新人執事のお仕事です。 (水城伊鈴)
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今日からあなたはお嬢様

思いつきで書いたので投稿が途絶えたら察してください。伸びが良かったら続けてくつもりです。


一暉「へぇーこんなとこに商店街あるんだ。」

 

俺、夢界一暉(むかいいつき)は興味をそそられながらもそう言う。そう言うのも無理はない。最近、と言うか今日ここへ越して来たばかりなのだ。親が海外出張する事になったが、日本の学校に通いたいと頼み込み、俺だけ日本に残り、転校と言う形になった。ただ、高一で一人暮らしは流石にダメだと、親戚の屋敷に預けてもらう事になり、ここへと越して来た。親戚……と言っても、会ったこともないし、名前も知らない。親が昔からの親友ってだけで俺は関係ないのだ。でも、すごい金持ちの家らしい。その証拠に、俺の分の学費を掛け持ってくれるとか。代わりに、その屋敷に住むお嬢様の側近として働いてくれと、契約することになった。どうやら同年代で、しかも同じ学校に通うことになるらしい。

 

?「どうしましょう……。」

 

一暉「ん?どうしたんだろ、あの子。」

 

商店街をしばらく進むと、中央のベンチで座っている少女がいた。その顔は、あまり浮かれない様子。

 

一暉「どうしたんですか?」

 

心配になり、彼女の前まで行き、心配すると、きょとんとした顔で俺を見つめる。……ってか、さっきまで顔が見えなかったから分からなかったけど、めっちゃ可愛いじゃん。クリッとした目に幼く見える顔立ち……正直、ドストライクです……。

 

?「あ、あの、お友達からもらったものを失くしてしまって……。」

 

一暉「どんなものです?」

 

?「えっと、ペンダントなんですけど……。」

 

一暉「なるほど。じゃあ、俺も手伝いますよ。落としたのここら辺ですよね?」

 

?「た、たしかにここら辺で落としてしまいましたけど、わざわざお手伝いしなくても、あなたに迷惑なだけですし……。」

 

一暉「そんな困った顔されたら見過ごせませんって。それに、もうすぐ陽も暮れて来ます。夜道は危ないですよ。」

 

?「……じゃあ、お言葉に甘えますね。一緒に探しましょう!」

 

あんなカッコつけたこと言ったはいいものの、今日来たばかりなんだよなぁ……。落とし物しやすいところとか全然知らないし、地道に見て行くしかないか……。

 

そうして俺は、名も知らない少女と共に落とし物を探す事になった。

 

〜一時間後〜

 

一暉「あった!ありましたよ!」

 

?「ほ、本当ですか!?良かった〜……」

 

俺が見つけたペンダントを手渡すと、安堵したのか、ぺたりとその場で膝をつく。そんなに大事なものだったのか。友達のとは聞いていたけど、ここまで安心すると言うことは、相当仲の良い友達なのだろうか。何はともあれ、見つかって良かった。

 

?「あの!何かお礼を……」

 

一暉「お礼なんて要りませんよ!感謝してくれるだけで充分です。」

 

?「で、ですが!」

 

一暉「じゃあ、また会えた時にお礼をしてください。もう真っ暗だし。」

 

?「……わかりました。この御恩はずっと忘れませんからね!」

 

そう言うと、彼女は少し惜しそうな顔をしながら、その場を立ち去った。……優しさを無碍にしてしまった感があって、罪悪感を感じる。

 

一暉「やべ、道わかんねぇ。」

 

落とし物を探すのに夢中になりすぎて、辺りはすっかり暗くなってしまっていた。あの子、帰れるのかな……?と言うか、もう屋敷に辿り着くのは不可能そうだ。だって、前も後ろも分かんないくらい真っ暗だし。電話だけして、ネカフェにでも泊まるか。

 

プルルル……

 

"もしもし。"

 

親戚"はい、一暉?"

 

"そうです。あの、人助けをしてたら迷子になったから今日は屋敷に着けそうにないです。"

 

"えぇ?じゃあ、どこで夜を過ごすつもり?"

 

"直ぐ近くにネカフェがあるらしいんで、そこでとりあえず泊まります。"

 

"……分かったけど、荷物は?"

 

"明日、学校に荷物ごと持って行くから平気と思います。"

 

"無理はしないでね。"

 

"大丈夫ですよ。これでも男なんで。"

 

ピッ……

 

ふぅ、とりあえず理由は説明できた。俺は一息つき、ネカフェへと向かった。最悪、ここから学校も近いっぽい。ほんと運が良い一日だったなぁ。

 

〜翌日〜

 

俺は、今日から登校する学校、「有栖川学院」の校門前で、腰を抜かしていた。……デカ過ぎ。しかも耳を澄ますと、辺りからは「ごきげんよう」と華のある挨拶が飛び交っている。お嬢様学校とは聞いていたが、まさかここまでとは……。

 

有栖川学院、ここは去年までお嬢様学校と呼ばれ、数多くのセレブが通う学校だったらしいが、ここ数年で、その敷居の高さから、入学する生徒が著しく低下してしまったとか。学校の人口増加を目的として、今年から男女共学制に変わった。その先駆者として、この学校に通っているお嬢様の側近になる俺が都合がいいのか知らないが抜擢(ばってき)された。つまり、今年中は他の転校生がいない限りハーレム!……と喜べるわけもなく、話が合わない女の子たちと過ごさなければいけないのだ。まぁ、端的に言うと、ぼっち生活が確定している。奇跡的に話の合う子がいれば良いけど、ここはお嬢様学校、俺の話題に共感できる人なんてまずいなさそう。はい、詰みと。

 

先生「今日は、前に言っていた転校生が来ます。男性ではありますが、男女問わず、暖かく迎えてあげてください。」

 

先生がそう言うと、生徒らは「はい!」と元気な声で返事をする。規則が厳しいらしいからなぁ、お堅めの人が多いんだろうか。

 

先生「それじゃあ、入って来なさい。」

 

ガラガラと教室のドアを開け、中に入ると、教室内は先程と違いざわめき出す。うぅ、こう言うの初だから緊張するなぁ……。周りから見られ過ぎて視線が痛い……。

 

先生「自己紹介を。」

 

一暉「はい、今日からこの有栖川学院に転校する事になった夢界一暉です。男一人だけってのも違和感かもしれないけど、仲良く出来るよう頑張ります。よろしくお願いします。」

 

ぺこりと軽く一礼すると、みんな優しく迎えてくれるように、拍手をしてくれた。お堅い人たちと思ったけど、意外といい人たちが多いのかも。

 

先生「それじゃあ席は……桜田さんの隣が空いてるし、そこでお願いします。」

 

一暉「よろしくね、桜田さ……って」

 

先生に導かれるがまま、指定された席へ向かい、隣の席の桜田さんと言う女性に挨拶をしようとすると、驚きを隠せず、つい声を出してしまう。

 

美夢「あなたは、昨日の……!」

 

先生「夢界さん、桜田さんとお知り合いだったのですか?」

 

一暉「ま、まぁ、一応知り合いです。昨日が初めましてですけど……。」

 

マジか……。昨日、一緒に落とし物を探した少女がまさか同じ学校の、隣の子だったなんて。桜田さんって言うのか……制服姿も可愛い……。

 

先生「とりあえず、交友の時間は後にして、ホームルームを始めますよ。」

 

先生はパンッと手を叩き、俺らの会話を一時中断させ、ホームルームを始めた。新高校生活、良いスタートが切れた気がする。

 



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新人執事の初仕事

思った以上に指が進みこっちの投稿です。最近、桜田美夢が熱くって。ほんとに可愛い

今回も読みにくい、語彙力が足りない可能性があります。生暖かい目で見て欲しいです。


一暉「桜田さんってここの生徒だったんだね。」

 

美夢「えぇ、それにしてもびっくりした。昨日、助けてくれた方が執事だっ……」

 

生徒「夢界さん夢界さん!夢界さんってどこの学校出身なのですか?」

 

ホームルームが終わり、向かい合わせになって話していると、桜田さんが気になることを言った気がする。しかし、俺のことに興味津々なクラスメイトたちが、たちまち俺の周りに集まりだし、彼女の声が遮られてしまった。

 

一暉「え、えっと……」

 

生徒「ここに転校と言うことは、ご親族の方が何かやられてるのですか?」

 

一暉「あ、うん」

 

頼む、一人づつ話してくれ……。どれから答えればいいか分からない。不意に桜田さんを見ると、心配そうに俺を見つめている。だけど、桜田さん一人じゃどうにも出来なさそう……。

 

?「あなたたち!一斉に話しかけては、新入生の方に失礼ですわよ!」

 

生徒「春日さん!?」

 

俺が大量の女子に押しかけられ、混乱していると、少し離れたところからキリッとした声が、女子生徒たちを鎮めた。

 

?「まったく……っと、急に怒鳴ってすみません。大丈夫でしたか?」

 

一暉「う、うん。ありがとう、えっと……」

 

春奈「春日春奈ですわ。よろしくお願いしますね、夢界さん。」

 

さっきまでの剣幕な表情から、柔らかい表情に変わり、声色も明るくニコッと微笑みかける。

 

春奈「美夢さんも大丈夫でしたか?」

 

美夢「うん、春奈ちゃんいつもありがとう!」

 

春奈「い、いえ、私は当然のことをしてるだけです。感謝されることは何も……。」

 

桜田さんに褒められると、春日さんは顔をカァッと赤くし、そっぽを向く。ん〜これが百合ってやつですか。

 

春奈「んん!とりあえず、もうすぐ授業が始まってしまうので、また今度深くお話し致しましょう。それでは」

 

一つ咳払いをして、スタスタとその場を去って行った。そんなに恥ずかしかったのだろうか……。

 

一暉「春日さんって、良い人だね。」

 

美夢「人のことちゃんと見てくれてるって感じだよね。私もあの子に救われたこといっぱいあるよ。」 

 

へぇー、だからあんなに親しげに話してたのか。他の子は「春日さん」呼びだったのに、桜田さんは「春奈ちゃん」ってラフな呼び方してるし。昨日の落とし物って春日さんからの物だったのかな。

 

それからは特に桜田さんと話すことはなかった。休み時間は、他の子らの質問に答えたりして、少しこの学校に溶け込めた気がする。

 

〜放課後〜

 

美夢「夢界くん、ちょっと付き合ってくれるかな?」

 

一暉「え、」

 

なにそれ告白……?付き合ってって俺もう屋敷に向かわなきゃいけないんだけど。どうしよう……。

 

………………………………

 

美夢「夢界くん大丈夫?顔色悪いけど。」

 

一暉「だ、大丈夫。ちょっと嫌なこと思い出しただけ。」

 

どうしてこうなった。気づい時には、桜田さんが呼んでいたであろうリムジンに乗ってしまっていた。だって桜田さんの誘いとか断れないでしょ。ってか、マズイくないか?女の子と二人きりで車って……。しかも、桜田さん、俺にくっついて来るように座るし……彼女が少し動くたびに花のような匂いがふわりと香る。てか、なんで俺リムジンに乗せられてるの?拉致ですか?

 

美夢「……いくん、夢界くん!」

 

一暉「ひゃい!なんですか!」

 

美夢「本当に大丈夫?もう着いたけど……。」

 

一暉「へ?着いたって……」

 

外の景色を見ると、めちゃくちゃ広い庭にそれっぽい噴水、その先には明らかに豪邸ですと言わんばかりの屋敷がそそり立っていた。

 

美夢「私の家だよ。夢界くんもここに用があるんでしょう?」

 

一暉「な、なんの話?てか、なんで俺が桜田さんの家に連れて来られたの?」

 

俺がそう言うと、きょとんとした顔で俺を見つめる。なんかデジャヴだな、この構図。

 

美夢「まだ聞いてなかったの?今日からここがあなたのお家だよ!」

 

……。ちょっと待て。話を整理しよう。リムジンで桜田さんの家に連れて来られて、今日から俺の家でもある。つまり?彼女が俺の仕えるお嬢さ……ま……。

 

一暉「えぇ!?桜田さんがお嬢様!?」

 

美夢「ふふ♪やっぱり気付いてなかったんだ。」

 

一暉「ご、ごめんなさい!お嬢様って知らなかったので……。」

 

美夢「気にしてないから良いよ。それより、早くお家に入ろう?」

 

僅かにぷくーっと頬を膨らませていた気がするが、とりあえず中に入ろう。

 

桜田母「一暉くん!初めまして。よく来てくれたわ。」

 

一暉「は、初めまして。親がいつもお世話になってます。」

 

桜田母「美夢もお帰りなさい。少し一暉くんとお話しするから、先に部屋に戻ってなさい。」

 

美夢「うん、分かった。」

 

桜田さんもといお嬢様は、俺の横を通って自部屋へと戻って行った。通り過ぎる瞬間、「また後でね」とコソッと耳元で囁かれ、少しドキドキしてしまう。

 

桜田母「じゃあ、今日からここで働いでもらう……っと言っても内容は至極簡単なことよ。」

 

一暉「なんですか?」

 

桜田母「ただ、美夢のそばにいてあげてちょうだい。」

 

一暉「……え?今なんて。」

 

桜田母「だから、美夢と一緒にいてあげてほしいの。掃除や洗濯等は全て元いるメイドたちがやるから、いつも通り過ごしてもらって構わないわ。」

 

一暉「そ、そんな事で良いんですか?学費まで払ってもらってるのに……。」

 

桜田母「美夢にはね、幸せに過ごしてほしいの。学校にいる時はお友達と楽しくしているらしいのだけど、家だと家庭教師の子が来る時以外、少し寂しそうな顔をしてるのよね。だから、美夢と同い年の子を雇いたいと思っていたのだけど、ちょうど良く一暉くんがこっちに来ると聞いて嬉しかったわ。これで美夢も楽しく過ごせるんだろうなって。」

 

そう言うことか。お嬢様のお母さん、娘想いなんだな。てか、たったそれだけで学費を払ってくれるの、なんか至れり尽くせり過ぎないか?

 

桜田母「あぁ、でも最低限、ここにいる時だけはこの服を着てね。」

 

そう言うと、スーツを俺に手渡して来た。おぉ、執事っぽい。

 

桜田母「これに着替えたら、自分の部屋に行ってみてちょうだいね。場所は二階の美夢の部屋の隣だから。」

 

一暉「了解です。」

 

話が一通り終わると、メイドの方が俺を使用人専用の更衣室へと連れて行ってくれた。お嬢様と言い、メイドと言い、なぜここの人たちはこうも可愛い人ばかりなのか。目は和むけど、心が休まらない……。

 

…………………………

 

一暉「落ち着かない……。」

 

スーツに着替えた俺は、自室へ向かうべく、屋敷の廊下を歩いていた。自分の匂いじゃないだけでこうも落ち着かないものなのか。

 

一暉「あっ、ここか。」

 

ガチャ……

 

美夢「あ!やっと来た!」

 

ドアを開けると、お嬢様は俺のベッドであろう上に座って枕を抱きしめていた。部屋着だ……。

 

一暉「あれ、ここって俺の部屋ですよね?なんでお嬢様がここに……。」

 

美夢「ちょっとお話と言うか、約束したくて待ってたの。」

 

一暉「お嬢様のお願いなら何なりと。」

 

わざわざ部屋で待ってまでするお願いってなんだろうか?無理難題じゃなければ良いけど……。まぁ、そんなこと言うような子には見えないし、大丈夫だよね。

 

美夢「じゃあ、その喋り方やめてほしいな。」

 

一暉「……と言うと?」

 

美夢「敬語はやめてってこと。あと、お嬢様じゃなくて、美夢って呼んでほしい。」

 

一暉「いやいや、それは無理ですよ!」

 

美夢「なんで?私たち同い年でしょう?私も一暉くんって呼ぶから。」

 

一暉「それとこれとは話が違います!それに俺からしたらお嬢様ですし……。」

 

美夢「むぅ〜、一暉くんって結構硬い子なんだね。」

 

一暉「うぐっ……。」

 

美夢「敬語使う限り、もうなにも返事しないからね!」

 

一暉「いや、お嬢様、それは……」

 

美夢「……。」

 

プイッと顔を逸らし、俺に顔を合わせようとしてくれない。あなたも頑固じゃないか……。口聞かれなくなると、今後の生活に支障をきたすし……う〜ん……。

 

一暉「み、美夢……さん……」

 

美夢「はい!なんですか?」

 

ん"ん"、なにそれ可愛すぎ!名前呼ばれるの、そんな嬉しいのかな。そこまで喜ばれた反応されると、もう美夢さんって呼ばざるを得なくなるんだが……。

 

一暉「これ、万が一美夢さんのお母さんに名前呼びしてるのバレたらクビになるとかありま……ないよね……?」

 

美夢「ふふ♪無理して直さなくて良いんだよ?」

 

俺は、敬語を使ってしまい、慌てて言葉を直すと、美夢さんは可笑しそうにケラケラと笑いながらそう言った。お淑やかな子だと思ってたけど、意外とからかうのが好きらしい。……うん、そんなとこも正直可愛い。

 

一暉「と、とにかく!その辺はどうなのかな?」

 

美夢「そこは大丈夫!私から言っておくから。」

 

一暉「ほんとに大丈夫なのかな……。」

 

美夢「お母様は優しいから多分平気だと思う。」

 

その後、美夢さんがお母さんにこの事を言いに行ったところ、すんなりと話が通ってしまったらしい。

 

…………………………

 

晴れて今日から、美夢お嬢様の執事になったわけだが、これから毎日美夢さんと一緒に暮らせると言うことに少し頬が緩んでしまう。だって、こんな可愛い子と毎朝登校するって事でしょ?幸せでしかない。

 

一暉「……。ここどこ……?」

 

ただ、屋敷の間取りを覚えるのはかなり時間がかかりそうだ……。




美夢の喋り方分かんない……。

次回「集結!Lyrical Lily」


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