れるだけではダメだ、
「ふふ……わりと、静かだね……ふふ」
見渡した
追っ手は……見えない。
「それでだな」
俺はようやく話を切り出した。京極も大体察しているようで―――
「ああ……僕は」
―――頷きつつ、応じる。
「レイドボスさんを殺してなんかいない」
旋風が墓地に訪れ、一瞬の内に駆けていった。
◆
レイドボスさんの死は、約1時間前に起きた。
その時、幕末は揺れていた……大体花火のせいだ。雨は降っていたが、幕末の花火は特に湿気るとかは無い。詰め込まれた火薬はこれでもかと削り、壊し、誘爆させた。理由としては大体
さて、レイドボスさんは爆発群の中でも
そして、死んだ。
レイドボスさんは唐突に動かなくなり、そのまま消えていったんだ。
狙撃では、無い。弓矢を撃てるような位置関係では無かったし、かといって近くの銃は全て
その結果として発生したのがこのアホみたいな数の追っ手だ……内訳としては色々、嫌がらせだろ?ドロップ狙いだろ?あとスト……イヤなんでも無い。まあ人間の欲望総集編、って感じの魑魅魍魎が襲い掛かってくるわけだな……状況を打破するためには、京極の無実を証明するか……もしくは、殺すしかない。
◆
俺はここまで考えて首を捻った。冷静に考えて無実を証明とかめんどくさいことしないで殺すのでよくね?って話なんだよな。イヤだってそうじゃん?このまま京極を守り通しつつ推理パートを進めるより、公衆の面前で処刑した方がはるかに楽だ……よしこれで行こう!俺は決定し、それを踏まえて京極に質問した。
「おい京極、お前打ち首と火炙りだったらどっちがいい?」
「君ひょっとして僕の敵なのかなぁ!?」
「いやいやいや―――アレだよお前、お前を処刑すればもうドロップアイテムは無くなるだろ?死んだ時点で諸々はリセットされるから、嫌がらせだってなくなるはず……元の状態に戻るワケだ。つまり解決!いい案だと思わないか?」
「……いや、ダメだ」
そういったときの京極はなんだか神妙な面持ちをしていて、俺は思わず警戒を緩めてしまった。
「レイドボスさんは―――単なる
それがいけなかったのだ。
「伏せろ!!」
「えっ」
刀が飛んでくる。
忌々しくも、その軌道はどこまでも直線的で……雨は
こんな投擲……それも刀によるものができるのは、レイドボスさん以外では―――
「……俺達の、勇者」
呟きと共に、推測は確信へと変わる。身を隠した墓石を
「京極を―――」
俺達の勇者は。最もレイドボスさん打倒に当たって期待されていた彼は、言い放った。
「―――渡すんだ」
隣の京極は震えている。俺も震えている。怖いからだ。他ならぬ勇者は、レイドボスさんを凌駕するレベルの暗黒的オーラを放っていた。いやオーラって何?直感システムの見せる幻は相当壮大だな……俺はビビりつつどうにか交渉に持っていける可能性に賭け、墓石から顔を出して叫んだ。
「待て~~!!!京極は―――危なッ!!京極は、レイドボスさんを殺してなんかいないッ!!」
「うるせえんだよ死ね」
俺達の勇者は無情にも言い放った。そこには「天誅ゥ~~~ッ!!」といういつものような暖かみ溢れる掛け声すら無かった。俺は背筋を凍らせた。寒かったからだ。大気が、墓石が……そして、雰囲気が。とりあえず交渉は決裂したようだな……どうする。
「本当だよ、本当に僕は殺してない!!ドロップも持ってないし、レイドボスさんのKDRを汚したりもしていない!!信じてくれよ!!」
京極が悲痛に言う。その瞳では仮想の涙が零れていて、VRゲームにおいて
迫り来る勇者、泣きわめく京極、冷たい墓石。この状況を打開する手立てはあるのか……?俺は必死に考える。雨粒は依然として俺の肉体を擦り抜けて行って、湿度を上げることすらしてはくれなかった。じりじりとタイムリミットが近づく中、俺は―――
◆
いや普通に死ぬよね、という。
リスポーンした長屋の障子を華麗にOPEN、ついでに裏に潜伏してたプレイヤーを適当に天誅しつつ伸びをする。イヤァ~~~疲れたなぁ。いつの間にか天は泣くのをやめ、雲一つない青空が頭上には広がっていた。うん、良い天気!俺は現実逃避した。実際の所全く良くは無いのだが、現実逃避した。なんか刀がこっち向いて落下してきたので適当にパリィからの弾道追跡天誅……そこッ!俺はレベルアップした。アァ~~~ステ振りどうしよ。俺が考えつつ歩いていると、
「あ、祭囃子じゃん久し振り」知らない人が話し掛けてきた。
「お?お、おう久し振り」俺は流れ的に応じた。
「あのさァ~~~聞いた?京極が」知らない人がなんか絡んでくる。
「京極が?」俺は仕方なく相槌を打つ。
「火炙りにされるらしいよ」知らない人が言った。
「支点固定型天誅移動ゥ!!!俺はおもむろに取り出した刀で知らない人を刺し殺し、それによって発生する慣性的なアレを利用して処刑が行われるであろう長屋の中心地へと向かった。
◆
元素天誅・空の型、支点固定型天誅移動、ステップ、ジャンプ、支点能動型天誅移動、元素天誅・土の型。
取り出した刀で通行人を刺し、その通行人が持っていた刀で更に通行人を刺す。幕末において、STRは腕の力でAGIは脚の力だ―――つまり
無限の断末魔を背負いながら、俺は
そう―――そもそも、
すなわち―――
レイドボスさんは、何かしら
ふと前を見る。全般的に見れば閉塞的なそれだった景色は、いつの間にか開いていて―――もう少し進めば
◆
「こういう時って何て呼べばいいんだろうな」
「処刑天誅?」
「40点、安直すぎる」
「じゃあお前は何がいいと思うんだよ」
「スケープゴート天誅」
「指し示す範囲が狭すぎるだろ……50点」
「ミディアム天誅とか?」
「30点、俺はベリーウェルダンが好き」
「木炭でも食ってろよ」
「愚弄したなテメェーーーッ!!ベリーレア・天誅ッ!!!」
「生肉と、ベリーレアとは、違うモノ……ッ!!」
「辞世の句がダサい、20点」
「はい」
広場は会話に包まれていた。いつものような断末魔も、混じり込んだものを少し聞くことはできるが……あくまでもそれは
前の方に設置された壇にプレイヤーが上がって、言う。
「エェ~~本日、
「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!「ダサくない?」」」」」」」広場が湧く。
そんな中、俺は。
「ちょっと待つんだな―――処刑人」
歩み出た。
「ン?ああ祭囃子か、天誅していい?」
「駄目だ……それよりだな、言いたいことがある」
「何だと?」
広場が沈黙する。視線が集まる感覚……直感システムがそうさせるんだろう。多少プレッシャーを感じるが、こんなモンあまりにも
「レイドボスさんは―――」
沈黙のどさくさに紛れていくつかの戦闘が勃発する。俺は華麗にインターセプション天誅をキメると、ドロップを回収して言った。
「―――
◆
「……何だって?」
長い長い沈黙を最初に破ったのは、他でもない京極だった。
「……でも、レイドボスさんは、確かに……僕の前で動かなくなって。それで―――」
「
一瞬のザワつき、数個の天誅、一瞬後の沈黙。
「あの―――何だったか。『行動ログの参照によってアバターが分裂する』ってバグは、どうやら
誰も喋らない。手を挙げる必要は無さそうだ……畳みかけるように話す。
「そもそも―――何故レイドボスさんは、あの爆発の最中にダメージを受けなかったと思う」
「気合でガード」「空隙天誅!」「VITが高いから」「空隙天誅返し!」「なんかすごい力」「爆風を見切ってたから」
「それ!」俺は答えのうち一つを述べたプレイヤーに指を指した。「俺は実際の所、その
一瞬のザワつき、数個の天誅、一瞬後の沈黙。俺は既視感を覚えた。
「……じゃあ、レイドボスさんのアバターが
京極が聞いてくる。俺は即答した。
「単に―――HPが尽きたんだろう。あれだけ爆風を浴びたわけだからな」
その時発生したザワつきは、数個の天誅を生み出しはしても、一瞬後の沈黙に繋がりはせず―――広場には、殺伐とした活気が戻りつつあった。
俺はそれに乗じて。
「ここに宣言しよう―――」
言い放った。
「
広場が再び湧いた。
俺はそれとなく京極を回収してトンズラする……万事解決だな。実際この考えが合ってるかどうかはちょっと微妙なところだが、まあとりあえずは問題ないだろう。
「……ありがとう」
京極は言った。俺は顔に笑みを浮かべ、隙をついて彼女を天誅した。
どこからか、
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闇鍋・狂想曲:オンライン
俺は死んだ。
首を刈り取られたからだ。
この事を見越しごくごく付近に設定しておいたリスポーン地点から起き上がった俺は、辺りに染み込む血液を無視して
「……」
オォッと
「…………」
京極はどぎまぎしている。自分の想定していた空間と実際が違ったので困惑しているのだろう……フッ、愚かなことだぜ。俺は首をゆっくりと横に振ったつもりになった。結局―――俺は人差し指をビシィと立てたつもりになった。結局、
「………………」
お、言うか!?もしかして言っちゃうのか!?俺たちはザワザワしたつもりになった。多分なった。もし京極が口を開いたとなれば、もう当然のことながら彼女は袋叩きのターゲットリストに仲間入りだ……リスポーン地点をいくら近くしても、リスキルを続けられれば気がめいっていつかはログアウトすることになる……実際、「デュラハン」は既にそれで脱落済みだ。それをも厭わず……言っちゃう、のか!?
「……………………あの」
言ったァッ!!俺は真っ先に動き出すと見せかけてあえてレイドボスさんの様子をうかがった。レイドボスさんの攻撃ルーチンは乱数だからだ。
「……!!!」
緊張が走る。
レイドボスさんは「何かのアクション」を取った人間に対し攻撃判定を行う。そのため、安易に殺しに行くと京極を無視してこっちにタゲが飛んできかねないのである。だからこそこの場ではあえて停止、レイドボスさんの顔色をうかがー――
―――カチャリ。
「狂犬」が我慢できずに柄に手を掛けた音である。
俺たちは彼を袋叩きにした。
◆
辞世の句、断末魔、リスポーン……すべてが途絶えて「狂犬」が飽きてログアウトしたのを察すると、俺たちは無言で持ち場に戻った。いや嘘、無言ではない。「唯一剣」が「被下剋上」をすれ違いざま天誅した。しかしそれ以外は全くの無言だったし、「被下剋上」もついさっきの俺のように何事も無かったかのように戻ってきた。
―――再びの、無言。
俺は懐からそれとなく箸を取り出し、目の前の鍋にこれを伸ばしていいものか悩み始めた―――その時脈絡も無く「吹雪狩」の袋叩きが始まったので参加しつつ、ぐつぐつと熱を帯び続ける鍋のことをずっと考えていた。
―――再びの、静寂。
こっそりインベントリに仕舞いこんだもう帰らない彼のドロップアイテムにひととおり思いを馳せると、俺は意を決して目の前の鍋に箸を突っ込んだ。このまま黙り込んだままでいたら、一周回ってレイドボスさんが
―――再びの、沈黙。
箸を動かし、妙にリアルなフィードバックに彩られた
八尺玉だった。
―――突き破る、騒音。
どうなったァッ!?引き上げられるとほぼ同時に爆ぜた玉に至近距離にいたせいで真っ先に溶かされた俺は、リスポーン地点からガバッしてシュタッした。
レイドボスさんと勇者は爆風を斬って(爆風を斬って????)無傷、
唯一剣は勇者の陰に隠れたので無傷、
針千本は爆風を刺して(爆風を刺して????)無傷、か。
黙る。
(……!…………!!)
京極があからさまに俺に何かしらの意思を伝えようと奮闘しているが、黙る。
「手滑り天誅!」
針千本に心臓を一突きにされリスポーンしたが、黙る。
「がはッ!?」
報復に針千本の心臓を一突きにしつつ、黙る。
そんなこんなで飛び散る血飛沫から食材(とされているもの)を鍋が守る中、「唯一剣」が鍋に手を伸ばす……箸にも装備判定が存在することにより
明らかに入りまくっているであろう火傷ダメージ及びそのフィードバックにしかめ面一つ浮かべずに、粛々と取り出されたのは―――
閃光が、光った。
クソがァッ!!俺は咄嗟にすぐそばにあった釜の蓋を構えた。おそらく原理的には何かしらの化学反応を利用した
ほぼ同時に襲い掛かる……いや、
「……はッァ」
右目でヒットポイントを確認……4割、か。地面に付きかける膝をどうにか抑え、より広範を防御できるよう蓋の角度を変更する―――無数の
「クソがッ……!!」
このまま終わってたまるかよッ……!!俺は地面を這い始めた。横目に見えたレイドボスさんはなんか刀振り回して矢を全部弾いている。えぇ……困惑しつつ先を急ぐ。この先は構造的な
「サ、サンラク……」
「ど、どうしようサンラク……!隙を見て漁夫ろうにもレイドボスさんがいるし、仕掛けておいた罠を起動しようにも全部無効化されちゃうし……!!」
ふむ……俺は腕組みをして考えた。
「あ、あれは何だろう」
俺は京極の背後を指した。
「え?」
京極は振り向いた。
「えい」
俺は京極の脇腹を己が硬刀にて突き貫いた。
「え?」
他ならぬ自らの
「えい」
俺は京極の脇腹から己が硬刀を引き抜いた。
「え?」
俺は京極をリスキルした。
「え?」
◆
ガッポガッポっスよガッポガッポ……ハハハ!いつの間にやら矢の雨は消え、あとついでに「あいつ」も消え、「あいつ」じゃない方のの
現在フル回転状態の夜目が、「俺たちの勇者」が鍋に箸を突っ込む様子を伝えてくれている……さァ鬼が出るか蛇が出るか、どっちだ!?
ざばん。
生首だった。
綺麗な放物線だなあ……仕切り直し!現在フル回転状態の夜目が、「俺たちの勇者」が鍋に箸を突っ込む様子を伝えてくれている……さァ鬼が出るか蛇が出るか、どっちだ!?
ざばん。
生首だった。
「……あの」
「被下剋上」が率直な意見を口にしかけたが、
俺は何となく「唯一剣」の頸動脈めがけて投擲型奇襲天誅をしたが、咄嗟に変則型土下座ドライブの型を取られ躱された。ヤルじゃん……だがなァ、変則型土下座ドライブの弱点、それは解除まで防御力が著しく下がることだ―――
「……くっ」
唯一剣は言うと、
ざばん。
乳母車だった。
◆
よし、放火しよう。
俺は決心した。
懐から取り出した火打石、その照らし出す空間をそのままに炎を乳母車へと移す!気付いたランカー共は針千本以外は正面にいる、釜の蓋で防御ッ!!そして、針千本は―――!
「……無、えッ!?」
串投げプレイヤーから串を
乳母車を発進させる!十中八九どころではない確率でレイドボスさんに斬られるだろうが、というか既に斬られたがそんなことはどうでもいい!
しかしレイドボスさんは炎を斬ることができるようで、乳母車は普通に鎮火した。
「…………」
まッまだだァーーーーッッ!確かに放火は失敗した、しかし今ならまだ逃げ切ることが可能なはず―――!!俺は変則型土下座ドライブの形態になって一目散に逃げだした。逃げろ逃げろ逃げろ、俺は今死ぬわけにはいかないんだよォーーーッ!!
―――背中に、何かが刺さった。
「ぁ……」
最後の力を使って視界を動かせば。そこには、
そういえば、
俺は死んだ。
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よくわかる!じゃんけん天誅入門ガイド
幕末ランカー部分は消えました
こんにちは、辻斬・狂想曲:オンライン天誅研究家の煎りジウムです。『読み始めたら止まらない、止まらなくなったお前を背後から刺し殺す』をモットーに、天誅解説ブログ『前門の虎の巻』で定期的に記事を投稿しています。
さて……今回紹介する天誅はこちら、「じゃんけん天誅」!数ある天誅の中でも少々特殊な立ち位置にあると言える『
じゃんけん天誅は、説明してしまえば随分簡単な
ここまでの文章を読んで、こう思う方もいるかもしれません―――「じゃんけんなんて無視して、普通に刺し殺せばいいじゃん」と。お気持ちは分かりますよ……じゃんけんなんてけったいな要素をゲームに持ち込んでもなにか
しかし、それはあくまでも
じゃんけん天誅……というよりじゃんけん天誅
1つ目のじゃんけん天誅については言わずもがな、先述の通り、戦闘中の相手に唐突にじゃんけんを吹っ掛ける天誅です。じゃんけん天誅の終了条件は二つ―――『じゃんけんの勝敗が決する』と、『じゃんけん天誅無視天誅が発生する』です。要するに、あいこが続く限りはどちらも攻撃を行わない安全地帯を作る技、と言えます。
2つ目、じゃんけん天誅無視天誅。これは簡単に言うと、吹っ掛けたまたは吹っ掛けられたじゃんけん天誅を無視し、普通に相手を刺し殺さんと襲い掛かる天誅のことを言います。別に「じゃーんけーん」の部分で無視をしなければならないというわけではなく、「じゃーんけーんぽんあいこでしょしょっしょでしょしょっしょでしょしょっしょでしょ」くらいのタイミングでようやく無視天誅をする、といったことも可能です。寧ろ、そちらの方がメジャーともいえるでしょう。じゃんけん天誅無視天誅はじゃんけん天誅を終了させ、通常の戦いへと戦闘をシフトさせます。
3つ目……じゃんけん天誅無視天誅迎撃天誅。この天誅は要するに、じゃんけん天誅無視天誅を
さて……何となく、読者の皆さんにもじゃんけん天誅の方針がお分かりいただけたでしょうか。まず先述の「じゃんけんなんて無視して、普通に刺し殺せばいいじゃん」が通用しない理由は……わかりましたか?いえ、厳密には
じゃんけん天誅戦法において、両者はこんなフローで天誅を行います―――まずどの天誅をするか選択する、そしてじゃんけん天誅の場合、出す手をさらに選択する。そして選択した天誅を行って、両者がじゃんけん天誅をしていないか、していても
こうして見ると……じゃんけん天誅が続行される可能性は、かなり低いものであるという事ができます。しかしまあ、
ここまではじゃんけん天誅戦法についてお話ししましたが、ここからは「じゃんけん天誅」単体について記すことにしましょう。
じゃんけん天誅で出すことが可能な手は、当然のことながらグー、チョキ、パーの三種類です。他の手を出した場合それは実質的にじゃんけん天誅無視天誅ですが、殺傷能力があるわけでも無いのでどの天誅にもアドバンテージを取れないクソ札です、捨ててしまいましょう。じゃんけん天誅を強引に終結させたいときに一応使えますが、だったら普通にじゃんけん天誅無視天誅をした方がまだ相手がじゃんけん天誅の場合に勝利できる分強いと言えます。
さて、グーは判断の難しい手です。何せグーを出した状態から刀を握るためには一度開いてからもう一度閉じなければならない。一方、ステゴロファイターの場合逆に最良の選択ともいえますが、だからと言ってグーばかり出していては見切られてしまいます。また、「さいしょはぐー」の存在も判断を難しくさせる一要因です。じゃんけん天誅はかならずグーから開始されることが確定しているため、そこがルールに若干の不均衡性を生み出している。
その点チョキは比較的簡単です。武器を握るまでの動作もグーよりはスムーズですし、相手の両目を貫けば攻撃も可能です。また、一部の維新軍プレイヤーからは「銃を取り出すならこっちの方が使いやすい」との声も上がっています。また、パーに勝利できるという点でバランスのいい手でもあります。
パーは最も使いやすい手です。一番刀を握るまでに余計なモーションを取る必要がありませんし、平手打ちという形でグーやチョキには劣るとはいえ攻撃も可能です。ただし性質上、「パーを出している……これは1ターン後にじゃんけん天誅無視天誅が来るか!?」といった認識を相手に与える可能性があることは考慮に入れてください。まあこんなものはどの手を選んでも結局発生するわけで、読み合いにはある種不可避な要素と言えます。頑張ってください。
さて……じゃんけん天誅(戦法)について、多少は御理解いただけたでしょうか?じゃんけん天誅の神髄はそのシンプルでいて奥深い読み合い。説明してしまえば随分簡単な
それではスコアをありがとう、経験値と化した貴方に背後から感謝を!
筆:煎りジウム
了
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仮の世界で借り受けた狩り
今日のレイドボスさんは芋砂モードらしい。
「やってやらァァアァァ!」
ずどん。
「げぺっ」
空気を切り裂くような音の塊がやってきて、意気揚々と突進していった男の
男が入り銃撃音が出ていった、長い
小路と直角に開いた壁のうち、小路の出口を挟んで僕と反対側にもたれかかっているプレイヤーたちに聞く。
「今ので何人目だい?」
「九十五人だな~」
反対側で雑談が始まった。
「……何とか阻止できねえモンかな?ハッキリ言って、今のレイドボスさんは舐めプしてると思うぜ」
「そうだな……
「それもうやったぞ、飛んできた爆弾のうち一つを狙撃した爆風で他の爆弾をこっちに飛ばしてきて逆絨毯爆撃された」
「なるほどね」
「……」
「……」
「閃いた!」
「ど」
「と見せかけて天誅ゥ!」
雑談が終わった。
深紅のポリゴンと共にばら撒かれた戦利品を、天誅を成功させたプレイヤーが拾い集めていく。どうやら不意を突かれたプレイヤーは結構色々とため込んでいたようで、落ちたアイテムには
「あ、そこ」
ずどん。
「射線……」
深紅の上に深紅が上塗りされる。煌めきの上に煌めきが重ねられる。僕は心中で『九十六人』と呟くと、そろそろ潮時かなと考える。
立ち上がる。
改めて、刀の握り方を確認する。髪型が邪魔にならないかとか、何か装備し忘れている者は無いかとか、事細かにだ。レイドボスさんとて一日中ログインしているわけじゃない、百人撃ったら消えてしまう可能性すらある。だったら……今挑む。それが一番いいはずだ。
「よし……」
刀の柄に手をかけて、眼前に積みあがったレアアイテムたちを見る。放たれる輝きはこの世界がゲームであることを声高に主張しているようにも見えて、だからこそ、京極ではない京
剣士としての意志を、ゲーマーとしての熱意を……そして、多めに振ったAGIを身に込めて。
「行くよっ!」
僕は加速する。
◆
ずどん、初手で弾が飛んでくる。レイドボスさんには超能力じみた察知能力と並外れた動体視力がある、普通にやっていればきっとこの弾は当たるだろう。だが……
「やぁッ!」
鉄刀を振り、殺到する銃弾を
「……へえ」
ずどん。
聞こえた気がした呟きが、もう片方の手に握られた
「う」
斬
「りゃぁ!」
らない。
剣道ではとてもやらないような技だが関係ない、僕はあくまで僕だから。二発目の弾を斬るための刃が無いが関係ない、刃なんて足元にいくらでも
喜びもほどほどにレイドボスさんに目をやる。彼は飛来した刀を難なく避けているが、隠されていた手元が見えてしまっている。そして、このゲームのプレイヤーアバターは視力が高い。斬弾は?右四発左五発、了解。
「うおおおおお!!」
突進する。
背後から何やら騒めきが聞こえる。レイドボスさんと僕の……ランカーですらないうえに極めて
「あと何秒で京極が死ぬか賭―――」
無視する。
さあ、レイドボスさんは次の銃撃で僕のどこを狙ってくるだろう?普通に考えれば脚だ、胴体付近なら弾斬りができるから。しかし本当にそうだろうか?彼には銃が二丁ある。だったらジャンプすれば避けられる脚をブラフにしてもう一丁で胴体を狙うこともあるかな?なんにせよ、脚を狙うなら少しでもしゃがむ必要がある。弾丸はなるべく地面と平行でないと、バックステップするだけで回避されかねないからだ。
彼をじっと観察する。
じっと。
じっと。
しゃがもうとしてる。
「今だ!」
背後の地面に刀を突き立てた状態で、砂埃を上げて宙返りをする。突き立てた刀が僕の肉体を引っ張ることで、なんだかいびつな体勢ができる。ずどん。
「何びょ―――ぐえ」
九十七人、背後でトトカルチョ天誅偽装天誅をしていたプレイヤーが死んだ。ずどん。やはり脚狙いの弾は来ていたらしい。剣柄を握る右手に体重を任せたまま前方を見れば、そこにはやはりもう一方の弾が飛んでくる。だけど―――問題ない。なぜなら。
「はっ!」
手はもう一本ある。
地面に突き立てた刀の上で、僕は先ほど拾っておいた
レイドボスさんの顔は僕自身が立てた砂埃で見えなくなっていて、向こう側で彼が何をしようとしているかは推測するしかない。
でも、多分、連射が来る。
急いで右横に着地、紫の刀を引き抜―――かない。陽動だ。ずどん、ずどん、ずどん。銃声が立て続けに三発、ついさっきまで僕がいた空中を掠める。そして、背後から断末魔が二つ。九十九人だ、もう後がない。僕は緑の刀を投げ上げ、突進する。右三発左四発の状態から右を全部使うとは思えない、だから最低でもあと一回は両手射撃ができる。この局面で新たなリボルバーを取り出すことはしないはず、時間がないのだ。晴れた砂埃のその先でレイドボスさんが銃口を向けている。どうする。間に合わない。どうしようもない。だったら。
「っ!!」
ずどん、ずどん。意図的に
先ほど投げ上げた緑の刀が落ちてくる、走りながらそれを取って……紫と合わせ、一方を順手、一方を逆手で持つ。もはや剣道なんてレベルじゃない、現実の実戦でもあり得ないようなやり方だ。でも関係ない、ここはゲームだから。左腕から赤片を垂れ流しながら走る、レイドボスさんは……見た感じ、リボルバーがエフェクトに包まれている。どうやら予備と交換しているらしい。あと二発は残っているはずだけど……揃えて交換するのを優先したのかな?何にせよ。
「チャンスだ!」
加速、加速、加速。前傾姿勢を取り、防御態勢を崩す。走るのに特化した体勢で標的を見据える。並び立つ壁たちの
レイドボスさんが、
ブラフ?待ってよ、考える時間が惜しい。引き金を引く前に。そうだ。最初に投げたけど避けられた刀が転がっているのを拾い上げる。投擲。刃が、刃が向かう。
「いいね」
レイドボスさんの呟きは、リボルバーの
「天誅ぅーーーっ!」
僕の叫びと、右手の双刀の攻撃を、彼は。
「……残念?」
クリティカルエフェクトと共に斬り結んだ。
僕は負けた。
◆
「クソーーっ!」
僕は吠え、吠えたのが原因で目立って襲い掛かってきたプレイヤーを適当に返り誅ちにした。デスポーン地点に急ぐ。立ち並ぶ長屋の片隅、幕末で最も長い道。先ほどまでの全力疾走と張り合えるくらいのスピードでそこに駆け込んだ僕は、
「……あれ?」
百人斬り大会を目にしていた。
「あ京極!京極テメェ!覚えてろ!」
ダイナミックな辞世の句を吐いて、刀を突き刺されたプレイヤーがポリゴンと散っていく。
その背中から錆光を引き抜いて……レイドボスさんが、こちらを見る。
「ひっ」
たじろぐ。
「うまいね」
呟くレイドボスさんの瞳には、殺意とも殺意でないとも呼べないような、意味の分からない光が宿っている。僕はなんとなく理解した。多分彼は、百人撃ちを完成させない状態で僕を「斬ってしまった」から、そのまま百人斬りモードに移行したんだ。芋砂は終わりだ。
「残念だった」
レイドボスさんが残念そうな……でも、なんだか楽しそうな、微妙な表情で呟く。
「京極!ここまでで九十九人と五人目だよ!」
知らないプレイヤーが声をかけてくる。
あと、九十……
「天誅」
四人か……。
振り降ろされた刀が、生命をひとつ抉り取った。
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魔犬のごとく嗅ぎ付けて
仮想空間。
『VRチュートリアルアスレチック』などの例外を除けば、ユートピア社製のVRシステムにおけるプリインストール・ソフトウェアの使用者は、基本的に
「……へぇ~~?」
『VRブラウザ』によってレンダリングされる白亜の部屋の中。京極の……どこか得意げで、どこか悪辣な呟きが、既定の音響設定に基づき空間を駆ける。
彼女は微笑むと、何枚かの半透明のウィンドウを前に少し首を傾げた。そして現実どおりの短髪を、ほとんど現実と言っていいほどに正確な物理演算のもと揺らした。でも、ここは現実ではない。かといって、京極の髪が京
「なるほどね」
その傾いた視界の中心には、
画像の内容を簡単に説明するなら、
「こういうことするタイプだったんだ」
一枚目。
京極の
関西住まいの京極でも、これがどこかはすぐにわかる―――
そもそもこのアカウントは半分捨て垢のようなもので、大抵の会話はダイレクト・メッセージで済ませている。そんなところに急に現実の写真を投稿した時点で、既にいつもと何かが違うのだ。
二枚目。
京極の
そう、同じである。
アングルと、映っている群衆の服の色だけが少し違う、本当にそれだけ。空を流れる白雲の形状も、太陽の傾き方も、投稿されたタイミングすらも。全てが、完璧に似通っている。同じ人物が撮ったのかと疑うくらいだ。
「まあ、デートだよね」
京極はそう睨んだ。
とやかく言うつもりはない。あの二人の関係は深掘りしないよう注意しているからだ。しかし、この画像を
「僕の待ち伏せ天誅の餌食にしてやるよ」
―――サンラクは、知人である以前に宿敵なのだから。
京極は思考入力でメニューを操作し、VRブラウザを閉じる。白亜の部屋が持っていた幾多のポリゴンがエフェクトとともに分解されて、白が黒へと塗り替えられていく。行きつく先はホームメニュー、起動するゲームは……決まっている、『辻斬・狂想曲:オンライン』だ。
幕末ではイベントの真っ最中。しかしサンラクは今
「墓穴を掘ったね、サンラク」
境界線を越えながら。京極から京
◆
仮想空間。
世の中にあるほとんどすべてのVRゲーム―――特にオンラインのものの使用者は、アバターとして現実とは違う容姿を使うことができる。簡単な話、もし現実の容姿しか使えないオンラインゲームがあったとして、それはもはや自動顔バレ装置でしかないからだ。そして『現実とは違う容姿』とは、時にあらかじめ用意された
「……さぁ~~て」
『辻斬・狂想曲:オンライン』によってレンダリングされる木製の長屋の中。サンラクの……どこか得意げで、どこか悪辣な呟きが、既定の音響設定に基づき空間を駆ける。
彼は微笑むと、現実とまるで違う形状に設定された髪を、現実とはどこか乖離した、少々大げさな物理演算のもと靡かせた。当然、ここは現実ではない。そう、明らかに
「天誅ッ」
「甘い」
「がッ」
返り討ち天誅読み反撃天誅読み返り討ち天誅を成功させ、加算されるスコアに気を良くしながらも、
「京極の奴、うまいこと
そうなのだった。
以前
彼は返り血を浴びながら、塀に囲まれた道の一角に目をやった。京極がログインするとするなら、だいたいそのあたりだと予想しているのだ。
「というか玲さんは……まあ、ちゃんとやってくれたよな」
彼にとっての
サンラク一人が画像を投稿しただけでは、「以前撮影した画像を今投稿することで外出中なのだと誤認させ、ログインしてきた隙をついて待ち伏せ天誅しようとしている」という真実が京極に気付かれてしまう可能性がある。しかし、
「さぁて、そろそろかな……?」
彼は、腰の刀に手をかける。
京極は、サンラクのことを
でも、サンラクは気にしない。今はゲームをやっているからだ。
「……来た!」
ログインエフェクトの光が、注視していた空間で弾けるのを。京極が境界線を越えて、
後はただ、駆け出すだけだった。
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世を辞めるということ
今日も「祭囃子」はログインした。
明らかにおかしな話だった。
辻斬・狂想曲:オンラインに蔓延る有力天誅
しかし実現した。
実現したので、祭囃子は明日ログインするかログインしないかトトカルチョ天誅の参加者たちはスコアラーたちを責め、強制切腹天誅に追い込んだ。対するスコアラーたちは切腹起点斬首天誅やすり替え切腹天誅などを活用してその状況からキルスコアを稼いだが、最終的には突進してきた「レイドボス」に全員キルされた。逆に「レイドボス」をみんなで集まって強襲する作戦が計画され、決行され、またしても全員キルされた。作戦が建てられたあたりになるともはやみんな、「祭囃子」のログインになど興味を示してはいなかった。せいぜい、一週間
しかし明日、「祭囃子」はログインする。
さらに言うなら明後日もだ。
◆
今日も京極はログインしなかった。
明らかにおかしな話だった。
辻斬・狂想曲:オンラインに蔓延る有力天誅
これまで京極は、「こんなクソゲー二度とやるもんか!」という叫びを長屋に木霊させようが、上手く漁夫の利天誅を成功させて高笑いしているところを天誅されてそのまま萎え落ちしようが、完全武装したランカーの首を無謀にも背後から落とそうとしたところで急に開いたウィンドウを見て「げっ」という言葉だけを残して
しかし覆った。
違ったので、京極は明日ログインするかしないかトトカルチョ天誅の参加者たちはスコアラーたちを責め、以下略だった。作戦が建てられたあたりになるともはやみんな、京極のログインになど興味を示してはいなかった。せいぜい、1週間とすこし
しかし明日、京極はログインしない。
さらに言うなら明後日もだ。
◆
「祭囃子」は今日もログインする。そしてプレイヤーたちのお祭り騒ぎにも大して参加せず、ただ何かを待っているかのように、長屋の一角で虚空を見つめている。
明日も。
明後日も。
◆
京極は今日もログインしない。プレイヤーたちのお祭り騒ぎは彼女抜きで進む。いや、彼女がプレイヤーのお祭り騒ぎ抜きで進んでいるのかもしれない。言葉遊びは無視するにしても、彼女がいるべき場所にはまだ虚空が漂っている。
明日も。
明後日も。
◆
それは何でもない日だった。
「祭囃子」と京極の双方が、とっくにトトカルチョの対象としては賞味期限切れを迎えたあとの、とある昼下がりだった。その日はちょっとした、幕末でイベントが開催されるほどではない程度のささやかな祝日で―――「祭囃子」はいつも通り、午後1時ぐらいにログインした。
この場合の「いつも通り」という言葉は、「ログインした」ことそのものにかかっていて、「午後1時ぐらい」を対象としているわけではない。「祭囃子」はここのところ毎日ログインしているが、その時間帯についてはばらつきがあるし、その継続時間もまちまちだ。適当に空いた時間を使っているだけだと言われる一方、何か規則性を感じるという声もある。適当に空いた時間が規則性を持っている、というのが現在の定説だ。
さて―――午後1時ぐらいにログインした「祭囃子」は、いつものようにログボ天誅・ログボ天誅返し返し・ログボ天誅読み天誅読み天誅などを交えつつ
この
連続ログイン記録をつけはじめてからの「祭囃子」は、特定の
「祭囃子」は、その日の
「来たな」
一言だった。
「祭囃子」は抜刀した。いつかのイベント報酬で手に入れた、
実は一人、長屋の影から「祭囃子」を観察し、天誅できる機会がないか探っていたプレイヤーがいたのだが―――彼は光に目がくらんで、その隙をついて背後から変則漁夫の利天誅されてしまった。
「祭囃子」の剣の光は確かに強いが、それだけで他者の視界を焼けるほどではなかった。他にも光源が必要だった。この場合のそれはログインエフェクトだった。今この世界に降り立とうとしている一体のアバターの肌を撫ぜた、紅に染まった閃光だった。
「―――辞世の句を詠め」
一閃。
ログイン時の無敵時間が終わるその瞬間を見抜いて、「祭囃子」は一閃を加えた。その天誅はまともに名前を付ければかなりの長ったらしいものになること請け合いだった。しかし―――それを、あえてシンプルに言うならば。
放たれたのは、「ログイン天誅」だった。
「っ!」
空間に現れた京極の胴体が、ちょうど腰のあたりで真っ二つに分かれた。血飛沫を表す紅のパーティクルが噴出し、HPが始まりと同時に終わりへと突き進む。しかしそういう現実を前に、少女は顔面から苦悶の表情を既に仕舞って、代わりに獰猛な笑みを現出させていた。
「そっ、っちがね!」
京極は「祭囃子」の首を落とした。
用意していたような一閃で、実際、用意していた。その天誅はまともに名前を付ければ、「祭囃子」が放ったものを超える長さになるはずだった。しかし―――それを、あえてシンプルに言うならば。
放たれたのは、「ログイン天誅返し」だった。
「―――」
このゲームでは、首を落とされた時点でアバターを操作することができなくなる。例えば、口は動かせない。「そっちがね」という言葉をかけられこそしたが、口を動かせない「祭囃子」は既に辞世の句を詠む能力を失っており、そのまま死ぬ。
操作できない部位には例外がある―――視界だ。朱色に染められた視界は、『復活する』とか『タイトルに戻る』とか書かれたボタンの背景として、少しの間だけ存続する。視界がある以上、視線を動かせる。
だから落下していく「祭囃子」の首は、眼球を京極の方に向けた。意思を感じさせる目だった。何かのメッセージを伝えたがっていた。それを見た京極は、出血により減少していくHPを無視し、
「ただいま」
それが辞世の句になった。
二つの記録の終焉を告げる
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ステレオ・ディレイ
長刀の先端が荒れ土に突き刺さると同時に、がりっと音がして、いくつかの小破片が飛び散った。
小破片が飛び散ったとは言っても、辻斬・狂想曲:オンラインのグラフィック技術は断じて最先端の代物ではない。飛散は物理演算ではなく
そういうわけで飛び散った破片たちは、
偽物の影。
その輪郭は、人型をしている。
影の持ち主の体重はいま、すべて大地に突き刺した
紅と金を基調とした刺激的な模様を見せる「
落ち始めると同時に、
「っはぁ!?」
京極は次の一手に出た。
驚愕と困惑と少しの
祭囃子だ。
少なくとも、外見上は。
「今日は――」
京極が口を開きながら一瞥するその両手には、全く同じデザインの刀が二振り握られている。このゲームの平均より短く、大きな変形も見られない刀身。その表面にはよく見れば格子模様が走っていて、何より――茶色い。間違いなくどちらも、先日のバレンタインイベントで全プレイヤーに配布された
曇天が二人を観察している。
「――誰かとデートに出かけるって話かと思ってたけど、違ったかな」
そういいつつも本当のところ、彼女は祭囃子の頭上に「サンラク」のネームタグが表示されていないことに気付いている。その普段の姿からは想像できない無口さにもだ。おそらく――このサンラクは
ただ、あの時とは変わっている点もある。
静止した両者。今のところ京極の「気配」システムは反応していないが、漁夫の利天誅には常に警戒しておく必要がある。仮想の唾を飲み込みながら、京極は祭囃子の出方を注視する。増殖したレイドボスさんのアバターは、あくまでそこにいるだけだった。本物と見分けがつかなかったから周囲のプレイヤーは混乱したが、
しかし――。
京極が佇んでいる空間は、ついさっきまで、一筋の斬撃に埋められていたのだ。
「……っ!」
そしてその軌道をなぞるかのように、右の「
だからなんだというのか?
4週間前に開催されたバレンタインデーイベントの内容は、「プレイヤー一人につき
「いいさ」
その憤怒を、燃料にでもするかのように。
刹那の土下座ドライブ。変則的挙動は祭囃子の亡霊を動かしている何かしらの思考ルーチンの虚を突いたらしく、交差された刃はむなしく空を切る。折りたたんでいた脚部を展開しながら一閃、祭囃子の脇腹がポリゴンを吐き出す。
京極はゆらりと立ち上がる。鋭利な刃の切っ先を盗人の複製に向けて、同時にそこに言語をも載せた。
「倍にして返してもらうからね」
少なくとも頭上に広がる白ずんだ
ほぼ、アクションが書きたかっただけ
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ベルセルク・オンライン・パッション
異議を握って立ち上がる
ログイン時に発生するエフェクトを後ろに、俺は脚を6本ほど
さて、今日も平和極まりない広場で俺がこの状態を維持するために使用している幾つものバグ技のうち一つのデメリットによって3秒ごとに発生する5倍に加速処理された怯みモーションをどうにか移動に利用できないか試していると、視界の中心に一人のプレイヤーが映って、
「ようサンラク、久し振りにログインしてるんだな」
と言った、彼は前述のような「顔見知り」の一人だが、その
「よう久し振りだな、ところでそれ視点とかどうなってんの?眼球がトリプルアクセルをキメたあとにすっ転んでるんだけど」
「ああ、これテクスチャはめっちゃぐわんぐわんなってるけど実態としては頭部に関するテクスチャ以外の
プレイヤーはポリゴンを顔面に張り付けたり剥がしたり1km以上先の空間に唐突に飛ばしたりしながら答えた。俺は怯みモーションを発生させつつ考察した。
「
「実はこれ発生条件わかってねーんだよなぁ……「ドッペルゲンガー」でどうにか「ヨーヨー」とキメラできないか試してたらなんかこうなったんだけど」
プレイヤーは手癖で頭を掻こうとするも頭の当たり判定を胴体に埋め込んだことを忘れていたせいでその手を空振らせて苦笑を浮かべ、その浮かべた苦笑の何かが悪かったせいでテクスチャの荒ぶりをより一層強めつつ答えた。マジかぁ……ドッペルゲンガーの開発者としてもぜひとも検証しておきたいところだなぁ……
俺は怯みモーションを発生させつつ考えた。そろそろ本題に入ろう。
「で、用件は?」
「え」
「普段のお前は知ってるプレイヤーに会っても「お、あいつか」みたいな顔をするだけでわざわざ挨拶をしに来るタイプじゃない。「ようサンラク」なんて話しかけてくるのは、何かしら用件があるからだろう……違うか?」
俺は怯みモーションをジャンプモーションでキャンセルできる可能性を検証するためジャンプしてみるもそのジャンプがまた別のバグのトリガーを引いてしまったらしく右親指のテクスチャのみを10倍ほどに肥大化させつつ言った。
「うーんその通りだ、やっぱりサンラクは流石だなぁ……クソゲーハンターを自負するだけのことはある」
「別にクソゲーとコミュニケーションは対して関係ねーだろ……よっ、と」
「ぐぇあ」
「あっすまん!!!!で、用件は?」
前に対戦したときモドルカッツォが使っていた「ショットガン」をこの親指の状態で使ったらどうなるのか検証すべく俺が放った
「大丈夫かーーー!!????、あーうん、それで用件なんだけど―――「R18触手アタック」ってあるじゃん?」
「モドルカッツォが作った奴か、あるなぁ」
「あれの名前、マズい気がするんだよ」
「へ?」
俺は逆立ちした状態なら怯みモーションを無効化できることに気付いて手を床につけつつ困惑した。なんで?別にR18でもいいじゃん。
「だってこれ全年齢ゲーだぜ?全年齢ゲーでR18触手アタックって言うのは、こう……なんかマズくないか?」
「いやでもさぁ、あれ実態としてせいぜいでPG12くらいだろPG12、たいしてヤバくはない気がするんだけど」
「でも名は体を表すっていうじゃん?作者がR18だと思ったらそれはR18な訳よ、いや例えばさぁ、「便秘」が何かの間違いで全国的漫画雑誌とかに掲載されたとするじゃん?そこでR18触手アタック、とか言ったらヤバいじゃんよ、だって全年齢だし」
「まず全国的漫画雑誌に便秘が掲載されるっていう前提がおかしいよ、何?編集部に何があったの?このデイリーログイン100人程度の新規もほとんどいないクソゲーをどうして全国的漫画雑誌に掲載するの?」
「いやとにかくさぁ、R18ってのはヤバいんだよ、R17やR16やR15には出せないヤバさがある、何なら多分このヤバさはR19とかにも出せないよ……本来上位互換なはずなのにさぁ、いやもうほんと実質『形容詞』みたいな?そういうところあるよ」
プレイヤーは妙に必死な様子だ。俺の心は若干揺れ動いた。逆立ちの軸も若干揺れ動いたため倒れそうになった。俺は体勢を立て直しつつ言った。
「うーーーーんまぁ確かに全国的漫画雑誌に仮にR18触手アタックが載ってしまったとしたらマズいかもしれない、載ってしまったとしたらな?載る可能性が10のマイナス1000乗%とかでも無いとは言い切れないもんな、それに備えて何かやっておくのは悪くないかもしれない」
俺は逆立ち状態なら怯みモーションは全く起こらないことを確認して自分が完全なる勝者であることを確信したがどうも実際は怯みモーションは発生しているがその発動が逆立ち中のためいったん保留されているに過ぎないらしいことに気付き、この自分を支えている九本のか細い指(と一本のとてつもなく太い指)が限界に達したとき一気に発動する蓄積された怯みモーションによって自分の身に何が起こるのか想像して身震いしつつ言った。確かに「R18」だと使用者が認識していればそれはR18だという考え方はあるかもしれない。
「じゃあなんだ、モドルカッツォに名前を変えるよう頼むか?」
「いやそれも違うんだよね、なんつーかこう、この便秘において「製作者がつけた名前は絶対」ってのは明確なルールなわけよ、鉄の掟なのね?それを捻じ曲げるのはやっぱよくないよ、よくない」
「なるほどなぁ……うーーーんとなるとどうするよ、「R18触手アタック」って文字列を人の目に触れないようにするんだろ?無理じゃね?」
「考えがある」
ほう。俺はついに逆立ちの維持が限界に達して尻餅をついたと同時にそれまでに蓄積された莫大な量の怯みモーションが一斉に襲い掛かってきたことでギュルンギュルンとX軸回転しつつ吹っ飛びながら聞く姿勢に移った。
「新技を作るんだ」
「うがががががががが新技あああああ!!!!?!??」
「そう――――上位互換の技が存在すれば、R18触手アタックは使われなくなり、代わりにそっちが使われるようになるはずだ。これで名前を変えなくてもR18触手アタックをこのゲームから消せる」
「なるほどなあああああああぐああああああああ!!!!!!!!!」
俺は最高潮に達した運動エネルギーでそのまま地面と衝突して死んだ。
◆
リスポーンして2、3のバグを使用しつつ高速移動でさっきいた場所に戻るも、あのポリゴンを荒ぶらせていた彼はいない。どこへ行ったのかと思ったら俺の後ろにいた。おいおい怖いな…………、というか―――――
「なんでお前顔のポリゴンが正常なの?」
俺は聞いた。そう、彼の肉体は通常時の物に戻っていたのだ。
「ああ、どうせサンラクが死ぬんだったら俺も死んで肉体変化系のバグをリセットしておいた方がいいかと思ってな」
なるほど。
「あーそれでか……」
「で、どうするよ?リセットもしたところだし早速新技の開発と行くかい?」
「いいね、そうしようじゃないか」
そういうわけで、「R18触手アタックを衆目に晒さない会」が結成され、同時に活動を開始した。
◇
「いいか、「パイルバンカー」直後の腕は伸びる……この状態で腕を"引いて"しまうと長さが戻ってしまうから本来パイルバンカーを重ね掛けすることはできない。でもな」
「でも?」
「この状態で
「あああああ!!!盲点だったなぁこれ!!!!」
「で、通常は準備モーションは2段分しかできないが…………「パイルバンカー」の影響で腕が2倍に伸びてるから、パンチも一気に4段分構えられる!!!!この状態でパンチを放てば――――」
「おおー、更に二倍になった」
「この「パイルバンカー→胴体を回転→パイルバンカー」の動きを繰り返せば2倍、4倍、8倍、16倍とどんどん腕が伸ばせるぞ!!!!!」
「いやあのこれ」
「はい」
「セットアップが長すぎないか?」
「そりゃあそうだなぁ……完全な上位互換とは呼べないか」
「敵の前でぐるぐるやるのはなぁ……」
「長期戦なら触手アタックも超えるだけのポテンシャルあるはずなんだけどな、なんせ倍々ゲームだし」
「決闘だときついわなー」
◇
「まずジャンプする」
「うん」
「ジャンプした状態で
「発生してるなぁ、空中怯みモーションって頭部だけが怯み状態になるんだよな」
「お、おう……よしここ、ここで空中ガードする!!!」
「えっなんか首が伸び始めた、どうなってんだこれキモッ」
「空中では頭部だけが怯むから本来阻害されるガードも頭部以外の部位でのみ可能だ、んでガードするとある程度硬直が発生するから怯みモーションによって一部位だけ移動してる頭部と
「マジかよキメェ~~~~~~~~キモッスクショ撮っていい?」
「いいよ」
「ありがとう……実践では使えそうにもないけど相手を驚かす手段としては結構なもんだな」
「というか逆にR18の方で謎に首を伸ばしてるの何なの?あれなんか意味あるのか」
「なんかこう、視点を動かす的な?」
「はーん」
◇
「逆立ちする」
「だんだんバグがイコールで奇行みたいになってきたな」
「んで逆立ちした状態で片方の手で「パイルバンカー」、これで腕を"引く"までは伸びてる状態なはずだ」
「そうだな」
「ここで間違えて腕を"引く"事にならないように注意しつつ逆立ちを戻すと……」
「あれ?!!?!??腕の代わりに脚が伸びてる!?!?!?!?なんで!?!?!?!?」
「多分だが、逆立ち中の腕には「接地判定」みたいなのがあって「足」としての役割をある程度本来の脚から譲渡されている、だから腕を伸ばした状態で「接地判定」を脚に戻すと脚も伸びるって寸法だ」
「ああ~~なるほどな……でもそれ腕はどうやって伸ばすんだ?」
「ああ、それはまた逆立ちすればいいだけだ」
「いや逆立ちしながら戦闘するの無理では?」
「それはそう」
「ダメじゃん」
「それはそう」
◇
「まず「ドッペルゲンガー」します」
「おおー一発成功とは流石だな」
「まぁね……さて、この技を繰り出しているいわば「本体」には操作判定が存在しない、俺が入っている分身体に掠め取られてるからだ」
「ドッペルゲンガーは応用性高くて強いよなぁ」
「ところで、腕を斬り落とした時の判定ってどうなってると思う?」
「腕を……?そりゃあ別のオブジェクトとして切り離して、あとは……当たり判定や操作判定を無くす、みたいな?感じか」
「そうだ――――でもな、
「あっ…………つまりひょっとして、今本体の腕を斬り落としても
「そうさ――――まず本体の腕をこんな風に斬り落として、あとはゲージ技のモーションが終わるのを待てば
「ああっ斬り落とされた腕が動いてる!!!!!キメェ!!!!!キモ!!!!!あーーーーそっかぁ分身体に操作判定を移動しておけば斬り落とした時に失わずに済むのか……」
「どうよ、これはかなり上位互換感無いか?」
「うーん確かにこれはヤバいな、『切断』できる部位ならどこでも切り離して遠隔操作できるわけだろ?浮遊系のバグ技と組み合わせれば世界が変わるんじゃねえの?」
「どうよ、これを普及させれば触手アタックなんて見向きもされないのでは?」
「うーん……こいつでいくか?」
◇
そんな風に俺達が駄弁っていた時、前方から聞こえる声があった。
「あっサンラクさん!!!!!!このゲームではお久しぶりですね!!!!!!!!何をなさってるんですか!!!???」
視線を上げれば、そこにはバーチャル筋肉に包まれたヒゲオヤジが鎮座していた。秋津茜――もとい、ドラゴンフライ――である。俺は彼、いや彼女か?まぁ彼でいいや、彼に軽く挨拶して、事のあらましを説明してやった。
「――――でやっぱその名前はコンプライアンス的にマズくない?みたいな話になった結果、新技を考えてるところなわけよ」
「あの、それって―――」
ん?
「技名を叫ばなければ、そもそも全国的な漫画雑誌に載ることもないんじゃないですか?」
「確かに」俺とさっきまで新技開発に勤しんでいたプレイヤーが言った。
「確かに」俺は彼と顔を見合わせて言った。
確かに。
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【WR】ベルセルク・オンライン・パッションストーリーモードAny%RTA(No ACE)1:02:12.28 Part1/6
※本来便秘の「ステージ」は6つしかありませんが、便宜上一つのステージを細かく区切ってそれひとつひとつを「ステージ」とします
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【WR】ベルセルク・オンライン・パッションストーリーモードAny%RTA(No ACE)1:02:12.28 Part1/6_プレーンテキスト版
割とやっつけで作ったので何かミスがあるかもしれません
あんまりレイアウトとしてしっくりこない気がするので提案とかあったらお願いします
【読み方】
文章に付く括弧の形状によってどの枠に表示された文章か区別してあります
【】……セリフ枠
〔〕……右枠
≪≫……右上枠
〔ベルセルク・オンライン・パッション(パケ版)
中古500円
クソバグアクションゲー
バグの組み合わせによる芸術的なコンボは必見〕
【格ゲーの皮を被ったリズムゲーのRTA、
はぁじまぁるよー!】
【さっそくスタートです!】
≪OPムービー
結構クオリティが高い≫
【OPムービーはスキップできますが、ムービー中のモーションが原因で発生するバグが重要になってくるので】
【そのモーションの発動まではスキップしません】
【ムービーの観賞中に、このゲームとこのRTAについて解説しておきましょう】
【皆さんご存じの通りこのゲーム、通称「便秘」はVRゲームの既存常識を覆す超絶人外魔境なわけですが、】
【ストーリーモードは敵AIも普通にバグを使ってくるため結構苦行で、多彩なグリッチを駆使する必要があります】
【グリッチの奥が深いためRTAは盛んで、speedrun.comに登録されているレギュレーションは多岐に渡ります】
【今回私が走っているのはAny%の中でもACE(任意コード実行)を禁止する「No ACE」ですが】
【当然ACEが可能なレギュもあり、そっちでは余りにメモリ操作が極まりすぎて一周回って誰も人外化するバグを使ってません】
【私はこのゲームの面白い所はメモリ系じゃなくてアクション系のバグだと思ってるのでNo ACEを選びました、ただACE走者の知り合いが】
【「バグでエンディング呼び出す時になぜかVRシステムへの五感出力が狂ってエナドリの味を感じる」って言ってたのは面白かったです】
【他のレギュレーションとしては、例えばヤバいバグが
(比較的に)少ないDL版限定の「DLO」とか、】
【割と普通につらくて走者が一人しかいない「Glitchless」などがあります】
【さて、駄弁ってるうちにスキップポイントが近づいてきましたね
スキップは当然早い方がタイムも縮むので集中して思考入力を準備】
〔「自キャラが宙返りするシーン」でスキップ
リセットライン5フレーム
スキップが速すぎてもダメ(17敗)〕
【……】
【…………】
【………………】
【ここです!】
【えー、7フレームのロスです
本来ならリセット案件ですが…】
〔「自キャラが宙返りするシーン」でスキップ
リセットライン5フレームなはずだけどなぜか録画では続行してる
スキップが速すぎてもダメ(17敗)〕
≪1-1
通常プレイだと
もう難所≫
【なんでお前走るの続行してんの?(困惑)
当時の自分が分からない……】
【ま、まあいいや……仕方ない
えーっとバグの解説をしましょう】
【御覧の通り、主人公のアバターがなぜか常時逆立ち状態で動いてますね】
【これは「るてるて坊主」というバグで、宙返り中の判定を常時維持することができます(詳細は右枠に)】
〔バグ#1
「るてるて坊主」
難易度★☆
・ムービーはプリレンダではなく都度アバターを組み合わせて生成している
・宙返りモーションもアバターに予め設定されている物を流用している
・宙返り中は若干操作体系が変化するため「宙返りフラグ」が設定される〕
〔・本来宙返り終了時にこれはオフになるのだが、途中でムービーを強制終了するとモーションが中断されてオフにならないことを利用したバグ技
・このバグのメリットとしては、脚を使わずに平行移動できる・回避性能が非常に高い・回避モーションを行うと変な挙動してめっちゃ飛ぶ・両脚で技が使える、など〕
【ここの敵は本来腕ではなく足を伸ばさないと届かない位置から二人同時に攻撃してきて非常にウザい上】
【足が少なくとも1本接地している必要があるため二人同時に倒すことが難しく、従来は面倒ポイントでしたが、】
【「るてるて坊主」を発動して両脚が自由になった状態なら二人まとめて倒すことが可能です。オリチャー万歳!】
【さあ、「ウインチ」を使って足を伸ばして敵を蹴散らしましょう!爽快ィ!!!!】
〔バグ#2
「ウインチ」
難易度★
・「ロープウェイ」と並ぶ二大脚伸バグ技の一
・「ロープウェイ」が走行判定を利用するのに対しこちらはキックの予備動作を利用する、「パイルバンカー」に近い
・向こうと比べて出が遅い代わりに攻撃判定が乗るのが強み〕
【最高!!さっきの7フレームはこれで取り返したと言っても過言ではありませんね、過言ですが】
〔ちなみにここの別解として
「四肢増殖系バグ技で足を3本にして1本で立って残り2本で攻撃」がある
単純な速度は上だが、今回のチャートではこの後も宙返り状態を生かしていくので総合的にはこっちの方が遅い〕
≪1-2
介護ミッション
普通にやるなら楽
RTA的には……≫
【さて、お次のステージは介護ミッションです
便秘のAIは何故かバグ技を使いこなしてるわけですが、】
【それは介護対象のキャラも例外ではないため、どっちかというとNPCに介護「される」ミッションです】
【はい、御覧の通りステージ開始と同時に介護相手さんが常軌を逸した感じの動きで無双を始めました】
〔ステージ1-2
何もしてなくてもNPCが介護してくれる癒しステージと有名
RTA的にはこの間に装備品を整えたりフラグを弄ったりしておくのが吉
ちなみにこの介護相手は前作「ベルセルク・オンライン」に登場している〕
【さて、今のうちに色々と準備を進めておきましょう
右枠にToDoを示します】
1-2ToDo
①「パイルバンカー」で腕を伸ばして適当な障害物を掴む(2敗)
②回避モーションを行う(1敗)
③メニューオープン連打でバッファ(21敗)
④地獄(5敗)
〕【ということでまず「パイルバンカー」、いい位置にありなおかつ固定オブジェクトの看板を掴みます】
【さらに回避モーション、「るてるて坊主」の影響で宙返り判定中なのでバグって上空にかっ飛ばされ……】
【さあ一番の難関、ポーズ画面の連打!!!!!!!!思考入力を研ぎ澄まして最大効率を狙いましょう】
【ちなみに私の場合、RBリボルブランタンの日本版と米国版一本ずつでジョイントした上で瞑想を行うことで集中力を限界まで引き上げてます】
【よし、成功、成功ですよ!!!!マジでここリセ率がヤバいのでプレイ時はテンションがブチ上がりました】
【さて、後は見えない天井にぶつかってガガガガガしつつさっき「パイルバンカー」した右腕のポリゴンがエグいことになってるのを確認し】
【ついでに下を見て処理落ちが原因で敵NPCのAIがバグって全員自滅したのを確認してステージクリア!!!】
【…………】
【あ、今何が起こったかの説明とか必要ですかね?】
【えー、右枠に説明を表示しておきますので読みたい人は一時停止で読んでね】
〔ステージ1-2に何が起こったか?
・「るてるて坊主」状態で回避モーションを行うとなんかめっちゃ飛ぶ
・何かしらの壁に一定以上の速度でぶつかると一部の判定が「ズレる」バグ(後述)と腕を物凄い勢いで胴体から離すと例え腕そのものが動いてなくてもパンチと認識されるバグ(後述)を今後のために使いたい〕
〔→腕を固定した状態でるてるて回避してめっちゃ飛ぶことでパンチバグをクリア、ついでにポーズバッファで処理落ちさせつつ上空に設置された見えない天井でズレバグ、更に処理落ちによって敵AIの使うバグのタイミングが「狂う」ことで自滅〕
【……さて1-3です、さっきパンチバグを起こした右腕はまだ看板を掴んだまま、残りの三肢で敵に対処します】
≪1-3
ヒデラオイルを求めるモヒカンとの戦い≫
【まぁそうは言っても右腕は置物という訳ではなく、寧ろバグを使って最強のダメージソースとして運用します】
【説明するより目で見せた方が早いでしょう、今編集で印を付けたモブモヒカンの動きに注意してください】
【えー、見ましたか?右腕に近づいた途端ダメージを受ける仕草をして死にましたね。あんな感じで運用します】
【………やっぱり目で見せるより説明した方がいい気がしてきたので、右枠にこのバグ技について詳細を書きますね】
〔バグ#3
「設置網」
難易度★★☆
・ある程度の速度で胴体と拳の距離を取ることで発動
・たとえ胴体だけが動いて、拳そのものが一ミリも動かず固定されていても、距離を取った分だけの威力を持つ「パンチを放った」として判定される〕
〔・つまり拳を固定した状態で全力で遠ざかれば、戻さない限り永遠にパンチ判定を維持した近づくだけでダメージを受ける腕が完成する
・非常に優秀なダメージソース、1面の間はずっとこれを維持する〕
【こんな感じです
「設置網」は拳のみならず腕にもパンチ判定が出る為、】
【こんな風に看板を中心にぐるぐる周ってれば勝手に敵に当たってダメージを与えられます】
【あとは作業です。ここは高速で移動した方が当然敵の殲滅も速いんですが、変な動きをし過ぎると宙返り状態が解除されてしまうのであまり速く移動できません】
【ここは多分このチャートの更新余地ですね、なんか宙返り状態でもできる高速周回移動の方法無いのかな】
【さて、そうこうしてるうちにステージ3が終わりました……次はいよいよボス戦、ここで1ダメでも受けたらリセ(11敗)なので、気を引き締めていきます】
〔ボス出現前に初期位置を「設置網」が通るようにしておきましょう
ノーダメ出来ないとイアイフィスト流に入門できないのでリセ〕
≪1-4
ボス戦
クソボス①≫
【さて1面ボスの三倍速分裂釘バット使い(バグ)との戦闘です!!!!!!!!いつ見てもひでぇ異名だな】
〔1面ボス
・釘バットの素早く動けないデメリットを三倍速バグでカバーしている
・分裂バグによって一度に広範囲を攻撃可能
・即死は無いがその異常な手数の多さから一度当たったらハメられて死ぬので実質即死
・クソボス〕
【さて、こいつは普通に戦うと結構苦労しますが、バグを駆使すれば大したことはありません】
【まず最近開発された名無しバグを使います、これは超必を撃った直後にガーキャンして再発動すると二重になって攻撃できるというバグです】
〔バグ#4
名無しバグ
難易度★★
・オールラウンダーで超必→ガーキャン→再発動で超必のダメージ判定を二倍にできる
・他のバグ技との組み合わせに富んだ良いバグ技、ちなみに開発者は新規勢〕
【さて、それとは別に「ドッペルゲンガー」というバグ技があります……超必を利用して分身する技です】
〔バグ#5
ドッペルゲンガー
難易度★★★★
・超必が発動する瞬間、1フレームだけ自由に動ける時間がある
・その時間にうまい事動くことで本体との分身が可能
・他のバグ技との親和性が低い〕
【私は考えました……「この二つを組み合わせたらいったいどうなるのか?」と。その答えがこちらです】
【超必を撃つ!宙返り状態の影響かなんかアバターが等速回転し始めましたが支障はないので続行!】
【それをガーキャン!再発動!―――そして、「ドッペルゲンガー」!!!!】
【はい、このように自キャラが3人に分裂しました
これこそが複合バグ「バイロケーション」です】
〔バグ#6
バイロケーション
難易度★★★★☆
・名無しバグと組み合わせることで「ドッペルゲンガー」を強化したもの
・3人に分身できる
・「ドッペルゲンガー」は他のバグとの親和性が低いが、発動そのものを弄ることは割と容易〕
【3人に分身して「設置網」も3倍!さらに超必二発分のダメも追加で発生!最高!!!】
【このボスの最も厄介な所は分裂バグですが、分裂する前に3倍「設置網」でハメちゃえば問題ないです】
【はい倒れましたね 完全に計算通り!!!!これで1面は終了となります】
〔今回は
このへんで〕
【区切りの良い所で今回はここまでです。
ご視聴ありがとうございました。】
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キミのココロは少し遅れて
何かが妙だ。
そういう感覚はある。
「『バイルパンカー』ッ!」
頭で抱いたその考えをいったん横に置いて、俺はバグ技を発動する。『バイルパンカー』は比較的最近発見されたバグ技で、『パイルバンカー』と逆の操作……つまり、『パンチ準備×2→パンチ』を逆にした、『パンチ→パンチ準備×2』で発動する。コツは最初のパンチをノーモーションで行うこと、少しでも拳を引いて力を溜めたりすると、それ自体が『パンチ準備』扱いになって上手く発動してくれない。条件の簡単さの割に最近まで見つかっていなかったのもそのせいだ。
「くっ……『R18触手ディフェンス』!」
「もうネタは割れてんだよ、『ヨーヨー』!」
ほとんどの場合回避用に使われる『ヨーヨー』で……逆に前進する!
モドルカッツォが編み出した新技『R18触手ディフェンス』は、その名の通り防御にアジャストされた『R18触手アタック』だ。『触手アタック』よりも腕・脚・首を伸ばせる長さがショボいが、代わりにそれらのパーツが二つに分裂する。分裂した腕は今みたいな防衛に最適だし、分裂した脚も姿勢制御に使える。だが……。
「なっ……」
「首は弱点にしかならないよなぁ!?」
展開された盾を『ヨーヨー』の効果で
カッツォのアバターは目隠しをしているが、口の動きだけ見ても意表を突かれて動揺してるのは丸わかりだ。遠慮なくそこを突かせてもらう!
「ゆ、『幽体……」
「『ショットガン』!」
このまま勝てると思うなよ!
カッツォに『幽体離脱』での回避を許さず、そのまま『ショットガン』で
しかしすり抜けた。
「は?」
「あぶね~、間一髪だったわ」
モドルカッツォはさも当然のようにそう言いながら、両手で特徴的なモーションを始める。ま……まずいぞ、特にバグ技でも何でもない……
「飛拳衝!」
「ぐは」
俺は空間に残留していた『ショットガン』による拳テクスチャたちをカッツォの放ったゲージ技で削られしかも『バイルパンカー』の判定も依然残っていたせいで明らかに不自然な感じにノックバックしながら
十本勝負最終スコア……0-9-1。
◆
「なんかおかしくねえ?」
「お、負け惜しみか?」
初手の返しがそれなの?
対戦終了後のメインロビー、野次馬たちから送られてくるスクショを眺めつつ反省会をしている。まあ実際、俺はこの十本勝負でモドルカッツォに一勝もできなかった。かろうじてついた引き分けにしても、俺たちとは別に対戦していた誰かが『グラウンドゼロ』を発動してノーゲームになったというだけだ……悔しい話だが、あのままやっていればカッツォが勝っていただろう。
だから……確かに俺の疑問は、ある一面では「負け惜しみ」なのかもしれない。
それにしても、だ。
「お前……何かバグ技を
カッツォは一拍置いてから、怪訝そうな表情を浮かべて
「え?」
と聞き返した。
……こいつは突発的な演技が得意なタイプじゃない。この虚を突かれたような表情は、基本的には真性のものと見るべきだろう。つまりさっきの……というかこの十連戦の中でたびたび起こった謎すり抜けは、カッツォの意図しないところで起きている事象ということになる。
「例えば最後の一戦だ、俺は『ヨーヨー』でお前の懐に潜り込んだ後、『ショットガン』で分裂した頭部に攻撃を入れようとした。お前は『幽体離脱』で逃げようとしたが、俺の拳が届く方が早かった。……はずなのに、なぜかダメージは入らなかった。なぜだ? 実は俺の知らないところで回避系のバグ技を使ってたのか?」
カッツォは僅かに静止した後、
「いやいやいや」
と手を振るジェスチャーをする。
「俺の『幽体離脱』は確かに間に合ったはずだよ? 確かに『ショットガン』が来たのはビビったけど、サンラクのことだしそろそろ対処法を思いつくころだろうなとは思ってたからさ、準備してたんだ」
何だと……?
「勘違いじゃね?」
カッツォは言う。
……そう、なのか……? 俺は自分の敗北が悔しくて、無意識にその原因を「未知のバグ技」へと転嫁し、自分を慰めていた。そういうことなのか……?
――いや。
「違う、このスクショを見ろ」
新技が披露されたこともあって、俺達の闘いを観戦する野次馬たちはかなり多かった。そのせいで『グラウンドゼロ』の感染が大規模化したとも言えるんだが……いったんは感謝しておこう。あれだけの観戦者がいなければ、こうして自体の説明に最適な写真を手に入れることもできなかったはずだ。
カッツォは俺の言葉に少し遅れて反応し、言われた通り展開された画像ウィンドウを覗き込む。……何だ? この動作にも何か違和感がある気がする。でも説明できない、何が起こっている?
「……本当だ」
ウィンドウに写っているのは、俺の『ショットガン』がカッツォのアバターをすり抜ける画像。カッツォの背後に『幽体離脱』特有のヒットボックスと重力エンジンが相互干渉することで起こるエフェクトが見られないことから、『幽体離脱』は発動できていないことが分かる。つまり、彼は
「どう説明する?」
カッツォは一瞬黙ってから、俺の質問にこう答える。
「たぶん――」
「いやちょっと待て」
「『幽体離脱』の――」
「お前さっきからおかしいぞカッツォ」
「え? どうしたのサンラク」
「
「おかしいって何がだ?」
「一拍置いてから」、「僅かに静止した後」、「少し遅れて反応し」、そして「一瞬黙ってから」。全部おかしい。モドルカッツォはさっきから……俺が言葉をかけてから反応するまでに、明らかな
「pingを言えカッツォ」
俺の言葉を前に、カッツォは沈黙した。それは
「お前、今自宅にいないな? フリーWi-Fiだかモバイル回線だか知らないが、とにかく相当
「…………」
カッツォは反論できない。当たり前だ――そもそも俺が発した言葉は、まだカッツォに届いてすらいない。さっきからこいつが発動している、凄まじい
「こっちで当たった攻撃が、お前の方では当たってない……考えてみりゃ、ラグった時の典型的な症状じゃないか。クソゲーではよくある話だろ? そしてこのゲームはクソゲーだ」
「……サンラク」
ここでようやく言葉が届き始めたらしく、カッツォが口を開き始める。だが遅い、俺とこいつの間には、クソ回線という名の巨大な壁がある。それは対戦においてはアドバンテージになりえたが、俺が会話の主導権を握る分には、カッツォは一手遅れての行動しかできない。ただの
「別に文句を付けたいわけじゃない……このゲームは
この十本勝負はあらかじめカッツォと約束したもので、日付まで含めてスケジューリングされている。こいつのリアルはプロゲーマーだ、マネージャーがちゃんとしていれば、オフと言った日はオフになる。突発的に仕事が入ったりはしない。GGCの一件についても……まあ、オンが別のオンに化けただけだしな。
でも……カッツォに何かがあった。多分プライベートな出来事だろう、オフと言った日が仕事とは別の何かによってオンに変えられてしまった。外出を強いられたカッツォは、仕方なくクソ回線の中で俺との対戦を始めることになった。それがうまく働いた結果が……0-9-1というスコアなわけだ。
「はは」
一拍遅れて苦笑いするカッツォの手元に素早く視線を飛ばす。人差し指が立っている――システムメニューからログアウトする気だな。させるか! 俺はカッツォの手首を掴もうと右手を伸ばし、同時にもっとも重要な一言を告げる!
「
掴んだ、これでこいつに洗いざらい――
「じゃあ」
ッしまった!
俺が手首を掴んでメニュー操作を妨害したにも関わらず、モドルカッツォはエフェクトを纏って
……いやまあ、悔しがる理由なんて『弱みを握れなかった』くらいしかないんだが。
「デート中にクソゲーするなよ……」
そう呟いて見上げた空は、誰かが発動したバグによって少し歪んでいた。
やっぱりパラシェルターってクソだわ
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デスゲーム・リベリオン・オンライン
自由を求め
腹が減った。
自由が欲しい。
逃げ出したい。
男の欲望は、それだけだった。
痩せた貧弱な体は、
生きる世界は、現実からゲームへと移り。
そして何より―――――それまであった自由が、今はない。
カース・オブ・エタニティという狂ったゲームを起動することで、男は第一の自由を失った。
クリアまで現実世界に出られないうえ、出られるのは10人まで。そんな悪魔のゲームを生き残るためには、誰よりも速い攻略だけが失った自由を取り返すための道…………
そう思ってしまったのが、第二の自由を失う原因だったのだろう。
思えば、どこで間違ったのだろうか?
このゲームを起動したこと?
――――――いいや、それで失ったのは第一の自由だけだ。
デスゲームの事実に狼狽える奴らを後目に、攻略に立ち上がったこと?
――――――いいや、そうしなけりゃどうせ10人にも入れず、生き残れもしない。
じゃあ、仲間を探しに寄った酒場で、目に見えて人を集めていた
――――――
男は限界だった。
もうこの地獄から逃げることはできないという事実に、精神を擦り減らし。
自分のことを同じ人間と思っていないかのような振舞いをする
一人、また一人と戦いの中で果てていく仲間たちに、次は自分の番だろうかと精神を擦り減らし。
何より、ゲームの中であるにもかかわらず、とんでもなくリアルに再現された
――――ああ、神よ。
男は祈った。
――――どうか、どうか。
VRの世界に神がいるかなど、男にはもはやどうでもよかった。
――――逃げ出させてください。
そんなことを考えられるような思考能力………最後の、第三の自由を、男は既に失っていたのだ。
…さて、結果から言うならば、VRの世界に神はいなかった。
しかしそれはそれとして、彼の願いは叶えられた。
ある日、仮想の世界の大きな広場で、
彼らに対し
しかし逆に言うならば、その言葉は恐怖以外に何も伴わず……当然のことながら、彼らは逃げた。
もう、第一の自由なんていらない。
第二の、このゲームで
そんな思いで必死に駆ける男と仲間達の思いは同じであり、自分で気づかないうちに第三の自由を失っている点でも彼らは共通していた。だから、走った。第二の自由を求めて。
彼らは適当に見つけた集団に声をかける。なかなかの大所帯であるそいつらは、自分たちと比べればずいぶん幸せそうで、楽しそうで……
1人を除き、美少女だけで構成されていた。
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【運営】デスゲーム・リベリオン・オンライン Part.15【爆発しろ】
490:名無しのゲーマー
ッァーーーーーックソ運営ィィ!!!!!!!!!!
491:名無しのゲーマー
マジで吉良マジでマジでお前
492:名無しのゲーマー
NPC4桁くらい殺したら枕元亡霊が多過ぎて処理落ち始まってワロタ
493:名無しのゲーマー
吉村の方がクソだぞいやほんと吉村ァ・・・・・・・
494:名無しのゲーマー
吉祥寺が真なる邪悪なんだよなぁ……
495:名無しのゲーマー
>>492
お前貴重な資源であるNPCをッ・・・!!!!!
496:名無しのゲーマー
>>491>>493>>494
お分かりでしょうか、これが「分散」です
497:名無しのゲーマー
迫力・畏怖・恐怖に振ってNPCに「逃げたい」という思考を持たせた状態でバトルロワイヤルさせて「勝ち抜いた奴は自由にしてやる」するの楽しすぎるだろ
対戦とか抜きにしてこれだけでゲームが成立するレベル
498:名無しのゲーマー
愚痴スレのPart数が本スレ超えてるじゃん
499:名無しのゲーマー
いやー悪意の塊のようなゲームだわマジで
500:名無しのゲーマー
>>497がめっちゃ小物っぽくて笑ってる
501:名無しのゲーマー
>>496
吐き気を催す邪悪みたいな奴が3人もいるせいでヘイトが分散してるのウケるが
502:名無しのゲーマー
迫害しまくってNPCを限界まで追い詰めた状態で意図的に「脱走」させて他人のPTに加入させて足を引っ張らせる作戦好きだから統率力・迫力・恐怖あたりに全振りして特化構成したんだけど
同じこと考えてる奴がいたみたいでそいつとNPCの送り合いした結果俺のPTと相手のPTで総取り換えになったわ
503:名無しのゲーマー
誰か信奉全振り試した人いない?
504:名無しのゲーマー
>>501
全員が常識の3倍ヘイト放出してるから実質普通と同じだぞ
505:名無しのゲーマー
そもそもこいつらが関わってるような作品を買う時点で「そっち側」なんだよなぁ…
506:名無しのゲーマー
クラファンに10万突っ込んでボスキャラのデザインに「ゆるふわもこもこらぶりーうさぎ」を投げたけど実装されたのが「拒絶の棘バリエルド」だった話していい?
507:名無しのゲーマー
ダメ
508:名無しのゲーマー
いいよ
509:名無しのゲーマー
>>503
やってみたら信仰が高まりすぎて解釈違いで内紛起きて全員死んだわ
神ゲー
510:名無しのゲーマー
>>492
ロード中に処理落ちするとか草
511:名無しのゲーマー
信仰に振った時のNPCの挙動、マジで他と違って世界観に真っ向から反してて面白すぎる
なんでVRMMOでデスゲームでどうしよう!からの宗教で救われましたなんだよ
512:名無しのゲーマー
そもそも救われてないしな
513:名無しのゲーマー
信仰振りNPCはボスの死体燃やすときに最後の最後で正気に戻るところが3Kポイント出てる
514:名無しのゲーマー
吉良と吉村と吉祥寺をまとめて3Kって呼ぶのやめろ
515:名無しのゲーマー
俺は悪意トリオって呼んでるよ
516:名無しのゲーマー
このゲームのNPCは傷つけた時のリアクションが豊富で最高
特に理由もなく未来に希望持ってそうなNPCをじわじわとなぶり殺しにするとかできるし
517:名無しのゲーマー
このスレ、「悪」が多すぎませんかね
518:名無しのゲーマー
そもそもゲームの本質が「悪」であらざるを得ないそれなんだよなぁ…
519:名無しのゲーマー
このゲーム宗教強すぎない?
コスパもいいし統率にそんな振らなくても勝手に「通じ合う」し
520:名無しのゲーマー
>>518
それを込めて考えても>>516は必要のない悪だぞ
521:名無しのゲーマー
>>519
宗教はこの絶望的デスゲームからの「逃避」の側面が非常に強いので別ベクトルの「希望」を見せてやればコロッと寝返るぞ
金で釣るとかはできないけど、愛嬌や魅力にはかなり食いついてくる
522:名無しのゲーマー
なるほどなぁ
523:名無しのゲーマー
これ補助系NPCで固めてバフ盛りまくればプレイヤー単騎で戦闘したりできるんだろうか
524:名無しのゲーマー
信奉に振ったNPCは自分の命を異様に軽く考えるのが使いやすいな
他の勢力に派遣して自爆させたりできるし
525:名無しのゲーマー
あああああああああああ死んだあああああああああ
なんかすごい勢いでNPC吸い取ってくる奴いて全員に寝返られて死んだ
526:名無しのゲーマー
シーズンが終わったらどうなるんだろうなこれ、新しいデスゲームが始まるのはわかってるけど何か演出とかあるんだろうか
527:名無しのゲーマー
>>524
派遣先の奴に寝返ってこっちに爆弾として帰ってくる場合とかあるけどな……
528:名無しのゲーマー
>>526
この世界観だからな、仮に勝ち残っても振出しに戻る無限ループ式かもしれんぞ……最終的に精神が崩壊する的な
529:名無しのゲーマー
宗教路線の信奉対象候補多すぎる
やってみたら床板を信奉しだしたんだけど
530:名無しのゲーマー
>>529
当たりを引いたな
531:名無しのゲーマー
ちょっと前に買ったばっかりだけど、吉吉吉の作品にしては自由度や戦略性が高くていいなこのゲーム
532:名無しのゲーマー
経営力弱くない?
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【速報】宗教戦争、始まる【デベリオン】
1:名無しのゲーマー
公式からの告知
https://store.dieselpowered.com/news/app/3920131312/view/838028328343025541831
>イベント発生のお知らせ
>この度、『オンライン』モード第1サーバーにて特定の条件が達成されました。
>そのため、ゲーム仕様に従い『戦争』イベントを開始します。
>今回の
2:名無しのゲーマー
どういうことだよ
3:名無しのゲーマー
特定の条件が達成されました←これ
4:名無しのゲーマー
なんか低評価めちゃくちゃついてて草
5:名無しのゲーマー
>>3
何の理由付けにもなってないんだよな
6:名無しのゲーマー
宗教ってからには信奉パラが関係してるんじゃね?
7:名無しのゲーマー
>>4
いつもこれくらい付いてるので問題ない
8:名無しのゲーマー
信奉めちゃくちゃ使いやすいよな
上げれば上げるだけ効果が出る上に畏怖とかと違って軽率に死んでくれるし
しかもプレイヤーが死んでも効果切れないんだよなあれ
9:名無しのゲーマー
>>7
この続きを読む(4289)とか書いてあるコメント欄もやっぱりいつも通りなの?
10:名無しのゲーマー
おまえらまだこのゲームやってたのかよ
俺リリースされて1週間で飽きたわ
11:名無しのゲーマー
>>8
>プレイヤーが死んでも効果切れないんだよなあれ
……ヤバくない?
12:名無しのゲーマー
>>10
アーリーアクセス定期
13:名無しのゲーマー
未来人定期
14:名無しのゲーマー
信奉におけるプレイヤーは神じゃなくて「教祖」的な立ち位置なんだよな
だからパラ上げ過ぎると解釈違い起こして内ゲバするっていう
15:名無しのゲーマー
>>9
今回はちょっと少なめだな
16:名無しのゲーマー
>パラ上げ過ぎると解釈違い起こして内ゲバする
>プレイヤーが死んでも効果切れない
……これ内ゲバの後も先鋭化した狂信者NPCが残って……
17:名無しのゲーマー
あっ……
18:名無しのゲーマー
訪問勧誘かよ
19:名無しのゲーマー
「宗教……?あ、間に合ってます」って言ったら「異教徒は粛清する!!!!!!!」っつって斧を振りかざしてくるわけ?怖すぎでしょ
20:名無しのゲーマー
草
21:名無しのゲーマー
でもそれ虐殺であって戦争では無くね?
22:名無しのゲーマー
デスゲーム中に起こる戦争の原因が宗教って時点で笑える
せめてゲームのことで争えよ
23:名無しのゲーマー
>>21
訪問勧誘員NPC同士が鉢合わせになると解釈違いバトルが始まるんだぞ
24:名無しのゲーマー
要するに今まで起こってた内ゲバがパーティレベルから世界レベルまで規模を広げた状態か
25:名無しのゲーマー
マジかwwwwとなって久し振りにログインしたらパーティメンバーのNPC全員死んでたんだが
信奉に全く振ってなくても異教徒判定出るのか……
26:名無しのゲーマー
信奉に60振った上でNPC100人くらい連れてたんだけどひょっとして俺のせい?
27:名無しのゲーマー
大丈夫、俺は50振って150人連れてた
28:名無しのゲーマー
実は僕も70振って95人連れてました……
29:名無しのゲーマー
おまえら信奉好きすぎだろ
30:名無しのゲーマー
悲劇の生まれる"瞬間"を見たわ……
31:名無しのゲーマー
100……何なら1000人単位のNPCが解釈違いと異教徒を粛清しに動くの、地獄だろ
32:名無しのゲーマー
聞きたいんだけど信奉に振りまくってた奴って今ローディングどうなってる?枕元に500人くらいいそうだけど
33:名無しのゲーマー
信奉、罠すぎる
運営の悪意を感じるぞ
34:名無しのゲーマー
そもそも信奉って本来他のパラの補助に使う物な気がするんだよな、若干の「狂い」を入れるみたいな意味合いで
例えば経営と一緒に振ればブラック企業作れるし愛玩と一緒に振れば神格化されることができるって言う
35:名無しのゲーマー
どーすんだよこれ
36:名無しのゲーマー
>>34
信奉は「自己犠牲」的な思想を持たせるところあるからな、死をも厭わない系の
37:名無しのゲーマー
どうしようもないぞ、次のシーズンを待て
38:名無しのゲーマー
今シーズン、トップテンが決まるころには全プレイヤー死んでそうだけどどうなるんだろう
39:名無しのゲーマー
1位:
2位:
3位:
4位:
5位:
6位:
7位:
8位:N/A さん
9位:N/A さん
10位:N/A さん
40:名無しのゲーマー
NPCがランキング埋めるのは新しいな
41:名無しのゲーマー
>>39
全員デフォルトネームで草
42:名無しのゲーマー
7人も残るか?
43:名無しのゲーマー
階層ボス「まだかな…」
44:名無しのゲーマー
>>41
このゲーム人の命がガチでその辺のゴミ以下だから名前を付けるコストにリターンが釣り合わないんだよね
45:名無しのゲーマー
閃いた、愛嬌と愛玩に振りまくって教信者共に生きる希望を見出させるのはどうだろう
名付けて愛は世界を救う作戦だ
46:名無しのゲーマー
名 前 を 付 け る コ ス ト
47:名無しのゲーマー
>>45
それ今度はお前に一番愛される座を巡って争い出さない?
48:名無しのゲーマー
でもこのゲーム設計上はNPCが"資源"だし終盤だとむしろプレイヤーの命の方が価値低いみたいな状況になって来るぞ
なお
49:名無しのゲーマー
おまえらまだこんな場末で解決策について話してたの?そんなことよりトトカルチョやろうぜトトカルチョ、最後まで生き残るのは誰か賭けるんだ
50:名無しのゲーマー
狂信者NPC強すぎない?3人がかりで挑んで負けたんだが
なんか神の加護とか掛かってないですか
51:名無しのゲーマー
>>49
オッズは?
52:名無しのゲーマー
>>50
これひょっとして狂信者になって初めて虚構の存在だった"神"が現れる、みたいな滅茶苦茶皮肉な演出じゃないか?
53:名無しのゲーマー
>>51
54:名無しのゲーマー
俺の好きなVRゲーム内に神なんているはずがないのにそれを信仰してしまった哀れなプレイヤーが堕ちるところまで堕ちて人を殺すようになった瞬間急に神が現れる展開だ
55:名無しのゲーマー
区別がつかないんですが……
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遊戯の終わりの目前で
どうしてこんなことになったのか。
サイガ-0は考えた。もっとも、もはや彼女を本来のプレイヤーネームで呼ぶものは殆どいない。この暗きに沈んだカース・オブ・エタニティにあって、彼女はもっぱらこう呼ばれる―――魔王、と。
立ち込める邪悪な
「レイさまぁ……」
「レイさま、あははっ」
「……」
サイガ-0は思案する。果たして
きっと、残っているはずがない。……「愛嬌」とはそういうパラメータだ。他の何かを実現する手段である信奉に対し、目の前の対象をただ追及する、自己目的化のパラメータ。本質的に中身が無―――。
「違う」
進みかけた思考を止める。愛に、恋に中身がないなんて認めたくはなかったから。
かつ、かつ。
足音が響く。
彼女の直前の思考を肯定するかのように。彼女の座るおどろおどろしいデザインの玉座に向けて、落とした影と共に語り掛ける者がある。
「……やあ、レイさん」
金属音が立て続けに鳴る。突如現れた侵入者に対処すべく、配下たちが各々の装備を取り出した音だ。
レイは片手を静かに上げて、彼女たちの動きを制止する。そして目の前に佇む……『サンラク』のプレイヤーネームを持つ想い人に、答えを返す。
こういうとき、どんな言葉を使えばいいのかな。
サイガ-0は考える。おはようとか、こんにちはとかは変だ。しかし、だからといって、ようこそいらっしゃいましたと言うわけにもいかない。ええと、ええと―――。
「……よ、よくぞ辿り着きましたね、サンラク君」
「ず……随分、ラスボスっぽいセリフだね」
サンラクのアバターは珍しく顔を露出したもので、その苦笑いが一目で見て取れて……サイガ-0は、自分が言葉選びを間違えたと理解した。
まずい、訂正しなくては。
「あ、ま、まちがいです!あの……待ちわびていましたよ、サンラク君!」
「それはそれでラスボスっぽいな……」
サイガ-0は顔面を両手で覆う。仮想空間にいるというのに、体温が上がりつつあるのを自覚できた。
……実際のところ。
実際、彼女はそれだけのことをしたのだ。まず一人のNPCにリソースを集中して育て上げ、既存の「信奉」ビルドプレイヤーのNPCを勧誘し、信仰対象をそのNPCに上書きして引き抜く。そして引き抜かれてきたNPCを、自分の「愛嬌」で二重に手駒にする。比較的容易な『信仰対象の上書き』と、ある程度の時間を要する『愛嬌による魅了』の合わせ技、中々に破壊力の高いコンボだ。
―――それらの一見して良く練られているように見える手が、本当はなし崩し的に打たれたこと。それを知る者は実際のところほとんどいない。
「まあ、何だ……」
サンラクはサイガ-0を見た。あるいは、サイガ-0の瞳の奥にいる斎賀玲を見ているのかもしれなくて、彼女は自分の体温がさらに上がっていることを知覚した。
やはり
「
宣戦布告した。
サイガ-0は、自分のこの体温を構成するものが、ただの恋慕ではないことを理解しつつあった。そこには、恋慕のほかに……確かな
だから、彼女は玉座から立ち上がった。謹んで「魔王」であろうと努力して、威厳を保とうと踏ん張って。そしてなるべく迫力を持たせた声色で、凶悪な外見の槍を構え、配下の者たちに『臨戦』のサインを与えると、目の前の好敵手にこう言い放った。
「望むところです、サンラク君」
それが合図だった。
二人はいよいよ激突した。デスゲーム・リベリオン・オンラインの第一シーズンは今夜終わる、それだけが一つ確かな真実として、つい数分後の未来に横たわっていた。
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デスリベチャンネル#1-7
オープニング
幻想的な雰囲気を持ち、それでいてどこか心の奥底の冒険への欲求をくすぐるような雰囲気を持つアップテンポな曲が流れる
ナレ : | 『デスゲーム・リベリオン・オンライン』公式ラジオ、『デスリベチャンネル』! |
幻想的な雰囲気を持ち、それでいてどこか心の奥底の冒険への欲求をくすぐるような雰囲気を持つアップテンポな曲が流れる
物音
山本 : | さあ始まりました、元インディーズ・現『スパイトグラッジ』社運営によるMMO『デスゲーム・リベリオン・オンライン』の魅力を伝えるべく毎週土曜日に配信されるラジオ『デスリベチャンネル』第1シーズン第13週。パーソナリティは私、声優の……。 |
スタッフ: | 山本さん! |
山本 : | 山本 |
スタッフ: | 山本さん! |
山本 : | あスタッフさん何ですか? |
スタッフ: | 第13週じゃないです。 |
山本 : | え、そうでしたっけ? |
スタッフ: | はい、実際は第7週です。 |
山本 : | 結構差分大きいですね。 |
スタッフ: | 差分大きいですね。え、アレですかあの。山本さんは最近あんまりデベリ……デスリベやらない感じなんですか? |
山本 : | ログインはしてないです。 |
スタッフ: | おい。 |
山本 : | いや大丈夫です、これはあの……戦略的な放置、って言うか。だって不用意にログインしたら殺される危険性あるじゃないですか。ゲーム内動向をつぶさに観察して、一番効果的なタイミングにインして全てをかっさらうんですよ。ね! |
スタッフ: | まあそういうこともあるかもしれないですね。 |
山本 : | ね! |
何とも言えない間
山本 : | ……えっと、今回はあの……スペシャルコーナーも用意してますのでお楽しみに。 |
何とも言えない間
山本 : | ……はい。それではいつも通り『今週のデスリベ』のコーナーから始めていきましょう! |
どこか冷たさを纏った音調による短いジングルが寂しげに流れる
スタッフ: | ……それはそれとして台本は読みませんか? |
どこか冷たさを纏った音調による短いジングルが寂しげに流れる
コーナー:今週のデスリベ
山本 : | さあ『今週のデスリベ』。このコーナーでは、今週に起こった『デスゲーム・リベリオン・オンライン』内のイベントや勢力変化などについて紹介していきます! |
スタッフ: | 第7週ともなると各所の動きも活発になってきますね。 |
山本 : | はい。えーまずCoE……『カース・オブ・エタニティ』の攻略状況についてです。第6週の34層から一気に9層進み、43層! すごい! 私はログインしてないのでアレですけど、傍から見てもペース上がり気味ですね。 |
スタッフ: | この調子で行くと、攻略完了タイミングはシーズン終了よりだいぶ早くなりそうですね。 |
山本 : | んー……どうでしょう?やっぱデベリ……デスリベはまだ第1シーズンじゃないですか。どこかで極端に難易度が上がるポイントがあったりしませんかね? |
スタッフ: | その可能性もありますね。 |
山本 : | まあともあれ、勢力図についても紹介していきましょう。えー、第39層のフロアボス『黒鎖獣バイノア=ビィト』の精神汚染能力により複数のNPCがトラウ |
スタッフ: | (割り込む)〈戦意喪失〉ですね。 |
山本 : | はい、〈戦意喪失〉ステータスを自然獲得。これにより〈信奉〉系の陣営にNPCが流れましたが……。 |
スタッフ: | 流れましたが? |
山本 : | ……えー、こんな感じになってるんだ。はい。流れましたが、これに乗じてプレイヤー『レッド・ペリング』氏率いる〈反幻想結社〉が〈対信奉キャンペーン〉と銘打ってプロパ |
スタッフ: | (割り込む)宣伝ですね。 |
山本 : | はい、宣伝戦略を開始。〈信奉〉系陣営の幻想に依存する様を批判し、そちらに流れていったNPCの |
スタッフ: | 広げましたが? |
山本 : | 火曜日の昼ごろ、〈反幻想結社〉配下のNPCたちが突然周囲のNPCに抱き着いて頭をばくは |
スタッフ: | (割り込む)周囲のNPCを攻撃し始めた、ですね。 |
山本 : | 周囲のNPCたちを攻撃し始めてそのまま崩壊。この行為に対しては非難が集まり、乗じてプレイヤー『鉛筆闘士』氏が〈反反幻想結社結社〉、略して〈反反幻社〉を設立し、〈信奉〉パラメータを利用して攻撃の被害NPC立ちを吸収し始めたほどです。 |
スタッフ: | 〈反反幻社〉の拡大は〈反幻想結社〉以上に高速で、既にランキング10位圏内で追い上げを見せている状態ですね。 |
山本 : | そうですね……あとはイベントです。今週は特にありませんでしたが、来週からCoEの内部イベントで……へえ、〈ラビット〉系モンスター関連のイベントが始まるみたいです! 私〈ラビット〉好きなんですよ、あのもふもふした感じが可愛いですよね! |
スタッフ: | 良いですね、それじゃあ山本さん久々に復帰ですか? |
山本 : | そうですねえ……。そろそろログインしようかな。ちなみにイベント名は『 |
スタッフ: | あ、イベント名は読み上げなくて大丈夫です。 |
山本 : | わかりました。「デスリベは遊んでないけどイベント名は気になる!」という方は、ぜひとも実際にVRゴーグルを被り、自分の目で確かめてみてくださいね! |
スタッフ: | そろそろ次のコーナーに行きましょう。 |
どこか冷たさを纏った音調による短いジングルが寂しげに流れる
コーナー:リスナーからのおたより
山本 : | さて『リスナーからのおたより』のコーナーです。おたよりは公式サイトに設置されたフォームからお送りいただけますから、リスナーの皆さんはどんどん送ってくださいね! |
スタッフ: | 一通目どうぞ。 |
山本 : | はい。えーラジオネーム『ダークLF』さんからのおたよりです。えー、「デベリオンは遊んでいませんが、山本さんのファンなのでこのラジオを聞いています。」デスリベは遊んでいない。遊んでくれてもいいんですよ? 「山本さんはオープニングでいつも『声優の』って名乗りますよね。デベリオンのラジオに出演するからには作中で何かしらの役を持っていると思うのですが、どうして『〇〇役の』ではなく『声優の』を使うんですか? 応援してます!」……はい。これはまあ……。 |
スタッフ: | 実際に、というか。 |
山本 : | そうですね、実際にデスリベを遊んでみればわかると思います! 遊べ! はい! (笑う) |
スタッフ: | 二通目です。 |
山本 : | ラジオネーム『焼け落ちた親友』さんからのおたよりです。えー、「クラファンの頃から遊んでます、NPCを |
ソだてるのが楽しいですね。面白い
ゲ
ームをありがとう
!」ええと、なんか改行が……。あー、私に言いますかそれ。まあ……ど、どういたしまして? ですかね。はい。
スタッフ: | 三通目です。 |
山本 : | ラジオネーム『トワ様命♡』さんからのおた……あー、特定プレイヤーに対する誹謗中傷ですねこれ。スタッフさんもうちょっとフィルタリング頑張れませんか? |
スタッフ: | 善処します。 |
山本 : | 頼みますよほんと、デスリベは健全なコンテンツなんだから、ギラギラした感じは排除しないと。 |
スタッフ: | すみません、四通目です。 |
山本 : | ラジオネーム『 |
スタッフ: | 山本さん。 |
山本 : | はい? |
スタッフ: | デスリベは健全なコンテンツなんだから、ギラギラした感じは排除しないと。 |
山本 : | ……すみません。私だったらえっとぉ、あ、誰かトップとして据える人材を別に置きますね。高速西日暮里さん……高速西日暮里って。高速西日暮里さんが直接軍団を指揮してる、っていう認識があるから三角関係なんて生まれるんですよ。別のリーダーを置いて、高速西日暮里さん……高速西日暮里って。高速西日暮里さんは影のトップとして君臨する、って言うのがいいんじゃないでしょうか。 |
スタッフ: | かっこいいですしね。 |
山本 : | (露骨な口調の変化)いやー改めて、デスリベって奥が深いゲームですね、遊びたくなってきた! ……こんなもんですかね? |
スタッフ: | はい、フィルタリング頑張ると残るおたよりはこんなもんです。 |
山本 : | ……リスナーの皆さん、たまには罵詈雑言以外も送ってくださいね! それじゃあ次のコーナーです。 |
どこか冷たさを纏った音調による短いジングルが寂しげに流れる
コーナー:ボス紹介
山本 : | さて『ボス紹介』のコーナーです、このコーナーではデスリベのフロアボスについて紹介していきます。今回は……。 |
スタッフ: | 第15-16層ですね。 |
山本 : | 割と端折りますね……まあいいや。第15-16層ですから……〈 |
スタッフ: | はい。両方とも城塞のような外見をしていて、スタンクが砂、ストウクが雪でできています。物理攻撃が通りにくい本体が直接攻撃をするほか、〈 |
山本 : | 一応16層くらいは終わらせてますけど、こいつら結構厄介だった記憶があります。《統率力》が低いと陣形が乱れて苦戦しそうですね~。 |
スタッフ: | 実際そうでしょうね、スタンクもストウクも足元を狙うタイプの攻撃が多いですし。 |
山本 : | これクラファン枠でしたっけ? |
スタッフ: | そうですね、ちょうど手元に原案書があります。 |
山本 : | えーっと……『 |
スタッフ: | それを色々料理した結果が、これです。 |
山本 : | 二体のなんかデカい城が凶悪な目つきでこちらを見てますね。というか城の目つきって何?波打つような砂塵と粉雪が周囲に展開し、グロ……不気味な〈 |
スタッフ: | いやあ、結構ユニークですね。 |
山本 : | そうですね、デスリベってほんと色んなところでこういうユニークさに出会えますよね。 |
スタッフ: | すごいですよね。 |
山本 : | すごいですよね。 |
何とも言えない間
物音
背後で流れているあまり印象に残らないタイプの毒にも薬にもならないようなBGMが沈黙の中で唯一控えめに活動する
物音
何とも言えない間
山本 : | ……えー、次のコーナーです。 |
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コーナー:デスリベあるある
山本 : | さて『デスリベあるある』のコーナーです。このコーナーでは、リスナーの皆さんから『デスゲーム・リベリオン・オンライン』を遊ぶうえで感じる"あるある"を募集していきます。 |
スタッフ: | すみません山本さん、資料は読んでても台本は読んでないの忘れてました。 |
山本 : | なんですか? |
スタッフ: | 今回は『デスリベあるある』ないです。 |
山本 : | え!? どうしてですか!? |
スタッフ: | フィルタリングを頑張ったからです。 |
山本 : | マジで? |
スタッフ: | マジで。 |
山本 : | え……えーっと。いやそんなわけないじゃないですか。あの、リスナーでも未プレイの皆さん。勘違いしないでくださいね?デべリ……デスリベはちょっと硬派ですけど面白くて健全なゲームです。離れないでくださいね。えーっと……アレですよ、スタッフさんがちょっと頑張りすぎちゃったのかな? |
スタッフ: | え、僕のせいですか? |
山本 : | いやだって……。じゃあ、試しにちょっとだけフィルタリング緩くしてみません? |
スタッフ: | ちょっとだとダメですね。 |
山本 : | じゃあまあまあ! |
スタッフ: | まあまあでもダメかも。 |
山本 : | 分かりました、じゃあ一番 |
スタッフ: | えーっと……これかな。 |
山本 : | はい。ラジオネーム『クラッ海月』さんからの"あるある"。えー、「NPCを十人くらい集めて愛称で呼び合うくらいまで仲良くさせたうえで密閉空間に閉じ込め、ナイフを」分かりましたもういいです、次行きましょう。 |
スタッフ: | ね? |
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スペシャルコーナー:開発者に聞く!
山本 : | えー予定より少し早いですが、冒頭でお伝えした『スペシャルコーナー』のお時間です!イエーイ! |
スタッフ: | イエーイ! |
山本 : | まあタイトルコールでネタはバレてますけど改めて言います。はい、このスペシャルコーナーでは……デスリベの開発者をお呼びして、このゲームの裏側について色々語ってもらいま~す!イエーイ! |
スタッフ: | イエーイ! |
山本 : | というわけで今回のゲストは |
吉良 : | どうも~。 |
吉村 : | ども。 |
山本 : | よろしくお願いしま~す。……なお、キャラクターコーディネーションディレクターの吉祥寺さんは残念ながら |
吉良 : | コンプラがね。 |
スタッフ: | さて、台本的には「好きに語っていただく」事になりそうですが……。 |
山本 : | 大丈夫そうで……あ、話題振りますか? |
吉良 : | そうして頂けると。 |
山本 : | えーっと、それではお二方に……そうですね、まずはデスリベがどういう経緯で開発されることになったのかお聞きしてみたいと思います。 |
吉良 : | わかりました。デベリオンの…… |
山本 : | デスリベの。 |
吉良 : | デスリベの案が最初に出たのはだいたい一昨年の冬のことでして。当時の僕はゲームクリエイターとしては一時引退していたんですが、引退前と比べてもユートピア社式フルダイブVRがかなり普及してるのを感じて。それでユートピア社本元の『シャンフロ』も発表されたことだし、そろそろVRゲームというメディアの構造を……こう、メタに捉えた作品があっても良いんじゃないかと思ったんです。 |
山本 : | なるほど。 |
吉良 : | それでまあ、とりあえずデスゲームものが良いっていうのは決まったんですけど。結構ブランクも長かったので、やはり以前みたく大規模に開発するわけにもいかない。なので吉村を誘って、インディーズゲームとして開発することにしたんです。 |
吉村 : | 突然誘いが来たときは驚きましたけど、吉良は結構きっちり計画を練るタイプですから。分厚い資料を見せられて、"これはいけるな"って。 |
山本 : | きっちりというのは、どれくらい先まで? |
吉村 : | すごいですよ。単純なゲームシステムに始まって、資金調達のプランとか、どのタイミングで起業するかとか。いかに |
スタッフ: | ちょっとちょっとちょっと。 |
吉村 : | このラジオの存在も『案』として載ってたんですよ。無関係な声優を……。 |
スタッフ: | 吉村さん吉村さん。 |
吉村 : | はい。 |
山本 : | えーっと……。あ、ありがとうございます。次はその……デスリベの製作にあたっての『こだわり』をお聞きできれば。 |
吉良 : | こだわり。 |
吉村 : | こだわりで言うと多分吉良よりは……。 |
吉良 : | まあ、吉村だよな。(笑う) |
吉村 : | はい。えー、僕の仕事はまあざっくり言うとモンスターのデザインですけど、モンスターというのはプレイヤーがいてこそ成立する『障壁』ですよね。 |
山本 : | はい。 |
吉村 : | 『デスゲーム・リベリオン・オンライン』っていうゲームは『カース・オブ・エタニティ』っていうゲームを内包してるじゃないですか。つまりこのゲームには実質的に二種類のプレイヤーがいる。デベリオン…… |
山本 : | デスリベ。 |
吉村 : | デベリオンのプレイヤーはCoEのプレイヤーでもある訳で。そうなるとプレイヤーの『障壁』であるモンスターも、二種類の要素を持つべきだと思うんですよ。CoEの開発者が『CoEのプレイヤーにこんな目に遭って欲しい』みたく思ってデザインしたモンスターを、僕がさらに『デベリオンのプレイヤーにこんな目に遭って欲しい』とアレンジする。いや、再解釈と言ったほうが良いかな。 |
山本 : | なるほど。 |
吉村 : | 具体的に言うとですね。CoEの開発者はちょっと……内蔵とか血液とか、そういうのを出すのを好みがちというか。 |
スタッフ: | ちょっとちょっとちょっとちょっとちょっとちょっと。 |
吉村 : | これはCoEが『黎明期のVRシステムにおけるデスゲーム』だからで。まあ黎明期ってやっぱりリアルさをアピールしたくなるじゃないですか。だからもう死体にたかる蝿の羽音から爪で抉られた…… |
スタッフ: | 吉村さん吉村さん吉村さん吉村さん。 |
吉村 : | はいはい。 |
山本 : | お話、とっても興味深かったです。そろそろ時間なので……。 |
吉良 : | いや、まだかなりあると思いますけど。 |
スタッフ: | フィルタリングを頑張りましたからね。 |
山本 : | 終わりか?なんでもないです。 |
吉良 : | あ、そうそう。デスリベではね、プレイヤーに入ってくる情報をかなり徹底的に管理してるんですよ。デスゲームってそういう得体の知れないところが怖いものですし、簡単に攻略wikiを見たくらいではわからないようにしたい気持ちがあった。いや別に攻略wiki自体は良いんです。デスゲーム作品でも『情報屋』みたいなプレイヤーはよく出てくる。しかし、それが初手で蔓延してしまうのは良くない。だからまあ、プレイヤーを誤解させるように色々と要素を散りばめまして。仕掛けた罠にまんまと引っ掛かったプレイヤーを見るのは何とも快感で……。 |
山本 : | すみませんお二方、デスリベは健全なコンテンツなのであの、もう少し……抑えていただきたいと言いますか。 |
吉村 : | そういえばそうでしたね。 |
吉良 : | そういえばそうだった。 |
山本 : | 終わりだ……。なんでもないです。 |
スタッフ: | 山本さん。 |
山本 : | 何ですか? |
スタッフ: | あの、新情報です。デベリオン内の勢力図が大きく動きました。 |
山本 : | マジ!? ……っとあの、すみませんキチ……吉良さん、吉村さん。今ちょっと速報が入ったので、一旦コーナー切り替えても大丈夫ですか? |
吉良 : | はい。 |
吉村 : | いいですよ。 |
山本 : | ありがとうございます。えー、それでは。 |
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速報:〈反反幻社〉崩壊
山本 : | えー先ほどお伝えしました〈反反幻社〉ですが……なんとついさっき、崩壊しました!(嬉しそうに) |
吉良 : | マジか、あれ結構想定解だったんですけどね。 |
山本 : | 崩壊のきっかけとなったのは。……えー、プレイヤー『ラクヨウ』氏が結成した〈資本主義パワーの会〉と呼ばれる集団です。彼らはまず秘密裏に攻略を行って47層に到達、そこで得たCoE内通貨を用いて……〈反反幻社〉の構成員を |
スタッフ: | 〈反反幻社〉は〈信奉〉メインじゃなかったんですか? 買収に応じるでしょうか。 |
吉良 : | いや、応じますね。〈信奉〉は〈信奉〉でも『レッド・ぺリング』氏を仮想敵に据える形での結束の面が強い。つまり〈資本主義パワーの会〉が同じく『レッド・ぺリング』氏を仮想敵と扱っている場合……できてから日の浅い〈反反幻社〉の構成員は、敢えて金を渡してくる側に行かない理由がない。 |
山本 : | 『鉛筆闘士』氏は戦力を削られたところで……〈資本主義パワーの会〉に属するプレイヤー『サイガーゼロ』氏と戦闘し、ころ |
スタッフ: | (割り込む)敗北ですね。 |
山本 : | 敗北! 勢力図が大きく書き換わる形になりました! あとそろそろ終わりの時間です!はい! |
吉村 : | 47層と言えば、あそこのフロアボスの触手は―――。 |
スタッフ: | はいネタバレです!もう終わり!もう終わりですよ! |
山本 : | 『デスリベチャンネル』第7週! パーソナリティは私、声優の山本朔夜! アシスタントはスタッフの以下略! 『ラクヨウ』氏に感謝! ありがとうございました~! |
エンディング
幻想的な雰囲気を持ち、それでいてどこか心の奥底の冒険への欲求をくすぐるような雰囲気を持つアップテンポな曲が流れる
ナレ : | 『デスゲーム・リベリオン・オンライン』公式ラジオ、『デスリベチャンネル』! |
幻想的な雰囲気を持ち、それでいてどこか心の奥底の冒険への欲求をくすぐるような雰囲気を持つアップテンポな曲が流れる
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スリリング・ファーム
流翔波及するテンペスト
スリリング・ファームを起動した俺は、最速で
本来、初手大豆というのは悪手中の悪手―――それこそ、「
とにかく、そういう訳で初手大豆は基本ナシだ―――では、なぜナシにも拘わらず「ジョウロニスト」の異名を持つ程度には危牧マイスターである俺がこんなことをしているのか?理由は簡単だ。経済でも、
◆
危牧の攻略コミュニティは閉鎖的だ。インターネットの場末も場末というべき場所にあってアクセスがしにくいし、そもそもがマイナーなゲームなのでアクセス
その情報とは、これだ。
『はじめまして!前々からこのゲームはプレイしていましたが、攻略コミュニティがあるとお聞きして馳せ参じました!メイン武器は大豆です、よろしくお願いします!』
そう―――このセンテンスは、最初は笑われるそれでしかなかった。『相当な変態だな』とかそう言う奴ね?でも、1時間半くらいしてからスクショ付きで書き込まれた、検証班による投稿を見るなり……誰も、それを笑わなくなった。
『大豆を投射魔法で撃つとなんかメチャクチャダメージが出る』
これにより、現在危牧コミュは大豆ブームの最中にある……どいつもこいつも、大豆を使ってRTAしたり、なぜ大豆でダメージが出て南瓜では出ないのか考察したり、ゲーム内の大豆を食うと割とうまいことを発見したりしている。
こうなると、俺も乗じざるを得ない。
◆
インベントリを6枠ほど大豆で埋めたあたりで、世界を轟風が埋め始めた。
流れが流れを打ち消し、流れが流れを創る―――そうした
「こっち見ろや低気圧野郎ォ~~~ッッッ!!【インドレア・アストラ・フルトヒーイング】ッッ!!」
投射ッ!!!奴を覆う雨と嵐の
「VOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO…………」
「……どうやら、確認するまでも無さそうだなァ……!!!」
クソキリンが
「【インドレア・アストラ・フルトヒーイング】!!【インドレア・アストラ・フルトヒーイング】!!【インドレア・アストラ・フルトヒーイング】!!」
投射投射投射ァッ!!!確認、よーしちょっと
しかし。
「……何だァ?」
投射魔法はあくまでも
絶えず発射している大豆たちが……
―――その時、
慌てて、そして恐る恐る振り返った先には……
「BMOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO…………」
そう―――俺は忘れていた。しばらくプレイしていなかった間に来た、大型アップデートの存在を……そして、そのアップデートによって実装された
ウシはやはりこちらを見ると、もう雨なのか雷なのか風なのか分からない環境音に巨大な鳴き声を混ぜ込み……刹那の先には、地表に襲い掛かる無尽の雷があった。倉庫が、作物が、地面が……すべてが、抉られていく。
「…………ふざけんなぁぁァァァァァァッッ!!!!!!」
例外といえば……キリンと、ウシと、大豆を取り出して激高する俺くらいの物だった。
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スタン-バイ・スタン
『核を撃つ時は気持ちが大事だよ、玲さん』
「は、はいっ」
サイガ-0はいささか気を張った声色で、ボイスチャットの向こうから送られたその訓示に相槌を打った。
目の前には、嵐がある。
彼女の視界を塗り潰す旋風は、もはやバグによる映像の乱れと大差ないほど激しく、凄まじいものだ。視界の四隅に表示されたアラートウィンドウたちは「耐久値極小」「被害甚大」「寝不足」などの文字列をこんなにもくっきりと表しているというのに、それより奥の
最高級ガレージの壁の耐久血をすさまじい速度で削りながら、ほとんどモザイクのようになった烈風は、嫌になるほどの轟音と共に全てを破壊していく。ときおり飛翔していく建造物の断片たちだけが、暴風雨が生み出したカーテンの向こうから、うすぼんやりとしたシルエットを投げかけている。――いや、違う。シルエットを生むものが、もう一つある。
災獣「ゼピュラ・ジラ」。
嵐禍を操る絶対の巨躯の、その前脚の蹄である。
『いいかな――』
ボイスチャットの向こうでサンラクが続ける。あからさまな鼻声だ。厄介なタイプの風邪をひいている。サイガ-0が
ベッドの中でタブレット端末か何かを開き、ボイスチャット越しにサイガ-0の画面配信を観ている彼は、先ほどの言葉に補足を加える。
『気持ちって言うのは、何も精神論の話じゃないんだ。……ゴホッ、俺が考えた「後出しじゃんけんチャート」の特徴は……ゲホッ。
「その、だ、大丈夫ですかサンラク君……?」
『ゲッホゲッホ! ……ああごめん、大丈夫だよ。それで――』
「いえ……もう喋らなくて大丈夫です」
それはサンラクの喉を気遣っての言葉だったが、だからといって偽りを含んでいるわけではなかった。
「――だいたい理解しました」
『流石だね』
「……っ」
サイガ-0は赤面した。とはいえ、想い人に悟られはしない。サンラクへの画面配信は一人称視点で行われるからだ。視線の移動なんかに動揺が現れないよう注意しつつも、ゲーム的に崩壊しつつあるガレージの壁に体重をかけ、
そこが狙い目だ。
彼女は考える。インターフェースを埋める紅のダイアログやけたたましいアラート音を通り過ぎ、精神を研ぎ澄まして考える。サンラクの『気持ちが大事』という言葉は……核爆弾の起動指令を、思考入力で行うがゆえだろう。ゲームオーバー時点でキャラクターのモーションは停止するので、手で起爆スイッチを押すことはできない。だが、思考入力なら――VRヘッドギア側の物理的制約を回避するために作られた、意図的な
轟音。爆音。破裂音。全てを無視する。直瀑に似て天板に響く熾烈な雨音を無視する。次第に拡大し増大していく周囲の揺動を無視する。脳裏で展開しかけていた、以前このゲームを遊んだ際の記憶すら無視する。記憶は必要ない。在るのは今だけだ。深海へと潜っていくような集中の感覚。サイガ-0は仮想の瞼を閉じる。
起爆の瞬間が訪れたら、サンラクが合図をしてくれることになっている。
<レイ氏、今だ!>
こんな感じで。
<レイ氏、今だ!>
『レ』が聞こえたら動き出す。
<レイ氏、今だ!>
ただ待つ。
『レ――』
(今)
サイガ-0は開眼して――。
『
「えっ!?!?!?!?!?!?」
自分に話しかけているのがサンラクではなく楽郎であったことに気づき、それまで考えていた全てが破綻し、ゲームオーバーになり、核爆弾を発動できず、なんかついでに転び、そうとうな低スコアを記録した。
リザルト画面で立ちすくむ彼女に対し、おそらくボイスチャットの向こうでは苦笑いをしているだろう、そんな声色で楽郎が言う。
『あー……惜しかったね。まあ
「……
『はい?』
「大まかな流れは把握しました。喉の痛みもあるでしょうし、通話は切っていただいて大丈夫です」
『いや玲さん、でも――』
「大丈夫、です」
そう言い切った
「その……掴んだ、ので」
今ならいくらでも核を撃てる。そう確信するに十分な
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サバイバル・ガンマン
ログデータ:ベータ
◇午前0時
サバイバル・ガンマンに連なる24の―――
◇午前1時
遠方の空から、複雑な形状をした欠片が飛んでくる―――
◇午前2時
午前0時から午前7時までの間にランダム発生する
◇午前3時
一人のプレイヤーが遠洋から泳いで来る。水飛沫を撒き散らしつつ砂浜にタッチすると、海岸を埋める
◇午前4時
そして数十分後、脈絡も無くばたりと倒れ、死ぬ……食あたりである。
◇午前5時
再び、
◇午前6時
そして数十分後、脈絡も無くばたりと倒れ、死ぬ……食あたりである。
◇午前7時
一艘の筏がやって来る―――
「ええと、木材は要らない海藻も要らない……ιのパーツだ、一応回収しとこう。ウオッマジかマスケット!!!!よーし回収回収……えーこの死体は何も持ってないっぽい……こんなもんか」
足跡だけを残して、筏と人は姿を消した。
◇午前8時
現実のそれと比較して2、3倍はある巨大な
◇午前9時
◇午前10時
筏に乗って数人のプレイヤーが上陸する。彼らは一切言葉を紡がず、ただ手に奇妙な動き―――
◇午前11時
一つの密閉された缶が流れ着く―――
◇午後0時
α船が座礁したらしく転覆し、諸々の積み荷が大海へと投げ出される……如何にVRといえど画質には限界があるため判別は困難だが……しかし、一つだけ
◇午後1時
「ウンババ!!!ウンババ!!!」
数人のプレイヤーと一層の筏が流れ着く―――
「トライデント、ザイリョウ、サガセ」
「オサ!!!オサ!!!ウンババ!!!」
プレイヤーたちが一斉に掲げた解体用携行トライデントが、陽光を反射してギラリと光った。
「オサ、カン、イル?」
「カン、トライデント、ツカエル、ナイ、イラヌ」
「ウンババー!!」
缶が投げ捨てられ、
「オサ、イカダ、イル?」
「イカダ、トライデント、ツカエル、ナイ、イラヌ」
「ウンババー!!」
一人用筏が放置され、
「オサ、シタイ、イル?」
「ホネ、トライデント、ツカエル、ツカエル、シアワセ、イル!!!!」
「ウンババー!!!!」
死体が解体され、
「オサ、ジンニク、イル?」
「ジンニク、トライデント、ツカエル、ナイ、イラヌ」
「ウンババ―!!」
人肉が放棄された。
そうして、40分と経たない内に―――孤島は、再び
◇午後2時
サバイバル・ガンマン―――引いてはVR全体には、『年齢別フィルタ』のシステムが存在する。すなわち利用者の年齢によって
◇午後3時
「レディも人が
一艘の筏の上に二人の男性―――双方、極端なまでの
「『β鯖のプレイヤーを食らいたいわ』なんてピンポイントでオーダーしてくるんだもんな……
降り立った二人は、雑談しながら浜辺を歩く。
「『マップの端と端が繋がってるからそこ経由すればショートカットできる戦法』みたいなのもできないっつー絶妙にアレな近さだもんな……どうせ過疎鯖を指定するなら、近い所でσ辺りにして欲しいわ」
「そもそも鯖によってプレイヤーの味って違うモンなの?」
「まあ、そうなんじゃね……って」
二人の内片割れが立ち止まり、足元を指差す。
「こんなところに死体が落ちてるじゃねーか!!!」
「ウオッマジだ、ここ基本的に無人島なのにやっぱ死ぬやつもいるんだなぁ……早速解体しようぜ!」
「よーしよしよし……アレ?」
「どうした」
「何だこりゃ……この死体、
「解体が楽に済んでいいじゃねえか」
「いやでも」
「どうせ骨なんて重要じゃないだろ」
「ウーンそうか……まあアレだ、多分骨角器マニアかなんかが持って行ったんだな」
二人は取り出しかけたナイフを仕舞うと、死体……いや、
◇午後4時
数人の人影が泳いで来る―――
傷口が痛むのか、悲痛な面持ちで座り込む彼ら。その内一人が言う。
「
そして全員倒れ、死ぬ……食あたりである。
◇午後5時
近海に7発ほどの
◇午後6時
一つの死体が流れ着く―――死体には全身に掛けて
『罪状:死刑
実刑:死刑
備考:死刑』
◇午後7時
α船でぶちまけられた貨物が、徐々に島へと流れて来る……最初に流れ着いたのは、
◇午後8時
モザイクでなお規制として足りない場合、VRエンジンは
◇午後9時
―――よし。
午前1時にこの島に来てからずっと…………ずぅ~~~~っと
乗ってきた筏が流されちゃったときはどうしようと思ったけど、代わりにεの人が補充してくれてなんとかなった。
鮫が流れ着いてきたときはひょっとしたら食われるんじゃないかと思ったけど、幸いこちらには気付かなかった。
θの連中が探しに来たときは見つかるかもと思ったけど、かくれんぼについては私の方が上手だった。
誰も……プレイヤーも、モンスターも、みんな
わたしは腕を、
「―――海岸が……随分と、
なぜ?―――思考の末、
「美化活動をする必要があるぜ―――そう思わないか、
―――珍しいほどに、
◇午後10時
「βとχは、
幼女―――
「……そういう貴方は、どうして」
「簡単な話だよ―――
それは、つまり。
「まさか、
「まあな―――流石に一度見ただけのχ民を探すのはキツいんで、尻尾を出すのを待たせてもらったぜ」
「…………」
絶句する。
「それで、お前はなぜ―――イヤいい、何となく分かった。お前、さては
「…………」
「黙るか?いいだろう―――当てて見せよう。そもそもωとχはかなり近い、ちょうどβから行くのと同じくらいの時間でお前はωまで行けたはずだ……いくら籠ってばっかりのχ鯖民でも、新実装されたサーバーに軽く下見に行くくらいはするかもしれない……というか、お前はしたんだ。そして何かを
「……何が言いたいの」
「分かってるんだろ?お前が
背後の幼女は……とても楽しそうで、とても幸せそうで、とても嬉しそうで……それでも、銃は何の感情も持たずに頸動脈を狙っていた。
「……認めないわ、わたしはそんなクソ戦犯ムーブしてない」
「裏付けだって取れるぜ―――まず明らかに漂着物が
「……要らなくなったアイテムを海に捨てただけかもしれないじゃない」
「τ鯖の【ノンフィクション】」
「……えっ」
「アレはどう説明するんだ、あの缶は
「…………」
「他にもあるぜ、例えばあの鮫。σなんてかなり遠くで活性化した鮫が、どうしてこんな辺境まで流れ着く?普通はもっと近くにある……λとか、φとかにまず行くだろう。φについては既に
「…………Ψ鯖の連中はなんで無事なのよ、Ψはωに最も近いのよ」
「
「………………シニャアアアアアアアアアス!!!!!!!!!!!」
「はいそこ」
幼女の構えたリボルバーは、反動と効果音を伴って弾丸を撃ち出し……そして、正確無比に
◇午後11時
仮想世界故か、若干誇張された感のある星空の元……
「まったく、別に戦犯だからってどうこうする気は無かったのになァ……」
そう、本物の静寂を掻き消して呟いた。
「…………」
そして、しばらく無言でアイテムを吟味し……
「…………あっこれヤバいわ」
呟きと共に
食あたりである。
◇午前0時
サバイバル・ガンマンに連なる24の―――閉ざされて
「うおおおおおグラ凄えなこれ……」
現在は、違う―――島の一角に、
「……いや凄いんだけど……コレMMOだよな?プレイヤーは?プレイヤーはどこにいるの?????」
呟きつつ、彼は砂浜を進む……波は昨日を全て掻き消し、砂には彼の足跡だけが記される。
そして、彼は発見する。
「……おっ、筏あんじゃん」
海岸にひっそりと泊められて、月明かりに影を落とす……
「……行くか」
彼は、迷わず進んだ。
◆
そして5分後、
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ブラックリスト・ボックスあるいはブラック・リストボックスあるいはブラックボックス・リスト
煌めく星空、騒めく星海、そしてそれらが混ざりゆく地平線。サバイバル・ガンマンの光夜は、相応の
「……なんだ、ありゃァ」
μサーバー、海岸線を観察していた男が、半径1メートルほどの静寂を乱した。しかして、それに影響を受ける者など砂粒の一かけらとして存在せず、静かな孤島の静かな時間ははそのまま過ぎていく。男は気を取り直すと、手に持った2枚のガラス板を摘み、先程視認した
それは、狂ったように放たれ続ける光を決して通さず、かといって反射もせず、延々と吸い取り続ける―――打ちゆく波に揺られつつ、星を黒へと置換する、一つの
ランダムで流れ着くアイテムにここまで大きな箱は存在しない。恐らく、他のサーバーからの
―――噴き出る赤色と共に、倒れた。
幼女は右手のナイフを振り、砂浜の一部を血痕で汚すと、箱に向かって歩き出す―――後にも先にも足跡は存在せず、これからも作られることは無いだろう。
◆
μ-skYは空を見上げた。
別に、月を貼り付けた黒が見たかったわけでも、黒を彩る星が見たかったわけでも、星を眺める月が見たかったわけでもない。ただ、
月明かりが照らすところによれば、この箱はどうやら
μ-skYはこのブラックボックスについて考える―――中には、一体何が入っているのだろう。脳内に展開した正体に関する
そこに至るまでのある程度の悩みと裏腹に、ナイフはあまりにも容易に壁を突き破って―――μ-skYが開封を終えた時、そこには―――
┳α
そこには、大量の
煙草、包帯、武器、
さしものμ-skYも、これには仰天―――というより、
それはまさしく、このゲームにおいての
月光が海面に呼応して揺れ始め、波音とともに何かの始まりを予感させた。
┣β
そこには、一人の
μ-skYはすぐさま態勢を整え、ナイフを巡手に持ち替えながら後退して距離を置く―――異常なほど煌めき続ける光たちが、男が出てくるのを
「……すみません」
直後、男が放ったその言葉によって、
「ここって、どこの鯖ですかね……?」
乱された。
┣γ
そこには、
「ッ!!」
咄嗟にナイフを投擲したμ-skYは、その反動に単純な跳躍を足すことで一気に後退した。一瞬遅れ、凝らした目が
「ふふふ……やあ、μ-skY」
当然のように右手の拳銃でナイフを
刹那の先にただ存在する転弾、ついでとばかりに投げ返されてくるナイフ。
しかし、それらの要素に全く臆することなく、それどころか逆に利用しようと狙い撃ってくる―――それこそが、アトバードという男なのだ。
デリンジャーを発砲、回避される。回避先を想定して撃っておいた2発目を撃墜され、、2発目を避けることを想定して撃った3発目は無駄に終わる。デリンジャーの残弾は3発、どうしてもという場合は
それは、二つのよく似た笑みだった。
┣δ
そこには、
飛びのいた
その視力を思い出したうえで、改めてμ-skYは箱を一瞥する―――
かつて中に入っていたかもしれない何かはすべて海水に駆逐されていて、その海水を呼び出した穴たちは、何の表情も持たずに月明かりを選別していた。
ちょうど、殺到する弾丸の盾にされたような穴だった。
┣ε
そこには、
「……ッ!?」
箱を開けた瞬間に襲い掛かった爆風に、身を焼かれそして飛ばされつつ、μ-skYはどうにか懐から煙草を取り出す―――辺りを文字通り爆発的に埋め尽くすことになった熱エネルギーにゲーム的補正を加えることで
―――ZOOOOOOO…………
「〈プレゼント〉」というその文字は、誰の目に触れることも無く砂に埋もれた。
┣ζ
そこには、双なる
反射的にμ-skYが飛び退き、足元の砂海が若干の波打ちを見せる。しかしてそれが何かに繋がったり、あるいはそれに何かが繋げてきたりすることは特に無く、静寂は依然として辺りに蔓延っている。
反射的に殺意の塊と化されたナイフを構えたまま、μ-skYは思案する―――これは何だろう。ιあたりの技術で作った眼球型爆弾?何かしらの儀具?それとも、
μ-skYは効くの限りを尽くしている夜目を駆使し、距離を置きつつ眼球を観察してみる。暗闇の中を紅眼が光り、眼前の眼に向けて視線を送りつける―――その時。
「……ッ!?」
眼前の、脈打たず、冷たく、黒ずんでいるその
「……」
だからこそ、
足を向けるは鬩ぎ合う波、音が響いて効を果たすその中心で、手にした二つの球体を、思い切り海に
瞬後に聞こえた
┣η
そこには、
箱の側面には「ηサーバー全体パーティー☆人間切断マジック!!」とポップな血文字で記されており、全体的に見ても親しみのある血模様が箱を包んでいた。暗闇の中でも設計者が明るい雰囲気を出すことを意図しているのは容易に伝わってきたし、その目論見が成功した時もきっとあったのだという確信を見る者に抱かせる……そんな箱だった。
今までにこの24の孤島群で作られた箱の中で、もっとも平和的なものはこれかもしれないな―――μ-skYはふとそんなことを考えた。そこには一切の暴力が関係せず、ただ
しかし、その考えは間違いであった。
┣θ
そこには、血図が
背後で音がする。風でも、波でも、虫でもない音がする。それは大箱が何かを
音は止まらない。恐らく攪乱が目的だ。果たして大箱の中のハンドサインが何を意味していて、それが背後の人物にどういった情報を与えたのか―――それはわからない。しかし、どうでもいいじゃないか。μ-skYは微笑んだ。自分はμ鯖のサイレント・キル・幼女、相手が何をしようとしているかなんて、いちいち確認するまでもない。
弾を込める。ナイフを持つ。姿勢を整える。戦いの準備を、始める。
風も、波も、虫も。いつの間にか、黙りこくった後だった。
┣ι
そこには、
箱が開かれたことで壁という軛から解放され、茶色たち―――大量の
「おぉう!?」
―――それこそ、μ-skYの小柄を、軽く埋め立ててしまうほどに。
土の大群から
血文字で「【カタパルト】計画:第3試射」と記された、その底面を風に晒して。
┣κ
そこには、「アァ~~~~すんませェ~~~ん」
「は?」
「あぁあったあった……ごめんなさいこれちょっと我々の物なんで、回収させてもらいますね」
「は?」
「いや~~~あってよかった、しかしλ挟んで隣の島に漂着するとは、随分運が良かったなぁ……おかげで泳ぐのも十キロほどで済みましたよ」
「は?」
「あ、じゃあ失礼します!どうもありがとうございました……良い夜を!!」
「は?」
「ウオァァァァァァァァ!!!!!!」
「は?」
「は?」
┣λ
そこには、何も存在しなかった。
厳密に言うならば、この言葉は正確ではない―――箱の内部にこびり付いた
月明かりが照らすぼろつきは、その箱が明らかに長期間に渡り使い込まれたものであることを語っていた。星明りが照らすべたつきは、その血が明らかに短期間のうちに付着したものであることを語っていた。
誰かが、その中身を食らったとでも言うのだろうか。
┣μ
そこには、
「なッ……!!」
この場合のμ-skYとは、
「……ァッ!!!」
文字通りの意味だ―――『
「……
―――『サイレントキル』要素、それだけである。
箱から出てこなかった方のμ-skYが初手で
PvPが、始まった。
┣ν
そこには、青い髪をした
全身の
「……なァ~~~に持ってるかなァ」
―――言い換えれば、μ-skYの格好の餌に他ならなかった。
慣れを感じさせる手際で亡骸の身ぐるみを剥ぎ始める幼女を、仮想の月は感情なき光で見下ろしていて……
亡骸の首に提げられた「判決:死刑」という木製の板を、ついでに軽く光で照らした。
板の裏側に刻まれた二本の直線が、受けた光にその溝を浮かび上がらせた。
┣ξ
そこには、
箱全体を埋め尽くす髪は、月明かりを受けて絵に描いたような金色に輝き、そのうねり入り組む全貌に可視性を持たせた。髪は時に蛇行し、時に分岐し、時に袋小路を作り―――何千、何万、ひょっとしたら何十万の
ドリルツインテールだったのである。
μ-skYは不思議げにその持ち主なき髪を引っ張り出し始め、乾燥した金色と潮風は出会い始める。それらの作業が完了するころ、この巨大な箱の奥底に、
“
┣ο
そこには、
デザインは極めて洗練されており、そのデザインを実現するクオリティも高い。
細部まで
衣装全体が、もっと言えば箱全体が、調和の取れたバランスで周囲の感情に訴えかけている。
添えられた『かなこ様へ』と情熱を感じる血文字で記されたカードも踏まえて、それはまさしく完璧な
もっとも、衣装全体にべたりと付着した赤黒い血液を除けばの話だが。
┣π
そこには、
μ-skYは首を傾げつつ、まあ多少の過剰包装なんてよくあることだろうと開封を続ける。それまで突き立ててきたナイフによって内部の箱は若干傷つけられており、作業は楽に終わった。
そうして開封が終えられたとき、そこには
μ-skYはさらに首を傾げ、何かの弾みでゴキリというSEが孤島の喧騒のうち極1部を占める運びとなった。μ-skYは眼前の光景から何となく嫌な予感を感じ取ったが、それでもまだ作業を続けようと決断した。
そうして開封が終えられたとき、そこには
そうして開封が終えられたとき、そこには
「……」
μ-skYはもはや何も言わず、黙って延々と作業を遂行することにした。
そこには、何もなかったのだ。
まるで、誰かに切り取られてしまったかのように。
┣ρ
そこには、拘束された小柄な
μ-skYは反射的に拳銃を構えたが、プレイヤーがいくら足掻こうと決してほどかれない拘束を一見した後、その必要性がないことを悟って銃を下ろした。
プレイヤーの眼―――口には、当然のように
一先ずプレイヤーの息の根を止めようと箱に入り込む。反撃を絶対に受けないよう細心の注意を払って、あたりを隅々まで見渡しながら、
『νサーバーの皆様へ』と孤島においては異常なほど綺麗な文字で題された、一つの小綺麗な封筒を。
そのプレイヤーは、青い髪をしていた。
┣σ
そこには、
「……なッ!!」
μ-skYは
―――PHOOOOOOOO
突進、である。
異島よりの来訪者との戦闘を継続しつつ、μ-skYは夜明けまでにこれが終わるかを考え始めていた。敗北などというものは考えもせず、一つの島を滅ぼしせしめた兎たちのそのうち一匹と、ただ渡り合うことを考えた。
┣τ
そこには、一束の
どこからともなく孤島へと流れ着くアイテム群には、時に
生物兵器の類を危惧しつつ束を手に取る
“
ライオットブラッドの"正体"こそが枝となって世界を分岐させるというのはもはや有名極まりない話だが、それは果たしてゲームの世界でも適用されるのだろうか。
ふと思い立った私は、ちょうど保管してあったライオットブラッド・フィクションそしてこの文書を大きな箱に詰めて海に流すことにした。
ライオットブラッド・フィクションの"正体"がこの世界に及ぼす影響は恐らく軽微で、せいぜいが少しの乱数を左右する程度のものだと思われる。
しかし、"大きな箱"という要素を同時に加えることで―――いわば、"型"を定着させることが可能なはずだ。
効果がいつ現れるのかはわからない。だが、この試みがもし成功したとするならば、ライオットブラッド・フィクション
繰り返そう―――
この実験の成功は、世界の枝分かれをそのまま意味する。
書類の裏側には何かのマークらしきものが記されていたが
┣υ
そこには、
「……ッ!?」
箱を開けた瞬間に襲い掛かった爆風に、身を焼かれそして飛ばされつつ、μ-skYはどうにか懐から煙草を取り出す―――辺りを文字通り爆発的に埋め尽くすことになった熱エネルギーにゲーム的補正を加えることで
―――ZOOOOOOO…………
「〈プレゼント〉」というその文字は、誰の目に触れることも無く砂に埋もれた。
┣φ
そこには、
「ッ!!」
咄嗟にナイフを投擲したμ-skYは、その反動に単純な跳躍を足すことで一気に後退した。一瞬遅れ、凝らした目が
「ククク……よう、μ-skY」
当然のように右手でナイフを
刹那の先にただ存在する疾走、投げ返されてくるナイフ。
しかし、それらの要素に全く臆することなく、それどころか気にも留めずに襲い掛かってくる―――それこそが、バイバアルという男なのだ。
デリンジャーを発砲、回避される。回避先を想定して撃っておいた2発目をナイフで弾かれ、2発目を避けることを想定して撃った3発目は無駄に終わる。デリンジャーの残弾は3発、どうしてもという場合は
それは、二つのよく似た笑みだった。
┣χ
そこには、
そう箱の中身を認識した後、μ-skYは微かな違和感を覚えた―――なぜ、自分は"
その疑問が何かの……例えば、その高く設定された視力でもって、一度海岸全体を見渡してみるだとかの行動につながることは、さして無かったのだ。
流れ星が闇夜を切り裂いたが、
┣ψ
そこには、巨大な
μ-skYの身長がかなり小さい方であることを踏まえても、その風貌は依然として巨大なものと言えた。何かしらの金属が使われているらしき穂先、なめらかで整ったフォルムを持つ柄、その造形技術を見せびらかすがごとく施された装飾―――それはまさしく、
「……?」
μ-skYはひとまずトライデントを認識したあと、一つの疑問を覚えた―――このトライデントがΨサーバーから流れ着いたことについては、まあほぼ確定でいいだろう。しかし……あのサーバー、
そして、その疑問は尤もなものだった。これでトライデントが例えば骨とか、更に低いレベルを想定するなら木の棒とかによって作られているなら、それは正しく現在のΨサーバーの文明レベルを反映していると言える。そしてこのトライデントがそういった材質を持たない以上、導出できる結論は一つだ―――このトライデントが作られたのは、そもそも
μ-skYが、箱の内側に小さく(やはり造形技術を見せびらかすがごとく)彫り込まれた
┗ω
そこには、大量の
煙草、包帯、武器、
さしものμ-skYも、これには仰天―――というより、
それはまさしく、このゲームにおいての
だからこそ―――
夢は未だ、覚める気配が無い。
月光が海面に呼応して揺れ始め、波音とともに何かの始まりを予感させた。
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罪過
それは、すべての始まりだった。
ギリシャサーバーの中で最も
すべての始まりのその瞬間まで、罪というものは存在しえない。始まっていない、つまり
だからこそ。
「……おいおいおい」
そのサーバーに最初のプレイヤーが降り立つまで、この二十四島に罪は存在しなかった。
「…………グラ凄すぎだろ」
それは見方を替えれば、彼が―――
「……俺以外に……まだ、誰もいないんだよな」
―――
♰α♰
罪状は、流刑という事になっていた。
どこで言い渡されたのかはわからない。とは言え
とりあえず顔を上げてみて、太陽の存在を確認する―――昼間だ。同時に、バカの大声が聞こえないことからここがφではないことを理解し、ローラーチェーンの軋みが聞こえないことからιではないことを理解し、
そんな疑問が頭を
かつて自分が放り出した砂浜を、水濡れの足で踏みしめた。
♰β♰
「構えェーーーッ!!」
その瞬間、銃殺刑が開始された。
或いは既に開始されていたと言えるかもしれないが、それは揚げ足を取る類の言説だ。何せ、構えられるその瞬間までそもそも銃は
「……ちょっと待てやコラ」
そこで、先ほどの発言に異が唱えられる。
「……どうした
「そういう事じゃねェよ……」
古典的な拘束具に身を包まれる男は、現状にこれでもかと不満をぶつけ始めた。
「ゴミクズだよ……お前ら全員ゴミクズ!まず構えがなってない、そんなヘナチョコポーズ構え~~って言われてやるモノか?コラ。ここをノベルゲーと間違えてるんじゃねーだろうな」
「どうでもいいだろそんな事ー!」
非難が飛ぶ。
「そりゃお前らのポーズはどうでもいいさ!何せさっき言った通りお前らは全員ゴミクズなわけで、わざわざゴミクズのポーズに気を掛ける必要はない!……だがなァ、ゴミクズに構えられる銃の気持ちにもなってみろよ!」
非難を飛ばす。
「ふざけんなー!お前ごときより俺の方がずっと銃を理解してるぞー!」
「そうだそうだ、俺の方が理解してるー!」
「ふざけやがってー!」
非難の応酬が発生する。
「そもそも冷静に考えて銃殺って刑罰として成り立ってなくね?」
誰かが呟いた。
「確かに」
「だよなぁ」
「銃殺されるのってゲーム内だったらめちゃくちゃ楽しいもんな」
「罪過の生産手段として軽すぎるよな」
「なんなら重さマイナスまであるよな」
賛同の声が集まる。
「……待てよ?つまり、銃殺は
「そういう事になるな」
「じゃあ銃殺し合えば銃殺し合うだけ楽しいじゃん」
「そういう事になるな」
「だったらさぁ……
「……?」
「つまり俺たちが銃殺し合いまくってドンドン楽しんでいる中で、死刑囚だけ蚊帳の外で俺たちが楽しんでいるのを見守るしかない……ってモデルだ」
「なるほど!」
「確かに苦しさ0でも苦しさマイナス100と比べれば相対的には苦しいな!」
「その例えはよくわからん」
「つまり残弾1のマガジンより残弾30のマガジンの方がずっと優れてるってことだよ!」
「なるほど!!!!!!」
「よし、さっそく殺し合おうぜ!」
「死刑囚を流れ弾で死刑しちゃわないよう注意しないとな!」
「一発目行くぞ~~~!!!」
轟音が響き、罪過が散った。
♰γ♰
男が二人いる。
両者ともに、あまりに典型的で、陳腐で、簡素なキャラクターメイクを施している―――それこそ、見分けがつかなくなるほどに。無人島と化して久しいこのδサーバーを、この瞬間だけ
δサーバーには、最初から最後まで罪と言う概念が存在しなかった。罪には与える側と与えられる側の2種類が存在しなければならない。しかし、かつて
その面影は、最早無い。
現在のδサーバーには罪過が渦巻いている。正確に言うと、罪過
効果音が、響いた。
アバターが一つ倒れるのを確認したもう一つのアバターが、物も言わずに海岸へと歩いていく。
5分後、無人島は再来した。
♰δ♰
「υ許すまじ!!!!」
「「「「「「υ許すまじ!!!!!」」」」」」
歓声とも怒号ともつかない声が、辺りを埋め尽くす。
「さあ諸君!見たまえ、そして知りたまえ!υの住民が織りなしてきた野蛮と暴力の歴史、そのごくごく一部を!」
一人のプレイヤーが演説をしている。どこか無機質な印象を与える服装は、その実このサーバー全体で
サバイバル・ガンマンは基本的に極限サバイバルゲームだが、一部の要素はなかなかにゲーム的なものだ……それは例えばデスペナルティ、もしくは―――スクリーンショットの、共有。
二つの人影が一つのスクリーンに出現し、数百の瞳に映りこむ。
一つの人影と一つの死体へと画面が移り変わり、誰かが小さく悲鳴を上げる。
「見たまえ―――この、倒れたのが誰かが分かるかね!?」
「誰だ?」「誰だ?」「いったい誰なんだ!?」
「そう……我らが同胞、εの住人に他ならない!」
「なんだって!?」「ε民なのか!?」「どうして!?」
「では次に……この、銃を撃ったのが誰かがわかるかね!?」
「υの野郎だ!」「υだ!」「υに違いない!」
「そうだろうとも……そうだろうとも!いいか、υの連中はこのように、とんでもない悪事を働いてきた!君たちは、奴らの薄汚い毒牙にかかりたいかね!」
「絶対に嫌だ!」「嫌に決まっている!」「想像するだけで寒気がする!」
「そうだろうとも、嫌だろうとも!―――ならばここに宣言しよう、我々は、断固として彼らに抵抗するのだと!」
「「「オオオオオオ!!!!!」」」「何でこんな遠くからの撮影でυ民だってわかったんだ……?」
「ユプシロン鯖は一人も生かすな!!!」「連れていけ」
「「「ウオオオオオオオオ!!!!!!!!」」」
止まらずに、罪過だけが生み出され続けていた。
♰ε♰
天守閣 卵白は、ピラニアの餌食にならないよう足元に注意しつつ、前方の
VRゲームにおいてスクリーンとはすなわち
目を、凝らします。
見えるのは―――二つのアバター。両者は簡素なキャラメイク故瓜二つで、少し目を離しているうちに入れ替わっていても気づかないかもしれません。そしてだからこそ、彼は瞬き一つ行わず、妙にリアルな仕様によって目が乾き始めることも厭わず、とにかく両者を
両者は銃を持っている、その事実を、ゲームという媒体故に異様に強化された双眼が伝えます。それはすなわち未来において
待ちます。
待ちます。
待ちます。
待ち―――発砲―――シャッターを切り、もう1枚分の先行入力を行います。
サバイバルゲームに似合わない近代的ユーザーインターフェースが、彼に行動の
ほとんど同時に……いえ、それより早かったかもしれません。彼は安堵と共に、思わずこう呟いたのです。
「……さて、どこに投げ込もうか」
罪過は、伝播します。
♰ζ♰
筏がある。
かつて存在していただけで、巨大なる抗争を発生させた筏だ。そこには「YEAH☆イータ魂」「マジおもろい!青春の道」などと言った益体も無い怪しげなフレーズが血文字にて羅列されている。そんな益体も無い文字たちの存在も、またあの巨大なる抗争の他ならぬ一因となっていた。
筏がある。
クオリティが低く、今にも壊れてしまいそうな筏だ。しかし謎の
筏がある。
結構に巨大な形状をしており、十数人程度なら乗り込めそうな筏だ。とはいえその行動が実際に適うことは無く、筏のついでに砂浜にも血模様が描かれる事態を招くばかりだった。もはや叶わなくなった航海を認めないかのように、差し込む陽光は異様なほど強い。
筏がある。
妙に不揃いな木材を妙に不揃いな蔓で束ねて作られた、歪な筏だ。そこに至るまでの共同作業の数々は、多少の歪さをそのまま「面白さ」として置換することに成功しており、例え本来の長さより5メートル短い木材が納品されたとしても「見ろよこいつwwwww5メートルも間違えてやがるwwwwww」と笑うだけで普通に筏に使いかねなかった。というより、実際に使った。彼らは、自分たち同士で罪過を認め合うことを決してしなかったから。
筏がある。
かつて存在していただけで、巨大なる抗争を発生させた筏だ。自分たち同士で罪というものを認め合わないサーバーに、それそのものが罪過の持ち主であるという糾弾を与えるに至った筏だ。とは言えすべては過去の話で、侵攻者たちは自分たちの
筏がある。
♰η♰
悲鳴一つ聞こえない静けさが、青空の下で蔓延っていた。
θサーバーにおける罪過の清算方法は、他の大体のサーバーと同じように
かつての彼らは、単に人との交流を嫌うだけだった。そのために静かであるよう努め、コミュニケーションは最低限のハンドサインで済ませた。しかしその結果、
よって。
「……」
ここに、
「……」
処刑者は無言、罪人は無言、当然のことながら立会人も無言。形成される異様な空間の中、小さな―――本当に小さな
「……」
繰り返される義務的な殴打には、何かしらの儀式を思わせる側面があった。
「……?」
そして、誰もが次第に気付き始めた。
罪人、或いは死刑囚は……
そして、爆発が発生した。
処刑の手段としてより手早く済むナイフではなくわざわざ拳が選択されているのは、非常時に手が塞がっているとサインを出すことができないからだ―――だからこそ。
「…………!!!」
有効活用されたその利点によって、
KAAAAAAAAAAAAAAAA…………
「……!!!!!!」
しかし、それは既に遅く。
突如として天空より飛来した巨大生物―――
♰θ♰
よう、随分久しぶりの新顔だな……まあ、実際に顔が見えるわけではないけど。どうだ、とりあえず身の上話を……なんだって、
♰ι♰
まさにその時、幕が開いた。
何の幕か?
日光を受け白く輝く獰猛さの象徴のごとき牙にも怯まず、唯一の得物たる量の拳で持って群れを成すそれらをこれでもかと攻撃する!
大海の中の一つの果て、極めて熾烈な争いである!
「うおおおおお!!!」
「「「「うおおおおおお!!!!」」」」
誰かの一つの叫びが、誰かたちの十数の叫びによって返答される!それはさながら衝突する波紋、彼らにとってはごくごく見慣れた光景だ!潜り込んだ海から垣間見える揺れ動く
SHAAAAAAAAAAAAA!!!
ピラニアの群れが散り、またκサーバー民の群れも散る。両者における唯一の違いと言えば
「よっしゃあああああああああああ!!!!」
彼らの戦いに……蠢く罪過が描き出す輪廻に、終わりは決して存在しない!!
♰κ♰
罪過が積みあがっている。
サバイバル・ガンマンにおいて、死体は非アクティブ……要するに
罪過が一つ、手に取られる。
それは要するに、死体を保存するだけでも
罪過が貪られる音がする。
男は罪過を己と重ね合わせ、いずれ必ず到来するその罪にまみれた瞬間を夢想して、期待に胸を膨らませ、顔面を露骨ににやつかせた。
罪過が一つ減り、また別の罪過が発生した。
♰λ♰
μサーバーに罪過は存在しない。
「はぁッ、はァッ、ハァッ」
なぜかと言えば、
「クソ、クソがッ!!」
「やめろ……来るなよ、こっちに来るな!」
μ-skYは答えない。しかし標的を負う足取りが遅れず、それどころか速くすらなっていることだけでも、彼女は十分に
「ひぃ、ヒィィッ!」
必死で打ち込んだ銃弾は掠るどころか明後日の方向に飛び、後方の幼女の足止め一つ成さない。プレイヤーは絶望の淵で、今自分がどうすればいいか、考えて―――
「
―――地面に、押し付けられた。
「が―――」
―――四肢が、いつの間にか存在しない。
「ねんねん……」
―――最後の力を振り絞って首を動かし、何やら
「……ぁぁ」
―――それは、太陽のような笑顔だった。
μサーバーに罪過は存在しない。
♰μ♰
少なくとも、
♰μ♰
νサーバーには罪過しか存在しない。
「お前、これで何処刑め?」
「13だな」
「あ~~~負けた!俺11だわ」
他愛もない会話が、首を固定する木材の隙間で交わされる。
ざん、と、何かが斬り落とされる音が聞こえる。
「今回は何で処刑されるわけ?」
「『サーバー名間違え罪』だな」
「お、同じだ」
ざん、と、またしても音が聞こえる。
「いや~~しかしこの斬首式処刑にはまだ慣れないなあ」
「なんか違和感あるよな、前の磔式の気分が抜けきってねーわ」
「磔式、やっぱ効率性に劣るからな……」
ざん、ざん、と、音がだんだん近づいてくる。
「まあ慣れが肝心だよ、結局はこの斬首式だって、もう5回くらいやられれば逆に磔に戻れなくなるはずだ」
「……ああ、そうだな!」
「さて、そろそろだな」
ざん、ざん、ざん。音が、つい間近まで迫っている。
「おしゃべりはこの辺にしておこうぜ」
「ああ、『処刑中私語罪』で
「よし、それじゃあ―――」
ざん。
「」
ざん。
「」
ざん。ざん。ざん。ざん。
罪過が無限に生み出され、無限に清算されていった。
♰ν♰
髪がそのまま強さを表す場合、
今、まさにそれが確かめられようとしている。
「……よし」
両手に握ったナイフ2本の感触を確かめつつ、プレイヤーは
「……へへ……」
しかし、実際は違った。
彼は、この島に……というより、この
「もう少しだ、もう少し……」
既に、前方に髪の先端は見えている。
あのにっくきHigh飛車の髪だ。本体……つまるところもう片方の先端は視界に入っていないが、そんなものの位置は極めてどうでもいいことだ。
暗闇にも拘らずどこからか光を受けて輝くナイフを、笑みと共に翳す。
さあ、と言おうとした。
「さ―――」
あ、が出る前に、
おかしい、髪は確かに前方に、数メートルも先にあるはずだ。突然赤く変転する視界を通して考える。そして、答えを出す―――そうか、
未然に防がれた罪過が、血液を流し地べたに伏した。
♰ξ♰
かなり根深い所で言い争いが起こっている。
「我らがピノン様の民に決まっておろう!」
「違うにゃ!ニャンジェルさまにゃ!」
「リスリスちゃんだと思うッス」
「かなこ」
「明らかにSHELLYたんでしょう!」
「……ゆ、違うゆぅ、これも違う、うゅ……発音できねえ……」
「あ、僕帰ります」
元はと言えば、問題は一つの殺人から始まった。
このサーバーには7つの支配者が存在し、それぞれが別々の
「往生際が悪いぞ貴様ら!
「いいやにゃ!火炙りが正解にゃ!」
「絞首刑が最強ッス」
「かなこ」
「SHELLYたん大解剖ショーの非検体ですよ!いやあ、幸せ者ですね!」
「……ゆ、なわけあるか……逆に『め』だけ?そんなはずないし……」
……そう、確かに殺人は罪だ。だが、その罪過を
彼らが作る議論の
「うるさいぞ貴様ら!そもそも殺されたのは我らがピノン様の民、であれば裁くのも我らに決まっておろう!」
「にゃんだと!?こいつはもともとニャンジェル様に忠誠を誓っていたにゃ!裁くべきはニャンジェル様にゃ!」
「でも死体が横たわってたのはリスリスちゃんの領地ッスよ」
「かなこ」
「肝心の殺人が起こったのはSHELLYたんの領地だって検証見てないんですか!?」
「ゅ……あれ?今言えたんじゃね?ゅ……よし、ゅか、ゅか!!!やった!!!!!」
議論が紛糾している。
被告人の顔はどんどん青ざめていく。すべてに絶望したかのような態度が徐々に色濃くなり、またそれに伴って頭のうなだれ具合も増加していく。そして。
「うわああああああ!!!」
「「「「「あ」」」」」
「かなこ」
人と人が作る隙間をかいくぐり、被告人は地を蹴り走り……そして、目の前の断崖へと……一直線に、落下していった。
「「「「「「…………」」」」」」
「……………ふう」
「どうするにゃ?」
「そうッスね……」
「かなこ」
「……お開き、ですかね?」
「ゅゅゅゅゅゅゅゅゅゅゅゅゅゅゅゅゅゅゅゅゅ」
かくして、罪過の清算は終えられた。
♰ο♰
おっぱい罪。
♰π♰
ロールプレイへたくそ罪。
♰ρ♰
結論から言って、σサーバーの住民はかなりの罪過を背負っている。
最も大きな原因は何かと言えば、名前がかっこいいことではないし、φの進行を許したことでもない―――
このゲームにおいて、孤島たちは
簡潔に言えば、
KAAAAAAAAAAAAAAAA…………
巨大な烏が空に飛び立ち、
SHAAAAAAAAAAAAA!!!
無数のピラニアが群れ成し海を往く。
スタンピードイベントは、サーバーに
「おい、待て、よ……」
呼び止める誰かの声も虚しく。
「待て、って……がはっ」
薄らみ行く骸の中に、ただ反響して消えるのみだ。
♰σ♰
「ライオットブラッド・アンデッド飲んだ?」
二人のプレイヤーのうち一人が陽光を浴びながら聞いたので、もう一人は答えた。
「もちろん発売日前日に買って日本版1本米国版2本飲んだぜ!最高だったな!」
「ああ、最高だった!」
「いや~~~エナジーカイザーに台頭して新フレーバーまで結構待ったけど、価値は十分あったよな!」
「ああ、ミント風味が五臓六腑に染みわたった!」
そんな会話が繰り広げられているところに、
「死ねェ~~~ッ!!!」
脈絡もなく
「うるせ~~~!!!!」
プレイヤーのうち一人がそれを殺害し、ついでに装備品を奪い取った。
「何だ今の」
「多分栄養ドリンク勢の奴らじゃないか?懲りないよなああいつらも」
横たわる
「というかさあ……実は今朝、新しい飲み方を試してみたんだよ」
「へえ?どんなやり方なんだ」
死体が、徐々にその透明度を増していく。
「無印とアンデッドを1つの缶に半分ずつ注いで、一気に飲んでみたんだ!なんか尋常じゃなくキマって驚いたぜ!」
「なんだって!?それは考えたことなかったな……そうか、アクセル、レジストに加えてフレーバーが増えたことで三つ目の摂取法が生まれたわけか!名前は何にしたんだ?」
誰にも見向きもされないままに、死体は―――
「ああ―――ミックス、だ」
「なるほど、こいつはまさに新時代のエナジードリンキングだな……
―――このサーバーの根底に存在する罪過を象徴するように、消えていった。
♰τ♰
「ε許すまじ!!!!」
「「「「「「ε許すまじ!!!!!」」」」」」
歓声とも怒号ともつかない声が、辺りを埋め尽くす。
「さあ諸君!見たまえ、そして知りたまえ!εの住民が織りなしてきた野蛮と暴力の歴史、そのごくごく一部を!」
一人のプレイヤーが演説をしている。どこか無機質な印象を与える服装は、その実このサーバー全体で
サバイバル・ガンマンは基本的に極限サバイバルゲームだが、一部の要素はなかなかにゲーム的なものだ……それは例えばデスペナルティ、もしくは―――スクリーンショットの、共有。
二つの人影が一つのスクリーンに出現し、数百の瞳に映りこむ。
一つの人影と一つの死体へと画面が移り変わり、誰かが小さく悲鳴を上げる。
「見たまえ―――この、倒れたのが誰かが分かるかね!?」
「誰だ?」「誰だ?」「いったい誰なんだ!?」
「そう……我らが同胞、υの住人に他ならない!」
「なんだって!?」「υ民なのか!?」「どうして!?」
「では次に……この、銃を撃ったのが誰かがわかるかね!?」
「εの野郎だ!」「εだ!」「εに違いない!」
「そうだろうとも……そうだろうとも!いいか、εの連中はこのように、とんでもない悪事を働いてきた!君たちは、奴らの薄汚い毒牙にかかりたいかね!」
「絶対に嫌だ!」「嫌に決まっている!」「想像するだけで寒気がする!」
「そうだろうとも、嫌だろうとも!―――ならばここに宣言しよう、我々は、断固として彼らに抵抗するのだと!」
「「「オオオオオオ!!!!!」」」「何でこんな遠くからの撮影でε民だってわかったんだ……?」
「イプシロン鯖の奴らに人権はねぇ!!!」「連れていけ」
「「「ウオオオオオオオオ!!!!!!!!」」」
止まらずに、罪過だけが生み出され続けていた。
♰υ♰
筏作りは、終始罪悪感にまみれた作業だった。
何せ、己の両手は他ならず
だとしても、罪悪感はある。
ふと、辺りを見渡す―――同じ信念を宿す仲間たちが、それでも斧という誘惑に抗えず文明の効率に身を費やす姿が見える。それは間違いではないだろう、
「……はァ」
だが……それも、仕方のないことだ。積み上げた罪過は因果を動かし、時に自分を
「…………」
ふと、無言で
恐ろしく美しい青い海と、恐ろしく毒々しい
♰φ♰
サバイバル・ガンマンで最も平和ではないサーバーを聞けば、返ってくる答えは様々だ―――基本的にはμやλが強いが、εやυにも両者
だが―――最も平和なサーバーを聞いた場合、果たしてどのような答えが返ってくるか。まず挙がるのはほぼ無人のβ、δ、σなどだが、σについてはスタンピードイベントの余波が未だ残っているため除外されるし、残り2つについても
となると―――結局のところ、一番いいのは
「……よし、
―――世界を果たさんとする
「オッ見ろ砂浜に銃が落ちてるぜ!ラッキィ~~~ッ!!」
「ウワほんとだ、よこせ!そいつは俺の銃だぞ!」
「うるせ~~!!!」
銃声が鳴り響き、赤色の罪過が砂たちを濡らした。
突如勃発した猟奇的事件への反応は薄い。この空間における
では共犯者たちは何をするかと言えば、それは各々によって違う―――ある者は
だからこそ。
「……おい、おいヤベェぞ!!」
「セプテントリオンが―――やらかした!!」
その時、人が、事実が―――そして罪過が、隠れるのをやめ公に晒された。
♰χ♰
月明かりが、寂しげに差し込んでいた。
「…………はぁ」
砂浜に一人、プレイヤーが座る。サバイバル・ガンマンは
実際のところそれはあまりに不十分で、砂浜は暗闇の底だった。
プレイヤーはふと立ち上がり、どこへともなく彷徨い始めた。ここ一時間で十三回目だ。破壊されてしまった何かの
そもそも、誰が悪かったのだろう?プレイヤーは考えた。文明を直接的に破壊したのは確かに
さざ波は答えない。崩壊した文明のごとく、もしくは人の手が加えられていない自然のごとく、野放図に押し寄せ去っていく。尤も、暗闇はその姿すら隠してしまったのだが。
そう……ある程度まで来た文明は、誰かに
そんな風に思いを馳せながら歩いていたところで、プレイヤーは
地面に刺さったトライデントに、つまずいたのだ。
体勢を立て直して、屈みこんで、拾い上げたそれを抱きしめた。
ああ、懐かしいな―――プレイヤーは思った。もはや、罪を持っているか持っていないかにかかわらず、ただあの頃に戻りたいという欲求だけがそこにあった。プレイヤーは泣こうとしたが、この世界に涙は定義されていないので泣けなかった。
そして、その時。
「……?」
プレイヤーの目の前に、突然
♰ψ♰
「……クソが」
目の前のウィンドウを一瞥し、男は呟いた。
とにかく強調された
辺りにエンド・コンテンツが広がっている。
それはずっと体験してみたかった場所だ。「ωサーバーだけ無いの怪しいよな」とか「待てば端っこの方に実装されるんじゃね?」といった噂は正しく、彼はその出身地の
だが、サービスはもうすぐ
「…………クソがッッッ!」
殴る。そのあたりに生えている木を、殴る。拳からの出血を厭わず、殴る。あからさまに生えている棘を無し、殴る。木がオブジェクトとしての耐久値を全損して
「……
♰ω♰
それは、すべての終わりだった。
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孤愁
人を撃ちたい。
アトバードはふとそう思った。
「……ショットガンのリコイルはもうちょっと大げさにした方が良いな……あと反動は逆にデカすぎ、操作感が損なわれてる」
立ち上る硝煙を浴びつつ、まったく関係ないことを呟く……その実それはいわば
両手の銃器に落としていた視線を戻し、辺りを見回す。
「……こんな
サバイバル・ガンマンのオフラインモードは、今日もプレイヤーに
人を撃ちたい。
◇
「……
呟くと、アトバードはマスケットを構えた。
現在鋭意開発中の
デモ版をプレイした記憶を呼び起こしつつ、どれくらい
「GYEAAAAAAAAAAAAA!!!」
惨猿特有の一瞬音量調整を間違えているんじゃないかと錯覚するほどの絶叫も、ヤシロバードにとっては
「……リロードアクションはもうちょっと座標的にズラした方が忠実だな……」
怒涛の攻撃を回避し、撃つ。
「弾速は問題ない……けど、引き金を引いてから弾が出るまでに若干ラグがあるのかな?」
カウンターとして跳躍を行い、撃つ。
「屑癌はちょっと重力の影響を受けすぎかもな……調整しよう」
外見から言って最後の物になるであろう弾丸を、撃つ。
かくして事切れた惨猿と、十分に収集できた研究データを前に、それでもなおアトバードは
人を撃ちたい。
◇
森は暗かった。
右手に
「……ッ!」
ふと振り返り、その先に銃を突き付けてみる。そうすればそこに、自分をサイレント・キルしようと幼女が立っているかのように思えたからだ。
確かに森は
しかし、実際のところそこには誰も居なかった。
「……当然だよな」
そう、当然―――あまりにも当然なのだ。だってここは
それをわかっていても、アトバードは思わずにはいられなかった。
人を撃ちたい。
◇
「……閃いた」
そう、そうして彼は閃いたのだ。
アトバードは立ち止まった。
マガジンを取り出した。
装填した。
スライドを引き、独特のSEが伝える発射準備の完了を把握した。
あの頃から今までずっと変わらない、アメリカで聞いた
辺りを見渡した。
やはり当然のことながら人は一人としておらず、かといって代わりに己の行動を遮る
安全装置を解除した。
「……よし」
アトバードは満面の笑みを浮かべると、引き金を勢いよく引いて人を撃った。
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筏を作ろう!:μ
「筏を作ろう!」
そう発言した4秒後、プレイヤーの首は走る鮮血と共に落ちた。
暗殺されたのだ。
「ああ、そうだな!」
そう発言した3秒後、プレイヤーの首は走る鮮血と共に落ちた。
暗殺されたのだ。
先ほどのプレイヤーの発言から2秒後に発言したので、この空間に
「……いかだ、ね」
刃から滴る血液すらもどこか静かに感じさせる、そんな騒音の対極のような幼女は、横たわるふたつの死体を眺めながら呟いた。
それは本当に小さな……ともすれば、
そんな、三日月ののぼる夜の事だったのだ。
◇
μ-skYは筏作りを開始した。
材料は、先ほどキルしたプレイヤーたちが用意してくれた。
一つの筏が作れるほどの大量の木材を用意するためには、相当の手間がかかっただろう……それをこの
「よっ」
またしても、呟きなのか思索なのかを本人にしか断定できないような、恐ろしく小さな呟きをふと発する。そしてその勢いで、7本目の丸太を紐の上に移動させる。幼女というキャラメイクは何かと便利だが、こういう
「ふう」
サバイバル・ガンマンは他のゲームと比べてもとんでもなくリアルだ。それは
そして、そのリアルさの一例こそが……汗、である。
単純に実装が難しいのもあるだろうが(実際、このレベルの技術が当然になるのは
でも、
服をべとりと湿らせ、透かして背中に貼り付けるその感覚は、まるで自分自身が溶け出すような……現実ではなく、この
汚れた(汚れる、というのもこのゲーム以外では早々見られない表現だ)服をより一層汚さんとする、滴る液体たちを拭いながら、μ-skYは8本目の丸太を移動させた。
◇
「筏を作ろう!」
そう発言した2秒後、プレイヤーの脳天は飛ぶ鮮血と共に開いた。
暗殺されたのだ。
「ああ、そ……えっ?」
そう発言した1秒後、プレイヤーの脳天は飛ぶ鮮血と共に開いた。
暗殺されたのだ。
先ほどのプレイヤーの発言から1.5秒後に発言したので、この空間に
これは奇しくも、先日のものと比較し、今回の暗殺はちょうど2倍の効率で行われた、という事を物語っていた。
「……まだ懲りずにやってたのか」
幼女は呟いた。呟きか思索かわからないなんてことは無い、明確にはっきりと、口から声を出した。
……ただし、
「……筏……イイな。
携えた
「……声が、出せる」
そう呟くと、μ-skYは空になった弾倉を海に放り投げ、
オールに、手汗と海水とを混ぜ滲ませながら。
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筏を作ろう!:φ
「筏を作ろう!」
無意味に殴り合いをする人間、無意味に殴り合いをしない人間、そして死体の3種類が散らばる砂浜にて、無意味に殴り合いをしない人間の男は言った。
「えぇ……」
周囲にいた無意味に殴り合いをしない人間、そして無意味に殴り合いをしていたが相手が死んだので無意味に殴り合いをしない人間になった人間などは、彼の提案に露骨な難色を示した。
「……なんだよお前ら、筏が作りたくない?」
「いや別に……」「筏なんていくらあってもいいもんな」「作りたくないわけではないよ」
「じゃあ何でそんなイヤそうなんだよ」
「斧が……」「斧がね……」「斧がな……」
理由は一目瞭然であった。
φサーバーにおける筏作りは半ば禁忌と化している。なぜかというと簡単な話で、斧の効率が良すぎるからだ。つまり、φサーバーの住民には基本的に"素手で戦う"という掟がある……というより"素手で戦う"という掟があるものがφサーバーの住民になるのだが、筏作りに当たってはさすがにということで斧が使用された。
繰り返そう―――これの効率が、良すぎた。
拳はどんな人間にも手を握りさえすれば入手できるが、斧は違う……ある程度進んだ文明がなければ、サバイバル・ガンマンにおける鉄的な何かでできた斧を手に入れることはかなわない。そして基本的に、手に入りにくいものは強い……というより、強いものが手に入りにくい。そういうわけで、その
「……ええい、わかったよ」
その文脈を当然把握している男は、仕方なく言う。
「じゃあアレだ……
余りに荒唐無稽なその提案は、誰が反対することも無く、自然とサーバー内の総意へと拡大していった。
◇
バイバアルは木を殴っていた。
平均的に見て細くも太くもない、しかし今の自分にとっては間違いなく太い……そんな木だ。
「……オラァッ!」
叩き込んだ一つの拳が、木を傾ける轟音と共に、樹皮にできている赤色の染みをさらに広げる。
染みと同様に赤く塗れた拳が痛いが、こんなものは慣れっこだ―――邪魔にもならない。
「……オラァッ!」
再びの、轟音。
轟音にしては木の受けるダメージは小規模に見え、バイバアルが今のところ赤い染み以外、木に対し目立った干渉を行えていない。
これ一本切り落とすのに何時間かかるだろう―――バイバアルは考えようとして、やめた。素手縛りで生きると決めた以上、あれこれ考え時間を食うより、ただ目の前の目標に対し、全力で拳を叩き込む―――それが、最も効果的なのだから。
「……オラァッ!」
足元の赤い水溜まりが、殴打と共に勢い良く揺れた。
◇
集まった木材は、どれもこれもこびり付くような赤色をしていた。
実際、こびり付いていたのだ。
恐ろしいほど長い素材収集の道のりから一転し、相対的に見てほとんど一瞬のような手間で終わった組み立て作業の後、バイバアルたちが筏を海に浮かべてみると……一緒になって、赤色の粒子たちが霧のように海面を染め始める。
しかしそれでもなお赤色はまるでテクスチャを占拠するようにこびり付いていて……総合的に見て、筏は完全に紅に染まっていた。
やはり赤く染まったオールを手取り、バイバアルが宣言する。
「ヨォシ!―――試運転の、時間だァ!」
「「「「ウオオオオオオオオ!!」」」」
歓声とともに次々と乗り込み始める屈強な男たちを、それを想定して更に屈強に作ってある筏は受け止め切って、溶けやんだ赤色を見送りながら、筏は砂浜を出発した。
一部始終は、太陽によって照らされていた。
◇
「なッ……なんだ、アレはッ!?」
崩壊した文明の痕跡が散乱する砂浜にて、ファーストブラッド氏は真紅に塗り上げられた洋上移動物体を観測した。
「おい、おい、おい、おい……」
「もしかして―――
実際、彼は2分後に死に至るわけだが……その血液はσサーバーにおいて
このサーバーで出会った血飛沫のすべてに、同じことが言える。
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等価交換弾丸効果
「バレンタイン・ユーザーイベント……ね」
μ-skYは呟くと、大海原を眺めた。
彼女が乗るのは小型の筏だ。こびり付いた新鮮な血液も、海水に洗い流され消えていく。といっても、血の匂いにピラニアが誘われるといけないから、ある程度は事前に彼女によって拭き取られている。
海が日光を反射して、宝石のような輝きを乱射する。
「
呟きを波音がかき消す。幼女が手元で弄り回している銃器類のカチャカチャと言う音もまた同様に。先ほどβ民に筏を
「……お、見えて来たな」
手の甲で太陽を遮って作った影の中、薄く描画され始めたその孤島に、μ-skYは鋭い視線を撃ち込み……そして、笑った。
シリンダーの掃除も、もう少しで終わりそうだった。
◇
ぱき、と音が響く。μ-skYがチョコレートを齧った音だ。
限りない空へ、だだっ広い海へ、そして
「……うま」
ずず、と音が響く。血の海で男が体を動かした音だ。
「き、さま」
呟きと言うには怨念が籠りすぎた言葉が、少し間を置いて発される。
「ん?……ああ、まだ生き残りがいたのか」
ぱん、と音が響く。μ-skYが発砲した音だ。
「あ゛」
彼女の
「……だだっ広いな、本当に」
ぱき、と音が響く。μ-skYがチョコレートを齧った音だ。
奇妙な形の歯形は、「攻撃手段は多い方が良い」と言う判断のもと行われたキャラメイクによるものであり……奇しくも、肉食動物に齧られた痕のようでもあった。
「ふぅ……あ」
色々なものに想いを馳せる幼女の眼に、ふと血の海に浸された
μ-skYは極めて
「……弾痕なし、切創なし……すげえな、
血に浸されているのを除けば、と心中で付け足すと、μ-skYはそれを見つめた。
この文明も何もない孤島からは考えられないような、精巧かつ美麗な構造を持つ純白が、そこにはある……もっとも、純白のうち8割がたは、既に深紅に染められていたのだが。
これを
「……ふぅん」
特に理由は無かった。ゲームとはそういう物だからだ。特に理由はないままに、彼女は、ドレスを
サイズとして見れば、なるべく身長を低くするよう作られた幼女の肉体にドレスは大きすぎる……だが、そこにこびり付いた血液は、異様なほど彼女に……似合っていた。
その時。
「……ッ!?」
ずどん、と音が響く。どこか遠くから、μ-skYめがけて銃弾が放たれた音だ。
「……来やがったな」
幼女はデザートイーグルを構える。その時彼女が考えたのは、血液によって腕に張り付くドレスのことで、遺体の一つから回収した、謎の技術で作られたチョコレートのことで……そして、
「内輪の戦いに首を突っ込んだ……後始末くらい、付けてやる」
ぱき、と音が響く。μ-skYがチョコレートを齧った音だ。
同時に、戦いが始まる音でもある。
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落伍
そんなわけで、あなたはオフライン版サバイバル・ガンマンを起動する。
周囲に誰もいないことを改めて確認しながら、あなたは青空を見上げる。そこには、つい昨日までιサーバーから見ていたものとまるで同じな、美しく、透き通って、誰もが憧れる、誰もいない青色が広がる。
……誰もいない、という言い回しは少しばかり不適切だ。厳密にはサバイバル・ガンマンの空は完全な
あなたは辺りを見回す。
……そして、もし烏とか蝶とかを「誰も」のカウントに含めないとするなら、あなたが今まさに踏みしめている大地(ほら、切りも燃やしもしていない初期状態だから、木がこんなに生い茂ってるぜ)とか、蔓たちの隙間から垣間見える海(実際のところ、オフライン版ではあなたのいる島は真に
あなたは自分が孤島にいることを理解する。
森林は血痕ひとつ浴びず、海波はあまりに青く。
端的に言って、異様な光景だ。
◆
あなたは飛行機の制作を再開する。
周囲に人がいようがいるまいが、基本的にやることは変わらない。ιサーバーには飛行機理論において五つの派閥があって、そしてそのそれぞれが血で血を洗いその過程でうっかり汚してしまった部品を水で洗う、そんな争いを繰り広げていた。あなたがどの派閥に属していたのかはこの際関係ない。なぜかといえば、空を見上げているのがあなただけだからだ。要は、あなたが孤独だからだ。
自分の派閥が主張していた飛行機の設計図を記憶から掘り出して、あなたは砂浜にそれを描き出し、初期装備のナイフに付着した砂を軽く払う。
作業は順調に進行する。
本当に、ものすごく、驚くほど順調に。
あなたは最初はその事実に戸惑うけれど、すぐに飲み込む。つまり、組み立て中に殴り込んでくる別派閥の奴らとか、組み立て中に殴り込んでくる(撃ち込んできたり斬り込んできたりもする)他サーバーの旗を掲げた筏とか、組み立て中に森に入ってマンモスとかを
ちょっと順調すぎるんじゃないか、と思いつつ、あなたは作業を粛々と進める。頭上の青空は少なくともまだ失われていないし、失われていない以上は憧れを満たすべきだと、そう思うからだ。
作業が進む、どんどん進む。周囲には海しかないというのに、なぜだか漂着物は普通にやってきて、あなたはそれを独り占めできる。あんなに材料が足りない足りないと小型化のため試行錯誤したエンジンも、目の前に積みあがった銃の高さに殴られて、極めて原始的な形でできあがる。
できあがってしまう、とも言える。
◆
木の皮に刻み込んだ日数が一行と埋まらないうちに、あなたは飛行機を完成させる。あなたが所属しているのがどの派閥かに関係なく、だ。多少日付が前後することはあっても、そう長い時間がかからないことは確定している。
あなたは喜ぶ。それはもう喜ぶ。飛行機の完成は悲願だったし、たとえオフラインモードであっても嬉しいものだ。
早速木の実をくりぬいて作ったヘルメットを被り、あなたは飛行機に乗り込む。危なげなく組み立てられたレバーを引いたり、新品みたいに輝くギアを回したり、随分お行儀よく収まったロープを引っ張ったりして、あなただけの飛行機を発進させる。
飛行機は事故を起こさない。
派閥によって違うけど、プロペラを回すなり燃料を噴射するなりして、ふわりと空を駆け巡る。あなたがあんなにも憧れて、木の皮を何枚も使ってなお届かなかった空を、軽快かつ何でもないように飛ぶのだ。
そして、あなたは思う。
全く面白くない、と思う。
和解も、対立も、危険もなしになんとなく完成してしまった飛行機を、全く面白くない、と思う。
高いところからいくら海原を見渡しても、島は一つを数えるのみであることに、全く面白くない、と思う。
何より―――あなた自身が求めていたのが、空を飛ぶことじゃなくて、ιサーバーの空を飛ぶことだったことに、全く面白くない、と思う。
操縦桿を傾ける。向かう先は小さな孤島、忌々しいあの孤島だ。全速力でプロペラないし燃料をぶちかまして、この空、そしてこの世界における最後の
当然のことながら、あなたは死ぬ。
目の前に表示された「コンティニュー」の文字を見ようともせずに、寂しげに輝く「ログアウト」を押す。
◆
あなたは、外部サイトに存在するかつてのιサーバーのコミュニティを見る。
厳密には、見るか見ないかある程度葛藤したうえで、見る。
いつの間にか管理者が雲隠れしてしまったという事実をトップページから読み取りつつも、備え付けられた掲示板を開く。
そこには、何十人ものあなたが、何十人ものあなたなりの言葉で、「セプテントリオンを許すな」という趣旨の言葉を投稿している。
あなたもまた、それに倣うのだ。
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スーパーポジション
残り五分。
ナイフが取り出される。
並び立つ木々の葉身たちが、女の頭上で天空を遮り、ちょっとしたカーテンを作っている。そこに生まれたわずかな隙間から、冷たい月光が漏れ出して、ナイフの鋭利な穂先に降り注ぎ、淡い銀色の輝きを生む。女がナイフを左手に持ち替えると、輝きはべつの輝きに変化した。
そして、勢いよく。
刃の切っ先が勢いよく、暗闇の中を弧を描くように駆ける。出発地点は虚空、終着地点も虚空。しかし、その中間には
結果として発生する切り口は、あまりに
女の指の傷口が、紅の雫を滴らせ、暗い地面がそれを吸い込む。指はそのままゆっくり進み、目の前の木の幹に到達し―――その表面を、
血液が幹のテクスチャに干渉する。要するに女は、その指先で
「―――っ」
刹那。
がさりと聞こえた物音に、女は手を動かしながらそっと振り向いた。長きにわたり隠れ続けていれば、物音の種類を聞き分ける技能くらいは自然と身につく。今回の場合は―――落ち葉を、誰かの靴が踏んだ音。さらに響き加減から、靴は靴でも少し濡れた靴だということも分かる。
それは何を意味するか? 直近の二十分間では叫び声や銃声は聞こえていない。つまり、靴を濡らしているのは血液ではない。モンスターの涎というわけもないだろう。もっと簡単な答えがある。
残り五分というところになって、新しくかくれんぼへの挑戦者が現れたのだった。
女が振り向いた先には、先ほどのものとはまた別の、茶色な木の幹が聳えている。そして―――それが隔てるさらに先から、また一つ、落ち葉がつぶれる音が聞こえる。
「……」
女が何かを考えるより先に、周囲の木々が微かに揺れる。恐らく、辺りに潜伏していた
また、落ち葉の音。
悠長にしているわけにもいかないだろう。
女はゆっくりと姿勢を変える。腰を低くして、地面で踊る薄影を眺めながら、その全身を幹の、血文字の裏側へと隠していく。落ち葉の音が続けて聞こえようと、彼女の動きは変わらない。速くも、遅くもなりはせず、ただゆっくりと―――かくれんぼを、遂行していく。
そして、暗闇は女を飲んだ。
彼女は後頭部を木の幹にあてると、口を両手で塞ぎ、極力呼吸音を消そうとする。VRゲームは目を開けたまま夢を見る行為で、でも、夢の中でも心臓は脈を打つ。現実とまったく同じ緊張をもとに、まったく同じ鼓動を刻む。
反対側から声が聞こえる。
「……はぁ」
悲しげで寂しげで儚げな、男の声。
「……結局、見つけられねえのかよ」
上陸者がχ鯖に乗り込むのは、どうも初めてではないらしい。つまり、彼はこのサーバーに
女は息を必死に殺す。男の足音が数歩続く。
「……こいつは」
女には、彼が何を目にしたかわかる。暗闇の中でもあざやかな材質を隠さず、その紅をほんのわずかに、月光の元曝け出す―――血文字。ついさっき、彼女が描いたものだ。
『誰も見つけられなかったね』
そう。誰も見つけられなかった。
数々の訪問者たちは、誰も誰かを見つけられなかった。
χサーバーの住人たちは、誰も誰かに見つけられなかった。
「……また、それか」
男は溜息と共に呟いた。前回の上陸時も、同じ文字列を読んだのだろう。
それは女にしてみれば、誰かに見せるつもりもなく、ただ何となく描いたものだった。いつも描いていたから今日も描いた、ただそれだけ。誰かに見つかることは想定しておらず、しかし見つかってしまった。見つかったせいで文字列に意味が生まれてしまった。
『でも、逆に言うなら』
女は思う。
『見つからなかったら、意味なんて生まれなかったのかな』
彼女はそこで唐突に、ひどく大きな願望を覚えた。物音を思いっきり立てまくって、無駄しかないような
誰も見つけられなかったχサーバー民を、誰かに見せて。そして―――かくれんぼを、終わらせたくなったのだ。
「……クソ」
でも、駄目だった。
男が小さく呟いた後も、女の息は殺され続け、χサーバーに潜伏する、そのほか百二十四人のプレイヤーについても同じだった。誰もがかくれんぼを終わらせたがっていて、しかし、かくれんぼはわざと終わらせてはならないものだった。そういうルールだからだ。
サバイバル・ガンマンのサービスが終わっていく。
それによって何かが変わることはない。
誰もが否定者を待っていて、それが現れることはなく。
分解され始めた月光の下で、男がもう一度、大きく叫ぶ。
「……クソッ!」
サバイバル・ガンマンのサービスが終わる。
彼らの潜伏は続くというのに。
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ともしび
それが最後の死体になった。
「……クソ」
そんな呟きを暗闇に放り捨てながら、バイバアルは『両手が冷たい』と思った。かぎりない冷気が掌の皮膚を蝕んでいるかのように感じ、肌が凍り付くような感触を覚えた。
錯覚だった。
実際のところ彼の両手は、そのほかの身体部位と同様に、興奮や激しい運動によって結構な熱を帯びていた。真夜中の涼風の中にあって、僅かな汗を滲ませてすらいた。バイバアルが感じた冷たさは、世界のどこにも存在しない虚構だった。
しかし果たしてフルダイブVRに、錯覚ではないものが存在するだろうか?
「ハァ……ハァ」
バイバアルは荒い息をしながら、早く冷たさから逃れてしまおうと、半ば無意識に両手を開く。それによって、その手中に収まっていた一本の細首が解放される。
首の肌には白色が広がり、闇の中でも存在感を放っている。つい先ほどまでマフラーに覆われていたので、ほかの部位と違って返り血には濡れていない。
唯一、その表面を汚すものがあるとすれば。
荒々しく残された、一筋の絞殺痕の他にないだろう。
「……やった」
どさり、と。
幼女の死体が地に落ちる。
今夜は月が出ていないから、辺りの闇は一段と深い。
バイバアルの高い視点からは、足元で横たわる幼女の浮かべる表情とか、装備する武器とかはわからない。
しかし彼にとっては、これだけわかれば十分なのだ。
φの野人が呟きを落とす。
ぽつり、と。
「……勝った」
それだけ言うと、バイバアルは屈みこむ。一度は手放した幼女の死体に、もう一度触れる。再び訪れた存在しない冷たさに耐えながら、彼は物言わぬ幼女を軽々と抱き上げる。
そして、暗闇の中を歩き出す。
死体を処理しなければならないのだ。
◆
サバイバル・ガンマンでは死体が残る。
理由については諸説ある。リアリティを重視した説がある一方、リスポーンの概念がある状態で何がリアリティだという反論もある。食料にするため説がある一方、そんなイカれたことをするのはλの連中だけだという反論もある。建造物の素材にするため説は既に唱えられていない。ιの死体飛行機は無残に爆散した。
何にせよ、サバイバル・ガンマンでは死体が残る。
死体が残る以上、処理しなければならない。
「―――よし」
バイバアルは、死体の山の前で呟いた。
φサーバーには素手縛りという暗黙の了解があるが、部分部分で例外が生じる。例えば、この状況における松明がそうだ。ごうごうと燃え盛る橙色の炎は、砂浜に無造作に突き刺された棒の先端で、周囲の光景を照らしている。
バイバアルはそれを頼りに、辺りの様子を確認する。
まず、目の前の死体の山。
確認した限り、どうやら『今回』の死体はこれで全部らしい。島中からかき集めて積み上げてみると、バイバアルとしては「随分殺したな」と言う他にない。
そして、それを囲む自分以外のプレイヤーたち。
φサーバーでは時に殺し合いが起こることもあるが、プレイヤー間の関係は、少なくとも協力して筏を作れる程度には良好なものだ。今回もこうして協力し、発生した死体を集めたのだ。
最後に―――。
「よぉ……っと」
バイバアルは、両手に抱えていたそれを、死体の山の頂上に移す。
―――μ-skYの、死体。
改めて炎光の中で見てみれば、その肉体には外傷がない。ご丁寧に月のない夜を選んで他サーバーに潜入し、他者を斬り、撃ち、噛んだというのに―――彼女の身体の紅は、全て返り血が生むそれだ。唯一の例外は、その開ききった瞳孔の奥で、薄く輝く血のような赤だけだった。
「……燃やすぞ」
バイバアルは唾を飲む。全てが終わった後だというのに、なぜが彼には緊張があった。
ひょっとすると、つい先ほど。
闇を貫いて自分を睨んだ眼光を、視界に焼きついた太陽の影のように、いまだ忘れられないからかもしれなかった。
◆
死体は処理しなければならない。
第一に、放っておくと腐臭が漂って不快だ。第二に、その腐臭におびき寄せられたモンスターがやって来て惨事が起こる可能性がある。σサーバーで発生したスタンピードイベントの一因は、目先の戦力強化を重視しすぎるあまり、死体の処理を怠ったことにあるともいわれている。
そういうわけで、死体は処理しなければならない。問題は処理方法にある。
例えば簡単なものだと、せっかく孤島なのだから近くの海に捨てればいいという考え方がある。しかし海に捨てられた死体もまた、水棲のモンスターをおびき寄せないとは言い切れない。しかも、このゲームのサメは陸に上がってくるのだ。遠洋に捨てれば問題は無いが、そんなことを気軽にできるサーバーは少ない。泳いで行けるκか、人間砲台を開発したιくらいだ。
食べるという選択肢を選べる者は、ほとんどλに集中している。
近くの海と同様に、地面に埋めるのも駄目だ。このゲームのモグラは空を飛ぶ。それを安定して仕留められるのはγだけだ。
酸か何かで溶かすというのは悪くないが、貴重な薬品系資源を無駄にすることになる。そもそも資源を活用する気のないηにしかできない芸当だ。
死体蹴りを大衆娯楽化する文化はνにしかない。
そして、その他ほとんどのサーバーでは。
「……」
死体は、燃やすことになっている。
バイバアルの見上げる先で、投げ込まれた松明から広がった焔が、μ-skYの死体を飲み込んでいく。飲み込み終えるのを待たずして、焔は頂上から別の死体へと燃え移る。立ち昇る煙を照らす炎光が、いっそう明瞭さを増していく。
光が強くなったことで、バイバアルは一つの事実を知った。
「……へっ、被ってやがる」
山の表面を埋める死体たちは一見すれば大量だが、強い光の中でよく見ると、まったく同じ顔をした死体がいくつもある。それはきっとキャラメイクが被ったとかそういう話ではなく、一度殺されてリスポーンしたプレイヤーが更に殺されたことで発生した重複だ。
「ってえことは……」
目の前の死体の山も、『種類』の数で言えば大したことはないのかもしれない。
バイバアルはそう考えた。案外山を崩して並べてみれば、顔が同じ死体が四つも五つも見つかって……被りを弾いたうえで数え直せば、そう多くは残らない可能性もある。
とはいえ。
彼は山の頂上を見る。現在進行形で他者へと炎を伝播させていく、熱の中心。幼女の死体。いくら被りを排除しようと、絶対に減らない
バイバアルは一人で呟く。
「……あいつの―――」
一人で呟く?
それはおかしな話だった。そう、おかしかった。バイバアルは静寂に気付いた。
「……チッ、気付いたか」
高い声が。
「テメェ……ッ!」
聞こえて、サバイバルナイフに付着した血液が、炎光をぎらりと跳ね返した。
「
再上陸した金髪の幼女が、微笑んでいる。眼光がバイバアルを鋭く突き刺す。
「上等だよ……ッ!」
バイバアルは熱光を受けながら、ふたたび太陽を直視した。
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フィッシング・フェスティバル・ファイブ
【掌編】祭渦
久し振りに起動したフィッシング・フェスティバル・ファイブのタイトル画面は、最後に見た時と若干違っていた―――
オフで延々とブルーギルを釣っていようと思っていた俺だが、これを見て少々気を変えた……そもそも外界との
そう、クリックしてしまったんだ。
◆
ロビーになぜか秋津茜がいたので俺は全力で後退した。
何故わかるのか?簡単な話だ―――
俺は考えつつ首を捻った。何故俺がサンラクだとわかった?名前はちゃんと変えたはず……イヤそうか、秋津茜には一度便秘の
「ふぅ……こんにちはサンラクさん、お元気ですか!?」
―――追いつかれる。
秋津茜は僅か2、3呼吸で息を整え終えると、何とも言えず黙り込む俺を置いて二の句を継いだ。
「もしよければ、このゲーム―――」
俺はふと目を回してロビー全体を見た。ロビーはまさに―――
「―――一緒に、プレイしませんか!?」
そういう事になった。
◆
釣りとは即ち
「えーっと、これをこうして……」
隣に座った秋津茜は、この無駄に凝ったグラフィックの清流に何やら獲物を得たらしく……慌ただしく釣竿をがちゃがちゃやりながら、期待がこもった眼差しで糸の先端を見つめている。は、早いっすね……俺はちょっとビビった。ま、まぁ……時間との向き合いとは言ったけどこのゲームは運ゲーなところあるしな、はい。え、えぇと……そういうことも、ある、カナ?
困惑する俺の横で、秋津茜が竿を引っ張り上げる……画一的な
「えいやっ!」
タイだった。
俺は泣いた。
「どうしたんですか?」
少々ぎこちない動作でタイをインベントリに仕舞い込み、秋津茜が聞いてくる……イヤ何でも無いよ何でも無い、俺は誤魔化した。何か話題転換のための
・古ぼけたブーツ
「陳腐ゥ!!!!!」
俺は背後に思いっきり手中の茶色を放り投げた。イヤさ~~~~~アノォ?流石に釣りにおける
「かかった!」
早すぎません?
秋津茜は、先程より
「えいやっ!」
カニだった。
俺は泣いた。
「どうしたんですか?」
いや、エェ?みたいなさぁ……何もかもにビビってるよ俺、川で当然のようにカニが釣れるのはまだいいとしても……その……クソがッ!!!俺は何かしらにキレた。秋津茜の済んだ瞳が全身に突き刺さる。もう何も考えないことにしよう……俺は釣りに専念した。
◆
無心。
そう、心に無を宿す―――1分は1時間であり、1秒でもある。時間は相対的なものに過ぎないのだ。だからこそ何も考えるな、ただ竿に全てを委ねろ。そうすれば、きっと。
―――かかった。
俺は竿を手繰り寄せ―――いや、どちらかと言えば竿
・ブルーギル
はい。
「あ、またかかった!!」
は???????????????????
秋津茜は、完全に慣れた手付きで手早くリールを引き揚げていく……お、落ち着け??????そうだ……アレだよ、流石に3連続はないだろ3連続は。2は分かるぜ?2ならまだ
「えいやっ!」
クジラだった。
俺は圧死した。
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水面を揺らせば己の顔も散る
釣りとは。
父曰く、釣りとは水面を通して魚と、世界と対話する世界で最も高尚な行いである、と主張する知り合いがいた。
「…………」
ぱしゃり、と水面が揺れる。
ぐい、と竿を引けばその感触は重すぎるほどだ。間違いない、このいかにも平静を極めるように見える水色の底には、紛れもない
だが―――斎賀玲は、決してそれに動じない。ただ水面下の大物が逃げ出さないよう、最低限の力加減を保ちながら……時を、待つ。
「…………」
父曰く、釣りをしてる最中の水面は感情を映す鏡である、と主張する知り合いがいたという。玲はそれについて、ある視点において確かに正しいのだろう―――そう思う。今の自分はどうにか平静を保とうとしているし、その過程で過去に挫折したこのゲームを起動した。だが……それはあくまで、表面的な策に過ぎない。だからこそ穏やかに見える水面の裏側では、とんでもないほどの
玲は、それを否定しない。
実際のところ、先ほど思い人との
けれど……その動揺を、ただエネルギーとして発散するか。あるいはかき混ぜられたことで生じたエネルギーを使って、例えば何かを運んでみたり、ちょっと積極的に、何かを飲み込んでみたりするか。その決定権は、他ならぬ玲自身にあるのだ。
だから、彼女はただ……待つ。水面下の大物が動き出し、それを捉えるために自分が動き出さねばならなくなる時を、じっと待つ。
「…………」
なぜ、玲は釣りをしているのだろう。
勉強会があるというなら、例えばそれに向けて予習をしておくとか、参考書をそろえておくとか、できることはあるはずだ。でも、それをいったん後回しにして、なぜ彼女は、ローポリゴン極まる、解像度の低いテクスチャをした釣竿を、握っているのだろう。
いいや、いいや、理由はわかっている。それは例えば軽率に
つまり今玲は、興奮している。
「私が?」
この川の奥底で今か今かと時を待っているシロナガスクジラは玲の現在を暗示している。シロナガスクジラは世界最大の動物、彼女の心に
ではなぜ玲は釣りをしているのか?釣りたいのではない、釣りをしたいのだ。川釣りモードには様々な魚が潜む。それはどこか思い人の持つ、多彩なプレイスタイル……そして、遊ぶゲームのレパートリーにも似る。玲にとって、それは他ならぬ
「ゲームに、ワクワクする心……!」
そう、それこそが玲の持つ、恋という名のシロナガスクジラの原点。雨が止もうが降ろうが、それは常に変わらないもので……釣竿に、莫大な手ごたえがかかる!
水面は激しい飛沫を上げず、しいて言えば水面
このかつて鯨を一本釣りできず挫折したゲーム「フィッシング・フェスティバル・ファイブ」……今こそそれに、比類なき決着をつける時だ。斎賀玲は眼を見開く。爆発するのは水面だけではない、彼女の整理されるべき感情たちも同じだ!
「龍宮院派生斎賀流護身術―――!」
1秒ごとにどんどん強くなる水面の……いやもはや水面とは言えない
「―――『砕惨・瀑布』!」
世界そのものが
「……ふぅ」
そう、一つだけ呟く斎賀玲と、その傍らに横たわる……巨大で巨大で巨大で巨大で巨大で巨大なシロナガスクジラが、付近一帯に
玲は深呼吸をし、余韻に浸る。あまりに強大なクジラはすでに川には潜んでおらず、多少揺れはするものの穏やかな流れたちだけが、さらさらと行っては来たりする。玲はなんだか気持ちが軽くなったように思えた。つい先ほど、世界で最も重い生物を釣り上げたからなのかもしれない。玲には、今なら楽郎と勉強会をしても、吐きそうになったりせず、この水面のように平静でいられるような、そんな気が―――
「……」
そんな気が。
「……ふぇぅっぬ!」
そんな気がしていたがやっぱり無理だと思った玲は、川に飛び込んで感情のままに泳いでいたら偶然近くを泳いでいた毒蛇に噛まれてゲームオーバーになった。
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フェアリア・クロニクル・オンライン
【ID無】フェアリア・クロニクル・オンライン アンチスレ 報酬の728分目
1:名無しのゲーマー
三位一体超絶地獄ゴミカスクソゲーフェアリア・クロニクル・オンラインのアンチスレです。
次スレは>>900が建ててください。
◆ID有りはこちら
【ID有】フェアリア・クロニクル・オンライン アンチスレ 報酬の341分目
https://no00.52ch.net/text/road.cgi/00ob/2482948261/
◆関連スレ
フェアリア・クロニクル・オンラインについて語るスレ Part372
https://no00.52ch.net/text/road.cgi/00ob/4728912738/
フェアリア・クロニクル・オンライン 信者スレ Part2
https://no00.52ch.net/text/road.cgi/00ob/5721839213/
◆前スレ
フェアリア・クロニクル・オンライン アンチスレ 報酬の727分目
https://no00.52ch.net/text/road.cgi/00ob/7294730238/
2:名無しのゲーマー
一乙
3:名無しのゲーマー
1乙
4:名無しのゲーマー
>>1乙
5:名無しのゲーマー
いちおつ
6:名無しのゲーマー
最近スレが建つたびに「俺はこんなクソゲーのアンチをPart〇〇になるまでやってるのか…」ってなって死にたくなるんだけど俺だけ?
7:名無しのゲーマー
>>6
わかる
8:名無しのゲーマー
もうフェアクソが野に放たれて何年経ったよおい
9:名無しのゲーマー
3、4年くらいかな?
あああああ死にたくなってきたぞ
10:名無しのゲーマー
気をしっかり持てよ
11:名無しのゲーマー
冷静に考えて3~4年前のクソゲーを未だにアンチしてる奴ってかなりヤバいのでは?
12:名無しのゲーマー
声優は最高だから…
13:名無しのゲーマー
そこまでか?キャラデザは認めるけど
14:名無しのゲーマー
100円で売ってれば楽しめると思うよ俺は
15:名無しのゲーマー
>>11
アンチスレは実質信者スレ定期
16:名無しのゲーマー
余りにもクソすぎて>>12とか>>13みたくアンチがいい所を探すようになったからな…
17:名無しのゲーマー
おかげで前に建てられた信者スレはPart2でDat落ちしてるし
18:名無しのゲーマー
むしろPart2まで行ったのが驚きだよ
19:名無しのゲーマー
オフライン時代のファンが立てたと推測してる
20:名無しのゲーマー
1年ぶりに来たけど相変わらずのフェアクソについて語るスレだな
ちょっと物凄いバランス崩壊を発見しちゃったので報告に来たぞ
21:名無しのゲーマー
お?
22:名無しのゲーマー
>>20
RTA短縮来るか?
23:名無しのゲーマー
この調子で短縮されればいずれ3分より速くクリアして労働に見合わない報酬を得ることも可能っぽいからな
24:名無しのゲーマー
>>14的な「100円で買えばRTAで楽しめそうなゲーム」ってあるよな
25:名無しのゲーマー
そういうゲームを求めてる奴にはベルセルク・オンライン・パッションのパッケージ版とかどうだ、投げ捨てる奴がものすごく多いから中古がクソ安い、その上RTAが楽しいぞ
26:名無しのゲーマー
クソゲー推薦ニキ久しぶりに見た
27:>>20
人づてに聞いた話なんだけどさ
ラスボスは専用装備で倒すより覆面海パンで顎を殴った方が速いらしい
28:名無しのゲーマー
ファッ!?
29:名無しのゲーマー
>>27
これマジ?
30:名無しのゲーマー
覆面海パンってあのネタ装備かよ
妙に強いの何なの
31:名無しのゲーマー
バグでフェアカスに着せて遊んだ記憶
なんかポリゴンがかなりヤバいことになって面白いんだよな
32:名無しのゲーマー
えぇ…どういう調整してたらそういうことが起こりうるんだ頭ガイアークかよ
33:名無しのゲーマー
専用装備取りに行く必要ないってマジ?
34:名無しのゲーマー
こうしてまた報酬の三分間への道のりが縮んでいくのか…
不労所得も夢じゃないな
35:名無しのゲーマー
>>27
ちなみにどれくらい差があるんだ?
36:>>27
3倍
37:名無しのゲーマー
流石に草
38:名無しのゲーマー
ワロタ
39:名無しのゲーマー
やっぱクソゲーだわ
40:名無しのゲーマー
3倍ってそれ今の初手バク転ワープ落とし穴直行ルートより速いじゃん
確かに(RTAの)バランスを壊してるな
41:名無しのゲーマー
酷すぎて草
42:名無しのゲーマー
再計算が必要だな
ネタ装備を取ってからバク転ワープでラスダンに行く必要がある
43:名無しのゲーマー
前から思ってたけど乱数発生器が微妙に他のソースコードに影響してるからバク転でワープ可能ってちょっと狂い過ぎじゃない?
44:名無しのゲーマー
ベルセルク・オンライン・パッションはその比じゃないぞ
あれは伝説だ
45:名無しのゲーマー
クソゲー推薦ニキ怖すぎる
46:名無しのゲーマー
そのうち任意コード実行とか見つかりそうやな
47:名無しのゲーマー
デバッグルームとどっちが先だろうか
48:名無しのゲーマー
夢が広がるなぁ
49:名無しのゲーマー
クソゲーに夢を持ってるの控えめに言ってサイコパスでは?
50:名無しのゲーマー
>>49
うるせ~~~~~~~~~~よ何に夢を持ったっていいんだよそれがVRだ
51:名無しのゲーマー
夢を共有する機械だからね…
52:名無しのゲーマー
【募集】奴1-2実相200
53:名無しのゲーマー
>>52
ノ
54:名無しのゲーマー
>>52
ノ
55:名無しのゲーマー
ノ
56:名無しのゲーマー
アアックソ間に合わなかったか
57:名無しのゲーマー
デバッグいってらー
58:>>36
まだ掲示板でデバッグ相手を募集してオンラインでデュエルデバッグする奴いるのか
もういなくなってるかと
59:名無しのゲーマー
たまに新規が入ってくるからな、クソゲー推薦ニキをはじめとするいろんなクソゲーハンターが別ゲーで見つけたやつに勧めてるっぽい
60:名無しのゲーマー
そして3~4年アンチやってるようなサイコパスは基本的に離れることはないから人数は増える一方、ってところか
61:名無しのゲーマー
あああああああああああああクソ開発氏ね爆発バグゥゥゥゥゥう!!!!!!!!!
62:名無しのゲーマー
クソ火山バグの犠牲者がまた一人…
63:名無しのゲーマー
あれマジで回避できないからやめてほしい
64:名無しのゲーマー
酷いゲームだなぁ…
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"Nosebleed" Glitch
「……よし、録画できてるな」
傍らに展開した、現代のゲームにしては妙にチープかつ低画質なウィンドウを確認し呟く。そこにはいくつかのアイコンとシークバー……そして、しゃがみ込む俺の姿が俯瞰視点で映っている。俺の姿と言っても、当然のことながら
「サンラク、いけそう?」
背後からカッツォが話しかけてくる。こいつも海パンに覆面、このゲームのキャラクリが貧弱なことも相まって、見分けを付けるのは困難だが……まあ、そもそもその必要はない。この録画はあくまで
「ああ……よし、始めようか」
「うん」
閉じるウィンドウの
「チョコを、集めるぞ」
◆
最高級デラックスパフェの材料のうち約半数は、フィールドからの採取によって収集される。
フェアクソにおける要素は、後の方に実装されたものほど「手間がかからない」ことを念頭に置いたものである傾向にあると言われている。そしてこの半数は恐らくかなり後になって実装されたようで、「サブシナリオを一つこなす」「ギミックボスを倒したドロップ」などのクオリティはともかく
【採取:〈スティックチョコ〉を入手しました】
「はぁ……」
俺は
「はぁ……」
反対側で同時にスティックチョコを入手しているカッツォも、釣られてか溜息を吐く。
……このゲームの採取ポイントは、基本的に野外だ。チョコだろうがキャンディだろうが
「ふぅ……」
仮想世界でも長時間しゃがんでいれば疲れる。俺は一旦立ち上がると、ついでにインベントリを開いて進捗を確認した。
「えーっと……俺が持ってるチョコが38本か。カッツォ、お前は?」
「俺は37……あっ、今38本になった」
「オッケー、じゃあ残り26本ずつ回収したらいったんストップだ」
「了解」
俺はメニューウィンドウの閉じる効果音を聞きながら、再びしゃがんで作業に戻った。
◆
「よし、ちゃんと64本あるな?」
「大丈夫だよ」
ただ実装されているというだけで200個近い進行不能バグを生み出しているアイテム実体化機能を細心の注意をもって使用すると、俺たちは手元のチョコスティックを確認し合った。
「じゃあ……
「よし」
目の前の覆面海パンが手渡してくる64本のチョコスティックを受け取り、右手の64本の束に追加する。この時点では……よし、何ともないな。
「この時点では何ともないようだ……それじゃあ、
右手をカメラに写りやすいように少し掲げるようにすると、左手でUIを操作する……いやこのメニューマジでゴミみたいなインターフェースだな……よしあった、【しまう】ボタンをタップする。一瞬遅れて、右手からチョコの束が消える。
「さてどうなった!?」
インベントリを開く!そこに表示されていたのは―――
【アイテム:〈スティックチョコ〉×-128】
「成功だああああああああ!!!!」
「よっしゃあああああああ!!!!」
喜びを叫びとして、カッツォと共に出力する。俺は今なら誰にも負けない気がしたが、直後にフラッシュバックした様々な記憶で嫌そうでもないなと考え直した。まあ何はともあれ……
「よしッ!いいぞいいぞ……!あとは
「ああ、サンラク……!作ろう、最高級デラックスパフェを!!」
俺たちは特に理由もなく飛び跳ねながら言葉を交わすと、駆け出した。
◆
フェアカスが棒立ちしている。
俺は彼女に近づくと、インベントリからマイナス128個の最高級デラックスパフェを選択し【わたす】ボタンの上に指を乗せる。
視界左上のUIを確認する……【フェアリアに最高級デラックスパフェを渡す(0/1)】。
このゲームにおいて、アイテムの個数は符号付き8bit整数で管理される……だが、こういうクエストの達成率には符号なし16bit整数を使っている。つまり、アイテムの個数が-128個から127個の範囲で表されるのに対し、ミッションの達成率は0から65535の範囲で表される、ということになる。ではこれらを組み合わせたら……果たして、どうなる?
「準備は良いな?」
しゃがみこんでウィンドウを覗くカッツォへ、フェアカス越しに問う。
「ああ大丈夫だ……完璧に、写ってるよ」
よし。
俺は満を持して、手元の【わたす】ボタンを……押した。
突如として、
「なッ…‥!」
予想外の事象だ……いや、よく見ればこれは雷じゃない!
俺が覆面に空いた小さな穴から見た物は……赤い爆炎、緑の回復光、青い稲妻……
「ちょっ、どうなってんの!?」
「多分これ
カッツォの質問に答えながら、左上を再び見れば……そこには、【フェアリアに最高級デラックスパフェを渡す(65409/1)】の文字。そしてそれは一瞬で【炎都ヴァヴェルに行く(65408/1)】へと変化し、【シェルドラビットの毛皮を集める(65407/20)】へと変化し、更に【3つの台座を集める(65387/3)】へと変化する。ビンゴだ……進行度が尋常じゃない大きさになった場合、このゲームは
目の前のフェアカスが見えなくなるほどの情報が集積され、雷のように、竜巻のように、爆炎のように踊り狂う。ふと空を見上げれば、太陽すらも早送りで移動し、朝と夜とが
「録画できてるよな……?」
「大丈夫だよ……さて、どうなる?」
どこかから轟音が聞こえたかと思えば、それを魔法障壁が防ぐ音もまた聞こえる。フェアリア・クロニクル・オンラインと言う世界におけるあらゆるイベントが、このクソヒロインの肉体をグラウンドゼロに発生し続けているのだ。そして、そこにはもちろん―――
「……
ラスボス戦、邪神グラトーニエの斃死。
この世界の終わり、或いはボーナスタイムの始まりすらも含まれて……!
「……サンラク、このグリッチの名前、どうする?」
カッツォが、目の前のエフェクトたちが徐々に
「……そうだな、こういうのはどうだろう?」
俺が、二言目を口に出す前に。
フェアリアは最後の出現エフェクトと共に、こう言った。
『ああ、精霊達が解放されていく……世界に色が………貴方のお陰よ、本当にありがとう………!!』
カッツォと息を合わせて、飛び蹴りのための跳躍をしながら……俺は、同時に問いへと答えを発した。
「―――"
壮大なBGMに包まれて、三分間が始まった。
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キグルミ・ファイト
枷としてすら機能せず
「……は?」
それしか言えなかった。
そもそもの話、カッツォが『キグルミ・ファイト』に俺を誘ってきたところからおかしいと考えるべきだったのだ。あのゲームはまあ一発ネタの類だから、アップデートが来て改善
ヤもちろん、単に気分を変えたかったのかな?みたいな、そういうことも少しは考えたよ。俺だってシャンフロの息抜きに幕末をやるし、危牧の息抜きに便秘をやるし、ミナゴロシの息抜きにハイジャァ~~ッッッ!!!!(よみがえるトラウマ)……というくらいのことはする。
しかし、実際のところは違った。
クラファンが未だ目標の30%に達していないせいか一向に行われないアップデートはあの息苦しいメニュー画面を全く変貌させないままで、とりあえずジェノサイドマンモスを選択した俺がとりあえずジェノサイドマンモスを選択したカッツォに超必殺技返しでまあ
―――「このゲームで―――
ここまで聞いた時点では、俺の言語野はああなんか気を散らそうとしてるなくらいしか思わなかった。カッツォは別に品行方正なゲーマーではないから、時としてこういう事をしてくるのだ。今までにやられたこれ系で一番ウザかったのは間違いなくあの忌々しい『テクスチャ・バルチャーズ』だが……残念ながら、それは
―――「このゲームで、お前と対戦したいって奴が―――
ここでも俺は動じなかった。もちろんカッツォが提示してくるであろう未知のクソゲーハンターと邂逅してエッお前ペンギン・オブ・ザ・デッドオルタナティブの限定版持ってんの~~~!?マジかよマジかよ……!みたいな話をしたくなかったと言えば嘘になる。しかしこの場の勝敗は、あの益体もないにもかかわらず各界から大ブーイングを巻き起こし社会問題にすら発展した限定版特典装備よりはるかに重要―――というより、完全に
―――「このゲームで、お前と対戦したいって奴がいるんだ……名前は―――
ハイハイ。俺はもはや眼前のローポリエレファントが紡ぐ言葉が目くらまし以上の意味を持たないことを悟っていた。集中をより強める。もはや何を言われようと、何を見せられようと一切動じない、そんなアドレナリンとカフェインを道として行きつける真の集中。カッツォのローポリカウンターが間に合わないのは明白で、俺のローポリスマッシュはあまりにも的確に彼にヒットする―――
―――「このゲームで、お前と対戦したいって奴がいるんだ……名前はシルヴィ―――
は??????俺は集中を完全に霧散させ、
―――「このゲームで、お前と対戦したいって奴がいるんだ……名前はシルヴィア・ゴールドバ―――
霧散の影響で操作をミスって妙に摩擦係数の低い床に頭を打ち付け、
―――「このゲームで、お前と対戦したいって奴がいるんだ……名前はシルヴィア・ゴールドバーグ」
死んだ。
◆
「ノーカンだろアレは」
「お~~や遠吠えが捗るねクソ雑魚エレファント君」
「エレファントの遠吠えってどんな感じだと思う?」
「パオーンとか?」
「パオーンってノーカンと似てない?」
「似てない」
「そっか……」
俺は空しく却下された提案に思いを馳せ、何となくパオーンと鳴いた。なんだかアニマルファイト・オンラインのあの鼻で巻き付き攻撃が強いように見えて実際のところライオンの尻尾巻き付き攻撃(??????)と比べて威力判定速度すべてが劣っているあの相対的ハイポリ象を思い出すな……俺がしみじみとしていたところ、
「あ、じゃあそういうわけでシルヴィア呼ぶよ」
早くない?
「Hello!!」
早くない????????
『さぁ!可愛いキグルミボディを選ぼう』
早くない???????????????????????????????????
◆
キグルミ・ファイトには
「…………ふふふ」
相対するキューティーキャット、あるいは別ユニバースにおける
カッツォのライブラリを漁ってたら(なんで?)見慣れないゲームを発見して試しに自分で購入し(なんで?)プレイしたらハマッた、らしいが……そもそもどうして便秘じゃなくキグルミなのかがわからない……いやそうか、便秘は基本的にパケ版しか遊ばれないからライブラリで新しい順ソートしても表示されないのか!合点が行った俺は、
「―――勝って、やるよ」 言って、
『さぁ!楽しいバトルの時間だぁ』 言われて、
「That's my line!」 言い返された。
◆
俺の第1キャラはバーサークエレファント、単純な火力を優先した形になる。全3ラウンドあるし、この多分仕様勝ち抜き戦はWΔと違って都度キャラ変をする方式だから、第1ラウンドはシルヴィアがどんな動きをするか見るのに費やしてしまっても問題ない……そういう考えも多少は入っている。
対するシルヴィアの第1キャラはキューティーキャット。このゲームはあんまりちゃんと触っていないが……確か一番AGIが高いキャラだったはずだ。外見は変質者にしか見えないがそれをさらに補強する高速のダッシュは見るものを笑い転げるか恐れ戦くかの二択に陥れる恐怖の性能である。
ここから導き出せる結論―――相手は突っ込んでくるはずだ、カウンターを狙え!!
「レッツ・ショータイム!」
襲い掛かるキューティーキャットを目前に、このゲーム特有のなんか変にクセのあるラグをどうにか抑え、反撃の準備を整える。
「な……ッ」
「
妙にテンションの高い声がどこか遠いものに聞こえる。というより実際のところそれは遠くて、なぜ実際のところ遠いかと言えば
「猫が象投げ飛ばしてんじゃねーよ!!」
どこの下剋上だそれはァッ!!受け身を取って着地、どこまで飛んだ?見ればシルヴィアは……いつの間にか、
「キャットパンチ!」
「エレファントスタンプ!」
右脇腹が適度に規制された出力でもって
「選択を誤ったなシルヴィアァァァァッ!!!」
固定観念を捨てろ、ここはお前の知ってる
「ッ!?」
「
――飛んだ。
「気持ち悪ッ!!」
「うるせえ!!!!
「
「シャラップ!!!!」
煩わしい空気抵抗を強引に無視、姿勢を変転させて突き出した右脚でキックをする。確かにこのゲームにおいてエレファントは全キャラ最低のAGIを持つが、三次元機動はAGIを参照しない―――座標と方向の両者が完璧を取り、俺の風船みたいな脚は吸い込まれるようにキューティーキャットの風船みたいな腕に直進する。これは勝っただろう―――俺はほくそ笑んだ、が。
『超必殺ぅ!イーロングライオン!!』
キューティーキャットの肉体が
「なッ!?」
「
キューティーキャットの超必、本来の効果はAGI上昇……だが俺が狙っていたのは他ならぬ右腕で―――狭まった
「あ゛」
問題、虚空にキックしたらどうなるでしょうか。
回答、転びます。
「Oh……ソーリィ!」
来る。キャラ性能と実装のショボさが合わさっためちゃくちゃショボい猫パンチが、しかして喜色を隠さない言葉とともに来る。
「が」
避けられない。ノックバックが無いから。
「ぐ」
受け止められない。防御コマンドが無いから。
かくして始まった
◆
ぶっ倒ォす!!!
俺は闘志を燃やした。
燃え上がる闘志をそのまま反映し選択キャラはジューシーチキン、何がキューティーキャットだよふざけやがって……そもそも体格がどう考えても人類のそれなのにキューティーなキャットで押し通すのは無理があるだろボケッ!!俺はキレた。キレたが、同時に落ち着いてもいた。燃え上がる闘志は紛れもない本物で、どこまでも俺という
チキンを選択、なぜか『さぁ!楽しいバトルの時間だぁ』がもう一回聞こえる。バグじゃないバグじゃないバグじゃない……10回念じたところで視界を染めるのは再びの簡素なマップたち、そして何よりキューティーキャットだ。
「ハァイ
「舐めるなよ―――今の俺は謂わば
「それ
「シャラアアアップ!!!」
叫び、突進する!今度は俺が攻める番だ!ジューシーチキンは基本的にAGIそこそこATKそこそこというなんだかラブリードギーと被り気味な性能であり、基本的に立ち止まっての殴り合いがデフォルトなこのゲームではキューティーキャットに対しては突進あるのみである。
1歩2歩3歩4歩目でトサカを掴もうとしてきたので華麗に回避することを読んで5歩目で固めに入ろうとして来ることを読んで6歩目でフェイントをかけ7歩目でちょっと引っ掻かれたけどせいぜい1割減、8歩目9歩目……今ッ!!
「
全力での頭突きをお見舞いする!
ラブリードギーとジューシーチキンの差別化点はすなわち身体的特徴である。ラブリードギーの牙は高倍率のダメージを相手に与えるし、ジューシーチキンのトサカも頭突きに使えば然りだ。もっともそんな高倍率攻撃をみすみす食らうような相手じゃない、当然のようにバク転で回避される。だから予備動作として持っておいた蹴りをそこに叩き込む。きりもみ回転で回避される。えぇ……ちょっとヒきつつまあ予想していたことなのでさらに持っておいたボディブロー―――
「甘いね」「甘いな」
まで見越して行われたサマーソルトが恐ろしいほど綺麗に決まる。宙を舞っているのは不格好なキグルミに他ならないのに、俺はどこか
「墜とせばいいだけの、話だッ!!」
蹴りをそのまま踵落としに転じさせて放つ!このゲームにはノックバックというものが無い、だからこそ飛翔しているものに踵落とししても
「なッ―――」
ベクトルとベクトルがキューティーキャットを板挟みにする。現在進行形で入り続けているダメージ判定たちが蝕む
「
再びの頭突き!完璧に衝突したトサカとローポリ背中はかくして貧弱な物理エンジンによる判定を介し、結果―――すなわち、キューティーキャットの消滅を出力した。
◆
シルヴィアの2キャラ目選出待ち、一先ず予想でもしようじゃないか―――俺は考える。まずキャットはあまり無い線といって良いだろう。彼女はAGIキャラを好みこそするがGH:Cと違ってミーティアス1本というわけではない。俺がまあAGIが低いわけではないチキンを選出している以上、AGIはもはや絶大なアドバンテージとはなりえない。そうなると対極として考えられるのがエレファントだが、ドギーとエレファントを天秤にかけた場合罫線能力の高さでドギーを選出するような気もする……うーむ。
俺が悩んでいる間に、あの微妙に使いづらいインターフェースをシルヴィアは乗り越えたらしく……フリーアセットと思われるエフェクトが発生し、彼女が―――
「今だァァァッッッ!!!!!!!!」
「Hello―――!?」
俺は全速力で超必を起動、『超必殺ぅ!フライングレッド!!』の腑抜けたアナウンスを身にまとう気持ちで突っ込む―――!おもむろに出現した鍋を掴んだところでオート操作に切り替わったアバターがシルヴィア―――あ、ラブリードギー選んだの?そっかぁ―――を煮始める!ヒャッハァ~~~~ッ!!!一瞬のうちに体力を
「やっぱこのゲームクソゲーだわ」
俺は呟いた。
◆
さ~~~~て次でシルヴィアの残機はラストそれに対し俺は1機残しているうえ体力も8割を上回っている……これは勝ったかな?俺は慢心した。だからシルヴィアが随分早くバーサークエレファントを選択して戻ってきたときも、なんだか嫌な予感がするぞ、といったことを考えはしなかったのだ。
紛れもない、間違いであった。
「―――ッ」
キャラ性能的に全速も全速を出して巨象が突っ込んでくる。ノックバックが存在しない以上加速度に意味は無いから、単に急いで攻撃したがっていると見るべきだろう……飛ぶ、翻る、しゃがむ、翻る―――ひとまず無難な方法で回避し、てッ!?
「Let's―――」
シルヴィアが変な動きをする。俺は驚きに硬直しつつ、イヤそんなことをしている場合じゃないと動き出す。その事実は当然のように何の影響を及ぼすことも無く、眼前の世界最強は……
「―――Headbutt!!」
「が……っ!?」
考えるべきだったのだ、頭突きは何もトサカを持っているチキンの専売特許ではない。コマンドとして全キャラクターが取りうるそれだし、敵がエレファントである以上その長い鼻はむしろそれに適しているとすら言えるのだから。
「こ、なくそ……ッ!」
ノックバックが存在しないため変に寸止めになった頭を強引に捻る。攻撃倍率が高いトサカをそのまま相手との接触部に回し、形勢を逆転すべく押し込む―――が、ダメだ。単純にSTRが足りない。
「離しはしないよ―――顔隠し」
象が耳元で囁いてくる。囁きと呼応するように入れられ始めた小パンは、端的に言うとハメ技だった。HPバーは削れてもベクトルは変化せず、ただ常時スーパーアーマー状態のニワトリだけが屠られていく―――
「く、そ、がッ!!」
右で小足小足小足、ゴリ押しでどうにかハメを突破する!ハズレハズレハズレ、どうやら一筋縄ではいかないようだな……!!俺は歯ぎしりをしようと思ったが、キグルミなのでできなかった。減っていくHPに焦りだけが増す。膝を入れ、回し蹴りをし、踵を落とす―――しかしてそれらのすべてが見切られる。ラウンドの最後、同時にヒットポイントの最後に相対する象に覚えた感情は、畏怖と尊敬と
◆
「オンドレァ!!!」
短めのロード時間の先にあるキャラセレクトを理論上最速でクリア、反射神経がキャラを選んでるんで意識では把握してないが……恐らくラブリードギーを選んだはずだ。それが最善だと本能が言うなら、期待に応えてやるまでだ!
「やってやろう、やってやろうじゃねェか……!!!」
リスポーンと同時に呟、く……?
「えっ」
「ハーイ」
なぜかバーサークエレファントが肉薄していた。
「えっ」
『超必殺ぅ!ジェノサイドマンモス!!』
それはひょっとしたら意趣返しだったのかもしれなくて、でも俺が見たのは煌めく彗星の一筋みたいなもので。
俺は死んだ。
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シェアード・シンパシー
いろいろ*1あって陽務楽郎と
「……楽郎君が、好きなゲームは……えっと」
他ならぬ、
近年のVRシステムにおいて、
共有はダウンロード販売によって購入されたゲームに限定されるとはいえ、それでも
「……うーん」
斎賀玲のゲームプレイにおける動機は単純明快、即ち「ゲームを通して
ゲームの共有こそ行われていても、詳細な情報……例えば、アカウントのプレイ時間は共有されていない。プレイ時間が共有されていない以上、どの程度
これを始めとして、彼女が直面している問題は極めて多岐に渡っていた―――スクロール中、ライブラリ一面を一瞬間違い探しに変化させる謎のパズルゲームシリーズ(全21作)、脳内において"SIMULATOR"という文字列のゲシュタルト崩壊を招く謎のローポリゴン・アクションゲーム群(全34作)、あるいは何やら
「……………………」
彼女は―――
◇
そういうわけで、彼女は現在キグルミ・ファイトの世界に降り立つ一人のキグルミ・ファイターであり、キグルミ・ファイティングへの情熱を燃やし続けている(ナレーション談)。
「……えっと、チュートリアルは……」
当然のように、無い。
彼女はしばしのインターフェース上における散策の後でそれを察し、諦めて素直に一介のキグルミ・ファイターとして己の肉体を
「…………えっと、ナレーションをオフにするオプションは……」
当然のように、無い。
彼女はしばしのインターフェース上における散策の後でそれを察し、抑揚のパラメータが0どころかマイナスに足を踏み入れつつあるくせにやたらと文量だけはあるナレーションが仮想の耳を侵し行くことを許容した。というより、
「……………えっと、2ページ目は……」
当然のように、無い。
サイガ-0は未だ知らないが、ストアページを見ればわかる通りこのゲームは
「………………ヘルプリファレンス………………」
当然のように、無い。
一流のキグルミ・ファイターは他者のしたためた文書などというものを参照せずとも、己の技のみで頂点に君臨できるものなのである(ナレーション談)。
かくしてサイガ-0は、早々に本日二回目の直観を使うことになった。
◇
マッチング画面。
「…………」
初戦の相手はキューティーキャット。ボイスチャットがデフォルトでオフになっているため会話は発生せず、無言のにらみ合いとシュルレアリスムだけがそこには成立していた。
『さぁ!楽しいバトルの時間だぁ』
ただ感情を持たぬナレーションだけがそこを崩し得たことは、果たして何かの皮肉であろうか―――おそらく、単なる偶然である。
ゴングの音とともに、試合は始まった。
「………………ッ!!」
相手のキューティーキャットは、開幕で超必殺技の入力を思考を研ぎ澄まし1フレームに50回行うことでゲージを踏み倒したうえでその50回―――キューティーキャットであるから、この場合はスリム化―――をすべて発動させることでスリム化にスリム化を重ねテクスチャの裏側が見えるレベルのスリムさを作り出すことによって
実に、192フレームの出来事であった。
◇
「……つ、次のゲームに……」
ロビーに降り立つやいなや、サイガ-0はUIの操作を開始した―――当然のことながら、目的はログアウトボタンである。己が直観をもって選び抜いたゲームとは言え、明らかにその直観は外れている―――直観が外れていることが直観で分かる。自分がこのゲームで勝利するためには、最低でもあの
『一流のキグルミファイターは決して諦めない!
その時、暑苦しいナレーションが響いた。
「……あ」
キグルミ・ファイトにナレーションをオフにするオプションは無い。だから、ロード時間より再生時間の方が長いせいで、暗転を終えてもまだ流れ続ける鬱陶しい声も、どうにか認識しないよう振舞う以外に無い。だからこそ―――その瞬間の
「……そうだ……諦めちゃ……諦めちゃ、ダメ、なんだ」
斎賀玲は、いろいろ*4以前の、様々な奇天烈なゲームに挑んでは、端から挫折することを繰り返していた自分を思い出す。結果として見れば、想い人が
「……でも」
UIから手を離し、若干もっさりとした動きで閉じ始めるそれから顔を上げる。
……でも、そのままではダメなのだ。例えいろいろ*5を経由していようが、
核に頼らなければ倒せなかった巨大なキリン、どう頑張っても12人までしか返り討ちにできなかった襲撃者たち、40%を超えられないトムソンガゼルのライオンに対する勝率……今こそ、そんな積み重ねてきた挫折を過去に置き去り、未来に向けて前進する時だ。
「……よしっ!」
かくして、サイガ-0の研究が幕を開けた。
◇
『一流のキグルミ・ファイターはぁ、他者のしたためた文書などというものを参照せずともぉ、己の技のみで頂点に君臨できるものなのであるぅ!』
「うーん、この声も久々だね……ってかこのパターン前は無かったっけ?なんだかんだアプデしてるんだなあ……」
数か月ぶりに『キグルミ・ファイト』の世界へと
ログインの目的としては、暇つぶしである。
「……おっ、ランダムマッチ追加されてるじゃん!ほんとにちゃんとアプデしてるんだね……ファイターは相変わらず4種類のままみたいだけど。……バランス調整くらいはしてるのかな?試しにバーサークエレファントで行ってみようかな」
例によってもっさりとした挙動で、マッチング画面に入る。
長引くと思っていたスピナーの
「……
頭上に表示されたプレイヤーネームに、首を―――
『さぁ!楽しいバトルの時間だぁ』
相手のジューシーチキンは地団駄を3回踏むことで
実に、102フレームの出来事であった。
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キグルミ・ファイトについにキャンペーンモードが実装された
キグルミ・ファイトについにキャンペーンモードが実装された。
ヒャッホォゥ!
俺はそのニュースを携帯端末で見た時点で爆速で朝ご飯の鯖味噌をカッ食らうとライオットブラッドを飲んでVRシステムに座ってダイブするとライブラリの奥の方に埋まっているはずのそのゲームめがけてスクロールを開始し……あーそういえばこんなゲームあったな~~ハイハイハイ、久しぶりに遊……誘惑に負けるなッ!よし!キグルミ・ファイト発見!緑色の表示……確かにアップデートが存在する証拠だ!ヨッシャ!アップデート開始!ちょっとダウンロードに時間がかかるかももう終わった!速ッ!までをババッと進めると一瞬という言葉すら惜しいほど早く終わったダウンロードに対する心配とそれでもなお湧き上がってくる期待を抱きつつログインした。
待ち遠しいローディングアニメーションも一瞬で終わる!それはそれで不安……だが、喜びも伴っている!メニューカーソルを動かせば……確かにあるぞ、「キャンペーンモード」の文字!ヨッシャ遊ぶぜ!
イェェェイ!!!!!
俺はテンションがおかしくなっていた。
つい1時間前までは寝ていたし、4時間前までは起きていたからだ。差し引き3時間睡眠である。
起きた直後にライオットブラッドをキメたのも影響しているかもしれない。
『キグルミをぉ、選択せよぉ!』
まあそんなことはどうでもいいッ!
いつも通りの鬱陶しいナレーションが、そういうことを考える手間を放棄させてくれた。
えーっと……とりあえずそうだな、ニワトリで行こうニワトリで!うん!さっき見た夢もニワトリだったし!いやヤンバルクイナだっけ!?まあどっちでもいいや!!!
イヨッシャァ!
なんか聞き覚えのあるフリーBGMの中で、奇声を上げながら「このキグルミで挑戦」ボタンを押す。
俺は眠かった。
つい4時間前までは起きていたし、8時間前まではシャンフロでレイさん(と、途中で乱入してきた京極)に銃の扱い方を教えていたしからだ。差し引き4時間プレイである。
『ラウンドぉ、ワンぅ!』
ヒャッハァァァ!!!
むさ苦しいナレーションとともに目の前に現れたラブリードギーに対し、暴走するテンションの捌け口を求めるように飛び掛かる……死ねェ~~ッ!!
「ワンッ」
しかしラブリードギーが妙に音質の悪い鳴き声を発しつつ何もない所に噛み付いたので、俺は死んだ。
◆
クソゲー。
俺は溜息を吐いた。
厳密に言うとこのゲームのキグルミに口は存在せず、声を出すときも
『ゲームオーバぁ……』
先ほどからねちっこく定期的に繰り返されるナレーションが、また聞こえる。
わかってるさ……俺はやろうと思えば、いつだってこのメイリオかMSゴシックかなんかで表示された「コンティニュー」ボタンをタップすることができる。
しかし……やる気が出ない。別にコンティニューに限った話ではないのだ。もはや何もかもがめんどくさい。
さっきニュースサイトでこのゲームの情報を目にした時点で気付くべきだったのだ。いくらクラファンをやってるとは言え、キグルミ・ファイトは典型的な暗黒個人開発ゲー……普通なら、ニュースサイトに取り上げられるようなネタじゃない。
じゃあなぜ取り上げられたのか……答えは一つ、
大体、何も無い所を噛まれて死ぬって何?って話なんだよな。俺も何も無い所を噛んでお前を殺してやろうか?って話だもん。酷いよ、本当にひどい。
俺は燃え尽きていた。
つい30分前までは最高潮にあった感情が、つい5分前に弾けたからだ。差し引き25分天下である。
……25分?
『ゲームオーバぁ……』
その時……俺の中で、何かが脈打った。
ゲームオーバー?……何がゲームオーバーだよ。俺は断じて
テンションが上がってきた。
そうだ……目が覚めて来た。思い出してきた。俺は起きた直後にライオットブラッドを飲んだ。しかし同時に……
つまり!俺はライオットブラッドを!この早朝にして既に2本飲んでいる!!!それも時間差摂取、それが意味するところは―――!!!
―――
やってやろうじゃねぇかァ~~~ッ!!ヒャッッホォィァ!!!!!!
盛り返したテンションに任せて、俺はコンティニューした。
◆
『ラウンドぉ、ワンぅ!』
行くぜェェェェェェェッ!!!
襲い掛かると死ぬのは把握している……恐らく当たり判定がズレている、それも相当。とにかく理屈は置いておいて、今回は襲い掛からないのが定石だ……だがッ!
敢えて!!!今回も突進する!!!
俺の
「ワ―――」
先ほどと同じ鳴き声、同じモーション、同じタイミングで、ラブリードギーは攻撃を試みて……
「ン―――」
今だッ!
俺は書き割りの羽毛を湾曲させ……
「ッ!」
ラブリードギーの一撃が空振りに終わる!もともと空振りだがそれはどうでもいい……とにかく、重要なのはこれからだ!
「ワンッ」
特に感情とかそういう物を感じさせない鳴き声を漏らすラブリードギーに、俺は……
「ワンッ」
そう……被攻撃判定がズレているというなら、接地判定も一緒でもおかしくない……!違ったとしてもコンテすればいい話だ!どうやらその必要はないようだがなァ~~~ッハッハァ~!!!
「ワンッ」
ラブリードギーが吠える……しかし、
「ワワンッ」
とりあえず……どうするかな。俺は今グラフィック的には空中に浮いていることになっている。別に下に向けて攻撃を放っても良いが……設置判定と被攻撃判定がズレているのは分かったが、こちらからの攻撃判定についてはどうなんだろう?とりあえず攻撃してみても、遅くは……
「ワワワワワワワワワワワワワンッ」
その時、ラブリードギーが
俺も飛んだ!!!!!
無限上昇バグだ!!!!!!
ヒャッホォォォォォォィ!!!!!!
ラブリードギーがなぜか爆発四散した!!!!!!!!!!!!
俺は勝利した!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
最高の気分だ……最高ッ!攻略してやったぞキグルミ・ファイト!ザマぁ見やがれッ!!!!!!!!!
『ラウンドぉ、ツウぅ!』
「ミャーウ」
その時ナレーションが響いてキューティーキャットが出現して何もない所を引っ掻いたので、俺は死んだ。
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ドッグライフ
虚構が虚構を挟み込む
最近、自分がもしクワガタだったらという幻想を抱くことがある。
こんなことを急に考え始めた背景には、二つの理由がある。一つにそれは我が家の奥底から幼稚園時代の『しょうらいなりたいもの』カードを発掘したことだ。そこにはローカライズを適当にやりすぎてシステムメニューを開いたり閉じたりするだけでだんだん各種インターフェースを構成する文字列が
経緯は記憶にないが、とにかくかつての俺がクワガタになりたがっていたのは紛れもない事実だ。実際、幼少期のメモリーライブラリを漁ると「どうしてライギョじゃなくてクワガタなんだ……」などと夜な夜な悔しがる父の姿(スニークミッション視点)を見ることができるし、明らかにライギョとクワガタは知名度的に釣り合っていない。まずはタイワンドジョウとカルムチーは違うという事を啓蒙するところから始めるべきだと思う。
二つ目の理由は簡単で、ただ
◆
聳え立つ檻が光を受け、俺に影の
俺はふと自分がもしクワガタだったらと考えたが、その考えは無意味だとすぐに棄却した。クワガタとカブトムシはただでさえ同じ動物界節足動物門昆虫網甲虫目に属しているのに、あまつさえそこに"夜行性"という共通点まで加えられるとなると、もう視力の点でクワガタとカブトは等価だろうと思ったためだ。
そんなことを考えているうちに、頭上で低品質なアニメーション文字が『3日目』『満腹度:14』と踊る。露骨に強調されたその色を見ればわかる通り、俺は今まさしく死に瀕している。
七周目にして、ようやく飽き性の小学生ルート攻略の糸口が掴めてきたところだ。
「とりあえすしばらく放置してみよう」で餓死した一周目。
「は?リテイク」でもう一回餓死した二周目
「……なるほどね」で初手脱獄を狙ったら落下死した三周目。
「さすがに先走りすぎたな……」と準備を進めてたら普通に餓死した四周目。
「ギリギリを見極めよう」で神経をすり減らし精神を切り刻んで"""待ち"""のフェーズに入り殆ど完璧といって良いタイミングで脱出したら飽き性の小学生がバーサークモード(何?)に入り嬲り殺された五周目。
放心状態で餓死した六周目。
思えば、すべての周回が経験として俺の糧になっている―――今こそ実行の時だ。俺は満腹度が『13』と瞬くのを複眼で捉えると同時に、大きく角を振りかぶって
―――自分がもしクワガタだったなら、いったいこのケージをどうやって破ったのだろう―――
ケージが揺れ、衝突音が―――そして、
―――きっと、この煩わしい棒を
ちらつく思考の一切を無視して、
完璧、完璧だッ!!時間帯的に飽き性の小学生はラジオ体操中だ、満腹度も2桁ある―――脱出には十分!三対の脚を次から次へと伸ばし、最高速度で卓上を這う。複眼に映る流れる景色が心地よく、しかしピンボケなので言うほど心地よくはない。
とはいえ、ピンボケでも
第三チェックポイント、〈ジャンプ台〉だ。
悩む時間も休む時間も無い、満腹度が危険域だし、満腹度が危険域なせいで碌に飛ぶこともできないからだ。
俺は走り出す。
―――自分がもしクワガタだったなら、いったいこの崖をどうやって渡ったのだろう―――
―――待ても、飛べも、戻れもしない中、どうやって虚空の崖を越えていったのだろう―――
―――きっと、同じ道を歩んだに違いない―――
成功、成功、成功だ……!!これ以降のコースはまったくの未知だが、この調子なら絶対に
進む、進む、進む―――辺りを流れるピンボケは気づけば見覚えのないピンボケになっていて、俺は心のどこかが
えっ?
あっ。
―――自分がもしクワガタだったなら、いったい
考える、べきだった。『飽き性』というのがもしも
―――当たり前の話だ、答えは一つに決まっている―――
右手が迫る。殺意を帯びた右手だ。右の複眼を動かす。
―――思いっきり、
八周目は、放心状態に終わる。
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ラブクロック
刹那に願いを込めて
「お」
1
俺は覚悟した。2週間にわたるピザ修行ゲー(ピザ修行シーンは一切存在しない)の果てで研ぎ澄まされた集中力が、およそあり得ないほどの
さて……メイド喫茶イベントでギャルだから……予想される選択肢は「ま」「き」「ー」「い」の4種類か。最高の選択肢は「ま」、これを引ければ確実に抜けられる……次に「き」、メイド喫茶イベントはハイリスクハイリターンな代物だが、その中で
「い」
2
「い」か……俺は心中で舌打ちをした。もちろん体には出さないし、VRノベルゲー特有の行動矯正が出させてくれない。40%の確率で発生する、アタリにもハズレにも転ぶルート……このゲームの物欲センサーはそこそこ標準的な出来なので、実際のところは「アタリにもハズレにもハズレにも転ぶルート」くらいの比率だと考えるべきだ。マズいな……とはいえ、「ー」を引いてそのまま「そういえばあたしってO型なんだよね!……あれ、O型のOってピザに見えね?」からの飛行機雲エンドよりはよっぽどマシであることもまた事実。そう悲観するべきでもない……悲観するべきでもなくあってくれ…………!!!俺は自分に言い聞かせた。実際「ま」を引いて「お前がどうしてここに!?」を発生させるのが一番良かったんだが……まああれは2回目以降だとなんとなく体感で確率下がってるような気もしなくも無いし仕方ない。うん、仕方ない。俺はまたしても自分に言い聞かせた。現実でもゲームの中でも、人生とは「諦め」の集合体である。
「し」
3
更に「おいお前→声かけイベント(ピザ:ノットピザが6:4)」「オイスターソースはいかが→ピザ」の2つの選択肢が潰れる。一応確率的には50-50よりマシになっているが……まあどんぐりの背比べだ。ちなみにピースというのは12分の1秒、つまり60FPSで言う5フレームの事だ。ラブクロックのUI右下にこっそり表示されているアナログ時計が、長針と長針の間で区切って12個の範囲に色分けされているのが由来である。アナログ時計に当然のように搭載されている
「く」
4
むっ。俺は眉をしかめた。正確には、眉をしかめたつもりになった。「おいし」ルートは基本的に「い」に派生するのが定石だが、そこであえて「く」か……これは分からなくなってきたぞ。「おいしいチーズケーキをどうぞ→ピザ」「おいしいですか?あっ、おいしいといえば→ピザ」などの確殺ルートを潰せたのは良いが、一方で「おい」ルート最強の選択肢である「おいしい?そりゃおいしいだろうな(好感度上昇&体力回復&内部ピザ値減少)」を逃したのは痛い……まあいい。この感じだとたぶん次は「で」で「おいしくできただろ(体力回復)」あたりを引くことに……
「な」
5
俺は困った。
「な」か……「な」かぁ…………。ヤバいな、最悪だ。「い」を引いて「おいしくない」ルートに移動できれば生存は可能だが好感度が下がる。「け」の「おいしくなけ」ルートはちょっと扱いが難しいし、「あ」に至っては入ったら確定で死ぬ。うーん、「な」かぁ……いや待てよ、俺は閃いた。「け」を引けば確定で「おいしくなければ」まで誘導できるわけだから、そこから0.4ピースくらいのところで割り込みをかければ内部ピザ値の大幅減少が見込めるんじゃないか?よしこのプランで行こう、予定が立った以上後は祈るのみ、祈ればピザの神、じゃなかったえっと恋愛の神は振り向いてくれるはずだ!!!俺の脳裏に慈愛を表情に湛え手を組むなんかいい感じに恋愛を司ってそうな神のイメージが浮かび上がる。来い、「け」!!!!!!
「あ」
6
はいクソ~~~。
脳裏の恋愛の神が組んだ手から、ポロリとサイコロが落ちた。
「れ」
7
集中力を失った脳は、
「萌」
8
これまでの加速感とはうって変わって、
「え」
9
考える時間も与えずに、
「萌」
10
仮想の現実を
「え」
11
俺に
「キ」
12
突き
「ュ」
13
つけ
「ン」
14
てきた。
「(暗転)」
15
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オトギニア・ユニオン
投げれば福は逃げていくから
「鬼は外~!」
「くっ!」
そして、カッツォは当然のごとくその全弾を綺麗に避けて見せる……流石は日本勢のキャラだ。ストーリーモードの桃太郎シナリオに出てくる雑魚のコンパチとはいえ、その肉体的スペックは俺の使用するジャック君とは比較にならないほどの物がある……だがッ!
「今だ……
無様にもその本懐を成し遂げられず、重力に従い地面へと落ちていく豆たち……その尽くが、俺の掛け声によって
「ちょっ、いやいやいや!」
「ホラホラここまで登って来いよォ~~ッ!」
付近に撒いておいた豆に掴まってアバターを上昇させながら、右手の金棒を重そうに振るい絡みつく豆の木に対処するカッツォを煽っておく。赤鬼はいかにもな「3Dモデル余ったんでせっかくだから実装しました」キャラ、フィジカルは最強クラスだが、空を飛ぶことも飛び道具を使うことも(金棒を投げる以外では)できない……!ここから20秒間俺は無敵だ、せいぜい芋砂に徹してやるぜェ~~ッ!!!
「サンラクゥゥゥッ!!」
どうにか豆の木を振り払ったカッツォが、金棒を振り上げ俺の真下まで駆け寄ってくる……フッ、無駄だね。赤鬼の射程じゃ近距離はもとより、金棒を投げても俺は届かない。もちろん着地狩りの危険はあるが……なあに、オトギニア・ユニオンにおける
いや節分とジャックの間にどんなゆかりがあるんだよって話ではあるが……とにかく、今のジャックは普通のジャックと違い
「おりゃぁッ!」
「えっ?」
下を見れば……そこには、豆の木の根元を
「やああああっ!」
咄嗟に伸ばした手も、空を切り。
「な、んだ、とッ!?」
俺は耐久値を全損させた豆の木が倒れるのと共に……
クソ……想定してなかった。確かにジャックの豆の木は、このゲームにしては珍しく原作再現要素が入っており、根元に特定の攻撃を入れれば倒れる仕様になっている……だが、それはあくまで金太郎の斧なんかの話だ……金棒で斬り倒せるはずが―――!
―――『代わりにステータスは全体的にダウンしてるが関係ない』―――
ふと数秒前の自分自身の言葉を思い出した途端、俺を加速する重力がより強くなったかのような、そんな錯覚を覚える。眼下で待ち構えるカッツォに、しかして例の飛び蹴りを放つことはかなわない……受動的に
「さぁ来いよサンラクゥ!お得意の豆を撒いてみなよ、全部さっきみたいに避けてやるさ!」
煽りが聞こえる。負けられない。咄嗟に計算する。スタンは着地とほぼ同時に解除されるはず。だったら!
「オラッ!」
迫り来る地面を見据えながら……俺は、
「なッ……!」
カッツォがたじろぐ……ふん、遅いね。ジャックの豆は当たらなければゲージ技用の布石に過ぎない、だが着弾した場合……それは、無条件の設置技になる。つまり―――
豆を打ち込んだ左の二の腕から、茶色の幹と緑の蔓が、メキメキというSEと共に繁茂を始める……当然、俺の真下のカッツォも巻き込んで!いや冷静に考えてこれまったく大豆じゃないな?まあいいや。
「クソがッ……!」
カッツォがもがく……無駄だね。ジャックの豆は本来そこそこのダメージが入る設置技だが、節分に伴うステダウンもあって、左上のUIが告げるのはどうあがいてもカスダメだ……だが、むしろ好都合ッ!
「『飛び蹴り』ッ!」
俺は全く飛ばずに、真下のカッツォに飛び蹴りした。
「『飛び蹴り』ッ!『飛び蹴り』ッ!『飛び蹴り』ッ!」
「なっ、くっ、がっ……!」
そうだ……俺が大豆のようなものを打ち込んだのは左腕、つまり脚を使う分には自由……!そして赤鬼には上半身を使用する攻撃しか存在しない……つまり、俺だけがこいつにカスダメ以上のものを叩き込めるッ!
「『飛び蹴り』ッ!『飛び蹴り』ッ!」
ゲージ技を使った場合に比べ、通常攻撃による豆の拘束時間は短めだ……飛び蹴りを叩き込み放題の時間は、絡み合う緑たちがほどけるとともに終わりを告げる。
眼前の赤鬼の傍らのHPバーに目をやれば、それは明確に
「さあ……ラストスパートだ」
「ちょっとタンマ」
えっ?
虚を突かれる俺から手元へと視線を移すと、カッツォは懐から取り出したチョコレートを口に入れた。
カッツォのHPが全回復した。
は?
「福は内、ってね……いや~サンラク、節分スキンについて露骨に誘導してたよね。怪しいと思ってwikiとか見て調べたんだ。なんだっけ……『現実の行事の約2週間前から当日までは、その行事にゆかりのあるキャラは限定スキンが使えるようになる』?」
俺は、絶句する。
「今年の節分が2月の何日かは忘れたけどさ……いつにしても、今日という日については確実に言えるはずだ」
言いながら、カッツォは金棒を重そうに担ぎ上げる……そう、重そうにだ。思えばおかしかった、赤鬼が金棒を重く感じるなんて普通はあり得ない。もし、それが
「―――今日は、バレンタインデーの約2週間前だ」
投げつけた豆が金棒に弾かれるのが、奇しくも再開の合図となった。
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ネフィリム・ホロウ
猫じゃらし号、大地を浮く
「……クソがァーーッ!!」
10勝に対し6敗を数えたところで、俺はついにキレた。
猫耳が強すぎるからだ。
「ようサンラク~!勝っちゃってごめんな?
知らない人がめちゃくちゃ嬉しそうにサムズアップし、地団駄を踏む俺からそっと離れていく。
俺はこのゲームそのものからそっと離れたい衝動に駆られた。
「……クソ……何が索敵性能100倍だよマジで……これがあればキングフィッシャーの高速機動はレーダー見れば見切れる確率が上がるし、フィドラークラブの透明化も意味ないじゃね~~かよ……」
俺は猫耳を憎みつつあった。「憎む」という言葉から猫耳を付けたフェアカスの姿が脳内に連想される……引っ込んでろ!
「……こうなったら……」
呟く。俺のアバターは表情とかそういう概念を持たないから、端からは真意を汲み取りにくいであろう呟きだ。だが……実際のところ、俺の目論見は余りにはっきりしていた。
システムメニューを開き、ロビーからフィールドに移動する準備をする。
新機体を作ろう。
◇
ランキング二位プレイヤー、スーパー玉男は困惑していた。
彼は猫耳イベントにおいて最も得るアドバンテージが大きいプレイヤーの一人である。
しかし、目の前で地面から数メートル上をホバリングする
「……サンラク、それは何だ?」
「見ればわかるだろ……
サンラクの操る新機体らしきもの……機体名『
「……その尻尾は?」
「ああ、スロット拡張の棒を腰につけて、そこにいろいろくっつけたらこうなったんだ……
どういう意図なんだ、考えても玉男にはわからない。ふと、
『跳弾猟犬 vs. 尾狗』
アナウンスが走る。インターフェースが変化する。そして……二匹の犬が、動き出す。
「オラァッ!」
スーパー玉男は初手でフレキシブルレーザーを放った。相手の機体は本体については軽量に見えるが、例の
空をつんざき、レーザーは尾狗目掛けて直線軌道を取る。サンラクは当然サイドブーストで回避を試みるが―――
「やっぱり、遅いな」
猫耳を装備した跳弾猟犬にとって、その行き先を予想するのは余りに容易い。極めて詳細に表示されたレーダーを見ながら、フレキシブルレーザーを軌道変更、確実に当たるよう調整して……
「……は?」
レーダーが、見えない。
いや……見えないのではない、
「……っ!」
玉男はメインモニターから前方を見る。そこには、こちらに向け突進する
「聞こえすぎる耳も、考え物―――ってな」
―――いつの間にか消えていた尻尾の後ろには、射出された大量の針が。
猫耳を
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直接宣伝と屈折光線
「……妙だな」
11月某日、日曜日、午後1時。
スーパー玉男、本日4度目の呟きであった。
ひとまず、己の勝利を華々しく伝える
「……人が、多すぎる」
そう、普段は閑古鳥が鳴くとしか形容しようがなく、そのだだっ広い空間を若干余らせているロビー。それが、今日ばかりはプレイヤー……それも、知らない顔に埋め尽くされているのだ。
はっきり言って、その人数はいつぞやのフィドラークラブお披露目戦すらも優に超える。さらに言えばお披露目戦の場合、プレイヤーたちは試合を見ることを目的に
つまり……ロビーは混雑の
玉男の表情は困惑に染まっている。
「……えっ、俺が知らないだけで実はデカい試合とかあるのか……?」
無い。二律灰反は依然として現役であり、その二半身連携によって生み出される鉄壁は、未だ新機体の披露に待ったを掛け続けている。
「……ネフホロ2の続報が発表されたり……?」
無い。そもそも、ネフホロ2の存在が発表された直後の新規が比較的増えた時期ですら、ロビーの様子は現在の喧騒には遠く及ばなかったはずだ。
「……それとも、有名人がこのゲームを、紹介……」
その時、玉男の呟きを遮るように、半透明のウィンドウが勢いよくポップアップした。
『「Jackal」があなたに決闘を申し込みました』
「っと!……またアルファベットネーム?やっぱ妙だよなあ……」
首を傾げつつ、玉男は手慣れた操作で決闘を受諾する。ボタンを押すことによるピ、というSEがいつもより小さく聞こえるのはなぜだろう、と玉男は一瞬考えたが、すぐに「ロビーに人が沢山いるから、話し声で若干かき消されているんだ」という
「……待てよ」
手癖でそのまま伸ばしかけた指を、『跳弾猟犬』の文字列の上で止める。
「……ここは一つ、
指を下へとずらしてみれば……そこには、『跳弾猟犬:ガンドッグカスタム』と記されたボタンが、どこか誇らしげに存在して。
同時に玉男が浮かべた不敵な笑みに、既に困惑の色はなかった。
◇
『跳弾猟犬:ガンドッグカスタム』は、ネフィリム・ホロウにおけるランキング2位(たまに3位)プレイヤーであるスーパー玉男が、ランキング圏外プレイヤーであるサンラクの操る『キングフィッシャー』を倒すことを目的にアセンブルした機体である。
その名の通り
しかし、この機体における
「さてと……また軽量機?見た感じ装甲がかなり薄そうだな……超高速機動流行ってんのか?」
試合開始と同時に玉男は右に旋回する。理由としては『サンラクなら右を攻めてくるだろう』という確信からだ……相手はサンラクではないはずなのにどうしてこうするのか、それは玉男にもわからない。だが、実際のところ予想は当たり……相手はその薄い装甲を繰り、玉男から見て右向きに
誰も見ることのないブースターフレアの残像が、ただエフェクトとして空間に散る。
リコイルが大きい武器を使っているのか若干ブレつつも己に襲来する弾道を、ひとまずサイドブーストを吹かして回避しつつ、玉男は一発目の
ちょうど移動方向を埋めるように空間を薙ぐレーザーに、軽量機はいかにも慌てた様子でブレーキをかけ、反転する……サンラクが相手みたいな状況に置かれたら同じ動きをしそうだな、と玉男は思った。
そして同時に、サンラクが自分みたいな状況に置かれたら絶対にこうするだろう、と思いながら……あらかじめ決めておいた進路を辿り、
「よしヒット!オラァ!!」
被弾してバランスを崩した相手との距離を一気に詰める。ネフィリム・ホロウにおいてレーザーの速度は一定ではない。屈折レーザーの場合、放ってから30フレームほどはそれ以降と比較して特に高速だ。だから、敵と近づくのはコントロールの観点から非常に重要である。
見たところ、相手は肩武器を積んでいる様子もない。それはつまり、屈折レーザーによってダウンしている間は、いくら近づこうとも攻撃される心配はない、ということで―――
「……ッ!?」
簡潔に言うと、相手の軽量機の
さらに言えば……ガンドッグのもとに、高速で
「ちょ……!」
「なんだこ……りゃァッ!」
回避自体には成功し、頭は真横を掠めていく……だが、時間を取られすぎた。背部カメラを確認すれば……そこには頭を失った首から代わりにレーザーブレードを生やした軽量機が、被弾してもなお高い機動力をもって、お辞儀の姿勢で突進してくるのが見える。
「随分な初見殺しだなオイ!」
玉男は悪態をつけながら考える。旋回は間に合うか?間に合わない。スラスターは外部ユニット扱いだからクールタイムがあるはずだ。屈折レーザーを前方に発射してすぐ後ろに曲げればいけないか?無理だ。エネルギー不足で発射できない。
様々な考えが浮かんでは、現実という否定者によってその意味を失っていき、時間が選択肢自体を減らしていく。玉男はこの感覚に覚えがあった。それこそサンラクが、フィドラークラブで使ったような……
「……でもな」
しかし、彼は諦めない。
なぜかといえば、簡単な話だ―――
「……
『ガンドッグ』という機体における目玉―――それは他ならず、打倒すべきサンラク自身を参考にした、その
もともと、跳弾猟犬が有する武器は腕部のパンツァーパンチャーと肩の屈折レーザーの2種類のみだった。そして『ガンドッグ』でパンツァーパンチャーを排したわけだから、現在は肩以外に武器は搭載されていないことになる。そして、これが何を意味するかといえば―――
「……
ガンドッグの体勢が変化し、同時に偽装双脚が変形……隠されていた
「サンラクほどじゃないな、お前は」
後ろ足のチャージを始めながら、玉男はそう呟いた。
◇
「……妙だな」
11月某日、日曜日、午後1時10分。
スーパー玉男、本日5度目の呟きであった。
ひとまず、己の勝利を華々しく伝える
『「TrueCursedPrison」があなたに決闘を申し込みました』
「はいはい……」
それをまた慣れた手つきで受諾しながら、玉男はやはりこう呟くのだ。
「いや、本当に人が多いな今日……」
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ユナイト・ラウンズ
目を閉じたまま雪を見る
「サンタ活動をするプレイヤーだと?」
確かに少し反応が過剰だったかもしれないが、とはいえカッツォの言葉は間違いなく予想外のものではあった。サンタ活動をするプレイヤー……確かに今日は12月25日、クリスマス真っただ中ではある。サンタ活動という意味では絶好だろう。……しかし。
俺はカッツォに確認する。
「このゲームって季節イベント無いよな?」
言いながら、横目で周囲の風景をちらりと確認する。俺たちは現在
さて、
このゲームのクソさはあくまでシステムの部分、グラフィックはむしろ頑張っている。標準的なクソゲーのように極端に粗いテクスチャを使っているということはない。ただ……土たちは、裸だ。何かしらのエンティティに覆われるということがない。例えば雑草、落葉、もしくは――冠雪。
草や葉っぱは、探せばある。前者は薬草の採取スポットに。後者は適当な木の陰とかに。しかし雪はない。どこにもない。
そのうえで、だ。
「サンタする意味あるか? ボーナスが入るとか?」
「ないね」
カッツォは即答した。
ないか~。
「ないなら仕方ないな」
俺は納得した。
やる理由がない? 結構じゃないか。損得計算で行動するのもいいが、時には無意味な遊び方で楽しむのもゲームの醍醐味だ。しかもサンタときた、殺風景なこのゲームにちょうどいい。俺はいろんなクソゲーでいろんなクリスマスイベントに参加してきたが、どのイベントもクソさとは別に……楽しさというか、
ひとしきり一人で納得したうえで、俺はカッツォに質問した。
「ちなみにそのサンタ活動ってどんな感じなんだ?」
「うん、ええとねサンラク」
カッツォのテンションが少し上がったように見える。ようやく本題に入れるぜという感じだ。
フルプレートによって少しくぐもったエフェクトをかけられたカッツォの声は、意気揚々と説明を始める。
「まず、①連中はサンタ帽をかぶるんだ。プレイヤーメイドのね」
「あの赤くてとんがった奴か?」
「赤くてとんがって、先端にふわふわがついてる奴だね」
「兜の上から?」
「兜の上から」
「マジか」
目の前のカッツォを
「で、②でかい袋なんかも担いで」
「うん」
「③適当なプレイヤーを見つけるでしょ?」
「うん」
「④『メリークリスマス!』って言うでしょ?」
「うん」
「⑤おもむろに自分が装備していたサンタ帽を脱いでそのプレイヤーに被せるでしょ?」
「うん?」
「で、⑥ぶっ殺して
「いつもとやってること変わらなくない?」
「いやいやいや」
いやいやいやじゃないけど? 普段からやってる②③⑥に無駄な①④⑤が加わっただけじゃねえか。何なら②もいらんわ。
「普段からやってる②③⑥に無駄な①④⑤が加わっただけじゃねえか。何なら②もいらんわ」
俺は思ったことを率直に伝えた。
「いやいやいや」
カッツォタタキは何もわかってないねえという感じで首を振る。何だこいつ?
「いいかいサンラク。この活動は……文脈が重要なんだ」
「文脈だと?」
「ああ。思い出してみなよ……君は僕がサンタ活動について説明してるとき、④の時点でどう思ってた?」
「サンタとか言ってたし、相手のプレイヤーになんかアイテムとか渡すのかなと……」
「それだよ、相手プレイヤーもそう思う。サンタ帽のせいで印象が緩和されて、戦利品を入れるためのものでしかないでかい袋も、すてきなプレゼントがいっぱい詰まった夢の容れ物にしか見えなくなるんだ」
それはナメすぎじゃない?
「そこからの⑤で相手に
「仮にそうだとして⑤はやっぱりいらなくないか? 正当化でドロップが増えるのかよ」
「なんか後味が悪くなるでしょ」
このゲームに後味が良かったことなんて一度もないけどなあ。
……まあ、いいか。
「要はあれだろ? カッツォ」
「ん?」
最終的に導かれる結論は……。
「
……至極、単純なものになるんだから。
俺の言葉を聞いて、カッツォはにっと笑った。気がした。顔面を覆う兜の鈍い光沢は彼の表情を隠してしまっていて、でも、やっぱりあいつは笑ったんじゃないかと思う。そんな気がするんだ。
「そうだね」
二人で、同時に立ち上がる。鎧のパーツたちがぶつかり合うかちゃかちゃという音。見据える先は二人とも同じだ。
サンタ狩りが、始まる――。
……
…………
………………
……そんなこともあったっけな。
唐突に思い起こされた記憶に軽く浸りつつ、同時に自分に言い聞かせる。出来る限りの忍び足だ、忍び足を心掛けろ。今回のターゲットは聴力が高い。油断すると
視覚的なエフェクトが伴うものは避けつつ、いくつかの隠密系スキルを自分に適用。暗視は……いらんな、素の視力で十分だ。必要なバフを取捨選択しつつ、暗闇の中を静かに進んでいく。精神状態としては極めて平静だ、今なら仮に目の前で屈伸煽りされても何も感じない、機械的に屈伸煽りを返すだけだ。ただ……。
さっき思い出した記憶について、少し考えてしまうところはある。
確かにいつかのクリスマス、あんなことがあった。あの後俺たちは街に繰り出してサンタ狩りを行い、サンタどもが警戒を始めたタイミングで連中から奪ったサンタ帽を装備して仲間と誤認させることでうまく狩りを継続するも果たして本物のサンタか偽物かあるいはという部分で混乱が生まれたから今度はその辺の通行人にサンタ帽を被せたり逆にサンタを殺さずサンタ帽だけ奪ったりして高度な頭脳戦を展開するも最終的に鉛筆が参戦してきたため爆発オチがついた。楽しかった。
まあ……運営にとっては癪だったろうけどな。円卓にはクリスマスなんて存在しなくて……俺たちは幻想上の
思えば、俺が今やっていることと同じだ。
両腕に抱え込んだ箱の中身が転がって音を出さないよう、細心の注意を払って水平を保つ。この行為だって、本来は存在しない。天下の神ゲー・シャングリラ・フロンティアの運営も、世界観を優先するという点では円卓と同じだった。シャンフロにクリスマスなんてない。それを演じるのは、世界観を破壊する行為だ。
でも。
「サンラクサン………」
「ニンジンは
たまには、こんなことをしてもいいんじゃないかと思う。
ラッピングされた直方体を一つ、サイドテーブルの上にそっと置く。大丈夫だ、ターゲットには気付かれてない。このまま静寂を維持しつつ、寝室を来た道と逆に歩いて、扉から出ればいいだけだ。死に戻りの方が正確だが、ロマンがない。俺はロマンを大事にする男だ。
闇の中でくるりと反転して、少々間抜けな歩行姿勢で帰路につく。背中に背負った袋が視界の端にちらりと浮かんで、あるいは仮想の冠雪に見える。心中で、一言呟きを落とす。
メリークリスマス、エムル。
その他カテゴリの方が良かったかも
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現実
【仮面】「顔隠し」総合スレPart.42【何者】
追記:投稿ミスりました
6:ただの一般モブ
一乙
7:ただの一般モブ
顔隠しのヘルメットいいよねわかる、あれどこで売ってんのかな
8:ただの一般モブ
いちおつー
9:ただの一般モブ
>>1乙
10:ただの一般モブ
リボルブランタンの缶デザインやっぱいいよな、うまく言語化できないけど全体的におしゃれ
11:ただの一般モブ
顔隠しがやってた「トゥナイトと何かをミックスしたうえでさらにリボルブランタンでジョイント」コンボいいなこれ、トゥナイトの持つ「継続力」をあえてミックスによる割合低下・リボルブランタンとジョイントによる加速でもって殺してバックドラフト的な「燃料」としての使い方をさせる感じ
12:ただの一般モブ
顔隠しはトゥナイトと何かのミックスに更にアクセルも突っ込んでるからさらに加速してるんだよな、その代わりに「何か」にバックドラフトを選出してるから燃料としての適性が上がってる
13:ただの一般モブ
実際燃料として使うなら一番バックドラフト二番トゥナイトみたいなところあるしな、バックドラフト×トゥナイトのミックスはとにかくエンジンにオイル突っ込んでる状態なんだよな
14:ただの一般モブ
何だこのスレ
15:ただの一般モブ
>>13
それをアクセル・ジョイント・リボルブランタンの力で強引に高速燃焼させてる感じだよね、スポーツカーかよっつー
16:ただの一般モブ
トゥナイト君こうして見るとマジで有能なんだよな……継戦力高いうえに燃料にも使えるとかね
17:ただの一般モブ
>>14
「顔隠し」について語るスレだが
18:ただの一般モブ
いやこう……どう見てもライオットブラッドについて語るスレでは?
19:ただの一般モブ
顔隠しのマーケティングって上手いよね
20:ただの一般モブ
あっはい
21:ただの一般モブ
う~~~~ん久し振りに来たけど順調に浸食が進んできてんな、そろそろ暴徒板に移転しろよ
22:ただの一般モブ
じゃあ顔隠しの話するか~~~????
23:ただの一般モブ
最後に顔隠しの話したのいつだったっけ…
24:ただの一般モブ
もうダメだろここ
25:ただの一般モブ
アメ、マスクドハンニャ戦の実況は盛り上がりましたね……
26:ただの一般モブ
そうだな、まさかあのマスクドハンニャが負けるなんて
27:ただの一般モブ
何が「あの」なんですかねぇ…
28:ただの一般モブ
マスクドハンニャさんはマスクドハンニャさんでしかない定期
29:ただの一般モブ
トートロジックな定期やめろ
30:ただの一般モブ
>>22
だったら話題振るわ
次に顔隠しが表舞台上がるのいつかな~~~~~~
31:ただの一般モブ
定期って概念自体が割とトートロジックでは?
32:ただの一般モブ
循環宇宙論で行けば宇宙そのものがトートロジックなんだよなぁ……
33:ただの一般モブ
>>30
なんか新しいライオットブラッドが出たらまたPRのために出てくる気がする
34:ただの一般モブ
トートロジーってそういう意味じゃないと思うんですけど
35:ただの一般モブ
>>33
これマジ?ガトリングドラム社は第8のライオットブラッドを発売しろ
36:ただの一般モブ
>>33
顔隠しをガトリングドラム社の広告塔みたいに言うのはやめろ!!!!!別に契約は結んでないだろ!!!!
37:ただの一般モブ
でもライオットブラッドに手を出した時点でもう……
38:ただの一般モブ
そういや顔隠しってソリッドとか使うタイプなのかな
39:ただの一般モブ
このスレで言うと説得力がありますね
40:ただの一般モブ
>>38
奥歯にソリッド仕込んどいて土壇場で噛み砕いてカフェイン加速させたりしてそう
41:ただの一般モブ
かっこいい
42:ただの一般モブ
実際焙煎とかでライオットブラッドの側に技術的な加工を行うタイプというよりは「飲み方」のコントロールでカフェインを操るタイプって暴徒板本スレの方でも考察されてたな
43:ただの一般モブ
そう考えるとソリッド噛み砕きはマジでやりそうだな
44:ただの一般モブ
ジョイントのラグと瞑想のタイミングを一致させる戦法は見事としか言いようがなかったよな~~~~~~
45:ただの一般モブ
そういえば最近GH:Cのレートに潜ってるとしょっちゅうカスプリに当たるんだけど顔隠し効果かね
46:ただの一般モブ
マスクドハンニャさんとの戦いでさらに知名度が上がったからな……
47:ただの一般モブ
もっと顔隠しが皆に知れ渡ってほしい
48:ただの一般モブ
世界に広がれ暴徒の輪
49:ただの一般モブ
顔隠しのゲーマー的プレイングについてほとんど語らずに暴徒的プレイングとライオットブラッドの話ばっかしてるのウケるが
50:ただの一般モブ
そういや顔隠しってミーティアス使ったらどうなんだろうな、割とオールラウンダーだけど
51:ただの一般モブ
むしろ高機動が本業まであるからな顔隠し
52:ただの一般モブ
ミーティアス、足は超速いけどカスプリほどの自由度は無いのがな…
53:ただの一般モブ
顔隠しのエナドリトークの話しない?あれ途中から明らかに憑かれてたよな
54:ただの一般モブ
>>51
高機動が本業っつっても誤差よ誤差、顔隠しのスタイルがオールラウンダーなのを一番生かせるのはやっぱモードチェンジがあるカスプリだと俺は思うわ
55:ただの一般モブ
>>53ライオットブラッドは合法だから安心しろ
56:ただの一般モブ
合法性だけで強引にすべてを解決しに行くのやめろ
57:ただの一般モブ
暴徒レベル上がってきたな……
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【狂気】「名前隠し」総合スレ Part.27
247:ただの一般モブ
オフでビルドミノ遊びやってるんだけど楽しいなこれ
名前隠しは序盤は一般人をラジコンにしてダイレクトアタックさせてたけど1ラウンド戦に関しては初手でドミノ始めるのも案外悪くないかもしれん
248:ただの一般モブ
言うてある程度被害を発生させないと避難イベントが起きないからNPCが分散しねえ?ヴィラニック貯め切れなくないか
249:ただの一般モブ
あーそれはそうだな、名前隠しのアレはスタジアムに避難民が集まってたからこそできたところあるし
250:ただの一般モブ
っつーかステージが基本ランダム生成な以上そもそもドミノはあんま現実的じゃなくね?格ゲーで乱数に祈るなよ
251:ただの一般モブ
やっぱこのゲーム本質的にシミュゲーだよな
ロールプレイキルを生み出した名前隠しの功績はデカいわ
252:ただの一般モブ
名前隠しは本番で乱数祈祷案件であるはずのドミノに成功してるのが地味にヤバいんだよな、かなり緻密に作戦練ってると思うぞあれ
253:ただの一般モブ
>>252
フォロワーは沢山後発してきてるのに本家を超えるだけのプレイヤーが現れないの、作戦の違いな気がするんだよね実際
254:ただの一般モブ
シミュゲーは仕様の把握がかなり重要だからな……
255:ただの一般モブ
やっぱシャンフロエンジンはすげーよ、ここまで複雑なシミュレーションをできること自体が凄いしそれを対戦ゲーにできるのも凄い
256:ただの一般モブ
GH:A→GH:Bの変化は普通かつ正当に強化されてるって感じなのにGH:B→GH:Cの変化がデカすぎるんだよな、技術的にもジャンル的にも
257:ただの一般モブ
コロシアム格ゲーを箱庭シミュゲーに魔改造するな
258:ただの一般モブ
ヒーロー側的には割と格ゲーだから……
259:ただの一般モブ
シャンフロエンジンほんとすごいんだよな、もうすぐこれでネフホロが遊べると思うと震えてくるわ
260:ただの一般モブ
そういえば顔隠しはネフホロ推してたけど名前隠しもやってるのかな
261:ただの一般モブ
身内で遊んでそう
262:ただの一般モブ
マジであの2人は魚臣とどういう関係なのかまるでわからんからどうかな…
263:ただの一般モブ
シャンフロといいGH:Cといいシャンフロエンジンはゲームをシミュ化するな
264:ただの一般モブ
自由度が高すぎるし数値が膨大すぎるんだよね、ネフホロもシミュゲー化するのかな
265:ただの一般モブ
ネフホロは熱管理とかのシステムといい装備同士の兼ね合いといい無印の時点で割とシミュゲーなので…
266:ただの一般モブ
JGEにいた早口少女は操作性とかバランスの変化とかについては触れてもジャンルそのものの変化については特に話してなかったし正統進化ゲーになるんじゃねーかな
267:ただの一般モブ
あの子すき
268:ただの一般モブ
品評が的確過ぎるんだよな
269:ただの一般モブ
閃いたんだけどNPC数人に爆弾持たせて避難所まで移動させた後にまとめて爆破すればビル倒さなくてもかなり殺せるんじゃね?
270:ただの一般モブ
あーダイレクト自爆テロか、いいかも
271:ただの一般モブ
ビルは倒れるのに時間がちょっとかかるけど自爆テロは起爆さえすれば一瞬なのはアドかもしれん
272:ただの一般モブ
とは言えどうなんだ、倒れた先に何があるかにかかわらずビルドミノってそこそこヴィラニック入るんじゃねーの?トントンでは
273:ただの一般モブ
実際名前隠しもビルドミノで稼いだヴィラニックでそのまま超必打ってたからな、避難民殺さなくてもドミノ部分だけで結構稼げると思われる
274:ただの一般モブ
ヴィラニック稼ぎ目的ならドミノよりジェンガ的に爆破した方が速くね?
275:ただの一般モブ
ここ事実上のクロックファイア戦略掲示板だよな
276:ただの一般モブ
そもそも避難場所って大抵は屋根のある場所な気がするけど視線通せるの?という問題ががが
277:ただの一般モブ
>>274
この戦法は通常爆弾をNPCに持たせる数が多いほど効果がデカいから、準備に長い時間がかかっても引き金を引くのは一回だけなドミノの方が色々と楽なんじゃねーかな
278:ただの一般モブ
NPCの悲鳴聞くの楽しすぎるんだよな
279:ただの一般モブ
屋根なんて爆破すればええやろの精神で
280:ただの一般モブ
屋根爆破するくらいなら普通に爆弾投げ入れろよ
281:ただの一般モブ
それはそうだわ…………
282:ただの一般モブ
>>278
シャンフロのAIが高性能なおかげでかなり感情とかの再現がされてるよな、迫真すぎる
283:ただの一般モブ
このゲームのNPC、全年齢でしちゃいけないリアクションしてくるんですけど
284:ただの一般モブ
これシャンフロにも言えるんだよな>全年齢でしちゃいけないリアクション
285:ただの一般モブ
名前隠しって顔隠しと違って一度しか表舞台に立ったことないのにこんなにスレ建ってたのか
286:ただの一般モブ
Part3くらいからロールプレイキルの戦術を研究する場所になったからな…
287:ただの一般モブ
>>285
最初のころは名前隠しの正体の話とかしてたけどな
288:ただの一般モブ
途中で大喜利に切り替わってたあれか
289:ただの一般モブ
天音 永遠説はちょっと笑ったぞ
雰囲気的な"有り得さ"と性格的な"有り得なさ"が両立してるのが大喜利の回答としてグッド
290:ただの一般モブ
纏う雰囲気がトワ様っぽいというのは確かにわからんでもない
291:ただの一般モブ
そういや検証したことないけど3Δで爆弾を設置して使い切らずに次のキャラに移行したら爆弾って残るのかな
残るとしたら色々悪巧みできそう
292:ただの一般モブ
出たな天音教徒
293:ただの一般モブ
設置したまま次行けたとしてもほとんど引き継げないのがな
任意起爆もできないし
294:ただの一般モブ
衝撃起爆頼りなのは実際キツいよな
295:ただの一般モブ
道路上に置けば車が轢いてくれるかも……
296:ただの一般モブ
爆弾テロ、奥が深すぎるな~~~~
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【リバ】魚臣慧 総合スレPart.178【不可】
148:名無しは左側を探索します
顔隠しのヘルメット×彗きゅんってどう?
149:名無しは左側を探索します
>>143
まだ21時だぞ
150:名無しは左側を探索します
好奇心でカボチャ頭を被ってみたらなんか唐突に発光しだしてびっくりする彗きゅん?
151:名無しは左側を探索します
いいわね、「被ってみる」から放たれる好奇心オーラと「びっくりする」から放たれる内向的オーラが両立されてるのもいい
152:名無しは左側を探索します
顔隠しが顔を隠してるのは仮面の下に潜む傷を隠すため論者だから軽率にメット外すのはな……
153:名無しは左側を探索します
逆に考えろ、つまり顔隠しが彗きゅんにしか見せない素顔を晒して一通りした後の余韻の中被ってみるんだよ
154:名無しは左側を探索します
あ~~~~~~~~発想の転換~~~~~~~~パラダイムシフトだわ
155:名無しは左側を探索します
パラダイム×彗きゅん
156:名無しは左側を探索します
パラダイムが
157:名無しは左側を探索します
は???????
158:名無しは左側を探索します
いや逆に考えろ、彗きゅんの存在があるからこそパラダイムはシフトせずに元の位置を保ってるんだ
159:名無しは左側を探索します
な、なるほど~!!!!!!これまた発想の転換
160:名無しは左側を探索します
逆に彗きゅん×パラダイムにあえて初期状態でした状態で彗きゅんがパラダイムに影響与えまくってシフトさせるのは
161:名無しは左側を探索します
う゛く゛っ゛(本質的には違うとわかっていても左側に彗きゅんが配置されていることに若干肉体が抵抗しているのを必死に抑える声)
シフトが後天的だと最初からパラダイム×彗きゅんの場合と両立ができないんだよな………
162:名無しは左側を探索します
攻めに影響されて攻める側になるって結局のところ彗きゅんが図式上の「攻め」を脱せてないだろ戦争するか??????オイ
163:名無しは左側を探索します
彗きゅん×パラダイムはパラダイム×彗きゅん世界線を破壊するからな……
164:名無しは左側を探索します
つまり(彗きゅん×パラダイム)×(パラダイム×彗きゅん)………???????
165:名無しは左側を探索します
これガチ?入れ子構造始まったな
166:名無しは左側を探索します
>>162
これをどうにかするために>>164を取り入れてカプを作ったぞ
((魚臣×パラダイム)×(パラダイム×魚臣))×魚臣
167:名無しは左側を探索します
なるほど、このパラダイムカップリングの議論そのものに攻められる彗きゅんか
168:名無しは左側を探索します
私のために争わないでみたいな
169:名無しは左側を探索します
入れ子は新しいな
次は再帰関数CPとか作られだしそう
170:名無しは左側を探索します
ループする彗きゅんか……
171:名無しは左側を探索します
運命×彗きゅん
172:名無しは左側を探索します
ループってそういう意味ではなくない?
173:名無しは左側を探索します
何回やり直しても絶対に運命に勝てず、ついに抗う心を忘れて力を抜いた虚脱状態彗きゅん……
174:名無しは左側を探索します
何の運命に勝てなかったんだろう?
175:名無しは左側を探索します
右側に組み込まれる運命
176:名無しは左側を探索します
そもそもこのループ物彗きゅん自体がカプのためだけに作られた存在だからな、そりゃ勝てませんわ
177:名無しは左側を探索します
運命は実質的に我々が操ってるわけだから我々×彗きゅん………??????
178:名無しは左側を探索します
出たな魔境民×魚臣
179:名無しは左側を探索します
シルバーマスク×彗きゅんってどう?
180:名無しは左側を探索します
あ~~~あえてシルヴィアじゃなくてシルバーマスクなのね
181:名無しは左側を探索します
考え方の方向性として好きなんだけど組み合わせとして拡張性がなさすぎない?
182:名無しは左側を探索します
シルバーマスクは表舞台にしか現れない……つまりシルバーマスク×魚臣は必然的に公開の場で……
183:名無しは左側を探索します
いいねぇ……
184:名無しは左側を探索します
>>181
まぁどっちかというと一点特化感はあるな
185:名無しは左側を探索します
目覚まし時計×彗きゅん
186:名無しは左側を探索します
ゲームで徹夜しちゃって鳴り響く目覚まし時計に慌てちゃう彗きゅんか…
187:名無しは左側を探索します
ちょっと弱いかな
188:名無しは左側を探索します
しかし、そのゲームが顔隠しとのプレイだとしたら……???
189:名無しは左側を探索します
徹夜するほど熱中しちゃったんだね……
190:名無しは左側を探索します
隣で顔隠しも同じように目覚まし時計と格闘してるのに気づいて顔を見合わせて笑うんだぞ
191:名無しは左側を探索します
なんで起きたばかりなのに顔隠しが隣にいんの????????
192:名無しは左側を探索します
まだ22時だぞ
193:名無しは左側を探索します
現実でも近くにいるのに敢えて一緒にゲームするってのが個人的にゲーマーとしてのエモみ感じて好き、人によってこの辺は違いそうだけど
194:名無しは左側を探索します
22時か……今頃顔隠し・名前隠し・性別隠しの3人組でゲームやってるんだろうな……
195:名無しは左側を探索します
何のゲームやってるんだろう
196:名無しは左側を探索します
俺はシャンフロと見たね、顔隠しと魚臣はシャンフロやってるはずだからな
197:名無しは左側を探索します
シャンフロでモンスターに襲われる彗きゅん……
198:名無しは左側を探索します
"緋色の傷"×魚臣か
199:名無しは左側を探索します
シャンフロは全年齢ゲーだしなぁ…
200:名無しは左側を探索します
むしろ全年齢フィルターがあるからこそ逆に燃えない?
201:名無しは左側を探索します
全くわからんがなんかわかる気がする
202:名無しは左側を探索します
全年齢×魚臣
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誕生日記念生成物/【リバ】魚臣慧 総合スレPart.163【不可】
281:名無しは左側を探索します
彗きゅん(シャンフロアバター)×彗きゅん(リアル)
282:名無しは左側を探索します
>>281
アウト
283:名無しは左側を探索します
一瞬セーフかなとも思ったけど個人的に二次元と三次元を組み合わせるのがそもそも好きじゃないのでここはアウトとさせて頂くわね
284:名無しは左側を探索します
は?
285:名無しは左側を探索します
俺は好き
286:名無しは左側を探索します
>>283
その謎に審査員っぽいコメントは何だよ
287:名無しは左側を探索します
そもそも魚臣自体が実質二次元なんだよな
288:名無しは左側を探索します
>>281
まじでふざけんなよおまえ
289:名無しは左側を探索します
レフトサイド騒動が再発するのはちょっと……
290:名無しは左側を探索します
話題変えろ話題
291:名無しは左側を探索します
>>289
レフトサイドとか言ってるけど要するに魚臣を左に置いたのが炎上しただけじゃねーか
292:名無しは左側を探索します
じゃあ話題変えるか、えーと
293:名無しは左側を探索します
そういえば今日は顔隠しの誕生日だよな!!!!!!!!!!!
294:名無しは左側を探索します
ウオミロイドの話とかどう?
295:名無しは左側を探索します
>>293
待てや
296:名無しは左側を探索します
顔隠しって誕生日明言してたっけ?顔隠してるのに?
297:名無しは左側を探索します
してないぞ
298:名無しは左側を探索します
えぇ……
299:名無しは左側を探索します
>>293
?????????
300:名無しは左側を探索します
いやだからさ、顔隠しは文字通り"顔を隠してる"存在で何もかもが不明じゃん?
何もかもが不明ってことはつまり今日が誕生日である可能性も明日が誕生日である可能性も"等しく"存在する
じゃあもう実質今日が誕生日だろって言う
301:名無しは左側を探索します
3行目が意味不明すぎる
「って言う」ではない
302:名無しは左側を探索します
シュレディンガーの誕生日かよ
303:名無しは左側を探索します
魚臣の性別みたいだな
304:名無しは左側を探索します
顔隠しの誕生日は一切が不明←わかる
だから今日が誕生日である可能性も1/365存在する←わかる
だから実質今日が誕生日←?????????
305:名無しは左側を探索します
>>303
は?彗きゅんはあくまでも男なのがいいんだけど喧嘩売ってんの?
306:名無しは左側を探索します
>>304
おまえうるう年エアプか?ちゃんと小数点を切り捨てず1/365.25って言えよ
307:名無しは左側を探索します
実際顔隠しって誕生日に何するんだろうな
308:名無しは左側を探索します
過激派怖すぎる
309:名無しは左側を探索します
>>307
ライオットブラッドケーキだぞ
310:名無しは左側を探索します
>>306
でもお前こそグレゴリオ暦エアプじゃん、うるう年は厳密には400年に97回しかないから1/365.2425と言うべきだぞ
311:名無しは左側を探索します
ライオットブラッドケーキ、俺はあのチョコミントの奴が好き
バースデイにアンデッドってのが洒落が効いてる
312:名無しは左側を探索します
俺は増量版タブーケーキが好き、混ぜすぎて常人には理解できないタイプの味になってるんで食う前にクァンタムを摂取する必要があるのウケるんだよな
313:名無しは左側を探索します
>>310
そもそも2月29日という「あくまでも日数が少ないもの」に付ける重みを減らす必要はあるのか……????
それ言ったらもう人口動態調査でも引っ張り出してきて365日分全部に詳細な重み付けを行う必要がある気がするんだけど
314:名無しは左側を探索します
顔隠しの誕生日、私は『普通にゲームしてる』派だな~~~
315:名無しは左側を探索します
>>300
待てよ、この理屈を8月29日に提唱すれば「たまたま誕生日が同じ」シチュが顔隠しと彗きゅんで実現できるのでは……??????
316:名無しは左側を探索します
>>311 >>312
ライオットブラッドケーキにも種類があるのか……
317:名無しは左側を探索します
レシピ共有サイトとかで検索すると200件くらい出てくるぞ
318:名無しは左側を探索します
>>314
わかる
319:名無しは左側を探索します
俺はライオットブラッド・シンプルケーキが好き
コーヒーケーキみたいなノリでライオットブラッドを混ぜて作るんだけどバックドラフトの風味が効いてていいんだよね
320:名無しは左側を探索します
このスレでの顔隠しの「隠された素顔には痛々しく醜い傷が」みたいな設定的にも>>314の「敢えて誕生日を祝わない」奴は割とマッチしてるような気がする
名前隠しとはまたちょっと違うんだよね
321:名無しは左側を探索します
暴徒が侵食してきたな……
322:名無しは左側を探索します
顔隠しの話になると毎回湧いてくる潜伏暴徒は何なの?
323:名無しは左側を探索します
暴徒が顔隠し経由でスレに入ってきたと見るべきか、スレ民が顔隠し経由で暴徒に入ったと見るべきかだ
324:名無しは左側を探索します
暴血ネタはいいけど内輪ノリ出し過ぎるなよ
これはここにも言えることだが
325:名無しは左側を探索します
両方でしょ
326:名無しは左側を探索します
>>323
どっちも顔隠しを経由してるの界隈の架け橋感あっていいな
実質総受け
327:名無しは左側を探索します
ここは場所的に内輪ネタに特に気を遣わないといけないからな……
耐久配信に原液ぶっかけに行った奴等見てるか~~???
328:名無しは左側を探索します
>>326
でも顔隠しそのものが彗きゅんを経由してそれらと繋がってるから総受けパワー最強は彗きゅんだぞ
329:名無しは左側を探索します
>>327
でもあれ明らかに運営側が狙ってんじゃん、告知ページでも「上からの猛プッシュ」とか書いてあったし全体的に異様な雰囲気だったぞ
まああんなのはごく少数なので基本的に原液はダメというのはそう
330:名無しは左側を探索します
耐久配信はアレスタッフに、2、3人"混じって"るぞ
俺は詳しいんだ
331:名無しは左側を探索します
顔隠しって何か呼び名ねーの?>>328とか「彗きゅん」っつークッソ砕けた愛称に対する「顔隠し」が何つーかこう……
332:名無しは左側を探索します
>>331
わかってねーなそれがいいんだよ
333:名無しは左側を探索します
顔隠し(文字列)×彗きゅんか
334:名無しは左側を探索します
逆に顔隠し×彗きゅん(文字列)は?
335:名無しは左側を探索します
>>334
ちょっとニュアンスがよく分からないですね……
336:名無しは左側を探索します
ごめん両側が文字列じゃないと意味ない派なんで……
337:名無しは左側を探索します
>>335
顔隠しってこのスレ系のコンテンツ知ってるの匂わせてたろ、彗きゅん(文字列)ってのは「スレ民の手によって右側に組み込まれてしまう魚臣」を意味してるのでは?
338:名無しは左側を探索します
解説たすかる
339:名無しは左側を探索します
これ思い付いたんだけども、「顔隠し(文字列)」の概念そのものについては明確に「今日が誕生日」と言えるのでは?
340:名無しは左側を探索します
>>337
特に考えて無かったけどそういう事にしておこう
341:名無しは左側を探索します
>>339
確かに
提唱されたのは確実に今日だしな
342:名無しは左側を探索します
つまり顔隠し(文字列)の誕生日を祝う魚臣(文字列)……?????????
アリだな
343:名無しは左側を探索します
一つ上の次元から見れば現実も文字列も大した違いなさそうだしな
344:名無しは左側を探索します
顔隠し(文字列)と彗きゅん(文字列)の濃厚フォントマージ……
345:名無しは左側を探索します
まだ二時だぞ
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分岐上直撃するマーケティング
◆A
【〈Gigabyte Japan〉、20XZ+1年11月7日の記事より引用】
高難易度VRロボットアクションゲーム『Nephilim Hollow(ネフィリム・ホロウ)』が、初代発売から数年を隔て再注目されつつある。『2』の電撃発表も記憶に新しい中、今回の注目はそれに上乗せされる形で生み出された。
台風の目たる人物は、やはり電撃的に現れたスーパースター・ゲーマー、"顔隠し"。今回の注目を引き出したのは、先日の『笹原エイトのチャンネル8!』生放送中に彼が行った、こちらの発言に他ならない。
“
この言葉が、前後文脈として『貴方の好きなゲームはなんですか』という質問に対する回答として発せられたものである事―――さらに遡れば、この発言の直前に彼が成し遂げた"神話再現"が筆者を含む視聴者たちの眼球にこびり付き続けていたことを考えれば、それが如何に大きなムーブメントを生み出すかご理解いただけるだろう。
その後行われたライオットブラッド・リボルブランタンに対するダイレクト・マーケティングがガトリングドラム社の株価に与えた影響が多大であるように、『Nephilim Hollow』に与えられた"期待"もまた多大なそれである。『2』発表の影響も相まって、再注目はしばらく止まるところを知らなさそうだ。
【人気のコメント】
・ネフホロはいいぞ
・顔隠しってハイスピードアクションもできるのな
・影響されて買ったけど操作が複雑すぎて死んでる
・ネフホロはいいぞ
・人類には早すぎるゲーム
・2はかなり操作簡単になるらしいからそっち待つわ
・顔隠しはむしろハイスピードアクションが本業だろアレ
・顔隠しにありがとう ブラックドールにありがとう 世界に すべてにありがとう
・言いぶりからしてシャンフロ本編もやってそう
◆B
【〈Gigabyte Japan〉、20XZ+1年11月7日の記事より引用】
協力型剣闘MMO『辻斬・狂想曲(カプリッチォ):オンライン』は、"知る人ぞ知る"タイトルとしての2年間を終え、1夜にして世界中のゲーム・コミュニティにおける最頻トレンドへと成り代わった。
台風の目たる人物は、やはり1夜にして極めて多くのな支持を得ることとなったトランジェントスター・ゲーマー、"顔隠し"。今回の注目を引き出したのは、先日の『笹原エイトのチャンネル8!』生放送中に彼が行った、こちらの発言に他ならない。
“
この言葉は、彼に投げかけられた『貴方の好きなゲームはなんですか』という視聴者による問いに対する答えとして発せられた。直前まで手に汗握るPvPを繰り広げていた人物が、突然"協力"ゲームが好きだと言い出したのだから、これはどういうことだと筆者を含む視聴者が興味を引かれたのも、極めて当然の出来事と言えよう。結果として発生したのが今回のムーブメントであり、直後に行われたライオットブラッド・アンデッドに対するダイレクト・マーケティングの如く、世界中を席巻する話題性を生み出している。
"顔隠し"のプレイ・レパートリーは、何も対戦ゲームに限られないようだ。
【人気のコメント】
・エアプ丸出しでワロタ
・露骨なコタツ記事やめろ
・流石にもう3日も経ったのに辻斬を協力ゲームとか書いちゃうのはダメだろ
・顔隠しはこんなログインしたかと思ったら一瞬でリスキルループ入るクソゲーの何を楽しんでるんだ
・記念カキコ
・エアプか?10回も死ねばリスキルループ抜けてリスキルする側に回れるだろ
・いや俺はクソゲーだと思うなこれ
・もしかして公式サイトから丸コピした?
・君素質あるよ
・流石にエアプで発売3年目のゲームの紹介記事書くのはちょっと……
◆C
【〈Gigabyte Japan〉、20XZ+1年11月7日の記事より引用】
アニマル・アクション・コンバット・ゲーム(公式サイトより)『アニマルファイト・オンライン』で突然発生したプレイヤー人口の爆発は、同時接続者数を一気に増やし過ぎたことが原因で、そのサーバーが3度のダウンに見舞われる事態にまで発展した。
台風の目たる人物は、やはり爆発的な支持を集めているフィクスドスター・ゲーマー、"顔隠し"。今回の注目を引き出したのは、先日の『笹原エイトのチャンネル8!』生放送中に彼が行った、こちらの発言に他ならない。
“
この言葉の直前に『貴方の好きなゲームはなんですか』という質問が存在したことが、視聴者たちの興味をより一層引き立てた。何せ『チャンネル8』にて行われた生放送でプレイされていたのはまさに『GH:C』、「『GH:C』のようなゲーム」が好きなゲーマーが筆者を含む視聴者の大半を占めているであろうその配信で、突然「システムが『GH:C』に似ている」という見たことも聞いたことも無いようなマイナーゲームが提示されたのである。これはもはや、食いつかない方がおかしいと言っていいだろう。
その後行われたライオットブラッド・バックドラフトに対するダイレクト・マーケティングが世界中を暴血赤で埋め尽くしたように、この回答もまた『アニマルファイト・オンライン』のサーバーを莫大な新規プレイヤー達で埋め尽くしている。ゲームバランスは少々トムソンガゼルが強すぎるきらいがあり大味だが、それでもこの熱狂に水を差すことは叶わなさそうだ。
【人気のコメント】
・おい最後ォ!
・SNSのトムソンガゼルネタ真に受けてて草
・このライター基本的にエアプで記事書くからな 信用しない方がいい
・ちなみにお前ら最強のキャラは何だと思う?
・トムソンガゼル
・ライオン
・トムソンガゼル
・マジな話トムソンガゼルって対ゴリラ性能だけは最強だよな
だから事実上ゴリラ→ライオン→トムソンガゼル→ゴリラ……でバランス取れるって言う
・ゴリラ
・なんか人口が増えたせいで強引にメタが回され始めてて草
◆D
【〈VRフルダイバーNET〉、20XZ+1年11月5日の記事より引用】
謎のゲーマー"顔隠し"氏は、生放送中の『貴方の好きなゲームはなんですか』という質問に対し極めて聞き取りづらい、しかし大きな感情が込められていることは確実にわかるような声色で答えた。
直後に行われたライオットブラッド・トゥナイトに対するダイレクト・マーケティングが極めて明瞭な声によって行われたものであったことから、恐らく何かしらの症状などではなく、単純に本人の感情がそうさせたのだと思われる。
録音データに残されたその怨嗟を、一部抜粋してみよう。
“
この内容の意味するところは不明だが、ライオットブラッド経験脳科学分野における第一人者であるB教授にインタビューを行ったところ、
“
とのことである。
顔隠し氏が顔を隠す理由は、本当にただの身バレ防止なのだろうか。
【コメント欄は設置されていません】
◆E
【〈Gigabyte Japan〉、20XZ+1年11月7日の記事より引用】
格闘ゲーム『ベルセルク・オンライン・パッション』の総プレイヤー数は、その日だけで一桁増えたと言われる。誇張ではなく、元々マイナーで、しかも巨大な過疎に曝されているゲームであったが故、その程度のことは時に起こり得るのだ―――巨大な衝撃を、携えて。
台風の目たる人物は、まさに震源地という言葉が似合うニュークリアスター・ゲーマー、"顔隠し"。今回の注目を引き出したのは、先日の『笹原エイトのチャンネル8!』生放送中に彼が行った、こちらの発言に他ならない。
“
『貴方の好きなゲームはなんですか』という問いが生み出したこの回答は、筆者を含む視聴者たちを大いに沸かせた―――何せこの言葉は、直後にダイレクト・マーケティングを受けるライオットブラッド・クァンタムの効果で若干現実とは違う場所を見ているようにも感じられる眼球を、それでも見開いて力強く発せられたそれだったからだ。
日ごとの同時接続者数が三桁を割る事すらあったという『ベルセルク・オンライン・パッション』に齎された、いわば希望の光である今回のムーブメント。果たして、このゲームは今後どうなっていくのだろうか。
【人気のコメント】
・キャンペーンやってるけど難しすぎない?まだ第一話クリアすらできてないんだが
・顔隠しはこれをまともにプレイできるのか……
・バグでしょ明らかに
・顔隠し、何者?
・キャンペーンが難しすぎるからオンラインに潜ったと思ったらなんかいつの間にか負けてたんだけど何あれ
・なんかオンライン上位の奴らって動きがおかしくね?
・ボスがやってくるバグみたいな挙動をこっちも取れればなあ……
・なんか上級者と俺達で"壁"がある気がするんだよなぁ
・さっき当たったプレイヤーが腕伸ばしてパンチしてきて負けたんだが?????挙動がアブノーマルすぎだろふざけんな
・幻覚だろ
◆F
【〈Gigabyte Japan〉、20XZ+1年11月7日の記事より引用】
"クソゲー界のトライアングルピラミッド"という俗称で知られる低評価ゲーム『フェアリア・クロニクル・オンライン』。様々な理由をもってそのレーティングを極めて下方まで突き落としているこのゲームに、今日、思わぬ理由でスポットライトが当たっている。
台風の目たる人物は、まさに頭から爪先までが"思わぬ"存在として構成されたマレフィクススター・ゲーマー、"顔隠し"。今回の注目を引き出したのは、先日の『笹原エイトのチャンネル8!』生放送中に彼が行った、こちらの発言に他ならない。
“
直後に意気揚々とライオットブラッド(無印)のダイレクト・マーケティングを開始する彼の姿は、筆者を含む視聴者たちから畏怖をもって観測された―――ある種当然と言えよう、この発言は『貴方の好きなゲームはなんですか』という問いに対する答えとして行われたものなのだから。
好きなゲームを聞かれて歴史的な低評価を受けているタイトルを挙げた上、更に「最悪でした」と明らかに"嫌っている"一面も見せる―――筆者にはその時、顔隠しが
この奇妙なインタビュー結果は連鎖的に奇妙な流行を生み出し、各ゲーム・コミュニティは『フェアリア・クロニクル・オンライン』の話題で賑わっている。顔隠しの"隠し"ている物は、何も顔だけに留まらないのかもしれない。
【人気のコメント】
・別の人格にチェンジしてそう
・この記事書いた奴絶対エアプだろ……
・世間の評価だけでクソかどうか判断するのはやめろ
・俺はちゃんとやったけどフェアクロは糞だと思う
・前から思ってたけどここのコメント欄にはなんか特有の思想を感じるな
・エアプ フェアクソの面白さは15周目突入当たりでようやくわかってくるものなので
・エアかエアじゃないかの問題を逸脱してるだろ
・カースドプリズンがフェアリアを延々と殴ってる絵好き
・あいつRPGも好きなんだな
・俺はカスプリが最高級デラックスパフェ作ってる絵が好き
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侵入者たち
初めて兄の部屋に勝手に入ったのはいつだっただろう。
脳裏にふと浮かんだそんな疑問について考えながら、陽務瑠美は後ろ手でドアハンドルを少し押した。力を加えられたドアはゆっくりと回転していき、蝶番がキイと軋む音とともに、兄の――陽務楽郎の個人部屋の内装を、陽務家の廊下から隠蔽していく。ハンドルに加えた力はドアを閉め切るほど強いものではなくて、銀色のラッチはドア枠に引っかかり、
わざとだ。理由は一つ、逃げたいときにすぐ逃げるため。
瑠美は
『GAMING ADDICT』
「……ほんとにダサいなあのTシャツ……」
冷房の風が静かに流れ、呆れ声で呟く彼女のサイドテールを微かに揺らす。
瑠美はこんな風に兄の部屋をじろじろ見まわしながらも、ちゃっちゃと用事を済ませてしまおうと足を進める。瑠美にとってしてみれば、この部屋の壁に飾られたポスターだのTシャツだのが漂わせる美的センスは、まったく許しがたいものだ。しかしそれらに目を瞑るなら、ここはいたって普通の片付いた部屋だ。左右のルームソックスを交互に出して、障害物の無い床をどんどん進んでいく。兄にバレては困るからと忍び歩きをしたりはしない。それは兄が不在だからではなくて、兄にバレても困らないからというわけでもない。単に――
「……よし、
バレないからだ。
瑠美が覗き込むシングルベッドの上で、ヘッドギアを被った兄が静止している。静止というのは……つまるところ、静止だ。動いていない。兄の口は閉じられっぱなしで何も言わないし、両の手はそれぞれ、五指を解放した状態でびくともしない。当然、足が組み変わったりもしない。要するに、兄は静止している。
当たり前だ――彼は今、
「どこかな~っと……」
瑠美は探し物を求めてベッドの周辺をうろつきながら、定期的に兄のヘッドギアをちらりと見る。
今回の場合、ステータスランプは緑色で点滅していた。だからセオリーに従うなら、瑠美は「少し注意」しておく必要があることになる。実際のところ、楽郎はVRシステムが発したこの手のサインを厳密に守るタイプではない。だからこのサインが出たところで、彼のログアウト状況が大きく左右されるわけではないのだが……経験則に従って行動している瑠美からすれば、そんなのは知ったことじゃない。用事が済んだらすぐ逃げる、それがやるべきことだ。
「ここかな?」
瑠美は探す。無い。
ちらりとランプを見る。点滅。
「……じゃあここ」
瑠美は探す。無い。
ちらりとランプを見る。点滅。
「こことか……」
瑠美は探す。無い。
ちらりとランプを見る。点滅。
「……」
瑠美はだんだん焦り始める。実際のところ彼女が置かれているのはそこまで危険な状況でもないのだが、ランプの点滅が目障りだ。点いたり消えたりを繰り返されると、何かを急かされているような気分になってくる。瑠美の肌をささやかな汗雫が伝って、そういえば、と彼女は思う。
兄も、まるっきり静止しているわけではない。
少なくとも――汗は掻いている。
彼がまとった異常にダサいジャージや異常にダサいシャツを直視しないよう注意しながら、瑠美は兄の頭部を確認する。フルダイブVRは脳の入出力系統を仮想の
「……どうしようかな」
瑠美は今後の方策を練る。
兄が汗を掻くということは、つまりゲーム内で文字通り手に汗握る場面を迎えたということだ。その場面が具体的に何なのかはわからないが、とにかく……手に汗握る場面というのは、一般的に
「……でも」
一度退いた方が、という気もする。
そもそも彼女が兄の部屋に足を踏み入れたのは、
「うーん……」
瑠美は腕組み考える。天井に備わった照明器具の光が彼女の肌に降り注ぎ、複雑な形状の影を描き出す。考える。考える。考え……
「え?」
陽務楽郎が笑っていた。
笑っていた。目元はヘッドギアに覆われて見えなかったが、少なくとも口では表情筋を歪ませ、口角を上げて喜びを表現していた。そう強い笑みではなく――一般的な基準でいう、
だって――ログインしたまま笑っている。
「ヤバい」
瑠美は気付いていた。フルダイブ中の脳信号はその100パーセントがゲーム内に送られるわけではなく、多少現実の肉体にそのまま
クソゲーをクリアすることによる高揚感――それより強い喜びなど、彼女の兄にとってはない。
瑠美は慌てて姿勢を直すと、ヘッドギアのランプを確認したい衝動を抑えながら、
いま重要なのは。
間に合うか?
「よっしゃあぁ!!」
どうやらログアウトしてきたらしい兄の咆哮を背中に、瑠美はただ走る。
「遂に『フェアクソ』クリアしたぞぉお!!」
どうやら兄はまだヘッドギアを取っていないらしい。視界が塞がれているうちに逃げきれれば何とかなるだろう。瑠美は開けっぱなしにしておいたドアをくぐる。「音で気付かれるかも」という考えが一瞬胸をよぎるが、些細なことを案じている場合ではない。構わずドアをバタンと閉める。
「……あ」
閉める瞬間、思い出す。
「始めて兄の部屋に勝手に入ったのはいつだっただろう」――答えは、3年前だ。当時小学生だった瑠美は、だいたい今と同じような流れで兄の部屋に無断で入った。そして見た。ベッドに寝転ぶ彼の顔面が浮かべていた、その笑顔を見た。理屈を言えば脳信号の入出力規制値が関係しているが、妹にはやはり関係ない。
「恨みは晴らさせてもらったぁぜ!!!」
ドアが完全に閉じられる刹那。その狭間から覗いた喜び狂うその姿こそが、彼女が思う陽務楽郎なのだから。
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侵入者たちⅡ
チャイムの音が呼んでいる。
「……聞いてます? サバさーん?」
「! ……おう大丈夫だぜ、続けてくれ」
口でそう返しておきながら、サバイバアルは自分の言葉の
「了解っス。つまり検証の結果としては……」
着せ替え隊員Aはそれを気にも留めず、手にしたスケッチブックを
チャイムの音が呼んでいる。
見せる。そのざらざらした質感を完璧に表現された紙面には、上手いとも下手とも言い難い、微妙な出来ばえの図解が描かれている。
その一点が指さされる。
「いいスか、ここまで述べた通り、俺たちが作った装備を賞金狩人たちが着てくれないことがある問題は……喫緊のモンです、何とかしなきゃな
チャイムの音が呼んでいる。
らない。検証を重ねたところによれば――」スケッチブックが捲られる。「まず、今まで信じられていた『装備の性能が足りてないから鹵獲してくれない』説については……間違ってるってことが分かりました」
「マジかよ」
「はい。そもそもティーアスたんが……いや賞金狩人なら誰でもいいんスけど仮にティーアスたんとしますね。ティーアスたんが『今着ている装備より強いものを求める』ロジックで動いているとするなら、
チャイムの音が呼んでいる。
彼女の装備の強さはどんどん
チャイムの音が呼んでいる。
「確かにな」
チャイムの音が呼んでいる。
「具体的なバランスは不明ですけど、賞金狩人ってのは
チャイムの音が呼んでいる。
公式チートの類なわけで……ティーアスたんが
チャイムの音が呼んでいる。
初期状態で着てる装備が、あの見た目全振り防具より……」
チャイムの音が呼んでいる。
チャイムの音が呼んでいる。
チャイムの音が呼んでいる。
サバイバアルはここにきて、先ほどから視界の片隅に展開している小さなフロートウィンドウをようやくまともに直視した。真下に『Pass-through monitor』の表示をぶら下げた、16:9の長方形。表示されているものは……なんだか、よくわからない。高くもないフレームレートで明るくなったり暗くなったりを繰り返す、
チャイムの音が呼んでいる。
しかしなんだかよくわからないというのは文脈を無視した見方であって、サバイバアル本人としてはとっくに見当がついていた。以前も似たようなことがあったのだ。
「――つまり、凝視の鳥面を頭に装備すれば――」
「……あのデブ」
「なんスか?」
猫だ。
「何でもねえよ、続けろや」 口走ると、サバイバアルは握っていた拳でそのままサムズアップを作り、胸の前に勢いよく掲げて見せた。それに伴って急速に動いた肘が、その辺にいた着せ替え隊員Cの鳩尾を抉る。「ギャ
チャイムの音が呼んでいる。
バーッ」とまたしてもバカらしい叫び声。着せ替え隊員Aは疑わしげに目を細めつつ、粛々とスケッチブックを捲る。
「それで――」
チャイムの音が呼んでいる。
ピンポン、という電子音。
世間に流通している標準的なフルダイブVR機器にはいくつかのユーティリティ・ボタンが備わっていて、OSのアップデートにより物理的なボタンを必要とする機能が追加された際に割り当てられると、第一刷の仕様書には記されていた。いま
チャイムの音が呼んでいる。
サバイバアルが使っているヘッドギアはかなりの型落ち品で、外部情報取り込み用のカメラも、小さく、粗く、乏しいものでしかない。猫いっぴきがすこし覆いかぶさるだけで、映像は簡単に遮られてしまう。
チャイムの音が呼んでいる。
ビデオ・メッセージの一要素として、
「……あ?」
そのとき、消えた。
フロートウィンドウごと、チャイムの音がいっさい聞こえなくなった。
モニターを埋める毛の波が、最後の一瞬だけ大きく縦方向に流れていくのをサバイバアルは見逃さなかった。おそらく……猫が、ヘッドギアからずり落ちたのだ。あの鈍重でぶにょぶにょした体躯がなめらかな曲面を滑り落ちていく様など、目の前にあるかのように想像できる。ついでに、第一ボタンにかけられていた体重が別のどこかへ転嫁されるのも。
こうして、サバイバアルはシャングリラ・フロンティアに舞い戻った。
すがすがしい気分だ。
「サバさんちょっと変じゃないスか?」
「いやァ問題ないぜ、見ての通りな!」
サバイバアルは両腕を大振りで広げ、左右に立っていた着せ替え隊員Dと着せ替え隊員Eを薙ぎ倒した。「「ビャゴェーッ」」捻りすぎてよくわからなくなってきた断末魔すら――どこか、心地良い。彼の浮ついた態度は既に、今までのような意図して誇張されたものではなくなっていた。
その表情に現れた微細な変化を、あるいは感じ取ったのか。着せ替え隊員Aは満面の笑みを浮かべると、スケッチブックを捲った。
「よし……それじゃあ結論イきますよッ! ティーアスたんはプレイヤーが着ている各装備の『奪いたさ』を判定して閾値を上回ったら鹵獲するんです。そしてこの『奪いたさ』の計算式には、一部
邪魔するものなど何もない。サバイバアルは単なるサバイバアルとして、スケッチブックの上手くもない絵を見つめる。
「だから――結論は簡単です。着せたい部位の防具だけ気合の入ったヤツにして、残りを全部変態ファッションで固める! そうすればティーアスたんは
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
れるはずなんです!」
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
「……クソ」
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
「え?」
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
サバイバルは展開した
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
『外部操作による強制ログアウトの実行』。
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
猫にリセットボタンを
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
押されるなんて、一昔前の
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
ゲーマーなら
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
いくらでも
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
チャイムの音が呼んでいて、ノックの音が響いていて、アラートの音が叫んでいる。
そんなこんなで、サバイバアルは美澄真澄になってしまった。
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その他
電脳魔法少女マジカル☆アカネ第16話「新たな力!?アカネ・ブラッキー★スター!」
午後6時。
隠岐 紅音―――またの名を電脳魔法少女マジカル☆アカネは、戦いの舞台たる電脳世界ではなく、現実に存在する自室で、小綺麗な机と向かい合っていた。
彼女は確かに電脳世界において、調子に乗った外道衆を懲らしめる☆正義の電脳魔法少女!!である―――しかし同時に、現実世界において一人の中学生だ。少なくとも
しかし。
時折漏らす「はぁ……」という溜息からもわかるように、彼女の意識は
壁に掛けられたアナログ時計が出したカチリという音を聞きつつ、紅音は
◆
電脳世界の荒野、若干不自然な質感の砂が舞い、
男―――ジョッキヘッド・サンラクは、どうにか態勢を立て直そうとし、しかし世界の違い故の若干の
「マジカル☆アカネェ!!!確かに俺はお前に負けたが、しかし
アカネが現実世界に残された脳でその意味について思考するよりも早く、彼は黒雷、そして紅光と共に、粒子と化して散っていった―――粒子はすぐに風に掻き消され、後には風と、塔と、アカネ―――そして、アカネのポケットに入ったマスコットのノワリンだけが残される。そのノワリンが現在
「暴徒の血は、惹かれ合う……」
塔の横を、砂嵐が静かに吹き去った。
◆
あの時ジョッキヘッド・サンラクが発したのは、この先始まるであろうより激しい戦いを謂わば
いずれ、今の力だけでは太刀打ちできなくなる―――そうわかっていても、具体的な方策を講じることはできない。如何に魔法少女のそれであろうと、
そこまで行った思考を中断し、紅音は椅子を立った。こんなことを考えていても始まらない―――代わりに窓に目をやり、広がる田舎の景色―――そして、紅く焼けた空を見る。そこから
―――200m走れば、大体の悩みは吹っ切れる。
それが、彼女の信条だった。
◆
翌日。
紅音は部活動を終え、まさに帰路に就く最中であった。彼女の住むここは、何の変哲もない田舎の町に過ぎない―――しかし、科学技術の発展はその何の変哲もない町にすら手を伸ばすようで、幾つもの宅配用ドローンが、夕焼け雲が見下ろす中、忙し気に風を切っている。その何でもない
ドローンの種類は宅配用に限らないようで、例えば不思議な形状をしたカメラを光らせ空中を右往左往する
紅音には、形状すらかけ離れている筈のそれらが何故だか
彼女が帰宅を完了し、同時にノワリンから外道衆出現の報を入れられるまで―――あと、5分。
◆
「正直に言って、だ」
その頭部を
「マジカル☆アカネ―――お前のことを、舐めてたよ」
対してアカネは―――すでに地べたに伏し、焦ったようにサンラクを睨んでいる。アカネの黒を基調としたコスチュームは、砂埃と傷に包まれている。もっともそれは
「いや何、お前を過小評価していたわけじゃあないんだ―――むしろ逆さ、自分を過大評価してたんだな、俺は。いくら敵が電脳魔法少女でも、このチェンジヘッドの妙技を前にすれば、大したことは無いだろう……そう思っていた。だが実際はどうだ?お前の受ける
頭部の炎が風を受けて揺らごうと、彼の声は阻害されることも無く―――それ故、声は荒野に響き渡った。
「ぶっちゃけ俺としてはそろそろ引き揚げてもイイかな~~~なんて思ってンだけど、まだ
彼は言い切ると、奇怪な動きでもって
「や、ぁあ、っっ!!」
アカネは必死で立ち上がり、サンラクに向けて5枚の【
「おいマジカル☆アカネ……いくら乱数の女神がお前に味方しようと、限度ってものがあると思う訳よ。例え、だぜ。例えお前がここでログアウトしたとしても、それは
「……サンラクさんは……以前、
―――魔法少女には、到底似合わない。立ち上がったアカネのコスチュームは、いつの間にか新品同然の傷ひとつない状態に戻っていた。それは前述の通り、"不要なエンティティの削除"という、プログラムされた事象でしかなかったが―――立ち上がる彼女の背中は、何かの
「未来の…………ごめんそれ忘れてもらっていい?」
シィンダーヘッド・サンラクが、自身が以前―――第十二話―――でテンションのままで放った発言を思い起こして赤面する。しかしそれを無視し、アカネは続ける。
「ここで引くことは、確かに
その時である。
二人という例外を除き、自然物だけで構成されていたその仮想荒野に―――今、
「それは―――それは、まさか!!!!」
シィンダーヘッド・サンラクの驚愕を背景に、
『RIOT BLOOD:FICTION』
アカネは、その缶について全く知識を持たなかったが―――既に、この後どうすればいいかを理解していた。
◇
ジョッキヘッド・サンラクの遺したこの言葉は、全くもって正しい―――
しかし。
ジョッキヘッド・サンラクは―――いや、本体であるキメラヘッド・サンラクすらも、これについて一つの
それは、何も
すなわち。シィンダーヘッド・サンラクが大量に用意し、この世界を搔き乱すのに使用せんとした
◇
「まさか―――有り得ない、乱数の女神の加護を利用して!?!?いや、それにしても……!!!!!」
シィンダーヘッド・サンラクの頭は、動揺によって激しく移動され―――
そして、アカネは呟いた。
「―――ドラゴン、」
しかし。
「……インストールッッッ!!!!!!」
爆発!!!
そう、その瞬間彼女のアバターに起こったことは……まさしく、
アカネの全身は―――
アカネは、自分に何が起こったのか理解していなかった―――しかし、同時に
「アカネ―――ブラッキー★スターッッッ!!!!」
◆
~CM~
◆
シィンダーヘッド・サンラクが呟いた「やべっ」という言葉は、誰の耳に届くことも無く―――刹那の先、アカネは既に
「やああああっ!!!」
「!?、ぐぁっ、」
―――
炎によって、その表情を読むことは叶わないが―――動きからは、明らかな動揺が読み取れる。そんな彼に対し、アカネは―――電脳魔法少女マジカル☆アカネは、言い放った。
「―――やらせませんよ、サンラクさん」
それを聞いたシィンダーヘッド・サンラクが退くのと、アカネがその三倍以上の速度で追撃に走り出すのは―――ほぼ、同時だった。
◆
暗闇。
例えばブラッキー★スターの衣装は、不気味なまでの黒ずみを持っていたが―――この暗闇も、それに匹敵する程度には
すなわち、
暗闇故、全体像を把握することもできないその瞳の持ち主は―――男の声で、呟いた。
「ズイブンと……面白そうなことに、なってるじゃァねぇかよ」
以前として、暗闇は保たれているが―――しかし一つ、その人物の行動で推定できることがあった。
すなわち、
「こいつは、
外道衆とはまた別の悪が……登場した、瞬間であった。
次回、第17話「いくら払えばいい?」
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択一
お、秋津茜じゃん久し振り。最近元気してた……いや多分元気してたんだろうな、そのツラ見ればわかるようん。それで……相談がある?相談ね……いいだろう、このサンラクさんが乗ってやろうじゃないか、相談。で、どういった……
新しいゲームを買う?
どういうことだ、なんか臨時収入でもあったの?うん。うん、順序立てて説明すると?
うん。まずルストからネフホロギフトが送られてきて。あ~~~この前の終末イベね、俺参加承諾してからあいつからギフト送られてくるまでのタイム計ってたんだけど聞きたい?聞きたい。17秒だったよ、正確には17秒52。いや怖すぎって話なんだよな、控えめに言ってWRだからねWR…………話が逸れたな続けて?
うん。ギフト受け取りに当たってDLゲーストアのアカウントを取得して?うん。取得したらルーレット?ルーレットって何だ……あー「クーポンが当たる!初回登録者限定ルーレット」みたいな奴?なるほどね、あれ当たりがマジで実装されてるのかちょっと疑問だよな……で、どうなったの。
……当たった?
………………当たっ、た?当たった。当たった……そ、そうかそういう事も……動揺?してないよ、俺は常に正面を見据える男だからな、してない。うん。で、その当たりって言うのは……
「好きなゲーム(7980円以下)を一本買えるチケット」??????????????スキナゲームヲ?????????????????イッポン??????????そ、そう……あー、えー……そうか。動揺?してないよ、俺は常に正面を見据える男だからな、してない。うん。でそういう訳で何かゲームを買おう、と。なるほどね……
ちなみにお前まだクリアしてないゲーム何本くらい残ってる?あーシャンフロは除外な、アレにクリアという概念が存在するかそもそも怪しいし。
……0本?え。0本?ネフホロは……そ、そう。え、じゃあ便秘も……そ、そうか。そうかァ~~~~~~。……動揺?してないよ、俺は常に正面を見据える男だからな、してない。うん。へえ、あー旅狼の他のメンツのオススメはもう聞いてあるのか。なるほど、それの選考委員も兼ねてもらいたい、と……分かったぜ。へえこれがリストか……お、タイトルだけで投票者の名前は全員「匿名希望」になってるな。先入観を防ぐためか?……ふうん?まあいいや、とりあえず上から1本ずつ消化していこう。
えー1本目、「ネフホロ2」。ごめんこれ匿名希望が無意味と化してるよね、完全に。初手じゃんという。イヤいいんだけども……よく見たら名前欄も「匿名希望&匿名希望」だしさァ。希望しすぎているだろ、せめて「匿名希望×2」くらいにしろって所あるからね。まあいいやとにかくネフホロ2……そうかもうDLストアでは予約始まってるのか。実際お前無印はどうだった。
……そうだろうな、お前ならそう言うと思ってたさ。まあ実際、ルスト……ここでは匿名希望って呼んだ方がいいのか?いやルストでいいか。ルストはまあ……簡単に言えば「正統進化」だと言ってたなこのゲーム。え、何だ……なんで未発売のゲームを評価できるのかって?ははは……次いこう次。
はい2本目、「ユナイト・ラウンズ」。イヤむしろ積極的に名前出そうとしてるまであるでしょこれ、何が匿名希望だよって話だもんな……
3本目「GH:C」。イヤ急に匿名感増したよねという、一周回って違和感を感じちゃうな……でもそれはそれとして右に添えられた「Anonymous」の文字を俺は見逃さなかったよね、見逃さなかった。いやあの人何してんの?????という。え、カッツォに聞きに行ったらたまたま一緒にいて?へぇ……へぇ~~~~。ちなみに何でカッツォに聞きに行ったはずなのに全い……アージェンアウルのおすすめの方が先に記載されてんの。カッツォの枠を奪って代わりに書いた?枠の概念があるのかよ……まあいいか。GH:Cねぇ……かなりオーソドックスに面白いゲームだと思うよGH:C。やっぱシャンフロエンジンだしな、人口も多いしバグも少ない……少ない?まあ
4本目、「辻斬・
え~~~5本目……消去法で言って次はレイさ……氏か。えー「スクラップ・ガンマン」。なあこれその辺にいた銃キチが書き込んでいった奴と間違えてない……間違えてないの?へぇレイ氏本人がこれ書いたんだ……気に入ったのかなアレ。ん?イヤなんでも無いよなんでも。というか待てよ、屑癌って確かARゲーだからこのチケットでは買えないのでは……へえ?そうなんだ、VR版もあるのか。まあ1回500円のゲーセンから家でやろうと思ったら急に数百万の機材が必要ってんじゃちょっと両極端すぎるからな、クッションとしてVR版が存在しても不思議じゃない……あれをVRにするってなると結構ゲーム性変わりそうだけどな。しかしそうか、気に入ってたのか……だったら今度また誘ってみても……エ?イヤイヤイヤだからなんでも無いって。なんでも。本当に。動揺?してないよ、俺は常に正面を見据える男だからな、してない。うん。まあとにかくアレだ……少なくともAR版はなかなかいいゲームだったし、買ってみても悪くないんじゃねーかな。
ふむ、これで全部か。まあなかなかいいラインナップだと思うぜ、どれを選んでもそうそう損はしないだろう。この中から……
俺?
そうか、俺のオススメが聞きたい、ね……ふーむ。例えばドブアイスってゲームがある。コレはまあタイムアタック・プラットフォーマーって感じのゲームジャンルなんだがシステムとコンセプトが微妙に噛み合って無くてなあ……とりあえず匍匐前進したもん勝ちみたいなところがあるというか。でも面白いんだよほんと、クソだけど。他にもラブクロックってゲームがある。これは要するに便秘みたいなリズムゲーに近くておまえにも適性がありそうなんだが……まあ、合間合間に挟まれる特殊演出がちょっとばかし長いかな。基本的にヤンデレキャラは地雷だから、個別とかハーレムを狙わない限りは初手でピザを食わせる必要があるぜ。他にもフェアクソってゲームもある。これはまあ……そうだな、遊ぶ人間によってきっと体験がすっかり変っちまうゲームなんだ。俺が遊んだ時とカッツォが遊んだ時でも結構なズレがあるんだ、もしもお前みたいなプレイヤーが遊んだら……きっと、ずいぶんと
これらの事実を踏まえて敢えて言うならば、だ。俺がお前にお勧めしたいゲームは、即ち―――
―――全部、だよ。
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刃を持たず獣に立ちはだかったとして何ができる?そう、銃を撃ち放つことができる
キッカケなんてものは結局のところ、なんでもいいのだ。
「カレーに生卵はあり得ないでしょ」
「
「ぐは」
「……ふぅ、ドロップが美味いぜ」
「」
「まったく、誤思考天誅誘導天誅なんて高度な戦術を京極に使いこなせるわけないのにな」
(走ってくる人影)
「あいつは結局、平等な条件下で戦うのが一番―――」
「天誅ァーーーッ!!!」
「甘いッ!」
「キレたからね僕は、"五戦"、"五戦"だよサンラクゥッ!!」
「上等だこの野郎ォッ!!隙を見て天誅!受けて立ってやるるるるァッ!!隙を見て天誅!……ふぅ、ドロップが美味いぜ」
「」
"五戦"においてプレイされるゲームは、ある程度の
例えばサンラクとカッツォについて考えてみよう。彼らが主なホームグラウンドとしていたのは『ベルセルク・オンライン・パッション』、バグだらけとは言え格闘ゲームだ。更に言えばカッツォは格闘ゲームを特に精力的にプレイするタイプのゲーマーであり、彼らの関係性は『格闘ゲーム』という軸を強く保持しているものであることがわかるだろう。
だからこそ、彼らが何回目かに行ったあの"五戦"では、すべての戦いが
もちろん、選定されるゲームは格闘ゲームに限らない。
"五戦"で遊ぶゲームにおける条件は三つ―――双方が容易に準備できること、時間がかかりすぎないこと、そして先述の
京極とサンラクの関係性における
その銀色の絆を目の前に、サンラクが選択した第一の
「いやいやいやいや」
京極は不平を述べた。
「ア?どうした京極、ほらネフィリムに乗り込め、空を往け!」
「いやいやいやいやいや」
「"五戦"には
サンラクは反論を述べた。
「いやいやいやいやいやいやいやいやいや」
京極はもう一度不満を述べた。
「何?」
「露骨なメタやめてもらえますか」
「?」
「いやあの、普通にこう……
「
「刀と産業廃棄物を一緒にしないでもらえますゥ!?」
「プロペラもある」
「
「さらには最終手段として自爆を行うことも可能だ」
「いやそれは普通に自爆じゃん……」
「好きだろ?自爆」
「う……」
「オラやるぞやるぞ、ネフィリムに乗り込め、地を進め!」
「……ちょっとアセンしてくる」
◇
数十分後に訪れたのは、カウントダウンの開始だった。
【5】
サンラクの
前述の通り装備構成は基本的にキングフィッシャーそのままだが、唯一の相違点として
【4】
相対する京極の期待を一言で言い表すなら―――
脚部は高速機動の可能性を捨て切り、重量級機体向けのタンク脚を採用。武装が
【3】
両者の共通点を探すのは難しい。超軽量級と重量級であり、
(―――ぶった斬ってやる!)
(―――斬り刻んでやる!)
【2】
―――どちらも、
【1】
エフェクトが散り、世界が次の段階に、
【0】
突入する。
剣戟が発生した。
(ッ!)
仕掛けたのはキングフィッシャー、
だからこそ、棒は
(……いける)
京極は確信した。
トライアイの選択に間違いはなかった。サンラクの事だからどうせバカみたいなスピードの機体を使ってくるに決まっている、そうだとすれば己が注力すべきは
(
再び、視界の中の翡翠色がその面積を増して、残像すら捉えきれない勢いで迫って来る―――構える準備は十分だ、角度、タイミング、装備。すべてを頭の中に入れたうえで、かつてあの狂想曲の中で会得した迎撃技
キングフィッシャーが変形した。
(は?)
鋭角方向転換変形……両足の爪先に力を入れながら人差し指でコンソール操作して他の指の動きで武装起動。かつて京極が挑戦し、ダメだったのでもういいやとなって今のような
そんなはずはない、京極は困惑した。キングフィッシャーのコンセプトは
(……そうか、
超熱棒二刀流は排熱効率を二倍にし、その分強化に必要な時間も二倍にする。それはつまり、その分エネルギー回復速度をケチっていいということでもある。
本来、
「……土下座トランスフォーム式……抜刀、天誅」
そう呟いたのは、果たしてどちらのプレイヤーだったのだろう?
"五戦"第一『
勝者……サンラク
「いやいやいやいや」
サンラクは不平を述べた。
「ん?どうしたんだいサンラク」
「露骨なメタァーーーッ!!!露骨なメタァーーーッ!!」
「おやおや何の話さ……君の苦手なゲームジャンルがノベルゲーなうえに恋愛シミュレーションと言うカテゴリには若干のトラウマを抱えてすらいることは知ってるけど、特にこの選定に意図は無いよ」
「そうなんだ!刀は?」
「ヘアスタイルプリセットには入ってるね」
「そうだね、
「先にやってきたのそっちだからね」
「開き直りやがった……」
「さあ行こうサンラク、
「
◇
『メルトダウン・ロマンス!オンライン
このゲームの特徴はやはり
基本的構造はノベルゲーム……現在主流と化したフルダイブVRというプラットフォームにおいては、NPCを相手に延々と台本を読み上げ、演劇めいたことを行うジャンル。京極の言う通り、サンラクが珍しく苦手とする分野だ。だが、その本質は―――
行動値40
選択肢:
◆挨拶(5)
◆挨拶2(5)
◆走り去る(10)
◆脈絡もなく殴り飛ばす(20)
◆告白(100)
◇続きを読む◇
―――お互いが、NPCを
◇
(……『挨拶2』だな)
持ち前の思考入力技術で瞬時に選択を行うと、宙に一瞬瞬いた-5の表示を傍に、
(うーん……ここは『挨拶8』かな?)
京極の戦闘スタイルは本質的に
1つの
(ふむ……ここはパスにしておくか)
「休む」を選択した
(サンラク、そう来るか……だったら!)
ここで京
(……なるほど、背景を移動することで特殊ギミックを狙うって寸法か……だが甘いッ!)
「脈絡もなく殴り飛ばす」の効果で京
(そして、さらに―――)
行動値が全損した状態で行動が行えるわけがない、京
(……「膝蹴り」!)
行動値が全損!+6!行動値が全損!+6!行動値が全損!+6!行動値が全損!+6!行動値が全損!+6!行動値が全損!+6!
(……勝ったな)
◇
「負けた……??」
リザルト画面を前に愕然とするサンラクの肩を、勝利の誇りを顔に浮かべた京極が叩く。
「残念だったねサンラク」
「……なぜ?」
「え、いやこれそういうゲームじゃないでしょ」
「?」
「"恋愛"を演じたうえで
「?????ラブクロックではこれでよかったんだけど」
「ごめん、僕には君が危険な領域にいることしかわからないよ」
「おかしくない?採点基準を公表すべき」
「後日じっくりレクチャーしてあげるよ……」
"五戦"第二『メルトダウン・ロマンス!オンライン
勝者……京極
「いや、何?」
京極は疑問を述べた。
「?何って、空中に完全固定された状態で一切狙いがブレない対物ライフルを連射するゲームだけど」
「正式名称は?」
「……」
「急に黙らないで?」
「…………世の中には、時として」
「いやわかったじゃあ百歩譲って名前については良いよ!刀は?????????????」
「まあ安心しろ、このゲーム存在しないものの方が
「で、刀は
「…………」
「おい」
◇
諸事情により正式名称を避け「空中に完全固定された状態で一切狙いがブレない対物ライフルを連射するゲーム」と通称されるそのゲームは、一言で言うと
このゲームにおける弾丸は、とんでもなく素直な挙動を取る……落ちない、遅れない、曲がらない。恐ろしいほど単純に設計された物理エンジンはシューティングゲームというジャンルにおける各種の煩雑な要素……つまるところ
そう、だからこそ―――再び言うならば、このゲームはクイックドローなのだ。ただ
―――このゲームの対戦における、勝者となる。
◇
サンラクは勝利を確信した。
このゲームにおけるクイックドローについて、彼はもはや知り尽くしていると言っても過言ではなかった。そしてこのゲームにクイックドロー以上の要素は無いので、実質的にこのゲーム全てを知り尽くしていると言い換えることができた。いかに単純なゲームとは言え、京極のようについさっきダウンロードを終えたプレイヤーと、彼のようにかつて貴重な人生を十数時間にわたり費やしたプレイヤーの間には、歴然とした
【GAME START】
地獄のように安っぽい音声が、地獄のように安っぽいテロップと共に、
特に加速したりも減速したりもしない銃弾が、そこそこの速度で京極に吸い込まれる―――勝った。サンラクは確信し、
―――ドン―――
驚愕した。
状況は理解している、
「……あいつ、弾斬りはできなかったはずだが―――」
対戦相手の、成長。
呟きながら……もう1発を、続けざまに撃つ。本来ライフルとしては設計されていないらしいこのゲームにおける銃は、普通に連射することが可能だ……京極も同じく連射を行ったようで、若干の
そこまで考えて、サンラクは目を見張った。
―――ギュン―――
京極が
サンラクは知らなかった……彼女の大きな強みは単純精度……即ち、スペック統一時のアドバンテージにある、という事を。その瞬間に成し遂げられたのは、例え
「迎撃、天誅……」
【YOU LOSE】
地獄のように安っぽいラベルと、地獄のように安っぽい効果音が、彼の敗北を告げていた。
"五戦"第三『空中に完全固定された状態で一切狙いがブレない対物ライフルを連射するゲーム』
勝者……京極
「い……」
「突発天誅先回り天誅先回り天誅先回り天誅ゥ!」
"五戦"第四『辻斬・
勝者……サンラク
「……なあ」
「何だい?」
「本当に
「いいんだよ……というかそれって今聞くことではなくない?」
「いやだって、幕末ではとりあえず天誅してからでも遅くないし……」
「結構遅いと思うけど……」
「まあアレだ……」
「ああ」
「
◇
"五戦"における五本目のゲームは、双方の話し合いによって決定される。だからこそ、関係性の織り成す
かれらの軸とはすなわち接点、関係性の重心を持つゲーム、つまるところ―――
◇
銃弾が飛んだ。
空を切るそれは尽く回避され、両者の判断材料の一つとして戦闘における役目を終える……当の発砲者であるサンラクは遠距離を捨てることを決意したらしく、頭上にハンドガンを投げ飛ばし……瞬迷の末に選択されたのは
「刀舞々【轟地進】ッ!」
「っ……
スキルエフェクトがサンラクへの攻撃を示し、また別のスキルエフェクトがサンラクによる防御を示す。光が融け合い、第三の色が共通部分に発生する。効果音が遅れて響き始める頃には、両者はそれを避けるように後退している。
瞬刻の先、再び激突が起こる……京極の装備に変化はないが、サンラクは盾を逆手持ちの直剣に変更している。より多くのステップに渡る攻防戦を想定した装備だ。このゲームにおいて武器はデフォルトで順手持ちになるよう出現するため、それをあえて修正したのには何かしら理由があるはずだ―――今のところは本人にしかわからない、理由が。
スキルエフェクトが、先ほどよりはまばらにせよやはり散る。なぜまばらになっているかというと、両者ともに攻撃系よりもバフ系のスキルを重点的に使用しているからだ。武器の変更に伴いエフェクトの形状が若干変化するから、それが全体の
「
それは
「
刹那の、出来事だった。
"五戦"第五―――
『シャングリラ・フロンティア』
勝利は、どちらの手に。
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電脳魔法少女マジカル☆アカネVS迫撃魔法少女フィジカル☆シルヴィアANOTHER第8話「切り開く/CLEAR」
【前回までのあらすじ】
キマシの塔に巣食うブルーウォール四天王のうち1人を打倒し、残り3人が自滅したことで勝利を収めたマジカル☆アカネだけど……大変!自滅の中でも特に自滅ポイントの高い自滅をキメたと思われていた揺籃のエタニティゼロが突然襲い掛かってきた!あまりに突然で対処できず闇の宝珠を奪われてしまい、放たれた漆黒のオーラに包まれて……気付いたら立っていたそこは、マジカル☆アカネ第1話の時代!?基本フォームしか使えなくなったアカネ、一体どうなるの!?
◇
「ノワル―――ッッッ!」
アカネは息を吸い込む。今も昔も―――いや、今は過去なので、
そんな思いを胸に抱いて、アカネは精一杯吸い込んだ橙色の空気を、標的めがけ―――
「ストリィィィィィムッッッ!!!!」
これでもかと、撃ち放った。
「ぐべ」
「さ、サンラクーっ!」
また別の声が響く……外道衆が一人、カッツォの物だ。フィジカル☆シルヴィアに挽き肉にされて以降なので、結構久しぶりに見ることになる。
「……撤収するよカッツォ君、バカみたいにデカいイレギュラーがいる」
言い放ったのはこれまた外道衆が一人、鉛筆である。渾身の自爆を決めて以来なので、久し振りというほどでもない。
「オーケー……デコイにとかしないよね?」
「……」
「しないよね?」
「……まだね」
「デコイとかに
する。(無印第38話参照)
「…………」
「否定して!?ねえ否定してよ!!」
無言を貫く鉛筆と、未だ己の運命を知らぬカッツォは、開かれた謎ゲートへと去っていった。
「……ふぅ」
ゲートが閉じると同時に変身を解除すると、アカネは思わず溜息をついた。
「……何がどうなっているのだ」
ポケットからひょこりと首を出したノワリンも、同じく溜息をついた。
◇
「…………タイムトラベル、ですか?」
「うむ」
アカネの問いに、湯舟をぷかぷかするノワリンが答えた。
「えっと、それは……」
ざばん、と妙に透明度の低い湯に浸かりつつ、
「どういう……ことでしょう?」
アカネは聞いた。
「
「そうなんですね!」
相槌が打たれ、水面を波紋が駆ける。
ノワリンは水面から飛び立つと、妙に透明度の高い水が汲まれた桶のふもとに立つ、どうやら、例え話に使うらしい……アカネはそれを見るために湯船から乗り出し、謎の光の面積を増やした。
「光と闇は……言うなれば、
「ふむふむ」
「器の対極にそれぞれ位置し、波及し合う波紋である」
「なるほど」
「例えば……お前と我の関係で例えよう。お前は光、我は闇の……」
「ノワリンさんはどちらかというと光だと思います!」
「口を慎むのだ!我が闇と決めたからには闇である!」
「はい!」
「……とにかく、このように」
ノワリンは桶に前足を伸ばすと、直径上の互いに向かい合う二つの点を示す。
「光の波紋と闇の波紋が存在し……」
そして軽く水面に触れさせた前足で、両点を中心に波紋を生み出す。
「見よ……二つの波紋は外側に影響を与えつつ、内側で打ち消し合っている……これが、光と闇の
「なるほど!」
「ほとんどの場合、このバランスが極端に偏ることは無い……ほとんどの場合偏りと言えるほど属性の
ノワリンは水面に軽く触れ、さざ波にも満たないような波紋を作り出した。
「総数が多かったとしても、例えばお前の『リミットオーバー』のように……」
ノワリンは桶に飛び込み、水柱と共に巨大な波紋を作り出した。
「……
そして桶から飛び出し、再び作り出した波紋によって両者を相殺させた。
「だが」
「だが?」
「あのエタニティゼロとかいう輩は……極端なほどに
「闇に偏ると何が起こるんですか?」
「うむ、簡単に言うとだな……」
ノワリンは電脳魔法も交えた全力の加速で桶にこれでもかと突っ込み、
「こうなる」
そして、そう言った。
「なるほど、タイムトラベルくらい起こっても不思議じゃないって事ですね!ありがとうございます!ところでこの桶どうしましょう!?」
「……む?何か不都合があるか」
「結構ありますね!」
その時。
「何だ、と―――!?」
突如として……
驚いて湯船から飛び出してノワリンの傍に駆け寄り、謎の光をさらに増やしたアカネが見たものは―――
「……これ、は」
湯舟を走る、巨大な波紋だった。
◇
服を着て、何かを両親に謂われる前に外へと飛び出したアカネの前には……彼女の大方の予想通り、揺籃のエタニティゼロが立ちふさがっていた。
「え、えっと……こんにちは!」
確実に自身をタイムトラベルに巻き込んだ相手に行うものではないアカネの挨拶を、ある種当然、ある種意外にもエタニティゼロはスルーし……代わりに、
「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ……!」
そう呟いた。
「え、えっと」
「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ…………!」
「エタニティゼロさーん!」
「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ………………!」
「ノワリンさん、エタニティゼロさんがヤバいです!どうしましょう!」
「闇に呑まれているな」
「呑まれるとかあるんですね!」
「時間遡行を起こすほどの強大な闇であるからな……我が全力状態ならばともかく、一介の人間にはとても耐えきれんだろう」
「ノワリンさんはどちらかというと光だと思います!」
「口を慎むのだ!我が闇と決めたからには闇である!」
「はい!……ちなみに、どうして時間遡行なんてしようと思ったんでしょう?」
「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ………………!」
「……分からないならば、それでいい」
「……?」
「ええい、とにかくエタニティゼロを討伐するのだ!奴を倒せれば、時間遡行も無効化されてすべてが元通りになるはずだ!」
「なるほど、わかりました―――じゃあ、行きますよ!」
「うむ!」
アカネはポーズを決めると、
「ドラゴン―――インストールッッッッッ!!!」
◇
「つ……強くないですか!?」
「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ………………!」
マジカル☆アカネ、端的に言ってピンチであった。
アカネの力は、現在かなりの制限を受けた状態にある。
とにかく、現在の彼女には
「くっ……えいやっ!」
かなりの力を込めたはずのパンチを、
「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ………………!」
弾かれる。
「……それならっ……!!」
「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ………………!」
受け流される。
「こ、困りました……!」
このままだとダメだ……アカネは、そう確信しつつあった。
「ええと、何か弱点を狙うとか……」
これがもし第2話時点でのアカネならば、そのような考えは一切抱かず、目の前のエタニティゼロに突進し続けたかもしれない。
「いや、単純に火力が足りないんじゃダメですよね……」
だが……2回のスピンオフ、1回の劇場版、1回の続編、そして0.5回(放送中)の
「他の魔法少女に頼る、とか……?」
アカネは、ノワリンに、サンラクに、サイガ―ゼロに、ルストに、モルドに、京極に、シルヴィアに……少なからざる、影響を受けていた。
「あ、でも……この時代だと、魔法少女はまだ私しかいませんよね……」
だからこそ彼女は、ここで『一度
「…………
そして、その作戦は成功する。
◇
「ええと……この角を右!」
アカネは街を駆けていた。
エタニティゼロのステータスは、確かに続編の四天王がさらに最強アイテムの片割れで強化されただけあって高いものだ……だが、
「よし、ここを直進して……この公園!」
影すら置いていくような、或いは自分自身が影になるかのような速度で駆け込んだその空間で、アカネはある一点を、マジカルパワーで強化された視力により探索する。
「―――あった」
「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ………………!」
背後から迫る声にも構わず、アカネは
それは本来決して活躍しない刃。破壊を運命として持ち、抗わせても抗いはせず、呑み込んだ光と共に砕け散った―――いや、今は過去なので、
「ドラゴン、
その妖刀、名をバクマツムラマサという。
◇
最初に発生したのは呪いだった。
妖刀だのなんだの言っているが、結局のところバクマツムラマサは呪いの装備に他ならない。持つものの精神を狂わせ、血に飢えさせる……アカネにとってもそれは例外ではなく、闇のオーラを放つバクマツムラマサから闇の感情が流れ込むのを、アカネは確かに感じていた。
だが―――
アカネには光の宝珠がある。本竜は光属性を認めないがノワリンもいる。何より―――
衣装の細部が変化する。
光を踏まえ、カラーリングが白を基調としたものに変更される。
バクマツムラマサそのものが、溢れ出る
「電脳少女マジカル☆アカネ―――ブライト✩☆✩エンチャント!」
変身を終えた光属性の戦士は、そう名乗った。
◇
「幼児に何かしたいんじゃなくて幼児になりてぇんだ………………!」
突進、バクマツムラマサを投擲する。エタニティゼロの高い防御力はしかし、本質的に
光に包まれて吹かれる夜風の快感に浸りながらパンチを入れる。それは端から見れば確実に
再び太陽を拝むのに、夜明けを待つ必要は無さそうだった。
「これくらいのボリューム少なめで30分くらいで書ける奴で問題ないよ」みたいな例を示すつもりが普通に5000文字書いてしまった
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世界の数だけ祝福がある
画面右下のUIに表示された「23:59」の文字列が「00:00」へと変化した瞬間、俺は行動を開始した。
現在、11月21日―――そして当然のことながら午前0時。俺は現実世界の自宅で、仮想世界の
他ならぬ焦りがUIの操作を急かすが、これに乗じ過ぎてはならない……冷静になってこそ、正確なUI操作が実現できるのだ。だから俺は慌てず騒がず、まずポップアップしてきた【新しいお知らせがあります:誕生日おめでとう!】のメールに「後で読む」の
やはり俺を焦らせる、いつもより5倍くらい遅く感じられるローディングサイクルの回転を見ながら……俺は冷静さをなお保つため、右下の時計を再び見る―――現在、11月21日午前0時1分。ここまでの操作で、既に今日という日の1440分の1が経過したことになる。
俺は学生だから一日中ダイブするわけにはいかないし、合法堕ちはまだだからライオットブラッドも3本に留めないといけない。だから、タイミングを考えると……この0時から7時までの間に、すべてを完了させる必要がある。
ローディングサイクルが
◆辻斬・狂想曲:オンライン
幕末における誕生日プレイヤーに対するボーナスは単純明快、誕生日武器の配布だ。
はっきり言って、クソみたいなシステムである。
誕生日武器……年度ごとに外見とか性能とかが異なるが、一貫して「誕生日」をモチーフにしている事は変わらないアイテム群。確か今年度は「バースデーカード」をモチーフにした刀、「
まさしく、今のように。
「ハッピーバースデー天誅ァァッ!」
とりあえず襲い掛かる幕末志士によるハッピーバースデー天誅をアンハッピー・デスデー天誅で躱しつつ舌打ちをする。幕末はそこそこリアルなゲームだが、プレイヤーに「舌打ちをする」機能が備わっているほどではないので、音はどこにも響かず、「舌打ちをした」という感覚を確かに持った俺だけを残す。マズいな……去年あたりから兆候はあったが、どうやら俺の誕生日はこいつらに完全に割れているらしい。
「バースデープレゼントにデスぺナをお見舞いしてやるぜェ~~ッ!」
バースデープレゼントにキルスコアをお見舞いしてもらいながら、偏重気味に振ってあるAGIで走る。……まあ祭囃子、なんて二つ名が付くレベルで
いつもの、比較的人の少ない
「……よし」
ビンゴだ、空間にはいつも通り閑古鳥が鳴いている。全速力でインベントリに
メニューを開く。巻物をモチーフにした和風のUIの上で指を踊らせ、一瞬でログアウトボタンの表示までを行う。後は押すのみだ、そして次のゲームに行くのみだ。そう強く意思をもって、指を伸ばして―――
「誕生日おめでとう、サンラク!」
刹那、
◆ベルセルク・オンライン・パッション
…‥気を取り直そう。
俺は気を取り直した。
正直、京極があそこに陣取っているとは……想定していなかった。上からの奇襲を想定していなかったわけではないが……時間帯的にそんなことをするような
あいつの誕生日はいつだ?サプライズイベントのために聞いておかないといけないな。
……気を取り直そう。
俺は気を取り直した。
俺のカウントが正しければ、あと1分ほどで俺は便秘にログインすることになる―――シャンフロにおけるキャラクリがそうだったように、近年のVRゲームでは「タイトル画面」がゲーム本体とはまた別のアプリケーションとして定義されているケースが多い。なぜかというと、VRゲームは起動時間が長く、タイトル画面をゲームに内蔵した場合、ちょっと設定を弄るだけで3分とか5分とかを消費してしまうからだ。タイトル画面を別物として、例えばVRシステムのホーム画面を拡張して設置すれば、ゲームを起動しない限り一瞬で設定までたどり着ける。旧来のゲームでいうランチャーを、より多機能にしたものと言えるだろう―――これは武田氏の受け売りだ。
まあとにかくその兼ね合いもあって……俺はこの「NOW LOADING...」の表示が終わった時、タイトル画面ではなくオンラインロビーに直に転送されることになる。キャンペーンモードを遊びたい場合、タイトル画面で「オンライン」の上に表示されている「キャンペーン」の方にカーソルをもっていけばいい。
さて―――あと20秒、脳内作戦会議だ。便秘における誕生日プレゼントは単純明快、「クラッカー」だ。起動した時点で「○○さん 誕生日おめでとう!」という文字が表示され、更に軽くクラッカーによる演出が挟まる。10秒に満たないしユニークさも無いので、ソウルバトル・ファンタジアの名残ではないかと言われている。
当然、この仕様もバグの起点にできる……誕生日しか使えないバグだから、ここから派生する一連のバグは「プレゼントシリーズ」という名称を付けられている。とはいえ1ユーザーが年に1度しか使えないという極めてまれなバグだから、今回の発動は検証の意図もある。
予想通り、1分ピッタリで視界を包み始めた光を見ながら―――俺は、作戦を開始した。
【
﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽さん 誕生日おめでとう!
】
まず、文字が表示され始める―――なんだか反転しているが、まあこれ自体はバグと言うほどでもない。単に俺のプレイヤーネームが「(反転制御文字)﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽﷽」だというだけの話だ。このゲームのプレイヤーネームには10文字の制限がある。そしてプレイヤーネームの表示はこんな感じで行われる―――つまり、なるべく横に長い文字を指定した方が時間稼ぎになる、ということだ。反転制御文字を入れることでなんだかよくわからないが再生時間がさらに二倍になるテクニックを使えば、最低5秒なはずの再生時間を40秒ほどまで引き延ばせる。
「今だ!」
横で待機してくれていたカッツォが言う―――よし!俺は
「うおおおお!!!」
同時に自分も「ショットガン」をすることで被ダメージ判定を増やしたカッツォに対する猛攻は、僅か3秒のうちに彼のゲージを削りきることに成功する―――ここまでは良い。5秒ほど待機、依然として表示される「!うとでめお日生誕」の上に「ラウンド 2」がかぶさって表示される……
「ドッペルゲンガー!」
「いいぞサンラク、いけーーっ!」
カッツォの声援を
残り時間は10秒、ドッペルゲンガーでクラッカーが増やせることが分かった時点で既に結構な収穫だが……まだだ。声を上げる。ここまでの一部始終をつぶさに観察していたであろう
「今だ―――ドラゴンフライッ!」
「はい、サンラクさんっ!」
駆け寄ってくるドラゴンフライと共に、叫ぶ―――
「「幽体離脱!!」」
同時発動する幽体離脱は、ヒットボックスを自分の背後に移すバグ技だ。クラッカーは基本的にプレイヤーとの物理的接触をしないが……
「……よし、いいよ!いいよサンラク……
「ラストスパートだドラゴンフライ―――
「はい……えっと、飛拳衝が2倍になるやつ!」
ドラゴンフライの当たり判定がアバター2人分になり、その一方で飛拳衝に殴られた俺が
「これは―――」
爆発した。
ロビー全体を……いくつもの、いくつものクラッカーが埋める。なぜか名前の表示が終わってもまだ消えずに残るそれは、まるで……
「花火みたいですね!」
ドラゴンフライに先を越された。
「あっ、そういえばサンラクさん、誕生日おめでとうございます!」
「ああそうそう、おめでとうサンラク……なんかクソゲーギフト送ろうか?話題のティタハーとかどうよ」
俺は礼を言うと、カッツォとティタハーの噂について語りたいという欲を抑え、別れを告げてログアウトした。
◆ユナイト・ラウンズ
ログインしたかと思ったら鉛筆戦士が襲ってきた。
「いると思ったわボケがァッ!」
前回ログアウトするとき、念のために
「サンラク君こんばんはー!!ドロップアイテムちょうだーい!!」
当然のように弾かれたブーメランを目で追う事はしない……どうせ回収するつもりはない。代わりにインベントリを開いて……
「サンラク君今脳内で私のこと『魔王』とか呼んでたよね」
えっ!?
「隙ありぃーーっ!というかブラフなのに『えっ!?』みたいな顔しないでもらえますぅー!?」
あっしまった!あまりの驚きに反応を一瞬遅れさせつつ、何とか鉛筆戦士の放ってきた3本の毒ナイフを―――
「……」
鉛筆戦士がポジティブかネガティブかでいうと明らかにネガティブ、みたいな表情をする……なんだこいつ。俺はブラフは掛け得だと思ったので、とりあえず言ってみる。
「鉛筆戦士君今脳内で俺のこと『変態』とか呼んでたよな」
鉛筆戦士の
「隙ありぃーーっ!」
俺は空中で激突して勢いを失った1本目と3本目の毒ナイフを掴み取って投げつけた。
鉛筆戦士があっしまった!みたいな顔をする。何があっしまった!だよクソがッ!しかもそんな顔をしながらナチュラルにナイフ自体は捌いて見せるのがより一層ムカつくぜ……!埒が明かないので突進する、ここはもうお前の
……あっ。
「ハッピーバースデー、サンラク君」
その声が、どこか遠くのものに聞こえて……いや、実際のところ遠ざかっている。何せ、
そうだよな……そうだよなあ~。鉛筆戦士ともあろうものが俺にわかるレベルでポーカーフェイスを崩すなんてそうないだろうし、いくら油断しているとはいえ、俺が毒ナイフ3本程度捌けない人間でもないことも知ってて当然だわ。いやまあ、なんというか……
「ハメられたな~~」
地面への激突の数秒前、俺は来年こそは奴を打倒してやると、そう心に誓った。
◆
◆
◆
◆
◆
◆
◆現実
「ふあぁ」
午前8時台の日差しの中で欠伸をしたのは、他ならぬ俺だ。
あの後、いろいろなことがあった……ありすぎた。危牧ではバースデーケーキを作ろうと小麦を育てていたはずが最終的にイエローケーキに頼る羽目になったし、ピザ留学ではホーム画面でキャラにメッセージを言ってもらえるのだがそのメッセージを言ってもらったか言ってもらってないかで本編でのフラグが変化するとかいう意味のわからないクソ仕様が顕現したし、シャンフロでは特に何もなかったし、これで最後だとネフホロに乗り込んだらちょうどいいタイミングでログインしてきたルストとモルドに10戦くらい拘束されたし……あれ、宇宙船のフレームがハッピーバースデー仕様になるだけだったうえにフレームが変わったせいで表示面積が減って完全にデバフでしかなかったのってユニバース・ストームだっけ、ギャラクシー・トラベラーだっけ?……うーむいかん。日本版トゥナイトとバックドラフトをアクセルミックスしたはずなのに、なおも記憶が混濁している。
「……こ、こんに……こんにちは、らくろーくん……」
「もしかして……玲さんも寝不足なの?」
「い、いえ……さくやは、すこしかんがえごとをしていた、だけで……」
それを寝不足と言うのでは……?
「だ、大丈夫?」
「だいじょ、だいじょうぶです!はい!
悩み……?玲さんほどの優等生でも悩みを持つものなんだな。……いや、「人生に迷いが多いのではない、迷いの中に人生があるのだ」って眠いから思い出せないあのクソゲーのNPCも言ってたもんな……どんな人間にも、悩みはあるものなんだろう。
「そうか……まあなんというか、気を付けて……」
「……らくろうくん」
はい?
玲さんは依然として眠そうに……しかしどこか覚悟を感じる佇まいで俺を呼び止めた。というより、呼びながら止まった。……何だろう?思案しようにも、7時間に及んで連続稼働した脳はその命令を実行しない。玲さんの行動を待つほかに無い。そんな当の玲さんは、何かの言葉を小声で繰り返し呟き、どういうわけか深呼吸をして、俺の、目を見て―――
「楽郎君、誕生日おめでとうございます」
そう言った。
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希求
別に、「大好きなゲーム」というわけでもなかった。
色々と好きな要素もあったが、特別これが良いというほどのものは見当たらなかった。逆に不満な点が少ないかというとそうでもなく、ルストはよくこのゲームの巨大ロボは全体的なフォルムが流線型すぎると主張していた。これではロボというより戦闘機だと。ロボ以外のオブジェクトのサイズ調整が雑で、本来大きくないはずのものが口で語られる設定より大きく配置されることが多く、そのせいで巨大ロボが相対的に小さく見えるようなことがよくあった。それもルストをときおり不満げにした。
とはいえ、不満げにするだけだった。
ルストは感情の発露が少ないタイプだし、相方のモルドも出力が大きいわけではない。ふたりにとってのそのゲームは―――愛するというほど好ましいわけでも、嫌うというほど憎らしくもない。ただそこにあるからとりあえず遊んでいるような、遊んでいる以上、好きか嫌いかで言えば多少は好きに傾くくらいな、そんな存在だった。
◆
「うわぁぁぁん……」
ロビーに泣き声が反響する。
フルダイブVRで自分の感情を隠すのは難しい。涙を流すコマンドが実装されているゲームは多くとも、涙を堪えるコマンドについてはその限りでないからだ。だから脳が泣きたいと思った瞬間、プレイヤーの頬には涙が伝う。そして涙の存在そのものが、連鎖的に更なる涙を呼ぶのだ。
「……」
ルストがいつも通りの無表情で眺めるシステムメニューには、現在時刻が23時45分である旨が記されている。言い換えれば―――このゲームのサービス終了まで、あと15分だ。鉛色のパイプが這いまわる壁を跳ね返る慟哭は、クロックが時間を刻むに従い、音量を増していっているように感じられる。
「ララ―――」
ロビーに歌声が反響する。
このゲームはプレイヤーの現実における声がそのままアバターの声として設定されるタイプだが、技術的問題から
「……」
モルドの視線の先にはこれまたシステムメニューのクロックがあって、現在時刻が23時46分であることを主張している。グラフィックの制限から生まれた
言ってみればその瞬間、ロビーは沈没間際の豪華客船の甲板のようなものだった。そこには脱出用のボートに乗り遅れたり、あるいは乗りこむつもりがそもそもなかった人々が、その声帯でもって思い思いの混沌を演じているのだった。
「ねえルスト」
モルドから口を開くのは珍しかった。大抵の場合……特にゲーム内にあっては、話を切り出すのはいつもルストだった。今回は例外ということになる。
少女のアバターをした少女は、大男のアバターをした大男を見上げる。
「……何」
「あと14分ってことはさ」
モルドは言った。なおさら濃さを増す喧騒にかき消されないよう、気持ち声量を大きめにして。
「一戦くらいはできるんじゃないかな?」
◆
このゲームのマルチプレイ要素は
【決闘を開始します】
【対戦者】
【Rust Vs. Mold】
ルストとモルドによる、二人だけの決闘でしかありえない。
「はっ」
モルドが最初に選んだのは、四時の方向への二発の
「やっぱり!」
彼は嬉しげにそう呟くと、そのまま操縦桿を左に倒す。アクションゲームが苦手なモルドにとって、この『操縦』というインターフェースは都合がいい。相方の少女ほどではないにせよ、最低限のパフォーマンスは発揮することができる。
「……読まれた」
と呟いたルストは全く同じデザインの操縦桿を倒して(機体のカスタマイズ性が低い件についても、彼女はよく文句を言っていた)、メインブースターを蒼く燃やした。選ぶのは突進、砂漠という選択ロケーションによって足元で上がる砂埃も気にせず、
「……まずいなあ」
モルドはアバターの頭を掻く。操作の巧拙がある程度縮まっているとは言え、やはり本気で機動されればルストの腕前には到底敵わない。二社の距離が近づくほど、モルドは不利になるということだ…このゲームにはトラップの類は存在しないから、正面から突進されるのを止めることができない。
そうした思惑の衝突の中で、二人は思った。別に同時であったかというとそうでもなく、しかし最終的には同じことを思った。このゲームには不満も多かったが、確実に遊ぶのは楽しかったと。
モルドは思った―――それにしても。
ルストは思った―――ロビーにいた人々は、このゲームにずいぶん入れ込んでいるようだった。
ふたりは思った―――いつか自分たちも、これくらい熱狂できるゲームを見つけられるんだろうか。
◆
そうして、終わりがやってきた。モルドの予想に反して試合は長引き、その主原因はモルド自身が
葉はVRヘッドギアを脱ぎ捨てると、最初に自室の窓を開けた。
夏蓮はVRヘッドギアを脱ぎ捨てると、最初に自室の窓を開けた。
そして深夜の冷たい
「……「次はどのゲームを遊ぶ?」」
いずれ出会う、最高の
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エデンへの聞き耳、リビング・メッセージ、錆びついた鍵
鋭利な牙。
それは満月の光を受けて、付着した唾液と共にぎらりと照り輝く。反射光が表すのは欲望であり、同時に憎悪で、何より殺意だ。目の前の存在を喰い殺してやろうという確かな殺意が、牙に憑依し漲っている。空中に撒き散らされた唾液の飛沫が、次々に月光を受けて数フレームだけ光る。
「はぁ……はあっ」
私は肩で息をしながら、並び立つ木々の間を走る。
呼吸のたびに肺を出入りする冷気。踏みつけた小枝がぱきりと折れる音。眼前で幕を張る闇に次ぐ闇。
そういう仮想の感覚たちが、ヘッドギアの中で微睡む脳に「あなたは息を切らしている」と囁くから――私は鼓動を早くする。必死で両足を交互に踏み出す。「早く走り終わらないだろうか」と考え始める。
背後から咆哮が聞こえる。
――早く走り終わらないだろうか。
数本の木が折り倒される音。
――早く走り終わらないだろうか。
空を切った攻撃エフェクトが、闇へと希釈されていく音。
――早く――
「今だっ!」
暗殺者さんが躍り出る。
私が上げた合図の声が、鬱蒼と続く森の中で反響し終えるより早く――彼女の細い右腕は、月夜の中でぶんと振られる。刹那、斬撃を表す効果音が聞こえて――直後には、私の目の前をダメージエフェクトが埋め尽くす。視界というキャンバスにある「黒色」を探し出して、そっくりそのまま「緋色」に置換したような感じだ。
ついさっきまで私を猛追していた巨大な狼が、ポリゴンになって風に乗り散る。
暗殺者さんの持っているスキルや装備は、自分を認識していない相手への攻撃……要は、不意打ちにおいて絶大な効果を発揮するものばかりだ。囮役の私が誘導した敵を、持ち場に隠れている暗殺者さんが不意打ちして倒す……このやり方は効率が良くて、レベル的に格上の相手でも楽に倒せる。
『モンスター
私の呼吸音に被さって、いくつかのアナウンスが聞こえ始める。
『討伐対象:
『エクゾーディナリーモンスターが撃破されました』
『称号【盲目の虎威】を獲得しました』
『
「はぁ、はぁ……」
息を整えながら呟く。
「……やっぱりレアなモンスターだったんだ」
実際、そんな気はしていた。私たちはよくこの辺りのエリアで狩りをするけど、狼型のモンスターに出くわしたのは今日が初めてだ。樹冠から漏れ出た月明かりを頼りに、狼の残したドロップアイテムに目を凝らしてみる。毛玉、角、骨……あんまり「狼」って感じのラインナップじゃない。アナウンスでもちらっと言っていたけど、たぶん狼に擬態していただけで、本来の姿は別の何かだったんだろう。
まあ、それについては一旦置いておこう。
それより――と私は暗殺者さんの方を向いて、
「乙です!」
親指を立て、そう言った。
私は、シャンフロの中では普段より明るく振る舞うよう努めている。その方が何かと面倒が少ないからだ。「乙です」の後ろにビックリマークを付けるのも、シャンフロを遊んでいる間だけだ。そんな私の渾身の元気に、暗殺者さんは――。
「…………」
何か言葉を発する代わりに、右手の人差し指と、親指と、薬指とを複雑に絡ませて、よく分からないサインのようなものを作り、こちらに見せてきた。晦冥が視界をぼやかそうと、そのサインの意味不明さは一目瞭然だった。
夜風がさっと通りすぎ、樹葉たちを軽く揺らしていった。ゲームエンジンによって描画された無数の卵型のシルエットが、どこか絵本の挿絵のように見えた。
暗殺者さんがはっとした様子で、慌てて右手を背中に隠した。マフラーで隠された口元を見ずとも、鋭く光る瞳の動きを見れば、「またやってしまった」みたいなことを考えているのはわかった。
ふたつの出来事が同時に起きたのは、きっと偶然なのだろう。
◆
暗殺者さんはちょっと謎めいている。
まず、クランマスターの話によると、彼女は私より一か月ほど早くうちのクランに加入したという。
うちのクランは別に「初心者お断り」というわけではないんだけど、活動の中心がイレベンタルなので、最低でもそこにたどり着かないと加入できない。イレベンタルはフォスフォシエルートにおける六番目の街だ。そしてシャンフロを普通に攻略するなら、
そして、私がこのクランに加入してから一か月。
一か月と一か月半と一か月を合わせると三か月半になるから、暗殺者さんがシャンフロを始めたのは、少なくとも三か月半くらい前だということになる。彼女は
でも、わかるのはそれだけだ。
「少なくとも三か月半」という言葉が指定する範囲は広い。ちょうど三か月半かもしれないけど、半年かもしれないし、なんなら一年と数か月前――このゲームのサービスが始まった日という可能性もないわけじゃない。暗殺者さんのレベルは88……一昔前なら「レベルが
そういうわけで、暗殺者さんの経歴は謎だ。
彼女を取り巻く謎めいた要素は他にもある。
暗殺者さんの頭上に浮かぶプレイヤーネームは、よくわからない記号の羅列だ。スラッシュとかプラスとか
目を瞑ってバーチャルキーパッドを連打したり、泥酔状態で無理やり思考入力をしたりするとこういう感じになると思うけど、暗殺者さん自身が実際にそうしたのかは分からない。確実なのは、彼女の名前をどう読めばいいかわからないこと。私が「暗殺者さん」という呼び方をするのはそれが理由だ。
そういうわけで、暗殺者さんの名前も謎だ。
こんな風に、暗殺者さんの持つ謎を挙げ始めるとキリがない。ただ……どの謎も、一番大きな謎には負ける。経歴を隠してるプレイヤーなんて盗賊系統職にはよくいるし、変な名前を付けることで相手を威嚇しようとするPKerなんてのもいる。最大の謎は、そういう小手先の理由付けではねじ伏せられないものを持っている。
つまるところ。
暗殺者さんは、言葉を喋らないのだ。
◆
狩りが終わったあとは、喫茶店で反省会をすることになっている。
「……「
半透明のシステムメニューの向こうで、暗殺者さんが謎のハンドサインを出すのが見える。さっき森の中で見たのとはまた別の、やっぱり謎めいているサインだ。一拍おいて、彼女は例の「またやってしまった」の表情をする。そして右手をテーブルの下に隠すと、俯く。
暗殺者さんのハンドサインもやっぱり謎だ。まず、意味が謎。手話の一種かと思ったけど、検索エンジンで調べてもヒットしない。あと、意図が謎。毎度見せる「またやってしまった」の仕草を考えると、本人としてはハンドサインを出そうと思って出しているわけではないらしい。体に染みついてしまっていて、無意識のうちに出してしまう……とか、そういう感じなのだろうか? 疑問は尽きない。
「えっと……自分の持っている武器の外見を、視認している別の武器のものに差し替えるスキル、らしいです! 武器の性能はそのままだけど、変形に伴う当たり判定の変化はあり得る……なるほど。それでリキャストは……いや長っ!」
とはいえサインについて本人に聞くのもなんだし、というか聞いたところでどうせ答えてはくれないので、私は自分の考えを隠し、いつも通りの元気な口調で、目の前に連なるテキストを淡々と読んでいく。
「まあなんていうか……対人戦ではいろいろできそうですけど、私たちのモンスター狩りにはそんなに使えなさそうな気がしますね! 暗殺者さんは何か思いつきますか?」
と一応聞くんだけど、暗殺者さんが何も答えないのは分かり切っている。そして私が予期した通り、暗殺者さんは、
「…………」
沈黙のままに左手で謎のハンドサインを描き、一拍おいてやはり仕舞った。
暗殺者さんは言葉を喋らない。理由は謎だ。最初は本人に聞いてみたりしたけど、喋らないので当然答えもわからない。それに理由について質問すると、彼女はそっぽを向いてしまう。それを見ると、まるで自分が嫌われているような気がして――実は本当に嫌われている可能性にすら思い当たって。その感覚が嫌で、自然と質問することはなくなった。
ロールプレイでやっているのかな、なんて考えもするけど、それだとハンドサインの説明がつかない。「言葉を発さない」なんてロールプレイの中でも特に難しい部類なわけで、それを成し遂げるほどの演技力を持つ人が、無意識のうちにハンドサインを出してしまうようなミスをするかは疑問だ。仮に演技として、結局ハンドサインの招待は何なんだという話になる。
まあ、全部――わからない。性格、意図、他者への感情。機嫌については薄い表情から多少読めとれるけど、それだけだ。暗殺者さんのステータスは、ほとんどすべてが謎なのだ。
「…………」
私はふと次に出す言葉を見失い、これまた黙って窓の外を見る。さっきは「光を発している」程度にしか認識していなかった月が、今は模様まではっきり見えた。
◆
暗殺者さんの謎が解かれる兆しを見せないまま、私たちの日々は過ぎていく。
いくつかのイベントが始まっては終わり、ワールドストーリーだのグランドクエストだのが、私たちの見ていないところで進行していく。基本的に私たちはずっと狩りをして、戦争イベントやベヒーモスの攻略に時間を割かれている時期も、少し短縮して狩り続けた。森で、丘で、洞窟で――その場所は何度となく変更されていき、それに伴って二人のレベルも上がっていった。
レベル99になったところで、私はひとつ決断をした。
◆
ログインし、手始めにシステムメニューを開く。
最初に確認するのは時間だ――現在時刻は午前7時27分、今28分になった。移動時間を加味しても、出航まではまだまだ余裕がある。
次にインベントリを見る。愛用の武器、食糧、照明器具、その他諸々。必要なものはすべて揃っていて、逆に不必要なものは何もない。きょう出航する新大陸調査船に乗ることを決めてから、しばらく断捨離を行った結果だ。不必要なものはすべて売り払い、高額な乗船券の購入にあてた。
最後に――これはついでだけど、運営からのメッセージを確認する。おそろしく細かいアップデート内容の箇条書きを高速スクロールで読み飛ばし、イベントとかを告知するスペースを確認する。戦争イベント後初となる新大陸調査船の出航は本日……知ってる。バベルシステムの正式導入……ニュースで見た。ゲーム内掲示板における通報行為への注意喚起……関係ない。うん。
「こんなところかな」
と呟いてメニューを閉じたところで、暗殺者さんが目の前に佇んでいることに気付いた。
私と暗殺者さんがいるのはフィフティシアにある宿屋の一室だ。なぜ暗殺者さんが私の宿にいるのか? 第一に、逆だ。暗殺者さんが私の宿にいるのではなく、私が暗殺者さんの宿にいる。そしてその上で理由を言うなら、私が乗船券の確保に精力を入れすぎて、前日に泊まる宿の予約を忘れていたことだ。偶然暗殺者さんが用事のために宿をとっていなかったら、路上でログインとログアウトをしなければならなかっただろう。
私は暗殺者さんをちらりと見る。
彼女とは今日でお別れになる。私は新大陸に行き、暗殺者さんは旧大陸に留まるからだ。一応フレンドにはなっているけど、彼女は
私が予想していたのと違い、暗殺者さんとの別れを前にしても、あまり寂しさみたいなものは湧いてこなかった。新大陸の攻略にわくわくする気持ちが強かったからかもしれない。
「部屋、貸してくれてありがとうございました!」
なので私はいつも通り、元気に聞こえるよう意識して、暗殺者さんに感謝の言葉を伝えた。
「……」
暗殺者さんの口元がマフラーの向こうで緩んだ気がして――直後、彼女の右手が少し上げられた。私は「また例のハンドサインが出るな」と思って、何の気なしに彼女の右手を見て、そして――。
潮風を感じている気がした。
◆
潮風を感じている気がした。
暗殺者さんを中心にして、私たちの周りに砂浜が広がっている気がした。その向こうにある大海原を眺めている気がした。右方から細波の音が聞こえている気がして、左方から銃声が聞こえている気がした。もちろん私の足は宿屋の床板に着いているし、視界は壁に阻まれていて、聞こえる音も窓越しに飛び込んでくる通行人の話し声がほとんどだ。でも――そういう孤島か何かの風景を、私は確かに感じている気がした。
いや、ここはVRだから――「気がする」だけで作られた世界だから。感じている気がするものは、たぶん、実際に感じていた。
私ははっとして暗殺者さんを見た。より厳密にはその手を見た。右手にはいつも通り、多分「またやってしまった」結果出された謎のハンドサインがあって、しかし驚いたことに、謎のハンドサインは謎ではなかった。
『今までありがとう。新大陸でも頑張ってね!』
読めたのだ。
その指はいつも通り複雑に折れ曲がっていて、小指なんかゲームじゃなきゃ怖くてできないような曲がり方だった。当然、私がその意味を知るはずはなくて――でも、読めた。どうして?
私は視線を落とす。床を、あるいは浜辺を見つめると、記憶を漁って理由を探す。少しして、行き付く。
「……バベルシステム」
言葉は、波音にかき消された。
そうだ――確かバベルシステムは、話し手のイメージを聞き手の脳に送り込む技術。つまりハンドサインのような音声を使わない言語でも、イメージさえあれば意味が相手に届く。ついでに言えば――私の感受性は、少々高すぎる。暗殺者さんのハンドサインに強い「孤島」のニュアンスがあるなら、イメージの共有で孤島の風景が見え始めてもおかしくない。
波音、波音、波音。
銃声、銃声、銃声。
とめどなくやってくるそれらに圧倒されながら、私はもう一度視線を上げて、暗殺者さんの手元を見る。
『今までありがとう。新大陸でも頑張ってね!』
バベルシステムによって翻訳できる以上、ハンドサインには意味がある。それは今暗殺者さんが出してるやつだけじゃなくて、たぶん、これまで彼女が出した全てのサインに意味があったんだろう。更に言うなら、サインはすべて無意識のうちに出されるから――その内容が取り繕ったものである可能性は考えづらい。サインの内容は、暗殺者さんの本心だ。口から言葉を出さないのは……もしかして、単に話すのが苦手だからだったりするんじゃないか。
つまり、こうだ。
暗殺者さんはずっと、ハンドサイン越しに彼女自身の素を出していて。
ただ、私がそれを読み取れていないだけだった。
「……?」
私の視線に気づいたのか、暗殺者さんは首を傾げる。首を傾げたついでに「またやってしまった」ことに気付いて、右手を隠す。それと同時に、私の五感からは砂浜が消え、大海原が消え、細波が消え、銃声が消え、孤島が消える。
言いたいことはいくらでもあった。
ハンドサインの意味が分かることを伝えれば、暗殺者さんと会話をすることが可能になる。つまり彼女の謎を解くことができるということだ。
あと、彼女に謝らなきゃいけないこともある。例えば、自分が嫌われているんじゃないかと疑ったこと。気難しい性格だと勝手に断定していたのもある。いくらでも謝る事項はあるはずだ。
でも――口が開かない。
『どうしたの?』
と暗殺者さんが無意識のハンドサインを送って、再び孤島は眼前に現出する。絶え間なく聞こえる銃声がさっきより大きい気がして、そこで自分が怖がっていることに気付いた。
暗殺者さんの過去に触れるのが怖い。
私は感受性が高すぎるから――自分で作った元気な外面を噛ませないと、他者と話せもしないから。この銃声に近づいて、その先で何かを見るのが怖いのだ。
逃げよう、そう思った。
「……余裕を持って行動したいので、そろそろ行きますね! ありがとうございました!」
私は逃げた。
暗殺者さんの手から目を背けるように、くるりと踵をめぐらした。視界からハンドサインが消えた瞬間、孤島はもう一度溶け消える。思考は混乱しているけれど、その根底には安堵がある。あとは廊下に続く扉を開いて立ち去れば、もう暗殺者さんと関わることはない。暗殺者さんは声を出さないから――あるいは出せないから、私を言葉で引き止めることもできない。淡々と歩き、淡々とドアノブをひねり、そのまま振り向かず部屋を去る。それだけでいい。私は心臓の鼓動を自覚しながら、早歩きをして進んでいく。
背後からは何も聞こえない。
――早く歩き終わらないだろうか。
背後からは何も聞こえない。
――早く歩き終わらないだろうか。
背後からは何も聞こえない。
――早く――
「さ……っ、さよ、なら!」
絞り出したような、掠れた声だった。
私は振り向いた。振り向かずにはいられなかった。そこには孤島は現れず、暗殺者さんがひとり立っていた。口元は黒色のマフラーに隠されていて、でも声の出どころがあるとすればそこしかなかった。
暗殺者さんが私の眼を見る。
私が暗殺者さんの眼を見る。
ふたつの出来事が同時に起きたのは、きっと偶然なのだろう。
舞台はシャンフロだけど話の筋的に鯖癌なのでこっちの短編集にしました
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転調
別に隠岐紅音√ではないのですが展開の関係で楽郎と紅音がリアルでつながってます マジで隠岐紅音√ではないです
プラスチック製の回転レバーは、正面から見ると歯車のような形をしていた。
レバーの表面は丸みを帯びて白く、中央に作られた円形の窪みの内部にだけ赤色の塗装がしてあって、黄色い曲線矢印が反時計回りでそれを囲んでいた。材質上、光沢を生み出すには十分なレベルの反射係数があったはずだが、ゲームショップの天井のLED電灯は不安定に薄暗く、経年劣化からレバーの表面も完全な白というわけではなかった。だから少なくとも回転レバーは、己の周囲に広がる様々な存在たちのうち、何の姿を跳ね返すということもなく、ただ、箱型の筐体にへばりついてそこにあった。
「えーっと……」
でも、カバーガラスは違った。
回転レバーの数センチ上部。筐体の中に詰められた無数のカプセルたちを覆い包むカバーガラスの表面には、薄くとはいえ、確かに隠岐紅音の顔面が映し出されていた。ゲームショップの一角に存在する
カバーガラスとカプセルたちの間には、一般的な
『中古
『激レアタイトルも出ちゃうかも!?』 ぎざぎざした吹き出しの中に太字のゴシックで。
『(※排出内容はメモリーキューブに限りません)』 隅っこに、極小字で。
「……どうしよう」
慣れない腕組み、傾げた小首。隠岐紅音は悩んでいた。答えを出すのは難しく、悩みが何かは簡単だった。ずばり――このガチャを一度回すべきか、回すことなく立ち去るべきか。
その脳内では計算が始まっている。
「今月のお小遣いが████で……████は███だから……」
しばらく沈黙。
隠岐紅音は……迷っていた、極めて。混沌を極めたような格安のダウンロード専売ゲームたちがオンラインストアに立ち並んでいく昨今だが、彼女のようなクレジットカードも知識も持たない中学生にそれらを購入する能力はない。遊べるゲームは物理的なパッケージに収められて販売されるものに限られ、更には経済的事情から、
だから――中古や、値下げ品に走ることになる。
ショートパンツのポケットの中には数枚の硬貨が潜んでいて、紅音の右手の人差し指に、硬く冷たい触感をもたらしていた。その一枚一枚の外縁部に刻まれた百数本の溝が、肌に食い込む。僅かに滲んだ汗と冷たさが交ざって生まれたどこか鈍いような指触りに、彼女は自身の葛藤を感じていた。
――回すべきだろうか?
回す、と決めてしまえば簡単だ。ポケットから四枚の硬貨を指でつまんで取り出して、ガチャの筐体の側面に開いた縦長のスリットに放り込み。じゃらじゃらという音がするのを確認したら、歯車のようなレバーに空いた窪みに指を合わせて、握力を発揮し、回せばいい。ただ回せばいい。そうして矢印が一回転するのを確認したら、取り出し口から吐き出されるであろうカプセルを持ち上げて、いざ開封してしまえばいい。
しかし。
「……四百円」
ハズレ、という可能性ももちろんある。
隠岐紅音の額を汗が伝う。照明が暗いから、それが光に輝くことはない。
「……よし!」
そこで彼女は決心した。「とりあえずやってみてから判断しよう」という、いつもの思考が発動したのだ。
ポケットから四枚の硬貨を指でつまんで取り出して、ガチャの筐体の側面に開いた縦長のスリットに放り込み。じゃらじゃらという音がするのを確認したら、歯車のようなレバーに空いた窪みに指を合わせて、握力を発揮し、回せばいい。ただ回せばいい。そうして矢印が一回転するのを確認したら、取り出し口から吐き出されるであろうカプセルを持ち上げた。
心臓が高鳴っている。
というところだけ予想と違ったけれど、何はともあれ回収した。そしてプラスチック製の薄い赤色に手をかけて、カプセルを、開いたのだ。
そこには――。
◇
「で、こうなったと」
サンラクは腕組みをして言う。
「はい!」
ドラゴンフライは元気よく答えた。
その頭部は二重であった。
ひしめく
そういう感じで二重になっているのは頭部だけではなくて、その四体の全体だった。
極めて不安定な状態のドラゴンフライに、サンラクは眉ひとつ動さずに言う。
「
ドラゴンフライは二重のまま答える。
「はい! でも、このゲームはもう持っていたので……」
「運が良いのか悪いのかわかんねーな。まあ……」
サンラクは軽く笑って、
「……いいじゃないか、400円もまったく無駄になったわけじゃない……新しい
言いながら、ドラゴンフライに向けたファインダー・ウィンドウに軽く触れ、スクリーンショットを一枚撮った。
ドラゴンフライのちょっとだけ釈然としていなさそうな表情(二重)が、電子的な画像情報として記録される。
彼女は既に考え始めていた――この新たなバグ技の名前を、だ。バグの内容は単純明快で、同じ端末で2枚のベルセルク・オンライン・パッションをそれぞれ起動したうえで、それぞれのソフトに紐つけられたプレイヤーネームを全く同じものにするとなんか二重になる。
「今回は運よく発動できたけど、厳密にはもう少し条件があるだろう。俺の見立てでは……ソフトの生産ロット関係で何かがある。ともかく、検証班に報告しなくちゃな」
ジャンパーの襟で隠れてこそいても、サンラクの口元がきっと笑っているのだということは目を見ればわかった。だからドラゴンフライはまた、相槌を打とうとして……。
「は……」
「あとさ、ドラゴンフライ」
遮られた。
「……い?」
サンラクは何でもないように聞く。
「……
ドラゴンフライが刹那、フリーズした。
◆
「よし……多分この辺の店だよな」
陽務楽郎はそう呟くと、地図アプリを表示させた携帯端末をスリープモードに戻して、ポケットに仕舞った。
普段は行かない道を歩いていたらゲームショップがあったので立ち寄ってみたところ、メモリーキューブが当たるガチャが置いてあった――。
しかし……彼女の話は、それらの経験とは一線を画するものだった。
別に何か特殊なポイントがあるわけではなく、
隠岐紅音は結局、「都合の悪い乱数を引く」という経験の乏しさゆえに引き際を見誤って、そのままガチャを五度回し、五度目にしてよくわからん成形色のゴム製のおもちゃが出たタイミングで店を出たというが……逆に言えば、それまでの四回はソフトが出ていたということになる。これがそもそもすさまじい確率だ。彼女に幸運の節があるとはいえ、普通この手のガチャは五度回して二本もキューブが出ればいい方だ。つまり今から楽郎が入ろうとしている店には、普通よりレアなゲームが、普通より高い頻度で出るガチャが置かれていることになる。
「……いまどき手動ドアかよ」
楽郎はハンドルを握り、少々煤けたガラスの扉をギイと開く。そこには薄暗い内装のゲームショップが広がっていて、誇りっぽい棚に雑然と詰まれたゲーム達の向こう側から、やる気のなさそうな店員が「いらっしゃせー」と無気力に発声して、手元の携帯端末に意識を戻した。
壁の塗装は剥げかけている。
「…………」
まあ……ゲームショップにもいろいろある。こういうところに来るのだって初めてじゃない。
楽郎はいろいろなものを飲み込むと、金属棚の傾いた影の間を縫って、ショップの奥へと進んでいく。進んでいきながら、ポケットに忍ばせた硬貨の数を数える。一、二、三、四、五、六――。金属がぶつかり合うじゃらじゃらという音にも構いはしない。むしろそれは、彼の抱いた期待をさらに助長するドラムロールに近かった。
楽郎の靴が今、埃の衝撃波を薄く散らして止まる。
「こいつか」
プラスチック製の回転レバーは、正面から見ると歯車のような形をしていた。
レバーの表面は丸みを帯びて白く、中央に作られた円形の窪みの内部にだけ赤色の塗装がしてあって、黄色い曲線矢印が反時計回りでそれを囲んでいた。材質上、光沢を生み出すには十分なレベルの反射係数があったはずだが、ゲームショップの天井のLED電灯は不安定に薄暗く、経年劣化からレバーの表面も完全な白というわけではなかった。だから少なくとも回転レバーは、己の周囲に広がる様々な存在たちのうち、何の姿を跳ね返すということもなく、ただ、箱型の筐体にへばりついてそこにあった。
楽郎は諸々を確認したりもせずに硬貨を四枚取り出して、即座に筐体の側面に開いた縦長のスリットに放り込んだ。じゃらじゃら、がちゃがちゃ、ぽとっ。あっという間にカプセルが堕ちて、楽郎はすぐにこれを取り出す。一通り回してからまとめて開封することも考えたが、今回はカプセルが一つ出るたびに都度開封する方式を取ることにした。楽郎は乱数の女神に祈る時間もほどほどに、さっさと球体を二つに分けてしまう。中身を確認すると――とりあえず、ゴム製のおもちゃじゃないことは間違いなさそうだ。形状から言って間違いなくメモリーキューブ、やはりこの店の排出率はおかしい。
しめしめと心を躍らせながら、楽郎はそれを覗き込んだ。
「……あ?」
舌打ちをするか迷って、しなかった。
楽郎はぐるりと踵を返すと、プラスチックの球体だったものを左のポケットに、かつての同胞の記憶を右のポケットに納めて、自動ドアのほうへと歩いていった。ガチャの筐体に備わった半透明のカバーは、店から彼が立ち去るまで、その後ろ姿を稀薄に映し出し続けた。
その幸運を、祝福してやるとでも言わんばかりに。
アカネチャンの誕生日二次(遅刻)ですが、ボーナストラックのつもりで入れた最終場面が濃すぎるかも
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