暗黒大陸?グルメ界の間違いだろう…… (クロアブースト)
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厄災?珍獣の間違いだろう……

暗黒大陸ものが読みたいけど、原作がまだ進んでないから余り細かい設定が作れない。暗黒大陸広いしグルメ界混ぜちゃえというスタンスで作った作品です。


グルメ界も暗黒大陸と遜色無いレベルの魔境だからヘッチャラだよねという感じなのでそんな駄作でも良ければどうぞ。


とある活火山の麓に食堂を開いている料理人がいた。そこは頻繁にマグマが噴火することから危険地帯になっているにも関わらず店には焦げ跡一つ無いという摩訶不思議な場所でもある。

そしてそこへやって来る酔狂な客もいるのである。カランコロンと扉を開く音がして店主兼料理長である青年は客を出迎える。

 

「いらっしゃい、久しぶりだねジン」

「久しぶりだなイスト。相変わらず人気のない場所に食堂を置いてるなぁ」

「仕方ないさ。俺が出す料理は一般向けじゃなくてグルメを探求したい強者向けだからね」

 

そう言ってイストと呼ばれた青年は気にせず答える。

 

彼はイスト・フロリア。数ある危険地帯ばかりに構える食堂でグルメ食材というこの世界のどの料理をも遥かに上回る美味な食材を使った料理を作る料理人である。

この世界で彼は”美食帝”という二つ名で知れ渡っており、グルメにまつわる職業や金に糸目を付けぬグルメ家達には有名である。

料理以外でも砂漠を緑の大地に変えたり、食糧難で起こった紛争地帯で食糧問題を解決させて戦争を終結させたなどの数々の逸話があるのだが、今回は関係ないので置いておく。

 

そして客としてやって来たのはジン・フリークス。二ツ星(ダブル)ハンターの称号を持つ遺跡ハンターで

その実力は世界でもトップクラスと言われている。

 

彼らが出会ったのはイストが紛争地帯で食糧問題を解決すべく活動していた時に偶然ジンがハンター協会からの依頼を請け負っていた途中に出会った。

イストはとある一匹の鳥を使って数万人の食糧問題を解決するという人間離れした偉業を成し遂げたことで関わりを持ったのだ。

そこでイストが振舞った料理をジンが食べてリピーターになったという経緯である。ジンはカウンターテーブルに座り待っているとイストが厨房で仕込みを終えた鍋の蓋を開ける。

 

 

「これが俺の拠点にある鍋山で取れたコンソメマグマだ」

 

そう言ってイストはお椀にぐつぐつ煮えたぎる赤い液体をよそって渡す。見た目は明らかにマグマであった。

 

「何度も飲んではいるが、本当にマグマだとは信じられないな」

「特殊な温度調節しなければ喰えないからな。きちんと人が食べれる温度にしてあるから大丈夫だ」

 

イストが構えるこの食堂は鍋山と呼ばれる場所で特殊な温度調整をすれば幻のスープと呼ばれる程の美味な食材である。

しかし数々の専門家達がこの鍋山まで来て挑戦するもコンソメマグマを食用レベルまで調整出来たのはイストとその弟子である副料理長のみ。因みに調理法の記した書物を盗もうとした盗人達はイストや副料理長の手で殺されている。客ではなく盗人と無銭飲食した相手は文字通り殺しているのでマナー違反はご法度がこの店のルールである。

スープを出したイストは店内に飼っている三匹のペット達にもお椀を用意してよそっている。ジンはコンソメマグマをスプーンで掬って口にする。

 

「!?」

 

その瞬間、全身がまるで煮えたぎったかのように熱量が旨味と共に浸透する。冷房が効いた店内だというのに心地よい暖かさが身体中に漲った。

 

「カァァァァァ、一口だけで身体中がポカポカしてくるな。それでいて辛さはそこまでないのにコンソメスープとしては絶品だな!」

「そうだろう。俺の知り合いがフルコースのスープにしているものだからな」

「これでも他の店で飲んできたどのスープよりも旨いのに、イストのフルコースにはなってないなんてな。『センチュリースープ』はまだ出せないのか?」

「予約する前に言っただろう。あれは全ての灰汁を抜く必要があるから仕込みに時間が掛かると。まだ未完成だからオーロラ出てないしな」

 

 

イストは残念そうに言う。彼の拠点の一つであるアイスヘルで取れる『センチュリースープ』はかつてグルメ界と呼ばれる世界でコンビを組んだパートナーと共に作り出したフルコースの一つであるスープだ。全ての灰汁を抜くことで何もないように見えるほど澄み切ってるだけでなくオーロラを発するというスープなのである。

 

「オーロラが出るなんて本当に信じられないぜ。と言っても綺麗さだったら『宝石の肉』も黄金に輝いてたな……」

 

以前肉料理が食べたいというリクエストがあったので保存してあった全身の身の旨味を全て兼ね備えた光り輝く『宝石の肉』のステーキを食べさせたのだ。

 

「ほら君達の分だよ。お上がり」

「キシャー」

「あい…」

「パブゥ」

 

返事をするのはジンから少し離れたところでお椀に入れられたコンソメマグマを食べる双尾の蛇やらガス生命体やらとある電気鼠っぽい着ぐるみを被った眼光鋭い獣が返事をする。明らかにこの世界で見たこともない生物達である。

 

「ところで……こいつらは一体何だ?」

「暗黒大陸で食材取りに行ったら着いてきた。こっちの世界じゃ五大厄災とか呼ばれてるな」

「そうか、五大厄災か。どうりで見たこともないわけだ……は!?」

 

ジンは思い出す。先祖であるドン・フリークスが新大陸紀行に記載している化け物達のことを……

 

殺意を伝染させる魔物 双尾の蛇ヘルベル

欲望の共依存 ガス生命体(霧状生物)アイ

快楽と命の等価交換 人飼いの獣パプ

 

着ぐるみで隠れている生物は分からないが、双尾の蛇やらガス生命体は書物に記されている特徴と一致していた。

 

「おまっ……何てものを飼ってるんだ!こいつらがどんだけヤバいか分かってるのか!?」

 

ジンは立ち上がってイストに言う。何せ一つだけでも人類が滅びかねない厄災がこの食堂に三つもあるというのは下手すれば人類崩壊待ったなしである。

 

「ん、殺意や欲望や快楽と知性体特化能力だろう。実際に対峙して受けたから分かってる」

「受けたって……お前の身体は何ともないのか……」

「何言ってるんだよジン。たかが感情操作の類だぞ……適応したに決まってるだろう」

「適応しただと……」

 

ジンは戦慄する。その程度で対応出来るならば厄災などとは言われていない。

かつてヘルベルによって自身の手で人を殺すと嘔吐してしまう程に殺生が駄目な医療部隊シスターが殺意に呑まれて同胞をナイフでめった刺しにした事例がある。

他にもアイと遭遇した結果正気を失った者達や三大欲求を完全に抑え込んだとされる僧侶を一撃で快楽依存させたとされるバプなど知生体への特化能力は桁外れているのはV5が今まで秘密裡に行ってきた実験で実証済みなのである。

それでもなお解決策は見つからず未だに隔離しか対処が出来ていないのが現状である。

それを目の前の男は適応したと言うのだ。

 

「俺の場合は適応出来た。まあ汎用性はないし、俺は専門家じゃないからそんなことはどうでも良い。それよりそろそろ食材が切れるから取りに行く予定なんだ」

「本当はそんなことで済ます問題じゃ、……おい、何故ここで食材を取りに行く話をしたんだ……」

 

ジンは冷や汗を掻く。何故なら話の流れからある流れが思い至ったからだ。暗黒大陸の厄災を連れて来た男が食材調達をしに行くと言ったら考えられるのは彼らの故郷である。

 

「実は暗黒大陸に作った拠点で収穫に行く予定なんだ……暗黒大陸に興味があるって話だから一緒に来ないか?」

 

イストはジンに旅行に誘うかのように気安く言ったのであった。




軽く人物紹介

イスト・フロリア
個体名:人間?
→オリ主。暗黒大陸も勝手に渡航して無事に帰ってこられるレベルってグルメ界の人間じゃないという発想で作られた料理人。
”美食帝”の二つ名で数々の偉業をハンターハンター世界で成して三ツ星(トリプル)ハンターの称号を持つグルメハンター。

ヘルちゃん
個体名:双尾の蛇ヘルベル
→イストが飼ってる五大厄災の一つ。実は人懐っこい個体で手を伸ばすと頭を撫でて欲しくてすり寄ってくる。因みに悪意を持って店に入ってくると殺意を伝染させた上で相手の拠点に戻らせて虐殺を行わせるハニートラップを仕掛けてくる娘。

アイちゃん
個体名:霧状生命体アイ
→イストが飼ってる五大厄災の一つ。欲望よりも食欲に目覚めた個体なので料理作って上げれば大人しかったりする。とある世界線ではアイちゃんに欲情する豪の者がいるとかいないとか……

バプちゃん
個体名:人飼いの獣バプ
→イストが飼ってる五大厄災の一つ。某日曜アニメのキャラのように「パブゥ」と鳴くマスコットの一匹。日差しを浴びたくないらしいので有名な電気鼠の着ぐるみを上げたら気に入って使っている。イメージ的にはポケモンのミミッキュ。

ジン・フリークス
個体名:人間
→イストの店にやって来たこの世界トップクラスのハンター。イストの暗黒大陸ツアーに巻き込まれた被害者である。


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1章〜流星雨のパフェ〜
暗黒大陸とは


本当は副料理長の方も描きたいけど、最初から暗黒大陸行かないのはグダグダしそうなので一章はイスト・ジン・ヘルちゃん・バフちゃん・アイちゃんのお話。

今回は暗黒大陸到着までの導入回なので暗黒大陸の軽い設定について触れています。




限界海境域にある関所、それは暗黒大陸への無断渡航を防ぐために存在する防衛機関が存在する。利権を主張したいV5とネテロ会長が暗黒大陸への進出を防ぎたいが為に、腕の立つ傭兵やプロハンター達が防衛の為に派遣されている。その無断渡航防衛率は99.99%という強固な阻止率を達成しているのである。

 

 

因みに0.01%がイスト・フロリアなのは言うまでもない。

 

 

 

 

とある人間界の海域から海の上を走る巨大な馬とそれに引っ張られる船があった。

その馬の名はギガホース。

体長1000メートル、体高800メートルという水陸両用の超巨大白馬である。

 

豪華客船というべき船の上でイスト達はくつろいでいた。

 

「まずはメビウス湖を超えないとどうしようもない。ということで暫くは船旅だよ」

「船旅なのは分かってるが、よくこんなデカい馬を用意できたな……」

「知り合いから借りたんだ。本当は俺の相棒の方がデカくて搭載量も格段に違うから連れて来たかったんだけど今は帰省中で呼び出せなかったよ」

「いやこれでも十分だろうが……」

 

呆れるジン。イストが桁違いなのは今に始まったことではないのだが、今までここまで巨大な白馬はジンでも見たこと無かった。

 

「と言ってもメビウス湖超えてからは徒歩になる。ギガホースでも暗黒大陸の猛獣達相手では喰われるから乗車してるわけにはいかない」

「は!?じゃあこのギガホースと船はどうするんだ?」

「ギガホースはそのまま帰宅。船は食糧などの保管庫だから持っていく」

「このデカい船を持っていく……発か……」

「そうだよ」

 

イストはそう言って腰巾着を取り出す。そこから巨大な皿に乗った大きなプリンを取り出す。プリンを置くと近くにいたヘルちゃん、アイちゃん、バプちゃん達が食べだした。

 

「発の一つ『パーソナルスペース』。能力は質量、重さを問わずに入れられる能力だ」

「確かにそりゃあ便利だが、だったら態々船を持ち歩く必要はないんじゃないか?」

 

ジンの言う通り、この能力があれば荷物は運べるので船を持ち歩く必要すら無くなるのである。

 

「理由はメビウス湖を超えた先にも船で渡らなきゃいけない海をまた渡ることになる」

「確かにメビウス湖以外にも海があってもおかしくねぇな」

 

メビウス湖を超えた先が巨大な大陸と言われているが、メビウス湖と同じように湖があってもおかしくはないのである。

 

「後は今回の旅に必要な物とかを色々詰め込んでいる。食糧庫の他に立ち寄る村や国への物資とかな」

「村や国があるのか!?」

 

驚愕するジン。暗黒大陸は最早人が住める場所では無いと呼ばれるほどの魔境だからこそ信じられなかった。

 

「といっても亜人のだけどな。新大陸紀行にはそこら辺載ってなかったのか?」

「ああ、新大陸紀行は主に探検先だから国とかの情報は載ってなかったな」

「まあ冒険譚に既存の国載せるかは別の話だしな」

 

せっかくの冒険譚ならば国よりも魔境や秘境を載せた方が面白いとはイストも思っている。

 

 

 

「ところで副料理長はどうするんだ?」

 

ジンはイストと共に食堂で働く唯一の弟子にしてスタッフである副料理長について尋ねる。

 

「ああ、流石にまだ生身で暗黒大陸潜るのは未熟だから代わりにハンター試験に行かせた」

「ハンター試験、確か今期は287期だな……」

「そんなに長くやってるんだな……」

「お前もハンター試験受かってるだろうが」

「俺の場合は協会の推薦があって受けただけだからな。元々ハンター自体に強い動機あったわけじゃないしな」

 

イストはあっさりと答える。イストは本来ハンター自体に興味がなく、自由気ままにグルメ食材を求めて旅をしていた風来坊だった。

その旅の途中で砂漠を緑の大地に変えたり、紛争解決したりと国際問題ガン無視で色々やらかしてたら刺客として心源流拳法師範がやって来た。

拳法使いという割には何故か観音像を出して攻撃してくるという変わった相手だったが、本人と比べて観音像自体の動作速度は大したこと無かったので観音像の腕を全部切り落として返り討ちにしたら何故かハンターにならないかと誘ってきたのである。

権力とか全く興味が無かったのだが、ハンターライセンスが公共交通機関無料になると言われて受けたハンター試験が余りにも簡単すぎて一発で通ってしまったのである。

 

因みにイストが参加した280期のハンター試験は”悪夢の280期”と言われていたりする。何故なら合格者は一名だが試験官参加者含めて約半数が廃人になるという前代未聞の事件が起こったからである。その原因がイストなのは言うまでもなかった。

 

「副料理長には生身で深海、溶岩、極寒、重力、低酸素とあらゆる環境適応能力は身に着けさせた。暗黒大陸渡航に必須の環境即応能力に関しては充分だ」

「いや生身だと流石に人間どころか生物の対応力を超えてるだろう。ていうか俺も流石に準備も無しにそんな環境は無理なんだが……」

「大丈夫、ジンの護衛にヘルちゃん達を回すから」

「それは別の意味で安心出来ないんだが……」

 

何せ護衛するのが下手すれば人類滅亡級という特大の爆弾とも言える三匹である。肉体の安全は保障するが精神の安心はガン無視である。

 

 

「まだ実戦経験が不足していてな。暗黒大陸に巣くう亜人や獣相手は荷が重い」

 

暗黒大陸で敵対する存在は主に二つ。

人と同じく知生体として知性を得て独自の生態系を構築した通称”亜人種”イメージ的には猫や犬などの獣人と呼ばれる種族やリザードマンなどと言った存在がいる。

猿が人へ進化したように、人がいないとされる暗黒大陸では猿以外の動物が知生体となった事例が存在するのである。彼らは人間と同じように武器だけでなく武術などの技術や戦略だって練ってくる。基本的には敵対しないのが一番だが敵対すればほぼ人間の上位互換なのでタイマンだと殺されたりする。

 

そしてもう一つは獣。これはここにいるヘルベルやバプ、アイが該当する。これは文字通り知生体とはならなかった生命体。だがこちらは亜人種と違って知生体になる必要がない存在が多い。

ヘルベル達のように知生体特化した能力や不死身のような再生力、若しくは知恵を持つ必要が無い程の潜在能力を持っているケースが多い。

そもそも知恵とは弱者が弱肉強食の世界で生き抜くために身に着けた術である。追い込まれなかったらそもそも知生体になる必要すら無い化け物だっているのである。

 

 

「副料理長の話だと実戦経験なら魔獣や賞金首を狩ったりしてたんだろう?」

「賞金首はともかく魔獣は余り参考にならなかった。念を使ってこなかったしな」

「念を使ってこなかったということはやはり暗黒大陸では……」

 

暗黒大陸での死者数が多い理由の一つをジンは思い浮かべる。亜人種という人間と同じ知生体は例外として五大厄災以外にも獣によって探検者の数多くが命を落としたとされる要因の一つが存在する。

 

 

「そう。暗黒大陸では亜人種だけでなく獣だって念能力を扱える。暗黒大陸において人間は発以外で念能力の優位性は保てない」

 

洗礼とも言える念能力者を狩る念能力を扱う獣達の蹂躙である。簡単なイメージで例えるなら向こうのゾウは人間と同じく念能力の基礎である四大行はおろか、応用技まで使ってくるのである。同じオーラを纏われた場合、身体能力で差がある為ゾウの凝での一撃は人間の硬ですら受けきれないので攻防力以前の問題で死亡する。

唯一の救いは彼らは遺伝子レベルで念の継承をしている為に発の能力や系統図は種族単位で共通なことだ。まあ油断してると兎ですら人間を殺せてしまうのが暗黒大陸の怖いところではあるのだが……

 

「因みにV5の渡航記録には一つ語弊がある。暗黒大陸で五大厄災のせいで全滅したかのように記載されてるけど、実際は厄災到達前にも甚大な被害を負ってる」

「確かに国の面子としては被害出しながら渡航してたというより大きな厄災で全滅の危機にあって敗走したと記載した方が体裁は良いのか……」

「まあどっちもどっちな気もするけどな」

 

呆れるしかない。何せ次の先駆者達には暗黒大陸の脅威は厄災しかまともに伝わらないのだから。確かに厄災は脅威だが外敵対策だって怠ってはならないのである。何せ暗黒大陸において人間は弱者なのだから……

 

「後はサイズには気を付けて置いた方が良いな。デカさは潜在オーラの多さに直結しやすいからより強固でしぶとくなる」

「イストはどうしたんだ?」

「いや俺は普通に包丁で削ぎ切れるから普通に殺してるけど……」

「お前やっぱ化け物だわ……」

 

そしてギガホースの側面からギガホースに匹敵する500m級の巨大な魚が飛び出して突っ込んで来るが、ジンが瞬時に船から飛び出して蹴り飛ばす。吹き飛んだ魚は水飛沫を上げるが、ギガホースは気にせず海の上を駆けていく。

 

ジンは何ともないように船に着地する。

 

「ところで暗黒大陸の何処に行くつもりなんだ」

「スターダスト・ヒルって場所だが知ってるか?」

「いや新大陸紀行には載ってないから知らないな」

「確か新大陸紀行は300年前だったから仕方ない。何せそこの環境が変わったのは5年前だからな」

「5年前?一体何があった」

 

ジンは尋ねる。暗黒大陸は人類未踏の地とされるが目の前の男は明らかに暗黒大陸を独力で渡れる実力者である。彼はそこで5年前に何を見たのか知りたかった。

 

「局所的厄災と呼ぶべきか、とある雨のせいでそこの生物達が絶滅したんだよ」

「雨で絶滅!?どういうことだ?」

「口で説明するより直接目で見てみれば分かる。まあ本当に恐ろしいのはそんな環境を作り出した奴なんだが、今回はジンはともかくヘルちゃん達連れてくと敵対したとみなされて確実に殺されるからそっちは行かないから勘弁な」

「イストだけでなく、そこにいる厄災達もか……」

 

ジンは驚愕する。何せここにいるヘルちゃん、アイちゃん、パブちゃんは一つだけでも人類を滅ぼしかねない厄災。それを上回る存在がいるとイストは示唆しているからである。

 

「(ジンも最初より強くなったとはいえ八王と対峙は不味いしな)…そろそろ関所だな」

「とんだ強行軍だったな……2~3ヵ月かけて行く距離がまさか2~3日で着くとは……」

 

進行方向先にあるのは聳え立つのは巨大な壁。ギガホースに匹敵する1000m近い見上げる程の大きな壁を……

 

 

「邪魔」

 

甲板に立ったイストが包丁を振るうと巨大な斬撃が壁に激突して壁を文字通り吹き飛ばした。壁を吹き飛ばしたことでギガホースが通れる一本道が出来上がる。

 

 

「相変わらず滅茶苦茶な奴だよお前は……」

「良いんだよ。会長もゾルディックも呼べなかったらしいから今年の刺客はただの有象無象しか雇えてないらしい。これで挑んでくる輩がいるならギガホースに周を纏わせて踏みつけさせてやるけど」

「どうやら来る気はないらしい」

 

壁を吹き飛ばした先をギガホースが駆け抜ける。少し待ってもギガホースへ攻撃を仕掛ける様子はない。関所とのやり取りをガン無視して暗黒大陸へ向かうのだった……

 

 

 

 

 

そして数日後、イスト達はメビウス湖を渡り到着する。メビウス湖を超えた先には巨大な森があった。イストはギガホース達に餌を与えた後は人間界へ向けて帰還させる。船を腰巾着に収納してジンへ向けて言う。

 

「さて、まずは危険地帯である"草食の森"を抜けようか」

 

イスト達は"草食の森"へ一歩を踏み出した。

 

 




細かいやり取りはガン無視して進行するスタイル。個人的にアニメ再開しても継承戦はカットしても許されるレベルだと思う。

本作の暗黒大陸設定
・主な外敵は人間みたいに知性体になった亜人種と獣
・暗黒大陸の外敵は念能力を四大業だけでなく応用まで扱える
・潜在能力に差があるので、発以外では優位に立てない
・厄災級は大体亜人種ではなく、獣である。

トリコ要素
・グルメ食材がある
・トリコで扱われているスポットが存在する

トリコ読んでた人なら場所の名前とかは連想しやすいと思います。


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おいでよ、草食の森

理想と現実

理想の草食動物「ぷるぷる、ぼくたち悪い動物じゃないよ」

尚現実の草食動物は後書きに記載。




「草食の森、名前だけなら可愛らしく思えるが違うんだろう?」

「まさか暗黒大陸にそんな穏やかな場所があるわけないさ。この森は肉食動物が一匹も残らず絶滅した危険地帯さ」

 

イストはジンの疑問に答える。

 

「絶滅した?」

「そうだ。だからこの森は危険地帯なのさ」

 

そうして歩いていくと人間界と同じサイズである一匹の兎が出てきた。

 

「まさか暗黒大陸で小兎が出てくるとはな」

「警戒しろよ」

 

その言葉と共に兎から大きなオーラを纏ってジンへと向かって高速で突っ込んでくる。

 

「うぉ!?」

 

ジンは慌てて避ける。

 

ズドォン!

 

避けられた兎は進行方向上の木々を貫通しながら突っ込んでいった。

 

「あれはロケット兎だな。頭で硬をしてロケットのように突っ込んで来る危険生物だ。群れで行動するのが特徴だ」

 

その言葉と共に森から20~30程の兎達が出現する。そして兎達は一斉にジンとイストへ向かって跳躍してロケットのように突っ込んできた。

 

「硬しながら受け流せ。受け止めると次々と襲ってくるからな」

「簡単に言ってくれるな」

 

ジンは次々と迫りくるロケット兎達を硬と流をしながら受け流す。

もし仮に凝や練で受け流そうとしたら攻防力不足で被弾箇所が吹き飛ぶ。

そして受け止めれば集中狙いされて手足を抉られてしまうのは容易に思い当たるのだ。

文字通り防御に全霊をかけなければ命を落とす危険生物である。

対してイストは軽々と素手で弾いている。オーラ量や潜在能力がロケット兎とは次元が違うレベルだから出来る芸当である。

 

「何時まで受け流せば良い?」

「こいつらは群れ単位で通じないと判断したら集まり出す。その隙をやる」

 

そうして数分ロケット兎達の突進を受け流していると通じないと判断したのか、単発で駄目なら一つの大きな弾丸になろうと集まり出した。そしてくっつき合うとオーラが増大していく。

 

「相互協力型(ジョイントタイプ)だ。威力と速度が跳ね上がるから念弾で出来る限り削れ」

 

ジンとイストは念弾を撃って削っていく。

そして十匹が念弾で撃ち落とされながらもロケット兎達は一つの砲弾のように突っ込んでくる。ジンとイストは容易く避けるが、後ろにあった大きな岩石を容易く貫通する。

 

そうして避けながらも念弾で削っていくとロケット兎達は分が悪いと判断した為、引いていった。

 

「ったく、最初から恐ろしい奴らだ」

「ジンがまともにやりあう気があったなら問題ないさ」

「まあな。だがここは通り抜けるだけなんだろう?」

「そうだ。草食の森はこの後立ち寄る狼人(ウルフロイド)達の狩場だからな。下手に乱獲すると問題になる」

「それ人間界から来る連中は知らないよな」

「そもそも手加減出来るかも怪しいな」

 

ジンとイストは会話しながら森の中を歩いていく。

 

歩いていくと落ち葉が地面を埋め尽くした広場が出てきた。明らかに不自然な場所な為にジンは凝を使う。

 

すると陰で隠された鋭利な木材が罠として仕掛けられていた。

 

「これを自然の動物が作ってるのか、随分知恵が回るな」

 

ジンは警戒しながら罠を避けて進もうとするが…

 

「待て」

「どうしたんだ」

「凝じゃなくて円を使ってみろ。周囲じゃなくて地面にだ」

「分かった」

 

ジンは地面へ向けて円を広げる。

 

「なっ!?」

 

円で感知した先には落とし穴があった。落とし穴の先にも同じく鋭利な木材が仕掛けられており、串刺しにされるだろう。

 

「朧狸だな。凝を欺く幻術を見せてくる」

「文字通り初見殺しな能力だな」

 

朧狸とは隠の罠を見破らせ、本命の凝を欺く幻術による落とし穴で仕留める狡猾な狸である。

 

「他にも幻狐という円を欺く幻術を見せる奴もいる」

「つまりこの森では凝と円を使い分けないといけないわけだな……」

 

洗礼とも言える初見殺し。この森では狐と狸の化かし合いが行われている。但し被害者に関してはこの森への侵入者なのが酷い話である。

 

「だが種が分かれば怖くないな」

「そうだな」

 

二人は無事に広場を超えた先の草原に出てくると顔が殺意にまみれた一匹の羊がこちらに向かってくる。

 

「メェー」

 

可愛らしい鳴き声とは裏腹に体毛で巨大な拳を作ってこちらに放ってきたのでジンとイストは避ける。

 

ズドン!

 

拳が振り下ろされた地面は陥没していた。

 

「コイツはスケープゴート、体毛を自在に操り対象を殺そうとしてくる羊だ」

「スケープゴートの由来は?」

「名付けた奴曰く見殺しにされまくって復讐に目覚めたってバックストーリーがあるんじゃないかなぁと言ってた」

「適当だなぁっと!」

 

ジンはスケープゴートの側面に近付き、右拳に硬を纏わせて殴るが、体毛が瞬時に緩衝材になって威力が削がれる。

そして拳が触れていない体毛部分が針となって襲いかかるのでジンは瞬時に離れる。

 

「奴に物理攻撃はほぼ効かない。まずは体毛を削ぎ落とさないとまともにダメージが入らないぞ」

「つまり切裂けば良いんだな」

 

ジンは右手のオーラの形状を変化させて手の周り無数の刃を作り出す。

 

キュイイイインン

 

オーラが高速回転することで刃も回転する。その光景は電動ノコギリであり、イストはジンをジト目で見る。

 

「やっぱお前のオーラ技術、変態だわ」

「お前が言うな」

 

ジンはそうしてスケープゴートへ電動ノコギリと化したオーラで毛刈りを行うのだった。

 

 

 

草原を超えた先でまた森に入って数分、イストとジンは歩みを止める。

 

「囲まれてるな」

 

周囲の木々から現れたのは軍服を着たリス、アーミーリス達だった。その数は50を超えていた。

 

「チュチュチュチュ」

 

一匹のアーミーリスの号令で五十を超えるアーミーリス達が一斉にマシンガンを具現化し全方位からの弾幕を作ってくる。

 

「ドングリの弾丸、周で銃並みの威力を持ってるのか……」

 

だが先程のロケット兎と違って練で全方位から放たれる弾丸を防ぎきれる程度の威力しかない。だがこのアーミーリスの恐ろしさは軍隊レベルの練度を持つことである。

 

半分のアーミーリス達が弾幕で牽制する間にもう半分のアーミーリス達は松ぼっくりを投擲する。

 

ブシュゥゥゥゥゥ

 

松ぼっくりから煙が吹き出し周囲が煙で見えなくなる。

 

「煙幕……」

 

ガクンッ

 

ジンの身体から力が抜けていく。

 

「眠りスギの花粉か……」

 

イストから聞かされていた睡眠作用のある眠りスギの花粉が撒き散らされる。木の上から見下ろすアーミーリスがチュチュと鳴くと空から赤い鳥が現れ、羽根から焔が巻き上がる。

 

「キー」

 

その雄叫びと共に熱風が煙に当たった瞬間、

 

ズドォォォォン

 

粉塵爆発が発生した。

 

 

周囲が吹き飛ぶ中で一つの氷のドームが出来ていた。そのドームがひび割れると無傷のイストと朦朧としたジンが出てくる。イストがジンの頬を軽くペチンと叩くとジンの意識が覚醒する。

 

「すまねぇ……油断していた……」

「火の鳥を使っての粉塵爆発は奴等が用意周到だったってだけさ。ところで………もう茶番は良いか」

「ああ、現時点で俺だけの力じゃ通用しないってことは分かった……」

 

ジンがそういうとイストは殺気を撒き散らす。その瞬間、周囲の動物達は一斉に身の毛もよだつ恐怖に晒される。

そして周囲の草食動物達は一斉に撤退していった。

 

 

 

 

パチパチパチパチ

 

焚き火をして先程捉えたロケット兎の蒲焼きをしながら休憩するジンとイスト。

 

「これが暗黒大陸の野生か……恐ろしいな」

 

ジンは先程までのやり取りを思い出しながら呟く。暗黒大陸の動物達は念能力を扱うと言われていたが、彼らは間違いなく念能力を使いこなしていた。

タイマンならばジンも容易に対処出来るレベルだが、向こうの草食動物達がああも待ち構えられていてはジンでも対応しきれなかったのである。

 

「まだ入口だから獣にしては弱い方さ」

 

イストは何ともないように言う。事実イストはこの草食動物達が襲いかかっても威圧だけで容易く撤退させた。それだけの実力差があるのである。

 

「まだ工夫次第でどうとでもなるレベルだ。個人でどうにもないレベルだと……」

 

ズシン、ズシン

 

地面が大きく揺れる音がする。遥か遠くから聞こえるのに振動が地震のように揺らしてくるのだ。

 

「この感じだと焚き火に釣られて向かって来てるな。その木に登って見てみろ」

「分かった」

 

ジンは木の天辺まで登って前方を見て迫ってくるものに唖然とする。

人間界でいう一つの要塞を背負う上半身が金属のような光沢を持つ鎧で覆われている巨大サイズのサイがいた。

 

「コイツは要犀だな。コイツレベルになるとネテロの百式観音位ではまともにダメージを与えられなくなる。まあ他にもいくつかいるが"狼人の村"まではもう少し先だ」

 

イストの言葉にジンは木の天辺から飛び降りて何事もなく着地する。

 

「こんな獣達を狩るとか狼人ってのは強いんだな」

「そうだな。草食の森以外でも狩りをしてるが、少なくとも人間界の念能力者達よりは強いさ」

「因みにイストはあの要犀には?」

「余裕で倒せるな」

 

イストは上空へ向けて包丁を振るう。

 

シュァ!スパパパパ

 

包丁から斬撃が放たれ、数キロ先の要犀がさいの目切りで細かいブロック状にされる。

 

「あのサイズなら狼人の村でも良い土産になる。回収に行くよ、ジン」

 

そしてジンはイストへジト目を向ける。

 

「数キロ先まで届く"さいの目切り"とかお前の包丁術は変態だな……」

「お前が言うな」

 

先程とは異なりイストがジンに変態だと言われた後、二人はさいの目サイズに分解された要犀を回収する為に向かった。




現実の草食動物「(肉食動物を)駆逐してやる…!」

他にも草食動物だけでなく人食い植物の群れとかもあったけど、草食の森での道中が長引くのでカット。
スターダスト・ヒルにはイストのフルコースの一つがあり、一章のメインがそちらになるので、それ以外は基本サクサク行きます。


【草食の森の生物や用語】
草食の森
…肉食動物を駆逐した殺意にまみれた草食動物達が住まう魔境。森に入れば純粋な殺意のこもった攻撃で温かく出迎えてくれるフレンドリーな草食動物達で溢れている。またの名を殺し合いともいう……
草食動物達はいずれも熟練の念能力者達であり、念能力者であっても単独で入るのは自殺行為。

草食の誓い
…本編で明かされなかった設定。とある草食動物の死者の念でこの森にいる草食動物達が対象。効果は草食動物限定だが種族を超えてアイコンタクトで意思疎通と連携を取れるという能力。
そのせいで草食動物達が徒党を組んで侵入者達を撃退してくる。
外敵は主に迷い込んでくる肉食動物やここを狩場としている狼人(ウルフロイド)が該当する。

ロケット兎
…硬で頭部を強化してロケット頭突きをしてくる。しかも20〜30近くの群れで襲ってくる。単発が効かないと判断すると相互協力型(ジョイントタイプ)で集まり出して一つの砲弾となって火力と弾速を上げて突っ込んでくる。

朧狸
…凝で見破れない幻術の罠を仕掛けてくる。
幻狐
…円で見破れない罠を仕掛けてくる。

スケープゴート
…殺意にまみれた羊。体毛を自在に操り攻撃してくる。しかも防御時には体毛を緩衝材として打撃ダメージを防いでくる。

アーミーリス
…軍服を来たリス達。マシンガンからドングリの弾丸を放ち、松ぼっくりから眠りスギという睡眠ガスを放ってくる。

眠りスギ
…草食の森にある睡眠作用のある花粉。可燃性があるので火を放つと粉塵爆発を起こす。

火の鳥
…炎を纏って熱風を放ってくる鳥。本編ではイストの殺気ですぐ撤退したが、もしあのまま続けてたら全身で炎を纏って突っ込んでくる予定だった。

要犀
…詳しくはトリコのグルメモンスターを調べると分かります。基本的には要塞サイズの巨大なサイ。しかも上半身が金属のような光沢を持つ鎧で覆われているので頑丈。百式観音の打撃とか普通に効かない。
というかグルメモンスターは捕獲レベルが百を超えてくると国家レベルの軍事兵器で傷一つ付かないレベルのモンスターがいるのでネテロでもモンスター次第で普通に詰みます。
けどイストの前では大して関係なかった……


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狼人の村

狼から知的生命体になった種族のお話。

原作がどうかは知らないけど今作では色んな動物が知的生命体になって亜人種が産まれた設定です。

※活動報告の方でオリ生物の募集やってるので、興味ある方はそちらも見て頂けると幸いです。



現在イストとジンは狼人(ウルフロイド)の村へと向かっていた。その道中で亜人種についての説明をジンは受けていた。

 

暗黒大陸には基本的に人間が存在しないと言われている。しかしそれは偽りである。

ヘルベルを含めた五大厄災達は明らかに知的生命体へ特化した能力を備えており、彼らがその力を進化の過程で身に着けるには大きな外敵が必要なのである。

 

「その外敵が亜人種ってわけなのか……」

「そうだ。人間がいない以上は猿以外が知的生命体になってもおかしくない。今から向かう狼人(ウルフロイド)は猿と同じように狼が知的生命体に進化したってわけだ」

「まあ猿が進化した位なんだからそれ以外が知的生命体に進化するのもあり得ない話じゃないか……」

 

ジンはイストの説明に納得する。理論上は猿が進化したというならば猿以外の生物が知的生命体になるというのは不可能ではない。それが人間達で解明できるかは別の話だが……

 

「因みに今回は立ち寄らないけど俺達とは違う猿から進化した猿の楽園とかも一応ある。モンキーレストランと言って50億頭近い猿が跋扈する大陸だ」

「凄いのは分かるが、それを聞くと猿が追いやられた風に聞こえるんだが……」

「追いやられたというよりはそこにあるスープを独占したくて移動したというのが正解だな」

「スープ?」

「そうだ。通称『表裏一体の雫』と呼ばれる至高のスープだ。大陸から湧き出るんだが、現在はそこを統べる猿人の巫女が管理している」

「『表裏一体の雫』かぁ…ぜひ飲んでみたいな」

「飲んだらビックリするだろうよ……別の意味でもな……」

 

最後は小声で言うイスト。性転換するとか言ったら飲むのを躊躇しそうだと思ったので言うのは辞めたのである。

後日ジンが飲んで弟子のカイトより先に女の子になっちゃった現象が起こるのは余談である…………

 

 

「言っておくが暗黒大陸で通貨とか使えないから基本的には物々交換になるぞ」

「だからこれだけの食材を集めてきたってわけだな」

 

イストとジンは賽の目切りした要犀以外にも草食の森で様々な草食動物を狩って袋詰めしていた。今から向かう先で物々交換をする為に。

 

「そろそろ見えて来たな」

 

イストが言うように村を囲う壁と入口があった。そして入口には狼の頭部を持つ右眼に傷跡を持つ狼人がおり手には長槍を肩に掛けていた。その狼人はジンからしても凄まじいオーラを纏っていた。

 

「このオーラ量は会長(ジジイ)並みか……」

 

亜人種は基本的には人間の上位互換、イストが言っていた通り、入口の門番が既にハンター協会のトップ並みの戦闘力を保有している時点で強さの証明になった。

そして狼人はイストに気付くと頭を下げてきた。

 

「む、これはイスト殿。お久しぶりです」

「久し振りだねローグ。お土産と長老に会いたいんだけどいるかな」

「はい、長老なら屋敷にいらっしゃいます」

 

ローグと呼ばれた狼人はイストへ敬語で話す。そしてローグはイストと一緒に来ていたジンへ視線を向ける。

 

「そちらの方は?」

「ジン・フリークスだ。よろしく頼む」

「私はローグ。この村の戦士だ。こちらこそよろしく頼む」

 

ローグは手を差し出して来たのでジンも握手する。ローグの手は狼特有の体毛こそあるものの人間と同じく五本指であり人間に進化したといっても信じられる変化であった。

 

そして村へと入ると子供から大人まで数多くの狼人達が人間のように生活していた。

お店を開いて商売をしてたり、子供達で遊び回ったり、雌狼人らしき主婦の女物の服を来て井戸端会議をしてたりと頭部が狼なのを除けば人間と変わらない。

だが人間界の人達と唯一違うのは……

 

「全員が纏をしているのか……」

「まあ人間界と違って野生の生物ですら念能力を使ってるから念を扱えないとなす術なく殺されるってわけさ。教育機関でも念能力の授業まである位だ」

「授業で念能力を教わるなんて人間界では信じられねぇな」

「ジン、却下されたけど一度念能力の学校作ろうとしてたんだろ?」

「ああ、まあハンター協会から念の秘匿性で説教された挙げ句却下されたけどな」

「ハッハッハ、人間界では念を教わるのが義務教育で無いのですね。私達の文化では信じられませんな」

 

ローグはジンが拗ねるように言った言葉に笑って答える。厳つい見た目に対してフレンドリーな男である。

 

「まあ我々としてはイスト殿のような化け物と遭遇したくは無いので人間界には行くつもりはありませんが……」

「イスト、ここでも化け物扱いされてるぞ」

「ローグ、言っとくが連れのジンは人間界で五本指に入る念能力使いだ。メモリ制限が無い上に天才だから文字通り何でもやって来る化け物だ」

「ふむ、化け物の連れは化け物というわけですな」

「おまっ!?何てことを言いやがる!」

「事実だろうが、因みにこのローグは念槍流という念を使った槍術の師範代。狼人の中でも五本指に入る実力者だ」

「お二人と比べると私は若輩者ですな」

「若輩者はね、自分で投げた槍の上に乗って空飛んだり、落雷を受けて地面で刺した槍で電流流したりは出来ないよローグ」

「こいつも化け物じゃねぇか!」

 

自分は化け物じゃなくて他の奴こそ化け物だという議論を三人でしながら長老の住む家へ辿り着く。

そうして現れたのは髭を生やした狼人の村長だった。

 

「よくいらっしゃいましたイスト殿。そして人間の方よどうぞ召し上がりください」

 

長老の狼人はそう言ってご馳走を振る舞う。そこで目を引くのは巨大なベーコンだった。

 

「このベーコンは?」

「こちらはベーコンの葉ですね」

「植物なのか!?」

「ええ、植物栽培でベーコンを取れる珍しい植物です」

 

ジンはベーコンの葉を食べる。

 

「本当にベーコンだ。グルメ食材は本当に常識外だ……」

「まあその分美味いから良いじゃないか」

「左様。イスト殿から施されたグルメ食材は我が狼人達でも人気が高く重宝しております」

「良いのさ。俺としてはグルメ食材はもっと増えて欲しくて積極的に渡している位だ」

 

イスト自身はグルメ食材を人間界でも広めたいのだが、確実に生態系が乱れるので、仕方なく自分が買い取った土地でのみ、栽培しており鍋山だったり、アイスヘルと言った環境になっている。

 

食事を済ませた後に長老から相談が持ちかけられた。

 

 

「実は狼人の村の周辺でキメラアントが繁殖しておりましてな」

「キメラアント程度なら貴方達でも撃退出来るだろう?」

「それがキメラアントの巣が同時に発生し、いずれも王と直属護衛軍が生まれてしまったのです」

「それは珍しいな……」

「王や直属護衛軍が生まれるのは珍しいのか?」

 

イストの感心した言葉にジンは尋ねる。キメラアントの生態は本来女王蟻が直属護衛軍と王を産むのが既定路線だからだ。

 

「キメラアントは暗黒大陸において食物連鎖では下層に位置する。というより周りの生物で強い獣が多いせいで餌の確保すら不安定なのが現状なのさ」

「確かに草食の森の獣とかを見ると餌を取りに行くのに対してのリスクが多いな」

 

暗黒大陸でキメラアントの女王蟻は王を産めないで滅ぼされるケースが多い。

理由は二つあり、一つ目は周りの生物が強過ぎるせいで安定した餌の供給が難しいからである。

獣のほぼ全てが念能力者なので栄養価こそ高いのだが、逆に言えば兵隊蟻を放っても全滅させられたりと返り討ちにあうケースも多々ある。

数の多い兵隊蟻が安定した餌を集められないせいで女王蟻へ栄養が行き渡らないケースが多く、直属護衛軍ならともかく王を産むのにはかなりの時間を要する。

 

そしてもう一つは直属護衛軍はおろか、王すらも容易く狩ってしまう獣や亜人種達が存在する。餌を取りに行かせたら直属護衛軍や王より強い敵に存在を知られてしまい、キメラアント自体が餌になってしまうことだって多々あるのである。

 

「十ある内の7つは壊滅させましたが、負傷者も出ている為に残りの3つは現在は膠着状態になっているのです」

「キメラアントとはいえ、籠城戦みたいなものだから万全を期すのは良いことさ」

「私は4日連続で王級を四体仕留めるのにオーラを大分消耗してしまいまして、現在療養期間中なのです」

「まあローグならそれ位は出来るな」

 

イストは納得する。この狼人はこの村最強候補の一人だ。今の話だと一日1拠点ペースでキメラアントの巣をローグの部隊が壊滅したということになる。

 

「イスト殿には我々が討伐予定の3つの巣の内、一つを担当してもらいたいのです」

「まあキメラアント位なら大した相手じゃないし、良いだろう」

「ありがとうございます」

「だけど担当地区の狼人は撤退させてくれ、多分皆殺しにするから避難出来てないと巻き添えになるから」

「頼もしいですな。分かりました、現在偵察中の部隊を引かせましょう」

 

 

 

 

数時間後、イスト達はキメラアントの巣へと向かうことになった。

 

「安請け合いして良かったのか?キメラアントとはいえ数は多いんだろ」

「大丈夫、袋に待機してるヘルちゃんいるから」

「ああ、それでか……頼もしいというべきか、恐ろしいというべきか……」

「今回は頼りになるだろ?キメラアントは確実に根絶やしになるし、まあ最悪俺が変わりにグルメ細胞の悪魔での威圧でキメラアント達を絶命させても良いんだけどな」

「ここに五大厄災より化け物がいたよ……」

 

ドン引きするジン。だがヘルベルと違ってイストは知性もあるが、止められる手段は人間界には存在しないのである。

 

「ところで狼人は武器使いが多いんだな」

「そりゃあ拳に硬するより周で刃先を強化した方が破壊力が増すからな」

「刃先?」

「そう。念能力者で剣全体に硬使ってる奴がいるが、実は斬れ味や貫通力を上げたいなら刃先へ集中させた方が威力が増す」

「確かにオーラを集中させた方が良いのは分かるが武器の耐久性の脆さや難易度が増すな。それを狼人は容易くやってのけてるってわけか……」

「人間界と違って仮想敵が堅や凝などで防御してくる念能力者だから少しでも火力を上げる必要性があるってわけだ」

「明らかに人間界より念能力が進歩しているな」

「人間界の科学技術の利便性には勝てないけどな。念能力だとどうしても均一化が難しいってのがあるしな」

 

公共施設や公共交通機関などと言ったものの普及率では大きく劣るのだ。そういう意味では人間に亜人種の村や国は住みにくいと言える。まあ中には人間界よりも発展している国もあるのだが……

 

そうしてイスト達はキメラアントの巣に辿り着いた。




因みにネフェルピトーだらけの猫人の村とかもあったりする。
きっと探せば「THIS WAY」と出会い頭にボ!をしてくるゴンさんの村とかもあるだろうけど本編では特に出たりはしません。

ローグ
…右眼に傷跡がある長槍を扱う狼人。ジンがネテロ並みと言ったオーラ量と槍術を極めた達人。その槍の貫通力はキメラアントの王の外殻すら容易く貫通する。
コイツだけで七つある内の4つの王を撃退したという化け物。

次回、ヘルちゃんの害虫駆除


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ヘルちゃんの害虫駆除【閲覧注意】

ヘルちゃんことヘルベルの恐ろしさが分かるお話。

※ベルベルによって殺意衝動が撒き散らされてるので残酷描写やグロテスクな描写があるので苦手な人はブラウザバック推奨


五大厄災の一つ、

殺意を伝染させる魔物 双尾の蛇ヘルベル。

その脅威を知るのはV5の下、非合法で研究してる連中位だろう。

何故ならヘルベルと遭遇した部隊は文字通り一匹の蛇によってほぼ全滅させられているからである。

ヘルベルの情報を知って念能力者達は安易に操作系の能力で殺意を撒くのだろうと言う。

ならば操作系は早い者勝ちなのだから、自身を事前に操作していれば対策出来ると言った者達は容易にヘルベルの餌食にあった。

他にも精神崩壊している廃人やら念獣ならと試したが例外なくヘルベルの餌食にあっている。

そしてオチマ連邦が派遣した遠征部隊で99%が餌食にあって帰還者は僅か11名と記載があるがそれには語弊がある。

何故なら帰還者達はほぼ全員が人間不信に陥ったとされる。

イストは言う。

 

ヘルベルの本当に恐ろしいのは殺意衝動を感染させることじゃないんだよ……

 

その意味をジンはこのキメラアントの巣で理解させられることになる……

 

 

 

時は少し遡りキメラアントの巣へ着く前に狼人による仮設テントへ到着したイストとジン。そこでキメラアントと最前線で対峙していた狼人の青年と出会っていた。

 

「久しぶりだな。イストさん、こんな情けない姿で再会するのは許してくれ」

「久しぶりだねローウェル。君達で言う名誉の負傷なんだろう。気にすることないさ」

「負傷に名誉もクソもあるかよ。仲間を守れないプライドなんざいらねぇよ」

 

黒い長髪に痩せ身の青年であるローウェルは包帯で接合した右腕を固定していた。彼は狼人の中でもより人間に近い見た目であり、人間との違いは頭に狼の耳が付いているだけである。付け耳だと言われれば信じるレベルで造形が人間に似通っていた。

先日あったキメラアントへの奇襲で対峙したキメラアントの王と対峙した際にお互いの利き腕が切断されたらしい。

 

「戦況は優位に進めて俺も追い詰めたんだがアイツ、直属護衛軍の仲間を喰いやがったんだ……」

 

ローウェルは悔しそうに言う。同胞を重んじるローウェルとして同胞を喰らうなど万死に値することだろう。

 

そして二体の直属護衛軍を喰らってパワーアップした王はローウェルと実力が拮抗してお互いの利き腕が吹き飛ぶ激闘が繰り広げられたらしい。

 

「利き腕が切断されちまった以上、情けないことに撤退せざるを得なかったんだ」

 

耳がショボンと項垂れているローウェルだが、それに待ったを掛けたのがローウェル隊副隊長であるピンク髪の狼人の女性だった。

 

「それは違います!隊長が万全ならば、確実に撃退してました!それまでに王を三体討伐して消耗してなければ勝っていたのは隊長です!」

「止せ、撤退したのは事実だ。流石にローグのおっさんと比べると俺はまだまだ未熟ってことだ」

「隊長……」

 

副隊長はローウェルを悲しげに見る。ローウェルが撤退したのは、自身が負ける可能性ではなく仲間が犠牲になるのを防ぐ為であった。イストは切断されたという右腕を見るが包帯で固定されているのを見るに無事にくっつけることが可能な治癒能力者がいると理解する。

 

「腕をくっつけたのは君か?」

「はい、私は支援系能力者なのでこれくらいしか出来ませんが……」

「何言ってるんだよ。お前さんが俺の腕をくっ付けてくれなきゃ今頃は引退すらしていた。俺は寧ろ感謝しているよ」

「隊長……」

 

ポンポンと副隊長の頭を撫でるローウェルと嬉しそうにする副隊長。イストやジンをそっちのけでイチャついてるとんでもない奴らである。

 

「ローウェル達はともかく撤退してくれ、今回はヘルちゃんが害虫駆除してキメラアントを根絶やしにする予定だから離れてないと巻き添えくらうよ」

「シャー♪」

 

イストの首に巻き付くヘルベルことヘルちゃんが元気に鳴く。

 

「ヘルベル巻き付けれるまで手懐けれるのはアンタ位だろうよ」

 

呆れるローウェル。狼人達にもヘルベルの恐ろしさは伝わっている。知性体にとっての天敵とも言える悍ましい惨劇を引き起こす生物としてである。

 

「まあ害虫駆除するまで辛抱してくれローウェル。すぐ終わるから」

 

 

その数時間後に狼人が撤退する。

 

 

丘の上でイストはヘルちゃんを撫でながら言う。

 

「殺っちゃって良いよヘルちゃん」

「シャー」

 

ヘルちゃんは鳴くと同時に禍々しい黒いオーラが溢れ出す。そして前方へ向けて広範囲の黒い円がキメラアントの巣へ襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

ヘルベルがオーラを放つ数刻前キメラアントの巣では王が治療を受けていた。

 

「ぐぅぅ…おのれ、狼人め…」

「王ご自愛下さい」

 

キメラアントの王は忌々しいというかのように呟く。

最後の直属護衛軍、鷲型のキメラアントであるホークスは王の切断された右腕を師団長の1人の念能力で接合させながら王を宥める。

 

何せ今キメラアントを殲滅しようとしているのは狼人最強の一角と言われるローウェル率いる部隊である。

王が直属護衛軍2匹を喰らってパワーアップしても尚、互角という怪物であり、お互いが利き腕が切断されたことで痛み分けの形で停戦になったに過ぎない。キメラアントと違って狼人は集落が他にもあり、他からローウェル級の増援がされでもすれば滅ぼされるのは容易いのである。

 

「腕が治り次第、狼人の村へ打って出る。ついて来い、ホークス!」

「ハッ、喜んで!」

 

ホークスは敬礼しながら言う。

 

ズアッ!

 

だがその瞬間、禍々しいオーラが巣を飲み込んでいく。

 

「これは……!」

 

キメラアントの巣は殺意の波動に飲み込まれる………

 

 

 

 

 

キメラアントの偵察部隊は狼人に備える為に偵察をしており、師団長へ合流していた。

 

「どうだ。敵はいたか?」

「大丈夫だ。異状なしだ」

 

兵隊蟻は師団長に報告する。

 

「気を抜くなよ、何時狼人が襲ってくるか、分からないからな」

「ああ、そうだな。何処に敵が潜んでいるか分からないもんな」

 

師団長は背を向ける。

 

ザシュ!

 

師団長の頸が地面に落ちる。

 

「え……」

「敵を警戒しないとな」

 

頸を刎ねた兵隊蟻は表情一つ変えることなく淡々と実行した。まるで頸を刎ねる行為が殺害行為だと認識してないかのように……

 

こうしてキメラアント同士の殺し合いが幕を開けるのであった……

 

 

「ガフッ!どうして……」

「報告します!こちら異常ありません!」

グシャ!

 

兵隊蟻は奇襲で重症を負わせた兵隊蟻を踏みつけながら報告をする。

 

「どうじて……味方を……殺ずんだよぉ!」

「俺達は一蓮托生の仲間だ!お互い生きて頑張ろうぜ」

 

血反吐を吐きながら悲鳴を上げる兵隊蟻へ笑顔で身体へ刃物を突き刺しながら言う師団長。

 

「警戒を怠るなよ」

ザシュ!

 

師団長は集まった兵隊蟻達に刃物を振るって切り裂く。

 

「了解」

「了解」

「了解」

ズブッ!ズブッ!ズブッ!

 

兵隊蟻は師団長に返事をしながら、三体は一斉に刃物を師団長目掛けて突き刺した。

 

「戦いを行うにはまずは食事が大事だ!遠慮せずに喰うんだぞ」

「はい!」

「腹一杯食べるぞぉ!」

 

笑顔で語り合いながら、平然と味方の兵隊蟻同士で共食いを始める連中まで出現する。

 

 

兵隊蟻、師団長問わず全員が平然と殺害行為を行う。まるで息をするかのように殺し合いをすることで数を減らしていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「酷えなこれは……」

 

ジンはその光景にドン引きする。何せ目の前に広がるのは夥しい数のキメラアントの兵隊蟻達の死骸である。

そしてジンは運良く生き残ったごく少数の兵隊蟻達を目撃する。

 

ガクガクガクガク

 

一匹は敵が来ているのにも関わらず身体を丸めて怯えている狐の兵隊蟻

 

「アハハ、楽しいなぁ、また遊びたいなぁ」

 

一匹は上の空で幻覚を見ることで現実逃避する蜘蛛の兵隊蟻

 

「ひぃぃぃぃ」

 

ジンやイストを見て怯えるだけで無抵抗の兵隊蟻も沢山いた。

 

明らかに目の前で起こった同族による殺し合いによって心が折れていた。

 

「これがヘルベルの恐ろしさか」

「そう。殺意の伝染と聞いて思うのは暴走と連想する連中はいるけど、実は違う。感染者は自覚しないんだよ」

 

イストは首に巻き付いたヘルちゃんを撫でながら言う。ヘルちゃんはシャーと気持ちよさそうに目を細めていた。

 

「目に見える恐怖より目に見えない恐怖の方が恐ろしいとはよく言ったもんだな……」

 

ヘルベルの恐ろしい点は二つだろう。

一つ目は殺意の伝染と言われているが、感染者は全く思考できないわけではなく、殺害行為がいけないことだと自覚出来なくなるのである。

だからオーラを見たとしても揺らぎすらしないし、感情が変動することすら無い。

快楽殺人者のように感情が高ぶることもないし、仲間を殺して悲しみを抱くことすら無いのだ。

彼らは殺気を放つことなく、殺しを平然と行うようになるのである。挨拶や歯磨きをするかのように当たり前のように無意識に殺しを行うのだ。

 

二つ目はその光景を見た連中である。兵隊蟻が良い例で人間不信になるのは当然だろう。何せ同族殺しや共食いを平然と行うなどまともな思考があれば普通じゃないと考えるのが当然である。

常識があるほどにヘルベル感染者を見るのは地獄絵図を見るのと同義なのだ。

 

 

そして王の間まで辿り着くと蟻の王と鷲のキメラアントが相討ちになって絶命していた。蟻の王は全身に切り傷と手足が捩じ切られた痕があり、鷲の羽による剣が切断された頭部を貫通しており、鷲のキメラアントは頸に捻られた痕があり頭部が亡くなっていた。

 

「この感じだと鷲の直属護衛軍と殺し合いをして傷を負い、敵対者がいなくなって自傷行為に走ったと言う感じか……」

「うぇ…敵対者がいなくなったら自傷まで始めるってのか?」

「そうだな。流石に鷲のキメラアントにより王の身体に傷痕こそあるが、殺せる程では無いだろう。恐らく普段から共食いとかしてるせいで自身の手足を千切って食べ出し、最終的には自分で自分の頸を抉ったとかいう感じだろうな…この感じだと……」

「やっぱ五大厄災は隔離しなきゃヤバいってのが分かった」

 

ジンは改めて五大厄災の恐ろしさを思い知ったのであった。

 




ヘルベル
…本編での殺意の伝染はこちらにしております。
【条件】
①黒い円の中に入った者へ強制的に殺意衝動を植え付ける。尚操作系念能力とはベクトルが異なるので操作系で操られてようが関係なく伝染する。黒い円の範囲はピトー並みな上に、ベルベル自身は対象指定まで出来るというという敵だけ狂わせることが出来る。
②血や体液を通して殺意衝動が伝染する。
③殺意衝動を持つ者を殺してしまった場合は殺意衝動が殺した相手に乗り移ってしまう。つまり殺してしまうのは悪手。
【効果】
理性を残しながら殺意衝動のリミッターが外れる。イメージで言うと本能的に暴れるのではなく、冷静なまま周囲のいる者をどうしたら殺せるかと思考し、躊躇いなく実行するようになる。
普通に殺気を放つことなく殺害行為を繰り返すクレイジーサイコパスが量産される。
平然と虐殺行為を行い出すので目の前で見てたら人間不信に陥るレベルという感じです。



ローウェル
…狼人最強格の1人で人間に近い外見の亜人種。元ネタはテイルズで黒髪ロングで有名なあの人。ほぼ人間の外見なので頭に狼耳を付けてる感じである。仲間想いだが戦場だろうとピンク髪の副隊長とイチャつく野郎である。
因みに本編で記載したように万全なら直属護衛軍二体喰らったメルエムならタイマンで勝てるが、その前に3日間連続で王討伐三連戦をしたせいで、オーラを消耗していた。


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狼人の村②

本当は明日投稿予定だったけど、早めに出来たので投稿。

狼人の生態についてちょっと触れます。


パン!パン!パシッ!パシッ!

 

拳と木刀が交差する。キメラアントの巣を壊滅させた数日後、現在狼人の村でジンとローウェルによる組手が行われていた。

 

ローウェルが接合した腕のリハビリがてらジンと手合わせしたいと言って了承した形である。

 

木刀をジャグリングのように空中で回転させながら振るうローウェルに対してジンは両手のオーラを変化させて戦っていた。

 

ジンは右手のオーラを鉤爪状に変化させて振るうが、ローウェルも木刀で受け流す。

だがジンは鉤爪を剣で受け太刀した瞬間に形状変化させて爪のオーラが剣に巻き付き、刃を覆って無力化する。

そのままもう片方の拳を振るうが、ローウェルも木刀の柄を起点に鉄棒の逆上がりの様に回転を行うことで拳を躱しながら回し蹴りを頭部へ叩き込もうとする。

ジンは右手のオーラを解除して回し蹴りを腕でガードすると後退する。

 

「イストが言ってた通りにオーラの扱い方が変幻自在だなアンタ」

「お前さんも武器の扱い方が巧いな。ここまで太刀筋が読みにくいのは久しぶりだ」

 

そう言いながら手を上下から相手に掌を向けて構えるジン。

 

龍頭戯画(ドラゴンヘッド)

 

ジンはオーラを東洋の龍に形状変化させる。

 

「ん、これは……」

 

イストはその技がかつて自分への刺客として放たれた暗殺一家の技じゃなかったっけと思い出す。

 

牙突(ドラゴンランス)

 

ジンはローウェルへ向けて龍の頭部を伸ばして攻撃した。

 

ローウェルは迫る牙突を躱すが、ジンは龍を旋回させ追いかけさせる。

そしてもう一度ローウェルが龍を躱そうとした瞬間に龍の頭部を四体に分裂させて上下左右から攻撃する。

 

「守護方陣」

 

ローウェルは木刀を地面に突き刺して発した周囲を円で囲う様に吹き出したオーラで迫り来る四体の龍を全て弾き消滅させた。

 

 

 

 

 

組手が一通り終わった後、イスト、ジン、ローウェルが昼食を取っていた。

イストは草食の森にいた100m級のガーリッ牛がいたので、ノッキングで仕留めた。

その後、広場で巨大な鉄板を出して狼人全員分のガーリッ牛のステーキを調理して配ったのである。

 

「ジンが使った技、確かゾルディック家の爺さんが使ってた技じゃなかったっけ?」

「ああ、以前襲われた時に受けたんだ。物理系の能力は一回くらうと大体真似出来るんだよ」

「チートじゃねぇか……ジン、やっぱ化け物だわ…」

「ゾルディック家をワンパンしたお前が言うな」

 

人間界にいるゼノからすれば、他人の技を勝手にコピーした挙げ句応用技まで作り出すジンもゾルディックの歴代当主をワンパンで返り討ちにするイストも化け物と思われているのは余談である。

因みに既に死んだ歴代当主の1人がナニカにイストを殺してと願ったらしいが、その願いは私の力を超えていると断られたという事実はゾルディック家の記録に残されておらずマハ・ゾルディックが知るのみである。

 

 

イスト達が会話していた傍らで今日も元気に遊び回る狼人の子供達、石を投げ合う姿も見受けられる。ある一点を除けば微笑ましい光景である。

 

「イスト、俺の目の錯覚じゃなければあの子供達大人サイズの岩を投げ合ってないか?」

「確かイ○ツブテ合戦とか言うらしい。2m級の岩を投げ合うとか普通おかしいよな」

 

2m級の岩がブォンと音が鳴る程の豪速球が狼人の子供に激突するが、潰れるどころか岩がより硬いものに激突したかのように爆散する。そして激突したが無傷な上に笑顔な狼人の子供はお返しに同じく2m級の岩を片手で掴んで投げ返していた。

 

「普通あんな大岩が激突したら人間が吹き飛ぶだろう。やっぱ狼人おかしいわ」

「そうか、俺も子供の頃は小石投げは良くやってたけどな」

 

ジンの言葉にキョトンとした表情で言うローウェル。彼等にとっては2m級サイズは小石という解釈らしい。

他にも大玉転がしで使う様なボールで木のラケットでテニスをやる子供達や、人間界サイズのバスケットボールを三つ使ってドリブルを行うというちょっと訳の分からないスポーツをやっていた。

 

「これ念能力が広まったせいでスポーツや遊びのレベルが跳ね上がってるな」

「まあ念能力使えば漫画の技とか簡単に再現出来るせいってのもあるだろう」

 

テニスでは大玉サイズがポールの外から飛んでくるという魔球を狼人の子供は容易く行ってくる。普通あのサイズの大玉が不規則で飛んできたら恐怖ものなのに狼人の子供達は笑顔で恐怖は一切ないらしい。

少なくともジンやイストは幼少期にあんな桁外れなスポーツをやった覚えは無い。まあコイツらはベクトルこそ違うがそれ以上のことを幼少期にやっているのは余談である。

 

「亜人が人間の上位互換と言ってたのも納得だな。あんな大岩投げあったりとかこっちじゃやらねぇしな」

「そうそう。俺やジンも溶岩水泳とか深海ダイビングとかやってた位だ」

「いやアンタら充分おかしいよ。何で生身で溶岩と深海泳げるんだよ……」

 

ドン引きするローウェル。改めてローウェルは絶対人間界に行かないと決意するのだが、そんなイカれた奴等はイストとジン、次点で人間界にいる副料理長位である。

 

「ジン、話変わるけど十老頭って知ってるか?」

「確かマフィアンコミュニティを取り仕切る十人だったか?」

「つい最近大幅な人事改革があったらしく、武闘派老人に構成員を変えたらしい」

「何か会長(ジジイ)にもオファーが来たらしいが蹴ったって聞いたな」

「確か地震を操る白い髭の爺さんやら仮面を被って果実を手掴みで喰らうシラットの爺さんやら『おしゃぶりの鬼』とか言われてる杖を持った好々爺とかが新しくなったんだと。ネテロ以外にもゼノやマハにもオファーきたらしいがゾルディック家からは断られたと十老頭になった1人に愚痴られたよ」

「ふ〜ん」

 

ジンはマフィアンコミュニティとは関わり合いが無いのでそうなんだなという認識しか無かった。とばっちりを受けるのは後にマフィアンコミュニティに戦争をふっかける幻影旅団や安易に十老頭抹殺依頼を受けるイルミ含めたゾルディック家なのだが、本編とは関係ないので置いておく。

 

「ところでスターダスト・ヒルまでは後どれくらいなんだ?」

「まずは砂海を超えないといけないな。そこにあるグルメピラミッドでメロウコーラを回収しつつ、雨の大陸へ向かう」

「メロウコーラ?」

「そう。サラマンダースフィンクスっていうグルメモンスターから取れる世界一美味と言われるコーラだ」

「メロウコーラを取るならピラミッドの王様と謁見する必要があるな」

「ローウェルの言う通り、グルメピラミッドは一つの国家でそこのファラオという王職に着いた権力者と会う必要がある」

 

グルメピラミッドでも至宝とされるメロウコーラを取るにはそれに値する食材を渡す必要があるのだ。

ファラオを名乗るだけあってその亜人は砂海全域のことを把握出来るらしく、砂海で謁見せず無断で取りに行こうものならファラオが侵入者とみなして刺客を放ってくるのだ。

 

「まあそれに関してはコンソメマグマやビリオンバードの卵を用意しているから交渉自体は問題ないよ」

「ビリオンバードの卵か……確かにあれは美味かったな……」

 

ジンは思い出す。ビリオンバードとは億年食える鳥と呼ばれる程に繁殖力が高い上に栄養価も高いという食材だ。

イストはとある紛争地帯の食糧難を解決する為にビリオンバードを使ったのである。

唯一の欠点が味の不味さなのだが、イストは自身のフルコースのドリンクにする程ビリオンバードの調理法には長けており、人間界の料理以上の美味さまで昇華させていた。

そして何と言ってもビリオンバードへの感謝から産まれる輝く卵こそがイストがフルコースのドリンクにする程の美味を持つ。

イストがかつてコンビを組んでいた相手とビリオンバードをどうしたら美味しく食べれるかを研究してた過程で見つけた副産物らしいがジンにとってはあれ以上のドリンクは無いだろうと思える体験をした。

 

そうして数日後、イストとジンは砂海へ向かうのであった。




Q:何故龍頭戯画(ドラゴンヘッド)?
A:以前ゼノ・ゾルディックに狙われた設定。ジンの経歴不明だから彼専用の発が作れない以上、かつて戦った強敵の技を使いこなすという感じです。
しかも勝手に応用技まで作り出すのでジンが本作でチートと呼ばれる所以とかだったりする。
本編では劣化になるから絶対やらないけど百式観音とかも出来る。祈りの動作速度だけが真似出来ねぇとぼやいてたとか……

Q:え、物理系?原作準拠なら打撃系じゃない?
A:本作では打撃系に関わらず物理系ならガードしてでも受ければコツを掴めると曲解しております。まあ個人的にはジンがここまで出来ても不思議じゃないと思う。

因みに十老頭の件は、この暗黒大陸編書く前に自分が考えてたボツネタの『十老頭は化け物か』という話で書いてたのを抜粋。
自分が読んでた漫画の強いジジイばかり構成員にしてました。暗黒大陸編書いたので書く予定はありません(念押し)
まあネテロやゼノ位のレベルに弱体化しているので幻影旅団ならきっと勝てるでしょう平気平気(他人事)
因みに本作最強格であるアカシアの三弟子は含まれておりません。
この作品において八王とアカシアの三弟子は暗黒大陸上位層になってるので……

イストのかつて組んでたコンビはお察し。尚、原作と違ってドンの力まで十全に使うので三虎どころかアカシアとまで渡り合える模様。


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砂海

本当は明日の朝1に投稿予定だったけど、今日発売のラチェ&クラPS5が買えたので投稿。予約してなかったから無事に買えて安堵してます。

アンケート追加、前に言ったように十老頭と幻影旅団の全面戦争は全カットの流れになるので、オークションの裏で文字通り命懸けの死闘を繰り広げてくれるでしょう。ネテロやゼノレベルに弱体化する制限ありきで勝てるか不明なのでアンケート結果を二章に反映する予定です。

一章終わりまでようやく半分まで来たぜ。個人的に早く副料理長のハンター試験を書きたい……
まあ流星雨のパフェを書くまで一章終わるまで二章に進めませんが……

実は一章の謎として本作の捏造として【ドン=フリークスが新大陸紀行の西がまだ出版されてない理由】のヒントをここで出す予定でしたが、四千文字超えたので次回以降に持ち越しになりました。

ということで砂海でのお話です。


「青い空!白い雲!絶好の旅日和だなジン!」

「そうだな。砂漠であることを除けばの話だがな……」

 

良い天候なのに対して一面に広大な砂漠が広がっている為にぶち壊しでもあった。砂漠超えなんて普通は水分補給とか問題点が多いのでどっちかというと苦行である。

 

「近道なんだろうが、砂漠を迂回する方法もあったんじゃないか?」

「ちょっと用事があってここは通らなくちゃいけないんだよ。因みに砂漠だと思うだろうが、砂漠の装備だとここは乗り越えられない。理由はこれだ」

 

イストは袋から一本の巨木を取り出して砂の大地へぶん投げる。

 

本来なら砂の大地と激突するだろうと思われたが……

 

チャプン…

 

「なっ!?」

 

ジンは驚愕する。巨木が砂漠へ吸い込まれるように消えていったからだ。砂漠は巨木が沈んだ直後は波が揺れるように揺らいでいたが、時間が立つと隆起する砂漠の形に戻った。

 

「ここにある砂は特殊で液体状になってるんだ。だから砂の海と描いて砂海と呼ばれている」

「つまり必要なのは砂漠の装備ではなく、海を渡る為の装備ってことか……そりゃあ普通じゃ二度手間だが引き返す必要があるのも頷ける」

「と言っても熱砂の特徴も兼ね揃えてるから、耐熱性もなきゃ渡れない。迂闊に砂海に沈んだら火傷するぞ」

「溶岩水泳させられたのよりはマシなんだろ?」

「まあな。こういう高熱の場所は暗黒大陸にはよくある。環境適応能力がなければどんなに強くても暗黒大陸では詰むってわけさ」

「だから副料理長には先に環境適応能力を身に着けさせたってわけか」

「そういうこと。まあ調理術とグルメ細胞の悪魔の力を引き出せるから人間界でも副料理長は上位に入るけどな」

 

そう言ってイストは袋から以前収納した豪華客船を出す。そして砂海に船を設置するイスト。

 

「以前収納した豪華客船か、この為に収納したのか」

「そうだ。いや一応俺とジンならこの砂海泳いで渡れるけど、今回はスターダスト・ヒルにも向かうから遊んでる場合じゃないしな」

「確か副料理長にお留守番する代わりの約束が流星雨のパフェだったな」

 

ジンは思い出す。

副料理長は師匠を敬愛しており、師匠であるイストの側にいることと、彼の料理を食べることこそが生き甲斐だ。

だが今回はお留守番なので案の定、副料理長はごねた。

一流のごねリストである副料理長がごねた余波で、鍋山を覆う程の山火事が起こったのは、ジンを持ってしても見抜けなかった。

ていうか、仮にも活火山の溶岩すら焼き尽くす炎って何だよと言いたかったレベルである。

尚、現場にいたイストとジンは火傷一つ負ってないから駆け付けた人間界の消防隊から「お前ら人間じゃねぇ!」と言われるのは余談である。

 

お留守番する代わり、副料理長がハンター試験に合格したら彼女の望む、好きな料理を一つだけリクエストを叶えるという約束をした。

そのリクエストが流星雨のパフェなのだ。

 

「そんなにデザートが好きなのか?」

「まあ副料理長を拾った時に最初に食べさせたのが流星雨のパフェなんだよ…女子というのもあるが思い出の品ってやつなのさ…」

「イストは態々暗黒大陸まで取りに行くとか本当にお人好しだよな…」

「俺はお人好しじゃねぇよ。別に見知らぬ他人がどうなろうが構わない人間だしな。まあかつてコンビを組んでた相棒の影響を受けてるのは否定できんが……」

「確か一龍だっけ?そんなに凄いのか?」

「ああ、俺が知りうる限り世界で一番強い人間だな(八王は除くがな)」

 

イストは今の八王が何故かパワーアップした原因が分からない。

何せアカシアの三弟子は確かに八王と渡り合える程の強さだったのにも関わらず、急激にパワーアップしたのである。

まさかの成長期?

ただでさえ上位層である八王が、成長期とか考えたくないのでイストはこの考えを思考から外した。

尚本人は知る由もないがイストが原因だったりする……

 

 

船がグルメピラミッドまで進むまでの道中、イストとジンは寛ぎながら雑談をしていた。

 

「ここで砂嵐とか海で言う竜巻と変わらないよな」

「止めろ、変なフラグ立てんな」

「嵐中水泳の訓練やったから問題ないだろ?」

「あれは割と命懸けだったんだからな。渦潮水泳もだ!乗り越えた後でもよく生きてたなと今でも思ってるぞ!」

 

イストとジンにとっては水中だろうが、嵐だろうが泳げるというとんでも理論で話していた。

因みに副料理長は先日デスウォールという毎分一兆リットルという最早膨大な水の爆弾で滝登りをさせられるという経験をさせられた。

それを乗り越えてすらまだ戦力外通告される時点で人間界のハンター達が暗黒大陸進出するのは無謀としか言えないのだ。

 

「そう言えばイストはニトロ米と三原水の他に万病に効く香草も取ったのか?」

 

ヘルベルが番人であるニトロ米、アイが番人である三原水は生物を手懐けてることから、獲得していると思ったジンはここにはいないブリオンが守護しているとされている、万病に効く香草について尋ねた。

 

ピシッと固まるイスト。そして冷や汗を掻いて目を逸らす。

 

「ああ……取ったよ」

「おいコラこっちを向け、何をしでかした?」

「人を問題児みたいに言わないでくれるかい?」

「そんなあからさまな反応してなきゃ否定できただろうよ」

 

どうせ何か問題を起こしたんだろうとジンは予想する。だがその想像を遥かに上回るとはこの時のジンは思いもしなかったのである。

 

「思いもしなかったんだ……」

 

イストは後悔するかのように呟く。まるで懺悔するように。

 

「まさか……

 

 

 

殺気を向けたらブリオンが枯れるだなんて……」

「えぇ……」

 

ドン引きするジン。まさか人類滅亡級の厄災が一人の人間?の人睨みで滅亡仕掛けてるとか知りたくなかった。

 

「五大厄災の一つをそんな容易く滅ぼすのが手に負えねぇ」

「俺も悪かったと思ってるんだ。お陰で枯れたブリオンを再生しなきゃいけないわ。何か再生させたら上下関係を自覚したからかブリオンが媚びて来るわ大変だったんだよ」

「自業自得だ。この馬鹿」

 

そしてジンは他の五大厄災も思い出す。恐らく他の五大厄災であるヘルベル、アイ、バプは対面した際に上下関係を本能的に感じてしまったのだろう。

ゾバエ病は知らん。きっと病が避けたとか言うオチだろうが、ジンはそんな事実は聞きたくないのである。

 

 

豪華客船で進んでいると遠方の砂海が揺らぎ、中から豪華客船に匹敵する程の巨大なサイズの大鮫が飛び出してくる。

豪華客船を呑みこもうとするつもりなのか巨大な口を開いて迫ってくるが、イストが包丁を一振りするとさいの目切りに分解される。

さいの目切りにされたサンドシャークの肉片はイストが豪華客船を包める程の巨大な網ネットを展開して回収した。

 

「サンドシャーク、砂海を泳ぐ巨大な鮫だ」

「こいつ豪華客船ごと俺達を呑みこもうとしてたな。こりゃあボートとかで渡ってたら容易に呑み込まれてたな」

「まあ同サイズだったし、良くて半分削れる位だっただろう」

「それでも船の半分削られたら沈没の危機だけどな」

「ん?まだ危機は過ぎ去ってないぞ」

 

イストの返答と一緒にババン!と豪華客船の周囲にある砂海から50を超える小型の影が上空へと飛翔する。その姿はペンギンだった。

 

「こいつらはクラウンペンギン、ロケット兎と同様に群れで突っ込んでくるぞ」

「暗黒大陸では小動物が物騒過ぎるな」

 

クラウンペンギン達は嘴を中心に三角錐のようにオーラを形状変化させるだけでなく、身体を捻って回転することで弾丸のように突っ込んで来る。50匹が前後左右から船を沈めようとしていた。

 

「気圧ドーム」

 

イストは豪華客船の周囲を包むように巨大な気圧の壁を作成してクラウンペンギン達の突進攻撃を防ぐ。

クラウンペンギン達の時間差攻撃により弾丸を弾く音が絶え間なく響き渡るが、気圧ドームには傷一つ付かない。

 

ジンは右手を頭上に掲げて、右手から膨大なオーラが噴き出し、空中で十二個の巨大な手を具現化する。

 

十二の巨手(ゴッドハンド)

 

イストが気圧ドームを解除した瞬間に十二個の巨大な手がクラウンペンギン達を次々と叩き落として行く。

恐るべきは一つ一つの巨大な手がオートではなく、遠隔操作で全て動かしていることだ。

もしこれがオート操作だった場合、クラウンペンギンの方が数が多いので豪華客船まで到達して風穴が空いていただろう。

しかもこれはジンのメインである念能力ではなく、受けただけで会得したサブの一つでしかない。

十二の巨手(ゴッドハンド)の本来の持ち主はオート操作かつ手のサイズも人の手位の大きさしかないという名前負けしていたのである。

暗黒大陸へ渡航するに当たってジンは今まで習得した念能力を独自に改良を加えた。彼が保有するサブの念能力は数十を超えるのである。

同じ念能力を使っても三流と一流が使うのではレベルが変わってくる。

圧倒的なオーラ量と桁外れの精密操作がジンが五本指の念能力者と言われる所以である。

 

「最早水族館だな」

「まあ大地じゃなくて海だからな。因みに百式観音を使わなかったのは?」

 

ジンは受けた物理攻撃は習得出来る。つまり十二支んになるに辺り、手合わせしたジンはネテロの百式観音による攻撃をガードしたこともあるので百式観音も使えるのである。

 

会長(ジジイ)の百式観音は攻撃動作前に祈りの所作を予備動作に加える制約を付けることで威力を底上げしている。俺では祈りの速度が再現出来ない以上、出来たのは祈り無しでの威力が劣化した百式観音で攻撃させる位だ。燃費が悪い上に腕があるせいで予備動作すら見えちまう。一番良いのは攻撃直前まで姿を隠しておくことだが……」

「毎回出し入れするんじゃオーラの消耗量が更に悪くなるってことか」

「百式観音が強いんじゃなくて会長(ジジイ)が使って初めて強力な能力ってことだ。まあ暗黒大陸じゃ通じないのは変わらないがな……」

「耐久力の低い亜人種とかの知性体ならともかく、今の鮫だって百式観音よりもデカくて硬い生物だからな」

 

不可避の速攻と言われるようにネテロの百式観音は圧倒的な速度と巨大な掌底による破壊力で仕留めるヒット&アウェイタイプだ。

だがこの暗黒大陸においては百式観音よりも大きい生物はザラにいる。

草食の森にいた金属のような鎧を持つ要犀や先程のサンドシャークのように……

そしてそんな獣達が練を使えば百式観音の一撃を平然と耐えてくるのは容易に想像出来る。

そうなった場合に待つのは百式観音の連打を平然と受けながらも巨大生物による反撃が牙を向く。

彼らの攻撃を百式観音の掌底で受け流すという選択肢もあるが、百式観音自体は暗黒大陸に住む巨大生物の攻撃を防ぐ為に作られた能力では無い。

つまり百式観音以上の破壊力を受け流し続けた場合、先に百式観音側が壊れる可能性が高い。

イストがネテロを誘わなかった理由は百式観音が通じない相手にネテロでは実力不足だったからである。

 

 

 

 

船で進むこと数時間、見えるのは巨大な三角形のピラミッド。

 

「さてグルメピラミッドだが、地下へと向かう」

「地下?上に向かうんじゃないのか?」

「これは城にある天辺の一部だよ、ここの地下には広大な城下町がある。そこにファラオがいるんだ」

「ファラオ?エジプトで言うところの王様か」

「そうだ。この地下にある城下町はファラオを名乗る王様が治めている。メロウコーラを取る前に会いに行こう」

 

船はピラミッドの近くにある蟻地獄のような穴へと向かい落ちていく。

 

「流砂か!?」

「そうだ。ピラミッドの城下町へ行くにはこの流砂へ降りないといけない」

 

船は流砂に呑まれて沈んでいく。

 

そして流砂から沈んだ途端に景色が切り替わる。

砂海が落ちた先は巨大な空間が存在していた。

砂海の下だというのに青い空や太陽が天井に存在し、船は空中をゆっくりと降りていく。

降りた先には草原が広がっており、遠方には大きな城下町があった。

 

「これは……」

「ピラミッドの地下にある城下町から少し離れた草原だ。城下町の名は太陽都市ソルガレス。俺達はそこにいるファラオと謁見しに行こう」

 

船から降りたイスト達は太陽都市へと向かって歩き出した。




悲報:原作開始前にブリオンがイストの逆鱗に触れて枯れる

イスト「再生させてるからセーフ、セーフだから!」
ジン「いやアウトだろ」

一体いつから五大厄災が無事だと錯覚していた( ・ิω・ิ)

オリ設定解説
十二の巨手(ゴッドハンド)
持ち主:?→ジン(受けて習得)
…十二の巨大な手を具現化して操る能力。イメージ的には超次元サッカーの某ゴールキーパーの技でOK。
本来の持ち主は三流なので名前の割にはオート操作かつ手自体も人の掌サイズというお粗末な能力だが、ジンが使うだけで変貌する。
勿論これはジンのサブ能力でしかない。

サンドシャーク
…豪華客船サイズの巨大な鮫。
クラウンペンギン
…群れで三角錐にオーラを形状変化させ回転でライフルのように弾丸の如く突っ込んで来る危険なペンギン。ほぼロケット兎と同じ。


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太陽都市ソルガレス

当初書こうとしてた十老頭(同作品被りNG縛り)メンバー

・白ひげ(ONE PIECE)
・ジュナザード(史上最強の弟子ケンイチ)
・チャンドラー(七つの大罪)
・キングブラッドレイ(鋼の錬金術師)
・山本元柳斎重國(BLEACH)
・うちはマダラ(NARUTO)
・継国縁壱(鬼滅の刃)
・ドーラ(天空の城ラピュタ)
・バンク(ワンパンマン)
・ベヘモット(べるぜバブ)

因みに一番ヤベーのが、空中海賊という生身で空気を蹴って宙を走る某平和の象徴や紅き猛獣が所属する武闘派連中の頭領かつ、バルスが無かったので悪の大佐を城諸共拳で沈めたという原作離れした肉体と戦闘力を備えた奴がいる。名前は言わなくても分かるな……


太陽都市ソルガレス、そこは砂海の流砂に呑まれて初めて行ける場所。

 

地下にあるというのに天井には太陽が登っており、草原の大地すらあるとは地上のことしか知らない者には想像すら付かなかっただろう。

 

まあノアの方舟が街になってたり、魂だけの世界とかもあったりはするのだが……

 

「砂海の地下だっていうのに地上にいるみたいだ」

「この空間自体は古代文明の産物らしい。このピラミッドを作成する際に自給自足の為に作成したんだろうよ」

 

砂海に限らず砂漠とは基本的に資源に乏しいケースが多い。このグルメピラミッドの地下空間を作成した人物はそれを懸念していたのだろう。

 

「因みにこの空を作成した際に太陽だけが欠けていた」

「ん、だが上空には太陽があるじゃねぇか?」

「あの空にある疑似太陽はファラオが念能力で作ったものだ」

「なっ!?太陽を作るだと……」

 

驚愕するのも無理はない。何故なら太陽とはそれだけ規模がデカい存在なのだから。

 

「勿論、本物の太陽とは大きさも熱量も及ばない。だがその代わりに操作精度は優れている。それこそ上空から侵入者にピンポイントで光熱砲を撃ち落とせる程に…」

「つまりこの太陽の下にいる限りはファラオの射程圏内というわけか。だがそこまで強力な念能力をよく習得出来たな」

「世代継承をしているからだ」

「世代継承?」

「次世代の後継者に継承していく念能力だ。初めは小さな灯火であっても念能力者を経由し継承されていくことで大きな念能力に変貌した。それがファラオの持つ太陽(サンシャイン)だ」

「暗黒大陸にはそういう継承があるのか」

「まあこれは珍しい部類だがな。余程国が安定してないと継承なんて難しいしな」

 

暗殺や譲渡出来ずに息絶えることがあったらその時点で継承は終了である。それが長続きするだけ、このグルメピラミッドは栄えているとも言えるのだ。

 

「そういえばイストは西側に行ったことはあるのか?」

「あるよ」

「まあそうだよな」

 

寧ろイストが行けなければ人類は西側には到達出来ないと断じる必要があったのである。

 

「西側には何があるんだ。ドン=フリークスについて知りたい」

 

新大陸紀行の謎の一つ。何故東しか存在しないのか?

ジンは三つの仮説を考えている。

志半ばで諦めたのか?

まだ見つかっていないのか?

今も書き続けているのか?

究極の長寿食であるニトロ米と万病に効く香草さえあれば理論上は外傷以外はどうとでもなるからである。

 

「言っておくが、俺はドン=フリークスを捜索した訳じゃないし、グルメ食材を探してただけだ。だから食材以外の秘宝とかはあんまり見つけていない」

「厄災やリターンはあるのか?」

「同じようにあるさ。俺が知っているだけでもリターンならあらゆる病を治す花弁を咲かす白桜樹やその土地の四季を変える四季石がある」

「どちらも文明が栄えるだけのリターンだな」

 

病を遠ざければ死者が減るし、四季を変えられるということは住みにくい環境を快適な環境にすることで資源に乏しい環境問題を解決することすら出来る可能性すらあるのだ。

 

「厄災は白桜を好む白い龍が住みついてたり、天候を自在に操る鹿がいたりする」

「それだけ聞くと東よりも厄災が軽く聞こえるが…」

「まあ確かに概念攻撃系は少ないな。だが逆に言えば明確な対策が取れないせいで搦手が通じず地力が求められる過酷な環境とも言える」

「軍師とかなら奇策が全部通じないから結局正面衝突せざるを得ないってことか?そりゃあ無能扱いされるだろう」

「違いない」

 

地力が無ければどうにもならないということはパワーバランスの逆転が起きにくいことを意味する。

弱者であるはずの人間が奇策を使わずに強者である暗黒大陸の生物相手に打ち勝つ地力を求められる環境なのだ。

 

「ドンはそこで何を見たんだ?」

 

ジンは知りたかったのだ。

何せ暗黒大陸は人の一生では渡りきれない程に広大なのだ。

下手すればドン=フリークスが今も書いていたとしても一度も会うことなくすれ違い、寿命を迎えることすら考えられた。

 

「これは憶測だが、ドンは西側を旅して知っちまったんだろうさ」

「知った?」

「そうだ。東と西、その二つを旅することでとある真実を知ってしまった。俺はそう思ってる」

「真実……」

「まだ真実の一端を知らないジンが知るには早いし信じられないと思う。本来なら東と西の両方を旅して初めて思い至ることだからな」

「だったら俺も西には行かなくちゃならないな」

 

ジンとしては東だけで渡航を終わらせるつもりはない。何せ未知があるなら追い求めるこそがハンター冥利につきると考えているからだ。

 

「そうだな……東にもヒントはあるし、そこに立ち寄ったら真実を教えても良いと思う」

「良いのか?」

「そっちの方が旅の目的が増えるからな」

 

イストは笑顔で言う。ジンならその真実を知っても問題ないという信頼があったからである。

 

 

 

城下町に住む者達は老若男女と人間界と同じくらいに賑わっていた。唯一の違いは耳に猫耳があるくらいだろう。

 

「ここの亜人種はどんな種族なんだ」

「確か砂猫らしいな。と言っても狼人よりも亜人化が進んでて耳以外はほぼ面影ないけどな」

「確かに狼人と比べて顔が猫なのはいないな」

 

城下町を見渡しても猫耳以外はほぼ人間である。猫特有の猫顔とか猫髭が全く見当たらない程である。

子供達はやっぱり遊んでいた。

 

右側では棒高跳びをしており、木で作られたポールに周を使って耐久力を上げつつ10m近く跳躍しながらトリプルアクセルを超える空中回転をしつつ地面に着地する。

 

左側ではシーソーがあるのだが、乗っている子供達は座っておらず板に直立で立っており、シーソーが傾き跳ね上がると乗ってた子供はトランポリンの如く20m近く飛び上がる。

更にその子供は空中で宙返りをしながら板へと着地し、反動でもう片方は同じく宙返りをして着地するという離れ技を見せていた。

 

「やっぱ亜人種の遊びはイカれてやがる」

「今更だろう。どこも同じようなものさ」

「知りたくなかったよ。そんな事実は」

 

ジンは子供達のイカれたお遊びから目を逸らした……

 

 

 

「フハハハハ、よくぞ来たイストよ。我が城に」

「久し振りだなファラオ」

 

玉座から見下ろしているのは砂猫の亜人種であるファラオ152世であった。褐色肌の男でカリスマはあるのだが、やはり猫耳が威厳を台無しにしているとジンは思った。

しかし突っ込んだら膨大なオーラを内包して玉座に居座るスフィンクス達が牙を向くと考えられたので指摘することは控えていた。

 

「彼はジン=フリークスだ」

「フリークス?貴様、ドンの血縁者か?」

「!?ドン=フリークスを知っているんですか?」

 

ジンはファラオに尋ねる。彼も相手は王族ということで敬語を使って話している。

それをやらないイストは下手すれば不敬罪で処罰されるリスクがあるにも関わらずやらないのは彼が強者だからだろう。

何せイストが"美食帝"を名乗るに辺り、金を払えば料理を振る舞うが俺が上だ。俺より強い奴じゃない限りは敬意は払わないと言ってた位である。

イストと長い付き合いのあるジンですらイストが敬意を払う姿は一度たりとも見たことはなかった。

 

「奴は350年位前に余の元へ謁見を求めた勇者だ。イスト程ではないがそれなりに見所のあった奴だからな覚えておる」

「そう…ですか……因みに彼はどちらへ向かったのか覚えていますか?」

「そうだな。奴は錬金植物を手に入れる為に香草を手に入れたと言っておったな」

「ゾバエ病対策か」

「うむ。あの病は確かに通常では完治しない故に香草は必須とも言えよう」

 

ドンの足跡の手掛かりを知ったが、何せ350年前では尋ねたところでほぼ役に立たないのでそれ以上は単なる好奇心であった。

だがドンはゾバエ病対策の為に万病に効く香草を手に入れていたらしい。

そこから考えられることはドンが探検しながら対策を講じていたということだ。

単なる探検ならば本来ゾバエ病の前に都合良く香草を手に入れているなんて偶然は起こり得ない。

彼は何かしらの手段でゾバエ病より先に香草の存在を知っていたことになるのだ。

 

「これがメロウコーラの代わりとなる食材だ」

「ふむ、よかろう。メロウコーラの収穫を許す」

 

イストは用意していた食材の数々をファラオに献上した。

現在人間界の一部を加工して作ったグルメ食材の一つである鍋山で取れる『コンソメマグマ』やアイスヘルで取れる『センチュリースープ』、感謝することで作られる特殊食材の『ビリオンバードの卵』などといったグルメ食材を渡したのである。

 

そうしてイスト達はメロウコーラを出すサラマンダースフィンクスの住まう奥地へ向かうのだった。




オリジナル用語

世代継承
…世代を超えて念能力を継承していくシステム。
メリットは次世代の念能力者が継承した念能力を培うことで成長していくので継承が大きい程強大な念能力になる。
デメリットは世代継承した場合にメモリを上書きされる為に継承すると別の発が作れなくなる。譲渡してしまうと先代継承者は発が使えなくなる。


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メロウコーラ

1章終わりまで今回の含めて残り3話。下手に話が伸びなきゃですが……

アンケート終了。十老頭の圧勝でしたね。まあ面子の大半がネテロも思わず「ワシより強くね」という連中だったので……
きっと次の話の合間とかに幻影旅団がぶっ殺された挙げ句に
「流星街の報復ぅ?構わねぇ邪魔するなら流星街の連中ごとぶっ殺せ!」
と流星街の報復程度でビビるような連中は皆無です。
きっとヨークシンで地震と火事と隕石と爆発が飛び交う刺激的なマフィアンコミュニティVS流星街の全面戦争に発展するでしょうが、イストは特に関わり合いにならないと思うので本編はスルーすると思います。
そんな中で幻影旅団を差し置いてヒソカが一人勝ちするとか凄ぇなと思う。

次のアンケートはドン=フリークスが新大陸紀行の西を作らなかった訳は何でしょうか?
選択肢は原作で言ってた三つの中からになります。
1章最終話で本編内の捏造で答えが明らかになりますが、興味のある方は予想してみてください。



ファラオとの謁見をした後、イストとジンはサラマンダースフィンクスのいる砂漠の迷宮(デザートラビリンス)へ辿り着く。

 

「おら、メロウコーラ出せ!」

「ワォォォン!?」

 

イストが腹パンしてサラマンダースフィンクスからメロウコーラを噴出させるという最低の構図がそこにあった。

 

 

 

 

 

時は遡り、ファラオとの謁見から数時間後。太陽都市から少し離れた場所にある地下通路を通る。

その通路はサラマンダースフィンクスのいる奥地へ繋がっており、太陽都市が管理している砂漠の迷宮(デザートラビリンス)へと足を踏み入れる。

 

砂漠の迷宮(デザートラビリンス)に入った途端に螺旋階段が現れる。

 

「これは…」

「蜃気楼だ。高熱に関しては問題ないがこの奥地では迷宮のような蜃気楼が発生している。迷うなよ」

 

この砂漠の迷宮(デザートラビリンス)は80℃の気温という異様な暑さに加え、迷宮のように入り組んだ蜃気楼や強力な猛獣たちが旅人に襲いかかる。

イストと会う前のジンなら確実にこの高熱の中を歩くことは出来なかっただろう。何故なら渡航するには体温調節が必要だった。

しかしこの二人は溶岩水泳というマグマを生身で泳ぎ切る程の耐熱性能な為に冷や汗一つかかずに容易く通過して行くのであった。

 

「溶岩水泳をさせられて感謝することになるとはな」

「ここに限らず暗黒大陸は暑さと寒さが極端な場所がある。戦闘力よりも先にそれを身に着けなければどれだけの仲間がいようがリタイアするだけだ」

 

イストが言うように環境に適応出来なければどんな強力な能力を持ってようが足手まといにしかならないのが暗黒大陸である。

 

螺旋階段を降りたイスト達は円を展開しながら砂漠の平坦な道を歩く。

 

「円があるから何とか蜃気楼を迷わずに渡れてるが、実際は細い一本道なんだな」

 

ジンが言うように目視では平坦な砂漠が広がっているのだが、円で地形把握をすると一人分の細い道と崖だけがあった。

稲妻のような道故に円を怠れば即座に足を踏み外して崖から真っ逆さまである。

 

無事に一本道を乗り越えたイスト達は頭に花を咲かせた大きな魚であるサンドフラワーフィッシュが現れたので仕留める。

食事と血液を水分補給代わりを行いながら進んで行った。

 

そして辿り着いたのは先程と同じくグルメピラミッド。しかし今度のグルメピラミッドは先程の城下町とは規模が桁外れだった。

 

「先程の城下町はこのグルメピラミッドのレプリカだ。亜人種が住みやすい環境にされている。そしてこのグルメピラミッドには猛獣共が放し飼いされている為に侵入者へ容赦なく襲い掛かる。ファラオの従える警備兵などは入団試験にここでの探索が命じられたりするな」

「つまり亜人種にとっては狩場というわけか」

「逆に未熟者がいけば喰われるがな。毎年入団試験があるらしいが受験者の4割が喰われてるってファラオが言ってたし」

「そりゃあ危険な場所だな」

 

イスト達はグルメピラミッドを降りながら進んでいく。道中出てきた三つ首の獣、ユニコーンケルベロスをジンが相手をする。

鋭利な一角でジンへと迫るが、ジンはその角を白羽取りの要領で掴んだ直後に背負い投げで地面に叩き付ける。

 

「ギャン!?」

 

ユニコーンケルベロスは周で強化された地面に叩きつけられたことで悲鳴を上げるが、ジンは手を緩めずに角を掴んだ手を離さずに身体を捻って180度の半円を描くように何度も宙に浮かしては周で強化した地面に叩き付けることを繰り返してユニコーンケルベロスを仕留めた。

 

「念の技術もそうだが武術とかも桁外れだな」

「念も武術も変わらねぇよ。結局は極めようとしたら行き着く先は一緒だったってだけさ」

 

ジンは大したことないかのように言うが、念能力者の大半は念能力という力に驕り我流で戦闘技術を磨く者が多い。

何故なら新しく学ぶなら念に合わせた動きの方が効率が良いからである。何せ他人の技術を習得するには時間がかかるし、自分の念能力と合うとは限らない。

しかし武術とは優れた武人の生涯を掛けて編み出した技術であるからこそ、極めれば強力な武器となる。

それをわかっているからこそ、ジンはあらゆる武術も極めているのだ。

 

イストは分かっているかのように迷うことなく道を進んでいき、ジンは着いていく。そしてイストが壁の壁面を軽く小突くと壁が音を立てて崩れていき隠し階段が現れる。

 

「おお、隠し階段か。イストはこのグルメピラミッド内の地形を把握しているのか?」

「いや全く」

「じゃあどうやって分かったんだ」

「食運だ」

「食運?」

「簡単に言うならオーラとは異なる"奇跡"という名の特殊な流れが見える。グルメ食材を探索するに当たって正しい道筋を示してくれたり、望んでいる幸運が訪れたりすることを"食運"と言われている」

「じゃあ宝くじが当たったりとかも可能ってわけか」

「可能だ」

「そりゃあ凄いな」

「いや宝くじで当たる金なんて腐る程持ってるだろうが」

「確かにそうだったな……」

 

片やトップハンターであるジンや1品で億単位の料理を扱うイストは富裕層と同レベルの資金があるのである。今更宝くじを買ったりはしないのだ。

 

「食運ってのは技術か?」

「いや生まれつきの才能だ。後天的に会得する方法はほぼない」

「つまり一応あると」

「その一つが俺のフルコースの一つである流星雨のパフェだ。短期的だが、食せばどの人間も食運を身に着けられる」

「ぜひとも食べてみたいな」

「楽しみにしていてくれ」

 

イストがフルコースにしている流星雨のパフェはメロウコーラを収穫した後に向かうスターダスト・ヒルにあるのでこのまま行けば食べれるチャンスはあるということである。

 

前方からタイヤのような甲羅を纏いながら高速回転して突っ込んで来るダンゴールの群れがやって来るがイストは正拳突きの構えを取る。

 

「エアノッキング」

 

彼がその言葉と共に拳を振り抜く

 

パンッ!

 

その拳は音を置き去りにしただけでなく、前方から突っ込んでいたダンゴールの群れ達が震動を受けて停止した。

 

会長(ジジイ)の技を簡単に再現するんじゃねぇよ」

「いやネテロじゃなくて知り合いの技だ」

会長(ジジイ)以外にも音速越えの正拳突き出来る奴がいるってわけか」

「音速越えよりもヤバいがな」

 

イストはサラっととんでもないことを言いながらもダンゴールの甲羅から実を取り出すと中からぷるんと輝く身が出てきた。

 

「こいつは一定の衝撃を与えて倒すと身が柔らかく上質なまま食べれる」

「うぉ!?確かにウニのようなふんわりとした柔らかさとイカのようなコリコリした食感がマッチしているな」

「因みに衝撃加減を間違えると身が硬化して不味くなる」

「だからイストが仕留めたってわけか」

 

イストとジンはダンゴールの群れの実を食べた後に様々なグルメモンスターを倒しながら遂にサラマンダースフィンクスの元まで辿り着く。

 

 

緑色の鱗に覆われた獅子の胴体、背中に生えた白く大きな翼、蛇のようにうねったオレンジ色のタテガミ、しっぽに生えた蛇が特徴の獣である。

そしてイスト達に向けて警戒心を顕にしたサラマンダースフィンクスは咆哮を上げる。

 

「ゴアアアアアア!!」

「うるさい」

「キャイン!?」

 

イストのワンパンで簡単に沈んだ。そしてサラマンダースフィンクスから体内で熟成されているメロウコーラを涙から絞り出す為に刺激を与える程度に手加減したパンチを叩き込むことをやりだしたのであった……

 

 

サラマンダースフィンクスの目から涙として大量のメロウコーラを噴き出す。それを直に浴びるイストとジン。

 

「爆竹みたいな音と刺激のシュワシュワ感!身体中の血流が一気に加速してくるな!」

「ジンは初めてだったな。遠慮せず飲んでみろ」

 

そしてジンは降り注ぐメロウコーラに口を開けて飲み込む。

 

「!?」

 

身体中を駆け巡るシュワシュワと駆け巡る炭酸を感じながらジンは飲み込んだ。

 

「うめぇぇぇぇ!」

 

ジンが思わず雄叫びを上げる程にメロウコーラは熟成していた。

このメロウコーラはたっぷり1年間熟成されており、その甘みはメープルシロップの数百倍の糖度を持っていた。

それに加えられた炭酸はシャンパンやソーダ水の炭酸とは比較にならぬ量で、仮にコップに注いだ場合、優雅に立ち昇る気泡は1年間止まることはないという。

 

炭酸の強烈な刺激がジンの身体中にある細胞を瞬時に叩き起こし、圧倒的な糖分の甘みは絞め技のようにじわじわと全身の隅まで染み渡っていた。

そして疲労のあったジンの身体が瞬時に回復しただけでなく潜在オーラ量も一気に跳ね上がる程に細胞が進化していた。

 

「そうだろう。ここのコーラは旨いからな。さてこいつらは出し渋る癖があるからもう少し捻りださせるぞ」

 

そして冒頭のスタイリッシュなカツアゲもどきでサラマンダースフィンクスからメロウコーラを涙から絞り出すイストだが、2匹目以降はジンにやらせていた。

メロウコーラを絞り出すには一定の手順が必要なのでイストがジンへ指示しながら空中に飛び上がったプールと言える程の量のメロウコーラを巨大な真空ボトルへと回収していた。

そしてジンは最初こそメロウコーラの余韻で感動があったのだが現在のやり方が不憫すぎてサラマンダースフィンクスに同情していた。

 

「罪悪感が半端ないんだが……」

「後、5匹だ。引き続き頼む」

「容赦の欠片もないなオイ」

 

イストはメロウコーラを巨大な真空ボトルに入れて次の真空ボトルを用意していた。

近くにいたサラマンダースフィンクス達は明らかに出荷される前の子羊の如く怯えていたのは余談である。

 

メロウコーラを回収したイスト達は次の目的地である雨の大陸に向けて向かっていた。




ニトロのいないグルメピラミッドなので呆気なく回収出来たという感じです。
因みにニトロがいようがイストがいる限りワンパンで終わりますが……


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流星雨のパフェ

残り2話。本編と関係ないけど一番好きな八王はスカイディアでした。
打ち切り迫ってたのか知らないけど原作でニュースがカットされたのはショックだった。
ぶっちゃけ描写カットされたニュース、アース、アトムはどんな感じか読みたいレベルですね。
まあ無いなら書けば良い理論なのが本編ですが……

イストの人生のフルコースの一つで一章のテーマとなる食材が"流星雨のパフェ"となります。

前回:
イスト「オラ、もっとメロウコーラ出せ」
スフィンクス「キャイン!?」
ジン「やめたげてよぉ!」



これはかつて副料理長となる少女をイストが拾った時のこと……

 

故郷を離れての遠い旅路。嘗てのコンビを組んでた一龍を味仙人である三人に任せて旅に出たイストは道端に空腹で倒れている少女を拾う。

 

イストはその日、運命というものを感じた。

かつて一龍の為に揃えたフルコースの数々。

何せ、自分以外の世界中の皆の分まで用意しないと食べないという頑固っぷりからだいぶ苦労させられた。

今でもアイツ、マジ許さねぇと当時のことを思うと腑が煮え繰り返る思いだったが、それは置いておく。

 

彼が運命を感じた理由はフルコースの内、デザートの食材だけが都合良く残っていたからだ。

まるで食材が彼女に食べられたいと待ち望んでいたかのようだった。

 

適合食材というものがある。それはグルメ細胞の限界を超える壁だったりと広義に渡るが、イストにとって適合食材とはグルメ細胞の悪魔を復活させた際に乗っ取られない為の鍵を指す。

それはグルメ細胞が本能的に求めるケースが多く、自然と自身のフルコースに入っているパターンも少なく無かった。

 

一龍の適合食材はビリオンバードの卵、

イストの適合食材は■■■■、

 

そして少女の適合食材は間違いなく流星雨のパフェだとイストは確信したのだった……

 

 

 

 

 

「メロウコーラ、悲しい事件だったな…」

「お前が言うな!」

 

悲しそうに言うイストに突っ込むジン。寧ろ悲しむのは強要されたジンの方なのだが、メロウコーラが必要だからということで同罪だからとその件はお終いということにした。

 

「雨の大陸はどんなところなんだ?」

「とある巨木の周りで多種多様な雨が降る場所だ。スターダスト・ヒルもその一つだ」

「イストはそのスターダスト・ヒルが目的地なんだよな」

「そうだ。そこに俺のフルコースの一つである流星雨のパフェがある」

 

 

 

ヒュー、ヒュー、ヒュー!

 

ドドォン!ドドォン!ドドォン!

 

そして大小様々な隕石の雨が無数に降り注ぐ丘に辿り着く。

 

「これがスターダスト・ヒルだ」

「爆撃機の空爆が可愛く見えるレベルじゃねぇか!?」

 

ジンがドン引きするのも仕方ない。何故なら大小様々な隕石が降り注ぐ危険地帯なのである。

常に隕石が降り注ぐせいで前方に爆風が発生し続けてるせいで先が見えないというレベルだ。

 

「ここには数年に一度デザート彗星からデザート星が降り注ぐことがある」

「デザート星?」

「デザート彗星という幸運の流星で育った特大サイズのフルーツだ。まあ一つ一つが山位のサイズはあるな」

「山!?そんなデカいのか……」

「デザート彗星から降り注ぐデザート星を使うことで流星雨のパフェは完成する。要は流星群の中からデザート星を見抜いて回収すれば良いのさ。簡単だろう?」

「普通の奴は流星群が飛んできたら死ぬからな」

 

そうしてイストは迫り来る流星群の隕石だけに包丁を振るってさいの目切りにして粉々にしながら、デザート星だけは優しく片手で受け止めていく。

優しくと言ったがそれはイストが受け止める行為のことであってデザート星はジェット機が突撃するかのように急降下で突っ込んで来る。

 

ズドーン!

 

イストに激突して爆音が鳴り響くが、イストは無傷かつデザート星も無事であった。

というか山サイズのフルーツ星の直撃を片手で受け止める行為自体が人間離れしていた。

デザート星を後ろにポイっと投げてはまたデザート星以外を包丁で処理していく。

 

「ジンは後ろに落としたデザート星を避難させてくれ」

「流石にこのサイズは持てないぞ!」

 

流石のジンであっても山を持ち上げるなんてことは出来なかった。

 

「転がして大丈夫。デザートの皮は大気圏で燃えない為に頑丈な作りになってるからな」

「分かった」

 

普通の念能力者なら無理だろうが、ジンの潜在オーラ量なら確かに可能だ。ジンは十二の巨手(ゴッドハンド)を発動し、巨大なオーラの巨手でデザート星を転がす形で動かしていく。

 

こうしてイストとジンによってデザート星は無事に回収されたのであった。

 

 

スターダスト・ヒルから離れた丘で山サイズという規格外のデザート星の数々にイストが包丁を入れて調理していた。

 

「普段からイストはこの流星雨のパフェを作る際はこの流星群を対処してたのか?」

「いや流石に一人は厳しいから相棒を連れて来てるな」

「相棒?」

「そうパートナーアニマルって言う強い獣さ」

「ふーん、何度か店に行ってるが見たことねぇな」

「そうだね。3年間位故郷へ帰省してるのと、人間界だと大き過ぎるから姿を隠させてたっていうのもあるな」

「3年か、結構長くないか?」

「いや俺も相棒もかなり長く生きてるから3年なんてあっという間さ」

 

イストはなんてことないように言うが人間からしたら3年は長い時間である。

 

「そいつの名前はなんて言うんだ」

「ディアと名付けた。人懐っこいパートナーさ」

「副料理長は知ってるのか?」

「ああ、キャンピングモンスターだから移動手段も兼ねてるからな」

「ん、キャンピングモンスター?初耳だな」

 

ジンは尋ねる。キャンピングモンスターとは聞いたことが無かったからである。

 

「自らが安全場所となる猛獣のことだ。そいつらが巨大かつ他の猛獣に見つかりにくい性質を持つ為に暗黒大陸を渡航する際とかに重宝する」

「は、ハアアアアアア!?おま、ちょっと待て!そんな便利なのがあるなら何でこの旅に使わなかった!」

「いやジンは旅するの好きそうだったからキャンピングモンスターに乗って旅するよりも直接探検する方が好きかなと思ってな」

「っぐ……確かにそれはそうだな……」

 

図星である。探検に限らず自動車や電車で目的地まで着いてしまうのは、全く旅行先を歩かない為、人によっては旅行間が薄れるという人がいる。そしてジンも楽して行くのは退屈というタイプであった。

 

「だがそんな便利な奴がいるなら人間界からも進出出来るんじゃねぇか?」

「いやそう都合良くはない。まず自分より強い生物には見つかってしまう」

「そうか、そして隠れる性質がある以上は戦闘力がそこまで強くないってことだな」

「そうだ。だから拠点と移動時間短縮という点は叶うが、結局は自衛出来なきゃ話にならない。そして矢面に立つなら戦闘力と環境適応能力が無ければタダの足手まといだ」

「確かにそうだな」

 

これまでの旅をした経験から少なくとも環境適応能力が無ければまともに戦うことすら出来ないこと、そして徒党を組んで連携してくる獣すらいる以上は精鋭を揃えなければいけないことを理解していた。

 

デザート星の皮を全て包丁で剥いたイストは二人分の材料以外に残っている膨大なデザート星達の殆どを一瞬で凍結させる。食材の鮮度を保ったまま凍らせたのである。

 

「鮮度を保ったまま凍らせる力か、料理人にとっては重宝する力だよな」

「そうだな。食材の殆どは鮮度が落ちると味も落ちてしまうし賞味期限だってある。俺の氷は数百年経っても鮮度を落とさずに長期保存も可能だ。逆に鮮度保存を緩めればアイスヘルが出来上がるがな」

「あの人間界に作った極寒の環境だな。全くあそこはお前が買い取るまでは普通の島だったはずなんだがな」

「まあ企業秘密だ」

「企業になんか属してねぇだろうが」

 

ジンも流石に相手の能力を暴こうという気は無いのでこれ以上追求はしなかった。

 

「さぁこれが流星雨のパフェだ」

「これが流星雨のパフェか!ダイス状にカットされたフルーツが宝石のように輝いているだと……」

「そうだ。デザート彗星の中にある幸運の流星のエネルギーを吸って育ったデザート星は宝石のような光沢を放ち、それ単体で鮮やかに輝くんだ」

 

イストが出したのはデザート星をふんだんに使ったフルーツパフェであった。

デザート彗星のフルーツ達をダイス状にカットされており、デザート一つ一つが宝石のように輝いていた。

イチゴはルビー、キウイはエメラルド、ミカンはトパーズと言った風にそれぞれのデザートが対応した色の宝石の如く輝いていた。

 

そしてジンがスプーンで掬って口にした瞬間、流星群の如く甘味が全身へ行き渡る。

 

「!?」

 

流星群が夜空を流れ落ちるように甘味が全身を駆け巡りながらもイチゴとキウイとミカンがそれぞれ独立しながらも互いを高め合うかのように折り重なったハーモニーをジンは味わった。

思わず涙が流れていた。

 

「ったく、相変わらずお前のフルコースは旨さで涙が出ちまう。勝手に身体が旨味に感動しちまうんだからな……」

「良いじゃないか、食の感動程素晴らしいことはあるまい」

 

そしてジンにはオーラとは異なる輝く流れが見え始めた。全身を星々のような輝きがまとわりついていた。

 

「これは一体?」

「手にしたのさ。この暗黒大陸を渡り歩くに当たって必須スキルの一つ。食運を!」

「これが食運なのか……」

「この流星雨のパフェは願い星と同等の幸運を蓄積しているんだ。故に俺がデザートラビリンスで隠し通路を見抜いたように正しい道筋を見抜いたり、本来なら見えなかったり、理解出来ないものすら把握したりと文字通り万能な力とも言える」

「それが食運…」

「どんな強者が望んでも手に入れられなかった才能とも言える。何せ強くたって食運が無ければ美味なる食材には辿り着けないからね」

「美味なる食材か……確かに、こんな美味しい食材を求める者達にとっては喉から手が出る程に欲しい才能だな」

 

ジンは納得する。旨い料理を食べたいという原始的な欲求はどんな人間をも魅了するのだとジンは改めて思ったのだ。

 

「さて……では次の目的地へ……」

 

イストが言葉を口にしている途中で……

 

ゾクッ

 

「!?」

「!?」

 

その瞬間、イストとジンへと向けて周囲が歪んで見える程の威圧感がぶつけられる。

 

ズオォォォォォ!ビリビリビリビリ!

 

まるで重力のように、上から押さえつけるかのような威圧感と電流を浴びているかのような、身体中に走る刺激にジンはかつてない悪寒を感じていた。

 

「一体何が……起こってるんだ……」

「まさか、向こうから来るとはな……」

 

イストは側面を向きながら呟く。その方角から何かが来ているのだろう。

だがジンの身体中に伝わる危険信号が振り向くなと言っているかのように激しく警告していた。

 

「訂正、俺には幸運なんだが……ジンには不運かもしれない」

 

その言葉にジンは喉を鳴らして覚悟を決めて側面へ顔を向ける。

 

数百km離れた遠方からでも感じ取れる程の凄まじいオーラと威圧感を纏って山をも踏み超える巨大な馬が悠然とこちらへ向かって来ていた。




馬王「私が来た!」

次回 一章 最終話

To Be Continued…

クロアブーストの次回作にご期待ください。


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食王エア

お待たせしました。今回で一章最終話となります。二章に関しては少し時間を下さい。勉強サボって執筆してたからそろそろ真面目に勉強を再会しないとヤバいので……


前回
WARNING:馬王襲来!

馬王「来ちゃった♥」
ジン「帰れ!」


「空気が…重い…た、戦う気すらしねぇ……」

 

目の前に王者の如く佇む巨大な馬にジンは圧倒されていた。

 

ジンは慢心してたのだと自覚する。

決して自分が最強だと自惚れていたわけじゃない。

イストより強い人間は確かに存在しているのかもしれない。

だが、イストですら格下と感じる程に次元の違う化け物が目の前に現れたのである。

 

馬王ヘラクレス、八王と呼ばれる一角であり、この暗黒大陸において頂点の一匹と言って良いだろう。

つまり、馬王のさじ加減一つで暗黒大陸中の生物は絶滅の危機を迎えるということである。

 

5年前から雨の大陸になったのは勿論、馬王のせいである。

暗黒大陸の各地で発生した豪雨地帯のせいで、新大陸紀行を元に探検計画を立てていた連中は一匹の馬というイレギュラーによって計画の抜本的見直しが求められる。何せ文字通り豪雨地帯は未知の領域になってしまったからである。

 

そして悲しいことに、他の各地が豪雨地帯に変わらない保証も無いのである。

ジンが明らかに気圧されている中でもイストは平然としていた。

 

「よぉ、ヘラクレス久し振り」

「ブルル」

「え、もうそんな時期なのか……ていうかまた出産ってちょっと盛り過ぎじゃないか」

「ブルルル」

「いや元気に産めるようになって嬉しいのは分かったけど……」

 

イストはヘラクレスと会話しているようだった。ジンは良いハンターは動物に好かれるというのが持論なのだが、こんな王者級となってくると話が変わってくる。

何せ目の前の生物は格下に侮られるのを嫌う気高き生物なのだ。

 

「イスト、言葉が分かるのか?」

「ああ、彼らの言葉はきちんと伝わっているさ」

「そうか…」

「というわけで乗るよ」

「は?」

 

まさか遥か格上の生物に乗るということにジンは一瞬思考が停止した……

 

 

 

 

 

 

ヘラクレスの背に乗りながら移動するイストとジン。物凄いスピードで大陸を駆け抜けているのだが、イストが気圧ドームをヘラクレスの背に発動することで背中に向かってくる向かい風を防いでいる。

というか加減しているらしいが、移動速度が凄まじ過ぎて気圧ドームへソニックブームが激突する音が鳴り止まないのである。

 

「一体どういう関係なんだ?」

「彼女は八王ヘラクレスだ」

「お前の言っていたパートナーアニマルか?」

「いやパートナーアニマルは別。こっちはどちらかと言うと現在組んでるコンビだな」

「コンビ?」

「そう。今の俺は八王の料理人ってわけさ」

 

イストからジンに説明される。八王とはこの世界で最も強い八匹の獣の王を指すこと。そして馬王ヘラクレスはその一匹なのであると。

 

「これだけの威厳があれば強いのは分かるが、他に七匹もいるのか……」

「ヘラクレスとは出産の為にエアを調理する約束をしているからな」

「出産?」

「ヘラクレスはエアから放出される膨大な空気を吸わないと元気な子供を産めないんだ。だから俺が協力しているってわけだ」

 

空気を食べる大気食で、一回に吸う空気量はおよそ3600億トン。

体積に換算すると大西洋の海水量とほぼ同じ量であり、その話を聞いたジンが顔を真っ青にするのも無理はない。

それだけの空気を食べるということは危険度もジンには予想が着いたからである。

 

「吸った空気の10%しか吐き出さないから、大陸の気圧は低く、吐き出した毒素が上昇気流となって様々な豪雨として降り注ぐんだ。

雨の大陸で降ってる豪雨もヘラクレスの影響だな」

「マジかよ……」

「一応ヘラクレスも加減はしているんだぜ。呼吸は基本的に年に一度だからそれで済んでるしな」

 

そしてヘラクレスの出産には充分な呼吸をする必要がある為にエアの調理と出産時期を合わせるとイストは話す。

その説明の数分後に馬王ヘラクレスの背に乗ったイストとジンはエアツリーの巨木へ来ていた。

ここは本来、のろま雨の丘という密度が濃く、抵抗力の強い空気が充満しているエリアなのだが、ヘラクレスが軽く一息吸うだけで通常レベルまで下げてくれた為にジンは知る由もなかった。

 

「これが食王エアだ」

「デケェ……」

 

ジンがそう呟くしかない程にエアはデカかった。

 

食王エア

 

数百年に一度実る、全長1500メートル以上の巨大な実。

 

一つの惑星を覆い尽くせるほどの空気が凝縮されており、熟して地面に落ちた瞬間に吹き出す空気は大陸の雲を全て吹き飛ばし、百色の虹の橋を作ると言われている。

まあ今回は前回の出産から数百年の時間を置いていない為に膨大な雲や百色の虹の橋すら出ないだろうが……

 

本来なら繊細な食材のため、ヘラクレスのような圧倒的強者が近づくとすぐに腐ってしまうのだが、ヘラクレスは絶を使うことで威圧感を最小限に抑えていた。

それでも威圧感が若干漏れていたりするのだが、エアが腐るのを阻止出来るレベルまで抑えられている時点で遥か昔よりは成長している。

勿論教えたのはイストだったりする。

 

「ありがとうヘラクレス、後は俺が調理するから任せてくれ」

「ブルルル」

 

ヘラクレスはエアの巨木から立ち去った。出産の際には絶が解けてしまう為にヘラクレスは出産を行う準備を始める為である。

それはヘラクレス自身がイストを信頼している証とも言える。

何せエアから離れることは、エアから出される空気へ干渉されるリスクも生じるからだ。

だがイストは八王の料理人となってから幾度も成功させている実績を持つことと、互いの利害が一致していることが信頼関係を結んでいた。

ヘラクレスは出産の為の空気を…

イストはエアから空気を放出させた後のエアの実自体が目当てだからである。

 

 

そしてイストはエアを調理すべくグルメ細胞を活性化させる。

 

ズズズズズ

 

イストの身体から異形の怪物が現れる。それはグルメ細胞の悪魔と呼ばれる者だった。

全身真っ黒で、丸っこい体に手と足が付いている存在が現れた。

 

「何だこれは…」

「彼はドンスライム、俺とコンビを組んでいた相棒のグルメ細胞の悪魔だ。と言ってもほんの僅かな断片だけどな」

「スライム?」

「コラ!私を呼ぶ時は『ドン』を付けなさい!ドンスライムだ!ドンスラでも良いぞ」

「彼は『ドン』を気に入ってるから名前を呼ぶ時は付けてあげてくれ」

「ああ、分かった」

 

ジンは了承する。

 

「これがグルメ細胞の悪魔なのか……ん、イストのグルメ細胞がドンスライムでは無いのか?」

「そうだな。俺のグルメ細胞の悪魔は強いんだが、汎用性に欠けるから戦闘以外はドンに頼ってるな」

「全く、仮にも宇宙の災害と言われた私を雑用にこき使うのはイスト位だ」

「それくらい頼りにしてるんだよ」

「うむ、それなら良い」

 

簡単に機嫌を治すドンスライム。付き合いが長いというのもあるが、本来のドンスライムは強過ぎて一龍が有事の際以外は殆ど頼らない。

そして一龍が頼らざるを得ない程のピンチなど同じアカシアの三弟子級か八王級でも無ければあり得ないので出番はほぼない。

だからこそ頼られるのに飢えているとも言えるのは余談だったりする。

 

「ドンスライムの凄いところはあらゆる物体に細胞レベルで姿を変えられることだ。エアの破裂を抑え付ける為にネットを張ってくれ」

「うむ任された」

 

ドンスライムは手をエアを覆う程の巨大な網ネットに変化させてエアが破裂しないように包み込む。

そしてイストはエアへ向けて包丁を連続して振るう。

 

「皇帝の調理術、空切り・乱式」

 

イストはエアへ向けて斬撃の乱れ打ちを振るう。

そしてイストの斬撃はドンスライムの網ネットを避けてエアを調理するという離れ業をしながら調理を着々と進めていく。

 

エアの実の本来の噴出孔以外から空気が飛び出しそうな場所はイストが気圧のコルクを作って封をすることで対処する。

原作ならば本来複数人で行う調理をイストはドンスライムと二人だけで調理をしていた。

 

「そろそろだな。ドンスライム、もう解除して良いぞ」

 

その言葉と共にエアを縛っていた網ネットは解けてエアは地面に落下する。

 

「見ていろ、ジン。これがエアの噴出だ」

 

ズンッ!ドッブォオ!

 

イストの言葉通り、エアが落下した途端に一斉に空気が噴き出した。

 

 

 

 

 

エアの実から噴き出した空気、その量は実に5000兆トン。体積にしておよそ250億立方キロメートル。

それが僅か数十秒の間にすべて放出されるのだ。

 

その空気は暗黒大陸だけでなく、海を超えて広がっていった。

 

火山の大噴火を超える空気の奔流にジンは驚愕していた。

 

「言っただろう?星全体に行き渡るって」

 

イストはジンを見ながら言う。ジンはエアの空気が暗黒大陸を超えて広がっていくことにある疑問を抱く。

星全体へ行き渡るとされている空気は何処へ向かうのかと……

そして以前話した真実について話し出す。

 

「真実について話したな。恐らくドンは渡航記を書く位に冒険好きなのだろう。彼は西を渡り歩いて一度は絶望したはずだ。大陸を渡り歩いてしまい次の目的を失ったが故に……」

「ん?私は渡航紀など書いておらんぞ」

「あ、ドンスライムすまない……君じゃなくてドン=フリークスのことなんだ……混乱させてすまないな」

「いや私と同じくドンを名乗るのだから、そやつも凄いのだろうな……」

 

ドンスライムとイストが茶番を行う。ジンが早く話の続きを話せとジト目で見てきたのでイストはンンッと咳払いをしてから話を戻した。

 

「ドン=フリークスは知ってしまったんだ。東側と西側を渡り歩いて、次の冒険を探した際に見落としていた事実……どうして一つだけなのかと誤認していたのかを……」

「まさか……」

 

ジンは驚愕する。

それは根本的な見落とし。

メビウス湖を超えた先に、人の一生分の人生では渡り歩く事が出来ない程の大きな大陸があったせいだろう。

一つの大陸という視野が狭まっていたのである。

もし仮にメビウス湖にいた住人なら世界旅行をしたいと行ったらどうするか?

それは簡単である……

 

大陸を超えれば良い。

 

一つの大陸を制覇したなら……と、ドン・フリークスは西側の本を書くのを忘れる位の新たな冒険の扉を見つけたのだろうと……

 

「暗黒大陸は一つじゃないってことさ」




これにて一章は終わりです。

次からは二章に入ります。


因みにドン=フリークスが新大陸紀行西を書かなくなったのは2番の挫折して出版されてないからでした。
まあ凄いこじつけだけど、某美食の神みたいに東と西を制覇したら一度は挫折という名の絶望位はしそうかなって。

ドンスライムの何が凄いって、細胞レベルで変化させられるので、イストとドンスライムが力を合わせれば食材をグルメ食材に変化させることすら出来たりします。
まあその代わりに食材をグルメ食材に変化させるには差分のカロリーを消耗するので事前に食没でチャージしないといけない上に、自分で食べるのには、ほぼ役に立たないことを除けばですが。
ぶっちゃけ富裕層向けの料理とかではドンスライムの能力使って金稼ぎをやってるんですが、そんなバックストーリー見せても面白くないと思うんで本編ではカットしてます。

『2章のニュースレポート』
「次のニュースです。287期ハンター試験が開始されました。
今期のハンター試験は、試験内容が情報漏洩しているのかと疑われるレベルでスクーターやバイク、ハンググライダー、乗馬、登山装備や探検リュックといった事前準備を行う受験者が大多数いるという前代未聞の受験者で溢れております。
試験内容が発表される度に準備をしていた者達に有利になる内容からか、正々堂々試験に挑む受験者達からは不満の声が多発しております。
あちらでトランプタワーを作っている男性やお腹の空いた受験者の為に料理を振る舞う女性のようにスポーツマンシップを持って望んでもらいたいものですね。
不正行為を行うハンター達が大多数の為、専門家達は今期のハンター試験は過去最悪になると見込んでいるようです。
以上、ニュースでした」


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1章後書き

これは本編ではなく、短い上に後書きや若干のネタバレ要素あるので本編見たい方はスルーでOKです。

それでも見たい方はどうぞ。


さてイストが暗黒大陸は一つじゃないという真相をジンに与えて終わったのが一章でした。

 

ぶっちゃけ幾ら暗黒大陸がデカいからってグルメ界のエリア全部まとめるの無理じゃねというのが本編となっております。

 

感想とかでも若干ヒント出してたけど一龍含めたアカシアの三弟子や金銀銅の三シェフとか節乃とかはHUNTER×HUNTERのメビウス湖のある暗黒大陸にはいませんというオチでした。

ということで一龍達との再会は当分先ですね。何せまだ西が残っているので……

 

ということで次回は2章、イストとジンが暗黒大陸行ってる間の副料理長ことシオリ・ミツルギのお話になります。

 

本当はシオリのヒソカと遜色無いクレイジーっぷりを発揮したかったんですけど、軽く受験者300人近くを殺してたらゴン達と関わり持つの無理じゃねということでクレイジーっぷり発揮はボツ案になりました。

代わりの案は前回の後書きに書いた原作知識を得た転生者多数という不正受験者だらけな過去最悪のハンター試験となります。

 

2章ではこいつら転生者じゃね?というレベルで念能力と事前準備をしている連中が大多数出現しております。

こいつらマジで念の秘匿を無視してんなぁというレベルな奴等ばかりです。

 

『簡単な経緯』

・普通に考えて転生者達は試験内容分かってる今期を逃すはずないんだよなぁ

・だから事前準備だってしっかりやるに決まってる

・普通のハンター試験なんてやっても面白くないけど、試験内容変えるの面倒だ

じゃあ転生者多数のハンター試験とかどうよ?

 

というのが二章のハンター試験となります。因みにイストとシオリは転生者じゃありません。

但しイストはかつて自分を襲って来た刺客を返り討ちにした時に刺客が転生者だった為にその存在を知っております。

 

実は不正行為を働いた転生者達への粛清措置とかもあったりするんですがネタバレになるのでこちらは秘密にしておきます。

 

 

イストやジンもハンター試験合格後に再会するので出番はありますが、メインは彼女です。

え、合格は確実なのかって?

やだなぁ。ネテロより強い彼女が落とされるわけないじゃないですか!もし落ちたりしたら恐らくハンター協会が焼け野原になっちゃいますよ!

 

そして念押ししますが

幻影旅団と現十老頭の抗争は全カット!

幻影旅団と現十老頭の抗争は全カット!

 

大事な事なので2回言いました。

なので幻影旅団がどれだけ死のうが、現十老頭相手にジャイアントキリング現象というミラクルが起こったりしてもこの本編では分かりません。

だからオークションの裏で血生臭い抗争なんて気にせずオークションをお楽しみ下さい。

きっとオークションの途中で、マフィアンコミュニティVS流星街のテロ戦争勃発してるだろうけど対岸の火事だから平気平気!

寧ろ、裏社会の勢力図が書き変わるだろう、大規模戦争の中でも一人勝ちという高難易度ミッションに挑むだろうヒソカの頑張りでも祈ってください(適当)




二章で転生者達が不正行為である原作知識の出どころを誤魔化すヒント

転生者達「ノストラードの占い師って知ってるか?」

人数多過ぎる上にマフィアが絡んでくる為に真偽は見分けられず、かつてない冤罪による風評被害がノストラードファミリーへ襲いかかる。
某頭脳は大人、身体は子供の名探偵でも迷宮入りは確実だと思われます。


二章のハンター試験は新HUNTER×HUNTERのオープニングを聞きながら読むと

「こんな夢も希望もねぇクソ試験があるかァ!」

と思えるような話に出来るように頑張ります。


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番外編〜5本指の念能力者①〜

2章の前に出来たので投稿。
ちょっと短いけどこういう二次創作だから、世界最強クラスをポンポン出すのも良いよね。


世界で五本指の念能力者、ネテロがそう評するように桁違いの念能力者が存在する。

 

お互い立場は違えど、卓越した念能力を扱う技術を持ち、メモリとは異なる念能力の才能を持っていた。

 

その強さは諸説あるが、後に原作で現れる直属護衛軍2体を吸収したキメラアントの王さえ彼等の内一人が派遣されていれば片付いたと言えば強さの指標にはなるだろう。

 

 

一人目はジン=フリークス。

頻繁に行方不明こそなるものの、十二支んのメンバーかつ道徳心も持ち合わせている。

強さを得る程に自分勝手かつ道徳から外れていくものだが、ジンは世界トップクラスの念能力者になってもパリストンが行おうとしていた5000体のキメラアントによるテロ未遂を止めたりと明らかに善人側とも言えた。

 

念能力は不明。

何故なら彼は才能だけで物理系の念能力を受ければ真似出来てしまう。

つまり物理系とカテゴリが制限されるものの、メインとは異なる発を無数に持ち合わせることになる。

千種類の発を扱うなどというふざけた話ではないが、彼の戦闘経験から利便性の高い発を20〜30位ストックしていると言えば応用力の高さが分かるだろう。

 

 

そして今回の話は二人目についてのお話である……

 

 

 

 

これはイストとジンが暗黒大陸へ渡航する前の時点。

とある大陸を買い取ったイストが大陸そのものを調理したことで危険地帯へと変貌した。

その大陸の名はアイスヘル、年中零下50度を下回り、周囲は氷山だらけの永久氷河。

その大陸にある食堂がイストの持つ拠点の一つである。

因みにプロハンターでさえ、このアイスヘルを渡ってこの食堂に来るのは、至難の業とも言えるせいで殆ど閑古鳥が鳴いている状態なのは言うまでもない。

 

「ったく、相変わらず店のある場所が危険地帯ばっかで客が全然いねぇな」

「まあ食堂なんてただの道楽だしな。金を稼ぐだけなら俺が直接赴けば良いし」

 

常連であるジンの言葉にイストは気にしてないように答える。

この世界においてアイスヘルを事前準備無しの生身で渡航するのがどれ程の自殺行為なのかは言うまでもない。

アイスヘルは極寒だけでなく、この大陸に住まう猛獣達はプロハンターでさえも容易く餌にしてしまう強さを持っている。

逆に言えば極寒対策ときちんとした実力を持ってさえいれば渡航を可能とするのだが、ジンの服装は何時も通りの浮浪者を思わせる服装で極寒対策などしていない。

 

つまりジンはアイスヘルを生身で環境に適応して渡航したのである。

 

「師匠の料理を食べるのだから、この環境程度は乗り越えて当然よね」

「食道楽でこの大陸まで来れる奴はそうそういねぇよシオリ」

 

そしてジンへ向けて話しかけて来た少女がいた。

栗色のストレートロングヘアーに両サイドに大きなリボンを飾った完璧系美少女。

この食堂の副料理長であるシオリ・ミツルギだ。

彼女も生身でアイスヘルを自由に行き来出来る環境適応能力を持つ実力者である。

 

「あら、そうとも言えないわよ。貴方も含めてここに来れる人は大体常連客になるもの」

「まあグルメ食材の美味しさは文字通り次元が違うからなぁ……」

 

シオリが言うように自力で来れる強者は一度でもイストの店でグルメ食材を使った料理を食べれば常連になる。何せ美味しさの水準が違い過ぎるからだ。

 

「他の奴等はどうしたんだ?」

「ヒソカは資金調達の為に暗殺依頼を受けてアイスヘルを出たな。最近修行と食費で資金が減って来たから暗殺依頼受けるのと一緒に天空闘技場で稼いで来るってさ」

 

この食堂にはシオリ以外にもスタッフがいる。

一人はヒソカ=モロウ。

イストの弟子の一人であり、メビウス湖を越えて来たばかりのイストへ当時孤児だったヒソカがすりを行おうとして返り討ちにしたことが切欠で弟子となった。

と言ってもシオリと異なり料理ではなく、念能力の弟子である。

まあヒソカ本人もイストの料理を食べて食道楽に目覚めた影響もあり、この店で調理スタッフが出来るレベルで料理の腕はあるのだが……

趣味は戦闘と食道楽。資金調達は主に殺しや天空闘技場で行っており、強い奴を見つけては挑む戦闘狂である。

 

「進捗はどうなんだ?」

「う〜ん、流石に二人の暗黒大陸の渡航はまだ早いかなぁ。ヒソカは戦闘、シオリは料理術を中心に鍛えたけど流石に暗黒大陸で単独行動させれるレベルじゃないな」

「もう一人のスタッフは?」

「アイツは元々俺と一緒にメビウス湖の外から来てるんだ。今回ジンと渡航するルートは比較的安全ルートだから食材のレベルも高くないからパスらしい」

 

もう一人のスタッフは現在アイスヘルで食材調達をして店の外である。

 

「本題はシオリの包丁を作ろうと思ってな」

「え…?」

 

イストの呟きにシオリはきょとんとする。

 

「俺達の『皇帝の調理術』は市販品の包丁では耐えられん。つまり専用の包丁が必要になる」

 

『皇帝の調理術』とはイストの師匠である『神の料理人』と呼ばれる女性から教わった調理術を改良したものである。

星のフルコースと呼ばれる八つの食材を調理する為の技や『神の料理人』が唯一持たなかった戦闘技術などがあり超人技術は並大抵の包丁では耐えきれないのだ。

 

「確か師匠の包丁はデロウス包丁でしたよね?」

「そうだ。まあ戦闘だけならサブの包丁で足りるから星のフルコース以外だとデロウス包丁は使わないな」

「私も師匠と同じデロウス包丁が良いです!」

「残念ながらシオリはまだデロウス包丁扱うには未熟だ。それにデロウス包丁作れる職人はこのメビウス湖にいないしな」

「えぇ…」

「それに利便性に関してはデロウス包丁より良い『霊刀』を依頼してあるから今日来るはずだ」

「『霊刀』……お前、まさかクラフトに頼んだのか!?」

 

ジンは驚愕する。『霊刀』と呼ばれる特殊な物を売買している職人などこの世界では一人しか存在せず、有名な人物だからだ。

何せ『霊刀』とは念能力者にしか扱えない具現化系特有の出し入れを購入すれば誰でも行えるという特殊武器だからだ。

 

カランコロン

 

扉を開けると何処かの令嬢のように青いワンピースを来た女性が来店する。

 

「あら、あらあら。ジン、お久しぶりね」

「まさか……お前が来るなんてな……クラフト」

 

朗らかに笑う女性は一見お淑やかに見える女性だが、『霊刀』専門の鍛冶職人であり、作品の試し斬りの為なら他国の紛争地帯に行ってまで人斬りを行うという生粋の狂人だ。

しかも本人曰く戦争なら人を斬っても合法よねと民間人以外なら人を斬ってもセーフと考えるキチガイ。

トリプルハンターでありながら、殺害人数は軽く5桁を超える史上最悪の人斬り。

 

名はクラフト=レギンレイヴ。

 

ネテロが言った世界で五本指に入る念能力者の一人である。




星のフルコース
…本編ではアカシアのフルコースという名称ではなく星のフルコースと呼ばれている。まあそもそもブルーニトロ達もアカシア生まれる前から調理してるから名称違うよねという感じでこちらになった。

因みにイストの食堂の常連客は現十老頭だったり、ジンやクラフトなどの世界トップクラスの念能力者だったりします。

クラフト=レギンレイヴの詳細は次回の予定です。


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番外編〜5本指の念能力者②〜

クラフトの紹介回、ジンと並ぶならこれ位イカれてるよねという設定です。

アンケートを追加。
本編では描く予定ないけど原作の概念系が多い五大厄災に対抗して、メビウス湖に放つと人類を武力で殲滅しかねない危険生物達をまとめた『武力的五大厄災』を記載。旅行するなら何処に行きたいか興味ある方は答えて頂けると幸いです。



クラフト=レギンレイヴ

 

彼女の名を知る者達は極端に言えば二つに分かれる。

 

彼女の鍛冶職人としての技術だけを評価するなら

『世界最高峰の武器職人』だと言うだろう。

 

『霊刀』と呼ばれる具現化系の特殊武器を売買している唯一の人間である。

 

『霊刀』とはクラフト自ら作り上げた念能力で作り上げた武器だ。

 

軽くて強靭、しかも切れ味抜群。

 

しかしそれだけでは世に知れ渡る名刀だって再現出来る。

だが彼女の『霊刀』は念能力者にしか使えないというデメリットがある代わりに剣使いにとって二つの利点が存在する。

 

一つ目はメモリを消費せずに出し入れ自由なこと。

これは売買する際、登録を行うことで具現化系未習得であろうが、『霊刀』という出し入れ可能な発を会得する形になる。

つまり、持ち運びしなくて済む上にどの六系統の能力者であってもメモリすら消費しないで金さえ払えば手に入る念能力の武器だ。

何せ自身のメモリを消費せずに武器を使えるので、具現化系を装うことすら可能となる。

 

そして二つ目はこの『霊刀』は盗難防止の為に持ち主以外は使えない仕様になっていることだ。

登録時に『霊刀』そのものに購入者のオーラを混ぜ込むことで購入者本人以外は出し入れが出来ない上に遠隔操作で収納も出来るので、仮に奪われたりしようが、解除して再発動すれば手元に残る。

他にも購入者が死ぬと『霊刀』自身も消滅する仕様になっているので使い手を殺して奪う等は出来ない。

武器使いにとって困る要因の一つである盗難を気にしなくて済むわけだ。

 

 

 

一方彼女の否定派が言う場合、満場一致でこう言うのだ。

 

『アイツは史上最悪の人斬りだ』と……

 

何せ彼女にとって試し斬りは作品を作る度の必須事項である。

人斬りは本来犯罪行為であり、ハンターであってもそう簡単には行えない。

 

だが例外は存在する。

それが生死問わずの凶悪指名手配犯や戦争である。

 

つまり彼女は数十を超える作品が出来るとハンターサイトなどで犯罪者リストや戦争情報を漁って試し斬りが合法になる場所を探すのである。

 

そして数が多い程試し斬り人数が増えるので、率先して組織やら紛争地帯を選んで自ら飛び込み人斬りを行うのである。

 

本人曰く、

 

『合法ですからセーフ、セーフね♪』

 

と返り血浴びながら武器を振るう令嬢に多くの犯罪者や軍人は震えることになる。

 

あのルポの内戦で唯一死者を出さなかったと言われる伝説の傭兵部隊と言われる"石壁"ですら、彼女が介入した途端に形勢が逆転し、敗戦にまで追い込まれた程である。

 

ハンターかつ大義名分で人斬りをしまくっている彼女を恐れる者は多く、口々に史上最悪の人斬りと呼ばれているのだ。

 

だが彼女は紛れもない強者であり、幻影旅団に匹敵するA級賞金首組織である通称『黒の組織』を単独で壊滅させている。

その組織は薬物と殺しを行う黒スーツを来た奴等が数十人いる連中だったのだが、クラフトが新作を数十品作成した直後の試し斬りで狙われ、壊滅させられることになる。

 

彼女は具現化系能力者であり、ジンに匹敵する才能を持つ。その強さの一端を二つだけ紹介しよう。

 

一つ目は具現化系の真逆である物体を自身のオーラに変換する才能だ。

現実にある物体はおろか、他人の念能力で具現化した武器や念獣、果ては操作系で使われるアイテム等も自身のオーラに変換して無力化出来る。

クラフト曰く同じ物質でも生物は駄目だが念獣は可能と曖昧な部分もあるが、彼女へ具現化系やアイテムを扱う操作系は相性が最悪とも言える。

何せ彼女に触れた途端にオーラに変換されて無力化するからだ。

対抗出来るのは強化系や物体を伴わないオーラを放つ放出系、電気や炎といった物体にならない変化系になる。

 

二つ目に具現化していない物質でも隠を纏わせて透過させるという変態染みた技量を持つ。

しかも隠の技量がずば抜けている為、トップレベルの凝ですら見破れない程の精度まで持つせいで地雷や鋼線などのトラップを仕掛けようものなら、文字通り地獄絵図と化すだろう。

流石に同格であるジンレベルの凝ならクラフトの隠を見破れるのだが、念能力者の戦いにおける隠の攻略が出来ないことがどれだけ危険なのかは言うまでもない。

 

「ところで試し斬り相手(ヒソカ)はいないのかしら?」

「ヒソカは資金調達の為に暗殺依頼と天空闘技場に行ったよ」

「ふぅん…残念ね、せっかく簡単に試し斬り出来ると思ったのに」

「いや加減してやれよ。『霊刀』でクラフト来る話したら即座に資金調達という名目で逃げたぞ」

「まぁ失礼しちゃうわ。普段はちゃんと合意を取って試し斬りしてるもの。ヒソカは殺し合いで私は試し斬りで利害の一致してるわ」

「いえヒソカは大体手も足も出ずやられてますよ……」

 

シオリがジト目で言う。

ヒソカはかつて戦闘狂故にジンやシオリ以外にもクラフトへ挑戦したのだが、クラフトはヒソカを瞬殺する程には強い。

その後もヒソカはクラフトが来る度に挑んでは試し斬りしたいからと挑戦を受け続けて殺し合いをしていた二人である。

まだその頃はヒソカもイストのように挑む気さえ起きない程では無かったのだ。

 

「やっぱり風呂場で鉢合わせした際に本気の殺意を向けられたからだろうな」

「裸見られたから思わず『天下五剣』使っちゃったのよねぇ…」

 

ヒソカは戦闘狂だが、死にたがりではない。対等な殺し合いの果てに死ぬならともかく勝ち目のない相手に無策で挑んだりはしない。

そして試し斬りを行うクラフトは勿論常人からすれば発狂間違いなしの禍々しいオーラを纏ってはいるのだが、ヒソカにはまだやりようによっては勝ち目のあるレベルだった。

 

だが先日運悪くトレーニングの汗を流そうとシャワールームへ行ったヒソカと既にクラフトがシャワールームで浴びてたところへ運悪く遭遇。

裸を見られたクラフトが思わず、本気の『霊刀』シリーズである『天下五剣』の一振りを発動したのだ。

その剣は百に及ぶ死者の念を糧に作られた文字通り次元の違う禍々しいオーラを感じ取り、ヒソカは師匠と同類だと死の間際に学んだのであった。

 

 

 

当時のやり取りはこんな感じである。

 

 

「あ……」

 

ゾワァ

 

運悪くシャワールームでクラフトと遭遇したヒソカ。

この世の不吉を孕んだかのような禍々しいオーラを笑顔で放つクラフト。

 

ヒソカは理解した。一秒後に自分は殺される。強者との戦いを望む自分がなす術なく蹂躙されて殺される光景をイメージしてしまった。

 

 

(バンジーガム、いや伸びる前に斬られる。

ドッキリテクスチャー?そもそも防御には使えない

ならば硬、いや硬ですら切れる『霊刀』には足りない

今終わっても良い。だからありったけを……)

 

かつてない程の強大なオーラがヒソカの身体から放出される。

 

天賦の才を持つものが全てを投げ出してようやく得られる程の力、目の前の怪物に対して生存本能がかつてない程に研ぎ澄まされる。

 

「バ…」

 

グシャアアア!

 

だがそんなヒソカの生涯最強のオーラを持ってしても目の前にいた怪物には瞬殺されてしまった。

 

残念、ヒソカの旅はここで終わってしまった……

 

「こりゃあ蘇生包丁じゃ無理だなぁ。まさか微塵切りにされるとは」

 

ドボドボドボドボ

 

とある水をヒソカだった肉片にかけるイスト。すると肉片から細胞分裂が発生して集合体となって再生する。

 

「おはようヒソカ」

「ああ、おはよう……ここは天国で良いのかな♠︎」

「いやここは現実で蘇生した。何か言いたいことはあるか?」

「レディーファーストを教えて欲しいな……」

 

殺人鬼はマナーを知るべきだと学習したのであった……

 

 

 

 

他にも住所割れてる伝説の暗殺一家へ試し斬りに行こうとしたらネテロに止められたとか……

天空闘技場で試し斬りのつもりでバトルフロンティアに乱入し、デモンストレーションだと調子に乗って自信満々だったフロアマスター達を次々瞬殺したり……

フロアマスター殺害数が20を超える手前で出禁にされたので、腹いせに天空闘技場を両断したり……

物騒なエピソードに事欠かないのであった。

 

「ジン、貴方が会長やれば良いのに〜」

「俺は会長の意思は継ぐことはあっても面倒くせぇのはお断りだ。お前こそ会長になれば良いだろう?」

「え〜私には無理よ〜私戦闘苦手だからぁ。荒事は専門家に任せるべきよ〜」

「会長半殺しにしたり、A級賞金首組織を一人で壊滅させた奴が何言ってやがる……」

「だってぇ会長は全盛期の半分しかないし〜。戦闘はあくまでサブだから無理よ〜。まあだから十二支んなんてお遊び集団が出来るのよね〜」

 

溜め息を吐くクラフト。

ジンが言った言葉は事実であり、かつて伝説の暗殺一家を試し斬りで執事諸共皆殺しにしようとしたクラフトはネテロに実力行使で止められた際に邪魔をしたネテロを半殺しにしている。

ネテロとクラフトの相性は最悪と言っても良く、百式観音は具現化系の為、クラフトに百式観音が触れた瞬間オーラに変換されて無力化出来るのだ。

勿論百式観音が無くてもネテロは強いのだが、それはジンやクラフトのような世界トップクラスの念能力者相手に発を使わずに勝てる程かと言われればそうではない。

本人が言ったように全盛期の半分しかないネテロでは太刀打ち出来なかったのである。

 

彼女の価値観として十二支んは最高幹部を名乗る割には自分に戦闘力で劣る者ばかりな為、会長に同情してると言っても良い。

彼女は自分の強さを自覚していない。

何せ彼女にとって優先すべきは本職の霊剣作りであって、自衛の為の戦闘力など無頓着なのだから……




クラフト=レギンレイヴ
系統:具現化系
…ジンと並ぶ五本指の念能力者。『霊刀』を売買する鍛冶職人。
本人曰く戦闘はサブなので苦手らしいが、ジンと同レベルには強い。
そして『天下五剣』と呼ばれるヒソカですら挑む気が起きない程の悍しい『霊刀』シリーズが存在する。

ジンがメモリ無視の発習得に対して彼女は具現化系の真逆である物質を自分のオーラに変換する才能を持つ。
そのせいで現実の武器はおろか、念能力で作られた物質全般が通じない。
武器や念獣、アイテム使う操作系とかも効かないというブチギレレベルである。

対処法は肉体の強化系や物質に変換しない変化系or放出系なら有効。
しかし彼女はそれ抜きでもジンに匹敵する念能力の扱いに長けており、しかも彼女が持つ『霊刀』が強力である。
まあ流石に硬を切れるのは彼女が剣の技量も踏まえてではある。

五本指の念能力と言われる技量
・具現化系の真逆である物質を自身のオーラに変換
・物質をオーラ変換は生物は駄目だが念獣は可能
・具現化系の念能力をオーラで取り込んだ場合は能力の詳細を把握可能。但し真似出来るわけではない。
・現実の物質をオーラで取り込むと製造方法を知れる
・他者の念を混ぜ込む特殊な『霊刀』を製造する
・死者の念を武器に混ぜ込むことが出来る
・具現化してない物質でも隠が可能。見えない暗器と化す。

本編で公開してない能力設定とかあるけど、具現化系極めたらこれ位やらかせるよねというイメージ。
因みに他の五本指の念能力者は賛否両論あると思うので登場しない予定。

【暗黒大陸東側の武力的五大厄災】
・草食の森最深部にある世界樹を主食とする肉食撲滅の為に怨を極めた【クンフーパンダ】
・全員が天まで届く長髪と強化系の極致と言える身体能力を持つ奴等が集まる【ゴンさんの村】
・周囲の金属を取り込んで成長し、あらゆる金属兵器となって襲い掛かるだけでなく、流動体にもなれる為に物理攻撃が通じない殺戮兵器【液体金属生命体レアメタリカ】
・キメラアントを飼い慣らし、成長したキメラアントの王をコロッセオでのタイマンで殺し主食とする戦闘狂なアリクイ【バトルアリクイ】
・ゴキブリ並みの生命力と異常な繁殖力で個体数を増やしまくり、万を超える数の暴力を一匹単位が竜のスケールで行う【軍隊竜の巣】

※因みに馬王を除き、東側より西側の方が武力的には強いとする。



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番外編〜ヨークシン抗争ダイジェスト①〜

久しぶりに投稿。ちょっと短めですが、ヒソカが漁夫の利狙うならこんな感じになるでしょうという作者の勝手なイメージ。

ヒソカは戦闘狂であっても自殺志願者じゃないので……

だいぶヒソカのキャラ設定変わってますがそれでも良ければどうぞ。


ヨークシン

 

ヨルビアン大陸の西端にある都市で毎年9月1日~10日には、世界最大の大競り市 ヨークシンドリームオークションが開催されている場所だ。

 

公式の競りだけで10日間の日程中、数十兆ジェニーの金が動くと言われている。

 

その中でもアンダーグラウンドオークションはマフィアが開催するオークションで、珍品・希少品・非合法な品などが売り買いされている競売市だ。

 

だが幻影旅団によって襲撃され、オークション会場にいた人々は行方不明になった。

気球での逃走を行い、マフィアの連中が追手として向かうも幻影旅団のメンバーの一人に壊滅。

更に追手として放たれた精鋭メンバーである陰獣の4人も倒される。

本来ならば、これでマフィアンコミュニティーは手詰まりであった。

 

そう原作ならば……

 

 

「カカカ、少しはやるようだわいのう」

 

ズオォォ!

 

禍々しいオーラが放たれる。

十老頭が超人足り得ない権力者だったのは昔の話、今のメンバー達は全員が百戦錬磨の怪物である。

幻影旅団の周囲に数十を超える仮面を付けた武術家達が集う。

無手や武器を持つ者達とそれぞれ異なるが全員が武術において達人級に至った強者だ。

 

そして率いるのは十老頭が一人、拳魔邪神の二つ名を持つシルクァッド・ジュナザード。

殺人拳において邪神と崇められる程の怪物だ。

 

幻影旅団vsジュナザード&シラットゲリラ部隊

 

 

 

 

 

 

抗争から数日後、オークション会場に一人の女性が新聞を見ながら驚いていた。

 

「うわぁ〜ジュナザードが殺しそこねたって聞いてびっくりしたけど。勢力が集いすぎね〜。国を滅ぼしに行くつもりかしら〜」

 

新聞から目を離し、とあるビルの窓からヨークシン内を歩く連中を見ながら世界で五本指の念能力者の一人であるクラフト=レギンレイヴは呟く。

 

背中に"殺"の字が書かれた隊服を着て帯刀している"鬼殺隊"

同じく黒い隊服に帯刀しており、普段はとある王族の警護をしている"護廷十三隊"

世界中のあらゆる海を支配下におきながらも、仁義の通った海賊達"白ひげ海賊団"

他にも十老頭子飼いの精鋭部隊達が続々とヨークシンに集っていた。

 

「流石に忍者である"うちは&千手連合忍部隊"や十老頭最強と言われる"空中海賊"は表に出てないわね〜。

A級賞金首集団と一つでも渡り合える勢力が10も揃うとか普通に考えたら悪夢よ〜」

 

正直な話、幻影旅団がジュナザードから逃げられたのは悪癖である油断や慢心のお陰に他ならない。

本来ならば敵に合わせて手加減するなど愚の骨頂なのだが、幻影旅団で一番の戦闘力があると言われるウボォーギン相手に力量を合わせて戦える余裕がある程に十老頭メンバーは強いのだ。

彼等の子飼いの部下達も決して侮れる存在ではなく、陰獣など前座よと言わんばかりに念能力と武術を使いこなす精鋭部隊であった。

まあそれでもジュナザード子飼いの部隊に犠牲者を出しつつ死者一人も出さずに逃げ切った幻影旅団を褒めるべきである。

その代わり、ウボォーギンがジュナザードとは異なるマフィアの勢力に拉致られたり、襲撃に参加していた幻影旅団メンバーの数人が重症負ったりと痛み分け状態と言える。

ジュナザードに関しては果実をムシャムシャと齧ってピンピンしているのは余談である。

 

他にも魔神部隊やホムンクルス部隊などという人ではなく、異形の怪物達が集う集団も存在するのだが、流石にオークション会場の醜聞になるといけないからか人目の付く場所には配置されてないらしい。

 

「唯一の救いは十老頭達が共闘せず、競争し合ってる位かしら〜。寧ろ連携取れずに足並みが乱れた方が良かったかもしれないけど〜」

 

ジュナザードが逃したことで、十老頭達は幻影旅団狩りに本腰を上げた。

原作のような競売オークションで賞金首にするなどというマフィアの顔に泥を塗るような行為ではない。

十老頭自ら勢力を率いて旅団狩りを開始したのである。

オークションの参加者達は幸せ者だ。

十老頭は基本的に素面の人間達には危害を加えたりしない紳士だからである。

寧ろ旅団に襲われてれば助ける事だってするだろう。

但しヒーローではないので人質になろうが、要求には殺意を持って答えるので人質救出率に期待してはいけないが……

オークションの参加者が幸せな理由は旅団と十老頭の抗争に巻き込まれれば念能力を使えるプロハンターだろうが流れ弾で容易に命を落とす抗争が始まろうとしているからだ。

 

「で、本当に幻影旅団の団長と戦いたいのかしら〜ヒソカ?」

「そうだね。その為に蜘蛛に抜けると宣言してきたし♠」

 

クラフトとテーブルを挟んで座っているのは幻影旅団でNo.4だったヒソカである。

先日、幻影旅団メンバーを集めてヨークシンを襲撃するという自殺行為を団長自ら宣言したことで、泥船どころか爆薬を詰め込んだ船と化した幻影旅団にヒソカは襲撃を止めるべきと抗議するも聞き入れられず幻影旅団を辞めざるを得なかった。

というかオークション襲撃前までに辞めてなければメビウス湖にいる限り、十老頭がヒソカの首を獲るまで刺客になり続けているのは目に見えていたからだ。

ヒソカは戦闘狂だが、自殺願望があるわけではない。

津波や大地震、隕石や樹海という環境破壊攻撃をしてくる連中は最早災害と呼ぶべき存在である。

先日戦った"空中海賊"の部下であり、拳一つで天候すら変えてしまうナチュラルボーンヒーローすら下っ端だと聞いて幻影旅団が勝てるなどという幻想は捨て去ったのだ。

後は死んだ人間を生き返らせて人間爆弾にしてくる通称"卑劣様"とは死んでも敵対したくない1位にランクインした位にヒソカは現十老頭の子飼いである部隊はイカれていると知ったのである。

 

勿論、襲撃を聞いておいて止めるなど裏切り行為に等しい。

おまけに次会う時は団長の首を取りに行くなどと宣言すれば幻影旅団から粛正待ったナシである。

それでも五体満足で逃げ切れる辺り、ヒソカの実力は高いのだが、それでもヒソカ単体で幻影旅団vs十老頭の抗争の中で団長とタイマンでやり合うのには勢力が必要だ。

尚、十老頭と共闘という選択肢は存在しない。

彼等は旅団狩りというゲームをしており、ヒソカという外来勢力はそもそも不要だからだ。

 

「シオリ達は〜グリードアイランドを競り落とす為に資金調達をしてるのよね〜」

「そちらも興味はあるけど今はこっちが優先かな◆」

「良いわよ。その代わり〜旅団3人位は新作包丁で試し切りしたいから手伝ってね」

「じゃあ交渉成立だ♥」

 

漁夫の利を狙うべくヒソカはクラフトという協力者を得て幻影旅団と十老頭の抗争の中に入るのであった。




因みに他作品の強者達が現十老頭の子飼いの部隊に紛れています。

他にも公式チートな"分かってんだよおじさん"とか閻魔という名の剣を使う二番隊隊長とか、初代剣八とか跋扈してるけど下っ端だから関係ないよね(遠い目)


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