GATE オリンピックから繋がる異世界 (イシグロ)
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繋がっちゃったよ

ゲートかの地にて、東京オリンピック、やる夫スレ系を合わせた闇鍋上等な話

漫画やアニメ、ゲームの世界に繋がってしまったゲートっぽい世界を舞台にした。オリジナルって訳じゃないから原作は色々に。
登場するキャラの人選は完全に好み。

出してほしいキャラあったらどうぞ。



1964年、東京オリンピックの開催と共に、多次元の世界が繋がった。

 

当時、予期せぬ事態に各国は騒ぎ立て、安全を考慮しオリンピックの急きょ中止にする案が飛び交っていたが、日本はそれを拒否し独断でオリンピックを存続。あろうことか、繋がった世界の住民たちに開催されるオリンピックを間近で見させはじめたのだ。彼らの姿は世界に映し出される、それもようやく軌道に乗った衛星放送と言う形で。

世界がオリンピックとともに、その世界および住民たちへと視線が向けられた。

オリンピック閉会後、繋がった世界の住人のトップと総理大臣、世界主要国の首脳陣を交えた会議で今後の方針が、急ぎ足で取りつくろわれた。

 

その日を境に、定期とまでに行かないものの…オリンピック開催の年となると多次元の世界へと繋がり始めた。この現象をGATEと呼び、この年が近づくたびに世界は冷や汗共に、繋がる可能性のある世界に向け希望と興奮を覚え始めたのだった。

 

 

─とある転生者の独白─

 

俺は、どうやらとんでもない世界に転生してしまったようだ。

 

神の手違いか、それとも寿命で死んだか、はたまた事故死か…いずれにせよ、記憶が無い以上どうでも良い事だろう。俺は死んで、前の世界、前世を持ちながらこの世界に生まれ直した…それだけだ。

チートがあるかと思ったら、別に何もなく…かと言ってこの世界に技術チートできる、しかし俺自身そこまでの知識は無い。勉学は何よりも力であるし、将来ガチで役立つ…学生の頃に戻りたいほど。

まぁ、今学生しているんですけどね。

 

よくある異世界転生、といえばなんちゃって中世ヨーロッパ系が多いけど改めて勉強してみると、中世時代のヨーロッパはローマ帝国の崩壊と宗教が主体、という感じだ。なろうもそこそこ、そんな感じだが…それ以上に、宗教がとんでもなく政治に関与している。その為、今よりひどく…解釈違いの所為で戦争にまで発展するほど宗教は根本に当たった。

現代転生でよかったです。

現代生まれの人間、それも若い奴がそんな時代へ生まれても…まぁ、野垂れ死ぬだろう。

 

長くなったが、俺がどんな世界に転生したのか…。

……俺が知りたい、マジで。何なの、この世界。俺が居た世界の漫画やアニメ、ゲームとかの世界と繋がっているし、一歩街を歩けばマジで闇鍋。色んな世界の名も無き人間や、時には主要人物に当たる。ここ最近というより見知っている有名人は、トリコの美食家の一人サニーさんなんだが、近所の大学で傾奇者講師として有名になっている。

時々、俺が通っている学校まで襲撃してきてはファッションセンスや調理科の生徒を獄卒並みに厳しい指導をしている。

ただ、指導を耐え抜いた生徒の卒業後はどれも一流のホテルスタッフとモデル、時には美食家として活躍するほど…効果覿面(こうかてきめん)であった。

 

GATEが初めて現れたのは1964年東京オリンピック、繋がった世界はNARUTO。

次に1976年モントリオールはトリコとFF、1988年ソウルはドラゴンボール、1998年長野ではドラえもんとガンダムシリーズだったか。

…あぁ、いや、あと一つあったな…そこまで話題に上がらなかったらしいが2000年シドニーオリンピック後の東京封鎖があったなぁ。何か、ベルの座とかなんとか…はは、どうみてもメガテンですねぇぇ!!スピンオフシリーズだけど。

なんだ、この世界…文明的に俺の居た世界とまんま変わらないけど…設定的にGATEっぽいよな。

オリンピックで繋がった世界以外にも、この世界独自の技術で繋がってしまった世界も、チラホラ存在する…。

何でこの世界、滅びたり植民地化してないの…。

 

要約すると…。

突如東京の赤坂にどデカいもんが突如現れて、その先は異世界へと繋がっている…そんな感じ。

 

てか、毎回なんでオリンピックの年に世界と繋がるんだ?

それ以上に世界が繋がり過ぎてこの世界の文明がトンデモねぇことになってんだけど…文明も発展しまくっているし。VR技術もクオリティ高いし、交通手段も格段に良くなって…食糧問題、それ以外の問題も解決してきているらしいし。

その分、負の方も出るかと思ったが…紛争の方面も改善されてきているようす。治安の部分が格段と上がっている、最初のGATEが現れた日本は自国で生産や防衛力が十分過ぎて、一国だけでも生きていける状態になってる。

一体何なんだこの世界…こわ。

いやね、オタクからしてみれば漫画やアニメ、ゲームで夢見た世界が間近で見られるのは興奮する。それもさ、魔法とかも習っているからか出来るようになっているし…あのドラえもんも見かけたりする、前の世界ではこれは紙の中や画面の中でのことで現実では一切出来なかった。

けどさ、それが出来て幾つも見れる状態って…異常を通り越して、もはや普通になって来てんの。

興奮は最初の内だけ。しかもさ、クラスメイトや同級生の何人かはあのキャラが親、という奴が居るからね。

それとあのキャラが同級生、とかもあるんだわ。

なんだこの世界。

……深く考えたら負けなんだろう、俺もう疲れた。流れに身を任せよう、あの世紀末病人も言っていた。

 

ちなみにその世紀末病人、近所のクリニックで医師とマッサージ師の二足の草鞋を履いている。

 




転生者困惑ですよ、こんな世界は。

あと、なろうとかでよく見るなんちゃってヨーロッパ、あそこで現代っ子がよく生き残れるなって思う。好きだけどね、だけどハーレムとかは好かん。
薄っぺらいから飽きちゃうんだ、スマンね。


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1964年、東京オリンピック(参加作品:NARUTO)

現代、今の日本とは若干異なっている世界でお願いします。
まんまだけど、流石にちょっとは変えています。

NARUTOはNARUTOだけど、時代的に柱間たちが生まれる前あたり。馴れ初めは原作で有名な一族、衆が戦争中に接触する形です。


1964年、日本・東京都。

戦後、日本はどん底であった。経済も、国民も底に沈んでいた。第二次世界大戦の敗戦国の烙印を押されて以降、国民は皆その事実を受け入れる事が出来ない者が多かった。

玉音放送による、天皇の人間宣言と共に敗戦に報告。それが決め手に。

 

だが、時代は進んでいる…その中で日本はどん底から血反吐を吐きながらも立ち上がった。

 

池田内閣の主導の下、日本の立て直しに力を入れた。エネルギーを石炭から石油への転換、所得税倍増、米欧の技術導入・技術革新を行い設備開発と新産業の確立を図る。一方で物価の上昇、公害等の負の遺産を出しながらも…日本は、世界に並び立つほどにまで、建て直す事に成功。内閣は批判を浴びながらも、憎まれながらも成し遂げたのだった。

 

…そして、1964年。

東京オリンピックの開催日。それは前触れもなく、突如として起こった。

 

その日、オリンピックが開かれるとともに…赤坂にて巨大な門が現れた。かの花の都パリに建つ凱旋門が如く、大理石でできたような乳白色と壮大な装飾で飾られた門。徐々にそれは開き、その先に待ち構えていたのは甲冑姿の兵士たちだった。かつて、この日本にも同じような甲冑が存在していたが…彼らの身につける甲冑は何とも簡素で、動きやすそうなもの。似たような文化を持つが、彼らかは見れば異なっていた。

一人の兵士が、門の外へと足を踏み出す。

門の周囲を武装に身を固めた自衛隊と機動隊が取り囲む、武器と盾を構え…兵士の出所を伺った。緊迫した雰囲気が辺り一帯を包んでいる。

 

「貴殿らに問う」

 

足を踏み出した兵士は、神妙な顔と声で自衛隊たちに問いかける。

 

「ここは浄土、なのか?」

 

浄土、俗に死後の世界の一つとされ天国、という解釈が多い。

兵士の前に自衛隊の隊長とされる人物が現れ、その問いに頭を横に振る。ここは、日本という国だと言う事を伝え、兵士に向け正体を問いただした。

「我らは忍、千手衆と言う…。異界の者たちよ、ここを速やかに明け渡すがいい。事によっては貴殿らと殺し合わなければならん。我らも、それは不本意だ…我らは長きにわたり戦をしてきている。

これ以上、我が同胞の血を流させたくはないのだ」

その言葉に両陣は戦慄する。

血を流させたくないのは、どの陣営も同じことだった。この日は日本にとっては世界に、敗戦国ではない日本という国を再度認識させるための大事な日であった。それを、血に塗れた日にするのは…かつての日本に逆戻りだ。

日本としてはどうしても、それを避けたかった。

そして、忍の者たちも戦続きによる疲弊…道を同じくする同胞を多く戦で失ってきている。それはかつて、日本のさまを目の前で映し出しているかのようだった。

 

「待ってくれ…」

 

自衛隊たちを押しのけ、一人の細みの男が兵士の前へと出る。

入院服に身を包み、酷く痩せ細っており顔色も酷い。まるで、病に侵されたかのような男であった。

池田政人(イケダマサト)、元内閣総理大臣だった。そこから数人の男たちが、池田元総理の元へ駆け寄っていく。その中には池田元総理に後を託され、現総理大臣と成った佐藤詠作(サトウエイサク)とその秘書の姿が、そこにあった。

「池田さん!何を無茶な事を!!」

佐藤総理はそう、池田元総理に怒鳴りかけるも…彼はかすれた声を荒げ、兵士に向かって叫んだ。

 

「頼む、攻撃は止してくれ…!この日本は、今…世界に見せつけないといけないのだ。この国は、…日本は、負けた敗戦国。…俺たちは、汚れ役を買ってでも、この生まれ変わった日本を見せつけなければ…ゲフ、ゴホ!見下す米欧に、…ようやく…」

 

途中口元を抑え、酷くせき込む池田元総理。

抑えられた口元の隙間から真っ赤な血がドポリ、と勢いよく吹き出し、アスファルトに小さなため池を作る。在任時、冷酷とまで言われた男はその面影を無くし、酷く弱々しくなっていた。かの男も、病には勝てなかったのだ…だが、それでも精神は屈せず、国の為に命を投げ出す行為を平然とやってのけている。

そんな池田元総理に、自衛隊たちはかたずをのんでいた…。

吐血してもなお、兵士を見上げ食い入るように睨みながら更に叫ぶ。

 

「俺の命、くれてやろう!この国のトップであった俺の命くらい安い!!

だから攻撃は止めてくれ…それに、今は神聖なる祭典の日だ。多くの血で汚すくらいなら、この命だけにしてくれ。血を一滴たりとも流させたくないが、これ位…安いもんだ。

この祭典の為だけに、腕を磨き高みを目指す若者たちが多く居るんだ…それを、戦争なんかで汚させるものか。

ようやく…戦争が終わったんだ。

ようやく……ようやくだ」

 

「お前たちに良心があるならば、ここで手を引いてくれ…。さもなければ、どうか…、俺の命で手を売ってくれ!」

 

ごちり、と頭を打ちつけるように土下座をする池田元総理。

かすれそうな声で、頼む…と何度もつぶやいている。その隣では佐藤総理も、同様に土下座をしながら兵士に向かって懇願した。

情けない姿、だと思うだろう。

本来なら、武器一つで制圧すればいい…だが、今の日本はそれを許されなかった。なんせ今日は、東京オリンピックの開催…ようやく、この地にオリンピックを開催できるような国へと成った。それを、たった一つの指示…武力での制圧をしたくなかった。

この国の政治体制は未だ不安定の域だ、政界も真黒である。

戦争への引き金は、いくつも転がっている。目の前の兵士たちの戦力も未知数、いきなり蹂躙に至らなかったのが奇跡な部類だ。

それに、この取引は一方的とも言える。

命一つで、引き上げて欲しい…そう言っているのだから。

 

「……」

 

兵士は何も言わない。

しばらくの沈黙、それを終わらしたのは兵士からだった。

「今、行われている祭典は…どう言ったモノだ?」

「競技…人と人が競い切羽琢磨し…人の高みを超えていきまた、挑戦する祭典だ。人同士の殺し合いは禁じている。この祭典の間は…そうなっているんだ。

…一度、見て欲しい。

それから…答えを、聞いても遅くは無いだ…ろう?」

池田元総理は、ゆっくりと顔上げ…兵士を見つめる。口元は真っ赤に染まり、顔も更にひどくなっているが…その両目は、ギラギラとした眼差しでかつて、在任時のような意志の強いモノだった。

 

東京オリンピックの急きょ中止は無く、そのまま続行された。

会場の多くに、時間は短いながらも佐藤総理と共にかの異世界の代表である大名と兵士たちが見守り、選手たちの雄姿を見届ける様は全世界に配信された。この時、各国の代表の多くは祭典のさなか、外交を開始しようとしたが…異世界の代表とされる大名、兵士たちはそれを無視し、選手たちに釘づけと成った。

そして、東京オリンピック、それが閉幕と同時に…条約が交わされた。

日本と繋がった世界…忍界はこの祭典を終えると同時に、戦を求めず手を取り合う事を誓う条約だった。短い間で決まりまだまだ不備のある条約ながら、それでいてある男の意思が酷く反映された条約でもあった。米欧はこの翌年に、忍界への接触を試みるも…忍界はこれを拒否、いや正確には最低限の取引とオリンピックに限っての交流だけに留めると言った。

米欧はこの結果に不満を持つも、未知なる忍界の戦力を警戒しそれを渋々と承諾したのだった。しかし、それでも目ざとく機会を伺っていた。

 

無血へと導いたその男は翌年、眠るように息を引き取った。……その男の葬式の列には、かつてあの兵士だった男が花を持ち…供えたと言う噂が飛び交ったと言う。

 

 




とりま、千手を出した。

仏間は居たかも知れない、でもまだNARUTOが連載していないから描写無しにした。

これってどうなんやろね。


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大筒木被告によるテロ行為(参戦作品:NARUTO、女神転生)

タイトルどおり、大筒木と呼ばれる人物が日本と世界にテロ行為した話。

時代的に2000年シドニーオリンピックが終わって数年くらい?かな。東京封鎖が解除されてこの仕打ちだけど。




「あー」

「わふ、わふ」

「あーうー」

「わふ」

短い足でふらふらと、何ともおぼつかない足取りで幼い女の子が、女の子よりやや大きめな体格のシベリアンハスキーに向かって歩いている。シベリアンハスキーはその女の子を待つようにジッと、その場で座り込み短く鳴きながら、こちらに来るよう誘導している。

「ぱしゅかうー」

「わふ」

ぽふ、とシベリアンハスキーのところまで近づくと幼い身体を倒した。パスカル、と呼ばれるシベリアンハスキーはベロベロと女の子の顔を舌でなめ、嬉しそうにこちらに来られたことを喜んでいる様子を見せる。女の子はパスカルに抱きつき、肉を摘まんだりよじ登ったりとするが、それを物ともせずパスカルはじゃれるように女の子を構う。

「きゃっきゃ、ぱしゅかうー」

「くぅーん、わふ」

 

 

「娘が尊いんだが」

 

そう死んだ魚のような目と、この世の終わりを体験しているかのような仏頂面で白髪の男、白鷺扉代(シラサギトシロ)。

彼は娘とされる少女と飼い犬の短い動画が流れる薄い板…スマートフォンを酷い仏頂面ながらも愛おしそうに覗き込み、そう呟きながらズルズルとカップラーメンをすすっている。

味は、塩味であった。

「あぁ、うん」

その隣、後ろで長い髪をまとめた童顔の男はその呟きに、低い声で生返事をしている。彼は宇智田刹那(ウチダセツナ)、扉代のその言葉を何度も聞いたような呆れに近い、そんな思いであった。

刹那も扉代同様カップメンをすすっている、こちらはしょうゆ味。

そんな扉代は続けざま、酷く嫌そうにこう呟く。彼、彼らが国連によって下された勅令に対し、酷く嫌そうにしていた。

「何で、何で俺はこんな場所でカップ麺貪りながらめんどくさい方の大筒木(オオツツキ)を潰しているんだ」

「扉代、俺だって美登(ミト)の所へ帰りたいぞ。東京封鎖もそうだったが…」

向かい側の黒髪で長髪の男は、扉代に向け同調の思いを口にする。彼は扉代の兄にあたる白鷺柱也(シラサギチュウヤ)、この場に居る三人ともう一人を含めた小部隊の隊長を務めている男。

彼らが居る場所は最初にGATEに繋がった世界、忍界と呼ばれる異世界。また、彼らの祖先の出身でもあった。

彼らを含め集められた特殊部隊はこの忍界で起きている脅威、大筒木の強襲に対処していた。彼らがこの忍界に訪れる数週間前に、元居た世界に大筒木と呼ばれる人物が襲来し日本及び世界の一部は被害を受ける。幸い、死傷者は出なかったものの建物の被害が酷く、これにより火事や電線の切断による漏電などの二次災害が多く頻発していた。

これを機に、国連は各国で選りすぐった実力者事および軍人を集め大筒木と呼ばれる人物、また協力関係に至る者達の捕縛または討伐へ向かう事を決定されたのである。

この忍界に訪れて早数日、特殊部隊は現地住民もまた、その戦犯に酷く手を焼かされおり彼らと協力関係を結び、確実に仕留めんとばかりに大筒木と呼ばれる人物を追い詰めていた。

 

「おい、なに辛気くせぇ雰囲気出してる…そろそろ奴(やっこ)が動くぞ」

 

そう、呆れたような声を掛けるはもう一人の隊員とされるツンツンとハネっ気のある黒髪の男。刹那の従兄にあたる宇智田雅(ウチダマサ)、柱也の相方を務めこの部隊の副隊長である。

「…狙撃部隊は?陽動、強襲部隊の準備は?」

「どちらも出来ている」

「なら潰すぞ」

「捕獲が優先だろ…まぁ、潰しても息があれば十分か」

「悪魔、魔法の準備をしておけ」

「了解、他の部隊も動くはずだ…戦績より結果だと言う事を忘れるな」

「解っている…行くぞ」

すすっていたカップ麺をすぐさま腹の中に収め、素早く戦闘準備を整える。扉代の周りに円を組む様に三人は集まり、扉代は両手で印と呼ばれる動作を結ぶ。彼らの祖先は印を結んだ魔術こと、忍術を駆使し戦っていたと言う。彼らもまた、この忍術を継承しており、新たな忍術を生み出してもいた。

彼が結んでいるのは時空間忍術と呼ばれるカテゴリーに値する、飛雷神の術と呼ばれるもの。

マーキングされた場所、および人物の元へ瞬時に移動できる高等ともされた。

 

「秘術・飛雷神」

 

印を結び終え飛雷神の術が発動し、彼らは直ぐに大筒木と呼ばれる人物の元へと瞬時に飛んだ。

 

 

忍界での討伐部隊が向かって一ヶ月。

GATEが開かれ、その中から討伐部隊と共に厳重に防衛に特化した護送車に収容された心身ともにボロボロの大筒木と呼ばれる人物とその協力者が帰還。その結果に、報道陣は直ぐさま号外を刷りニュースを取り上げ、世界へ向け発信するのであった。

 

 




簡易登場人物

白鷺扉代(シラサギトシロ)…外見千手扉間似、機動隊員。千手一族の末裔。

宇智田刹那(ウチダセツナ)…外見うちはイズナ似、自衛隊員。うちは一族の末裔。

白鷺柱也(シラサギチュウヤ)…外見千手柱間似、自衛隊員。千手一族の末裔。

宇智田雅(ウチダマサ)…外見うちはマダラ似、爆弾処理班。うちは一族の末裔。

大筒木(オオツツキ)…大筒木モモシキとキンシキ、ウラシキ、黒ゼツたち。

原作始まったの?色々と貿易したことで、文明発展と各国が程よくなった為。原作が開始されなかったし時代が流れ、忍界がカオスった。




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その異形、かの地に現れる(参加作品前書き参照)

参加作品
艦隊これくしょん、アズールレーン、ストライクウィッチーズ、ラストオリジン

艦これ、アズレンに関しては艦娘・KAN-SENは外見に種類があり、妖精さんから生み出される生命体と言うことにしています

にわかですんません、一時期提督していたけど設定よく分かっていなかったのです。
はい、言い訳ですね…うん

あと、よくあるTUEEE扱いです
無理な方はブラウザバックしてくだしあ


 

『臨時速報です。

突如、海域内に大型の未確認生物の存在を確認。数は多く、海域全土に発生し日本でも存在を確認。海上防衛と共に、特殊部隊による遊撃が発生しています。海岸沿いに位置する住民は速やかに内陸部に避難してください。

繰り返します、海岸沿いに位置する住民は速やかに内陸部に避難してください』

 

酷く荒れた天候。

叩きつけるような豪雨、雷鳴が鳴り響き波は荒ぶる。強靭な戦艦ですら、その波の前ではバランスを保つことで精いっぱいだった。

その戦艦の先端に、どっかりと座る軍服を着た一人の男。身長は座っているとはいえ、つま先から頭まで長い印象。今にでも張り裂けそうな軍服の安否を気にしてしまうほど、筋骨隆々…鍛え上げられた身体。

「くだらねぇな…」

そう、大男は呟いた。フルフェイスのヘルメットを被り、そこから覗く眼光は燃え盛る炎のように、ギラギラとしたモノだった。憎悪、その言葉が最も似合うと言っても良いだろうか。

彼が見つめる視線の先には、異形の存在が水平線一面を埋め尽くしていた。荒れ狂う天候の中、青白い光がずらりと灯されている。今年はオリンピックの開催日、その日に…“アレ”が現れた。本来なら、異世界の存在はGATEから通って来るが…今回は、海からやって来たのだ。

「第一、アレっぽっちであいつ等が満足する訳ねぇだろ」

彼はあの膨大な数を、さも少ないとばかりにこぼしている。

「ふん、当たり前だ。これでは一、二回の出撃にしかならん」

豪雨の中を、悠然と男の隣に立つ一人の少女。端正な顔立ちながら、その顔には一本線の傷がくっきりと付けられていた。

「ジャリガールが、テメェは大人しく勉強でもして飯食ってクソして寝ろ」

「なぁに、アレを全て落とせば大人しくガールらしいことをするさ」

そう余裕綽々とした態度で、男の愚痴を律儀に答える。

彼女の名は、ハンナ・フォン・ルーディス。ドイツの裕福な家庭の出身ながら、ガンダムの技術を流用した強化骨格・ストライカーユニットの適合者。その姿はまさに、撃墜王の再来とまで言われる程の実力と行動力を持つ。

そんな彼女に悪態をつくこの大男、北斗蛇義(ホクトジャギ)。一子相伝の古武術の家系の出でありながら、数々の非行により破門とされる。現在は、国連によって召集されたストライカーユニットの適合者および、問題児にカウントされる実力者たちの隊長に就いていた。

用は問題児を押し付けられた、なのだが…彼もまた、まともであるも問題児としてカウントされていたのだった…。

二人の視線の先には、異形の者たちが今にも強襲せんとばかりに虎視眈々と狙っている。

しかし、二人はその数に怯む事は無い…むしろ、がっかりとしていた。そう思うだけの実力を持ち合わせた上での反応だろう。

 

「ち、面倒だ。夕飯前には終わらせとけ」

「あぁ、分かっている。今日のメニューは?」

「パインサラダとシチュー、デザートにミルクゼリーだ」

「ならば、パイン抜きで頼むぞ」

 

そう言い残し、ハンナは蛇義に背を向け出撃の準備に入った。…そこから数分後、雷鳴の中を数機の飛行物体と海面上を沈む事なく駆ける人影の姿が現われ、水平線上にびっしりと灯された青白い光は、一つまた一つ、凄まじい速度で消えていく。最後となった一つも、息を吹きかけるように…呆気なく消えた。

 

 

目の前に居る人類たちは異様に恐ろしく、それでいて…強かった。

 

生身の人間の筈なのに、水上をまるで地上のように軽やかに駆け、中には宙を飛んでいる。それと、まるで私たちのように魔法を使っているのか…手から光線や、自然現象を起こしている人類も居た。

武装特化した軍艦よりも、非力な筈の生身の人間の方が強い現象が今まさに目の前で起きている。

こちらに来る以前の世界での文化、漫画やアニメ…と言ったか。その中に出てくるような能力を持った人類が、目の前でセイレーンを蹂躙している。ハッキリ言って、セイレーン側に同情してしまう程に…。

本来私たちが助けるはずが逆に助けられ、あろうことか一方的にセイレーンを降した事に対し、開いた口が塞がらず…今も塞げていない。

何なの、この世界の人類は。

しかし…妖精である私たちは、セイレーンを独自で降せるこの世界に不要な存在なのかもしれない…。しかし、人類はそんなよそ者であった私たちをやさしく迎え入れてくれた。特に、欧州のグレートブリテンは私たちを熱烈に歓迎し、次点ながらも日本と呼ばれる国も私たちを歓迎してくれていた。

 

「ほら、妖精さんは居ると言っただろう!!」

「わかったから、…落ちつけ…」

「何度も言っているだろ!妖精さんは居るってぇえ!!!」

「うるせぇ!!わかったつってんだろ!」

 

…本当に、私たちはこの世界にお世話になっても大丈夫だろうか。

 

それから数年後、スポーツの祭典とされるオリンピックの年になるとセイレーンに似た鉄虫と呼ばれる生命体が、異空間より発生。この世界は再び危機に直面、具体的には精密機器に酷く打撃と受けてしまうも、何故か死傷者の方は出ていない不謹慎ながら、不思議な状況に陥った。軍人以外の国民も、意外と強かなのだろうか…。

どれだけ強いんだ、この世界の人類…。

私たちから見て、あの鉄虫は人類滅亡の脅威になる程…危険性のある存在なのに。そんな中、異世界へ通じる門ことGATEから、私たちのような彼らと対抗できるバイオロイドと呼ばれる者が現れる。

だが、そのバイオロイドの見せ場を作らせる事なく…呆気なく、鉄虫は無に還ってしまった。

それもそうだ、この世界の文明は他の惑星の文明をも取り込んでいた。その為、機械が駄目なら、他の方法で対処する。人間が駄目なら、地球外来生命体およびその生命体代表のサイヤ人に力を借りればいいのだ。

しかし、問題は此処からだった。

バイオロイドの存在の意義が、人類内で白熱する事に。彼ら…いや、ここは彼女らと言った方が良いか。彼女らは人のように見えて、人造人間と呼ばれる類…この世界ではまだ、倫理はまともであった為、彼女らの存在はまだ生み出されていなかった。その為、いずれ訪れるこの議題を、早まらせた原因となった。

しかし、各国の共通は彼女らを無意識に、意図せず当たり前のように『人間』として扱っていた。

彼女らが生まれた世界では、彼女らはあくまで“道具”という認識。そんな彼女らにとって、この世界の人間は異質であり…優しい存在という認識と成った。未だ、長らく議論はされているものの、この世界は幾多の世界と縁を結び、航路を持っている。その為、この世界に生きる人間の数には限りがあり、縁を結ぶ世界の人類もまた数に限りある。

その為か、必要な人数を送れていないのだ。猫の手も借りたい、その言葉通りの状況となっている。

そんな猫の手という立場に、彼女らバイオロイドが当てられた。生産は少ないながらも、彼女らは大きく役立っていると言う。

中には、バイオロイドと婚姻を結ぶ者もちらほら、と現われていた。子を産めない制約ながらも、彼らは幸福だと口々に言っている。この世界の彼らは、バイオロイド…いずれ生み出されるKAN-SENたちの、幸せの形を示してくれるかもしれない。

 




簡易登場人物
北斗蛇義(ホクトジャギ)…ジャギの可能性の一つ。破門後、特殊部隊ヴァルハラチームの総隊長。

ハンナ・フォン・ルーディス…ハンナ・ルーデル似、表向きは大学生でヴァルハラのウィッチ(ストライカーユニット適合者)。

人間がだめなら宇宙人で対応すればいいじゃない、…ご都合主義ですね。
今流行のアニメや漫画、ゲームに疎いので、平成2000年代くらいが主になる。
たまに1990年代も入るかも…。


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担任は宇宙人?

1988年にドラゴンボールワールドに繋がっちゃった為、宇宙進出は早まり、今では宇宙に数と官位があることを知ったくらいまで。

上司にしたいトップに入るほどの人格者が登場。
転生者の胃は大丈夫なのか、空いてしまうのか…今後はまだ考え中


「はじめまして、皆さん。今日から一年間このクラスの担任のフリーザ、と申します」

 

紳士的な口調共に、教壇の前に建つ異様な存在感。全体的に爬虫類っぽい姿で白い肌に、紫の頭部…艶やかな尻尾をゆらりと振るう、小柄の人型。

俺たちのクラスに、…宇宙人がやって来た。

しかも、担任として。

 

 

─転生者の独白─

 

俺の通っている学校…いや、この世界の学校は前の世界と比べて多種多様な人類および、宇宙人が通っていた。文明が発展したお蔭で、宇宙への進出と異世界の宇宙人との交流・交易でこちらの世界に、移住する人達も少なからず居た。

その為か、外を歩けば異世界の人や宇宙人が歩いている事自体珍しくは無い。

イメージは銀魂の世界観になっている。ここでは戦争というより、紛争に近いモノが起きているけど…さほど変わらないか。交流があるからこそ、こう言った衝突はつきものだろう…文化が違う、宗教が違う、環境が違うなど、みんな同じというわけじゃないのだから。

 

てか、何でフリーザ様が居るんですかねぇえ?!

原作ではあんたとんでもない危険人物扱いだったはずでしょ…何で、教師やっているのか心底疑問だ。…いやね、上司にしたい人物トップに入るくらいの人格者だけど、性格が…ねぇ。

「どうしましたか?」

そんな思いを見透かされたかのように、意味深な笑みを浮かべたフリーザ…先生はこちらに視線を向ける。

「イエ…」

「ふむ、宇宙人がこの教壇に立つのが珍しいですかね?」

「えっと…その」

「まぁ、ここ最近そうなるようになりましたからねぇ。…これでも、下の者からは評判は良い方ですよ?」

二コリ、と全員に向け笑みを向ける…う、胡散臭いが結構ユーモアある人なんだな。

「先生ってヤクザなんですかー?」

そこに、一人の気だるい声が響き渡った。声の方を向くと、窓際の席に黒髪の少年が手を挙げていた。滅茶苦茶誰かに似ている…なんか、前作の主人公に色々と奪われた新主人公っぽい容姿。

「ヤクザ…?あぁ、宇宙海賊かぶれの奴らですか。そのヤクザ、というより私は以前、母国で独裁政治していましたねぇ」

原作まんまかい!!

しかも、そっくり野郎…なんつう質問しているんだよ。お前の周りの席の奴ら、お前の事を若干引いているぞ。周りの視線は興味ないとばかりに仏頂面で先生を見るも、直ぐに興味が失せたのか机に転がっていた鉛筆を回しだした。

その容姿とは裏腹に気まぐれな奴だな…。

しかし、このクラスを改めて見ると…そっくりさんどころの話じゃないんだが。瓜二つ、その言葉が合う程の容姿だらけだ。性格は似てなくても、マジで容姿は前の世界で見たようなキャラばかり。

…本当に、この世界の文明やらなんやら…おかしすぎだし、規格外だろ。

 

……んん?出入口側の女子生徒の机の中になにか…え、猫がい…る?

それにあのそっくり野郎、先生の目の前でガンプラ作り始めたぞ。あと、ゆるふわな赤毛の女子生徒、先生に憧れとも言えるような人物に出会えたような眼差し向けてし…あ、目があった…こわっ。

それとさぁ…、金髪のふとましい方の御曹司…菓子食うなよ。それって、こっちの県じゃ食えないようなご当地菓子じゃねぇか。しかも、どっかで見た事のあるような薄桃色の…え、あの宇宙人お姫様居るじゃん。

 

…なに、この問題児なクラス。

俺、この一年間このクラスで過ごすわけですか?フリーダムすぎるだろ、てか先生絶対胃を壊すと思うぞ。

大丈夫か、このクラス。

 

 

「ふうむ、問題児をこれでもかと集めましたねぇ」

 

校長室、と札が掛けられた部屋に二人の教師が居た。この度、初めてクラスを任された宇宙人教師フリーザはパラリ、パラリと在籍する生徒たちの名簿を覗いている。その横では副校長の地位にある教師、牧魔絵葉(マキマエヴァ)が爽やかな笑みでその様子を見つつ、こう呟いた。

「えぇ、皆生まれも待遇も異なっていますが…良い子たちです。周りとは一歩違うからこその苦悩を持っていたとしても、きっと彼らなら…乗り越えられると思います。私たち教師は…それを手助けする装置です」

絵葉はそう誇らしげに言葉を紡ぎ、フリーザはその言葉にしっかりと耳を傾ける。

「あなたのカリスマ性は聞き及んでおります…頼りにしていますよ、フリーザ先生。生徒の為にも、先生方の為にも…この学校の為にも、ね」

そんな呟きに、フリーザは視線を一度副校長の方へ向ける。

フ、と僅かな笑みを浮かべるくらいで何も言わず…名簿の方へと、視線を戻した。副校長はその笑みを見つつも、変わらず微笑みを浮かべ校長室を後にした。シン、と静まりかえった校長室に、一人となったフリーザ。己ひとり、という状況で溶け込むような声で、こう零す。

 

「どの世界も、変わらず私のような野心家は居るんですねぇ…」

 




簡易登場人物
フリーザ…フリーザの可能性の一つ。悟空とこの世界の実力者に倒されるも、教師に興味を持ち実習を経て担任へ。

牧魔絵葉(マキマエヴァ)…マキマさん似。転生者が在学する高校の副校長。


わかる人にはわかる。

けど、ここは作者の独断と好み・趣味が入っている為マイナーなキャラを出すかもしれん。



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魔法適正調査(参加作品:FF)

今回はFFがもたらしたモノと転生者のクラスメイト登場回。

同一人物か、そうでないかは人次第ですが…完全な私個人の好みと趣味なキャラが出る。
いや、ねーわ、な方はブラウザバック。


魔法、それは魔力という不思議な力を用いた術。

よくあるファンタジー作品で見られるモノで、火を起こし、水を湧かせ、雷を発生させる。時には人を癒すものもあれば、呪うものもある。

そんな魔法が、1978年モントリオールオリンピックで繋がった異世界で発見された。

この異世界への縁を繋がった事で、この世界は魔法を再度復活させる事に成功。実際、この世界にも魔法は確かに存在していた…しかし、時代と共にその魔法は解明され、産業革命が起こる頃には魔法は廃れてしまった。一説には、人の自然への畏怖と信仰が失った事によるものとか、魔力が枯渇(こかつ)していったと言う説も、上げられている。

 

魔法が発見された異世界、そこは自然が豊かでまだ、近代化の手が伸びていない剣と魔法の世界という場所。

それと同時に、自然の化身であるモンスターの存在も確認される。その異世界に足を踏み入れた特殊部隊の一人は、まるでゲームの世界に踏み入れたかのような錯覚に陥ったと言う。

人々は魔法を使い、身の回りの事やモンスターへの自衛としての手段で使い、時には神事において使用されている。魔法以外にも、住民の中には動物のようなパーツと見た目を持つ者や、子供のように小さい体系の者、耳が長くまさにエルフと言った者も確認されている。

彼らはこちらの世界に繋がった事に対し、好奇心を持ちつつ驚きと共に、大きな恐怖を持ち合わせていた。

こちらの文明とあちらの文明では異なり、こちらでは銃器や核と言った近代兵器を持っている事で戦力との差に大きな差がある事を知ってしまったのだろう。対し、あちらの異世界では弓と剣、時には大砲がやっとの近代化前の利器で対抗する他ないのだ。しかし、それだけの差があっても魔法という存在はこちらの世界では未知数、お互い…慎重な姿勢で交流を取る事に。

 

 

それからしばらくしてこちらの世界に移住する異世界の住民たちが現れるようになった。その逆もしかり。程なくして、異世界で日常的に使用された魔法も、こちらの世界でも使われるようになりそれが原因で犯罪等が行われるように。

警察といった国防組織は未だ魔法への認知が遅く、そこを突かれ対処が後手に回る事が多いことも要因の一つであった。

また魔法の一つ、召喚魔法により異世界のモンスターを召喚する人災が多くなり経済への打撃は決して浅くは無い。この事により、各国は魔法への処置として厳格な法律および、魔法適性検査を義務付けが決まる。

それでも、まだ魔法というのは異世界の技術をもってしても未知の領域が残っているため解明に時間を費やす他なかった。

 

─転生者の独白─

 

フリーザ先生が担任になって数日後、その日は特別な授業が行われていた。

とある異世界に繋がり、その魔法が復元されて以降各学校ではある適性検査が行われるようになった。魔法の素質の有無を知る為の検査であり、これを行う事でもしもの時に対処できるようにだとか。そのもしも、というのは魔力の過剰摂取による暴走…この世界は魔法が廃れて長く、いきなり異世界の魔法がこちらに浸透するようになった。

長らく忘れられたのだ、勝手がわからないのも仕方ないとみる。

 

ふよふよと、体型はあの御曹司に劣らずふくよかで獣のような耳と、真っ赤な玉のような尻尾を持った毛玉が浮いている。

とある最終幻想的なゲームで見かけるようなマスコットみたいな見た目…と言うか、実際その最終幻想こと、ファイナルファンタジーに繋がっていたんだよなぁ。

目の前の毛玉マスコット。そのゲームに登場するモーグリ、というキャラクターだ。彼らは各地の学校、医療法人に派遣されこうやって魔法の適性検査を行ってくれる。俺的にはもうちょっと、スリムかと思ったんだが…個体差、っていうやつか。

 

「それじゃあ、君達に魔法の適性検査を行うクポ」

 

その言葉と共に、俺たちに一枚のメモ用紙的な紙が一枚一枚配られた。

「まず、配られる紙に集中してみるクポ。

この紙がどんなふうに変化が起こるかによって君達の属性が分かるクポよ」

モーグリの言う通り、俺たちは紙へと集中してみる…。すると、手に持っていた紙が湿り始め出した。それはもう、形が崩れていない事が奇跡なくらい湿っており、足元に大きな染みを残すほどだった。

周りを見てみると、紙の反応に驚いている者も居れば紙が一切変化していない者もいた。

それはそれとして…俺は…もしや、水魔法系のチートを持っていたと言う事か!?そう淡い希望を持たせていると、モーグリがこちらに来てこう言った。

「君、結構集中していたクポね。ちょっとだけでよかったクポよ~」

「アッハイ」

 

俺に、チートは、無いんかい!!!

 

まぁ、当たり前だよな。そんな都合がいいモノを与えてもらえるなんて…大いに思っていたよ。現代っ子、具体的にはなろうとか読み漁ったが故に現実とフィクションの境目を見落とした、大ばか者です。

「ねぇねぇ、どんな事起こった?私は何か静電気みたいなのが走ったんだぁ」

すると、某宇宙人お姫さま似のクラスメイトことラファ・ベルゼヴュートが無邪気な笑みを向け、話しかけてきた。相変わらず、美少女です…本当に、ありがとうございます。こんな、平凡な俺に話しかけてくれるなんて。

っと、彼女は電気属性持ちなのか…機械いじりや発明好きって言っていたから、納得いく話だな。

「俺は水属性みたいだな。まぁ、ラファ…さんらしいね」

「別に呼び捨てでいーよ。ねぇー、さやっちはどうなの?」

呼び捨て解禁ですよ、やったぜ(興奮)。

そんな彼女、人あたりが良く明るいためたった数日でクラスメイト全員と仲良くなれていたのであった。く、コレだから陽キャラは…陰キャの俺には眩しい存在です、止めて眩しい。

そんな彼女が良く話しかける相手、それは…。

「…なにも、起こらなかったわ」

「くぽー、君は魔法の才が微粒子レベルすら無いみたいクポね」

こ、このモーグリ…どんだけ、ハッキリ言ってやるんだよ。

どうやらモーグリの話では、ここまで魔法の才が無い人間は珍しい部類に入ると言う。例え反応がなくても、モーグリみたいな魔力を知れる存在はある程度才能の有無が分かると言う。そんなモーグリでさえ、珍しい部類に入る彼女…女神に転生する作品の原作および、初代で出て来そうな苗字持ちだ。

白鷺沙綾子(シラサギサヤコ)、何でもとある傷害事件を起こしたらしい…それが原因で、元居た高校からこっちに転校してこのクラスに配属されたとか。え、ペルソナ5のジョーカー枠なの、彼女?

「まぁ、魔法なんてあっても無くても平気クポよ」

「ずいぶんな言いようね…」

「事実クポ~」

何とも意外な返答だ。まぁ…この世界に居て魔法が有ろうが無かろうが、問題なく生活できるくらいなものだろうけど…。

それにしても、魔法が使えないのは…白鷺さんだけの様子。他の奴らは紙に変化が起きたよだ…これで孤立、というクラスにはならないだろうけど…。他の奴らの属性ってなんだろうか…俺は水属性で、ラファは雷属性だけど。

よし、聞いてみますか。

 

 

「俺は真っ二つに割れた」

「俺もシンと同様だ」

 

どうやらこの二人は、風属性みたいだ。

ガンプラ好きな野郎と、猫っぽい目のイケメンなんだが…あの中に入りたくない、めちゃくちゃ俺が浮くじゃん。

ガンプラ好きの野郎は、種子田(タネダ)シンで変わらず暇さえあればガンプラばかり組み立てる奴だ、話してみれば良い奴なんだが…すげぇマイペース。隣に居るネコ目のイケメンは中島志水(ナカジマシスイ)…何でもうちは一族の遠縁だとか。うん、…確かにうちはっぽいけど、重そうな素振りは見た事ないから注意とかしなくて平気だろ。

…フラグ、じゃないよね?

「どうした?俺の顔ジッと見て」

「な、何でもねぇよ。それと、シン…ここでガンプラ組み立てようとは思ってないだろうな…荷物持ちなんぞ嫌だぞ」

「接着剤に砂入るからやらないよ。まぁ、完成した奴の舞台には丁度いいかもね」

 

 

「愚民、お前は水属性か…サバイバルでは役立ちそうなものだな」

「私たちは火属性でしたわ、まぁこちらもあなたと同様に役立つでしょう」

 

ほぉん、セレブ組は炎属性か。

そんなこの二人、実家が世界有数の大企業及び財団である。何でそんなセレブがこの高校に通っているのかが疑問だし、もっと偏差値のバリ高な学校とか通っているかと思ったんだが…まぁ、訳ありだろうな。

某ジュブナイル人狼ゲームに出て来そうなふくよかな体系の男の方は澁澤廻沙流(シブサワカエサル)、イタリアのクウォーターで高圧的な口調だが結構真面目な奴だった。

赤髪のゆるふわロングな彼女は楓・C・岩崎(カエデ・コルベール・イワサキ)、フランス人とのハーフであの三菱創業者岩崎弥太郎の子孫、だとか。…彼女自身、与太話だろうと思っていて信じていないが、セレブであるのは間違いない。

「へぇ、意外だな。てっきりDEVU(デヴゥ)は闇属性でもやるのかと思ったぞ」

「そのあだ名やめろ、何か情けないぞ。それと俺はふくよか、だ!」

「でも、魔法が使えるのってなんかワクワクしますわ!いつか、フリーザ先生みたいな光線を…キャー!」

「オ、オウ」

そんな楓、フリーザ先生の大ファンである。なんでも天下一武闘会で一目ぼれしたとか…、先生って出てたんすね。俺が予想するに、この事が原因でこの問題児クラスへ強制的に編入してきたのではないかと睨んでいる。合ってほしくないが、コイツならやりかねないだろうと言う確信があった…。

あ、平手は勘弁…イッタぃいいいい!!!

「つい」

「つい、なら仕方ないな」

 

 

「うむ!君は水属性か、俺も水属性だったらしくてな!」

「声が、デケェよ…。ちょっとは抑えてくれ…委員長」

「すまん!!」

だからデカいっての…。

この声を含め、全体的に強調し過ぎというか存在自体がうるさそうなクラス委員長の男子生徒。真田煉十郎(サナダレンジュウロウ)、どこぞの鬼斬り漫画の目がイっている野郎に似ている奴だ。熱血なのに、何で水属性なのか…それは俺が知りたいんだけど。

まぁ、性格とはまた違う属性になる事は珍しくも無いだろう。

というか、コイツはどっちかというと魔法より得物か肉体で言語しそうな質だろ。人間見た目で判断するつもりはないにせよ、世の中解らんな。

「しかし、俺が委員長になっていいのだろうか」

「んあ?そりゃあ、煉十郎以外居ないだろ。このクラスまとめんの…お前だから良いに決まってんじゃん、ここは問題児クラスって言われてんだぞ」

「…それは、どういう意味だ」

どうもこうも無い。そう言った意味だよ。

みんな、何かしら抱えて、抱えさせられたんだ。数は少ないクラスだけど、全員が委員長ならこいつしか居ないと言う事で煉十郎に決まった。まぁ、押し付けはあっただろうけどな。

俺がなんでこのクラスに入れられたか、皆目見当がつかないが。

「そう言う所だろうな!!!」

「うるせぇえ!お前、声量がデカいんだって、拡声器並みにでけぇわ!!」

「そこ、うるさいクポよ。特に平凡ぼん」

「何で俺!?」

 

 

「問題児クラス…ですか」

モーグリの傍に立っていたフリーザがそう溢す。

フリーザはこのクラスの担当を受け持つことになって以降、彼らの経歴を調べていた。彼が担当するクラスの生徒たちは、皆…他のクラスとは違うと言う事が理解できるほど、“訳あり”を抱えていた。その事もあり、彼が担当するクラスは陰で、問題児クラスと呼ばれていたのだった。

 

悪意ある暴行事件の容疑者、人の嫉妬心による悪辣な事故、自身の才能が招いた悲劇、秀才の転落、四面楚歌の孤高、生まれる事への罪と罰、盲目なる人格障害。

 

周囲によって悪意を押し付けられ、自身の才能と思いに怯えている…。手を差し伸べられなかった、子供たち。

フリーザは何とも難儀な事だ、と他人事のような思いを持っていた。だが、同時にこの子供たちの行く末がどうなっていくのか、知りたいと言う思いもあった。…フリーザは生まれながらにして勝ち組の地位を持っていた、その為あのサイヤ人に負けるまではその地位を脅かす存在はいなかったのである。

だが、あるサイヤ人に負け地位を失った際に最初に湧き上がったのは怒りと憎悪。

しかし、無慈悲にも復讐の機会を与える暇もなくフリーザはこの世界の人間たちにボコボコにされる。最終的にはある教師との出会いによって、人を知りたいと言う思いを持って教師を志すようになったのだ。

そんなフリーザは、一人の生徒に深く興味を示していた。

優良な存在に目ざといフリーザが、特徴も無く、平凡、目立った経歴も無い…そんな生徒に目を掛けた。何処にでも居る様なそんな生徒が、このクラスの中に入って何を成すのか。事実、彼は彼らの抱えているもの抜きにして真っ当に話しかけている。

普通なら、そんな事は出来ない。

彼らの抱えているモノに距離を置いてしまうため。彼は他とは違う、いや、当たり前な事をしている事にフリーザは興味を示した。

「当たり前な事とは何でしょうね。…では、教師として当たり前なのはどういった事か、ふふふ。

少しは楽しめそうですね」

そうフリーザは、楽しそうな笑みを浮かべながら聞こえないくらいの声量で呟いたのだった。

 

 

 




簡易登場人物

転生者
GATE的な世界に転生してしまった、フィクションと現実の境界線を未だに誤っている今時な奴。

ラファ・ベルゼヴュート
ララ・デビルルーク似、宇宙人。
フォマルファウトー星と呼ばれる星の王家長子。

白鷺沙綾子(シラサギサヤコ)
D×2女神転生女主人公似、白鷺扉代の娘。
千手一族の末裔。

中島志水(ナカジマシスイ)
うちはシスイ似、元有力スプリンター。
うちは一族の遠縁。

種子田(タネダ)シン
シン・アスカ似、バイオロイドとのハーフ。
ガンプラ好きで父と二人暮らし。

澁澤廻沙流(シブサワカエサル)
スーダン2十神白夜似、名家澁澤の末席。
姉と同居。

楓・C・岩崎(カエデ・コルベール・イワサキ)
楓・J・ヌーベル似、岩崎弥太郎の子孫?
惚れっぽい性格であり、また美化フィルター故障している。

真田煉十郎(サナダレンジュウロウ)
煉獄杏寿郎(レンゴクキョウジュウロウ)似、クラス委員長。
影がある暑苦しい奴、天才を超えた秀才。

転生者含め、クラスの生徒は8人です。
ぶっちゃけあんまり多いと捌けない、てか多すぎてゴチャるんですわ。

モーグリはFFCCデザインです、好きなゲームの一つなんで


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異世界とこちらの世界の事情

タイトル通りな話です

GATEが未だ解析が進まない理由は、特定の年にしか大きく動く気配がないということ。
普段の行き来は可能です




 

赤坂GATE前、日本で唯一武装警備隊の配置が許可された地帯である。

此処に当たる警備隊のほとんどは自衛隊及び、特殊部隊から選出されている。此処に配属される彼らは実力も申し分はない、全員が死んだ方が良いと思えるほどの苛烈な訓練を受けているため。

いつ何時、戦闘が起きて防衛が出来るようにと言うが…皆、そのような事が起きないよう祈りを捧げる他ない程、この任は過酷なものだ。

GATE周辺において基本、一般人の立ち入りは許されていない。また、ドローンの飛行なんぞもっての外。

以前、あるテレビ特番でドローンによる撮影があったがものの一瞬の映像のみ放映。後に、その企画を通したプロデューサーもといテレビ局は首の皮一枚まで絞られたという。実際、彼らの処分は甘い方だった。

GATEを映す。その行為は犯罪の予兆につながりかねず、また各国の暗躍の手助けになりかねない。

たまに、一般人の撮影が上げられる事もあるが…その撮影者および、投稿者の罪はかつてのテレビ局程甘くはならない。

むしろ、首はとっくに切り離される…撮影自体が、自殺行為に当たる。一部の国民はこの事に抗議を上げるもののそれでも日本という国が生きていく上では、ここまで切り捨てなければいけない程に厳格にならなければいけなかった。いくら未知なる宝庫のGATEがあっても、見方を変えればそこは戦場の最前線。

国と国との暗躍、謀略を視野に入れ、更にはGATEの今後に目を向ける中で…余計な事に心労を掛けたくはないのは、当たり前かもしれない。ましてや最前線である以上、国民の命が大事であることは、国にとって大事な理由の一つであった。

 

 

GATEが、オリンピックの年のみに異世界へと繋がる理由は…依然不明だ。

ある学者の説では世界で盛り上がり、熱狂が上がる事で異世界へと繋ぐエネルギーが発生し、それを消費する事によりランダムでどこかの世界へと繋がる事が出来るのではないか…と言う説。

しかし、間隔がある以上この説が正しいかとは言い難い。

その為、どの説も明確に近いと言うものは無く…そもそも、GATEがどのような原理で動いているのか、いまだ解明されていなかったのだ。いくら文明を積もうとも、解明できない領域に立つGATEは、それ以上に未知なものというのが世界での共通と成った。

GATEを通し異世界からの住人や侵略者が来る、その定例も崩れてきている。セイレーン、鉄虫はGATEではない方法でやって来てしまっていたからである。今後、彼らと同様な事例も起きなくはない現状と成り、日本及び世界は頭を抱える。

また、ここ最近増え続けている異世界からのあぶれ者、犯罪者。異世界同士が繋がり、犯罪者の逃亡・潜伏先の手助けになっているのもまた、事実。しかし、犯罪者を野放しにするほど、世界と国は疲弊している訳ではない。異世界が繋がると言う事は犯罪が増えることは明らか、世界と国はこの状況により一生厳しい処罰をかせる法案を立法し、既存の方を改案していく。

しかしながら、課題は異世界が繋がるごとに徐々に増えていく。

基本、異世界同士の干渉は公益と交流に限られている。戦争や紛争での問題は、他の異世界に頼らずその異世界で問題を解決する。異世界からの侵略者は例外にあたるも、それを拒否することは可能だった。

大筒木や鉄虫の件は、他の異世界に被害が及び、また及ぶ可能性を踏まえ協力した、それが理由である。

異世界、またはこの世界で起こる戦争と紛争に関しては基本対岸で起きている認識になる。異世界側の介入があれば、それこそ戦争が戦争を呼ぶと言う事態になる。そうなれば人類は馬鹿である、と言う認識で宇宙に広まり、滑稽な終わり方を迎える羽目になるだろう。

そのような結末にならない為にも介入しないと言うのは、それこそお互いの為であった。

 

 




異世界同士、争えば目に見えた泥沼試合になりかねない理由で深くは調査をしない。

それでも、徐々に干渉していっているという矛盾

出す作品どうしようか


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月には人が居るらしい(参加作品:NARUTO)

ある少年の未来が変わった話でもある

まぁ、ここの少年があの少女に惚れて色々するかは分からんちん。
異世界に繋がったために、原作崩壊するなんて…


月には、ウサギが餅を突き高度文明が栄えている。

宇宙進出がまだなかった頃の人類は、月という存在に大きな魅力と共に身近な存在であると認識していた。それから月日が経ち、人類は宇宙へと進出するところまで文明を栄えた。

ようやく、人類が月へと足を踏み込ませたアメリカのアポロ計画、アポロ11号に搭乗したアームストロング飛行士の月面着陸。

そこから月面基地が建設され、月面車による月の走行と採取が行われた。

時代は進み宇宙進出が本格化した頃、とある宇宙飛行士は…一人の少年と出会う。

 

 

「…うー?」

「オーゥ、何でこんな所に少年が居るんだ」

宇宙飛行士、アームストロングは月面探索の最中に大きな建造物、それも地球では考えられないような最新オーバーテクノロジーばかり備えられていた建物の中を、歩いていた。その建物の中にジュニアスクール、小学校に上がったばかりと思われる年齢くらいの少年が、自立する機械人形らしきもので遊んでいる光景が映る。

まだ、自律出来る人形は地球では開発段階の初期。

それに高性能AIなど、まだまだ先の段階だった。それも、子守りの出来るほどの思考能力を持った人形は、彼の目からしたら夢のようなもの。

アームストロングは少年をまじまじと観察する。

汚れの無い白髪で閉じられた両目、服装は何処かアジア圏内で着るような、ゆったりとした服装であった。この月に人が居ると言う事自体が…アームストロングにとって、予期せぬことである。

「誰だ」

ふと、背後から声が聞こえ振り向く。

そこには少年と同じ白髪でこちらも両目は固く閉じられているものの、まるで睨んでいるかのように、警戒心を放つ男性。彼は一目見て、この男はこの少年の父親であると直感した。

「アー…Are you human?」

「な、何だその奇天烈な言葉は」

アームストロングはこの男、言葉通じていないな…と思ったのであった。

 

少年と父親が居たとされる建物から、大きく離れた月面基地。

そこではアームストロングをはじめ、各国の選りすぐりの宇宙飛行士と研究者たちが集い研究と調査が行われていた。基地内ではアームストロングの他、基地内に居る全員が…少年と父親をまじまじと見ていた。

少年は見ず知らずの大人の視線に恐いと感じたのか、父親から離れようとせずしがみついている。

そんな怯える少年に、ここに集う全員が申し訳ない思いで一杯であった。

「sorry、なんせ月に人が居るなんて思いもしなかったからね」

「…ここは、地球の者たちが作ったのか?」

「That’s right.先人たちの偉業のおかげで、俺たちは今…ここに集い君達と出会えたのさ」

「…」

男はジッとアームストロングと、周りに集う基地の人間たちを見渡し始める。

彼らは目も見えない中、分かるのだろうかという思いがほとんどであったが男はそれを気にする様子を見せない。むしろ日常動作にブレが無いことに驚いており、様子を見る医師たちはそんな彼に対し興味を示す者も、チラホラと居た。

「私の知る、地上の人とは違っているな…。忍者ではないな」

「フーム…、そうだね。俺たちはちょっと特殊な方法でこっちの世界に来た調査団みたいなものさ」

「調査団?」

アームストロングの代わりに、日本人宇宙飛行士…偶然にも、忍界出身の者が説明をする。

アームストロングを初め、この場に居る者たちはとある門を通し忍界とは別の世界から来た者たちであり、ここ忍界の宇宙に来たのは犯罪人である大筒木という人物のルーツを探る為だと言う。また、この忍界の宇宙についても調査をしにやって来たと言う事も、説明をすると…男は、大筒木という言葉に酷く困惑した顔を見せた。

「なに、大筒木だと…!?」

「知っているのかい?」

「……私は、大筒木オオアマ。その者は、私と同じ血縁者であろう……そうか、お前たちには済まない事をしたな」

「ノン。Mr.オオアマ、あんた自身が悪い訳じゃあない」

「それでも、同族である以上示しはつきものだ…」

アームストロングはその意志の強さに尊敬を向けるものの、この勢いでいけばいずれ少年は酷く寂しい思いをさせてしまうであろう。聞くところによると、あの建物に居るとされる人は、この親子とほんの数人くらいとみる。最悪、この親子だけかもしれないと言う思いもあった。

どうにかこのオオアマの思いを踏みとどまらせる方法はないかと、画策していると…少年はとある医師の元に居た。その医師は子供を持っており、手持ち無沙汰になった少年を見かねて絵本を持ち出し、読み聞かせしようとしたのであった。

周りの宇宙飛行士たちも少年の暇をつぶさせようとあれこれ遊んであげようとしている。

少なくとも、この基地内に居る人間はオオアマが悪いと言う認識は無い。むしろ、恐がらせてしまった少年に対し、何とかしてあげたいと言う優しい思いの持ち主ばかりであった。

「Mr.オオアマ。あんたは、まだ子供の彼を一人にさせたいのかい?」

「それは…」

「あんたのその意志、尊敬できるが…俺としては少年が気掛かりだ。子供って言うのは、親が居なくちゃこじれるってもんさ。昔の俺みたいに、bad boyにならない為にも」

アームストロングは、オオアマに一つウインクを送る。

「…君たちは、随分と優しいんだな」

「ハハ、thank you」

 

 

─転生者の独白─

 

「ウギャー!!お前、それ反則だろ!」

俺は自室で一人、悲鳴を上げていた。

目の前のパソコンに映し出されているのはとあるFPSゲームの画面。このゲームは今流行のVRゲーム、『ソードアート・オンライン(SAO)』含めたO(オンライン)シリーズのうちの一つであるものだ。

何で悲鳴を上げたか…俺たちのチームは、相手のチームとその友人によってボロクソに負けてしまったためである。死角からの銃撃、予測できないくらいの距離からの狙撃、どういう原理でやってんのってくらいの格闘戦によって…ボロクソに負けた。こいつが居るチームは俺たちおよび他のチームから、理不尽と呼ばれているほど実力が高い。

そんでこの友人、アメリカ在住らしく頭のいい俺と同学年くらいの男。普段はお互いに顔を見られないのだが、時たま大会とかのオンラインで顔を見せるくらい。…これまた、白髪で女子受けしそうなザ・美少年って感じのガチのイケメンだったことは、記憶に新しい。

『アッハハハ、ものの見事に墓穴掘ったよね』

「うっせー、バーカバーカ!!」

『痒いくらいだよ。君の罵声は』

「ムッキー!絶対勝ってやる。…って、お前んとこの時間そろそろだろ」

『あ、ほんとだ。ごめんね、そろそろ寝ないと…そうだ。君の所って、ホームステイって出来る?』

あ、ホームステイ?

アレか、外国人がこっちに来て色々と学ぶために何日か一緒に生活するやつか。両親は海外経験ないし、妹も海外に縁の無い家庭なんだがなぁ。

「俺ん家やった事ねーんだけど。基本主食は米だぞ」

『僕は何でも食べるから平気、…無理ならいいけど』

「ちょっと、聞いて来るわ」

席を外し、リビングに居る両親と妹にホームステイの件を話してみる。

全員、良い返事をしてくれたのでソイツに話してみると…どうやら夏ぐらいに来るらしい。まだ予定が決まっていないものの、近所の大学の交換留学生として来日し交流と講義を受けるつもりだとか…、飛び級か。

実際居るんだな、飛び級の学生って。

『決まった段階で声を掛けるよ、…えーっとこっちのヤツで良いかな』

「実際、連絡手段はこれだけだしな。メールだけど…そっちもう遅いから、暇が出来た時にな」

『ありがとう。日本って久々だからワクワクするよ…じゃあね、お休み~』

チャットが切れ、俺もそろそろ就寝しようとベッドへと潜る。

ホームステイか…、まだ先とは言え少し楽しみだと思った。…そう言えば、あいつの顔ってマジで、何処かで見たような…無いような。

 

……まぁ、いっか。

 

 




簡易登場人物
大筒木オオアマ…ある少年の父親、現地スタッフに就職。

オオアマの息子…ある少年の可能性の一つ、地球で飛び級学生。
FPS系のゲームで鬼強プレイヤー。

わかる人にはわかる少年。
転生者たちの方は恋愛ありなジュブナイルさせ…たい!
闇を掘り下げとかも、するかも。転生者家族についても掘っていきたい…な!


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グルメ、好きですか?(参加作品:トリコ)

今回はトリコの世界についての話。
グルメ大陸のほとんどの動植物、魚類等は一度でもいいから食べてみたいですわ。

そんでクラスの闇案件をチラリ、と。


グルメ界、1976年モントリオールオリンピックの時にそれは発見された異次元世界。

 

なんでも繋がった世界の情報によるとその世界である地球の70%を占めるその大陸は、人間の文明が開始されていなかった原始時代そのもの。自然豊かで地球ではまずみられないような動物、植物といった種類が多く発見された。しかし、未知なる大地には環境の違いと危険も多くあり、どんな実力者であってもその大地を踏みしめるのには人の域では難解なものであった。

それこそ、人の域を超え…すべての環境に対応できるほどの領域、そこまで到達しなければならない程。

それ故に、外交を行う際に最優先で現地住民との接触および、交流を重点とした結果、見合った成果を持ち帰れるようになった。

現地住民である彼らは、美食家と呼ばれる冒険家であり料理人、研究者としてのあらゆる側面を持ち、その大地の特攻役職とされた。

そんな彼らの力の源、それはグルメ細胞と呼ばれる特殊細胞。

グルメ界のみに存在する細胞であり、それはグルメ界に適するような身体づくりには必須であり、それを得るにはグルメ界に存在する生物である『グルメクラゲ』を摂取しなければならなかった。また、細胞の力は他にも強靭な身体と体力、人間の身体において解明されていない未知の域を開放できると言う研究結果も発表されている。

現在、グルメ細胞はどうやらグルメ界に存在する動植物、食材たちに僅かながら存在すると言う論文が発表された。それでも、グルメ界はいまだ謎多き次元である為、確実な証拠となる結果は、まだまだ先の事であった。

 

 

グルメ界で発見された動植物は、こちらの世界でも流通している。

しかし、足が速くどうしても半日も持たないモノが多かった。その為、足を少しでも遅く、それでいて新鮮なうちに食べてもらうために、グルメ界の食材を使われる飲食店の多くの料理人は、美食家および彼らの弟子でしか扱えなかった。

その為、彼らの店は赤坂に集中している理由に。

美食家の弟子だけあって、料理人はグルメ界に赴き自ら食材を調達する事は日常であり、当たり前のこと。

そんな彼らが作るフルコースは富裕層のみならず、王族や皇室もその味に魅了されていた。しかし、料理人たちはまんべんなく多くの人に食べてもらうために日夜グルメ界の食材をいかに、浸透させやすくするかの研究が進められている。

…だが、その食材に関連する裏取引はもちろん存在する。

何せ、流通が非常に稀で危険伴う幻の食材、それこそ食いつきが良いのは間違いないだろう。

裏取引で流れる食材の多くは、偽物。それこそ、そこらで採れるような食材を加工したものが多く、彼らは美食家の間では下賤すら生易しい程のクズ、と呼ばれ忌み嫌っている。

 

 

─転生者の独白─

 

料理というのは結構、想像力豊かな内容が多い。

手順、過程もさることながらひと手間加える事で色々と味や見た目も変わる、七変化が如く、だ。俺だって料理、両親が不在の時は妹に振る舞うからその苦労や達成感、味についても理解している。

そして、目の前に並ぶ眩い、という言葉が似合う程の豪華絢爛な料理の数々。

 

満漢全席、まさにそれだ。

 

それもバイキングスタイル…いや、都会ではビュッフェか。おい、そこ田舎丸出しと笑っていやがるな、お前もその口だろちくしょう。

 

事の発端はフリーザ先生が担任になり、早1か月過ぎた頃。…いきなりDEVU(デヴゥ)こと廻沙流が、親睦会を開くと言う事を言いだし、実行したのであった。

意外だな、こう言った群れることは嫌って良そうなのに…その為、廻沙流同様セレブである片割れの楓も、この親睦会をいたく気に入り財力、持ち前の札束ビンタでさらに豪華にさせた。

やめろ馬鹿、お前たちセレブの感性に一般人である俺たちは付いて行けねぇんだよ。足がすくんで動けず、はては疑心に溢れるんだぞ…。

見ろ、白鷺なんて顔面蒼白だぞ…。口を動かし、なんかブツブツ言っている…ちょっと近づけば、ようやく聞き取れるくらいの声量。酷く怯え、ナニカに対し恐怖心を湧きあがらせている…ヤバくね。

 

「これは、あの男の罠…?私を更に、陥れる為の……」

 

ほらぁあ!!こいつのトラウマ無自覚で抉りやがってぇ!

……あとさぁ、中島お前…女性に優しくするのは良い事だよ。しかもトラウマ発動しちゃっている白鷺の介抱、率先するのは良いよ。俺たちだって心配してるさ、めちゃくちゃ震えているし…ラファも、オロオロしているからな。

あのマイペース野郎シンだって、心配している。このクラスのやつら、結構芯身で優しい性格多いよな、人の気持ちが分かると言うか…何と言うか。

「おい、大丈夫か…」

「へ、へいき…」

身体を震わす白鷺に、中島は着ていたレザージャケットを白鷺の肩へと羽織らせている。うん、別に悪い訳じゃないけどさ…俺が汚れているだけかもしれないけどさ…。

「……近くね?」

「どうした…って、お前なんつう顔してんだよ」

「何その顔、…まるでネットに転がっている宇宙を背景にした猫の驚きの顔にそっくりじゃない…」

「ナンデモナイデース」

「うむ、白鷺くん大丈夫かね?…顔色が優れんが」

「…平気よ、澁澤たちはそこまでの意図は無いと思っているから。単に、ちょっとね」

…めちゃくちゃあの傷害事件引きずってるやん。

そりゃあそうか、意図せず無理やり被疑者、容疑者と決めつけられ…これを引きずっていない、なんて出来ないわな。俺も今の気持ちに配慮が足りなかったと、反省する。

「フリーザ様にはちょっと物足りなかったでしょうか…」

「いえいえ、岩崎さん。

そんな事はございません。私としても貴重であり、ここまで信頼を寄せてくれる生徒を持てて幸せですよ」

「フ、フリーザ様…!」

楓のフリーザ先生愛、すげぇ重い…。楓が担当している部分全て、フリーザに合うようなグレードの高いやつばっかり揃えてあるし。もちろん、俺たちの事も視野に入れた配慮はあるが…いずれにせよ、フリーザ基準といった所。

恋は盲目、そんな感じだった。

 

 

テーブルに並べられた料理の中には、あのグルメ界で採れる食材も混じっていた。例え、食材の取れる危険度は低くも…それでもうん百万円くらいの値段。

緊張しすぎて味が分からなくなることもある人間の身体、それを無視しグルメ界の食材で調理された料理は…脳に焼き付けるほどの衝撃を与えた。俺はこの瞬間、このクラスの生徒でよかったと思うと同時にカエサルと楓には逆らえない、というヒエラルキーを突き付けられ、身に自覚した。

 

前菜の一つ、霜降り豆腐のサラダ。

グルメ界に生息し生産に成功した大トロ大豆という植物を原料とした豆腐。普通の豆腐よりホロホロ崩れやすいものの、しょうゆ無しでも美味い。委員長は豆腐が好きなのか、さっきからデカい声でうまい、しか言っていない。

うるせぇ。

他にも寿司だといくらの様なブドウらしく、名前もそのまんまないくらブドウを使ったしょうゆ漬けの軍艦、ストライプサーモンという綺麗なオレンジ色の肉を持ったサーモンのムニエル、味の変化が虹のように七変化するあさりの味噌汁もテーブルに並べられている。

デザートはマントル芋を使ったスイートポテトや大学いも。大学いもの方は白鷺が嬉しそうに頬張っている。

ラファは赤毛豚の生姜焼きがお気に召したらしい、デザートに目をやるかと思ったが…こっちの暮らしで、一番初めに食べた生姜焼きが好きになった理由からだと言う。

俺個人で好きなのは、捕獲度が比較的低いガララワニ、という食材を使った薄く切られたレアステーキ。これでも百万はくだらないと、廻沙流が言っていたので何が何でも味わう事にした。

和牛は食った事ないが、それ以上に脂ののったやわらかな食感。口の中で、うまみが滅茶苦茶広がる。もうこれ食ったら、一般流出されている牛肉なんて目が無いくらい…俺、舌肥えるわ。

 

楽しい時間と言うものはあっさりと過ぎ、俺たちの親睦会は終わりを告げた。

俺の知らない皆の素面を知れたし、好きな好物も知れた…廻沙流と楓には感謝の他ない。何で俺、このクラスに配属されたのか最初は疑問と不安でしかなかったが…、あいつ等は問題抱えてもこうやって笑えている。

辛気臭いだけのクラスなんて、楽しくも無いしな。

 

ただ、俺自身は…こいつらの抱えている問題を少しでも軽く出来ないかと、思っていたりする。

 

 




セレブーな二人は財力で物言わす、な感じですが基本は目立ったことはしません。

転生者はなんだかんだ良い奴です、気苦労しますが…何処にでもいる感じな奴です。


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異世界転移、な話

今回は転生、ではなく転移の話。
実際、転生よりかは転移が多そうだよねなろう系って。詳しくは知らんけど。

こちらの世界では転移は事件扱いです。



異世界転移、今更異世界繋がりまくっている世界でこんな言葉はやるのかと思えば…どうやら、実際起こっている現象、というか…誘拐事件である。GATE以外でも、この世界が異世界へと繋げる事が出来ると記したが…あれは、この異世界転移が大きく関係している。

異世界転生が行われた際、こちらの世界でやる事は一つ…取り返すことである。

 

その為に…、異世界側がターゲットとなる人物達を呼び込む事で縁が繋がり、こちらの世界が異世界へと呼びこまれた人間を奪還する。

 

多くの異世界転移の発生当初は、魔方陣や無人トラック、時には身に覚えのない多額の借金を連帯保証された、という事例。特に多額の借金、これは文字通り借金を保証させるためなのだが…当の借金をした人間および、借金を取り立てるモノは、存在していなかったのである。

どうやら、これは異世界側の神格が意図的にターゲットの人物達を異世界へ呼び込むために行った自演、である。

その為、奪還の際には神格側へと裁判が行われる。

そもそも、神格を裁けるのか、神格が人間の行う裁判に参加させる事が出来るのか…近年、悪魔という存在が露見したことで神格が存在すると言う事実も表に出されている。死後の世界も大っぴらには明かされていないが、薄々民衆は勘付いている為…あえて露見していない。

死後の裁判が神話等で残っている事もあり、神格への裁判は人間と悪魔、それも閻魔(ヤマ、エンマ)やミノス王を交えた裁判が行われる。

神格側に至っては、自身が裁判に掛けられる理由に対し納得している存在は数えた方が早いほど、少ない。それだけ、自身が強大であり尊大であると言う理由で他の世界から無力な人間を拉致しているのであった。

そもそも、裁判を掛けられる事に疑問を持っている。人間よりはるか上の存在、または創造主たる自分達を裁くとは、どういう見解か…それが神格の言い分。だが、人間は反骨精神たくましい生き物だ…舐められる前にやる、そう言った性質を持っている。

だからこそ、神格への裁判を行わない…と言う事をしない、何故なら…舐められている。ならば、やるだけなのである。

 

 

異世界転移で落とされた人物の、生還は酷く乏しい。

 

何故かと言えば、環境が違いすぎると言う事と疫病の餌食になる事が多い為である。

たとえ、疫病を免れ、環境に適応できたとしても日々の習慣と未知なる技術の技術を目の当たりにした異世界の人間は、彼らをどう見るか。

簡単だ、非国民である故に殺傷も問わない。

受け入れる、成功する事は異世界では稀である。そもそも、送られる時代はこちらのような産業革命、経済成長等が行われる以前の中世に近い時代だ。下手すれば、暗黒時代ほどの文明であることもある。

その為、外の人間を未知なる存在と思うと同時に悪魔のような存在という認識でいる。

そう言った理由で、送られる彼らは異世界の住民に殺される事もあれば、疫病に倒れる事も多く…生還の目途が乏しいくらいに酷い現状であった。

 

 

『先日、埼玉県において高校丸々一つ分の異世界への集団誘拐事件が発生しました。

警察および防衛庁特殊対策の調査が行われ、昨日全生徒、教職員の帰還の成功を発表。重傷者は無く、軽症者多数で死者はいないと言う事です。

引き続き、警察と特殊対策の面々は調査を行い犯人の特定に当たるようです…。』

 

『次のニュースです…』

 

 

異世界転移が行われたと思ったら、昨日の今日で帰ってきた。

周りの生徒のほとんどが、こちらに還って来た事に安堵している。先生たちも、顔は険しいものの…一息つく人が多い。とは言え、生徒の中には異世界転移に憧れている奴らも少なからずいるだろう、俺もその口に当たる。

俺のチートライフが…と思ったが、よくよく考えてみれば帰って来られて本当に良かったと思う。見ず知らずの土地、そこは人の生死が軽く俺たちが生きていける保証も無い、何も無い状態での転移だった。

よくあるチート、そんなモノは無かった。

当たり前なのだろう、そんな都合のいいモノに限って碌でもない代償とかをふんだくられるのがオチだ。

 

帰還の際に、入念な健康チェックが行われこちらでは発見されていない、存在しない未知なる病原菌への検査も行われた。実際、そう言ったモノは結構厳しいのが何処の国でも同じ。続けざまメンタルチェックも行われ、中には何人かの生徒が精神的に弱々しくなっているのを見かけた。

それだけ、衝撃的でショッキングな出来事だったのだ…異世界転移は。

学校への復帰は、二日後になりその間診断は続けられる。復帰のめどが難しい生徒及び教職員は、そのまま少し休む事になる。酷い場合は…中退、退職も視野に入れられるらしい…。

転移という一回で、人をここまで陥らせる…行為なのか。

安易に、チート無双したいなんて思っていた自分がバカみたいだ…。

俺は…許せない、と思う。たしかに、その世界の人は困っているだろう…けど、なぜわざわざ他の世界からむやみやたらと連れて来させるのかが、理解できない。自分達ではどうにか出来ない対応を、何も知らない他の世界に一任するのは間違っていると思う。

俺は頭が良いと言うわけではないし、感情論かも知れない。

 

でも、俺なりに考えた結果…異世界転移って、結構ヒドイ誘拐事件だな、と思う。

 

何せ、向こうへ行っても身の安全すら保障してくれず異世界の人にとっては、俺たちは希望の存在というより…何をしでかすか、何を持っているかも分からない恐怖で未知な存在、なのだから。

神という存在、またはどこかの国のお偉いさんが俺たちを呼んで…それっきり、全部丸投げして…その後、返す気も無かったらと思うと…腹が立ってくる。そんな事がないように、俺たちをこの世界に帰してくれた警察や特殊対策の人達には、感謝しか無い。

 

俺は今のところ、メンタルも健康も問題ない為…復学は出来る。

クラスの中で、来ない人はきっといるだろう。彼らが悪い訳ではない、かと言って異世界の人や神も、悪いとは限らない。誰も悪くなかった場合、それはどういった事になるのだろうか…俺は、正直…想像したくなかった。

 

 

 




女神転生が関わっちゃった以上、これくらいは出来るかな…と思い組み込んでみた。

実際、人間が神格を裁くなんて結構業が深いなぁ…と思っちゃうが、当人たちにとっては殴りたいが先だよね。人の生死に関わってるし。


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ありふれた兄妹の話

クラスの闇表現を色々と錯誤するも、やりたいネタが多すぎ問題。
仮面やら霧深い町的な描写が特にやりたい。

間をとって転生者の妹を出すことになった。


 

─転生者の独白─

 

しっかし、未だにフリーザ先生が担任な事に成れない。

授業をして、生徒の質問に律儀に答え、課題とテストを出してくる。どの先生であっても同じような事を、フリーザ先生もしている事に…俺は、未だに酷く違和感を覚えていた。いい加減慣れた方が良いのかもしれない、…あいつ等もあいつ等で何故あんなに慣れているのか…。

…はぁ、モルガナモフりてぇ。

頭使うと、無性に癒しが欲しい…。そんな事を思っていると、扉越しから妹の声が聞こえてきた。

「お兄ちゃーん、switch貸して~」

「んー」

俺の返事を聞いたのか、扉を開けズケズケと部屋へと侵入する妹。今どき珍しいおかっぱな髪型…今の言い方だと、姫カットか。

誰にも似ていないうえに端正な顔立ちで、ザ・美少女な奴だ。まぁ、家族なのでそんな所まで気にする事は無い…てか、switch最近借り過ぎだと思う。自動で中学に上がるとはいえ、勉強とか宿題は大丈夫なのか?

「平気~、これでもクラスで一番だもん」

まぁ、テストで満点ばっかり取ってんもんな。でも、慢心は止めとけよ。

「なら良いけどさ…分からない所があれば言えよ」

「お兄ちゃん、最下位じゃん」

やめろ、痛い所を突くな…それと。

 

「俺はこれでも八十点台行くわ!あいつらが、マジで頭良すぎなんだよ!!」

 

たしかに最下位だよ…、嘘じゃないからな。

だがな、普通なクラスだったら上位に入る位置なんだ。だけど、何故かあのクラスに居るあいつ等に至っては、進学校クラス並みの頭の良さ持ってんだよ。真面目にやってきた、とか言っているけどさ…俺以外が全員満点取るっておかしいよ!!俺がマジで頭悪いってなるじゃん、馬鹿!!おたんこなす!

それにフリーザ先生から、憐みを貰っている故に…楓から嫉妬という名の憎悪の視線貰う身にもなってみろ。…楓よ、そんなにフリーザ先生から注目されたいならワザとテスト外せばいいんじゃないかと思う。

とは言っても、あいつの性格上…真面目だから無理だろうけど。

そりゃあ、取れるモノをワザと外す事に何の意味も無いからな…楓の場合、それがメリットになるはずなのに、あえてしない所を見ると真面目さが仇となっている。いや、良いことなんだろうけど…不憫な奴だ。

「あー、うん…どんまい」

「はぁ~…まったく、肩身が狭いぞ」

まったくさぁ、…もういいや。

てか、妹よ。変な奴らに絡まれたりいじめられたりしたらお兄ちゃんに言えよ。対処はえぐめにしとくし、今じゃあ弁護士や警察加入しておけばあいつ等は嫌でも黙るぞ。そんな事をする奴に、慈悲を与えれば甘えになるからな。

お前は普通だけど、ちょっと変わっているから。それと、しつこいようだがswitch壊すなよ…お前、この前リンゴ片手で潰したんだから……。父ちゃん、あの時澄ましてはいたが懐に手を忍ばせていたの…見逃していなかったからな。

「壊さないし!!……でも、ちゃんと見てるよね。ちゃんと、見てると思う」

「あー?なんだよ、それよりゲームすんじゃねぇのか?」

「するよー。ねぇ、お兄ちゃんは…ずっと一緒だよね?」

「就職するまではな。それまでは何処にも行かねぇよ…でも、俺は一人暮らしより実家暮らしで楽したい」

「お母さんに呆れられるよ…」

やめろ、その憐みの視線は俺に効くぞ…妹よ。

 

 

『次のニュースです。都市開発の影響で森林伐採、神社寺院の取り壊しが多くなってきたことによる抗議が多発し、住民と政府との間で衝突が多くなってきているもよう。

政府から、住民に向け説明会を行う事を検討するとの事です』

 

『先日、栃木県の山中において身元不明の白骨遺体が発見。警察は殺人、事故の両方面から捜査を発表しました。傍には多くのこけしが廃棄されており、場所も人気も無い廃れた神社であることから永らく安置された可能性があるとの事…』

 

日々、ニュースが暗い側面ばかりを取り上げ始めてきている。GATEが現われ、未知なる異世界と繋がりが多くなると同時に、明るい希望はやがてくすんでいき、黒へと染め上げていった。

人が増えれば、それだけ都市や村、人の住める場所も必要になってくる。

自然が無くなりはじめると、そこに住まう生き物や魚、時には歴史を伝える文化財も残せなくなる。それこそ、程よく生きていく必要がある…それが今は、難しくなってきている状況だ。

…そう言えば、俺のかつて住んでいた町も都市開発の失敗で、今や過疎地と成ったんだった。そりゃあ、あの町の土地神様を蔑ろにすれば…そうなるわな。前居た町の神主さんが言っていたが、あそこは特に神が厄介だと言っていたっけ…確か、生前の影響で怨念が強くてそれを収める為に崇め、奉られた口らしい。

菅原道真公パターンだな。

それと…妹が出来たのも、その時期だっけか。

 

「お兄ちゃーん、お風呂湧いたって~」

「おーぅ…」

神主さんは酷く落胆していたな、この土地は終わるって…あれ以来、どうしたんだろうな。

 




あるゲームのネタをちょこちょこ混ぜた環境に居た転生者で、今は引っ越して問題児たちと一緒の学校に通っている感じ。

なんだかんだ、変わっているけど何処にでもいるような奴です。

ちなみに流行りな英霊大量オーダーとかな運命は入れないです。設定複雑と言うか風呂敷デカ過ぎて認識による誤差が酷くなるので。


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エブリデイ学校生活

転生者だって学校生活楽しみたいのですよ、な話。

めちゃくちゃ今どき、ややパリピ?だけど目ざとい感じです。
中身はうっすいですが、お付き合いできれば幸いです。



─転生者の独白─

 

「それではみなさん、良い結果を期待していますよ」

 

そう言い残し、フリーザ先生は教室を後にした。

フリーザ先生が出た後、シンが終わったーと背を伸ばしながらそう声を上げた。俺たちが行っていたのはテスト、フリーザ先生の授業は度々ちょっとの合間を使ってテストを行ってくる。俺たちの学力を図るため、とか言っているが中間や期末テストあたりでも良かったと思うが…先生なりにも、考えがあるのだろう。

どうせ、俺以外は満点だろうけど。

「先生の授業って、結構テストあるからよりやらなきゃってなるんだよなー…」

「そうですわね、私としては常に満点を取っていきたいですわ。失望されては私、死んでしまいますもの」

「ムム、それはよろしくないぞ岩崎。死んでしまっては、それこそ価値なしとして先生に見向きもされんからな!」

「それもそうですわね」

委員長、楓の扱いに慣れてるなー…。

「次何の授業だっけ…うえー、体育じゃん。やだなー」

「だったら、早く行きましょう。あの先生時間に厳しいんだから」

俺も体育苦手なんだよな、運動は嫌いじゃないが…好きな時にやりたい、そんな感じだ。…中島のやつあの先生の事苦手意識持っている。まぁ、意図的にあいつを陸上から遠ざけたってのもあるが。

…まぁ、考えても仕方ないか。

 

 

「それじゃあ準備運動から始めるわよー。二人、三人で一組になるようにー」

先生止めてください、ボッチも居るんですよ…。

いや、二人だけに限定していないあたり先生なりの優しさはあるんだろうけど。それにしても、別クラスの奴ら俺らと距離、離れすぎじゃね…そんなヒドス。まぁ、いいけどねそう言う反応なら、俺らも興味ないし。

その為か、変わらずどこのクラスとも組む事なくいつも通りのパターンに入っている。

さぁて、俺も組む相手は…委員長とシン、中島はもう組んでるのか。残るは…ハハ、まさか。

「愚民、組め」

「お前のその行動力ちょっと分けて欲しいわ。…って、止めろ馬鹿俺の背にのっかかるな死ぬ、死ぬぅううう!!!?」

背中の方からみしみしと嫌な音が聞こえているような気がするが、気のせいでありたい。

途中から先生が止めに入らなければコイツに傷害罪が付くところだったぞ。あぶねぇ、いくらなんでもそれは流石に笑えねぇからな。

死にかけた準備運動も終わり、今回の授業内容はバスケットボールになった。おいおい俺の得意分野だよ、やったぜ。

フフン、俺のボールさばきについて…こいつ、速い?

あと、したり顔ムカつくなおい。でも、ムカつく分上手いから反論の隙がねぇ…しかも、イケメンだし。何でこの学校って顔面偏差値高いのさ、生徒会や風紀委員会、はては教師でさえイケメンとか…。

何でさ。

「君、こっち」

不意に声が聞こえたので、ボールを繋げて見るといつの間にかダンクされていたでござる。やべぇ、敵側だったか…って良かった、俺が投げたのは味方だったか…と言うかあの声の主何処だ。おいおい、マジでどこに居るんだ…って影うっす!うっす!!お前どうやったらそんな影薄く出来るんだよ、そんながら空きの所に居ればハッキリ言って目立つと思うぞ!

ハハーン、さてはコイツ…足音すら立てぬ忍者だな。

なあに、NARUTOの忍界に繋がってんだ…そう言った奴も、出ても可笑しくは無いしな。俺は驚かんさ。

 

「顔がうるさいわよ」

 

そんな言葉と共に、白鷺が酷く冷めた顔…俗にいうチベットスナギツネみたいな顔だ。

お前、そんな顔できるんだな…と呟けば、白鷺のやつ、女子がやってはいけない程の酷くめんどくさそうな溜息を吐きやがった。

「あんだと、白鷺!!おめー、なんだよその積極的なタックル、普通はしないんですけどー!?」

「うるさ。別にいいでしょ何事も全力で対応せよ、そう教えられているんだから」

「あーん?お前の力加減マジでゴリ……ナンデモナイデース」

ミシリ、と体育館の床が歪んだ音が聞こえた気がしたので咄嗟に謝罪をする俺は結構いい判断だと思う。まったく、お前沸点引く過ぎんぞ…そんなんじゃあ、男が寄り付かなくなるぜ。

先生を見てみろよ、マジでナイスバディだぞ。男子連中はあの先生に首ったけ…一部、俺たちのクラスは眼中に無さそうって感じだが。なんでお前らあの体目の前にして、平気なツラしてんのさ。

…中島、お前顔が青いぞ。腹でも下したか?

「まったく、Eクラスはうるさいものだな」

なんか、どっかで声が聞こえたしあのムカつくイケメンだ…しかし、それよりも白鷺の態度が気に入らん。

「大体ね、あんたそのボールさばき何。早すぎて気持ち悪いわよ」

「おいおい、これでも中学はインターハイまで行ってんだよ。格だよ格ぅ」

「その反応、小物の類だぞ愚民」

DEVUのお気に召さない反応だと…ちくしょう、これだから生まれついての王者は違うぜ。それと、白鷺こちらの実力にケチ付けないでもらいたいね…何でもかんでもタックルしてボールもぎ取るのは悪くないが、お前のタックルは死傷者出るわ。……もしや、魔法が出来ないのは、全部物理によってるからじゃねぇの?

「へぇ、インターに出ているんだね。通りで上手い訳だ」

その時、先ほどの声の主がそうポツリとつぶやいた。

凄く平凡な容姿な奴だし、影薄い奴…でも、悪い性格ではないと確信した。何せ、ボッチは…良い性格な奴が多いからな、要は大人しく自己主張があまりない奴だけど。コイツ別のクラスかぁ、機会が有れば話してみたい所…、あの場でこっちに回せって言うあたり経験者だしな。

…コイツよく、俺たちを前にして平然としてられるな。周りのやつら、めちゃくちゃ距離取ってるのに。

「聞いているのか!?」

あん、誰だお前。

「いや、お前…結構、話しかけてたぞ」

「えー、そうなん。すまんそん」

未だ顔が青い中島の説明で何か、俺が悪いことをしてしまったようだ。…いや、あの男はどうでもいいんだよ。

中島、お前マジで大丈夫か…いや、大丈夫じゃねぇだろ。

「ふ、まったくこれだから低俗h」

「ちょっと、試合はまだ途中よ。早く持ち場に戻りなさい」

やべ、まだ試合の最中だった。さっさと持ち場に戻ろ。

 

試合再開後、白鷺の攻めでこちらが不利に成ったりするが何とか中島を主軸に、DEVUにも盾になってもらって、ようやくゴール決める場面が多くなって…勝った。中島、DEVU…お前たちの犠牲は無駄にはしないぜ?中島を盾にするのは申し訳なかったけどな。

「はったおすぞ」

「イヤン、恐ーい」

「止めろ」

「アッハイ」

マジな顔止めて、若干目玉赤く充血しているところ見るとマジで怖いから。悪かったよ、でも白鷺ってば結構可愛げあるから役得じゃん。…でも俺はもうちょっと、優しめの子が好きだから…力も弱いくらいが良いんで。

「ちょっとサイテーですわよ」

「さやっち優しいもん。見る目ないなー」

「コイツがムカつくのは今に始まった事じゃないから良いわよ。…負けるのはクソほど癪に障るけど」

「うーむ、白鷺くんちょっと落ち着こうか…」

「至って正常よ、委員長」

正常ちゃうで、白鷺さぁん。いや、待ってバスケットボールって結構固いし潰れにくい素材なんぞ、…何で指がめり込めるんですかねぇ。若干変形しているし、先生もそのボールの様変わりした様子に流石に慌てて止めに入る、やべーよなアレ。同じ女でも、あそこまでやられたら引くわな。

俺も同じ立場だったら止めに入るし、引く。

 

この後何試合かやり、時間もいい所で授業を終え掃除と器具の片づけを行う。その時、あの声の生徒が話しかけてきた。

「…結構仲良いんだね、君達って」

「我が強いから、俺ってば振り回されっぱなしだぜ。…まぁ、嫌いじゃないからな」

「そっか、…って名前言って無かったね。俺は碓井黒子(ウスイクロコ)、俺もバスケやってたんだ」

「おー、やっぱり?俺もそうなんだ、俺の名前は…」

名乗ろうとした時、廻沙流が遮るようにこちらに向かって声を掛けてきた。

「愚民、そろそろ行くぞ。次も移動教室だ、あんまりうかうかしては遅れるぞ」

俺ん所のクラスって離れだから移動教室だとすげーめんどくさい、…と言う事は次の授業は実験室あたりだよな。あそこも遠すぎるだろ…もうちょい、短い距離の授業やって欲しいぜ。

「やべ、そうだった。いこうぜ、碓井」

「あ…うん」

碓井の方はまた別の授業らしく、このまま別れることになった。良いなぁ、適切な移動できる距離のクラスで。

 

あれ、俺ってば名乗ってなくね?

 

 




おまえ、キョン(名前を言わせない、言わないパターン)なのか?

名前は案外適当にはつけてないです…多分、メイビー。

中島の闇案件はまだ先です。ただ…顔が良いってそういう事だよね。


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総理、霊夢見たってさ(参加作品:ドラゴンボール)

霊夢って言葉としては使わないよね。もっぱら東のゲーム主人公の方が有名だし。

全王の立ち位置についての話でもある。

深い意味はないよ、ほんと。そんなもん、な内容だからね…この小説。


 

 

「不思議な事が起きてる、のね」

「…それは、どういった意味でしょうか」

「君の惑星に現れた『門』の事だよ。門が繋ぐ世界は…ありえる話、なのね。例えば、シュレティンガーの猫ちゃん…生きているか、死んでいるか。どちらも開けてみないと解らない事だけど、この門も同じなのね。

どっちを取っても、ありえる話になる。それだけなのね」

「…あまり、分からないのですが」

「そう言うもの、と覚えておけばいいのね。君の目に映ることは過程も結果も、考えてみればあり得る話になる。

目の前で起こる現象はそんなものなのね、だから…気にしすぎても意味ないのね」

 

目の前の現象は嘘か真か、…少なくとも本当の事だろう。

…ふと、思い出す。あの東京オリンピックの出来事を経験し総理の座に就き、いざオリンピックの年となった際に何処か…異世界へと繋がった瞬間を見た際には、腰が抜け椅子から立ち上がれなかったあの日を、思い出した。振り返り考えれば、こうなることはあり得た話…それが、過去として思い出せるくらいになった。

 

そして、目の前に佇む不思議な存在…全王、と呼ばれる神格。

これ以上の情報は開示されていないものの…、それ以上知れば間違いなく俺の正気は失われるだろう。

人間が知ってはいけない情報を見れば、理解できず延々と悩み苦しむ…そうなるくらいなら、ビジネスな関係に留まる方が良い。

「君…朝生(アソウ)くんは、これからどうするのね?」

コテリ、と頭を傾げる。

見た目は可愛らしい印象の人形っぽいが、力はどの世界の神々よりも強い、と『公』が言っていた。勝てる見込みのない戦をするつもりはないが、…主義だけは変えるつもりもない。

神を目の前にしても、だ。

「…俺は国民を守り、陛下に殉ずる。神でもない、ただ…国民と陛下、家族の為にこれからを良くする。それだけだ」

「それでいいのね、私利私欲にかまけたら…消しちゃうとこだったのね」

ニッコリ、と可愛らしげに笑う全王。しかし、その笑みは何処か疑わしいと思える感情を湧かせるほどに、胡散臭かった。それでも、その言葉に偽りはないと見る…勘ではあるが、確かだった。

…どこかで、ぶつりと何かが切れる音がした。

 

「見届けるよ、どんな事が起きても…ぼくは見届ける。それが、ぼくの役目だからね」

 

 

『スリープモード解除…起床五秒前。…4、3、2、1…』

アナウンスと共に、カプセル型の機械がゆっくりと起動し始める。まるでSFジャンルに搭乗しそうな大型の精密機器だ。扉が開き、中には五十代と思わしき男性が一人、仰向けになって寝息を立てていた。男性はゆっくりと目を開け、身体を起こす…ぼんやりとしながらも、小さく口を開く。

「…なんつう夢だ」

起きて早々、忌々しく言葉を零す男性。

悪い夢でも見たかのように彼の顔は青白く冷や汗をかき、服の色がにじむほど背中は湿っていた。

この日本国における現総理大臣、朝生多郎(アソウタロウ)。東京オリンピックの出来事を経験した世代であり、歯に衣着せぬ態度と言葉ながらも、冷静に事を分析し決断が迅速であると評判な政治家として知られている。

忌々しくそのような言葉を零したのは、就寝中の夢にて各国でもごく一部の人間にしか、その存在を明らかにされていない全王を目の当たりにした事が切っ掛けであった。

全王、と呼ばれる存在は…秘匿中の秘匿。

その存在を知ったのは、1998年の長野オリンピックの際に繋がったある異世界からの情報によってだった。その異世界は、この世界の文明…特に、機械文明が発達しており、地球外惑星、生命体、宇宙との交流が進んでいた世界であった。

宇宙の始まりから存在し、永きに渡り生まれ滅んでいった惑星たちの一生を見届けている、と言われている。…そもそも、異世界の宇宙の存在である全王は、この世界の宇宙の支配者に当たるのか?

疑問視する問題だが…支配者であろうとも、なかろうとも…この全王の機嫌一つで、この世界も消え去ってしまうほどの技量持ち。それをわざわざ探りや喧嘩を売る必要性は、皆無であろう。

…要はゴルゴ13のように、探りを入れたら死ぬと思えばいい。

世界を牛耳、支配する存在たちは全王への干渉は皆無であった。我が身可愛さ、それもあるが、…それ以上の得体の知れない未知の恐怖が彼らを蝕んでいっていたのだった。

そんな朝生、何故全王と会い見えたのか…ひとえに、全王の気まぐれにすぎない。

元々、全王は余程の事がない限り一つの惑星、それもその惑星に住まう一個人への接触は皆無に等しい。…しかし、GATEという存在に対し全王は何かしら思う所でもあったのか、夢を通し朝生と短いながらも対談が実現したのだった。しかし、内容は朝生にとっては何とも釈然としないモノ言いで、知っている口ぶりながらも必要以上に喋らない。

ただ、言える事は…気にしすぎるな、それだけである。

単純にそれだけを汲み取ればいいのかもしれないが、朝生は引っ掛かりを覚えた。

しかし、未だGATEの所在が解明できない以上…全王の言葉はある意味魅力的だ。神自身が、それ以上気にしてもしょうがないと言っている…それでも、その言葉には何とも無責任さが伺えられる。

「…霊夢(レイム)なんざ、見るもんじゃねぇな」

ポツリ、と再度零す。

その言葉には、忌々しいと言う思い、困惑、悲痛な思い等が入り混じっていた。

 

 




意味深な感じだが、転生者はこんなことが起きてるなんて知りもせず高校生活エンジョイしてます。

振り回される役目ではありますが。


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ナルシストのペルソナ その1

数話ほど、中島の闇案件を扱います。
今回はちょいと長い、具体的には6千文字…です。

エロいですが、ぎりぎり大丈夫ではという根拠のない自信。これで駄目だったら笑ってください。


『さぁ、委ねて…私はあなたの味方よ』

おぼろげな視界の中、酷く蠱惑的で色気のある声が頭の中に響く。むしろ、ねっとりと絡みつくような声だ。ぞわり…ぞわり…、背筋が痒くなるほどに身体を繊細な手つきで触れられている…。

再び、あの声が響き…絡みつく。

 

『フフフ…あなたの、望むようにしてあげる』

 

『あなたは私のかわいい生徒…。私の、私の…可愛い生徒』

 

下腹部が酷く熱い、おぼろげな視界が段々と鮮明になっていく。

ホテルの一室くらいに、程よい広さ。あの声ばかりに気にし過ぎていたようで、どうやらふかふかのベッドに寝転んでいるらしい。中は暗く、唯一の明かりは傍の備え付けられた照明一つ。自分の身体をよく見ると、服も何も来ていない…それに腕が拘束されている。心臓が高鳴る音を聞きながら…目の前を見れば、明かりに照らされ色白の細い身体と、すらりと伸びる四肢そして、…豊満な胸が視界に映った。

だらり、と長い髪がカーテンのように伸びている。

……女性と思わしき人は、俺の上で跨っている。長い髪から覗く、その表情は、どう見ても陶酔のソレだった。

 

俺は現在進行形で起きている出来事に酷く焦り、そのまま体を起こした。

 

 

─転生者の独白─

 

冒頭、俺はとんでもないエロい夢を見てしまった。

滅茶苦茶どこかで見た事のある女性で、しかも身体つきは酷く情緒を誘う程、整っていた…。あのまま寝ていれば、結構進んだような気がするが…あの時、俺の感情は真逆で、こんな事をしたくないと言う拒絶反応で一杯だった。それに、自分の身体じゃあ、無いと思える。

誰かに入り込んでしまった、そんな感じだった。

…さて、それよりも。

 

「ここ、どこだ?」

 

酷く霧深く、近くのモノでさえまったく見えないほど。

距離感など、一切測れない。

へたり込んでいる地面は固い床のようで、俺が着ているのは学生服。記憶によればこの日の全ての授業は終わっているようで、今の時間帯は放課後と仮定する。何で、俺はこんな場所に居るんだ…もしかして、飛ばされたのか?

考えても仕方ない、ともかくこのままジッとしても始まらないし。

周囲に注意しながら、俺は深い霧の中を歩くことにした。

 

…しばらく進んではみたものの一向に開けない視界、変わらず地面は固いまま。

途中、ナニカの置物に足先が当たった。しゃがみ触れてみると陸上で使われる障害物が、乱雑に倒れていた…少し目を凝らせば、幾つか同じやつが倒れている。…なんだ、此処って陸上のフィールみたいなところだろうか。地面に気をつけながら、足を動かす…すでに俺の心臓は、バクバクと脈打っている。

この得体の知れない場所を早く抜け出さないと、そう言った気持ちで一杯であった。

 

どれくらい歩き続けたのか、時間も分からない中…俺は歩き続ける。

幸い、霧の濃度も薄まりつつある。ぼやけてはいるが、先にどのようなものがあるかある程度分かる事が出来た。やはり、ここは陸上競技で使われるフィールドで、俺はその中に居るようだった。

何で、陸上競技…なんだろうか。

そうこうしていると、目の前にデカい空洞が現れた。よく競技選手が出入りする入場口だろうか、そのような奴に似ており先には長い廊下が続いている。その中に恐る恐る足を踏み入れ、周囲を気にしながら…また、歩き続けた。

歩き続けて感覚がマヒしているのか、異様に長い…ようやく曲がり角に差し掛かった時、足音が聞こえたが…直ぐに遠くへ行ってしまったかのように消えた。

角から様子を見ると、壁にもたれかかった中島を見つけた。

「中島!」

すぐさま駆け寄り、中島の様子を見る。…息が荒く、蒼白した顔。

衣服は乱れ、ベルトも外れている。頬には誰かと争ったのか、軽い殴打の痕が見られる。

「中島、中島!俺が分かるか?」

「……う、あ…おまえ、なんで」

「お前、何があった?」

「……わか、らない。気付けば、ここに寝転がされ…それで、あの…いや、化け物に喰われかけた」

「…ここが、どんな場所か分かるか?」

そう問いかければ、腹を抑えながら中島は横に振る。

何か言いかけた気がするが、今は脱出が先のようだな。中島が衣服を整えるのを待っていると、足音が徐々に近づいてきている。手元に武器は無い、中島を見捨てる事も出来ずモダモダとすると…。

「…!なんで、あんたたちが」

足音の正体は、白鷺だった。それの足元には…モルガナが二足歩行で立っていた。それもゲームの時のような姿、頭でっかちの可愛らしいイメージのやつ。…あれ、此処ってまさか誰かのパレスだったりする?陸上関連で俺の知っている奴といえば、…そう言う事なんだろう。

けど、何故か腑に落ちない…。

「おい、白鷺…お前なんでこんな所に居るんだよ」

「モルガナが急に走り出すから、後追って…気が付いたら、こんな場所に居たの。それより、中島くん顔色悪いわよ…ここから、早く出ましょ。さっきから、嫌な予感ばっかりなの」

「おう…中島、ちょっと我慢しろよ」

「…わりぃ」

ぐったりとした中島を背負い、白鷺とモルガナを先頭に俺が来た道を引き返す…はずが、入り口は先程まで開いていたのに、塞がれている。何時の間に、…めちゃくちゃデジャブ感があるが、今は中島を早く外に出さんといけないってのになんつうことしやがる。

闇雲に動いても体力が尽きるだけだ…とりあえず、奥へと進んでいくしかないな。

白鷺とモルガナを先頭に出してしまう事が何とも情けないが…、今の俺と中島は足手まといになっている現状、仕方ない。

「…お前、モルガナだよな。此処って、何なんだ?」

「お前、驚かないんだな。…そうだな、吾輩もここが何なのかはすべて理解していない。だが、ここは人の『ペルソナ』の中であることは理解できる」

「ペルソナ?何だ、ユングの…あー、内なる人格、本性ってやつ?」

「簡単に言えばな。だが、…吾輩もここを出たくてたまらぬ。何もかも全部、食われてしまいそうだ。

そこの男も、その影響だろう…一刻を争うほどにな」

「…待って、誰かいる」

すると、急に白鷺が手を伸ばし静止を促す。何かがこちらに近づいてきているようで俺は何時でも動けるように姿勢を整え、白鷺とモルガナから一歩ほど、後ろへ下がった。中島は相変わらずぐったりとしており、時折呻いている。

カツン、カツンと廊下に響き渡るヒール音。薄暗い空間で、灯りも無いが…ぼんやりと前方に淡い光が現れ、徐々に大きくなっていく。

光は程よい大きさと成り、そこに現れたのは…ふんわりとウェーブな長髪を持った体育教師、鴎女聖子(カモメショウコ)。元オリンピックメダリストで、引退後彼女の教え子たちはみな優秀な成績を残している、と聞いている。暗い話も上がるが、それもかすむほどに他者への指導力が高く、学校はそれを理由に引き込んだのだとか。

何で、鴎女先生がこんな場所に。

「何で生徒が…それより、大丈夫?怪我とかは無い?」

「え、と…中島がさっきからぐったりしていて…」

「そうなの、見せて頂戴。はやく」

見知った大人が居る事への安心からか、俺は鴎女先生の所へ駆け寄ろうとした…。一瞬の怒りを含ませた声に、気が付く事が出来ないほど…俺は、どうやら精神的に参っていたらしい。

しかし、白鷺は怪訝そうな顔で先生を捉えている。腕は震えているが、一向に俺へ静止をかけ続けている…モルガナも、毛先を立たせ威嚇している。二人とも、先生に対して何かを感じ取っていたようだ。

震える声で、白鷺は口を開き…問いかける。

「…誰、ですか」

「どうしたの、白鷺さん?…こんな場所だもの、精神的に錯乱するのは」

「先生は、…私に、優しくありません。前科者である、私には…決してやさしくはしません。…あなたは、誰ですか?」

その言葉を聞いた先生。

すると目の光が消え…口元を上げはじめた。

くつくつと、喉を鳴らし嗤いを耐える鴎女先生。それも長くは続かず、不穏を煽る様な高笑いを上げ…こちらに顔向けた瞬間、先生の顔は酷く歪んでいた。白目は一気に黒へと変色し、瞳は鈍い金色に輝いている。口から覗く鋭い犬歯…まるで、吸血鬼を思わせるほど、鋭い。

ベろり、と長い舌が唇を舐め取る…その仕草は、認めたくはないが酷くそそられる。

「やあね、これだからクソガキは…。さっさとその子を渡せばいいだけなのに」

「…逃げて!あいつの狙いは、中島くんよ!!!」

「気安く私の男を呼ばないで!」

鴎女先生は白鷺の言葉が逆鱗に触れたがごとく荒く声を上げた途端、白鷺へと一気に詰め寄り首を掴み、壁へと勢いよく叩きつけた。硬い材質の壁にクレーターが出来上がり、クレーターからあらゆる方向にヒビが入っている。ガラガラと破片が地面へと流れおち、白鷺も一緒に落ちた。

首元は青白くうっ血し、呼吸が…聞こえない。

「し、白鷺…!」

「サヤコ!」

足がすくんで動かない。

目の前の先生…いや、化け物は何なんだ。

モルガナが何か言っているが、今の俺は目の前の化け物が怖くて仕方がない。逃げようと思っていても、身体が岩のように重たくて動けない。まずいはずなのに、何で俺の身体は動かねぇんだ…!

先生は、恐怖に溺れる俺を見て…うっとりとした顔で舌を這わせる。

蛇に睨まれるカエル、まさにそんな状況だ。もっとも、その蛇は人を丸呑みするほど、たちが悪いが。

「あらあら…、恐かったわねぇ。ごめんなさいね、つい力加減を間違ってしまったわ。うふふ、その顔…可愛いわね。でも、私はその子の女…君は魅力的だけど、私にはその子だけなの」

「激情に身を任せ仮にも教え子に手を出すなど、不届き者めが!!サヤコを手に掛けても飽きたらず、挙句の果てには中島殿を籠絡するつもりか…。貴様は生かしてはおけん、このモルガナ…許さんぞ!!」

「うるさい害獣ねぇ…、殺処分してもらいたいわ。なにも、その子を渡せばあなたたちは見逃してあげると言うのに…」

中島を渡せば助けるだと、クソが…良い気になりやがって。無性にムカムカする…こんな奴の思い通りにしないと、生き残れないって言うのか?泥水を啜る覚悟はあるが、ダチを見捨てるほど…俺は生きたくもないね。

「…うるせぇぞ、くそアマ。誰がダチを見捨てるか、もう…見捨てはしねぇんだ!」

ようやく声を出す事が出来たが、…鴎女は俺たちを汚物と捉え蔑むようにこちらに視線を向け…冷淡な口調で言葉を紡いだ。

白鷺は一向に動かない…。

 

「はぁ…うるさいクソガキだ事。どいつもこいつも、一人前に吠えるだけで、後はとんだふにゃちん。その点、志水は気立ても良いし何より、全部相性が良くて…私の好みなんだもの…志水が居れば何もいらないわぁ。

あなたは知らないでしょうね…彼は可哀想なの、皆彼の才能に嫉妬してあんなことを仕出かす…クズよ。

だから、全てが敵だとしても…私が、私だけが志水の味方」

 

「だってそうでしょ、私は志水に何でもしてあげれられる。陸上を続けたいなら、私が指導してあげて上を取らせてあげる。金銭面でも援助してあげる、男の子だもの…そう言う事だって。

私は、オリンピック選手ですもの」

 

先生は、一呼吸でその言葉を一気に紡ぎ終えた。

俺は先生に見切りが付けた瞬間でもあった。第一、オリンピック選手というのは日々オリンピックに出場権を得る為、出場してもなお結果を残そうと力を蓄え続ける人だ。ハッキリ言って、他の奴…それも高校生の有力候補を支援できるほど、余裕無いはずなんだけどな…。

いや、全面または少し支援する選手もきっと居るかもしれないが…殆どは、余裕は無い。

それに、この女は酷く勘違いしてやがる。そんなに中島が大事なら、話している間にもさっさと俺を殺して、モルガナを吹っ飛ばして奪いにくるだろ。

それをしないでいる辺り…そう言うこと。

「勘違いしてんじゃねぇよ。お前が恋しているのは中島じゃねぇさ…、恋に溺れるお前自身に酔いしれてんだよ…泥酔女が」

「…こんの、クソガキ…キャ!」

すると、いきなり女の目の前に先ほどまで倒れていた筈の白鷺が立ち塞がる。

もはや先生なんてつけるほどの人間ではない…女、鴎女は驚きながらも拳を振るい白鷺をのけようとするが、…白鷺は鴎女の拳を簡単に受け止めた。頭は血だらけで、口元も真っ赤に染め上げぼたり、ぼたり…と血液が床にこぼれ小さな池を幾つも作り出していた。一向に動かない自身の拳に焦りの表情を見せる鴎女、その時…モルガナが動いた。

「吾輩たちが時間を稼ぐ、直ぐさま戦線を離脱しろ!!」

腰に差していたサーベルを抜き、ギラリと先端が光ると同時に鴎女に向け目では追い付けない速さの連撃を入れる。片手を捕られたまま、モルガナの攻撃をモロに受ける鴎女の表情は憤怒に満ち、今にでも爆発しそうだ…いや、あの性格では爆発しているだろう。

モルガナの言う通り、俺は中島と共にその場を離れる。

…俺はまた、見捨てるのか。いや、これは戦術的には良い判断なのだろうな。

 

 

来た道を迷うことなく走り続ける。

……納得がいかない。

足手まとい、それだけで俺たちはあの二人の足枷になっている。

未だ意識が朦朧としている中島でも、今の状況に対し酷く悔しそうであった。

 

不意に、背後から勢いよく頬をかすめる。しかし間を置かず、左足に激痛が走った…あまりの痛さに声が出ず、中島と共にそのまま床へとダイブしてしまった。

「が…アァアア!!!」

激痛で思考が定まらず、悲鳴を上げてしまう。ゆっくりと左足へと視線を向ける。太腿から足首にかけて、びっしりといくつもの長い針が貫通していた。何で、長い針が…そんな事を思うも、痛みで涙と鼻水が同時に出始め、どうにかなりそうだ…痛みが、我慢できない。

それでも我慢しなくちゃ、中島が危ないって言うのに…このままだと、あの女に追いつかれる。

グルグルとめぐる入り混じった感情を押しとどめ呻き声を上げ、這いずりながら中島を引きずり逃げるようにするが…ドサリ、と前方の床に何かが乱暴に放り出された。それは傷だらけで血だらけな白鷺とモルガナであった。…白鷺至っては、もう…駄目なのかもしれなかった。

足がひしゃげ、首元が真っ赤に染め上げている。モルガナの方が、息はあるが…酷く弱りきっている。

「しら、さぎ…モルガナ…?」

…返事がない。

「…あ、あ」

「手こずらせやがって…クソガキ共。さぁ、志水…私の元へ戻ってきて」

「やめ、ろ…ギ、ィいいっぃいい!!!」

突き刺さった針が鴎女の足裏で押され、沈みこんでいく。

「どう、痛いでしょ。そのまま死にかけてちょうだい…」

深く突き刺さる針が幾つもあり、頭がショートしそうなくらいに激痛が長く続いている。俺が呻いている間に、中島へと駆け寄る鴎女…そのまま、志水へと跨り始めた。意識が定まらない中島を良いように弄び、衣服に手をかけ始めた。

中島は何とか阻止しようと、力の定まらない両腕で鴎女を押しのけようとするが…力の差は歴然。

この女、ここでおっぱじめる気かよ…気が狂ってる。

「やめろ…俺は」

「志水、アァ…志水!…一つに、私たちは…!!私のモノに!」

おっぱじめる前からエクスタシーに酔いしれてやがる…くそ、痛い。中島から離れさせないとなのに、痛すぎる…。

 

「ふざけ…るな」

 

中島は、弱々しい声ながらも…冷たい声を発した。息を荒げ、何とか抵抗を続ける中島…その目は徐々に赤く染まっていく。

そう言えば、コイツ…確か…。

 

「俺は、…お前の、玩具、じゃねぇ」

目が紅へと染まる。ぐるり、と円を描くように三つの勾玉が浮き上がり回転する。

 

「俺の、……友達に、なにしやがる。…くそアマ」

三つの勾玉が徐々に溶け合い、一つの形を作り出した。

 

「俺の友達を、傷つけた…なぁ!絶対に、許さねぇ…俺は、お前を殺したい!!」

やがて勾玉は姿を変え、四ツ刃の手裏剣へと変化していった。再度、手裏剣は回転しそして…。

 

「別天神(コトアマツカミ)・アシカビヒコジノカミ」

目の前で、俺は写輪眼…それも、万華鏡へと一気に駆け上がった瞬間を目撃した。

 

 




元ネタらしく、写輪眼もそっち方向で。
ただ、ちょっと能力は違うようにしていきます。

バトル、ではないです。彼らは武道経験者は居れども戦えるかといえば現代っ子で子供、無理に近いです。


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ナルシストのペルソナ その2

続きです。
とりあえずここで異界脱出入りまーす。

一応、鴎女先生も元ネタはあります。
リョナ要素と言うか、えげつない描写あります。無理な方はブラウザバックしてくだしあ。



えげつない描写あり

 

 

「別天神(コトアマツカミ)・アシカビヒコジノカミ」

 

 

中島は両目に写輪眼、それも最強格とされる万華鏡写輪眼を宿らせた。その目をもろに見てしまった鴎女…しかし、彼女はかわらずエクスタシーに酔いしれている。効かないのか…そう思っていると、彼女の左腕が徐々に膨れ上がっている。まるでどんどんと空気が送られていく風船のように膨れ、今にでも破裂しそうだ…そして、パアンと大きな破裂音と共に腕は木端微塵になった。

肉片をまき散らし、鴎女の左腕は無くなっていた。

鴎女自身、何が起きたか分からずぼう然とするも…直ぐに痛みが流れて来たのか、金切り声をあげのた打ち回っている。

中島は鴎女を一蹴りし、後ろへと後退する…真っ赤に染まる両目、中島自身も何が起きたか理解できていなかった。

「は…!白鷺、モルガナ!」

中島は直ぐさま駆け寄るが…二人の様態に酷く狼映えしている。何度も名前で呼びかけるが、…返事が返される事は無い。

「…返事してくれ、二人とも……なぁ、なぁ!」

「中、島…もう、駄目だ。二人は…」

「お前だって!…何で、何で…俺の為に」

何で、そこまでするのか…と言う表情だった。俺も、何でこんな行動するのか…全部は、理解できていない…。

けど、単純な理由だ。

「友達、だからだよ…。すげぇ仲の良い、命を張れるくらいの、な」

俺は本心を、中島へと伝えた。白鷺とモルガナも、俺と同じ気持ちだろう…それこそ、命を張って良い程に。

問題児同士、シンパシーを感じ取っての事だろう。

 

「ドォオオオジイィイテェエエエ!!!」

 

「ジズィイイイイ!!ワダジノモノォオオ、モノナノニィイイ!!!」

 

耳障りで、塞ぎたくなるような大音量の声を上げる鴎女。少し目を逸らしただけなのに、女の身体は酷く醜くなっていた。最初整っていた顔立ちは見る影もなく片目が埋もれるほど肉付きが増し、プロポーションが良かった身体も、これまたにブヨブヨとした贅肉が全面的に主張している。

ほんの一瞬の間に、何があったのか…中島の写輪眼の能力なのか…?

それよりも、俺たちは戦えると言うわけじゃない…いくら写輪眼が開眼した中島が居ても、全員が満身創痍。

このままでは、全滅だ。

 

「おやおや、ずいぶんと様変わりしましたねぇ…鴎女先生」

 

聞き覚えのある声が聞こえたと同時に、一つの光線が背後から突き抜けていった。

後ろを振り向くと、フリーザ先生が指を指し立っていた。何でも様になると言うか、なんというか…ともかく、この状況で先生はかっこよく見えた。男の俺も、惚れそうなくらいに。

余裕がない証拠なんだろうけど。

「せ、せんせ…白鷺、白鷺が…俺の所為で、俺…」

先生の登場によって抑え込んでいた感情が決壊し、涙と鼻水でぐしゃぐしゃな顔を浮かべる中島。フリーザ先生は、情緒不安定な中島を落ちつかせるように目線を合わせゆっくりと語りかける。

…先生なんだよな、フリーザ先生って。

そんな事を思っていると、先生の尻尾が俺をどついた。すいません!!でも、俺は怪我人ですぅう!

「落ち着きなさい中島さん」

「でも、俺の所為で…白鷺が、白鷺が死んで!」

「ゆっくりと、彼女の脈を取りなさい」

恐る恐る白鷺の手首に親指を抑え、脈を図る中島…次第に、中島の表情に驚きと歓喜が浮かぶ。良かった、まだ生きているのか…!!

「彼女たちにコレを飲ませなさい、コレはソーマ…どのような傷でも治す神酒です」

……。

…ソ、ソーマ!?トンデモねぇレアアイテムじゃねぇかよ!!ラスダンあたりのボスくらいしか低確率で落とすか落とさないかのアイテムじゃないか!しかも、実在してるんかい!

何で先生が持っているのさ、それって現代価値に変換すればうん十億はくだらないだろ。

一端の先生が持つほどの物じゃ…。

「君の考えは最もですが、今はそれどころではないでしょう?」

「は…はい」

「白鷺、飲めるか?」

返事がない辺り、身体に力が入っていない様子。それもそうだ、白鷺は俺たち以上にひどく傷ついている…足も完全に別方向に曲がっているくらいだ。これで生きているのが、奇跡に近い。

…むしろ、無理やり生かされているのでは、と勘繰ってしまうほどだ。

すると、中島はいきなりソーマを口に含み白鷺の口を塞ぎ…流し込んだ。口移しに戸惑いねぇな…いや、状況が状況だからだろうけど。…ソーマを口に含んだ瞬間、効果は瞬時に現われた。

あれ程酷かった傷が瞬く間に消えていき…傷も塞がり、呼吸も安定し始めた。モルガナもソーマを口に含むと、瞬く間に傷が癒えていった。

白鷺、モルガナが良くなったことで安堵が先に訪れる。…あの女、鴎女はまだ息が有るのにもかかわらず。

「さて、さっさとここを離れましょうか」

「でも、出口は」

「そんなの、彼女に聞けばいいだけですよ…。ここは彼女の内なる部屋、なのですから」

「はいぃい?」

え、此処って鴎女の精神世界なの?

「厳密には、精神世界ではなく…異界、と呼ばれる異空間です。今までの出来事は、全て現実…幻でもないのですよ。だから、白鷺さんとモルガナさんは一度死にかけている、これも…酷い話ですが現実で起きたのですよ」

 

 

「ペルソナ、とは仮面を意味します。ユングでは表面上の人格を表しますが、元々は自分を偽る為の別の側面としての役割があります。しかし、近年でのペルソナは表の人格ではなく、…本性とされる人格を指す事が多くなってきました。そうした背景の中でこの異界の誕生は人の感情に合わせる様に魔力的要素が合致し、このような空間が生まれ…人を引きずりこんでいるのです」

 

「モルガナさんはどうやら、ペルソナの道先案内人といった所でしょうか…名前の通りに、ね。私も詳しくは存じませんが…彼女は、己に対しコンプレックスでもあるかのようですね…まぁ、正直興味はありません。

私の教え子たちにここまでさせておいて、改心させるなど…私には到底、出来ませんしね」

 

そう言いながら、フリーザ先生は鴎女の元へ行くと足蹴りを彼女の腹部…あの人の事だ、一番えげつない箇所…おそらく、子宮近くに強く入れた。ベキリ、と耳を塞ぎたくなるような痛々しい音を立てた…子宮と骨盤をあの人蹴りで壊したのだろう。続けざま胸倉の肉を潰れるくらいに掴み、顔面を何発も拳を入れ…顔をより変形させる。

そこから、容赦ない嬲りが続いていた。

そんな光景に対しうわぁ…、と声が漏れ出てしまった。スカッとした気持ちも湧くが、それ以上に目も当てられなかった。

当の獲物であった中島は、白鷺とモルガナの介抱に必死である為…彼女には目もくれない。鴎女にとってこれが一番絶望しそうだが、あいつが心から愛していたのは自分自身だしこれくらいは、平気か。

…先生、出口の事ちゃんと聞いてくれるかねぇ。

 

あれから数十分の嬲りを終え、フリーザ先生は俺たちを引き連れ彼女が示した出口へと連れ出してくれた。今まで背負われていた中島はといえば今度は白鷺とモルガナを抱きかかえている…、重くないのか?…コイツ、俺より体重あんのに何で俺背負えたんだろうか…もしや、火事場の馬鹿力?

意外と出るんだな、そう言った人体の神秘。

「俺の方が一番軽症だ、それくらいさせてくれ」

「なら良いが、…いや良くねぇよ。お前目から流血してんのに軽症はねぇだろ」

「まだ見える」

まだ見える、じゃねぇよ!!

何コイツ、頑固すぎィ!

滅茶苦茶頑固、確かに俺は左足が動かせない状況だし先生におぶられているから何とも言えないけど…、一番ヤバいやつじゃん。失明案件じゃねぇか。

「騒ぐのいいですが、そろそろ出口ですよ」

「…おお、やっと……ん?滅茶苦茶人だかりいません?」

「そうですねぇ、合ってはいるんですが」

いったい…眩し!!?目がぁあ、目があぁあ!!おい待てバルスやめろ、何その強いフラッシュ!!ここは洞窟かなんかですか!洞窟で入ってすぐフラッシュたかれるポケモンおよびモブトレーナーの気持ちがほんの少しわかったわ。

「人が出て来たぞ!!怪我人も居る、救護班至急あつまれ!」

「大丈夫ですか!?」

警察および特殊対策と思わしき人達がこぞってこちらへ駆け寄り始めた。え、え、こんな大事なの?

俺らがあの中に居た時、外は一体何が起きたんだよ…。

「…え、何ですこれ?もしや、此処ってマジで陸上競技場や学校だったりします?」

「どうやら錯乱している様だな…無理も無い、ここの競技場で異界が発生したからな」

「…え?どうやって人引っ張ってきたんすか。俺この近くの学校ですけど、…流石に距離有りますよ」

「それは最もだが…今は身体と心を休めなさい。見た所、怪我をしているようだ…そっちの生徒に至っては、重傷だ」

…本職の人間から言われてるじゃねぇか。

やっぱ、さじ加減で言うもんじゃねえと思うんだけど。そう訴えかけるような視線を送るも、あいつガン無視してやがる。

「おい、中島さっきから言ったじゃねぇか!おめぇの方がヤバいって!!」

「まだ見えるって言ってるだろ」

「二人とも、静かにするように」

滅茶苦茶腑に落ちねぇ終わり方で、一日を終えてしまった。

ソーマのおかげで白鷺とモルガナは一命を取り留め、俺の方も歩行には問題なく回復した。問題は中島の方だ、一気に万華鏡写輪眼まで開眼し挙句の果てに使用した…その分、反動で目に負荷が掛かっているらしい。

幸い、今の医療の進歩は俺が居た世界よりも格段に良くなっていたので、数週間くらいすれば回復すると言う。写輪眼だが、普段使いするほどの環境じゃないしその点については、本人任せになった。復学の件はどうやら事情聴取を含め、早くて一週間後くらいになると言われた…。

その分、課題は多く出されたが…まだいい。

俺的には他の奴らに会えないのが結構辛かったりする。

 

…そう言えば、あの女どうなるんだろうか…異界の中にまだ居るし、フリーザ先生にボコボコにされたし。息はありますよ、とフリーザ先生の自己申告だが…今後は、どうなるのやら。

その前に、ちょっと眩しいんで光落してください。

 

 




もしや、転生者余裕だったり?
余裕、ではないです。

中島編はもうちょい続かせたい…まだ他の奴らいるんですけどね。


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ナルシストのペルソナ その3

今回も長い、次あたりで中島の闇案件を締めたい。

転生者の過去もチラリ、と。…マジで全員やれるかな。GATEも絡ませにゃならんし。


深く、暗く…それでいて寒い。

深淵のようで、深海のような…真っ暗な不思議な空間に漂っていた。ただ、目の前に一筋の赤い光がぼんやり、と小さく輝いていた。それを目指すように、上へと夢中になって浮上していこうとする…だが、上がれども上がれども、その光に辿り着けない。手を伸ばし、なんとかその光を掴もうとした時…、ナニカが突き抜けた感覚が起きた。

ようやく、外へと抜け出せた…。

抜け出せたはずなのに…、辺り一面真っ赤な水で埋め尽くされ、水の上には黒く大小無造作に浮かぶ物体、それは…死体。自身の知っている人は誰もおらず、見知らぬ人ばかりなのだが…不思議と、懐かしさがこみ上げてくるような…気味の悪さ。

無残な死体から目を逸らすように、上を見上げた…。

 

空に大きな瞳、それもまるで天文図のように四つ刃の手裏剣を軸に三つの勾玉がグルグルと、廻っている。

 

すると、影が覆い被さった…そこには、俺と同じ姿をし…あの空に浮かぶ瞳を持っていた。いきなり自身が現れた事に驚いたのか、声も出せず口を魚のようにパクパクと、開けたり閉じたりとしてしまった。…ぼたり、と頬に何かが垂れ落ち男の目から、血が涙のように流れ出ている。泣いている、そう見えてしまう程に血を流し続けていた…。ふと口元を見ると、何か言っているが…聞こえない。

そして、自身に似た男の瞳の中に宿る手裏剣の回転を見た瞬間、視界が暗転した。

 

「…霧が深き…愛憎、……ネ…カタ…ス」

 

 

気が付けば全身汗が噴き出たかのように身体中がベタベタした状態で、目が覚める。目に映るのは、あの瞳ではなく…見知った天上であった。あぁ、俺は昨日の内に入院からようやく帰って来たのか…、こうなる前の記憶が浮かび上がっていく。

ズキリ、と両目が軽い痛みが走る。長引かない痛みだった…俺はベッドから降り、洗面台へと直行し鏡を覗いた。

そこには目を真っ赤に染め、あの夢の瞳と同じような模様が浮かび上がっていた。

「俺は…、そうか。“うちは”になったんだな…」

そんな呟きが、無意識のうちにこぼれた。

 

 

─転生者の独白─

 

あの事件から一週間とちょっと、俺…俺たちは学校へと通う事が叶った。

重傷であった白鷺やモルガナも、この日から復学が叶い一緒に授業をしている。モルガナは相変わらず、白鷺の机の中で丸まっている…たまに、先生からの指名で机の中で暴れられるくらいには元気だ。

…問題は、中島だ。鴎女…先生との溝の所為で鴎女先生を慕い、おそらく関係があったとされる生徒に絡まれる羽目になった。とは言え、流石にこの教室に来る馬鹿はいないらしく、ただのやっかみだろう…。

ぼんやりと、小説を読みふける中島を横目に見る。

「そっとしておくのが良い」

DEVU、…澁澤がそう呟いた。俺はどうも気になって仕方ないが、それがかえって本人によくないのだろう。

「…」

「愚民、お前は根っからの善人だ。気になってしまうのは仕方ないが…今は、変わらず接するだけで良い。区切りをつけるのは、俺たちではない…己自身の仕事だ」

「そう言うもんかね」

「どのような形でも、結局は己自身がやらねばならん。どんな状況でも、選択権を他人に押し付けても良いことは無いぞ」

時々、澁澤は俺たちよりもハードな人生を送っているんじゃないかと思う…。金持ちの覚悟、なのかはわからないが…決して人に委ねないぞ、っていう気持ちが強い。何と言うか、それで痛い目に合っているのだろうか…そうだとしたら、澁澤なりの忠告なのだろう。

…しかし、思えばどうやってあの異界へと連れて来られたのか。

全員に、放課後について聞いてみたが特に変わった様子は無かったと聞く。しいて言えば、俺と中島、白鷺は先に家路についた…それが原因なのだろうが、決定打にしては弱い。中島は鴎女と接点どころか重要人物、引きずり込むのは当たり前だ。だが、俺と白鷺はそこまでの関係ではない、白鷺に至っては嫌っている…分からん。情報が少ないと言うか、皆無だ。

俺の場合はただ単に、偶然巻き込まれただけだろう。

…鴎女はどうやってあのような化け物になりえるほどの力を得たんだ?そもそも、そんなニュースは聞いていない、報道すらもされていない。異界発生は小規模ながら、連日発見されたと言う報道されているが…。

 

 

…地面が固い。

俺は身体をおこし、辺りを見わたした…。そこは以前連れて来られた時と同じく、霧深い場所であった。

「な…!?何で…まさか、あの女生きて」

いや、落ち着け。

まだ、あの女…鴎女が作った異界とは限らない。とりあえず、ここに立ち止っても時間が過ぎるだけだ、せめて探索していく方が良い。

周囲に注意し、歩みを進めると…やはり、ここは陸上競技場のようで、地面には陸上で使われる道具が乱雑に置かれている。そう言えば、鴎女は陸上競技の元オリンピック選手だったな。此処は以前、俺の予想では中島の心理描写を表したのかと決めつけていたが…、思えば鴎女だったんだな。

 

歩けども、歩けども霧が晴れない…それどころか、段々濃くなっている。

いったい、ここは前回とどこが違うんだ?陸上競技場であることに間違いはない、変化があるとすれば競技道具の乱雑具合が、激しい事ぐらいか。

歩き続け床に散乱している競技道具も、徐々に酷く散乱していき足場に余裕がない。この散乱具合の変化を見ると、…奥へと近づいているからだろう。けど、何でまた、俺はこんな所に来ているのか。

考えても答えは浮かばない、歩き続ける他ないな…その内、ひらけた場所にぶち当たるだろう。

…噂をすれば何とやら、霧が薄れ競技道具も少なくなってきた。

先の視界がハッキリとした頃、目の前に黒い影…人影が立っていた。鴎女か、…それにしてはデカいし、男っぽい。

もしや…?

 

「…中島?」

 

そう、人影へと呼びかける。

すると、人影は振りかえりこちらを見つめる。中島と酷似した外見ながら…瞳は金色に輝き、白目の部分は黒く染まっていた。

「中島……っ!!」

もう一度呼びかけ、駆け寄ろうとした…ふと、足元を見てしまい声を失う。

足元に転がっていたのは、あの時の原型を失い化け物になった鴎女、と思わしき肉塊。左腕は当然なく、新たな変化として…あの時以上に、ぶくぶくと肉付きが増し、もはや球体に近いほどにまで、膨らんでいた。目は埋もれ、四肢は無くなっており人間のプロポーション等皆無に等しい。

人の手でここまで人…いや、化け物を醜くさせることは可能なのか?

俺は目の前の惨状に、どうしていいか分からずただ、唖然と見つめる他なかった。

この状態にしたのは、中島…仮名を裏中島、だろう。目の前の裏中島はこちらをじっと見つめる以外、どうこうせずにいる…精々怯えている俺に対し、嗤っているくらいか。不謹慎な話だが、顔が良いからか腹立つわぁ…。

「…お前、中島か?」

「…」

「沈黙は肯定とするぜ。…鴎女のその様子だと、お前の写輪眼の能力か。えげつない事するな、どんだけこいつが嫌いなんだよ」

「嫌い、か。あぁ、嫌いだとも…この女も、自分も嫌いで仕方ない」

お、喋るようになった。

しかし、自分が嫌いか。年齢的に多感なのだろうけど、…おそらく自分が行ってきたことに対し呆れと、後悔が混じっているんだろうな。俺は中島をそこまで知ってはいないが、スポーツニュースとかで結構な成績を出していたな。それに、やっぱり高校生の内に九秒台の壁をぶち破ったのが大きい。

その点を踏まえ、コイツの周りは一気に敵に回っただろうよ…なんせ、この時代はまだあの最速の選手はまだ登場していない。

だからこそ、みみっちいことが行われたのだろう。嫉妬という名の悪意による、イジメが…。

その所為で、中島は…あの事故を負ったのだ。同じ陸上部の奴らによる悪辣な傷害事件を。

 

「たった九秒を超えただけだ。それに対して、あいつ等は容赦なく俺を攻撃したよ…当時、俺のコーチの一人として鴎女先生も加わっていたことも、要因だった。あの女は顔も良く、成績のいい男をその容姿で堕落させていたらしい…俺も、まんまと引っ掛かった」

 

「情けない話だ、だからこそ…俺が嫌いだ。

あの女のお気に入りだったことで、あいつ等のいじめは加速…折れたよ。陸上を離れる時も、あの女の力で裏でのことは揉み消され…このクラスへと編入。…けどな、俺はお前を含め、クラスの奴らを好きになったようだ。後ろめたい過去を持っていたとしても、突き放さず馬鹿みたいに接してくれる…お前らを、俺は好きになった」

 

「…だが、俺はそれでも自分が嫌いで仕方ない。

この世界から、消えて無くなりたいほどに…俺は、自分に嫌気がさしちまったよ」

 

中島は一度顔を伏せると、直ぐに顔を上げ…こちらを見た。

あの金色だった目は、瞬時に紅色の写輪眼へと変化していた。四つ刃の手裏剣、俺が知っているその写輪眼は、おそらく幻術最恐の能力。といっても、原作をそこまで深く知らない…だが、そんな能力だったな。

「俺は、確実に負けるぜ?」

「負けてくれ。死んでくれ。…お前のその視界に映る、俺が何よりも…大っ嫌いだからな!!」

滅茶苦茶酷い言い訳だな、おい。

てか、コレってマジでまずいパターンじゃん。…鬼ごっこだとしても、コイツ…離れていたとは言え、陸上部。

 

フフフ、死んだな!!(絶望)

 

 

 

競技道具が散乱した陸上競技場。

とくにトラックの箇所は酷く散乱しているが、俺に掛かれば屁でもねぇ。スタートダッシュ時のあの瞬発力、流石に死を悟ったが…運よく目先は酷く散乱していた為空いた隙間の的確に足を踏み込めた。おかげで、あいつの序盤の加速を崩せることに成功、尚且つ散乱している道具を蹴飛ばし中島の妨害を怠らなかった。

流石に当たれば痛い様なので中島は、必ず避けた。避ける事で一瞬の隙が出来る、その分距離を縮ませる事が出来た。

俺たちはそれを繰り返し、トラック周辺を走り回っている。

そろそろ、妨害に仕える道具が心もとなくなってきた。いや、道具は大切に扱うべきなんだけど…状況的に、無理。

「うぉおおおおおっ!!!いくら走り特化でもぉお、俺の年季の入った鬼ごっこ技術には付いてこれまい、バーーーカッ!」

「くっそ…お前、どういった…」

いくら走り屋でもな、体力は必ずある…それも短距離なら、尚更だ。

走り続ける俺の背後から、低く冷たい声が聞こえる。

「…俺を、本当の中島と思っているのか?おめでたいな」

「いいや、お前は…ペルソナ。内なる本性だよ、それに俺はお前を殺せねぇさ」

目の前にあの時の入場口が見える。…しかし、近づけどもその先は深淵のように、真っ暗であった。俺はその光景を見た瞬間、まずいという一言がよぎった…良くない、これは良くない、と。

ギリギリまで近づき方向転換で、あの裏中島を入場口に叩き込めるだろう…。

だが、それでは中島が…死んでしまうのではという思いがあった。

 

どうする?

 

どうすれば…、どうすればいい。

 

「そら、目の前は真っ暗闇だぞ…?近くなってきたな」

「…」

近づいて来る。深淵が、暗闇が、…近づいて来る。

目の前の入場口の先で、誰か…ナニカの視線が、俺たちへと集中する。幻聴か、おいで…おいで、と言っているような気がした。いや、幻聴だ…目の前には、真っ暗異空間しかないだろうから。

だが、近づいて行くたびに…精神が削られるほどに、寒い。息切れが今以上に激しくなってきた。

「…中島」

「は?ふざけ…何だあれは、……おい、止めろ。まて、行くな…止まれ!!」

あと一歩のところ、入場口へと踏み込まずでグイッと背後に引っ張られた。裏中島が、俺の腕を掴み…急停止させた。足先が、入場口に触れていたが…俺はそのまま、裏中島へと倒れ込んでしまった。

後ろから、カエルが潰れたような悲鳴が聞こえたが…俺は、目の前の入場口に違和感を覚えていた。

いや、この空間自体が…異常なのだと言う事に。

俺の下敷きになっている裏中島から離れ、…問いかけた。

「…お前、ここの異界の主なのか?」

「違う、ここは変わらずこの鴎女のもんだ。…だが、アレは知らない…何だか、懐かしい…いや、違う気持ち悪い。気持ち悪いんだ…だが、俺が求めていた…求めていた場所だった」

どういうことだ?

いったい、何が…。…ナニカ、聞こえる上に、嫌な予感がする…!ゆっくりと振り返ると、そこには。

 

「ァァ…アアアア、ジ、ジジズィイイ、ジズイイィイイ!!」

 

俺たちの背後から耳障りで気持ち悪く…寒気を覚えるような声を上げ、こちらに迫ってくる鴎女の姿があった。四肢すらなくなっていた筈なのに、いつの間にか腕を四本生やし勢いよくこちらに近づいて来る。

まずい、このままでは裏中島が…!

考える間もなく迫る鴎女に咄嗟に俺は中島の腕を掴み、横へと跳んだ。着地が上手くいかず、そのまま二人で勢いよく地面へと叩きつけられた。

すげぇ痛い…。

勢いが良いのか、鴎女はそのまま入場口へとダイブしてしまった…呑み込まれるように、吸い込まれるように。入場口からあの声が聞こえるが、一向に此方に来る様子は無い…それどころか断末魔のような悲鳴が聞こえ、それっきり…静かになった。

…しばらく、沈黙が続く。

それを終わらすように、俺は口を開いた。震えている、俺は怖いと思っていた…この状況に、あの入場口に。裏中島なんか目じゃない程に、あれらに対し…俺は心から、恐いと実感している。

「なんだよ…一体、何が起きているんだ?」

「…分からない…。…そろそろ、異界が崩れる。戻れ、お前は此処に長居するな」

「おい、お前は…!」

「心配するな、俺は…ペルソナ。元の器に戻る、そろそろ夜が明けるからな」

待て待て、今の時間夜なの?今の俺の記憶、マジで最初の時と同じなんだけどぉ!!?しかも夜明けだと、じゃあ…俺ってば一人でこんな所まで飛ばされ…おい待て、視界がかすんでいく…んだが。

おい、ちょっと、ま……。

 

すやぁ…。

 




中島が顔と成績が良いばかりに、いろんな方面で敵と味方を作っちゃった感じです。
特に鴎女先生が地雷だったパターン。

まぁ、当の鴎女先生は落ちちゃいましたけどね。


転生者の過去も明かしていくつもりです。


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