七色向日葵 (ブランチランチ)
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第1話 

初投稿、ドキドキしますね。


1話

 

 

米国某所、F.I.S.の研究施設にて、完全聖遺物ネフィリムの起動実験が本日行われる。

他の聖遺物とは違い自立兵器であるネフィリムが制御不能に陥った場合に対処するため、セレナ・カデンツァヴナ・イブは実験室とは別の部屋で開始を待っていた。

 

「マリア姉さん、そんなに心配しないで、マムだって念のためっていってたでしょ」

 

自身にしがみついて離れない姉に対し困ったという色を含んだ笑顔で話しかける。

 

「そんなこと言ったって心配なものは仕方ないじゃない、私は、まだ上手くシンフォギアを纏えないからセレナと実験に参加出来ないし・・・」

 

姉のマリア・カデンツァヴナ・イブはセレナに抱きつきながら呟く。

 

シンフォギア、聖遺物のエネルギーを用いて構成される鎧型武装であり、適合者の身体能力を上昇させ強力な防御能力を持つ異端技術の結晶である。そして、シンフォギアを纏えるものを装者と呼ぶ。しかし、適合者の存在は極めて少ない上に、ある程度適正を伸ばさなければシンフォギアから解放されるエネルギーにてダメージを負ってしまう。

 

マリアは装者としての訓練途中であり戦闘行為を行えるほど高い適正値には至っていなかった。今回は戦闘の可能性があると聞かされて、マムことF.I.S.の老女性技術者のナスターシャ教授に頼み込み見学させてもらっている。

 

(いつも守ってくれるマリア姉さん、望んで纏ったギアじゃないけど、この力でマリア姉さんたちを守りたいと思ったのは私・・・大丈夫・・・守るから)

 

離れないマリアを抱き返し実験の開始を待つ。

 

 

アラームが鳴り響き、轟音が幾度となく響く。歌を介さずの強制起動によりネフィリムは制御不能に陥った。起動時に予想以上のエネルギーを吸収したネフィリムは、強固な実験場を破壊し参加した技術者や実験を視察にきた米国要人に襲いかかった。

 

即座にセレナもギアを纏いネフィリムを止めるべく動くが、巨体に見合ったパワーと見合わない俊敏さを前に苦戦をしいられている。

 

「何をしている!!、とっととネフィリムを止めろ!!」

「来るなー!!、あーー」

「私を助けろー!、ギャーーー」

 

ネフィリムに襲われて叫ぶ研究員や要人、ネフィリムは羽虫を払うように腕を振るうと数人の人間が弾け壁や床を真っ赤に染める。

 

「セレナーー!!」

 

「マリアやめなさい!!」

 

マリアは叫ぶことしかできない。

研究員や要人を助けようとネフィリムに立ち向かうたびに剛腕による攻撃をその身に受けるセレナ。

傷つく妹に駆け寄ろうとするがナスターシャ教授により引き止められる。

 

状況は最悪だった。

ネフィリムを止める為にはセレナの絶唱が必要になる。しかし、絶唱は装者に多大な負荷をかける。通常状態ですら命を落とす危険があるが、セレナは度重なる攻撃で瀕死の手前までダメージを負ってしまっている。

 

「誰か・・・誰か、セレナを助けて」

 

「マリア・・・」

 

涙を流しながら絞り出すような声でマリアは願った。セレナが助かるようにと、、、

 

「あら、じゃあお姉さんが叶えてあげるわ」

 

「っ!!」

 

驚きながら言葉の聞こえた方を向くと、この部屋に似合わない人物が立っていた。

 

緑の癖っ毛で白いシャツ、赤のチェックが入ったベストに同じ柄のロングスカート、首元に黄色のスカーフを付けている女性。さらに室内であるのに日傘をさしている。

 

「あなたは・・・」

 

「貴方はどこから侵入したのですか!?」

 

「さぁ?、私も急に飛ばされて混乱してるのよ、取り敢えず助けてくるわね」

 

言い淀むマリアに代わりナスターシャ教授が問いただすが答えは返ってこない。

謎の女性は日傘をたたみ激闘を繰り広げるセレナの元に散歩をするかのような気楽さで歩を進めた。

 

 

ネフィリムに追いすがり攻撃を受けながらなんとか周りの人達を逃したセレナは膝を突きながらネフィリムと対峙していた。

 

(何とか、時間は稼げた、、、後はネフィリムを止めるだけ)

 

痛む体を無視して覚悟を決める。

セレナが息を吸い込んだと同時にネフィリムが襲いかかる。回避の為に動こうと体に力を入れるが激痛の為動けなかった。

 

(姉さん!!)

 

迫るネフィリムを前に目をつぶってしまうセレナ。

打撃音が響き渡るが衝撃が来ないことに恐る恐る目を開けると見知らぬ女性がネフィリムの腕を片手で受け止めている。

 

「えっ?なんで?え?」

 

ネフィリムの一撃をにこやかな笑顔で受け止める女性に混乱するセレナ。

ネフィリムも今までと違う結果に戸惑っているようだが、即空いている左腕で追撃をかける。女性はネフィリムの腕を離し、ひょいと体を逸らし避ける。更に噛み付くネフィリムだが、近づいた顎に女性がアッパーを入れる。傍目からは腕を軽く持ち上げたようなアッパーなのにネフィリムの顔が持ち上がりそのまま後方に体勢を崩した。

 

「あら、頑丈なのね、でもお終いよ」

 

更に広角を上げて笑う女性が右手を引き絞りネフィリムに拳を放つ。いわゆるテレフォンパンチであるが、引き絞って溜めた力に腰を使い体の力を乗せたパンチはネフィリムに風穴を空けそのまま残りの体は壁にめり込んだ。その後、うめき声を上げながら元の蛹型に形を変えていった。

 

「終わったの?」

 

圧倒的な力によって活性化前の蛹型に戻ったネフィリムを確認するも半信半疑なセレナであったが、女性がそれをひょいと拾いこちらに投げてきた。

 

「これで良いかしら?」

「助かりました、あ、ありがとうございます」

 

近くまできた女性にお礼を言いながら立ちあがろうとするが力が入らない。

 

「あっちの子も泣きながら来てるみたいだし少し横になってなさい、あら?」

 

「そう、、させて、、もらいます、力がもう」

 

「紫も勝手ね、わかったわよもう、ご褒美にこれをあげるわ、それじゃあね」

 

優しく横になる体を支えてくれた女性はセレナの右手に何かを握らせた。

 

「??種?、あれ?」

 

右手の中身を確認すると何かの種があり、一目右手を確認した一瞬で女性を見失ってしまった。種を落とさないように右手を閉じると同時に意識が遠のいていく。

 

後に種を検査した結果サネカズラという種と判明し、この女性をナスターシャ教授の証言を元にして米国が全力で捜索するが影すら捕らえることが出来なかった。

 

6年後になるまでは・・・



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第2話

UAやお気に入りが増えると嬉しいですね。
楽しんで頂けたら幸いです。


2話

 

アリス・マーガトロイドは困惑していた。

急にスキマに落とされた先は見たことない建造物の中、しかもライブ途中と思われる場所でとんでもなく賑わっている。幻想郷で人里の人間が集まってもこんなにはいないのでは?という疑問が浮かんで現実逃避する程に・・・

 

「また、とんでもない所に飛ばしてくれたわね、しかも明らかに不法侵入っぽい場所じゃない」

 

自分の周りには照明器具がステージを煌びやかに照らしており壇上の主役を彩る。

 

「まぁ、終わるのを待ってこっそりと退場すれば良いかしら?歌はとってもいい感じだしこの子達にも聞かせましょう」

 

自身が作成した中でよく使用する二体の人形を手すりに座らせる。

名前は上海と蓬莱、アリスが作成した人形でそれぞれの型で初めに作成した人形である。

 

舞台では赤の歌姫が会場へ呼びかけ、観客がそれに応え熱狂の声を上げる。動きも勢いがあり快活な声でアグレッシブな振る舞いのためか明るい女性に感じる。方や青の歌姫は凛とした声でキレのある動きによりクールな女性に感じるアリスである。

 

(赤は魔理沙ぽいかしら、青は咲夜?どっちもこんな大勢の前で歌なんて歌わないだろうけど)

 

歌姫を身近な知人である白黒魔法使いと瀟洒なメイド長で例えてみたりとアリスなりに楽しんでいる。

上海は手すりで踊りを真似して動きまわり、蓬莱はリズムに合わせて体を揺らす。

 

 

 

 

別室

 

「フォニックゲイン順調に上昇中」

「セーフティー問題なし」

「目標値まで残り15%を切りました」

 

スタッフより上がる報告に頷きながら腕を組む男。特異災害対策機動部二課の司令官である風鳴弦十郎は推移を見守っていた。

 

今回は完全聖遺物のネフシュタンの鎧起動実験であり、ライブを通して奏と翼の能力を引上げ起動に必要なフォニックゲインを集める計画だ。

 

(この調子なら数分で起動となるか?)

 

完全聖遺物故に大量のフォニックゲインを必要とする為、秘密裏に一般人を巻き込んだ今回の起動実験の成功が見え始めた。

 

「フォニックゲイン急上昇!?」

「セーフティ保ちません!!」

「起動っ!いや、暴走します!!」

 

報告と共にネフシュタンの鎧よりエネルギーが溢れ、周囲の機材が爆発し天井や柱が崩れた。

 

 

同時刻 ライブ会場

 

観客席の床が突如隆起し爆発、粉塵を巻き上げビルのように巨大なノイズが出現する。

巨大なノイズは人間大のノイズを放出し、現れたノイズは瞬く間に周囲の人間を襲う。

 

ノイズ、認定特異災害と呼ばれる脅威であり、人に触れる事で自身もろとも炭素の塊に転換する特性を持つ。更に位相差障壁という自身の存在する比率をコントロールすることで物理干渉を減衰または無力化させる厄介な能力を有する。

 

現れたノイズにより会場は地獄となった。

次々と炭素に変えられる観客、我先に逃げようとするもの、家族を探すもの、泣き叫び逃げ惑うもの、抵抗できるものはいなかった。

 

「ノイズの好き勝手にさせるかよ!!翼行くぞ!!」

 

「奏!!司令からはまだなにも」

 

「ダンナからの指示を待ってられるか!!槍と剣を携えてるのは私たちだけだ!!」

 

舞台から飛び、詠唱によりシンフォギアを纏う。そのまま空中から槍を投げノイズを瞬く間に葬る。シンフォギアにより位相差障壁に干渉してノイズの存在を固定し攻撃可能とする。更に聖遺物の力により強力な攻撃を可能としアームドギアという武器を形成する。

 

奏より放たれるガングニールの槍は空中で分離、増殖し投げるたびに複数のノイズを殲滅する。

奏に遅れて翼もシンフォギアを纏い、天羽々斬のアームドギアである剣で周囲のノイズを切り刻む。

奏も翼も何とか逃げようとする人達の盾になるように対峙するが大量のノイズの前に限定的なものになっている。

 

「クソっ!!攻めきれない、、、!?早く逃げろ、ダァーーーーーー!!」

 

奏は攻撃の合間に背後で立ちすくむ少女を確認すると叫び、ノイズの攻撃を一身に受ける。

槍を高速で回転させ盾とするがノイズの猛攻の前に槍や自身のアーマーが欠けて後方に飛散する。

何とか防ぎ切るが槍から欠けた破片が弾丸の様に少女の胸に突き刺さり鮮血が舞い倒れてしまう。

 

「頼む!!目を開けてくれ!!生きるのを諦めるな!!」

 

駆け寄り叫ぶ奏に少女は瞳を開ける。

瀕死の状態ではあるが、まだ助けられる可能性があることにひとまず安堵し覚悟を決める。

 

「一度、頭ん中空っぽにして目一杯歌ってみたかったんだ。こんなに聞いてくれる奴がいるし・・・いいよな」

 

一筋目から涙を零しながらノイズに向き合い軽く息を整える。決死の覚悟で絶唱を行おうとすると、、、

 

「あら、何をする気なのかわからないけど、あんな奴らに貴方の歌は勿体ないわ」

 

ふわりと空から金髪の少女が武装した人形たちを伴って舞い降りた。

 

「お前は、、、」

 

「私はアリス、この子達は上海と蓬莱よ。

貴方達のお陰でこの子達が攻撃出来るように改良できたわ。すぐに手当するから少し大人しくしてちょうだい?」

 

「何を、言って、、」

 

「上海、蓬莱行きなさい!!」

「シャンハーイ!!」

「ホーラーイ!!」

 

奏の問いかけを無視して上海と蓬莱に指示を出す。

自身の名前を鳴き声の様に叫び突撃する二体を先頭に同型と見られる人形達は後に続く。

赤色のドレスを見に纏いランスを構えた蓬莱はそのままノイズに突撃を行い進路上のノイズを貫通していく。

青色のメイド服の様な様相の上海は剣や鉈を携つつレーザーを放ち蓬莱を援護する。

統率された人形達は数では劣るものの確実にノイズを減らし追い詰めていく。

 

「お前、本当になにもんだよ」

 

「そんなのは後よ、取り敢えずこっちの子の応急処置はするけど、こんなにひどい怪我私の手に負えないわ。その次は貴方よ」

 

奏の問いかけより、手当を優先し止血を行なって応急処置をする。

 

程なく翼と上海、蓬莱の活躍によりノイズは撃退する事が出来た。

奏はリンカーの効果時間が切れたことによりシンフォギアが解け疲労とダメージの為横になる。

 

「奏!!大丈夫なの!?それとあの人形は何!!」

 

「何とかね、あの人形は上海と蓬莱だってさ」

 

「上海と蓬莱?確かにそう言いながら攻撃してたけど、、、いやそうじゃなくて」

 

「あっちで人形に指示してる奴がいるだろ?詳しくはわからないけどアリスが手伝ってくれたのさ」

 

翼は指差された方を向くと、アリスが上海と蓬莱に指示を出して通路の瓦礫の撤去や瓦礫の下敷きになってる人達の救出を行っていた。

 

「私も手伝ってくる。奏は安静にしててね」

 

「頼んだ。私は動けそうにない」

 

奏の事で頭がいっぱいになっていた翼はアリスの行動をみて自身も救助を手伝うべく小走りでアリスの元に向かう。

 

その後到着した自衛体や救護チームにより救助活動が本格的に行われた。

この時もアリスが活躍した。

上海や蓬莱を使用する事で、重篤な患者を会場外まで空中経由で救急車に乗せることで従来より早く搬送でき、少なくない命を助けることが出来た。

 

 



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無印第1話

無印に突入です。
ひびみく好きです。


無印1話

 

私立リディアン音楽院高等科、トップアーティストの風鳴翼が在籍してることで今大人気の学院である。そんな通称リディアンに入学した立花響は小日向未来と共にある場所を目指していた。

 

「未来〜早く早く〜やっと終わったんだから早くいこ〜よ〜」

 

「ちょっと響そんなに引っ張らないで、あの人は逃げたりしないから」

 

「え〜早く行って少しでも長くお話ししたいんだもん」

 

「まったく、響ったら」

 

ぐいぐいと未来の手を引っ張り目的の場所へ急ごうとする響に困った風を装いながら自身も楽しみで仕方ない未来。

 

リディアンから程近い商店街、花屋とカフェを両立させた店舗につく。

 

「あら、いらっしゃい。席はどこにする?カップル席も空いてるわよ?」

 

店主を務める風見幽香が響と未来を迎える。

 

「幽香さん!!こんにちは、カップル席も魅力的ですが幽香さんといっぱいお話ししたいんでカウンターでお願いします!!」

 

「響ったら、もう、幽香さんお邪魔します」

 

「カウンターね、未来ちゃんが残念そうにしてるけど本当にいいの響ちゃん、ふふ」

 

「幽香さん!!」

 

元気いっぱいの響の返事に、クスクスと未来をからかう幽香、未来はびっくりしながら顔を赤らめる。

 

程なくカウンター席につく二人。

 

「今日はお祝いで貸切よ、もてなしてあげるから遠慮なく楽しんでちょうだい」

 

「わぁ〜、ありがとうございます、目一杯楽しんじゃいます♪」

 

「ありがとうございます、響ったらあんまりはしゃがないの」

 

「だって幽香さんが祝ってくれるんだよー、私の気持ちは天井知らずに上がっちゃうよ!!」

 

「もぅ」

 

「今日は特別よ、はい、どうぞ」

 

はしゃぐ響を横目に呆れる未来。

響と未来の前に生クリームとイチゴでトッピングしたケーキ(1ホール)とチーズタルト(1ホール)、フルーツタルト(1ホール)にクッキー(山盛)、チョコレート(山盛)等を次々に置いていく。最後にハーブティーをカップに注ぎ置く。

 

「わぁ〜♪」

「ゆ、幽香さん、、、」

 

所狭しと置かれたお菓子に目を輝かせる響と対象的に引いた声をあげる未来。

 

「幽香さん、こんなに食べられませんよ」

 

「大丈夫よね響ちゃん、それに今食べ切れなくても持って帰れる様に包んであげるわ。飲み物はメニューにある奴ならすぐ出せるからおかわりはなんでもいいわよ」

 

「私は食べれます、持って帰ってもいいなんて、やったね未来」

 

「響ちゃんはさすがね、それに、お腹いっぱいになったら未来ちゃんが響ちゃんにあ〜んって食べさせてあげればいいじゃない」

 

「幽香さん、それ最高ですね!!」

 

「響っ!!幽香さんも!!あんまりからかわないで下さい!!」

 

「いやよ、貴方たちを揶揄うのが私の生き甲斐なのよ」

 

ストレートに気持ちを表現する響とクスクスと笑いながらからかってくる幽香に顔を赤くして抗議する未来だが心地よい雰囲気で内心ではとても楽しんでいる。

ただ、反射的に恥ずかしく声を荒げてしまうだけなのだ。

 

「まぁ、未来ちゃんの可愛い姿も堪能したし学校でのお話し聞かせてくれるかしら響ちゃん?」

 

「もちろんです!!赤面した未来も可愛いですけど学校での未来も可愛いです!!」

 

「響ぃ〜」

 

「ふふ、楽しみね」

 

三人の楽しいお茶会は、オーバーヒート気味の未来を置き去りにして始まった。元気爆発で喋るのと食べるのを器用に行う響は学校での出来事を幽香に話す。新しく出来た友達のこと、先生に怒られたこと、学食の事、風鳴翼に会えないこと、未来との寮生活のこと等怒涛の勢いで話していく響。

幽香は時に未来に追撃を行ったり、お茶やお菓子のお代わりを出したりしながら聞いていた。

 

日も傾き始めた頃に楽しいお茶会はお開きとなった。

 

「はい、これはお土産よ未来ちゃん、響ちゃんに渡すと帰るまでになくなりそうだから貴方に渡しておくわ」

 

「ありがとうございます。改めて今日は貸切でお祝いしていただきありがとうございました」

 

「ありがとうござました幽香さん!!お話しも楽しかったし、お腹も大満足です」

 

お土産を受け取り、ぺこりと頭を下げる未来と自身のお腹をさすりながらニコニコとする響に幽香もニッコリと笑いかける。

 

「いつでも来なさい、困った時でも、友達とお喋りする時でも、いつでも歓迎するわ。こんなにサービスするのは貴方達だけなんだから」

 

「っ〜〜幽香さんっ!!」

 

感極まり、抱きつく響を受け止めて頭を撫でる幽香、未来はニコニコと二人を眺めている。

 

抱擁も終え帰路につく二人は自分達の恩人に改めて感謝しながらリディアンを目指すのだった。

 



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無印第2話

翼さんってCあるんですね。
A、あってもBだと思ってました。


無印2話

 

ツヴァイウィングのニューシングルを買いに来た響はノイズと遭遇してしまう。

途中親とはぐれたと思われる女の子を発見し一緒に逃走をはかるも窮地に追い込まれる。

絶対絶命の窮地にガングニールが覚醒しシンフォギアを纏い窮地を脱出し駆けつけた翼によってノイズは殲滅された。

 

そんなこんなで響はリディアン地下の二課本部に連行された。

 

「ようこそ!!人類守護の要、特異災害対策機動部二課へ!!歓迎するぞ!!」

 

大柄な男による歓迎の声の後にクラッカーによる歓迎を受ける。

 

「はーい、笑って笑ってお近づきのあかしにツーショット写真〜」

 

「いーやーですよ〜手錠をしたままの写真なんて悲しい記憶に残っちゃいますよ〜」

 

怒涛の出来事に困惑を強める響

 

「司令、流石に彼女が可哀想です。ふざけるのもその辺で・・・」

 

「翼は硬いな〜みんな無事、んでもってノイズも撃退出来たんだから祝いみたいなものさ」

 

「もう、奏はお気楽なんだから」

 

司令と呼ばれた男の影からひょいと出てきて翼に話しかける奏に翼は苦笑の表情で答える。

 

「つば!?翼さんだけでなく奏さんまで!!ツヴァイウィングのお二人が!!?私の前に!?CDじゃない生の声!!」

 

「おっ!!私たちの歌聞いてくれてるのか、嬉しいねぇ、な!!翼」

 

「まぁ、嬉しいけど」

 

驚く響に、ニカっと笑いながら話す奏とぷいっとそっぽをむきながら呟く翼。

 

手錠を解かれて自己紹介となった。

 

「まぁ、翼と奏君は知ってるみたいだな、俺は風鳴弦十郎、ここの責任者だ」

 

「はぁーい、できる女、天才考古学者の櫻井了子よぉ」

 

「私は緒川慎次と申します。こちらでエージェントとツヴァイウィングのマネージャーも勤めています。こちらを」

 

「これは、結構なものを、初めて名刺もらいました」

 

名刺を受け取りほえーと、初めて貰った名刺に感動してると奏と翼が続いて自己紹介する。

 

「んで真打登場、ツヴァイウィングでシンフォギア装者、天羽奏だ!!装者としては休業中だけどな」

 

「風鳴翼よ私も装者を務めている」

 

「あーもぅ、硬いな翼はもっとバーンとなんかないのか」

 

「そんな事言ったって・・・っていうか奏だってそんなに派手なことしてないじゃない」

 

「真打って振っただろ?締めなんだから盛り上げなきゃ〜」

 

「もぅ、奏は意地悪だ」

 

「なんというか、すごい仲良しですね奏さんと翼さん、それに普段と違って翼さん可愛いです!!」

 

「そうなんだ、翼はかわいいんだ!!そこに気づくとはやるな立花!!」

 

「奏!!立花も何を言っている!!私は防人として」

 

響と奏の話が盛り上がり頬を赤らめながら抗議する翼。三人が周りを無視して盛り上がるのをどこで話を切ろうかと思案する大人達は苦笑しながらタイミングを待っていた。

 

 

 

 

ノイズの警報が出た事で早々に店を閉めた幽香は、街の喧騒とは無関係にハーブティーを楽しんでいた。

 

暫くすると耳障りな警報が止んだ。早々に店を閉めた事で、特にやることがなくなった幽香は花を愛でていると珍しく携帯電話が鳴った。

 

「はい、どうしたの?」

 

「すみません幽香さん、響がまだ帰ってきてないんですが、そちらに来てませんか?」

 

「今日は来てないわよ、まだ帰って来てないの?」

 

「はい、CDを買いに行ったのですがまだ帰ってなくて、携帯も繋がらなくて、それに警報も出てたから心配で・・・」

 

「大丈夫よ未来ちゃん、響ちゃんなら、マァ、今から買い物に行く予定だったから少し探してみるわ。未来ちゃんは、そのまま待ってて入れ違いになると面倒だし」

 

「ありがとうございます。帰ってきたら連絡します」

 

「了解よ、ちゃんと帰ってきたらどこで浮気してたか聞き出して怒るのよ」

 

「ゆ、幽香さん、ふふっそうします」

 

いつものようにからかう事で少しだけ声に元気が戻った未来に一安心する。

幽香は携帯を切ると日傘を手に街へと繰り出した。



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無印第3話

ドS発動
お楽しみいただけたら幸いです。


無印3話

 

日傘を片手で持ちながらCDショップ周辺を散策する。人が戻りつつあり、日常に戻ろうとしていた。幽香は周辺の草木より響のことを聞き出すと黒服の人間と一緒に車に乗りどこかへ行ったという。

政府の人間により保護されているなら問題ないと考え周辺の花を見ながら帰路に着こうとしていると一人の少女を見かけた。

 

銀髪が特徴的な少女はどこか寂しそうな顔で、街の喧騒を眺めていた。何を見てるのかと視線を向けると父と母に手を引かれ満面の笑顔でいる幼子のようだ。

 

「どうしたのお嬢ちゃん?」

 

幽香は自分でも驚くくらい自然に声をかけた。

 

「っ!!」

 

少女は驚きこちらを向きながら距離をとり睨みつけている。

 

「んだよ、私になんかようか!!」

 

「別にようがある訳じゃないんだけど、寂しそうな顔を見てたら声をかけてしまったわ」

 

「あ、私が寂しそうだと、とんだ言いがかりだな!!」

 

少女は強い口調で否定するが先ほどの表情を見た後だからかそのまま立ち去る気にはなれなかった。

 

「まぁ、そんなに威嚇しないの、家には帰らないの?」

 

「帰っても一人だから適当に散歩してたんだよ!!」

 

「それならいいわね」

 

サッと距離を詰めて少女の手を取り少女の抗議を無視して自宅を目指す。

 

 

 

 

道中で名前を聞き出し、のらりくらりとクリスの抗議をかわしながら自宅まで帰って来た。

 

 

「なんで私はここに連れてこられたんだ!!」

 

「いいじゃない、一人で寂しかったんでしょ?」

 

「んっ!?んなわけあるか!!」

 

顔を真っ赤にしてカウンターに座る少女雪音クリスは掴まれた手から逃れられずに連れてこられてしまった。

 

「とんでもねぇ力でつれてきやがって!!」

 

キシャーと猫が威嚇する様に騒ぎ立てるクリスだが幽香は気にしない。

 

「あんだけお腹鳴らしてたんだから、それでもつまんでちょっと待ってなさいな」

 

クスクスと笑い厨房に入る幽香をじっと睨みつけて見送る。

 

自分の前には一杯のお茶と少量のクッキーが置かれていた。じっと睨んでから恐る恐るクッキーを一枚食べると、花の香りが鼻腔をくすぐりふんわりと甘さが口に広がった。

美味しいと感じ、お茶を口に含むと先ほどとは違う花の香りに少量の苦味を感じ口に残る甘さをリセットしてくれる。口に入れる順序を変えれば甘さが際立つ。気づけばどちらも空になったがお腹は全然物足りないと主張してくる。

 

「気に入ったかしら?まだまだ足りないでしょ?」

 

空いた皿とカップを片付けて新たな皿を置いていく。一つ目は透明なスープにニンジン、キャベツ、ウィンナー、じゃがいもが沈んでいる。二つ目は鉄板の上でジュージューと音を立てるハンバーグ脇には別皿でデミグラスソース。

 

「ごはんとパンはどちらがいいかしら?」

 

「ごはん」

 

ボソリと呟くクリスに、にっこりしてご飯を置く。

 

「おかわりはあるから遠慮なくどうぞ、あっ、でもケーキがあるからいっぱいにしちゃだめよ」

 

「んっ、その・・いただきます」

 

「ふふっ、どうぞ召し上がれ、お冷ここに置いとくわね」

 

面と向かって言えないクリスは少し視線をずらして言った。そんなクリスを可愛いと思いながら返答する幽香。

 

始めはニコニコと眺めていた幽香だが徐々に顔が引き攣っていく。美味しそうに食べるのはこちらとしても嬉しいからいいのだが口の周りや服、テーブルと食べ散らかしが広がっていく。呆れながらも食べ終わるまでは指摘しないと決めた幽香であった。

 

 

「ん、ごちそうさま」

 

デザートまで全て平らげてからボソッと言うクリス。テーブルは食器を片付けながら綺麗にしたが、クリス自体は酷いありさまだった。デミグラスソースやケーキのクリームが服につき、口の周りまでベトベトになっている。

 

「満足してもらって良かったわ、でもちょっとこっち向きなさい」

 

「な、何しやがる!!、力強っ!!」

 

頭を押さえてこちらに向かせてハンカチで顔を拭いていく。

 

「あなた、かわいいのにこんなに汚して、服もシミになっちゃうから洗濯してあげるわ」

 

「顔くらい自分で拭けるって!!子供扱いするな!!後力が強い!!」

 

「だってあなた暴れそうだったから、面倒ね今晩泊まっていきなさい。あの様子じゃ家でひとりぼっちだったんでしょ?朝までには服も乾くわ」

 

そんな幽香の言葉を聞いて少し黙ったクリス。

 

「・・・なんでここまでするんだ?私は他人だろほっときゃいいだろ」

 

俯きながらクリスは幽香に問う。その様子は迷子の子供が項垂れている様に見えてしまった。

その様子はある人物が悲しみに暮れている日々に見た光景に似ていた。

 

「ちょっと知ってる子に似てたのよ。ちょっと前まで貴方みたいな悲しそうな顔をしてたわ。だからね貴方の笑顔が見たくなったのよ。あの子みたいな太陽の様な笑顔をね」

 

「なんだよそれ・・・わけわかんねぇよ」

 

幽香を見るクリスの顔が少しだけ明るくなった。笑顔には遠いが少しは良くなった。

 

「まぁ、深く気にしなくていいわ、私は意地悪なお姉さんだから勝手にするわ」

 

悪戯な笑顔をクリスに向けて宣言するのだった。

 

 



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無印第4話

お楽しみいただけたら幸いです。


無印4話

 

風呂から上がり軽く水気をタオルで取りトリートメントを馴染ませてから、寝室にてドライヤーを使いクリスの髪を丁寧に乾かす幽香。ドライヤーの音だけが聞こえる。

 

「体のこと何も聞かないのか?」

 

静寂に耐えかねたのかクリスがぽつりと呟く。体にある傷は火傷や生傷の一つや二つではない。

 

「なら一つだけ」

 

クリスは少しガッカリしたこいつも同じなのかと、自分に哀れみを向けるがなんの役にも立たない大人達と。どうせ薄っぺらい同情の言葉でもかけるのだろう。

 

「あなた、その年でスタイル良すぎない?肌もすべすべだし、あっ、でも髪の手入れはした方が良いわよ。せっかく綺麗なんだから、なんなら教えてあげるわ」

 

「一つじゃないし、なんなんだそれは!!っ!!クソっまた押さえてやがるな!!動けねぇ!!」

 

立ち上がろうとしたがガッチリと肩を掴まれて首を振るくらいしか出来なかった。

 

「何?他に何を聞いて欲しかったのかしら?」

 

「その、傷のことだよ」

 

「それがどうしたの?私の知ってる白黒とかはもっと怪我してるんじゃないかしら、紅白巫女はわからないけど」

 

「なんだよそいつら」

 

幽香は本当に気にしてる様子はない。妖怪相手にタイマンはる幻想郷基準なのだが、人は身体の怪我は乗り越える。腕を食われても、目を潰されても、かえって強くなるものまでいる。心が折れなければであるが・・・

 

「まぁ、言いたい事があるなら聞くわ。アドバイス出来るかわからないけど」

 

乾いた髪を櫛で梳く。最後に丸めてお団子ヘヤーにする。

 

「いやいい、あんがと」

 

なんのことはないと言う幽香に心の緊張が緩む。ご飯を食べてる時も優しい顔で見ててくれた。風呂に入った時もニコニコしながら体を洗ってくれた。くすぐられたり、髪を洗いながら変な髪型にもされたが、とても暖かかった。何年ぶりだろうか、こんなに暖かいのは、俯きながら頬をつたう雫を止めることはできなかった。

幽香そっと頭を抱き寄せて頭を撫でる。

 

 

「顔を洗ってくる」と洗面台に向かったクリスを見送り部屋で待っていると携帯が振動した。

未来と響からのメールで無事に寮に戻ったと報告があり改めてお礼をさせて欲しいとのことだった。別にいいのにと思いながら、今度友達を連れて遊びに来なさいと返信し、わかりましたと返信があった。

 

戻ってきたクリスをベットに寝かせて同じベットに入る。一瞬クリスはビクッと身体を震わしたが抵抗は無かった。

 

リモコンで豆電球にして

 

「おやすみなさいクリス」

 

「ああ、おやすみ」

 

クリスに添えられた手がトントンと優しくリズムを刻み安らかな眠りへと誘うのだった。

 

 

 



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無印5話

待ってる方がいるのなら!!
早くゆうかりん暴れさせたい。

お楽しみ頂けたら幸いです。


目が覚めると幽香は居なかった。

1人のベッドは慣れているはずなのに温もりが恋しい。

 

起きてドアを開けるといい匂いが漂っている。それを追いかけるように歩を進める。

 

「あら起きたのね。おはよう」

 

向けられる笑顔に安らぎを覚える。いつぶりだろうか・・・

 

「おう、おはよう」

 

丸テーブルにはサラダ、パン、ハムエッグ、スープに牛乳が置いてある。

 

スープは湯気を立てている。

 

「足音が聞こえたからね」

 

クリスの足音を聞き準備してくれた様だ。

 

「ありがとう」

 

自然と感謝の言葉が出る。

なんでもない事が心地いい。

望んでも届かなかった事。

 

幽香は小窓の様なカウンターから近隣の住人にコーヒーやサンドウィッチを販売している。彼女に微笑んで貰う為に買う常連がいるらしい。

 

デレデレとコーヒーを受け取るサラリーマンの彼は今日も馬車馬の様に働くだろう。

ここから見ても幽香の微笑みは温かい。

みんなそれを感じてここによるのだろう。

 

通勤ラッシュも終わり、ひと段落したのか小窓に準備中の札をかけて戻ってきた。

 

「お粗末様。お茶飲むけどクリスもいる?」

 

「頼む」

 

透明なポットと白いカップにお湯を入れて温める。ポットに茶葉を入れてお湯を注ぐと茶葉が踊り湯を染める。少し蒸らしてから茶こしを使いながら丁寧にカップへ注ぐ。

 

湯気と共にいい香りがする。

 

上手く表現出来ないが良い香りがして好みの味がする。

 

「美味しい?」

 

「ああ」

 

「よかった」

 

微笑みを向ける幽香は綺麗だった。

 

こんなに優しい人が無くならない様に。

争いを私が無くさなきゃならねぇ!!

 

決意は固くなった。

私は引き金を引いたんだ。

ノイズを使って争いのない世界を作る。

 

「ごちそうさま。ありがとな私いくわ」

 

「そう、いつでも来なさい。待ってるわ」

 

また微笑みを向ける幽香に後ろめたさを感じながら店を後にする。

 

 

 

 

「それでは、初めてくれ!!」

 

弦十郎の声と共に翼は刃を手に響に斬りかかる。

 

「はあ!!」

 

響は澄んでの所で交わすが正にへっぴりごし、迫る刃から避けるというより逃げると言う様子だ。

 

「立花、遠慮するなお前も打ってこい」

 

檄を飛ばす翼だが

 

「そ、そんな事言われても〜」

 

刃を向けられて怖いというのもあるが翼さんに手を挙げるというのも恐れおおいと上手く体を動かす事が出来ない。

 

「むぅ、訓練なんだから寧ろ立花から来なければ意味がないぞ」

 

プシューと扉が開く。

 

「アリス!!」

 

「ダメよ翼。いきなりそれでは萎縮しちゃうでしょ?」

 

そこに現れたのはアリス・マーガトロイド。

 

「はじめまして、立花響さん。私はアリス・マーガトロイドよアリスでいいわ」

 

「えっと、あの、私は立花響です!!」

 

バタバタとした後に何故か敬礼して挨拶する響。

 

「そんな畏まらなくていいわ。それと響さんのトレーニングは私がするわ。翼もね」

 

「なに?」

 

アリスが、パチンと指を鳴らすと上海と蓬莱が5体ずつ現れた。

 

「わっ!?お人形さんが現れた!!」

 

「ええ、この上海が響さんの相手ね。なぁに鬼ごっこみたいなものよ。上海が体当たりするから響さんは避けながら、上海の持つ盾に攻撃を入れられたら訓練終了よ。翼は蓬莱ね。蓬莱はランスも装備してるから、ちゃんと避けないとけっこう痛いわよ」

 

ふよふよ浮く上海と蓬莱はシャンハーイ、ホーラーイと鳴きながら2人の前に移動する。

 

「ふん、防人を舐めるなよ」

 

前に出た翼に蓬莱が襲いかかる。

 

二刀で斬りかかる翼の斬撃を2体の蓬莱が受け止め。動きの止まった翼に別の2体がランスで突撃する。

 

「しっ、はあ!!」

 

二刀に力をいれて体を捻りランスの突撃を回避し、足から伸びた刃で背後から襲ってくる5体目の蓬莱を迎撃する。

 

足の斬撃を盾で防いだ蓬莱を他所に回転しながら5体から距離をとる。

 

「中々やるではないか」

 

足の刃を翼に変えてブーストし高速ホバー移動で5体に斬りかかる翼。

 

「わぁー」

 

そんなやり取りを見ながら間抜けな声をあげている響。

 

「じゃあ、行くわよ響さん」

 

「うえ!!」

 

盾を構えた上海は響に殺到した。

地面を蹴り壁を蹴り縦横無尽に飛び回り逃げる響。しかし上海も体当たりを敢行する。

 

着地の瞬間や視界から外れた瞬間に肩や足、腹に衝撃が走る。

 

「かはっ!!」

 

苦し紛れに拳を振るうが擦りもしない。

 

シンフォギアのおかげで痛みは殆ど無いが衝撃が凄まじい。

 

「そんなんじゃ終わらないわよ」

 

迫る上海に集中する。

先程から視界から外れると攻撃してくるまずは全体の把握。

 

「あいたー!?」

 

動きを止めて見ることに集中してしまい避けることが出来なかった。

 

モニターでその様子を見つめるメンバーもこれには苦笑い。

 

「あっはっは、立花は面白いなぁー」

 

「ひ、響君」

 

「あ、あはは」

 

結局ボコボコにされてしまう響であった。

 

 

 



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無印第6話

戦闘を妄想するのが楽しいです。
もう少しでゆうかりんが暴れる予定です。

お楽しみ頂けたら幸いです。




 

「もう、朝から修行とか言って何処に行ってたの?」

 

プクーっとほっぺを膨らませて「怒ってます」とアピールする未来。

 

「えーと、そのー」

 

視線を逸らして考えるが特に何も思いつかない。「ノイズと戦う為に特訓してます」なんて言えないし、間違いなく心配させてしまう。

 

「はぁ、いいよ。でも改めてちゃんと教えてね。急に居なくなったら心配なんだから」

 

ほっぺを元に戻し、少し悲しい顔で告げる。

 

「未来・・・大丈夫、未来の居るところが私の帰る所なんだ!!絶対帰ってくるよ」

 

ガバッと抱きつき未来の耳元で囁く。

 

「うん」

 

未来も抱き返し温もりを確かめる。

 

「でも、あんまり心配させたら幽香さんに言いつけちゃうんだから」

 

「えーそれは反則だよー!!それだけはダメ!!絶対ダメ!!」

 

姿勢を正し、両腕でバツを作る響は酷く狼狽えている。

 

「知らなーい、響が私を心配させなきゃいいだけでしょ」

 

ツーンとソッポを向く未来にガックリと項垂れる響。

 

「そんな〜」

 

「ふふ、あははは」

「はは、あははは」

 

2人は少しの間を置いて可笑しくなり笑い合う。こんなやり取りも楽しい2人の日常。

 

それを壊す様に端末が震える。

 

響は直ぐに端末を取り出して未来に背を向けて耳を当てる。

 

「響」

 

険しい顔の響に未来は悲しくなる。また何かに巻き込まれているのだろうと予想はつくが響は話してくれない。端末を耳から離すとこちらに振り返り申し訳なさそうな顔をしている。

 

「未来、その」

 

「いいよ、ちゃんと帰ってきてくれるんでしょ?」

 

不安はあるが響は止まらないだろう。だったら待つしか無い。

 

「未来!!」

 

抱きつく響は自分の理解者である未来の言葉が嬉しく抱きついた。その抱擁も直ぐに終わり

 

「行ってきます!!」

 

「いってらっしゃい」

 

響は寮を後にした。

 

 

 

街ではノイズが暴れていた。

ビルに突撃を繰り返して倒壊するビルが山を作っている。1つ幸いしたのはノイズ災害によって街には住民らしい住民が居ない廃墟であった事である。

 

「出てこい突起物!!融合症例!!」

 

ネフシュタンの鎧を纏いソロモンの杖でノイズを操るクリス。

 

遠くからエンジン音が聞こえ次第に大きくなっている。

 

崩壊した橋を駆け上りバイクが飛んで来た。

 

「そこまでだ!!」

 

頭上から大量の刃の雨を降らす翼。

刃の餌食となったノイズは次々と炭化していく。

 

「お前じゃ無いんだよ人気者!!」

 

落下に合わせる様にムチで迎撃するクリス。

バイクから飛び降りる事で直撃は防ぐ。

 

クリスはムチを操り空中にいる翼の横でバイクに追撃し爆発させる。

 

「ぐぁ!!」

 

体制を崩した翼をムチで拘束し叩きつける。

止めにビルに叩きつけ衝撃で崩れた瓦礫に埋る翼。

 

「寝てな」

 

モニター越しに事態を確認していた面々は驚愕していた。

 

「翼があっさりだと!!ダンナ!!私も出るぞ!!」

 

「ダメだ!!お前の体はボロボロなんだ!!出せるわけがない!!」

 

「でも!!翼が!!」

 

食ってかかる奏を弦十郎が落ち着かせる。

 

「落ち着け!!アリス君の位置は!!」

 

「避難所より急行中です!!通信繋げます!!」

 

「アリス君、翼が戦闘不能だ。急ぎ現場に急行しネフシュタンの装者とノイズを退けて欲しい。可能ならネフシュタンの装者を捕縛してくれ」

 

「なかなか無茶言ってくれるわね」

 

「すまない。増援は送っているがノイズ相手では・・・」

 

「大丈夫よ、翼の救出は任せるわよ」

 

「司令!!緊急通信です!!」

 

「なんだ!!」

 

新たな通信が繋がり緒川が声を上げる。

 

「司令、響さんが現場に急行しました!!」

 

「なんだとぉ!!通信機は!!」

 

「呼びかけてますが応答ありません」

 

オペレーターの報告により響と連絡が取れない事が告げられる。

翼の援護として向かわせていたがそれが災いしてしまった。

 

「緒川!!響君を捕捉して連れてこい!!彼女には荷が重すぎる!!」

 

「了解しました」

 

「アリス君」

 

「なんとかするわ」

 

「すまん」

 

アリスへの負担が増すばかりで不甲斐なく思う弦十郎は拳を硬く握る。

 

 

 

「たぁぁ!!」

 

ビルから飛び降りその勢いのまま眼前のノイズを拳で貫く響。

 

着地した先にはクリスがいた。

 

「来たな融合症例!!」

 

「え!?人?女の子!!」

 

ノイズが暴れていると思っていた響は動揺した。

 

殺到するノイズを辛くも迎撃しながらクリスの前に立つ。

 

「なんでこんなことを」

 

「あぁん?敵を前に何をトッポイこと言ってやがる!!大人しく私についてきな!!」

 

「きゃ!!」

 

ムチが響を襲い吹き飛ばしビルに激突する。

 

「ふん」

 

手応えがなさすぎる響を拘束しようと歩を進める。

 

「させるかぁ!!」

 

背後のビルが爆発し翼が背後から斬りかかる。

 

「チッ!!」

 

ノイズを盾にしてやり過ごし翼に対峙する。

 

「ボロボロじゃねぇか。寝てれば良かっただろ」

 

「後輩のピンチに寝てるなど許せるものか!!」

 

無理矢理脱出した為体は傷だらけ、力を入れる度各部に痛みが走る。

 

「相手してやる」

 

新たに召喚したノイズは響を拘束する。

 

「おらぁ!!」

 

エネルギー弾を放つクリス。接近しつつ紙一重でかわし更に間合いを詰める。

 

二刀により手数を増やしてクリスに斬りかかる翼は体を回転させて斬撃の速度を増す。

 

「クソ!接近戦じゃ不利か!!」

 

後方に飛び距離を取ろうとするクリスだが何かにぶつかる。

 

「壁だと!?」

 

「壁じゃない剣だ!!」

 

距離を取ることを見越し巨大な剣を背後に突き立てていた翼は瞬時に剣を回転させて峰打ちを叩き込む。

 

「ぐあ!!」

 

地面に叩きつけられたクリス、立ち上がろうとすると眼前に剣が突きつけられる。

 

「抵抗はやめてもらおうか」

 

「っ!!」

 

互いに睨みつけ合い場を静寂が支配した。

 

睨み合いを続ける中、突如静寂が破られる。

 

周囲のビルが一斉に爆発し始め爆炎と瓦礫が舞う。

 

「ちくしょう、なんだこれは」

 

予期せぬ事態のおかげで脱出出来たが成果は無し。寧ろ姿を晒してしまった事によるデメリットすらある。

 

「こんなんじゃ、あたしは!!」

 

目標を眼前にしながら逃走するしかない自分に怒りを覚えながらクリスは離脱した。

 

 

「立花ー!!何処だ!!」

 

瓦礫を退ける翼は響を探していた。

 

「間に合わなかったみたいね」

 

現場が廃墟であった為に有人区画のシェルターとの距離が遠くノイズの妨害もあり到着が遅れてしまったアリス。

 

その後到着した増援と共に響を捜索したが未だ見つからない。

 

 

 



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無印第7話


しないシンフォギア的なのを思いつくので
早くフィーネ倒してゆうかりん。

お楽しみ頂けたら幸いです。


夜も遅くなり就寝前にミルクを飲みながら本を読む幽香。

 

そんな時にガンガンとシャッターを叩く音が聞こえてきた。

 

「幽香さん!!幽香さん!!」

 

声は未来のものとすぐ分かったが大分慌てているようだ。

 

寝巻きのままシャッターを開けると未来が見るなり抱きついてきた。

 

「ゆうっかさん、ひっく、えぐ、」

 

抱きついてくるなり泣き始める未来に困惑したが落ち着かせる為に頭を撫でたり、背中をポンポンと優しく叩く。

 

店に入り、私室に連れてきたが未来は離れない。やっと見つけた寄る辺が無くなるのを恐れている様にも見える。

 

少しの不安を覚えながら未来に尋ねる。

 

「こんな遅くにどうしたの?響ちゃんは?」

 

互いに支え合う2人が1人でいる事が珍しい。無いわけでは無いがこのくらいの時間なら寮にいるべき時間である。

 

「響がっ響が!」

 

未来の体は強ばり、涙が溢れる。響というワードに反応したようだ。

 

「警察からっ、連絡があって、えぐっ、行方がわからないって、ノイズ発生区域で行方不明だって・・・」

 

抱きつきまた大泣きを始める未来。幽香も衝撃を受ける。己の矜持も無く人を襲うノイズに興味は無かったがお気に入りを取り上げられて殺意がふつふつと湧き上がる。

 

このお気に入りは2人でセットなのだ。太陽があるから月は輝く。大きく翳った月は太陽を求めて泣き出している。

 

未来の悪夢を晴らす為、少なくとも生死を確かめる為行かなければならない。

 

未来はこのままでは折れてしまうかもしれない。応急処置だが寝かせておこう。優しく妖気を当てて意識を刈り取る。涙を拭いベットに寝かせる。せめて良い眠りであるように安心効果のある花を咲かせる。

 

「すぐに響ちゃんを連れてくるからね」

 

頭を撫でてから店を後にする。戸締りをキチンと行い。対ノイズ様に護衛用の植物妖怪を置いていく。

 

 

 

 

取り敢えず本日警報が出た地域に来たが厳重な規制線が張られている。深夜だというのに昼間の様な光量でライトアップされ重機や人が溢れている。

 

何回かノイズ発生終息後を眺めていた事があったが様相が大分違う。ただでさえ廃墟だったこの区画が更に瓦礫の山になっている。

そんな場所を終息直ぐに重機を大量投入してまで瓦礫を退かすだろうか。広範囲の瓦礫を退かす割には事前に入念な確認を行い中を探っている。

 

ビルの上から日傘をクルクルしながら考える。

 

(何かが埋まっている?周囲には植物が焼けた後、黒く煤けるコンクリート。瓦礫の山。爆発によるもの、未来への連絡。ノイズ被害者は炭になるのに?すぐに特定出来たのか?響ちゃんの秘密。政府の人間との関わり。探してるのは響ちゃん?)

 

自分の願望があるのは理解している。しかし、希望はそこにしかない。

 

ここら辺は不幸な事に植物が少ない。植物が豊富なら響の事を聞いて回るのだが上手くいっていない。

 

植物を求めて廃墟をふらふらしているとようやく植物を発見し話を聞いてみる。女の子は見なかったとの事。代わりにガタイの良い男達が何かを運んでいたと。欲しい情報じゃなかった。その場を離れるとパキリと何かを踏んだ。特に意識してなかったが足を退かして見ると見慣れたヘアピン。赤くNみたいな形をしたもの・・・そこで繋がった。

男達に運ばれていたのは響、初めは政府関係者が荷物を運んでいたのかと思ったが違う。今作業してる連中とは別で今回のノイズ発生を利用した者達。響を攫った理由は分からないがそれはいい。殺すなら放置でいいだろ、爆発とビルの倒壊で生きていられる方が稀だろう。そこから運ぶならば響は生きている可能性が高い。そして

 

「やってくれたわね」

 

殺意を秘めた顔は月明かりに照らされた誰もが震え上がる笑顔であった。

 

 

 

 

植物より聞き出した場所に向かうと大きなトレーラーが二台倉庫跡地の様な場所に隠れていた。屈強な男3人が自動小銃を手に持ち周囲を警戒している。

 

「ビンゴ」

 

ふわりと鉄塔から飛び入り口に降り立つ。

 

男たちは姿を確認すると問答無用で銃の引き金を引く。サイレンサーがついている様で派手な銃声は無く殆どの弾丸が幽香に襲いかかる。慌てる素振りもなく幽香が傘を開くと弾丸はそこで弾かれる。

 

それを確認した男達は無線で増援を呼び、2人が幽香に駆け寄りながら銃を撃つ。

 

傘を閉じて2人に向かう幽香に銃を放つが1発も当たらない。交差する直前にナイフで斬りかかる2人だが幽香に刃が届く前に腹部にとんでもない鈍痛が走る。幽香が放つ拳が突き刺さり僅かな時間差で2人とも数メートル離れた壁に叩きつけられ泡を吹いて意識を手放す。

 

現実離れした光景に驚くも小銃では話にならないと理解して男は背中からショットガンを抜き連続発射する。発射される前に横に飛び稲妻の軌跡の様に接近する幽香には擦りもせず男が最後に見たのは凶悪に笑う悪鬼だった。

 

「貴様何者だ!!」

 

トレーラーから出てきた5人の内1人が声を荒げる。残りは先程とは違い大型の銃を構えている。

 

「ゴミに名乗る趣味はないわ。今すぐ響ちゃんを渡せば命だけは保証しても良いわよ?」

 

「何を馬鹿な事を、あのサンプルは有効に使わせてもらう」

 

「そう」

 

交渉は決裂した。

 

「ファイア!!」

 

事後の事は取り敢えず後にし全火力を撃ち込む男達。銃声と吐き出される薬莢が地面に散乱する劣化したコンクリートは弾け白煙の様にあたりに立ち込めるほど撃ち込むと銃声が止む。

 

「ミンチになってるでしょね。隊長」

 

「これで生きてるわけがねぇ」

 

「油断するな死体を確認しろ」

 

警戒は解かずゆっくりと近づく。

 

一歩、また一歩。

 

「そんなにそれは大事なのかしら?」

 

耳元で話しかけられ、声の方に銃を向けると部下達は悶絶していた。

 

「こうしても使えるのかしら?」

 

幽香が銃を握るとそのまま握り潰され銃が曲る。

 

「化け物め!!」

 

隊長は幽香にパンチを繰り出すが掴まれてしまい。

 

「失礼しちゃうわ」

 

笑顔のまま拳が握り潰された。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

悲鳴をあげる隊長は膝をつき無惨に変わった手を抱えるしかなかった。

 

「うるさいわ」

 

的確に顎を打ち抜き失神させる。

 

男達は重傷を負い意識を失った。

 

幽香は何のこともなく手を振り赤く染めていた液体を飛ばす。最後にハンカチで拭いてからトレーラーに向かうがトレーラーに入るところで足を止める。

 

「命が惜しけりゃ止まりな」

 

倉庫入り口の方から女の声がする。

 

「面倒ね」

 

幽香は一足で飛び傘の一撃を加える。

 

「なんて力してやがる」

 

「よく防いだわね」

 

月明かりが照らすのはネフシュタンのムチで幽香の一撃を防いだクリスだった。

 

「なっ!?お前!?幽香か!!」

 

「この声はクリス?」

 

ネフシュタンのバイザーで顔は見えないが声と反応でわかる。

 

傘の力を緩める。

 

「随分とハレンチな格好ね」

 

体のラインが強調されるようにピッタリとした姿に呆れる。

 

「なっ!?何を言ってやがる!!」

 

腕で体を隠すクリスに幽香はクスクスと笑う。

 

「ちゃんと私の知ってるクリスで良かったわ。それで?なんでこんなところに?」

 

「そ、それは、さ、探し物だよ!!」

 

明らかな動揺あたふたと告げる。

 

「奇遇ね。私は人探しなのよ。多分あの中にいるわ」

 

トレーラーを指さすとクリスはビクッと反応する。

 

「幽香も敵なのか?私の邪魔をするのか?」

 

「クリス?」

 

雰囲気が変わる。ただでさえ暗い中バイザー越しの表情は伺えない。

 

「私には後が無いんだ!!」

 

クリスはネフシュタンのムチで幽香に襲いかかる。振り抜かれたムチは易々とコンクリートの地面を抉る。

 

幽香は片足を下げて体を逸らす事で回避している。

 

「クリス」

 

「そんな顔で私を見るなぁ!!」

 

飛び上がりエネルギー弾を撃ち込む。癇癪を起こした子供が周りにあたる様に、しかしその力はネフシュタンの鎧により現代兵器を軽く凌駕する威力。着弾と同時に弾け飛び倉庫を吹き飛ばす。爆音と揺れは凄まじく周囲の廃墟も爆風で崩れている。そんな中でも幽香は二台のトレーラーを無傷で守っていた。

 

「んなぁぁぁぁぁ!!」

 

めちゃくちゃにムチを全力で振るうが傘でそらされる。更にエネルギー弾を放つが着弾前に拳で弾かれ拳圧にてエネルギーを空に流す。

そんなめちゃくちゃな戦いをしているとヘリの音と車のエンジン音が無数に近づいてきている。

 

黒服を引き連れて現れたのは弦十郎と緒川、ヘリからはシンフォギアを纏った翼が降下してくる。

 

「ネフシュタンの鎧を纏う少女とあの女性は?」

 

「出鱈目ですね」

 

地面についた傷の数々に崩壊した廃墟群、しかし、幽香の後ろには傷1つない状況。それだけで幽香の実力の一端を測る事ができる。

 

「あまり手荒な事はしたく無いが確保するぞ!!翼!!緒川!!行くぞ!!」

 

「叔父様!?」

 

「司令!」

 

「邪魔!!」

 

傘を一振りし飛びあがろうとした弦十郎の足元のコンクリートが抉られる。

 

「そこを超えたら容赦しないわ」

 

重圧な殺気が3人を襲う。弦十郎と緒川は一瞬の怯みで済んだ。しかし、翼は凶悪な害意で体が震える。死の恐怖を味わった事はあるがノイズ相手と人相手ではまた違う。更に武を収めているからこそ彼女の力量がとんでもないものであると感じ取れた。シンフォギアがあっても勝てないと

 

「あ、あ、」

 

「翼!!」

 

殺気から護る様に体で翼を隠す弦十郎は叫ぶ。

 

しかし、翼はまだ震えてるだけだ。

 

「緒川、少し様子を見るぞ」

 

「はい」

 

翼の前に立ち様子を伺う事にした。

 

 

「誰も!!誰も!!私を私たちを救ってくれなかった!!パパもママも!!だから私が戦いを振り撒く奴を叩き潰すんだ!!そうすればこんな思いをする奴は生まれない!!邪魔するなぁぁぁぁぁあ!!」

 

特大のエネルギー弾を放ち追撃にムチを全力で振るう。エネルギー弾は傘で空に打ち上げられて爆発する。そしてムチを掴んだ幽香は思いっきり引っ張り自身にクリスを引き寄せる。

 

「力を振るうだけではダメなのよ。それは次の戦いを生むだけ」

 

優しく抱き止めて耳元で呟く。

 

「だったらどうすればいい!!私は!!力しか無い私は!!」

 

抱擁から脱出しようともがくが幽香は離さない。

 

「考えましょう。今は1人じゃないわ。私がいるもの」

 

「っ!!」

 

力が抜けていくクリス。

 

「でも、私は戦いを無くさなきゃ」

 

「一緒に考えましょう。強いだけではダメなの私もそうだから」

 

優しく優しく頭を撫でる幽香それを受けるクリスは力を使いすぎたのか姿も洋服になり意識を失ってしまった。

 

「よいだろうか?」

 

静寂を破り弦十郎は声をかける。

 

「何かしら」

 

先程とは違い普通に受け答えする幽香。

 

「俺は特異災害対策機動部二課の風鳴弦十郎という。君は?」

 

「私はしがないカフェ兼花屋の店主よ。後ろの中にようがあるの」

 

「先程から気になっていたがその後ろの者達は君が?」

 

「ええ、邪魔されたからね」

 

動かない男達の事を聞く。

 

「その子はどうするつもりだ」

 

「家に連れてくだけね。保護になるかしら?」

 

「素直には返せないな、色々と手続きを」

 

「知らないわ。いい加減、響ちゃんを連れてきたいんだけど」

 

苛立ちの声で告げる。

 

「何!!響君だと!!」

 

周囲もざわめく。

 

「うるさいわね。だから早くしてちょうだい」

 

「響君がいるなら尚のこと引き下がれん!!」

 

キッと睨みつける幽香。

 

(弦十郎やめなさい。アレと敵対するのは自殺行為よ。ノイズと敵対するより余程危険だわ)

 

アリスから通信が入る。

 

「しかし」

 

(何でか保護すると言っているのだから監視をつけて様子見が得策よ。アレが暴れたら街の2つ3つ無くなるわよ。幽香に聞こえる様にして)

 

弦十郎は通信機の音量を最大にする。

 

「幽香?聞こえるかしら、アリスよ」

 

「あら、貴女もこっちに?」

 

「ええ、紫のせいでね。私達も響が心配なのよ。だから私だけでもついていって良いかしら?それで面倒な事は無しにするわ」

 

少しの沈黙の後

 

「わかったわ」

 

トレーラーの中にあったポッドの中で寝かされていた響を回収してその場を後にする幽香。

 

それを見送り動き出す。

 

「アリス君、後で聞かせてもらうからな」

 

(ええ、わかってるわ。取り敢えずありがとう。幽香と戦うのは危険すぎるのよ。私は言われた場所に行くわ)

 

切られた通信機を見てため息を一つ。

 

「取り敢えず、あれから話を聞くか」

 

「はい」

 

この場の収拾に努める弦十郎達だった。

 

 



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無印第8話

読みたいと言われるとすごく嬉しいです。
ありがとうございます。

私に出来るのは続きを書く事です。
お楽しみ頂けたら幸いです。

今回はゆうかりんとアリスパートです。
次回はひびみくとクリスちゃんきゃわわ
(書けたらいいなぁ)ゆうかりんもいるよを予定しております。




涼しげにコーヒーを飲む了子は外面とは裏腹に怒りでどうにかなりそうだった。

 

(余計な事を!!手間が増えた上にコマとネフシュタンの鎧が管理下から離れたぞ!!)

 

米国の特殊部隊が事前通告も無く響の拉致を強行し、秘密裏に国外脱出を画策していた。あまつさえ失敗し謎の女性に響共々クリスとネフシュタンの鎧を掻っ攫われた。更にネフシュタンの鎧と真っ向から打ち合い軽く迎撃する実力者でアリスから忠告が入るほどの人物。

 

「まだ六割、この代償は払ってもらうぞ」

 

底冷えする様な声音で呟きカップをゴミ箱に捨てるのだった。

 

 

 

 

幽香は響とクリスをツルで背中と腹部に固定しておんぶと抱っこで運んだ。俵持ちにしようか迷ったがこの方法にした。

 

響は未来と同じベッドに寝かせてクリスは自分のベッドに寝かせた。2人とも服を脱がせて濡れタオルで拭いてふんわりネグリジェにチェンジした。クリスには悪戯でウサミミをつけておいた。

 

一仕事終えてお茶を用意する。

 

そんな時にアリスが来た。

 

「こんばんは、おはようかしら?」

 

後少しで夜も明ける時間帯。いつもなら商品の軽食を作り始める頃なので今日は臨時休業かなぁと思う幽香。

 

「おはよう、アリス。それで?何をするのかしら?」

 

「前、良いかしら?」

 

「良いわよ」

 

丸テーブルの幽香の前に腰かけるアリス。幽香はアリスにもお茶を入れる。

 

「ありがとう。話しを聞かせてくれない?色々あって私はあそこにいてね。幽香がどうするか聞きたいのよ。単刀直入に言うわ。あの子達をどうするの?」

 

お茶を一口飲み答える。

 

「そうね。強いて言うなら悪戯かしら?」

 

「悪戯?どういうこと?」

 

予想外の回答に困惑するアリス。

 

「揶揄うと面白いのよ。ふふ、だからあの子達が死ぬくらいまではちょっかいかけながら見守るつもりよ。だから今回みたいな彼女達を害する奴らは潰すわ」

 

和やかな言葉の中で軽く言う殺意の塊、目的の為なら虫を潰す感覚で敵対する相手を壊滅させるだろう。風見幽香はそういう妖怪である。

 

「特に彼女達を拘束したりはしないのね?」

 

「勿論よ。彼女達の意思は尊重するわ。何をしても良いし束縛する気は無いわ」

 

「それが聞ければ良いわ。こちらからアクションを起こすのを止めたりはする?」

 

「特に、無理強いするなら潰すけど決めるのはあの子達なのよ。死に急いで欲しくは無いけどね」

 

「わかったわ」

 

ふぅーと息を吐きお茶を飲む。何らかの要求があると思ったが特には無い様だ。機嫌を損ねて全面戦争なんて事態になったら、ここら一体は整地されて花畑にでもされるだろう。

 

「それじゃあ、私は報告に帰るわ」

 

「何を言ってるのダメよ」

 

席を立つアリスを止める。

 

「アリスにはやってもらう事があるんだから」

 

にっこりと笑う幽香に背中が寒くなるアリスだった。

 

 

 

 

 

本日は土曜日。朝から店を開ける日である。

窓口からの販売ではなく店内にて朝食を提供する。遊びに出掛ける前による客が多くいつも満席となる。

 

「アリス、6番と8番のモーニングセットが上がったわ。お願いね」

 

「はいはい」

(何故こんな事に・・・)

 

帰ろとした時に捕まり手伝いをさせられている。

 

「シャンハーイ」

 

「ホーラーイ」

 

モーニングセットを2体でお盆の端と端を持ってテーブルに向かう。他にも複数体の上海と蓬莱が店を飛び回る。配膳、列整理、掃除とふよふよと行う。そんな様子がSNSで拡散されて集客効果まである上海と蓬莱。

 

「ママー!!お人形さんが働いてる!!」

 

「すごいわね。お人形さんの邪魔しちゃダメよ」

 

目をキラキラさせて上海達を見上げる子供。

人形達は特に子供に大人気である。

 

「あの子もかわいいな」

 

「ああ!!幽香さんも美人だけど、すげぇかわいい!!」

 

幽香目当てで来客する男達は初めて見る美少女のアリスに大興奮している。

 

そんなアリスはレジ打ちをしながら笑顔で対応する。何度か隙を見て逃げようとしたが、そのたびに幽香が肩を押さえる。埒があかないと端末で連絡が来た振りをしたら端末を握り潰された。その時の笑顔が怖くそこで諦めて今に至る。

 

 

過去に無いほどの大盛況につき午前中に在庫が空になった。列に並んでくれた人達には即席の割引券を渡し閉店となった。静かになった店内でアリスがうなだれていた。

 

途中からは厨房迄も任されてんてこまいの内に営業が終わり疲れ果てていた。

 

「貴女達もありがとうね」

 

「シャンハーイ!」

 

「ホーラーイ!」

 

幽香とハイタッチする上海と蓬莱。

 

「土曜日はまた手伝いなさいね。来週も頼むわよ」

 

無慈悲に強制的に決まった。ワガママ大王に逆らう気力もなくソファに沈むアリスだった。

 

 

 



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無印第9話

ひびみくです。

クリスちゃんは次回と言うことでお許しください。

お楽しみ頂けたら幸いです。


太陽を求めて暗闇を歩く。

暗闇を歩きながら思い出す。

太陽は暖かくいつも側にいてくれた。

モニターに映し出される様に周囲には記憶が映し出される。

 

前にも太陽は沈み、一時はもう戻らないのでは無いかと不安を覚えた事がある。

その時は、寄り添い懸命に支えた。

そんな行為を嘲笑うかの如く事態はより悪化していく。無力な自分を呪い陰る太陽に寄り添う事しか出来なかった。

そんな時に出会った向日葵は2人の問題を解決した。大輪の向日葵は2人を祝福で包み太陽はまた暖かく輝いた。

大いに喜んだが同時に無力なことを突きつけられて嫉妬した。初めは向日葵に対しては陰のある思いもあった。

しかし、向日葵は言った。

 

「太陽の光に興味を持ったのは事実だが、貴女の献身的な姿を見て手を差し伸べたのだ」

 

と向日葵は続けた。

 

「貴女は本当に良く支えている」

 

信じられなかった。

私が?

何も出来ない居るだけの私

 

私は我慢出来ず怒鳴った。

向日葵は目を閉じて聞いている。

いかに自分が無力かを、太陽に対して何も出来ていないかを、向日葵に嫉妬し疎ましく思ったことを

 

汚く、酷い言葉をぶつけた。

言葉が出なくなり泣いていると太陽が私を抱きしめた。

 

気づかなかった。

向日葵と2人きりだったのに・・

絶望した。

汚い自分を見せたと恩人に対する酷い言葉

涙が止まらなかった。

 

太陽は抱きしめながら言った。

 

「私が安心できる場所は貴女の側、唯一の陽だまりなんだ」

 

そこからはどれだけ支えられてるかを説明してくれた。嬉しかった。自分はちゃんと支える事が出来ていた。また私は泣いた。

 

太陽も一緒になって大泣きした。

向日葵はいつのまにか姿を消していた。

向日葵は私の陰を見抜いていたのだろうか?

向日葵は語らないが深まった絆を感じる事が出来て感謝した。

 

暗闇を歩く中、モニターには楽しい日々が映し出される一本道。

 

そして、一本の電話でモニターすらなくなる完全な闇。

 

不安に押しつぶされそうになりながら太陽を求めて進む。

 

途中、向日葵に会い太陽を探すと姿を消した。

 

寂しくて、怖くて、進みたくない。

そんな中モニターが出てくる。

見たくない、良からぬ映像が映し出される。

そこにあるのは炭。元の形も分からぬ炭。

どのモニターも炭が映っている。

 

見たくない。見たくない。見たくない。

違う。違う。違う。

 

そして太陽が炭に変わっていく映像が映し出される。

 

嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。

目を閉じようとしても閉じることはできず見てしまう。

助けて。助けて。助けて。

 

受け入れたくない映像。

しかし、結末の一つ、それも最悪な一つ。

絶望する私。

涙が溢れる。

何度目かの絶望。

 

そして、変わった。

 

モニターにツタがが巻きつき次第に潰していく。

緑に押しつぶされた残骸。

 

空から黄色い花びらが舞う。

眼前には一面の向日葵。

そしてその向日葵が向く先には・・・・

 

 

 

未来は嫌な夢を見た。

現実に戻る感覚。

光が差し、柔らかい布団。

温かな温もり、花の香りといつもの香り。

 

隣には響が寝ていた。

 

涙が溢れる。

恐る恐る。

夢であってくれるなと、願いを込めてゆっくりと触れる。

 

暖かい。

確かにそこに居る。

触れる手に感じる温もり。

 

「ひびきぃ」

 

掠れる声。

抱きついた。離さない。離したくない。

ありったけの力で抱きしめる。

 

「う〜、く、苦しい」

 

響は寝ぼけながら起きた。

 

「みくぅ、力ゆるめて〜」

 

抱きつく未来を見下ろす形で背中をタップする響。

 

見上げる未来の顔は涙で濡れていた。

 

「え!?未来!?」

 

「え?じゃない!!心配したんだから!!電話が来て!!響が行方不明だって!!ノイズにやられちゃったかもしれないと思って!!」

 

響は何があったか思い出す。

ノイズとの戦いとネフシュタンの少女との戦いを・・・

 

「ごめん」

 

「いやだよ!!知らない間に響がいなくなっちゃうのは!!何をしてるの?何で話してくれないの!!教えてよ・・・」

 

「未来」

 

自分を心配して泣きじゃくる未来に胸が痛む。シンフォギアの秘密を話したいがそれで未来に危険が及べば後悔しきれない。

言葉を紡ごうとするが口が動くだけで言葉は出ない。

 

「危険な事をしてるのはなんとなくわかるんだよ。私は響を1番見てるから、私を思って言えないんでしょ?分かるよ。響は優しいから・・・でもね。支えたいの・・力になれるか分からないけど一緒に考えたい」

 

胸に頭を埋める未来。

彼女が口に出してまで言う支えたいと言う言葉の重さ、真剣さを響は知っている。

自分が辛い時に支え続けてくれたのは未来であり今があるのも未来の影響は大きい。

 

「未来、ごめん。話すよ。だから私を支えてくれる?」

 

「響、うん。支える。出来ることは何でもするよ」

 

響は話した。

シンフォギアの事を自分が何をしているのかを、これからも続ける事を。

話を聞きながら未来の抱きつきが強くなる。

 

「えっと、こんな感じなんですけど未来さん力を緩めてくれませんか〜」

 

「ダメ!!そんなに危ない事してたんだからこれは罰!!」

 

「あ、あはは」

 

許してもらえる迄まだ時間がかかるなぁと諦める響だった。

 



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無印第10話

ほのぼのクリスちゃんです。
後3話から4話で無印は纏めるつもりです。
お付き合いいただけると幸いです。

お楽しみ頂けたら幸いです。


アリスをこき使い響と未来からお礼を言われた翌日。クリスはまだ寝ていた。アリス経由で医者に診させたが体に問題は無いと聞いている。そうなると目を覚さないのは面白くない。今日は響への罰ゲームをさせるので一緒にやらせるつもりなのだ。

 

眠るクリスの鼻を摘む幽香。

 

「んあ?」

 

間抜けな声をあげて目覚めるクリス。

 

「ここは?」

 

「おはよう、寝坊助さん」

 

混乱するクリスにニコニコと挨拶する。

 

クリスは戦闘の事を思い出して何か言おうとするが謝れば良いのか、感謝すれば良いのか分からず言葉に出来なかった。

 

「さ、お風呂入って綺麗になりましょう」

 

「え?」

 

ニコニコとクリスを引きづり衣服を剥ぎ取り体を洗う。瞬く間に泡だらけにされて身綺麗にされる。最初こそ抗議の声を上げたが力ではまるで勝てないので途中からは諦めてなすがまま洗われた。誰かに優しく洗われるのがこんなに気持ちの良い事だと思ったのはいつぶりだろか。両親と風呂に入った時以来だろうか。程なくして泡を洗い流される。シャワーで適度に温められてから風呂から出され脱衣所でタオルにて隈なく拭かれる。

 

髪を乾かして服が出される。

 

「これを着るのか!?」

 

「そうよ」

 

迫力ある笑顔に逆らう事をやめたクリスだった。

 

 

着替え終わったクリスは幽香の部屋に連れられてサンドウィッチとミルクの軽食を食べながら説明を受けた。

 

本日は響、クリスの罰として1日こき使うとの事。その際には特別衣装を着てもらう。

 

以上。

 

「響ってまさか」

 

「トレーラーにいた娘よ」

 

自分が力を向けた相手。

曇る表情をするクリスに幽香が

 

「小難しく考えなくて良いわ。あの娘はそんな事で貴女を避けたりしないわ」

 

「でも・・・」

 

「難しく考えないの、最後にチェックしたら行くわよ」

 

身支度を整える。

最後に幽香はクリスの頭を撫でる。

少し長いかな?とクリスが思った後にカフェの扉を開く。

 

カフェに居るのは3人。

黒いメイド服を着るアリスと未来。

黒をベースに白いフリルのついたエプロンとカチューシャがキュートである。

 

そして響は燕尾服。

黒のジャケットで燕の尾の様な裾に黒ズボン。

女性的な体のラインはそのままに対照的な男装。未来からは熱い視線が送られている。

 

そして入ってきた。クリスは白いメイド服をベースに水色のフリル胸元にはピンクのリボン。

 

「あの」

 

クリスが話そうとすると

 

「かわいい〜すごいかわいいよ。あっ、ごめんね。私は立花響!!15歳!!好きなものはご飯&ご飯。身長体重はもうちょっと仲良くなってからね!!貴女の名前は!!」

 

ずいっと距離を詰めて捲し立てる響。

 

「ちょちょちょ!?離れろ!びっくりするだろ。それに、良いのかよ私はお前を」

 

しりすぼみになる言葉に響はキョトンと首を傾げる。

 

「もう、戦わなくていいんでしょ?それに幽香さんの知り合いだし、私も友達になりたい!!」

 

にこにこと眩しい笑顔でストレートに思いを告げる響。

 

未来もよってきて

 

「諦めて下さい。響がこうなったら半分もう友達だと思われてます」

 

苦笑して告げる。

 

「私は小日向未来です。よろしくお願いします」

 

「ゆ、雪音クリスだ」

 

困惑気味に笑うクリスと満面の笑みの2人。

 

「クリスちゃん!!改めてだけど本当に可愛いよ!!特にその、っ!!」

 

「??」

 

「可愛いわよねぇ、響ちゃん」

 

何かを誉めようとした響は幽香と目が合い言葉を止めた。

 

クリスは困惑するが照れの方が強かった。

 

「ダメだよ響」

 

「う、うん、うっかり」

 

ヒソヒソと未来と響が話す。

 

「アリス、流石貴女ね。お礼を言うわ」

 

「そう思うなら休ませて欲しかった」

 

1人グロッキーなアリスは今日の為に特急で服を作成するはめになったのだ。

 

「ダメね。貴女と上海と蓬莱も人気なんだから盛り上げてもらわないと」

 

そう言う幽香に諦めるアリス。

 

店内は遮光カーテンで締め切られてる他には変わりはない。

 

「じゃあ、開店させるから頑張るのよ」

 

「うぇ、接客なんてした事ないぞ」

 

「私もないけど頑張ろうクリスちゃん」

 

「私も」

 

「こんなんで大丈夫なのかよ」

 

不安を覚えるクリスだが止まる事は無かった。

 

外は開店前から行列が出来ており上海と蓬莱達が列の整備と今回の特別開店についてのチラシを渡している。

 

ドアが開かれて皆が迎える。

 

「「「「「いらっしゃいませ」」」」」

 

 

瞬く間に店内は満席になる。

飛び回る上海と蓬莱。

ぎこちなくオーダーを聞くクリス。

すっ転ぶ響。

フォローする未来とアリス。

無駄撮影する者を処断する幽香。

 

騒がしくも楽しく過ぎていく。

 

クリスは男女問わず可愛いと言われ頬を染める。

 

響は女性客から黄色い声援を受け満更でもない表情で笑う。

 

その背後では黒い微笑を湛える未来さん。

 

店を回す中でそれぞれの距離感も近くなり終わる頃には微笑み合っていた。

 

最後の客を見送ると3人は近場の席に腰掛けて伸びていた。

 

初めての接客で疲れ果てている。

 

「お疲れ様、大盛況だったわね。ありがとう。今日はご馳走するから皆食べていきなさい」

 

「やったー!!」

 

「ありがとうございます」

 

「本当こき使いやがって」

 

喜ぶ響と未来。

言葉は悪いが達成感からか良い笑顔のクリス。

アリスは疲労で天上を見上げたまま微動だにしなかった。

 

「まぁまぁ、良いじゃない本当に可愛いわよウサギの耳も貴女の髪にも合ってるわ」

 

「ウサギ耳?そんな可愛いのついてねぇよ」

 

「え?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「クリスちゃん、流石に気付いてると思ってたよ」

 

「うん、結構お客さんも我慢出来て無かったし」

 

驚きと呆れの響と未来。

驚愕のクリス。

 

「え?いや!!そんなのあるわけが!!」

 

頭に触れるとカチューシャが落ちる。

そこには確かにウサギ耳、片側は少し垂れる形になっている。

 

「はい」

 

幽香は1枚の写真を渡す。

接客中にお客さんから可愛いと言われ頬を染めてはにかむウサミミメイドのクリスの写真。

クリスを中心に慌しい店内が伺える。

後ろでは浮かれた響に黒い微笑で詰め寄る未来。飛び回る上海と蓬莱。こき使われるアリス。隠れて写真を撮ろうとした客を処断する幽香。

この写真は勇者が幽香に献上する事でカメラの粉砕を許して貰えた逸品である。

 

「はぇぇ、凄い良く撮れてる!!ね!!クリスちゃん!!」

 

「うん、綺麗」

 

写真を見て驚く未来。

写真を見た後にクリスにまとわりつく響。

 

「ん〜!!ちょせぇ!!まとわりつくな!!」

 

「あいた!!ひどいよクリスちゃん!!」

 

ニコニコ揶揄う様にまとわりつく響にチョップを入れて引き離すクリス。

 

「ちくしょーー!!」

 

恥ずかしさで叫ぶクリスとニコニコする面々の和気藹々とした夜は続く。

 

 



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無印第11話

アリスはド◯◯もん的な感じで
ゆうかりんの無茶振りを叶えてくれます。
(拒否権はありません)

アリスもなんだかんだやってくれる良い娘です。

お楽しみ頂けたら幸いです。



「たぁ!!」

 

翼は鋭く剣を幽香に振るう。

しかし、剣は難なくフックで打ち砕かれる。

刃ではなく剣の腹を的確に打ち抜き砕く。

 

「遅い!!それに脆い!!」

 

距離の詰まった所で幽香は翼のボディに拳を入れる。

 

「ぐぅ」

 

くの字に曲がる体を気合いで持ち直し距離を取る。

 

「たぁ!!」

 

翼への追撃をさせないために響が飛び蹴りで援護する。

 

幽香に当たる前に足を掴まれて物凄い遠心力を感じる響。

 

そのままバットを振るうかの様に勢いをつけて翼に向けて投げられる。

 

「た、立花ぁぁぁ?!」

 

「うぁぁぁぁぁあ!!」

 

着地後まもなく響がミサイルの様に迫り受け止める事も避ける事も出来ずに激突する。

 

有効打を与えられずに伸びる2人にため息をひとつ。

 

「こんなんでよくノイズと戦ってたわね。続けるの?」

 

モニターに向かい問いかける。

 

「2人がそれではなぁ、すまないが一旦休憩にさせてくれ」

 

モニターに弦十郎が映り告げる。

 

「はいはい、控室にいるから再開する時に声をかけてちょうだい」

 

ひらひらと手を振り控え室に消えていった。

 

「医療班に確認させてくれ。しかし、2人がかりでもどうにもならんか」

 

「でもぉ、訓練を通してフォニックゲインが通常の1.8倍に高まってるわ。シンフォギアの出力は確実にあがってるんだけどねぇ」

 

「何?各種データは?」

 

了子の発言にオペレーターに確認を取る。

 

「スピードとパワーは普段より3割程度上昇しています。これはフォニックゲインの上昇に比例してるようでまだ伸び代がありそうです」

 

普段の訓練データと比較して差を数値化し報告する。

 

「ふむ、もう少し反応を見たいが2人はどうなっている」

 

「司令まだ行けます!!」

 

「師匠!!私も大丈夫です!!」

 

翼と響は起き上がり鼻息荒く告げる。

 

「幽香君いけるか?」

 

「はいはい、どーぞ」

 

控室から訓練場に出てくる幽香は退屈そうだった。

 

「くっ!!その余裕の表情を引っ剥がしてやる!!行くぞ!!立花!!」

 

「はい!!翼さん!!」

 

刃の雨を降らせて牽制しながら一気に距離を詰める2人。

 

「その程度でっ!!」

 

幽香は爪を立てて剣の雨に向かい腕を勢いよく振り上げる。強烈な衝撃波で剣の雨に穴が開き幽香は移動する事なく攻撃を防ぐ。

 

「まだまだ!!」

 

動かない幽香に近づき剣を切り上げる。

ひらりと避けられ回転のままに高速の拳が鳩尾に入る。

 

「がはっ!!」

 

呼吸が出来ず動きが止まる翼に拳が迫るが響が腕を十字にして割り込み盾になる。

 

「ぐぅ」

 

威力を受け止めきれずに地面を滑る2人。

 

「良く受け止めたわね。次に2人とも気絶したら今日はもう帰るから」

 

直撃したら意識を確実に刈り取られていたであろう一撃。響は痺れる腕に喝を入れる。

 

「翼さんは少し休んでて下さい。私が時間を稼ぎます!!」

 

「なぁ!立花!!無理するな!!」

 

素早いワンツーを繰り出し、蹴り、肘を次々繰り出す。早い連撃で幽香からの反撃に注意する。

 

そして、幽香のストレートを掻い潜りボディに一撃が入った。

 

「残念」

 

入ったと確信した一撃は反対の手で受け止められていた。

 

「うふふふふ。良いじゃない。楽しくなってきたわ」

 

ゾクっと寒気がし響は距離を取った。

 

「次は翼ちゃんね」

 

翼にロックオンした幽香はロケットの様に高速で詰め寄る。

 

(手数で勝負だ!!)

 

二刀に切り替えて斬りかかる。

 

しかし、幽香はあろうことか腕で受け止めた。

 

「なっ!?」

 

「貴女、躊躇って切れ味がなって無いのよ。

全力できなさい!!そんななまくらで私は切れないわよ」

 

服すら切れていない事に悔しさを覚える。

八つ当たりの様に斬りかかる。

 

「腕が無くなってから後悔しても遅いぞ!!」

 

「切れてから言いなさいな」

 

幽香は防御も避ける事もせずに刃を受ける。

攻撃に怯まない幽香に恐怖する。

 

「翼さん!!」

 

援護に入ろうとする響を掴み放り投げる。

 

「邪魔よ〜響ちゃん」

 

「翼さ〜ん!!」

 

掴まれて壁に放り投げられる響は「ぐえ」と声を上げて伸びた。

 

「さぁ、翼ちゃんはどうするの?先輩としてそれで良いのかしら?また響ちゃんが連れ去られるわよ?連れ去られるだけなら良いけど・・・」

 

言葉にしないが最悪の結果を想像させる。

 

「う、あ」

 

幽香の迫力に恐怖してしまい刀を落とし後ずさってしまう。

 

「おいおい、あんまり翼をいじめないでくれよ」

 

控室から現れたのは奏。

 

「こっからは私が相手だ!!」

 

「良いけど」

 

翼を背に奏に歩を進める幽香。

 

破壊の権化である幽香の一撃を奏が受け止められる訳がない。何故かシンフォギアを纏っているが体は薬でボロボロのはず、殺すつもりは無くともあの威力を受けれるだろうか?事故の可能性はあり得る。

 

(奏が死ぬ?)

 

ライブ会場の事件ではアリスのおかげで奏は助かった。では次は?

 

「やらせない・・・やらせないぞ!!」

 

全力で駆け出し、刀に全霊をのせて上段から斬りかかる。

 

それを幽香は傘で受け止める。

 

「やれば出来るじゃない」

 

悪戯が成功した様に笑う幽香に見惚れて一瞬硬直する。

 

「でも詰めがね」

 

その隙を逃さず空いている片手でアイアンクローの様に頭を掴まれて地面に叩きつけられる。ピクリとも動かなくなった翼を前に

 

「はい、おしまい」

 

「容赦ねぇなぁ」

 

背後で奏がドン引きする。

 

2人が起きてからネタばらしとなった。

今回の訓練は奏発案で幽香に頼み込んで開催された。

 

目的は2人の強化

特に翼が悩んでいたのでなんとかしたいと奏が幽香に土下座で頼み込んだ。

 

迷いが無く思い切りの良い奏を面白く感じ幽香は承諾。過去の話しを聞いて翼を追い込めるネタを特定して奏にも一芝居してもらった。この時のシンフォギア衣装はアリスに作成させ、本日もアリスとクリスが店番をしている。

 

「だからアリスがいなかったのか」

 

「幽香もアリスこき使いすぎだろ。この衣装も完成度高いんだけどさ」

 

「アリスさん凄いですよねーあんまりいじめちゃダメですよ幽香さん?」

 

「はいはい、程々にするわよ」

 

全然配慮しそうにない回答に一同は苦笑するのだった。

 

 

 

端末を眺める了子は歓喜していた。

 

(素晴らしい!!これだけのフォニックゲインがあればデュランダルの覚醒も可能だろう!!大詰めだ!!あと少し!!あと少しで)

 

そして、櫻井了子よりデュランダル起動実験の企画書が提出されて政府の承認を受けることとなる。

 

 

 









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無印第12話

すみません。
コメントを頂き直ぐ上げたかったのですが手間取りました。
OTONAを入れる案を思いついて書き直しました。

お楽しみ頂けたら幸いです。



デュランダル起動実験の準備中にそれは届けられた。ネフシュタンの鎧。デュランダルと同じく完全聖遺物。しかも覚醒したものであり幽香により届けられた。

 

(何という僥倖!!手札は揃った!!後はデュランダルを起動しカディンギルにて月を穿つ!!憎きバラルの呪詛からの解放を成し遂げるのだ!!)

 

歓喜渦巻く胸中、不敵な笑みを浮かべながら端末を操作する。

 

デュランダルを実験場に移し終わり実験時間まで、ネフシュタンの鎧の状態を一人で確認していた。歓喜と現状の状態により油断していた。

 

「良いかしら?」

 

「っ!?」

 

背後から風見幽香に声をかけられた。

 

背筋に特大の悪寒が走る。

 

「な、何かしら?」

 

「これを届けに来たのよ」

 

幽香は1つの封筒を差し出す。

 

「これは?」

 

「雪音クリスからよ」

 

「そう」

 

(コイツ、気づいているのか?)

 

微かに震える手で封筒を受け取る。

 

「中は見てないから安心して」

 

「・・・」

 

踵を返して背を向ける幽香。

 

「そうそう、悪巧みも程々にね」

 

そう言い残し部屋を出ていった。

 

封筒を開けると一枚の便箋が入っておりそれを読む。

 

「「役に立てなくてごめん。もうこんなことはやめよう。2人で償おう。」」

 

内容のみで名前が書いてないのはクリスなりの配慮なのかもしれない。

 

「バカな娘ね。こんなことでは止まらないわ」

 

冷たい表情のまま封筒と共に便箋を掌の上で燃やす。

 

 

 

 

搬入された機器に収まっているデュランダル。練習場には機器を取り扱うスタッフが計器の確認で忙しなく動いている。

 

「ネフシュタンの二の舞にならん様に最善を尽くせ」

 

弦十郎はスタッフに檄を飛ばす。

 

響と翼もシンフォギアを纏い準備万端の状態でいる。

 

今回の覚醒計画は先日確認できた装者の訓練によるフォニックゲインの上昇を利用しデュランダルを覚醒させるというもの。

 

相手は幽香なのだが、実はやりたくないと大分ごねた。

 

理由は店を閉めるのが嫌とのこと。

 

今回はアリスも現場で警戒する為クリス1人で店番は厳しい。試しに幽香無しでフォニックゲインを計測したが上手く上昇しなかった。これはシュミレーションと幽香を相手にした時の本気度が違う為だと思われる。本気でぶつかって尚凌駕され、油断すれば容赦なく与えられるダメージ。戦場と同様の緊張感を与え、装者自身が心から全力であたらなければ「やられる」という感覚こそがフォニックゲインを高める要因と考えられている。

 

そこで再度交渉を行い「翼と奏を1日自由にする」という事で決着がついた。

 

本日はクリス1人で窓口のみの営業を行っている。

 

「ぐぬぬ、幽香の条件を飲むとは・・・不安なんだが」

 

「そうか?私は楽しそうだけど。そこんとこどうなんだ立花」

 

「私の時はみんなでコスプレしました!!面白かったですよ!!」

 

和気藹々としてる中、幽香が現れる。

 

「あらあら、賑やかね」

 

「幽香さん!!」

 

幽香を見つけた響は一目散に駆け寄り抱きつく。主人を見つけた犬の様だ。

 

「よしよし」

 

幽香は頭をなでなで、顎下をこしょこしよと犬の様に撫でる。

 

「幽香、立花は犬じゃないぞ」

 

「いや、ありゃ犬だろ」

 

目を閉じて気持ちよさそうに受け入れる響。

 

「来てくれたな。幽香君それでは始めるか!!各員持ち場につけ!!」

 

「「「はい!!」」」

 

持ち場に着くスタッフ達、弦十郎も司令室に戻ろうとした時に

 

「弦十郎、貴方も参加しなさい」

 

「何?俺は司令所で全体の指揮を」

 

「師弟揃って相手してあげるわ」

 

幽香の提案に困惑するが、真剣な目に何かを感じ取り了解する。

 

 

「始めるわよ」

 

いつもと違う覇気を纏わせ対峙する幽香。

 

響と翼は足が止まってしまう。

 

「ふん!!」

 

開戦の狼煙を上げたのは弦十郎だった。

踏み込み地面を陥没させる程の踏み込みから正拳突きを打ち出す。

 

幽香は突き出る腕に体を滑り込ませて背負い投げで迎撃する。

 

投げの勢いを利用し、思いっきり飛び上がることで辛くも地面に叩きつけられる前に腕の拘束を解き、前回り受け身をへて立ち上がる。

 

「翼ぁ!!続けぇ!!」

 

弦十郎の叫びにハッとし剣を構えて突撃する翼。

 

「立花ぁ!!」

 

「はい!!」

 

翼の一閃を傘で受け止める。

空いた片手で拳を放とうとすると翼に隠れていた響が横ステップで回り込み脇腹目掛けてフックを撃ち込む。

 

早い連携に受け止められないと感じた幽香は、傘の力を巧みに抜いて一閃を響側に落としバックステップで距離を取る。

 

距離を取った矢先に殺気を感じ、後回し蹴りを繰り出すと弦十郎の蹴りと鍔迫り合いとなり互いに距離を取る。

 

距離を取った先は幽香を中心に弦十郎、響、翼に三方を取り囲まれる死地であった。

 

死角に翼と響を配置し1番の脅威である弦十郎が正面という布陣。

 

「良い連携ね」

 

「私達も学んだのだ。易々といくと思うな!!」

 

「勝たせてもらいます!!幽香さん!!」

 

「俺も久々に楽しませてもらっている」

 

一拍の静寂の後、幽香が弦十郎に襲いかかる。

 

目潰しを兼ねた下段からのひっかき、地面を抉り無数の礫がショットガンの弾丸の様に弦十郎に襲いかかる。

 

「ハァ!!」

 

回し受けにて砂塵を散らし礫を弾く。

迫る拳を腕に受けて防御し受けた勢いで腰を回しボディを打ち込む。

 

この訓練で初めてダメージを負い一瞬体が硬直する幽香に翼と響が迫る。

 

辛くも翼の一閃を体を捻り避け、その回転で弦十郎にバックブローで牽制する。

 

「立花ぁーー!!」

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

バックブローにてガラ空きになった胸元。

鳩尾に拳が突き刺さりガングニールがアンカーを打ち込む様に開いた機構を閉じて必殺の威力を発揮する。

 

幽香の背中に円形の衝撃が幾重にも伸びる。その後に幽香がミサイルの様に肉眼で捉えられない速度で壁に突き刺さる。

 

特殊装甲を含む壁の中に消えた幽香。壁は軋みひび割れが幾重にも起き、コンクリートは崩れている。

 

「あわわわ!?」

 

「立花!?」

 

「いかん!!医療班!!」

 

騒然となる現場。

 

「ゆ、幽香さんがぁぁ!!」

 

「いくらなんでもやりすぎだ立花!!」

 

「だって!!幽香さんめちゃくちゃ強いんですもん!!つい!!」

 

あたふたする響と翼、慌てて指示を出す弦十郎。

 

轟音が響く。

鉄板やコンクリートが降り注ぐ。

一瞬で静まり返る練習場。

 

「良い一撃だったわ」

 

幽香が埋まった時の何倍もの大穴を開けて舞い戻る。

 

服こそ汚れ破れているがダメージを負った様には見えない。

 

悠然と歩いて来る幽香。

 

赤く輝く瞳、全身にオーラを纏い。

 

「第二ラウンドね」

 

妖艶な笑顔を向ける幽香。

 

しかし、部屋を包み込む様な光が一瞬起きてデュランダルが機器の拘束を離れて浮き上がった。

 

館内放送にて

 

「じっ、実験は成功です!!訓練を中止してください!!不足の事態に備えてください!!」

 

「あら、残念」

 

ため息1つシュンとする幽香。

 

「た、助かったのか?」

 

「こ、怖かった」

 

幽香のオーラに押されていた2人は力が抜けて安堵する。

 

職員と共にデュランダルの前に行く一同。

 

「拾いますね」

 

「待ちなさい!!響ちゃん!!」

 

「へ?」

 

幽香の静止も虚しくデュランダルを握る。

 

「あ!!あぁぁぁ!!」

 

黒い光に包まれ絶叫する響。

 

「立花!!」

 

「響君!!」

 

「職員は離れなさい!!」

 

デュランダルが輝きを増していく。

 

ゆっくりと振りかぶろうとする響。

 

「ごめんね」

 

幽香はボディブローを一撃入れてデュランダルを剥ぎとる。

 

ゆっくりと黒い光が収まりいつもの響に戻る。

 

「凄い力ね」

 

マジマジとデュランダルを観察する。

 

ストレッチャーで響は医務室へ運ばれていった。翼もついて行く。

 

「はい」

 

近づいてきた了子にデュランダルを渡す。

 

「んぅ。凄いわねぇ」

 

恍惚とした表情でデュランダルを観察する了子。

 

「了子君、厳重に管理するんだぞ」

 

「勿論よぉ。じゃあ後でレポート提案するから失礼するわ」

 

「わかった」

 

るんるん気分で退室する了子。

 

「弦十郎ちょっと良いかしら」

 

「ん?ああ」

 

幽香は弦十郎と話した。

その直後。

 

「ノイズの反応多数!!今までに無い規模です!!」

 

アラームと共に館内放送が入る。

長い1日が始まる。

 

 

 



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無印第13話

無印は次回で終われそうです。

お楽しみ頂けたら幸いです。



「お姉ちゃんクッキー下さい!!あとね、コーヒーも!!」

 

元気良く注文をする女の子。

母親もニコニコとそれを見ている。

 

「あいよ。いつもありがとうな」

 

コーヒーとクッキーの袋を手渡すクリス。

常連客との慣れたやり取りだ。

 

「今日も可愛いね。コーヒーとサンドウィッチください」

 

「はいはい、いつもありがとよ」

 

三角巾にエプロン姿のクリス。

出勤前にいつも買いに来るサラリーマンだ。

 

そんな感じでクリスは1人ながらいつも通りに接客を行う。

 

「クリス手伝いに来たよ」

 

「ん?ああ、ありがとう」

 

先日のコスプレ接客で仲良くなって以来、響が留守の時にちょくちょくクリスのとこに来る様になった未来。

 

クリスも自然に店に通す。

 

2人で店番をしてる時にそれは起こった。

 

けたたましく鳴るサイレン。

繰り返される避難指示。

 

「ノイズ!!」

 

「未来!!店に入れ!!お前達も!!ここからシェルターに行くよりこの店の方が安全だ!!」

 

店のドアを開放して客を受け入れる。

 

「でも!!ただの店だろ?」

 

困惑する客にノイズが空から飛来する。

 

「シャンハーイ!!」

 

数体の上海が店から出てノイズを迎撃し難を逃れる。

 

「わかっただろ!!早く!!」

 

それを見た周りの人は店に入る。

 

店を基点にしてアリスが用意した上海人形。

幽香の有り余る妖気をエネルギーとし、店の防衛の為に何体か設置させている。

 

上海は迫るノイズを倒し客が店に入るのを援護する。

 

死角から店に突撃するもノイズは壁に阻まれ中に入れない。

 

この店はノイズ発生時には結界が張られるのでそこらのシェルターより頑丈に作られている。

 

阻まれたノイズを上海が処理する。

 

ただし店にある妖気をエネルギーにしてるので広範囲は動けない。なので距離を空けて攻撃するノイズの数が余り減らない。

 

脅威を発見した事でノイズが集まってくる。

普段の数なら対応も可能だったが今回は違う。空を覆い尽くす程の数が集まり巨大なノイズも数十体はいる。

 

「な、なんて数だ!!」

 

「お母さん」

 

「大丈夫、大丈夫よ」

 

クリスは立ち上がり外に出ようとする。

 

「クリス!!」

 

慌ててしがみつく未来。

 

「あぶないよ!!」

 

「大丈夫だ!!私が護るんだ!!」

 

腕を振り解き、ペンダントを握り外に出る。

 

「私は歌で護るんだ!!」

 

イチイバルを纏い全力で攻撃する。

ミサイルを放ちガトリングが絶え間なく火を噴く。

 

爆炎に包まれるノイズ。

飛来するノイズはなすすべもなく蜂の巣になる。

 

しかし、打ち出す弾丸を優に上回る数で飛来するノイズ。自身を弾丸の様に丸め特効を仕掛けるノイズ群。クリスと上海は懸命に迎撃を続けるが魚の群れの様に飛来するノイズ群にレーザーや弾丸が当たっても僅かに数を減らすだけで勢いを殺せない。

 

そしてついに上海が飲み込まれた。

 

「上海!!くそっ!!」

 

まだ残っているが次々にやられていく。

 

津波に攫われる様にノイズに飲み込まれ砕ける。

 

「くそーーー!!」

 

ノイズの濁流に飲まれる。

全身がノイズやコンクリートに打ち付けられて鈍痛が襲う。

 

運良くノイズの波から吐き出されたがシンフォギアはひび割れクリスも立ち上がる事が出来ない。

何とか首を動かして店を探す。

幸いにもそんなに遠くまで飛ばされたわけでわなく直ぐに見つける事が出来た。

 

そこに広がるのは絶望の景色だった。

 

最後の上海がレーザーを撃ち注意を引くが大型ノイズに踏み潰される。

 

家よりも大きなノイズが集まって来ている。ハサミの様な腕を振り下ろす。

 

結界が働き崩壊こそ免れたが店にはひびが入り振り下ろされた部分は大きく凹んでいる。

 

「やめろ、やめてくれ」

 

踠き何とか右手をノイズに向けて拳銃タイプのアームドギアで弾丸を打ち込む。

 

意に介さずノイズはもう一撃、もう一撃とハサミを振り下ろす。

 

「やっと見つけた居場所なんだよ」

 

日常になりつつある常連とのやりとり。

響や未来との戯れ合い。

幽香との日々。

 

温かい居場所

それが壊されようとしている。

 

止められない自分に涙する。

力の入らない体が恨めしい。

 

扉が歪んで出れないのかノイズに恐怖して出れないのかは分からないが避難した人達は出て来てない。

 

このままでは纏めて潰されてしまう。

 

業をにやしたのか別の大型ノイズがドリルの様な形状に変化して落下し始めた。

 

「クソ!!クソ!!」

 

回転するノイズは弾丸をものともせずに真っ直ぐに落下する。

 

「行きなさい!!ゴリアテ!!」

 

全てを粉砕するかに思えたノイズに対して蹴りを加える巨大な人形。

 

着地の間際に両手に持つ剣で店の周囲にいる大型ノイズを斬り伏せる。

 

「生きてる?」

 

ふわりと降り立つアリスはクリスを抱き起こす。

 

「おせぇよ」

 

泣き顔のクリスは少し安堵する。

 

「頑張ったわね。悪いけど少し休んだら加勢してちょうだい。敵が多すぎるわ」

 

それぞれ100体は下らない上海と蓬莱が巨大なゴリアテを中心にノイズを殲滅する。

 

殺到するノイズを正面から斬り捨てるゴリアテ。溢れたノイズを上海がレーザーで殲滅する。ゴリアテの背後から迫る大型ノイズは蓬莱がランスを構えて四方八方から串刺しにする。

 

「ハァ!!」

 

更に翼が援軍に駆けつけ剣の雨を降らせる。

 

「緒川さん、住民の避難は任せます!!」

 

翼に続いてワゴン車が数台現れて中から黒服を連れた緒川が降りてくる。

 

「アリスさん!!住民は!!」

 

「あの店の中よ!!一旦押し返すから頼むわ!!」

 

「了解です!!」

 

ゴリアテの攻勢が増し、上海達もレーザーを束ねて纏めて通常のノイズを焼き払う。蓬莱は盾を構えて緒川達の護衛をする。

 

「私だって!!店番を任されたんだ!!」

 

クリスは気力で立ち上がり緒川に続く。

 

「みんな!!無事か!!」

 

ドアを開けて中を見ると所々ひび割れた天井が落ちているが皆無事の様だ。

 

「クリス!!ボロボロじゃない!!」

 

未来がふらふらのクリスに近づき支える。

 

「すまねぇ、皆で脱出するぞ!!ついて来てくれ!!」

 

緒川が先導し全員がワゴン車に乗り発進する。

 

「住民の避難開始しました。当該区画に住民は居ません。いけます!!」

 

「幽香君!!」

 

空中で待機していた幽香。

 

「待ちくたびれたわ。アリス、翼も車に続きなさい。」

 

深呼吸を一つし

 

「幻想郷の開花」

 

辺り一面に様々な花が空中を彩る。

空を覆い尽くす様に開花すると一斉にノイズに襲いかかる。

 

花の雪崩に巻き込まれたノイズはたちまち炭化し消滅する。

 

花による蹂躙であった。

 

数の暴力で苦戦を強いられていたノイズ群をさらに上回る力で蹂躙する。

 

司令室は消えていくノイズ反応と比例して恐怖を覚えた。

 

集まっていた事もあり大半のノイズは花にのまれた。幽香も何とか被害を抑えようとしたがある程度高いビルや道路のあちこちを消滅させてしまった。

 

 

「こっちは完了したわ」

 

司令室に報告する幽香。

 

「?」

 

返事が返って来ない。

 

「幽・・・ん、至急・・・応・・を、繰り・・します。・・・応援を・・・司令室が!!」

 

そして通信機から銃声が聞こえた。

 

 



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無印第14話

期間が空いてすみません。
今回で終わらせたかったけど無理でしたすみません。

もう1個書きたいシーンがあるのです。

強いゆうかりんで妄想した時に真っ先に
思い浮かんだ妄想が最後の部分です。







「回収した住民達と翼達はどうなっている」

 

「アリスさんが殿となって此方に向かっています」

 

「幽香さんの攻撃によりノイズが劇的に減少していきます」

 

幽香の店に異常に集中したノイズから住民を避難させる事ができ安堵する。

 

「いやはや、幽香君の強さは底が知れない。医療班!!怪我人がいるだろうからスタンバっておけ!!」

 

ノイズの脅威が去りつつあり一瞬司令室の緊張が緩んだ。

 

そこに、カランコロンと筒状の物が投げ込まれる。

 

「皆伏せろ!!」

 

いち早く気づいた弦十郎は叫び咄嗟に筒を蹴る。

 

人から1番遠くの壁に当たる前に爆発した。

 

そしてマスクで顔を覆った重装備の兵が入り口から殺到する。

 

「全員武器を取れ!!全館に非常警報!!」

 

言うと入ってきた先頭の兵士を正拳突きで倒す。

 

流石に爆破後の突入に合わせてほぼゼロ距離で迎撃されると予想してなかったのか兵士に動揺が走る。

 

弦十郎はその隙を見逃さず的確に拳をボディーに打ち込む。

 

「後2人!!」

 

後続の兵士がマシンガンを撃ち込むが素早く左右に動くことで回避し壁を蹴って一気に距離を詰めた。曲芸まがいの動き、且つ高速な動きで照準が合わず弾丸は当たらない。

 

そのままの勢いで1人は膝を顔面に入れ、着地越しに手を伸ばし掴んだもう1人の頭を床に叩きつける。

 

瞬く間に制圧した弦十郎。

 

「現状を報告しろ!!」

 

「館内各部署との連絡が取れません!!他も襲撃されている可能性があります!!」

 

「外にいる部隊に応援要請を出しましたが通信状況が良くありません!!返答は無しです!!」

 

「響君の回収を最優先とする!!各員武装を整えろ!!藤尭達は通信状況の回復、又は別の連絡手段で館内に連絡を確立しろ!!俺は響君の回収に向かう!!」

 

指示を出し動こうとしたところ

 

「司令!!館内からノイズ反応です!!」

 

「ノイズ!!だとぉ!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

櫻井了子、もといフィーネは悠々とエレベーターに向かっていた。

 

デュランダルをセットし終わり後はカディンギルにて月を穿つ。米国が融合症例に興味を抱いていたので囮として招待した。

精々混乱させてくれれば良いという程度だ。

 

最後にノイズを放ち地上を目指す。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ハァ!!ヤァ!!」

 

医務室に群がるノイズを響が蹴散らす。

起き抜けに館内でけたたましくアラームがなりノイズが殺到したのだ。

 

(1人で戦うのがこんなに不安なんて)

 

通信機は反応が無くサポートが無い。

他の場所がどうなっているかもわからないので取り敢えず籠城している。しかし、これが正しいのか不安で仕方ない。

 

何とか見える範囲にノイズがいなくなり一息着くと銃声が響く。

 

「イタ、イタタタ何で!?」

 

シンフォギアにてダメージはほとんど無いが銃で撃たれて動揺する。

 

医務室のドアに隠れて様子を伺うが間違いなく人が響を撃ってくる。

 

「何で?」

 

混乱がピークに達する。

 

「ドアから離れなさい!!」

 

医療スタッフが響を引っ張ろうと近づく。

それはほとんど同時の出来事だった。

 

シュポンと聴き慣れない音の後にドアが爆発した。

 

「んがぁ!!」

 

熱風と衝撃で室内に吹き飛ばされる。

 

「ぐぅぅ」

 

響の横で医療スタッフが血まみれで倒れている。

 

「しっかりして!!」

 

「わた・・しは、はぁ、はぁ、大丈夫です、うっ!!早く逃げて下さい」

 

「この人は私達が何とかするからあっちをお願い」

 

血まみれの人を別のスタッフが手当を行う。

 

「お願いします!!何で!!人同士でっ!!」

 

拳を握るがいつもより力が入らない。

そんな響の前に武装した兵士が現れて発砲する。

 

響は腕のアーマで弾き正拳突きを放とうと距離を詰めるがすんでで止めてしまう。

 

その隙に対峙している兵士の横からショットガンを構えていた別の兵士が遠慮無く腹部に撃ち込む。

 

「ガハっ!!」

 

体が浮き倒れ込む。

 

次弾を装填するが響の方に銃口は向いていなかった。

 

「やめて!!」

 

響の後ろにいるスタッフに向いた銃口を止める術を今の響は持ってなかった。

 

「オラァ!!」

 

兵士は纏めて壁に叩きつけられた。

 

「立花!!大丈夫か!!」

 

「か、奏さん」

 

ガングニールを纏った奏がそこにいた。

 

「ノイズを倒してたら遅れちまった。すまねぇ」

 

槍を肩にかけて謝る奏。

 

「ありがとうございます。でも何でギアを?」

 

「万が一って事でな!!それよりそっちの手当だ!!」

 

奥にいる負傷者を指さす。

 

行動に移そうとした時に

 

「無事か!!」

 

弦十郎達が入ってきて全館に退避命令のアナウンスを行い脱出する。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

散発的な銃声がリディアンの各地で起こる。

学生たちの悲鳴が上がる。

 

兵士達は脅しで地面や壁を撃ち制圧していく。

 

兵士達は生徒と教職陣達を纏めて行く。

兵士の後ろには無数のノイズもいる為、恐怖で動けなくなる者はいるが抵抗する者はいない。

 

「物は使いようだな。こいつらにもこんな使い方があるなんて」

 

遠まきに眺めるフィーネは侮蔑を含んだ笑みを浮かべる。

 

「フィナーレだ!!屹立せよ!!カディンギル!!」

 

地面が揺れ、崩れる。

そこから現れるのは聳え立つカディンギル。

周囲の木々、建築物を優に超える。

 

「貴様!!これは何だ聞いていないぞ!!」

 

隊長格の兵士が詰め寄る。

 

「黙れ痴れ者が!!これぞバラルの呪詛を・・・月を穿つ荷電粒子砲!!カディンギルだ!!」

 

狂気の笑顔、その迫力に圧倒される隊長。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「何だあれは!!」

 

リディアン近くから迫り上がるカディンギルを見る一同。

 

「リディアンが!!」

 

「クソ!!フィーネ!!やるってことだな!!」

 

クリスはミサイルを出し飛び乗る。

サーファーの様にミサイルを操り宇宙を目指す。

 

「クリスちゃん!?」

 

「クリス!?」

 

響と未来が驚く。

 

「間に合え!!間に合え!!間に合え!!」

 

空を駆けるクリスはフィーネから盗み聞いた月を穿つと言う言葉からこの後にする事を察した。

 

(今からフィーネは止められない!)

 

カディンギルに力が収束されるのが分かる。

大きな力だからか、聖遺物由来なのだからかは分からない。時間の余裕は無い。

 

宇宙から地上を見ながらリフレクターを全開にする。

 

煌煌と輝く場所に狙いを定める。

絶唱を口にすると記憶が蘇る。

 

両親と歌った楽しい日々。

響や未来、アリスと出会った幽香の店。

恥ずかしかったけど楽しかった。

幽香と回す喫茶店。

常連とのやり取り。

 

楽しかった。

 

「何だ・・・私の人生も捨てたもんじゃねぇな」

 

地上より伸びる破滅の光柱。

 

光の端に1人の影。

 

「そんな顔すんなよ・・・幽香」

 

こちらに向かいながら、必死の形相で手を伸ばす幽香がスコープ越しに見える。

 

口から垂れる血をそのままにトリガーを引く。

 

絶唱による命を削る一撃。

 

月を目指す破滅の光を押し留める少女の願い。

 

一時押し留めるがクリスごと地上からの光は月を穿った。

 

月の一部を

 

 

「クリスーーー!!」

 

光の中から弾かれたクリス。

 

炎の衣を纏い堕ちているクリスに手を伸ばす幽香。

 

響の渾身の力で打ち出された幽香は懸命にクリスに向かう。

 

辛くも受け止める事が出来た。

 

意識は無いが胸の鼓動は聞こえる。

 

一瞬の安堵を塗り替える怒り。

 

血を吐きギアもボロボロなクリス。

 

優しく抱きしめて頭を撫でる。

 

地上では再度光が灯る。

 

忌々しい

 

傘を取り出して力を溜める。

 

「忠告はしてたわよね?」

 

破滅の光が迫る中。

 

傘を銃の様に片手で構える。

 

傘の先端に球状の光が膨れる。

 

そして告げる。

 

「マスタースパーク」

 

静かに告げたトリガー。

 

光は弾け地上からの光を迎えうつ。

 

怒りに任せた一撃。

 

衝突した光は拮抗せずに一方的に突き進む。

 

幽香が放ったマスタースパークがカディンギルの一撃を蹂躙する。

 

力負けする光は、束ねた糸が解れる様にマスタースパークを中心に崩壊していく。

 

地上から見ると木から枝が伸びる様に光が散っていく。

 

そしてカディンギルに光の柱が突き刺さった。

 

 

 

 



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無印最終話

まさに!!

愛!!

お楽しみ頂けたら幸いです。


「許さん!!許さんぞ!!風見幽香ぁぁぁぁぁあ!!」

 

激昂するフィーネ。

 

カディンギルは撃ち抜かれ地中に没した。

長い年月をかけて成就目前にして

 

破壊の余波は地面を抉り地中で爆発して周辺に地震と衝撃波をばら撒いた。

 

窓ガラスは吹き飛び窓枠は熱で変形している。

 

辛うじて翼が展開した大剣を盾として三重に束ねる事で兵士共々人的被害は無い。

 

大剣は最後の一枚以外は砕け散った。

 

「イレギュラーがぁ!!」

 

治らない怒りに声を張り上げる。

降下してくる幽香にノイズを津波の様に召喚して襲撃させる。

 

「貴様も私から取り上げたのだ!!ならば覚悟はできているだろうなぁ!!」

 

ノイズは幽香ではなく意識が無く抱かれているクリス目掛けて殺到する。

 

「いかん!!」

 

「させるかよ!!」

 

「幽香さん!!クリスちゃん!!」

 

翼と奏、響が援護に向かおうとするが

 

「黙ってみていろ!!」

 

ノイズを生徒達目掛けてけしかける。

 

「クソ!!」

 

守る対象が多くその場に釘付けにされる面々。

 

装者3人は遊撃で、アリスはゴリアテを中心に上海と蓬莱でノイズを撃退する。

 

空中では激しい攻防が繰り広げられる。

 

「鬱陶しい!!」

 

クリスを抱きながら片手で迎撃と防御を行う。ハエでも追い払うかの様にノイズを消滅させるが余裕は無かった。

 

クリスが弱っていて無理な動きが出来ず力にセーブがかかる。

 

更にノイズは執拗に下側から追い立てる事で民家やシェルターを盾にする為に弾幕も撃ちづらい。

 

自ずと傘や蹴り主体且つ力のセーブされた状態でノイズを撃退しなければならない。

 

体を捻りノイズの特攻をかわしその回転のままノイズを傘で切り裂く。

 

この時、ノイズが防御したため体が少し止まる。

 

「もらった!!」

 

歓喜の声を上げてフィーネはムチを高速で抜き放つ。

 

そして、背に迫る殺気を感じ幽香はクリスを体から離しそのムチを受けた。

 

背中から突き刺さりムチの先端が腹部から出る。もう一本は肩を貫いている。激痛悲鳴ではなく声が出る。

 

「よかった」

 

血を流しながらクリスに当たらなかった事に安堵する幽香。

 

「まだまだぁ!!」

 

フィーネはムチを全力で引き幽香を森に叩きつける。

 

砂塵が巻き上がる森を一同は見た。

 

轟音が轟く。

 

「うぁぁぁぁぁあ!!」

 

その光景に響は叫び声を上げるとその身を黒く変色させる。

怒りに支配される。憎しみに支配される。

フィーネを視界に捉えて咆哮を上げる。

 

「ヴァァァ!!」

 

爆発的に距離を詰めて力任せに拳をフィーネに振るう。

 

「獣に堕ちた者など!!」

 

嘲笑い力任せの動きにカウンターを合わせて迎撃しノイズをけしかける。

 

地面を転がりノイズの攻撃を避ける響。

四足獣の様に駆ける周りノイズに蹴りや拳を叩き込む。

 

「ひびきぃー!!」

 

理性がなくなり暴力的な見た目に変貌した響に呼びかける未来。

 

お構い無しに周辺のノイズに当たり散らす響は体に傷を増やす。

 

「立花!!正気に戻れ!!」

 

翼が掴み掛かろうとするも払い除け拳を振るう始末。

 

「このままでは」

 

「私も多分長くないぞ」

 

悪化する状況に翼と奏は焦っていた。

 

「あの!!」

 

ノイズの只中にいる2人に未来が走ってきた。

 

「無茶するな!!」

 

間一髪でノイズから未来を守り合流する。

 

「あの!!私に考えがあります!!響の所に連れてって貰えませんか!!」

 

ノイズの中心で暴れる響の元に未来を連れて行く。

 

「危険だ!!」

 

「翼、立花がこのままだとまずいぞ。私はもう長くない。」

 

「くっ!!」

 

活動限界を告げられて歯噛みする翼。

 

リンカーの効果時間が切れ始めているのを感じる奏は賛同する。

 

「リンカーが切れた後に翼とアリスだけでは無理だ。響がいる。やるぞ翼、アリス」

 

アリスと人形軍団は守備で手一杯。

 

響は暴走状態。

 

幽香も堕ち。

 

奏も時間切れ間近。

 

「やるしかないか・・・」

 

他に案が思い浮かばない。

 

「「一瞬押し返すわ・・・とっておき・・・2度目はないわよ。頼むわ」」

 

通信機越しにアリスが告げる。

 

「小娘共!!何を企む!!」

 

フィーネが翼達にムチを振り下ろす。

 

「きゃ!!」

 

「翼!!任せた!!」

 

「ああ!!」

 

ムチを剣で受け止める。

その衝撃で翼の足元にひびが入る。

 

奏は咄嗟に未来を引き寄せて跳んだ。

 

「何をするか分からんがやらせるか!!」

 

ムチとエネルギー弾で翼を攻撃するフィーネ。

 

「そんな攻撃!!幽香のに比べれば!!」

 

ムチを切り払い、エネルギー弾を次々と切りフィーネとの距離を詰める。

 

「小癪な!!」

 

響は殺到するノイズを足場にすることで縦横無尽に跳び回り暴れている。

 

全方位をノイズが囲む中、奏は未来を抱えて疾走する。

 

真っ直ぐに、一直線に

 

「「行くわよ奏!!」」

 

「「ゴリアテ!!フルバースト!!」」

 

ゴリアテは両腕を突き出し指を伸ばす。

 

背中には赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の光球が並ぶ。

 

それぞれの光球からレーザーを放つ。

指先からも虹色のレーザーを放つ。

更にスカートの中から虹色の上海と蓬莱が吐き出され続けノイズに特攻する。

 

放たれ続けられるレーザーと上海と蓬莱は、生徒達に襲い掛かろうとするノイズごと響の周りのノイズの半数程を葬る。

 

「「行きなさい!!」」

 

「小日向!!覚悟を決めろ!!ここからは私が受け持つ!!走れ!!」

 

「はい!!」

 

降ろされた未来は懸命に走り出す。

最愛の響の元へ。

 

奏は深呼吸し、覚悟を決める。

力を出し切る。命を削ってでも。

黙って取ってきた虎の子のリンカー。

了子の部屋にあった管理されていなかったリンカーを懐から取り出し首に打つ。

 

「いけぇぇぇ!!」

 

ありったけの思いを込めて

絶唱にて進路上のノイズを葬る。

 

どさりと倒れる奏!!

 

「振り向くな!!行け!!」

 

体が動かない奏は叫ぶ。

未来に思いを繋いで

 

「響ぃぃぃぃ!!」

 

自分に振り向かす為に声を張り上げる。

私を見ろと。

 

周辺のノイズが消えて未来の声に反応し拳を振りかぶり跳ぶ響。

 

一瞬で距離を詰められる。

未来は怯まなかった。

陰る太陽を戻すと意気込み声を上げる。

 

「響!!」

 

その声に響は拳を振り上げた状態で未来の前で止まる。

 

止まった響の頬を両手で包み鋭い瞳を真正面から覗き込む。

愛しい愛しい響に戻す為に

 

「戻ってきて響!!響にそんな顔は似合わないよ。いつもの優しくて眩しい響に・・・」

 

自分の思いを載せて未来は響と唇を重ねた。

 

温かい思いが響の中に溢れる。

いつもそばにいるかけがえのない愛しい想い。

黒色にひびが入り元に戻っていく響。

 

唇が離れ互いに見つめ合う。

照れよりも愛しさが勝り体が未来の温もりを求める。

響が未来を抱きしめて

 

「ありがとう未来」

 

耳元で甘く囁く。

 

「うん」

 

いつもの響に安堵する。

 

「終わらせてくる」

 

自信に満ち溢れた声。

 

「いってらっしゃい」

 

心が温かい。

 

力が溢れる。

 

この思いを歌に・・・

 

カタチに・・・

 

「シンフォギアァァァァァァア!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

響が戻った直後。

 

「まったく、頼もしい後輩たちだ。私も負けてられないな」

 

「小娘共が当てつけおって!!」

 

ムチを響の方へ放とうとする。

 

「馬に蹴られたくなければやめておけ!!」

 

一閃する。

 

「くっ」

 

「力が沸る!!」

 

後輩に負けてられないと奮い立つ。

 

「いくぞ!!」

 

「フォニックゲインが!?これは!」

 

驚愕に染まるフィーネ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

響を元に戻そうとしている時。

 

 

「うっ、?」

 

何かに包まれている。

カディンギルを受けたダメージはある。

しかし、死を覚悟した割には少ない。

 

目を開けると緑に包まれていた。

 

「葉っぱ?」

 

ふかふかになるほど積み重ねられた葉っぱ。

 

這い出ると地面に幽香が倒れていた。

 

「幽香!!幽香!!」

 

肩から血を流し、腹部は赤黒くなっている。

目を閉じる姿は生きている様には見えなかった。

 

「なぁによ、休ませなさいよ」

 

気怠げに目を開ける幽香。

 

「幽香、幽香、よかった、よかった」

 

泣きながらしがみつくクリス。

目の前でまた温もりが失われてしまう恐怖に怯えた。

幽香は上手く動かない腕を使いクリスの頭をぎこちなく撫でる。

 

「まったく、泣き虫クリスね」

 

「なんでもいい!!居なくならないでくれよ!!」

 

もう無くしたくない、あの日々に戻りたくないと思う。

ガバッと起き上がり幽香の顔を覗くクリス。

 

溢れる涙を指ですくい。

 

「ふふ、少し静かに休ませて。直ぐに良くなるから」

 

「わかった!!直ぐに終わらせてやる!!そしたらまた幽香の店で!!」

 

「そうね。次はアリスに何を作らせて貴女に着させようかしら?」

 

瞳を閉じる幽香。

 

「いってらっしゃい。クリス」

 

「ああ、いってきます」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

3人は飛び上がり光に包まれる。

 

眩い光から出てきた3人のギアは変貌していた。それぞれが最大限の力を出せる様に。

 

「決戦機能位で!!」

 

ソロモンの杖をかざしノイズを追加召喚し今いる分も操り攻撃させる。

 

「今更ノイズ!!」

 

「何するものぞ!!」

 

「乱れ打ちだぁ!!」

 

クリスからレーザーの絨毯爆撃。

翼は特大の斬撃。

響は拳から弾幕をはる。

 

瞬く間に殲滅されるノイズ。

 

「デュランダル!!」

 

殲滅されたノイズは目眩しであった。

意識がノイズに移っている間にソロモンの杖を腹部に刺してその身を変えた。

 

龍の様な外観となり巨大な体をもちあげる。

 

顔の様な部分より極太のビームが放たれると彼方の山に突き刺さり大爆発を起こす。

 

「何という威力!?」

 

「奥の手ってやつか」

 

「それでも!!」

 

3人は攻撃を繰り出す。

 

しかし、斬撃、打撃、砲撃、どれも瞬く間に回復される。

 

「こそばゆいなぁ!!小娘!!」

 

圧倒的な力量差に3人は怯む。

 

「どうすれば!!」

 

「このままでは」

 

「クソが!!」

 

打開策を考えようとすると

 

「あらあら、新しいおべべに夢中なのかしら?」

 

ゆっくりと、日傘をさして傘を回しながら現れた幽香。

 

服こそ血の跡や穴が空いてたりするがピンピンした様子。

 

「幽香!?」

 

「危ないですよ!?」

 

「病み上がりで無茶は!!」

 

三者三様に驚くが

 

「私・・・やられたらやり返すタチなのよ」

 

語尾にハートでもついてるかの様な物言いだが目が笑ってない。

ドス黒い覇気が漂う。

 

「風見幽香ぁぁぁ!!」

 

フィーネは全身から無数のレーザーを放つ。

 

幽香はそれを閉じた傘で打ち払い避けながら距離を詰める。

 

「吹き飛べぇぇえ!!」

 

眼下に迫る幽香に最大火力を打ち込む。

 

「吹き飛ぶのは貴女よ!!」

 

見上げる形になる事で叶った射線。

 

「マスタースパーク!!」

 

極光がフィーネを捉えて龍は消し飛ぶ。

 

光の世界で敗北を悟り、届かぬ思い人を思い浮かべながら自然と手が伸ばされた。

 

幽香は見た崩壊する龍の中に飛び込む人影を

 

「物好きね」

 

されども愛しい人の行動に笑みを浮かべる。

 

 

 

 

「何故助けた」

 

「殴り合うだけじゃ悲しいですから。私達は言葉が通じます。分かり合えます」

 

満身創痍で瓦礫に腰掛けるフィーネの問いに響が応える。

 

「殺し合う事しか出来ぬ人類にわかりあうことなど・・・出来るかぁぁ!!」

 

フィーネはムチを伸ばし月のカケラを引っ張る。

 

地面は陥没しヒビが広がる。

 

体にヒビがはいっても辞めぬ最期の力。

 

「月のカケラを落とす!!貴様らは此処で終わりだ!!私には次がある!!」

 

狂気の顔で告げるフィーネ。

 

しかし、響は動じない。

 

「大丈夫です。終わらせない・・・此処は私が何とかします。次に起きた時には少しは良い世界になってますよ」

 

真っ直ぐに当たり前だと信じている純粋な顔で

 

「貴女・・・ふふ、胸の唄を信じなさい・・」

 

響の言葉に何かを思い最期は笑顔で砂になるフィーネ。

 

響は未来を真っ直ぐ見つめてから。

 

「いってきます」

 

答えを聞かずに飛んでいく。

 

「幽香、いいの?」

 

アリスは何もしない幽香に問いかける。

 

「あの子の選択よ」

 

微笑みながら応えた。

 

「そう」

 

未来の頬をつたう涙。

 

未来は空を見上げると。

 

空に向かう光を見る。

 

飛翔を続ける金色の光。

 

その光に赤と青が合流した。

 

程なくして空には流れ星が輝いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そして3人は戦闘中行方不明に・・・・

 

なる事は無くそれぞれがボランティアを行なっている。

 

今回の事後処理を巡り日本政府は響達を死亡者とする事で各国からの追求を逃れようと画策した。

 

しかし、風見幽香の

 

「嫌よ」

 

の一言に中止を余儀なくされた。

 

月を破壊する一撃を凌駕する力を持ち、今回の元凶を葬った歩く戦略兵器はあまつさえ

 

「私と敵対したいの?」

 

この言葉に関係者は戦慄した。

顔を青くする交渉人と泡を吹く高官を見て幽香は流石に不憫に思ったのか

 

「あんまり無茶言うならその国で暴れてくるから安心しなさい」

 

更なる爆弾を置いて帰っていった。

 

これにより外務大臣等は先の戦闘映像と件の破壊力が分かる映像資料を作成して米国共々各国を黙らせた。(兵器としてなのでシンフォギアや幽香等の映像は入念に削除されている)

 

映像のみを見ると映画のワンシーンなのだが、実際に戦闘の余波で軍事衛星は破壊され、さらに月を破壊した事実があるため米国も黙るしかなかった。

 

これにより兵器開発について非難が出たが、歩く戦略兵器の機嫌を損ねる方が面倒だと判断した日本政府なのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

都内避難所

 

ここは今回の騒動で家を破壊されてしまった人たち用の避難施設。

 

 

子供達用のこじんまりした広場に幽香達は来ていた。

 

「それじゃあ、人形劇始まるわよ〜」

 

「シャンハーイ」

 

「ホーラーイ」

 

中心に居るのはアリス。

司会進行と物語のナレーターを行う。

 

「みんなー集まれー」

 

「とっても楽しい人形劇だよー」

 

「た、楽しいぞー」

 

響と未来、クリスは片手に上海と蓬莱のパペットを付けて子供達を誘導する。

 

「わーい」

「やったー」

 

何回か行なっているので直ぐに子供達が集まってくる。

 

「「「それでは第一幕始まり始まり〜」」」

 

響達が声を合わせてそう言うと

 

パチンと指を鳴らす音が響き花びらが舞う。

 

幽香は椅子に腰掛けながらこういった演出を行う。

 

この様に幽香達は店が立て直されるまで避難所を巡って笑顔を届けている。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

某スタジオ控室

 

「翼!!聞いたか!!今度、海外歌手とコラボだってさ!!」

 

「奏、私もさっき緒川さんから聞いた」

 

「私達ツヴァイウィングの歌が1番だって驚かしてやろう!!」

 

「ふふ、そうね」

 

そして今日とて歌を届ける2人。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

某所

 

「日本か・・・」

 

「心配事?」

 

「何かあるなら話して欲しいデース!!」

 

「ありがとう、大丈夫よ」

 

(風見幽香・・・)

 

幽香を思い空を見る女性とそれを見守る少女達

 

 

to be continued




やったー!
一区切りです。

お付き合い頂きありがとうございます。

感想とかいただけると嬉しいです。

何か感想頂けたらやる気が爆上げされますのでお願いします。
効能は下記です。

・妄想ブースト
・投稿間隔短縮
・やる気アップ

などなど

お願いします。


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無印しないシンフォギア

感想、評価ありがとうございます。

感謝の投稿。

10000UAも超える事が出来ました。
皆様に感謝しております。

これからもお楽しみ頂けたら幸いです。
それでは「レッツひびみく!!」



「幽香さ〜ん、クッリスちゃ〜ん遊びに来たよ〜」

 

「来ました〜」

 

るんるん気分でニコニコというかデレデレの響と上機嫌の未来が仮設住居に来た。

 

「おう、入りな。それにしてもいつにも増してバカ面になってるぞ」

 

出迎えたクリスは響のデレデレ顔に呆れる。

 

「ひどいなぁクリスちゃん。ねぇ?未来そう思わない?」

 

「ん〜まぁクリスの言いたいこともわかるけど、私はそんな響も好きだから」

 

照れ照れと頬を赤らめて俯く未来。

 

「もぉ〜未来はかわいいんだから〜」

 

響は未来に抱きつき体を揺らす。

 

「も、もう、クリスが見てる」

 

「関係ないよ」

 

「響」

 

「未来」

 

繰り広げられるイチャイチャの寸劇。

互いに近づく顔、未来の瞳はトロンとしている。

 

「っ〜〜〜そういうのは家でやれ!!」

 

玄関で繰り広げられるイチャイチャに耐えられなくなったクリスは恥ずかしさで顔を真っ赤にして、響には強めに未来には弱めにチョップする。

 

「あいた〜酷いよクリスちゃん」

 

「もうちょっとだったのに」

 

叩かれた所をさする響と残念そうにする未来。

 

「うるせぇ、とっとと入りやがれ!!」

 

「「はーい」」

 

居間に入ると幽香がお茶を飲んでいた。

 

「いらっしゃい。随分と騒がしかったわね?」

 

クスクスと微笑む。

 

「こいつらが玄関でイチャイチャしやがったからなぁ」

 

「あはは」

 

「ごめんなさい」

 

頭をかき苦笑いの響と頭を下げる未来。

 

「ところで何で急にそんなになったの?」

 

幽香は素直に疑問を口にする。

 

「「「えっ」」」

 

驚愕する3人。

 

「そうか、幽香は戦闘映像とか見ないもんなぁ、私も偶々見ちゃっただけだし」

 

納得したクリス。

 

「いや、まぁ、あれは流石に私も恥ずかしかったから・・・翼さんと奏さんは生でみられたのかなぁ」

 

「う〜」

 

納得するクリス。

頬をかきながら照れる響。

顔を真っ赤にして俯く未来。

首を傾げる幽香。

 

「幽香、その、な?こしょこしょ、でゴニョゴニョなんだよ」

 

クリスは幽香に耳打ちする。

フィーネとの戦いの最中に起きた響暴走の顛末を

 

「え!?何それ見たい!!」

 

驚愕して声が漏れる。

 

その反応に更に頬を染める2人。

 

「残念ながら無理だな。流石に消されたよ」

 

クリスが告げたその言葉に絶望する幽香。

 

無言でクリスを引っ張る。

 

「無言で引っ張るな、お前、力つぇぇんだから!!おい!!」

 

クリスを膝に乗せ、自分の顔をクリスの肩に両腕でお腹に手を回し拘束する。

 

「もうダメ、今日はクリスに癒される。決めたわ」

 

ぎゅっとクリスの柔らかい体を堪能する幽香。

 

「や、やめろ!!幽香、バカ共が見てるんだぞ!!」

 

ジタバタ抵抗するがびくともしない。

 

「いやいや〜クリスちゃ〜ん。そんな事言ってるけど満更でもない顔してるよ〜」

 

ニタァと揶揄う響。

 

「ふふ、嬉しそう」

 

「っ〜〜、見るんじゃねえ!!バカは後でぶっ飛ばす!!」

 

「もう〜照れちゃって〜」

 

満更嫌じゃ無い事を指摘され、真っ赤になる顔を自分でも自覚しながら恥ずかしさも止まらないクリスは照れ隠しに暴言を吐く。しかし、そんな照れ隠しに怯む響では無い。

 

そんな感じに一通りクリスが一通りいじられたところで上海と蓬莱がお茶とクッキーを持ってきた。

 

「ありがとう」

 

「シャンハーイ」

 

「ホーラーイ」

 

未来は手を出すと2体は掌にハイタッチしてくれた。

 

「かわいい!!私も、いぇーい!」

 

続いて響も行う。

 

「それで、モグ、ング、何のモグ用モグモグ」

 

クッキーをハムスターの様に詰め込み話す響。

言葉などわからない。

 

「響!!はしたない!!」

 

慌てて叱る未来。

 

「ング、でも幽香さんのとこのクッキーすっごい美味しいんだもん」

 

「もう、すみません。幽香さん」

 

悪びれない響に代わり謝る未来。

 

「奥さん大変ねぇ。それに食べ方については身近に凄いのが居るから気にしないわ」

 

ギクっと固まるクリス。

だが未来は幽香の発言に嬉しくなり気付かなかった。

 

「今日はコレを渡したかったのよ」

 

掌に収まる程の箱を3人の前に置く。

 

「私もか?」

 

「開けてみて」

 

それぞれ箱を開けると人形が出てきた。

 

響のはデフォルメされた未来人形。

未来のはデフォルメされた響人形。

クリスのはデフォルメされた幽香人形。

 

箱から出るとそれぞれテチテチと歩き渡された3人をそれぞれ見上げている。

 

「この子歩きますよ幽香さん!!しかも可愛い!!未来可愛い!!」

 

照れて体を揺らす未来人形。

表情に影が出来る未来さん。

 

そんな未来に響人形は袖を引っ張りニコッと笑う。

 

「はわわわ」

 

ワナワナとそのキュートさにやられる未来さん。

 

幽香人形は小さな日傘をクルクルしながらクリスの掌にちょこんと座る。

 

「お、おぅ」

 

「ていうかクリスのは私モチーフなのね」

 

肩から幽香が幽香人形を覗き込む。

前門のチビ幽香、後門の幽香。

自然と笑みが溢れるクリス。

 

「っていうか知らなかったのかよ」

 

「ええ、アリスにこんなの作ってって頼んだのよ」

 

「そういや、アリスは?」

 

話題に上がり今日は顔見てないなぁと思い幽香に聞く。

 

「今は自室で服を作らせてるわ。後2日しか無いから邪魔しないでね」

 

「うわぁ」

 

無茶振りされたんだなぁと哀れに思うクリスは、後でお菓子を差し入れようと決意した。

 

「それでこの子達はなんなんです?可愛いからそれだけでも嬉しいんですけど?」

 

指でチビ未来の頬を突く響は案外柔らかいなと絶妙な柔らかさに驚いていた。

 

「この子達は発信機であり、受信機なのよ。この子達を身につけて入れば何処に居ても分かるらしいわ。だからカバンとかポケットに入れて持ち運びなさい。一応ノイズ戦も出来るらしいけど当てにしない方が良いわね」

 

「優秀なんだねぇ」

 

プニプニと触り続けながら聞く響。

 

そうしているとチビ響が来てチビ未来と遊び始める。いつの間にかクリスの手から離れたチビ幽香は2人に混ざり遊んでいる。

 

それを複雑な思いでクリスは見ていると

 

「クリス人形も作らせるわ」

 

空気を察して幽香が告げる。

 

「いやっ、べっ、別に私の人形が無くて寂しいとか思ってねぇぞ!!」

 

あたふたするクリス。

 

「バカはそんな顔で見るんじゃねぇ!!」

 

ニタニタと分かってますよという顔で見てくる響。

 

そんな響に呆れながら苦笑する未来。

 

今日も騒がしい1日になるだろう。

 

 

 




ねん◯ろいどですね。

ビッキーの煽りでクリスちゃんは真っ赤に!!
クリスちゃんは総受け!!
攻めクリスちゃんも見てみたいけどね。

あんまりかまいすぎると未来さんがヤバいと思うけど・・・





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無印しないシンフォギア②

評価頂き有難うございます!!

お気に入りの増加スピードも上がり泣きそうです。
感謝の12時投稿が間に合わずすみません。
間に合わないと諦めたら文書が想定の倍位になりました。

お楽しみ頂けたら幸いです。

勘違いしないでください。
アリスも大好きです!!



緒川は風見幽香と対峙していた。

 

「ここまでのものをお持ちとは!?」

 

驚愕する緒川、その光景にニヤリと口角が上がる幽香。

 

「後はこれよ、どう?」

 

ほぼ勝ちを確信した幽香はダメ出しを行う。

 

「ここまで出来ているとは・・・是非ともやりましょう」

 

現代を生きる忍びでエージェントとして装者達を裏からサポートする緒川を唸らせるもの、それは!?

 

ツヴァイウィングのノイズ被災者への慰問ライブ企画である。

 

アリス達を連れて人形劇を避難所で何回か行っていたのだが、何回か行うと幼児たちは毎回喜んでくれるが青年層や成人層の食いつきが悪くなる。例外として幽香達の容姿に惹かれるファンは熱心にいるのだが・・・

 

そんなこんなで何となくクリスがテレビが好きらしく一緒に見ていた。その時にツヴァイウィングの特集がやっており熱狂する観客の多さに驚いた。

 

そこで緒川にこんな事出来ない?(拒否権は無い)と衣装デザイン、演出、グッズと見よう見真似の思いつきをアリスに企画書として作らせて今に至る。

 

「踊りについては正直分からないからそっちでお願い。グッズはこっちの伝手で作らせたいけど良い?」

 

「了解しました。ちなみに伝手について教えて貰えますか?もう日にちも有りませんが間に合うのでしょか?」

 

「良いわ、そこは間に合わせて貰うのよ」

 

「あはは、余り無理はさせない様にしてください」

 

ふふんと上機嫌の幽香を刺激しないように苦笑する緒川だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ライブ当日

 

「幽香さん!!緊張します!!」

 

元気良く報告する響。

 

「まさか私たちにも出番があるなんて・・・」

 

進行台本を渡される3人。

 

「あんまり人前に出たく無いんだけどなぁ」

 

頭を掻きながら台本を確認するクリス。

 

「でもクリスちゃんって幽香さんのお願い断らないよね?」

 

「うっ、そりゃなぁ、なんだかんだ本当に嫌な事はやらせないし。喜んでくれるし・・・」

 

尻窄みにゴニョゴニョとした声になる。

 

「幽香さん優しく撫でてくれるもんね。クリス」

 

クスッと笑う未来。

 

「それは、その」

 

未来相手では響程強く出れないし押し切れる自信もないので顔を赤らめて口を尖らせるにとどめるクリス。

 

「あれ、響じゃないか!?それに未来ちゃんも」

 

クリスの後ろから現れたのは響の父だった。

 

「お父さん!?何で?」

 

びっくりする響。

 

「いやぁ、幽香さんにこっちにコレを届けてと頼まれてね。今日の売店もウチが商品を卸してるんだ」

 

そういうと、ダンボールを見せる様に持ち上げる響パパ。

 

「そうなんだ。そうだ!この子はクリスちゃん!!こっちで出来た友達なんだ!!」

 

響と未来の後ろに隠れる様にしていたクリスの腕を引っ張って抱きつく響。

 

「急に引っ張るなよ!!えっと、雪音クリスです。ども・・」

 

引っ張られた事に反射的に声を上げるが、響パパの前に出されてしまい自己紹介してぺこりと頭を下げる。

 

「うぷぷ、クリスちゃんの敬語似合わなーい」

 

「なんだとぉ!!」

 

響は敬語を揶揄い、拳をつくりツインテールを逆立てて怒るクリス。

 

そのやり取りを見て笑う未来。

 

仲良しな3人に笑みが溢れる響パパ。

 

「いやあ、響と仲良くしてくれてありがとう。これからもよろしくね」

 

「あの、えと、はい。よろしくお願いします」

 

改めて挨拶されて拳を引っ込めて俯きながら返事をするクリス。

 

横では響が目を輝かせてウズウズしている。

 

「クリスちゃんかわいい!!」

 

「私も!?」

 

背後に周り未来ごと引き寄せて抱きつく響。

響を中心に3人が笑いながらくっついていた。その光景を間近で見れて響パパは改めて今の状況が幸福であると感じる。

 

「俺も歳とったなぁ、涙が出そうだ」

 

ボソリと呟く声は誰にも聞かれていなかっただろう。

 

「あっ、それで中身はなんなの?」

 

わちゃわちゃしてたが我にかえる響。

 

「お前、自由すぎだろ」

 

「あはは・・・」

 

ジト目で睨むクリスと苦笑する未来を他所に響はダンボールに食いつく。

 

「知らないのか?舞台で使うって言ってたぞ?」

 

ダンボールを開けて中を覗き込む3人。

 

3人は驚いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「やれやれ、こんなに短い間にレッスンを積み込んだのは初めてじゃないか?」

 

「いいじゃないか翼。このくらいの無茶なら問題ないだろ?」

 

「まぁ、そうだが」

 

心底楽しそうにする奏と練習量に不安を覚える翼。

 

部屋の扉がノックされて了承するとアリスが入ってきた。

 

「はい、これがリハーサルで要望貰った箇所を直した衣装よ。着て確認して」

 

本番前というのに衣装の直しをするアリスは今回の騒動・・・いや、幽香の被害者筆頭である。

 

「おう!!いい感じだな。これなら派手に動いても大丈夫そうだ」

 

衣装を来て軽くダンスのステップを取る。

翼も各部の稼働域を確認する様に大きく体を動かす。

 

「私も大丈夫だ。それにしても私はあんまりこういう衣装は得意ではないな」

 

改めて鏡の前で自分の姿を確認する。

 

「良いじゃんか。可愛いぜぇ翼ぁ」

 

「ちょっと!!くすぐらないで!!奏はいじわるだ!!」

 

鏡を確認する翼を羽交い締めの様にしてくすぐる奏。

 

「そんなんで壊さないでよ?」

 

呆れながら口にするアリス。

 

「あっはっはっは、すまんアリス、翼が可愛くて」

 

「もう!!」

 

顔を赤らめながら服を正す翼と仁王立ちで大笑いする奏。

 

そこにノックをしてから幽香が入ってきた。

 

「何を騒いでるのよ。騒ぐならステージの上でね。行くわよ」

 

「わかった」

「おう!!」

「はいはい」

 

静かに頷く翼と元気良く挨拶する奏ため息混じりのアリスが続く。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

避難所の大広場には人が詰めかけていた。

幽香達の人形劇団が特別ゲストを招くと告知してたからだ。誰を呼ぶかは告知されていなかったがトラックの出入り等があり簡易ながらステージも設置された事から見物客は多い。人形劇団のこれまでの実績も大きい。

 

大型スピーカーから音楽が流れるとお馴染みの3人が現れた。

 

「「「こんにちわー」」」

 

マイクで挨拶する響、未来、クリス。

 

ステージに上がった3人を見ると観客は盛り上がった。

 

「今回は皆んな衣装着てるのね可愛い」

 

「お母さん!!私もあの人形欲しい!!」

 

「あの俯いてるツインテールの娘めちゃくちゃ可愛いぞ!!」

 

「いやいや!!あの元気いっぱいの娘だろう!!」

 

「何を言っている!!黒髪の娘だろう!!」

 

「ふっ、わかってないな。ステージには立って無いが・・あの日傘をさしてる御方こそ至高!!」

 

広場は大盛り上がりだ。

 

会場を盛り上げた3人は、響と未来が青のエプロンドレスに大きな頭のリボンが特徴の上海を模した衣装を身につけている。

 

クリスは赤のエプロンドレスで大きな頭のリボン、差別化を図る為腰のエプロン紐の結び目が大きく蝶の羽根のようになっている。

こちらは、蓬莱を模している衣装を身につけている。

 

そして3人の手は上海と蓬莱を模したパペットを身につけており。マイクを持つと上海や蓬莱がマイクを向けてる様な可愛さが見られる。

 

「会場は大盛り上がりですねー!!」

 

手を大きく上げて全身で手を振る響に会場も歓声で答える。

 

「お、おねいさん。きっ、今日は素敵なゲストが来てるんだよね?」

 

あがってしまったのか棒読みで両手のパペットを響に話しかける様に動かす。

 

「誰かな?誰かな?」

 

未来も同様にパペットを動かしながら響に聞くように動かす。

 

「ふふーん、それは見てのお楽しみだよー!!」

 

ドヤ顔で話す響。

 

「それでは」

 

「「「どうぞ!!」」」

 

3人がステージ中央を指すとBGMが変わる。

 

「こ、この曲は!!」

 

「間違いない!!」

 

聞き覚えのあるBGMに会場の緊張が高まる。

 

すると一瞬会場に影が横切り巨大な何かがステージに降ってくる。

 

スモークが焚かれ大きな音と衝撃の後にスモークから現れるゴリアテ。

 

静寂に包まれるなかゴリアテが両手を突き出し掌を開くと歌が始まる。

 

「「「「ツヴァイウィングだーーー!!」」」」

 

会場の熱気は爆発した。

 

歌う2人の衣装も上海と蓬莱を模したものである。

 

翼は青のエプロンドレスにリボンが散りばめられておりドレス全体もふんわりと柔らかさを出している。頭のリボンも大きめでキュートさを前面に出した仕様でマイクもリボンが巻かれている。

 

奏は赤のエプロンドレスに鉄の胸当てに胸元のリボン、コルセットと体に張り付くドレスで攻撃的になっている。頭のリボンでキュートさも出しつつ戦闘的な様相でありマイクも小さな円錐型の西洋槍にマイクを取り付けた武器チックなものになっている。

 

そして踊る2人の後ろや横には、それぞれ上海と蓬莱が2人の様に飛びながら踊っている。

 

ゴリアテも背中に光球を出して七色様々な光で会場に華をそえる。

 

曲もクライマックスになる。

 

すると翼と奏はゴリアテの掌から跳ぶ。

 

それに合わせて上海と蓬莱も追従すると2人は観客の頭上を駆ける。

 

手を繋ぎ駆ける姿は翼のようである。

 

2人の周りには光る花びらが舞い更に2人を映させる。

 

一通り会場を周りゴリアテに戻る。

 

「みんなー盛り上がってるかー!!」

 

奏の問いかけに会場も歓声で応える。

 

「今は大変な時だけど明るい明日は絶対に来る!!」

 

「いつもみんなから元気を貰ってる私たちは皆んなに少しでも元気になって欲しい!!」

 

「「歌が世界を良くできるように私たちは頑張るから!!いっしょに頑張ろう!!」

 

2人の呼びかけに会場は今日1番の歓声で応えた。

 

その後は奏の無茶振りにより響達も一緒にステージで踊らされたりとハプニングはあったが大盛況でライブは幕を閉じた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「「「「お疲れ様ーー!!」」」」

 

幽香達は幽香宅で打ち上げを行っていた。

ようやく修復と改装が済んだ店は空き地となった周辺の土地を新たに買い取って大きくなり、独立した自宅も隣の土地に新たに建てる事が出来た。

 

「いや〜恥ずかしかったですよ奏さん!!」

 

笑いながら言う響は楽しそうに抗議した。

 

「いいじゃないか。ちゃんと踊れてたぞ」

 

ケラケラと悪びれない奏。

 

「というかあんなにゴリアテを動かして大丈夫だったのか?」

 

燃費が悪いと聞いていたゴリアテが動くだけではなくフルバーストの一部まで舞台用に使用してたのに驚いた。

 

「いや、あんだけ無駄に動かしてやったのに幽香ったらピンピンしてるのよ!!」

 

実は今回のゴリアテや上海、蓬莱の動力を幽香が肩代わりしていたのだ。日頃の腹いせにステージが崩壊しない程度にしこたま力を使ってやろうとしたがそよ風の吹くが如く余裕の幽香に腹を立てている。まぁ、そのおかげで演出が更に派手になったのだが・・・

 

「何?じゃあもっと派手に出来たの?全く手抜きはダメじゃない」

 

やれやれと肩をすくめる幽香に絶句するアリス。

 

「これは触れない方がいいな」

 

「私もそう思う」

 

「あはは・・・」

 

何かを察知した翼は呟き、クリスは同意し未来は苦笑する。

 

「いやあ、素晴らしい盛り上がりでしたよ幽香さん。今度コラボ企画があるんですけどアイディアが無いか聞かせて貰えませんか」

 

緒川は確かな手応えに少し興奮している。

それもそのはず、会場こそツヴァイウィングが行うステージでは最小だったがSNSを通じて話題となり同時にネット配信していた中継はパンク寸前迄追い込まれる盛況ぶりだった。

 

「そういうことなら、ウチも一枚噛ませてください。協力させて貰いますよ」

 

響パパも申し出る。

 

幽香の伝手で職を移ることが出来た。更に、家族へのバッシング迄押さえつけてくれた事に感謝している身としては幽香には是が非でも恩を返したいのだ。

 

「面白そうね。また考えて見ようかしら?ね?アリス?」

 

「今日は飲むわよー!!チクショウ!!」

 

アリスの叫びに周りは笑った。

 

 

 




ちょっとこんな妄想が出たので見てみてください。

女神
「貴方が堕としたのはオレっ娘ですか?」
「それともこのボクっ娘ですか?」

猫の様に首根っこを掴まれるキャロル
「貴様!!なんだ!!はなせ!!」

猫の様に首根っこを掴まれるエルフナイン
「はわわ!?はなしてくださーい」

幽香
「両方」

女神
「え!?それはちょっと・・・」

幽香(暗黒微笑)
「ん?」

女神
「ヒッ」

幽香ウキウキでキャロルとエルフナインお持ち帰り。

女神
「メソメソ」

優しく女神の肩に手を添えるアリス。

以上です。
キャロルちゃんを幽香りん大好きっ娘にしたい。

言うだけならタダかなぁと思い厚かましいですが聞いて下さい。
こんな絵が見てみたい!!

笑顔の幽香の膝の上で
キレるキャロルちゃんとアワアワしてるエルフナイン
それを後ろから羨ましそうに見てるクリス。

クリスに気づいて2人を持ち上げてまとめて抱きつき床に押し倒す幽香りん。暴れるキャロルとクリス、アワアワするエルフナイン。

疲れて皆んな仲良く昼寝。

以上です!!

こんな思いつきが急に出ましたので・・・。
病気ですね。









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G第1話

Gに入りました。

引き続きお楽しみ頂ければ幸いです。

のほほんとしたきりしらを書きたいけどまだ書けない。だからひびみくを書きました。







米国某所

 

パソコン越しに通信する者が1人。

 

「今回も稼いでくるのよマリア」

 

妙齢の女性はワイン片手にそう告げる。

 

「分かっているわ。最高に盛り上げて利益を上げれば良いんでしょ」

 

ぶっきらぼうに告げるマリア。

 

「そうよ。期待してるわぁ。それじゃあ頑張ってね」

 

「まちな・・・」

 

一方的に通信を切る。

そして、パソコンを操作してある監視カメラの映像をみる。

 

「これがある限り貴方は私の言いなりなのよ。ふふふ」

 

暗室の中で不気味に光る機械の映像を見ながらワインを飲み干し悦に浸る。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「クソっ!!」

 

テーブルを両手で叩く。

抑えられない怒りの感情を少しでも発散させる様に暴れるマリアは家具にあたる。

家具はめちゃくちゃになり花瓶などの陶器の破片が散らばる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、・・・うっ、うう」

 

ベットに顔を埋めて声を殺し泣くマリア。

 

音を聞きつけて駆けつけるがドアの隙間から見える光景に中に入れない2人。

 

暁切歌と月読調。

 

「マリア」

 

「流石に入れないデスよ調」

 

気付かれないように小声で話す。

そっと気付かれない様にドアから離れる2人。

 

「どうせ!!あのおばさんから連絡があったデス」

 

「私もそう思う」

 

ため息混じりに表情を曇らせる。

 

「なんとかマリアを元気づけられないデスかねぇ?」

 

文字通り頭を抱えて必死に考える切歌。

 

「キリちゃん、ご飯作ろう。それで少しでも元気になるはず」

 

元気になってほしいという願いを込めて提案する調。

 

「そうデスね。お腹がいっぱいになれば元気になるはずデス!!流石は調デス!!」

 

厨房に向かう2人を見送るしか出来ない自分に歯噛みするナスターシャだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふぁぁ、ただいまぁ」

 

寮に着いた事で気が抜けてしまう響は眠気目を片手でくしくしと擦りながら靴を脱ぐ。

 

「お帰り響。一晩中お疲れ様」

 

そんな響を出迎える未来。

 

「あれ!?未来!?遅くなるって言ってたのになんで?いや、すごく嬉しいんだけどね」

 

ソロモンの杖を岩国の米軍基地へ護送する任務を行なっていた。

任務は順調に終わり予定より早く基地に到着出来た。そして弦十郎の計らいにより手配されていたヘリで超特急で帰ってきた。

 

「うん、響を出迎えたくてね。悩んでたらこの子が帰って来たら教えてあげるって」

 

肩に乗っていたチビ響が顔を出してピースする。

 

「嬉しい!!」

 

「おっとと、ふふ、私も」

 

感極まって抱きつく響を受け止める。

 

「寝る前にご飯にする?」

 

抱き合ったまま未来は聞く。

 

「ううん。最初はこれ」

 

瞳を閉じてキスをする。

じっくりと唇の柔らかさを確かめるように、熱が上がると次第に啄む様なキスになる。

 

チビーズは一緒に主人から離れて顔を両手で覆うが指の隙間からその光景を覗いていた。

 

キスに満足した2人は頬を染めて互いを見つめる。見つめ合いながら時が過ぎる。

絡めた手からは熱を感じ、当たる胸からはお互いの鼓動を感じる。

鼓動は速くなり更に気恥ずかしさが増す。

 

「えっと、あの、お、お腹空いちゃった!!ご飯ご飯!!」

 

沈黙と羞恥に耐えられず逃げるように居間に向かう響。

 

「いくじなし・・・」

 

この先の展開に少しは期待していた未来さんでした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

マリアは今回のコラボ相手であるツヴァイウィングの控室に来ていた。

 

ノックをし中から了承を得てドアを開ける。

 

「貴方達がツヴァイウィングの2人かしら?私はマリア・カデンツァヴナ・イブよ。よろしく。マリアでいいわ」

 

少し芝居がかったような大きな動きで自己紹介するマリアに奏と翼は少々面食らうが続けて自己紹介する。

 

「よろしく。私は天羽奏。好きに呼んでくれていいぞ」

 

「よろしく。私は風鳴翼。翼と呼んでくれ」

 

それぞれ自己紹介の後に握手を行う。

 

「今日はせいぜい私の引き立て役になって頂戴」

 

そう言うマリアは不敵に笑う。

 

「ほほう?私達ツヴァイウィングを舐めない方がいいぜ。マリア」

 

挑発を真正面から受けてたつ奏は仁王立ちで告げる。

 

「ふっ、そうこなくちゃね。最高の夜になりそうだわ。それじゃあステージで」

 

面白いと笑い部屋を出るマリア。

 

自分の控室に向かう途中でスタッフと思われる男が電話をしながら歩いている。

 

「え?幽香さん控室の場所分からないんですか?今どこに居ます?迎えに行きますよ」

 

普通の人なら特に気にならないやり取りだかマリアは走り去るスタッフの電話内容にハッとする。

 

「風見幽香が来ている?」

 

長年密かに待ち望んだ再会に鼓動が速くなる。直ぐに追いかけようとするが携帯が鳴る。着信を確認すると切歌からだった。

表示されている時間が集合時間の15分前であるから居場所の確認電話だろう。

 

「くっ」

 

内心は男を追いかけたいが今日のステージに不備があっては元も子もないとグッと我慢して電話に出る。

 

(風見幽香が近くに来ている。それさえ分かれば)

 

上の空で電話を受けながら控室に向かう。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「凄いよ未来!!超満員!!カメラもいっぱい!!」

 

サイネリウムを両手に持ちブンブン振り回しながら興奮している。

 

「もう、凄いのは分かるからそんなにはしゃがないの」

 

余りにはしゃぐ響に苦笑しながら軽く嗜める未来。

 

「いやいや!!響の反応の方が正しいよ!!今をときめくツヴァイウィングと世界の歌姫マリアのコラボライブなんだよ!!何でそんなに冷静なのさ!!」

 

冷静な未来に待ったをかけるのはクラスメートの板場弓美。

響と同じくサイネリウムをブンブンしている。

 

「いやぁ、あんた達は、はしゃぎすぎだよ気持ちは分かるけど・・・まだ始まってないんだよ」

 

呆れ顔で注意するのは同じくクラスメートの安藤創世。

 

「このバカはいつも以上にうるさいな、少しは大人しくしろ」

 

注意もどこ吹く風でソワソワしている響にチョップするクリス。

 

「もぅ、痛いなぁ、クリスちゃんだってソワソワしてるの分かるんだからね」

 

「このバカは!!少しは年上の私の言う事を聞けってんだ!!」

 

ギャーギャーと盛り上がるクリスと響。

 

「いつものが始まりましたね」

 

苦笑するのは寺島詩織。

 

「あれはじゃれあいだしほっとこう。キネクリ先輩とビッキーの恒例行事だよ」

 

「そうですね」

 

暫く騒いでいると会場が暗くなる。

 

レーザーが無数に光り暗闇を照らし会場の中央にあるステージに光が集まる。

 

すると曲が流れ始めて中央ステージからマリアが跳び出して来る。

 

出だしはマリアがソロで歌う。

歌いながら両手を広げて会場の左右を指さす。そこには高台がありそれぞれマリアのいる中央ステージを挟んで聳え立っている。

 

赤と青の光がそれぞれの高台を照らすと青くなった高台に翼、赤くなった高台に奏が現れる。

 

マリアが歌を止めると2人は高台から走り出しそのまま飛んだ。

 

観客席の頭上を歌いながら駆けるツヴァイウィング。2人の飛んだ軌跡には光り輝く青の羽と赤の羽がそれぞれ観客席に降り注ぎ会場半分を青く、もう半分を赤く染めて幻想的な景色を作り上げる。

 

そうして観客席を一周した2人はマリアのいる中央ステージに舞い降りる。

 

マリアを真ん中に翼と奏が、脇を固めてポーズを決めると中央ステージの縁から光輝く青と赤の羽と桃色の花びらが打ち出される。

 

打ち出された発射音と同時にモニターのあるメインステージ迄の道に炎が上がり3人は歌いながら駆ける。

 

メインステージに着くと曲も終盤になる。

 

3人は右手を掲げると青、赤、桃色の光球が現れる。

 

歌が終わる際に光球を口元に近づけてロウソクの炎を消すように息を吹きかける。すると光から先程と同じように羽と花びらが観客席に飛んでいき何かに当たる度に小さく弾けて会場を飾る。

 

吹きかける仕草はメインモニターに三分割で写し出されており3人が吹きかける様は扇情的に映し出されている。

曲が終わるとマリアが言う。

 

「私の歌をくれてあげる!!ついて来れるやつだけ付いてこい!!」

 

その言葉に観客は歓声で答える。

 

「あたしらだって負けてられねぇ!!そうだろうみんな!!」

 

「私達の歌で皆んなに勇気を分けてあげられたらと思っている!!」

 

「「「まだまだ始まったばかりだ!!」」」

 

3人はそう宣言し会場には歓声が響き渡る。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

大盛況で幕を下ろしたライブ。

余韻に浸る事なくマリアは急いでいた。

この会場に居るであろう風見幽香に接触する為に・・・

 

「マリア」

 

そんな彼女を呼び止めたのはナスターシャだった。

 

「マム」

 

「わかっています。ここに彼女が居るはずです。私が時間を稼ぎますから行って来なさい。くれぐれも注意するのですよ」

 

焦った様子が隠せて無いマリアにナスターシャは一枚の簡易的な地図を渡す。

 

「ありがとう」

 

泣きそうになる自分に喝を入れて地図に記された場所に向かう。

 

通路を曲がると目的地である所まで来た。

 

(お願い!!まだ居てちょうだい!!)

 

時間的余裕はない。

願いを込めて通路を曲がるとあの日と同じ姿が見える。

 

あちらもこちらを確認したようで驚いている。

 

「今日の主役じゃない」

 

「っ、あ」

 

マリアは言葉が出なかった。

ようやく会えた風見幽香になんて声をかけて良いかわからなくてなってしまう。

 

「こっちに行ったらしいぞ」

 

背後から声が聞こえる。

忌々しい女が付けたSPの声だ。

 

マリアは弾かれたように駆け出すと写真を幽香に握らせる。

 

「貴女何を?え?」

 

ボソッと呟くと踵を返して去っていくマリア。

 

困惑する幽香は握らされた写真を見ながら先程言われた言葉を呟く。

 

「セレナを助けて?」

 

幽香は困惑の中にいた。

 

 




何回もライブシーン見ながら書いたけど難しいです。
脳内補完して頂ければ幸いです。

マリアさんに幸あれ!!


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G第2話

書きながらマリアさんが可哀想と思う今日この頃。

お楽しみ頂ければ幸いです。

短くてすみません。


椅子に座り写真を確認しながら先程の言葉を思い出す。

 

確かにマリアは「助けて」と口にしていた。

写真には見たことある少女がカプセルの様な機械の中で目を閉じている。

 

初めて此方に来た時に化け物と戦っていた小さな戦士。自分より周りを優先して助けようと懸命に戦う姿に興味を惹かれて助けた筈だった。

 

「ということは・・・さっきの娘はあの時の泣き虫?」

 

泣きながら頼み込んで来た娘がいたなぁと思い出す。しかし、泣き虫は大人の姿なのに写真の少女の姿は変わっていない。

 

「ふふ、大きくなっても泣き虫なのね」

 

写真を渡す時に顔を間近で見たが少し涙が流れていた。必死に堪えていたのだろう。

 

「もう少しの我慢よ」

 

そう呟き端末を操作し連絡を取った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

幽香の店で打ち上げ用の料理を皆んなで並べている時だった。

 

「え〜幽香さん打ち上げ参加しないの〜」

 

悲しみと驚きが混ざった声を上げる響。

 

「ああ、なんか確認する事が出来たって帰ってくる途中で連絡があった」

 

そう言うクリスも声に張りがなく落胆しているのが見て取れる。

 

「残念です」

 

「ビッキーとヒナがよく話すお姉さんに会えないのは残念だね」

 

「ん〜出来る女の辛い所って感じ?」

 

板場達も残念がる。

 

そこに今夜の主役が登場する。

 

「いや〜楽しかった〜」

 

上機嫌で扉を開ける奏。

 

「さっきからそればっかりね。奏は」

 

苦笑しながら続いて翼も入ってくる。

 

「お疲れ様です!!」

 

「凄い楽しかったです!!」

 

「こんな2人と知り合いとか、ほんとアニメみたい!!サイコー!!」

 

2人を歓声で迎える一同。

 

「あれ?アリスさんと緒川さんは?」

 

未来は2人が居ない事に気づく。

 

「なんか司令から呼び出しがあったみたいだぞ」

 

「ああ、ライブの撤収作業の途中で連絡があってな」

 

2人の発言に室内が静かになる。

 

「このタイミングでか?」

 

「何かあったのか?」

 

クリスの呟きに翼が反応する。

 

今の状況を簡単に説明する未来。

話を聞いて考える。

 

「分からないな、ノイズ関係なら私達に連絡がある筈だし・・」

 

「幽香の思いつきなら巻き込まれるのはアリスだけだし・・・」

 

「緒川さんと弦十郎さんもとなると・・・」

 

皆んながうーんと考える。

 

「まぁ、なんかあったら動けるようにしておくしかないんじゃないか?」

 

沈みかける雰囲気を察して奏が発言する。

 

「そうですね!!難しく考えても答えを出せる自信がありません!!」

 

それに響が続き空気が緩む。

 

それぞれが頷き、少し引っかかるが打ち上げを楽しむ事にするのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ライブが終わりホテルに戻ってからマリアはソファから動こうとしなかった。

 

祈る様に手を合わせて額に当てて座っている。マリアは先程の事を思い出し後悔している。なんの説明も出来ずに写真を渡して立ち去ってしまった。こちらは鮮明にあの時の事を覚えているが、あちらは忘れているかもしれない。考えれば考えるほど不安になる。あの写真がセレナに関する唯一の品というのも心を揺さぶる要因である。マリアにとってセレナの姿を見る唯一の手段。見ていると悲しくなるが取り戻そうとやる気が出てマリアを支える写真。

 

どのくらい考えていたのかもわかなくなった頃に左右から温かさを感じた。

 

なんだろうと確認すると調と切歌が寄り添ってくれていた。

 

「マリアが何を悩んでるのかは分からないデス」

 

「私達は無力だけど一緒にいる事は出来るから」

 

2人の温もりがマリアを癒す。

血反吐を吐きながら訓練を共にした家族。

本当に優しい2人。

 

「ありがとう2人とも」

 

2人に手を回して今ある温もりを確かめるマリアだった。

 

 

 



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G第3話

学園祭に早く進みたい今日この頃です。

お楽しみ頂ければ幸いです。

マリアさんを慰めて!!きりしら!!

今回どっちも出ませんが・・・
すみません。


「それで緊急の用件とは?」

 

弦十郎が幽香に問う。

仮説本部がある潜水艦内の一室に弦十郎、緒川、アリスの3人は幽香に集められた。

 

「これから話す話は現段階では他言無用でお願いね。破ったら適当に街一つ消すから」

 

にっこりと告げる幽香は軽く言うが、本当にやりかねない恐ろしさと実力がある為一同は頷く。

 

了承を取ってから幽香はテーブルに一枚の写真を置く。

 

カプセル状の機械の中で眠る少女の写真。

 

「これは?」

 

代表して弦十郎が口を開く。

 

「ある泣き虫に頼まれてね。この子を助けて欲しいって」

 

「助けて」という言葉に皆の表情が引き締まる。

 

「ふむ?それで俺たちを集める理由は?」

 

「まず、この機械の検討がつかなくてね。

なんなのコレ?」

 

写真の機械部分を指さす。

 

「恐らくだが、コールドスリープ装置だ」

 

質問に答える弦十郎。

 

「コールドスリープ?」

 

聞き慣れない言葉に首を傾げる幽香。

 

「はい、今のままの状態で保存する装置と言えば分かりますか?治せない病気とか怪我の治療法を未来に託したり。臓器提供迄の間に命を落とさないようにしたりと使い方は様々です」

 

緒川が補足する。

 

「なるほど」

 

顎に手を当てて考える。

 

得られた情報を元に考える。

変わらない姿のままの少女。

大きく成長した泣き虫。

自分が戦った化け物。

戦う少女。

突然の訪問。

去り際の涙。

 

ピースは散らばっている。

あれだけのライブを行える人物が私以外に頼れる者が居ない?

 

「待たせたわね」

 

思案する幽香を待っていた3人。

 

「これを渡してきたのは今日のライブの主役なのよ。名前忘れたけど・・・彼女が急に私の所に来て「セレナを助けて」と言って戻っていったわ」

 

「ちょっと待て!何か?あの歌姫マリアがコレを君に渡して、この写真の娘を助けてくれと言ったのか?」

 

追加情報に声を上げて驚く弦十郎。

他の面々も驚愕する。

 

「そうよ。それにその子、大分前にシンフォギアを纏って戦ってるところを私が助けたのよ。どのくらい前か分からないけど、マリア?が、その子と同じ位の背格好でいたから大分前ね」

 

「この少女は装者なのか」

 

弦十郎はもう一度写真をみる。

 

「でも、そうなると数年は装置の中にいる事になりますよ」

 

マリアは成人している。写真の少女が成人するには1、2年では明らかに足りない。

 

「ああ、そして助けを求めているという事は本来の使い方をしていないのだろう」

 

コールドスリープ中は抵抗など出来ない。少し装置を弄るだけでその命は散るだろう。

 

「しかも、私に助けを求めるっていうのがね。医者や警察ではない・・・」

 

病気ならば医者、人質ならば警察などの機関に依頼するのが一般的である。そこを通さずに直接、幽香に頼み込むというのが普通ではない事を物語っている。

 

「あれだけの知名度を持つ歌手だ、そこらの大統領なんかより発言力はあるだろう。少なくとも逆らえん関係なのだろうな」

 

「まぁ、人質なんでしょうね」

 

「ううむ」

 

弦十郎達は予想の斜め上の事態に黙り込む。

 

「とりあえず、マリアの背後関係を洗って欲しいのよ。シンフォギア関係なんだから何とか出来るでしょ?」

 

「すまん、即答は出来ない。俺の権限を超える上に海外となると・・・しかし、そんな長い間苦しめられている子供がいて黙っていられるほど俺は大人ではない。少し兄貴にも相談してみる」

 

幽香の頼みに即答は出来ない弦十郎だが、何とかしてみせると意気込んでいるのは伝わってくる。

 

「まぁ、いいでしょう。期待してるわ」

 

即答して欲しかったがありありと見えるやる気に満足する。

 

「今いる施設周りを偵察してみましょうか?」

 

「ああ、不審なところが無いかの確認を頼む。もしかしたら装者についてわかるかも知れん」

 

緒川の提案を受け入れる弦十郎。

 

こうしてマリアの願いは成就に向けて動き出す。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

パソコンにメッセージが入る。

それを確認する。

 

「無事にソロモンの杖を手中に収めた見たいね」

 

深々と革張りのソファに体を預ける。

指に填めた大小様々な宝石の指輪を満足気に眺める。輝きにうっとりする。

 

「そろそろ寝坊助を起こしてあげないとねぇ」

 

輝きを眺めながら考える。

 

「ルナアタックの英雄ねぇ?排除出来るのが1番だけれど・・・いけるかしら?」

 

月の破片を破壊する力がある集団。

計画遂行の障害になるのは明白。

こちらにも装者はいるが数でも負けている。

 

「課題はまたまだあるわね。とりあえず寝坊助を起こす所から・・・か」

 

そして一つ思いつく。

 

「ソロモンの杖の試運転は手伝ってもらいましょう」

 

ニンマリと口角が上がり不気味な笑顔で宝石を眺め続けるのだった。

 

 

 

 




マリアさんはぐぬぬ顔が似合うと思う。
共感してくれる人いるかな?

絶対ぐぬぬさせてやるんだ!!


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G第4話

お楽しみ頂ければ幸いです。


4人で集まってから幾ばくかの時が流れた。

進捗は芳しく無いが定期的に集まり報告を聞く。

そんな夜は帰りが遅くなるので店の電気は消えている。

 

風呂に入り身支度を整えて就寝する。

コレがいつもの動きなのだが今日は違うようだ。もう少しで意識が落ちるなぁという所で静かに扉が開けられる。

 

薄目で確認すると枕を抱き抱えたクリスが様子を伺っている。

 

そーっと足音に注意しながら部屋に入ってくる。

 

寝ている幽香に近づくと寝ているか様子を伺っているようだ。

 

変化が無い事で寝てると判断したのかゆっくりとシーツを捲って隣りに入ってくる。

 

幽香はこっそりと布団に入ってきたクリスを可愛いと思いつつ様子を伺う。

 

手をちょんと触って起きない事を確認してから握ってきた。

 

我慢出来なくなった幽香はゴロンと体をクリスの方に向けて抱きつき足も絡めて逃げられないようにする。

 

「お、お前起きてたのか!!」

 

驚きと恥ずかしさで声が上擦る。

しかし、がっしりと捕まっているので胸の中でもがくことしか出来ない。

 

「ええ、可愛らしく枕を抱いて入ってきた所からね」

 

「はっ、初めからじゃねぇか!!」

 

「いいじゃない。可愛らしくて良かったわよ〜」

 

「っ〜」

 

恥ずかしさで声は出せなかった。

逃げられないので胸に顔を埋める事で見られないようにする。

 

「最近居なくて寂しかった?」

 

子供をあやすように頭を撫でながら問いかける。

 

「うん、それに・・・それに頼って貰えなくて悔しい」

 

胸の中で告げるクリス。

温かい居場所をくれた幽香に頼って貰いたい。恩を返したい。という思いがあり今回のような状況は面白くない。

 

「全く可愛いわね。いつも頼りにしてるじゃない」

 

優しく頭を撫で続ける。

 

「クリスには助けられてるし、これからも助けて貰うつもりよ?」

 

「うん」

 

クリスがぎゅっと抱きつく。

 

「そうね。眠くなるまで最近の事を教えてくれるかしら?学校の事とかね?」

 

「う〜?」

 

身じろぎして何を話そうか考えるクリス。

 

「そういえば学園祭があるらしいじゃない」

 

考えるクリスに話題を提案する。

 

「あー、あるなぁ」

 

余りに乗り気な反応ではない。

 

「何かあったの?」

 

「いや、クラスの奴がしつこく付き纏ってきてなぁ。苦手なんだよ。あの感じ・・・むず痒くて・・・」

 

「あらあら、楽しそうで良いじゃない。見に行くからね」

 

いちいち可愛いなぁと頭を撫でながらほっぺも撫でる。

 

「うー、まぁ悪い奴らじゃないし・・・頑張る」

 

そんな感じで夜は更けていく。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「調ぇ、最近マリアが前より落ち込んでる気がするデスよ」

 

バンっと机を叩き訴える。

 

「そんなに大声出さなくても聞こえるよキリちゃん」

 

対面に座っている調は静かに指摘する。

 

「んふー!!何でそんなに冷静なんデスか!!」

 

頬を膨らませて抗議の声を上げる切歌。

 

「落ち着いて。そこでコレ、ジャーン」

 

抑揚の無い言葉で手紙を出す。

 

「何デスか?」

 

調の横に周り隣りに座る切歌。

 

「この間のライブでマリアとコラボしたツヴァイウィングのマネージャーから届いた招待状」

 

「招待状?」

 

封を開けると季節の挨拶から始まり丁寧な言葉で書かれている。

 

「青い方の学校でお祭りがあるから来ないかって」

 

端的に伝える調。

 

「学校デスか・・・」

 

自分達には縁のない場所の名前に胸がチクリと痛くなる。

 

「気晴らしにはなると思う。ライブは楽しそうに歌ってたし」

 

「そうデスね!!マリアを連れ出すのデース!!」

 

調の手を握り、おーと持ち上げる。

 

「切ちゃん、痛い」

 

「調もテンション上げるデス!!」

 

「うん」

 

「「えいえいおー!!」」

 

マリアを元気にするべく頑張る2人であった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「やっと来ましたか。全く慎重過ぎますよ」

 

メールを確認してやれやれと首を振る。

 

「まぁ、英雄になる為の序章ですからね。さっさとやりますか」

 

ここにも動き出す人物が1人。

 



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G第5話

お久しぶりです。

お楽しみいただけたら幸いです。


 

「マリア〜早く行くデス!!」

 

そう言ってサングラスとハンチング帽で軽く変装したマリアの手を引っ張り先導する。

 

「キリちゃん前見ないと危ない」

 

切歌とは反対の手を握り少し前を歩く。

調もいつもよりテンションが高い。

苦笑しながら両手に花の状態。

 

(アイツらが居なければね)

 

後ろには黒スーツのSP達。

マリアの監視である。

 

先日の行動もあり、見えない所で何かをしたと判断されて監視が厳しくなっている。

 

自分の行動がセレナにどんな影響を与えるか気が気でない。

 

しかし、切歌と調が自身を励ましたいという気持ちも分かるのでなんとか楽しもうとする。

 

校門に近づくと賑わいが伝わってくる。

チラシを配る生徒やオススメを宣伝する生徒。楽しそうな雰囲気が遠目でも分かる。

 

「お待ちしておりました。ご来場頂きありがとうございます」

 

「デース!?」

 

「!?」

 

喧騒を眺めていたマリア達は緒川の声に驚く。意識が校門の前に向いて居たからなのか?こんなに近づく人に気づかないものだろうか?

そんな疑問を抱きながら返答する。

 

「今日はお招きいただきありがとう。楽しませて貰うわ」

 

「是非お楽しみ下さい。もう少し行くと案内役が居ますのでお進み下さい」

 

「分かったわ」

 

和かな笑顔で先に進む様に促される。

 

マリア達はそのまま進む。

 

「お付きの方はすみません。その胸のものは我が国では所持しているだけで犯罪となります」

 

うまい具合に間に入りマリア達に気付かれない様に割り込む。

 

「何を言っている許可は得ている。こんな事をして何かあったらタダじゃ済まないぞ」

 

「護衛については問題有りません。こちらで最強の御方を付けましたので、それより許可書の確認をする為に此方へ」

 

あくまで和かだが確認しなければ通さないという意思が見て取れる為SPは素直に従った。

 

「後で苦情は入れさせて貰う」

 

「了解しました」

 

捨て台詞と共に他の職員に連れられて行くSP。

 

(紛れてるのが何人か居ますね。直ぐに対処しなければ・・・後は頼みましたよ)

 

一般客に紛れたSPを見破った緒川は対処するべく動くのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「デス!!デース!!」

 

瞳をキラキラさせてマリアと調の前をちょろちょろと駆け回る。

 

食べ物の屋台やミニゲームの屋台、それぞれ学生が呼び込みを行っている。子連れの来客や老夫婦が学生の呼び込みに誘われて楽しんでいる。

 

喧騒を眺めながら歩くと白い傘が目に入る。

校舎を眺める彼女は此方には気付いていなかった。

 

驚きで足を止めるマリアに調がどうしたのかと振り返る。

 

そんな2人に首を傾げて戻って来る切歌。

 

「どうしたデス?マリアァー調ぇー!」

 

透き通る声は難なく周囲の人に届く。

 

白い傘は動き出し、隠れていた顔が此方を見る。

 

風見幽香は此方を見るとにっこりと微笑み歩いてくる。

 

驚きで動けなくなるマリアの視線は風見幽香からは離れない。

 

「ちょっと待つデース!!」

 

「貴女は何?」

 

マリアを庇う様に幽香の前に立ち2人は睨みつける。

 

「ちょっと!貴女達!!」

 

慌てて声をかけるが2人は取り合わない。

 

「大丈夫デス!!私達が追っ払います!!」

 

「心配しないで」

 

無駄に自信満々の2人。

 

「ちがっ!!」

 

混乱で上手く言葉が出ないマリア。

 

「何を揉めてるの?」

 

そんな3人に眉をしそめながら幽香が話しかける。

 

「マリアになんの様でデスか!!」

 

「目的は何」

 

幽香に詰め寄る2人。

 

「何をって、今日の案内役なのだけれど?」

 

首を傾げて告げる幽香。

 

「「「え!?」」」

 

3人は声を揃えて驚いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「申し訳ないデース!!」

 

「ごめんなさい」

 

勢いよく頭を下げて両腕もガルウィングの様になってる切歌。

 

静かに頭を下げる調。

 

「私からもごめんなさい。まさか貴女が出てくると思わなかったから驚いてしまったわ」

 

マリアも謝る。

 

「そんなに謝らないの。こっちも事前に連絡してなかったのだから謝るのは此方よ。ごめんなさい。」

 

傘を閉じて頭を下げる幽香。

 

「貴女達は立派にボディガード出来たのよ。偉いわね」

 

幽香は切歌と調の頭を撫でて褒める。

 

「ほぇぇ、気持ちいいデェェス」

 

「んっ」

 

目を閉じて蕩ける切歌。

気持ちよさそうに撫で撫でを受ける調。

 

「そういえば知ってる人なのにマリアはあんなに驚いてたのですか?」

 

撫でられながら首を傾げる切歌。

 

「私も子供の頃に会って以来だったから・・・」

 

「何と!!お姉さんは実はオバっ!?」

 

切歌が言い切る前に撫でていた手は頭部を鷲掴みにし鈍痛が走る。アイアンクローである。

 

「何かしら?」

 

「あば!!あばばばば!?その、あの、お姉さんはもっとお姉さんだったデス!!」

 

にっこりと微笑む幽香の顔は、表情とは裏腹に虎やライオンなどの猛獣に睨まれた様な迫力がある。切歌は、必死に手を引き剥がそうとするが、どうにもならず焦って訳わからない事を口走る。

 

「キリちゃん・・・」

 

失礼な事を言いかけた事と訳のわからない物言いに呆れる調。

 

「あっははは」

 

マリアはそんなやり取りに緊張が解けて笑った。

 

切歌の天然な幽香とのやり取り、調の呆れ顔。SPに囲まれ落ち込むマリアの横でいつも緊張していた2人。久々に見るコミカルな日常の一コマがツボにハマってしまった。

 

「マリアが笑ったデース!!お姉さんもっとやるデス!!」

 

「え、えぇ」

 

「キリちゃん・・・」

 

「あっはっはっはっは!!」

 

引き剥がそうとしたアイアンクローを両手で掴みキラキラした目で幽香を見ている。

それに引く幽香に呆れる調。再度お腹を抱えて笑うマリアであった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

廊下を走るクリス。

曲がり角を曲がると人とぶつかってしまう。

 

「すっすまねぇ!?」

 

「いつつ・・・何をそんなに慌ててるんだ?」

 

ぶつかったのは翼だった。

2人は尻餅をついてしまう。

 

「追われてるんだよ!!」

 

鬼気迫る表情で言うクリス。

 

「なんだと!?」

 

驚く翼は複数人の足音を聞き手刀を構えて迎撃態勢を整える。

 

「やっと見つけた雪音さん!!」

 

緊張した翼が対峙したのはどう考えてもただの生徒達だった。

 

「どういうことだ?」

 

困惑する翼を置いて女生徒は続ける。

 

「お願い!!雪音さん!!この通り!!」

 

拝み倒す勢いで掌を合わせて頼み込む。

 

「だから、柄じゃねぇって!!」

 

胡座をかいてプイッと顔を逸らすクリス。

 

「でも、雪音さんの歌はとても良かったもん!!折角だしステージに出てよ!!」

 

「「うんうん!!」」

 

残りの生徒も詰め寄る。

 

「ふむ。雪音はステージに立つのを断っていると・・・、皆は立って欲しいと・・・」

 

やり取りを見ながら考える。

すると珍しく悪戯心の様なものが芽生えた。

 

「そんなに頑なにならなくても良いのではないか?」

 

話しかけながら頼み込む生徒にウィンクする。それを受け取り黙る女生徒達。

黙ったのを確認してから胡座をかくクリスの横に座る。

 

「なんだよ。いくら先輩からの頼みでも・・・」

 

断る言葉を紡ぐクリスに被せる様にクリスが知らない情報を告げる。

 

「しかし、今日は幽香も来てるようだぞ?」

 

「幽香が?でも用事があるって・・・」

 

「ああ、叔父様絡みで詳しくは聞いてないが学園祭を回ってるらしい」

 

「・・・・・」

 

クリスは翼の言葉を待っている。

 

「緒川さんから聞いたのだがステージを見る事は決まってるらしい。まぁ、その他は叔父様の選定ルートを通るらしくて、幽香は大分文句を言ってたと緒川さんは苦笑していた」

 

緒川から聞いた話をクリスに話していく。

 

「そこで雪音がステージで歌っているのを見たら幽香は喜ぶんじゃないか?」

 

「・・・」

 

クリスは普段から楽しそうに話を聞いてくる幽香を思い出す。

 

「心当たりがあるようだな」

 

ニヤリと口角を上げる翼。

 

「べっ、別に幽香を喜ばすためじゃねぇ。その、あれだ!!偶には驚かしてやろうって事だ!!」

 

恥ずかしくなり頬を染めながら言うクリス。

みんなは生暖かい目で見ている。

 

「そこで一つ提案なのだが」

 

翼は思いついた事をここに居る者に告げる。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「美味しいもの一杯で幸せデース!!」

 

簡易テーブルに広げられた食べ物達。

綿菓子、たこ焼き、チョコバナナ、焼きそば、焼きリンゴ、etc・・・

 

「美味しい」

 

パクパク勢いよく食べる切歌と黙々と食べる調。

 

「見てて気分良いわね」

 

元気良く食べる2人にクスクスと微笑みながら幽香は言う。

 

「ええ」

 

2人の顔を見ながら最近はこんな時間は無かったなと表情を曇らせるマリア。

 

食べ物に夢中な切歌と調に感づかれないように幽香は耳打ちする。

 

「大丈夫よ。そう遠くない内にもう1人ここに加わるわ。私達に任せなさい。・・・だから笑いなさい」

 

耳打ちしながらそっと手を握る幽香に

 

「お願い」

 

そう言い握り返すマリア。

 

そっとジュースをマリアに渡す幽香。

 

「あーーーー!!」

 

そこに聞き慣れた騒がしく明るい声が上がる。

 

「幽香さん!!来てるなら連絡くださいよ〜!!」

 

響は幽香の背中に飛びつく。

 

「響!!急に飛びついたら危ないよ!!」

 

それを咎めるのは未来であった。

 

「あら、見つかっちゃたわね」

 

肩に顎を乗せる響の方へ振り向く幽香。

 

「およ?幽香さんこの方達は?」

 

「案内してるのよ。切歌に調、マリアよ」

 

なんのこともないと普通に質問に返答する幽香。

 

「マリア?さん?」

 

響はマリアを見ると少し固まり理解する。

 

「!!?!?」

 

叫ぶ前に口を押さえて声が発せられるのを抑える幽香。

 

「響ちゃん。お忍びなのよ〜驚くのは良いけど静かにねぇ」

 

こくこくと頷き自分でも口を塞ぐ響。

 

未来も目を大きくして驚いている。

 

「た、立花響です!!好きなものはご飯&ご飯!!食べるのが大好きです!!よ、よろしくお願いします!!」

 

直立し言い切ると勢いよく頭を下げた。

 

「私は小日向未来です。お会いできて光栄です。」

 

未来はにっこりと微笑みながら会釈する。

 

「ええ、よろしく」

 

マリアは握手で答える。

 

「お姉さんの知り合いデスか?」

 

食べるのを中断して此方に向き直る切歌と調。

 

「そうだけど、ちょっと動かないでね。」

 

「ん〜ん〜。かたじけないデース」

 

幽香は優しくハンカチで口周りのソースを拭う。

 

「幽香さん、また女の子たらし込んでる〜クリスちゃんが妬いちゃいますよ〜」

 

「大丈夫よ。ちゃんと可愛がるから」

 

揶揄う響にふふっと笑い返答する。

 

「クリスも大変だ」

 

いないクリスに同情する未来であった。

 

「私は切歌デース。こっちは調デス。お姉さん達もよろしくデース!!」

 

「よろしく」

 

「うん、よろしく。立花響です!!」

 

「小日向未来です」

 

自己紹介をして響達が買ってきた食べ物も空になる頃に丁度良い時間となった。

 

「それじゃあメインイベントね」

 

食べ物の容器を捨ててから仕切り直す。

 

マリアと切歌、調は首を傾げる。

 

響と未来は察する。

 

「ステージですね。友達も出るから楽しみです」

 

「ステージデスか?楽しそうデース!!行くデス!!マリア!!調!!」

 

一同は会場へ向かう。

 

運良く中央の席を確保出来ステージが開演する。生徒達がそれぞれ歌う。勝ち残りで行われるステージは聞き応えと見応えがある。

 

「あのコスプレ面白かったわね。今度ウチの店でもやってもらおうかしら?」

 

クスクスと板場達のステージを振り返る。

 

「あはは」

 

そんな幽香に一同は苦笑い。

 

「次なる挑戦者は何と!!今をときめく我が校のスーパースター風鳴翼だーー!!」

 

司会も興奮し紹介する。

 

会場は騒然とし歓声が鳴り止まない。

 

そんな喧騒の中翼はステージに立ちマイクを口元に持って行くと会場は静まり返る。

 

「歌う前にひとつだけ喋らせて欲しい。私の次の挑戦者が私に勝てたら一つの我儘を言う。どうか応えて欲しい。・・・ありがとう、時間を取らせた。始めよう!!」

 

殆どの観客は何の事かわからないが翼の見つめた先にいた人物は頷く了承した。

 

ツヴァイウィングの曲が流れ始めて会場は盛り上がる。

 

照明、演奏は大忙しで翼を追う。

 

一曲という短い中に翼は今できる最大の力を持って歌う。観客は声に、仕草に、視線に熱狂する。

 

一体となったステージは曲の終わりと共に拍手と歓声に包まれる。

 

「最後のステージありがとうございました!!新たなチャンピオンはもちろん翼さんです!!」

 

怒号の様な歓声が飛び会場は大盛り上がりだ。

 

「さぁ!!最強のチャンピオンに挑むのはこの方!!雪音クリスさんだぁ!!」

 

マイクを両手に持ちステージ中央に立つクリス。

 

舞台袖を見ればクラスメイトが応援しているのがわかる。

 

会場を見渡し目標を確認する。

 

曲がかかり歌い始める。

 

多くの観客の中で思いを伝えたい相手に届く様に感謝の気持ちを込めて。

 

気持ちを乗せて丁寧に、見つけてくれてありがとう。

救ってくれてありがとう。

居場所をくれてありがとう。

新しい日々は戸惑いが多いけど、優しい皆んなに支えて貰っている。

ありがとう。

 

クリスの歌は翼と違い派手さやノリの良い曲ではない。しかし、暖かい気持ちが伝わる。

歌から伝わる少女の叫び。むず痒く照れ臭いこそばゆい感覚が身体を巡る。

 

聞きいる皆は微笑み聞き惚れる。

胸に灯るじんわりと優しい気持ち。

 

ピアノの音を最後に静寂が会場を包む。

染み渡る様に静寂の中でクリスの歌の余韻に浸る。

 

「ありがとうございました!!素晴らしい歌でした!!結果は!!」

 

観客は固唾を呑んで発表を待つ。

 

クリスも目を閉じて結果を待つ。

 

「なんと!?同点!!前代未聞のチャンピオンが2人!?」

 

観客は立ち上がり拍手で讃える。

 

クリスの横に翼がきてマイクを受け取る。

 

クリスと翼は背中合わせで会場の中央、目的の人物を指さす。

 

「「さぁ、一緒に歌おう!!」」

 

会場は静寂の中、指の指された場所に視線を向ける。

 

幽香は両脇の3人をがしりと掴むと跳ぶ。

 

「「「え!?」」」

 

ふわりと持ち上げられたマリア、切歌、調。

 

「デェェェェェェス!」

「きゃーーーーー!!」

 

ステージに着地する幽香。

 

マイクを受け取ると

 

「良いわ、でもこの子達も一緒よ」

 

宣言と同時に持ち直したマリアが立ち上がるとサングラスと帽子がずり落ち観客が目にする。

 

 

「え!?」

「嘘!?」

「何で!?」

 

「「「「マリアだぁーーーーー!!」」」

 

驚愕で観客が騒ぎ出し混乱する。

 

「狼狽えるな!!」

 

マリアがマイクを受け取り会場に叫ぶ。

 

「お忍びだったけど良い歌に出会えたわ。私にもチャンピオンに挑戦させて欲しい。良いだろうか?」

 

「マリアー!!」

「サイコー!!」

「ありがとう!!」

 

観客は盛り上がる。

 

「な、なんと!?歌姫マリアが!!乱入だぁー!!」

 

司会も何とか持ち直し宣言する。

 

その後ろで翼とクリス、幽香が話している。

 

「むぅ、まさかマリアと居たとは驚かされる」

 

「ったく!!いつも予想の上を行きやがって!!」

 

「ふふ、まだまだね。でも良い歌だったわ」

 

「っっ!!」

 

頭を撫でられて恥ずかしいが嬉しいクリスだった。

 

その後は、マリアが歌いそれを聞きつけた奏が乱入して伝説の学園祭となったのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「少し良いですか?」

 

「エージェント緒川だったかな?」

 

「バレてましたか」

 

変装したSP達の中でも様子が異なり監視している様に見えなかった為声をかけてみた緒川だった。

 

「その、他の方と様子が違う様でしたので観察させて貰いました」

 

マリア達を見ていたという部分では同じだが他が監視するのに対して見守るという印象が強かった。

 

「正直に言うのだね。そういうのは好感触だ。そうだね、私はマリアのファンなのだよ。勿論、危険が有れば命を賭けて守るSPだが、他の奴らの様に監視するのは嫌いだ。それに風見幽香が居るなら私は必要無いだろうしね」

 

「幽香さんの事もご存知ですか。2人が会っているのは良いのですか?」

 

SPは肩をすくめる。

 

「友人が会うのを止めるのかい?ただ風見幽香は要注意人物としてマークされている。そちらも気をつけてくれ。」

 

SPは緒川に小型の記憶端末を差し出す。

 

「私が調べた「妹」に関する情報だ」

 

「!?、、、いいのですか?」

 

「風見幽香については私も半信半疑だったのだが・・・あんなに笑ったマリアを初めて見たよ・・・私からも頼む、マリア達を救ってくれ」

 

端末を差し出しながら頭を下げるSP。

 

「全力を尽くします」

 

覚悟を受け取る緒川。

 

 

 




怪我で落ち込んでいたのですが
少しずつ増えるお気に入りに元気を貰えました。

皆様ありがとうございます。

ぼちぼち投稿しますのでお楽しみいただけたら嬉しいです。


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G第6話

どうやってセレナの救出とネフェリムイベントを両立させるか悩んでようやく答えを出せました。
そこからモチベが下がって止まってたんですが今日コメントを見てやる気が出ました。

ありがとうございます。
自分にチョロいなと思いながら書けました。

お楽しみ頂けたら幸いです。






「それでは報告を聞きましょうか」

 

モニター越しに妙齢の女性が話しかける。

 

「はい、結果からお伝えしますとネフェリム覚醒には至りませんでした。ソロモンの杖を用いて実戦を行い3人は見事にノイズを撃退しました。数値は以前と比べるまでもないほどに向上していますが・・・足りません」

 

ウェル博士は報告する。

 

「なるほど、戦闘内容についてはどのような内容ですか?」

 

「はい、3人は上手く連携し一方的にノイズを壊滅させました。シュミレーションの時が嘘のように。これならば戦力としても申し分ないと思われます。しかし・・・」

 

言葉に詰まるウェル博士。

 

「なんでしょう?言ってみてください」

 

「正直、ルナアタックの英雄達と比べてどうかと言われれば苦しいかと・・・全力では無いとはいえ、あちらには限定解除と例の人物も居ますし」

 

肩をすくめて報告するウェル博士は何処か呆れたような表情をしている。

 

日本政府が出した資料に載せられた光景とこちらで掴んだ情報により、戦力差が比べるまでもなく劣っていると考えているのだろう。

 

「しかし、こちらにはノイズもあります。取れる戦略で何とかするしかないでしょう。それでネフェリム覚醒について何か提案はありますか?」

 

「ありますが少しお手を煩わせる事になるかも知れません」

 

「取り敢えず聞きましょう」

 

「フォニックゲインが用意出来ないならあちらに用意してもらうのです。」

 

「なるほど、いいでしょう。余り時間も有りませんし根回しはこちらで行います。」

 

「よろしくお願いします」

 

ウェル博士は恭しくお辞儀をモニターに映すが表情は酷く歪んだ笑顔だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「デース!!」

 

そう言ってベットにダイブする切歌。

 

「キリちゃん、ご機嫌だね」

 

そう言ってベットに腰掛ける調。

 

「だってノイズも瞬殺だったし、学園祭楽しかったデース!!」

 

「うん、楽しかった。マリアも笑ってた。」

 

「皆んなで歌ったのも良かったのデース!!マリアも楽しそうだったので大成功デス!!」

 

枕を抱き抱えてゴロゴロする切歌。

 

「そうだ・・・」

 

そう言ってポーチから紙を出した。

 

「ジャーン」

 

「なんデス?無料券?」

 

両手で端を持ちピンと伸ばしてよく見えるようにしている。

 

「うん。幽香さんがやってるお店の無料券くれた。いつでも来てって言ってた」

 

「おお!!幽香さんのお店デス!?行きたいデス!!」

 

「うん、私も行きたい」

 

パァと明るくなる切歌。

 

3人で幽香のいる店に想いを馳せる。

学園祭の様に幽香に揶揄われ調が呆れてマリアが笑う。そんな楽しい時間に想いを馳せる。

 

そして気づく・・・

 

「行けるデスか?」

 

今回の学園祭はツヴァイウィングのプロデューサーを立てた対応である。

 

浮かれていたので忘れていたが規模的に自由に外出する事は許されていない。

 

「大丈夫、マムにお願いしよう。私達が頑張れば許してくれるはず・・・」

 

ナスターシャ教授は厳しいが良心があり結果を出せば許せる限りで褒美も出してくれる。

 

「そうデスね!!頑張るデース!!」

 

楽しいお出かけを夢見て2人は明日を想う。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「むぅ」

 

アラームがなり司令室のモニターに地図が表示され赤い点が無数に点滅している。

 

連日襲撃してくるノイズは扇型に展開され日に日に展開範囲と数が増えている。更に司令所から離れていっている。

 

「こちらの対応を見られているな」

 

腕を組み険しい顔でモニターを睨む。

 

「司令!!大型ノイズ群がアリスさんの所に!!」

 

オペレーターの報告に弦十郎は声を上げる。

 

「他の状況は!!」

 

 

「クリスちゃんは中央でノイズ群と戦闘中!!フォローの響ちゃんも動けません!!」

 

「翼は!!」

 

「間もなく殲滅可能ですが距離があります!!」

 

「ヘリで中継出来るか!!」

 

「可能です!!」

 

「到着予想時間は10分!!」

 

短いやり取りの後にアリスに通信を繋げる。

 

「翼が10分で到着予定だ!!持たせてくれ!!」

 

「敵の数が多いわ!!しかもゴリアテに攻撃が集中していて損傷が抑えられない!!」

 

通信からは切迫したアリスの声が響く。

 

「くっ!!さっきから上海と蓬莱がノイズ以外の何かに壊されていく!!」

 

悪態の様な通信に弦十郎の眉が歪む。

 

増える赤い点に押されて居るがわかる。

赤い点が消える数も多いが増える速度が上回っている。

 

「何かがアリス君の近くに居るのは確実だ!!直ぐに移動できるようにヘリの待機場所を装者から離すな!!」

 

「「了解!!」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

大型ノイズの殺到を巨大な鉈を振るい切り裂いていく。既に左腕はなく右腕だけで捌く。

 

上海と蓬莱の群体で小型の殺到を防ぐ。

 

小型の対処は何とかなるが大型が殺到されると無傷ではいられない。

 

さらに、ノイズの攻撃を防ぐ際に何体かの上海と蓬莱に穴が空き落下する。

 

「くっ!?」

 

破壊されて急に落ちる上海と蓬莱。

 

丹精込めて作った物なので怒りで沸騰しそうになる。

 

抜けた穴にノイズが殺到して上海の盾が引き裂かれる。

 

数に任せた特攻、分断された上海もレーザーにて追撃し幾ばくか数を減らすが津波に小石を投げる様なもの。

 

その津波が向かう先はゴリアテ。

左腕の無いガラ空きになった左方。

 

ゴリアテから2体の上海が津波に飛び込む。

 

「っ!!リターンイナニメトネス!!」

 

苦しい表情で叫ぶ。

 

2体の上海はノイズの中で爆発し殆どを巻き込んだ。

 

「ごめんね」

 

しかし、それは苦し紛れの一撃。

 

後続が針の様な形状に変形してゴリアテに突き刺さっていく。

 

刺さる数が増える度にヒビが入り崩れていく。

 

何とか大型1体に鉈を振るい道連れにする。

 

制御を失ったゴリアテは崩れながらその場に倒れ込む。

 

上海と蓬莱を自身の周りに展開し直すと数は合わせて20程度、100はいたのだが被害は甚大である。

 

しかし、眼前には大型、小型入り乱れて視界の大半を埋め尽くしている。

 

小型が動き出しそれに続く後続達。

 

上海のレーザーが先頭集団に当たった。

 

その時に

 

「千ノ落涙!!」

 

空中から刃が中断に落とされる。

 

「騎兵隊のお通りだぁぁぁ」

 

「はあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ミサイルに乗り銃撃を繰り返すクリス。

 

拳を突き出して全力で突撃する響は目の前の大型達を貫いていく。

 

 

3人の装者が合流してからは早かった。

 

瞬く間に殲滅していく。

 

「一気に行くぞ!!」

 

「おうよ!!」

 

「了解です!!」

 

3人は集まり手を握る。

 

「うぁぁぁぁぁあ!!」

 

「立花ぁ!!」

 

「踏ん張れぇ」

 

「「「S2CA!!トライバースト!!」」」

 

絶唱を束ねた極大の一撃は数の暴力をねじ伏せる。

 

虹色の竜巻の余波は天空へと登っていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「素晴らしいぃ!?うははは、いひゃひゃ、あはは・・・流石は英雄です!!素晴らしい光景!!・・・それにぃ、ネフェリムは覚醒しましたぁ。あっはっははっは!!人形使いの戦力もダウンンンン!!これは嬉しい誤算ですねぇ」

 

ひとしきり笑い落ち着きをや取り戻す。

 

「ではっ、第二段階に進みましょう」

 

モニターの光が照らす顔は酷く歪んで見えた。

 

 

 



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G第7話

久々の発熱中に固まり何とか書き上げました。
過去最長かもしれません。

場面転換が多いので読みにくかったらすみません。

お楽しみ頂けたら幸いです。



「あむ、はむっ!!未来!!美味しいよ!!」

 

どんぶりご飯を片手に生姜焼き、味噌汁と漬物を忙しなく口に放り込み食べ進める響。

 

「そんなに慌てなくても」

 

苦笑しながら対面に座る。

 

「今夜も徹夜なの?」

 

「うん、多分また来ると思うし・・・今は幽香さんも居ないからね」

 

心配する未来の問に箸を止めて答える。

 

最近はおおよそ同じ時間にノイズが出現する。日に日にノイズの数が増え展開範囲も広がり弦十郎は頭を悩ませている。

 

さらに、昨日の戦闘によりゴリアテは中破し上海と蓬莱が10体程度まで減ってしまった。

 

「上海と蓬莱も減っちゃったし幽香さんも居ないけど私達が何とかするから大丈夫だよ・・・うん、へいきへっちゃら・・」

 

「そっか・・・ご飯作って待ってるね」

 

貼り付けられた笑顔に無理はしていると感じる。しかし、心配される事を嫌う響を立てて特に言葉にはしない。

 

夕食を食べて玄関で靴を履く。

それを側で見守る。

 

準備が終わって未来の方を向く響は照れくさそうにはにかむ。

 

響がそっと肩を掴むと未来は目を閉じる。

そして重なる唇。

少しの余韻と高揚する気持ちを爆発させる響。

 

「うぉぉぉお!!元気出てきた!!行ってくるね未来!!」

 

「うん、いってらっしゃい」

 

扉が完全に閉じるまで見送る。

 

かちゃりと扉が閉じてから先程の事を思い出す。自身の頬が染まるのを感じながら最愛の人が帰るのを待つ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「そちらはどうだ?」

 

弦十郎は緒川と連絡を取っていた。

 

「実働部隊の準備は完了しました。後は司令のお言葉を待つばかりです。後は、幽香さんを止めるのが大変というところでしょうか・・・」

 

準備状況を報告する緒川は最後に少しだけ苦笑する様な口調となる。

 

「それはなんとも・・・やっかいな案件だな。しかし、もう少しの辛抱だ何とか頼む」

 

眉を顰め答えるが声は明るい。

 

「それより、そちらの方が大変な事になっているようですが・・・」

 

「むぅ、不甲斐ないが有効な対策を立てられていない。我々のツケを払って居るのがアリス君というのがまた口惜しい」

 

額に手を当ててこの頃の被害の大きさにため息を吐く。

 

その後もしばらく情報交換を続ける弦十郎だった。

 

暫く時がたちアラームが鳴り響く司令室。

 

モニターに映されるノイズ群を確認して指示を出す弦十郎。

 

「響君とアリス君はA地点へ向かってくれ。翼とクリス君はC地点へ!!奏君はE地点付近で待機だ万一の予防だ!あまり近づきすぎるなよ!」

 

「「「「「了解」」」」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ヘリ内部

 

「数はあっちより少ないけど、こっちは大型が多いわね。フォローするからガツンとやっちゃいなさい」

 

送られてきた現場データを確認しながらアリスは響に言う。

 

「はい!!真っ直ぐ突っ込んで倒しちゃいます!!」

 

ゴツんと拳を合わせて笑う響。

 

「頼もしいわ。とっとと終わらせてやりましょう」

 

「はい!!」

 

その会話が合図となる様にヘリの降下ドアが開けられる。

 

「行きます!!」

 

空いたドアから弾丸の様に地面に向けて飛び出す響。

 

「ちょっと!?」

 

それに続いてアリスも空中に飛び込む。

後方に上海と蓬莱を連れて。

 

空中でシンフォギアを纏い歌とともに拳を突き出す。

 

歌を力に変えてシンフォギアが応える。

拳の装甲が変形してメリケンサックの様なモノが展開され撃鉄を引く様に籠手を伸ばす。後部よりブースターが点火され爆発的に速度が増していく。

 

槍というより流星の様な勢いで迎撃にくるノイズを貫いていき最後は大型を何体か巻き込んで伸ばされた籠手が打ちつけられると、その破壊力で地面にクレーターを作り有り余る破壊の余波が周りのノイズを消し飛ばす。

 

続くアリスは上海と蓬莱を展開しながら、そのデタラメな破壊力に呆れる。

 

「その出鱈目さ幽香に似てきたんじゃない?」

 

「本当ですかぁ!!アリスさんに言われると嬉しいです〜!!」

 

笑いながらノイズを蹴散らしていく響。

 

「褒めてないわ」

 

ため息を吐きながら小型を確実に減らす。

 

その戦場に不釣り合いな拍手が響く。

 

「いや〜流石ルナアタックの英雄だ!!素晴らしい戦闘力ですねぇ!!」

 

そこに現れたのはソロモンの杖を手に持つウェル博士。

 

「貴方は!!」

 

「なんで!?」

 

ソロモンの杖を米国で研究する為に受領した本人がそれを携えて戦場に来たのだ。

 

「此方にも事情がありましてねぇ。取り敢えず貴方にはもう一役かって貰いますよ!!行け!!ネフィリムぅ!!」

 

響の近くの瓦礫を吹き飛ばし勢いのまま巨腕を振るうネフィリム。

 

「がぁ!!」

 

奇襲により、そのままビルを貫き瓦礫に消える響を追い咆哮を上げて突撃するネフィリム。

 

「させない!!」

 

上海と蓬莱がネフィリムに突貫する。

 

「こちらだって!!」

 

ソロモンの杖を使い大中様々なノイズが壁を作る様に召喚される。

 

「くっ!!」

 

何体か突破出来ても集団で突破する事が出来ず飛び出た上海と蓬莱が一つ一つと潰されていく。

 

「ゴリアテ!!」

 

苦い顔で叫ぶアリス。

 

それに応えて出現したゴリアテは痛々しい姿だった。

 

左腕はなく服も破れや汚れが目立ち顔にもヒビが入っている。スカートから覗く足にもヒビが目立ち包帯を巻く様に布で補強されていた。

 

そんな姿であるがかけた手に鉈を構えて眼前のノイズに襲いかかる。

 

「弦十郎!!弦十郎!!」

 

突破出来ない現象を打破しようと司令室に通信をはかるが聞こえるの耳障りなノイズのみ。

 

「あはぁ!!今回のノイズ展開範囲は既にジャミングが完了してるんですよぉ!!あっはっは!!」

 

「くそ!!」

 

笑うウェル博士を睨み覚悟を決める。

 

そして突破した上海が爆発して壁に穴を開け始める。

 

「おやぁ、それは厄介ですねぇ」

 

空いた穴を見るとパチン指を鳴らす。

 

すると乾いた破裂音が周囲から聞こえる。

 

「がっ!?」

 

肩に衝撃と焼けた様な激痛が走る。

感じたことのない痛みに膝をついてしまう。

何とか上海達のコントロールが切れない様に意識を保つ。

 

同時に上海と蓬莱も何体か砕け散る。

 

「貴方は厄介ですからねぇ。生かしとく意味もないので此方も全力です。まぁ、僕はあっちに行きますけどね!!あっはっは」

 

そう言ってネフィリムが作った穴に入っていく。

 

「舐めないでよね」

 

怒りに燃える瞳でアリスは穴を睨んだ。

見えない狙撃手とノイズ群との戦闘が始まった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

少し遡って翼とクリスの戦場。

 

「とんでもねぇ数だ」

 

クリスは絶え間なく砲火をばら撒きながら呟く。

 

「しかし、数だけだ!!さっさと蹴散らして立花達の所へ向かうぞ!!」

 

「先輩こそヘマするなよ」

 

「ふっ、言ってくれる」

 

ニヤリとして挑発するクリスに頬を緩め応える翼。

 

次々と数を減らす中・・・異変が起きる。

 

「通信が繋がらないぞ!!」

 

司令室に現象の報告をしようとした時に不通に気づいた。

 

「あぁ?つまりなんだ?」

 

「これは何かあるということだ!!」

 

ほぼノイズを倒し切った所だったが周囲の警戒を強める2人。

 

「流石は防人と言った所かしら」

 

ビルの上に立つのは黒いギアを纏ったマリア。

 

「マリアか!?」

 

「はぁ!?なんでだよ!!」

 

困惑する2人。

 

「説明不用!!」

 

マントを翻しビルから一直線に飛んでくるマリアを翼が迎撃する。

 

マントから出てきたアームドギアを刃で受けながら驚愕する。

 

「ガングニールだと!!ぐぁ!!」

 

色や細部に違いはあれど相棒の奏の物と同様の物だった。

 

それに同様し硬直した所に蹴りを貰ってしまう。

 

「先輩!!」

 

反射的に銃を構え援護しようとする。

 

「なんとイガリマーー!!」

 

雄叫びと共に振り下ろされる巨大な鎌を反射的に飛び退き避ける。

 

「キリちゃん・・それじゃあ当たらないよ」

 

「デース?」

 

鎌を引っこ抜き首を傾げる切歌。

 

「お、お前らあの時の・・・」

 

ステージで共に歌って笑った相手、幽香も今度遊びに来いと言っていた2人。

 

向ける銃口が無意識に下がってしまう。

 

しかし、お構いなく攻撃が再開される。

放たれる丸鋸、鎌に銃口を向けるが引き金を引けない。

 

「クソっ!!」

 

直撃寸前のものを撃ち落とすのが精一杯で

逃げの一方である。

 

「雪音!!」

 

何とか体勢を立ち直しクリスの状態を確認して叫ぶ。

 

「貴方の相手は私よ!!」

 

槍で突きを繰り出すが翼は剣で受け流す。

そのまま刃を交えたまま背中合わせの様に肩をぶつける。

マリアも負けじと力を入れて肩で押し合う様な形になる。

 

「何故だ!!マリア!!共に歌い同じステージに立った中では無いか!!」

 

「此方にも引けない理由がある!!」

 

マリアの力が強くなる。

 

「幽香がお前の為に動いてるのは知っている!!詳細は分からないが・・・だからこそ敵対する理由が分からない!!答えろ!!」

 

翼も負けじと力を入れる。

 

「っ!?」

 

ビクッとマリアが震えるのがわかる。

 

「私だって・・・こんなのはイヤなのよ!!でも!!仕方ないのよ!!」

 

力をふっと抜き一歩下がってから槍を乱れ突く。

 

翼は止められていた力を流すようにそのまま手をついて側転しながら飛び避ける。

 

「ならば!!理由はベッドで聞かせてもらう!!」

 

脚部にも刃を展開しカポエラの様に回り斬撃を繰り出す。

 

マントで受け流し追撃するマリア。

 

5人の攻防は続く。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はぁ!!やぁ!!」

 

コンクリートに叩きつけられたダメージはあれどネフィリムを圧倒し始める響。

 

繰り出されるネフィリムの拳を受け流し背撃で攻撃に転化し流れを変える。

 

飛び出た顎を蹴り上げネフィリムがたたらを踏むと、ガラ空きになった腹部に足を戻しながら踏み込み拳を叩き込む。

 

その威力にネフィリムが悲鳴を上げて後方の壁に叩きつけられる。

 

その様な感じでネフィリムの拳や体当たりを受け流して反撃という流れで追い詰めていく響。

 

「おやおや、やはりお強いですねぇ」

 

ネフィリムが圧倒されているのにゆったりと登場したウェル博士。

 

「コレを倒したら貴方を捕まえてなんでこんな事をしているのか話してもらいます!!」

 

「出来ますかねぇ?貴女に」

 

「やってみせます!!」

 

響からの言葉にニヤリと笑い余裕のウェル博士。

 

ネフィリムが近くの瓦礫を投げてから再度突撃を敢行する。

 

瓦礫を裏拳で払い迎撃の構えを取る。

 

視界の端に小さなドローンが複数飛んでいるのを確認するが今は迫る最大の脅威に集中する。

 

ネフィリムとの距離はさほど離れては無かったが迫る迄の数メートルにドローンが横切る。

 

ネフィリムに意識を集中し直視していたのでそれは見えてしまった。

 

「はっ!!?」

 

目が開き体が硬くなる。

不意打ちから思考停止し次第に湧き上がる不安そして胸の中に巡る恐怖。

 

釘付けになった目は次第に横切るドローンを追ってしまう。

 

銃口をこめかみに当てられた未来の映像を携えたそれを・・・

 

ぶちり

 

思考停止した体に響いたのはそんな音だった。

 

「え?」

 

異常事態に対しては間抜けな反応。

音の方に向き直ると眼前にはネフィリムの頭部。

 

そして顔が振り上げられた際にまた音が鳴る。

 

びちびち

 

体が持ち上げられるも右手が引っ張られ直ぐに尻餅をついてしまう。

 

鮮血に染まる地面。

膝に当たる冷さ生暖かい液体。

肘から先の空間。

そしてバキ、グチャとネフィリムが咀嚼する音。

 

腕が食べられた

 

理解が追いつくと激痛に襲われる。

 

「あぁぁぁぁぁぉぁ!!」

 

「あっひゃひゃひゃ!!イッタぁぁぁぁぁあ!!ぱくついた!!シンフォギアを!!ガングニールを!!」

 

絶叫と歓喜の地獄のハーモニーが響く。

 

「コレで完璧!!戦力を削いでネフィリムは完全となる!!僕が英雄になるんだぁ!!」

 

ネフィリムは二回り大きくなり体の模様が炎の様に明滅し咆哮する。

 

新たな体に歓喜する様に。

 

響は激痛の中で自身の事より未来の事を思った。

 

何故?

どうして?

誰が?

無事?

ごめん

 

渦巻く疑問の中で自分のせいで、と結論づけ助けなければと思うが、次第に思考が過激になる。

 

許さない!!

許せない!!

よくも未来に!!

私の未来に!!

 

憎悪が膨らみ生命の危機にガングニールが暴走を始める。

 

「ウアァァァァァァ!!」

 

怒りの慟哭。

黒い渦が全身を駆け巡り眼前の敵を再度認識する。

 

殺す!!

 

膨れ上がった憎悪は響に破壊衝動を促し思考が支配される。

 

ガングニールはそれに応えて腕を再生する。

 

「なぁ?!」

 

驚くウェル博士を尻目に一足でネフィリムの懐に入り今までとは比べ物にならない一撃をみまう。

 

打撃音を置き去りにネフィリムはその巨大を吹き飛ばされ壁を破壊していく。

 

それを響は追いかける。

 

「待てぇぇ!!」

 

凶悪な破壊力にネフィリムを倒されてしまうと慌てて追いかける。

 

 

ネフィリムが止まったのは奇しくも響に一撃をみまった大通り。

 

そこにはノイズはおらず先程よりも瓦礫が散乱している。

 

「この、化け物は、っはあ、はぁ」

 

息も絶え絶えで言葉を発するアリスはボロボロだった。

 

ドレスは所々穴や破れ、自身の血に汚れ赤黒く硬くなり焦げた後もある。

 

上海と蓬莱もオリジナルが残るのみ、ゴリアテはビルに寄りかかる様に座っている。

 

上海と蓬莱が迎撃しようとした所でネフィリムが出てきたビルの瓦礫が吹き飛ばされる。

 

「グルァ!!」

 

ネフィリムにそのままの勢いで飛びかかり大振りに右左と殴りつける。

 

その禍々しい姿に一瞬呆気に取られるが不味いと上海、蓬莱、ゴリアテを向かわせる。

 

戦意喪失し逃走を計るネフィリム。

 

響は追撃を行う前に上海らを視界に捉えた。

逃げるものより向かってくるものを脅威と考え迎撃してくる。

 

「ウラァ」

 

牽制に拳を振るい風圧で砂利や瓦礫を飛ばし目眩しを起こす。

 

その粉塵を切り裂き突貫する響の蹴りを上海が自身と同じサイズの盾で受ける。

 

後方に力を受け流しながらであるのに威力を殺し切れず盾には足の跡の凹みが出来る。

 

止まった響に蓬莱がランスの腹で横払いをするが掴まれて放り投げられてしまう。

 

パワーでは太刀打ちできない。

 

「ゴリアテ!!」

 

それを予想していたアリスはゴリアテをぶつける。

 

満身創痍で細かくコントロールが難しくなる中、指のかけらが辛うじて付いている掌で地面に押しつぶす。

 

「正気に戻りなさい!!」

 

力任せにもがく響をゴリアテで押さえつけながら叫ぶ。

 

「うあぁぁぁぁぁあ」

 

限界だったのか苦肉の策なのかは分からないが黒い渦は残りのエネルギーを爆発に変えて

ゴリアテを吹き飛ばし響は元に戻った。

 

しかし、ゴリアテの腕は崩壊し体の至る所に破損を起こし大破した。

 

「あの化け物は」

 

霞む目で周囲をさがすと離れた所で佇んでいた。

 

「おやぁ?急いで来てみれば倒れてるじゃ無いですかぁ!これは僥倖!!ああ、貴女も生きてたんですね」

 

瓦礫に手をかけて騒ぐウェル博士。

 

「ネフィリム!!そいつを抱えなさい!!帰りますよ!!」

 

すると、のしのしと動いて響を捕まえて歩き出すネフィリム。

 

「ま、待ちなさい!!」

 

足に力を入れようとするが体は応えてくれない。

 

上海と蓬莱を向かわせようとすると。

 

「まぁ、生きてたらまた会いましょう」

 

無慈悲にノイズが召喚されていく。

 

姿が見えなくなる頃にノイズが緩慢な動作で此方に向かってくる。

 

戦闘を覚悟すると

 

空から槍の雨が降りノイズを消しとばしていく。

 

「アーーーリーーーースーーー!!」

 

空中から降り立ったのはギアを纏った奏だった。

 

「何時ぞやとは逆の立場だなぁ」

 

ニッと口角を上げて言う奏。

 

「ええ、そうね。でも時間が無いわ響を追いかけなきゃ行けないの」

 

「事情は分からんが取り敢えず眼前のノイズだ!!」

 

その後ノイズを殲滅したが響の手がかりは残されていなかった。

 

装者の誘拐とアリスの重傷。

上海、蓬莱の戦力低下にゴリアテの大破。

 

失ったものが多すぎる戦闘であった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

某所軍事施設

 

 

翼達との戦闘を終えて帰投したマリア達。

 

マリアは呼び出されていた。

 

「良くやりましたね。眠る妹も喜んでいるでしょう」

 

どっかりと椅子に座る妙齢の女性。

 

F.I.Sを牛耳り私服を肥やすトップである。

聖遺物の研究の成果を使い力と金を蓄えその力を使い米国で政界に顔が効き金で権力を買った女。

 

「あれは酷すぎるわ!!折角知り合った人と・・・」

 

マリアの言葉にワインを傾けて香りを楽しみながら答える。

 

「翼嬢の事ですか?唯の知り合いでしょう?それとも学園祭で密会して情が出ましたか?」

 

「くっ」

 

睨みつけるマリアに余裕の微笑みを返す。

 

「あらあら、可哀想なマリア。では選びなさい・・・妹とあの2人達の愛情を取るか・・・翼嬢達との友情を取るか。」

 

邪悪な笑みでワインをあおる。

 

選べるわけが無い。

選択肢として成立しないのだ。

最愛の妹、セレナ。

長年苦楽を共にした切歌と調。

 

楽しかったが1日にも満たない時間を共有した日本の歌姫。

 

「私はどちらでもいいのですよ?選ばれなかった方を処理して、選んだ方を囲い込むだけなのですから。うふふ、あはは」

 

醜悪な女性だと思ったが、それに逆らえない自分に腹が立ち情けないと悔しい思いが込み上がる。

 

堪えてもマリアの頬には雫がつたう。

 

2人は気づかなかったトビラが少しだけ開いていた事に・・・

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

急増された施設は人員が足りていなかったそれが幸いした。

 

「もう、後戻りできないデス」

 

「うん」

 

話を聞いてしまった。

自分達は人質。

マリアを縛る鎖であると・・・

手にはリンカー。

互いに打とうとそれぞれ相手の首にあてがおうとした時

 

「君たち・・・」

 

現れたのはSP。

SPは懐に手を入れる。

 

「させないデス!!」

「!!」

 

「待ってくれ!!・・・コレを」

 

言葉で静止して起動した液晶端末と記憶媒体を手にして差し出してきた。

 

「歌姫マリアを救う情報を託したい」

 

睨んでいた切歌と調は目を見開き受け取る。

 

「風見幽香を頼れ・・端末の点に向かって進めば店に着く」

 

言葉を聞いて調は手に握ったチケットを見る。外で頼れる唯一の手がかり。

 

「もう持っていたのか・・・行け!!少しは誤魔化しておく」

 

「何で?」

 

調の問いに答えるSP。

 

「俺はマリアのファンなんだ」

 

そう笑うとSPは戻って行った。

 

2人は笑い合いリンカーを投与しあう。

 

ギアを纏い調がノコをタイヤの様に展開し切歌が背中に捕まる。

 

チケットを握りしめ端末の表示を頼りにしながら闇夜の中目的地を目指す。

 

 

 

 




次回はゆうかりんがUSC(アルティメットサディスティッククリーチャー)になりますのでお楽しみに!!敵さん逃げてーー!!

感想くれたら速度が上がるかもしれません。|ω・)チラ


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G第8話

 

シューっと排気音が室内に響く。

それが終わると透明な蓋がスライドして中身が完全に外気に触れる。

 

重い瞼を開き霞む視界が捉えたのは配管が張り巡らされ仄暗い場所だった。

 

出迎えてくれた人を忘れる事は無い。

あの時のお姉さんだった。

優しく微笑んでいる。

 

お姉さんを認識しても体の自由がきかない。瞼を開くのすら重く、体のあちこちに力が入らない。

 

そんな私をお姉さんは優しく優しく抱き抱えてくれた。

 

花の香りがふんわりと鼻をくすぐりとても暖かく心地よいものだった。

 

頭を撫でる手もやさしくて私はそのまま眠りについた。

 

そして何となくまた助けて貰ったと感じたのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

緒川慎次は事の収拾に翻弄されていた。

セレナ・カデンツァヴナ・イブ救出作戦は成功したが問題が山積みの状態である。

 

そもそも、米国基地を秘密裏に急襲するというとんでもない事案だったのだが何とか決行寸前までこぎつけていた。

 

しかし、そこで問題が起きた。

装者立花響と外部協力者小日向未来の誘拐である。

 

両名は風見幽香が懇意にしている2名である。それを行ったと思われる組織は今回のノイズ事件の首謀者であり、外部から得られた情報により今回の基地を設立した組織と同じであると調べがついていた。

 

これを知り風見幽香が取ったのは単独での強襲。

 

結果は想像を絶するものであった。

 

舗装されて近代兵器が並び精鋭と言って差し支えない部隊がいた基地は草花が覆い木々が生い茂る姿になっていた。

 

更に屈強な兵士達は緒川達を確認すると泣きながらに助けを求めた。

 

それだけで異様だったが森に近づくとさらに異様だった。

 

木や蔓に飲み込まれて体の一部が辛うじて見える兵士達。

 

銃器は散らばり交戦の後もある。

 

ここにいる兵士達は震えて許しを請うばかりで会話が成立しないものが殆どだ。

 

植物に呑まれていないもの達は腕や足を失い正に虫の息だ。

 

緒川が隊員達と救助していると悲鳴が森の外から聞こえた。

 

緒川は数人を連れて出ると数人の兵士が少女を抱き抱えて歩く幽香に銃口を向けている。

 

しかし、恐怖からか銃口は震えている。

 

幽香は意に介さずそのまま歩く。

次第に近づく距離に兵士の震えが大きくなる。周りの兵士は余計な事をするなと取り押さえたいが指が引き金にかかっているのを確認しているので動けない。

 

「クソ!!俺は!!俺は!!」

 

近づくに連れて足音が大きくなる。

緊張が頂点に達して引き金を引こうとする瞬間に幽香が睨む。

 

その気迫に全員が呼吸困難になる錯覚を覚え体が硬直する。圧倒的な強者からの圧に生存をする為に刺激してはいけないと緊張は恐怖に塗り替えられる。生殺与奪は眼前の女性が握っている事を嫌でも思い知らされる。1分にも満たない時間だが外された視線により体の強張りが解ける。

 

自然と下がる銃口に周りがこれ以上不敬をかわないように必死で男を取り押さえる。

残りの兵士達は振り返るなという願いを込めて全員が幽香の背を見るが望み通りそのまま船に歩いて行った。

 

そこからは緒川達が指示を出して兵士の救助や施設の制圧を行った。

 

制圧といっても無抵抗どころか安全の為に緒川達に泣きつくような有様である。

 

そんな状態であったため現場を部下に任せて、複数の責任者を連れて緒川は船に戻り聞き取りを行う事にした。

 

包帯を巻き杖で体を支える兵士は初めに優香と交戦した部隊の指揮官。

 

次はやつれて無数に穴の空いた服を着ている男は森で幽香と戦闘した部隊の指揮官。

 

最後は屋内を案内させられた研究員である。

 

「怪我をしている所申し訳ありませんがお話をお聞かせください」

 

「これであの化け物から護ってくれるなら這ってでも話させてもらう。だからどうか部下達を助けてくれ」

 

残りの2人もコクコクと頷く。

 

緒川は内心何をしたのか聞きたくない衝動に駆られたが諦めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

鈍い音が轟きガラガラと何かが崩れる音が夜間の基地に響いた。

 

その音は直ぐにサイレンがかき消しサーチライトが一斉に照らされる。

 

入場ゲート横の検問所が崩れ外と基地を隔てる壁が崩れている。

 

コンクリート片と土煙で視界が悪い中、10メートルは有ろうかという木が瓦礫の中に見える。

 

夜間警備を行なっていた兵士が銃を携えて

殺到する。

 

足を止めて円形に囲み警戒する中ゆったりとした足音が聞こえてくる。

 

コツ、コツとゆっくり進められる音は煙の中から聞こえる。

 

煙から現れた人影はサーチライトの光を浴びながら赤い双眸で此方を睨みつける。

 

「う、撃てっ!!一斉射撃っ!!」

 

指揮官は背後に冷たいものを感じて声を上げる。

 

兵士達も得体の知れない恐怖を祓う様に引き金を引く。

 

それと同時に幽香はコツっと足を鳴らすと地面から波が立つ様にツタがコンクリートを砕き現れて弾丸を防ぐ。

 

防ぐのみならず波紋の様に幽香を中心にして津波の様に兵士を飲み込む。

 

「な!?なんだ!!うあ」

 

「来るなー!!」

 

「下がれーー!!」

 

ツタに向かい銃を乱射する者。

ツタに呑まれながらナイフを突きたてる者。

逃げようと走り出す者。

 

殆どの者はツタに飲み込まれ苦悶の籠った呻き声を上げている。

 

「銃は使うな!!味方に当たる!!クソビッチが!!」

 

飲み込まれた兵士達は盾となったのだ。苦悶の声を上げるツタの盾に。

 

ツタは壁となっていたが少しだけ離れて幽香が出てくる。

 

ナイフを構えた兵士5人が取り囲み斬りつけようと踏み込むが腹や肩にカウンターの拳をもらう。

 

腹に拳を貰った者は泡を吹いて気絶し、肩に拳を貰った者は砕かれた肩を押さえて絶叫した。

 

「面倒」

 

そう呟いた幽香は地面に手を当てた。

 

全員が身構える中、地鳴りと共に足元が崩れ何かに包まれた。

 

基地には突如として密林が現れた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

増援として駆けつけた部隊は困惑しながらも密林に入っていく。

 

 

複数人が視認出来る距離を保ちながら横に広がり進む。

 

入ってすぐに隊員達は恐怖した。

 

木には埋め込まれる様に見知った友が助けを求めている。

 

体の半分が呑まれたもの、腕と顔だけが出ている者、顔だけが外に出ている者。

 

様々であるが共通して木に囚われている。

 

助けを求める声と常軌を逸した光景に動悸が早くなり恐怖にとりつかれる。

 

そして、それらは襲いかかった。

 

葉を合わせた様な見た目にツタが取り巻き噛み付く様に襲う植物群。

 

まさに化け物。

 

4、5メートルはあるそれは突進してその口の様な器官で隊員を捉える。

 

銃も折れる力になす術もなく捉えられるとツタが口を押さえて捉えていく。

 

銃で応戦するも怯みもしない怪物達に逃げ惑うばかりの隊員。

 

「貴方達はそれ好きねぇ、ならこれは如何かしら?」

 

木の上で眺める優香はパチンと指を鳴らすと木々の枝に花が咲く。

 

白い花びらで向日葵の様に中央に種子を蓄えている。

 

「ばぁん」

 

その掛け声と共に種子が降り注ぐ。

 

頭上から打ち出される種子は散弾の様に弾けて装備を貫通して体内で止まる。

 

苦痛の悲鳴と共に転げ回る隊員。

 

「だらしないわねぇ・・・まだ種が植えられただけじゃない。」

 

辛うじて被弾しなかった隊員はその言葉に恐怖した。被弾した者は痛みで聞き取れなかったのが幸いしたのかうずくまるばかりだった。

 

パチンと幽香が指を鳴らすと数名の被弾した隊員の内側から枝が血肉を押しのけて鮮血の発芽を行う。

 

種を受けた者は自分のこれからに恐怖し、受けていないものはその惨状に恐怖した。

 

こうして恐怖は伝染していった。

 

「面倒だから偉い人間出して頂戴な?じゃないと花を咲かせるわよ?」

 

クスクスと頭上で傘を回しながら問いかける。

 

「ぐぅ、わ、私がこの隊を預かっている」

 

種子を受けたがまだ発芽していない様だ。

痛みを堪えながら応える。

 

「全滅させても良いのだけど面倒だから降伏してくれないかしら?私はこの基地にいる友人に用があるのよ」

 

「ゆ、友人?何の事だ?ここには実験材料しか、ああぐぁあ!!」

 

「別にアンタが知ってるかは興味無いのよ。降伏するの?しないの?」

 

内側からの痛みで問答を中断される指揮官。

 

隊員も先遣隊が全滅で増援も壊滅状態では抵抗出来る訳もなかった。

 

「降伏する!!降伏するから隊員達を助けてくれ!!」

 

その言葉に周りの隊員は武器を放り投げて戦闘の意思が無いという事を示す。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なんだ!!なんだ!!貴様ら!!」

 

研究施設に堂々と兵を連れてくる幽香に研究員が詰め寄る。

 

研究員が手を伸ばし掴もうとしたところで幽香は伸びてきた腕を握り潰した。

 

「邪魔」

 

そのまま壁に叩きつけて手についた血を振りはらう。

 

後続に続いていた研究員は絶句し気絶するものもいる。

 

「こ、コイツを手当しても良いか?」

 

「好きになさい」

 

恐る恐る兵士が聞き研究員を連れて行く。

 

研究員達は理解した。

もう既にこの基地は制圧されていると・・・

逆らえば殺されてしまうという事を

 

「セレナという娘が居るわよね?」

 

幽香は静かに問いかける。

 

「し、しらな」

 

言いかけると幽香は壁に指をめり込ませて壁面を引き抜き、言葉を発した研究員の前で握り潰した。

 

「あ、そ、その」

 

言葉は続かず後ずさろうとするが震えて動けていない。

 

「すまん、ソイツは知らないんだ。私が案内しよう」

 

少し遅れてきた研究員が全てを悟り答える。

 

「そう、頼むわ」

 

幽香が案内役の方へ向き直ると、知らないと言った研究員はへたり込んだ。

 

案内役の研究員の後に続き幽香、指揮官と続く。

 

立ち入り禁止の文字が書かれた扉を研究員がカードキーで開けるとそこには大量に卵状のカプセルが等間隔で並んでいた。

 

「なんだ!!これは!!」

 

驚愕する指揮官に研究員が応える。

 

「君たちは知らされていなかったのか、この基地はこれを守るための基地だったんだよ」

 

歩きながら目当てのカプセルに歩いて行く。

 

カプセルの中には人が納められており皆目を瞑っている。

 

それが百はあるだろうか。

 

「これだね」

 

そこにはセレナが寝かされていた。

透明な蓋に隔たれた先には、初めて見た時と同じで幼い姿だった。

 

「開けなさい」

 

黙って機械を操作する研究員。

機械を操作しそれに応える様に無機質な稼働音が静寂をうめる。

 

暫くすると空気を排出する音が響き透明な蓋がスライドされる。

 

ゆっくりと瞳が開かれる。

 

寝起きの様なとろんとした瞳だが幽香に向けられている。

 

腕を動かそうとしているようだが指先や肘が少し持ち上がるくらいだ。

 

優香は優しく抱き上げて頭を撫でる。

 

そうすると寝息が聞こえ始めたので手から綿を出して纏わせ暖かくする。

 

「少ししたら人がくるから此処で待ってなさい。全てが終わったら全員の種を出してあげる」

 

そう言って幽香は出て行った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

話を聞いてから現場からの報告を聞く緒川。

 

積極的に兵士が協力して救助と救助者の搬送準備が整った。更に自ら護送船に乗船しおとなしくしている様だ。

 

未だ種が残っている事で兵士は従順だった。

研究員達はそんな兵士達を見て観念したようだ。

 

予想以上の救助者数の為に増援を依頼した。

 

まだ身動きが取れない状況に弦十郎に連絡をする緒川だった。

 

 

 

 

 

 

 



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G第9話

 

 

持ち帰った立花響を医療カプセルに入れて治療及び解析を行うウェル博士。

 

回収時ネフィリムに持ち運ばせたため気づかなかったが異常な発熱を起こしていた様だ。

 

ネフィリムがその熱を吸収していた為気付くのに遅れたが・・・

 

これにより何かが立花響の体で起こっていると確信し今に至る。

 

「成程」

 

英雄願望の狂気に満ちた表情とは打って変わって研究者としての冷静な表情でデータを確認する。

 

聖遺物についての知識ではナスターシャに劣るが生物学については天才と言っても過言ではないウェル博士は観測されたデータから立花響の生命に関わる事態であると断定した。

 

全身に張り巡らせられたガングニールの触手が各器官に纏わりついている。

 

「これは・・・最後のピースを埋めてくれるかもしれませんねぇ」

 

現状を確認して最適解を導き出した。

 

確認したモニター先は簡素な牢屋。

未来が囚われていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ガシャガシャとシャッターが叩かれる音がする。

 

「なんだよ、うるせーな」

 

ガシガシと頭を掻きながら寝室からドアに向かう。

 

まだ日が昇っていない早朝。

もう少し寝てから開店準備をしたかったと思いながら歩く。

 

「ふぁあ、開店にはまだ・・ってお前らは!!」

 

調を背負いドアを叩いていた切歌。

昨日の戦闘と学園祭で会った2人だ。

しかし、見るからに疲弊している様子で調は滝の様な汗を流しながら切歌の背中で荒い呼吸を繰り返していた。

 

「お願いです・・・話を聞いてください。幽香に会わせてください」

 

「おね・・・がい・・します」

 

クリスに疲弊しきった2人を断る事は出来なかった。

 

「今、幽香はいねぇ。取り敢えず中に入れ」

 

ドアを開けて入る様に促すと切歌と調は意識を失い力が抜ける。

 

「あぶねぇ!!」

 

何とか受け止めて転倒を防ぐ。

受け入れてもらえた事で緊張の糸が切れたのだろうか。

 

「ったく、早く帰ってこいよ幽香・・・」

 

四苦八苦しながら何とかソファに寝かせる事が出来たクリスは弦十郎に連絡を取った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

日差しが入り店内を照らす様になった頃に切歌は目を覚ました。

 

ボーッとした思考で今までを思い出す。

調の温もりを探して一瞬焦るが隣りで寝息を立てていた。

 

ほっとすると状況が見えてきた。

毛布をかけられてソファに寝かされた状態。

服も着替えさせられており身綺麗になっている。そして店内に漂ういい香り。

 

「デースぅ」

 

香りに刺激されたこどで「くきゅる〜」と可愛い音を立ててお腹が空腹を主張している。

 

「おっ!!起きたか!!」

 

はっきりと元気な声をかけて来たのはクリスではなく奏だった。

 

「クリス〜起きたぞー!!」

 

「わかった〜こっちもいいぞ」

 

カウンターの奥から聞こえるクリスの返事。

大きな奏の声に調も体を起こし目を擦る。

 

「何はともあれ飯だ!!話はそれからで良いだろう?」

 

奏は2人にウィンクしてついてくる様に促す。

 

調と切歌は顔を見合わせてからおずおずと後に続く。

 

厨房に近いカウンターにハンバーグ、パン、ゴロゴロ野菜のスープにサラダ、オレンジジュースが並んでいる。

 

「おっ!!うまそー!!勿論アタシの分もあるんだよな!!」

 

ご馳走様を前に声を輝かせる奏。

 

「ああ、無いとうるさそうだからな」

 

ニヤリと笑いながらエプロンを脱ぎ軽く畳むクリス。

 

最初は遠慮がちに食べる2人だったが奏が大袈裟に美味いと声を上げながら食べ進め、これが美味い、あれが美味いと2人に勧める。

 

それに感化されてか2人も夢中になって食べはじめる。

 

作戦成功といった感じでクリスにウィンクする奏はおかわりを貰い2人もそれに続く。

 

「「「ご馳走様!!(デース)」」」

 

「はい、お粗末さま」

 

揃って手を合わせて言う3人とそれに返答するクリス。

 

片付けをしながらクリスは一瞬で仲良くなった奏に感心していた。

 

今も2人を引き連れてテーブルを拭いたり食器を運んだりしている。

 

正直2人とどう接すれば良いかわからなかったクリスは感謝している。

 

片付けも終わり本題に入る。

 

此処でも奏が上手く進行をしてくれて2人の目的を聞き出してくれた。

 

2人が望むのはマリアの救出。

 

マリアがどんな状況にあるのかを2人が知る限りで全てを話す。

 

自分達が人質になっておりマリアの行動は常に制限されている事。

 

歌姫としての価値とシンフォギア装者としての価値を意のままに操る黒幕がいる事。

 

「後これを」

 

SPから渡された端末と記憶媒体を置く。

 

「これは?」

 

「基地を出る時にSPの人がくれました。マリアを助ける情報が入っていると・・・」

 

「わかった。ありがとう・・・絶対にマリアは助ける。私・・・いやツヴァイウィングの名にかけて」

 

そして2つを受け取る奏。

 

「お願いします」

 

「お願いデス」

 

2人は深々と頭を下げて懇願する。

 

「任せとけ!!」

 

2人の頭を撫でて奏は力強く言う。

 

そうして会談は終わった。

 

奏は外に控えていた職員の車に乗り込み弦十郎の元に向かう。

 

クリスは2人を風呂に誘い疲れを取る様に促す。幽香直伝のシャンプーで頭を洗ってやり仲良く3人で風呂の時間を過ごす。

 

風呂から上がった2人は疲れと安心からか、はたから見ても眠そうだったのでベッドに寝かしつけるクリスだった。

 

 

奏が持ち帰ったデータの中身を確認して弦十郎は自分達の想像を超える事態が起こっている事がわかった。

 

最大のものは月が落下起動をとりつつあること、それを知った米国は秘密裏に一部の者達が助かる様に事態を隠蔽しながら行動に移していた。

 

それに続く様にマリアを裏で操っている者が、セレナだけでなく米国の上層部や企業のトップの妻子をセレナ同様に監禁している事がわかった。妻子らの命を対価に米国の政財界でかなりの力を持つまでになったと記されている。

 

「この情報を信じるとすればとんでもない事ばかりだな・・・」

 

「月の軌道計算はどうだ?」

 

「月に関してはこのデータ通りですね・・・公表されているデータとはまるで違います」

 

「慎次から来たデータとのすり合わせは?」

 

「こちらもデータ通りです」

 

セレナ救出時に確認されたコールドスリープさせられた人々のリスト。

研究所からのデータと完全に一致している。

人質リストの裏どりが出来たこともあり他の研究所やリストも正確である可能性が高い。

 

「とんでもないリストだな・・・」

 

モニターに映し出されているのは内閣情報官であり弦十郎の兄である風鳴八紘。

 

入手したデータを確認しながらため息を吐く。

 

「これに関係あるかは調査中だが在日米軍艦隊が出航した事を確認している。速度は遅いが予想進路がこのデータにある座標を目指している様にも見える」

 

「米軍艦隊?」

 

「ああ、念の為頭に入れといてくれ」

 

「わかった。俺たちは響君たちの救出に動く」

 

「了解した。此方も何か掴めたら連絡する」

 

風鳴八紘との情報交換を終えた。

 

「各員!!クリス君が乗艦次第出航する!!準備を怠るなよ!!」

 

「「「了解!!」」」

 

乗員はシステムチェックに物資の積込みを急ピッチで行うのだった。

 

 

ある一室で翼は天羽々斬のペンダントを握り締めて自身の不甲斐なさに歯噛みしていた。

 

自身に力がない為にマリアとの戦闘で時間を取られ響は連れ去られてしまった。

 

奏には残り少ないリンカーまで使用させてしまいアリスも殆どの人形を失った。

 

手に籠る力が増すなか

 

「ひゃっ!?」

 

不意に脇腹を突かれて声を上げてしまう。

 

「なんだよ!難しい顔しちゃって、そんなんじゃ出来ることも出来なくなっちまうぞ?」

 

振り向いた先には奏がやれやれと首を振っていた。

 

「奏!!今は戯れあっている場合では!!」

 

怒鳴る翼を抱きしめて黙らせる。

 

「こんな時だから余計な力を抜きなって…一人で悔やむんじゃない。私やクリス、アリスに幽香、みんなで戦ってるんだ。一人で背負い込むなよ」

 

優しく翼の力をほぐす様に語りかける。

 

「そうだな、分かっているつもりなんだが私もまだまだだ」

 

「分かれば良いんだよ。今度は私も初っ端からいける。二人揃ったツヴァイウィングに出来ない事は無い。そうだろ?」

 

「ああ、立花も小日向も取り戻す」

 

抱き返し決意を新たにする。

 

「マリアも助けないとな!!同じステージに立った仲だしな!!」

 

「ああ、またあの日の様なステージに立ちたいしな」

 

離れた二人は笑みを浮かべて歩き出す。

 

表とは違う戦いのステージで舞う為に・・・

 

 



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G第10話

 

 

発砲音が鳴り響き、砲撃が海を叩き水柱を作る。

 

二課仮設本部となっている潜水艦は懸命に回避する。

 

空から殺到するノイズはクリスと奏が撃ち落とす。

 

空を闊歩するノイズと海上を米軍艦隊が行手を阻むという異色の組み合わせに苦戦を強いられる。

 

「気合を入れろ!!センサーから目を離すなよ!!装者にデータを報告し続けろ!!」

 

「やってますよ!!連中!!無茶苦茶だぁー!!」

 

「泣き言言わないの!!クリスちゃん左舷からノイズ飛来!!奏さん!!敵艦が右から来てる!!」

 

司令室は戦況を装者に伝えてバックアップに専念している。

 

「翼!!左舷敵艦を黙らせろ!!今なら孤立している!!」

 

自艦に攻めてのない事に歯噛みしながら翼に指示を出す弦十郎。

 

潜水艦で敵艦の前に出るなど自殺行為であるのだが、攻撃手段が基本的に装者に頼っている手前、潜航してしまうとなぶり殺しになってしまう。

 

防御兵装も対艦用の物などは装備していない。そもそもがノイズ戦を想定しての機能が主な為、仕方がないのだが敵艦からの攻撃によりヘリの発艦すらままならない。

 

遠距離攻撃はクリス、奏、翼と可能ではあるがこの距離で行う攻撃手段では火力の調節が難しい。

 

その為、現状では海上を滑空できる翼が敵艦の無力化に動いている。

 

 

「鬱陶しいんだよ!!」

 

艦に殺到するノイズをガトリングで蜂の巣にする合間にミサイルをばら撒き中型を葬る。

 

「やらせるかよ」

 

ガングニールから放たれる熱線が砲弾やミサイルの誘爆を引き起こす。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

剣の柄を繋ぎ高速で回転させ降り注ぐ弾丸の雨を切り裂きながら海面を高速で翔ける。

 

艦に取り付くと射撃兵装を駆け抜けながら切り刻んでいく。

 

艦首から艦尾まで瞬く間に翔けて艦を無力化するとそのままの勢いで海に跳ぶ。

 

自艦の脅威になると判断した他の艦が翼に砲撃を加えるが

 

「やらせるかよ!!」

 

翼を狙う艦のすぐ横の海面に熱線を放ち海が爆発し大きく艦を揺らす。

 

滑空する翼には問題ないが荒れる波に砲撃が上手くできなくなる。

 

「ありがとう!!奏!!」

 

その隙に艦に飛び乗り先程と同じように剣を振おうとした時、背中に悪寒が走った。

翼は反射的に飛び退き剣を構える。

 

先程いた場所は線状に切り裂かれている。

 

「あら、勘が良いのね」

 

槍を構え冷たく見下ろすのはマリアだった。

 

「マリア」

 

冷たく感じる瞳は完全に敵として見る敵対者の憎悪を宿すものであった。

 

ドンという艦砲の音と共に二人は動き出す。

 

槍を突き出し突進するマリアに対して槍の腹を剣で打ち付けて逸らす。

 

そのまま剣を回転させて追撃するがマリアのマントがそれを弾く。翼の体が浮いた所に体を回転させ翼の方を向きながら、回転力を乗せて槍を突き刺すマリア。

 

翼は無理に槍を受け止めずにその力を利用してバク転し距離をとる。

 

互いに睨み合いながら呼吸を整える。

同時に飛び込み火花を散らす。

邪魔の入らない甲板で死闘は続く。

 

 

 

翼が激戦を繰り広げる前・・・

セレナ救出時の傷が色濃く残る基地。

制圧した港に停泊する医療船内では、セレナを医療カプセルに入れる前の処置が行われている。

 

小さな身には大き過ぎる青あざや切り傷に火傷等ダメージが多い。

 

更に長期間のコールドスリープにより体力が著しく低下していた。

 

懸命に医療班が治療を行う中、命の鼓動が弱くなりつつある。

 

懸命に処置を続行する中、外がさわがしくなる。

 

「風見さん!!処置中です!!お待ち下さい!!警備班!!」

 

「邪魔よ!!」

 

組みついた男性警備班達を腕の一振りで押しのけて処置室の中に入ろうとする。

 

「待って下さい!!」

 

女性看護師が両手を広げて立ち塞がる。

 

「退きなさい。貴方も怪我するわよ!!」

 

セレナの生命力が著しく低下した事を感じとり行動した幽香は殺気をぶつける。

 

「貴方があの子を助けたいのは知ってます!!何をするのか話して下さい!!じゃなきゃ通すことは出来ません!!私達だって全力を尽くしています!!」

 

極悪な殺気をぶつけられ震える体を黙らせる様に大声で対峙する看護師。

 

一瞬の静寂。

 

手のひらの種を見せる。

 

「これをあの娘に植えるわ。瀕死の宿主に作用して生命力を高める子よ。私の力で成長させるから効果は絶大の筈。唯、私の力で成長した子は毒素も含んでしまうけどすぐ死ぬ事はないわ。そこは私とアリスでなんとかする。死なせたら意味が無いのよ」

 

看護師は涙を流しながら頭を下げて告げた。

 

「私達の力ではセレナさんを救えません。お願いします・・・滅菌室に案内します。」

 

悔しそうに告げる看護師の肩を叩き。

 

「生命力を高めることが出来ても、そこからの処置は私には出来ない。あの子を救って頂戴」

 

「当たり前です!!」

 

涙を拭い幽香を急いで滅菌室に連れて行く看護師は覚悟を新たに歩を進めた。

 

その後何とか一命を取り留め、今は医療カプセルに入れられてセレナの容態は安定している。

 

そのカプセルのある部屋で幽香は椅子に座りセレナを眺める。

 

肩から白い蕾を覗かせて液体に体を浸からせている。

 

ひとまず繋がった命に安堵しながら自分の妖力がセレナを廻るのを見る。

 

余りある力である幽香の妖力のおかげで命を落とすことはないと思うが、余り長い間晒されてしまうと確証はないがセレナとしての自我を保てなくなるだろうという確信があった。

 

解決策を思案していると扉が開かれ緒川が入室した。

 

「セレナさんの容態は?」

 

「ひとまず峠は越えたわ。問題はあるけど何とかするから安心なさい」

 

緒川は息を深く吐き安堵した様子だ。

 

「良かったです。話は変わるのですが合流の指示が出てまして、どうやら彼方は艦艇を持って待ち構えてるようです」

 

「そう、看護師が来たら行くわ」

 

「了解しましたすぐに手配します」

 

携帯を取り出し一時退出する緒川に振り返りもせずセレナを見続ける。

 

程なくして看護師を連れて緒川が入室してきた。

 

「それじゃあ、マリアを助けてくるわね」

 

そう告げて退出する。

 

扉が閉まる寸前で破裂音と共に液体が叩きつけられる音がした。

 

踵を返すと破片の中に蹲るセレナがいた。

 

「連れってって下さい・・・姉さんの元に・・・連れってって下さい!!」

 

絞り出すような声からはっきりとした叫びとなる。

 

「無茶よ!!貴方はさっきまで生死を彷徨っていたのよ!!」

 

「そうです。ここは僕たちに任せてください」

 

「・・・」

 

看護師と緒川は説得を試みるがセレナは幽香を見つめていた。

 

「姉は私の為に泣きながら戦っている筈です!!・・・はぁ、っはぁ、わがままをっ・・・言ってるのは理解しています。

でも、姉さんに・・・これ以上無理して欲しく無い!!・・・お願いします」

 

泣きながら伝える必死さに言葉を失う二人。

 

「今度こそ死ぬかも知れないわよ?姉の目の前で・・・」

 

冷たい現実を叩きつける。

最悪の未来。

そうなればマリアの心は砕け散るだろう。

セレナを取り戻す事を目標にして頑張ってきたのだ。それが目の前で霧散するのを耐えられるとは思えない。

 

セレナはニコッと笑って

 

「大丈夫です。お姉さんが何とかしてくれます。」

 

屈託の無い笑顔に意表をつかれてしまった。

幽香なら出来るでしょう?という挑発にもとれる言動それがセレナから出たというのに幽香は我慢できなかった。

 

「ふふ、あはははは。良いわ!!その度胸と笑顔!!真っ直ぐで疑っていない!!でも私は安くないの、報酬は覚悟しなさい。ふふ」

 

「幽香さん!!」

 

緒川が声を上げるが止められる。

 

「うるさいわね、貴方もこんな娘のお願いくらい叶えてみせなさい。この覚悟に報いないのは年長者としてどうなのよ?」

 

「ですが!!」

 

「敵の装者を会わせるだけで無力化、又は味方に出来るのよ。これ以上の益があるの?」

 

「しかし」

 

「しかしも、カカシもない!!ほら着替えるんだから出てなさい!!助平!!」

 

「なぁ!!」

 

そう言って幽香は緒川を外に追い出した。

 

セレナの着替えを手伝い一通り終わった時に

 

「唯の姫として連れてかないわ。無茶はダメだけど迷わず使いなさい」

 

そう言ってセレナの前にギアペンダントを差し出す。

 

「それを取ったら後戻りできないわ」

 

幽香の掌からペンダントを迷わず受け取るセレナ。

 

「ありがとうございます。無理を聞いてくれて・・・ゆぅっ?!」

 

人差し指で口が開く前に唇を押さえる幽香。

 

「お礼は全部終わってからよ。うちの従業員としてこき使ってやるわ」

 

ウィンクをして唇から指が離される。

 

「行くわよ」

 

「はい!!」

 

幽香の後を歩くセレナは真っ直ぐに後を追う。姉を助ける決心を固めて・・・

 



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