ゲーム脳カズマ (明日生きてるとは限らない。)
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シーユー世界

 死んだ。死んだ。グッドモーニング世界、シーユー人生、そんな勢いで死んだ。詳しく説明するのなら、トラックに轢かれて死んだ。それも、女の子を庇ってだ。誇らしい死に方をできたと思っている。

 

 そして、問題はここからだろう。目の前のことについて。そこには椅子に座った青い透き通る色の髪と目をした、すらりとした女性が佇んでいた。彼女が言うなら、自称『神』らしい、そして別世界で生きてほしい、とのこと。なんともゲームらしい展開であり、俺の思うセオリーにあっている。

 

 でも、最初に言うべきことはこれだろう。善人らしく、小説の主人公として相応しい質問を。

 

 「お、俺が突き飛ばした女の子は…助かりましたか?」

 

 ちょっと噛んでしまった。いや、人とのコミュニケーションが久しく慣れてないためだろう。転生という事でどうにかならないものか。

 

 「ああ、死んではないわよ?」

 

 そうですか。とあたかも安心したような口調で返した。どうやら、本当に誇らしい死に方をしたらしい。自分のことながら気分がいい。

 

 「でもあなたが何もしない方が良かったかもね」

 

 え? そんな言葉が自然に口からこぼれた。いやいや。おかしいだろ。俺は助けていたじゃん。

 

 話によると、俺がトラックと思ったものはトラクターで、別に轢き殺されるスピードでもなく。俺は本当に余計なことをしてしまったらしい。

 

 「あら? もう少し騒ぐと思ったのに、でもマヌケな死に方ね。プークスクス!」

 

 なんかムカつくなアイツ。こっちの気も知らずに。今俺は誇らしい死に方からマヌケな死に方になったショックを受けてるんだけど。

 

 てかあの人足組んでポテチ食ってるんですけど。ちょームカつくんですけど。

 

 「まあいいわ! ストレス発散にしようと思ったけどあんまり反応が良くないわね? つまらないから次に行くわ」

 

 うるせぇ、一言そう返した。表情にあまり出ないのは…なんでか知らない。多分、ずっと感情が舞い上がるような事がなかったから、か?

 

 「それでね? 最初に説明した通り、転生してもらうの。でも何もなしとか流石に酷いと思うわよね? だからね、神様たちですごい力を与えましょうってなって! ね? いいでしょう!?」

 

 まあ、話を聞いているなら良い話に聞こえる。が、死んでしまい、戻りたくないと駄々をこねる魂が続出する世界で、そんなチート1つでどうにかなるのか? 

 疑る気持ちもあるが、正直なところは期待の方が大きい。世の中のチート、と呼ばれるものが、現実で、しかも自分が使えるのだ。

 

 「それじゃ、ここから選んでね」

 

 そういい、両手を広げたと思えば沢山の紙が出現する。

 

 「おい、そういえば言語はどうなる? 俺は日ノ本語しか話せないぞ」

 

 「やっと会話らしい会話をしてくれたわね? そこは神様パワーで脳に負荷を与えて習得させるから大丈夫! ちょっとパーになっちゃうこともあるけど……」

 

 「今なんて言った?」

 

 何にも、そう返された。めんどくさいしさっさと決めて旅立とうではないか!

 

 ・怪力…通常値の100倍

 ・魔剣グアム…なんでも切れる

 ・自己回復…瞬時に回復、修復

 などなど……。

 

 ゲームはこういう時、走り出しが肝心だ。どんなに強いモノでも扱いを間違えばそれはゴミ。

 

 ん〜〜っと俺が唸っていると、前方から声がかかった。

 

 「ねー。どうせ全部同じだし早く決めてー。あんたみたいなのがまだ詰まってるんですケドー。早くしてほしいんですケドー」

 

 なんだアイツ。相手が女神じゃないならドロップキックかましてるところだぞ。

 

 「なあ、持っていけるモノはなんでもいいのか?」

 

 「ええ。基本なんでも大丈夫よ。変な人はスマホとか持っていったけど」

 

 どこのスマホ太郎だよ。でも、いい情報を聞いた。なんでも良いらしい。

 

 「じゃ、アンタ」

 

 ビシッと腕も振り、相手を指で指す。

 

 「あっそう、ならそこの円の真ん中に立って……え?」

 

 動揺したようにこちらを伺う。かじっていたポテチがぽろっと落ちた。

 

 「そんなのダメに決まってるでしょ!」

 

 「そんなことはありませんよ?」

 

 どこからか女神以外の声が聞こえてきた。

 

 「持っていける”モノ”でございます。なので、物でも者でもどちらでも可能です!」

 

 「はぁあああ!? そんなのおかしいじゃない! 日本語で遊ぼうじゃないのよ!?」

 

 チカチカっと俺と女神の足元が光り輝き、ふわっと浮き出す。

 

 「ちょっと! こんなニートと異世界とか、私女神! 女神なんですけど!?」

 

 「はっ! 人のことを馬鹿にしてるからだな」

 

 乾いた口調で言い返しておいた。こういう行動は性分じゃないが、とても気分が良い。歌でも一曲歌いたい気分だ。

 

 「それではサトウカズマ様、魔王を打ち倒した暁には何でも願いが叶う権利を与えましょう! それではお元気で!」

 

 「ちょ! それ私のセリフっ! 私のセリフぅう!!」

 

 意識が引き延ばされるような感覚とともに、目の前が暗くなってきた。

 

 さて、異世界とはどんな世界なのか。というかコイツを転生特典に選んだの。今更ではあるが物凄み間違いだったのでは?

 

 

 

 




 ゲーム脳要素が少ない…もっと出したいから早く話進んでくれ……。

 最近、三点リーダーを使いすぎる症候群、というものがあるらしいですね。私もこの症候群にかかってます()

 カズマはいつも通りジャージです。あとは所持金2065円です。

 誤字報告:タケミカヅチ様ありがとうございます。

 小説あんまり書けないのでアドバイスとか誤字報告とかはお願いします。


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最低なヤツ。

 以前の話が消えているのは、カズマらしくないと思ったのとこのifのテーマにあっていなかったからです。
 サーセン


 ん。と息をこぼす。眩しい光に目を細める。大空が見えることからどうやら俺は寝転がっているらしい。体に感覚が戻る。なんとも不思議な気分だ。体の再構築。神経の覚醒。そして何分か経ったのち、体を起こした。

 

 ここは…平原? 遠くの方には城壁の立派な街が見える。遠いな、と少し残念な気持ちを抑え、俺の隣に寝ている女神アクアを起こすことにした。

 

 しゃがみこんで顔を覗くと……なんかこと人泣いた跡があるんですケド。なんか悪いことしたな。

 

 肩を揺らして小さく声をかける。起きろ〜、起きろ〜、と。肩を揺らすと胸のソレも揺れて…へへ。

 

 おっといけね。変な気持ちが出てきちまった。

 

 そしてやはり女神というべきか。俺の邪念に気付いたのか起き上がってきた。

 

 そして周りを見渡したのち、立ち上がり服についた土をパッパっと叩く。結構すぐ起き上がるその様子にあまり混乱はしてないようだ。女神だから日常茶飯事なのだろうか。少し安心する。

 

 アクアは土を叩き終わったようで、こちらを少し見ると。

 

 「ああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 即座に耳を塞いだ。見誤った。

 

 女神アクアは”混乱”している!

 

 そのあとは…予想通り、なんでこうなるとか、お前のせいだとか、どうしてくれるとか。今さっきの安心と女神様への期待を返してくれ。

 

 怒り疲れたのか…いや発狂疲れ? で、少し静かになったところで話しかけることにした。

 

 「なあ、帰りたいなら帰ってくれていいからさ。こっからは一人でいいから」

 

 「アンタ何言ってるの!? 帰れないから怒ってるんですケド!」

 

 え、そうなの? 帰れないの、てか帰ってくれないの? この様子を見るだけで今後のデメリットにしか思えないんだけど。

 

 「アンタどうするつもりよ! 魔王倒さないと帰れないんですけど!」

 

 もし、デメリットになるなら早急に切り離すべきだろう。あとでどんなことになるか予想はつかない。特にこんなヤツは。

 

 「知るか。そんなに帰りたいなら帰ればいい。住めば都と言うだろ」

 

 俺の言葉を聞き驚いたように目を開き、目を少し潤ませる。

 

 「そう」

 

 悪い気はしない。俺ははっきり言っただけ。

 

 だから……もう。

 

 「俺は、必ず魔王を倒してみせる。それでお前を空に還す」

 

 小声で呟き、くだらねぇと蹴飛ばした。なんともない小さな妄言。それを呟いてから足を進める。朝のうちに行動しないとだしな。

 

 「ねえ、今なんて言ったの!?」

 

 やけに嬉しそうな声が後ろから聞こえる。なんか無理な約束するんじゃなかったな……。

 まあ、いいか。一度っきりの異世界。夢を見るのも悪くない。

 

 チートがないも同然。まったくひどい世界だ。

 これからどうなるのか。こんなヤツを選ばなければよかった話だが。チートもない俺はラノベの様な冒険は出来なそうだ。

 

 でもまあ、後ろに目線を動かし、少し笑った。

 

 どうにかなるだろう。多分。

 

 

 




 


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