新約 仮面ライダーGHOST (放仮ごdz)
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プロローグ

ちょっと実験的な試みとして投稿。三年前からコツコツ書いてた、ダブルと世界観を共有している仮面ライダーゴーストの話。人気が出たら続くかも?


 九月某日、東京某所。その一角にある銀行にて、少女は銀行強盗に巻き込まれて床にしゃがみ込んでいた。

 

 

(何時にもまして不幸だ。なんで、よりにもよってこの日にこんな目に遭うのかな私は!)

 

 

 高校生であるその少女。本日は月に一度の親からの仕送りがある日であり、ちょうど金欠で困っていたため最速でやってきたところにこれだ。とある体質により常人より不幸であると自負している少女にとっても、最低最悪な不幸なのは間違いなかった。

 

 

「おいてめえら!少しでも動いたら容赦しねえぞ!」

 

(何で日本なのに悪党が普通に銃を持っているのか!)

 

 

 不恰好な拳銃を手に脅してくる強盗の一人に、心の中で悪態を吐く少女。無抵抗なら何もされないだろうと全力で無力な一般市民を演じる。まだしたいことが山ほどあるのだ、死んでられない。

だがしかし、視界に映ったとあるモノを見た事で思考が冷静になり、少女はとにかく状況判断をする事にした。

 

 

(えっと・・・強盗達の持っているのは多分、3Dプリンター?で作った銃。確か漫画だと威力は本物と同じだったはず・・・で、人数は入って来た時と同じ五人でみんなフードを被って仮面を被っているから顔は分からない・・・あれ?)

ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!

 

 

 ちらちらと横目で確認していると、おかしなことに気付いた。強盗犯が増えているのだ。黒づくめのお揃いのパーカーでフードを被り、統一感の無いお面を付けていてその手に銃を・・・そこで気付く、先程見えた“アレ”が居た、空中に一人出現したのだと。

 

 

「え?あれ?」

 

「どうした、五月蠅いぞ!」

 

 

 思わず小声で呟いてしまい、すぐ傍の強盗に聞きとがめられたのか銃口を向けられてしまうが少女はそれどころではなかった。

 フードを被っているその顔は他の強盗と違ってすっぽり顔を覆ったオレンジ色で縁取られた顔の様な一本角が額に付いてる仮面に隠れていて、よく見ればフードの淵にオレンジ色のラインが見え、開いた胸元にはでっかい単眼が刻まれている。腰にはでっかいバックルの着いたベルトを巻いていて、全体的には警察の機動隊の装甲服が上着だけパーカーを着ている様な格好だ。そして妙に透けていて、ぼんやり仮面が光っている姿が不気味で・・・まるで、

 

 

(まさか、アレも幽霊!?)

 

 

 ふわふわ浮かんでいた謎の男は、騒いでいるこちらに気付くのか視線を向けると、何も感情を感じない黒い複眼でこちらを見続けると、バックルの前に手をやりそこから大型の剣を取り出した。驚きで固まってしまった少女に銃の引き金が引かれそうになったその時、仮面の男はフードに手をかけて、取っ払う。

 

 

「脅すだけなら見逃そうと思ったけどさ、それ以上は駄目だろ。人の命を何だと思ってるんだ」

 

「な、なああ!?」

 

 

 ただフードを外した、それだけなのに驚く強盗達。否、少女の他の人質達も驚いていた。そこで気付いた、どういう原理かは知らないが、フードを被っている時だけ見えない(・・・・)のだと。そして理解した。むしろ、さっきまで見えていた自分が異常なのだと。

 

 

「・・・やっぱり、不幸だ」

 

「テメエ!何時からそこに?!」

 

「やっちまえ!」

 

 

 銃弾の雨が謎の男を狙い、男はふわりと浮かんで回避。着地すると浮遊しながら突進し、剣の腹で手近の強盗を殴りつけた。

 

 

「まずは一人。命だけは取らないから安心しろ。俺は『カルマ』以外は殺さない。でも、人の命を奪おうとする奴には容赦しないぞ」

 

「カルマだあ?行け、お前等!殺せ!」

 

 

 剣を突きつけられたリーダー格だろう男の一声で一斉に銃を乱射する部下三人。しかし謎の男は浮遊して回避、避けきれない銃弾は剣で切り払って行く。そのまま傍にあった椅子を蹴り飛ばしてシャッターの閉まっている窓に大穴を開けると、状況について行けず茫然としていた人質達に向けて、出口を指差した。

 

 

「こいつ等は俺が引き受けるからみんな、逃げてくれ」

 

「なっ・・・人質を逃がすな!させてたまるか、イカレ野郎!」

 

 

 我先にと逃げ出す人質達を、部下に怒鳴り散らしてそれを阻止しながら銃弾を謎の男の脳天に炸裂させるリーダー格。その場の誰もが、男は死んだ・・・そう直感する。溜め息吐きっぱなしの少女を除いてだが。

 

 

「はあ・・・イカレ野郎だって?それはこっちの台詞だっての!この平和な日本に生まれて何でそう簡単に人の命を奪うって結論に達せるんだ?」

 

「な、何でお前生きて・・・」

 

「何でって。俺、ゴーストだからな」

 

 

 頭部、それもこめかみを弾丸で撃ち抜かれたはずなのに肩を竦めただけの謎の男・・・本人の名乗るところの「ゴースト」は、デフォルトされた髑髏にも見える仮面の文様をぼんやりとオレンジ色に輝かせるとその姿を靄の様に消失。リーダー格は戸惑い、部下たちはとりあえずと逃げようとする人質達に銃口を向け・・・次の瞬間、目の前の床から出てきたゴーストに部下の一人が正拳で殴り飛ばされ、続けてその手に握られた剣を変形させ大型の銃にしたゴーストが発砲。

 

 

「必死に生きようとしている人達に銃口を向けてんな。撃っていいのは撃たれる覚悟を持つ奴だけだって言うぜ」

 

「ヒギャッ!?」

 

「テメエらどいてろ!・・・まさかこんな、活動資金を得るためのはした銀行強盗で使うとは思わなかったが・・・仮面ライダーが出張って来たなら仕方ねえ」

 

「仮面ライダー?なんだそりゃ?」

 

 

 眼前の床を撃ち抜かれて完全に及び腰の部下を蹴り飛ばし、ゴーストの前に進み出たリーダー格の男は怒りを顔ににじませながら懐から大型のUSBメモリの様な物を取り出しボタンを押した。

 

 

≪OCTOPUS!≫

 

「知らねえとは言わせねえぞ!わざわざ風都まで赴いて購入したこのメモリの力で、テメエを捻り潰してやるぜ!」

 

 

 すると額に現れた妙な文様にメモリを端子部分から突き刺し、それが文様に吸い込まれてリーダー格の姿が変わる。全身赤い大男で、タコツボを模した肩当てと胴体、触手が顎鬚のように伸びたタコを模した顔の怪物だ。

 

 

「カルマじゃないな?なら相手したくないが、しょうがない」

 

「うおおおおおおお!」

 

 

 両手足と触手を含めた八本の連打がゴーストを襲うが、その猛ラッシュはゴーストを透過しており、ダメージを与えることはなかった。そのままゴーストは無気力に銃を剣に戻して鍔部分を腰のバックルにかざした。

 

 

≪ダイカイガン!!≫≪ガンガンミナー!ガンガンミナー!≫

 

 

 その瞬間、ベルトがやかましい音声を響かせて周囲が動揺する中、ゴーストは意に介さず剣のトリガーを押し込んで両手で縦に振り上げた。

 

 

≪オメガブレイク!!≫

「ぐっ…アァアアアアアア!?」

 

 

 タコの怪人が触手を一斉に伸ばして妨害しようとするがやはりすり抜け、振り下ろされた大剣に一刀両断されて爆散。男は元の姿に戻り、額から出て来たUSBメモリが≪オクトパス!≫と鳴ってから砕け散った。

 

 

「……これで観念してくれるか?」

 

「ひ、ひいいいい!ボスがやられた…こ、降参だあ!」

 

 

 無感情な仮面は首を傾げ、残りの強盗達は降参。銀行員が警察に通報する中でもゴーストは残り続け、警察が乗り込んでくるとフードを被って霞む様に姿を消して去って行った。…人助けする幽霊って、いるんだな。そう思って見続けていると、自分が消えた後の様子を見守っていた幽霊の男は視線に気付くと慌てて今度こそその場を去って行った。

 

幽霊が見える体質、不幸だと思い続けていたがそうでもないらしい。そう考えながら私、結城鴒(ゆうきれい)は帰路に着くのであった。

 




・基本設定
期限は49日。108体のカルマを倒し、英雄眼魂を集めてカルマを撲滅するのが目的。理不尽に遭っても理不尽に命を奪われる他者を救う孤独なヒーロー。
主人公は偶然、爆発に巻き込まれ浮遊霊となり、カルマの犯行現場を目撃。直後に迎えに来たエクスストリーマー(案内人)によりカルマの存在を知り、命の冒涜をさせないために契約。ゴーストの力を得る。
主人公は普段は物に触れることが出来ないが、変身することで現世に接触できるようになり、幽霊のごとく壁や床から現れて謎の怪物を倒して颯爽と去って行く謎のヒーロー「ゴースト」として世間に知られることに。
ヒロインは幽霊を見ることが出来る少女。
ネクロムがカルマたちの元締めにして死霊術師。エクストリーマーは主人公の「案内人」にして、■■■■。

・カルマ
今回は未登場。英雄眼魂を取り込むことで自らのカルマが怪人型の生霊として幽体離脱した人間たちの総称。煩悩の数を「ネクロ」と呼ばれる男が英雄たちの魂を降霊して生み出した。全てのパーカーゴーストを具現化して英雄たちの魂を得ることがネクロの目的であり、そのためにはどうしようもない人間の業が必要で、英雄たちのそれと同一の業を持つ人間が使うことで具現化、カルマが人の魂を得ることでその力を維持することが出来るが長くは持たず、持ち主が自らの業を維持するために他者の魂を刈り取ることを目的とする。自らの業のためなら他者の死も厭わない、冒涜的で自己中な連中。英雄と呼ばれる域の業を得た狂人たち。
由来は「(カルマ)」と怪人「スカル魔」。スケルトン+一つ目の意匠、そしてパーカーゴーストが特徴。倒すことで眼魂を得ることが出来る。

こんな感じの設定で全く新しい仮面ライダーゴーストを描こうという試みでした。お気に召したなら感想などいただけると嬉しいです。


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第一話:開眼、俺がゴースト

どうも、放仮ごです。前回投稿した時点で途中まで続きが出来てたんで投稿します。


 俺の人生は、何も無かった。普通に進学して、でも些細な事から休学して。そのままなし崩し的に中学を卒業。高校も一度は第三希望でギリギリ受かった農業高校にしぶしぶ通ってみたものの、喧嘩沙汰になり停学して一年を無駄に過ごしたのちに転向して通信科に通い、それでもろくに授業を受けなかったため単位が足りずに一年も留年して二十歳になって・・・俺の青春は、始まらずに終わった。友人?もちろんいない。最初の高校で1人だけできたが、突然俺が停学したため音信不通だ。

 

 やっと卒業した時それに気付いて、泣いた。糞みたいな人生だ。ここまで育ててくれた両親や、できのいい四つ下の妹に顔向けできない。

 

 思えば小学生低学年の時には親戚の葬式に遠出した際に高速道路で家族ともども事故に巻き込まれたし、小学高学年では調子に乗って自転車で坂道を駆け下りてブレーキが効かずに電柱に激突して宙を舞って全身血塗れと言う大怪我を負った。車の事故は真ん中に居て大した怪我はしなかったし、電柱はむしろ激突してなかったらそのまま十字路の道路に飛び出していたのだから幸運だった。

 それでも死ななかった自分を、俺は「漫画やアニメの主人公みたいだ」と過信していたのだろう。その結果がこれだ。人間不信に陥った、最底辺のクズだ。

 

 そうだ、俺は主人公に憧れた。あんな青春を送ってみたかったし、友人をいっぱい作りたかった。そんな事を思いつつ、驕った結果がこれだ。もう高校生も終わったんだから素直に平凡な日常を送り、今すぐにでもニートを脱却するしかない。

 

 そんな俺が、バイトを見付けるために外に出た結果。死んだ。何か爆発に巻き込まれて、よく分からずに死んだ。20歳になり一週間後。高校を卒業した翌日であった。機械音痴がアイス工場で働こうとか思ったのが駄目だったのか。

 

 

 

 

 さて、前置きが長くて悪いが、そうだ。俺は死んだはずだ。なのに何故か、俺はこうして己の人生を振り返り、歴史全振りだった頭で今の状況について考えている。そして、都会のど真ん中の歩道で熟考中だと言うのに、他の人間は俺の体をすり抜いて行くのに気付いた様子は一切ない。あと、何か変なのが視界をよぎって行く。ふむ。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・どうやら俺は、幽霊になったらしい。

 

 

 

 

 心残りと言えば俺が死んだ後に家族がどうしてるかぐらいだが、できれば知りたくないのが本音だ。あとここはどこだ。看板を見るに東京だが俺はバリバリの九州生まれだ。九州から外に出た事なんて某テーマパークに行った幼少時ぐらいのド田舎もんだ。

 

 意識を取り戻したらここだったからどうしようもないが、何で俺はここにいるのだろうか。ところで目の前をふよふよ飛んで行くのはお化けか何かか。

 気になって近くまで行ってみたら、間近でそれを見たら凄く怖かったのと、あと普通に飛べることに気付いた。便利だな。物に触れないからもう物食いできないのだろうが元々無気力に過ごしていたから問題ないな。だが、それだけに何をすればいいか分からない。とりあえず九州に戻って家族の安否を確かめるか・・・・・・・・・いや、このまま飛んで行かないとかもだから却下だな。面倒なのはごめん被る。

 

 

 

 

 

【次のニュースです。昨日の13時、九州の●●県●●市で起きた大規模火災について・・・】

 

 

 

 

 ふと街頭のでっかいモニターを見上げると、俺が死んだ翌日だと分かった。聞き覚えがある地名に、俺が死んだ出来事についてだと思い至り、意識を寄せる。火災?爆発事故じゃないのか?

 

 

【町の中心から離れた廃工場で発生し周囲の家屋に延焼した大規模火災における犠牲者は二十名にも及び、現場からは黒焦げとなった焼死体が発見されました。火元は分かっておらず、遺体のいくつかが先月発生した行方不明者と一致したことから警察は関係性を疑っているとのことです・・・】

 

 

 廃工場。確か、俺が死ぬ直前で見たのがそこだった。通りかかったと言うのが正しいか。だがその爆発が火元となるとおかしい。火元が不明?じゃあ俺が巻き込まれた爆発は何なんだって事になる。そう、街の上空でふよふよと浮遊しつつ腕を組んで考え込んでいた時だった。

 

 

 

 

「・・・ん?」

 

 

 

 ちらり、と。人ごみの中に不自然な物が見えた。さっきのなんか怖いおばけもどきじゃない。人ごみをかき分けている事から俺みたいな幽霊じゃない事は明らかなのに、誰も気にしていない。違和感を抱いたのは、その格好。

 

 黒づくめのマント姿で、フードの下に群青色の鎖が交差した様な変な文様の丸い仮面を被っている。コスプレイヤーかと思ったがここはアキバではない。都心のど真ん中で違和感しかない姿なのに、俺もジッと観察するまでその事に気付かなかった。何故気付いたかと言われたら、変な既視感を感じたのだ。

 

 

 気になったのでその黒づくめを上空からふよふよと追いかけてみる。黒づくめは何の変哲もないビルに入って行き、外からは見えないので俺もそれに続く。男は空き部屋の三階フロアまで来ると誰も居ないのか確かめたのか辺りを見渡してから鍵を閉めた。一瞬目があった気がしてひやりとしたけどやっぱり見えない様だ。

 

 

「・・・さて、と。ここならばれないだろう」

 

 

 そう言った男が、ばさりとマントを翻すとどういう訳かその下から鎖で縛られた人間が複数現れ、乱雑に床に並べられる。雁字搦めで口元まで縛られているが、どんな手品を使ったのか明らかにマントの面積以上の数、五人もいた。そして驚くべきことに・・・縛られている人達の顔は、先程マントの男がぶつかった人間達だ。あの一瞬で捕えたと言う事なのだろう。どういう手品だ。

 

 

「さてさて皆様、稀代の魔術師であるわたくしめの脱出ショーは如何だったかな?お楽しみいただけたなら結構、ではお代として君達の魂をいただこう」

 

「んん~っ!」

 

「そうかそうか、嬉しいか。そうだろうそうだろう、この稀代の魔術師フーディーニに魂を献上するのだからね。光栄だろう?」

 

「んんん~っ!!」

 

 

 フーディーニだと?ハリー・フーディーニ、かつてアメリカ合衆国で名を馳せた天才マジシャンの名だ。間違ってもこんな変なマントの上からパーカーを被ってるような仮面野郎では断じてない。フーディーニと名乗った謎の男がまるで骸骨の様な右手を伸ばして目の前の女子高生の頭に触れると、何か青く光るものが吸い込まれて行き、少女は白目をむいて倒れる。息をしてない、既にこと切れていた。

 

 

「ごちそうさま。んん、お代としては質の悪い魂だな。口直しといこうか」

 

「んんん~っ!?」

 

 

 そう言って次のサラリーマンに手を伸ばす怪人。見ればマントの下はまるで骸骨の様な姿だった。人間じゃ、ないのか?どちらかというと俺みたいな幽霊の様な……これでも特撮ヒーローに憧れた身だ。見て見ぬふりなどできない、例え無駄だろうと、呪うことぐらいは…!

 

 

「ウオォオオオオッ!」

 

「ふむ。うるさいね、キミ。観客じゃないものは黙って出て行ってくれたまえ」

 

 

 背後から拳を振るおうと突撃、するもフーディーニは突如首をグルンと180度回してこちらに視線を向けてきて、明らかに俺の存在を視認していることに気付いた時には、マントの下から伸びた鎖が凄い勢いで炸裂し、俺は吹き飛ばされてしまう。ク、ソ……意識が遠のく…幽霊でも、気絶するんだな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、起きたかい?」

 

「!?」

 

 

 目を覚ますと、謎の男の整った顔がドアップで目の前にあって。咄嗟に突き飛ばそうとするもひらりと避けられる。黒いローブに眼球を模った杖、フードを被った胡散臭いイケメンがそこにいた。

 

 

「お前…誰だ?ここは…」

 

「ここは…うーん、名前はないんだが不便だからね。辺獄(リンボ)とでも呼ぼうか。そして私はエクストリーマー。君の()き先案内人だ」

 

「案内人…つまり、ここは死後の世界ってことか?」

 

「そうなるね。君の魂は寿命を迎えるより早く、不慮の事故に遭ってここに至らず彷徨っていた。それを私が回収したわけだ」

 

「それは…ありがとうございます?」

 

「礼を言えるのは大事だね」

 

 

 そうケラケラと笑っていたエクストリーマーが、真面目な顔となる。なんだろうか、転生でもさせてくれるのだろうか。

 

 

「さて本題に入ろう。君が遭遇した怪人の名はカルマ。奴等は魂を薪に自らの業を燃やす生霊だ」

 

「カルマ…?生霊、だから幽霊の俺を知覚できたのか…」

 

「本来ここに導かれるべき魂を喰らってしまうカルマとそれを牛耳るネクロという男には我々も手を焼いていてね。何せ英雄・偉人の業を身に纏い生まれる性質上、本体さえ残っていれば何度でも再誕してしまう厄介さを兼ね備えている」

 

「はあ……なら本体を殺せばいいのでは?」

 

「そうもいかないんだ。なにせ我々は魂の管理者、勝手に殺してしまうことはご法度だ。そこで白羽の矢が立ったのが君なんだ」

 

「俺?」

 

 

 ただの特撮オタクなだけの人間のクズなんだが?

 

 

「君は特殊な魂だ。本来なら死んですぐここで守られるはずのか弱い魂が、数日とはいえ現世を彷徨ったことでその魂は強靭となった。その魂なら、英雄たちの業を眼魂(アイコン)として回収することが可能なんだ」

 

「眼魂?」

 

「これさ」

 

 

 そう言ってエクストリーマーが取り出したのは目玉の様な球状の物体。真っ白で、澄んだ瞳をしていた。

 

 

「これはゴースト眼魂。その、ブランク体だ。中身がない。我々はカルマから英雄たちの業を回収して倒すことができる装置、ゴーストドライバーを作り出したのだが生憎とその性質上、人間の魂しか使用できなくてね。だが他の魂だと英雄たちの業を受け止めきれなくて破裂してしまう。だが君なら使いこなせるはずなんだ」

 

「……眼魂にゴーストドライバーね」

 

「君の魂をこのゴースト眼魂に封入しゴーストドライバーで「変身」することで君は現実に干渉できるようになる。その力で、全てのカルマを倒して108つある眼魂を全て回収してほしい。…四十九日で」

 

「なんて?」

 

「四十九日で」

 

 

 108体を四十九日で?無茶を言うなこの野郎。

 

 

「君の魂を維持できるのは眼魂に入れてから四十九日が限界なんだ。それ以上を越えると成仏してしまう」

 

「俺の死後四十九日を、カルマを殲滅するためだけに使えと?」

 

「そうなるね。君がこの眼魂のスイッチを押せば契約はなされる。死後の世界は幸福な生活を送れると保障…」

 

「本当か?」

 

「…なんでだい?」

 

「リンボってのは辺獄。つまり洗礼を受けていない者が堕ちる地獄のような場所だ。天国でもなんでもない。そう表現したってことは…四十九日後俺に待ち受けるのはさしずめ「無」だ。そうだろう?」

 

「…博識だね、君は」

 

 

 これでも某英霊を呼び出すスマホゲームとかやってるんだ。そういう言葉も知っていた。だが、それでも。何者にもなれなかった、クズの俺に死後与えられた役割としては上等だ。

 

 

「いいよ、やってやる。そのカルマって奴等はあのフーディーニみたいに罪もない人間を殺して回ってるんだろ?それを俺なんかの魂を使って止められるって言うなら」

 

「人知れず戦い、感謝もされないかもしれないよ?」

 

「俺にとって重要なのは、俺が誇れる俺になる事だ」

 

 

 そう言って、ゴーストドライバーを握るとその使い方が頭に流れてきて。大きなバックルの様なそれを腰に装着してベルトにして、ブランク体のゴースト眼魂を手に取りスイッチを入れると「G」の刻印が刻まれる。それは俺の魂が封入されたことを指していて、カバーを開いたバックルの中に装填してカバーを閉じると不思議な声が鳴り響き、ゴーストドライバーから何かが出てくる。

 

 

≪アーイ!≫≪バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!≫

 

 

妙な待機音に合せて踊るそれは、フーディーニのパーカーによく似た、黒とオレンジで彩られ顔の部分に眼の様な光だけがパーカーの様なナニカだった。

 

 

「…なんだこれ?」

 

「作った者の趣味さ。ちなみにそれはパーカーゴーストだ」

 

「いい趣味してんな」

 

 

 妙な待機音と踊り狂うパーカーゴーストに首を傾げながら、ドライバーを押し込む。憧れたあのセリフを言うことも忘れずに。

 

 

「変身!」

 

≪カイガン!オレ!≫

 

 

 そして俺の身体は光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

≪レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!≫

 

 

 そんな音声が鳴り響き、フーディーニカルマは何事かとゆっくりと振り返る。その暗がりにいたのはオレンジ色の髑髏を模った輝く顔。オレンジ色以外は黒ずくめでマッシブなボディで一本角が目立ち、自らとよく似たパーカーを羽織っている姿に別のカルマかと思ったフーディーニは笑いかける。

 

 

「ふむ、お仲間か。だがこれは私の戦利品だ。別の獲物を……!?」

 

 

 殴られた。ふわりと浮かび、直立姿勢のままスーッとスライドしてきたそれに顔面を殴り飛ばされたフーディーニは顔を押さえて悶え叫ぶ。

 

 

「いきなり何を…!?」

 

「俺はカルマじゃない。…ただのゴーストだ」

 

 

 そう言ってフードを下ろすとようやく人間たちが認識したのかくぐもった悲鳴が上がる。フーディーニカルマはゴーストと名乗ったそれを敵だと判断して両手に鎖を展開し、投擲するもフードを被ったゴーストの身体を擦り抜けてしまい、その青いフードの下の単眼をひん剥くことになった。

 

 

「覚悟しろ」

 

≪ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!≫

 

 

 再びフードを下ろしてバックルのレバーを一回押し込んで印を結ぶゴースト。背後に目玉の様な魔方陣を浮かばせて宙に浮かび、その右足にオレンジ色のエネルギーが集束されていくのを見て逃げようと試みるフーディーニカルマを追うように体勢を変えて飛び蹴りを放つゴースト。

 

 

「でりゃああああああ!」

 

「グアァアアアアア!?」

 

 

 背中から飛び蹴りが炸裂、身に纏っていたフーディーニパーカーゴーストが剥ぎ取られて単眼の骸骨の様なトランジェントと呼ばれる姿になったカルマは爆散。フーディーニパーカーゴーストはゴーストを見て頷くとそのベルト…ゴーストドライバーに煙の様になって吸い込まれて行き、ベルトの中心のモノアイから青く彩られた眼魂が排出され、ゴーストはそれを手に取る。

 

 

「あー、怖がらなくていいですよ?」

 

「あ、ありがとう!」

 

「助かった…!」

 

 

 拘束していた鎖が消滅して解放された人々はゴーストの存在に怯えていたが、口々とお礼を言って去って行く。こうして謎のヒーロー「ゴースト」は世間に少しずつ浸透されることとなるのだが…それは別のお話。




この作品のゴーストと怪人カルマについてよくわかったかなと。お気に召したなら感想などいただけると嬉しいです。


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第二話:剣豪と天才と不幸な少女

どうも、放仮ごです。今回の題名はオーズ風。前回から一週間後の話です。楽しんでいただければ幸いです。


「くそっ、あと一歩だったところを…!」

 

「逃がすか!」

≪カイガン!フーディーニ!マジイイジャン!すげぇマジシャン!≫

 

 

 北海道のとある高原。翼を広げて空を飛び逃げ出すライト兄弟二人分の業を宿したカルマに対し、背中に飛行ユニットを付けた青く魔法使いを彷彿とさせるパーカーを身に着け二本角を生やして鎖が交差したような絵柄の仮面の姿「フーディーニ魂」に変わったゴーストが鎖を飛ばして拘束。そのまま引きずり落として地面に叩き付け、レバーを押し込んで飛び蹴りの体勢で飛び込んだ。

 

 

≪ダイカイガン!フーディーニ!オメガドライブ!≫

 

「でりゃああああ!」

 

 

 そのまま鎖で雁字搦めにしたライトカルマを引き寄せて飛び蹴りを叩き込み、爆散。爆散後から出てきたライト兄弟のパーカーゴースト二体を回収して眼魂を手に入れてオレ魂に戻り、同時にパーカーゴーストフーディーニがマシンフーディーと言う名のバイクに変形してそれに乗り込み先を急ぐゴースト。ゴーストに初変身したあの戦いから一週間。ゴーストは、日本中を駆け巡り既に17個の眼魂を回収していた。

 

 

「フーディーニを始めとして、ニュートンにビリー・ザ・キッドに項羽にニコラ・テスラ、今回はライト兄弟。本当に有名な偉人ばかりだな」

 

 

 エクストリーマーからの情報で、カルマの元締めであるネクロは東京を中心にサブカルチャーに秀でた日本人を利用してカルマを作り出しており、日本中でカルマによる怪事件が起きていることが分かったゴースト。

 最初に手に入れたフーディーニが姿を変えたマシンフーディーによる「瞬間移動マジック」を用いた能力である空間転移で日本中を駆け回り、片っ端から怪事件が起きた場所に急行してカルマを狩ることを繰り返していた。その途中で銀行強盗を行っていたカルマとは異なる怪人ドーパントを倒したりもしたが、カルマだろうがそうでなかろうが人命が関わるならほっとけないのはゴーストの性分だった。

 

 

「…仮面ライダー、ねえ」

 

 

 行く先々で人々を助け、そう呼ばれる様になったゴースト。その名にふさわしいかは置いといて、認められた気がして少し嬉しくなる。この名を大事にしよう、そう思った。すると空を飛んでやってきたのは緑と黒で彩られたコンドルの様なナニカ。それが変形した黒電話「コンドルデンワー」を手に取ったゴーストは、受話器を耳に当てる。

 

 

「もしもし?ああ、エクストリーマーか。アンタが言ってた北海道のカルマは倒したぞ。二つも眼魂を手に入れた」

 

≪「二つ?それは兄弟だったり二人で有名だったりする偉人の眼魂だね。それはラッキーだ。これで17個か。順調じゃないか」≫

 

「一週間で17は順調なのか?まあいい、次は何処だ?」

 

≪「今度は東京で誘拐事件が起きている。二体のカルマ反応が固まってるから注意してくれ」≫

 

「了解。また東京にとんぼ返りか。いい加減にしてほしい所だな」

 

 

 やはりというか東京に多くカルマは現れ、たまに北海道や九州にも現れるためいったりきたりで休まる暇もない。ゴーストはマシンフーディーのハンドルを切って踵を返し、青い光と共にその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が何をしたって言うんですか…」

 

 

 勉強途中で飲み物を買いに出かけた私。先日銀行強盗に遭ったばかりだというのに、今度は誘拐されて廃屋で拘束されてしまった。目の前には、二人の男女。一人は静電気で逆立った白髪赤眼でだぶだぶの白衣を着た少女で狂ったようにパソコンのキーボードに何やら打ち込んでいて、もう一人は着流しを着て長短二つの木刀を手にした初老の男性。二人とも左手に何か目玉の様な装飾がついた腕輪を付けているのが共通点だろうか。

 

 

「……おい、エジソン。まだお前の研究の準備は終わらないのか」

 

「ちょっと待っててよムサシ。ボクの研究は超デリケートな計算と調整の上で完成するんだから!」

 

 

 不満げに苛立ちの籠った声を上げる男と、それにのほほんと返す少女。自販機の前にいた私をあっという間に車で攫った誘拐犯だ。男がキャラバンの運転をして、少女の方がスタンガンで私を拉致してたから少数の誘拐犯なんだろう。だがさっきから私の身長とか体重とか何を食べたかとかしか聞かれなくて、電話番号とかは聞かれないからただの誘拐犯じゃないかもしれない。

 

 

「ああ、不幸だ…」

 

「不幸?バカ言っちゃいけないよモルモットちゃん」

 

 

 ぽつりと漏らした口癖に反応したのはエジソンと呼ばれた少女。どう見ても日本人なのだがあだ名とかなんだろうか。エジソンは「ちっちっち」と指を揺らしながら自慢げに語る。

 

 

「君はこの世紀の大発明の人体実験に選ばれたのさ!偉大な大発明の第一成功者になれるかもしれないというのに不幸なわけないじゃないか」

 

「世紀の大発明…?」

 

「そうさ!これこそボクが制作した、大量の電気を肉体に流して人間を強化するマシン!その名も…グットツヨクナルンダーVSXさ!」

 

 

 そう言って掲げたのは電極のついたヘルメットとギブスの様な装置。明らかに安全性が保障されてない機械だった。え、これの実験体にされるの?過去最大に不幸だと思うのだが。

 

 

「そのネーミングセンスはどうかと思うぞエジソン」

 

「名前なんてどうでもいいの!わかってないなあムサシは。これは君の念願でもあるじゃないか。ボク達二人の(カルマ)を滾らせられるんだ!一石二鳥のそれだよ!」

 

 

 そう言って左手の腕輪の目玉の様な中心部を押しこむエジソン。するとその腕輪から何やらパーカーの様な幽霊の様な物が飛び出してエジソンが着るようにして被さり、意識を失った少女が倒れると同時に異形の何かが少女から抜け出たように現れる。

 

 

≪ヘイガン!エジソン! エレキ!ヒラメキ!発明王!≫

 

 

 電極を模した装飾がある銀のパーカーと、電球を模した黄色い模様が彩られた黒いのっぺらぼうの様な仮面。その下はボロボロの白衣を着た青白い骸骨の様な四肢、胴体には不気味な単眼が存在していた。その姿はこの前、銀行強盗に遭った際に助けてくれたゴーストをドーパントの様に歪にしたような…怪人だった。でも、世間でよく知られているドーパントじゃない。そもそもドーパントは風都って街にしか基本的に出ない筈だし!

 

 

「さあ!あとはこの装置を装着して、ボクが3000Vの電撃を流すだけ!」

 

 

 その怪人から聞こえる声は、倒れたはずのエジソンと呼ばれた少女の声そのもの。彼女の生霊か何かなのだろうか。私だから見えてるだけなのかと思ったが、そうでもないようでヘルメットを掴んだことから実体があるようだ。

 

 

「そう言ってどうせまた失敗するんだろう?」

 

「もう十何人も実験して来たから今度こそ大丈夫だよ!さあさあ!ボクの最高傑作、電気超人第一号になる栄誉を受ける準備はいいかな、モルモットちゃん改め結城鴒ちゃん!成功したらこの、強い奴と戦いたい変態!ムサシと戦ってもらうけど問題ないよね!」

 

「誰が変態だ」

 

「準備なんてできるはずがないし戦う気もないです!私を返して!」

 

「生憎とだが我も我慢の限界でな。常人を越えし強者と戦える時を我は待ち侘びているのだ…!」

≪ヘイガン!ムサシ! 決闘!ズバッと、超剣豪!≫

 

 

 そう言ってムサシと名乗った男も左手の腕輪の目玉を押し込み、赤いパーカーみたいな幽霊が被さってその体からエジソンとよく似ているが赤く頭部に日本刀が刺さっているような装飾のパーカーの下は白衣ではなく着流しを身に纏った、交差した刀の様な模様の仮面の怪人が抜け出てきた。

 

 

「あなたたち…一体、なんなんですか!」

 

「我等はカルマ。我が身を支配する業に縛られし者…!」

 

「どうしようもなく叶えたい業のために人間であることを捨てた自他ともに認める狂人さ!」

 

 

 カルマ。やっぱり、ドーパントじゃない。でもその名前、どこかで聞いたような?そう妙に冷静な頭で考えているうちにヘルメットを私の頭に付け、ギブスを装着してくるエジソン。そして両手を摺合せ、電気をその間に目に見えて溜め始める。

 

 

「安心して!成功すれば君は超人だ!このボクが十何人も犠牲にして完成させたんだもん!成功するよ!するする!」

 

「貴様の言う超人。どれほどか、楽しませてもらうぞ」

 

 

 バチバチとフラッシュする。もう、だめだ。諦めかけたその時。

 

 

 

 

 

≪ダイカイガン!オレ!オオメダマ!≫

 

「辺鄙なところに隠れてるんじゃねーぞシュート!」

 

 

 そんな声と共に天井が巨大なナニカを撃ち込まれて粉砕され、何か巨大な目玉の様な物がエジソンとムサシの二人のカルマを押し潰す。そして巨大な目玉が消え去ると共に空からふわりと降りてきたのは、見覚えのある仮面の幽霊だった。

 

 

「ようやく見つけたぞカルマ共………あれ?アンタ、この間の…」

 

「アハハ…また会いましたね、ゴーストさん」

 

 

 これが運命の再会だと言うことを私達はまだ知らない。




相変わらず巻き込まれているヒロインちゃんと、マッドサイエンティストのエジソンちゃんと戦闘狂のムサシさんの登場でした。まだ主人公の名前が明かされてないっていうね。

カルマは閉眼(ヘイガン)することで本体の意識を閉ざして生霊であるカルマになります。左手の腕輪は押し込むと目が閉じるギミックつきのメガウルオウダーが生物的になったみたいなものです。肉体から離れない未完成の眼魂ってイメージ。

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第三話:重力と弾丸と二刀流

どうも、放仮ごです。今回も題名はオーズ風。VSエジソンカルマ、ムサシカルマです。楽しんでいただければ幸いです。


 カルマと名乗ったエジソン、ムサシ二体の怪人によってピンチだった私を間一髪で助けてくれたのは、銀行強盗の時にも助けてくれた仮面の戦士、ゴースト。そこで思い出す。カルマとは、ゴーストがぼやいていた名前だと。つまり、ゴーストはカルマと戦うヒーロー…!?

 

 

「…事件に巻き込まれるのが趣味なのか?」

 

「そんなわけないでしょ!?」

 

 

 首をかしげるゴーストに怒鳴り返していると、起き上がるエジソンとムサシ。ゴーストを見るなり、敵意をむき出しに構えた。

 

 

「いきなりは酷いなあ……君が噂のゴースト?ボクの実験の邪魔をするなんて、もしかしなくても命知らずだなあ?ほらほら、念願のゴーストだよ仕事してムサシ。ボクは実験を続行するから」

 

「心得た。数々のカルマを屠ったその実力…見せてもらう!」

 

「命知らずも何も、既に死んでるんだがね!させるかよ!」

 

 

 腰の長短二刀を抜いたムサシが斬りかかり、ゴーストは咄嗟にベルトの前に手をやって出現させたメカメカしい剣で受けとめ、弾き返す。その間に私に近づくエジソン。

 

 

「さーて、早く君で実験を成功させて奴と戦ってもらおうかな~」

 

「い、いや!来ないで!」

 

 

 助けを求めようにも、ゴーストはムサシの剣を受け止めるので精一杯。だ、誰か…!

 

 

「こいつ、今までのどのカルマよりも強い…!?くそっ、コンドルデンワー!バットクロック!クモランタン!彼女を助けろ!」

 

「ぐはっ!?」

 

 

 ゴーストが叫ぶと、窓を突き破って黒と緑の黒電話みたいな胴体をしたコンドルの様なメカ、茶色と黒の時計みたいな胴体をした蝙蝠の様なメカ、薄い水色と黒の蜘蛛の様なメカが現れ、コンドルと蝙蝠はエジソンに体当たりして怯ませ、蜘蛛が糸の様なワイヤーを伸ばしてエジソンの右手を拘束して引っ張って足止めする。ゴーストの仲間なのかな…?

 

 

「痛いなあもう…こんなおもちゃでボクを止められるとでも!?」

 

 

 そう言ってエジソンが高速で両手を擦り合わせると肩の電極の様な装飾が放電を起こして三つのメカを攻撃、ショートさせてしまう。そんな…!?

 

 

「お前は我との勝負にだけ集中しろ!」

 

「そうはいくか!俺はもう、目の前で誰の命も奪わせない!」

≪アーイ!≫≪バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!≫

 

 

 ゴーストはムサシの剣と鍔迫り合いながらもバックルのカバーを外して目玉の様な物を取りだすと代わりに取りだして起動した、水色の目玉の様な物を取り出しスイッチを入れて04と表示させるとバックルにセット。するとゴーストはパーカーが消えて顔もつるっとしたのっぺらぼうの様な姿になり、カバーを上げたバックルから丸っこい形状をした水色のパーカーの様な幽霊の様な物が現れて踊り狂い、妙な歌を響かせる。何事かと反応する二体のカルマ。

 

 

「え、なになに!?」

 

「これは…我等と同じ、パーカーゴーストだと!?」

 

「俺は、俺が誇れる人間になる!」

≪カイガン!ニュートン!≫

 

 

 そしてレバーを引いて押し込むとムサシからパーカーゴーストと呼ばれたそれがゴーストに被さり、両腕に水色の球体の様なグローブが装着されてムサシを殴り飛ばす。

 

 

≪リンゴが落下!引き寄せまっか~!≫

 

 

 被さると同時にのっぺらぼうだった顔が水色のリンゴと四本の下を向いた矢印が描かれたものに変わったゴースト。しかしエジソンは意にも介さずに私に電気を浴びせようとしていて。

 

 

「関係ないもんね!浴びせてしまえばこっちのもん…!?」

 

「させるかって、言ったよなあ!」

 

 

 ゴーストが突き出した左手から放たれた青い波動に吸い寄せられて引っくり返るエジソン。そのまま引き寄せられ、殴り飛ばされてしまう。同時に、ムサシが攻撃していたものの右手から放たれた赤い波動に吹き飛ばされそうになっていたのを堪えていた。さっき、ニュートンと聞こえたけど…まさか、重力と斥力を同時に操ってる…!?

 

 

「お前は…邪魔だ!」

 

「ぐっ…オォオオオオ!?」

 

 

 さらに斥力を押し付けられたのか、ついに床を離れて壁を突き破り外に吹き飛ばされるムサシ。その間にもエジソンは引き寄せられは殴り飛ばされて、引き寄せられては殴り飛ばされてを繰り返してちょっと可哀想になってきた。

 

 

「お前、お前ェ…!ボクの実験の邪魔をして、許さないぞォオオオオ!」

 

「お前も吹っ飛べ!」

 

「ぷぎゃっ!?」

 

 

 エジソンが高速で掌を擦り合わせて電撃を放射するも、右手の斥力を向けられて電撃は跳ね返され、自分も廃屋の壁に叩きつけられてダウンしてしまった。その間に私に歩み寄り、拳の一撃で拘束を破壊するゴースト。

 

 

「こっちだ。早く逃げろ」

 

「う、うん…!」

 

 

 ゴーストにお姫様抱っこで抱えられ、ムサシが吹き飛ばされた時にできた穴から外に出る私達。後ろからコンドルデンワー?たちも着いて来ていた。ちょっとほっこりしていたのもつかの間。振り下ろされた斬撃を、咄嗟にスウェーで回避するゴーストは私を下ろしながらファイティングポーズをとる。その先には、ボロボロのムサシがいた。

 

 

「貴様、珍妙な技を使いおって…!正々堂々戦え!」

 

「いいぜ、戦ってやるよ。離れてな」

 

 

 そう言って私を物陰に隠れさせると、バックルのカバーを外して目玉の様な物を取り出しのっぺらぼうに戻るゴーストは茶色で彩られた目玉の様な物を取りだしセット、カバーを戻してトリガーを引っ張り押し込んだ。

 

 

≪カイガン!ビリー・ザ・キッド!≫

 

 

 現れたのはテンガロンハットと体中をガンベルトで覆った茶色のパーカーゴースト。被さると正面から見た拳銃とマズルフラッシュが描かれた仮面になり、ゴーストは取りだした剣を変形させて銃にすると、左手を伸ばすとその手に同じく銃に変形したバットクロックが収まり、二丁拳銃となる。

 

 

≪百発!百中!ズキューン!バキューン!≫

「二刀流には二丁拳銃、だ!」

 

「小癪な!」

 

 

 二丁拳銃から弾幕をばら撒くゴーストと、それを二刀で斬り弾いて近づいてくるムサシ。分が悪いように見えたが、ゴーストは余裕の態度を崩さない。ムサシが目の前まで近づくと、ゴーストはバットクロックを剣だった銃の銃口に合体。まるでライフルの様な形態にすると銃口をムサシに突き付け引き金を引き、ムサシはその威力に耐えきれず吹き飛ばされる。

 

 

「豆鉄砲だと油断しただろ。これでとどめだ」

≪ダイカイガン!!≫≪ガンガンミナー!ガンガンミナー!≫

 

「ぐっ…卑怯な…!」

 

 

 ライフルの鍔(?)の目の様な装飾をバックルの目の様な部分にかざすゴースト。目と目が通じ合ってまるでアイコンタクトだ。するとベルトが銀行強盗の時と同じくやかましい音声を響かせ、構えたライフルの上に目玉の様な紋章が現れてスコープとなり、複数の蝙蝠のエフェクトが現れたり時計が時を刻む音が聞こえてきて目に見えてエネルギーを銃口に溜めて行き、ゴーストはライフルのトリガーを引いた。

 

 

≪オメガインパクト!≫

 

「ぐっ…アァアアアアアア!?」

 

 

 放たれたエネルギー弾を浴びたムサシは爆散。パーカーだけ剥がれてパーカーゴーストとなり、ゴーストのバックルに吸い込まれていくと赤い目玉の様なものが生成される。

 

 

「こいつがムサシ眼魂か…」

 

 

 眼魂というらしいそれをしげしげと眺めていたゴーストだったが、頭上から放たれた放電をバックステップで避ける。見上げれば、廃屋の壁の穴からエジソンが顔を覗かせていた。

 

 

「あーもう、ムサシの野郎!何が我は強い奴と戦いたい、だ!あっさり負けて!だけどボクはそう簡単には負けないぞ!」

 

 

 そう言って両手を擦り合わせ、肩の電極から電撃を放ちまくるエジソン。対してゴーストはライフルで応戦するも、電磁バリアの様なもので防がれてしまう。

 

 

「ならさっそく、使ってみるか!」

≪アーイ!≫≪バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!≫

 

 

 再びのっぺらぼうとなったゴーストが電撃を避けながらセットしたのは、さっきの赤い眼魂。するとムサシに被さったパーカーゴーストと同じものが現れ、両手の刀を振るい電撃を弾いて行く中でカバーを閉めてトリガーを押し込むゴースト。

 

 

≪カイガン!ムサシ! 決闘!ズバッと、超剣豪!≫

 

 

 そして現れたのは、先ほどのムサシから生まれたカルマと酷似した姿のゴースト。赤い交差した刀が描かれ鉢巻を締めた仮面がエジソンを睨み付け、バットクロックを外して剣に戻した武器を分離して大小異なる刀の様な形状にすると構え、次々と電撃を刀で弾いて行く。

 

 

「な、なにをう…!」

 

「コイツで終わりだ!」

≪ダイカイガン!!≫≪ガンガンミナー!ガンガンミナー!≫

 

 

 そしてアイコンタクト、エネルギーを両手の刀の刃に溜めて飛び上がるゴースト。電撃を弾きながら迫るゴーストの姿はエジソンからしたら恐怖しかないだろう。バリアを張るが、それも斬り裂かれてしまうエジソン。

 

 

「こ、来ないでェエエエエ!?」

 

≪オメガスラッシュ!≫

 

 

 そして二連撃の斬撃が叩き込まれ、エジソンも爆発。パーカーゴーストもゴーストのバックルに吸い込まれて眼魂となる。元の黒いパーカーとオレンジ色の仮面の姿になったゴーストは、二階の壁に開いた穴で一息ついて二つの眼魂を眺めた。

 

 

「こいつで19個。順調だな……あれ?」

≪オヤスミー≫

 

 

 すると二つの眼魂を見ていたゴーストがよろけてその姿が普通の男性の姿となり、二階から落下してふわりとアスファルトに寝そべり、私は慌てて駆け寄る。ゴーストの正体と思われるその人物は、平凡な格好をした男性だった。透けていたり浮いていたりするので幽霊で間違いなさそうだ。

 

 

「え、えっと……どうしよう。あなた、名前は!?」

 

 

 混乱しながらそう問いかけると、目を開けたゴーストだった男はぼそりと呟いた。

 

 

「俺は………柳原、悠二」

 

 

 そう言って気絶してしまった男性、柳原君に、私はどうしたものかと慌てふためくしかなかった。




ようやく判明したゴーストの名前。ヒロインと同じく幽霊から取りました。

ニュートンカルマ、ビリー・ザ・キッドカルマとは一話と二話の間に戦ってます。それぞれ、引き寄せられたところを両断、決闘で早撃ちで勝利してますが話にするほどじゃないのでスキップしました。

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第四話:友達

どうも、放仮ごです。今回の題名はクウガ風。前回倒れたゴーストのその後の話。楽しんでいただければ幸いです。


 目を覚ますと、知らない天井で。視線を横に向けると、会うのも三度目となる少女がいた。ブレザー姿で、黒髪をポニーテールにしている大和撫子さながらの印象を感じる。水にぬれたタオルを手に首をかしげていたので、俺を看病しようとして物に触れられないから困っているのだろう。しかし幽霊でも疲れるのか。今後は一週間ぶっ通しはやめないとな。

 

 

「…もう大丈夫だ。心配かけたみたいだな。…えっと」

 

「結城鴒です。柳原悠二さん、目を覚ましたみたいで何より」

 

「俺を運んでくれたのか?どうやって?」

 

「私、幽霊に触れられるんです。生身より軽いから簡単でしたよ」

 

 

 そう言って俺の手を握る少女、結城さん。久しぶりの人のぬくもりを感じた。

 

 

「あっ、すみませんいきなり触ったりして。でも……本当に、ありがとうございました。私、幽霊が見えたり人より不運だったりでよく事件に巻き込まれて…でも、今度ばかりは本当に死ぬかと思いました」

 

「気にしないでくれ。あのカルマって怪人は俺が倒さないといけないんだ。結城さんを助けたつもりが助けられた。俺も幽霊になってから戦いづくめで精神的に摩耗していたらしい」

 

「あ、呼び捨てでいいですよ私なんか。私も悠二君、って呼ぶので。…同世代ですよね?」

 

「一応死ぬ前は20歳なんだが…結城は学生だよな?」

 

「え。ご、ごめんなさい!そうは見えなくて…」

 

「よく言われる」

 

 

 俺は実年齢よりちょっと若く見えるらしい。良く知らんけど。さて、精神力は戻ったみたいだしそろそろ行くかな。

 

 

「…そろそろ行くか」

 

「え、もう?」

 

「何せ期限が四十九日だからな。108つの眼魂を手に入れないといけないんだ」

 

「え…?なんで、悠二君が戦わないといけないの?」

 

「俺しか戦えないからだ。今こうしている間にも誰かが犠牲になってるかもしれない。俺はクソみたいな生涯でな。少しでも俺が誇れる俺に、誰かのヒーローになるために人々を助けて見せる」

 

「……なら、もう叶ってるよ」

 

「…なに?」

 

 

 外に行こうとしていた足を止め、振り向く。そこには笑顔の結城がいて。

 

 

「だって悠二くんはもう、二度も私を助けてくれたヒーロー、仮面ライダーだからね!」

 

「…ヒーロー、仮面ライダー……まだ、慣れないなそう呼ばれるのは」

 

「でも私にとっては貴方は仮面ライダーだよ!人知れず仮面を被り人々を助ける正義のヒーローだもの」

 

「そうか。そう言ってくれると助かるよ。……奴から電話はないか。どうしたもんかね」

 

 

 コンドルデンワーを手にぼやく。連絡が入らない、というかエクストリーマーの野郎はカルマが派手なことをやらかさない限り感知しない。だから連絡がない場合はこの間の銀行強盗みたいに悪事の気配を感じたら割り込むようにしているが、カルマに当たったことは二、三回しかない。

 

 

「時間もないってのに全てのカルマの居場所なんかわからないからなあ…」

 

「なら私、手伝えるかも!」

 

「なに?」

 

「私、幽霊が見えてさらに不幸だから、怪しい噂や場所をあらかじめネットで調べて近づかないようにしているの。それでも銀行強盗だったり誘拐だったりに遭遇するんだけど……多分その中には、カルマの仕業の事件もあると思うんだ」

 

「なるほど?」

 

「最近だと…これ!ニュースにもなってた、法で裁けない悪人が次々と暗殺されてる事件。これ、カルマの仕業じゃないかな?」

 

「確かにカルマの仕業っぽいが…法で裁けない悪人を暗殺…正義のカルマ、だと?」

 

 

 そんなのいるのか?今までのカルマは自分の欲望に忠実で、悪辣とした業を叶えようとするために他人の魂を奪おうとする輩ばかりだった。悪人を倒すのが何の業なのか想像つかない。

 

 

「…とりあえず、行ってみるか。次の標的、分かるか?」

 

「有名な悪人から順に暗殺されているから、次に狙われるのは次の総理大臣候補って言われてる政治家の上総紅助(かずさこうすけ)のライバルの金菅光栄(かねすだ こうえい)ってネットでは言われてるね」

 

「助かる。じゃあな」

 

「あ、ちょっと待って」

 

 

 結城の教えてくれた奴の場所へ向かおうとするが、呼び止められて振り返る。そこには真剣な顔をした結城がいた。

 

 

「私もついていっていい?」

 

「はあ?そんなのダメだ。そもそも、自分から巻き込まれるつもりか?」

 

「だって、49日しかないんでしょ?だったら時間をかけてられない。でも私なら、巻き込まれることで誘き出すことができる」

 

「これは俺の問題だ。気にせず平和を享受しろ」

 

「いやだ!だって、悠二君はもう友達だもん!……友達、だよね?」

 

「あ、ああ…多分?」

 

 

 自信満々に言ったかと思えばしどろもどろに問いかけてきたので、頷いておく。といっても俺も引き籠もりで友達もひとりぐらいしかいないから何とも言えないが。

 

 

「友達が困ってるなら力を貸すに決まってるよ!それに…守って、くれるんでしょ?」

 

「そう言われると、強く言えないだろ…」

 

 

 そして俺は守るべき友人を連れて、戦いへと赴いたのだった。

 

 

「…仮面ライダーのバイクの後部座席に乗る勇気はあるか?」

 

「え。私、見えない人の運転するのに乗りたくないんだけど」

 

「このクモランタンを使えば変身しなくても他人から見える様になるらしい。一時間だけだが」

 

「あ、それならちょっと乗ってみたいかも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クモランタンの光で結城以外にも見える様になり、後部座席に帽子と眼鏡で軽く変装した結城を乗せたマシンフーディーを駆って件の政治家がいるというビルへ向かう。そこには、ビルの入り口を囲む様に十数人の警官が屯していた。ここからは見えないが中にも警護する警官でいっぱいなんだろうな。

 

 

「…俺が出る機会なくないか?」

 

「そんなことないよ。…カルマって普通の人でも勝てるの?」

 

「まあ生霊だけど物体には触れられるみたいだしなあ。銃弾の雨を喰らえばさすがに?」

 

 

 遠目から二人でそれを確認していると、背後から気配を感じて殴りかかると、簡単に受け止められる。そこにはスーツを着た生真面目そうな女性が訝しんだ目つきで警察手帳を手に立っていた。

 

 

「公務執行妨害…のところだが、隣の彼女を守るためみたいだから見逃そう。私は警視庁の刑事をしている森川真弓という者だが。こんなところでなにをしている?何やら物騒な話をしていたようだが?」

 

「け、刑事さんでしたか…殺気を感じたのでつい。ごめんなさい」

 

「わ、私達はツーリングしていて…なにがあったのかなあって物見遊山のつもりで……邪魔になったのならごめんなさい」

 

「いや。邪魔ってことではないが……今ここは危険だ。ここだけの話だが、ロビンフッドを名乗る謎の人物から殺害予告状がこのビルにいる政治家に送り付けられてな。我々が警護している」

 

 

 ロビンフッド…!カルマの仕業とみて間違いなさそうだな。すると結城が気になったのか森川刑事に尋ねた。

 

 

「もしかして、悪徳政治家とかが何人も暗殺されているって言う…?」

 

「そこまで噂が広まっているのか。今回も許してしまっては警察の面目が丸潰れだ。それが、一般人にまで被害が及んだとなると事だ。悪いことは言わない、ここから離れた方がいい」

 

「は、はい…!行こう、悠二君」

 

「あ、ああ……お邪魔しました?」

 

 

 とりあえず邪魔になることは確かなので離れることにする。しかしどうするかな。…物々しい警備だが、カルマが相手でしかもこれまで何度も殺されているみたいだしなあ。

 

 

「変身して中に入ってみるか。あ、このコンドルデンワーを預けておく。俺の持ってるコブラケータイに通話できるから、カルマが出たら連絡してくれ。それに、危険が及んだら守ってくれるはずだ」

 

「ありがとう。気を付けてね」

 

 

 結城にコンドルデンワーを預け、俺はオレ眼魂を取りだしてスイッチを入れ、顕現させたベルトのカバーを開けて装填、カバーを閉じる。

 

 

≪アーイ!≫≪バッチリミナー!バッチリミナー!バッチリミナー!≫

 

「おう。変身」

 

≪カイガン!オレ!≫≪レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!≫

 

「よし、行くか」

 

 

 そしてパーカーゴーストが舞い踊る中、ベルトのトリガーを押し込んでパーカーゴーストを身に纏った俺はフードを被ったまま宙に浮かび、警官達の真上を通ってビルに入って行った。謎の正義の味方のカルマ…その正体、見極めてやる。




そんなわけで頼れる(?)協力者を得たゴースト。クモランタンで一時的に姿を現すことも。

新しい名前も続々登場。ネームドキャラがどう関わってくるのか。

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第五話:正義

どうも、放仮ごです。今回の題名もクウガ風。VSロビンフッドカルマ、そして…?楽しんでいただければ幸いです。


 壁を擦り抜け、宙に浮かんで警官が沢山いる目的地と思われる階までやってくる。常人には見えないフード姿に幽体化して標的であろう男、金菅光栄に近づく。綺麗な景色を一望できるガラス張りの壁を背に椅子に座り踏ん反り返っている。

 

 

「ははっ、なんで僕なんかを狙うんでしょうねえ…頼りにしてますよ、警察の方々」

 

 

 そう語る金管は整った顔をした好青年であり、悪徳政治家とは思えない容姿だ。だがまあ、噂される程度にはあくどい事をやっているんだろう。罪がある人間だと言うのなら正直守る義理はないが、知ってるのに殺されるのも放っては置けない。ロビンフッドとやらはどこからくる…?

 

 

「…ん?」

 

 

 すると何かに反応して姿を現すコブラケータイがガラケーに変形して俺の手に収まり耳に当てると、結城の焦った声が聞こえた。

 

 

≪「悠二君、あのね、森川さんがいなくなったと思ったら緑のフードのカルマが現れて次々に警察の人達の意識を奪って、それで多分カルマの正体は………」「そこまでです」≫

 

「結城!?結城!…クソッ!」

 

 

 そこで通話が途切れる。コンドルデンワーが動けない通話中に襲われたのか。クソッ、クモランタンとかも預けておくべきだった…!だが伝えたいことは伝わった。よりにもよって警察官がカルマか…!

 

 

「失礼しますよ、警察の方々」

 

 

 そして出入り口の扉が蹴破られ、奴は現れた。緑の布地に黄色のラインをあしらった、まるで弓矢の様な絵柄の仮面をつけた、同じ女性が変身したエジソンカルマよりも女性だとよくわかる体型で緑のマントをフードの下に身に着けたカルマ。礼儀正しく一礼するその姿からは暗殺者には見えない。

 

 

「毎度毎度、無意味な警護ご苦労様です。抵抗はしてくださいね?仕事しないであっさり警護対象を殺された、だなんて上に報告したくはないでしょう?」

 

「出たぞ、ロビンフッドだ!撃て、撃てー!」

 

 

 俺が乱入する間もなく、拳銃を手に一斉射撃を行う警官達。しかしロビンフッドカルマはマントを翻して弾丸を全て受け止め、全ての弾丸が床にカラコロと零れ落ちる。防弾のマントだと…!?

 

 

「此度も悪人以外の命を奪う気はないので、あしからず」

 

 

 そう言ってマントを翻して宙返り、次々と当身で警官達の意識を奪っていくロビンフッドカルマ。ならばと、最後の警官の意識を奪って油断しているであろうタイミングでガンガンセイバーを手に斬りかかるも、まるで分っていたかのように避けられて手にした弓で殴りつけられ、吹き飛ばされフードが脱げて姿を現してしまう。

 

 

「クソッ、何で居場所が…!」

 

「貴方がさっきの少女が連絡していた相手ですね。噂のゴーストか、私の邪魔をしないでください」

 

「く、クソッ…役立たずの警察め!二人も侵入者を許してるじゃないか!」

 

「「ッ!」」

 

 

 怒りと恐怖が入り混じった表情を浮かべた金管が机の裏に手をやって取りだしたのは、ロシア製の拳銃(だったはずの)トカレフ。狙いもつけずに乱射し、俺は咄嗟にフードを被って幽体化して回避、ロビンフッドもマントを翻して防御する。弾を撃ちきった金管はカチカチと引き金を引き続けていたが投げ捨て、涙と鼻水でグチャグチャな顔で土下座した。ええ……?

 

 

「お願いします!命ばかりは……!」

 

「そうはいきません、法が裁けない悪に生きる価値なし。貴方が土地を得るためにヤクザを使って法外な地上げを行ったのはわかってます!」

 

「しょ、証拠はないだろう!?そ、それに金ならやる!いくらでもやる!だから命だけは…!」

 

「金なんていりません。貴方が死ねば、私はそれでいい…!」

 

 

 そう言って背中に現れた矢束から矢を取りだして弓に番えて引き絞るロビンフッドカルマ。見ていて救う価値の無い悪党だとわかったが、見逃すわけにもいかない。ガンガンセイバーをガンモードに変形させて銃撃、放たれた矢を撃ち落とす。

 

 

「やめろ!証拠を見つけて捕まえればいい話だろ!?」

 

「…それができないから、私はこんなことをしているんだ!邪魔をするな、ゴースト!」

 

 

 今度は俺に向けて三本矢を手にして引き絞り、射出してきたのでガンガンセイバーをブレードモードにして斬り払い、突撃。咄嗟に弓を手に殴りつけようとしてきたロビンフッドカルマに体当たりしてガラス張りの壁に激突し、下まで一緒に落下。地面に激突すると同時にまるで合気道の様な動きで投げ飛ばされる。

 

 

「今の動き…警察の体術だ。やっぱり森川真弓さん、アンタか」

 

「そういう君はさっきの不審者君か。邪魔をしないでもらおう!」

 

 

 弓を手にして突撃してきたロビンフッドカルマを、ガンガンセイバーで迎え撃ち、激突。棒術の様に弓を振るう攻撃を、なんとか捌いて行く。素人の戦い方じゃ、プロには勝てないか…!?

 

 

「なんで、警察のアンタがこんなことをしてるんだ!」

 

「法で裁けない悪魔に!私の家族は殺された!警察であっても、逮捕することもできなかった!そんな悪に生きる価値はない!」

 

「そんなの、ただの復讐だ!アンタの正義は何処に行った!?」

 

「警察になった私が信じた正義は、もうどこにもない!」

 

 

 凄まじい気迫の一撃が腹部に炸裂、突き飛ばされる。そして引き絞られる弓矢。咄嗟に、黄色い眼魂を取りだしスイッチを入れて一連の動作を行う。

 

 

「邪魔をするならお前も悪だ、死ね!」

 

≪カイガン!エジソン!エレキ!ヒラメキ!発明王!≫

 

「生憎と死ねないな…既にゴーストだ!」

 

 

 エジソン魂になると同時に電磁バリアを展開して矢を防ぎ、ガンガンセイバーをガンモードにしてゴーストドライバーにアイコンタクト。電磁バリアもろとも電気を銃口に集束させていき、引き金を引いた。

 

 

≪ダイカイガン!エジソン!オメガシュート!≫

 

「くっ…!」

 

 

そして放たれた必殺の一撃は、ロビンフッドカルマのマントを犠牲にして防ぎきられてしまう。なんて防御力だ。

 

 

「まだだ、私はまだ、終われない…!」

 

「ならもう一発…!」

 

 

 今度は蹴り技で……そう、バックルのトリガーに手をかけた瞬間だった。俺とロビンフッドカルマの間に、紫色のパーカーゴーストを身に纏ったカルマが降りたって手にした火縄銃を発砲。俺は防御もできず吹き飛ばされてしまう。髷の様な物が頭に着いた紫のパーカーゴーストで二丁の火縄銃が交差した様に紫で記された顔、戦国武将の様な甲冑と表が黒で裏が赤地のマントをパーカーの下に身に着けた武人の様なカルマだった。

 

 

「お前、は…!?」

 

「ロビンフッド。ここは我に任せて業を為せ。逃げられるぞ」

 

「……助太刀感謝する」

 

「待て…がああ!?」

 

 

 ボロボロのマントを翻してこの場を去ろうとするロビンフッドカルマを追いかけようとするが、謎のカルマが腰から抜いた日本刀で斬り裂かれ、逃がしてしまう。咄嗟にガンガンセイバーガンモードで発砲するが、日本刀で斬り弾かれてしまった。この強さ、ただのカルマじゃない…!?

 

 

「お前、何者だ…?」

 

「我はノブナガ。()の魔王、織田信長公の業を背負う、カルマの幹部だ」

 

「カルマには幹部までいるのか…個人プレーの集団だと思ってたんだがな?」

 

「奴の業は我も気に行っている故…邪魔はさせん。アシガルマ!」

 

 

 そう言ったノブナガカルマが手を振るうと、その影から刀やら槍やらを手にした足軽の様な格好をした単眼が特徴の怪人が複数湧き出てきて俺を取り囲む。ノブナガと言うだけあって、配下の軍勢までいるのか、厄介な。

 

 

≪カイガン!ムサシ!決闘!ズバッと、超剣豪!≫

 

「何体居ようが関係ねえ、叩き切る!」

 

「その生き様、我に見せてみろ!仮面ライダーゴースト!」

 

 

 そして、ノブナガカルマと俺は激突した。




森川真弓=ロビンフッドはあからさますぎてすぐわかったかな?必殺技を耐える防御力に、遠近両方の戦闘をこなす強敵カルマとなってます。ちなみに狙われた金管は明地光秀がモチーフ。金柑頭と言われていたのと、みつひでとも読める光栄という名前。

幹部カルマであるノブナガカルマが登場。アシガルマという足軽+カルマな戦闘員を使役するいわゆる戦闘員枠の幹部です。

お気に召したなら感想などいただけると嬉しいです。


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第六話:復讐者たちの狂詩曲

どうも、放仮ごです。今回の題名はキバ風。VSノブナガカルマ、そして…?楽しんでいただければ幸いです。


 二年前。森川真弓がいつものように仕事を終えて帰宅した時だった。「ただいま」と言っても返事はなく、血の匂いがした。嫌な予感がして慌てて明かりのついている風呂場に入ると、赤く染まった風呂の中で幼い息子と、溺れた様子の息子を庇うように抱きしめた最愛の夫が血を流し息絶えていた。絶望の声を上げて泣き崩れていると、背後から知らない声がして。振り向く。

 

 

「あれ、まだいたんだ。しょうがないなあ」

 

 

 そこには血塗れの白いワンピースを着た11歳ぐらいの少女がナイフを手に笑顔で立っていて。嬉々として襲いかかろうとしてきたので、怒りのままにナイフを蹴り飛ばし、その幼い体を取り押さえる。そのまま殺したいほど憎かったが、自分は警察官。少女を現行犯逮捕したが、法の力では未成年の少女である殺人鬼を裁くことはできず。

 さらに保護観察対象となった少女は保護観察官と保護司の隙を突いて惨殺し逃亡。行方を晦ませてしまい、法の無力を痛感し打ちひしがれることしかできなかった森川真弓は、その憎悪と怨嗟の叫びを聞き届けたネクロの手でカルマとなった。八つ当たりかの如く法で裁けない悪を殺すことでしか満たされない復讐心と正義を遂行する警察の二重生活を続けながら、あの殺人鬼を絶対に捜しださんとする業を背負ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ、あの刑事さんにこれ以上命を奪ってほしくないってのに…!」

 

 

 ムサシ魂となってガンガンセイバー二刀流モードを振るい、アシガルマを次々と斬り伏せて行く。しかしノブナガカルマの影から随時補充され、いくら斬っても切りがない。

 

 

「邪魔をするなゴースト。我等カルマは業を叶えんと怪人と化した者。人を捨ててでも叶えようとする業だ、見過ごしてもよかろう」

 

「それで他人の命を、魂を奪って業を燃やすのがお前らカルマだろ!人の命をなんだと思ってやがる!」

 

≪ダイカイガン!ムサシ!オメガドライブ!≫

 

 

 ゴーストドライバーのトリガーを一度入れて刀身にエネルギーを溜め、さらにガンガンセイバー二刀流モードの柄を合体させてナギナタモードにしてアイコンタクト。

 

 

≪ダイカイガン!!≫≪ガンガンミナー!ガンガンミナー!≫

 

 

 そのままナギナタモードのガンガンセイバーを振るい、アシガルマを斬り伏せながらノブナガカルマに突撃。手を振るい、盾を手にしたアシガルマを複数展開して守ろうとするノブナガカルマごと、斬り伏せるためにガンガンセイバーのトリガーを引いた。

 

 

「命、燃やすぜ!」

≪オメガストリーム!≫

 

 

 ダイカイガン二回分のエネルギーを溜めた、円形に放たれる赤いエネルギーの斬撃はアシガルマの全てを斬り伏せ、爆散。さらにノブナガカルマに当たった確かな手ごたえを感じた。

 

 

「幹部かどうかは知らんが、二つも眼魂が手に入るなんて、今日はツいているな……なに!?」

 

 

 爆発が晴れたそこには、マントをはためかせた鎧に一文字の切り傷を作ったノブナガカルマが健在だった。

 

 

「この我の身体に傷を作るとは……いいだろう。奴も目的を果たして逃げた頃合いだ。此度は見逃してやろうゴースト。次遭った時は容赦せんぞ」

 

「待て、この野郎…!?」

 

 

 マントを翻して歩いて去って行くノブナガを追おうとするが、アシガルマ三体に阻まれる。厄介な能力だな。ナギナタモードのガンガンセイバーで斬り伏せた頃には、黒塗りの車が走り去って行くぐらいでノブナガの姿はなかった。逃がしたか…いや、今はそれよりも。

 

 

「まだ、間に合うか…!」

≪カイガン!オレ!≫≪レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!≫

 

 

 オレ魂になってさっきの部屋に浮かんで戻ろうとすると、突然ガラスの壁を突き破って何かが落ちてきた。それは、緑のフードの怪人だった。

 

 

「森川さん…!?」

 

 

 地面に落ちて転がったロビンフッドカルマを見ていると、割れたガラスの壁から何かが降りてきた。それはトランジェント体のゴーストによく似ているがちょっと違って心電図の様で、顔はやはりのっぺらぼう。腰にはゴーストドライバー。

 

 

≪アーイ!バッチリミロー!~♪ バッチリミロー!~♪≫

 

 

しかし、ラップ調だが俺のとは曲調の違う音声が鳴り響きその側に黒い布地に青いラインのパーカーゴーストが浮かんでいて、それはゴーストドライバーのトリガーを押し込んでパーカーゴーストを身に纏った。

 

 

≪カイガン!スペクター!≫≪レディゴー!覚悟!ド・キ・ド・キ・ゴースト!≫

 

 

 現れたのは、ゴーストによく似た、鬼。二本角で鋭い目つきの青いシルエット。その手には青いマジックハンドの様な武器…俺のガンガンセイバーと同じならガンガンハンドか…?が握られている。音声から考えるとスペクター、と呼べばいいのだろうか。

 

 

「準備はいいか?覚悟しろ、カルマ」

 

 

 そう言うとスペクターは飛び降りてロビンフッドカルマの側に降り立つと、ロビンフッドカルマの突き出した弓を左手で握り受け止めて、右手に持ったガンガンハンドを荒々しく叩きつけた。何度も何度も、防御体勢もままならないロビンフッドカルマへと容赦のない打撃が叩き込まれていく。

 

 

「なんなんだ、アイツ…?」

 

「お前か!?俺の!家族を!殺した!カルマは!」

 

「くっ、がっ、うあっ…」

 

 

 悲鳴と共にグシャッグシャッと、聞こえちゃいけない音まで聞こえてきた。思わず止めたいが、俺もカルマを倒そうとしている身。やり方が違うだけでやろうとしていることは同じだ。するとなすがままにされていたロビンフッドカルマが激昂、渾身のパンチをスペクターに浴びせて殴り飛ばした。

 

 

「がっ!?」

 

「ふざけるな!私だってあの凶悪殺人鬼……白川乙女(しらかわおとめ)に家族を惨殺されたんだ!未成年というだけで法じゃ裁けず保護観察、しかも行方を晦ませた!私はもう、同じ法じゃ裁けない悪人を処刑する事しか出来ないんだ!邪魔をするな、ゴースト!」

 

「ゴースト?違うな……お前の動機など知らん。俺はお前らカルマを悉く葬る復讐鬼、スペクターだ!」

 

≪ダイカイガン!スペクター!オメガドライブ!≫

 

 

 ガンガンハンドを投げ捨ててゴーストドライバーのトリガーを押し込み、背後に浮かび上がった紋章のエネルギーを右脚に収束し、立ち上がろうとしていたロビンフッドカルマの顔面を蹴り飛ばすスペクター。

 

 

「命、爆発!」

 

 

そして空中に飛び上がって急降下しながら飛び蹴りを叩き込まんとするが、その先のロビンフッドの傍らには気絶した結城がいて。ロビンフッドカルマもそれに気づいたのか庇おうとするが、あれでは結城まで巻き込まれる!

 

 

「っ、駄目だ!」

 

≪ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!≫

 

 

 割り込む様にしてこちらも飛び蹴りを繰り出してスペクターの飛び蹴りを阻止。二人揃って変身解除されてその場に転がった。




登場。復讐鬼の二号ライダー、スペクター。ロビンフッドカルマの動機も判明。

アシガルマを倒したオメガドライブムサシ+オメガストリームは原作でも好きな技だったり。

次回、ゴーストVSスペクター。お気に召したなら感想などいただけると嬉しいです。


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第七話:死のワルツ~交響曲

どうも、勢いのまま前回の続きを書き上げた放仮ごです。今回の題名もキバ風。今作屈指のやべーやつが登場。ロビンフッド編終局、5000字越えでお送りします。楽しんでいただければ幸いです。


 飛び蹴りを叩き込んで結城が巻き込まれるのを何とか防ぐことに成功した俺。俺と同じく変身が解けたスペクターは、皮のジャケットを着た茶髪の整った顔のイケメンで、憎悪の籠った瞳でこちらを睨む。

 

 

「貴様!何故邪魔をした!俺と同じ力、お前もカルマを倒す人間だろう!」

 

「お前こそ、今何をしようとした!一般人まで巻き込むつもりか!?」

 

「躊躇している間に逃げられたらどうする!俺は周りの人間を巻き込んででも、全てのカルマを屠る!卑劣で外道なカルマを倒すためならば手段は選ばん!」

 

「お前と一緒にするな!」

 

 

 その言葉には物申したい。確かに森川さんはカルマだ。だが、こいつと一緒にされたくない。

 

 

「この人はな、警察官だ!目標以外は気絶させるだけで、決して巻き込もうとしないいい人だ!確かに殺人は擁護できないが、他人も巻き込むお前と比べたら全然マシだこの野郎!」

 

「不審者君……」

 

 

 庇うように前に出ると、戸惑った声が後ろから聞こえてきた。カルマだろうがいい人はいるって知れたんだ。止めるためにも、スペクターに倒させちゃ駄目だ。

 

 

「…俺の邪魔をするというのなら、お前も潰す」

≪アーイ!バッチリミロー!~♪ バッチリミロー!~♪≫

 

「上等だ。お前を倒して、この人を止めてみせる」

≪アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!≫

 

 

 同時にバックルのカバーを開き、ゴーストドライバーにスイッチを入れた眼魂を装填してカバーを閉じ、出現したパーカーゴースト二体が空中でぶつかり合う中で俺達は睨み合い、同時に叫ぶと共にトリガーを押し込んだ。

 

 

「「変身!」」

≪≪カイガン!≫≫

 

≪スペクター!≫≪レディゴー!覚悟!ド・キ・ド・キ・ゴースト!≫

 

≪オレ!≫≪レッツゴー!覚悟!ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!≫

 

 

 そして変身と駆け出して、パーカーゴーストを身に纏い変身完了すると同時に拳がクロスカウンターで仮面に激突。同時に殴り飛ばされ、構えるとスペクターはガンガンハンドを変形させて先端の掌部分を握り拳にしてライフル銃にすると俺に向けて乱射。気絶した人たちを巻き込まない様に空に浮かんで回避していくが、一発が胸の装甲に炸裂して吹き飛ばされ地面に転がる。

 

 

「やってくれたな…お返しだ!」

≪カイガン!ビリー・ザ・キッド!≫≪百発!百中!ズキューン!バキューン!≫

 

「英雄眼魂の力を使えるのか!だが関係ない!」

 

 

 立ち上がりながらビリー・ザ・キッド魂に変身、バットクロックを呼び寄せてガンガンセイバーガンモードと共に構え、こちらも乱射してスペクターと撃ち合いになり、両者ともにダメージを受けて行く。このままじゃ埒が明かないか。

 

 

≪≪ダイカイガン!≫≫

≪ガンガンミロー!ガンガンミロー!≫

≪ガンガンミナー!ガンガンミナー!≫

 

 

 考えることは同じだったのか、同時にアイコンタクト。待機音を響かせ、エネルギーをそれぞれの銃口に溜めて行く。

 

 

「命、燃やすぜ!」

≪オメガインパクト!≫

 

「命、爆発!」

≪オメガスパーク!≫

 

 

 そして蝙蝠の幻影を纏った茶色のエネルギー弾と、蒼色のエネルギー弾がぶつかり、大爆発。その余波を受けてスペクターが怯んだ隙を突いて突撃。ゴーストドライバーのトリガーを引きながら飛び上がる。

 

 

≪ダイカイガン!ビリー・ザ・キッド!オメガドライブ!≫

「俺は、俺が誇れる人間になる!」

 

「くっ…!」

 

 

 そして弾丸のエフェクトを纏った飛び蹴りを繰り出し、咄嗟にスペクターの繰り出した青いエネルギーを纏った拳と激突。拮抗して同時に吹き飛ばされ、共に変身が解除されて転がる。すると俺に駆け寄ってくる人間がいた。目を覚ましたらしい結城だった。

 

 

「悠二君、大丈夫!?何が起きてるの!?仮面ライダーと戦ってるなんて…」

 

「結城か…ここは危ない、離れてろ!あいつは他人を巻き込むことも辞さない危険な奴だ」

 

「で、でも悠二君…後ろにカルマが」

 

「え?」

 

「……」

 

 

 結城に言われて振り向くと、そこにはロビンフッドカルマがいつの間にかいて。スペクターから庇うために戦ってたからいるのはいいが、なんでここに来たんだ?

 

 

「ゴースト。教えてくれ、私の手は血で汚れている…こんな私でも、いい人なのか?」

 

「…なあ森川さん。アンタの動機はわかった。だけど、命を奪うのは間違いだってアンタも気付いてるんだろ?アンタの力なら不正を暴いて公に裁くことも可能のはずだ。そうだろう?」

 

「…ああそうだ。白川乙女さえ殺せれば、それでいいはずだった。だが許せなかった。私の信じた法を掻い潜って悪事をなす輩を、見過ごすことはできなかった。私は、やり方を間違えたんだ」

 

 

 そう言って左手の腕輪の目玉の様な中心部を押しこむロビンフッドカルマ。するとパーカーゴーストを残してその姿が消失し、物陰から森川さんが姿を現し、パーカーゴーストは腕輪に吸い込まれて消えた。それを信じられない様に目を見開くスペクターだった男。気持ちは分かるぞ、カルマは自分本位な奴ばかりで自分から変身を解くなんてありえないからな。

 

 

「森川さん…」

 

「やっぱり、あなたが…」

 

「……私は、どうすればよかったんだろうな」

 

 

 乾いた笑いを浮かべてそう問いかけてくる森川さんに何も言えない。人生の敗北者である俺如きが何か言えるはずがない。結城も同様の様だ。するとスペクターだった男が口を開いた。

 

 

「戸惑うくらいなら復讐をしなければよかったんだ。甘い奴が復讐なんてするのが間違ってる。お前は復讐者に向いてない。やめてしまえ」

 

 

 …同類だから言える言葉か。少しは落ち着いたようだな。

 

 

「…今更、止まれるだろうか」

 

「大事なのは、自分が誇れる自分になる事だと思うぞ、俺は」

 

「私が誇れる私…そうだな。私は自首するよ。眼魂はゴースト、君に渡して……」

 

 

 その時だった。森川さんの瞳が、驚愕に染まる。俺と結城、スペクターだった男が見てる方とは反対方向を見据え、その身を震わせている。振り返る。そこには、白いワンピースを着た幼い少女が立っていた。

 

 

「えー、残念。せっかくお仲間に会えたと思ったのにやめちゃうなんて…興醒めだなあ」

 

「き、さまっは……白川、乙女ッッッ!」

≪ヘイガン!ロビン・フッド!ハロー!アロー!森で会おう!≫

 

 

 白川乙女。森川さんの家族を殺した未成年の凶悪殺人鬼…!森川さんは怒りの表情と共に、腕輪を荒々しく叩いてロビンフッドカルマになると弓に番えた矢を引き絞り、間髪入れず射出。しかし少女はひょいっと動くだけで矢を回避するとにんまり笑って、その手に眼魂を二つ取り出してスイッチを入れ、直接胸に埋め込んだ。なん…だと!?

 するとその胸から飛び出してきた、漆黒の刃物を彷彿させる鋭利なシルエットの布切れの様なパーカーゴーストと、頭に貴婦人の帽子の様な装飾がついた血の様に赤いドレスの様に下が大きく広がったパーカーゴーストが続けざまにロビンフッドカルマの放った矢を迎撃する。

 

 

「あ、本気で殺しに来てくれるんだ。嬉しいなあ、楽しいなあ、殺し甲斐があるね!」

≪ヘイガン!ジャック・ザ・リッパー!凶器・斬り裂き・殺人鬼!≫

≪ヘイガン!エリザベート!乙女の生き血!美の極致!≫

 

 

 二重奏の音声を奏でながら、まずジャック・ザ・リッパーのパーカーゴーストが被さってその上からエリザベートのパーカーゴーストが重ね着した少女から成人男性と同じ大きさのカルマが抜け出した。

両肘に腕輪の役割を果たすのだろう目玉の装飾がついており、胴体には通常のカルマと異なる二つの目玉が縦に連なる姿はただのカルマではなく、顔は白のナイフが交差したものと、緋色のアイアンメイデンを模したシルエットが重なって凶悪なもので、まるでドレスを身に纏った貴婦人の様な優雅な姿で二本のナイフを手に舞い踊る。二つの、しかも完成された眼魂を使うカルマだと…!?以前、ライト兄弟カルマを倒したことはあるが、あれは兄弟だからだったはずだ。今回のとは全然違う!

 

 

「こんにちは。ボスからはシルアルキラーカルマと呼ばれてる白川乙女です。よろしく、殺されてどうぞ!」

 

「まさか…お前もカルマだったなんて…ネクロ…あいつ、知っててわざと…許さん!許せるものか!」

 

 

 そう和やかに挨拶しながら、激昂したロビンフッドカルマの放つ矢を叩き落として接近してくるシルアルキラーカルマから、結城を庇うように後退していると、ロビンフッドカルマとは別にスペクターも様子がおかしいことに気付く。

 

 

「その声、その姿……見つけたぞ、カルマ!俺だ、浅木魁(あさき かい)だ!この名を忘れたとは言わせんぞ!」

≪カイガン!スペクター!レディゴー!覚悟!ド・キ・ド・キ・ゴースト!≫

 

「えー、誰?知らないなー!」

 

 

 激昂した浅木魁もスペクターに変身し、ガンガンハンドを手に殴りかかるも、シリアルキラーカルマは意にも介さず、スペクターをあっさり蹴り飛ばすとロビンフッドカルマに当ててもみくちゃにするとこちらに顔を向けた。

 

 

「楽しいなあ、殺し合い、楽しいなあ!そこの君は来ないの?それとも、理由が出来たら殺しに来てくれるのかな?」

 

「っ!結城!」

≪カイガン!ムサシ!決闘、ズバッと、超剣豪!≫

 

 

 その仮面の下の目が結城を舐めるように見たことに気付き、嫌な予感がしてムサシ魂へと直接変身するも、霧に包まれて瞬間移動してきたシリアルキラーカルマに蹴り飛ばされ、あまりの重さに無様に地面に転がるしかなく。ハイヒールなこともありなんつー威力だ……って、不味い!アイツの目的は…!

 

 

「逃げろ!」

 

「え…?」

 

「ハーイ、お姉さん。死んでいいよ」

 

 

 無駄だと思っても叫ぶしかない。無力な少女へと、無垢なる刃が容赦なく振り下ろされて…

 

 

「…あー、何時にもまして不幸だなあ」

 

 

 そんな諦めの籠った声と共に、赤い血飛沫が舞った。一瞬の出来事で、その光景が信じられなかった。

 

 

「…え?」

 

「……あれえ?なんで生きてるの?」

 

 

 結城は無事だった。突き飛ばされたまま転がり、呆然としている。間に合わないと踏んだのか人間の身体に戻り、結城を庇った人がいたのだ。

 

 

「森川さん!」

 

「…かふっ」

 

 

 胸から鮮血を溢れさせ、口からも血反吐を吐いて崩れ落ちる森川さん。俺とスペクターは全く同時に飛びかかって挟撃。しかしまた霧に包まれ離れたところに逃げられてしまい、慌てて森川さんの体を支えた。

 

 

「なんで…こんな」

 

「……私は警察官だからな。市民を守る義務を守っただけさ。ゴースト、これを…君に託す」

 

 

 そう言って森川さんが視線を向けたのは、カルマから解放されてどうしたらいいかわからず森川さんを心配そうに見守るパーカーゴースト・ロビンフッド。俺は頷き、パーカーゴーストも意を汲み取ったのかゴーストドライバーに吸い込まれていき、眼魂となった。

 

 

「頼む、私を人間に戻してくれた…ヒーロー。あいつを……白川乙女を、止めてくれ。頼んだ、ぞ…」

 

「森川さん…!」

 

 

 そう言って森川真弓という名の警察官は、笑みを浮かべて息絶えた。俺も、スペクターも、結城も、何も言えず沈黙するしかない。それを破ったのは、ただの人間だったころから怪物だったと思われる、少女の声だった。

 

 

「私と殺し合いするよりも他人を守って死んでいくことを選ぶなんて酷いなあ。早く続きをしようよ、やる気が出ないならやっぱり殺すしかない?」

 

「…お前、黙れよ」

 

「同感だ」

 

 

 俺とスペクターは結城を守るように並び立つ。俺は森川さんの死を侮辱された怒りで。スペクターは復讐心から、今この時だけ「奴を倒す」という目的が一致した。俺はドライバーからムサシ眼魂を取り外してロビンフッド眼魂を装填、パーカーゴーストを呼び出す。

 

 

≪アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!≫

「森川さん…一緒に戦ってください!」

≪カイガン!ロビン・フッド!≫≪ハロー!アロー!森で会おう!≫

 

 

 そして俺はロビン魂に変身、ガンガンセイバーをガンモードにすると飛んできたコンドルデンワーが合体してアローモードとなり、ガンガンハンドを手にして殴りかかったスペクターを援護する様にエネルギーの矢を発射。しかし霧を纏い瞬間移動してスペクターを翻弄するシリアルキラーカルマを捉えることはできない。

 

 

「アハハハハ!鬼さんこちら!手の鳴る方へ!」

 

「だったらこれはどうだ」

≪ダイカイガン!ガンガンミナー!ガンガンミナー!≫

≪ダイカイガン!ロビン・フッド!オメガドライブ!≫

 

 

 アイコンタクトして弓の様にガンガンセイバーを引き絞りつつ、さらにゴーストドライバーのトリガーを押し込んでオメガドライブを発動。すると次々と分身が生み出され、横一列に並んでエネルギーを溜めこんでいく。

 

 

「逃がさん!」

 

「およ?これはやばいかも!」

 

 

 さらに瞬間移動を執念で追いかけたスペクターがガンガンハンドでシリアルキラーカルマを捕らえることに成功。分身全ての照準を奴に合わせて、解き放つ。

 

 

≪オメガストライク!≫

 

 

十人に分身しての一撃がシリアルキラーカルマに正確に炸裂。スペクターも炸裂する寸前で離脱し、爆発が広がる。しかし、ぱらぱらと何かが崩れる音が聞こえて。炎が晴れると、そこには赤い流動体が奴を包み込んで爆発から身を守っていた。あれは…血か?霧の瞬間移動がジャック・ザ・リッパーの能力なら、あれはエリザベート…エリザベート・バートリの力か。

 

 

「あー、危なかった!でも楽しかったよ、また遊ぼうね。ゴーストと…スペクター?」

 

「っ、待て!」

 

 

 そう言ってシリアルキラーカルマは手を振って霧に包まれて姿を消し、スペクターが飛びかかるも時すでに遅く。そのまま悔しそうにスペクターは跳躍して去って行く。俺は、無力感に打ちひしがれるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 後から知ったことだが、金管は森川さんに殺害されていた。スペクターは殺されたあとに乱入したらしい。…何が誰一人カルマに殺させない、だ。全ての人間を守る事なんて無理だということを、今更ながらに思い知ることとなった、そんな戦いだった。白川乙女……シリアルキラーカルマ。次会ったら絶対に逃がさない。森川さんの無念は、俺が引き継ぐ。




 ゴーストVSスペクターこと浅木魁、森川真弓との和解、ノブナガカルマに続く幹部カルマ・シリアルキラーカルマこと森川と浅木の仇でもある白川乙女が登場、森川の死とロビン魂への変身とてんこ盛りだった今回。自分でも積み込み過ぎたと思ってる、反省。

 シリアルキラーカルマ。原作グンダリ戦での「重ね着」から着想を得て生み出された、「ジャック・ザ・リッパー」と「エリザベート・バートリ」シリアルキラー2つ分のパーカーゴーストを重ね着した特殊なカルマ。眼魂もすでに完成されている、つまり二人分の偉人(?)の「業」を叶えた少女、白川乙女が変身する。
 スペクターの家族を殺した謎のカルマその人であり、白川本人は森川の家族を殺した、数多の人間の運命を狂わせた凶悪殺人鬼。霧を纏うことによる瞬間移動と血の様な流動体を操る能力、そしてパーカードレスに替えが供えられたナイフを武器にする。モチーフは「悪ノ娘」シリーズのネイ・フタピエ。

次回、仮面ライダーWのキャラがついに登場。乗り込むは宗教団体?お気に召したなら感想などいただけると嬉しいです。


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